ハリーポッター マホウトコロの陰陽師 (猫舌猫目)
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設定【ネタバレ注意】

取り合えず、千文字超えたので、載せときます。


<日本の魔法界の環境>

・魔女狩りという魔法使いの迫害は他の魔法界と比べて少ない。

 

・歴史的大きな事件

 豊臣秀吉による声聞師狩り。いわゆる、陰陽師狩り。陰陽師は追放され、貴重な文献を滅却される。しかしながら、マホウトコロが滅却された文献を持っており、日本の魔法は廃れず、被害者も片手で数える程しかいなかったおかげで確執が生まれる事はなかった。さらに江戸時代になるときっかけさえあれば、魔法界に入れるような距離を保っていた。

 

他の魔法界の状況が違っている原因

・日本の鎖国

 鎖国により、日本の魔法界もまた海外との交流を絶ってしまう。その数百年後、開国により、日本は海外の交流が始まり、日本の魔法界でも少しずつだが海外の交流を始める。その際、国際魔法使い連盟に加入し、連盟が定めた国際魔法機密保持法により、日本でも魔法界を隔離する事になったが、数百年続いたマグルの交流はそう簡単には切れる事はない。しかし、ヴォルデモートの登場により、他の魔法界との交流は絶たれてしまい、鎖国状態に戻ってしまう。

 

 

<日本の魔法と西洋の魔法の違い>

 

・西洋の魔法

 定義;人間の意志で森羅万象に適用させて何らかの変化を生じさせる事、つまり、自分の意志で現象を行使させる事。杖を使う事で魔法を発動できる

 発動方法;杖で発動。 

 

・日本の魔法

 定義;呪い(まじない)は神仏や不思議な力を持つ仮生の物から力を借りて、何らかの変化を生じさせる事。つまり、自分の意志で現象を行使するのではなく、自分の意志で仮生から力を借りて、その力で現象を行使させる事。杖、または紙を使う事で魔法を発動出来る

 発動方法;杖で発動。または、紙で発動。

 

 

<日本の魔法一覧>

 

・魔法

 <狐火>   木の狐 尾を打ち合わす 狐火

 <鏡を作成> 石鋳型 鏡作部     石凝姥命

 <鎌鼬>   傷開き 生き血を吸わせ 鎌鼬

 <浄霊>   御霊会 霊を鎮めよ   イザナミよ

 <拘束>   敵縛れ 不動明王    羂索よ

 <水蛇>   罔象女 蛇になりて   締め付けろ

 

・式紙術

 <????> 安倍清明の子孫の名の下、掛けまくも畏き。玄天上帝。姿を現し給うと恐み恐みも白す 

 <????> 急急如律令

 

・封印術

 <賢者の石を封印> 石求む されど入らず 魚網鴻離

 

<登場人物>

【人】

・安倍灯葉

 今、ホグワーツ魔法学校へ留学中。

 日本、マホウトコロの制服の色は 青。

 

・比丘尼

 現職:マホウトコロ校長

 

・鬼一

 現職:外交官 

 前職:対テロ組織部隊

 

【式紙】

・水玄

 正体:玄武、また、玄天上帝

 式紙の姿:子

 

・如月→月神

 正体:????

 式紙の姿:梟、鴉、鳥

 

<陰陽師>

定義:陰陽道を元に森羅万象、この世の全ての現象、物を解明する魔法使い

 

<鬼>

定義:イギリスというと闇の魔法使いの事を指す。または吸魂鬼のように元人間だった生き物

 




蛇足;
せっかくマホウトコロで書くので日本の魔法はハリーポッターで使われている魔法とは違った魔法を書きたかったのでこういう風に設定しました。
しかし、ハリーポッターでは魔法行使する時、杖がないと困難という設定だったので、この設定だけは変えたくなかったので、錫【杖】を使う事にしました。ハリーポッター達が使っている杖を使うというのも考えましたが、違った魔法を使うという事なので、また違った杖を使いたいなという我儘です。

また蛇足として、錫杖の前に御幣を考えていました。御幣はおそらく出しません。

駄文ですけど、読んでくれたら幸いです。


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賢者の石
プロローグ


見切り発車です。のんびりと更新します


「先生さようなら」

 

 何処にいるような子供達が声を揃えて学校を出る。

 子供達は全員ほぼ淡いピンク色のローブを着ている。子供たちは鳥の群れに向かって歩いている。

 鳥は大きく、子供が大勢乗れる程だ。子供達が乗ると鳥は羽ばたき、学校から離れていく。

 学校は海に囲まれており、孤島となっている。この学校は無機質なコンクリートではなく白いヒスイで作られている。

 最後の鳥が羽ばたき、飛ぼうとした時、学校から駆け足で来る中年の男性。その男性は鳥に向かって叫んでいる。

 

「おーい!安倍待ってくれ!」

 

 しかし、鳥は空へと飛ぶ。男性は膝に手をつき、息を整えながら、独り言を呟く。

 

「間に合わなかったか……」

「何ですか?先生?」

 先生の前には青色のローブを着ている子供、その隣には子供が乗れる程の折り紙の鶴。

 子供は人差し指と中指をくっ付けたまま伸ばし、親指を薬指に当て、他の指は折り曲げる。その手を折り紙の鶴に指す。

 指した瞬間、鶴は小さな長方形の紙となる。紙には何やら模様が書かれている。

 先生は紙を拾っている子供に話しかける。

 

「流石だな。校長が呼んでるぞ」

「比丘尼校長がですか?分かりました」

 

 子供は校長室へと向かう。

 校長室は庵となっていて、周りが水に囲まれていて池となっている。

 池は蓮が浮いており、校長室に行けるように石橋がかけられている。

 子供は石橋を渡り、庵の襖を開ける。中は巻物が多く積めている棚、畳が敷かれている。畳は新しいのか、畳の臭いが感じられる。また、棚から巻物が人間の手を借りずに出て宙を舞っている。

 そんな部屋の奥には立派な御座に座っている一人の尼がいる。

 頭巾を被っているせいで顔以外は見えないが、その肌と顔は20代後半だと思われる。

 その尼は手に巻物を取っており、読んでいたが安倍が来たことを知ると巻物をしまい、安倍に微笑んだ。まるで孫と久々に会ったかのような微笑みだ。

 

「安倍さん。待っておりました。貴女に用事がありまして、座ってください」

 

 尼と向き合うかのように棚の下の収納箱から、座布団が誰の手からも借りずに移動する。

安倍はその座布団に座り、尼に話しかける。

 

「用事とは?」

「安倍さん。もうすぐ11歳になりますね。優秀な貴女にこのマホウトコロに入って頂きたいのですが……」

 

 尼は言葉を切り、懐から何かを取り出して、その何かを安部に渡す。

 その何かは手紙だ。手紙は封がされており、裏には【ホグワーツ魔法魔術学校】と書かれていた。

 

「中を見ても?」

 

 尼は言葉を発せずに頷く。安倍は確認すると封を切り、中身を確認する。

 中身を確認したのか、手紙を封筒に戻し、視線を尼の方へと向ける。

 

「今年から学校の仲を深める為にお互いの生徒を留学させるんですね。その生徒が要するに私ですか?」

「そうです。無理とは言いませんが、是非貴女に行ってもらいたい。その年で金色の3つ下の色をしている貴女に」

 

 安倍と尼の間に少し間が空く。安倍は目を閉じて考えている。尼はそれを黙って観ている。

 安倍は目を開け、尼に伝える。

 

「そうですね。外国の魔法気になりますし、行きます」

「英断感謝します」

 

 尼は笑みを浮かべて感謝の言葉を述べる。尼は、尼の背後から何かを取り出す。

それは先端が輪となっていて、その輪には数個の鉄の輪が通している杖、錫杖だ。

 その錫杖を鳴らすように上下に振ると安部の前には封筒と袋が現れる。袋の中身は金貨数十枚、封筒はマグルの飛行機のチケットと英語で書かれた本、可能なペットのリストだ。

 

「金貨は私の餞別です。本は1年生に必要な物。封筒は1年生に必要なリスト、イギリスまでの航空チケットが入っています。後詳しい説明はあちらの先生に任せています」

「有り難うございます」

 

 安部は懐から風呂敷を取りだし、尼から受けとった物を風呂敷にしまう。風呂敷は荷物ごと小さくなり、安部の手のひらサイズとなり、安部の懐へと入れていく。

 

「失礼します」

 

 安倍はその言葉で庵を後にする。

 暫くして、島から一匹の鳥が飛んでく。

 その鳥の上で安部はローブを風になびかせて、独り言を言う。とても嬉しそうな顔で。

 

「ふふふ、ハリーポッターに会える」




日本の魔法といえば陰陽師という安直な考えです
せっかく、マホウトコロが発表されたので書きたいなと……下手くそですが


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陰陽師 イギリス入国

下手な文章投稿させていただきます


 鉄の鳥が集う巣。

 その巣の中は大勢の人に溢れている。スーツ姿の人は掲示板を見て、走っていく。ラフな姿は一緒に行くであろう人と楽しそうに話している。その中、異彩を放っている人物がずっと誰かを待っているかのように立っている。

 

 その人物は高齢の女性。女性は後ろで束ねたひっつめ髪、四角い眼鏡をかけている。女性の見た目は生真面目、先生のようなイメージを感じさせるが、女性が着ている服のおかげですれ違う人、回りの人々はつい2度見をしてしまう。

 服は高齢の女性が着てもおかしくはない服だったが、女性がその服の上に首元で止める形の足元まで伸びているコートを着ており、服とコートはお世辞にも似合うとは言いがたい。

 

 女性はコートから写真を取り出す。写真には1人の女の子が写っている。

 写真の女の子は黒曜石に等しいほど黒く輝き、背中まで伸びている髪。茶色の切れ長の目。顔はまだ11歳のせいなのか幼く見えて可愛らしい印象を与えてくれる。

 

 女性は写真とゲートから出てくる人と交互に見ながらその写真に写っている女の子を探していた。

 

 暫くして、ゲートから出ていくる人の中に写真に写っている女の子が現れる。女の子は歩きながら、視線を手紙を見ている。そのおかげで高齢の女性には気づいていない。高齢の女性は女の子に気づかせる為に言葉を放つ。

 

「トウハ・アベ こちらです」

 

 女の子は高齢の女性が放った言葉に気づき、女の子は高齢の女性に向かって歩いていく。

 女の子は写真よりも可愛らしい微笑みを顔に浮かべている。恰好は白いブラウスに黒い長いスカートを着ていて、上品なイメージを与えてくれる姿。

 高齢の女性と女の子が並ぶとさらに高齢の女性の姿が目立つ。女の子はお辞儀をして、高齢の女性に向かって挨拶する。

 

「ミネルバ・マクゴナガル。初めまして、灯葉・安倍です。これからよろしくお願いします」

 

 お辞儀を見たことがないマクゴナガルは女の子が何をしているのかわからなかったのか、すぐ声をかける。

 

「顔をお上げなさい。トウハ・アベ。さぁ手をとりなさい」

 

 安倍はミネルバの手を取る。取った瞬間、ミネルバと安倍の回りの風景は安倍とミネルバを中心にして回転する。安倍はその光景に驚いたのか、呟く。

 

「これがイギリスの魔法…………」

 

 西洋の魔法が見れたのが嬉しいのか、灯葉の顔は喜びの表情で一杯だ。マクゴナガルはその様子をまるで孫を見ているかのような目をしていた。

 回転が止むと、灯葉とマクゴナガルの前には漏れ鍋という名前の店がある。漏れ鍋は外見はボロい印象を与える。ボロいせいなのか灯葉の耳に客の声が聞こえる。

 

 マクゴナガルは常連なのか騒がしい雰囲気に臆することなく、店の扉を開ける。マクゴナガルが入ってくるのを気づいたのか客一人が声をかける。

 

「ミセス・ミネルバ 久し振りです。聞きましたか?」

「何がですか?」

「ハリーポッターが漏れ鍋へと来たんですよ。サインをもらいたかったんですが、ホグワーツの準備があるらしくさっさと行きましたけど」

「ハリー・ポッターですか?」

 

 安倍灯葉はハリー・ポッターの単語を聞いたらしく、会話に割り込むようにマクゴナガルに声をかけた客に話しかける。

 

「ええ。そうですよ。あのハリー・ポッターですよ」

「何処へと行ったんですか?」

「ダイアゴン横丁に決まってるじゃないですか」

 

 客は心底驚いた顔で安倍の質問に答える。

 

「ミネルバ・マクゴナガル。さぁダイアゴン横丁へ行きましょう」

 

 安倍はマクゴナガルの手を掴み、ダイアゴン横丁へと行こうとする。マクゴナガルは咳払いをし、興奮している灯葉を落ち着かせようとする。

 

「トウハ・アベ。落ち着きなさい。私達もダイアゴン横丁へいきます。ホグワーツの制服等を揃える為に」

 

 灯葉達はダイアゴン横丁へと入っていったが、新入生らしき人やその家族らが大勢いたので、安倍灯葉は自分の荷物を揃えるだけになってしまった。



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出会い

 蒸気機関車は人知れずにホグワーツへと向けて平原を走っている。

 その蒸気機関車の個室に安倍灯葉がいる。安倍は窓の方の壁に寄りかかり、窓の外の風景を見ていた。

 外の風景は森が所々点々とある。人が住んでいるであろう所も牧場みたいな家。点々とある風車。のどかな風景を印象付ける。

 しかし、その風景を見ても、安倍の表情は無表情で浮かない様子。

 個室には1人しかいない。さっきまではもう一人いたのだが話しかけても灯葉の反応がなく、つまらないと思ったのか、何処かへと行ってしまった。

 灯葉もいずれ帰ってくるだろうと個室から出ていく姿を一瞥しただけで、声をかけなかった。

 

「はぁー、つまらない。結局ハリー・ポッターには会えませんでしたし」

 

 安倍は窓の外を見ていたが、機関車の揺れで夢に落ちるのであった。

 

 

 

 

 

「ねぇ、そろそろ起きたほうがいいわよ」

 

 誰かに体を揺すれながら、声を掛けられたおかげで、灯葉は目覚める。

 気づいたら辺りは森はなく、湖の橋の上を走っていた。

 灯葉は目をこすり、起こした人物を見る。そこにいるのは手入れがされていないボサボサの縮れ毛の女の子がいる。

 

「やっと起きたもうすぐホグワーツに着くから着替えた方がいいわよそのローブマホウトコロの服?本で見たことあるわ金色の3つ下くらいの色よね貴女優秀なのね私ハーマイオニー・グレンジャー。よろしく」

 

 余程、興奮しているのか息づきなしで早口で言う。その勢いにおされてか、灯葉は何も言えずに戸惑う。

 

「今トレバーというカエルを探してるのよ。知らない?」

「カエルは見てないですね。けど、私の式紙が見てるかもしれないから、連絡とってみましょう」

「シキガミ?」

 

 灯葉はハーマイオニーの疑問に答えずに紙を取りだし、紙に向かって話しかける。

 

 

 

 

 一方、灯葉の式紙であろう者は隣の車両にいた。

 式紙は頭にカエルを乗せたおかっぱ姿で質素な服を着ている。式紙はその車両にあるお菓子を頬張っている。カエルはおかっぱ頭が気に入ったらしく、置物のようにじっとしている。

 

「旨いね!お兄ちゃん達」

 

「あーそれはよかった」

「ねぇ、ハリー」

「迷子?あの子何処から来たんだ?紛れてここに来たのか?」

「さぁ?さっきのおばさんに言えば良かったのかな?」

 

 ハリー達は子供に聞こえないように席の隅に移動して会話をする。

 子供はハリーが買ったお菓子に夢中らしく、頬張っている。

 しかし、子供は何か見つけたのか、その何かを高々に上げてハリー達に話しかける。

 

「何これ?美味しそう」

 それはハリーが先ほど外れをひいた百味ビーンズ。ハリー達はひきつった顔をするが、子供はビーンズを一気に頬張る。頬張った子供はリスのように頬を膨らませて、味を確かめている。

 

 

「モグモグ。んー変な味だけど、美味しい。美味しい」

「それは、よかった」

 

 ハリー達はどんな味が出たのか、またそれが口の中でどんな風に混ざっているのか想像したくない様子で素っ気なく答えた。

 子供はそんな事を気づかない様子で、一気に口の中にあるビーンズを胃の中に流し込む。

 ビーンズを胃に収めた子供は独り言を呟く。

 

「あ、灯葉お姉ちゃん。やっと起きたんだ。ん?カエル?僕の頭にいるやつかな?何処にいるって?お兄ちゃん達の所、灯葉お姉ちゃんの隣の車両だよ。ああ、わかった」

 

 視線をハリー達に向けて、言う。

 

「お兄ちゃん達、灯葉お姉ちゃんが来るってさ」

 

「「トウハ?」」

 

 ドアが開く。そこには2人の女子がいた。子供は黒髪の女性に抱きつく。

 

「私の式紙がお世話になりました」

「へぇ!この子がトウハの式紙ね!かわいい!」

 

 ハーマイオニーは興味津々の目で子供を見る。灯葉は子供の頭の上のカエルを両手で取り、ハーマイオニーに言う。

 ハーマイオニーは弟を見るかのように子供をまだ見ている。

 

「これが探してるカエルですか?ならさっさと渡した方が良いと思いますよ」

「そうね。有難う。トウハ」

 

 ハーマイオニーはカエルをもらい、部屋から出た。灯葉は部屋から出るハーマイオニーに手を振っていた。

 ハリー達は目の前にいる女子に聞こえないように互いに顔を近づけて話をしている。

 

「ハリー。あの子供、シキガミって言ってなかった?シキガミってなんだ?」

「さぁ分からない」

「この子は式紙という一種の魔法です。そうですね・・・守護霊といった感じですね」

「!!」

「ごめんなさい。なぜ、子供がいるか疑問ですよね」

「あ・・なるほど」

 

 灯葉は二人の会話に挟んで、2人の疑問を解消する。

 

「では、改めて、私はトウハ・アベ。この子は私の式神」

「よろしくねー」

「ああ、ロン。ロン・ウィーズリー」

「僕は、ハリー。ハリー・ポッター」

「「「よろしく」」」

「では、私は着替えますのでこれで失礼します」

 

 灯葉はハリー達の客室から出た。笑みを浮かべながら。その笑みは二人には見えなかった。

 

 

 

 



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ホグワーツ

 機関車は長い時間を経て、目的地へと着いた。そこは薄暗く、駅の点々とした灯りが唯一駅を照らしている。

 機関車に乗っていた新入生らしい人達は学校が待ちきれないのか我先にと機関車を降りていく。

 

 灯葉は客室でその様子を見ている。特に額に傷がある少年の背中を。少年は灯葉が見ている事に気づかずに周りと同様に浮かれている。灯葉はじっと見て呟く。

 

「ハリー・ポッター。特別な力は感じない。けど、ハリー・ポッターに何か保護がかかっている。神の保護と比べたら全然だけど、強力そう。一体なんの保護?」

 

 灯葉は新入生の身長を1つ飛び出た大男に連れていかれるまでハリーをじっと見ていた。

 新入生が駅から居なくなった後、灯葉はやっと降りた。灯葉は駅の灯りに照らされてポツンと一人で立つ。目を瞑りながら。

 

「へぇ。あれがホグワーツ魔法学校か」

 

 灯葉は笑みを浮かべ言う。

 

「さぁ、貴方の秘密を暴こう。ハリー・ポッター」

 

 

 

 一方、ハリーは船に乗りながら、ホグワーツ魔法学校を見ていた。ホグワーツ魔法学校は中世の城を想像させる外見だ。新入生達も言葉を忘れてたかのようにただホグワーツを見ている。

 

 そんな中、ハグリットは何か気になるのか、空を見上げる。

 

「ん。あっりゃなんだ?あの鳥、ここにはいないはずなんだが?」

 

 ハグリットは手を額に乗せて、鳥を観察する。鳥はハグリットの船の速さに合わせるかのように飛んでいた。しかし、鳥は急にUターンして何処かへと行ってしまう。まるでハグリットに気付かれた事を感じ取ったかのように。

 

 ハグリットは首を傾げながらも、校長にいち早くハリーを連れていく為、船をホグワーツへと漕いでいく。

 逆に鳥は城と距離を離していき、ある少女に向かって降りていく。鳥は少女の手の甲に降りていく。その動きはロボットのように滑らかな動きだ。

 

「此処でも式神は使える。ありがとう。如月」

 

 鳥は少女の言葉に返答するかのように一鳴きし、鳥が煙に包まれ、煙から紙がゆっくりと少女の足元に落ちていく。少女は紙を拾い、懐へとしまった。

 

 その時、駅の灯りの下に髭を立派に蓄え、髪が背中まで延びている爺さんが少女に声をかける。少女はこの駅にいるのは一人だと思っていたらしく、声を掛けられた瞬間、肩が震える。

 

「ホッホッホ。ホグワーツを見た感想はどうかの?」

「……流石ですね。気づいていたんですね」

「いやいや。その若さで変身術みたいな魔法を使えるとは恐れ入った」

「では改めて、宜しくお願い致します。ダンブルドア校長」

「ようこそ。ホグワーツへ。ミス トウハ・アベ。さて、話は山程あるが、まずは急ごうかの」

 

 ダンブルドア校長と灯葉はホグワーツへと向かった。

 

 

 

 

 ホグワーツへと着いた灯葉は新入生達とは別の所にいた。なぜなら、ダンブルドア校長が言うにはサプライズで留学生が来ることを発表するらしい。登場の仕方は任せるという内容だった。

 

 それを聞いた灯葉はなんとも言えない顔をしていた。灯葉は紙を取り出してその紙を睨んでいた。

 

「式神がバレましたか。初めての海外だし、使役して探りたかったけど、ダンブルドアの所ではバレるのがオチですね」

 

 睨んでいた紙をしまい、ため息を吐く。そして、先程から拍手の音が止まない扉を見つめる。それと随分と年季が入った声が響きわたる。

 

「スリザリン!」

「レイブンクロー!」

「ハッフルパフ!」

「グリフィンドール」

 

 4つの名前が灯葉の耳に何度も入る。どうやら、この4つが寮らしい。この4つの名前を何度も聞かされたら分かるだろう。

 

 いよいよ、拍手の音が小さくなると、安部灯葉の元にマクゴガナル先生が近づく。

 

「ミス トウハ・アベ。そろそろです。準備はよろしいですか?扉の前で待機してください。出番となったら扉が開きますので」

 

 言い終わるとマクゴガナル先生は拍手が鳴る扉の方へと行ってしまった。

 

 「さて、出番は派手の方が良いよね」

 

 灯葉は紙を懐から出して、扉を見つめた。

 

 

 

 

 

 灯葉の見つめる扉の先には4つのどこまでも伸びてそうな流そうなテーブルがある。

そこには先ほど安倍が聞いていた寮の人達が座っていた。そこには新入生らしき人達も座っている。

騒がしい雰囲気に包まれそうな瞬間、ダンブルドアは立ち上がり、年を取ってるとは思えないほどの大広間に広がる声を出す。

 

「さて、騒がしくなる前に言っときたい事が2つある。1つは4階には立ち入り禁止じゃ。立ち入った者は死より恐ろしい物が待ち受けておる。さて、次は嬉しいニュースじゃ。日本、マホウトコロから留学生が来ておる。留学生は先ほどと同様に組み分け帽子で入る寮を決める」

 

 ダンブルドアの最後の一言で各寮は周りの人達と喋りだし、騒がしくなる。そんな中、ハリーとロン、ハーマイオニーは列車の中で会っている灯葉を思い出したのか、はっとした顔をしていた。

 

「さて、マホウトコロの留学生 ミス トウハ・アベじゃ」

 

 ダンブルドアの言葉が終わった後、自動的にドアが開く。

 

 ドアの向こうには青色のローブを着た灯葉がいる。青いローブの下にはホグワーツではみた事のなさそうな服を着ていて、灯葉の手には足から肩くらいまでの長い杖を持っており、杖の頭部は輪形となっており、それには鉄の輪が複数通っている。

 

 ホグワーツの男性達は灯葉の外見とローブの下に着ている服を見て、好意の目を向ける。女性達は杖の方を見て、興味の目、またはホグワーツの男性達を見て、呆れてしまっている。

 

 ドアを完全に開く。灯葉は杖を地につけ、鉄と鉄がぶつかり合う音を鳴らす。その瞬間、灯葉の左右から青い炎が現れ、ある一定の距離を保って点々と古い帽子の前まで現れる。まるで青い炎が道を作っているかのように。

 

 灯葉は再度、杖を鳴らす。すると天井の蝋燭が青い炎に包まれていく。青い炎が消えた後、蝋燭の火は消えていた。灯りは道となっている青い炎だけだ。

 

 ホグワーツの生徒はその光景に騒ごうとするが、灯葉はその騒ぎを無視するかのように古い帽子に向かって、炎の道を歩く。青い炎は灯葉を照らす。灯葉の杖は灯葉が歩く度、鉄と鉄がぶつかり合う音が大広間に響きわたる。その音は一定に鳴っている。

 

 また、灯葉の黒曜石のように輝いている髪は青い炎に照らされて、際立っている。また堂々とした歩きでホグワーツの生徒達はまるで歩きを邪魔しないようにと騒ぎは段々と収まっていく。

 

 灯葉は古い帽子の前に立つと、青い炎は消えていく。その代わり、天井の蝋燭は再び紅い火をつく。灯葉は振り返り、一礼し、挨拶を述べる。

 

「ホグワーツの皆様。これからよろしくお願い致します。灯葉 安倍です」

 

 そのお辞儀に答える者はいなかった。皆、唖然としている。ただし、その背中を半月型の眼鏡を通して、注意深く見ている者が一人いるだけだ。

 

 

 

  

 

 

 

 

 




主人公の寮は次話で


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組み分け帽子

 安倍灯葉は目の前の組分け帽子を被る。

 組分け帽子は所々傷ついており、ボロボロだ。

 灯葉が被ると組分け帽子は年季の入ったらしき皺を口のように動かして、喋りだつ。

 

「ん~これは難しい。純血。知への探求心。そして、知へと学ぶ為の信念は誰よりも高い。其ゆえに手段は問わない。どうしたものか……」

 

 どの寮の人達も安倍灯葉がどこに入るのかが気になるいるのか、さっきの騒ぎが静まっていた。その場にいる全員が組分け帽子の言葉を聞いている。

 組分け帽子はその静まりに呼応するように潜考する。安倍灯葉も同調するように目を瞑る。

 

「さて、どうしたものか」

 

 組分け帽子は考えをまとめるかのようのに呟く。

 そんな中、安倍灯葉は目を瞑り、組分け帽子にだけ聞こえるように言う。

 

「見つけた」

 

 組分け帽子はその言葉に反応してか、帽子には目が無いのだが、目を開いたかのように驚く。組分け帽子は帽子に戻ったかのように黙る。

(まさか、この少女が帽子の意識に入るとは…………)

 

 組分け帽子は安倍灯葉を追いかけるように自分の意識へと入り込んだ。

 

 

 安倍灯葉は白い部屋にいる。

 目の前には長いテーブル、テーブル中央には花瓶がある。今いる空間を見渡し、足元、テーブルを触る。

 

(成る程、帽子に意識があるのはこういう事ですか)

 

 安倍灯葉は微笑む。目の前にいる4人に。

 その4人は押し黙り、安倍灯葉を見る。4人は灯葉に対し、テーブルを挟んで座っている。

 

 一人は蛇を想像させる眼光の男性で安倍灯葉を見ている。後ろには蛇が書かれた絵が書かれている。

 

 もう一人は王の風格を体現したかのような男性で、手を組み、手の上に顎を乗せている。後ろには獅子の絵が書かれている。

 

 もう一人は興味津々な目で見ている女性。その後ろには鷲の絵が描かれている。

 

 最後の一人は温厚そうな笑み浮かべている女性がいる。その後ろにはアナグマの絵が描かれている。

 

 始めに口を開いたのは温厚そうな笑みを浮かべている女性。

 

(わざわざ、こんな所に来て何のご用でしょうか?)

(知りたかっただけ。意識を持った帽子の事を)

 

 鋭い眼光をした男性は威圧をかけるように言葉を発する。

 しかし、安倍灯葉は威圧を気にしないかのように言う。

 

(それだけか?東洋の魔女?いや、陰陽師)

(ええ、陰陽師をご存知なら、知っているでしょう。陰陽師はどのような魔法使いか)

 

 安倍灯葉の返答に興味津々な目の女性は答える。

 

(ええ、勿論。陰陽師は私と同じく知を探求する者。あらゆる事を知りたいと欲する者)

(そうです。だから、私は帽子、貴方達を知りたい。それにこの空間もまた知りたい。あらゆる事を知りたい)

 

 それを聞いた鋭い眼光をした男性は椅子から立ち上がる。立ち上がった衝撃で椅子は倒れこんだ。倒れた椅子は空間に鈍い音を発する。

 

(ふん、ここにいる吾が輩達は誰よりも知っている。しかしな、4人の知識を合わせてもあらゆる事に全ては説明出来ない。ここに入ったからって調子に乗るなよ。小娘が)

(まぁまぁ、スリザリン。落ち着きましょう。私は彼女の知識への探求心は称賛しますわ)

 

 興味津々な目をしている女性は鋭い眼光の男性をスリザリンと呼び、落ち着かせるように言う。

 スリザリンと呼ばれた男性は安倍を一瞥し、椅子を元に戻し、椅子に座る。

 王の風格を体現したかのような男性は他の3人を見渡し、安倍に言う事は無いだろうと判断したのか、安倍に言う。

 

(本題に戻そう。貴方をどの寮にするかだが…………)

(それなら!!やっぱり、私の寮でしょう。彼女の知識の探求心。最も相応しいでしょう)

(ふん、それはない。ここに入る遠慮の無さ、知りたいと故に欲の深さ。吾輩には知る為には手段を選ばないと見た。彼女にはスリザリンが相応しいだろう)

(グリフィンドールだな。彼女には信念がある。あらゆる事を知るという信念がな)

(どれも当てはまるね。いっその事、ハッフルパフへ)

 

 

((((・・・・・))))

 

 4人はにらみ合っている。目の前にいる安倍を無視して。雰囲気は今にも喧嘩をしそうな雰囲気に包まれる。誰もが如何にも自分の寮へと入れたがっている。安倍はそんな人達に向かって言う。

 

(帽子の中でこんな事をしていたんですね)

(そうだ。帽子には4人の知識と人格を複製した。4人の意識が交わる事がないのはこの部屋があるからこそだ。帽子の発言は4人の話し合いで決まっている。もしくは4人の誰かが喋っている)

(なるほど。封印術ではなく、呪術でしたか。そうなると、あの魔法が近いか。けど、この部屋は一体・・・・?)

 

 

 安倍の発言に対し、王の風格を体現したかのような男性は答える。

 その答えで安倍は考えるかのように下を向いて、4人を無視するかのように喋る。

 それを見た4人の一人、温厚そうな笑み浮かべている女性は咳払いして、安倍の意識をこちらに向ける。

 

(そろそろ、決めなくては。貴方はどの寮に入りたい?)

(そうですね。私は)

 

 安倍灯葉の言葉に4人全員はテーブルに身を乗り出し、答えを聞く。

 安倍灯葉の答えに王の風格を体現したかのような男性は喜ぶ。スリザリンと呼ばれた男性はそっぽを向き、舌打ちをする。他の2人の女性はしょうがないと言った表情をする。

 

(そろそろ、現実に戻ろうか。ようこそ。グリフィンドールへ)

 

 安倍灯葉の意識は大広間へと戻った。

 安倍灯葉は組み分け帽子だけに聞こえるように喋る。組み分け帽子はスリザリンと呼ばれた男性の口調で安倍にだけ聞こえる声で言う。

 

「貴重な体験、有難うございます」

「ふん。もう二度くるな。小娘が」

 

 

 組み分け帽子は高々と宣言する。

 

 

「グリフィンドール!!」

 

 

 グリフィンドールからはハリーポッターがグリフィンドールに選ばれたくらいの同じくらいの歓声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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ホグワーツの夜

 日本からきた留学生や生き残った男の子のおかげで今年のホグワーツは外まで聞こえるほど騒がしい雰囲気となった。

 夕食の後、生徒達は自分達への寮へと戻る。

 グリフィンドールは有名人が2人も入ったのが嬉しいのか、寮に帰っても騒ぎは収まらない。

 男子学生はハリー・ポッターを囲い、話の機会を伺っている。女子生徒は安倍灯葉を囲い、喋っている。

 ハリーを狙う女子生徒、灯葉を狙う男子生徒がいるのだが、なかなか話が出来ずに落ち込んでいる。その騒ぎはマクゴガナル先生がくるまで続き、それぞれの寝室へと帰っていく。

 グリフィンドールの寝室は共同の部屋から別々な階段があり、階段の先には男性の寝室の搭、女性の寝室の搭がある。

 

 男性の搭でも女性の搭でもルームメイトと話を咲かせている。

 

 ハリーは同じ部屋となったロンと話をしている。

 ロンは初めて友達となった故にハリーは嬉しそうに話をしている。

 ロンは今日の事について話をしている。

 

「しかし、日本の留学生には驚いた。何だあの青い炎は?」

 

 ロンの話を聞いて、ポッターは安倍灯葉の事を思い出した。

 ロンは初めての友達ならば、安倍灯葉は初めて笑顔をしてくれた同年代の少女だ。

 その笑顔は優しい笑みを浮かべていて、茶色い瞳、黒曜石のような輝きをもった綺麗な髪。その輝きにも劣らない笑顔を思い出してポッターは胸を熱くしていた。

 

 

 一方、女子寮ではハーマイオニー・グレンジャーと灯葉は一緒の部屋になったらしく、ルームメイト、ラベンダー・ブラウン、パーバティ・パチルと話をしている。

 

「それがマホウトコロの制服?」

「そうですね。制服は巫女という衣装が元にデザインされました。そして、このローブは千早という服を元にデザインされました」

「可愛いね。登場時にもでた青い炎も日本の魔法?」

「ええ。それは狐火ですね。 そうですね・・・・実際にやりましょう」

 

 灯葉は錫杖を取り出し、呪文を唱える。唱えると同時に錫杖を地面に叩き、一定のリズムで鳴らす。

 

―木の狐 尾を打ち合わす 狐火―

 

 唱え終わると灯葉の右手の上に青い炎が出る。

 ハーマイオニー達は青い炎をじっと見る。そして、ハーマイオニーは尋ねる。

 

「手熱くないの?」

「この狐火は色々な意味ありますけど、今は人を導く、惑わすという意味の呪文を唱えましたので熱くないです。近づけてみます?」

 

 ハーマイオニーは青い炎に手を近づける。熱くないのか、手は青い炎と数cmの距離だが、ハーマイオニーは全く熱がる様子を見せない。パーバティ、ラベンダーはその様子を見て、青い炎に手を近づける。

 

「本当だ。熱くない。それをさっきやったの?」

「そうですね。他にも魔法見ますか?」

「もういいや。それより、その制服、ローブ着てもいい?」

「いいですよ」

 

 そして、ハーマイオニー達はマホウトコロの制服を順番に着た。

服の着心地を試したり、鏡の前に立ち、似合っているかを確認した。学生服で色々遊んでいたせいなのか、深夜を回り、さすがに眠くなったのか、ハーマイオニー達はそれぞれ眠りについた。

 

 しかし、眠りについていない人がいる。その人は他の人を起こさないように、静かにベランダの方へと歩いて行った。

 その人は手に鳥がいる。鳥はイギリスでは見ない種類だ。その人は鳥に向かって話しかける。

 

「如月。貴方にまた別名を付けます」

 

 その人以外には誰もいないのだが、ベランダに低い声が聞こえる。その声はベランダの人にしか聞こえない。

 

―流石にあの爺にバレたのは悔しい?今の名前じゃ私の力は10分の1も使えないし―

 

「うるさい。如月。貴方は安倍一族に仕える者。その使命を果たしなさい」

 

 灯葉は苦虫を噛み潰したような苦い顔をして、言う。その苦い顔はポッターに向けた笑顔とはかなり離れた顔だった。

 

―まぁいいけど。さて、貴方はどんな名前をつけるのかしらね―

 

「貴方の名前は月神。そして、姿はフクロウ」

 

―いいわね。これからもよろしく。私の主様―

 

その声が最後に鳥は紙となり、鳥が手に止まっていた人の足元にひらりと落ちていく。

 

「今日から未知の事が始まる。暴いていこう。陰陽師の名にかけて」

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 




マホウトコロの制服の設定としては
男性はよく見かける陰陽師の服
女性は巫女服のような物
で考えてくれると助かります。


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初授業

 今日は半数近くの新入生が初めて魔法に触れる日。マグルにいた人達は朝から落ち着かない様子だ。

 特にハーマイオニー・グレンジャーはそうだ。ハーマイオニーは誰よりも落ち着いていない。そんなハーマイオニーと違って、隣の安倍灯葉が落ち着いていた。

 

「授業は逃げませんからさっさと食べ終わりましょう」

「そうね。けど、どんな授業なのか楽しみで仕方ないわ!!」

 

 そんなハーマイオニーを見て、灯葉はやれやれと言った顔でパンを小さな口で頬張る。ハーマイオニーは早く授業へと行きたいのか、灯葉と比べられないほどの速さで食べている。

 灯葉はパンを一切れ食い終わる頃には、ハーマイオニーは朝食を完食して、隣で本を見ていた。

 その本は次の授業で使う変身術の本。ハーマイオニーは本を見ながら、ちらちらと灯葉を見ている。

 灯葉は苦笑を浮かべて言う。

 

「ハーマイオニー。先に行っててもいいですよ」

「まだ!時間あるしいいわ。それに移動しながら、本で載っていた日本の魔法も聞きたいし」

「本当に熱心ですね。じゃ行きましょう」

 

 灯葉とハーマイオニーは変身術の教室へと向かう。しかし、変身術の教室に向かう途中に動く階段を使わなくてはいけない。

 故に階段が来るまで、ハーマイオニーと灯葉は話をしている。

 

「日本の魔法とイギリスの魔法ってどう違うの?」

「そもそも意味が違います。西洋の魔法、つまり魔術は人間の意志で森羅万象に適用させて、何らかの変化を生じさせる事。逆に日本の魔法、呪い(まじない)は神仏や不思議な力を持つ仮生の物から力を借りて、変化を生じさせる事です」

「つまり?」

「人と何かの物は対等であるかないかの差ですね」

「昨日の呪文も何かの物に力を借りたってこと?」

「そうです。昨日は狐から力を借りたってことです」

 

 変身術の教室に着くまでハーマイオニーは灯葉と共に歩きつつ、灯葉に質問を投げ掛ける。

 そして、質問を投げ掛けている合間に灯葉達は変身術の教室にたどり着く。しかし、部屋には変身術の先生であるマクゴガナル先生はいない。代わりにいたのは机の上にいる一匹の猫。

 ハーマイオニーは猫に近づき、灯葉に同意を求めるかのように言う。

 

「先生のペット?」

 

 灯葉は笑みを浮かべて言う。

 

「先生のペットではなく、猫が先生です」

 

 ハーマイオニーは首を傾げる。

 その瞬間、猫は机からジャンプして、地面に足をつけようとする。猫の足が地面に触れようとする瞬間に、猫は人へと変わり、マクゴガナル先生がハーマイオニーの前に現れる。マクゴガナル先生は嬉しそうな顔をして、灯葉に言う。

 

「一目で分かるとは、教えがいがありますね。そろそろ時間なので、席へお座りなさい」

 

 ハーマイオニーは当然、一番前の席に座る。隣は灯葉が座る。座っているのは2人だけだ。授業が始まる1、2分前にやっと席が埋まり始めていた。皆、席に座った時、息を整えている。

 マクゴナガル先生にはそれが見慣れた光景なのか、息を整えている生徒達に慣れた様子で話す。

 

「初日だから許しますけど、今後遅刻したら、貴方達を迷わないように地図かコンパスに変えます。こんな風に姿を変えます」

 

 マクゴナガル先生は生徒達に見せるように机を地図へと変える。生徒達は驚きと変身術への好奇心で目を輝かせる。

 その時、2人の生徒が教室へと入ってくる。その2人はハリー、ロンだ。

 マクゴガナル先生は遅刻ギリギリで来た2人の前に説教する。

 

「ハリー・ポッター、ロン・ウィズリー。今後遅刻したら、授業を受けさせませんよ。それほど魔法は危険ですから」

 

 説教した後、マクゴガナル先生は授業へと入る。

 授業の内容は魔法の説明を黒板へと書いた後、それぞれの机にあるマッチ棒を針に変えるという内容だ。

 灯葉は他の生徒よりも早く魔法に触れていたおかげか、一回杖を振るうだけで、マッチ棒を針へと変えた。

 

「流石。ミスアベ。しかし、それはあなたの杖ですか?変わった形ですね」

 

 マクゴナガル先生は褒めながらも、灯葉が持っている杖に感想を述べる。

 他の生徒の杖は肘から手首に収まる程度の長さだが、灯葉の杖は自分の背に収まる程度の長さだ。また先には鉄輪が連なっていて、杖が動く度、鉄と鉄がぶつかりあう音が教室に響き渡る。響き渡る音は誰も不快とは思わず、むしろ澄んで聞こえていた。

 

「これが私にとって一番馴染みます」

 

 結局、マッチ棒から針へと変える事が出来たのは灯葉とハーマイオニーだけだった。

 

 

 次の授業はスリザリンと合同の魔法薬学。

 灯葉とハーマイオニーは魔法薬学の教室であるスリザリン寮の近くの地下牢に入る。そこで待っていたのは2極化した生徒達だ。

 スリザリンはスリザリンだけで固まり、グリフィンドールはグリフィンドールだけで固まっている、固まった集団はもう一組の集団から、距離を取っていた。

 

「ここまで仲が悪いんですね」

「早く行きましょう」

 

 

 灯葉とハーマイオニーはグリフィンドールの集団へと行く。グリフィンドールの席は教室の入り口から離れていて、スリザリンの席を横切らなくてはいけない。

その途中でスリザリン達の生徒は灯葉とハーマイオニーを睨む、もしくは見下した目で見ている。特に青白い顔の少年はハーマイオニーを見下した目、灯葉に対しては価値を計るような眼をする。

 灯葉は立ち止まって、そんな青白い顔の少年に話しかける。

 

「何か御用ですか?」

「君も純潔らしいがグリフィンドールに入ったのが運の尽き。せいぜい純潔の価値を落とさないでくれよ」

「助言感謝します」

 

 灯葉は青白い顔の少年に向かって、感謝の意を込めて、笑顔でお辞儀をする。青白い顔の少年は顔を背け、虫を払うかのように手を振る。

 灯葉はグリフィンドールの集団の中へと入る。

 青白い顔の少年に話しかけられたのが気になったロンは灯葉に話しかける。

 

「アベ、あいつに何かされたか?」

「いいえ。何も」

「あいつには気をつけろよ」

「はい。それにしても、ここまで仲が悪いなんて。何でしょうね。気になります」

 

 灯葉は興味を持ったのか、スリザリンの集団を見て獲物を見つけたかのように口角をあげて笑う。

 その時、教室のドアが音を立てて開く。魔法薬学の先生、スネイプは教室を一瞥し、口を開く。開いた瞬間、スリザリンの生徒は乾いた笑みがあがる。

 

「ああ、我らが新しいスター。ハリー・ポッター・・・」

 

 スネイプは足音を立てながら、ハリーの目の前に立ち、ハリーを見る。

 

「スターならば、今までの生徒よりも誰よりも優秀なはずだ。この授業では名声を瓶詰めし、死すら蓋をする学問だ。ポッターならばそれが出来るはずだ。そう思わんか」

「いいえ」

 

 ハリーはスネイプから視線を外さずに否定する。スネイプはハリーポッターを見る目を細める。その目は恨みを持ったような眼をしている。しかし、それに気づいているのは灯葉のみだった。

 スネイプはハリーに向かって、問題を出す。

 

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になる?」

「分かりません」

 

 ハリーは首を振り、答える。ハーマイオニー以外の生徒達は答えが分からないのか、2人の会話をじっと聞いている。逆にハーマイオニーは真っすぐ手を挙げて、指されるのを待っている。

 

「ベゾアール石はどこを探せば見つかる?」

「わかりません」

 

「モンクスフードとウルフスベーンの違いは何だね?」

「わかりません」

 

 スネイプは質問を続けていく。スネイプはハリーの回答に対し、溜息を吐く。

 

「なんとも情けない。そう思わんか」

 

 スリザリンからは侮蔑の笑いが響き渡る。ハリーはそのことにイラついたのかスネイプに言う。

 

「答えがわかっているハーマイオニーに聞いてみたらどうですか?」

「・・・・・手を下げたまえ」

 

 スネイプは冷めた表情でハーマイオニーを言う。ハーマイオニーは消沈した事を表現するかのように手をゆっくりと下げていく。

 

「さて、話題の留学生。ミスアベは分かるかね?貴様もポッターと同じく話題だけかね?」

 

 スリザリンはスネイプの発言に同調するかのように笑いをあげる。

 

「1つ目は『生ける屍の水薬』、2つ目山羊の胃から取り出す物で石と言いつつ見た目は萎びた内臓のようであり、大抵の解毒剤の主成分。3つ目は2つとも同じ植物の名前、天雄、またトリカブトという植物。答えは違いはありません」

「まぁ答えは知ってて当然だろうな。予習は当然の行動だ。ポッターはそれをしていなかった。グリフィンドールは1点減点だ。で、諸君は何故、ノートに答えを写さない?」

 

 スネイプの言葉で一斉に羽ペンと羊皮紙を取り出す音が響く。

 その後の授業は生徒を二人一組にして、おできを治す簡単な薬を調合させていくことになった。

 

 灯葉はハーマイオニーと組み、薬を調合させている。ハリーはロンと組み、調合させている。スネイプは生徒の様子を見ながら、徘徊していく。スリザリンの生徒に助言らしい事を述べて注意していく。もしくはお気に入りらしい青白い顔の少年は笑みを浮かべている。それに対し、グリフィンドールは注意だけを述べて、離れていく。

 

 グリフィンドールはスネイプに期待できない事を知ったのか、教科書を見ながら薬を調合していく。また、調合が誰よりも進んでいる灯葉とハーマイオニーは他の人達に助言をしていく。

 

「ロン、ハリー。蛇の牙は砕いてからです」

「そうか。ありがとう」

 

 灯葉はハリーの隣にいるオドオドしている少年に話しかける。

 

「ネビルでしたよね?」

「うん。僕はネビル・ロングボトム。言いそびれたけどカエル探してくれてありがとう」

「感謝は私の式紙にお願いします。それと火からおろしてから、ヤマアラシの針を入れてください」

「あ。なるほど・・・ありがとう」

 

 ちょうど灯葉の後ろを徘徊していたスネイプはハリーに言いがかりをつけて、さらにグリフィンドールの生徒に言いがかりをつける。

 

「ポッター。何故、隣にいる貴様が注意しない?それにグリフィンドールの生徒達は何故、自分の力で調合しない?自分達の力で調合するように。グリフィンドール 1点減点」

 

 スネイプは最後までグリフィンドールを攻撃していく。

 こうして、新入生達は授業を受けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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飛行訓練

 そして、授業が始まり2週間後の金曜日。

 午後は授業がない為、生徒達は食堂でのんびりと話していたり、授業の課題を終わらせたり、読書、食事したりとしていた。

 安倍灯葉はロン・ウィーズリー、ハリー・ポッター、ハーマイオニー・グレンジャーと共に食堂で過ごしていた。

 

 そんな時、フクロウが食堂へと入って来る。フクロウは食堂にいる生徒達に郵便物が渡していく。

 その郵便物の中に日刊預言者新聞が混ざっていた。その新聞は2週間の期間、ずっと授業していたせいで、退屈していた生徒達に刺激的なニュースを与える。

 そのニュースはグリンゴッツ銀行に強盗が入ったことが報道されていた。

 

 それを見たハリーは周りにいる灯葉達に話す。

 

「おかしい。713番金庫はハグリットと共に取り出してて、もう何も無いはず」

「そうなんですね」

「何入っていたんだ?」

「さぁ」

 

 安倍は口元を手で隠し、ハリー達に見えないようにニヤリと笑う。

 

「面白い」

 

 この話題は夜まで続かなかった。

 原因は各寮の談話室に貼られていた飛行訓練の時間帯の事で全員の頭はそっちに変わってしまったからだ。

 魔法界ではクィディッチというスポーツが大人気だ。もちろん、ホグワーツ魔法学校でもクィディッチは大人気だ。

 それ故に上級生達、特に各寮代表チームメンバーは下級生に期待している。上手な下級生が入れば、他の寮達に差を広げられると。また、下級生もいずれ自分も代表チームに入り、活躍すると決意していた。

 グリフィンドールはなぜかスリザリンと合同訓練だった。

 

 

 

 時はたち、来週の木曜日。

 今日はグリフィンドール、スリザリン合同の初の飛行訓練。そのせいか、朝から食堂はグリフィンドール、またはスリザリンの場所は一段と騒がしくなっている。すでに飛行している生徒達は周りの生徒達に飛行した時の経験を自慢げに話している。特に青白い顔の少年が自慢気に話している。

 

「あれは去年の事だったかな。僕が箒に乗って空高く飛び上がるとそこに偶然マグルのヘリコプターが迫ってきたんだ。マグルってのはあんなでかい鉄の箱を用意しないと空を飛べない不自由な生き物らしいね。僕はそのヘリコプターを咄嗟に避けた! まさにぶつかる寸前、ギリギリってやつさ。ぶつかるかと思ったかだって? ははっ、まさか。動きが止まって見えたね」

 

 その声は食堂にいる人達にも聞こえる程の大きさで喋っている。他の生徒達は振り返って、声の主を睨もうとするが、青白い顔が喋っているのを見て、嫌な顔をして、食事を再開する。

 それを見ている灯葉は今だに青白い顔の少年を睨んでいるロンに話しかける。

 

「ロン、あの少年が気になりますか?」

「少年ではなくドラコ・マルフォイ。あいつ、クィディッチがうまいっていつも自慢してるけど、口先だけ。それよりも、トウハはどうなの?日本はクィディッチ上手いらしいけど」

「さぁどうでしょう。それよりもネビル。荷物です」

「あ・・あ、ありがとう」

 

 灯葉はネビルに荷物を渡す。ネビルは荷物から何やら白い煙が入っている玉を取り出す。ネビルがその玉を観察してると、中の白い煙が徐々に赤く染まっていく。

 ネビルはその現象に不思議がっていると隣のディーン・トーマスがネビルに言う。

 

「それ、思い出し玉だ。何かを忘れてると赤く染まる」

「けど、何を忘れているかが分からないんだよ」

 

 ネビルは肩をすくめて、玉をローブの中へとしまった。

 食事が終わり、ハリーと灯葉達は飛行訓練へと行く。

 

 飛行訓練は20~30本の箒が地面に整然と並べられており、マダム・フーチの指示で、みんなは箒の横に立つ。

 

「そして、こういうのです。上がれ」

 

 生徒達は一斉に言う。

 

「あがれ!」

 

 右手を箒の上に出して、上がれと唱える。

 しかし、1回目で成功したのはハリー、ドラコ、灯葉の3人だけだ。他の生徒達は箒が上がらず苦戦していた。特に酷かったのはロンだ。箒の柄が顔にぶつかり、鼻を赤くしていた。隣にいたハリー、ハリーの隣にいた灯葉は可笑しかったのか笑ってしまう。

 ロンは誤魔化すかのように当たった部分を掻き、笑うなよとハリー、灯葉にいう。

 

 全員が箒を手にできたところでフーチは言う。

 

 「皆箒を持ったわね。そしたら、またがりなさい。笛で合図したら全員で地面を蹴り浮き上がりなさい。しばらく浮いて、前かがみになって降りて来なさい。良いですね」

 

 生徒達は箒にまたがり、フーチが笛を吹く。まず浮き上がったのはネビルだ。

 しかし、ネビルは制御出来ていないのか、箒に振り回されている。城壁にぶつかり、最終的には銅像が持っている剣にローブが刺さってしまう。

 生徒達とフーチは急いでネビルの元へと向かう。しかし、重力には逆らえず、ネビルは落ちていく。

 

 フーチはネビルに杖を向けて、魔法を放とうとする。しかし、魔法よりも早い何かがフーチの傍を通る。それは人の姿をした紙だ。紙はネビルの落下地点にきた時、煙に包まれた。落下するネビルはその煙に包まれて、姿が見えなくなる。

 

 煙が徐々に晴れていき、ネビルの姿が見えてくる。

 ネビルは地面に落下していなく、おかっぱ頭の質素な服を着た子供がネビルをお姫様だっこしてキャッチしていた。

 ネビルは地面に落下すると思ったのか体は震えて目を瞑っている。

 子供は今だに目を瞑っているネビルに声をかける。

 

「大丈夫?お兄ちゃん?」

「水玄 助かりました」

「アベの魔法ですか!?ネビル。体はどうですか。ああ、手首が折れてる。大丈夫よ、しっかりしなさい。医務室に行きましょう。他のみなさんは地面に足を付けて待っていなさい! もし飛ぼうものなら、クィディッチのクを言う前にホグワーツから出て行ってもらいます」

 

 フーチは子供からネビルを引き取り、医務室へと向かう。グリフィンドールの生徒達は心配そうにしているが、スリザリンはネビルの箒の飛びかたを見て笑っている。

特に笑っていたのがマルフォイだ。

 マルフォイは笑いを堪える為、下を向いていたが何かを見つけたのか、見つけたものを拾う。拾った物をグリフィンドールに見せつけて、喋る。

 

「おい、見ろよ。この玉を見れば、あんな無様な落ち方で、子供にお姫様だっこされる姿を思い出すだろうに」

 

その喋り方に腹立ったのか、ハリーはマルフォイに詰め寄る。

 

「返せよ。マルフォイ」

 

マルフォイは箒にまたがり、空中に浮かぶ。浮かんだまま、ハリーを見下ろして言う。

 

「嫌だね。あいつに探させる」

 

マルフォイは高度を高くして、ハリーを挑発する。

ハリーは挑発に乗ってしまい、箒にまたがる。ハーマイオニーはハリーを止める。

 

「待って!!飛んだら退学よ!ハリー!トウハも何か言って」

「いいんじゃないですか。男子は元気が一番です。そうですよね。水玄」

「うん。それにしても。青白い顔のお兄ちゃん。すごい!」

「はっは。そうだろう。中々わかるじゃないか」

「そういう問題じゃないわよ!」

 

 

 水玄と呼ばれた子供は空を飛んでいるマルフォイに向かって、目を輝かせて、手を振っていた。

 マルフォイは褒められて気分が良さそうだ。灯葉はその水玄の後ろから肩に手を置いて、ハリーの様子を見ていた。

 ハーマイオニーはそんな水玄と灯葉を怒鳴る。

 ハーマイオニーが灯葉達に怒鳴る合間にマルフォイは空高く上がっていく。ハリーはマルフォイを追いかける為に箒で飛んでいく。

 

「もう知らない!」

「あのお兄ちゃんもすごい!乗せてもらえないかな?」

「そうですね。載せてもらうように頼んでみましょうか」

「やった!」

「だから!そういうのは後でしょ!退学させられるわよ!」

「まぁ今は2人の様子を見ましょう」

 

 マルフォイは思い出し玉を思い切り投げる。思い出し玉は放物線を描いて、城の壁に当たろうとする。しかし、ハリーは体を屈めて、マルフォイの横を風のように横切り、飛び出していく。思い出し玉が城の壁に当たろうとする瞬間、ハリーは城の壁に当たらないように速度を急に緩めつつ、箒の穂先が壁に当たるか当たらないかの所で思い出し玉を片手でキャッチする。

 水玄はそれまでの様子を見ていたのか、灯葉にハリーの様子を話す。

 

「すごい!あのお兄ちゃん。片手でキャッチだよ!」

「初めてなのにすごいですね。やっぱりただの人では無さそうですね・・・・」

 

 ハリーは思い出し玉を持っている手を高く上げて、グリフィンドールの生徒の元へ戻っていく。グリフィンドールの生徒はハリーを歓喜の声を上げながら迎える。

 しかし、それを偶然目撃していたマクゴナガル先生が現れてハリーを連れて行ってしまう。

 

 スリザリンの生徒達はハリーの処遇について、何やら盛り上がっている。

 

「これでポッターは退学になるぞ!!!」

 

 それを聞いた水玄は心配そうに安倍を見上げる。

 

「灯葉お姉ちゃん・・・」

「大丈夫でしょ。見事な箒技術でしたし。それに何だか嬉しそうでしたね」

 

 後日、ホグワーツで初めての最年少シーカーが誕生したニュースがホグワーツ中に届いた。

 

 

 



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ハロウィーン

 草木も眠る丑三つ時、グリフィンドールの女子寮のベランダの手すりに座っている人物がいる。

 その人物の腕にはフクロウが止まっている。フクロウは金色の目をしており、じっと見ていると月を彷彿させるような色をしている。

 フクロウはじっとその人物を見ている。

 

「そうですか。目撃情報もなしですか。ただ錯覚呪文使われた事は分かってるんですね」

 

―そうね。今度は何を探るの?―

 

「次はその日、ホグワーツの先生がダイアゴン横丁にいたかどうか調べてください。期限は次の夕食までです」

 

―分かったわ。我が主―

 

 そして、フクロウはホグワーツから飛び立っていく。その人物はフクロウが飛び立つのを確認した後、静かに自分の寝床へと戻っていった。

 

 

 

 

 夜が更けていき、本日はハロウィーン。

 夕食時の大広間は派手に飾り付けられている。広間を照らしている蝋燭の代わりにジャック・オー・ランタンが広間を照らす。

 テーブルの上にはカボチャを贅沢に使った料理がズラリと並んでいる。いつもよりも豪華な食事になっているおかげか、生徒達は料理に舌鼓みし、盛り上がっていた。

 

 ハリー・ポッターも盛り上がっているかと思えば、少し沈んでいる。

 なぜなら、いつも周りにいる安倍灯葉、ハーマイオニー・グレンジャーがいないからだ。ロン・ウィズリーはハリーの隣にいるが、自分の気持ちを誤魔化すかのように次から次へと口に料理を運んでいる。

 

「いいよ。もうあいつの事なんか。トウハもハーマイオニーを置いてさっさとどこかへ行ってしまったし」

「けど、ハリー、ロン。僕は2人が心配だよ。食事だけでも取っておこうよ」

 

 ロンは気分を切り替えるかのようにかぼちゃパイを豪快に口で嚙み千切る。

 ネビルは2人が心配なのか、ハリー達の会話に入り、かぼちゃパイなどの料理を別皿に分けていく。ロンはそんなネビルを見て、迷った顔をして手伝う。

 ネビルに対してはトウハの為だからなと言っているが、時折、ロンは大広間の扉を見ていた事はハリーとネビルは知っていた。

 

 ハーマイオニーは夕食前の授業中、ロンと呪文の唱え方で口論となる。ハーマイオニーは『ロンへのお手本』として呪文を成功させてしまった。さらに先生に褒められたものだから、授業が終わってからロンの機嫌は最悪になっていた。そのせいか、食堂へと行く途中、言葉を吐き捨てて言ってしまった。

 ハーマイオニーはそれを聞いてしまったらしい。聞いている事を知らせるかのようにハーマイオニーはわざとロンの肩にぶつかり、どこかへと行ってしまった。

 ロンはその時のハーマイオニーの横顔を見たのか、後ろめたい顔をしていたが、プライドが邪魔をしたのか、ハーマイオニーを追いかけずに食堂へと来てしまった。

 

 それに対し、灯葉は授業が終わると誰よりも一足早く、教室から出てしまった。ハリーが灯葉に呼びかけると用事があるという返事を残し、どこかへと行ってしまった。

 ハリーは横の空白となっている席を見る。そこにはいつも灯葉がいた。しかし、今日はいない。今日のハロウィーンはダドリー家がいない初めての日。いつも盛り上がっているダドリー家の横でぽつんとしていた。しかし、今回のハロウィーンはダドリー家から離れている。きっと楽しめるはずだと思っていた。しかし、何とも味気ないハロウィーンとなってしまったと。

 ハリーは溜息をつく。

 

 

 その頃、灯葉はどこかのベランダにいる。

 灯葉は月の色をした目のフクロウを腕に止めている。腕に止めたフクロウは灯葉を見つめ、灯葉に話しかける。

 

―ええ。そうよ。ノクターン横丁にくさい臭いを纏ったフードの男がいたらしいよ―

 

「なるほど。どうもありがとう。月神」

 

 フクロウは煙に包まれていなくなる。煙からヒラヒラと一枚の紙が舞い落ちる。

 灯葉はそれをしまう。

 

「さて、大体検討はついたし、夕食の前にトイレへ行きましょう」

 

 灯葉はベランダから出て、近くの女子トイレに向かう。

 曲がり角を曲がると、廊下の途中で立ち止まっているハリーとロンがいる。ハリーとロンは廊下の先の影を見ている。その影は人のような形になっている。

 灯葉はハリー達に声をかける。

 

「あの影がどうかしましたか?」

「!あ、トウハか。無事か。よかった」

 

 ハリーとロンは灯葉は無事と知り、安堵する。しかし、その瞬間、廊下の先に絹を引き裂くかのような女性の叫び声が聞こえる。ハリーとロンは急いで、女性の叫び声の元へと向かう。灯葉もハリー達に付いていく。

 女性の声が聞こえた場所は女子トイレだ。

 

 ハリー達は女子トイレに入る。

 女子トイレはハーマイオニーとトロールがいる。ハーマイオニーは逃げ回っていたのか、トイレの小部屋は全て壊されて、水管が壊されたのか、水が降り注いでいる。

 

 トロールはハリー達が来たことに気づいていないのか、ハーマイオニーに夢中だ。

 トロールは持っているこん棒を洗面台の下に隠れているハーマイオニーに振り下ろす。

 振り下ろす瞬間、ハーマイオニーは這いずって隣の洗面台の下に移動する。移動した瞬間、ハーマイオニーがいた洗面台はスクラップとなってしまった。

 ハリーとロンはハーマイオニーに声をかける。

 

「「ハーマイオニー!」」

「ハリー。ロン。トウハ!」

 

 ハーマイオニーはハリー達が来てくれた事に対し、嬉しそうに呼ぶ。しかし、ハーマイオニーはトロールから目を離してしまった。

 その間にトロールはこん棒をスクラップとなっている洗面台から引き抜いて、ハーマイオニーにこん棒を振り下ろす。ハーマイオニーは目の前にある死の恐怖で移動出来ずに身を縮める。

 ハリーとロンは叫ぶ。

 

 「「ハーマイオニー!」」

 

 

 

 

 

 

 しかし、こん棒はハーマイオニーを潰さなかった。ハーマイオニーの上、洗面台の上には亀の甲羅のような物があり、こん棒からハーマイオニーを守っている。

 亀の甲羅はこん棒くらいの大きさで、亀の甲羅からは足が出ており、洗面台を潰さないように前足は壁につけて、後ろ脚で立っている。トロールは亀の甲羅を壊そうとこん棒を振り下ろし、壊そうとするが、あまりの固さにこん棒ははじき返されて、トロールはよろめいて、壊された小部屋の方に倒れていく。

 亀の甲羅は壁から足を離して、床に足をつける。亀の甲羅から、亀の首、さらに後ろ足側の甲羅から蛇が出てくる。亀と蛇は倒れているトロールをじっと見つめている。

 

 ハーマイオニーは自分は死んだと思っていたのか、目を瞑っていた。しかし、衝撃が来ない事に不思議に思ったのか、恐る恐る目を開けて、亀と蛇を見る。

 

 ハリーとロンは後ろにいる灯葉を見る。

 灯葉は人指し指と中指をくっ付けて、目を瞑っている顔に近づけて、呪文のような言葉を唱えている。

 

―安倍清明の子孫の名の下、掛けまくも畏き。玄天上帝。姿を現し給うと恐み恐みも白す。― 

 

 ハリーとロンには灯葉が何を言っているのか分からなかった。

 灯葉は目を開けて、亀の甲羅を見る。

 

「水玄。トロールを倒してください」

 

 亀の甲羅は灯葉に応えるかのように動く。蛇が鞭のようにしなりながら、トロールの首元に向かっていき、噛みつく。

 トロールはうめき声をあげて、蛇を握ろうとするが、腕に力が入らないのか、ゆっくりとしか動かない。蛇を掴もうとする瞬間に腕は重力に負けて落ちていき、トロールは段々と目を閉じていった。亀はトロールが動かなくなったのを確認した後、煙に包まれていなくなった。

 ハーマイオニーは洗面台の下から出ていき、ハリー達に近づいて、抱き着く。

 

「ハリー!ロン!それにトウハ!ありがとう。助かったわ!」

「無事でよかった」

「無事でなによりです」

 

 その時、廊下から数人の足音が聞こえ、トイレの中に入ってくる。

 マクゴナガル先生、クィレル先生、スネイプ先生だ。

 マクゴナガル先生はハリー達を見て、怒気を含めて話し始める。

 

「あなた方はどういうつもりなのですか⁉︎

殺されなかっただけ運がよかった…

どうして寮に戻らずにこんな所にいるのです?」

 

 ハリーとロンは怒っているマクゴナガル先生を見て何も言えない様子だ。それを見たハーマイオニーはハリー達の代わりに弁明する。

 

「マクゴナガル先生、3人とも私を探しに来たんです!私、トロールを1人でなんとかできると思って。本で読んで知ってたから…でも、ダメでした。もしみんなが私を見つけてくれなかったら、私今頃死んでました。3人とも人を呼びに行く時間がなくて、見つけてくれた時には殺される寸前でした」

 

 ハリーとロンはハーマイオニーが言ってくれたことに、その通りだという体を装った。

 

「ミス・グレンジャー、たった1人でトロールを捕まえようなんてどうして考えたのですか。グリフィンドールは5点減点です。あなたには失望しました」

「あなたたちも、時間が無かったのはわかりましたが、監督生や先生に伝えてから行動に移しなさい。しかし、大人のトロールに対抗できる1年生はそうざらにはいません。1人5点ずつあげましょう。その幸運に対してです。」

 

 マクゴナガル先生は最後の方を強めに言う。

 

「さて、あなた達は寮に戻りなさい。アベ。貴方もトロールから離れて寮へ戻りなさい」

 

 安倍灯葉はハリー達が会話してる合間に倒れているトロールの体を触り、観察していた。

 

 

 ハリー達は小さく返事をして、トイレから出ていく。誰も喋ることならず、また。ロンとハーマイオニーは距離を離して、寮へと戻っていく。

 寮へと戻るとロンは申し訳ないような顔をして、ハーマイオニーに話す。

 

「ええっと、ハーマイオニー。ごめん。あんな事言って」

「ううん。こちらこそ。今日は助けてくれてありがとう」

 

 ロンはハーマイオニーに謝罪を伝え、ハーマイオニーはハリー達に助けてくれた事に感謝する。

 そうしてハリー達はネビルがちゃっかりと大広間から2人の為に取っておいた料理を寮に運んでいた。

その料理でハリー達はパーティーを再開していた。

 

 ハリーは料理が少ないながらも安倍、ロン、ハーマイオニーが仲良く食事をしている風景を見て、トラブルもあったが、こんなハロウィーンも悪くないと思っていた。

 

 

 

 

 

 

  

 



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陰陽師

 安倍灯葉がトロールを倒した後日、灯葉はダンブルドア校長に呼ばれる。

 呼ばれた灯葉はマクゴガナル先生と共にガーゴイルの像の前に連れていかれる。マクゴガナル先生はガーゴイルの像に言葉を言う。

 

「ショートブレッド」

 

 と言った後、ガーゴイルの像は動きだし、階段が現れる。その階段をマクゴナガル先生と灯葉は昇り、校長室の中に入る。

校長室は先代校長達の絵が壁にかけられ、絵に描かれている校長達はじっと灯葉を見ている。灯葉もまた、じっと見ている先代校長達を見ている。

 マクゴナガル先生は灯葉に言う。

 

「もう少しで校長が来ます」

 

 灯葉は校長の机に置いてある古い帽子がある事に気づき、話しかける。帽子は乱暴な口調で返す。

 

「久し振りですね」

「二度と来るなと言ったはず。東洋の魔女」

 

 その時、校長室の入り口のドア、灯葉の後ろの方からダンブルドアが灯葉に話しかける。

 

「ほほほ。随分と帽子と仲良いのう」

「ええ。まぁ。組み分けの際、良くしてもらいましたし」

「そうなのか?」

「まぁな」

 

 組み分け帽子はダンブルドアに短い返事を返して、ただの帽子へと戻っていく。

 ダンブルドアは灯葉に座るように促す。灯葉もそれに従う。

 灯葉が座ったのを確認して、ダンブルドアは杖を取り出して、皿の上にあるカップに紅茶を入れ、机の上にある袋からクッキーのような物を取り出し、紅茶と共に灯葉に渡す。

 

「来てもらったのはわしと長話をしてもらいたかったんじゃ。今わしが気に入っているお菓子をつまみながらの話となるが」

「そうですか。このお菓子は?」

「イギリスのお菓子、ショートブレット。マグルのお菓子は優れている」

 

 灯葉は先ほどのマクゴナガルの言葉を思い出すように、納得した顔をして、お菓子を頬張り、紅茶を飲む。紅茶を飲んだダンブルドアは話しかける。

 

「本題に入るとしよう。陰陽師とはいったい何かの?」

 

 その質問、紅茶を入っているカップを口から離して、皿に置く。皿に置いた瞬間、部屋には鈍い音が響く。灯葉はじっとダンブルドアを見て、質問に答える。

 

「陰陽師は一言で言えば、学者です。マグルだと霊や鬼といった魔物を退治する職業、魔を退ける魔法使い、退魔師と知られていますが、そういうのは陰陽師とは言えません。だってイギリスだって化け物を退治する魔法使いいますよね?」

「いるのぅ」

「だったら、その人も陰陽師になりますし」

 

 灯葉は含み笑いをして、紅茶を飲む。ダンブルドアも長いひげを濡らさないように紅茶を飲む。2人の間に一瞬の間が生まれる。

 

 

 間が終わり、カップを置き、灯葉は目に凝らし、ダンブルドアを見つめる。ダンブルドアが待っている答えを今から言うかのように。

 

「陰陽師とは陰陽道を真髄として生きる者。陰陽道とは陰陽五行思想を主として森羅万象を解き明かす学問。この世は陰と陽の2種類に分けられ、また木・火・土・金・水に分けられる。つまり、陰陽道は森羅万象を解き明かす」

 

 灯葉は椅子から立ち上がり、空を見上げて言う。

 その姿はまるで神から啓示を受けたかのように手を広げている。また、校長室の明かりを空から灯葉をさして、黒曜石のように輝いている髪は明かりを反射して、さらに輝いている。

 

「これこそが陰陽師。そして、安倍家の目的。これが私の目的です」

「なるほどのぅ。なら、森羅万象を解き明かした後、何をしたい?」

「森羅万象は常に変化する物。謎はいつも私達の周りにあります。例えば、ハリーポッター。もしくはダンブルドア校長が敵に奪われたくないが、壊したくもない大切な物とか」

 

 灯葉はダンブルドア校長に目の前にいる不敵な笑みを向ける。ダンブルドア校長はまだ残っている紅茶を飲みながら、返事をする。

 

「さて何の事か」

「いずれ解き明かします。ダンブルドア校長」

 

 灯葉は校長室から出ていき、寮へと帰っていった。

 




補足

陰陽師;陰陽道を元に森羅万象、この世の全ての現象、物を解明する魔法使い

マグルが霊や魔物を退治するのが生業と勘違いした理由:昔、現象を解明する際、殆どが霊や魔物が起こした現象で、解き明かす際、魔物を退治をして、その事が昔から今にかけて、マグルの間に伝わった為。



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クィディッチ

 ハロウィーンのトロール騒ぎ後、安倍灯葉とハーマイオニー・グレンジャーの2人組、ロン・ウィズリーとハリー・ポッターの2人組がくっ付き、当たり前のように4人組で行動をしていた。

 4人組はハロウィーンの後、3頭犬に出会ったり、スネイプにいちゃもんをつけられるが、スネイプの足がケガをしているのを見て、3頭犬が守っている物を狙っているのではないかという話題で持ち切りだった。

 しかし、その話題は近々行われるグリフィンドールとスリザリンの寮対抗戦のクィディッチの話題に切り替わりつつある。

 ハリーは対抗戦まで日にちが少ないのか、4人で行動しているときも無心でクィディッチに関する本を読んでいる。ロン、ハーマイオニーはそんなハリーを見守り、励ましたりしている。

 灯葉もハリーの練習を最初から最後まで見守っていた。しかし、グリフィンドールのキャプテンであるオリバー・ウッドが灯葉にマホウトコロの練習方法を聞いて、グリフィンドールの練習が一段と厳しくなった事は灯葉とオリバーだけの秘密だ。

 

 

 

 

 そして、時間が過ぎていき、本日はグリフィンドールとスリザリンの対抗戦。スリザリンの生徒は自分の寮の旗、グリフィンドールの生徒は自分の寮の旗を振っている。一方、レイブンクローとハッフルパフはスリザリンに勝ってほしくないのか、グリフィンドールグリフィンドールの旗を振っている。

 

「随分と嫌われてますね。スリザリン」

「そりゃそうだよ!スリザリンはラフプレーばっかしてセコい手しか使わないし」

 

 灯葉は観客の様子を見て、ぼそりと言ったが、灯葉の右隣にいるロンがハリーを応援するのに作ったらしい旗を手に持ちながら、スリザリンが嫌われている訳を灯葉に話す。

 

「トウハもクィディッチ出ればよかったのに!見てたよ!ハリーの初練習の時、トウハも上手かった。流石。マホウトコロ出身は違うな!」

「ハリーの方が上手かったですよ。それよりもハリーが出てきましたね。少し緊張してますね」

 

 グリフィンドール、スリザリンチームが出てくる。他の選手と比べてハリーも背が小さく、また、落ち着かない様子で他の選手を目で動かして、様子を見るのではなく、首を動かして様子を見ている。

 そんなハリーを見て、ハーマイオニーは心配に言う。

 

「大丈夫かしら?」

「大丈夫だろう。ハリーは」

「本番に強そうですし」

 

 

 気遣うようにロンと灯葉は言う。そんな事を言ってる間に審判のマダム・フーチの声に従い、選手が全員箒にまたがる。そして審判が笛を吹き、全員が一斉に空へと舞い上がる。

 試合がいよいよ始まる。

 

 試合の序盤はグリフィンドールの優勢が始まる。

 実況のグリフィンドールであるリー・ジョーダンはグリフィンドール贔屓の実況で会場を盛り上げる。途中でマクゴナガル先生の注意が入るが、それも毎度の事なのか誰も気にしていないどころか、さらに会場の雰囲気が熱が入る。

 

 ポッターは邪魔をしないように選手のさらに上空で待機して、スイッチを探して、捕まえようとする。

 しかし、マーカス・フリントの邪魔によって、取れずにいる。その邪魔は他寮からはブーイングの嵐を受けていた。

 試合は進んでいき、スリザリンのプレースタイルにグリフィンドールは翻弄されていく。ついには逆転されて、30対20で10点リードされていく。

 グリフィンドールチームは点を入れるべく、更に箒の速さが早くなるが、その時、ハリーの箒がハリーを落とそうするかのように出鱈目な動きをする。

 

「なんだ?ハリーが」

「ハリー!?」

「……」

 

 その時、ハーマイオニーが何かに気づいたのか向こう側の観客席を見る。

 

「あ!スネイプの様子が!!」

 

 スネイプはハリーを見て、瞬きせずに口を動かしている。

 ハーマイオニー曰く、呪文を唱えているらしい。ハーマイオニーは止める為にスネイプがいる観客席に向かう。

 ロンはハーマイオニーが早く対処してくれと願いつつ、双眼鏡でじっとスネイプの様子を見ている。一方、灯葉はスネイプの上にいるクィレルを見て、呟く。

 

「なるほど。保護は効いていない。間接だったら、保護は無効という事ですか」

 

 灯葉は懐から紙を取り出す。紙は煙に包まれて、鳥となる。鳥は鴉のように見える。鴉はじっと灯葉を見る。

 

―また、姿を変えたのね。何の用かしら―

 

 その声は灯葉にしか聞こえないらしい。

 

「月神、ターバンの男に攻撃をお願い致します」

 

―ターバンの男。なるほどね。あの男、何かに取り憑かれてるね。すごい嫌な陰ね―

 

 鴉は一鳴きすると、灯葉から離れて、真っすぐにクィレルの下にいく。鴉はクィレルの頭、ターバンの上に降り立つ。クィレルは集中しているのか、頭に鴉が降りた事に気づいていない様子だ。その時、ハリーが箒から落とされて、宙ぶらりんとなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 クィレルは内心で微笑む。もう少しでハリーが箒から落ちて、上空から落ちる。ハリーは重症を負うだろう。あわよくば、死亡も有りうるだろう。死亡すれば、あの方も喜びになり、何かを下さるだろう。

 クィレルは先の事を考え、更に呪文に力が入る。

 その時、クィレルの目がしらに白い物が走る。

 クィレルは顔をしかめながら、呪文を唱える。ここで止める訳にはいかない。もう少しでハリーに止めを刺せるのだから。

 白い物は重力に従い、クィレルの顔を伝いながら落ちていき、クィレルの口へと入っていく。呪文を唱えている口は白い物を受け入れてしまう。そこでクィレルは白い物の正体に気づいてしまう。

 その正体に気づいたクィレルは思わず、呪文を唱えるのを止めて、叫んでしまう。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 その叫び声は周りの人の注目を浴びてしまう。周りの人はクィレルを見る。

 クィレルは頭に鴉を乗せていた。更には頭の上で糞をしたのか、白い線が走っている顔を周りの人達は見てしまう。周りの人たちは思わず、クィレルから後ずさりをしてしまった。

 クィレルは顔を拭きつつ、観客席から出ていく。鴉はいつの間にか頭から離れて、クィレルの様子を見ていた。

 クィレルの様子が可笑しかったのか、鴉は笑うように一鳴きして、上空へと飛び立つ。

 

 

 その間、ハリーは箒のコントロールを取り戻して、スイッチを追い、急降下する。ハリーは手を伸ばし、スニッチを取ろうとする。しかし、ハリーは箒から落ちてしまった。ハリーは転落した衝撃で何やら苦しそうだ。

 ハリーは口から何かを吐き出す。それはスイッチだ。

 ハリーはスニッチを高々に上げる。それを見た、スリザリン以外の寮は大歓声を上げる。スリザリンはブーイングの嵐だ。

 

 グリフィンドールとスリザリンの対抗戦はグリフィンドールの勝利で幕を下りた。

 

 その後、ハグリットが祝勝会を挙げるというので、ハグリットの家に4人は集まる。

 祝勝会でロンとハーマイオニーはスネイプが呪文を唱えて、ハリーに呪文をかけていた事、3頭犬の件を告げる。

 ハグリットはスネイプがそんな事をしないと否定しつつ、思わず、口を滑らせてしまう。

 

「いいか!あの犬、フラッフィーと先生方が守っている物に関われるのは、ダンブルドアとニコラス・フラメルだけだ」

 

「ニコラス・フラメル?」

「あぁ、しまった。口が滑ってしまった。言うてはいかんかったな。もう帰ってくれ。頼む。俺がこれ以上なにも言わないうちに」

 

 

 ハグリットはしまったという顔をして、4人を追い出す。

 ハリー達は納得がいかない様子で寮へと帰っていき、疲れたのか、すぐ様、寝てしまった。

 灯葉はまだ寝ずにベランダにいた。安倍灯葉は梟に話しかけている。

 

―さて、今度は梟ね。何の用事かしら―

 

「ニコラス・フラメルについて調べてください」

 

―了解―

 

 梟はホグワーツから飛び立つ。

 

「もう少しで分かる。貴方達はどう動きますか。ダンブルドア。クィレル」

 

 



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クリスマス

 ハリー達はニコラス・フラメルという名前のみを手かがりに3頭犬が守っている物が何なのかホグワーツの図書館で探していた。しかし、ニコラス・フラメルはどこにも載っておらず、ただ時間が過ぎていき、十二月となる。ホグワーツは白一色。雪に覆われ、ホグワーツの近くの湖も凍る。

 この時期はクリスマス休暇でほとんどの生徒はクリスマス休暇でいなくなる。しかし、ハーマイオニー以外の4人組は実家に帰らずにホグワーツで過ごしていた。

 

 実家に帰ろうとするハーマイオニーに安倍灯葉はクリスマスプレゼントを渡す。

 

「ハーマイオニー クリスマスまで早いですが、プレゼントです」

「トウハ。ありがとう!これは紙と本、『馬鹿(むましか)でも出来る式紙術』?」

「初級の式紙術です。本を読むと、さっき渡した紙で式紙が出来ます」

 

 灯葉は紙を取り出して、紙を折る。折った紙は鶴のような形となる。灯葉は折った鶴に向かって息を吹きかけて、唱える

 

―急急如律令―

 

 呪文が終わると、鶴は紙の羽を動かし、ハーマイオニーを中心にしてぐるぐると飛び回る。ハーマイオニーは自分の周りを飛び回る鶴を感嘆の表情で見ていた。

 

「すごい!これが日本の魔法、式紙術なのね?」

「そうです」

「これも神仏からも力を借りてるの?」

「ええ。これも紙頼みの術なので、紙だけに神頼みしています」

 

 ハーマイオニーは灯葉の言葉に若干苦笑いをして、本と紙を鞄にしまい、チェスをしているハリー達に何かの本と言葉を残して、実家へと帰っていった。

 

 

 

 そして、あっとう間にクリスマス。

ホグワーツに残っている生徒達は実家から送られてきているプレゼントを開けて喜んでいた。

ハリーとロン達もまた然り。ロンは手編みのセーターを着て喜んでいる。一方、ハリーは透明マントが届く。

 

「すごい!ハリーこんなすごい物初めて見たよ」

「首が浮かんでるように見えますね」

 

 ロンと灯葉はただ驚いている。ハリーは騒ぎにならないようにマントを仕舞う。灯葉は2人に日本のお菓子、八つ橋をプレゼントした後、どこかへと行ってしまった。

 灯葉が出ていった後、ロンとハリーは禁書の棚へ入る手順を考えていた。

 

 寮から出ていった灯葉は校長室へと向かっていた。ダンブルドア校長に八つ橋を届ける為だ。合言葉を唱えて、校長室へと行く。

 

 校長室にはダンブルドア校長が机で羽ペンを持って何かを書いていた。灯葉が来た事に気づき、羽ペンを止めて、灯葉に話しかける。

 

「トウハか こんな所に何の用じゃ」

「先日のお菓子のお返しです。日本で八つ橋という御菓子です」

「ありがたい。トウハも一緒にどうかの?」

「では頂きます。粗茶も一緒に持ってきたのでこれどうぞ」

 

 ダンブルドア校長は灯葉にカップと皿を取り出す。灯葉もダンブルドアのいう事に従い、ダンブルドア校長の向かいの椅子に座り、ダンブルドア校長と一緒に八つ橋と抹茶を頂く。

 

「ほぉー。柔らかくて甘い。トウハ。この黒いのは?」

「餡子です」

「アンコか。これも中々」

「ダンブルドア校長っていくつなんですか?八つ橋を食った事はないんですか?」

「110歳じゃ。日本のお菓子は機会がなかったからのぅ。これが初めてじゃ」

 

 ダンブルドアは抹茶を飲む。

 

「苦いのぅ。八つ橋の甘さが口に残って、さらに引き立つのぅ」

「それが日本の頂き方です。あくまで、お菓子は抹茶の引き立て役ですからね」

「なるほどのぅ。お菓子がメインだと思っていたが違うのか」

「そうです。メインは抹茶です。こういう勘違いはけっこうありますよね」

「そうだのぅ」

 

 灯葉は八つ橋を一口頂き、抹茶を飲む。

 

「外国の学問で陰陽道と似ている学問があって驚きましたね」

「・・・・その学問とは?」

「錬金術です。そういえば、ダンブルドア校長。ニコラス・フラメルと友好ありますよね?ご紹介をお願いしたいのですが」

「彼も色々と忙しいからな」

「そうですか。せっかく賢者の石をご教授をしてもらいたかったのですが。年も700歳以上ですし、色々と知っているだと思っていたんですが」

 

 灯葉とダンブルドアは最後の八つ橋を頂き、抹茶を飲む。抹茶を飲むまでダンブルドアと灯葉は一口も喋らない。

 ダンブルドア校長は目を瞑り、ため息を吐いて、目を開き、灯葉を見つめる。

 

「何が望みじゃ?鴉や梟を使って、色々と探っていたようじゃの。好奇心は良いことじゃが、いつか身を滅ぼすぞ」

 

 灯葉は勝ったという笑みをダンブルドア校長に向けて言う。

 

「好奇心が無ければ、知識は得られない。私の望みは先ほど言った通り、ニコラス・フラメルと会う事」

「会って、賢者の石を作るのか?不死を望むのか?」

「不死は望みません。ただ知識を得るだけです」

 

 灯葉は口調を強めて言う。まるで不死を望む事が無いように。ただ知識を得たいと言いたいかのように。

 

「そうか。紹介はしようかのぅ。ただ1つ条件がある。彼も色々と敵がいるからのぅ。簡単に教える訳にはいかん」

「了解しました。その条件とは?」

 

 ダンブルドア校長はその条件を告げる。灯葉はその条件を飲む。ダンブルドア校長は灯葉と互いに信じるかのように握手をし、ダンブルドア校長と灯葉は夜まで校長室で話をしていた。

 

 

 

 

 

 

 ダンブルドア校長と灯葉が話をしている間、ハリーは透明マントを使い、禁書の棚へと入ったが、そこで叫び声を出す本を開けてしまい、アーガス・フィルチに聞かれてしまった。フィルチから逃げる時、言い争うスネイプとクィレルと出会ってしまう。

 

「貴様。何のつもりだ?」

「ななな、何の事ですか?」

 

 スネイプは親の仇を見るかのように睨む。クィレルはただ視線から逃げるかのように顔を背ける。

 その時、スネイプはクィレルから視線を外し、横を睨む。その視線は透明になっているハリーを見ていた。

 

「誰だ!?」

「私です。スネイプ先生」

 

 ハリーの後ろにある暗闇から灯葉がスネイプに向かって微笑みながら出てくる。灯葉の真っ黒な髪は周りの暗闇と同化する事なく、月の輝きに反射しているのか、輝く。スネイプは安倍灯葉を睨む。

 

「こんな夜に出歩くとは何の用だ?」

「ダンブルドア校長にまだ日本からの土産を送っていなかったので、届けに行ってました。そして、つい話に夢中になりまして、こんな時間になりました」

「ダンブルドアと?」

 

 スネイプは灯葉の返事にクィレルの服を掴んでいた手が緩む。その隙にクィレルはスネイプから逃げてしまう。スネイプは苦い顔をする。

 

「クィレル先生に何か御用でしたか?」

「何でもない。さっさと寮へ戻れ」

「もしかして、寮対抗戦の時ですか?それとも、トロールの時ですか?」

「二度目は言わんぞ」

 

 スネイプはクィレルを睨んでいた目を灯葉に向ける。灯葉は謝罪するかのように腰を曲げて、暗闇に消えていく。しかし、安倍灯葉は暗闇からスネイプに話しかける。

 

「もうちょっとハリーに優しくしたらどうです?」

 

 スネイプは灯葉に返事を返せずに安倍灯葉の逆方向の暗闇へと消えていった。ただハリーはその場面を見ているだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紙だけに神頼み・・・

思い切り滑ってますが これが日本の魔法という設定です。



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みぞの鏡

 スネイプ、安倍灯葉が暗闇に消えた後、ハリー・ポッターは透明マントを脱いだ。

姿を現したハリーは冷たい風に当たりながら、先ほどの灯葉の言葉を考えていた。

 

「トウハは何を知っているのだろうか」

 

 ハリーは考える。

 スネイプはトロールの時、3頭犬に近づき、怪我をした。対抗戦の時、スネイプは呪文を唱えて、僕を落とそうとした。

 クィレルはどうだ……トロールの襲撃知らせて、気絶した。対抗戦の時、何やら、大騒ぎをしていたらしい。

 クィレル、スネイプの間に何あったのだろうか………

 

「いいや、トウハに聞けばいいだけの話じゃないか」

 

 ハリーは考えを振り払うように頭を振るう。

 振るう時、何かに気づいたのか、振るう頭を止めて、廊下を歩いていく。

 ハリーの歩く先には鏡があった。その鏡は誰もが見ても古臭く、ホコリの臭いを感じられる。

 

「なんでこんな所に鏡が?」

 

 鏡の枠には彫刻が彫られており、そこには『erised of mirror』と彫られていた。

 

「何だろう?」

 

 鏡のホコリを拭う。なんともない普通の鏡だ。僕が映ってるだけだ……

いや、鏡の中、映ってる自分の両方隣に誰かが映っている。

 隣には女性が映っている。女性は僕に向かって微笑んでいる。もう一方の隣には自分とよく似た男性が映っている。男性は女性と僕に向かって、見守るような目をしている。

 

「もしかして、母さん?父さん?」

 

 鏡に映る二人はハリーの返事に答えるかのように頷き、ハリーの肩に手を置く。ハリーは自分の肩を触る。しかし、肩には置いている手はなく、さらには自分の隣には誰もいない。

 しかし、鏡を見ると確かに映っている。

 

 初めて見る親だ。この姿を誰かに見せたい。そうだ…ロンに見せよう。

 

 ハリーはロンの所に急いで向かう。今自分がみた両親を見せる為に。

 

 しかし、ロンに見せたが、ロンにはハリーが見た両親の姿は見えていなかった。ロンには寮対抗戦の優勝姿しか見えていない様子だった。ロンは鏡に映った自分の姿に喜び、寮へと帰っていった。ハリーはその帰り姿をただ見送るだけだった。

 

 ロンを見送ったハリーは鏡の前に座り、鏡をずっと見ている。時折、鏡に映る両親に手を伸ばしたり、両親に話しかける。

 その時、ハリーの後ろから声がする。

 

「ハリー」

 

 後ろから声をかけたのはダンブルドアだ。ダンブルドアに話しかけらたハリーはダンブルドアを見るが、鏡から目を離したくないのか、すぐ様に鏡を見る。

 そんなハリーに対し、ダンブルドアは優しく説く。

 

「それがみぞの鏡じゃ。映る人物の欲望、望みを鏡が映してくれる。もし、世界一の幸せ者がこの鏡の前に立ったなら、そこには今、あるがままの自分が映し出されるじゃろう」

「この鏡に魅せられて、自分を見失ったり半狂乱になった人間が沢山いたのじゃ」

「ハリー。この鏡はもう他の場所に移すとしよう。夢にふけって生きることを忘れてはならない」

 

 ダンブルドアの説く言葉にハリーは俯き、何も言えずにいた。鏡からやっと目を離して、ダンブルドアを見る。ダンブルドアは優しく温かい目でハリーを見ていた。鏡に映る両親の温かい目とは違う本物の目だ。その目を見たハリーは自分の寮へと帰っていく。しかし、夢から覚めたくないのか、1歩1歩進んでいった。ダンブルドアはその姿にただ見守るだけだった。

 見送ったダンブルドアは鏡を触れ、目を瞑りながら、呪文を唱える。

 

―ディミヌエンド 縮め―

 

 鏡は縮み、手のひらサイズとなる。ダンブルドアは小さくなった鏡を拾い、校長室へと向かう。

 校長室で待っている人物の元に。

 

 

 

 場所は変わり、校長室。

 

 校長室では灯葉が待っていた。灯葉は椅子に座り、優雅にティーカップでお茶を飲んでいた。ダンブルドアが来ると、ティーカップを机で置く。

 ダンブルドアは小さくなったみぞの鏡を元のサイズに戻して、灯葉の前に置く。

 灯葉はみぞの鏡を好奇心の目で見る。鏡に映っている自分を確認しようはせずに。鏡を見ながら、ダンブルドアに尋ねる。

 

「これがみぞの鏡ですか?」

「そうじゃ」

「望み、欲望が映る鏡、だからみぞの鏡」

 

 灯葉はようやく鏡に映る自分を確認する。鏡に映った自分に灯葉はただ見つめる。

 

「へぇ興味深い鏡ですね」

「どうじゃ?その映った自分の姿は?後悔?それとも罪深い欲望が映っておるかのう」

 

 灯葉はダンブルドアに向けて唇の上に人指し指をくっつけ、言う。

 

「女の秘密です」

「そうか。残念じゃ」

「さて、確認ですが、みぞの鏡に賢者の石を封印する。その封印方法は望む者に対し、絶対に手に入らないという方法でいいんですね」

「そうじゃ。封印してくれるかのぅ」

「了解です。その代わりにニコラス・フラメルに私を紹介する事を忘れないでくださいね」

「もちろんじゃ」

 

 灯葉はダンブルドアの了承の返事をもらった後、錫杖を取り出す。錫杖で床を叩き、鳴らす。

 

石鋳型(いしいがた) 鏡作部(かがみつくりべ) 石凝姥命(イシコリドメ)   ―

 

 灯葉が唱えると灯葉の前に立方体の石が現れる。その石は徐々に罅が走る。石は罅に耐え切れずに石は砕ける。石の中からは鏡が現れる。鏡は円の形をしており、灯葉が持てるくらいの大きさだった。

 灯葉はみぞの鏡の前に鏡を浮かせて、みぞの鏡に作った鏡が映るように置く。

 

「合わせ鏡。鏡には別世界が映ると言われています。もしくは別世界の入り口とも言われています。こうする事で鏡の中、別世界に封印します。鏡の間に賢者の石を入れてください」

 

 ダンブルドアは賢者の石を鏡の間に入れる。 

 灯葉は賢者の石を入れたのを確認し、呪文を唱えようとするが、何か思いついたのかに灯葉はダンブルドアに話しかける

 

「ダンブルドア校長。言葉ってどう思いますか?」

「それはどういう意味じゃ?」

 

 灯葉はその質問を待っていたかのように口角を上げて、話す。

 

「望み鏡の『望み』を反対にすると、何の意味を表さない」

「みぞの鏡。聞いた時は私は溝の鏡だと思いました。心の溝を埋める鏡。だから、みぞの鏡。」

「それがどうかしたのか?」

「反対から読んでも、ただ読んだだけでも意味は通じる。これは偶然か必然どちらなんでしょうね?溝があるから望むのか、望むから溝があるのか」

「偶然だろうじゃろうな」

「そうですね。しかし、必然だったら、これほど面白い物はないでしょうね。さて始めます」

 

 灯葉は錫杖を持って、呪文を唱える。

 

―石求む されど入らず 魚網鴻離(ぎょもうこうり)

 

 呪文が唱え終わると、先ほど作られた鏡が光りだす。光に誘惑されるかのように賢者の石は作られた鏡の方に吸い込まれていく。

 鏡は賢者の石を吸い込んだら光は徐々に消えていく。鏡には賢者の石が映っている。しかし、みぞの鏡に映っている鏡、また鏡の間には石はない。

 

 ダンブルドアはただ静かに見守っている。灯葉は成功したと確信しているのかティーカップに残っていたお茶を飲んでいる。

 灯葉がティーカップに口に近づけた瞬間、今度は溝の鏡が光りだす。光はつららを作るかのように鏡の方にに伸びていく。光のつららが作られた鏡に触れて、鏡に光の道が出来る。光の道に賢者の石が移動していく。移動先はみぞの鏡だ。

 賢者の石はみぞの鏡に入っていく。入る瞬間、鏡は水面のように波立ちながら入る。入ると同時に光は消えていき、作られた鏡は徐々に崩壊していく。

 完全にみぞの鏡に入った瞬間、鏡の光は完全になくなる。鏡は完全に崩壊し、砂のような粒になり、夜風に消えていく。

 灯葉はダンブルドアに向けて、話す。

 

「封印は終わりました」

 




蛇足:間違っていたらすみません

石凝姥命:八咫鏡を作った神様
魚網鴻離:求めるものが得られず、求めていないものが得られるたとえ。


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禁じられた森

 みぞの鏡に封印された日以降、特に事件らしいことは起こらずにいた。

 ところが、ハグリットがドラゴンを孵した所をドラコに見られてしまった。しかも、その場にはハリー、ハーマイオニーとロンがいた。そのせいで、ハリー達3人は捕まってしまう。一人50点で、150点も寮の点を失い、さらに罰を受ける羽目になってしまった。

 しかし、マルフォイの思い通りとはいかず、マルフォイもマクゴナガルに捕まり、同じ罰を受ける事になるのだが、ハリー達にとってはそれはどうでも良かった。

 何故なら、今のハリー達の状況はグリフィンドール、レイブンクロー、ハッフルパフの生徒達から後ろ指を刺されてしまっているからだ。

 

 ハリー達とマルフォイの罰は真夜中に受ける事になる。

 ハリー達は真夜中の寒さに震えながら、罰を受ける場所、ハグリットの家に向かう。

 その途中、ロンは愚痴をこぼす。

 

「はぁ。真夜中に処罰とか何をされるんだ?」

 

 ハリー達はロンの愚痴を聞きながら、ハグリットの家に行く。そこにはフィルチ、ハグリットがいる。先に来ていたのかマルフォイもいる。また、ドラゴンが孵化した場面に出会わなかった安倍灯葉もいる。

 灯葉がいる事に気づいたロンは驚いた表情で言う。

 

「トウハ。なぜ君がいるんだ?」

「私がいるのはスネイプ先生も同行する予定だったんですが、行けなくなったという事なので、代わりに来ました」

 

 灯葉は訳を話した後、ハリー達に言う。

 

「それより、ドラゴンが生まれる瞬間を見たかったのですが、なんで呼んでくれなかったんですか?」

「その時、トウハはいなかったから、しょうがないじゃない」

「・・・ごめん」

 

 ハーマイオニーは訳を話したが、ハリーは謝る。

 フィルチは3人が会話が終わったと感じたのか、ハリー達とフィルチの反応を楽しむかのように笑いながら、話す。その笑いはランプに照らされて、不気味に感じられる。

 

「今から森へ入る」

 

 フィルチの言葉に、マルフォイは人一倍怖い反応を見せる。対照的に灯葉は森へ入る事が楽しみでしょうがないのか、じっと興味津々な目で森を見ている。

 そんな中、ハグリットは灯葉も含めて、5人に促す。

 

「そんな気持ちじゃ、あ、っという間に死ぬぞ。傷ついたユニコーンを探せないぞ」

 

 傷ついたユニコーンを探す為、ハーマイオニーとハグリット。ロンとフィルチ。灯葉とマルフォイ、ハリーの3手で別れる事にする。

 

 

 

 

 「あーあー。なんで、この僕がこんな事にしなければならないんだ?きっとこの事を知れば、父上はなんて言うか」

 

 灯葉達のグループは3人は違った足取りで歩いている。

 マルフォイは愚痴をこぼしながら、乱暴な足取りで歩いていく。時折、根っこを蹴って、うっ憤を晴らしているようだ。

 灯葉は珍しいのか、周りを見渡しながら歩いている。時々、木や地面を触り、採取している。

 一方、ハリーはマルフォイと灯葉の様子を見ながら、歩いている。特に灯葉の様子を見ていた。なぜなら、透明マントでスネイプと灯葉の会話の事を聞いて、その理由を聞けずにいたからだ。

 灯葉は何を知っているのか気になってしょうがない。しかし、偶然といえ、盗聴してしまった後ろめたさで聞けなかった。

 どうやって、聞けばいいのか、ハリーには全然分からなかった。

 

 その時、マルフォイの足が止まった。それに釣られて、ハリー、灯葉は止まる。

 マルフォイの見ていた先に地面に横たわるユニコーンの傍に人の形をした者がいた。その者は黒いフードがあるコートを着て、ユニコーンの傍で何かをしていた。

 その光景にマルフォイは叫びながら、逃げていく。

 

 その叫び声に反応したコートの者は振り返り、灯葉とハリーを見る。フードを深くかぶっており、顔は見えない。

 ハリーはその者を見た瞬間、額を抑えて、苦しむかのように息を荒くして、膝を地面につける。フードの者はそれを見た瞬間、好機かというかのように人間とは思えない程の跳躍でハリーにとびかかる。

 

―傷開き 生き血を吸わせ 鎌鼬―

 

 灯葉はいつの間にか手に錫杖を持ち、呪文を唱える。呪文は真空の刃となり、フードの者に襲い掛かる。その時、フードの者は跳躍しており、避けれないだろう。ハリーと灯葉はそう思っていた。

 しかし、フードの者は空中で止まり、真空の刃を避ける為、空中を地面のように蹴り、後ろに下がり、先ほどいたユニコーンの傍に降りる。

 フードの者はその場を動かない。じっとフードの奥から、灯葉と蹲っているハリーを見ている。それに対し、灯葉はしてやったりという表情をして、錫杖で自分の腕を指す。 

 フードの者はそれを見て、自分の腕を見る。そこにはローブが手首から腕から肘まで切れていて、フードの者は腕を触り、自分の手を見る。

 

「血が出ていない事が不思議ですか?」

 

 灯葉は錫杖を振るう。錫杖から真空の刃が出る。フードの者は横にズレて、真空の刃を避ける。しかし、反応に遅れたのか、今度は腹に真空の刃が切り裂いていく。しかし、今度もまたローブと体を切るだけで血は出ない。

 

「鎌鼬は血が大好物なんですよね。吸われたユニコーンの痛みを知りなさい。陰の者よ」

 

 フードの者は切られた腹を手で抑えて、灯葉を見る。フードから真っ黒な闇しか見えないが、闇の先から鋭い眼光を感じられる。灯葉は錫杖をフードの者に向けて、臨戦態勢を取る。

 その姿を見てか、フードの者は跳躍し、木から木へと移動して、森の奥へと消えていく。

 

 灯葉は消えていく方向を見て、いない事を確認したら、まだ蹲っているハリーポッターの方へと向かう。

 

「ハリー、大丈夫ですか?」 

 

 ハリーはまだ額の痛みとずっと戦っていた。その戦いの中、ずっと考えていた。灯葉は臆する事なく、フードの者と戦っている。それに対し、僕は何だっていうんだ。ただ蹲っているだけだ。それにずっと、トウハに聞けずにいるあの夜の出来事も。

 

 

・・・・なんて、情けない。

 

 ハリーの頭は痛みと共に自分の情けなさが支配していた。それにずっと、トウハに聞けずにいる。あの夜の出来事も。

 

「ハリー、まだ痛みますか?」

 

 ハリーは決心する。額の痛みは段々と引いていくが、今自分の中にある情けなさは消えないままだ。むしろ増していくだけだ。

 

「トウハ。君に聞きたいことがある」

「何でしょうか?」

「聞いてしまったんだ。クリスマスの晩。スネイプとトウハの言い争いを。君は何を知っているんだ?」

 

 ハリーは安倍灯葉から目を離さない。灯葉は静かに口を開く。

 

「私が言える事はただ一つ。敵は味方です。後は自分で動いて、未知を知りましょう」

 

 

 

 

 




補足

鎌鼬
何もない場所で皮膚を切り裂かれるという事象を起こす妖怪。
切り裂かれた皮膚からは血は一切出ない。
ある一説では血を吸っていると言われている。


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試練

 安倍灯葉の返事は今のハリーにとってはとても辛く感じていた。

 

 なんで教えてくれないんだろう・・・・

 

 灯葉が発した言葉の意味を考えながらも、ハリーはもう一度質問する。

 

「それはどういう意味?」

「それを知る事も大事な事です。待っていたら何も起こらない。何も知ることは出来ない。それは停滞という怠惰です。特に私、陰陽師はそれを嫌います」 

 

 

 灯葉はハリーを見つめる。その切れ長の目は真剣な眼差しで見ていた。ハリーは灯葉の顔を見れずに支援を地面に向けて、何も言い返せずにいる。

 灯葉はハリーから興味を無くしたかのように地面に横たわるユニコーンの方に移動し、膝を地面を付けて、ユニコーンの容態を見る。

 

「やっぱり血を吸われていますね。それもかなりの量を」

 

 その時、急いで走る足音が複数 ハリーの後ろから聞こえる。それと同時にロン、ハーマイオニーとハグリットの叫び声が聞こえる。

 

「「ハリー!!」」

「ハリー!ケガはしちゃおらんか!!」

 

 ロンとハーマイオニーはハリー達がケガをしていない事を確認して、安心したのか抱き合って再会を喜んでいる。一方、ハグリットはハリーが無事なのを確認したのか、息を吐き、横たわるユニコーンに近づく。

 

「もう助からんか?」

「もう無理です」

「そうか。後は俺に任せろ」

 

 ユニコーンはハグリットに任せて、ハリー達は寮と帰っていく。

 その道中、ハリーはロン達に何かあったかを聞かれたが、生返事で答えるだけだった。返事よりもハリーは灯葉の言葉を考えていた。

 その灯葉の言葉にやっと答えを見つけたのは、ベットに寝ころんだ後だった。

 

「敵は味方。もしかして、スネイプは僕の味方なのか・・・」

 

 だとすれば、スネイプの今までの行動は何だっていうんだ・・・・

 僕を見かけると、いちゃもんをつけて、減点する。ハロウィーンもダンブルドア校長の目をトロールに向けさせて、賢者の石を取ろうとした。さらにはクィディッチでは箒から落とそうと呪文を唱えていた。

 特に僕を見つめる目。あれはダドリー一家と同じ目にそっくりだ。冷たく、愛を感じさせない目。

 

 味方なはずがない。きっと灯葉の勘違いだ。そうに違いない。

 

 それをずっと考えていたら、睡魔に襲われて、ハリーは夢の中に入っていった。

 

 

 

 

 ハリーはずっと眠りにつくまで考えていた頃、灯葉はベランダの手すりに腰かけていた。灯葉の肩には梟が止まっていた。梟はじっと灯葉を見つめている。

 灯葉は梟に会話するかのように話している

 

「もう少し、ハリーに優しくですか?今知りたいのはハリーにかけられている魔法の事だけですよ」

 

―スネイプという男に言う前に主も優しくしたらどうなの?―

 

「ハリーに興味がありましたけど、それはどうやって死から退けた事だけです」

 

「蓋を開けてみれば、ハリーには何の力もない。ただ魔法のおかげで死から退けられただけ。おそらく、あの魔法は他者から掛けられた守護の魔法。ハリーは何も知らない。知ることさえもしない。そのハリーにどうやって優しくするんですか」

「今回も単なる決めつけで犯人をスネイプと決めている。何にも調べずに」

 

―せっかく。良い男の子だったんだけどね。まぁいいわ。私は関係ないわ―

 

 梟は紙に変わり、消えていく。

 灯葉は紙を拾い、ベットに入り、眠りにつく。

 

 

 

 

 禁じられた森から翌日、ハリーは灯葉の忠告に対し、何にも行動を起こさずに学生の最大イベントである学年末試験の為に勉強に日々を費やしていた。

 ハリーはもちろんだが、ロン、ハーマイオニーも試験の為に勉強している。ロンやハリーは分からない所があれば、灯葉やハーマイオニーに聞いていた。

 しかしながら、ハリーは灯葉の間には溝が段々と深くなっていく事を感じていた。

 だが、ハリーはその溝を埋めようとはしなかった。

 灯葉が言った言葉を無視するかのようにスネイプをまだ疑っていて、目の敵にしていた。その事に対して、安倍灯葉はただ静観するだけだった。

 そんな中、ハーマイオニーはニコラス・フラメルの事を知る。ニコラス・フラメルは錬金術師で、ダンブルドアと共に賢者の石を作った事を知り、フラッフィーは賢者の石を守っている事を知る。スネイプはそれを狙っているとハリー達は考えていた。

 

 

 

 そして時が経ち、学年末試験最終日

 

 学生達は試験の結果に対し、話題しながら、勉強から解放された喜びを共有している。もちろん、ハリー達もそうだった。

 しかし、その場には灯葉はいなかった。灯葉はダンブルドア校長に呼ばれて、校長室へと行ってしまったからだ。

 灯葉を除くハリー達3人は解放感を味わうべく、外を歩いていた。だが、歩いている途中でハリーは額を抑える。ロンとハーマイオニーは心配そうにする。

 その時、何か閃いたのか、ハグリットの方へ向かう。

 

「おかしいじゃないか。タイミングが良すぎる」

「どういう事?」

 

 ハリーはハグリットがドラゴンを探していた事を知っていた。しかし、それは限られた人しか知らない。探していた所に偶然、ドラゴンの卵を持っている人がハグリットの所に現れるのか。

 ハリーはその出来事は全てスネイプの計画じゃないかと疑って、ハグリットに尋ねる。

 ハリー達はその時の状況を知り、ハグリットはその人にフラッフィーのなだめ方をうっかり教えてしまった事を知る。ハリーはスネイプが全部仕掛けたと確信する。

 

 ハリー達はマクゴナガル先生に事情を話し、ダンブルドア校長に注意を促そうとするが

 

「ダンブルドア校長はアベと共に魔法省へと行かれましたよ。なんでも留学について聞きたい事があると」

 

 ハリーは愕然とする。今、この場で一番頼れるダンブルドア校長がいない。しかも、同学年で頼りになる灯葉もいない。

 なら、自分達で守るしかない。

 ハリー達は賢者の石を守るべく、決心する。

 

 

 その日の真夜中、ハリー達はフラッフィーの下へと行く為、移動する。その時、ネビルは待ち伏せをして、ハリー達の前に立ち塞がる。

 

 

「何処へ行くのかは分からないけど行かせないよ!またグリフィンドールの点が減る。それにハリー。トウハと最近仲悪いんでしょ。トウハと仲良くしない限りここは通さない!」

 

 ネビルは拳を握り、戦う姿勢をハリーに向ける。

「ぼ、僕戦うぞ!」

「ごめん。ネビル」

 

 ハーマイオニーは杖を向けて、呪文を唱える。

 

-ペトリフィカルス・トタルス-

 

 ネビルは石のように固まり、地面に横たわる。ハリー達はネビルに謝罪を述べて、先へと行く。謝罪を述べる時、ハリーは一言、ネビルに言う。

 

「僕だって、仲良くしたいよ」

 

 ハリー達は透明マントのおかげで、無事にフラッフィーの所へと着く。

 フラッフィーは誰もいないのに音を奏でるハーブのおかげで寝ている。足元の仕掛け扉は扉が開いていた。まるでハリー達を誘っているかのように。

 

 ハリー達は扉の中に入っていく。賢者の石を守る為に。

 最初の罠は悪魔の罠だ。ハーマイオニーが罠を言い当てて、ハーマイオニーの機転で誰もケガすることなく3人は突破していく。

 

 次は無数の羽が生えた鍵の中から1つだけ鍵を探し出すという試練だ。

 この試練はハリーの箒の技術でクリアしていた。

 

 次の試練はチェスだった。ロンは自ら犠牲となり、ハーマイオニーは炎に囲まれながらも冷静な思考を失わずにハリーを先へと進ませる。

 ハリーは先へと進んでいく。先には敵が待っている事を知った上で。たった一人で奥へ行く。賢者の石を護る為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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例のあの人

 チェスの間から暫く細い道を歩く。ハリーはその道を一人で歩いていく。震えた手で杖を構えながら。この道の最終地点でスネイプが待っている。

 安倍灯葉はスネイプを味方と言っていたが、ハリーはそんな事を微塵も思っていなく、この先には必ずスネイプが待っていると思っていた。

 

 もし、スネイプだったら、トウハは間違っていたと言える。しかし、スネイプ以外の人だったらどうしよう・・・トウハに謝ればいけるかな。

 

 ハリーはスネイプがこの先に待っていると期待をして、道を歩いていく。

 やがて、道が終わり、その先には円の形をした大広間があった。大広間の周りには5つの柱が建っており、広間の中心には鏡がある。そして、鏡の前には人がいる。その人は鏡をじっと見ていた。

 その人はゆっくりと振り返る。ハリーはその人物に驚きながら、否定する。

 

「まさかあなたが?スネイプのはずだ!スネイプはいつも僕を・・・」

 

 クィレルはハリーの言葉に侮辱の笑いを浮かべ言う。

 

「彼はいかにも怪しげに見える。スネイプがいれば、誰も私を怪しまずに済んだはずだった!しかし!」

 

 クィレルは怒りを表現するかのように声を荒げる。

 

「アベ、スネイプのせいで全てが台無しになってしまったのだ!!トロールの時も!クィディッチの時も!スネイプは反対呪文で邪魔され、アベにはクィディッチの時、私の顔に使い魔の糞をやりやがって!」

 

「トウハは貴方が犯人である事を知っていた?それにスネイプは僕を救ってくれた?」

 

「そうだ。お前は知らず知らずのうちに助けてもらっていたんだ。まるで赤ん坊のようにな。スネイプは私から決して目を離さずに一人きりにはしなかった。それにアベも常にポッターを見ていた。手が出せなかった。しかし、今は誰もいない!今夜の赤ん坊のお世話は、私達がする!!」

 

 クィレルは鏡に振り返り、鏡に対して、怒鳴り始める。

 

「さぁ、鏡よ。ああ。そうだ。見えるぞ。賢者の石を持つ私が」

 

 クィレルは恍惚とした表情では鏡を見つめる。

 

「さぁどうやって手に入れる?鏡よ」

 

 その時、何処からかかすれた声がする。その声はかすれてていたが、どの声よりも聞こえやすく、体の芯から震える程の怖さを纏っている。

 

「その子を使え」

 

 声に導かれたクィレルはハリーに対し、怒鳴る。

 

「こい!ポッター!早く」

 

 ハリーは言われた通り、鏡の前に立つ。クィレルはハリーの横にたち、耳元で囁く。

 

「答えろ・・・何が見える?どうした!早く言え!」

 

 ハリーには見えていた。

 鏡が映る自分がポケットに賢者の石を入れる姿を。

 ポケットを探ると、そこには今まで探していた賢者の石が入っている。しかし、正直に答えたら、クィレルは賢者の石を手に入れる。もしクィレルの手に渡ったら、おそらくこの世は終わるだろう。

 ハリーは咄嗟に噓をつく。

 

「ぼ、僕がダンブルドアと握手してる。グリフィンドールが優勝して…それにトウハとロン達で仲良くパーティーを」

 

「嘘だ。もういい。わしが話す」

 

 またしても何処からかすれた声が聞こえる。

 クィレルは声に反応して、頭に巻いているターバンを外していく。ターバンの下にはもう一つ顔がある。その顔はハリーを見つめて、再会を喜ぶかのように笑う。

 

「ハリー・ポッター。また会ったな」

 

 クィレルのもう一つの顔は傷だらけで、以下にも凶悪そうな顔をしている。ハリーはその顔を見て、恐怖を感じたのか、絞り出す声で言う。

 

「ヴォルデモート…」

 

「そうだ。見ろ、この姿。こうして人の体を借りねば生きられぬ、寄生虫のような様を。ユニコーンの血でかろうじて生きているが体はとどめられなかった。だからあるものさえ手に入れれば、自分の体を取り戻す。そのポケットにある石だ」

 

 ハリーは震える体を鞭を打ち、大広間から逃げ出そうとする。しかし、クィレルが指で音を鳴らすと、大広間の周りに火が付く。

 ヴォルデモートは優しい口調でハリーに説く。

 

「馬鹿な真似はよせ。死の苦しみを味わうことはない。わしと手を組んで生きればよいのだ」

 

 ハリ―は強い口調でヴォルデモートを否定する。ヴォルデモートはその否定を喜ぶかのように笑いながら、ハリーに説く。

 

「嫌だ!」

「ははっ、愉快だなぁ。親に良く似ておる。どうだ、ハリー?父と母にもう一度会いたくはないか?2人でなら呼び戻せる。ハリー。この世に善と悪などないのだ。力を求める強き者と求めぬ弱き者がいるだけだ。わしとおまえなら全て思いのままにできる。さぁ、その石をよこせ!」

「やるもんか!」

 

 ヴォルデモートは笑うの止めて、一言。

 

「殺せ!」

 

 ヴォルデモートの一言でクィレルは跳躍して、一瞬にして、ハリーとの距離を縮ませる。跳躍した勢いでハリーの首に手を当て、持ち上げて、首を絞める。

 首を絞められたハリーは苦しい表情を浮かべて、唸り声をあげる。

 その声を聴いたクィレルは笑いを浮かべる。ヴォルデモートはその声をまるで好きな音楽を聴いているかのように目を細めている。

 

・・・死にたくない。スネイプは犯人じゃなかった。トウハに僕の方が勘違いだったと謝らなくては。

 

 ハリーは諦めておらず、この先の事を考えていた。

 ハリーは無意識に自分の首を絞めているクィレルの腕に触る。クィレルはその手を無視して、さらに手に力を入れる。

 しかし、その時、ハリーに触れた所からクィレルの腕が火傷を受け始める。

 クィレルは火傷の痛みでハリーの首から手を離す。クィレルは驚きと痛みの表情を混ぜて、腕を抑える。ハリーはやっと吸い込めた空気だったが、急に吸い込んだおかげでむせていた。

 

「あっ、あぁぁぁぁ!!なんだ、この魔法は!?」

「馬鹿者!早く石を奪え!」

 

 クィレルはまだ腕を抑えて、痛みを和らげるかのように大声で叫ぶ。ヴォルデモートはそのクィレルに叱咤する。しかし、ハリーの方が復活が早く、ハリーはクィレルの顔に触れる。

 触れた瞬間、クィレルの顔は罅が入る。クィレル、ヴォルデモートは苦しみの声を上げる。

 

「わあぁぁぁ」

「ぅおおぉぉ」

 

 クィレルは罅がやがて体中に走る。やがて、クィレルは砂と化して消えていく。残ったのはクィレルの服だけだった。

 ハリーはその服を見て、倒したと安堵して、ゆっくりと地面に落ちていた賢者の石を拾う。クィレルの服の上に靄が出てくるの気づかずに。

 やっと気づいた時、ハリーの目の前に靄がいた。靄はハリーの体を叫びながら通り抜ける。ハリーは襲われた衝撃で気絶をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

―誤算だった。また再びあの森へ帰り、時を来るのを待たなくては―

 

 靄と化しているヴォルデモートは気絶したハリーを見下ろしながら、考える。ハリーの手には賢者の石が握られている。

 賢者の石にはワシの情けない姿が映る。

 

―なんとも情けない姿よ。しかし、いずれこの世を征服するまでは我慢するまでだ―

 

 ヴォルデモートは森へ帰るべく、大広間を囲っている火を抜けて、出口へと向かう。しかし、ヴォルデモートの誤算はまだあった。

 

―なんだ!この火は抜けれない。逃げれないじゃないか―

 

 その時、火を避けるように一人分の道が出来る。そこを通ってくる一人の人物。

 その人物は安倍灯葉だ。

 灯葉はマホウトコロの服を着ていて、手には錫杖をもっていて、歩きながら、錫杖を鳴らす。

 

「さて、ヴォルデモート卿。初めまして。安倍灯葉と申します」

 

―東洋の魔女がワシに何の用だ―

 

「貴方に会えたのは嬉しいですが早速、浄霊を始めます」

 

 灯葉が持つ錫杖を鳴らすと柱から火が走る。火は別の柱に向かう。柱に着いたら、また火は別の柱に向かう。最終的には最初に着いた柱に着く。

 

―なんだ!これは?―

 

「五芒星です」

 

 灯葉は錫杖を鳴らし、呪文を唱える。

 

御霊会(ごりょうえ) 霊を鎮めよ イザナミよ―

 

 それを合図に五芒星は火の光、赤い色ではなく、白い光となる。その光は徐々に靄となっているヴォルデモートに近づいていく。

 

―なんだ!?これは?―

 

「浄霊です。消えなさい。怨霊よ」

 

 光はヴォルデモートを包む。やがて光は球体となる。

 灯葉は錫杖を鳴らす。球体は小さくなり、やがて、光は米粒くらいの大きさとなり消えていく。灯葉は消えていった光の球体の所を見て、錫杖をしまう。

 

「さて、終わりましたか」

 

 灯葉はまだ倒れているハリーの手から賢者の石を拾う。倒れているハリーに対し、一言放つ。

 

「行動は立派でしたが、まだ赤ん坊のままですね。ヴォルデモートは消えたし、後は賢者の石を渡すだけ」

 

―いや、ワシは不死身だ。しくじったな。東洋の魔女よ―

 

 灯葉は驚き、振り返る。そこには靄のヴォルデモートがいた。靄となっている顔は表情が見えずらいが、笑っているようだ。

 

「まさか?貴方まだ死んでいない」

 

―ワシは不死身だ。覚えたぞ。貴様の名を。アベトウハ 待っていろ いつか必ず―

 

 そう言い残すと出口の方に向かっていき、消えていく。灯葉はそれをただ見るだけだった。灯葉は驚いて何にも行動に移せなかった。しかし、その表情は笑っていた。

 

 




補足

御霊会
霊魂、怨霊の祟りを鎮め慰めることを行う祭りの事。

本稿では御霊会は浄霊の一種の儀式という事にしました。ちなみに祇園祭は御霊会が起源となっているそうです。



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1年の終わり

 ハリーが目を覚ました時、医務室のベットの上にいた。ベットの傍には誰かがお見舞いに来たのか、多くのお見舞いの品がある。傍には安倍灯葉がいる。

 灯葉はハリーが起きた事を知るとリンゴを渡す。リンゴはブイの字の皮が付いている。

 

「これは?」

「ウサギです」

「ありがとう」

 

 ハリーはそのリンゴを齧る。リンゴの酸味としゃりしゃり感が感じられる。灯葉も同様にリンゴを齧る。

 ハリーは何か言いたげな様子で、灯葉をちらちらと見る。灯葉はその視線に気づいていない様子だ。ハリーは勇気を出して、口に残っているリンゴを胃に押し込み、灯葉に話しかける。

 

「トウハ。この間はごめん」

「なんで謝罪をするんですか?」

「スネイプが犯人ではない事を教えてくれたのに、忠告を無視するなんて」

「ああ、その事ですか。問題ないですよ」

 

 それから会話が続かなく、ハリーを会話しようとするが、言葉が出てこない。

 

 なんて言えばいいのだろうか・・・・

 なんて、情けない。

 

 ハリーは自分が情けないのか、悔しさに耐え切れないのか、ズボンを握る。

 灯葉はそんなハリーに気づかないのか、立ち上がり、医務室から立ち去ろうとする。

 ハリーは出ていく灯葉を引き留めるかのように声を張り上げる。

 

「トウハ!あの・・・・これからは」

 

 灯葉は振り返り、ハリーに向かって微笑む。その微笑みは今のハリーにとって、眩しすぎて、直視できなかった。

 

「ハリー。貴方の行動は立派でしたよ。けど今度は自分の力だけで動いてください。何時までも赤ん坊のままでは駄目ですよ」

「わかった。ありがとう!トウハ」

 

 灯葉の言葉で、ハリーの中にある情けなさが無くなったのか、灯葉を見つめて、感謝を述べる。灯葉はそれを聞いて、医務室から出ていく。

 

医務室出ていく灯葉は壁によりかかっているスネイプに話しかける。

 

「スネイプ先生。ハリーが起きましたよ」

 

 スネイプはその場を動かすにじっと灯葉を見つめている。

 

「アベ。貴様。ポッターを煽り、また見守ったり何をしたいのだ?」

「何も。私はただ知りたいだけ。ハリーに掛けられた魔法の事を」

 

 スネイプは表情が変わらないものの、眉をピクリと上げ、灯葉に近づく。灯葉とスネイプの距離が数十cmの所でスネイプはいつもよりも低い声を出す。

 

「貴様はその事を何も知らなくていい」

「ポッターにそこまで熱心になるとは。魔法と関係あるのですか?」

 

 その時、スネイプは灯葉の首筋の服を掴み、自分の額と安倍灯葉の額をくっ付くかくっ付かないの距離に近づいて、さらに低い声で言う。

 

「もう一度言う。あの魔法には関わるな。いいな」

 

 灯葉の返事は無く、ただ微笑みで返す。その事にイラついたのかスネイプはさらに力を入れて、服を強く握る。

 

「ゼブルス。よせんか」

「・・・・ふん」

 

 スネイプはダンブルドアに後ろから名前で呼ばれて、冷静になったのか、服を握る手が弱まり、服から手を離す。スネイプはダンブルドアと灯葉を一瞥し、去っていく。

 去っていくスネイプを見たダンブルドアは仕方ないと言ったような表情で立派な髭を触る。

 

「よけいなお世話だったかのぅ」

「いえ。助かりました」

「それは良かった。それよりトウハ。本当に魔法の興味だけでハリーを見守っているだけかのぅ?」

「そうです。それだけです」

 

 灯葉とダンブルドアの間に一瞬だけだが、空白の時間が生まれる。

 

「そうか・・・なら、今後も見守ってくれんか」

「本当に興味が失せるまでなら」

 

 灯葉はダンブルドアに一礼して、大広間に向かう。ダンブルドアは去っていく灯葉もまた見ていた。

 

 

 

 

 

 大広間に着くと、他の寮の生徒達は集まっていた。生徒達は昨夜の話題で持ち切りだ。その話題はハリーがホグワーツに隠されていた賢者の石を護った事だ。

 ハリー達は一夜で話題の者になってしまった。そのせいなのか、ハーマイオニーとロンは大広間に居づらく、大広間へ続く廊下で待っていた。

 それに対し、灯葉は大広間、ネビルの横でハリー達が来るのを待っている。

 

「トウハ。ハリー達と何かあったの?最近、仲が悪くなってると見えてしまって。もしかして賢者の石の事?」

「関係ないです。それより、ネビル。私の心配をしているのですか?」

「ううん!それは、ええっと」

 

 灯葉はネビルの質問に一言で返しつつ、ネビルに質問で言葉を返していく。ネビルはその質問にどうやって答えようか悩み、顔を下を向けて、言葉をつまらせる。

 その様子を見た灯葉はネビルの顔を下から覗き込んで、様子を見る。ネビルから見て、灯葉は上目づかいになってネビルを見ている。その視線に耐え切れず、ネビルは顔を下から横へと動かす。顔は湯気が出る程、赤くなっている。

 ネビルの様子を見ていたフレッド、ジョージの双子はネビルをからかう。

 

「どうした?色男?答えろよ。返事を待ってるぞ」

「トウハが待っているぞ」

 

 ネビルは双子のからかいに耐え切れないのか、席を移動する。しかし、顔はまだ赤いままだった。

 

「ネビル。どうしたんでしょうね」

 

 灯葉は呟く。呟きを聞いたフレッド、ジョージは灯葉に聞こえないように灯葉に背を向けて、ひそひそ話をする。

 

「フレッド。教えようか」

「いや、これはこれで面白い」

 

 灯葉は2人の笑い声が聞こえていたが、無視を決めて、ハリー達が大広間に来るまで、同じ寮の人と喋っていた。

 ようやく、ハリー達が到着すると、少し、遅れて、ダンブルドアも到着し、寮対抗戦の結果を報告する。

 

「また1年が過ぎた。今年の最優秀の寮を表彰したいと思う。では、得点を発表しよう。

第4位グリフィンドール、312点。第3位ハッフルパフ、352点。第2位はレイブンクロー。得点は426点。そして、第1位は472点で、スリザリンじゃ」

 

 その報告でスリザリンからは喜びの声が上がる。他の寮達は声を上げない所か、スリザリンを睨む生徒達がいた。しかし、ダンブルドアは拍手し、労いの言葉を送る。しかし、続けさまに報告する。

   

「よーしよしよくやった、スリザリンの諸君。だがのぅ、最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまい。ギリギリで得点をあげた者がいる」

     

 ダンブルドアはハリー達が賢者の石を護った事を称えるようにハーマイオニーに50点、ロンに50点を加算する。そして、ハリーには60点加算する。それによって、スリザリンと並ぶ。

 生徒達は全員、今年はスリザリンとグリフィンドールの同時優勝だと思っていた。他に活躍した人は話題に上がっていないからだ。しかし、ダンブルドアはネビルに友達と立ち向かう事を称賛し、10点加算する。

 結果、グリフィンドールの単独優勝となる。

 

 グリフィンドールは帽子を空に挙げて、逆転優勝をした事を表現する。ハッフルパフ、レイブンクローもまた、グリフィンドールに向かって拍手を送っていた。喜びの声はホグワーツの外まで聞こえていた。

 

 生徒達はいよいよ実家に帰る時間となる。

 生徒達は鞄に荷物を突っ込み、汽車へと乗り込む。安倍もまた鞄に荷物を突っ込み、汽車へと乗り込む。手には一通の手紙を持って。

 その手紙には、親愛なるダンブルドアの生徒 トウハ・アベ、また、手紙の封蝋にはNFの印が押されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




1話だけ閑話、クィディッチの練習の状況を書こうかなと思っております。

あと設定上、交換留学となっていますが、日本マホウトコロにいった魔法使いは本編には出さない予定です。
暇があれば、閑話で出そうかなと思っております。
ちなみに魔法使いは具体的には決まっておりませんが、マルフォイ家の遠い親戚でいこうかなと思っています。


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閑話 クィディッチの練習風景

 ハリー達がトロールを倒してから日が経ち、今日はハリーがクィディッチの初練習となる。

 ロンやハーマイオニー、灯葉もハリーの初練習を見るべく、ハリーと共にクィディッチ競技場へと向かう。

 

 クィディッチ競技場はもうグリフィンドールの選抜選手達がいる。ハリーを見かけると、オリバー・ウッドはハリーの肩を叩き、喜びの声を上げ、フレッド・ウィーズリー、ジョージ・ウィーズリーはハリーをからかう。

 

「ハリー。期待してるぞ!!」

「大丈夫さ。ブラッジャーから守ってやるさ」

 

 灯葉達はハリーの練習を見守るべく、観客席へと行く。灯葉は待機席で懐から紙を取り出し、地面にひらひらと落とす。紙は子供へと変わる。子供は練習している選手を見て、目をキラキラさせて、興奮している。

 

「おーすごい!飛んでる!!あ、ハリーお兄ちゃんも!」

「トウハ。なんで、子供を出した?うるさいじゃないか」

「いいじゃないですか。水玄 箒に乗ってみたいんでしょ」

「うん!」

 

 ロンは騒いでいる子供に対して、灯葉に文句を言うが、灯葉は水玄の頭を撫でて、子供に同意を求める。

ロンは灯葉に注意しても無駄という事を知り、ハーマイオニーを見て、灯葉を注意するように目で訴える。しかし、ハーマイオニーは灯葉と同様に頭を撫でる。

 

「いいじゃない!ロン。それにこの子。私の恩人でしょ。有難う」

「いいよ!ハーマイオニーお姉ちゃん」

 

 ロンは溜息を吐き、選抜チームが休憩を取るまで、一心に練習を見ていた。

 

 

 

 

「10分休憩だ!」

 

 オリバーの声で選手達は箒の高度を下げて、地面へと降り立つ。ハリー以外の選手は真っすぐ、休憩に向かうが、ハリーは初練習のせいなのか、その場にへたりこんでしまう。それを見た灯葉達はハリーの元へと向かう。

 

「ハリー。大丈夫か?」

「ロン、大丈夫。ちょっとよろめいただけ」

「ハリーお兄ちゃん。大丈夫?」

 

 休憩していたオリバーがハリーを見て、何かを見つけたのかハリーの方に近づき、灯葉に興奮した声で話しかける。

 

「おお!君がマホウトコロの生徒か!!マホウトコロの生徒はクィディッチが上手いと聞く!見せてくれないか!?」

「けど今、私、箒がないです。それに代表ではないから邪魔になりますよ」

「「箒ならある。練習用の箒だけどな」」

「邪魔にはならない。休憩中の合間に見せてくれ」

 

 灯葉の言い訳に対し、いつの間にか後ろにいたジョージ、フレッドが箒を手に持ち話しかけ、オリバーは休憩中に見せてくれと頼み込む。

 安倍は言い訳が思いつかなかったのか、ジョージ、フレッドから箒をもらい、箒にまたがる。

 

「じゃちょっとだけですよ。ついでに水玄、一緒に乗りましょうか」

「うん!」

 

 水玄も箒にまたがり、灯葉は箒の高度を上げ、飛び回る。その速さはグリフィンドールの代表チームと引けをとらない程だ。また箒の技術も、オリバーが自然に感嘆の声を挙げていた。ほぼ直角に曲がると思えば、急激に高度を落とし、地面擦れ擦れで飛び回っている。

 水玄は箒に乗って楽しいのか、興奮した声が聞こえてくる。オリバーもまた興奮して、飛んでいる灯葉を見つめて、灯葉の技術を褒める。

 

「子供を乗せて、あの技術か!素晴らしいな。次世代のチェイサーだな」

 

 灯葉は箒の高度を下げて、皆が集まっている所に降りる。水玄は箒から降りても、興奮が続いている様子だ。

 

「水玄。楽しみましたか?」

「うん。ありがとう!」

「流石!マホウトコロから来た事ある!上手い!選抜チームに入る気はないか?」

「今は箒よりも興味がある物があるので、遠慮します」

 

 オリバーはチームに勧誘をしようとするが、灯葉は遠慮する。しかし、オリバーは諦めきれない様子で何かを考えている。

 

「じゃせめて!マホウトコロのクィディッチだけ聞かせてくれ!」

「……では代わりに」

「ああ、その事か。いいとも!」

 

 オリバーは灯葉と共に練習場から移動する。マホウトコロのクィディッチを聞くために。

 他の選抜選手は肩をすくめて、それぞれがクィディッチバカと愚痴をこぼし、オリバーが戻ってくるまで、休憩を取っていた。

 

 

 一方、オリバーと灯葉はマホウトコロのクィディッチの話で盛り上がっている。

 

「そうか!だからあれほどの技術を身に着けたのか。練習方法は!?」

「練習方法は…」

 

 オリバーは灯葉が話すマホウトコロの練習方法を必死にメモを取る。その練習方法にオリバーは驚いたり、関心したりなど、灯葉の言葉に一言一句に反応する。

 

「これで話は終わりです。オリバーさん。次は貴方です」

「これは参考になる。これからの練習に取り入れるべきだな。たしか、クィレル先生の事を聞きたいのか」

「ええ」

 

 その時の灯葉の目は獲物を狙うような目だった。

 

 

 

 

 

 




次は秘密の部屋を書きます。
下手くそですが、応援の方よろしくお願いします。


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秘密の部屋
夏休みの過ごし方


申し訳ないですが、短めです。


 いつも白い靄がかかっている湖に誰も姿を見たことがない小島がある。そこには小さな木製の小屋がある。

 その小屋には、揺れる椅子に身を任せて、本を読んでいる一人の老人がいる。老人は年をとっている事が一目でわかるほどに顔の皺が深く刻まれており、髭を胸まで生やしており、頭は剥げている。

 老人は膝の上にある本を体の揺れに合わせながら本を捲り、本の内容を口にする。爺さんの目の前にいる一人の少女に向かって喋っているようだ。

 

「錬金術の考えでは、万物は火、空気、水、土の4つの属性に分けられる」

「なるほど。陰陽道と何やら通じるものがありそうですね」

「人が考える事はそう大差ない。人は学ばない」

 

 老人の目が細める。何かを思い出すかのように。

 

「さて、最後の弟子、トウハ。どこまで学べるか楽しみだ」

 

 安倍灯葉は夏休み中、その小島で過ごしていた。

 一方、ハリーポッターはダーズリー家で手紙を来るのをずっと待っていた。しかし、灯葉以外の人からは手紙が来ず、連絡が取れずにいた。

 ハリーは窓枠の上にある鳥の形で折っている紙を手にもつ。この紙は気が付いたらいつも窓枠の上にあった。

 その紙を持つと、紙は自然に開き、書かれている内容が見える。内容は他愛もないが、ハリーにとっては寂しさを紛らわすのには十分だった。

 ハリーはその紙に返事を書き、窓枠の上に置く。

 ハリーの手から離れた紙は窓の隙間から抜ける。窓から抜けた紙は勝手に折り始め、鳥の形となる。鳥は羽を動かし、空へと旅経つ。

 ハリーはそれを窓から見守る。これがハリーの朝の日常となり、昼、夜はダーズリー家の世話の日常となっていた。

 

 

 ある日、ダーズリー家がお客様が来ることとなり、ハリーはお邪魔虫のように部屋に閉じ込められる。しかし、部屋にはダーズリー達が知らないお客がいた。

 そのお客は服とは呼べないボロボロな布を着ており、顔はコウモリのような長い耳、大きい緑の眼がギョロリと飛び出している。そのお客はハリーを見つめて

 

「ハリー・ポッター。なんていう光栄でしょう」 

「誰なの?」 

「ドビーでございます。屋敷しもべのドビーです」 

 

 ドビーはハリーに忠告する為に来たと言う。

 忠告はホグワーツには行くな。

 今年のホグワーツには恐ろしい罠が仕掛けられているという内容だった。ハリーはその忠告を拒絶する。

 ハリーにとって、ダーズリー家は自分の家ではない。自分の家はホグワーツなのだから。

 ハリーはドビーにそう伝えるがドビーは口を滑らす。

 

「僕は学校に戻らなくちゃ。ここには居場所がないんだ。僕の居場所はホグワーツなんだ、あそこには友達がいる」 

「一人だけ、手紙くれる友達のためでッか?」 

「待ってよ・・どうして知ってるの?」 

「怒ってはダメでございます。ハリー・ポッター」 

「手紙を返してよ」 

「ダメです・・」 

 

 ドビーは手紙の束を持ちながら、階段を降りていく。ハリーがドビーを追うが、ドビーが逃げていった先にはダーズリー家のお客がいる。

 ドビーはそのお客に向かって魔法でケーキを落とす。ダーズリー家の大切なお客に。

 もちろん、その一件でハリーの伯父、バーノン・ダーズリーは激怒し、ハリーを部屋に監禁した。

 

 しかし、それは無意味の行動となる。

 ハリーの友達、ロン・ウィーズリー、ロンの家族であるフレッド、ジョージが空飛ぶ車に乗り、ダーズリー家からハリーを救出した。

 

 

 



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2年生の準備

 

 湖にある小島に建っている小屋の扉が開く。小屋の中からホグワーツの制服を着た安倍灯葉が出てくる。その後ろから老人が出てくる。老人は灯葉に本を差し出す。本の内容は錬金術に関する物だ。

 

「ホグワーツ出発までまだ日があるだろう。それでも読んでおけ」

 

 老人は灯葉に本を渡し、灯葉の手を握る。

 すると、老人と灯葉の周りの景色が一瞬にして変わる。水に囲まれた景色から薄暗く、ホコリが舞い、ネズミや虫が徘徊する裏道に変わる。鼠や虫は二人の登場に現れたのか、一斉に下水に潜り込む。または暗闇に溶け込む。

 

「ノクターン横丁だ。ここを右に曲がって真っ直ぐいけばダイアゴン横丁だ。ダンブルドアによろしくな」

「ええ。ではまた来年。ミスター ニコラス」

 

 ニコラスと呼ばれた老人は灯葉の手を放し壁に向かって歩いていく。歩いていく先にネズミが消えた暗闇と同じくらい黒い色の靄が一瞬にして現れ、老人の姿を包んで消えていく。灯葉はその様子を見守る。

 

「後は頼みましたよ 水玄」

 

 

 

 灯葉はニコラスの言う通りに裏道から右に曲がろうとする。

 しかし、右に曲がる瞬間、プラチナブロンドの髪、青白い顔に尖った顎の中年の男にぶつかりそうになる。中年の男性はいきなり出てきた灯葉を睨みつけるが、その中年の男の背中から、ドラコ・マルフォイが驚いた声を出す。

 

「なぜ!アベがここに!?」

「知り合いに会ってました」

「ドラコ。知り合いか?」

「ええ。父上。東洋の学校からの留学生です」

「ほー。君が東洋の留学生か・・・・グリフィンドールか」

 

 中年の男は灯葉を値踏みするような目で見る。しかし、制服の勲章を見て、嘲笑うかのように言葉を放つ。

 灯葉は中年の男にお辞儀しながら、自己紹介する。

 

「初めまして。トウハ・アベです」

「ルシウス・マルフォイだ。噂はかねがね聞いているよ。なんでも優秀な魔女だとか」

「ありがとうございます」

「息子と仲良くしてやってくれ。マグル、グリフィンドールの生徒よりもな」

 

 そう言い残し、ルシウスは息子と共にノクターン横丁から出ていく。

 灯葉はその場から去るルシウスを見ていた。特にルシウスの手に持っている本を見ていた。

 

 

 そして、灯葉もマルフォイ親子と同様にノクターン横丁を出て、ダイアゴン横丁に行く。2年生に必要な物を買う為に。数日前にダンブルドア校長から届いた必要な物リストを見る。

 リストを見た灯葉は眉をしかめる。

 

「本当に必要なんですか?」

 

 そこに書かれているのは今学期に必要とされる教科書の一覧が載っていたのだが、その大半が今学期から闇の魔術の防衛術の先生になるギルデロイ・ロックハートが書いた本で埋められている。

 名前を見るからにそれは教科書ではなく、小説だ。

 

 灯葉は本屋でリストを載っている本を買う。買うのも一苦労だった。

 本屋にロックハート本人がいて、握手会を開いている。そのおかげか、多くの魔女がいて、混雑している。

 混雑の原因であるロックハートは魔女に笑顔で握手している。握手された魔女は満点の笑顔と興奮が収まらない様子だ。

 灯葉はロックハートを一瞥したが興味がないのか、さっさと本屋から去ろうとするが、何かを見つけたのか、握手待ちをしている大勢の魔女の壁に隠れて様子を見ている。

 

 灯葉の見つめる先には先ほど会っていたマルフォイの親子と、赤毛の中年の男がいる。赤毛の中年の男周りにはハリー、ハーマイオニー、そして、ウィーズリー兄弟達がいる。そして、その兄弟達の後ろに妹らしき女性がいる。安倍灯葉はその集団に加わる事をしようとはせずに傍観に徹している。

 ルシウスと赤毛の中年の男は今にも殴り合いになろうかというくらいな雰囲気で睨みあっている。

 

「役所も大変忙しいだろう。留学生だったり、抜き打ち検査だったり、魔法使いの面汚しと言われてもねぇ」

「何が面汚しかはお互い意見が違うようだ」

 

 ルシウスは赤毛の中年の男からハーマイオニーを見る。

 

「マグルと付き合うとは。まだ落ちぶれ足りないそうだな。付き合うならまだ東洋の魔女の方が良いだろうに」

 

 ルシウスは本をウィーズリー家の妹らしき女性が持っていた鍋に入れる。

 灯葉はその瞬間を見逃してはいなかった。ハリーもまた鍋を見て、何か気づいている様子だ。

 ルシウスは本屋から去る。ウィーズリー家とハリー達は去っていくルシウスをただ睨んでいた。

 灯葉はその様子を見て、笑う。

 

「これがイギリスの純血思想ですか。これも中々面白そうですね」

 

 本屋から出るウィズリー家の妹らしき女性の鍋の本、またスマイルを浮かべて握手しているロックハートを見つめる。

 

「あんな魔法使いでは今年は期待出来ないと思っていましたが、あの本には期待できる」

「さぁあの本の秘密を暴こう」

 

 そして、灯葉は出発の日するまで、漏れ鍋の部屋で本を読んでいた。ロックハートの本ではなく、ニコラスに渡された錬金術の本を。

 

 

 

 



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それぞれの思い

ここから少し、設定を変えるかもしれないので設定改変タグを付けさせて頂きます。


 ホグワーツへ出発する列車のコンパートメントに膝に本を載せて寝ている一人の少女がいる。少女は本の退屈さと窓から入ってくる光のおかげで眠りについたようだ。

 

 そのコンパートメントに入ってくる人がいる。その人物はネビル・ロングボトムだ。

 ネビル・ロングボトムは列車のコンパートメントが空いていなく、彷徨っていた。ネビルは小声で言いながら、扉を開ける。

 

「トウハ・・・・失礼します」

 

 ネビルは安倍灯葉の向かいに座る。灯葉はネビルが来た事に気づかずにまだ寝ている。窓から入ってくる光で黒曜石のように髪が輝いている。

 ネビルは灯葉の寝顔を見つめている。その時、灯葉が寝苦しいのか姿勢を変える。ネビルは慌てて、窓の景色を見る。

 しかし、まだ灯葉は眠いのか、夢の中だ。

 ネビルは安心したように息を吐く。その時、ネビルは灯葉の膝にある本を見る。その本がロックハート著の本と知ると項垂れがら、一言を吐く。

 

「トウハもロックハートが好きなのかな・・」

 

 

 

 

 

 ホグワーツの生徒が学校に向かう為、列車に乗っている時、イギリスの魔法省にはマホウトコロの校長、比丘尼校長がいる。比丘尼校長は尼の恰好をしており、手には錫杖を持っている。比丘尼の隣にはオールバックの髪型をした男性がいる。男性もまた片手で錫杖を持ち、片手は痒いのか首筋を掻いている。

 

 その向かいにはダンブルドア校長、イギリスの魔法省、国際魔法協力部。いわゆる外交を管轄している部署の部長、バーテミウス・クラウチがいる。

 ダンブルドア校長は比丘尼と挨拶として抱き合う。その姿はまるで爺さんと孫が久々の再会をしているようだ。

その隣ではクラウチとオールバックの男性が握手をしている。

 

「ミズ・ビクニ。ようこそ。イギリスへ」

「ミスター・ダンブルドア。お招きありがとうございます」

 

「ようこそ。ミスター・キイチ」

「どうも。ミスター・クラウチ」

 

 4人は椅子に座り、話し合いを始める。切り出したのはクラウチだ。

 

「日本からわざわざ来てもらったのは他でもない。再来年、ホグワーツで三大魔法学校対抗試合をやる予定だ。ホグワーツ魔法魔術学校、ダームストラング専門学校、ボーバトン魔法アカデミーの3校だ。そこにマホウトコロも参加してもらい、四大魔法学校対抗試合を開く予定だ。どうだ?」

 

 その提案に口を開いたのはキイチと呼ばれた男性だ。キイチはテーブルに足を乗せて、退屈そうに口を開く。

 

「どうって言われてもな、その試合の事はまーーーったく知らない。それにクラウチさんよ。あんたの目、どう見てもギラギラしている。成功させて、出世でもしたいのか?」

 

 クラウチはキイチの言った事が当たったのか、苦虫をかみつぶしたような顔をする。しかし、その顔は一瞬に変えて、笑顔で話す。

 

「そんな事は無い。ミスター・キイチ」

「どうだかな」

「止めなさい。鬼一」

「・・・・はいよ」

 

 鬼一は比丘尼の仲裁で足をテーブルから乗せるのを止めて、これ以上言うのをやめる。しかし、やる気の無さは表に出すのを止めない。

 比丘尼はため息を吐き、クラウチに謝罪する。クラウチはまったく気にしていない様子だ。

 

「申し訳ありません。ミスター・クラウチ」

「問題ない。ミズ・ビクニ。それより試合は参加する気はあるか?」

「キイチの言う通り、私達はその試合を知りません。つい最近まで鎖国に近い状態でしたから、日本の魔法界以外の知識はほとんどありません」

「ミズ・ビクニ。気にする事は無い。その代わり、日本はマグルと折り合いがついておるじゃろう」

「その代わり、マホウトコロは他の魔法界と比べて、閉鎖的です。何とかしたいと思っていますがなかなか思うように出来なくて」

 

 比丘尼は肩を竦める。それをあくびをしながら、鬼一はフォローする。

 

「ふぁーー。しょうがないだろう。マグルが勝手に鎖国してしまったし。それにヴォルデモートという奴がいたしな」

「ミスター・キイチ。あんまりその名前は出せないでくれ」

 

 ヴォルデモートという名前が出るとクラウチは顔を青くし、震えながら鬼一を責める。その様子に鬼一は笑っている。比丘尼は咳払いし、空気を変える。

 

「さて、ミスター・ダンブルドア、クラウチ。その対抗試合、マホウトコロは参加します」

「ミズ・ビクニ。感謝する」

「さて、詳しい内容を詰めようじゃないか」

 

 ダンブルドア校長とクラウチはビクニの発言に喜ぶ。特にクラウチは喜んでいた。ダンブルドア校長も顔には出せないが、顔が微笑んでいた。3人は2年後の四大魔法学校対抗試合について話し合いを進め始める。

 

 鬼一は話し合いには参加せずに3人を見ていた。

 3人とも対抗試合とは別にそれぞれの思惑があるな。まるで狐と狸の化かし合いだな。鬼一は思わず、3人の化かし合いに吹き出しそうになる。

 吹き出しそうになるが、何とかこらえて、鬼一はダンブルドア校長を見つめる。

 ヴォルデモートと言ったら、僅かながら、眉を動かした。つまり、ヴォルデモートはまだ死んでいない。つまり、戦える。そう思うと鬼一は錫杖を持っている手に思わず力が入る。

 

 イギリスの友好関係は正直どうでも良かったが、ヴォルデモートには正直興味がある。

 鬼一は外交官に任命された以前、対テロ組織部隊にいた時の戦いの高揚を思い出すかのように錫杖を鳴らした。




日本の魔法界とマグル界の関係性を以下のように設定しました。

・魔女狩りという魔法使いの迫害は他の魔法界と比べて少ない。

 歴史的大きな事件は豊臣秀吉による声聞師狩り。いわゆる陰陽師狩り。
 陰陽師は追放され、貴重な文献を滅却された。しかしながら、マホウトコロが滅却された文献を持っており、日本の魔法は廃れず、被害者も片手で数える程しかいなかったおかげで確執が生まれる事はなかった。さらに江戸時代になるときっかけさえあれば、魔法界に入れるような距離を保っていた。

他の魔法界の状況が違っている原因の一つ
・日本の鎖国。

 鎖国により、日本の魔法界もまた海外との交流を絶ってしまう。その数百年後、開国により、日本は海外の交流が始まり、日本の魔法界でも少しずつだが海外の交流を始める。その際、国際魔法使い連盟に加入し、連盟が定めた国際魔法機密保持法により、日本でも魔法界を隔離する事になったが、数百年続いたマグルの交流はそう簡単には切れる事はない。しかし、ヴォルデモートの登場により、交流は絶たれてしまい、鎖国状態に戻ってしまう。

 本当は本文に書きたかったですが、文才がない為、ここに書きました。申し訳ないです



 設定を見ると日本は国際魔法使い連盟に加入している上で国際魔法機密保持法が制定されたと捉える事も出来ると思いますが、本小説では日本は制定された後で連盟に加入したという事にさせて頂きました。

 あと、魔女狩りのような大きな迫害は一様ないと設定させていただきました。
キリシタン弾圧に関しては、陰陽師とは関係なさそうなので、陰陽師の迫害は上記の事件を例に挙げました。


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2年生の始まり

 眠りについていた安倍灯葉がネビルに起こされたのは汽車がホグワーツに止まった頃だった。

灯葉は眼を擦りながら起きる。

 

 

「・・・いつの間にか寝てしまいましたか。ネビル、ありがとうございます」

「ううん。そろそろ降りよう。トウハ」

 

 灯葉は膝に載せていた本を閉じて、ネビルと共に機関車から降り、ホグワーツ魔法学校へと行く。途中でハーマイオニーに会ったが、ハリーとロンには会えず仕舞いだった。

 ネビルは心配そうにしていたが、ハーマイオニーは二人の事を気にする所か、ご機嫌だった。満足顔で表紙にサインが書かれたロックハート著の本を大事そうに抱えるのを見て、灯葉とネビルはハリー達の事を話題には出来ずに苦笑いするのみだった。

 

 ハーマイオニーがやっとハリー達の話題を切り出すのは新入生の組み分けの途中だった。

 

「そういえば、ハリー達は?」

「ハリー達はいませんね」

「そうだったんだ。どうしたんだろう」

 そんな会話していたら、組み分けが終わり、ダンブルドア校長が去年と同じく禁止事項を述べていく。

 最後にロックハートを闇の魔術の防衛術の先生になった事を紹介する。生徒達が座っている席からは拍手が鳴り響く。

 主に女子生徒達が拍手をロックハート先生に送っている。その中にはハーマイオニーも当然いた。ロックハート先生は拍手を応えるかのようにウィンクして、歯を光らせて、笑顔を見せる。

 

「やぁ、ホグワーツの生徒達。皆さんのご存知の通り、ギルデロイ・ロックハートです。今年、闇の魔術に対する防衛術を教えることになりました。不安があるかもしれませんが、何度も危険を乗り越えている私が教える限り、皆さんには不安なんて与えません」

 

 その笑顔と言葉でさらに拍手の音が大広間に鳴り響く。

 拍手をする女子生徒達に対し、男子生徒はロックハートを冷ややかな目で見ていた。

 ネビルはロックハートを見ずに灯葉を見ていた。灯葉は拍手を送らずに頬杖をついていた。その灯葉の様子から何やら安堵したのか、嬉しそうだ。

 

 

 ロックハート先生の紹介後、宴会が始まる。

しかし、宴会にはロンや、ハリーの姿を現す事はなかった。結局、灯葉達がハリー達と会えたのは宴会後の寮だった。

 二人のいう事だとキングズ・クロス駅の9と4分の3番線に入れず、ホグワーツに行く為に空飛ぶフォード・アングリアに乗ってロンドンからホグワーツまでの距離を飛び、到着の際には校庭の暴れ柳に突っ込んだとか。

 

 結果、ホグワーツが始まる前ということで減点こそなかったものの、この件をマグルが知り、大騒ぎになりそうになり、魔法省が動くことになった。またハリー達は罰則を受けなければならないことになってしまう。

 しかし、ハリー達はその事よりもハーマイオニーの様子が気になっている。

 

「なんて、無謀な!!もう知らない」

 

 ハーマイオニーはそう言い残し、自分の寝室へ行く。ハリーは登るハーマイオニーをただ見るだけで、2年生の初日が終わる。

 

 

 

 二日目の朝

 

 ハリー達はハーマイオニーと灯葉に挨拶がするが、ハーマイオニーは若干遅れながらも返答する。

 

「おはよう、ハーマイオニー」

「・・・・おはよう」

「おはようございます」

 

 それだけで会話が終わり、ハリー達は朝食を食べる。その時、フクロウ便が来て、ロンの前に赤い手紙が届く。ロンはその赤い手紙を見ると、体を震わせている。灯葉はロンの姿を見て、尋ねる。

 

「それは何ですか?」

「吠えメールだよ!それはもう・・・」

 

 言いかけた時、赤い手紙が浮き、口のようになる。口はロンに向かって、唾を吐くかのように吠えまくる。近くにいる人はあまりの吠えに耳を防ぐ。

 

「車を盗み出すなんて、退校処分になっても当たり前です!!車がなくなっているのを見て私とアーサーがどんな思いだったか!お前はちょっとでも考えたんですか!!」

 

「昨夜もダンブルドアからの手紙が来て、アーサーは恥ずかしさのあまり死んでしまうのかと心配しました!! お前もハリーも間違えば死ぬ所だったのですよ!!」

 

 ウィーズリーは浮いている手紙に頭が上がらず、視線を下に向ける。吠えメールから名前が出た事で、ポッターも申し訳なさそうにしている。

 

「全く愛想が尽きました!さらにはお父様は役所で尋問を受けたのですよ!!今度ちょっとでも規則を破ってご覧なさい!!私たちがお前をすぐ家に引っ張って帰りますからね!!それとジニー。グリフィンドール入寮おめでとう。ママもパパも鼻が高いわ」

 

 

 そして、吠えるのが終わった手紙は燃え上がって灰になる。安倍灯葉は灰になった手紙をじっと見て

 

「ほー。私の手紙と似てますね」

「今いう事じゃないよね」

 

 ネビルは灯葉の感想に突っ込み、吠えメールが届いたロンは泣きそうな目でハリーを見つめる。

 

「ハリー・・・・」

 

 吠えメールが届いたロンは一日震え、授業を受ける事になる。

 

 



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ギルデロイ・ロックハートの初授業

 ロンが吠えメールのショックから立ち直った頃、授業は午後に入り、次の授業はロックハートの闇の魔術の防衛術だ。

 女子生徒達の一部はロックハートが来るのを待ち遠しくしていた。男子生徒は興味がないのか女子生徒達の様子に飽きれている。

 ハーマイオニーは隣の安倍灯葉に対し、ロックハートの事について熱く語っている。灯葉は頷きながら、聞いている。しかし、周りから見れば聞き流している事が明らかだったが、ハーマイオニーはその事に気づいていないようだ。

 

 その時、後ろの扉からギルデロイ・ロックハートが現れる。無駄にマントを靡かせながら悠々と歩いていく。そして、生徒に自己紹介する。

 

「私だ。ギルデロイ・ロックハート、勲三等マーリン勲章、闇の力に対する防衛術連盟名誉会員、そして『週刊魔女』5回連続『チャーミング・スマイル賞』受賞。もっとも私はそんな事を自慢するわけではありませんよ。スマイルでカーディフの狼男を大人しくさせたわけではありませんからね」

 

 ロックハート自身は気の効いたジョークを言ったつもりのようだが、その言葉で笑っていたのは女子生徒の一部だけだった。

 何やら、一気に空気が冷たくなりつつあったが、ロックハートはそんな事に気付いていないようで、偉そうな口調で話しはじめる。

 

「さて、このクラスには日本から留学生が来ているらしいね。君だね。名前はアベトウハでしたね」

「はい。そうです」

「一度旅へと行きましたが、日本はいい国でしたよ。今度、その時の旅を本として書く予定です。鬼と対決した時は肝を冷やしましたよ。魔法を使ったら危なかったですが、怪力だけでは私には通じませんからね」

「鬼ですか?」

 

 ロックハートの言った言葉に安倍灯葉は疑問の声を上げる。

 

「ええ、鬼です」

「鬼は、イギリスで言うと闇の魔法使いの事を言います。闇に落ちると言いますが、日本では鬼と化すといわれます。先生は怪力だけの鬼に会ったのですか?」

「まぁ、そうですね。詳しい話は本で読んでください。ここで話してもいいのですが、次に出す本の興味が失われたら、台無しですからね」

 

 ロックハートは灯葉の質問を流しつつ、咳払いし、机にある紙を生徒達に配る。

 

「全員、勿論私の本を揃えているね? そして勿論1、2冊くらいは読み終えている事とは思う。そこでまず、簡単なミニテストを実施したい。心配は無用、君達がどのくらい私の本を読んでいるかをチェックするだけの、満点を取れて当たり前のテストだ」

 

 その言葉にうんざりとした顔をしなかった生徒は片手で数える程しかいない。しかし、ロックハートは気づいていない。

 テストは30分間も続いていた。ハリーは一様、テストに向き合っていたが、安倍灯葉はテストに向き合わず、30分間、手を動かさずに眼を瞑っていた。

 

 テストが終わり、灯葉の隣にいたハーマイオニーが灯葉をゆらゆらと肩を揺らし、ジト目で話しかける。

 

「ねぇ、テストが終わったわよ。トウハ。何やってたのよ?」

「精神統一です」

「せっかくのテストなのに・・・・」

 

 灯葉の答えに納得いかないハーマイオニーは小言をこぼす。

 そんな中、ロックハートはテストを回収し、クラス全員の前でパラパラとそれをめくった。

 

「どうやら、私の好きな色がライラック色をほとんど答えていないようだ。誕生日が1964年11月26日という事も誰も知らないようだ。贈り物は、魔法界と非魔法界のハーモニーですね。オグデンのオールド・ファイア・ウィスキーの大瓶でも大歓迎です!」

 

 答え合わせしているロックハートにロンはもう溜息しか出ないようだ。また、灯葉もまた、ロックハートを無視するかのように目を瞑っていた。ハーマイオニーはもう一度、安倍灯葉を注意しようとするが、その時、ロックハートから自分の名前を呼ばれて、体を震わす

 

「ミス・ハーマイオニー・グレンジャー!貴方はパーフェクトです!!ミス・グレンジャーはどこにいますか?」

 

 ハーマイオニーは体をまだ震わせて、手を挙げる。

 

「これだけの生徒がいながら、貴方だけが満点です!グリフィンドールに10点あげましょう!」

 

 ハーマイオニーは嬉しそうだ。しかし、グリフィンドールの生徒達はなんとも言えない顔をしていた。

 

「さて、授業に入りましょう、今からもっとも穢れた生き物を皆さんに見せましょう!どうか叫ばないようにお願いしたい!こいつらを刺激してしまうといけないのでね」

 

 ロックハートは覆いのかかった何かを机の上に出し、覆いを取り払う。

 覆いが外れた何かは鳥籠だった。しかし、そこに入っていたのは無数の妖精だった。

 

「捕らえたばかりのコーンフォール地方のピクシー小妖精。さて君たちがどのように対処するのか。お手並み拝見!」

 

 ロックハートは妖精を解放する。解放された妖精は自由になった事が嬉しいのか、部屋に笑い声を響かせながら、鳥籠から出る。鳥籠から出た妖精は無邪気な子供のように生徒達に襲う。

 ハリー、ロンとハーマイオニーは本を武器にしながら、妖精を叩き落とす。しかし、他の生徒達はハリー達のように対処出来ないのか、妖精に耳、鼻や髪を引っ張られてしまう。特に酷かったのがネビルだった。ネビルの元には2匹の妖精がいて、両耳を引っ張っていた。

 

 そんな中、灯葉だけは目を瞑っていた。ハリーは灯葉の元に向かい、肩を揺らす。肩を揺らされた灯葉は目を開けて、妖精を見る。

 

「トウハ。起きて!」

「ん・・・なんの騒ぎですか?」

 

 灯葉は錫杖を取り出し、錫杖を鳴らす。

 

―敵縛れ 不動明王 羂索よ―

 

 5色の糸の縄が灯葉の前に現れる。縄は生き物のように動き、妖精を縛る。

 妖精は羽ごと体を縛られ、地に落ちる。縛られた妖精は歯を食いしばり、抜け出そうとするが、抜け出せない。

 灯葉は錫杖をしまい、天井のシャンデリアにぶら下げているネビルを見上げる。

 

「そんな所で何やってるんですか?」

「トウハ・・・助けて」

 

 ネビルは顔を真っ赤にしながら安倍灯葉に助けを求めた。

 ネビルを助けた後、授業のベルが終わり、ロックハートの初授業が終わった。




補足説明

鬼:イギリスというと闇の魔法使いの事を指す。または吸魂鬼のように元人間だった生き物。

羂索:不動明王がその左手に持つ五色の縄。魔物を縛り、苦しむ人々を救う等の役割を持っている。


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ハロウィーン

 ホグワーツの日常が段々と過ぎていき、ロックハートの授業はただ本の自慢するだけになってしまう。段々と生徒達の間では、信頼度ががた落ちになっていく。

 生徒達はロックハートの授業はお昼寝タイムとなっていき、ある生徒は他の授業の宿題をやっていた。

 灯葉もまた、ロックハートの授業はただ目を瞑って、時を待つようになっていた。

 

 そんな中、ホグワーツはハロウィーンの時期になる。

 今年もまた生徒達はハロウィーンを楽しみにしていた。特にハリーは去年のトロールの騒ぎでそんな所ではなかったので他の生徒達よりも楽しみにしていた。

 そのハリーに「ほとんど首無しニック」は自分の絶命日に地下牢で開かれるパーティーに参加しないかと話しかける。

 

 ハリーは灯葉達にそのパーティーの事を話しかける。

 ロンとハーマイオニーは参加する事にした。しかし、灯葉だけは不参加だった。なんでも他の人と約束をしていたらしい。ハリーは残念そうにしていた。

 

 そして、ハロウィーン当日。

 ハリー達は後悔し始めていた。

 ニックの絶命日パーティーより大広間のパーティーの方が断然楽しそうだったからだ。それは当然だ。地下牢で開催される死んでいる人とパーティー、大広間で大勢の生きている人とパーティーなら比べるまでもない。

 

 ハリーとロンは重い足取りでニックのパーティーの元へと行く。そんなハリーとロンにハーマイオニーは命令口調で話す。

 

「約束は約束でしょ」

 

 ハリー達はハーマイオニーの説教を聞きながら、ニックの絶命日パーティーを向かっていた。

 

 

 一方、灯葉は誰とも会わず、トイレに向かっていた。向かおうとするトイレはここに住んでいる幽霊のおかげで誰も来ようとはしない場所で、いつもうす暗い雰囲気に包まれている。灯葉はトイレの奥の小部屋に入り、目を瞑る。

 

「水玄。そちらの様子はどうですか?」

 

―やっている事と言えば手紙を書いてるだけ―

 

 灯葉の目の奥にはカンテラの火を頼りに羽ペンを動かしている老人が映っている。

 

「そうですか。そのまま、よろしくお願い致します」

 

 灯葉は目を開け、息を吐く。その様子はトイレの雰囲気に飲まれたかのように落ち込んでいた。

 

「そう簡単には見せてくれませんか・・・・」

 

 灯葉はドアを手に掛け、開けようとする。

 

 

 しかし、灯葉はドアを開けれなかった。

 灯葉は顔が強張り、眼は焦点を合わせる事が出来ず、額からは汗の玉が浮かび上がっている。

 

 何か、いる・・・ここから出たら死ぬ。

 

 灯葉は本能的に感じ取り、灯葉の頭には死のイメージが浮かんでいた。

 

 

 その時、ドアの向こうからは管から空気が漏れたような音が聞こえる。その音はこのトイレの雰囲気を更に不気味にする。音を出している張本人は灯葉に気づいていないようで、何かを引きずる音を出しながら、安倍灯葉から離れていく。

 

 灯葉は音がするまで何も出来ずにいた。

 灯葉は慎重にドアを開き、周りを確かめる。灯葉の額にはまだ汗の玉が浮かんでいる。灯葉は手で汗を拭い、トイレを後にする。口元は笑いながら。まるで先ほどの恐怖を楽しむかのように。

 

「あれほどの恐怖をあったとは、まだまだ知らない事がありそうですね」

 

 

 

 

 その頃、ハリー達の目の前に水浸しになっている廊下、壁に書かれた文字と遭遇していた。

 

 秘密の部屋は開かれたり 継承者の敵は気をつけよ

 

 その文字は生徒達を不安にさせる。その生徒達の中でマルフォイが声高らかにそう叫ぶ。

 

「継承者の敵よ、気を付けろ!次はお前たちの番だぞ、穢れた血め!お前たちもこの猫のように死ぬんだぞ」

 

 マルフォイは自分が高みの見物にいるかのようにハリー、特にハーマイオニーを見下す。ハーマイオニーはマルフォイが言った事に衝撃を受けて、唇を噛みしめている。

 マルフォイはハーマイオニーの様子が面白いのか、声を高々に笑っている。

 

罔象女(みつはのめ) 蛇になりて 締め付けろ―

 

 マルフォイの後ろから呪文が聞こえる。マルフォイが後ろを振り向く瞬間、マルフォイがいる足元の水が波立ち、蛇の形を模す。水の蛇はマルフォイに対し、水の牙を剥いて、襲い掛かろうとする。

 

 マルフォイは恐怖で顔を歪ませて、逃げようとするが、足を滑らせてその場にへたり込んでしまいう。しかし、マルフォイに襲い掛かる瞬間、水は蛇の形を崩し、勢いだけの水がマルフォイに襲い掛かる。マルフォイはすっかり水浸しとなってしまう。

 呪文を唱えたのは勿論、灯葉だ。

 

「何の騒ぎかは知りませんが、少し黙りましょうね」

「ななな、何するんだ!?東洋の魔女!」

「黙らないとまたやりますよ」

 

 マルフォイは灯葉の雰囲気に圧されて、黙る。マルフォイのお付きの仲間、ゴイル&クラップがマルフォイを抱えて、後ろへ下がろうとする。

 しかし、下がるマルフォイに声をかける。

 

「穢れた血、マグル生まれが継承者の敵なんですね?」

「そうだ。覚えてろよ!お前もその連中といると痛い目に合うからな」

 

 マルフォイ達は負け犬の遠吠えのように吠えて、生徒達の中に消えていく。

 灯葉はマルフォイの背中を見ながら呟く。

 

「もう、痛い目には合いませんよ」

 

 呟いた灯葉は消えたマルフォイから壁に書かれた文字を視線を移し、ハリーが声を掛けるまで、見ていた。




罔象女(みつはのめ)
イザナミから生まれた神様。水神


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いつも通りの風景

 壁に書かれた文字で起きた騒ぎはダンブルドア校長によって一旦静まり、生徒達はそれぞれの寮へと帰っていた。

ただ、被害者である猫、ミセス・ノリスの飼い主であるフィルチはハリーがこの騒ぎを起こしたのではないかと思い込んでいる。

そのせいか、フィルチは寮へと帰っていくハリーの背中を睨んでいた。

 ハリーはその睨みに気づいていたが、今はそれ所ではない。

 

 ハリーは気になってしょうがなかった。

 壁に書かれた文字をじっと見ていた灯葉の顔を。

 壁の文字を興味深そうに見ている茶色の瞳。そして、少しだけだが口角を上げて、嬉しそうな表情をしていた事を。

 

 「何か恐ろしい事が起きるはず。けどなんでトウハは嬉しそうにするんだ・・」

 

 ハリーは壁の文字よりも灯葉の様子が気になり、眠れなかった。

 

 

 

 

 あれから、数日の大広間。

 生徒達はハロウィーンの事で話している。ある者は不安で仕方ない様子。また、ある者は不安がっている人を優越に浸りながら見ていた。

 グリフィンドールも然り。特にネビルは目の下にクマが出来ている。

 ハリーはネビルを心配に

 

「ネビル 大丈夫?」

「うん。大丈夫だけど、ハリーもすごいクマだよ」

「ああ、大丈夫」

 

 ハリーはこの数日間眠らず、ネビルと同様にクマが出来ている。

 ハリーはゴシゴシと目を擦り、目を覚まそうとする。しかし、まだ眠たいのか、瞼が開こうとしない。

その時、ハーマイオニーがイラついて、叫ぶ。その叫びでハリーは目を覚ます。

 

 

「ああ、もう!ホグワーツの歴史が二週間も返って来ないわ!それなら家から持ってくるんだったわ」

「ホグワーツの歴史?」

「そうよ。もしかして、本に秘密の部屋が書いてあるかもしれないのに。ああ、もう思い出せない」

 

ハーマイオニーはそのイラつきを机にぶつける。その衝撃で皿が浮き、鈍い金属音が響き渡る。ハーマイオニーの近くにいた灯葉は予期していたのか、皿を持って食事をしていた。

 

「まぁ、焦らなくてもじきに返ってきますよ」

「それじゃ遅いのよ!」

「そうですか」

 

 灯葉はハーマイオニーを宥めようとするが、失敗に終わる。失敗に終わった灯葉は食事を再開する。ハーマイオニーは食事を早めに終わらし、大広間から出る。方角からして、図書館の方に向かっているようだ。

 

 灯葉がいつものんびりとした言葉を吐く。それをハーマイオニーは突っ込む。いつも通りの光景。何も変わらないじゃないか。

 きっと笑っていたのは気のせいに違いない。

 

 ハリーは目覚めのコーヒーと一緒にその考えを一緒に飲んでいた。

 

 

 

 それから数日、ハーマイオニーは先生から秘密の部屋の事を聞いて、秘密の部屋を知ろうとしたが、何も結果は得られず、またもや大広間でイラついている。

 

「ああ、もう。先生も秘密の部屋知らないなんて、どういう事よ!」

「誰も知らないからこそ秘密なんですよ。知っている人と言えば、この騒ぎを起こした張本人でしょうね。どうです?ハリー何か知りませんか?」

「僕じゃないし!知らないよ」

「君もハリーを疑っているのか!?」

 

 ハリーは否定する。ロンは灯葉の言葉に怒りを露わにする。

 そんなロンを見ながら、灯葉は笑いながら、言う。

 

「冗談です。知っている人はサラザール・スリザリンですかね。知っていればいいんですけどね」

「もうその人亡くなってるし、こんな時まで冗談言わないでよ。・・・・スリザリン。スリザリンね。ありがとう!トウハ」

 

 ハーマイオニーは大広間から大急ぎで出る。去っていくハーマイオニーを見て、ハリー達は首を傾けていた。

 

「どうしたんだろう?」

「さぁ。そんなことよりもクィディッチの練習行かなくていいのか」

「ああ!忘れてた」

「さて、私もおいとまします」

 

 ハリー達は急いで食事をとる。灯葉は既に食事を取っていたのか、ハリー達に退席を伝え、大広間から出る。

 大広間から出た灯葉もある所へと向かう。そこは大きな石のガーゴイル像の前だ。

 その石の前で言葉を発する。

 

「ショートブレット」

 

 その言葉が廊下に響き渡る。それ以外、音は出ない。

 

「レモンキャンディー」

 

 その言葉でガーゴイルが本物となり、ガーゴイルの後ろの壁が大きな音を立てて、左右に我始める。その壁の奥から階段が現れる。

 灯葉が後ろを振り向くと髭を撫でるダンブルドア校長がいる。

 

「ほほほ。アメはどうかね?」

「頂きます。さて私に何の用かね?」

「申し訳ないですが、校長にではなく、組み分け帽子です」

「振られてしまったか」

 

 灯葉とダンブルドア校長は一緒に階段を昇る。振り分け帽子は校長室の机の上に置いてあった。

 組み分け帽子が灯葉に気づき、威圧的な口調で話しかける。

 

「なんの用だ?東洋の魔女?」

「秘密の部屋を知りませんか?」

 

 組み分け帽子はしかめっ面の表情をするかのように帽子の皺を動かす。

 

「秘密の部屋?なんだそれは?」

「いえ。なんでもありません。ではマグル生まれの魔法使い、穢れた血については?」

 

 組み分け帽子は暫く、沈黙する。

 

「・・・・教育には差別するつもりはない」

「長い沈黙ですね」

「東洋の魔女はどう考えてる?」

「日本はマグルと付き合いが長いですから、そういった差別はないです。マグルと良い関係で付き合ってきましたから」

「本当に良い関係だったのか聞きたいけどな」

「良い関係でしたよ。歴史の表舞台はマグル。その裏に魔法界は生きていましたから」

 

 組み分け帽子は意趣返ししたいのか、灯葉の言葉に突っかかっていく。

 

「裏でマグルを操っていたのではないのか?」

「さてどうでしょう」

 

 最後に、灯葉は組み分け帽子に笑いかけて、校長室を去っていった。

 

 

 

 

 

 



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2人目の犠牲者

 ハーマイオニーは裏で何かを企んでいる中、時間が進み、今年もまたクィデイッチの寮対抗戦が始まる。

 最初の試合はスリザリン対グリフィンドール。

 

 スリザリン代表チームは顔を笑いながら、悠々と同じ黒い箒を飛んでいる。

 他の寮達は悔しがる目でスリザリン代表の人達を見ていた。それに対し、スリザリンは今年は優勝するというばかりに応援している。

なぜなら、スリザリンの代表チームの箒は全て最新モデルのニンバス2001だからだ。

 他の箒よりも断然性能が良い。もちろん、ハリー・ポッターのニンバス2000よりも性能が良い。それが一人だけだったらまだしも、全員がニンバス2001に乗っている。クィディッチの技術なら他の寮よりも勝ってると各寮の人達は言いたいだろう。しかし、箒だけは別だ。箒だけは見ただけで性能の差が丸わかりだ。

 各寮の生徒達はいつも以上にスリザリンを悪口を言い、いつものグリフィンドールの応援に熱が入る。

 

 グリフィンドール代表チームはその応援に答えるかのように気合が入っている。

 スリザリン代表チームのキャプテン、マーカス・フリントはオリバー・ウッドに箒を自慢するかのようにニヤニヤ顔を向け、今年からシーカーとなったマルフォイもまた、ハリーに話しかける。

 

「どうだ!羨ましいだろう!」

 

 ハリーはその言葉を無視し、試合の開始の合図、ホイッスルに集中する。

 そして、ホイッスルが鳴り響く。

 

 

 

 試合はスリザリンが優勢となっていく。

 箒の性能の差もあってがスリザリンは90点入れて、グリフィンドールは60点差になる。

 そんな中、ブラッジャーが執拗にハリーを狙っていた。ハーマイオニーはおかしいと気づいたのか、騒ぎ始める。

 

「なんなの!あのブラッジャー!?」

「誰が細工しているんだ」

 

 しかし、ハリーはブラッジャーを回避しながら、スニッチをクィッディチの舞台場を支える柱を避けながら追いかける。マルフォイもハリーの横にぴったりと張り付いてスニッチを追いかける。

 途中で障害物となっている柱はハリーは上、マルフォイは下を通る。ブラッジャーは柱の存在を無視するかのように体当たりし、柱を粉々にしながら、ハリーを追いかける。

 

 スニッチを追いかけるハリーとマルフォイ。それを追いかけるブラッジャー。

 その追いかけっこを写真に撮りたいのか、クィッディチの舞台場に繋ぐ橋の所に男の子がいた。その男の子はカメラを構えながら、ハリーの姿をとらえようとする。

 しかし、男の子は写真に夢中となっており、ハリー達がこちらに来ている事に気づかない。

 

 気づいた時には目と鼻の先だ。男の子は目を瞑り、衝撃に耐えようとする。

 

―驚かせろ 袖引き小僧 袖を引け ―

 男の子は橋から退場し、一人の女性の元へ引っ張られていく。そのおかげでハリー達とぶつかる事はなかった。

男の子は恐る恐る目を開ける。

 

「・・・柔らかい?」

「さて、大丈夫でしたら離れてください」

 

 男の子は女性とぶつかっていた。女性は灯葉だ。

 男の子は離れて、カメラが無事かどうかを調べる。

 

「一年のコリン・クリービーですね?」

「そうです!助けてくれてありがとう!」

「危ないので、ここから写真撮りましょう」

「はい!」

 

 コリンは再びカメラを構え決定的な瞬間を取ろうとする。

 灯葉はコリンの後ろでじっとコリンを見ている。コリンはそんな事に気づいていない。

 その時、観客席から歓声が鳴り響く。コリンもカメラを片手で持ち、両手を上げる。

 

「やったー!!ハリーがスニッチ取ったぞ!!」

 

 ハリーはグランドに寝そべり、スニッチを高々に上げていた。スニッチは太陽の光を浴び、金色の体をさらに輝かせる。

 

 

 ハリーは安堵していた。これで試合が終わる。後ろから追ってくるブラッジャーがいなくなると。

 しかし、目に入る光の近くに黒い点が見える。黒い点は段々と大きくなり、ハリーの頭の横に落ちる。正体はブラッジャーだ。

 ハリーは横にいるブラッジャーを見る。ズレていたら頭に直撃する。 体中に冷たい汗が走る。

 ブラッジャーはそんなハリーにお構いなく、襲おうとする。

 

―燃え尽きよ 骨を鳴らせろ 狐火よ―

 

 ブラッジャーに青い火がつく。青い火はブラッジャーをあっという間に炭へと変える。炭はハリーの顔に降りかかる。

 

 

「大丈夫ですか?ハリー」

「あ、ありがとう」

 

 安倍灯葉は手を差し出し、ハリーを起こそうとする。

 ハリーは手を取り、起きようとする。しかし、顔をしかめる。その時、ハグリット、ロックハート先生、それにロン、ハーマイオニーがハリーに近づいてくる。

 ロックハートはハリーの様子を見て、杖を取り出し、治そうとする。

 

「骨折しているようだね。心配無用!今すぐ私が治してあげよう」

 

 しかし、ロックハートのせいで骨折は治ったが、骨が無くなり、結局、医務室へと泊まる事となってしまうが、ハリ―は生徒で一番、次の被害者が出てしまった事を聞いてしまう。

 

 二人目の犠牲者はコリン・クリービーだという事を。

 




大分更新が遅れてしまい申し訳ございません。


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決闘クラブ

 コリン・クリービーが石となり、生徒達は更に不安が高まる。それを感じったのか、数日後、ロックハートが決闘クラブを開く。決闘クラブには多くの生徒達が集まる。その中には勿論、安倍灯葉、ハリーもいる。

 

 ロックハートは集まる生徒達に声をかける。

 

「皆さん。私の声が聞こえますか?最近物騒な事件が続いているので、校長からお許しを得て、決闘クラブを開くことにしました。万が一の為に自分で守れるようにね。ご紹介致しましょう!私の助手、スネイプ先生です!」

 

 ロックハートに呼ばれてスネイプは生徒達の前に立つ。顔は不機嫌そうに見える。

 

「模範演技のために、勇敢にもお手伝いしてくれます。ご心配めさるな!魔法薬の先生は消しませんから!」

 

 スネイプは眉をしかめ、目を更に細くし、怒りを露わにする。

 それを感じ取れないロックハートは模擬演技を始める。

 模擬演技とは杖を構え、後ろへ下がりながら3つ数え、術をかけるという内容で、ロックハートとスネイプは生徒達の前でやることになる。

 

「一、ニ、三」

 

 そのかけ声の後、スネイプとロックハートは杖を相手の方に素早く向けるが、スネイプの方が早く、呪文を唱える。

 

―エクスペリアームズ 武器よ去れ!―

 

 その呪文でロックハートは後方へと飛ばされる。飛ばされた勢いでロックハートは嗚咽を吐いてしまう。しかし、ロックハートは復活が早く、生徒達に笑いながら、立ち上がり、訳を並べて、わざと負けたという事を伝える。その言い訳にスネイプだけは鼻で笑っていた。

 

「では、皆さん ペアを組んでください」

 

 生徒達はそれぞれペアを組む。

 ハリーはロンと組もうとするが、それよりも早くスネイプがハリーの所へと来る。

 

「ウィーズリーは今回見学だ。その杖では惨事を起こしてしまうではないのか」

「けど、それではロンが」

「なんだ?ケガしたいのか?ロックハート教授はどう思いますかね?」

「ああ、そうだね。申し訳ないが、ウィーズリーは見学でお願いしますよ。余計なケガはさせたくありませんから」

 

 ロンはスネイプの言葉に反論出来ずにいたが、ハリーは反論しようとしたが、ロックハートがスネイプの言葉に乗っかり、ロンは見学となる。

 

「マルフォイはいるか」

 

 マルフォイはスネイプの言葉を待っていたかのように素早くスネイプの隣に立つ。

 

「ポッター。始めようか」

 

 マルフォイはハリーを連れて、他のペアの所へと行く。スネイプはハリーを見届けた後、安倍灯葉を見る。

 

 

「さて、アベはペアを組めたのかね?」

「いいえ、私はまだです」

「どうやら、貴様が最後の一人のようだな。しょうがない。吾輩が相手してしよう」

 

 スネイプの言葉にロックハートは食いつく。

 

「スネイプ先生。生徒と先生では実力が違いすぎる」

「心配するではない。生徒を消しやしない。それよりも戦闘準備してない生徒を襲ったアベの方が危険ではないのか。吾輩が進んで罰を与えようではないか」

 

 スネイプの言葉の言う通り、先日、灯葉はマルフォイに呪文を唱え、マルフォイをビジョ濡れにしてしまった。

 その件もあり、スリザリンの生徒達は喧嘩を売られた事になっており、安倍を目の敵にしている。隙あればちょっかいをかけていたが、無視され、糠に釘の状態だった。

 しかし、今回はスネイプが罰を与えるという事となり、ちょっかいをかけていたスリザリンの生徒達は顔をにやけ、スネイプによって無残な姿になる灯葉を想像している。

 

「いいですよ。確かにあの件は私が悪いですし。それに先生と戦える機会なんて滅多にないですし」

「・・・なら、いいのですが。では皆さん。先ほどの通り、杖を構えて、行きますよ!」

 

 ロックハートは本人が同意しているので強く言い出せず、模擬決闘を始めようとする。

 

「1・・・・2・・・・3」

 

 

 ロックハートの言葉の後、一斉に生徒達は呪文を唱える。

 

―エクスペリアームズ 武器よ去れ!―

 

 しかし、ある組、ハリーとドラコだけは違った呪文を唱え、ハリーは体を回転しながら、吹っ飛ばされてしまう。

 それを見ていた灯葉は

 

「何をやっているんでしょうかね」

 

―エクスペリアームズ 武器よ去れ!―

 

 スネイプはハリー達を見ていた灯葉に向けて呪文を唱える。その呪文の速度は生徒の呪文よりさらに速く、横を見ていた灯葉には対応出来ない。

 スネイプはそう思っていた。

 

 ふん。他愛もない。目の前にいる敵に無視して、他に意識を向けるとは。

 

 スネイプは目の前の光景を見ながら、ダンブルドア校長との会話を思い出していた。

 

 

 

 

「吾輩がアベを見極めるのですか?」

「ああ。そうじゃ。まだアベは実力を出しておらん。セブルス。実力を見極めてくれんか」

「だがどうやって?」

「ああ。そこでだ。この決闘クラブを許可するとしよう。そこでやってくれないか」

「御意・・・」

 

 

 

 スネイプはダンブルドアの思惑通りに安倍灯葉と対決した。しかし、結果はあっけない。

 

 ただの興味本位がある子供か・・・・・。

 

 興味本位がある子供、灯葉に武装解除呪文が襲い掛かる。武装解除呪文は灯葉から錫杖を吹き飛ばそうとする。

 しかし、呪文と灯葉の間に何かが飛び出し、灯葉を護ろうとする。その何かは一枚の紙だった。紙は呪文を自分の身で受けて、塵となり、灯葉には当たらない。

 

「そんなに慌てなくても、勝負しますよ」

 

 灯葉は錫杖を鳴らす。

 鳴らすと灯葉の袖から複数の紙が飛び出す。紙は一瞬にて鶴の形となり、紙の羽を動かしながら一直線にスネイプに襲い掛かる。

 

―急急如律令―

 

「甘い」

 

―インセンディオ―

 

 襲い掛かる紙にスネイプは炎上呪文で対応する。呪文が当たった鳥の紙は燃えあがり、一生懸命に羽を動かしているが、燃えるのが早く、スネイプにたどり着く前に塵となる。

 灯葉は続いて、錫杖を鳴らす。

 

―杖を引け 袖引き小僧 驚かせろ―

 

 スネイプの先生の杖が灯葉の方向へと引っ張られる。しかし、スネイプは対抗して、呪文を唱える。

 

ーステューピファイ 麻痺せよー

 

 呪文は灯葉の意識を刈り取るべく、先ほどの呪文よりも早い速度で襲い掛かる。

 しかし、またもや、灯葉を護るように紙が呪文の前に現れ、塵となる。

 

「この紙は私の身が危ない時に護るようにしてるのですが、私を消すつもりですか?」

「消してないのだから、問題なかろう」

「この紙決して安くないんですよ」

 

 灯葉は笑い、小言で「あと数枚しかありませんか」と呟き、錫杖を構える。

 スネイプは杖を構え、お互い呪文を唱えようとする。この戦闘を見ていた生徒達はこれで決まると予想し、目の前の光景に釘付けとなる。

 

 しかし、どこからか生徒の悲鳴でスネイプと灯葉は悲鳴の方向を見る。悲鳴の先には蛇がいる。蛇は怯えて逃げようとしない生徒を睨み、噛みつこうとしている。

 

―???????―

 

 ハリーから出た人間が理解できない言葉を発していた。しかし、言葉は蛇だけが理解できたようで蛇はハリーを見つめる。

 周りの人はハリーと蛇を見て、怯えや恐怖の表情を浮かんでいた。

 スネイプも驚きの表情を浮かべていたが、一瞬にして、真面目な顔をし、蛇に向かって呪文を唱える。呪文は蛇を消す。

 

 蛇を消した後の決闘クラブは、和やかな雰囲気を消えて、ただ灯葉を除く全員がハリーを恐怖、困惑の目でみていた。

 

 

 

 



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3人目の被害者

 校長室でダンブルドア校長は静かにスネイプの報告を聞く。

 聞いた後のダンブルドア校長は頭を抱え、スネイプに感謝を伝える。

 

「・・・以上です」

「そうか。ご苦労。ゼブルス」

 

 まさか、ハリーがパーセルマウスだったとは。

 ハリーがヴォルデモートの血縁ではないのは知っている。

 ヴォルデモートがハリーに何かをしたと考えた方がいい。

 

「それで、トウハの感想はどうじゃ?」

「興味本位がありすぎる子供かと。ただ、アベが使う東洋の魔法には注意するべきかと」

 

 スネイプは伝える。

 安倍灯葉は呪文を唱えただけで、自分の杖が引っ張られたという事を。

 スネイプはとっさに失神呪文を使ってしまったことを。

 

「衝撃的でした。まさか、呪文が当たってないにも関わらずに吾輩の杖が引っ張られるとは」

 

 あの時、スネイプは驚いていた。

 灯葉は呪文を唱えた後、呪文の光が出ずに杖が引っ張られるという事になるとは。

 

 

「そうか。ご苦労だった。ゼブルス」

 

 ゼブルスは校長室を後にする。

 ダンブルドア校長は目頭を押さえて、弱気を吐いてしまう。

 

「好奇心がある子供のままでいてくれないかのう」

 

 ダンブルドアは思い出す。

 ヴォルデモートが入学した日。あの日、ヴォルデモートが帽子を目指して、優雅に歩いていたのを。

 生徒達はヴォルデモートが帽子に辿り着くまで息を潜めていた。まるで歩みを邪魔しないかのように。

 その時の光景がトウハと重なってしまう。

 

 また、私は生徒を止められないのか・・・いいや、まだ間に合う。

 

 ダンブルドアは目を開き、決心する。その姿は100年程、歳を取った老人は思えない程に英気に満ちていた。

 

「もう二度と闇には入らせまい」

 

 

 しかし、決意した直後、校長室のドアが勢いよく開く。

 そこにいたのはマクゴナガル副校長だ。

 

「また被害者が出ました!被害者はトウハ・アベです!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少々さかのぼる。

 ゼブルスがダンブルドアに報告している中、生徒達は大広間にて、それぞれが勉強していた。しかし、生徒の誰もが、ある生徒を時折、見ていた。

 ある生徒とはハリーだ。

 

 ハリーは自分を見ている人に視線を向けるが、ハリーからの視線を避ける為、顔を背ける。ある者は怯えの表情を浮かべている。

 ロン、ハーマイオニー、灯葉もフォロー出来ないのか、何も出来ずにいた。

 そんな中、安倍灯葉は本をしまい、扉へと向かう。

 

「では、お先に失礼します」

 

 安倍灯葉は大広間から出る。ハリーも続いて、本をしまい、灯葉を追いかけるように大広間から出る。

 

「待って。トウハ」

 

 しかし、遅かったのか、灯葉の姿は見えない。

 そんな中、大広間からこそこそと話が聞こえる。ハリーは扉の前で話を聞いてしまう。

 

「ハリーは継承者だ。例のあの人はハリーを消そうと企んでいたんだ」

 

 ハリーは俯きながら聞いていた。

 

 

 

 

そんな中、灯葉はほとんど首なしニックと話していた。

 

「さて、良い夜を」

「そちらこそ。良い夜を」

 

 ほとんど首なしニックと別れた後、すぐに彼が呻き声をあげる。

 

「ぐぅおお」

 

「さて、来ましたか。」

 

 灯葉は目を瞑り、振り向いて、紙を投げる。紙はほとんど首なしニックを通り抜けて、なにかに向かって飛んでいき、張り付く。

 灯葉は目を開けて、対峙しようとするが、男性と女性が同時に喋る声が灯葉の耳に届く。

 

「そんなことしても無駄だ」

 

 灯葉は紙がボロボロになりかけているのを気づき、柱の後ろに姿を隠す。

 声は高々に宣言する。

 

「お前は障害になりうる。ここで消えてもらう」

「消えてもらうのはそちらです」

 

 

 

 

 



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日記

 灯葉が襲われた現場は柱は壊され、瓦礫と化していた。

 天井もまた、一部が崩壊しており、闘いの跡が刻まれていた。その中に石となっている灯葉がいた。

 

 灯葉は他の被害者と同様に病室へと運ばれる。

 病室には発見者であるハリー、ロン、ハーマイオニー、そして、安倍灯葉と親しいグリフィンドールの生徒数人がいる。

 全員、安倍灯葉を見て、悲しそうにしていた。特にネビルとハリーは悲しそうにしていた。

 

「トウハ。なぜ君が・・・」

 

 悲しそうにしている中、グリフィンドールの寮監、ミネルバが来て、解散となる。

 全員はグリフィンドールの寮へと戻り、就寝する。

 しかし、ハリーは就寝する前にある物を取り出し、それを開く。

 

 それはボロボロな日記で、灯葉が石になった現場の近くに拾った物だ。地面に叩き付けられたのか開いたまま捨てられていた。

 普段は拾わないが、ハリーは何故だか気になってしまい、拾ってしまった。

 ハリーは何気なく、インクを本に垂らす。

 

 数秒後、垂らしたインクが消えた。ハリーは驚き、ボロボロな日記を見つめる。

 その時、本からハリーにメッセージが書かれる。

 

「・・・あなたは誰ですか?」

 

 ハリーは返事を書き、日記としばらくコミュニケーションを取る。はたから見たらおかしいな光景だが、今は深夜で誰もが寝ているから関係ない。

 コミュニケーションが続き、気を許したのか、ハリーは今の心情を日記に書く。

 今、起きている事件。ハリーが他の人達から疑われている事。友達が被害を受けた事を。

 ありのままの感情を日記にぶつけた。

 ぶつけた結果、返ってきたのは前に同じ事が起きていた事。その事件の犯人を知っている事を。

 本はハリーに過去の光景を見せた。ハリーにはとても信じられなかった。

 前に事件を起こした犯人はハグリットだという事を。

 

「まさか、ハグリットが、そんなわけがない」

 

 信じられないまま、夜が過ぎていく。

 

 

 

 朝、ロンとハーマイオニーにその事を話す。

 ハーマイオニーはとても信じられないようだ。

 

「日記を見せて。ハグリットがそんな事するわけがない」

 

 しかし、ハリーの部屋は荒らされ、日記が無くなっていた。

 日記が無くなった事で、ハーマイオニーは信じなかった。ロンはハグリットに直接聞いてみようというになったので、夜、ハリーとロンはハグリットの家に行くことにした。

 

 透明マントで、ハリーとロンはハグリットの家に行き、ハグリットに真偽を聞こうとした瞬間、訪問者が現れる。

 

「早くマントをかぶれ。声出すんじゃねえぞ。静かにな」

 

 ハリーとロンは透明マントを被り、隠れる。

 ハグリットは隠れた事を確認したら、扉を開ける。

 

「おっダンブルドア先生」

「こんばんはハグリッド」

「お邪魔する」

「ほー色々な臭いするな」

 

訪問者はコーネリウス魔法省大臣、ダンブルドア校長、そして、オールバックの黒髪をした男性だ。

コーネリアスはハグリットに言う。

 

「状況はすこぶるよくない。残念ながらマグル生まれ2人、そして、こちらの国の留学生1人も犠牲出してしまっては」

「俺としてはどうでもいいが、上がうるさいからな」

「俺は何もしてねえ本当でさぁ先生」

「コーネリウスわしはのうこのハグリッドに全幅の信頼を置いておる」

「しかしアルバス、ハグリッドには不利な過去がある連行せねばならん」

「連行?どこへ?まさかアズカバンの監獄じゃ…」

「そうするより仕方がないのだ」

 

 その時、ルシウス・マルフォイがハグリットの家に入る。

 

「来ていたのか。ファッジ結構」

「それで一体わしに何の用があるのじゃ?」

「私をはじめ理事全員があなたの退陣を決定した。ここに停職命令がある。12人の理事が全員署名した。

あなたが現状を掌握できていないと感じておりましてね」

「このまま襲撃が続けばマグル出身者1人もいなくなり、こちらの国も申し訳が立たない」

 

 ルシウスはちらりと黒髪の男性を見るが、黒髪の男性はどうでもいいのか、ハグリットの家を物色しており、

黒蜘蛛を手づかみで取り、観察している。

 

「蜘蛛が多いな。森だからか」

 

 ルシウスは咳払いして、黒髪の男性を注意する。黒髪の男性は蜘蛛を置いて、ルシウスに返答する。

 

「こちらの学生が被害を受けるとは思わなかった。退陣についてはこちらも賛成だ」

「退陣を求めるならもちろんわしは退こう。しかしじゃよいかな。ホグワーツでは助けを求める者には必ずそれが与えられるのじゃ。あっぱれなご心境で…では」

「では、ハグリットも」

「もし…もし何かを見つけたけりゃクモの後を追っかけりゃええ。そうすりゃちゃ〜んと糸口が分かる。

まっ俺が言いてぇのは…それだけだ」

「ほぉ・・・蜘蛛の後ね」

 

そう言い残し、ハグリット達は家を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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夢 前編

 ハリー達が蜘蛛を追いかけている頃、石をされた灯葉の元にハーマイオニーはいた。

 ハーマイオニーは心配そうに灯葉を見ている。

 

 「大丈夫。もうすぐで薬が出来るから。それにしても、石になったら、夢を見るのかしら・・・」

 

 ハーマイオニーはそう言い残し、寮へと戻る。はハーマイオニーがいなくなり、静まり返った病室。そんな疑問に答えるかのように灯葉は夢を見ていた。

 灯葉がイギリスに来る前の前日の事を・・・・・

 

 

 

 

 

 

 誰もこんな道を通らないだろう。通ってもそこには何にもないと思われる細道を灯葉は通る。

 道の奥には幾重にも続く石の階段。石の階段は泡雪のように白い灰が積もっている。灯葉はまるで跡をつけるかのように灰を踏みつけ、階段を登っていく。

 

 階段を登りきった灯葉の前には、自分の背よりもはるかにも大きい門。

 門は灯葉を待っていたかのように木が軋む音を立てながら、開いていく。

 門の先には大きな武家屋敷。武家屋敷は空から降り続ける白い灰で白く染まっていた。灯葉はそれを気にしていない。まっずくと武家屋敷に入っていく。

 武家屋敷は誰もいないのか、音は鳴らない。静寂のみだ。

 灯葉は廊下の奥を目指していく。廊下の奥は大きな部屋がある。奥には上段の間がある。上段の間には2つの布団があり、2人の人物が呻き声を漏らして、寝ていた。灯葉は正座し、その2人と対面する。

「ただいま帰りました。母上。父上」

 

 しかし、返答は2人の呻き声。

 灯葉は立ち上がって、上段の間に入る。

 

「お変わりないようで安心しました」

 

 灯葉は2人の顔色を見て、安堵したかのように言う。だが、2人の顔は包帯で巻かれていて、顔色などとてもではないが見えない。それでも、2人の顔が見えていた。

 灯葉は包帯を用意して、2人の包帯を変える為、包帯を剥がしていく。剥がしていく度に鼻につく匂い、脂肪が燃えた匂いが襲いかかるが、顔色一つ変えずに包帯を変えていく。

 包帯を変えた灯葉は古い包帯を捨てるべく、部屋から出て、長い廊下を歩いていく。歩く度に木が軋む音がする。今、武家屋敷に響く音はこの音だけだ。

 しかし、その音を邪魔するように別の音が鳴り響く。その音に灯葉は立ち止まる。立ち止まった事を気付いたのか、音はさらに響く。鉄が床に引き摺られる音。

  

 

 灯葉は音が鳴る方向へ歩く。暗く、入り口か見えない地下の階段へと。

 そこに待っていたのは鉄格子の部屋。鉄には錆がなく、地下に備え付けていた蝋燭の光を反射させ、部屋を薄く照らす。

 灯葉は皿ごと蝋燭を持ち、部屋へと入る。蝋燭で、部屋が明るくなり、部屋の全容が明らかになる。

 そこにいたのは少女だった。少女は一度も切っていないのか、自分の体を覆い隠すのかのような白い髪、髪の奥からはずり落ちそうな布を着ていた。さらに少女の四肢は枷ではめられていた。それぞれの枷から長い鎖を伸びており、壁に繋がっている。

 白い髪の隙間から眼球が動き、安倍灯葉を睨みつける。その睨みは人が殺せそうな鋭さを持っていた。

 

「貴方も変わりなさそうで」

 

 灯葉は肉親と会話した時のように安堵していると、白い髪の少女は体を動かし、灯葉に襲い掛かろうとするが、鎖が床に撥ねて、音を鳴らすだけだ。白い髪の少女は喉から老婆のような枯れた声で言葉を発する。

 

「ゴロ・・・・す。おま・・・も。ぜ・・ん・・いん コロ・・ス」

「慌てないで。私は貴方を愛しています。愛しいほどに」

 

 灯葉は白い髪をどけて、頬に触れる。白い髪の少女は一瞬だが体を震えてた。

 

「だって、私達は姉妹なんだから。お姉様」

 

 蝋燭に照らされた2人の顔は瓜二つ。

 違うのは蝋燭に照らされた黒く輝く髪、対して、白く輝く髪だけだった。

 

 

 

 



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夢 後編

 日本の魔法界は排他的だ。

 昔から築きあげた魔法の一部を歴史から抹消する為、あらゆる方法も取った。

 

 1つ目は人の排斥。

 日本の魔法使いはマホウトコロで学ぶ。抹消対象である魔法を使うと在学中に渡されたローブの色が変わり、『鬼』といわれ、処罰の対象となる。抵抗しようにも、専門の部隊である討鬼隊が鬼を捕まえ、投獄される。例え、捕まえる事が出来ず、殺す事になっても、不運の事故として処理される。

 ローブを脱いで、その魔法を使っても、ローブを着た瞬間、色が変わる。またローブを着ないとしても、日本の魔法界の町を出かけるときは、必ずそのローブを羽織る事になっている。羽織らなかった場合、処罰の対象となる。

 

 2つ目は歴史による排斥。

 1593年、豊臣秀吉が声聞師狩りを行った。公には無事と言われているが、実際には、魔法界はわざと抹消対象である魔法が書かれている文献を流出させ、魔法を抹消させた。この事で、一部の魔法は無くなってしまった。

 

 当然ながら、この流れに逆らう人達もいた。

 日本の魔法使い、『陰陽師』は森羅万象を解き明かす事を目的としているのに、魔法を抹消するのはどうなのかと。

 その人達の中には、安倍晴明の子孫である家もいた。

 しかし、その家は魔法界に多大なる影響を持っており、魔法界も手が出せなかった。また、その家も主張を公にすることは出来なかった。

 

 そこでその家はある方法を取った。

 

 

 

 

 

「お姉様。今、水を飲ませますね」

 

 安倍灯葉はお姉様と呼ばれた白い髪の少女の顎を片手で上げさせて、水を飲ませる。姉は静かに喉を動かし、水を飲み続ける。水を飲んだのが久しいのか、咽てしまい、水を吐き出してしまう。

 吐き出した水は灯葉の服に濡らす。濡れた所から、酸っぱい臭いが漂う。しかし、灯葉は気にしていないようで、姉に笑いかける。

 

「お姉様が抹消される魔法、陰の魔法を知り、私が陽の魔法を知り、姉妹2人合わせて、森羅万象を解き明かす。だから力を合わせましょう。お姉様」

 

 灯葉は正面にいる瓜二つの少女の頬に触れて、笑いかける。しかし、姉は顔を背け、唇をしっかりと一文字に結んでいる。

 灯葉は慈愛のこもった優しい顔で、姉を縛っている鎖を断ち切る。

 姉は座ったまま、安倍灯葉を睨みつける。水を飲んだのか、悠長とは言えないが、はっきりと言葉を発する。

 

「何・・の・つもり・・だ」

「私はイギリスに行きます。お姉様も行きましょう」

 

 返事は姉の口から飛び出す蟲。蟲は灯葉の手に噛みつこうとする。しかし、飛び掛かる虫を手で払いのけ、地面に落とされる。落とされた蟲はピクリと動かない。

 

「コロ・・・す」

「お姉様。素直になってください」

 

 灯葉は姉の両頬に触れ、目を合わせる。濁りのない純粋な眼で。

 

「愛されたいんでしょう」

 

 姉は灯葉から眼をそらす。

 

「私は愛しています。だから私はお姉様を殺さない。殺されても私は愛しています」

「・・・・いつか、コロす・・・・今はお前についていく」

 

 姉は立ち上がろうとするが、長年、体を動かしてないのか、倒れようとするが、灯葉は姉の手を取り、体を支える。

 

「行きましょう。お姉様」

 

 瓜二つの少女は灰が雪のように降り続ける屋敷から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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子と巳と少女

 子は見ている。

 主の命令通りに。それは知識、魔法を盗む事。

 たとえ、主が近くにいなくても、主が夢を見ている時でも、主の命令をこなす為に子は盗みの機会を待っている。

 しかし、なかなか尻尾を出せない。老人は警戒しているのだろう。当たり前だ。何せ不老不死の知識を持っている人物であり、今まで長く生きている人物なのだから。それでも、子は亀のようにじっと待つ。

 全ては主の為に。

 

 老人を見てから、随分と時間と立つ。

 老人の一日は手紙を書いたり、ページがくたびれている本を読んだり、妻と他愛のない会話ばっかりだったが、老人はついに尻尾を出す。老人は妻が買い物に出ている隙に、床に隠されていた扉を開ける。扉の先には地下室が隠されていた。

 子は地下室へと入る。主の命令を完了させる為に。

 

 しかし、老人は気づいてたのか、罠を設置していた。地下室に入ろうとした瞬間、子は罠にかかり、檻に囚われてしまった。老人は捕らえた子を見て、肩を落としてしまう。

 

「アベ。お前もか‥‥」

 

 

 ようやく、魔法、知識を受け継げる人物が現れたと期待していた。だが、結果がこの鼠。あの少女は貪欲すぎる。少女が来たら、破門にするか…

 

 老人は少女に思いを馳せながら、階段を上がる。その足取りは重い。まるで膝の痛みを抑えるような足取りだ。

 地下から出た老人は何時ものように地下室を隠していく。老人はその作業に集中していたせいなのか、少女に落胆していたせいなのか、老人の後ろに少女がいる事に気づいていない。

 

 

 「はじめまして。ニコラス・フラメル」

 

 

 声に驚いた老人が後ろを振り返る。しかし、振り向いた瞬間、意識は遠のいていく。瞼が自分の意志と関係なく、閉じていく。閉じていく眼に一瞬、声の主が映る。

 そこにいたのは、先ほど、思いに馳せていた安倍灯葉にそっくりな少女。違うのは白い髪だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 巳は諦めない。

 たとえ、眼が鳥に潰されようとも。脳天に剣を突かれようとも。主の命令を守る為に巳は決して死なない。

 

「お前は吾輩の意志そのもの。決して、意志を潰えてならん」

 

 巳は主の最後が言った言葉を忘れない。私は主の意志そのものなのだから。

 巳は主から去ってから成長した体をくねらせて、移動する。向かう先は主が自分の為に作ってくれた住処。そこで、暫く待つことになる。次こそ、主の意志を全うする。全ては主の為に。

 巳は決心して、住処へと入ろうとする。

 

「許しませんよ」

 

 しかし、蛇の後ろに聞こえる声。

 巳は振り返る。意志を受け継ぐ者が現れたかと期待して。

 待っていたのは巳を焦がす炎。炎を誘う声。

 

 葉灯りて

 赤く染めゆく

 染まる葉は

 紅葉となり

 燃え尽きる

 

 最初は頭を焦がす小さな炎。

 炎はやがて、巳を包み、大きい体を徐々に焦がしていく大きい炎となる。火だるまとなった巳は悲鳴を上げて、水へと入る。しかし、水に入っても、炎は消えない。

 

「お礼です。私の名を最後まで噛みしめてください」 

 

 少女は、水から出てくる黒い灰と水から照らす灯りを背に受けて、秘密の部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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2年の終わり

 古来、日本は、人の名前には通り名と忌み名の二通りがある。通り名は公に明かし、自分の名前としている。それに対し、忌み名は公には明かさず、誰にも知られないように隠している。

 

 なぜなら、名前はその人物の魂であり、名前を知るということは魂を知る事になる。

 忌み名を隠すというのは魂を隠すと言う意味であり、忌み名から遠ざかるにつれ、自分の魂を認識出来なくなる。

 

 認識出来なくなるにつれて、自分が持っている本来の能力が出せなくなる。

 つまり、忌み名を晒す事は自分を晒し、本来の能力が出す事が出来る。

 時にその能力は多大なる影響を与える事がある。 

 

 

 秘密の部屋の入り口から出た黒髪の少女、安倍灯葉。目の前にいる瓜二つの少女に話しかける。

 

「ご苦労様です。太陰神」

「まったくだわ。主様」

 

 灯葉にそっくりな少女は姿を変え、20代の女性の姿に代わる。

 その姿は茶色の髪。主様に呼んだ灯葉に向かって、薄い笑顔を向けている。

 

「石にされた気分はどうです?」

「最悪だわ。で、結果はどうなの?」

「秘密の部屋は知れて、あちらの方も無事に手に入れました」

「ならいいわ。じゃあね」

 

 そう言うと、女性は紙へと姿を変える。灯葉は紙を拾い、大広間へと向かう。

 向かう途中にルシウスとハリーが対面していた。また、ルシウスの後ろには屋敷妖精ドビーがいた。灯葉は3人に気づかれないように隠れる。様子を伺う。

 

 ハリーが持っている古い本。それはルシウスが本屋でジニーの懐に入れた物だ。

 そして、ルシウスの後ろにいる化生の者はなんだ?

 

 灯葉の興味は尽きない。灯葉の視線はその2つに注がれる。

 

 本はルシウスに渡される。

 灯葉はハリーの意図に気づき、思わず笑う。ハリーもまた気づいていたんですね。

 

「覚えとけ。ポッター。行くぞ。ドビー」

 

 ルシウスは苦々しく、言葉を残し、帰ろうとする。ドビーはその後を追いかけない。

 ドビーは本を開けて、本を凝視していた。本に挟まれていたのは靴下。ドビーは靴下を手に取り、自由だと高らかに叫ぶ。

 ルシウスは呆然とするが、ハリーの方を見て、一瞬で理解する。

 

「貴様!よくも私の召使を!!」

 

 ルシウスは怒りのままに杖をハリーに向け、呪文を唱える。

 

 

―アバダ・ケダ「そこまでです。ルシウス」― 

 

 

 

 

 

 

 ルシウスは心の中で目の前の少女に感謝する。

 たかが東洋の魔女。しかし、純血である事を聞いて、価値はあると踏んでいたが、こんな所で役に立つとは。

 

「・・・・何か用かな。トウハ」

 

 冷静に装うが、心の内では冷静ではない。

 もし、呪文が間に合っていたら。呪文がポッターに当たっていたら。この少女が止めてくれなかったら。

 私が築き上げた物全てが崩壊してしまうのだから。

 

「ただならぬ状況でしたので。お邪魔でしたか?続けても構いませんよ」

「いや。私は忙しいのでな。また今度にしよう。ポッター。ドビー。今度こそな」

 

 ルシウスはポッターに言葉を残して、去っていく。

 ドビーは今までの鬱憤が溜まっていたのか、ルシウスに向かって、下まぶたを引き下げ、舌を出していた。そんなドビーを灯葉はずっと見ていた。

 

「貴方は何者です?」

「私は屋敷妖精のドビーでございます。2人共。助けてくれてありがとうございます。」

「妖精ですか。なるほど」

 

 灯葉はじっとドビーを毛一本見逃せないといった感じで見ている。

 ドビーはじっと見られた事がないらしく、ハリーの後ろへと隠れていく。ハリーはそんなドビーに構う暇がないのか灯葉は話しかける。

 

「トウハ。治ったんだ」

「治りました。ハリー。貴方は一年前と大違いですね。自分で選択し、動いた。そして、私を助けた。ありがとう」

 

 ハリーは灯葉に認められた。そう感じられた。ハリーはそれだけで満足だ。

 

「さて、ハリー。行きましょうか。皆が待っています」

「いこう!」

 

 ハリーと灯葉は手をつなぎ、皆が待っている大広間へと向かった。

 灯葉の片方の手にはいつの間にか、トム・リドルの日記を持っていた。

 

 ヴォルデモートの日記。またこれで、更に知識が増える。

 

 灯葉の頭はそれだけで一杯だった。

 その事にハリーもドビーも気づいていなかった。



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アズカバンの囚人
プロローグ


 ハリーは憤慨していた。

 ダーズリー家に意地悪なマージおばさんがやって来て、ハリーの両親に対し、悪口を吐いたり、ハリーに嫌がらせしたりと色々行った。ハリーはそれに耐え切れなくなり、マージに魔法を使って、ダーズリー家を飛び出した。

 そして、ハリーにはどこかに行く当てもないので、街灯で照らされた道を歩いていた。

 道を歩くにつれて、ハリーの感情は憤慨から不安に変わりつつあった。

 

 何処にいけばいいのだろうか‥‥

 

 歩き疲れたハリーは道端に座る。

 少しでも、不安を取り戻そうとして、考えを巡らす。

 

 ヘドウィグで手紙を送って、ロン、ハーマイオニー、トウハに助けを求めようか・・・

 

 そんな考えを巡らす中、道路の向こう側の茂みが音を立てる。

 茂みの先は闇を纏い、何が出てもおかしくはない。鬼が出るか、蛇が出るか。

 ハリーは何がでても対処できるように杖を構える。

 

 「・・・誰?」

 

 声が震える。しかし、今頼れるのは自分だけ。自分で対処しなければならない。

 

 大丈夫だ。僕は。秘密の部屋を思い出せ。あの時の恐怖よりもましじゃないか・・・・ 

 

 ハリーの考えに刺激されたのか、茂みが先ほどよりも音を立てて、現れる。

 そこにいたのは一匹の犬。

 犬は周りの暗闇より真っ黒な毛、口を開けば、骨さえも砕きそうな鋭い牙。そして、ハリーを決して逃せないと決意しているのか、灰色の眼はハリーから逸らそうとしない。

 

 ハリーはその眼から逃れようと、後ろに下がるが石ころに躓き、地面に転ぶ。

 

 しまった。襲われる。

 

 ハリーは慌てて、立ち上がり、杖を構えた。しかし、目の前に犬はいなかった。

 犬はいない代わりに何者かががこちらを見ていた。

 その者は白い色の髪。白いロープ。白い仮面。

 仮面の口は笑って、先ほどの犬のように鋭い歯をを見せている。暗闇に反していて、その白が一層際立たせる。

 

「ハリー・ポッター」

 

 ハリーは白い者の一声で心臓が掴まれた感覚に陥る。

 

 先ほどの犬の方がずっとましだ。秘密の部屋で受けた恐怖と何ら変わらない。あの時の恐怖と同じくらいに目の前にいる人物は得体が知れない。さっさと逃げないと。

 

「愛されてるな・・・」

 

 白い物はその言葉だけ言い残し、白はゆっくりと黒に変わり、ハリーの目の前から消えていく。

 ハリーはやっと消えた恐怖から安堵して、その場に座り込んだ。

 その時、ハリーの前にバスが現れる。

 

 「ようこそ。夜の騎士バスへ」

 

 渡りに船。というのはこの事だ。

 ハリーは自分の運に感謝して、バスへと乗り込み、この場を後にした。

 

 

 

 

 

 バスが走り去り、姿が見えなくなった頃、茂みから白い者は現れる。一人の少女と共に。

 

「どうです?お姉様。ハリーは?」

「愛されてるな。お前と同じだな。なんで会わせた?」

 

 白い物は一人の少女を恨みを込めた言葉を投げかける。しかし、その恨みを軽く流すように少女は話す。

 

「いいえ、偶然ですよ。あの犬を追いかけていたら、ハリーに会ったものですから。お姉様とハリーの反応が気になって、会わせただけです」

「そのせいで、あの犬と鬼は何処かに行ってしまったけどな」

「まぁ次があるでしょ」

 

 少女は手に持っている新聞紙を広げて、呟く。

 

「待っててください。吸魂鬼。シリウス・ブラック」

 

 少女の呟きに反応したのか、新聞紙のシリウス・ブラックは叫ぶ。まるで、鬼に追い詰められるのを嘆くかのように。

 その嘆きは決してマグルには聞こえないが、今日の眠りはとても浅くなりそうだ。

  



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目覚める記憶

 ハリーポッターは休暇の間は漏れ鍋で過ごした。

 過ごす間、本に噛みつかれそうになり、ハーマイオニーが猫を飼ったり、その猫がロンの鼠を襲って、ハーマイオニーとロンが喧嘩したりと、色々とトラブルがあったが、何事も無い休暇だった。

 

 しかし、ハリーは脱獄した囚人、ブラックが気になっていた。

そして、あっという間に汽車に乗る日。

今日の列車は、凶悪な囚人、ブラックがいるせいか列車は混んでいる。

列車は走り出したら、いくらブラックでも乗り込む事は出来ないだろうし、学校側も今回の事に対し、対策しているだろう。だったら、列車が一番安全だ。

親達はそう思い、子供を列車に乗せていた。

 

そのせいで、ハリー達は一番後ろのコンパートメントしか席が無かったが、そのコンパートメントも先客がいた。

先客はボロボロのコート、炭まみれの帽子。口周りをマフラーで覆い被さり、眠っている。その様子は誰から見てもホームレスを連想させる姿だった。

しかし、席はここしか空いていないため、ハリー達はここに座る。ハリーとロンは怪しげな先客の客。ロンは先客に怪しげな視線を向ける。

 

「誰だ?」

「リーマス・ルーピンよ」

 

 その男性の足下に鞄があり、その鞄には名札がついている。

 

「新しい防衛術の先生か?今年はましだといいけどな」

「さぁ。どうでしょう。ロックハート先生によりはマシだと思いますけど」

 

 

 そんな事を話していると、汽車が急停車し、灯りが消えていく。

 窓を覗くと窓が凍り付いていく。まだ残暑が残る時期。いくら雨で気温が下がっていたとしても、窓が凍り付くはずがない。

 顔を青白く染めたハリー達は窓から離れ、身を震わせる。決して寒さで身体を震わせるわけではないが、自然と身を寄せ合っていた。

 

 

 その時、列車がズシンと音を鳴らし、揺らしていく。

 廊下が見える窓が徐々に凍っていき、徐々にゆらゆらと揺れる黒い布がハリー達の前に現れていく。

 ハリー達は息を潜め、消えるの待つが、扉のレバーがさび付いているかのように音を立て、下がっていく。

 

 扉の先には黒い布をかぶった何かがいた。老人のように細く、干からびた白い肌の手。頭部には、口の部分しか開いていない丸い穴。食事以外必要としていないかのように。

 それでも何かは見えているのか、頭を揺らし、ハリー達を見つめていく。ハリーを見た瞬間、黒い何かは息を吸う。その瞬間、ハリーの身体を痙攣し始める。

 ロンとハーマイオニーは助けようとするが、身体が言う事を効かない。

 

―助けて―

 

・・・・・誰かが叫んだ気がした。

 

 薄れゆく意識の中、目の前に黒が紅になっていくと共に(うた)を耳にした。

 

 

 葉灯りて

 赤く染めゆく

 

 



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