ティガライブ!サンシャイン‼︎ (にわかラブライバーレベル10億)
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人物設定(ウルトラマン編)

ここでは、主人公の円大吾をはじめとした登場するウルトラマンに変身するオリキャラの設定を書きたいと思います。登場次第追記していきます。

例外としてもう1人のキーキャラとして、マドカ・ダイゴのダイナ本編以降の彼の動向を書いています。


円大吾/ウルトラマンティガ

今作の主人公。17歳の高校2年生。ある時、別世界のマドカ・ダイゴとの邂逅を果たす夢を見たことにより、ラブライブの世界のウルトラマンに選ばれてしまう。両親は小学生の時に、トラックによる事故に巻き込まれてしまい、死別している。しかし、身寄りがなかったため、母と親友だった千歌の母親に引き取られ、高海家に居候している。

Aqoursのメンバーとは、物語開始時点で、それぞれ邂逅しており、友人関係となっている。しかし、その9人全員から多かれ少なかれ好意を抱かれていることは知らない。実はあるμ'sメンバーとも幼馴染で、弟のように可愛がられている。

 

マドカ・ダイゴ/ウルトラマンティガ

ネオフロンティアスペース(ウルトラマンティガ、ウルトラマンダイナが活躍していた宇宙)の地球において、ウルトラマンティガに変身して闇の勢力と戦った青年。

劇場版ウルトラマンティガにおいて、スパークレンスを取り戻したため、設定上は現在でもティガには変身できる(Wikiより抜粋)。しかし、ウルトラマンとしてではなく、人間として生きることを決意していたため、ティガには2度とならないと決めていた。劇場版ティガから10年後に訪れたスフィアの襲来の際には、先輩としてかつての自分のことをダイナ=アスカに伝えた。さらにその十数年後、魔神エタルガーの襲来の際に、ダイナを含めた複数のウルトラマンが鏡の中に封印されていることを知り、彼らを助けるため、再びティガに変身してエタルガーに戦いを挑んだ。しかし、前述の決意の影響で、かつてのように満足に戦えなくなっており、敗北及び鏡の中に封印されてしまう(エタルガーはゼロやノア=ネクサスが戦い、単独で倒せなかった敵であるため、たとえ万全な状態だったとしても勝てたかは不明)。その後ギンガスペースの地球で、UPGとコスモス=ムサシに救出された後は、ウルトラ10勇士を結成し、エタルガーが召喚したファイブキングに、ダイナ、ガイアと共に戦い、これを撃破した。かつて3人で共に戦ったことがある(劇場版ティガ、ダイナ&ガイアのこと)ため、久しぶりの共闘なのに、素晴らしいチームワークを発揮した。

ゼロの力を借りて、元の世界に戻る道中、メビウスから別の世界のダイゴとティガのこと(超ウルトラ8兄弟のこと)を知る。今作では、ゼロからある闇の存在の復活を教えられ、ラブライブの世界のダイゴである大吾にティガのことを伝えるために夢の中に現れた。




いかがでしたでしょうか?マドカ・ダイゴ隊員は、Wikiや各映画作品の設定を準拠した設定としています。もし不明な点がございましたら、感想やメッセージなどで承ります。これからもよろしくお願いします(^ ^)


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序章 時空を超えた復活編
第1話 運命の出逢い


はじめまして。にわかラブライバーと申します。初投稿作品です。今年の夏から始まったラブライブ!サンシャインと僕の永遠のヒーロー、ウルトラマンティガのコラボ作品です。ティガが放送されてから、早くも20周年((((;゚Д゚)))))))またいつかダイゴ隊員が僕らの前に現れることを祈るばかりです>_<

それでは本編スタート!!!


「ここは・・・?」

 

何もないどこまでも果てしなく続く薄暗い空間。そこに1人の少年が立っていた。

 

「なんでこんなところに?確か僕は、家で寝ていたはずなのに」

 

その少年は何が起きているのか把握しようとした。しかし、どんなに考えても答えは出てこなかった。刹那、彼の目の前が急に光り出し、彼は一瞬目を閉じた。そして再び目を開くとそこには様々な映像が映し出されていた。それは赤と紫を基調とした巨人が様々な怪獣や、宇宙人と戦っている映像である。その巨人は時には赤い姿になり、時には紫色の姿となり、様々な光の技で打ち倒していった。

 

「なんだよこれ?」

 

「これは僕のかつての戦いの記憶さ」

 

「誰だ⁉︎・・・って、僕⁉︎」

 

次々と映し出される映像に少年が困惑しながら見ていた。するとどこからか声が聞こえ、声のした方向を向くとそこには1人の青年が立っていた。しかし、その男の姿を見た時、少年の顔色が青くなった。なぜならそこに立っていたのは紛れもなく自分と同じ顔をした人物だったからである。

 

「驚かせてすまない。僕はマドカ・ダイゴ。よろしく」

 

「名前まで一緒⁉︎何がどうなってんだよ⁉︎」

 

「簡単さ。僕は別世界の君だよ」

 

「はあ・・・」

 

その青年の名はマドカ・ダイゴと名乗った。その名を聞いた時少年はさらに動揺した。まさか顔だけでなく、名前も同じだったからである。しかもその正体が別世界の自分だということを知り、もう完全に頭がこんがらがった。

 

「まず今君が見たあの映像は、さっき言ったようにかつての戦いの記憶。僕の、そして、ウルトラマンティガの・・・、ね」

 

「ウルトラマンティガ?」

 

「あの巨人の名前さ。あれが僕のもう1つの姿」

 

「そのウルトラマンさんが僕をここに呼んだのか?」

 

「いや、正確には君の夢の中に僕がこの力を使って、現れたのさ。本当はあまり使いたくない力なんだけどね」

 

ダイゴは映像に映されている巨人を指差し、その戦士の名を告げた。さらにその巨人が彼のもう1つの姿でもあることとその力を使い、今自分と話していることを少年に告げた。

 

「どういうこと?」

 

「今は君が知る必要ないことさ。でもこのティガの力は君に関係してくる」

 

「だからどういうことだよ?」

 

「近い未来、君の住む世界に大きな災いが起きる。その時に君にティガとして戦って欲しいんだ」

 

「なんで僕が⁉︎」

 

「君の世界の人間で、ウルトラマンティガに変身出来るのが君1人だけだからさ」

 

ダイゴは上着の上ポケットから、かつて自信がウルトラマンティガに変身した際に使用していた変身アイテム、スパークレンスを取り出した。

 

「僕はかつての戦いの果てに、ウルトラマンとしてではなく、人間として生きることを選んだ。だから、闇の巨人との戦いが終わった後、僕は2度とティガにならないことにした」

 

「・・・」

 

「しかし、たった1度だけティガに変身した。いや、せざるを得なかったんだ。僕と同じウルトラマンが次々と封印されていて、彼らを助けるためにね。でも結果負けてしまい、僕も囚われてしまった。しかし、ある2人のウルトラマンと仲間の人々が僕らを助け、僕を含めた10人のウルトラマンがそいつを倒したんだ」

 

すると、新たな映像が映し出された。それはティガとはまた違うウルトラマンが鏡のようなものに閉じ込められており、それを見たダイゴがティガとなり、金色の異形の存在に戦いを挑み、敗北してしまい、鏡の中に封印されてしまう映像と怪獣や宇宙人、闇の巨人とそれぞれ戦う10人のウルトラマンの映像だった。

 

「それで僕になんの関係が?」

 

「話はここからだ。その時共に戦ったメビウスというウルトラマンが言っていた。僕ら2人とはまた別の世界のマドカ・ダイゴは、かつての僕の、ティガとしての記憶が混ざったことにより、彼はティガへと変身出来たらしい」

 

「まさか」

 

「そう。君を選んだのは、この世界のダイゴだからだ。君でなければ、ティガに変身することが出来ないんだ」

 

「分からないだろう⁉︎もしかしたら、別の人がこの世界のあんたかもしれないじゃないか!」

 

「いや、僕には分かる。君こそがこの世界を守る光の戦士にして、この世界の僕自身だ」

 

ダイゴの話には続きがあった。それはこことはさらに違う世界でもマドカ・ダイゴが存在し、その男は目の前にいるダイゴの記憶が混ざり、ウルトラマンへと変身し、仲間の戦士と共に侵略者と戦っていたとのことだった。

 

「だったら、あんたがティガになって戦えばいいじゃないか!いずれ来るっていう大きな災いって奴にさ!」

 

「それは出来ない」

 

「なんで⁉︎」

 

「さっきも言ったように僕は、ウルトラマンとしてではなく、人間として生きていくことを選んだ。その影響なのか、かつてのような万全な状態で戦うことが出来ないんだ。エタルガーが呼び出したファイブキングとの戦いも、ダイナとガイアの2人が共に戦ってくれなければ、おそらく勝てなかった。まあ、たとえ万全な状態だったとしても、1人であれに勝てたかと言われたら、答えられる気がしないけどね」

 

少年はずっと思っていたことがある。それはなぜウルトラマンであるダイゴ自身が戦おうとしないのか、であった。しかし、ダイゴ自身が戦おうとしないのではない。戦えないのである。人間として生きることを選んだが故に、かつてのような戦いが出来なくなってしまった彼はこうして、今、自分の目の前にいるのだ。

 

「無理にとは言わない。でも君にも生活はあるし、それに大切な人がいるはずだ。もしその人達がその災いに巻き込まれ、助けを求めた時、君はどうする?」

 

「そんなの助けるに決まってるじゃないか‼︎」

 

ダイゴに言われた時、彼の目には9人の少女の姿がうつった。それは自分にとって、最もかけがえのない友人だ。もし彼女たちが助けを求めたら、彼は命に代えても助けるつもりである。

 

「今はその答えが聞けただけでもよしとするよ」

 

「どういうことだよ?」

 

「どうやら時間切れのようだ。次君の前に現れる時があるとしたら、それは君が力を欲し、戦うことを決意した時だろう。だが忘れないで欲しい。奴は必ず君の世界に現れ、恐怖と混沌に陥れる。僕以外のウルトラマン達もそれぞれこの世界に赴く予定だが、間に合うかどうか分からない」

 

「もしそうなったら、戦える可能性があるのは僕のみ?」

 

「そうだ。だからこそ、この世界は君に託したいんだ、円大吾‼︎」

 

その最後の言葉と共に彼の視界は暗転し、再び目を覚ますと、目の前に1人の少女が心配そうな顔をしていた。

 

「おはようダイ君。顔色悪いけど大丈夫?」

 

「おはよう千歌ちゃん。大丈夫。ちょっと怖い夢見ちゃってただけさ」

 

「そう?なら良かった!そろそろ約束の時間だから、すぐ準備してね!曜ちゃんももうこっちに向かってるって言ってたから」

 

「了解。さて・・・、と、ん?何だこれ?」

 

千歌が部屋を出たのを確認し、彼は着替えようとした時、ゴトッという何かが落ちる音が聞こえた。見てみるとそこにはダイゴが持っていたスパークレンスの形をした石像だった。それを大吾は右手で持ち上げながらダイゴが言っていた言葉を呟いた。

 

「いずれ来る大きな災い。そしてティガになることができるのは僕だけ・・・、か」

 

ダイゴが言っていた大きな災いが本当に起きるとは、この時大吾は予想すらしていなかった。

 

ED:Brave Love,TIGA〜Aqours ver.〜




次回予告

「3人で遊ぶなんて、中学以来だね!」

「ウルトラマンのいない世界か。まあたとえ奴らが現れようとも我らの脅威ではない!」

遊びに出かける大吾たち。しかし、その裏で暗躍する者あり。

「ギシャー‼︎」

「自衛隊ですら歯が立たないなんて‼︎」

ついに訪れる予言の時。2大怪獣襲来‼︎

「この世界を・・・、僕が守る‼︎」

「テャァァ!」

円大吾、決意の変身。時空を超え、あの光の巨人が蘇る!!!

次回 第2話 光を継ぐもの


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第2話 光を継ぐもの

みなさんお久しぶりです>_<
今回のお話でついにティガ覚醒、そしてファーストバトルとなります。というわけであの2体が相手です(^ ^)

それでは本編スタート!!!


前回のティガライブ!サンシャイン‼

僕は円大吾。ある日家で寝ていた僕は不思議な夢を見た。それは…、

 

「僕はマドカ・ダイゴ。別の世界の君さ」

 

まさかの別の世界にいる自分と邂逅する夢。しかもその人は、ウルトラマンティガという光の巨人に変身できる能力を持っていた。そんな人が俺の前に現れた理由はなんといずれ来るという大きな災いに僕自身がウルトラマンティガに変身して戦うことを頼むため。

 

「いずれ来る大きな災い。そしてティガになることができるのは僕だけ…、か」

 

彼が夢の最後に言っていた予言。その時がもうすでに近づいていたことはこのとき僕は想像すらしていなかった。

 

「おはよう、大吾くん。今日はいつもより遅かったわね?」

 

「まあ、昨日変な夢を見てしまって。でも大したことないので気にしないでください」

 

「そう?ならいいけど。それよりも私たちは家族なんだから、そんな敬語じゃなくていいのよ?」

 

「すいません。長年これで通してたので、今すぐにはちょっと…」

 

リビングに入ってきた大吾に話しかけてきたのは、高海千早。千歌たち3姉妹の母親で、大吾にとっては義理の母親に当たる。この辺の事情は別のお話で説明しよう。大吾の返事にちょっと残念そうな顔をしたかと思ったが、急に悪い笑顔に変わり、大吾とは反対に座っている3人の娘である、志満、美渡、千歌を見ながら大吾に話しかけた。

 

「じゃあ、ここにいる3人のうちだれかと結婚しなさいよ?そうすれば晴れて、うちの息子よ?」

 

「「「ちょっと母さん!?いきなり何言ってんのよ!?」」」

 

とんでもない発言に3人娘は赤面になりながら、母に問い詰めた。そのうち千歌は大吾の方をチラッと目線を向けるが、彼は特に動じていなかった。いや、彼女がそう見えていただけで、彼は実際にはちょっとだけ動揺していた。

 

「あら?あなたたちだって昔は大吾くんと結婚するって言ってたじゃない」

 

「昔の話でしょ?それにダイ君だって急に言われたって困るだけじゃない‼」

 

「そうよ。ねえ、ダイ君?」

 

「え!?あ、ああ…。そ、そうですね…」

 

「ものすごい動揺してるわね…」

 

千早は3人の娘に悪い笑顔をしながら、3人に問いに答える。しかしその時の大吾の反応にちょっとだけ不満を持つ者がいた。言わずもがな、千歌である。

 

(ちょっとは本気で考えてくれてもいいじゃない!!)

 

「とにかく大吾くん?この三人の中の誰かと結婚してもらうからね?」

 

「え!?決定事項なんですか!?」

 

「もちろん」

 

「はあ…、不幸だ」

 

「まあ、冗談なんだけどね」

 

「え!?なんだ、そうだったんですか~。もう朝から心臓に悪いですよ」

 

そしてその言葉に完全に不機嫌になった千歌。千歌の機嫌を戻すのに時間かかるわ、友達との約束の時間になるわで朝から散々な目に遭う大吾なのであった。

 

(これはしばらく面白いことになりそうね~。あなたの息子は本当にあなたそっくりだわ、涼ちゃん)

 

かつての親友との思い出の写真に思いをはせる千早の姿があったことは、4人は知らない。

 

OP:TAKE ME HIGHER

 

第2話 光を継ぐもの

超古代怪獣ゴルザ、超古代竜メルバ登場

 

そしてとある廃墟に場面が変わる。そこにもうすぐ夏だというのに黒い長そでのコートと帽子をまとう一人の中年がいた。

 

「ほう。様々な宇宙が存在するが、本当にあの憎き戦士どもがいない宇宙の地球なのか」

 

「まさかこのような場所があったとは。やつらが来る前にこの星を手に入れるとしよう」

 

「ふっ…。たとえ奴らが来たとしても、もう遅いくらいには侵略してやる。さてと、まずは手始めにこの2体を召喚するか。出でよ、ゴルザ、そしてメルバよ!!」

 

そのうちの一人は2個の人形を、不思議な力で具現化させた。二体の怪獣は雄叫びをあげ、一人の男にこう命令される。

 

「さあ、暴れろ!!そしてこの地球をわれらの手に!!行け、ゴルザ、そしてメルバよ!!」

 

そしてこの様子を地球の外、大気圏外で見ていた3人の戦士たちがいた。

 

「まずいぜ。こんな早く奴らが行動開始するとは」

 

「ダイゴさんの話だと、まだこの世界のティガは覚醒できていないそうです」

 

「だとすると、僕らが戦うしかないですね」

 

「ああ。即あの怪獣たちを…」

 

(待ってくれ、みんな!!)

 

3人の戦士たちは、ゴルザとメルバを迎撃するため、地球に向かおうとした瞬間、それを止める者がいた。それはすでにこの世界の地球に降り立っていたマドカ・ダイゴであった。なぜ彼が自分たちを止めたのか分からない一人の戦士がマドカ・ダイゴに問いかける。

 

「なぜ僕らを止めたのです?」

 

(まずはこの世界の僕、円大吾がティガになるのが先だ。それに君たちも知るように、あの怪獣たちは、奴の先兵に過ぎない。やつを倒すには、11人全員が集結する必要がある)

 

「でも一度説得には失敗してるんでしょう?」

 

「大丈夫だ。どうやら彼も覚悟を決めたみたいだからね」

 

ダイゴの話を聞き、そちらのほうに目を向けてみるとどうやら戦う覚悟ができたらしい円大吾の姿があった。それを見た3人の戦士たちは納得し、もう一度ダイゴのほうを見やる。

 

「わかった。とりあえず俺たちも一度この地球に降り立つ。あの怪獣は別の世界のあなたに託します」

 

3人の戦士たちは、それぞれの宇宙の地球でそれぞれ戦った伝説の戦士である。そして共通の名前を持ち、時にはこうして集結しともに戦うのである。彼らは人々からこう呼ばれている。――― ウルトラマン、と。

 

 

時間を少しさかのぼる。高海家の家の前に一人の少女がやってきた。彼女の名は渡辺曜。千歌と大吾の共通の友達で、その関係は少額時代からで休日の日などは、よくこの三人で行動していたのだ。高校は千歌と曜の二人が女子高である浦の星女学院に進学したので、大吾は隣町の高校に通うことになったのである。

 

「朝から不機嫌だね、千歌ちゃん?」

 

「別に何でもないよ‼」

 

「なんでもなくないじゃん。大吾くんがめちゃめちゃ疲れてるじゃない」

 

「ま、まあいろいろあってね」

 

「ふーん。まあ、後で詳しく聞かせてもらおうかな?」

 

駅に向かう途中で、めちゃめちゃ問い詰めてくる曜。朝の出来事を詳しく説明する大吾なのだが、なぜか曜まで機嫌を損ねてしまい、疑問に思いながらも、機嫌を戻すことに尽力を尽くす大吾。そんな彼にはどうしても気がかりなことがあった。それは朝見た夢のこと。そして、今自分のジャケットの内ポケットの中に入っている石像のことである。その石像は、夢に出てきたマドカ・ダイゴが持っていたスパークレンスと同じ形をしており、何度か変身できないのか試してみた。しかし何の変化もなく、やはりただの夢だと思ったのだが、なぜかいつの間にやら、家に置いてきたはずなのに、内ポケットに入っていたのだ。

 

「ねえダイ君?聞いてる?」

 

「え!?ああ、ごめん。ちょっと、考え事しててね」

 

「大丈夫?朝からこんな感じだけど…」

 

「具合悪いの?」

 

明らかにいつもの大吾ではないので千歌と曜の二人は、大吾の顔を覗き込むように心配した。

 

「いや、大丈夫だよ。それに久々に3人そろって遊びに出かけるんだから、目いっぱい楽しもうよ」

 

二人に心配された大吾は笑顔で応対すると、その笑顔に二人だけでなく、たまたま近くを歩いていた女性の方々全員が赤面した。

そんなときだった。内ポケットの石像が震えだしたのである。彼がいきなり震えだした石像に対して、訝しげにしたと同時に、ある声が聞こえてきた。大吾は聞こえた方向に目を向けると、そこにはまっすぐいま自分たちがいる沼津市に向かっている巨大生物がいた。そうそれは、先ほど謎の男が謎の力で呼び出したゴルザとメルバである。

 

「なにあれ!?」

 

「わかんないけど、すごくやばい奴じゃないの!?」

 

大吾の両隣にいた千歌と曜の二人は、突然のことで動揺しているが、大吾だけは落ち着いていた。

 

「まさかこれが大きな災いの正体なのか?」

 

「ダイ君?」

 

「千歌ちゃん、曜ちゃん。二人は早く逃げて」

 

大吾は二人を逃がそうとしたが、二人は信じられないような顔をして、彼の顔を見ていた。

 

「何言ってるの!?ダイ君も逃げるんだよ!!」

 

「あの辺は、果南ちゃんの家がある。確か彼女のお祖父さんは今けがで療養中だっただろう?俺が手伝わないといけない。それに今日来ていたお客様の避難の手伝いもしなきゃいけない。こういう時の男手なのに、役立たずはもう嫌なんだ!!」

 

なんとか彼もいっしょに逃がそうと彼の腕をとる千歌。しかし、大吾は決心を固めたかのようにすでに怪獣たちのほうを見ていた。さらに、すでに出ていたのか自衛隊による攻撃が始まったのだが、まったくと言っていいほど、通用せず、逆に二大怪獣の光線で撃墜されているのである。

 

「自衛隊の攻撃も効かないなんて!!」

 

「千歌ちゃん。俺のトラウマわかってるだろ?だから今俺は少しでも助けたい。ましてや、千歌ちゃんの家族は俺にとっても家族みたいな人たちだ。俺のような過去を君には持ってほしくないんだ」

 

「でも大吾くんが死んじゃったら、私たち…」

 

「大丈夫。僕は死なないよ。昔千歌ちゃんと曜ちゃんの二人がくれたこのお守りがあるからさ」

 

自衛隊がことごとく撃墜するのを、見て驚きを隠せない3人。それでも大吾は千歌を説得する。しかしやはり心配してしまう二人に対して、大吾はカバンからあるものを出す。それはかつて何もかもを失った自分に二人がくれた大事なお守りだった。

 

「これがあったから、僕は頑張れたんだ。だからこれを持ってる限り、僕は帰ってくる。それだけは約束する」

 

「ダイ君…。分かった。でも絶対に無理だけはしないで!!少しでもやばいと感じたらすぐに引き返してね」

 

「分かった。じゃあ行ってくるよ」

 

彼の強い決意を感じ取った二人は、大吾から腕を離した。それと同時に大吾はゴルザとメルバがいるほうへ駆け出した。その後姿を見た二人は彼がどこか遠いところに行ってしまうような気がしたが、大吾に言われたように避難所へ向かった。

 

 

前半part 終了

 

 

場面が変わり、避難所である浦の星女学院にたどり着いた千歌と曜。そのとき彼女たちは驚愕した。なんとすでに避難所にそれぞれの家族と、果南とその祖父がいたのである。

 

「お母さん、ダイ君は!?」

 

「大吾くん?あなたたちと一緒にいたはずでしょう?」

 

「じゃあ、入れ違いになったんだ…」

 

「そんな…」

 

しかしそこには大吾がいなかったので、母に問い詰める千歌。しかし、どうやら彼が向かったと同時に彼女たちも避難をしていたらしく、その事実に愕然とする千歌と曜。

 

「私、探してくる!!」

 

「私も!!」

 

「何言ってるの!!今外はすごく危険な状態なのよ!?」

 

外に出ようとした二人の腕をつかんだのは果南だった。

 

「離して、果南ちゃん。このままじゃダイ君が…」

 

「落ち着きなさい!!」

 

何としても彼を助けに行きたい千歌と曜だったが、それを抑えさせる果南。彼女の鬼気とした迫力に二人は少しだけ驚く。

 

「心配なのは分かる。私だって、今の話を聞いて助けに行きたいわ。でも今はかなり危険な状態よ。だから彼が無事なのを信じるしかないわ」

 

「ダイ君…」

 

何とか落ち着いた二人。今は果南の言う通り、彼の無事を祈ることしかできないのもまた事実なので、3人は大吾に対して想いを馳せていた。

 

 

 

そしてここは千歌の家の旅館の裏の山である。そこに大吾はいた。大吾は今もなお、街を破壊しながら街を突き進むゴルザとメルバを睨んでいた。そして内ポケットから石像を取り出し、話しかけた。

 

「なあ、この状況を見てるんだろ?」

 

(もちろん。まさかこんな早く奴が動き出すとは思っていなかったけどね)

 

「教えてくれ。あれがあんたが言っていた大きな災いなのか?」

 

(いやあれは先兵に過ぎない。奴はまだ完全に復活しているわけじゃないようだ)

 

「その奴ってのは誰なんだ?」

 

大吾は石像を介して、夢で出会った別世界の自分と話していた。その中にいま自分が聞きたいいくつかのことがあった。

 

(異次元人ヤプール。ぼくらウルトラマンの宿敵さ。と言っても僕は戦ったことはないけどね)

 

「どういうことだよ?」

 

(僕らのいた地球には現れたことがないんだよ。でも今この地球に向かっている他のウルトラマンたちのうち何人かは戦ったことがあるらしい)

 

しかしダイゴからは満足のいく答えが得られなかったが、今自分がすべきことだけはわかったのでもう一つ彼にあることを問いかける。

 

「そうか。じゃあ、もう一つ答えてくれ。この世界でウルトラマンになることができる可能性があるのは僕だけなんだよな?」

 

(ああ。その通りだ)

 

「その力があれば、千歌ちゃんや曜ちゃん、いやこの世界の人々を守れるのか?」

 

(僕たちウルトラマンは神じゃない。すべてを守ろうとするのは少しだけ不可能だが、大切な人を守ることはできる)

 

ダイゴからの回答を聞いた大吾は、目を閉じ、一呼吸を置き、再び開いた。そして、その眼にはある決意が込められていた。

 

「なら、僕にあんたの力を、ウルトラマンティガの力を貸してくれ!!」

 

(その言葉を待っていた!!)

 

ダイゴからの最後の言葉が聞こえてきたと同時に、石像にひびが入り、砕け散った。代わりに本来の姿となったスパークレンスが右手に握られていた。さらに、夢で見た様々なティガの記憶が彼の中に入っていった。彼はすべての記憶が入ったのを感じると、再び暴れているゴルザとメルバを睨んでいた。

 

「この世界を、僕が守る!!」

 

大吾は両腕を時計周りに回しスパークレンスを空に掲げた。そして、先端部分のパーツが左右に展開し、レンズ部分から放たれた光が大吾を包み込んだ。

 

「ティガー!!!」

 

登場BGM:TIGA!

 

そしてその光は、ゴルザとメルバの二体の怪獣の前に姿を現した。光の中から現れたのは、かつてある世界で3000万年の眠りから目覚め、闇の存在たちと戦った光の巨人、ウルトラマンティガである。今、この地球に時空を超え、よみがえったのである。

そして突如現れた光の巨人に言葉を失う人々。しかし、彼らは知っている。約半世紀もの時間、数々の敵から地球を守り抜いてくれたヒーローたちの名を。

 

「ウルトラマンだ。ウルトラマンが来てくれたんだ‼」

 

「がんばれ、ウルトラマン‼」

 

『頑張れー‼‼‼』

 

戦闘BGM:光を継ぐもの

 

「チャッ‼」

 

人々の応援を背に、ティガはファイティングポーズをとり、ゴルザとメルバに向かって駆け出した。それに対し、ゴルザもティガに向けて、駆け出した。お互いが近くまで来ると、ティガはチョップを繰り出し、そこから膝蹴り、裏拳を繰り出した。

 

「チャッ‼」

 

「ピァァァァァァ‼」

 

ゴルザを援護しようとメルバが近づいてきたが、ティガはメルバの首の部分に手をかけて、あごの部分を膝蹴りで攻撃し、怯んだところを蹴り飛ばした。

 

「グァァァァ」

 

「!?グワッ‼」

 

ゴルザはお返しと後ろから超音波光線を放ち、突然の不意打ちにティガは吹き飛ばされてしまう。さらに、ティガが立ち上がろうとした瞬間、ゴルザが再び超音波光線を放ち、ティガはこれをまともに受けてしまい、その場に膝をついてしまった。

 

「(どうしたらいいんだ?)」

 

(大吾。タイプチェンジだ!!)

 

山の頂上で戦いを見ていたダイゴは、テレパシーで状況打破の方法を伝えた。ティガは、ある記憶を一瞬だけ垣間見た。その瞬間、両腕をクロスさせると、額のクリスタル部分が赤く光り、両腕を振り下ろした。

 

「ンンンン、チャッ‼‼」

 

瞬間、彼の体は、赤を基調とした姿に変わった。ティガは今までとは違うファイティングポーズをとり、駆け出した。ゴルザとメルバの二体は自分たちに近づこうとしてきたティガにそれぞれ光線技を放った。ティガはこれをバリアで防ぐと、駆け出し、ゴルザにつかみかかった。ティガはそのまま、ゴルザの背中でつかみ、力を入れ、ゴルザの骨を砕き、そのまま投げ飛ばした。

 

「ピァァァァァ‼」

 

メルバは空からティガの背中に攻撃し、ティガは再び膝をついてしまった。同時に、彼の胸の部分についてるカラータイマーがピコン、ピコンと青から赤へと変わり、点滅を初めてしまった。ウルトラマンティガをはじめとしたウルトラマンは地球上で3分間しか戦えない。つまり、時間切れが近づいているのである。さらにティガが攻撃してこない隙に、ゴルザは地面に穴を掘り、逃げてしまった。

 

「負けるな、ウルトラマン‼」

 

「私たちがついてるわ‼」

 

「そうだ!頑張れ‼」

 

すると、再び戦いの様子をみていた人々がティガに声援を送る。その声を聞いたティガは再び立ち上がり、両腕をクロスさせた。額のクリスタル部分は青紫色に輝き、両腕を振り下ろすと、紫を基調とした姿と変わった。

 

「ハッ‼」

 

ティガは飛び上がり、空にいるメルバに向かって飛び蹴りを浴びせ、まともに喰らってしまったメルバは墜落した。ティガはメルバから少し離れたところに降り立つと、メルバのほうを向いた。メルバが立ち上がろうとした瞬間、両腕を左右に開き、光のエネルギーを収束し、メルバに向けて発射した。

 

「(ランバルト光弾!!!)チャッ‼」

 

ティガの必殺技を受けたメルバは動かなくなり、その場で爆散した。その様子を見届けた人々はティガの勝利だと確信し、歓声を上げた。ティガは破壊されてしまった沼津の街に向けて、温かい光を浴びせ、街を元に戻した。街がすべて戻ったのを確認すると、ティガは空へと飛び去って行った。

 

「よくやった、大吾」

 

ティガが飛び去るのを見ていたダイゴはティガ=大吾に賞賛すると、その後ろに3人の男の存在に気付き、そちらのほうを見た。

 

「すまなかったね。僕のわがままを聞いてもらって。アスカ、ムサシ、大地」

 

ダイゴに名前を呼ばれた3人は笑顔でうなずいた。

 

 

 

 

 

「ダイくーん‼」

 

「大吾くん!いたら返事してー‼」

 

ティガが飛び去ってから千歌と曜、果南の3人は街へと駆け出し、安否がわかってない大吾を探していた。すると、果南はあるものを見つけ、二人を呼ぶ。

 

「千歌、曜!これ…」

 

それは大吾が持っていたお守りだった。それを見た3人は絶望した顔をしており、特に千歌はその場に倒れこんでしまった。そんな彼女に手を差し伸べた者がいた。そう、大吾である。

 

「千歌ちゃん、大丈夫!?」

 

「「「ダイ君(大吾くん)!?」」」

 

いきなり現れた大吾に驚きつつも、彼に抱き着く3人。今は彼が無事だっただけでも、彼女たちとしてはうれしいのである。

 

「もう、心配したんだからね」

 

「ごめんごめん。さっきのウルトラマンと怪獣の戦いに巻き込まれたんだけど、お守りのおかげで助かったんだよ」

 

大吾は彼女たちを落ち着かせると、しれっと嘘をつき、今まで何してたのかを教えた。まさか戦いに巻き込まれておいて、生きていたのだからある意味奇跡である。

 

「ウルトラマンか。そういえばあのウルトラマンなんていうんだろう?」

 

「ほんとだよね。昔やってたダイナに少し似てたけど、あんなウルトラマン見たことないよ」

 

「ウルトラマンティガじゃないかな?」

 

4人はそれぞれの家に戻る道中、怪獣たちと戦うあのウルトラマンについて話し合っていた。実を言うと、この世界ではウルトラマンはテレビで放送されているが、ティガは放送されておらず、一番最初の平成ウルトラマンはダイナということになっているのだ。

 

「ティガ?」

 

「そう、ウルトラマンティガ。ほら、3つの姿に変わって、怪獣と戦ってからさ」

 

大吾が口にした名前に頭に?マークを浮かべながら尋ねる千歌。それにこたえる大吾の説明に3人はうなずいた。

 

「いいね、ウルトラマンティガ。私たちのウルトラマンだ!!!」

 

千歌は笑顔で叫び、それに3人が笑った。そしてその大吾は内ポケットに隠しているスパークレンスを外から感触を感じながら、こう思った。

 

(守り抜いて見せる、みんなを。そしてこの世界を)

 

ED:Brave Love, TIGA~Aqoursバージョン~

 




次回予告

「まさかウルトラマンがこの世界で現れるとはな。忌々しい限りだ」

「ヤプールのやつ。この世界で何をするつもりなんだ?」

ティガ登場に苦虫を噛むヤプール。そんなヤプールの狙いを探るダイゴ達。

「またティガ来てくれないかな?」

「バカな。この地球には怪獣の生体反応はなかったはずなのに」

ティガに想いを馳せる千歌。そこに新たな二大怪獣出現⁉︎

「チャッ!!!」

「来てくれた、私達のウルトラマンが‼︎」

二大怪獣に立ち向かうため、ウルトラマンティガ、セカンドバトル‼︎

次回 第3話 光の巨人


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第3話 光の巨人ーウルトラマンティガー

お久しぶりです>_<

今回のお話では、この世界でのマドカ・ダイゴをはじめとしたウルトラマンがどうなっているのかなど様々なことが描かれています。

チラッとですが、あの方々が出てきています>_<

それでは本編スタート!!!


前回のティガライブ!サンシャイン‼︎

 

僕はマドカ・ダイゴ。かつてネオフロンティアスペースと呼ばれる宇宙の地球において、ウルトラマンティガとして、闇の存在と戦った男だ。そんな僕が、今いるのはラブライブスペースと呼ばれる宇宙の地球。ヤプールが現れるという仲間のウルトラマンのメッセージを受けたからなんだ。でも、今の僕では、かつてのような戦いができない。だから、この世界の僕である大吾にティガの力を受け継がせることにしたんだ。

そしてついに奴は動き出した。僕にとっても、因縁深い敵の1つ、ゴルザとメルバを呼び出し、沼津市を襲ったんだ。

 

「この世界を・・・、僕が守る‼︎ティガーー!!!」

 

大吾はついに戦う決意をする。ウルトラマンティガへと変身し、見事ゴルザとメルバを倒すことに成功した。まあ初めての戦いということもあり、ちょっとばかり拙い戦いではあったけどね。だが気をつけろ大吾。戦いはまだ始まったばかりだ!

 

『ニュースです。昨日午後、怪獣と思しき巨大生物が静岡の沼津市に出現。それをウルトラマンと思しき、光の巨人が撃退しました。その時の映像がこちらです』

 

昨日の夕方からずっと、臨時ニュースとして流れているものがあった。それは円大吾がウルトラマンティガとなり、ゴルザ、メルバの2大怪獣と戦い、撃退している映像である。

 

『このウルトラマンは、どうやら3つの姿を状況に応じて使い分けるようですね』

 

『と、言いますと?』

 

『この赤と紫の姿の時には、バランスいいステータスなのですが、赤くなるとパワーが上がります。しかし、素早さが下がってしまう。逆に紫の姿に変わると、パワーが下がる反面、素早さが上がっています。私はこの姿をそれぞれマルチタイプ、パワータイプ、スカイタイプと名付けようと思っています』

 

『なるほど〜。マルチ、パワー、スカイですか?ぴったりな名前ですな?それであのウルトラマンはなんというのですかな?』

 

『3つの姿を使い分ける光の巨人、ウルトラマンティガ。沼津の方々はすでにこう呼んでいるようです』

 

『ウルトラマンティガ。素晴らしい名前です!以上、今日のゲストの綺羅ツバサさんでした。ありがとうございました』

 

それを最後に、大吾は自分の部屋のテレビを消した。そして、スパークレンスを持ち、あることを思っていた。

 

「マルチ、パワー、スカイ・・・、か。ツバサ姉ちゃんらしいや。そういえば、今年もそろそろだな。久しぶりに会いに行ってみるかな?ねえ、姉ちゃん?」

 

彼は、カレンダーの日付を確認した後、机の上に飾ってある14人の女性と一緒に撮った集合写真を見た。そこにはかつて、この世界で人気を博したある2大グループのメンバーたちだった。

 

OP:TAKE ME HIGHER

 

第3話 光の巨人

冷凍怪獣ラゴラス、溶岩怪獣グランゴン登場

 

大吾はこの日、ある場所に出かけていた。それは・・・、

 

「僕を呼んだのはあんたなんだろ?出てきたらどうなんだ?」

 

「その通りだ。こうやってちゃんと話すのは、はじめてだな、大吾」

 

学校の裏山だった。ふと、窓から空を見上げたら、謎の文字が浮かんでいたのだ。しかし、たまたま部屋に入ってきた千歌には見えておらず、どうやら彼にしか見えないものだった。

 

「それで?僕を呼んだ理由は?」

 

「君にヤプールについて教えとこう、と思ってね。ただ、これは僕も仲間のウルトラマンたちから聞いたことだから、あまり詳しくは話せないんだけどさ」

 

異次元人ヤプール。それは、かつてM78ワールドと呼ばれる宇宙において、ウルトラ兄弟と呼ばれた戦士たちが【悪魔】と呼ぶ存在。怪獣よりも、はるかに強い生体兵器、【超獣】を次々と繰り出し、ウルトラマンA、タロウ、メビウスが主に戦い、苦しめられていたそうだ。特に、メビウスが地球防衛任務についていた頃には、ウルトラ6兄弟とメビウスの7人とも激戦を繰り広げ、さらにその後メビウスによって倒された。

その後、ギンガスペースと呼ばれる宇宙において、その世界を守っていたギンガとビクトリーの前に2度も現れた。その時は、時空を超えて、A、レオ、アストラ、ヒカリの4人のウルトラ兄弟を加えた激戦となり、闇の帝王ジュダ・スペクターをも、この時に倒している。

 

「以上が僕が彼らから聞いた話だ。質問はあるかい?」

 

ダイゴは仲間のウルトラマンから聞いたヤプールについてを分かりやすく、かつ簡潔に大吾に伝えた。その後、大吾の方を向き、質問がないか尋ねた。大吾は、少し考えた後、気になっていたことを尋ねた。

 

「そのヤプールは、なんでこの地球を?」

 

「それは僕にも分からない。ゼロが言うには、伝説のウルトラ戦士、ウルトラマンキングがこの世界から異常なマイナスエネルギーを感知し、その波形パターンからヤプールのものだと判明したから僕らがこの地球にやってくることになったんだけど」

 

「あんた以外のウルトラマンは他に誰が来るんだ?」

 

「僕を含めたウルトラ10勇士とXを加えた11人のウルトラマンさ。それが何か?」

 

そもそもなぜヤプールがこの地球に現れたのか、それは未だに分からない。ウルトラマンであるダイゴからそう言われてしまい、俯いてしまう大吾。しかし、彼からある違和感を感じ、そちらを見やった。

 

「どうした?」

 

「あんたを含めたウルトラ10勇士⁉︎ちょっと待てよ。ウルトラ10勇士にティガっていうウルトラマンはいないはずだ‼︎」

 

「どういうことだい?」

 

「論より証拠。僕についてきてくれ」

 

そう。それはダイゴ自身もウルトラ10勇士だということ。そこに疑問を抱いた大吾はダイゴを連れ、街のレンタルDVDショップの特撮コーナーに向かった。

 

「ほら、これがウルトラ10勇士だよ」

 

「これは、ウルトラマンネオスじゃないか。この世界では、ティガではなくネオスがウルトラ10勇士だったのか。それにこっちの【超ウルトラ8兄弟】は確か、メビウスが言っていた戦いだよな。こっちでは、ティガの代わりにコスモスが並び立っている。そうか、この世界では僕が変身していたウルトラマンティガは放送されていない。その代わりとして、別のウルトラマンが僕の立ち位置になっているのか」

 

大吾から渡されたDVDのパッケージを見たダイゴは驚愕した。それは、本来ウルトラ10勇士として並び立っているはずのティガがおらず、代わりにウルトラマンネオスと呼ばれるウルトラマンが並び立っていたのだ。さらに、かつて大吾をウルトラマンに選んだきっかけともなっている戦いが描かれている【超ウルトラ8兄弟】には、初代ウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマンジャック、ウルトラマンA、ウルトラマンメビウスのウルトラ5兄弟と並び立っていたのは、ダイナ、ガイアに加えてコスモスとなっていた。

 

「じゃあ、本来の超ウルトラ8兄弟とウルトラ10勇士は違うんですか?」

 

「8兄弟は僕自身が実際に戦った訳じゃないからなんとも言えないけど、ウルトラ10勇士は違う。まあ8兄弟はメビウスが実際に参加した戦いで、この出来事をヒントに君をティガに選んだんだけどね。ウルトラ10勇士のメンバーは、ここに描かれているように、ダイナ、ガイア、コスモス、ネクサス、マックス、メビウス、ゼロ、ギンガ、ビクトリーと僕が変身していたティガの10人で編成されてるんだ」

 

ダイゴは、本来のウルトラ10勇士のメンバー構成を大吾に伝えながら、DVDを棚に戻した。大吾はまさか自身が見ていた作品が全く違う設定になっていたことに驚いていた。お気づきかもしれないが、彼は生粋のウルトラシリーズファンで、最新作まですべて見ている男なのだ。ちなみにダイゴが、別世界のウルトラマンに詳しいのは、ほとんどのウルトラマンと出会ったことがあるからである。

 

大吾がダイゴと共にDVDショップにいた頃、高海家の旅館の奥にある千歌の部屋では、部屋の主である千歌とその親友である、曜がパソコンで、ティガがゴルザとメルバの2大怪獣と戦っている映像を見ていた。しかし、あの非常事態でこの戦いを終始撮ることに成功した者がいるとは。

 

「やっぱり、かっこいいな〜〜」

 

「千歌ちゃん、そればっかりだね。まあかっこいいのは認めるけどね」

 

千歌は何度も何度も再生し、ティガスカイタイプが必殺技【ランパルド光弾】を放つ所を真似するなど、完全にヒーローに憧れる少年のような眼をしていた。曜はそれに若干呆れつつも、ティガが戦う所はちゃんと見ていた。

 

「それにしても、なんで怪獣とウルトラマンが現れたんだろうね?完全にああいうのって、空想上の存在だと思ってたんだけど」

 

「うーん・・・。まぁ難しいことは今はいいんじゃないかな?それに昔ダイ君と一緒に見た作品の劇中でも言ってたし。『諦めない限り、ウルトラマンは絶対来てくれる』って。多分、誰かが諦めなかったから、ウルトラマンティガが来てくれたんだよ」

 

曜がふと疑問に思っていたことを口にすると、再生終了となり、もう一度見ようとする千歌がパソコンをいじりながら、曜に自分の考えを伝えた。

 

「なるほどね〜。ところで、今日大吾くんは?」

 

「さあ?なんか急用できたとかで、出かけたけど」

 

「ふーん。大吾くん昔から、ちょっと変わってたよね。そこが彼のいいところなんだけどさ」

 

「確かにそうかも。特にうちに来た頃なんかはね」

 

千歌と曜は、ここに今いない大吾との思い出を思い出していた。そして、千歌は再び、ティガの映像を再生し、再び釘付けとなっていた。

 

「ああ〜。またティガに会えないかな?」

 

「ティガが来るってことは、またヤバイことになるってことだよ?千歌ちゃん」

 

「え?」

 

ティガにもう一度会いたい千歌がポロっと声に出すと、曜が呆れながらツッコンだ。確かにウルトラマンはかっこいいが、現れるということは、危険な状況でもある。千歌はそこに気づいてないのだ。そして、再び危険が迫っていたことはこの時、まだ誰も知る由がなかった。

 

前半part 終了

 

場面が変わりコートを被った中年の男は、ある山において、ある物を取り出していた。それは、以前使っていたゴルザとメルバとはまた違う人形だった。

 

「まさかこの世界でもウルトラマンが現れるとは。まったく忌々しい限りだ。だが、邪魔はさせん。最後に勝利し、愚かな人間を支配するのはこの私なのだから。行け、ラゴラス、そしてグランゴンよ‼︎」

 

かつてと同じように、謎の力を2つの人形に注ぐ男。そして、その2体の人形は空中に浮かび上がり、みるみる巨大な姿となった。それはかつて、あるウルトラマンが最初に戦った2体の怪獣、冷凍怪獣ラゴラスと溶岩怪獣グランゴンだった。

 

ーブルッ

 

大吾の内ポケットの中にあるスパークレンスが、僅かにだが揺れた。大吾は内ポケットからスパークレンスを出すと、あるイメージが頭の中に流れ込んだ。それはラゴラスとグランゴンが現れ、この街に向かっていることだった。

 

「怪獣がまた現れた⁉︎それになんだよ、今のイメージは?」

 

「やはり君はウルトラマンの力を僕以上に使えるみたいだね。それで、どんな怪獣だった?」

 

「片方は、冷凍光線で周りのものを氷漬けにしてて、もう片方は、マグマのような光弾で周りを破壊してる。っていうかこの2体確か、マックスが戦った奴じゃ?」

 

大吾はいきなりの事態に困惑するが、隣にいたダイゴは、至って冷静だった。ダイゴに怪獣の特徴を聞かれ、それに答える大吾は見覚えのある怪獣だと気付き、ダイゴは感心した。

 

「えらく怪獣に詳しいね」

 

「まぁ一応、あんたらウルトラマンは僕たち人間の永遠のヒーローだからさ。僕も小さい頃は見てたし」

 

「それでどうする?」

 

「決まってるさ。僕は守りたい人たちがいる。そのために僕はあんたからこの力を受け継いだんだ」

 

スパークレンスを握りしめながら、ダイゴに自身の思いを話し、どこかへと走り去ってしまう大吾。その後ろ姿を微笑みながら、見ていたダイゴに近づく3人の男たち。

 

「彼が新しいティガですか?ダイゴさん」

 

「ああ。もしかしたら、ヤプールが現れる前に君たちに彼を手伝ってもらう時が来るかもしれないが、しばらくは大吾に任せよう。いいかな、アスカ、ムサシ、大地」

 

3人は頷き、そのまま街の人たちの避難誘導にあたっていた。

 

大吾は人目のつかない裏山に入ると、周りに人がいないことを確認し、スパークレンスをポケットから取り出した。そして両腕を時計周りに回し、スパークレンスを空高く掲げた。先端パーツが左右に展開し、レンズ部分から放たれた光に大吾は包まれた。

 

登場BGM:TIGA!

 

その光は、ラゴラス、そしてグランゴンの2体の怪獣の前に降ってきた。そこから、1人の光の巨人が姿を現した。怪獣出現により、逃げ惑っていた人々は、その巨人の姿を見た時、歓喜した。

 

「千歌ちゃん、あれ‼︎」

 

「うん。来てくれたんだ、私たちのウルトラマンが、ウルトラマンティガが‼︎」

 

「ティガ!頑張れー‼︎」

 

戦闘BGM:光を継ぐもの

 

ティガの姿を視認したグランゴンはティガめがけて駆け出し、ティガはそれを回し蹴りで、突進の軌道をズラすと、ラゴラスに向けてファイティングポーズをとり、ハンドスラッシュでラゴラスの胴体に攻撃した。ラゴラスはその攻撃で、僅かながら後ろへと後退した。

 

「チャァッ‼︎」

 

「グォォォン⁉︎」

 

先ほど突進して、ティガに軌道をズラされたグランゴンはティガの後ろから火炎弾を放った。しかしティガはそれに気付き、バリアを張りそれを防いだ。しかし、その瞬間だった。先ほど攻撃されたラゴラスが、冷凍光線をティガの足元に放ったのである。

 

「(なんだ?体が自由に動かない⁉︎)グッ⁉︎」

 

ティガの体は、少しずつ氷漬けになっていった。それを好機と見たグランゴンは再び、ティガに向けて突進し、ティガの腰辺りにぶつかった。さらにラゴラスはティガに近づいていき、右腕、左腕、尻尾とグランゴンとの連携で何度もティガに攻撃していったのである。

 

ーーピコン、ピコン、ピコン

 

次第にティガの胸に付けられているカラータイマーが青から赤へと点滅を始めてしまった。ウルトラマンティガが地球上で活動できるのは、わずか3分のみ。もし、3分過ぎてしまうと再び立ち上がれなくなるのである。さらに今は、足元から少しずつ氷漬けにされており、動くこともできない状態で、ラゴラス、グランゴンの2大怪獣に攻撃されているのである。

 

「いいぞ、ラゴラス、そしてグランゴンよ。そのまま忌々しいウルトラマンを消し去ってしまえ‼︎」

 

戦いを見ていた謎の男は、ラゴラスとグランゴンにとどめを刺すように命令した。主である男からの命令を受けて、2大怪獣はそれぞれ得意技をティガに向けて発射した。

 

「(こんなところで負けられない。今は、僕がウルトラマンなんだ‼︎)ンンンン・・・、ハッ‼︎」

 

戦闘BGM:TAKE ME HIGHER(Instrumental)

 

ティガの額のクリスタル部分が赤く光り、両腕をクロスさせ、振り下ろした。彼の体は赤を基調とした姿、パワータイプへと変わると同時に、体にまとわりついていた氷が吹き飛んだ。

ラゴラスとグランゴンの攻撃を高く飛び上がり、かわしたティガはラゴラスを飛び蹴りで吹き飛ばすと、後ろにいたグランゴンの尻尾をつかみ、1回転、2回転、3回転と振り回した後、ラゴラスの方へと投げ飛ばした。

 

「チャァッ‼︎」

 

「ギャオォォォォン⁉︎」

 

グランゴンはそのまま立ち上がろうとしていたラゴラスにぶつかってしまい、お互いが立てなくなってしまった。その隙に、両腕をカラータイマーの辺りにかざし、光のエネルギーを収束させ、それを2大怪獣に向けて放った。

 

「ハッ、ハァァァァ、(デラシウム光流‼︎)ハァッ!!!」

 

ティガパワータイプの必殺技であるデラシウム光流を同時に受けてしまったラゴラスとグランゴンは、断末魔をあげながら爆散した。その様子を見ていた人々は大歓喜し、お互いに抱きついたりハイタッチをしていた。そんな中、千歌がティガに向かって叫んだ。

 

「ウルトラマンティガー‼︎ありがとー!!!」

 

ティガは千歌の声を聞き、そちらに体を向けて、彼女からの言葉を聞き、頷いた。そのまま、破壊されてしまった街並みを元に戻した後、空高く飛び去っていった。

 

「ちっ!どこまでも私の邪魔をするつもりか?ならば、いずれ貴様をこの手で捻り潰してやるわ」

 

謎の男はそのままどこかへと消えていった。

 

 

 

 

「本当にすごかったんだから、あの時のティガ!」

 

「へ、へぇ〜(~_~;)それは見たかったな〜(~_~;)」

 

千歌は帰った後、いつの間に帰ってきていた大吾に今日のティガのことを話していた。しかし、何度もほぼほぼ同じ内容なので、少しばかり飽きていたのも事実であり、その戦っていたティガが自分であるなんてことを言えないのもまた事実であった。

 

「はいはい千歌。それぐらいにしときなさい?それより大吾くん。そろそろあの時期でしょ?今年も行くの?」

 

「はい、もちろん。両親に会える唯一の時期ですから」

 

「そう。なら千歌。あなたと曜ちゃんもついていって、挨拶してらっしゃいな?大吾くんの両親に♪」

 

「東京に行ってきていいの⁉︎」

 

「もちろん‼︎ついでにせっかくの東京なんだから、楽しんでらっしゃい」

 

こうして大吾、千歌、曜の3人の東京行きが決まった。なぜ、この時期に東京に行くのかは、次回明かすことにしよう。

 

ED:Brave Love, TIGA!〜Aqours version〜




次回予告

「ほらほら、曜ちゃん!こっちこっち‼︎」

「1年ぶりだね、父さん、母さん」

3人は一路東京へ。果たしてその理由は一体?

「大ちゃんじゃない‼︎元気にしてた⁉︎」

「久しぶり、穂乃果姉ちゃん」

大吾はある和菓子屋で感動の再会を果たす。その相手はなんと⁉︎

「君を待っていたのだよ、ウルトラマンティガ‼︎受けてみろ、キリエル人の怒りを!!!」

「キリッ‼︎」

大吾=ティガに向かって叫ぶキリエル人と名乗る男。キリエル人の挑戦が今、始まる!!!

次回 ティガライブ!サンシャイン‼︎
第4話 悪魔の予言


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第4話 悪魔の予言

お久しぶりです!!!
毎日暑いですね〜(~_~;)そう思いながら、今回の話を執筆してあることを思いました。分割すりゃよかった。

さてさて、今回はタイトル見て分かる通り、ティガの宿敵ともいえるあいつとの戦いです。さらに、μ'sの時代から何年後なのか?とか大吾の過去についてなど幾つか書いています。
さらに、あのウルトラマンに変身する人がスペシャルゲストとして登場!
最後に、この話で序章【時空を超えた復活編】終了です>_<
それでは本編スタート!!!


前回のティガライブ!サンシャイン‼︎

 

数話ぶりかな?僕は円大吾。ある日、ふと空を見上げると、謎の文字が見えたんだ。しかし、それは僕にしか見えないみたいで、千歌ちゃん達には見えないものだったらしい。

 

「あんたが僕を呼んだんだろ?」

 

「こうやってちゃんと話すのははじめてだな」

 

夢の中以来となる別世界の自分にして、あのウルトラマンダイナがいた宇宙のもう1人のウルトラマンであるダイゴさんと再会を果たす。この世界に訪れた敵の正体はなんとあのヤプールだった。しかも、ダイゴさん以外のウルトラマンたちもこの地球に向かっているらしい。

そこになんと新たな怪獣が襲来。僕はティガに変身してこれを倒した。

そして、あることをするために、千歌ちゃん、曜ちゃんと一緒に東京へ向かうことになった。

 

 

 

「もうすぐだね、千歌ちゃん!」

 

「うん‼︎もうワクワクが止まらないよ〜‼︎」

 

「2人とも、他の人に迷惑になるから、もうちょっと声下げて」

 

ここはとある新幹線の中。ここに大吾、千歌、曜の3人が乗っていた。ついにあの東京に着くということで、千歌と曜の2人はテンションが上がっており、大吾はそんな幼馴染2人を諌めた。

 

「そうだった、ごめん」

 

「ごめんなさい」

 

大吾に注意されて、2人は周りの人たちに謝罪した。謝罪された隣のおばあさんは、気にしてない、と手を振り返してくれた。

 

「ところで、2人は本当にいいの?僕と別行動で?」

 

「うん。千歌ちゃんと話し合ったの。私たちも挨拶したいけど、せっかく1年ぶりに会えるんだから、家族水入らずにしてあげよう、って」

 

「そうそう。それにあの秋葉原ってところ1度行ってみたかったんだよね〜。後は、あそことかあそことか・・・」

 

本来東京に来るはずだったのは、大吾のみだったのだが、千歌の母である千早の計らいで千歌と曜も行けることになっていた。大吾は、両親にこの2人の幼馴染を紹介しよう、と思っていたのだが、千歌と曜は新幹線に乗るやいなや、自分たちは別行動で、って言ってきたのでびっくりしたのである。

 

(やっぱり守り抜きたい、この2人の笑顔を)

 

ーーまもなく、東京、東京です。お忘れのないよう・・・

 

大吾は、自身の内ポケットに隠しているスパークレンスの感触を感じながら、改めて決意したのだった。

 

OP:TAKE ME HIGHER

 

第4話 悪魔の予言

炎魔戦士キリエロイド、電脳怪獣ミニサイバーゴモラ、大空大地/ウルトラマンエックス登場

 

 

 

ここはあるテレビ局である。ここではある番組の収録が行われていた。

 

「ここ最近、テレビの中の存在と思われていた怪獣およびウルトラマンが現れました。しかし、沼津や内浦の方々はこのウルトラマンをティガと呼んでるらしいですね?ゲストのツバサさんはどう思いますか?」

 

「私はこの光の巨人、ウルトラマンティガは我々人類の守護神になってくれると信じています。なぜなら、テレビとはいえ歴代のウルトラマンたちも私たち人間のために戦い続けてくれた永遠のヒーローです。その名を持つティガも我々を守り、導いてくれる存在。私はかねてよりずっとそう思っています」

 

「なるほど〜。確かに私が小さい頃見たウルトラマンたちも必死に戦っていましたな。我々の世界に現れたティガも人類のために戦ってくれるヒーロー、というわけですな?」

 

「ありがとうございました。以上、緊急特番【ウルトラマンの歴史とティガの謎を追え!】でした。ゲストに人気アイドルグループ【A-RISE】のセンター、綺羅ツバサさんをお呼びしてお送りしました。ありがとうございました」

 

その番組の内容は、今年で50周年を迎えるウルトラシリーズの歴史とこの世界に現れた光の巨人、ウルトラマンティガについてだった。番組の収録を終え、控室に戻ったツバサは、驚愕した。なぜなら、その控室に見知らぬ男がいたからである。

 

「綺羅ツバサ。あなたはあのウルトラマンティガを守護神と崇める気なのか?」

 

「ええ、そうよ。それが何か?」

 

「あなたは我々キリエル人の怒りを買った。ならばティガとキリエル人。どちらが守護神に相応しいのかをその目に焼きつかせてくれよう!」

 

ツバサに問う男。その問いに答えたツバサに対し、忌々しい、といった感じの顔を作るキリエル人と名乗った男は何処かへと消えていった。ツバサは冷や汗をかきながら、夢でも見ていた、と思うことにした。

 

 

場面が変わり、ここはとある寺。そこにある1つの墓の前に大吾はいた。

 

「久しぶりだね、父さん、母さん」

 

大吾は少し悲しげな感じに話しかけた。そう。大吾の両親はすでに亡くなっている。原因は、不慮の事故であった。

今から4年前、3人は外食に出かけた。その帰りにあるトラックが3人に向かって突っ込んできたのである。大吾は父親が突き飛ばしたおかげで助かったのだが、両親は瀕死の重傷を負ってしまった。その後、西木野病院に運ばれ、医者が必死に頑張ったのだが、2人は帰らぬ人となってしまった。

数日後、葬式が行われ、1人取り残されてしまった大吾をどうするか、という問題が起きてしまった。彼はまだ小学生である。そんな時、1人の女性が大吾に話しかけた。

 

「ねえ、大吾くん。私のこと覚えてる?」

 

「確か・・・、母さんの友達の・・・」

 

「正解。まさか涼ちゃんともう会えなくなるなんて、ビックリしたわ。ねえ、大吾くん?もし良かったらだけど、うちに来ない?」

 

それは千早だった。千早の発言にほとんどの人間が、驚愕した。大吾自身言葉を失うほどである。

 

「あなたは大切な親友の一人息子だし、うちの子達も大吾くんなら大歓迎だろうしね」

 

「き、君!何を言ってるのだね⁉︎」

 

「そうよ!これはうちの問題なのだから、部外者は黙ってなさい‼︎」

 

千早は笑顔で大吾に語りかけ、大吾はそれを黙って聞いていた。そこに、大吾の親戚が彼女に近づいてきた。

 

「うちの問題?違うわ。あなたたちが欲しいのは、大吾くんが持ってる財産でしょう?あなたたちが今恐れてるのは、私にその財産を取られること。違う?」

 

「うっ・・・」

 

大吾の両親は共同経営の会社を持っており、この辺では西木野家に次ぐ金持ちの家だった。今この両親が亡くなったため、今その財産すべてを持つのは大吾である。それ欲しさに親戚一同は対立していたのだ。

 

「言っとくけど、私はその財産なんかどうでもいいわ。私は親友との約束を果たしたいだけ。涼ちゃんたちの身に何かあった時に、大吾くんを守り抜くっていうね!」

 

それは大吾の両親が亡くなる寸前のこと。彼女は最期にこう残していたのだ。

 

ーー私たちはもう助からない。けど、私たちの希望の光にして、大切なもの。大吾を守って欲しい。これを頼めるのは、親友であるちーちゃんだけよ。お願い、ちーちゃん・・・。

 

千早はその言葉を最期に息を引き取った大吾の母に涙を流しながら頷いて、約束を交わしたのだった。

 

「おじさん、おばさん。僕はお金なんか必要ありません。お金が欲しいなら全部あげます。でも、僕自身のことは僕が決めます。僕はこの人について行きます。今までありがとうございました‼︎」

 

大吾は涙を浮かべながら、自身の決意を親戚に語った。その後、大吾の言葉通り、残された財産はすべて親戚に分割され、大吾たち3人家族が住んでいた家は、親戚たちがせめてもの罪滅ぼしとして、大吾が保有する場所となった。

大吾は数日後、高海家に引き取られ、義理の息子となったのだった。

 

「じゃあそろそろ行くよ。また会いに来るよ、父さん、母さん」

 

大吾は昔のことを思い出し、そしてこの1年にあったことを両親に報告すると、立ち上がり、別れを告げ、何処かへと歩き出した。

 

 

 

「思えばあれからもう4年経つんだね〜。ダイ君がうちに来て」

 

「本当だよね〜。今でこそ、明るい性格に戻ったけど、昔は本当に悲しそうな顔してたもんね」

 

千歌と曜は、昔のことを思い浮かべながら、ある場所を目指していた。千歌は大吾から貰った地図を頼りに行動していたのだが、まったくたどり着かないのである。

 

「ねえ、千歌ちゃん?もしかして迷った?」

 

「あ、あっはは〜。そんなわけないじゃん、曜ちゃん!ほらこっちこっち‼︎」

 

「本当かな〜?」

 

曜はもしや、と思い千歌に尋ねるが、千歌はそれを否定し、また何処かへと駆け出した。それを後ろから冷や汗を流しながら、疑う曜なのであった。

 

 

場面が変わり、大吾はとある店の前に来ていた。そこは大吾がまだ東京にいた頃からあり、大吾自身思い入れが強い場所であった。

 

「6年ぶりか。元気にしてるかな?」

 

大吾はここにいるであろうある人物のことを思い浮かべながら、その店に入っていった。するとそこには、大吾が思い浮かべていた人物・・・、ではなく違う女性が和菓子を食べていた。

 

「いらっしゃ・・・、ってもしかして君、大吾くん?」

 

「はい、お久しぶりです。美穂さん」

 

そうそれは、かつてお世話になっていた高坂美穂だった。彼女はここ、老舗の和菓子屋【穂むら】において、旦那さんと一緒に経営している。今は亡き大吾の母の高校の先輩でもあるのだ。

 

「久しぶりね〜。そうか、最後に会ったのはあの時だものね。すっかりイケメンさんに成長しちゃってて、おばさん一瞬分からなかったわ。私も歳をとるわけだわ」

 

「何言ってるんですか?まだ若いのに」

 

美穂は、かつての大吾を思い出し、今の大吾と見比べていた。すると何かを思い出したかのように、立ち上がった。

 

「ちょっと待っててね。あの子たち今ちょうどいるから、呼んであげる」

 

美穂はそう言うと、店の奥の方へと向かった。大吾はそちらの方に目をやると、小さい頃よく出入りしていた場所が見えたと同時に懐かしい声が聞こえた。

 

「あなたたち、今すぐ店の方に来なさい」

 

「「え〜⁉︎また店の手伝い〜⁉︎」」

 

「いいから!ことりちゃん、海未ちゃん、亜里紗ちゃんも一緒に来て」

 

「「「私たちもですか?」」」

 

「そうよ。その方が彼も嬉しいだろうし」

 

(確かに嬉しいけど、まさか5人も揃ってたの?ていうかあれから4年経ってるから、声は変わってなくても、雰囲気だいぶ変わってるんじゃ⁉︎)

 

奥から聞こえてきた懐かしい声に大吾は、嬉しく感じつつも、よく思い出してみたら、大吾が知ってるのはあくまでも4年前の姿なので、少しだけ狼狽えていた。すると奥から、大吾にとって懐かしい5人の美しい女性が現れた。

 

「まったくも〜。一体なんだっていう・・・の?」

 

「あれ?珍しいね、若い男性のお客さんなん・・・て?」

 

「も、もしかしてあなた・・・⁉︎」

 

「大吾くんなの⁉︎」

 

「え⁉︎ハ、ハラショー‼︎」

 

その5人は店の中で待たされていた大吾を見ると、驚きを隠せていなかった。対する大吾も案の定、4年前と雰囲気が変わっていた5人に驚きつつも前と変わらない声に安堵していた。

 

「えーと、4年ぶりだね。穂乃果姉ちゃん、ことり姉ちゃん、海未姉ちゃん、雪穂姉ちゃん、亜里紗姉ちゃん」

 

大吾の呼びかけに5人は目元に涙を浮かべ、海未以外の4人は大吾に抱きつくのであった。

 

 

 

前半part 終了

 

 

 

「もう〜。来るなら来るって連絡してよ‼︎事前に分かってたら、14人全員時間を無理やりにでも作ったのに‼︎」

 

大吾はある部屋で5人の美女に囲まれていた。そのうちの1人である人物が大吾に不満をぶつけるかのように、文句を言っていた。

 

「ご、ごめん。それに14人揃ったところ見たいけど、ツバサ姉ちゃんたちや、にこ姉ちゃん、絵里姉ちゃん、凛姉ちゃん、真姫姉ちゃんとかは今忙しいだろうからって思ってあえて連絡しなかったんだよ」

 

大吾は文句を述べていた女性に弁解した。そう、大吾には、昔からお世話になっていた14人の姉的存在がいる。元々は4人のみだったのだが、ある時期を境に14人まで増えたのだった。

 

「それにしてもビックリしたよ。みんな雰囲気変わってて、一瞬誰だか分からなかった」

 

「そういう大吾もあの頃に比べて、かなり落ち着いた雰囲気を纏ってたので、本当に大吾なのか、って疑っちゃいましたよ」

 

大吾が正直な感想を述べると先ほどの女性の隣に座っていた黒髪ロングの女性が返してきた。その言葉に他の4人も頷いており、どうやらみんな同じ意見だったようだ。それではそろそろこの5人について説明しよう。

まず真ん中に座っているのが、高坂穂乃果。大吾の最初の姉的存在の1人。現在23歳になる女性で、ここ【穂むら】の看板娘にして、今ではストリートシンガーをしている。かつてはサイドポニーにしていたが、今では髪を結っておらず、髪を伸ばしていたのかロングヘアとなっていた。分かりやすく言えば、劇場版ラブライブに出てきたあの謎の女性と同じ外見である。

次に隣にいる灰色の髪のロングヘアの脳トロボイスの声の持ち主が南ことり。穂乃果の幼馴染にして、大吾の最初の姉的存在の1人。穂乃果と同じく現在23歳。現在はかねてより夢であったファッションデザイナーの仕事をしている。実はこの世界で今流行っている服装はだいたいことりがデザインし、コーディネートしたものらしい。かつては穂乃果同様髪を結っていた部分があったのだが、今ではストレートにしている。

同じく穂乃果の隣に座っているのが園田海未。穂乃果やことり同様大吾の最初の姉的存在の1人であり、現在23歳。今は実家の園田流を受け継いでいる当主である。穂乃果、ことりと比べると1番しっかり者であり、かつては大吾に勉強を教えており、護身術なども教えていた。ティガとして戦っている大吾の戦い方の大元は海未から教わった武術である。外見は前述の2人とは違い、高校時代からさほど変わっていない。

大吾から見て左端にいるのが高坂雪穂。彼女は現在21歳で現役の女子大生。穂乃果の実の妹であり、大吾にとっては4番目に仲良くなった姉的存在。姉の穂乃果は若干だらしない性格をしているが、妹の雪穂は昔からしっかりしていて、姉である穂乃果をたまにだが、説教していたことがある。大吾のことは穂乃果たち3人同様弟のように可愛がっている。外見は髪を伸ばし、セミロングとなっている。

最後に大吾から見て右端にいるのが絢瀬亜里紗。彼女も雪穂同様現在21歳で雪穂と同じ大学に通っている。さらに驚くことに姉と共にモデルをやっているらしい。大吾も2人揃ってファッション誌の表紙を飾ってるのを発見した時は、声を上げたほどだった。外見はかつての姉の銀髪バージョンとなっている。

 

「なんか設定資料みたいな説明だったね」

 

「急にどうしたの、穂乃果姉ちゃん⁉︎」

 

穂乃果がポツリと呟くとそれに驚いた大吾がツッコミをいれた。

 

「大ちゃん元気だった?」

 

「元気だよ、ってこの前もLINEで話してたじゃん」

 

「そうだけどさ。あれ?そういえばなんでこっちに?」

 

『え⁉︎』

 

穂乃果の問いに答えていく大吾。ところが本当に分かってないのか穂乃果は首を傾げており、大吾を含めた残り5人が信じられないような顔をしていた。

 

「お姉ちゃん、忘れたの⁉︎この時期は大吾くんの‼︎」

 

雪穂に言われ、穂乃果はようやく思い出し、手をポンっと叩いた。

 

「今思い出したのですか⁉︎まったく穂乃果はいっつもいっつも」

 

「あはは・・・。大吾ちゃん、ごめんね?」

 

「ハラショー!久々に穂乃果さん達のこの光景見ました‼︎」

 

「ことり姉ちゃん、別に気にしてないから大丈夫だよ。あと、亜里紗姉ちゃんには同意するよ」

 

そんな穂乃果に説教を開始し、穂乃果は若干涙目になっていた。それを横から見ていたことりは苦笑し、大吾の方を向き、軽く謝罪した。雪穂は海未同様穂乃果に対し、説教を始めており、亜里紗は久々のこの光景に目を輝かせており、大吾はかつてこのメンバー、特に穂乃果、ことり、海未の3人があるグループのメンバーとして活躍していた6年前のことを思い出していた。

 

それから1時間ほど経った頃、大吾のスマホが鳴った。見てみるとそれは今まで、別行動していた曜からだった。大吾はチラッと穂乃果達の方を見ると、5人は頷き、大吾は電話に出た。

 

「もしもし。曜ちゃんどうしたの?」

 

「大吾くん。どうやら私たち迷っちゃったみたい」

 

「え?」

 

曜からのまさかの発言に大吾は冷や汗を流し、苦笑した。ちゃんと渡したはずの地図を見たけど、どうやら土地勘がなかったことが災いして、目的地にたどり着けなかったらしい。電話の奥では、千歌が若干泣いてるのがよく分かった。

 

「近くに何かない?」

 

「ええと、神田明神?ってところにいるんだけど」

 

「意外と近くにいたね。分かった。今から迎えに行くよ」

 

「ヨーソロー!」

 

大吾は曜の口癖を聞くと同時に電話を切ると立ち上がった。

 

「ごめん、姉ちゃん。まだ話したかったことがあったんだけど、急用出来たからこのままお暇するね」

 

「ええ。お友達にもよろしく伝えといてください」

 

大吾が5人に別れを告げると、海未が笑顔で応対した。すると穂乃果がいつになく、真剣な表情を作り、大吾を見据えていた。

 

「大ちゃん。今私たちにもさっきの子にも隠してることあるでしょ?」

 

「うっ・・・、それは・・・」

 

どうやら穂乃果は大吾が何かを隠してることに気づいていたようだ。大吾が隠してることは言うまでもなく、自身がティガに変身できることである。

 

「今は話してくれなくていいよ。大ちゃんにだって隠し事の1つや2つあるだろうし。でもね、大ちゃんが何を抱えていようが、私たちはみんな大ちゃんの味方だから。それだけは忘れないでね」

 

大吾は穂乃果からの言葉に思わず泣きそうになってしまった。まさかあの穂乃果からそのような言葉が出るとは思っていなかったからである。

 

「あなた本当に穂乃果ですか?」

 

「ひどいよ、穂乃果だよ⁉︎」

 

どうやら海未とことりも同じだったようだ。大吾は苦笑しつつ、そのまま別れを告げ、穂むらを出たのであった。その後神田明神において、泣きべそをかいていた千歌に抱きつかれたのは言うまでもない。

千歌、曜と合流した大吾はかつて住んでいた家にたどり着いた。はじめて来る2人は、驚嘆しており、千歌は曜を連れ、家の中の探検を始めていた。大吾は2人に晩飯の材料を買いに出かけることを告げ、近くのスーパーへと向かった。その道中のことである。

 

ーー貴様がウルトラマンティガか?

 

「誰だ⁉︎」

 

大吾は突如聞こえた謎の声に警戒心を高め、いつでも戦えるようにスパークレンスを取り出した。

 

ーー貴様は我々の怒りを買った。我がキリエル人の聖なる炎がアキバテレビを中心に半径5キロ圏内全てを焼き尽くす。止めたければ、夕方6時に秋葉原に来い‼︎

 

謎の声が聞こえなくなった後、大吾はスマホで時間を見た。今は夕方5時半。タイムリミットまで残り30分しかなかった。大吾はスマホである人物に電話をかけた。

 

「もしもし?」

 

「ツバサ姉ちゃん!確か今日アキバテレビで収録だったよね?」

 

それは綺羅ツバサだった。大吾にとってはツバサも姉の1人なので、よく彼女にライブの時に招待状をもらっていた。

 

「よく聞いて。詳しくは言えないけど、アキバテレビを中心に爆発する可能性があるんだ」

 

「あなた何故それを⁉︎もしかしてあなたのもとにもキリエル人が⁉︎」

 

「あなたも、ってまさかツバサ姉ちゃんの前にも⁉︎」

 

「ええ。今さっきね。私以外にもあんじゅと英玲奈、スタッフ陣も聞いていて、今臨時ニュースで半径5キロ以内の人たちを逃してるところよ」

 

ツバサから現状を聞いて、大吾はあるビルのモニターを見やった。確かにアキバテレビの報道フロアから臨時ニュースが流れており、それを聞いた人々が逃げ惑っており、あんじゅと英玲奈の2人が人々の避難誘導をしていた。

 

「分かった。ツバサ姉ちゃんも気をつけてね!」

 

「そういえば大吾。あなた今東京にいるの⁉︎」

 

「その話はまた後で。じゃあね‼︎」

 

大吾は電話を切り、LINEで千歌と曜の2人に事情を話し、逃げるように伝えると、秋葉原に向かって走り出した。

 

「ここには大切な思い出が詰まってるんだ。お前らなんかに破壊させてたまるか!!!」

 

 

それから20数分後、大吾は秋葉原へとたどり着いた。すると1人の男が大吾に話しかけた。

 

「円大吾くんだよね?」

 

「あなたは?」

 

「僕は大空大地。そしてこっちが」

 

《私はウルトラマンエックス。我々は別の世界のダイゴに、君のサポートをしてほしいと頼まれてここに来たんだ》

 

なんとそれはかつてある宇宙の地球において、ダークサンダーエナジーを操るグリーザから地球を守ったあの大空大地とウルトラマンエックスだった。

 

「本物のウルトラマン⁉︎まさかこんなところで会えるなんて‼︎」

 

「いや、一応君も本物のウルトラマンでしょ?それより事情は把握してる。ダイゴさんからこのような事態を阻止する方法を教えてもらってるんだ」

 

「というと?」

 

「かつてネオフロンティアスペースの地球にもキリエル人が現れ、ダイゴさんが戦ったことがあるらしい。その時行われたやり方を擬似的に再現してキリエル人の思惑を潰す」

 

大地から明かされた作戦内容はこうだ。

1.今回中心になる場所はアキバテレビと言われているが、正確にはその前に広がる交差点。

2.そこに多大なエネルギーが充満しているため、そこに衝撃を送り、これを相殺する。

 

「なるほど。でも、どうやってそれを相殺するんですか?」

 

「簡単さ。僕のゴモラの力を借りる。君ならこう言えば大体分かるって言われたんだけど、理解出来た?」

 

「ええとつまり、サイバーゴモラを召喚するんですか?」

 

「正確には、ミニサイバーゴモラ。Xioの研究成果の1つでね。最近やっとミニサイズで召喚出来るようになったんだ」

 

「ウルトラマンエックス終わった後にすごいことできるようになったんですね」

 

大吾は大地から言われたやり方に感嘆しており、やはり彼も地球を守り抜いたウルトラマンなのだと改めて思った。作戦を全て理解した時、時間はすでにタイムリミットまで後1分を切っていた。

 

「大吾くん。僕らがサポート出来るのは、あくまでもキリエル人の聖なる炎を止めることまでだ。そこから先はこの世界のウルトラマンである君の役目だ」

 

「はい‼︎」

 

《大地。10秒前だ》

 

「よし、頼むぞ。ゴモラ!」

 

《ミニサイバーゴモラ Realize》

 

いわゆる人間サイズのサイバーゴモラが姿を現した。ミニサイバーゴモラはそのまま地面に向け、サイバー振動波を放とうとした。その時、大吾の目に信じられない光景が映った。それはツバサたちA-RISEの3人が逃げ遅れていたのである。大吾は駆け出し、スパークレンスを展開し、光を浴びてウルトラマンティガへと変身し、3人を衝撃に巻き込まれないように右手で優しく掴み、救出した。

大地は自身のエクスデバイザーを確認し、はるか地中のエネルギーが消えたのを確認するとティガに笑顔で頷いた。ティガはそれに頷き返し、ツバサたち3人を地面に降ろした。

 

「ツバサちゃーん‼︎」

 

「イタタ・・・。穂乃果⁉︎なんでここに⁉︎」

 

「3人が事件に巻き込まれてるって知って、いてもたってもいられなくなったの」

 

「その様子だと無事だったようですね、ってもしかしてこの巨人が最近話題になってるウルトラマンティガですか?」

 

ツバサたち3人に駆け寄ってきたのは、穂乃果、ことり、海未の3人だった。雪穂と亜里紗の2人は先に避難していたようだ。海未が言うように全員が見上げるとそこにはウルトラマンティガが膝をついて、こちらを見ていた。

 

「ウルトラマンティガ。来てくれたのね」

 

ーー君を待っていたのだよ、ウルトラマンティガ!!!

 

ツバサがティガに対して呟くと、聞こえたのかティガは頷き、それを肯定した。するとどこかから謎の男の声が聞こえてきた。ティガは立ち上がりながら、周りを見てみると近くに謎のフードを被っていた男がこちらを睨んでいた。その男に気づいたツバサはあることに気づいた。

 

「あの男、さっきの‼︎」

 

「ウルトラマンティガよ。君はこの星の守護神になるつもりかい?おこがましいとは思わないかね?君がその巨大な体を表わすずっと前から愚かな生き物たちは我々キリエル人の導きを待っていたのだよ。君は招かれざる者なのだ。見せてやろう。キリエル人の力を、キリエル人の怒りの姿を!!!」

 

謎の男の足元にピシッという音が聞こえたと同時に巨大な炎が吹き上がった。ティガはその炎に警戒心を高め、ファイティングポーズを取りながら、距離をとった。吹き上がった炎はやがて悪魔のような姿へと変わり、ティガの前に姿を現した。

 

「あれがキリエル人の正体?」

 

《いや。おそらくだが、体のサイズまでも彼に合わせて変身したのだろう。彼に、ティガに挑戦するために・・・、な》

 

「エックス」

 

《分かっている。もしもの時のためにいつでもユナイトする準備は出来ている。だが私は・・・、いや、私たちは彼を信じている。ティガが、円大吾が自身の手で勝ち取ることを》

 

穂乃果たちとは少し離れたビルの屋上にいつの間に移動していた大地はこの戦いを自身の相棒と共に見届けようとしていた。彼もいつでも変身出来るように準備はしているが、今は大吾を信じてこの場を任せることにした。

 

「チャッ‼︎」

 

「キリ‼︎」

 

ティガとキリエロイドはお互いにファイティングポーズを取り、距離を置いていたが、両者共に動き出した。ティガは回し蹴りを繰り出し、それをジャンプでかわすキリエロイド。ティガは高く飛び上がり、キリエロイドの頭部に向けて急降下チョップを、地面に降り立ち、一瞬の隙が出来たキリエロイドに一撃を与えた。

 

「キリッ⁉︎」

 

「ハァッ‼︎」

 

ティガはさらに追撃しようとキリエロイドに近づくが、態勢を一瞬で立て直したキリエロイドに回し蹴りで吹き飛ばされてしまった。ティガは突然の反撃に対応できず、後ろにあった建物に叩きつけられた。キリエロイドは素早い動きでティガに近づき、彼の頭部を握り潰そうと手をかけてきた。

 

「キリ、キリ、キリ」

 

「(やらせるか‼︎)フン!ハァッ‼︎」

 

ティガはこれを左手で引き剝がし、エルボーを喰らわせた後、一本背負いの容量でキリエロイドを投げ飛ばした。

 

戦闘BGM:TAKE ME HIGHER(TVsize Ver.)

 

キリエロイドはそれをなんとか態勢を立て直そうと、着地し、ティガの方を向き、動き出そうとした。すかさずティガはハンドスラッシュでキリエロイドの動きを封じ、攻撃をまともにくらったキリエロイドはその場に跪いた。

 

「(素早さには、素早さだ!)ンンンン・・・、ハッ‼︎」

 

ティガは両腕をクロスさせた。その瞬間、額のクリスタル部分が青紫に輝き、ティガが両腕を振り下ろすとティガの体は紫を基調とした姿、スカイタイプへと変わった。

 

「姿が変わった!」

 

地上から戦いを見ていた穂乃果がタイプチェンジしたティガに驚きを隠せなかった。隣にいたツバサも今まで映像で見ていたとはいえ、実際に見るのは初めてだったので、頷きつつも内心驚いていた。

ティガはマルチタイプとは違うファイティングポーズを取ると、高く飛び上がり、強烈な飛び蹴りを喰らわせた。

 

「チャアァァァァァ!!!」

 

「キリィ⁉︎」

 

キリエロイドがどうやらこれまでよりも強いダメージを負ったのか、膝をつき、動けなくなった。ティガは追撃しようと駆け出すと、キリエロイドは右腕から獄炎弾を放ち、ティガに攻撃した。ティガは反撃に対応できず、吹き飛ばされてしまい、立ち上がろうとした瞬間、再びキリエロイドの獄炎弾が放たれ、ティガはその場に倒れてしまった。

 

ーーピコン、ピコン、ピコン

 

ティガのカラータイマーが点滅を始めてしまった。ウルトラマンティガが地球上で活動できるのはわずか3分のみ。もし制限時間を過ぎてしまうと彼は再び立ち上がることが出来なくなってしまうのだ。

 

「ウルトラマンティガ!負けちゃダメ‼︎」

 

ことりはウルトラマンティガに声援を送った。この声を聞き、ティガは力を振り絞り、立ち上がろうとした。そこにキリエロイドがティガの体を掴み、高笑いしながら、猛攻撃を始めた。

 

「キーリ、キリ、キリ‼︎」

 

「ウッ!グアッ!ウワァ‼︎」

 

ティガはなんとか反撃しようとするが、猛攻撃に耐えられず、数メートルほど飛ばされてしまう。

 

「ウルトラマンティガ。私たちは信じてる」

 

「あなたが私たち人間を守り導いてくれる救世主であることを」

 

「そうです!だから立ち上がり、そして勝ってください‼︎」

 

「頑張って!ウルトラマンティガ‼︎」

 

「穂乃果もあなたを信じる!だからファイトだよ、ティガ‼︎」

 

英玲奈、ツバサ、海未、あんじゅ、穂乃果の順にティガに声援を送る。ティガはチラッとそちらを見やった。

 

「(穂乃果姉ちゃん、ことり姉ちゃん、海未姉ちゃん、ツバサ姉ちゃん、英玲奈姉ちゃん、あんじゅ姉ちゃん。ありがとう。その声援があるから、僕は戦うことが出来るんだ!)」

 

キリエロイドは止めと言わんばかりに、今までよりもはるかに強い獄炎弾を放った。ティガはそれを素早く転げながら、回避した。ティガは立ち上がると、カラータイマーの前で両手をかざし、光エネルギーを収束させ、キリエロイドの頭上に放った。

 

「チャァ‼︎」

 

「キリィ⁉︎」

 

その光エネルギーは破裂し、冷気となり、キリエロイドはこれをまともに喰らい、徐々に凍っていった。

 

「ンンンン・・・、ハッ‼︎」

 

ティガは両腕をクロスさせた。額のクリスタル部分が白く輝き、両腕を振り下ろした。ティガの体に赤い部分が加わり、基本形態であるマルチタイプへと姿を変えた。その間にキリエロイドは完全に凍りつき、動かなくなった。ティガは両腕を腰に置き、前方で交差させた後、左右に大きく広げ、光エネルギーを最大まで収束させた。それをL字型に両腕を組み、光線としてキリエロイドに発射した。

 

「(ゼペリオン光線‼︎)チャアァァァァァ!!!」

 

ウルトラマンティガマルチタイプの必殺技【ゼペリオン光線】をまともに喰らったキリエロイドは爆散した。これを見た穂乃果たちは歓喜し、ティガに手を振っていた。ティガは6人の方を向き、ピースサインを送った。

 

「ありがとう、ウルトラマンティガ」

 

「シュワ!」

 

ティガは穂乃果の感謝の言葉に気づき、頷くと同時に空高く飛び上がり、何処かへと飛んでいった。

 

それをビルから見ていた大地は笑顔で、見送っていた。

 

《やはり私たちの出番はなかったな》

 

「うん。まあ、彼が勝つことは分かってたからね。でも、これから襲い来る敵はかなりの強敵だ」

 

《その通りだ。引き続き、アスカ、ムサシと共にヤプールの動向を追うとしよう》

 

「そうだね。次に会うときは一緒にウルトラマンとして戦う時だ、大吾くん。それまでこの世界の平和を頼んだよ」

 

大地はエックスと会話しながら、何処かへと歩き、消えていった。

 

大吾は家の裏庭に着地すると、何事もなかったかのように家に入った。だが、この時あることを思い出した。それは・・・。

 

「あっ。買い物忘れてた。しょうがない。ここは3人で外食だな」

 

大吾はなんとか言い訳を述べ、かつて行きつけだった店に千歌と曜を連れ、出かけるのだった。心配させた罰及び買い物を忘れた罰として全額払わされたことは言うまでもない。

 

 

 

そして帰りの日。ホームにて大吾は穂乃果と話していた。

 

「他のみんなも誘ったんだけど、都合合わなかったみたい。でもみんなから伝言。来るならちゃんと連絡して!だってさ」

 

「次来る時はそうするよ。穂乃果姉ちゃんも頑張ってね」

 

「大ちゃん。大ちゃんが抱えてることは正直穂乃果では頼りないかもしれないけど、穂乃果はずっと味方だからね?それだけは忘れちゃダメだよ?」

 

「分かってるよ、穂乃果姉ちゃん」

 

「ダイくーん!早くしないと列車出ちゃうよ‼︎」

 

「ヤバイ!穂乃果姉ちゃん。またね‼︎」

 

後ろから千歌の声に気づき、大吾は急いで、列車に飛び乗った。席についた大吾はそこから手を振り、穂乃果も応じた。大吾と一緒にいた千歌と曜は穂乃果にお辞儀をした。列車はそのまま動き出し、数分後誰もいなくなったホームで穂乃果はたった1人で立ちすくんでいた。

 

「頑張ってね、ウルトラマンティガ」

 

穂乃果はそうひとりごとを呟くと駅から出たのであった。

 

 

列車内では大吾、千歌、曜の3人が雑談していた。

 

「さっきの人、もしかして昔お世話になってた人?」

 

「うん。小さい頃から弟のように僕を可愛がってくれたんだ」

 

曜の質問に答える大吾。すると今度は千歌が2人を呼びかけ、2人はそちらに視線を送った。

 

「ダイ君、曜ちゃん聞いて!私ね、春からスクールアイドルになる‼︎」

 

千歌のまさかの発言に言葉を失う2人。そして同時にこうつぶやいた。

 

「「え?なんでまた急に?」」

 

ED:Brave Love,TIGA!〜Aqours Ver.〜




次回予告

「スクールアイドルはじめませんか〜?」

「なんで急にスクールアイドル始めようと思ったの?」

季節はついに春に移り変わり、迎える新学期。千歌は何やら始めるつもりみたいで?

「なんでまた急に転校することになったんだ?しかも女子校に」

「な、なんであなたがここに⁉︎」

突然の通知に疑問を抱く大吾。転校先はなんと⁉︎

「嘘?まだ4月だよ?」

「火山怪鳥バードンだと⁉︎」

海辺に佇む1人の少女。と、同時に新たな怪獣出現!しかもその怪獣はなんとかつて2人のウルトラマンを死に追いやった強敵怪獣だった。

次回 ティガライブ!サンシャイン‼︎
第5話 輝きたい‼︎


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第1章 動きだす物語編
第5話 輝きたい‼︎


お久しぶりです>_<

今回からいよいよアニメ本編をリンクさせたストーリーとなっていきます。今回から始まる第1章は、第1話『輝きたい‼︎』から第3話『ファーストステップ』までを基にしたストーリーとなります。まだ未登場だったあのキャラクターや、ティガと言ったら欠かせないあのヒロイン、そしてもう1人の主人公でもある?2人目のウルトラマンが出てきます((((;゚Д゚)))))))

今回はティガと怪獣出てきますが、戦いません(~_~;)
それでは本編スタート!!!


前回のティガライブ!サンシャイン‼︎

かつて事故により亡くなった両親の命日に合わせて、故郷である東京に、千歌、曜とともに向かった大吾。そこでかつて姉のように慕っていた高坂穂乃果、南ことり、園田海未、高坂雪穂、絢瀬亜里沙の5人と再会する。

彼女たちとの再会に浸っていた頃、キリエル人が暗躍していた。彼らはどうやらティガではなく、自分たちを守護神と崇めさせようとしていた。

 

「僕は大空大地。そしてこっちが・・・」

 

《わたしはウルトラマンエックス》

 

「本物のウルトラマン⁉︎」

 

大吾は先輩ウルトラマンにあたる、大空大地とウルトラマンエックスの協力で爆発事故を防ぐことに成功する。ところがキリエル人はキリエロイドへと姿を変え、ティガとなった大吾と戦った。大吾はなんとかキリエロイドに勝利し、内浦へと帰っていくのだった。

 

「私、スクールアイドル始めようと思うんだ‼︎」

 

「「え?なんでまた急に?」」

 

千歌はどうやら東京で何かを決意したようで・・・?

 

千歌side

 

ーー普通な私の日常に、突然訪れた奇跡。

 

これは大吾が前回、穂むらにて高坂穂乃果たち5人と再会を果たしていた時のことである。大吾とともに東京にやってきた千歌と曜の2人は秋葉原を訪れていた。

 

「「わぁ〜〜‼︎」」

 

「千歌ちゃん、見てみて」

 

秋葉原の街に興奮する千歌と曜。その中でも曜は特に興奮しており、何処かへと駆け出していった。

 

ーー何かに夢中になりたくて、何かに全力になりたくて・・・

 

「どうぞ‼︎・・・キャッ‼︎」

 

「ああ!待って待って‼︎」

 

そんな千歌に1人のメイドさんがチラシを渡した。その瞬間強い風が吹き、チラシが道端にばらまかれてしまった。千歌は曜とともにそれを1枚ずつ拾っていった。

 

ーー脇目も振らず走りたくて。でも何をやっていいかわからなくて・・・

 

千歌は再び風により飛んでいったそのうち1枚を追い、ビルの中を駆け抜けた。

 

ーーくすぶっていた私の全てを、吹き飛ばし舞い降りた!

 

千歌はある大きな建物の前でその1枚のチラシを掴むと、不意にこれまでで1番強い風が吹き、持っていたチラシを吹き飛ばした。そんな千歌の目には、あるモニターがあった。そこにはこう書かれていた。

 

【Love Live!second winner school idol...】

 

ーーそれが‼︎

 

千歌side out

 

OP:青空Jumping Heart

 

第5話 輝きたい‼︎

火山怪鳥バードン登場

 

場面が変わり、ここは浦の星女学院。ここでは新学期となり、今日からやってくる新入生たちを様々な部が勧誘を行っていた。その中で1人の美少女が友人とともに新入生を勧誘していた。言うまでもなく、千歌と曜のことである。

 

「スクールアイドル部で〜す!春から始まる!スクールアイドル部〜‼︎よろしくお願いしま〜す‼︎あなたも!あなたも!スクールアイドルやってみませんか⁉︎」

 

千歌は右手にあるものを持ちながら、メガホンを用いて叫んでいた。一度書き間違えた後があった。それに合わせ、曜は一人一人にチラシを渡していたが、新入生の子は申し訳なさそうに断っていた。

 

「輝けるアイドル‼︎スクールアイドル〜!!!」

 

千歌がひとしきり叫び終えると、とうとう人がいなくなった。さすがに誰1人見向きもしなかったことが彼女にはショックだったようで、俯いてしまった。

 

「千歌ちゃん」

 

「スクールアイドル部です・・・。」

 

「?」

 

「今大人気の・・・、スクールアイドルで〜〜〜す!!!」

 

そんな親友を心配して話しかけた曜だったが、千歌が何やら呟いており、曜が訝しげにしていると、千歌は再びメガホンを用いて叫ぶのであった。

 

時は遡り、今日の朝方になる。何やら大きな音とともに大きな振動が千歌と大吾が住む旅館【十千万】に響き渡った。

 

「何⁉︎」

 

「千歌ちゃんだと思うけど」

 

「まさかまだやってるの?お客さんに迷惑だよ」

 

「言ったんだけど」

 

謎の振動にビックリするこの旅館を経営する高海家の次女の高海美渡。愛犬であるしいたけとともにテレビを見ていた。対して奥の方で旅館の仕事をしているのが高海家の長女の高海志満である。志満は基本おっとりしている性格で、美渡はボーイッシュな性格である。やはり千歌の姉だけあって、2人とも美人である。美渡はお茶を飲み干すと、となりに座っているしいたけに話しかけた。

 

「お前も言ってやって。こんな田舎じゃ無理だって!」

 

「ワン!」

 

その頃千歌の部屋では、転んだ際に尻を痛めた千歌を心配そうに話しかける曜の2人がいた。

 

「大丈夫?」

 

「平気、平気。もう一度。どう?」

 

「うーん。いいんじゃないかな?」

 

千歌は再び決めポーズ?をとり、曜に決まってるか尋ねる。曜は携帯に写っているある少女と見比べて、ちょっと悩んだ末できていることを疑問系にしながら告げた。

 

「本当に始めるつもり?」

 

「うん。新学期始まったら、すぐ部活を立ち上げる!」

 

「他に部員は?」

 

「ううん、まだ。曜ちゃんが水泳部じゃなかったら誘ってたけど」

 

どうやら決意が固い千歌にちょっとだけ嬉しくなる曜。その時部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。

 

ーーコンコン

 

「千歌ちゃん、曜ちゃん。入っても大丈夫?」

 

「ああ、うん。大丈夫だよ!」

 

「失礼します。2人ともおはよう」

 

「「おはよう、大吾くん(ダイくん)」」

 

それは大吾だった。彼女たちとは違い、沼津の高校に通う彼は始業式は別の日なので、今は私服だった。そんな彼は否定しているが、端から見たらかなりのイケメンである。何しろかつて美渡が某アイドル事務所に勝手に履歴書送ったら、即合格したほどである。そんな彼を直視した千歌と曜の2人は若干頬を赤く染め、視線を逸らした。

 

「?2人とも顔赤いけど大丈夫?」

 

「大丈夫大丈夫!そうだ千歌ちゃん?どうしてスクールアイドルなの?」

 

大吾は2人の心配するが、曜はそれを慌てて否定し、千歌にずっと気になっていたことを尋ねた。

 

「そういや確かに。ずっと気になってたんだよね」

 

「今まではどんな部活にも興味ないって言ってたでしょ?」

 

「えへ」

 

「「ってもうこんな時間⁉︎」」

 

曜と大吾は千歌の方を向くと、千歌は笑顔でごまかした。2人は訝しげにすると千歌と曜は時計の針に気づき、急いで旅館を後にするのだった。大吾は元々2人にバスの時間だということを教えるために部屋に来たのである。

 

「「ふぅ〜」」

 

「間に合った〜。危うくこれ無駄になるところだったよ」

 

「そんなのまで作ったの?」

 

「うん。早い方がいいでしょ?ああ〜、楽しみだなぁ!」

 

「はぁ。でも〜」

 

「何々?」

 

「よし!ここは親友の千歌ちゃんのために一肌脱ぎますか‼︎」

 

なんとかバスに間に合った2人。千歌は手作りのチラシの束をカバンから取り出した。これまでの経緯とこのチラシを見た曜は少し悩み、親友を手伝うことにしたのだ。

 

「スクールアイドル部で〜す・・・」

 

そして場面は再び現在。そんなこんなことがあって今に至るのである。ちなみにあの後大吾からLINEで、部の字が間違ってることを教えられ、千歌がちょっとだけ恥ずかしく感じたのは別の話。

もはや誰もいないところで2人で凹みながら、なおも勧誘していた。ただし前を通り過ぎるのは風だけだった。

 

「全然だね〜」

 

「お?」

 

曜が話しかけた瞬間、千歌の目には茶髪で黄色い瞳をした美少女と赤い髪で緑色の瞳をした美少女が映った。リボンの色からして先ほどまで勧誘していた新入生だろう。

 

「美少女?・・・あたっ⁉︎」

 

その美少女に気づいた曜はいつの間にやら重心を支えていた親友がいなくなっており、その場に倒れてしまった。そしてその親友の千歌は2人の前に移動していた。

 

「あの!スクールアイドルやりませんか?」

 

「ズラ⁉︎」

 

「ズラ?」

 

いきなりのことで方言で驚いてしまった美少女。

 

「大丈夫!悪いようにはしないから。あなたたちなら人気が出る!間違いない‼︎」

 

「マ、マルは・・・」

 

「興味あるの⁉︎」

 

「ライブとかやるんですか⁉︎」

 

茶髪の方の女の子は千歌に少し戸惑っており、赤毛の女の子はチラシを凝視していた。赤毛の女の子の反応に気づいた千歌は思い切って尋ねてみた。するとその女の子はテンションが上がった状態になった。そんな中、茶髪の子はある一本の桜の木を見ていた。正確には木の上にいる1人の少女を見ていた。

 

「ううん。これから始めるところ。だからあなたみたいな可愛い子にぜひ!」

 

千歌の言葉に急に冷や汗と顔を青ざめる赤毛の女の子。それに気づいた茶髪の女の子は両耳を塞ぎ、千歌は笑顔を保っていた。

 

「ピギィ!!!!!!⁉︎」

 

「うわ⁉︎」

 

そして赤毛の女の子は顔を真っ赤にして絶叫した。この悲鳴だけで周りが揺れているほどである。千歌はその場に尻餅をつき、曜は両耳を塞ぎながらこちらに近づいてきた。

 

「お、おお、お姉ちゃ〜ん‼︎」

 

「ルビィちゃんは究極の人見知りズラ」

 

「うわぁぁぁぁぁぁ⁉︎」

 

どうやらこの赤毛の女の子はルビィという名前らしい。茶髪の女の子が説明してくれると、今度は木の上から女の子が降ってきた。あそこから落ちてきて、両足で着地したので相当なダメージが今彼女の両足を襲っているだろう。さらに追い討ちとしてカバンが彼女の頭に落ちてきた。これは見てるこちらも痛いと思う。

 

「いろいろ大丈夫?」

 

「ここはもしかして地上?」

 

千歌が心配そうに話しかけると、彼女は頭を打ったせいなのか、何やらおかしなことを言い始めた。その彼女の怖い笑顔に4人は少し驚いた。ルビィは茶髪の女の子の後ろに隠れていた。人見知りだからしょうがないのかもしれない。

 

「大丈夫じゃない」

 

「ということはあなた達は、下劣で下等な人間ということですか?」

 

「うわ!」

 

それをよそにどんどん謎めいた言葉を話す女の子。それに若干ドン引きする曜だった。そう、皆さんお気づきかもしれないが、この子はどうやら厨二病なのだろう。

 

「それより足大丈夫?」

 

「イッ⁉︎痛いわけないでしょう?この体は単なる器なのですから」

 

「ええ?」

 

本気で心配する千歌は女の子の足をちょっとだけつついた。すると彼女は少しだけ涙目になり、また痛い発言をした。今のこの子は二重の意味で痛い状態である。さすがにこれには千歌も気づいたようで、笑顔が引きつっていた。同じく曜も笑顔が引きつっていた。すると茶髪の女の子があることに気づく。

 

「あ、善子ちゃん?」

 

「ええ?」

 

「やっぱり善子ちゃんだ!花丸だよ。幼稚園以来だね〜」

 

茶髪の女の子いわく、この痛い少女の名は善子というらしい。そして茶髪の女の子の名は花丸というらしい。今更だがよくよく見てみると善子も美少女である。この学校美少女やたら多いな。

 

「は、な、ま、る⁉︎人間風情が何を言って・・・⁉︎」

 

「ジャンケーン、ポイ!このチョキはやっぱり善子ちゃん‼︎」

 

「善子言うな‼︎」

 

どうやらその名前に覚えがあったのか若干顔を引きつかせる善子。そこにジト目をしながらじゃんけんする花丸につられて、善子は独特なチョキを出した。これでやはり花丸は相手がかつての幼馴染であることに気づくのだった。

 

「い〜い?私はヨハネ。ヨハネなんだからね〜‼︎ナレーションもちゃんと呼びなさい〜‼︎」

 

「善子ちゃ〜ん‼︎」

 

「花丸ちゃん‼︎」

 

善子はメタ発言しながら走り去って行き、花丸、ルビィの順でそれについて行くように走り去って行ったのだった。

 

「善子言うな〜‼︎」

 

「どうしたの善子ちゃ〜ん⁉︎」

 

「待って〜‼︎」

 

「あの子たち・・・。あとでスカウトに行こう‼︎」

 

「あはは・・・」

 

そんな3人を見ていた千歌は諦めずに彼女たちをスカウトする気満々だった。そんな彼女に苦笑いする曜。そんな中チラシを拾い、それを見ていた1人の美少女がいた。

 

「あなたですの?このチラシを配っていたのは?」

 

「「え?」」

 

「いつ何時、スクールアイドル部なるものがこの浦の星女学院にできたのです?」

 

その黒髪の美少女は少し威圧のあるかつ、丁寧なお嬢様な感じの口調で千歌たちに語りかけた。先ほどまでの3人とは違い、緑色のリボンをしていた。ちなみに千歌たちは赤なので、どうやらこの人は千歌たちとも違う学年のようだ。

 

「あなたも新入生?」

 

「千歌ちゃん、違うよ。この人は3年生。しかも・・・」

 

「嘘⁉︎生徒会長?」

その女の子の登場に若干ひくつく曜はまた勧誘しようとした千歌の後ろに行き、耳元で彼女の正体を明かした。上級生でしかも生徒会長だった。なぜに千歌は今まで知らなかったのだろうか?

 

場面はここで、生徒会室へと変わる。今千歌は生徒会長とマンツーマンで対面していた。というのも何故千歌がスクールアイドルの勧誘していたのかを説明するためである。

 

「つまり、設立の許可どころか申請もしていないうちに、勝手に部員集めをしていたわけ?」

 

「悪気はなかったんです。ただみんな勧誘してたので、ついでというか〜。焦ったというか〜」

 

「部員は何人いますの?ここには1人しか書かれていませんが?」

 

「今のところ、1人です」

 

千歌の説明を聞き、納得する生徒会長。彼女の質問に本当に悪気がなさそうに、いつものテンションで答えていく千歌だった。そんな彼女の感じにわなわなとしていく生徒会長。気づけば申請用紙を持ってる手が震えている。

 

「設立の申請には最低5人必要というのは、知ってますよね?」

 

「だ〜から勧誘してたんじゃないですか〜?」

 

「フン‼︎」

 

「だぁぁ⁉︎」

 

「あいった〜」

 

少しだけ冷静を保ち、彼女に話しかけていく生徒会長。しかし千歌のノーテンキさについに我慢の限界が来たようで、思いっきり机を叩いた。そしてそのダメージが意外と強かったようで、手を押さえていた。これには千歌も笑ってしまう。

 

「笑ってられる立場ですの⁉︎」

 

「すいません・・・」

 

「とにかく、こんな不備だらけの申請書じゃ受け取れませんわ」

 

「ええええ⁉︎」

 

まあ生徒会長の言うとおりである。そもそもまだ1人しかいないのに申請が通るわけもない。そんな彼女を心配したのか、ずっと廊下で待機していた曜が小声で千歌に声をかける。

 

「千歌ちゃーん。一回戻ろう?」

 

「じゃあ5人集めてもう一回持ってきます」

 

「別に構いませんが、たとえそれでも承認いたしかねますがね」

 

「どうしてです?」

 

「わたくしが生徒会長である限り、スクールアイドル部は認めないからです!」

 

「そ、そんなぁ〜〜〜‼︎」

 

千歌もここであきらめるわけにはいかず、食いさがる。しかし、生徒会長は威厳のある声音で彼女に語りかけ、そして少々理不尽な理由を述べる。と、同時に強い風が吹き、千歌の声がこだました。

 

前半part 終了

 

「しかし、いきなり転校ってどういうことだ?しかも女子校なんて」

 

大吾は自身が通う学校の呼び出しがかかり、そこであるものを渡された。それはこの春から別の学校へ転校しろ、という内容だった。なんでもある女子校の新理事長がぜひ大吾をうちの学校に、と強く願ったことからこうなったらしい。

 

「そういやどこの女子校なんだ?ええっと、確かこの辺に・・・、!」

 

ーーブルッ

 

「スパークレンスが震えた?ってことはまさか!」

 

カバンの中に入れておいたスパークレンスが震えたのである。大吾はこの現象に覚えがあったので、すぐにスパークレンスに手を触れる。するとあるイメージが彼の頭に流れてきた。それは鳥のように空を飛ぶ全体的に赤い怪獣がこちらに向かってまっすぐ飛んでくるイメージだった。

 

「今のって、火山怪鳥バードン⁉︎ヤバいやつじゃねえか⁉︎」

 

大吾はその怪獣を知っていた。というより、その怪獣はかなり有名な怪獣なのである。

火山怪鳥バードン。かつて様々なウルトラ戦士がこいつと戦い、苦戦を強いられた強敵怪獣。なんといっても、2人のウルトラ兄弟を死に追いやったことで知られる怪獣なのだ。

 

「ええっと、人気のないところは・・・。ないじゃん‼︎」

 

現在大吾がいるのは沼津。以前なら内浦の山とか夜だったので、人目に触れることがないので、変身できた。しかし、沼津は都会であるため、どこに行っても人がいる。しかも今は夕方のため人通りが多い時間帯なのだ。

 

「しょうがない。ここはタクシーで適当なところで降りて、変身だ」

 

大吾はタクシーに乗り込み、内浦方面に向かうのだった。

 

時間を少しだけ遡る。生徒会長に拒絶され、失意する千歌は家にたどり着くやいなや、母親から回覧板を回してほしいと頼まれ、曜とともに船である場所に向かっていた。

 

「あ〜あ、失敗したなぁ。でもどうしてスクールアイドル部はダメなんて言うんだろう?」

 

「嫌い、みたい。クラスの子が前に作りたいって断られたって・・・」

 

「え⁉︎曜ちゃん知ってたの⁉︎」

 

「ごめん!」

 

「先に言ってよ〜」

 

千歌は何故彼女がそこまで嫌がるのかを疑問に思っていた。すると曜は少しだけバツが悪そうな顔をしていた。

 

「だって、千歌ちゃん夢中だったし。言い出しにくくて・・・。とにかく、生徒会長・・・、黒澤ダイヤさんの家って、結構古風ないえらしくて。だから、ああいうチャラチャラしたものは嫌ってるんじゃないか?って噂もあるし」

 

「チャラチャラじゃないのになぁ」

 

曜により、生徒会長の黒澤ダイヤが何故ここまでスクールアイドルを拒絶するのかが明かされた。これを聞くと確かに嫌がるのは分からなくもない。千歌は自身の真上を飛ぶカモメに手を伸ばしながら、つぶやくのだった。

彼女たちが乗っていた船は目的地にたどり着いた。そこは淡島水族館と併設されているダイビングショップ。千歌と曜のかけがえのない幼馴染がそこにいるのだ。その人物は松浦果南である。

 

「遅かったね。今日は入学式だけでしょ?」

 

「うん。それが色々と・・・」

 

「はい。回覧板とお母さんから」

 

「どうせまたみかんでしょう?」

 

「文句ならお母さんに言ってよ」

 

「ふふふ」

 

果南に目的である回覧板とお土産を渡す千歌。果南は腰を下ろしながら、そのお土産を当てた。その後千歌たちは席に座り、今日あったことを話すのだった。

 

「それで果南ちゃんは新学期から学校来れそう?」

 

「うーん。家の手伝いとかもまだけっこうあってね。よっと、お父さんの骨折ももうちょっとかかりそうだし」

 

「そっか〜。果南ちゃんも誘いたかったなぁ」

 

「誘う?」

 

「うん。私ね、スクールアイドルやるんだ!」

 

千歌の言葉に一瞬動きを止める果南。千歌と曜からは見えないが、少しだけ影がある顔をしていた。

 

「ふーん。まあ、でも私たちは千歌たちと違って3年生だからね」

 

「知ってる〜?凄いんだよ〜?」

 

「はい、お返し」

 

「また干物〜?」

 

「文句ならお母さんに言ってよ」

 

果南は一度中に入っていき、あるものを持ってきて、それを千歌の顔に近づけた。これにはちょっと不満を持つ千歌だったが、先ほど果南に行った言葉をそのまんま返されてしまった。千歌、曜、果南、そしてここに大吾を加えた4人にとってはいつもの日常の光景なのである。

 

「まあ、そういうわけでまだしばらく休学続くから、学校でなんかあったら教えて」

 

「ん?」

 

「なんだろ?」

 

「小原家でしょ?」

 

3人が上空を見るとあるヘリが飛んでいた。そのヘリの機内には、金髪の美少女が乗っていた。ただ謎のBGMが流れていたが。

 

「2年ブゥ〜リですか」

 

 

そして果南の家から戻ってきて、最寄りのバス停で降りた千歌。その後自宅に向かって歩いていた千歌はチラシを持ちながら、考え事をしていた。

 

「どうにかしなくちゃなぁ〜。せっかく見つけたんだし・・・。はぁー・・・」

 

すると彼女の目にはある光景が映っていた。1人の少女が佇んでおり、急に服を脱ぎ始めた。その下には水着が競泳用水着が着用されており、彼女は海に向かって駆け出した。

 

「嘘?まだ4月だよ?」

 

「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

「待って!死ぬから!死んじゃうから!」

 

「離して!行かなきゃならないの‼︎」

 

まだ4月なのに、海に飛び込もうとするその少女を千歌はいち早く動き出し、抱きつき止めようとする。まあその少女のセリフだけ見ても自殺しようとしているように見えなくもない。そして2人は足を滑らせ、結局そのまま海に落ちるのであった。

 

「「うわぁぁぁぁぁぁ⁉︎」」

 

 

なんとか海岸にたどり着いた千歌はすぐに家に戻り、タオルを持ってきて自身と彼女にかけるのだった。

 

「くしゅん」

 

「大丈夫?沖縄じゃないんだから」

 

「海に入りたければ、ダイビングショップもあるのに」

 

「海の音を聞きたいの・・・」

 

「海の音?どうして?」

 

少女の言葉に疑問符を浮かべる千歌。しかし、少女はそのまま黙り込んでしまうのだった。

 

「分かった。じゃあもう聞かない。海中の音ってこと?」

 

「私、ピアノで曲作ってるの。でもどうしても海の曲のイメージが浮かばなくて」

 

「ふーん。曲を?作曲なんて凄いね!ここら辺の高校?」

 

「東京」

 

「東京⁉︎わざわざ⁉︎」

 

「わざわざっていうか・・・」

 

その少女はなんと東京からきた子だった。千歌もまさか大都会である東京からここ、内浦に来たことに驚きを隠せなかった。千歌は立ち上がり、少女の隣に移動した。

 

「そうだ。じゃあ誰かスクールアイドル知ってる?」

 

「スクールアイドル?」

 

「うん。ほら、東京だと有名なグループたくさんいるでしょう?」

 

「なんの話?」

 

「え?」

 

相手が東京の人だと知り、千歌はスクールアイドルの話題を出してみた。するとその少女は本当に分からないのか、ポカンとしていた。そしてその少女の後ろをバスが通り過ぎて行った。そしてしばしの沈黙も流れた。

 

「まさか知らないの⁉︎スクールアイドルだよ?学校でアイドル活動して、大会も開かれたりする」

 

「有名なの?」

 

「有名なんてもんじゃないよ〜?ドーム大会も開かれたくらい、超人気なんだよ〜?って、私も詳しくなったの最近だけど」

 

「そうなんだ。私、ずっとピアノばっかりやってきて、そういうの少し疎くて」

 

千歌は少女にスクールアイドルについて語る。でも、彼女自身スクールアイドルを知ったのは最近なので、あまり偉そうには言えないのだが。

 

「じゃあ見てみる?なんじゃこりゃ〜、ってなるから」

 

「なんじゃこりゃ?」

 

「なんじゃこりゃ」

 

「うーん。これが?」

 

「どう?」

 

「どうって、なんというか・・・、普通?」

 

自身のきっかけにもなったある9人のグループを見せる千歌。しかし、それをみた少女は本当にそう思ったのか、率直な感想を述べた。

 

「あぁ、いや!悪い意味じゃなくて、アイドルって言うから、もっと芸能人みたいな感じかと思ったっていうか・・・」

 

「だよね。だから衝撃だったんだよ」

 

「え?」

 

千歌は語る。今まで自分は何に対しても本気になれなかった自分。そして、普通すぎることを。それでも何かあるんじゃないかって思ってたけど、そのまま時は流れ高2になっていたことを。そんな時に東京である人たちに出会ったことを。

 

挿入歌:START:DASH

 

そのグループのメンバーは皆、自身と同じ普通だった。みんなで一生懸命練習して、みんなで心を1つにしてステージに立つと感動して、カッコよくて、素敵になれることを感じた。スクールアイドルは、輝けることを知ったのだ。

だから彼女は決意した。自身も仲間とともに頑張りたい、自身の憧れとなったグループの目指したところを自分も目指したい、そして自分も輝きたい、と。

 

「ありがとう。なんか頑張れ、って言われた気がする。今の話」

 

「本当に?」

 

「ええ。スクールアイドルなれるといいわね」

 

「うん!あ、私、高海千歌。あそこの丘にある浦の星女学院って高校の2年生」

 

「同い年ね。私は桜内梨子。高校は・・・、音ノ木坂学院高校」

 

彼女の言葉に笑顔を浮かべる少女。そしてそれぞれ自己紹介を果たす。東京から来た少女の名は桜内梨子。そして、彼女が通う高校の名はかつて伝説と呼ばれた2大スクールアイドルの片割れが通っていた高校だった。

 

 

ーーキュオォォォォォォン!!!

 

「何?今の?」

 

「あ!あれ‼︎」

 

謎の音が聞こえ、訝しげにする2人。すると、梨子はあるものに気づき、指を指す。その先には、街中に降り立つ火山怪鳥バードンの姿があった。バードンは強い風を巻き起こし、さらに口から火炎放射を放ち、次々と街を破壊して行った。

 

「梨子ちゃん。うちそこだから、一緒に逃げるよ!」

 

「え、ええ!」

 

千歌は梨子の手を取り、その場から逃げ出そうとする。しかし、バードンが巻き起こした風が強すぎて、2人はその場から動くことができなかった。そんな2人の目には一筋の光が、バードンから少し離れた所に降りてきたのが見えた。その光から、赤と紫を基調とする姿をした光の巨人が現れた。

 

登場BGM:TIGA!

 

「ウルトラマンティガ!来てくれたんだ‼︎」

 

「あれが・・・、ウルトラマンティガ・・・?」

 

ティガはバードンを視認すると、いつものファイティングポーズを構えた。今、ティガとバードンの戦いが始まろうとしていた。

 

「チャァッ‼︎」

 

ED:Brave Love, TIGA!〜Aqours Ver.〜




次回予告

「ティガが消えちゃった?」

「多分死んではいないと思うけど」

なんとかバードンを撃退するも、ダメージにより消えてしまうティガ。

「東京から来ました、桜内梨子です。よろしくお願いします」

「奇跡だよ!!!」

舞台は再び浦の星女学院に。そこで千歌は梨子と再会する。

「バードンに勝てるだろうか?いや、勝たなきゃ駄目なんだ‼︎」

「銀色の・・・、ウルトラマン?」

バードン再襲来!ティガは応戦するも絶体絶命のピンチに。その時、銀色の巨人が舞い降りる‼︎

次回 ティガライブ!サンシャイン‼︎
第6話 舞い降りる絆


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第6話 舞い降りる絆

お久しぶりでごぜえます>_<

今回は前回の続きで、バードン戦と1話の最後を書いています。ついにあのウルトラマンが2人目として、ティガの前に現れます。さらに、最後の方で、ちょっとした伏線を敷いちゃいました((((;゚Д゚)))))))

あと、この作品の評価に色が着いており、驚きました((((;゚Д゚)))))))
みなさん、本当にありがとうございます>_<

あと、この作品がある程度落ち着いたら、仮面ライダーの小説でも書こうかなと思ってます>_<

それでは、本編スタート!!!


前回のティガライブ!サンシャイン‼︎

私は高海千歌。内浦にある浦の星女学院に通う高校2年生。東京に行った際に、スクールアイドルになることを決意した私は、さっそく学校で親友の曜ちゃんとともに勧誘してたんだけど、うまくいかなかった。その過程で、国木田花丸ちゃん、黒澤ルビィちゃん、津島善子ちゃんと知り合うことができたの。

 

「私がいる限り、スクールアイドル部を認めないからです!!!」

 

「そ、そんなぁ〜〜〜〜!!!」

 

生徒会長の黒澤ダイヤさんに反対され、お先真っ暗な私は、海岸で東京から来た美少女、桜内梨子ちゃんと出会う。

 

「海の音が聞きたくて・・・」

 

「海中の音ってこと?」

 

梨子ちゃんがはるばる内浦まで来た理由は、海の曲のイメージに必要な海の音を聞くため。

そんな私たちの日常にまた怪獣が現れたの。

 

「キュオォォォォォォン‼︎」

 

「チャァッ‼︎」

 

でも大丈夫。私たちのヒーロー、ウルトラマンティガが来てくれたから!

 

 

ーー頑張れ、ウルトラマンティガ‼︎

 

 

戦闘BGM:Brave Love, TIGA〜TVsize〜

 

ウルトラマンティガはファイティグポーズをとり、バードンと距離を置いていた。すると一度飛び上がり、前転宙返りをしながらバードンの数メートル先に降り立つとハンドスラッシュでバードンの胴体に攻撃した。

 

「チャァッ‼︎」

 

「キュオォォォン‼︎」

 

ハンドスラッシュで攻撃されたバードンはティガを敵と認識し、羽を羽ばたかせ、突風をふかせた。ティガはこれに一度態勢を崩し、仰け反ってしまう。バードンはこれを好機とみて、口から火炎攻撃を放ち、ティガに攻撃した。しかし、ティガは突風に耐えきり、前転でバードンの目の前に転がり、バードンに掴みかかり、ひざ蹴りを2回バードンに与え、そして回し蹴りでバードンを蹴飛ばす。

 

「ハッ、ハッ、チャァッ‼︎」

 

「キュオォォォン⁉︎」

 

バードンはさすがにこれには耐えきれず、数メートル飛ばされた、かのように見えたが、ギリギリで羽を羽ばたかせなんとか受け身を取るのであった。

 

「ンンンン・・・・、ハッ‼︎」

 

ティガが両腕をクロスさせた瞬間、額のクリスタル部分が赤く光る。両腕を振り下ろすと、紫だった部分が赤くなり、全体的に赤と銀を基調とした姿、パワータイプへとタイプチェンジした。

 

「タイプチェンジ・・・、パワータイプだ‼︎」

 

「タイプチェンジ?」

 

「うん。ウルトラマンティガは状況に応じて、3つの姿を使い分けるの。今までの赤と紫と銀色が合わさった姿が、基本形態のマルチタイプ。そして今の姿が、力持ちのパワータイプだよ!」

 

ティガとバードンの戦いを海岸で見ていた千歌は隣にいる美少女、桜内梨子にティガについて説明する。梨子自身も何度かニュースなどで見たことがあるのだが、実際にティガの戦いを見るのははじめてだったので、困惑していたのである。

ティガはマルチタイプとは違う、力強いファイティグポーズをとるとバードンめがけて駆け出した。バードンもこれに応戦すべく、ティガに向かって駆け出した。ティガはすれ違いざまに右腕で手刀のようにバードンの胴体に攻撃した。バードンはさすがにダメージを受けたようでその場で倒れた。

 

「ハァッ‼︎(今だ!)」

 

「行けぇ〜!ウルトラマンティガ〜‼︎」

 

「ハッ、ハァァァァァ、(デラシウム光流!)「(待て、大吾‼︎)」・・・、⁉︎」

 

ティガはとどめを刺すために、パワータイプの必殺技【デラシウム光流】を発動しようとした瞬間、頭の中にテレパシーが流れてきた。それは大吾にティガの力を授けたかつてのウルトラマンティガこと、マドカ・ダイゴである。その声を聞いた瞬間、ティガは必殺技を放つのをやめた。

 

「どうしたの、ティガ⁉︎なんで必殺技をやめちゃったの⁉︎」

 

「(忘れたのか?バードンが何を持っているのかを!)」

 

「(そうだ!バードンには・・・、⁉︎)ウワァッ⁉︎」

 

ティガが攻撃をやめたのを視認した千歌は、彼の突然の行動に訝しげにする。ティガが何もしないのを好機とみたバードンは空高く舞い上がり、ティガめがけて突進してきた。ティガはギリギリでこれを受け止めたのだが、嘴の部分がティガの脇腹に刺さっていた。そこからバードンはあるものをティガに流し込む。そう、これがバードンの最大にして、厄介な武器の毒である。この毒でかつて様々なウルトラマンが苦しみ、そのうち2人のウルトラマンが死に追いやられたのである。

 

ーーピコン、ピコン、ピコン

 

胸の部分に取り付けられているカラータイマーが点滅をはじめる。ウルトラマンティガが地球上で活動できるのは3分間のみ。もし、カラータイマーが輝きを失うとティガは2度と立ち上がれなくなる。さらにバードンの毒によるダメージで、いつもより点滅の間隔が短い。

 

「ハァッ‼︎」

 

「キュオォォォン⁉︎」

 

「ンンンン・・・、ハッ‼︎」

 

ティガはなんとか嘴を脇腹から抜くと、バードンの顎の部分をひざ蹴りで攻撃し、空高く蹴飛ばした。すかさず、マルチタイプへとタイプチェンジを行い、両腕を十字型にクロスさせ、光線を上空にいるバードンめがけて発射する。それはまさしく、初代ウルトラマンの【スペシウム光線】のような技、言うなれば【マルチ・スペシウム光線】といったところか。

 

「チャァァァァ‼︎」

 

「キュオォォォン‼︎」

 

しかし、毒によるダメージで、狙った方からわずかにずれ、バードンの翼の部分をかすった程度である。バードンもこれには大ダメージを受けたのか、よろよろとしながら、どこかへと飛び去ってしまった。

ティガはふらつきながらも立ち上がり、破壊されてしまった街並みを元に戻すと、その場で消えてしまった。

 

「ティガが消えちゃった?」

 

「まだカラータイマーが点滅していたから、力尽きた訳ではないとは思うけど」

 

梨子は消えてしまったティガに心配そうな目をするが、千歌も心配するもカラータイマーが消えてないのを見ていた。果たしてティガは、大吾は無事なのだろうか?

 

OP:青空Jumping Heart

 

第6話 舞い降りる絆

火山怪鳥バードン、ウルトラマンネクサス登場

 

翌日、浦の星女学院に向かうバスの中。千歌と曜はとても不安な顔をしていた。それには理由がある。

 

「大吾くん、大丈夫かな?」

 

「うん。一応、今日1日安静にしていれば、大丈夫らしいんだけどね」

 

そう。大吾のことである。実は大吾はティガへの変身を解くと、自力で【十千万】にたどり着いた。しかし、たどり着くと同時に玄関先で倒れてしまったのである。しいたけがこれに気づき、中にいる千歌たちを連れてきて、すぐに病院へと向かった。そのまま病院で一晩ほど入院することになり、そのことを曜に電話で伝えた千歌。曜も先ほどチラッとだけ千歌と共にお見舞いに行ったのだが、大吾は静かに眠っていた。しかし、彼女たちは知らないことだが、彼がここまで弱っている原因は、バードンとの戦いでやられてしまった毒が原因である。

そして、浦の星女学院に着いた千歌はあることを決意し、曜に伝える。

 

「もう一度⁉︎」

 

「うん。ダイヤさんのところに行ってもう一度お願いしてみる」

 

「でも・・・」

 

そう。生徒会長であるダイヤの元に行き、もう一度スクールアイドル部を認可してもらおうとすることだった。しかし、曜は何やら心配しているが、千歌は自身がスクールアイドルをはじめるきっかけになった人たちの歌詞を口にする。

 

「諦めちゃダメなんだよ。あの人たちも歌ってた!その日は絶対来るって!」

 

「本気なんだね?」

 

千歌が本気であることを確認した曜は、千歌の肩を指で叩く。千歌はこれにつられ、後ろを見るが、曜はすかさず反対側から千歌の手から申請書を取り上げる。

 

「ああ!ちょっと⁉︎」

 

「私ね、小学校の頃からず〜っと思ってたんだ。千歌ちゃんと一緒に夢中で、何かやりたいなぁ、って」

 

「曜ちゃん?」

 

「だから、水泳部と掛け持ちだけど!えへ!はい!」

 

曜は千歌の背中に寄りかかり、はじめて親友に自身の思いを告げる。そして、千歌から取り上げた申請書に自身の名前を書くのだった。

 

「曜ちゃん。曜ちゃ〜ん!」

 

「うわ⁉︎苦しいよ〜!」

 

「よーっし、絶対すごいスクールアイドルになろうね‼︎」

 

「うん‼︎」

 

曜の思いを知り、涙を浮かべながら親友に抱きつく千歌。ずっと隣にいた親友と共に改めて決意した千歌だったが、申請書が抱きついた反動で手元からなくなっていたことに気づいておらず、その申請書は水たまりの中へと落ちていくのだった。

 

「「ん?うわぁ〜〜〜〜‼︎」」

 

そして場面が変わり、生徒会室。生徒会長に先ほどのズブ濡れの申請書を提出する千歌。しかし、ダイヤはこれを冷や汗を流しながら、ジト目で見つめるのであった。

 

「ふぅ。よくこれでもう一度持ってこようという気分になりましたわね?しかも1人が2人になっただけですわよ?」

 

「やっぱり、簡単に引き下がったらダメだって思って!きっと生徒会長は私の根性を試しているんじゃないか、って」

 

「違いますわ!何度来ても同じだとあの時言ったでしょう⁉︎」

 

「どうしてです⁉︎」

 

ダイヤの問いに答える千歌。これにはダイヤもワナワナしながら聞くと、机に乗り、千歌の間近まで近づいて、叫ぶ。これには千歌も納得できず、ダイヤに詰め寄る。

 

「この学校には、スクールアイドルが必要ないからです‼︎」

 

「なんでです⁉︎」

 

お互いに譲るつもりはないらしく、睨み合う千歌とダイヤ。これをずっと静観していた曜はすかさず止めに入る。

 

「まあまあ」

 

「あなたに言うつもりはありません‼︎大体、やるにしても曲は作れるんですの?」

 

「曲?」

 

「ふぅ。ラブライブ出場するには、オリジナルの曲でなければいけない。スクールアイドルをはじめる時に、最初に難関になるポイントですわ」

 

すると落ち着きを取り戻したダイヤは窓に近づきながら、スクールアイドルとして覚えておかなきゃならないことを告げる。スクールアイドルが嫌いにしては、結構物知りである。

 

「東京の高校ならいざ知らず、うちのような高校だとそんな生徒は」

 

「1人もいない・・・。生徒会長の言う通りだった」

 

「大変なんだね。スクールアイドルはじめるのも」

 

「うん。こうなったら‼︎」

 

場面は教室に変わり、机に俯せる千歌と曜。ダイヤに言われ、全生徒に聞いてみたところ、誰もできないことが判明し、落ち込んでいるのだ。すると千歌はあることを思い、机の中からあるものを取り出す。それは小学校低学年の音楽の教科書だった。もしかして、そこからはじめるつもりなのか?

 

「私が!なんとかして〜‼︎」

 

「できる頃には、卒業してると思う」

 

「だよね〜・・・」

 

もしかしなくてもそのつもりだったらしい。曜に指摘され、再び俯せる千歌。そんな時、自分たちのクラスの担任が入ってきた。

 

「はーい、みなさん。ここで転校生を紹介します。今日からこのクラスに編入することになった」

 

「くしゅん。失礼。東京の音ノ木坂という高校から転校してきました・・・」

 

担任から発せられた転校生という言葉にざわつく生徒たち。そんな中1人の女子生徒がクラスに入ってくる。その女子生徒を見た瞬間、千歌は言葉を失う。千歌に目線を送る曜は疑問を抱いていたが、千歌はその少女のことを知っていた。そう、つい昨日海辺で出会ったあの美少女だったのである。

 

「くしゅん。桜内梨子です。よろしくお願いします」

 

「はぁー!奇跡だよ‼︎」

 

「あ!あなたは⁉︎」

 

そうこれが彼女たちの軌跡の始まりを告げる瞬間だった。

 

挿入歌:決めたよHand in Hand

 

「一緒にスクールアイドル始めませんか⁉︎」

 

「うふ」

 

千歌は右腕を差し出し、彼女を勧誘する。梨子はそれに対し、一度微笑み、一拍置いてこう返事する。

 

「ごめんなさい」

 

「え?えええええ!!!⁉︎」

 

見事に撃沈する千歌。まあいきなりアイドルやりませんか?と言われ、はい、と答える人はほとんどいない。当然っちゃ当然かもしれん。

 

前半part 終了

 

 

 

 

場面はある車内に変わる。そこにいたのは、車を運転する志満と先ほど退院した大吾である。

 

「それにしても本当になんともなくて、安心したわ。もし大吾くんに何かあったら、千歌ちゃんや曜ちゃんたちが悲しむもの」

 

「すいません。仕事あるのに、迎えに来てもらって」

 

「いいのよ。お母さんも言ってたけど、あなたは私たちにとって家族みたいなものなんだから。こういうときは助け合っていかなきゃ」

 

大吾は少しだけ顔色が戻ったが、気がかりなことがあった。昨日撃退したバードンについてである。バードンに毒が残っている以上、うかつに倒すことができない。

 

(歴代のウルトラマンたちはあの毒袋をなんとかしてから倒してたけど、今またバードンが来て、そこを正確に狙えるか、と言われたら多分無理だ)

 

大吾は鞄の中に入れてあったスパークレンスをチラッと見やると、窓から見慣れた外の景色に視線を移した。

 

 

場面は変わり、再び千歌と曜の2人に戻る。千歌は今朝、梨子にスカウトしたのだが、断られてしまい、ドヨーン、とした空気を醸しながら机に俯せていた。

 

「千歌ちゃん、転校生の桜内さん、だっけ?知り合いなの?」

 

「うん。昨日怪獣が現れたでしょ?そのちょっと前に知り合ったの。海のイメージの曲作りたいってこっちに来たんだって」

 

「てことは作曲出来るってことだよね?」

 

「うん。だからね、桜内さんをなんとしてもスクールアイドル部に入れてみせる‼︎」

 

千歌は決意し、曜はそんな親友の姿を見て、微笑んだ。そんな時である。再び彼女たちの日常が脅かされようとしていた。

 

ーーキュオォォォォォン!!!

 

千歌はこの声に聞き覚えがあった。そう、この鳴き声は昨日現れた火山怪鳥バードンの鳴き声である。

 

「昨日の怪獣⁉︎そんな!ティガに大ダメージ与えられたはずなのに⁉︎」

 

「多分、かすった程度のダメージだったのよ。だから、こんなに早く戻ってきたんだわ」

 

教室の窓からバードンが空高く飛んでいるのを見つけた千歌。そんな彼女の両隣に曜と梨子が近づいてくる。するとバードンは、急降下を始め、ある場所に降り立った。それは今千歌たちがいる浦の星女学院の校庭だった。幸い校庭には人がいなかったが、バードンは校内にいる千歌たちを餌として、定めまっすぐこちらに向かって歩いてきた。

この時、誰も気づいていなかった。1人の生徒が、千歌たちのクラスから出ていったことを。

 

同じ頃、バードンが現れたのを、スパークレンスによって知った大吾はよろよろ、と歩きながら、人気のない裏山にいた。

 

「こんな早くまた現れるなんて・・・。バードンは強敵だ。勝てるだろうか?」

 

右手で握っているスパークレンスをチラッと見やると、もう一度バードンの方を見た。大吾の目には、バードンが浦の星女学院の校庭に降り立ち、まっすぐそっちに向かっているのがうつった。

 

「いや、勝たなきゃダメなんだ‼︎だから、もう一度僕に力を貸してくれ‼︎」

 

腕を反時計回りにまわし、スパークレンスを空高く掲げた。スパークレンスの先端が左右に展開され、中のクリスタル部分が輝き、大吾を包んだ。

 

「ティガー!!!」

 

登場BGM:TIGA!

 

バードンが千歌たちのいるあたりに嘴を向け、窓に突き刺そうとした瞬間、それを遮る光が現れた。千歌たちがゆっくり目を開き、見てみると、バードンの嘴を両手で押さえていた光の巨人、ウルトラマンティガがいた。

 

「ウルトラマンティガ!」

 

「ティガが来てくれたわ!」

 

「チャァッ!!!」

 

「キュオォォォン⁉︎」

 

ティガはバードンを押さえながら、パワータイプへとチェンジすると、両足で蹴飛ばした。バードンは数百メートル先まで吹き飛び、ティガは後ろにいる千歌、曜、梨子の3人の方を向いた。すると、変身してからわずか数秒しか経ってないのに、カラータイマーが点滅を始めた。

 

「なんで⁉︎ウルトラマンは3分間戦えるはずなのに⁉︎」

 

「千歌ちゃん!これ見て‼︎」

 

明らかに早すぎるカラータイマーの点滅に驚愕する千歌。すると、曜がスマホである情報を開いていた。それは今ティガが相対している敵がバードンであること。そのバードン最大の武器について書いてあった。

 

「この情報が確かなら、今ティガは毒が残ってる状態ってこと⁉︎」

 

「そうなるわね」

 

千歌は再びティガに目線を向ける。するとこちらを見ていたティガと目線があい、ティガは頷くと飛び上がり、バードンの近くに降り立った。ティガはすぐさま、バードンに近づき、右、左と交互に連続でパンチを浴びせると、回し蹴りを2連続で叩き込んだ。バードンは再び数メートル先に飛ばされるとティガを睨みつけた。しかし、ここで予想外なことが起きてしまった。なんと、パワータイプからマルチタイプへと強制的に戻ってしまった。

 

「っ⁉︎(何⁉︎)」

 

《やはり、バードンから受けたダメージで、エネルギーが残ってないのだろう》

 

「大地、エックス」

 

とあるビルの屋上でティガとバードンの戦いを見ていた2人の男がいた。それはかつてある宇宙の地球で闇の脅威と戦ったマドカ・ダイゴと彼とはまた違う宇宙でグリーザと戦った大空大地とウルトラマンエックスである。

 

「分かってます。本当にやばい状況の時は、僕らが彼を救援します」

 

「すまない」

 

場面は再びティガ対バードンに戻る。いきなりマルチタイプへと戻ってしまったことに驚きを隠せないティガは、バードンとなんとか戦えていた。しかし、カラータイマーの点滅がさっきより早くなってしまい、さらに毒によるダメージで思うように戦えないティガは一方的にバードンに叩きのめされていた。

 

「頑張って、ティガ‼︎」

 

「負けちゃダメ‼︎」

 

浦の星女学院で戦いを見ていた千歌たちはティガに声援を送っていた。しかし、ティガはほとんど戦えない状態になっていた。バードンは、数回ティガを踏みつけると、ティガのカラータイマーめがけて嘴を下ろした。ティガは両手でそれを抑えるも、少しずつカラータイマーに嘴が近づいていた。

 

「行くぞ、エックス!ユナイトだ!」

 

《ああ!ティガを、大吾くんを救うんだ!》

 

「!待て、2人とも。あれを見ろ‼︎」

 

ティガのピンチに先輩ウルトラマンとして、助けるべく変身しようとする大地。相棒であるエックスも同じ気持ちで、肯定する。そんな時、ダイゴはあることに気づき、大地はそちらに目がやった。その光景に大地は目を見開いた。なんとある光がバードンめがけて飛んできて、バードンを吹き飛ばしたのである。その光はティガとバードンの間で止まると1人の巨人が現れた。その巨人は全体的に銀色を基調とした戦士だった。

 

登場BGM:ネクサス〜Appearance〜

 

「銀色の・・・、ウルトラマン?」

 

「あれは・・・、ネクサス!」

 

「ウルトラマンネクサス。大吾の、ティガのピンチに駆けつけてくれたのか?」

 

突如現れた巨人に驚きを隠せない千歌たち。それと同様にまさかの救援に目を見開いたダイゴと大地。しかし、その救援者の名前を彼らは知っていた。かつてそれぞれ共に戦った仲間のウルトラマンなのだから。

その巨人の名はウルトラマンネクサス。かつて様々な宇宙で闇の存在と戦い、人から人へと受け継がれていった絆の名を持つウルトラマンである。ネクサスはティガに近づくと、彼の左腕を通して、温かい光を送った。すると、点滅していたティガのカラータイマーが青く光り、ティガ自身に残っていた毒のダメージがきれいさっぱりなくなっていた。

 

「(ありがとう、ネクサス)」

 

「・・・・〈コクッ〉」

 

ティガは立ち上がると、ネクサスの隣に並び立った。ネクサスはそれと同時に右腕を自身の胸のあたりにかざし、振り下ろした。ネクサスの体は全体的に赤と銀を基調とした姿へと変わる。今までの姿は基本形態の【アンファンス】。そして今の姿が、【ジュネッス】である。姿を変えたネクサスはある光エネルギーを空高くかざした。その放たれた光エネルギーはバードンとティガ、ネクサスを囲むように降り注ぎ、彼らが消えてしまった。いや、正確には、別の空間に囲まれた、というのが正しい。

 

《私たちの世界にスペースビーストが現れた時と同じ技か》

 

「不連続時空間【メタフィールド】を作り出す、【フェーズシフトウェーブ】か。考えたな」

 

そう、なぜネクサスがこの技を発動したのか、それは幾つか理由がある。

 

1つ:街中からバードンを引き離すため。

2つ:この空間の中では、光エネルギーを使う戦士、ウルトラマンであるティガとネクサスが有利になるため。

そして3つ:このメタフィールドはいわゆる一種の異次元空間である。この中でバードンを倒しても、外の現実世界に毒が飛び散ることがなくなるからである。

 

戦闘BGM:ネクサス〜Heroic〜

 

「チャァッ‼︎(行くぞ、ネクサス!)」

 

「シェア‼︎」

 

ティガとネクサスは同時にファイティングポーズをとると、駆け出した。バードンも2人に向かって駆け出た。ティガが正面からバードンを受け止めると、ネクサスが飛び上がり、バードンの頭部に飛び蹴りを与えた。

 

「シェア‼︎」

 

「キュオォォォン⁉︎」

 

バードンは頭にダメージが来たので、よろめいた。ティガはこの隙に再びパワータイプへとタイプチェンジし、右腕にエネルギーを溜め、バードンの頭部に攻撃した。

 

「チャァッ!!!」

 

「キュオォォォン⁉︎」

 

バードンはその場に倒れ込み、度重なる頭部によるダメージで軽い脳震盪を起こしていた。ティガはバードンを背中から押さえつけ、少し離れたところにいたネクサスに指示をする。

 

「(今だ!バードンの毒袋を狙え!)」

 

「〈コクッ〉シェアァッ!」

 

ティガの指示を聞き、頷いたネクサスは両腕に取り付いているアームドネクサスから2発の光の刃【パーティクル・フェザー】を放つ。その2発は見事、バードンの毒袋の根元にあたり、毒袋にあった毒がバードンの体内で逆流していた。

 

「キュオォォォン⁉︎」

 

「チャァッ!!!」

 

バードンが悶え苦しんだのを確認すると、ティガはバク転の要領で、バードンを後ろから蹴飛ばした。バードンはよろめき、ネクサスも再び飛び蹴りを背中に攻撃した。バードンはこれを喰らいつつも、なんとか耐えきった。

 

「チャァッ!!!」

 

「シェアァッ!!!」

 

バードンがよろよろ、としたのを合図に2人のウルトラマンはお互いに頷き、高く飛び上がり、空中で前転し、ティガは右足を、ネクサスは左足を前に突き出し、急降下キックを浴びせた。とあるヒーローシリーズの技名を借りて、名付けるなら【ウルトラダブルキック】といったところか。2人のキックは見事にバードンの両翼に当たり、バードンはこれまでのダメージに加え、今の攻撃で完全に致命傷となったのか、動かなくなり、立ち尽くしていた。

 

「ンンンン・・・、ハッ‼︎」

 

ティガはマルチタイプへとタイプチェンジし、両腕を腰に置き、前方でクロスさせ、光エネルギーを集束させた。ネクサスも両腕のアームドネクサスを交差させ、ガッツポーズをし、V字型に伸ばした。そして2人同時にそれぞれL字型に組み、光線を放つ。

 

「(ゼペリオン光線!!!)チャアァァァァァッ!!!」

 

「(オーバーレイ・シュトローム!!!)シェアァァァァァッ!!!」

 

ウルトラマンティガマルチタイプの必殺技【ゼペリオン光線】、ウルトラマンネクサスジュネッスの必殺技【オーバーレイ・シュトローム】。2つの光線技を喰らい、バードンは断末魔を上げながら、ゆっくりと倒れていき、爆散した。

2人のウルトラマンは今の攻撃で、エネルギーをほとんど使ったため、それぞれの胸にあるカラータイマーとコアゲージが点滅していた。バードンを倒すと、メタフィールドが解除され、再び現実世界に姿を現わすティガとネクサス。

 

「あ、出てきた!」

 

「あの怪獣は?どこにも見当たらないんだけど?」

 

「いないってことは勝ったんだよ!ティガとネクサスが!!!」

 

曜、梨子、千歌の順に反応すると、浦の星女学院の生徒たちは歓声を上げた。ティガはネクサスの方に向くと、右手を差し出した。ネクサスはそれに応じ、右手を出し、固く握手するとネクサスは透明化し、消えていった。ティガも長居は無用とし、どこかへと飛び去っていった。

 

「ウルトラマンネクサス。一体誰が変身してるんだ?」

 

「僕たちの世界の時の副隊長のように、彼に選ばれた人間がいるってことですよね?」

 

「ああ、大地。すまないが、ヤプールの動向と同時にネクサスと一体化した人間【デュナミスト】を探してくれないか?来るべき戦いには、ネクサスの力が必要になるからね」

 

「わかってます。至急、アスカさんとムサシさんと合流して、捜索にあたります」

 

ダイゴと大地は、突如現れた仲間のウルトラマン、ネクサスと一体化した人間を探すことにした。ウルトラマンたちはお互いに相手がウルトラマンであることを知らないことが多い。何を隠そう、大地自身もダイゴがウルトラマンであることに気付けなかったほどなのだから。ましてや、今回は変身者が一定しないネクサスである。特定するには、時間がかかる。

 

そんなダイゴと大地のやり取りを見ていた1人の少女がいた。少女の服装は、浦の星女学院の制服を着ていた。その右手には鞘に収まっている、白い小型スティックがあった。

 

「あの人が先代ウルトラマンティガのマドカ・ダイゴ。そしてあっちの人がウルトラマンエックスの大空大地。あなたが言っていた仲間のウルトラマンね」

 

彼女の言葉に肯定するかのように、呼応するアイテム。彼女は自身の相棒の返事に笑顔を見せ、視線を【十千万】にこっそり入ろうとしている大吾に移した。

 

「そして彼が今のウルトラマンティガ、円大吾くんか。まあ、またいずれ会うときがあるでしょうから挨拶はその時ね・・・、ってヤバい!授業早くしないと始まっちゃうじゃない!」

 

その少女は、不思議な光に包まれ、どこかへと飛び去っていった。もし、ダイゴが彼女と邂逅していたら、大変驚いただろう。なぜならその少女の顔は、ダイゴがよく知る女性と同じ顔だったのだから。

 

ED:Brave Love, TIGA!〜Aqours Ver.〜




次回予告

「一緒にスクールアイドルやりませんか⁉︎」

「ごめんなさい‼︎」

梨子にしつこくスカウトする千歌。さてさてどうなる?

「何故かこの学校に転入することになった円大吾です。よろしくお願いします」

「な、なんでダイ君がここに⁉︎」
ついに大吾の転入先が判明。大吾は新天地でやっていけるのか?

「久しぶりね、大吾くん」

「あなたとはお久しぶりなんだけど、はじめましてかしらね」

大吾に話しかける梨子と謎の美少女。彼女たちと大吾の関係が気になってしょうがない千歌と曜。

次回 ティガライブ!サンシャイン‼︎
第7話 転校生をつかまえろ‼︎


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第7話 転校生をつかまえろ‼︎

みなさん、長らくお待たせ致しました(^ ^)

そしてこんなに更新しなくて申し訳ありません(−_−;)


今回は戦闘描写ありませんが、一応この作品の舞台の地球に、現時点で集まっているウルトラマン達が変身前の姿で勢揃いします。


そして皆様が気になっているであろう今作のもう1人の主人公となる、ネクサスと一体化したデュナミストも最後の方でチラッと登場します(^ ^)

あと、後半グダッていますが、そこはご了承ください(−_−;)

それでは、本編スタート!!!





前回のティガライブ!サンシャイン‼︎

春にスクールアイドルμ'sを知った千歌ちゃんは、自分の学校にスクールアイドル部を決意した。

 

「受け取れませんわ」

 

その時、千歌ちゃんは東京からピアノをやってるという女の子と出会い、スクールアイドルへの想いを話す。

 

「離して!」

 

「私も仲間と一緒に頑張ってみたい」

 

スクールアイドルを始めるため、作曲をできる人を探していた千歌ちゃん。海で出会った女の子、梨子ちゃんが転校してきた。

 

「奇跡だよ!」

 

さらにそんな私たちの日常に火山怪鳥バードンが襲来。一度はティガが撃退したんだけど、予想より早く戻ってきたの。

 

「キュオォォォン‼︎」

 

「チャァッ‼︎」

 

ティガもダメージが残っている状態で戦ったんだけど、絶体絶命のピンチに。そこに現れたのは、なんと銀色の巨人、ウルトラマンネクサスだった。

 

「シェアッ‼︎」

 

ティガとネクサスは協力してバードンを倒し、再び平和が戻ったんだ。

あ、私は渡辺曜だよ。よろしくね、ヨーソロー‼︎

 

梨子side

これはまだ桜内梨子が東京にいた頃のお話である。この日はピアノコンクール。その出場メンバーの中に彼女の名前があった。

 

「音ノ木坂学院高校1年、桜内梨子さん。曲は『海に還るもの』」

 

会場アナウンスから名前を呼ばれ、ステージのピアノに向かう梨子。見に来ていた客はたちまち拍手を送っていた。

しかし、いざピアノを弾こうとすると、指が震え出し、そのままプレッシャーに飲み込まれてしまった。会場にはざわめきが起こった。

そして現在。かつてと同じように梨子はピアノを弾こうとした。だが、先ほどのことがトラウマとなり、スランプに陥っていた彼女は弾くことができない。彼女はベランダに向かうと、手前の家の窓を見ていた。

 

梨子side out

 

 

OP:青空Jumping Heart

 

 

第7話 転校生をつかまえろ‼︎

 

 

「ごめんなさい」

 

「だからね、スクールアイドルっていうのは・・・」

 

今日、浦ノ星女学院にやってきた桜内梨子は第一声で、断った。その相手は高海千歌、とそれに付き合っている彼女の親友渡辺曜である。曜の方は、苦笑いしており、千歌は食い下がることなく、梨子にスクールアイドルについて教えようとしていた。まあそんな彼女をスルーしていったのも、梨子であった。

 

「ごめんなさい」

 

「学校を救ったりして、すごく素敵で〜!」

 

場面が変わり、食堂。またもや梨子の前に現れ、スクールアイドルについて教授していた。梨子は飲んでいたお汁粉の缶をやや強めに

テーブルに叩きつけ、無言で立ち去っていった。千歌は再び、ガックリとうなだれるとであった。

 

「どうしても作曲出来る人が必要で〜!」

 

「ごめんなさ〜い‼︎」

 

「あだっ⁉︎」

 

体育の時間では、ランニング中に梨子を勧誘する千歌。梨子も謝りながら逃げていき、それを追いかけようとしてその場で派手に転んでしまう千歌。その様子を見守っていた友人たちにすら、呆れられる始末であった。

 

「まただめだったの?」

 

「うん!でもあと1歩、あと一押しって感じかな」

 

「本当かな〜?」

 

場面が変わり、休み時間。中庭にてステップの練習する千歌と曜。どうやらまた失敗してきた千歌に曜が問うが、なぜか自信満々な千歌にジト目を、冷や汗を流しながら視線が送る曜だった。

 

「だって最初は・・・」

 

「ごめんなさい!」

 

本当に申し訳なさそうな笑顔で謝る梨子。

 

「だったのが、最近では」

 

「うぅ・・・、ごめんなさい・・・」

 

「になってきたし‼︎」

 

本当に嫌そうな感じで謝る梨子。どうみてもいやがってるので、勧誘失敗していく未来した見えないのだが。

 

「いやがってるようにしか思えないんだけど」

 

「大丈夫!いざとなったら、ほい!なんとかするし!」

 

「それはあんまり考えない方がいいかもしれない」

 

さらに千歌は、前回出てきた音楽の教科書をどこからか取り出し、またもや自分が勉強して作曲するつもりらしい。この子は学習能力という物がないのだろうか?

 

「それより、曜ちゃんの方は?」

 

「あぁ、描いてきたよ!」

 

千歌が曜に尋ねると、2人は教室に戻り、ある絵を見ていた。それは曜が描いてきたスクールアイドルの衣装の絵だった。絵はいいのだが、描かれているものはちょっと独特だった。車掌、婦警さん、サバゲースタイル(しかもライフル装備付き)の三連星というコンボだった。実は曜は制服が趣味なのだが、にしてもこれは衣装向きではない。特に最後のは。

 

「もうちょっとスクールアイドルっぽいのないの?」

 

「じゃあこれかな?」

 

千歌に言われて開いたページには、いかにもアイドルという可愛らしい衣装の絵が描かれていた。これがあるなら最初からそれ見せればいいのに。

 

「うるさいよ、ナレーションの人」

 

「どしたの、曜ちゃん?」

 

「ううんなんでもない」

 

「ならいいけど。ところでこれ本当に作れるの?」

 

「もちろん。なんとかなる!」

 

「本当⁉︎よ〜し、くじけてる訳にはいかない‼︎」

 

この絵の通りに衣装を作れるとは何気にこの子すごいスキルの持ち主である。親友の心強い言葉を受け、何か決意した千歌はある所へ向かった。

 

「お断りしますわ!」

 

「こっちも⁉︎」

 

「やっぱり・・・」

 

生徒会室だった。この子は思いつくとすぐ行動するのはいいのだが、何故こうも無謀なのだろうか?明らかに今行っても断られるのは分かっているだろうに。

 

「5人必要だと言ったはずです。それ以前に作曲はどうなったのです?」

 

「それは〜、多分、いずれ、きっと、可能性は無限大!」

 

生徒会長であるダイヤに問われ、しどろもどろに答える千歌。そういえば、このスクールアイドル部(仮)は何1つ条件満たしていないんだった。しかし、この空気がこの後のセリフで急変するのだった。

 

「でも最初は3人しかいなくて、大変だったんですよね?''ユーズ''も。知りませんか?第2回ラブライブ優勝、音ノ木坂学院スクールアイドル''ユーズ''」

 

それはかつてこの世界で伝説となりつつある2大スクールアイドルの片割れの名前をあろうことか間違えたのである。まあ普通ならスルーするところなのだが、ダイヤは明らかに雰囲気が豹変していた。千歌は全く気付いていなかったが、隣にいた曜は完全に気付いており、なんとか千歌を抑えようとした。

 

「それはもしかして、''μ's''のことを言ってるのではありませんですわよね?」

 

「もしかしてあれ、''ミューズ''って読む・・・」

 

「お黙らっしゃ〜〜い!!!」

 

という叫び声と共に鳥が飛んで行った。時は流れ、放課後、校門前でバスを待つ千歌と曜。

 

「だって〜。前途多難すぎるよ〜」

 

「じゃあ〜、止める?」

 

「止めない!」

 

「でも具体的にこれからどうするの?」

 

「そこなんだよね〜。ダイ君、ダイヤさんと知り合いなら何かいい手段ないの?」

 

「なんでそこで僕なの?」

 

落ち込む千歌に曜はいつものように鼓舞する。曜いわく、千歌ちゃんがやる気の時はこの言葉が1番効くらしい。そして何故ここに今までいなかったはずの大吾がいるのか?一度ここは先ほどの生徒会室のところまで時間をさかのぼって見てみよう。

 

「言うに事欠いて、名前を間違えるですって⁉︎ああん‼︎⁉︎」

 

何故かμ'sの名前を千歌に間違われて、少しご立腹なダイヤ。千歌はどんどん近づいてくるダイヤに困惑し、曜はどうしようか、と考えながら困惑していた。

 

「μ'sはスクールアイドル達にとって、伝説、聖域、聖天、宇宙にも等しき生命の源ですわよ⁉︎その名前を間違えるとは。片腹痛いですわ」

 

「ち、近くないですか?」

 

そして場面は再び放課後。千歌は知り合いを見つけたらしく、元気よく話しかけるのだった。

 

「あ!花丸ちゃんだ!おーい‼︎」

 

「こんにちは」

 

「はぁ〜〜。やっぱり可愛い〜・・・、ん?ルビィちゃんもいる〜‼︎」

 

「ピィ⁉︎」

 

それは入学式の時にスカウトしたことがキッカケで知り合った花丸とルビィの2人だった。

 

「ふん。その浅い知識だと、たまたま見つけたから軽い気持ちでマネをしてみようと思ったのですね?」

 

「そんなこと・・・」

 

「ならば、μ'sが最初に9人で歌った曲は?答えられますか?」

 

「え、えっと・・・」

 

「ブー!ですわ」

 

再び生徒会室。μ'sのファンでありながら、あまりにも知識がなさすぎる千歌に対し、キツめの辛口コメントを述べるダイヤ。これには千歌も言い返そうとするが、ダイヤは新しい問題を出した。千歌は答えようとするが、すぐさま時間切れとなった。

 

「ほ〜ら、ほら。怖くな〜い。食べる?」

 

「わぁ」

 

「よっ、ほっ、ル〜ルルル〜、ふっ、と〜りゃっ!捕まえた!」

 

そして再び校門前。千歌はどこからともなく出したアメをルビィに差し出すと、ルビィは人見知りゆえにやや警戒しながら千歌を見つめ、アメを見つけるとまるで小動物のようにアメを手に入れようと近づいていった。そして、千歌はタイミングを合わせ、アメを空高く投げ、ルビィの視線がアメの方に向いた瞬間に、抱きついた。そしてそのアメはルビィの口へとうまく着地するという奇跡も起きた。

 

「いや、ルビィちゃん。いくらアメがそこにあったからって、すぐついてっちゃダメだよ?」

 

さすがに大吾はこのルビィの一連の行動を注意しようと声をかけると、ルビィは大吾の顔を見るなり、顔を真っ青にした。その瞬間、抱きついていたはずの千歌を含め、周りにいた女子たちはみな、両耳を塞いだ。

 

「ピギィィィィィィ!!!男の人〜〜〜!!!」

 

大吾が自分以外のメンバーが耳を塞いだのを不審に思った瞬間、とんでもない声量でルビィが絶叫した。大吾はそれに気圧され、その場に膝をついた。

 

「そういえばルビィちゃん。極度の人見知りで、極度の男性恐怖症だったの忘れてた。それでもさすがにこれはこたえるな〜」

 

「ル、ルビィちゃん。大吾さんだよ?この前も会ったのに忘れたの?」

 

「え?あ、大吾さん。お久しぶりです・・・」

 

「うん、久しぶり」

 

ルビィに絶叫され、ちょっと涙目になる大吾。それを見た花丸はルビィに近付き、相手が大吾であることを伝える。するとルビィは大吾だということにやっと気づき、赤面しながら挨拶してきた。大吾はまだ立ち直れないのか、若干涙を流しながらこれに答える。

 

「大吾さん、お久しぶりず・・・、です」

 

「今方言出そうになったね、花丸ちゃん」

 

花丸も大吾に挨拶するが、いつもの癖で方言が出そうになり、大吾に指摘され、やや赤面するのだった。

 

「【僕らのLIVE 君とのLIFE】通称ぼららら。次、第2回ラブライブ予選でμ'sがA-RISEと一緒にステージに選んだ場所は?」

 

「ステージ?」

 

「ぶっぶ〜、ですわ。秋葉原UTX屋上。あの伝説とも呼ばれるA-RISEとの予選ですわ。次、ラブライブ第2回決勝。μ'sがアンコールで歌った曲は・・・、「知ってる。【僕らは今のなかで】‼︎」・・・、ですが」

 

再び生徒会室。先ほどの問題の答えを述べるダイヤは、第2問の問題を出すも、千歌は答えられず、というより答える間もなくダイヤが次の問題に移った。それは分かるのか千歌は右腕を高く上げながら答えた。その瞬間ダイヤは、千歌の方に顔を向けた。

 

「スクールアイドル?」

 

「すっごく楽しいよ。興味ない?」

 

「いえ、丸は図書委員のお仕事があるズラ・・・、いや、あるし」

 

「そっかぁ。ルビィちゃんは?」

 

「え⁉︎ルビィはその、お姉ちゃんが・・・」

 

「お姉ちゃん?」

 

「ルビィちゃん。ダイヤさんの妹ズラ」

 

「生徒会長の⁉︎」

 

「なんでか嫌いみたいだもんね。スクールアイドル」

 

再び放課後。バスに乗り、帰路につく千歌たち。千歌はいつものごとく、ルビィと花丸を勧誘するも、それぞれの理由で断られてしまう。しかも、ルビィはダイヤの妹であることが発覚したのである。千歌はこれに驚き、隣に座っていた曜が発言し、その発言にルビィは俯いた。しかし、その曜の発言を否定する者がいた。そう、大吾である。

 

「別に嫌いってわけじゃないよ」

 

「え?」

 

「どういうこと、ダイ君?」

 

「いや、気にしないで。ところで2人とも、1ついいかな?」

 

「「?」」

 

「いつになったら、この縄解いてくれるの?」

 

「駄目。私たちの知らないところで、たくさん女の子の友達作ってた罰」

 

「なにそれ、すげえ理不尽なんだが」

 

 

 

ーードクンッ

 

 

 

「⁉︎」

 

大吾は何か思うことがありそうな語り方をしたのだが、すぐに誤魔化した。よくよく見てみると大吾は何故か両腕を縄で縛られている状態になっており、どこかへと連行されているような絵面となっていた。大吾は幼馴染である千歌たちに解くよう頼むが断られてしまう。そんな時、今まで感じたことのない不快な感覚が大吾を襲った。

 

「どうしたの?」

 

「い、いや、なんでもない・・・。(なんだ今の?)」

 

大吾の変化に気づいた曜が、大吾に話しかけるが大吾は平静を装って嘘をついた。曜はなぜか残念そうな顔をしたのだが、今は大吾を信じることにして引き下がった。

 

「ですが、曲の冒頭でスキップをしている4人のメンバーは?」

 

「えええっ⁉︎」

 

再び生徒会室での場面。先ほどの問題の続きを述べるダイヤ。まさかの難問に声をあげる千歌に近づきながら、ダイヤの口からまたまたあのワードが出た。

 

「ぶっぶっぶ〜、ですわ‼︎正解は・・・、「絢瀬絵里、東條希、星空凛、西木野真姫」・・・、その通りですわ。この問題を軽く正解するとはやりますわね、大吾さ・・・、ん?大吾さん?」

 

「「え⁉︎」」

 

ダイヤが問題の答えを述べようとした瞬間、ある別の声が聞こえてきた。その声の主を知っていたダイヤはそのまま続けようとしたが、ふと我に返り、確認するようにそちらに視線を送った。同時に千歌と曜もその声の主に気づき、同じく視線を送った。3人の視線の先である入り口には、本来女子校にいないはずの男子、円大吾が立っていた。

 

「「「な、なんでダイ君(大吾くん)(大吾さん)がここにいるの⁉︎(いるんですの⁉︎)」」」

 

「なんでって言われても。明日からこの学校の生徒になるからとしか言えないんだよなぁ。あと、さっきから校内放送で一部始終流れてたよ?ここまでのくだり」

 

「え⁉︎」

 

3人から質問が飛んできて、それに答える大吾。サラッととんでもない事実が返ってきたが、大吾は気にすることなく続けた。大吾の指摘にダイヤは慌てて、千歌がいたあたりに駆け寄った。ダイヤはある棚の上に視線を送ると、電源が入っていたマイクに気づき、速攻でスイッチを切るのであった。

 

「ゴホン。とりあえず、大吾さん。先ほどこの学校の生徒になると言ってましたが、まさか女装趣味があったのですの?」

 

「な訳あるか!まったくダイヤちゃんは、本当に変わらないね」

 

「うふふ、冗談ですわ。大吾さんのそのツッコミのキレも変わりませんわね」

 

「基本的に君たちにしかやってないけどね」

 

「え⁉︎ダイ君、ダイヤさんと知り合いなの⁉︎」

 

「そうだよ」

 

ダイヤはわざとらしく、咳払いすると大吾の方に向き直り、大吾と共に他愛ない会話を始めた。千歌は2人が知り合いなのかを大吾に問い詰めた。大吾はこれに肯定した。

 

「ところでダイヤちゃん。1問目と2問目はまだ分かるけど、3問目は答えられる人あまりいないよ?」

 

「何言ってるんですの?あんなの一般教養ですわ!」

 

「いや一般教養ではない」

 

「ま、まぁいいですわ。とりあえず、あなた方の申請は今回も却下させてもらいますわ‼︎」

 

「ええええ⁉︎」

 

ということがあり、現在に至る。あのあと、帰る前にもう一度生徒会室に行ったが、即却下されてしまった。大吾はその間に手続きを行い、律儀に千歌と曜の授業が終わるまで、生徒会室で待っていたのは別の話。

 

そして場面はバスを降りた千歌と大吾に戻る。千歌はバスから降りると、海辺に1人立っていた1人の少女に声をかけた。

 

「桜内さーん!」

 

「はぁ・・・」

 

「まさかまた海に入ろうとしてる?」

 

「してません!!!ていうか、そこに男の人いるのに、なにするの⁉︎」

 

「大丈夫。ダイ君だもん。ね、ダイ君?」

 

「どういう理屈⁉︎」

 

その少女の正体は桜内梨子であった。梨子は千歌の登場に若干ため息を吐いた。その瞬間、千歌はいつの間にもう後ろまで来て、なんと梨子のスカートをめくったのである。これは距離的に大吾にも見えるため、梨子は千歌に注意した。大吾ももちろん見ていた。梨子のスカートの中・・・、ではなく上空に現れたウルトラサインを。

 

「ごめん。話聞いてなかった。何の話?」

 

「何でもないです。本当に見てませんよね?」

 

「いやだから何が⁉︎」

 

「はぁ。大体ね、こんなところまで付いて来てもアイドルはやらないわよ」

 

「え?ああ、違う違う。通りかかっただけ」

 

「いや無視かよ。まぁいいや。とりあえず、千歌ちゃん。ちょっと野暮用思い出したから先帰ってて」

 

大吾は話の展開がよく分からないまま、この場を去り、ある場所へと向かった。千歌はそんな大吾を怪訝に思いながらも見送り、再び梨子の方を向いた。

 

「そういえば、海の音聞くこと出来た?」

 

「・・・・」

 

千歌は梨子に尋ねた。しかし、梨子は少しだけ悲しそうな顔をするだけであったが、千歌は少しだけ微笑みこう言葉を続けた。

 

「じゃあ、今度の日曜日空いてる?」

 

「どうして?」

 

「お昼にここに来てよ。海の音、聞けるかもしれないから」

 

「聞けたらスクールアイドルになれ、って言うんでしょ?」

 

どうやら彼女は、今の梨子の悩みをどうにかしたい、と考えていたらしい。そのために日曜日に彼女を誘ったのだ。梨子もそれには気づいていたのか、冗談混じりで言葉を返す。千歌は少しだけ悩んだ感じを醸し出しながら、梨子の方に顔を向ける。

 

「うーん。だったら嬉しいけど、その前に聞いて欲しいの。歌を」

 

「歌?」

 

「梨子ちゃん、スクールアイドルの曲全然知らないでしょ?だから知ってもらいたいの。駄目?」

 

千歌の言葉を聞いた梨子は一息つくと、海を見ながら、こう言葉を続けた。

 

「ふぅ。あのね、私ピアノやってるって言ったでしょ?」

 

「うん」

 

「子供の頃からずーっと続けてたんだけど、最近いくらやっても上達しなくて、やる気も出なくて。それで、環境変えてみよう、って。海の音を聞ければ何かが変わるのかな、って」

 

梨子は目の前の海に両手をつかもうとするように出した。しかし、現実はそう簡単ではない。そう感じた梨子の目はどこか悲しげだった。その時、その手を握ったものがいた。そう、千歌である。

 

「変わるよ、きっと」

 

「簡単に言わないでよ」

 

「分かってるよ。でも、そんな気がする」

 

「変な人ね、あなた。とにかくスクールアイドルなんてやってる暇ないの、ごめんね」

 

「分かった。じゃあ、海の音だけ聞きに行ってみようよ、スクールアイドル関係無しに」

 

「え?」

 

「それならいいでしょ?」

 

梨子は目の前に少女の優しさに感銘を受けた。最初は何度も何度も勧誘してくる迷惑な人だと感じていたが、今はそう思ってない。

 

「本当、変な人」

 

その一言に、今の梨子の千歌の人柄の良さに対する評価が含まれていた。

 

 

 

前半part 終了

 

 

場面が変わり、ここはいつもの裏山。ここを大吾はあることを考えながら、歩いていた。

 

(さっきのウルトラサイン、ダイゴさんのじゃなかった。じゃあ、あれはエックスさんの物か?)

 

大吾がウルトラサインを見るのは今回で2度目。以前は先代ウルトラマンティガであるダイゴのものだったが、今回は全く違うものだった。さらに、大吾にはもう1つ不可解なことがあった。それは先ほどバスに乗っていた時に感じた感覚である。

 

「まあ、ウルトラサインで呼ぶってことは、ある程度重要なことだろう。さてと、そろそろ指定の場所なんだけど」

 

「お、来たようだね」

 

大吾が周りを見渡すと少し先の広場で、4人の青年が立っていた。そのうち2人は以前にも会っていたマドカ・ダイゴと大空大地の2人なのだが、残り2人は初対面にあたるため、大吾は誰だか検討つくことが出来なかった。しかし、その2人が来ているスーツに見覚えがあり、ある2人の戦士を思い出した。

 

「そういえばそっち2人はこれが初対面だったね。でも2人が着ている服には見覚えあるんじゃないか?」

 

「はい。そちらのスーパーGUTSの隊員服の方は、ウルトラマンダイナのアスカ・シンさん。そしてそちらの青い服の方がウルトラマンコスモスの春野ムサシさん・・・ですよね?」

 

「正解だ、ルーキー」

 

「君の戦いは、ずうっと見ていたよ」

 

そう、それはかつて様々な宇宙の地球に現れ、平和を守ったウルトラマンダイナことアスカ・シンと慈愛の勇者ウルトラマンコスモスこと春野ムサシだった。

 

「すげえ。本物のウルトラマン達がこんなに・・・、じゃあさっきのウルトラサインはアスカさんたちのですか?」

 

「いや、あれは俺のウルトラサインだ」

 

元々ウルトラシリーズのファンである大吾にとって、ダイゴを始めとしたレジェンドとも呼べる戦士たちがこの場に集まっているという状況は神に出会うのとほぼほぼ等しい。大吾が感激しているとここからまた別の声が聞こえた。そちらの方に顔を向けると見知らぬ男性が立っていた。

 

「えっと・・・、あなたは?」

 

「なんだ、そっち2人はすぐに気付いたのに俺のことは分からないのか?」

 

「仕方ないさ。大吾、彼の右手首の部分を見てみな」

 

大吾は誰なのか本当に分からなかったのか、訝しげにその男を見ていたのだが、ダイゴの言葉通り男の右手首の方に目線を送る。そこにあったあるアイテムを見た瞬間、1人の戦士を思い出す。

 

「それってもしかして、アグレイター⁉︎って事は、ウルトラマンアグルの藤宮博也さん⁉︎」

 

「その通りだ。よろしくな」

 

「いいなぁ、僕なんて自己紹介するまで全然気付かれなかったのに」

 

《君の場合は、XIOの隊員服を着てなかったからだ。着ていたら、大吾くんだって気付いただろう》

 

「すいません、大地さん」

 

ようやく自分自身に気付いた大吾に、優しい声色で応じる。大地は自身は初めて会った時は気付いてもらえなかった事をちょっと根に持ってたようで、これには大吾も速攻で頭を下げた。

 

「さて、大吾。君をここに呼んだのは、さっき君も感じたであろう感覚の正体についてだ」

 

ダイゴが真剣な表情になり、説明を始めると談笑していたアスカたちもそちらの方に顔を向ける。大吾もただならぬ雰囲気を感じ取り、真剣な表情になる。

 

「はい。あんな感覚初めて感じました。まるでなんとも形容しがたい不快な感覚でした。あれは一体・・・?」

 

「あの感覚の正体は、スペースビーストだよ」

 

「スペースビーストって、あのウルトラマンネクサスが戦った⁉︎」

 

「そう、そのスペースビーストだ」

 

大吾はずっと疑問に思っていた、感覚の正体について質問するとムサシが答える。返ってきた答えに動揺する大吾。スペースビーストを詳しく説明すると長くなるので、掻い摘んで説明しよう。

 

スペースビーストとは、ウルトラマンネクサスで登場した怪獣達のことである。正確には怪獣ではなく謎の生物群だが、自分たち以外の動物(ネクサスの劇中では、人間がターゲット)を捕食し、進化し続ける。その禍々しい姿から、当時子供達から本当に怖がられていたことでも有名である。さらに、ネクサス放送終了から、10年経ったウルトラマンXでも1度だけ登場し、Xとネクサスの共闘により倒された。一応ネクサス本編で黒幕でもあるダークザギは倒されているのだが、生き残りがいるため、ネクサスは様々な宇宙に現れている(関係ないが、ウルトラマンダイナのスフィアも生き残りが存在している)。スペースビーストの詳しい設定を知りたい方は、Wikipediaを見る事をオススメする。

 

「ネクサスが現れた時にもしかしたら、とは思っていたんですが、本当に出現していたとは」

 

「一応スペースビースト自体は、大吾が東京でキリエロイドと戦った辺りからすでに出現していたんだ」

 

「え⁉︎そんな前から⁉︎でも1度も感じた事ないですよ?」

 

「それはお前がまだウルトラマンとして未熟だからだ。だけど、お前も感じるようになったことがダイゴのスパークレンスを通して知った俺たちはお前を呼んだんだ」

 

「ああ、なるほど。いまいちよく分かってないけど、ウルトラマンだからってなるとなんでもありって気がしてきました」

 

大吾は、あまりの情報量の多さに頭がパンクしそうになるが、なんとか話についてこれていた。

 

「スペースビーストは一体なぜこの世界に現れたんでしょう?」

 

「おそらくヤプールがなんらかの形で連れてきたんだろう。あのネクサスが出張ってるところを見るとかなりの数だと思う」

 

「そういえば、今までもスペースビーストは現れていたんですよね?さすがにこの街で戦ってたら、気付かれるはずです」

 

「それは簡単さ。全部ネクサスが倒していたのさ。そのうち何体かは僕らも共に戦ってたんだけど」

 

大地が質問を投げかけると、それに答えるアスカ。大吾も質問すると、今度はムサシが答える。その発言にとんでもない情報があった。そう、ネクサスと共に他のウルトラマン達も一緒に戦っていたのだ。大吾が目線を送ると、ダイゴを含めた全員が頷いた。つまり、ネクサスとダイナ、ネクサスとコスモス、といった組み合わせで一緒に戦っていたということである。

 

「待ってください。てことはもう、デュナミストの正体が分かったんですか⁉︎」

 

「ああ、少なくとも今ここにいるメンバーは全員知ってるよ」

 

「一応あいつにも来るように言ったんだが、来る気ないみたいだな」

 

「まあ、彼女の場合はしょうがないのかもしれませんね」

 

大吾はもうすでに会話についていけなくなっていた。まさか自分の知らない所で、すでにウルトラマン達が戦っていたこと、そして自分がずっと探していたデュナミストの正体を突き止めていたことに言葉を失っていた。

 

「もう暗くなってきたし、今日はここまでにしよう。だが大吾、これだけは覚えておけ。スペースビーストは人間に対して、容赦ない。もし、君の友人が襲われたら、君の正体がバレてもいい。なんとしても守れ!」

 

「はい、肝に銘じます‼︎」

 

ダイゴは空を見上げ、この会合をお開きにしようとする。やはり、最年少の大吾がまだ一介の高校生であることを垣間見てもこれ以上長居させるのは良くないと感じ、他のメンバーも頷く。そしてダイゴは大吾に言葉を送ると大吾は頷きながら返事をし、その言葉と共に大吾を除いたメンバーは光に包まれ、何処かへと飛んで行った。

 

 

 

そして、彼らは気づいてなかった。それを見ていた1人の少女がいたことを。

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日。ここは浦ノ星女学院の千歌と曜、梨子がいるクラスの前の廊下。大吾は私服で廊下に立っていた。なぜ私服なのかというと急遽決まった男子学生のテスト生であるため、準備が間に合わなかったからである。中から担任の教師から呼ばれ、大吾は緊張しつつも若干リラックスして入って行った。入った途端、あちらこちらから「カッコイイ」とか「優しそう」などといった感想が聞こえてきた。

 

「今日からこのクラスで1年間お世話になる、円大吾です。よろしくお願いします」

 

大吾が自己紹介を終えると、千歌と曜が拍手を送り、続けてクラス全体から拍手が響いた。担任が席を指定すると、そこは千歌、曜、梨子の席の間だった。大吾がそこの席に向かうと、梨子が大吾に話しかけた。

 

「久しぶり、大吾くん。私のこと覚えてる?」

 

「君は確か・・・、昨日海辺にいた・・・」

 

「そうだよね。あれから6年経ってるんだもん。分かるわけないか」

 

梨子は若干悲しげな表情をし、大吾は申し訳無さそうにしたが、彼女の髪飾りを見たとき、1人の少女との思い出を思い出す。

 

「その髪飾り・・・、昔僕があげたやつだ。じゃあ君は、もしかして桜内梨子ちゃん⁉︎」

 

「やっと思い出してくれたのね。良かった」

 

「いや、全然気づかなかったよ。そうか、君が千歌ちゃんが言ってた東京から来た女の子だったのか」

 

大吾がようやく思い出してくれたことで若干顔を赤くしながら笑顔になる梨子。その様子を後ろから見ていた千歌と曜の2人は大吾に尋ねる。

 

「え?ダイ君、桜内さんと知り合いなの⁉︎」

 

「うん。僕がまだ東京にいた頃の同級生で、近所に住んでたんだ。あの頃と雰囲気変わってたから、本当に分からなかったけど」

 

大吾は本当に申し訳無さそうに梨子に、頭を軽く下げると梨子も笑顔で会釈した。その様子を見て、千歌と曜はあることに気づいた。

 

((この人も、私たちと同じだ))

 

これがどういう意味なのかは、大吾以外はみんな気付くだろう。その後、ホームルームとして、大吾の歓迎会が開かれた。まあほとんどは、女子たちによる質問責めであったが。内容としては、「彼女はいるのか?」とかそういう感じのだった。

 

ホームルームが終わり、休憩時間になると、1人の少女が大吾に近づいていた。その少女は、千歌や曜、梨子同様超が付くほどの美少女だった。

 

「えっと、はじめまして。私は柳瀬伶奈。このクラスの学級委員を勤めてます。先生から、高海さんたちと一緒にあなたのフォローを任されました。何か困ったことがあったら、いつでも相談してね」

 

「あ、はい。よろしく」

 

「こちらこそ・・・、っと!」

 

柳瀬伶奈と名乗ったその少女は、一通り自己紹介すると大吾に右手を差し出したよ大吾も応じるように、右手を出すと、伶奈がその右手を思いっきり自分の方に引っ張り、大吾の右耳の方に顔を近づけ、そして信じられない言葉を発した。

 

 

 

ーーー久しぶり、ウルトラマンティガさん?

 

ED:Brave Love, TIGA!〜Aqours Ver.〜




次回予告
BGM:ウルトラマンティガ次回予告

「なぜ君は、僕がウルトラマンだと知っている?」

「その質問に答える義務は無いわね」

放課後、屋上に伶奈を呼び出した大吾。なぜ彼女は大吾がティガであることを知っているのか?

「聞こえた?海の音?」

「ダメ、全然聞こえない」

日曜日、海に出る千歌、曜、梨子。果たして目的の海の音を聞くことが出来るのだろうか?

「あれは、ブロブタイプビーストペドレオン⁉︎」

「シェアァッ!!!」

「君がデュナミストだったのか⁉︎」

ついに大吾たちの前にスペースビースト襲来。そしてネクサス再び登場。果たしてデュナミストの正体は一体?

次回、ティガライブ!サンシャイン‼︎

第8話 海の音


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