モッ...モリアさんは最強なんやで(棒読み) (ニルドアーニ四世)
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プロローグ

BLEACHのとある創作中に思いついた作品です。初投稿時はストーリーとかは余り考えていなかったのでお試しで投稿していました(8/15当時まで)

好評であると判断したら本編で投稿しようと思って投稿し続け、反響が予想以上に大きかったので本作投稿?に切り替えました。

ただ文字数が少なく文章には自信がなく描写が飛ぶこともあるのでそういうのがダメな人や執筆関係者の方は読む事をオススメしません。ですが文章の出来やミスを気にしないという方には比較的楽しんで頂いていると思います。正直文章力がないとご指摘頂きましても趣味にかからない程度なので学び直す気は全くありません



何も存在しない光の世界で俺はそこに確かに存在した...

 

ただ一つ理解したのは俺自身の身体はなく、ただキラキラと輝いており、昇天している。正確には実体がないという所であり、現在俺という存在は魂であると理解した。現世での記憶をよく思い出せないという事は多少は不安になるだろうが、今の状況では寧ろ好都合だ。生前は婚約者や親友、そして寝たきりの両親、もしくは最愛の子供達までいるかもしれない。仮にそうだとして未練なくスパッと切り替えられる人はそうはいないだろう。なにより好都合なのは対人関係以外の記憶は全て残っているのだ。自分の通った小学校の名前は覚えているが、クラスメイトの顔と名前は誰一人思い出せない。つまり意図的に記憶を消されたということだろう。

 

そして今、俺がすべき事は周囲を観察して少しでも自分の利益となるように計らう事である。おそらくどう足掻いたところで何も変わらぬとは思うが、何分魂になった経験がないので何もしないよりかは賢明な判断だと考えた...。

 

俺はそう考えてしばらく周囲を警戒しつつ観察をしていた。すると頭上から一人の白く長い立派な顎髭を生やした好々爺のような人物がゆっくりと降りてきた。その老人は神々しい純白のローブを身につけている。その老人は神であるかと理解するのに俺の思考は必要なかった。

 

「あ〜お前死んだから。覚えてないだろうから教えたげる...。えぇっと君は中学生で夏休みにチャラ男の叔父のクルーザーに乗ってたら、海面から出てきたエイにぶつかって頭を強く打って死んだんだよ。」

 

(ほ〜ん...。んでここは天国的な?)

 

俺は軽く返事をした。正直記憶なんて一切ないから死因何かどうでもいい。ちょっと特殊だから気にならなくもないが大した問題ではないだろう。

 

「...」

 

(ん?)

 

神と思われる老人は少し考えこんだ。おそらく俺の適当すぎる態度が予想外だったのだろう。もう既に死んだという事は受け入れているから、どうでもいいのだ。

 

「まぁいいや、だいたい全ての生き物は死んだら、夢を見せる事になっている。まぁこれが人間は自由に選べて欲望を具現化するって感じかな...。ぶっちゃけると天国に連れてくよりコスパいいんだわ...。眠らせたら適当な箱にぶち込んで終わりだからさ〜。」

 

コスパとかいう人には理解できぬキーワードが出てきたが、そんな事を考える事に意味はない。むしろ今俺の状況をどうすべきか考えるべきである。夢という事は何でも可能という事だろう。女囲ってハーレムや金を大量に持つのが大部分だろう。だがそんな事より前提を“誰も逆らえぬ絶対的権力者”というモノにして仕事はその国の象徴てある故、何もする必要はなくただ好きな事をしていていいと設定した方が遥かに合理的である。だが従順過ぎる社会というのも考えモノだ。今この瞬間では女や金や権力に興味はあってもいつかは飽きる。つまり飽きず常に優位に立てる立場が理想となるはずである。つまり手の抜けぬヌルゲーが一番の理想なのだ。

 

 

(んじゃ、ワンピースとかへ転生も可能ってとこ?夢だから多少の希望は通せるよね?)

 

 

そう...これがベストである。仮に俺が希望など通さず、ワンピースに転生したいと言えば一般市民として生きるかもしれないし、下手したらハエに転生する可能性も充分ある。

 

「イケるよ...。希望あるなら聞いちゃるよ〜...。」

 

(ん〜。やっぱ海賊だよね〜。七武海になりたいな。でも可能な限り原作はブレイクしない感じがいいし...。じゃあそこそこ強い悪魔の能力者で覇気はそこそこの才能がある感じでおなしゃす。あと鍛えたら最強クラスに登り詰める才能をくださいな...。)

 

「りょーかい。七武海になれるけど原作ブレイクしない感じでそこそこの能力で才能あるヤツな...。んじゃちょっと待っとき...。言われてないけど、時代とか性別も考慮しといてやるから。」

 

迂闊だったありがたき...。俺はそういうと同時に意識がプツリと消えて目の前が真っ暗になった。そしてゆっくりと目を開いた。これがワンピースの世界へ今、俺は飛び込んだ。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

<ローグタウン>

 

 

 

今、とある大罪人の公開処刑が執り行われようとしていた。その男は今日生き絶えると理解していながらもその目には絶望という文字は写っていなかった。そして静かに処刑台に座った。

 

罪人の名は富、名声、力、この世の全てを手に入れた男...“海賊王”ゴールド・ロジャーに群衆の一人が誰もが知りたがっていた質問をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)はどこにある?”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロジャーはその質問を耳にすると溢れんばかりの自分の処刑を見にきた群衆へ向けて純真無垢な少年のようにニヤッと笑うと口を開いた。

 

 

 

「俺の財宝か?欲しけりゃくれてやるッ!探せッ‼︎ この世の全てをそこへ置いてきたッ!!!!」

 

 

 

彼の死に際に放った一言は人々を全世界へ駆り立てた...。世は“大海賊時代”を迎える...

 

 

 

そして後に“大海賊時代”を担う事となるとある男は“海賊王”の言葉を耳にして歓喜した。

 

 

「こりゃいい‼︎ 始まるぞ。海賊達の時代がァ!そして俺がその全ての海賊の頂点まで上り詰めてやる!!!!キシシシシシシ...。」

 

 

(うわ〜変な声...。目ぇ合わせないどこ...)

 

 

無事に転生を果たした男は海賊王の処刑を目の当たりにした。そして近くから聞こえた変な声の主に目を合わせないように地面を見つめた。すると男は貴族を彷彿させる高貴そうな黒い服にオレンジと黄色のズボンを履いていた。

 

 

(ん?俺の服なんか見覚えあんぞ...。どこの貴族様だよ。ってか俺...デカくね?なんかめっちゃ見られてるし...。)

 

男は気まずくなり、つい頭を掻くと変な感覚があった。普通の人間なら存在しないはずのツノのようなモノが確かにそこに存在していた。

 

 

(何か硬い何かが俺の額の両端から生えてね?ってかこの笑い声に、高い声...。おいおい...待て待て...。まさかアレじゃねぇよな?確かに七武海になりたいって言ったし、原作はあんまりブレイクしたくないとも言ったよね?確かにそこそこ強い能力だし...。まさか七武海で一番影薄いアイツじゃねぇよな...。カゲカゲの能力者だけに...。そんなんはどうでもいいっ!確か四皇さんにボコられて拗ねて、ルフィにボコられて、戦争で派手なサングラス野郎と熊さんファミリーに消される《仮》ヤツじゃん...。)

 

 

「モリアじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇかァァァァァ⁉︎」

 

そう...。俺は七武海最弱候補にして最大の噛ませ要員ゲッコー・モリア(24歳)へと憑依した。

 

 

 




作者は読者様の感想が来るとテンションが上がって投稿の意欲が上がります。いい点、悪い点、誤字、ONE PIECEについて語りたい事や考察など、どんな事でも良いので感想をお待ちしています。作者はどんな感想でも見つけ次第返事をします(追記もウェルカムです。)ので気軽に声をかけてください(笑)


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脂肪フラグをかっ消そう


ちなみに憑依をしたタイミングですが、次の***のあとの二つの文の間です。

***

「こりゃいい‼︎ 始まるぞ。海賊達の時代がァ!そして俺がその全ての海賊の頂点まで上り詰めてやる‼︎‼︎キシシシシシシ...。」


(うわ〜変な声...。目ぇ合わせないどこ...)


***


上の発言は原作モリアでこのセリフを言った後に憑依し、他人が言ったものと勘違いをしたという流れです





 

 

 

俺はモリアに憑依した。幸いにもまだ賞金首じゃないし、なぜか原作のスリラーバーグ編でのモリアは覇気を身につけてないはずだったのに多少の人の気配を察知できる。原作通りなら恐らくこれから海賊になるのだろう。

 

 

 

 

俺はまだ海へは出ない事にした。

 

 

 

 

 

ヤバそうなカイドウさんにボコられるよか鍛えた方がいいし、フラミンゴ野郎に消されるじゃん。あと声高いし、何よりデブじゃん。

 

 

 

 

死亡(脂肪)フラグがビンビンじゃん。

 

 

 

 

 

よし...。強くなったろ...

 

 

 

 

俺...ゲッコー・モリアは修行を開始した...

 

 

 

 

***

 

 

 

3年後

 

 

 

<新世界>

 

 

 

 

 

「何て強さだよ...。バケモノが...。」

 

偉大なる航路(グランドライン)の後半の海...“新世界”にて海賊同士の抗争が行われていた。抗争と言うより一方的に強者による蹂躙を行われていた。弱者の船はボロボロになっており、多くの者は深手を負い息絶えている。荒廃寸前の船でただ一人は無傷な者がおり、手負いや死した敵のクルーを見下すように一瞥すると口を開いた。

 

「お前らが弱いんだよ...。俺のせいにするな...。」

 

貴族のような黒い服に身を纏った男はゴミでも見るかのような瞳で睨みつけ歩き始めた

 

「こいつ海賊潰しのモリアじゃねぇかッ!くそッ!とんでもねぇ野郎と出くわしちまったッ!」

 

船のクルーの一人がシワシワになっている手配書を両手で握りしめて震えている。男はその手配書の金額を見て声をあげた。

 

「ほぅ...。俺の賞金があがってるのか...」

 

その手配書には3年前のモリアとは比べものにならぬほどの端正な顔立ちをした男が映っている。モリアは厳正な鍛錬により身体は異常なほど筋肉質で大物という大物が溢れる圧倒的な威圧感を放っていた。

 

 

 

***

 

 

 

“常闇”ゲッコー・モリア

 

 

懸賞金4億8000万ベリー

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ふむ...。最近海軍の艦隊を沈めたからかな?さてと俺の船に戻るか...。」

 

モリアは先日海軍の8隻の艦隊を一人で沈めたのだ。モリアの海賊団は周囲の海には一切見えない。するとモリアの右手から影が揺らめき、すると天へ素早く昇ると黒い影の雨雲が船の頭上へ現れた。

 

「“黒鉄雨(ダークフォール)”。」

 

すると雨雲から黒い雨が降り注いだ。モリアはその様子を見ると一瞬で消えた。

 

そしてモリアの消えた船は影の雨が次々と船を貫き、全てが降り注ぎ、雨雲が消え太陽が船を照らす頃には船という原型を留めておらず、もはや人も船も残骸となって海に漂っていた。

 

 

 

ゲッコー・モリア(27)

 

 

 

修行を終えた結果...

 

 

 

 

 

尖った顔は引き締まり、常人以下の小顔のイケメンフェイスへ...

 

数メートルという身体は肉体や骨格は異常な負荷に押し潰され2メートルというほど良き身長へ...

 

弱かった原作のモリアなど比べものにならぬほどの強者へと変貌した...

 

 

 

 

 

・脂肪フラグ回避成功

・死亡フラグ回避成功?

・カイドウさん...超怖い

 

 

 

 

そして...

 

 

 

・噛ませキャラ回避成功(確実)

 

 

 



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モリアの為すべきこと

 

浮かぶ島を改造した巨大船“スリラーバーク”の影から現れた。スリラーバークは西の海の島を買取って船にしたのだ。原作の知識があったため容易く提案して改造させたが、大いに人々に衝撃を与えた。そして世界最大の海賊船として有名になった。新世界で海賊を狩るモリアは通常は“偉大なる航路(グランドライン)”の“魔の三角地帯(フロリアン・トライアングル)”でこの巨大な船を隠している。海域は常に霧に囲まれているため隠すには絶好の場所だった。

 

「実にくだらぬ海賊(ゴミ)だった。あんな輩が世に蔓延るのは虫酸が走る。」

 

モリアは世界政府から海賊嫌いの海賊として知られていた。モリアは基本的に財宝や冒険目当ての海賊にはこちらからは手を出さず、市民から略奪行為をする者や海賊故捉えようとする海軍を潰しはするものの、海兵は尊敬に値するとして近辺の海軍基地の救助と影の狼煙をあげた上でその場から立ち去るようにしている。むろん民間人が海賊に襲われている時は海賊を潰し、村や国が廃れた場合は自分が海賊から掻き集めた宝を無利子で貸したり、時には与えたりした。

 

そのせいかモリアは世間から圧倒的な支持と人気を集めており、モリアが街へ食料の買出しへ向かうと行く先々で歓迎を受けた。時には海兵からも尊敬されており、モリアの船と海軍の船が出くわした場合もスルーする場合があった。その海兵の多くはシャボンディ諸島の“天竜人”へのやるせなさや海兵による汚職など、そして海軍の過激派による一般市民を巻き込んだ戦闘などの不満を抱えていた。

 

 

 

モリアはそのまま宝物庫へ移動し、頑丈で巨大な扉を開けると眩い限りの財宝が所狭しと雑に置かれている。モリアは宝と宝の隙間に手を突き出すと影が現れ先ほどの海賊から奪った財宝がボロボロと落ちていく。これはカゲカゲの実の能力により叶うものであり、この能力は大変便利だった。

 

「ザッと四十億ってとこか?あとは別に返して貰わなくてもいい借金は三十億くらいだな。まぁ大分金は集まったけど、一人は寂しいな...。まぁ変なのかき集めるよりはいいけど。原作ではペローナはモリアが拾って、ホグバックはシンドリーとかいう女優が死んでからだよね...。今の居場所は抑えてあるから死んでからスカウトだね。あとはアブサロムは知らないから、透ける能力者がいるっていう情報があったらスカウトだな。何か墓場の王になりたいとか言ってたね...。」

 

モリアは憑依した時に原作を忘れぬように片っ端からモリアに関する情報を書き出したのだ。大半を書き終えるとザコキャラ過ぎて凹んだが、今は違う...。

 

 

3億2000万の七武海(笑)のモリアじゃねぇ

 

 

 

4億8000万の“常闇”のモリアだッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

んぉ...七武海にはどうやってなるんだっけ?

 

 



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ゴースト娘

数年後

 

 

 

〜ミルトーン教会〜

 

 

 

“西の海”のとある田舎の国のとある村にどこにでもあるような寂れた教会だが、そこに住む孤児の一人の女の子が有名であった。村中の人々は彼女をこう呼ぶ...

 

 

 

 

“ゴースト娘”

 

 

 

 

 

その子は亡霊を呼びおこしただの。からかった少年の精神を呪いで不安定にしただの。壁をすり抜けただの。そんな噂が近辺に流れ海兵や名だたる研究者がその娘の調査に乗り出したが、皆が返討ちにあった。その噂を世界中にいる情報屋の一人から仕入れた男がその教会へやってきた。そしてその庭にいた教会のシスターらしき女性へ声をかけた。

 

「俺はゲッコー・モリア...。“ゴースト娘”はここにいるのか?」

 

モリアの名前を聞いたシスターはビクッとしたが、怯えた顔を首を勢いよく降って会釈をすると走って逃げていった。

 

「...俺が海賊で民間人を襲わないことを知っていただろう...。明らかにゴースト娘の事で乱したな...。まぁいい...。」

 

モリアは気配を察知する“見聞色の覇気”を使用し、教会の地下に一人の女の子が体操座りをしていることを感じた。

 

 

 

原作のモリアが覇気を習得していないのにカイドウと張り合ったという情報があった。だがその後のモリアは覇気の習得前のルフィに敗れた。また同じ七武海の“クロコダイル”も同じである。七武海にも成り得る強さを持つ者ならば覇気を習得していなかったとは考えられない...。二人の共通点は過去に自分より強者に敗れたという点だ。

 

覇気の真髄は『自分を疑わない』ということ。つまり裏を返せば“自分を疑ってしまう”と覇気は弱体ないし使用が不可能になるのだろう。原作のモリアは自分で『昔はおれも自力の過信と野心に満ちてた』とルフィに言っていた。そして頂上戦争後にクロコダイルは『傷はもう癒えてる。』と言っていた。つまり傷が精神的なモノで己が敗れた白ひげが死んだことにより癒えたのなら辻褄が合う。つまり...

 

 

“自分の強さを疑わなかったが、強者に敗れて自分が信じられなくなった”

 

 

という事だろう...。考察するに七武海就任後に二人は強者に敗れて覇気を使えなくなったのだろう。政府としても七武海に就任させた以上メンツがある。だから他の海賊達に敗れぬように偉大なる航路の前半の海で強者に敗れぬように指示を出していたのだろう。

 

 

 

そしてカイドウに挑んでいないモリアが覇気を使えるというのは自然な流れであった...

 

 

 

***

 

 

 

 

〜地下室〜

 

 

 

 

そこは薄暗く床は足を載せるたびにギシギシ鳴り響いた。ランプにより明るいものの不気味な空気を醸し出している。すると小さなクマのぬいぐるみを持っている可愛らしい少女が壁にもたれかかって座っている。

 

「お前が“ゴースト娘”だな...。」

 

モリアが尋ねると女の子は敵意をむき出しにした顔で睨みつけた。そして口を開いた。

 

「私はバケモノよ!呪われたくないなら出て行って!」

 

ゴースト娘は声をあげてモリアを威嚇した。だがモリアはニヤッと笑うと口を開いた。

 

「ほぅ...。呪ってみるがいい...。」

 

興味深そうな顔をしたモリアは己に呪いをかけるように挑発した。この娘が自分の探し求めていた人である可能性が高いが、決定的ではなかったため、“能力”が本物であるかを確かめたかったのだ。

 

「ふん!“ネガティヴホロウ”!」

 

娘は手から小さな白い光を発するとたらこ唇に黒く丸い目をしている可愛らしいオバケのようなモノをモリアへ飛ばした。

 

「“影縫(シャドウ・ストリング)”。」

 

モリアは影で産み出した黒い針を“ネガティヴホロウ”の影に突き刺すとホロウは動かなくなった。人は影と表裏一体である。人が動けば影も動く...。つまり影が動かなければ人も動かない...。そしてこの針は影を固定する力を持つ。この世で影ができない物質は存在しないため、モリアは万物の動きを止めることが可能なのだ。もちろん針を抜かれたり、全身を強力な武装色で覆えば解放されるという弱点もあるが...

 

「なんでうごかないのよっ!」

 

娘は声をあげた。今まで己の能力が自分の意思に反したことがないのに、己の指示無しに止まったからだ。モリアは動かなくなったオバケを見て嬉しそうに笑った。

 

 

(やっと会えた...将来の“ゴーストプリンセス”にして“ホロホロの実”の能力者...ペローナ。)

 

 

「それは俺がお前と同じ能力者(バケモノ)だからだよ。」

 

モリアが手から影を出してペローナに見せつけた。するとペローナはあり得ないというような顔をしてモリアの影に興味を抱いた。

 

「だが俺とお前はバケモノではない...。マズい果物を食ったろ?」

 

マズい果物とは悪魔の実である。ここは”偉大なる航路(グランドライン)“でない以上、悪魔の実の存在は知られてなく、また呪いであるという噂があったため、ペローナが悪魔の実の存在を知らないと考えたのだ。

 

「うん...変な白い果物を食べたらオバケが出せるようになった...。」

 

ペローナは自分と同じような特別な力を持つ人間に初めて出会い、モリアに純真無垢な好奇心を抱いていた。その様子を見抜いたモリアはゆっくりと口を開いた。

 

「本当はこんな所に居たくないのだろう?ペローナ...。俺と共に来い...。お前のいる狭き地下室(世界)から俺のいる(世界)を見せてやる...。」

 

まぁ...俺もそこまでは出歩かないがな...とモリアが付け加えるとペローナは元気よく返事をした。そしてそのままモリアと手を繋いだまま(ペローナの要望であってモリアがロリコンなわけではない)地下室を出た。そしてシスターに事情を説明すると厄介払いができたというような顔をして快くモリアが引き取ることを承諾した。

 

 

 




オバケに影があるのはご都合主義です!

すんません



この覇気の設定どっかの作品で見たことあんぞ...という方もおられるかもしれません。ですが多分その作品も私の書いたヤツです。探そうと思えば作者検索で簡単に探せますが、初投稿やら手抜きやら何やらでグダグダなので見て欲しくはないです...。


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厨二変態野郎

 

数年後

 

 

 

〜高級ブティック〜

 

 

 

原作通り七武海になったモリアはペローナを連れて栄えている街へ買い出しに来ていた。ペローナが気に入っている店の新商品がウィンドウに飾られているのを見ていたのでモリアが提案したのだ。

 

「好きなものを持ってくるといい...。金の心配はするなよ。」

 

モリアはペローナに時折モノを買い与えていた。もちろん勉強などは腕の良い家庭教師の家で教えてもらい、航海術や地理学も叩き込んだ。原作ではペローナは航海士であるためか吸収は早いようだ。今では完全に打ち解けた。初めはモリア様と呼んでいたが、モリアがそれを許さなかったのでモリアと呼び捨てになっていた。

 

「ありがとなモリア。選んでくる!」

 

10歳になったペローナはオシャレに興味を持ち始める年頃でその事をモリアは配慮し、最近はよく出かけるようにしている。モリアはペローナの走っていく様子を見て微笑んだが、背後から気配を感じた。するとブティックのガラス張りのドアを勢いよく開くと激しく息切れをしている金髪の男がいた。

 

「ゼェ...ゼェ...。あんたが七武海のモリアか?」

 

金髪でそこそこ顔の整っている男がモリアに尋ねた。そして歩いてモリアの目の前まで来た。

 

「あぁ...。生憎だが部下なら間に合ってるし、必要ない...。」

 

モリアは男の目的を見抜いて拒否をした。まだ拒否した。このようなことはよくあるのだ。

 

「頼むッ!俺をあんたの部下にしてくれ!」

 

男は手を床について土下座をした。その様子にブティックにいた店員と客は二人に注目した。だがモリアの目は冷ややかであった。

 

「ならばお前の価値を見せろ...。お前は俺に何をくれる?そしてお前は何がしたい?」

 

少なからず使えぬ人間ならはなっからいらないし、必要ない。料理も掃除もモリアは自分でできなくはないが、ペローナがやってくれる。意外と家庭的な女なんだとモリアは思っていた。

 

「俺は力をあんたに...。そして俺を“墓場の王”にしてくれッ‼︎ 。」

 

モリアはこいつが自分が強さに自信を持っているのかと考えたが、見たところ覇気は使えないが、かなりガタイはいい。力に自信があるのだろう。だがその程度の強さならこの海には幾らでもいる。

 

「あ...“厨二”はなおさらいらねぇ。相手すんの面倒くさいんで...。」

 

 

(厨二病くせぇな。ってか墓場の王...どっかで聞いたことあるな。なんだっけ?)

 

 

「俺はアブサロム!悪魔の実を食ったからあんたの役にたてるはずだ。頼む!俺を“墓場の王”にしてくれ!」

 

アブサロムは決意の固さがうかがえる瞳でモリアを見た。モリアはアブサロムが本気でそうなりたいと考えていると理解した。

 

「なんだこの厨二野郎は?モリア...誰こいつ?」

 

派手なゴスロリの数着の服が入ったカゴを持ったペローナがモリアの側に来ていた。するとアブサロムを偏見の目で見ていた。

 

「俺も知らねぇ...何の実を食った?」

 

 

(こいつアブサロムじゃねぇかッ⁉︎ 確かホグバックに身体を改造したんだったな...。だからわかんなかったのか...。)

 

 

「俺は“スケスケの実”の透明人間。」

 

モリアはアブサロムが自分を探していたと理解した。そして最近ペローナが気に入っているブティックの店員にモリア達が来たら連絡でもするように頼んでいたのだろうと考えた。

 

「おいモリア...。こいつ多分変態だぞ...。確実に女湯を覗いてる。私は嫌だぞ。」

 

「奇遇だなペローナ。俺もそう思った。」

 

ペローナは幼いながらもアブサロムが変態であるということを見抜いた。むろんモリアも原作知識でエロサロムであることを知っている。

 

「誰がエロサロムだッ⁉︎ そんなのはどうでもいい!どうだ?あんたの諜報部員として使えるはずだ。俺を部下にしてくれ!」

 

アブサロムは地面に頭をつけてモリアの部下にしてほしいと頼んだ。だがモリアの返事はアブサロム本人だと知ってから仲間にすることは決めている。

 

「着いてこい...。お前の能力は使えそうだ。」

 

モリアの返事にアブサロムは顔を輝かせて大声でなんども礼を言った。モリアは微笑むとペローナは声をあげた。

 

「おいモリアッ!こんな変態を仲間にすんのか?能力もウソかもしんねぇぞ!」

 

ペローナは客観的にアブサロムの事が信用できないとモリアへ訴えた。だがモリアは最もらしい答えを言った。

 

「いや、本当だ。変態扱いされた時の対応が手慣れていたからな。さぁカゴを渡せ。精算してくる。」

 

 

 

 

こうして変態厨二野郎のアブサロムが“墓場の王”になるべく仲間になった。

 

 

 

 

王下七武海“常闇海賊団”(モリア命名)

 

 

 

...構成員合計3名

 

 



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影の侵食 1

ちょっと繋ぎ入ります...


〜新世界〜

 

 

 

とある海軍基地

 

 

 

 

「んで...俺はこいつを殺せばいいんだな。可能であれば捕らえるっていう前提で...。」

 

モリアは七武海としての任務を与えられていた。それはとある海賊団の殲滅ないし、壊滅である。モリアは手配書の男に目を向けた。長く整った緑色の髪をした色白で華奢な男だが、彼は大海賊時代史上最強のルーキーとして名高い男である。海軍としては若い芽は積んでおきたいが、新世界の大物達による覇権争いのせいでこの海軍基地には実力者は出払っているが、比較的近くの港にいるルーキーをみすみす逃すわけにはいかないのだ。そこで急遽モリアが討伐することになった。モリアは筋を通す男でなおかつ影さえ存在すれば瞬間移動することも可能であるため、うってつけだとして選ばれた。

 

 

 

 

***

 

 

 

“奇術師”リンダ

 

 

懸賞金4億2000万ベリー

 

 

 

***

 

 

 

 

「ハッ!そして我らはこれよりモリア様を近くの港まで護送させていただきます!」

 

敬礼をしている海兵がモリアに船に乗るように促した。だがモリアはそれを拒否した。

 

「いや、さっさと狩ってくるわ...。あと“様”は付けなくていい。」

 

モリアが足元の影の中にゆっくりと沈むように入りこむとその場から消えた。そしてモリアはリンダのいる港のとある船影から姿を現した。少し見渡すとそれらしき海賊旗が見えたので跳躍して乗り込んだ。すると船番をしているモブ海賊がモリアを見つけると声をあげた。

 

「誰だおめぇ⁉︎ モッ...モリアだァッ‼︎ 」

 

「なんで七武海がこんなとこにッ⁉︎ 」

 

モリアの突然の来襲に次々と戦闘態勢に入った。そして銃や刀を持ってモリアの行動を待っているとモリアは口を開いた。

 

雑兵(貴様ら)に用はない...。」

 

モリアが目を鋭めた刹那に次々とクルー達は気絶をした。すると臆病そうな男を除いて皆が倒れた。ただ一人残った男は倒れた仲間を見ながら冷汗をかいている。そしてモリアを見るとゆっくりと歩いて間合いを詰めた。

 

「はっ...“覇王色”の覇気...。」

 

そうつぶやくと同時にモリアに首を片手で掴み、持ちあげられた。男はモリアの手から逃れようと手首を外そうと両手に力を加えるがビクともしない。

 

「リンダはどこにいる?」

 

モリアがそう尋ねるが、男は首を振る。どうやら話す気は無いようだ。モリアが落胆した。そして右手に力を加えて男の首の骨を破壊して殺そうとすると港に強者の気配を感じた。その気配は船に跳躍して飛び乗ると声をかけた。

 

「おいおい...七武海様がどうしてここにいるんだい?」

 

モリアは男の顔を見ると手配書通りの長い緑色の髪をした男が立っていた。するとモリアは男を投げ捨てると、男は激しく噎せた。

 

「わかんだろ?てめぇを狩りに来た。」

 

 



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影の侵食 2

 

 

 

二人は同時に地面を蹴り、拳を武装色で黒く染めるとぶつかりあい火花が舞った。そして片方の拳が一方的に押し負けるとそのまま船の外へ飛ばされた。

 

「...拳は砕いたな。」

 

船に残っていたモリアは骨を砕いた感覚を得て呟いた。建物に激突したのかリンダの土煙が立ち昇る様子をこの様子を見て早く帰れそうだと思った。そしてモリアは船から飛び降りて歩いてリンダの元へ向かった。

 

「案外弱ぇな...。最強(笑)ルーキー。」

 

モリアは土煙が立ち昇る場所の手間まで来ると貶すように言い放った。煙が晴れると右手がドス青黒く変色して腫れているリンダを見下すように見た。確実に骨まで砕いている

 

「バケモンだね...。再痛感させられるよ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕の能力の有能さをね...。“譲渡(ギフト)”。」

 

リンダがそう言い放つとモリアは己の右拳に激痛が走った。右手を見ると先ほど見たリンダと同じようにドス青黒くなっている。するとリンダは立ち上がると折れていたはずの右手が元通りになっていた。

 

「僕は“パスパスの実”の譲渡人間。常人では渡せぬモノを僕は一方的に譲渡できる。僕の疲労や痛み、傷、病気も...。かなり特異な能力でね。僕を殺すには一瞬でやるしかない。致命傷程度じゃ死ぬのは君...

 

さぁおいでよ...七武海。」

 

 

(恐ろしく厄介だな...。ダメージも傷もヤツが認識できぬ程の早さで始末するしかない...。最強のカウンター能力といえる...。)

 

 

「考え事なんかしてる暇あるのかい?」

 

リンダは隠し持っていたであろうナイフを手に持つと己の腕に突き刺した。そして再び“譲渡(ギフト)”とつぶやくとモリアの腕からナイフによる出血の傷が溢れ出てきた。

 

「...毒か。麻痺系と言ったとこか?」

 

モリアは毒が全身に回らぬ様に腕に力を加え圧迫した。するとリンダは笑みを浮かべると口を開いた。

 

「正解...。30秒位で全身に回る神経系の毒だよ。」

 

 

「そうか...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感謝する...。」

 

「は?」

 

リンダはモリアの言葉に目を丸くさせるとモリアはニャッと笑った。そして全身から影の煙のようなモノが溢れ出した。

 

「“常闇狭霧(ブラック・ミスト)”」

 

すると地面にポタっと水滴の音がした。するとモリアの身体は黒い霧のようなモノに覆われている。

 

「何言ってるの?『プシュ。』...“譲渡(ギフト)”。」

 

リンダは自分の腕を斬り裂いて“譲渡(ギフト)”をしたがモリアは何ともないようだった。その様子を見たリンダは焦ったように何度も繰り返した。だがモリアはその様子を満足そうに見据えていた。

 

「俺は影を自在に実体化する事ができる。ならば逆に虚無化も可能。俺という実体化された影を虚無化しただけのことだ。」

 

原作のモリアは頂上戦争でオーズJr.の身体を“角刀影(つのトカゲ)”で貫いていた。モリアは覇気を使用できないはずであるのに影を攻撃として利用できるという事は影を実体化して攻撃する事ができると結論に達する。つまりその逆、実体化してある影をただの影にする事も可能である。そしてこの技はモリアという実体化された影を虚無化したに過ぎない。

 

「なッ...でも覇気で攻撃すれば君を捉えられるよね。」

 

リンダは右腕を武装色で硬化し、モリアへ間合いを詰めて殴ったが、まるで霧を殴ったかのようにすり抜けた。今度は足を硬化して回し蹴りをしたが再びすり抜けた。

 

「無駄だよ...。お前じゃ俺に勝てない。」

 

 

(原作のルフィがゴムだからという理由で打撃が効かないのなら、モリアが影だからという理由で打撃、斬術、銃、その他大半の悪魔の実の攻撃系能力も全てを無駄な足掻きと化す事ができる。ロギアより数段厄介だろうな。なぜならパラミシアは覇気で捉えられない実体のない攻撃が可能だからだ...。無論この技も弱点は存在する。)

 

 

本来ロギアが無敵である条件は3つーーー、

“相手が覇気を覚えていない”こと

“己以上の覇気の使い手”でないこと

“弱点を突かれない”ことに

 

おおよそ、これらに限られるであろう。頂上戦争での青雉は白ひげの覇気を纏った槍で刺されたが無傷だった。つまり彼の覇気が白ひげを上回っていたと予測できる。

 

この技は全身を纏う影の霧に武装色を纏っているため、敵の武装色より自身が上回る場合にのみ無敵の防御を誇る。いや、防御とより回避能力というのが正しいのかもしれない。

 

「お前の攻撃は通らず、俺の攻撃はお前を捉える。今のお前にできる事は俺が身体を実体化させている時にその部位を攻撃するしかない。」

 

無論虚無化したのならモリア自身も攻撃が不可能である。だからモリアが攻撃に転ずる場合はその部位を実体化せねばならないのだ。だから敵が格下の場合はその実体化した瞬間にモリアにダメージを与えるしかない。リンダは絶望したような顔でモリアを見るとモリアは狂気的な笑みを浮かべて言い放った。

 

「そんな事不可能だって思ったろ?あきらめなよ、影に攻撃してダメージをあたえようなんていうバカはこの世に存在するか?」

そう言い終わった瞬間にリンダの首はゴキッと折られた。そしてかすれゆく意識の中で目の前にいたはずのモリアがただの黒く薄っぺらな影になっているのをかろうじて理解したが、そのまま絶命した。

 

「“影法師(ドッペルマン)”...。やっぱり俺の能力はチートだな。原作のモリアももっと使いこなしていれば最強格だったのにな。さてこいつの死体を貰うか、こいつの能力は使えそうだ...。」

 

モリアが満足そうに笑みを浮かべて己の影にリンダの亡骸をモリアの影の空間に収納すると先ほどいた海軍本部へ戻った。

 

 

 




更新遅れてすみません。最近は忙しいのでまたしばらく投稿できないかもしれません。番外編を書いてから本編に進もうと考えてます。


ちなみにモリアが礼を言ったのは即効性のない毒や睡眠薬でなかったからです。あと地面に落ちたの水滴は毒です。

パスパスって念能力だったら強そうですね。不遇な放出系を変える可能性を秘めてそうだけど、オーラじゃないから不可能か...


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影の英雄 1

 

 

 

“聖地マリージョア”

 

 

 

 

 

聖地“マリージョア”にはこの世で最も気高く、世界の頂点に君臨する一族“天竜人”が住んでいる。そして天竜人はどんな振る舞いをしても許される。なぜなら海軍大将を自由に呼べ動かせる権限を持つため傍若無人な振る舞いを事実上認められていた。そして天竜人が所有する奴隷の一人が捕らえられている牢獄の目の前に二人の男が突然現れた。容姿の整った貴族のような黒い服を着た男とそこそこ容姿の整った長い金髪の男は牢獄の中で捕らわれている赤い肌をしたタイの魚人を見た。そして黒い服を着た男、モリアは口を開いた。

 

「御機嫌よう…。“フィッシャー・タイガー”。」

 

モリアはタイガーに挨拶をするとタイガーは不機嫌そうな顔をした。二人が突然現れたことに関して驚かなかったのは何度かタイガーの元を訪れているからである。

 

「消えろ人間...。七武海だろうが俺は奴隷なんだ。関係ねぇ...。」

 

タイガーは天竜人の振る舞いや人間による魚人の迫害から大の人間嫌いなのだ。初めはモリアの言葉を無視し続けていたが、やがてタイガーが折れて多少の会話をするようになった。

 

「なぁに...あんたと取引がしてぇ。見返りはあんたの自由だ。」

 

モリアはそろそろ本題を切り出すべきだと思い、タイガーへ提案をした。自由が見返りと聞いたタイガーは目を見開いた。

 

「...ッ!何が目的だ?あんたは海賊とはいえあんたは政府側の人間のはずだ。」

 

タイガーはモリアの意図を探ろうと尋ねた。そもそも七武海とは政府が略奪を許す代わりに政府の犬とならなくてはいけないのだ。

 

「俺は全ての奴隷を解放したい。」

 

モリアがその一言をその言葉を聞いた瞬間に身を乗り出してモリアへ詰め寄ろうとしたが、途中で鎖が張り金属の音が響いた。

 

「あんた...。七武海にいられなくなるかもしれねぇぞ。」

 

タイガーは目を見開いてモリアへ尋ねた。だがモリアは全く動じず口を開いた。

 

「大丈夫だ...。バレたら皆殺しにすりゃいい。まぁ極力やらないけどな。」

 

「...話してみろ。いや話してくれ。」

 

タイガーはモリアの揺るがぬ瞳を見て話を聞く価値があると考えた。七武海という地位を賭けて奴隷を解放したいと言っているのだ。むしろこちらが頼むほうだろう。モリアはニヤッと笑うと口を開いた。

 

「あんたに“奴隷解放のシンボル”となって貰う。」

 

「どういうことだ?」

 

タイガーはモリアの“シンボル”という言葉の意味が理解できないようだった。

 

「俺には立場がある。俺も奴隷解放に参加はするが、七武海という座は守りたい。」

 

 

(偶然思い出したけど、タイガーがどうやって脱獄したかは原作に乗ってないんだよな。偶然かもしれないけど、爆発する首輪はあった今でもあるから内通者がいた可能性が高い。何もしなくても脱獄するだろうが、どうせならいずれ七武海になるジンベエやハンコックに恩を売ったほうがいい。もちろん俺の方が奴隷は安全に解放できるからな。)

 

 

「つまりお前が得る奴隷解放の名誉と罪を俺に背負えということか?」

 

タイガーはようやくモリアの意図を理解した。つまり自由と引き換えに海軍から一生追われる身となるのだ。そして天竜人は海軍大将を動かす権限を持っている。

 

「そうだ。このままクソみてぇな生活を続けるか俺にかけてみるか...。」

 

モリアの提案を聞くと同時にタイガーはニヤッと笑って声をあげた。

 

「のってやろうじゃねぇか!あんたに俺の命を預けた!計画を教えてくれ!」

 

タイガーはモリアの提案を受けると言うとモリアは檻の中に手を差し出した。タイガーは驚いたような顔をすると戸惑いながらも手を握り返した。魚人を同じ人間として扱ってくれる人間に出会わなかったのだ。冒険家として世界を回りつつも魚人だからという理由で避けられ、海賊にはハクをつけるために襲われたりもしたのだ。だがこの人間(モリア)は自分の地位を脅かす計画を魚人(自分)に委ねてくれるのだ。こんな人間がいたのかとタイガーは思っていた。

 

「契約成立だ。まずはあんたを単独で逃す。理由はあんたが単独で奴隷を解放させたとして世界政府の追撃を受けるからな。だからあんたの無事の手まわしだな。一年であんたの命を匿うあてを見つけろ。最悪スリラーバーグで一生を過ごすことになるがな...」

 

モリアはタイガーが海軍からの追っ手から逃がさなければならないため、手を回さなくてはならない。スリラーバーグはモリアが匿えば安全圏だが、天竜人にバレるのはマズイため外へ出すわけには行かないのだ。

 

「わかった。それにはアテがある。奴隷はどうやって逃す?俺は何をすればいい?」

 

「まずはあんたがマリージョアで暴れろ。そして俺が奴隷達をスリラーバーグへ匿う。あんた以外の奴隷だとわかっても七武海の傘に守られれば世界政府とはいえ迂闊に手を出せないだろうな。」

 

モリアは七武海として最も政府のために働いている。政府の命で狩った大物の海賊達も少なくはない。(ただその分モリアは強力な死体を得る事ができたのでどうでもいいが...) 奴隷を解放したタイガーでなく、いち奴隷ならば諦める可能性が高いのだ。

 

「だが“天竜人の枷”はどう外す?爆発しちまうぞ。」

 

天竜人の枷とはセンサーがついており、一定の範囲外へ出ると爆発する仕組みになっているのだ。つまり枷を外さない限りタイガーだけでなく奴隷達を解放するわけには行かないのだ。

 

「簡単だ。俺の能力を使う...。」

 

影法師(ドッペルマン)”を使い檻の中に入ると驚くタイガーを余所にゆらゆらしている影を手から出し、タイガーの鍵穴へ入れた。そして影を実体化し、鍵のように捻ると首にかけられた枷は外れた。そしておなじ要領で足首にもつけられた鎖を外した。

 

「さぁ逃げようか...。どこへ連れて行って欲しい?」

 

 

 

 



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影の英雄 2


すいません...遊んでました


 

 

 

 

 

 

シャボンディ諸島 海岸

 

 

 

 

「一年後に俺の部下のビブルカードを辿ってスリラーバークに来い。フォローはするが表立って派手には動けない。」

 

モリアは人気のない海岸でアブサロム、タイガーがアブサロムの能力で透明になったまま会話をしていた。周囲から見れば何も存在せず、声が聞こえてくるだけだが、人目がないため気にしないでよく、モリアが見聞色で気配を探っているので問題なかった。また部下とはペローナのことである。モリアは“新世界”のあちこちで海賊達を生け捕ったり殺したり、アブサロムはかつての強者達の死体を荒らし盗んでいるため、スリラーバーグにいるとは限らないからだ。

 

「あぁ...。一つ聞いていいか?あんたに奴隷を解放するメリットがねぇ。それだけじゃなくあんたの七武海(地位)を揺るがすことになる。ましてや俺がトンズラこいてモリアが逃がしてくれたなんて言っちまえばあんたは全てを失う。どうしてあんたは俺に全てを託してくれるんだ?」

 

「さぁな...。俺は天竜人も海賊も嫌いなんだよ。種族間の差別っていうのも気に食わないし、隔たりを無くしたいと思ってる。だが今まで散々迫害してきた俺達(人間)が今更助けますから仲良くしようなんて虫のいい話あるか?だからあんた(魚人)が英雄になる事が最善だと思ったんだよ。」

 

モリアは損得感情抜きに心の内を語った。彼は本来平和を愛する男なのだ。確かにモリアであれば政府に露見せずに奴隷を解放させる事は十分に可能である。だが奴隷の多くは人間の手によって連れ去られ、人間(天竜人)によって狂気の沙汰とも思えんばかりの扱いを受けているのだ。人間だけでなく魚人、巨人、ミンクなどの種族も囚われているからである。

 

「...あんたの想いは俺が受け止めてやる。絶対に俺は全ての奴隷達を自由にしてやるとあんたに誓う。」

 

「フフッ...任せるぞ。これを持っていけ。金なんて持ってねぇだろ?」

 

モリアは小さな袋を渡した。タイガーが袋の中身を見ると金貨や宝石などがぎっしり入っている。1000万ベリーは下らないだろう。

 

「あんた...。」

 

「早くいけよ...。故郷へ帰りてぇだろ?」

 

「すまねぇ...。この恩は絶対ぇ返す。」

 

 

 

***

 

 

「モリア...。」

 

「わかってる。お前を墓場の王にするのはもう少し時を待て...。現にお前に世界中の墓場から遺体や遺骨を掻き集めさせてるだろ。あとはその遺体の質を跳ね上げる男を引き入れるだけだ。だがまだ時が満ちていない。」

 

 

 



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影の英雄 3

 

 

 

〜聖地マリージョア〜

 

 

 

 

「襲撃だァァッッ!天竜人の方々を逃せぇぇッッ!敵は魚人たった一人だ!」

 

聖地マリージョアが豪炎に包まれる中モリアが逃がしたタイガーが力の限り暴れまわっていた。天竜人の近衛兵が銃や刀で襲いかかるがタイガーに軽く蹴散らされる。

 

「クソッ!“CP0”はなぜこない!」

 

『プルプル...プルプル...』

 

近衛兵のリーダーらしき男が“でんでん虫”を天竜人直属の諜報機関の最上級組織である“CP0”へ連絡をしようとした。ここがマリージョアとはいえ、ここを警護するのは数名の手練れがいるはずだ。それなのに前代未聞の大事件にCP0が一人も援軍に来ないのだ。だから“新世界”にあるCP0の本部へ直接連絡をし、近くにいるCPのメンバーを呼び出そうと思ったのだ。

 

「これであの魚風情を始末でき...『ゴキッ!』...。」

 

すると突然リーダーの首が横にへし折られ前に倒れた。驚いた部下の近衛兵は銃を向けるが誰もいない。すると無数の細く黒いヒモのようなモノが飛んできて一瞬で近衛兵達を斬り裂いた。

 

ここ(マリージョア)にいるCP0は全員始末したが、援軍を呼ばれんのは面倒だ。」

 

そう声が聞こえると一瞬でフワッと二人の人物が現れた。一人は黒い仮面を被り、黒のローブを羽織っている。そしてもう一人は目元が隠れる仮面を付けている。そして黒いローブを羽織った人物は受話器を直すとでんでん虫の音が切れた。

 

「“リーダス”...。お前は中に取り残された奴隷を解放しろ。お前なら手錠ぐらい素手で破壊できるな?」

 

「了解...。」

 

リーダスと呼ばれた男は一瞬で消えた。もちろんリーダスはアブサロムの偽名であり、黒いローブを羽織った男がモリアである。原作のアブサロムは覇気を覚えていないようだったが、モリアがペローナと共に覇気を教えたので新世界でも比較的上位に食い込む程の力量を持っている。見聞色の覇気を使えば奴隷がどこに居るのかを判断できるし、爆発する錠は力任せに引っこ抜いて手を武装色で覆えば爆発を限りなく抑え込めるのだ。

 

「何者だ!」

 

二人の存在に気づいた近衛兵がモリアへ向かってきた。するとモリアは仮面の下でニヤッと笑うと口を開いた。

 

「ただの反逆者だよ。“三日月の影(ダーク・ナイト)”。」

 

モリアがそういい放つと伸ばした手に影を纏わせると真横に一閃振った。すると真横から近衛兵達は鎧ごと斬り裂かれ生き絶えた。

 

「さてと...マリージョアに眠る宝や悪魔の実を根こそぎ頂くか...。」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

30分後

 

 

 

 

「自由だッァァ!こんな地獄から抜け出せるなんて何度夢見たことかッ!」

 

暴れまわっているタイガーが手錠の鍵を奴隷達に渡すと次々と外へ出て走り出した。すると後ろにいた若い女性の奴隷が口を開いた

 

「でもどうやって逃げるのよ!ここはレッドラインの頂上!降りるなんて不可能よ!」

 

確かにその通りである。ここはレッドラインの頂上であり、誰もが原作のタイガーのようにレッドラインをよじ登るような芸当は不可能である。すると真横から足音が響き渡るとその持ち主が口を開いた。

 

「安心しろ...。我が能力ではそんなこと容易い。」

 

扉鏡扉(シャドウ・ホール)”モリアがつぶやくと天にまで届くほどの巨大な扉が現れ、ゆっくりと開いた。扉の向こうはとても暗くまるで先の見えないトンネルのようだった。

 

「何だこれは⁉︎」

 

「この技で二つの扉を創り繋いだ。一つはここに、もう一つは俺の拠点に。そこに俺の部下がいる。そいつがお前達を世話する手筈になっている。」

 

すると扉の前にするが奴隷達は入るか入らまいか迷っている。敵か味方かもわからぬ得体の知れぬ男の得体の知れぬ技により創られたモノに飛び込む勇気は持ち合わせていないようだった。

 

「早く行け。ここの奴隷達全員を逃したいのだ。天竜人の世話を今一度受けたいか?」

 

一人の奴隷がその言葉を聞いて勢いを付けて飛び込むとそれに続くように次々とモリアの創った扉へ入って行った。人間、魚人、小人、ミンク、魚人、手長族、足長族などが次々と扉へ入って行くと政府の役人がやってきて声をあげた。どうやら天竜人は逃がしきり、近衛兵の様子を見に来たようだった。

 

「何だあのドアは!能力者か⁉︎」

 

「どけ!」

 

すると後ろから美しい黒髪の若い人魚を担いだアブサロムが役人を蹴り飛ばした。その様子を見たモリアは口を開いた。

 

「他に人魚はいたか?」

 

「いやこの娘だけだ。大半の奴隷はもう後ろにいない。ん?その子は何だ?」

 

アブサロムはモリアの足元に小さな耳にモコモコした人型の生き物に気づき尋ねた。

 

「子兎のミンクだ。離してくれなくてな。」

 

可愛らしい子兎のミンクは小さなウルウルとした涙目でモリアの足をギュッと掴んでピッタリ離れない。モリアは何度も扉へ行くように声をかけたが頭を横に激しく振るだけだったのでモリアが諦めたのだ。

 

「そうか...俺は人魚の娘をスリラーバーグの海岸まで連れていく。」

 

「あぁ。俺はタイガーを待つ。」

 

モリアは足に子兎のミンクを引っ付けたままタイガーを待った。奴隷達が次々と扉へ駆け込む中20分程待つと両腕に小さな子供を抱えた血塗れのタイガーが現れた。今にも倒れそうでフラフラしている。

 

「ハァ...ハァ...ハァ...これで全員だ。」

 

モリアは二人の子供を受け取り、左腕で二人を抱え、タイガーの肩を抱えた。

 

「よくやってくれた。さぁ行こう。早く手当をせねば...。」

 

モリア達が扉の中へ入ると扉はだんだん小さく縮みはじめ、そしてシュッと一瞬で消えた

 

 

これが後々“聖地マリージョア襲撃事件”として英雄フィッシャー・タイガーの名を世界に轟かせる事となる。そして協力者の黒いローブの男の正体は誰もわからなかった。

 

 

 

 



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新時代の幕開け *〜原作スタート〜*

原作入りやす。ちょっと我の強い部下になってます。

ちょっと苦手な方は申し訳ありません


〜13年後〜

 

 

 

 

 

 

“スリラーバーク”...それは“王下七武海”ゲッコー・モリアの所有する島を改造した世界最大の船である。ここは世界政府も知らぬが船でなく、一つの国のようであった。民家や商店街もあれば、人も住み、法律もあれば大臣もいる。ただここの住民は他の国と違う事が幾つかある。それは様々な種族が分け隔てなく生きている事だ。そしてここへ最初に住み着いた人々が元天竜人の奴隷であるということである。

 

13年前、モリアはタイガーと共にマリージョアを襲撃し、追っ手により死に絶えた以外の奴隷を救出した。モリアはほとぼりが冷めるまでスリラーバーグで匿い、それぞれの故郷へ帰すつもりだったが、大半の奴隷達は七武海の傘下にあるスリラーバーグでの安全な生活を望んだ。街々は日が当たらないモノの活気に溢れており、かつての奴隷としての闇は完全に取り払われたようだった。

 

 

そしてこの島は三つのエリアに区切られている。中心にあるのが“Aエリア”。そしてその周りに高い塀があり、大量の銃を持った警備員が配置しており巨大な扉には他のエリアからの厳しい関所がある。ここはおよそ二百名程が住んでおり治安は異常な程いいのだ。

 

そして“Aエリア”の周りにあるのが“Bエリア”である。ここは元奴隷の賞金首や大工や鍛冶職人などの戦闘系以外のゾンビが住んでいる。Bエリアからはモリアの許可証さえあれば自由に行き来できるが、一度でも犯罪、迷惑行為をすると投獄生活の後に“Bエリア”かその下の“Cエリア”へと追放になる。

 

そして“Cエリア”にはアブサロムとモリアが死体を掻き集め、そして世界最高の外科医師“ドクトル・ホグバック”の手により肉体改造のされたゾンビや一部の新米の傘下の海賊達が住むエリアである。ここは外からの襲撃に備えるために配置してある。

 

 

さらに地下にモリアに影を取られた手練れの海賊達が比較的自由に管理されている。食事や酒、雇った女などが生活していた。またモリアの強さに絶望し、命乞いをしたため反乱などの意思は全くなかった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

“Aエリア”

 

 

〜城内〜

 

 

 

 

「さて...今回政府からの招集を受けた。世界の海は極々平和だが、おそらく俺と同じ七武海の“サー・クロコダイル”が大佐程度の海兵に捕らえられた件だろう。俺は裏があると判断し、調べたところこいつの所業である事がわかった。」

 

モリアが手配書を机に置くと集まった皆が覗き込んだ。そこには麦わら帽子を被った無邪気な笑顔の青年だった。

 

 

***

 

 

 

モンキー・D・ルフィ

 

 

 

懸賞金一億ベリー

 

 

 

***

 

 

 

 

「“モンキー・D”...海軍の“英雄”ガープの血縁者か?」

 

ペローナがそう呟いた。かつて“海賊王”ゴールド・ロジャーを追い詰めた伝説の海兵と同じ姓なのだ。

 

「モンキー・D・ルフィ...。私の“記憶”によれば東の海のルーキーですね。初頭金は三千万にして“ノコギリ”のアーロン率いる魚人海賊団の撃破により付けられた。“モンキー・D・ルフィ”はガープの孫です。」

 

長い白髪に立派なヒゲを生やした老人がスラスラとモンキー・D・ルフィの情報を語った。彼は元々政府の上層部の人間だったが、マリージョア襲撃事件の黒幕がモリアであることを見抜き、感動したためモリアの配下へと願い出たのだ。

 

「ガルルル...英雄の孫ってとこだな...。」

 

ホグバックの手によってありとあらゆる動物の筋肉を移植されたアブサロムはもはやそこらのゾオン系能力者より身体能力は高くなり、モリアの部下として最強の強さを誇る

 

「うるせぇ歩く未確認歩行物体。てめぇの能力で猥褻物加減が警官にバレねぇからって調子のってんじゃねぇぞ。 」

 

ペローナの側にいたショタ顔の幼い兎のミンク“のアルフレッド”が普段の可愛らしい様子とは正反対のゲスい顔でモコモコの三つに分かれた指の真ん中だけ立てている。このミンクはマリージョア襲撃時にモリアから離れなかった子兎のミンクが成長し、ペローナの副官となったのだ。

 

「んなッ!てめぇ口悪いんだよ!おいペローナ!部下を止めろ!」

 

アブサロムは少し慌てながら上官であるペローナに毒舌のアルフレッドを止めるように言った。覗きが趣味の彼に威厳というモノは存在せず、そして彼自身の性格に合わなかったから部下からは完全に舐められているのだ。

 

「あ゛?ペローナ様に声かけんな万年発情野郎が!」

 

「ホロホロホロ...可愛いからいいじゃねぇか。」

 

アルフレッドがアブサロムに毒を撒き散らす様子を見たペローナはご機嫌そうに声をあげた。彼女には可愛い兎のミンクがゲス兎になるのがたまらないようだった。

 

「ねぇ...そんなに殺して欲しいの?」

 

突然霧のようなモノが現れて固まると美しい長い黒髪の人魚が現れた。人魚はなぜか宙をふわふわと浮いているが、そんな事よりドス黒く焦点の合っていない瞳に気が散ってしまう。すると腰から斬れ味の良さそうな細長い包丁を二本取り出した

 

「待っ...待て“リディアナ”!」

 

アブサロムはリディアナを止めようとした。普段のリディアナはアブサロムの副官であるから言うことを聞くが目が虚ろになったリディアナを止めるのはアブサロムにとっても容易でない。

 

「だってこのクソ兎(ガキ)は貴方にそんな無礼な言葉何て許しておけませんわ。きゃっ!貴方だなんて“まるで妻”みたいですね...まぁいずれそうなるんですけどね。あっ...子供は何人欲しいですか?私は男の子でも女の子でもいいですよ。全て貴方の希望に従います。え?望まない性別だったら?もちろん“居なかったことに()”しますよ。また作ればいいし...勘違いしないでくださいね?第一貴方の幸せを邪魔するつもりはありませんよ。あぁその前にお義父様とお義母様に挨拶ですね。私たちの邪魔をする者ら始末しますからご安心ください。私としては女の子は少し気が引けますわ。当たり前じゃないですか...私以外の雌が貴方に近づいてしまうからです...。私達の赤ちゃんが女の子がいいなら従いますわ。だって私は貴方の幸せが大事なんですから。貴方のマリージョアの勇姿は忘れませんわ。貴方が水槽に取り残された私を助けて下さったのを思い出すと私はいつでも幸せなんです。あぁ!妊娠してしまいそうですわ。だからどんな事でも命じてくださ...etc

 

 

リディアナのヤンデレっぷりを見たアブサロムは顔を青ざめ頰肉をピクピクさせているとペローナが機嫌良さげに口を開いた。

 

「ホロホロホロホロ...。アブサロム...結婚してやれよ。おめぇ結婚したがってるじゃねぇか。」

 

「フォスフォスフォス...。ヤンデレが嫌なら好みの死体を持ってこい。」

 

「俺はヤンデレもゾンビも嫌なんだよ。生きたまともな花嫁が欲しいだけなんだ!」

 

変態(覗き野郎)の嫁は変態(ヤンデレ)で十分だろ。」

 

上司のモリアを前に部下達が散々好き放題にしているが、モリアは全く機嫌が悪くならなかった。なぜならこれが信頼関係の証であると思っていたからである。だがアブサロムを不憫に思ったのも事実である。

 

「アルフレッド...。一応アブサロムの立場はお前より上だという事をわすれるな。」

 

「了解!」

 

モリアがアルフレッドに一言注意をするとモコモコの手をおでこの前に置いて敬礼ポーズをとった。その様子は可愛く殺伐とした皆の雰囲気が少し紛れた。

 

「それはモンキー・D・ルフィを潰すのですかな?」

 

「いや...決して侮るなという事だ。ゴール・D・ロジャーやモンキー・D・ガープ、そして最近七武海を蹴ったポートガス・D・エース。マリージョアではDの一族は“神の天敵”だとか...。世界に散らばる幹部達に“記憶”を送ってくれ。」

 

「えぇ...。」

 

老人が頭に指を添えると突然メモ用紙が出て、チラッと中身を確認すると呟いた。

 

「“複製(コピー)”...。“送信(プレゼント)”。」

 

複製(コピー)”と唱えると数十枚のメモ用紙がコピーされ、増えた。そして“送信(プレゼント)”と呟くとメモが折られ紙飛行機ができると自動で飛んで行った。

 

「やはり便利だな。“メモメモの実”メモ人間にしてこの国の大臣“賢者”ギルノス・メレスシード。」

 

 



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“麦わら”と“黒ひげ”

 

 

 

 

 

 

 

 

〜聖地マリージョア〜

 

 

 

 

 

 

世界政府...

 

 

それは世界へ圧倒的な影響力を持つ国際組織で、加盟国は170ヵ国以上に及び、今から800年前に20人の王により創設された。そしてその20人の王の末裔を“天竜人”と呼び、そしてこの“聖地マリージョア”に住んでおり、この世界の頂点に君臨している。

 

そしてその世界政府に略奪行為を許された七人の海賊の猛者がいる。その代わりに政府の犬となり海軍と共にこの不安定な世界の均衡を保っている。そしてその一人が今、マリージョアの海岸へ到着し、船から降りて来た。

 

 

 

『海軍本部からマリージョアへ...

 

“王下七武海” ゲッコー・モリア様がお着きに...』

 

 

高貴な印象を持たせる黒い貴族服に身を包み、血のような紅き髪は背中まで届き、そしてその端正な顔立に似合わぬほどの異常すぎる威圧感と威厳に護衛という名目で警備をしている海兵達は固唾を呑んで彼を見守った。

 

そして彼がマリージョアの内部へ入ると海兵達は胸を撫で下ろし、そして彼らがただの海賊でなく、七武海である事を安堵した。

 

 

 

 

***

 

 

 

数時間後

 

 

 

 

「おいやめろ‼︎ 何をするッ!」

 

会議の行われる円形の広い机に座っている海兵が側にいる海兵に首を絞められていた。すると首を絞めている海兵が慌てたように声をあげた。

 

「違うんだ!手が勝手に‼︎ 」

 

声をあげた海兵は手を緩めない。正確には緩めることができないようだ。まるで操り人形のように...

 

「バカ言えッ!こんな時にふざけてる場合かッ!」

 

「そうだよ。ふざけてる時ではない。ドフラミンゴ...。いい子だからおやめ。」

 

“海軍中将”おつるが王下七武海ドンキホーテ・ドフラミンゴへと注目が集まった。ドフラミンゴは指を怪しげに動かしていた。

 

「フフッ...フッフッフ...いい子だからか。敵わねぇなぁ。あんたにゃ...。だったらよ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さっさと話すこと話して終わらせちまおうぜ。こんな集会...。」

 

「おい‼︎バカよせッ!」「うォ!」

 

すると二人の中将は刀を抜き、互いを切り裂こうとした。だが刀が交わる寸前に二人の動きが止まった。

 

「おぉ...。」「助かった...。」

 

「...ッ!...モリア。おめぇの仕業か?邪魔すんなよ...楽しいとこだったのによぉ...。」

 

ドフラミンゴは二人の海兵の影に黒い針が刺さっているのを見てそう判断した。するとモリアはゴミを見るかのような目で見下すように見ていた。

 

「俺は海兵の争いなんぞ、滑稽で不快だったがな...。なんなら代わりに俺がおめぇと遊んでやろうか?」

 

「お?...やんのか?」

 

張り裂けるようなピリピリとした二人の雰囲気は誰にも止められないと実感させられた中一人の男が止めた。

 

「やめんか海のクズ共...。」

 

アフロに細長く編み込まれた顎髭に丸メガネした巨大な男がヤギを連れて現れた。かの男が海軍のトップに立つ“海軍元帥”センゴクである。

 

「フフッ...“仏”の名が泣くぞセンゴク。」

 

「だが的を得ている...。」

 

「ほぅ...俺もクズか?」

 

センゴクの挑発と威圧を軽く受け流した。そして議題について話そうとゆっくりと歩いて向かった。

 

「三人も集まるとは私の予想以...『コツン...コツン...コツン...。』

 

「おぉ最も意外な男が来なすった。」

 

足音が響き渡り皆の注目が集まると背中に巨大な黒い刀を持った細身の男が現れた。この男は世界最強の剣士“鷹の目”のミホーク。

 

「フン...。俺はただの傍観希望者だ。たまたま今回の議題に関わる海賊達に興味があるだけだ...。」

 

麦わらのルフィの情報を得ていたのかそのまま空けられた四つの椅子に座ろうとするとその場に居合わせた強者達が一斉に窓際に鋭い目を向けた。

 

「ならば私も“傍観希望者”として参加させて頂きたい...。空いた七武海の枠に推薦したい男がいるのでね」

 

窓の端に座りながら口を開き、そしてタップダンスと杖をクルクルと回しながら歩いてきた。

 

「その男の海賊団は“黒ひげ海賊団”。」

 

その海賊団のキーワードを聞くとモリアの顔色が変わった。そして腕から蝙蝠をスリラーバーグへ飛ばした。

 

 



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“記憶”

 

“マリージョア襲撃事件から二年後”

 

 

 

 

 

 

「ギルノス...。記憶の消去を頼めるか?」

 

かつてギルノスはその“能力”でモリアが“マリージョア襲撃事件”の黒幕だと突き止めた。“メモメモの実”は人の記憶をメモという形に具現化したり、自由自在に操作できる力を持つ。ギルノスの前に隠し事などは通用しない。彼は元奴隷の一人を見つけ、何も話さない奴隷から無理矢理記憶を盗み見たのだ。また他にも記憶の保存や削除、改竄、渡す事も可能である。

 

そしてギルノスはモリアに命じられ、スリラーバーグの地下で比較的自由に管理されている影を奪われた強者達の記憶を削除し、犯罪や横暴な振る舞いをしない人間だという記憶改竄を行っていた。

 

さらにここで管理されているのは“スラム街で貧困に喘いでいたところをモリアが救ってくれたが、他の住民達が怖がるから止むを得ず地下へ住まわせてもらっている。”と思い込ませ、そして彼らは“モリアに勝てばここから無条件に解放する”とモリアが言い。誰一人勝てなかったので諦めて地下での暮らしを謳歌していた。むろん彼らはモリアから影を取られている事を知っているため、無闇に脱獄しようとは考えていない。

 

 

「ほぅ...どの辺りの記憶ですかな?」

 

「このゴールド・ロジャーの処刑より前の記憶...。」

 

モリアに憑依したのはゴールド・ロジャーの処刑時である。モリアが消したいのは生前の憑依したという記憶のみであるため、これが正しい。

 

「ほぅ...。興味深いですが聞きませんよ。」

 

 

(時の流れを知っているとこの世の出来事が作業になってつまらない。確かに良いことは沢山あるが、もう疲れたし十分だ。)

 

 

モリアは損得勘定抜きで二つの事をしたいと考えていた。既に成功したマリージョア襲撃。そして“いちファン”としてエースの救出だったが、七武海という立場のため斬り捨てる事にした。だが万が一手を貸してしまったら七武海という傘が無くなり、スリラーバーグの住民達に危険が及ぶかもしれないのだ。

 

「本当によろしいので?」

 

「あぁ...頼む。」

 

「わかりました。」

 

ギルノスはモリアの頭へ指を近づけ、モリアの頭から小さくて見えない程文字が書かれたメモを取り出そうとした。

 

「...ッ!」

 

だがメモを取り出す寸前にモリアがギルノスの手首を掴んだ。幸いにもメモは取り出す前だったのでまだ憑依前の記憶はある。

 

「ただし記憶を消した後に『“黒ひげ”と名乗る男が現れたら確実に戦争で始末しろ』と伝えてくれ。」

 

最後に突然思い出した様に“黒ひげ”という名前を出した。死んだ“白ひげ”からグラグラの実を奪ったのだ。“黒ひげ(ヤツ)”は世界の脅威になり得ると突然思い立ったのだ。

 

「意味はわかりませんが...。伝えておきます。では...“削除(デリート)”」

 

ギルノスは少し戸惑いながらもメモを抜き取り“削除(デリート)”とつぶやくとメモの文字がスゥと消えて透明なメモになった。

 

 

 

 

これでモリアは完全に憑依したゲッコー・モリアでなく、ONE PIECE(改)の住人となった

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

“現在”

 

 

 

 

〜スリラーバーグ〜

 

 

 

 

「暇だぁぁ〜。モリア様かペローナ様からナデナデして欲しい!ペローナ様を起こして遊びたいけど嫌われたくない!」

 

「そうね...愛夫のアブサロム様は死体を盗みに行ったし、モリア様は“マリージョア”へ...。はぁ...。」

 

二人の副官達がモリアの城の中で嘆いていた。アルフレッドにとって至高なのはモリアとペローナに撫でられることである。そしてアブサロムは変態なので自分の大好きな上司が不快な思いをしないように牽制をしているのだ。それとは反対にリディアナはアブサロム大好きである。モリアはあくまでも恩人だが、自らを助けてくれたアブサロムに惚れている。彼女はアブサロムが絡むとおかしく(ヤンデレ)になるが、アブサロムが居なければ普通の優しいお姉さんなのだ。敵対関係になりそうな二人だが、お互いの心情を理解してるからか互いを尊重する感じで意外と仲がいいのだ。

 

「修行をしたいにも敵からの襲撃に備えて万全の体制でなければならないしね。ギルノスも強いけど大臣だから頼る訳にはいかないし...。何より年老いたことで自分の力が信じられなくなって覇気が使えなくなったのよね...。能力はチートだけど...」

 

ギルノスは元はCPとして働いてどんどん出世したが、覇気が使えなくなり前線を退いてからは上官として任務を遂行していたのだ。

 

「...ッ!」「...ッ!」

 

二人が同時に気配を感じて窓を見ると蝙蝠が 部屋の中に入り、二人の眼の前でまるで毛糸から糸が解けるかのように影の糸が文字を作り出した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜至急“黒ひげ”について調べてくれ〜

 

 

 

 

***

 

 

 

 

二人はモリアからの指示を数秒間ジッと見ると二人は同時に顔を見合わせた。

 

「これってモリア様からの指令じゃないかしら⁉︎」

 

「ヒャッハー!頼られたぜ!」

 

アルフレッドはこの指示を完璧に全うすればモリアから褒められると思い、急にテンションが上がった。だがそのテンションもすぐに終わりを告げることとなる。

 

「でも情報って確実にアブサロム様かギルノスの役目よね...。」

 

「...。」

 

リディアナがごもっともな事を言うとアルフレッドは何も言い返せなかった。そして二人はゆっくりと天を仰ぎながら声をあげた。

 

「あぅ...。目の前の人参をアブサロム(覗き野郎)に踏みつけられた感覚...。」

 

「はぁ...。アブサロム様の風呂場で隠し撮りして蒸気で全く見えなかった感覚...。」

 

二人の空気は重かったがモリアのため素直にギルノスの元へ伝えに行った。

 

 

 

 

***

 

 

 

一月後

 

 

 

「“黒ひげ”とは何者だ?懸賞金は分かったか?」

 

モリアは“黒ひげ”の情報の報告を求めた。

 

「...“マーシャル・D・ティーチ”。元“白ひげ海賊団”です。しかも“2番隊”に所属していました。」

 

ギルノスが宴中の集合写真のようなモノをモリアへ提示した。この写真はアブサロムが透明になり、“白ひげ海賊団”のところから盗んできたのだ。アブサロムの“スケスケの実”と同時に見聞色の覇気を使用し、何もしなければ彼の存在を察知するのはほぼ不可能であるのだ。

 

「“2番隊”だと?...見覚えのない男だ。懸賞金は幾らだ?」

 

「0です。能力、戦闘力は共に未知数と見るべきですな。」

 

「実力をひた隠しにするタイプ。計算高く野心家だな。幹部たちに連絡を...。警戒レベルは最高だと伝えろ。」

 

モリアは自身の謎の伝言と“黒ひげ”という男の分析をした結果、危険な男であると判断したため、“麦わらのルフィ”と同じように警戒対象に加えた。

 

「了解...。“複製(コピー)”...“送信(プレゼント)”。」

 

 

(俺の伝言の“戦争”とは何のことだ?“黒ひげ”と戦争をするのか?読めないな。まぁいい。ギルノスに記憶を復元させるのも手だが、何らかの意図があって消したのだ。思い出すこともあるまい...。)

 

 

 

 

 

 



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人物紹介とエニエスロビー

 

 

“常闇海賊団”

 

 

 

 

〜ゲッコー・モリア〜

 

<年齢> 48歳

<通り名> “常闇”

<能力>カゲカゲの実

<懸賞金>元4億8千万ベリー

<立場> 王下七武海・常闇海賊団船長

 

 

元日本人...。原作知識と神のサービス、何気に鋭い頭脳の甲斐あって七武海に就いた。マリージョア襲撃事件に加担し、奴隷達を解放させ大半をスリラーバーグへ住まわせた。原作知識がある事により作業となった事で人生がつまらなくなり、ギルノスに記憶を消させた。今では世界が平和になることと戦力を高めるために強者の死体と影を掻き集めている。

 

 

*(彼の年齢の名誉の為に...赤犬(53) 黄猿(56)

 

 

 

 

 

 

〜アブサロム〜

 

<年齢> 不明

<通り名> “墓場”

<能力> スケスケの実

<懸賞金> 0ベリー

<立場> 諜報部員

 

 

変態(覗き野郎)...。墓場の王になるべくモリアの部下となった。今では部下の強者達のゾンビに囲まれて日々を満喫している。彼の男の浪漫とも言えん能力で覗きを繰り返しているが、リディアナのヤンデレ的報復を恐れてスリラーバーグでは行わないようにしている。天才外科医ホグバックの手により動物の筋肉を移植され、中級ゾオン系能力者を上回る身体能力を得る。更に覇気を使えるため実力はモリアに次ぐ強さを誇る。

 

 

*(年齢は不明設定でしたので...)

 

 

 

 

〜ペローナ〜

 

 

<年齢> 23歳

<通り名>ゴースト・プリンセス

<能力> ホロホロの実

<懸賞金>0ベリー

<立場> 航海士

 

 

 

ツンデレ...幼い頃にモリアに引き取られたため、モリアの事を大層慕っている。彼女の感性にとって可愛いモノが好きで動物系ゾンビを配下にしている。だが最近はミンクのアルフレッドのことを大層気に入っており、その欲求は薄れつつある。

 

 

 

〜ホグバック〜

 

 

<年齢> 不明

<通り名>“ドクトル”

<能力> 無し

<懸賞金> 0ベリー

<立場> 船医

 

 

世界最高の天才外科医として名を馳せたが、愛していた女性を蘇らせる代わりにモリアの部下となった。彼の手によりゾンビの身体能力は著しく上昇し、モリアの戦力の大半を担っている。

 

 

 

 

〜アルフレッド〜

 

 

<年齢> 17歳

<通り名> 黒兎

<能力> ?

<懸賞金> 0ベリー

<立場> ペローナの副官

 

 

見た目は最高に可愛いが超絶口の悪いウサギのミンク...。彼は5歳の頃に人攫いの手により連れ去られ、その数ヶ月後にモリアに救われた。幼い女の子の天竜人に飼われたため、奴隷の中では比較的優しい扱いを受けていたが幼いミンクにとって最悪の恐怖だった。モリアに救われて異常に懐いた事やミンクの住む“ゾウ”へのビブルカードが無かったため、ミンク族は全員がスリラーバーグへ残った。

 

 

 

 

〜リディアナ〜

 

 

 

<年齢> 27歳

<通り名> 狂艶(きょうえん)

<能力> パラミシアorロギア?

<懸賞金>0ベリー

<立場> アブサロムの副官

 

ヤンデレ人魚...。燃え盛るマリージョアの中で水槽の中に取り残されたリディアナはアブサロムに救われた事でアブサロムに惚れた。彼女は8歳の時に捕らえられたため、好きな人への接し方がわからず、ヤンデレと化した。武器は二本の包丁で天竜人の余興のピラニアとの格闘により身につけた剣術?である

 

 

 

 

〜ギルノス・メレスシード〜

 

 

 

<年齢> 74歳

<通り名> “賢者”

<能力> メモメモの実

<懸賞金> 0ベリー

<立場> 参謀andスリラーバーグの大臣

 

 

ギルノスは元々世界政府の上層部の人間のだったが、彼の能力によりマリージョア襲撃事件の黒幕のモリアに感動し、部下になった。彼の能力と聡明さを見抜き、彼をスリラーバーグの大臣に任命した。マリージョアの地下で管理されている影を取られた強者達の記憶を能力で改竄し、脱走しないようにしている

 

 

 

 

 

 

〜ディルゴ〜

 

 

 

 

<年齢> 34歳

<通り名> 巨雷兵

<能力> 無し

<懸賞金> 元1億8000万ベリー

<立場> 舵船士?

 

 

ドMな巨人族...海賊傭兵として荒金を稼いでいた。シャボンディの大人のエ○チなお店で手錠とロープで拘束されている時にグルだった人攫いの手により、ヒューマン・ショップへ売り飛ばされた。

 

モリアへの恩義を返す為に部下となった。“魔の三角地帯(フロリアン・トライアングル)”を出る時はスリラーバーグをロープで引いて船を移動させる。(島でなく改造船のため底が地面についてないから案外楽)これによりログに関わらず自由に世界を行き来出来る。普段は森の中で寝ているか修行を続けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

“友人”

 

 

 

〜ジンベエ〜

 

 

 

<年齢> 44歳

<通り名>“海狭”

<能力> 無し

<懸賞金> 元2億5000万ベリー

<立場> 王下七武海・魚人海賊団船長

 

 

ジンベエザメの魚人...。モリアと共にマリージョアを襲撃したフィッシャー・タイガーの右腕だった男。その縁で仲が良くたまにスリラーバーグへ招いている。彼は魚人島を守ってくれた“白ひげ海賊団”だけには手を出さぬようにモリアへ頼んでいる。

 

 

 

 

〜ボア・ハンコック〜

 

 

<年齢> 29歳

<通り名> “女帝”

<能力> メロメロの実

<懸賞金> 元8000万ベリー

<立場> 王下七武海・九蛇海賊団船長

 

 

 

世界一の美女で女人国“アマゾンリリー”の女帝。元天竜人の奴隷で数少ない故郷へ送ってもらった一人であり、モリアに大恩を感じている。たまにモリアを“アマゾンリリー”へ招いてもてなしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜スリラーバーグ〜

 

 

 

 

「ハァ...ハァ...大変です!」

 

モリアが城の中で本を読んでいるとドアが突然開き、呼吸の荒れているアルフレッドが現れた。何やら一大事のようだった。

 

「息を整えろ...。そして何があった?」

 

モリアはアルフレッドに息を整えさせ、何が起こったのかを尋ねた。そして息が正常に戻ると口を開いた。

 

「ふぅ...。警戒対象の“麦わらルフィ”率いる麦わらの一味が“エニエスロビー”を落としました‼︎ 」

 

“エニエスロビー”...それは世界政府の直轄地で“司法の島”と呼ばれる海賊を裁く裁判である。その世界の均衡を保つための三つの施設の一つを落としたのだ。元七武海の“クロコダイル”を倒した時から警戒対象にしていたもののここまでの事をするとは想定外だった。

 

「なんだと ⁉︎ ...“エニエスロビー”からのログは“魔の三角地帯(フロリアン・トライアングル)”へ通るはずだ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで麦わらの一味を始末する。ペローナとリディアナを呼べ!」

 

 




次話から原作のスリラーバーグ編へ突入しやす。そろそろチラシ裏でなく本編へ移動させようかと思っています。流石に今すぐは移動させませんが、投稿日から一週間程経ったら移動させます。


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麦わらとの邂逅 *〜原作〜 スリラーバーグ編*

〜サニー号〜

 

 

 

 

「影は数年前ある男に奪われました...。この海で彼に勝てる者は数える程しか存在しないでしょう...。」

 

“ヨミヨミの実”を食べたアフロの骸骨“ブルック”が自身に影のない理由と影を取られた者が太陽の光に触れると身体が消滅すると話した

 

「何言ってんだよ水クセェ!だったら俺が影を取り返してやるよ。」

 

麦わら帽子をかぶった青年、“モンキー・D・ルフィ”がブルックの話を聞いて、影を奪った犯人から取り返すと答えた。ブルックが感動していると船内の壁からヒョコンと小さなオバケが現れた。ブルックが悲鳴をあげるとオバケに弱いメンバー達も悲鳴をあげた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜スリラーバーグ〜

 

 

 

 

 

“Aエリア”

 

 

<城内>

 

 

 

モリアは“スリラーバーク”にいる幹部と副官を集めて殲滅対象の“麦わらの一味”がスリラーバークの近くに来るのを待っていた。オバケを出せる“ホロホロの実”の能力者のペローナには偵察を任せていたのだ。そして城の窓からは短い金髪の容姿の整った巨人族の“巨雷兵”ディルゴが待機していた。モリアが逃がした天竜人の奴隷だったが、恩義を果たすために配下となった。すると項垂れているペローナへオバケが次々と入っていくと、ムクリと立ち上がった。

 

「モリア...。正面の門から南西の方角に“麦わらの一味”の船を発見したぞ。何か可愛い動くアフロガイコツが乗ってた。あいつは私にくれ...。」

 

「構わない...。ディルゴは南西に船を引け。アブサロムはスリラーバークを透明化。そしてリディアナはスリラーバークに“霧”を撒け。」

 

アフロガイコツをモリアは何かの能力者かと思いすぐに許可をした。ペローナの部下は皆可愛い(ペローナにとって)動物達のゾンビであり、唯一の例外がアルフレッドである。それはさて置きモリアは部下達に指示を出した。

 

「「「了解!」」」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

数時間後

 

 

 

〜サニー号〜

 

 

 

“麦わらの一味”のサニー号はスリラーバークの外壁を閉じられ、外部へ逃げられないようにされた。門を突き破って逃げるように伝えるとブルックは海面を高速で走り、スリラーバークへ上陸した。だが船長の“麦わら”のルフィが興味を持った。そしてスリラーバークへ乗り込もうとした瞬間に突然勝手に船の錨が沈んだ。

 

ハッチが空いたが、誰もそこにはいなかった。そして獣のような声が微かに響き渡ると突然“泥棒猫”のナミは身体をベロッと舐められた。ナミは気持ち悪さと恐怖で悲鳴をあげた。

 

「ガルルル...。好みの女だ。」

 

「どうしたナミさん!」

 

そして“黒脚”のサンジがナミに何が起こったのか尋ねるとナミの背後から何者かが飛んできた。目を凝らして見てみると声をあげた。

 

若い人魚(マーメイド)ォォッッ!」

 

「おい!何で浮いてんだ⁉︎」

 

空中を泳ぐそうに飛んでくる若く美しい人魚に目をハートにしたサンジは発狂しながら、身体をくねくねさせた。そして他のメンバー達も人魚に目を見開いて驚いた。先日老女の人魚(ココロばぁさん)と出くわして幻滅した思い出があったのだ。

 

「あら浮気かしら...。その美少女...殺す(邪魔)ね。」

 

光のなく黒く虚な瞳をしたリディアナは腰から細長く鋭い包丁を抜き、ナミへ向かって突撃した。するとアブサロムはナミから少し離れて声をあげた。

 

「おい!リディアナ!やめろ!」

 

ナミの首を落とそうと包丁を振りかざそうとした瞬間、リディアナの包丁が止められた。三本の刀を腰に差した男がリディアナの前に立ち塞がった。

 

「血の気の多い女だな...。」

 

 

(この人魚...。なんて力だよ。一瞬でも気を抜いたら押し負けそうだ。)

 

 

ゾロは身体の線の細く女性からは考えられぬほどの力を感じた。そしてリディアナは意外そうな顔をしてつぶやいた。

 

「“海賊狩り”のゾロ。腕と力はまぁまぁいいわね...

 

 

 

 

 

 

 

前半の海(パラダイス)”にしてはだけど。」

 

リディアナが力を加えるとゾロが押し負けて船の外壁へぶつかり、壁を突き破って船内へ飛ばされた。すると“悪魔の子”ニコ・ロビンが動いた。

 

「“六輪咲き(セイスフルール)”。」

 

リディアナの身体から六本の腕が現れ、関節を決める寸前まで身体を押さえ込まれた。

 

「確か貴方は“ハナハナの実”の能力者だったわね...。油断してたわ。」

 

「“クラッチ”。」

 

関節技を決められたリディアナの身体は霧のようにファッと舞い消えると、やがて蒸気が集まり、再びリディアナが現れた。

 

「...ッ!...“ロギア”。」

 

「その通り...。私は“スチスチの実”を食べた蒸気(スチーム)人間。この深い霧は私が作り浮いているのも蒸気だからよ。ロギア系最弱種だけど、貴方達じゃ相手にならないわよ。」

 

リディアナはモリアが天竜人の倉庫から盗んできた悪魔の実の一つを食べたのだ。そして彼女の力で霧を覆わせ、スリラーバーグが陽の当たる場所でも通る事が出来るようにしたのだ。船長のルフィが“ギア2”とつぶやき身体から蒸気を放出させ、リディアナへ向けて攻撃を繰り出した。

 

「“ゴムゴムのォォ...ガトリングッッ!”。」

 

そして“ゴムゴムの実”の力で血流を激しく流し、身体能力を著しく上昇させ、さらにゴムの反動を利用し素早く攻撃に繰り出す原理である。

 

「無理よ。今の貴方じゃ蒸気には触れる事すら出来ない。」

 

覇気を纏わなければロギアのリディアナの実態は捉えられないのだ。そして攻撃の対象をルフィに切り替えると“サイボーグ”フランキーが声をあげた。

 

「だったら炎はどうだ蒸気女!“フレッシュ・ファイア”!」

 

「きゃっ!」

 

自身の身体を改造した人造人間“フランキー”が口から炎を出すとリディアナは予想外の攻撃に炎から回避するのが遅れてしい、リディアナの右腕が少し焦げてしまった。

 

「フランキー!てめぇ!」

 

「スゥーーパァ...『グホッ⁉︎』」

 

「“黒脚”!なにしやがる⁉︎」

 

美人に惚れやすい性格のサンジは決めポーズをしているフランキーを蹴飛ばした。

 

「麗しきレディに手ぇだすんじゃねぇ!しかもマーメイドだぞ!マーメイド!」

 

サンジが抗議をするフランキーに対して怒っている背後でアブサロムはリディアナに触れて二人は透明になった。

 

「大丈夫か⁉︎クソッ!サイボーグか...。リディアナ!一旦引くぞ。お前じゃ相性が悪い。この程度の火傷くらいホグバックならすぐに治せるはずだ!」

 

「はーい!アブサロム様❤️。」

 

リディアナは担がれて幸せそうにお姫様だっこをされて船医のホグバックの元へ走って退いた。そして意気揚々キメ顔で振り返ったサンジは消えたリディアナへ向けて叫んだ。

 

「待ってよォォ!愛しのマーメイドォォ。」

 

サンジやリディアナの強さを感じた麦わらの一味はしばらく動けなかった。そしてその中最も頭のいいロビンがとある結論に達した。

 

「“影”、アブサロム、そしてホグバック...。マズイわ...。恐らくブルックの影を奪った男は元4億8000万ベリーの“ゲッコー・モリア” 王下七武海の一人...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人は彼を“死の錬金術士”と呼ぶ...。」

 

 

 






事前に伝えておきますがかなりの御都合主義が入ってしまいます。作者の実力、勉強不足のせいです。申し訳ありません...


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海賊としての格 1

 

 

 

 

 

 

 

〜スリラーバーク〜

 

 

 

 

 

「皆さん!どうしてここへ⁉︎ 」

 

スリラーバーグへ上陸した麦わらの一味はブルックと城へ向かう森の中で再会した。ブルックは門を突き破って脱走しなかったことに驚いた。

 

「おめぇはもう俺の仲間だろ。」

 

ルフィがブルックへそう言い放った。ある意味傍若無人なルフィは自分の興味や関心などを優先し、人の言う事など聞かないのだ。

 

「先ほど会ったばかりの貴方達に死んでくれとは言えません。私の影を取り戻す事ですら不可能に近いのに...。」

 

「うるせぇ!モリアって野郎をぶっとばせばいいんだな。」

 

ブルックはルフィ達を巻き込むまいと帰るように言うが、ルフィはブルックの言葉を聞かずブルックの手助けを無理やりする気なのだ。

 

「何を言っ...

 

「あぁなったルフィはもう止められねぇ。諦めろ。」

 

サンジはブルックの肩を持ちモリアを倒すのに協力する気のようだった。そして他のメンバー達はナミ、“狙撃の王様そげキング”ことウソップ、そして“わたあめ大好き”チョッパーはモリアにビビっているが、それを除いたメンバーは腹をくくったようだった。

 

「貴方達...本当に良い人達ですね...。是非ともお力をお貸しください..,。」

 

「作戦はあるの?ただ闇雲に突っ込むのなら全滅よ。」

 

ブルックはうっすら涙を浮かべ“麦わらの一味”を頼ることにした。そしてロビンは冷静にブルックに疑問をぶつけた。確かに(モリア側)に“ロギア”のリディアナ、そしてその上司と思われるアブサロム、更にその上に君臨するのが“王下七武海”ゲッコー・モリアなのだ。まともにぶつかり合えば“麦わらの一味”とブルックは全滅するのが目に見えていた

 

「...えぇ。ここの地下にモリアに影を奪われた人達が地下で捕らえられています。彼らに反乱を起こさせ、そしてその混乱に乗じてモリアを倒すのです。」

 

ブルックは7年前モリアとアブサロムの留守の時を狙って影を取り返す為にスリラーバークへ乗り込んだ事があった。自分の入れられたゾンビを見つける事ができず、情報だけを掻き集めたのだ。そこで地下に囚われた強者の香りのする人達が幽閉されているのを見つけたのだ。やがてアブサロムが帰ってきたのに気づき、素早くスリラーバークから脱出したが、アブサロムの透明化により船を見失ってしまったのだ。

 

「ちょっと待て。じゃあ何でおめぇは海にいたんだ?」

 

「私は弱かったからです。影は持ち主が死んだら影は消滅します。だから彼は強者を光の当たらない地下で幽閉しています。」

 

事実、モリアはスリラーバークに迷い込んだり、戦闘を仕掛けた海賊の内弱いと思った者から影を奪い地下で管理せずに森へ野放しにしたのだ。勿論逆らわぬようにディルゴを森へ住まわせ監視をさせていた。

 

「何でそいつらは逃げねぇんだ!だって自由じゃねぇなんてあり得ねぇだろ。」

 

「それが彼の強さを物語っているのです。モリアは政府の命令や独自に“新世界”の猛者達を次々と捕らえ地下へ幽閉しています。彼らは“逃げない”のではなく、“逃げられない”のです。」

 

支配される事を嫌うルフィはモリアと管理される者に腹を立てたが、ブルックは静かに反論した。すると“麦わらの一味”の周囲を取り囲むように海賊達が現れ、リーダー格らしき女性“求婚”のローラが口を開いた。

 

「話は聞かせて貰ったよ。私達はずっとこの森でチャンスを待ち続けた。私達にも協力させて。」

 

ルフィ達はローラの頼みを受け入れる返事をすると森の奥から何者かの足音が森へ響くと同時に薄暗い森へ威厳のある低い声が轟いた

 

「実にくだらぬ...。海賊なら海賊らしく力強くで奪いに来い。それがこの海における絶対的で唯一のルールだろ。」

 

 

 



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海賊としての格 2

「モリアだァァァァァァッッッ!!!!」

 

“王下七武海”ゲッコー・モリアが森の中へ現れると麦わらの一味を取り巻く海賊達は恐怖に満ちた顔をし、怯んだ。本能が彼を恐れているのだ。これが世界に名を轟かせる男だと肌身に感じさせた。

 

「さぁ...俺を倒したいのだろう?俺はサシでも全員でも構わない。」

 

「おめぇがモリアか⁉︎骨の影を返せッッ!」

 

モリアが余裕の表情でかかってくるように言うとルフィがモリアの前へ現れて声をあげた。だがモリアは身長差からルフィを見下す様に見て言い返した。

 

「勘違いするなよ。俺は防衛とモーガニア以外の敵には極力こちらからは手を出さないと決めている。」

 

モリアが冷たく言い放つと一斉に“麦わらの一味”や海賊達は戦闘態勢に入った。銃や刀を持った寄せ集めの集団を見てモリアは嘲る様な笑みを浮かべた。烏合の衆で七武海を落とせる気になっているのかと思ったからである

 

「ルフィ、こいつはやべぇ...。お前はブルックと先に地下へ行け。バケモノ(モリア)は俺達で押さえておく。」

 

「わかった!行くぞブルック。」

 

ゾロはモリアからクロコダイル(クラス)でなくミホーク(クラス)であると初見で感じた。そしてロビンの言う通り正面からやりあえば全滅という言葉が現実味を帯びている事を理解したのだ。反乱を誘導する事を悟られた可能性が高い以上、反乱を起こさせて間接的なダメージを与えた方が得策だと考えたのだ。ルフィは走り出したがブルックは慌てるようにルフィを追いかけた。

 

「無茶です。あの方達は死にますよ!」

 

「大丈夫だ。ゾロが任せろって言ったんだ。地下はどっから入るんだ?」

 

ルフィが仲間を信じているから心配をしていないのだとブルックが理解するとジタバタするのは彼らに対する侮辱だと思い、地下へと向かった。

 

「内乱を起こすなど、無駄な事だが...。一つ格というものを教えてやる。俺はここから一歩も動かずに貴様ら全員を捻り潰せる。」

 

「舐めてんのか?」

 

モリアが多くの強者達を管理しているのは記憶の改竄を行っているからだった。管理するまでもないと判断した雑魚をそのまま放流したツケが回ってきたなと感じたが、彼らに危機感を抱くほどモリアは落ちぶれてはいなかった。

 

「いや...正当な評価だ。それとも貴様らなど取るに足らないと言った方がわかりやすかったか?“影血閃(ブラック・ブレット)”」

 

モリアが“影血閃(ブラック・ブレット)”とつぶやくとモリアの周囲に自在に揺らめく影が現れた。モリアが手を動かすと太い無数の鞭のようにしなる植物のように形を変え、手を横へ振るとムチのように海賊達を吹き飛ばした。そしてモリアへ向けて次々と銃を撃ったが影の形を楯のように変えて軽く防いだ。今度は限りなく細くし糸を使ってドフラミンゴのように斬り裂いた。刀や銃は斬り裂かれ倒れた。もやは残ったのは“麦わらの一味”と僅かな雑兵のみとなった。ナミ、ウソップ、チョッパーは震えてモリアに恐怖していた。

 

「来ぬのか?せめて俺に触れられるとよいな。」

 

 

 

***

 

 

 

 

地下

 

 

 

ブルックは7年前に見つけた地下へ侵入できる穴の元へ行き、ルフィと共に中へ入った。そしてしばらく進んだ。薄暗い中一定の間隔で蝋燭が灯され、まるで商店街のようなモノが並んでいたが、店番などおらず自由に持って行っていいようだった。ルフィは何度か摘み食いをしようとしたが、ブルックはそれを認めず先へ進んだ。すると騒がしい酒場があったのでそこへ入った。すると皆が陽気に酒盛りを楽しんでいた。その様子を見た無言でルフィは声をあげた。

 

「何でおめぇらは自由を望まねぇんだ!!!!こんな所に閉じ込められてていいのか⁉︎」

 

ルフィが大声をあげると騒がしかった酒場はシンとなった。そして酒場にいた一人が驚いたような顔をしが、追いついた口調で話しかけた。

 

「あぁ...新入りか?何言ってんだよ。俺たちゃスラム街で落ちぶれてた所をモリア様に拾って貰ったんだ。人並みの生活を保障し、与えてくれた。だからその代わりに俺らは影を渡したんだ。」

 

「ん?ここにいる奴ら全員か?」

 

「大抵はそうだな。みんなモリア様にゃ感謝してる。」

 

ルフィは管理されている人達からモリアに感謝しているのだと知ると強張った顔を緩めた。むろん記憶を改竄していることを知らないからこそ辿り着いた結果である。

 

「なんだよブルック。案外モリアっていいヤツじゃねぇか。」

 

「...,」

 

「ブルック?」

 

ルフィがブルックへ声をかけるとブルックは一人の老人をジッと見ていた。そして思い出したらしく声をあげた。

 

「貴方はスラム街の人間じゃない!海賊“コナー・ナルキス”4億7000万の男。 七武海の一人を討ち取った大剣豪ですよね⁉︎」

 

「俺を知ってるのか?クソ骸骨にクソ麦わら。この老いぼれに何の用だ?」

 

ブルックは老人を見て声をあげた。見覚えのある人間がいたのだ。かつて“海割”と呼ばれた大剣豪のはずだったのにコナーは何のことかは分からないようだった。

 

「おいおい何言ってんだよ。確かにコナーじぃさんだが、ただの酒好きな口の悪ぃじいさんだ。」

 

「そうだぞブルック。これはただのじぃさんだ。」

 

周囲の人間やルフィがただの老人だと言うがブルックは周囲を見回すと次々に声をあげた

 

「違います...。はっ!あそこにいるのは“3億ベリー”金棒”のデルコフ、それに2億4000万の“瞬弾”のレミン。彼らは私世代の最高位の海賊達ですよ。」

 

「じゃあはこいつらは海賊なのか⁉︎」

 

ブルックは自身のしる海賊達を見つけて声をあげた。当時腕にそこまでの覚えはなかったブルック達が警戒していた海賊達が軒並み捕らえられている。これがモリアという男の強さを物語っていた。

 

「しかも揃いに揃って悪名を轟かせた強者ばかり...。でもどうして自分をスラム街の住人だと...。」

 

「何でだ?」

 

「恐らく悪魔の実の力...。もしかしたら彼らの記憶を改竄して、支配しているのかもしれません。意思を殺し自らに都合よく生きながらせるために...。」

 

その言葉を聞いた瞬間ルフィはこめかみに筋を入れ、目は鋭くなった。ルフィが嫌いなのは支配をする事だ。そしてそれがより非道であると更に嫌う。モリアは記憶を改竄し、己の都合のいいように生かしてあるだけなのだ。そして息をすぅと吸うと天へ向け怒りに任せて吠えた

 

「モリアァァァァァァッッッッッッッッッ!!!!。」

 

森の中で掠れかけたルフィの声を聞いたモリアはニヤッと笑ってルフィのいる方角を見た。エニエスロビーを落とした“麦わらのルフィ”がこの程度だとは思わなかったからである

 

「ほぅ...。野獣の如き男だ...。だが所詮ネズミ程度のモノ...。まぁ一歩たりとも動かぬ俺に触れる事もできぬネズミらと同じレベルのネズミに過ぎぬが。」

 

モリアが嘲るように影の大樹の実のように吊るされ気絶している麦わらの一味とその他の海賊達を見ていた。むろん一歩も動かずに...

 

 




影血閃の植物のような攻撃イメージは東○喰種の赫子を長くした感じです。


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海賊としての格 3

 

 

 

「モリアッッッッッッ!!!!」

 

「どうした?仲間を見捨てれば長生きする可能性はあったのにな。まぁもう逃がさんがな...。世界の平和の為に死ぬがいい。」

 

ルフィがブルックと共に森へ戻ってくるとモリアは向かって走ってきた。そしてモリアの影の植物の監獄に囚われている仲間を見て声をあげた。

 

「仲間は返してもらう‼︎‼︎お前は俺の嫌いな奴らによく似ている‼︎ お前の平和ってモンは人の自由を奪ってまで、守らなくちゃなんねぇモンなのか!!!!」

 

ルフィがモリアへ問いかけた。ルフィの最も恐れるのは仲間を失う事であり、仲間を守る為なら命を軽々捨てる事ができるような男なのだ。だがモリアはそれを嘲笑った。

 

「フフフ...ハァッハッハッハッハッハ!!!!くだらねぇな麦わら(ルーキー)!!!!」

 

モリアはルフィの覚悟を込めた言葉を戯言だと嘲笑いつつ大声をあげた。

 

「てめぇも一端の海賊ならわかんだろ‼︎ この世とは強者のエゴにより世界は動く‼︎ 悪を管理し戦力とする俺と、悪を解放し自由とするお前じゃどちらが未来の現実となる?答えは強者だ。世界破壊だろうが世界平和だろうが所詮人のエゴだ...

 

 

これが歴史だッ!世界だッ!現実だッ!

 

気に入らねぇなら潰しに来い...

 

この世とはエゴ(欲望)だ...。」

 

モリアはこの世の理を語った。人とは何かをしたい、やりたい。それだけで全てを語れるのだ。食事、行動、願望、道徳、倫理...この世の全てが欲望だと言い放った。モリアからしてみれば“世界を滅ぼしたい”、“世界を平和にしたい”も所詮は人のエゴ(欲望)に過ぎないのだ。

 

「“ギア2” “ゴムゴムのォォ jetピストル”!」

 

身体から蒸気が溢れ出したルフィに全く動じず、軽々身体を仰け反らせて躱したモリアはルフィを挑発的な瞳で見据えたが、ルフィは親指を噛んで空気を入れて膨らませた。

 

「“ギア3” ゴムゴムのォォ 巨人の銃(ギガント・ピストル)!」

 

 

(これは避けられんな...。一歩も動かぬと宣言した以上カッコがつかぬからな。まぁ捕らえた奴らはもはや動けまい...。)

 

 

モリアは植物の監獄の全ての影をモリアの目の前に移動させ、盾に変化させ軽々防いだ。すると空気が抜けたのかルフィの身体が萎んで小さくなった。そしてモリアはつまらなそうな顔をし、盾を数本の影の槍にした。

 

「ゲェ!やっ...やべぇ‼︎ 」

 

声の高くなり、子供のように小さくなったルフィは逃げようとしたがモリアの影からは逃れられないのは明らかだった。ルフィへ影の槍が貫く寸前に邪魔が入った。

 

「“七十二煩悩鳳”!」

 

飛ぶ斬撃がモリアの槍の影を吹き飛ばした。するとゾロは刀を二本抜いていたが斬り裂けなかった事を不満気な顔をしていた。“麦わら一味”は“影血閃”で植物の監獄にしていたモノを盾にしたため解放されたのだ。モリアとしては確実に失神させたつもりが戦闘の意志を挫けない程度のダメージしか与えられなかったようだ。つまりモリアが麦わら一味を軽んじていたという事になる。

 

そして“麦わら一味”がモリアへ反撃をせんと向かってきた。

 

 



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海賊としての格 4

 

 

「...流石に過小評価をしていたのは認めよう。前言撤回だ。」

 

モリアは素直に自分の非を認めた。“麦わら一味”を取るに足らない、一歩も動かないと斬り捨てていたのは誤りだと思ったのだ。第一モリアは完全に意識を奪ったと考えていたため植物の監獄をルフィの攻撃の為に盾に変えたことの判断ミスと戦闘の意志を残す程度のダメージと恐怖しか与えきれなかったと感じたからである。

 

「案外律儀なんだな...。」

 

フランキーは顎を摩りながら口に出した。そしてモリアという人物は敵だが人格者の片鱗を感じた。するとモリアは小さく鼻で笑うと口を開いた。

 

「現実を見据えぬのは愚か者のすることだ。だが非を認めたからと言って未来は変わらぬと知れ...。」

 

モリアは常に自分を客観的な位置で見る事ができる人間である。世界の平和の為に動くが自分を一海賊である事を認めているし、それが自分の自己満足である事も認めている。感謝される事はあるが、それはあくまでも副産物であり、どう捉えるかは千差万別、十人十色であるのでそれを誇りに思う事など微塵も無かった。

 

「ヨホホホ!私から行かせて頂きますよ。“鼻唄三丁矢筈...ッ⁉︎」

 

“麦わらの一味”を巻き込んだと自覚しているブルックがモリアへ戦闘を仕掛けた。彼は元々居合術に優れとある王国の護衛戦団団長を任されていた。だがそれは所詮とある王国の護衛団のボスである。この海を統べる七つの怪物(七武海)の一人を担うゲッコー・モリアに通じるはずもなかった。モリアは左手の人差し指と親指で仕込み杖の剣先を掴んだ。ブルックは彼の指の力ですら解く事ができない事に驚いた。

 

「“悪魔風脚(ディアブルジャンブ)”“画竜点睛(フランバージュ・ショット)”。」

 

地面に脚をめり込ませ回転する事により生じる炎を纏った蹴りをモリアへ繰り出した。彼はブルックの背後から人体の急所である首筋を狙ったが、モリアに炎の届かない脛の部分を掴まれた。

 

「身体能力は中々...。」

 

モリアはブルックの刃を掴んだままサンジを力任せに地面に叩きつけた。地面は彼のパワーに押されまるで2メートル程のクレーターの様な穴が空いた。そして素早く回し蹴りに切り替えてブルックの腹を蹴飛ばした。ブルックは吹き飛ぶと森の木を数本倒しそのままグッタリとした。

 

「能力なしでこの強さかよ!“火の鳥星 ファイアーバード”ッ。」

 

「“サンダーボルト・テンポ”ッ!」

 

ウソップはモリアのパワーに驚いたがモリアはかなり加減をしていた。モリアとしてはこの一味の全員をゾンビにする為、出来る限り損傷しないようにしたかった。無論実力差があるため覇気など一度も使ってなかった。だから彼は体術で終わらせるつもりだった。ウソップとナミが遠距離で炎と雷の攻撃を仕掛けるがモリアは一瞬で二人の間へ移動すると二人の顎を撫でるように軽く力を込めて弾いた。少し離れて倒れているサンジを地面に無数に生やした手で避難させていたロビンは彼の身体能力の高さに驚いた。そしてロビンの方を振り返った。するとその背後で二人の脳はモリアの与えた軽い衝撃で脳震盪を起こし意識を失い、ゆっくりと倒れた。次はロビンを潰す(やる)かと考えたモリアだったが、真横を振り返った。

 

「吹き飛びやがれ!“風来砲(クー・ド・ヴァン)”」

 

フランキーの両の腕が大きく膨らむとモリアへ強力な突風で吹き飛ばそうとした。ロビンが動けないサンジを移動させているのを止めてはならないと考え、この攻撃で時間を稼ごうとしたのだ。だがモリアはそんな事を見抜き素早く身体を少し跼めて風の影響を極力避け、そして腹を少し強めに殴った。アブサロムからサイボーグである事を聞いていたのでこの程度の力加減が最適だった。無論一撃で意識を刈り取られた。

 

「硬いな...。」

 

「“腕力強化(アームポイント)”。“刻蹄(こくてい)”“桜吹雪(ロゼオミチエーリ)”。」

 

モリアがフランキーの硬度を感じつぶやくとフランキーの隣にいたチョッパーが何やら小さい丸薬を噛むと腕の筋肉が発達し、モリアへ攻撃を仕掛けたがモリアは体勢を崩しながらも蹴りを加えてチョッパーを吹き飛ばさせた。

 

「“六輪咲き(セイスフルール)” 。」

 

「遅ぇ...。」

 

サンジを避難させたロビンがモリアへ関節技をかけようと六本の腕を生やした。関節技を決めようと手を伸ばしモリアの身体へ触れようとした瞬間、ロビンは掌底を腹に打ち込まれた。気絶した事により能力の手が消えると背後から研ぎ澄まされた殺気を感じた。

 

「“二刀流 羅生門ッ! ...ッ⁉︎」

 

ゾロがモリアへ向けて攻撃を仕掛けたが、刀を抜く前に両手が止まった。見ると目の前にモリアが現れて自分の手首を押さえ込んでいた。目を見開くと同時にモリアは顎蹴りあげた。ゾロはかろうじてモリアの攻撃を予測し激しく歯軋りをして耐えようとしたがゆっくりと倒れた。

 

「お前ッッッッッ!!!!俺の仲間に手をだすんじゃ...『ボゴン‼︎』

 

身体が元に戻ったルフィがやられて倒れた仲間を見て吼えたがモリアが今更相手にするわけはなく、覇気を纏ってルフィの顔を殴った。ルフィの意識が一撃で刈り取られると地面に叩きつけられ、サンジの時にできたクレーターの倍以上の広さと深さはあると思われる程の穴が空いた。

 

「“エニエスロビー”を落とした海賊もこの程度か...。とても“新世界”で生き残れる海賊には思えぬ...。まだ若い...。」

 

モリアがつぶやくと背後から本の微かな気配を感じ、背後を素早く振り返ると目の前に刀を抜きかけているゾロがいた。

 

「“一刀流 獅子歌々”ッ! 」

 

 



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海賊としての格 5

今日、ふと先週のUAを見たら1万6000まで行ってました。正直チラシ裏でここまで伸びるとは思っても見なかったので驚いています。このペースでちょいちょい更新していき、原作の進み待ちのところまで行こうと思います。


 

 

 

「“一刀流 獅子歌歌”ッ!」

 

モリアがゾロの間合いに入っている事を理解し、突然目を鋭めた。自分が微かにしか感じれない程度の気配の消し具合は見事だった。モリアの顔色には余裕はなくなったが興味深そうな顔をしている。

 

「かなりの筋だ...。間合いに入るまでの集中力は凄まじい...。」

 

「...ッ!身体が動かねぇ!」

 

ゾロは刀を半分程抜き、いつでもモリアを斬り裂く事ができるが身体が一ミリも動けない。ゾロの足元の影には黒い針が刺さっていた。ゾロがモリアを斬り裂く前に両脚の間の影へ向けて針を放ったのだ。

 

 

(凄まじい腕だ。奴の殺気は微塵も感じなかった...。覇気と能力がなく察知が遅れていたら死んでいたな。)

 

 

「おめぇ...なにをした?」

 

「まだ貴様じゃ影の拘束は解けない。そこで船長の死に様を目に焼き付けておけ。」

 

モリアの“影縫(シャドウ・ストリング)”は全身に覇気を込めれば軽く拘束は免れる。だがそれはモリアの放つ針に覇気を込めなければの話である。仮に覇気を込めた場合に拘束を解くにはそれ以上の覇気を込めるか覇気を込めた力を上回る程の力があれば問題ない。そしてモリアは倒れているルフィへ止めを刺そうとするとゾロはモリアへ懇願するように大声をあげた。

 

「クソッォォ!!!!やめろッ!!!! やめろォォォ!!!!」

 

「俺の仲間に手ぇ出すんじゃねぇよッ!!!!」

 

するとロビンに避難させられ休んでいたサンジが復活し、脚に炎を纏わせた蹴りでモリアを攻撃しようとしたが、軽く躱され、そして顔を鷲掴みにされるとそのまま後頭部から地面へ叩きつけられた。地面がひび割れる程の衝撃を受けたサンジはもはやしばらく立ち上がることは不可能であると思われた。

 

「頼む待ってくれ!!!!」

 

「喚くなよ...。俺がお前らを生かすメリットがない...。」

 

モリアが拘束されて一歩も動けぬゾロの願いを軽く突っぱねて見下すように冷たく見た。

 

「...どうしてもルフィの首をとるのか?」

 

「あぁ...。正確には“麦わらの一味”の首だがな。」

 

「首はやるよ。だが俺の首だけだッ!ウオォォォッッッッ...『パリン!!!』」

 

ゾロは全身に異常な程力を込めるとモリアの拘束から抜け出した。そして針がパリンと砕け散るとモリアの目の前へひざまづいた。

 

「ほぅ...逃れたか。だが貴様は何を言ってる?」

 

「未来の世界最強の剣士の首を取れると思えば不足はねぇはずだ...。ルフィは海賊王になる男だ。ここで死なせるわけにはいかねぇ」

 

ゾロは地面に頭を叩きつける様に土下座をすると“麦わらの一味”に手を出さず、首を取るのは自分だけにして欲しいと頼んだ。

 

「二度言わせるな。俺にはお前の首だけでなく、ここで倒れている敗者の首を取る権利がある。まぁ放棄するかどうかは別の話だが。」

 

 

(...アブサロムとギルノスの情報によれば“麦わらの一味”が海賊行為を行った事はない。そして世界の均衡を崩しかけたのはクロコダイルの件とエニエスロビー。これらは仲間の為に落としたと聞いているため案外危険因子ではないとも考えられる。ただ何をしてかすか分からないという危険があるのも事実だ...。)

 

 

「後生だ...。」

 

ゾロの覚悟にモリアは少し眉毛をピクッとさせるとゾロの目の前に跼み手のひらをゾロの頬へ添えて顔を上げさせた。

 

「ならばお前は俺に何をくれる?一体何のメリットを与えてくれる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何なりと...。」

 

モリアはゾロの揺るがぬ瞳をジッと睨みつけ覇気を解放させて彼を威圧した。だがゾロの瞳に迷いは見られない。するとモリアは突然笑い始めた。

 

 

「クックック...気に入った...。揺るがぬ意志程美しく逞しいモノは存在せぬと実感させられる。貴様にチャンスをやろう...。俺のゾンビ兵に剣士のお前に相応しい侍がいる...。そいつにサシで勝ったら船長の首、そしておめぇらの首も取らない。そして尚この海域での安全の保障を約束しよう。無論影も返してやる。ただし負けたら反乱因子ごと皆殺しだ。管理してないゴミなどまた掻き集めればいいからな。」

 

「恩にきる...。」

 

ゾロが静かにモリアからチャンスを貰った事へ感謝した。彼の面持ちからは自分が破れる事など信じないと思わせる程の気迫を放っていた。『良き眼だ...。』とつぶやくと息をスゥと吸うと口を開いた。

 

「“リューマ”ッ!!!!」

 

スリラーバークへ響き渡る程の声が轟くと数分後一人のゾンビがゆっくりと下駄をカツン...カツン...と響かせながら歩いてきた。容姿はホグバックによって改造させられた肉体に白と黒の着物、そして頭には丁髷をした倭国の武人の格好をしていた。

 

「何の用だ...クソモリア。」

 

「殺し合いの時間だ。この男を殺せ...。」

 

「了解...。」

 

リューマは不機嫌気味にモリアに何の用があるかを尋ねた。そしてゾロと斬り合う様に命じるとリューマは了承し、日本刀を抜くと刃先は黒く艶めいた。

 

「さぁ斬りあえ‼︎ 勝てば全てを守り、負ければ全てを失う。リタイア不可能な無慈悲で非人道的なゲーム(殺し合い)!海賊らしくていいじゃねぇか!!!! 」

 

 




すみません、作者としても無理があるとは思ったんですけど、ゾロの秋水イベントは回収しなければならなかったのでこの様な成り行きとなりました。ですが戦争編で確実にモリアさんは暴れますのでもう暫くお待ちください...




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海賊としての格 6

 

 

 

 

「強ぇ…。」

 

ゾロは身体のあちこちに浅い切り傷ができ、血がゆっくりと垂れていた。それに反してリューマの着物は一閃の切り傷も付いていなかった。致命傷を与えきれない事から二人の力量は僅差だが剣士にとってはその差が命取りになるのだ。だがゾロは仲間とその他の海賊達の命が己の剣にかかっているというのにどこかこの状況を楽しんでいるようだった。

 

「“海割”コナー・ナルキス...。その者の全盛期の剣は海をも斬り裂いたという...。だが落ちたモノだな。」

 

 

(やはりリューマの肉体に“覇気”のない(精神)はダメだ。)

 

 

コナーはかつてモリアが生け捕りにした“新世界”の強者の一人である。彼は彼を倒し捕らえたところまでは良かったものの自分の限界を感じ、“自分を信じられなくなった”のか覇気が使えなくなってしまったのだ。そもそもゾンビにおける影とは技、性格などの特徴を表すモノである。むろん覇気も影の力に委ねられている。そして剣士だからリューマの影にしようと思ったのが打算であると再認識した

 

「まぁそこそこはやるようだが、若い...。面倒くせぇからさっさと終わらせようぜ。老体にゃ応えちまう。」

 

リューマは黒刀を鞘に収めそう言い放った。ゾンビである以上老体などとは関係無いが影は当人の性格の影響を出るためそう言ったのだろう。リューマは刀に手を添えると素早くゾロへ間合いを詰めた。

 

 

(...ック⁉︎ スキがねぇ...だったら...)

 

「“斬波天鐘”」

 

「“一刀流 飛竜火焔”ッ!!!!」

 

二人の刃が交わり剣を同時に鞘に収めた。数秒後ゾロの腹が裂け血が飛び散った。そのままゆっくりと膝を着いて口から血を吐いた。

 

「クックック...生意気なクソガキだ。」

 

リューマがそうつぶやくと着物が大きく斜めに裂け、ホグバックに改造された強靭な肉体にヒビが入ると同時に傷口が発火した。

 

「私が剣士に敗れるとはな...。私も老いたものだ。受け取れ...。“秋水”をその折れた刃の代わりにするがよい...。」

 

着物から引火し全身が燃え盛るリューマはゾロへゆっくりと歩み刀をゾロへ渡した。彼はゾロが刀を三本使用する事やその内の一本が折れていることを見抜いていた。そして同時にリューマはゾロを気に入ったようだった。ゾロはリューマの技にどう足掻いても捌けないと判断し“避けなかった”のだ。そして相打ち覚悟でゾロも技を撃ち込みその結果彼は自分より力量が上のリューマに打ち勝ったのだ。

 

「はぁ...はぁ...。」

 

「約束は守る。少なくとも俺が逃がしたって事はDクラス以下のはずだ。この場に居合わせた者の影は全て返そう。」

 

モリアがゆっくりと息を整えてえるゾロの元へ向かうと傷口を押さえながら息を整えていた。そしてモリアはかなり細め糸にした“影血閃”でゾロの傷口に注ぎ込み傷口を塞いだ。するとゾロはリューマから受け取った刀をモリアへ突き出した。

 

「刀は返す。ゾンビの性格は“影”なんだろ?だったらリューマの意志じゃねぇ。」

 

「いや...あと刀は持っていけ。貴様の戦利品であろう?先の影の糸は傷を防いだだけに過ぎん。貴様の治療が先だ。」

 

ゾロはモリアに刀を返そうとした。ゾンビにおいて影は精神面を担うのだ。つまり肉体のリューマの意志とは言い切れずリューマやモリアのモノである可能性が高いからである。モリアはゾロを右腕で抱え更に側に倒れているルフィを左腕で抱えると麦わら帽子をまじまじと見た。

 

 

(この帽子...。あぁ...この子がシャンクスが言ってた子供か…。)

 

 

「ディルゴッ!倒れている者達を屋敷へ移動させろ。」

 

「了解したぜボス。」

 

モリアはかつてシャンクスとの交流を少し思い出したがすぐに現実に戻った。そして声をあげて部下へ命じた。約束では手を出さず安全を保障するとあったからである。

 

 

 

***

 

 

 

数時間後

 

 

 

〜スリラーバーク〜

 

 

 

 

モリアは城内のホールに先ほどの場に居合わせた者達を連れ影を返した後に食事や治療を施した。そこまでは約束の範囲外であるが、それはゾロを気に入ったモリアの一存である。ホールには豪華な食事が置いてあり大半はそれに貪り食っている。そして完治しているはずのサンジや一部の海賊の男はペローナとリィディアナの看病をデレデレした様子で治療を望み、ペローナがツンツンした様子で拒むのを見てサンジや海賊達にアルフレッドが悪態をついたりボコったりしている。

 

城内の一室にゾロを除いた一味が回復し集められたところでモリアが口を開いた。

 

「アラバスタやエニエスロビーの件は見逃してやる。緑色の剣士に感謝しろ...。」

 

「「「「ゾロ⁉︎」」」」

 

一味のメンバーが目を覚ますとモリアになぜ生かしたのか?なにが目的か?ゾロはどこにいるのか?と次々と質問攻めにしたがモリアは一味が集まってから答えるの一点張りだったのだ。そしてモリアは約束の流れを話した

 

「奴は治療室にいる。船医のホグバックが治療しているから安心しろ。」

 

「ホグバックって...ドクトル・ホグバックか⁉︎」

 

船医のチョッパーが大声をあげた。ホグバックは天才外科医としてその道で知らぬ者は無いと呼ばれる程の名声を得ている。

 

「あぁ...。今は俺のクルーだ。それはさておき、これ以上は無闇に暴れるな。貴様らの安全圏はこの海域だけだと思え...。」

 

 

モリアがそう説明をし、チョッパーから見学とかサインなどのワードを聞き流しながら警告をするとモリアの幹部達がピクッと反応して同時に同じ方向を見た。そしてモリアが目線でペローナとアルフレッドに合図を送ると二人は無言で部屋から出て行った。

 

 



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七武海の来襲 1

 

 

 

 

 

 

 

 

〜スリラーバーク海岸〜

 

 

 

 

 

「久しぶりの侵入者だと思って来てみたら...。七武海の“くま”じゃねぇか。戦争がしてぇなら今すぐにでもおっぱじめるかよ?」

 

ペローナがアルフレッドと共に侵入者の元へ急いで向かった。すると巨大で丸い身体、そして左手に聖書を持った男がいた。二人はすぐにこの男が誰かを理解した。モリアと同じ“七武海”の一人である“バーソロミュー・くま”だったのだ。ペローナはくまの狙いがわからぬ以上、挑発的な態度をとっていた。

 

「旅行をするならどこへ行きたい?」

 

くまは何気ない世間話のような質問を二人にぶつけるとアルフレッドはビクッとこめかみに筋を入れて口を開いた。

 

「あ?根暗拗らせて中身までシケってんのかよ。クソオタク野郎がッ!」

 

アルフレッドはくまの物静かな様子に悪態をついたが、隣にいるペローナはアルフレッドとは異なる態度をとっていた。

 

「でも...やっぱりバカンスなら。暗くて...湿ってて...怨念渦巻く古城のほとりで呪いの唄でも歌って過ごしたい。」

 

ペローナは頬を片手で押さえながらゴースト・プリンセスの名に相応しい旅行先を答えた。するとアルフレッドはペローナの様子を見て口を開いた。

 

「んじゃ俺はモリア様のいる所かペローナ様のいるところ。」

 

「ハッ!ペースに乗せられた‼︎」

 

アルフレッドがペローナに習って素直に答えた。するとペローナは自分の置かれている状況を思い出した。ペローナがくまの前に行こうとするとアルフレッドがモフモフの腕でペローナの進路を塞いだ。

 

「下がってて...俺が先にやるよ。その代わり...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒したらニンジンと撫で撫でを所望する!」

 

アルフレッドが真顔でくまを倒したご褒美をペローナに求めた。その様子に満足したのかペローナはご機嫌な顔で返事をした。

 

「ホロホロホロ...構わねぇ。単純な戦闘スキルじゃお前の方が上だ。」

 

「OK...。んじゃ初めから飛ばしますか...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“獣人化”...。」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜スリラーバーク〜

 

 

 

 

侵入者がくまであると知らぬモリア達は未だに部屋の中にいた。モリアは“麦わらの一味”に質疑応答を終えると巨大な骨つき肉を大量に乗せた皿を床に置き、むすっとして肉にかぶりついていた。

 

「クックック...拗ねているのか?俺の恩情と仲間の力に救われた命が腑に落ちぬか?」

 

モリアはルフィを揶揄うように尋ねるがルフィは返事をしなかった。するとナミ、ウソップ、チョッパーがルフィの元へ急いで移動をしてナミがルフィの頭を押さえつけた。

 

「ほらルフィ!謝んなさい!」

 

「そうだルフィ!モリアの旦那に礼を言え!」

 

「ルフィ〜...。俺はまだ死にたくねぇぞ〜!」

 

三人は約束を守ると言ったモリアの発言を鵜呑みにせずに怯えているのかモリアの機嫌を損ねぬ様にしたいようだった。

 

「うるせぇ!俺は謝らねぇし!認めねぇし!許さねぇ!納得もできねぇ!」

 

ルフィが軽く力を入れて三人の拘束から逃れると声をあげた。やはりルフィはモリアのやり方が納得できぬ様だった。

 

「ならばなぜ食事にありついている?それになぜ敵視する男を倒しにかからん?」

 

するとモリアは静かにルフィへ問いかけた。するとルフィは突然静かになると口を開いた

 

「よくわかんねぇけど...。お前が間違ってないってのはわかる。それに今の俺がオメェに勝てねぇってのも...。」

 

「ほぅ...潔いな。」

 

ルフィは戦闘前のモリアの言葉がずっと引っかかっていた様だ。ルフィは今まで自分の自由や仲間へ手を出した者達を倒してきた。今この状況にあるのは自分がその者達に勝利したからであり、敗れていればこんな仲間だけでなく自分の命をも失っていただろう。その事を時間と共に思い出し、単純な頭なりにじっくりと考えたのだろう。

 

「だけど認めねぇ‼︎ 俺はいつか強くなってお前をぶっ飛ばす!!!!」

 

「「「ルフィ!!!!」」」

 

ルフィがモリアのやり方を認めぬと盛大に宣言すると再び胡麻擦りトリオは再びルフィを抑え込もうとした。絶対に自分の信念は曲げず嘘をつけないルフィを抑え込めないのはわかっているが何もせずにはいられない様だ。

 

「すみません旦那ッ‼︎このバカはッ!!!!」

 

ウソップはルフィの上に乗りかかりながらモリアへ向けて必死に機嫌を損ねぬ様に全力を尽くしていた。だが三人の心情とは裏腹にモリアは突然笑い始めた。

 

「クックック...放してやれ。」

 

「「「へ?」」」

 

ご機嫌そうなモリアが三人にルフィを解放してやる様に言った。その様子は先ほど今まであった者の中で最強の敵だったモリアからは想像もつかぬ様子だった。

 

「それでいい...。俺達は海賊なんだ。いつでも自由に生きればいい。ただその自由を守るには力がなくちゃいけねぇ...。こんな簡単な事は自由じゃ無くならねぇとわからねぇモンなんだ。」

 

モリアが海賊の先輩として麦わらの一味に海賊としての在り方を説いた。この言葉によりモリアを警戒し、離れていたルフィとトリオ以外は少しモリアの生き方を認めた。

 

「今日は負けたけど...俺はいつかお前より強くなって海賊王になる!!!!」

 

ルフィが真剣な表情で自分では足元にも及ばぬ事を見せつけられたモリアに向けていつか自分が勝つと宣戦布告をした。するとモリアは笑みを浮かべると口を開いた。

 

「クックック...再戦の日を楽しみにしているぞ。俺は“侵入者(客人)”を迎えに行かねばならん。俺が戻るまでこの城からは決して出るでないぞ。」

 

 



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七武海の来襲 2

 

〜スリラーバーク〜

 

 

 

<海岸>

 

 

 

 

「“獣人化”...。」

 

アルフレッドがそう呟くと身体は黄金色の毛が生え、更に上半身の筋肉が発達し鋭い牙がギュッと三日月型に伸びた。可愛らしい草食動物のようなアルフレッドに獰猛な肉食獣が半分程混じったようだった。

 

「“古代種”か...。」

 

「正解。俺は“ネコネコの実 <モデル>サーベルタイガー”を食べた...

 

 

 

んじゃ始めようか...。」

 

アルフレッドが地面を後ろ脚で力強く蹴り、くまとの間合いを詰めようとした瞬間に身体を白いゴーストが身体をすり抜けた。

 

「水虫のおっさんに踏みつけられた最高級ヘチマになりたい...。」

 

アルフレッドは跪き途轍もなくネガティヴになった。これはペローナの出したゴーストによるもので防御不可避の精神攻撃である。

 

「...その姿は可愛くねぇ!!!!何度言わせりゃわかんだ!!!!」

 

ペローナはプンスカしてアルフレッドに獣人化をやめる様に叱った。彼女はアルフレッドの獣人化が余り好きではない様だった。

 

「しょうがないじゃん!だって案外この能力はパワーは強いけど顎の力と脚力は意外と弱いんだよ!だからミンクの跳躍力とスピードが必要なの!」

 

アルフレッドはペローナに反論をした。確かに生物学者の話によればサーベルタイガーは顎と脚力は弱かったが現在のライオンやトラなどより遥かに前脚が発達しており、強靭な筋力を誇った。一説によればサーベルタイガーは唯一古代で最強と呼ばれる一種のマンモスを食料とした肉食獣であるのだ。ただマンモスが気候変動の影響で絶滅した事により小型の動物を狙ったが脚力の弱さ故捕らえる事ができず餓死したという...

 

「ホロホロホロ...下がってな。そもそも私の能力じゃイチコロだ。」

 

 

 

 

***

 

 

 

数分後

 

 

 

モリアはペローナとアルフレッドの二人が侵入者を片付けるのに手間取っていると思い、侵入者のいる海岸へ歩いていた。見聞色の覇気で気配を探ると巨大な人間がペローナを手の平で叩くとペローナの気配が一瞬で消えた。モリアはその瞬間に海岸の影へ一瞬で移動をした。

 

「クソがァァァァァァァッッッッッ!!!!」

 

獣人化したアルフレッドはくまへ単調に突っ込んだ。くまは手の平で弾こうとしたがアルフレッドはニヤッと笑うと身体を元に戻し小さくなり躱した。そして爪を突き出して武装色の硬化をし、更にミンクの特性の電気を纏いくまを思いっきり斬り裂いた。くまの服だけでなく肉体が深く斬り裂かれ何やら機械がビリビリと故障を起こしていた。

 

「ッグ⁉︎...。強いな。」

 

「硬えな。サイボーグ(鉄屑)かよ。最低でもあと3発ブチ込んだら昇天させられるな。」

 

アルフレッドはじっくりとくまの身体を見聞色の覇気で観察した。すると全身が機械に覆われていることから急所を確実に狙える部位か見当たらない事から3発で倒せると予測した

 

「...流石に今の一撃をもろに受けたら死ぬな...。モリアには強力な部下がいる...。だが俺には勝てん...」

 

「ホザけッ‼︎ その手に触れられずに闘えばいいだけのことだろうが!!!!」

 

アルフレッドが素早く突っ込むとくまが消えアルフレッドの背後へくまが瞬間移動した。アルフレッドは素早く勘づき振り向くと同時に電撃を纏わせて斬り裂こうとすると手の平でくまは軽く弾き、そのまま素早く間合いを詰め体勢を崩したアルフレットを触れるとその場から消した。

 

アルフレッドの背後へくまが移動した時に海岸へついたモリアは確かにアルフレッドが一瞬で消されたのを見た。そしてペローナも居ない事からくまにやられたと判断した。

 

「“くま”ッッッッッ!!!! てめぇ...俺の部下に何をしやがった⁉︎」

 

覇気を剥き出しにしたモリアがかつてないほどブチ切れてもくまは全く動じなかった。今までスリラーバーグへくまが訪れた事はないため、モリアは彼が戦争を仕掛けに来たのかと推察した。

 

「戦闘の意志はない...。お前の部下達が早とちりをして俺に攻撃を仕掛けた。正当防衛といったところだ。」

 

「そうか...。それは申し訳ない事をした。」

 

くまはモリアへ戦争をするつもりはないと言い、状況を説明するとモリアは部下らの非礼を詫びた。非があれば素直に謝罪をできるのがモリアの人間としての器の大きさを表していた。

 

「俺がここへ来たの...『なに勝手に話を進めてる?』

 

くまが単調に語りだすとモリアが遮った。モリアは大分大人しくなったが、目を瞑っていてもわかる程にモリアが怒りを覚えていた。動じぬくまにモリアは口を開いた。

 

「幾ら俺の部下の過失で正当防衛だとしても...お前が俺の部下をやったという事実は変わらねぇだろ...。」

 

「...安心しろ。お前の部下達は無傷で無事だ。俺は“ニキュニキュの実”を食べた肉球人間。ありとあらゆるモノを弾く能力だ。」

 

モリアが部下に手を出した以上くまを許す気はないと言い放つとくまは戦闘をする気はないのか反論をした。

 

「つまり俺の部下を弾き飛ばしたという事か?どこにいる?」

 

「二人とも“シッケアール王国”へ飛ばした。あいつらの希望通りに飛ばしたから旅行をさせているとでも思えばいい。」

 

シッケアール王国が確かに“偉大なる航路”に存在する王国だという知識のあったモリアは少し思考を研ぎ澄ました。確かにシッケアール王国はジメジメしていて薄暗かったはず...、いかにもペローナが好きそうな場所である。そしてアルフレッドはペローナのいる場所がいいとでも言ったのだろう。

 

「...それならいい。お前が嘘をつく理由もメリットもねぇはずだ。とりあえず何の用だ?事前に連絡でも寄越すのが筋だろうが。」

 

モリアはくまが部下達を飛ばす理由がないと考え、話を聞いてから部下達を戻させようと思った。

 

「新たな七武海についてと強制召集の通達だ。一つ聞くが...“麦わらの一味”は来てるのか?」

 

くまは淡々とモリアへの伝言係としてこの島へ来たという事を伝えた。また“麦わらの一味”というワードを聞いたがモリアは顔色一つ変えなかった。

 

「政府は何か仕掛ける気か?まぁいい。“麦わらの一味”とは先日エニエスロビーを落としたルーキーだったな。ログからしてこの海域を通る可能性があったから警戒していたが、見つからなかった。おそらくもうこの海域は抜けてるはずだろう。」

 

モリアは“麦わらの一味”がスリラーバークには来ていないと言った。くまは普段のモーガニア、均衡を崩す危険のある海賊らを狩り続けているため疑うことなく信用した。

 

「そうか...。あと今すぐマリージョアへ向かうようにとの伝言だ。」

 

「了解したと伝えろ。その前に俺の部下へ伝言と無事を確認させて貰う。“影便(レター)”」

 

モリアは二匹のコウモリをシッケアール王国へ飛ばした。メッセージは“しばし休暇を与える。所用が片付いたら迎えに行く”というモノである。むろん二人を見つけなければ戻ってくる仕組みであるため、二人の生存を確かめる事にもなるのだ。そしてくまが自分を弾いて消えるとモリアは振り返るとスリラーバークへ帰って行った。

 

 

 




サーベルタイガーの件は諸説ありですが、この作品ではそういう設定でお願いします。


まさか昨日だけで平均評価8.8から6.6まで落ちるとは思ってなかったですね。スリラーバーグ編の駄作感が伺えます。戦争編で巻き返しますのでお付き合い下さい(必死)


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新たな世代と時代の歯車 *〜スリラーバーグ編終了〜*

〜スリラーバーク城内〜

 

 

 

 

 

「筋のある情報じゃ...ここにある可能性が高いのよ。」

 

先ほど一味が集められ、モリアの部屋と思われるところでナミとウソップが二人きりで部屋の中にいた。ウソップは訳がわからぬ様子だったが、ナミは部屋の中を物色し始めた。

 

「ナッ...ナミ⁉︎バレたら殺されちまうかもしんねぇだぞ!」

 

ナミはモリアの机の引き出しから何やらゴーグルの様なモノを取り出し胸の間に隠した。するとウソップが慌てて止めようとした。

 

「大丈夫よ。バレなきゃいいのよ。」

 

「そうだな...。バレなければ何もしていないのは事実だ。バレなければな...。」

 

ナミが盗みなどバレなければないいと言い放つとナミの真後ろにいたのだ。二人はゆっくりとモリアの様子を見て叫んだ。

 

「ヌォォォォッッ!!!!」「ギャァァッッ!!!!」

 

二人はお互いの手を合わせ顔色を青ざめさせている。モリアは両手で耳を塞ぐと口を開いた。

 

「騒ぐな...。欲しいなら許可を得ろ。」

 

「「へ?」」

 

予想外の言葉にキョトンとする二人をよそにモリアは再びわかりやすく言い直した。

 

「やるよ...。ロロノアという男に出会えた礼という事にしよう。部下に向かい入れたいところだが、命を張る程の価値のある一味を抜けるつもりはないだろうからな。」

 

モリアはゾロという男に出会えた事を良く思っており大層気に入っていた。そして部下に引き抜きたかったが、ゾロの決意は本物だったため、仲間に勧誘するだけ無駄だと思ったのだ。

 

「ん?金なら腐る程ある。トレジャーマークぐらいなど取るにたらん...。俺も存在を忘れていたぐらいだ。“右手”のもな。」

 

「「あっ...ありがとうございます!!!!」」

 

モリアは海賊達を狩るついでに宝を根こそぎ奪っているため、金などそこらの国家財産より多く持っているのだ。そのためいち海賊の宝の在り処など興味ないし、大して必要でもないのだ。二人は礼を言うとモリアの気が変わらぬ内に一目散に逃げ出した。

 

「クックック...生意気な女だ。俺の書斎の裏に保管してあった“神の落とし子(エンジェル・ティア)”まで盗んでやがる。ありゃ泥棒としての経験は長ぇはずだ。」

 

神の落とし子(エンジェル・ティア)”とはモリアが民衆に悪政を強いていたとある独裁者気取りの海賊を殺すついでに盗んだ最高級品のダイアである。3億ベリー程の価値はあるらしいが、モリアとしては興味なかったので一応記念として部屋に残してあったのだ。別に失ってもダメージはないため見逃してやったのだ。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

五分後

 

 

 

〜スリラーバーク広間〜

 

 

 

 

 

 

「ナミ...どうだった?見つかった?」

 

酒を飲み交わしている男共を他所にローリング海賊団船長ローラとモリアの部屋から逃げ出したナミがヒソヒソと話していた。

 

「えぇ...でもバレちゃったけど結局モリアがくれたわ。貴重な情報ありがとう。」

 

ナミがモリアの部屋に忍び込んだのはローラから情報を得たからである。ある日、森の中でアブサロムが一つの棺を抱えて城へ向かっている途中にモリアと出会うと、アブサロムが棺の中ならゴーグルのようなモノを取り出したのだ。二人をいち早く見つけすぐ側に隠れていたローラは二人の会話を盗み聞いていると悪名高い伝説の海賊“キャプテン・ジョン”の財宝の在り処を示すトレジャーマークだと知った。そしてモリアが興味を示し『これは自分が預かっておく、他の財宝は金庫にぶち込んでこい』と指示を出していた。そのことをナミに教えたのだ。

 

「くれたの⁉︎じゃあ約束通りに...」

 

「もちろん!...ゾロの“爪”よ。寝てる時に少し削ったけど、気付かれなかったわ。」

 

ナミは小さな小瓶に入った白い小さな爪の欠片をローラへ渡した。これはナミがモリアの財宝についてダメ元で嗅ぎ回っていた時にローラから有益な情報がありそうだったためビブルカードを作る時に必要な爪を取引として要求したのだ。ローラはモリアから説明を受けた時にゾロの男気を耳にし、惚れたのだ。“求婚”の名を持つ彼女だが心から人に惚れた事がなかったのでいつもの調子が出せなくなり、臆病になってしまったのだ。そこで心の用意が出来た時に再会出来るようにこっそり爪を取ってきて欲しいと頼んだのだ。

 

「ありがとうナミ!私達は姉妹分よ!」

 

「えっ...えぇ...。」

 

ローラはゾロの爪の欠片が入った小瓶を受け取るとグラスに酒を注いでナミに渡した。当初ナミはローラを利用しただけのつもりだったが、酒を酌み交わしたことで意気投合し、本当の姉妹のように仲がよくなった。

 

 

 

***

 

 

 

 

〜スリラーバーク医療室〜

 

 

 

 

 

「フォスフォスフォス...この病気の患者はここをこうやって...。」

 

「すげぇな“ドクトル”!どうしてこんな発想ができるんだ⁉︎」

 

ゾンビの改造をする医務室とは別の医務室でホグバックはチョッパーと話をしていた。そして医術書を片手に教えていたのだ。チョッパーは正直で嘘をつけないタイプなので素直にホグバックを褒め称えた。これは自尊心の高いホグバックには心地よいようだった。

 

「そりゃおめぇ天才だからよ。あっ!プリン食うか?」

 

「食うぞ!」

 

ホグバックは胸を誇らしげな顔をし、冷蔵庫に残しておいたプリンをチョッパーにあげようと思った。するとホグバックの使用人ゾンビのシンドリーが二個のプリンを持ってテーブルの前まで来た。

 

「さっさと食えよクソ野郎...。」

 

シンドリーはプリンを投げ置く様にテーブルに置いた。そしてホグバックはその様子に抗議をする様に声をあげた。

 

「ちょっとシンドリーちゃん。口が悪いよ。可愛いん『キメェんだよ。デブ野郎が!!!!』

 

その一言にホグバックは反論できずにテンションをただ下りの中プリンを食べ始めた。ホグバックはシンドリーの影を可愛くお淑やかな女の子の影を入れて欲しかったが、モリアは一般人から影を奪うわけなかった。流石に男の海賊の影を入れるわけにもいかず、止むを得ず女海賊の影を入れたのだ。お淑やかさなどとは無縁だが、第一人称が俺になるよりかはマシだと割り切ってしまったのだ。

 

 

 

***

 

 

 

 

〜次の日〜

 

 

 

<スリラーバーク海岸>

 

 

 

 

「“麦わらの一味”...強くなるがよい。この世(大海賊時代)とは強者の生き残る時代だ。弱き者に人権は与えられず、強き者は全てを手に入れる。貴様らが頂点に達つにはまだまだ弱い...。絶え間なく流れる時と海の中で己の強さを疑わずただ突き進め...。叶わぬのなら己と向き合え...さすれば道は現れるであろう。」

 

モリアは“麦わらの一味”の出航の見送りをしていた。ホグバックの手により傷は完全に塞ぎ、チョッパーにその後の治療を任せたため命に別状はないと判断したため、出航を許可したのだ。そしてモリアは一味にたわむけの言葉を送った。

 

「あぁ...いつか俺達はお前を超えてやる!そして海賊王に俺はなる!!!!」

 

「クックック...好きに生きろ!そしてそれが許される程の強者になりし時、俺に挑みに来い。海賊王としての器に足るかどうかを試してやる。」

 

モリアとルフィが言葉を交わすと船は出航し、やがて準備のできた影を奪われていたローリング海賊団も出航しスリラーバークを出て行った。

 

誰も居なくなった海岸でモリアは新たな七武海の情報と政府の緊急招集の理由を探り、これから何が起きるかを見抜いていた。そして静かに呟いた。

 

「...これから世界を揺るがす“戦争”が起きる。どちらが勝とうとも時代は大きく変わる。その時代の狭間に敗北という味を知った“麦わらの一味”がどう成長するのかが楽しみだ。それより“あの男(白ひげ)”とのリベンジ(再戦)があると思うと...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血が滾る...。」

 




次から頂上戦争編へ行きます。ストロングワールドの話も書くつもりですが、戦争終了時に番外編として書きます。


あとこじつけと御都合主義の件はすみません。作者の勉強不足で原作との辻褄が合わなくなってしまった結果です...


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稼働せし時代の歯車 *〜頂上戦争編〜*

 

 

 

 

 

数日後

 

 

 

〜海軍本部〜

 

 

 

 

モリアは政府に用意された豪華な一人部屋で新聞を読んでいると一面にシャボンディでの大事件が載っていた。ルフィが天竜人を殴り飛ばし人質にして立て籠もったという...するとモリアは笑い始め、新聞を畳んで机に置いた。モリアは世界の均衡の為に世界政府の命に従うが、天竜人は嫌いなのだ。むろんマリージョアをタイガーと共に襲撃したのはこれが理由である。

 

「クックックッ...ルフィが“ヒューマンショップ”で天竜人を殴り飛ばしたのか。つくづく自分に素直である意味傍若無人な男だ...。ヤツは俺の助言など憶えておらぬだろうな。まぁいい...天竜人もヒューマンショップもじきに潰す予定だったから俺としてはどうでもいいことだが...。」

 

 

(その後の“麦わらの一味”はシャボンディ諸島で天竜人の呼んだ海軍大将“黄猿”と衝突。そして一味は全員行方不明となった。手配書と情報が取消されてないことから生きていると推察される。まぁ...くまの能力なら可能だが、思いつく限りの動機がない...。そんな事よりも戦争覚悟で“白ひげ海賊団”の二番隊隊長の公開処刑を行うなど政府は危険な橋を渡るものだな。長年は“白ひげ海賊団”に対して慎重に接していた政府だとは思えん。)

 

 

 

***

 

 

 

 

同日

 

 

 

 

〜アマゾンリリー〜

 

 

 

 

 

 

「ふふふっ…そなたを気に入ったぞ。目的地を言え...船を貸そう。」

 

ルフィはモリアと同じ“王下七武海”の“海賊女帝”ボア・ハンコックへ向けて声をあげた。ルフィはシャボンディ諸島でくまの急襲により、仲間はバラバラとなったのだ。そして天竜人を殴り飛ばした事件を耳にし、ルフィに天竜人の奴隷だと語ったところ惚れたのだ。そしてインペルダウンに収監されたポートガス・D・エースが兄である事をハンコックに話し、インペルダウンまで自分を送ってくれる様に頼んだ結果彼女は了承した。

 

「じゃが...一つ言わねばならぬ事がある。ルフィ...。七武海に妾より遥かに強い男が一人おる。名を“ゲッコー・モリア”という...。」

 

「モリアっ⁉︎」

 

ハンコックの口からモリアというワードが出てきてルフィは声をあげた。ほんの数日前ルフィはモリアに海賊としての格を見せつけられ、更に黄猿、くま、戦桃丸に力の差を思い知らされたばかりだったのだ。

 

「世間ではタイガーの他に主犯がもう一人いたとされている。それがモリアじゃ。当時から七武海だった彼は立場を失うリスクを犯し奴隷達を救う為に尽力したのじゃ。」

 

「...。」

 

ハンコックら奴隷を解放したのがモリアであると知ったルフィは何も言えなかった。ルフィの知るモリアは海賊を地下へ幽閉し、自分の戦力とする男であるのにハンコックにとっては大恩人であったのだ。

 

「妾は戦争にてお主の手伝いをしたいが、フィッシャー・タイガーと同様にモリアには一生かけても返せぬ大恩がある。彼が第一に望むのは世界の安定じゃ。彼は平和のために海軍を滅ぼさぬように白ひげを殺し、兄上を処刑させるじゃろう。妾は彼の障害にはなれぬ。一番良いのはエースをいち早く救い、白ひげがその場から逃げることじゃ。じゃがモリアが白ひげを逃がさん。かつてはモリアは白ひげに僅差なれど敗れた。なれどそれ過去の話...。白ひげは老い、モリアはさらなる鍛錬を積んだ。おそらく今戦えばどうなるかは分からん...

 

つまり妾はバレぬようにお主のサポートをしつつ、七武海として白ひげ海賊団を足留めせねばならん。よいな?妾はお主とモリアの味方じゃ。そなたに過度な肩入れはできん。」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

同日

 

 

 

 

〜インペルダウン Level6〜

 

 

 

 

「わしゃこの戦争を死んでも止めたかった。“白ひげの親父さん”とモリアさんが本気で争えば必ずどちらかが死ぬ!...わしはどちらにも容易く返せぬ恩義がある。あの二人の殺し合いを前にわしはどちらの味方もできん!」

 

“白ひげ”と戦うことを拒否した王下七武海の一人“海侠”のジンベエが世界最強の大監獄“インペルダウン”の最下層で嘆いていた。すると同室の“白ひげ海賊団二番隊隊長”ポートガス・D・エースが口を開いた。

 

「よせよジンベエ...。親父もモリアも分かっているはずだ。ここにいる以上“白ひげ海賊団(俺たち)”側だろ。それにタイガー(恩人)魚人島(故郷)じゃ後者を取ることも...。そして仁義に貫くお前が仁義に背くこともな...。」

 

「...。」

 

エースは嗜める様に言うとジンベエは何も言い返せなくなった。ジンベエはモリアには兄貴分のタイガーを救ってくれた大恩、そして大海賊時代に故郷の魚人島は大いに荒れたが白ひげの縄張りにした事により島は平和になったのだ。この二つの恩を天秤にかけるなら後者に決まっていた。

 

「おいおい...“白ひげ”とモリアがやり合うのかよ!どっちが死んでも面白ぇ!!!!」

 

「俺をこっから出せ!!!!二人の首を取ってやるよ!!!!」

 

同じLevel6内の囚人達がジンベエとエースの会話を盗み聞きすると声をあげ騒ぎ始めた。どうやらここの囚人達はモリアと白ひげに怨みがある様だった。

 

「おめぇらが親父の首を取るだと?」

 

「モリアさんは貴様らの様な輩には負けやせん。政府の命(生け捕り)によって見逃された奴らじゃ相手にならんぞ!」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

同日

 

 

 

 

〜海軍本部〜

 

 

 

ポートガス・D・エースの公開処刑まで、あと6日...。“白ひげ”が監視船を全滅させたことにより“海軍本部”は一層緊張を増し、マリンフォードの港には各地で名を挙げる屈強な海兵達が続々と着港...“正義”の名を持つ全ての戦力が海軍本部に集結していた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜聖地マリージョア〜

 

 

 

警護として居合わせた海兵達が固唾を呑む中既に招集された七武海の海賊達にも戦闘陣営が伝えられるがいずれも手に余る曲者揃い...ただ一つだけ理解できることは彼らが一丸となって戦う事はまず考えられない

 

 

 

 

 

 

 

 



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歴史の序章 1

 

 

 

 

〜海軍本部〜

 

 

 

“正午”

 

 

 

 

「処刑3時間前です。罪人を処刑場前へ送ります‼︎ 」

 

『カツン...カツン...。』

 

手錠を課せられた“二番隊隊長”ポートガス・D・エースは二人の死刑執行人と共に死へと向かう処刑台までへの階段を一歩ずつ登っていく。通路は細くそして暗いため己の足音のみを感じる空間において生と死の狭間にいるエースは弟との過去を思い出していた。

 

 

 

 

***

 

 

 

...いいかルフィ

 

俺たちは絶対にくいのない様に生きるんだ‼︎

 

 

 

うん‼︎

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「止まれ...門を開けるぞ。」

 

執行人はエースを閉じられた門を開く仕掛けを作動させると錆びた金属と重い木製の扉がゆっくりと鈍い音が響き渡った。

 

『ギィ〜〜...。』

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

いつか必ず海へ出て思いのままに生きよう ‼︎

 

 

誰よりも自由に!!!

 

 

 

***

 

 

 

 

海軍本部により招集された名のある海兵達総勢約10万人の精鋭が

 

三日月形の湾頭及び島全体を50隻の軍艦が取り囲み湾岸には無数の銃砲を立ち並ぶ

 

 

戦局のカギを握る5名の曲者達海賊“王下七武海”

 

 

そして広場の最後尾に高くそびえる処刑台には

 

事件の中心人物“白ひげ海賊団”二番隊隊長

 

その眼下で処刑台を軽く守るのは海軍本部“最高戦力”3人の「海軍大将」

 

 

今考え得る限りの正義の力がエース奪還を阻止する為“白ひげ海賊団”を待ち構える

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜海軍本部処刑台〜

 

 

 

「諸君らに話しておく事がある。ポートガス・D・エース...この男がここで死ぬ事についての大きな意味についてだ...。」

 

捕らえられたエースの真横で“海軍元帥”センゴクが総勢10万人の正義の軍隊を前にでんでん虫を手に演説を始めた。

 

「エース...お前の父親の名を言ってみろ。」

 

「俺の親父は“白ひげ”だ...。」

 

「違う!!!!」

 

「違わねぇ!!!!“白ひげ”だけだ!!!!」

 

センゴクがエースに質問をし、答えたが満足のいく回答は得られなかった様だ。すると海兵達はザワザワとし始めるとセンゴクは諦めた様にゆっくりと口を開いた。

 

「当時、我々は目を皿にして必死に探したのだ...。ある島にある男の子供がいるかもしれないというCPの微かな情報とその可能性だけを頼りに生まれてきた子供、生まれて来る子供。そして母親達を隈なく調べたが見つからない...。

 

それもそのはず、お前の出生には母親が命を懸けた母の意地ともいえるトリックがあったのだ‼ ...それは我々の目を...いや、世界の目を欺いた‼ サウスブルーに“バリテラ”という島がある。母親の名は“ポートガス・D・ルージュ”。女は我々の頭にある常識を遥かに超えて子を思う一心で実に20ヶ月もの間、子を腹に宿していたのだ。そしてお前を産むと同時に力付き果てその場で命を落とした。父親の死から一年と三ヶ月を経て、世界最大の悪の血を引いて生まれてきた子供...それがお前だ。知らんわけではあるまい...

 

お前の父親は...

 

 

 

 

 

 

 

“海賊王”ゴールド・ロジャーだ!!!! 」

 

センゴクはポートガス・D・エースの母親、そして出生を語り、海兵、映像でんでん虫により世界へと重大な事実を伝えた。そしてその事実を耳にした全ての者は驚き絶句した

 

「ほぅ...海賊王に息子か...。漸く腑に落ちた。政府としてはそんな害悪因子を始末しときてぇはずだ。」

 

モリアがエースの処刑の意味を理解した。かつて自身の目の前で処刑された海賊王の遺伝子がまたしても目の前で処刑されるという事実を皮肉に思った。

 

「まもなくすれば大海賊時代の頂点に立つ資質を発揮し始める‼︎ だからこそ今日...ここでお前の首を取る事には大きな意味がある...

 

 

 

 

たとえ“白ひげ”との全面戦争になろうともだ!!!!」

 

センゴクが大声をあげ世界最強の海賊と戦うかも知れぬ海兵達を鼓舞し士気をあげさせた。海兵達はセンゴクの目論見通り一斉に10万の雄叫びが島に響き渡った。それを他所に処刑台のセンゴクに慌てながら近づく一人の海兵が現れた。

 

「報告します!“正義の門”が誰の許可なく開いてます‼︎ 動力室とは連絡がつかず‼︎」

 

「何だと⁉︎」

 

センゴクが耳を疑う程の報告を受けると政府の三つの機関を繋ぐ一方的な海流から抜けられ、正義以外の船を封じる“正義の門”がセンゴクの指示なしに開いたのだ。

 

『ゴゴゴゴゴ...』

 

ゆっくりと巨大な正義の門がゆっくりと鈍い音を島に響かせると霧の向こうに微かに多くの髑髏マークを掲げた海賊の艦隊が湾内に侵入しようとしていた。

 

「...なぜ門が開く?裏切り者か侵入者だな...。」

 

モリアが鋭い目で海賊の艦隊を見据えると呟いた。動力室はマリンフォードへある為その考察が自然だった。

 

「来たぞォォーッ‼︎全員戦闘態勢!!!!」

 

やがて海賊船に乗る人物らが“新世界”に名を轟かせる者達にして“白ひげ海賊団”の一員だと理解した。合計43隻の大艦隊を前にするとモリアは呟いた。

 

「目標はあの船長格の半分の死体の入手だな...。」

 

海兵達は“白ひげ”や隊長達の乗る本船を見つける為に忙しなく動き始め海上に目を見張り始めた。すると誰よりも初めにモリアが事態を飲み込んだ。

 

「...ッ⁉︎ 布陣のミスだな...。」

 

モリアの呟きから次第に強者達は海底を見つめ始めた。すると湾内からブクブクと空気が湧きあがると見聞色の覇気に薄い者達も理解し始めた。

 

「そうだったのかあいつら全員‼︎ コーティング船で海底をッ⁉︎」

 

『ザパン!!!!』

 

海が揺れ4つの影が現れるとやがて白いクジラをモチーフにしたデザインの巨大な海賊船が海上に勢いよく現れた。

 

「うわァァァッッッ!!!!“モビーディック号”が来たァァァッッッ!!!!」

 

「“白ひげ”...。」

 

 

『カツン...カツン...カツン...。』

 

14名の隊長達の乗るモビーディック号の本船の奥から巨大な金属音が聞こえてきた。そして次第に豪傑と言えんばかりの巨大で強靭な肉体、そして手に持つ太く長い薙刀、更に“白ひげ”の名に相応しい三日月形の白い髭の男が現れた。

 

 

「何十年ぶりだ?センゴク...

 

 

 

 

俺の愛する息子は無事なんだろうな。

 

ちょっと待ってな...エース。」

 

「オヤジィ!!!!」

 




長い会話文は以前私の書いた作品から一部の文をコピペ後に修正したので著作権とかは大丈夫なはずです。


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戦場の序章 2


連続投稿行きやす


 

 

 

 

「こうも急接近されるとは...。」

 

「...。」

 

センゴクが作戦で白ひげ海賊団に遅れを取ると白ひげは槍を船に突き刺し両腕を交差して構え、そのまま大気にぶつけると大気がパキパキとヒビ割れた。するとマリンフォードの両側の海が盛り上がった。海兵達がその様子に怯むと処刑台の上に座るエースが声をあげた。

 

「俺はみんなの忠告を無視して飛び出したのに...

 

なんで見捨ててくれなかったんだよォ!!!!俺の身勝手でこうなっちまったのに‼ 」

 

エースが仲間へ向けて大声をあげると白ひげは静かにその返事を返した。

 

「いや...俺は行けと言ったハズだぜ、息子よ。」

 

「ウソつけ!!!!バカ言ってんじゃねぇよ!! あんたがあの時止めたのに俺は...」

 

「俺は行けと言った...そうだろマルコ。」

 

「あぁ、俺も聞いてたよい!! この海じゃ、誰でも知ってるはずだ...。」

 

エースはボスである白ひげの忠告を無視し、鉄の掟を破って仲間を殺した自分の部下へのケジメをつける為に海へ繰り出したのだ。そして一番隊隊長のマルコも白ひげの言う通りだと答えた。

 

「俺たちの家族に手ぇ出したらどうなるかぐらいはな!!!!」

 

「待ってろエース‼ 今助けるぞォォッ!!!!」

 

マルコの言葉を皮切りに次々と白ひげ海賊団は雄叫びをあげ始め海軍本部へと攻め入ろうとした。するとモリアが“白ひげ海賊団”の一丸となっている様子に気圧されている海兵達を見て口を開いた。

 

「クックック...グラグラの実の能力者”白ひげ“エドワード・ニューゲート。世界最強の男だッ ‼︎ 悪の頂点に立つ男だ!!!!

 

 

海兵よ!!!!臆すな!! 汝等の使命を思い出せ!!!!

 

汝等の犠牲と健闘により世界の均衡は守られ悪は淘汰される!!!!

 

敵は正面にいる!!!!さぁ全力で叩き潰せ!!!!」

 

モリアの声がマリンフォードへ響き渡ると白ひげの起こした海震と白ひげ海賊団の気迫に押されていた海兵達は先ほどは劣らぬ程の雄叫びをあげ返した。上級階級の海兵や一部の過激派の海兵達は不快そうな顔をしたが、それ以外の者達はモリアの鼓舞により士気を取り戻した。その様子を見て処刑台の眼下で待機している三大将の内の一人の“赤犬”が不快そうな声を漏らした。

 

「ふん...こいつらは海兵失格じゃの。モリアこそ悪である事を忘れちょる。」

 

海賊排斥主義の中でも随一の過激派である赤犬はモリアを見下す様に睨みつけると逆に穏健派の“青雉”が口を開いた。

 

「別にいいんじゃねぇの?あいつはほぼ海兵みたいなモンだろ。」

 

海軍(あっしら)としては士気があがる事に越したことはないからねぇ...。」

 

青雉がモリアを擁護する様な発言をすると同じく大将の“黄猿”も士気が上がったからと寛容な態度を示すと赤犬は納得はせぬモノの口を紡いだ。すると突然ズズズズという地鳴りが響いてきた。するとルフィの祖父にしてゴールド・ロジャーを追い詰めた伝説の海兵“ガープ”が口を開いた。

 

「さぁ...奴の仕掛けた海震が津波に変わってやってくる。」

 

すると遠くから二つの巨大な津波がマリンフォードを挟み撃ちにする様に襲いかからんと距離を詰めていた。

 

「勢力で上回ろうが勝ちとタカをくくるなよ‼︎ 最後を迎えるのは我々かも知れんのだ‼︎

 

あの男は...世界を滅ぼす力を持っているんだ!!!!」

 

 

 

***

 

 

 

 

攻め入るは白ヒゲ率いる新世界の海賊47隻の海賊艦隊

 

迎え撃つは政府の二大勢力「海軍本部」「王下七武海」

 

誰が勝ち...誰が負けても時代が変わる‼︎‼︎

 

 




すみません...アレです。短いのは配分ミスです。


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小手調べ

 

 

 

 

 

 

 

やがて白ひげの起こした巨大な二つの津波がマリンフォード一体へ襲いにかかると三大将の一人“青雉”が動いた。マリンフォードの中央へ跳躍すると両手を津波へ向けて左右に突き出した

 

「“氷河時代(アイスエイジ)“ !!!!」

 

両手から一本の氷の棒が放出され、津波へ命中すると一気に凍りつくと、まるで彫刻品へと変わり動きを止めた。そのまま白ひげへ向けて攻撃を仕掛けた。

 

「“両棘矛(パルチザン)”。」

 

青雉は四本の矛を白ひげへ向けて放つと白ひげは左腕を振るい大気をヒビ割ると矛は青雉諸共コナゴナにした。青雉は『あらら...』とつぶやくと海へ向けて落ちた。着水寸前に実体化し、凍らせて作った足場に手をおいてマリンフォード湾内の海を全て凍らせた。

 

船の動きを封じられると白ひげ海賊団はいい足場ができたとして次々と船から飛び降りてエースの処刑台へ向けて走り出した。その様子を見た海軍の中将達が次々と氷へと降りた

 

「本船の連中は“白ひげ”とマルコを除いて前線へと向かうか...。恐らく“赤犬”の攻撃で氷を溶かす手筈のはずだが、海兵の犠牲は少ない方がいい...。仕掛けるか...。」

 

モリアは右手に影を纏わせ天へと突き出し影を渦巻かせながら昇らせた。“白ひげ海賊団”と海軍は圧倒的強者たるモリアが動いたため注目を集めた。やがて影が天へと到達すると白ひげ海賊団側を覆いきる程の黒き雨雲が現れ、日光を遮り曇りと化した。

 

「“黒鉄雨(ダークフォール)”」

 

天から武装色の硬化をさせた万を優に超える黒き鉄の雨が白ひげ海賊団を襲いかかった。海賊の身体など容易く貫通し、青雉の張った氷を次々と貫き海へ触れると勢いが弱体化した。家族が次々と倒れていく様子を見て薙刀を細かに動かして防いでいた白ひげは薙刀を力強く掴むと素早く先端に白い光を覆うとそのまま天へ向けて大気をヒビ割った。

 

すると天が真っ二つに裂け、その隙間からは空に青空が差し込んだ。やがて雲が晴れると“白ひげ”はモリアを見据えた。

 

「グララララ...おめぇの雨なんざ傘も必要ねぇ...だが相変わらず生意気な小僧だ。」

 

白ひげがモリアの雨を嘲笑するとモリアが軽く鼻を鳴らすと頭を本の少し仰け反らせ見下す様に口を開いた。

 

「ほんの腕試しに足る程度か...。だが貴様が薙刀を振えぬ程老いたかどうかが知れた...。」

 

すると二人はお互いの皮肉を通わすと同時にニヤッと笑った。白ひげがモリアの黒雨を吹き飛ばした事により活気づいた白ひげ海賊団はエース奪還へ向けて攻め込んだ。

 

 

 

 

***

 

 

 

海軍side

 

 

 

 

 

「フフフッ何だやんのかお前...。」

 

何故か姿の見えぬ“黒ひげ”、そして戦争に反対してインペルダウンへ収監されたジンベエを除いた5名の七武海が戦況を伺う中、“鷹の目”ミホークが背中に巨大な黒刀を抜いた。

 

「推し量るだけだ...近くに見える。あの男と我々の本当の距離を...。」

 

ミホークは剣を縦に一閃振るうと斬撃が白ひげへ向けて飛ばした。すると一人のガタイのいい男が斬撃の前へと飛び出した。少しずつ押されはするモノのやがて天へ向けて剣の軌道を変えた。

 

「止めたッ‼︎ 世界一の斬撃を!!!!。」

 

「三番隊隊長“ダイヤモンド”ジョズ ‼︎」

 

海兵かそう叫び土煙が晴れると身体の半分をダイアにした男が現れた。白ひげ側の歓声が上がると突然天に眩いばかりの光が現れた

 

「“八尺瓊曲玉”...」

 

「“黄猿”だッ!!!!」

 

黄猿が現れ両手から無数の光の玉を白ひげへと放った。すると白ひげは呑気に声をあげた

 

「おいおい...眩しいじゃねぇか...。」

 

白ひげへ向けて光の弾丸が次々と迫り来ると青い炎の塊が素早く現れ悉く防いだ。

 

「大将の攻撃を止めたッ!!!!」

 

「いきなり“キング”は取れねえだろうよい。」

 

“白ひげ海賊団”一番隊隊長“不死鳥”マルコが黄猿へそう言い放った。すると黄猿はのんびりとした口調で返事をした。

 

「コワイねぇ〜...“白ひげ海賊団”...。“ロギア”より更に希少...“ゾオン系幻獣種”...。」

 

黄猿は再び光の弾丸を放つとマルコは全身を不死鳥へと変化し突っ込んで黄猿との間合いを詰めた。そして身体のみを人間に戻し覇気を含ませた脚で黄猿を蹴りつけた。すると黄猿は勢いを殺しきれずに光となって地面へ激突した。だが無傷のまま出てくると上を向いて声をかけた。

 

「巨人部隊...空も注意しなよ〜。」

 

合計8名の巨人族の海兵達が返事をすると突然“ジョズ”が氷となった地面に手を突っ込みながら声をあげた。

 

「お前ら!下がってろ...。」

 

力尽くで氷塊をくり抜くと巨人族へ向けて投げつけた。氷塊は巨人族を遥かに上回る大きさであったため、モリアは感嘆の声を漏らした。

 

「ほぅ...かなりのパワー。だが氷遊びなら他でやれ...ッ!」

 

モリアが影で氷で飲み込んで投げ返そうかと思ったが、背後で気配を察知したため振り返ると座っていた赤犬が立ち上がっていた。

 

「まったくわしらが出払ったら誰がここを守るんじゃ...。」

 

右腕からボコボコとマグマが湧きあがると構えて巨大な氷塊へ向けて放った。

 

「“大噴火”」

 

巨大な氷塊は赤犬のマグマがぶつかる事によって全てが蒸発した。そしてそのまま隕石の流星群の様に次々とマグマの塊が白ひげ海賊団へと襲いかかった。白ひげの本船の一隻が引火し燃え盛り、更にモビーディック号の先端で仁王立ちをしている白ひげの元へと向かうと薙刀で軽く刺し、燃え盛るマグマの塊を息で履いて消した。

 

「誕生ケーキにでも灯してやがれマグマ小僧...。」

 

「フフフ...派手な葬式は嫌いか白ひげ...。」

 

 

 



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相反する二人の王 1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行けぇリトルオーズJr.!!!」

 

巨大な包丁のような刀を手に持った巨人が前線へとやって来た。普通の巨人の倍以上の巨大に海兵側の巨人は初めて人を見上げる経験を味わった。

 

「“国引きオーズ”の子孫か...。ヤツに相応しい影がなく冷凍保存されたままだが、あって損はあるまい...。」

 

モリアの持つ死体の中で最強クラスの逸物だが、覇気を司る影がオーズに相応しいモノがないため冷凍保存してあるのだ。モリアとしては最低でも強靭な肉体を引き立たせるために武装色を極めた者以外影にするつもりはないため、中々ゾンビにできぬのが現状であった。

 

「エースぐんは優じいんだ絶だいに死なせねぇ...。」

 

オーズは舌足らずの口調でエースを助けようと躍起になっていた。そして海軍の軍艦一隻を湾内でひき回し突破口を開こうとした。

 

「湾内の侵入を許すな!!!!」

 

巨人族の海兵達がオーズへ襲いかかるが全く歯が立たないようだった。するとくまが両手の肉球で空気を弾き圧縮し始めた。そしてオーズへ向けて放った。

 

「“熊の衝撃(ウルススショック)”。」

 

ゆっくりと肉球型の空気砲がオーズの腹へ命中すると大気が弾け飛び内臓に爆発的なダメージを与えた。オーズは意識を失いかける程の衝撃を辛うじて耐えたが頭だけでなく身体中から大量の血が流れた。その衝撃で落ちた藁の傘を見た。これはエースが太陽に近いからと心配したエースが編んでくれたのだ。

 

「ハァ...ハァ...せめて七武海の一人だけでも。」

 

「あ?」

 

オーズはドフラミンゴへ狙いを済ませると雄叫びをあげながら拳を振り下ろした。圧倒的なパワーにより七武海の足場は崩れたがその程度の攻撃を食らう七武海ではなく、地面へ降りた。そしてドフラミンゴは高笑いをしながら糸の力で雲へ括り付けて空を飛んだ。

 

「面白ェ!!! フッフッフッフッフッ!!!!」

 

ドフラミンゴが地面へ舞い降りるとオーズの右脚が糸により切り裂かれ宙を舞った。その様子を見てモリアはつぶやいた。

 

「斬ったか...まぁいい...。」

 

モリアはパッと突き出した拳を掴む様に握り、拳を上向けにして人差し指を突き出し、上向きへスッと小さく振ると地面の氷から影が突き抜けてきてオーズの急所辺りを貫いた。これは先ほど海底に沈んだ雨の影を固めて操作した。モリアは海水にこの影を忍ばせ“いざ”という時の“影法師”に使用するつもりだったがこれ以上死体を傷つけぬ様に攻撃に移る事にしたのだ。

 

能力者は直接海や海楼石に触れれば力が抜け能力は使用できなくなる。ただモリアの“カゲカゲの実”を含むパラミシアの強みは一部例外が存在し、パラミシア(ロギアも含まれる)の手から離れた攻撃に実体が含まれないという事だ。これは覇気で攻撃しようとも接近戦と中距離のロギアと違い実体を捉えられない。つまり遠距離からの攻撃に優れているのだ。むろん実体でない以上海水面での攻撃が可能である。もちろん海である以上弱体化はするモノのモリア本体が能力が使えなくなるわけでなく、直接触れない為無効化ではないのだ。

 

「オーズ...。」

 

白ひげが手を伸ばせばエースにギリギリ届かぬ位置で倒れたオーズを見てつぶやいた。

 

「隙を見せたな白ひげ!!!悲しんでる暇はねぇぞ!!!!」

 

斧を持った巨人族のロンズ中将が白ひげへ襲いかかった。斧を振り降ろすと白ひげは軽く振動を起こし砕いた。そして体勢を崩したロンズの頭を掴み直接振動を叩き込んだ。気絶したロンズ中将を力任せに投げ飛ばすと地面に無様に倒れた。

 

「オーズを踏み越えて進め!!!!」

 

突破口を開いたオーズの犠牲を無駄にしないためにも白ひげは部下達を鼓舞した。白ひげ海賊団はうっすら涙を浮かべる者をいる中オーズを倒した七武海へ向けて走り出した。するとモリアは面倒くさそうに雑兵の進撃を見据えると未だにモビーディックの先端に仁王立ちしている白ひげを見てニャッと笑った

 

「そろそろ出るか...。」

 

モリアは跼み氷の大地に手を置くと虚無化した細い影を入れて氷の中を素早く伝せる。そしてモビーディックの真下まで来ると実体化し、真上に立つ白ひげへ向けて縦に貫こうとした。白ひげは攻撃の気配を察知し、後ろへタッと引くと先程まで立っていた所から影の槍が地面を割ってモビーディックの先端を貫かせ、そして影の槍は少し進んだ所でピタッと止まった。

 

「“影法師(ドッペルマン)”...そう暴れてくれるなよ...。」

 

影の槍がモリアに一瞬で変化するとモビーディックの先端で相反する二人の王が静かに向かい合うと両軍は自分達の戦闘を忘れただ二人の戦闘を見守った。

 

「グララララ...。かつて俺の首を取りに単身で乗り込んできた男によく似ている。おめぇの顔を見ると傷が疼いてしかたねぇ...。」

 

かつてのモリアと今のモリアの変わり様を嘲ると白ひげは胸の無数の比較的小さな斬り傷がピクッと微かに疼いた。するとモリアは嘲る様に白ひげを見据えた。

 

当時(11年前)とは実力、思想が共に異なるぞ。かつては貴様を殺し“頂点に立つ事で均衡そのモノを消滅させるべき”と考えていたが、今では“俺が支配するのではなく、支えるべき”だと悟っただけに過ぎん。」

 

 




白ひげの胸の上にある無数の切り傷はアニメの白ひげが中心であるいて次第に仲間が増えていくシーンで傷も次第に増えていき、胸の深い傷より後にできていた様だったのでモリアさんがやったという設定にしました。

次の話から過去編行きます


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最強との過去 1

 

 

 

 

11年前(モリアが記憶を失って3年後)

 

 

 

 

 

〜レニス島〜

 

 

 

 

 

「貴様らが“白ひげ海賊団”だな...。」

 

記憶を失って3年たったモリアは白ひげ海賊団の拠点を見つけだし、単身で現れた。

 

「何だてめ...モッ...!モリ...『バタン...。』

 

否定しなかった事から本物であると突き止めたモリアが覇王色を剥き出しにして歩き始めるとモリアを止めようと迫り来る海賊達が覇王色の間合いに差し掛かると次々と倒れていく。

 

「貴様らでは俺を捉えられぬ...。」

 

モリアがどんどん先へ進むと前方からマルコを横に連れた“白ひげ”が薙刀を片手で持ち地面を突きながら歩いてきた。来襲者が七武海でも名のある方の男だと理解してもなお王者として余裕の表情で笑った。

 

「グラララララ...。おめぇ...七武海の影小僧じゃねぇか...俺に挑みにでも来たか?」

 

「愚問だな...挑むのではない...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺しに来たのだ。」

 

モリアがそう言い放つと硬化した二人の拳がぶつかり合うと二人の拳の間の大気に亀裂が入り天が割れた。

 

二人は互いの力量を感じると互いに間合いを取るとモリアの腕は痛みでビリビリと痺れていたが白ひげは何ともない様だった。おそらくモリアは肉体で上回り、白ひげは覇気で上回った。その二つを差し引いた結果モリアの方が劣っていると理解しつぶやいた。

 

「やはり持っていないわけないか...。」

 

「グララララ...“王の資質”。生意気な...。」

 

“白ひげ”は世界最強の海賊。そしてこの“新世界”では覇王色の覇気を持つ男はざらにいる。海賊の頂点に立つ男が王の資質を持たぬわけがなかった。

 

「貴様が海賊の頂点と呼ばるる男...。貴様に勝てば均衡は崩れはするものの、俺が頂点に立つ器と強さがあるという事に等しい...

 

 

 

 

故に喧嘩を売らせて頂いた。」

 

「グララララ...おめぇみてぇなハナッタレがこの俺に勝てるとでも思ってんのか?」

 

「二度言わせるな。勝つ気はない...殺すのだ。」

 

白ひげは薙刀を振るうがモリアは軽々躱し、間合いを詰めた所で武装色の覇気で白ひげの腹を殴ろうとすると白ひげは空いている右手で殴り返してモリアを軽く吹き飛ばした。

 

モリアは指に影を纏い地面を削ってブレーキをかけて勢いを殺すと白ひげは目の前におり、薙刀でモリアを真上から叩き落とす様に振り落とした。すると激しい土煙が舞うと側にいる部下達は歓声をあげた。

 

「まだだ...。この程度でやられる様なタマじゃねぇ。」

 

“白ひげ”はまだモリアが薙刀で叩き潰す程度では倒せぬことを理解していた。そして土煙が晴れると右手で薙刀を力任せに掴んでいるのが見えた。

 

「貴様も俺を過小評価しておるがな...。」

 

モリアはグィッと引き薙刀を自分の身体に引き寄せると自分の左脚を武装色で硬化し、真上に蹴り上げると薙刀の先端の刃のついた棒は折れ、宙をクルクルと舞い地面へ突き刺さった。

 

白ひげの武器を機能停止にさせた瞬間モリアはほんの少しだけ油断をした。その刹那に白ひげはモリアの顔を右手で掴むと力任せに地面に叩きつけ、右手を白い光で覆うと地面に亀裂が入り土煙が激しく舞った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“影鎧(ブラックローブ)”...。」

 

 




ちなみに白ひげは50〜60代で身体能力は落ちていますので全盛期ではありません。


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ダークサイド

 

 

 

 

 

 

 

地面に叩きつけられたモリアの全身が薄く黒い煙が湯気の様に立ち昇っていた。そしてモリアはゆっくりと立ち上がると唯一残された顔は無傷で土煙の汚れしか付いていなかった

 

 

(もう“影法師(ドッペルマン)”は使えぬな...。)

 

 

この技は“影法師(ドッペルマン)”の強度を鎧として全身に纏い更に武装色を二重で覆う。故に強力で鉄壁の鎧と化す。この技は“常闇狭霧”と対になるモノで“常闇狭霧”は『自分より武装色の劣る者』が対象であるがこの技は『対強者用及び覇気の力量が不明な強者』に使用するものである。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜3時間後〜

 

 

 

 

 

「ハァ...ハァ...これが最強か...。俺の実力不足が手に取るようにわかる。」

 

頭から血を流しつつも影の鎧は破壊されていなかった。白ひげの能力は“振動”を与えることでダメージを与えられる。その振動に武装色を織り交ぜる事により爆発的な破壊力を誇るのだ。振動とはどこまでの突き抜けて全身にダメージが響き渡るためモリアの影の鎧ではある程度しか効果がなかった。仮に“白ひげ”の覇気よりモリアの覇気が上回っていれば勝機は十分にあった。

 

「グララララ...。この海(新世界)でもおめぇの強さはかなりのもんだ。」

 

微かな汗と目に疲れた様子の見える白ひげはここまでモリアがやるとは思ってもみなかったのだ。だがモリアの顔は冷たく淡々とした口調で語りかけた。

 

「なぜそう呑気でいられる...。」

 

「あん?」

 

モリアの情緒の突然の変化に白ひげは聞き返した。言葉の意味がすぐに理解することができなかったのだ。

 

「わからぬのか?なぜゴールド・ロジャーの残した椅子につかぬ...。」

 

「...。」

 

モリアはこの時代の頂点に君臨する力がないと理解し、白ひげに問いかけた。その気になれば“海賊王”になれるのに白ひげはそれを望んでいなかった事に対して疑問と怒りを抱いていたのだ。

 

「なぜ貴様はそれ程の力がありながら貴様は王座につかん!!約束された地位でありながら!!貴様がその座に就くことでこの海が安定することを理解しておきながら!! どうして王にならぬ!!!!」

 

モリアは白ひげの様子に感極まり大声をあげた。彼が“白ひげ”を殺し頂点になる事を望んだ理由は世界の安定の為である。ロジャーの処刑後世界の海賊達が“ひとつなぎの財宝(ワンピース)”を求めて海へと飛び出した。ロジャーの死後、次期海賊王と呼ばれていた“白ひげ”は“ひとつなぎの財宝(ワンピース)”を探さなかったのだ。その結果海賊達が世界で略奪、殺人、誘拐などの狼藉を働き罪なき人々の平安を侵し続けた。

 

それ故モリアは“白ひげ”を始末し、自分が“ひとつなぎの財宝(ワンピース)”を見つけ海賊王になる事によって海賊達の勢いを抑え込もうとしたのだ。

 

 

 

 

「...俺ァ“ひとつなぎの財宝(ワンピース)”なんぞに興味がねぇんだよ。」

 

 

 

“白ひげ”の一言はモリアを激昂させた。彼の命と世界の均衡をかけた決意を“興味がない”...。ただそれだけの事で彼の想いを踏みにじられたのだ。

 

「そうではない!!!!強者とは常に強者以外の全ての状況を揺るがす !! 強者の頂点たるお前の一声で海賊から足を洗う連中がどれ程いるかを知らぬわけではあるまい!!!!お前の匙加減一つで多くの人々の命が救われるのだぞ!!!!」

 

モリアは興味がある、ないではなく海賊という害意の権化から市民という存在を守る為に海賊王にならねばならぬと説いた。

 

「この俺に意見するたァ...生意気な小僧だ...。まだ暴れたきゃこの海で俺の名を背負って好きなだけ暴れてみろ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の息子になれ...。」

 

“白ひげ”はニヤッと笑いモリアの元へ歩いたそして手を差し伸べた。ゲッコー・モリアという男を家族にしたいと心から思ったのだ。だがその勧誘もまた彼の神経を逆撫でした

 

「ふざけるなァァッッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが敗者に人権は非ず...

従わせたいのなら従わせろ...殺すなら殺せ...

 

俺はこれから起こり得る現実の全てを受け入れる覚悟などとうにできてる。」

 

モリアは影の鎧を解いた。彼は“強者は全てを肯定できる”と考える男でそれを持論として振舞ってきた。海賊を狩ってゾンビにするもの強者の権利、海賊から影を奪って島から出さぬのも強者の権利。

 

無論その持論は己を例外でないことは初めてその理を悟った時から、己がいつか敗者としてどの様な現実が待ち構えていようと“耐え抜く”か“抗い続ける”かの覚悟はできていた。たがモリアは“白ひげ”の仲間になる気は微塵もなく戦闘で敗れた以上抗うだけ見苦しいと考え死を受け入れるつもりだった。

 

彼の矜持を前にした“白ひげ”は更にモリアという男をいたく気に入った。そして満足気に呟いた。

 

「くそ生意気な...。」

 

 

“白ひげ”がそう呟き終わると同時にモリアの耳に悪魔のような高い声をした男の声が響いていた。

 

 

(キシシシシシ...なんてザマだ。お前は無様で惨めな雑魚だ。)

 

 

モリアが一切の気配の感じぬ男の声を耳にして周囲を勢いよく見回した。だがその男らしき男は見当たらない。

 

「誰だお前は⁉︎どこにいる⁉︎」

 

「お前は何を言ってやがる?」

 

モリアの様子に“白ひげ”は理解できずに声をかけた。どうやら自分だけにしか聞こえぬ声のようだった。

 

 

(馬鹿だな...俺は“お前”だ。白ひげは俺にやらせろ。お前みたいな雑魚じゃ勝てねぇ...。)

 

 

「俺だとッ⁉︎何を言ってやがる!」

 

 

(キシシシシシシ!馬鹿な野郎だ。だったら無理矢理奪えば済む話だ。俺に全てを寄越せ。)

 

 

謎の男の声がモリアの脳内へ響き渡ると今まで感じたことのない程の頭痛が彼を襲った。モリアが突然頭を抑え込んでもがき苦しむ様子を見て“白ひげ”の後ろにいたマルコが仲間に船医を呼ぶ様に指示を出した。

 

「うオォォォォッッ...ック!クソがッ!」

 

 

(キシシシシ...。早く楽になれ。俺に全てを委ねろ。全てを終わらせてやる。)

 

 

「...。」

 

「大丈夫か?」

 

突然大人しくなったモリアに“白ひげ”が問いかけるとモリアはゆっくりと顔をあげた。モリアは狂気的な程歪んだ笑みを浮かべ、悪魔の如き恐ろしく冷たく高い声を上げた。

 

「キシシシ...キィッシッシッシッシ!!!!漸く手に入れた!!!! 感謝するぜ白ひげェ!!!!」

 

 





〜後日〜


この投稿後かなり不評でしたが、ちゃんと次の話で作者の仕込んだ設定が発動します。大半の伏線を回収できますのであと一話だけでもご覧ください。


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精神の攻防

原作モリアのダークサイドは不評でしたが、ちゃんとこの話で取り返せると思います。白ひげの格が落ちたとお考えの人は申し訳ありません。作者の作り込みの甘さです。

一見無駄に見える記憶の消去や覇気設定、カイドウ回避の影響などが漸く現れます。


 

 

 

 

 

 

ゲッコー・モリアは憑依者である。本来原作のモリアは確かに存在し、原作としての役割を担っていたが神の都合により彼本来の人格と肉体は奪われた。人格は表面上消えはしたものの憑依者の意識の及ばぬ奥底から肉体の主導権を奪い返そうと虎視眈々と狙っていた。

 

だが原作のモリアに誤算が二つ起きた。一つは彼の精神が全くブレなかった事だ。肉体の自由はない以上精神に影響を与える事以外に肉体を取り戻す術はなかったのだ。原作モリアは知らぬが彼には原作知識があり、未来を知るという事は大いなる自信に繋がった。また好きな漫画だったONE PIECEの世界で精神など弱まるはずなかった。

 

そしてもう一つは彼の覇気が自分の覇気を遥かに上回っていた事だ。覇気とは“疑わない力”。上記した精神力で彼は覇気の腕前をぐんぐん上昇させた。覇気とは精神力であるため原作モリアの覇気を含む精神力では敵わなかったのだ。

 

 

 

彼は半ば諦めつつも決して己の肉体を取り戻すことを諦めなかった。未来を知る憑依者は記憶を消し、そして強者の白ひげに挑むと実力の差を見せつけられて敗れた憑依者は自分の力を信じられなくなりつつあった。即ち“覇気が弱まってきた”のだ。

 

 

その隙を原作のモリアは決して逃さなかった。そして精神力で彼を上回ると22年もの長い月日の経てゲッコー・モリアは憑依者から肉体を取り戻す事に成功した。

 

 

「キシシシ...何て覇気だ...何て肉体だ。あり得ねぇほどの力が湧き上がってくる!!!!」

 

原作のモリアは己の力を実感し、酔い痴れた。憑依者の肉体と精神を支配下に置いた以上、鍛え抜かれた肉体と弱まった覇気を手に入れた。そして原作ではカイドウに敗れ失われたはずのモリア本来の覇気と弱まりつつあった憑依者の覇気...この二つを完全に支配下に置いたモリアがもはや敵などいないと過信するのは極々自然な事であった。

 

「キシシシ...手始めに“白ひげ海賊団”の殲滅に移ろう...。」

 

モリアがそう言い放つと“白ひげ”、マルコらの顔色が一瞬で変わった。だが憑依モリアを完全に抑え込む事が出来なかったのか、頭に声が響いてきた。

 

 

(ふざけるな...我が肉体をどうする気なのだ⁉︎)

 

 

「黙れ!お前が俺の肉体を奪ったんだ!!!」

 

 

(俺は奪ってなどいない!!!!早く返せ!!!!)

 

 

「うるせぇ野郎だ....。まぁいい。あとでゆっくりと精神だけでなく人格をも俺の支配下に置いてやる...。」

 

記憶を失った事により己が憑依者である事を忘れた憑依モリアと肉体を奪われた原作モリアの話が噛み合うわけもなく言い合ったが、原作モリアは彼を後回しにする事にした。

 

 

「よくわからねぇが...ほっとくわけにもいかねぇな。」

 

“白ひげ”は右手に光を覆うと原作モリアへ向けて大気を割り覇気を含ませた振動を与えた。モリアは口元を歪めて軽く呟いた。

 

「“影法師(ドッペルマン)”」

 

白ひげの目の前から一瞬で影の塊と化した。背後に気配を感じて振り向くが遅かった。モリアは右手に強力な武装色で硬化をして後ろから白ひげの脇腹殴りつけた。白ひげの脇腹にモリアの拳がめり込むと強靭な身体が浮くほどの威力があった。

 

「キィッシッシッシッシ!!!!肉体も覇気も能力もあり得ねぇ程研ぎ澄まされてやがる!!!俺こそが海賊王に相応しい男だ!!!!」

 

原作モリアは己の最盛期をビシビシと感じた。目の前の最強を完璧に出し抜く事を容易く行えたのだ。

 

ダークサイド(こっち)に変わった瞬間...覇気の精度が跳ね上がりやがった。二重人格か?」

 

白ひげは知らぬが、原作モリアは本来カイドウへ挑んで敗れ覇気を失っていた。だがそれは皮肉な事に憑依モリアの記憶によって回避されたのだ。原作モリアは失う事のなくなった覇気に憑依モリアの才能の輝く覇気、更に憑依モリアに鍛えあげられた能力を手にした原作モリアは世界最強と呼ぶ事に過言はないようだった。

 

「座る気のねぇ王座なら俺に寄越せ...。“影編交刃(シャドウクロス)”。」

 

原作モリアは憑依モリアの原作知識や己の記憶により編み出した数々の技の一つを放った。この技は両斜めからの影の一閃を互いに細々と無数に交差させたもので一本一本に異常な程強力な武装色が編み込ませてある。初めて使用する技でありながらモリアという人格に染み込まれた技を使うなど実に容易い事だった。

 

白ひげは右手を硬化させ白い光で覆い、モリアの放った交差された影の糸々を殴り壊そうとした。だがモリアの放った影は振動を“すり抜けた”。予めこの技は虚無化させておき、対象に触れる瞬間よりごく僅か前に実体化させるのだ。つまりこの技は無傷で破壊不可避な技であった。

 

白ひげは硬化した右手から影が斬り裂いたが一歩も引かず、逆に右手で掴んで影の糸々の勢いを殺した。そして左手を硬化して再び光で覆い攻撃を加えると実体化された影を粉々に破壊した。

 

だが破片の一部が飛び散り白ひげの胸の上を数個が深く抉り、掴んだ右手からはポタポタと血が滴り落ちた。

 

「キシシシ...防がれたのは想定外だが、血を流すのは何時ぶりだ?...ッ⁉︎クソッ!!!!雑魚の癖に抵抗しやがって!!!!」

 

原作モリアが強さの余韻に浸っていると再び頭の中で憑依モリアの声が響いてくると激しい頭痛がした。どうやら精神力を取り戻した憑依モリアが暴れ出したようだ。

 

 

(さっさと俺の肉体を返せ!!!!俺にはやらねばならぬ事がある!!!!)

 

 

「仲間なんざくだらねぇ...。今の俺の力があれば世界を手に入れられる。海賊ごっこならおめぇのお花畑(頭ん中)でやってろ!!!!ようやく取り返した肉体をやすやす明け渡すか!!!!」

 

原作モリアは頭を押さえ込んで頭痛に耐えるが、憑依モリアは大人しくなどならなかった。全てを失う寸前に思い出したのだ。自分のやるべきこと(世界平和)への想いと自分を慕ってくれる部下や国民がいたことを...

 

 

(俺にはやるべき使命と大切な仲間がいる!!!!得体の知れぬ貴様などに肉体を奪われてたまるかッ!!!!俺は決して屈さぬッッッ!!!!)

 

 

モリアは自然と身体を仰け反らせ途端に静かになると周囲の海賊達はモリアの様子を伺おうとジッと注目した。

 

 

「...。」

 

 

(覚えていろ!!!!俺はいつどの時もおめぇ狙い続ける!!!!そしておめぇの大事なモンを全てぶっ壊してやる!!!!)

 

 

「...悪ぃな。邪魔が入っちま...『バタン』

 

原作モリアへ打ち勝った憑依モリアはつぶやき終わる前に気を失いゆっくりと前に倒れた。そして白ひげは彼から圧倒的なオーラを感じると機嫌良さげに口を開いた。

 

「グラララ...弱まりかけてやがった奴本来の覇気が逆に“上がってやがる”。マルコ...奴を医務室まで運んでやんな。」

 

これが後にゲッコー・モリアの伝説の一つとして語り継がれる“レニス島”の決闘である。

 

世界最強と呼ばれる“白ひげ海賊団”に単身で乗り込み“白ひげ”エドワード・ニューゲートに深傷を負わせた二人目の男として世界に名を轟かせることとなった。

 

 




わかりづらいところがありますので質問など遠慮なくしてください。

因みにダークサイドを出した理由は本来“カゲカゲの実”は闇属性で、闇堕ちや裏人格などのセオリーがあったので採用しようと思いました。もちろん『原作モリア来んなよ、今更主人公にする気?』という方も多かったですが、あくまでも過去編で現在モリアは原作モリアの面影すらなかったので主人公にする気なんか全くありません。


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若き王の成長

 

 

 

 

 

 

「命を救われた“恩義”があるとはいえ...貴様を狙うのは申し訳なく思う。強者の我儘は全て許される権利がある。ただ義務ではない。それ故俺は貴様以上の強者となり“貴方へ”の不義理を正当化する...実に不本意だが俺にも立場というモノがある...」

 

確かに強いからと言って“赤髪のシャンクス”のように傍若無人な振る舞いをしない者もいる。つまり権利がありそれを行使するかどうかは別問題なのだ。白ひげはモリアの言葉の一部にピクッと反応するとニヤッ笑った。

 

「グラララ...かつて俺と張り合った男にしちゃ甘ぇこというじゃねぇか。」

 

白ひげが皮肉めいた言葉をモリアへぶつけた。モリアは不快そうな顔をすると口を開いた。

 

「張り合っただと?くだらん。あれは政府の誇張と戦闘後の状況のみよって都合良く書かれた報道により植え付けられた妄言(プロパガンダ)に過ぎない。当時の俺は若く実力も海賊としての心構えもなってなかった。」

 

モリアは白ひげとの決闘は惨敗だったと思っていた。無事に生きて帰ったモリアは政府の息のかかった新聞記者の取材にありのまま答えた。翌日の新聞にはダークサイドの事は一切書かれておらず胸上と右手から出血している“白ひげ”の写真が撮られていた。もちろん敗れたと明記してあったが、僅差であったと曖昧な文章が載せられていた。この時に初めてモリアは自分がつけられていた事に気付き記者の隠密行動のスキルに関心した。そして“白ひげ”もこの新聞を読んだが大して気に止めなかった。

 

考えがなっていないというのは海賊としての覚悟が足らず“白ひげ”が王座につくかどうかは強者として選ぶことができたはず、それなのにモリアは敗者として意見を述べてしまった事を若気の至りたして恥じていたのだ。

 

「「「「親父ッ!!!!」」」」

 

モビーディックの先端で向かい合う2人の王に白ひげ海賊団は声をあげた。若く未熟だった王は筋の通す絶対的な王へと成長し、絶対的な王はもはや伝説の王へと老いた。海軍側は知らぬ情報だが“白ひげ”は病に侵されていたのだ。“親父”の強さは重々知っているが今を生ける最強の七武海が一対一(サシ)で11年前の決闘の再戦を行おうとしていたのだ。

 

「「モリアッ!!!!」」

 

 

 

白ひげの後ろにいたマルコが右前へと飛び出し両手から青い炎を噴き出すと不死鳥として、そして地上から船に飛び乗ったジョズが身体をダイアに変えてモリアを挟み撃ちにしようとした。

 

「余計ぇなことをしやがって...。」

 

白ひげは2人の様子を見てぼやいた。するとその言葉通りに2人の身体は静止した。2人が己の影を見ると武装色の覇気を込められた“針”が刺さっていた。

 

「横槍は控えて貰おう...

 

俺は貴様に敗れた直後己の全てと向き合いダークサイド(ヤツ)を封じ込む為に鍛錬を積んだ...。結果は俺という存在は強者として、海賊として高みへと登りつめることとなった...

 

俺にチャンスと命を与えた貴様を殺さなくてはならぬ事を末代までの恥と心得る。」

 

かつて一方的に喧嘩を吹っかけた若き日のモリアに“白ひげ”は最強として登りつめる機会を与え、更に勝者として彼の命を散らす権利を得たのに見逃したのだ。その二つの大恩を仇として還す事を恥と言わずになんと言うのかとモリアは考えていた。

 

「よく口が回るじゃねぇか...。」

 

「無口だと申告した憶えはない。」

 

 

 

 

白ひげの向かいあい同時に地面を蹴った。モリアは硬化した右手に影の鎧をつけ、そして白ひげは硬化した右手に白い光を覆った。

 

二人の攻撃が亀裂を産み11年前と同じ様に再び王の資質のある者達が衝突すると二人の拳の間の大気にビキビキと亀裂が入り周囲に衝撃波を与えた。やがえモリアの覇気が上回り白ひげを後退させた。

 

「やはり最強とはいえど齢には勝てぬようだ...。覇気が以前やりあったより数段衰えている。もはや貴様の薙刀は俺には届かぬ。」

 

「親父から離れろ!!!!」

 

真横からマルコは脚で攻撃をしたけたがモリアは軽々としゃがんで躱しフッと挑発的な笑みを浮かべた。

 

「覇王の衝突で針が抜けたか...。」

 

「前を見ろよい...。」

 

薄っすら笑みを浮かべたマルコが前を見る様に言うと目の前にはダイアの上から武装色で硬化した強靭な肩が見えた。

 

「“ブリリアントパンク”ッ!!!!」

 

モリアはジョズの渾身の一撃を回避する事は出来ず致命傷を避ける為に両腕を硬化させてガードするしかできなかった。モリアはジョズのパワーを前に勢いよく吹き飛ばされた。海軍の後方部隊の場所まで飛ぶと硬化した手を地面に突き立てて勢いを殺した。

 

「さすがにタイマンなんてやらせねぇか。隊長を引き離す程に追い込んでからだな...。邪魔が入っちまう。」

 

モリアはノーダメージで立ち上がると平然と歩き始めて戦場へと戻った。その様子を見たジョズはモリアを見て嘆いた。

 

「クソッ!なんて野郎だ...。」

 

ジョズの肩はビリビリとした鈍い痛みを感じていた。彼の攻撃にモリアは武装色でガードをしていたに過ぎない。モリアが無傷でジョズにダメージを与えたのは単純に武装色で上回ったからである。ジョズが吹き飛ばせたのはモリアの体重が彼の衝撃に耐えられなかったに過ぎず、むしろモリアは抵抗せず衝撃をモロに受ける事により距離を取ったのだ。

 

「だから余計だと言ったろ...。次は邪魔をするんじゃねぇ...。」

 




アレです。モリアさんが本気を出すのはもうちょい先になりやす。


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空からの軍艦とモリアの暗躍

 

「クソッ!!!このバケモンがッ!!!!」

 

モリアは遥か後方まで吹き飛ばされたがゆっくりと進み己に襲いにかかる雑兵の相手をしていた。銃や剣を駆使して集団で襲いかかるが全くもって無駄な抵抗だった。

 

「貴様らの親父の方がバケモンだ。もう七十超えてるのではないのか?...ん?」

 

モリアが上空から微かな声を聞くと空を見上げた。すると空から黒い影のようなモノが降ってきた。次第に異常な光景を前に皆がその影の正体を理解し始めた。

 

「あれは海軍の軍艦...。囚人服を着ている者が多いな...。まさか脱獄囚か?」

 

軍艦は凄い勢いで落下するとジョズが氷をくり抜いた部分に思いっきり着水した。水飛沫が激しく昇ると次第に船の中にいた面子が現れ始めた。

 

「ルフィ!!!!」

 

死刑台の上からこの戦争の引き金となったエースが大声をあげた。そして船の上に立っているルフィは笑顔で返した。

 

「エース!!!!やっと会えたァ!!!!」

 

ルフィも歓喜の声をあげると次第にインペルダウンから脱獄した強者達が船の上に登り集まった。

 

「ジンベエ、クロコダイル、革命軍のイワンコフまで !!」

 

「後ろにいるのは過去に名を馳せた海賊達!!!インペルダウンの脱獄囚達だッ!!!!」

 

海兵達が次々とメンツを見て大声をあげた。白ひげは海賊であり、自分らは海兵である。どう考えても味方にはならないからだ。処刑台の上に立つセンゴクはルフィの祖父のガープへ問い詰めると頭を抱えて困った声をあげた。

 

「なぜ麦わらがここへ?」

 

 

(ヤツがインペルダウンに囚われたという情報はなく、囚人服も着ていない。恐らくヤツが主犯...。誰が手引きをした?...船に潜り込むか?いや厳しい。正義の門を通れるのは政府関係者と俺達七武海...。“黒ひげ”か?だがヤツの姿は見えぬ。『戦争で始末しろ』という俺のメッセージ...。少なくともヤツが戦争に来たのなら始末せねばならぬな...。おそらくヤツの手引きだ。)

 

 

「...。」

 

モリアが“黒ひげ”がルフィを手引きし、インペルダウンへ引き入れたと考察すると比較的近くにいたハンコックがモリアを意味深な瞳でジ〜ッと見ていた。

 

「どうした?」

 

ハンコックに問いかけるとわかりやすく顔をぷいっと逸らした様子を見たモリアは少し目を細めるとハンコックへの距離を詰めながら質問をした。

 

「ハンコック...お前は遅れて来てたな?どこへ行ってた?」

 

思い出してみればハンコックは七武海の招集に最後に応じてやってきた。囚人達とハンコックが関係があるとは思えぬが、かなり怪しい。モリアが彼女の目の前にまで移動するとハンコックは声をあげた。

 

「男が妾に話しかけるなど無礼千万であ...『他人のふりをするな...』...すまぬ。」

 

ハンコックは普段男に扱うようにモリアにもそう振る舞ったが恩人である為一言で罪を認めた。これでハンコックが“麦わら”を手引きしたと理解する

 

 

(おそらくハンコックは“麦わら”が天竜人を殴った事件から気に入っていり、おそらくエースを助けに向かったのだろう。やはり面白い男だ)

 

 

「わかった...あとで事情は聞かせてもらうが、“麦わら”の援護はするな...“九蛇”の皇帝でいたいのならな...。」

 

「...ッ!見逃してくれるのか?」

 

モリアがハンコックの元から離れようとすると彼女は彼へ声をかけた。ハンコックの知るモリアならば確実に怒られると思っていたのに案外あっさりと終わったのだ。

 

「当たり前だ...お前は強い。七武海から除名させるわけにはいかぬ。ただ囚人は始末する。いいな?」

 

「礼を言う...。我儘じゃがルフィにだけは手を出さないでくれまいか?」

 

モリアはインペルダウンの囚人達やルフィよりも世界の均衡の方が大事だったのだ。むしろ多くの死体を手に入れられると思っていた。ハンコックはモリアに頼み事をした。彼女はルフィに惚れていたが大恩人の彼もぞんざいに扱う事のできぬという二つに挟まれていたのだ。

 

「...それはできぬ。七武海という立場も尊重せねばならぬからだ。せめて俺と“麦わら”が出会わぬ事を祈れ。お前がどちらにつくのは自由だが敵となれば容赦はせぬと心得よ。」

 

「...。」

 

モリアがそう言い放つと地面に手を触れた。あの数の援軍を相手にするには面倒だし生き残りを出すわけにはいかぬと思っていたのだ

 

「“影扉影(シャドウホール)”...。」

 

モリアの手から影が地面へ伝い地面から黒い出口が現れると常闇の奥底からゾンビ兵達が続々と現れた。

 

「ようやく動いたか...これがヤツの最強たる所以の一つ...ゾンビ兵の道を空けろ!!!!」

 

センゴクが待ち侘びた様にモリアを見て部下達に指示を出した。するとゾンビ兵は続々と増え続けていく様子を見て白ひげが声をあげた

 

「グラララ...これがヤツの能力の最大の強みだ。おめぇらゾンビの両腕を狙え!!!!」

 

「「「「「「「オオオッッッ!!!!」」」」」」」

 

“白ひげ”の指示はゾンビの数少ない弱点を指摘した。ゾンビは肉体にダメージを食らわぬため頭を切り離そうとも何ともない。仮に頭を斬り落とされても手で拾い復活する。故に両手さえ斬り落とせばもう何もできないのだ

 

地面から全てのゾンビ兵が完全に地上へ出てくると凡そ少なくとも七十体はいる様だった。そしてモリアを中心に隊を成すとモリアは口を開いた。

 

「余計な事を言いやがって...だがこいつらは俺の最強クラスのゾンビばかりだ。容易くは行えぬぞ...

 

 

痛みも苦痛も感情も失われしゾンビよ!!!!

 

 

貴様らには如何様な攻撃も決して届かぬ!!!!

 

 

痛みに非ず!

 

苦痛に非ず!

 

恐怖に非ず!

 

 

貴様らを死の淵から蘇らせた主の為その身が朽ち果て千切れようともこの俺に奉仕せよ!!!!

 

 

 

殺戮の行進(パレード)”...。」

 

 

 




匿名投稿を解除し、アンケートを取れる様に変更しました。早速アンケートの回答を募集しました。私の文章についてです。とある方のアドバイスを元にしたモノですので回答して頂けると嬉しいです。


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友への激昂

 

 

 

 

「おい...ゾンビ兵には昔“新世界”で暴れてた連中が混じってるぞ!!!!」

 

モリアがゾンビ兵に自由に動くよう指示を出すと目の前にいる海賊達へと次々襲いかかった。よく見るとかつて名をあげた強者達がモリアのゾンビと化していたことに気づき始めた。

 

 

 

***

 

 

「あ〜ダル...はいはい...“譲渡(ギフト)”。」

 

全く攻撃する素振りを見せなかった顔の整った長い緑色の髪をしたゾンビは刀で胸や頭を斬り裂かれたり銃弾を次々放たれたが“譲渡”とつぶやくと全てのダメージと傷が周囲の人間に返された。

 

「面倒くせぇから早く攻撃してよ...。致命傷ぐらいでさ...」

 

「あいつは“奇術師”リンダ!!! 確かあいつは譲渡人間だ!!!」

 

リンダを知っている男が能力を仲間に教えた。能力をバラされたリンダはため息をつくと武装色を身体に纏い襲いかかった。

 

 

 

***

 

 

 

「邪魔...。」

 

全身が黒の毛で覆われなぜか頭だけ短い金髪をした男が小さく呟いて腕を振るった。

 

『ボゴンッ!!!!』

 

“ヒトヒトの実<モデル>ゴリラ”を食べ、獣人化している男が力任せに暴れている。彼が腕を振るうと雑兵は纏めて吹き飛ばされた

 

「あいつは“獣碗”ビルド・シュタイン!!! 」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「アッヒャッヒャッ!!!!死んどけや!!!!」

 

肉体が腐りかけているゾンビが両手に太めのピストルを持って連射していた。次々と脳天に銃弾を命中させるとバタバタと倒れていく

 

「“聖弾”のカリー!!! 半世紀前のガンマンだ!」

 

 

 

***

 

 

 

 

「さっさ退きや...はよせんと殺してまう」

 

笑顔でナイフを持つ童顔の青年のゾンビが『タン...タン』とステップを刻みながら同じく小柄で剣を持った栗色の髪の少年と斬り合っていた。

 

「早いな...。君の名前は?」

 

“白ひげ海賊団”十二番隊隊長ハルタはナイフを持つ青年に名前を尋ねた。

 

肉体(身体)は“骸拾”マルフォース...。精神(中身)は“闇討ち”アルトや。どっちもしがない暗殺職やった...。海賊は専門外やけどしゃぁないなぁ...。」

 

 

 

***

 

 

 

「おいおい...あいつもしかして“キャプテン・ジョン”じゃねぇのか⁉︎」

 

酒瓶をラッパ飲みしながらサーベルを片手に完全に肉体が腐っている長い髪のゾンビは海賊達をスパスパと斬り捨てていく。男はかつて世界で名を轟かせた伝説の海賊の一人であった。

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜処刑台〜

 

 

 

「錚々たる面々だ...残虐非道で知られた伝説の海賊達、超人的な逸話を持つ剣豪やガンマン、海兵専門の暗殺者、そして“新世界”で名をあげた海賊共...。」

 

センゴクが処刑台の上でモリアのゾンビ達を見ていた。全員が聞く者が聞けば震えあがる者ばかりであった。

 

「何だよありゃ...一体一体が強過ぎる。」

 

エースがゾンビの戦闘力を目の当たりにし嘆いた。70を超えるゾンビ軍勢を前に仲間達が次々と蹴散らされていくのだ。例外に取り押さえられて氷の大地に仰向けに倒されて身体のあちこちに刀を突き刺して固定されたゾンビもいるが大半はゾンビ兵が戦況を揺るがしていた。

 

 

ゾンビにおける影は精神面及び特徴を担う...。主に性格、技術などの肉体以外の役目であり、極端な例を出すと伝説級剣士の肉体に伝説級狙撃手の影を入れてもゾンビとしての強さは格段に落ちる。なぜなら剣士には剣士に向く肉体があり、狙撃手には狙撃手に向く身体があるのだ。事実モリアがホグバックに一番こだわらせるのは改造をする事により肉体の特徴を消さぬことである。

 

他にも隠せぬ部位をゾンビ風に改造させない事もこだわりに含まれる。モリアはスパイとして世界に己のゾンビ兵を放っている。入手した時点で死体が腐っていればホグバックに筋肉を移植させてカバーさせ、死後間も無い死体を入手した場合は冷凍保存をしている。それは肉体を腐らせぬ様にするためである。むろんスパイとして放つゾンビも肉体が腐らぬわけではなく。もちろん防腐剤を使用し寿命を伸ばしてはいるがそれでも長くは持たない。更に出血や痛覚などがないため海軍や海賊などの密偵には向かない。そこでいつ行方をくらませても気づかれにくい酒場の従業員や清掃員として潜り込ませている。

 

 

「政府としちゃ決して失いたくない男というわけかよ...。」

 

「...。」

 

 

 

 

***

 

 

 

「だいぶ減らしたな...。俺の兵達は“隊長達”でも易々と太刀打ちできぬ...。」

 

死人故に感じぬ痛み、天才外科医に改造された肉体、各々の達人の極めた技、新世界の強者の覇気や戦闘力スキル。それらの全てを併せ持つゾンビ兵などにもはや敵などいなかった。モリアが数名のゾンビを護衛としておき“白ひげ”の元へ向かっていると見覚えのある顔が現れた。

 

「久方ぶりだな麦わらッ!!!!」

 

「ゲェ!!!!モリア!!!!」

 

ルフィはエースを救出しようと全速力へ走っていて気づかなかったが、目の前にモリアがいた事に驚いた。そして勝てる相手でも無い為モリアとの戦闘を回避しようと考え、”ギア2”で身体の身体能力をあげるとモリアの攻撃を躱しつつ先へ進もうとした。

 

「貴様の命をもら...ッ!“影血閃(ブラックブレット)”」

 

突然氷の大地が割れて目の前に海水がモリアへ向けて放たれた。モリアは己を横切って回避しようとしていたルフィから目を離し、影の盾を創って己が海水に触れぬ様にした。そして海水の勢いが止まると側につけていたゾンビ兵の身体から影が抜けて持ち主の足元へ帰っていった。モリアが鋭い目で海水を起こした者を睨むと友人であるジンベエだった。

 

「俺に海水を当て気絶させれば影を失いゾンビは動かぬ肉片と化す...。動かぬ死体が消えたり傷つけられるのは面倒だ。

 

 

 

貴様は俺の数少ない天敵だからな...」

 

モリアがそう言い放つと全てのゾンビ兵の足元に小さな影の円が現れとゆっくりと沈んでいった。ジンベエは魚人であり、海水を己の武器として使用できる。能力者であるモリアにとって海水は脅威であり、失神でもしてしまえば今まで掻き集めた影が全て持ち主へ戻ってしまう。強者の影は地下で管理している為再び取り返せばいい。だが影を失った後の死体が問題なのだ。大砲などの流れ弾で死体が燃え尽きたり、傷つけられたりするのが実に痛い。格上だと理解はしているが己が敗れる可能性がある以上ジンベエがこの戦場にいる以上ゾンビ兵を使うわけにはいかなかった。

 

「仁義を通せぬわしを許してくれ!!!!わしゃエースさんを助けたい!!!!」

 

ジンベエは許しを請う様に嘆いた。だがモリアは恩人一人と故郷での恩の価値は比べるまでもないと考えていたので何とも思わなかった。だがモリアは声をあげた。敵として相見えたのに命を奪う気概で来ぬジンベエに腹が立ったのだ。

 

「仁義云々の前に敵が目の前にいるだろうジンベエ!!!! 救いてぇなら救ってみろ!!! 」

 

仁義を貫けぬジンベエの心情を察しているからこそモリアは敵である彼に対してそう言い放った。敵である以前に友人であり、世界の均衡の一つを担う同胞でもあるのだ。だが戦場に互いのエゴを持ち込みそれが相反した以上戦わぬわけにもいかない。ジンベエもまたモリアの意図を理解し全力でモリア()を倒さんと己の最強の技で挑んだ。

 

「おぉう!!!! ...“魚人空手奥義”ッ!!!!」

 

ジンベエは目を閉じ精神を可能な限り抑え込み、モリアが間合いに入る瞬間を待ち構えた。その様子を見たモリアは機嫌良さげにニヤッと笑った。

 

「昂ぶらせてくれんじゃねぇか!!!! 」

 

“影鎧”を一瞬で纏い右手を武装色で硬化すると地面を思いっきり蹴って間合いを詰めた。ジンベエはモリアが己の剛拳の間合いに入るのをただ待った。そして閉じた目を一瞬で開くと拳に水を纏いモリアへ繰り出した。

 

「“武頼貫(ぶらいかん)”ッ!!!!」

 

2人の拳同士は激しくぶつかり合い辺りの人々を吹き飛ばす程の衝撃波を放った。ジンベエが苦しみ紛れの声をあげると押し負け吹き飛んだ。ジンベエが仰向けに倒れ、身体をふらつかせながら立ち上がろうとすると腹に衝撃を感じた。目を上げるとモリアが脚でジンベエの腹を力任せに踏み込んでいた。

 

「ぐぬぬぬぬぬぬ...。」

 

ジンベエは両手でモリアの脚を掴んで退かそうとするが離れず、次第にモリアの脚力で少しずつ氷の大地にヒビが入り始めると氷が割れジンベエは気絶すると同時に完全に氷が砕け散りまるで人形の様に海底へと沈んでいった。

 

「海底で休んでいろ...七武海でなくなったとはいえ、世界に貴様という男を失うわけにはいかぬのだ...。」

 

 



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海軍の策 1

 

 

 

 

 

 

「来るな!! ルフィッ!!!!」

 

突如処刑台の上でエースがルフィへ向けて大声をあげた。その言葉を聞いたルフィは彼の言葉を理解できないというような顔をした。

 

「わかってるはずだぞ!!!俺もお前も海賊なんだ!!思うままの海へ進んだはずだ!!!!俺には俺の冒険がある!!!俺には俺の仲間がいる!!!お前に立ち入れられる筋合いはねぇ!!!!

 

帰れよルフィ!!!!なぜ来たんだ!!!」

 

 

(頼むルフィ...お前にまで道連れにならねぇでくれ...これは俺の失態なんだ...)

 

 

エースは自分には自分の冒険があり、ルフィには関係ないと無慈悲に言い放った。だが彼は自分だけでなくルフィまでもが犠牲になる事を恐れていたのだ。彼の言葉に悟ったか悟らずかルフィは少し怒った様な顔をして大声をあげた。

 

「俺は弟だ!!!! 」

 

その言葉を聞いたマリンフォードの海兵達がどよめき始めるのをよそにルフィはエースのいる処刑台へ目掛けて全力疾走で向かっていた。

 

「...少なくともロジャーの子ではあるまい...。義兄弟が妥当か...。」

 

モリアが海賊を“影血閃”を身体の周囲に待機させまるでとても太い鞭の様な形にして振るい弾き飛ばしていた。

 

「何をしている!!!たかだかルーキー一人に戦況を左右されるな!!!エースと同じ未来の有害因子“革命家 ドラゴン”の実の息子だッ!!!!」

 

ルフィの特攻に海兵達が押され始めるとセンゴクが彼らを処刑台の上から鼓舞し、“世界最悪の犯罪者”と呼ばれる男の実の息子であるという事実を伝えた。ドラゴンとは世界政府を倒そうと目論む革命軍のリーダーであり、国民に圧政を強いる国が次々と革命軍の手により落とされているのだ。その場に居合わせた両勢力は驚きを隠せぬ様子だった。だがそれはモリアも同様であった。

 

「なんだと...⁉︎」

 

 

(“麦わら”を始末すれば革命軍を敵に回しかねんな...それは避けておきたい。少し語弊はあるが同士討ちなど実に滑稽だ...)

 

 

モリアは本来は世界政府などクズの巣窟という認識であり嫌っている。彼が七武海の座に今でもついているのはスリラーバーグの安全、また世界の均衡を守るため、そして政府の情報網を利用するためである。革命軍は世界政府と敵対しており、世界政府の犬とも呼ばれる七武海だがモリアは予め政府との協定で海賊以外の任務に従うかどうかはモリアが決めると約束してあるので直接は革命軍と争ったことはなかった。

 

「オオオッ!!!」

 

モリアがルフィに手を出す優先順位をかなりさげる決心をすると巨大な金棒を持った海軍中将がルフィへ向けて振り下ろそうとした。それに対してルフィは指を噛み空気を注ぎ込むと拳を巨大化させた。

 

「“ゴムゴムのォォ巨人の回転弾”ッ!!!!」

 

巨人の中将は金棒をルフィへ叩きつけるが、ルフィはそれ以上のパワーで押し返し殴りつけると気絶して倒れた。

 

「好きなだけ何とでも言えッ!!!俺は死んでも助けるぞォォォッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

〜数十分後〜

 

 

 

 

 

「元帥殿準備が整いました。」

 

「あいつら!エースに何する気だ?まだ時間じゃねぇぞ!」

 

センゴクへの謎の報告がエースの処刑だと勘付いた海賊達だったが、彼の言葉は予想外のものだった。

 

「直ちに映像でんでん虫の通信を切れ!! 我々に対して世間が不信感を持っては困る...

 

 

数時間後...世界に伝わる情報は我々の『勝利』この二文字でいいんだ。」

 

でんでん虫の映像を切ることを命じるとセンゴクは静かにつぶやいた。そして彼の策はゆっくりと稼働していく。

 

「湾頭を見ろ!! 何かいるぞ!!!」

 

“白ひげ海賊団”の背後に巨大な人影が現れると彼らは目を見開いた。皆の顔や容姿が同じ顔で七武海であったからだ。

 

「動いたな...本来は海賊を湾内に追い込んで“パシフィスタ”で進路を塞いで集中砲火という算段か...。」

 

モリアが海軍側の作戦を見抜くと同時に20を超える“バーソロミュー・くま”を鉞を担いだ金太郎の様な男が引き連れている。これは“パシフィスタ”と呼ばれる世界政府の人間兵器である。

 

「さァおめぇらッ!!!待ちくたびれたぜやっと出番だ!!!!」

 

 

 

開戦より約一時間半の死闘を経た頃『海軍』が大きく仕掛ける

 

“戦争”は急速に流れを変え

 

最終局面へと一気に雪崩れ込む

 

 

 



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海軍の策 2

 

 

 

 

 

 

 

「始めるぞ!!!行けぇパシフィスタ!!!!」

 

金太郎の様な男が指示を出すと一斉に手や口から光のビームを放った。すると海賊達は地面に当たったビームからの爆発により次々と犠牲を出していく

 

「後方の敵に構うな!!! 一気に広場へ攻め込むぞォッッッ!!!!」

 

白ひげの一言で海賊達はより一層激しく攻め立てる。するとセンゴクが戦局を大きく揺るがす手を打った。

 

「全員直ちに氷上を離れろッ!!!! 海賊達を決して上げるなッ!!!!」

 

その一言で海兵達は続々と氷上から要塞へと撤退していく。モリアは白ひげ海賊団を背に引き返す海兵達を逃がす為に一歩も動かず前線に残った。

 

「全ての映像が切れた時点で“包囲壁”を作動!!!その後すぐにエースの処刑と共に敵を一網打尽にする!!!!」

 

センゴクは海兵らに指示を出した。モリアは包囲壁と聞いて己の考察が正しかったと確信しつつ、海賊らを抑え込んだ。

 

「後方に構うな前へ進めッ!」

 

白ひげは後方からのパシフィスタを相手にして時間をかけるのではなく、海兵が引くのを追う方が賢明だと考えた。“包囲壁”というワードを聞いて海軍の意図を見抜いたのかもしれない。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

〜モビーディック号〜

 

 

 

 

 

 

 

「スクアード...無事だったか。さっきてめぇに連絡を...。」

 

未だに傘下の海賊達が後方にモビーディックに一人で残っている白ひげは背後からの気配を察知し振り返ると“大渦蜘蛛”スクアードがいた。彼は巨大な日本刀を手に白ひげへ詰め寄りながら謝罪した。

 

「あぁすいませんオヤッさん...後方の傘下の海賊達はえらいやられ様だ...。」

 

白ひげの横へ着いたスクアードは後方からパシフィスタに襲われる傘下の海賊達を見て口を開いた。

 

「持てる戦力は全てぶつけて来る。後ろから追われるんなら望む所だ。俺も出る!! こっちも一気に攻め込む他にねぇ...。」

 

白ひげはここがピンチではあるが戦局を大きく揺るがす状況であるためこちらからも仕掛けなければならないと言った。

 

「そうですね...俺たちも全員あんたにゃ大恩がある...白ひげ海賊団の為なら命も要らねえ!!」

 

スクアードは大太刀から鞘を外し、その刹那白ひげはスクアードに腹を剣で貫かれた。白ひげはスクアードの行動に目を疑い、その様子を見ていた白ひげ海賊団達の時間が止まった。モリアはその瞬間を静かに見据えると冷たく無慈悲に言い放った。

 

「“白ひげ海賊団”とはいえ所詮は人...。終いには己の欲望(エゴ)の為にしか動かぬ...。」

 

 



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海軍の策 3



改訂版云々の話ですが、出させて頂く事となりました。活動報告のアンケートでは選択肢①の『出さなくていい』という意見が最も多かったですが、理由の多くが「投稿ペースが落ち込みそうだから」、「作者の好きにしたらいい」というモノでした。

私としては「文章力がないから勿体無い」という意見が多かったので改訂版を出したいという想いでした。改訂してくださる方が名乗り出てくださり、その方の改定した文章を見た瞬間に文章の格が違うと思い知らされました。この方に是非ともお任せしたいと思いました。

心配された投稿ペースは“問題ありません”。今の所の予定ではこれまで通り私は『ここで投稿を続けます』。そして改訂者さんがお暇な時に以前の話から改訂してくださるので続きが気になる方はご安心ください。逆に文章を優先したい方は改訂版を是非ともご覧下さい。“モッ...モリアさん〜”が一読者としては生まれ変わったと断言するレベルだと思っています。もちろん内容は一緒ですのでご安心ください。




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実にくだらぬ茶番だ...。白ひげ海賊団の為、“火拳”の為に命を捨てると言うておきながら、“白ひげ”という男を疑い己らの命惜しさに...怒りに任せて刺すなど実に滑稽...。」

 

 

(脳が足りぬにせよ少し考えればわかる話だ。なぜ海軍と既に話がついているのに奴一人がその情報を知り得たのか...。ましてや傘下の海賊達を売るだけで済むのなら戦争などという面倒な真似を両軍せぬはずだ。間違っても公開用でんでん虫など配備せぬ...

 

そもそも奴のいう見返りの通りなら戦争の初めに本船にのる“白ひげ海賊団本体”は初めから来ぬ。傘下の海賊vs.海軍となるからな...

 

 

そんな回りくどいことではなく“火拳”を捕えたという情報を世間に隠し、白ひげにのみ取引の情報を流せば事は自然に運ぶ...

 

『息子を助けにこなかったという“白ひげ”の面子は立ち』

 

『“海軍”としても白ひげ海賊団全軍との全面戦争を回避できる』

 

その状況が回避された以上白ひげが仲間を売るなど断じて無いと断言できる。)

 

 

 

 

 

人の心とは実に脆い...

 

 

 

***

 

 

 

 

〜モビーディック号〜

 

 

 

 

 

「「「「「「オヤッさん!!!!」」」」」」」

 

スクアードに刺され出血した白ひげは膝をついて胸を抑えた。マルコは両腕を炎の翼に変えてモビーディックへ戻りスクアードの顔を掴んで地面に叩きつけた。

 

「スクアードッ!!!!なぜお前がこんな事!!!!」

 

マルコは冷や汗をかきながら吠えた。心から信頼している家族が白ひげを突然刺したのだ。

 

「うるせぇ!!!!こうさせたのはお前らじゃねぇか!!!!」

 

スクアードはマルコへ大剣を振るうがマルコは軽々躱し、スクアードを攻撃しようとしたが白ひげが静止させた。

 

「こんな茶番劇やめちまえよ“白ひげ”!!!!もう海軍と話はついてんだろ⁉︎お前ら“白ひげ海賊団”とエースの命は必ず助かると確約されてんだろ⁉︎」

 

スクアードの一言に“白ひげ海賊団”が響めき始めた。そしてこの戦争を見守る世界中の人々をも驚かせた。ほんの少しでも“白ひげ”という男を知っていれば断じてその様な事はしないからである。スクアードはそのまま大声で戦場に散らばる家族へと話しかけた。

 

「俺達ァ罠にかけられたんだよォォッ!!!!

 

俺達傘下の海賊団の船長の首を売り!!!ひきかえにエースの命を買ったんだ!!!!“白ひげ海賊団”とエースは助かる!!!すでにセンゴクと話はついてる!!!そうだろ⁉︎

 

そんな事も知らずにどうだ⁉︎俺たちはエースの為白ひげの為と命を投げ出してここまでついて来て...よく見ろよ!!!!

 

 

海軍の標的になってんのは現に傘下の海賊団(俺達)じゃねぇか!!!!」

 

「オヤッさん⁉︎本当かよ!!!!」

 

「ウソだろ⁉︎言われてみりゃコイツら俺達しか狙わねぇぞ!!!!」

 

後方からのパシフィスタの猛攻に傘下の海賊団ばかりが次々と崩されて行くことからスクアードの叫びが強ち嘘ではない可能性があると思ってしまったのだ。

 

「ハァハァ...一度刺せただけでも奇跡だ...もう覚悟はできてる...殺せよ。」

 

「バカ野郎!!!担がれやったなスクアード!!!なぜ親父を信じない!!!!」

 

胸からの出血を抑える白ひげをよそにマルコはスクアードの胸ぐらを掴んで大声をあげる。だがスクアードには正気を失われた顔をしており、白ひげから裏切られたと思っているようだった。インペルダウンの囚人達に奪われた映像用でんでん虫が彼らのやり取りを映す中センゴクは海軍に不信感を持たれるのを防ぐために部下へ指示をだした。

 

「青雉!!!!」

 

青雉がその場から素早く移動し、辺り一帯にいた映像でんでん虫を待つ囚人達を一瞬で凍結させた。その様子を見たセンゴクは最後の策を打った。

 

「“包囲壁”作動!!!!」

 

“白ひげ”の疑惑に揺れる中で密かに海底でボコボコと気泡があがり始め、確実に海軍の包囲壁が作動し始めていた。その様子に気づかずにクロコダイルはかつて己が敗れた男への怒りを露わにした。

 

「あの野郎...

 

みっともねぇじゃねぇか!!!“白ひげ”!!!!俺はそんな“弱ぇ男”に敗けたつもりはねぇぞ!!!!」

 

「...。」

 

 

(今までのオヤジなら仲間の攻撃だろうとこんなんくらうアンタじゃなかったよい...体調は悪化するばかりだ...。)

 

 

「スクアード...おめぇ仮にも親に刃物をつき立てるとはとんでもねぇバカ息子だ...。」

 

「ウァァッッ!!!!」

 

白ひげがゆっくりとスクアードへ近づくと彼は悲鳴をあげた。命を覚悟したとはいえ世界最強と呼ばれる男に殺されるという恐怖は何一つ変わらない。スクアードの目の前へ来ると白ひげは彼を優しく抱きしめた。

 

「バカな息子を...それでも愛そう。」

 

 






原作を見比べながら書く戦争編は難しいですね。モリアさんが出せない話も出てくるかもしれません。ちゃんと流れは抑えてありますので安心してください。


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海軍の策 4


忙しかったのと削る部分を選ぶのに手間取りました。

モリアさんが出ないのでかなり端折ります。流石に一つ一つ書くのはキツイです。すみません。


 

 

 

 

 

 

 

「仲良くやんな...エースだけが特別じゃねぇ。みんな俺の家族だぜ。」

 

「ッ!!!!」

 

白ひげの言葉でスクアードはハッとした顔をし、自分がとんでもない事をしでかしてしまったのだと理解した。そして処刑台の上に立つセンゴクを睨みつけてつぶやいた。

 

「衰えちゃいねぇなセンゴク...。見事に引っ掻き回してくれる...

 

俺が息子らの首を売っただと?」

 

白ひげは両腕を交差させて大気をヒビ割り地震を起こすと青雉の凍らせた海を破壊させると動かなくなっていた“白ひげ海賊団”の船を解放させた。

 

「海賊共に退路を与えたか...。」

 

センゴクが流石だとつぶやいた。味方から受ける己への疑いを払拭させ、いつでも逃げられる様にしたのだ。

 

「海賊なら信じるものはテメェで決めろォォ!!!!」

 

白ひげの一言で海賊達は海軍の罠であると理解した海賊達は雄叫びをあげて海軍本部を攻め立てた。もちろん誰一人も引く者はいなかった。

 

「...。」

 

クロコダイルは葉巻をギリッと噛みながらこめかみに筋をいれ憤怒の表情をしていた。

 

 

(弱ぇ男か...ワニ小僧。俺だって悪魔だの怪物だの言われようともいつまでも“最強”じゃいられねぇんだよ。若ぇ命をたった一つ未来につなげりゃお役御免でいいだろう?)

 

 

「俺と共に来る者は命を捨ててついて来い!!!!」

 

「「「「「ウォォォォォッッッ!!!!」」」」」

 

自分が老い最強でないという本心を隠しながらも己が最強である“白ひげ”として若い命(エース)を救うべく仲間を鼓舞した。

 

白ひげがモビーディックから飛び降りて氷の地面へ降りると海軍達の表情が強張った。世界最強と呼ばるる男が暴れようとしていたからである。そして離れた場所でモリアが口をひらいた。

 

「部下に刺されるなど認知症にでもなったか?」

 

離れた場所でモリアが皮肉を放つと白ひげはニヤッと笑うと言い返した。

 

「グラララ...この程度じゃ俺は止まらねぇ...。」

 

 

 

 

***

 

 

 

数分後

 

 

 

 

 

「くそ!ビクともしねぇ...。」

 

「さっきから言ってた“包囲壁”ってのは!」

 

包囲壁が同時に上がり始め湾内を包囲した。唯一空いた後方の穴はパシフィスタの軍隊が塞いでいた。だが正面の壁がオーズが倒れているからか作動せず下がったままだった。

 

「おいどうなっている!!!!完璧に作動させろ!!!!」

 

「それが包囲壁がオーズの巨体を持ち上げられず...どうやら奴の血がシステムに入り込んでパワーダウンしたようです!!!!」

 

「締まらんが始めろ赤犬!!!!」

 

赤犬が両腕からマグマを噴き出し始め天へ向けて放った。するとマグマの流星が降り注いだ。

 

「“流星火山”。」

 

「氷を溶かして足場を奪え!!!!」

 

火山の隕石が凍った大地へ次々と降り注ぎ溶かしていく。そして海賊達は逃れようと前進するが、次第にマグマで滾る海へ落ちてゆく

 

モビーディック号に引火しすると激しく燃え始めた。そして海に落ちた海賊達へ向けて砲弾を次々と撃ち込んだ。

 

「処刑を実行しろ...。」

 

センゴクが隙を見て冷たく言い放つとモリアら強者達はピクッと反応して倒れているオーズを見た。すると血に塗れながらもゆっくりと立ち上がっていった。

 

「...急所を外したか?」

 

「オーズだ!!!!」

 

モリアは意外そうな声をあげた。彼自身は巨人族との戦闘経験はごく僅かしかなく丈夫であるという印象しかなかったのだ。

 

「エ...エースぐん...。」

 

「オーズ!!!!」

 

オーズはゆっくりと立ち上がったが、全身から血を流しもはや常人(人間)であれば動く方がおかしいと感じさせられた。なぜなら3人の七武海の攻撃を耐え抜くとは到底思えなかったからである。

 

「頭をブチ抜くか...。」

 

モリアは影を出し槍の様な形にしてオーズの頭を貫こうとした。すると突然海底から水の柱が天高く上がりマストを持ったルフィが三大将のいる目の前に降り立った。

 

「タフだな...ジンベエ。」

 

「わしゃエースさんを助けるぞ。」

 

目に疲れた様子の見えるジンベエだったが、戦闘可能である事をモリアは確認した。少し手加減をし過ぎたのかと反省をした。

 

「ならばやってみよ...。だが処刑は止まらぬぞ...。」

 

「やれ...。」

 

センゴクの指示に二人の処刑人が刀を左右から同時に振り下ろそうとした。その刹那に“砂の刃”が二人を斬り裂いた。

 

「クロコダイル!!!!」

 

「あんな瀕死のジジイ後で消すさ...その前にお前らの喜ぶ顔が見たくねぇんだよ...。」

 

 



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怪物

 

 

 

「元帥殿!湾内の海賊達が妙な動きを!!!」

 

赤犬によって溶かされた海を海賊達が泳いでオーズの方へ向かっているのを発見した海兵がセンゴクへ報告した。

 

海軍は砲撃を海賊達へ向けて放ち続けるとゴポゴポと海面へ気泡が上がり始め、やがて巨大な影が現れると激しい水飛沫と共に艦船が現れた。

 

「コーティング船を海底へ待機させていたか...。」

 

「ウチの船が出揃ったと言った憶えはねぇぞ。」

 

巨大な艦船は帆を畳んでいるにも関わらず速い速度で突っ込んでくる。

 

外輪船(パドルシップ)です。こちらへ突っ込んできます!」

 

海兵は艦船を砲撃し続けるがそれが誤りだと気づくには遅すぎた。

 

「行くどみんな!!!」

 

オーズが雄叫びをあげながら艦船を抱えて湾内へ引き上げた。そして船から次々と降りた

 

「エースを救えェェッッ!!!!」

 

誰かの鼓舞により士気のあがる海賊達だったが、限界が来たのかオーズが倒れた。その様子をしみじみと見た“白ひげ”は薙刀を構え、先端に白い光を覆うと一気に振り抜いた。大気が割られ振動で前線にいた海兵達がまるで埃を払うかのように吹き飛んだ。

 

「野郎共ォ!!!!エースを救い出し、海軍を滅せェェッッ!!!!」

 

白ひげが海軍本部へ己の存在を轟かせると再び薙刀の先端に白い光を覆いもう一撃食らわせようとしたら、一人の海兵が現れて氷を放った。

 

「“アイスボール”」

 

青雉の攻撃により白ひげは全身が凍りついて動かなくなった。数秒経つとピキッとヒビが入った。

 

「あららダメか...“振動”は凍らねぇな...どうも。」

 

バキンという音と共に氷が砕けた白ひげは素早く覇気を込めた薙刀で青雉の身体を貫いた。

 

「覇気で刺した!!!死んだか青雉!!!!」

 

「NOォォ〜、バカ言ったいけねぇよ。」

 

青雉は軽く受け流した。彼は確かに覇気で貫かれたが、身体に覇気を纏った。そしてその青雉の覇気が白ひげの覇気を上回ったため無傷だった。身体を貫かれたまま平気な様子で薙刀をパキパキと凍らせ始めると真横からの衝撃を受けた。

 

「オヤジ...先へ。」

 

「あぁ...。」

 

ジョズのラリアットにより青雉は全身が粉々になったが、すぐさま全身を元通りにした。覇気はあくまでも能力者の実体を捉えるモノであって無効化ではい。それ故ロギア系の能力者は覇気で身体を破壊されようとも時間さえあれば容易く復活する事ができる。これは攻撃を受け流せることと共にロギアの強みとして知られている。

 

白ひげは道を開ける海賊達の間を進み先頭へ出ると先端に白い光を覆い振るった。すると白い光とは相反する黒い影が受け止め、周囲に強力な衝撃波が飛んだ。

 

「ようやく機が熟した...。」

 

モリアは影を纏った足で薙刀の刃を踏みつけるように抑え込んで相殺したのだ。先ほどモリアの妨害をしたマルコとジョズは黄猿、青雉と向かい合っており、到底モリアの進撃を止められる状況ではなかった。

 

「懲りねぇ野郎だ...。邪魔だな...おい。」

 

「そう邪険にするな...。俺とて老人を嬲るのは気が引ける。」

 

二人が本日二度目の邂逅を終えると共にモリアが下がって間合いを取った。そしてすぐさま下から持ち上げるように拳を握ると地面から白ひげの周囲を円状に無数の影の剣先が現れた。

 

「“影喰球(ダークスフィア)”。」

 

モリアが呟くと一気に円状に散りばめられた影の剣が白ひげへ襲いかかろうとした。白ひげは薙刀の下に白い光で覆うと地面を突いた。すると影の刃は無残に割れ散った。

 

「こりゃ陽動だろ。」

 

白ひげは素早く薙刀を後方へ向けて振りかざした。するとモリアが背後に移動して攻撃を繰り出そうと間合いを詰めていた瞬間であり、到底躱せぬと思われた。

 

「“影法師(ドッペルマン)”」

 

白ひげが薙刀を振り抜くがモリアは目の前から完全に消えてしまっていた。そして前方を素早く振り返ったが、モリアは完全に攻撃を仕掛けており、武装色と影を覆った手刀で白ひげの腹を貫いた。

 

「ゴフッ...。」

 

モリアの手刀は完全に白ひげの内臓をも傷つけていた。モリアは素早く手を抜くと辺りに大量の血飛沫が飛んだ。白ひげは膝をついて傷口を抑え込んだ様子を見たマルコとジョズが気をとられた瞬間に二人の大将は攻撃を仕掛けた。ジョズは全身を凍らされ、マルコは不死鳥の能力を封じる為に海楼石の手錠をはめた後に黄猿のレーザーに貫かれた。

 

「やはり老いた老兵は戦場に出るモノではないな。もはや戦場(ここ)に貴様の居場所はないと思え...。」

 

白ひげは止まらぬ出血を他所に心臓辺りを抑え込んでいた。彼は病にかかっており、戦場へ出てきていいという身体ではなかったのだ。その様子をモリアが悟った瞬間に背後から大声が聞こえた。

 

「何をしている!!!!早く白ひげを討ち取れ!!!!」

 

モリアがいる事を他所に一斉に海兵達が大砲を放ち、剣で次々と白ひげの胸を貫く。まるで蟻が象を薙ぎ倒す様に激しく攻め立てた。モリアは素早く“影法師(ドッペルマン)”で後方へ回避したため無傷だったが、少し不満げな顔をした。

 

「モリア...わかっちよろうの...。」

 

背後から赤犬がモリアに忠告をすると彼は当たり前だという顔をしながら返事をした。

 

「無論...。これより俺は防衛に徹しよう。」

 

モリアは海賊の頂点たる白ひげが同じ海賊であるモリアに殺されたのであれば海兵としてのメンツが立たない事を理解していたため、赤犬の真横を通って後方へ歩いて移動した。

 

「「「「「「「「「親父!!!!」」」」」」」」」

 

モリアの背後で胸を無数の海兵に貫かれた白ひげはもろに砲撃を顔に受けた。そして後ずさりとしたが踏みとどまった。

 

 

「こいつら...これしきで...。ハァ...ハァ...

おれを殺せると思ってやがる...。助けなんざいらねぇよ...ハァ...ハァ...

 

 

 

 

 

俺ァァ白ひげだァァッッッ!!!!」

 

白ひげは薙刀に力を加えて力の限り振るった。すると海兵達がゴミのように一斉に吹き飛んだ。この手負いでなおこの強さ、その場に居合わせた者達は『怪物』だと理解した。

 

吹き飛ばされ宙を舞う海兵達は己の死を覚悟したが、身体の中心に細い影の糸が巻きついて停止するとゆっくりと地面へ降ろされた。そして吹き飛ばされた海兵達が全員無事であることから圧倒的に短い能力の発動時間に精密度、そして己らが怪物と感じた白ひげより実力者と思われるモリアという男もまた怪物であると理解した。

 

「前言撤回だ。老いてもなお怪物か...。」

 

 




ちょっとオリジナル展開が少な過ぎて少し疲れました。気分転換の為にチラシ裏に1話だけ投稿します。

以前から多少ほのめかしていたハンコックの性別逆転をやります。数話しか投稿しませんので失踪は無いです。

『九蛇から一匹の蛇が生えて十蛇(♂)』という題名にします。銀魂ネタですが題名以外には使いません。

私情ですが申し訳ありません。少し休ませて下さい。


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救われた灯火 1


だいぶ休めましたので更新を再開致します。お待たせして申し訳ありません。モリアさんの出番のないところはショートカットで行きますのでご了承ください


 

 

 

 

 

 

白ひげは海兵達を薙ぎ払い突き進むと彼の背中を守る様に海賊達が集まった。するとセンゴクは素早く執行者にエースを殺す様に命じた。海賊達が彼の名を叫ぶと白ひげは処刑を止めようとしたが、大きく吐血をして膝をついた。誰もがエースは処刑されると思った刹那、マリンフォードへ怒号が響いた。

 

「やめろォォォォォォォォォッッッッッ!!!!」

 

頭から出血し、ボロボロのルフィが叫ぶと執行人の二人がバタリと倒れた。するとルフィの周囲にいた海兵達も次々と気を失っていく。

 

「覇王色の覇気...まだ制御すらままならぬ。だが奴はこの戦場からは逃れられない。ドラゴンの息子という存在だけならまだしも、覇王色まで持つとは...。」

 

ただでさえドラゴンの息子という強力なカードを得れば革命軍のボスを潰せるかもしれないのだ。ルフィを人質として単独で呼び寄せて捕らえればいい。最低でも有害因子として海軍が始末するだけでも十分な収穫である。

 

「野郎共ォォ!!!!麦わらのルフィを全力で援護しろォォォッッ!!!!」

 

王の資質を持つ事を知った白ひげはルフィを援護するよう指示を出した。海賊達や一部の囚人が海軍を抑え始め、ルフィを優先に進ませ始めた。

 

 

 

やがてルフィの側にいた革命軍のイワンコフの派手なアフロの中から両手が巨大なハサミになっている男が現れて、刃を開いて地面を削り、そして上へ放り投げ処刑台までの道を作った

 

「...便利な能力だな。」

 

その上をルフィが単独で登り始めると海軍は大砲で的にしようとしたが、隊長達が処理をした。ルフィが半分程登ったところで頭上から何かが落ち、土煙が舞った。ルフィが走りながら何かを見ると祖父であるガープが立ち塞がっていた。

 

「じいちゃん!!! そこどいてくれよ!!!!」

 

「どくわけにいくかルフィ!!!!わしゃァ海軍本部中将じゃ!!!!ルフィお前を敵と見なす!!!!」

 

二人は拳を振り下す刹那、ガープの脳裏に幼き頃のエースとルフィとの思い出が過ぎり拳への力が緩んだ。そして静かに目を瞑るとルフィの拳を受け入れた。

 

ガープは処刑台までの通路から落ちると地面へ激突した。そしてエースとセンゴクの立つ処刑台へ登りつめた。密かにハンコックから貰ったエースの手錠の鍵を差し込もうとすると一本の光が鍵を貫いて破壊した。

 

「私が逃すと思うか?」

 

センゴクが突然巨大な大仏に変化し、全身は金色に変化してルフィ諸共殴り潰そうとした。ルフィは全身をゴム風船の様に膨らませて、海楼石により生身となったエースを血を吐きながら庇った。

 

「ん?あの処刑人...手から何かを...。」

 

処刑台はセンゴクの拳の力に耐えられず砕けるとルフィと生身のエースへ向けて一斉に砲撃をした。一斉砲撃による爆炎の中に炎が現れて3人の人影が地面へ降りた。

 

 

(あの鍵...蝋の能力者。かなり応用力の効く“テゾーロ”の下位互換のようなところ...欲しいな。生きていたら部下へ勧誘しよう。)

 

 

モリアは処刑人が作ったと思われる鍵を見て仲間へ加えたいと考えた。そして海賊達の様子を確認すると大いに歓声が上がっていた。

 

 

(だが実に厄介だ。“白ひげ海賊団”の士気が尋常なく上がっている...。早急に手を打たねば滅ぼされるのはこっちだな。)

 

 

「...士気(エース)削る(殺る)か。」

 

モリアは冷たく呟くと地面へと潜り込んでその場から姿を消した。そしてルフィとエースにより蹴散らされた海兵の後方へ現れた。ルフィはモリアの襲来に慌て始めるとエースは静かに弟を庇う様に前へ立ち塞がった。

 

 

 



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老兵の決意

 

 

 

 

「自由になって早々悪いが死んで貰うぞ。貴様の存在は戦局を左右し、政府の不安の“種”を取り除けば借りができる。」

 

モリアはエースを悪の芽でなく、出芽すらしていない種と称した。彼からしてみればロギア系最強種メラメラの実など取るに足らない能力者の一人に過ぎないのだ。

 

「エース!こいつはめちゃくちゃ強ぇぞ!!!気をつけろ!!!!」

 

ルフィはモリアとの戦いで容易く殺されかけた苦い思い出がまだ癒えていないのか声をあげた。するとエースはルフィの前へ出た。

 

「下がってろルフィ...。こいつは全力の親父と張り合った男だ。」

 

「白ひげのおっさんと!!!!」

 

モリアは張り合うという言葉を聞いてピクッと不快そうな反応をしたが、特に何も言わなかった。無理して否定する手間かける気にはならなかったのだ。

 

「しかも今より10年前だからな...。だがモリア。俺がお前を討ち取りゃ俺達(白ひげ海賊団)の士気が上がるとは思わなかったのか?」

 

「格下に敗れることを考えながら戦う者がいるか?無論微塵も考えぬ者は敗れるが...。」

 

「へぇ...じゃ俺に負けたら俺が格上だな。」

 

「まだ若いな...力量も探れぬか。いや理解してもなお引かぬのか?面白き男だ。」

 

二人は互いに挑発をし合いニヤッと笑うとすぐにエースは炎を纏った手で大きく振りかぶった。

 

「さぁな...“火拳”ッ!!!!」

 

豪炎の拳がモリアを襲い焼き尽くすとその様子を見たルフィが口を開いた。

 

「やったか?」

 

「いや...まだだ。」

 

「“常闇狭霧(ブラック・ミスト)”...。やはりまだ若い。」

 

炎の中から無傷のモリアが現れるとゆっくりと歩いて間合いを詰め始めるとエースは少し表情を強張らせながらつぶやいた。

 

「やっぱり一筋縄じゃいかねぇか...。流石は七武海最強の男。」

 

「最強など客観的に見た第三者の邪推に過ぎぬ。呼称などあてにならぬぞ。海賊王(ロジャー)の名を継がなかった理由に多少なりと含ませるのではないか?ロジャー(海賊王)の息子と呼ばれたくないという心情が... 」

 

「俺はゴールド・エースじゃねぇ...ポートガス・D・エース...そして白ひげの息子だ。」

 

「これは失礼...。無粋だったな。」

 

モリアは自分の非を認めるとエースは二本の燃え盛る炎の槍を投げつけた。モリアは“影血閃”で盾のようにして軽々ガードをした。

 

「無駄な足掻きだ...。」

 

モリアがつぶやくと彼の周囲にフワフワとした黄緑色の無数の光が囲んでいた。エースがニヤリと笑うと声をあげた。

 

「“螢火...火達磨ッ”!」

 

モリアを取り囲む無数の光が爆発し激しい土煙が舞ったが、それが晴れる前にエースの足元の地面からモリアがすっと現れた。彼は地面へ影となりスイスイ移動して回避したのだ。

 

「能力の発動が遅いな...。」

 

モリアは足に覇気を込めてエースの腹を蹴りあげた。実体を捉えられたエースは口から血を吐くと両手を地面についた。

 

「エース!!!!こんにゃろ!!!!」

 

「下がれルフィ!!!!おめぇの敵う敵じゃねぇ!!!!」

 

ルフィがエースに加勢しようとすると、エースの怒号が響いた。

 

「エース...。」

 

ルフィはエースの言葉の本心を長い付き合いから理解していた。モリアには自分達では手に負えない強さであるが、エースは自分とルフィがモリアから逃れる事もできないということを理解していた。

 

「こいつは俺の敵だ...。手ぇ出すな。」

 

「...流石は二番隊長。力の差を理解しても尚立ち塞がるか...。そろそろジンベエが加勢に来るだろうから早急に始末せね...ッ!!!! 」

 

突然モリアの背後でバトルシップが動き始め、海軍本部へと突っ込み始めていた。そこには赤犬に唆されて白ひげを刺したスクアードとその部下たちが乗っていた。

 

「たとえ償いにならなくてもこうでもしなきゃ俺の気が収まらねぇ!!! エースを連れてみんな逃げろォ!!!!」

 

海兵や氷の大河を破壊し突き進む中、突如ドゴォォッッという激音が響いた。すると白ひげが片手で抑え、受け止めていた。

 

「親父!!!!」

 

腹からポタポタと血を流し命を削りながら戦場で暴れ続ける白ひげはスゥと息を吸うと大声をあげた。

 

「今から伝えるのは最後の船長命令だ。よォく聞け野郎共...

 

 

 

お前らとおれはここで別れる!!!!全員必ず生きて新世界へ帰還しろ!!!!」

 

 



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潰えぬ炎

 

「オヤジッ!!!!」「ここで死ぬ気か⁉︎」

 

「俺ァ時代の残党だ!!! 新時代に俺の乗り込む船はねぇ!!!!」

 

海賊達(息子達)白ひげ(親父)の決意を目の当たりにすると、白ひげは大気にパキパキとヒビをいれると海軍の要塞を一撃で破壊した。

 

「「「「「「「親父ッッ!!!!」」」」」」」

 

息子達は涙を流しながら父親を呼んだが、白ひげは一切振り返らずただ息子達の敵を屠らんとギロリと睨んだ。

 

「随分長く旅をした...決着(ケリ)つけようぜ...海軍...。」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜モリアside〜

 

 

 

 

「あのジジイ...マリンフォードを鎮める気だな。勝負はお預けだ。」

 

モリアは白ひげを睨みつけると地面にある影に潜り込んでその場から消えた。

 

「モリア!!!!」

 

「エース!!!!行こうおっさんの覚悟が!!!!」

 

その様子を見たエースが叫ぶがもう遅かった。するとルフィが白ひげの想いを受け止めてこの島から脱出するべきだど言った。

 

「わかってる!!!無駄にゃしねぇ...。」

 

 

 

***

 

 

 

 

〜モリア・白ひげside〜

 

 

 

 

 

 

 

「歳不相応に暴れてくれるよ...俺は血の気の多い老人の介護などする気はないぞ。」

 

モリアと白ひげが三たび相見えると挑発するような余裕の笑みを浮かべ、嘲笑した。彼は今まで何度も白ひげとの再戦(リベンジ)の機会を奪われ続けた。だがもう面倒な隊長は退却を始め、更に近くには赤犬の様な海賊排斥主義者はいなかったのだ。即ち誰にも邪魔をされることなく、己が白ひげを討ち取る事ができると理解していた。擦り傷一つ負わず若い自分と腹を貫かれ更に無数の銃弾と斬り傷を受け、かつて最強であった老人とでは勝負にならぬと悟っていた。

 

「グラララ...墓は要らねぇ。海軍本部の瓦礫の上が俺の墓場だァァァッッ!!!!」

 

目を血走らせ命を削りながらモリアへ攻撃を仕掛けようと薙刀を前に振るった。モリアは後方へ軽く下がり避けると、薙刀の刃は地面に激突し土煙が舞った。

 

すると土煙の隙間から刃が迫り来たのでモリアは覇気でガードするが少し後方へ押された

 

「先よりパワーが増している...。やはり貴様は俺の予想の上を行く...。」

 

モリアは命が枯れそうになりながらも最強の海賊として親父として息子達を守らんと暴れまわる“白ひげ”エドワード・ニューゲートという男に舌を巻いた。

 

「お前らそこをどけ!!!!」

 

突如モリアと白ひげを崖を除いた全てを取り囲んでいた海兵達が豪炎に包まれて苦しんだ。炎の中にはエースがおり白ひげへ土下座をしていた。これは謝罪としてではなく感謝としての意味を持つという事を誰もが理解していた。

 

「一つ聞かせろエース...。俺が親父でよかったか?」

 

「勿論だ!!!!」

 

白ひげはエースの鋭き視線を受けると愉快そうにニヤッと笑った。

 

「グラララララ...。」

 

そして声をあげて笑うとエースは後ろを振り返り走り始めた。満足そうな顔をすると白ひげはゆっくりと息子達の殿の為に目の前の敵わぬ強敵(モリア)を見据えた。

 

「すまねぇな...時間取らせた。」

 

「決意の固めた男の餞け(別れ)を邪魔をする事など到底俺にはできまい...。」

 

 

 

***

 

 

 

 

〜ルフィ・エースside〜

 

 

 

 

 

「エースを逃して即退散とはとんだ腰抜けの集まりじゃのう白ひげ海賊団...船長が船長...それも仕方ねぇか。白ひげは所詮先の時代への敗北者じゃけぇ...。」

 

ルフィとエースの背後から赤犬が挑発する様につぶやいた。その言葉を聞き逃さなかったエースがピクッと反応し振り返った。

 

「敗北者...?...取り消せよ...今の言葉ッ!!!!」

 

エースは父親の侮辱を耳にし赤犬へ距離を詰めようとした。

 

「エース!!!乗るなッ!!!!」

 

海賊の一人がエースの肩を抑えて親父の望みを為すべきだと言ったが、エースはそれを払いのけて距離を詰める

 

「白ひげは敗北者として死ぬ!!!ゴミ山の大将にゃ誂え向きじゃろうが!!!!」

 

赤犬がエースを挑発するとエースは激しく歯軋りをして大声をあげた。

 

「白ひげはこの時代を作った大海賊だ!!!!」

 

 

(俺を救ってくれた人をばかにするじゃねぇ!!!!)

 

 

「この時代の名が!!!!白ひげだァ!!!!」

 

エースは豪炎を纏った炎を、赤犬は炎をも焼き尽くすマグマを、二人の拳は激しく激突したがエースが軽々吹き飛ばされて身体が焼けた。その様子をわき見していたモリアが口をあけた。

 

「向こうでも始まっ...ッ!!!!」

 

白ひげが薙刀の先端に光を纏って薙刀を振るおうとしていた。モリアは命の尽きかけていた老人を前に僅かな慢心があったのだ。普通の強き老人であれば何の問題もなかっただろう。だが相手は“白ひげ”エドワード・ニューゲート。彼はその隙を一切逃さなかった。完全に薙刀の間合いに入っていたモリアは到底避ける事ができず、辛うじて“影鎧(ブラックローブ)”を身に纏ったが強力な破壊力も前に身体を水平を保つことができず吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜ルフィ・エースside〜

 

 

 

 

 

 

「よぉ見ちょれ...。」

 

焼かれた痛みに耐えるエースを他所に赤犬はルフィへと目を向けて狙いを定めた。

 

エースの制止に赤犬は全く耳を傾けず、エースをも焼き尽くすマグマを右手に纏いルフィの身体を貫こうとした。

 

 

 

 

ルフィが赤犬の攻撃が自分へ向けている事に気付いた瞬間、目の前を炎が遮った。

 

 

ルフィはその炎がエースであると理解すると同時に彼が腹を貫かれて血反吐を吐いたのを目の当たりにした。赤犬はエースの身体から己の腕を抜くとゆっくりとエースはルフィへもたれかかるように倒れた。そして海賊達の悲鳴のような叫びと兄が自分を庇って致命傷を受けた事に錯乱するルフィの耳元でエースが静かに呟き始めた。

 

「ルフィ...おれがこれからいう言葉をお前からみんなに伝えてくれ...

 

 

 

 

オヤジ!!!みんな!!!そしてルフィ...

今日までこんなにどうしようもねぇ俺を...

鬼の血を引くこの俺を...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛してくれてありがとう!!!!」

 

その言葉を言い放つと同時にエースはゆっくりと倒れ、まるで人形の様に抵抗せず地面へ突き伏せた。

 

 

 

ポートガス・D・エース...。彼の死した顔には笑みが浮かんでいた。彼はこの悪夢とも言える大海賊時代を引き起こした“海賊王”ゴールド・ロジャーを父親に持つ。即ち誰もがロジャーを憎んでおり、誰もが嫌悪していた。その悪魔の様な息子である自分という存在が誰からも必要とされていないと幼き頃より肌に感じていた。

 

だが今では自分の命を投げ打ってくれる仲間達(家族)

 

悪魔の子を受け入れてくれた白ひげ(父親)

 

そして数多くの修羅場を超えてまで己を助けようと模索してくれたルフィ()

 

 

 

彼の望んだ本当のモノは名声や力などではなかった

 

 

『自分はこの世に生まれてきてよかったのか?』

 

 

その答えを知る事こそが彼の想いであり、そしてその問いの答えは彼の幸せそうな笑みが全てを物語っていた

 

 

 

 



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エドワード・ニューゲート 1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次こそはお前じゃ“麦わら”ッ!!!!」

 

赤犬がマグマを右手に纏いルフィを貫こうとすると青い炎が現れた。一番隊隊長のマルコが赤犬を見て口を開いた。

 

「こいつの命はやらねぇ!!!エースの弟を連れて行けよい!!!ジンベエ!!!!」

 

マルコは赤犬には手出しを出さない様にいい、更に島であるマリンフォードにおいて魚人であるジンベエが一番ルフィを生かせる可能性が高かったので指示をだしたのだ。

 

「わかった!!!!」

 

ジンベエはルフィを小脇に抱えて走り始めるとマルコは白ひげ海賊団に問いかけた。

 

「その命こそ生けるエースの意思だ!!!!

 

エースに変わって俺達が必ず守り抜く!!!もし死なせたら白ひげ海賊団の恥と思え!!!!」

 

ルフィを逃す事に一致団結した白ひげ海賊団は赤犬から逃げるのをやめて取り囲んだ。やがて赤犬はマルコを吹き飛ばした。

 

「赤犬さん!!!危ない!!!!」

 

とある海兵の一言で背後に気配を察知すると共に今までより強力な白い光を纏った一撃を赤犬の頭部を殴り、そのまま地面へ叩きつけた。

 

「オヤジが怒ってる!!!みんなここから離れろォ!!!!」

 

憤怒の表情で赤犬へ襲いかかる白ひげを見た海賊達は一斉にその場から離れ始めた。

 

「グ...冥狗(めいごう)。」

 

赤犬は苦悶の表情を浮かべながらマグマに変えた拳で白ひげの顔へ殴りつけようとした。白ひげは避けようとしたが深手の傷と疲労からか躱しきれず顔の一部を削った。

 

だが全く怯まず白ひげは赤犬の脇腹に拳をぶつけて振動を起こすと赤犬は吐血し倒れた。だがその振動の勢いは止まらず海軍本部へとぶつかり完全に大破させた。

 

「ゲホッッ...おんどれぇ...白ひげェェ!!!!」

 

動けぬ赤犬は真っ二つに割れた地面の亀裂の下へと落ちていった。土煙が晴れると白ひげの背後の広場がぱっくりと巨大な狭間現れ、海兵と海賊達を隔離させた。向こう岸にいる海賊達を前に海兵達は乗り越えられず何もできなかった。

 

「くそ...油断した。やはり俺もまだ未熟か...。俺なら余裕で向こう岸へ行けるが“白ひげ”を始末せねばならん。」

 

モリアが己の未熟さを11年前の白ひげに敗れた時と同じ様に痛感させられた。そして影で白ひげの元へ移動しようしたが、一人の海兵の声によって阻まれた。

 

「何だありゃ!!!本部要塞の影に何かいるぞ!!!!」

 

その一言で戦場の後方にいた者達は気付いた。海軍本部に身を隠すようにしていた巨人がいたのだ。しかも巨大な囚人服を来ていた。つまり脱獄囚である。

 

「あ...見つかっちった。」

 

栗のような顔をした巨人族が呟いた。オーズ程巨大そうな巨体をみた海兵達はどよめき始めると処刑台の上に数名の人影がいることに気がついた。

 

「黒ひげ海賊団...。」

 

処刑台の上にいる人影の存在に気づき呟いたモリアは冷たく睨みつけた。均衡の担い手であるはずなのにこの戦争へ参加せずインペルダウンへ向かったと知ったからだ。

 

「ゼハハハハハハ!!!!久しいな!!!死に目に会えそうでよかったぜオヤジッ!!!!!」

 

「ティーチ...。」

 

“黒ひげ”マーシャル・D・ティーチは常人ではとうに死に絶えているであろう傷を負ってもなお戦意の消えない白ひげを見て嘲笑った。

 

そして四番隊隊長のサッチを殺して逃亡し、更にエースを海軍に引き渡した元部下を白ひげは睨みつけた。

 

そして怒りに身を任せて振動を処刑台へ向けて放つと衝撃が大気を伝わり、黒ひげ達の足場を完全に破壊した。やがて瓦礫の中から出てきた黒ひげ達は無傷であった。

 

「サッチの無念...このバカの命を取って俺がケジメをつける!!!!」

 

黒ひげの元へ向った白ひげだったが、全身から血を垂れ流していた。二人が向かい合うと黒ひげが動いた。

 

「“闇穴道(ブラックホール)”!!!! サッチも死んだがエースも死んだなぁ!!!オヤジ!!!! 」

 

突如黒ひげの身体から闇が噴き出す様に溢れ出し広がった。そして白ひげと自分のみのリングの様に闇の足場を創った。

 

「俺はアンタを心より尊敬し、憧れてたがアンタは老いた!!! 部下一人救えねぇ程にな!!!!」

 

白ひげは右手に白い光を覆い、黒ひげへ向けて打ち付けようとした。

 

「おっとっと...無駄だぜ!!!俺の前では能力は全て無駄!!! “闇水(くろうず)”」

 

黒ひげの闇を纏った右手で、白い光に触れるとそれが消滅した。まるで呑み込まれる様に

 

「ゼハハハ...もう振動は起こせねぇ。」

 

白ひげは薙刀を思いっきり黒ひげへ振るった。すると激しく血が飛び散り、黒ひげは倒れて痛みに悶え苦しんだ。白ひげは薙刀と足で黒ひげの両手を封じると空いた右手で黒ひげの首を掴み白い光で覆った。

 

「おいやめろォォ!!!俺ァァ息子だぞォォォ!!!!」

 

白ひげは無言で強力な振動を起こすと大地がヒビ割れ、激しく土煙をあげた。

 

晴れると頭から大量の血を流した黒ひげがゆっくりと立ち上がった。すると白ひげは怒りで身体中から蒸気を噴き出しながらゆっくりと歩いて間合いを詰めた。そして右手に白い光を覆った。

 

「この怪物がァァァ!!!死に損ないの癖に黙って死にやがらねぇかァァァッッッ!!!!」

 

黒ひげが吐き捨てる様にいいながら銃を取り出して撃った。すると命中する寸前に光が消えて一瞬怯んだ。

 

「やっちまえェェお前らァァァ!!!!」

 

黒ひげが部下達にそう指示をすると銃弾と斬撃を雨の様に浴びせた。海賊達が白ひげの身を案じて叫ぶが、白ひげは一歩も動けず銃弾と斬撃を受け続けた。





以前書いていたBLEACHの作品の匿名を解除しましたので、興味のある方はぜひ読んでください。


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エドワード・ニューゲート 2

 

 

 

 

「んあっ弾切れだ...。」

 

満身創痍で暴れ尽くし、全身から垂れ流す様に血を流し続ける白ひげへ向けて黒ひげ海賊団達の攻撃が止むととうに死したと思われた男が口を開いた。

 

「お前じゃねぇんだ...。」

 

「まだ生きてんのかよ!!!!」

 

白ひげの気力を絞り尽くして発する様な声を聞いた黒ひげはおののくように大声をあげた

 

「ロジャーが待っている男は少なくともお前じゃねぇよ...。ロジャーの意志を継ぐ者達がいる様に...いずれエースの意志を継ぐ者が現れる。そうやって遠い昔から脈々と受け継がれてきた。そして未来...いつの日かその数百年分の“歴史”を全て背負ってこの世界に戦いを挑む者が現れる...。センゴク...お前達“世界政府”はいつか来るその世界中を巻き込む程の巨大な戦いを恐れている!!!

興味はねぇが“あの宝”を誰かが見つけた時...

世界はひっくり返るのさ...

誰かが見つけ出す...

その日は必ず来る...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”は実在する!!!!」

 

まるで遺言の様な白ひげの言葉はまるでかつてローグタウンで処刑されたゴールド・ロジャーを彷彿させる様な語り口であり、そして白ひげの最後の一言は再び海賊達を熱狂させ新世界へ選ばれた強者共が暴れに来ることとなる。

 

やがて彼のいう“ロジャーの求める男”が“ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”を見つけることを祈り、やがて意識はゆっくりとゆっくりと蒸発する様に消滅し始めた。

 

「貴様ッ!!!!」

 

センゴクの怒号は白ひげの耳へと届く事なく無情に“でんでん虫”から世界中へと広まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

許せ息子達とんでもねぇバカを残しちまった...

俺はここまでだ

お前達には全てを貰った...

 

感謝しているさらばだ...息子達...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宝や海賊のロマンに全く惹かれなかった男が欲しかったのは“家族”であった。誰もが当たり前に持つ存在であっても彼にはそうでなかったのかもしれない。どうあれ“白ひげ”はこの望みを叶えることができ、“新たな意志”へこの大海賊時代の頂点の座を託した。

 

 

 

「死んでやがる...立ったままァッ!!!!」

 

黒ひげが微塵も動かぬ白ひげを見据え驚きの声をあげた。親父の死を泣き叫ぶ海賊達の声がマリンフォードに響き渡る中、少し離れた場所で周囲に海兵しか居ない七武海最強の男は静かに静かに頬から雫を垂らしていた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜黒ひげside〜

 

 

 

「ハァ...ハァ...始めるぞ!!!!」

 

巨大な黒い布を白ひげへ被せ、部下(クルー)達が周囲を取り囲むとその中へ黒ひげが入って居なくなった。

 

 

 

モリアはただ死した“白ひげ(恩人)”との思い出を振り返りながら、周囲の海兵に気づかれる事なく頬を涙で濡らし続けた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

〜11年前〜

 

 

 

“モビーディック号・船長室”

 

 

 

 

 

「それで...出直すか空席の二番隊隊長につくか決めろよい...。」

 

椅子に座る白ひげ海賊団船長“白ひげ”、そして彼の側に立つ一番隊隊長“不死鳥”マルコ。

 

そして二人に向き合う様に立つ“王下七武海”ゲッコー・モリアが三人で船長室にいた。

 

 

 

モリアはこの数日前“白ひげ”と決闘をし敗れるものの治療を受け、更に白ひげの仲間(息子)に誘われていたのだ。モリアの強さは隊長達を凌駕しかねない強さであり、白ひげは空席の二番隊副隊長の座を約束していた。もちろん敵として“白ひげ”の命を狙いに来たモリアが隊長になるのは皆の信用を得てからの話だったが...。

 

「...俺は貴方の息子にはならぬ。命を見逃してくれた大恩があるとはいえ俺にはやらねばならぬ事がある。」

 

モリアは敵である自分を治療してくれた恩義と己の大望である“大海賊時代の終焉”を天秤にかけて長考による長考を重ねた。だが彼自身の大望を成し得る程の実力はなかった。かといって彼の夢を諦めるなど到底できなかった。

 

「グララララララ...だったらしょうがねぇ。」

 

白ひげは彼の苦渋の決断を吹き飛ばす様に豪快に笑いながら、巨大な瓢箪に入った酒を呑んだ。勿論その程度でモリアが納得するわけもなく口を開いた。

 

「だが恩義に背くのは筋が通らぬ...。俺は何を貴方にすればいい?」

 

『おめぇみてぇなハナッタレに何かをされる程この俺は落ちぶれちゃいねぇ!!!!』と言い返そうとした白ひげだったが、モリアの真剣で揺るがぬ覚悟を秘めた両の瞳を前にその様な事は言えなかった。そして瓢箪を地面に置くと静かに海賊の最強とされる己の心の遥か奥底の想いをモリアに語り出した。

 

「俺ァ...怪物だ、バケモノだと呼ばれてるが所詮俺も人の子...。最強とも呼ばれようが寿命には勝てねぇ。もし俺という傘を失った家族はどうなる?そしてこの海はどうなる?」

 

モリアとマルコは“最強(白ひげ)”らしくない問いに驚きを隠せなかったが、すぐさまモリアは彼の問いに答えた。

 

「覇権争いだな...。海賊、市民、海兵、多くの命が失われる。」

 

一瞬で正解を導いたモリアに白ひげは真剣な表情でモリアの瞳を見つめると彼の他には誰も託せぬかもしれない頼みをした。

 

「どの道俺はそう長くはねぇ老いた老兵だ。もし俺が死んだら...

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜黒ひげside〜

 

 

 

 

 

「黒ひげが出てきたぞ!!! “白ひげ”にも黒ひげにも何の異変はない!!!!」

 

巨大な黒い布から出てきた黒ひげとその隙間から見える白ひげの亡骸を見た海兵は特に以前と変わらぬ様子の二人を見て声をあげた。

 

「海軍ん〜...晴れて再び敵となるわけだ...。俺の力ってモンを見せておこう...。」

 

黒ひげが勿体ぶるように海兵達の前へ出ると彼の部下達はニヤニヤと笑っている。

 

「ゼハハハ...“闇穴道(ブラックホール)”!!!」

 

「う!何だ⁉︎」

 

地面を闇が覆い尽くす様に広がると海兵達の足元からゆっくりと沈み始め、やがて全身が呑み込まれた。

 

「これが俺のヤミヤミの実の能力(ちから)。そして...」

 

黒ひげがニヤッと笑って白ひげが振動を起こす様な構えをし、掌に白い光を覆うと大気へ叩きつけヒビを入れる寸前に荒れ果てたマリンフォードの戦場に途轍もない爆音が響いた。

 

『ボゴン!!!!』

 

圧倒的な武装色の覇気を覆った影の拳が白い光を抑え込んだ。そして光が全て影の勢力に侵されて消滅すると誰もが得体の知れぬ黒ひげへと立ちふさがる彼の存在を認識した。

 

黒ひげが目を見開き驚くと、死神の如く殺気を放つ男は異常なほど激しくしていた歯軋りを止め、儚げで渇いた瞳で黒ひげを睨みつけていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

「もし俺が死んだら...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おめぇが家族を守ってやってくれ...。」



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闇の深淵 1

 

 

 

 

「ゼハハハおめぇは関係ねぇだろモリア。もうくたばった時代遅れのじじぃに何の義理があるんだ?」

 

己の目の前に立ち塞がったモリアの様子から七武海としてではなく、一人の恩人を殺されたただの男だという事を理解した黒ひげは疑問をぶつけた。

 

「義理はないが...大恩がある。」

 

モリアがゴミでも見る様に見下すとゆっくりと口を開いた。

 

「どうしたお前ら(白ひげ海賊団)...

まだ戦争は終わってねぇ...

エースの意志をッ!!!!そしてエドワード・ニューゲートの意志を絶やすんじゃねぇ!!!!」

 

モリアの言葉で悲しみに明け暮れる海賊達は下げていた顔をハッとしてあげ、涙を拭き始め立ち上がり始めた。

 

「モンキー・D・ルフィを逃せ!!!!そいつは海賊の頂点(白ひげ)が認めた未来の王に成り得る器を持つ男だ!!!

 

死を恐るるな!!!

恐れとは自ら意志を挫くこと!!!

 

さぁ立ち上がれッ!!!!白ひげ海賊団ッ‼︎‼︎!!」

 

敵とはいえモリアの鼓舞により海賊の頂点(白ひげ)の想いを絶やすわけにはいかないと感じ、ルフィを殺さんとする赤犬へ向けて攻撃を仕掛けた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜マルコside〜

 

 

 

 

 

「あの野郎!!!親父を何度も殺そうとしといて何を今さ...ッ!!!」

 

一部の納得出来ぬ海賊達がモリアへ向けて銃を向けようとするとマルコが腕で制止をさせた。そして部下達へ口を開いた。

 

ティーチ(アイツ)はモリアに任せろ。あの言葉は本心だよい...。本当はこの戦争に参加したくなかったはずだよい。」

 

事実モリアはこの戦争で二つの天秤に惑わされていた。恩人か正義の要塞...護るべきモノはどちらも重く大切だった。そこで彼は己の立場を尊重し、白ひげ海賊団に牙を剥いた。そして白ひげ(恩人)の頼みを今成し得ようと動いたのだ。己の立場を揺るがしかねない彼の想いをマルコと11年前の出来事を聞いていた隊長達は“黒ひげ”をモリアへ任せた。

 

「マルコ隊長...一体どういう?」

 

「白ひげ海賊団の肩を持つなどモリアといえど所詮は海賊(クズ)...。」

 

マルコの側にいた海賊の一人が疑問をぶつけようとするが、ルフィを始末したい赤犬はそれを遮りモリアを睨みつけながら己を妨げる敵(白ひげ海賊団)へと距離を詰めた。

 

「後で皆に話すよい...。ひとまず赤犬を止めるぞ。」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜モリア・黒ひげside〜

 

 

 

 

 

「ふん...モリア俺の仲間になれよ。おめぇ程の男が俺と手を組めばこの世界を支配できる。おめぇの言う均衡ってモンがなくなるはずだ。」

 

黒ひげはモリアの鼓舞を気に入らなそうにしたが、彼ほどの男をみすみす見逃すわけはなく己の仲間にしようとした。だがモリアは冷たい目で睨み続けるだけだった。

 

「戯言をぬかすな...。俺は貴様の様な義理を通さぬ男は好かん。」

 

「ゼハハハ...“白ひげ”のいねぇ“白ひげ海賊団”みてぇな小物の衆にはもう用はねぇよ。」

 

黒ひげがモリアを挑発すると、彼は静かに口を開いた。

 

「一つ問おう...戦場において最も足手纏いになる者が何かわかるか?」

 

「あん?」

 

「臆病者でも敗者でもない...死んだ者だ。人は友人や仲間や恋人、肉親の屍を前に上手く剣は振るえない。故にもはや海兵、海賊だろうと何人たりとも貴様らに殺させはせぬ...

 

我が命が貴様の前で生ける限り。」

 

モリアがこれ以上黒ひげ海賊団による犠牲者を一人も出さぬと言い放つと黒ひげはニヤニヤしながら口を開いた。

 

「おいおい...俺たちゃ殺していいってか?連れねぇ野郎だ。」

 

「言うたろう...貴様は好かぬ。」

 

モリアは冷たく黒ひげの冗談を流すと、黒ひげはニタァっと笑い、右手にグラグラの実の白い光を...そして左手にはヤミヤミの実の闇を溢れ出させた。

 

「おめぇも理解したはずだ...ヤミヤミの能力とグラグラの能力を手にした俺は最強だ!!!!」

 

「最強だと?よほど脳への損傷が大きいと見える...。」

 

「ゼハハハ...流石にわかってるだろうが圧倒的に不利なのは傷を負ってる俺じゃなくて無傷のおめぇだ。」

 

黒ひげの言葉にモリアは何も言い返せなかった。確かにそうであるのだ。まずモリアがかつて白ひげとまともに戦えたのは“影鎧(ブラックローブ)”による鉄壁の防御、そして“影法師(ドッペルマン)”によるトリッキーな攻撃、そして白ひげより若い肉体と研ぎ澄まされた覇気である。

 

黒ひげの闇の手に捕まれば影の能力は発動できなくなり、無防備な状態となる。そこにグラグラの地震を叩き込まれればどうなるかは予想などする必要はない。更に白ひげの様に年老いてなく、覇気が弱体化していない黒ひげと覇気をかなり使い込んだモリアでは差は歴然だった。

 

更に能力の相性である。ヤミヤミの能力とカゲカゲの実は互いに性質は異なるとはいえ、影と闇では完全に上下関係があると容易に予想できる。つまり影であるモリアは闇からは逃れられない可能性が高いということだ。

 

つまりモリアは黒ひげの左手に一切触れることなく、最低限の覇気で同年代の肉体を持つ黒ひげの攻め続け勝利せねばならないのだ。

 

「ゼハハハ!!!だんまりかよ!!!!“黒渦(くろうず)”!!!!」

 

モリアは突如身体が黒ひげに引き寄せられ、初めて闇に引力の力があることを理解した。

 

モリアは闇の引力から逃れる事はできず、黒ひげの闇に捕らえられた。肩を掴まれ能力を封じられると黒ひげは右手に白い光を覆い、満足そうな声をあげた。

 

 

「ゼハハハ...あのモリアでさえも俺の前じゃ無力だ!!!!」

 

そして白い拳をモリアへぶつけると、大気が時空を歪んだと錯覚する程ヒビ割れた。二人の戦闘を見守る海兵達は黒ひげの振動攻撃が白ひげの放った振動を遥かに上回る事を見せつけられ容易に理解させられた。

 

モリアは武装色の覇気でガードをしたが、“影鎧(ブラックローブ)”のない無防備な肉体は黒ひげの覇気と振動に耐え切ることができずに、大量の血反吐をドバッと吐き、頭をガクンと前へ傾けた。確実に内臓を破壊したと感じた黒ひげは愉快そうな声をあげた。

 

 

「ゼハハハハハハ!!!!全てを引きずり込む闇の引力!!!!そして全てを破壊する地震の力!!!!俺こそが最強だ!!!!世界中のつまらねぇ野郎共!!!!これからは俺の時代だァァァッッ!!!!!!」

 

インペルダウンの囚人の落としたでんでん虫により黒ひげという新たな脅威に世界中の人々は怯え始め、そしてあのモリアさえ圧倒する力を手にした事を未だに信じられなかった。

 

 

 

 

 

「...ッ!!??」

 

黒ひげは突如右の手首に激痛が走った。見るとモリアの左手が己の手首の骨を握力でミシミシと言わせ、頭を傾けたまま口を開いた

 

「...................ない。」

「あ?」

 

微かな声を黒ひげは聞き取れず、聞き直すとモリアは勢いよく血に塗れた頭をあげて周囲に血の水滴を飛ばすと大声をあげた。

 

「“白ひげ”エドワード・ニューゲートの力は断じてこの程度ではない!!!!」

 

モリアは右手に出来うる限りの力を込めて黒ひげの右手首を真横から殴りつけた。『ゴキュリ!!!!』という身の毛のよだつ骨の軋み折れる音を響かせると黒ひげの右手は完全に有り得ぬ方向にへし折れていた。

 

「グァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!」

 

黒ひげは右手の想像を絶する程の激痛に悶え苦しんでのたうち回った。モリアは頭と口元から血をタラタラと垂らしながら、影を渦巻かせ一歩ずつ黒ひげとの間合いを詰めていく。

 

黒ひげは先ほどの白ひげの恐怖に劣らぬ程の絶望を感じた。そして先ほどと同じ様にモリアを蜂の巣にしようと部下達へ指示を出した

 

 

「野郎共やっちまぇぇぇッッ!!!!」

 

「「「「「「「「ッ⁉︎」」」」」」」」」

 

船長の一言で再び動こうとするが、何故か一歩も動けずその場に立ち尽くした。

 

黒ひげが部下達の足元に覇気の込められた影の針が突き刺さっていることに気がついた。そして前方からの常軌を逸する気迫を感じて前へ振り返した。

 

「ハァ...ハァ...テメェの闇は能力の使用不可であって“解除”じゃねぇんだろ?」

 

モリアが息を整えながら黒ひげへ言い放つと図星の様な顔をした。モリアは黒ひげの闇の引力に引き寄せられる僅かな時間に影の針を黒ひげの部下達の足元へ放ったのだ。

 

部下に頼らずに自分の力でどうにかするしかないと理解した黒ひげは右手を庇いながらゆっくりと立ち上がった。

 

「だったらこのまま沈んじまえ!!!このバケモンがァァァァッッッ!!!!」

 

無事な左手で“闇穴道”をして、モリアを闇に呑み込ませて閉じ込めようとした。モリアは足元からゆっくりと沈み始めたが全く動じなかった。そして目を瞑り、心の中である男を呼び出した。

 

「影とはこの世に存在す限り逃れられぬ宿命...

我が本気(高み)を見せてやる...

“黒ひげ”...

時に影は闇をも喰らう...。」

 

 

 

 

モリアがそう言い放つと万物の時が止まった。目の前には怯えながらも技を放つ黒ひげに二人の戦闘を固唾に見守る海兵達。彼らは微動だにしなかったが、ただ唯一モリアの精神のみは動き続けた。なぜなら彼は自分のもう一つの人格を呼び醒ましただけに過ぎず、これは極限まで凝縮された精神世界であるからだ。

 

 

 

モリアの精神の空間に7メートルはあろうかという恐ろしい男が現れた。彼の名はゲッコー・モリア...。奇しくも二人は同一人物である。かつて精神の攻防で肉体を奪い合ったなかであるが憑依をしたモリアは完全に己の支配下に置き肉体は奪いにくる事は無くなった。

 

 

本来のモリアは憑依モリアに対してもはや敵意を持ち合わせていなかった。彼の強力な精神力に太刀打ちできなくなったため、争うより仲良くした方が偽物とはいえ憑依モリアとある程度の会話や期間限定で肉体を譲る交渉もできるからである。

 

 

 

(キシシシ...よぉ半端野郎...確実にあの黒豚野郎は“白ひげ”の後釜を奪いにかかる。一つ確実に言えるのは確実に均衡は崩される。偽善者のおめぇはどうしたい?)

 

 

本来のモリアは恐ろしく高い声だが威圧や敵意を微塵も感じさせぬ口調で話しかけた。彼は偽物という以前に憑依モリアをいたく気に入り、彼の野望がどこまで世界に通用するかを見てみたくなったのだ。

 

「俺という存在はある時に光へ、ある時に闇へと形を変える。ゆえに闇でありながら純粋な闇でない俺では貴様の様に非情にはなれぬ。だが時にそうにならればならぬ時もある。さっさと俺に力を寄越せ。」

 

 

(キシシシ...おめぇに手を貸しゃ面白ぇモンが見られそうだからな。もしおめぇが腑抜けちまったらその時は容赦しねぇぞ...)

 

 

本来のモリアは珍しく憑依モリアへ真剣な表情を見せると、憑依モリアは軽く笑みを浮かべながら鼻を鳴らすと口を開いた。

 

「あり得ぬな...俺は俺だ。それ以上でもそれ以下でもない。」

 

その言葉を本来のモリアが耳にするとギザギザの歯を見せる様に笑うと、身体から影の塊を放出して憑依モリアの身体へとスゥと同化し、影という影が全身から溢れ出した。

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと目を開くと時は再び動き始め、モリアの身体は以前より遥かに強力で大量に影が纏われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モリアが己の狂気性を秘めた第二の人格を拒まず完全に受け入れし時...

 

彼の能力は新たなステージへと登りつめる

 

 






流石にダークサイドをこう使うと予想していた人はどれほどいますかね(笑)。作者としては初めからこう使うつもりだったので苦手な方はすみません。もう少しで戦争編が集結し、新世界編と映画編(予定)へと物語を進めていきます。楽しみにしててください。


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闇の深淵 2

悪魔の実の新たなステージ...それを人は“覚醒”と呼ぶ。能力者は稀に覚醒し、能力の系統ごとに影響は異なる。カゲカゲの実を含むパラミシアでは己以外にも影響を与え始める。

 

 

 

 

 

モリアが膝をついてしゃがみ闇が蠢く地面へ手を触れつぶやいた。

 

「“暗黒大陸(イロージョン)” 。」

 

モリアの右手からは影が渦巻き素早く地面へ侵食する様に広がり始めた。黒ひげの煙の様にゆらゆらと蠢く闇をまるで喰らい尽くす様に水平な影が広がっていく。闇は成す術がなく影の支配下におかれるとマリンフォードの地面は影に覆われ、モリアの支配下と化した。海賊達や海兵らは黒ひげの“闇穴道”とは違い地面に沈むことはないが、誰しもが“ある異変”に気がついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『万物の動きが止まり、視線と口以外は何一つ動かせなくなっていた。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで俺は動けねぇ!!!!」

 

黒ひげは大声をあげた。モリアを除く目に入る全ての動きが止まっているのだ。人も雲も風も土煙も微動だにしなかった。

 

「常識だが物体は動くと影も動く。だが俺はある程度の影を動かして物体を動かす事ができる...。覚醒により地面へと影を覆い尽くし万物の動きを封じただけだ...。」

 

原作のモリアには“影革命”という技があった。物体の影に“影法師”を潜ませて本体を自由自在に形を変えることができた。

 

そしてカゲカゲの実の覚醒により、地面に影の影響を与えた。つまりマリンフォード一帯に影を侵食させ、“闇穴道”ごと地面を影で覆い尽くしたのだ。つまり万物の物体の影を喰らい、影そのものを一時的に無くしたのだ。つまり影を持つ全ての物体、液体の動きを受け止めることができるのだ。

 

もっとシンプルに言うと気体を除く全ての動きを停止させる事がモリアのカゲカゲの実の覚醒による最大の特権なのだ。

 

 

「何だと...⁉︎じゃ何で俺の闇が⁉︎影と闇じゃ上下関係があってもおかしくはねぇが、影が上回るなんて思えねぇ!!!!」

 

「馬鹿か貴様は?付け刃程度の能力と研ぎ澄まされた俺の力を同格に見るなど滑稽...。単純に格が違うのだ。」

 

黒ひげがヤミヤミの実の能力者になったのは数ヶ月程度前であり、まだコントロールか生半可なところがある。それに対しモリアはカゲカゲの実を自由自在に操り、精密度は世界でも五本の指に入る程使いこなしている。更に覚醒という新たなステージへと上り詰めている。

 

仮に上下関係にあろうともその程度で勝敗が揺らぐ程能力者の争いは単純ではない。

 

「人も銃弾も土煙も...動きが止まってやがる。動かせるのは目線と口と思考回路...。」

 

黒ひげ海賊団の一人の“雨”のシリュウは慌てる他のメンバーとは違い、冷静に現状を分析した。確かに動きを支配したのであれば目線や口を動かせるはずではない。

 

「俺は万物の動きを支配できると言ったな?即ち一部の部位だけ自由にする事も可能だ。ここまでの精密さを出すにはかなり苦労したがな...。」

 

モリアは万物の動きを止める事が可能である。だがそれではつまらないのだ。だから口元と眼球を能力の対象外にした。元々人の内臓や筋肉は内部にあり影は存在しないため動くのは可能である。ただ影を一時的に無くしたため動くことはできないが、元々影のない内部では動かせることができる。

 

例えばモリアの影の支配下に置かれて動けない人間がいるとしよう...。更にその人間が体内に時限爆弾を仕込んでいたとする。体内であり影は存在しないため時限爆弾は機動し、爆発することはできる。つまり爆風が体外へ出てモリアへダメージを与える事が可能であるのだ。なぜなら元々地面にあった影は既にモリアの支配下であるが、爆風による影は新たに上書きされた影であるからだ。

 

つまり支配下にさえあれば内部を動かすことは可能であるが、外部は一切動かない。つまり臓器、血液、筋肉は動かせる。ただし表面...人で言えば皮膚か服は一切動かす事ができないため全身は動かせないのだ。

 

「おめぇだけ動けるなんぞ卑怯じゃねぇか!!!!」

 

「この影の支配下とはいえ強力な武装色の覇気さえ纏えば抵抗はあるものの動くのは可能だ...。だがこの戦場で覇気を使わず温存した強者などいるか?少なくとも俺が動けるのは元々影が必要ないからで貴様らが動けないのはただ“小物”だからだ。」

 

そもそも覇気とは弱点を突く以外に能力者の実体を捉えることができる唯一の手段である。覇気をより強力な攻撃をする“武装色の覇気”...。覇気は本来悪魔の実の能力の実体を捉えるだけであるが、その道の達人は実体のない攻撃でさえも軽減する事が可能である。

 

事実原作のパンクハザード編ではヴェルゴの強力な武装色はローの能力でさえも防ぐとドフラミンゴが言っていた。つまり武装色の覇気さえあれば実体が無くとも軽減ないし無効化ができるという事になる。ただそれは能力者の覇気に一定の差をつけなければならないのだろう。

 

 

事実原作ではローは覇気使いであり、ヴェルゴに能力を軽減させずぶった切られている。

 

恐らく『能力+能力に込めた覇気<覇気』という条件が満たせば可能であると思われる。

 

「とっ...“常闇”。」

 

黒ひげがモリアの通り名の通り名をつぶやいた。海軍は彼の影の能力を恐れてこの名を付けたが、図らずもそれが彼の真の力の名に相応しかった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜マルコ・ジンベエ・赤犬side〜

 

 

 

 

 

「これはモリアさんの“覚醒した能力”...。これは有り難い...ルフィ君のダメージは変わらずわしは休息をとれる。」

 

ジンベエはルフィから垂れて地面に落ちかけていたルフィから垂れた血の水滴は宙に浮いており、傷口から血が体外へ出る寸前で止まりこれ以上の出血を図らずも抑えている。傷口から血液が出る寸前であれば内部でないため動かないのだ。

 

ルフィとジンベエの外傷は治療さえすれば何の問題もない。ただルフィは兄を目の前で殺された事でかなりの精神的ダメージを受けたのだ。だが気絶をしており、インペルダウン、マリンフォードでの肉体的負荷が甚大であったため目を覚ますことはないとジンベエは判断したのだ。

 

それよりもルフィを抱えて逃げるジンベエの体力を温存した方がいい。休めるのは赤犬()も同様であるが赤犬()を抑える白ひげ海賊団も同じ条件である為、体力の回復により食い止める時間を稼ぎジンベエの体力を回復させるのは都合が良かった。

 

 

 

「モリアのヤツ...これほどまでに能力を...。」

 

マルコはかつて悪魔の実の力の暴走とも言えるモリアの過去を見た。それに対して当時とは比べものにならぬ程の能力精度である事に驚いた。

 

儂ら(海兵)にまで能力の範囲内にするとは裏切りじゃのぅ...憶えちょれよ。」

 

赤犬は動かぬ白ひげ海賊団から目を逸らし、目の端でモリアを睨みつけた。

 

 

 

***

 

 

 

 

〜センゴク・ガープ・黄猿side〜

 

 

 

 

「モリアめ...。儂等じゃ影の支配からは逃れられん。もうふた回り若ければ何とかなるものを...。」

 

センゴクは己の覇気と衰えた身体能力では影の拘束はどうにもならないと嘆いた。

 

「影と対極にある“あっし()”でさえも拘束するって事は覇気か能力、もしくは両方に差をつけられてるって事だよねぇ...

ゲッコー・モリア...怖いねぇ...。」

 

センゴクとそう遠くない所にいた黄猿は呑気にモリアの技の分析を始めた。それに対してガープは歯を激しく食いしばり赤犬への殺意を殺そうとしていた。

 

「...。」

 

 

***

 

 

 

 

 

〜モリア・黒ひげ海賊団side〜

 

 

 

 

 

「動かぬ貴様を屠るのは興醒めというモノだ...。格の違いを教えてやろう。」

 

黒ひげの足元の影がフッと消えると彼自身の影が拘束を解かれて自由に動ける様になった。

 

「ゼハハハ...後悔させてやる。」

 

黒ひげは思いっきり折れた右手首を掴んでグキッと強制的に戻すと激痛が走ったが、歯を激しく食い縛って悲鳴をあげなかった。そして不気味にニヤッと笑った。

 

「“影編交刃(シャドウクロス)”」

 

モリアは両斜めからのありったけの覇気を込めた強力な影の一閃を互いに細々と無数に交差させ、黒ひげへ放った。

 

「ゼハハハ!!!!おめぇの影なんぞ支配さえされなきゃ恐るるに足りねぇぇぇぇッッッ!!!!」

 

黒ひげは覇気を纏った振動を起こして破壊しようとしたが、虚無化してあるため振動をすり抜け、身体にぶつかる寸前で実体化し黒ひげを斬り裂いた。

 

黒ひげは網状に激しく身体を切り裂かれて尋常なく出血をするとゆっくりと仰向けにバタリと倒れた。

 

「ハァッ...ハァッ...ハァッ...ハァッ...。」

 

黒ひげは息も上手く吸えぬ程のダメージを受けて目を濁らせた。モリアはゆっくりと歩いて黒ひげの顔の近くでしゃがんだ。

 

「やはり貴様は小物だ。さっさと死ね」

 

かつての白ひげはこの技を冷静に対処したのに黒ひげはなす術なく致命傷を負ったからである。モリアは黒ひげのデコに人差し指を置いた。そして指から実体化した鋭い影を放出すると黒ひげの頭を容易く貫いた。

 

 

 

(クソッ!!!!クソッ!!!!クソッォォ!!!!俺の長年の計画がァァァァァッッッ!!!!)

 

 

 

黒ひげは薄れゆく意識の中で悔しさを滲ませる声をあげたが、それがモリアに届くことはなかった。




モリアの覚醒の技はかなり分かりにくいと思われますし、作者の気付かぬ矛盾点があるかもしれません。ご指摘を受けても反論できない場合もございますので、発覚した場合は温かい目でご覧ください...

少なくとも修正できる様な場合でなければという場合です。


ちなみに耳が聞こえるのは鼓膜が振動するからで、鼓膜は体内であり影ができないからです。


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戦争の終結と新たな時代へ 1

 

 

 

 

 

モリアが黒ひげの命を狩ると影の侵食が消え、戦場に居合わせた万物の物体は再び動き始めた。

 

黒ひげの遺体の下に影の円ができるとゆっくりと沈んで消えていった。その様子を見た開放され自由になった黒ひげ海賊団達は戦意を喪失して呆然していた。モリアがゆっくり立ち上がり見据えると次々に口を開いた。

 

「船長があっさりと...。」

 

七武海の会議に潜入して黒ひげの七武海入りを推薦したラフィットがつぶやいた。

 

「まっ...待つんだにゃ!俺はあんたの部下になる!!!」

 

“悪政王”ピサロはまだ死にたくないのか特徴的な口調で命乞いをした。

 

「ムルフフフ...とんでもない男ね。どう足掻いても勝てる気がしないわ...。」

 

“三日月狩り”カタリーナ・デボンは半ば死を受け入れた様子だった。

 

「やべぇな...死んじまった...。」

 

シリュウが太い葉巻を吹かしながら冷静に冷たく言い放った。

 

「それもまた運命...。ゴフッ...。」

 

病弱そうな馬に乗った病弱そうな男が血を吐きながら、船長の死を割り切った。

 

何を言わないメンバーは無関心か唖然、平静を保っていた。その様子を見たモリアは口を開いた。

 

「...我が旗下に加わりたいのか?」

 

黒ひげ海賊団の船員のハッとした顔を見て、モリアはニヤッと笑うと残酷に言い放った。

 

「許すわけがなかろう。船長と共に死に我がゾンビ(しもべ)となれ。」

 

船員の数だけの影の槍で心臓を貫いて殺した。そして倒れた遺体を船長同様に沈ませ終わるとモリアはガクンと膝を付いた。

 

「相変わらず反動が凄まじいな...。それよりはやく内臓の修復をせねば...。」

 

モリアは原作でのドレスローザでのドフラミンゴと同様に影を体内で糸の様に操り、破損した内臓の応急処置を行った。そしてふと海軍本部の影に身を隠していた“巨大戦艦”サンファン・ウルフの存在を思い出して視線を向けるがそこには誰もいなかった。

 

「まさか能力者...身体のサイズを操作する能力者。いやもしくは海へ逃亡したのか?」

 

モリアは思考を研ぎ澄ますが情報が少な過ぎた。だがインペルダウンの囚人で少なくとも黒ひげに恩義を感じるようなタイプとは思えなかったので深追いはしなかった。それよりも内臓の応急処置と覇気の回復を優先させた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

数分後

 

 

 

〜ルフィ・ジンベエ・クロコダイルside〜

 

 

 

 

「守りてぇならしっかり守れッ!これ以上こいつらの好きにさせんじゃねぇよッ!」

 

白ひげ海賊団の妨害を突破した赤犬がジンベエごとルフィへ攻撃を仕掛け、ジンベエの腹を貫いてルフィの胸辺りに傷を負わせ倒れていると、クロコダイルが“砂嵐(サーブルス)”で二人を吹き飛ばした。

 

 

 

この様子を見ていたモリアはクロコダイルの行動と態度に少しは驚いたものの特に友人のジンベエと白ひげが託した命を守ってくれた事に対する感謝以外の気持ちはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談だがもしモリアが記憶を失わず、原作知識を覚えたまま今日に至り、同じ状況であればこう思ったことだろう。

 

 

(うわぁ...アレだ。原作の七武海最弱グランプリがモリアになった決定的瞬間...。クロコは赤犬だけじゃなくてドフラミンゴやミホークとも少なからず戦ってたしね...。それに対して原作モリアは影で自分を強化しておきながらジンベエに一発でボコられて...後々消されちゃう。改変したとはいえ悲しいね...。)

 

 

と彼はそう感じただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤犬を押さえ込まんと再び白ひげ海賊団とクロコダイルが取り囲む様子を見てモリアはゆっくりと大の字になって地面に寝転がった。

 

(もう戦争には参加しなくていいだろう...。だが世界政府(天竜人)からの“最後の指令”に当たらねばならぬ)




サンファン・ウルフを逃したのは黒ひげ海賊団の中でもかなり伏線やプラトンに関係してる説などの考察がなされていたので生かしておきます。


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戦争の終結と新たな時代へ 2

「おい!大丈夫か?」

 

海軍の正義と書かれたコートを羽織っていない桃色の髪をした海兵が足元で動かなくなった海兵の身体を揺すっていた。その海兵の手には血に塗れたペンダントが握られており、それを開くと家族の写真だった。桃色髪の海兵“コビー”は歯を激しく食いしばりポタポタと涙を流し始めると一目散に走り出した。

 

 

 

***

 

 

数分後

 

 

 

「そこまでだァァァァァァァッッッ!!!!」

 

ルフィを逃す時間を稼ぐ白ひげ海賊団と悪の芽であるルフィを殺したがる赤犬の間で大声をあげて立ちふさがった。

 

「もうやめましょうよ!!!!もうこれ以上戦うのやめましょうよ!!!!」

 

コビーは涙を激しく流しながら赤犬へ声をあげた。海兵や海賊を問わずコビーという存在に気づき彼に注目した。だがコビーはただ言いたい事を言ったに過ぎなかった。彼の頭の中で消えゆく声が響き渡ったのだ。

 

 

だっ...誰か...

 

助け...

 

...『バタン』

 

 

「命がもったいない!!!!兵士一人一人に帰りを待つ家族がいるのに...目的はもう果たしてるのに...戦意のない海賊を追いかけ!!!やめられる戦いに欲をかいて!!!いま手当てをすれば助かる兵士を見捨てて!!!その上にまだ犠牲者を増やすなんて...

 

 

今から倒れていく兵士達はまるで...馬鹿じゃないですか!!!!」

 

コビーの叫びの様な演説はマリンフォードへ響き渡った。あのセンゴクでさえも少し心を動かされかけていた。

 

「あの海兵...実に見事。」

 

覇気と体力をある程度回復させたモリアは感嘆の声をあげる。今はただの名も無き海兵に期待の目を向けた。

 

「あん?誰じゃ貴様...。数秒無駄にした。正しくもない兵士は海軍には要らん!!!!」

 

だが赤犬はセンゴクやモリアとは異なり特に効果はなかった。右手にマグマを纏うとコビーへ向けて振り下ろそうとした。

 

「くそッ!まだ間に...来たか...。」

 

モリアが影で移動し、コビーへ向けられた攻撃を防ごうとするととある気配を感じ、その気配が先に赤犬の攻撃を食い止めた。

 

 

 

マグマの右手は大剣によって受け止められ、次第にその男が誰か皆が理解をし始めた。

 

「ん⁉︎」

 

己の攻撃が誰かに食い止められ、若き海兵は緊張からかゆっくりと気絶し倒れた。

 

「良くやった...若い海兵。お前が命をかけて生み出した勇気ある数秒は良くか悪くかたった今、世界の運命の大きく変えた。」

 

男は海兵を褒めるとマリンフォードの海岸に巨大な船が着港した。

 

そして地面に落ちた麦わら帽子を抱えると声をあげた。

 

「この戦争を終わらせに来た。」

 

四皇の一人“赤髪”のシャンクスが荒れ果てたマリンフォードに現れた。

 

突如現れた四皇にどよめく海兵と海賊達を他所に赤犬とシャンクスは向いあった。

 

「赤髪...。」

 

少し離れた場所でモリアがニヤッと笑いつぶやくとシャンクスは歩き出し、海軍元帥のセンゴクの近くにやってきた。

 

「両軍...これ以上欲しても両軍被害が無益に拡大する一方だ。まだ暴れたりないのなら...

 

来い!!!俺達が相手をしてやる!!!!」

 

シャンクスの後ろに赤髪海賊団の幹部が並びどよめく海兵、海賊達が静かになるとシャンクスは刀を収め語りかけた。

 

「全員...この場は俺の顔を立てて貰おう。白ひげ エースの弔いは俺達に任せてもらう。戦いの映像は世界に発信されていたんだ。これ以上そいつらの死を晒す様な真似はさせない...。」

 

シャンクスの予想外の発言に海兵が抗議の声をあげた。センゴクが歯を噛み締め口を開いた。

 

「構わん!!!!」

 

「すまん。」

 

センゴクが海兵らを黙らせる様に大声をあげると、自分の顔を立ててくれたセンゴクに軽く謝った。

 

「戦争は終わりだァァァァァァァッッッ!!!!」

 

センゴクのマリンフォードへ響き渡る一声により戦争は無事に終結、両軍被害は果てしなかったが“白ひげ”、エースという最大の悪の芽を摘んだ海軍の勝利として新たな歴史として語り継がれる事となる。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

数時間後

 

 

 

〜マリンフォード湾岸〜

 

 

 

 

 

 

 

「テメェ...モリアッッッッッ!!!!」

 

ドフラミンゴはモリアの背後に並ぶパシフィスタ軍団の猛攻により声をあげた。パシフィスタの半数は糸で斬り裂かれ機能停止しているが、流石に数という有利(アドバンテージ)は覆せない。

 

「どうだ?人間兵器では満足に暴れられぬだろう...。俺が相手をしよう。」

 

爆風に吹き飛ばされ倒れているドフラミンゴにモリアが声をかけた。

 

「テメェ...。“海原白波(エバーホワイト)”ッ!!!!」

 

ドフラミンゴが地面に手を触れると地面が巨大な糸の塊に変化し、ドフラミンゴの意のままに動き始めた。

 

「ほぅ...。」

 

「覚醒してるのがお前だけだと思ってんじゃねぇよ!!!!」

 

先端が武装色で硬化された無数の糸の塊がモリアへ襲いかかった。だがモリアは鼻で笑った。

 

「だが...脆い。」

 

影の一閃が素早くサッと真横にまたたくと、糸の塊が一斉に斬り裂いた。そしてその延長線にいたドフラミンゴをも真っ二つに斬り裂いた。

 

上半身と下半身を切り離したが、切り口から見えたのは血ではなく糸の断面だった。

 

「糸の分身か...。見えているぞドフラミンゴ。」

 

背後に現れたドフラミンゴが五本の指から糸を出して斬り裂こうとしたが、見聞色の覇気で何をしようか見通していたモリアが硬化した右腕で軽々と糸をガードした。

 

「このバケモンが...。」

 

「分身は得意分野でな。」

 

モリアは右手でドフラミンゴの顔を掴んでそのまま地面に力任せに叩きつけた。土煙が舞い、やがて収まると両手両足が4本の影の杭の様なモノが突き刺さり地面に繋がれている。そこからたらたらと血を流しドフラミンゴは悔しそうな顔をしたが、モリアはそれを見下す様に見ると口を開いた。

 

「お前が七武海になったのはマリージョアに眠る国宝の存在を知っていたから...。そして消されなかったのは単純にお前が強くて消せなかったから...。もうわかるな?」

 

ドフラミンゴはマリージョアを揺るがしかねない程の国宝の存在を知り、逃亡した。そして口封じの為に追手を差し向けたが、ドフラミンゴは全てを退けたり逃げ出した。やがて成長したドフラミンゴは天竜人の貢金を乗せた船を襲撃した。すると世界政府はドフラミンゴを始末するより利用した方がいいと考え七武海へ迎えた。

 

だがそれはドフラミンゴが強く天竜人の放つ刺客では討ち取れなかったからの話である。つまり討ち取れる程の人材さえいれば生かしておくもはや理由はない。

 

「フフフ...フッフッフッフッフッ!!!!天竜人の差し金か...胸糞悪りぃ野郎共だ。ところで俺を始末するとどうなるかわからねぇわけでもねぇよなぁ?モリア...。」

 

「...。」

 

ドフラミンゴの言葉に顔色一つ変えず何も言い返さないモリアに追い打ちをかける様に語り始めた。

 

「この世で白ひげという楔が消えた今、この海は大いに混乱する。そして確実に新世界の大物達は準備を整えるだろう。王座につかぬ番人の消えた海賊王という椅子をな...

俺が手綱を引いているんだ...

新世界の大物達の手綱をな...。」

 

ドフラミンゴは裏の世界でジョーカーとして新世界の強者達と取引をしている。その物資が消えてしまえば今度どの様な行動に出るかぎわからない。かといって生かしておけば新世界へ危険な物資の流通が止まらなくなる。どちらにせよリスクは大きい。

 

「そうか...だったら俺がその手綱を切り離してやる。そしてその手綱でお前の言う新世界の大物の首を全て絞めてやる。」

 

「なんだと⁉︎」

 

モリアが選んだのはドフラミンゴを消してこれ以上、新世界へ危険な物資を食い止めることだった。

 

「貴様を潰せば、少なくともカイドウとの“スマイル”の取引は消える...。お前だけじゃなく七武海という傘がなくなるんだからな...。そうすれば混乱によりカイドウの進出を遅らせる事とこれ以上の戦力の増加を抑えるのが可能になる。」

 

ドフラミンゴの最も大きな取引相手は四皇の一人“百獣”のカイドウ。そのカイドウに流す物資は“人造悪魔の実”...その名を『スマイル』。人造ゆえにリスクは大きいが悪魔の実という誰しもが欲しい力だ。欲しがる者は大勢いる。

 

「フフフ...だったらその隙を見てビッグマムが先に暴れだすだけの話だ。さらにそれを止めようとする赤髪に、“白ひげ”にとって変わろうとする新たな勢力に、それらを阻止しようと動く白ひげ海賊団の残党達...。

どう転ぼうとも新世界の大物達が暴れだし、大海賊時代最高の覇権争いが始まる!!!!

それこそおめぇの望む世界じゃねぇよな?

多くの市民が傷つくことになるぞ...。

フフフ...フッフッフッフッフッフッ!!!!」

 

仮にカイドウの戦力を食い止めるとしてもガラ空きの白ひげの縄張りを四皇の一人“ビックマム”が侵攻しかねない。どちらにせよ新世界は激しい戦乱に市民や海軍、海賊達が巻き込まれる。その事を容易に見抜いたドフラミンゴが高笑いをした。

 

「安心しろ...。この戦争で白ひげが死んだ時に一つ妙案が浮かんだ。今までは七武海として海軍という組織のしがらみのある者じゃなく、自由な海賊(七武海)として海賊(ゴミ)を狩る。

今まではこれが最善だと思ってた...。」

 

「“思ってた”?まさか...」

 

モリアは静かにドフラミンゴに語りかける。するとドフラミンゴはモリアの言葉の中に聞き流せないワードがあった。

 

「あぁ...白ひげが守っていた海賊王の座を俺が登り詰め、俺が世界を支配すればいい。“ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”を俺が見つけ、俺という抑止力こそが世界の頂点に君臨し、俺という存在が大海賊時代を終わらせる...。」

 

モリアは己が海賊王へなるべく新世界へ乗り込む決意を固めたとドフラミンゴに言い放つと、彼は荒れ果てたマリンフォードへ響き渡る様に大声で笑い始めた。

 

「フフフ...フッフッフッフッフッフッ!!!!おっかねぇ野郎だ。お前なら本当にやりかねねぇからタチが悪い!!!!」

 

ドフラミンゴがモリアという男であればこんな世迷いごととも取れる言葉を嘘ではなく、本気だと理解した。そして急に静かになると穏やかな口調で語りかけた。

 

「ふぅ...腐れ縁だがウマの合わねぇおめぇに一つだけ、頼みがある...。

 

俺の部下をお前の傘下に入れてやってくれ。七武海という傘の無くなれば俺のファミリーは崩壊しちまう。」

 

ドフラミンゴという男は天竜人に激しい怨みを持ち、この世界を破壊する事が夢であった。だが彼はその夢よりも大切なモノがある。それは己の家族ともいえる幹部のファミリーである。家族によって人生を大いに狂わされた彼にとって命をも投げ出せる幹部は何よりも大切だった。

 

「あぁ...ドレスローザに使いを出そう。」

 

「...こんな事をおめぇに頼むなんぞ予想できなかったがな。」

 

「それは俺もだ。」

 

モリアがドフラミンゴの頼みを受け入れ、元々最悪の仲だったのに二人は軽口を叩き合いニヤッと笑った。そしてモリアは右手に影を纏わせながら口を開いた。

 

「さらば“堕ちた天竜人”ドンキホーテ・ドフラミンゴ...

貴様は先に地獄で俺を待っていろ...

俺が良い土産話を持ってきてやる。」

 

「...楽しみに待っているよ。フフフ...フッフッフッフッフッ!!!!」

 

影血閃(ブラックブレット)”で影の槍を一本作り、高笑いを続けるドフラミンゴの心臓を貫いた。



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覇道への歩み



活動報告でのアンケートを取らせてください。このモリアさんとBLEACHの方が完結しだい新しく投稿する作品を考えています。参考にしたいのでご協力をお願いします


 

 

 

 

 

 

 

〜マリンフォード頂上戦争から数日後〜

 

 

 

 

 

“とある島”

 

 

 

 

「赤髪...モリア...なんと礼を言ったらいいか。」

 

ここでは頂上戦争で亡くなった“白ひげ”、“火拳”の葬儀が行われており、名を刻まれた墓石の側には遺品の帽子やナイフ、薙刀やマントが供えられ、その背後には白ひげ海賊団達の刀が突き刺ささっていた。

 

二つの墓石の前で中心に立つマルコ、右側には裏切り者で“白ひげ”を殺した黒ひげを仇打ちにしたモリア、そして左側には戦争を止めにきて二人の亡骸を無事にここまで連れてきた赤髪。白ひげ海賊団から見ると二人は恩人であった。

 

「敵でも白ひげは敬意を払うべき男だった。センゴクですらそうだった。」

 

「俺は約束を守っただけだ。恩を得るために動いたのではない。」

 

赤髪とモリアは礼には及ばないという心情であった。本来であればモリアはマリンフォードで敵対関係にあり、白ひげの腹を貫いたりオーズの胴体を狙った。更に多くの雑兵達を攻撃した。この場にいる事さえ不自然なのに白ひげ海賊団は立場と恩義の狭間にあったモリアが立場を選び政府の味方をしたというやむをえない事情をマルコから聞き理解した。そして白ひげ亡き後は約束通り白ひげの家族を守る為に尽力した。だから大半の者達は一部の反発者を除いてモリアに敵意を持ち合わせていなかった。

 

「じゃあ...俺達はもう行く。」

 

「あぁ...ありがとよい。」

 

赤髪は白ひげとエースの墓場を後にすると引き返し、己の部下の待つ船へ戻った。

 

「...。」

 

「...。」

 

マルコとモリアは赤髪が立ち去った後もその場にいた。二人は黙って白ひげとエースの墓を見つめているとモリアが口を開いた。

 

「“白ひげ”エドワード・ニューゲート...貴方は俺の目標だった。自惚れ...王になれると傲慢だったこの俺に海賊としての在り方を示してくれた。本当に感謝している...

 

願う事なら一度だけでも貴方と二人で酒を飲み交わしたかった...。」

 

11年前モリアは白ひげに挑み敗れた。だが今振り返ると海賊としての覚悟も現実も理解しておらず、“白ひげ(最強)”に見合うだけの実力さえもなかった。戦争へ挑む際には成長した自分は白ひげを対等の海賊になれたと思っていたが、それこそが傲慢で過信だった。まだ海賊として未熟な己を再び気づかせてくれた事に心から感謝していた。

 

「俺は貴方から頂いた享受は一生かかっても返せぬ程の価値がある。だからこそ俺は貴方の守りたかった(家族)を守り続ける...

マルコ...俺は七武海を脱退し、海賊王になるべく新世界へ出る。お前達白ひげ海賊団も俺と共に来ないか?」

 

「...。」

 

モリアはマルコへ白ひげ海賊団が己の傘下に加わらないかと提案をした。もちろん一番隊の隊長とはいえ独断で返事をして皆がすぐに従うという事にはならない。

 

「返事はまだいい...。俺も何かとせねばならぬ事がある。少なくとも白ひげの海域は早く抑えろ。俺が加勢しても構わぬ。」

 

モリアはマルコへ忠告をしてその場から去った。白ひげの家族を守るのであれば傘下にする必要はない。ただ援軍を与えればいいのだ。更にモリアは個人的には新世界の均衡を揺るがしかねない事なので都合が良かった。

 

モリアが白ひげ海賊団達からの何とも言えない表情に見向きもせず歩き続けた。そして海岸に己の腹心として連れてきたアブサロムがその場から離れてモリアの前で止まった。

 

「ボス...。ひとまず俺をシッケアールに送ってください。あの二人を迎えに行きます。」

 

アブサロムは真剣な表情で“くま”にシッケアール王国に飛ばされたペローナとアルフレッドを自分が迎えに行くと言った。海賊として尊敬し憧れていた白ひげの葬式だからという腹心の彼としての気遣いである。

 

「あぁ...すまない。二人を見つけたらでんでん虫をかけろ。」

 

「了解です。」

 

するとアブサロムの地面から影の円が揺らめいてゆっくりと沈んだ。周囲に誰もいない空間でモリアは天を見上げて固まるとやがて覇権争いで激動の渦に巻き込まれる新世界の王へなるべくゆっくりと動き始めた。

 

 




頂上戦争編終了です。原作の改変により2年後、パンクハザード編にドレスローザ編へと物語は進んでいきます。ちなみにBLEACHの方と一話ずつ交互に投稿していく予定ですので少し投稿頻度は半分になりますが、目標1日一話で頑張りたいと思います。ストーリー展開は完成していますので、あとは忙しさで決まります。
戦争編が丁度50話終わったのは偶然ですね。ほんとに長かった...


もしよろしければ感想や評価をお願い致します


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バギーズデリバリー 1 *〜新世界編〜*

手抜きです。すみません。


これより原作とはほんの一部だけ関係ない流れになる所がありますが、基本は変わりません。所詮は2次創作ですので気に入らないところは軽くスルーしてください。


 

マリンフォード頂上戦争からおよそ一ヶ月後

 

 

 

 

 

 

戦争は終結し、海賊たちは新たに空いた四つの席の一つ及びワンピース(ひとつなぎの大秘宝)を目指し、新世界へなだれ込んでいた。

 

膨れあがった海賊達を潰す、又は配下にしている男は単身でとある海賊達の明暗を分ける決断を問いに向かっていた。

 

 

 

 

「...“元バロックワークスMr.3”ギャルディーノ。ドルドルの実の蝋人間。元海賊王(ロジャー)船員(クルー)である道化のバギーと共にインペルダウンで大量の囚人を脱獄させた張本人。」

 

(良い人材だが...均衡を揺るがす事をしでかした。囚人は俺が狩り尽くせばいいが、道化のバギーは七武海になっちまったからな。どちらにせよ動かぬ訳には行くまい...。)

 

 

 

***

 

 

 

 

 

バギーズデリバリー予定地

 

 

 

 

「おうおう野郎共!!!さっさと働きやがれ!!!!ここがかの王下七武海の道化のバギー様の拠点となるのだァァァッッッ!!!!!」

 

新王下七武海となった“道化”のバギーにより解放されたインペルダウンの脱獄囚達が雄叫びをあげ、作業へ勤しんだ。

 

「それにしても私達は運がいい。一月前にはこんな派遣会社など作るとは思っても見なかったガネ...。」

 

彼らは一月と少し前にはインペルダウンで終わりなき拷問を受けていた。そして麦わらのルフィの侵入による混乱に乗じて他の囚人を解放しつつ脱獄。そして頂上戦争へ乗り込み名をあげ、政府からの七武海の任命により今に至る。

 

「ギャハハハハ!!!そりゃ兄弟!!!この俺様に運が向いてきたってことよ!!!!」

 

「金の匂いがプンプンするがね...。」

 

二人は実力は並み以下の実力しかないのに、並外れた強運と謎の過大評価により政府から七武海の地位を確立した。

 

だがその強運もついえかねない決断を二人は迫られていた。

 

「ん?あれはなんだ?」

 

バギーは遠くから何かがこちらに飛んでくるのを確認した。そしてそれが部下の一人である事を理解すると同時に爆音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ボゴォォォォォォォォォォォォン!!!!』

 

 

 

 

 

 

バギーらの横に立てかけていたテントが崩れ、部下の鼻の骨がグチャと潰れ血をポタポタ流しながら気絶していた。

 

二人は口を開いてポカンとしていると、向こうから切迫している部下の声が響き渡った。

 

「キャプテン・バギー!!!ヤツです!!!! 最近七武海を脱退したゲッコー・モリアが...『そう喚くな...今の所俺に戦闘の予定はない。』

 

元王下七武海のゲッコー・モリアがバギーズデリバリー(予定地)に来襲した。そして頬の肉をビクビクさせ青ざめた顔をしている二人を見下す様に見据えた。

 




ご報告がありますので、活動報告をご覧ください。


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バギーズデリバリー 2


この上なき手抜きです。次からちゃんとしますのでご了承ください


 

 

 

 

 

 

 

 

(モッ...モリアだとォォ!!! 俺様は神に選ばれたんじゃねぇのかよォォォォッッッ!!!!)

 

 

(すっごくマズイガネ!!!モリアは市民に害を加える海賊を狩り尽しかねない男...。それを解放した我らは間違いなく始末されるガネ!!!!)

 

 

 

二人は心の中で大声をあげ、己らの幸運の終わりを実感し絶望した表情を浮かべた。新旧の七武海同士であるとはいえ実力差は歴然であっからだ。。

 

更に彼は自分達のような海賊を毛嫌いしており、どちらも民間人に損害を与えた経験がある。そして先日のインペルダウンの騒動から自分達を始末しに来たとしても不思議でなかったからである。

 

「急なことで悪いが取引をしたい。あいつは俺の用も尋ねず襲いかかったため潰した。」

 

「おっ...おう...。」

 

モリアはバギーと取引がしたいと申し出た。彼の目的はMr.3の引き抜きとバギーズデリバリーの矯正及び殲滅である。

 

そしてモリアは部下を攻撃したのはやむを得ない事であると言い放つが、バギーはビビって何も言えなかった。

 

「見ろよあのキャプテン・バギーとゲッコー・モリアを...ありゃ生ける伝説の筆頭格の二人じゃねぇか!!!!」

 

「あぁ違いねぇ...あのモリアがキャプテン・バギーに取引を持ちかけにやってきたんだ!!!」

 

「おい!!!もしかして...モリアがキャプテン・バギーと同盟を結びたがってるんじゃねぇのか?」

 

「いやもしかしたら傘下に入れてもらう様に頼みに来たのかも...。」

 

元インペルダウンの囚人にしてバギーを崇拝する部下達が都合のいい解釈をしてお互いを見回すとテンポを合わせて雄叫びをあげながら、右手を天へ突き上げた。

 

「「「「「「バギー!!!バギー!!!バギー!!!バギー!!!バギー!!!バギー!!!バギー!!!」」」」」」

 

(オイッッッ!!!!何言ってやがんだよ!!!!あのモリアだぞ!!!! 俺なんかの傘下に...)

 

己の命の危機とは裏腹に能天気に騒ぎ立てる部下達を心の中で叫び、チラッとモリアを見ると彼はこめかみにビクッと筋を入れ、ご機嫌斜めの様子だった。

 

(ブチ切れそうだガネ!!! どうにかせねばいかんガネ!!!!)

 

(どちらにもひけねぇじゃねぇか!!!!だったら...)

 

二人は心の中で会話のキャッチボールを交わすと、バギーは意を決して口を開いた。

 

「静まれぃこの馬鹿野郎共がぁ!!!!」

 

バギーの大声に騒いでいた部下達はぴたっと止み、彼に注目を集めた。

 

「俺への来客に恥かかすんじゃねぇよ。作業へ戻りやがれぃ!!!!」

 

バギーの一言に一部の部下達は涙を流しながら、膝から崩れ落ちて声をあげた。

 

「流石だ...キャプテン・バギー。白ひげの首を狙っていた者同士だから敵なのに...あんたはライバルに恥をかかせぬようにと...。」

 

「キャプテン・バギー...器がデカすぎるよ。俺達じゃ計り知れねぇ!!!!」

 

「こうしちゃいられねぇ!!!作業へ戻るぞ!!!!」

 

部下達は再びバギーにさらなる心酔と勘違いを深める事となる。

 

これも一種の才能であった。彼には確かにカリスマ性というものを有している。だがそれに実力が伴っていないだけである。そしてその実力を買い被る部下達はバギーが海賊王になると信じてやまなかった。

 

そして完全にバギーがモリアに気を使っただけであると盛大に勘違いをかました部下達は先ほど当たっていた仕事に戻っていく。

 

 

(上手くまとまったガネ〜!!!)

 

 

Mr.3は心の中で絶叫した。

 

 

 

***

 

 

 

 

数分後

 

 

 

〜テントの中〜

 

 

 

 

「まずは要件の一つからだ...貴様らの創る予定の会社だが、気に食わん。」

 

 

((ですよね〜))

 

 

バギーとMr.3は人払いをしたテントにモリアを招き、話を聞いていた。彼らはモリアの言葉の一つ一つにビクビクし、決して彼の機嫌を損ねぬ様にせねばならなかった。

 

 

「俺の言葉の意味がわかるな?“今の所”戦闘の意思はない。」

 

 

(今更止めますなんて言えねェェよ!!!!)

 

 

(かと言ってモリアを敵に回して生き残る自信はないがね...)

 

 

 

モリアは従わぬのなら潰すと言い放つ。その顔からは冗談とは到底思えず、どうしていいかわからず2人は慌て始める。

 

 

「だが貴様らとて急に路線を変更するには少し手間取るだろう。俺の傘下に入れ...。俺は白ひげ海賊団の抑えた海域の支配圏を広げている。」

 

 

(傘下ってことか...俺としちゃ争って滅ぶぐらいならモリアの傘下として生き残る方が賢いよな?兄弟。)

 

 

(ただ問題なのは脱獄囚に私達が小物だとバレてしまうこと...。だけどいつかはバレることだがね。)

 

 

「脱獄囚達が格下のお前達に従うのは買いかぶっているからだ。いつか反乱が起きるのは抗えぬ未来...。」

 

 

(言い返せねぇぇぇッッ!!!!)

 

 

「だっ...だが政府直属の七武海が海賊の傘下に下るのはマズイことだがね。」

 

Mr.3がどうにかしてモリアの傘下入りを断ったとしても、無事に済む方法を考えて彼なりの答えを言い放った。

 

世界の均衡とは“海軍+七武海=四皇(の一角)”である。ある意味敵対関係にあり、政府の傘下となる七武海がいち海賊に従うのは少々無理があった。

 

(よくやった兄弟!!!俺はモリアからのオーラでちびりそうだ。)

 

バギーはMr.3の頭のキレに感謝しながらモリアの顔を伺うが、彼はそこまで甘くなかった

 

「そこは配慮するつもりだ。あくまでも建前でいい。会社の管理を俺達がやる代わりに敵対組織や海賊達との戦闘は俺達が請け負う。対価としては十分だろう。」

 

モリアにとって最善の解決策は会社の方針を管理しつつ、己の傘下にいれることである。どう考えても戦闘に自信のない2人にとってはかなりの好カードである事を理解していた

 

 

(つまりは...反乱が起きたら守ってくれるということだがね。)

 

 

(どちらを選んでも俺達は死ぬ可能性があるわけだ。だがモリアを選ばねぇと今死ぬ...)

 

 

((のる〔ガネ〕ぞ!!!))

 

 

 

 

***

 

 

 

 

一時間後

 

 

 

 

 

 

「野郎共!!!! 俺達バギー海賊団はゲッコー・モリアのさn...

 

 

(言っ...言えねぇぇッッッッッ!!!!かと言って今更反故にはできねぇぇッッッ!!!!)

 

 

バギーは先ほどMr.3と決めた傘下加入の話を緊急招集された部下達の前でしようとしたが、つい口ごもる。どちらに回ろうとも己の命を散らせかねないバギーの表情が少しずつ青ざめて様子を不審に思う部下達が声をあげる。

 

「どうしましたキャプテン・バギー⁉︎」

 

「体調でも悪いので?」

 

「“さn”って...もしかして傘下に入るのか?」

 

部下達は自身らのボスの表情から悪い話であるのを悟ったのか、モリアとバギーへ疑いの表情を向けざわつき始める。

 

 

(どっ...どの道()られんじゃねぇかよ!!!!だったら一世一代の大勝負じゃぁいッッッ!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モリアと同盟を結ぶことになったァァァァァァッッッッッ!!!!!!!」

 

バギーその一言に部下達は大声をあげて同調した。キャプテン・バギーとモリアが手を組めば四皇どころか海賊王への近道だと各々が勝手に深読みしてしまった。

 

バギーの発した言葉が先ほどの話と異なる事からモリアがこめかみに筋をビクッと入れた様子を見てMr.3の顔から血の気がひいていた

 

 

(救いようのない程やばいガネぇぇぇッッ!!!!)

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜テント内〜

 

 

 

 

 

 

「約束が違うではないか?俺は同盟と傘下は別ものだという認識だが...。」

 

「すまねぇ...でもよぉ...。」

 

「まぁ...いい。血の気の多い部下らに傘下になると明言するのは少々キツいか。ただ俺の命には従わせる。」

 

「「はい...。」」

 

同盟者であるモリアへの配慮の為略奪は禁止 戦争などの戦力としての派遣海賊傭兵会社として運営することとなる。

 

そしてバギーには商才があったのか、はたまた需要が多かったのか盛大に栄える事となる

 

 

 

「ところでMr.3...。俺の配下に来ぬか?俺は貴様を高く勝っている。クロコダイルのように使い捨てなどせん。」

 

モリアはMr.3とバギーの過去など把握しており、その上での取引と勧誘である。彼は確かに民間人に損害を与える海賊を始末する。だが最終的に平和への礎となるか、モリアが当人に殺すのは惜しいと思わせる程の価値があり改心するのであれば別だった。

 

今回ではMr.3は殺すには惜しいと思い、バギーら海賊派遣会社は平和への礎になると考えたのだ。戦争とは悪というの名のついたエゴである。いくら綺麗事を並べたところで民間人に害を与えた以上悪であり、モリアの殲滅対象の一つとなる。

 

バギーの傘下である屈強な海賊達の加担により戦争が早く終結する可能性が高いと感じたからである。そもそも相応の戦力が欲しがり、要請するのはより財力に余裕のある方である。

 

戦争において優位に立つのは財力のある方で戦争(それ)を終わらせる為に呼ぶ易いと判断した

もちろん劣勢の側が要請する可能性も低くはない。だが勝算の低い場合に第三者であり、七武海とはいえ海賊の手を借りるとは思いにくい。

 

なぜなら一般人から見れば略奪をされる懸念の方が大きく、そうされても七武海であるまめ海軍は手出しができない。万が一そうなれば自分らの保身に関わるからである。

 

 

「きゅ...急過ぎるがね...。買いかぶっちゃ困る。私はまったく強くないガネ。」

 

Mr.3は両手で拒む様に振りながら声をあげた。だがモリアは淡々と口を開いた。

 

「弱いのなら俺がお前を強くする。お前ならば我が側近へ迎えよう...。」

 

 

(とんでもないがね...私があのモリアの幹部など買い被りにも程があるがね...)

 

(だがよ兄弟...断っちまうとここで死ぬぞ。さっきの俺の同盟発言で確実に機嫌が悪くなっちまってる。)

 

 

「わかっ...わかったがね。その代わりバギーズデリバリーに害を加える者を全力で排除するのが条件だがね。」

 

「市民を傷つけたり、悪戯に均衡を崩しかねない行為以外により生まれた敵は排除しよう。政府の強制招集におりには顔の割れていない強力な部下を預ける...。討ち取った者は全てバギー(貴様)の手柄にせよ。」

 

「了解だガネ。」

 

「兄弟...。」

 

「このバギーデリバリーを任せたがね。」

 

Mr.3は立ち上がりモリアの元へ向かおうとした。そしてバギーは勢いよく立ち上がり号泣しながら彼へ抱きついた。するとMr.3もまた泣き始め彼と熱い抱擁を交わした。

 

 

 

 

 

 



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新世界への挑戦者

 

 

 

 

 

 

 

 

〜マリンフォード頂上戦争から半年〜

 

 

 

 

『“死の錬金術士”ゲッコー・モリア、四皇へ』

 

 

半年前に行われたマリンフォード頂上戦争にて“白ひげ”、“火拳”が死に四皇の一角が崩れた。誰もが新世界の海が荒れると予想したものの、実際に荒れたのは最初の二ヶ月程であった。なぜなら当時王下七武海であったゲッコー・モリアが戦争後に脱退し、白ひげ海賊団の縄張りの海域を僅か一ヶ月で抑えたからである。海域を熟知している“不死鳥マルコ”率いる“白ひげ海賊団”の残党達の大半がモリアの傘下になったのが大きな要因の一つである。

 

元々白ひげとは敵対関係にあったものの、信頼関係があり互いを尊重していたのだろう。少なくとも頂上戦争では互いが認め合っている様に見え、仲間を殺して白ひげ海賊団を裏切った“黒ひげ”がケジメを付けようとした白ひげを卑怯な手段で殺害した。その時に真っ先に黒ひげに立ち塞がったのはモリアであり、白ひげ海賊団もまたモリアに黒ひげの“手打ち”を任せた。

 

ここからは我が社の予想だが、事前に密約があったと思われる。『白ひげ死後の白ひげ海賊団の面倒を見る』ということだろう。頂上戦争ではモリアは白ひげを討ち取るチャンスは素人目でも何度かあった様に思われた。だが彼は何かしらの理由でそれをしなかった。恐らくモリアは白ひげを討ち取れなかったのではなく討ち取らなかったのだ。そうでもなければ敵対関係にあった男の傘下などには入らないだろう。

 

 

少なくともモリアは現段階で最も海賊王に近い男であるのは間違いない。縄張りの海域は今でも広がり始め白ひげ海賊団だけでなく白ひげ海賊団の傘下をも己の戦力は迎え、更にモリア本来の屈強な親衛隊の幹部、豊富な財力にゾンビ軍団、更に元々の傘下の海賊団や新たな傘下の海賊団などがある。確実に頭数は他の四皇より多く、死んでもゾンビとしてこの世に再生するため優位は揺るがない。

 

それに近日、また一人実力の高い男がモリアの親衛隊へ加わったと発覚した。たった一人で男は先日海軍の軍艦を悪魔の実の能力のみで5隻を戦闘不能にして見せた。政府は彼を大きく警戒するとの発表である。

 

 

 

 

 

〜著者アブサ〜

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜スリラーバーグ〜

 

 

 

 

「アブサロムの書いた社説だ。傘下に入ったのは間違いないが確認のためだ。」

 

モリアは彼の書斎でアブサロムの書いた社説の原稿を男へ渡した。その男は“白ひげ海賊団船長”マルコである。彼はその文を読み終えるとモリアの方を見た。

 

「問題ないよい...。俺達としては自由にやらせて貰っている。文句なんて言える立場じゃないよい。」

 

あのエースと白ひげの葬式の後、彼らは正式にモリアの傘下に入った。

 

戦争が終結後マルコは白ひげ海賊団にへ白ひげがモリアに頼んだ事を皆の前で話した。そして葬式の後の傘下に入るかどうかの提案を皆に伝えた。初めは大いに反発したが、白ひげのいない白ひげ海賊団では縄張りを守れず、更に白ひげに怨みを持つ多くの銀メダリストからの襲撃など予想された。

 

モリアの傘下に下る条件はただひとつ...彼の海賊団の掟を守ることで、その掟はそこまで問題なかったため、一部の納得しない者のみは白ひげ海賊団から抜け“新白ひげ海賊団”を名乗ったが、予想された通りに怨恨と名をあげる為に毎日の様に襲撃を受け壊滅的被害受けた。そして生存したおよそ半数はモリアの傘下を願いでて今に至る。

 

モリアは彼らを受け入れ、かつて“白ひげ海賊団”の抑えた海域を全て制覇した。そして現在は力を蓄える時期に入り、資金や武器、悪魔の実などを率先して掻き集めていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

〜そしてマリンフォード頂上戦争から2年〜

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪吹き溢れる雪の中に一人の青年が初雪を踏む音を響かせながら大木へ歩む。そして大木の足元にある巨石に載せた麦わら帽子の目の前で立ち止まり呟いた。

 

「早ぇなぁ...もう2年か...。」

 

そして雪に埋もれた“麦わら帽子”を掴んだ

 






次から原作の新世界編へと突入しやす。


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新生“麦わらの一味”

 

 

 

 

 

 

 

 

〜六ヶ条の掟〜

 

 

 

 

其の一 民間人、政府関係者には如何なる害を加えてはならない。但し自衛及び友を守る為なら例外である

 

其の二 己及び仲間の命はシンボルより優先せよ

 

其の三 仲間間での争いは禁止であるが対等な条件での喧嘩、そして鍛錬は例外とする

 

其の四 裏切り者は即座に始末せよ。但し止むを得ない場合は例外とする

 

其の五 世界の均衡は己及び仲間の命の次に尊重すべきであるが、時としてそうでない場合もある

 

其の六 主人が錯乱すれば始末してよい。主人とはゲッコー・モリアのみである

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

〜シャボンディ諸島〜

 

 

 

 

2年前、かつて海賊“麦わらの一味”船長モンキー・D・ルフィが天竜人を殴りつけて七武海の一人の経営していた店にて立て篭もり事件を起こした。

 

麦わらの一味(彼ら)”の起こしたのはその大事件だけではない。“王下七武海”サー・クロコダイルを討ち取り、司法の島“エニエスロビー”を落とし、“インペルダウン”から囚人達を脱獄させ、マリンフォードに二度も乗り込んだ

 

だがこの2年間麦わらの一味は一切の活動の痕跡が見られなかった。世間もかつての出来事と忘れ始めていた。その間、“麦わらの一味”は未熟だった己らの牙を研いでいたのだ

 

 

そしてその一味がシャボンディ諸島に再び現れたという情報を得た海軍が彼らを捕らえに迫ってきた。

 

そして麦わらの一味船長“麦わら”ルフィ、“海賊狩り”ロロノア・ゾロ、そして“黒脚”サンジを確認した部隊が銃をむけ投降する様呼びかけた。

 

『ホロホロホロホロ...』

 

舌を出しており、可愛らしさを漂わせるゴースト達が海兵たちの身体を通り抜けた。すると一瞬で膝をついて倒れ始める。

 

「俺は...シラミになりたい。」

 

顔を青ざめさせながら、ネガテイブになって倒れていた。すると海兵達の後ろから二人の人影が現れた。

 

「おい...あれは確か。」

 

サンジとゾロの目線の先にはゴスロリファッションの可愛らしい女の子とこの騒ぎにイライラしている人型のウサギがいた。

 

「やっぱりお前らか?この大騒ぎ。」

 

「あぁ面倒くせぇ、この上なく面倒くせぇよ。あぁ怠い、この上なく怠ぃよ。」

 

四皇“死の錬金術師”ゲッコー・モリアが部下の航海士“ゴーストプリンセス”ペローナとその副官“黒兎”アルフレッドである。

 

ペローナとアルフレッドはバーソロミュー・くまにより、“シッケアール王国”へ飛ばされた。まもなくゾロが飛ばされた数日後に王下七武海“ジュラキュール・ミホーク”が現れた

 

戦争後ゾロはミホークに弟子入りをした次の日にモリアとアブサロムが迎えにきた。だが“くま”に敗れた事からアルフレッドも修行の為の2年間の休暇を願い出て許され今に至る。そしてアルフレッドに付き添ったペローナは方向音痴なゾロを心配になったのか、この島まで連れてきたのだ。

 

「ウォォォォッッ!!! 君はスリラーバークのォォォ!!!!」

 

ゾロの呆れた声はサンジの感性により掻き消された。そしてサンジはくにゃくにゃしながらペローナへ近づく。

 

「お前ら、なんでまだこんなとこにいるんだ?」

 

「はぁぁぁぁん?」

 

「この島にまで送ってやった恩人になんて言い草だ?私がいなきゃお前、今頃...ん?」

 

ゾロの言葉に苛立ちを覚えたアルフレッドは見下す様な顔をし、ペローナは少しだけ大きな声をあげた。

 

ゾロは確かに正論だと感じバツの悪い顔をして反論できずにいると、サンジがくんくんとペローナの匂いを嗅いでいた。

 

「本物の女...。」

 

「当たり前だろうがなんの病気だテメェ!!!!」

 

ペローナが叫ぶと同時にアルフレッドはペシッとサンジを殴って、地面に叩きつけた。

 

「んだよ。どっかで経験済み(デジャブ)かと思ったらアブサロムのお友達(ただの変態野郎)じゃねぇか。」

 

アルフレッドが幸せそうな顔をしているサンジをゲシゲシ踏みつけながら悪態をつく

 

「それはそうとこの島に軍艦がきてるぞ。」

 

「なんだと⁉︎」

 

ペローナの言葉を耳にしたゾロは声をあげると、アルフレッドは空気を読み足を退けた。すると五人は影に覆われると、愛らしい声が響いてきた。

 

「やっと見つけたァァァッ!」

 

「おぉッ!!!」

 

空から巨大な怪鳥が現れ、その上にはツノの生えたタヌキの様な生き物が乗っていた。

 

「“綿あめ大好き”チョッパー。ミンク(同族)なのかな?」

 

「さっさと行きな。私らもスリラーバークに帰りたいんだよ。」

 

そして三人はチョッパーに言われ、怪鳥の背中に乗って去っていった。そしてその道中にルフィはあの二人が誰なのかをようやく思い出しかけていたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

およそ一ヶ月後

 

 

 

 

 

〜魚人島付近の海底〜

 

 

 

 

 

“魚人島”でホーディとバンダーデッケンの野望を打ち砕き、ヒーローとなった麦わらの一味は盛大に見送られ次の目的地へ向かっていた。

 

「どうしたルフィ?」

 

珍しく考え込んでいた船長の様子を見た一味の一人が彼に声をかけた。

 

「ここ上ったら...。シャンクスの海だ。」

 

 

そう呟いたルフィはかつて出会い己に影響を与えた者達の言葉を思い出し始めた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「この帽子をお前に預ける。俺の大切な帽子だ。いつかきっと返しに来い。立派な海賊になってな...。」

 

シャンクス(目標)...

 

 

 

 

 

 

「お前なら必ずやれる。俺の弟だ。」

 

エース()...

 

 

 

 

 

 

 

 

「確認せぇ!!! お前にまだ残っておるものはなんじゃ!!!!」

 

ジンベエ(恩人)

 

 

 

 

 

 

 

 

「頂点にまで行って来い。」

 

レイリー(師匠)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気にいらねぇなら潰しに来い。」

 

モリア(強者)

 

 

 

 

 

 

 

「その最後の海を人はもう一つの名前でこう呼ぶんです。次の時代を切り開く者達の集う海。その海を制した者こそが海賊王です。」

 

コビー(友達)

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「この海底を抜けたら世界最強の海だ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行くぞ野郎共ォォォ新世界へェェッッッ!!!!」

 

 



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<番外編> 魚人島

 

 

 

 

 

 

 

 

マリンフォード頂上戦争から三ヶ月後

 

 

 

 

 

〜魚人島〜

 

 

 

 

 

魚人島の王の間にて三人の男が座り話し合いをしていた。

 

一人は魚人島の“リュウグウ王国”の王ネプチューン、魚人海賊団船長にして元王下七武海ジンベエ、同じく元王下七武海ゲッコー・モリアである。

 

モリアは白ひげ海賊団とバギー海賊団を傘下にし、次々と縄張りの海域を広げ四皇の一人に数えられた。そしてその頃から一ヶ月後に友人であるジンベエに大事な話があるからと魚人島へ招かれたのである。

 

 

 

「この魚人島をお主の縄張りにして欲しいんじゃもん。」

 

「ほぅ...。」

 

巨大なシーラカンスの魚人ネプチューンはモリアへそう伝えた。魚人島は無法者が新世界へ向かう為の最も安全なルートの1つであるため、昔から海賊による犯罪行為が多発していたが、亡き白ひげが縄張りにすることにより魚人島の治安は守られてきた。

 

しかし、白ひげは戦死したことにより多くの海賊達は新世界へ雪崩れ込んでいた。

 

所詮は欲に目が眩むだけの連中が大半のため、人間の十倍の握力を持つ魚人の中でも屈強な兵士達により討伐されている。

 

ネプチューンはいずれ自分達の軍隊では手に負えぬ程の海賊団が現れることを危惧し、新たに四皇の傘下に入りたいと考えた。そこでモリアに頼みたいと彼と交友関係のあるジンベエを呼び、パイプ役を担ってもらった。

 

「魚人島は“白ひげ”のオヤジさんの縄張りじゃった。そして今の“白ひげ海賊団”はモリアさんの傘下、魚人島もワシらもそう(傘下に)して欲しい。」

 

ジンベエは魚人島を縄張りにして海賊達の手から守ってくれるのであれば、己の海賊団も傘下にするべきだと言う。彼は七武海でありながら白ひげ海賊団と交友が深く、ほとんど傘下のようなものだった。

 

「だが一つ、気がかりがある。俺は“白ひげ海賊団”の海域は大半抑えた。だが他の四皇と強さを見比べると見劣る。」

 

普通であれば縄張りが増え、更に元七武海の海賊団が傘下になるのは戦力として申し分ない。しかしモリアは己の戦力強化より魚人島に住む民達の方が大事であると考えた。

 

「頭数の話ではない。結束力、つまり組織としての強さだ。俺が戦力を掻き集めて日が浅い、つまり組織の為に尽力する者が少ないのだ。四皇クラスと抗争にでもなれば敗れるのは目に見えてる。」

 

「ワシらの話を断るということか?」

 

「む〜ん...。」

 

ジンベエは少し残念そうな顔をし、ネプチューンはモリアの言うことが正しいと感じ始めたが彼の傘下にしてもらうのが無難ではないのかと思考を研ぎ澄ませる。

 

「あぁ、“ビックマム”がいいだろう。あの女は危険だが、種族間の争いを嫌い菓子さえ上納すれば問題ない。」

 

「だが...。」

 

“ビックマム”は四皇の一人シャーロット・リンリンの通り名である。彼女は甘いお菓子が好物であり、己のシンボルを貸す代わりに大量のお菓子の上納をさせている。だが彼女には1つ厄介な点がある。それはお菓子を上納せねば島を滅ぼすのだ。

 

この点は大変危険であるがお菓子を上納さえすれば己らの安全を買えるのだ。他の四皇と比べれば比較的自由にさせて貰える。

 

「確かに魚人島のお菓子は名産品、彼女に口に合うかもしれん。」

 

ネプチューンはモリアの言う事に完全に納得すると、モリアは軽くフッと笑うとその場から立ち上がった。

 

「確かに危険だが、今の俺は不安定過ぎる。無難な方を選ぶがいい。俺は拒みはせぬし、妬みもせん。」

 

そう言い放つと彼は背を向けてゆっくりとその場から歩み始めた。

 



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“老体の忠義”

長らく更新を止めていて申し訳ありません。
家のゴタゴタやら資格やらゲームにのめり込んだやらで、こっちへ労力を回せませんでした。

とりあえず、当時に原作に出てなかった悪魔の実をオリキャラに与えてましたが、出て来ちゃったので補正です。

無理矢理感は凄いですが、これが最善手だと考えたのでご了承ください。更新は可能であれば続けようと思います。


 

 

 

〜スリラーバーク〜

 

 

 

 

 

恐ろしく静かで薄暗い夜、霧に覆われた巨大な漂う()は四皇が一人の拠点である。

 

世界に散らばる幹部達は極秘に緊急招集を受けて、城の中の一室に集まっていた。

 

部屋の奥にとても血色の悪い表情をした老人がベットの上で横たわり、弱々しい手を息子のような年代の男の頬へ添える。

 

ゲッコー・モリア、“白ひげ”亡き後新たな四皇の一角になったその男は抵抗せずに受け入れる。老人はゆっくりと残りの命を削るかのように言葉を絞り出す。

 

 

「モリア様、貴方は優し過ぎる...。私の言うことがわかるでしょう?」

 

モリアは何も言わない、彼自身がそれを一番理解していたのだ。老人の名はギルノス、かつてCP(サイファーポール)の者だった。

 

彼はフィッシャー・タイガーの起こした前代未聞の大事件“マリージョア襲撃事件を手引きしたのがモリアであることを政府関係者で唯一見抜き、彼の部下へなるべく馳せ参じた。

 

彼の思慮深さと能力はモリアの勢力を一層高めるに至った。そして彼は最もモリアの内面を理解する者の一人となった。

 

 

(モリア様、世界を制するには時に非情にならなければならない時もある。時に市民を殺し、部下を見捨て、仲間を利用する気概が貴方にはない。これもまた強さなのです。)

 

 

モリアはギルノスの自分への忠義に涙を流す。政府関係者として世界の秩序を守るという点において尽力を尽くし、静かに過ごすべき余生の10年間を主人の為に使ったのだ。

 

モリアは表情を一切変えずに彼の言葉を聞いていた。だが頬から雫が流れ落ちる。

 

「お前の最後の言葉が、それか...?」

 

彼はギルノスの言葉に軽く歯ぎしりをしながら涙を流し続ける。

 

ギルノスは最後の力を使い、己の能力を使用する。彼の弱点、弱みかも知れない存在を消し去ろうと頭へ触れる。

 

 

(貴方の記憶は私が完全に消し去りましょう。知らない方がいい、貴方ほどの男が消したがった記憶です。立ち止まってはいけない。世界は今も動き続けている。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完全消去(パーフェクト・デリート)

 

 

 

 

 

 

モリアの頭に触れた彼の手が一瞬ピカッと光ると、主人の過去の記憶が完全に消えた。

 

 

彼は記憶を消すことや改竄することが可能な能力、かつてはモリアは転生者としての記憶を彼に消させた。しかし、悪魔の実の効力は永遠ではない、能力者が死ねば大方の効力が消えるからである。

 

つまり彼が死ねば彼の行った能力が戻ってしまう。だからこそ彼は死ぬ前に一つの手を打った。モリアの部下になった時から記憶を消したり改竄するとしても完全に消すことはしなかった。

 

モリア自身が転生する前の記憶が必要な時が来ると考えたからということや、記憶を完全に消し去った事を後悔する時が来るかもしれないと考えたからである。ギルノスはそれに従っていたが、モリアの記憶に関しては良くは思ってなかった。

 

モリアは自分が転生者であることを誰かに話したことがない、そしてギルノスはその記憶(過去)が彼自身の弱みだと考え、その弱みを完全に消すことが海賊王への近道だと彼は推察していた。

 

能力を発動し終えると仲間達の顔を一通り一瞥し、最後にモリアをジッと見つめた

 

「...貴方こそが海賊王に。」

 

弱々しくも天へ拳をかかげ、ゆっくりとその手は地へ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幹部達が次々とギルノスの名を叫び、涙を流す中にモリアは何も語らずゆっくりとその部屋を出ようとドアノブに手をかける。

 

部下達がなぜギルノスに声をかけないのかと主人を問い正そうとするが、最も古参のペローナとアブサロムが涙を流しながら制止する。老人の最後の願いを主人が叶えようとしていることを理解したからだ。

 

 

「ギルノスは死んだ、俺は非情になろう。」

 

彼は部屋から出て地下室への扉の一つから中へ入る。酒ビンや新聞の一面などが捨てられている地面を奥へ奥へ進むと憎しみと憤怒の表情を浮かべる“ゾンビの影の持ち主達(モリアに敗れた強者達)”が一斉にモリアへ飛びかかった。

 

スラム街から落ちぶれていたがモリアに助けられたというギルノスの記憶の改竄が消えてしまったことから自由を求めて徒党を組んで彼を殺そうと決起したのだった。

 

 

 

 

モリアは地面へ触れると己の覚醒した能力を発動させて囚人達を一瞬で拘束した。そしてリーダーの元へ迷わずゆっくりと歩いた、リーダーは顔を強張らせて必死に影の拘束から逃れようとするが、十分にもがけない。

 

モリアはそのままソイツの横を通り過ぎて2、3歩進むと突然、立ち止まって口を開いた

 

「...貴様らは俺の囚人だ。檻の中で生き続けろ。死ぬ権利すら与えぬ。」

 

そう言い放ち終わると同時にリーダーの首が胴体から斬り離された。まるで剣客の居合のような技を素手でやってのけたことを辛うじて理解すると囚人達は絶望したかのように項垂れると同時に自分達はこれからも地下で生き、地下で死ぬということを理解した。

 

 

 

 

 

この日を境にモリアは己の甘さを捨て、海賊王へなるべく動き始めた。

 

 






記憶を完全に消したのは能力の効果が切れて転生者に戻ってしまうので、構成上完全に消去せざるを得ませんでした。転生モリアを楽しみにしてた方は申し訳ありません。


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パンクハザード 〜ほぼ原作のみ〜


パンクハザード編、お待たせしました。漫画を片手にセリフを書くのは手間がかかるし、原作を読まれた方も退屈だと思ったので可能な限りショートカット、他の文が比較的手抜きです。
(今回は9割は原作通りです。)

申し訳ありません。


 

 

 

 

 

 

 

 

〜とある島付近の海域〜

 

 

 

 

 

 

「助けてくれぇっっ!!!」

 

麦わらの一味の乗る船“サウザンド・サニー号”に危険信号が届いた。海軍の使う罠の常套手段であることを忠告されたにもかかわらず船長のルフィは即座にでんでん虫をとった。

 

「あぁ寒い!!!ボスですか?仲間達が次々に斬られてく!!!侍に殺されるッッッ!!!!」

 

でんでん虫により通話ができたことを理解したのか、受話器の向こう側の男が切迫している声で救助を要請した。

 

「おい!お前名前は⁉︎そこどこだ⁉︎」

 

船長にして最悪の世代の中でも最も問題児であるとされる“麦わら”のルフィはその男がどこにいるのか尋ねる。

 

「誰でもいいから助けてくれ!!!ここは...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“パンクハザード”ッ!!!!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

少し離れた海域

 

 

 

 

 

「パンクハザードだと?」

 

盗聴用でんでん虫から助けを求めた者と麦わらの一味との会話を盗み聞いていた“G-5”に所属している海軍中将“白猟”スモーカーはその地名に聞き覚えがあるようだった。

 

「しかし、スモーカーさん。パンクハザードは四年前の事故以来、完全に封鎖された無人島です。」

 

スモーカーの副官である女性の名はたしぎ、赤いメガネにアップされた黒髪、端正な容姿とは裏腹に天然で少し抜けたところから部下に“大佐ちゃん”と呼ばれ好かれている。

 

「そうだな、現在生物が住める様な環境じゃねぇが手掛かりはそれしかねぇんだ。」

 

嫌がるような部下達をよそに船の進路をパンクハザードへ変更した。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

〜パンクハザード〜

 

 

 

 

麦わらの一味は目の前にある燃え盛る島がパンクハザードだと判断し、船を近づける。

 

そしてクジ引きで誰が島内へ入るかを決めた後、航海士のナミの技で4名が向かう。

 

しばらく進むと世界政府のマークと厳重に封鎖された柵があった。入り口にはパンクハザードと書かれた看板があり、この島で間違いないということを確信した。

 

一味は柵を躊躇なく破り、中へ侵入する。

 

「たいそうに封鎖してあんのはここが燃えて危なくなったからか?それとも元々ヤベェ施設なのか。」

 

「この島を“記録指針”ログポースが示さないというのもひっかかるわね。」

 

“海賊狩り”のゾロ、“悪魔の子”ニコ・ロビンは災害か事故か“何か”で建物が燃えさかっている様子や不審な点から何かを感じつつも更に奥へ奥へと突き進む

 

「お〜い!!!さっきの奴いねぇか⁉︎助けに来たぞッッッ!!!!」

 

熱いのに寒いという矛盾を一味は感じながらも救助を要請してきた人を探し続ける。

 

 

突然、ルフィ達の目の前の建物がガラガラと音を立てながら、ゆっくりと起き上がった

 

「うわ巨人⁉︎」

「いや、巨人よりもデケェぞ。」

「いや、空想上の生物だ、存在するわけねぇ。」

「だけどこの姿、そうとしか思えない。」

 

 

唸り声をあげながら完全に立ち上がったソレは無数に並ぶ巨大で鋭利な牙、鱗で覆われた鉄のような皮膚、ひとたび羽ばたけば全てが吹き飛はせるかのような羽根ーーー、

 

 

それはドラゴンだった

 

「何奴だ...。」

 

確かに仲間の声でない誰かの声がした

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜サニー号〜

 

 

 

 

船番をしていた麦わらの一味のクルーは全員が催眠ガスにより倒れており、その船内を数名のガス対策をしたスーツを身に纏った者達が船内を物色するように歩き回る。

 

「人間二人に人間らしき鉄人一体、ペット一匹。」

 

「全員縛り上げろ。マスターに捧げよう。海賊が消息を絶っても誰も騒ぎやしない。」

 

 

 

 

***

 

 

 

〜ルフィ、ゾロ、ウソップ、ロビンside〜

 

 

 

 

 

ドラゴンを倒してバーベキューをしていた麦わらの一味は背から人間の下半身が飛び出ていることに気がついた。

 

それにルフィとウソップが興味を持ち、引き抜こうと、下半身の腰の部分に手をかける

 

「抜くぞ。」

 

ルフィがそう言うと力を込めて下半身を引き抜こうとする

 

「おい、何奴だ!手を離せブ。」

 

下半身はもがいて抵抗しようとするが、ドラゴンの身体からスポンと抜けた。だがそこに上半身の姿はない。

 

ルフィは慌てふためきながら叫ぶように謝るが、それはスタンと立ち上がった。

 

「おぉ、離れられたでござブ。」

 

下半身からは血など出ることはなく、まるで自我を持っているかのようだった。

 

「どういうこと?こっちに身体が千切れた跡なんてないわ。」

 

驚くメンバー達をよそにロビンは冷静に観察をする。ドラゴンの背には上半身がありそうではなく、完全に独立した下半身が存在しているだけだった。

 

「逃しはせぬぞ、あの戯けた七武海めが!」

 

謎の下半身はそう叫び、逃げ出そうと走りだすが、興味を持ったルフィにすぐに捕まった

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜ナミ、サンジ、チョッパー、フランキーside〜

 

 

 

 

 

閉じ込められた密室の中でサンジは扉を破壊しようと蹴り続けるが、打撃を吸収する性質を持つのか壊れない。船にいたはずのブルックが連れ去られていないことから死体だと勘違いされたようだった。

 

やがて全員が目覚めると誰かの声が密室で響いた。

 

「お主達、“判じ物”は好きか?異国語でパズル。」

 

皆は自分達の声ではないことを理解して、声の主を探す。

 

すると、8個に別れた人間の顔のパーツがそこにはあった。

 

メンバーはその顔を組み立てながら、会話を重ねた。やがて自分達が海賊であると知ると眼を血走らせて激昂する。彼は海賊が吐くほどに嫌いであるらしい。

 

「どいてろ、コーラは満タンだ。“ラディカルビーム”。」

 

フランキーはサイボーグである。己の身体を改造し、コーラを燃料にパワーをあげたりビームを撃ったりすることが可能なのだ。

 

今回は両の手からビームを扉へ向けて放った。命中すると高温からか扉が焼けて溶け落ちる。メンバーは密室から脱走しようとするが、サンジだけは首だけの男を見る

 

「お前どうすんだ?俺達が海賊じゃなきゃ、一緒に逃げたかったんじゃねぇのか?」

 

「黙れ!行け海賊。」

 

「一人で首だけで逃げられる見込みはねぇだろ、ワノ国の“侍”」

 

サンジは自分達が緊急信号でこの島にやって来たことを伝え、頭部の髪がまげ を掴んで持ち上げる。彼はワノ国特有の髪型である まげ を知っており、これがそうであると見抜いていた。

 

「拙者、己を恥じるような人斬りはせぬ、この島に息子を助けに来た!!! 邪魔する者は何万人でも斬る!!!!」

 

サンジはその首の息子への想いを見て何かを感じながら、そのまま掴んで密室を飛び出した。他のメンバーからは人斬りが怖いと言われながらも自分が責任を取ると言い放つ

 

 

 

 

 

メンバーとサンジに抱えられた生首は奥にあった扉を開いた。すると中には巨大な子供達が大勢いる。メンバーは巨人族の子供達かと考えるが、中には普通の子供もいるようだった。

 

彼らは深く考えずにこの部屋を通り抜けようとするが、目の前を一人の子供が遮るように顔を出す。

 

「助けて!」

「ねぇお姉ちゃん、私達を助けて」

「僕たち、もう病気治ったよ」

「おうちに帰りたいよ、ねぇ助けて」

 

次々と子供達が救助を求める。皆は怪訝な顔をするが、逃亡中の彼らにそんな余裕はない。だが一人だけは立ち止まる。

 

「よーしよし、子供達。そこにいるのは怖い人達だ。こっちにおいで。」

 

先ほど船にいた全身ガスマスクの人間が銃を持って数名入ってくる。

 

「ナミさん、早く!」

 

サンジは立ち止まって子供達の様子を伺っているナミに早くこの場から去るべきだと言う

 

「助けよう、子供達。」

 

意外にも冷静で頭のキレるサンジは即座に反対する。今、自分達は追われてる身で仲間の安否すらままならない状況だ。ある意味当然の反応だったかもしれない。

 

「子供に泣いて助けてって言われたら、もう背中向けられないじゃない!」

 

「もう構わねぇ、ガキごとやっちまえ!」

 

マスターと呼ばれる男が子供を傷つけることを許さないため遠慮をしていたが、催眠弾であり脱走者を逃す方が重罪だと考え、銃口を子供達ごとメンバーへ向ける

 

ナミの言葉を聞いたサンジは無言で催眠銃の上へ飛び乗ると、持ち主を蹴り飛ばした

 

 

 

***

 

 

 

〜マスターside〜

 

 

 

 

「マスター、おられますか?」

 

全身ガスの対策されたスーツを身につけた男が自身の上司に報告をしにやって来た。

 

目の前にはガス状の塊が蠢いて何やら薬品のようなモノを調合している。

 

「あぁここだ。」

 

マスターと呼ばれたガス状の塊は返事をする

「海岸にG-5の軍艦が一隻...。」

 

「軍艦⁉︎なんとしても追い払え!毒ガスを散布しろ。」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

数分後

 

 

 

 

〜スモーカー、たしぎside〜

 

 

 

 

 

 

「スモーカー中将、ムリだ。まだ毒ガスが漏れてる、四年前のペガパンクの化学兵器の失敗で島は腐っちまってるんだ。」

 

部下の一人が引き換えそうと提案をする。

 

「いや、こんなにガスが発生してる方が不自然だ。」

 

スモーカーはサングラスの奥から見える鋭い目で、このガスが人為的なものだと見抜く

 

「2年前、ここは火も氷もねぇ、ただの島だった。そして有害物質もだ。」

 

「だから赤犬と青雉はパンクハザードを決闘の場に選んだ。天候を変えちまうほどの大ゲンカをな。」

 

2年前、マリンフォード頂上戦争後に“海軍元帥”センゴク、“英雄”ガープは現役を退いた。そして政府は新たなリーダーを選出することとなった。政府の意向は二つに分かれ、決闘で新たな元帥を決めることとなった。

 

勝者は赤犬、敗れた青雉は海軍を去り、四皇の一人に加担しているという噂が流れている

 

 

 

 

 

スモーカーは大砲で氷を破壊しながら進み続ける。その様子を確認した研究所の人間が内部の報告先へ連絡を行う。

 

 

 

「マスター、スモーカー中将がやがて研究所へきます!対応はどうします?」

「誰もいちゃいけねぇんだ、お前らも見つかるな、俺も出られねぇ。」

 

どうやって海軍を追い払うかの算段がつかずに、両者の間に沈黙が流れる。すると奥から二つの足音が響いてくる。二人とも若い男性である。

 

一人は目つきが悪く黒い斑点のある白い帽子をかぶり、自分の身長ほどもある日本刀を持った男

 

そしてもう一人はさらさらの白い髪に白い肌、細い目からは得体の知れぬ何かを感じさせるような雰囲気を醸し出していた

 

「ボクもソレは避けときたい。頼むわ。」

 

さらさらの白髪の若者はニコニコしながら、横の無愛想な若者へ追い払うように頼む。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜スモーカー、たしぎside〜

 

 

 

 

 

海軍が扉の入り口を封鎖しており、スモーカーはブザーをならして家主を待つ。

 

やがて巨大な扉がゆっくりと鈍い音を響かせながら開く

 

「俺の別荘になんのようだ?白猟屋。」

 

海兵たちは驚きを隠せずに震え始める者もいる。なぜなら彼はあることを引き換えに海軍本部へ海賊の心臓を100個届けた狂気の男だからである。

 

そのあることとは“王下七武海”の称号、男の名前は“死の外科医”トラファルガー・ロー

 

 



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パンクハザード2

手抜きは原作通りのところだけです。漫画を片手に打ち込むのは骨が折れます。ご了承ください。


 

〜サンジらside〜

 

 

 

 

 

子供達を助ける事に決めた彼らは走りながら子供達から事情を聞く。自分達が一年で病気が治るという病気にかかっており、両親から病気を治すよう頼まれた人達に連れてこられたらしい。

 

チョッパーは子供達の様子から病気であるようには見えないと思っていた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜スモーカー、ローside〜

 

 

 

 

 

スモーカーは七武海であるローのことを初めから信用していないため、追及を行なっていた

 

自分達の目的である麦わらのルフィがこの島にきた可能性とヒューマンショップと頂上戦争での繋がりからローが彼らを匿っていると考えていた。

 

そして何度も中を見せろというが、ローは断り続ける。

 

「お前らが捨てた島に海賊の俺がいて何が悪い?ここにいるのは俺一人だ。」

 

ローは海賊であり七武海である。仮に法律を犯していても許される権利を持っている。つまりスモーカーの追及を受ける義理はない

 

そうやって押し問答を続けていると研究所の奥から、ガタガタという振動と数名の話し声が近まってくる。

 

するとローの背後から子供達を連れて来た麦わらの一味(半分)がでて来た。あっけにとられる海軍とローは何も言えなかった。

 

「マズイぞ、海軍だ。出口を変えよう。 」

「あれ、海軍ていい人達じゃないの?」

「やだ!あの人達ヤクザみたい!」

 

海軍を見つけた麦わら一味は素早く逃げ出そうと振り返った。そして子供達もまたG-5の顔が怖いという理由から彼らに着いて行く。

 

 

「...いるじゃねぇか。」

「...いたな、俺も驚いてる。」

 

ほんの少しの間をおいてスモーカーは彼に問い詰めたが、ローもまた驚いていた。

 

 

 

すると、ローは先手を打つ。ルーム(・・・)を広げて船を解体(・・)した。

 

海軍達が呆気にとられる隙に後ろへ振り返り、彼の能力を発動させる。

 

 

 

***

 

 

 

 

〜シーザー、白髪の若者side〜

 

 

 

 

先ほどのローと海軍、麦わらの一味と子供達の出来事を見ていた者からの報告がなされる

 

「マスター、例の脱走した海賊達がガキどもを連れて、海軍と鉢合わせたようです。」

「もうこの島は怪しまれた!スモーカーを殺したところで軍は異変を察知する!」

 

慌てふためくシーザーを他所に若者は軽く伸びをして立ち上がった。

 

「狼狽えんどきや、シーザー君。ボクが出る。」

 

シーザーは冷や汗をかきながらも彼が味方である幸運に感謝した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜スモーカー、ローside〜

 

 

 

 

スモーカーとローはすぐさま戦闘に発展した。双方は高いの能力を駆使して戦う。

 

「この島で何を企んでる⁉︎」

「場所を変えなきゃ、見えねぇ景色もあるんだ、“メス”」

 

ローはスモーカーの隙を見て、身体から心臓だけを切り離した。そして鼓動し続ける心臓をローが手にするとスモーカーは意識を失ったかのように倒れた。

 

彼はオペオペの実の改造自在人間、ルームというサークルの中にモノが存在すれば、マッドな医者の手術台の上にいるも同じだ。

 

そしてオペオペの実は人格を入れ替えたり、心臓だけを抜き取ったり、物体をバラしてくっ付けたりなどができる。

 

 

スモーカーの心臓を手にしたローが研究所へ戻ろうとしていると、遠くから声が聞こえて来た。

 

「あれ〜⁉︎お前は〜ッ!」

 

道中で襲ってきた茶ヒゲという下半身がワニの海賊をタクシー代わりにして研究所へ向かっていた“麦わら”のルフィとその仲間達がいた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜麦わらの一味side〜

 

 

 

 

 

研究所の裏口で“麦わらの一味”全員が集まる。そしてローの能力によって人格を入れ替わった仲間達を見てルフィは爆笑していた

 

そしてこの島へ一味がやってきた原因である救難信号の侍が首であり、ルフィが連れてきた下半身が彼のものであるとして返した。

 

そして彼は誘拐された息子を取り戻すために動いていたが、邪魔をされたので斬ったということ、そして自分を斬ったのはローである事を話した。

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜スモーカーside〜

 

 

 

 

「研究所の脇の船にCCというマークがあった、ローの裏にいるヤツに心当たりがある。」

 

サングラスに葉巻をくわえ、服のボタンを外した“たしぎ”が静かにそう呟いた。部下達は普段優しいたしぎが怖くなり、普段怖いスモーカーが優しくなったことに戸惑っていた

 

「大量殺戮兵器の第一人者、“シーザー・クラウン”。」

 

そんな部下に構わず結論を導き出した。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜麦わらの一味、茶ヒゲside〜

 

 

 

 

 

麦わらの一味はここに住むマスターという男の話を茶ヒゲから聞いていた。

 

「ここは元々、政府の科学者ペガパンクの実験施設で、兵器や薬物の研究所だ。囚人達を人体実験してたーーー、

...だが、四年前にペガパンクが化学兵器の実験に失敗し、有害物質をまき散らした島を政府は捨てやがったんだーーー、

...置き去りにされた囚人達にある救世主が現れた。我らがマスターだ。彼は自分の能力で毒ガスを中和し、部下として受け入れてくださった。そして、ローが島にやってきて能力で俺たちに足をくれた。」

 

茶ヒゲが麦わらの一味へ向けてマスターとローの話をすると、賛美の声をあげる。だが、サンジはふと気がついた。自分が連れてきたはずの侍がいなくなっているのだ。ブルック曰く胴体だけの人間を見たと言い、教えたらそこへ向かったという。

 

サンジは自身がケジメをつけるしかないと考え、出ようとするが、ナミはローの能力で自分の身体を持つサンジを一人にすれば何をするかわからないため、仲の悪いゾロを行かせることにした。

 

 

 

 

 

しばらくすると、一人の子供が苦しみはじめた。まもなく子供達全員が次々と頭を抱える

 

「いつもこの時間は何してる?」

「検査の時間があって、キャンディを貰うんだ、シュワシュワと煙が出てきてアレを食べると幸せな気分になるから楽になるかも。」

 

その言葉を聞くとチョッパーの目の色が変わった。この症状と原因に気がついたのだ。

 

「これは覚醒剤だよ!この子達は毎日少しずつ体内に取り込んで中毒になってる!」

 

「研究所から逃さないためだ!お前達のマスターは子供達をどうしようと言うんだッ!!!」

 

茶ヒゲへそう問い詰めるが、何もわからないという様子だった。すると子供が暴れ始めた

 

 

 

 

***

 

 

 

 

研究所内

 

 

〜シーザー、ロー、モネside〜

 

 

「“麦わらの一味”、ローと同じ最悪の世代で、政府が危険視してる一味。復活したと聞いてる。」

 

緑色の髪に背中にはローの能力によって背中に羽根をつけられている女性、モネはシーザーの秘書であり情報に精通してた。

 

「ロー、貴方は知ってるわよね。2年前のシャボンディとマリンフォードで“麦わら”と関わってる。」

 

「なに?お前が呼び込んだって事はねぇよな。」

 

ルフィとの関係を怪しんだシーザーは自分のポケットの中から銃を取り出して、ローへ向ける。

 

「玄関で鉢合わせるまで俺はヤツらの存在を知らなかった。ここがバレると俺にも都合がわるいんだ。」

 

シーザーはふと一年半前にローが島へ訪れた時の事を思い出していた。

 

 

 

 

 

〜1年半前〜

 

 

 

 

「パンクハザードに滞在を?」

「この研究所には政府の研究の証跡が残ってるはずだ。この研究所と島を自由に歩き回れりゃそれでいい。」

「確かに害はねぇかもな。」

「今のボスに許可を取りたい。」

「は?ボスは俺だ。」

「ゲッコー・モリアだ、早くしろ。」

「訳知りだな。」

 

シーザーとローは会話をしつつ己の“でんでん虫”をボスであるモリアの番号は繋ぐ。

 

『どうしたシーザー?』

「ボス、七武海のローにパンクハザードに滞在させてもいいか?」

『代わってくれ。』

 

 

 

〜数分後〜

 

 

 

「話は理解した。俺もお前の七武海の権限でパンクハザードとシーザーが守られるのは良いメリットだ。」

 

七武海とは政府により非合法活動を認められる権限のことをいう。パンクハザードには己の部下を置いてあるが、完全ではない。シーザーを七武海であるローの部下という事にしておけば政府は介入できない。

 

「敵、主に海軍が来ればお前が対応しろ。それならば許可をしよう。」

「礼を言う。」

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

〜麦わらの一味、茶ヒゲside〜

 

 

 

ウソップの睡眠作用のある弾を打ち込み、一時的に眠らせる。そしてチョッパーがマスターという人物を許さないという決意を固め、親元へ返してやろうとルフィへ言う。

 

 

 

すると裏口に何発か砲撃の音が響いてくる。茶ヒゲはその音に目を覚まし、自分を助けに味方が来てくれたのだと理解した。

 

「茶ヒゲだな、お前も殺しのリストに入ってる。」

 

彼の目の前に一瞬で大砲のような銃を持った巨人が現れて、銃口を向ける。

 

「...ッ!マスターから俺を助けろっていう依頼だろ?」

 

巨人はめんどくさそうな反応をすると“でんでん虫”を取り出して彼へ聞かせる。

 

「これを聞け」

 

『あ〜、それとクソみてぇなヒゲ面で元々マヌケで有名な...、あぁ茶ヒゲ。アレも足手まといだ。もういらねェ。』

 

己の敬愛するマスターが自分を切り捨てようとしている事に気がついた彼は涙を流しながら訴える。

 

「ウソだ、マスター!」

 

巨大な銃口は無慈悲に火を吹いた

 

 

 

 

 

 

 

その銃声を聞きつけて研究所へ向かったルフィ達が戻ってくる。流石に不利だと感じたのかナミが人格のフランキーは生け捕りという約束のため連れて行く。

 

 

 

 

ルフィはフランキーが人格のチョッパーを連れて、ナミの奪還へ向かった。そして目の前の巨人を倒した。

 

仲間がナミを連れて逃げ出そうとするが、ローが現れて一人を軽く倒した。

 

 

 

 

「トラ男!」

 

ルフィはローにあだ名をつけてそう呼ぶが、彼は気にせず自分の用事を伝える。

 

「少し考えてな、お前に話がある。」

「?」

 

ルフィはナミを拘束していた鎖を歯で砕くとローの話に耳を貸す。

 

「新世界で生き残る手段は二つ、“四皇の傘下に入る”か、“挑み続ける”かだ。お前、誰かの下につきてぇってタマじゃねぇよな?」

 

ローはほんの数回の交流でルフィの性格を見抜いていた。

 

「あぁ、俺は船長がいい。」

 

ルフィは当たり前だと言わんばかりにそう答える。

 

「だったらウチと同盟を結べ。」

「同盟?」

 

ルフィは聞きなれない言葉を聞いて聞き返すが、ローはそのままニヤリと笑い結論から先に伝える。

 

「四皇を一人、引きずり落とす策がある。」

 

 

 

 

ルフィはローの話を一通り聞くと、同盟を組むと答えた。すると彼は静かに今のパンクハザードについての情報を伝えた。

 

 

「...ここに厄介なヤツが一人いる。二年前、かの“四皇“ゲッコー・モリア”の元へ馳せ参じた元海兵の男だ。」

 

元々パンクハザードはドフラミンゴの息のかかった島だった。そして頂上戦争において彼の遺言でファミリーを傘下に加え、彼の元拠点であるドレスローザ、パンクハザードなどの縄張りを手に入れた。

 

「モリアの仲間がここに...。」

 

2年前にスリラーバーグで惨敗した海賊の仲間がここにいるということを知ったルフィは不安になりながらも嬉しく思った。

 

「...だがそいつは覇気、頭脳、身体能力もモリアの親衛隊どころか幹部の中でも並以下だ。」

 

ローはたんたんと、モリアの仲間の事を教える。するとナミが人格のフランキーは彼へ尋ねる。

 

「何で強くない奴が信頼されてるのよ。」

 

ローは最後まで自分の話を聞けと言わんばかりに直接質問には答えない。

 

「実質の立場は“墓場”のアブサロムに次いでNo.3ながらも懸賞金はモリアに次ぐ。」

 

懸賞金とは強さだけを示すのではない。政府における危険度もその一つだ。強さは並以下でも強さ以外で危険だと判断されれば懸賞金は跳ね上がる。

 

つまり政府の中では四皇のモリアについで危険だと認識されているのだ。

 

「...なぜなら、ハリス・アーノルドは大半の“悪魔の実の力を封じる悪魔の実”の力を持っているからだ。」

 

先ほどローと一緒にいた白髪の若者がハリスである。ある企みを持っていた彼がずっとパンクハザードへ留まるハメになったのは彼と優秀な秘書のおかげである。

 

「どういうことだ?」

 

「俺も噂程度にしか知らねぇ...。能力者である海軍大将でも迂闊に手を出せないと言われている。」

 

「じゃ能力者じゃないヤツが戦えばいいのね?」

 

能力の無効化が厄介だということは能力者じゃなければ関係ない。だがそれならば危険度は低い。ローは解説を続ける。

 

「奴は銃、刀、をほぼ無力化できる。あいつは元海兵少将で追って来た軍艦と支部基地を地図から消して(・・・)みせた。ヤツがその気ならこの島を一瞬で消滅させられる。」

 

ナミは顔を青ざめさせて彼とは会いたくないと思ったが、それは既に近くに、いや背後にやってきていた。

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、麦わら君にロー君。とりまボクに摘まれてや。」

 

白い髪をした蛇のような男が雪を踏みしめながらゆっくりと歩いていた。

 

その瞳はとても細く、背筋をゾゾゾと逆撫でさせられるような、背筋を蛇がなぞるような感覚と錯覚させられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり、彼は得体の知れない怪物だった

 

 

 

 



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ハリス・アーノルド

 

 

 

ほんの少し慌てた表情をするローとは違い、ルフィは落ち着いた様子で口を開く。

 

「おめぇ...モリアの仲間なんだってな。だったら強いに決まってる。」

 

ハリスは少しニヤっと笑う。自身の主人から麦わらの一味には気をつけろという忠告を耳に挟んでいたからだ。

 

「ボクはそこまで戦闘に自信はないんやけど、強いんは事実や。まぁ、おいで。」

 

彼は少し頭を下げて見下すようにして覇気をむき出しにする。強大な威圧ではなく冷たい鋭い雰囲気であり、とても不気味だった。

 

「ギア2、ゴムゴムのーォ“jet ピストル”ッ!」

 

ルフィは腕を軽く振るい、血液の流れを活発化させると身体から蒸気が溢れ出す。そして自身の中でも最速の技とも言えるソレを放った。

 

ハリスはニコニコしながら構えることなく一歩も動かない。彼へ当たる寸前で拳は硬い何かに激突した。そこに見えない壁のようなモノがあったのである。

 

「...ッく⁉︎ 痛え。アイツ、何したんだ?」

 

ルフィは拳がヒリヒリとした痛みを感じ、その壁に武装色の覇気が込められていたという事を理解した。

 

ローは自分の刀を抜き臨戦態勢に入るとルフィへ声をかける。

 

「麦わら屋、気をつけろ。“ルーム”。」

 

ローは手のひらから薄いドーム状の膜のようなモノを広げて、内側に3人が十分に入る大きさにすると固定した。

 

「残念、対象内(・・・)や。」

 

ハリスが軽く指をパチンと鳴らすと一瞬でルームが消え去った。あっけにとられるローとは裏腹にルフィは無策で相手の間合いに踏み込む。

 

「“ゴムゴムのーォ ブレッド”ッ!」

 

ルフィは拳を硬化させてハリスの脇腹を狙うが、またもや見えない壁の所為で本人にはダメージが通らない。今度は武装色を込めていたため痛みはほとんどなかったが、自分より上手のようだった。

 

再びハリスは指をパチンと鳴らすと何かが弾けたような衝撃がルフィを襲う。ルフィは吹き飛ばされるが、ローの真横へ華麗に着地する。特にダメージはないようだ。

 

「あらら...なんともないん、結構来たやろ?」

 

ハリスは意外そうな顔をしていた。今のはそこそこの威力を持つ攻撃だったようだ。

 

「効かないねぇ、ゴムだから。」

 

「そうやったね...。」

 

ゴム人間には打撃が効かないという事を思い出す。ルフィは彼の見えない壁を破壊しようと、武装色で硬化した拳で“ジェットガトリング”という技を繰り出す。比較的威力の弱い拳だが、速度と連打が可能な技である。

 

「そんなんじゃ、これは割れんよ。」

 

するとローが素早くルームを広げ、ハリスの背後を取ると素早く斬りかかる。ローはハリスの背後と自分を入れ替える事により瞬時に死角からの攻撃を可能にした。だがその程度の事は見聞色の覇気で対処できる。

 

ハリスは左腕を硬化してローの斬撃を受け止めて防いだ。オペオペの実を食べたローはルームの中であれば出血をさせずに身体をバラバラにすることができる。だがそれは程度にもよるが武装色の覇気で防ぐ事が可能である

 

「それも対象内(・・・)。」

 

再び彼は指を鳴らした。

 

するとローの刀が一瞬で消え去った。まるで始めから何も存在しなかったかのように。

 

彼の能力を知っていたとしても生まれる一瞬の隙を彼は逃さない。ローの鳩尾へ素早く武装色を纏った蹴りを加えると吐血して倒れた

 

「トラ男ッ!」

 

ルフィが叫ぶと同時にハリスは指を鳴らして壁を消した。風圧を受けたルフィは技を中断させられるが、今度は足を踏み込んで耐える

 

「今度は君らの力量の確かめようか。」

 

ハリスは指を弾くと一瞬でルフィの目の前に現れる。CPの“剃”のように一瞬で何度も地面を蹴るのではない、ほんの一度すら蹴らなかった。つまりこれは瞬間移動(・・・・)だった。

 

「おやすみ。」

 

ハリスは右手に白く輝かせるとルフィの顔を掴み、左の指をパチンと鳴らした。するとルフィへ武装色を纏った衝撃波が顔から全身へと伝った。彼は意識を失い、白目を剥くと同時に地面の雪へと身を任せた。

 

「ーッ、クソっ。こんなところで。」

 

ローは意識を取り戻したのか、フラフラしながら立ち上がる。ハリスはニコニコしながら彼へ声をかける。

 

「...起きた?青い膜作ってもボクが消すだけ、観念しぃや。」

 

「もう作り終えた(・・・・・)よ。」

 

ハリスは驚いたがすぐにハッタリだと考えて彼との距離をつめて意識を奪おうとする。だが突然、ローはその場から消えた。

 

「あれ、ルームは作ってなかったよな?それにサイボーグも居らんくなったわ。」

 

ハリスは知らないがルームは当人の命を少し削ることで目に見えないほどの薄い膜を作ることが可能である。

 

そしてルフィの後ろに居たはずのサイボーグが居なくなっていることに気がついた。

 

 

 

手負いが2名に無傷が1人、あの場面で確実にローが逃げるにはサイボーグに担がせて逃げる事ぐらいだ。ルフィを連れて行くと運ぶ側の負担が大きくなってしまう。

 

比較的ローは軽症で休めば回復できるレベルだが、ルフィは意識を失ってる。休んでもしばらくは戦力にはならないだろう。同盟を組んだ時点でルフィの身は守らなければならないが、自分達ごと捕まるリスクが高くなる。

 

尋問をしなくてはならないため、ルフィを置いてはいけないハリスとしてはロー達を深追いはできない。実力で敵わないなら不意打ちか取引でしかルフィを取り戻すことは不可能である。そして彼は後者で新たな作戦を考えついていた。

 

 

 

その作戦を見抜くほどの頭脳がないハリスは取り敢えず、ルフィを連れて行こうと考えた

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜裏口〜

 

 

 

 

ナミの人格のフランキーは逃げながらローの話を聞き、納得した上で一味の元へ戻った。そしてルフィが捕まった事や同盟を組んだことを皆へ話した。

 

「すまねぇ。麦わら屋は取り返せなかった。だが手はある。」

 

その手とは当初の予定と同じく、シーザーを誘拐はするが、ルフィの身柄と交換するのだ

その時にあらかじめシーザーの心臓を奪っておけば自分達の優位な状況へ持ち込める

 

ローは人格を元に戻せるだけ戻す。フランキーとチョッパーは元へ戻ったが、ナミは自分の身体を持つサンジが侍の胴体を探しに向かっているため取り敢えずサンジの身体へ入る

 

ローは素早く指示を出した。チョッパーは子供達の麻薬の成分を調べるため、研究所へ侵入すること、

 

子供達が再び暴れ始めたら眠らせる事ができるウソップとサンジの身体で上手く戦えないナミは待機となった。

 

そしてロビンとフランキーはシーザーを誘拐するローのサポートとなった。

 

このメンバーで唯一覇気の使えるローがロギア系能力者のシーザーと戦うしかない。だが体力が全回復したわけではないため温存しておくべきで、ロビンとフランキーが雑兵の相手をすることとなった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜研究所、玄関〜

 

 

 

 

 

 

スモーカーとたしぎは部下と共に研究所へ侵入するために敵と交戦していた。そして彼らがパンクハザードにいたはずの囚人であると理解した。

 

 

 

***

 

 

 

〜シーザーside〜

 

 

 

 

『プルプルプルプルプルプルプルプル...』

 

 

 

秘書であるモネの“でんでん虫”が鳴り始めたため、彼女はシーザーに電話に出るよう声をかける。

 

「出なくていい、扉を開けたって報告と中から何かが出た、仲間がやられた、助けてくれ。耳障りなだけだ。」

 

シーザーは海軍が玄関先に来る前に手を打っていた。それは一つの倉庫の扉を開けることである。

 

「今回の実験体はアイツらだ。俺のペットを紹介しよう。シュロロロ、誰一人島から出られやしねぇ。」

 

 

 



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スライム


原作通りの部分は可能な限りスピーディに行きます


 

 

 

 

 

 

「もしもし、マスター?応答願います!こちら炎の土地、指示通り扉を開けました!」

 

ガスを防ぐスーツを身に纏っていたシーザーの部下達は彼へ連絡を取ろうとしていた。しかし何度もかけても繋がることはない。

 

「だめだ、出てくれねぇ。とにかく走れ!仲間はやられちまった。」

 

仲間は声を張り上げるように走って逃げるように言う。なぜなら背後には自我を持つゼリーのような生き物が自分達を追ってきているからである。

 

 

 

 

***

 

 

 

〜ゾロ、サンジ、ブルック、錦えもんside〜

 

 

 

自分の身体を探しに行ったサムライの捜索を続けていると氷で凍って倒れているのを発見して救助した。そして彼は自身が能力者であり、上半身が水中の中らしいという事を話す

 

「なぁ、あそこが湖だよな?あんなトコに山なんかあったか?」

 

話し終えると目の前に巨大で大きな何かがそこにはあった。

 

 

***

 

 

 

〜シーザー、モネ、ハリスside〜

 

 

 

「シュロロロロ、“スライム”は四年前にパンクハザードを襲った化学兵器暴発事故そのものだ。俺様が圧縮してモンスターに変えたのさ。」

 

先ほどのゼリーのような生き物の正体はシーザーの作り出した化学兵器だった。そして今回の公開実験の商品でもある。

 

「あぁ、...ん?それはローの刀だな。」

 

「そうやね。」

 

彼の手には先ほど消えたはずのローの刀があった。彼はバスケットにちょんと触れた後に中に一つだけ入っていた林檎を一瞥すると剣を抜刀して一閃放ち、素早く鞘へ戻す。

 

するとバスケットには切り傷一つ付くことはなく、林檎だけは真っ二つに切り離した。満足そうに笑うとこれが名刀であると納得させられる。なぜなら彼は剣術が得意でない(・・・・・)からである。

 

 

***

 

 

 

 

〜研究所、玄関〜

 

 

 

 

スモーカー率いる海軍と研究所の元囚人達は交戦を続けており、ローがオプジェにした艦船に隠れるようにして様子を伺っている者達がいた。

 

「海軍がいるが、回り込む時間はねぇ。突っ込むぞ。」

 

フランキーが手はず通りに両手を合わせて玄関の扉へ向けるとレーザーを扉へ放つ。

 

扉を容易く撃ち抜くと爆発し、破壊する。海軍と囚人達が呆気にとられる隙をついて彼らが研究所内へ侵入しようとする。

 

だがロビンが何かに気がついた。海の上を漂う一隻の船にドロドロとした小さなスライムが船のマストにへばりついていたのだ。

 

船の甲板には海兵がおり、動いている小さなスライムを斬ったり銃で撃っても毒ガスを出すだけで傷がつかない。

 

業を煮やした彼らは火炎放射器でスライムを燃やしてみる。すると嫌がり始めたソレがやがて動きを止めると大爆発を引き起こし、船を木っ端微塵にした。

 

 

 

「シュロロロロ、いい子だ。3年も閉じ込めて悪かったな。」

 

マスターと大声で囚人達は敬愛を込めてその名を誇り高く呼ぶ

 

ローがオプジェにした船の上にシーザーは立っているのを確認した海兵達は警戒態勢に入り、銃を彼へ向ける。

 

「アイツは水が苦手だからよ、あの湖を越えるために自分のカケラを飛ばしてるのさ。」

 

シーザーは笑いながらスマイルの解説をしてやる。敵へ情報は漏らすべきではないが、彼の自己顕示欲の強さ故にペラペラと語る

 

「“ルーム”。」

 

ローが一瞬でシーザーの目の前へ移動すると、武装色で硬化した拳を振り上げて殴りかかる。

 

シーザーは意地悪そうにニヤリと笑うとポケットの中から鼓動し続ける何かを取り出した

 

「コレを忘れてねぇか、ロー?」

まるで彼が襲ってくるのが想定内であるかの様に拳が触れる前に心臓を握り潰した。

 

ローを激痛が襲い、彼は大声をあげて悶え苦しんだ。シーザーは満足そうに笑っているとフランキーとロビン、たしぎ、スモーカーが同時に彼の間合いへと飛び込んだ

 

それもまた予測していたのか片手で空気を握り潰すような所作をすると、彼らは突然苦しみ出すとまもなく気絶した。

 

「コイツらを海楼石で縛り上げろ。お前達は研究所へ戻るんだ。」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜ゾロ、サンジ、ブルック、錦えもんside〜

 

 

 

 

湖の前にいた4人はスライムの体液で魚が死ぬ様子から水中に毒が蔓延していることを理解した。

サンジの人格のナミが錦えもんの胴体を見つけようと毒が滲む湖へ飛び込んだ。

 

 

サメや毒を回避しながらサンジは胴体を抱えたまま陸へあがった。そして侍に渡すと彼は完全な人としての形態を取り戻すと土下座をして感謝の意を述べる。

 

「拙者、名を錦えもんと申す。決してこの御恩ッ、忘れはせぬ。かなじけない!」

 

 

***

 

 

 

〜研究所〜

 

 

 

ローから研究所への行き方を聞いたチョッパーは警備の目を掻い潜りながら進んでいた。なんとか目的地へ侵入すると何だか見覚えのある背中がそこにはあった。

 

彼の尊敬する医者がそこにいたのだ

 

「ドクトル!」

 

世界一の医者と呼ばれる男にしてモリアの船医であるホグバック。彼は振り返ると目の前にいるチョッパーを見る。

 

「んぉ?なんだ、お前。見覚えあんな。」

 

そして思い出したように彼と会話を始める

 

「なぁドクトル、ここでなんの研究してんだ?」

 

チョッパーは目をキラキラさせながら彼へ尋ねる。ホグバックは照れながら正直に質問に答える。

 

「スマイルっていうものを研究してんのよ、あと、まぁ巨人化だな。」

 

シーザーと同じく天才であり、自己顕示欲の強い彼は機密情報を喋る。チョッパーはスマイルという意味はわからなかったが、後半の彼の言葉を聞き逃さなかった。

 

「ドクトル、お前がやったのか?」

 

チョッパーは突然静かにそう尋ねた

 

(ん〜、ガキ共の体調管理と診察は俺がしてるし...)

 

「おう。」

 

ホグバックはそう答えるとチョッパーが突然巨大な大男に変化した。

 

「俺はお前を許さねぇ!」

 

「え?」

 

そうつぶやくとチョッパーの巨大な拳がホグバックを襲った。そして鼻血を出して気絶した彼を放置して薬について調べ始める。

 

 

 

***

 

 

 

 

〜ナミ、ウソップ、シーザーside〜

 

 

 

 

 

「なぜ連れ出した、子供達が苦しんでるじゃないか!」

 

ナミ達はシーザーの仕込んだドラックキャンディの禁断症状で凶暴化した子供達を鎖に繋いで眠らせていたが、目を覚まし暴れ出していた。

 

しかしその場にシーザー自ら子供達を奪還しに来ていた。

 

「みんな家に帰りたがってるわ!親達だってずっと探してるに決まってる!」

 

サンジの外見をしたナミがそうシーザーへ言い放つが、彼はニヤニヤと笑っていた。

 

「キャンディくれよ〜ッ!」

「いつものキャンディ!」

 

子供達は次々と彼の作ったドラックキャンディを求める声を出す。

 

「シュロロ、どこに帰りたがってる子がいる?」

 

彼は若いながら冷たく言い放つと、彼の能力で酸素を抜いた。酸欠状態となったナミとウソップは首元を抑える。

 

 

 

「シーザーッッ!!!」

 

茶ヒゲが巨大で太い鉄パイプを持ってシーザーへ振るった。しかしロギアの彼にただの打撃は無意味である。そのおかげで彼の技が中断させられナミとウソップはむせながら酸素を吸う

 

 

「俺は目が覚めたぜ。」

「我が有能な部下、茶ひげ。全身黒コゲで目も当てられない。」

「お前の差し金だ!」

 

シーザーは挑発するように茶ヒゲを揶揄うと彼は激情して鉄パイプで叩き潰そうとする

 

「子供達、いますぐ外のガス風船に乗るんだ!」

 

彼はそう指示すると子供達はキャンディ欲しさに素直に言う事を聞く。

 

「俺が騙されてたことはいい、だが部下達は返してもらう!」

「はぁ?いつまで船長気取ってんだ新世界落ちのクズ海賊。あいつらはまだ俺を救いの神だと信じてる、ただのモルモットなのによ。」

 

茶ヒゲはかつての部下を連れてここから出ようと考えたが、現実はそうはいかない。それだけシーザーの洗脳は上手くいってたのだ

 

「貴様ァーーーーッッ!!!!」

 

茶ヒゲは怒りに身を任せて鉄パイプへ力を込めるが、シーザーは彼程度の海賊などより遥かに強かった。

 

「“ガスタネット”。」

 

ガスで固めたカスタネットをカカンと鳴らすと激しいガス爆発が起き茶ヒゲをいとも容易く倒した。

 

ナミとウソップは爆風から逃れようとして外へ出ようとするが、シーザーに背後を取られ“ガスタネット”で吹き飛ばした。

 

 



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シノクニ





 

 

 

 

 

 

〜研究所〜

 

 

 

 

 

「各地の非合法なるブローカー諸君。これから見せる毒ガス兵器をお見せしよう。用途は様々、気に入って貰えたら取引しようじゃないか。」

 

シーザーは“映像でんでん虫”を使用して各地に散らばる兵器のブローカーへ向けて宣伝という名の実験を度々行なっていた。

 

「スマイリーは四年前にこの島を殺してみせた。だが前回の問題点は毒を食らった者達が弱りながらも安全な場所へ避難できたという点だ。」

 

スマイリーとは毒ガスの生物であるスマイルの名前である。そしてブローカーにも分かり易いようにプレゼンを行う

 

「そこである効力を追加し、完璧な殺戮兵器を完成させる。その名も“シノクニ”。」

 

画面にスマイリーが映され、スマイリーが進行方向にあった飴のように包まれた“何か”を食べる。するとスマイリーはもがき苦しみ始め毒ガスを放出した。

 

ガスの速度は常人の速度を上回り、逃げ遅れたシーザーの部下達は追いつかれる。そして彼らをコーティングされるように白い膜の様に固められて動かなくなった。

 

「シュロロ、成功だ。灰のようにまとわりつくガスは皮膚から侵入して全身を一気に麻痺させるのさ。」

 

モニターで様子を見ていたシーザーは得意げに実験成功を喜ぶ。あとは上手く“シノクニ”の効果を見せつけるだけで利益の半分を手にする事が出来るのだ。

 

彼は近くに置かれている檻をチラリと見る

 

牢の中にルフィ、ロー、フランキー、ロビン、そしてスモーカー、たしぎが囚われている。そしてあるボタンを押すとガコンという音と共に外へ剥き出しの状態で出された。

 

「“シノクニ”の前じゃ、4億の賞金首、海軍の中将、王下七武海でさえ何もできないと世界に証明してくれ!」

 

シーザーは笑いながらそう言い放った

 

「相変わらず悪趣味やねぇ、まぁウチには必要なモンやからしゃーないか。」

 

ハリスはそう呟いた。

 

彼のボスはモリアである。兵器の実験を続けさせているのは彼の意向でブローカーとの取引も認めていた。それは資金を搔き集めるという目的もあるが、中断させれば彼の兵器を強く望む者達を敵に回しかねないからである

 

だがシーザーの兵器取引の利益の半分をモリアへ護衛代として納めている。彼自身が賞金首で怨みを買う事をしているためこの程度の防衛費はさほど高く感じられなかった。

 

更にシーザーは自分が天才であると世界に認めさせたいという自己顕示欲の強い気質であるため金にはあまり興味はなかった。だが女性関係には少しだらしがないようだった。

 

 

 

 

 

実験の観察を続けているシーザー達を他所に研究所の外へ剥き出しとなったルフィ達だが、危機感がないようだった。

 

「作戦は変わらず、今度はしくじるな。反撃に出るぞ。」

 

呆れたようにローを策を講じる。

 

「物を燃やせるヤツはいるか?」

「俺ならスーパーやれるぜ。」

「向かって右下の軍艦を燃やせ。」

 

フランキーがローへそう答えると彼はすぐさま指示を出す。指示通りにフランキーは息を軽く吸うと火の玉を飛ばして船へ着火させる

 

風に乗って煙が彼らの檻を覆うように纏った。フランキー達は煙たがるがローは己を縛っていた鎖から解放され立ち上がる。

 

「さて、これで“映像でんでん虫”に映らねぇ。すぐにはバレずに済む。」

 

海楼石の鎖であるのにローが解放された理由をルフィが尋ねると、初めからただの鎖だったと答えた。

 

そして能力を使用するとブォンという音と共に彼の手に刀が現れる。

 

「さて、お前らをどうしようか。少し知り過ぎたな。」

 

同盟を組んだ麦わらの一味のクルーだけを解放するとスモーカーとたしぎを見下すように薄気味悪く睨みつける。

 

「どうするかは決めてあんだろ、さっさとしろ。」

 

「お前の上司のヴェルゴを調べろ。アイツは海賊だ。」

 

 

 

***

 

 

 

 

〜ハリスside〜

 

 

 

 

ハリスはローから奪った刀を自分の部屋へ持って行っていた。すると突然、刀が一瞬で消えた。一瞬だけ自身の能力かと勘違いするがその様子はない。

 

「刀が消えたね、ロー君の細工か。」

 

ハリスがそうつぶやくと、ファンファンというサイレンが研究所内を木霊する。

 

シャッターが勝手に開いた時になる警告音と共に元囚人達が走り、止まっていたハリスを追い抜かしていく。

 

 

 

***

 

 

 

 

〜ゾロら、茶ヒゲside〜

 

 

 

 

 

「おいおい待て待て、シャッター閉めるな!」

 

麦わらの一味は“シノクニ”から逃れるために爆走する茶ヒゲの背に乗っていた。ゆっくりと閉まり始めるシャッターにウソップが声をあげるが、完全に閉まってしまう。

 

「鉄は斬れるか?」

「あれしきなら。」

「そのまま走れ茶ひげ!」

 

ゾロが錦えもんと即座に話を合わせると走り続けるよう指示を出す。

 

 

壁にぶつかる寸前、二人は同時に斜めに斬り裂くと、壁を茶ヒゲが突き飛ばして内部へ侵入した。

 

偶然、内部にいたG-5の海兵達は内部に“シノクニ”が侵入することを恐れて素早く閉じた

 

「ゾロ達だ、みんな来たな。」

 

ルフィが笑いながら集合した一味を見ていると海軍が麦わらの一味と茶ひげへ銃を向ける

 

 

「ここにいる全員に話しておく!!!毒ガスに囲まれた研究所から外気に触れずに直接海へ出る通路が一つだけある!!!“R塔66”と書かれた扉がそうだ!!!」

 

ローが大声を出して逃げ道を教えると皆は自分のすべき事を最優先に動き出した。ルフィはシーザー捕獲へ向かい、スモーカーは誘拐された子供を回収しつつR塔66へ。錦えもんとゾロらは彼の息子であるモモの助を助けに行く事になった。

 

 

 

***

 

 

 

 

数分後

 

 

 

〜ハリスside〜

 

 

 

 

 

 

「ん〜、彼らの目的はなんやろ?まぁ分からんモン考えてもしゃーない。手当たり次第潰そうか...。」

 

ハリスは比較的回転の鈍い自身の頭で考えるが、無策で突き進むことに決める。

 

すると遠くから連なる複数人の足音が近づいている事を理解した。

 

「ん?」

 

海兵の一人が自分達の進行方向に一人の男がいることに気がつく。そしてそれが誰であるかをすぐさま理解して無意識に足を止める。

 

やがて、彼らを束ねていた“たしぎ”がハリスに気がついて自然と彼の情報を口に出す。

 

「ハリス・アーノルド、8億越えの海賊。最も警戒すべき人物の一人。」

 

彼女の頭には彼の情報が羅列するように出てくるが、それ以上は何も言えなかった。戦闘において自分達が敵うはずないと本能で理解しており、刺激してはならないと考えたからである。

 

「いや、ここは“何が大事なのか”...やな。」

 

ハリスは海兵達に興味がないように見向きもする事なく、歩き続ける。そしてようやく自分が何をすべきなのかを理解すると、そこへ向かい始める。

 

海兵達は後退りを始めるがその内の一人が震えながら銃口を彼へ向ける。数少ない手柄を立てるチャンスだと思ったのだろう。

 

それに続くように陣形を素早くとってハリスに銃の標準を合わせる。だが彼は歩みを止めることはなかった。

 

「待て、ハリス! 」

 

前後数列で並び固まった海兵達が冷や汗をながしながら銃口を突きつけるが、震えて狙いが定まる事がない。やがて冷静さを取り戻した“たしぎ”が部下達にやめるよう指示を出そうとするが、なぜか声が出ない。

 

「ん?あぁ、ボクは用事ができたんよ。邪魔せんどいてや。」

 

ハリスは冷たく冷めたように笑いながら歩き続ける。やがて海兵達の震えが同時に止まる

 

 

 

緊張が溶けたのではない、恐怖を感じる主人を他所に身体がピクリとも動かなくなったのだ。

 

 

全身から汗が噴き出し、死を覚悟する海兵達だったが、ハリスは彼らに手を出すことはなく無言で通り過ぎた。

 

 






早くオリ部分を書きたいのですが、もうじき中間試験があるので少し遅れるかもしれません。


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SAD製造室 1

 

 

 

 

〜シーザー、モネside〜

 

 

 

 

 

「通路を封鎖した上で、入口の壁を破壊してシノクニを流し込め。」

 

シーザーがルフィらの脱出を察知すると素早く指示を出した。

 

「え、そんな事をすればウチの警備兵も一緒に!」

 

部下はルフィらを食い止めている仲間までも“シノクニ”の餌食になってしまうと忠言する。しかしシーザーは公開実験を成功させたいのかイライラしながら声をあげる。

 

「いいからやれ!改めてブローカー達への公開実験を仕切り直せ!」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜チョッパー、ホグバックside〜

 

 

 

 

 

 

「おい、とっとと歩け!」

 

「ちくしょう...なんで俺が。」

 

怒っているチョッパーはロープでぐるぐる巻きにされているホグバックを引っ張りながら仲間の元へ向かっていた。

 

そして散歩を嫌がる犬のように歩くのを渋る彼をチョッパーは引きずりながら進む。

 

すると目の前に一人でスタスタと歩いているローと遭遇する。ほんの少し目を見開いて驚く彼にチョッパーは声をかける。

 

「トラ男、コイツに子供達の治療させるよ。腐っても名医だ。」

 

「良くやったトニー屋。これで作戦成功の可能性があがった。俺は大事な用がある、ソイツをどっかに隠しとけ。」

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜シーザー、モネside〜

 

 

 

 

シーザー達はモニターで“シノクニ”の様子を観察していると、自動ドアが開き中へ入る

 

「は?」

 

シーザーの目の前にいたのはルフィであった。そして彼は驚いた一瞬の隙に間合いを詰められる。

 

「シーザーァァァァッッ!!!」

 

ルフィはシーザーの腹を思い切り殴り吐血させる。彼の覇気はロギアの実体を捉えることが可能なレベルにまで達していたのである

 

「痛えな、“無空世界(カラクニ)”。」

 

シーザーは両の拳を握り潰すとルフィの周囲の酸素を抜いた。彼はガスガスの実のガス人間であり、気体を操ることすらできる。

 

「息が...。」

 

ルフィは素早く後方へ回避して酸素を吸う。彼の能力の間合いから離れたのである。

 

ルフィは大きく息を吸うとギア2で身体から蒸気を発しながら背後を取った。

 

「“武装硬化”ゴムゴムのォ〜...」

 

ルフィは左右の拳を武装色で硬化するとシーザーを殴りつけようとする。

 

だが突然、シーザーとルフィの間に白く冷たい壁が現れる。

 

「“カマクラ”」

 

ルフィは自身の攻撃を止めることなく壁を殴りつける。

 

「...ガトリング”ッッ!!!」

 

壁にヒビを入れるとすぐにそれは粉々に砕け散る。ルフィはシーザーの側に鳥の羽根のようなモノが生えた美女に気がついた。

 

「マスター、お逃げを。無駄な戦いです。」

「あぁ、全くだ。」

 

シーザーの秘書であるモネがシーザーを逃がそうとする。

 

「待て!」

「彼は追わせない。」

 

シーザーを誘拐しようとするルフィは追いかけようとするが、モネに遮られる。

 

 

「お前には負ける気がしねぇ!」

「私も貴方と戦って勝てる気はしない。でも戦闘力と勝敗は別物よ。 」

 

モネは自身の冷たい身体でルフィに抱きついた。

 

「私に抱きつかれたら、この冷たい身体にみるみる体力は奪われて行く。」

 

モネはルフィを優しく包み込むように抱き締め続けると、次第にルフィの気力が落ち込み始める。だが突然、目を見開くと彼女の腕から逃れようと力を込める。

 

「ゴムゴムのォ〜 “jet(スピア)”ッ!」

 

ルフィは地面に蹴りを入れて下の階へ逃れようとしたのである。

 

「にっしっし!うわぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」

 

ルフィは満足げな顔をして笑うが、すぐさま重力に逆らわず落ちて行く。この部屋の下には部屋などなかったのだ。

 

 

「そこから落ちると、ダクトを通って地中深くのゴミ箱行きよ。自滅とはね。」

 

モネはルフィの底力を感じつつも、もうあがれはしないと判断してその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

『こちらD塔より、第三研究所全棟へ、緊急連絡!!!只今、トラファルガー・ローが“SAD”製造室へ侵入しましたッ!!!!』

 

 

 

 

 

「なんだと⁉︎正気かあの野郎、2人の四皇を敵に回す行為だぞ!!!」

 

シーザーは顔を青ざめさせながら彼の狙いを理解した。自身を誘拐して“SMILE”を作らせないということである。現在、ソレの取引は密かに四皇の一人と行われているのである。

 

 

『...しかし、SAD製造室にはハリス殿がおられます。皆さんは目の前の敵に専念してください!!!』

 

 

 

***

 

 

 

〜地下〜

 

 

〜ルフィside〜

 

 

 

 

 

「ハリス、あいつがトラ男のとこに...。」

 

ルフィは地下深くのゴミ箱で鯰のような生物と遭遇して、共に脱出を試みようとしている時に先ほどの緊急連絡が聞こえてきたのである。

 

ルフィはハリスに負けたままである事に納得していないため、SAD製造室へ向かうと決心した。しかしそこまでのルートを知らなかった。そこで彼は見聞色の覇気を使用したのである。

 

「この島で一番強ぇヤツは?」

 

ルフィは目を閉じて島全体にいる全ての生物の強さを図ろうとする。そして二人の強い覇気を感じ取ると、そこが自分の目的地だと確信した。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜SAD製造室〜

 

 

〜ロー、ハリスside〜

 

 

 

 

 

 

「ボクの能力の前じゃ、君は無力。」

 

頭から血を流しながら倒れているローは血の気のない鋭い目でハリスを睨みつける。

 

「やっぱ、強ぇな。」

 

ローはハリスがSAD製造室に立て籠もっていることは想定内だった。しかし彼の計画上、ここにシーザーを連れてくることに意味があったのである。交渉をするにおいて最も大事な事は相手より優位に立ちながら優位に進めることだからだ。

 

しかし、それは彼を誰かが仕留めなければならなかった。ローは自分一人でハリスに勝つことが出来ないことを知っている。それなのに彼はハリスと戦うことを選んだ。

 

なぜならハリスがSAD製造室に立て籠もるのではなく、無差別に味方を倒し続け大量の人質を取られることのほうが面倒だったからである。

 

 

 

ローはふらふらと立ち上がりながら元上司だった男の言葉が脳裏によぎる。

 

 

 

『敵わねえ敵を消す手段なら幾らでもある。』

 

 

男は高笑いしながらそう言い放った。自分の恩人を殺したソイツはその言葉通りに邪魔で自分より強い者をも消してのしあがった。

 

だが自分がそれを成し得るには少し心もとなかった。これは彼の事前に想定していた1つの結果であり、自分の同盟相手には作戦を伝えてなかった。

 

 

「うるせぇ、だからやってんだろ。」

「...?」

 

 

ハリスはローの言葉に疑問を浮かべながらも特に聞き返しはしなかった。

 

 

(麦わら屋がシーザーを誘拐するまでの時間稼ぎだ。)

 

 

ローは人差し指を軽く上へあげて岩を地面から槍のように突き出させる。ハリスは見聞色の覇気で容易く躱す

 

「危ないね、でも意味はない。ボクはこれを消す事ができる。」

 

ハリスは地面から突き出ている岩にチョンと触れると一瞬で消え去った。するとローは不敵な笑みを浮かべながら口を開く。

 

「ひとつ腑に落ちねぇ事がある。お前の能力は消滅(・・)じゃねぇだろ。」

 

 

 

 



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フェイク 1

 

 

 

 

〜SAD製造室〜

 

 

 

〜ハリス、ローside〜

 

 

 

 

 

 

 

「麦わら屋がお前を殴ろうとした時、見えねぇ壁に阻まれてた。」

 

ローは時間稼ぎのためにハリスに己の疑問をぶつける。確かにルフィの攻撃は見えない壁のようなモノに防がれていた。

 

「空間を消したんや、次元の異なる壁なら彼の拳どころか、どんな攻撃をも防げる。だから、“悪魔の実を封じる悪魔の実”って呼ばれとる。」

 

ハリスは顔色ひとつ変えることもなく、更に何の迷いもなくスラスラと答えた。しかしローはその答えにニヤリと笑う。

 

「だったら覇気なんてどうやって纏う?」

 

ハリスは普段閉じかけている目を少しだけあげてローを見る。彼が驚いている事を察したローは追い討ちをかけるように己の考察を述べる。

 

「存在しねぇのにできるわけもねぇ。それにお前は“そのなんじゃ、これは割れない”、そう言った。」

 

消滅であるならば壁、もとい物質を生み出すことなど考えにくい。

 

「つまり、割れるんだな?お前の能力は消滅じゃない。」

 

ローはそう結論づける。彼の表情の変化からその答えが正しいことを物語っていた。

 

「それを見抜いたんは...14人目や!」

 

ハリスが指を勢いよくパチンと弾くとローは激しく吹き飛ばされて壁に打ち付けられる。そしてそのまま受け身すら取れずに身体を地面に叩きつける。

 

「そう、確かにボクはあらゆるモノを消滅させる能力者やない。」

 

「はぁはぁ....、“一定範囲において、あらゆるモノを圧縮する能力”。」

 

「お見事、ボクは“グシャグシャの実”を食べた圧縮人間や。」

 

ハリス・アーノルドは自分以外の条件付きだが、万物を圧縮できる能力を持つ。

 

消滅というワードは彼の属する海賊団の参謀から仕込まれたモノであったが、彼の頭脳では咄嗟にごまかせないためにフェイクであることを見抜かれることも少なくはなかった。

 

「でも、なんでわかったん?」

 

「お前が麦わら屋に使った白い衝撃波、アレはバーソルミュー・くまが使っていた“大気を弾いて造った衝撃波”に似てた。」

 

彼が手のひらに纏った白い光は大気を圧縮して一瞬で戻すことにより可能となる衝撃波で、2年前の頂上戦争で参考にして習得したのである。

 

「それも正解、でも発動条件はわからんやろ?」

 

ハリスは普段通りの様子に戻ると逆に尋ね返した。彼にとっては能力の詳細など隠すほどの価値はないと考えていたからだ。

 

「一定範囲は6、7メートル程、そして物体には直接触れる必要がある。」

 

「...ッ!!!」

 

ハリスは完全に目を見開いて唖然とした。彼自身の能力をほぼ完全に見抜かれていたからである。以前にも消滅ではないという結論に達した者は何人かいたが、たった一度や二度の戦闘で答えに達した者はいなかった。

 

「ヒントをありがとう、お前がベラベラ喋るヤツで助かったよ。」

 

ローは不気味に笑いながらハリスを挑発する。だが彼にそんな手法はあまり効果がない

 

 

(うん、全部あってる。)

 

 

「でもわかったところで何ができるん?」

「できたさ、こっちに向かって来てる。」

 

 

ハリスは部屋の外から何かが物凄いスピードでこちらに向かって来ていることに気がついた。そして研究所の壁に一瞬で巨大なヒビが入ると砕ける。すると巨大な漆黒の拳がハリスへ向かって来ていた。

 

「ハリスーーーーーーーッッ!!!!」

 

ルフィの叫ぶように名を呼ぶとそのまま彼を殴りかかる。ハリスは不意を突かれて躱すことができなかった。

 

武装色で硬化した両腕を交差させて受けようとするが、勢いを殺しきれずに飛ばされる。そして部屋の壁へ激突すると土煙が舞う。

 

「あ、あの見えねぇ壁なかったな。」

 

ルフィがそうつぶやくとローが得た情報を共有するために話しかける。

 

「ヤツの能力がわかったぞ、あらゆる圧縮させる能力だ。あの壁は大気を圧縮して固体化、それに武装色を覆ってた。」

 

「...?」

 

ルフィはピンと来ていないようだったがローはそれを見逃して話を進める。

 

「お前、シーザーの件はどうなった?」

「あ、まだ誘拐してねぇ。」

「お前なッ!!!」

「にしし。悪りぃ、悪りぃ。」

「笑い事じゃねぇぞ。俺がなんのために!!!!」

 

気分屋のルフィにローはペースを乱される。すると土煙の中から人影が見えて彼らの目の前に現れる。

 

「誘拐ねぇ...。そんなんしてどうすんの?」

 

無傷のハリスは歩きながら彼らとの間合いを詰める。するとルフィが一歩前に出る。

 

「トラ男、こいつは俺がやる。今度は俺が勝つ。」

「俺も負けてんだ!!!」

 

ローは声を荒げながらルフィと並びハリスの攻撃に身を備える。しかし既にそこは彼の間合いだった。

 

「動けねぇ...。」

 

ルフィとローはまるで金縛りにでもあったかのように全身を拘束させられる。しかしローは想定内だと言わんばかりに口を開く。

 

「俺たちの周囲の空気を圧縮してんだ。」

 

“ルーム”とつぶやくと自分たちがサークルの先頭になるようにして、ハリスの能力範囲外である後方へと移動する。

 

ローは可能な限りハリスから離れたかった。彼自身のサークルの封じられる可能性をギリギリまで下げ、更にハリスの間合いから逃れるためである。

 

 

 

 

 

(麦わら屋、作戦がある)

 

「ん...なんか言ったか?」

 

(お前の頭の中に話しかけてる。流石に俺達の生半可な策で勝てるほどヤツは甘くねぇ。ここは俺の作戦の通りにしろ。)

 

「わかった。」

 

ローが己の能力の1つであるテレパシーを使い、ルフィの頭の中へ直接作戦を伝える。ハリスはその事に気がついていないため実に効果的だった。

 

 

 

作戦を全て伝えるとルフィが一目散にハリスへと突っ込んだ。そしてとにかく連続して攻撃の手を緩めない。ハリスは彼の攻撃を捌いたりガードをして防ぎ続ける。

 

 

(身体能力において、お前とヤツじゃ。お前の方が上だ。だからとにかく攻め込め。)

 

 

ルフィはローの指示通りに兎に角、防がれようが躱されようが攻め続ける。

 

するとハリスが能力を発動させて圧縮した大気の壁を作る。むろん覇気を込めておりルフィは拳に痛みを感じる。

 

ルフィは素早く攻撃の手を止める。

 

 

(壁で防がれたら何もしなくていい、ヤツも攻撃できないからな。)

 

 

ハリスは親指を中指に添えるように置くと弾いて音を鳴らした。

 

圧縮された空気を一瞬で元へ戻すと激しい風圧と共にルフィは飛ばされながらも、親指を軽く噛んだ。

 

 

(ヤツの能力は指を弾いた瞬間に解ける。その隙に俺がお前を...)

 

 

「“ルーム”ッ!!!」

 

ローのサークルがルフィとハリスを包み込んだ。そしてローは不気味に笑いながら“シャンブルズ”と呟く。

 

 

(...飛ばす!!!)

 

 

「ゴムゴムのォ〜“エレファント・ガン”!!!!」

 

 

一瞬で背後を取ったルフィの拳はハリスを撃ち抜いた

 

 



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正義とは... 1


バランスが果てしなく悪いですが、今回は多めです(笑)


 

 

 

 

 

 

 

ルフィは己の拳の骨をまるで風船を膨らませるように空気を注入して、肥大化させる。更にそれを武装色で硬化をするとそのまま背後からハリスを殴りかかる。

 

「ゴムゴムのォ〜“エレファント・ガン”!!!!」

 

ルフィの巨大な拳がハリスに第三者の目で当たるか当たらないか、その瞬間に拳が、ルフィが神隠しの如く姿を消した。

 

「あぁ...効いたわ。危ない、危ない。でも触れたよ。」

 

彼の拳を紙一重でガードしたのか肘に軽く痣ができているが、大したダメージではなさそうだった。

 

 

(麦わら屋が消えた...、いや。まさか。)

 

 

「おい!トラ男!」

 

まるで蚊の鳴くような小さく高い声の誰かにローは名前を呼ばれた。彼が声の方向に目を向けると、そこには一粒の大豆ほどのルフィがいる。

 

呑気にお前ら、巨人みたいだな。とルフィ呑気に笑うが、ローは返事をせずにハリスに質問をする。

 

「人も圧縮できるとはな。」

 

「圧縮言うんはあくまでも表現の1つ、それ以外ができんわけやない。これは縮小や。」

 

ハリスの言う“万物を圧縮できる能力”というのは最も適した、及び的を得ている表現に過ぎない。彼はモノを圧力で潰す“圧縮”、更にモノの大きさをそのまま小さくする“縮小”を行うことができる。

 

「遠距離の攻撃は限りなく圧縮し威力を弱め、接近戦じゃ身体を縮小してパワーを抑え込む。」

 

ローはハリスの戦闘方法を的確に見抜くと、彼は返事をせずにただニヤリと冷たく笑った

 

「じゃあ、もうわかるやろ?」

 

ハリスは諦めるよう二人に言い放つがローは己の刀に手をかけ、ルフィは無言で戦闘体制に入っている。

 

「諦めたらええのに...。」

 

ハリスは真顔になり、2人は警戒をする。だがそれをも無意味だった。彼には地面を縮小して一瞬で間合いを詰める術を持っている。

 

実質的な瞬間移動である。

 

 

ハリスは武装色で拳を硬化させると全力でローの顔を殴り飛ばした。彼はハリスとの戦闘でのダメージが残り過ぎていたのかガードすら間に合わずにもろに攻撃を受けてしまう。

 

そのまま研究所の壁に激しく叩きつけられ、背中からめり込むと動かなくなる。頭から一筋の血がたらりと流れるが、彼は拭うことすらできなかった。

 

 

「トラ男ーーッ!!!」

 

ルフィはそう叫ぶがローに届くことはない、だがまだ息はあるようだった。つまり彼のすべきことはハリスを退けて医者の元へ連れて行くことだった。

 

ルフィがいつになく真剣な表情を見せるとハリスはニヤリと笑う。相手の行動が無謀かつ無意味であると確信していたからだ。

 

ルフィが拳を地面に詰めて全身を一瞬だけ振るうように痙攣させると、身体が少し赤みを帯びて蒸気を発し始める。

 

「ふふふ、ボクの縮小で君は身体、つまり筋肉も小そうなってる。」

 

ハリスの縮小で小さくなった筋肉では普段のパワーが出ることはない。

 

なぜ彼の能力が“大半の悪魔の実を封じる悪魔の実”と呼ばれるのか?

 

 

それは単純明快である。パラミシアやロギアの遠距離系の攻撃は限りなく圧縮して勢いを殺し、パラミシアとロギア、ゾオンの近距離の攻撃は縮小でパワーを弱める。

 

この能力によって数多くの能力者は仕留められ、彼のボスのゾンビの器として保管及び利用されている。

 

彼の能力の対象外となり得る能力は限られる。例えばガスガスの実の能力者であるシーザーの酸素を抜く技、更にはドクドクの実のマゼラン、更に“不死鳥”のマルコの再生能力などである。

 

 

彼の能力と言えども身体(しんたい)における悪魔の実の作用までは封じることはできない。

 

分かり易く言えばロギアの攻撃を受け流す性質やパラミシアにおける身体の性質、そして先ほど上記したゾオンにおけるマルコの再生能力のような特質な性質、

 

なぜなら悪魔の実の力そのものを封じる力でなく、悪魔の実の攻撃を封じる術を持っているに過ぎないからである。

 

すなわち、ルフィのゴムゴムの実の性能そのものはハリスの干渉から逃れることができる。

 

 

ルフィは地面を瞬間的に何度も蹴ることで素早く移動し、ハリスの目の前に現れる。

 

「ゴムゴムのォ〜、“jetピストル”ッ!!!」

 

ルフィはハリスの頬を素早く殴りつけるが、衝撃は果てしなく小さく、ペチンという頼りない音しか出なかった。

 

ハリスはニヤニヤしながらルフィを挑発する

 

「蚊でもおったん?いや、虫は君やね。」

 

彼は小豆ほどの大きさのルフィの周囲の大気を一瞬で圧縮する。そしてそのまま指を弾いて大気を元へ戻し衝撃波を生み出した。

 

白い衝撃波は大気を波打つようにルフィへ迫り、火薬なき爆風が彼を襲う。

 

ルフィはハリスが攻撃をする事を見聞色で察知しており、素早く距離を取っていたため最小限のダメージに抑え込むことに成功した。

 

「躱してみぃよ...。」

 

ハリスは地面を軽く蹴ってルフィとの距離を詰めて、能力の範囲内へ間合いに入る。

 

そして幼児が無理して取る必要のない虫の命を遊びで奪うかのように笑いながら、能力で大気の衝撃波でルフィをじわじわと追い詰める。彼は何度も紙一重で回避し続けるが、確実に体力と気力を削って行く。

 

 

 

 

 

(なんか、飽きたね。虫が小さいから的を絞り辛いな。)

 

 

五分程、ハリスはルフィで遊んでいたがすぐに飽きてしまう。そろそろ彼を元のサイズに戻してトドメを刺そうと考えた一瞬の隙にルフィが親指から空気を注入し拳を通常ほどの大きさに肥大化させ、武装色で硬化をすると彼の頬へ殴りつけた。

 

ハリスは躱すことができずにモロに受ける。だがローとは違い咄嗟に覇気を纏って勢いを殺したのだった。唇が切れて血がたらりと流れ落ちるのを服の裾で拭くと指を弾いた。

 

 

ハリスがルフィの縮小を解いたのだ。

 

「おぉ...戻ったァァァァ〜〜ッ!!!!」

 

彼が呑気に大声で叫ぶが一瞬で目の前が真っ暗になると同時に後頭部が床に叩きつけらる感覚を感じる。

 

ルフィはゴム人間である以上、覇気を纏った手で地面や壁に叩きつけた二次災害的なダメージはない。

 

だがハリスの目論見はゼロ距離からの衝撃波を与える事だった。頭蓋骨を掴みながら右手を覆うように白く輝かせると、そのまま衝撃波を生み出した。

 

 

弾かれるように発生した痛みにより苦悶の声を発したルフィは頭部から周囲に撒き散らすように血が飛び散った。

 

ハリスは地面に大の字になって倒れているルフィから手を離す。そして彼とローを拘束するための海楼石の手錠を持って来るよう部下に連絡しようと考えるが、意識が朦朧としながらもルフィが震える両手で身体を持ち上げようとしているのを見つけた。

 

「そのまま寝ときや、君はようやった。」

 

ハリスは少し意外そうな顔をしながらも見逃す気はさらさらなかった。もはや痛みつける必要さえないと思ったからだ。

 

「はぁ、はぁ...俺は情けねぇ。」

 

ルフィはそうつぶやくと激しく歯切りをすると気力で朦朧としていた意識を戻した。更に痛みと疲労で震え続ける腕へ力を込めて抑え込む。

 

「...今、ここで四皇の幹部ぐらい倒せねぇと俺は海賊王になれねぇ!!!!」

 

ルフィは覇気を剥き出しにすると腕を噛み激しい勢いで空気を注ぎ込んだ。すると肩の筋肉が激しく隆起し、それを中心に全身が丸みを帯びる。そして武装色で全身を黒く染めると言い放った。

 

「...“ギア4(フォース)”。」

 

まるで歌舞伎役者のような形相に変化したルフィは常にゴムボールのように跳ね続けている

 

「なにそれ?」

 

「こうなった俺は強ぇぞ。」

 

ルフィは拳を己の腕の中にめり込ませていく。ハリスは本能でそれが彼の牙が自信に届き得る事を感じ取った。

 

「ゴムゴムのォ〜“獣王銃(ゴングガン)”。」

 

肘ほどまでに深くめり込んだ拳を一気にハリスへ向けて放つ。ゴムの反発する特性から凄まじい速度で放たれた拳はハリスの目に映ることはなかった。

 

 

 

だがそれと同時にルフィの拳もまたハリスに届くことはない。彼の目の前にはひび割れた透明なガラスのようなモノがあった。

 

彼が事前に何重にも大気を圧縮して作った壁によってそれは防がれた。しかしゆっくりとそのヒビは広がり、やがて壁は砕け散る

 

 

「ヤバいけど、覇気を使い過ぎや。でもこんなん相性最悪やろ。」

 

ルフィはハリスの言葉に耳を傾けず、再び攻撃を行おうとする。彼の攻撃は通常の攻撃よりも遥かに覇気を使い込んでいた。つまり時間制限があるのである。

 

しかし、それはハリスにとって最も都合の悪い最悪の戦法だった。彼は基本的に能力が強力過ぎるが故に無意識に己の身体能力や覇気の修行を怠っていたのかもしれない。

 

更に彼の能力の制限によってルフィを再び縮小してパワーを抑え込むのが至難の技になっていたのである。

 

 

(ボクの圧縮は一度に一つにしか対象を絞れないし、触れたモンを上書してしまう。)

 

 

彼が能力を使用するにおいて2つのモノを同時に干渉する事ができないのである。つまり大気の壁を作りながら大気の衝撃波を産み出すことができないという制限があるのだ。

 

更に後者がこの場面において厄介である。

 

例えば物体Aに触れ圧縮を行った後に元に戻し、物体Bに触れた場合には上書きがされ物体Aを圧縮できなくなる。

 

更に物体Aに触れ圧縮を行った後に元へ戻すとする。そして再びAを圧縮する場合はAにもう一度触れる必要があるのである。

 

 

 

つまり一度触れるにつき一度しか圧縮できないため、彼がルフィを圧縮するにはもう一度触れる必要がある。

 

そして今のルフィの攻撃を耐えつつ触れる身体能力、策においてハリスは持ち合わせていなかった。

 

結論、彼が距離を取って時間を稼ぎルフィのスタミナ切れ狙うか隙を突くのが最善手だった。

 

 

ハリスは何度も何度も大気の壁を作り続けてルフィの攻撃を防ぎつつける。時折混ざる強力な攻撃により、武装色の覇気で耐久性を高めるがそれは砕かれる。

 

 

そしてその時は訪れる。ハリスはルフィの攻撃に合わせて自分自身を縮小した。そして彼が攻撃の反動で前に行ったタイミングに合わせて指を弾いて元に戻った。

 

ルフィが空中に浮いている時に彼の真上の大気を圧縮して弾いた。爆風で彼は地面に叩きつけられると同時にハリスは上下左右斜めから大気を圧縮させて地震並みの振動を生み出した。

 

ルフィは地面が底抜けて下の階に落ちる。そしてハリスはルフィの周囲に何重にも重ねた大気の壁を四方に並べて彼を閉じ込める。

 

ルフィは何度もそれを破壊しようとするが、狭い空間のために勢いが殺されて破壊する事ができない。

 

 

「はぁ...アレは結構、ヤバかったね。」

 

ハリスは冷や汗をかきながら、なんとかルフィを拘束すると胸を撫で下ろした。

 

「さて、ロー君を拘束しようか。」

 

ハリスはルフィ同様に大気の壁で覆い閉じ込めておこうと考え、彼の方へ身体を向けるとそこにはめり込んだ壁しか存在してなかった

 

(おらんッ!!!)

 

ハリスはローの急襲に身構えるが、彼のサークルが見えないことから身体を休めているのだと結論付けた。

 

しかし、素早くそれを思い直す、

 

 

(いや、ルームは見えなくても発動することができる!!!)

 

 

ハリスは先ほどローを捕らえ損なった時にサークルなしに発動ができる事を思い出したが、時はすでに遅かった。

 

ハリスの背後にローが瞬間移動をすると彼は刀を一瞬で抜刀する。

 

彼の刃先がハリスの背中を斬り裂き、水溜りの泥水を思い切り踏みつけたかの如く傷口から血が弾き飛んだ。

 

 

 

(覇気で能力は防いだか、それに浅かった。)

 

 

ローは冷静に手応えから彼の命を刈り取る事ができなかった事を察して、もう一度斬りかかろうと刀を振り下ろそうとする。

 

だが身体の髄へ悪寒に近いナニカが流れた、禍々しいほどの純粋な殺気である。

 

「触れたな、俺に...。」

 

激しく血走った目に睨まれたローは全身を蝋で固められたかのように動く事ができなかった。やがて硬直が収まり刀へ力を込めるとそれは一瞬で手から抜け落ちた。

 

刀が小石程にまで縮小されたのである。ハリスは身体を右に捻らせて、落ちてくる刀の方へ手を伸ばした。

 

そして指を鳴らされることはなく(・・・・・)、刀は空中で元へ戻るとそれはハリスに掴まれた

 

ハリスはそのままローの胴体を斜めに切り裂くように刀を振るった。内臓を傷つけた感覚を覚えた彼は満足げに笑う。

 

 

(指を鳴らすのはフェイク、確かに拳に衝撃波を纏い攻撃した後に指を鳴らしてなかった。)

 

 

ハリスの指を鳴らす事に初めから意味などなかったのだ。

 

圧縮、縮小を解除するには指を鳴らす必要があると思わせるのは実に効果的だった。指を鳴らす前に逃れればいいという意識で戦いながら、不意に襲われる奇襲に対応するのは実に困難なモノと言えるだろう。

 

これもまた能力を消滅と思わせるよう入れ知恵をしたのと同じ人物である。この人物は姑息で卑怯だと罵られることよりも任務遂行を優先する男だった、そしてハリス当人はプライドやスポーツマンシップなどに興味はなかったためにそのアドバイスを受け入れた。

 

 

ローは重力に逆らうことなく倒れる。そして水溜りができるように血が流れ始めた。

 

 

(流石にマズい、今すぐ能力で止血しねぇと...。)

 

 

医者であるローはそう判断するが、それは叶いそうになかった。自分の喉元に自身の愛刀が突きつけられたからである。

 

「もう死んどき。」

 

ハリスが刀を振り上げようとすると彼のすぐ側の床が砕け、下の階からルフィが現れ両足を自身の身体にめり込ませていた。

 

「ゴムゴムのォ〜、“犀榴弾砲(リノシュナイダー)”ッ!!!!」

 

ルフィが両足の裏で刀を持っていた方の腕を全力で蹴りつける。ハリスの腕の骨の鈍い音と共にその場から飛ばされるが、彼は背後の大気を軽く圧縮して勢いを殺すと数メートル後方に着地する

 

だが彼の右腕は神経が取り除かれたようにプランと垂れており、まともに動かす事すら出来なさそうであった。

 

 

(壁のなかった床を壊して、上がってきたんか。もうこっちは使えんね...。)

 

 

ハリスは表情1つ変えることなく自身の折れた右腕を見つめるが、特に反応はしなかった。それどころかハリスは自身の左手に白い光を纏って殴りかかる。

 

ルフィは己の拳をめり込ませることすらせずにただ殴り返した。ハリスの攻撃など容易く弾かれ、彼は体制を崩してしまう。

 

ハリスの左側の4本の指が逆側に関節に従わずに曲がっていた。

 

 

「はぁはぁはぁ...お前の負けだ!!!」

 

ルフィは己の覇気と体力を激しく消耗しており、もはや満身創痍であると言っても過言ではなかった。

 

「...こんな所で。」

 

ルフィには聞こえない程度の小さな声でハリスはそうつぶやいた。

 

(ボクは負けるわけにはいかんのや、ボクはボクの正義の為に...。)

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

〜16年前(ハリス12歳)〜

 

 

 

 

〜スリラーバーグ、城の中〜

 

 

 

 

 

 

 

高貴な貴族のような男と部下らしき男を取り囲むように人々は集まっていた。皆は2人を除いて全身がボロボロで小汚い雑巾のような衣服を身に纏っている。彼らは涙を流しながら天へ男へ感謝の意を述べ続けていた。

 

奴隷だったのだ、未来永劫続く地獄で生き続けるしかなかった彼らへ救いの手を差し伸べたのである。

 

「お前達を救ったのは俺の義心に従ったに過ぎんよ、これからは好きに生きるといい。」

 

男の名は王下七武海が一人、ゲッコー・モリアである。彼は己の地位を失う可能性がありながらも不条理な境遇にある彼らを見逃すことができず救ったのだ。

 

「ただ奪われた悲しみ、憎しみを糧に生きるのではなく、ほんの少しでもいい、優しくあってくれ。それが俺の願いだ。」

 

モリアの言葉に激しく泣き叫ぶ元奴隷達は彼を救世主、救いの神と讃え続ける。彼は己の意思が伝わった事に満足して控えている部下へ暖かい食事と清潔な衣服を用意するよう指示を出した。

 

彼の優しさに今後の人生全てを捧げる覚悟をした多くの者とは異なり、その場で唯一、ただ一人だけ復讐の炎を燃やす少年がいた

 

 

(何が英雄だ、何が救いの神だ?俺が、俺がヤツを殺してやるンヤ(・・)...。)

 

 

恐ろしく鋭く冷たい瞳で己を救ってくれたはずの男をただ睨みつけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






評価欄や個人メッセで何度かあった質問と指摘をここに書いておきます。


Q.1記憶をなくすなら憑依じゃない、意味がないしタイトル詐欺じゃないのか?前世の記憶のモリアさんを書くのから逃げただけでは?

A.憑依にしたのは覇王色と覇気の才能をモリアに与えるためで、彼の性格、見た目をも変更したかったから(ifでは少し無理がありそうだったのも含まれる)。記憶を消したのは原作との相違点を無くすためにギルノスの存在を消さなくてはならなかった。彼のバックアップの設定はモリア本人(憑依時)の記憶が戻ると下書きしておいた筋道と仕込んでおいた設定が発動させるには少し無理があったから。

あと正直に言いますが、失踪時に暇を見つけて少しずつ書き溜めたのを全て書き直すのが少々、しんどいのもあります。




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死の行商人



*6月8日、ハリス・アーノルドの父親の名前をマヘス・アーノルドとしていましたが、ワンピースの世界では“姓”→“名前”の順であるという指摘から修正させて頂きます。私の凡ミスでキャラの名前を変更するという事から混乱を招き申し訳ありません。

修正前 マヘス・アーノルド ✖️
修正後 ハリス・ヴァルジャーク ○


 

 

 

 

〜18年前、ハリス・アーノルド(10歳)〜

 

 

 

 

 

<グランドライン>

 

 

 

 

 

 

とある国は隣国との戦争の真っ只中であった。きっかけは些細な事に過ぎなかった。

 

たまたま王族の一人が船に乗って旅行をしているとハリケーンに遭遇していまい。そして不運にも仲の悪かった隣国の海岸へ打ち上げられたのだった。

 

政府はすぐさま交渉を行ったが、その渦中に持病の発作で死んでしまったのだ。薬を与えてやればすぐに治るのだが、持ち物は常備している薬を含めて全て没収され当人の訴えは仮病と判断され無視された。

 

元々隣国の鉄資源を狙っていたため、これを理由に宣戦布告をし戦争と発展したのである。

 

 

 

 

 

それから3年後、この戦争とはまったく関係のない男が経済面で国の大臣と商談を行なっていた。彼は白く長い髪をポニーテールにしてゴムで結んでいる。歳は30代半ばと思われ鍛え抜かれた肉体と不遜な態度からカリスマ性の様なものを持ち合わせていた。

 

「商品は如何かね?」

 

部屋へゆっくりと響き渡るような低い声で丸眼鏡に黒い顎髭を携えた大臣へ問いかける。彼の名は“ハリス・ヴァルジャーク”、グランドラインでは名の知れた武器商人であった。

 

この国の兵士が使用する銃を必要としていると判断したのか、アポを取らずにいきなり現れ商談を持ちかけたのだ。実に無礼な振る舞いだが大臣は許さざるを得なかった。

 

男の通り名は“死の行商人”、新世界でそこそこ名を馳せた傭兵でありながら数年前に戦場から退き武器を仕入れ売り捌くようになったのである。

 

彼には良からぬ噂が流れていた。あるマフィア同士の抗争中の真っ只中に現れ、資産に余裕のある方へ商談を持ちかけたのである。

 

今回と同じくアポを取らずにふらりと現れたことから無礼だと追い返したところ、そのマフィアは3日後に滅んだ。

 

敵対していたマフィアがそれまでにない程に戦力を増備したのが原因だった。強力な武器と屈強な傭兵を配備したが、どう考えてもそれらを調達する資金が割に合わなかったのである。

 

そしてある憶測が広まった。マフィアへ武器や傭兵を用意したのはヴァルジャークであり、それらは無償で行われたのだとーーー。

 

 

無償提供など商人であるならば考えられない行動であり、当時の人々はその理由を考えたが一向に謎が解けることはなかった。

 

そして後に彼と何度も商談を行っている者がその答えを記者へ漏らした。

 

ヴァルジャークにとって儲けなどに興味がない。ただ武器を捌き、その武器で何かを滅ぼす事に意味があるのだ。さしずめ商談とは彼の楽しみの第一歩であり、ルーティーンと言える。

 

君は楽しみで行った場所が期待はずれであればどう思うかね?私は落胆するだけだ。

 

しかし、ヤツは違う。初めから何かを滅ぼすことにしか興味がない。楽しみな場所などどうでもいいのだよ。つまり彼にとって金を稼ぐ事とは趣味への投資なのだ。

 

 

 

 

それから彼の異名がついたのである。だがそれと同時に彼は商談においての約束は絶対に守る男であると有名だった。

 

以前、反乱軍(レジスタンス)と取引を行い、ある武器を仕入れる約束をした。だが不運にもそれを生産していた企業が倒産し、社員の多くは全て他の企業へ買収されてしまった。

 

そこで彼はその買収した会社の社長へ会いに行き、買収した倍の金額を支払い、会社を独立させると共に社員達の大多数を金の力で奪い返した。

 

そしてその武器を再生産させて取引を完了させたのである。むろん追加報酬など受け取らず約束通りの金しか受け取らなかった。

 

 

ヴァルジャークを信頼できる商人として招き入れようとした国、組織、テロリストは多くいたが彼がそれに応じたのは一度たりともなかった。彼は金儲けよりも己が楽しむ事を選ぶような男だった、自分の眼で見て商品を売り、武器で全てを破壊され尽くしたモノを見るのが何よりも好きだったからである。

 

「ふむ、かなり質がいい。だが我らの戦争もじきに終わる。果たして武器が必要があるのかと疑問になるのだよ。」

 

大臣はヴァルジャークという男がわからない。この国に武器を売る理由がないと考えていたからだ。彼にとって何か思い入れがあるわけもなく戦争は終結寸前である。

 

戦局はこちらの圧倒的優位である。己の手を汚さずに破壊を望む彼が既に破壊されかけているモノに果たして興味があるのかと考える。そもそも噂通りの男ならば自分達でなく相手側に加担するのが自然だと思われる。

 

しかし例のマフィアのように無下にあしらって敵国に加担されるよりは無理に取引をすべきだと理解はしているが、戦時中であるために国の金庫は少々寂しかった。

 

こちらに武器が必要ないと思わせて最低限度の武器のみを仕入れようと結論づけ、彼に資金源が心許ない事だけでなく、密かに購入の意思が無いことを悟らせようとした。

 

「例えばこのモデルは従来より小型で扱い易いのが特徴でな、極論を言えば子供でも兵士になれる。」

 

ヴァルジャークは机の上に開かれたカタログの中の1つに指を指して、特徴を説明し始めた。

 

その言葉に大臣は少しギョッとした。どう追い返すかを決めたタイミングに彼は商談を勧めにきたのである。まさか自分の魂胆を見抜かれていたのかと少し焦りながらも返事をする。

 

「...確かにそれは便利そうだ。サンプルを用意してくれないか?」

 

「感謝するよ、大臣殿。」

 

ヴァルジャークは貴様は私の掌の上だと言わんばかりに顔を歪めてニヤリと笑った。そして彼はポケットの中から“でんでん虫”を取り出すとある番号へかける。

 

「例の小型モデルを持ってきてくれ。」

 

彼が電話をかけた先に一言指示をする。返事を待たずに“でんでん虫”の通信を切断すると、大臣へ向けて右手の指で全て立てて5分だけ待ってくれないかと言った。

 

4分と30秒ほど経つとヴァルジャークは軽く微笑みながら大臣へ言い放った。

 

「私の見立て(・・・)より早かったようだ。」

 

大臣は怪訝な顔をして彼の意味深な言葉の真意を考える。すると人の気配がして素早く目線を向けると、部屋の窓の縁にアタッシュケースを背中に括り付けている白い髪の少年が立っていた。

 

「おぉ、子供がどうしてこんな所に?」

 

大臣は冷や汗をかきながら呟く。外にはヴァルジャークが訪れてから警備の者を増員させたはずだった。アタッシュケースを背中に括り付けいる少年を見れば敵国のテロだと判断して騒ぎになるだろう。しかし周囲はとても静かであった

 

「あぁお構いなく、私の息子だ。」

 

ヴァルジャークは薄気味悪く笑いながら目の前の少年が怪しい者でないと伝えた。

 

彼の息子は一言も発することなく、アタッシュケースの中から幾つかに分解された部品のようなモノを慣れた手つきで組み立て始める。

 

10秒ほどすると先ほど前向きに検討していた小型の銃が完成する。この瞬間に大臣は彼の息子の潜入スキルと警備の甘さを痛感させられた。既に部下から彼が息子を連れてきており、大量のアタッシュケースと共に城の一室に待機させているという報告を受けていた。

 

待機部屋からここまでは歩いて5分はかかる。更にヴァルジャークが訪れたことを皆へ知らせておらず知らない者が見れば息子を捕らえにかかるだろう。しかし商談をしている者の関係者を制圧して進む訳にもいかない。だからこそ壁を伝ったり、部屋と部屋の窓から移動して警備の穴を掻い潜ったのだ。

 

「戦争が終わればこんな事も出来ましょう。」

 

ヴァルジャークは心が乱れている大臣へ更に問い掛ける。彼は窓の外から鳥の群れを指差す

 

すると息子は銃を構えて狙いを定めると銃の引き金をひいた。銃弾は群れの中の一羽の鳥の胴体を貫くとそのまま地面へ落ちていった

 

 

 

ヴァルジャークは一瞬だけ不愉快そうな表情をしたが、すぐに笑顔になり正常な判断すらできない大臣へ語りかける。

 

「小型であるが故に反動も小さく、親子で狩りなども楽しめますな。」

 

「.......買おう。」

 

「感謝するよ。」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

1時間後

 

 

 

 

〜馬車〜

 

 

 

 

 

取引を終えたヴァルジャークとその息子であるハリス・アーノルドは2人で馬車に乗って移動していた。この親子の会話などあるわけもない、彼は息子に次の商談相手の拠点の間取りや警備の情報の書かれたファイルを暗記させていた。

 

「今日の潜入は良かった、私の見立てより早かったのは構わん。遅くさえなければな。」

 

商談の秘訣とは相手を追い込みつつ正常な判断をさせないことであるとマヘスは語る。その為に息子の危険を冒してでも無理な潜入をさせるのである。

 

悪名高い自分(商人)の相手をするとなると優秀なヤツである。無論、頭はよく思考力も想像力も優れているはずだ。今日のように現れたハリスが商品を持ってくるのではなく、もし爆薬を持っていたらどうなっていただろう。一人前でもプロでもない年端のいかぬ子供に痕跡なく潜入を許せば誰であろうとも怯む。ましてや優秀なヤツほど自体を重く受け止めて失態を大袈裟に考える。

 

「...だが銃の腕は未熟のようだ。アレは頭を撃ち抜けと言ったはずだ。」

 

「すみません、父上。」

 

アーノルドはファイルの中から拠点の間取りからどの部屋で商談が行われても構わない侵入経路を探しながら謝罪をする。

 

「まぁ結果として商談は想像以上に上手くいった。だからこれ以上の追求は必要ない。」

 

ヴァルジャークはそう言うとアーノルドにこの国で名産の菓子を渡した。礼を言われても表情1つ変えない父親に息子は軽く笑みをこぼす。

 

「ところで今日の商談は必要なんてありましたか?武器なんて必要なさそうでしたよ。」

 

アーノルドはこの国の情報のまとめられたファイルに記載してあったように戦争は終わりかけていることから、城下町や城内の様子を観察して商談が成立する可能性が低いだろうという算段をつけていた。

 

「じきにわかる。楽しみにするといい。」

 

 

 

ヴァルジャークはとても愉快そうな顔を浮かべてアーノルドへ言い放つ。息子は父親のように破壊には興味がなかったが、何か理由があるのだろうと考えてこれ以上何も質問しなかった。

 

 

 

 

 

この出来事の半年後に戦争は終結した。むろんヴァルジャークと取引をした国が勝利し、兵士に支給していた武器は城の倉庫へ保管するはずだった。しかし財政は最悪で借金すら抱えていたために彼との取引で手に入れた大量の小型の銃を狩猟、護身用として国民へ売り捌いた。

 

そして兵士として男性の数が激減したことや経済政策がうまく行かずに借金はどんどん増えていった。やがて負債を負債で返す日々が続くとその国は経済破綻に陥ったのである。

 

やがて国民達が立ち上がり内乱が各地で起きてしまった。政府軍と市民軍に分かれて激しい戦火を撒き散らし始めた。ちなみに市民軍の多くは子供(・・)だった。

 

だが政府軍には資金と武器が圧倒的に不足していたのである。借金の返済と国民らへ売り捌いたためである。そのせいでヴァルジャークの手配した銃を手に取った反乱軍が取引を行なった者達へ向けられ(破壊)されていく。

 

 

取引から10ヶ月後には国が崩壊しており、見るも無残な光景のみが首都を埋めていた。反乱軍によって統治されることとなったが経済に詳しい者などいるわけもなく国の経済状況は更に悪化。統治者が変わったからといって借金を踏み倒すことなどできるわけもない。

 

やがて力を盛り返した敵国から侵攻を受けて国そのものが世界の地図から消え去った

 

新聞でヴァルジャークがこの話を知った時は身体を後ろへよじらせながら愉快そうに笑い続け、大人しくなると掲載されていた首都の崩壊を写した写真を満足そうにずっと眺めていた。

 

 

 

 

国をも滅ぼす“死の行商人”がハリス・アーノルドの父親だった。

 

 





ハリス・アーノルドの父親の名前は私のミスです。完全に姓と名前の順番を失念していました。今まではハリスを名前であるかのように使っていましたが、混乱を広げないために今回だけアーノルドとさせて頂きました。

念の為に次の話の冒頭にもほぼ同じ内容の文を載せておきます。本当に申し訳ありませんでした。


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竜の烙印

先日、前回の話でオリキャラの名前に関するミスの指摘を頂きました。詳しくは一話前の冒頭に記載していますのでご確認頂ければ幸いです。

本当に申し訳ありませんが、ご了承ください。



 

 

〜取引から一年後〜

 

 

 

 

 

<シャボンディ諸島、ヒューマンショップ>

 

 

 

 

 

 

王下七武海の一人、ドンキホーテ・ドフラミンゴのシンボルによって合法となっている人身売買の施設にハリスはいた。

 

彼の首元にはセンサーを搭載された首輪が嵌められており、他の商品と共に牢屋の中に閉じ込められていた。小人や魚人族、ミンクもいたが彼らの目には恐怖と絶望以外に映っているモノはなにもなかった。奴隷として誰かに購入されペット以下の扱いを受けるだけだと理解していたからだ。

 

しかしハリスは無表情で天井だけを見つめていた。純粋に残りの人生に興味がなかったのかもしれない

 

 

 

 

“死の行商人”として名を馳せたハリスの父親は怨みを持つ者に毒を盛られ死亡。そしてその一味にハリスは捕まりヒューマンショップに売り飛ばされたのである。

 

彼は生まれた時から父親の側について生きていた。母親は彼を産むと同時に亡くなり父親一人に育てられたのである。自分の手を汚さずに破壊を楽しむ性格はよくわからなかったが、彼にとっては家族だった。

 

しかし亡くなってみても悲しいという感覚がなかった。正確には分からなかったのだ。ハリスの父親は武器商人としては一流だったが、親としては少し性格的な面で欠落していた。己の快楽の為に子供を利用する点において彼は教育や鍛錬の努力は惜しまなかった。

 

だが息子へ父親としての愛を与えるのが少し不十分だったのだ。さらに目の前で破壊されたモノを生まれた時から間近であったために“父親が破壊された”。それ以上にハリスの頭には何も浮かばなかった。

 

 

結果としてとある国の婚期を逃した貴族の醜女にオークションで競り落とされた。彼女にとっては初めてのヒューマンショップで見学のつもりだったが、ハリスをひと目見て気に入り競り落としたのである。

 

 

ハリスは食事や風呂、寝室は用意されているなど奴隷としては珍しいほどに恵まれた待遇だった。

 

暴力や重労働などは一切なかったが、彼女の部屋にほぼ一日中軟禁されていた。彼にとっては暇を持て余すぐらいしか嫌なことはなかったので今の立場に比較的満足していた。

 

貴族としての付き合いで多忙な彼女はたまに帰ってくると、ハリスの服を脱がしてベッドへ突き飛ばすと馬乗りになる。そしてそれら一通り終えると彼女は愚痴を聞いてやる日々を過ごしていた。彼は父親からそのような教育を受けていなかったため、彼女から愛を確かめ合う儀式と教えられていた。

 

その後に愛とは何か?と訪ねたハリスに彼女は何も答えられなかった。

 

 

 

 

ある日、珍しくハリスは主人の買い物に付き合わされていた。彼女は従順なハリスを大いに満足しており、暇を持て余している彼に友人を与えるためにヒューマンショップを回っていた。ミンクや小人を品定めするためにオークション会場へ訪れたのである。

 

「ハリス、向こうへ行きますわよ。」

「了解しました。」

 

ハリスは主人の容姿の醜さを誤魔化すように散布されたキツい香水の匂いを嗅がないように早口で返事をする。彼は奴隷にしては珍しく脱走を試みたことはなかった。

 

なぜなら彼女の部屋以外に自分の居場所がないと理解していたことと普通の人間としての生活を知らなかったからである。

 

 

 

空いた席へ向かっていると主人の顔が一瞬で表情が強張ると軽く震え始める。ハリスが目線を辿ると目の前には滑稽な髪型をした醜い家族がいる。皆は全身を外気から身を守るためかシャボンのマスクと防護スーツを身につけていた。

 

素早く目を逸らしてハリスの腕を掴んで急ぎ足で席へ向かおうとする。彼はふと目の前の一家の端にいた自分と同い年ぐらいの少女と目が合う。他の者達とは異なり身体の線は細く整った容姿をしていた。

 

 

 

そんな些細なことが気に障ったようだった

 

 

 

 

『そこのお前、儂の娘に色目を使ったぇ。奴隷に見られるなど穢れてしまったぇ。』

 

一家の中で父親らしき男が粘着質のような声でハリスへ不快そうに言い放つ。彼はなぜこの太った醜い男がこれほど怒っているのか理解できずにいた。

 

「申し訳ありません!私めの奴隷が無礼な行為を、どうかお許しをタルモント聖ッ!!!」

 

すると彼女は大量に汗をかきながら悲鳴に近い声で謝罪をした。この一家はただの家庭ではなかった。彼らは貴族なのではない、800年前に世界政府を創ったとされる20人の王の末裔とされている世界で最も崇高であるとされている一族、“天竜人”である。

 

どれほど不条理で傲慢なことをしでかそうとも罪に問われることはない。更に彼らに手を出せば海軍大将による報復が待っている。その為に彼らの横暴かつ下賤な行動の全ては許される。

 

『誰がこの儂に口を聞いてよいと許可したぇ?』

 

主人にタルモント聖と呼ばれた男は静かに冷たくそう言った。その言葉にオークション会場は静まり返る。彼らの機嫌を損ねた者は全てが同じ末路を辿っていたのを知っていたからである。

 

唖然としたハリスの主人は全身を強張らせて全身を痙攣させるように震え始めた。そしてへなへなと腰が抜けて地面に座り込んでしまう。やがて狂った猿の玩具がシンバルを無意味に鳴らし続けるように何度も何度も謝罪の言葉を呟き続けていた。

 

『そこの白髪、お前。なぜ頭を下げん?不敬だぇ。』

 

 

(頭をさげる?なぜこんな豚に...。)

 

 

タルモントはこめかみに筋を入れながらハリスへ頭を下げて許しを乞うよう言う。だがハリスは天竜人の事など知らなかった。彼にとってはただの醜い人間もどきのブタが騒いでいるだけのように感じていたからだ。

 

 

 

『ふん、今日は競売を楽しむつもりが興醒めじゃ。おい、女。その奴隷は幾らで買ったんだぇ?』

 

タルモントは突然立ち上がるとハリスの主人へ質問をする。

 

「ひっ...73万ベリーでした。」

 

彼女は震えながら質問に答えた。人間の男の最低価格は50万ベリーである。

 

だが子供は泣き喚いて奴隷として満足な働き手にならない事が多かったために欲しがる者は少なかった。純粋にハリスの容姿から将来、化けるであろうと判断した女達が競り合った結果、彼女の所有物となったのである。

 

 

 

『買い取るぇ。』

 

「えっ?」

 

タルモントはハリスの買い取った値段を聞くと側にいたサングラスをかけた黒いスーツの護衛らしき男に金を渡すよう合図を送った

 

『なにか問題でもあるのかぇ?』

 

「いいえ、差し上げますわ。」

 

反射的に否定的な態度をとってしまった女に対してジロリと睨んで黙らせる。そして黒服の男が金を押し付けるように渡してくる。

 

 

ハリスの主人は己のバックの中から首輪の鍵を黒服の男へ渡そうとすると、タルモントはそれを遮った。

 

 

 

『すぐに返してやるぇ。』

 

タルモントは己の懐から金や宝石で豪華に装飾されたピストルを取り出してハリスへ向けた。オークション会場にいた一部の女性達が悲鳴をあげると、ハリスと目があった少女が口を開いた。

 

『耳障りアマス。』

 

彼女の呟き一つでオークション会場は物音一つせず静まり返る。すると娘を溺愛しているタルモントの表情が強張り周囲の観客達を軽く一瞥すると、皆は下を俯いて目立たぬようにしてやり過ごそうとする。

 

 

『...父上。私はこの奴隷にするアマス。』

 

少女は父親であるタルモントにそう言った。軽く笑みを浮かべながらハリスを舐め回すように見る。

 

『こんな貧相な奴隷でいいのかぇ?』

 

タルモントは娘に確認をとる。彼女をここに何度か連れてきた事はあったが、今まで奴隷を欲しがったことなどなかったのだ。

 

「大人は嫌アマス、それに若い方が長く持つアマス。」

『わかったぇ。』

 

タルモントは娘の考えを聞くと尊重することにしたようだ。天竜人と言えども自分の肉親は可愛く見え、嫌われないように波風を立てないことにしているようだった。

 

『私はさっそく城に帰るアマス。奴隷はもうコイツだけで満足アマス。』

『そうかぇ、お前達、送ってやるぇ。』

 

タルモントは護衛の黒服の半数を娘の送り迎えに付き添わせる。そして彼女はハリスの首輪についているリードを強く引っ張り、軽く引きずるように彼を城まで連れて帰った

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜聖地マリージョア〜

 

 

 

 

 

シャボンディ諸島から天竜人の居城のある“赤土の大陸(レッドライン)”へ帰還した。ハリスは途中から諦めて素直に歩いて彼女の後ろを付いて行っていた。すぐ側にいる護衛達が厳重な警戒態勢で自分が少女を襲うのではないかと待ち構えている。

 

彼女は疲れたと言うと自分の部屋へ戻る。そして奴隷に焼印をするよう指示を出した。これは天竜人の奴隷であるという証明のために身体の何処かへ竜の鉤爪の紋章を刻みこむのである。一生消えぬことのない人間以下の証明を焼き付けられる少年に軽く同情をしながらも命令には逆らえず護衛達は地下へ連れて行く。

 

 

 

だが彼ら達は不思議に思っていた。大人でも全力で抵抗することも珍しくなく、気絶させて刻み込むハメになるのに目の前の少年は無言で自らの足で歩いて行くのだ。ここまで来たら嫌でも気がつくだろう。

 

石炭で真っ赤に燃やされている鉄の棒の先端には天竜人の紋章の形をしており、蒸気により空気が歪んでいるようだった。

 

黒服の一人が手袋をして焼印を手に取ると凄まじい高温から汗をタラタラと流し始める。そしてハリスの服を脱がせると背中に思い切り真っ赤に焼けた鉄を押し当てた。

 

ジュージューという肉が焼ける音が地下を覆い尽くすが、黒服達の耳に悲鳴が入ることはなかった。完全にハリスが無反応だったのだ。痛感がないわけではない、痛みに強いわけでもない。考えるだけ、反応するだけ無駄だと察していたからだ。

 

ハリスは自分のために生きるという発想がなかった。父親が自分の快楽の為に息子をそう教育したからである。彼の無関心さは父親譲りということも含まれるが、感情が常人に比べて欠落しているのだ

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

1日後

 

 

 

〜聖地マリージョア〜

 

 

 

 

 

ハリスは天竜人の焼印を背中へ刻まれると冷やして傷を悪化させない為に氷をつけていた。彼は背中が痛みと痒みによりズキズキとするが何もせず普段と同じ様に無表情である

 

1時間ほど冷やし続けて腫れが少しだけ治ると黒服の男に連れられて自分の新しい主人の部屋へ向かった。そしてダイヤやルビーの装飾がされたドアをノックする。

 

「入るアマス。」

 

黒服の男はドアノブに触れてゆっくりと押した。だが少女と目を合わせてマニュアル通りの言葉で期限を損ねぬようにする。

 

「アピマネラ宮、ご寛大な御心、恐悦至極にございます。本日入荷致しました奴隷を連れてまいりました。」

 

アピマネラと呼ばれた少女はシャボンのマスクを外しており、防具スーツのような服のみを身につけていた。彼女は青いショートヘアに黒い目、そして年齢相応な未発達で細身の身体をしている。

 

「奴隷を置いて下がるアマス。」

 

アピマネラは目障りだと言わんばかりに冷たい表情をして、黒服の男が出て行くように言い放った。安全を保障できないために奴隷と二人きりにする事は望ましくないと可能な限り丁寧な言葉で言い返したが、彼女はピストルを取り出して男へ向けた。

 

「わかりました、くれぐれもお気をつけくださいませ。」

 

男はアピマネラに護衛に付かずにハリスに暴れられて傷をつけられ、何らかの処分を受ける可能性を危惧したが今すぐ弾丸に撃ち抜かれるよりはマシだろうと考える。

 

 

護衛がアピマネラの部屋から離れて部屋には沈黙が流れる。そして彼女はキリッとした瞳でハリスをジッと見ると口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君ねぇ、ほんとに馬鹿なの?」

 

とても呆れた様子で彼女はハリスへ言い放った。そういうと軽く腕を上へ伸ばして声を漏らす。高貴さをひけらかすように付けられた語尾を取り払ったアピマネラは天竜人ではなく、何処にでもいるような少女であった。

 

「天竜人に逆らったらどうなるか知ってるわよね?私に感謝しな...ふわぁ〜。」

 

彼女はベット縁を背もたれにして寄りかかりながら、ハリスへ真剣な表情で追求し続けていたが飽きたのか途中で欠伸をして中止をする

 

「...。」

 

これがハリスとアピマネラの出会いだった

 

 



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マリージョアの犠牲者

想像以上に回想が伸びてしまったので可能な限り一話に纏めました。おそらく次の投稿で終わりますが、期末試験のために一時的に凍結します。


普段より少し過激です、御気をつけください


 

 

 

 

 

 

 

一ヶ月後

 

 

 

 

〜聖地マリージョア〜

 

 

 

 

 

宝石や一流の職人の手で施された豪華なアンティークが散りばめられ、稀有な獣の毛皮の絨毯に少年少女は寝っ転がりながら分厚い動物の図鑑を眺めていた。

 

彼らは図鑑の特徴ある動物を指差して笑っていた。雪の国に住む登山好きな礼儀正しいクマ、カンフーを習得している武闘派なアザラシ、人の言葉を真似て話す人面ライオンなどの世にも珍しい珍獣を観察して楽しんでいる

 

「はぁ...、図鑑を見るだけの生活なんてつまんない。そう思えてこない?」

 

青い髪をした美少女は寝返りをうちながら正座のように散りばめられたエメラルドの天井を見上げ溜息をつく。

 

「アピマネラが父親に頼めば用意ぐらいしてくれるでしょ。まぁ俺は楽しいけど...。」

 

頑丈そうな鉄の首輪を嵌められているハリスは無表情でそうつぶやいた。

 

二人はいつも一緒だった。互いに暇を持て余していたため、ハリスはアピマネラの持つ本を読んで時間を潰していた。

 

彼らの世界は本だけにしか過ぎなかった

 

天竜人と奴隷、世界最高の血筋と人権すらない底辺の相反する二人は同じだった

 

政府によって己らの望み通りの環境を与えられた代償に理性と実権を奪われ、聖地という建前の軟禁所に固められた天竜人。

 

彼女は理解していた。天竜人が世界を牛耳っているのではなく、政府を傀儡として操っているのでもなく、飼われているのだということをーーー。

 

天竜人そのものの価値はまるでない、本当は権力をもっているわけでもない。政府から七武海同様の非合法活動の全てに目を瞑り、海軍大将を己の兵士として扱える権利を持っているだけに過ぎないということを理解しているのは極僅かである。自分が政府の人間であれば害でしかない目障りな連中を生かしておく意味はない。つまり天竜人を生かしておく何らかの理由があるのだろう。

 

彼女はそう悟った日から何も考えない事にした。理性の狂った発情期のブタのように感じていた父や兄達、価値や珍しさを知らずに高価だからという理由で身につけて醜い容姿を少しでもマシに見せようと着飾る母や姉、

 

嫌悪するだけ無駄だと結論づけて目を逸らしていた。そう考えると全てが退屈になったのである。奴隷などには興味がなかったし、話し相手がいなければ困るほど子供ではない。シャボンディのヒューマンショップにいたのは一度ぐらいは付いて来いと父親に強く言われたからであり、嫌々に付き添っただけに過ぎなかった

 

 

 

 

対してハリスは感情がわからなかった。彼の世界は父親が全てで父の命じるがままに選択し、生きてきた。ハリスの世界の全てであった父親は殺され、奴隷として売り飛ばされた。こんな指示を受けていなかったために流れに身を任せていたのである。成り行きでアピマネラの奴隷となり、二人で過ごす内に少しずつ理解してきた。

 

 

 

自分達には共通の目的が一つだけあるということだ

それは“自由”に生きること

ただそれだけの事を共に望んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

「天竜人なんてクソよ、だいたい喋り方とか何がしたいのか...。」

 

アピマネラのいう喋り方とは、天竜人がつける特有の『〜だぇ、〜アマス』などの語尾である。なぜかは知らないが天竜人らはこのおかしなモノを付けるのが常識であった。

 

アピマネラは天竜人を心の底から嫌悪しており素の彼女はいびつな語尾など使わない。だが異端だと思われて孤立するのも都合が悪い。少し前に天竜人も1人の人間に過ぎないと提唱した者の家族が地位を捨ててマリージョアから出ていったことがあった。

 

彼らを待ち受けていたのは天竜人への恨みを持つ者達からの報復である。彼女はその一家の二の舞になる気はなかった。つまり嫌悪しつつも世間や家族の前では天竜人らしく振舞う必要があったのである。

 

「...あ、そういえば。」

 

アピマネラは思い出したようにベットに散乱している幾つかの本の中から一冊、手にとって表紙をハリスへ見せつける。

 

「“ワノ国の文化”...、どっかの国の本?」

 

ハリスは題名を見てつぶやいた。彼は何処かの知らない国の珍しい文化でも書いてあり、それを自分に報告したいのだと考えた。

 

普段から何もすることのない二人にとって、これは貴重な会話のネタだった。奴隷であるために部屋で軟禁されているハリスと違い、アピマネラはマリージョアの図書館へ入ることができる。そこから面白そうな本を持ってきて部屋でハリスと共に読んでいたのである

 

彼女はハリスの質問に答えることなく、折って印をつけていたページを開いた。そこには方言という特有の文化が記載されており、語尾に何をつけるかを手短に書いてある

 

アピマネラはジッとそれへ目を通すと、軽く咳払いをして口を開いた

 

「私は自由になりたいンヤ!!!」

 

「...何かおかしい。」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

3ヶ月後

 

 

 

 

 

 

ハリスがアピマネラの奴隷となって3ヶ月が過ぎた。彼女はこの部屋以外では傲慢で我儘な天竜人を演じ、時に些細な理由でハリスをハイヒールで踏みつけることもあった。周囲へバレない程度に加減されていたために彼は何も反応せず痛みを堪えられた。その様子を見た者はアピマネラの調教がよくされていると褒めることとなる。

 

 

 

そしてあの日から暇な時は周囲の目には晒されることのない唯一の場所といえるアピマネラの部屋で時間を潰していた。

 

「ねぇ、2人でどこか遠くへ行こう。俺達の事を誰も知らない自由な世界へ。」

 

2人はベッドにねっころがり自分達の望む“自由”を語り合っていた。ハリスは彼女から己が望むべきモノが何か、心とは何かという事を教えて貰っていた。自分が心の底から自由を求めているかはわからないが彼女がそういうならば正しいだろうと思ったのである。

 

比較的に頭の鈍い彼にも奴隷と天竜人という相反する存在が世間から忌み嫌われている存在であることは容易に想像できる。

 

「ええね、私は大人になれば結婚させられる。だから大人になる少し前に逃げん?」

 

「ふふふ、待ち遠しいよ。ってか僕もソレやらなくちゃいけないの?」

 

天竜人は自身の血族が神聖なモノであると信じてやまなかった。それ故に己らの子供は天竜人同士で成した赤子しか認めない者も多い

 

奴隷との子供ができたケースは多い。奴隷が女性であれば興味本位で腹を裂かれて胎児を手にとってみたり、腹を蹴りつけて流産させたりすることもある。だが中には正室の子として育てる場合も少なからずある。狭いコミュニティのみで天竜人の血を薄めぬように子を成していくと見た目が似通ってしまい奇形な体格となりがちになる。だが稀に整った容姿をしている天竜人は容姿の整った奴隷との子である傾向がある。

 

そしてアピマネラはそのケースである。他の兄弟とは違い醜さのカケラもない彼女の母はシャボンディ諸島のウェイトレスであり、父に見初められて強制的に第四夫人にされたのである。彼女は子供を産み終わるとすぐに飽きたとしてマリージョアから追い出され、まもなく病気で死んでしまったのである。

 

 

 

そのような事情を知らないアピマネラはハリスが自分と同じ方言を使うことに抵抗があるということを理解すると、少しだけ悪い顔をすると両手で頬を軽く掴んで横へ引っ張った

 

「あ、た、り、ま、え、や!」

 

彼女は一文字ずつ強調するように喋った、そして文脈を切るタイミングに合わせてハリスの頬を強めに引っ張る。

 

言い終わるとハリスの頬肉は解放された、だが少しだけ赤くなっていた。彼は右側の頬をさすりながら口を開く

 

「やっぱ変だよ、それ。」

 

「そんなこと私もわかってる!...んや」

 

「...............。」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜数ヶ月後〜

 

 

 

<聖地マリージョア>

 

 

 

 

 

 

世界中から腕の立つ職人と圧倒的財力により創り上げられたマリージョアが燃え盛っている。のちに英雄と呼ばれる魚人が天竜人の奴隷となっている同胞を救う為に襲撃したのである。彼は奴隷という身分に種族など関係ないと考えたのか首輪や足枷の錠の鍵を番人から奪い取り、囚人のように牢屋へ閉じ込められていた檻の中へ投げ込んだ。

 

次々と奴隷達は命をかけて焼け落ちて崩れていく建物の欠片を躱しながら走り続ける。

 

 

 

やがてハリス達が囚われている地下牢が解放された。一部の勇気ある奴隷が他の奴隷達を逃がすために鍵を持ってきてくれたのである

 

泣いて喜びながら自由のために走り出す仲間達の背中をハリスは見つめていた

 

 

彼はその場から動くことなく考え事をした。奴隷として酷使された奴隷達が無差別に天竜人を襲うかもしれないとーーー、

 

 

アピマネラが危険だ...、ハリスはそう結論付けると全力で地面を蹴って彼女と過ごしてきた部屋へ走った。彼もなぜ彼女のためにさせるのかと疑問に思った。自分の望んでいたのは自由のはずだ。だったら一目散に逃亡すればいい。

 

 

 

 

 

ハリスは理解した、

自分が求めていたのは自由なんかじゃない。アピマネラという存在、彼女が自由が欲しいと言ったから自分もそう望んだとだと

俺はただ誰かに導いて欲しかったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天竜人を殺せぇぇぇぇ!!!」

「報いを与えてやるッ!!!!」

「俺は遊びで足を焼かれたッ!!!」

「私は目の前で赤ちゃんを殺された...。」

 

 

 

 

 

ハリスがアピマネラの部屋に来るまで様々な怨念の声を耳にした。天竜人の警護をしていた衛生兵の武器を奪い取り、天竜人やその部下達へ復讐をしてやろうと模索する者達、自由になれるかもしれないという期待からレッドラインの頂上にあるマリージョアから脱出手段などないという現実に気がつかない者達

 

いずれも天竜人から解放され仮初めであるとしても自由というモノを人生において最大限に感じているのは事実である

 

 

 

ハリスは城の廊下が煙で充満していることでさえ気に取られず、一目散にアピマネラの部屋へ向かっていた。そして見慣れた豪華な装飾のドアを開けようとするが、鍵がかかっているようだった。ハリスは拳で強く扉を叩きながらアピマネラの名前を呼んだ。

 

 

すると扉の鍵がゆっくりと鈍い音を立てて開く音がした。ハリスは扉を開くとそこには軽く笑みを浮かべ満足そうな顔をしているアピマネラがいた。彼はすぐに悟る。彼女は少なくとも死を拒み生きる事を諦めるような様子ではない

 

まるで死ぬ事を待ちわびていた(・・・・・・・)かのような表情だったのである

 

 

 

「行くよ、こんな機会はもうない。自由な世界へ行こう!!!」

 

「ねぇキミさ、何か勘違いしてる。」

 

アピマネラは軽く首を傾げながら生気の篭っていない冷たい目でハリスを見つめていた

 

「私はずっと...。」

 

 

(やめてくれ、聞きたくない。)

 

 

ハリスの想いとは裏腹に彼女はこう言い放った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死にたかった(・・・・・・)のよ。」

 

 

ハリスはその言葉を聞くと彼女の身を案じていたために強張っていた身体から力が抜け落ちて、ぐったりと重くなったような気がした

 

 

その瞳はまるで自分だったのだ。生きることも死ぬことにも興味がない虚無の瞳、氷点下の川の中へ閉じ込められたような心、

 

彼女と出会う前の全てに無関心だったハリス・アーノルドと同じだったのである

 

 

彼女は自分を導く光だったわけではない、互いに光などわからず、正解のわからぬまま迷走し続け、最も抽象的で希望に満ち溢れた自由という言葉を夢に見ることで心を安らかに保っていたに過ぎなかったのである。

 

聡明な彼女であればそれが叶わぬ夢であることなど理解していた。政府の非加盟国へ亡命しようとも怨恨にかられた者達の手から逃れられるわけもない。それを父親や同族達は許すわけもなく連れ戻しにかかるだろう。

 

 

 

 

 

 

ハリスもまた似たようなモノであった。彼は己の意思というモノがわからなかった、自身の父に代わりアピマネラが望むモノを自分の意思にする事で生きる理由をこじつけていたに過ぎない。そんな彼女が自由など求める前に死にたいと願ったのだ。彼自身も生きる理由など見失ったのである。

 

 

ハリスはぐったりとしていると背後から迫ってくる無数の足音と共に一言のつぶやきが聞こえてきた。

 

 

「見ぃつけた...。」

 

 

みすぼらしい服装と痩せ細った身体から奴隷達であることは容易に理解させられた。10名ほどの徒党を組んで自由よりも復讐を選んだのである。

 

奴隷達がそれぞれが武器らしきモノを持って2人へ近づいてきている。呟いたのは先頭にいる血走った目をしている男であると思われ、彼は己の繋がれていた両足の足枷を右手に抱えていた。不敵な笑みを浮かべながら力を込めると突然無表情になり、聞こえるか聞こえないかの小さな声でボソボソと言い始めた。それに呼応するように段々と他の者達もつぶやきはじめる。

 

 

少しずつ間合いを詰める奴隷達が何を言っているのかを理解する頃には、あと10歩程の距離にまで彼らは近づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え償え

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地獄の亡者達のうめき声のような願いにアピマネラは冷たい表情のまま言い放った。

 

 

「ええよ、天竜人の一族なんて根絶やしにした方が世の為だと思わない?」

 

アピマネラは呆気なく彼らの望みに応じるという返事をすると前へ抜きんでた。そして目を瞑り彼らの復讐をその身をもって受け入れようとしたのである。リーダー格の男が彼女の目の前にまで来ると、足枷を持ち上げて思い切り振り下ろした。

 

 

 

 

ゴォォンという鈍い音が響き渡ると同時に大量の血が周囲へ飛び散る音がした。だが不思議とアピマネラは痛みという痛みを感じてはいなかった。彼女が恐る恐る目を開くと目の前には頭から血を流しているハリスと目があった。

 

「死にたいなんて言うんじゃねぇよ。俺は君と...............。」

 

 

 

ハリスがそう言い切る前に全ての音は爆風により掻き消される。火が燃えうつり可燃性の何かへ引火したことによる爆発だった。その場に居合わせた者達は1人残らず吹き飛ばされ地面に力なく倒れた。そして天井が崩れ落ちアピマネラの部屋へ瓦礫が降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

「...いてて。いますぐここから離れねぇと。」

 

瓦礫の破片が幾つかのハリスの身体へ命中したが大したダメージはなかったようだ。それよりも頭部の出血による方が深刻だった。アピマネラへ襲いかかった奴隷達は1人残らず瓦礫に覆われていた

 

ハリスがアピマネラの吹き飛ばされたであろう方向を見ると絶句した。彼女は目を瞑ったまま倒れたままで下半身は天井の瓦礫に押し潰されており、地面には赤い水溜りのように出血していた。素人目に見ても手遅れだった

 

 

「アピマネラ、嘘だろ。おいアピマネラッ!!!!」

 

ハリスはアピマネラの体を軽く揺さぶると彼女はゆっくりと目を開いた。

 

「...満足してる。」

 

彼女のその言葉は最後のモノであるとハリスは理解させられる。だが彼自身は納得などしたくないという気持ちから彼女の名を強く呼んだ。しっかりしろ、何を言ってるんだ、という叫びが届くことなどあるわけもなかった

 

 

(だって私は貴方と過ごせて楽しかったから、その思い出だけが私の生きてもいいという唯一の証だと思ってた。)

 

 

アピマネラの言葉に嘘などなかった、己の存在が、意味が、理由が彼女には見出す事が出来なかったのである。ただ退屈な日々を消化する毎日を共有する友達がいること、それだけが彼女の疑問をほんの少し鈍らせることができたのだ。今となっては穢れた血を引く自分などには有り余る餞けだと思わせざるをえなかった

 

 

ハリスは彼女の言葉も気持ちも理解などできなかった。だが彼の頬から水滴が滴り落ちる

 

「...あれ、あれ、なんで俺が泣いて。」

 

 

(それが心よ、ハリス。貴方が求めているのは一番近い誰かの望むモノ、それじゃあダメなの)

 

 

彼女は消えゆく最後の光をハリスへ与えることにした。自分を光であると気がつくこともない彼へ、自身を光と思い込んでいる彼へ。自分の生きる理由をくれた最愛の友へお礼をしなくてはならない。自分の道を自分の意思で進むことのできるように、私の歩みはここでお終い、

 

「...キミは自分の為に生きるんや、その方がずっと素敵よ。」

 

 

 

彼女はそう言うと静かに瞳を閉じた。ゆっくりと鼓動を弱めていき、やがて呼吸は止まる。完全に彼女の時計の針が止まってしまったが笑顔でとても安らかな表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

奪い続ける人生が、家族が嫌だった

そんな一族の血が流れていることが嫌だった

死にたくなるほど窮屈だった

そんな時に貴方が現れた

ほんの小さな気紛れだった

でも特に変わった事はなかった

...でも悪くなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハリスはその言葉を聞くと手足を地面につけて溢れ出す悲しみを抑えるように歯を噛み締めるが、そんなことなどできなかった。

 

燃え盛る炎に包まれながら、彼は天を仰いで悲しみの咆哮を発する。途轍もない風圧と共に炎は押され、やがて全て消え去った。

 

 

 

 

 

彼は焼き焦げた城の一室で泣け叫び続けた。その大声と関係あるかはわからないが、ひび割れてかろうじて耐えていた壁が崩れ落ちハリスへ降り注いだ。彼は空を見上げ両手を広げた。己の死を受け入れようとしたのである。彼女と共に死ぬ事も悪くはない。そう思った瞬間に無数の黒い刃が落ちてきた瓦礫が1つ残らず斬り裂かれ、パラパラと落ちていった

 

 

彼が呆気にとられ黒い影が人為的なモノであると理解した。天竜人が幾つかの悪魔の実を所有しており、余興などで食べさせられた者達や能力者であるが故に買われた者達を知っていたからである。

 

 

 

 

 

 

「...なぜ泣いている?少年よ。」

 

ハリスは低く響き渡るような声をした方へ振り返った。そこには全身を覆うように黒いローブに黒い仮面を被った男がいたのである。

 

彼はこの得体の知れない男がこの事件を引き起こした者であると無意識に理解した。

 

「お前のせいだ、お前のせいでアピマネラがッ!!!」

 

「否定はできないな。彼女は天竜人か、まぁいい。行くぞ。」

 

その男はハリスの言葉を無視するかのように歩いて距離を詰めていく。

 

「お前を殺してやるッッッ!!!!」

 

ハリスは側に落ちていた瓦礫を手で掴むと男へ襲いかかった。彼が男の頭部へ向けて叩きつけようとするが、容易く手首を掴まれて自身の首に空いた方の腕を突きつけられた。そのまま男の俊敏性にとんだ脚力により焼き焦げた壁へ叩きつけられた。

 

ハリスは手首と喉元を封じられてろくに動くことなどできなかったが、彼は怯まず仮面の男を殺気を帯びた目で睨みつけていた。

 

「良い顔だ。」

 

男はそういうとハリスを解放した。彼は力が抜けたのか地面へ座り込んでしまう。煙を大量に吸い込んでいたことや精神的なショックにより彼は限界を迎えていたのである。だが目線だけは男から離すことはなかった。

 

その男はローブについていたフードをとり、仮面を外そうと手をかけた。

 

「それでいい、恨みもまた生きる糧となる。これからも俺一人を狙い続けろ。」

 

彼はそう言うと仮面をとり素顔をハリスへ晒した。オールバックに整えた真紅の髪に血のように赤い瞳、額には小さく鋭い角のようなモノが生えていた。とても整った容姿とは裏腹に放たれるオーラと威圧感に彼は一瞬だけ殺気を解いてしまう。

 

男はハリスの首の後ろを掴むと自身の肩に抱える。そして再び仮面を被りフードで頭を覆うと振り返り、部屋から出て行こうとする。

 

 

 

「...離せ、離せよ。」

 

ハリスは顔をうつむかせながら男へ自身を降ろすように言う。だがその言葉を聞き入れることなく無言で男は歩き出す。

 

「...離せぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっ!!!!!!」

 

ハリスはアピマネラの亡骸へむけて手を伸ばしながら大声をあげる。当然のように腕の力を緩めることなく男は無言で己の用意していた影の扉(・・・)へ向けて歩みを止めることはなかった

 

 

 

 

 

 

 

 



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犠牲

長らくお待たせして申し訳ありません。何度も小分けして投稿するのもどうかと思ったので残りの回想編を一話に纏めました。もちろんこれまでの時間は投稿だけに専念ししてきたわけではありませんが失踪は避けたいと考えているのでこれからもゆっくりと進めていきます

自分史上最高の文字数で日本語のおかしな点や誤字脱字、手抜きが目立つかもしれませんが、どうかお楽しみいただけたら幸いです


 

 

 

 

〜半年後〜

 

 

 

 

<グランドライン、海軍養成所>

 

 

 

 

 

ここはグランドライン前半の海に位置する海軍の養成所である。粗暴で手のつけられない者や正義に燃える者が正義のコートを掲げるために日夜鍛錬を積んでいた。そして今日は開校して以来、最も大物の海兵が視察に訪れている。

 

「大将殿、遠路はるばるご苦労様です!」

 

ここの学長にして元海軍少将である初老の男が敬礼をビシリと決めて大物の機嫌を伺う。男は特徴らしい特徴はほとんどなく胸から腕にかけて花のような刺青を掘っていた。政府の最高戦力にして海軍大将の一人、“赤犬”サカズキである。

 

「うむ、今年の生徒はどうじゃ?」

 

彼は視察とは別に骨のある生徒に目をつけておこうと考えていたのである。当然のように優れた新兵は当人の希望と上層部の話し合いでどこへ属するか決められるため自分達のところへやってくる可能性は低かった。だがこういう視察で有能な者に声をかけておくことで所属の希望先を自分の船にさせるよう仕向けたかったのである。

 

「えぇ、今年は豊作です。アガー少将の息子は六式の習得間近、ノルマン大佐の娘は気候を見抜くことにたける、そしてゴドーという学生は銃はかなりの腕前。」

 

学長は生徒の資料をペラペラとめくりながらサカズキへめぼしい生徒の情報を提供する。2人は歩きながら学校の設備や鍛錬をしている生徒達の様子を遠目から観察する。

 

「その生徒達のとこへ儂を連れてけ。ん、あそこは道場か?」

 

サカズキの目の前には独立した小さな小屋のような建物があった。換気のために空いている小窓から見える特有の床からそう判断したのである。

「剣術の得意な生徒の名は?」

 

「...えぇと、その。」

 

思い出したように学長に尋ねると彼は少し冷や汗をかいて焦りの表情を見せる。何か見られたくない様子でもあるようだった。サカズキは軽く鼻を鳴らして道場の中へ入ろうと進路を向ける。学長は止めたいのか他の施設の説明をするが特に意味はなかった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

〜道場〜

 

 

 

 

 

サカズキの目に飛び込んだのは白い髪の、あどけなさの残る一人の青年とその周囲を取り囲むように倒れている学生達であった。一人の青年以外は折れた木刀を持ったまま顎が割られていたり、手や足の骨を折られて泣きながら痛みに耐える者達、ましては呼吸すらせずに動かない者もいた。奥には教官らしき男がこめかみに筋を入れ顔を真っ赤にさせながら怒鳴っている。

 

リアネス(・・・・)、これで何度目だ!!? 仲間を再起不能にする気かッ!!!!!」

 

リアネスと呼ばれた青年は偽名を使っていた。本当の名前はハリスという。だが彼には本名を話せない理由がある。かつて天竜人の奴隷であったということだ。“マリージョア襲撃事件”の際に彼は海賊に命を救われると同時に己の愛する者の命を奪われた。その海賊は他に助けられた他の者達の盗み聞いた話によればかなりの大物らしかったが特に興味のなかったために調べようとはせずに数日後、滞在していた島から出た。

 

その後、彼は愛する者の最後の言葉でこれから自分のやりたいように生きると決心した。それはその海賊を殺すことである。一度襲いかかったことがあり、戦闘には自信があったのに全く歯が立たなかった。その海賊の庇護の元でいきるのは耐えられなかったので彼は純粋に強さを求めた。そこで最も都合のよかったのが海兵となることである。力を蓄えることもできるし、上の地位に登ればその海賊の情報を手に入れることも難しくないだろうと考えたのである。

 

偽名を使っているのは詳しく説明する必要はないだろう。その名前の由来は愛する者と自分が2人で一つという意味を込めて2人の名前の一部を組み合わせて名付けた。書類審査はマリージョア襲撃事件のゴタゴタや当時の七武海が満席でなかったためにとても緩かったので偽造したのが見抜かれなかったのである

 

 

 

 

 

ハリスは血がポタポタと滴り落ちる木刀を軽くふるって血を払う。ピュッと床へ垂れると彼はニヤリと冷たく笑った。

 

 

「貴様...、なにがおかしい?」

 

教官は拳を強く握りしめ、異常性を物語る得体の知れない冷たさを感じながらも問い詰める。

 

「海賊は海兵の命を奪いに来るやろ?だったら奪われる訓練をせないかん。」

 

ハリス、もといリアネスは淡々とこの惨劇を引き起こした動機を語り始める。彼は純粋に自分がやりたいようにしているだけだったのである。ただ暴力、破壊行為が好きなわけではない。ただ純粋に鍛錬を誰よりも本気に臨んだだけだ。彼の強さを追い求める姿勢は本物だった。教官の目から見ても海兵になるため、または強さを求める姿勢は教官達の大半は高く評価している。だが常人では無意識にストッパーをかけるレベルの攻撃を彼は仲間でさえ、友人でさえも容赦なく叩き込む姿勢が危険であると認識させられている。

 

「もしよかったら先生(センセ)がボクを殺しに来てくださいよ、殺す気で戦うんは慣れても殺しに来られる経験がなさ過ぎて訓練にならんわ。」

 

彼は己の冷たい殺気を辺りへ放った。死線を何度も潜り抜いた教官を物怖じをさせるほどの圧はないが、この冷たいオーラを纏う年端のいかぬ青年の異常性を物語っていたのである。

 

まともな環境で育ったような男ではない、履歴書にはグランドラインでも有数に荒れたスラム街出身とされており、生まれながらに戦闘と殺し合いを身近に感じ過ぎたからこの様な歪んだ感情となったのだろうと結論付けられていた。

 

 

 

「た、大将殿。ヤツはこの学校始まって以来の問題児でして、その見苦しい姿を...。」

 

学長はリアネスのことは良く思ってはいなかったものの海兵としての心構えだけは高く評価していた。だがサカズキの視察により海軍本部からの査定に響く可能性があるとして避けていたのだった。

 

「何がじゃ?あのガキ一人に対して皆で攻撃を仕掛けたのがわからんのか?」

「ひっ...」

 

サカズキは査定などに興味はなかった。純粋に優秀な生徒に目をつけに来ただけだったのである。そしてあくまでも冷静にリアネスという青年を見ていた。性格に難はあるかもしれないが腕は確かな様だった。他の生徒達は彼を取り囲むように倒れている。つまり皆でリンチに近かかったと判断できた。更に彼の持っている木刀のヒビや傷の場所を観察してみると疎らに存在している、この痕跡が物語ることは彼は“剣術の腕は然程ない”、そして“純粋な反射神経と身体能力”だけで叩きのめしたという事である。

 

「それにヤツは正論しか言うちょらん。じゃつたら儂と手合わせせんか?」

 

「あんた、誰?」

 

「誰でもいいじゃろう、ならば海賊と思え。」

 

サカズキはかかってこいといい放ち、不遜な態度で待ち構える。するとリアネスの目は突然として鋭さを増し地面を強く蹴って間合いを詰め木刀を振りかざす。

 

サカズキは容易く腕で木刀を受け止め、そしてリアネスの脇腹へ強烈な蹴りを入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜数十分後〜

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ...。」

 

全身に打撲の跡のついたリアネスは息切れをしながら立ちあがる。全身から汗は吹き出し傷に染みてヒリヒリとした痛みに襲われているにも関わらず気にする様子はない。彼は折れた木刀を持つ手に力を込めて間合いを詰めるがサカズキは容易く躱して力を込めた拳で殴り飛ばす。リアネスは地面に倒れると剣先で身体を支えながら立ち上がろうとする。

 

「まだやるんか?」

 

「海賊を前に負けを認める海兵なんか、シャレにならへんやろ。俺は職務放棄はせん。」

 

その言葉を聞くと鉄仮面であるサカズキの表情が誰にも気づかれない程に微かに緩む。彼はリアネスへ向けて歩き始め目の前で立ち止まり声をかける。

 

「お前、名は?」

 

「...リアネス」

 

「そうか、明日から儂の船に乗れ。」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

三年後

 

 

 

 

〜海軍本部〜

 

 

 

 

 

 

リアネスはある海賊を狩るための作戦会議のために海軍本部へ訪れていた。彼は赤犬の元で海賊を捕らえながら鍛錬を積み大佐の座についていた。サカズキの船に属していながらも稀有な能力からメンバーに選ばれたのである。

 

彼が本部の会議室へ向かっていると向こう側から1人の長身の男が目に入る。モジャモジャの黒い髪、額当てのようにアイマスクを装着しており欠伸をしながら歩いている。

 

リアネスは無言で廊下の端に寄って頭を軽く下げる。道を譲るという行為は階級ゆえの礼儀ではなく、彼は純粋にこの男のことが嫌いだったのである。男の名前は己の師と同じ海軍大将の座につく“青雉”クザン、だらしない性格でありながらも己の正義の貫く姿勢、部下や民間人への振る舞いから海兵として最も信頼されている者の1人である。

 

 

「お、こりゃ噂のルーキー君じゃないの?」

 

「...。」

 

クザンはフランクに声をかける。だがリアネスはビシッと敬礼のポーズをとった。この2人は何度か会って言葉を交わしたことはあるのだが互いに肌が合わなかったようだ。

 

「無視かい?こりゃ手痛いな。」

 

クザンは己より遥か下の階級であるリアネスの無礼な振る舞いに気にも留めない様子だった。だがリアネスはその対応が嫌いなのである。

 

「お前の正義は気に食わんのや、先日海賊をワザと逃したらしいな?」

 

リアネスは目に敵意を滲ませながらクザンを睨みつける。だが彼は特に咎めることなく質問に返事をする。

 

「あぁアレか、ありゃ市民は襲わずに海賊から奪う善良な海賊だったのよ。まぁそこそこ腕は立つから海賊を狩ってくれそうじゃない?」

 

「理解できんわ、ソイツらがこれからも善良である保証はないんに信じるんはマヌケや。」

 

クザンの楽観的な答えにリアネスは苛立ちを隠せずに軽く罵倒する。彼は海賊を野放しにする可能性を摘むべきだと考えているからだ

 

「あ〜、その、アレだ。まぁいいや。面倒くせぇ。」

 

クザンはリアネスの言葉に納得はしていないために言い返そうとするが、途中で中断してしまう。そんな態度に苛立ちを隠せないリアネスは後ろへ振り返って立ち去ろうとする。その背中を見たクザンは珍しく真剣な表情をして問いかけた。

 

「そんなやり方、息が詰まんねぇか?赤犬の受け売りならやめときな、正義っつうモンは自分で見いだすべきだ。」

 

「おかしなこと言うね、ボクは貴方の言葉通りボクの正義を貫いてるわ。」

 

先人の言葉も虚しくリアネスは無言でその場から離れた。クザンの視界から彼が消えて誰もいない空間になると哀愁を感じさせるような声でつぶやいた。

 

「あらら、ありゃ厄介だな。」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

3ヶ月後

 

 

 

 

新世界を巡回しているリアネスは本部から応援要請を受けて小さな民家に訪れていた。経緯は港に海賊船が停泊しているのを発見して破壊して逃げ道を防ぎ、そのまま上陸して海賊団を探した。結論を言えば民家で略奪している最中であったのだ。姑息な船長は市民を人質にして膠着状態が2日続いていた。海兵は取り囲み投降を呼びかけるが受け入れられることはなかったのである

 

統括者である大将サカズキは躊躇することなく人質諸共マグマで焼き尽くしていた。これが彼の掲げる“徹底的な正義”、悪を滅ぼすためならば、可能性が少しでもあるならば民間人を巻き込んでも滅することを享受としている。その思想にリアネスは傾倒しており今日までサカズキと共に海兵として生きていた

 

 

 

海賊達は相手がサカズキであると知ると人質を捨てて応戦することにした。曲がりなりにも新世界の海賊として戦闘から逃げることはなく、船長や己らのシンボルを守る為に全身全霊をかけているようだ。だがサカズキの兵は感情を捨て去るほどの心構えが無くては正気を保てない。当然、鍛錬も他の部隊より過酷である。

 

リアネスは己の部下達に突撃命令をかけると自分は丸腰で奥へ奥へと進む。ときおり銃弾や剣の刃が彼を襲うが見えない壁に遮られ全ては防がれる。それに驚く間も無く首筋へ蹴りが飛び、胴体と頭が切り離される。

 

リアネスは民家のドアを蹴破ると中には赤子を庇うように震えている若い夫婦を見つけた。夫の手には薪割り斧があり、海賊であれば命かけで戦うつもりだったのだろう。

 

夫婦は正義と刺繍された白いマントを身につけた男を見て、胸を撫でおろすように安心してお礼を言おうと近づくが海兵の冷たい表情に足を止めてしまう。確実に自分達を保護に来たのではないと理解させられたからだ。

 

「さて、死んでくれへん?」

 

リアネスはニコニコとした表情を崩すことなく夫婦へ歩み寄る。すると夫が大声をあげながらリアネスへ思い切り斧を振り下ろした。だが斧が男を叩き斬ることはなく、当たる寸前に刃先から粉々に砕け散った。

 

「公務執行妨害やね。まぁ、そんなもんなくても死ぬんは変わらんけど。」

 

リアネスは唖然とする男の頭を鷲掴みにして持ち上げる。そしてほんの少し覇気を込めて力を強めるとトマトを潰したときのように血が飛び散った。妻の悲鳴と赤子の泣き声がが家の中で響き渡るが夫の返り血を大量に浴びたリアネスは笑いながら近づいていく。

 

 

「あなた達は海兵でしょ!!!市民を守るのが仕事じゃないの!!!!」

 

「ん、確かに言えてる。でもボクはそんなに真面目じゃないんよ。」

 

ハリスは笑みを浮かべながら手を払って血の水滴を飛ばす。

 

「海賊をただ駆逐したい。そしてその可能性のある全てを踏み潰してるだけ。」

 

リアネスの言葉に母親は怒りの表情を浮かべながらも冷静に子供を生かす方法を模索する

 

「じゃあ、海賊でなければ、海賊でないと示すことができたら見逃してくれるの?」

 

「ん〜、そやね。」

 

ハリスは興味なさげに返事をする。

 

「この子は赤ん坊、海賊であるわけもない。私はいい。この子だけは助けて。」

 

 

(...女の子。)

 

 

リアネスは赤子を受け取るとほんの少し揺れ動いた。確かに理にはかなっており、彼自身も生かしてよいのではないかと考えた。だが自分の上司は一部の同僚達は殺せと言うだろう。

 

「まだこの世界を何も知らない子供なの。お願い、この子に生きるチャンスをあげて。」

 

その言葉にリアネスは目を見開いた。自分の中の大切な人と赤子は同じであると理解したからだ。この子は自分が密かに連れ出して保護しようと決意を固める。リアネスは赤子を受け取ると白いカバーウォールにリアネスの手についた父親の血が染みていく。そして母親の決意に答えなければならないと口を開く

 

 

「わかっ...ッ!!!」

 

その瞬間にリアネスは機械仕掛けの人形のような冷たく精密に敵を滅するというような殺気を感じて素早く後方へ飛んだ。

 

自分の左斜め前から真横へマグマの咆哮が通り過ぎたのだ。母親とマグマの触れた家具などは一瞬で燃え上がり炭となる。人の焦げる臭いを感じる前に鼻の粘膜が火傷する。

 

家の壁を抉り取るように放出した男は右手から水滴を垂らすようにポタリポタリとマグマを落としている。己の上司であるサカズキであった。その背後には副官の准将がおり彼の最も信頼している部下の一人である。リアネスの手におさまっている赤子を見て彼は少し眉を細めて詰め寄った

 

「柄にもなく情でも湧いたんか?」

 

サカズキは彼の背後にいた副官と共にリアネスの反応を伺う。場合によっては彼を悪とみなして始末せねばならないからだ。

 

「...この子を保護してから戻るわ。」

 

ハリスはさりげなくこの場から離れようと彼らの真横を通り過ぎようとする。

 

「貴様、本気で言うとるんかい。」

 

サカズキのマグマを垂らす勢いが増していき周囲の温度があがっていく。

 

「悪の根が世代を超えて正義に楯突く可能性がある以上、根絶やしにせねばならん。」

 

世代を超える、とは彼に言わせてみれば赤子が海軍を逆恨みして自分達に牙を剥く可能性があるといいたいのだ。彼は可能性が僅かでもあるならば抹殺すべきという正義を掲げており内外からの批判は強いものの政府は最も効率的な評されている。

 

「殺せ。」

 

サカズキは冷たい表情で命じる、だが彼はリアネスか応じないことを知っていた

 

「...ボクにはできんわ。」

 

リアネスは少し間をおいて正直に答えた、彼もまた自身の置かれている状況を理解していたからだ。

 

「儂の見込み違いじゃった、軟弱な海兵は儂の船に要らん。」

 

サカズキを纏っていたマグマの勢いを強め凝縮するようにして破壊力をあげる。そして拳を振りかざすと赤子諸共、焼き尽くそうと地面を蹴って殴りかかった。

 

副官は一歩も動かぬリアネスが死を選んだのだろうと思った。彼は確かに将来が有望で楽しみな男だ。だが大将が相手では取るに足らない器、逃げるにしても不可能に近い。

 

だがリアネスの目はいつになく鋭く赤犬の目だけを見ている。死を受け入れるなど連想させるわけもなく彼は静かに静かに殺気を放っていた。

 

サカズキの拳が触れるほんの数センチ前で透明な壁に遮られる。マグマが阻まれて左右にはみ出すように地面へ流れていった。床は焼けて蒸気を立ちのぼらせる。

「貴様、なんの真似じゃ?」

 

サカズキはリアネスの腕を見込んで与えた悪魔の実の能力の所為であると知っていた。彼は事前の知識では自身の能力と対抗できうる能力とは知らなかったが、やはり能力は使い手次第で化けるのだと思い直させられたのだった。それから数年は経つだろう、サカズキはあえて彼の能力を自身の側から離さなかった。いつの日か自分に牙を剥いた時に自分の手で確実に殺せるようにするためだった。なぜならサカズキはリアネス、いやハリス・アーノルドが天竜人の奴隷であったことを知っていた(・・・・・)からだ。

 

彼がその情報を得たのはリアネスを自身の船へ向かい入れた時だ。大海賊時代の最中、政府は多くの戦力を求めていたために基準がとても緩かった。荒れた環境では孤児や捨て子が問題となり、その子供達を政府は支援と引き換えに政府の戦力として鍛えた。その中の一人がリアネスである。孤児でスラム街にいたという経歴をサカズキは本当なのか疑いの目を向けていた。ごく稀に海賊のスパイが海軍へ送り込まれる事が露見することがあるからだ。

 

サカズキは一人残らず素性や家族構成、経歴から性格まで調べ尽くした上で自身の船へ迎え入れる。だがリアネスは特例であった。彼はサカズキが自ら見て感じて己の想う正義を背負うに値する人間であると感じたのだ。だからこそ自分が調べる前に部下にしようと決めたのである。

 

後々にサカズキが調べてみると天竜人の逃亡した奴隷のリストにリアネスらしき男がいた。足跡を辿ると彼は“死の行商人”の息子であり罪人であることが判明したのである。すわなちサカズキにとっては確かな悪の芽であると言える。しかし彼はそうしなかった

 

己の懸念以上にリアネスという海兵を評価していたのだ。いつか自身の右腕になりうる男でありそれ相応のポテンシャルを秘めている。鍛錬、同期の生徒達より誰よりも全力で臨み、志は誰よりも気高く悪を滅っさんとしていた。だからこそサカズキは自分の側からリアネスを離さず常に期待と警戒の目を向けていたのである。

 

そしてリアネスはサカズキの想いを裏切るかのように人間としての心を、己の道しるべとしていた彼女の言っていた心を確かに思い出していた。彼はこの子を守るまでに全身全霊をもって戦い、正義の看板を失おうとも守り抜いてみせよう。

 

彼はそう決心した

 

 

 

 

「ボクはこの子を殺したくなどない。ボクの矜持に反する(やりたくない)や。」

 

リアネスはそう言い放つの素早く大気を圧縮していた透明な壁を戻した。激しい暴風は焦げかけた家の壁にヒビを入れ土煙を舞わせる。その勢いにサカズキのマグマの水滴は容易く吹き飛ばされたために彼はマグマを生身の状態へ戻した。

 

その隙をリアネスは見逃す事はなかった、一瞬で地面を圧縮して間合いを詰めたのである。彼は赤子を背後の地面に残しており右手の指を全て伸ばして武装色で硬化してナイフのようにしていた。そしてサカズキの心臓へめがけて貫こうとしたのである。

 

ロギア系マグマグの実の能力者のサカズキの身体はマグマと同じである。仮に覇気を纏って彼本体の実体を捉えたとしても能力そのものを無効化するわけではない、ゆえに彼の攻撃はマグマの中へ手を入れるようなものだった。しかしリアネスは右手を捨てる覚悟でサカズキの命を取ろうとしたのである。

 

 

 

 

しかしそれは叶うことがなかった、かろうじてリアネスの視線に捉えたのは副官のグローブをつけた拳であった。後方へ飛ばされ地面へ叩きつけられる。一瞬、全身の力が抜け落ちたような感覚と顎への鈍い痛みを覚えた頃には地面へうつ伏せの状態で制圧されており、自分の背中に陣取られ肘の関節を固めている。そして海楼石の破片が表面にコーティングされたグローブで首を後ろから掴まれていた。

 

 

 

 

(余計な真似をするな、お前の能力を失うのは惜しい。)

 

副官はリアネスにしか聞こえないほどに小さな声で囁いた。リアネスはそれに応じることなく抵抗を続けようとするものの、海楼石によって全身の力が奪われて動けない。

 

そして2人の目の前にサカズキが立っておりリアネスをまるでゴミでも見るかのような冷めた目で睨んでいた。

 

「腑抜けが...。」

 

サカズキは自分とリアネス達の間にいる赤子を見た。彼女は戦闘の騒がしさから泣き喚いており、あやす者がいないため声はどんどん大きく叫ぶようになっている。

 

彼はその事に気にも止めず右手にマグマを纏い殴りつける。マグマはまるで赤子を呑み込むように襲い痛みや暑さを感じさせる間も無く命を奪った。リアネスの叫びとマグマの熱のみが漂うその空間でサカズキは静かに言い放った。

 

「お前は二度と儂の船には乗せん。」

 

その場から2人は立ち去る。だがリアネスはただ引火して燃え盛る家の中にいた。かつてもこのような状況に自分は置かれていたことを思い出させられる。自分が助けたくても助けられなかった人が、護りたいと思った存在は自分より強い者に阻まれ叶うことはない

 

焼け焦げた赤子へリアネスは手を伸す

 

三年前の自分が嫌で嫌で強く残忍になったつもりだった、だがボクは護りたいモノすら護れない弱い自分のままだった

 

恨みを糧に生きて来たのに、生きて来た存在理由はいつも誰かに奪われ続ける。父親から彼女、赤子に至るまで全てだ。

 

だったらボクがもっと強くなって護るしかない

誰よりも強く、誰よりも優しく、

 

ボクはもう海兵じゃなくていい

イチからやり直すんや

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

数日後

 

 

 

 

〜海軍本部〜

 

 

 

 

悪に怯える人々を護る正義の要塞である海軍本部にて、海軍元帥センゴクは部下の報告を受けて頭を悩ませていた。

 

「はぁサカズキめ、リアネスを除隊させるとは。ヤツの能力を失うのは痛手だな。どうしたらいいものか」

 

サカズキはあの後、リアネスを自分の船から追放した。これは彼に限ってよくあることであった。正義の暴走とも揶揄できる彼のやり方に反発した者や精神を痛めた者は海兵としてふさわしくないと断定され他の隊へ飛ばすか引退を命じていた。その者たちの大半は海軍を去ってしまうため将来が楽しみなリアネスを何としてでも引き止めなければならない

 

センゴクは長考をする寸前に自分が用があって招いた部下がいたことを思い出して中断させる。

 

「あぁ待たせてすまんな、青雉。」

 

「構わねぇよ、あんま口を挟むのは好きじゃねぇが、リアネスがどうかしたの?」

 

サカズキと同じく海軍大将の一人であるクザンであった。彼はセンゴクから事情を聞くと間髪入れずに静かにこう言った

 

「ふーん、じゃソイツ、俺にくれよ。」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

数年後

 

 

 

 

〜新世界、G-5 海軍支部〜

 

 

 

 

あれからリアネスはクザンの船へ迎え入れられ少しずつ自分本来の姿を見出して言った。あんなに海賊を憎む一心で海兵となった彼は市民を護るために任務や鍛錬により一層深く取り組んだ。そのおかげか大佐の地位を超えて少将にまで出世している。いまではクザンを尊敬しており、激しく毛嫌いしていた昔の自分が恥ずかしくなるようだ。

 

 

そして少将になると同時に軍艦と部下を持つ立場になった。彼はもう感情を失ったモンスターではない、誰よりも熱い心と優しさを持つ模範とすべき海兵となっていた。部下からの信頼も厚く彼の船へ乗りたいと望む新兵も多いらしい。

 

 

 

 

リアネスの乗る船は任務を終えて己の駐屯支部へ帰還していた。気候の変化の激しい新世界であっても海軍や極一部の航海士しか知らない比較的落ち着いたルートを通っている。四皇の縄張りでもないためとても平穏な航路である。しかしそれは一瞬で消え去った。

 

 

「リアネス少将、大変です!」

 

情報部員の兵が甲板で皆を見守っていたリアネスへ報告をする。ただならぬ様子に彼は落ち着くよう声をかけて息を整えさせた。開いた口から発っせられたのは衝撃の事件であった。

 

「我らの拠点とする基地が海賊の手に落ちました!」

 

リアネスは目を見開くと同時に部下達の間にどよめきと不安が漂う。基地にはいつくかの少将や中将達が駐屯しており決して容易に落とせるわけはない。それに海賊が自ら近寄る事もほとんどない、あるとすれば四皇クラスの猛者達が縄張りを広げるために邪魔な基地を抑えるぐらいだろう。今までもそうして攻め落とされた事件は何度かあった。

 

「すぐさま救援を行う!全速力で進め!」

 

 

リアネスは部下達へ鼓舞するかのように指示を出すと素早く船を進めた。

 

 

基地へ着くと海賊は懸念したような四皇の者達ではなかったものの、新世界でそこそこ名を馳せた海賊団である。この海賊は民間人と海兵を人質に物資と仲間の解放を目的に襲いかかったという。どうやら最近、捕らえられた仲間を助けに来たようだ。基地に待機していた海兵を制圧したのはいいものの援軍が駆けつけたため、やむなく立て籠もったらしい

 

基地を背後に海賊達は入り口付近で人質と共にいた。この基地に駐屯しているおよそ半数の海兵は上陸しており、全体を取り囲んで投降を呼びかけていたが応じる気配はない

 

「おい、オメェら!お仲間を大砲で吹き飛ばされたくなきゃ、近寄んじゃねぇよ!」

 

倉庫に仕舞われていた軍艦用の大砲を向けられて歯をくいしばって悔しがる海兵を盾に海賊達は離れるように言う。その中には何処からか捕らえた民間人も数人おり、こちらも手を出せずにいた。

 

 

船を預かる者達は持ち場を離れずに伝達役を介して話し合いを行った。民間人と仲間か、この海賊を逃した場合に起こる市民の被害かを天秤にかけた結果、リアネスの能力で隙を生み海賊達を捕らえるという強行手段に出る作戦になった。

 

 

リアネスは両手をあげてゆっくりと海賊達へ近づいて行った。優しく投稿をするように呼びかける振りをして能力を発動させるタイミングを伺う。そして彼は隙を見て彼らの空気を軽く圧縮して一気に戻した。人を吹き飛ばせるほどの風圧を生み出すと海賊達や人質は左右へバラバラに飛ばされる。そしてほどよく離れていた海兵達は素早く武器を持って目の前の人質と海賊へ向けて走り出した。人質を保護しながら孤立した海賊達へ各々が銃を向けてまばら制圧する。完全に自体は収束するかと思いきや、海賊団の船長だけは踏ん張って飛ばされなかったのである。

 

「クソ野郎共がぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」

 

唯一、その場から離れなかった船長はそう叫ぶと大砲を自分に迫り来る海兵へ向けて火をつけた。砲弾は発射されると同時にリアネスは剃を行って部下の大砲の間へ移動する。彼は至近距離でその砲弾を受けると爆発するように火花と土煙は舞う。

 

ヤケクソになって大砲を撃った船長はざまあみろと高笑いしていた。そして土煙の隙間から真っ先に目に入ったのは一人の人影であった。

 

 

完全に土煙が晴れるとリアネスは身を呈して部下を大砲から護ることに成功したのである。彼は覇気を纏ったとはいえ背中に鈍い痛みを感じる。だが海兵達の命を護れたのだと考えれば安いものだった。

 

リアネスは振り返ると唖然とする船長へ間合いを詰めて真横に立つと顎を弾いて失神させる。彼はゆっくりと振り返り笑みを浮かべるがその場はあり得ないほどの静けさが漂っている。すると突然、背後の海兵達の間からG-5 の基地長が現れる。リアネスはそれに気づいて振り返り、声をかけようとしたが思いつめたような表情の上司に対して何も言えなかった。

 

「罪人、リアネスを捕らえよ(・・・・・・・・・)

 

その言葉に彼は唖然とした。なぜ自分が罪人なのか?罪を犯した覚えなど何もない。彼はふと背中から直接、風を感じた。

 

つまり背中があらわになっていたのである。大砲の爆風により正義のコートは吹き飛ばされ、その下に来ていたスーツは焼けていた

 

そしてリアネスの背中には天竜人の紋章が確かに刻まれていたのである。海兵達が震えながら持つ銃を自身へ向けられて彼はもう何も弁解することができなかった。

 

 

リアネスへ銃口を向けるほとんどの海兵達の脳裏にシャボンディ諸島での天竜人の振る舞いがよぎる。人を人として扱わずどれほど傍若無人なことをしでかそうと誰も止められない。ヤツらが悪であると誰もが理解していながらもどうすることもできない。ただ彼らの機嫌を損ねぬように静かに息を殺していたのだ。

 

 

天竜人に逆らった者がどうなったか?

そして、紋章を見た者は報告の義務がある

 

「基地長、確かにボクは...

 

リアネスはようやくほんの少しだけ落ち着きを取り戻し、この場を凌げる可能性のある言葉をなげかけようとした。

 

だが自分の口から鉄臭い液体が溢れ出ていることに気がついた。そして自身の腹部に空いた幾つかの穴と痛みを感じる。彼はゆっくりと膝と手をつきながらも血走った眼で自分を撃った者を探した。目の前の海兵達の目線は後ろにあり、彼は痛みに震えながら後ろを見た。すると煙の立ち昇る銃を持った数名が腰が抜けたように倒れていたのを確認した。

 

それは自分が身を呈してまで護った海兵達であった

 

彼らは自分がしでかしたことを改めて理解すると後悔するかのような声を発する。そしてそれ以外の海兵達は震えながらリアネスとの間合いを詰めていく。

 

「...え?」

 

銃口が自身へ向けられたことに彼は理解ができずにいた。その想いが彼の普遍的な頭脳が著しく働いた。

 

 

(僕を撃つんが正義なん?法に則り、正義を執行するのが本当に正しいんか?)

 

 

彼は自分の中の理想とする正義の答えを、本質を問い詰めていた。

 

 

(所詮は己の保身の為の正義、護るべきモンやと思ってたモンは僕を護ってくれんのか。僕の居場所はここでもないん?)

 

 

 

「なんでボクはいつもこうなんや...」

 

 

彼の眼は潤み出すと地面へ雫が垂れた。だが彼の感情は突然、悲しみから怒りへ変わり、怒りが彼の理想とする正義の答えを導いた

 

 

 

法や正義がボクを護ってくれんなら

ボクがボク自身を護るべきや

即ちボクこそが正義

これからボクのやりたいように貫く

どんなに犠牲を産もうとも構わない

もう立場なんてどうだっていい

ボクの歩む道こそが正義や

 

 

 

彼はそう考え尽くと同時に地面に触れ己の能力を発動した。己の可能な限り地面を圧縮し続ける。

 

対象は“地面”であり、人や動物、建物や森林、岩などはそれに含まれない。それら全ては足場を失くして海へ落ちていった。やがてリアネス一人がいられるほどの小さな岩のようになると彼は静かに呟いた

 

 

“全てを護る”ということ自体が間違ってた

どんなモンにも犠牲は産まれるという事にボクは目を逸らしていた。

 

 

ボクは“犠牲を産む正義”を誓う

最も大きな護るべきモンだけを護る正義

それ以外は犠牲になるべきや

 

ボクは溺れている人達(こいつら)を切り捨てる

なぜならボクの方が正しく多くを護れる

 

 

 

リアネスはその後、大気を圧縮してそれを伝ってその場から去り行方をくらませた。政府は自体を重く受け止め堕ちた海兵として手配書を配布することとなった

 

 

リアネスでなく

“元天竜人の奴隷”ハリス・アーノルドとして

 

彼はその後、世界を転々としながら護るべき存在を護って生きていた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜新世界、とある島(現在からニ年前)〜

 

 

 

 

 

リアネスはフードのついたローブを見に纏いながら寂れた街を歩いていた。彼は放浪生活を送っていたのである。貯金口座は凍結されいまでは海賊船を襲って金品を奪い、命を繋いでいた。ここでは特に海賊の被害はなさそうだったため通り過ぎようとしていると、突然背後から誰かにつけられていると感じた

 

狭い路地へ入った。半ばまで進み、立ち止まると振り返って待ち構えた。自分をつけていた者も同じくローブで顔を隠している。尾行がバレても逃げようとせずにこちらへ歩いてくる。

 

 

「よう、リアネス。いやハリスと呼んだ方がいいのか」

 

その聞き覚えのある低い声にリアネス、もといハリス・アーノルドはフードをとって口を開いた。

 

「青雉さん。赤犬さんと大喧嘩したようで」

 

ハリスは自分がその男の尾行を見抜いたのではなく、あえて自分の尾行を見抜かせたのだと理解した。その男はフードを取ると懐かしいアフロが目に入る。クザンであった。

 

頂上戦争の後にセンゴクが元帥の座を退き、青雉と赤犬はその座をかけて決闘を行なったのである。結果は赤犬が勝者となり青雉は療養中というニュースは新聞で確認していた

 

「あらら、痛いとこ突くなぁ、まぁ最近退院したばかりなのよ」

 

「なぜここにきたんですか?少なくとも仕事やないでしょ」

 

「まぁな、少なくともお前を見つけたのは偶然よ。」

 

「...。」

 

クザンののらりくらりとした態度にハリスは無言で見つめた。

 

「なんだ、何か言いたい事でもあんのか?」

 

クザンはよっ、と言いながら地べたへ座った。ハリスもその様子を見て腰を下ろした。

 

「ボクを捕まえないん?」

「なんだ、捕まりてぇのか?」

「いや...」

「ならいいじゃねぇか」

 

クザンは懐から酒を二本取り出すと一本をハリスへ投げて渡した。二人は栓を抜いてひと呑みするとクザンが口を開いた。

 

 

「俺は少し前に海軍を抜けてきた」

「ッ⁉︎」

 

ハリスの驚く様子をよそにクザンは続けた

 

「赤犬の元じゃ俺の正義は貫けねぇからな」

「これからどうするんです?」

 

クザンはもう一度、酒を呑むと口を開いた

 

「俺が海軍を無断で抜けたら、すぐに勧誘が来たのよ。」

 

ハリスはクザンという戦力を政府が手放すわけがないと知っていたし、なにより彼自身が手続きを面倒くさがったのだろうと考えた

 

「勧誘して来たのは誰です?」

「海賊だよ、それも大物のな」

 

クザンの言葉にハリスの目は少し鋭くなる。彼はその様子を気にすることなく口を開いた。

 

「俺はその海賊に力を貸す約束をした。利害の一致ってとこか?まぁ俺は俺だ。」

 

彼はそういうと立ち上がってハリスの横を通り過ぎようとしたが、すぐに立ち止まった

 

「お前も来るか?」

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜パンクハザード、SAD製造室(現在)〜

 

 

 

 

 

「誰もが正義となり、誰もが悪に成り得る。だったら考えるだけ無駄なんや、答え(わからんもん)を無理に出すよりも惚けてる方が余程いい。」

 

ハリスは指の曲がった左手で折れた右腕を庇いながらも静かにルフィへ語り始めた。走馬灯のように流れた自身の生き様から得た経験をなぜか無性に語りたくなったのである。

 

 

「この世に悪など存在しない、仮にそうでないとしても誰かの感情の一つに過ぎない。」

 

「...?」

 

 

 

(僕も君らもモリアも海軍も誰かにとっては悪となりうる。だから正義か悪かなんて考えるだけ無駄な話)

 

(本来、正しいはずの正義がぶつかり合う時点で悪などないよ。互いに尊重できひんなら自由にぶつかり合うだけや。)

 

 

(でもそれはあくまでも理論的な話、感情的なモンは権力者の独断や大衆評価で全ては決まり、それらにそぐわぬ者が悪とされ犠牲となる。つまり世界で最も大切なのは犠牲)

 

 

 

 

「ボクが自分が殺したいと願っていた男の下についた。それは一つの結論に達したからや」

 

ハリスはルフィへそう言うが彼は特に理解していないようだった。それでいいのだ。彼は理解をしてほしいために話したのではない。己の正義が折れないように自らを奮い立たせるために話したのだ。

 

「ボクの正義の最大の焦点は海賊をこの世界から消すにはどうしたらいい?ということ、その答えは新たな海賊王が誕生させることや。ワンピースさえ手にすれば夢を追う海賊が出てこなくなる。」

 

ワンピース、海賊王という言葉にルフィは目の色を変える。だがハリスはその様子に気がつくことはない。

 

「だからボクはヤツを王にする。その為には犠牲はやむを得ん。ボクの怨みもまた犠牲になるべきや。」

 

犠牲(・・)?」

 

ルフィはハリスの言葉の中で犠牲というワードが引っかかる。彼の脳裏には茶ヒゲ、子供達、シーザーの非道な行為があった。

 

「モリアはそんなこと許さねぇぞ!!!あいつはそんな事するようなヤツじゃねぇ!!!!」

 

ルフィの中でモリアという男は一つの目標のようだった。彼は自分と同じ自由という事を大切にしている。かつて敗れた後も筋を通す男で民間人にだけは手を出すことはないと知っていた。越えるべき壁として、海賊として認めていたのである。

 

 

「あの人は変わったよ、でも流石に子供達はボクと参謀の独断。ボスは知らんはずや。」

 

彼はそう言うと指が折れているはずの左手へ白い光を蓄え始めた。

 

「ボクの夢は大海賊時代を終わらせること、すなわちモリアを王にする。彼らもその為の犠牲に過ぎん!!!」

 

そう叫ぶとハリスはルフィへ向けて殴りかかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ」「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」

 

 

2人は激しく息切れをしていたが客観的に見れば対等な状態ではなかった。ハリスは全身がボロボロの状態で左手は無残な状態になっている。ルフィは傷やダメージというより体力が限界という様子である。“ギア4”は全身に負担がかかり長時間の戦闘に適していないからだ

 

 

 

「なんでそこまですんだよ。もう勝負はついてんだろ⁉︎」

 

ルフィはハリスの状態を見て大声をあげた。もはや精神力だけで立っているかのようだったからである。もはや彼には怒りという感情は微塵もなかった。素直に殺めたくないという気持ちからでた行動である。

 

「確かにね、でも負けようが死のうが構わん。これはボクの決意と覚悟や。ボクはお前を潰すために全力を注ぐ」

 

 

彼はもはや感覚すらない左手ではなく右手へこれまでにないほどに白く巨大な光を纏わせたのである。時空が歪むと錯覚させるほどの大気の圧縮、それに耐えられる強度をハリスの身体は持ち合わせていない。血が飛び散って骨がミシミシ言わせながら時折折れるような小さな音がする。

 

 

「お前、腕がッ!!!」

 

ルフィはハリスの正義への狂信者ぶりを目の当たりにさせられ、戦意を喪失しかけていた。かつてこれ程までに己を排除しようという敵と合間見えたことがなかったからだ。

 

「構わんよ。この一撃で腕一本を犠牲にするだけ。ただそれだけのことや!!!!」

 

ハリスはそう叫ぶと全身全霊の最後の一撃をルフィへ与えようと走り出した。彼は決して勝てるような戦いでないことを知っている。ただここで退いてしまうと己の矜持を、正義を踏み躙ることになるからだ。

 

ルフィもまた自分も海賊王という目標のためには死ぬ事を厭わないような男だ。それが虚勢の類いでないことを本能で理解した。むしろ自分が手を抜いて彼と戦うことこそが間違っていると思わさせられたのだ

 

「“ゴムゴムのぉ〜、大猿王銃”ッ!!!」

「ウガぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」

 

もやはハリスのそれは人としての理性を捨てさり死にかけた野生動物の本能そのものだ。犠牲と引き換えに当人の持ち合わせる力量を遥かに超える最後の攻撃は確かに放たれたのである

 

それに対してルフィの渾身の攻撃はハリスへ向けて撃ち込んだ

 

 

 

爆風にも似た風圧がパンクハザードの一室を襲った。床は剥がれSADを溜め込んだ金属製の容器は破壊され、壁は激しくめり込みあたり一帯にヒビを入れる。もはや災害に近い激突であった。

 

 

土煙とは言い難いモノが晴れルフィの目に入ったのは自分とハリスの間に1メートルほどの隙間があったということだ。確かに殴った感覚はあったのである、彼はふと思い出した。これは透明な壁なのではないか?

 

だがハリスの能力ではないようだった、気を失い目の前へゆっくりと倒れていったからである。だが地面へ倒れることはなく、何かにもたれかかるように空中で静止した。

 

するとスゥという音と共に1人の男がその場に現れたのである。貴族のような黒を基調とした服装と青の線が入った白い帽子を被ったそいつは全身は人間だが、顎がライオンのようだった。

 

「お前はあの時n...

 

ルフィはそう言いかける途中で全身の力が当然抜けて倒れてしまう。呼吸は荒くなり会話をするのが精一杯なぐらいに弱っていた。

 

「悪いな、麦わら。此処は退かせて貰う。」

 

アブサロムはハリスを背中へおぶると、そのまま歩き始めた。だがルフィは納得していないのか口を開いた

 

「待て...。」

 

「俺がお前のトドメをさせるんだ、ここで手打ちにしてやるよ。」

 

アブサロムはそう切り捨てるとその場から立ち去ろうと歩き始めた。やがて人気のない通路へ差し掛かるとポケットの中から“でんでん虫”を取り出してある人物を呼び出した。

 

「大事な茶会(・・)の前にすまねぇな。ハリス、...シーザーの裏切りだ。どうする?」

 

アブサロムの言葉に聞いた電話の向こうの男は静かに答える

 

「スリラーバークへ連れて帰れ。ひとまず話だけはそこで聞く。裏切り者は始末せねばな」

 

 

 

 







ちなみに全部で16525字でした、詰め込みすぎたかもしれませんね


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取引の締結

今回も原作はかなり削りました、手抜きも目立ちますがご利用ください


<ビスケット室>

 

 

 

 

〜ゾロ、たしぎ、モネside〜

 

 

 

 

 

子供達の遊び場として使用されるビスケット室でユキユキの実の能力者であるモネと“海賊狩り”のゾロとの戦闘が始まろうとしていた。たしぎはモネによる攻撃で手負いの状態だ。

 

モネはゾロが女を手を出さない人間だと思っていたが、彼による頬に斬撃を受けて唖然としていた。

 

「確かに俺も斬りたくねぇもんある、だがお前、絶対に人を噛まねぇと保証できる猛獣にあったことあるか?」

 

ゾロはそういいながら刀を抜くとモネとの間合いを詰めるために走り出した。

 

「俺はねぇ。」

 

 

(なに⁉︎体が動かない)

 

 

ゾロの覇気と気迫によりモネの体は硬直して逃げることができない、そして彼は彼女を頭から真っ二つに斬り裂いた。

 

「一刀流“大辰憾”」

 

ゾロがそうつぶやくと彼女は静かに地面へ倒れた。だが暫くすると斬り裂かれたはずの彼女は動き始める。しかし体は原型を保てずに崩れていく、彼女はロギア系の能力者であるからだ。だがゾロが刀に覇気を纏っていれば自身が死んでいたこと、そして圧倒的強者への恐怖からうまく体を動かせないようだった

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜スモーカー、シーザーside〜

 

 

 

 

 

 

 

「おい、さっさと歩け」

 

「離せ!俺様は天才だぞ」

 

スモーカーは海楼石の仕込まれた十手の先端をシーザーに突き立てて前へ進ませていた。彼は物凄く不機嫌な顔をしながら歩かざるを得なかった。全身の力が抜けていくような感覚を覚えながら反抗できるのはせいぜい文句を言うことぐらいであった。

 

スモーカーは海賊から受けた施しをそのままにしておくことが気に入らなかった、ルフィとローの同盟の目的がシーザーの誘拐であることを知っていた彼は捕獲することにしたのである。そしてローに渡し貸し借りを帳消しにした。

 

 

 

***

 

 

 

 

〜パンクハザード、海岸〜

 

 

 

 

 

 

海兵と海賊の垣根を超えて彼らは宴を行なった、ナミらが救出した子供達も参加し皆で楽しんだ。彼らの間には確かに微かな絆が芽生えていたのかもしれない。

 

ルフィはパンクハザードから奪ったタンカーに子供達を早く保護させるように頼むと、スモーカーはたしぎと子供達を乗せて出航させた

 

 

 

***

 

 

 

 

〜サニー号〜

 

 

 

 

 

子供達を出航させたルフィらとローはサニー号に乗ると自分達が次の目的地へ向かおうと準備をすると舵の下に“でんでん虫”が無造作に置いてあることに気がついた、そして誰も自分のでないと言うとローはモリアの手のモノだと考え自分が管理すると言った。

 

 

 

そして数時間後に“でんでん虫”がなり、ローはそれを動じることなく取った。すると受話器の向こう側から低く響くような声が聞こえてくる。

 

「ようやく気がついてくれたか、なんどか連絡をしたのだよ。」

 

「...モリアか?」

 

ローは張り詰めたような空気を出しながらも少し冷や汗をかいていた。やはり声だけで強者特有の威圧感を感じたのである。

 

「あぁ、貴様と取引がしたい。」

 

「こっちもだ。」

 

ローは静かに答えると、モリアは自分の要求を言った。彼はシーザーとホグバックの解放、そして二度と自分に喧嘩を売らないということである。それに対して自分達と自分達に関係のある人達に永久的に手を出さないということだった。

 

人造悪魔の実のスマイルを創れるシーザーと名医のホグバックを失うわけにはいかないモリアはメンツよりも彼らの命を優先した。

 

「パンクハザードの件は水に流し、これからは互いに不干渉ということでいいな?いいならシーザー以外は解放する。」

 

「あぁ。だがシーザーの心臓を持っているはずだ、そんなデリケートなものをお前達には預けられない。」

 

「わかった、シーザーの心臓は俺が渡す。だが本体は俺たちが安全な場所に避難してから解放する。場所はヤツから聞け。」

 

そして彼らは待ち合わせの場所と時間、そして取引はローがホグバックとシーザーの心臓を渡した時に成立するというルールを決め終わると最後に彼はニヤリと笑いながら伝えた

 

「あぁそうそう、俺たちから細やかなプレゼントがある。ただ見誤るなよ」

 

 

 

***

 

 

 

 

<パンクハザード、崖の上>

 

 

 

〜およそ半日前〜

 

 

 

 

 

パンクハザードの崖の上でローとルフィは同盟を組むという決断をした。そしてローは彼の練っていた計画を語り始める。

 

 

「ここは“四皇”ゲッコー・モリアの縄張りの一つ。ログの取れない無人島であるから、実験所と化している。」

 

「じゃあ標的はモリアなの⁉︎そんなの絶対にイヤよ!!!!」

 

ローの能力で人格移動させられたナミはフランキーの身体をしていた。

 

「俺達が喧嘩を売るのはモリアじゃねぇ。カイドウだ。たがこればかりは賭けざるを得なかった。」

 

ローはナミの言葉を封殺して語り始めた。

 

「パンクハザードだけじゃなく、モリアは“ある物”を製造しているドレスローザという国を縄張りにしている。」

 

「ドレスローザ?」

 

「頂上戦争で戦死したドフラミンゴの納めていた国だが、その部下達がモリアの傘下に入ることで守られている。」

 

モリアは頂上戦争でドフラミンゴを政府の指示により暗殺した。そして彼の遺言によりファミリーを傘下に加えて守ったのである。当然、ファミリーはその事を知らない。

 

「だが、そこは既にカイドウの息がかかってる。ドフラミンゴの行なっていた闇取引は終わらせたが、そこの部下が無断でカイドウとの取引のみ続けている。」

 

元々ドフラミンゴは闇取引のジョーカーとして裏社会で暗躍していた。そんな彼の最も大きな顧客がルフィらの標的となるカイドウである。だが当のモリアは四皇についたばかりで縄張り全てを把握できているわけでないのか継続して取引が行われているという

 

「だからそこへ潜り込み、取引の証拠を抑え、モリアへ提供する。それで安全を買うしかねぇんだ。理想を言えばシーザーを誘拐してまず取引をしてからな。」

 

なぜローが裏切り者を教えることが大事だと言うのか、それは取引を行なっている相手が問題なのだ。同じ四皇の中で最も敵対している組み合わせだからである。赤髪は攻めて来なければ攻めないタイプであり、ビッグマムはモリアと同盟を組んでいるという噂がある。事実、敵対したことが今まで一度もない

 

だがカイドウは異なる、元々過激な男で新世界で小競り合いをよく起こすようなタイプであり平穏を求めるモリアとは小さな抗争も何度かあった。そんなカイドウの戦力の一つを味方が提供していることをモリアは把握できずにいるため、最も効果的だと判断していた

 

「取引ってのは、いつでも破れるもんだ。無法者の俺達には特にな。どちらかが破ったところでそれを罰する第三者がいねぇからだ。それを解消するには2つの方法がある」

 

「相手が守らざるを得ないカギをこちらが握り続ける事、そしてデカい貸しをつくり、それを返えさせねぇ事だ。」

 

 

そして現在、ルフィとローの同盟はモリアが取引を受け入れざるを得ないカギであるホグバックとシーザーを握っており、これから行うのは裏切り者を摘発するという貸しをつくるのが彼の計画である。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

数時間後

 

 

 

 

〜パンクハザード、上空〜

 

 

 

 

 

数字の3という髪型をしているメガネの男が巨大な鳥の背に乗って海の上を移動していた。彼の乗る鳥は本物の鳥ではなくスマイルを食べた能力者である。そしてパンクハザードの海岸に着くとそのまま飛び降りる。そこにはまだ海兵達が残っていたのである。急にミサイルでも降ってきたかのような土煙が舞うと中から人影が見えてきた。その男は知的で細身な印象でありながらも鍛えあげられた肉体をしている。“でんでん虫”を手にとっており報告を行なっている。

 

「こちらギャルディーノ、パンクハザードに到着。とりあえず皆殺しにするガネ。」

 

『構わん、全てを消してこい。まだ取引は締結していないからな』

 

元バロックワークスMr.3こと四皇ゲッコー・モリアの参謀“純白の細工師”ギャルディーノがパンクハザードへ舞い降りた。

 

 




お待たせして申し訳ありません、夏を満喫してました。
前回の話が長過ぎたので体感では千文字ぐらいだと思ったら三千文字ありました。なんか少しモチベーションがあがった気がします(笑)


あと感想欄にて、ハリスの関西弁に違和感を感じたとの指摘をいただきましたのでドレスローザ編まで落ち着いてから修正しようと思っています。


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