魔法先生ネギま!神の祝福授かりし異端者 (幻想師)
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プロローグ

どうも始めまして!幻想師と申します!ネギまの小説ですが結構テンプレな展開になると思うのでご了承下さい!



 

 

『死後』という概念には様々な解釈がある。

 

例えば悪人は地獄に、善人は天国にという理論。

 

死後という概念がそもそも間違いで、死んだ後はただ虚無が広がるだけなんて言う人もいる。

 

そして死後、人は新たな人格を得て転生するという理論。

 

何故急にこんな話を始めたか、それは俺の体感時間で数分程前まで遡る。

 

8月1日。夏休みも始まったばかり、高校3年の俺は受験勉強の息抜きに駅前の本屋まで本を買いに行った。

 

セミの鳴き声や車の音、喧騒に包まれる大通りを歩いていた時だった。

 

背後で突然悲鳴が上がった。

驚いて後ろを振り向いた俺の目に映ったのは血を流しながらうずくまっている女性、そしてナイフを振り回しながら俺に迫ってくる男。

 

「俺を必要としない世界なんか!俺を必要としない奴らなんか!皆、殺してやる!」

 

確かそんなことを叫んでいた気がする、そして俺は対した抵抗も出来ずにその男に首を切られた。

 

首の、しかも耳の少し下の頸動脈を皮膚を切り裂きながら通過するナイフの感覚をまだ覚えている。

 

出血多量で死ぬ前に、そのあまりの出血の勢いにショック死したらしい。

 

遠くから聞こえるサイレンの音を聞きながら俺は意識を閉ざしたのだった。

 

そして現在、死んだはずの俺は、何故か意識が戻ると何も無いただ床だけが何処までも広がっている白い空間にいた。

 

「ここ、は……」

 

「ここは現実と幻想の境界だよ」

 

思わず呟いた言葉に返ってくる少女の声。

顔をあげるとそこには何時の間にか白いワンピースを着た少女が立っていた。

 

「君は?」

 

「私は君が生み出した幻想」

 

少女は笑ながら言う。

 

「それは、どういう意味?」

 

「えーとね、元々私っていう概念なんてないの。今君が見てる私は君が見たいと思ってる私なんだ」

 

「……まあ、何となく分かったよ。それで?俺は何でここにいるんだ?」

 

1番聞きたかった事を聞いてみる。あの時確かに死んだ俺が、何故こんなところで目が覚めたのかと。

 

「君は確かにその時死んだ、疑いようもなくね。でも、何故か君の魂は死後の世界、あの世に行かなかったんだ。だから、私が彷徨っていた君の魂をここに連れてきたの」

 

「死後の世界?そんな物が本当にあるのか?」

 

「もちろんあるよ、この空間がその証拠。この空間は君が元いた現実と現実で死んだ人達が行くはずの死後の世界、幻想の世界を支えるため存在してるんだよ」

 

「なるほど、じゃあ何で俺はその幻想に行けなかったんだ?」

 

少女は首を振る。

 

「それは私にも分からない。ただ1つ言えるとしたら、これはとっても珍しいこと。今までにこんな事は一度も無かった、だからこれから君がどうなるのかも全くの未知数」

 

少女はそう言って謝る。

 

「そうか、じゃあそんな俺を君はこれからどうするんだ?」

 

「全くの未知数、だから私達は君をこの世界から飛ばす事に決めたの。不穏分子は、出来るだけ作りたく無いから」

 

「私達って?それに、この世界から飛ばすってどういう事なんだ?」

 

突然の少女の発言に元々状況把握が追いついてなかった俺の頭はさらに混乱気味になる。

 

「私達は私達。私と、現実の管理者と、幻想の管理者」

 

「君みたいな存在が現実にも幻想にもいるのか。それで、この世界から飛ばすって?」

 

「そのままの意味、私達の管理する世界の外の世界に、君を飛ばすの」

 

外の世界?そんな物まであるのか……いや、世界は1つだけとは限らない。この世界の隣の世界、おそらくパラレルワールドの様な世界なんだろう。

 

「その世界には君みたいな管理者はいないのか?」

 

もしその世界にも管理者がいるのなら、その世界でも不穏分子として扱われ挙げ句の果てにパラレルワールドをたらい回しにさせられかねない。

 

「私達の様に、世界に意識が宿るのは極稀。その世界には私達の様な存在はいない」

 

それならまだ安心だ、まあ、その世界でどんな事が待ち受けているのか分かったものじゃないんだが。

 

「君の心配は分かる、私達も君をこちらの勝手で世界から追い出す事を悪く思ってるんだ。だから、君には贈り物をする事にしたの」

 

そう言って少女が近寄ってくる。

顔と顔が触れ合いそうになるまで近づく少女、でも何故か俺の体は全く動かない。

 

「君は次の世界でも人間として生きる事が出来る、そして、君には自身の身を守るための力を渡す」

 

「身を守る力って……むぐっ」

 

そこまで言いかけたところで少女は俺の顔を両手で固定し、キスをしてきた。

生前も、付き合ってた人はいなかったからこれがファーストキスだろう。だが、俺にはそのキスの感触は一切分からなかった。

少女が急にキスをしてきた、というのもあるがそれ以上にキスと同時に自身の体の中に流れ込んでくる暖かい何かに意識を持っていかれたからだ。

 

「……ん、力の譲渡は出来た」

 

数分後、少女が俺から離れる。

 

「これが……力?」

 

確かに体の中に今までには無かった暖かい何かがあるのを感じる。

 

「その力は使い方次第ではとても強力、だから、使い所を間違えないで」

 

「分かったよ」

 

もともと人を悲しませる事は好きでは無い、悪い事には使わないとは思うが。

 

「それともう1つ、君に力をあげた。これは私からの贈り物」

 

「その力って?」

 

「それは後々分かると思うよ?面白い力だから、君も気に入ってくれると思う」

 

「そうか、ありがとう」

 

そう言うと少女は花が咲く様な笑顔を見せる。

 

「うん、なんか私、君を気に入っちゃったみたい。でも、もうお別れ」

 

もうそろそろ時間らしい、だんだん体の感覚が薄くなっていく。

 

「最後に、君の今後の人生が幸せになる事を祈ってるね……ばいばい!」

 

少女のその言葉を最後に、俺はまた意識を失うのだった。

 

 

 




という事でプロローグでした、主人公の名前はそのうち出ると思います。
ご意見ご感想等ありましたらお願いします。
ではでは、また次回!


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第1話 異世界の少女

第1話です!みんな大好きあの子の登場です!どうぞお楽しみ下さい!


 

 

 

意識が浮上する。それと同時に耳に入ってくる鳥の囀り、草木の匂い。

何処かの森の中のようだ。

 

「ん……着いたみたいだな」

 

意識が完全に覚醒し、目も光に慣れてくる。

俺は森の中に倒れていたらしい。

 

「まずは、状況把握をしなきゃな」

 

自分の体を見てみる、どうやら少し若返ってるようだ、中学あたりの体だ。

 

「あの子に貰った力もちゃんとあるみたいだな」

 

だが、最初に貰った力はちゃんと感じられるが、そのあとに貰った物がどうしても分からない。

 

「まあ、そのうち分かるか」

 

取り合えず、移動をしよう。いつまでもここにいたって仕方がない。

そんな時だった、歩き始めた所に突如響く何かが爆ぜた様な爆音。

木の枝でよく見えないが前方から煙が上がっている。

 

「あそこからか……一応、行ってみるか」

 

もしかしたら怪我人がいるかもしれない、俺は爆音のした方へと走り出した。

 

「あれは……どういう状況だ?」

 

走って行って着いた先は、先ほどの爆発?で少し森が開けていた。そこで少女が1人、数人の男と対峙している。

少女は金色のロングヘアーに人形のように可愛らしい外見をしているが、それに見合わないような見窄らしいマントを纏っている。

なにやら訳ありのようだ。

それに対し、男達の方はファンタジー物のアニメなんかでよく見るような冒険者の様な装備だ。

 

「こうしてみると、本当に異世界に来たんだなって実感が湧くな……っと、そんなことしてる場合じゃなかった」

 

この状況、どちらに味方に付くかなんて考えなくても分かる。

そもそも、少女1人に対して数人がかりなんて、根性が気に入らない。

俺は何の躊躇いもなく少女を庇う様に男達の前に立つ。

 

「なんだぁ?てめぇ?」

 

先頭にいた男が俺を睨んでくる。

見た目からして外国人だと思ったんだが、話す言葉が分かるってことは日本語なのか?……いや、何か違う、俺の頭が勝手に相手の言葉を理解してるみたいだ。

 

「何だも何も無い、お前達こそ、この子になにしているんだ?」

 

「そんなもん、悪を討とうとしてるに決まってんだろうが!」

 

俺の言葉もあっちは理解出来るらしい、やっぱり俺には何時の間にか自動で言語翻訳が出来る能力が備わっていたらしい。

あの子の言った力もこの事だったのか?

 

「はっ、悪?この子がか?俺からしたら、こんな子供を集団で襲うお前達こそ悪だと思うんだが?」

 

俺の言葉に男達は舌打ちし、

何やら話し出す。

 

「何なんだ、あいつ?」

 

「構わねぇ、あいつも一緒にやっちまおうぜ。どうせあの魔女の仲間だ」

 

何やらブツブツ相談しているが、所々こっちにまで聞こえてくる。

魔女?この子が?

後ろの少女を見る。

 

「……貴様は……何で私を?」

 

まだ俺を警戒しているようだ、いぶかしむ様に俺を見てくる。

 

「そんな物、君を助けたかったからに決まってるだろ?……大丈夫だ、あんな奴ら、お兄ちゃんがすぐに追い払ってやるからな?」

 

そう言って少女の頭を優しく撫でる。

この子、今までこんなことが何度もあったのだろう。

何よりも、人はもう信じられないとでも言いそうな目がそれを語っている。

 

男達の方を振り返るともう話し合いは終わっていた様だ。

 

「悪ぃがテメェにも死んでもらうぜ?恨むんなら後ろの魔女を恨むんだな」

 

男達はそれぞれが腕を前に突き出し、何かをブツブツと唱え出す。

 

「魔法……か?……やっぱりこの世界にはあるのか」

 

「おい、貴様。私が時間を稼ぐ、その隙に逃げろ」

 

後ろの少女がそんなことを言ってくるが無視し、俺は男達の方へゆっくり歩いていく。

 

「おい、聞いているのか!?貴様は私と何の関係も無いだろう!さっさと行け!」

 

「はぁ、何の関係も無いだと?俺と君はもうここで出会ってるじゃないか……この世界に何の関係も無いなんて物は無い、全ての物が、あらゆる物と関係を持つことで成り立っているんだから。それに、最初に言っただろ?お兄ちゃんに任せろって」

 

その言葉に少女は黙る、男達も詠唱?が終わった様だ。

 

「喰らえ!『魔法の射手(サギタ・マギガ)』っ」

 

男達の手から放たれる大量の光条、赤、青、白、様々な色をするその光の矢は軽くホーミングをしながら一斉に俺に向かってくる。

 

「始めて使うのがこんな状況か、まあ、こういう状況の方が使い方は身に付きやすいか……」

 

左手を前に出し、俺の中にある『力』を行使する。

 

俺の足元から『闇』が勢いよく噴き出し迫ってくる魔法の矢を悉く消し去る。

 

「なっ!」

 

男達、そして後ろの少女が驚きの声を上げる。

やっぱり、さっきの詠唱からすると詠唱無しでの魔法は珍しいのか?

 

「て、テメェ!何しやがったんだ!?」

 

先頭の男が喚き出す。

 

「そんなこと、知る必要もないだろう……それよりも、俺を殺そうとしたんだ、お前達も殺される覚悟は出来ているんだろうな?」

 

人を殺す……もちろん始めての経験だが、こんな世界だ、そんなことを気にしていたらこの先生きては行けないだろう。

 

「何故人は闇を恐れるのか、お前達は知っているか?」

 

そう言って前に突き出した左手を広げる。

 

「な、なんだこれ!?」

 

男達の足元に闇が広がり、俺が左手をゆっくり閉じると共にドンドン男達が沈み始める。

 

「くっ、そぉ!抜けられねぇ!」

 

「い、嫌だ!嫌だぁ!!」

 

抜け出られないことを知ると、男達は騒ぎ始める。

中には命乞いを始める者までいるが、闇はそんな男達を1人ずつ確実に飲み込んでいく。

 

「が、あぁぁぁぁ……」

 

さほど時間も掛からずに最後の1人も飲み込まれた。

辺りを静寂が満たす。

 

「ふぅ、何とかなったな。さて、多分もうこの辺りには誰もいないだろ。安心していいぞ」

 

後ろの少女に声をかけかけるが少女は俺を信じられない物でもみるかのような目をするだけで固まっている。

 

「……?」

 

何の反応もないので少女の目の前まで行って手を振ってみると。

 

「な……なんだいまのはぁぁぁ!!」

 

「うおっ、な、何って何がだ?」

 

「何って!さっきの魔法だ!私はあんな魔法知らないぞ!?」

 

「ああ、あれね。んー、魔法、なのか?どっちかと言うと俺の固有スキルみたいな?」

 

「な、めちゃくちゃな……」

 

そう言って放心していた少女だが、しばらくすると俺に向き直る。

 

「まあ、あれだ……一応、助けられたしな。その、あ、ありがとう。感謝する」

 

何だか慣れない様子でそう言ってくる少女は妙に笑いを誘った。

 

「くっ……ぷっ、あはははは!」

 

「な!き、貴様は!人が折角感謝してやってるというのに!」

 

「あははは、悪い、何か似合わねーって思ってさ」

 

「くっ、まあいい、それよりも貴様。さっさとここを離れるぞ、あいつら仲間が何時また来るかも分からんしな」

 

少女は少し歩くとそこでピタリと止まる。

 

「……エヴァンジェリン」

 

「は?」

 

「私の名だ、エヴァンジェリン.A.K.マクダウェル」

 

そう名乗ると本当にさっさと歩いて行ってしまう少女、エヴァンジェリン、ちと笑いすぎたかな?

 

「お、おい!待ってくれよ!?」

 

俺はその後を追いかける。

何だろうか、心が踊る。

エヴァンジェリンとの出会いは俺の人生を劇的に変える、そんな予感がした。

 

 

 

 




というわけで第1話でした、どうだったでしょうか?楽しんでもらえれば幸いです。
分からない所などがあったら言って下さい。
ではでは!また次回!


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第2話 少女の正体

今回はシリアス回です!まあ駄文なんでそんな期待しないで欲しいです。主人公の能力も少しだけ判明しますのでお楽しみに!


 

 

 

日が暮れるまでに森から出る事が出来なかった俺とエヴァンジェリンは森の中の川辺にあった洞窟で一夜を明かすことになった。

 

「ほら、焼けたぞ」

 

エヴァンジェリン……長いからエヴァでいいや、エヴァがいい具合に焼けた魚を差し出してくる。

恥ずかしながら野宿の経験なんて皆無な俺は食料の調達から寝床の準備までエヴァに任せることになった。

 

「ああ、なんか、悪いな。力になれなくて」

 

「気にするな、今朝の礼だ」

 

そう言うと自らも魚をかじり始めるエヴァ。

俺も食うかな……うん、美味い。

 

「それで?貴様は一体何者なんだ?」

 

そう質問してくるエヴァ、まあ、気になるよな。

そう言えば俺の名前、どうしようか……行きてた頃の名前を使うか?

 

「俺は咲良ショウ。んー、そうだなあ。まず第1に、俺はこの世界の人間じゃない。違う世界から来た」

 

「ん?なんだ、ショウは『魔法世界』出身か?」

 

「魔法世界?なんだそりゃ?」

 

俺が逆に聞き返すとエヴァが訝しげに眉を顰めながら説明してくれる。

どうやらこのパラレルワールドにあるもう1つの世界らしい。

おそらく俺の元いた世界の現実と幻想の様な物なのだろう。

なんでも、そっちでは魔法が科学になり代わり繁栄しているらしい。

 

それともう1つ、今いる世界の話なんだが。

どうやらここも地球らしい、ただ、魔法があるなど前とは少し違う世界の様だ。

まあ当たり前なんだが。

それに時代も全然違った、何となく中世のヨーロッパ辺りを思い描いていたのだが、本当にここは中世のヨーロッパだったらしい……うーん、信じられん。

 

「にわかには信じられないな……こことは違う世界か」

 

「んー、それは信じてもらうしかないよな。つーか魔法をポンポン使う様な奴に信じられんとか言われたくねぇ」

 

「む、それもそうか。だがショウも魔法を使っただろう?あれは何なんだ?」

 

「まだ俺も完全には理解していないんだがな?星とリンクする事でその星に存在する物質や現象を操ることが出来る能力、らしい。因みにさっきはこの星にある物質の中から闇や影を使った」

 

そういえば闇って物質なのか?なんて思ったが使えるもんは使えるんだから気にしないでいいか。

 

「な、な、なんだその無茶苦茶な力はっ!!」

 

「こらっ、声が響くだろうが。俺だって強すぎると思ったんだがな?もう返し様もないしな」

 

これについてはもうしょうがないし、力の使い方を覚えていくしかないだろう。

 

「で?ショウはこれからどうする気だ?もし行く当てがないのなら、わ、私に着いて来てもいいぞ?力の使い方もある程度までは教えてやろう」

 

「ん?いいのか?」

 

「あ、ああ、ショウが来たいと言うなら仕方がないしな、うん、仕方がないんだ!」

 

なんかブツブツ呟きガッツポーズをしているエヴァ。

 

「そう言えばエヴァは何であいつらに追われてたんだ?なんかあいつらエヴァの事魔女とか言ってたけど」

 

つーかあいつ等も魔法使ってなかったか?

だが、その話題を口にした瞬間エヴァが動きを止めた。

……しまった、地雷だったか?

 

「あー、言いたくないんならいいんだ」

 

「いや、これからは行動を共にするんだ。知っておいてもらいたい」

 

そう言うとエヴァは自身の事をポツポツと話し出す。

 

領主の城に預けられ、何不自由ない少女時代を過ごした事。

十歳の誕生日、目が覚めた自分が真祖の吸血鬼になっていた事。

神を呪い、自分をこんな姿にした男に復讐を果たし、城を出た事。

それからずっと1人で生き続けて来た事。

 

「どうだ?失望しただろ?私は本物の化け物なんだ」

 

そう言うとエヴァは自虐の笑いを見せる。

 

「……はっ、何が真祖だ。言っとくけどな、まだためした事はないが俺は星からのバックアップがあればほとんどなんだって出来る。お前には出来んのかよ?」

 

「……何が言いたい?」

 

「だから、生命体云々じゃなくて、能力値的に言えば俺はお前よりも化け物だって事!真祖如きでグチグチ言ってんじゃねーよって言ってんの!」

 

ちょっと極論過ぎたかな?いや、こんくらいで十分だろ。

 

「な、お前は何を言って……ってな、何!?」

 

何か言ってるエヴァを無視して俺の膝の上に乗せ、後ろから抱き締める。

 

「あのなぁ、気づいてないんだろうけど、泣きながら 震えてる女の子が目の前にいたら大抵の男は無視出来ないと思うぞ?」

 

「え?……」

 

そう言って自分の手を見るエヴァ、その手は俺の言う通りに震えていた。

そして瞳からとめどなく溢れる涙が頬を濡らしている。

 

「寂しかったんだろ?……まあ、なんだ。これからは俺が側にいるからさ。だから、もう我慢とかしなくて良いんだぞ?」

 

そう耳元で囁いて頭を撫でると、抑えていた物が外れたのか声をあげて泣き出すエヴァ。

その日はエヴァを抱き締めたまま、寝たのだった。

 

 

 




と言うわけで第2話でした!……すいません、作者がエヴァといちゃいちゃしたかっただけです、はい。
ご意見、ご感想、ご要望等もお待ちしておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。
ではでは!また次回!


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第3話 エヴァと従者

第3話でーす、楽しんで貰えると嬉しいです。


 

 

 

翌朝目を覚ますと、昨夜抱き枕の如く抱き締めたまま寝たはずのエヴァに何故か膝枕をされて髪の毛をいじられている状況だった。

何でいきなりそんな展開にだって?そんなの俺が1番聞きたいわ!

起きるにも起きずらく、暫く様子をみようと思い寝たふりを決行する。

 

「……寝顏は、可愛いんだな」

 

……少し顔が熱くなった。

エヴァの独り言は続く。

 

「今まで、人に優しくされる事なんてなかったからな……こういう時になんて言えば良いのか分からない」

 

そう言って一度言葉を切り、優しい手つきで頭を撫でてくる。

 

「だが、これだけは言っておく……ありがとう」

 

何か、俺が聞いちゃいけないセリフだったような……

幸いエヴァは俺が起きているのにまだ気づいていない様だし、もうしばらくしたら起きよう。

 

……数分が経った、もうそろそろいいだろうか。

 

「ん、うぅん……」

 

「わ、わ!お、起きたのか」

 

さっきから起きていたがな……

 

「お、おう。何故に膝枕?」

 

「こ、これはだな……そうだ、ちょっとした気まぐれだ!なんだ!迷惑か!?」

 

逆ギレですか……まあ、荒っぽい口調の割には顔が真っ赤になっているので逆に和んでしまうんだが。

 

「いや、あったかいし柔らかいし。快適だったよ」

 

起き上がりながらそう言うと、さらに顔を赤く染めるエヴァ。

人ってここまで顔を赤く出来るんだな……ああ、吸血鬼か。

 

「そ、そうか……ふんっ、しょうがないな!そんなに良かったのならまたやらせてやらん事もないぞ!?」

 

私は別にしたくも無いんだがな!と言いながらそっぽを向きながら言っているエヴァ、全く素直じゃない吸血鬼だな。

 

「へいへい、その時はよろしくお願いしますよ」

 

昨日余分に獲っておいた魚をさっさと焼いて食べ、すぐに旅支度を始める。

 

「そう言えばこれから行く当てはあるのか?」

 

「ん?ああ、行き先は……そうだな、ショウは確か日本出身だったな、行くか?」

 

「日本にか、良いんじゃないかな?俺はエヴァに着いて行くだけだしな……あ、そうだ。たしかエヴァってかなり強いんだよな?」

 

「ああ、百数十年戦場を渡り歩いて来たんだ、それなりに心得はあるぞ」

 

……百数十年って、まあ、吸血鬼だし不老不死はデフォルトなんだろうな。

 

「ならさ、俺の鍛錬に付き合ってくれないか?」

 

そう言って頭を下げる。

 

「それは構わないが……お前、あの力があれば十分じゃないか?」

 

「実はさぁ……使い方分かん無いんだよね、あの能力」

 

「……はぁ!?」

 

あはは~、やっぱそう言う反応するよな。

 

「いや~、昨日エヴァが魚取りに行ってる間に試してみたんだけどさ、これがうんともすんとも言わないの」

 

まあいきなり貰った力を直ぐに十全に使いこなせるなんて思ってなかったけどさ……エヴァ助けた時は結構必死だったしな。

 

「それにさ、いくら強い力手に入れても使う俺が未熟じゃ宝の持ち腐れだろ?」

 

「成る程な……そう言うことなら引き受けてやる。なに、私が教えるんだ、半端には育てないからな、覚悟しとけよ」

 

そう言って無い胸を張るエヴァ、なんだろう、何か可哀想……

 

「……おい、今失礼な事を考えたろう?」

 

エヴァの目が怖い……

 

「気のせいだ、そら、今後の予定も決まったんだ。さっさと出発しようぜ」

 

「ああ、ちょっと待て。私の従者が偵察に出ていてな、もうすぐ戻ってくる頃なんだ」

 

エヴァの従者か……そんな事聞いてないんだが。

つーかもう1体って、もはや人間扱いされてねぇよその人。

 

「どうやら丁度いいタイミングで戻ってきたようだな……紹介しよう、私の従者のチャチャゼロだ」

 

エヴァの背後の草むらが揺れ、何かが飛び出してくる。

 

「ケケッ!ナニヤラ昨日ハ大ピンチダッタミテーダナ、御主人?」

 

「ふん、あんな物私1人でもどうにかできたわ!それより貴様こそ、成果はどうなんだ」

 

「コノ辺リヲ1通リ見テ周ッテ来タガ、村ナンテ1ッツモネーヨ」

 

そこまで言うと、エヴァの従者がこっちを向く。

 

「ソレヨリアッチノ旦那ハアノママデイーノカ?コッチ見テ固マッテルゾ?」

 

「む?おい、どうしたショウ?」

 

エヴァが心配そうに声を掛けて来るが、俺の意識はある一点へと集中していた。

そう、目の前にあるエヴァの従者の〝人形〟へと。

 

「チャ、チャッ○ーだ!リアルチャッ○ー人形が出た!」

 

両手にナイフを持ち、言葉を喋る女の子の人形。

前の世界にいた時に1度だけ観て、一生もののトラウマになったとあるホラー映画が思い出される。

 

「ど、どうしたショウ!?おい、チャチャゼロ!貴様何をした!?」

 

ガタガタ震え出す俺に駆け寄りながら、チャチャゼロと呼ばれた動く人形に怒鳴りつけるエヴァ。

 

「ケケッ!知ラネーヨ、ソレニオレノ名前ハチャチャゼロダ」

 

「うーむ、こんな弱点があったとは……おい、ショウ。こいつは私の従者だと言ったろ、そんなに怖がるな」

 

「うぅ……そ、そうか?」

 

恐る恐るチャチャゼロと目を合わせる。

……うん、こうして見ると意外と可愛い、かも?

 

「ジロジロ見テンジャネーヨ、殺ラレテーノカ?」

 

そう言ってカチャッと手に持ったナイフを掲げるチャチャゼロ。

 

「ひぃぃ!す、すんません!!」

 

コワイ、人形コワイヨ。

 

「ケケッ!冗談ダ、旦那ニハ御主人ガ世話ンナッタミテーダシナ」

 

ん?何のことだ?まあ、何故か感謝してるみたいだし、いいか。

 

「えと、どういたしまして?」

 

つーか何故に旦那?

 

「さて、全員揃った所でそろそろ行くか」

 

「お、おう」

 

そう言ってエヴァが先頭を歩き出す。

その後に続く俺とチャチャゼロ、ちなみにチャチャゼロは何故かエヴァではなく俺の頭の上に乗っている。

 

「御主人ジャ見晴ラシガワルイカラナ」

 

「な、なるほど。つーか心読まないでくれます?マジで怖いんで」

 

「ケケッ!ソリャ失礼」

 

「そこ!失礼な会話してないでさっさと付いてこい、氷漬けにするぞ」

 

何となく恐怖も薄れてきたのでチャチャゼロと他愛もない会話を楽しんでいるとエヴァに怒られてしまった。

 

「へいへい、今行きますよ~」

 

つか氷漬けって……まあ、いいか。

暫くはこの子の隣が俺の居場所になりそうだしな。

そんな事を考えながら俺はエヴァの元に走って行くのだった。

 

 

 




と言う訳で第3話でした、正直、作者自身オリ主の能力強くしすぎたかな~って思ったので、少しだけ制限する事にしました。
それと今回は、出来るだけセリフを長くしすぎない様に意識して書いたんですがどうだったでしょうか?
楽しんで読んでいただけたのなら幸いです。
ではでは、また次回!


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第4話 訓練と特訓

お久しぶりです、失踪寸前で何とか生還しました幻想師です。
まあ、大学受験が忙しかったって理由なだけなんですがね。
もし、この小説を楽しみに待っていてくれた人がいるならば、ありがとうとごめんなさいを同時に言いたい心境です。
では、長々と話すのもアレなので。
どうぞ、お楽しみください。


 

 

エヴァと旅を始めてから数年が経つ、が、俺達は未だに大陸を横断中だった。

まあ、ちょくちょく寄り道してたし仕方ないんだが。

べ、別に道に迷ったとかそういうことじゃないんだからね!

……現在は休憩がてら?エヴァに訓練と言う名の拷問を受けている最中なのだが。

 

「ちょっ、エヴァさん!?それ死ぬ!普通死ぬから!?」

 

「ハッハッハ!何を甘っちょろいことを言っている!この位は避けんと話にならんぞ!」

 

エヴァの一件以降、うんともすんとも言わなかった俺の能力。

あれ、どうやら俺の闘争本能や生存本能などの強い意識に反応する事が分かった。

今のところ10回中6回、約半分の割合でしか発動しないんだが。

そこで、エヴァが最も簡単に俺の闘争本能と生存本能を引き出す方法として考えついたのがこの訓練。

 

「だからって『氷神の戦鎚』はやり過ぎだと思うんだぁ!?」

 

エヴァの魔法攻撃を唯延々と避け続ける。

え?たったそれだけ?とか思った奴は俺と今直ぐ変わって欲しい。

頭上から降り注ぐ魔法の矢、吹雪、果てには巨大な氷塊の恐ろしさを教えて差し上げよう。

 

「ぬぉぉぉ!」

 

俺を押し潰さんと降ってくる巨大な氷塊を横に飛ぶ事で躱す。

この数年、この訓練をやり続けた俺の身体能力は、なんかもう変態レベルまで達していた。

まあそれでも余波だけで軽く吹き飛ぶんだが。

数メートル飛ばされたところで止まったので、すぐさま立ち上がる。

 

「し、死ぬかと思ったーー!!」

 

「死んでも貴様は死なんだろうが!ほら、もう一発行くぞ!」

 

「ちょ!休憩は無しですか!」

 

因みに、エヴァが言った様にあのまま押し潰されても俺は死なない。

能力が関係しているんだろうが、どうやら俺は不老不死になったらしい。

何度か、訓練中にうっかり死んだ事があるからまず間違いないだろう。

不老に関しても、数年の月日が流れても見た目が一切変わらないらしいから間違いないと思う。

 

「ほう?私の訓練中に考え事とは随分余裕じゃないか!なら、もう一段階レベルをあげようか!チャチャゼロ、ゴー!」

 

「アイアイサー」

 

と言うなんとも理不尽な理由で訓練の第2段階、エヴァの遠距離魔法を避けながらのチャチャゼロとの近距離戦が始まる。

……信じられるか?これ、まだ2段階目なんだぜ?

 

「旦那ニウラミハネーガ、コレモ訓練ダカラナ、喰ライナ!」

 

チャチャゼロが左手に持ったナイフを一線。

ただ避けるだけじゃ右のナイフが追撃してくるのは既に承知済み。

何故かって?俺はこれで2回、斬り殺されたからさ。

 

「せっ!そりゃっ!」

 

左のナイフはバク転で回避、続いて迫る右のナイフは回転した勢いのまま足で蹴飛ばす。

 

「オッ、ナカナカイイ反応スルヨウニナッタジャネーカ?」

 

そう言うとバックステップで俺から距離を取るチャチャゼロ。

 

「こんだけ扱かれればそりゃあねー」

 

「ケケッ、ダガ、マダマダ甘イナ」

 

そう言ってちょいちょい上を指差すチャチャゼロ。

そして、それと共にフッと暗くなる空。

 

「あ、やば……」

 

エヴァが発動していたもう1つの氷神の戦鎚がもう頭の上まで迫っていたようだ。

避ける時間は……無いよねー。

だが、突然、世界の流れがゆっくりになる。

熱くなる体、それに反して冷たくなる思考。

 

(……来た)

 

これが能力の発動する前兆だ、どうやら今回は成功らしい。

途方も無く大きな物と繋がる感覚。

そして、その何かから流れてくる洪水の様な力の波。

 

「……面白い」

 

どうも、この状態になると性格が変わるらしいな。

闘争心が湧き上がってくる。

右手を突き出すと、掌から炎が噴き出し、型を成し始める。

そして、炎は一瞬で幅広の大剣へと変わった。

 

「しゃぁぁぁ!」

 

炎剣『レーヴァテイン』を縦に一線し、氷塊を真っ二つにする。

そして、それだけでは終わらないし、止まらない。

今度は背中から炎が噴き出し、一対の翼が出来る。

 

「行くぞ、エヴァ!」

 

エヴァのいる空中へと一気に飛び上がり、距離を詰める。

 

「今回は成功の様だな!その力の感覚を覚えるんだ!」

 

「そんなこと、分かってる……よ!」

 

レーヴァテインを横薙ぎに一線。

だが、エヴァは身体を蝙蝠にする事で上下に回避。

 

「後ろがお留守だ!」

 

素早い動きで視界の外に飛び去った蝙蝠達は、俺の背後で再度エヴァに戻ったらしい。

そんな声と共に背中を抉られる様な一撃を喰らう。

爪で思いっきり引き裂かれた様だ、痛い、すごく痛い。

 

「ぐっ……っ、まだまだぁ!」

 

痛みを抑え、後ろのエヴァから距離を取る。

 

「これでも、喰らえ!」

 

振り向きざまに右手のレーヴァテインを投擲。

 

「どうした、悪足掻きか?」

 

エヴァは横に少しズレるだけで簡単にそれを回避。

が、エヴァが避けた瞬間、レーヴァテインが爆発した。

炎と煙がエヴァを包む。

 

「油断したな、エヴァ?」

 

「そのようだな!だが、こんな物では終わらんぞ!」

 

これで終われば楽なのだが、と思った矢先に煙から飛び出してくるエヴァ。

所々衣服が焦げているから一応ダメージは通ったらしい。

 

「……流石だなエヴァ、だが、これで終わりだ」

 

俺の右手には、氷でできた槍が握られていて、既にエヴァに狙いを定めていて。

 

「な!?」

 

「行け、氷槍『ブリューナク』っ!」

 

投擲された氷の槍はエヴァの眼前で5つに分裂、そして当たると共にさらに爆散。

今度は氷と冷気に包まれたエヴァ。

 

「やったか……?」

 

「はっ!それは死亡フラグだ!」

 

そう言いながら煙から飛び出し、俺に猛スピードで接近してくるエヴァ。

そして刹那の間、首に鋭い爪を突きつけられた。

 

「まだまだ甘いな?」

 

「はぁ、また負けた……」

 

と、本日の訓練は終了したのだった。

そろそろ夕刻と言うこともあって、訓練後の反省会は夕食を食べながら行われた。

 

「ショウの技はイマイチ威力が足りん、あんなものではそこらへんの雑魚ぐらいしか相手には出来んぞ?」

 

エヴァが、さっきちょちょっと狩ってきて焼き肉にした、猪か何かの肉をモグモグしながらそう言う。

 

「相変わらずストレートっすね、いや、それは俺も悩んではいるんだよ?」

 

さっきの訓練みたいに武器を作り出して戦うのが最近の俺のスタイルなんだが、どうしても形だけで中身がスカスカの武器になってしまうのだ。

 

「だが、力を武器の形にする戦い方はいいと思うぞ?この短い時間であそこまでこなせれば、才能と言ってもいいやもしれん」

 

「お、おお。まさかエヴァが褒めてくれるとは……」

 

いきなりの褒め言葉に若干赤くなる俺。

そして何故か俺より顔を赤くしそっぽを向くエヴァ。

あの赤さは絶対に焚き火のせいなんかじゃ無いと思う。

まったくもって萌え萌えである。

 

「な、なんだ?私だっていいところがあれば褒めるぐらいはするぞ」

 

「おおー、素直なエヴァちゃん萌えー」

 

と笑うと流石にやり過ぎたか、今度はプンスカ怒り出すエヴァ。

 

「う、うるさいうるさい!バカなことを言っている暇があったらさっさとLINKの使い方を覚えろ!」

 

「へいへい……ん?なんだ、LINKて?」

 

「ショウの力の名前だ、無かっただろう?名前」

 

「……」

 

「迷惑……だったか?」

 

エヴァの方を見て固まる俺が、迷惑してると思ったのか若干泣きそうな顔でそう聞いてくるエヴァは……正直たまらないです。

 

「ぷっ、あはは!寧ろ嬉しくて固まってただけだから!そんな泣きそうな顔すんなって!」

 

「な、泣きそうになってなどおらんわ!」

 

(目元を拭いながら言ってもなぁ……)

 

なんて思ったが口には出さない、それが俺の優しさ。

エヴァを持ち上げて膝の上に座らせると頭をナデナデしてやる。

 

「よしよし、そんなに不安だったのかー?かわいそーに」

 

「え、えへへ……はっ!だ、だから違うと言っているだろうが!……え、えへへ……」

 

二ヘラっと笑っては顔をブンブン振り、また暫くすると二ヘラっと笑い出すエヴァ。

そのループ姿は、特にそういう属性持ちでは無かった俺に「もうロリコンでいいや」と言わせるには十分過ぎる威力だった。

 

「なあチャチャゼロ、この子、貰っていいかな?」

 

と、さっきから隣に座ってナイフを研いでいたチャチャゼロに思わず言ってしまう。

何だかんだで、最初は怖かったチャチャゼロともかなり仲が良くなったのは完全な余談である。

 

「知ラネーヨ……デモマア、旦那ノ好キ二スレバイインジャネーノ?御主人モ満更ジャネーミテーダシナ」

 

いつも通り、結局最後にはちゃんと答えてくれるチャチャゼロは、ツンデレ絶好調であった。

 

「ん、そーなのか?」

 

「ケケッ、御主人ガココマデ心ヲ開イタ事ナンテ今マデ一度モネーヨ」

 

「こらチャチャゼロ!余計なことを言うんじゃ無い!」

 

ぬ、エヴァが何時の間にかループを破ったみたいだな。

 

「ヘイヘイ。全ク、ウルセー御主人ダゼ」

 

研ぎ終わったナイフをホルダーにしまい、最早定位置となった俺の頭の上に乗っかるチャチャゼロ。

因みに、チャチャゼロのナイフホルダーは俺がエヴァに習って作った手作りである。

ベルトに付ければ背負う事だってできるんだぜ!

結構喜んでくれたので俺としても嬉しい限りである。

 

「ふんっ、それに武器を使う戦闘は評価したが、まだその武器を使いこなせてはいない、しっかりと鍛錬する事だな」

 

と、エヴァ。

いや、だって俺元一般人ですぜ?剣なんて中学の時の体育で剣道やったぐらいだから……とは言わない俺。

自分の鍛錬不足に理由を付ける気はないしな。

 

「へーいへい、これからも精進しますよ」

 

「ん、分かればいいのだ……さて、私はそろそろ寝るが、ショウはまだ起きてるのか?」

 

ふわぁ~、と実に子供っぽいアクビをするエヴァ。

 

「そうだな、俺はもう少し起きてるよ」

 

「分かった……お休み……」

 

エヴァは俺の横にコロンッと横になると、直ぐに寝息を立て始める。

まさに早業。

 

「なあ、エヴァって本当に吸血鬼なのか?」

 

「一応ナ」

 

「……一応なんだ」

 

チャチャゼロの言葉に苦笑いで答えつつ、俺は立ち上がる。

 

「オット、今日ハモウ行クノカ?」

 

「ん?ああ。エヴァにもダメ出しされたことだしな」

 

そんな事を言い合いながら、俺とチャチャゼロはエヴァを起こさない様に焚き火から離れていく。

暫く歩いて着いた場所は、今日一日訓練をしていた場所。

そこで俺とチャチャゼロは対峙する。

 

「さぁて、今日も宜しくお願いしますよ。チャチャゼロ先輩」

 

「アア、ボロ雑巾ノ様ニナルマデシゴイテヤルゼ」

 

「……すいません、やっぱお手柔らかにお願いします」

 

そう言いながらも、拳を構える俺。

ここ数年は、エヴァが寝静まるのを待ってチャチャゼロと秘密の特訓をするのが日課になっていた。

エヴァの足でまといにならない様にするには、どうしても強くなりたい。

そうチャチャゼロに相談したところ、この様な形になったと言う訳だ。

エヴァに言わないのは、まあ、そっちの方がカッコイイからだ。うん。

 

「ソレジャ、サッソク行クゼ!」

 

「おうよ!」

 

それが始まりの合図。

チャチャゼロが小柄な体を活かし、軽いフットワークで距離を詰めてくる。

 

「そぉい!」

 

しゃがみ込んで、右の足で横薙ぎの下段蹴り。

が、チャチャゼロはそれを軽々と飛び越えてさらに接近。

 

「ソラヨ!」

 

月明かりを受け、煌めくナイフが頭めがけて振り下ろされる。

 

「っ!まだまだ!」

 

チャチャゼロに背を向ける様に上半身を回転、振り切った右足と両手を軸に、後ろ蹴りを放つ。

今度はちゃんと決まった様だ、カキンッと言う音と共にチャチャゼロが後ろに飛ぶ。

 

「フッ!」

 

俺はそのまま前方に回転して距離を取る。

 

「よし、次はこっちから!」

 

チャチャゼロが体勢を立て直したのを見計らって距離を詰める。

先ず、俺が右足で二連蹴り。

直ぐに防がれ、チャチャゼロのナイフ三連撃が襲う。

そしてさらにそのナイフを防ぎ、四連蹴りを……

と、一進一退の攻防が始まる。

そうして、俺とチャチャゼロは夜が更けても暫くの間特訓を続ける。

最初は、本当にボロ雑巾の様になるまで痛めつけられていたが、最近では反撃すら出来る様になった。

これも、一応成長なのだろうか?

 

まだ、物語は始まったばかり。

この後、想像もつかない、さらなる展開が待ち受けているのだった。

 

to be continued……




と言う訳で、俗に言う特訓回です。
え?言わない?それは失礼しました。
それはそれとして、以前ご感想で話が短いという物があったんですが、どれ位が読みやすいんでしょうかね?
まあ、これから書いて行く内に覚えるしかないんでしょうが。
それでは、今回はこの辺で。
次回も何時になるか分かりませんが、今回の様に何時の間にか投稿されていると思うので、ごゆるりとお待ちください。
ご意見ご感想も待ってまーす。
ではでは、また次回!


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第5話 日本上陸と麻帆良

なんか、書き上がってしまったので投稿です。
それでは、どうぞお楽しみください!


 

 

俺がこの世界に来て、数百年が経った。

漸く、一ヶ月ほど前に日本へと辿り着いた俺とエヴァ。

が、日本に来たからと言って特に行く場所も無く。

日本は今明治の初頭、戦も大分終結した頃で、争いごとも少ない。

まあ、いつも通り、賞金稼ぎの追手は襲ってくるだろうが。

と言う訳で、暫くは日本をブラブラすることになったのだった。

……そういえば、日本に来て2つ、面白い事があった。

まず1つ目。

ここ数百年、幾度もエヴァを狙う追手を返り討ちにしていた訳だが、とうとう俺にも賞金と二つ名が付いたのだ。

いやー、実はエヴァが『闇の福音』だなんだって呼ばれてて結構羨ましかったんだよね。

賞金額は250万ドル、まあ、妥当かな?

それで、肝心の二つ名の方なんだが。

 

『イレペディウス・アドウェルサ』

訳すと、歩く自然災害。

 

……いや、確かに武器使い出すまでは嵐起こしたり吹雪起こしたりしてたけどさ。

なんか、カッコ悪くね?

その事でエヴァとチャチャゼロに一度相談してみたんだが。

エヴァには、

 

「そんなもの知らんわバカ者!」

 

と怒られ、チャチャゼロには、

 

「ケケッ!ダッs、カッコイイジャネーカ!」

 

ってバカにされた。

泣きそうだった。

いや、いい。もうその話はいい。

気を取り直して、面白かったこと2つ目。

どうやら、この世界には魔法などの非現実の他にも、俺の元いた世界との違いがあったらしい。

それが、今俺とエヴァが来ている土地、麻帆良。

場所でいうと多分埼玉とかそこら辺だろうか?

まあ、この土地も魔法に関係があるみたいなんだが。

なぜなら……

 

「大きい木だな……」

 

「いやいや、デカ過ぎでしょ、これは」

 

俺とエヴァが見上げるのは、木。

唯の木ではない、種類としては広葉樹なのだが、とにかくデカいのだ。

 

「エヴァはこの木の事、知らなかったのか?」

 

「ん?ああ、始めて見たぞ。こんな物」

 

そう言うと、再び上を見上げるエヴァ。

 

「まさか、木、自身が認識阻害の魔法を使っているとは」

 

そう、俺達が驚いていたのは、木の大きさだけではなかった。

驚くことにこの木、大地から吸い上げた魔力を使ってこの辺りの土地をスッポリ覆う結界を張っていたのだ。

なるほど、土地ごと認識阻害を掛けることで一般人に自身の存在を正当化させているらしい。

 

「んー……あれだ、この星が術者だとしたら、この木は魔力媒体って感じだな」

 

「分かるのか?」

 

エヴァが聞いて来る。

 

「なんとなくな。一応、俺も星にアクセス出来る存在だし」

 

「そう言えば、そうだったな」

 

数百年の月日を掛けて、能力の発動と制御だけは一応出来る様になった。

そもそも能力自体がかなり強力だから、制御さえ出来れば色々と応用が効くんだよな。

魔力を必要としないから発動を感知させることも無いし、俺の負担にもならない。

なんせ身体能力だけなら超人だが、魔力量は一般人並らしいからな、俺。

それはともかく、そうして暫くの間木の下でのんびりとしていた俺達な訳だったんだが。

 

「ノンビリシテルトコ悪ィガ、ドウヤラオ客ミテーダゼ」

 

俺の頭に乗っかっていたチャチャゼロが、飛び降りながらそんなことを言い出す。

 

「はぁ、折角無視してたのに」

 

確かに、後方数キロ辺りに多人数の気配を感じる。

俺達には無関係な人達だと良いなと祈っていたんだが、ダメだったらしい。

気配は真っ直ぐ、俺達に向かって来る。

そして少しすると、気配の主達が現れた。

 

「貴様ら!ここが誰の土地か分かっているのか!?」

 

いきなりそんな事を叫びながら現れたのは、どう考えても魔法関係者な男達数名。

多分、ここら辺を管理してる魔法使いの組織とかそんな所だろう。

だが幸い、まだ俺とエヴァの正体には気付いていない様だ。

 

「エヴァ、ここはやり過ごそう。俺が相手するから、少し後ろに隠れてて」

 

そう耳打ちするとチャチャゼロを持ち上げてエヴァに渡し、俺は男達の方に進み出る。

 

「いやーすみません!私達は流れの魔法使いでして!風の噂で聞いた東方の巨木を一目見ようと訪れただけなんですよ!」

 

そう言いながらエヴァを自分の後ろに隠し、自分も男達と顔を合わせない様に出来るだけ自然に木を見上げる。

 

「……本当にそれだけの目的なんだな?」

 

1番前の男がそう聞いて来る。

……もう少しか?

 

「勿論です!お邪魔になる様でしたら、今すぐにでも出て行きますとも!」

 

そう言いながら、さっさとその場を立ち去ろうとする俺とエヴァ。

だったのだが。

 

「あっ!」

 

と、男達の中の1人が声を上げた。

その男は、俺やエヴァの顔を手に持っている紙と数回見比べると、1番前にいたリーダーっぽい男にその紙を渡しながら何やら慌ただしげに囁く。

 

(これは、アウトだな)

 

そう考えると、俺は後ろのエヴァに囁く。

 

「……エヴァ、逃げる準備を」

 

「あれぐらいの人数ならお前1人でも楽勝だろう?何故逃げる必要がある?」

 

……確かに、昔とは違い、強くなった今なら勝てるだろう。

だけど、違う。

 

「いつも言ってるけど、俺は戦わなくて済むなら、戦わない」

 

そう言いながらエヴァの目を見つめる。

 

「殺すのは勿論、痛めつけるのも、出来ればしたくないんだ。だから、今までも追手を殺しはしなかっただろ?」

 

この世界に来て最初に会った男達は、確かに俺が自分の意識で殺した。

が、それ以降は出来るだけ、人を殺さない様に努めてきた。

人を殺す事に慣れてしまったら、俺は俺で無くなるから。

体は変わっても、心は人で在りたいから。

 

「……いつか、その甘さが仇になるぞ?」

 

ハァッと、ため息を吐くエヴァ。

 

「まあ、ここは奴らの領土らしいしな。戦うよりも逃げる方が正解かもしれん」

 

良かった、エヴァも分かってくれたらしい。

こっちの話が終わると同時に、どうやら向こうも話が終わったらしい。

さっきまでとは違い、男達から明確な殺意が向けられているのを感じる。

 

「状況が変わった、少々ご同行願おうか?」

 

リーダーの男が、そう言ってくる。

 

「だが……断るっ!」

 

『LINK』発動。

特訓の成果か、ある程度の敵意を受けるだけで能力は使える様になった。

いつも通り、途方も無く大きな何か……いや、星と繋がる感覚。

今この瞬間〝ありとあらゆる自然〟は俺の味方になった。

 

「今日の天気は、大嵐だっ!」

 

その言葉をキーワードに、空が一瞬で暗くなる。

男達が何事かと空を見上げると、そこには何時の間にか分厚い雲が渦巻いていた。

そして、ほど無くして降り出す大雨。

 

「まさか!魔法の発動なんて感じなかったぞ!?」

 

「魔力も無しに天候操作の魔法を使うなんて!」

 

男達がそんな驚きの声を上げるが、次の瞬間にはその声すら雨音に掻き消される。

最早、目も開けられない大豪雨に突風。

そんな中を、俺とエヴァは走り抜ける。

雨も風も、俺達を邪魔しない。

 

「全く、こんな事ばかりしているから歩く自然災害なんて言われるんだ」

 

隣を飛ぶ様に駆けるエヴァは、呆れた様にそう言う。

 

「うぅ、でも仕方ないだろ?これが1番逃げるのに効率いいんだから」

 

ええそうですとも、自分でも自覚はしていますとも!

でもまだ手加減なんて出来る様な力量じゃないんだよ!

と、そうこうしているうちに麻帆良の土地から抜けた俺とエヴァ。

 

「ここまで来ればもう大丈夫だろ」

 

LINKを解除し、麻帆良を覆っていた雲を霧散させる。

星との繋がりが切れ、体に流れ込む力も止まる。

 

「あ~……この虚脱感、何度味わっても慣れないぃ~」

 

「オウオウ、ズイブントオ疲レダナ!」

 

グデ~と倒れる俺の頬を、チャチャゼロがツンツン突ついてくる。

もうやめて!ショウのHPはゼロよ!

……能力の副作用なのか、一度力を使うとどうも体が重く感じるのだ。

簡単にいうと、ものっそい怠い。

 

「何をダラけているんだ、さっさと行くぞ」

 

「えぇ~……行くってぇ、どこに?」

 

「とりあえず南下だ、ここから離れるぞ」

 

南、関西か……

ん?関西、関西ねぇ……

 

「そうだ、京都行こう」

 

「……は?」

 

と、なんとも○Rな理由で京都を目指す事になった俺達なのであった。

 

to be continued……




という訳で第5話でした!
今回は、やっとの事での日本上陸と麻帆良登場ですね。
あと、主人公の能力の説明。
分かりにくかったりしたかもしれませんが、後々詳細に明かして行く予定ではありますので、どうかご容赦を。
それでは、次回も完全に更新不定期になるでしょうが、待っていてくれると嬉しいです。

補足です! 世界樹の設定についてですが、独自設定ですのであしからず!
ではでは、また次回!


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