Charlotte(ルルーシュver)題名考え中 (@まきにき)
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天才の能力者

思い付きでの投稿です。ほんとに駄文になりそうで怖いです....。おかしなところ等あれば御指摘お願いします。


 

 

 

 

 

「能力は...略奪」

 

「こ、この能力は!」

 

「危険すぎる能力です...今回は慎重にいきましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の名前は乙坂・ルルーシュ今年から陽野森高校に主席で入学した高校一年生だ。だが俺は普通の人間とは違ったある特殊な能力を持っている、それは...他人に5秒間だけ乗り移る事が出来るという能力だ。

勿論良いことばかりではないこの能力には大きな欠点がある、それは視界内の相手のみという有効対象、元の身体の意識喪失、最初この事を知らずに能力を使ってしまったせいでアスファルトとキスすることになってしまった...。そしてもっとも大きな欠点というのはこの能力の本筋でもある5秒間だけ他人に乗り移れるということだ、ハッキリ言って5秒間では乗り移ったとしても大したことは出来ないだろう。しかしそれ以上に利点もある、1つはアニメやゲームの世界でもないのに能力を使えるという事、2つめは何度でも視界にいる人なら乗り移る事が出来るという事、そして3つめは俺の頭脳と合わせれば5秒間だけだとしても十分すぎるくらいの力を発揮することが出来るという事だ。

 

だが最近気になっていることがある、それは俺以外にも能力者はいるんじゃないのか?ということである。世界でただ俺だけが特別にこの力を与えられたとはとても思えないのだ。もしかしたら俺以外にも能力を使える者がいるのかもしれない、だがもしいたとしても気にはなるが関係ない。俺と俺の最愛の妹である歩未に危害を加えない限りは。

 

 

「ルルーシュお兄ちゃん~朝でござる~」

 

「ん...あぁ歩未おはよう」

 

「今日はルルーシュお兄ちゃんの高校生活初めての登校日なので歩未腕にのりをかけて朝食を作ったでござる~♪」

 

「あぁ歩未ありがとな、でも腕にのりじゃなくてよりだぞ?」

 

「な、なんと!左様でござったか!!流石ルルーシュお兄ちゃんは頭が良くて物知りなのですぅー!」

 

「そんなことないさ、それより早く朝食にしよう」

 

俺は妹の事がとても大切で大好きだ勿論恋とかそういう類いのものではない、離婚した母親が親権を遠方に住むおじに渡したせいで俺と歩末はずっと二人暮らしを余儀なくされていた。だがそんな妹だが1つだけ頭を抱える事がある、それは・・・。

 

「はい!ルルーシュお兄ちゃん今日はルルーシュお兄ちゃんの大好きな乙坂家秘伝のオムライスなのですぅ~♪」

 

そうこれがその問題だ。

乙坂家秘伝のソースを使用した料理だ、歩未は料理が上手いのだがそれを全て乙坂家秘伝のソースが邪魔をしている。ちなみに乙坂家秘伝のソースとはピザソースのことだ。つまりどんな料理でも赤くそして...とてつもなく甘いのだ。

 

「あ、あぁ...」

 

「・・・どうでしょうか?」

 

俺が食べると毎回のように歩末は味の感想を聞いてくる、その感想に俺はいつも通りに返す。

 

「ああ、美味しいよ」

 

「それは良かったのですぅ~♪」

 

時計を見るとそろそろ学校に行く時間になっていたので食事を終わらせる。

 

「それじゃあ、歩末行ってくるよ」

 

「あ!もうそんな時間でしたか!ルルーシュお兄ちゃん、気を付けて行ってらっしゃいなのですぅ~♪」

 

俺は家から出ると常に自分の能力について考えている。この能力を利用して早く歩末に楽をさせてあげたいからだ、母親がおじに親権を擦り付けたせいで俺と歩末は生きていくので精一杯なのだ、俺は料理や洗濯というものが出来ないので全て歩末に頼りきりなってしまっている、そんな状況が許せなくて俺は勉強を人の何倍もするようになった、昔から頭の要領が良く直ぐに頭に入ってくるので高校にはいる前には高校卒業くらいまでの学力を持つことが出来た。

 

能力を使用してカンニングすれば満点を取ることなぞ造作もないことは分かっていたが能力はどこまでいってもたかが能力だ。いつ消えるのかも分からない能力にいつでも頼ってしまっては能力が無くなってしまった場合自分では何も出来なくなるので出来るだけ能力には頼らずにここまで来たのだ。

 

その努力の結果が...陽野森高校という超難関校主席入学なのだ。

 

 

 

 

ーーー始業式。

 

 

「それでは次に新入生代表の言葉乙坂・ルルーシュ君お願いします」

 

「はい」

 

俺が新入生代表として呼ばれると周りでは少しのざわめきが起きた。

 

「うわーかっこいい...」

 

「顔も良くて勉強も出来のかよー」

 

「ルルーシュって?外人さんなのかな?」

 

まぁ感想はさまざまだろう俺は特に気にせず壇上の上に向かい、新入生代表の言葉を言う。

 

「本日は私達新入生のためにこのような盛大な式を挙げていただき誠にありがとうございます。暖かい春の日差しに包まれーーー」

 

新入生代表の言葉が終わると始業式も終わり自分のクラスに戻ることになった。

クラスでそのあと自己紹介をしたり雑談をしたりして本日は終わり帰宅出来るようになった。

 

 

Prrr。

 

今日は歩末の学校は休みなので早く帰ろうと準備していると知らないメールアドレスからメールがきた。色々書いてあったが簡潔にまとめると告白したいので校舎の裏まで来てくださいという内容だった。俺はまだこの高校に来て誰ともメールの交換をしてないはずなので元々同じ中学から入ったやつが教えたんだろうと考え溜め息を1度吐いて校舎裏に向かった。

 

 

 

 

ーーー校舎裏。

 

俺が校舎裏に着くとやはりというか知らない女子が1人待っていた。

 

「あ、あの!急に呼び出してすいません」

 

「別に気にしてないよ、何かようかな?」

 

「あの...その友達からでも良いので!私と付き合っていただけないでしょうか!?」

 

言葉が矛盾している....。ルルーシュが最初に聞いて思ったのがそれである、付き合いたいのに友達からとはどういう意味なのか理解出来なかった。

 

「すまないが君の事を何も知らないし付き合うことは出来ない」

 

「そ、そうですか...そうですよね」

 

女子生徒は今にも泣き出してしまいそうなくらいに瞳に涙を浮かべている。

 

「だけど友達からならこちらからお願いするよ、高校に入ったばかりで友達も少なくてね」

 

「・・・あ、ありがとうございます!」

 

「それじゃあ改めて俺の名前は乙坂・ルルーシュ、よろしく」

 

「わ、わわ私の名前は月野凪です!」

 

俺は握手して家に帰った。

家に帰るとメールが何件か来たので短いがそれなりの内容でしっかりと返す。

そんなことがあった次の日...放課後になると俺は放送で生徒会室に呼び出された。呼び出しを受ける事にたいして見に覚えが全く無いので不振に思いながらも生徒会室に向かう。

 

 

「生徒会長の大村です」

 

生徒会室に入ると開けたスペースに男子生徒が1人と机の上に筆記用具が置かれていた。この時に俺の頭の中では何故呼び出されたのか10数パターン思い付いた、そしてそのなかで最悪のパターンだけは外れてくれと願いながら呼び出された理由を聞く。

 

「俺は何故呼び出されたんでしょうか?」

 

「これはこの前のテストでのあなたの答案用紙のコピーです、見事に全ての教科が100点です」

 

今の言葉を聞いて5パターンくらいにまで減ったが逆に最悪のパターンの可能性が高くなってしまった。少しカマをかけて確認する必要がある。

 

「あの程度なら簡単でしたから」

 

「あの程度ですか....」

 

「何でしょうか?」

 

「同じテストがそこにおいてあります。この場でもう一度満点を取ってみてください」

 

これはただのカンニング疑惑かそれとも...。

 

「それの何の意味があるのでしょうか?」

 

「あなたにはカンニングの容疑がかかっています、90点以上なら白、90点以下なら黒とみなします」

 

ただのカンニング疑惑かそれなら問題はない。

 

「いいでしょう、だがこちらがそれを受けて何かメリットはあるんですか?」

 

「メリット?あなたにはカンニングの容疑がかかっているんですよ?その疑いがはれるだけでは不満ですか?」

 

「この学校ではテストで満点を取るとカンニングの容疑がかけられるんですか?」

 

「そういうことでは...」

 

「俺がカンニングしたと言った人がいた、そういうことではないですか?」

 

「・・・」

 

「あーもういいですよ、そうです私があなたがカンニングしてるといいました。乙坂・ルルーシュ君」

 

生徒会室には先程まで俺と生徒会長の二人しかいなかったことは確認済みなので急にビデオカメラを持って表れた女の子を見てこの状況が最悪のパターンだと理解する。

 

「君は誰ですか?」

 

「あれ?あまり驚かないんですね、私は星ノ海学園生徒会長の友利 奈緒といいます」

 

「それで他校の生徒会長が何故俺がカンニングをしていると?」

 

「ああ、それはテストを受けてから話すんでご心配なく」

 

友利 奈緒という女が能力者だということはこの状況で理解した、そして俺の能力も何故かバレていて能力を使用してカンニングをしていたのではないかと言ってきているわけだ。だが1つわからない点がある、仮に俺が能力を使用していたとしたらカンニングとみなされて高校は退学になるだろう、だが俺を退学させたいがためにここまで手の組んだ事をした理由が分からない。

俺が友利 奈緒という女の思想を理解しようとしていると本校の生徒会長が話を進めた。

 

「このテストであなたがカンニングをしていたことが発覚した際は退学になってもらいます。この事については先生方にも承諾してもらっています」

 

先生の許可をもらっているということは...友利 奈緒はそこそこ顔が効くのか?それとも証拠でも撮られたか...。まぁ考えても仕方ないし問題を解いて帰るか。

 

「それでは国語の一番の問題から答えを口答でも大丈夫ですか?時間があまりないもので」

 

「なっ!?」

 

俺の言葉に驚きを見せたのは友利 奈緒だった、恐らく能力を過信して自分では何も出来ないと考えていたのだろう。

 

「それは大丈夫ですが問題は見なくて良いのですか?」

 

「同じ問題なら既に頭に入っているので問題ありません」

 

俺はそれから5教科を30分ほどかけて口答で端から答えた。勿論結果は満点だ。

 

「そんな....」

 

俺が全部の問題の回答をいい終えると誰かが生徒会室に入ってきた。

 

「すいません、遅くなりました」

 

「お、遅いぞ!」

 

「すいません、急ぎはしたのですが中々眼鏡が見つからなくて」

 

「そんなものどうでもいいんだよ!」

 

「それで例の彼は?」

 

友利 奈緒がこちらに指差すと眼鏡をかけた着痩せしてそうな男子生徒がこちらを見てきた。

 

「すいません、名乗り遅れました。私の名前は高城 丈士朗と言います、こちらにいる友利さんと同じ高校に通っています」

 

友利と同じ高校と聞いてこいつも超能力者だった場合に備えて48通りのパターンを考えておく。

 

「そ、そうですか...それでテストも終わったのでそろそろ帰りたいんですが」

 

俺が帰りたいんですがというと友利奈緒はあからさまに嫌そうな顔をした。だが結果は出てしまったので本校の生徒会長に頭を下げられて帰れることになった。

家につく少し前に俺は友利 奈緒の能力について思い出した。

 

見えなくなる、不可視というやつだ。

 

それなら今俺の後ろを追いかけてきている可能性もあるので試しに振りかえって確認することにした。

 

「そろそろ着いてくるのは止めてもらいたいんですが」

 

俺がそう言うと先程まで誰もいなかった場所から友利 奈緒が出てきた。

 

「・・・いつから気づいてたんですか?あなたには見えていないはずですが」

 

あなたには?他のやつには姿が見えるってことか。

 

「別に、ただあのまま引き返しそうにはないと思っただけですよ」

 

「そうですか」

 

「それで何の目的で俺の後を付け回すんですか?」

 

「はぁ...分かりました、正直に話します」

 

俺は友利 奈緒から能力のことを聞いた。これは思春期の病気みたいなもので成人になれば消えてなくなってしまうこと、それに研究者にバレてしまえば人体実験のモルモットにされてしまうということだ。友利 奈緒達は研究者たちから能力者を守るために能力者を見つけたら高校の3年間を星ノ海学園で通ってもらうことをしているらしい。

前からおれ自身も考えていたことなので素直に本当のことだと信じる。だがこの話を聞いて俺も聞かなくてはいけないことが1つだけあった。

 

「この能力は遺伝とかするんですか?」

 

「必ずしも遺伝するとは限りませんが可能性は極めて高いです」

 

俺の質問には友利 奈緒が答えてくれた。俺の最優先事項である妹のピンチに関わることだ、それなら俺の答えはもう決まっている。

 

「あなたが能力者だということは分かっています!ですがカンニングの疑いをかけたことはこちらの不手際でありサイテーな行為でした。本当にすいませんでした」

 

「それで、もしあのとき俺が能力を使ってカンニングをしていたとしたらどうしようとしていたんですか?」

 

「私達の通う星ノ海学園に転入してもらう予定でした」

 

「そこに通えば安全なんですか?」

 

「え?あ、はい...日本一、いえ世界一安全だと思われます」

 

「そうですかそれなら断る理由は特に思い当たらないですね」

 

「えーと?」

 

友利 奈緒は俺が何を言っているのか分からないみたいで首を傾けている。

 

「転入の件進めておいてください」

 

「それでは?」

 

「はい、これからよろしくお願いします。会長」

 

「なんか最初から最後まで負けた気がして納得いきませんが目的は果たせたので良かったです」

 

「私の出番は無さそうですね」

 

先程の眼鏡をかけた男が後ろから歩いてきた。

 

「確か...高城 丈士朗っていいましたっけ?」

 

「はいそうです、覚えていただけたようで幸いです。乙坂・ルルーシュさん」

 

「それで何をしようとしてたんですか?」

 

俺が高城 丈士朗に聞くと友利 奈緒が代わりに答えた。

 

「彼の能力は瞬間移動なんすよ、なので無理矢理連れていこうと思ってました」

 

「あははは...少し笑えない冗談ですね」

 

「冗談ではありません」

 

「ふっ彼女はやるといったらやりますよ...それで私が何度酷い目にあったことか!」

 

 

高城 丈士朗は何かを思い出したように瞳に涙を浮かべながら拳を握る。

 

「それじゃあー明日には手続き終わると思うのでお願いしますー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたでしょうか?ルルーシュがルルーシュらしくなくて少し不安は残りますが...ちなみにまだヒロインは決めていないので追々考えていこうと思います。


少し修正しました。ルルーシュ途中からタメ語になっていたので敬語に!


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生徒会の仕事

ルルーシュって仮面を被らないと話し方に特徴無さすぎて難しい....。

感想やアドバイス、ご指摘等あればお願いします!


翌日の朝。俺は友利 奈緒からの電話の着信音により起こされた。昨日引っ越しの準備をしたり歩末に転入のことを話したりと色々大変だったのでまだ眠いが目を擦って無理矢理体を起こす。

 

 

「あーすいません、まだ寝てましたか?」

 

「大丈夫です...それで用件は何でしょうか?」

 

俺は時計の針を確認してまだ6時を指しているのを見て二度寝することを決め友利 奈緒の用件を聞く。

 

「昨日話していた引っ越しの手続きが終わりましたので今日荷物を纏めてもらえないかと思いまして」

 

「荷物なら昨日のうちに纏めておいたので。引っ越しなら今日でも問題ないですよ」

 

「・・・相変わらず隙のない人ですね...わざわざ昨日言わずに帰ったのに」

 

「会って間もない相手に相変わらずと言われましても。はぁ...これで俺は正式に星ノ海学園の生徒になったわけですか」

 

「はい、妹ちゃんのほうも手続きは既に済ませてあります。お話はしてもらえましたか?」

 

「ああ話はしておきましたが俺と歩末が特待生として星ノ海学園に入るっていうのは良いいんですか?」

 

「いいとは?」

 

「こんな微妙な時期にそんなことして大丈夫なんですか?」

 

「ああ、大丈夫ですよ。話は通してありますから、それに特待生の方が助かるのではないですか?」

 

俺が思っている以上に友利 奈緒の顔は学外だけではなく学内でも効くようだ。生徒会長だと言っていたがそれも関係あるのか?

 

「確かにうちには払えるお金はないがここまでしてもらうのも悪いと思いまして」

 

「いえいえ。それにあなたにはしてもらいたいこともありますので」

 

「してもらいたいこと?」

 

「その話はのちほど」

 

「分かりました」

 

俺が星ノ海学園に転入するにあたり、歩末も同じ中学に通うには距離が遠すぎるので星ノ海学園に一緒に転入することになったのだ。星ノ海学園は聞いた限り高校というわけではないらしい、最初俺は中学は違う場所だと思っていたのだが星ノ海学園の目的は能力者の保護ということなので高等部と中等部があり近いので俺としても安心だ。

 

「引っ越しの準備お二人では大変だと思うので私達も途中で手伝いに向かいますね」

 

私達?ああ昨日の高城 丈士朗というやつも一緒に来るということか。

 

「そんなに荷物もないですし大丈夫ですよ。それに業者の人もやってくれると思いますし」

 

「話して起きたいことがあるんです」

 

「電話では話せないことなんですか?」

 

「別に話せなくはないんですが高城 も一緒にいた方が都合がいいので」

 

さっき話してた。してもらいたいことの話だと理解して話を進める。

 

「そういうことでしたらお願いします」

 

「今から引っ越し業者の人がいくと思うので、それではまたのちほど」

 

話す内容について気にはなったが深く追求せずに二度寝は諦めて引っ越しの準備をすることにした。           

 

 

 

 

ーーー星ノ海学園の寮。

 

寮に着くと俺は少なからず驚いた。玄関のセキュリティーは最新で警備の人までいる。さらに部屋は二人で住むには広すぎるといってもいいくらい開放的な部屋だった。

 

「おおーー!すごい広い部屋なのですぅー!本当にあゆとルルーシュお兄ちゃんの二人で使っていいんでしょうかー!?」

 

歩末の疑問は俺にとっても、もっともな疑問だった。いくら能力者の保護をするとしてもここまでの設備と部屋を貸してくれるなど学校では無理だ。それならもっと大きな企業が絡んでいると俺は思い少し警戒をすることにした。

 

「確かに二人だと勿体ない部屋の広さだな」

 

俺達が話をしていると業者の人が俺達の荷物を部屋の中に運んでくれていた。荷物を運んでくれている業者さんに向かって歩末が。

 

「お疲れ様でござる!不詳私めにもお手伝いを!!」

 

俺は困っている業者さんを見て、その光景を微笑ましく思い自然と笑みがもれる。だがこのままだと業者さんの仕事にならないので注意する。

 

「歩末、業者さんの仕事を奪ってやるな」

 

「おおー!そういう発想はあゆにはありませんでしたー!」

 

業者さんが部屋に荷物を全部運び入れてくれた後業者さんが帰るとすぐに友利 奈緒と高城 丈士朗が来た。

 

「こんにちわーお邪魔しますーてかしてます~」

 

「うっ...能力を使っていきなり現れるのやめてもらえませんか?」

 

「おっ、やっと普通に驚いてくれましたね。最初驚かなかったのあなたが初めてだったので少しいら...能力を無くしてしまったのではと心配になったので試してみました」

 

「今明らかにいらっとしてるといいかけませんでしたか?」

 

「いえいえ、そんなことないですよ」

 

「あれ?皆さんはルルーシュお兄ちゃんと同じ学校の人達でしょーか?」

 

「はい。生徒会の者です」

 

「私は高城 。こちらは友利さん放課後になったのでお手伝いしようと寄ってみました」

 

「それは助かるのですぅー!」

 

「では手分けしていきましょう」

 

「はい!」

 

高城はどこから取り出したのか分からないエプロンを一瞬の間に着替えて決めポーズを取っていた。俺はエプロンの早着替えも能力なのかと思ったが別に早着替え出来るからなにというわけではないので考えるのを辞めた。

 

俺が部屋の掃除をしていると歩末と友利 奈緒が一緒にいたので気になり部屋を覗いてみると。

 

「歩末ちゃん、手品見せてあげよっか?」

 

「それは是非みたいのですぅー!」

 

「そこにいてね。一瞬の出来事だから」

 

「うん!て、えええ!!」

 

俺から見ると歩末がうんと言った後に驚いているので恐らくは友利 奈緒が能力を使って歩末の前から消えているのだろう。そしてゆっくり歩末の後ろに回り込み肩を叩いた。能力のことを知らない相手なら誰しもが驚くであろう、俺も妹の度肝を抜きすぎると思って止めたいがあまりに歩末が楽しそうなので止めにいくことも出来ずに少しずつ部屋に入っていった。

 

「ええ!すごいのです!いきなり後ろに現れたのですぅー!テレビに出てくる人よりすごいのですぅー!」

 

「喜んでもらえた?」

 

歩末は何度も首を縦に降って喜びを表している。そんな歩末を微笑ましく見ていると友利 奈緒と目があった。

 

「乙坂さんもやりますか?」

 

「遠慮しておきます...」

 

たねの分かっている手品ほどつまらないものはない。

 

「それよりも、そろそろ片付けも一段落つきそうなので聞きたいことがあるんですが」

 

「そうですね。分かりました、高城を連れてくるので待っていてください」

 

歩末の前で話すわけにもいかないので俺の部屋に集まることになった。

 

「それで俺にしてもらいたいことというのは?」

 

「あなたには私達の生徒会に入ってもらいたいんです」

 

「生徒会?」

 

「はい。あなたの能力は使えるので協力してほしいのです」

 

「何にですか?」

 

「能力を悪用しているやつらを脅すためにです。あたし達はそういう存在なのです」

 

「脅す?俺はなるべく能力に頼らないように生きてきました、ここ一年でこの能力を使ったのは」

 

「1度だけですよね?」

 

「なぜそれを知っているんですか?」

 

「あなたが能力をどのように使ったのかは分かりませんが私が見てきた限りでは3週間前に居眠り運転の事故が起きようとしているときに能力を使いそれを回避した。私は丁度その場にいました。悪用ではありませんでした...でも普段どのように使っているかなんて分かりません、ですからカンニング疑惑を訴え出たんです」

 

能力者は大抵能力をあてにしているのだろう、自分は特別だと他の人とは違う選ばれた存在なのだと。そんな能力者を見てきたから友利 奈緒は能力者に対して疑惑の念をもってしまうのだろう。

 

「何のために脅すんですか?」

 

「能力者を守るためです」

 

能力者に対して疑惑の念を人一倍持っているはずなのに誰よりも能力者を守ろうとしているその矛盾と覚悟に過去なにかあるのかと思ったが今は聞かずに歩末のためにも協力することを決意した。

 

「分かりました。俺で良ければ生徒会に入ります」

 

「ありがとうございます」

 

「それでは乙坂さん、これからよろしくお願いします」

 

話も終わり外も暗くなってきたので友利と高城は帰っていった。俺は疲れたので早めに布団に入ろうとすると歩末の声が俺の部屋まで聞こえてきたので歩末の部屋に向かった。

 

「やっぱりHow-Low-Helloの西森 柚咲は最高ーなのですぅー!」

 

俺が部屋を覗くと何かのバンドの曲と歩末の興奮した声が部屋でこだましていた。

 

「歩末、明日は学校なんだから早めに寝るんだぞ?」

 

「あ、ルルーシュお兄ちゃん!見てみて!今How-Low-Helloの西森 柚咲ことゆさりんがテレビに出てるのですぅー!」

 

俺はテレビをあまり見ないのでHow-Low-Helloの西森 柚咲と言われても誰だか分からなかった。

 

「そ、そうか..あまり遅くならないように寝るんだぞ?」 

 

「了解したのですぅー!」

 

 

 

 

翌日。朝起きて俺は今玄関で歩末が来るのを待っている。勿論一緒に登校するためだ。

 

「ルルーシュお兄ちゃん!お待たせなのですぅー!」

 

「そんなに待ってないよ。それじゃあ行こうか」

 

「あ!ちょっと待ってくだされ!お弁当を作ったのですぅー!」

 

「いつもありがとう、歩末」

 

俺は歩末の頭を撫でながらお弁当を受けとる。

 

「歩末もルルーシュお兄ちゃんに食べてもらえると嬉しいので大丈夫なのですぅー!」

 

「それじゃあ行こうか」

 

「はいなのですぅー!」

 

俺は歩末を中等部の校舎まで送っていき自分の教室に向かう前に転入初日なので職員室に向かった。職員室で話を済ませて職員室から出ると友利と高城がいた。

 

「ようこそ我が校へ」

 

高城は友利の声に合わせてこちらに会釈だけしてくる。俺も会釈で返して三人で教室に向かう。

 

「ここにいる生徒は全員が能力者なんですか?」

 

「いいえ。ここにいる生徒の殆どは能力のありそうなものやこれから能力が出るかもしれないという疑いのある生徒が殆どです」

 

「むかーし我々のような特別な能力を持った者は脳科学者のモルモットになっていたんです。1度捕まれば人生終わり。」

 

友利は口調こそいままでと同じだがその声音はどこか悲しそうに聞こえて友利の過去と何か関係があるのではと思った。だが俺にはそれを確かめるすべはなかった。

 

「そうですか...」

 

「ありえないとか、冗談とか言わないんですね?」

 

「嘘ついているかどうかは目を見れば何となく分かりますから」

 

「そうですか...あ、あと何故に敬語なんですか?」

 

「生徒会長ということは年上ではないんですか?」

 

「いえ。同い年です」

 

高校一年で生徒会長、よほど頭がいいのかそれとも特別な決まりでもあるのか。俺はあまりに知らないことが多すぎると思いしばらくは情報を集めることにした。

 

「それなら何故あなたも敬語を?」

 

「ああ、私はこのしゃべり方が落ち着くので」

 

 

 

 

 

教室に着くと担任から自己紹介をしてくれと言われたので簡単に済ませて自分の席に戻った。

休み時間になると高城に学食に誘われたが歩末が作ってくれた弁当があるからと断ろうとした。だが学食も見てみたいとも思ったので弁当を持って学食に着いていくことにした。

 

 

 

 

 

 

ーーー学食。

 

「どこも混んでいて座れそうにないな」

 

「そうですね。サンドイッチでも買って教室で食べましょうか、乙坂さんはお弁当がありますしサンドイッチはどうしますか?」

 

「今回は遠慮しておくよ。だがあの列に並ぶのか?」

 

学食には何種類かご飯を注文できる所があったがどこもすごい行列だった。

 

「私の能力なら問題はありません。ただ速すぎて味を選べないのが難点ですが」

 

高城はそれだけいうと一瞬にしてその場から消えて周囲は風圧で吹き飛び強化ガラスは割れていた。誰から見てもはた迷惑なことだろう。

 

「乙坂さん」

 

後ろから声がして後ろを振り返ると頭から血を流した高城が立っていた。高城の瞬間移動は初めて見たがあの時無理矢理この能力で連れていかれそうになったと考えると冷や汗が出てくる。

教室に戻り教室を向かい合わせて高城と食べながら俺は高城の能力について少し調べることにした。

 

「パンを取ることは出来るが品定めする時間はないってことなのか?」

 

「そうですね、瞬間移動ですから」

 

「変に潰れているのも」

 

「瞬間移動ですから、力の加減なんて出来るはずがありません」

 

「着地する位置とか決めれないのか?」

 

「それができるのなら品定めも出来るでしょう」

 

「そうだよな....会長は女子同士で昼御飯を食べたりはしないのか?」

 

「彼女の能力は特定の一人に対してだけ見えなくなる力です。逆に言えばそれ以外の人間には見える。その不完全さ故に今の状況を招いたのでしょう」

 

「つまりいくら理由があってもそれは能力を使った暴力と周りには見えるからってことか」

 

「ええ。理解が早くて助かります、おっとこっちに来ますよ」

 

「協力者が現れます」

 

「協力者?」

 

「生徒会室に集合ということです」

 

この状況で生徒会室に集合という理由は1つしかない。

 

「能力者が見つかったってことなのか?」

 

「ほんとに察しがいいですね...」

 

 

 

 

 

 

ーーー生徒会室。

 

俺達が生徒会室に集まってしばらく過ぎるとずぶ濡れの男が急に入ってきた。そしてーーー。

 

 

「能力は...念写」

 

それだけ言ってずぶ濡れの男は生徒会室を出ていった。

 

「今のは?」

 

「特殊能力者の能力と居場所を教えてくれる協力者です」

 

「難波高校...待ち伏せするか。早退していくぞ」

 

「授業午後も残ってるはずだが...」

 

「生徒会は早退認められているので問題ありません」

 

 

 

 

 

 

ーーー難波高校。

 

 

「さあー聞き込み開始~」

 

「はい!」

 

友利の掛け声に敬礼をしながら返事をする高城。

 

「念写が能力ということは...ここ最近での写真での噂話などを聞けばいいのか?」

 

「素晴らしいですね...概ねその通りです。では!」

 

俺は校門にしばらくいると難波高校の女子生徒に話しかけられたので写真についてこの頃何か噂話などはないか聞いてみると何でも男子の間で何か流行っているという情報を得ることが出来た。

念写の能力を使用して女子生徒では流行っておらず男子生徒だけで流行っているという情報を整理して1つの解答に辿り着いた。犯人の狙いが分かった時後ろから友利に呼ばれて振り向く。

 

「挙動がおかしなやつがいました。あなたの能力で乗り移ってあいつの鞄の中身を調べてください!」

 

「その怪しいやつはどこに?」

 

「こっちです!」

 

ここでひとつ問題が起きた。俺は必死で走った別にふざけているわけじゃない。だが友利の背中が徐々に遠くなっていく。

 

「乙坂さん!足遅すぎます!ふざけてるんですか!?」

 

「はぁはぁ...お、俺はこれでも本気で走ってるんだよ」

 

そう俺は運動音痴なのだ。

 

 

「まさか...ここまで運動音痴だとは」

 

「はぁはぁ...すまない」

 

「いえ、それより早く追わないと」

 

「その事なんだが逃げたやつの行き先くらいならだいだい分かるから高城と会長で俺の指示通りに動いてくれないか?」

 

「・・・捕まえられますか?」

 

「ああ、従ってくれれば」

 

「分かりました」

 

今逃げてる男子生徒は恐らく自分が持っている物をバレたくなくて逃げている。その真相心理は警察に追い詰められた強盗と同じだ。それならば揺すれば簡単に捕まえられる、まず唯一相手に顔を見られている友利は校門にいてもらう。こうすることで男子生徒は帰ることは出来なくなる、普段の落ち着いた思考なら裏口から出るなど考えられるが今はそんなに余裕がないため身を潜めることに集中する。もっとも安心して身を潜めることが可能な場所は別館の1階男子トイレだ。まず理由として見つけたのが女子である友利だということで男子トイレに入っていれば安全だと考えるからだ、それに1階ならもしもバレたときに窓から出て外に逃げることも出来る。だがトイレの窓の所は俺が外から見張るので出てくればチェットクメイトだ。

 

この作戦を友利に話したときに、あなたは命令するだけで自分は何もしないのだと思っていました。と言われたがそれでは捕まえられない、これは1つの駒でも抜けたら穴だらけになってしまう作戦なのだから。

 

 

結果俺の予想通り男子生徒を捕まえることが出来、友利を呼び出した。

 

「さて、それでは調べさせてもらいますね」

 

「ま、待ってくれ!」

 

友利が調べようと鞄に手をかけようとすると男子生徒は鞄を抱き締めて待ってくれ!と必死に懇願してきた。

 

「その鞄の中にあるものなら大体予想はついている」

 

俺が言うと男子生徒はビクッと体を揺らして顔は青ざめ始めた。

 

「それでこの中には何が入っているのでしょうか?」

 

「女子生徒の下着写真だ」

 

「な、なんで...」

 

俺が言うと男子生徒は明らかに口調がおかしくなった。

 

「何故そう思うんですか?」

 

「さっき校門のところでここの女子生徒に聞いてみたところ男子生徒には流行っていて女子生徒には流行っていないと言われたんだ。そしてこの逃走となれば考えられるものは」

 

「女子には見せられない如何わしい物ですか」

 

「頭の回転が早いなそれでこれからどうする?」

 

「勿論下着写真は証拠になるので徴収します。それにこの人が念写したとは思えませんし誰から貰ったのかをしゃべってもらいます」

 

俺達が男子生徒の方に目を向けるとまだ鞄を抱き締めていたので俺はため息をつきながら能力を使い乗り移って鞄を友利に向かって投げた。

乗り移られた男子生徒は何が起きたんだみたいな顔をしたが鞄を持っていないことに気づくと慌ててこちらを見たが既に友利が写真を2枚見つけたあとだった。1枚は普通の女子生徒が制服姿で笑っている写真。そしてもう一枚はさっきの写真と同じ女子生徒が下着姿で写っていた。

 

「これが念写かーしょうもないことに使うなー」

 

「どうやら乙坂さんが言っていたことは合っていたようですね」

 

「さあこの写真をどこで手に入れたのか教えてください」

 

男子生徒は友利の質問には黙ったままだった。

 

「別にこの件を第三者に漏らすようなことはしません。真実だけ教えてください、教えてくれないとこの写真の子にあなたがこれ持ってたことばらしちゃいますよ?」

 

「・・・くっ、有働。二年E組」

 

「ありがとうございます。突入するぞー2年E組有働を捕まえる」

 

「あ、あの写真は...」

 

「この状況で返すわけないだろ、つか引くなっ!!」

 

 

 

 

 

ーーー二年E組。

 

「有働さんはもう帰られましたか?」

 

「え?有働君なら弓道部にいるんじゃないかな?」

 

「そうですかありがとうございましたーそれじゃあ弓道部に向かうぞー」

 

 

 

 

 

 

ーーー弓道部。

 

俺達が弓道部に着くと有働という生徒以外は丁度帰ろうとしていた。

 

「それでは部長お先に失礼します」

 

「ああ。お疲れ」

 

「いやーびっくりしたなぁー」

 

友利は能力を使い有働の前まで行って姿を表しながら有働に話しかけた。恐らく驚いたのは有働のほうだろう。

 

「うぉおお!お前誰だ!?どっから沸いて出てきた!?」

 

「酷いなー人をそんなゴキブリみたいに言わないでもらえますかね。それにまさかこんなハレンチな写真を念写能力で撮影して売り捌いている犯人が弓道部の部長だなんて~」

 

「うっ、写真?念写能力?なんのことだか」

 

「あなたのお客さんがゲロッたんすよ。あとあなたのロッカーも調べさせてもらいました。大量の写真が出てきてこのビデオカメラに証拠として録画しておきました」

 

「なっ...」

 

「部室のロッカーくらいなら簡単に開けられます」

 

友利の完璧ともいえる証拠を俺と高城は有働にバレないように柱の影に隠れながら見ている。

 

「えっ...くそ」

 

「どうしてそんなことを?」

 

「そりゃ金になるからさ」

 

「家計的な問題ですか。そんなお金もらっても親御さんは喜ばないっすよ」

 

「病気なんだよ!!仕方ないだろ!」

 

これでチェックだと俺は思っていたが有働は弓道着の中に手を入れて一枚の写真を取り出した。

 

「お前の下着姿を念写した。顔まで写っている、写真をばらまかれたくなかったら全て無かった事にしろ!」

 

「え!今ので念写終わりっすか!ぱないな!でもそんなの需要ないっすよ」

 

「どっから見ても上玉だろ?」

 

「マジっすか!誉められた!やったぁー♪」

 

この状況でなぜそこまで喜んでいられるのか理解出来なかったが先に進まないので俺は有働に乗り移り友利に写真を投げた。

 

「ナイス」

 

「ん..あれ写真がない!」

 

「ここにありまーす」

 

「何で...お前が」

 

「詰みました。観念してください」

 

弓道部の部長は追い詰められたことにより友利に向けて矢を向けた。俺はこの時に隣にいた高城の肩を掴み引っ張ることで1秒でも早く止めるために友利の元に向かった。考えもなく動くなんて俺らしくないが体が勝手に動いてしまった。

 

「全てを無かった事にしろ!」

 

「矢を人に向けるなんて最低ーです。武道精神ナッシングかよ!!」

 

「えっ...」

 

友利の言葉とともに俺の意識は右肩の激痛により意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると知らない天井。知らない場所で俺は寝かされていた。

 

「ここは?」

 

「あ、目が覚めましたか」

 

俺が目を覚ますとベットの隣で会長がイスに座っていた。

 

「会長?」

 

「はい。」

 

「俺は一体...」

 

「あなたは有働さんが矢を引いたときに友利さんの前に立って友利さんの代わりに矢を受けたのです」

 

高城の声が聞こえた俺はまだ痛む右肩を左手で押さえながら起き上がるとそこには友利の他に高城もいた。

 

「そうか」

 

「そうか、ではありません...何故あの場面で私の前になんて出てきたんですか!一歩間違えれば死んでいたかもしれないんですよ!」

 

(友利さんがここまで取り乱して怒るのは始めてみます。でもそれは友利さんの中で何かが変わったから、そして影響を与えてくれたのは乙坂さんなのでしょうね)

 

「俺にも分からない。ただ」

 

「ただ何ですか」

 

「友達を助けるのに理由は必要なのか?」

 

「えっ...いやあの」

 

「さてさて乙坂さんも命には別状はないのでいいではないですか。」

 

「・・・そうですね、そのありがとうございました。助けてくれて」

 

友利と高城はそのあとしばらく話して帰っていった。友利達が帰ってからしばらくするとものすごい勢いで部屋の扉が開かれて歩末が入ってきて怪我のことで色々聞かれたが今日は疲れたから明日話すよと言って眠りにつくのだった。

 

 

 

 




次回はいよいよ、ゆさりんが登場します。


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柚咲と美砂

皆様感想や意見をありがとうございます!ルルーシュ以外にも出してほしいという意見があったのですが反対の意見が多かったためこの作品ではコードギアスからはルルーシュのみの登場とさせていただきます。

駄文ではありますが感想や意見、指摘などあればお願いします!


 

俺は1週間の入院生活を終えてようやく退院することが出来た。学校からは少し遠い病院だったが友利が信用できる病院だと言うので入院した、医療技術は最先端で医療費も安かった。それに海に面していて夕方に見る景色はとても絶景だった。

 

「退院おめでとうございます」

 

俺が病院から出ると友利と高城が病院の前にいた。

 

「待っててくれたのか?」

 

「ええ。その怪我の一端は私のせいですので、肩の痛みはどうですか?」

 

「もうなんともないからあまり気にしないでくれ」

 

「そういうわけには...」

 

「友利さん、あまり気にしていては乙坂さんに悪いですよ」

 

「それより今日は学校があるんじゃないのか?」

 

「乙坂さんが退院すると聞いて友利さんと私は午前中を休みにしてあるので問題ありません」

 

「かえって悪かったかな?」

 

「そんなことないですよ。それでは学校にいきましょう、もうお昼になりますし」

 

 

 

 

俺と高城は学校に着くと友利と別れて食堂に向かった。今日は歩末の弁当がないので俺も食堂でご飯を食べるためだ。

食堂に入る前に高城が場所取りのためだと瞬間移動で食堂に繋がる扉を破壊しながら消えていった。

 

 

ーーー食堂。

 

俺が食堂に着くと頭から血を流した高城が二人分のカレーを用意して座っていた。

 

「あっ、乙坂さん。こちらです」

 

「いつも思うが高城。その怪我は大丈夫なのか?」

 

「はい。問題ありません、馴れていますから」

 

馴れているという言葉に何故か友利を連想してしまったが考えるのはやめることにした。

 

「・・・そうか」

 

「あとこれは私からの退院祝いです。数量限定牛タンカレーです」 

 

「すまないな。高城」

 

「いえいえ。それではいただきましょう」

 

Prrr。

 

俺と高城が牛タンカレーを食べようとすると友利から携帯にメールが入った。メールの内容は生徒会室に集合らしく急いで食べて生徒会室に向かった。因みに数量限定の牛タンカレーは、とても美味しかった。

 

 

 

ーーー生徒会室。

 

生徒会で少し待つと全身ずぶ濡れの男が入ってきた。

 

「能力は...口寄せ」

 

「口寄せ...死人を自分に乗り移らせるっていうやつか」

 

「そうです。降霊術...乙坂さんが言ったように自分に死者を乗り移らせる。イタコだ」

 

「もうひとつ...発火」

 

「2つの能力を有しているなんて!」

 

「すぐ確保に向かいたいところなんですがねー」

 

「どうしたのですか?」

 

「いえ。乙坂さんが何か気になることがありそうなので」

 

「・・・2つほどいいか?」

 

「はい、どうぞ」

 

「それじゃあ、まず一つ目。協力者が示した能力者の場所なんだが学校ではなくただの道だ。能力者の大人がいないなら昼のこんな時間にここに学生がいるのはおかしい」

 

「それは私も気になっていました。2つ目は何ですか?」

 

「これは俺の推測が入っているんだが大丈夫か?」

 

「はい。構いません」

 

「1人一つしか能力を持つことが出来ないと仮定して話すと。一つ目の能力が口寄せ。恐らくはそれが本質の能力なんだ、そして2つ目の能力の発火。これは口寄せされたやつが持ってる能力だと俺は思う。」

 

「・・・確かにそれなら辻褄が合いますね...口寄せの能力を持っており、発火の能力は口寄せされた者の能力」

 

「なるほど。それで結果的には二つの能力を有しているということになってるんですね」

 

「とりあえず気を付けながらこの場所に行ってみましょうか」

 

 

俺はこの時の言葉を後々己自信で覆すことになるのだが、まだ知るよしもない。

 

 

 

 

ーーー路地裏。

 

「ここなのか?」

 

「はい」

 

俺達が着いた場所は細い裏の路地でとても学生が通るとは思えない所だった。

 

「その人はそうとう必死にここを通り抜けたようです。段ボールのこの面だけ埃が付いていない、用は箱にぶつかるかしてここを走り抜けたんでしょう。」

 

「つまりは追われていた...ということですね?」

 

「事件性があるな」

 

「やっぱり、会長は頭の回転が早いな」

 

「あなたが言いますか...はぁ、まぁいいです先を急ぎましょう」

 

俺達がしばらく進むと1つは狭い間隔のもう1つは大きな間隔の足跡を見つけて女の子が追われていると分かり急いで後を追いかけた。後を追いかけていると煙草を吸っている人がいたので女の子が追いかけられてなかったか聞いた。

 

「ここで女の子が追われていませんでしたか?」

 

「ああ。さっきのアレね」

 

「なんすか?」

 

「アイドルが大男に追われているっていう。撮影でしょ?」

 

「アイドル?」

 

「えーとー。そう西森柚咲ちゃん」

 

「聞いたことあるなー」

 

「確か歩末がテレビで」

 

「ゆさりん!?」

 

俺達は煙草を吸っていた人にお礼を言って西森柚咲が逃げていったと言われた方に歩いていると高城が知っている用な感じだったので友利が西森柚咲の事を聞く。

 

「西森柚咲について知ってるのか?」

 

「通称ハロハロ。How-Low-Helloというバンドのボーカルも勤めている、人気上昇中の歌って踊れるアイドルです!!」

 

「お前そんなアイドルオタクだったのか!引くなっ!!」

 

「小学6年の時にローティーン向けファッション誌プチバナナ代14回読者モデルオーディションでグランプリを獲得という快挙から始まり専属モデルとしてデビュー。翌年にはムーブメント朝のレギュラー出演が決まり!二年後受験を理由のため降板...。そして高校生になって芸能活動に」

 

「高城その話はとりあえず後にしよう。まずはその子を探さないと」

 

「とりあえずYahooで名前入力したら顔出てきたんでどうぞ」 

 

「そんなもの見なくても分かります!」

 

「お前に見せてねーよ!」

 

友利が携帯を見せてくれている後ろで高城が眼鏡をあげながら言うと、友利に回し蹴りをくらわされて後ろに吹っ飛んだ。

 

「ああ、悪いな。俺も顔知らなくて」

 

「いえいえ、追っている者の顔も知らないんじゃ探しようがないだけなので...!!不審者発見!追います」

 

友利が不審者を見つけたらしく走っていく、それを少し遅れて俺と高城が追いかける。追いかけているときに高城の方から本当に?を連呼された気がするが聞こえなかったことにする。

 

「ぐはぁ!」

 

友利が不審者を追って路地を曲がった瞬間に吹き飛んできた。俺はそのようすを見て瞬時に理解して路地を曲がり逃げようとしている男を見つけたので能力で乗り移る。

 

「ぐはぁ!」

 

能力で俺が乗り移ると瞬間移動で高城が俺(ホストっぽい男)に突っ込んできた。その威力は凄まじくコンクリートで出来たビルに当たるまで高城の勢いは止まらず俺(ホストっぽい男)がぶつかった所は衝撃でコンクリートに穴が空いていた。

 

「痛っ...人に乗り移った時には乗り移った人の痛みは俺が受けるのか」

 

「乙坂さん、一応退院したばかりで心配だったのですが分析している余裕があるみたいで良かったです」

 

「かなり痛かったが問題ない。そうだ、会長は?」

 

俺は先程吹き飛ばされた、友利の元に向かった。

 

「会長大丈夫か?」

 

「痛っつつ....くそ!ビデオカメラ壊れたらどうすんだよ!」

 

「大丈夫そうだな....」

 

友利は起き上がり先程高城に吹き飛ばされた男の方にいく。男は口から血が出て倒れていた、俺が受けた痛みでは恐らく...。

 

「お前何者だ?」

 

「貴様等こそ...うっ」

 

「吐いたら救急車呼んでやるからさぁーこのままじゃーあなた死んじゃいますよー」

 

「仕事を頼まれてるだけだ」

 

「どんな?」

 

「それは...言えない」

 

友利は男の襟をつかみあげて言う。

 

「命かけてまで守る話ですか」

 

「・・・西森柚咲を探してるんだよ」

 

「誰に頼まれて?」

 

「太陽テレビ」

 

「の、誰ですか?」

 

「そこまでは知らない。本当だ」

 

「分かりました。既に救急車は呼んであります」

 

男を救急車に乗せると後ろから話しかけられた。

 

「お前等。何者なんだ?」

 

「西森柚咲という女性を探しているものです」

 

「通称ゆさりんです!!」

 

「何のために?」

 

「理由は分かりませんが追われていることは確実なので助けようかと」

 

「柚咲の知り合いか?」

 

「大ファンです!」

 

「いちいち話の腰を折るな!!」

 

高城は友利に腹に1発いれられその勢いのまま後ろ回し蹴りで吹き飛ばされた。俺は高城がご飯を食べているときに馴れていると言ったのは能力のせいではなく友利によるもののほうが大きいのではないかと思い始めた。

 

「ずっと見ていたがどうやってあの男を倒した?」

 

「特殊な力で。それは恐らく西森さんの持っているものに似た」

 

「何でそれを!」

 

「あたしたちであればその子を助けられるかと」

 

「そうか...。なら証明してくれ、あいつと同じ力を持ってることを」

 

「同じではありませんが、ほい」

 

友利は能力を使用して消えることで特殊な力を持ってることを証明した。高城はいつのまにか隣に戻っていた。

 

「消えた!?」

 

「ほい」

 

「なっ!?...」

 

「信じていただけましたか?」

 

「・・・ああ。じゃあついてこいよ」

 

 

 

 

ーーークラブ。

 

人通りの少ない所に来るとクラブがあり、地下まで案内された。

地下まで案内されると案内してくれた赤い髪の男の他にニット帽を被った男に先程携帯で見たマシュマロを食べている西森柚咲がいた。

 

「外の様子はどうだった?」

 

「何人か探してやがる。あと」

 

「うぉおおおおお!!まさに本物のゆさりん!!ハロハロのCD全部持ってます!」

 

「引くなっ!!」

 

「ありがとうございます♪」

 

「おい、なんだそいつ等は」

 

「美砂と同じく特殊な能力を持ってるやつらだ」

 

「美砂?本名は柚咲ではなく美砂なのですか?」

 

「そこがややこしいところなんだ」

 

「いいのか?こいつ等を信用して」

 

「あいつ等をその力で撃退してくれたからな」

 

「ややこしい...美砂と柚咲は別人なのか?もしくは片方は死んでるとかじゃないのか?」

 

「乙坂さん、それはつまり」

 

「ああ。俺はそう思っている」

 

「美砂は...死んだ柚咲の実の姉だ。半年前に亡くなっている」

 

赤い髪の男がそういった瞬間西森柚咲の瞳の色が赤に変わり髪も金とオレンジのグラデーションに変わった。

 

「テメェ!見ず知らずの相手にあれこれ教えてるんじゃねぇよ!」

 

赤い髪の男は髪も様子が変わった西森柚咲に腹をおもいっきり蹴られた。

 

「もしかしてあなたが美砂さん?」

 

「狭い場所に揃い揃ってうっぜーなー!!」

 

元々俺は西森柚咲という性格を知らないので分からないが高城を見ると白くなって震えていることから性格が変わっているということが分かった。つまり今は西森柚咲ではなく、西森美砂になったのだろう。

西森美砂が手をかざした方に火が急に現れた。これが発火の能力なのかと理解する。

 

「うおおお!すっごい能力!」

 

友利は、はしゃぎながらビデオカメラを回しているがクラブの個室で火なんて付けたらあっという間に広がってかなり危険だ。この火をどうやって消すか考えていると赤い髪の男がが叫んだ。

 

「落ち着け美砂!全員焼き殺す気か!」

 

「ちっ...そいつはセンスがないな」

 

美砂は1度指を鳴らすといままで部屋を燃やしていた火が一瞬にして消えた。

 

「驚きました。自由に呼び出せるわけではなく美砂さんの方に主導権があるんすね」

 

「なんか文句あんのかよ」 

 

「と言うことはたぐいまれなる憑依体質。そしてその柚咲さんに憑依する美砂さんが発火能力を持つ」 

 

「ああ」

 

「この二人との関係は?」

 

「生きてた頃にヤンチャしてたあたしの仲間だ」

 

「何故妹さんが追われているかご存知ですか?」

 

「ああ」

 

美砂はニット帽の被った男に合図するとニット帽を被った男は携帯を取り出した。

 

「こいつだ。どっかの現場で柚咲が持ちかえっちまったテレビ局の大物プロデューサーの物だ。それにメールが届いて柚咲が読んじまった。金の使い込み、ヤバイ連中との付き合いサツに持っていけば間違いなくしょっぴかれる内容だ」

 

「電源は切ってあるのか?」

 

「ああ。だが昨日までは切って無かった」 

 

「それならもうこのへんにいることはGPSでバレてるだろうね」

 

「ええ。見つかるのも時間の問題です」

 

「そ、それなら!ゆさりんが私の部屋にくればどうでしょうか!?」

 

「ばぁあかか!テメェは!少し黙ってろ!」

 

「そ、それなら!せめてゆさりん!危ないときに連絡を取れるように私と連絡先の交換ぐふぉ!」

 

高城が本日何度目か友利により吹き飛ばされた。

 

「まぁこの馬鹿はほおっておいて話を戻します。いまさらスマホを返したところで無事ではすまない。かといって警察に渡したところで西森さんが」

 

「こいつの本名は黒羽だ。西森は芸名」

 

「はぁそうですか、黒羽さんが警察に渡したところでプロデューサーを売ったことで芸能活動が出来なくなる」

 

「ならテレビ局ごと燃やしてやる」

 

「ばぁああかか!!そんなことしたら妹さんが逮捕されるわ!」

 

「テメェ!何様だ!アァン?」

 

「二人とも落ち着いてくれ。美砂さん、妹が少年院に送られてもいいんですか?」

 

「・・・くっ、それはセンスがないな」

 

「冷静になった所で、俺に作戦がある」

 

「勝算は?」

 

「全員が俺の言った指示通りに動いてくれれば100%成功させる。戦略が戦術に負けることはないのだから」

 

 

 

 

 

 




ルルーシュの作戦なのですがアニメと同じにしようかオリジナルで行こうか悩んでいます。よろしければ感想でどちらを書いた方がいいか書いてもらえると嬉しいです。特にない場合はアニメと同じでいこうと思います!


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力よりも心

たくさんの感想や意見ありがとうございます!オリジナルで書いてみたのですがどうでしょうか...ルルーシュにしては地味ですかね。

感想や意見あればお願いします!


 

ーーー倉庫前。

 

 

 

作戦を全員に伝えて今俺達はプロデューサーを指定して呼び出した海沿いの使わなくなった倉庫の前に来ていた。時間は夜10時お互いに人目に付かなくて都合がいい時間帯だ。勿論柚咲以外は倉庫の影に隠れている。

 

「逃げ切れないと悟ったか?」

 

俺の予想通りプロデューサーの後ろには2台の車と数人の黒服の男達が出てきた。

 

「あのー全然追われる理由が分からないんですけどーゆさりん何かしましたっけー?」

 

「俺のスマホを返せ」

 

「これですか?」

 

「そうだ」

 

「返したところでゆさりんピーンチみたいな~?」

 

「どっちにしろお前にこの業界での未来はない」

 

「あたしの未来がない...くそがっ!それはテメェの方だろうが!!」

 

プロデューサーと車の回りにあらかじめまいておいたガソリンに美砂の能力を使い火を付けさせて退路を塞ぐ。ガソリンに火を発火させたことにより火は燃え上がり完全に退路は無くなる。俺の目的はプロデューサーを動揺させる事と俺達が倉庫の影からでて後ろに回り込んでもバレないようにするためだ。

 

「な、なんだこの火は!?」

 

俺はプロデューサーが動揺している間にボディーガード1人1人に乗り移り銃を持っていないか確認すると1人だけ銃を持ってるやつがいたので予めいくつか考えておいた作戦の内の0作戦を友利と高城に合図して作戦にうつる。

 

「あたしを追い込んだつもりだろうがあたしがあんたらを追い込んだことに気づいてないなんて全くセンスがねーなー」

 

「な、なんなんだお前...本当に西森柚咲なのか?」

 

「勿論。本物のゆさりんこと西森柚咲だよ。あたしは自分が成功するためなら誰でも殺す!」

 

「ふふふ...だがこの炎の中ならお前も生きては出られんぞ?」

 

「そうかな?」

 

美砂が指を鳴らすと先程までの火が嘘だったかのように消える。それを合図に俺達は車の後ろから0作戦だと美砂に合図を送る。

 

「な、何故火が!」

 

「ははは、そんなこともわかんねえのかよ。だから身内の裏切りにも気づけねえんだよ」

 

「な、なにを」

 

「お前の後ろにいる黒服の一番左の奴だよ。あいつが裏切っていろいろ情報をくれたんだよ」

 

「ふ、ははは、何を馬鹿げたことを」

 

「あいつだけ銃もってるだろ?」

 

「なっ!?ま、まさか貴様!」

 

「い、いえ私は!」

 

このタイミングで俺は銃を持っている黒服に乗り移り車のタイヤを銃で一つずつパンクさせて銃を海に投げ捨てる。

 

「はっ!わ、私は何を....」

 

「貴様!裏切っていたのか!帰ったら覚えてろよ!お前の未来もないと思え!」

 

「わ、私は何も!」

 

「黙れ!目の前であんなことをしておいて!白々しい!」

 

「んなことはどーでもいいんだよ」

 

「くっ...だが頼みの火は消えてお前にもう打つ手はないんじゃないのか?」

 

プロデューサーはそう言うと先程の俺が乗り移った黒服以外が美砂を捕まえようと少しずつ近づいてきた。

 

「私はいつ裏切りが一人って言ったよ?」

 

美砂がそう言った瞬間俺は黒服の一人に乗り移り周りの黒服に殴りかかる。

 

「そ、そんな...」

 

プロデューサーの頭の中は動揺と恐怖、そしてボディーガードに裏切られ疑心暗鬼になっている。俺が考えた作戦ではこの状況にプロデューサーを陥れることが重要だった。俺達の力を使えばこんな回りくどいことをしなくても簡単に言うことを聞かせることが可能だが、力による支配はもっと大きな力をてに入れたときに簡単に覆させられてしまう。それでは今は良くても後々柚咲が危ない目に合う危険性があった。だから俺は恐怖をプロデューサーに与えて金輪際柚咲に逆らうことが出来なくしたのだ。

 

「いつでもテメェを闇に葬れるんだよ。こっちはな」

 

「わ、分かった...降参だ。助けてくれ...」

 

「これは返してやる。ただし次はもうないからな?問答無用で消す」

 

「ひぃ...ひぃぃいいい」

 

美砂の最後の一言で完全に心が折れた、プロデューサーは情けない声をあげて走り去っていく。

 

 

「上手くいったようで良かったよ」

 

「はい。私達何もしてないのであれですが」

 

「銃を持ってる相手が1人以上なら俺だけじゃ無理だったからな、1人だったからなんとかなっただけだよ」

 

「ともかく助かった。さっき起きた全てを柚咲1人でやったと思い込んでいる。それにあれだけ恐怖心を仰げば、あのプロデューサーは柚咲には逆らえないだろう」

 

「いえ。まだ問題は残っています」

 

友利は美砂に能力者の事や脳科学者達の研究のモルモットに使われていることを話した。

 

「と言うわけで、我々の通っている星ノ海学園に転入して今後行動を共にしてください」

 

「何でだよ!」

 

「先程説明したように科学者達に捕まれば人体実験の日々が始まり2度と日常には帰って来られなくなるんですよ」

 

「くっ...」

 

「我々の学校と併設するマンションは黒羽さんにとってこの日本で1番安全な場所なのです」

 

「それは柚咲にとって助かる話だな。是非そうしてくれ」

 

「ま、待ってくれ!じゃあ...えーと」

 

「柚咲の力が無くなったらもう美砂には会えないってことか?」

 

「お、俺もそれを聞きたかったんだ」

 

「ま、そうなるでしょうけど。そもそも故人ですよ。これまで会えていたことの方が不自然ではないですか」

 

「で、でも!!」

 

「翔!こいつの言う通りだ。本当はもういないんだ!ここらでもうお別れ。そう決めないか?」

 

こんなときだが赤い髪の男は翔って言うのか初めて知った。

 

「くっ...じゃあせめて思いの丈くらいは伝えさせてくれ」

 

「ん?」

 

「えと、なんつーか...こんなときに言葉が出てこねー」

 

「え?翔お前あたしに気が合ったのか?」

 

「うっ...は、はは。そうだよ!俺は美砂お前が好きだった。恥ずかしい話だけど恋してたんだ。それを伝える前にいっちまうなんて...それも原付のにけつで事故。俺だけは怪我で済んで...お前を殺したのは俺で」

 

「そっかーそっかそっか。それは大変な思いをさせ続けちまったな。でもそういうスリルを求めたのはこのあたしだ、自業自得だ。」

 

「う、うう...」

 

「泣くなよー柄でもねー。翔、あたしの事は忘れて明日からはお前の人生を歩め。何時までも死人のことを引っ張るな。でないとお前の人生狂っちまってこの先幸せになれないぜ?たくっ困った奴だな」

 

「翔」

 

「分かったよ...美砂。俺はお前がいない俺の道を歩む。お前への思いを断ち切る。そうして生きていく」

 

「よし。二人とも幸せな人生を送れよな!」

 

「・・・ああ」

 

「おうよ」

 

「じゃあな。ずっとありがとな、最高に楽しかったぜ!」

 

柚咲が星ノ海学園に転入するという事が決まり俺達は長い生徒会活動を終えて帰宅する。

 

 

ーーーマンション。

 

「めっさ遅ーい!こんな遅くなるなら電話してほしかったのですぅ!!」

 

「す、すまない。生徒会の仕事で予想以上に時間がかかってしまってな」

 

「もう!退院したばかりなんだから無理は駄目なのですぅ!!あゆはルルーシュお兄ちゃんが心配なのですぅ!!」

 

俺は微笑みながら歩末の頭を撫でる。

 

「ありがとな歩末。心配してくれて、でももう大丈夫だからあまり心配しないでくれ」

 

「うう。これはズルいと思うのですぅ...」

 

「歩末ご飯はあるかい?」

 

「勿論なのですぅ!今晩は改心のミートスパゲッティーなのでござるー!」

 

「それは楽しみだ」

 

俺はご飯を食べ終わり歩末の邪魔にならないように食器を洗うのを手伝っているとテレビで柚咲が歌っていた。

 

「あ!またハロハロ!」

 

「テレビで見ると遠くの人に感じるなー」

 

「ん!?テレビで見るととはどういうことなのでしょうか?」

 

「ああ。明日からうちの高校に転入してくるんだよ」

 

「ええ!?それは羨ましすぎるのですぅ!!あゆ会えたり出来ないものでしょうか!」

 

「あ、ああすぐには無理だと思うが」

 

「ほぉおおお!!」

 

歩末が興奮しすぎて鼻血を出したのでティッシュで拭いて鼻に小さく千切ったティッシュを押し込む。

 

「歩末落ち着つくんだ、取りあえずは鼻血を止めないと」

 

「それはすごいことなのですぅ!!」

 

鼻につめたティッシュが吹き飛んだ。

直接会わせるとどうなるのか想像しただけでも嫌な予感しかしないので会わせるかどうかは考えることにした。

 

俺はいつも通り歩末を送り届けてから自分の教室に向かった。

 

 

 

 

ーーー教室。

 

教室ではどこから漏れたか分からないが学校に柚咲が転入してくることが既に広まっており教室中が賑やかだった。

 

「あの西森柚咲が転入してくるんだって!」

 

「え?まじかよ!?」

 

「まさかー芸能学校じゃあるまいし」

 

「でもー本物だったらー嬉しい!」

 

「流石はゆさりん!既に盛り上がってますね!乙坂さん!」

 

「あまり興味はないな」

 

「ええ!またまた~そんなこと言って~」

 

「本当だって」

 

クラスが賑やかなまま教室の扉が開き先生と柚咲が教室に入ってきた。

 

「静かに。そこ着席しろ」

 

「ま、まじで?」

 

「あ、あれって...」

 

「それじゃあ。今日からクラスメートになる転入生だ。自己紹介を」

 

「ゆさりんことー黒羽柚咲です♪」

 

「「うぉおおおおお!!」」

 

「可愛い!お人形さんみたい!」

 

「静かに!静かに!そこ!着席しろ!!そこ踊るな!」

 

「先生って職業も大変そうだな」

 

俺はこんな状況を見ながら先生を哀れむことしか考えていなかった。

 

「本名は黒羽って言うのかぁー!」

 

「ふっそんなことも知らなかったとは」

 

「しーーーーーー。お仕事で出席出来ないこともありますが皆さんとの高校生活思いっきりエンジョイしていきたいと思います♪よろしくお願いします♪」

 

柚咲のしーーーという言葉であれだけざわついていた教室は一瞬に静まり返り皆目を奪われていた。そんな静寂を破ったのは俺と同じ生徒会の高城だった。

 

「ゆさりん。ゆさりん。ゆさりん。ゆさりん。」

 

高城のそのゆさりんコールを境にクラスの男子は全員ゆさりんコールを始めた。

 

「静かにしろーー!!黒羽の席はそこ。着席したまえ」

 

 

柚咲の席は友利の隣の席だった。ゆさりんと近くに座れた生徒からは歓喜の声が遠い生徒からは呪いの声みたいなのが聞こえてきた。

 

「よろしくお願いします」

 

「はい!こちらこそ色々と御面倒をかけると思いますがよろしくお願いします♪」

 

友利が隣の席になった柚咲に挨拶してそれに柚咲が返しただけなのだが周りの生徒からは感じ悪いなど友利の悪口が複数聞こえてきた。俺は妬みかとも思ったが高城から聞いた話を思い出して妬みではないと理解する。

休み時間になると柚咲の周りにはクラスの女子や男子が集まって話をしていた。

 

「NEWシングル予約したよー!」

 

「あー!あたしも!あれすごく良い曲だよね!」

 

「と、友達になってください!メアドの交換を!」

 

「て、テメェいきなりなにいってやがる!」

 

「なんだよ!」

 

「抜け駆けすんなよ!」

 

「それくらいいいじゃないか!」

 

「まぁまぁ二人とも仲良くですよ~」

 

「はっ!まさか!聞けるのか!あれが!」

 

「高城何のことだ?」

 

「仲直り~仲直り~なっか直りのおまじない♪」

 

「でたぁああーーー!!ゆさりんのおまじないシリーズ13!!仲直りのおまじない!!」

 

「あ...ああそうなのか」

 

「はい、二人は仲直りしました~♪」

 

「ああ。悪かったな」

 

「いいや。俺こそ」

 

「高城...あのおまじないシリーズってのは何なんだ?」

 

「柚咲さんがレギュラー出演していた。朝の情報番組。ムーブメント朝。通称ムブ朝で今日の占いの後で運が悪い視聴者に向けて柚咲さんが送っていた!おまじないの数々です!」

 

「シリーズ13てことはいくつもあるのか?」

 

「64個です!がっ実はダブリがありまして実は63」

 

「引くなっ!!」

 

「ん?」

 

「おっとまた協力者が現れますか?」

 

「はい」

 

友利は柚咲の周りにいる生徒を強引にどかしながら柚咲の前までいく。

 

「黒羽さん。今すぐ生徒会室まで同行してください」

 

「そりゃねーだろー生徒会長さんよ」

 

「いきますよー」

 

「はい」

 

 

 

 

ーーー生徒会室。

 

「柚咲さん!先程のおまじないシリーズ13仲直りのおまじない!素晴らしかったです!」

 

「すごーい。そこまで詳しく知ってもらってたんだぁ~」

 

「はい!柚咲さんが出演されていた間はずっとチェックしていましたので!」

 

「わぁーい♪ありがとうございます♪」

 

俺も高城に引き始めていると協力者が入ってきた。

 

「ふぇえ...」

 

「柚咲さん!大丈夫です!怖いかもしれませんが安全です!」

 

「お前らー少し黙ってろー」

 

「はい...」

 

「能力は...念動力」

 

「ええと...結局何が起きたんでしょうか?」

 

「特殊能力者の居場所とどんな能力を持っているかを教えてくれたんですよ。えーと黒羽さんもこうして協力者に見つけられた」

 

「へぇーそれはすごい!あ、乙坂さん。私のことはゆさりんか柚咲で大丈夫ですよ♪」

 

「分かった」

 

「場所は学校だな...ここは関内学園か。よし!ビンゴ!」

 

「会長どういう意味だ?」

 

友利は1枚の新聞を俺達の前にだした。そこには一人の高校球児が大きく載っていた。

 

「これ先週のスポーツ新聞。あたし目ー付けてたんですよー」

 

「3試合連続完全試合ナックル冴え渡る。プロ要り間違いなしの超高校球児」

 

「翌日その試合を見に行ってきたんですよー。ビデオカメラで取ってきたんで皆さんも見てください」

 

ビデオカメラにはナックルでバッターを打ち取る投手が写っていた。すごい変化とキレでとても高校生に打てる玉じゃないのは見ていても分かる。

 

「メジャーリーグ並みですね」

 

「ところがどっこい。今度は投球するピッチャーの手に寄った映像を見てください。これ見てください。変じゃないですか?」

 

「握り方がストレートということは」

 

「そうです。投げた直後に念動力を使ってボールを落としてるに違いありません」

 

「わぁ~これまたすごいです!」

 

「甲子園の予選が始まる前に抑えておかないとまずいです。すぐ向かいましょう」

 

「え?授業は?」 

 

「大丈夫です。どのように行動しようとも生徒会に所属している限り成績や内申屁のデメリットはありません」

 

「は、はぁ」

 

 

 

 

ーーー関内高校グラウンド。

 

「星ノ海学園の生徒会の者です。」

 

「何のようですか?練習中に」

 

「すいません~」

 

「え?西森柚咲?」

 

「あ、彼女の事は無視して今はあたしの話を聞いてください」

 

「何ですか?」 

 

「単刀直入に聞きます。あなたは念動力を使ってナックルボールを投げていますよね?」

 

「念動力?超能力のですか?そんなの持ってるわけないでしょ。生徒会じゃなくオカルト研究会ですか?」

 

「いいですか、よく聞いてください。その能力は思春期のみに生じる病気のようなものです。あなたがプロを目指したとしてもその頃には能力は消えています。それどころか誰かがあなたの能力に気付けばあなたは捕まり2度と野球が出来ない体にされます。なので今後はその特殊能力を使わないでください」

 

「捕まるって誰にですか?」

 

「あなたの用な能力者を研究している科学者達にです」

 

「そんな馬鹿げたことを信じろと?」

 

「分かりました。では私を見ていてください」

 

「ん?うぉ!消えた?」

 

「信じてくれましたか?」

 

「・・・」

 

「往生際がわりーなー。丸焼きにでもすっか」

 

「うぉお!!」

 

「美砂、ここじゃ目立ちすぎる」

 

「こんなとこで見せびらかすな!」

 

「けっ。ぺっ!」

 

「ああ!ゆさりんの唾液!!いや!美砂さんの唾液なのか!?反応に困る!」

 

「引くなっ!!」

 

「話が進まない...本題に戻そう」

 

「では野球で勝負しませんか?うちの野球部とあなたの学校の野球部で。我々が勝ったら言う通りにしてください」

 

「分かりました。僕達が勝てば2度と関わらないでください」

 

「はーい。にしてもプロ野球選手になれないのに何があなたをそこまで突き動かすのか分かりかねます」

 

「甲子園に行く。ただそれだけです」

 

「分かりました。次の日曜日午後3時からうちのグラウンドでどうでしょう?」

 

「はい。問題ありません」

 

俺達は試合の約束をして関内高校グラウンドをあとにした。

 

「会長。うちの野球部って強いのか?」

 

「いえ。普通といったところでしょうか。能力を使うので問題ありません」

 

「野球部にも能力者がいるのか?」

 

「や、うちの野球部には素質さえあれど能力を使える者はいません」

 

「俺達が能力を使って勝つってことか?」

 

「はい、その通りです。うちのグラウンドであれば能力無制限に使いたい放題に使えますし」

 

「まぁ妥当ですね」

 

「ふん。久々に燃えるな」

 

「俺の運動能力を考慮してるのか?」 

 

「そこが一番の難点でしたが勝つ方法を考えてください」

 

「それで1週間の猶予をとったのか?」

 

「その通りです。足りませんでしたか?」

 

「いや充分すぎる時間だ」

 

 

 

 




何かやっちまったかんが拭えない...。


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野球の勝利は戦略で決まる

野球回難しかった....野球の知識がパワプロくんしか無かったので1日野球の事を勉強しました...拙い文ですが感想やご指摘お待ちしてます!


1週間過ぎ約束の日。

グラウンドに関内高校の野球部がやってきた。

 

「プレイボール」

 

アンパイアの合図と共に試合は始まった。俺は予めピッチャーに覚えるように言っておいた、サインをしっかりと覚えているか確認して全員を守備につかせる。守備位置は、キャッチャーが野球部。ファーストも野球部。セカンドを俺。サードを高城。ショートも野球部。ライトは野球部。センターは友利。レフトは一番打たれずらいという理由で柚咲となっている。

野球部のピッチャーは投げる前に俺の方を向きサインを俺が指示する。俺が覚えてもらったサインの種類は大きく分けると2つ。1つは変化球を投げる。もう1つはストレートを投げる。うちの野球部のピッチャーの変化球はカーブとスライダーの二種類があるので指示するものによっては大きな武器になる。しかし球速は120キロと高校野球では遅く打たれやすい。

試合が始まり相手の一番バッターが出てくる。

俺は今日まで1週間関内高校野球部の試合をひたすら見て研究してきた。そのおかげで関内高校野球部の一人一人の打つときの呼吸などが手に取るように分かる。

 

俺は最初はど真中にストレートという指示を出す。この指示を見てうちの野球部のピッチャーは驚いたがバッターに向き直り1球目を投げた。

 

「ストライク!」

 

思った通りの結果だった。相手の1番は足がとても速いがバッティングに自信がないのか初球は見過ごす癖があるのだ。

次に2球目の指示を出す。次は外角いっぱいの外に逃げるスライダーと指示を出す。

 

「ストライク!」

 

先程ど真中のストレートを見逃したことでほぼ同じ球速のスライダーを投げれば思わず振ってしまいこれでストライクは2つ。あとは内角高めにストレートを投げるように指示を出し一番バッターを三振にとる。

そのあとの二人はどちらも内角が苦手なので内角を投げさせてピッチャーゴロを2つ取り、スリーアウトチャエンジになった。

 

「うちのピッチャーの球が打てないなんてたいしたことないなー、それとも乙坂さんのサインが良かったんですか?」

 

「俺は特になにもしてないよ。撃ち取ったのはうちの野球部のピッチャーのおかげさ」

 

「えーでもうちの野球部弱いですよ?」

 

「おい!急な試合で本気だしてるのになんだその言いぐさは!!」

 

「事実ですので。それに乙坂さんのサイン無しであそこまで上手くあしらえましたか?」

 

「くっ...それはそうかもしれないが!テメェにそこまで言われる覚えはないぞ!この試合放棄するぞ!?」

 

「それは困ります。投げてください」

 

「だったらちゃんと考えて喋れよ!!」

 

「黒羽さーん。お願いします」

 

「え?」

 

「はーい♪おまじない~おまじない~冷静になるのおまじない♪」

 

「でたぁああーーー!!ゆさりんのおまじないシリーズ9!冷静になるのおまじない!」

 

「はい。これで冷静になりましたー♪」

 

「ほぁああ...」

 

「引くなっ!!」

 

 

ひと悶着あったが次はこちらが攻めだ。ここで成功しなければ俺の作戦は失敗するかもしれない大事な場面。

バッターの順番は1番に友利。2番野球部。3番柚咲。4番俺。5番野球部。6番野球部。7番高城。8番野球部。9番野球部となっている。

 

「会長少し良いか?」

 

「はい。何でしょうか?」

 

「今回1番の会長が打てなければ俺の作戦は失敗して恐らく負ける」

 

「はぁ...は!?何言ってるんですか!?私は生徒会長ですが野球選手ではないんですよ?」

 

「大丈夫だ、作戦はある。あのピッチャーは最初の1球だけは絶対にナックルボールを投げてこない」

 

「何故そんなことが分かるのですか?」

 

「試合を見た限りで1度もないだけだと証拠にならないが...恐らくだが自分の能力を使わなくても相手に自分のボールが通じるってことを自分自身が知りたいからなんじゃないかと思う」

 

「恐らくとか、たぶんでは人は動かせませんよ」

 

「フッ全くだ。だから会長打席の方は無理なら変えてもらっても構わない」

 

「変えませんよ」

 

「え?」

 

「私はあなたに作戦は任せるって言ったんす。いまさら気に入らないからって否定したりしませんよ」

 

「そうか...恐らくあのピッチャーに変化球は無い。内角低めに投げてくる、そこを打ってくれ」

 

「分かりました」

 

俺との話が終わり友利はバッターボックスに立った。そして第1球目は俺の思った通りの場所には来なかった...。内角ではなく外角に投げられた、俺はもう半ば諦めて顔を俯かせると友利の声が聞こえた。

 

「うおりゃあああ!」

 

友利は短く持っていたバットを打つときの遠心力でグリップの方に持ち変えて打ち返した。友利が打ち返した打球はレフト前に落ちてセーフとなった。

俺はヘルメットを回収するために友利の元に向かった。

 

「乙坂さんでも間違うことがあるんですね」

 

「・・・そうだな、助かったよ会長」

 

「いえいえ。それにあのキャッチャー。恐らくですが私がバットを短く持っていたのを見て外角にコースを変更したんだと思います」

 

「あんな球を捕球し続けることだって並大抵出はないはずなんだがな、能力でもないに才能というやつか」

 

「乙坂さんの頭脳も才能だと私は思いますけどね」

 

「そうかな」

 

あまり長くいては注意されてしまうので友利に耳打ちをして、ヘルメットを回収して味方ベンチに戻る。

そして2番の野球部がバッターボックスに立つ。

2番にはとにかく2ストライクになるまでは振るなと言ってある。

 

「プレイ!」

 

関内高校のピッチャーは予想通り今度は最初からナックルボールを投げた。

 

「ストライク!」

 

ストライクを1つ取られた時に相手の二塁ベースを守ってたやつが叫び声をあげる。

 

「何やってるんだ!たかと!一塁走ってるぞ!」

 

「えっ!!どこに!?」

 

これが俺が考えた勝つための作戦だ。友利を一塁まで行かせてあとはピッチャーが投げるときにキャッチャーに見られないように不可視の能力を使用して2塁ベースに走る。この作戦は確実と言って良いほど簡単に1点を取れるが、1点では越される可能性があるのでこの方法を利用してキャッチャーを潰すことが勝利への鍵になる。

 

「セーフ」

 

「一体どこから...」

 

「たかと!!」

 

「あ、ああ」

 

「落ち着け!まだ点数を取られた訳じゃない!」

 

「そ、そうだな。すまない」

 

流石にバッテリー組んでることだけあってこれだけでは簡単に平常に戻ってしまうか。

俺達の野球部がナックルボールで三振になり次は3番バッターの柚咲が出てきた。

 

「あ、あのー私打てる気がしないんですけどー?」

 

「大丈夫。野球は1人でやるスポーツではないからなんとかなるよ」

 

「は、はぁ...よく意味が分かりませんが、ゆさりん頑張って来ますね♪」

 

「ああ任せたぞ。美砂」

 

「ちっ。仕方ねーなー!あたしのセンスで打ってきてやるよ!」

 

美砂が乗り移りバッターボックスに立った。初球はナックルボール。友利に打たれてしまったたせいで相手が女でも全てナックルボールで仕留めにくる考えだろう。だがそれは逆を言わせればナックルボールしか投げてこないと言うことだ。ストレートを入れつつナックルボールを投げるからこそバッターは打ちにくくなる。いくら鋭いからといってもどう変化するのか分かってさえしまえば打つことは難しくても不可能ではなくなる。そして女である美砂が打つことによりピッチャーにもキャッチャーにも大きく動揺を与えることが出来る。

だが問題は美砂にナックルボールが打ち返せるかどうかだ。打てなかった時の案を今更ながら考えようとするとバッターボックスの方から甲高い音が聞こえた。

 

かきーん。

 

美砂が芯に捉えてナックルボールを打ち返したようだ。だが柚咲の力があまりに弱いのか芯に捉えたはずのボールはあまり延びずライトを守っていた守備の頭上で止まり落下し始めた。

 

「ちきしょう!延びろー!!」

 

「乙坂さん!このままでは!」

 

「分かっている」

 

俺は、ライトを守る守備に乗り移りわざとエラーをする。

 

「おお!ナイスファインプレーですよ!乙坂さん!」

 

「この方法は誰も外野まで飛ばせる奴がいないと思って選択肢からは外してたんだがまさか美砂が打つとは...」

 

美砂はセカンドまで走り友利はホームに戻ってきてこちらが1点を先制した。

1アウト、2塁には少し悔しそうな顔をしている美砂いる。

 

「ふぅ...ナイス判断でした」

 

「会長もいい感じにかき回してくれて助かったよ」

 

「ですがこの次は乙坂さんですが大丈夫なんですか?あの球打てるんですか?」

 

「打てないだろうね。当てることも出来ないで終わりだよ」

 

「ちょ!それでは!」

 

「普段のままの精神状態ならだが」

 

「どういうことですか?」

 

「まぁ見てれば分かる」

 

俺はバッターボックスに立ち美砂にサインをだして大袈裟に走塁をしてもらいピッチャーに負担をかけてもらっている。

初球はナックルボールだった。だが先程までとは違い明らかに鋭さがなくなっていた。能力というのは使う人の精神状態が大きく関係してくる、だから精神状態が乱れれば能力が思ったように使えなくなる。ただし....俺の運動神経では打ち返すことは出来ない。

だからこそここで賭けに出ることにする、これが上手くいけば俺達の勝ちがほぼ確実になるが失敗すれば相手の精神状態は元に戻ってしまうブラフという賭けで。

 

「なっ!!何!?」

 

「これは...」

 

「「ホームラン宣言!!」」

 

俺はホームラン宣言をした。無論ホームランなど打てるはずがないのだが、友利の能力によってキャッチャーに動揺を与えて美砂の打席によりナックルボールを打たれてピッチャーとキャッチャー両方に動揺を与えて簡単に処理できるはずの外野フライを俺の能力でミスさせて二人の精神状態をボロボロにして1点を先制することでさらに焦りを感じさせ4番である俺が1度ナックルボールを見てホームラン宣言をしたのだ、俺の思い通りにいけば....。

 

「け、敬遠だ!そうか乙坂さんはこれを狙って」

 

俺がホームラン宣言をしたあとキャッチャーは立ち上がり敬遠の合図をだし俺は歩かされる。全て作戦通りだった。

 

「乙坂さん...あなたはここまで読んでいたんですか?」

 

「こうなるとは予想していたが、相手のピッチャーの球筋は読みきれていなかった、やはり実戦はやらないと分からないことがあるな」

 

俺は被っていたヘルメットを友利に渡して次のバッターにサインを出す。

 

次のバッターは鋭さが無くなった、ナックルボールを打ち上げて犠牲フライとなり美砂が三塁俺が二塁に行きアウトになった。

次のバッターは打ってセカンドを抜けて美砂がホームに返り1点追加となった。俺は走らずに二塁にとどまり現在はランナー1、2塁となった。

 

 

「乙坂さん!何故走らなかったんですか!走れば軽くセーフになりましたよ!」

 

高城それは違う。セカンド抜けたくらいで俺の足では間に合わない危険があったから走らなかっただけだ。

 

「た、タイム」

 

相手のキャッチャーがタイムをとりキャッチャーとピッチャーが何か話して再び戻っていった。

そして試合再開されるとピッチャーのナックルボールは先程までとは違い初球と同じ鋭さに戻っていた。高城はバットに当てることが出来ずスリーアウトチェンジになった。お互いにあれから点を取れずに2対0のままこちらが優勢して最終回になった。

ここで俺達が抑えれば勝ちになる筈だったのだがうちの野球部のピッチャーが疲れで俺のサインと真逆の方に投げツーベースヒットを打たれた。そしてそのまま次のバッターにもヒットを打たれノーアウトランナー1、3塁という状況になってしまった。この野球部が何故弱いと友利が言っていた理由が分かった。そもそも体力が足りていないし、集中力も最後までもっていないこんなことではいくら良いものを持っていても宝の持ち腐れだ。うちの野球部の練習メニューを俺が考え始めていると次のバッターが出てきた。

次のバッターは俺のサイン通り投げた筈なのに打ち返して唯一ヒットを打ったキャッチャーだった。

今うちのピッチャーは疲れでコントロールが無く球威も落ちてきている。そんな状態で打たれたら長打、もしくは最悪ホームランの可能性すらあった。

俺は1度タイムをとり全員を集合させて今考えた最後の作戦を伝えた。

 

「ははは、そりゃー良いな!最高に燃えてきたぜ!」

 

「しかしそうなると証拠を撮る人が必要だな、誰か余っている人で私と交代してください」

 

「高城お前に全てかかっているからな」

 

「・・・鬼のような人達だ」

 

そのあと友利はベンチにいた野球部と交代してビデオカメラを持って外野の隅に移動した。

俺はピッチャーにど真中にストレートを投げてくれと合図をだした。

結果は予想通り、ホームラン級の打球を打たれた。相手のベンチは喜びで全員が立ち上がり打ったキャッチャーの元に行き抱きついたりハイタッチをしているがその間に高城はゆっくりと足に力を入れておよそ600メートルは離れていたが一瞬で積めてボールをキャッチしてそのまま大きく山になっていた砂場に頭から突っ込んだ。

あまりの事に相手が一瞬で静まり返り先程の録画したビデオを友利が審判に見せた。

 

「あ、アウトぉおおお!」

 

かなり体が震えているが証拠があるので何も言えないだろう。相手が固まっているうちにボールを取りに行ってくれた美砂がこちらにボールを投げてくれ未だに動けないでいる野球部にタッチして試合終了となった。

 

「我々が勝ちました。今後その能力は2度と使わないでください」

 

「僕は平凡なピッチャーだった。けどキャッチャーのたかとは違う!本当に脚光を浴びるべきキャッチャーだ。ずっと二人でバッテリーを

組んできた。うちの野球部が弱いことは分かっていたがそれでもあいつは僕と組むことを選んでくれたんだ。だからこの不思議な力を使ってでも連れて行きたかった。あいつをプロからも注目される大舞台に」

 

「私利私欲にではなく友情のために能力を使っていたんすね」

 

「ああ」

 

「我々は今日の試合ズルで勝ちました。あなたもずっとズルして投げてきました。でもちゃんと見てくれる人はいます。ズルなんかしなくても大学でも社会人野球でもあなたは彼の親友としてずっと見守っていけばいいと思います。いつかあいつは僕の親友なんだぜって自慢出来る日が来ます、絶対っす。大丈夫っす」

 

「ふっ、ああ。」

 

友利と話終えて野球部の元に戻っていった。

 

「ちょっとした実験です。彼に乗り移ってもらえませんか?」

 

「それは何故だ?」

 

「だからちょっとした実験です。それに私は今日あなたを信じました。なのであなたも私を信じてやってはくれませんか?」

 

「・・・分かった」

 

俺が乗り移ると俺の体を倒れないように友利が支えてくれていた。

 

「倒れないように支えてくれたのかありがとな」

 

「いえ。お礼を言うのはこちらの方なので。ありがとうございます」

 

「何か気になることでもあったのか?」

 

「はい。ですが今はまだ分かりません」

 

「そうか」

 

俺達はそのあと解散になり俺も寮に戻った。

 

 

「歩末ただいま」

 

「あ!ルルーシュお兄ちゃん!お帰りなさいなのですぅー!」

 

「いつもご飯の支度を任せてしまってすまないな」

 

「気にしないで欲しいのですぅー!あゆも好きでやってることですので!」

 

「今日のご飯は何か聞いても?」

 

「ふふふ。乙坂家秘伝のブロッコリータップリのクリームシチューなのですぅー!!」

 

クリームシチューの色は白じゃなかったっけという疑問を思いながらも俺はいつもの感想を歩末に言う。

 

「とっても美味しいよ。歩末」

 

「それは良かったのですぅー!!」

 

いつもの平和な食事を過ごしているとテレビに柚咲が映った。

 

「ああ!ゆさりんの新CMですぅー!しかもハロハロの新曲~♪はっ!そう言えば本当にゆさりんは転入してきたのでしょうかぁー!?」

 

「あ、ああ」

 

「それは...スゴいことなのですぅー!!!」

 

歩末は鼻血を吹き出して後ろに倒れてしまった。

そのあと俺は歩末に柚咲のことについて質問責めにあって寝るのが2時を過ぎていた。

 

 

 

 

 

翌日学校に来ると昨日のテレビのことで柚咲の周りにクラスメイトが集まっていた。

 

「昨日ラジオ聞いたよ!」

 

「お昼私とお茶しない?」

 

「あ、俺も!」

 

その会話を見ていると隣で高城が不気味な顔で笑っている。遠慮しないで混ざってくればいいと思うのだが何故こいつは混ざりにいかないんだ?と疑問に思っていると他のクラスから数名の女子生徒が入ってきて友利を無理矢理連れていった。

 

「高城、あれは?」

 

「検討はつきますが知らない方が良いですよ」

 

「この間話してくれた友利の能力のことか」

 

「・・・これだけのヒントで正解に辿り着きますか...ええ乙坂さんが思っている通りです」

 

「お前は助けないのか?」

 

「助けないのか?ですか、違いますね僕では助けることは出来ないんですよ。半ば彼女の事情を知ってしまっているのでね」

 

俺はそれ以上深入りはせずに友利の後を追う。

後を追ってくるとそこは体育館の後ろだった、友利の様子から見てこういう事には馴れていることが分かる。

 

「まずリカの分!」

 

「次は百合子の分!」

 

そうして1番上だと思われる女子生徒が友利の顔を殴り下がった頭を掴んで腹に膝蹴りをいれた。俺はそこまで見たら自然に体が動き友利を殴っている女子生徒に声をかけていた。

 

「何をしているんですか?」

 

「ああ?誰だよ、あんた」

 

「俺は会長と同じく生徒会に所属しているものです」

 

「はっ!あんただってこいつが何をしてるか分かってるんでしょ?私の友達を殴って、蹴って!」

 

「分かってますよ」

 

「なら何でここに来たの?一緒に殴りにでもきたの?」 

 

「いえ。勿論止めに来ました」

 

「はぁ?あんた話聞いてた?」

 

「聞いてましたけど?」

 

「じゃあなに?こいつが殴るのは良いけど私達がこいつを殴るのは駄目だってこと?」

 

「まぁそうなりますね」

 

「乙坂...さん?何故ここに?」

 

「会長、話は後で。それよりこれまであったことは無かったことにするので帰ってくれませんか?」

 

「ふざけんな!あんたも仲良く殴ってやるよ!」

 

「そうですか、では1つだけ教えてあげます。俺の能力は絶対遵守の能力でしてね。簡単に言うと俺が命令すれば相手は何でも言うことを聞いてくれるんです」

 

「なっ!?そんな馬鹿みたいな話信じるわけないでしょ!」

 

「なら仕方がない。乙坂・ルルーシュが命ずる...お前は全力で友利に謝れ!!」

 

俺はそう言うと1番上だと思われる女子生徒に乗り移った。

 

・・・そして。

 

 

「友利さん。本当にすいませんでした!すいませんすいませんすいませんすいません」

 

「そ、そんな...」

 

「嘘でしょ...こんな能力チートすぎるじゃない」

 

「あ、あれ?私何して...」

 

「あんた、さっきまでこいつに謝ってたんだよ!」

 

「うんうん!やばいよ..」

 

「そ、そんな...」

 

「どうだ?まだ信じられないなら仕方がないかあれを」

 

「「ひぃ...」」

 

「分かってくれたみたいなので良かったです。帰ってくれますね?」

 

「は、はい」

 

女子生徒達は我先にと逃げていった。

 

「会長大丈夫か?」

 

「何故助けたんですか?」 

 

「体が勝手に動いてたので何でと言われても」

 

「そうですか...ぷっふふふ、それにしてもさっきの絶対遵守の力ってなんですか?それに全力で私に謝ってくるし。ぷふふふ」

 

「そ、それについては忘れてくれ」

 

「うーん、そうですね。忘れてあげるので条件があります」

 

「この状況で何故こうなっているのか甚だ疑問だが何だ?」

 

「私のことは先程みたいに友利と呼んでください」

 

「・・・それだけなのか?」

 

「はい。他にも言ってほしいならいいますが」

 

「いや、それで大丈夫だ」

 

友利に条件を出されていると友利の携帯にメールが届いた。

 

「協力者か?」

 

「はい」

 

「それじゃあ。生徒会室に行こうか友利」

 

「はいっす!」

 

 

 




この作品を書こうと思ったときに友利をどう助けるかを一番最初に考えていたのでなんとかここまでこれて良かったです!1度ここで読み直しをしておかしなところを修正したいと思います!


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オカルト誌のフライング▪ヒューマノイド

シャーロットのOVAいつの間にかやっていたのですね...とても面白かった~なんて思いながらの暑い暑い夏。


感想や御指摘をありがとうございます!自分では気づけない所が多いので...感想や御指摘あればお願いします。
御指摘いただいたので修正しました。風➡風邪御指摘ありがとうございました!


 

ーーー生徒会室。

 

「ひゃあああ...友利さん!その顔のキズどうしたんですか?」

 

「さっきリンチにあってきました」

 

「はわわわわ!病院行かなくて大丈夫なんでしょうか!?」

 

「はい。乙坂さんが途中で助けてくれたので」

 

友利と柚咲が話しているときに俺と高城の目が合った。高城は笑っていたがどこか悲しそうな笑い方だった。

 

「へぇーおめぇやるじゃねえか!それでその相手にはちゃんとお灸を吸わせてきたんだろうな?」

 

いつの間にか美砂が柚咲に乗り移っていた。

 

「別にただ少し脅しただけだよ」

 

「ちっ!あめぇーな!それじゃあ、今からお礼回りに行こうか!」

 

「行かねえよ、そんな面倒な。それに...」

 

友利は何故かそこまで言って俺の方を見てきた。

 

「なんだ?」

 

「いえ、別に」

 

「ふーん。まっいいなら良いけどよ」

 

 

突然生徒会室の扉が開かれて協力者が現れた。

 

「能力は...空中浮揚」

 

「よっし!!きたぁあああ!これだ!!」

 

友利は如何にもオカルト大好きな人が見るような雑誌を机の上に叩きつけた。

その記事には日本でもフライング▪ヒューマノイド発見と写真付きで載っていた。写真には空中に人らしき物体が浮いているように見える。あまりにその物体が小さいので人なのか何なのか分からないので大きなニュースにはならずにオカルト誌に載っているのだろう。

 

「この黒い影がその人だと言うのですか?」

 

「まだこんなオカルト誌にスクープされているだけで済んでいますが、このまま放置していれば多分大変な事になります。この場所に行きましょう」

 

「ここは山の中だよな?どうやって見つけるんだ?」

 

「まあまあ、その辺は考えてありますから、たまには乙坂さんも私のやり方を見ていてください」

 

「分かった。友利がそう言うなら行ってみよう」

 

「ん?友利?」

 

「ああ、それはさっき友利にそう呼んでくれって頼まれてね」

 

「そうでしたか」

 

「あーその話は別にいいんで。早く行きますよ。あっ因みに能力者が現れるまで張り続けるので買い出しをしにスーパーに行きましょう」

 

「かっ●●●●!」

 

「ゆさりんにそんなこと言わせないでください!!」

 

「友利、張り続けるってことは家に帰れないってことか?」

 

「はい。勿論そうですが」

 

「なら今回は断る。俺には歩末がいるんだ」

 

「どんだけシスコンなんだよ!!1日や2日家空けてても問題ねえって!」

 

「確か友利はこの学園に来ることが俺と歩末にとって最も安全だと言ったよな?」

 

「ええ。今でもその考えは変わりません。設備もシステムも完璧です」

 

「だが俺が歩末の近くにいないことで起こりうる事件だってあるかもしれないじゃないか」

 

「例えばなんですか?」

 

「家を空けている間に歩末が風邪にでもなったらどうするんだ?誰が歩末の看病をするんだ」

 

「・・・そこまでシスコンでしたか」

 

「それで俺の問いに答えてもらおうか?」

 

(めんどくせぇ....ここまでシスコンだったとは。仕方ないか...)

 

「・・・分かりました。妹さんも一緒に連れていくということでどうでしょうか?」

 

「と、友利さん。良いのですか?そんなことしても」

 

「まっ学校には私から言っておくので問題ないですよ」

 

「行くなら早く行こうぜー」 

 

「あのー...柚咲さんに戻ってはもらえないでしょうか」

 

「そんなことはあたしが決める!何でてめぇの指図に従わなくちゃならねえんだよ?」

 

「こうなるからですよ!!」

 

「皆さん待ってください。まだ乙坂さんから返事を聞いていません。了承してくれますか?」

 

「・・・あまり歩末を巻き込みたくはないが友利にまた会いたがっていたし、それに...」

 

俺は美砂を見ながら歩末と柚咲を会わせられる機会が出来たと思ったが同時に柚咲と歩末が面と向かって会ってしまったときの事を考えてそれ以上言えずに美砂を見続けていた。

 

「な、何だよ?」

 

「あ、ああ。いや何でもない」

 

「そーれーで!いいんですか?悪いんですか?」

 

「分かった。歩末が来ると言う条件で了承しよう」

 

「それじゃあーお前ら~いっくぞー」

 

 

 

 

 

ーーーデパート。

 

俺達は歩末とデパートで待ち合わせをしてデパートの扉の前で歩末が来るのを待っていた。

 

「あっ!ルルーシュおに~ちゃん♪お待たせなのですぅー!!」

 

「すまないな歩末。急に泊まりがけでBBQをしに行くだなんて」

 

「ううん!逆に誘ってもらってあゆは嬉しいのですぅ!!あっ!友利お姉ちゃん!お久しぶりなのですぅー!!」

 

「歩末ちゃん久しぶり。急に誘っちゃってごめんね、でもせっかくだからたくさん楽しんでね♪」

 

「はいなのですぅー!!」

 

「あ、そうだ。歩末紹介がまだだったなこっちにいるのが」

 

「ゆ、ゆ、ゆさりん...?ぶはぁっ!!」

 

歩末は俺が紹介を始める前に柚咲と目が合ったらしく柚咲の名前を言って鼻血を出しながら後ろに倒れた。

 

「はわわわ!だ、大丈夫ですか!?」

 

「柚咲、すまないが少し友利の後ろにいてくれこうなる気はしていたから迷っていたんだ...」

 

「分かります!分かりますよ!歩末さん!初めて急にゆさりんと会ってしまったら嬉しさのあまり気絶くらいしますよね!」

 

それから俺はポケットティッシュで鼻血を拭いて歩末を起き上がらせる。

 

「・・・はっ!ルルーシュお兄ちゃん!!大変なのですぅ!!ゆさ、ゆさりんが今、あゆの目の前にいたのですぅ!!」

 

「あ、ああそうだな。えと歩末紹介するよ、高城は知ってるよな?」

 

「はいなのですぅー!!友利お姉ちゃんと一緒に引っ越しのお手伝いをしてくれた人なのですぅ!!」

 

「ああ。それとここにいるのが」

 

「はい!ゆさりんこと!黒羽柚咲です♪」

 

「ゆ、ゆさりん...?ぶほぉっ!!」

 

歩末が本日2度目の鼻血を出して倒れた。

 

「二度も倒れるとは...相当なファンのようですね」

 

「え、えーとどうしたら...」

 

「すまないが、歩末が馴れるまで皆付き合ってくれ...」

 

それから5回でなんとか鼻血を出さなくなった歩末だったが柚咲も一緒にBBQに行くと言ったら「そ、そそそそれは凄いことなのですぅ!!」と言ってまた倒れて結局スーパーの中に入れたのは30分ほど過ぎた頃だった。

 

「ご、ごめんなさいなのですぅ...」

 

「歩末ちゃんが謝ることないですよ。元はと言えば柚咲さんがいけないので」

 

「わ、私ですか!す、すいません...」

 

「わわっゆさりん!謝らないでほしいのですぅ...。ただあゆは、ゆさりんと会えてとても嬉しかっただけなのですぅ」

 

「歩末ちゃん...ありがとう♪」

 

この会話の中で元はと言えばの所で友利は柚咲の方は見ずに俺の方を見ながら言っていたのだが反省して下を向いていた、歩末と柚咲は知らない。

 

 

「ふんふん~♪」

 

「とうもろこしをそんなに買うのか?」

 

「バーベキューと言ったら焼きとうもろこしっしょ!」

 

「へ、へぇ...所でバーベキューなんてやって煙凄いと思うが相手にこちらの居場所を教えていいのか?」

 

「案外向こうから近付いて来てくれるかもしれないっすよ」

 

「そうか」

 

「あれ、疑わないんすか?」

 

「今回は友利に任せるって言ってあるからな」

 

「そうっすか。さて!あっとは~ステーキ用の肉と~スペアリブ~ウインナ~♪」

 

「少し気になったんだがここの会計って誰が払うんだ?」

 

「ああ。心配しなくても私が出すので安心してください」

 

「流石にそれは悪いだろ」

 

「いえいえ。後で報告書と一緒にレシート渡せば返ってくるので一時的ですのでお気になさらず」

 

「ふーん」

 

「あの御二人ってとても仲良しですね。もしかして付き合ってたり?」

 

「ええ!それはあゆも気になるのですぅ!!」

 

「出会って間もないのでそこまでいっているとは考えにくいですが進展はあったのではないかと私は思います」

 

「進展ですか?」 

 

「どう進展になったのかは分かりませんが見ていてとても微笑ましいですね」

 

「はい♪」

 

「あゆもそう思うのですぅ!」

 

 

食料を数日分買い終えて外にでるとタクシーが2台止まっていた。

 

「移動するのに私が呼んでおきました。今回の場所は少し遠いので」

 

「バスでも良いんじゃないのか?」

 

「場所が田舎なんすよ。この時間じゃもうバスなんて出ていないんす」

 

「成る程」

 

「でもーどうやって乗りますか?」

 

「この場合ですと1台に3人もう1台に2人という乗り方ですかね」

 

「それなら俺と歩末が一緒に乗れば良いんじゃないのか?」

 

「うーん...あゆはルルーシュお兄ちゃんと一緒に乗れるのは嬉しいのですがせっかくゆさりんと会えたのでゆさりんともう少しお話したいのですぅ!」

 

「そうか。歩末の好きにしていいぞ」

 

「それじゃあ、あゆとゆさりんと眼鏡のお兄ちゃんで乗るのでルルーシュお兄ちゃんと友利お姉ちゃんは違うタクシーでお願いしたいのですぅ!」

 

「おお!ゆ、ゆさりんと乗れる!!」

 

「俺は構わないが。友利はそれでいいか?」

 

「ええ。私は構いませんよ」

 

「それじゃあ。ルルーシュお兄ちゃんまた後ほどなのですぅ!!」

 

俺達は荷物をタクシーに乗せて目的地に向かって出発した。

 

 

 

 

ーーータクシー(ルルーシュ・友利)

 

俺達は二人とも後ろの席に座った。

 

「それでどのくらい目的地迄時間かかるんだ?」

 

「そうですね。今の時刻が夜の8時ですので明日の6時には着くと思います」

 

「10時間もかかるのか...」

 

「まぁ途中でトイレ休憩や運転手さんの休憩も挟みますのでそれくらいはかかります」

 

「そうか」

 

「はい。なので今のうちに寝てしまいましょう、起きていてもやることはないですし」

 

「そうだな」

 

 

 

 

ーーータクシー(高城・柚咲・歩末)

 

席の座り方は助手席に高城、後ろに柚咲と歩末が座っている。

 

(くぅーーーー!ゆさりんとゆさりんと隣に座れると思ったのにぃーーー!)

 

「歩末さん、何故友利さんと乙坂さんを二人きりにしたのですか?」

 

「あ!それゆさりんも気になりました!」

 

「んールルーシュお兄ちゃんて、昔からあゆの事ばかり考えてくれてあゆはそんなルルーシュお兄ちゃんのことが大好きだけどルルーシュお兄ちゃんの友達って見たこと無かったんです」

 

「ルルーシュさんほどの美形ならかなりモテていたと思いますよ?」

 

「モテていたのはあゆも知っているのです...でも、ルルーシュお兄ちゃんが誰かと遊びに行って帰ってくるのが遅くなったりとか1度もなかったのですぅ...たぶんそれはあゆの為だと思うのです。離婚してお母さんが親権を遠くに住んでいるおじさんに渡してルルーシュお兄ちゃんとは二人暮らしになってしまってきっとあゆを寂しがらせないようしていてくれたのだと思うのですぅ...」

 

「そんなことがあったんですね...」

 

「友利さんから大体の事情は聞いていましたが私が思っていた以上に乙坂さんも歩末さんも苦労をしてきていたんですね」

 

「あゆは何にもしてないのですぅ...してもらってばかりで」

 

「そんなことはないですよ。乙坂さんがこの間お昼の時に言っていました。俺が両親を恨んでいないのは全部歩末さんがいてくれるおかげだって」

 

「ルルーシュお兄ちゃんが...」

 

「はい」

 

「う、ひくっ...私感動しちゃいました...」

 

「えっ!!い、いや!その泣かないでほしいのですぅ!」

 

「あ、あの!運転手さん!」

 

「は、はい何でしょうか?」

 

「歩末ちゃんの為に1曲歌っても良いですか?」

 

「そ、そりゃ!おじさんも西森柚咲の歌を生で聞けるなんて嬉しいからね!是非お願いするよ!」

 

「やったぁあああ!ゆさりんの歌声を生で聞けるなんて!!生きててよかったぁああああ!!」

 

「ゆ、ゆさりんがあゆの為にう、歌を....ぶほぉっ!!」

 

「ああ!た、高城さん!ティッシュ取ってください!」

 

「は、はい!」

 

そのあと夜が更けていくなかタクシーの中では柚咲の歌声だけがタクシーの中で響いていた。

 

 

 

 

ーーー山の中。

 

「やっと着いたな」

 

「ええ。まぁ寝ていたのであっという間でしたが」

 

「私は感無量です!もう死んでも悔いはありません!」

 

「あゆもなのですぅ!」

 

「喜んでいただけたようで何よりです♪」

 

」それではー男性陣はテントとバーベキューコンロを持ってください。あたしと黒羽さんと歩末ちゃんで食料を持っていきますので」

 

「あの着替えとか持ってきてないんですけど」

 

「着替えなくても死にませんから」

 

「あゆは着替えたいですぅ...」

 

「歩末大丈夫だ。ちゃんと歩末と俺の着替えは用意してある」

 

「いつの間に用意したんですか....」

 

「休憩所で簡単なやつだが買っておいた」

 

「はわわわ、あのー私少し戻っても」

 

「さぁー荷物持っていきますよー」

 

俺達は森の奥にどんどん入っていった。道が舗装されているわけでもなく危ない道もあったが空気はとても澄んでいて川の水もとても綺麗だった。

しばらく歩くと森を抜けて少し開けた場所に出た。

 

「よし。到着」

 

友利がオカルト誌に写っていた風景と同じ場所だと確認した。

 

「暗くなる前にテント張るかー」

 

「そうですね」

 

俺はここまで来るのにかなり疲れていたが歩末の手前サボることもできず着々と作業を進めていく。

 

「あっ、そっち危ないですよー」

 

「え?...うぉっ!」

 

テントを張るために広げていたら大きな穴が空いており危なく落ちそうになった。

 

「だ、大丈夫でしょうか!ルルーシュお兄ちゃん!」

 

「あ、ああなんとかな。井戸の穴...か」

 

「そうっす」

 

「知っていたならもう少し早く教えてくれ...」

 

「いや落ちたら普段クールなあなたがどんな反応するのか気になったのでいいかなと」

 

「ここから落ちて反応出来る気はしないがな」

 

「ルルーシュお兄ちゃん!怪我はしてないでしょうか!」

 

「ああ、大丈夫だよ歩末。ありがとう」

 

「穴は私が責任をもって塞いでおきますねー」

 

「ああ。よろしく頼む」

 

俺と高城はテントを張った後にその辺に落ちている木を拾ってきてバーベキューコンロの中に入れて美砂に発火の能力を使用してもらい火をつけた。勿論発火の能力を使うので歩末には高城と一緒に水を汲んできてもらうように頼んである。

 

「うおー便利だな~」

 

「ライター代わりに使うな!なんてセンスのなさだ!」

 

「只今戻りましたのですぅ!!」

 

「歩末ちゃん、ありがとうございます。それではさっそく焼いていきましょう~」

 

「あ、あの美砂さん。歩末さんも戻ってきましたし柚咲さんに戻ってもらえないでしょうか」

 

「お前の指図に従うきはないがここは柚咲に譲るか」

 

「はっ!あれ!?」

 

高城は友利が焼いていた焼きとうもろこしを1つ掴んで戸惑っている柚咲に渡す。

 

「さぁどうぞ。焼きとうもろこしです」

 

「わぁ!これゆさりんが食べていいんですか?」

 

「どうぞどうぞ」

 

「わーい♪ありがとうございます!わーこれ美味しい~♪」

 

「でしょでしょ~焼きとうもろこしに関しては任せてください~あとは~肉肉ー。」

 

「ルルーシュお兄ちゃん!」

 

「ん?どうした歩末?」

 

「今あゆはとっても楽しくてとっても幸せですぅ!!」

 

「ああ。俺もだよ」

 

 

 




原作とは少し変えて歩末ちゃんも一緒に連れてきてしまいました...。



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小さな変化

1年で一番忙しいかもと思う、今日この頃。立派な社畜に成り果ててます...。



御指摘、御感想おまちしてます!


 

夢を見た。

その夢はまるで昔本当にあったことのように鮮明で、でもあやふやな夢。

小さい頃、俺と歩末がまだ母親と暮らしていた頃。母親は朝仕事に行くのが早いため俺達はいつも母親がいない朝食を取っていた。勿論それは夢の中でも同じだった。歩末が作ってくれた朝食を食べながら楽しそうに会話をしている風景。だが今とは異なる箇所があった。それは俺と歩末以外にもう1人誰か一緒に朝食を取っているという風景だった。歩末の顔は鮮明に出ているのだがそのもう1人はまるで顔に霧がかかっているみたいに分からない。分かることといえば性別が男であるということと、俺と歩末と仲がいいということだけだった。

 

 

「あれは一体誰だったんだ...」

 

「どうしたのですか?乙坂さん」

 

「ああ、すまない。起こしてしまったか」

 

俺達は能力者を探すためにここに来たまでは良かったが昨日能力者が現れなかったため交代で見張ることになった。今は友利達が見張ってくれているので俺と高城がテントの中で休んでいたのだ。

 

「さあ。交代の時間です~。て、何かあったんですか?」

 

「いや何も。少し夢をな」

 

「はぁ...夢ですか。因みにどんな夢を?」

 

「忘れたよ」

 

俺と高城は交代して見張っていたが結局誰も現れず友利達が起きてきた。

 

「お疲れさまです。どうでした?」

 

「まだ特に何もなかった」

 

「まだですか。流石に乙坂さんは気づいちゃいますか」

 

「狙いはだけどな」

 

「ふわぁ~おはようございます♪」

 

「おお!ゆさりん!おはようございます!」

 

「もう昼だけどなー」

 

「あ!ルルーシュお兄ちゃん♪おはようなのですぅ!!」

 

「ああ。おはよう」

 

「おはよう。歩末ちゃん、よく寝れましたか?」

 

「はいなのですぅ!隣でゆさりんが寝ていると思ったら緊張で快眠でしたぁ!!」

 

「そ、それは起用ですね...」

 

「ゆさりんお役にたてたようで嬉しいです♪」

 

「それでこれからどうするんだ?」

 

「ここは山ですよ?」

 

「それが?」

 

「山って言ったら釣りっしょ!」

 

「道具はあるのか?」

 

「乙坂さん達が持ってきてくれたじゃないっすか」

 

「まさか...」

 

俺達はここに来るまでに持たされていた、重い鞄の中から釣竿を4本出して持ってきた。

 

「歩末ちゃんの分は時間が間に合わず足りないので高城のを使ってください」

 

「いや、それは流石にわるいのですぅ!あゆは皆がやっているのを見ているだけで楽しいので大丈夫なのですぅ!」

 

「ああ大丈夫っすよ。高城なら今から巣潜りで魚捕まえて来ますから」

 

「え、ええ!!そんなこと出来るのでしょうか!!」

 

(で、出来るわけがない。ここは...素直に言うしか)

 

「高城さんって巣潜り出来るんですか!ゆさりん見てみたいです!」

 

「勿論ですよ!ゆさりんも歩末さんも見ていてください!私の華麗なる泳ぎを!」

 

高城が巣潜り出来るなんて知らない俺は友利に近づき皆に聞こえないように聞いてみる。

 

「高城って巣潜り出来たのか?」

 

「さあ。どうなんですかね」

 

「・・・さっき出来るみたいなこと言ってなかったか?」

 

「ええまぁ。でも大丈夫ですよ、川なら溺れてもなんとかなると思いますし瞬間移動使えば何とかなるっしょ」

 

「瞬間移動で壁に激突したら流石に危なくないのか?」

 

「まぁー危ないでしょうね。でも高城ですから心配ないですよ」

 

「・・・そうか」

 

高城は上着を脱ぎズボンを下ろそうとズボンに手をかけただがここには歩末もいる。歩末にそんな姿を見せる訳にはいかないので高城に乗り移ろうとするといつの間にか移動していた友利が高城を川の中に蹴り飛ばした。

 

「こんなところで脱いでんじゃねーよ!バカ野郎!歩末ちゃんもいんだぞ!」

 

「すまない。友利、正直助かった」

 

「いえいえ。悪いのは全部あいつなので」

 

「はわわわ。高城さん大丈夫ですか?」

 

「友利お姉ちゃん、流石に危ないとあゆは思うのですぅ」

 

「大丈夫ですよー。あれでも鍛えてますから、ほらもうあがって....」

 

川の水が浅い所に運悪く落ちたようで高城は川の石にぶつかりプカプカと浮いていた。

 

「乙坂さん!泳げますか!?」

 

「・・・すまない」

 

「だよな、くそっ!どうする....」

 

確かに俺は運動神経悪いから泳げないと分かってたと思うがこの状況を作った現況である、友利にそういわれるのは少し納得がいかなかったが取り合えず忘れて高城を助ける方法を考える。

 

「はううう。お姉ちゃんなら泳ぎ得意だったのに...」

 

「・・・歩末。すまないが大きな木の棒を拾ってきてくれないか?大至急でだ」

 

「何故かは分からないけど、了解したのですぅ!!」

 

「まぁだいだい予想はつきますが。私も念のため歩末ちゃんと一緒にいますね」

 

「悪いな。・・・美砂」

 

「み...さ?・・・たくっ...非常時だからしょうがねえけど次柚咲の前で呼んだら燃やすぞ」

 

「・・・ああ」

 

 

柚咲に乗り移った美砂が川に飛び込み高城を掴んで戻ってくる。

 

「高城は大丈夫か?」

 

「少し水を飲んでるぽいが問題ないだろ。少しすれば目を覚ますさ」

 

「そうか...!」

 

俺は安心したのと同時に美砂を見ておもわず目をそらした。川に制服姿のままで飛び込んだのだ、そのあられもない姿は容易に想像がつくだろう。俺が目をそらしたことで美砂も自分が今どういう状況か理解したようでこちらをにやにやと見てくる。

 

「ルルーシュって以外と純情なんだな」

 

「別にそういうわけじゃはない。それに意志は美砂でも体は柚咲だろ、勝手に見るわけにはいかないだろ。早く服を着替えろ」

 

「んーそういってもなーこの服以外に服なんて持ってきてないだろ?」

 

「・・・分かった。作戦を考えたのは俺だ。なら俺にも原因はあるだろう。買っておいた俺の服の予備がある。男物だが我慢して着てくれるか?」

 

「あたしは別に気にしないけどなーそこは柚咲に聞いてみないと」

 

「だがその姿でいたら風邪を引くだろ?」

 

「以外と優しいんだな」

 

「そうじゃない。後味が悪いだけだ」

 

「分かったよ、そういうことにしといてやる。柚咲に戻るのは服が乾いて着替えてからにすれば問題ないだろ」

 

「悪いな。それじゃあついてきてくれ」

 

俺は美砂をテントまで連れてきて外を見張りテントの中で美砂に着替えてもらった。

美砂が着替えている間に朝見た夢のことを思い出していた。

 

「あれはただの夢だったのか...」

 

「何がですか?」

 

「うっ...友利か」

 

「はい」

 

「いつからそこに?」

 

「ずっと一緒にいましたよ?」

 

「・・・見てたのか?」

 

「何をですかねー。まぁ柚咲さんが、いや美砂さんが透け透けになっているのを見て乙坂さんが目をそらしたところら辺は見ていましたけど」

 

「最初からじゃないか...歩末は?」

 

「高城に付いていてとお願いしてあります」

 

「それで何か言いに来たのか?」

 

「いえ別に。それにこうなることは予想していたので」

 

「分かった上で何も言わなかったのか」

 

「はい。他に方法はありませんでしたから」

 

「ルルーシュ、待たせたな。何か話し声が聞こえたが誰かいたのか?」

 

友利は俺の隣にまだいるので何故かは分からないが美砂に能力を使用しているのだと気づく。

 

「それよりも歩末も来てるんだ、そのしゃべり方どうにかならないか?」

 

「んなこと言われてもなーこれがあたしだしな」

 

「服が乾いて柚咲に戻るまでの間でいいから頼めないか?」

 

「んーそれなら1つ条件がある」

 

「条件?」

 

「あたしが生きていた頃好きだった喫茶店があるんだよ、そこでご飯奢ってくれたら柚咲になりきってやる」

 

「そのくらいなら別に構わないが」

 

「本当か?約束だからな」

 

「ああ」

 

「あーすいません。ちょっと待ってください」

 

「なっ!てめえいつからいやがった!?」

 

「最初からいました。いいですねぇー喫茶店私も御一緒してもいいですか?」

 

「言い分けねえだろ!」

 

「それは何故ですか?」

 

「そ、それは...」

 

「二人とも少し落ち着け。友利今回は美砂の言うとおりにしてくれ」

 

「乙坂さんがそういうなら」

 

「ふぅ...」

 

「ならその後日私とも喫茶店行ってください」

 

「はぁ!?何言ってんだてめえ?」

 

「ああん?お前には関係ねえだろうが?」

 

暫く友利と美砂の口論が続いたがなんとか二人をなだめて歩末の元に戻る。

 

「あ!ルルーシュお兄ちゃん!遅いのですぅ!」

 

「少し色々あってな」

 

「ゆさりんと友利お姉ちゃん何か機嫌悪そうですが何かあったのでしょうか?」

 

「ううん。何でもないよ歩末ちゃん。心配かけちゃってごめんね」

 

「ああ、悪いな...あっ」

 

「ゆ、ゆさりんが不良みたいになっているのですぅ!!」

 

「そ、そう言えば柚咲はドラマで不良少女の役をやることになったんだよな?」

 

「え?...あ!はい!そうなんですよー普段から役になりきる練習をしないといけなくってー」

 

「そうだったのですかー!それはとても気になるのですぅ!!いつ放送するのでしょうかぁ!!」

 

「え?...えーと」

 

歩末の質問に困った美砂は俺の方を見て助けを求めてくる。こうなった原因が俺にもある以上なんとかしなくてはいけないのでフォローする。

 

「まだ未定なんだろ?この間言っていたじゃないか」

 

「あっ!そ、そうでした!まだ未定なんですよー」

 

「そうなんですかぁー!というか!ルルーシュお兄ちゃん知っていたならあゆにもっと早く教えてほしかったのですぅ!!」

 

俺はなんとか誤魔化して美砂にボロが出ないようにフォローしていると夕方になった。

 

「結局今日も能力者は現れなかったな」

 

「だなー」

 

「美砂。女の子があぐらをかくのはどうかと思うぞ?」

 

「いいだろ別に。あんたとあたししかいないんだし」

 

「そう言えば友利はどこに行ったんだ?」

 

「ああー、なんかさっき森の中に入ってたぞ」

 

「そうか」

 

俺は少し心配になり友利が入っていったという森の中を進んでいった。暫く進んでいくと少し開けたところに出て友利が座っていた。俺は友利の隣までいき座る。

 

「何かようでしょうか?」

 

「いや。特に用はないんだ」

 

「そうですか。美砂さんを1人にしていいんですか?女の子ですよ?」

 

「それなら友利もだろ?」

 

「はぁ、まぁ女の子扱いなんて暫くされたことなかったので微妙なところですが」

 

「なあ、友利」

 

「はい。何でしょうか?」

 

「いつも聞いてるその曲なんていう曲なんだ?」

 

「ZHIEND (ジエンド)っていうバンド」

 

「聞いたことないな」

 

「兄が好きだったバンドです」

 

「へぇ。友利に兄弟とかいたのか」

 

「そう言えばまだ話していませんでしたね」

 

「なにをだ?」

 

「私の過去についてです」

 

「聞いてないからな」

 

「ええ。今回の任務が終わったら教えますよ」

 

「別に無理して話さなくてもいいんだぞ?」

 

「いえ。私が聞いてもらいたいのかもしれません」

 

「どういう意味だ?」

 

「さあ。私にもよくわかりません...。それよりこの曲聞いてみますか?」

 

「いいのか?」

 

「はい」

 

俺は友利からイヤホンを貸してもらいZHIEND (ジエンド)の曲を聞いた。聞いた瞬間にどこか聞いたことのあるような懐かしい不思議な感覚に襲われてそのあとに広いところに1人で立っているような不思議な気分になる曲だった。

 

「どうっすか?」

 

「いい曲だな。広いところにまるで1人で立っているような」

 

「おお!分かってるじゃないっすか!そうなんすよ。ZHIEND (ジエンド)の音楽はスゴくスゴく広大でひたすら孤独なんです。それは作曲もこなすボーカルが両目の光を失っているからだと思うんです。景色がどこまでも広がっていくイメージで。ZHIEND (ジエンド)のPVを撮るのが夢なんす」

 

ZHIEND (ジエンド)のことを話す友利は生き生きとしていて今まで見たことのない顔をしていた。

 

「ZHIEND (ジエンド)の活動を追ったドキュメントでもいいなぁ~」

 

「ああ。応援してるよ」

 

「あ、ありがとうございます...」

 

友利は何故か急に顔を赤くして顔を下に向けてしまった。俺は何か変なことを言ってしまったのかと思っていると友利が再び顔をあげた。

 

「それプレイヤーごとあげます」

 

「いや、それは流石に悪いだろ?というか顔赤いが友利熱でもあるのか?」

 

「い、いやいや!熱なんてないですから!能力の仕事で貯金もありますので新しいの買えますし。それに、そ、その嬉しかったので...」

 

「なら遠慮なくもらっておくよ」

 

「はいっす」

 

能力者が現れないまま2日目が過ぎていった。

余談だが高城は翌日の朝になるまでテントの中で眠っていた。

 

 

 

 

 




少し短かったですかね....。次回は友利の兄が登場します。


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友利の過去

更新がこれでもかと遅くなり大変申し訳ありません。入院したとか、某アニメサイトで見れなくなったとか、足の靭帯切ったとか色々ありましたが思い付かなかったの一言だと思います......。

※歩美→歩未に修正します。




耳にイヤホンを付けて友利から貰った音楽プレイヤーでZHIENDのバンドの曲を聞いている。

 

初めて聞いた筈なのに以前何処かで聞いたことがあるような不思議な曲。

目を閉じれば広大の草原の中に自分が一人で立っているかのような気分にしてくれる不思議な曲。

 

肩を後ろから叩かれたのでイヤホンを外し振り向くと友利が立っていた。

 

「お腹が空いたのでお昼にしましょう」

 

今日は3日目。ここに着いてからだと2日目になるのだがそれでも食料は後2日は持ちそうなくらいあった。

 

鼻歌を歌いながら上機嫌でトウモロコシを焼いている友利の姿は能力者としての友利ではなく、高校に通う普通の女子高校生にしか見えなかった。

 

何度か考えたことがある。

 

能力者を助けるためだとはいえ、能力を使って人を殴ったり蹴ったりするのはどんな気持ちなんだろうか。

 

俺は友利に出会ってまだ実際に見た訳じゃないから分からない。

でもあの時の言葉。

 

校舎裏に連れていかれて殴られていたとき。

 

『馴れてますから』

 

あの言葉だけは異常としか思えなかった。

殴られる事、蹴られることに馴れるなんてことは無いと俺は思っている。

 

「ルルーシュさん。どうかしましたか?」

 

俺がどんな顔をしていたのか自分では分からないが高城が心配して声をかけてくれたところ酷い顔をしていたのかもしれない。

 

「いや、何でもないよ」

 

「そうですか。何やら思い詰めた顔をしていましたので」

 

「ははは、気のせいだよ。毎日バーベキューは流石に飽きるなって思っただけだよ」

 

「心配ありませんよ」

 

高城と話していると、スペアリブウインナーをカリッと音をたてて食べながら友利がこちらに来た。

 

「友利さん、心配ないとは?」

 

「そろそろ動き出すと思うんで」

 

 

「あの~。あなたたちはここで何をしているんでしょう?」

 

林の間から同い年くらいの男性が出てきた。

 

これで駒は全て揃ったわけだ。

後は友利がどう動かすか、だな。

 

「いや~家出中なんですよ、みんな。理由は様々ですが意気投合しまして。はっはっは~」

 

嘘つくのが下手なのか単純にわざとやっているのか後者なら詐欺師の才能があるな。

 

「まだここに居続ける…ということでしょうか?」

 

声に苛立ちが入ってきたな。人は焦ったり怒っているときは視野が狭くなりボロが出やすくなる、流石は友利というところか。

 

「はい、ず~っと いるつもりです。ここならバレませんから」

 

「でも僕にバレてしまいましたね。親御さんも心配されるでしょう。警察に連絡します」

 

青年は携帯を取り出して警察にかけると脅してきた。

 

「はわわわ、ルルーシュお兄ちゃん。あゆ達バーベキューに来ただけなのに捕まってしまうのでしょうか?」

 

「ん?バーベキュー?」

 

青年は、歩未のバーベキューという言葉で手を止めて友利に視線を向ける。

 

「はいー。歩未ちゃんに本当の事を言うのは憚れましたのでバーベキューということになってます」

 

友利は笑顔で答えているが笑っていない、これ以上何かする前に歩未には下がっていて貰った方がいいか。

 

「えー!そうだったの!?あゆ初めて知ったのでござるー!」

 

うっすらと友利の血管が浮かび上がっている気がしたので高城に頼んでテントまで連れていってもらった。

 

「ふぅ。事情は分かりませんが。あんなに小さい子もいるならなおのこと放ってはおけませんね」

 

「警察を呼んだら貴方も捕まりますよ?」

 

「は?どうして僕が」

 

「ここ私有地っすから」

 

「えっ!?」

 

柚咲だけ驚いているが森にはいる前に立ち入り禁止の看板があったことを知らなかったようだ。

 

「あと、あとこれ。貴方ですよね?」

 

友利は週刊誌を見せて青年に聞く。

 

「は?なにそれ僕にはなんの覚えもありませんが?」

 

「ここは都内で近いしあなたにとって好都合な山だった。けど私たちが居ついて一向に帰る気配がない。だからじれたあなたはこうして姿を現した。私たちを追い払ってまた 空を飛ぶ練習をするために」

 

先程の笑顔とは違い勝ち誇ったような顔をしている、案外人を追い詰めること事態が好きなのかもしれない。

 

「飛べるわけないし頭おかしいだろ。警察を呼んでおく」

 

未だに警察に頼ろうとしている、青年が俺には哀れに見えるがもう少しでチェックだろう。

 

「こんな所まで一人で来たあなたも十分おかしいと思うんですが」

 

「く、栗を探しにきたんだよ」

 

「この時期に栗は取れませんが?」

 

「............」

 

チェックだな。

この勝負は友利の勝ちだ。

 

「で、すでにこの時間にあなたがいた証拠これで撮っちゃったんですけど~」

 

何時ものビデオカメラでいつの間にか撮影していた友利がわざとらしく困り顔を作り追い討ちをかけた。

 

「よこせ!消すっ!」

 

青年は友利からビデオカメラを取ろうと此方に向かってくるが青年の位置から初日に俺自身が落ちそうになった穴があることを思い出した。

 

「なあ、友利。あれは埋めたのか?」

 

「さあ~今から分かりますよ」

 

これでもかと口元が緩んでいる友利の顔を見て絶対埋めてないと確信した。

 

「うわっ!?」

 

「イエス!」

 

予想通り青年は穴に落ちて能力を使い飛ぶことで穴から出てきた。

勿論友利が証拠を撮っているため、これでチェックメイトになった。

 

柚咲は口に手を当てて「ほえー」と驚いている。

 

「そりゃ底知れぬ穴に落ちたら能力使って飛びますよね~おかげですごいスクープ映像が撮れちゃいました」

 

「それをよこせ!」

 

ここまで追い詰められれば実力行使でビデオカメラを奪いに来ることは明白だったので乗り移り3秒数えてから穴の中に飛び降りた。

 

飛び降りて重力を感じて落下する直前で自分の体に戻り青年は「へ?」と間の抜けた声をあげて穴に落ちていった。

 

「うわーエグいことするなー」

 

「友利にだけは言われたくない台詞だな。それに友利なら念のため下に落ち葉かなんか敷き詰めてあるんだろ?」

 

「まあ敷き詰めておきましたけど.....そこまで分かられていると自分の頭の中を覗かれているようで少し気持ち悪いですね」

 

「それよりも、どうして上がってこないんだ?そろそろ上がってきても良さそうだが」

 

「.....そうっすね。落ちる恐怖で能力が使えなくなってしまったのかもしれませんし....ロープを持ってきます。貴方は高城を連れてきてください」

 

「見張りは良いのか?」

 

「ビデオカメラに証拠は抑えてありますし。それに.....黒羽さんに見ていてもらうので問題ありません」

 

「そうか」

 

俺は高城を連れてくるためにテントに向かった。

 

 

 

 

「さてと、おーい。生きてますか~?」

 

「....ああ」

 

「そうですか、それは良かったです」

 

「くそっ......飛べない....どうして...おい、なんで....」

 

「貴方はもう、飛べませんよ」

 

「っ!どうして!?」

 

「貴方はもう、能力者ではありませんから」

 

「そんな...そんな馬鹿げた話があるか!僕だけに与えられた力だ!僕の力だ!」

 

「はぁ....現実を見てください。現に貴方は飛べていません。それに我々も特殊能力を持っています。ただこの能力は思春期のときだけ現れる病気のようなものでやがて消えます」

 

「そんな....でもだったら何故俺の能力は消えたんだ!」

 

「....よく分かりませんが、落ちたときの恐怖心で飛べなくなった。というのが一番妥当だと思います」

 

「そんな...」

 

「それに能力があると知られたら科学者たちのモルモットになります。それは嫌ですよね?」

 

「......」

 

「なので使えなくなって良かったと思ってこれから先は能力を使おうとせずに過ごしてください」

 

「友利、高城呼んできたぞ」

 

「友利さん、用事は」

 

「ロープを穴の中に投げ入れるんでお二人で引っ張ってください」

 

「....友利は引っ張らないのか?」

 

「嫌ですねー私女の子ですよ?」

 

「乙坂さん、言いたいことは分かりますが堪えてください」

 

高城と俺はロープを引っ張り穴に落ちた青年を引っ張りあげた。ここで飛んで逃げないことを考えると能力は失っているようだ。

 

思春期の病気の様なものだと友利は以前言っていた。

 

では何故今能力が無くなったのか。

 

恐怖心で飛べなくなった?確かに無いとは言い切れないだろう、でも根拠がない。

 

それに恐怖心と言うなら相手に乗り移って乗り移った間に高城に瞬間移動で突撃されたことも恐怖心になるのではないか。

 

だとすれば他に要因がある?

 

青年が最後に飛ぼうとしたとき何が起きた?

 

穴に落ちた?

いや穴に落ちても飛び上がってきた。

 

俺が能力を使って乗り移った.....乗り移る?

 

もし俺の能力が相手に乗り移るだけじゃないとしたら.....。

 

俺が乗り移ると相手の能力を消せるのだとしたら....この間の野球の後に乗り移ったのも納得がいく。

 

友利は俺に何かを隠している?

 

「さてと、これでようやく帰れますね。乙坂さん」

 

「あ、ああ」

 

このあと歩未の誤解を解くためテントに戻ったが歩未は中々納得してくれず困っていた。

 

「ほんとに、ほんとにさっきの話は冗談なのでしょうかー?あゆはお家に帰ることができるのでしょうか...」

 

「ああ、勿論だよ。俺が歩未に嘘を付いたことなんてないだろ?」

 

「それは...そうなのですが...」

 

「ルルーシュさん、ここはゆさりんに任せてください!」

 

「おお!ということはここであれが聞けるのですか!!」

 

「ではいきます!納得のおまじない♪」

 

「なぁっとく~なぁっとく~。どんなことでもなぁっとく出来る~おまじないっ♪」

 

「きたぁーー!!ゆさりんのおまじないシリーズ27!!納得出来るのおまじないー!ある視聴者から番組にクレームが来た際に一度だけ使ったとされる幻のおまじなぃーー!!まさかここで見れるとは!!」

 

「引くなっ!」

 

「あ、あゆも嬉しくて....納得したのですぅー!!ぶしゅっ!!」

 

高城は叫び歩未は鼻血を出して倒れてしまった。

 

極力柚咲と会わせるのは辞めようとこの日俺は誓うのだった。

 

 

 

タクシーの中、俺と友利は行きと同じく帰りも二人で乗っていた。

 

「そう言えば約束していましたね」

 

唐突に友利が話を切り出したがなんの約束なのか全然分からなかった。

 

「何か約束してたか?」

 

「してましたよー。覚えてませんか?私の過去についてですよ」

 

「.....それは友利が生徒会長をやってる理由とも関係あるのか?」

 

「はい。過去があって現在の私がいるわけですから」

 

「.....分かった」

 

「では少し寄り道させてもらいますね。歩未ちゃんには見せたくないので先に帰らせてください。家まで高城と黒羽さんに送らせますので」

 

「........いや俺が帰るまでいてもらえることは出来るか?」

 

「どこまでシスコンなんですか......まぁ大丈夫だとは思いますけど....」

 

友利はメールを送ると数分後に返信が来て高城から大丈夫ですと一文だけ返ってきた。

 

「と、言うわけで。大丈夫ですね?」

 

「ああ」

 

友利は運転手に行き先を伝えると携帯を開き何処かにメールをして携帯を閉じた。

 

「さっき友利が言ってた場所って病院だよな?」

 

「はい。貴方も入院した病院なので分かると思いますが、そこに向かいます。ここからなら後7時間程で着きますので今のうちに寝ておきましょう」

 

「そうだな」

 

俺はイヤホンを耳に付けてZHIENDのバンドの曲を流す。

 

広大な草原に一人......そこは変わらない。

不意に肩に重みがあることに気付き目を開けると友利が肩に頭を乗せて寝ていた。

 

疲れていたのだろう。

作戦を考えて行動して、バーベキューして皆が飽きないように色々考えて。

 

友利を起こさずに俺も目を閉じ曲に身を任せることにした。

 

 

一人で聞いていた時と感じた印象が変わっていた。

 

 

広大な草原に俺と、そしてもう一人友利がいる。

 

 

何処までも孤独な曲という印象だったのに今はそれだけじゃない印象があった。

 

孤独な曲を知って....その曲に孤独じゃないもう一人の存在を見つけてしまうとこの曲は、もう一人の存在の大切さを教えてくれる。

 

孤独になるから分かる感情。

 

孤独から孤独じゃ無くなったから気付けたこともある。

 

この気持ちは.............。

 

 

 

「お...k....く.......」

 

誰かの声が遠くで聞こえる。

 

「お客さん......」

 

なんだ運転手の声か......。

 

「お客さん、いい加減起きてくださいよ」

 

「ん.....ここは」

 

「もう病院についてますよ。一緒の人も起こしてそろそろ降りてくださいな。私もそろそろ帰って寝たいんでね」

 

「あ、ああ......っ!」

 

俺は重い瞼を擦ると友利の横顔が目の前にあった。

 

いや正確には俺の膝を枕にして友利が寝ていた。

 

「おい、友利.....」

 

「んん......」

 

「おい」

 

肩を揺すったりするが起きそうもない。

 

「はぁ....」

 

仕方なく友利をおんぶしてタクシーの運転手にお金を渡して領収書をもらった。

 

生徒会の仕事をするようになってお金を貰っていたので足りたが額が凄いことになっていた。

 

この状況で病院に入るわけにもいかず友利が目を覚ますまで辺りを歩こうと思い暫く歩いていると崖まで来ていた。

 

崖からは、水平線が何処までも続いており海が波に揺られ光が反射して輝いていた。

 

「ん....ここは」

 

「目が覚めたか」

 

「はい。すいませんっす」

 

「いや、疲れていたんだろ?ならしょうがないさ」

 

「ここ....この場所」

 

「ああ、友利が中々起きないからさ。暫く歩いてたんだけど綺麗だなと思ってさ」

 

「はい...ここは私のお気に入りの場所でもありますから」

 

「そうなのか?」

 

「はい」

 

友利の顔からは哀愁が漂い良い思い出ではないと容易に分かったが今はただ何処までも続いているような水平線を見ることしか俺には出来なかった。

 

 

「さて....それでは行きましょうか」

 

「病室か?」

 

「はい。乙坂さんには今から、私の兄に会ってもらいます」

 

「兄弟がいたのか」

 

「はい。隠していたわけではないんですけどね。それでは着いてきてください」

 

「ああ」

 

友利に案内されて病室に入ると無気力と言うのか感情が全く感じられないといった若い男性、友利の兄が病室のベットで座っていた。

 

「私の兄です」

 

「.....こ、こんにちは」

 

「.......」

 

返事がない所ではない。此方に反応すらしていない。

 

「これが科学者に捕まった能力者の末路です」

 

「っ!......それじゃあ」

 

「はい。兄は.....科学者達のモルモットになっていました。どこから話しましょうか.......ではまずは兄が特殊能力者になりましたと言うところから話します。私が受験で国立の付属中学に受かった時のことです」

 

 

「うちは母親一人で私と兄を育ててくれていたので、かなりお金に余裕がありませんでした。なので少しでも楽をさせてあげたくて勉強をひたすらやっていました。それで国立の中学に受かって母親も兄も喜んでくれましたし、誉めてくれました。それにその頃兄にもレコード会社から声をかけてもらっていたのです」

 

 

「でも私は入学出来ませんでした」

 

「どうして....」

 

「ある夜。私と兄は母親に呼び出されました。内容は全寮制の学校に入学すること。ですが私は国立の中学に受かっており、兄はもうすぐレコード会社と契約するところまできていました。勿論母親の意図が掴めず私達は反論しました。兄も独り立ちするから家庭的にもありがたいはずだろ、と。私もそう思っていました。ですが母親は逆だと、私達が全寮制の学校に進学する方が家庭的に助かると言われました。はぁ....もう意味わかりませんでしたよ」

 

「..........」

 

「そしてその日始めて、私たちは母親の土下座を見ました。長く一人で私達の面倒を一人で見てくれた母親の......もう何も言えなくなりました......」

 

「そこは見かけは学校ですぐに友達はできました。ただ毎日授業が終わると健康診断の用なものを受けさせられましたけど」

 

「.......」

 

「.....そんなに拳を強く握らないでくださいよ。気持ちは嬉しいですけど、最後まで話せなくなってしまいます」

 

友利に言われて手を見るといつの間にか強く握り締めており爪が食い込んでいた。

 

「あ、ああ.....」

 

「優しいっすね」

 

「そんなことないさ...」

 

「そして、一緒の学校のはずなのに兄とは会えないままでいました。私が兄を探そうとすると決まって友達がそれを止めた.....あとになって知りましたが。兄はその時ずっと実験を受けていたそうです」

 

「兄の能力は自由に空気を振動させられるというもの。ライブでその能力を使ってギターを様々な音色に変えていたことから奴らに見つかったそうです」

 

「空気の振動...成る程な。その能力を利用すれば通信をジャミングできるし電波ジャックも可能になる」

 

「はい。そして、私が兄と会えたのは約1年後。もう兄はかつての兄じゃなかった。私を兄から遠ざけようとした友達も全員科学者が用意したかりそめの友達」

 

「だから友利は誰にでも敬語で話すのか?」

 

「....そうかもしれないっすね。誰も信じられなくなってるのかもしれないです」

 

「......」

 

「でも、これでもあなたの事は信用してるんすよ。こんな話を自分からしようと思ったのはあなたが初めてっすからね」

 

「そうか.....」

 

「それで私は自分の能力を科学者達から隠し施設から逃げました。その後は、あなたともう一人。信用出来る人に助けて貰い今に至ります」

 

「もう一人の信用してる人?」

 

「名前は流石に言えないっすよ。まっ、ここの病院を用意して星の海学園を建ててくれた人っす」

 

「学園を.....」

 

それだけの経済力のある人が.....。

 

「っあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 

「っ!な、なんだ」

 

いきなり友利の兄が叫びだし枕を引きちぎり中に詰まっていた羽毛が其処らじゅうに散乱している。

 

「作曲です。これで兄はギターを弾いているつもりなんですよ.....唸って聞こえるのはメロディ。主旋律なんです」

 

「あーあ。また布団が駄目になった」

 

ナースコールを押して布団に座った友利は静かに目を開き兄のメロディを聞いているように俺には見えた。

 

 



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新たな能力者

評価が赤くなっていて驚きました....びっくりです。まさにガスだね、と昔のCM思い出すくらい驚きました。
沢山の評価や感想をありがとうございました。


今回の話しは原作には登場しない能力者のお話です。まぁ筆者は小説知識皆無なので小説でもしいたら許してください。


友利の過去を知った翌日。

 

友利は普段と変わらず教室に入り無言で席に座って窓の外の何処か遠い場所を見ている。

 

教室の窓が開けられて風が友利の髪をなびかせる。

 

あんなに小さな少女が過去どれだけ多くの重荷や苦しみを背負ってきたのか話を聞いただけで分かったとは言えなかった。

 

言ってはいけないと思った。それほど重く辛い過去を経験しており、そしてそれは俺と歩未にも関係している事柄だった。

 

俺はずっと歩未の笑顔を見れればそれでいい。

 

だけどもし歩未に危害を加えるものがいるとするなら.....俺は------------------。

 

「乙坂さん?」

 

「あ、ああ。高城か」

 

「どうかしましたか?なにやら思い詰めていましたが」

 

「いや何でもないよ。それより高城、今日昼休みに、ご飯食べ終わったら付き合ってくれないか?」

 

「それは構いませんが何か用事ですか?」

 

「用事というほどでもないよ。ただ生徒会室にチェス盤があったから久し振りにやりたいと思って。だめかな?」

 

「そうでしたか。全然構いませんよ!ですが、私こう見えても少し自身があるので覚悟しておいた方が良いですよ!」

 

「あはは、怖いな」

 

「あれー?お二人ともどうしたんですか?」

 

「ゆさりん!おはようございます!」

 

「はい♪おはようございます♪」

 

「おはよう」

 

「それでなんのお話をしていたのですか?」

 

「いえいえ、昼休みに少し乙坂さんと勝負をしようと誘われただけですよ。良ければ是非ゆさりんも見に来てください!」

 

「ええ!ゆさりんも見に行っていいんですか!?」

 

「勿論です!」

 

「わーい!ありがとうございます♪」

 

 

 

 

 

 

生徒会室(昼休み)

 

俺と高城は昼御飯を食べ終わり生徒会室に来ていた。

生徒会室には、俺達の他に友利と柚咲がいた。

 

 

「えーと、乙坂さん。貴方が昼休みに生徒会室に来るなんて珍しいですね、何かあったのですか?」

 

「いや、生徒会にあるチェス盤を借りてもいいかな?」

 

「それは構いませんが...高城とやるつもりですか?」

 

「ああ、久し振りにやりたくなってね」

 

「はぁ...そうですか。どうぞ御自由に、ただあまりやり過ぎないようにしてくださいね。後がめんどくさいので」

 

「高城は自信があるように言っていたけど強くないのか?」

 

「えーと...弱くはないですが私とやって6割り私が勝っている、という所でしょうか」

 

「そうか」

 

「なので、やり過ぎないようにしてくださいね」

 

「ああ、でも現実の厳しさを教えるのも大事じゃないかな?」

 

「さて!ゆさりん!私の勇姿を見ていてください!」

 

「はい♪楽しみにしてます♪」

 

高城は柚咲に対して腕捲りをしながら自信満々にしている。

 

「はぁ....まぁそうですけど。というか以外と乙坂さんって意地が悪いですよね?」

 

「ははは、そうかな?」

 

 

「で、では!乙坂さん!勝負といきましょう!」

 

「ああ、よろしく頼むよ」

 

高城と向かい合うように椅子に座り机にチェス盤を置く。

 

「先行はお譲りしますよ」

 

眼鏡をあげながら先行を譲ると言ってくる高城に余程自身があることが分かる。

 

「あーと、言い忘れてましたが昼休みは残り10分ですのでそれまでに終わらせてくださいね」

 

「ああ、問題ない」

 

「ほほお、かなり自信があるようですね!最初はd4ですか...それなら私はd5に置かせていただきます!」

 

 

「友利さんは、どちらが勝つと思いますか?」

 

「間違いなく乙坂さんでしょう。むしろ高城が何を思って乙坂さんに勝てると思ったのか疑問に思います」

 

「そんなに強いんですか?」

 

「そうですね....高城より私の方が強いですけど、乙坂さんは私より強いと思いますよ」

 

「乙坂さんって実は凄い人だったんですね~」

 

「どうなんすかね....」

 

「どうなんだろうな、ほんとに」

 

「いきなり出てきましたね」

 

「だってもう勝負見えてるんだろ?あまり柚咲には見られたくないだろうしな」

 

「そうっすね。ただ貴方が見たかっただけな様な気もしますが?」

 

「気のせいだよ、それよりどうしてルルーシュは2手目でキングを動かしてるんだ?」

 

「さあ、私には分かりません。ですがd5から始める展開は、クローズドゲームと言われていてとても難しい責めです。私はあまり使いたくない攻めかたですね。キングを最初に動かすのはキャスリングと言ってキングを安全な位置に置き変えるときに使うのですが....乙坂さんの場合はキングを前に出して...どちらかと言うとキングを司令塔みたいにして使っていますね...あんな攻めかた怖くて私では不可能です」

 

「へえー...なんかよく分かんねえけど凄えんだな」

 

 

 

 

「残り時間は4分か。クイーンをe7に移動してチェックだ」

 

「くっ......き、キングをc7から....d6に」

 

「ポーンをc5に置いてチェックメイ「バタンっ」.....」

 

「さーて協力者が現れたので終わりです。早く閉まってください」

 

「ああ」

 

俺がチェックメイトと言う前に協力者が現れた。

 

「わ、私がここまで簡単に....」

 

「大丈夫ですよ、高城。柚咲さんは全然見てませんでしたから。代わりに美砂さんが見てましたので」

 

「ふんっ、まぁ最後まで諦めなかったのは良かったんじゃねえのか?」

 

「ゆ、ゆさりん!...いえ、今は美砂さんでしたね。ありがとうございます」

 

「別にあたしはなにもしてないし...」

 

「皆さん、そろそろ始まるので静かにしてくださいー」

 

 

毎回思うが髪の毛で顔が見えないがこの学校でこいつみたいな奴見たことないが一体誰なんだ?

 

「能力は...精神感応」

 

「精神感応.....てことはテレパシーって事か?」

 

「はい、そのようですね。ですが、だとしたら....」

 

「ああ、今回俺は不利になる」

 

「どうしてだ?」

 

「頭を使うタイプの乙坂さんにとって、精神感応、つまりテレパシーは頭の中で何を考えているのかバレてしまうのです。ですので頭で考えている事が筒抜けになってしまっているのでは頭を使うタイプの乙坂さんでは不利になる、と言うことです」

 

「ふーん。成る程な」

 

「だがどんな能力にも欠点はある。欠点を探せばなんとかなるかもしれない」

 

「そうっすね。取り合えずはここに行ってみるしかないっしょ」

 

「ここは...学校ですね。かなり遠いですが千葉県の紅葉山高校と書かれていますね」

 

「それじゃあ、全員千葉駅に向けて出発するぞー」

 

千葉県か....今回も泊まりになるかもしれない。もしそうなら.....。

 

「なあ、友利」

 

「分かってますって。もう既に歩末ちゃんも行けるように手配してますので。それに明日から祝日で学校はお休みですからね」

 

「そうか」

 

「ほーんとにルルーシュって妹の事大好きだよなぁ。あたしも柚咲の事大好きだからわかるけどよぉ」

 

「当たり前だろ、歩末は俺にとってたった一人の家族だ」

 

「ん?ルルーシュには両親はいないのか?」

 

「っ!美砂さん、それは!」

 

事情を知っている友利と高城は急いで美砂に駆け寄って口を塞いでいる。

 

「別に構わないよ。それに言わなくちゃいけないことだとも思うしな」

 

「乙坂さん...」

 

「え、えと....話しずらいことなら無理に話さなくてもいいんだぜ?ほら、話したくないことの1つや2つあるし」

 

俺は首を横に振ることで話す意図を伝えて話し出す。

 

 

「俺と歩未の親は、俺達がまだ幼いときに離婚したんだ」

 

「.......」 

 

三人とも聞きずらい話しなのに誰一人下を向かずに聞いてくれている。

 

「母親の方に引き取られたんだけど、その母親も育てられなくなったのか、俺達の親権を遠方に住むおじに渡したせいで二人暮らしを余儀なくされたんだ」

 

「そんなことって.....」

 

「だから俺と歩未には親はいないし、家族は俺と歩未の二人だけ」

 

「.....」

 

話が終わると、まるでお通やの後のような雰囲気になってしまった。

 

「わ、悪い....ルルーシュ」

 

「なんで美砂が謝るんだよ」

 

「流石に....デリカシーが無かったから」

 

「ぷっ、ははは」

 

「な、何笑って」

 

「美砂がデリカシーなんて言葉を知ってるなんて思わなくてついね」

 

「も、もう.....ルルーシュの意地悪....」

 

「はい、はーい。良い雰囲気の所、大変申し訳ないのですがー。そろそろ支度して行きたいのですがよろしいでしょうか?」

 

「あ、ああ。そうだな」

 

「い、良い雰囲気ってなんだよ!」

 

「ああ...一瞬、美砂さんが可愛いと思ってしまった、私はどうすれば....いやでも体はゆさりんなのですから問題ないはず....ですが肝心な中身は美砂さん......ああああ!!」

 

「引くなっ!」

 

 

友利が高城に突っ込みをいれていると美砂が此方に近付いてきた。

 

「な、なあ....この間の約束覚えてるか?」

 

「約束?」

 

「ほ、ほら....その喫茶店に行くって話」

 

「あ、ああ。勿論覚えてるよ」

 

「そ、そうか...」

 

美砂の頬は少し紅く瞳は涙が溜まっているのか潤っており、何時もより妖艶的だった。

 

「今回の依頼が終わったら....一緒に食べに行ってくれないか?」

 

「あ、ああ構わないが」

 

「.......二人で、だぞ?」

 

「........歩未を一人にさせるわけには....」

 

「大丈夫だ。高城に頼むから」

 

高城...俺なんかを誘わないで高城を誘ってやれば高城も喜ぶと思うが.....。

 

「高城は誘わないからな?」

 

「......あ、ああ」

 

有無を言わさない圧力を感じて口ごもってしまう。

 

「それで良いのか?」

 

「....分かった。約束だしな」

 

「.....ヨシ........」

 

「?何か言ったか?」

 

「い、いや!なんでもねえよ!そ、それじゃ絶対だからな!」

 

「あ、ああ」

 

「あれー二人とも何か話してましたか?」

 

「いいや、なんでもねえよ。それより高城は?」

 

「少し強く蹴り....飛ばし過ぎたみたいで伸びてますが問題ありません」

 

高城......少し不憫に思えてくるな。

 

「それで、またタクシーで行くのか?」

 

「いえいえ、そんな遅いのではいきません!」

 

 

 

 

 

 

 

「今回は特急で行きますっ!」

 

いつの間にか歩未も合流して現在特急券片手に駅のホームに俺達はいる。

そして何故か柚咲は、マスクと眼鏡を着用している。

 

「柚咲さんは目立つのでマスクと眼鏡をしてもらってます」

 

「あの~...私あまりこういう変装は好きではないんですけど~」

 

「めんどくさいのでそのままでいてください」

 

「うう....」

 

どうしてか、今日の友利は柚咲に厳しい気がする。

 

「はぁ~、眼鏡とマスクをしていてもゆさりんはかわごふぉっ!?」

 

「んな大きな声で名前言ったら変装してる意味ねえだろうが!」

 

友利の回し蹴りが高城に炸裂して高城は今日も何度目か吹っ飛んでいた。

 

「さーて、高城は放っておいて駅弁買いにいきましょ、お腹空きました」

 

「そ、そうですね。ゆさり「ああ?」はぅ....私は何て名乗れば....」

 

「ここでは、そうですね....友理(ゆり)とでも名乗ってください」

 

「は、はい....」

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

友利と柚咲の会話を遠くで駅にある椅子に座って見ていると後ろから誰かに話しかけられた。

 

「あ、あの!もしかして乙坂ルルーシュさん...ですか!?」

 

「あ、ああ。そうですけど....もしかして」

 

この声とこの顔には覚えがあった。

 

「は、はい!月野凪です!」

 

「久しぶりですね」

 

「は、はい!と、突然転校してしまったので....その何かあったのか聞きたかったのですけど失礼かと思って、折角メールアドレスも交換してもらったのに聞けなくて....」

 

どうやら突然転校してしまったことで心配してくれていたようだ。

 

俺は最初の高校に一日しか在学していなかったので誰からも覚えられていないと思っていたけどそうではなかったみたいだ。

 

「学校では何か話を聞きましたか?」

 

「い、いえ!先生に聞いても分からないとしか言われなかったので.....」

 

成る程。

あの場所で俺が問題を解いてしまったからカンニング容疑で転校してもらったとは公言できなかったわけだ。

 

そんなことしたら訴えられても仕方がないしな。

 

「そうか....家の事情でね、やむ無く転校することになったんだ」

 

「そ、そうだったんですか....。あ、わ、私聞いてはいけないことを....すいません!」

 

頭を深々と下げて謝罪をしてくる月野さん、悪い子ではないのだろうが駅のホームで女子高生に頭を下げさせている、男子高校生とか周りの目が痛い。

 

「え、えーと...月野さん。俺は気にしてないから頭を上げてください」

 

「で、でも....」

 

少し頭を上げて此方を伺うように見つめてくる月野さん。その瞳には涙を浮かべている、真剣に謝っていることは充分すぎるくらいに伝わってくる。

 

「構わないですから。それにこんな場所で頭を下げられては周りの目も痛いので....」

 

本音を言うと一度大きく頭を上げて目を大きく見開き大声で「すいませんっ!」と言って、また頭を深く下げた。

 

「乙坂さん?」「ルルーシュ?」

 

今の声を聞いたのか聞こえたのか友利と恐らく美砂になった変装柚咲、現在は友理だったか。が近付いてきた。

 

「あ、いや...これは」

 

今の状況を怒られるのではないのかと思い便宜を図ろうとすると二人からは全く関係のない言葉が返ってきた。

 

「「その女の子はどなた(誰)ですか?(だ?)」」

 

二人とも笑顔だが目が笑っていない。

 

助けを求めようと高城を見るが伸びていて目覚める気配はない。

 

何か使えるものはないかと周りを見渡すが、此方を向きコソコソと話をしている奴等だけ。

 

「あ、歩末は?」  

 

そうだ、歩未は何処だ?さっきまで一緒にいたはず。

 

「あー歩未ちゃんならおトイレに行っていますよ。先程行ったばかりなのでもう少しかかるかと」

 

「それでその子はどなたですか?」

 

「.....前の学校の知り合いだ」

 

「え、えと!月野凪と言います!乙坂さんとは.....えーとー....お友達以上の関係になれたら良いなって思ってます!」

 

「と、友達以上.....?」

 

「ルルーシュ.....これはどういうことだ?」

 

何故俺が責められているのか分からないが現状を見て言い返してはいけないことだけは分かった。

 

「あ、あの!お二人は乙坂さんの”お友達”ですか?」

 

「わ、私は....」「あ、あたしは...」

 

二人して同時に俺を見てくるが見られても困るので目をそらすと歩未が此方に走って向かってくるのが見えたので俺はこの空気に耐えきれなくなり離脱することに決めた。

 

「あ!歩未戻ってきたんだな」

 

「あ!ちょっと乙坂さん、待ってくださいよ!」

 

「ちっ....逃げたな」

 

 

特急も来てこれで安心して千葉駅に迎えると思ってた。

 

だが。

 

 

俺の左隣は友利右隣は歩未、席を空けて美砂その右隣が高城ではなく何故か月野さんだった。

 

高城は俺達の後ろの席で未だに伸びている。

 

「はぁ.....高城と柚咲さんを一緒に座らせると五月蝿くなると思って席を離しましたがそれが裏目にでるとは...」

 

どうやら友利の策略だったようだ。

 

「でも俺と高城で座れば良かったんじゃないのか?」

 

「それがですね~.......まっ良いじゃないですか」

 

「良くねえよ!どうしてあたしがここなんだ?」

 

因みに歩未には今回は、柚咲の親戚が一緒に来ると言ってある。

 

「では、あゆと席を代われば問題ないのですぅー!」

 

「あ、歩未ちゃん、良いのか?」

 

「はい、なのですぅー!あゆは何時もゆさりんの歌声に助けられているので、ゆさりんの親戚の友理さんに恩返しなのですぅ!」

 

「あ、あの!私も乙坂さんと一緒に座りたいです!」

 

「余ってないので諦めてください」

 

「い、嫌ですっ!ずるいですっ!私、乙坂さんに告白しました!フラれましたけど....で、でも!何もしてない人達より権利はあると思います!」

 

「乙坂さん、それは本当ですか?」

 

「本当だけど....」

 

「はぁ....そうですか。というか何故貴方も特急に?」

 

「私は実家に帰省するために帰るんです」

 

「どこまで帰るんですか?」

 

「千葉駅までですけど.....」

 

「......貴方、もしかして兄弟とかいたりしませんか?紅葉山高校に通ってたり」

 

「え?直輝お兄ちゃんの事を御存じなんですか?」

 

「これは....」

 

「友利は、月野さんの兄弟が怪しいと思っているのか?」

 

「まだ分かりませんが合点がいく点が少々多いので....あの、貴方の、その直輝さんは何か特別な事を高校でしてたりしませんか?」

 

「い、いえ...特には」

 

「そうですか....何か部活に入って活躍したりとかは?」

 

「特に無いと思いますけど....いきなりどうしたんですか?」

 

「いえ.....もし良ければ貴方の家にお邪魔しても良いでしょうか?」 

 

「え.....それは」

 

「勿論、乙坂さんも一緒に行くので」

 

「っ!......分かりました」

 

「では千葉駅に到着したら、お邪魔させてもらいますね」

 

「分かりました。でも先に両親に電話しておきたいので少し席を外しますね」

 

月野さんは座席から立ち上がり電車の連結スペースで電話をかけている。

 

「それにしても困ったな」

 

「おや、いつの間に」

 

隣を見ると歩未ではなく、いつの間に移動したのか美砂が座っていた。

 

「ルルーシュお兄ちゃんは、モテモテなのですぅー!」

 

「そんなんじゃないって....」

 

「まっ、その話しは置いといて。どうするつもりなんだ?」

 

「そうっすね....一応お宅を見せてもらって判断するしか無いと思います。それに相手の能力は此方の考えは筒抜けになってしまいます。出来るだけ他の事を考えながら行動しましょう」

 

「分かった」

 

「たくっめんどくさそうだがしかたねーか」

 

「いえいえ、貴女は柚咲さんに戻ってもらっても構わないのですよ?」

 

「ああ?そしたら正体がバレちまうだろうが」

 

「いえいえ、ホテルで待っていてもらっても良いと言っているのです」

 

「断る」

 

「それなら仕方ありませんね。何か対抗策を考えて置いてください」

 

「お前はあるのか?対抗策」

 

美砂が友利に聞くと不適に笑みを浮かべた。

 

「勿論っす。見えなければ聞かれないと思いますから能力を使って最初から見られないようにするっす」

 

成る程な。

 

確かに精神感応の能力なら相手の姿を見るのは必須になりそうだしな。

 

後は.....俺達全員の能力は完璧ではない。

 

例えば俺なら乗り移る時間は5秒程度。(この能力には秘密がありそうだが)

 

友利なら一人にしか使えないということ。

 

高城は距離もスピードを関係なく真っ直ぐに突っ込んで止まらないこと。

 

柚咲の場合は、柚咲の意思では美砂を呼び出せず美砂の判断で乗り移り発火の能力も美砂が使えるという所だ。

 

それなら、精神感応に関しても完全な能力ではない可能性が高い。

 

 

もし能力を使って一度に得られる情報に限りがあるとすれば、幾つもの考えを瞬時に頭で考えれば考えを読まれなくなるかもしれない。

 

「くっ.....それならルルーシュはどうするんだ?」

 

「俺は....そうだな。幾つかの考えを瞬時に思い浮かべて負荷を与えてみる。能力が完全ではないなら何処かに隙があるはずだから」

 

「そうっすね。意外と有効かもしれません」

 

「あたしは....燃やすか....」

 

「燃やすなっ!バカの一つ覚えみたいに火をつけるな!」

 

「ならどうすればいいんだよ!」

 

「.....友利の後ろにいるっていうのはどうだ?」

 

「私の後ろですか?」

 

「ああ。勿論移動中は無理だけど部屋とかに入って話をするときとかは可能だろ?」

 

「成る程.....仮に精神感応の能力が相手を正しく認識して使用するものなら....私がいることで阻害されて能力が発動できず逆にパニックにさせることも可能かもしれませんね」

 

「ああ」

 

「あのー...あゆにはどういう話なのかさっぱり分からないのですがー?」

 

「あ、ああ。あゆはホテルで高城の事を見ててくれるか?俺達は少し行くところがあるから」

 

「わ、分かったのですぅー!あゆ、しっかり待ってるのですぅ!」

 

電話を終えたのか月野さんが此方に戻ってきた。

 

「ごめんなさい、お待たせてしまって」

 

「いえいえ、それでどうでしたか?」

 

「はい。うちに来るのは問題ありません。ですが私には先程言ったように兄弟がいて、おにい.....兄なのですが、きっと驚くと言われたのですがそれがなんなのか分からなくて....兄の事を知ってそうだった、貴方達なら何か御存じではありませんか?」

 

「さあー分かりませんが。御家族の方が久し振りに帰省してくる月野さんに対してサプライズでも用意しているということではないでしょうか?」

 

「そうでしょうか.....」

 

 

驚くことか...やっぱり何かありそうだな。

 

 

 




チェス回でした。ルルーシュならこの回は入れたかったのです、すいません、チェス自分自身弱いので途中経過はかけませんでした!


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