ヒカセンの紀行録 (Lavian)
しおりを挟む

第1話 朝起きたらヒカセンになってた

小説初心者なので大目に見てください。
3話分程度のストック終了後、遅筆になります。


 『朝起きたら自キャラになってた』

 

 懐かしいフレーズだ。FF11をプレイしていた頃は、スレを開くのを楽しみにしていた。もし自分がFF11の自キャラになったら、どんなことをしようかってワクワクしていたっけ。

 

 時代が変わって、FF11からFF14になって。根性版から新生になって、蒼天のイシュガルドになって。スレが無くなっても、ゲームの中へ行きたいって気持ちは変わらなくて。そうなったらいいな、って思いながら毎日を過ごしてた。

 

でも、まさか本当に。

 

「私がFF14の自キャラになるとはな……」

 

 大剣の刀身を鏡代わりに自分を映してみれば、そこにいるのは金髪幼女。もう少し詳しく外見を説明すると、金髪で髪型はライトニングさん。瞳は真紅。ララフェル特有の小柄な体系に、絶壁の胸。衣服はミラプリしたハイアラガンタンク装備の暗黒騎士だ。これらの特徴は、FF14のマイキャラ『セラ』に一致する。

 

「本当に『セラ』になるのであれば、ララフェルではなくミコッテにすべきだった……」

 

 現実の私は小柄で貧乳で童顔だ。もう大学生なのに中学生に間違われるぐらいに。ララフェルが可愛くて選んだが、ゲームの中でぐらい理想のスタイルにすれば良かった。幻想薬は1個も所持していないので、スタイルの変更は絶望的である。なんてこった!

 

 そんな余計なことを考えるぐらい私が落ち着いているのは、常日頃からFF14の世界に行ったらどうするかを考えていたからである。つまりは、事前にこういう事態を想定していたということだ。流石は私。まずは夢か現実かのチェック判定の定番、ほっぺをつねるを実行。痛かったからこれは現実で、今の私は紛れも無くララフェルなのだ。現在地は部屋の雰囲気から、リムサ・ロミンサの宿屋『ミズンマスト』と思われる。

 

 こうなってしまった心当たりは全く無い。昨日は特別な事なんてしてないし、FF14のプレイだっていつも通りアレキ零式に挑んで返り討ちにあってぐぬぬしていた程度だ。そうして一晩寝て、起きたら幼女化してゲーム内にいたのだ。つまり、リアル側には一切手がかりなし。

 

「ひとまず、自分の外見チェックは終わった。次は状況確認だな」

 

 鏡代わりの大剣を置いた私は、部屋のテーブルの上に置かれている『愛用の紀行録』を開く。『愛用の紀行録』はゲーム内で過去のイベントムービーを振り返りたい時に使用するアイテムだ。これを読めば、『セラ』の過去の行動がわかるというワケだ。

 

 しかし、期待して本を開いたが、中身はほとんど真っ白。読み取れることと言えば、帝国の仕官学校を飛び出した『セラ』は冒険者になるべくリムサ・ロミンサを目指し船に乗る。船の旅は順調で、何事も無く、昨日リムサへ到着。街に着いたセラはこの宿屋・ミズンマストで一週間部屋を借りた。中身はその程度だ。

 

「まだ何の冒険もしていないのであれば、ゲーム開始時と同じ状況のはずなんだが」

 

 しかし、ゲーム通りであれば、船の旅は順調では無かったはずだ。ゲームでは海賊船と遭遇し、それを振り切るってリムサへ到着という流れだった。それが書かれていないのはどうなんだろう。それに、リムサに到着したばかりなら暗黒騎士Lv60のフル装備というのもおかしいのだ。『新米冒険者セラ』に『光の戦士セラ』が憑依したのか、あるいは『光の戦士セラ』の逆行強くてニューゲームなのか。あるいは、『光の戦士セラ』が突如この場に誕生したのか。

 

「ふーむ。いくら考えても、家の中にいるだけじゃ分からないか」

 

 結局のところ、ゲーム開始直後かどうかすら確証を持てない。実際に外で自分の足で情報を集めるしか無さそうだ。

 

 それにしても、口調がなんだかおかしい。『私』は普通の言葉で喋っているつもりなのに、なんだかクールでぶっきらぼうな口調になっている。

これは『セラ』の口調だ。ララフェルらしく無いのは放っておいて欲しい。身体だけじゃなく、性格や口調まで『セラ』になっている気がする。

 

「セラの性格は確か、クールだが正義感が強い。バトルマニア。ピーマンが苦手。身長が小さいことにコンプレックスを持っている。甘いものが大好きで、糖分を1日摂取しないと禁断症状が出る」

 

 過去の私よ。何故糖分が無いと禁断症状なんて設定にしたのだ。現実になるとやばいぞこれは。

 

「他の設定は……帝国の貴族出身で、家を捨てて冒険者になるべく旅に出た。ピンチになるとオッドアイになり、魔眼が発動して戦闘能力アップ」

 

 ろ、ろくでもない……過去の自分を殴りたい。TRPGのキャラをベースにして作ったのがまずかった。邪鬼眼はまだいい。帝国貴族出身とか厄介ごとのフラグしかないぞ。しかも、貴族出身というだけで他はさっぱり決めてない。何家出身なんだよ、私。

 

「設定はまだまだあるけど、今はやめておこう。次は所持品の確認だ」

 

 所持品の確認といっても、いわゆるアイテムボックスはどうなっているのか。小さな道具袋があるのだが、これに全部詰まっている……?

 

「そうか、こういう時は定番の……アイテムウィンドウ、オープン!」

 

 叫んでみたら、本当にアイテムウィンドウが出てきた。テンプレは偉大である。所持品は道具袋に入っているが、これはいわゆる四次元ボックスだった。重さも感じず、アイテムが何でも100種類入る魔法の袋。ギアセットも似たような感じで、問題なく他の職業へジョブチェンジ・装備変更可能だった。アイテムの確認が終わったら、次は魔法。そして、ウェポンスキル。室内で使えそうなものを選んで順番に試していくと……

 

 結論、全部使えた。結構適当だな、この世界。

 

 超える力についても、上手く言い表せないが『持っている』感覚がある。魔法や装備を確認した私は、行動方針を考える。

 

「戦闘力は問題なし、というかレベル60だし冒険者としてはトップクラスのはずだ。お金も3000万ギルあるし生活には困らない。できれば引きこもっていたいのだが」

 

 しかし、この世界で『何もしない』というのはリスクがある。

 

「仮にゲーム開始直後で私が光の戦士、もしくはその仲間というポジションだった場合、何もしなければ蛮神大暴れな上に帝国との戦争に負けかねん」

 

 放置の結果バハムート復活なんてことになったら笑えない。この世界の命運は光の戦士達の働きにかかっているのだ。そして、その光の戦士が自分なのか?というとそうとも言い切れない。FF14はネットゲーム。光の戦士は大量にいたし、この世界に転移して来ているのが私だけとも限らない。他のプレイヤーが光の戦士、私は無関係の村人Aという可能性も十分にありうる。

 

「超える力もあるようだし、私が光の戦士だったらストーリーをなぞるように動かねば。そうでなかったら、光の戦士をサポートする。そのためには、まず光の戦士の情報を集める必要があるというところか?もちろん、今がどの時期か確認してからだが」

 

 当面の方針としては、情報収集からスタート。とはいえ、いきなり冒険者ギルドへ行って冒険者登録とはいかない。私はこの世界をゲームでしか知らないのだ。できるだけゲームと今の世界との差異を確認したい。未知の世界では石橋を叩いて渡る必要がある。そのためには情報が必要だ。特に物価は最優先だ。相場を知らない人物なんて、箱入りお嬢様にしか見られないだろう。

 

「まず、リムサのマーケットへ行ってみるか」

 

 

 

 

 

 マーケットへやってきた私は、色んな店に並んでいる品物と値札を見比べた。相場はゲームと大分差があった。1ギル=1円という感じで、現実味のある値段になっていた。例えば、HQじゃなくてNQであっても極端に安くはならないし、武器防具が1000ギル(1000円)以下なんてことも無かった。相場については注意していないと大ポカしそうだ。気をつけよう。

 

 前から食べてみたかったエオルゼアスイーツを大人買いし、その後はリムサを一通り回ることにした。レストラン・ビスマルクで食事をし(ロランベリーチーズケーキは絶品だった!)鍛冶ギルドを見学し、巴術ギルドで一般常識や魔法、歴史の本を購入。ミズンマストへ戻ったら購入した本を読み漁り、この世界の知識を詰め込んでいく。

 

 

 

 

 

 

 そんな日々を1週間ほど過ごしたおかげで、とりあえずレベルの一般常識を身につけた。この世界の一般常識については、忘れていたことを思い出すようにすんなりと知識が身についた。『セラ』の知識については忘れているだけで、容易に思い出せるということらしい。また、情報収集の結果、現在がゲーム開始直後という確認もできた。次はいよいよ冒険だ。けれど、流石に一人でいきなり戦闘というのも不安である。ソロでの冒険は不安。なら護衛を雇えば良いと言うことで、私は溺れた海豚亭へ向かった。

 

 溺れた海豚亭へやってきた後は適当な席を選んで座り、料理を頼む。そうして食べながらこっそり周りの様子を観察していく。どうやら冒険者の依頼関連はミコッテのチャ・モクリという女性が仕切っているようだ。この冒険者ギルドのマスター、バデロンは挨拶や世間話ばかりしている。細かい依頼などは部下に任せているのだろう。

 

 観察を終え、料理を食べ終わった私は他の依頼者の真似をしつつ、チャ・モクリに話しかける。そのままだと、カウンターのほうが私の頭より高いので、カウンターに腕を置いて身を乗り出しながら。

 

 ……世の中はララフェルに厳しい。エオルゼアもバリアフリーを推進すべきである。

 

「すまん。依頼をしたいのだが」

 

 チャ・モクリを見上げながら尋ねる。

 

「ご依頼ありがとうございます。どのような種別の依頼でしょう。採集、製作、戦闘とありますが」

 

 私が声をかけると、チャ・モクリはにっこり笑って対応してくれる。揺れる猫耳。かわいい。

 

「戦闘系だな。モラビー造船処まで、徒歩で旅をしたくて護衛を依頼したい。旅慣れていないから、護衛しながら旅の仕方を説明してくれる人が良い。日程は明日の朝に出発を予定している」

 

 私の目的は冒険者の知識を得ることだ。そのためには、冒険者と一緒に旅をするのが丁度良い。そこで、近場のモラビー造船所まで冒険者を護衛として雇い、道中に知識を教えてもらうのが狙いだ。冒険者とのコネができるのも良い。

 

「わかりました。掲示板に張り紙を出しますか?もしくは、割高になりますが冒険者を指名することもできますよ」

 

 チャ・モクリはそう言うと、現在指名可能な冒険者と値段を教えてくれた。とはいえ、私はこれらの冒険者を知っているわけでもない。チャ・モクリのオススメを聞くのがきっと一番だ。

 

「誠実で、旅の知識のある人を頼む。強さや料金は重視しなくていい良い」

「でしたら、こちらのドールラス・ベアーさんはいかがでしょうか。誠実で知識もある、ベテランの冒険者ですよ」

 

 剣術士のルガディン、男、値段は3日間の護衛依頼で15万ギル。条件は特に問題なさそうだ。

 

「それなら、ドールラス・ベアーを指名しよう」

「了解しました。では、ドールラス・ベアーに声をかけておきますね。明日の朝、また溺れた海豚亭に来てください」

「わかった、ありがとう」

 

一礼し、溺れた海豚亭を後にする。マーケットで旅に必要そうなものを買って、明日に備えよう。

 

 

 

 

 

 翌日。溺れた海豚亭に顔を出し、護衛の冒険者と合流した私は、さっそくモラビー造船所へ出発した。ゲームではたった1エリアの移動だが、現実世界になった今ではモラビーまででも中々に遠い。野営込みで1日半かかるとのことだったので、朝早く出立したのだ。

 

 ドールラス・ベアーは灰色の肌に緑色の頭髪のルガディンだ。装備は白いプレートアーマーで、ベテランの雰囲気を感じる。さらに、性格は中々に紳士的だ。

 

「私はパーティの仲間を守るのが役目でして。例えモンスターが来ようが、盗賊が来ようが、命に代えても守り切ってみせましょう」

 

 そう言って自信満々に胸を叩くドールラス。私が見たところ、彼のレベルは25程度だ。モラビーまでの道のりなら、彼にかなう敵はいないだろう。私がレベル60で彼より強いことは黙っておく。

 

「それは心強いな。でも、この依頼は護衛だけじゃなくて、ドールラスの旅の話や冒険者の知識を聞かせてほしいんだ」

「確かに依頼の条件にありましたね。そういうお話を聞くのが好きなんですか?」

「私は腕に覚えはあるんだが、それは訓練の話で実戦経験や旅なんかはさっぱりなんだ。まあ、詳しい事情は聞いてくれるな。ただ、これからは自分の腕を生かして冒険者をはじめたいんだ」

 

 レベル60もの実力があるのに世間知らずっていう状況だが、訳ありだと言っておけば深くは聞いてこないだろう。仮に聞かれても、上手くごまかす自信はある。

 

「なるほど。それで私を雇ったのですね。冒険者になるにあたって、旅や知識が不足しているから、先達に話を聞きたいと」

「そういうことだ。ドールラス、私に冒険者としての知識を教えてくれないか?」

「もちろん良いですとも。未来の後輩のために、一肌脱ごうじゃありませんか」

 

 冒険者志望と伝えてもこちらを侮っているような雰囲気は無い。ララフェルや女性だからといって先入観を持たないのはありがたい。彼を選んだのは正解だったようだ。

 

 こうして私はドールラスに様々な知恵を教わりながらモラビー造船所を目指した。冒険者のあり方、暗黙のルール。食べられる野草に魔物、野営の仕方。星空から方角を判断する方法。海賊への対応方法や注意。ついでにリムサやエオルゼアの歴史も教えてもらった。ドールラスは会話が上手く、楽しく・わかりやすく冒険の話してくれた。

 

 ドールラスに聞いた話からすると、普通の冒険者はアイテムボックスなんて存在せず、魔法の袋というアイテムボックスのような道具を持っている人が少数いるぐらいらしい。なので、旅の問題は食料が大きいようだ。私の場合はアイテムボックスに食料満載で行けるので楽勝だけれど。

 

 野営についてはやはり危険なようで、見張りを置いたほうがいいらしい。野営の必要がある旅なら、一人旅ではなく二人旅がオススメとのこと。冒険者の実力については、レベル20で一人前らしい。30でベテラン、レベル40で有名な実力者、レベル50は相当の猛者で、グランドカンパニーの少将~大将クラス。レベル50まで行ってるのはほんの一握りだとか。

 

 その話を聞いた後、「実は私、レベル60なんだ」ってドールラスに言ったけど冗談だと思われた。レベル60なんてラウバーン級だとさ。そりゃ冗談だと思うわ。道中、トリプルドライアドの対戦もしたけれど、私とドールラスの戦績は3勝2敗だった。私のほうが圧倒的に強いカードを持っているのに全勝できないとは、なんだか悔しい。プラスが……プラスのルールが悪いのだ!

 

 とはいえ勝ちは勝ち。ドールラスには罰ゲームということで、ラウバーンのようにマウントになって貰った。ちなみにドールラスマウントは中々快適だった。できるルガディンである。

 

 

 

 

 

 そんな感じの旅は退屈することもなく、襲ってくる魔物もいなかったため、1日半で予定通りにモラビー造船所に到着したのだった。

 

「ドールラスのおかげで楽しい旅ができたよ、ありがとう。今日は街で宿を取って、帰りはリムサ行きの船に乗ろうと思うんだが良いだろうか」

「了解です。船の上でまた、冒険者として知っておくべき知識を教えるとしましょう」

「では、明日もよろしく」

 

 街の入り口で別れた私たちはそれぞれで宿を取り、明日の船旅に備えて就寝したのだった。

 

 

 




ドールラス・ベアーさんは、サスタシャクエで会話するルガディンです。
ヒカセンは彼のことを完璧に忘れています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 初戦闘

リムサ・ロミンサの序盤のメインクエあたりです。
他国の人には分かり辛いかも。
そこそこシリアス。


 その日の深夜、私は妙な胸騒ぎがして目が覚めてしまった。

 

 肌がチリチリするというか、何と言うか……そう、武器を手にしていなければ落ち着かないのだ。レベル60の冒険者である『セラ』の胸騒ぎを無視してはいけない。私は念のためギアセット1……暗黒騎士装備を虚空から呼び出し、一瞬で装備した。他の冒険者はこんなことできないらしいが、私はできる。ゲームシステムの恩恵をなのか、これもまた『超える力』なのか。

 

 意思持つ大剣、アニマウェポンを装備した私は部屋の外に出る。そのまま1階へ降り、階段を降りようとした所で異常事態を知らせる叫び声が外から響いた。

 

「敵襲!敵襲だー!海賊が攻めてきたぞー!」

 

 一気に階段を飛び降り、入り口の扉を乱暴に開けて外へ出る。

 

 視界に入ってくるのは多数の海賊と、あちこちで戦闘になっている冒険者や黒渦団の兵の姿だ。宿屋から出てきた完全武装の私を目にすると、3人の海賊がターゲットを私に変更し、一斉に襲い掛かってくる。

 

「むっ……!」

 

 私は突然の戦闘に躊躇しながらも大剣を構える。まさかエオルゼアの初戦闘が人間とは。敵を殺さないと生き残れないのは分かっているけれど、日本人の倫理観が人間を切り裂こうとする動きを鈍らせる。私の身体能力なら先手を取れたはずだ。しかし、迷いのせいで先手は海賊となった。

 

「死ねぇ!」

 

 目をぎらつかせながら、斧を振りかぶって襲い掛かってくる海賊たち。

3方向からの同時攻撃。しかし、私の身体は歴戦の戦士だ。どう対処したらベストかが瞬時に脳裏に浮かぶ。大剣を持つ手に力を入れ、横なぎに一閃。彼らの斧を狙って放ったその一撃は容易く3つの斧を粉砕してみせた。武器を破壊され、体制を崩し隙だらけになる海賊たち。自分より格上の敵を相手に怖気づいたのか、2人が後ずさりしている。だが、1人は腰から新たにサーベルを抜いて斬りかかって来た。

 

 相手は私を殺す気だ。その殺意に光の戦士セラの体が反応する。闘志が高まり、武器を握る手に力が入る。殺人=禁忌という感覚が消えていく。

 

(これは正当防衛だ。今殺さなければ私か、あるいは街の住人が死ぬ)

 

 理由さえできれば後は簡単だ。この身は光の戦士。数多の敵を葬ってきたのだから。

 

「この世界で生きていく上で、いつか経験しなければならないのなら!」

(今、この場で人を殺す)

 

 私は叫び、向かってきた敵の体に覚悟を決めて大剣を突き込む。心臓を貫き、真っ赤に濡れるアニマウェポン。素早く剣を引き抜き、残る2人の海賊を斬り殺す。

 

「………こんなものか」

 

 『私』としては初めての殺人。けれど忌避感や恐怖感は無く、冷静だ。

まるで『いつものこと』のように感じる。冷えた感情のまま、別の海賊に大剣を向ける。黒渦団の兵と争っていた海賊に目をつけると、プランジカットを発動。跳躍し、勢いをつけた私の大剣は海賊をやすやすと斬り裂いた。

 

「冒険者か、助かったよ。この場はいいから建造中のヴィクトリー号を守ってくれ!」

 

 助けた兵士は負傷していたが、自分よりもヴィクトリー号のほうが心配なようだ。

 

「任せろ。必ず守ってみせよう」

 

 アイテムボックスに腐るほど眠っていたエリクサーを取り出してその場に置き、ヴィクトリー号へ向かった。

 

 

 

 

 

「これがゲーム通りのクエストなら、ヴィクトリー号付近の海賊の頭がいるはず」

 

 私の到着したその日に、まるで計ったかのように襲撃が起きたことに疑問はあるけれど、モラビー造船所が海賊に襲撃されるのはゲーム通りだ。クエスト『ヴィクトリー号炎上』で出現する海賊はレベル15前後。今の私の敵じゃない。

 

 襲い掛かってくる海賊達を一撃で葬りながらヴィクトリー号へと突き進むと、体格が大きく、豪華な服を着た海賊が見えた。今まさに、火炎瓶をヴィクトリー号へ投げ込もうとしている。

 

「そこまでだ!ヴィクトリー号の破壊は阻止させてもらう!」

 

 叫ぶと同時、魔法のアンメンドを発動。掌から闇のエネルギーを放出し海賊を狙う。

 

「何っ!?」

 

 叫び声に反応した海賊は火炎瓶を捨てて、横っとびに跳躍して魔法を回避する。火炎瓶を投げそこなった事に舌打ちしつつ、海賊は斧を構えた。

 

「ふん、冒険者か。船が心配で駆けつけたんだろうが、先走って一人で来たのは失敗だったな。おい、お前ら!」

 

 服装からもしやと思ったが、どうやらこの海賊がリーダーのようだ。号令に従い、10人ほどの手下が前に出る。

 

「お頭の邪魔をしやがって!タダじゃおかねぇぞ!」

「土下座して命乞いしても許してやらねぇからな!」

 

 三下のテンプレのような台詞を吐きながら、じりじりと私を包囲するように展開する海賊達。斧や剣の切っ先を向けられるが、私は全くプレッシャーを感じない。例え当たっても、魔力を纏った私ならそれらを軽々と弾く……そういう確信がある。

 

「お前たちの相手なんて私一人で十分だ。全員同時にかかって来るといい!」

「チビがよく吠えたもんだぜ。やっちまえ!」

 

 挑発すると下っ端海賊たちは見事に引っかかり、一斉に飛びかかってくる。多方向からの同時攻撃は有効な戦法だろうけれど……彼らと私ではレベルが違いすぎるのだ。私は大剣を大地に突き刺し、チビと馬鹿にされた怒りを込めた魔力を放出する。

 

「誰がチビか!ララフェルの中では大きいほうなんだぞ!纏めて吹き飛べ、アンリーシュ!」

 

 漆黒の魔力が地面から噴出し、雑魚たちを纏めて吹き飛ばす。

 

「ぐわぁ!」

 

 悲鳴を上げて飛んでいく彼らを他所に、私は海賊の頭領を注視する。彼は斧を振り上げ、そこから扇状にオレンジが……『範囲攻撃の予兆』が私に伸びていた。

 

「喰らいやがれぇ!オーバーパワー!」

 

 部下を巻き込むことを厭わない範囲攻撃だ。しかし、事前に範囲の分かっている攻撃なんて容易く避けられる。右にステップを踏んで攻撃を回避し、すぐさま頭領への距離を詰める。

 

「馬鹿な!俺の必殺の一撃を!?貴様、何者だ……ぐわっ!」

 

 足払いにより転倒させ、即座にマウントポジションを取り、そのまま頭領の首に大剣の刃を当てた。

 

「何者、か……。そうだな。人は私を『ヒカセン』と呼ぶ」

 

 光の戦士は私以外に相応しい者がいるかもしれない。故に私は『ヒカセン』を名乗った。

 

「……さて、これでお前は詰みだ。降伏し、仲間を撤退するなら命だけは助けよう」

「へっ、誰がお前なんかに……ぐわあ!」

 

 頭領が生意気な言葉を吐いたので、マウントポジションを維持したままアンメンドを唱え、痛めつける。

 

「さて、吐く気になったか?さっきは手加減したが、壊す部位はたくさんある。それに私は回復魔法も使えるからいくらでも粘ってくれて良いぞ?」

 

 苦痛に呻く頭領に脅しをかける。今の私はジュピーと鳴く獣。手加減などしないのだ。

 

「わ、わかったからやめろ!降参する!」

 

 私の笑顔を見た頭領は数秒で根を上げた。全く、根性無しの海賊もいたものだ。そのほうが私は楽だけれど。

 

「さあ、撤退命令を出せ」

 

 マウントポジションから降り、頭領を解放して促す。剣は背中に当てたままだ。

 

「ち、ちくしょう……」

 

 頭領は悔しそうに呻きながらも、懐からリンクパールを取り出して叫んだ。

 

「野郎共!負けだ負け!この街にゃあとんでもねぇバケモンがいる!生きている奴は撤退しろ。倒れている奴は置いていけ!」

 

 命令を出した後のを確認後、頭領からリンクパールを取り上げ、アイテムボックスから取り出したロープで彼を縛る。これでこの街は大丈夫だろう。

 

 しかし、私はゲームの知識で知っている。ここの襲撃はあくまで陽動。本命は別の街なのだ。その襲撃情報を頭領にサクサクと吐いて貰わねばなるまい。

 

 遠くからグランドカンパニーの兵士が走ってくるのが見える。彼に頭領を引き渡し、尋問を任せよう。その後は撤退していない海賊の残党がいないか街を見回らなくては。

 

「ボスを倒しただけじゃ戦闘は終わらない。現実というのは大変だな」

 

 そう呟き、私は大剣を手に再び夜の街を駆け抜けていった。

 

 

 

 

 

 翌朝。海賊の頭領を尋問した結果、スウィフトパーチ及びエールポート襲撃が計画されていることが判明した。襲撃の日時は今日の夜。わざと時間差をつけて、戦力をモラビー湾に引きつけてから襲撃する手はずだったようだ。黒渦団の兵は各町への伝令や、戦力集めに大忙しとなりそうだ。

なので私はこう言った。

 

「私はテレポを使える。各地への伝令や戦力を転送なら任せてくれ」

 

 実はテレポとデジョンはリムサで事前に試していたのだ。問題なく使えるし、リムサ以外の街に行けるのも確認済みだ。

 

「モラビー湾の英雄殿に頼むのも申し訳ないのですが、お願いいたします」

 

 黒渦団の兵達は申し訳無さそうにしつつも、緊急事態ということで遠慮なく頼んできた。かくして私は英雄として持てはやされる暇も無く、1日中テレポタクシーを続けたのだった。テレポタクシーっていうと、FF11を思い出して懐かしいなあなんて思いながら。

 

 

 

 

 

 そして夜。私はスウィフトパーチで黒渦団の兵+ドールラス含む冒険者の合計30名と共に迎撃体勢を整えていた。光の戦士が来るかもと期待していたが、それらしき人物は現れなかった。少なくとも、リムサ・ロミンサの騒動は私が解決するしか無いらしい。

 

「他の2国に光の戦士がいてくれればいいんだが。いなければ私が光の戦士で確定か」

 

 光の戦士になったら戦いの日々だ。ノーマル蛮神ならともかく、極蛮神なんかはソロじゃ勝てる気がしない。仮に仲間が集まってたとしても死闘になるだろう。確実に勝てるサスタシャノーマルとは格が違う。きっと生死を賭けた戦いだ。『セラ』としては慣れっこだろうが、日本人の私はそんな状況なんてゴメンである。どうか他の国に光の戦士がいて、厄介ごとを全て引き受けてくれますように、と願いながら敵を待つのだった。

 

 月が頭上で輝く頃になって、スウィフトパーチに海蛇の尾が攻めて来た。海蛇の尾の戦力は20名ほど。彼らよりもこちらのほうが戦力が多い。それでもなお、海蛇の尾は捨て身で突撃してくる。テンパードとなり心を失った海蛇の尾は自身が捨て駒になることも厭わないらしい。

 

「野郎共おぉぉ!黒渦団のヤツらを血祭りにしてやれえええ!」

「迎え撃てぃ!黒渦団の強さを見せてやれ!」

 

 激しくぶつかり合う両軍。私は最初の衝突に参加するのは避け、あえて民家の屋根の上に隠れ、待機した。ここで戦うべき本命は別にいる。

 

 この状況なら動くはずだと考え、静かに待つ。アシエンならばゲーム通りに仕掛けてる可能性が……来た!黒いローブに赤い仮面の男が海蛇の尾の最後尾に空間転移してくる。そして、一瞬で巨大なデーモンを召喚してみせた。

 

「行けぃ!デーモンよ、ヤツらをなぎ払え!」

 

 黒渦団をデーモンで蹴散らすつもりなのだろう。だけれど、ここには私がいる。

 

「貴様の狙い、阻止させてもらう!」

 

 天高く跳躍し、その勢いのままブランジカットを発動。デーモンを上空から強襲する。

 

「斬!」

 

 月を背景に夜空を舞うララフェル。くるくると回転しながら大剣を振り回し、重さに落下速度をプラスした一撃はあっさりとデーモンの首を跳ね飛ばした。所詮はレベル15相当の敵。今の私の敵じゃない。

 

「な、なんだと!?私のデーモンを一撃で!」

 

 そして、今この場には護衛のデーモンを倒され、驚愕し無防備になったアシエンがいる。奴を自由にさせておくと何があるか分からない。速攻で無力化する!地面に着地した私はアシエンに向かって大剣を斬り上げる。

その一撃はアシエンの赤い仮面を砕いた。見えた顔は老人で、サンクレッドでは無い。これなら遠慮はいらない!

 

「ぬぅぅ!貴様、何者だ!」

「人は私を、ヒカセンと呼ぶ!」

 

 偽名を名乗った後、ハードスラッシュ、サイフォンストライク、ソウルイーターからなる暗黒騎士の王道3連コンボを瞬く間に放ち、アシエンを切り刻む。最後の一撃はクリティカルヒット、手応えアリだ!

 

「おのれぇ!貴様の名、覚えたぞ!ヒカセン!ぐわああああ!!」

 

 憑依している肉体を破壊されたアシエンは断末魔の声を上げて倒れた。

おそらくアシエンの魂には逃げられたのだろうが、白聖石なんて持っているはずも無いし仕方ない。今は肉体を破壊し、活動を鈍らせただけでも良しとしよう。そう結論付けた私は背後を振り返り、黒渦団に加勢するのだった。ヒカセン無双の始まりである。

 

 その後の結果はまあ、言うまでもないだろう。レベルの差は偉大である。

 

 




朝起きたら自キャラになってた のFF14版が無かったので自分で書いてやる、というのが犯行の動機です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 魔理沙との出会い

死者の宮殿楽しいです(地雷を踏んで爆発しながら)


~1週間後~

 

 モワビー湾&スウィフトパーチ襲撃の怒涛の2日間を乗り越えた私はレストラン・ビスマルクでゆっくりしていた。待ち合わせというヤツだ。相手は女性なので残念ながらデートではない。いつものようにロランベリーチーズケーキをもぐもぐしながら待っていると、目的の人物が現れる。

 

「はじめまして、ヒカセンさん。待たせちゃったみたいね」

「はじめまして、ヤ・シュトラ。たいして待っていないし平気さ」

 

 私を呼び出したのは暁の賢者の一人、ヤ・シュトラだ。ヴィクトリー号を救ったモラビー湾の英雄の名前は『ヒカセン』で広まってしまったので、しばらくはそのままヒカセンで通すことにした。私と同じようにエオルゼアに来てしまったプレイヤーがいるなら、きっとヒカセンの名前に反応するだろうからね。

 

「早速だけれど、貴方が倒した敵。黒ローブの赤仮面について何か知らないかしら?」

 

 ストレートな質問が来た。ヤ・シュトラに真実を教えておいたほうが後々の対策は立てやすそうだが、問題はサンクレッドがアシエンに操られているせいでアシエン側に情報が筒抜けになってしまうところか。悩みどころだが、下手に未来情報を教えた結果、サンクレッド以外が憑依されることになるほうが困る。

 

「いや、知らないな。海蛇の尾が雇った魔術師か何かじゃないのか?」

「そう。それなら仕方ないわ。じゃあせめて、戦闘時の状況を聞かせて貰えないかしら」

 

 アシエンの情報に関しては大して期待していなかったのだろう。ヤ・シュトラはサクサクと別の質問に入るようだ。

 

「もちろん構わないとも」

「貴方は黒ローブの召喚したデーモンを一撃で斬り伏せた。デーモンの強さはどのぐらいだったのかしら?」

「Lv20程度の冒険者なら十分に倒せるレベルだったな」

「思ったより弱かったのね。様子見だったのかしら。それとも、大量に召喚するつもりだったとか」

 

 悩むそぶりを見せるヤ・シュトラ。ゲームの序盤だから敵が弱かったんです、とは流石に言えない。

 

「じゃあ、次の質問ね。貴方は黒ローブに何者かと問われて、ヒカセンと名乗ったのよね?」

「その通りだ」

 

 その時、ヤ・シュトラの目がキラリと光った気がした。

 

「あの黒ローブに赤仮面の人物はアシエンといって、複数名が確認されてるわ。でも、アシエンの言語は私達には分からないの。その場にいた黒渦団の兵にも確認したけれど、アシエンの言葉は意味不明だったらしいわ」

 

 ヤ・シュトラは眼光を鋭くし、私の目をしっかりと見据える。

 

「けれど、貴方はきちんと会話をしていた。貴方は彼らの言葉が理解できるのかしら?」

 

 むむむ。そこを突いてくるとは。アシエンの言語って、超える力が無いと理解できないんだったか。流石はヤ・シュトラ。シャーレアンの賢者は名探偵の才能もあるみたいだ。ごまかす理由も無いし、ここは正直に答えよう。

 

「私は異なる言語でも理解できる。『言葉の壁を超える力』と言えば分かるだろうか」

「なるほど、貴方は超える力を持っているのね。実は、私たちの組織は超える力を含めた特別な能力を持っている人を集めているの。もし良ければ、話を聞いてくれないかしら」

 

 了承するとヤ・シュトラは暁の詳細について説明をしてくれる。ゲーム内の暁と大差は無いようだ。しかしなんと、組織に入ると任務に応じて給料が出るとの事。1ヶ月みっちりと仕事をした場合、月給30万ギルだそうだ。これにはヒカセンも驚愕である。ゲーム内じゃテレポ代だけでいっぱい労働させられたぞ、おい。

 

「やりたいことがあるから組織に入るのは遠慮しておこう。しかし、用事が片付いたら前向きに検討しようじゃないか」

 

 暁に入ることは良いのだが、サスタシャやタムタラのイベントを放置したくは無い。入るとしたら、メインストーリーにおける加入時期に合わせたいところだ。

 

「それならリンクパールを渡しておくわ。暁に入りたくなったり、アシエンにまた出会ったりしたら連絡してね」

 

 リンクパールを貰い、掌の上でころころと転がしてみる。この真珠が無線やら携帯電話の代わりなわけだ。ファンタジーすごい。

 

「ありがとう。何かあれば連絡しよう。ところで、ヤ・シュトラはアシエンを知っていたけれど、他の場所でも暗躍していたのか?例えば、ウルダハやグリダニア」

 

 私が知りたいのは他のヒカセンの情報だ。彼らが存在しているのであれば他国のアシエンをきっと妨害していることだろう。

 

「貴方が事件を解決した前後にウルダハ、グリダニアでもアシエンが事件を起こしているわ。どちらも冒険者によって解決済よ」

「その事件を解決した冒険者の特徴を聞いてもいいか?」

「いいわよ。グリダニアの事件を解決した冒険者の名前は『りゅーさん』と『ミスティア』。竜騎士と詩人のペアね。ウルダハの事件を解決したのは『ブロント』『霊夢』『咲夜』。ナイト、白、忍者のPTね。どちらもかなりの実力者らしいわ」

「なん……だと……!?」

 

 驚愕に思わず目を丸くしてしまう。純粋なFF14だと思っていたら、陰陽鉄クロスだった。来た!メイン盾来た!これで勝つる!?

 

「あら、もしかして知り合いだった?」

「いや、私が一方的に知ってるだけだ」

 

 そう言ってごまかし、適当な雑談をした後にヤ・シュトラと別れた。ちなみにヤ・シュトラはくさいというネタがあるが、特にくさく無かった。風評被害である。

 

 

 

 一人になった私は再度考察する。ここが純粋なFF14の物語なら異物はブロントさん達。陰陽鉄ベースの話なら異物はむしろ私のほうだ。果たしてどちらが光の戦士なのか。ブロントさんが脇役というイメージは無い。やはり、彼が光の戦士で主人公であり、私はそれを支えるパーティメンバー役なんだろうか。どちらにせよ、メインクエストに関わっていけばいずれ分かる。私の知っているシナリオを外れないようにしながら冒険を続けよう。

 

 

 

 数日後、私はリムサの晩餐会に呼ばれた。しかし、特に超える力の発動もマザークリスタルとの邂逅も無く晩餐会が終わる。私が既に超える力持ち・光のクリスタル所持だからイベントが起こらなかったのか、それともブロントさんのほうでイベントが起こったのか。分からないことばかりだ。その後は3国へ親書を届ける依頼も無いまま、サスタシャ攻略の冒険者募集が開始された。

 

 ウルダハ・グリダニア組もサスタシャの攻略依頼を受けたなら、溺れた海豚亭に来るだろう。そう思い、私は毎日溺れた海豚亭に通い、エオルゼアスイーツを食べながら彼らを待つのだった。

 

 それにしてもロランベリーチーズケーキは本当に美味しい。ザッハトルテやババロア・オ・フィグもいいがロランベリーにはかなわない。しかも、ヒカセンの身体はいっぱい食べても全然太らないのだ。資金もたっぷりある。つまり、甘味の食べ放題である。これだけでもエオルゼアに来た甲斐があるというものだ。

 3個目のチーズケーキを食べ終わったところで、溺れた海豚亭に彼女は現れた。

 

「よっす、マスター!一番儲かる依頼を頼むぜ!」

 

 黒魔に相応しい帽子。長い金髪に勝気な瞳。特徴的な『だぜ』。白黒こと、霧雨魔理沙だ。バデロンは一瞬驚いたもののニヤリと笑って本当に一番儲かる依頼を出してきた。

 

「それなら、このサスタシャ攻略だな。海蛇の尾のマディソン船長は賞金首だし、奴らなら財宝をがっぽり貯めこんでるだろうよ」

「おお、ソイツはいいな!腕が鳴るぜ!」

 

 それは黒魔としての腕なのか、サポシとしての腕なのか。私的には後者だと思う。

 

「この魔理沙様の魔法で海賊なんか一網打尽だぜ!」

 

 自信満々に言い切る魔理沙。しかし、海蛇の尾を纏めて『海賊なんか』と纏めてしまったのは良くなかったようだ。溺れた海豚亭で食事をしていたルガディンの海賊が魔理沙に声をかける。

 

「おいおい嬢ちゃん、その格好なら呪術師なんだろうが無謀な事はやめとけよ」

「あーん?」

「サスタシャは海蛇の尾のアジトだ。そこにゃあ何十人と海賊がいる。今、溺れた海豚亭にいる客は20人程度だが、こいつらが一斉に嬢ちゃんに襲い掛かるようなもんだ」

「へっ。この店にいる全員が相手だって私は負けないぜ」

 

 啖呵を切る魔理沙。自信満々に言い切る彼女は自分の勝利を疑っていない。

 

(この店にはレベル60の私もいるんだが……)

 

「流石に今のはカチンと来たぜ。おい、外に出ろよ。サスタシャに行く前に俺が訓練つけてやるぜ」

「おう。私の実力を証明してやるぜ!」

 

 溺れた海豚亭から出て行く二人。店の中にいる客は「喧嘩だ喧嘩!」「俺は嬢ちゃんを応援するぞぉ!」などと盛り上がり、彼女らを追って外に出て行く。私もなんだかワクワクしてきた。酒場での喧嘩とか、ファンタジーの醍醐味だ。魔理沙vs海賊の結果を見届けなくては!

 

 アフトカースルで睨みあう魔理沙と海賊。そして周囲を囲む野次馬たち(私含む)。相変わらず周囲は「いいぞ、やれやれー!」「海賊の力を見せてやれー!」だのヤジを飛ばしている。

 

 私の見立てでは魔理沙はレベル60、退治している海賊がレベル30といったところだ。ゲームであればレベル差のおかげで魔理沙が負けることは無いだろう。しかし、ここはいまや現実。戦法や技によってはどうなるか分からない。

 

「コインが地面に落ちたら決闘開始だ。勝ったほうは相手の言うことを一つ聞く。いいな?」

「おう。私が勝ったら、お前が代金持ちでこの場の全員に酒をおごりな」

 

 魔理沙の言葉に会場が沸く。

 

「いけいけぇ!俺は嬢ちゃんを応援するぞ!」

「やれー!やつの財布を空っぽにしてやれぇ!」

 

 同じ海賊を味方するより、酒の味方をする奴が多い。みんな現金なものである。

 

「へっ、吠え面かかせてやるよ。そら、コイントスだ!」

 

 海賊がコインを空中へ弾く。コインはくるくると何度も回転し、地面に衝突して高い音を立てた。

 

「オラアアッ!」

 

 先手必勝とばかりに海賊が踏み込み、斧を横薙ぎに振るう。魔理沙はその一撃をしゃがみこむように避ける。

 

「ミアズマ……」

 

 そして、しゃがみこんだ体勢から、溜めた力を解放した。

 

「スウィープ!」

 

 しゃがんでいた体勢からを飛び上がるようにアッパーを放つ。昇竜拳こと、ミアズマスウィープだ。決してミアズマバースト(物理)ではない。

これを受けた海賊は1メートルほど打ち上げられ、そのまま地面へ落下して気絶。呪術師にあるまじき、見事な物理攻撃であった。

 

「うおおー!いいぞ嬢ちゃーん!」

「オイオイ、呪術師じゃなくて格闘士かよ!」

 

 華麗なノックダウンに周囲は沸きあがり、魔理沙もノリノリで周囲に応えている。

 

「私にかかればざっとこんなもんだぜ!負けたソイツの財布で酒盛りだあ!」

 

 気絶した海賊から財布を奪い、頭上に掲げる魔理沙。どっちが海賊だ。

 

「嬢ちゃんわかってるぅ!」

「よっしゃあ!タダで酒が飲めるぞ皆!」

 

 さらに盛り上がる観衆。喧嘩とタダ酒の力はすごいらしい。

とはいえ、これは中々良い流れだ。魔理沙と仲良くなるチャンスかもしれない。酒盛りに便乗して、魔理沙に近づいてフレンド登録するのだ。クエスト『魔理沙と仲良くなれ』スタート!

 

 

 

 

 

 酒盛りが開始されて2時間。他人の金の力は偉大で、皆すっかり酔っ払っている。もちろん魔理沙もだ。頃合と見た私はワインを片手に魔理沙の隣の席へ座る。

 

「こんばんは。さっきは見事な戦いだった」

「……アンタ、小さいけど酒とか飲めるのかよ?」

「見た目で判断しないで欲しい。私はこれでも15歳だ。この国ではお酒も飲める。君の仲間にはララフェル族やそれに似た種族はいなかったのかい?」

「あー、確かに私の友達にもいるな。悪かったぜ」

 

 私が指摘すると萃香やレミリアの事を思い出したか、あっさりと納得したようだ。お互いのグラスにワインを注ぎ、飲んだところで本題を切り出す。

 

「そこで、キミの腕を見込んでの話なんだが、サスタシャ攻略にあたって私とPTを組まないか?」

「へぇ、アンタとか」

 

 魔理沙は飲むのをやめると、こちらの全身を値踏みする。

 

「見たところ、大剣や鎧はマジックアイテムみたいだ。アンタ自身からもかなりの魔力を感じるぜ。闇属性か?」

 

 流石は魔法使い。少し見つめただけで、これだけの情報を看破してくるとは。

 

「その通り。私は闇の魔法を用いる暗黒騎士だ。キミが呪術師ならばソロは危険だ。前衛は必要だと思うが」

「なるほど。装備も実力も十分。それに前衛後衛で構成的にもバッチリってワケか。よし、PT組もうぜ!」

魔理沙は快くPTを了承してくれた。酒のテンションもあるかも知れないが、男前である。

「ありがとう。これからよろしく」

「ああ!こちらこそよろしくだぜ!」

 

 

 

 その後は魔理沙と一晩飲み明かした。翌日は案の定二日酔いだったが、エスナ一発で元通り。同じく二日酔いだった魔理沙にもエスナをかけたら大変感謝された。こうして二日酔いは治ったが、サスタシャに行くのに急ぐ必要は無い。3日ほどを魔理沙との戦闘・連携訓練、作戦会議、サスタシャの情報収集、物資の準備を行う期間とし、万全の状態にしてサスタシャに挑むこととなった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話 サスタシャでやるべきこと

そろそろストックが尽きるため、不定期更新になります。


~天然要害 サスタシャ浸食洞~

 

 3日はあっという間に過ぎ去り、サスタシャ攻略の日。私と魔理沙はサスタシャに制限解除で突入し、現在クラゲやらコウモリやらを蹴散らしているところである。

 

「海賊のアジトだって聞いたのに雑魚モンスターしかいねーな。本当にここが海賊の住処なのか?」

 

 魔理沙がファイアをポイっと投げれば一瞬で敵が燃え尽きる。肩透かしを喰らってツマラナイという感じだ。

 

「モンスターのいる天然の洞窟をアジトに選んだんだろう。ここはまだ入り口近くだ。奥までいけば海賊がワラワラと出てくるさ」

 

 魔理沙と同様、大剣の一撃で敵を葬りながら応える。

 

「ふーん。この辺りはまだ余裕ってことか。ならさ、セラの魔法を見せてくれよ」

 

 いいこと思いついた!とばかりに魔理沙が提案してくる。勉強熱心な彼女にとって、エオルゼアの魔法は興味深いのだろう。なお、魔理沙には名前がセラで苗字がヒカセン(偽名)と伝えてある。今の私はセラ・ヒカセンなのだ。

 

「了解だ。では、順番に使っていこう」

 

 アンメンド、アンリーシュ、ダークパッセンジャー、アビサルドレイン。ふよふよ浮いてるクラゲやコウモリに魔法を打ち込みながら進んでいく。

 

「なるほど。威力じゃなく速度と手数って感じの魔法だな。大剣を振りながら合間に唱えるための魔法だろ?」

「正解。魔理沙は鋭いな」

「伊達に魔法使いをやってないんだぜ。でもやっぱ、魔法は火力が一番だ。そういうのは無いのか?」

 

 言われて少し考える。ジョブチェンジをすれば可能だが、ダンジョン内でジョブチェンジ可能なんだろうか。ゲームでは制限があったが、今は現実世界。着替えに制限なんて無いはずだが、ギアセットは魔法のような扱い。どんな判定になるか。

 

「試してみるか……ギアセット5」

 

 唱えると、私の身体が光に包まれ、一瞬の内に黒魔になっていた。わざと敵を釣ってから着替えても成功したことから、いつでも着替えられるらしい。これは戦闘の切り札となる機能かも知れない。

 

「おお。いかにも魔法使いっぽい格好になったな。それだと火力重視の魔法を使えるのか?」

「その通り。今の私は黒魔導士だ」

 

 コクリと頷く。ちょうどダンジョンもクァールのねぐらに来た所だ。ゲームと違い、クァールは最初から出現していて、こちらを睨みつけながら低く唸っている。戦闘行動を取る素振りを見せれば即座に襲い掛かってくるだろう。

 

「魔理沙、あのクァールに魔法をぶち込む。見ていてくれ」

 

 宣言し、アビリティを使いながら魔力を高める。イメージするのは太陽。パチュリーのロイヤルフレアにだって負けないぞ。

 

「滅びゆく肉体に暗黒神の名を刻め。始源の炎蘇らん!フレア!」

 

 私の作り出した魔力が太陽となり、クアールを中心に弾ける。爆音が響き、洞窟全体がビリビリと揺れる。

 

「おお!こりゃすげぇ!やっぱ魔法はこうでなくっちゃ!」

 

 魔理沙が歓声を上げ、私は自分の魔法の威力に内心で驚く。どうやら、このエオルゼアでは魔法の威力に比例してエフェクトが派手になるらしい。爆風が晴れた時、そこには炭化したクァールだったものが残っていた。

 

「……これが私の魔法だ。どうだ魔理沙、参考になったか?」

「ああ!私もさっきの魔法を使ってみたくてウズウズするぐらいにな!」

「それならこの先も魔法を中心に戦っていこう。私の使える魔法は108式まであるぞ」

「3桁とかマジかよ!?」

 

 黒魔、白魔、暗黒、召喚、学者、ナイト、占星、忍者。それぞれの魔法(忍術)を合計すればきっとそのぐらい行くだろう。ヒカセンの多彩っぷりをナメてはいけない。行くぞサスタシャ、敵の貯蔵は十分か!

 

 

 

 

 黒魔の魔法を一通り撃ち終わり、巴術士にジョブチェンジして黄色むーたんを召喚したあたりで2ボスの部屋に辿り着いた。いかにも小物なボス、マディソン船長だ。コリブリが本体なんじゃないかと私は今でも疑っている。

 

「オカシラ!テキシュウ!テキシュウ!」

「ああん?何者だ、お前ら」

 

 部下と一緒に酒を飲んでいたらしいマディソン船長が私達に気がつき、酒を捨てて武器を構える。酔ってるせいか千鳥足、構えも隙だらけだが。

 

「私は魔理沙、こっちはセラ!お前達海賊を討伐しに来た冒険者だぜ!」

「海賊よ、今日が貴様達の命日だ!」

 

 魔理沙が箒を向けてビシッと宣言する。私もむーたんの背に乗りながら、同じように指をビシッと敵に向けておいた。決まったな。

 

「冒険者だあ?たった二人でこのマディソン船長に挑むたあ無謀なヤツらだぜ。んん?よく見りゃあ、とんでもねえ美人じゃねーか。へへっ。浚って来た女みてーに、俺の嫁にしてやるぜ」

「嫁にしたいなら武器を構えるんじゃなく、愛を囁くもんだぜ?勘違い野郎にはオシオキしてやらないとな」

 

 マディソン船長の言葉を受けて魔理沙が一歩前に出る。ぶっ飛ばす気満々だ。だが、マディソン船長は魔理沙に対して「違う違う」と手をヒラヒラさせた。

 

「俺が欲しいのはお前じゃない。そこのララフェルだ」

「……ファッ!?」

 

 びっくりして変な声が出た。

 

「ヒューランみてーな年増なんているかよ。いつまでも若いもちもちの肌にツルペタ体系、抱き心地の良い小さい身体。ララフェルこそ最高の女だぜ!」

 

 マディソン船長、ララコンをこじらせて……そういえばサスタシャに囚われてる女性、半分はララフェルだったな。サスタシャにはどんな変態がいるのかと思ったら船長お前かよ。

 

 うわこっち見てる。キモイ。ぶち転がすぞ。

 

「…………」

 

 ふと魔理沙を見れば、無言で魔力に変えてチャージしている。かなりお怒りのご様子。ここはストレス解消にこの変態を一発でぶっ飛ばして貰おう。

 

「魔理沙、許可する。やってしまえ」

「おうとも。乙女を年増呼ばわりした報い、受けてもらうぜ!魔理沙流フレア!」

 

 魔理沙が発動した呪文はフレア。さっき私が見せたのを自分なりにアレンジして発動したらしい。1度見ただけで習得するとは天才か。

 

 フレアの魔法は海賊の手下を中心にして、船長から手前の位置で爆発した。魔理沙流フレアは威力十分で手下が一瞬で消し飛ぶ。後方にいて直撃を逃れたものの、爆風を喰らったマディソン船長は豪快に吹き飛ばされた。

 

「ぐおおお!?て、てめーら覚えていやがれ!」

 

 船長は洞窟の岸壁に打ち付けられたが素早く立ち直り、捨て台詞を残して奥へ逃げていった。

 

「見事な逃げっぷりだな。追うぞ、魔理沙」

「往生際の悪いやつだぜ!」

 

 無論、逃がす気は無い。この世のララフェルを守るため、変態ララコンはこの世から抹殺するのだ!

 

 

 

 

 魔理沙に色んな魔法を見せるため、ジョブチェンジしまくりながらマディソン船長を追い、気が付けばもう3ボス前の地点だ。余裕だとは思うが、念を入れて一番ILの高いメインジョブ、暗黒に着替えなおしておく。

 

「よっしゃ、突撃だぜ!」

 

 魔理沙が足を踏み入れ、私も続く。最後の区画に入った瞬間、鯱牙のデェンが登場し、マディソン船長が斬られる……という光景を予想していたが、それは裏切られた。鯱牙のデェンは登場した。ただし、巨大なクラーケンと共に。マディソン船長はクラーケンの触手によってはるか彼方へ放り投げられて星になった。南無。

 

「フシュー……俺ハ鯱牙のデェン。ヒレナシ共、貴様ラハ強イ。故ニ、コノクラーケンデ海ノ藻屑ニシテクレル!」

 

 ジャンプしてクラーケンの頭の上に乗るデェン。まさかのサスタシャハード開始である。

 

「で、でけぇな。ありゃあ大きさ的に20ララフェルぐらいあるんじゃねーか?」

「単位を何でもララフェルかルガディンにするのはやめるんだ」

 

 軽口を言い合う。だが実際、Lv60の冒険者二人でクラーケンを相手にするのはやや厳しいかもしれない。どうしたものかと思いながら魔理沙を見たが、私と反対に彼女は自信満々に不敵な笑みを浮かべていた。

 

「何かイイ手があるみたいだな、魔理沙」

「おうよ。エオルゼアの魔法は発動が早い代わりに威力が低い。だから、私のオリジナル魔法の最大火力でアイツに風穴開けてやるぜ!」

 

 なるほど、マスタースパーク級ならクラーケン相手でも通じるということか。

 

「その魔法、詠唱時間はどのぐらいだ?」

「溜めれば溜めるほど強くなるタイプの魔法だ。十分な威力を確保するには1分ぐらいは必要だな」

 

 1分待てば体力オバケのクラーケンに有効な魔法が撃てるとは。東方世界の人間マジ怖い。

 

「分かった、ならば私はアイツの注意を引き付けよう」

「了解だ。私はヤツの上空で魔力をチャージするぜ」

 

 箒に跨り、飛行する魔理沙。戦闘中も飛行可能とか、東方勢ずるすぎじゃないか……?

 ともあれ作戦は決まった。後は敵視を惹き付けるのみ!

 

「行くぞ、鯱牙のデェン!海の藻屑になるのは貴様だ!」

 

 暗黒にグリッドスタンスのバフを確認しつつ、接近しながらアンメンドを叩き込む。戦闘開始だ。

 

 ところで、私はヒカセン化してからこれが初の巨大ボス戦になるのだが、間近で見るとクラーケンのデカさが超ヤバイ。視点を空中から俯瞰じゃなく、自分目線にしてクラーケンと戦う場面を想像して貰えばいい。

『セラの身体』が慣れているからか、少々冷や汗が浮かぶぐらいですんでいるが、今後も巨体相手が続くと考えると憂鬱だ。

 

「……ええい、これでも喰らえ!」

 

 思考を切り替えてハードスラッシュ→スピンスラッシュ→パワースラッシュのヘイトコンボを放つ。大剣がクラーケンの皮膚を切り裂くが、どう考えても浅すぎる。ララフェル大剣のリーチ限界だ。

 

 周囲にザパァン!という音が複数鳴り響き、ちらりと見るとわらわら触手が沸いて出てきて私を狙っていた。触手が水を飛ばしたり、私に向かって振り下ろされたり、撒きつこうとしてくる。8本同時に。

 

「シャ、シャドウスキン!」

 

 すごい速度で迫るド迫力の触手達にびびった私は、撒きつこうとしてきた触手を大剣で迎撃しながら防御バフを切る。周囲に展開されたバリアは水鉄砲を霧散させ、叩きつけられた触手を弾き返した。

 

 攻撃を凌ぎ切り、反撃のチャンスがやってくる。触手は『触腕』と『腕』の2種類。この内、優先して狙うべきはストレンジャータイズを発生させてくる腕!私は腕へ向かって跳躍し、プランジカットで切り込みをかける。

 

「やあああ!!」

 

 くるくると空中で横回転しながら、勢いのままにクラーケンの腕をぶった切る。気分はリヴァイ兵長だ。会心の手応え。大剣は一撃でクラーケンの腕を切り落とした。ゲームだったらHPがあるためこうはいかないのだろうが、現実世界では綺麗に決まれば一撃で斬り落とすのも可能ということだ。

 

「キシャアアアア!!」

 

 怒りの声を上げるクラーケン。その衝動のままに残った腕で周囲の水場から水流の竜巻を発生させてきた。ストレンジャータイズだ!

高さ5メートル級の水流の竜巻が私をもみくちゃにしながら空中へ放り投げる。全HPの20%程度のダメージを受けながらも、なんとか体勢を整えて着地したところにインクプロットが振ってきた。

 

 避けきれずに喰らった私は真っ黒。しかもずぶ濡れ。おのれクラーケン、許すまじ!

 

 魔理沙が心配になったが、視界に入った彼女はクラーケンの上空で高度を取っていて、クラーケンの攻撃はどうやっても届きそうに無い位置にいた。ちくしょう!ずるい!

 

 たぷたぷに水と墨が入ったブーツは歩くたびにぎゅっぽんぎゅっぽんと不快な音を立てるが、今は無視だ。大技の後だからか、クラーケンの触手は動きを止めている。攻撃のチャンスだ。ヤツの表皮はいくら斬っても無駄。故に、狙うは一点!

 

「ララフェルをナメるな!」

 

 ダークアーツを発動しながら高く跳躍し、カーヴ・アンド・スピットを載せた大剣をクラーケンの右目に深く突き入れた。びしょぬれのお返しだ!

 

「ぐるああああああ!!」

 

 絶叫を上げるクラーケン。触手を闇雲にブンブン振り回すが、そんな物では私を引き剥がせない。大剣をぐるんと捻って傷を広げてから引き抜き、クラーケンを蹴って遠くへ着地する。これでジャスト1分だ!

 

「待たせたな、セラ!これが魔理沙様のオリジナル魔法だぜ!星符『ドラゴンメテオ』!」

 

 クラーケン上空の魔理沙は八卦炉を真下に向け、そこから七色に輝くごん太ビームを照射。極光がデェンとクラーケンを飲み込んだ。その破壊力は凄まじく、洞窟全体が地響きでグラグラと揺れるほど。それが数秒続き、光が収まるとデェンだったものがクラーケンの上から崩れ落ちた。だが、クラーケンは大ダメージを受けているものの、今だ健在だ。

 

 とはいえ、私に抜かりは無い。こういう場合、敵を一撃で仕留め切れないものとして行動しておくのが歴戦の冒険者なのだから。私はクラーケンの触腕に対し、アニマウェポンを突き立てて貫通させ、地面に縫い付けていた。全力で押し込んだ大剣は地面にガッチガチに固定されていて、いくらクラーケンが暴れようとも抜ける気配は無い。これでハルブレイカーノーマルのように逃げられる心配は無くなった。例え逃げずにクラーケンが魔理沙を攻撃しようとしても、彼女は空中で攻撃なんて届かない。

 

 上空の魔理沙を見上げると、アンブラルブリザードによってMPを急速に回復し、迅速魔を使ったところだった。

 

「2発目には耐えられるか?行くぜタコ野郎!星符『ドラゴンメテオ』!」

 

 情け容赦ない極光がクラーケンを飲み込んでいく。2度目の光が収まってもクラーケンは生きていたが、所々炭化し、弱りきって触手を動かす力も無さそうだった。こうなればもう勝利は確定である。

 

 ゆっくりとMPを回復した魔理沙は3回目のドラゴンメテオを放ち、見事クラーケンを倒しきるのだった。

 

 

 

 

 

 戦闘終了後、私はインクを洗い流すため、水を全身に被った。服が水を吸って重いし、肌に張り付いて気持ち悪い。とはいえ、無事にサスタシャハードを攻略完了したのだからこの程度は些細なことだ。その最大の功労者、魔理沙は大魔法の連発に疲れたのか座って休憩している。

 

「それにしても、とてつもない魔法だったな。あのクラーケンを3発で倒しきるとは」

「ふっふっふ。なんたって、私のとっておきの魔法だからな!」

 

 胸を張る魔理沙。PTを組んでなければ、MIPを上げたいところだ。

 

「ともあれ、ここはサスタシャの最深部のようだ。この洞窟の敵は殲滅したと見ていいだろう」

「っしゃあ!ってことは依頼クリアだな。それじゃあ、お宝探そうぜ!」

 

 私はボスを倒したら帰るだけと思っていたが、魔理沙は当然のようにお宝を探すと言った。

 

「お宝……?」

「海賊なら金銀財宝貯め込んでるに決まってるだろ。で、それらは海賊を討伐した私達が貰う権利があるんだぜ!」

 

 流石は魔理沙だ。サポシは伊達じゃない。

 

「……なるほど。船長を追うのに夢中だったが、道中に金銀財宝を溜め込んだ部屋があったな。ちなみに、私のアイテムBOXは十分に空きがあるぞ」

 

 今やゲームバランスなんて無いのだ。例え最初のダンジョンであろうが、そこに金銀財宝があるなら根こそぎ奪うのみ!

 

「よし、それじゃあ手分けして財宝集めだ」

「目指せ、億万長者だぜ!」

 

 気合を入れてサスタシャをくまなく探索した私達は、合計で5000万ギル相当の財宝を得て仲良く二等分した。私は謙虚なナイトでも光の戦士でも無い。強欲な暗黒騎士、ヒカセンなのだからこれが当然の流れなのだ。

 

 ごちそうさまでした。

 




サスタシャでやるべき事は、間違いなく道中の金銀財宝の回収。
ゲーム本編の光の戦士は謙虚すぎるよね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話 謙虚な騎士とカッパーベル攻略

今後の投稿はゆっくりペースになる予定です。


 サスタシャを攻略した事をバデロンに報告すると、ウルダハのダンジョン、カッパーベルを紹介された。採掘中に巨人族を発掘してしまい、カッパーベル銅山が危険地帯になってしまったので冒険者を募集しているという内容だ。グリダニアのほうは大丈夫なのかと聞くと、タムタラという場所で冒険者の募集があったがもう解決済とのこと。解決した冒険者の名前はもちろん『りゅーさん』だ。

 

……りゅーさん、仕事早すぎ。

 

 となると、私はカッパーベルへ行くべきだろう。上手く行けば、ブロントさん達に会えるかもしれないし。私がブロントさんの事を知ってることを魔理沙に伏せて単純にカッパーベルのクエストに誘った所、魔理沙も着いて来るそうだ。魔理沙は友人を探していて、そろそろリムサ・ロミンサ以外の国も探したかったから丁度良かったらしい。話が纏まれば後は簡単だ。私はテレポ一発でウルダハへ飛べるのだから。

 

 

 

 

 

~ウルダハ~

 旅の準備を整えてからテレポを発動し、私と魔理沙はウルダハにやってきた。まず見て回るのはマーケットだ。宿を取ったりクエを受けるにも、リムサとの物価の差を把握しておかないと損をするかもしれない。

 マーケットに移動するとかなりの人が売買をしていて、活気に溢れていた。ゲーム内のスカスカなウルダハとは違う。あえて言うなら、根性版FF14ちゃんの頃の人の量だ。

 

「うわ、すっげぇ人の量!こんな街に住んだら毎日面白そうだな」

「確かに。毎日新しいことが起きそうだ」

 

 雑談しながらざっくりと物価を把握する。リムサより平均的に物価が高いようだ。そして、商品にHQが混ざっている。値段も質もピンからキリまで、上と下の差が激しいのがウルダハみたいだ。

 

「何か欲しいものはあったか?」

「魔法書とかあればと思ったんだけど、見つからないなー」

 

 きょろきょろと店を見渡しながら呟く魔理沙。やはり、彼女の中で興味があるのは魔法らしい。

 

「そういうのは呪術士ギルドのほうで売ってるのかもな」

「なるほど、後で行ってみようぜ」

「ああ。冒険者ギルドの次に行ってみよう」

 

 マーケットで物価を調べたら、次は冒険者ギルドだ。丁度同じ建物内に宿もあるし。私達は冒険者ギルドこと、酒場クイックサンドへ向かった。

 

 

 

 

 

 昼間だというのに酒場クイックサンドは盛況だ。席は8割が埋まっており、どこも楽しそうに食べたり飲んだりしている。そろそろ食事時だし、私もまずは料理を頼んでから情報を集めるとしよう。ここの名物料理はクランペットらしいから楽しみだ。そう思ってどの席に座ろうかと周囲を再度見渡すと、そこに見覚えのある人物を見つけた。特徴的な紅白衣装の脇巫女と、銀髪褐色のナイトだ。

 

「霊夢!ブロントさん!会いたかったぜ!」

 

 魔理沙も二人を発見したらしく、名前を呼びながら駆け寄っていく。私も有名人に会う気持ちでわくわくしながら魔理沙を追いかける。

 

「あ!魔理沙じゃない!魔理沙もこっちに来てたのね」

「久しぶりだなまるさところで隣のララフェルはぜんえzん知らないヤツなんだが?」

 

 霊夢とブロントさんもこちらに気が付いたようだ。っと、私は二人とは出会ったことが無いんだから、初対面のように振る舞わないとな。

 

「はじめまして。私の名前はセラ・ヒカセン。ジョブは暗黒騎士だ。魔理沙とは冒険者として一緒にPTを組んでいる」

 

 ブロントさんの言動に少し驚いた雰囲気を出してから挨拶し、ペコリと/bowでお辞儀をする。我ながら完璧だ。

 

「はじめまして、私の名前は霊夢よ。職業は巫女ね。こっちで言うと、白魔が近いかしら」

「おれの名前はブロントだジョブは黄金の鉄の塊で出来ているナイトだから当然強いしメイン盾」

 

 文章で読んでもすごかったが、生で聞いてもすごい。全てが間違ってるのに意味・意図だけはバッチリ伝わるそれがブロント語。

 

「あー……セラ、ブロントさんは独特な喋り方をするけど、方言とか訛りみたいなもんだ。良い奴だから仲良くしてくれよ」

「おいィ?俺の言葉がヴァナディールの標準語なのは確定的に明らかなんだが?」

 

 魔理沙のフォローが入るが、納得がいかないご様子。

 

「魔理沙が良い奴って言うならもちろん信用するさ。よろしく、霊夢、ブロントさん」

 

 ブロントさんにはしっかりと『さん』をつける。でないと、「さんをつけろよデコスケ野郎!」ってお約束を言われてしまうからね。

 

 

 

 

 

「かくかくしかじか」

「ふむふむ、なるほど……」

 

 相席により同じ机を4人で囲み、食事しながら情報交換を行う。彼らは砕け散ったグラットンソードの破片を集めて復元、見事異変を解決したはずだったのだが、その際にグラットンソードが暴走。気が付いたらエオルゼアにいたらしい。

 エオルゼアに流れ着いてからは、ウルダハでひたすらクエスト・人助けの日々。ブロントさん曰く、「助けようと思って助けるのではなく助けてしまうのがナイト」だそうだ。そうしてウルダハで活躍しているうちに霊夢、咲夜と合流。光のクリスタルを拾ってハイデリンに出会う、ゾンビパウダーの事件(ウルダハのメインクエスト)を解決したそうな。

 ここにいない咲夜はりゅーさんとミスティアに連絡を取るため、グリダニアに出かけているとのこと。残ったブロントさんと霊夢でこれからカッパーベルを攻略しにいく所だったようだ。

 

「なるほど、それなら私とセラが合流すれば4人PTで丁度良いな。セラもいいだろ?」

「もちろん構わない。仲間が増えるのは大歓迎だ」

「メイン盾ナイト、アタッカー暗黒と黒、ヒーラー白だなところでセラおまいの武器は大鎌ではにぃのか?」

「ああ、エオルゼアの暗黒騎士は大剣が一番得意なんだ。鎌は装備できない」

 

 どうやらブロントさんの中ではFF11時代同様、暗黒騎士=アタッカーみたいだ。タンクだと分かると面倒そうだから、このままアタッカーということにしてしまおう。見たところ、ブロントさんも霊夢もレベル60クラス。ILは……平均200だが、グラットンソードだけ計り知れない強さを感じるといったところだ。これなら、例えカッパーベルのハードに挑んだって余裕だろう。

 その後はダンジョン攻略に関係する情報を交換し、翌日の朝からカッパーベルに挑むことになった。

 

 

 

 

~カッパーベル~

 この世界にはレベルシンクやアイテムシンクなんて存在しない。人数制限すら存在せず、常に制限解除状態だ。よって、私達がLv60の4人PTでカッパーベルに突入し、バランスを無視して敵を蹂躙しても何一つ問題は無い。出てくる敵はLv15~20程度なので相手にもならず、一撃で倒しながら進んでいく。1ボスだって楽勝で突破だった。

 

「順調ね。このまま最後まで雑魚だけならいいんだけど」

「いや、問題発生みたいだぜ?」

 

 モンスターは障害とならない私達だが、ギミックは別だ。私達の前の通路土砂で埋まっていて、通行できなくなっている。周囲には発破装置があり、さらに火薬が落ちている。ゲーム内ではこれで土砂を吹き飛ばし、道を確保するのだが……

 

「ナイトの出番なのは確定的に明らか俺に任せるべきそうすべき」

 

 ブロントさんがやる気満々だったので任せることにした。どうも、新規PTメンバーの私に良い所を見せようとしている気がする。暗黒というダークパワー持ちがいるから、ナイトのほうが優れているアピールをしたいという可能性もあるが。

 

「生半可なナイトには真似できないホーリー!」

 

 前に出たブロントさんがホーリーを放ち、聖なる極光で土砂を吹き飛ばす。おいィ?ナイトが本職白魔と同じホーリー使うのは反則じゃないですかね。

 

「流石ブロントさんね」

「通路の封印が解けられた!やったぜ!」

「それほどでもない」

 

 霊無と魔理沙に褒められたブロントさんはドヤ顔をしている。このドヤ顔を見てると、対抗したくなるな……

 その後しばらく進むと同じように土砂で塞がれた通路があった。再度ブロントさんが対応しようとしたので、今度は私がやると主張する。エオルゼアの冒険者として、ブロントさんに負けていないところを見せておかないとな。暗黒の範囲攻撃は威力が低いから、このままだと土砂を吹き飛ばせないかもしれないが、私には裏技……ギアセットによる早着替えがあるのだ。

 

「いくぞ!ダークアーツ!……からの、早着替えホーリー!」

 

 ダークアーツでエフェクトを出した後、速攻で白のギアセットにチェンジし、ホーリーを唱えてまた暗黒騎士に戻る。これぞ、生半可な暗黒には真似できないダークホーリーだ!

 

「おいィ?暗黒騎士がホーリーとかあもりにも卑怯すぐるでしょう?お前絶対忍者だろ……」

「ブロントさん、忍者でもホーリーは撃てないわよ?」

「どう見てもホーリーの時だけ白魔に着替えてたぜ」

 

 なんやかんや言われているが、通路は無事に通れるようになったので問題ない。次の土砂は霊夢のホーリーで吹き飛ばし、最後の土砂は魔理沙が「ホーリー!」って叫びながらフレアで吹き飛ばした。ついでに、2ボスのでっかい緑スイライムも発破装置無しでホーリー&フレア乱発で爆破された。結局発破装置は一度も使用されなかった。発破装置ェ……

 

 

 

 

 

 2ボスを撃破した私達は道なりに奥へ進もうとしたが、ブロントさんが立ち止まったまま動かない。長い耳をピクピクと動かしながら虚空を睨んでいる。

 

「さっき悲鳴が聞こえたんだがれうむ達は聞こえたか?」

 

 言われてじっと耳を澄ませる。どこからか金属と金属のぶつかる音、戦闘音が聞こえる。方向は……奥へ行くのとは別の方向、壁の向こう側のようだ。

 

「戦闘音が聞こえるわね」

「もしかしたら他の冒険者かも知れないな。ブロントさんが悲鳴を聞いたなら、ピンチの可能性が高い」

「時既に時間切れになる前に助けるべきだぜ」

 

 ブロントさんは頷くと悲鳴の聞こえたほうの壁の前に立ち、モンクの構えを取る。大地を踏みしめ、右の拳を全力で壁に叩きつけた。

 

「メガトンパンチ!」

 

 本職のモンク以上の破壊力で放たれた拳が岩の壁を破壊し、横穴ができる。こいつ本当にナイトなのか?

 

「リアルではモンクタイプの俺にかかればこんなもの。急いで行くぞ一瞬の遅れが命取り」

 

 ブロントさんはスプリントを発動すると、砂煙をあげながら全力で駆けだした。霊夢は空を飛び、魔理沙は箒に乗り、私は異次元からチョコボを呼び出して騎乗し、ブロントさんを追う……が、追いつけない。ブロントさんのスプリントは何故かめちゃくちゃ早い。マウントに乗っているこちらのほうが遅いという不思議現象が起きている。

 

 その速度のおかげであっという間に目的地へついた。大きい広間で足元は砂地の部屋だ。そこで3人の冒険者と巨人が戦っていて、明らかに冒険者側が劣勢だ。即座に巨人と冒険者の間にブロントさんが割って入り、巨人の攻撃を受け止める。

 

「た、助かりました!」

「それほどでもない。ピンチな人間がいれば助けてしまうのがナイトだからなそれより早く下がるべき」

 

 ブロントさんが巨人にシールドバッシュを打ち込みスタンさせる。救出対象の冒険者達はその隙に距離を取り、こちらへ逃げてくる。ルガディンの剣術士、ミコッテの槍術士、ララフェルの幻術士だ。彼らのうち、ルガディンの顔には見覚えが……

 

「ドールラスじゃないか!」

「セ、セラさん!?まさかこのような場所で出会うとは!」

 

 驚くべきことに、戦っていたのはドールラス・ベアーだった。その時、私の脳裏にニュータイプのような電流が走り、彼らのことを思い出した。彼らはサスタシャで出会い、クエスト『カッパーベルで消える夢』で死亡するはずのNPCだったのだ。ゲーム内では手の届かない位置でいつの間にか死亡していた彼らだが、今は助けられる位置にいる。ならば、今度こそ死なせはしない。

 

「この部屋の入り口付近まで下がれば安全なはずだ。ドールラス、そこで私たちの戦いを見ていてくれ」

「いえ、ケアルで回復次第加勢をします。あの巨人はとてつもなく強い!」

 

 私はドールラスに向け、不敵な笑顔を作ってみせた。自分の身長程もある大剣を構え、暗黒を発動する。

 

「なら、私たちが劣勢になったら加勢してくれ。もっとも、そんな機会は来ないが。あんな巨人より、圧倒的に私たちのほうが強い!」

 

 唖然とするドールラスを置き去りにして、砂地の中央にいる巨人、カッパーベルハードのボスである復讐のウラノスに向かって突撃する。私と霊夢、魔理沙がブロントさんに加勢し、4対1になると不利を感じたのか、巨人が増援を呼ぶ。

 

「オデのカワイイイモムシちゅわん!ジャマなチビども、ツブしちまえ!」

 

 砂地が不自然に盛り上がったかと思うと、そこから巨大なイモムシ、アビスワームが飛び出してくる。即座に挑発とアンメンドを使ってターゲットを私に固定すると、ワームは大口を開けて一直線に向かって来た。ゲームでは存在しなかった動き。しかし、その動作すら『オレンジ色の範囲攻撃の予兆』によってバレバレだ。ダークアーツを発動し、飛び込んでくるアビスワームに向かって跳躍。すれ違い様に奴の口内にダークパッセンジャーを叩きこんだ。

 

「これでも食べてろ、大食いワーム!ダークパッセンジャー!」

 

 硬い外皮に覆われていない、弱点の口内に攻撃を受けてアビスワームが一瞬怯む。

 

「私を忘れてもらっちゃ困るぜ!地に閉ざされし、内臓にたぎる火よ。人の罪を問え!ファイジャ!」

 

 その隙を逃さず魔理沙が追撃のファイジャを敵の頭部に決める。激しく燃える炎を振り払うように暴れるアビスワームだが、その動きはデタラメで隙だらけだ。

 

「モンハンG級の私にかかればこの程度!」

 

 ブラッドウェポンを発動し、ダークアーツを全開にしながらソウルイーターコンボでアビスワームの頭部を斬り刻む。二人で連携して徹底的に頭部を狙った結果、アビスワームはあっさりと動かなくなった。

 ワームの撃破を確認し、フリーになった私と魔理沙は巨人を相手取っていたブロントさん・霊夢ペアの援護に入る。ブロントさんは巨人の攻撃を的確に盾でブロックし、相手の体勢を崩してから攻撃を叩き込んでいた。見事なカウンターだ。普段の彼からすると意外だが、防御重視で堅実に戦うタイプのようだ。

 合流した私が巨人の背面を取って斬りつけると、巨人は正面のブロントさんと背後の私、どちらを相手にするか迷う動きを見せた。

その隙を見逃さず、今まで防御主体だったブロントさんが反撃に転じる。

 

「破壊力ばつ牛ン!ハイスラァ!」

 

 大上段から全力の振り下ろしが巨人を引き裂き、よろめかせる。さらにブロントさんは振り下ろした剣に炎を纏わせ、今度は救い上げるようなアッパー斬りを放つ。そこに魔理沙がフレアを、霊夢がホーリーを合わせる。私も連携攻撃に参加し、ダークパッセンジャーを放った。

 

「追撃のっ!グゥランドヴァイパーッ!」

「ステーキにしてやるぜっ!フレア!」

「これで終わりよ!ホーリー!」

「闇に飲まれろ!ダークパッセンジャー!」

 

 4人の同時攻撃がトドメとなり、巨人は倒れ、黒い霧となって霧散した。カッパーベルハードモード、攻略完了だ。

 

 なお、1人だけ明らかにゲームを間違えた技を使っていたが、威力はあるし技として完成しているので細かいことは突っ込まない事にする。……私も頑張ったらグランドヴァイパー撃てるようにならないかな。

 




この小説の主人公、ヒカセンの画像はこちら


【挿絵表示】


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話 コロセウム無双

~ウルダハ~

 カッパーベルに戻ってきた私達はモモディに結果を報告し、ドールラス達と別れた。今はブロントさん、魔理沙、霊夢、私の4人で食事を取りながら今後の相談をしている。

 

「私達はサンクレッドっていう優男から勧誘を受けてるの。その男の組織、暁の血盟っていう所へ行ってみようと思うわ」

「サンクれんドはこえう力の秘密を教えてくれるらしい」

「私は霊夢とブロントさんについていくぜ。セラはどうする?」

 

 ブロントさん、魔理沙、霊夢はゲームのクエスト通り、暁の血盟と接触するらしい。その後の流れはキャンプ・ドライボーンへ向かってイフリート退治だったか。この辺りでは主要メンバーに死人は出なかったはず。なら、私は単独行動で今後のために動くのが一番だろう。

 

「私はやることがあるから、ここでPTを抜けさせて貰うよ」

 

 そう告げると魔理沙は残念そうに「わかったぜ」と頷いてくれた。私としても魔理沙とのPTは楽しかったから少し寂しい。そんな私と魔理沙のことを見かねたのか、霊夢が一つの提案をしてくる。

 

「セラが良ければ私達のフリーカンパニー『最終幻想』に招待するわ。どうかしら?」

「ナイトがいるFC→即シャキ→心が豊かなので性格も良い→友達ができる。ナイトがいないFC→ぜんえzんPT組めない→心が狭く顔にまででてくる→いくえ不明。なのでセラは『最終幻想』に入るべき」

 

 ブロントさんが掌の上にリンクパールを2個乗せて差し出してくる。FCも連絡はリンクパールで取り合うみたいだ。魔理沙が一つ受け取った後、期待した目で私を見ている。

 

「ふふ、確かに友達が増えるのは嬉しいな。『最終幻想』に入ろう。これからよろしく頼む、ブロントさん、霊夢、魔理沙」

 

 私はブロントさんからリンクパールを受け取った。これで私はこの世界でもFCに入ったことになる。ぼっちは寂しいから、とてもありがたい。

 

 

 

 

 

 フリーカンパニーに入ってフレンド登録も行った後、私はブロントさん達と別れ、クイックサンドでクランペット(現実世界で言うホットケーキ)をほおばりながら今後の計画を練っていた。蒼天のイシュガルドはひとまず置いておくとして、新生エオルゼアのメインクエストの中で私が変えたい歴史は以下の3つになる。

 

1、砂の家の襲撃による暁のメンバー死亡

2、ナナモ様が毒で倒れる&ラウバーンの負傷

3、クリスタルブレイブ結成時の裏切りの阻止

 

 このあたりが確実に変えたい所だろうか。ナナモ様やアルフィノは苦境に置かれることで成長していたから、それが無くなる事が少し不安だ。しかし、死人が少なくなるほうが優先だろう。

 

 1番は襲撃の時に砂の家にいればいい。3番はクリスタルブレイブ結成時に裏切りメンバーを入れなければOKだ。もしくは、裏切りの証拠を掴んで告発しても良い。しかし、2番を阻止するとなるとテレジ・アデレジが厄介だな。話が金と政治に絡んできそうだ。対抗するにはこちらも金と権力が必要だろう。方針としては資金を稼ぎつつ、ウルダハで発言力・影響力を稼ぐ。そしてテレジ・アデレジ以外の砂蠍衆と組み、彼の動きを阻止するのだ。そうと決まれば早速行動だ。

 

 

 

 

 

 まずは資金から稼ぐ事に決めた私はリテイナーを4人雇った。私はゲームキャラに憑依しただけでなく、蒼天のイシュガルドの時代から新生エオルゼア開始時の時代へ逆行もしている。逆行者ともなれば将来値上がる物品を知ってる。リテイナー達に今の内に集めさせて、値上がってから売り捌かせるのだ。

 

 彼らに指示するのはトームストーン集めだ。トームストーンとは古代アラグ帝国の情報が入ったハードディスクのようなもので、ゲーム内ではNPCのロウェナがこれを大量に売買し、大金持ちになったという。市場を確認したところ、トームストーン『哲学』と『神話』がやや値上がりの傾向を見せているところだ。私は上記の2種類のほかに『戦記』『詩学』『禁書』『伝承』の順で買い集めることを指示する。買い集めの資金はサスタシャで稼いだあぶく銭の2500万ギルだ。最終的にどの程度の資金を稼げるかは不明だが、期待して待つとしよう。

 

 他に買うものとして、鬼畜クエスト『ゾディアックウェポン』『アニマウェポン』で使用する道具も買い集めておく。私は既にアニマウェポン持ちだが、ブロントさん達の誰かがクエストを行うかもしれない。念のためだ。

 

 先物取引だけでは不安なので、堅実に稼ぐ手法も取り入れる。イシュガルドでしか入手できない鉱石で武具を生産し、マーケットにぼったくり価格で数点だけ出しておくのだ。アーマリーチェストに眠っている、ゲーム内では販売不可能だったEXアイテムやBIND武具も同様に市場に流す。大量に流すと市場を崩壊させてしまうので、掘り出し物とか一品物とかそういう感じでプレミア価格をつけて流した。

 

 資金集めの合間にウルダハで影響力を持つ行動も忘れない。ゲーム内のクエストはブロントさんが対応する物として手をつけず、それでいてウルダハで名を売れる所と言えば一箇所だ。その場所とはコロセウム。不滅隊のトップ、ラウバーンもかつてはコロセウムで1000人斬りを行って名声を稼ぎ、その稼ぎで砂蠍衆に入ったという。私もそれに習い、コロセウムで英雄ヒカセンの名を広めるのだ!

 

 

 

 

 

 

~コロセウム~

 コロセウムで選手登録し、約2週間。私は連日、ここで試合を重ねている。今もまた、リングの中で対戦相手と向き合っている所だ。

 

「今日の対戦は注目のカード!流星の如く現れた期待の新人!戦績は10戦10勝、負け知らずのホープ!その大剣は全てを切り裂く!『暗黒剣』ヒカセンだあ!」

 

 司会の紹介に観客席が歓声をあげる。ファンサービスということで、私も観客席に手を振って応えた。

 

「対するは『麗しの剣士』フランツ!華麗なる剣技で勝利を掴むベテランだ!新人の連勝を阻止できるのは彼しかいない!」

 

 ワアアアアア!!と歓声が爆発する。明らかにヒカセンの紹介よりも大きい歓声は彼の人気と実績を証明している。ゲーム中でも登場した、麗しの剣士フランツ。イケメンなだけでなく、実力も確かな闘士だ。だがしかし、それはウルダハの平均的な闘士と比較した場合の話だ。私が超える力でフランツのレベルを見抜いたところ、彼はレベル45。私が負ける要素はほとんど無い。

 

「両者武器を構えて戦闘態勢に入った!審判のカウントダウンが開始されます!……3、2、1、0!試合開始だぁ!」

 

 カァン!試合開始のゴングが高らかに鳴ると同時に私はグリッドスタンスを発動し、防御重視の構えを取る。逆にフランツは攻撃に全力を賭けるといった勢いで一直線に突っ込んできた。速度と体重を乗せた片手剣の突き。それを私は大剣で斬り上げるように弾いた。武器と共に腕をかち上げられたフランツは胴体がガラ空きになり、絶好の隙ができる。だが、あえて追撃はしない。フランツは慌ててバックステッポで距離を取り、剣を構えなおす。

 

「暗黒剣のヒカセン、絶好のチャンスを見逃しました!しかしこれこそが彼女のスタイルなのです!序盤は守りに徹して相手に全力を出させます!」

「そしてぇ!相手の攻撃の全てを防いだ上で、その大剣で相手の肉体も精神も叩き折る!この可愛いララフェルは見た目と中身が正反対なのです!フランツはこの鬼畜ララフェルを攻略できるのでしょうかぁ!」

 

 ルガディンの司会が音声増幅魔道具(いわゆるマイク)を片手に実況する。酷い言われ様をしているが、おおむね間違っていない。

 コロシアムの闘士にはスター性が求められる。『麗しの剣士』なんて二つ名がつくフランツが良い例だ。私もカリスマ人気闘士になるため、戦法を独自のスタイルにした。それは、序盤は一切反撃をせずに防御に徹し、相手の攻撃を全て出させてから猛反撃を開始するというもの。いわゆる舐めプだが、客からのウケは良い。

 

「一撃では突破できないか。それなら、ここからは手数で勝負だ!」

 

 フランツは開幕に全力を込めた一撃を弾かれて表情を歪めたが、すぐに戦闘スタイルを変えた。一撃の重さに賭けるのではなく、連続攻撃で攻めるスタイルだ。彼はファストブレード、フラットブレードからレイジオブハルオーネへと繋げてくる。怒涛の連続攻撃だ。しかし私は冷静に、大剣でその全てを迎撃する。

 

「フランツの華麗な連続攻撃です!しかしヒカセンはその全てを大剣で弾き返しています!大剣の重さを一切感じさせない動きです!」

 

 司会の声を背景に、私はハルオーネを捌ききる。15もあるレベル差は、私とフランツの間に絶対的な格差を作っているのだ。

 

「そんな軽い攻撃では私には届かないぞ」

「……かくなる上は切り札を切らせてもらう!いくぞ、暗黒剣のヒカセン!」

 

 フランツが叫び、捨て身・発勁・猛者を順に発動させる。ベテラン闘士の意地か、確かにこの怒涛のバフは切り札と言える。

 再度放たれるファストブレードとフラットブレード。剣速は先程までよりはるかに疾く、重い。

 

「……!ダークダンス!」

 

 素の状態では捌ききれないと判断した私はダークダンスを発動した。まるで範囲攻撃の予兆のように、フランツの剣がどこに来るかが可視化される。

 

「真・レイジオブハルオーネッ!」

 

 フランツが放った真・レイジオブハルオーネは5連撃だ。私は未来視した軌跡に沿って大剣を振るい、迎撃する。初撃の左からの横切りを回避し、右からの斬り返しを大剣で受け流す。流れるように繰り出される下からの切り上げを弾くと、再び右から来る剣閃を回避。最後の上段の振り下ろしはシャドウスキンを展開し、バリアによって剣を跳ね返す。

 

「これでも届かないのかっ!?」

 

 フランツは自分の切り札を無傷で切り抜けられた事に驚愕し、仕切りなおすために距離を取った。

 

「フランツの必殺技、真・レイジオブハルオーネが炸裂しましたぁ!今までこの技を受けて立ち上がった者はほとんどいません。ですがですがぁ!なんとヒカセン、無傷で切り抜けました!」

 

 司会が叫び、観客達が大歓声をあげる。相手の必殺技を完全に防いだことでコロセウム熱狂がピークに達する。

 

「それで終わりか?ならば、今度は私のターンだ」

 

 観客は十分に盛り上がった。ここまで攻撃を防いで見せれば十分だろうと判断し、私はグリッドスタンスを解除。暗黒を発動する。意識を集中し、私は真紅のオーラを大剣に纏わせた。

 

「麗しの剣士フランツの猛攻もヒカセンには届きません!そして暗黒剣のヒカセン、ついに二つ名の暗黒を大剣に纏わせました!」

 

 暗黒はゲーム内では自分の全身に纏うものだった。しかし、現実となった今では多少の応用が効く様になっている。纏うオーラを全身では無く、一点に集中させれば暗黒の破壊力が跳ね上がった。コロセウムという実戦を通して分かったことの一つだ。さらにダークアーツを上乗せし、大剣を構えてフランツに疾走する。フランツもランパートを発動し、迎撃の構えを取った。

 

「神に背きし剣の極意、その目で見るがいい!カーヴ・アンド・スピット!」

 

 だが、今の私にはその程度の守りなんてガラスのようなものだ。繰り出された大剣はランパートの障壁とぶつかり、轟音と共にそれ粉砕した。その威力だけでフランツが吹き飛び、コロセウムのリング外へ吹き飛ばされる。この瞬間フランツは場外負けとなり、私の勝ちが決まった。

 

「い、一撃!今回も一撃です!あのフランツですら、暗黒剣のヒカセンには歯が立ちません!彼女を止められる者は今のコロセウムにいるのでしょうか!?」

 

 司会の声と歓声を浴びながら、リングの中央で観客に手を振る。これでヒカセンの名はまた有名になり、クールで格好良いララフェルとして有名になることだろう。

 賞金もがっぽり、名声も高まって、実戦経験も磨ける。何より歓声が気持ち良い。ふふふ……完璧、パーフェクトだ。コロセウム、何と素晴らしい場所か!このままラウバーンを超える伝説を立ててみせるぞ!

 野望を胸に抱きつつ、私は「勝利を喜ぶ」エモートを連発するのだった。

 

 

 

 

 

 なお、翌日の試合で出てきたテュポーン先生の鼻息により場外負けとなり、ヒカセンの連勝記録はストップしたのであった。

 




コロセウムに参加して優勝したい。
ヒカセンの皆さんなら考えたことありますよね。
アマジナ杯なんて優勝賞金20Mも出るのですから。


二つ名は『暗黒剣』と『ジュピーと鳴く獣』で迷いました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話 激辛ジュースとクシャミ爆弾のコンボでストレスがマッハ

エオルゼアでは異種族同士の結婚は必ず母方の種族になります。
ガレアン人の父とララフェルの母の場合、子供はララフェルになります。

ガレマール本国の設定はよく分からないのですが、本作ではほとんどがガレアンまたはヒューランで、ミコッテやララフェル等の種族はごく少数という設定でいきます。


 ゆらゆらと。ふわふらと。真っ白な空間を漂う。手も、足も、肉体の感覚が何一つ無く。唯一存在する意識の中で、ああ、自分は夢を見ているんだなと自覚する。

 

 けれど夢の主人は私であって私では無い。これは、彼女の夢だ。

 

 子供の頃。少女の周りは皆ガレアン人(ガレマール帝国における民族の名前。)ばかりで、ララフェルなんて一人もいなかった。ララフェルの少女は背も小さく、力も弱い。ただ他と種族が違うというだけで意地悪され、両親に泣きついた。母は優しく少女を抱きしめる。父は少女の頭を乱暴に撫でながら、彼女に語った。

 

「幸せは自分の手で掴むのだ。強くなれ」

「強くなる……?」

 

 少女は父を見上げた。

 

「そうだ。世の中は不公平、不平等に溢れている。それを覆したければ、強くなれ。そうすれば皆がお前を認めるだろう」

「私、強くなれるかな?皆よりこんなに小さいのに」

 

 少女は不安そうに父に尋ねる。父は頭を撫でるのをやめ、少女の瞳を覗き込んで言った。

 

「お前は必ず強くなれる。俺の娘なのだから」

「……うん。私、強くなるよ」

 

 幼い少女は父の期待に応えるため、強くなることを誓った。

 

 それから少女は父の言葉を信じて努力した。身体を鍛え、魔法を学び。幾度と無く魔物と戦った。誰よりも貪欲に強さを求め、士官学校の誰よりも強くなった。しかし、父の言葉の通り誰よりも強くなった少女に待っていたのは周囲からの尊敬と恐れ。意地悪されることは無くなったが、少女は昔と変わらず孤独だった。

 

 

 

 

 

「ん……」

 

窓から入ってきた日光に眩しさを感じ、目が覚める。机の上に突っ伏していた顔を上げ、頭を徐々に覚醒させていく。

 

「眠ってしまっていたか。今のは『セラ』の夢か……?」

 

 夢の中で私は私で無くなり、『セラ』の記憶を俯瞰しているような感覚だった。彼女はララフェルである事に孤独とコンプレックスを感じていたようだ。周囲のほとんどがヒューランとガレアン人で、ララフェルは自分と母だけ……なんて状況ではそれも仕方なかったのだろうけれど。

 

 『セラ』の事を私は設定でしか知らない。だから、彼女の記憶を知る手がかりは重要だ。今後も似たような夢を見た場合に備えて、きちんと書き記しておくことにする。

 

 今日はコロセウムの試合も無く、リテイナーと商売の打ち合わせも無い。やる事と言えば、現状の整理とゲーム内未来情報との照らし合わせぐらいだ。それが終わったら、もう一度眠って夢の続きを見ることに挑戦するのも良いかもしれない。そうと決まれば、さっさと情報整理を済ませてしまおう。

 

「これまでの報告では、ブロントさん組とりゅーさん組は合流完了。イフリート撃破後にグリダニアへ移動。トトラクの千獄を攻略完了して、シルフとの友好を結んだ……だったか」

 

 光の戦士ブロントさん達の冒険は順調だ。サスタシャ・カッパーベルが本来のゲームより強化されていたことからイフリートの強化も懸念していたが、報告を聞く限り1段階強化となる真イフリートが出現し、楽々撃破したとのこと。極イフリートだったらまずかったかも知れないが、Lv60の冒険者なら真イフ程度何の問題も無い。

 今朝の報告からすると、今頃はハウケタ御用邸を攻略しているところだろうか。仮にハウケタがハード化していても、彼らなら余裕だろう。

 

 

 

 

 

 ブロントさん達のことを考えていると、机の上のリンクパールが明滅しはじめた。これは通信の合図だ。リンクパールさんは携帯電話並にハイスペックなのだ。

 

「こちら咲夜。緊急事態発生よ。戦力がいるから手の空いてる人はシルフの仮宿に集まってくれないかしら」

 

 リンクパールを取ると咲夜からの緊急連絡が。いったいどうしたのだろうか?

 

「こちらセラ。シルフの仮宿に向かえるが、いったい何があったんだ?」

「……こちらりゅーさん。現在、ハウケタ御用邸で戦闘中だ。向かうには時間がかかる。みすちー、霊夢も同様だ」

「こちら魔理沙、すぐに向かうぜ!」

 

 ハウケタ御用邸の攻略PTはりゅーさん、みすちー、霊夢と聞いている。ハウケタ以外での問題だろうか。

 

「……ブロントさんが蛮神ラムウの元へ一人で向かったわ。いくらブロントさんとはいえ、一人で蛮神を倒せるとは思えない。急いで連れ戻さないといけないのよ」

 

 このタイミングでラムウだって?ゲームの時系列ならラムウはもっと後のはず。イレギュラーな事態が起こっているのか。しかし何故?

 

「咲夜、それマジかよ!?ブロントさんだって、一人で蛮神に突っ込むのは無謀だって分かってるはずだぜ!」

「ブロントさんがラムウに挑む理由は何故だ?詳しく教えてくれ」

 

 理由を問うと、リンクパールの向こうから「はぁ……」という溜息が一つ。

 

「悪い子シルフに散々イタズラされた後、トドメにグラットンソードを盗まれたのよ。それでブロントさんの怒りが有頂天になって、悪い子シルフのボスであるラムウに殴り込みをかけたってわけ。ブロントさん、武器も持たずに出て行ってしまったわ」

 

 ブ、ブロントさん……グラットン盗まれて取り返したいのは分かるけれど、せめて私達の合流を待ってくれてもいいのに。……いや、ブロントさんは煽り耐性無くて沸点低いからそれも無理か。

 

「あー……ブロントさん、グラットンめっちゃ大事にしてるからな。そりゃ取り返しに行くわ」

「そういうわけで、緊急事態なのよ。魔理沙、セラ。貴方達が合流したらすぐブロントさんを追いかけましょう。りゅーさん、ミスティア、霊夢はダンジョンの攻略が完了次第来て頂戴」

 

 了解、と返事をしてリンクパールの通信を切る。どうやら、光の戦士に全てを任せて楽をするという案は無理らしい。光の戦士の先輩として、このヒカセンがサポートしてあげるとしよう。

 

 

 

 

 

~シルフの仮宿~

 

 シルフの仮宿に着くと、そこには既に咲夜と魔理沙がいた。

 

「すまない、遅くなった」

「いや、私も今来たところだから平気だぜ。それで咲夜、ブロントさんがラムウの所へ乗り込んだってのは聞いたけれど、詳しい行き先に心当たりは?」

「いえ……森は広いし、空を飛んでも視界が遮られてしまうから偵察もできないの。ある程度仮宿のシルフに聞き込みをしたのだけれど、ブロントさんの目撃情報もラムウの居場所も大雑把にしか分からなかったわ」

 

 魔理沙が尋ねるが、咲夜は首を横に振って否定。現状では曖昧な情報しか無いことを告げる。けれど、この場には未来知識を持つこの私がいるのだ。

 

「ブロントさんがこの森で危機に陥るとしたら可能性は二つ。迷って遭難か、蛮神ラムウと戦うかだけだ。しかし、遭難したり迷ったら怒りも沈静化してリンクパールの呼びかけに答えてくれるだろう。だから、私達が目指すのはラムウの位置だ」

「けどよー。そのラムウの位置が分からないぜ。咲夜の話じゃおおまかにしか情報が無いんだろ?」

 

 魔理沙の言葉に対し、私は持っている地図を広げた。そしてドヤ顔でラムウへと繋がるエーテライトの位置を指し示す。

 

「問題ない。ラムウへと繋がるエーテライトの位置はここだ」

「セラ、何でこんな詳細な地図持ってるんだぜ?」

「それは確かな情報なのかしら?」

 

 私が出した地図へ懐疑的な視線を向けてくる二人。普通、シルフの住む森の細部まで書かれた地図なんて無いだろうからこの反応も当然かもしれない。だが、地図の出所は言えないので秘密で押し切る。

 

「私はとある経路でエオルゼア全土の詳細な地図を入手しているんだ。他の土地の地図もあるぞ。サハギンやアマルジャの土地だってバッチリ載っている。入手ルートは契約上言えないが、この地図の精度は確かだ。そして、私が指し示した位置にはシルフ族のエーテライトがある」

「他の地図を見てもどれも正確さは十分みたいだから、この地図も信用できそうね。そしてエーテライト……行ってみる価値はありそうね」

「決まりだな。地図があるなら迷わず行けばブロントさんに追いつけるかも知れないし。急いで向かおうぜ」

 

 魔理沙は箒で、咲夜はそのままふわりと宙に浮かぶ。私はチョコボに乗ったが、風脈が無いため飛べなかった。飛行組はやはりずるい……

 

 

 

 

 

 

~シルフ族エーテライト前~

 

 シルフ族のエーテライトへ向かう途中でブロントさんとは合流できた。気絶した悪い子シルフが道なりに何人も倒れており、それを追っていくと「おいぃぃぃぃぃ!」と叫ぶ謙虚な騎士を発見したのだ。しかし、合流したのはいいものの、

 

「グラットンがまだ戻ってきてにぃからここで帰るとメイン盾ができなくえエオルゼアでひっそり幕を閉じることになる。それに不良シルフの親にモンクを言わないとこの怒りはしばらく収まることを知らない」

 

 とラムウの元へ殴りこむ気満々だった。イタズラ被害や愛剣を取られた怒りを除外したとしても、グラットンソードには強力なダークパワーが宿っているから、早急に取り戻さなければ何らかの事件が発生する可能性があるとのこと。どうやら、このままラムウの元へ突入するしか無いらしい。

 

「ラムウ戦が避けられないのは了解した。なら、私が知る限りのラムウの情報を話そう。情報提供元は秘密だから聞いてくれるな」

 

 ラムウは特にギミックがキツイ蛮神だ。仮に極蛮神が出てきた場合、雷球や雷鼓の理解は必須といえる。何も言わないままだと、妖怪球拾いが出てしまうだろうからな。

 

「……全てがこの情報の通りかは不明だが、十分に注意してくれ。後はブロントさん、これを」

 

 武器を失っているブロントさんにはアイテムボックスからIL210のオートクレールを取り出して渡しておく。グラットンには及ばないが、十分な強さのはずだ。さらに、現在の構成がナイト、忍者、黒魔なので私は白魔に着替える。これで戦闘準備は整った。

 

 

「セラお前良いやつだな後でジュースをおごってやろう」

「……どうせなら、ジュースより甘いお菓子がいいな」

「任せろ雪山のロランベリーを作ってやる」

 

 ブロントさんが出したお菓子の名前『雪山のロランベリー』とは、エオルゼアには存在しないFF11のお菓子だ。つまり幻のレシピといえる。これは是が非でも頑張らねばならない。燃えてきたぞ!

 

「ブロントさんもぶっ飛んでるけど……武器に地図に敵の情報。さらにその強さ。セラも相当だぜ」

「貴方の秘密は気になるけれど、今は追求しないでおくわ。でも、仲間になったのだから近い内にきちんと話して欲しいわね」

「ああ。いつ話せるかは分からないが、いずれ話すと約束しよう」

 

 情報提供元についての追及は後日にしてくれるらしい。砂の家のアシエンのスパイ(サンクレッド)の件が片付いたら話そうと心に決める。

 

「よし、準備完了だな。行くぞ皆!雪山のロランベリーのために勝利を!」

「ブロントさん、そのお菓子は私にも作ってくれよな!」

「グラットんを盗んだ罪は重いマジで親のダイヤの結婚指輪のネックレスを指にはめてぶん殴る」

「それは指輪なのかしら?それともネックレス?」

 

 蛮神へ突入する雰囲気なんて欠片も無いまま、私達はエーテライトを使用してラムウの元へ転移するのだった。

 




東方陰陽鉄の動画を見たのが2008年12月。あれから8年。
FF11が出たのは2002年。
もうずいぶん昔の話になってしまったんですね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話 新たなる選択肢

 シルフ族のエーテライトを使って転移する。視界がブラックアウトしたかと思えば、一瞬で新たな景色が目に入ってきた。広い円形のフィールドと、その中央に佇む老人。ただし、そのサイズは5メートル以上の巨体で、超すごくモフモフしてそうな白いお髭をお持ちの老人だ。老人の名は蛮神ラムウ。シルフ族の守護神である。

 

 

「ほう……人間の来客とは珍しいの。何用じゃ」

 

 私達を見て尋ねるラムウに対し、ブロントさんが前に進み出て答える。

 

「俺は3回イタズラを受けた。トウガラシ入りジュース、クシャミ爆弾、グラットン窃盗。普段は確かに心優しく言葉使いも良いナイトでも悪い子シルフのあまりの粘着ぶりに怒りが有頂天となった。仏の顔を三度までという名セリフを知らないのかよ」 

「つまり、グラットンソードを返して謝れば許す。けど返さないならハイスラでボコって取り返すぞってことだぜ!」

 

 ブロント語を魔理沙が補足し、ブロントさんが頷く。グラットン返せとかハイスラのあたりはブロントさんの発言に入っていなかった気がするが、気にしてはいけない。

 

「独特な言い回しじゃな。言語として間違っていても、意味は伝わるのが不思議じゃ。グラットンソードとはこの漆黒の剣かのう」

 

 ラムウが手を天にかざすと、虚空からグラットンソードが現れてラムウの右手に収まる。

 

「hai!早く返してくだしあ!」

「それは聞けぬな。この剣は強大な力を秘めておる。その規模はこの森一体の潜在エーテル量に匹敵しよう。そして、この剣からエーテルを吸収すれば森からエーテルを吸収する必要がなくなる。この森の寿命を縮める事無く、シルフ族を守ることができるのじゃ」

 

 シルフ族を守るのが目的であるラムウからすれば、森以外からのエーテルの確保は必須。それでグラットンソードの持つエネルギーに目をつけたらしい。

 

「それは何か、グラットンの代わりとなる物ではいけないのかしら?」

「この剣の持つエネルギーは計り知れない量じゃ。これに匹敵するエネルギーを供給できるのなら、剣を返してもいいんじゃが……」

 

 咲夜の問いにラムウが答える。私が見たところ、グラットンは竜の眼に匹敵するエネルギーを秘めている。私の中にはフレースヴェルグの眼が宿っているが渡せるわけが無い。他の皆とて、グラットンに匹敵するものを持っていても渡そうとはしないだろう。

 

「どうやら交渉決裂のようだぜ。そもそも、盗まれた物を取り返しに来たのに代わりのものを渡すってのがおかしいんだ」

 

 皆の困り顔を見て、交渉決裂を悟った魔理沙が武器を構える。それに伴い皆も武器を構え、ラムウも杖を取った。私もプロテスを詠唱し、戦闘に備える。

 

「こちらに非があるのは理解しているが、譲ることはできんのじゃ。戦うのならば、我が雷がお前達を焼きつくすことになるぞ」

「お前、雷属性の左でボコるわ……」

「素直にグラットンを返さなかったこと、後悔させてあげるわ」

「あまり調子に乗ってると、裏世界でひっそり幕を閉じるってことを教えてやるぜ!」

 

 魔理沙が箒に跨って飛行し、咲夜とブロントさんがラムウへと駆け出す。戦闘開始だ。

 

「行くぞ蛮神ラムウ。50回周回しても馬が取れなかった恨み、今ここで晴らす!」

 

 

 

 

 戦闘フィールドはゲーム中の極ラムウ戦と同じだ。周囲には水があり、そこに雷が落ちれば感電する。よって初手はコレだ。

 

「魔理沙!周囲の水を蒸発させるか凍らせてくれ!」

「あいよ、任されたぜ!」

 

 私の指示に従い魔理沙から放たれた炎により、周囲の水が蒸発する。水場での感電が無くなり、まずは状況が一つ改善された。

 魔理沙の魔法が終わると、今度はラムウのサンダーストームだ。複数の雷が落ち、落雷地点に雷球が生成される。この雷球がラムウギミックの肝で、MTが常に雷球を3つ保持しなくてはならない。ブロントさんに雷球の回収を頼んでもいいが、まずは別の手段を試すことにする。

 

「物は試しだ。エアロ!」

 

 詠唱によって巻き起こされた風はラムウではなく雷球に向かう。この風で雷球をブロントさんのほうへ弾き飛ばせればと考えたのだ。しかし、エアロは雷球に当たると、雷球を弾くのではなく消滅させた。

 

「やはり、そこまで上手くは行かないか。ブロントさん、事前の説明通り、雷球の確保を頼んだ!」

「hai!」

 

 ブロントさんが雷球を回収していく。その動きは迷いが無くスムーズだ。流石はFF11を戦い抜いたナイトか。そして、4個目以降の雷球には私がエアロを打ち込み消滅させる。

 先ほどの実験で移動せずとも遠距離からエアロで消せる事が判明している。こういうことは有効利用していかないとな。

 

「雷属性の左の封印が解けられた!」

 

 雷球を左に持つ盾で回収し、電気を纏った状態になったブロントさんはそのままシールドバッシュを決めた。有言実行するとは、流石ブロントさんである。

 ショックストライクでラムウが反撃するも、ブロントさんは電気を纏った盾で受け、ダメージを軽減した。

 

「ふむ、お主が司令塔か」

 

 ここまでの流れを作った私を厄介と思ったのか、ラムウがカオスストライクを打ってくる。不可視の必中攻撃は避けることができず喰らってしまうが、喋ることはできるようだ。それなら問題ない。

 

「この硬直の呪いは雷を受けることで解除される。頼んだ!」

 

 私が叫ぶと即座に魔理沙からサンダーが飛んでくる。違う、そうじゃなくてラムウのサンダーストームを!っと思ったら普通に魔理沙のサンダーで解除された。まさかの攻略方法発見である。

 自分の技が即座に破られたことを理解したラムウは戦法を物量に切り替え、大量のサンダーストームを降らせてくる。その数はゲームよりはるかに多く、回避が不可能な量だ。

 しかし、それでも超える力は敵の攻撃のタイミングを予知してくれる。雷が落ちてくるタイミングを狙って、上空へ短剣を数本放り投げた。

 数多の漫画で使用された雷への常套手段は効果を発揮し、雷は短剣に直撃した事で霧散、その下にいる私にまで届くことは無かった。

 

「無駄だ、ラムウ。お前の技は私達には届かない!」

 

 

 

 

 その後もラムウの攻撃が繰り返されるが、全てを的確に対処していく。ブロントさんの避雷バフが切れたタイミングもあったが、我らが頼れるメイン盾は防御バフによりきちんとショックストライクを凌ぎきった。

 

「ならば、我が最高の技を使うまで」

 

 全ての技が防がれ、このままでは押し込まれると考えたのかラムウは周囲に分身を展開する。そして長い詠唱を開始した。見れば分身達がラムウ本体に電気をチャージしており、詠唱完了時に大技が来るのが予想できる。

 

 おそらくは『裁きの雷』だろう。確かにこの技は回避不能。分身を早急に殲滅するDPSが無ければ全滅するだけだ。

 しかし、このPTは私以外にも強力なメンバーが揃っている。もしかしたら、ゲーム中にいた廃人達よりも高いDPSを持っているかもしれないぐらいのメンバーが。

 

「吹き飛ばしてやるぜ!彗星『ブレイジングスター』!!」

「消えなさい。傷魂『ソウルスカルプチュア』」

 

 魔理沙が箒でひき逃げして右の敵3体を、咲夜がナイフで左の敵3体をバラバラに引き裂く。範囲・威力共にLBに匹敵する大技のようだ。クールタイムまでは分からないが、スペルカード発動時にMP・TPが一気に減っているから連発は不可能と見える。それでも非常に羨ましいが。運営さん、私にも新スキルください。

 スペルカード発動によって分身が速攻で沈み、裁きの雷を詠唱しているのがラムウ本体だけになる。チャンスと見たブロントさんと私がラムウに連携攻撃をしかける。

 

「詠唱時間が長すぎた結果がコレだよ。時既に時間切れ。ハイスラァ!」

「汚れ無き天空の光よ、血にまみれし不浄を照らし出せ!ホーリー!」

 

 ハイスラとホーリーによる合体攻撃、ホーリーハイスラがラムウの体力を削る。さらに分身を倒し終えた咲夜と魔理沙も攻撃を重ね、フルボッコ。しかし流石に削りきることはできず、裁きの雷が発動する。

 

「輝ける古の知に照らし、我、汝に厳正なる審判を降ろさん!」

 

 ラムウの膨大な魔力が開放される。フィールドを埋め尽くすように雷が落ち、視界が真っ白に染まる。雷の嵐は数秒間続き、フィールドを焼き尽くした。だがそれほどの技を持ってしても、私達のHPは3割も減らなかった。Lv60の性能は伊達では無いのだ。

 

 

 

「おいィ?お前の最強の技が防がれたなら、勝ち目はにぃから降参したらどうですかねぇ?」

「シルフ族を守りたいのなら、敗北して消滅するより負けて生き残ったほうが良いんじゃないかしら」

 

 裁きの雷を余裕で耐え切り、ラムウに実力を見せた所でブロントさんと咲夜が降伏勧告を行う。ラムウは多少迷う素振りを見せたものの、降伏を決意したようだ。

 

「むぅ、ここまで実力差が明確では仕方あるまい……降伏しよう。剣を受けとるのじゃ」

 

 

 

 ブロントさんはグラットンソードをラムウから受け取ると、満足そうに鞘に収める。これでグラットン騒動については解決だ。しかし、問題はまだ残っている。

 

「グラットンソードは戻ってきたけどよ、ラムウが顕現し続けるためのエネルギーってのが無いとこの森がいつか滅びちゃうんだろ?けどラムウがいなくなると帝国が攻めてくる。何かいい案考えないとマズイぜ」

 

 グラットンソードは戻ってもシルフ族の問題は解決していないのだ。ラムウ顕現させると森がいずれ滅ぶが、ラムウを討滅しても帝国軍によりシルフが滅ぶ。一応、延命の案があるにはあるんだが……

 

「延命で良ければ案があるにはある。一つは何らかのルートでラムウにクリスタルを供給し続けること。私の手持ちに雷クリのシャードが8千個、クリスタルが2千個、クラスターが300個ある。これでどのぐらい持つ?」

「戦闘可能な形態であれば3ヶ月。戦闘能力を放棄し、燃費を重視した形態であれば3年という所じゃな」

「おいおい、そんな大量のクリスタルがあってもたった3ヶ月しか顕現できねーのかよ。大喰らいすぎるぜ」

 

 私がゲーム時代に貯め込んだクリスタルでこの程度だ。戦闘モードのラムウを顕現させ続けようとすると森が滅びるのも納得できる。となると、ラムウには戦闘をさせずに省エネモードで過ごして貰うしかない。

 

「第2案。ラムウには燃費重視形態で過ごしてもらい、ラムウに代わって帝国を私達が牽制する」

「クリスタル供給よりは現実的だけど、この森をずっと守るのは誰がやるんだ?私は冒険したいし、やめとくぜ」

「私も遠慮しておくわ。ブロントさんとセラは?」

「俺は世界中で助けを求められているからなナイトは人気ジョブだから一箇所にとどまらにぃ」

 

 私もこの世界で動くことがある。ずっと森にいては防げる悲劇も防げなくなってしまう。第1案、第2案共に良案では無いのだ。

 

「むむむ……私もやることがあるから、森を守るのは無理なんだ。他の案を考えるしかないか」

 

 言って、再び考え込もうとしたその時、森にイケメンボイスが響いた。

 

「ならばその役目、俺が請け負おう」

 

 

 

 

 声が聞こえたのは驚くべきことに上空から。直後、すさまじい勢いで何かが降ってきた。

 

 着地の際にすさまじい轟音が響くも、彼は華麗に着地を決めた。その姿は長い槍に紫色の軽装鎧。我らが仲間、りゅーさんだ。

 

「来た!メインりゅーさん来た!これで勝つる!」

「あらりゅーさん、丁度良い所に。貴方が引き受けてくれるなら安心ね」

「救援妖精を聞いて駆けつけたんだが、どうやら戦闘は終わっていたようだ。すまないな。だが、話は聞かせてもらった。森とシルフ族の護衛なら俺が役に立てるだろう」

 

 タイミングの良い助っ人参上にブロントさんが歓喜する。私としてもこのりゅーさんが引き受けてくれるのはありがたく、/bowで感謝の意を表明しておいた。

 

「ありがたいけどよ、りゅーさんいいのか?森で護衛するにしても、いつまで護衛しなきゃいけないか分からないんだぜ?」

「私達の中に希望者がいないから正直助かるが……森に縛り付けられるデメリットがあっても、りゅーさんに対するメリットなんて無いはずだ。いいのか?」

 

「困っている人を助けるのにメリットなんていらないさ。それに、帝国の事は調査したいと思っていた所だ。この森を護衛しながら帝国の情報を集めておくとしよう」

 

 自信たっぷりに宣言するりゅーさん。なにこのりゅーさんイケメンなんだけど。素早いりゅーさんじゃなくて、プロ竜りゅーさんのオーラを感じる。

 

「見事な返事だと感心するがどこもおかしくはない。りゅーさんがこう言っているんだから任せるべきそうすべき」

「決定だな。流石だぜりゅーさん!キャーリューサーン!」

 

 りゅーさんの気が変わらない内にと二人が話を終わらせようとする。こんなあっさり決めていいものかと思いつつ、ラムウの意思を確認する。

 

「ラムウ、このりゅーさんは私達と同レベルの実力者だ。りゅーさんにシルフ族とこの森の護衛を頼み、ラムウにはこれ以上戦闘せずおとなしくして貰う。それで良いだろうか?」

「ふむ。こちらとしては、そのりゅーさんとやらが本当にこの森とシルフ族を守ってくれるか分からないのじゃが?」

 

 ラムウが疑いの言葉を投げかけてくる。しかし、本当に疑っているというよりはあくまで確認といった感じがする。内心ではもう対応を決定しているのだろう。

 

「おいィ?お前りゅーさんを信用できないワケ?」

「騙すぐらいならこのまま討滅しているわ。私達としては貴方が生きていることそのものがリスクなのだし」

「仮にラムウ本人が戦闘せずとも蛮神が生きているというだけで帝国の牽制にもなるだろう。クリスタル消費を抑えつつ、帝国への牽制を維持できる点はこちらとしてもメリットだ。竜騎士1名と蛮神では、名前による威圧の効果が段違いだからな」

 

「……あいわかった。お主達を信じるとしよう。シルフ族とこの森を頼むぞ、りゅーさん」

「フッ、任せておけ」

 

 こうしてシルフ族と彼女達が住む森を守る約束が結ばれ、蛮神ラムウの問題は一応の解決となった。後から合流したミスティアはりゅーさんと一緒に森に残り、霊夢を含むブロントさん一行は新たな蛮神問題に対応するため森を後にしたのだった。

 




原作との差異を出すにあたって蛮神との和解をしたかったので、理性的な蛮神であるラムウさんに出てきて貰いました。

話は変わりますが、光のお父さんが来春TVドラマ化するそうです。非常に面白い作品なので、見たこと無い人は原作ブログを見ることをオススメします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9話 砂の家襲撃

 極ラムウ討伐後、私は砂の家に赴き、私自身が超える力を持っていることを説明した上で暁への入団を申し入れた。

 ただし、私の正体はミンフィリアのみに明かし、他の暁には偽名『ライト』を名乗っての入団だ。理由は簡単。暁に所属しているサンクレッドはアシエンに操られているため、彼の耳に私の情報を入れたくなかったのだ。ミンフィリアには、ウルダハのコロシアムで『暗黒剣のセラ』の名前が売れているため、目立たないように偽名を使うと言い訳しておいた。

 

 私がこの時期に暁に入った理由は、暁への襲撃を撃退するためである。暁襲撃により、主人公達は帝国を倒すという意識が高まるのだが、そのための犠牲は多い。ゲームならともかく、現実となった今では見過ごすことができない。

 ゲーム内では蛮神タイタン戦の時期に暁襲撃が起きており、ブロントさん達の活動の様子からタイタン戦が近いと感じたからだ。ハウケタを攻略した彼らは海雄旅団関連クエストを受けている所であり、クエストが全て終われば暁が襲撃されるだろう。

 

「暁のメンバーを殺させはしない。未来を知る私が悲劇を防いでみせるさ」

 

 

 

 

 暁に入団するにあたり、私は偽名のほかに変装も行った。眼鏡をかけ、帽子を被り、学者にジョブチェンジだ。見た目は立派な文形。謎のヒカセンXオルタって感じだ。勤務場所は入り口に一番近い場所、すなわち受付を強く希望した。

 テレポートで砂の家内部に直接飛んでくる帝国軍を撃退するには、ここで守るのが一番だと判断したからだ。

 

「ライトさん、この書類の処理お願いしまっす。この後追加で20枚あるので手早くお願いしまっす」

「アッハイ」

 

 しかし、砂の家には既に受付がいる。FF14のヒロイン?ことララフェルのタタル・タルだ。赤いベレー帽がトレードマークの彼女こそが正規の受付嬢兼経理である。そこに二人目の受付嬢として配置されるため、私はいわゆる受付嬢見習い兼経理見習いとして彼女の後輩となったのだ。なので、受付や経理の仕事も自然と任されるのだが……

 

「ライトさん、この書類はここがこうなので、こうしてああして……」

「す、すまないタタル先輩」

 

 タタル嬢、初めての後輩に大盛り上がり。大変熱心に指導してくれている。本当は経理スキルも受付嬢スキルもいらないのに、無駄に上達していく。サボるとタタルがしっかり見抜いて指摘してくるので手を抜くこともできない。ゲーム内に来てからこんな仕事をするとは思わなかった。

 

「ライトさんは計算もできるし筋が良いから教え甲斐がありまっす。通常業務が終わったら、経理の勉強時間でっす。先輩として優しく分かりやすくビシバシ指導するでっす」

「は、はは……ありがとう、タタル先輩」

 

 ゲームの世界に入っても、仕事という呪縛からは逃れられないということを知ったヒカセンであった。

 

 

 

 

 とはいえ、この職場も慣れてくれば楽しくなってくる。働き始めて1週間も過ごせばタタルのスパルタ研修期間も終わり、少しは余裕が持てるようになった。足手まといから、指示すれば動けるお手伝い要員になれたというところだろうか。

 ともかく、時間の余裕ができたことを利用し、仕事以外でタタルと交流を持つことにする。タタルは可愛いし仲良くなりたいのだ。

 それに、このあたりでヒカセンとしての威厳というものを見せておかなければタタルに一生後輩扱いされてしまうと思いもあった。そこで、今後の快適ライフのためにもマイスター調理師としてタタルに夕飯を振舞うことにしたのだ。

 

「さあタタル先輩、味わってくれ。これが私の真骨頂。エフトステーキ、ビーフシチュー、猟師風エフトキッシュ、ガレット・デ・ロワだ!」

「お、おおー!ライトさんすごいでっす!こんな豪華な夕食初めてでっす!」

 

 勿論全てHQ。調理クエでロロリトを唸らせたフルコースは、見た目だけでも庶民を圧倒する。そして実際に口に運べば……

 

「す、素晴らしいでっす!この世にこんなに美味しい料理があったなんて初めて知ったでっす!」

「ふふ。そうだろう、そうだろう」

 

 大感激のタタル。ここまで喜んで貰えると奮発して作った甲斐があったというもの。自分の作った料理で人がこんなに喜んでくれるなんて、現実世界では味わえなかった幸福だ。

 

「ライトさん、貴方は経理や受付嬢に収まる器じゃありません。すぐに調理師になるべきでっす!この夕飯を食べ終えたら一緒にミンフィリアさんの所へ行きましょう。配置換えでっす!」

「……え?い、いや私は調理師ではなく受付嬢になりたくてだな」

「ダメでっす!調理師になって毎日タタルのご飯を作って欲しいでっす!」

 

 いけない!タタルの暴走だ!こうなったタタルは割と頑固である。その上、食い意地もあるので一歩も引かない構えを見せている。

 その後、なんとかして私を砂の家の調理師にしようとするタタルを必死に説得し、手の空いた時間にオヤツを作事で妥協してもらった。

 

 

 

 

 タタルにご飯やオヤツを作ったり。タタル自作の歌を聞かせて貰い、代わりに日本の歌を教えてあげたり。書類の山を一掃した後にタタル先生の勉強で力尽きたり。そんな感じで平和に日々が過ぎていく

 タタルと一緒なら受付嬢や経理の仕事も悪くない、そう思える素敵な日常だった。やはり、仕事は人間関係というものが重要である。

 

 しかし、いつまでもそんな日々は続かない。やがて、ブロントさん達がタイタンを攻略する日がやってきた。ゲーム通りであれば、帝国が砂の家を襲撃する日だ。それが、今日。

 現在の砂の家にはサンクレッドもヤ・シュトラもイダもパパリモもいない。腕の立つ冒険者は皆、留守にしている。敵にとっては砂の家を潰すまたとない機会だった。

 

「ライトさん、今日は来客が来た時の練習でっす。受付は愛想が良くないとダメでっす」

「いらっしゃいませ。本日はどんな用件だ?……、どんな用件でしょうか?」

 

 と、そんな日ではあるが敵の襲撃の可能性は誰にも伝えていない。どこからサンクレッドという内通者に伝わるか分からないし。もちろんタタルにも内緒にしているため、彼女は平常運転だ。今日は接客の練習らしい。

 

「笑顔はOKでっすが、口調がダメダメでっす」

「す、すまない。この口調は癖になっていて、中々直らないんだ」

「そんなもの気合で直すでっす!」

 

 セラはクールで格好良い剣士という設定で作った。さらに貴族出身だ。そのせいか、どこか偉そうな口調が身についてしまっている。いや、偉そうというよりは……自分を周囲に強く見せるためにこんな口調になっているのか?

 ともかく、癖になっていて中々変えられない。矯正には時間がかかりそうだ。どこの勘違い系主人公だと言われそうだが、実際に自分がなってみると大変だ。もはやこの口調は自分の一部で、それを修正するのは右利きの人が両利きを目指すぐらい大変なのだ。

 

 

 

 接客の練習をしたり、実際に来客の対応をしたり、書類の整理をすること2時間ほど。私の感覚が、部屋の雰囲気がどこか変わったことを捉えた。

 

「……タタル先輩。何かが来る。用心してくれ」

「え?何かって何でっすか?」

 

 きょとんとしているタタル先輩。詳しい説明ができないことがもどかしい。私は無言で机の上の書類を一束に纏め、タタルに手渡して席を立つ

 

 その動作とほぼ同時に、部屋の入り口付近の空間が歪み、帝国兵が現れる。1人、2人……まだ増えそうだが、転移直後からいきなり斬りかかって来る気配は無い。

 

「タタル先輩、敵襲だ!ここは私が抑えるから、ミンフィリアに連絡してきてくれ!」

「で、でもそれじゃライトさんが危険でっす!」

 

 タタルには私の実力を教えてないから当然だ。ここは一つ、実力を見せるのが早いだろう。狭い室内で武器を振り回すのは不利と判断し、モンクをチョイス。ギアセットを呼び出し、一瞬で着替える。モンクのミラプリはララフェルの初期種族服に、牙狼装備の紋章ナックルだ。ILは200程度か。

 

 帝国兵は最初に転移した二人が数歩、前へ出ている。他の帝国兵の転移が終わるまで、転移地点の確保をするつもりだろうが……甘い。

 

「開幕羅刹!」

 

 地面を強く蹴り、一歩の内に敵との距離を詰める。そして、相手の腹に強烈なボディブロー。スタンした所にもう一撃叩き込み、帝国兵Aを気絶させる。

 

「大丈夫だ、私は強い。時間稼ぎぐらい大丈夫だ。タタル先輩、行ってくれ!」

「わ、わかりました。すぐに応援を呼んでくるでっす!」

 

 タタルが階段を降り、奥の部屋へと向かう。私はタタルを狙わせないために帝国兵Bの前に立つ。

 

 帝国兵Bは剣のリーチを生かし、剣を横薙ぎに放つ。ララフェル相手のためか、低めの軌跡だ。綺麗な型だし、ララフェル相手でもブレ無く当てに来ているが……

 

「遅い!」

 

 叫ぶと共に跳躍。天上に逆さまに着地し、そのまま天上を蹴った勢いで帝国兵Bの頭に蹴りを叩き込んだ。

 

「……!!」

 

 悲鳴を上げることすらできず、帝国兵Bが床へ倒れこむ。そのまま次の目標を倒したい所だったが、無理はせずにバックステップで距離を取る。

 直後、私のいた場所を鋭い蹴りが通り過ぎた。蹴りを放ったのは白い鎧に身を包む女性。

 

「ダルマスカの魔女。リウィア・サス・ユニウスか……」

 

 どうやら彼女は今さっき転移が完了し、その直後にも関わらず状況を把握して攻撃してきたらしい。流石は帝国の将軍、状況判断が素晴らしい。

私が名前を呟くと、彼女は唇の端を釣り上げてニヤリと笑った。

 

「あら、アタシを知っているなら話が早いわね。アタシに命乞いなんて無駄だから、サクッと死んで頂戴」

 

 言うが早いか、距離を詰めて再び蹴りを放ってくる。それを一歩下がる事で避け、彼女を観察する。見えたレベルは54。将軍だけあって、レベル50を超えてきたが……今の私、レベル60には届かない。

 だが、レベルが上だから勝利が確定するワケでも無い。相手は歴戦の将軍。油断をせず、全力で仕留める!

 

「悪いが、私はまだ死ぬ気なんて無い。帝国軍を招待した覚えは無いんだ。お引取り願おう!」

 

 言い放つと同時に前方へ疾走する。リウィアが迎撃の構えを取ったが、構わず突っ込んでいく。

ララフェルは手足のリーチが短いからどうしても超接近戦になる。リウィアと私では得意な間合いが違うのだ。それなら、多少のダメージは覚悟の上で突っ込み、間合いを詰めるのが最適!

 

「チッ!」

 

 Lv60の突撃の速度はリウィアにとっては想定外だったことだろう。舌打ちと共に彼女が私に放った迎撃の蹴りは狙いが甘く、潜る様に回避できた。

 そして、突進の勢いを乗せた一撃をリウィアに放とうとした所で、突如として私の後頭部に衝撃。脳がゆさぶられ、前のめりに倒れるように体勢が崩れていく。

 

「ぐっ……!?」

 

 避けたはずのリウィアの蹴り。それが突如として軌道を変え、踵が私の後頭部を打ったのだ。おそらく、あの甘い蹴りはフェイントでこの踵が本命。この一撃で体勢が崩れたところにリウィアの追撃が来る。

その想像通り、彼女は両手を組んでハンマーのように振り下ろしてきた。狙いは私の頭部だ。

 崩れた体勢でこの攻撃を避けることは困難。だが、何も出来ないワケじゃない。私は体を捻り、左の拳をリウィアの両手に横から全力で叩きつけた。

 リウィアの攻撃を逸らすと同時に右手を床につき、跳ねるようにして体勢を整える。

 

「この馬鹿力のクソチビめ!」

 

 リウィアはバックステップで距離を取り、こちらを警戒している。見れば、私が左拳をぶつけた部分の手甲にヒビが入っていた。彼女にとって私のパワー、スピード、頑丈さは警戒に値することだろう。

 一方、私もリウィアのフェイントに引っかかって見事に追い込まれてしまった。多少のダメージ覚悟で突っ込んだとはいえ、体勢を崩されてからの強力な一撃は危なかった。先程の二の舞は避けたいところだ。

 互いを警戒する両者が取った答えは遠距離戦。構えを取り、闘気を高めていく。

 

「この建物ごと燃やしてやる!獣王火心撃!」

「迎え撃つ!これこそがモンクの最終奥義!蒼気砲(横)!」

 

リウィアがガンバグナウから弾丸と共に赤い気炎を放つ。一方、私はかめはめ波の構えから蒼気砲を放った。赤い炎と蒼い気がぶつかり、エネルギー同士が拮抗してバチバチとスパークを放つ。

しかし、その均衡はすぐに崩れ去り、蒼い気が赤い炎を押し切った。そして、そのまま蒼気砲がリウィアを飲み込もうとする。

 

「アタシが押し負けただと?クソがっ!」

 

 蒼い気に飲み込まれる寸前、リウィアは横っ飛びに回避し、そのままテレポを発動する。

 

「覚えていろ、ヒカセン!貴様はアタシが殺す!」

 

 捨て台詞を言い切ったところで丁度テレポが発動し、リウィアが消える。周囲の帝国兵もリウィアに続くようにテレポで退却していった。

 

 

 

 周囲の敵が完全に消え去り、構えを解く。テレポを妨害しようとすればできたかもしれないが、やめておいた。リウィアが逃走しない場合、アシエン(サンクレッド)が応援に来ていたかも知れない。そうなってしまえば苦戦は間違い無しだ。

 今日の目的は帝国軍を撃退し、暁を守ること。帝国軍が退散するならそれで良い。

 

 それに……アシエンが応援に来なかったとしても、リウィアには苦戦しただろう。彼女は私よりレベルが下だが、戦い方が巧かった。蛮神のように力押しとは違う強さ、これは対人経験の差だろう。私は『セラ』の性能を完璧に引き出せているとは思えない。とにかく戦闘経験が不足しているのだ。

 

「皆を守るため、私ももっと鍛えなければ……」

 

 今後の目標の内、戦闘力向上の優先度を上げなければならない。タタル先輩と一緒に事務作業をする時間は終わりを告げた。これからしばらくは修行の時間だ。

 




パッチ4.0では侍と赤魔、どっちをやるか悩みます。
早く夏にならないかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話 コロセウムにはロマンがある

 砂の家の襲撃は無事に防ぐことができた。死人は出なかったものの、暁はこの襲撃に危機感を覚え、密かに拠点をモードゥナに移転するそうだ。これは暁が半数以上死亡してしまう本来の歴史からすれば素晴らしい成果と言える。正体を隠し、事務員として仕事をした甲斐もあったというものだ。

 また、モードゥナならエーテライトがあるから、今後何かあったとしてもすぐに駆けつける事ができる。ついでに言えば、頻繁にクエストで呼び出されまくるブロントさんのストレスも軽減されることだろう。

 

 しかし、歴史改変には問題もある。本来の流れではここでミンフィリアが浚われる流れだったが、ヒカセンの活躍により流れが書き換わった。つまりはメインクエが一部消失したわけで、上手く軌道修正しなければならない。

 東ザナラーン、聖アダマ・ランダマ教会にいる記憶喪失のシド。光の戦士と彼が邂逅することで物語が進む。私はブロントさんを彼と会わせる用に誘導する必要があるのだ。

 

 さて、そのために光の戦士を動かすには何が必要だろうか。

 金銭?

 いいや。金銭は定番だが、一番効果的な回答は私自身が良く知っている。砂の家で今後の方針を話し合っているブロントさんに向けて、私はそれを実行した。

 

「ブロントさん、君にクエストを発注したい。報酬は……装備の見た目を自由に変えられる術式『ミラージュプリズム』の情報だ!」

「hai!なんでも言ってくだしあ!」

 

 クエストに加えて報酬がオシャレ装備。この組み合わせに堕ちない光の戦士はいないのだ。

 

 

 

 ブロントさんは私の依頼を受け、早速聖アダマ・ランダマ教会へ出発した。彼にはその場所にいる記憶喪失の人物の手助けをして欲しいと頼んである

 

 こうしてブロントさんをクエストに向かわせたが、私は動向せずに別行動を取る事にした。先日のリウィアとの対戦結果から、私はまだ実力が不足していると考えたためだ。『セラ』のスペックを完璧に引き出すためには、中の人にも経験が求められるのである。

 

 実戦経験を積む選択肢は色々あるが、私は再びコロセウムを選ぶことにした。実戦経験と共にお金と名声が手に入る。以前コロセウムに登録し、剣闘士として活躍していたから下地も整っている。理想の環境だ。それに、なんと言ってもコロセウムにはロマンがある。

 目的が決まればすぐに行動あるのみ。私はウルダハへ向かった。

 

 

 

 

 

 ウルダハへ到着し、コロセウムで復帰の手続きをするために受付へ行くと別室へ通された。なんでも、試合を組んで欲しい人物がいるとか。

 別室へ行くとルガディンの男性スタッフが待っていた。ピンクの制服を着ているのは少しセンスが悪いと思うのだが、エオルゼアでは普通なのだろうか?

 

「セラさんがまたコロセウムに戻ってきてくれて嬉しい限りです。貴方はララフェル族の小さな体格を物ともせず大剣を操る。強く、可憐な貴方はコロセウムでも大人気なんですよ。観客達はコロセウム最強だとか、ラウバーンに匹敵するだなんて噂するぐらいです」

 

 小さな身体に大きな武器。これはロマンである。エオルゼアの皆にも分かってもらえて嬉しい限りだ。それに、褒められるのはやはり嬉しい。

 

「ありがとう。しかし、わざわざ別室に通したのは他の話があるんだろう?」

 

 先を促すと、その通りです、と頷くルガディン。

 

「実はとんでも無く強い新人が現れまして。短期間の内に連戦連勝。フランツ達4人組や、テュポーンを当てても簡単に蹴散らされてしまったんです。私達の見立てでは、その新人は貴方と同等の強さがあると判断しています」

「……ラウバーン級と噂される私と同等の強さがあって、私が場外負けしたテュポーンをあっさり蹴散らしたと」

 

 つまりは……コロセウム最強候補たる私よりも、その新人のほうが強いのでは?という図式になっているんじゃないか?

 

「お察しの通りです。そんな状況のため、観客達からは『暗黒剣のセラ・ヒカセン』と『新人』のどちらが強いのか、試合を組んで欲しいとのリクエストが大量に来ているんですよ」

「なるほど。それなら試合を組むのも納得だ。それで、その新人の名前は?」

 

 すごい新人が来たのは納得したが、ゲーム時代ではコロセウムにそんな奴がいるとは聞いたことが無い。やはり、FF14とは異なる世界から来たイレギュラーな存在だろうか?

 

「その新人の名前は『ギルガメッシュ』。あらゆる武器の達人です」

 

 ……ギルちゃん、試合することになっても、かえるの歌(トード)とミニマムはやめてね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 コロセウムの試合は一週間後となった。それまでの間、コロセウムでの試合は無い。

 よって、コロセウムでのエントリーを終えた私はウルダハの拠点に帰宅した。拠点の名は『よろず屋ヒカセン』。リテイナーに商売を任せた際に、ウルダハで店を1件借りていたのだ。

 1階が店、2階と3階が居住空間で、私とリテイナー4名の5名で住む家となる。

 

 店番や通常商品の仕入れはリテイナー。取り扱うのは主に武器防具で、他に高騰したトームストーンなんかも売り出している。

 これだけでは一般の店として埋もれかねないので、武具は私が作成したアダマン製HQ装備も掘り出し物として何点か置いている。おかげで売り上げは上々。隠れた名店として顧客が増えているようだ。今後はコロセウムでヒカセン製武具を宣伝し、知名度アップを狙う作戦である。

 

 この世界のヒカセンはロウェナに搾取される側ではない。トームストーンや高級武具を取り扱い、いずれはヒカセン商会を立ち上げ、膨大な富を得るという壮大な作戦なのだ!

……今はまだ、従業員はリテイナー4名だけだけれども。

 

 

 武具作成の休憩時間で机の上にノートを広げ、上記の現状や今後の方針をメモしていく。

 昼は冒険者として活動するか、コロセウムで戦闘経験を積む。夜は武具をクラフトしたり、素材を調達する。ブロントさんから連絡が入ればPTにインしてIDや蛮神の攻略。

 これがウルダハでの生活の基本となる。もう少し活動範囲を広げたい気もするが、まずは足場を固めるのを優先だ。

 

他にやりたい事と言えばエオルゼア探検や、私が異世界転移した理由の解明。この世界に元からいた『セラ』の過去を調べてみたいところだ。

 

 『セラ』の過去……どうやって調べるのが良いのだろうか。自分自身で調べようにも、『セラ』の記憶はたまに夢で見る程度。ここはその手の専門家、情報屋にでも調べてもらうのが良いかもしれない。

 

 

 

 

 

 翌日の深夜。早速『セラ』のことを調べて貰う為にウルダハの大通り、情報屋のワイモンドの元へ向かった。ウルダハの情報屋と言えばワイモンドである。他の情報屋を知らないとも言う。

 自分で自分のことを調べてくれと言うのも怪しいので、変装をして接触することにした。今の私は眼鏡をかけた学者、砂の家の受付でも使った変装スタイルだ。

 

 目的の場所へ到着すると、グラサンのヒューラン男性が建築物に寄りかかって暇そうに立っている。この一見普通のお兄さんが情報屋のワイモンドだ。

 

「こんばんは。情報屋ワイモンドに依頼をしに来たんだ」

「こんばんは、お嬢さん。こんな夜更けに俺へ依頼とはね。いったいどんな要件だい?他人に聞かれたくない案件なら、行きつけの店に案内するけれど」

 

 ワイモンドが提案してくるが、『セラ』の情報はそこまで他人に秘密にすべき内容でも無いと思う。

 

「いや、ここでいい。コロセウムの闘士、『セラ・ヒカセン』の細かい経歴が知りたいんだ。特に、このエオルゼアに来る前の」

 

 そう言ってギルの入った袋を渡す。ワイモンドは袋を受け取ると、その中から料金分のギルを抜いて私に袋を返した。

 

「オーケイ。それじゃあ現時点で俺の知ってる情報を話そう。そうだな……セラ・ヒカセン。コロセウムの人気闘士で実力は非常に高く、まるで未来を見ているかのように攻撃を回避するのが特徴だ。ラウバーンに匹敵する強さと噂されている」

「そこまでは私もよく知っている。コロセウムの中では有名だしな」

 

 ちなみに、コロセウムでは次回のギルガメッシュ戦のチケットが飛ぶように売れているらしい。

 

「で、そんな強力な人物を各勢力が放っておく訳がない。味方と敵、どちらに転ぶか早急に判断が必要だ。特に彼女がいるウルダハはな。よって、不滅隊主動で彼女の身辺調査が行われた。結果は・・・・・・今のところグレーだ」

「不滅隊が調査を・・・・・・でも、グレー?」

 

 不滅隊が既に私を調査していたのも驚きだが、その調査結果がグレーというのも解せない。私は精錬潔癖だと思うのだが。

 

「彼女が最初に目撃されたのはリムサ・ロミンサ。その後は海賊の襲撃から船を守ったり、コロシアムで名声を稼ぐことになるが、それ以前の経歴は一切不明だ。あれほどの実力者だがエオルゼアでの目撃情報はほとんど無い。唯一、アラミゴで目撃情報があったらしい。その時はアラミゴ市民を帝国から庇っていたらしいが・・・・・・それ以外の詳しい情報はさっぱりだ。不滅隊は『情報が意図的に隠蔽された』と判断したらしい」

 

「ふむ・・・・・・情報が意図的に隠蔽された。誰が、何のために?」

 

「それは分からない。けれど情報の隠蔽はある程度の組織・・・・・・例えば、帝国軍やアラミゴ解放軍なんかが情報を抹消したと見られている。つまり、帝国が関わっている可能性が高いからグレーだ。ま、アンタの立場はこんな感じだから気をつけるんだな。セラ・ヒカセンさん」

 

 名乗っていないし変装もしているはずなのに、しっかりと名前を当ててくるワイモンド。

 

「バレていたのか。変装には自信があったんだが・・・・・・流石は情報屋」

「伊達にこの道で食ってないさ。そんなワケで、不滅隊はアンタを帝国の犬じゃないかと怪しんでる。アンタが何者か知らないが、俺から情報を買ったんだ。ちゃんと有効活用して上手くやるんだな」

「ありがとう。とても良い情報だった」

 

 私が礼を言うと、ワイモンドは背中を向け、手をひらひらさせながら去って行った。 

 

 

 

「・・・・・・それにしても、興味深い情報だったな」

 

 ワイモンドと別れた後、帰り道を歩きながら独り言をつぶやく。

 

 セラの初期設定は『帝国の貴族出身』だ。さらに日記から『帝国の士官学校に通っていた』はずだ。けれどさっきの情報の『帝国からアラミゴ市民を庇った』『何らかの組織の手により、情報が隠蔽された』事と組み合わせると色々な推測が立てられる。

 例えば『帝国士官だったが何らかの理由で帝国から離反した。ただの一兵士ではなく貴族だったため、情報を抹消された』とか。

 

「いったい、『セラ』はどんな人物だったんだろうな」

 

 私が憑依した『セラ』。彼女の意識は消えたのか、眠ったのか、私と融合したのか。どうなっているにせよ、彼女の過去を知りたいと強く思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 ブロントさんを手伝ったり、よろず屋ヒカセンを経営したり、武器防具をクラフトしたり。そんな日々を過ごしていたら、あっという間にギルガメッシュと試合の日となった。

 

 今、私がいるのはコロセウムのフィールドだ。そして退治するのはフレッシュミート・・・・・・じゃなくて、赤い巨躯の男。歌舞伎者っぽい雰囲気で、背中には大量の武器を背負っている。ギルガメッシュだ。

 

「俺の名はギルガメッシュ!俺が勝ったら、お前の武器を記念に頂くぜ!」

 

 闘技場であっても気にせずいつもの台詞を言うギルガメッシュ。だが、私の武器は魂を込めて……それこそ血反吐を吐く思いで作ったアニマウェポンだ。渡す気は無く、つまり絶対に負けられない。

 

「私はセラ・ヒカセンだ。私が勝ったら武器の代わりに……そうだな。ギルガメッシュには私の友人になって貰おう」

「はっはっは!そりゃいいな。セラ、お前が強かったら、勝敗に関わらず友達だぜ!さあ、審判!始めてくれ!」

 

 ギルガメッシュに促され、審判が頷く。

 

「それでは、試合開始!」

 

ドーン、という銅鑼の鳴る音と共に審判が試合開始を宣言した。

 ギルガメッシュとの距離はまだ遠い。彼に『ジャンプ』でもされたら厄介なので、先手必勝でこちらから攻める。今回に限っては序盤を防御に徹するという舐めプレイはしない。最初から全力だ。

 

「行くぞ、ブランジカット!」

 

 まずは得意技で距離を詰める。叫んで跳躍。空中でくるりと1回転しながら、体重の乗った一撃を振り下ろした。

 が、ギルガメッシュとて歴戦の戦士。しっかりと槍で受け止めた。

 

「やるじゃねぇか!今度はこっちの番だぜ!」

 

 槍を振り回して私を弾くと、そのまま槍の回転を増加。フィールドに複数の竜巻を発生させる。

 

「くっ!」

 

 ゲーム中では直接触れなければ問題の無かった竜巻だが、現実となると多少距離があってもこちらに影響を与えてくる。範囲から外れていてもその凄まじい風圧と、複数の竜巻が組み合わさった乱気流が私の動きを阻害する。

 

「そらよっ!ヒット・ジ・エンド!」

 

 そして、それを狙ったかのように放たれるギルガメッシュの技。竜巻で動きを鈍らせ、溜め技を放つ。中々に嫌らしいコンボだ。

 だが、私とてそれは『見えていた』。多少動きが阻害されていたとしても、来ると分かっている攻撃は対処可能だ。

 

 大地にしっかりを足を固定し、右手のみで大剣を振るってギルガメッシュの槍にぶつけ、軌道を逸らす。それと同時に空いた左手に魔力を溜め、解き放った。

 

「私をただの剣士と思わないことだ。ダーク・パッセンジャー!」

 

 闇のエネルギーの奔流が前方広範囲に広がり、ギルガメッシュに襲いかかった。

 

「げぇ!魔法も使えるのかよ!」

 

 ギルガメッシュは槍を引き戻し、ダーク・パッセンジャーを縦に切り裂いて咄嗟にダメージを軽減する。

 しかし、その行動は咄嗟の行為であったために次へ繋げられない。切り払った後の隙目がけて、ハードスラッシュ、サイフォンストライク、ソウルイーターの定番コンボをたたき込む。

 

「やべっ、くっ、そいやあっ!」

 

 その隙だらけの状態から、たたらを踏んで交代しながらもギルガメッシュはこのコンボを受けきった。そして、大きく跳躍して後退する。

 私はその後退をあえて見逃し、距離を確保した。

 

「やはりその辺の雑魚とは違う。強いな、ギルガメッシュ」

「あったりめぇよ!けれどお前もめちゃくちゃ強いじゃねぇか、セラ!こりゃ、奥の手を出すしか無いぜ」

 

 宣言すると、ギルガメッシュは力を溜め始める。私もまた、敵の大技が来るまでの間にダークアーツを発動して迎撃体勢を整える。

ギルガメッシュが天高く跳躍する。私の眼に映るのは超える力による『未来予知』。見えた未来に従い、闇を纏った大剣を繰り出す。

 

「いくぜ!俺の必殺技を受けてみな!ギガジャンプ!」

「神に背きし剣の極意、その目で見るがいい!カーヴ・アンド・スピット!」

 

 最初とは立場が逆転し、空中から落下攻撃を仕掛けるギルガメッシュと、それを大剣で迎撃する私となった。

 槍と大剣が交差し、その威力が衝撃波となって闘技場を震撼させた。

 

 

 

 

 

 

 試合は接戦だったが、私の勝利となった。ギルガメッシュは大技を好んだが、隙の多いそれらに対して事前に潰したり、カウンターを決めたのが勝因だろう。

 大技を誘発し、未来予知で対処し、カウンターで潰す。戦闘スタイルとしてはこの形が良さそうだ。

 なお、ギルガメッシュとは試合前の会話通り、友人となった。セラちゃん、ギルちゃんと呼び合う仲だ。試合の再戦も約束したので、闘技場では今後何度もぶつかることになるだろう。強者との戦闘経験を求めている私にとっては嬉しい限りだ。

 

 名声が得られる。資金を稼げる。戦闘経験を積める。そして、思わぬ強敵・・・・・・強敵と書いて『友人』と読む出会いがあった。

 やはり、コロセウムにはロマンがあるのだ。

 




紅蓮のリベレーター最高ですね。特にアジムステップは神ですよ!
あと、作者は侍になりました。乱れ雪月花とか、溜め攻撃からの必殺技で超格好良いです。

オマケ。ヒカセンちゃんの好きなもの
→ロランベリーチーズケーキ
→コロセウム
→釣り
→ゴールドソーサー


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。