転生者は何を思う (獣耳が大好きな新月)
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さぁ、転生の時間だ
プロローグ1


あるところに一人の少年がいた。

その少年に親と呼ばれる人はいない。

少年は幼い頃に親に捨てられた。

それも借金が返せなくなったという理由で。

売られた少年はとある場所に買い取られあること(・・・・)を教えられた。

それは……人を殺す(・・・・)術だ。

最初に教えられたのはナイフの使い方。

次に実践しそれが終わったら今度は森に同じ境遇の子供と共に入れられ子供同士で殺し合わされた。

それを突破したごく少数は銃の使い方を教えられた。

それが終われば今度は実践に出されそれに生き残った者は今度暗殺術を覚えさせられる。

それが終われば今度も実践。

だが、少年はここでミスを犯した。

暗殺対象だった少女を殺さなかったのだ。

それ故に捕まり今度はその少女側の兵として闘った。

だが、少年はそれで良かったと思った。

例え人を殺す事を強いられたとしても、彼女と過ごせればそれで良かった。

彼女がいればそれで良かった。

だが、少女は死んだ。

殺したのは、少女の実の父。

殺したのは、少女の祖国。

殺したのは、少女が愛したこの国。

少年はそれに絶望した。

少年はゲリラとしてこの国と戦う事を決めた。

8歳だった少年が13歳になる頃、この紛争は終わった。

だが、ゲリラとして戦っていた少年は紛争が終わった後も傭兵として戦い続けていた。

そしてー。

 

『ゴースト4どうした?』

「こちらゴースト4。特に問題はない」

『そうか、ゴースト4はその場で待機。テロが起こり次第行動を開始せよ』

「ゴースト4了解」

ブツッと通信が途切れる音がしたのを確認してからヘッドセットを外した。

少年が傭兵として過ごして1年、14歳になった時少年は対テロ組織『グレイヴ』に勧誘された。

そして、グレイヴに入って1年が経った今、ゴースト4と呼ばれた少年は任務で日本に来ていた。

今の時代、表面上は平和な国が多いがその実裏では怪しげな取引などがされている。

そして、その裏で得た情報によるとここ日本でテロが起きるらしい。

らしいというのも不確定情報だからなのだが少年はそれを承知の上でここ日本で待機していた。

そして、少年は日本で過ごしているのだが問題がある。

それはー。

「ねぇねぇ君。いい加減機嫌直してよー」

「オレは元からこうだ」

「君可愛いのになー」

現地の人ーだいたい高校2年生の少女ーに捕まっていることだ。

少年は捕まった後の行動などは熟知しているがこのような状況にどうしたら良いのかは全く知らないのだ。

だが、この少女は離せと何度も少年が言っていても頑なに話そうとしない。

そして、少女と共に近くのデパートに入って、テロに遭遇した。

 

『ゴースト4、状況は?』

「敵は5人、内武装しているのは4人だが、1人はスイッチを持っている。BOM(爆弾)がある可能性が高い」

『了解した。ゴースト4は合図があるまで待機』

「ゴースト4了解」

テロリストの目を盗み本部と連絡した少年は人質たちの様子を見ていく。

怯えている者、状況を理解していない者、喚いている者、泣いている者など様々だ。

少年は彼らを一瞥すると自分をここに連れてきた少女の方を見る。

そこには怯えて身体を震わせている少女がいた。

少年は彼女を見て何かを考えた後、彼女を抱きしめた。

安心させるように抱き締めながら頭を撫でると少女は落ち着きを取り戻す。

そして、再び少年の通信機が震えた。

少年はこっそりと通信機を取り出して通信する。

『ゴースト4!状況が変化した!支給応答せよ』

「こちらゴースト4、何があった」

『奴らが国に金を要求したが……支払わなければ5分おきに人質を殺す(・・・・・・・・・・)だそうだ』

「……その連絡が来てから何分だ?」

『2分。だからあと3分だ』

「了解した。3分後に行動を開始できるようにしてくれ」

『待てゴースト4!!まさか!!』

「そのまさかだ」

そう少年が言うと通信機の向こう側の人が少し考えてから

『解った。そちらに合わせる』

「了解した」

通信を切ると目の前にいつの間にか少女がいた。

聞かれたと少年は背筋に冷たい物が走る。

「今の……何?」

「知らなくていいことだ」

少女が何かを言いたそうに口を開いたとき、テロリストが部屋の中に入ってきた。

少年はさりげなく出入り口の近くにさりげなく移動するとテロリストは少年の腕を掴んだ。

「来い」

一言そう言うと少年を引っ張りながら男たちは外へ出て行った。

だが、この時少年が彼女に説明してから行けば未来は変わったかもしれないが少年がそれを知ることはなかった。

 

テロリストが集まっている場所に連れてこられた少年はさりげない動作でズボンの中に入れてある通信機を2回押した。

そして、電話が鳴ると同時に少年が動いた。

近くにいた男の銃を奪いスイッチを撃つ。そして、それと同時に男の仲間をどんどん撃っていく。

戦闘不能にさせるだけだが、男たちはそれでもこちらを殺そうとしてくる。

仕方ないと少年は呟くと男たちの左胸を撃っていく。

だが、それと同時に隠れていたらしきテロリストが銃を構えてこちらを狙ってくるが少年は男たちが引き鉄を引く前に男たちを撃ち殺していく。

そうしていると少年の仲間たちが入ってくる。

もう少しだと少年が思った時後ろから足音が聞こえた。

空いていた扉からこちらに入ってきたのは、さっきまで一緒にいた少女だった。

「な、何で?」

「こういうことだ」

そう少年は言うとまだこちらを殺そうとしてくるテロリストに向かって引き鉄を容赦なく引いていく。

その途中で少女の胸に赤い光があることに気づいた。

まずいと少年が動くがもう遅い。

少年の前で少女が撃たれた。

そして、少年は気がつく。

柱の爆弾の数字が動いていることに。

5個だけならまだここにいる人は無事だが、6個全ての爆弾が爆発すれば、ここにいる人全てが死ぬ事になる。

少年は少女の近くにある爆弾の解除を始める。

すると、少女が少年の上に覆い被さってきた。

「何をしている?」

「最後に……こう……した……くて」

「そうか」

それだけ言うと少年は爆弾の解除を再開する。

残り10秒でようやく一つ目の爆弾が解除できたが他は不可能だ。

少女は弱々しい息だがまだ生きている。

少年は少女を守ろうとしたがここで自分の胸に破片が刺さっているのを感じた。

もう、爆弾が爆発し始めたのかと少年は思った。

せめて、死ぬのなら、あの娘(・・・)の墓に行ってから死にたい。

そう思って少年は……死んだ。



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プロローグ2

初めましての方は初めまして。お久しぶりの方はお久しぶりです。
獣耳が大好きな新月です。
この作品は消してしまった転生者の問題児を書き直した物ですので転生者の問題児でいたキャラがいなかったりなどします。
相変わらずの駄文ですがそれでも良ければ見てください。


【第3人生管理課の始末書より抜粋】

ーーーーが間違えて本来死ぬはずでは無かった者10名の書類をシュレッダーにかけてしまいこのような事態になりました。

そのため、彼らにはアニメの世界に転生してもらうことにします。

また今回の件は他の課でも度々起きているとのことなので早々の処置を求めます。

第3人生管理課 課長女神アーテ。

 

 

目がさめると真っ暗な場所にいた。

ここは何処なのだろうか?

いや、解っている。ここは死後の世界だ。

ということはここにいればオレに然るべき罰が来るということだ。

ならば待とうと思っていると他にも人の気配があることに気がついた。

恐らく気配や雰囲気、声の高さからして男が4人、女が5人。

ここにオレを入れた10人がここにいる。

そこまで考えてからおかしいと思った。

オレは眼には相当な自信がある。今までどれだけ暗い場所でも見えたのに今は全く見えない。

いや、見えたとしても靄がかかっていて輪郭は見えるがその身体や顔は見えない。

すると、オレたちのちょうど真ん中辺りに光で覆われた幼女が現れた。

オレが幼女を凝視(観察)していると幼女はオレの方を見て何で見えてるんですか!?とでも言いたそうな顔をした。

オレからしてみれば暗い場所でも明るい場所でも3キロ先のタイルの染みが見えるんだけどな。

そう思っていると幼女はこの人外めという視線をオレに向けてきた。

そうやって幼女を心の中で揶揄いながら観察していると他の奴らが騒ぎ始めた。

「何なんだよここは!!」

「お前誰なんだよ!!」

と右側から聞こえてきて

「…………くぅ」

「ここはどこだろう?」

「さぁねぇー。死後の世界だったりして」

左側は落ち着きすぎているし他の人も自分の最後を覚えているのか身体を震わせていたり、顔を青くしたり、泣いている奴までいる。

「落ち着け、まずは状況を把握することが先だ。右の2人のように騒いでも何も書いた解決しない。右の2人は左側の奴らの爪の垢でも飲ませてもらえ」

そう言うと右側の方からこっちに向けて言葉が飛んでくるがそれを無視してオレは目の前の光に覆われている幼女に向かって

「おい。さっさと説明してくれこの2人がうるさくて情報の整理ができない」

と言うと幼女はオレにぺこりとお辞儀してからこの状況を説明し始める。

「ここにいるみなさまに最初に言っておく事があります。貴方達は死にました。それも、此方のミスで」

そう言うと周りの奴らが目の前の奴に目を向ける。

オレは眼を瞑ってその視覚情報をカットする。

「此方のミスにより死んでしまった貴方達はこれからアニメの世界に転生してもらいます」

そう言うと周りの奴らは幼女に期待するような眼を向けていく。

だが、オレは

「発言いいか?」

「良いですよ」

「その転生?とやらは強制なのか?」

「はい。此方のミスによるものなので」

「オレは転生したくないのだが」

そう言うと周りの奴らは「はぁ?馬鹿なのこいつ」と言う顔をする者オレを品定めする者など様々な反応を見せてくれた。

「えっと、その理由は」

「お前たちのミスだとしてもオレは死んだそれが理由だ」

「……すみません。それでもです」

「どうしても……か?」

「どうしてもです」

そうかと言い幼女との会話を打ち切る。

幼女はそれでオレが不機嫌になったと思ったらしく此方から目を逸らした。

「おい、お前は神様なのか?」

「はい、そうです」

「なら特典はあるんだよな!!」

「はい、あります」

そう言うと周りの奴らは再び騒ぎ出した。

いきなり大声で騒ぎ始めたからか幼女はビクビクと怯えてしまう。

仕方なくオレはさっさと続きを言え幼女と心の中で言っておく。

するとオレの方を見て意外そうな顔をしてきた。

何でだ?と思ったがすぐに機嫌が悪くなった人がその元凶……と自分が思っている相手を慰めたらそうなるか。

「特典の数は貴方達の生前の行いで決まります」

すると、この場にいたほとんどの奴らの動きが止まった。

生前の行いか…………。

人を殺し、仲良くなった少女を死なせ(殺し)たオレは生前の行いは悪いんじゃないか?

幼女はオレの右隣の奴の近くまで行き特典の数を教え特典の内容を教えてもらっている。

だが、その時特典の内容と思われる部分は聞き取れなかった。

オレは恐らく最後だと思ったから他の人の事を意識から遠ざけ眠り始めた。

 

近くに誰かが来たのを察知して起きる。

そこにいたのは光るようー。

「誰が光る幼女ですか!!誰が!!」

「お前だ」

「違います!!はぁ、貴方が最後なのでさっさと決めてください」

「すまない。オレはアニメ?だったかそういうのは知らないんだ」

そうオレが言うと幼女ははぁ!?と大きな声で叫んだ後しばらく悩んだ後望みを聞かれた。

「貴方が望んだものに近い物を特典として登録します」

早く早く。と無駄にキラキラした瞳で見られたオレは言葉に詰まった後何と無く思いついたことを言った。

「一つは身体能力を高くしてほしい」

「はい、他には?」

「自分で武器が作れるようにしたいんだが」

「分かりました。他には?」

「特にはないからそっちで決めてほしい」

「……分かりました」

それでは転生させますねと言い幼女はオレの額に手を当てた。

「転生する前にお前の名前を教えてくれ」

「人に名前を聞くときは自分からですよ」

正論を言われてしまったため昔彼女から貰った名前を言う。

「カシム」

「そうですかカシムさん。私の名前はアーテです」

「そうか。感謝する」

そうオレは言いアーテに続きを促す。

「分かりました。それではあなたの来世に神のご加護があらんことを」

そう言いアーテはオレの唇に自分の唇を押し付けた。

勢いが余って歯と歯が当たって痛かった。

?何がしたいんだこいつは?そう思っているとアーテは顔を真っ赤にして

「何で何も反応しないんですかー」

と涙目で言ってきた。

「今のはどういう意味なんだ?」

「知りません」

足元にいきなり穴が開き、オレは重力に逆らえずそのまま落ちていく。

「また、いつか会えるといいですね。カシム」

その直前に見た彼女の笑顔が綺麗だと思った。



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裏プロローグー他の転生者バージョンだそうですよ?

「何なんだよここは!!」

起きると何故か知らない所にいた。

そこに俺はパニックになり喚き散らしてしまう。

当たり前だろう。俺は引きこもりのNEETで外に出たことなんてなかった。

だからこうして喚くのは当然だろう。なのにあの生意気な奴が俺に何かを言った後神様とやらに間違えて殺されたと知った時、俺はついに俺の時代が来た!!と叫びそうになった。

それはそうだろう。あの転生だ。神様からチートやらを貰いハーレムを作り嫁たちと過ごす。

神とやらに転生特典を一つ使って原作を知った時、俺はガッツポーズを決めた。

そう、なんせその世界は『魔法少女リリカルなのは』俺の大好きな『なのは』や『フェイト』『はやて』『すずか』『アリサ』などのキャラクターがいる世界だ。

ゲームは知らないがアニメと劇場版を知ってる俺に敵はいない!!

もちろん特典はかなり悩んだ。

まぁ、悩んだ結果『王の財宝(ゲートオブバビロン)』『イケメン』『十二の試練(ゴッドハンド)』『膨大な魔力』を頼んだ。

これで俺に敵はいないぜ。

これで嫁たちとグフフフフ。

そして、俺は転生した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

俺は三次元が嫌いだった。

こうなった理由は俺が好きだった奴がビッチで淫乱な奴だったからだ。

まぁ、そいつに惚れた俺も俺だったが、だけど隣の奴とは違う。

俺は美少女だけのハーレムを作る。

俺TUEEeeeeeeをしたいとは思う。

そしていきなり現れた奴に「お前誰なんだよ!!」と言ってしまったのは仕方ない。

しばらくしてから神に特典を言った。

無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)』『解析眼』『使い魔』『1回だけの死者蘇生』『高い身体能力』

この5つさえあれば十分だぜ。

さぁ、待ってろよ美少女たち!!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

僕は、目を開けたらいつの間にか別よ場所にいたと言う摩訶不思議なことを体験している。

左側がうるさいけどその隣の声の子は静かだな。

というか、凄いねまるで軍人みたいだ。

神様に特典を言ってくださいと言われたので僕は『夏目智春の容姿』『黒鉄』『金運C』『千里眼C』『身体能力の上昇』と答えた。

はぁ、今度は平和でありますように。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私は、自分の最後を思い出して、何をしているんだと思った。

あの時、テロに巻き込まれた時に助けてくれた少年ーカシムと抱いていた時に聞いたーが連れ去られてしまい心配になってつい後を追ってしまった。

だけど、その時にはカシム君は人を……殺していた。

それを見て、私は彼のことが怖くなった。

不良から助けて貰って気にはなっていたけど、それでもその光景を見て私はカシム君に恐怖を覚えてしまった。

そして、私に銃口が向けられた時彼は躊躇なくその人を撃った。

私は、彼に救われたんだって思った。

それに感謝をした時、私は胸が熱くなった。

私は胸を見て、あぁ、撃たれたんだって思った。

彼の方を見ると彼は目だけで哀しんでいた。

だけど、その目は私を映していない。

その目は私と誰かを重ねているだけなんだって、思った。

だから私は、彼を死ぬ間際に抱きしめた。

私は私だよって彼に知って欲しくて。

「ーーーーさん?」

名前を呼ばれて顔を上げる。

特典を言ってくださいと言ってきた。

私は一番最初の彼が特典を使って原作を言わせたため知っている。そしてその世界でいいと思える特典はと思い、神様に言う。

『サーヴァント』『魔力変換素質 凍結』『八神はやての姉として転生』『心眼 C』『歌の才能』と答えた。

えっ?何で歌の才能かって?私ね前世は凄い……音痴だったんだー。

だからそれを無くしたかったんだー。

そして、私の意識が途切れる直前、そう言えばあの時うるさい2人に声をかけていた人の言葉使いまるで『カシム君』みたいだったなーと思いながら私は転生した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私は前世で良く不思議ちゃんやオタクと言われていた。

良いじゃん。女子が銃や爆弾を好きでも。

良く友達の葵ちゃんにはだから彼氏が出来ないだよーって言われてた。

何だろう?凄くその時はイラついた。

私にも何時か素敵な人が現れますしー。

って不貞腐れていると神様が特典を言ってくださいと言ってきた。

なので私は『サーヴァント』『転生者の弟』『デバイス』『心眼』『気配遮断A』を頼んだ。

転生したら弟をぱしって、いい人と結婚するぞー。

そう思いながら私は転生した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私は前世で特に友達はいなかった。

というかクラスで虐められていた。

机には罵倒の言葉が彫られていて、クツや体操服、教科書が無くなっていたりしていた。

まぁ、全部やった人は分かるんだけどね。

まぁ、どうでもいいんだけど。

前世の夢を見て懐かしいなって思っていると神様が特典を言ってくださいと言ってきた。

なので私は容姿が似ていると言われていた『春日部耀のギフト』『瞬間記憶能力』『デバイス』『ユニゾンデバイス』『戦いとかをサポートしてくれる人』を頼んだ。

すると神様はむーんと唸ってからじゃあ彼にしましょうと言い私から見て対角線上にいる相手を見た。

どうやら、私の特典の一つは転生者に依存するらしい。

後でその人についての情報を送っときますね。

その言葉を最後に私は転生した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私の前世の死に方は、はっきり言って最悪だと言える。

塾の帰りに男たちに襲われて色々された後、走って逃げてたら車に轢かれた。

だから今も私は男の声が聞こえてきた時に身体が無意識の内に震えてしまった。

だから女の子(・・・)がその人たちを止めてくれた時、ホッとした。

そして神様に特典を聞かれた時、私は前世で欲しかった物を言った。

『妹』『デバイス』『家』『未来視 予言型』『直死の魔眼』そして私は転生した。

願わくはあの娘に会えることを祈って。

でも、神様が笑っていたのが気になった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私は人形だと言われた。

友達にも教師にもそう言われ続けた。

まぁ、そうでしょうね。

私は小学校から帰っても家で監禁に近い扱いをされる。

そんなところで楽しいと思えるはずがない。

仕方ないって、私は思う。

それが私の人生だって諦めていた。

だから死にたいって思って外へ出たら……本当に死んじゃった。

その事に何も思わなかった。

でも、友達に会いたかったな。

と今はそれよりも特典、どうしよう?

聞かれてからずっと考えたが何も無いので『そこそこの容姿』『幸運A』『頭が良くなりたい』『身体を丈夫にしてほしい』『友達が欲しい』と言った。

転生を始めたするがなんか不思議な気分になった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私は死んだらしい。

といっても私自身別にあの世界に未練があったわけじゃない。

まぁ、次の世界で好きな人ができればいいなーって気楽に考えたりしてるわけですよ。

今のところ、この転生者で言うならあの2人を止めた彼かなー。

声は女の子らしかったけど言葉使いが男の子っぽいしねー。

それに、彼はなんか不思議な感じがする。

少なくとも、この場にいる男共よりはマシな気がするにゃー。

っと私の特典?それは『さっきの子と次の世界で会うこと』『やればやるほど出来るようになる程度の能力』『デバイス』『動物に懐かれやすくなるなる体質』『気配遮断EX』にした。

そうすると神様は可哀想にとその子に視線を向けていた。

なになに〜?私そこまで何かすると思ってるのー?

すると神様は急いで私を転生させた。

むぅ、まぁ良いやー。

よろしくね、名前の知らない男の娘。



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原作前の少年たち
転生しても何も変わらないそうですよ?


転生した時期は親に捨てられてすぐらしい。

らしいというのも気づいたらこの薄暗い施設にいたからなのだが、前世と全く同じ境遇か。

どうにもオレはまともになれないらしい。

そして、この世界はオレの前いた世界とはまた違うらしい。

何故分かるかはここが『管理世界』と呼ばれる魔法文化(・・・・)のある世界だからだ。

だが、その世界においてオレは親に売られたらしい。

理由は知らない。知っても無駄だ。知ったところでオレの次の任務には関係無い。

今この世界において2つの勢力が戦争をしている。

1つはこの世界を形作った『アラン』2つ目はオレの参戦しているレジスタン組織『グレイル』だ。

戦争をしている理由は簡単だ。

この世界は4年前に大規模の次元振が起こりその結果この世界は無事だったがその日に産まれた新生児にとある特殊な物を持ってしまったのだ。

『古代ベルカの技術』『アルハザードの技術』『存在しない技術(ブラックテクノロジー)』などの技術(テクノロジー)

これらを持っている者達をこの世界では『ささやかれる者(ウィスパード)』と呼ばれている。

そして、アランの王族はこのウィスパードの持つ技術(テクノロジー)を利用しようとしている。

オレも一応このウィスパードだが、奴らに捕まる前にこのレジスタン組織に匿われたため無事だ。

だが、現在も奴らに連れ去られたウィスパードの行方は不明だ。

そして、これが最も大きいだろう。

圧政だ。

この世界の税は高すぎる。

そのため満足に食べる物など無い。だが、王族は裕福な暮らしをしている。

だからオレたちはこの世界を変えるために戦っている。

というのが上の考えだ。

そしてこの戦争を起こしたがオレたちは苦戦を強いられてきた。

まず一つ目、兵装の違いだ。

オレたちは管理世界でいう質量兵器を使うのに対して奴らは『魔法』を使ってくる。

オレたちが殺す気で奴らに撃っても『プロテクション』により防がれ逆にオレたちは魔法を防ぐ術がない。

2つ目は補給だ。

奴らの魔法は『リンカーコア』と呼ばれる器官を使い魔力素を取り込み魔力を生成する。

それに引き換えオレたちの質量兵器は消耗もすれば弾薬も減る。

ウィスパードの技術を使っているとしても用意するまでに時間がかかってしまう。

3つ目は単純に戦力の差だ。

オレたちのレジスタン組織にいる人数は4桁をいっているらしいが実際に戦うのはその100分の1もいない。

だが、敵は3桁の敵。

これでもこの組織が潰れないのはリーダーのアルツのおかげだ。

アルツの作戦をオレたちが成功させる。これにより敵の牽制も撃破もできる。

だが、ここにいる者の全ては何時も腹を空かせている。

「お兄ちゃん。お腹……減った」

「オレの分も食え、他の奴らにも渡せよ」

「うん」

オレの前まで来ていた少女に配給されたコッペパンをやる。

今もギリギリまで食費や食材を切り詰めている。

そう長くは持たないかもしれないな。

「カシム。ちょっといいか?」

「了解した」

アルツに呼ばれオレはアルツの元へ行く。

 

ミーティングルームに行くとそこには大の大人が3人、青年が4人いた。

ここにいる者全てが作戦を考える者たちだ。

「カシム。子供達はどうだった?」

「マシにはなったがまだ外に出れない者が多い」

「他は?」

「もうそろそろ食材が尽きるとミッテとサーナさんに言われた。後は整備班が予備の弾薬なども後がないと言っていた」

そう報告すると目の前にいる黒い男ーカルマが考えるような素振りを見せる。

「カシム。お前はあと何回でこの戦争に決着を付けるべきだと思う?」

「次の襲撃場所を変えてもいいなら後2回だなそれ以上は不可能だ」

「襲撃場所を変える!?何処にする気だよ!?」

カルマの近くにいるスナイパーの男ーパーシュタがオレにいってくる。

「今のオレたちに足りないのは怪我人の為の治療キット、弾薬などの物資そして、食料だ」

「そうだなぁ」

工具を担いでいる男ーおやっさんがオレの言葉に賛同する。

「そこで、ここの拠点を破棄、王都の近くにある城砦『アルン』を占拠。その後1時間後に王都を襲撃。これしかもう手はない」

そう言うとこの場に居るアルツとおやっさん以外がざわつき始める。

「それで?城砦を襲撃するのは誰がやるんだ?」

「オレとアルツ、後ゴースト小隊にするつもりだ」

オレはこの言葉に反論が無いことを確認してすぐに地図を広げた。

「オレたちは明朝02:00にこの道を通って襲撃。襲撃開始から5分後に同じところを通って(・・・・・・・・・)この城砦に進行する」

この言葉にさっきまで異を唱えていたものはオレが何をしたいのかを理解して作戦の細かな調整をしていく。

 

作戦決行の時間になった。

オレたちはあらかじめ決めていたルートを通って城砦に近づく。

今まで通り城砦の門番は遅くまで酒を飲んでいたらしく眠っている。

「ゴースト4より各位へ準備は良いか?」

『ゴースト1から3準備良し』

『ゴースト5からゴースト7、準備OKだ!!』

『ヘッドリーダー、準備OK』

全員の準備を確認してタイミングを計る。

「行くぞ!!散開(ブレイク)!!」

その合図で固まっていた全員が各々の持ち場に行く。

 

結果から言えば、オレたちはここを占拠する事に成功した。

だが、遊んでいる時間はない。

ここにある弾薬などを持てるだけ持つ。

アルツはアルツで王都の地図を探している。

「なぁ、カシム。お前はこれが終わったら如何する?」

アルツが突然言ってきた問いにオレは咄嗟に答えられなかった。

前世と同じだ。オレは戦い以外の物を知らない。

「俺はさ、この作戦が終わったらミッテに告白するんだ」

「告白かだが、ミッテとはな彼女は手強い。盗み食いを告白した瞬間鍋が飛んでくるぞ」

「そっちの告白じゃなくて!!そのさ、愛の、告白さ」

「そうか、愛の告白か」

「お前には……居ないのか?一緒にいたいと思える人は?」

「ここにいる家族全員だ」

そうオレが言うと「まだまだ若いなー」とアルツは馬鹿にしたようにいってくる。

「アルツ、死ぬなよ」

「お前こそな……カシム」

 

 

 

そして、出来るだけの武器を持ったオレたちは王都へと走った。

北へ北へ、一歩も足を止めることなく。

だが、この時のオレたちは知らなかった。

王都に待ち受ける地獄と、そしてウィスパードたちの未来を。

 

 

 

「王都についた。全員、これが最後だ!ロックンロール!!」

アルツの言葉で全員が各々の武器を持ち王都へと入っていく。

オレは他の人が敵の目を引きつけている間に王宮へと急ぐ。

この作戦の要はオレとアルツだ。

オレかアルツ。どちらかが王宮を占拠するそれが勝利条件だ。

「いたぞ!!レジスタンスだ!!」

目の前に王宮の兵士が現れるがその動きは素人のそれだ!!

「遅い!!」

通り過ぎる時に手榴弾(アップル)を落としていく。

走り去ると同時に爆音と悲鳴が聞こえてくる。

オレはそれに目もくれず真っ直ぐに前へ進む。

王宮に近づくとそこには見たこともない服を着た人達がいた。

「止まれ!!我々は次元管理局だ!!」

「……こちらゴースト4。次元管理局は敵だ」

『こちらヘッドリーダー。了解した。ゴースト4は任務を継続、王宮内部にいるとされるウィスパードの救出と制圧を遂行せよ……。』

「了解した。交信終了」

アルツから許可が出ると同時に肩に掛けていた散弾銃を次元管理局と名乗った男達に向けて発砲するが何時ものごとく無効化される。

だが、それでいい。

おかげで、隙ができた。

硬直した近くの男のデバイスを遠くへ蹴り飛ばし無防備になった男の胸を銃で撃ち抜く。

それと同時に来た魔力弾を殺した男を盾にすることで防御する。

「くっ!なんて卑劣な!!」

オレは腐った王のところに行きたい気持ちを抑え傍受した無線で聞いた場所に向かう。

 

着いた場所は、まさに地獄だった。

ありとあらゆるところに置いてある人間の脳(・・・・)目から光を無くした子供達。

そして、ウィスパードだと思われる解剖された死体。

はっきり言って

「吐き気がする」

この世界にも、これをやった奴にも、そして、これをやった奴に協力している次元管理局にも。

近くの死体が持っていたペンダントを見た時何故かこれを持っていかないとと思った。

そして、その周りにある資料も一通り目を通す。

恐らく、大人たちはこれを理解していないだろう。

この理論は巧妙に隠されているが所々に致命的な部分が欠けている。

そして、それが分かるのは恐らくウィスパードだけ。

更に奥に進むとそこにはポッドの中に入れられたウィスパードの少女がいた。

オレは苦しまないように殺そうとしたときーー彼女の目がオレを捉えた。

オレの目にはその子が前世でオレに名を与えてくれたあの子と重なる。

優しすぎる少女で、花が大好きで、よく笑う子だった。

笑顔を絶やさなくて、そんな少女をオレは助けられなかった(殺した)

オレは少女の頭に合わせていた銃口をポッドに向け発砲する。

 

『ヘッドリーダーよりゴースト4!!生きてるか』

「生きている。どうした?」

『彼奴ら俺たちを皆殺しにする気だ!!次元振動を意図的に引き起こす装置を開発しやがった!!』

「そうか、奴らはオレたちと共に死ぬ気か」

『何?どういう事だ!!カシム!!』

「あれは表向き自分たちは無事になるように作られているが実は発動した瞬間、この世界が丸ごと消えるようになっている」

そうオレが言うとアルツは息を飲んだ。

「アルツ、早く撤退……」

『……するわけ無いだろ!!だいーーーーー』

突如ノイズで通信機がおしゃかになった。

オレは苛立ちを隠せないまま上へと上がる。

 

 

 

オレたちは家族だ。

そう教えてくれた人がいた。

オレたちは仲間だ。

そう言ってくれた人がいた。

俺はあいつのことが好きなんだ。

そう笑いながら言っていた親友(アルツ)がいた。

私ねアルツと平和な場所で暮らすんだ。

そう夢を見ていた少女(ミッテ)がいた。

なのに、もう彼らの声を聞くことはない。

もう、あの暖かさを味わうこともない。

それでもオレは進まねばならなかった。

彼らが何を見たのかーー知るために。

 

 

 

「何だ?これは」

目の前には本当の地獄が広がっていた。

地は焼かれ、いろんな人の叫び声が聞こえてくる。

右を見ても、左を見ても紅が広がっている。

思わず背中に背負っていた少女を落とすところだったがしっかり掴む。

「……ぅ」

少女は小さく唸った後再び気持ちよく寝始めた。

「やぁやぁ、君はあの時攫い損ねたウィスパードか」

「腐った王」

「違う!!私の名はブーパール」

名乗りをあげると同時に奴はオレに向かって魔力弾を放った。

「っ!?」

間一髪で躱すことに成功するがその拍子に少女を落としてしまう。

「あぁ、このウィスパードは確か夜伽用に保存していた」

「……何?」

「だからーこいつは私のね。妾にしてやろうと思っていたのだよ」

「お前……ロリコン?とやらなのか?」

「違う!!」

腐った王がはぁはぁ、言いながらこちらに近づいてくる。

不味い。

直感に従い前に転がるとさっきまでいたところに槍が刺さっていた。

「おや、外したのかな?」

それから数分、奴とオレは殺し合いをしていると、あの少女が目を覚ました。

だが、その子の目は何も映していない。

いや、目は見えているがその子の目からは生気が無いのだ。

まるで、生きる屍。

「私の妾が目を覚ましたようだ。さらばだ、名も知れぬガキよ!!」

やられるのか。オレは。こんな奴に。

「ふざけるな!!」

殺されて……たまるか!!

TAROS(Transfer And Response ”Omni-Sphere")起動』

持って来たペンダントがその言葉と共に光を放つ。

『認証開始。声紋登録開始』

「ゴースト4、カシムだ」

『認証……終了』

するとペンダントの光が治り始める。

『適性魔法診断……完了。古代ベルカ式のみ適性あり』

オレの足元に三角形のアリスブルーの魔法陣が現れる。

『バリアジャケット展開』

オレの服も変わり始める。

黒を基調としたフードの付いたジャケット。

頭にはヘッドセットらしきものがつく。

それよりも気になるのはジャケットの所々にある銀色のパーツだろ。

『どうですか軍曹殿』

「問題ない」

「で、デバイスだと!!だがそれでも無駄だ!!」

特大の砲撃が来る。

防げない。いや、防がないと……死ぬ!!

見えない何かが砲撃を防いでいた。

『ラムダ・ドライバの起動を確認』

「ラムダ・ドライバ?」

『軍曹殿。今はそれより』

「分かっている!!」

デバイスを銃に変える。

足元にアリスブルーの魔法陣が現れる。

『ラムダ・ドライバを攻撃に転用』

銃口に見えない力場が集まる。

『ショット』

放たれた魔力弾は障壁をすり抜けて(・・・・・・・・)ブーパールを弾け飛ばした。

それを確認すると銀色のパーツからシリンダーが伸び、ジャケットのあらゆるところから煙が出てくる。

煙が出なくなってから、少女の元に向かう。

「大丈夫か?」

「……大……丈夫……です」

酷く怯えた様子でこちらに大丈夫と伝えてくる。

その時、この世界が揺れた。

「何が起こっている!!」

『次元振動装置の起動を確認。この世界が次元断層で無くなります』

「なんだと!!」

『ラムダ・ドライバを使えば助かる可能性はありますが』

「くっ。大丈夫だ!!何とかなる」

「……はい」

一か八かだが、賭ける価値はある。

そして、オレたちは世界が壊れると同時に、意識が途切れた。



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夏目姉弟はウィスパードと会うそうですよ?

side????

 

 

僕は転生してから夜の山で修行している。

その理由は家でやると姉ー転生して2日で分かったが僕と同じ転生者ーがうるさいし何より黒鉄の力が使えない。

転生してはや4年。

いや、転生したら肉体年齢が3歳って意外と驚いたからね。

まぁ、転生したら双子の姉がいて、その姉が転生者でそこそこ僕の苦労などを知ってくれているが、凄いオタクなんだよね。

特にモデルガンなどを家に置かないでください。

危ないです。

まぁ、それはともかく修行修行。

いつも通りこの山に結界を貼り黒鉄の能力の確認、そして僕の魔力量と適性魔法を調べていく。

増えてるかなーと思っていたが相変わらず僕に魔法の才能はなかった。

何で砲撃魔法以外の適性が平均レベルなんだろう。

砲撃魔法は適性無しだけど。

そして、ほどほどに魔法の練習をしたから家へ帰ろうと思った時、下から僕の姉『夏目美咲(みさき)』が登ってきた。

「やぁやぁ、智春(ちはる)君。今日も精がでるねぇー」

「姉さん茶化さないでよ」

「まぁまぁ、落ち着きたまえ少年よ。とりあえず帰って私のジュースを買ってきてくれ給え」

「はいはい」

そして姉さんと2人で帰ろうとした時、どすっという音が奥の茂みから聞こえた。

「面白そうな予感がするねぇー弟君」

「行くなよ!!行かないでよ!!行かないでください!!」

だが僕の言葉を無視して我が姉はずんずんと奥へ進んで行く。

うわぁ、幽霊とか出そうだなって思いながら進んで行く。

「智春こっちこっち」

姉さんが僕を呼ぶ声が聞こえる。

そこへ行くと姉さんが白い髪の女の子(・・・・・・・)を抱いてこっちに来ていた。

「姉さん。何処からその子を連れてきたのさ」

「?あそこの茂みからだよ?」

何を言ってるんだい?君は?とでもいいたそうな顔をしながらこっちにその女の子を見せてくる。

ボロボロな服を着ていることを除けば可愛い子だと思う。

「どうどう!!この子可愛いよね可愛いよね!!見てよこの白い髪さらさらで羨ましい!!それにここ!!アホ毛がある〜!!」

だから持ち帰っても良い?と僕にその子を突き付けてくる。

今までの経験則から分かる。

この姉がこう言ったら僕に決定権はない。

この子も可哀想に、これからこの姉に振り回されるのか。

僕は同情の眼差しをこの子に向ける。

その後、僕らは家に帰ったが僕がジュースを買いにもう一度出かけたのは言わなくても分かるだろう。

 

 

sideカシム

 

 

眼が覚めると見たこともない綺麗な天井が見えた。

此処は何処だろうか?起き上がろうとして自分の筋力が落ちている事に気がつく。

そこまで考えてこの状況をようやく把握した。

ーオレは、敵に捕まったのか?それとも此処は死後の世界なのか?

あの次元断層の直前、オレはあのデバイスに言われラムダ・ドライバを起動したと思うがそれでも無事な確率は少ないはず。

それに、側にいた少女がいない。

今はそれはいい。

それよりもこの状況だ。

これではまるで前世の……彼女(・・)と出会った時と同じだ。

だとすれば此処にいればオレはまた彼女に会えるのかもな。

それもいいな。

そして、ガチャっとドアノブが捻られる音が聞こえた。

身構えていると扉からこの場所に住んでいると思われる子供が2人入ってきた。

1人はオレに同情の眼差しを向けもう1人はこちらに奇異の目を向ける。

「此処は何処だ?」

そう聞くと2人とも頭の上にはてなマークを浮かべる。

?……そうかオレの世界の言葉を言っても通じないのか?だが、此処が何処なのか分からない限り俺の知っている言葉でこれを言い続けるしかないだろう。

 

3分経って此処が日本だということが分かり今では日本語で会話している。

智春と美咲という2人の子供にオレは救われたらしい。

そこでオレは2人にオレのデバイスを知らないかと聞くと2人ともあぁと頷くと智春が説明してくる。

「それなら今姉さんのデバイスが調べてるよ」

「無駄だ。恐らく解析はできても理解はできないだろう」

そう言うと2人とも首をかしげる。

「オレのデバイスは古代ベルカとアルハザードのテクノロジー、そしてブラックテクノロジーで作られている。解析できても実際に作るための方法も分からなければ中のデータも調べられないだろう」

そう言うと2人してどうしてそんな技術を君が知っているのと聞かれた。

オレは自分の世界のことを2人に言った。

話の後半部分で2人とも顔色を悪くしたが、それでも最後まで話を聞いていた。

「あのさ、君は転生者?」

転生者?あぁ、

「あの幼女に転生させられた人を指すのなら肯定だ」

すると2人ともオレの特典を聞いてくるが、オレ自身知らないので答えようがないと言うと2人して唖然とした顔をした。

そして、2人よりも背が少しだけ高い少女がオレのデバイスを持って現れた。

「どうだったカルテット?」

「無理ですね。これほどのデバイスは見たこともないです」

すると少女はオレの方を見て自己紹介した。

「はじめましてカルテットです。一応この美咲(バカ)のデバイスです。よろしくお願いします」

「カシムだ」

「女の子ですよね?」

「いや、男だ」

そう言うと、此処にいる全員の時間が止まった。

「えっ?男?」

「あれ?男?」

「人間の神秘ですね」

全員の言っていることが全くわからない。

「カシム?それ名前?」

「肯定だ」

「変な名前〜」

「?普通だと思うが?」

「珍しいと思うよ」

 

一応、戸籍などはなんとかしてくれるらしいが住む場所がない。

「カシム君。これから何処で住むの?」

「近くに山があったと記憶している。そこで野宿する」

すると全員で駄目だと止められた。

結局オレはこの家に住むことになった。

だが、ここで一つ問題があった。

「あのさカシム君。好きに使ってもいいって言ったけど流石にこれはうん。ダメだね」

「?何故だ?敵が寝込みを襲ってきても対処できるように」

「それでも、駄目!!」

智春に部屋にトラップを仕掛けたことで怒られ

「カシム君は何食べるの?」

「生野菜と干し肉、たまにコッペパンもあったな」

「うん。これからは私と一緒に料理を習おう〜」

美咲に食生活のことで怒られた。

 

ここの生活を始めて10日。

全く慣れなかった。

だが、この世界の技術などにも興味があるオレは美咲たちが学校に行ってる間に図書館に行く。

そこには……車椅子に乗っている少女がいた。

だが、オレが驚いたのは車椅子に乗っているということじゃなくその子が彼女に似ていたからだ。

前世で最後の最後に助けられなかった、あの少女に。




次回予告
美咲「図書館に行くとそこには前世で助けられなかった少女に似た少女がってえええええええ!!」
智春「カシム君がその子と会っている間に僕は僕で原作キャラたちと会っている」
カシム「なるほど、これが主人公体質というものか」
智春「違う!!」
次回『転生者が原作キャラに会うそうですよ?』


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転生者が原作キャラに会うそうですよ?

前回までのあらすじ
夏目家に居候させてもらうことになったカシム。
この世界のことを知ろうと図書館に行くとそこにはカシムが前世で救えなかった少女に似た子がいた。


sideカシム

 

色々あって仲良くなった少女の名前は『八神はやて』何でも学校に行ってないらしくここにほぼ毎日いる……らしい。

オレの性別について一悶着あったが、それはまぁ良いだろう。

「でな、こういう風になったらカシム君はどないするん?」

「ふむ。まずは誘拐犯についての情報を集めそいつの弱みを握り次にそいつの場所まで行き交渉(脅迫)する。そしてー」

「ごめん。もうええわ」

自分の率直な意見を言ったら却下というかもうええわと言われてしまった。

「カシム君はどこに住んでたん?」

「そうだな色々な場所にいた」

「ヘェ〜、じゃあ外国語喋れるん?」

「知ってる国の言葉ならな」

「まじか!?」

「肯定だ」

はぁ、と八神にため息をつかれた。

「カシム君はどこに住んでるん?」

住所を言うと八神は「そこ家の近くやわ」と言っていた。

「それにしてもー」

八神の目が俺を捉える。

「ー男とは思えへんほどの可愛さやね!!」

「何だ?それは?」

可愛いということやよと八神はオレに微笑んだ。

「はやて〜。何処ー?」

「あっ!葵ちゃんこっちやこっち!」

そうして八神が呼んだのは八神と瓜二つの少女。

「紹介するわ葵ちゃん。こっち今日友達になったカシム君って葵ちゃん?姉やん?葵お姉ちゃん?」

「………………」

八神が呼んだ葵という少女は固まっていた。

それにしても、瓜二つだな。

茶髪なのは変わらないが眼の色が葵という少女は翡翠色だった。

綺麗だと思った。

「……っ!?は、はじめまして、八神葵です。よ、よろしくね、カシム君」

「よろしく頼む」

そう言ってオレは葵と八神の2人を再び見つめる。

やはり瓜二つだな。

「双子……か?」

「そやよ」

その後もオレとこの双子の会話は続いた。

 

 

side智春

 

春それは別れの季節。

春それは出会いの季節。

10日前に衝撃の出会いをしたっていうのにもう次の出会いなんて運があるのか無いのか。

姉さん?あの人は例外。

ていうかあの人はどうなってんの?

無駄に銃とか詳しいし今度実際に作ってみたいって言ってたなー。

デバイスの形を銃にしてはぁ、ミッド式の姉さんと同じで僕もミッド式しか適性は無かった。

僕はこの世界の原作を知らない。

だが、キャラクターだけは知っている。

だから僕は目立たないようにして原作キャラに会いたくなかったのだが。

「おはよう智春君」

「おはよう月村さん」

何故か隣の席がその原作キャラなのだ。

はぁ、姉さんのクラスも此処だし変な奴らも同じクラスだし呪われてるのかなー僕。

「何か、いつも以上に疲れてるね」

「また姉さんがやらかしただけだよ」

 

ここのところ、僕の生活は姉さんの所為で変わってしまった。

原作キャラとの邂逅。

居候、それも次元断層で無くなった世界出身でレジスタンスをしていてさらには古代ベルカやアルハザードの技術だけでもお腹いっぱいなのにそこに存在しない技術(ブラックテクノロジー)ときたもんだ。

もう、僕の普通は戻ってこないのか。

そう思っていながらも僕はこれまで集めてきた転生者の情報を整理する。

このクラスにいる転生者は。

『金色英雄』『赤弓翔』『夏目美咲』だけどまだ原作開始まで時間がある。

だから油断はできない。

それに、恐らくまだ転生者はいる。

けど注意しなければいけないのは『金色英雄』と『赤弓翔』の2人だ。

この2人は姉さん曰く踏み台らしい。

俺の嫁とか言って原作キャラを追いかけているのが印象的だった。

原作開始まであと1年。

転生者にとっては準備や計画を立てる時期だろうね。

僕?僕は原作に介入しないよ。

だって僕がいなくても大丈夫だろ?

いざという時以外は僕は絶対に原作介入はしない。

 

side美咲

 

 

カシム君が転生者であることは確定だけどこの世界については原作を知らないだけで魔法などは知ってた。

うーん。どうしよっかなー。

どうせ智春は原作介入はしないって考えてるんだろうけど、甘いなー私たちはもう、巻き込まれる運命にあるんだよ。

無印じゃなくて、A'Sでね!!

どうしよっかなー。無印で介入するか、しないか。

でもカシム君は多分管理局と敵対……するよね。

カシム君にとって管理局は自分の家族と故郷を失う原因。

許すはずがないよね〜。

でも、嫌だなー。

将来管理局で働こうと思っている私にとってカシム君がそういう感情を持っているのは何となく嫌だ。

どうしよっかなー。

 

side????

私の転生特典の一つ『戦いとかをサポートしてくれる人』が未だに現れない。

神様が送ってきた情報によると名前は確かー。

思い出した。

カシム……だったはず。

どこにいるんだろ?

まぁ、三毛猫たちと一緒にいながら気長に待とう。

私と彼が出会うのはこの一週間後なのだが、この時の私はそんな事など全然知らなかった。




『次回予告』
カシム「一週間たちオレは葵と八神と共によく遊ぶ仲になった」
智春「そしてカシムは八神家と夏目家の両方の居候になったのだが姉さんの様子が最近可笑しい」
葵「そして私は前世の友達に会ったのだけど……え!?何でカシム君と一緒に!?」
美咲「そして私はかつての友達とカシムと共に前世の事について語っていくがそこで意外な事実が!!」
?「……そして、遂に私……登場!」
次回『転生者たちが会うそうですよ?』


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転生者たちが会うそうですよ?

sideカシム

 

八神たちと会ってから一週間が経った。

オレは八神家と夏目家の両方の居候になっている。

そして最近智春と美咲が変わった。

何でも原作とやらが近くなってきたから腕をあげたいんだそうだ。

後最近ミッドチルダに行ったカルテットからの情報だが最近とある犯罪組織が『ラムダ・ドライバ』搭載型のデバイスを使っているらしい。

だが、それはおかしい。

ラムダ・ドライバはオレたちウィスパードしか知らないはずの技術『ブラックテクノロジー』のはず。

なのにそれが他の人、それもウィスパードではない奴がその技術を知っているはずがない。

『どうかなさいましたか?軍曹殿』

「アル。お前はこの件をどう見る?」

『件のラムダ・ドライバ搭載型のデバイスのことでしょうか?』

「あぁ。これに対するお前の考えを聞きたい」

『恐らく、あの時の屑野郎がデバイスを量産、それを売っていたのでしょう。そうでなければ屑野郎たちがあれだけの実験設備を整えられるはずがありません』

「そうか。なら、オレはそいつらを倒せるか?」

否定(ネガティヴ)です軍曹殿。軍曹殿と違い奴らはラムダ・ドライバを薬物を投与する事により擬似的に使っています。しかし、軍曹殿はラムダ・ドライバを任意に使用できません。ラムダ・ドライバなしでの軍曹殿がラムダ・ドライバ搭載型のデバイスを持った魔導師に勝てる確率は1割未満です』

「……そうか」

しばらく黙っているとアルが機能を停止した。

「アル?」

故障か?と思い再起動をさせると

『このデバイスが使われていてこのメッセージが再生されているということは君はラムダ・ドライバをいや、アーバレストを使いこなせていないということかな?』

「なっ!?」

いきなり、誰か、いや、この声からしてこのデバイス『アーバレスト』を作った奴の声なのだろう。

『確かに、今のアーバレストは不完全だ。だが、その不完全なデバイスも使用者によっては最強にもなる』

「ふざけるな!!この欠陥品が最強だと!!」

『見たこともない使用者。君が大切な物を見つけた時このアーバレストは最強になる。それを、忘れないように』

大切な物と聞いた時、胸がズキリと痛んだ。

『軍曹殿?何かありましたか?』

「何でも無い」

『そうですか』

再び無言になる1人と1機。

オレはあのメッセージを忘れようとしたが忘れられなくて頭の中にもやもやとしたものを感じながらオレは『今日の』居候先である夏目家へと足を運んだ。

 

夏目家に着いた頃にはもう日が沈み始めていた。

「どうしたのカシム?」

「何でも無い」

「そ……いや、ならいいや」

夏目家に入ってすぐ智春に会ってしまった。

智春は何の取り柄もない普通の(・・・)転生者だと言っているがオレから言わしてみれば智春は異常だ(・・・)

智春はその容姿からは考えられないほど精神面が強い。

だけど、カルテット曰く「智春君は自己評価が低すぎて他人からの好意も勘違いで済ましてしまうんですよね」らしい。

この意味がオレには分からなかった。

 

リビングで2人の話を聞きながらニュースを見る。

そこには『集団行方不明』と映されている映像を見て違和感を感じた。

何故かそこに行かないといけないと思った。

「ーーって、聞いてるー?カシム君」

「すまない。全く聞いていなかった」

「だからさ〜、明日デパートに行こうよって話〜」

「了解した」

「うんうん。あっ!予定が空いてたら八神さん?だっけ連れてきてよ」

「了解した」

それだけ言うと美咲は自分の部屋に戻っていく。

「智春も来るのか?」

「僕はパス」

「そうか」

智春が席を立ち自分の部屋に向かう。

「なるほど。2人して洗い物を押し付けたか」

オレも溜まった洗い物を洗ってから自分の部屋?に向かう。

頭の中には未だにあの言葉が繰り返されている。

 

「そうか。八神はこないのか」

『うん。ごめんね』

「なら八神姉が来るだけか」

『そうなるね』

「それでは明日午前9時に八神姉の所に行く」

『楽しみに待ってるね』

八神姉との通話を終えてベッドに腰掛ける。

やはり、話し方といい雰囲気といいあの少女に似ていてやりにくい。

「大切なもの……か」

そう呟きながらオレの意識は薄れていった。

 

『本当にこれでいいの?ロニ』

『良いんだよマニ。こいつはこれで』

『そういえばさ、言い忘れてた。ありがとうねカシム。あいつを殺してくれて』

『僕からも言っておくよカシム。ありがと』

『それだけー?』

『分かったよ』

暗い部屋の中で誰かがささやいている。

これは『ささやかれる者(ウィスパード)』同士の共振。

いや、これはもはや違う。これは共振ではなく共有。

彼らの技術が俺の中に入ってくる。

『君に大切な……守りたい人が出来た時アーバレストは最強になる』

金髪の兄妹がオレに向かって言ってくる。

その言葉は奇しくも

『それを忘れないでね』

アーバレストの中に録音されていたメッセージと同じものだった。

 

さて、今のこの状況は何だろう?

方やオレと美咲を交互に見ている八神姉。

方や八神姉をじっくり見て幽霊でも見たかのような顔をしている美咲。

そしてそれを眺めているオレ。

「カシム君。紹介して」

「了解した。美咲、こっちが初の居候先の夏目家のトップ夏目美咲だ」

紹介したのだが、八神姉は何かを気に入らなかったらしく自分で自己紹介した。

「初め……まして……八神葵です」

「初め……まして……夏目美咲」

すると、2人して次の言葉は重なった。

「もしかして葵!!」

「もしかして美咲!!」

その後2人は意気投合したようで歩きながら転生してからの事を話し始めた。

 

デパートに着くと2人して服屋の方に行き始めた。

女子の買い物は長いと聞いてはいたがここまでとは。

思えば、彼女と街に行った時はこうだっただろうか?

前世に思いをはせていると突如2人に腕を掴まれ服屋の方に引きずられていく。

葵達曰く「せっかく素材はいいのにそんな服ばっか着ているのは勿体無い」……だそうだ。

だが、このフリフリの服は男用なのか?

一応動きやすいがそれでも目立ち過ぎる。

2人がさらにヒートアップして行きオレは試着室の前で待機しているとチリン……。チリン……。

「うん?」

周りを見るが鈴のようなものは無い。

空耳か?そう思っていると、何時の間にか近くに葵が来ていた。

その手に10着以上の服を持ちながら。

 

side美咲

 

 

「まさか、カシム君が言っていたもう一つの居候先が美咲のところだったなんて」

「うん。それは私も思った……っていうか〜葵〜何あの恋してますオーラ」

「な、なんのこと?」

おうおう、可愛いねぇーこの子はちょっと揶揄った程度でこんなに真っ赤になるなんて。

「そっ、それより早くカシム君に服を着てもらわないと」

そう言うや早足でカシムのもとに行った。

「恋かー。かぁ〜、早く私も恋がしたい」

そう言ってみるけど私の近くには男の子はいることはいるけど恋するほどの人はいない。

智春は……男以前の問題だし。

カシムは……どうなんだろ?

よく分かんないなカシムは。

でも、流石に親友が好きな人を取るのは……良くないよね。

仕方ない。カシムは諦める……か?ってあれ?何でこうなったんだっけ?

まぁ、良いや。

今はこれで。

 

 

sideカシム

 

 

途中から2人とも趣旨を忘れてオレの服を買っていた。

もうそろそろ止めとこうという話になり今は帰路についている。

「あっ、ここじゃない?あの集団行方不明があった場所」

「あれ?何か違和感が……ってカシム君!?」

何故かは分からないがここにきてから鈴の音が酷くなってきた。

まるでオレをここに誘っているかのように。

此処に入れるのか?そう思っていると足元に猫が寄ってきた。

「猫?」

「可愛いー」

「お前」

オレがそう言うと猫は何かの方に進んでいく。

ここを通れってことか?

オレは猫の先導のもと中に入っていく。

「あっ!?待ってよカシム」

「2人とも待って〜」

すると、何かを通り越してオレは、いやオレたちは何かの中に入ったが

「何だ……これ」

そこはまるで地獄のようなところだった。

オレたちが入ってきた場所には一面の紅があった。

それだけじゃない。

これは骨だ。

所々にあるのは砕かれた……人骨。

美咲達が顔を青くしていると

「おやおやぁ?何でこんな所に子供が?」

ふざけた声が聞こえた。

「今日は誰もさらっていないんだがな」

すると、男は何かを考えるようなそぶりを見せた後オレたちの目の前に

「まぁ、運が悪かったね!!」

魔法陣を出した。

「っ!?」

咄嗟に2人を抱え横に飛ぶ。

するとさっきまでいた場所が爆発した。

「おいおい。逃げるナヨォォォォォォ」

「走れ!!死ぬぞ!!」

美咲達の腕を引っ張り走る。

この状況、不味い!!

「……あっ!カルテットセットアップ!!」

美咲が戦闘態勢に入る。

だが、何だ?この嫌な予感は!!

「魔導師?まぁ、私の」

男がデバイスをナイフの形に変化させる。

「敵じゃ……ないけどナァァァァァァァ」

男が突き出したナイフは美咲が張ったプロテクションに当た……らずにそのまま

「美咲ちゃん!!」

「っ!?……え!?」

オレの右腕に刺さった。

「おいおい。なんだよ。何身体張っちゃってんの?正義の味方のつもりですかぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「…………で」

「アァァァン?」

「何で!」

男を蹴り無理やりナイフから自分の腕を外すとオレはセットアップしながらその男に言う!!

「何でお前がラムダ・ドライバをつかえる!!」

そう言うと男は笑いながらオレに言ってくる。

「クハハハハぁぁぁぉ。お前!!あの次元世界出身か!!」

「答えろ!!」

「なやこった!!」

魔力弾をオレたちに撃ちながら男は追ってくる。

対するオレたちはそれから逃げているだけ。

「そらそら!!そのデバイスにも有るんだロォォォォラムダ・ドライバガサァァァァァァァ」

「くそっ!」

さっきからラムダ・ドライバを使おうとしているが全く作動しない。

「ほらほらぁ、どうしたよぉぉ、さっさとつかえよぉぉぉぉ」

男がラムダ・ドライバで覆った魔力弾をオレに直撃するルートで撃ってくる。

くそっ!!!!

その時、バリアジャケットの銀色の部分から何かが伸びた音が聞こえた。

咄嗟に出した右手から不可視の障壁が張られ、男が撃った魔力弾を防いでいる。

「なんだなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?」

「アル!!」

『ラムダ・ドライバ作動中』

これならやれる。

そう思った時、伸びてきたものが再び縮みバリアジャケットから蒸気が出てくる。

くそっ!!やっぱりか!!

「なんだなんだ?……もしかしてお前、そのラムダ・ドライバ、不安定なんじゃないのかぁ?」

くっ!!やはり気づくか!!

「そうかそうかぁぁ、なら今度こそ、さようならぁ!!」

死ぬのを覚悟した時男の背後から現れた魔力弾が男を吹き飛ばす。

「……こっち」

何時の間にか来ていた少女がオレの腕を掴み走る。

美咲達は?と思い周りを見ると白色のバリアジャケットを着た少女に連れられて移動していた。

そして、そのバリアジャケットを見てオレは眉を顰めた。

 

少女に連れられて移動したのはデパートだった。

そして、今そこではオレたちが少女に事情聴取と状況説明を受けている。

「ー以上ですけど……何か問題がありますか?」

「う、ううん。分かりやすい説明ありがと」

オレはその光景を見張りをしながら見ている。

やはり、ラムダ・ドライバ搭載型のデバイスを持った犯罪組織の一員だったか。

「……それで、貴方はどうなの?」

「何がだ?」

「……今の所、あいつと戦えるのは貴方だけだし、どうするの?」

「……オレは、出来ればあいつを倒したいと思っている。だが、あの時はラムダ・ドライバが偶々作動したから助かっただけだ。次は無いだろう」

「?なんで使えないの?」

「分からん。だがー」

オレは一呼吸入れてから隣にいる少女に言う。

「ートリガーを引いた時に確実に作動しないものは兵器ではない」

そう言うと少女は何かを考えた後オレに言い聞かせるように言った。

「多分だけど、君がラムダ・ドライバを使えないのは迷ってるからじゃないかな」

「?迷っている?何にだ?」

「君はそのデバイス……アーバレストだっけ?それを嫌悪してるその嫌悪が君の動きに迷いを見せてるんじゃないかな?」

「……」

オレはそれに、何も言えなかった。

確かにそうだ。

さっきのことや最近の訓練の時もそうだ、ラムダ・ドライバは作動しなかった。

オレはだからこそ嫌悪している。

アーバレスト(トリガーを引いた時に確実に作動しない兵器)を。

「あの子に聞いたんだけど、デバイスは魔導師のパートナーなんだって」

「そうか」

それっきりこの少女との会話は終わった。

しばらくすると少女が再びオレに話しかけてきた。

「そういえば」

「何だ?」

「あなたの名前、何?」

いきなり、何を言いだすんだこいつは?

「カシム。性は無い」

そう言うと少女は驚いた顔をするがすぐに元に戻した。

「私は春日部耀。よろしく同類君」

「同類?」

「……君も、転生者だよね?」

「肯定だ」

「認めるんだね」

「問題はない」

そう言うと、少女ー春日部耀は再び外を見て急いで向こうへ行った。

オレもそちらに目を向けると、そこには同じようなバリアジャケットを着た5人の男がここを囲っていた。

 

しばらく様子を見ていると5人の男にあの管理局員がたった1人で向かっていった。

戦闘が開始してしばらく経つと今度は八神姉と美咲が後に続いていった。

「君は、行かないの?」

「あぁ」

「君の友達が死ぬかもしれないのに?」

「……あぁ」

「そっか」

そう言うと少女はオレの隣に座った。

「ねぇ、最後かもしれないから教えてよ」

「……何をだ?」

「君のこと」

春日部に前世のことを全て言っていく。

とある国で殺し屋として……暗殺者として育てられたこと。

大切な少女を殺してしまったこと。

そして、対テロ組織に入ったことなど。

短い時間だが、オレの時間はかなり時間が経ったような気がした。

「……そんな、前世だったんだ」

「肯定だ」

話していると、爆発音が遠くから聞こえた。

「もう、終わったのかな?」

「……そうだな」

ふとポケットに入れたままのアーバレストを手に取る。

「無様だな」

「そうだね」

アーバレストから送られてくる映像を見てそう言う。

隣に座っている春日部がオレの肩に頭を乗っけてくる。

「何か言いたそうだな」

「分かる?」

「あぁ」

じゃあ言うねと春日部は小声で言いそして、オレの腹を殴った。

「ガッカリした。神様が特典として選んだ人がこんなヤツだったなんて」

今度はさっきよりも力を入れ再び同じ場所を殴られた。

「無様だと思った」

「そうだな」

今度もさらに力を入れて同じ場所を春日部が殴ってくる。

「何より、」

1度言葉を区切り春日部はオレを蹴飛ばした。

そして、その後オレを抱きしめた。

「あなたが、普通の人間らしくて安心した」

「ぁっ」

春日部に抱きしめられどれだけたっただろう?

数秒程度だと思うがオレには永遠のように感じた。

「大丈夫だよ。君は人間なんだからそうなるのも仕方ない。でもねカシム」

それでも、貴方がやる事は有るでしょ?

そう言われてオレはアーバレストを握る力を強くする。

そうだ。昔のオレとは違う。

昔のオレのようにただ人を殺す機械ではない。

今のオレは彼女に教えられた人間らしさを身につけた。

外に出る前にもう一度春日部を見る。

春日部は何が何だか分からず頭をかたむけている。

「行ってくる」

「……うん。気をつけてね」

「セットアップ」

TAROS(Transfer And Response ”Omni-Sphere")起動』

オレは春日部をもう一度見てから外に出た。

 

 

side?

私、氷川奏はこの状況をどうしようか、考えています。

つい3ヶ月前(・・・・)からとある犯罪組織に厄介なものが流出された。

『ラムダ・ドライバ』原理は不明だが私たち魔導師にとっては天敵とも言えるものです。

私はそれを今、身を以て知っています。

葵さんや美咲さんのおかげでまだ生きていますけど、多分もう持たないでしょう。

「これで……終わりかーい管理局ぅぅ!!」

こっちの魔力はもう少ない。

正直に言ってもう、無理だ。

[葵さん、美咲さん逃げてください!!]

[奏ちゃん!!]

[もう無理です。今しか逃げられません!!]

[でもー]

[大丈夫です。奏は大丈夫ですから]

「お話しは済んだかなぁ?それではぁぁぁー」

リーダーらしき男のデバイスが私を捉える。

「ごきげんよおぉぉぉぉぉ」

痛みに備えて目を瞑るがいつまで経っても痛みはこなかった。

どうして?

[今誰がやったの?美咲さん?]

『違うよでも美味しいタイミングじゃない?』

『どうやらそのようだな』

声が聞こえてきた方を見るとそこには白が居た。

ゴースト4(・・・・・)より各位へ待たせてすまなかった』

その姿は私たちを救いに来てくれた正義の味方(ヒーロー)のようで

『後は任せてくれ』

とても、カッコよかった。

 

 

sideカシム

「今作動したなアル」

『肯定です軍曹殿』

バリアジャケットのあらゆるところから煙が出てくる。

『ラムダ・ドライバが確実に作動しました』

「動いたり動かなかったりまったくアテにならない物だな」

『私もそう思います』

「お前はオレより冗談が上手いようだ」

肯定(アファーマティブ)

「憎まれ口も……な」

敵の方を見るとねんわ?とやらをしながら慌てているのが分かる。

その間にアルが集めた戦闘データを見て状況を把握していく。

「オーバーSランクの魔導師が5人。さらにラムダ・ドライバ搭載型のデバイスを持っている。普通なら逃げ出すところだが」

『いいえ、行けます軍曹殿』

「そうだ」

その言葉と共にビルの上から飛び降りる。

あの時戦った男が俺に魔力弾を撃ってくる。

だがそれはオレの目の前に展開しているラムダ・ドライバの力場が防ぐ。

「まずは一人」

後ろに控えている男が目に入ったので狙う。

確かに奴らはラムダ・ドライバを持っているが、それでも今のオレにはそいつを倒すビジョンが浮かんでいる。

引き鉄を引いて放った魔力弾(たま)は相手の張った力場と一瞬だけ拮抗しすぐにその力場ごと敵を撃ち抜いた。

下で奴が息を呑んだのが分かる。

「この野郎!!」

飛んでくる魔力弾を力場を使って防ぐ。

「散れぇ!!」

奴の号令で待機していた魔導師が全員散開した。

そのうちの一人がオレに魔力弾を撃ってくる。

オレはそいつを誘き寄せるように目立つ場所を移動する。

そして、ついてきてるのを確認して細い糸を踏んで高く跳躍する。

「なんだと!!」

やろうとした男は出来ずそのまま地に倒れてしまう。

オレはそいつに照準を合わせ撃つ。

「2人!」

『接近警報』

アルの声で上を見ると奴が槍を振り下ろそうとしていた。

バリアジャケットの腰にあるポーチからナイフを取り出しぶつける。

その時に力場を出し奴を無理矢理吹き飛ばす。

それと同時に左手に持っていたアーバレストを後ろの敵に向ける。

避けようとするがオレが撃つ方が早い!!

『3人』

「先に言うな!!」

そして、先ほど吹き飛ばした奴を仕留めようとして移動していると横からもう1人いた敵がぶつかりオレを吹き飛ばす。がそれと同時に奴の身体に魔力で出来た糸を巻き地面に叩きつける。

「『4人!!』」

アルと声が揃えて撃墜数を言う。

奴は動揺しながら次の場所にって

「不味い!!」

急いで追いかけるとそこにはやはり先ほどの管理局員が奴に捕まっていた。

「来るな!!来るな来るな来るな!!こいつを殺すぞ!!」

管理局員のくせに顔色が悪い、それでも管理局員(オレの故郷を滅ぼした奴の仲間か)と言いたいが言わない。

「お前のラムダ・ドライバは不安定じゃなかったか!?何なんだ!!その強さは!!それに、何故自分の故郷を滅ぼした奴の味方をする!!貴様!!いったい何者なんだ!!」

この状況、下手をすればあいつも殺しかねない。

どうする?

そうだ、確か智春が言っていた技あれならば。

「オレが何者か…………知りたければ教えてやる」

そう言いながらオレは自分の右手に力場を集める。

「管理局だがなんだがどうでも良い!!」

「おいおい、こっちには人質が……」

力場が充分に集まったのを確認する。

そして、イメージも強固にしていく。

「オレは第3管理世界『ヤムスク』出身」

「もしもーし」

残りの魔力や散らばっている使用した魔力も右手に収束させる。

「元レジスタンス組織『グレイル』コールナンバーはゴースト4で」

「聞いてるー?こっちには人質が」

奴の言葉を聞き流しながらも一歩一歩確実に進んでいく。

「現八神家と夏目家の居候!!」

奴が乾いた笑いをする。

だが、それでも容赦はしない。

こいつを、この一撃で倒す!!

「ただのカシムだ!!」

振り下ろした右手を管理局員の前で止める。

すると、管理局員の後ろから極光が現れる。

極光の柱はそのままのぼり結界を破壊しながら空へと消えていく。

しばらくするとデバイスが完全に壊れたが気絶している奴がいた。

「やったね!!カシム」

「やったんだねカシム君!!」

「肯定だ。これよりゴースト4は……」

途中で言葉を区切ると2人してどうしたの?と聞きたそうにしていた。

「訂正。これよりゴースト4は次の任務へ移行する」

そう言いながら目的地へ向かうと後ろから「「なにそれーー!!」」という声が聞こえた。

 

目的地。というか隠れていた遊園地に向かうとやはりそこには春日部が寝ていた。

「春日部」

声をかけても反応が無く仕方なく春日部の頬をムニムニと触る。

すると、春日部は不機嫌そうに起きた後、起こしたのが俺と知るや否や抱きついた。

「……心配した」

「……心配かけた」

「……うん」

「……行こう、全員、待ってる」

「……分かった」

 

そこに春日部を連れてくると管理局員は春日部の姿を見るや「大丈夫だった?」と抱きつきながら言っていた。

その様子を見ながらオレはどうしようか悩んでいた。

先ほど聞いた話だともうすぐここに応援がくるらしい。

その応援は間違いなく管理局の連中だろう。

オレは帰ろうとした時、八神姉と美咲に手を掴まれ引き止められてしまう。

するとそんなオレの様子に気がつき赤髪はオレに近づいてきてお礼を言ってきた。

オレの持ってる管理局のイメージと違いすぎていて警戒するのが馬鹿らしくなってしまう。

なんで帰ろうとするんですか!って聞かれオレはつい反射的に

「オレは管理局が、嫌いだ」

と言ってしまった。

だが、それでも少女は諦めずオレに話しかける。

話を聞いて分かったのはこいつも転生者だが、オレたちとは違うやつの手により転生させられた奴であること、そして、中身も子供だということだ。

「あっ!?忘れてました奏は氷川奏といいます」

「……カシム」

「よろしくお願いしますカシムちゃん」

ピシッとこの場の空気が止まったと思った。

次々と再起動していく周りというか春日部まで「女の子だよね?」っていう顔をしているぞ。

「オレは男だ」

そう言うと赤髪ー氷川奏は顔を真っ赤にして

「すみません。男の子だと知らず……に……」

だんどんと氷川の顔が真っ青になっていきそして、急にリンゴのような真っ赤になった。

「ぷぎゃぁぁぁぁーーーーーーーーーーー」

いきなり近くで叫ばれオレはしばらく抑えるのを忘れていた右耳が痛みを訴え始めた。

周りを見れば全員耳を塞いでいる。

「ごめん。言い忘れてたけど奏は人見知りで男性恐怖症」

「春日部、言うのが遅い」

 

しばらくすると氷川が落ち着き始めた。

「ごっ、ごめんなさいカシム君」

「……大丈夫だ。問題ない」

その後も様々なことを聞かれ答えた。

しばらくすると氷川がデバイスで通信をとった後捕まえていた奴らを転送させていく。

「すみません。もうお別れのようです」

そう氷川が言うと八神姉と美咲は悲しそうな顔をした。

オレと春日部は何も変わっていないが。

氷川はご丁寧に1人1人お礼を言っていきオレのところに来た。

……春日部の背中に隠れながら。

「あの!カシム君も……ありがとうごしゃいました」

最後なのに氷川は思いっきり噛んだ。

そしてそれを話題に盛り上がる女子(八神姉と美咲)

「別に良い」

そう言うとホッとしたような残念そうなよくわからない表情をしてくる。

「あの!!奏と良かったら……連絡先……交換してくれませんか」

「別に良い。アル送ってやれ」

しばらくすると氷川のデバイスが光り氷川の表情が眩しいぐらいに輝く。

「ありがとうございます。あの……また、会えますか?」

「オレは管理局員には会いたくない」

そう言うと目に見えて落ち込み始めた。

「そう……ですよね……やっぱり奏なんかとは……話したく……無いですよね」

何となくだが春日部たちに鋭い目で見られる。

?こいつらは何を勘違いしているんだ?

『軍曹殿。言葉が足りません』

「そうか。訂正する。オレは管理局員としての氷川奏ではなく普通の氷川奏に会いたいと言ったんだ」

そう言うと氷川は顔を真っ赤にして固まった。

春日部たちが再起動させようとしているが何かおかしかっただろうか?

『軍曹殿は鈍感なのですね』

「鈍感?殺気には敏感だと自負しているが」

『いえ、そういう意味ではありません』

結局、この後氷川が再起動すると顔を真っ赤にしながら転移魔法を使って帰っていった。

「あのさ、カシム」

「どうした?春日部?」

「私もカシムと同じように居候しても……良いかな?」




やった!!
やっと一万文字入ったぜひゃっはー。
というわけで次回予告。
カシム「春日部という新たに加わった居候」
美咲「そして最近カシムが何やらやっているもよう」
耀「……そんなことより……お腹空いた」
葵「次回『転生者たちの日常』」
智春「原作開始まであと少し……果たして作者はそれまでに原作を何回見るのかお楽しみに〜」


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転生者たちの休日だそうですよ?

side奏

 

『なるほど。次の日曜日にこっちへ来るのか』

「はい。その時はよろしくお願いします」

『肯定だ』

その言葉と同時に通信をやめる。

一息ついてからカレンダーを見る。

「次の、日曜日だよね?」

しばらく休暇を取ってない奏はこれを機に2日『地球』で過ごそうと思っています。

「でも、気づいて欲しかったです」

そう、今回はカシム君と仲良くなることを目的とした旅行。

でも、カシム君は……気づかないよね。

むー。自分でも気付かないうちにほおが膨らみます。

でもでもこの2日で距離を縮められたら……良い……ですよね。

早く次の日曜日にならないかなぁ?って思いながら今日も奏は職務を全うします。

 

sideカシム

 

「いい加減機嫌を直せ美咲」

「……ツーン」

「姉さん。これは自業自得だよ」

美咲に料理対決だ!!と突然言われ智春と共にやってみたがその結果美咲が拗ねてしまった。

「そもそも姉さんは料理ができないんだからこうなることは分かってたでしょ?」

「……それでもさ。智春は私の札を挙げるべきだと思うよ!!」

「それは無理」

何デー!!と美咲が智春に向かって拳を放つ。

ここ数週間の間ではよく見かける光景だ。

『軍曹殿。これは何をしているのでしょうか?』

突如アルがオレに聞いてくる。

「これは一種の演習だ。自分の持てるもの全てを使うことで反省点などを見つける」

『そうですか』

最近アルとの仲も概ね良好だ。

だが、それとは別でもう一つ。

「春日部、そろそろ足が限界なのだが」

「……もう少しだけ」

「さっきもそう言っていた気がするが」

「それは気のせい」

春日部がオレの膝を枕にしているため全く動けない。

「そう言えばカシム」

「どうした?智春」

「これ、カシム宛の手紙」

「オレ宛か?後で見ておく」

ここ置いとくよと机の上に白色の封筒が置かれる。

最近は色々なことが起こりすぎて疲れる。

街に美咲達と行けば銀髪や金髪に襲われついこの間は智春が誘拐に巻き込まれた。

唯一心と身体が休めるのは八神家と夜の通話時間だけだな。

「そう言えば、カシム聞いたよ〜奏ちゃんとデートするんだってね」

「?デート?デートとは何だ?」

『軍曹殿。デートとは戦争のことです』

「違う違う、そっちのデートじゃなくて普通の男女で遊びに行く方のデート」

「それならば肯定だ」

すると春日部がわざとらしく足をつねる。

さっきから動いていないためものすごく、痛い。

「春日部、痛い」

「……唐変木」

それだけ言うと春日部は猫のようにオレの膝から降りて自分の部屋に向かう。

「アル。唐変木の意味を」

否定(ネガティヴ)です軍曹殿。これは軍曹殿が自分で考えて答えを出すべきです』

「むっ。そうなのか。ならば善処する」

余談だが、この後カシムは寝る間も惜しんで考えるが結局分からなずにモヤモヤとしたまま朝を迎えた。

 

昨日見忘れたが確かオレ宛に手紙が届いていたはず。

案の定昨日智春が置いていた場所にあった。

手紙の封を切りトラップなどがないことを確認してから封筒から手紙を出す。

手紙を読んでいくとそこに書かれていたのは私立聖祥大附属小学校に2年後の春から編入してく欲しいとのことだった。

下にアーテと書かれていたということはあの幼女か。

それにしても、学校とは何をするとこなのだ?

明日、氷川に聞いてみるか。

 

集合場所に遅れないように行くとそこには氷川がいた……のだが、

「何故柱に隠れている?」

「……これだけ人がいると落ち着かなくて」

「まぁ、良いか。どこに行くんだ?」

そう言うと氷川に手を握られ「こっちです」とそのまま引かれ遊園地の方に向かっていく。

 

side智春

 

カシムがデートに行っている間僕は来たくもない場所に来てしまった。

まぁ、来たというよりはどちらかと言えば拉致だけど。

月村家とバニングス家を甘く見ていた。

まさか、ここまでやるなんて。

そう思いながら高町達と共にいる『宮永輝』を見る。

何処からどう見てもバニングスに好かれているのに気づかない。

カシムもだけど僕の周りには鈍感が多い。

そう考えていたら猫が僕の頭に乗ってきて猫パンチやらひっかくやらをしてくる。

今日の僕は不幸なのかな?

 

side美咲

 

おぉ、やるねぇ〜奏ちゃん。

カシム君の手をがっちし掴んじゃってるよ〜。

その様子を私は葵と耀ちゃんと共に見る。

というか、さっきから2人の後ろに黒いオーラが出てるんですけどー。

確かにさー私もあれを見てイラっときたけどさー。我慢してるよー。多分。

でも家帰って来たらちょっとー甘えようかなとは思ってるけど。

うん?もしかして私の休日ってこれで終わる系?

こんなリア充を観察するだけで?

……ヤダァ〜。

こんな休日、過ごしたくなかったよ!!



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ラスボスの集まり……だそうですよ?

【女神アーテの報告書より抜粋】

ーーーーー以上のことから今回私たちの課が転生させたところにもう一つ別の課が転生者を送っていたことが判明。

おそらく15人の転生者がいるとされる。

しかし、そちらの転生者は様々な点で問題がある。

よって、『イレギュラー』が確認された場合対処可能な転生者は6人である。

 

 

sideカシム

 

氷川とのデート?からかなりの日が経ち美咲達が小学校3年生になった。

美咲達が言うにはもうすぐ原作が始まるらしい。

まぁ、オレは介入しないが。

あと変わったところはオレの出身世界第3管理世界『ヤムスク』が管理世界から無人世界に変わり、また出入り禁止世界になったというところだろう。

ヤムスクが管理世界から無人世界に変わった理由は恐らく『アレ』だろう。

だが、不可解なことはそこに今も管理局員がたまに捜査に行きMIA(戦闘中行方不明)の判定を受けている。

馬鹿な連中だと思う。

あそこには十全の準備をしても今の技術(テクノロジー)では意味がない。

というかそもそもあそこに行っても管理局員では同士討ち(・・・・)することは確定だろう。

いい気味だ。

ヤムスクの都市は複数の数字で区別されている。

外側からだんだん中へ入っていくごとに数字は大きくなる。

ヤムスク1〜10は農地。豊富な土地は様々なものを育てられる。

ヤムスク11はこのヤムスクという世界の中心(・・・・・)

ヤムスク12〜20は資源などが豊富でラムダ・ドライバ搭載型のデバイスのほとんどはここで取れる鉱石などを利用して作られる。

ヤムスク21〜30はオレたちゲリラなどの下級階級の民が住んでいる通称ゴミだめだ。

以上の1〜30がヤムスクの世界での都市の名前だ。

そして、管理局員が同士討ちする元凶は世界の中心ヤムスク11(・・・・・・)のTAROSだ。

9年前のヤムスクでの12月25日午後11時11分。この世界での12月24日午前0時00分。突如このTAROSが暴走。

次元断層とごく僅かな精神波が放出されるということが起きた。

だが、この時放出された精神波<タウ波>は一般人には何の害も引き起こさなかったがその時間に産まれた新生児に影響を与えた。

これがささやかれし者(ウィスパード)の誕生の秘密だ。

そして、そのヤムスクが滅びる時恐らく再びあの腐った王はTAROSを使った。

その結果、次元断層だけでなく精神波までも再び放出されてしまったのだろう。

恐らくその時に放出されたのは<タウ波>ではなく<イタオ波>。

こちらはタウ波とは違い一般人にも影響が出る。

イタオ波の効果はある意味誰もが求めるだろう。

何せ使い方によっては平気にもなる。

イタオ波は<あり得た未来>をその人達に見せる。

これが普通なら良いと思うだろうが現実には違う。

<あり得た未来>とは一つではない(・・・・・・)

未来は一つではないのだ(・・・・・・・・・・・)

普通の人間ではヤムスクに入ることもできなくなる。

精神がどれだけ強くてもヤムスク1が限度だろう。

それ以上は対処法を知らない限り一歩も動けない(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

まぁ、たとえ対処法を知っていたとしてもヤムスク11には絶対に、たどり着けない。

このまま管理局がヤムスクの調査を止めないのなら死人が増えていくばかりだ。

それはそれでオレ的にも良いのだがな。

「そう思わないか?ジェイル・スカエリッティ(・・・・・・・・・・・・)?」

「全くそう思うよウィスパード」

オレは今ジェイル・スカエリッティという時限犯罪者に会っている。

といってもこいつの考えている戦闘機人。

そいつらの製作の手伝いをしている。

こいつと出会ったのは一ヶ月前。

管理局員に追われているこいつを助けたのがきっかけだ。

それ以来、ミッドチルダやヤムスクの情報を集める手助けをしてもらっている。

「それにしても、計画F(プロジェクトフェイト)か」

「元々はウィスパードを量産しようとして老害が理論だけ完成させた計画だよ。……まぁ、結果は失敗だったけど」

「だろうな」

2人して同じタイミングでお茶を飲む。

「あんたは何時までここに居る?プレシア・テスタロッサ(・・・・・・・・・・・)

「私だって来たくて来たわけじゃないわよ。そこの変態が来いって言ったから(脅迫したから)渋々きたのよ」

「まぁまぁ、良いじゃないか。管理局を嫌っているだけの者たちの集まりでは無いのだから」

「そうだな『無限の欲望』とも言われ『天才科学者』で『オーバーSランクの時限犯罪者』に『ウィスパード』、そして『オーバーSランクの魔導師』普通じゃないな」

「ゲームだったらラスボスの集まりねここ」

確かにそうだ!!と笑いながらジェイルはお茶を口にする。

「それでどうだい?アリシアちゃん(・・・・・・・)の容体は?」

「カシムが送ってくれた医療機器のおかげで回復には向かってるけどもう一つの装置を使うには膨大な魔力が必要。で、それはどうするの?」

「魔力の問題ならラムダ・ドライバの技術を応用して何とかする」

そう。とプレシアは安堵したような顔をする。

「全く、せっかくのお茶会なのにそういう事を言わないでくれたまえよ」

「「お前がそれを言うな(貴方がそれを言わないで!!)」」

「仲が良いことで」

やれやれとでも言いたそうな顔をしているジェイル(変態)

「グランツ博士は最近どうなんだ?」

「グランツは最近娘ができたそうだ。実に喜ばしい」

「あら、今度見に行こうかしら」

「そうだな」

グランツ博士はオレたちと同じ。

管理局に狙われている人だ。

何でもネットサーフィンをしていたら寝ボケて管理局のコンピューターをハッキング。

最高評議会の秘密を知ってしまったためこうしてオレたちと同じように狙われてしまうようになった。

オレは……何処からかオレが生きている事が知られてしまい保護というなの実験をさせられそうになっているのだが、今のところ管理外世界からあまり出ていないから多分……大丈夫だ。

「そろそろ時間ね」

「そうだな」

「肯定だ」

時間が来たからと言う理由でオレとプレシア女史は帰るための転移魔法を組む。

「次は何時にする?」

「ゴールデンウィーク?とやらで良いんじゃないかしら?」

「そうだな。その時にまた来よう」




次回予告
カシム「ついに原作が開始」
智春「でも此処でイレギュラーが発生」
美咲「さぁ、此処からは私のターン!!」
奏「ちっ、違います違います!」
葵「そして、此処からはカシム君より私たちが活躍?って何でカシム君はプレシアさん達に合ってるのー!?」
耀「……次回『原作開始とイレギュラーだそうですよ?』」
輝「って、俺のセリフは!?」
全員「ごめん。忘れてた」
輝「うわぁぁぁぁぁぁ」


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無印
原作開始とイレギュラーだそうですよ?


俺たちはその合図を聞いた。
これでより良い方に物語を進められる。
そう思っていた。
転生者の存在が必ずしも良い方に進むとは限らない。
そして、転生者が全て良い方向に物語を進めようとは限らない。
俺たちはそこを失念していた。


【女神アーテの報告書より抜粋】

ー以上22名が魔法少女リリカルなのはに転生したと思われる。

転生した先で特典を悪用しているのは11名。

現在いる転生者の中で彼らに対処できるのは1人のみ。

よって、転生者達を1度あそこに連れてくることにする。

 

sideアーテ

 

はぁと溜息を吐き準備を進める。

他の課でも転生させた人がいるらしい。

でも今回の場合は非常に不味い。

転生させた時間も時期も悪すぎるのです。

それにより大きな歪みができその結果『カシム』に重大な役割を押し付けてしまいましたし。

「それにしても、此方に敵対する意思を持っている人たちの特典。厄介ですね」

確かに私たちは転生者に特典を渡しますが多くの人正確に言えば10分の9の転生者たちはその特典の力を十全に引き出せません。

まぁ、稀に自分の特典の力を十全に引き出す人や特典を一切使わない人(・・・・・・・・・・)もいますが。

それにしても、多いですね。

今回の転生特典、ほとんどの人が型月作品を選んでいる。

行く世界がわかっていたからと言っても不思議ですね?

何故型月でしょうか?

チートなら他の作品でも多々あるのに。

はっ!?仕事仕事。

 

side智春

 

高町が今朝バスの中で不思議な夢を見たという話をしていた。

これは確か原作開始の合図……だった気がする。

最近はカシムも家にあまり帰らなくなってきている。

この原作?に関係があるのだろうか?

だが、今は原作だ。

隣にさりげなく座ってきた宮永君が声をかけてくる。

「夏目は原作介入派なのか?」

「何だよそういう派閥みたいなの?」

「知らないのか?今転生者の多くは派閥を作って情報の共有をしてるんだぜ」

「ヘェ〜」

最近、転生者と思われる人たちがコソコソとしてたのには気づいてたけどまさか派閥を作っていたなんて。

「夏目、一つだけ聞いておきたい」

「何だよ」

「お前の家の転生者は……最近人を殺したか?」

その言葉に僕は即答できなかった。

最近ニュースなどで取り上げられている殺人事件。

その方法が僕らの知ってるアニメにそって殺されているのだ。

「俺は今回の殺人事件は転生者のせいだと思ってる」

「だろうね」

「俺たち原作介入派には犯人はいなかった。なら他は踏み台組と夏目家、そして今だ行方がつかめていない転生者の誰かだ」

「……僕の家の居候が最近何処かに行ってる。でもこの殺人事件とは無関係だと断言できる」

そう言うと彼は一瞬目を鋭くさせた。

「根拠は?」

「彼ならあんな嬲る様な殺し方は絶対にしないから」

「……何だよ……それ」

この話は以上だねと言い彼は自分の席に向かっていった。

 

授業中僕はカシムのことを考えていた。

彼は自分の前世のことを一部を隠して僕らに言った。

その一部のところだけ彼の目は哀しみが深くなっていたから僕らも聞けないけど。

ってそれはともかくカシムは恐らくこの事件について調べてる。

それも僕らを巻き込まないようにしている。

宮永君の言う通りおそらくこれは転生者の仕業だ。

だけど、動機が見えない。

カシムなら、すぐに分かるのにな。

そんなこと、カシムに言ったら絶対。

「オレは専門家(スペシャリスト)だからな」

って言うんだろうな。

はぁ、早くカシム帰ってきてくれないかな。

もう、あんなゲテモノ食べたくないから。

 

sideカシム

 

「ここも、酷いな」

ツンと鼻に付く腐敗臭。

そして目の前には無数の穴が空いた管理局員の死体。

オレは死体を漁りながらアルに氷川に通信を繋げるように言った。

『……どっ、どうかしましたか!かっ、カシム君!!』

「落ち着け氷川。それに、今回のことはあまりお前に言いたくはないんだがな」

『……何が……あったのですか?』

「殺人事件だ。それも管理局員とリンカーコアを持ってる奴を狙った凶悪な」

そう言うと氷川は顔を真っ青にした。

『理由は……何でしょうか?』

「十中八九、転生者を殺すことだろうな連中の目的は」

『……何で、そんなことを』

「さぁな」

そういう風に氷川と通信していると目の前がぐにゃりと歪んだ気がした。

 

目を開けるとそこは転生した時と同じ場所だった……いや、正確には椅子の数が増えている。

そして真ん中にはあいも変わらず幼女もといアーテがいる。

何のために、オレをいやオレたちを呼んだんだ?

アーテの話をまとめるとこうだ。

最近の殺人事件は転生者によるもの。

この場にいる転生者は殺人事件に関わっていない。

殺人犯に注意してください。

まぁ、そうだろうな。

自分たちが転生させたのにすぐに殺されては余りにも、可哀想だ。

そして、皆が返されオレとアーテだけになった。

なるほど、アーテにとってはこっちが本命か。



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初めての戦闘と暗躍する黒い影だそうですよ?

side智春

 

僕と宮永君は今動物病院にいる。

神様からの忠告で一応最初だけ様子を見ることにした。

僕もこれには賛成なんだけど……何で僕はここにいるんだろう?

「ねぇ、何で僕はここにいるのかな?」

「仕方ないだろ俺の特典を知っていて暇なのは夏目しかいなかったんだから」

暇って確かに暇ですけども!!

「静かに、始まる」

その声で余分な情報を頭から消して目の前の出来事に集中する。

目の前でユーノが吹き飛ばされて高町にぶつかる。

そして、ここで

「ハハハハハ。俺のために踏み台になれ雑種!!」

英雄(馬鹿)が宝具撃ちながら来た。

だがその攻撃はさらに高町の行く先を防ぎ高町を助けるどころか逃げるのを妨害している。

「夏目!!行くぞって……デバイスは?」

「僕は持ってないよ。造ってる人曰く後一週間で完成らしいけど」

まぁ、造ってるのがあのカシム(非常識の塊兼天災)だからどんなデバイスになるのか分からないけど。

「……そっちの神様って不親切だな」

「そうだね」

「じゃあ、夏目は俺のサポート任せたぞ!!」

「はいはい」

そして僕らは駆けつけようとして違和感を感じた。

「なぁ、夏目何か感じなかったか?」

「うん。感じたけどその違和感が分からない」

「……どうする?」

「……一度原作に介入しよう」

「分かった」

その言葉と同時に僕らは高町に向かって走り出した。

 

side????

 

何だよ所詮はガキってところかよ。

「……けて」

「はいはい助けてあげますよっと」

引き鉄を引く。

撃ち出された弾はさっきまで少しずつ皮を剥いでいた(遊んでいた)少年の頭を撃ち抜いた。

けっ、つまんねぇ。

でも俺と同じ転生者は見つけた。

あいつらは少しは楽しませてくれるのかねぇ。

「今度はなんて書こうかね。そうだ!!この世界に転生した時にあった多分死んだあの子供(・・・・・・・・・・)に向けてのメッセージにするか〜」

血で壁や床に日本語で文字を書く。

この意味がわかる奴は……いるかねぇ?

 

sideカシム

 

「はぁぁ!?あそこがばれた!?」

「さっきからそう言っているだろう?グランツ」

「そうようるさいわね」

「今回ばかりはそこのジェイル(変態)に同感だ」

プレシアの泊まっている場所に集まり全員で定期報告をしている。

そこでジェイルからヤムスク11のTAROSがばれたとの報告があった。

「いやいや、TAROSはばれたらまずいものじゃないか!?」

「肯定だ。だが奴らはTAROSのもとに行くことは出来ないだろうな」

「どういうことだい?」

「前にも言ったが今のヤムスクに管理局員が言っても無駄なんだ。ウィスパードでもギリギリなのに耐性もない一般人が行ってもTAROSに到達する前に全滅する」

そう言うとグランツ博士はそうだったねと落ち着いた様子で言った。

「次は私の報告ね。フェイトが可愛くて仕方ー」

「次はグランツだったね」

「ちょっと、最後まで言わせなさいよ!!」

プレシアの娘自慢を聞かされると長いのは最初の報告の時に知っていたのでジェイルが中断させる。

「次に僕だね。娘たちがー」

「「お前もか(君もかい!!)」」

はぁはぁとジェイルが疲れているのに対してグランツ博士とプレシアが何やら結託しているのが見えた。

「次はカシムだね」

「了解した」

オレはあるを取り出しとあるデータを出す。

「……これは?」

「……何よ、これ」

「ここまでするなんて……ね」

データにはここ一週間で調べ上げた殺人事件の現場写真と証拠、メッセージと思われる文章が映されている。

「カシム。これだけかい?報告は?」

「プレシア、すまない」

「あれのことね」

「肯定だ。オレのラムダ・ドライバを使っても魔力が足りない。他の何かから外部供給しなければならない」

「そう。まぁ、良いわ私はもう時限犯罪者のようなものになっているしね」

その言葉でこの場にいる者は顔を曇らせる。

ここにいる全員は管理局に犯罪者とされているものばかりだ。

『ジェイル・スカエリッティ』は様々な犯罪をしたこと。

『グランツ博士』はありもしない事件の犯人として。

『プレシア・テスタロッサ』は責任を押し付けられて。

『オレことカシム』は次元兵器を開発し世界を破滅させた一員として。

それぞれ管理世界では生きられないのでこうして管理外世界にいる。

「……私は」

プレシアが覚悟を決めたような顔をしてオレたちにある事を告げた。



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だから私は娘を愛する……だそうですよ?

分かっていた。
プレシア女史がそうすることを。
だからオレたちは持てる全てを使って彼女を目覚めさせようとしていた。
でも、遅すぎた。
きっと、彼女はあれを狙うだろう。
自分の……娘たちのために。


sideカシム

 

「それで……良いのか?」

「ええ。娘の為なら例え火の中水の中娘のスカートの中までよ」

「「すまない黙ってろ変態(痴女)」」

「ははは。過去これまでカシム君とジェイル君がシンクロしたことは無いね」

シリアスだったのにプレシアの言葉でその空気が霧散してしまった。

そしてプレシアは真面目な顔をしてオレたちに理由を述べた。

「仕方ないでしょ?貴方達はともかく私はそれほど逃げる宛は無いしそれに、私は癌。それも末期癌なのよ?それならアリシアを目覚めさせてフェイトを私と同じようにさせない様にするのが私の努めよ」

その言葉で全員が本気だと思った。

だがプレシア女史ー。

「そのセリフ、鼻血がなければ感動した」

「同感だね」

「私も同意するよ」

「仕方ないでしょ!!今フェイトとアリシアのあんな姿やこんな姿を想像したら……ごめんなさい鼻血が止まらないわ」

「いい加減子離れしろ」

この面子が揃った時点でおそらくシリアスなんてものは無くなるのだろう。

今、それがよくわかった。

「それじゃあカシムはどうするの?」

「オレは……こいつを追わないと行けないからな」

そうして指をさすのは現場写真。

「そうね。お願いするとして」

「次はこちらの話か」

今度はグランツ博士が写真を置く。

「やはり管理局は裏で『アマルガルム』と繋がっていたよ」

『アマルガルム』ラムダ・ドライバ搭載型のデバイスを使用する犯罪組織。

構成員のほとんどは昔傭兵として活躍していた魔導師であること以外不明の組織。

奴らの目的はヤムスクに居る『とある生物』を捕まえること。

そのためにラムダ・ドライバの研究をしているらしいが……無理だろう。

ラムダ・ドライバは基礎理論を知っているジェイルでも解明できなかったものだ。

それ以前に『彼女』を見ることが奴らにはできないのだから。

「……以上だ。ほかになにかあるのなら今ここで言うべきだけど」

「……オレから一つだけ良いか?」

するとジェイルもグランツ博士も意図を察してくれてプレシア女史に目配せする。

「プレシア女史なぜここまでする?」

「そんなの決まってるわよ!!」

プレシア女史は何処からか取り出した1枚のポスターを広げながらオレに説明してくる。

「私は娘を愛している。だから、」

プレシア女史が広げたポスターは

「私は例えその愛すべき娘に恨まれても娘を幸せにしたい!!」

プレシアの娘の昼寝姿だった。

ここ一帯の時が止まった気がした。

プレシア女史はそれに気づいていないのか鼻息をどんどん荒くする。

そして、オレたちはああ、いつものプレシア女史だと思いながら解散していった。

 

そして次の日新しい殺人現場に残されていたメッセージを見てオレの顔にとある男の顔が浮かんだ。

『翼なき鳥の子供に告げる。

虎の子は還り虎の親は血を流す。

沈める血は輪廻を外れた生き血。

翼を持たない鳥よ待っていろ。

俺はお前たちを喰う』

「何だよ?この文意味がわかんない」

「そうだねぇ〜まぁ、関係ないし良いか!」

「良くない!!」

美咲の気楽な言葉につい声を荒立ててしまう。

その様子を見て美咲と智春はそんなオレを見て目を瞬きさせている。

だけど、この時のオレはそんな美咲達の様子など知らない。

今オレの頭を支配しているのはあの男に対する敵意だけだ。

「……カシムは、あの文の意味を理解したんだね」

「アレはオレにしか理解できないメッセージだ」

「内容を聞かせてもらっても良い?」

美咲がオレに聞いてくる。

それで、オレは少し冷静さを取り戻した。

「まず『翼なき鳥の子供に告げる』これはオレのいたレジスタンス組織のことだ。

次の『虎の子は還り虎の親は血を流す』これはオレたちは死んだが虎の親、オレたちに人を殺す術を教えたある男のことを指す。

その次の『沈める血は輪廻を外れた生き血』これは、オレたち転生者を殺す(・・・・・・・・・・)という意味だ。

その次の『翼を持たない鳥よ待っていろ』これは奴がターゲットを見つけたと暗に指している。

最後の『俺はお前たちを喰う』これは奴が確実に仕留める時に使う言葉だ」

そして、オレは一呼吸置いてから2人に言う。

「あいつはオレたち転生者の居場所を知りオレたちを殺すと宣言した」

その言葉を聞くと2人とも乾いた声で笑う。

「まさか、そんな馬鹿なこと」

「あり得る」

2人とも無いと言おうとしていたのだろう。

だが、お前たちは忘れてないか?

「オレたち転生者は無意識の内に精神年齢の高さが出ている」

「でも、それだけで判断なんて」

「できない。普通ならな、だが奴は転生者だ(・・・・・・)原作を知っていてもおかしくは無い」

そう言うと2人ともこれが現実だと思ったらしくいつに無く真剣な様子になっていた。

「このこと、耀ちゃんには?」

「まだだ、今気づいたからな」

そう。と言いながら美咲と智春は学校へ行く準備をし始める。

「オレは……一人で奴を探す」

小声で2人に聞こえないように言った。




これがオレたちの運命を決めた日だった。
彼女は娘のために悪になる覚悟を。
オレは大切な仲間を守る為に再び地獄を進む覚悟を決めた。
この時のオレたちの覚悟が産んだものに目を背けて。
例えそれがこの日々を壊すことになろうとオレたちは止まれない。
いずれ裁かれる日までオレたちは進み続ける。

『次回予告』
その日は僕たちにとって一つの分岐点だった。
主人公とライバル。2人の少女が出会う。
僕らはそれぞれハッピーエンドへ向けて行動し始める。
だけど、僕らは忘れていた。
忠告されていたのに
ちゃんと言われたのに
それがあんな事になるなんて
この時の僕らは知らなかった。

次回『覚悟がないだそうですよ?』


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覚悟ないだそうですよ?

side智春

 

遂に昨日高町とテスタロッサが出会った。

そして、闘いになったんだけど、結果は惨敗だった。

宮永君も良いとこまで言ったんだけど英雄(踏み台)のせいで負けた。

そして、姉さんも本格的に原作に介入し始めた。

ただ、春日部さんとカシムは今だに僕らに協力をしない。

最近では春日部さんとカシムが僕らの家と八神さんの家に帰ってこない日の方が多くなってきた。

何をやっているのか聞いてみたけどはぐらかされてばかりだし。

後、昨日家に帰ったらデバイスが完成していた。

インテリジェントデバイスで名前はまだ決めてない。

杖だけでなく刀にも変形するし他にも様々な機能が搭載されている。

カルテット曰くこのデバイスは現代のデバイス技術の数十年先を進んでいるらしい。

カシム、ちょっとは自重しなよ。

あっ、さすがにラムダ・ドライバは付いてなかったけどその代わり『アジャイル・スラスタ』が搭載されていてこれは視線誘導を用いて制御するらしい。

だけど欠点としてこのデバイス、最大稼働時間が数十秒しかない。

アジャイル・スラスタは僕の魔力を使って充電をしてそれを一気に使うという一見便利に見えるが実際はそこまで便利じゃない。

カシムは使いようによっては最強だ。と言っていたけどこれは無理があると思う。

そんなことを考えていたらいつの間にか授業が終わっていた。

さようならと先生が言い僕も帰りの準備を始める。

「夏目!」

「どうしたんだい?宮永君」

「今日もあれ行くか?」

「うん。そのつもり」

そっかーと彼は安心したように言う。

 

夜になり僕と姉さんは集合場所に向かう。

原作では高町さんとテスタロッサさんが戦った場所……らしい。

「ジュエルシードが発動したね」

僕はそう言いながらデバイスーレイヴンを右手に刀モードで持つ。

セットアップを今日初めて使ったけどこの肩と腰についてるのは何だろう?動くのに支障は無いけどなんか気になる。

「来たよ!フェイトちゃんとなのはちゃん!」

姉さんの声で僕らはその方向を見る。

もう戦い始めてたのか。

そして、僕らは見ていることしかできずそのまま原作通りに次元振動が起きる。

でも、これは

「原作より……強い!!」

「くそっ!!」

振動だけで建物が崩れていく。

こんなの………どうすればいいんだよ!!

テスタロッサさんが生身でジュエルシードへ向かおうとする。

自殺行為だ!!

くそっ。

もう打つ手は無いのか?!

いや、あきらめるな!

その時、何かがジュエルシードに当たり光の柱を出す。

なんだ!?これは!?

 

サイド美咲

 

あの時に見た光の柱がジュエルシードを包む。

魔力反応を見るけど当然のことながらカシム君は見つけられなかった。

しばらくすると光の柱は消えそこには封印されたジュエルシードが転がっていた。

アルフと言っていた使い魔はそれを見てジュエルシードを取った後フェイトちゃんを回収してそのまま何処かへ転移してしまった。

 

side智春

 

あれからしばらくの時間が過ぎた。

高町さんのデバイスの自己修復が完了したから今日からまた再開するそうだ。

正直に言って僕はびびっている。

前の時と同じように次元震が起きたらとつい考えてしまう。

それと、もう一つは原作より敵が強化されてる可能性と転生者がいる可能性だ。

正直に言って僕は逃げたい。

このまま捨てて逃げ出したいけどそれをしたら後悔する気がする。

 

今度のジュエルシードの反応があったのは港だ。

コンテナなどがある場所で何の願いも叶えていない魔力を放出しているだけのジュエルシードを封印し、再び高町とテスタロッサさんが戦おうとした時、その2人の間に現れた人がそれを止める。

「ストップだ!この場所での戦闘は危険すぎる!」

全身が真っ黒な少年は僕らにそう告げる。

 

あの後フェイトちゃんは使い魔とともに逃げ、僕らは管理局の船で大人しく事情聴取と説明を受けていた。

そして、後は管理局がやるから君たちは関わらなくてもいいというリンディさんの言葉に宮永君がキレた。

まぁ、諸々の事情もあり、僕と宮永君はこれまで通りジュエルシード探索に参加。

高町さんは家族に相談して、許可をもらってくるらしい。

姉さんも参加するらしい。

まぁ、本人は将来管理局に就職するらしいけど。

将来っかカシムはどうするんだろ?

故郷はなくなって殺すことしか知らない。

幼い頃から戦場でしか生きてこなかった。

戦うこと以外のことを知らない彼はどうするんだろう。

 

sideカシム

 

「……駄目。血の匂いで追えない」

「そうか」

春日部でも追えないとなるとしばらくは転生者を見張るしかないか。

だが、誰を見張る?

オレが今把握してるだけでも20人は超えている。

その中で死んだのは10人。

それもこの街にいるやつだけ。

なら誰だ?

奴はおそらく殺しを楽しんでいる。

そして、今回の現場に魔力の残留が残っていることから殺し合いをしていたことになる。

だとすると、奴は転生者が一人だけでは楽しめないと思ったはず。

そして、最近夏目たちは集団行ー。

次の狙いがあいつらなら奴を倒す(殺す)なら見張るのは

「春日部、夏目の匂いを辿ってくれ」

「……智春の?」

「ああ、奴は次におそらく夏目たちを狙う」

 

side智春

 

管理局と協力することになった僕たちは今テスタロッサさんと高町さんの戦闘を見ているのだが。

「……これ、どっちが悪役なんだろう?」

そんな僕の言葉にユーノたちは苦笑いをする。

今僕の見ている画面では高町さんがスターライトブレイカーを抵抗できないテスタロッサさんに撃った場面が映っている。

なるほど、姉さんはよく高町さんのことを魔砲少女と呼んでいたが間違いじゃないね。

見ているこっちの顔色が全員青いよ。

高町さんがハキハキとそれ撃つからユーノ君とか顔色真っ青だよ!!

あの姉さんもこれを見て身体を震わせてるし!

恐るべし、魔砲少女。

決着がつきテスタロッサさんのデバイスがジュエルシードを吐き出した時、閃光が僕らの目の前を覆った。

 

眼が覚めるとアースラの医務室だった。

何でも敵の黒幕がテスタロッサさんとアースラに向けて魔法を撃ったらしい。

そして、その衝撃で僕は体制を崩して机の角に頭をぶつけたらしい。

っていうか、

「クロノ!僕らはどこに向かってるの!」

「時の庭園というプレシア・テスタロッサがいる場所だ」

いつの間にクライマックスに入ってたし!

そして、いつの間に無印の大事な部分に入ってたし!

「さようなら失敗作。貴女との家族ごっこも楽しかったけどしょせんは失敗作。本物には遠く及ばないわ」

その言葉を最後にモニターの画面が途切れた。

宮永君と高町さんの手が震えている。

あっ、これは僕も巻き込まれるパターンですね。

 

sideプレシア

 

ふぅ。とため息を吐く。

娘のためにとは言えこんな本心ではない言葉を吐くことになるなんてね。

でもね、こうするしかないのよフェイト。

貴女とアリシア、どちらも守るにはこれしかないのよ。

私は机の上に置いてある写真立てを倒す。

「後はカシムがこっちに来てアレを起動させー」

「ー悪いけどさ〜それは出来ないんだな〜」

後ろから右胸を貫かれた。

「悪いけどさ〜。俺の目的のためにお前はもうちょい生かしておいてやるよ」

「……目……的……?」

「まだ喋れるのかよ、まぁ、冥土の土産に教えてやるよ」

意識が朦朧としてくるけどそれを気合いで繋ぎとめる。

「殺し合いだ」

その言葉を聞いて私の意識は途切れた。

 

side智春

 

何でも原作と違いゴーレムなどが一切ないらしくプレシアの元まで行こうとした時

「まってくれ!」

宮永君の声が聞こえた。

そこにはさっきまで心ここに在らずのテスタロッサさんが宮永君と共にいた。

「私も、連れて行ってください」

「だが」

「私は母さんに伝えなければいけないことがあります」

テスタロッサさんの目には高町さんを沸騰させる何かがあった。

クロノもそれを感じたのかため息をはいたあとテスタロッサさんの同行を許可した。

そして、プレシアのいる場所に行くとそこには、

「おう、遅かったな」

倒れたプレシアに銃を向けている男がいた。

「そして、さようなら」

テスタロッサさんの声が聞こえる。

だがその声も虚しく引き鉄は引かれ放たれた銃弾はプレシアを貫いた。

その光景に誰もが反応できなかった。

テスタロッサさんの泣き声が聞こえる。

そして、それと同時に宮永君が飛び出す。

魔力放出と変換素質の炎熱を加えた鋭い斬撃が男に向かう。

「なんだ〜その斬撃は!!」

男がプレシアの体から何かを引抜く。

そんな、あの特典はまさか!

「あん。クックははははは」

「何がおかしい!!」

「いや、このババアに残ったのはこれかよ」

「なんの話だ!!!!!」

「そのババアはよ娘を助けるために嘘をわざと娘に向かって言ったんだよ」

その言葉にこの場にいるものの動きが一瞬止まる。

「本当は娘のことが好きで好きでたまらないのによー!!」

その一瞬の硬直の間に放っていた蹴りが宮永君を吹き飛ばす。

その光景に僕らは正気を取り戻す。

そして、それぞれ自分のデバイスを使って男に魔法を放つが

「無駄だよ。お前らじゃあ俺に傷はつけられない(・・・・・・・・・・・・・・・・)

男の手前でそのすべての魔法が止まった。

「なっ!?」

「初めて見るか?執務官。これがラムダ・ドライバだよ!!」

その言葉と同時に止まっていた魔法が全て返ってくる。

まずい。そう思うと同時に僕は転がるように避けるけど避けられなかった砲撃に当たり男の近くにまで飛ばされてしまう。

「智春君!!」

姉さんの声が聞こえる。

不味いのは知ってるけど、これは無理だ!!

「じゃあな、坊主」

その声と共に剣が僕の首めがけて振るわれる。

不思議と、その様子がゆっくり見える。

死ぬ?誰が?

死ぬ?僕が?こんな人の命を玩具のように扱う奴に?殺される?

ふざけるな!!まだ僕は何もしていない!

何もしていないのに、ここで死ねるもんか!!

「まだだぁ!」

『声紋チェック。……マスター、チハル確認。心拍数上昇』

デバイスが起動していることに驚く。

今までどんなことをしてもAIは起動しなかった。

それが、なぜ今になって?

TAROS(Transfer And Response ”Omni-Sphere")起動』

剣が僕の首に近づいてくる。

でも、今の僕はそれを無視して次の行動をする。

「アジャイル・スラスタは使用者の脳波と視線誘導により方向や向きを変える」

思い出すのはカシムの説明。

「最大稼働させると数十秒しか使えないがその代わり爆発的な機動力を発揮させることができる」

だが、とカシムは僕の身体に手を当てて

「今のお前の身体では最大稼働はするな。身体への負担が大きすぎる」

心の中でカシムに謝る。

今は、その最大稼働が必要なんだ!!

頭の中で何かが弾けた。

視界がクリアになる。そして、次の自分の行動が解る。

視線を剣とは真逆の場所に向けて頭で高速で移動するのを想像する。

すると、僕の身体はバリアジャケットについているアジャイル・スラスタにより爆発的な加速力で視線の先へ移動する。

身体への負担が一気に僕へ押し寄せる。

男を見ると僕を見て面白そうな玩具を見つけた子供のような顔をした。

それを見ても僕は冷静だった。

不思議と今の僕はそれを見てもなんとも思わなかった。

頭の中にあるのは次の行動。

そして、男の次の行動に対する脳内シュミレートだけ。

「行くぜ!!」

男が剣を構えて突っ込んでくる。

それをアジャイル・スラスタを使って大きくかわす。

ラムダ・ドライバによる付加効果を付けたあの剣はかするだけでも今の僕には致命傷になる。

一撃必殺の武器を持つ相手、こちらはその相手に対する対抗策は一切ない。

せいぜい時間稼ぎしかできない。

「逃げてばかりじゃ……」

男の鋭い突きが僕に迫る。

「……勝てねぇぞ!!」

だけど、相手がこちらを攻撃することにのみ集中している今ならある(・・・・・・・・・・・・・・)!!

デバイスの耐久度を信じて突きを逸らしながらアジャイル・スラスタを再び最大稼働で使用する。

逸らした時に出来た少しの隙間をアジャイル・スラスタの爆発的な加速力で通る。

そして、このままアジャイル・スラスタの向きを視線と脳波で強引に変える。

旋回、そしてそのまま空いた背中に魔力弾を放つ。

すると、さっきのように止まらずそのまま男に当たる。

追撃しようとした時、ピーという音がデバイスから聞こえた。

アジャイル・スラスタの貯蔵魔力が切れた合図だ。

時間切れ!!急いで体勢を立て直そうとした時膝をつく。

アジャイル・スラスタの最大稼働。それに加えて無茶な軌道変化、最初に受けた魔力ダメージ。

意識があるのが不思議なほどだ。

さっきまでの感覚はもう無い。

万事休すか。そう思った時男の剣が吹き飛んだ。

えっ!?と思った。

今、あの剣はラムダ・ドライバによって切れ味と防御力がかなり上がっている。

吹き飛ぶはずがない。

なのに吹き飛ぶなんてこと、出来るはずが……!?

いや、出来る。同じラムダ・ドライバならそれは可能だ。

痛む身体を気合いで動かしてその方向を見る。

誰かいる。でも、陰でよく見えない。

歩いてこちらに来ている。

そして、男がその姿を見た時一瞬目を見開いた。

「生けてたのか会いたかったぜ〜カシム(・・・)!!」

光が影の方に当たりその姿を照らす。

白い髪とバリアジャケット越しでも細いとわかる手足。

その手には銃を持っている。

間違いないあれはカシムだ!!

「お前こそ、頭を撃ったはずなのに生きているとはなガウルン」

「昔の怪我でな頭に鉄板を埋め込んでいたのさ」

そうかとカシムは他人事のように言う。

「まさかお前が管理局と手を組んでいたとはな」

「違う。オレが手を貸していたのはお前が殺したプレシア女史(・・・・・・)だ」

その言葉に僕らは驚愕する。

何で、カシムがプレシアに協力を?

するとガウルンと呼ばれた男はなるほどなと頷いた後カシムに向けて言葉を言う。

「お前、やっぱり『ウィスパード』か」

「肯定だ」

ウィスパード。その単語を知っているということはあいつはカシムの関係者?いやクロノの驚愕していることから管理局も知っているのか。

「アル、ラムダ・ドライバを使うぞ」

了解(ラジャ)

「良いぜ良いぜ!カシム!!」

男の右手に魔力が集まる。

「全員衝撃に備えろ!!」

クロノの言葉でハッとなり近くのロープで体を固定する。

カシムの左手にも同じ現象が起こっている。

それだけじゃない。多分、感だけど両方ラムダ・ドライバも使ってる。

そして、二人同時に攻撃をする!!

「カシムゥゥゥゥゥゥ!!」

「ガウルンー!!」

二人が突き出した拳はぶつかる直前に透明な壁で止まる。

ラムダ・ドライバの障壁!!

だけどその一瞬の拮抗はカシムの勝ちでカシムの突き出した左手がガウルンに当たる……直前でカシムの動きが止まった。

なんで?そう思っているとガウルンは転移魔法を使いどこかに転移する。

 

sideカシム

 

あのままガウルンにアレを出したらプレシアの死体も無くなるところだった。

だけど、今ので

[肯定です軍曹殿、例のあれは起動を確認。無事にアリシア・テスタロッサの蘇生に入りました]

[ウイルスと救難信号は?]

[全て計画通りに]

[そうか、ならあとは手筈通りに]

アルと念話で会話した後夏目たちの方を見る。

とりあえず、全員無事か。

そのまま転移しようとした時管理局員が待ってくれと言ってくる。

だが、オレはそれを無視して構わず術式を組む。

そして、完成すると共に夏目にアリシアのことを伝えて転移する。




PT事件が終わった。
だが、その時、僕の中にあったのは解決した喜びではなく一人の人間を誤解し、更には助けられなかった無力感だけだった。
それを受け止めるだけで今の僕は精一杯だった。
次回『無印終了と覚悟を決める日だそうですよ?』












『予告』空白期からタイトルの最後の〜だそうですよ?が無くなります。


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無印終了と覚悟を決めるそうですよ?

side智春

 

プレシアが死んでから3日経った。

テスタロッサさんは宮永君のおかげで立て直したのだけど、やっぱり宮永君はテスタロッサさんの好意に気づいてないよね。

そして、アリシアさんは無事に意識を一度取り戻しフェイトと会っているらしい。

そして、管理局が例の装置を調べようとした瞬間、例の装置ー蘇生装置ーはデータも何もかもが破壊された。

そして、僕のデバイスも調べられたのだが、こちらも表面的なスペックだけ見れたが他はカシムの認証データが必要らしくその本命、『アジャイル・スラスタ』のデータは一切見れなかった。

『マスター?どうかなさいましたか?』

「いや、何でもないよレイヴン」

そして、管理局員が頭を抱えているもう一つの原因はこのAIだ。

現在の管理世界の技術(テクノロジー)ではこんなに人間らしいAIは作れない。

ようはカシムの作ったこのデバイスはそのデータの一端だけでも現段階の管理世界の技術(テクノロジー)を軽く超えている。

『全く、マイスターのブロックは管理局でも破れないでしょう』

「どういうこと?」

『マイスターのブロックは未来予知でもしているかのようにプロテクトが数秒で変わり始めるのですよ。それも、全て同じやつは一個もありません』

「カシムって、凄いね」

そして、この事件は『プレシア・テスタロッサ』の遺言もあり、プレシア・テスタロッサが主犯でフェイト・テスタロッサは虐待をされていて命令を聞くしかなかった状況であったと報告された。

僕は今回のことで自分がどれだけこの世界を舐めていたのか理解させられた。

どうせ、関係無いと思っていたガウルンのこと、プレシア・テスタロッサの思い。

これは、全部現実だ。

ここは、アニメの世界だと思っていた自分が恥ずかしい。

僕は今回のことで何もできなかった。

ジュエルシード集めも積極的にやらなかった。

ガウルンのことも少し考えれば分かることなのにそれをしなかった。

それに……今回のことで分かった。

僕はカシムに憧れていたんだ(・・・・・・・)

カシムの覚悟とかに僕は憧れていた。

宮永君たちは強いな。

もう、プレシア・テスタロッサのことを乗り越えてる。

でも、僕はそれを乗り越えられずにいる。

だけど、これは乗り越えなければならない。

でも、今は今だけは。

「泣いても……良いよねレイヴン」

『……良いと思います』

 

side輝

 

今回のことで俺は転生者の影響で原作があてにならない可能性を思い知った。

特にカシムって言われてたあの子とガウルンの戦いは一瞬だけだったけどすごいと思った。

そして、クロノからあの子はウィスパードと言う最優先保護対象(・・・・・・・)であることを聞いた。

何でももう滅びた管理世界『ヤムスク』の生き残りだそうだ。

さらにウィスパードについては謎しかないらしい。

何でも上層部により情報統制されていて詳しくは知らないとクロノも言っていた。

『アキラ』

「大丈夫だよエル俺は……大丈夫だ」

なのはたちを不安にさせないために平然としてたけど、やっぱり

「怖い」

『大丈夫ですよそれは普通のことですから』

だけどと心の中で言いながらあの時のことを思い出す。

あの時、俺たちは智春が死ぬと思っていた。

だけど、あいつは俺たちの予測を大きく上回った戦いをしていた。

デバイスのコントロール、状況判断能力、そのどれもがあの時にいた奴の誰よりも高かった。

だけど、カシムって奴を見て俺は格の違いを見せられた。

一瞬だけだったけどあいつはガウルンを圧倒した。

だけど、俺はそれを見て怖いとかは思わなかった。

その時のことを言うなら、憧れ。

あいつの目にあったような物が俺は欲しかったんだ。

でも、俺はあんな目をしたくないとも思ってる。

あんな、

|誰かの死を労わりながらもそれを殺したような目《・・・・・・・》は。

やっぱり、俺はなりたいと思った。

アニメを見て憧れたあの人物のような正義の味方(英雄)に。

 

sideカシム

 

夏目家に居れなくなったオレは八神家に居候した。

八神にはケンカしたと伝えてある。

八神姉にはそんな嘘は通じなかったが。

そして、夜になると最近は意識が引っ張られるようにあそこへ行く。

あの幼女の待つ空間に。

「どうでした?」

「概ね裏特典(・・・)の法則性は分かった」

裏特典。それはオレたちの頼んだものとは違う特典。

誰もなぜ疑問に思わなかったんだ?

アーテは生前の行いによって特典の数を決めると言った。

だが、ここで疑問が出る。

何故全員同じ数の特典を貰っているのか(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

それをアーテに確認したところおかしいと言った後確認すると与えた特典の他に何名か別の特典を持って転生したらしい。

オレはその裏特典保持者を全員見つけた。

まぁ、見つけるために管理世界を複数行き来したが。

今回の件でガウルン、智春の覚醒が確認されている。

だが、今だに見つかっていない転生者が裏特典保持者ということはあり得ない。

何故ならアーテの言った人数はもう揃ったのだ。

それにしても、智春が敵になるのか。

そう思うと少し悲しくなるが仕方ない。

そういう運命だと割り切るしかない。

 

side智春

 

今日はテスタロッサさんの見送りの日だ。

今は宮永君とテスタロッサさん、高町さんが別れの言葉を言っている。

僕?僕は昨日のうちに言ってあるよ。

それにしても、姉さんは今日に限って熱を出すとか馬鹿なの?

後、今日の朝カシムの部屋に行ったら

『極秘任務中。デバイスのメンテナンスは一ヶ月はしなくて良い。それまでにデバイスの勉強でもしたらどうだ?

追伸 管理局と協力しても良いが自分を見失うな』

と書かれた置手紙があった。

これを見てふざけるなぁぁぁーと叫んだ僕は悪くないと思う。

でも、これはカシムなりの励ましだと後で気がついた。

ああ、そっか。知ってたねそう言えば。

プレシア・テスタロッサの死も僕の悩みも全部。

そうだ、なら僕も覚悟をきめよう。

僕は、僕は全てを守る正義の味方にはならない。

僕は大切な人だけを守る正義の味方になる。



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無印終了時点での転生者の設定

※ステータスは一般人なら魔力ーのオールEです。



【アーテが転生させた転生者】

 

『金色英雄』

特典

転生する世界の名前

王の財宝(ゲートオブバビロン)

イケメン

十二の試練(ゴットハンド)

膨大な魔力

 

ステータス

筋力 D

耐久 C

敏捷 E

魔力 SSS

幸運 C

特典 C

 

今作品の踏み台1。

十二の試練持ってるから踏み台にならなくね?と思った人もいると思うがこの十二の試練は耐久度が低いためどんな攻撃でも死ぬ可能性が出ている。

今の所一般人よりちょっと上かな程度だから普通に倒せるレベル。

無印の時は最初の時に大怪我をした為のちの物語には名前も出てこなかった。

A'Sでは再び登場するがこいつの影響でどうなるかは不明。

 

デバイス『レオン』

英雄のデバイス。

入っている魔法はほとんどなく英雄自身もデバイスより財宝を使うことの方が多い。

 

『赤弓翔』

特典

無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)

解析眼

使い魔

一回だけの死者蘇生

高い身体能力

 

ステータス

筋力 B

耐久 B

敏捷 B

魔力 B

幸運 F

特典 C

 

今作の踏み台2。

英雄と違いオレtueeeeeeしたくて転生してからずっと特訓をしてきた。

強いが本人の慢心によりあまり強くはない。

後に投稿する話『最ー憧れー強』でカシムと戦い改心する。

そしてアニメで見たことのないモブキャラと恋に落ちる。

なお後にステータスがオールAになる。

 

『夏目智春』

特典

夏目智春の容姿

黒鉄

金運 C

千里眼 C

身体能力の上昇

 

裏特典

SEED

 

ステータス

筋力 C

耐久 D

敏捷 B

魔力A

幸運 F

特典 B

 

今作の主人公2。

今作品では1番成長した転生者。

生前はアスラクラインにはまっていた平凡な高校生。

カシムの作ったデバイス『レイヴン』を扱える人物。

ピンチになって裏特典の使用。あれ?カシムより主人公ぽくね?

現在ではカシムより弱いですがいずれカシムと同じになるかも?

周りに鈍感が多いことにため息を吐いたりしているが、智春も鈍感のため人のことは言えない。

 

デバイス『レイヴン』

カシムの作った高性能デバイス。

自重を知らないカシムらしいデバイスでアジャイル・スラスタを使用した時の体にかかる負荷は5.8Gとされているが智春は無茶な軌道をしたりしているため実際はそれよりも負荷がかかっている。

形状は剣、槍、銃の3つになる。

アジャイル・スラスタはバリアジャケットの肩、腰、足についている。

TAROS(Transfer And Response ”Omni-Sphere")についてはA'S後の空白期でその真実が判明する。

現段階ではAIのレイヴンはまだ許容できる範囲の人間らしさを持っている。

 

『八神葵』

特典

サーヴァント

魔力変換素質 凍結

八神はやての姉として転生

心眼 C

歌の才能

 

ステータス

筋力 E

耐久 E

敏捷 B

魔力 AAA

幸運 A

特典 C

 

生前は普通の高校生だったが死ぬ直前にカシムと会いテロにも遭遇した。

転生した後にもカシムと会えたことを喜んでいて家にカシムが来るときは顔がキラキラしているらしい。

今だ特典の一つサーヴァントは使えていない。

これは葵が条件『A'S開始』を達成していないからなのだが本人はそれに気づいてない。

はやての事になると過保護になる。

 

『夏目美咲』

特典

サーヴァント

転生者の弟

デバイス

心眼

気配遮断 A

 

ステータス

筋力 B

耐久 C

敏捷 A

魔力 A

幸運 S

特典 B

 

前世ではオタクの高校生だった。

今世では智春の姉として転生。

智春をからかいながらも楽しい毎日を過ごしている。

転生者たちが会うそうですよ?からカシムのことを異性として無意識に意識しているが本人は気づいてない。

デバイス『カルテット』

人型と銃の2つになれるデバイス。

美咲の無茶を手伝っている。

 

『春日部耀』

特典

春日部耀のギフト

瞬間記憶能力

デバイス

ユニゾンデバイス

戦いとかをサポートしてくれる人

 

裏特典

モザイクで見れない。

 

ステータス

筋力 A

耐久 B

敏捷 EX

魔力 B

幸運 B

特典 A

 

前世ではイジメを受けていた中学2年生の女の子。

今世では廃墟のビルなどで寝泊まりしていた。

転生者たちが会うそうですよ?の5日前に奏と会う。

転生者たちが会うそうですよ?でカシムと会ったときに一目惚れをした。

最近の悩みはライバルが増えたことらしい。

A'Sでデバイスが登場予定。

 

『カシム』

特典(特典の名前を知らないが使い方は分かる)

書き換え能力(リライト)

身体能力の向上

SEED

未来予知

モザイクで見れない

 

裏特典

モザイクで見れない

 

ステータス

筋力 A+

耐久 B-

敏捷 EX

魔力 B-

幸運 AA

特典 S

 

前世も今世も紛争地域で育った少年。

今世ではウィスパードと呼称された天才児。

レイヴンを製作した本人。

ウィスパードとしての知識は『アジャイル・スラスタ』『ラムダ・ドライバ』の骨子と理論、そして製作方法であるが後にウィスパードの共振により全ウィスパードの知識を持つことになる。

今だに前世のあることを背負っている節がある。

なお、現在はたった一人でラムダ・ドライバを使用する魔導師に対抗できるたった一人の人物とされて管理局に注目されている。

 

デバイス『アーバレスト』

AIの名前はアルでカシムもアルと呼んでいる。

ラムダ・ドライバ搭載型のデバイスでインテリジェンスデバイスのAIを超える人間らしさがある。

最近カシムにカルテットのような人型になりたいとねだっている。

 

【??に転生させられた転生者】

『ガウルン』

特典

神からの干渉不可

気配遮断 EX

原作知識の習得

魔力を探知する程度の能力

王の右腕

 

裏特典

モザイクで見れない

 

ステータス

筋力 A

耐久 A

敏捷 A

魔力 SSS

幸運 A

特典 EX

 

今作品のボスキャラ?

A'Sではさらに関わりカシムと激闘を繰り広げる予定。

ガウルンとカシムの戦いに非殺傷というものはなく命を賭けた殺し合い。

 

【???が転生させた転生者】

『氷川奏』

特典

デバイス

原作知識

未来予知

歌の才能

デバイスの知識

 

ステータス

筋力 C

耐久 C

敏捷 F

魔力 S

特典 C

 

転生者たちが会うそうですよ?で登場した転生者。

運動音痴でそれを普段は身体強化をすることで隠している。

転生者たちが会うそうですよ?でカシムに惚れて以降は時々連絡を取り合っている。

耀たちの気持ちにも気づいていて重婚でも良いんじゃないかな?とか思っている。

気弱で男性恐怖症。

 

デバイス『(名前はA'Sで発表)』

 

『宮永輝』

特典

直感

デバイス

身体能力の向上

魔力変換素質 炎熱

魔力放出

 

ステータス

筋力 C

耐久 B

敏捷 C

魔力 AAA

特典 C

 

子供らしいところが残っている転生者。

将来の夢は正義の味方になることと言っている。




次回予告
ずっと続くと思っていた。
カシム君が居って、耀ちゃんが居って、葵ちゃんがおる。
そんな生活がずっと続くと思っとった。
でも、それは終わってもうた。
これからは、みんなが居ってくれればええ。
なぁ、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ。
次回『守護ー覚醒ー騎士』


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空白期
守護ーめざめー騎士


すみません。
前話の予告は半分は嘘です。


side耀

 

美咲たちと別居(この言い方はなんか違うと思うけど)してからもう一ヶ月が経とうとしていた。

相変わらず変わらない生活。

葵が朝遅くに起きてカシムが料理をはやてに教えてもらって私がそれを食べて。

そして、みんながはやてに怒られる。

こんな毎日が永遠に続くと思ってた。

そう、思ってた。

side out

 

 

その日は満月だった。月が綺麗な日でまるで何かを祝福しているような感じがした。

そんな日にオレたちは運命に出会った。

それは偶然なのか必然だったのか分からない。

でも、それでも良いとオレは思った。

だって、彼女たちがあんなに楽しそうな顔をしていた。

それは今のオレにとってはどんな物よりも綺麗に見えた。

 

 

sideカシム

 

「……はやてもカシムも夢中になりすぎ」

「「反省はしとるけど後悔はしとらん(反省はしているが後悔はしていない)」」

「2人とも、お願いだから自重して」

春日部と葵から非難の目を向けられる。

むっ。特売の日にタイムセールが重なってしまったのだ仕方がないと思うが。

「確かにね〜。でも、この時間まで買い物に夢中になるなんて」

そう、今の時間は午後8時。

確かにこれはオレたちに非がある。

そうこうしているとはやての動きが止まった。

「どうした?」

「溝にはまってもうた」

はぁとため息を吐き車椅子を溝から引き上げようとして車がこっちに近づいてくるのが見えた。

はやての近くに全員集まっていたが、誰も反応すらできなかった。

オレはそれを見てすぐに声を上げようとして目の前にあるものに目が行った。

本だ。

鎖で巻かれた本。

それが今目の前、いや正確には八神の前で浮いている。

『闇の書起動』

機械的な音だ。

そして、この本をオレは見たことないはずなのに知っている気がした。

何だ?この感覚は?

まるで、その存在の全てを知っているような感覚にオレはめまいがした。

そして、オレたちの足下にオレが使うような三角形の魔法陣(・・・・・・・・・・・・・・・)が現れる。

そして、眩しい光に覆われ目を開けるとそこは空の上だった。

『守護騎士プログラム起動』

そして、目の前に

「……カシムは見ちゃダメ!!」

何かがあったような気がしたがそれを見る前に春日部に意識を落とされた。

人は……成長するんだな……。

 

眼が覚めると目の前でちょっと危ない服を着た女性2名と幼女、そして「犬、いや狼が素体の使い魔?だがオレの知識が正しければ古代ベルカ時代は守護獣と呼んでいたはずだ」

「その通りだ。中々博識なのだな」

「オレはかなり特殊だからな」

守護獣がいた。

「まず、貴様は何者だ?」

「それは本来ならこちらの台詞なんだがまぁ良い。この世界に住んでいる魔導師だ」

そう言うと守護騎士と守護獣は戦闘態勢に移行する。

「貴様も管理局のー」

「ふざけるな!!」

幼女が言葉を言い終わる前に殺気も怒気を幼女にぶつけながら叫んでしまった。

それを見て他の守護騎士たちも驚いた表情を見せる。

「……いきなり怒鳴って悪かった。だが、オレは管理局が大嫌いだ。あいつらの仲間なんてこちらから願い下げだ」

そう言うと守護騎士たちは渋々だが納得してくれた。

 

八神が起きてから事情を説明すると納得してすぐに買い物に出かけた。

オレは今春日部と八神姉と共に留守番をしている。

そんなことをしていると八神姉が何かをしていることに気がついた。

「何をしているんだ?」

「サーヴァントを召喚しようとしてるんだけどね」

そうしていると葵が呪文を唱え始める。

後にオレたちはこう言った。

「触媒を用意しとけば良かった」と。

そして、魔法陣が光り輝きそこにいたのは……。

「サーヴァントライダー!!召喚に従い参上したよ!!君が僕のマスターかい?」

凄い、美少女だった。

だが、先程からオレの直感は逃げろと告げている。

「……え、うん」

そう言うと少女はふぅぅと脱力した後

「あっ!!真名言うの忘れてたね僕の真名はアストルフォ!!シャルルマーニュ十二勇士が一人さ!!」

アストルフォという名前を聞いてオレは驚愕する。

確か本で読んだ限りではアストルフォは……。

「男……なのか?」

「あれ?伝承ではそうなってるの?嫌だなぁ〜僕はれっきとした女の子だよ?」

オレは今だに唖然としている八神姉に近づく。

「八神姉?」

「……ごめんね。カシム君」

そう言うと八神姉は自分の部屋に戻っていった。

「ありゃ?マスターは上に行っちゃたね。それにしても君ーカシムだっけ?」

「あ、ああ、合っている」

名前を聞かれただけなのに凄い……嫌な予感がする。

「女の子?」

「こんな容姿だが男だ」

ヘェ〜と彼女は言うと近づいてくる。

嫌な予感がさらに強くなる。

「ちょっと僕の遊び相手になってよ」

そう言って彼女ーアストルフォはオレに笑顔を向けてくる。

「了解した」

この後オレは後悔することになる。

アストルフォの遊び相手になったことを。

 

オレがアストルフォに色々なことをされている間に八神姉が八神にアストルフォのことを紹介していた。

オレとしては早く助けて欲しいのだが。

オレは今アストルフォのオモチャにされている。

「うーん。ごめんねぇ〜今の僕理性が飛んでてね」

「知っている。そのことはこの前読んだ本に書いてあった」

そっかそっかと言いながらアストルフォの手は止まらずオレの髪を弄り続ける。

その後そのまま八神たちの目の前に行って八神に「産まれてくる性別間違えてへん?」と言われた。

 

八神家に人が増えてもう一ヶ月が過ぎた。

普通の小学生にとってこの月から夏休みという物が始まるそうだ。

これはこの前闇の書のことを言いにジェイルのもとに行った時に聞いた。

八神家は温泉に旅行に行くことになったのだが、今現在オレとはやてはそのことについて喧嘩している。

 

side耀

 

今私の前でカシムがはやてに荷物検査されている。

バッグをはやてが漁っていると出てくる出てくる。

危険物(銃とかナイフとか爆弾とか手榴弾など)が沢山出てくる。

どこに入ってたんだろうと思うほどの危険物の山が私たちの前にできていた。

「何か……弁明は?」

「……あ、ああ。昔オレの仲間に風呂に入ってくるといって幼女と共に風呂へ行きそのまま殺されたことがあってだな」

珍しくカシムが言いよどんでいる。

それもそのはず私も多分そうしていたと思う。

それほどまでに今のはやては怖い。

後ろからスタンド(般若)を出してるし。

「この平和な日本でそんなこと起こるわけないやろ!!」

スパーンと綺麗にハリセンがカシムの頭に当たる。

「だが、はやて、その慢心が危険なのだ。平和だからという理由で警戒などを怠っているといざという時ー」

「怒ってたまるか!!」

スパパパパーンと目に見えない速度でハリセンがカシムの頭に当たる。

凄い、はやて凄いよ。

「だが、人生何があるかわからない。八神、君も警戒を怠っているとー」

「だから起きへんって!!」

スパパパパーンと再び宝具はやてのハリセン(ハリセンザスマッシュ)がカシムの頭に当たる。

「武器類の持ち込みは絶対にあかん!!良えか!!」

「だがそれでは」

チョキっとカシムの目の前にはりせんの先っぽが突きつけられる。

 

そして、温泉旅行当日。

私たちはバスジャックに会っていた。

シグナムたちも動こうとしているが中々動けずにいる。

それもそのはず、こいつらはバスの中に私たちしかいないことも確認してきてる。

目的がわからない。

「……お前らの目的は金か?」

カシムがアルを見ながらバスジャック犯に聞く。

「そうだ!悪いか?!」

「いや、別に?」

するとカシムはバッグの中をごそごそと何かを探すような仕草を見せる。

それを見て私は嫌な予感がした。

あっ、これカシム。絶対何かする気だ。

「……おい嬢ちゃん。そのカバンの中を見せろ」

するとカシムは別に良いとでも言いたげに男たちにカバンを投げ渡す。

そして、男たちが中を確認しようとした時、やらかした。

「動くな。大人しく降伏しろ」

「はぁ?何言ってるんだよ嬢ちゃー」

「そのカバンの中には|爆弾が入っている」

そうカシムが言うと男たちの動きが止まった。

「その中に入ってる爆弾は特別製でな揺らすとタイマーが起動するようになっている」

隣などを見るとはやてが真っ白になっていてアストルフォは面白そうに見ていてシグナムたちは唖然としている。

うん。そうだよね。これ私もどっちが悪人かわからないもん。

「そ、そんなの、た、ただの、ただのハッタリだ!!」

「そうだな、確かにハッタリかもしれない。だがハッタリでは無かったとしたらお前たちはオレたちとともに死ぬことになる」

「そ、それでも」

「やらなければやらないことがある……か?だが、お前たちはどうする?タイマーが作動した爆弾。そして、オレの手に握られているとある所に偶然(・・)置いてある爆弾のスイッチ」

「あっ、あるところ……だと?」

そう言うとカシムは死んだ魚のような目で淡々と言っていく。

「そこのお前、そうお前だ。確かお前には娘がいたな」

「なっ、何で」

「とある情報だ。そして、その娘は心臓が弱いらしいなオレがこのスイッチを押せばたちまち大きな音と爆炎が近くで起こることになる。さて、心臓の弱いお前の娘はどうなる?」

「なっ!?」

わぁ、今日は天気がいいなー(棒)

「そして、そこのお前。そう、お前だ。お前は猫を飼っているそうだな。そして、その猫はあそこにいる奴の娘が入院している病院に行き来しているみたいだな」

「なっ、何でそれを?」

「とある筋の情報だ。そして、このスイッチを押せばその病院はたちまちパニックになり猫は爆発の中で苦しみながらー」

「止めろ、止めてくれぇ!!」

「どうした?オレはお前たちがハッタリという爆弾の話をしているだけだぞ?」

その光景を見てシグナムたちも唖然を超えて真っ白になっている。

そして、カシムの言葉は的確にその人たちの弱点を抉っていきそして、バスジャック犯は全員逃げるように去っていった。

「さっきの話……本当なん?」

はやてが真っ白になっていてもカシムに聞いてくる。

「いや、ハッタリだ。通じて良かった」

カシムは清々しいほど良い笑顔で私達に言ってくる。

「あの、さっきの人の事は?」

「あれはあの男たちの持ち物と仕草服に付いてる物から推測しただけだ」

そこに置いてあるアルの画面を見てみると成分表と持ち物の名称が書いてあった。

まさか、これだけで?

「とりあえず、これで温泉に行けるだろう?って八神?」

あっ、はやての身体がブルブル震えてる。

「この……アホちんが!!!」

スパパパパーンとはやての宝具がこの日も披露された。

私はこの光景を見てこんな日も悪くないかなって思った。




次回予告
それは、絶対に負けられない闘い。
その闘いは誰にも手出しはできない。
そう、それは私たちの戦争。
次回『戦ーまくらなげー争』


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戦ーまくらなげー争

side耀

 

無事に(無事にと言えるかは不明)旅館に辿り着いた私たちはさっそく疲れを取るために温泉に浸かろうとしたのだが、

「えぇー、良いじゃんいいじゃん!!カシムもこっちでさ!!」

「断る!お前と居ると疲れが取れない!!」

「カシムのケチー!!」

疲れのもと(カシム)本能で動く少女(アストルフォ)が言い争っていた。

本来転生者であるカシムたちの年代は女性の裸とかに興味津々のはずだが、カシムは違う。

1に命令、2に行動、3に殺しのカシムは人間の三大欲求にかなり疎い。

だが、それでもカシムは日々の行動……アストルフォに遊ばれたり風呂に突撃されたり裸でカシムに抱きつきいらぬ誤解をカシムに私たちが向けたりなどがあった。

この事からカシムはアストルフォを苦手としている。

苦手としているだけで嫌いではない。

なんとも不思議な光景だ。

後最近分かったけどカシムは涙に弱い。

だけどそんなことも知らないアストルフォはカシムを無理やり連れてこようとする。

 

結局カシムはアストルフォの泣き落としに負け女湯に入っている。

だが、ここで不思議なことがある。

何でカシムは体にタオル巻いてるの?

まさか実は女の子でしたーとか?それともお湯を被ると女の子になる体質?

はやてもそれが気になったようで葵を説得している。

カシムは相変わらず何かを確認するように外に意識を向けている。

やるなら今しかない。

そう思っているとアストルフォがカシムに近づいてー。

「そーい!!」

タオルを思いっきり私たちの方に投げた。

………………はい?

一瞬私の思考が飛んだ。

……何やってんのこの娘は?

それよりも、カシムの姿を見てー。

固まった。

そこには美少女がいた。

濡れた白い髪と幼い身体。

それらが奇跡的な調和を見せたその姿はまるで天使のようでー。

そこまで考えて私の顔は真っ赤に染まる。

「何や!この気持ちは!この、このカシム君の姿を見て私どうなったん?」

「こ、これは凄いな」

「カシムくん、凄い」

「ギガヤベェなこれ」

「さ、流石にこれは僕もやばいね」

「超グッジョブ!!」

「はぁ、だから嫌だったんだ。裸を見られるのは」

ていうか、カシム、裸を見られたんだから恥ずかしがろうよ。

というか、シグナムの胸を見ても何も思わないの?

「……?シグナムの胸?そんなのただのー」

ー贅肉だろ?

その言葉で私たち女性陣は固まった。

 

そして、夜になってみんなが寝ようと準備し始めて。

「何やってるんだ?はやて?」

「これはなヴィータ。まくらなげをするためのフィールドを作ってんねん」

何でもカシムの言葉に堪忍袋の尾が切れたはやてが自分でそれを倒すんだそうだ。

そして、カシムがこの部屋に入ってきてはやてがカシムに向かってまくらを投げた。

だがカシムはそれを宙返りして躱すって凄い。

カシムの身体能力は高いと知ってたけどここまでだなんて思ってもいなかった。

その後カシムがはやてをフルボッコにしてこの戦争は幕を閉じた。

後は頼むとだけ告げカシムは部屋から出て行った。

後に残ったのは避難していたシグナムとヴィータ、アストルフォと気絶しているシャマルと葵、はやてだけだった。

 

sideカシム

 

昼は温泉にゆっくり浸かれなかったためこの時間に再び入る。

だけど、本当の目的はー。

「何の用だ?ガウルン」

「やっぱ気づきやがったか」

ガウルンに会うためだ。

あの時オレが外を見ていたのは光信号を覚えるためだった。

結局アストルフォに邪魔されたが。

「あの光信号はお前がオレに教えた物だ」

「確かにな」

「用件は?」

そう言うとガウルンはオレの方を向き言った。

「どうだ?俺と一緒に管理局を潰さないか?」



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同ーたいりつー類

sideカシム

 

「……管理局を潰す?」

ガウルンの言った言葉にオレは数秒固まった。

「そうだ。管理局を潰して俺が新しい世界を作る」

「……具体的には?」

「俺の作る世界に秩序や法はいらねぇ。無法世界を作る」

その言葉を聞きオレはこいつはやはりガウルンだと思った。

だが、管理局を潰すか確かに良いかもしれないが

「管理局員はどうする?」

「決まってんだろ?皆殺しだよ」

その言葉を聞きオレの頭には一人の少女の顔が浮かんだ。

氷川奏。

おどおどしていてまるで小動物のような雰囲気を出している少女。

「別にいいだろ?管理局員なんて」

その言葉にオレは

「違う」

否定の言葉を言っていた。

「ただ闇雲に奪うのなら管理局(あいつら)と何も変わらない」

そしてオレは手にアルを呼び寄せる。

「オレは……そんなことは認めない!!」

「革命には犠牲が必要だ」

「犠牲のことを言ってるんじゃない。オレは、お前の作る世界を否定しているんだ!!ガウルン!!」

「何でだ?」

「そんな世界にあるのは平和じゃない!!争いの日々だ!!」

「分かってねぇなカシム」

ガウルンがオレに殺気をぶつけながら言ってくる。

「俺は争いがある日常が欲しいんだよ」

そして、次にガウルンはオレの方を見て

「それに、お前も本当は争いが絶えない世界の方が良いんじゃないのか?」

「何言って……」

「お前はまともに慣れない」

その言葉はオレの頭を冷やすのに充分だった。

「もう一度言ってやるよカシム。お前は人を殺し過ぎたんだよそんなお前がー」

まともになれるわけないだろ。

静かに奴はそう告げた。

「大体、お前のその殺気はなんだ?昔の自分の邪魔をしていた奴を殺していた(・・・・・・・・・・・・・・・・・)時とは比べ物にならないほど薄いぜ」

そうだ。オレはまともになれない。そんなことは知っている。

でも、それでもオレは

「ガウルン。オレはそれに協力しない」

「そうか、じゃあ12月29日にまた会おう」

何?と聞こうとした時ガウルンの後ろから一人の少女が現れた。

「……お前は……」

「お久しぶりですカシムさん」

そこには、オレがヤムスクで助けたウィスパード(・・・・・・)の少女がいた。

「何で、お前が?」

「私は今アマルガムに所属しています。管理局を、いえ私の故郷や親を殺した奴らに復讐するために」

声を上げようとした時、少女の後ろから二人の少女がまた現れる。

それだけでなく後ろからも何かが来る。

「ECSか」

「その通りです。私のウィスパードの知識は存在しない技術(ブラックテクノロジー)の中でもラムダ・ドライバとこのECSしかありません」

ですがーと彼女が指を鳴らすとそこには多くの人型デバイスの姿が。

「それでも、それを極めればこうすることはできます」

「……成る程な」

確かにそうだ才能がない人間でも一つのことを極めれば天才と対等に戦える。

「じゃあな」

待てと言おうとした瞬間ガウルンたちの姿が消えた。

ECS、またの名を電磁迷彩システム。

このシステムの最大の特徴はレーダーすら騙すことだ。

熱源などでは到底対処できない。

これに対抗できるのは今の所専用のシステムがつまれているアーバレストとレイヴンのみ。

敵にまわったら厄介なシステムだ。

まぁ、最も厄介なのはミラだ。

あの時助けた後どうなったかは知らないがウィスパードがアマルガムにいることはやばい。

ブラックテクノロジーであるラムダ・ドライバを作れるなど様々な点で現在の管理局は負けるだろう。

『どういたしますか?』

「……黙っておこう。オレは管理局がどうなろうと知ったことではない」

 

side?

 

私は妹と共に温泉旅行に来ていた。

だけど、今私はこの状況に困っています。

それは

「ふむふむ。式ちゃんはそこそこの発育やな」

胸を揉まれたあげくさらに揉むと大きくなるとかいいながらこっちに来ようとしている八神はやて(変態)がいるからだ。

「うーん。小豆ちゃんは何も言わずにもましてくれたで」

「違います!!!!!小豆ちゃんの目その時ゴミでも見るような目で八神さんを見てました!!」

「な、なんやて」

八神さんが小豆ちゃんを見る。

するとそこには相変わらずの無表情だけどゴミを見るような目で八神さんを見てました。

「な、なんやろ。あの目でもっと見られたくなってくるわ」

「このど変態さん!!」

すると、襖が開きそこから綺麗な少女(・・)が入ってきました。

珍しく小豆ちゃんも目を見開いています。

「あれ?遅かったなカシム君?」

「……いろんなことがあったんだそれよりそっちの奴らは?」

「新しく友達になった黒桐式ちゃんと黒桐小豆ちゃんや」

そう八神さんが言うとカシムちゃんはヘェ〜と言った後にシグナムさんたちのことを聞くと八神さんは酔ったとだけいった。

「ふーん。カシムだよろしく」

「黒桐式です。よろしくお願いします」

「黒桐小豆です……よろしくカシムちゃん」

そう小豆ちゃんが言うとカシムちゃんは首を傾げて

「ちゃん?オレは男だぞ?」

と言った。

……………………えっ?男?

「嘘」

「嘘じゃなくて本当だ」

 

sideカシム

 

間違いを訂正するとこの式と呼ばれた少女と氷川の姿が重なった。

そして、オレは重なった瞬間手で耳を塞いだ。

その後、オレたちは気絶することになる。



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最ー憧れー強

sideカシム

八神たちと温泉旅行に行き新しい友達ができた一週間後。

オレは今

「お願いだ!俺を鍛えてくれ!!」

赤いバリアジャケットを羽織っている転生者に土下座されている。

 

一時間前

 

「久しぶりにレイヴンの様子でも見に行くか」

そう呟いてオレは窓から夏目家に文字通り跳ぶ。

夏目家は八神家の隣にある、そのため夏目家に行くためにオレは玄関を使わずこのように窓から夏目家に入る。

「カシム君。またそこから来たんだねぇ〜」

「夏目には会いにくいからな」

そう言ってオレは机の上にあるレイヴンをメンテナンスモードにする。

「そう言えばそれカルテットも『お手上げ』って言ってたっけ」

「そうだな。ある意味かなり高性能に仕上げたからな」

「それが『アジャイル・スラスタ』ですか?」

カルテットに聞かれオレは仕方なく美咲とカルテットにアジャイル・スラスタについて教える。

するとカルテットは溜息をついて頭を抱え始めた。

「すまない。これからある物を取りに行かないと」

「そっか。じゃあね久しぶりに話せて良かった」

 

ある物ー春日部のデバイスととある物をアーテから転送してもらったオレは結界を解除してそのまま家に帰ろうとして再び結界が張られたことを感じた。

「……なるほど、転生者か」

「なるほど。転生者のことを知っていたかならー」

後ろの奴の言葉を聞く前に本能がオレの身体を動かす。

「ー死ね!!」

何処からか現れた無数の剣がオレに降ってくる。

それを咄嗟に全て逸らす。

そして、内心でアルを置いてきたことを後悔する。

結界の効果なのかアルを呼んでも来る気配は無い。

いや、おそらくあいつのことだ忘れたことを怒っているから来るはずはないな。

溜息を吐いてポーチからバタフライナイフと糸を出す。

再び無数の剣がオレに降ってくるが無駄だ!!

ナイフと糸を巧妙に使いあいつに全て弾き飛ばす。

こういうことをされたのは初めてなのか慌てて回避し始める。

「クク。所詮は俺の敵じゃ」

「獲物を前に舌舐めずり三流のすることだ」

何!?という声とともに蹴飛ばす。

すると面白いくらいに飛んでいく。

「くそ、舐めるなよ!!」

「来い、相手をしてやる」

相手をあえて覆ってやる。

それが策なのも知らずに敵はどんどんこっちに剣を飛ばしてくる。

だが、それは結果として奴の元に戻っていく。オレの手によって。

「くそ!!なら『身体は剣で出来ている!!』」

奴が詠唱を始める。

「『血潮は鉄で心は硝子』」

それと同時に嫌な予感がオレを支配する。

「『幾たびの戦場をかけ不敗』」

だから、オレのとる行動はただ一つ。

奴が呪文に集中している間に倒す!!

「『そう、ー』」

あいつの呪文が完成する前にオレは奴の頭を蹴る。

だが、咄嗟に気づいたようでバックステップで避けられる。

だが、それで良い(・・・・・)

突如奴の身体が揺れる。

オレがやったことは簡単だ。

顎の先を掠めるように強く蹴って脳震盪を引き起こした。

そして、奴は起きてすぐに弟子にしてくれ!!と言ってきた。

 

回想終了

 

「拒否する」

「何でもするし、弱音は吐かねぇから!!」

「了解した。オレの訓練は厳しいぞそれでも良いのか?」

「ああ!!」

「違う!!イエス・サーだ!!」

「イエス・サー!!!!」

こうして、オレに実験台(弟子)ができた。

とりあえず今日は遅いから帰らせたが。

 

そして、今日からこいつを鍛えることにした。

場所?そんなのは山に決まっている。

だが、こうしていると自分が対テロ組織の新兵だった時を思い出す。

あの時と同じ訓練をこいつにさせる。

それで耐えれたらこのまま鍛える。

耐えられなかったら、まぁ、矯正からか。

返す?そんなのはオレの辞書にない!!

今あいつー赤弓翔というらしい。ーにこの山を走らせている。

だが、最初に比べてペースは落ちている。

「タラタラ走るな!!良いか!!今のお前は人間以下だ!!名も無き◯◯だ!!悔しいか!?ならば行動で示せこのうすのろの◯◯◯◯!!」

その言葉と共に翔のペースが上がっていく。

かれこれ2時間はやっているが今だに耐えている。

これは……すごいな。

 

side翔

 

俺は最初自分は特別だと思っていた。

だから俺はモテるし特別な力だって貰えた。

俺は最強なんだ!!と天狗になっていた。

そして、原作キャラを見つけようと思い歩いていたら転生者がいた。

だから俺はそいつも倒せると慢心していた。

その結果は惨敗だった。

だけど、俺の頭にはこれまでのような逆ギレの言葉はなく。

ただ、賞賛の言葉だけあった。

だから、俺はこの人に憧れた(弟子入りをしようと思った)

そして、その人からの初めての訓練は辛い。

ペースを落とそうとすれば罵倒が飛んでくる。

でも、それでも俺はこの訓練に耐える。

それが、俺をもっともっと強くすることにつながるはずだ!!

 

sideカシム

 

その後も翔は一切の弱音を吐くことなくオレの訓練を受け続けた。

かれこれ訓練を開始して一ヶ月が経った。

もうすぐ夏休みとやらが終わるらしい。

そのため一週間前から訓練を泊まりがけでやっている。

「いいか!!オレの楽しみはお前の苦しむ顔を見ることだ!!」

「ハァハァハァ」

「どうした!?まさかここで終わりなのか!?最初に言ったはずだ!!お前は泣くことも笑うことも許さんと!!」

「サー!!イエッサー!!」

「どうした!?足が止まっているぞ!!」

「ハァハァハァ……サー!!イエッサー!!」

翔が次の匍匐前進に入った。

「泣くことも笑うことも許さん!!弱音を吐くことなどもってのほかだ!!」

翔がオレの作った試作自立起動型人型デバイス『カリス』との近接戦闘訓練に入る。

「わざと負けて同情を引きたいか!!わざと当たって注目を浴びたいか!!この負け犬根性の◯◯◯◯!!良いか!!この訓練に生き残れた時お前は初めて◯◯◯◯以下の◯◯◯◯から兵器となる!!」

そして、いよいよ最後の大詰めこいつの投影魔術とやらの訓練に入る。

「まずは基本的なものからやれ!!初めから宝具の投影!?貴様には初心者並みのネジがお似合いだ!!悔しいか!?ならばツベコベ言わず俺を納得させる投影をしてみせろ!!」

 

訓練が全て終わる頃には太陽は完全に沈み真っ暗になっていた。

「ありがとうございました」

「ああ、ちゃんと帰れよ」

フラフラとした足取りで翔は家へと向かっていく。

最後までやったことに驚いたが

「少し、寂しくなるな」

 

side智春

 

夏休みが明け、始業式の日。

僕らは憂鬱の気分になっていた。

だってそうだろ?踏み台と合わなかったのに何で二人の踏み台に会わなくちゃいけないんだよ!!

そう思いながら姉さんとともに教室に入って、姉さん共々固まった。

僕らは夢でも見ているのかな?

「赤弓くん。変わったー」

「そうかな?でもそういう上代さんは前髪切ったんじゃない?」

「えっ」

「その髪型も似合ってるけど俺的には夏休み前の君の方が魅力的だったな」

「そっ、そんなに褒めても何も出ないけど!!」

赤弓くん(踏み台1)が踏み台じゃなくなっている!!

いや、何があったんだよ!!あの慢心の塊で俺が全てだ!!の彼は何があってそうなったんだよ!!

この光景に高町さんたちも唖然としている。

すると赤弓くんは僕らの近くまで来た。

また、何か言うのか?と身構えるよりも何があったかの方に意識が向いてしまう。

すると赤弓くんは僕らの前に来て

「すまなかった!!」

完璧な土下座をした。

…………………………………………………。

うん。凄い綺麗な土下座だ。

手の位置も頭の角度も何もかもが完璧。

凄い、凄いよ赤弓くん!!

でもね、何があったんだよ彼に!!

 

sideカシム

 

「むっ。調子に乗って少女漫画(・・・・)のヒーローのようなセリフを息を吸うように言えるように調教してしまった(教育してしまった)。」

オレはふと学校の方に目を向けて

「まぁ、良いか」

と呟き八神が帰ってくるまで銃のメンテナンスをする。

この後、銃のメンテナンスをしているオレに八神がハリセンで頭を叩くことになる。




人に完璧や完全などない。
それは当たり前のことだ。
でも、それを僕は失念していた。
何が身近な人たちを救う正義の味方になるだ!!
結局、救えても、助けられてもいないじゃないか!!
次回『襲ーはじまりー撃』


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A'S
襲ーはじまりー撃


side智春

 

久しぶりにランニングをしていた僕は現在ー。

ー迷子になっている。

いや、まっすぐきたはずなんだけたど?ここどこだろ?

すると突如空の色が変わる。

結界!!狙いは誰なんだ!!

すると空から誰かが飛んでくる。

『プロテクション』

咄嗟にレイヴンがプロテクションを張ってくれるが、

「はぁぁー!!」

襲撃者はそれを切り裂いた。

「くっ、レイヴンセットアップ!」

TAROS(Transfer And Response ”Omni-Sphere")起動』

再び襲撃者が切り掛かってくるけど、

今の僕なら避けられる!!

アジャイル・スラスタを最大稼働させ襲撃者の方に向かう。

腰の刀を持ち通ると同時に切ろうとして

真っ向から切り捨てられた。

そんな!!これがだめなんて!!

僕が今できる技の中で最強の攻撃が防がれた。

これにより僕は一瞬とは言え唖然としてしまう。

「すまないな」

「えっ!?」

謝られると同時に吹き飛ばされてしまう。

何で?謝るんだ?

僕の頭が混乱し始めるが、そんなことは忘れろ!!

今は戦闘中だ!!

そして、襲撃者がこっちに向かってくる。

「お前に怨みは無いが、その魔力頂いてく!!」

くそ。どういう意味かはわからない、けど今の状況で魔力を抜かれるわけには行かない!!

その時、僕の中で何かが弾ける。

視界が霧が晴れたようにハッキリと見える。

襲撃者が止めを刺そうと剣を振るう。

その瞬間に横が空いた!!

すぐさま視線誘導で襲撃者の横に視線を合わせる。そしてー。

「うぉぉぉ!!」

「なに!?」

襲撃者の横を一瞬で通る。

それに驚いた襲撃者に向かい魔力弾を撃つ。

だが、それは容易く切り裂かれていくが……計画通りだ!!

アジャイル・スラスタの出力をあげる。

身体が悲鳴をあげ始めるが無視する。

「くらぇぇぇ!!」

黒鉄の力を少しだけ上乗せした斬撃を与える。

だが、その時僕らのもとに無数の剣が降り注いだ。

咄嗟にアジャイル・スラスタの向きを調節して当たらないようにする。

誰なんだ!!

そう思って見るとそこには赤弓くんがいた。

何で!!と思ったがよく考えれば分かることだ。

ようは彼は襲撃者側の人なんだ。

「シグナム!!ヴィータが押されてる早く行けって師匠が!」

「分かった!!ここは任せるぞ赤弓!!」

そして、残されたのは赤弓くんと、僕だけ。

「悪いね夏目くん。ここからは俺が相手だ」

「見逃したりは?」

「残念ながらしないよ」

「だよねぇ〜」

時間稼ぎをしている間に溜めてたアジャイル・スラスタで一気に戦線離脱しようとした時赤弓くんが剣を投影して飛ばしてくる!!

空いてる場所に逃げ込むようにスラスタを制御する。

「知ってるよ、そのアジャイル・スラスタの弱点」

突如ぞっとするほどの声で赤弓くんが僕に言ってくる。

「アジャイル・スラスタの特長はその加速力だ。でも、アジャイル・スラスタの弱点はー」

突如僕の目の前に剣が現れる。

違う!!僕がここに誘われたんだ!!

「その加速力ゆえにコントロールがし辛いということだ」

剣が爆発して僕は意識を手放した。

 

side美咲

 

私は今ザフィーラと戦っているけど、全然倒せない。

「この程度で盾の守護獣が破られるか!!」

「だよねぇ〜」

『マスターは元々こういう真向勝負は出来ませんからね』

私の適性に砲撃魔法などの高威力な魔法は一切入っていない。

だからこうしてアイディアでそこをカバーしてたけど

「『むり』」

あいつ、硬すぎる!!

その時、大きな爆発音がした。

[なにいまの!!]

[わかりませんしかし!!]

「よそ見をしている場合か!!」

「『!?』」

ザフィーラの攻撃を紙一重で捌いてく。

カシム君から教えてもらったのがこんなところで役に立つなんて!!

「うぉぉぉ!!」

だけど、それも長くは続かなかった。

どんどん拳は速くなっていき私が捌けなくなってくる。

そして、ザフィーラの拳が私に入った。

息ができなくなると同時に浮遊感。

そして、壁にぶつかった!!

「っ!?」

[美咲!!]

[大丈夫!!]

だけど、これは不味い!!

そう思っていると空からアルフが飛んできた。

「アルフ!?」

「助太刀するよ美咲!!」

「二対一か、だが、それでもまだ足りん!!」

ザフィーラが攻撃してくる。

それをアルフと二人で捌いてく。

「確かに筋はいい、感も悪くないだが!!」

ザフィーラの足が私とアルフの体勢を崩す。

「経験が足りん!!」

そして、崩れた私たちに向かってザフィーラの拳が来る。

それをプロテクションで防御するも飛ばされてしまう。

「これで、終わりだぁぁぁ!!」

ザフィーラが止めを刺そうとして、何かを見て離脱していった。

何が?と思いその方向を見るとピンク色の光が結界を貫いていた。

そうか、やったんだね。

そう思った時、私の意識は薄れていった。

 

side out

 

「ヘェ〜、闇の書か」

先生(シンサン)の予想より早いですね」

この光景を見ていたガウルンらはそれを見て笑っていた。

「ミラの方はどうだ?」

「ヤムスクに一度調査に行きました」

そうか、とガウルンは言うと目の前の画面に目を移す。

「良し、闇の書の主の場所も分かったしそうだねー、カシムに誕生日プレゼントでもやるかね」

そう言うとガウルンはデバイスを戻し転送魔法を起動させる。

「待ってろよ、カシム」




僕らは知らなかった。
彼の思い、彼の痛み、なのに僕らは彼を傷つけてしまった。
それを彼はどう思ったのだろう?
憎んだのかな?
哀れんだのかな?
それとも何も思わなかったのか?
僕らにそれが分かるはずがない。
分かるのは彼を拒絶したのは僕らで
その拒絶を認めたのは彼だということ。
次回『拒ーきれつー絶』
僕らはそれでも足を止めることはしなかった。


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拒ーきれつー絶

side智春

 

今僕は今回の襲撃を計画したであろう人物のもとに向かっている。

あの手際、そして、撤退のタイミングさらにはアジャイル・スラスタの弱点を知っている。

ここまで来れば誰がやったのか分かる。

「どうした?夏目」

「何で!なんでこんなことをした!!」

カシムは僕が何を言っているか分からないような顔をする。

分からない?あんな風に傷つけたくせに!?

「何を言っているかオレにはわからないが」

「わからないだって!!昨日君はあの人たちと会ってたんだろ!!」

「何を言っている?落ちつー」

「ふざけるな!!」

カシム肩を掴んで壁に押し付ける。

「昨日!!君が差し向けたと思われる人と戦った!!その結果姉さんも高町さんもテスタロッサさんも傷ついた!!何でこんなことを!!そんなに、そんなに管理局が嫌いなのか!!」

僕自身もう止まれなくなっていた。

「智春君どうしたの!!」

珍しく慌てたような顔をした姉さんが上がってくる。

でも、それでも!!

「どうせ!!この数日僕らの目の前に来なかったのは彼女たちと結託していたからだろ!!」

この、何も言わなかった奴に、この怒りをぶつけないと気が済まない。

姉さんがこっちの部屋に入ってくる。

「何とか言えよ!!カシム!!」

「…………それは……お前が弱かったからだろ?」

「なっ!?」

その言葉は今の僕にとって地雷のような物だった。

この場にいる僕と姉さんの動きが止まる。

「お前たちが弱かったから傷ついた。違うのか?」

顔を俯かせたままカシムは言葉を続ける。

「レイヴンだって、お前は使いこなせていない」

カシムの声は僕の怒りを上げていく。

「はっきり言ってやるお前たちは三流以前のレベルだ。まだ赤弓の方が(・・・・・)強い」

その言葉で僕はカシムに殴りかかった。

だが、その拳はカシムの右手に受け止められそのまま僕の視界が変わる。

気づいたら天井が上にあった。

「前にも言ったはずだ。お前らではオレに勝てないと」

何も含まれていない声でカシムは僕に告げる。

「……これだけは教えてカシム君」

姉さんの声が聞こえる。普段の誰かを弄り回す声と違って真剣な声。

「貴方は私たちの敵?味方?」

「もう、答えはわかってるはずだ」

それは言外に僕らの敵と言ってるようなものだ。

「カルテットセットアップ!!」

「アル、ラムダ・ドライバを攻撃に転用」

何時の間にか姉さんの後ろにいたカシムは姉さんを気絶させた。

「レイヴン!!」

僕の中で何かが弾けた。

それと同時にアジャイル・スラスタを最大稼働させてカシムに向かう。

「カシムー!!」

だが、その攻撃は完璧にいなされてそして、

「言ったはずだ、お前らではー」

僕のみぞに鋭い衝撃が走った。

「ーオレに勝てないと」

その声と共に僕の意識は無くなった。

 

sideカシム

 

智春が眠ったのを確認してヴィータから闇の書を送ってもらい二人の魔力を食わせる。

本来ならオレは傍観しているつもりだった。

ここ数日いなくなっていたのもガウルンを見つけるためだった。

だが、見つからなかった。

この部屋には武器を取りに来ただけなんだが、まさか拒絶されるなんてな。

だが、それでもオレは後悔していない。

昔に戻るだけだ。

目の前にいるのは全員敵。

信じられるのは自分と手元の武器だけ。

そんな毎日に戻るだけだ。

だから、大丈夫だ。

カルテットとレイヴンを少し弄る。

これで、こいつらはさらに強くなる。

今回のこの件はある意味でラッキーだ。

この二人は潜在能力はとても高いが向上心が全くなかった。

最近だと智春に向上心が出てきたが美咲は全くと言っていいほど向上心なんてものは無かった。

だから、こうすれば恐らく良いはずだ。

だが、これでオレは夏目たちに会うことはできなくなった。

だが、不思議と何も感じなかった。

なるほど、これがガウルンの言っていたまともになれないということか。

確かにな。

オレは慣れすぎている。

何かを失うことにも……何かを消すことも。

恐らく、オレはあの時に人間として大事なものを失ってしまったのだろう。

殺すか殺されるかの世界。

これからオレが進むかもしれない道はそういう道だ。

「ありがとう。夏目、美咲お前らと居れて一時的にだがまともになれた」

そう呟いて出る。

この二人のおかげで難航していた闇の書のページがかなり進んだ。

 

八神家に戻るとそこには八神以外の全員が揃っていた。

「どうだった?」

「……」

無言でヴィータに闇の書を投げる。

丁寧にしろよとか小言を言いながらヴィータは闇の書を開けてさっきより増えたページを見てオレがしたことを理解したのか良いのかよと言ってくる。

「肯定だ。それにこうすれば、ガウルンとの戦いの時に荷物がいなくなる」

そう言うとヴィータたちは悲しそうな顔をした後次のリンカーコア蒐集についての話を始めた。

今は修行だと言って赤弓を連れて行っている。

赤弓もこういう風に自分の成長具合が分かるのは嬉しいらしく珍しくテンションが上がっていた。

「とりあえず、カシムは暫く主といるということでいいのか?」

「肯定だ」

「カシム。はやてのこと、頼んだぜ」

「分かっている」

すまないな、夏目、美咲、氷川これが、オレの選んだ道だ。

この場にいるものにはすでに言ってある。

オレは……再び人を殺す。

最悪の敵ーガウルンを殺す。

あいつは殺さないと止まらない。

だから、殺す。

 

side奏

 

美咲ちゃんからの電話でカシム君が敵になったのを奏は聞きました。

奏は原作を知らないけどこれは不味いというのはなんとなく分かる。

だけど、闇の書というのは管理局でも危険とされているロストギア。

奏は何故カシム君がそっちに行ったのか理解できない。

でも、理解できない場所が数多くあった。

カシム君が二人を突き放すように言った言葉の数々。

普段のカシム君ならこんなことを言わないはず。

でも、言った。

それは、何でだろ?

奏がそれを考えていると上司から一枚の辞令を渡された。

その内容は、アースらへの転属とするとのことだった。

その後奏が顔を真っ青にして叫んだのは言わなくても分かるよね?




失ってはならないものがあった。
それを守るためにオレは目の前にある小さいものを捨てていった。
そのせいで結局は全てを失うことになると分かっていてもするしかなかった。
気づいても気づかぬふりをし続けてそして、何時かは相応の裁きを受ける。
その日までオレはー。
次回『対ーおもいー立』


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対ーおもいー立

side智春

 

今日から氷川さんがアースラに配属されたらしい。

らしいというのも今アースラは此処ではなくミッドチルダにあるためである。

そして、氷川さんとテスタロッサさんが私立聖祥大附属小学校に転校してくる。

ちなみに、テスタロッサさんの妹というかオリジナルは現在目を覚ましたけどリハビリが必要らしい。

だけど、それよりも今は赤弓くんだ。

彼は今日も学校に来ている。

恐らくこれもカシムの指示だろう。

あの時の戦闘は一切記録されていなかった。

そのため、僕らも様子見するしかないのだ。

「どうしたんだ夏目?そんな苛立った顔して」

「ああ、何もないよ宮永君」

「そっ、そうか」

宮永君が引きつったような顔をした。

何かおかしかったかな?

「そう言えば今日だよなフェイトと奏が来るのって」

「そうだよ」

その声とともに先生が入ってくる。

さて、今日も授業授業。

 

sideカシム

 

春日部と共に街を捜索しているが、全く痕跡すらない。

すると、目の前で道に迷っているらしき車椅子の少女がいた。

八神と違い金髪、そして幼い。

「どうしたんだ?」

「えっ!?えっと、道に迷ってね」

「何処だ?送ってやる」

すると金髪幼女はすこし悩んだ後住所を教えた。

それにしても、この金髪幼女何処かで見たことがある気がして……思い出した。

アリシア・テスタロッサ。

プレシア女史の子供でオレが救うように頼まれた少女だ。

それがこうして健康になっている。

オレはそれが素直に嬉しいと思う。

自分の、誰かを殺すための技術が多いウィスパードの技術が誰かを救う。

これはオレにとってはかなり嬉しいことだ。

 

彼女の家の前まで送ってオレと春日部は彼女と別れる。

そして、何時ものように春日部とショッピングモールでお茶を飲む。

「……どうするの?」

「何もしない。オレはガウルンを殺すだけだ」

そっかと春日部は哀しそうな顔をする。

だけど、オレにとってはこれが当たり前なんだ。

明日も生きてるかどうかわからない人生。

それでも、進むしか生きる道が無い。

だからオレは……止まらない。

 

side小豆

 

久しぶりに外へ出る。

前世は監禁されていたから外は新鮮だ。

気まぐれでショッピングモールに行く。

ゲームセンター?前世では聞いたことしかないけど行ってみたいと思った。

そして、そこにいたのは春日部耀という少女とそして、

「?何だこれは?」

不思議な顔で画面を見ているカシムという女の子のような男の子がいた。

気づいたら私は声を出していた。

「何が……わからない……ですか?」

「このシステムだ。何故頭に当たっても生きていられるんだ?」

「……それだと……需要が……無い」

「なるほど」

「……やって……みれば?」

「そうしてみる」

そして彼はコントローラーを持って固まった。

「……どう……したの?」

「操作方法が分からん」

私はため息をつく。

さっき自信満々に言っていたのは何だったんだ?

「……ここを……こうして……こうすれば……動く」

「なるほど助かる」

ありがとうと彼は私に微笑みかける。

それを見て私は顔が熱くなった。

そして、わかったことがある。

この人、天然だ。

彼の顔が見れないから画面を見る。

するとそこにはさっきまでの素人のような動きではなく玄人のような動きを見せるキャラクターが。

あれ?この人、素人だよね?

「?弱いな本当にこれが最大難易度なのか?」

「……あなたが……異常なだけ」

後ろで春日部さんが首を縦に振っている。

彼はそれを見て再び首を傾げた。

 

side智春

 

やられた。

そう思ってしまった。

今日から僕らも戦線に復帰して高町さんたちと共に闘ったが、仮面の男にテスタロッサさんが敗れリンカーコアを蒐集されてしまった。

だが、ここ最近の手口はカシムのそれじゃない。

あの仮面の男はおそらくカシムとは無関係だ。

だけど、それならカシムは守護騎士たちがこうしてる間に何をやっている?

カシムの性格からして何もしていないなんてことはない。

だけど、何処にもいない。

これはおかしい。

僕はいや、僕と姉さんは何かを間違えている?

じゃあ、何を間違えた?

わからない。

カシムの考えていることが全くわからない。

 

そして、12月に入った。

ここ最近、赤弓くんは学校に来ていない。

おそらく、何かがあったんだろう。

守護騎士たちをあせらせる何かが。

 

sideカシム

 

八神が入院した。

その知らせは今までよりオレたちの焦りを強くさせるのには十分だった。

そして、オレはそれと同時に現れ始めたガウルンの痕跡を追っていく日々を送っている。

ふと、八神家のカレンダーが目にとまる。

そこには12月24日にカシム君の誕生日と書かれていた。

「そうか、もうすぐオレの誕生日か」

自分でも忘れていた。

 

そして、ガウルンの痕跡を追っていくとそこは

病院?しかもここはオレは走って八神の病室へ向かう。

ガウルンがいるかもしれない、だから走る。

そして、病室に向かうとそこには八神だけいた。

「あれ?どうしたんカシム君?」

「……ああ、何をしに来たのか忘れた」

「はぁ、相変わらずカシム君はよう分からんな」

八神はそう言うと近くの椅子を叩きここに座りと言った。

「シグナムたちはどうや?」

「元気すぎるぐらいだ。特にヴィータは最近帰りが遅くなるほど夢中になるものを見つけてな」

「へぇー、それで?」

「この前なんか階段で転んでも行こうとしていた」

そう言うと八神は笑った。

その笑顔を見るとオレもつい微笑んでしまう。

やっぱり、八神の笑顔は好きだ。

この笑顔を守りたいとオレは思う。

「そう言えばカシム君は好きな人とかおるん?」

「ああ、いた」

「紛争地域におったんよね?どういう人やった?」

「可愛い娘だった」

そう言うと八神は少し驚いた顔をした後続きを促してきた。

「オレは、彼女、フローラと言う娘なんだが笑顔がとても可愛らしかった。オレはフローラの笑顔が好きでずっとフローラと共にいた」

「おっ、おうそれで」

「オレはフローラが居ればそれでいいと思っていた」

「うん?さっきから『好きだった』や『思っていた』って何で過去形なん?」

「フローラはもういない」

「えっ?」

「フローラは、死んだ。オレは……助けられなかった」

「……そうなんか」

重苦しい空気になった時シグナムたちが入ってきた。

「どうした?」

「今日ははやてちゃんのお友達が来る日だからみんなで集まろうって」

「そうか」

暫くするとそのお友達が来た。

そして、それを見ると同時に八神と八神姉、春日部、黒桐姉妹以外の顔が強張る。

それもそうだろう。

その友達の中には夏目や美咲、誰かたちの集団がいた。

赤弓を、外に待機させといて正解だったな。

「久しぶりやね〜夏目くん美咲ちゃん」

「久しぶり〜」

「……久しぶりだねはやて」

二人とも若干戸惑いながら挨拶を返す。

そして、少女2名とシグナムとシャマルが外へ出る。

そして、オレも病室を出る。

すると夏目と美咲もオレについて来る。

 

「……何の用だ?」

オレは後ろにいる二人に声をかける。

「貴方が何のためにこんな事をしたのか、知りたくて」

「言ってる意味がよくわからないな」

「じゃあ、変えるね。貴方は何で私たちのデバイスを直したの?」

「……………………」

「沈黙は私の予想通りの答えって事でいいよね」

「…………その通りだ」

「えっ!?どいうこと!?!?!?」

「はぁ、智春君、カシム君はね私たちに強くなってほしかっただけなの」

「そのために、あんなことを?」

「それだけじゃ、ないけどな」

そして、二人に本当のことを話そうとしてその気配に気づいた。

「っ!!ガウルン!!」

その言葉で二人とも後ろを向く。

そこにはオレの予想通りの男、ガウルンとあの双子がいた。

「よう、カシム。それじゃぁ」

殺し合おうぜその言葉でガウルンたちがオレたちに向けて魔法を放ってきた。




オレは闘うことを選んだ。
そうすることで彼女の存在を忘れないように
自分の罪を忘れないために
そして、二度と大切な人を殺させないために
オレは闘うことを選んだ。
次回『楽ーゆめー園』


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楽ーゆめー園

sideカシム

 

ガウルンの放った砲撃魔法をラムダ・ドライバの力場で防ぐ。

だが、その間に後ろに双子が移動してくるが

「やらせない!!」

「悪いけど、カシム君はやらせない」

夏目と美咲によってその攻撃は防がれる。

「良いぜ!良いぜ!!」

「ガウルン!!」

ガウルンが病院の方から移動し始める。

ガウルンを逃さないようにオレは夏目たちを置いていき念話で赤弓を呼び戻しながらガウルンを追う。

幸いここはもう結界の中だ、手加減はしなくていい。

「アル、非殺傷設定を解除(・・・・・・・・)

了解(ラジャ)非殺傷設定を解除』

非殺傷設定が解除されたのを確認してナイフを投げる。

だがそれはラムダ・ドライバの力場で防がれてしまう。

「アル!!モードボクサーだ!!」

『了解しました軍曹殿』

アルの形がリボルバーからボクサー(散弾銃)に変わる。

「アル!!ラムダ・ドライバを攻撃に転用」

了解(ラジャ)ラムダ・ドライバを攻撃に転用』

ラムダ・ドライバを攻撃に転用した瞬間、ガウルンがこちらを見た。

「行っくぜぇぇぇぇ!!カシィムゥー!!」

「ガウルン!!」

放った弾とガウルンの力場が拮抗する瞬間、ガウルンの姿が消えた。

「逃がすか!!」

ガウルンのいる地点に向けてボクサーモードの魔力弾を放つ。

ガウルンはそれを避ける。

くそ!!このままじゃジリ貧だ!!

「ほらほら!!どうしたよ!!カシィムゥ!!」

「ガウルン!!」

 

side智春

 

「この程度ですか?」

「拍子抜けです」

目の前で余裕を見せている双子ちゃんがそう言ってくる。

だけど、ぼくらはそれを言い返せない。

彼女たちは僕たちを攻撃しながら話してる。

ラムダ・ドライバが無くてもこれだけの技量を持つ彼女達に僕は恐怖してしまった。

「それでは、終わらせましょう」

「わかりました」

そう言うと双子は攻撃を止めて空を飛んだ。

「逃さない!!」

「まって智春君!!」

姉さんの声が聞こえるけどそれを無視して彼女たちに向かっていく。

「コネクティブメイ!!」

「アクセプション!」

その言葉と共に双子のバリアジャケットが変わる。

左肩のところにあった盾が背中に行きそこから光の翼を広げる。

それと同時に首筋を悪寒が通った。

咄嗟に首の近くにレイヴンを戻すと衝撃が走った。

何が!?

一瞬で目の前にいたはずの双子が消えていた。

なんだ!?あの速さは!?

「防ぎましたか、しかし」

「これで!終わり!!」

見えないけど悪寒が首と左胸、足に走る。

死ぬのか?そう思った時、身体の中で……何かが弾けた。

視界がクリアになりさっきまで見えなかった双子の動きが見える。

「そこだ!!」

レイヴンをガンモードにして打つ。

すると双子がかわすような動きを見せた。

よし!!このままいける!!

レイヴンを刀に戻すとアジャイル・スラスタを使う。

「うおぉぉー!!」

凄まじい負荷が体にかかる。

それでも!!

この一撃は、届かせる!!

「行っけぇー!!」

「無駄だ、雑種よ」

だけど、その一撃は届かなかった。

何故なら僕の体には今、

「がはっ!?」

無数の宝具が刺さっているのだから。

下で姉さんが何かを言っているけど聞こえない。

あれ?何で病院の屋上の床が僕の目の前に?

ああ、そっか、僕は

「我こそがオリ主なのだ、雑種はそこで倒れてろ」

金色英雄(こいつ)にやられたんだ。

 

sideカシム

 

五分前。

 

何回めかの攻撃をガウルンにする。

お互い一撃一撃が必殺。

それを防ぎ捌き、いなしていく。

「楽しいなぁ!カシム!!」

「ガウルン!!」

お互いのナイフがぶつかり合う。

戦闘経験は同じ、戦闘技術は奴の方が上。

ラムダ・ドライバの使い方はオレの方が上。

魔導師としての力は奴の方がはるかに上回っている。

総合的に言えばあいつの方が強い。

だけど、オレには負けられない理由が……ある!!

「ガウルンー!!」

「なに!?」

ナイフを右手だけで掴みそのまま投げる。

ここだ!!ここで奴を仕留める!!

ラムダ・ドライバの力場をナイフに集中させる。

そのとき、レイヴンから危険信号がアルに送られてきた。

それを聞き夏目とガウルン、どちらを優先すべきかを考え夏目を優先することにした。

 

送られてきた座標に向かうとそこには無数の武器に体を貫かれている夏目がいた。

幸い急所は外れていたが危険なのに変わりはない。

すぐに止血と応急手当てと申し訳程度の治癒魔法をかける。

「ほう、何時ぞやの奴ではないか?」

「これをやったのは……お前か?金ピカ」

「我を愚弄するかならば」

金ピカの背後に金色の波紋が現れる。

そこから薄っすらと見えるのは膨大な魔力を内包した武器。

それを見ると同時に頭の中に聞いたことも見たこともない知識が入ってくる。

それによってあれは全て宝具という武器であることが分かった。

「死ね!!」

宝具がオレに向けて射出される。

それをオレはラムダ・ドライバの力場で防ぐ。

すると、奴は今度鎖をオレに向けて撃ってくる。

あれに捕まるな!!とオレの中の本能が言ってくる。

紙一重で鎖の拘束を躱す。

だが、それと同時に再び宝具が降り注いでくる。

それを何個か掴んでは投げて掴んでは投げてを繰り返す。

この金ピカ!!なんだ!?

すると、病院の屋上に濃い紫色をした三角形の魔法陣が現れた。

嫌な予感がする。

その予感は正しくそこから、八神と八神姉、闇の書が現れた。

[カシム!!]

春日部から念話が届く。

[どうした?]

[ごめん!!こっちも襲撃を受けててそっちに行けない]

[分かった]

春日部からの念話が切れたことを確認してから屋上に向かって走る。

先ほどの攻撃で屋上から落ちてしまったのだから仕方ないが。

屋上に着くと金ピカが守護騎士のリンカーコアを手に持って闇の書に近づいていた。

止めさせようとして八神の目が赤くなっているのに気づいた。

「八神!!」

「……カシム……君?」

「この雑種が!!」

近くを見ると茶髪少女たちが鎖で拘束されていた。

よそ見をしていたら後ろから何かがくる。

背中を守るようにラムダ・ドライバの力場を作る。

何個かは弾いたが、2個ほど腹に刺さった。

刺さった奴を抜き、治癒魔法で止血しながら八神の元へ向かう。

「この、雑種如きが!!」

「なめるな!!」

最短ルートを遮るように降ってくる宝具を躱しつつ八神のところに行く。

そして、八神の近くにガウルンが転移した。

構えた右手にはラムダ・ドライバの力場が集中しているのが分かる。

八神は、やらせない!!

その時、オレの中で何かが弾けた。

視界と思考がクリアになっていく。

意識を自己に没頭させながら進む。

本来ならやり直しのきかないこの能力は使わないが時間がない。

意識を足に向ける。

イメージするのはチーターのような脚力を持つ自分の足。そして、それを本来なら少しづつ流していくのだが時間がない。

一気に流す!!

自分の足が書き換わっていくのを感じながらもどんどん早くなっていく自分の足に驚く。

そして、書き換えが終わった。

さっきまでの速さなど比ではない脚力で八神の元に向かい八神とガウルンの間に入る。

「アル!!ラムダ・ドライバを防御に転用!!」

『……了解(ラジャ)

ラムダ・ドライバ同士の力場がぶつかり合う。

だが、その拮抗は長く続かなかった。

前方に集中していたのだから当たり前だ。

後ろへの警戒を完全に怠っていた。

後ろからオレの身体を無数の宝具が貫く。

それと同時にラムダ・ドライバの力場が消える。

それに目を見開く。

そのままガウルンの拳がオレの胸に当たる。

衝撃がオレの心臓を止める。

……まだ……だ。

強引に体を動かし中国拳法を利用した蘇生をする。

「ゴホッ」

口から血反吐を吐く。

「……八神、……早く……病室……に……もど……れ」

「……カシム……君……?」

戸惑っている八神の声が薄っすらと聞こえる。

八神を落ち着かせようとして歩こうとすると何かで滑り倒れてしまう。

?床は赤かったのか?

いや、違うこれはオレの血だ。

「死………種」

その声とともに身体を再び宝具が貫きオレは八神の泣き声を聞くとともにー。

 

side春日部

 

屋上に着くとそこは、地獄だった。

カシムが無数の宝具に貫かれていた。

それをやった金ピカに攻撃しようとして、悪寒が走った。

その元凶は、泣いているはやて。

闇の書がページをめくって新しいリンカーコアを吸収していくってあれは私には分かる。

あれは守護騎士たちだ!!

『………………』

何を言っているのか恐怖で分からないけど何かやばそうなきがする!

すると突如はやての周辺が紫色の光で見えなくなる。

「また、目覚めてしまった」

光が収まるとそこには銀髪の美人さんがいた。

おそらく、あれが闇の書の管制人格!!

「……主の友人と同士よしばらくの間、眠っていろ」

すると、カシムと智春の身体がまるで闇の書に吸い込まれるように消えていく。

「お前達もだ、同士の友と主の姉よ」

その言葉と同時に私は底知れぬ安堵感と眠気に負けてしまった。

 

side智春

 

「起きて起きて智春君!!学校に遅刻するよ!!」

「……むにゅう」

姉さんが何かを言っているけど、それを無視して眠りの中に着く。

「仕方ないな、美咲オレが起こす」

「ごめんねカシム君」

「別に良い」

そして、急に僕は目覚めなきゃと思った。

あれ?何だろう?とても嫌な予感がする。

その予感は正しく目を開けるとそこには……僕の頭(・・・)に銃口を突きつけているカシムがいた。

「何してるのさ!!」

「……?起こそうとしただけだ」

「そんなことされたら永眠しちゃうよ!!」

そうなのか?と言いつつカシムは僕に制服を投げてくる。

「今日から彼女と共に登校するんだろ?」

その言葉を聞き僕は固まった。

彼女?僕に彼女なんていたかな?

「はぁ、フェイト・テスタロッサがもうすぐ来るぞ」

「何でため息ついたの!!」

そうじゃないか、僕は一週間前にテスタロッサさんに告白して付き合うことになったんだった。

なんで忘れてたんだろう?

ズキっと頭が痛くなった。

「どうした?」

「何でもないよカシム!!」

 

side耀

 

「耀?耀起きろ」

「後五分」

「はぁ、起きないと目玉焼きなしだな」

「それは困る!!」

カシムの言葉に私はガバッと起きる。

「ゆっくりしてから来いよ」

そう言ってカシムは私に笑いかけた(・・・・・)

あれ?カシムって私に笑顔を見せたことあったっけ?

微笑みは何回も見たけど……?

何を考えているんだろう?私は。

カシムの誕生日に私はカシムに告白して恋人同士になったんじゃないか。

まだ、寝足りないのかな。

ここが、私の現実(・・・・)のはずなのに。

 

side葵

 

去年のクリスマス。

はやての足が治った記念すべき日。

私はそれに違和感を感じたけど、考えない。

だって、

「あっ、そうか今日はカシム君が泊まりに来る日やからそんなに張り切ってるんやね」

「なっ、何言ってるの?はやて?」

「慌てすぎやで葵ちゃん」

はぅと顔を私は真っ赤にする。

その時、ピンポーンとチャイムが鳴る。

「あっ!?流石に待たせるのは不味いよね!!私行くよ!!」

「あっ!?葵ちゃんそれはないで!!」

私ははやてが何かを言ってくるのを無視して玄関まで走る。

「お待たせ!カシム君!」

「別に待っていないが」

そこにはお洒落な服を着たカシム君がいた。

「それに、オレははやてと葵(・・・・・)に会えただけでも十分だ」

ズキっと頭が痛くなったけど、私はカシム君の言葉に嬉しくなってついその手を掴んでしまう。

そうだ、去年のクリスマス私とはやてはカシム君に告白して二人で付き合うことになったんだ。

私はカシム君の手を引きながら家の中に入る。

手を繋ぐ時に手首の傷を探しながら(・・・・・・・・・・)

 

sideカシム

 

目が覚めると先程までの死にかけの身体では無く元の身体になっていた。

そして、火薬の匂いがするこの場所は間違いない。

ここは

「どうしたの?カシム?」

「フ、フローラ?」

居るとは思っていた。

でも、会えるはずがない。

だって彼女はもう、死んだはずだ(・・・・・・)

フローラ。

俺の名付け親で、そしてオレの前世で唯一好きになった少女(ひと)だ。

「早く行かないと駄目だよカシム」

「えっ?」

「忘れたのですか?今日はカシムが私の護衛に正式になる日ですよ?」

その言葉に何かが引っかかったがそんなことはどうでも良い。

オレには、フローラさえ居れば、それでいい。

ふと、頭の中で何人かの人が浮かんだ。

そして、最後に木の下で会った少女(・・・・・・・・・)の面影が見えた気がした。




過去に戻ることはできない。
オレは過去に想いを馳せる人がいた。
過去を見て未来を見なかった。
未来に想いを馳せる人がいた。
僕は好きな人とのこうだったら良いという未来を見て。
私は好きな人との日常を見る。
そして、私は幸せな幻想に浸る。
でも、これは夢だ。
それをオレは、僕は、私は、私は知ってる。
だからオレは
だから僕は、
だから私は、
だから私は、
次回『現ーいまー実』


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現ーいまー実

遅くなって申し訳ありません!
新しく書き始めた方とバイトに夢中だったことと友達がリア充になったのが原因で遅れました!
今度からはなるべくそんなことが起きないようにしたいと思います!


side智春

彼女であるテスタロッサさんと共に学校に行くとそこには高町さんたちが話しながら待っていた。

その光景を見て僕は違和感を感じる。

まるで歯車がかみ合っていないかのよくなそんな違和感が。

「ほら、智春も来て」

テスタロッサさんに呼ばれてそっちに行く。

違和感は依然と晴れないままだ。

 

side耀

「助かった、耀が来てくれなければこんなに買えなかった」

「……そんなことだろうと思った」

カシムに出かけるけど来るか?と言われて行くと私の予想を裏切らずに買い物に付き合わされた。

「何をふてくされてるんだ?」

「……別に」

するとカシムは私が膨らませていた頬をムニッと突く。

「……何するの?」

「耀があまりにも可愛かったからやったんだが、可笑しかったか?」

その言葉に耐えようのない違和感を覚える。

目の前にいるのはカシムだ、でも、カシムじゃない!

 

side葵

はやてとカシム君の三人でショッピングモールに行く。

はやてとカシム君の会話を聞いていて違和感を感じる。

今日の夕飯について話している。

それの何処がおかしいんだろ?

カシム君は外国から来た……外国?それってどこだっけ?

そう言えばこういう時カシム君ははやてにハリセンで叩かれていたなー?ハリセンで?何で叩かれてたの?

カシム君は平和な日常(非日常)で過ごしていたはず。

私の……この違和感は何?

なんで私は彼のカシム君の手首を見ているの?

 

sideカシム

フローラに連れられてきたのはフローラの父親のもと。

そこには笑いあっているフローラの両親がいた。

「ゴースト4到着しました」

「別にコード番号で言わなくても良い。君は今日からフローラ専用の護衛なのだから」

「わかりました」

その後何個か言葉を交わしてからフローラと共に出る。

そして、フローラと共に来たのは教会。

俺はその場所を知っている。

なぜならそこは

フローラの大好きな場所(フローラが死んだ場所)だからだ。

?オレは今何を思い出した。

フローラが死んだ?そんなはずはない。

現にフローはここにいる(夢の中にいる)

「ねぇ、カシム。ここで予行練習しませんか?」

「予行練習?」

「私と、カシムの結婚式」

その言葉に顔を赤くする。

オレはその言葉に

「無理だ」

と答えた。

「えっ?」

「すまない、フローラ。お前に会ってオレの気持ちは再確認できた。オレはフローラのことが好きだった」

「何だ、分かってたんだ」

「ああ、どれだけ幸せであろうとフローラが死んだことに変わりはない」

「……そっか、じゃあ最後に」

そう言ってフローラはオレに抱きつく。

「私ね、カシムのことを愛してた」

「オレもだ、愛してた」

「バイバイ、カシム」

「ああ、フローラ」

そう言ってオレはポケットの中にいたアルを取り出す。

「起きてるな?アル」

「肯定です軍曹殿」

「ラムダ・ドライバを攻撃に転用」

了解(ラジャ)ラムダ・ドライバを攻撃に転用」

「ブチヌケェェェ!!」

そして、オレはこの世界(幸せに満ちた夢)壊した(否定した)

 

side智春

夕方の通学路をテスタロッサさんと歩いてる途中で走る。

こんな世界は僕の知っている世界じゃない!

だって、テスタロッサさんは彼のことが好きなんだから!

夢はいつか覚める。

それが早くなるだけ。

「起きてる?レイヴン」

『Yes!!』

僕はその瞬間、目の前の壁をきった。

 

side耀

カシムの頬を叩く。

そして、次に私のほおを思い切り叩く。

「……痛い、けどこれで目が覚めた!!」

そうだ、ここは私のいる場所じゃない!

私の好きなカシムはあそこ(現実)にしかいないんだ!!

 

side葵

カシム君が伸ばしてくる手を拒む。

「ごめんね、カシム君。でも、私の好きなカシム君は戦争馬鹿で突拍子のないことをするカシム君なの。だから、ごめんね」

そう言うと目の前のカシム君は笑っていた。

「そっか、起きるのか」

「うん。人間誰しも夢を見るけど私の場合、それは今じゃなくてもっと後、カシム君に想いを届けるまでは夢は見ないって決めたから」

「そうか」

「バイバイ、カシム君」

すると、私の目の前に亀裂が走る。

そして、そこから眩い光が溢れてきて私の意識はそこで消えた。



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