バカとテストと黄金獣 (ハガル_ゴールド)
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物語の始まり

 新連載、前の小説?ちょっと煮詰まりすぎたので休載……まだプロローグすら終わってないのに……


 

 ――少年、卿は何を泣いているのかね

 

 ――放っておいてよ、キラキラおじさん

 

 ――キラキラおじさん、か……面白い呼び名だな……一応悪魔のようなものなのだがね

 

 ――悪魔?……悪い子を食べに来る人……おじさんが嘘をついてるように見えないから悪魔なんだろうけど……

 

 ――子供は素直なものだな、普通は怪しむものだろう?

 

 ――だって人間っぽくないもん……神様は僕を嫌いなんだろうし……あってくれるのなんて悪魔しかいないよ

 

 ――とはいえ、悪魔にしても秩序というものがある……食す前に契約を交わすものだ

 

 ――契約?

 

 ――願い事を叶えるというものだよ……願いを対価にその者の魂を奪うのだ

 

 ――じゃあ、お父さんになってくれる?

 

 ――なるほど、息子にして欲しい、か……別に構わぬよ

 

 ――……僕を見捨てない?出来損ないの馬鹿だって……いらない子扱いしない?

 

 ――勿論だとも、私は――――すべてを愛している……この世界に僅かながらの存命を許されたのだ、一番初めに見つけた卿と契約をかわそう

 

 ――……うん……契約

 

 

 

 

 

 

 

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穏やかな気候で桜舞い散る道の中を一人の茶髪の少年がゆったりと歩いていた。

周りには少年と同じ制服を着ている生徒が多数おり、遅刻というものでもなくのんびりと周りの風景を楽しんでいるものと思われる。

 

 「春といえば出会いの季節とも言うけど……特に際立った出会いは無いかな~」

 

本当に呑気にそのような事を考えながら少年は歩き続けていた、自らの通っている学園へと。

そうして歩いていると、校門の前に多量の生徒の列と数人の教師の姿が見て取れた。

 

 「……新学期だから凄い並んでるんだろうけど……並びすぎじゃないかな~」

 

しかもあからさまに一つの列にのみに並んでおり、他にも数人の教師がいるのだが――その内の1名を除き、本当にチョコチョコとしか並んでいなかった。

並んでる意味ないのでは?という疑問の表情とこれは仕方がないのだろうな、と諦めに満ちた表情の教師がほとんどである。

とはいえ、それでも職務を全うする為にしっかりと待ち構えている姿は流石教師といったところだろう。

 

 「義父さんの列に並びたいけど、家で顔を合わせてるし……ここは―――」

 

列に並ぶことなく、誰がいいかな?と眺めてから親交のある教師に狙いを定めてそちらの方へと歩き出した。

 

 「おはようございます鉄人!」

 

 「氷室、流石に公共の場でその呼び名はやめろ」

 

 「あ、そうでしたね!おはようございます西村先生」

 

若干ずっこけかけた鉄j―――西村先生と呼ばれた男、体格はガッチリとしており、浅黒い肌と高い身長が特徴的な教師である。

かつてトライアスロンに出場し、様々な記録を打ち立てたという逸話を持っていた為、鉄人というあだ名が定着している。

とはいえ、西村先生も否定的ではなく、公共の場以外―――例えばプライベートなどではその名で呼ぶ事を許していたりするのである。

流石に公共の場では将来のことも踏まえさせる為にあだ名を禁止しているのだが。

 

 「それはそうと、父親の列に並ぶと思ったのだが―――?」

 

 「色々と長くなりそうですから……それに学園で余り親子親しくしすぎると色々と拙いですよ」

 

 「……まあ、この学園自体が色々と注目を集めているからな……1生徒ばかりを構い特別扱いする先生は」

 

外聞が悪いと言おうとしたのだが、それ以上に外聞が悪い事例が学園にはゴロゴロとありふれているのでそれ以上の言葉を告ようもなかった。

それ以上にこの学園におけるとあるシステムが功を成しているのかほとんど突っかかってこない現状……とはいえそのような異常を余り多くしないに越した事はない。

 

 「というか、相変わらずあの先生の人気は凄まじいですよね」

 

 「……そうだな、俺からすれば非常にキナ臭いが……お前の父親の人気の方が納得できる要素が大きいのに、だ」

 

失礼だと思いつつも、2人は長蛇の列を形成させている外見上は冴えない青年を見ていた。

どこにでもいるような顔立ち、黒髪黒目の青年で、笑みを絶やしていない……特徴的なのは目の下にある黒子だろう。

男女問わずかなりの生徒を魅了している……全高生徒のほぼ過半数以上に慕われているという点からして異常なのだ……しかも異性限定という点が。

が、それ以上に―――

 

 「あいも変わらずあの者は大変そうだな、そうは思わないか?西村先生」

 

 「氷室先生の人気の方がぶっ飛んでいるではないですか、男女問わず、ですよ?」

 

 「とう……氷室先生ならまだ外見で判断できるし優秀な成績も持ってますから判断できるんですよね」

 

自分のところにきた生徒は捌ききったのか、他の先生と話をしにでも来たのか少年と同じ姓を持つ先生が、ゆっくりと歩いてきた……歩き方一つをとっても魅了するような華やかさと色気が出ており、十分に説得力を持つような印象がある。

……おまけに外見も黄金の髪、黄金の瞳、という点とおよそ人間とは思えないほどに整った黄金比の肉体を持ち合わせており、それだけでも他者を魅了するには満ち足りすぎているのだ。

 

 「まあいいのだが……少々、卿に嫉妬するよ西村先生……できるならば私が息子に渡したかったのだがな」

 

 「氷室先生に手渡されたい生徒を差し置きたくなかったのでしょうな……まあ、来年があるのですからそれまで我慢すればいいだろう」

 

氷室先生の嫉妬が混じった発言に西村先生は苦笑で応える……どうにも親子に見えない外見の2人なのだが、2人に血など繋がっておらず、また、周知の事実でもある……それをネタにされる事も多々あったのだが、本来の家族以上に家族として結び付きが強いのか、まったくダメージを受けることなどなかったのである。

 

 「えーっと……それじゃあ、そろそろ僕のクラスを……と」

 

 「まあ、見るまでも無いがな……結局試験期間中もアレ(・・)に没頭しおって……」

 

 「明久らしくていいではないか、真っ直ぐに突き進む様は好ましいぞ?」

 

 

 

 

―――氷室明久 Fクラス

 

 

 

 

そうして、何処か狂っている世界でかつて吉井明久(・・・・)だった者は氷室明久(・・・・)として最低クラスでの生活の幕を開けたのである。

 

 




氷室先生、一体何者なんだ……(棒


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FクラスⅠ

 明久の交友関係とか大幅に変わっていたりします……

 環境が変わったせいですけどね

 初期アンチ枠=原作Fクラスメンバー …… 姫路、須川は回避

 1巻終了相当に到達するまでは基本、明久との関わりが悪いか中立より悪い寄り

 尚、校門でモテてる黒髪の教師は別にアンチ枠じゃないというかとても愉快な人です。



 「…………ここは本当に学園の教室なの?」

 

明久がAクラスの教室を覗き込みながらそう評する。

普通教室など、どこのクラスも同じものであるという認識であり、事実明久も1年の頃は全員同じ教室だったはず、とつぶやいているほどである。

とはいえ、現実逃避はよくない、現実をキチンと見据えなければこの先きっと生き残ることなどできないだろう。

 

 「Aクラスがこれほど充実してたら……Fクラスが不安になるなあ……」

 

明久以外にも覗いている生徒はチラホラおり、Fクラスに該当する者も居るのか、若干同意するかのように頷いていた。

まず、教室の広さなのだが、通常の5倍の広さを誇っている……そして設備として―――

 

 「ノートパソコン、個人エアコン……これだけでも突っ込みどころ満載だよ……パソコンルームならまだわかるのに……」

 

 『おいおい、黒板じゃなくてホワイトボードかと思ったらホワイトディスプレイだぞ!?』

 

 『冷蔵庫にリクライニングシート……どんだけ優遇してるんだ!?教室じゃなくてホテルじゃないか!!』

 

他にも観葉植物や格調高い絵画などが並べられており、ホテルというのもあながち間違っていないだろう。

これだけ優遇されているのであれば、確実にほかのクラスではそのトバッチリを受けてしまっている筈である。

というか確実に最低クラスであるFクラスはモロにその影響を受けてしまうと言っても過言ではないだろう……。

ドリンクサーバーなどもあり、本当に至れり尽せりな環境である。

 

 「……えっと、君もFクラス?」

 

 「ん?ああ……そうだ、俺もなんだ……お前も同じクラスなのか?」

 

近くで独り言を明久と同じように話している者を見つけ、なんとなく失礼ではあるが空気からして同じクラスの人っぽいと感じて、声をかけたのだが……どうやら正解であったようだ。

 

 「えっと、僕は氷室明久……コンゴトモヨロシク」

 

 「お前はアクマか!!?俺は須川亮……不安だが1年間よろしく頼む」

 

不安なのは、この後に訪れなければならない共に学ぶ場所である教室に関してだろう。

 

 「そろそろ移動しようか……他にも見ている人いるけど長居は迷惑だろうし」

 

 「ああ、そうだな……不安だが、流石に教育機関だからそんなにおかしいって訳じゃないよな!」

 

無理に明るく努める須川に明久は現実逃避気味に同意し……自分の学ぶべき場所であるFクラスへと向かっていったのだが―――

 

 

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 「……須川くん……この教室を見てどう思う?」

 

 「凄く……格差社会です……」

 

見事なまでに2人の現実逃避は打ち砕かれ、そこには見るに耐えない……という訳ではないが、Aクラスやほかの教室に比べれば、非常に惨めな教室がそこにはあった……流石に衛生環境は最悪ではないのだが……通常の椅子や机は存在せず下は畳張りであり、机は卓袱台、椅子は座布団……しかも綿が入ってなさそうなのが殆どを占めており、争奪戦は必須になりそうな有様である。

 

 「無難に綿が少なさそうなのを貰おう……ギスギスしたくない」

 

 「お、俺は中間ぐらいを……」

 

明久が異常なだけであり、ワタが多そうなのを狙うのが普通である……明久はワタが少なさそうな物を探して、すべてを触った後、最後に触れたのが最小―――どころかワタなしだったのでそれを選んで座った……座り心地が悪そうであり、若干眉をひそめている。

お尻が痛いと顔で物語っているのだが……後で争奪でも起きた時を考えると体のダメージが少ないと割り切ったようで、ため息一つで済ませた。

 

 「こんな状況でやっていけるか不安だなあ……」

 

 「この最低設備を上クラスへと殴り込むための要素に組み込んでるんじゃないか?」

 

教室内には現状、2人しか存在していない為、必然的に会話をするには2人だけとなる。

あまり話したことのない人物ではあったが、意外と話しやすそうだと思ったのか、自然と会話をする空気へ切り替わっていった。

 

 「まあ、卓袱台の足が折れてたり、窓が割れてたりしてないからマシといえばマシだと思うけどね」

 

 「そこまでいけば流石に教育的に大問題だろう、馬鹿な俺でもわかるぞ」

 

 「ホコリっぽかったり、カビていたりしてないしね……そこまで最悪な想像をなんでしてたんだろう」

 

 「確か、噂だとそんな感じだったなあ……」

 

噂は所詮噂に過ぎず、実際には勉強するには少々厳しそうだが、綺麗な教室であった……が、キチンとした椅子で授業してた事を考えれば、今の状況は非常に勉強しづらい環境なのは間違いが無いだろう。

 

 「試験召喚戦争……仕掛けるのかなあ?」

 

試験召喚戦争とは、この学園独自の戦争ルールであり、原則的にクラス対抗戦の擬似的な戦争である。

とはいえ、戦うのは本人通しではなく、科学とオカルトの産物である試験召喚獣というもので戦わせるものであり、その召喚獣の能力は召喚者本人のテストの点数により上下するのである。

 

 「代表しだいだろう……そもそもその代表が誰なのかわからない状況だが」

 

 「なんとかDクラス……は贅沢だからEクラスを狙ってみたいね」

 

現実を考えれば上位クラスは最低でも1周りの点数差がある為、通常は1つ上のクラスを狙うのが得策だろう。

ましてや慣れていない状況では2周り以上の点数を相手に戦うなどよほど戦略に長けて指揮をこなし、その指示をきちんと受けて動けてなければ厳しい上に相手も人間である以上様々な戦略のぶつかり合いになるのだから。

 

 「机と椅子か……勉強はあまり好きじゃないがそうも言ってられない……のか?」

 

 「まあ、暫くは勉強でテストの点数という名の力を溜めて戦うっていうのが方針じゃないかな?」

 

 「氷室なら意外と指揮官に向いているんじゃないか?」

 

そこまで冷静に考えられるなら指揮官に向いており、下手な代表の指示よりも的確に動かせそうだと思った須川が問うが。

 

 「いや、義父さんの受け売りみたいなものだよ……ここの教師をやってる。それに僕は指揮官よりも兵隊の方が気軽かな?何人もの命を預かる器がないし」

 

 「少なくとも俺よりも向いていそうだがなあ……まあ、もし戦争になったらお前の指揮で動きたいな」

 

軽く笑い合う……結構気があったようであり、明久としてはようやく念願の友人になれそうな男を見つけれたのでこのクラスで良かったと思っているのだ。

自分のあまり好かない(・・・・・・・)人物は頭もいい為、このクラスには絶対に来ないだろうと安心しきっているからである。

 

 「須川くん、僕のことは明久でいいよ。色々とよろしく」

 

 「じゃあ、俺の事も亮でいいぞ……お前といれば遥か格上は無理だろうがEクラスの相手は楽そうだ」

 

ガッチリと握手を交わし合い、友情を誓った……明久の生涯における最大の友との出会いの一幕である。

 

 

 




 親友獲得……雄二?秀吉?土屋?……交流がそもそも無い

 交流があるのはホンの少ししかおらず、男子は久保――――――弟だけ


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人物紹介その1

 とりあえずの紹介……転生者などは1巻相当が終了後に公開

 原作キャラの変更に関してもそこでまとめて公開


氷室(ヒムロ) 明久(アキヒサ)  旧姓【吉井明久】

 

外見:吉井明久という状態での原作通り

 

性格など:底抜けに明るく……いうなればいい意味での馬鹿であり、好きなものには一直線になれる努力家。

  己が背中を預けれるような相手や超絶憎い相手以外は基本自分を犠牲にしても助ける熱い意志を持ち合わせている。

  成績は原作通り……勉学よりも試験召喚獣に力を注ぎ続けた弊害である。

  何故か家族に存在を全否定され(本来は存在しない人物の影響で)、路頭に迷っているところを黄金の獣に出会い、家族となる事で暗く落ちる事は回避された。

  料理の腕前は原作と同等であり、生活資金をゲームにつぎ込むようにはなってない。

 

 

 

召喚獣は外見以外は原作通りであり、何故か第二次世界大戦中のドイツ軍の軍服を纏っている。

木刀装備は変わっていないのだが、それが不釣り合いさを大幅に強調している。

 

 

 

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氷室(ヒムロ) 雷二(ライジ)

 

Diesiraeのラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒの残照……何故かこの世界に戸籍付きで姿を現した。

名前の由来は愛称であるライニを弄っただけ。

すべてを愛し、すべてを破壊するという心理は変わっていないものの、この世界そのものを満喫しているようであり、

最初に出あった人間である明久が命尽きるまでは留まるという悪魔の契約のようなものを結んでいる。

魔名が悪魔(メフィストフェレス)だからあながち間違ってもいないのだろう。

尚、残照である為、元の世界における魔人状態には遥かに及ばないものの、西村教諭に比肩する身体能力を持つ程度にまで弱体化している。

現在は文月学園の教師の一人をしており、事実上の学園長として君臨している……並べて学園長がどっちなのかを聞いたら氷室先生と答える生徒が多い上に、学校の情報サイトなどでも一時期学園長の欄に書かれていた。

獲得点数は全教科最低でも2000点以上。

誰もこの点数に到達できないだろうし、通常の手段で倒すには不可能であるため、最低限腕輪の能力を使える400点以上の者でないと倒すのはほぼ不可能だろう。

 

 

武装:聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)

  黄金に輝く槍。

  この武装で倒した敵の最大点数を戦争中加算するという酷い仕様であり……補給を必要としなくなる……それ故に数の暴力で攻めても無駄であり、質で攻めなければならない。

 

 

腕輪能力……現状不明、二段階存在しているようだが……?

 

 

 



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FクラスⅡ

 クラス代表など登場……!

 なんで同じ学校を選んだ?という疑問があるけど、それは後々~


 

 「ぼちぼちと人が集まってきてるな」

 

 「そうだね……あからさまにホッとしてる人が多いのは噂より酷くなくて良かったって思ってるからかな?」

 

時間にして10分経過した時点で、ようやく人の数が増えてきた。

入ってくる人間、全員が全員教室を見渡してホッとしている者が多く、明久と同じように噂を信じて最悪の環境を想像していた者が多かったってことなのだろう。

 

 「いやー……俺の知り合いは見事に全員ほかのクラスっぽいな~」

 

 「まだ全員来てないんだしわからないよ?それにさ……話が合う人だっているよ、類は友を呼ぶって言うし」

 

 「それもそうだな、初めてのクラスメイトだらけでも楽しもうと努力すればいいんだし」

 

これから1年間、余程の事がない限りは一緒に学んでいく仲間なのだ。

であるならば仲が良いにこしたことは無い……仲が最悪であればいざという時に連携が取れないであろうからだ。

 

 「女子が入ってくれると華やかさがあるんだけど……どうだろう?」

 

 「……1人だけ、心当たりはあるな」

 

 「え?」

 

明久が男子ばかり入ってくるのに気が滅入っており女子はまだかなー、とむさくるしいのは勘弁して欲しいと切実に思っていると、亮が顎に手をやり、指を立てて心当たりがあると言い出した。

 

 「実は、振り分け試験中に女子生徒が1人、倒れたんだよ。理由まではわからないんだが」

 

 「ああ……途中退出したからなんだね……確か0点扱いになるんだったっけ」

 

 「まあ、知り合いに聞いただけだし、誰なのかもわからないけどな」

 

 「いや~……でも女子がいるだけでも華があるよ……この学校の僕のような男子はまだしも女子は美少女揃いだし」

 

 「そうだな、俺みたいな男子はまだしも女子はレベルが高いからな」

 

 

 「「はっはっは……はあ……」」

 

 

双方共に自虐しつつため息をつく……ダメージを受けるくらいなら自虐しなければいいのに、という状況だろう。

集まった男子はその会話を聞いており、女子が来るという事でどんな女子がくるのかを楽しみにしていた。

と、ここで明久がよく知る――一方的に、だが――人物が入ってきた。

赤毛で180cmはある身長のやや細身のボクサーのような機能美の肉体を持ち赤いたてがみのように感じ取れるつんつん頭の少年だ。

明久が話をする数少ない人物の1人がその人物の事をよく話していたので印象に残っているのだ。

意外な事に遠目でしかエンカウントした事はなく、これだけ近くで見たのは初めてである……とはいえ多少離れているが。

 

 「あれ?坂本?……成績は悪くないはず……」

 

 「なんで知ってるんだ?」

 

 「いや、知り合いから話を聞いてたりするし……んん?」

 

一瞬だけ、視線が絡み合う……敵意に見えなくもないが、それとは別の意思を感じ取れる視線。

……羨ましいという感じの意味合いの方が強く見受けられていた……すぐさま教卓の前に立ちクラスを見渡し始めていたが。

 

 「……戦力の把握をしているっぽいね……という事はクラス代表かな?義父さんの寸評が正しいなら……期待できそうなんだけどね」

 

 「マジか……ならEクラスの設備は狙えるって事だな……」

 

人を扱うに関して、生徒の中でも抜きん出ていると高評価を得られている生徒に明久は期待していた……この時は。

 

 『む、雄二……お主が代表なのか?』

 

 『秀吉か……いや、俺じゃないな、貰った紙に代表と書かれるそうなんだが、書かれてなかった』

 

 「…………キタイワヘシオラレタ」

 

聞こえてきた会話で明久は項垂れた……今度の生徒は明久は知らない人物のようである。

一瞬何故女子が男子の制服を着ているのか気になったのだが、もし本当に男子だったらどうしようという思いと、男装趣味の女子という点も捨てきれないのでとりあえずは放置の方向で落ち着いた。

 

 「待て明久、サブとして動いてくれる可能性が捨てきれない」

 

 「は!そうか……よっぽど最悪で相性が悪そうな代表じゃない限りは大丈夫な筈……!」

 

よほど自分に自信満々で他者の事を顧みないような最低な代表でない限りは坂本雄二の有用性を理解できるはずだ、と明久は思い直し、まだ見ぬ代表に思いを馳せていた。

 

 

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そうしてだいぶ時間が経ち、50人中、48人が揃っていたのだが―――

 

 「……なあ、明久」

 

 「どうしたの亮」

 

言いたい事はわかっていると言わんばかりに明久が亮の言葉を受け止める。

 

 「気のせいか――こっちに近づけない島田がお前を睨んでないか?」

 

 「なぜか知らないけど、殺されかけてるんだよね、度々……特に他の女子と話をしていると……それはそうともっと別の部分があると思うんだけど?」

 

言われる事が若干違ったのか、若干震えつつも返事を返す明久。

話をする女子のうちの1人ではあるのだが、同時に明久自身苦手な女子生徒でもある島田美波――

最初の頃はそうでも無かったのだが、何がきっかけか分からないが―――

関節技や殴打、蹴りなどの暴行を加えてくるようになっており、非常に苦手な人物の1人である。

明久の義父の”真に愛するなら壊せ”という言葉を常々聞かされていても、どう解釈しても殺意全開としか思えないのだ。

 

 「何人か……明らかにAクラス、もしくはBクラスの成績の生徒なんだけど……」

 

 「……そうだな、成績上位者に名を連ねている面々が多すぎだ」

 

成績上位者は何らかの褒賞付きとともに掲示板に張り出されるのだが……それに名を何度も連ねている生徒がなぜか、見た限り、5人も居たのである……そのうちの1人は島田にかまっていて暴行を受けている事によろこ――気にしていない人物だが。

 

 「しかもイケメン……イケメン爆発しろ」

 

 「それにモテてるしね……リア充死すべし……!」

 

実を言えば明久も人の事は言えないのだが、余談に過ぎず、そもそも認識していないので亮もカウントしていないのである。

 

 「まあ、それはともかくとして、他にどんな人が―――」

 

そこまで言って明久は嫌な予感を感じ取った……同時にありえないという感覚も。

汗は吹き出る、体が多少震え、青ざめる……クラス中を見渡しても特に問題あるような人物は島田以外には存在しないというのに、だ。

 

 「ど、どうした明久……顔が悪いぞ?」

 

 「は、ははは……それを言うなら顔色が悪い、だよ……顔が悪いのはもともともだから……」

 

明らかに普通ではない……そして明久は急に開かれた扉を見て、何故悪寒を感じ取ったのかを理解した。

 

 『すいませ~ん!まだですけどちょっと遅れちゃいました♪』

 

 『早く座れ!この蛆虫野郎!』

 

明久に良く似た顔立ちの明久が一番会いたくなかった人物が……入り込んできていたからだ。

 

 

 



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FクラスⅢ

 島田と相性の良い男子生徒登場……


 

 「…………こっちを覚えてないのが幸い、なのかな……」

 

 「どうしたんだ、明久、吉井が入ってきてからちょっと変だぞ?」

 

明久の会いたくなかった人物はこっちに視線を送ってきたが、明久と目があったにも関わらず、気がつかないような雰囲気であった。

それをありがたいと思いつつも、悔しげに思う明久……意識しているのは結局明久だけなのだろう。

 

 「なんでもないよ、うん……こっちが意識しすぎてるだけだから」

 

 「そうか……まあ、顔色が戻っているし何も問題は無いんだろうが……」

 

そうして吉井と坂本の下へと土屋と木下が集まり始める……島田も近づいているようであり、その面々が1年の頃からよくつるんでるグループなのだろう。

非常に楽しそうではあるのだが、明久は、どうにも居場所を奪われたような感じしかしない……なぜそう思ったのかは明久自身も分からないが。

すると、教室の扉が開き、教師が入ってきたのだが―――

 

 『総員、席につきたまえ……そろそろHRの時間だぞ』

 

 「ぶは!?」

 

入ってきた先生が問題だった……何を隠そう、明久の義父である氷室先生であった……教室中の生徒が全員唖然としている。

クラスによって担任の先生が異なるのだが……上位のクラスであるほど人気で優秀な先生が担当する……氷室先生は学園で並ぶものがいない文武両道の傑者である。

Aクラスならまだしも最低クラスに配属されるような人物ではないのだ。

 

 「ちょ……なんで義父さんが!!?」

 

 「このクラスの担任となった氷室雷二だ……それとここでは先生だ氷室、公私は分けておくように」

 

明久が驚きのあまり更に立ち上がって問うように大声を上げるが、氷室先生は多少苦笑したあとで明久に注意する。

公私の分別は明久もできているのだが、まさかこのクラスに父親がくるとは思ってなかったらしく、ついつい忘れてしまったのだ。

 

 「あ、すいません氷室先生」

 

 「さて、私が来た原因なのだが――単純にFクラスの担任はくじ引きで決まるのだよ、立候補も推薦も禁止で単純に運次第だな」

 

 『『『『どれだけ嫌がられてるんだよ!!!!?』』』』

 

それなら理由は納得であるのだが……なぜだか、明久には義父が望んでこのクラスに来たように感じ取れた。

確かにくじ引きは本当かもしれないのに、だ。

 

 「さて、先ほど連絡があり生徒が1人遅れている、が……時間を考えれば流石にHRを進めなければならないな……まずは備品についてだが卓袱台、座布団は行き渡っているかね?」

 

 『先生、俺の卓袱台の足が若干壊れてます』

 

ここで備品に不満があるのか、生徒の1人が手を挙げて堂々と発言する……机や椅子じゃないのが不満であれば我慢してくださいという回答が出てくるのだろうが、逆にそういう事であれば―――

 

 「ふむ、後ほど修理の申請をしておくとしよう、今はこの木工用ボンドと添える為の木材で我慢してくれ」

 

 『先生、座布団にワタがあまり入ってません』

 

 「―――(ふむ、おかしいな。確か全てに入れるよう業者に頼んでおいた筈だが)今は少し我慢してくれ、後で詰め込み用のワタを持ってくるとしよう」

 

一瞬、何か考え事をしていたのだろう……明久には何を考えたのか理解できた……本来、座布団全てにワタが敷き詰められていたのだろう、と。

なんらかの思惑があるに違いないと思いつつも……明久にはその思惑までは読めなかった。

とはいえ、畳、天井、窓には特に支障がなく、卓袱台と座布団だけに異常があっただけのようだ。

 

 『『『先生、俺に彼女がいません』』』

 

 「それは自分でどうにかしたまえ」

 

―――大半の男子生徒の不満に氷室先生は呆れるしかなかった……とはいえ、明久から見れば好ましく見ていると受け取れたが。

 

 「では級友の事を知るためにも自己紹介をしてもらうとしようか、廊下側から」

 

氷室先生の指名を受けて、廊下側に座っていた生徒の1人が立ち上がり、自己紹介をはじめる。

1年間過ごす仲間たちなのだから明久も覚えておくとしようと、自己紹介に耳を傾け始めた。

 

 「木下秀吉じゃ、演劇部に所属しておる」

 

木下秀吉、女子生徒に見間違える外見の男子生徒、去年はいくら男子生徒であると言っても誰も信じなかったそうだが。

明久からすればいくら演劇とはいえ女子の役ばかりやってたらそういう認識にしかならないだろうというツッコミがあった。

しかも、本人も疑問に思わないどころか若干ノリノリであったらしい…………本当に男子生徒に見て貰いたいのだろうか、

という疑問が湧いて出てくるしかない……その証拠にこのクラスの男子生徒の大半は「美少女キタ━(゚∀゚)━!」と言いたげな視線を送っているのである。

 

 「―――土屋康太」

 

小柄であるが、引き締まった体付きをしている男子生徒の自己紹介を聞く……目立ちたくないのか、小声で言うだけ言ってすぐに座っていた。

何らかのおまけ要素でもつけておけばいいのに、と明久は思っていたが、他人の自己紹介にケチをつけるのはダメだろうと思い、他の人の特徴を掴んでいると。

 

 「島田美波です海外育ちで、日本語は会話ができますが読み書きが苦手です」

 

島田美波、ドイツに留学していた帰国子女、と言ってもいいこのクラスに存在する2人いる女子の内の1人だ。

なぜ、2人なのかというと、あと1人、試験中に熱で退席した生徒が居ると亮が話していた事を明久は思い出して、島田は除外したので、遅れている1人が該当していると思ったのだ。

 

 「趣味は―――氷室明久を殴ることです☆」

 

 『どうして俺じゃないんだ!!?』

 

島田の言うことに明久は怯え、なぜか、島田の言う事を聞いて血涙を流す男子生徒がいる…………どういう状況なのだろうか、これは。

その後は、淡々と名前を告げる作業だけが行われていた……何もないのだろうか?と思ったが実際に自己紹介なんてこんなものなのだろうと諦めた、が。

 

 「私はMです、間違えた……俺は木戸(キド)衛武(エイブ)だ、あだ名は読み方を捩ってドMでした」

 

島田に熱い視線を送るまさに変態の鏡(?)の存在、木戸……ここまで暴露されるといっそ清々しい。

島田が鬱陶しそうに睨んでいるのだが……残念ながらその男にはご褒美にしkならない……あまりにもインパクトの強い自己紹介に、明久は他のクラスメイトの名前を頭に入れそびれた。

 

 「俺は須川亮だ、中華料理同好会に所属している、放課後に来てくれれば簡単な点心を用意してるからそれを食べて感想を聞かせて欲しい」

 

明久はその意見を聞いて今日の放課後はいつもの事の前に、食べに行こうと心に誓った。

順番が来たので明久が立ち上がり自己紹介をする。

 

 「氷室明久です、1年間よろしくお願いします」

 

何か趣味でも言えばよかったのだろうが、特に言えることも無かったので明久は座り込んだ……結局他の人とあまり代わり映えしないじゃないか、と自己苦笑しつつ。

そうして座ると同時に教室の戸が開かれ、1人の女子生徒が入り込んできた―――

 

 

 




 ―――残念イケメンだがな!無理強いはしていないのでマシな人物かもしれない


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引き金

 自己紹介のプチ続きと代表演説1


 「来たか、現在自己紹介中であるので卿も自己紹介をするといい」

 

 「は、はい……姫路瑞希です、皆さんよろしくお願いします」

 

小柄な体を更に小さく縮こめるようにして声を上げる人物こそ、このクラスにおける2人の女子の最後の1人である姫路瑞希だった。

亮の話が確かなら熱で倒れてこのクラスに来てしまったのだろうと思いつつ、確かに体が弱いという話でも有名なので該当者は彼女なのだろうと明久は思う。

 

 『あ、あの……なんでここに来たんですか?』

 

聞き用によっては失礼に当たる言葉でもあるが、確かに何も知らない状況であれば5本の指に入る程の成績である姫路がこのクラスに何故くるのかと疑問に思うのだろう。

 

 「そ……その……振り分け試験の最中に高熱を出してしまって……」

 

亮が言ってたとおり……というか亮が聞いてた話の通りであった。

振り分け試験では、欠席したり中途退出したりすると0点扱いとなり、再試験すら存在しないという厳しいものだ。

というのも、体調管理も社会に出る上で必要だと言う事を大事な局面であるということも踏まえてそのように厳しくしているそうだ。

厳しいようだが、これも試験校であるこの学園の特色でもあるのだろう。

そのような姫路の言い分を聞いてか、クラス中の人間が口々に何かを言い出した。

 

 『俺も熱(の問題)が出てFクラスになったんだよな~』

 

 『あぁ、化学だろ?アレは難しかったよなあ』

 

”も”とは言っているが、そっちの熱ではない……姫路と一緒の事でFクラス入りした扱いになりたかったのだろうが、近くにいた別の生徒に普通に見破られていた。

 

 『俺は弟が事故にあったと聞いて実力を出しきれなくて……』

 

 『いや、お前のところ、双子の妹じゃねーか……俺の隣で普通に試験を受けてたぞ』

 

妹の性別を間違える&そもそも普通に試験を受けているという明後日の方向の言い訳に別の生徒が突っ込む。

 

 『前の晩、画面の向こうの30人の彼女が寝かせてくれなくてさ』

 

 『何個ゲームを消化してたんだお前は!?』

 

1つのゲームに約6人だと仮定しても5本近くゲームを攻略していたことになる……普通にFクラスに入って当然だろう。

復習も普段の勉強も睡眠も足りていないのだから……やはりバカばかりである。

その中でも成績上位であるはずの姫路と、ある生徒は異質すぎるのだが。

 

 「で、では……よろしくお願いします」

 

そんな中、逃げるように姫路は坂本と明久の苦手な人物――吉井――にあった卓袱台へと座り込んでいた。

 

 『――です。特技はトライアスロンです』

 

 『お前、そんな特技なかっただろ!?』

 

そうして自己紹介が姫路を意識しつつ格好を付けるようなものが多くなり始めたが、おそらく気のせいだろう。

そして、明久にとって苦手な人物の自己紹介がようやく始まる。

と言っても明久が認識されていないのでバカバカしい一方通行な思いなのだが。

 

 「吉井明斗だ、気軽に『ダ~リン』って呼んでくれ」

 

 

『『『『ダ~~~リィイイイイイイン!!!!!』』』』

 

 

明久は卓袱台に頭を突っ込んだ……クラスの8割以上の大合唱に気分が悪くなったのと自分の知ってる人物が何かおかしい点に頭を抱えつつ。

ちなみに姫路はびっくりしており、クラス中を目が点になっているような顔できょろきょろと見渡していた。

……やはり色々と頭が弱い生徒が多いのだろう……明久自身も馬鹿なので「人の事は言えないよねー」と心の中で自嘲していたが。

 

 「坂本雄二だ」

 

そうしているうちに自己紹介は全て終わったらしい。

氷室先生は出席簿を見比べつつ確認し終えた後で――

 

 「元気がよくて何よりではあるが、一応他にも自己紹介をしているので短くしてもらいたかったな」

 

大声の野太い大合唱を聞いても微動だにせず優雅に余裕を持っている氷室先生……流石は元――ほとんど現在も、ではあるが――黄金の獣であり死者の軍勢を率いた男である。

 

 「そして、吉井明斗はクラス代表でもある……本人が忘れてて発表し損ねてようだがな」

 

 (調整したのかな?何の為に……?)

 

吉井の頭脳をもってすれば確かにそういうふうな点数配分にする事は確かに余裕であろう……ただ、姫路のようなイレギュラーがあったのに、どうして普通にFクラスの代表として君臨できたのかが疑問ではあるのだが。

 

 「では、吉井よ、代表として何か一言言ってもらおうか」

 

 「はい」

 

そう言って教卓に近づき、クラス中を見渡す吉井……明久の記憶以上に圧倒する気配がある。

――とはいえ、明久の義父のお陰で大軽減されているのだが。

 

 「クラス代表の吉井だ……代表とでも吉井とでも好きに読んでくれて構わないぜ」

 

そう言って不敵に笑っていた……クラスの人間の顔をひとりひとり見渡し、教室中に視線を送る。

明久、氷室先生以外の人間がその光景につられながら同じように教室内を見渡していた。

 

 「古臭い木造の教室、卓袱台に座布団な環境……それに対してAクラスは冷暖房完備で冷蔵庫などもあるんだが――」

 

そう言って言葉を止める―――ひと呼吸をおいて更に言葉をつなげる、間の取り方が非常にうまく、全員が次の言葉を聞く気になっていた。

 

 「―――不満はないか?」

 

 『『『『大アリじゃああああああ!!!!!!!』』』』

 

2年F組男子生徒―――明久を除いた全員の魂の奥からの叫び……木下や土屋ですらも知らず知らず叫んでいた。

明久も同じように叫びそうになったが……口パクだけに留まった。

 

 「そうだろう?俺だってこの現状は大いに不満である。確かに最低限度の設備とは言えこれはあんまりだろう!」

 

不満であるなら何故このクラスに来たのだろう?と明久は思ったが、口に出すほど無粋ではなかった。

戦争を仕掛けるような空気が充満しており、明久としては戦争は望むところでもあるからだ。

……この際、何故吉井がここに居るのかを考えるのはやめにしようと決意し、会話を見守る。

 

 『Aクラスとは学費がおんなじなんだよ!この差は不公平だ!!』

 

 『改善を要求する!馬鹿だからって決め付けてこの設備にするなんてあんまりだ!』

 

士気が高まっていく……上位クラスには努力して入ったのが多く、このクラスに落ちてしまったのは勉学を疎かにした自分達の自業自得なのだが、それを納得できるほど、頭が良くない……ただただAクラスを1度見て豪華な設備を満喫しているであろうAクラスの生徒への嫉妬という心があるだけだ。

 

 「皆の意見はもっともだ……そこで代表としての提案だ―――Aクラスに試験召喚戦争を仕掛けようじゃないか」

 

戦争の引き金を引いた――思惑がどのようなものなのかを明久は理解できていないが……それでも戦争に期待していたが故に―――

 

 

 

 

 

―――――――心が踊っていた

 

 

 




 いよいよ戦争の引き金を引くFクラスの代表吉井明斗

 転生者はほとんどかませにしない予定……かませじゃないんだハイドリヒ卿が

 ぶっ飛んでるだけなんだ……という状況になればいいなあと思いつつ努力しなくては……


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FクラスⅣ

試験的にバカテスもまえがきで実行


Qドイツの政治家であり、金髪の野獣とも言われた国家保安本部(RSHA)事実上の初代長官の名前を答えなさい

姫路瑞希の答え
 ラインハルト・ハイドリヒ

教師のコメント
 正解です、一応ラインハルト・ハイドリヒでも正解としてますがフルネームでは―――


氷室明久の答え
 ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ(Reinhard Tristan Eugen Heydrich)

教師のコメント
 ドイツ語も書かれてて少々驚きました、お父さんである氷室先生の影響でしょうか?


氷室雷二の答え
 わた―――ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ(Reinhard Tristan Eugen Heydrich)

教師のコメント
 何故氷室先生が……それに気のせいか、消された後が……これは「私」?


須川亮の答え
 ラインハルト・フォン・○ーエングラム

教師の答え
 先生も銀○英雄伝説は好きですが、間違いです




 

吉井明斗のAクラスへの宣戦布告宣言によりクラス中に大きなざわめきが起こる。

明久としては心が踊ったのはいいのだが……勝てる勝てないかと言われると勝てないという意見が多いのだろう。

 

その証拠に―――

 

 『勝てるわけがない!』

 

 『そうだそうだ!現実的にEクラスを見たほうがいいじゃないか!!』

 

 『島田がいれば何も要らない!』

 

 『何!?お前正気か!!?』

 

いきなりの最高クラスを相手にするのは躊躇われる意見の方が多いのだ。

この学園では試験召喚戦争と呼ばれる特殊な行事のようなものが存在しており、それは近年の学力の低下を嘆いて、生徒の勉強に対するモチベーションの確保の為に遊び感覚で一時間で上限なしのテストの点数でステータスが決まる召喚獣を扱い、戦争を行うという行為が行われている。

召喚獣は科学とオカルトの偶然の融合の産物であり、開発者である本来の学園長の藤堂カヲルだけが完全に全貌を把握しているのである。

それはさておいて、その為クラスの振り分け試験が点数順である以上最高クラスと最低クラスとでは点数差がありすぎるのだ。

 

 「大丈夫だ、問題ない―――このクラスには勝ち抜く為の要素が揃っているんだからな」

 

そのような吉井の意見を聞いて、クラス中が更にざわめいていた。

ふと、明久が気になって氷室先生を見てみると、クラスを見渡して大体の検討がついていたのか同意するような表情になっていた。

もっとも明久以外は吉井に視線を送っていて気がつきもしなかったが……氷室先生を信頼して明久も無謀扱いはやめて根拠に耳を傾ける。

 

 「今から説明しよう―――おい康太!畳に顔を押し付けて姫路のスカートを覗いてないでこっちに来い!」

 

 「……!」

 

 「は、はわ!?」

 

康太と呼ばれた少年がものすごい勢いで立ち上がり首を音が聞こえるほどに左右に振っていた。

姫路はスカートを抑えて遠ざかっていた……気がついていなかったようである、というか明久も気がつかなかった上に、実は吉井も何かを知っていなければ気がつかなかったほどである。

ともかく、土屋は呼ばれたので畳の跡がついているであろう頬を抑えつつ壇上へと近づいていった。

 

 「土屋康太……この男があの有名な寡黙なる性識者(ムッツリーニ)だ」

 

 「……!?」

 

土屋康太という名前はそこまで有名なものではない……が、先ほど言われたムッツリーニという異名は誰しもが、一度は聞いていたであろう名前だ。

もっとも言われた本人は必死に否定するかのように首を振っているのだが。

 

 『ムッツリーニ、だと……やつがそうだと言うのか……!!』

 

 『だが、あそこまであきらかとなっている覗きの証拠を必死に隠し続けようとしている』

 

 『あぁ、まさしくムッツリーニにふさわしい姿だ』

 

例えどのような状況であろうとも己の下心は隠し続ける……異名は伊達では無いということか……今ここにいる教師が、氷室先生でなければ、そして姫路でなければ確実に問題となってよくて生徒指導室に向かわされただろう。

直接的(故意な肉体的接触など)でない限り、そしてバレないようにする限りは寛大であり、姫路も姫路で気性は穏やかなので、微笑んで許すという有様だからこそこの場合には問題になっていなかっただけである。

 

 「姫路と俺の事は説明するまでもないだろう、このクラスの最高戦力だ」

 

 「え?私、ですか?」

 

 『自分で最高戦力と言ってやがる……否定できねーけど』

 

 『というか、アイツがこのクラスにきた理由ってなんなんだ????』

 

その部分は誰もが気になる要素なのだが……下位クラスから上位クラスを落とすという事を行いたかったのだろうと推測するしかない。

 

 『まあ、Aクラスにも引けを取らないな!』

 

 『姫路さんがいれば何もいらない』

 

 『何!俺は島田がいれば何も怖くないぞ!』

 

先程から女性陣にラブコールを送っているのは誰なのだろうか……1人はわかりやすい人物であり、口に出しては睨まれて興奮していた。

 

 「戦力としてどう見るんだ?明久」

 

 「ん?まあ、確実に主戦力だね」

 

亮に話しかけられて明久が答えを返す……点数の高さによるステータスの高さは召喚戦争中では確実に主力として機能するだろう。

間違いなくクラスの最高戦力として上げても問題ないのだが……自分で自分を最高戦力という点はやや過剰な気もする。

 

 「そして、島田は数学では高い点数を出せるし……坂本雄二も本気を出すぜ」

 

 「数学以外は勘弁して欲しいわ」

 

 「まあ、全力を尽くすぞ」

 

 『坂本って小学生の頃は神童と呼ばれてたそうだ……』

 

 『島田もなんだかんだでAクラス並みの点数を数学”だけ”はたたき出せるようだし……単体科目だけ見れば上なのが多いのか』

 

紹介されてまんざらでもないのか、島田は立ち上がり坂本は気合を込めて周囲を見渡していた。

クラスの士気は最高潮であり、群集心理の影響か既に戦勝ムードが漂っていた……気が早すぎるのだが。

 

 「――それに、氷室明久だって居る」

 

 

 

 

―――教室が一気に静寂に包まれた

 

 

 

 

 「吉井よ、なぜここで私の息子の名を出した」

 

 「そうだ!せっかくの士気の上昇がリセットされてるじゃないか!!?」

 

氷室先生が教室の隅の先生用の椅子に座りながら吉井を問いただし、明久も追従するかたちで吉井に向かって叫んだ。

クラスの全員も何が何やらわからない状況だ。

 

 『氷室って誰だ?』

 

 『そんな奴―――居たけど、何かあったっけ?』

 

 「ほら言わんこっちゃない!どう考えても愚策じゃないか!」

 

明久は認めたくはないが―――縁を切ってあるとは言え血筋的には双子の兄に対して、怒鳴った。

どのようなバカでも先ほどの熱を奪うような行為は愚策でしか無いと言う事を理解しているがゆえに。

が、吉井は――――それすらも考えての事であるという表情で―――

 

 「氷室明久では有名じゃないだろうな……観察処分者ならどうだ?」

 

 『それってバカの代名詞じゃ……?』

 

 「……ここでその情報を出すか、卿は……まあ、おおよその検討は付いた好きにするがいい」

 

 「そういや、入学して1週間も経たない内にそんな肩書きの生徒が出たって話だが……まさか明久だったのか」

 

”観察処分者”とは学園生活を営む上で特別問題のある生徒に課せられる称号であり処分である。

とはいえ、明久自身一切逸脱しすぎた学園の問題となるような行為を行ってはおらず、とある理由から自分から進んでその処分を引き受けただけである。

チラリと学園の発行するチラシで名前が出ただけで以降は音沙汰がなかったため、基本的に誰も覚えてないようなものでもあったが。

 

 「えっと……特例で召喚獣が物に触れて雑用をこなすんでしたっけ……?力が強いそうですから羨ましいですね」

 

 「え?ああ……うん、ちょっと交換条件でそうなったというかなんというか……フィードバックもつくからデメリットがあるけどね」

 

姫路に羨望と尊敬のこもった視線を向けられて明久は若干苦笑する……それ程いいものではないのは確かである。

とはいえ、デメリットそのものは明久にとって問題ないので、事実上メリットのみしか存在しない称号ではあるのだ。

 

 「つまり、召喚獣の操作がずば抜けて高い……主力として動かすにはうってつけだ」

 

 「それに関しては、私も保証しよう……召喚獣の操作という点に関しては明久は学園生徒の中で一番だ」

 

氷室先生の後押しによってクラス中の下がった士気が再び急上昇する……落差が激しいほど上下の差は増すのである。

吉井はこれを狙っていたのであり、決して貶めようと名前を出したのではないのだ……親しくもない仲で礼儀を失した行いをしたのは減点ものではあるが。

 

 『やばい……勝てる気がしてきたぞ!』

 

 『怖いものなしだ!氷室先生のお墨付きってことは最強なんじゃないか氷室は!』

 

 「実際はどうなんだ?」

 

 「操作が多いってだけだけどね……強い方だとは自負しておくよ」

 

クラス中の士気が最大以上に突破したのを踏まえ、吉井は宣言した。

 

 「俺たちの力の証明として……景気づけにDクラスを倒しに向かおう!」

 

 『『『『オオオオォォォォォォ!!!』』』』

 

 「お、おー!」

 

クラスの雰囲気にのまれたのか姫路もちいさくではあるが拳を掲げて声を出していた。

 

 「では、宣戦布告ということで、私はDクラスへ赴くとしよう……開戦日時はどうするのかね?」

 

 「死者として―――え、あ今日の午後でお願いします……なんで先生が?」

 

 「開戦を告げる使者が去年、入院した事件があった影響だ、今年からは教師が向かう事となっているのだ」

 

そう言って氷室先生はDクラスへと歩いて向かって行った。

歩き去る姿も絵になっており、男ですらも何人か見とれていた……仕方がないことではあるが。

 

 「今年から使者の制度が変わってて良かったな……」

 

 「そうだね……入院騒ぎって学園としてダメージ大きかったんだろうなあ……」

 

開戦まではまだ時間があるので、午前中のうちに食事を済ませるという案が出され、明久は弁当を広げた。

ちなみに、主力メンバーと秀吉は屋上に向かったようである。

 

 

 




ストックが切れたので、もしかしたら2~3日に1回の投稿になるかもしれません。

リアルもあるので、一応、毎日投稿を心がけてはいますが……では


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VS Dクラス戦Ⅰ

 Dクラス戦―――開幕


 

 「とうとうDクラス戦に入るけど……」

 

 「氷室、相手はどう出るんだ?」

 

明久率いる7名の生徒が開戦と同時に出撃したのだが、接敵しておらず、廊下でジリジリと相手の教室へと向かっている最中だ。

須川も分隊長として明久とは別行動のようである……代表の指示なのだから仕方がないのだが。

恐れて出撃しないというわけではなく、何か作戦を考えているようなのだが、何を考えているをかを理解できず、ゆっくり進行だ。

 

 「教室で待ち構えて小出しするっていうパターンが考えられるけど……まだわからないね」

 

 「一気に突撃とかはやっぱりダメか?」

 

相手の出方がわからない以上突撃はまだ愚策だ吉井代表も様子見をしろとの指示しか出していないので、明久としても無理な突撃はせず、Dクラスの入口付近をしっかりと見据えている程度。

 

 「戦死確率が上がっちゃうから――動きがないのもアレだから暫くして動かなかったら考慮に入れるけどね」

 

 「そうか……うん?相手のクラスに動きアリ!出てくるぞ――」

 

 「あ、やっと出てきたんだ……9人、か」

 

こちらを伺っていたDクラスの生徒がいたので、こちらを見て動くとは思ってたが、同じ人数より少し小出しにするように、生徒を出撃させていた。

純粋な消耗戦である、勝ったとしてもすぐに捕われない様に撤退しなければ点数が減った状態でまた連戦を強いられるだろう。

 

 「点数も数も向こうが上、なら……6人引き受けるから3人を2:1で引き受けて!」

 

 「何!?大丈夫なのか!!?」

 

 「守りだけに徹すればね!心配なら即効で倒して合流して!!」

 

引き連れてる先生は五十嵐先生と布施先生……両方共化学の教師であり、召喚フィールドも化学に限定される。

教師によって召喚可能な科目が変化し、ほとんどは担当科目が該当する……全科目可能な例外は氷室先生、高橋先生、西村先生だけである。

 

 「点数で劣ってても数で攻めれば勝てる!僕が抑えてるあいだに決着を着けて周りの援護を!

 

  Fクラス氷室明久が、そこの6人に化学で挑みます!!」

 

 『『『最低クラスのくせに生意気だぞ!そっちの望み通り受けて殲滅してやろうじゃないか!!』』』

 

相手が下位クラスであることを強調しつつ、挑んでくる明久に対してしっかりと受けるDクラスの面々。

あっさりと挑発に乗るのもおかしいとは思うのだが……試験召喚戦争を覚悟しているとは言え新学期初日にいきなり宣戦布告されて、更には馬鹿にされてるように6:1で戦おうとする事に対して沸点が低くなっても仕方がないのかもしれない。

 

 

 

 化学フィールド

 

 ――― Fクラス 氷室明久 62点

 

                   V  S

 

 ――― Dクラス 山下圭一 96点

 

 ――― Dクラス 鈴木一郎 97点

 

 ――― Dクラス 笹島圭吾 101点

 

 ――― Dクラス 中野健太 99点

 

 ――― Dクラス 蒲田圭一 102点

 

 ――― Dクラス 霧崎杏子 88点

 

 

 

 

第二次世界大戦中のドイツの軍服(・・・・・・)に身を包み、木刀を装備したアンバランスにしか見えない召喚獣が出現する。

服装はしっかりしているのに木刀装備という外見に唖然としてしまった。

が、突然名前を見て思い出したのか再び再起動し始める。

 

 『思い出した!氷室明久って、確か校内新聞にちょっと載ってた唯一の観察処分者の該当者だ!』

 

 『へ、やっぱり馬鹿だから変なバランスなんだな!』

 

 『観察処分者は余程の馬鹿でないとつけられないそうだしな!』

 

 『とっとと始末して援護に向かうわ!だから無理に戦おうとしないで!』

 

 『了解!流石に点数で勝ってても数が多いと厳しいからね』

 

 『召喚獣と同じように構えるなんてバカじゃないの?』

 

そう言って、点数のこともあってか、安心し始めるDクラスの生徒―――だが、その成り行きを見ていた氷室先生が笑う。

―――が、明久についてきていた現状の戦友達は心配していなかった、明久の事を学園でも1、2を争う程の天才が認めていたのもある。

そして実際に明久の立ち振る舞いを見て、馬鹿としか映らないが、馬鹿だからこそ理解出来る頼もしさを感じ取ったが故に。

大声で笑うというわけでもなく、ただ苦笑するだけの笑いではあるのだが―――

 

 「馬鹿は馬鹿でも……あいにくと我が義息子は試験召喚バカ(・・)なのだよ」

 

その言葉が合図となったかどうかはわからないが、それはともかく戦端が開かれた。

 

 『死ねえええ!!』

 

 「うん、ごめんね……これも”戦争”だから」

 

ここで、明久と対峙しているDクラスの生徒の1人が勢いよく突撃してくる――単独で。

点数さもあり、全てにおいて明久を上回るスペックなのだが、それを明久は最小限の動きで木刀で武器の一点を正確に狙い打つ。

 

 『な!!?』

 

 「授業だと簡単に動かすことしか教わらない……だからこういう細かい動きは出来ない」

 

するとバランスが崩れたのか、突撃してきた召喚獣の体勢が一気に崩れ去り、必死に立て直そうと努力しているのだが、上手くいかなかった……冷静に動かせばまだ直せたのだが……焦りすぎていたのだ。

とはいえ、3秒もあれば立て直せていただろう―――対戦相手が何もしなければ、の話だが。

 

 「木刀でもね……人体急所に当てれば効果的だよ」

 

すぐに返す刀で横に潜り込み、非常にえぐい事ではあるのだが……切っ先を防具の隙間の腋に抉りこませた。

1VS1の形で十分に時間があり、溜めたおかげと突きという一点攻撃によりその衝撃は腋から骨へ、そして肺へと伝わり、戦闘不能へと追いやったのである。

 

 『ちょ!!?なんでそんなに正確に打ち込め―――!!?』

 

 「観察処分者って事は、長く動かしてる人物だといえばいいかな?さあ……せっかくの多VS1なんだから――しっかりと掛かってきてよ」

 

明久はとても生き生きしていた……試験召喚獣と初めて出会った時から魅了され、召喚の授業の後放課後に今まで我が儘を言わなかった明久が、義父の氷室先生に対して、召喚獣の特訓をさせて欲しいと願った……馬鹿であろうとも誰よりもうまく動かせば、テストの点数で上位の者達を倒せるのだという魅力にとりつかれ。

 

 「まだ始まったばかりだよ!もっともっと――――存分に戦い合おうじゃないか!!」

 

 『な、なんでバカなんかに―――』

 

 

 

 化学フィールド

 

 ――― Fクラス 氷室明久 62点

 

                   V  S

 

 ――― Dクラス 山下圭一 0点 Dead

 

 ――― Dクラス 鈴木一郎 97点

 

 ――― Dクラス 笹島圭吾 101点

 

 ――― Dクラス 中野健太 99点

 

 ――― Dクラス 蒲田圭一 102点

 

 ――― Dクラス 霧崎杏子 88点

 

 

 

 「戦死者は補習~~~!!!!!」

 

どこからともなく西村先生が現れ戦死した山下の肩を掴む……どこにも見かけなかったのにどうやって現れたのか気になったが、突っ込んだら負けである。

 

 『い、嫌だ!!?あんな地獄の教室には逝きたくない!!拷問はいやだ~~~!!』

 

 「地獄?拷問?何を言っている――ただ単にキチンと勉学を教え、骨の髄まで勉学に勤しみ、二宮金次郎を尊敬する志を持つ立派な生徒に仕立て上げるだけだ」

 

 『ひぃ!?鬼だ!嫌だたすけ―――』

 

悲鳴は補習室に閉じ込められたことで途絶えた―――何とも言えない空気になる。

 

 「さあ、5VS1と1VS2×3の戦い―――ここで君達を全滅させる」

 

 「この戦い、勝てる!勝てるぞ!!」

 

Dクラスの士気は敗北と先ほどの恐怖の光景で下がり―――逆に態度を変えない明久を見てついてきていたFクラスの生徒は、士気が上昇していた―――

 

 




 明久無双……原作以上に操作している。

 ゲームや漫画とか遊びとかを全て召喚獣に費やしているから仕方がないですよね(ぇ


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VS Dクラス戦Ⅱ

 久々にこっちを投稿

 息抜きに他のを書いていると書き進む不思議


 『こ!この!!当たりなさいよ!!』

 

 『ちょこまか動くな……!おい中野邪魔だ!!』

 

明久の召喚獣がフィールドを自在に駆け回り続け、多数相手という事を逆に利点として奮闘していた。

ただでさえ操作性能がまだ基礎しか出来ていない生徒では細かな動きはできないとは言え、その点を利用して攻めるというのは大人気ないかもしれない。

が、これは戦争である―――故にそのような弱点を攻めるのは卑怯ではない。

 

 「あっちの方向に何人か突撃してるみたいだけど……まあ、僕の管轄はここだから関係ないかな」

 

縦横無尽に動き回りつつもDクラスの様子を見る余裕があるのか明久は相手方の動きを見ている。

明久の言うとおり、明久に任されているのはこの戦闘区域だけなので、ほかの組に任せればいいだけである。

 

 

 化学フィールド

 

 ――― Fクラス 氷室明久 62点

 

                   V  S

 

 ――― Dクラス 鈴木一郎 72点

 

 ――― Dクラス 笹島圭吾 93点

 

 ――― Dクラス 中野健太 55点

 

 ――― Dクラス 蒲田圭一 62点

 

 ――― Dクラス 霧崎杏子 28点

 

 

一撃を与えながら離脱、同士討ちを狙う戦法により相手の召喚獣のゲームで言うところのHPともいえる点数が減少していた。

それでもまだまだ高い方の点数ではあるのだが、明久にとっては問題ないレベルである。

先程までもまったくひるむことなく戦闘し続けれたという点もあるがゆえに。

 

 『なんで点数も数もこっちが上だというのに―――!!』

 

 「技術が足りない、連携力が足りない……そして数だけで戦いが決まるなんて教えられた事はないからね」

 

余裕の表情はみせておらず明久は全く油断をせずに堂々と戦いを続けているのだ。

余裕をかましていいのは自分の父親だけだという妙な理念を持ち合わせており、格下である以上少しの油断も自分には許されないのだと心に刻み込んでいるのだ。

 

 「明久を倒したければ最低でも腕輪能力を保持しておく事だな……数だけで圧すのは逆に明久に有利になるだけだ。単独でもあまり変わらないがね」

 

 「氷室先生、何さらっと末恐ろしい事を言ってるんですか」

 

明久以外の戦場は既に戦いが集結している。

単純に2VS1の戦いであったことと、初めてであるはずなのに連携力が高いという利点により点数差を覆しての撃破である。

ゆえに後は明久の戦闘を見るのと向かってくるかどうかの確認なのだ。

 

 「というか氷室……木刀を武器としてあんまり使ってないような……」

 

 「ああ……映画とかでよくある、棒みたいなものを地面に突き刺してぐるんぐるん回る方法で攻撃したりしてるな」

 

 「いや、片手でもって相手の武器を抑えながら空いてる手で攻撃を仕掛けたりもしてるぞ」

 

 「あそこまで上手に動かせるもんなんだな……」

 

全員がゆっくりと打ち合うカクカク動作のゲームをしている中で明久だけが最新の格闘ゲームをプレイしているような状況である。

動きのキレも戦場における観察も半端ではないのだ。

 

 『嘘だ、嘘だ……最低クラスなんかに……それも学園一のバカなんかに……!!?』

 

 『そ、そんな馬鹿な……清水の奴が言ってたことが本当だっただなんて……!!』

 

 

 化学フィールド

 

 ――― Fクラス 氷室明久 62点

 

                   V  S

 

 ――― Dクラス 鈴木一郎 12点

 

 ――― Dクラス 笹島圭吾 9点

 

 

既に残りの人数もたった二人だけに減少しており、明久は無傷で点数が上の生徒を複数撃破したこととなる。

手の内を晒しすぎなような気もするのだが……明久としてもまだまだ隠し手が存在しているので何も問題がないのである。

既に戦意を無くした二人に対しても明久は油断などせずにしっかりと操作して刈り取った。

窮鼠猫を噛むという事態を警戒しての事である。

 

 「戦死者は補習……!!」

 

 『『う、うわああああああああああ!!』』

 

戦死と同時に生徒はあっという間に西村先生により補習室へと連行されていく。

全員の脳内で牛が連れられておくあの曲が流れているのだが、状況的にはおそらく似ているので問題はないはずである。

 

 「よし……とりあえず点数の減った人は?」

 

 「……2点削られたが問題はないな」

 

 「俺も似たような状況だ」

 

損害軽微、相手の戦力多数撃滅……初戦としてはいい滑り出しだ。

敵の数はまだまだ多いので油断はできないが、精神に安定性を呼ぶにはいい傾向だろう。

 

 「こっちに向かってくるのを防ぐ意味合いと時間稼ぎの意味合いで暫くは待機、かな」

 

 「新たに指示もないからそうなるだろうな」

 

他の戦線の様子も見てみたいところだが、明久はとりあえず静観という方向で待機することにした。

現場だけの判断で戦略を破綻させるわけにはいかないのとあくまでもこの場所の確保と防衛だけしか指示を受けていないからだ。

例え、Dクラスから顔を少しだけ出してこちらの様子を伺っている生徒がいたとしても。

 

 

 

 

 

          *          *          *          *          *

 

 

 

 

 

 「教室から出てくる気配もなし……他の戦線に出てるのが順調ってことなのかな?」

 

 「指示はないな……Fクラスから慌ただしく出かけていたりするが……」

 

明らかに他の戦線で不利な状況だと理解できたが、それでも明久はこの場を動かない。

この箇所を抜かれてしまえば本陣へとあっという間に詰め寄られるポジションでもあり、敵の攻撃を一方向防ぐ意味合いの方が強いからである。

どうやら敵は明久を警戒しているようなので明久のいる状況では迂闊に攻め込んでこないようだ。

 

 「時間だけが経過していく……代表からの指示は―――」

 

 「無いな……というか忘れ去られてたりして……」

 

冗談でも笑えないことである、が忘れているのであれば戦線を埋める為に別の者が派遣されてくるだろう。

暫くは警戒重視でおとなしくしておこうと思った矢先―――

 

 「氷室!島田が援軍を要請してるんだが!!」

 

 「なんで!?」

 

一人の生徒が駆け寄ってきたので情報の伝達だと思い話を聞いておいてと一人に指示したのだが、そこから出てきた言葉に驚くしかなかった。

というか驚き以外に表現のしようがない。

 

 「いやいやいや……僕ここの担当だよ……島田さんは違う戦線だよね?」

 

 「そうなんだが、形勢が不利になっていてな……『あのバカを呼んできて盾にするわよ』、と」

 

 「逐一戦力を送ってるんだよね……?」

 

 「戦死者がやけに多いんだよ……相手に点数詐欺してたのが多かったらしくてさ」

 

点数詐欺と聞いて明久は頭を悩ませる。

高い点数の持ち主が相手なら戦いに向かいたいのだが……今指示されているのはこの戦線の維持だけであり、命令違反で動くわけにはいかない。

自分とは違って頭がいい自分とは似ても似つかない代表の戦略構想を崩すわけにもいかないのだ……。

 

 「峰打くん……代表に意見を聞きに行って」

 

 「氷室はどうするんだ?」

 

 「最悪、僕が関節を外されるだけでいいし……変更がない限りはここで待機するよ」

 

若干遠い目で答える明久に同行していた生徒の面々は島田の去年の暴力性を思い出しながら気分が滅入っていた。

それと同時に、彼女にしたくない女子ランキングに確実に入れてやるとも決意を固めて。

 

 「じゃあ、行ってくる……吉井代表に指示を確認しにな」

 

 「お願いね……」

 

気分が滅入っているが、それでも明久は相手の教室を睨みつけながら敵が出てくるのか来ないのかを判断し続けていた。

 

 

 




 島田ァ…………氷室先生は責めないけどさあ(真に愛するなら壊せ!)

 まあうん……もうちょいしたら暴力要素あっても受け入れてくれる相手と結ばれるから(ぇ


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VS Dクラス戦Ⅲ


わかりやすいフラグ……つまりヒロインは……!という回

あ、玉野さんは違います、念の為(大幅なアンチ対象でもないですけど)


 

 「……戦線変更なし、余裕はないんだとさ」

 

代表に聞きに向かって数分……明久を向かわせたいのはやまやまだが活躍については情報を何故かすぐに仕入れており、明久を外すわけには行かないとの判断だ。

あとで島田に締められる様子を楽しむためではなく、純粋に適材適所を動かせないだけなのだ。

 

 「氷室が向かうとなれば、敵がもしかしたらこっちに来るんじゃないかっていう警戒だそうだ」

 

 「随分と買われてるなあ……いざとなったら攻め込むしかないかもね」

 

この人数で攻め込むしかないだろう、と明久が半ばやけになりながら考える……一応、念の為に戦線を本陣の方へと下げて別戦線が抜かれたときのことに備える。

ある種の独自の判断だが、これだけならまだ許容の範囲であるハズ、と明久は考える。

 

 「そういえば氷室よ……Dクラスから覗いているあの子は知り合いか?複雑な表情で見ているみたいだが」

 

 「……まあ、一応ね……」

 

オレンジの髪の毛をロール状のツインテールでまとめた小柄な少女が明久一人を憎いやら違うやらの表情で睨みつけていた。

殺気半分、別の感情半分という微妙な状態のようであり、なんとも奇っ怪な表情である。

少女として間違っている表情なのだが、それを見てあえてオブラードに包んで複雑な表情だと評しているのだ。

 

 「……去年、ちょっと罰ゲームで”女装して”話しかける状況になって……まあ、色々とあったんだ」

 

そう言って遠い目をする明久、目に光がなくあはははと乾いた笑いをするさまは恐ろしい。

何があったかは知らない……少女に持てているなら異端尋問を実行する気だったFクラス男子はそのただならぬ気配に引いた。

 

 『ああ、豚野郎……美波お姉様と親し……万死に値……でもアキお姉様が……ブツブツ』

 

小声で話しているはずなのにこちらにまで聞こえている怨みの声がブツブツとしかしはっきりと聞こえて来る。

時期がいろいろと悪かったというだけであり、ある種少女の初恋が破れさり、弱っていたところに自分の心を捉える存在が現れ歓喜していたところに嫌いな“男子”である事が発覚していろいろとあったらしい。

予測可能かもしれないが、少女―――清水美春は島田美波に恋している同性愛者である。

それが新たに現れた自身にとって許されざる(男子を毛嫌いしている)恋と板挟みになって色々と複雑なのである。

 

 「カツラを被って女子の制服を着たら変なフィルターが働いて普通に話してくれるんだけどね」

 

そう言ってポケットに入れていたカツラを頭にかぶる明久……その瞬間に清水が赤い顔をしながら教室に逃げ込み、どこからともなく別の人物からの撮影をうける。

あまりにも早かったため明久には誰が撮影したのかはわからないが、Dクラスの方向からだとは理解できていた。

 

 「「「……まさか幻の美少女アキちゃんの正体が氷室だったなんて……」」」

 

 「ちょっと待ってどういう事なの!!!!?」

 

周囲の男子が落ち込む様子に明久はうろたえる。

というか幻の美少女扱いされている事に対しても驚きがプラスされているのだ。

 

 「氷室、卿は校内の女子人気ランキングを見ていないのか?」

 

 「いや、そもそも成績ぐらいしか見てないけど……」

 

氷室先生の言葉に明久はそう返す。

試験召喚戦争に気を集中させており、同時に自分の成績を把握しようと成績は見ているのだが、時折新聞部が発行している校内の様々なジャンルのランキングは見ていないのである。

 

 「そこで名称不明で”あき”という名称まではわかっている”女子生徒”が第三位にランクインしているのだよ……その時の新聞もあるがみるかね?」

 

 「…………なん……だと」

 

明久が受け取った新聞……それには女装した自分が笑顔を振りまいている姿が映っていた。

霧島、姫路という女子生徒にに続いて……名称不明、幻の美少女アキちゃんとして。

ショックを受けながらも明久はDクラスの動く気配だけを無意識ながらも感じ取ったのかかつらを撮る余裕もなく虚ろな表情で見据える。

 

 『……やはりここは攻めて行く方向じゃないと、明久が原作より強すぎ―――アキちゃんだと……!!?』

 

 『何!!?アキちゃんがいる……何てことだ男装姿も麗しい!!』

 

 『ああ、アキちゃんアキちゃん素敵可愛いアキちゃんアキちゃん……』

 

 「氷室先生!氷室明久が総合科目で今出てきたDクラスを全員相手します!!!」

 

 「―――承認しよう」

 

……明久の現実逃避という名の八つ当たりがDクラス生徒をおそう……試験召喚戦争という形で。

先程よりは鈍い動きではあるが、それでも7名の生徒の召喚獣の急所を的確に木刀で打ち抜いて第二戦を終わらせていた。

―――終わったあとで明久はカツラを取り……そういえばなんで入れていたんだっけ……?と自覚がなかった事が発覚した。

本人の名誉の為に言及するが、明久に女装趣味はない――何らかの目的の為に女装する意思があるだけだ。

 

 

 

     *     *     *     *     *

 

 

 

 「氷室がこれないってどういう事よ!!」

 

 「落ち着け島田……明久に任せなきゃいけない戦闘区域があるって代表からも指示があったはずだぞ」

 

島田と須川……その両名が部隊を率い、劣勢の状態ながらもしっかりと食い止め続けていた。

これには島田の言うことを第一に聞くとあるドエムな生徒が奮闘している事が割と関係しているのだが、感謝の言葉が無い。

――もっともその本人も素っ気なく扱われているのがご褒美だったりするので気にすることではないかも知れない。

 

 「15名最初に居たけど……後続が結構来てくれて補充したのに戦死数が多すぎる……!」

 

島田が戦場を見ながらそう呟いていた。

既に合計で30名以上がこの場所で戦闘をしていたのだが、大半が戦死しており、教室の方もこれ以上戦力が割けないとの事で戦略の練りなおしを坂本と吉井が行っている状態だ。

二人が共に焦りを見せず、しっかりと再調整をしているので数分後には新たな作戦が伝達されるとは思うのだが。

 

 「あのバカを盾にすれば楽に抜けるっていうのに……!」

 

 「島田!安心しろ!!お前への攻撃は俺が全て防ぐから!!」

 

 「うっさい!!この変態!!」

 

 「ありがとうございます!!!」

 

ちなみにまだ壊滅せずに時間稼ぎができている最大の理由が島田と木戸の物理的100%のコントに若干引いているためだ。

最初は怯んでいるからチャンスだと攻勢に移っていたのだが、なんか……木戸が無駄にパワーアップしているのか、逆に返り討ちしているのである。

その度に島田に褒めてもらおうと行動する⇒島田が物理込みで邪険に扱う⇒今度こそチャンス⇒島田に手を上げるな⇒返り討ち……のループが続いていたのである。

もう、お前ら二人だけで実はいいんじゃないのか?とも思ったが、そうするとこの場所を抜かれてしまうので結局は須川が統率しながら防いでいるのである。

 

 「どうしてうちにはまともな奴が寄ってきてくれないのよ……!美春はどうにか大人しくなったけどこいつとあいつだけは……うぅ」

 

 「……なんか苦労してるんだな……」

 

なにか複雑な事情を抱えているようだった。

まあ、今はこの場所を死守するのが第一ではあるので特に触れることなく作戦の変更待ちと相手の出かたを伺うに留めるように行動を開始しだした。

といっても現在の状況とそんなに変わらないことなので、あまり意味はない。

心構えが変わっただけである。

 

 





 更新速度がこれからググッと落ちると思います

 連休も終わりか……(遠い目)


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