俺の高校生活は、彼女によって変化が訪れる (”アイゼロ”)
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1日目

はい、どうも、アイゼロです。

夏休みが始まりました。1日1話投稿、頑張りたいと思います。

それではご覧ください。



桜の花びらが、ひらりひらりと歩道に舞い散り、春の温かな風が体にぶつかってくる朝。しかし、俺、比企谷八幡は、こんな晴れ晴れとした気持ちと裏腹に、どんよりと目を腐らせ、負のオーラを纏っているおかげで、その雰囲気を見事にぶち壊している。

 

猫背になりながら、トボトボと、今日から通うことになった進学校、総武高校に向けて足を運んでいる。

 

そして、その高校に着くと、家を出た時よりも、気分が萎えていた。車に轢かれそうになった犬を助けたりとか、女の子をナンパしてたチャラ男どもを蹴散らしたりとか。少しでもイジメに対抗できるように、体を鍛えていたことが、ここにきて役に立ったな。そんなこともあって、入学式の時には、既に色々と参っていた。パトラッシュ、僕はもういろんな意味で疲れたよ。

 

なんて下らない事を考えていたら、入学式はとっくに終わり、新入生の皆は退場している。

 

 

入学式の後は、教室でしばらく待機との事だ。先生がいなくなった途端、一斉に話し声がわんさかと響いた。皆ボッチにならないようと、必死に話を繋げたり、合わせたり、携帯を取り出している。これだとおそらく1週間でグループ形成は終わるだろう。

 

え?お前はだって?作る気なんかない。仮面を被れない捻くれた俺に、そんなもんできるか。っつーかいらないし。話しかけてきた奴も、適当に携帯持ってきてないと嘘をついて追い返しました。

 

 

それから数分後、担任が戻り、HRを終わらせ、各々帰宅した。だが、俺以外教室を出る気配はない。お前ら凄すぎだろ、そのコミュニケーション能力。なんだ?会って3秒で友達って、座右の銘でもあるのか?

 

 

はい、入学式から2週間がたちました。周りはグループが完璧に形成されており、俺はボッチとなった。今日も今日とて、周りが騒がしい。そう、俺は、台風の目。

 

教室での静かさは林の如く、影の薄さは透明人間の如く、帰宅する疾さは風の如く。この高校で俺の新しい座右の銘が生まれた。

 

4限の授業が終わり、昼休みなった。その瞬間ケーズデンキに入るかのようにみんなが集合し、弁当箱を広げている。それに対して俺は、入学そうそう見つけた、いい穴場、通称ベストプレイスの段差に座り、先程購入したパンを頬張る。

 

「ねえねえ」

 

目の前にはテニスコートがあり、テニス部の人たちが汗を流しながら、ボールを打っている。ふむ、俺は人は嫌いだが、一生懸命な人は嫌いではない。

 

「ちょっとぉ?」

 

おーい、さっきから呼んでるんだから、返事してあげなよ。無視はダメだぞ。意外と傷つくんだぞ。実体験。

 

「君!」ポン!

 

「んぐ!げほっげほ!」

 

「ああ!ごめんごめん!そんなつもりじゃなかったの」

 

どうやらこの女子は俺を呼んでいたらしい。不意に肩を叩かれたため、あまりの驚きにむせてしまい、慌ててマッカンを口に含む。

 

「・・ああ、大丈夫だ。てっきり別の人を呼んでるのかと」

 

「いいよ、名前呼ばなかった私も悪かったし。あ、隣座るね」

 

「え?ちょっと・・・」

 

ええー!なにこの展開。ついに俺の青春スタートしてしまうの?しかも、こいつよく見ると、かなりの美少女だ。10人中8人は振り返るレベルの。

 

「名前教えてくれる?」

 

「え、ああ、比企谷八幡だ・・・」

 

急展開&緊張のせいで若干うわずいた声を出してしまった。

 

「私は太宰春歌(だざいはるか)、よろしくね」

 

しかし、この女子はそれを気にする様子も見せず、自己紹介をし返した。・・・ん?

 

「太宰?」

 

「あー、やっぱり反応した。そうなんだ、私の苗字はあの文豪、太宰治と同じなの」

 

「へぇ、すげぇじゃん。太宰ってペンネームなのに」

 

「そうかな?変だと思わないの?」

 

「いや、全然。俺は寧ろ太宰は好きだぞ」

 

「あら、いきなり愛の告白されちゃった。照れるじゃん♪」

 

「なっ!違う。太宰治の作品が好きって意味だ!」

 

「冗談だよ♪」

 

そう言うと太宰はペロッと舌を出し、悪戯が成功したかのような笑顔を見せた。その幼い動作に、不覚にもドキッとしてしまった。

 

「じゃ、またね」

 

「お、おう。・・ってまた?おいちょっと待て」

 

しかし、俺の異論を聞かないまま、去ってしまった。随分とマイペースで台風みたいな子だ。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

情景描写練習中です。

また明日。


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2日目

はい、どうも、アイゼロです。

いただいた感想の返答は、後書きで答えていきます。

それではご覧ください。


太宰と突然の出会いをした日の翌日。いや、なんかこの文だと凄い誤解されそうだな。だって太宰なんだもん。しょうがないでしょ!下の名前で呼ぶわけにもいかないし。それにしても珍しいにも程がある。日本を巡ったら、芥川とか国木田がいるんじゃないのかな?何それ超会ってみたい。

 

俺はいつものベストプレイスで、パンを頬張り、マッカンを煽っている。

 

「異能力!」

 

「ぶふー!げほっげほ」

 

「ああ、ごめんごめん!」

 

突然後ろから大声をだされ、マッカンを吹いてしまった。ま、またかよ。そしてこの聞き覚えのある声は・・。

 

「なんだ?太宰」

 

「人間失格!」

 

えー、俺昨日会ったばっかの人に、いきなり人間として否定されてしまったよ。いや、確かに恥の多い生涯を送ってしまったけれども。こうも真っ正面から言われると、ダイヤモンドメンタルな俺でも、ヒビが入るぞ。

 

「そうですか・・・・」

 

「あー!違う違う。そう言う意味じゃない!」

 

そう言うなり昨日と同様、何故か隣に座ってきた。ちょっとぉ、そういう行為こそが男子を勘違いさせてしまうのだよ・・・。

 

俺は気付かれないよう、少しだけ距離をとった。

 

「意味は分かってる。あの漫画読んでるんだな」

 

「うん。やっぱ同じ名字である太宰治が一番好きかな」

 

「俺は芥川だな」

 

羅生門とかカッコよすぎでしょアレ。技の種類も豊富だし。でも、乱歩のあの性格も好きだな。『僕が良ければすべてよし』。俺みたいじゃない?

 

ていうか、何で俺は普通に会話をしているんだ。とにかく、太宰に理由を聞く必要がある。

 

「何でここに来たんだ?お前、友達とかいるだろ?」

 

「どうしてそう思ったの?」

 

いや、だって美人だし、なんてことは口が裂けても言えない。

 

「いそうだな、と思っただけだ」

 

「まぁ、いるけど。ちょっと喋りたかっただけだよ」

 

「ふぅん。俺と喋りたいなんて、随分ともの好きなんだな」

 

「えぇ?そうかな?」

 

「そうだぞ。こんなボッチで暗い奴に話しかけるなんて、いるわけない」

 

「ふーん、そうなんだ」

 

俺はお得意の自虐ネタを披露したが、彼女はそれを気に留めもなく、淡泊に返事をした。あれ?こういう事言われると、何を言い返せばいいかわからなくて、引いて気まずくなるはずなんじゃないの?むしろそれを狙ってたまである。

 

「あんまり自分を卑下するもんじゃないよ」

 

それどころか、何故か励ましの言葉を送られた。こいつ、もしかして結構なお人好しなんじゃないか?こんな俺に対しても、そのような言葉をかけるとは。

 

「そりゃどうも。じゃあな」

 

「うん、またね」

 

いや、だからまたってなんだよ・・・。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。


それでは、質問に答えます。

Q.何時ごろ更新?
 A.不定期です。

Q.何故太宰春歌が話しかけたのか。
 A.3日目で明らかになります。

Q.どのようにして八幡とくっつくか
 A.お楽しみに


また明日。


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3日目

はい、どうも、アイゼロです。

そろそろ他のシリーズも投稿しなきゃな。今日には投稿できそうかもしれない。

それでは、ご覧ください。


今日は雨が降っているため、仕方なく嫌々昼食を教室で食べている。耳につんざく大きな声や叫び声、甘ったるい若者現代用語が、とても鬱陶しい。なので俺は、素早くパンを胃に流し込み、喧騒の中を逃げるように、教室を出た。

 

特に行くところもないので、マッカンでも買おうと思い、手に小銭をもって、自販機に向かう。

 

ボタンを押し、ガシャンと出口に落ちてきたマッカンを拾い、その場で一口だけ煽る。

 

「あ、比企谷君」

 

「ん?太宰か」

 

壁に背中を預けながら、喉を潤していたら、最近何かと接している太宰が目の前に現れた。彼女は俺の名前を呼んだ後、ちょっと待っててと言い、紅茶を購入した。

 

「あそこのベンチに座ろう」

 

「え、いや・・・」

 

即座に拒否をしようとしたが、太宰の苦笑交じりな表情に、目は真剣な意味が込められていて、ここで退却することが、とても失礼だと思った。

 

「実は、比企谷君に言いたいことがあってね」

 

一見愛の告白の前触れのように聞こえるが、太宰の微笑している顔を見ると、もっと違う何かがあるんだと見て取れる。

 

「ありがとう」

 

「・・・・え?」

 

彼女の言う事を予想していたわけではないが、あまりにも唐突な感謝の言葉に、俺は戸惑いを隠せなかった。

 

「ほら、入学式の日、ナンパから助けてくれたでしょ?」

 

「・・・・あー、あの時の女子って、太宰だったのか」

 

「そう。ずっと言いそびれちゃったけど、ちゃんとお礼を言いたくて。遅いかもしれないけど、ありがとう」

 

彼女は俺に向かって、頭を下げた。

 

「いや、頭を下げられても困る。そういう目的で助けたわけじゃない。ただ、体が勝手に動いただけだ」

 

「随分と謙虚だね。こういうのって、案外できそうでできないことなんだよ?もっと自分を誇らなきゃ」

 

「生憎、俺に誇れるようなものは何もない。強いて言えば、暗いボッチなこととこの濁った眼くらいだ」

 

俺は胸を張りながらそう言うと、彼女は不満げな顔をして、俺の目の前に立ち、両手で頬を引っ張ってきた。

 

「ふぉ、ふぉい。ふぁふぃふぉふふ!(お、おい。なにをする!)」

 

「私、そうやって自分で自分を陥れる人は、嫌いだよ」

 

更に太宰は顔を近づけ、真剣な目でそう言ってきた。ちょっ、近い近い!美人な分より緊張が走り、触れなくても顔が熱くなっていくことが確認できてしまう。

 

「ふぉ、ふぉふぃふぁえふふぁふぁふぃふぇふふぇ!(と、取り敢えず離してくれ!)」

 

「もうしませんは?」

 

何でこいつ聞き取れてるんだよ!あと、もうしませんは?ってお前は母ちゃんか・・・。

 

「ふぉふふぃふぁふぇん(もうしません)」

 

「うん、よろしい」

 

解放された頬を撫でると、少しだけ温かくなっていた。これは緊張のせいではなく、あくまで引っ張られたからだ。うん、そうだ。

 

「じゃ、改めて、ありがとう」

 

三度目の感謝の言葉と共に、手を伸ばし、握手を求めた太宰。俺はここで無視することは出来ず、彼女の手を握った。

 

「じゃあ、これで比企谷君の誇れるものが一つ消えたね」

 

「・・は?」

 

「ボッチが誇りだったんでしょ?私という友達ができたんだから、もうボッチじゃないよね」

 

「え?友達?」

 

「うん。あ、そうだ。連絡先教えてよ」

 

突然の友達宣言に戸惑いながらも、俺は自分の携帯を彼女に渡した。

 

「普通に人に携帯渡したね」

 

「俺、交換の仕方とか分からないし。別にみられて困るようなものもないからな」

 

「そっか。・・・よし、終わったよ」

 

電話帳には、『太宰春歌』という文字が、シンプルに映っていた。

 

「じゃ、またね~」

 

太宰はこちらを見ながら手を振り、その場を去った。俺も振り返しておこう。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

現状では、3年生になる少し前で終わりにしたいと思っています。完結する日が決まっているから、どう進めようか結構悩みどころです。

また明日。


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4日目

はい、どうも、アイゼロです。



それではご覧ください。


俺にとって唯一の憩いの場、昼間の潮風が心地いい、このベストプレイスで、日課の昼食タイムを楽しんでいた。俺は基本購買でパンを2個買うだけだから、食う時間をさほど有しない。20分くらいは余裕ができるため、こうして、潮風とテニスボールがはじける音を堪能しながら、遠くを見つめている。この時間が、学校で唯一くつろげる場所だ。

 

「あ、やっぱりここにいた」

 

するとそこへやってきたのは、前に俺にとって人生で初めての友達である、太宰春歌が訪れた。

 

「太宰か」

 

「やっほー」

 

何ともあほらしい挨拶だ。そして、いつものように俺の隣に座ってきたので、俺はいつものように少し距離をとる。

 

「いいね~、ここ。風が気持ちいい」

 

「ああ。ここは俺が苦労して、1人でいられる場所を見つけたんだからな」

 

「まぁ、確かに人通りは少ないし、案外くつろげるかもね」

 

太宰はそう言って、腕を上にあげ、背筋を伸ばした。今は絶対に横を向いてはいけない。煩悩退散。

 

「それよか、何でここに来たんだ?」

 

「比企谷君いるかな~?って思ったから」

 

えー、その言い方だと、俺に会いたがってるように聞こえるじゃん。昔の俺だったら勘違いして、勝手に舞い上がってるところだぞ。

 

「クラスの友達とでも話してればいいのに。俺といたって、あんまり楽しくないぞ」

 

「いいのいいの。ちょっとお喋りしたかっただけだし」

 

「お喋りって・・・。俺に話題提供スキルなんてないぞ」

 

「私が勝手に話すからいいの」

 

「そーかい」

 

そこまでして俺と話したいことでもあるのか?

 

「そういえば比企谷君。私のメール無視したでしょ?」

 

「は?メール?・・・・・あ、きてる」

 

受信履歴を確認すると、一番上に太宰春歌という文字があった。時刻は23時という夜中だ。

 

メールの内容は

 

『今日の夜ご飯、私の大好物のオムライスだったんだ~。美味しかった!

 比企谷君は何が好きなの?』

 

という、俺にとっちゃ至極どうでもよい内容だった。

 

「いや、こんなことわざわざ送らんでも・・・」

 

「ええー、初めてのメールなんだから、これくらいがいいの。それで、比企谷君は何が好きなの?」

 

友達同士って、こんなどうでもいいことをわざわざメールでやり取りしているのか?俺にはいまいち理解ができいない。・・まぁいいや、とりあえず質問には答えよう。

 

「俺は、ハンバーグだな。和風でもデミグラスでも、何でもいける」

 

「成程。ハンバーグね。・・・子供?」

 

「オムライスの太宰には言われたくない」

 

そもそも、ハンバーグ好き=子供っていう思考がすでに子供のような気がする。

 

「オムライスは子供じゃないよ!」

 

「いや、そこで熱くなられても困る。そろそろ予鈴もなるし、行った方がいいぞ」

 

「あ、そうだね。じゃあ、行こうか」

 

あれ?何で俺も一緒に行くことになってるんだ?お1人でどーぞ。

 

動かない俺を不思議そうに首を傾げながら、こちらを窺っている。

 

「ん?どうしたの?早く行こう」

 

どうやら、俺の意図が伝わっていないらしいので、仕方なく一緒に戻ることになってしまった。

 

「あ、次からはちゃんと返信してよね」

 

「善処する」

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

奉仕部には入れないと思います。

また明日。


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5日目

はい、どうも、アイゼロです。



それではご覧ください。


さぁ、高校生になって少し浮かれている皆に最初の関門、中間テストが今月に始まります。テストまで残り2週間。と言っても、俺にとっちゃそこまで苦労するものではない。普段から勉強はしているし、文系なら1位だってとったことのある実力者だ。理系に関しては触れないでほしい。赤点ではないものの40点台だから、あまりいい気はしないのだ。

 

今日もテストに向けて勉強、と少し意気込んでシャーペンを握ると、スマフォに一通のメールが届いた。・・・・太宰春歌からだ。何故フルネームで言ったかというと、太宰だけだと、過去からメールがきたって思われて怖がられるから。

 

メールの内容は

 

『タスケテ』

 

いやこわっ!何でこいつはわざわざカタカナにしたんだよ。それだけ大事なことだというのか?何があったのか聞くために、何事だ?と簡潔な返信をした。

 

そして30秒足らずで返信がきて、あまりの速さに少し驚きながら、メールを開いた。

 

『テスト』

 

はい、もうわかりました。この3文字だけで全て把握してしまいました。こいつも浮かれちゃった軍の一味だ。

 

続けて、太宰からメールが送られてきた。

 

『今どこ?』

 

う~ん、まぁ勉強見てあげる分にはいいか。ちなみに俺がいるのは図書室の自習スペースだ。当然一番隅っこ。

 

太宰にもそうメールで伝えた。そして、数分後、図書室に入り、俺の姿を見るや否や、小走りでこちらに来た。

 

「勉強教えて!」

 

「ここ図書室だから静かにな。それで、何で俺なんだ?友達に頼めばいいだろ?」

 

「だってみんな、塾やら家庭教師やらで勉強してるっていうから・・・」

 

なら、学校で教えてもらえばそれでいいだろう。と言おうとしたが、今にも涙目の太宰を見ると、とてもそれは口にはできなかった。

 

「だから教えて」

 

「わ、分かった。分かったから、Yシャツを引っ張るな」

 

そんなわけで、太宰の勉強を見ることになった。

 

「で、何で隣に座ってるんだ?」

 

「え?こっちの方が色々と教えやすいでしょ?」

 

何でこいつはこうも無自覚なんだ?もしかして俺が気にし過ぎなのか?いやそんなはずはない。いくら友達でも警戒くらいはするはずだ。だが、太宰からはそう言うのが全く見えない。俺、いつからそんな太宰に信用されるようになったんだ?

 

「それで、何が苦手なんだ?」

 

もういいや、と俺は諦め、太宰の勉強の手伝いを始めた。

 

「文系」

 

「その中で一番苦手なのは?」

 

「・・・現国」

 

「お前太宰なんだろ?何で現国ができないんだよ・・・」

 

「名字関係ないでしょ!別に太宰治の血を引いてるわけじゃないんだから」

 

いや、血も関係ないと思う。てっきり同じ名字だから、色々本を読んでいると思っていたが、そうではないらしい。だってほら、国木田花丸ちゃんだって、台車に積むほど本を買って読んでるんだよ。

 

「・・・・まぁいい。取り敢えず、分からないところがあったら、言ってくれ」

 

「うん。ありがとう♪」

 

それから2時間くらい、俺の家庭教師が始まった。最初は俺に聞いてばっかだったが、呑み込みが早いのか、一度聞いたところはほとんど出来ていた。彼女は定型的なやればできる子なのだろう。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

また明日。


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6日目

はい、どうも、アイゼロです。

ちょっと進展する。

それではご覧ください。


先週で中間テストが終わり、今の授業はテスト返却となっている。一日で全教科返ってくるのは、正直嬉しい。文系は2位になり、理系も40点台に抑えて見せた。そんな俺は今日も外でパンを食べています。

 

「比企谷君比企谷君!」

 

今までだったら驚いてむせていたが、さすがにもう慣れてしまった。俺は声のした方へ顔を向ける。

 

「どうした?」

 

「見て見て!」

 

何やら上機嫌な太宰は、手に持っていた紙を俺の目の前で開いた。現国の解答用紙で、右下端には80という高得点が書かれていた。

 

「やったよ!」

 

「おおー、すげぇじゃん。頑張ったな」

 

「うん!比企谷君のおかげだよ、ありがとう♪」

 

「いや、俺はアドバイスをしただけに過ぎん。これは太宰の実力だ」

 

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、比企谷君が教えてくれたから、私は頑張れたの。ありがとね」

 

「それは、どういたしまして」

 

何だろう、このむず痒さは・・。普段人にお礼なんて言われるようなことしてないから、慣れないな。でも、いい気分にはなる。

 

「それでさ、もしよかったらなんだけど、お礼も兼ねて、日曜日に2人でお出かけしない?」

 

「え?」

 

こいつ今なんて言った?お出かけ?2人で?日曜日か・・・。

 

「え、いや、それは・・・」

 

「あ、もしかして、予定入ってた?」

 

突然の誘いに戸惑ってしまい、それを見た彼女は俺に予定があると思ったのか、シュンと肩を下げ、悲しげな表情をした。う~、ここで断ると俺の良心が傷つきそうだ。

 

「い、いや、予定はないけど」

 

「じゃあ、どうかな?お出かけ」

 

でも、太宰と2人で出掛けるという事は、その、所謂デートってことになるのか?本人はそんな気ではないのだろうけど、男子からしたら、こんなん意識しまくってしまうよ。

 

かと言ってボッチの俺には予定なんてあるはずもなく、断る理由も見つからないため、太宰と出掛けることになった。

 

「じゃあ、集合場所と時間はメールするね!」

 

彼女は上機嫌で、この場を去った。

 

 

 

 

その日の夜、太宰から『11時に駅前の時計下にきて。楽しみにしてるよ』とメールが届き、今は自分の財布と服を顧みている。

 

う~ん、何とも言えない。服は普段家から出ていないから、あまりおしゃれなのはもっていないし、財布の中は樋口さんが一枚。・・・・親に相談でもするかな。それらしい理由はあるから、多少はくれるだろう。

 

 

「どうしたのお兄ちゃん?そんな思い詰めた顔して」

 

「ん?小町か」

 

妹の小町が、開いていたドアから、入ってきた。

 

「どうしたの?財布と服とにらめっこなんかして」

 

「ああ、実は日曜に出かけることになってな。その準備だ」

 

「・・・へ?1人で?」

 

「いや、2人だけど」

 

俺がそう言うと、小町は俺を憐れんだ目で近づき、俺の肩をポンと置いた。

 

「お兄ちゃん、病院行こう」

 

「いやいやいや、病気でも妄想でもないから!失礼だぞ」

 

「小町は真剣だよ!」

 

ひ、ひでぇ・・・。冗談だと思っていたのに、ガチだったとは・・・。お兄ちゃん悲しい。

 

「ほら。こいつと行くんだ」

 

証拠を見せるため、太宰から先程送られたメールを小町に見せた。

 

「太宰春歌・・・。凄い名字だね。ていうか、女子!」

 

「そうだが・・・」

 

俺が妄想ではないと知った途端、小町はわなわなと震えだし、何かブツブツ言った後、勢いよく俺の部屋を飛び出した。途中階段から転げ落ちる凄い音が聞こえたんだが・・・。ちょっとは落ち着こうよ。

 

数分後、頭に包帯を巻いた小町が戻ってきた。そして手に握られていたのは、諭吉さんが5枚という夢のような光景だ。

 

「お兄ちゃん!はい!」

 

「お、おう」

 

その諭吉さん5枚を俺の胸板に押し付けてきた。この5万は、おそらく親父からねだってもらったのだろう。ご愁傷さま、親父。

 

「お兄ちゃん!デート頑張ってね!それと、服は小町が見繕ってあげる!」

 

おい、デートっていうなよ。折角意識しないよう、頭から離れさせていたのに・・。でも、服を見繕ってくれるのは正直嬉しいので、快くお願いした。

 

気合入りすぎて気持ち悪いと思われるかもしれないが、考えてもみろ。これを見ている女子の諸君、隣にいる男子が地味な服装だったら嫌でしょ?それこそ太宰の面目が危うくなってしまうかもしれないからな。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

また明日。


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7日目

はい、どうも、アイゼロです。

今週バイトが結構入っていて、少し疲れ気味。ストックしてあるから無問題。

それではご覧ください。


財布の中は豊かになり、小町が見繕ってくれた服を纏い、多少はマシになった俺は、集合場所である駅前の時計下に、集合時間より30分前に来ていた。

 

「比企谷君、おはよう!」

 

俺がここにきてまだ数分なのに、今日一緒に行動する太宰が。俺に手を振りながら、こちらに走ってきた。

 

「おう、おはよう。やけに早いな」

 

「遅刻しないように早く家を出たの。そう言う比企谷君こそ、まだ時間じゃないよ」

 

「俺も遅刻しないように早めに出たんだよ」

 

俺がそう言うと太宰は短くそっか、と笑顔でそう返した。彼女の服装は白スキッパーシャツにカーキのフレアスカートだ。今の笑顔とよく似合っていて、とても可愛らしい。

 

「その服、似合ってるな」

 

当然心の中で思った感想は口に出せるはずもなく、無難な褒め方をした。けど、彼女は気にも留めず、嬉しそうに笑った。

 

「ありがとう♪比企谷君も、結構オシャレだよ」

 

「おう。ていっても、妹がやってくれただけなんだけど。それで、これからどこに行くんだ?」

 

「まずは映画!」

 

 

 

そんなわけで、駅の近くにある映画館にやってきた。今回見る作品は、少女漫画が実写化された恋愛ものだ。男の俺でもこの作品は知っている。小町に借りて読んだことがあるからな。

 

「何か食べる?」

 

「いや、俺は飲み物だけでいいかな」

 

「じゃあ、私もそうしよう」

 

ドリンクを購入し、指定された席に座る。

 

 

 

 

 

 

「うぅ~、よかったね」

 

映画が終わり、隣を見ると見事に感動の涙を彼女は流していた。凄い感情移入してたんだな。

 

でも確かに、俺も途中はちょっと目頭が熱くなったし、面白かった。

 

「ほら、これ使え」

 

「うん、ありがとう・・・」

 

ポケットに入っていたハンカチを太宰に渡した。

 

「お腹すいたし、どこかで食べよう」

 

「そうだな。どこがいいか?」

 

「行きつけの喫茶店があるんだ♪そこに行こう」

 

太宰はそう言うと、いきなり俺の手を引っ張って、その喫茶店へと足を運んだ。

 

 

「いらっしゃいませ~。あ、春歌ちゃん」

 

「こんにちは~」

 

店に入ると、店員の女性が、太宰に気兼ねなく話しかけている。行きつけだって言ってたから、知り合いなんだろう。

 

「あら、もしかして彼氏連れ?やるじゃない春歌ちゃん」

 

「いえ、違いますよ。友達です」

 

「でも手繋いでるじゃない?」

 

「え?・・・あ、ごめん比企谷君」

 

「あ、いや、別に気にしなくていいぞ」

 

太宰は何も気にしなくていい。俺は終始緊張してたけどな。けど、一つ分かったことがある。女子の手って柔らかいんだなぁ。はちを

 

「ふふ、それじゃあ席を案内するわね」

 

俺と太宰を見てからずっとニコニコしている女性店員は、奥の窓際席を案内した。

 

「ここのパスタ美味しいんだよ!おすすめはコレ!」

 

「じゃあ、俺はそれにしようかな」

 

「私も決めた」

 

それぞれパスタと飲み物を注文し、しばらく談笑に入った。

 

「比企谷君って、映画よく見に行ってるの?」

 

「いや、俺はあんまり外出ないからな。でも映画は好きだぞ」

 

「好きなジャンルとかは?」

 

「そうだなぁ。基本何でも見るが、ホラーとかミステリーが好きだな」

 

「へぇ、私もミステリーとか好きなんだぁ。あとSF」

 

SFか。偏見になるが、女子高生でもそう言うのは見るんだな。さっき俺がホラーと口に出した瞬間、太宰の肩がピクッと反応したのは、おそらく俺の気のせいだろうな。

 

「もちろん恋愛も好きだけどね。さっきのやつは感動したな~」

 

「すげぇ泣いてたもんな」

 

「あはは、私涙もろいんだよ」

 

「感受性が豊かでいいじゃねえか」

 

「う~ん、そうなのかな?でも、なんか褒められた気分♪」

 

感受性って褒め言葉かどうか定かではないけど、まぁいいや。・・と、話していたら、注文した料理が運ばれてきた。

 

 

「うん、美味しい♪」

 

「ああ、本当に美味いな」

 

その後も、パスタの味に舌鼓を打ちながら、映画の話で盛り上がりましたとさ。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

展開的には、8月の上旬に八幡と太宰春歌を結ばせます。

また明日。


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8日目

はい、どうも、アイゼロです。

それではご覧ください。


喫茶店での食事を済ませ、時刻はまだ14時という、かなり余裕がある。

 

「次はどこに行くんだ?」

 

「イオンに行こうか♪」

 

 

太宰の提案により、駅の近くにあるイオンモールにやってきた。

 

「本屋に行くけど、いいかな?」

 

「いいぞ。俺も本屋行きたいし」

 

確か、ラノベの最新刊があったはずだ。まだ買っていないからちょうどいい。

 

ラノベの最新刊と気になった本を手に持ちながら、太宰の方をちらっと見た。太宰の手には、『人間失格』『女生徒』という、太宰治著の本があった。ややこしいなぁ・・・。

 

「それ、読むのか?」

 

「うん、なんか気になっちゃって。比企谷君も好きって言ってたし」

 

「でも、現国苦手なやつとか、本読まない人にとってはそれ、きついと思うぞ」

 

「やっぱりそう思う?」

 

「最初は手ごろな短編小説から手を出した方がいいぞ」

 

「そっかぁ。じゃあそうしてみようかな。ありがとう」

 

その後も、太宰におすすめを聞かれ、中学の時に読んでいた本を薦めた。

 

 

 

 

 

「あ、そこの服屋寄っていい?」

 

「わざわざ俺に確認しなくてもいいんじゃないか?そんじゃ、外で待ってるわ」

 

「一緒に行くの!折角だから見てもらう!」

 

いや、俺に人の服を選ぶなんて、そんな高尚なことできるわけがない。

 

「こっちとこっち、どっちがいいかな?」

 

太宰は並んでいる服を2着俺に見せてきた。・・う~ん、さっぱり分からない。どれも一緒に見えてしまう。

 

2着の服を見極めていると、ふと横を見ると別の服が目に入り、何故かこの服がピンときた。

 

「この服とかどうだ?」

 

その服を薦めたら、太宰は驚いたように口をポカーンと開けた。え、そ、そんなに変だったかい?

 

「あー、悪い。気に入らなかったな」

 

「え!違うよ!ちょっと驚いただけだから!それ着てみるよ」

 

「いや、無理に着なくてもいいんだが」

 

「いいから!」

 

俺が手に取った服を取られ、試着室に入っていった。本当にあれでよかったのだろうか?決めた俺が言うのも何なんだが。

 

「どうかな?」

 

カーテンが開き、着替えを終えた太宰の姿を見た瞬間、自然と目が吸い込まれてしまった。

 

俺が選んだ服は、白い生地に花が描かれたワンピースなんだが、「今の太宰の体形といい感じに合っていて、ポニーテールとも相性がいい。そして、何より可愛い。」

 

「そ、そっか・・。可愛い、か。・・ありがとう♪」

 

太宰は照れた様子で頬を朱色に染めながら、俺に笑みを向けた。え?どうしてだ?俺まだ何にも言ってないのに・・・。

 

「声に出てたよ」

 

「え、マジか・・・」

 

うわあああ!恥ずい!思いっきり可愛いとか言っちまったよ!でも太宰は引くことなく、純粋な笑顔を向けてくれている。内心どう思っているか怖いが、これが唯一の救いだ。

 

「折角薦めてくれたし、可愛いって言ってくれたから、これ買おうかな♪」

 

太宰は上機嫌な様子で、くるりと一回転した

 

「・・・あ、でも結構高いな」

 

「それなら、俺が払うからいいぞ」

 

「え?そんな、悪いからいいよ」

 

「いや、遠慮する必要ない。それに、俺も太宰にお礼がしたかったしな」

 

「私、お礼されるようなことしてないよ」

 

太宰には心当たりがないらしい。・・当たり前だ、これは普通の事なんだろうけど、俺にとっては大事なことなんだ。

 

「俺と、友達になってくれただろ」

 

「・・・でも、それって普通なんじゃないの?」

 

「いや、俺にとっちゃ友達関係なんて無縁な人生を送ってきたからな。太宰が友達になろうって言ってくれた時は、驚きこそしたが結構嬉しかったんだぜ。人生で初めての友達だからな」

 

「そうだったんだ・・・。なら、お言葉に甘えようかな♪」

 

太宰からワンピースを受け取り、俺は会計に行った。

 

「ほい」

 

「ありがとね。比企谷君」

 

「どういたしまして。もう夕方だな」

 

「そうだね。それじゃあ帰ろっか」

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ここでいいよ。わざわざ送らなくてもいいのに・・・」

 

「またナンパにでもあったら嫌だろ?」

 

「ありがとう。じゃあ、またね」

 

「じゃあな」

 

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

結構進展したんじゃないかな。

また明日。


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9日目

はい、どうも、アイゼロです。

最近時間の流れが早く感じる。

それではご覧ください。


休み明けの月曜日は、何故か怠いと感じてしまう今日の昼休み。私、太宰春歌は中学の頃からよく遊んでいる友達4人で、弁当を共に食しています。無事全員が総武高に受かったのです。あの時は不覚にも泣いてしまいました。

 

そんな思い出に浸りながら、今日も仲良く他愛のない話や、流行の話で盛り上がっています。

 

「あ、ちょっと席外すね」

 

昼休み終了まで、残り15分となったので、私はとある場所に行きます。

 

「春歌っていつもこの時間いなくなるね」

 

「うん、少しお喋りしてるの」

 

「もしかして彼氏?」

 

「違うよ。男の子ではあるけど」

 

「ええー。なにそれもしかして脈あり?いいなぁ」

 

「脈って何それ?あはは、面白い事言うね♪じゃ、また後で」

 

脈ありって、脈がなきゃ人間じゃないよね?何言ってるんだろう?

 

 

 

そのころ、太宰春歌を見送った3人の友達はあることに今更ながら気づく。

 

「そうだ。春歌って、そういうの全然分からないんだった」

 

「そもそも、人を好きになったこともないらしいし」

 

「本当に、よくアニメに出てくる鈍感主人公よりも、鈍感だからね」

 

 

 

 

「お待たせ~」

 

「いや、待ってないし。そもそも来る必要なくね?」

 

「もう~、本当は私と話したかったくせに~。素直じゃないんだから♪」

 

う、うぜぇ。本当に別に待ってなんかいなかったし・・・。今日は来ないんだな~なんて思ってないし。

 

「あ、そうそう聞きたいことがあったんだ~」

 

「なんだ?」

 

「私と比企谷君って、どういう関係?」

 

・・・・・これは、あれかな?現状の再認識かな?一回一緒に出掛けたくらいで舞い上がって、勘違いするなとか、彼氏面するなっていう忠告でいいんだな?

 

「ただの友達なんだろ?それ以上でも以下でもない」

 

俺はそんな勝手に舞い上がる馬鹿な男子とは違い、中学の時にはもう悟りを開いているから、そんなヘマはしない。

 

「何で急にそんなこと聞いたんだ?」

 

「私が男の子と喋るって言ったら、友達が彼氏?って聞いてきてね」

 

「成程な。まぁ、男子といるって知ったら、彼氏だと思うのは女子高生の(さが)だからな」

 

「そうなんだ。私、そういうの全然分からないんだよね」

 

もしかしてこいつ、恋愛ごとに関しては一切鈍感な、ラノベ主人公が持つ特性を持っているのか・・・。

 

「ま、生きていけばいずれわかるときがくるだろ」

 

「そうだといいなあ」

 

人を好きになる、という恋愛感情がない人間なんてこの世にいないか、極わずかだ。どんなにモテなくて、二次元が嫁と言っている人でも、その感情が消える事なんて絶対と言っていいほどない。俺も恋愛感情はあるが、ほとんど諦めかけている。なにせ、俺と釣り合う女性なんていないと思っているからな。天秤にかけたって、俺が上にいくに決まっている。

 

 

 

「比企谷君は彼女とかいるの?」

 

なんか恋愛みたいな話になっちゃったから、高校生らしい質問をしてみた。

 

「逆に聞こう。いると思うか?」

 

「いないと思う」

 

「だろ?」

 

「いや、そこで偉そうに胸を張らないでよ・・・」

 

返事の仕方といい、比企谷君らしいな。彼とは友達になってもう2ヶ月だから、彼の事は結構知るようになった。

 

 

 

それにしても、・・・何で比企谷君に彼女がいないことが分かった途端に、ホッと安心したんだろう、私。

 

ん~?・・・・。分かんないからいいや。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

また明日。


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10日目

はい、どうも、アイゼロです。

今日明日、午後から用事があるため、午前に投稿します。

それではご覧ください。


もうすぐ梅雨明けだというのに、この豪雨は一体何なんだ・・・。くそっ、降らないと思って傘持って行かずに、自転車で来てしまったから、しばらく待つしかない。

 

「あれ?比企谷君」

 

下駄箱の入り口で、上を見上げながらやむのを待っていると、横から太宰が話しかけてきた。

 

「どうしたの?帰らないの?」

 

「傘持ってきてないんだよ・・・」

 

「ありゃ、それは大変だ。はい、入っていいよ」

 

太宰は傘を広げ、俺の袖を引っ張りながら、自分の入っている傘に入れようとした。

 

「おい、それはさすがにまずい。大丈夫だ。すぐやむと思うから」

 

「この豪雨で?」

 

「うっ、待つ」

 

さすがに相合傘とか俺には到底無理だ。第一目立つし、太宰に色々な意味で迷惑がかかるかもしれない。

 

「さ、遠慮せずに入りなさい!」

 

「いや、だから」

 

「早く帰りたいんでしょ!」

 

掴まれた腕を強引に引っ張られ、無理矢理相合傘の中に入れられてしまった。

 

「はぁ、分かったよ。傘は俺が持つから」

 

「うん。お願いね♪家はどっち?」

 

「校門から出て右だ。悪いな、歩かせちまって」

 

「気にすることないよ。困ってたから助けただけ」

 

こいつやっぱりお人好しだなあ。きっとさぞかしおモテになっているんだろう。こういう奴は誰に対しても優しいからな。

 

 

 

 

 

 

少し喋りながらも、我が家に到着した。

 

「本当にありがとな」

 

「ううん、いいよ。・・へえ、ここが比企谷君の家か」

 

太宰は俺の家ををまじまじと観察している。普通の家だよ?兵器とかそういうの仕組まれてないから。

 

「ありがとな太宰。今度何か礼をする」

 

「え?いいよわざわざ」

 

「いや、しなきゃ俺の気がすまない」

 

「・・・うーん、そこまで言うなら・・。あ、そうだ!明日土曜日で学校休みだよね」

 

「そうだけど」

 

「じゃあ、明日比企谷君の家行っていい?」

 

・・・・ワッツ?この子、今何を言ったのかわかっているのかな?いいのか?男の家にホイホイ入ってきて(イケボ)。

 

「太宰は大丈夫なのか?」

 

「え?何が?」

 

うわぁ、気に留めないどころか完全に気付いていない様子だ。逆に意識してしまっている俺が恥ずかしくなってくる。

 

「まぁ、太宰がいいならいいぞ」

 

「本当!やったー。じゃあ明日、11時に行くね♪」

 

「随分と早いな。・・・分かった。じゃ、また明日な」

 

「うん。じゃあね」

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

「あ、おかえり。お兄ちゃん。・・なんか話し声が聞こえたけど、誰かいたの?」

 

「ああ、実は傘忘れてな。太宰が入れてくれたんだ」

 

「・・・・はぇ?だ、太宰って、この前にデートした?」

 

「デートじゃない。お出かけだ。・・・そうだけど」

 

「あ、あ、・・あ、あのお兄ちゃんが、あ、相合傘ーーーーー!?」

 

おい、言うな、何も言わないでくれ。俺だって遠慮したんだよ。

 

「お兄ちゃんの青春が到来だーーーー!」

 

両腕を天に仰げながら大声で叫んでいる小町を無視し、枕を被って悶えようと、自室に籠ろうとしたら、小町は俺の肩を掴み、相合傘の経緯を全部吐かされた。

 

「ふむふむ、それで明日、うちで遊ぶことに・・・」

 

「あ、ああ・・」

 

何でこんなことになってしまったのだ・・・。そして、小町は少し座っていた椅子から離れ、何故か電話をしている。

 

「うん、じゃあ明日ね。バイバーイ♪」

 

この世に生を授かって17年。これ以上ないというくらい史上最悪な嫌な予感が、俺の全身を駆け巡る。

 

「小町、明日友達と勉強することになったから。帰りは夜になるかな♪」

 

「はぁ!待て待て待て。家で男女が2人だけなんてマジでシャレにならない!そして何故そう仕込んだ?」

 

「やっぱりぃ、お邪魔はしない方がいいかなぁ~なんてぇ♪。後お兄ちゃんヘタレだからそんな間違い起きないでしょ?」

 

「うわ、すっごい笑顔で言ってきたな。すげぇ腹立つ。でも否定はできない」

 

「頑張ってね♪」

 

小町は鼻歌交じりで、そそくさと自分の部屋に戻っていった。っていうか頑張るって何を頑張るんだよ・・・。

 

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

なんかこれ八幡じゃないな感が否めないので、少し捻デレ度をアップさせようかなと思う。

また明日。


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11日目

はい、どうも、アイゼロです。

毎日投稿で一番恐ろしいのは、ネタが尽きる事。

それではご覧ください。


豪雨の日の翌日の土曜日。そう、今日は太宰春歌という人物が俺の家へ訪れる。これだけならまだいい。だが、両親は共働きで夜まで帰ってこない。小町は俺が家に太宰がくると知った途端、友達と約束しやがって夜までいない。つまり、この家は太宰と俺だけという、高校生には合ってはならない状況になってしまうのだ。いくら妹でも恨んでやる。あの策略した妹に報復を!

 

俺も意識しすぎだ。落ち着こう。いつものように、どんよりと、フラットに、ぶっきらぼうに・・・。悔しいがいつものように、ヘタレ気味に。

 

深呼吸と同時にピンポーンと家のインターホンが鳴らされた。ドアを開けると私服姿の太宰が笑顔で手を振ってきた。

 

「おはよう」

 

「お、おはよう。入っていいぞ」

 

「お邪魔しまーす♪」

 

スリッパを用意し、リビングへと案内した。冷蔵庫にあった飲み物を適当にコップに入れ、ソファに座っている太宰に渡した。

 

「ありがとう」

 

「おう。それで、何で俺の家に来たいなんて言ったんだ?」

 

「入ってみたかったし、比企谷君と遊びたかったから」

 

うわぁ、これまた随分と簡潔に理由を言われたな。しかも俺と遊びたいって、人生で初めて耳にした言葉だ。

 

「そうかい。・・でも、遊ぶっつっても1人用のゲームしかないぞ。ずっと1人だったからな」

 

「はい。自虐は禁止」

 

と、太宰に頬を引っ張られた。すっかり自虐ネタが癖になってしまっているから、自然と出ちゃうんだよなぁ。しかも、おそらくこれをするたびに頬を引っ張られるかもしれない。うっかり矯正されちゃいそうだな。

 

「でも、本当に何もないぞ。せいぜい映画とか本とかしか・・・」

 

「じゃあ、映画見ようよ!比企谷君のおすすめするやつ!」

 

「分かった。ちょっと待ってろ」

 

テレビ台の横にあるDVDやらBDが並んでいる棚を、右から順に調べている。親父は几帳面だからしっかりと50音順に並んでいるため、かなり見つけやすい。最初はSFにしようとしたが、ふと横目に置いてあったホラー映画が目に入り、それを取った。

 

「じゃあ、これにするか」

 

「え!・・そ、それは」

 

「一応俺の一押し映画なんだが・・・。もしかして、不満だったか?」

 

「う、ううん。そんなことないよ!それ、見よう・・・」

 

何やら焦っている太宰を横目にDVDをセットし、最初のわけのわからない予告を飛ばし、早速本編がスタート。・・・太宰、なんか徐々に近づいているのは気のせいか?

 

映画の内容は、謎の館に入り込んだ中学生4人が化け物から逃げながら、謎を解いて館から脱出するという物語だ。

 

出てくる化け物は神出鬼没、どこからでも出てくるという事で、恐怖が煽られるんだ。これが人気の秘密かもしれないな。

 

さらに、化け物が中学生を追いかけている時は、BGMが変わり、緊迫感が刺激される。

 

「うぅ・・・」

 

少しマニアックな映画だが、太宰はとても楽しんでいる。やっぱりホラーなんだから少しはオドオドしてた方が一層いいだろう。

 

俺の記憶だとそろそろ・・・。

 

『バキバキ!』

 

「ひゃあ!?」

 

「お、おい、太宰」

 

床を突き抜けて化け物が現れた途端、悲鳴をあげて、俺の腕に太宰が掴んできた。必死に離そうとするが全然離れてくれない。ていうか、力強い。

 

『きゃあああああああ!?』

 

テレビから叫び声が響いた瞬間、太宰は涙目で、掴みから抱き着きにシフトチェンジをしてきた。・・・やばい、映画に集中できなくなる。その2つの柔らかい物体が、俺の腕と精神を攻撃してくる。・・・た、耐えろ!俺!自称理性の化け物の底力を見せてやるんだ。

 

「おい、離れろ太宰」

 

「やだ~」

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

連日バイトは結構疲労。

また明日。


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12日目

はい、どうも、アイゼロです。

部活があるため、深夜投稿。

それではご覧ください。


「落ち着いたか?」

 

「うん・・・」

 

映画が終わり、自我を取り戻した太宰は己が何をしているのかを理解し、顔を赤くしながら、そっと離れてくれた。

 

「いや、悪かったな。ホラー選んじまって」

 

「ううん。言わなかった私が悪いの。変に意地張っちゃって」

 

いや、俺こそ、なんて言おうとしたけど、このままだと謝罪の嵐になってしまうため、俺は口を閉じた。

 

「そういや、昼は食って来たのか?もうすぐ12時だけど」

 

「ううん。実は食べてきてないんだ。言われたらお腹空いてきちゃった」ぐぅぅぅ

 

太宰がそう言った途端、腹の虫も反応した。恥ずかしそうにお腹を押さえている。

 

「ふっ、んじゃ、今ある材料で何か作るな」

 

「うぅ、触れないところはありがたいけど・・・。ていうか、比企谷君料理できるんだ」

 

「まあな。親が帰り遅いから、俺が作ってたんだ」

 

て言っても、小町が中学上がる時にはすでに、あまりやっていないんだけどね。変に意地を張ってしまった俺がいる。

 

「何かリクエストがあるなら聞くが・・・」

 

「・・・じゃあ、その、できればオムライスをお願いします」

 

「オムライスね・・・。よし、材料揃ってるから待ってろ」

 

「はーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「できたぞ」

 

「いただきます。・・・・美味しい!」

 

「そうか。それは良かった」

 

「私も料理できるようになりたいなぁ」

 

当然俺は自分から話題を振ることができないため、数分おきに太宰が口を開いている。

 

「なんかさ、こうして今の状況を顧みるとさ」

 

「ん?なんだ?」

 

「私達、付き合ってるみたいだね」

 

「ぶっ!な、何言ってんだいきなり」

 

なんだこいつ?何故突然そんなことを言ってきたんだ・・・。クソっ、なんか弄ばれてるように感じてしまう。

 

「あはは、比企谷君顔赤いよ」

 

「うるせー。そう言うお前こそ顔真っ赤だぞ」

 

「・・へ?」

 

どうやら気付いていなかったらしく、きょとんと首を傾げながら、自分の顔に手を当てている。

 

「あ、あれ?何でだろう・・。あははは」

 

顔の熱を引かせながら、空笑いをする太宰。

 

 

 

 

 

 

昼飯を食い終わった後、本当に何をしようか迷う。今は俺と太宰ともにボーっとしている。すると、太宰はハッとして目を見開き、こちらを向いた。

 

「比企谷君の部屋ってどこにあるの?」

 

「は?2階だが、まさか入る気か?」

 

「え?入れてくれないの?」

 

「・・・何にもないし。入れる気はねぇよ」

 

「ええー!お願い、入れて入れて!」

 

ちょっとぉ、腕引っ張らないで。顔近い近い!なんかすっげぇいい匂いするから。

 

「おい、離せ。あと近い」

 

「入れてよー。気になるじゃん」

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

「へえ、意外と片付いてるねー」

 

結局入れてしまった・・・。

 

「本当に本ばっかりだ。やっぱり色々な文豪の小説持ってるんだね。あ、ラノベもある」

 

そう言って太宰は俺のデカい本棚を物珍しそうに見て、漁ったりしている。そして、とうとう本を読みだしてしまった。うん、このままでいい気がする。静かだし。・・・・でも君、普通に何の前触れもなく俺のベッドに座って読み始めたね。

 

太宰が読んでいるのは、太宰治著の『人間失格』。どうやら、本格的に興味を持ったらしいな。一度は止めたが、やはり気になっていたんだろう。

 

俺も適当に本を手に取り、読み始めた。俺が読むのはリゼロだ。ラノベですよ。

 

 

 

 

静寂に包まれながら1時間が経った。少し背筋を伸ばし、太宰を横目にやると、目を疑う光景が広がっていた。

 

座っていたはずなのに、いつの間にか寝ていて、しかも仰向けにベッドで寝てしまっている。

 

額に手を当てしばしうなだれながらも、特に気に留めないふりをし、再びリゼロの世界に入りこんだ。ああ、太宰が寝る前の時間に死に戻りたい。いや死にたくはないな。

 

 

 

更に2時間後、時刻は17時という、そろそろ家に帰らなければいけない時間だ。・・・太宰はまだ寝ています。起こそう。

 

「おい、起きろ太宰」

 

「・・・え?あれ?寝てた?・・」

 

「思いっきり寝てたぞ」

 

「ご、ごめん。ついうっかり」

 

「いや、別にいい。それより、もう日没だ。送ってやるから帰った方がいい」

 

「うん、そうする。・・・それよりさ、私の寝顔、見た?」

 

「え?見たけど」

 

「やっぱり。・・うぅ」

 

女子って、寝顔見られることがそんなに嫌だったのか。だとしたら悪いことしたな。

 

「ああ、悪いな。見ちまって」

 

「ううん。私も寝ちゃったからいいよ」

 

「そう言ってくれるとありがたい。もう帰った方がいいぞ。送ってくから」

 

「う、うん!じゃあ、お願い」

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

そろそろストックが尽きそうです。頑張りますん。

また明日。


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13日目

はい、どうも、アイゼロです。

またまた深夜投稿。ちなみに明日もです。

それではご覧ください。


「~♪」

 

「春歌、最近上機嫌だね」

 

「え?そうかな?」

 

そろそろ夏本番。夏バテでだらける人が増える中、制服は夏用の半そでになり、夏休みまであと2週間という今日の昼休み。一緒にお弁当を食べている友達にそう聞かれた。

 

「そうだよ。何かいい事でもあったの?」

 

「それとも、前に言った男の子?」

 

「そうかもね。比企谷君といると楽しくってね」

 

「へぇ、比企谷君っていうんだ。どうやって知り合ったの?」

 

「え?・・あー、そういえば言ってなかったね」

 

私は入学式に比企谷君がナンパから助けてくれたことを友人に話した。

 

「へえー、カッコいいじゃん!」

 

「うん。そこから私が話しかけて、そこから関わるようになったんだ♪」

 

「春歌、楽しそうだね」

 

「え?」

 

言われて気付いた私は、いつの間にか笑顔になりながら比企谷君の話をしていた。友人曰く、すっごい嬉しそうな満面の笑みらしい。

 

「春歌、聞いておくけど」

 

「ん?」

 

「比企谷君の事、好きなの?」

 

・・・・好き、か。どうなんだろう。返答に困る質問をされちゃったな。

 

「私、人を好きになったことないから。よくわからないんだ」

 

「そっか・・・」

 

「でもね、比企谷君といると、何だか心が温かくてね。一緒にいて楽しいし、可愛いって言ってもらえて、凄く嬉しかったんだ」

 

私は素直にそう言って、自分でも分かるほどの優しい笑みを友達に向けた。

 

「「「・・・・」」」

 

3人は口を開けてポカーンとしてしまった。・・あ、あれ?私、何かおかしな事言っちゃったかな?ちょっと!何でそんなお母さんのような慈愛の目で見るの!やめて、恥ずかしい!

 

「そっかぁ。春歌は比企谷君のことが好きなんだ~」

 

「え?」

 

「そんな幸せそうに顔赤くして~」

 

「嘘!?」

 

「すっかり恋する乙女じゃん♪」

 

「も、もうやめて!」

 

あまりの恥ずかしさに両手で顔を押さえた。はい、凄く熱いです。人を好きになるという事が分からなかった私でも、友人に言われて自覚した。比企谷君の事を考えると、心臓の鼓動が速くなり、いつの間にか頬が熱くなる。

 

私は、比企谷君が好き・・・。

 

「春歌が恋かー。ちょっとびっくり」

 

「本当だね。今までそういうのに無関心だったし」

 

「いいなぁ」

 

「からかわないでよ!」

 

う~、どうしよう・・。なんか比企谷君に会いに行くたびに意識しそうだよ・・。どうしてくれるのー!

 

恋に無関心、人に対する好意というものを知らなかった私、太宰春歌は今日、友達のおかげで、恋愛を知ることができました。・・・・比企谷君って、私の事どう思ってるんだろう。

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

太宰春歌、恋する乙女にシフトチェンジ!ここから太宰視点が多くなるかも。

また明日。


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14日目

はい、どうも、アイゼロです。

いやぁ、8月に入ってしまったねぇ。暑い暑い・・・。

それではご覧ください。



「何で緊張してんの?私。今まで気兼ねなく接してきたのに・・・」

 

もうすぐ夏休みという真夏の今日。いつものように比企谷君のいる場所に向かっている私は。少し緊張しています。

 

はい、私が比企谷君を好きだからです。

 

唐突な告白にビックリしたと思うけど、自分の抱いている感情が恋と知ったのは、つい最近。友達のおかげというか、せいというか。よくわかりません。

 

あー、なんか自分のキャラが崩壊してる気がする。こんな乙女な自分がなんかもどかしい。この前『私達、付き合ってるみたいだね』なんて、気軽に言えてた自分に戻りたい。・・・・ていうか、何であんな事口走ったんだろう!恋愛感情を抱いた自分の過去の言葉を顧みると、なんか恥ずかしくなってきてしまう。

 

そんなことを考えていたら、比企谷君のいる場所に辿り着いた。

 

「比企谷君」

 

「おう。来たのか」

 

いつもの素っ気ない返事が、何故か物足りなく感じてしまう。でも、比企谷君の平常運転のおかげで緊張はほぐれた。

 

私はいつものように彼の隣に座った。すると、ドキドキと心臓の音がはっきりと耳に聞こえてくる。あ、あれれ~、私ってこんなに分かりやすい人だったっけ・・・。

 

「比企谷君ってさ、普段どんな事してるの?」

 

「読書と昼寝」

 

「・・えぇ!それだけ!」

 

「そうだが」

 

さ、さすがは1人というわけか。でも、裏を返せば暇という事になるのかな。なら、いつでも誘えるってことだよね。

 

「太宰はなんかしてるのか?」

 

「私か・・・。たまーに友達と遊びに出かけたり、後はテレビとかかな」

 

「俺とどう違うんだよ・・・」

 

た、確かに。私もよく一人でいるからあまり比企谷君と変わらない。

 

でも、かえって都合がいいかも。私たちの過ごし方が似ているなら、2人で遊べる機会が結構あるってことだし。

 

それにしても

 

「・・暑い」

 

「なら、来なきゃいい話だろ・・・」

 

「ぶー、その言い方はないよぅ」

 

しまいには泣くよ?

 

「比企谷君だって、暑そうじゃん」

 

「1人でいられるなら、俺はどんな暑さにも負けない」

 

「私がいるんだけど・・・」

 

「・・・・そうだな」

 

え?何で顔逸らしたの?ねえねえ、気になるじゃん!

 

軽く心の声で怒っていると、比企谷君は目を細くしながら、再びこちらに顔を向けた。

 

「・・・ど、どうしたの?比企谷君」

 

聞いてみるが、無視されずーっと私を見ている。私の顔に何かついてるのかな?・・・・・そ、そんな見つめられると照れるんだけど・・・。

 

「いてっ」

 

突然、比企谷君が私の額をペチンと軽くたたいてきた。

 

「な、何するの!」

 

「ああ、蚊がいたから殺そうとした」

 

「物騒な言い方しないでよ。もう」

 

「悪い悪い。・・いてっ!」

 

私も比企谷君の額を叩いてやった。強めに。

 

「お返し♪」

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

実は、比企谷八幡の誕生日記念SSを投稿しようかと思ってます。実は一ヶ月ほど前から書いてる。

また明日。


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15日目

はい、どうも、アイゼロです。

それではご覧ください。


ついに夏休みが到来だーーー!

 

ボッチにとって一番と言っていい最大最高行事の長期休暇、summer vacation!一日中クーラーの効いた家に籠り、一日中ぐうたら。もう体格が良くて、面倒見がいい甘党な男子が担がない限り、一歩も外へ出たくも、布団から出たくもない。

 

一度起きたが、再び夢のトビラへと誘われるように、目を閉じた。

 

「お兄ちゃんいつまで寝てるの!もう昼過ぎだよ!」

 

ドアがバンと勢いよく開く音と、妹の激高の声によって、トビラが閉まり、現実世界へと戻されてしまった。

 

「あと10時間。なんなら24時間」

 

「馬鹿な事言わないの!布団干したいから出た出た」

 

「ヤダ」

 

「なにをぉ!・・・・こうなったら、とりゃぁ!」

 

「ぐえ!」

 

小町に全身プレスをくらわされ、布団からはじき出された俺は、次の安眠場所であるソファに横になった。

 

「お兄ちゃん。いくら何でもだらけすぎじゃない?」

 

粗方家事を終えた小町が、ため息をつきながらそう言ってきた。

 

「いいんだよ。ボッチにとって学校というのは、気の抜けない日々なんだ。今までの疲労をすべて癒す。休みなのだから」

 

「全くこのごみいちゃんは・・・。ほら、誰か来たから行ってきて」

 

「あーい」

 

おそらく宅配便だろう。うちのインターホンを鳴らす人なんてそれくらいしかいないからな。

 

「はーい」

 

「比企谷君♪」

 

ガチャン。

 

何でいるのあいつ。思わず閉めちゃったけど。そもそも何しに来たんだ?この間うちにきて、何もない事が分かっているはずなのに・・・。

 

「誰だったの?」

 

「い、いやぁ、誰もいなかったぞ。全く、ピンポンダッシュなんて迷惑だぜー」

 

「ちょっと!何で閉めるの!」

 

取り敢えず、誰もいなかったという事にしておいて、後で事情を話そうという作戦だったが、太宰にドアを開けられ、呆気なくも散った。

 

そして、太宰と小町、初対面。

 

「お、お兄ちゃん・・。その女性は何やつで・・・」

 

あー、おそらくテンパって口調が変わってしまったようだ。

 

「あー、ほら。前に話しただろ。こいつが太宰春歌だ」

 

「太宰春歌です。えーと、妹さんでいいのかな?」

 

「あ、ああ。これはどうもご丁寧に。妹の小町です!兄がお世話になっておりまする!」

 

普段の、そして俺の真の理解者である小町だからこそ、こういうキャラ崩壊が起きている。小町の目の前に広がっている光景が、天変地異でも起きるんじゃないかというくらい、ありえないのだから。

 

「はぁ、入っていいぞ。折角来たんだしな」

 

「お邪魔しまーす。小町ちゃんでいいかな?よろしくね♪」

 

「はい!こちらこそよろしくです!春歌さん!ささ、どうぞこちらへ」

 

小町は太宰をリビングへ誘導し、女子同士で話したいことがあるという事で、男の俺は追い出されましたとさ。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

また明日。


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16日目

はい、どうも、アイゼロです。

それではご覧ください。


 

私、太宰春歌はアポなしで比企谷君の家に訪問。ドアを開けたと思ったら、まさかの閉店ガラガラ。ムッとした私は、そのドアを開けたとき、目の前には比企谷君とその妹、小町ちゃんが立っていた。その小町ちゃんは、私と話したいことがあるという事で、兄である比企谷君を追い出し、リビングへと誘導された。

 

「それで、兄とはどういう関係ですか?」

 

い、いきなりぶっ飛んだ質問だ!・・・そっか、兄の事だから心配なのかな?そうだよね。会ったことのない人なんだから当然だよね。

 

「友達だよ」

 

今はね!

 

「友達ですか・・。兄とはどういった経緯でそんな仲に?あのごみいちゃんは自分から人と関わることなんて、小町が大嫌いと言わない限り、しないんですよ?」

 

ご、ごみいちゃん?比企谷君、何でそう呼ばれてるの?それと、今の話を聞いた限り、シスコンなの?頭が疑問で一杯です。

 

「入学式の日に、比企谷君がナンパから助けてくれたんだ。凄かったんだよ!3人相手に怪我なく追い払ったし!強かった」

 

「あー、お兄ちゃんは昔から体鍛えてるんですよ。なんか、いつどこで何されるか分からないって言ってね」

 

「どうして比企谷君はそう思ってるの?」

 

「小学生の時にちょいといざこざあったんですよ。それが原因で筋トレとか始めたらしいです。今じゃ、並の空手家よりは強いと思いますよ」

 

そっか・・・。だから自分から1人に・・・。

 

「でも、そんなお兄ちゃんが変わりつつあるんですよね。春歌さんのおかげです」

 

「え?私?」

 

「はい。なんか捻くれ具合が下がったり、自虐も減ってきたなぁと思ったんですよ。だから、ありがとうございます。そして、今後もあのごみいちゃんをよろしくです」

 

小町ちゃんは、はにかみながらそう言って、軽く頭を下げた。兄思いのいい妹だなぁ。何だか温かい・・・。

 

それと、自虐が減ったのは、言う度に私が頬を引っ張ってるから、そのせいだと思います・・・。

 

「うん。こちらこそよろしく」

 

私は、笑顔で短くそう返事をした。

 

「さて、ではいよいよ本題へ・・・」

 

小町ちゃんは、急に人が変わったかのように、目を細め、ギランと光らせた。

 

「兄の事、好きなんですか?」

 

「・・・・え?」

 

ええー!完全に予想外のドストレート質問が来てしまった!焦りのせいで口が上手く回らない。

 

「え、ええと・・・」

 

「さっきは友達と言ってましたが、心の中では今はね!とでも思ってましたね?」

 

なにこの子、エスパーか何かなの!?怖すぎる!小町ちゃんが段々前のめりになっているため、身が縮こまってしまう。

 

「好きなんですね?」

 

「はい・・・」

 

想い人の妹の勢いに気圧されて、負けてしまった私です。

 

 

「いやぁ、まさかお兄ちゃんを好きになる人がいるなんてねぇ。小町ビックリ。惚れた決定打は何ですか?」

 

「決定打っていうか・・。私、今まで恋って知らなくて、人を好きになるのも、分からなかったんだよね」

 

「珍しいですね・・・」

 

「それでね、友達に比企谷君といるとどんな気持ちなのかって話したら、それが恋だよって教えてくれてね。なんか気付いたら、顔まで赤くしちゃってて」

 

「ち、ちなみに、その気持ちとは・・・?」

 

「こ、心が、温かくて、楽しくて、可愛いって言ってくれて嬉しい・・。も、もうやめて!恥ずかしくて死にそう」

 

段々と声が小さくなり、次第に顔も自分でわかるほど真っ赤になった私は、限界になりテーブルに突っ伏してしまった。

 

「うはぁ、ベタ惚れじゃないですか・・・。さすがの小町も予想外です」

 

「それ以上言わないでぇ!?」

 

小町ちゃんの顔をちらっと見ると、清々しいほどの満面の笑みを浮かべていた。く、悔しい・・・。

 

「それじゃあ、兄を呼んできますね。お二人でごゆっくり。頑張ってね。未来のお義姉ちゃん」

 

「お、お義姉ちゃん!?ちょっとぉ!」

 

何だろう・・・。小町ちゃんには一生勝てない気がする。あの全てを見透かした様子は、比企谷君と似ている気がする。さすがは兄妹というわけか。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

挿絵が欲しい・・・。友人に絵描ける人いるんだけど、なかなか都合合わないんだよなぁ。もういっそ自分で描く?無理だな。

また次回。


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17日目

はい、どうも、アイゼロです。

一話先の話を投稿してしまうという失態を犯してしまいました。
というわけで再投稿です。

それではご覧ください。


「お兄ちゃん、いいよー」

 

「はいよ」

 

太宰との話が終わったのか、本の世界に入っていた俺を現実へと呼び戻した。

 

リビングに入ると、テーブルに突っ伏している太宰がいた。俺はその太宰の向かい側の席に座る。

 

「おーい」

 

「比企谷君!?」

 

「うお、悪い。驚かせたな。・・・顔赤いがどうした?小町が何かしたか?」

 

「ううん!何でもないし、されてもないよ。あはは・・・・」

 

「そうか」

 

うん、絶対に何かあったなこれは。

 

「それで、何でまたうちに来たんだ?」

 

「遊びに来た!」

 

「・・・もう忘れたのか?うちに遊び道具なんてそんな無いって・・・」

 

「いいのいいの。こうしてるだけで楽しいから!」

 

「はぁ、お前友達とかと遊びに行けばいいだろ?」

 

俺がそう言うと、うっ、と顔を固くし、視線を横に移した。

 

「み、皆それぞれ用事があるっていうから・・・」

 

「・・・・・暇人かよ」

 

「ちょっと!小声で言ったつもりだったんだろうけど、聞こえてるからね!それと比企谷君にだけは言われたくない」

 

「悪かった。そんなに怒るなよ。・・・んじゃ、そんな太宰にあるものを渡そう」

 

「ん?プールのチケット?」

 

「親父が友人からもらってな。そんで俺の手に渡ってきたんだ。でも俺、行く相手いねえし。友達連れて行ったらどうだ?この一枚だけで5人も入れる万能チケットだぞ」

 

最初は親父が、母ちゃんと小町で行こうと言っていたが、その2人に行かないと言われてしまったのだ。そして、傷心中の親父は、最初から俺をハブらせてたくせに、俺にあげてきたからな。ボッチにグループ専用のプールチケット渡すとか、どんな嫌がらせだよ。全く新しいぞ。

 

「もらって大丈夫なの?」

 

「ああ。俺が持っててもしょうがないしな」

 

「じゃあ、もらうね。ありがとう♪それじゃあ行こっか。比企谷君」

 

・・・・は?この子、今俺が言った事わかっているのだろうか。俺は友達と行けばいいと言ったんだが・・。あー、俺も友達だったか。でも、俺が言ったのは、太宰が普段から仲良くしてる女友達と行くといいって意味だ。

 

「いや、行かねえよ」

 

「えー!どうして!行こうよ。ていうか行って」

 

「命令形かよ。とにかく俺は行かない」

 

「こうなったら、恥ずかしいけど・・・・・。お願い?」

 

太宰は口元に手を添え、上目遣いでお願いをしてきた。

 

「あざとっ」

 

「くぅ!・・・・折角羞恥心を抑えたのに・・・。」

 

太宰、意外と粘り強いぞ。そこまでして俺を連れて行って何があるというのだ・・・。

 

「・・・・・小町ちゃんに言いつけるよ?」

 

「暴挙に出やがったなこの女郎が・・・。わーったよ!行きゃいいんだろ」

 

「よしっ!」

 

太宰は小さくガッツポーズをした。なんだろう、一瞬だけ子供のような可愛さを垣間見た気がする。

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

とある感想をいただきました。

『がはまさんが息してない!』

アイゼロ氏「させねぇよ!」

また明日。


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18日目

はい、どうも、アイゼロです。

小町はあまり出さないと思います。個人的に小町の八幡を振り回す策略が、あまり好きではないので。


太宰に渡したはずのプールのチケットで、何故か俺まで行くことになった今日この金曜日。絶好のプール日和だというくらいに、クソ暑い。

 

そんな俺は、男だからすぐに着替え終え、今は太宰を待っている。ああ、このジリジリと皮膚が焼ける感覚は好きではない。テレビでよく見る日焼けしたい人の気持ちが全然分からない。焼いて何かあるの?それ。

 

「お待たせ~」

 

「やっとか・・・。そんじゃ、行こうぜ」

 

「え、ちょっと。何で顔逸らすの?」

 

お願いだ、察してくれ。太宰のそのビキニタイプの水着を見ると、緊張で俺が恥ずかしい思いをする。

 

「それで、どうかな?この水着?」

 

そんな願いは届かず、太宰は水着を俺の眼前にもってきた。クッソ、似合ってる。けど慣れてないせいで、口が上手く回らない。

 

「もしかして、変?」

 

太宰は眉を下げて、シュンと肩を下げた。

 

「あい、いや、そんなことない。似合ってるぞ?」

 

「本当?」

 

「おう・・・」

 

「そっかぁ・・・。ありがとう♪」

 

太宰は笑顔になり、遊ぼう!、と俺の手を掴んでプールサイドへと向かった。

 

 

※ここから太宰視点

 

 

ここのプールは、遊具の種類が豊富で有名な場所だ。それ故に、いつ来ても飽きないと評判なのだ。

 

定番のウォータースライダーは4種類あり、高さは6Mほどのロッククライミングまである。

 

流れるプールは、流れるだけで何したらいいか、お互い分からないため、遊具だけで遊ぼうと決めた。

 

「どこにするんだ?」

 

「やっぱりウォータースライダーかな」

 

ここのウォータースライダーは2人乗りが2種類あり、それぞれ違うコースとなっている。

 

「はい。では、次の方ー」

 

私たちの番になり、係員さんが2人乗り用の浮き輪を渡してきた。

 

「どっちに座るんだ?」

 

どうしようかな・・。やっぱり前の方がいいかな?・・・・・・あ、でも、私が後ろになれば自然に比企谷君にくっついていられる。でも、比企谷君そういうの嫌いそうだし。一体どうしたら!

 

「彼女さんが前で、彼氏さんが後ろの方が安全だと思いますよ~」

 

にこやかな営業スマイルの係員さんが、手招きでささっ!と、誘導している。

 

か、彼女か・・・。やっぱり周りからはそう見えてるのかな?

 

「いや、彼女じゃないんですが・・・」

 

「ほらほら、彼氏なんだからリードしないと!」

 

比企谷君が一度否定したけど、全く意に返さず言葉のマシンガンを浴びせている係員さん。

 

「太宰、俺が後ろでいいか?」

 

さすがの比企谷君も参ったらしく、係員さんの言う通りにしようと提案してきた。もちろんOK。

 

私が前、比企谷君が後ろに座り、準備万端となった。

 

「それでは、いってらっしゃーい!」

 

係員さんに押し出され、スタートした。そして、思いのほか、押し出す力が強かったため、その衝撃で比企谷君に背中を預ける状態になってしまった。

 

今すぐ態勢を立て直そうと試みたが、滑る勢いがやはり凄いため、着地までこの状態でい続けなければいけなかった。

 

 

「大丈夫か?太宰」

 

「うん。結構勢いあったね。でも楽しい!」

 

比企谷君の様子を見ると、勢いのせいで滑ってる途中の事は頭から離れているらしい。よかったのか悪かったのか、よくわからない心境です。

 

 

※ここから八幡視点

 

その後も、数あるウォータースライダーに乗り、楽しんだ太宰。時間も忘れ、遊んでいたため、もう夕方になっていた。遊び疲れたから、お互い結構ヘトヘト。

 

今は、太宰を家まで送っている。

 

「楽しかったね♪」

 

太宰は顔を覗き込む形で、そう言った。

 

「・・・・ま、たまにはこんなのも悪くないな」

 

「素直じゃないなぁ・・・」

 

「いや、本心なんだけどな」

 

まぁ、人と遊ぶことなんて全くしてこなかったから、どう楽しもうか結構探り探りなところもあったけど。・・あ、そういや小町から家を出る時何か渡されたな。でも、かなり小さく折りたたまれているため、中は何かわからない、何かのポスターっぽいけど・・。

 

開いてみると、それは毎年行われている夏祭りの宣伝ポスターだ。

 

・・・・・・これを俺にどうしろと?

 

「何見てるの?」

 

小町に渡されたポスターを呆然と見ていたら、横から太宰が覗き込んできた。

 

「なんか、小町が俺にこれを渡してきてな。今は小町の真意を推理中だ」

 

ポスターを見せながらそう言うと、太宰も腕を組みながら考えている。そして、数十秒後、突然ハッと目を見開き、顔を赤くしながら、笑顔で拝み始めた。

 

この謎の行動に、困惑するしかない俺。

 

「夏祭り、一緒に行こう」

 

「ええ・・・」

 

自分でも分かるほど、俺は面倒くさい顔をした。その態度に、太宰もご立腹。

 

「折角小町ちゃんが教えてくれたんだし」

 

「・・・でも、俺とでいいのか?」

 

「私は、比企谷君と行きたいな」

 

風に揺れるポニーテール、ほんの少し首を傾けながらの笑顔、バックには朱い夕日。今の太宰は、とても絵になっていて、思わず見惚れてしまった。

 

「・・・しょうがない。行くか」

 

「本当!楽しみだな~♪」

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

迷走中

また明日。


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19日目

はい、どうも、アイゼロです。

八幡誕生日おめでとう。

それではご覧ください。


約束の夏祭り当日。私、太宰春歌は、気合のいれた浴衣を纏い、駅で比企谷君を待っています。お母さんからは、彼氏なの?ねぇ彼氏?このこの~、なんて中学生みたいなからかい方されたけど。

 

あ、来た。

 

「悪い。待ったか?」

 

「全然」

 

楽しみにし過ぎて、時間の流れを全然感じなかったからね。

 

「どうかな?この浴衣」

 

「・・・いいと思うぞ」

 

彼は顔を逸らしながらも、ちゃんと答えてくれた。比企谷君にとって、これは照れ隠しのようなものなのです。

 

「早く乗ろうぜ」

 

さっさと改札を抜け、電車で夏祭りの場所まで移動。

 

 

外はほぼ夜のため、仕事帰りの人や、私たちと同じ祭りに行く人で結構混んでいた。でも車内はクーラーが効いてるおかげで、汗をかくことがない。

 

ガタンゴトン

 

「うわっ」

 

電車特有の激しい揺れに耐えきれず、比企谷君の方に体を寄せてしまった。ナイス電車。

 

「大丈夫か?」

 

「うん。ありがとう」

 

たまにでいいから、こういう一時の幸せを味わいたい。

 

「ほら」

 

「え?」

 

「さっきにみたいに倒れそうになったら危ないだろ?掴んでろ」

 

何と、まさかの比企谷君の方から腕を出してきました。それじゃあ、遠慮なく。

 

こういう場合、言われた通り掴むんじゃなく、あえて腕を絡ませるというのを漫画で読んだことがある。だけどそんなことできるはずもなく、私は言われた通りにした。今はこれくらいがちょうどいい。

 

ちょっぴり幸せなひと時を噛みしめながら、電車が揺れる事15分。目的地に到着した。

 

 

 

祭りはかなりの賑わいを見せています。老夫婦、カップル、高校生グループや中学生、老若男女共々目に映ります。

 

しかし、やはり人が多いから進むのに一苦労。はぐれないようにしなきゃ。

 

「はぁ、凄い人混みだ。・・・太宰」

 

「え?・・・」

 

比企谷君が何故か私に手を出してきた。私はそれに気づかず、首を傾げると、比企谷君はハッと何かに気づいたように、手を引いた。もしかして、はぐれないように手を繋ごうとしてたのかな?

 

「あ、悪い。つい兄スキルが出ちまった」

 

あ、成程。さっきの電車といい、今といい、妹がいるから無意識にリードしようとしたんだ。いい兄をお持ちですね、小町ちゃん。

 

「進もう!」

 

私は比企谷君の手を取り、そのまま屋台を見回りながら、進んだ。

 

取り敢えず、祭り気分を出そうと言い、比企谷君はわたあめ、私はリンゴ飴を食べています。

 

「そういや、もうすぐ花火が上がると思うぞ」

 

「へぇ、ここ花火もやるんだ」

 

「毎年同じ時間に打ち上げられるんだ。見るんだったら前に行った方がいい」

 

「じゃあ前に行こっか」

 

私、祭りで花火見るの、実は初めてなんだよね。今まで友達と、ただ遊んでて、花火の前に帰っちゃったし。

 

 

 

人をかき分け、前の方に出ると、ちょうどいいタイミングで花火が打ちあがった。

 

とても綺麗。やっぱり生だと迫力が違うなぁ・・・。

 

・・・・・あれ?花火に見惚れて、気が付かなかったけど、いつの間にか比企谷君と手が離れていた。

 

ん?と不思議に思った私は、比企谷君の方を見ると、何故か両手で耳を塞いでいた。でもしっかり、花火は見ている。

 

取り敢えず、話しかけないで、花火が終わったら聞こう。

 

 

 

 

「何で耳塞いでたの?」

 

「ああ。俺、昔から花火の音がどうしてもダメなんだ。ほら、あの花火が破裂するときの爆音。アレがどうしても耐えられなくてな」

 

「へぇ、珍しいね」

 

「調べたところ、こういう奴は聴覚が過敏なんだとよ。・・・今まで人間観察や必要以上に他人の陰口を聞いてたおかげかな」

 

そ、そんなことしてたんだ。一体どういう中学校生活を送ってきたのだろう。違う意味で知りたくなってきた。

 

「もう花火も終わったし、帰るか?」

 

「ん~、ちょっと名残惜しいけど・・。もう遅いし、帰った方がいいかな」

 

「おう、そうか。そうと決まれば帰ろう!」

 

「何でそんなノリノリなの?」

 

比企谷君の性格をよく知ってないと、今の言動は結構心にチクッとするよ・・・。気を付けようね。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

八幡誕生日記念SSを投稿するので、そちらもよろしくお願いします。

また明日。


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20日目

はい、どうも、アイゼロです。

昨日に引き続きずっとブルーライトを浴びたおかげで、凄く目が痛いです

それではご覧ください。


1ヶ月半という、とても短い夏休みが終わってしまい、今日から2学期が始まる。1ヶ月足りない!また気の抜けない日々が始まる。・・・・・いや、いっそ気を全力で抜いてみたらどうだろう。抜き過ぎて完全に空気化という偉業を成し遂げられるかもしれない。

 

それか、今目の前に何故かある鋭利なカッターで首を切り、目が覚めると夏休み初日に戻るという事にはならないだろうか・・・。はい、現実逃避はそこまでだ。

 

さっき言ったように、今日は気を完全に抜いて、過ごしてみようかな。よし、寝よう。

 

 

 

 

4限の終わりを告げるチャイムを目覚ましに、意識が戻った俺は、目をこすりながら黒板の方を見た。

 

「はい。それでは文化祭の役割はこれで全員決まりました」

 

文化祭?・・あー、そういやもうすぐだったな。ていうかやばいな。俺寝てたから勝手に面倒なところに入れられているかもしれない。焦った俺は黒板を凝視すると、驚き半分嬉し半分の光景が映った。

 

なんと俺の名前がないのだ。先生はこれで全員と言った。結論を言おう。俺はとうとうこのクラスから亡き者にされている。

 

もうここまでくると清々しいな。いいな、誰にも気づかれてないって。もう影が薄いを超えて幻影と化したんじゃないか俺。なにそれ超カッコいい。

 

そんなわけで、俺は仕事をしなくて済む。んじゃ、いつもの場所で飯を食うとしますか。

 

 

 

「どうしたの?そんなにニコニコして。傍から見ると結構危ない人だよ?」

 

「うるせぇよ・・・」

 

太宰がこちらに来ることが日常となり、開口一番がまさかの罵倒。別に傷つかないよ。つきすぎてこれ以上傷入れる場所なんてないから。

 

「何かいい事でもあった?」

 

「ふっ、ついに俺は幻影の覇者になったんだ」

 

「・・・病院行く?」

 

ガチだった。ガチのトーンでさらに本気で心配してる目で見られた。

 

「別に病気じゃねぇよ」

 

「じゃあ、どうしたの?そんな厨二くさい事言って」

 

「文化祭の仕事の役割で、おそらく全員仕事をするらしかったんだ。でも、俺だけが黒板に書かれていなかったんだ」

 

「そ、それって・・・」

 

「そう。俺はとうとうクラスの空気を超え、幻の存在となったんだ」

 

胸を張りながら、強い口調で自慢してやった。太宰は呆気にとられ、ため息をついている。

 

「そう言う太宰は何やるんだ?」

 

「C組はお化け屋敷。私は午前中だけの受付」

 

「楽だな」

 

「比企谷君に比べたら忙しいよ」

 

「仕事ない奴と比べてもな・・・」

 

「それもそっか・・・」

 

お化け屋敷か。以前小学生の時、家族と行ったことがある。ああ、あの時はまだ俺に甘かったのに・・・。今はそんなこといいや。あの時、俺と小町は叫びをあげながら、通路を進んでいったんだ。そんでいざ終わったとなると・・・。

 

『怖かったよ!パパ』

 

『そうか。ハハッ、よく頑張ったな小町』

 

小町の場合がこれ。

 

『あー、怖かった・・・』

 

『あっはははは!八幡、お前凄かったな!あっはははは』

 

俺の場合がこれ。初めて人を殴りたいと思った瞬間だった。

 

「比企谷君って、お化け役向いてそうだよね。その眼」

 

ちょっとぉ、ただでさえ嫌な事思い出してたのに、追い打ちしないでよ。

 

さすがの俺も黙っちゃいないぞ。お返しだ。

 

「ほぅ。言うじゃねぇか。なら、怖がらせてやるよ。・・・どうだ?」

 

俺は少し顔を太宰に近づけ、濁った眼で太宰の目を見た。

 

「え・・あっ・・・ちょ」

 

ん?あれ?人間って怖がるとき顔赤くするっけ?そして何故そっぽを向いた?寧ろ怖がられるよりずっと酷いよそれ。

 

「ち、違うよ!怖くなかったし。そっぽ向いたのは、その、ええと・・・」

 

傷心中の俺を慰めようとしているのか、慌てながら弁解しようとする太宰。

 

「そうだな。所詮俺はゾンビだよ。くさった死体だよ・・・」

 

「す、拗ねないでよ!本当にそんなこと思ってないから!」

 

手をぶんぶんと振っている、太宰が面白い。

 

「そ、それよりさ。比企谷君、午後って暇?」

 

急に話題を切り替えたな。そんで、さっき言った通り、仕事がないため、四六時中暇だ。なんなら、帰ってもいい。

 

「忙しい」

 

「いやさっき仕事ないって胸張って言ってたよね!?・・・それでさ、私も午後から特に仕事ないんだ」

 

「それで?」

 

「文化祭さ、一緒に回らない?」

 

「友達と行けばいいだろ?」

 

こんな幻の存在な俺と一緒より、断然昔から仲のいい友人といた方が絶対に楽しいと思うぞ?

 

「最初は友達誘ったんだけど、午後から仕事らしくて・・・」

 

成程。妥協して俺というわけか。・・・・うわぁ、なんか普通よりもダメージが大きい。誘わないとかよりずっと酷い。

 

「太宰がいいなら、別にいい」

 

「うん。やった!」

 

・・・ねぇ、妥協だよね?とても嘘とは思えない喜び方だよ?俺と行きたいからって、嘘ついてない?さすがに自意識過剰でした。

 

「(さすがに嘘ついたのは、罪悪感があるな。でも、比企谷君にはこうでも言わないと、一緒にいてくれなさそうだし・・・)」

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

また明日。


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21日目

はい、どうも、アイゼロです。

夏コミ行こうか迷ってます。

それではご覧ください。


本日、ついに文化祭の開幕です。私、太宰春歌は、比企谷君との文化祭巡りというお楽しみを胸に抱き、現在受付を頑張っています。仕事がない比企谷君が羨ましいです。

 

ちなみに比企谷君とは、いつもの場所で待ち合わせをしています。後30分、頑張ろう。

 

「春歌、もういいよ」

 

気合を入れなおし、仕事に真っ当しようとしたら、突然友人に話しかけられた。

 

「え?何が?」

 

「後は私たちがやるから」

 

「え?何で?」

 

「比企谷君と約束してるんでしょ?ほら、行ってきなよ」

 

そう言うなり、私が付けていた受付の腕章を取られてしまった。そして、見事に見抜かれてる!誰にも言ってないのに!

 

「そんなにそわそわしてたら、誰だって気付くよ」

 

嘘!そんなに分かりやすかった。無意識に態度に出ちゃってたんだ!恥ずかしい!

 

「ほらほら、彼氏が待ってるんでしょ?」

 

「まだ彼氏じゃないよ!・・・・ありがとう」

 

「いいっていいって。後で一杯話聞くから。ガツンといっちゃえ!」

 

拳を突き出して、応援してくれる友達。私もそれに応えるべく、拳を突き出した。

 

「うん。決めてくる!」

 

友達の応援のおかげで、少し自信がつきました。

 

今日、私は比企谷君に告白します。

 

 

 

 

いつも話している場所に着くと、比企谷君が飲み物を煽りながら、待ってくれていた。

 

「お待たせ」

 

「おう。お疲れ」

 

彼は私に労いの言葉を送り、飲み物を差し出した。あ、私の好きな紅茶だ。

 

「ありがとう。よく知ってたね。私の好きなもの」

 

「たまたまだよ」

 

うっそだぁ、私が紅茶買ってるとこ見たくせにぃ。

 

「じゃあ、取り敢えず、適当に回ろうか」

 

 

やっぱり文化祭と言ったら食べ物だよね。私は片手にアメリカンドッグ、対する比企谷君はクレープを食べている。彼はかなりの甘党だ。

 

「あ、折角だから私のクラスのお化け屋敷行ってみる?」

 

「いや、辞めといた方がいいんじゃ・・・」

 

「どうして?」

 

「お前のクラスだろ?俺なんかといたら、変な噂されて迷惑かかるんじゃないか?」

 

・・・はぁ、おそらくこれが彼なりの優しさなんだろうけど、ここまでくると呆れるというか、さすがにムッとくる。

 

「もしかして、怖いからそんな事言って逃れようとしてる?」

 

口に手を当てながら、嘲笑のしぐさをした。

 

「なっ、そんなんじゃねぇよ。いいぜ行ってやるよ」

 

煽り成功。ただ単に怖がってる比企谷君を見たいだけ。普段あんなにクールぶってる人が、ビックリする姿を拝みたい。

 

 

「キャア!」

 

「わっ!」

 

「比企谷君!」

 

「・・・・・」

 

 

 

「何でお前が一番怖がってんだよ!」

 

「だ、だって、ここまでのクオリティだとは思わなくて。ていうか、比企谷君全然怖がってないし・・・」

 

「何でクラスのお化け屋敷の仕組みを知らないんだよ・・・。ていうか俺も結構ビビったぞ。表に出してないだけだ」

 

ず、ずるい。そのポーカーフェイス力を少し分けてほしい。

 

あ~、怖かったけど、その拍子で思わず比企谷君にしがみつけたからいいや。

 

チョンチョン

 

ん?唐突に肩を叩かれた。振り返ると、先程仕事を請け負ってくれた友人が、何か紙をもって立っている。

 

「はいこれ」

 

渡された謎の紙を見ると、そこには驚愕の光景が・・・。

 

先程、私は比企谷君にしがみついたと言いました。そして、その瞬間を友人に撮影されていたという、とんでもなく恥ずかしい写真です。

 

「ちょっと!何やってるのー!」

 

羞恥半分怒り半分に、友人の両肩を思いっきり揺らした。

 

「だ、だって、思い出づくりに」

 

「もっと他に方法あったでしょー!なんでわざわざナイトスコープまで使ってるのー!」

 

「ど、どうした太宰?急に大声なんか・・・」

 

突然大声をだした私を心配したのか、比企谷君が驚きながら、ポカーンとしている。

 

「な、なんでもないよ!」

 

私は咄嗟に写真をポケットにしまい

 

「なんか、体育館で何かやるらしいから行ってみようよ」

 

「お、おい太宰!」

 

誤魔化すように強引に比企谷君を連れて、体育館へと向かった。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

次回は結構力いれてるので、読んでくれると嬉しいです。

また明日。


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22日目

はい、どうも、アイゼロです。

太宰、ついに告白。そして、ごめんなさい。2000文字超えちゃった。

それではご覧ください。


「凄かったね!劇」

 

「ワイヤーアクションとか、いくら何でも力入れすぎだろ演劇部。おかげで、他の有志団体全然盛り上がってなかったし」

 

本当に、有志団体のバンドの人たちが可哀想だと思ってしまった。盛り上がってはいたが、まさかの劇より劣っている。

 

窓から外を見ると、既に日没寸前。時計の短針はすでに5の数字を超えていた。常に時間を気にする俺が時間を忘れるなんて珍しい。明日はロンギヌスの槍でも振るのかな?

 

「この学校も、なんか炎を囲って踊るらしいよ」

 

炎を囲う?・・・あー、あれか。あの薪を四角形に組み立てて、その中に文化祭で使った看板やら色々燃やすアレか。確かに外を見ると、それをやっている人がちらほら。ドラマだけかと思ってた。

 

「比企谷君、私たちも踊ろうよ」

 

「いや、何でだよ・・・」

 

こういうのって仲のいい男女かカップルが踊る行事だろ。逆に女同士もおかしいとは思わないが、男同士だと、笑われる。男にとって理不尽な世界だ。なんかスケール大きくなった。

 

「大事な話があるんだ♪」

 

とても大事とは思えないほどの笑顔で言われても。

 

「いいけど、俺踊りなんてできないぞ」

 

「適当に合わせてればいいんじゃない?他の人たちも多分踊れないでしょ」

 

随分と適当だなぁ。

 

 

はぁ・・・。断れるわけがない。笑顔でも、本当に大事な話があるのだろう。あんな真剣な目で訴えられたら、断るほうが逆に失礼だ。

 

 

「なんか、結構熱いね」

 

「だな」

 

テレビとかでは結構平気で踊ってるが、実際にやってみると、結構熱気が凄い。10分くらい経ったら、汗かきそう。

 

「それで、大事な話ってなんだ?」

 

「・・・私ね、比企谷君の事好きなんだ」

 

その声は、燃え盛る炎の音、周りの騒がしい声をもすり抜け、俺の耳に、鮮明に響いた。そして、愛の告白とは思えない、軽快な口調。しかし、そんな口調等気にも留めず、比企谷君が好きという言葉が、何度も頭でリピートされた。

 

「え?・・・え」

 

当然困惑するに決まっている。突然きた告白に、今すぐ答えられるほどの対応力なんて持ち合わせていないんだから。

 

「私、比企谷君の彼女になりたい」

 

思わず太宰の方へ振り向く。その瞳は、しっかりと俺の眼を射抜いていて、微動だにしていない。

 

「い、一旦ここ離れようぜ。踊りながらじゃなんだろ?」

 

「そうだね。じゃあ、あそこ行こうか」

 

列から離れ、やってきたのは、いつも俺が昼に飯を食っているベストプレイス。いつものように2人で座る。俺ら数分しか踊ってないな。

 

「返事の前に聞きたい。どうして俺を好きに?」

 

「最初は恋なんて知らなかったけど、比企谷君に抱いてるものが恋心と知ってから意識したかな?」

 

「・・・・すまない太宰。お前は真剣だったのに、俺は失礼なことをした。・・・太宰の言葉の裏を読もうとしてしまった」

 

 

※太宰視点

 

 

今の比企谷君の言葉に、ショックがないと言えば嘘になる。けど、彼が今まで過ごしてきたことを知っていたら、仕方がない事だと思う。

 

「太宰は、こんな裏を探る奴と、付き合ったって、嫌だろ?」

 

・・・え?

 

「太宰には、まだまだ先がある。そこには、絶対俺なんかよりも、いい男と出会えるはずだ。だから、こんな捻くれたボッチといたって」

 

・・・そんな震えた声で、たった今用意した文章を読まれたって、ちっとも痛くないよ。彼は、誰よりも優しい。見知らぬ人を体を張って助けるほど、強く、優しい人間。だからこそ、私の幸せを願って、自分から離れさせようとしてる。

 

けど、その自分を二の次にするいき過ぎた優しさはまちがってる。私は今、爪が刺さるほど、拳を握って、怒りを内に秘めている。

 

「悪いが、俺と太宰じゃ、釣り合わない。だから・・ッ!」

 

これ以上言わせない!私は彼の胸倉をつかみ、引っ張って、その嘘を並べて喋る口を、無理矢理私の口で塞いだ。所謂キスというやつ。なんでしたかって?比企谷君を止めるため!

 

「だ、太宰・・・」

 

「もう、これ以上、自分を傷つけるのはやめて。そんな心にもない事言って、また一人になろうとするのはやめて!

捻くれてるから何なの!?裏を探る?そんなの普通の人だってやってるよ!何で人には優しいのに自分には優しくできないの!?」

 

堪忍袋の緒が切れた私は、比企谷君の胸倉をつかんだまま、自分の秘めた思いを、そのまま叫んだ。

 

「ッ!?」

 

比企谷君は、驚いたように目を見開いている。取り敢えず、言いたいことを言えた私は、比企谷君を離し、静かに話を続ける。

 

「私の幸せは、比企谷君といることだよ」

 

そう言って私は、震えていた彼の手を優しく握った。

 

「・・・ありがとう、太宰。俺の事、そんな風に思ってくれて」

 

涙をこらえてるのか、彼の眉間に少ししわが寄っている。そして、私は見逃さない。涙を流してたまるかと、空いてる片手で、太ももをつねっているところを。おそらく赤く腫れてる。

 

「俺、太宰の事好きだわ」

 

「・・・え!?ええぇ!ちょっと、いきなりどうしたの!?」

 

比企谷君が突然こっちを見たと思ったら、まさかの告白をされてしまった。あまりに唐突過ぎて、動揺している。私も唐突だったから、人の事言えないけど。

 

「少し、自分に素直になってみたんだ。さっきお前が言ってただろ?心にもない事を言うなって」

 

「だとしてもいきなり過ぎない!?」

 

「おいおい・・。突然俺にキスしてきた奴が言うか?それ」

 

「うっ・・・」

 

それに関しては返す言葉もありません。ていうか恥ずかしくなるから、今は思い出させないで。

 

 

※八幡視点

 

 

数十秒の沈黙が続き、ついにその沈黙が破られた。

 

「太宰、もう一度言う。ありがとうな、こんな俺を好きになってくれて。そんで、俺と恋人になってくれ」

 

「うん。喜んで♪」

 

まさか、文化祭の日に恋人ができるなんて、いや、そもそも俺にできるなんて、全然思わなかった。明日はロンギヌスの槍のち雷神トールの大落雷かな。

 

もう俺は太宰に対して、絶対の信頼を寄せている。裏切られたら即自殺レベルで。・・重い?重いですね。

 

「捻くれてて、ネガティブなところも好きだけど、もう少し優しさを抑えてね。私結構怒ってるんだから」

 

「・・・・善処するよ。それか、無理矢理にでも太宰が止めてくれ」

 

「任せて!・・じゃあ、これからよろしく♪」

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

明日の分の話が完成していない。これに結構時間かけたからなぁ。

また明日。


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23日目

はい、どうも、アイゼロです。

これ投稿するとき、眠気がすごくて、意識が朦朧としてました。

それではご覧ください。


文化祭の日の翌日。天気は雲一つなく、槍や落雷も無い快晴。ふっ、煩わしい太陽ね!

 

そんな中、現在は体育の時間。F組はC組と合同。サッカーかテニスで、俺は当然ソロでもできるテニスを選んだ。

 

「んじゃ、2人組つくれー」

 

基本的なテニスのルールや握り方、打ち方を教えた体育担当教師は、生徒たちにそう呼びかけた。その瞬間、ものの数秒であっという間に、ペアができてしまった。

 

「よし、全員組めたな。それじゃ、ラリー練習だ」

 

わーすごーい。俺もう透明人間の境地に達した気がする。いや、いくら何でも薄すぎでしょ俺。ここまでくると逆に不安になってくる。成績とか単位とか。でも、一学期の通知表はちゃんとあるんだよなぁ。俺って謎が多い。

 

取り敢えず、適当に壁打ちしてよう。まかせとけ、壁打ちは俺の十八番だ。体鍛えてるときにやったから。あ、実は筋トレ以外にも、スポーツの基本的なこともしてたのだ。だから俺は運動神経がいい。

 

 

 

4限の体育が終わり、昼休み。運動したからいつもより多くパンを買った。ていうか、体育のくだりいる?俺の存在が希薄を超えた希薄という事しか伝えてないんだけど。

 

「来たよー」

 

「おう」

 

恋人同士になったとはいえ、別に環境自体が変わるわけではない。いつものように、俺達は昼休みの終わる約15分前に集合し、色々話をする。

 

「そう言えば、比企谷君って体育テニスにしてたんだね」

 

「まぁな。チームプレーとか冗談じゃないし。・・・・・ん?何で知ってるんだ?ストーカー?」

 

「へぇ・・・。なんならしてあげようか?」

 

うわあ、凄い笑顔だ。でも、目が冷たい。Mに目覚めそう。嘘です。

 

「冗談だ。それで、何故(なにゆえ)ご存じ?」

 

「私C組だよ。ていうか昨日一緒にお化け屋敷行ったじゃん」

 

「確かにそうだな。でも、太宰の悲鳴のせいで頭から離れてたわ」

 

「思い出させないでよ・・・」

 

「それより、何でテニスだって知ってたんだ?」

 

俺が再び質問すると、太宰がこちらに近づき、肩に手を置いて、耳元で囁いた。

 

「比企谷君の事、ずっと離れて見てたから」

 

ゾクッと、背中に悪寒が一気に走り出した。声も小さく、冷たい。

 

「ストーカーって、こんな感じかな?」

 

「違うわ!いや、別にそういう奴もいると思うけど。どっちかって言うと、重すぎるヤンデレだぞ。ていうか話を逸らすな」

 

「ごめんごめん。体育館から見てたんだよ。見事な壁打ちをしてる比企谷君をね。凄かったね、周りの人たちよりも、上手かったし」

 

「だろ?昔かじった程度にやっただけなのに。凄いだろ?」

 

「うん凄い!運動だけが他の人よりも上なんて!」

 

・・・ちょっとぉ、今聞きづてならない事言ったよね?さらっと毒を吐くんじゃないよ。

 

「ほぅ。言うじゃねぇか。運動だけ、ね~」

 

「ひょ、ひょっと!」

 

ちょいと今の言葉が鼻についた俺は、太宰の右頬を優しく引っ張った。柔らかくて、結構伸びる。

 

「うぅ~・・・」

 

太宰は解放された頬を撫で、俺を恨めしそうに、ジト~っと見ている。

 

「その表情、結構好きだぞ」

 

「睨まれるのがそんなに楽しい?」

 

あ、睨んでるつもりだったんだ。ジト目で結構グッときたよ。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

また明日。


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24日目

はい、どうも、アイゼロです。

早いなぁ。夏休みも残すところあと、2週間と数日だよ。

それではご覧ください。


俺は今、とても重大な問題を抱えている。問題と共に頭も抱えそうなほど、大変な事態だ。

 

家の鍵がない。

 

本来、小町が先に帰っているため、家の鍵は持つ事等ないのだ。けど、今日だけは違う。小町は学校帰りにそのまま、友人の家に泊まるため、小町は帰らない。もう、お分かりいただけただろうか?

 

いつもの癖で、鍵を持ってくるのを忘れました。

 

両親も夜遅くまで仕事だから、俺が家に入るためには、その時間まで親を待ってなきゃいけない。・・・どうしよう。半引きこもりの俺にとって、家に帰れないというのは、悲劇だ。

 

片手で頭を抱え、パンを頬張りながら、打開策を練ろうと、脳をフル回転させていると、不意に頭に何かが乗っかった。

 

「どうしたの?頭痛いの?・・・・痛いの痛いの飛んでけーー!」

 

その正体は太宰だ。まさかこの年で、その呪文を受けるとは思ってもいなかった。

 

「お前それ自分でやって恥ずかしくないのか?」

 

「言わないで!自分でも後悔してるから!」

 

そう言うなり、太宰は俺の背中に顔をピトッと当てた。

 

「どうしたの?何かあった?」

 

「家に帰れないんだ」

 

「・・・・ええ!?」

 

冒頭で言った俺の危機的状況をそのまま太宰に伝えた。

 

「じゃあうちに来なよ」

 

「・・・は?いや、そんな遅くまでいるわけにはいかないだろ?」

 

「じゃあ泊まってって!私の部屋結構広いから」

 

「なんだお前誘ってんのか?!そんなに彼氏を弄びやがって?!襲っちまうぞ!」

 

「そんなつもりで言ったんじゃないから!ただ純粋に彼氏の心配してるだけだよ!・・・・そ、それに、比企谷君なら、襲っても、いいけど・・・」

 

「おいやめろ。そう思わせぶりなことは言うんじゃない。・・でもありがとうな。じゃあ、泊まらせてもらう」

 

「うん。おいでおいで」

 

 

 

そんなわけで、太宰家にやってきました。着替えの問題は大丈夫。ジャージがあるし、下着は帰りに買った。準備バッチリだ。

 

「ただいまー」

 

「お邪魔します」

 

いざ、彼女の家に訪問。

 

「おかえり。ん?誰?」

 

「比企谷君。ほら、よく話してるでしょ」

 

「あー、この子が・・・。春歌の母です。よろしくね」

 

「ああ、どうも。比企谷八幡です」

 

「そんなにかしこまらなくてもいいよ。娘の初恋の相手なんだし♪」

 

こういう気兼ねなく話してくる人はありがたいな。あと初恋って、改めて意識させられると、なんか気恥ずかしい。しかも彼女の親に・・・。

 

「こ、こっち私の部屋だから、案内するね」

 

太宰も俺と同じ気持ちだったのか、俺の手を引いて、部屋へ招かれた。

 

「ごめんね。お母さん、結構舞い上がっちゃってるから」

 

「いや、逆にああいう人当たりいい人で良かったわ。厳格な人より断然いい」

 

きょろきょろと太宰の部屋を見渡すと、綺麗に片付いており、思ったほどピンクが少ない。女子高生って、部屋真っピンクという偏見をもってたが、少し改めよう。・・・・・・バシン!俺は、目の周りが痛くなるほど、強く目を手でふさいだ。

 

「ど、どうしたの!?」

 

「おい、あれ」

 

「え?・・・・・あ!」

 

その原因の方を指さした。すると、目隠しでも分かるくらい太宰は慌てて、そこに向かい、片付けた。その正体は、・・・太宰の下着類だった。見事にタンスの前に転がっていたのだ。

 

「ごめんごめん」

 

「次からは気を付けてくれ」

 

目を解放させ、太宰を見ると、顔を赤くし、チラチラと俺を横目にしている。

 

「・・・変な事考えないでよ」

 

「おい、それを言うなって。余計邪念が生まれるだろ」

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

原作に入るか?という質問を受けたので答えます。

2年には進級します。ただ奉仕部にはいれない。今のところ答えられるのはこれくらいかな。

また明日。


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25日目

はい、どうも、アイゼロです。

バイト中、客足が少ないときは基本、暇な時がある。その間にネタとかを考えてるんだけど、いざ自宅に帰って書こうとすると、忘れてる時があるんだよ。はい、無意味。

それではご覧ください。


太宰の部屋で少し喋った後、太宰の母から晩飯ができたとの報告があり、俺はリビングに案内された。

 

「いっぱい食べてね」

 

「はい。いただきます」

 

うむ、凄く美味い。さすがは母親だ。

 

そういや、もう数ヶ月くらい母ちゃんの料理食ってないな。お願いとかしたら作ってくれるんかな?いや、ガラじゃねぇし、いっか。

 

「あ、ご飯粒ついてるよ」

 

おっと、考え事してたから気付かなかった。自分で取ろうとしたら、それよりも先に太宰がとって食べてしまった。だが、太宰を見ると、表情一つ変えずに、平然としている。太宰って、たまに無自覚にドキッとさせられるんだよなぁ。

 

「あらあら♪」

 

一方、太宰の母は、俺達をニコニコしながら観察している。この状況をかなり楽しんでいる。

 

 

 

風呂まで貸してもらった俺は、太宰の部屋で漫画を読んでいる。今は、太宰が風呂の番だ。ラッキースケベなど起こしていないから安心してくれ。あんなものを現実世界で起こしたら、即悲鳴即ビンタ即通報だ。

 

「ふぅ、さっぱりした♪」

 

バスタオルを首に巻き、パジャマ姿で現れた太宰。人間初めて目にするものには、つい釘付けになってしまうものだ。そして同時に、見惚れてしまう。

 

普段一つに結んでいる髪は解かれ、ポニーテールからセミロングになっている黒髪、風呂あがり特有の少し上気して火照っている顔。艶やかな唇。思わず息を飲んでしまった。

 

「ど、どうしたの?そんなに見られると恥ずかしい・・・」

 

そう言って首に巻いてるバスタオルを上げ、口元を隠した。しかし、その仕草こそが余計にグッときた。

 

「綺麗だぞ」

 

「え!・・い、いきなりはずるいよ!比企谷君の方こそ私を誘ってるの!?」

 

「本心だけど」

 

「きゅ、急に素直にならないでよ!・・・いや、まぁ、嬉しいけど」

 

太宰は落ち着こうと、深呼吸をし、火照った頬をスーッと戻した。そして、俺の隣にピッタリくっつき、腕に抱き着いてきた。

 

「太宰?」

 

「お返し。比企谷君にも恥ずかしい思いをさせてやるんだから」

 

「それくらいで恥ずかしがってたら、これから先恋人やってけねぇっての」

 

「う~、悔しい・・・」

 

嘘です。かなり心臓が動いています。四六時中無表情だったから、自然と身に着けたポーカーフェイス力がここで役に立った。

 

 

 

そろそろ寝る時間のため、寝ることに。

 

「そういや、俺ってどこで寝ればいいんだ?」

 

「あ、ちょっと待ってて。お母さんから布団もらってくるから」

 

数分後・・・。

 

「はい、比企谷君」

 

「おう。悪いな」

 

「こういう時は、ありがとうだよ」

 

「・・・そうだな。サンキュー」

 

「うん。お休み」

 

「お休み」

 

予定外で突然の泊まりだったけど、案外楽しめた。さ、明日も学校だし、寝よう。

 

「(本当に何もしてこないんだなぁ。男の子なのに。されたらされたで戸惑うけど、う~ん、なんか自分でもよくわからない)」

 

 

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

俺がバイトしてるところは、基本生モノ以外揃ってるから、ある意味ネタの宝庫ではあるんだよね。

また明日。


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26日目

はい、どうも、アイゼロです。



それではご覧ください。


翌朝、目を覚まし、意識が薄い中、半身を上げ、顔を時計の方へ向けると、時刻は6時半。寝る布団や場所が違うためか、いつもより早く起きてしまった。

 

二度寝するような時間でもないため、起き上がって布団をたたんだ。

 

横に目をやると、布団がはだけて、へそを出して寝ている太宰。お見事って言いたくなるほどの寝相の悪さだ。気持ちよさそうに寝てるなぁ。

 

パシャッ

 

取り敢えず一枚。よし、起こそうか。

 

「おーい、そろそろ起きた方がいいんじゃないか?」

 

肩を軽く揺らすと、う~んと唸って、半身を上げた。けど、依然として目はつぶったまま。朝はめっぽう弱いようだ。

 

そして、また寝てしまった。

 

「おーい」

 

「ん~、抱いて~」

 

「ぶっ!?」

 

よし、一旦落ち着け俺。これはあれだ。寝ぼけて少し子供みたいな甘えん坊なところが少し露呈しただけだ。深呼吸深呼吸。

 

「馬鹿なこと言ってないで起きろよ」

 

「・・・あれ?比企谷君?」

 

「おう」

 

「私、何か馬鹿なこと言ったの?」

 

「抱いて~、私を比企谷君の色に染めてーって言ってた」

 

「なっ!な、な、な」

 

「嘘」

 

手元の枕で思いっきり殴られました。

 

 

 

 

「・・・」

 

「どうしたの春歌?随分とご立腹だね」

 

「別にー」

 

根にもたれたなー、さっきの事。でも、半分は事実なんだよ。

 

「夜はお楽しみだったのかな?」

 

「「っ!げほっげほ!」」

 

太宰と共にむせてしまった。

 

「あ痛い!」

 

そして、娘に箱ティッシュを投げつけられる母親。面白い家族だな~。

 

「なんか、ユニークな母親だな」

 

「まあね。楽しいことが好きで、よく悪戯とかするんだ。たまに迷惑することもあるけど、退屈しないかな」

 

「いいな。楽しそうで」

 

 

※太宰視点

 

 

C組とF組の教室は離れているため、途中で比企谷君と別れた。2年は同じクラスになれたらいいなぁ。

 

「おはよう」

 

「あ、春歌。おはよう」

 

教室に入ると、いつも仲良くしてる友人に挨拶をする。そして、HRまで少し話をします。

 

・・・しばらくすると、携帯が振動した。開いてみると、メールが届いたらしく、しかも送信者は比企谷君だった。

 

メールの内容は何も書かれていない白紙。最初は何が何だか分からなかったけど、写真が添付されていた。その写真を見ると・・・。

 

「比企谷君のバカーーー!!」

 

「うわ!どうしたの春歌!急に叫んで・・・」

 

ひ、昼になったら覚えてなさいよ・・・。

 

 

 

 

 

昼になり、いつもは友人と昼食を共にするのだが、申し訳なく断りを入れ、あの場所に一直線に向かった。

 

着くと、比企谷君は呑気に潮風を浴びながら、パンを頬張っている。

 

「ひーきーがーやーくーん」

 

私は比企谷君の頭を力強く掴んだ。

 

「な、何だ?太宰?」

 

「なんだ?じゃないでしょ!何あの写真。いつ撮ったの?」

 

「いつ撮ったって、今日の朝に決まってるだろう。可笑しな事言うなぁ」

 

「やかましい!クラスで大声上げちゃったじゃない」

 

「いやぁ、あまりに可愛いからついな」

 

「・・そ、そっか。可愛いかったから・・・」

 

それなら許してもいいかなぁ。比企谷君の癒しになるならそれで。

 

「・・・ちょろい」

 

ブチッ。

 

「こんのーーー!!」

 

「いだだだだ!!」

 

思いっきり両手で頭をぐりぐりしてやった。

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

2年になって始めの高校生活を振り返っての作文をどうしようか悩んでます。

また明日。


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27日目

はい、どうも、アイゼロです。

俺ガイルの特徴である、名字と名前を被らせるという要素を一度も使ったことがないです。

それではご覧ください。


11月の下旬。本格的に冬が始まり、肌寒くなった。そうなると、いつも外で飯を食ってる俺は、この寒さに耐えなければいけない。いや、暑さにも耐えられたんだから、厚着すれば問題ないか。

 

でも、おそらく太宰は来てくれないだろうなぁ。・・・別に寂しくなんかないし。

 

「比企谷君寒くないの?」

 

突然両頬に温かいもので包まれた。毛糸みたいな感触。手袋までして来てくれたのか太宰は。

 

「寒いぞ。ただここを離れたくないんだ」

 

「夏にも聞いたよそれ。・・・・はい」

 

太宰は首に巻いてるマフラーを少し俺に与えてきた。

 

「これ、結構長いから入ると思う。もう少しくっつくから」

 

「ああ、サンキュー」

 

もうこういうのにも、すっかり慣れてしまった。元々俺が意識しすぎたってのもあるんだけどね。だって最初何したらいいか全然分からなかったし。初恋人だったからね。・・あ、でも太宰もそうだったな。しかも、恋愛感情も疎かったし。・・・やっぱり俺が単純にヘタレだっただけなのか。

 

「さすがに外は誰もいないね」

 

「そうだな。冬となると、テニスの練習も控えるんだろう」

 

毎日、テニスボールのはじける音を聞いていたから、物足りなく感じてしまう。あの銀髪の可愛い小柄な人は、ほぼ毎日、汗を流して練習してたなぁ。そいつが男子更衣室に入った時は度肝を抜かれたけど。初めて神は意地悪だとも思った。

 

「・・・・2人きりだね」

 

「まぁ、こんな寒い中外出る奴なんて俺ら以外いないからな」

 

校庭や後ろの通路を見渡しても、誰一人いない。校内は暖房がガンガンに効いてるからな。

 

「何もしてくれないの?」

 

「何かされたいのか?」

 

「・・・・うん」

 

いや、うんって言われても・・。俺だってしたいと思ったこともある。でも嫌がられるかもしれないから、抵抗あるんだよ。

 

「ん?」

 

「今は、頭を撫でることくらいしかできないな。俺、ヘタレだし」

 

「そっか。これも悪くはないけど。・・・・じゃ、しばらくはこっちからしようかな♪」

 

そう言うと太宰は、俺の肩に手を置き、俺の頬にキスをしてきた。

 

「お、おい?」

 

「ふふーん。しばらくは私からこうするから」

 

くっ!世の彼女がいる男子はこうやって手玉に取られるのか、恐るべし。俺も男の意地を見せてやる。

 

今太宰の顔は間近にある。太宰の顔が俺から離れる前に、両手で優しく抑え、キスを返してやった。頬ではなく口に。

 

「あ、あれ?・・・え・・」

 

太宰は顔を真っ赤にして見事に混乱している。さっきまで自分が優勢だったから油断したな。俺だってやるときゃやる目の腐った男ですよ。

 

「さて、もう昼休み終わりだ。行こうぜ」

 

「ちょ、ちょっと待って!マフラーまだ巻き付いてるから!」

 

あ、完全に忘れてた。ていうか太宰今引っ張ったろ?苦しかったんだけど・・・。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

この八オリシリーズは、ほんのり甘くを目標にしています。

また明日。


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28日目

はい、どうも、アイゼロです。

本日は東京に行くため、早めに投稿です。

それではご覧ください。


「春歌、最近どう?」

 

「ん?どうって?」

 

「彼氏だよ。上手くやってるの?」

 

「うん。ていうか比企谷君と言い合いとか一度もないし」

 

相性がいいのか知らないけど、喧嘩とかそういういざこざってないなぁ。それにしたくもないし。うん、平和だ。

 

「あれ?まだ名字呼びなの?」

 

「ん?名字呼び?それが?」

 

首を傾げると、皆に深いため息をつかれた。肺活量を疑うくらいに。ちょっと失礼。

 

「春歌。普通恋人同士は下の名前で呼び合うんだよ」

 

「へぇ・・。そうなんだ。初耳」

 

「全く。これだから恋愛初心者は・・・」

 

「彼氏いない人に言われてもねぇ・・・」

 

「ぐっ・・・。とにかく!今日名前で呼んでみな」

 

「分かったよ。じゃ、行ってくるね」

 

下の名前だけで、そこまで変わるのかな?

 

 

 

 

「八幡!」

 

・・・なんだなんだ?いつものように来て隣に座るのかと思ったら、目の前で俺を見上げるようにしゃがんで急に名前で呼んできたぞ。ハイアングルだと綺麗さが増すんだな。

 

「八幡!」

 

「いや分かったから。どうして下の名前で?」

 

「恋人同士は下の名前で呼び合うって聞いたから」

 

「まぁ、世間一般ではそう言われてるらしいな」

 

「じゃ、呼んでみて」

 

「・・・春歌」

 

名前で呼んだ途端、互いに目を合わせながらパチリパチリと瞬かせ、静寂が生まれた。

 

「・・・なんだろうなぁ。よくわからないけど、嬉しい。比企谷君以外の男に呼ばれるのは嫌と感じた」

 

変なところで鈍感な太宰であった。

 

「これから名前呼びでいこう。八幡」

 

「・・・そうだな。春歌」

 

付き合って4ヶ月ちょい。やっとお互い名前呼びになった。やっとというか、完全に意識してなかったんだけどね。

 

 

「もうすぐクリスマスだね。早いなぁ。ついこの間入学したと思ったら」

 

「そうだな。俺は毎年長いと感じていたが、今年は色々刺激があって、早く感じた」

 

他の奴と違って、切磋琢磨もすることなく、時間に追われることもなく、悠々自適に時間の流れに乗っていたから、時の流れを遅くする能力でもあるんじゃないか、とバカなことも考えたことあったな。あの頃は若かった。

 

「クリスマスは毎年どう過ごしてるんだ?」

 

「24日は友達と遊んで、25日は家族。両親ともイベント好きだから、結構力入れてるんだよね」

 

という事は、父親の方も結構面白い人なのかな?会ってみたいわ

 

「ねぇ比企谷君。24日のイブ、一緒に過ごそう」

 

「友達はいいのか?」

 

「うん。多分だけど、彼氏と過ごしなさいって言われる」

 

「そうか。いいぞ。俺も太宰といたかったし」

 

「嬉しい事言ってくれるね」

 

「掘り返さないでくれ・・・。ていうか、普通に名字に戻っちゃってんじゃん」

 

「あ・・・」

 

全然気づかなかった。違和感がなさ過ぎたもん。

 

「名字に戻すか?」

 

「やだ。名前で呼び合う。八幡」

 

「はいはい。分かったよ春歌」

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

夏休みの後も続いてほしいと言われて凄い嬉しかったですが、夏休みの企画なので、8月31日には完結させます。

また明日。


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29日目

はい、どうも、アイゼロです。

東京楽しんできたが、最後の最後でsuicaを落としてしまい、落胆しました。

それではご覧ください。




クリスマスがやってきた。人生で初めてかもしれない。こんなシャレた記念日に外へ出るなんて。約束通り、今日24日は春歌と過ごすため。今は春歌を待っている。場所は駅前の時計下だ。

 

「はちまーん!」

 

俺の名前を呼んだ彼女は手を振りながら、俺に向かって駆け寄ろうとしている。厚着が可愛い。厚着の方が隠されて体のラインが際立ってエロイ。俺冬派。

 

「なんか変な事考えてないよね?」

 

「何も。早く行こうぜ」

 

周りの野郎共のジェラシーファイアに耐えられないから。

 

「うん。行こう♪」

 

変なところで勘が鋭いな、春歌は。今日行くのは、前に一緒に行った喫茶店だ。あそこは、イベントごとに色々メニューや飾りつけを変えるらしい。七夕だったり、バレンタインだったり、今日のクリスマスもそう。

 

 

 

 

店に入ると、凄い繁盛している。男女カップルが多いな。一部には女子同士の人もいる。さすがに男子同士はいないな。

 

「あ、いらっしゃい春歌ちゃん。春歌ちゃんも彼氏連れ?」

 

「はい。元友達の八幡です!」

 

「いいねぇ~。友達からの彼氏なんて。ささ、特別にいいところ、取ってあるよ」

 

「ありがとうございます♪」

 

 

 

 

「本当にメニュー変わってるな。しかもカップル専用多すぎだろ」

 

「それが狙いだからねここは。私たちもそれにする?」

 

「まぁ、折角だしな。色んな専用メニュー頼もうぜ」

 

ドリンクや、料理、デザートなども注文し、辺りを見回す。・・・よーく見ると、店員さんミニスカサンタコスだ。厨房の人も赤い鼻だけ付けている。

 

「どうしたの?私の事そんな見て」

 

「・・・いや、春歌のサンタコスが見て見たいと思ってな」

 

「・・待ってて。借りれるか聞いてくる」

 

え?行動早くない?そしてまさかの本気するとは・・・。

 

数分後。

 

「どうかな?」

 

ミニスカサンタの春歌が登場。

 

「似合ってる・・・」

 

「何で目逸らしたの!?・・あ、照れてるの?そうなんでしょ?」

 

「ほ、ほら、飲み物きたから」

 

「分かった~♪」

 

春歌は上機嫌に、俺は目の保養になり、その運ばれたドリンクを飲もうとしたが、その形状に戦慄せざるを得なかった。

 

一回り大きいコップ、そして2つのストローが交差され、左右に飲み口が分かれている。テレビでよく見るやつだ。

 

「こ、これはさすがに・・・」

 

「そうだな。交代で飲むか」

 

こんなバカップルなことできるか!逆にこれを平気でできる奴を異常だと俺は思うぞ。

 

料理を食べる場面は割愛します。

 

 

「そうだ。はい、春歌」

 

「え?もしかしてプレゼント?」

 

「そうだ。クリスマスだしな」

 

「ありがとう♪」

 

箱の中から出てきたのは、リボンだ。春歌は季節関係なく髪を結んでいるからな。

 

「じゃあ、私からはこれ」

 

春歌も用意してくれたらしく、小さい箱を受け取った。

 

開けると、頑丈で綺麗なブックカバーと、面白い形をした眼鏡だ。

 

「その眼鏡、怠け者眼鏡って言って、寝ながら読書できるの」

 

へぇ、そんな便利な物があるのか、この世には・・。面白いなぁ。

 

「ありがとな、春歌。大事にする」

 

「私も、リボンありがとう」

 

その後、一緒に写真を撮らされたりし、久しぶりに楽しいと思えたクリスマスを過ごしたとさ。

 

 

 

 

春歌を家に送り、俺も帰宅。だが、中には誰もいない。おかしい、クリスマスは小町のために両親は休みを取ってる筈なのに。ていうか小町すらいない。

 

・・・あれ?テーブルに何か紙が・・・。

 

『家族旅行に行ってきます!アデュー!』

 

泣くよ俺?

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

次回はほんの少し糖分が多めになります。

また明日。


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30日目

はい、どうも、アイゼロです。

予告した通り、ほんのちょっと糖分を増やしました。

それではご覧ください。


太宰とのクリスマスデートから一日が経った。現在は25日の夕方。

 

『家族旅行に行ってきます!アデュー!』

 

再度、メモを頭の中で朗読した。家族旅行・・・ねぇ。

 

ついには俺を家族から外されたのか?何それ一番傷つくんだけど。冗談だろうけど。いいんだけどね、元々行かなくなったのは俺から何だし。

 

飯も用意されていないし。作れるからいいけど。なにこのやるせない感じ。自分の今の状況に心が痛む。

 

こうなったらアレだ。家族旅行したことを後悔させてやるくらい、いつも以上に豪華で美味い飯を作ってやる。俺の家事スキルをフルで活用してな。

 

そうと決まれば早速材料を買おう。

 

 

というわけでスーパーにやってきた。

 

「あ、八幡」

 

肉と野菜を見繕っていると、隣から聞き慣れた声が聞こえた。

 

「あれ?春歌?」

 

「もしかして、八幡も買い出し?」

 

「ああ。そんなところだ。春歌もか」

 

「そうなんだ。買い忘れがあったらしくてね。八幡の家は今から作るの?」

 

「ああ。家に誰もいなかったからな。俺が作るしかないんだ」

 

「ええ!どうして?」

 

「家族旅行に行っててな。俺を置いて・・・はぁ」

 

聞いてはいけないことを聞いたのかもしれないと、春歌が気まずそうにしている。なんか誤解してるみたいだから補足させとくか。

 

「別に気にしてないぞ。今まで誘いを断ったから自然になっただけだ」

 

「そうなんだ・・・」

 

俺がそう言うと、しばし考える姿勢をとった春歌。何か思いついたのか俺の袖をつまんだ。

 

「八幡。うちにおいで」

 

「え?・・いや、でも悪いだろ。家族水入らずなのに。かえって邪魔だ」

 

「そんなことないよ!お父さんもお母さんも喜ぶよ!私の八幡を一人にさせるもんですか!」

 

不覚にもこの言葉で泣きそうになってしまった。俺は袖をつまんでいる春歌の手を握った。

 

「抱き着いてもよかですか?」

 

「で、できれば人気のないところでお願いします・・・」

 

 

 

太宰家到着。家が見事にイルミネーションが装飾されていた。ここ通ったら絶対写真撮りたくなるよ。

 

「ただいまー」

 

「お、お邪魔します」

 

なんか親がいるとわかってると緊張する。一度深呼吸をし、落ち着いてリビングに入った。

 

「お?おかえり春歌。隣にいる人は?」

 

「あら、比企谷君じゃないの?どうしたの?」

 

「あ、ああ。どうも」

 

春歌が俺がいる説明をしている中、俺はただただポカーンと立ち尽くすことしかできなかった。目の前に広がっている光景に。サンタのコスプレをした春歌の母、トナカイの角をつけている、かなりカッコいい父親。ここまではしゃげる大人を見たのは初めてだから、どう反応すればいいのか分からなかった。

 

「どうかしたのかい?ぼ~っとして」

 

春歌の父親は、さっきから微動だにしない俺を心配してるのか、トナカイの恰好のまま近づいてきた。

 

「いや、お父さんたちの格好に驚いてるだけだよ」

 

「あ、そうかそうか。何、気を抜いてくれてもいいよ」

 

「ああ、はい」

 

「さあ、春歌が恋人を自慢してきたことだし、比企谷君を加えてパーティーを始めよう」

 

「何その始まり方!わざと?わざとなの!?」

 

こうして、何をしていいのか分からない、人生初、人の家でのクリスマスが始まった。

 

 

1時間後・・・・。そう、この一時間の間に、すっかり酒を飲んで酔ってしまった太宰両親は、俺と春歌に、質問という名の、罰ゲームをさせた。そして、途中から自分たちが語り始めたよ。酔った勢いで普通に禁句とか言っちゃったし。春歌と気まずくなっちまったよ。

 

俺達はそんな両親から逃げるように、部屋に入った。

 

「なんか、騒がしくてごめんね」

 

「折角のクリスマスだし。はしゃいだ方が楽しいだろ」

 

「そう。・・じゃあ、私たちもはしゃごうか!」

 

「おおっと・・ちょっとぉ?」

 

どうしたんだ?急に抱き着いてきて。この前の泊待った時も感じたが、やはり子供のような甘えん坊が出る時があるのか。

 

「お前、急に甘えん坊になるときあるな。なんだそれ?」

 

「わかんないけど、衝動的にそうなるんだ。八幡がいる時だけね。やっぱり安心できるのかな」

 

そう言って顔を近づけてきた。一瞬何かわからず動揺したが、すぐに理解したため、俺もそれに応えようと、同じことをする。

 

「あらあら~」

 

「成長したな。春歌」

 

「なっ!お父さんお母さん!何してるの!?」

 

あー、思いっきり見られちまったな。

 

「八幡、また今度ね」

 

春歌は両親に見られた事で一気に羞恥心が込みあがってきたのか、俺にそう言って顔を離そうとした。・・・・・・・そうはさせないぞ?

 

「は、八幡!?」

 

「俺は毎回恥ずかしい思いをさせられるからな。たまにはお返しさせろ」

 

「で、でも親の前で・・!」

 

その親の方を見ると、ニヤニヤしながらどこかへ行ってしまった。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

ちょっと積極的になっちゃったかな?

また明日。


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31日目

はい、どうも、アイゼロです。

いやぁ、なんだかんだ言って一ヶ月経ったねぇ。

それではご覧ください。


冬休みが終わり、幾日経って、現在は2月。まだまだ寒さは衰えない。

 

「お待たせ~、八幡」

 

「おう、待ってたぞ春歌」

 

いつになっても変わることは無い、このやり取り。中身などないが、これが無きゃ心地が良くない。

 

「ねえ、今日は何月何日だと思う?」

 

「は?2月14日だろ?俺そんな馬鹿に見える?」

 

「いや違うから。合ってるよ。それで、今日は何の日?」

 

何の日?今日って何か記念日でもあったのか?・・・日本の行事には少し疎いからよくわからない。

 

「キャプテン・クックが太平洋探検の第3回航海中にハワイで先住民とのいさかいによって落命した日、か?」

 

「何それ!聞いたことないんだけど!」

 

「違うのか?じゃあ、ペルー・ボリビアとチリの間で太平洋戦争が勃発」

 

「それも違うから。わざと?わざとそう言ってんの?」

 

「いや、ガチなんだが・・・」

 

俺がそう言うと、深いため息をつかれた。

 

「はい、これ」

 

春歌が渡してきたものは、四角い箱に綺麗にラッピングされたものだった。開封の許可をもらい、中を見て見ると、デコレーションされたチョコレートが入っていた。

 

「何でチョコレート?しかも見るからに手作りだな」

 

「・・・もしかして、本当に知らないの?」

 

「え?何?あと顔近いキスするぞ。え?そんなにおかしい?」

 

「全く。じゃあ教えてあげる。・・・って今さりげなくとんでもない事言ったよね!?」

 

とんでもない事って何のことだ?としらを切り、春歌から今日は好きな人にチョコを渡す、バレンタインデーという日だと教えてもらった。

 

「へぇ、そんな日があったんだな。どうりで毎年2月に入ると、チョコレートの広告が増えるわけだ」

 

「まさか日本人でバレンタインを知らない人がいるなんて思わなかったよ」

 

「ふぅん。なんか聞いてる限り、お菓子メーカーの陰謀のような気がするが・・・」

 

「何でそこだけ鋭いのよ・・・」

 

あ、当たってた。適当に予想を言っただけなのに。

 

「とにかく、ありがとな。すげぇ嬉しい」

 

「食べてから言って。折角の手作りだから」

 

「分かった」

 

では早速一口。・・・うん、美味い。甘さもちょうどよくて、いくらでも食べられる。

 

「す、すごい勢いで食べてるね。そんなに美味しかった?」

 

「ああ、全然飽きない。美味いぞ」

 

「よかった~。ありがとう」

 

「俺の方こそありがとな。ご馳走さん」

 

気付いたら箱の中が空っぽになってしまった。

 

「じゃ、お返しは楽しみにしてるよ」

 

「ん?お返し?金でも払えばいいのか?」

 

「違う!ああ、そっか。知ってるはずないもんね」

 

なんかさっきっから馬鹿にされてる気がする。別にいいじゃないか。リア充のイベントなんて今まで無縁だったのだから。

 

ちなみにお返しというのは、ホワイトデーと言って、チョコのお返しに何か菓子類とかを渡す日らしい。

 

「じゃあ、その日にお菓子を作ればいいんだな」

 

「え?作るの?」

 

「手作りには手作りだ。料理できる奴はお菓子も作れる。期待しとけ」

 

「じゃあ、凄く期待してるから、待ってるね」

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

ホワイトデーは書きません。

また明日。


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32日目

はい、どうも、アイゼロです。

PC開けるか不安なため、久しぶりの深夜投稿。

そして前言撤回。ホワイトデー書きました。

それではご覧ください。


バレンタインという、リア充イベントから一ヶ月。今度は男子がお返しをする、ホワイトデー。

 

俺は自作のお菓子を持ちながら、春歌がくるのを待機。中身は開けてみてからのお楽しみ。久しぶりに力を入れた気がするな。小町にとられそうになったが、死守した。自分だけもらおうとか、いつからこんなに卑怯な奴になったのだろうか。

 

「八幡」

 

いつもよりニコニコして俺の横に現れた春歌。

 

「お前分かりやすいな」

 

「あー、顔に出てた?なんかいやしい人みたいになっちゃった・・・」

 

「まぁ、楽しみにしてくれてたんだろ?素直に嬉しかったぞ」

 

人に期待されるって、こんなにいいものなんだな。世界ふしぎ発見。

 

春歌にお菓子が入った紙袋を渡した。袋の中身はなんだろな?

 

「おお、結構入ってる」

 

春歌は中の物を一つずつ手に取り、確認した。

 

「クッキー、マフィンにマカロン。って多すぎじゃない!しかもおしゃれ!本当に男?」

 

褒めてくれたのはありがたいが、最後のは何だ?こんな腐った眼の女子なんて俺は見たくないぞ。

 

「ま、見た目はともかく、食ってみろ。自信はある」

 

「いただきます。・・・・・・美味っ!凄い美味しい!」

 

それぞれのお菓子の種類を一つずつ食べるたびに、絶賛している。正直そこまで喜んでくれるとは思っていなかった。

 

「まさかここまでとは・・・。期待以上だったよ」

 

「そりゃ、ありがとう」

 

そして再びお菓子を頬張る春歌。

 

「今そんな食べなくてもいいんじゃないか?結構量あるし・・・」

 

「折角の美味しい手作りお菓子だもの。今食べたい」

 

「・・・・・・太るぞ?」

 

そう言った瞬間、春歌の手がピタリと止まった。

 

「の、残りは帰って食べよう」

 

そう言ってぱたりと箱を閉じた。そして俺の方を睨みつき

 

「今の結構グサッときたよ!」

 

と、頬を引っ張られた。やはり女子にとって『太る』というのはタブーなのかもしれない。

 

 

「ホワイトデー、ありがとうね。まさかこんなにもらえるなんて。なんか割に合わないよ・・・」

 

「いや、別に比較しなくてもいいじゃねぇか。」

 

「ん~、でもやっぱり、チョコだけと、この数は・・・」

 

「はぁ、・・・・俺にとって、春歌のチョコはそれ以上の価値があると思ったんだ。あの時は本当に美味くて嬉しかったから、俺もそれに見合うものを作ろうと思ったんだ」

 

あー、我ながららしくもない、恥ずかしい事を言ったな。思わず、いつもの癖で頭をガシガシと掻いてしまった。

 

「は、春歌?」

 

「ん?なあに?」

 

「いや、あのさ、そんなにべったりくっつかなくても・・・」

 

「やだ♪」

 

ここにきて甘えん坊気質なところが出てきてしまったか。・・・・まぁ、嫌じゃないからこのままで。

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

投稿日付設定すればいいんじゃないか?と思うかもしれないけど、なんかしたくないんだ。何故かわからないけど、すぐ投稿しないと、なんか嫌なんだ。

また明日。


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33日目

はい、どうも、アイゼロです。

本日、外が凄いですね。千葉は台風が暴れています。

それではご覧ください。


「ドキドキしてきたね」

 

「そうだな。ちょっと緊張してる」

 

俺と春歌は今、一緒に登校している。いつもは違うが、今日という日は特別なのだ。

 

俺達1年生は、ついに今日から2年生。つまり進級だ。そして、何故2人かというと

 

「同じクラスになれるといいね」

 

「ああ。なりたいな」

 

クラス替えである。俺と春歌は1年の時、クラスが離れていたため、同じクラスになるのは悲願なのだ。

 

「春歌の友達とやらも、一緒の方がいいかもな」

 

「そうだね。彼氏を紹介したいし」

 

 

 

新しいクラスの表は、定番の下駄箱のドアに貼られている。順番にA組から見て回っている。しかし、E組まで来ても、俺と春歌の名前がない。

 

そしてF組の表を見ると、俺の名前、春歌の名前が書かれていた。

 

「やったよ八幡!」

 

「お、おい。さすがにここで抱き着かれると・・・」

 

「あ、ごめんごめん」

 

うわぁ、ヤバい。殺意のこもった眼が一斉に向かれた。

 

「気持ちは俺も同じだから」

 

うっかり頭を撫でてしまった。

 

「おーおー、お2人さん。朝から公衆の前でいちゃついてますねぇ」

 

「あ、皆集合してたんだ」

 

「おはよう。またみんな同じクラスだね。それと、比企谷君だよね?よろしく」

 

「え、ああ、おう。」

 

「固くならなくていいよ。君の事は、春歌からよく惚気られてるから」

 

思わぬ事実が発覚してしまった。普段から冷静で時には甘えん坊な春歌が、友人に対し惚気話など。

 

「そう言えば自己紹介がまだだったね。芥川梨奈」

 

「福沢有希だよ」

 

「夏目奏菜。よろしく」

 

「江戸川蘭子」

 

「・・・・・はぁ!?」

 

なんと!まさかの文豪が勢ぞろい!いやいや嘘だろ・・・。なにこの偶然というか奇跡というか。これに太宰春歌か。将来この5人で武装探偵社でも立てる気か?

 

「何平然と嘘ついてるの!?八幡誤解しないで。嘘だから!」

 

何だ嘘か・・・。焦ったぁ。でもなんかそれと同時に、密かに期待していた物が崩れた感じがした。

 

その後、本当の名前を教えてもらい、俺も自己紹介を返した。どうやら名字だけ嘘らしくて下の名前は本当らしい。

 

はぁ、女子5人に対し、男は俺1人。後先怖いなぁ、と思いを馳せながらも、2年F組の教室に着いた。

 

席の配置を確認すると、分かってたことだが春歌とはそれなりに離れる。タ行とハ行だしな。

 

HR始まりのチャイムが鳴り、新たな担任が登場した。

 

「今日から2年F組の担任になった、平塚静だ。よろしく」

 

すげぇ男っぽい自己紹介だな。

 

担任の自己紹介から始まった、生徒による自己紹介が終わり、今日はこれで学校が終わる。

 

「八幡、この後昼ご飯行こう」

 

「かまわないが、友達も誘わないのか?」

 

「皆用事があるって言われた・・・」

 

「そうか。じゃ、行こうぜ」

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

夏休みもあと9日か・・・。

また明日。


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34日目

はい、どうも、アイゼロです。

予約したいフィギュアがあるが、届け予定日が学校ある日でどうしようか悩んでる。どうでもいいね。

それではご覧ください。


今日はクラス替えと自己紹介だけで学校が終わったため、春歌と昼飯を共にすることになった。場所はお決まりの喫茶店。すっかり俺と春歌の行きつけとなっていた。

 

「あ、春歌ちゃん、八幡君。ちょうどよかった。ちょっとお願いがあるの」

 

店に入り、いつも俺達を歓迎してくれる女性店員が手を合わせてお願いしてきた。

 

「今新作メニュー開発中なんだけど、試食してくれないかな?」

 

「え?私達でいいんですか?」

 

「うん。いつも2人には来てもらってるし。是非」

 

そんなわけで、新作の試食をすることとなった。常連になると、こういうことがあるのか。なりたけでもあったらいいな。新作ラーメンの試食。

 

「はい、どうぞ~」

 

「おお~、綺麗」

 

運ばれてきた料理は、リゾットだ。リゾットは結構種類とレシピがあるが、これはチーズがベースで、ブラックペッパーがかかっている。ありがちな組み合わせだと思うが、何か工夫されているのだろうか。なんにせよ食べてから物を言った方がいいな。

 

それでは、実食!

 

「・・・・美味しい」

 

「ああ、美味いな」

 

リゾットって初めて食べたが、こんなにも美味い物なのか。作りたくなる美味さだ。

 

「本当に!お客さんに出せる?」

 

「はい。お金とっても文句言えないほど、美味しいです」

 

「よかった~。それじゃあ、シェフに話してくるね」

 

店員さんが厨房に戻る姿を横目に、目の前のリゾットを食い続ける。すると突然、目の前にスプーンが2つ現れた。1つは俺の。2つ目は、春歌がこちらに突き出していた。

 

「どうした?」

 

「俗にいう、あーん、というやつかな」

 

「・・・・何故?」

 

「いや、ほら、私達、まだやったことないから、折角だし、・・しよう」

 

そんな照れた様子で目パチパチさせて、意味深なことを言わないでくれ。高校生男子だとやっぱりそっち方向に考えを持ってかれちゃうんだよ。煩悩退散、南無三。

 

俺は何も言わずに春歌のスプーンにかぶりついた。

 

「じゃあ次、八幡の番」

 

「ほらよ」

 

無心だ。こういう時はどぎまぎするからこそ、手玉に取られる。あえて何も考えてないように思わせるのだ。

 

パシャッ

 

春歌がちょうどスプーンに口を付けた瞬間、カメラのシャッター音が鳴った。春歌もそれに驚き、口を離し、俺と共に音源の方に目を向けた。

 

そこにはニコニコと営業スマイル女性店員がカメラを構えていた。やられた。

 

「うんうん。いい写真が撮れた。微笑ましいねぇ♪」

 

「な、何してるんですか!消してください。ああ、でもその前に私の携帯にデータ送ってください!宝物にします」

 

「春歌!?」

 

 

その後、写真のデータと共に、まさかの現像も渡された。・・・これをどうしろと?あの、プリクラ?みたいに財布とかに入れればいいの?いや入れないけど。机にでも立てとくよ。

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

夏休みか修学旅行で終わりにしたいと思います。

また明日。


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35日目

はい、どうも、アイゼロです。

今回の話は、いただいた感想をリスペクトさせていただきました。

それではご覧ください。


「う~ん・・・」

 

「さて、どうしたもんか・・・」

 

現在、俺の部屋にて、課題として出された、『高校生活を振り返って』という作文に苦悩している。

 

「色々ありすぎて、どう書いたらいいのやら」

 

「そうだな。俺もかなり刺激的な1年になったからな」

 

「もういっそのこと、あった出来事そのまま書いちゃおうか。そしたら、文句言われようと言い返せるし」

 

「なんか、考えが俺に似てきてないか?」

 

「嘘っ!・・なんか、複雑」

 

うわ、今の結構傷ついたぞ。

 

そんなわけで、俺達の書いた作文がこちら。まず春歌。

 

 

『高校生活1年目は、それなりに充実してたと思います。中学の友達全員とここに受かって、毎日楽しく過ごしてきました。でも、その楽しい日々の前に、入学式の日、ナンパをされました。ですが、1人の男の子が身をもって助けてくれて、あの時は本当にうれしかったです。その男の子に昼休み会って、お礼を言って、それ以来、毎日顔を合わせるようになりました。

そして、ここから私自身が大きく変わったことがあります。その男の子に恋をしたことです。以前、私は人を好きになるとか恋というものを知らなかったのです。でも、彼と一緒にいる時の気持ちが、恋だと友達に気づかされました。それから彼を異性として意識をし始め、文化祭で見事に恋人同士になりました。それ以来、私の高校生活に、もう一つの花が咲いたと思いました。

私の高校1年間、自分の心境が変わり、それと共に充実してると感じてます』

 

 

そしてこれが俺。

 

 

『自分は過去に色々あり、人に失望していた。だから、自らボッチ高校生活を作り上げた。だが、入学式から2週間、俺の前にとある女子が現れた。最初は不審がってなんだこいつ?と思っていたが、そいつは俺のいいところ、悪いところを、はっきりといった。いや、言ってくれた。こんなやつ初めてだ、と思い、彼女と友達になった。それから、遊んだり一緒に勉強したり、毎日顔を合わせたりなど、平穏な日常を送っていた。

そして、気付けば俺は彼女に惹かれていたのだ。もう、彼女なら信頼できる。それくらいまで俺は惹かれた。文化祭の日、色々あったが、恋人になった。それから俺の高校生活に、光が差し込んだ。

俺の高校1年間、学んだことは、愛は人を変える。愛は素晴らしい』

 

 

お互い書いた作文を渡し、読み上げる。

 

「恥ずかしいな・・・」

 

「だな。まぁ事実だし、これでいこう」

 

「ていうか、私の第一印象、なんだこいつ?って酷くない!」

 

「む、昔の事だから、気にしない気にしない。今はかけがえのない人だから」

 

「ッ!ず、ずるい・・・。八幡あざとい」

 

おい、俺なんかあざといと思わせる発言したか?してないよね?そもそもあざとい言い方ってなんだろうね?手をグーにして頭にてへッ♪とコツンさせるのか?絶対にやりたくない。

 

 

翌日、作文を提出した。

 

そして、それ以来担任の平塚先生が凄く体調悪いかのように思わせるくらい、元気がなかったのはまた別の話。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

また明日。


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36日目

はい、どうも、アイゼロです。

少しキャラ崩壊が起きていますが、ご了承ください。

それではご覧ください。


俺は普段と変わらず、テニスコート付近のベストプレイスにて、昼飯を食べている。折角春歌と同じクラスになったのに、一緒に食わないのかというと、友達と食っているんだ。一緒に食べようと誘われたが、友達同士に水を差すのはどうかと思うし、俺もこんな性格だから、一緒に食べることは無い。でも、食い終わったら、ここに来てくれる。

 

それに、たまにならここで春歌と潮風を浴びながら食べるつもりだ。

 

同じクラスになっても、ここは変わらない。いつもと違うと何かやりづらいというのは、春歌も同じらしい。

 

「八幡!」

 

「おう、春歌」

 

綺麗なポニーテールを揺らしながら、こちらに駆ける春歌。そう、これだ。約1年間続けてきたベストプレイスに合流。お互い名前を呼び合う挨拶。定位置の隣同士。落ち着く。

 

「あ、八幡。職場見学どうするの?」

 

「まだ決まってないな。将来どんな仕事就こうかもわからんし」

 

専業主夫かな、なんて一時期思っていたけど、段々現実味が無くなってきたから、高校入って諦めてたんだよ。けど、社会人の仲間入りはあまり好ましくない。働きたくないよ。とんだクズ発言だな。

 

「まさか専業主夫なんて言わないよね?」

 

「え、何で分かったの?エスパーなの?怖い」

 

「やっぱり!ちゃんと働かないとダメだよ。私が困っちゃう」

 

・・・・何でだ?俺が働かないと春歌が困る?・・・分からない。

 

俺のその心情を読み取ったのか、春歌は頬を少し朱に染め、目をそらしながら、呟いた。

 

「ほ、ほら。こうして付き合っていって、その、結婚とか、するし。だから、しっかり働かないと・・・」

 

途中から微かにしか聞こえなかったが、しっかりと俺の耳に届いた。

 

「結婚か。・・・春歌が俺と幸せな家庭を築き上げたいと思ってんなら、頑張らなきゃな。うん、”春歌が俺と結婚したい”か。嬉しいねぇ。そこまで考えてくれてたなんてな」

 

「ねえ!わざと結婚の所強調したでしょ!」

 

「おう。俺も春歌となら大歓迎だ。結婚しよう」

 

「ええぇ!?ここ、こんなプロポーズある!?ほら、もっと雰囲気を大事にとか・・・!」

 

「先に言ったのそっちだよな?」

 

「・・はい。そうだね・・・」

 

清々しいくらいに潔かった。・・・ていうかお互いに結婚を了承したんだから、恋人から少し言い方とか変わるのか?

 

「じゃあ、俺らは今日から婚約者ってことか?」

 

「そ、そうだね!婚約者か・・・。ふふ」

 

今の照れ様子のはにかむような笑顔。凄くグッときた。絶対に幸せにしよう。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

どう完結させるかは大体決まってきました。

また明日。


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37日目

はい、どうも、アイゼロです。

SS作家という職業があればいいのに・・・。と思う今日。そしたら、ニートとお金が消えるかもしれないな。

それではご覧ください。


2年生になって少し経った、現在は6月。梅雨の時期が入ってきました。外はバシャバシャ、中はもわもわと湿気が煩わしい。

 

当然いつものベストプレイスが使えないため、別の場所に移動する。

 

・・・う~ん、ここがいいな。自販機からも近く、ベンチもあり尚且つ、人通りも少ない。いるにはいるがたまにしか通らないし。ていうかここ、一回来た。一応俺の思い出の場所ではあるな。

 

「お待たせ、八幡」

 

「おう、俺も来たばっかだ」

 

「嘘つけぇ!」

 

あらやだ春歌ったら。いつからそんな乱暴な口調に・・・。

 

「・・・懐かしいね、ここ」

 

「ああ」

 

ここは初めて友達ができた思い入れのある場所だ。マッカンを煽りながら、思い出に浸る。

 

「こんなことしてたよね~♪」

 

「・・・ふぉうふぁふぁ(そうだな)」

 

突然俺の前に立ったと思ったら、1年前と同じことをされた。でもこれが実は嬉しかったんだよな。友達で満足だったのに、今じゃ恋人だ。あの時、こうなるとは思ってもみなかった。

 

「前はこうやって顔を近づけるだけだったけど」

 

言い切る前に、突然顔を更に近づけ、春歌の口が俺の口と重なった。

 

「今ではこんなことができちゃう♪」

 

やられたなぁ・・・。主導権を握られたため、今日は俺が手玉に取られる。いや、別に何も競ってなんかないんだけどね。

 

「ていうか、春歌最近俺にキスしすぎじゃない?」

 

「そうなの?初めてだからさじ加減が分からないんだよね」

 

あー、そうか。恋愛に関しては結構鈍いから加減が分からないんだな。俺もだけど。

 

「なんか、八幡の口、甘い」

 

おっと?春歌らしくもない。急に意味深な事言ってきたぞ。そんな甘くなるほど長くしていない。原因は俺が飲んでたマッカンだろう。

 

「八幡いつもそれ飲んでるけど、美味しいの?」

 

「・・・は?まさか、飲んだことないというのか?このソウルドリンクを・・・」

 

「え?私何か変なこと言った?なんかキャラおかしくなってるし・・・」

 

まさか千葉県民でこれを飲んでいない奴がいるとは。恐れいったぞ、春歌。

 

「ほら、飲んでみろよ」

 

「うん。・・・・・甘っ!甘すぎない!」

 

そんなに驚くほど甘くないだろう。寧ろ俺はこれ以外コーヒーは飲めないのだ。微糖とかカフェオレですら苦いと感じるからな。おい、誰だ今子供って言ったの?子供だってコーヒー飲むぞ。小町飲めるんだぞ。

 

「そんなもの飲んでると、糖尿病になるよ」

 

「安心しろ。ちゃんと考慮してる」

 

ちゃんと一日二本って決めてるからな。そもそもこれってコーヒーに入るのか?名前にコーヒーは入ってるけど、これ寧ろ逆に、練乳にコーヒーを入れたって言う方が正しい気がする。

 

「あ、そうだそうだ。八幡、夏休み暇?」

 

「夏休みどころか年中暇だ」

 

「あのさ、2人で旅行行かない?ていっても県内だけど」

 

「旅行?どこ行くんだ?」

 

「下の方」

 

物凄いざっくりだ。まだ決まってなかったんだな。

 

「じゃ、行くか旅行」

 

「うん。あ、ちなみに旅館で一泊するから」

 

・・・・・マジで?

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

また明日。


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38日目

はい、どうも、アイゼロです。

最近、八オリ作品が増えてきて、歓喜しています。

それではご覧ください。


晩飯も食い終わり、風呂から出た後、自分の部屋に戻ると、メールが届いていることに気づいた。春歌からだ。

 

『明日は購買で買わないでね。それと一緒に食べよう。答えは聞かない』

 

拷問?何も買わせないつもりなのに、一緒に食べよう?答えは聞かないって・・・。どういうつもりなんだろう。もしかして、『今日の昼ご飯は私だよ』って言いだして、人気のないところに連れて行かれるのか?『私を食べて』って言われるのか。もう~春歌ちゃんったら破廉恥ねぇ~。大歓げ・・コホン。はい、よからぬ妄想もここまでにしよう。

 

取り敢えず、パンは買わない。答えを聞くつもりはないという事だな。了承。

 

 

 

翌日、約束通り何も買わず、晴天の中、ベストプレイスにて、春歌の到着まで待機。今日も頑張ってるなぁ、テニス部。あの銀髪美男子、確か同じクラスになったんだよな。まぁ、向こうは知らないだろうが。

 

「はちまーん♪」

 

いつもよりニコニコと上機嫌な可愛い笑顔でやってきた春歌。手には2つの弁当がある。

 

「はい、お弁当作ってきたよ」

 

「本当か!ありがとな」

 

何も買うなというのはこういう事だったのか。素直に凄い嬉しい。手作りの弁当なんて何年ぶりだろう。

 

中を見ると、卵焼きにアスパラのベーコン巻き、ハンバーグに唐揚げなど、男子高校生には嬉しいおかず且つシンプルイズベスト。俺にとって完璧と言っていい。

 

「いただきます」

 

早速卵焼きを一口。・・・美味い!そして甘い!まさか甘い卵焼きを食べられるとは・・・。

 

気付けば、無我夢中で食べていた。

 

「ごちそうさまでした」

 

ものの10分しないうちに全部食べ切ってしまった。

 

「えへへ、そんなに美味しかったんだ♪」

 

春歌は満面の笑みを浮かべている。

 

「ああ、マジで美味かった。毎日食いたいくらいだ」

 

「じゃあ、毎日作ろうか?」

 

「でも、きつくないか?」

 

「寧ろ、そこまで美味しく食べてくれるなら、やる気も出るよ。・・・それに、花嫁修業になるしね」

 

そこまで恥ずかしがるくらいなら、最後のは言わなくてもよかったんじゃないか?改めて俺も恥ずかしくなってくる。

 

「なんか、弁当作ってもらうのに、さらにここまで歩かせるのは申し訳ないな」

 

「気にしなくていいのに・・・」

 

「いいや、気にする。春歌がそこまでしてくれるんだ。俺も少しは変えなきゃいけない。・・・だから、これから昼は一緒に食おう。教室で」

 

「いいの?」

 

「ああ」

 

正直、こんなに可愛い彼女が俺なんかと一緒に食うなんて、っていう周りの嫉妬と何かされる怯えてたが、今日で終わりだ。堂々としてよう。彼氏がこんなんじゃ、春歌に申し訳ない。

 

「あ、お弁当のおかず、何かリクエストある?」

 

「そうだなぁ。量は今日よりも多く、肉多めのバランスが取れるおかずがいいな。お願いできるか?」

 

「うん!任された!」

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

また明日。


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39日目

はい、どうも、アイゼロです。

残すところ、あと3日です。最終日までの話は書き終えましたが、見直し修正をしています。

それではご覧ください。


現在、俺の家にて、春歌と映画鑑賞中。

 

見ているのは、また少女漫画が実写された映画だ。また見ようって約束してたから今日果たそうという事になった。

 

ただ、厳選して選んだ映画の内容が、かなり刺激が強く、今は主人公とヒロインが、濃厚なキスをしているシーンだ。見えていないが、間違いなく舌がぶつかり合っている。顔を赤くしている春歌を横目に、早くシーンを切り替えろと願いながら、テレビに目を向ける。

 

・・・・・・・・・

 

やっと終わった・・・。すげぇ時間を長く感じたな。

 

「お、思ってた以上に過激だった」

 

「・・・そうだな。正直予想外だった」

 

依然として顔が赤い春歌はチラチラとこちらを見ながら、ジュースを飲む。結構純情な乙女なんですね。女子高生はビッチばっかだ、という見解を見直そう。

 

「どうした?そんなチラチラと」

 

「あー、なんか気まずくならないかなぁって思ってさ」

 

分かるなぁ。アレだ。家族でテレビ見てたら、突然下ネタをぶっこんでくる芸人。アレで少し気まずくなって黙っちゃうんだよ。親視点だと子供は一体どれくらい性に関して知識を入れているのかって予想がつかないからな。そのせいでもあるんだ。

 

「気分転換に何か別のを見ようか」

 

「やったー。今度は何?」

 

「・・・これとか」

 

『IT』

 

「わざと!?わざとそれチョイスした?私が苦手なの知っててそれ選んだの!?」

 

ん~、ダメかー。ひゃあ!とか小さく悲鳴を出したり、ビクッってする春歌可愛いからなぁ。

 

「あ、そういえば面白い番組やっててな。それ録画したから見ようぜ」

 

「・・・・ホラーじゃないよね?」

 

「・・・・・・・さ、見ようぜ」

 

「ねえ何今の間は!?本当にホラーはやめて!」

 

「わ、分かった!分かったから泣きそうなるな」

 

ぶっちゃけ泣いた春歌を見てみたいから、ホラーチョイスしたんだが、さすがに可哀想だったかな。

 

「ついでに聞くけど、何見ようとしたの?」

 

「本当にあった怖い話」

 

「私それ見たらもう号泣するよ」

 

「え?何それ見てみたい。よし、流そう」

 

半ば冗談で体を起こしたら、春歌が勢いよく手を掴んだ。

 

「怒るよ?」

 

「すまん。悪ノリが過ぎた」

 

その後、飲み物で喉を潤しながら、再び映画選びに戻った。

 

 

 

 

「あ、八幡。今日泊まっていい?」

 

「・・・は?」

 

選んだ映画を見終わり、ディスクを戻す最中に、春歌からそう聞かれた。泊まりか・・・。

 

「俺は良いけど。・・・小町に聞いてみるわ」

 

「あれ?両親にはいいの?」

 

「会社に泊まるらしいから別に大丈夫だ。・・・・あ、もしもし小町」

 

『呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん。小町だお♪』

 

キャラブレブレじゃねぇか。なんだそれ。

 

「あー、今日春歌が泊まりたいらしくてな。いいか?」

 

『およ?奇遇だね。小町も今日友達の家に泊まるんだよ』

 

は?

 

『だからいいよ。じゃあね』

 

ツー、ツー、と虚しい音だけが耳に響いた。

 

「どうだった?」

 

「小町も友達の家に泊まるらしい。だから泊まってOK。今夜は俺達だけだ」

 

「そっかぁ。やった♪・・・って私達だけ!」

 

え?やっぱり嫌だった?そりゃそうだよね。いくら恋人でも一つ屋根の下は無理だよね。

 

「やっぱ嫌だよな・・・」

 

「いやいや違うから!誤解しないで!ていうか、変なところでネガティブにならないでよ!」

 

そんなわけで、俺の家に泊まることになった春歌。取り敢えず、寝床とか確保しとこうか。後、風呂と飯。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

また明日。


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40日目

はい、どうも、アイゼロです。

親が俺のためにマッカン買ってきてくれたのに、それを親が飲んじゃうというわけのわからないことがあり、凹んでます。

それではご覧ください。


食事は春歌が作ると言ってくれたため、俺は現在入浴中。彼女が料理して俺が風呂。なんかこの時だけ夫婦みたいだなぁ、と錯覚させられる。

 

基本俺は入浴時間が短いため、ササッと体を拭き、リビングに戻る。すると、春歌が突然横から現れた。

 

「ご飯にする?お風呂にする?それとも、わ・た・し?♪」

 

「・・・・・」

 

ネタが少し古い。・・・いや、風呂はたった今入ってきたし、飯なんてもうテーブルに用意されてる。じゃあ、春歌で・・・なんて言えるほどまだ歳を重ねていないため不可能。そこら辺はちゃんと考えてるよ。

 

よく見れば、春歌少し震えてるんだけど。若干顔赤いし。満面の笑みだった顔をが少し引きつり始めた。

 

「うわ、恥ずっ!」

 

「酷い!いいじゃん!一度言ってみたかったの!でも、今後悔してる!」

 

顔を徐々に赤くし、俺の胸板をポカポカと優しくたたいてきた。

 

「はいはい、よくできました~」ナデナデ

 

「子ども扱いしないで!?」

 

今の君は立派な子供ですよ。

 

 

 

飯も食い終わり、春歌も風呂を済ませ、俺の部屋に春歌が寝る布団を置いた。別にそういう意味じゃないから!?春歌がここがいいって言ったんだから!?変な事考えないでよ!?なんて柄にもなく、誰に向かっているもかもわからず、無意味に心の中で叫んでみたり。キャラ崩壊が起きるくらい、ちょっと舞い上がっちゃってます。

 

今はもう22時を回っているが、俺達は夏休みに行く旅行の事で話し合っていた。決めたのが、海沿いの綺麗なホテルに宿泊、そこで海の上で打ちあがる花火を見ることになった。もちろん、旅館に着く前に色々観光したりするが。

 

「楽しみだね」

 

春歌は布団の上で大の字になりながらそう呟く。

 

「そうだな。旅行なんて何年ぶりだろうな」

 

最後に旅行した日が思い出せないくらい昔だからなぁ。ていうか、いつから俺不参加になったんだっけ。

 

「・・・」ジ~

 

「なんだ?そんな何かを訴えているような目で見て」

 

俺がそう聞いても視線を外さず、見続ける春歌。そしてようやく口を開く。

 

「一緒に寝ようよ」

 

「は?いや、同じ部屋で寝るんだから一緒に寝るだろ」

 

「そうじゃなくて、2人で一つのベッドを使おうって意味だよ」

 

「・・・・・なんかお前、最近やけに積極的じゃないか?」

 

「え?そうかな?」

 

「前に比べたらかなりな」

 

これも、まだ加減が定まってない感じなのかな?表情とか見た感じ、素だし。いや、分からないな。春歌は俺に影響されて、ポーカーフェイスが上手くなってるから。俺の観察眼が効いてないと思う。

 

「そっか。じゃあ寝ようか」

 

「え?俺まだ返事してないよね?ナチュラルにベッドに潜り込むなよ」

 

「気にしない気にしない。あ~、気持ちいい」

 

おいやめろ。男と2人でベッドの上にいて、気持ちいいは意味深に聞こえてしまうぞ。男子高校生特有の妄想が働いちまうだろう。そしてまずお前が気にしろ。

 

そんなわけで、一緒にベッドを共にすることになった。別にそういう意味じゃ(ry

 

 

 

(こんなに近くで一緒に寝てるのに何もしてこないなんて・・・。私って、あまり魅力ないのかなぁ・・・。なんか複雑)

 

そう思いながら、自分の身体をマジマジと見る。昔とは違い、すっかり乙女になった太宰春歌であった。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

このシリーズは旅館で最終日を迎えます。

また明日。


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41日目

はい、どうも、アイゼロです。

太宰春歌は、八幡と付き合ってから、ちょっとだけ少女漫画に影響されている設定です。

それではご覧ください。


「海だー!」

 

総武高も夏休みに入り、俺と春歌は約束していた旅行をしている。旅館は海沿いなため、海で遊ぶことになった。そこら中に海の家がたくさんあり、しかもバーベキューできる場所もあるのだ。

 

春歌は海だー!と大きい声で叫んだが、実際は今旅館の中にいる。これから海に遊びに行くのだ。

 

「行こう八幡!」

 

「その前に日焼け止め塗っとけ」

 

「はーい」

 

 

 

 

水着に着替え、海にやってきた。潮風が気持ちよく、波の音で涼しさを感じさせられる。まぶしい太陽に入道雲が、目に焼き付いている。

 

「八幡」

 

俺の名前を呼び、目の前に立った。去年と同様、ビキニタイプの水着だ。・・・しかし、一年経つと色々成長するんだな。・・あー、いかんいかん。つい目がいってしまう。

 

「それにしても、やっぱり筋肉凄いね八幡。さすが」

 

「おい、くすぐったい」

 

ペタペタと俺の腹筋や腕を触ってくる彼女。日ごろから鍛えてるから割れている。

 

「ありがとう。お礼に私のも触っていいよ♪」

 

「からかうなよ。本気にするだろ」

 

「本気なんだけどなぁ。・・・まぁいいや、遊ぼう!」

 

 

 

 

「おりゃー!」

 

「どわっ!」

 

いきなり春歌にドンッ!と勢いよく押され、全身くまなく海に飲み込まれた。それを見て笑う春歌。

 

「倍返しだ」

 

「え!ちょっと八幡!」

 

春歌の背中と太もも裏に腕を回し、持ち上げてそのまま海に放り投げた。体重が軽かったため楽勝に持ち上がった。

 

「うえぇ、しょっぱい・・・」

 

「やられたらやり返す」

 

半沢になった気分だ。

 

つーか、つい衝動的に姫抱きしてしまった。春歌の顔を窺うが、特に意識していない様子だ。知らぬが仏。

 

(今の、お姫様抱っこだよね!?ていうか八幡平然としてるし。何でこんな時だけ無意識にできるの!?)←思いっきり意識してる。

 

「どうした?顔赤いぞ」

 

「う、うるさい!八幡のバカ!」

 

「え?何で俺罵倒されたの?」

 

「自分の胸に聞いてみろ」

 

お?中々聞けないセリフをありがとう。早速聞いてみよう。

 

・・・・・うむ、今日も正常に働いてくれている。

 

「血液の発送、お疲れ様です」

 

「・・・私、心臓に労いの言葉を送る人初めて見たよ」

 

おそらく人類初じゃないのかな?と密かに優越感に浸った俺であった。

 

 

気付けば夕方になっていたため、旅館に戻る俺達。途中美味そうなアイスが売っていたから、食べ歩きをしている。俺がMAXコーヒー味。春歌がチョコ。

 

驚いた。まさかマッカン味があったなんてね。即決だったよ。甘いアイスにマッカンの甘みが足されたらとんでもないんじゃないかって、期待半分不安半分だったが、味はしっかりマッカン、甘さは普通のアイスより甘いが別に気にするレベルじゃない。要するに美味い。

 

しばらく歩いていると、アイスを持っている俺の手が脳の命令も受けていないのに、動いた。それは春歌の顔まで持ってかれ、持っていたアイスをパクリと食べてしまった。

 

「うん。美味しい。けど普通より甘い」

 

「お前なぁ・・・」

 

「はい。あげる」

 

と、チョコのアイスを突き出してきたので、一口。・・・・っ、苦い。まさかこれ、ビターかよ。嘘だろ、春歌こんな苦いの食えるのか・・・。

 

「あはは!八幡舌が子供~♪」

 

「うるせぇ!お前も十分子供だぞ。見た目が」

 

「なんですとぉ!遠回しなセクハラだよ!」

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

明日で最終日です。

また明日。


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42日目

はい、どうも、アイゼロです。

ついに最終日だー!長いようで短かった。ついに完結です。後書きは最後まで読むことをお勧めします。

そしてすいません。最後の最後で2000文字超えてしまい、掟を破ってしまいました!

それではご覧ください。


旅館に戻った俺は、海の潮水でべとべとになった身体を洗うべく、浴場へ向かった。右が男湯、左が女湯。

 

「混浴じゃないんだね」

 

ニヤニヤとしながら俺の顔を覗き込む形で言ってきた。

 

「そうだなー。残念だー。春歌の裸見たかったなー」

 

やってやったぜ!と心の中で小さくガッツポーズをした。その瞬間、予想外の返答に焦ったのか、かあっと顔を赤くして

 

「じゃ、じゃあ、あそこの、家族、風呂に」

 

と別の場所にある家族風呂の暖簾を振るえている指で刺した。

 

「待て待て!悪かった。俺が悪かったから正気に戻れ」

 

「っ!・・・・八幡のバカ!」

 

はい、本日二回目のバカをいただきました。

 

「悪かった。ほら、入ろうぜ。また後でな」

 

「うん」

 

 

 

 

 

「ふぅ、気持ちよかった」

 

「うん。さすが旅館の浴場」

 

風呂上りはやっぱりマッカン。火照った身体に冷えたマッカンは最高の気分になる。春歌はブラックコーヒーだ。何でそんな苦いものが飲めるんだ・・・。

 

渋った顔でその無糖コーヒーを見ていると、ふふーんと自慢げにどや顔された。悔しい。

 

 

 

部屋に戻ると同時に、女中さんが食事を持ってきてくれた。やはりよく見るやつだな。1人用の鍋が2つに和食がずら~り。お?ジュースもついてくるとは。太っ腹だ。見てるだけで食欲が湧いてくるほど美味そうだ。

 

「早く食べよう♪」

 

「そうだな」

 

各々飲み物を注ぎ、乾杯とコップをぶつかり合わせた。俺はコーラだが、春歌のは透明だからよくわからない。ただの水だろうか?それか三ツ矢?

 

特に気にすることもなく食事を進める。やっぱり家とは違うなぁ。どうしたらこんなに上手く、そして美味く茶碗蒸しができるのだろう。天ぷらもサクサクとして、魚はパサパサしてなくジューシー。鍋のキムチ鍋うどんも最高だ。程よい辛みが癖になる。

 

特に会話もなく、箸の音と咀嚼音だけが部屋に響く。

 

「何か話そうよ」

 

ついに沈黙が耐えきれなくなったのか、春歌が口を開いた。

 

「そうは言っても、何話すんだ?」

 

「今後の夏休みの予定とか」

 

「今後か・・・・。春歌が決めてくれ。俺常に暇だから」

 

「いや、いつも暇って。少しはプライベート時間欲しいでしょ・・・・?」

 

「別に。春歌と一緒にいられるなら、プライベートなんていらねぇよ」

 

溜息交じりの適当な返事をしたら、急に俯き始めた春歌。

 

「どうした?」

 

「いや、嬉しいなぁって。プライベートより私といた方がいいって思ってくれて」

 

若干頬を染めて、満面の笑みを浮かべている。俺何か言ったっけか?

 

『春歌と一緒にいられるなら、プライベートなんていらねぇよ』

 

・・・・・やっちまったぁ!何言ってんの俺?そもそも無自覚でこんな事言えてたっけ俺?春歌と付き合ってから俺の中が変化したのか。だったら、この調子で目の腐りも消えてほしいくらいだ。

 

「もう1回言って」

 

「やだ」

 

 

 

 

食事も済ませ、花火まで時間があるため、特にすることもなく座る。やっぱり旅館と言ったらお茶の茶菓子だろ。

 

お茶を注ぎ、春歌の前に置いた。・・・ん?なんかおかしい。春歌は礼儀を分け前るため、こういう時はどんな相手にも礼を言うんだ。ちょっと顔を窺うと・・・・、え?

 

顔をほんのり赤く、どこか虚ろで目が垂れている。・・・・・おい、この現象見たことあるぞ。

 

茶菓子が並んでいるトレーに目を向けると、何個かの袋が開封されていた。・・・・・・アルコール入りのお菓子。

 

こいつ酔っぱらってやがる!?ていうか、何でアルコール菓子があるんだここに!

 

「お、おい春歌?」

 

「なに?はちみゃん」

 

あ、ダメだこれ。

 

「暑いなぁ~、ちょっと脱ごう」

 

「待て待て待て!俺がいるから!」

 

「はちみゃんになら見られてもいいよ~」

 

「それはありがたい・・・。じゃなくて、脱ぐな!」

 

春歌の両手を急いで掴む。こいつ、酒に弱すぎる。お菓子でここまでなんて・・・。大人になっても俺と一緒にいあるとき以外、酒は飲ませたくない。完全に飲まれるタイプだ。

 

そんなこと考えていたら、こくん、と首に力を入れなくなった。寝ちまったよ・・・。俺に覆いかぶさったまま。幸い布団の上だから助かったが。

 

花火は残念だが、起きる気配がないため、俺も寝ることにしよう。起こさないように、そっと春歌を退け、隣の布団に移動する。

 

 

 

 

 

あれ?いつの間にか寝てた。固まった身体をほぐすべく、腕と背中を伸ばし、窓を見ると、朝になっていた。ああ!花火見てない!た、楽しみにしてたのに・・・。

 

八幡の方に目を向けると、何故だか地味にはだけている。・・・・あれ?よく見たら、私もだ。ちょっと胸元開いちゃってる・・・。

 

男女の着物がはだけてる、気付いたら朝、隣に八幡。・・・・・・・・ま、まさか!

 

いやいや、八幡に限ってそんなことないよ。ヘタレだし。・・・・そうだよね?

 

「あ、おはよう春歌」

 

「お、おはよう・・・。は、八幡。私が寝てるとき、何かした?」

 

「(寝てるとき?いや、2人でほぼ同じ時間に寝たし。ていうか、逆に俺がされたんだけど・・・)」

 

え?何で黙るの?もしかして本当に・・・・。

 

「お前、覚えてないのか?」

 

そう言われて、取り出されたのは、お菓子の袋ゴミ。

 

「お前、このアルコール入りのお菓子食って、酔っぱらってたんだよ。着物がはだけてるのも、その証拠だ」

 

・・・・え?酔った?という事は、これは自分で招いた事?

 

・・・・恥ずかしい!さっきまでよからぬこと考えてた私を殴りたい!

 

「それより、この後どうするんだ?」

 

「この後・・・。帰りながら色々回っていこう」

 

「そうか。じゃ、飯食ったら帰る準備だな」

 

「うん。鴨シー行きたい♪」

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

ついに、これにて終わりです。読んでくださった方、お気に入り登録、投票してくれた方、ありがとうございました。

毎日投稿、できましたね。自分でも不安でした。危ないときもあったけど。

それでは!ありがとうございました!



























To Be Continued???


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