閃光の機竜 (叶絵)
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原作前
仲良しでも喧嘩はあるよ


「お姉ちゃん‼︎」

 

いきなり怒った声が屋敷の中に響き、セリスティアは驚く。金髪が腰まであり、翡翠の瞳を持つ2人、外見が同じでどっちがどっちかわからない。ただ怒っているのは妹だとわかる。

 

「ライラ、どうしたんですか?そんな声を出して」

 

「どうしたんですか?じゃないよ!」

 

セリスティアにはライラが怒っている理由がわからない。ライラに酷いことを言ってないし、傷つけてもない。というより、溺愛をしているため、そんなことをする必要がない。

 

「落ち着いて、何に怒ってるの?」

 

「お姉ちゃん、ウェイド先生に何か変なことをいったでしょ!」

 

変なことを言ったかどうかは判断し難いが、セリスティアはウェイド先生に今まで何を言ったか思い出していた。

 

(ウェイド先生には…機竜の扱い方、訓練方法の見直し、それと…)

 

ここで思い出した。ラルグリス家の中で聞いた悪い噂をウェイド先生に言ったことを。

 

「もしかして…帝国についてですか?」

 

「そうだよ、そのせいでウェイド先生が捕まっちゃったんだよ!お姉ちゃんのバカ!」

 

「えっ…」

 

ライラの言ったことは本当なのか、と始めは思った。しかしウェイド先生を一番慕っていた妹が先生の名前を使って嘘をつくことはないはずだ。そして大好きな妹にバカって言われたこと。この言動がセリスティアの頭の中が真っ白にさせる。

 

「お姉ちゃんのことなんて大嫌い!」

 

セリスティアはこの言葉でノックアウト。ただ立つことだけで精一杯。妹は足早に階段を駆け上り、自分の部屋の中へと逃げてしまった。一般の家庭ではよくある姉妹喧嘩、数日経てば喧嘩がなかったように仲直りになるはずだ。だがこの姉妹の間では異常なことだった。初めての姉妹喧嘩、姉のセリスティアには何をして仲直りしたらいいのかわからなかった。

 

(と…とりあえず、ライラが好きなドーナツを…)

 

好きなもので釣ろうという作戦、しかし、ライラは部屋から出ることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数ヶ月後、あの時以来、ライラが部屋から出るのは家族で食事をする時のみになった。

部屋に入ろうとするも内側から鍵をかけられており、セリスティアが何度も入ろうといくつもの考えを思いつくが全戦全敗。何をしても扉を開けてくれない。

 

(今回はぬいぐるみを作りましたから…ライラが大好きなクマさんを!)

 

ライラは大のクマ好きだ。これなら確実に開けてくれるはずだと確信している。だが、

 

「ライラ、プレゼントをあげたいのですが…」

 

反応がない。無駄だとおもうがドアノブを捻る。

 

(また、ダメでしたか…)

 

ガチャという音がなり、セリスティアはえっ?ってなる。すぐさま部屋に入るが誰もいない。

 

(この部屋に入るのも久々ですね。)

 

毎日のように出入りしていた妹の部屋はピンク色で染まっていて、それは今でも変わっていない。だが、1つだけ違っていたのは…

 

(これはなんでしょうか?)

 

部屋の中は暖色で統一されている中、1つだけ寒色のものがあった。便箋である。

 

(これはライラの字…)

 

(家出をします。お願いですから探さないでください。って…)

 

セリスティアはショックを受ける、だがその後、素早く思考を回転させる。

 

(昨日の食事の時はいたが、今日はいなかった。食事の後、直ぐに出て行ったの、それともついさっき…ともかく、お母様に連絡を…)

 

父は用事で外へ出かけている。母に頼りになるのがセオリーだったが、母はセリスから渡されたライラの便箋を見て気を失っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、

 

「はぁ…はぁ…ここまで来れば…」

 

ライラは疲れていた。足が棒になるぐらいに。

 

「お腹減ったなぁ〜、というか、ここはどこらへんかな?」

 

空腹でもある。それもそのはずだ、彼女は食事をとった後、直ぐに家出をし、どこか遠いところへ走り出してしまったからだ。今は周りが見えない夜である。

 

「なにか食べものが欲しい…家から持ってくれればよかったよ…」

 

ライラは嘆いていた。後悔先に立たず。姉に罪はないと知っていながらも当たってしまったこと、そして何よりも顔を合わせにくかった。家での食事のときは姉の顔は一切見ない。姉に謝りたかったがそれ以上に申し訳なさでいっぱいだった。

 

「ごめんね…お姉ちゃん…」

 

そうポツリと言った瞬間、足音がした。

 

(こんなところに…人?ありえない。ということは動物?)

 

パニクっていた。ただ足音が近づいてくる。音からして4足ある。

 

(ヤバイ…ヤバイよ…完全に動物じゃん!)

 

足音が大きくなった瞬間

 

「君、どうしたの?」

 

声が聞こえた。容姿は短い白銀の髪に女の子っぽい顔、だけど骨格からして男のようにも捉えれる。

 

「え…えっと…」

 

ライラは迷っていた。何を聞けばいいのか、なんでここにいるのか、あなたは男ですか?それとも女ですか?初対面でそれは失礼じゃないか。

 

「兄さん、困らせてどうするんですか?」

 

兄さんと呼ばれた人の後ろで同じ色のセミロングの髪型をしている子を見つけた。

 

(兄さんということは男の子なのか…この顔で)

 

ライラが失礼なことを思っている中、兄妹で軽い喧嘩になっている。

 

「アイリ、僕はこの子が迷っているだろうと思って…」

 

「だからって、どうしたの?っていうのはないと思いますよ。ナンパの決まり文句じゃないですか。」

 

「そうだけど、放って置けなくて…」

 

これを見て、ライラは姉との喧嘩を思い出していた。

 

(お姉ちゃん…)

 

兄妹で会話をしているのをみて兄妹はいいなと思うと

 

「はい、これ」

 

兄からハンカチを差し出された。えっ?となるが

 

「あなた泣いていますよ?」

 

とアイリと呼ばれた女の子に言われた。手を頬にあててみる。汗ではない、涙を流していた。

 

「ありがとう」

 

そう言いつつ、ハンカチを受け取り、涙を拭う。そして安堵したのか、お腹の虫が鳴った。

 

「お腹減ったの?」

 

「もう兄さん!デリカシーないですよ!」

 

「ごめんごめん、もし良かったら僕たちの家に来る?」

 

このまま行ったら誘拐されるとは思わなかった。なんせ、ハンカチを貸してくれた人だ。悪い人ではないだろう。妹の方もしっかりしてるし。

 

「うん」

 

「あっ、名前まだ言ってませんでしたね。私はアイリです」

 

「僕の名前はルクス。君は?」

 

「私はライラ…です」

 

名前の後にラルグリスと言おうとしたが止めた、私は家出したからその名前は使ってはならない、その義務感があった。

 

「ライラですね。よろしくお願いします。」

 

アイリに言われよろしくお願いしますと言いルクスたちの家へ行った。



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元王家の人に居候

「ライラは大丈夫でしょうか…」

 

満天の星空を窓越しに見つめながら、セリスはライラが家出した後から毎夜のように心配をしている。ただ、家出をしたのなら捜索すればいいが、都合が良くなかった。家出した後の一ヶ月後にアーカディア帝国へのクーデターが発生したからだ。そのため、生きているかどうか分からない人を探すのは無謀とも言え、そもそも、新王国が出来たばかりで兵士の人数を割くことは出来なかった。セリスが自ら探しに行くと言ったが、もちろん、女の子1人だけで行かせる親ではない。

 

(ライラ…生きてると信じてます。)

 

流れ星はなかったが、そう願い続けている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルクス達との出会いから3年後、ライラが住む環境はガラリと変わってしまった。

前までは、王都の貴族街で裕福な暮らしをしていたのだが、今では王都の離れに住んでおり、毎日忙しい日々を送っている。だが、その生活も生きがいと感じて何も不自由とは思ってない。

 

「こんなことを自分がするとは考えられなかったからね〜」

 

朝早く、ライラはキッチンで料理を作っている。ベーコンエッグやサラダ、トーストなど効率よく作業をしている。全品を食卓に置くと、その部屋を出て行き階段を上がり二階の部屋の扉の前で止まった。

 

「アイリー、そろそろご飯の時間よー」

 

ノックをしながら言う。ライラはアイリと同部屋だが、着替え中だったりするといけないため気を使ってノックは一応する。だが、返事は一向に返ってこない。いつもはアイリがこの時間に起きてるはずだが、今日は違っていた。

 

(一応ノックしたし、入りますか)

 

ドアを開けると、ダブルベッドの上に横向きで寝ているアイリがいた。いつもは兄であるルクスにツンツンしているのだが、それを感じさせない無防備で可愛いアイリの寝顔があった。いつまでも眺めてたいライラであったが、せっかくのご飯が冷めてしまうので、アイリの頬に人差し指でつつく。

 

「ふにゅぅ…」

 

(アイリ可愛いすぎだよ…今すぐ抱きしめたい!)

 

ライラが欲望を理性で抑えつけているとアイリは起きる。未だに眠そうな声で

 

「おはよう、お姉ちゃん」

 

「おはよう、アイリ、ご飯の準備できてるから顔を洗って来なさい」

 

素直に洗面台のところへいき、食卓へやってきた。いただきますと2人は声を揃え料理を頬張りながら会話をする。

 

「あれ?兄さんは?」

 

「ルクスはもう仕事に行っているよ。雑用の依頼がたくさんたまっているから、少しでも早く消化したいらしい。大変そうだよね〜」

 

「お姉ちゃん、他人事だと思ってません?」

 

「だって、私は元王家ではありませんから。アイリ姫?」

 

「その呼び方はやめてください!」

 

「ごめんごめん、アイリ。そういえば、珍しく自分で起きなかったよね?」

 

「すみません、古文書の解読が後少しで解けそうだったので…」

 

「そっか、それなら仕方ないかな」

 

そんな話をしながら食事を進めていく。アイリとルクスは旧帝国王家の生き残り。新王国が2人を釈放する条件。それはどちらかの1人が新王国の国家予算の一部負担をすること。そのため、ルクスはアイリにその負担をさせないよう、国中の雑用係となって東奔西走している。また、アイリも兄さんの負担を軽くするためにと思って古文書の解読、装甲機竜の指南書の改訂などをしている。ライラは居候の身であり、2人の為にと思い家事の全般をこなしている。

 

「そうだ、ルクスからの伝言、『しばらく帰って来れない』だそうで」

 

「しばらくってどれぐらいでしょうか。もう兄さんはいつもザックリしているんですから」

 

「あはは…それじゃ、そのしばらくの間はアイリと2人きりだね」

 

「お姉ちゃん、その…頼みたいことが…ありまして…」

 

「どうしたの?可愛い妹のためならなんでもするよ?」

 

「本当ですか?ならば、装甲機竜の扱い方を教えてください」

 

「うん。いいよ。とりあえず、食器を洗って洗濯物を干すまで待っててね」

 

「それなら私もやります」

 

食事を終えた2人は仲良く家事をこなし、外へと出る。森の中に入るとライラは何度も行き帰りしている道をアイリと談笑しながら歩く。開けた場所に到着すると、ライラは早速3つ持っている機攻殻剣のうち1つを渡す。

 

「お姉ちゃん…これって…」

 

「特殊型の装甲機竜、ドレイクだよ。性能はアイリの方がよく知っているから説明は省くよ。最初は性能が低い装甲機竜を使わないと痛い目みるから」

 

「は…はい…頑張ります」

 

ライラは基本操作を教え、後はアイリが自由に動くように指示をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、アイリは装甲機竜の装着を外し、草の上に寝転がって肩で息をしている。よく見ると足が震えており、もう立てないようだ。そこに金髪の髪を持つ女の子が近づく。

 

「アイリ、お疲れ様。今日はこれぐらいにしておこっか。」

 

「い…いいえ、まだやります。」

 

「そんなこと言っちゃって…足がピクピクしてるよ?怪我をしちゃったらどうするの?それに1日で強くなれる訳ではないのよ?毎日コツコツ練習するのが一番なんだから」

 

「は…はいぃ…」

 

ルクスに口喧嘩で完勝しているアイリでもライラとでは一度も勝っていない。今は一歩も動けないので素直に従っておこう。

 

「ほら、アイリ乗って」

 

ライラはアイリに背を見せ体を乗せるように促す。アイリは一瞬ためらったが、また正論の矢が大量に刺さりそうなので体を預ける。

 

「お…重たくないですか?」

 

「それほど重くはないよ。逆に心配するぐらいかなぁ〜、ちゃんと私が作る料理を食べてるのっていうぐらい」

 

「ちゃんと食べてますよ」

 

「それじゃなんで私と同い年なのにお胸が小さいの?」

 

「小さくありません!ってあれ?」

 

アイリはツッコんだ後に重要なことを聞いた。

 

「お…お姉ちゃん、さっきなんて?」

 

「お胸が小さいの?」

 

「そっちではありません!その直前に…」

 

「私と同い年なのにってところ?」

 

アイリは唖然した、今までルクスと同い年だと思って接していたことと、自分と同い年なのにライラがはち切れんばかりのお胸を持っていることに。

 

「世の中は不公平で満ちあふれてます…」

 

「アイリ何か言った?」

 

「何でもありません」

 

アイリの憎しみのある独り言はライラの耳には届かなかった。



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王都へ

「いつ見てもすごいよなぁ…ここは」

 

アイリの特訓から帰った後、ライラは王都へ出かけていた。 理由は食材がないのと…

 

「早めに行かないと、女王さまが怒っちゃう…」

 

アティスマータの女王と面会である。というのも、彼女は女王から直々に任務を受けている。その経過報告をしなければならない。しかし王都に出れば、不意にラルグリス家やその関係の一家に目撃されると面倒ごとになるため、タオルで隠している。目立つ金髪をタオルからはみ出さないように王城へ走っていく。

 

「お疲れ様です。衛兵さん」

 

そう言いながらライラは慣れた手つきでタオルを手に取る。普通は顔パスでは通れない。そこで、女王はライラに髪留めを贈り、それを着けて王城へ来れば衛兵は通させるように命じると言われた。金髪の髪にインパクトのある紫色の宝石のような髪留めが衛兵の目に映る。

 

「お…お疲れ様です!」

 

そういいながら、扉を開ける。ありがとうといいながら通り過ぎ、城内へと入っていった。場内に入るとまたタオルで髪を隠す。城内で隠してもあまり意味はないが念のためにということで隠している。いつもだったら、通り過ぎるときに衛兵が今日はいませんよと言ってくるのだが、今回はそうではなかった。恐らく新人だったんだろう。色々と考えていたら女王の間に繋がる扉に着き、門番に話す。ライラが来るときいつもこの人が門番しているので顔パスで入れる。女王が面会の用意ができ、門番がドアを開ける。

 

「女王さま、お待たせいたしました」

 

「はい、ライラ。今日もお疲れ様です」

 

女王は笑みをライラに向ける。彼女はライラに甘い。側近から聞いた話で、娘がいるらしいが、その娘よりも甘く接しているのがライラである。娘はあまり女王とは話さないらしい。ライラとその娘と会ったことは未だにない。

 

「女王さま、例の件で報告をしにきました。」

 

「ライラ、そんなにかしこまらないで、もっと気楽に」

 

「ですが…」

 

アティスマータ女王は微笑みながらライラを見る。ライラにとっては無言の圧力が怖かった。今までは側近がいたため敬語で話していたがその人がいない。ライラは観念して

 

「はぁ…わかりましたよ」

 

「あら、素直なのね」

 

「もう、話をそらさないでよ」

 

「それじゃあ、報告してちょうだい。その後に談笑しましょう」

 

談笑する気はないのだが、任務の報告をするため坦々と話す。

 

「ルクスは順調に雑用をこなしています。最近は信用を得て一週間後の予定まで入っているらしいです。あと、仕事に専念するためしばらく家を空けておくと今日言われました」

 

「ルクスは忙しくなってるのね。しばらく家を空けるならばルクスの報告はいいわ。それでアイリちゃんの方は?」

 

「アイリはいつも通りですよ、古文書の解読に専念しているらしい。あぁ、そうそう、今日の朝はアイリから装甲機竜の扱い方についてレクチャーしていました。これはアイリから頼まれたのでやったのですが」

 

「ライラ、アイリちゃんの噂を聞いたんだけど」

 

(何だろう。アイリが装甲機竜を使いたい理由と重なるのかな?)

 

「アイリちゃんと一緒に寝ているのって本当?」

 

どうでもいい話だった。どうしてこんなことを今言い出す。

 

「えぇ…まぁ、そうですけど」

 

「なら、今度私と一緒に…」

 

「嫌です。絶対に嫌です」

 

「えぇ〜…」

 

女王がショックを受けている。頭に暗い色の波波の三本線が引かれているであろう。

 

「確かに、女王さまには感謝していますよ。私の行方をラルグリス家に知らせないようににしてくれているし、何より、この楽しい生活を続けられるのは女王さまのおかげですから」

 

「あらあら」

 

「どうしたんですか?」

 

「ライラちゃんの笑顔が可愛いなって」

 

「もう、からかわないでください!」

 

顔を赤くしながらそう言う。

ライラが女王と出会ったのがルクスとアイリの釈放の時である。ライラがルクス達を迎えに行ったときに会ってしまったのだ。女王はすぐにラルグリスの次女と分かってしまった。ライラの父である当主から、可愛い娘が家出してしまったから探して欲しいと言われていたのだ。だが、女王はライラの実直な性格を見て、彼女の意思を尊重するようにした。しかし、それだけではメリットがないので、ライラの所在を内緒にすることを対価にルクスとアイリの監視の任務をしてもらうようにした。いざというときの為に機攻殻剣を神装機竜を含む3つも渡した。ライラは汎用機竜の1つでいいと遠慮したのだが、女王はあなたが気に入ったからと押し付ける形で3つの機攻殻剣を渡したのだ。

 

「そういえば、機攻殻剣はどうしたの?」

 

「アイリに渡したままでした。アイリがいいならこのまま渡そうと思っているんですけど.」

 

「私はいいと思うよ。アイリちゃんはあなたを慕っているようだし、彼女の性格上、反逆できないだろうし」

 

「もしかしたらルクスと一緒にやりそうなんですけどね」

 

「ルクスくんがそんなことをすることはないわ。私がこの国の政治を腐敗させない限り」

 

「それは国民に不平等な政治をさせないということを誓っているのですか?」

 

「もし、そうしたらあなたが許さないでしょ?『閃光の妖精』さん」

 

「…その呼び名はやめましょう」

 

『閃光の妖精』というのはライラの二つ名である。橙色の神装機竜をスタイルの女性が纏い、閃光の如く私利私欲な政治家や王を殺すとまではいかないが、再起不能まで追い込む。ルクスの『黒き英雄』はアーカディア帝国を滅ぼした後、見た人はいない、そのため『閃光の妖精』は必ず存在してると言われかなり世界中で知られている。

 

「そろそろ帰りますね」

 

「もっと話しましょうよ」

 

「話をしたいのは山々なんですが、夕食の準備をしないといけないので失礼します」

 

「そう…仕方ないわね。アイリちゃんをよろしくね」

 

「わかりました」

 

そういって退室する。退室した後、すぐさまタオルを被り王城を去る。 これから二週間の献立を考えながら商店通りへ行く。

 

(アイリと2人だけだから、ヘルシーなものにしようかな〜)

 

そう考え始めたとき、昔から馴染みのある髪を見かけた。

 

(なんでこんなところにお姉ちゃんがいるのよ…)

 

人混みの中でもひときわ目立つ髪の色。上品な立ち振る舞いをしながら誰かを探しているような様子を伺わせる。

 

(私はもう帰らないの。それにそっちに行ったら女王からの任務ができないじゃない」

 

女王からの任務というより、アイリが心配なだけ。自分を姉として慕ってもらえる子とは離れたくないと思うである。同い年ではあるが。

 

「上手く躱しながら行けるかな?」

 

セリスにバレませんようにと願いながらライラは買い物を始め、済ませた。帰る頃には姉の姿は見かけなかった。しかし、時間がいつもよりもかかってしまったため、仕方なく橙色の機攻殻剣を取り出し、神装機竜を纏って家へと帰って行った。




王女と女王が混同していましたので修正しました。
誤字報告ありがとうございます


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原作1巻
士官学園へ


「あなたにはクロスフィードにある士官学園に行ってもらいます」

 

いつものように、女王陛下へルクス達の経過報告をした後に言われた。

 

「へっ?」

 

素っ頓狂な声が出た。いきなり転勤ですみたいなことを言われたから誰でもそうなるだろう。

 

「理由を聞いてもいいでしょうか?」

 

「あなたはルクス達の監視に加えて遺跡調査や他国の政治を再起不能にさせてるでしょ?だけど、学びも大切なのよ。それにアイリちゃんとルクスくんの監視を続けるにも必要なことだし…」

 

「ちょっと待ってください、どうしてそこでルクスの名前が出るんですか?確か女学園でしたよね?」

 

「ええ、そこは女学園よ。ルクスくんはそこで機竜整備士として依頼されてるのよ」

 

「なんでそんなことを知っているんですか…」

 

「ふふっ、乙女の秘密よ」

 

(乙女なんかじゃない歳のくせに…)

 

アイリは機竜の知識をより得るために士官学園へ入学し、寮生活を送っている。時々、毒を吐くような発言で友達ができないんじゃないかと心配していたのだが、アイリからの手紙ではそんなことはないらしい。また、その手紙にはライラと同じ姿を見たというのも書いていた。多分セリスであろう。世界には2、3人は同じ顔の人がいるんだよって返信はしたのたが、アイリに自分の正体がバレるのは時間の問題だ。

 

「士官学園ですか…」

 

「確かお姉さんが通っていましたね。あなたの家で何があったのかは知らないわ。だけど、そろそろ顔を見せないといけないわ。お姉さんは王都にいるから向こうにいるときに気持ちの整理をしたらいいんじゃない?」

 

「お姉ちゃんこっちにいるの!?なんで!?」

 

「確か、軍事演習で士官学園の騎士団と合同でやっていますよ。一度見に行きますか?」

 

「いえ、まだ心の整理がついてないので」

 

「そうですか。ならば推薦書を渡しておくので、学園長に渡してくださいね」

 

「了解しました」

 

任務だからと割り切って渋々受け取る。そして、退室しようとドアに手を当てると王女が思い出したように言った。

 

「そうそう、報告は手紙でお願いね。あなたが再々休むことになったら他の生徒も怪しむでしょうから」

 

「わかりました」

 

「それと、向こうの学園長には明日着くと言っておいたので」

 

「それを先に行って欲しかった!」

 

そう言ってドアを開け飛び出す。今はもう日が沈む頃であり、士官学園があるクロスフィードまで時間がかかる。すぐさま家に帰り準備を済ませてから、神装機竜を纏い駆け出して行った。



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初めてのお嬢様学園

「この、痴れ者がぁぁぁぁぁっ」

 

士官学園に着いて敷地内へ入ろうとした時、そんな女の子の声が聞こえた。ライラはこの声が気になったが、おそらく覗きだろう。こんな女の園があるんだ。覗きがいても仕方がない。そう思いつつ、今頃は捕まえられたのではないかと思ったのだが、校舎内での慌てぶりからみるとまだ捕まってはいないらしい。

 

(本当、男ってバカなんだから、まぁそのおかげで穏便に学園長室へ行けるんだけどね。)

 

校舎内をうろうろしながら歩く。角を曲がろうとした際に何者かとぶつかる。

 

「きゃっ!?」

 

「うわっ」

 

2人はぶつかった後、尻餅をつき、痛そうにお尻をさすっている。その後に少年の声が聞こえた。

 

「すいません、お怪我はありませんか?」

 

「えぇ、大丈夫です」

 

そう言いつつ少年の手を取り、顔を確認すると見慣れた童顔、銀髪の容姿が見えた。この人はよく知っている。

 

「ルクスなんで逃げてるの?」

 

「それはその…えっと…」

 

何か後ろめたそうにしており。先ほどの女の子の叫び、そして走る状況になるには。とそう考え一つの結論に辿り着き、ルクスに言葉で攻めようと企んだが

 

「あぁ!あそこにいたぁ!」

 

そう言いながらこちらに人差し指を向けて大声を出している茶髪の女の子に邪魔された。その大声で駆けつけたのだろうか、蒼髪の女の子と黒髪の女の子がこちらへ向かってくる。

 

「セリス!その少年を捕まえろ!」

 

(私はお姉ちゃんじゃないんだけどなぁ〜、仕方がない協力を…)

 

ライラはお姉ちゃんと間違えられたのが不服であったが、久々にルクスを弄るのが楽しみだった。すまないという気持ちを一切なくルクスへ顔を向けるがいつの間にかいなかった。

 

「くっ、逃げられましたか」

 

そうライラはセリスの口調を真似しながら悔しがる。

 

「セリスでも捕まえられないとは…あの少年逃げ足が速い…」

 

「Yes、でもセリス先輩はなぜ学園にはいるのですか?」

 

「え、えっとそれは…」

 

(困ったな…お姉ちゃんとんでもなく有名人になってるじゃん)

 

5年間離れ離れになったとしてもセリスに似ていると言われるのは嬉しくもあり悲しくもある。そんなことで一喜一憂している時間はなく、この黒い髪の子に何か返さないと怪しまれると危機感を感じている。

 

「ノクト、それはもちろん学園長に用があるんだ。なぁ、セリス」

 

「えっ!?は…はい、そうです。いち早く学園長に会わなくてはなりません」

 

「そうか、ならティルファー、ノクト行くぞ」

 

「待ってください。ノクトお願いがあります。学園長室まで案内してくれませんか?」

 

「Yes、ですが、一人でも行けるのでは?」

 

「わお…ノクト、そんなことをセリス先輩に言っちゃうんだ。こういう風に聞くていうことは…」

 

ティルファーという女の子がノクトと呼ばれる女の子に察しろという目線を送った。おそらく、迷子になったと下級生がいる前で言えないセリスのプライドがあるのだというのを目線で知らせている。ただ、ノクトはそれが怪しいと思ったのだが少女に目を細めて

 

「すいません、セリス先輩聞きづらいことを言ってしまって…案内します」

 

「それではセリスまた後で」

 

「えぇ、また後で」

 

「待っていろ〜変態痴漢少年!今すぐに成敗してやる〜」

 

(ルクス、まぁ頑張れ)

二人はそんなニュアンスの言葉を発しながら走って行った。それを見ながら妙な雰囲気になってしまったノクトとライラ。何か話題がないかと探したのだが変なことを喋るとセリスにも影響が出るという歯がゆい時間となってしまった。ライラにとっても学園長室に早く行きたいという気持ちが早まりこの状況は予想できなかった。

 

「それでは、ノクトよろしくお願いします」

 

「その前に…」

 

「な…なんですか?」

 

ノクトはライラをジーと見ているバレるなバレるなと念じつつ、顔が青ざめており、汗が尋常じゃないぐらいかいている。

 

(早く…早く案内して!)

 

そう願っているとノクトから話しかけてくる。

 

「もういいですよ、ライラさん」

 

「えっ!?なんで!?」

 

ノクトに見破られてしまった。セリスのマネしても効果がなかったのか、何が原因なのかがわからない。でもまだ確証はないはずだからまだ通せると思い。

 

「何を言ってるのでしょうか?ノクト」

 

「いえ、あなたのことはアイリからよく聞いています。それにセリス先輩は機攻殻剣は2つも持っていません。」

 

アイリの友人だとおそらく自分がセリスに似ていると言いふらしていても仕方がない。それに、セリスは機攻殻剣が2つも持っていない。これから推測したのだろう。

 

「はぁ、負けたよ。その通り、私はアイリの保護者的な立場であるライラです。よろしくねノクトさん」

 

「Yes、ライラさん。アイリとは同級生でルームメイトなのでとても仲良くさせてもらっています。ですが、さんはいりません」

 

「そう、ならば私と同い年かな。私もライラでいいよ」

 

「えっ!?同い年だったのですか!?」

 

「なんだろう、このデジャヴ感…」

 

そんな話をしていると、いつの間にか学園長室の前に立っていた。一応マナーなのでノックをして入る。中からどうぞーという声が聞こえたので、中へと入る。

 

「いらっしゃい。あなたがライラさんですか?」

 

「はい、そうです。あっ、これ推薦状です」

 

「はい、ちゃんと女王からの推薦状を受け取りました。ライラ・ラルグリスさん」

 

「えっ、さっき女王って…それにラルグリスっていうのも」

 

(学園長さん、おちゃめ過ぎでしょ…秘密にしたかったのに)

 

学園長からノクトへ自分の秘密をバラきました。もうノクトには秘密を守ってもらうしか…

 

「ごめんなさいノクト、まだ話せるような心の準備をしていないから。後、このことは」

 

「Yes、誰にもいいません」

 

「ありがとう。準備ができたら一番にノクトに教えます。」

 

「ありがとうございます」

 

そういいながら学園長とノクトと話をしていく。学園内での規則を確認し、世間話をして盛り上がっているところでノックが聞こえた。



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数ヶ月ぶりの再会

このペースだと原作1巻で10話以上になりそうです…
どこか手を抜こうかと考え始めてます


「学園長、学園内に侵入した少年を捕らえました」

 

そう言ったのは先ほどノックして入ってきた少女、ノクト達と一緒にいた蒼髪を持った子であった。

 

(とうとう捕まっちゃったのか…どう弄ってやろうかな〜♪)

 

「その少年の特徴を教えてくれる?」

 

学園長は落ち着いて犯人の情報を確認する。

 

「確か、白銀の髪でした」

 

「あの、学園長」

 

「どうしたの?ライラさん」

 

「ライラ?この人はセリスではないのですか?」

 

「騙していてすいません。私はセリスさんではありませんライラです」

 

「そうなのか、こちらも申し訳ない。私の名前はシャリス。私の友人にとても似ていたので…」

 

「世界で二人は同じ顔の人がいるっていいますからね」

 

「二人とも、話を戻すよ。それで、ライラ何か言いたいことは?」

 

「あの、その少年のことを知っているので、できれば寛大な処置を…」

 

(してもらって、私がずっといじり倒すんだ♪)

 

「私も知っている人だから。ひどい仕打ちはしないよ。とりあえず、シャリスとノクトはその少年をこちらに連れてきて」

 

「わかりました」

 

そういいシャリスとノクトは学園長室を出る。

 

「それで学園長、その少年…ルクスを知っているのですか?」

 

「ライラさん、学園長じゃなくてレリィと呼んでちょうだい?そんな堅苦しくしないで。そうねぇ、私は彼が幼い頃から知っているわ。ルクスくんがこの学園に来させたのも私が雑用の依頼を出したからよ」

 

「そうだったんですね」

 

ライラはルクスを犯罪者として扱われては困るので弁明しようとしたのだが、レリィさんが彼を知っている。それにルクスがこっちに来させたレリィさんなら罪を被せる気はないと判断し、安心した。

 

数分後またしてもノックが鳴り響く、まぁシャリスさんだろうと勝手に判断して扉が開かれるのを待つ。

 

「失礼します。学園長、兄さんが捕まってしまったのを聞いたのですが」

 

「あれ?アイリじゃん、やっほ〜」

 

ライラは久しぶりに会った妹ともいえるアイリの姿を見て呑気に言葉を交わす。

 

「お姉ちゃ…ライラさん、いつここに来たんですか?」

 

「あらら、もう姉ちゃんとは呼んでくれないのね…およよよ…」

 

悲しそうなフリをして人差し指で目をさする。

 

「はぁ…お姉ちゃんはなんでここに来たのですか?」

 

「それはもちろんアイリを見るために!」

 

急に立ち直り、親指を立ててグッと拳を出す。アイリはもう1つため息をついてから言った。

 

「それで学園長、兄さんは今どこに?」

 

「独房よ。もうすぐ連れてくると思うわよ」

 

「ならレリィさん、どこか部屋を貸してくれませんか?空いている教室でもいいので」

 

「いいわよ。隣に応接室があるから使ってちょうだい。でもなんで?」

 

「男が入ったって女子達が野次馬根性丸出しでここへ来ますし、こういうときのアイリはルクスに毒を吐きまくりますから」

 

「なっ!?」

 

ライラはレリィに笑みを見せながらそう言った。図星であるアイリはタジタジしている。

 

「まぁ、ここの女子達にその本性を見せないようにしたいからなので」

 

そう言い切り、アイリは少し頬を赤く染めた。レリィは笑顔を見せ

 

「本当に姉妹のようね」

 

「まぁ、私にもいろいろとありましたから。それでは応接室にいきますね。行こっかアイリ」

 

アイリはハイといい、学園長室からでて隣にある応接室へと入って行った。

 



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3人での会話

「もう、兄さんは何をやっているんですか!」

 

そう言われてルクスは困っている。その二人を見て微笑ましそうに見るノクトとライラ。本当はノクトは退室した方がいいのではないかとライラが思ったのだが、アイリはルームメイトだからと言ってこの場にいることを許可した。

 

「色々とごめん、アイリ…それにライラも」

 

「あら?私にも謝るのですか?」

 

「だってしばらく家を空けるとか言って何年も帰ってこなかったから」

 

「そう、私の苦労も分かってくれたのですね。本当に大変だったのよ?」

 

「面目ない…」

 

ライラはしばらく家に帰らなかったルクスに弄ってやろうとは思ったのだが、そのことについて罪悪感があるっていうことで許そうとした。だが、

 

「覗き魔に痴漢、さらには下着ドロ、まったく私が学園に広めた兄さん像が台無しです。それに身内が犯罪者なんて私の立場がなくなってしまうじゃないですか、どうしてくれるんですか」

 

「あはは…」

 

そう曖昧に返事をするルクスに少し苛立ちを覚えた。

 

「そういえば君、座らないの?」

 

と言って、ルクスはノクトを座らせるように促せたのだが

 

「NO、私はこのままで良いです。変態とは適切な距離を取らないと息だけでスカートがめくれるって聞いたので」

 

「いつの間にか変態扱いされている!?」

 

「お姉ちゃん、兄さんこちらは私とルームメイトの」

 

「ノクトだよね。ファミリーネームは知らないけど」

 

「Yes、ライラには少し前に話しました。ノクト・リーフレットです」

 

「改めてよろしくね、ノクト。それでルクスはレリィさんに痴漢騒ぎの処分はどう言われたの?」

 

「それがライラ…新王国の姫であるリーズシャルテ・アティスマータと決闘することになったんだ」

 

「へ…へぇ…」

 

女王は確かに娘がいると言った。しかしライラには紹介をしてくれなかったため、外見は知らないが内面はすごくいい子だとは聞いている。その子と決闘ということは…と推測を始める。

 

「つまり、姫様の裸を見てしまい、そこでルクスがエロいとか発言をし姫を怒らせた。裸を見たっていうことで牢屋行きかここで雑用で働くかを決闘で決めるということかな」

 

「なんでわかるの!?」

 

「乙女の直感よ♪」

 

「もう…兄さんはデリカシーなさすぎです」

 

そう呆れてアイリはため息をつく。ノクトはライラの推測に驚いており、何も言えない。ルクスは面目ない表情を浮かべている。変な空気をライラが切り出す

 

「アイリ、姫様の情報ってある?」

 

「リーズシャルテさんは学園内では無敗を誇っています」

 

「でもそれはルクスも一緒でしょ?」

 

「「ある意味、無敗だから」」

 

そう声を重ねてライラとアイリは不思議な笑みをしていた。

 

「二人とも、他人事みたいに…」

 

「これでも兄さんを応援しているんですよ?借金を返すためにも兄さんには国中の雑用をしてもらわなければなりませんから」

 

「私はどっちかっていうと他人事だからね〜」

 

「はぁ…」

 

ライラは何しにここへ来たんだとそう思いながらため息をした。そう思いつつも雑用のために決闘に集中するために精神統一をしていたルクスだった。



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プリンセス対旧プリンス

「新王国第一王女リーズシャルテ対、旧帝国第七皇子ルクスの機竜対抗試合を行う」

 

教官の声が演習場に響き渡り、観客が盛り上がる。その中にはライラ、アイリ、ノクトの3人の姿が一緒である。

 

「な〜んでこんなにもいるんだろうね〜」

 

「それは兄さんが変な騒ぎを起こしたからですよ」

 

「Yes、ですが、ただ単に男性の機竜の使い方を見たいという人もいるでしょう」

 

演習場の観客席は全体の7割を埋め尽くされている。アイリの意見が見に来た観客の9割を占めているだろう。あとは純粋にリーズシャルテ様の機竜の技術を盗もうとしている人だとライラは予想する。

そう考えていると、ルクスは飛翔型汎用機竜に接続をし、戦闘準備を完了する。また、リーズシャルテも機竜に接続する。

 

「神装機竜か…」

 

「えぇ、新王国の王族専用機竜、ティアマトです」

 

王族専用とはいえども、王族で神装機竜を扱えるのはそういないのだが、リーズシャルテの目の前にもいた。

 

(さすがに、この公の場でバハムートを使用するのはマズイか)

 

旧帝国を滅ぼしたのが王族であったなどと知られては厄介事を生み出すので、それを減らそうとしているのだろう。

程なくして試合開始の合図をした直後、リーズシャルテがルクスに射口を向け狙撃を開始する。ルクスはギリギリで躱しつつも危なげなく回避をする。

 

「わお、ルクス余裕だね」

 

「そうでしょうか?私にはそんな風には見えませんが」

 

「それは違いますノクト。兄さんはギリギリで躱すようにしているのです」

 

ルクスは相変わらず躱していく。しかしリーズシャルテは痺れを切らしたのか特殊武装である空挺要塞を4つ展開する。

 

「私のダンスは少々荒っぽいぞ!ルクス・アーカディア!」

 

そんな声が演習場に響く

 

「お姫様のダンスはお淑やかにするようなものじゃないのかな?」

 

「Yes、ですがリーシャ様はそんな余裕はないかと」

 

ライラとノクトが話しているうちにルクスは躱し続ける。リーズシャルテも負けず嫌いなのか空挺要塞を16に展開し、射撃を続ける。しかし表情を見ると焦っているような顔をしていた。

 

「空挺要塞を頼り切った攻撃パターンしかしてないから。そろそろ」

 

ライラが予想をしていると、リーズシャルテはその予想外なことをした

 

「神の名の下にひれ伏せ、天声!!!」

 

「この状況で神装を使っちゃったかぁ…」

 

「それほどリーズシャルテ様は全力で戦わないと兄さんには勝てないと思ったのでしょう」

 

「ところでアイリとノクトはリーズシャルテ様が暴走したのは見たことあるの?」

 

「いえ、見たことはありません」

 

「No、いつもはこんなに特殊武装などつかいませんので」

 

「なら、初めて見るんじゃないかな暴走しそうな姿」

 

そう言いつつ、視線を落とすと暴走寸前になっているリーズシャルテが焦っている。

 

(あ〜あ、これはやってしまったな、しかもこのタイミングで来ますか…)

 

そうライラはため息をつきつつ、空を見上げる。そこには

 

「「ギィィィィェェェェァァァァ!!!」」

 

人の天敵である幻獣神が咆哮していた。

 

「一匹なら、なんとかなるけど二匹もか…」

 

最悪なことに二匹同時に




字数が少なくなってきてるー


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天敵の襲来

「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁ」」」

 

演習場にいた多くの生徒がいきなり現れた幻獣神に驚き、悲鳴をあげている。この士官学園は幻獣神に対抗するために作られたと言っても過言ではないのだが、実戦経験が少なく、幻獣神も滅多に出現してない。

 

「ねぇ!まだ抜剣の許可が出ないの!?」

 

「救援は!?警備隊は!?」

 

「どうして三年生がいないときに!?」

 

そんな声が多く聞こえる。不測の事態に平常心で備えるのが機竜使いの鉄則なのだが、そんなもの女子達は気にせずパニックになっている。

 

「やれやれ、まだ候補生らしく、皆さんは突発的な騒動には弱いのですね」

 

「Yes、ですが仕方ないかと。幻獣神一体では上級階層の使い手3人、中級階層の使い手が5人、下級階層の使い手が10人以上で撤退戦、防衛戦をするのがやっとですから」

 

「それに、今回の場合は一体だけでなく、二体だから仕方ないよアイリ」

 

普通の人の考えをノクトとライラが言う。三年生がいない状況では防衛戦ができるかといえばできないだろう。経験が浅いし、指揮ができる人も少ない。そこで、アイリから提案が出た

 

「姉さん、ここは私が…」

 

「駄目だよアイリ、ここは学園内だし、街の中だから街に最小限の被害で抑えたいから抜剣の許可がなかなか出ない。それはわかっているよね」

 

抜剣許可が下りないのは、あくまで最小限の被害に抑えるため、防御や回避に専念すると被害が大きくなる。だが、汎用機竜、暴走寸前の神装機竜一機ずつだと倒すどころか殺されるだけだ。

 

「だから、アイリはノクトと一緒に避難誘導して、幻獣神は私がなんとかするよ」

 

「だけど!」

 

「大丈夫、街に被害をもたらさないから、それに私は明日編入するからね。今日のことは不問にしてくれるはずだよ」

 

そう言って片目を閉じアイリを安心させ、橙色の機攻殻剣を抜剣する。

 

(生徒はほとんどいないし、この子でいいでしょ!)

 

あいにく、この神装機竜の詠唱符は知らない。女王からこの剣をもらったときに教えてもらわなかった。いや、正確には教えることができなかった。なぜなら、忘れちゃった♪てへっ♪と言われたからだ。このままじゃ意味がないのだが、昔ウェイド先生に低い確率だが思念操作だけで機竜を展開できることがあると聞いたので実践をしたら上手く機竜を纏えた、よって詠唱符はライラにとってもういらないものとなっている。ライラが橙色の機竜を纏い、空へ駆け出す。

 

「なっ!?橙色の神装機竜!?」

 

それに気づいたのは、戦っていたルクスとリーズシャルテ、避難誘導している三和音とアイリである。ライラの正体を知っていたルクス以外が驚いている。

 

『ルクス、もう一体の幻獣神をお願い!こっちはちゃんと倒すから!あと!無いと思うけどフレンドリーファイアだけは勘弁ね!』

 

『わかった。リーズシャルテ様、お願いがあります』

 

ライラの冗談を無視してルクスはリーズシャルテに頼み事をする。リーズシャルテは《閃光の妖精》の出現に驚きを隠せていないが、すぐさま暴走を抑えるようにしながら、ルクスの話を聞く。その間にも

 

「まったく、ルクスはお姫様に何の頼み事をしているのかな、早く終わらせてこっちに来て欲しいんだけど!」

 

幻獣神二体同時に戦っていた。街を破壊されないように幻獣神よりも高く飛翔していた。数分後、

 

「ごめん、お待たせライラ」

 

「遅い!大遅刻!最初に言った通りに一体お願いね!」

 

「了解!」

 

そう言って2人同時に左右別れて散開する。すると上手く幻獣神が別れ、ライラとルクスへそれぞれ向かっていく。程よい距離で幻獣神を離れさせることに成功したライラは

 

「さて、とっとと終わらせましょうか!」

 

そう言って剣を抜く。そして

 

「《神速》に加えて《剣舞》!」

 

目に見えない速度で幻獣神に向かい、上半身と下半身を別れるように斬り、その後に下から左右真っ二つに割れ爆発する。アイリはその姿を見て

 

「すごい…」

 

と感嘆な声を出していた。後はルクスが相手をしている幻獣神だったが、ライラが茶々を入れようとルクスに竜声で声を掛けようとしたら、リーズシャルテの《七つの竜頭》を放ち、幻獣神は消え去る。

 

「ふぅ…何とか終わったかな」

 

演習場に戻り機竜を剣に戻す。ルクスも幻獣神がいないと判断し、戻ってくるが…

ガチャン!

不時着をしてしまい、すぐさま医務室へ連れて行かれた。

 

「はぁ、終わった終わった〜」

 

今から学園長に事の次第を報告するついでに、シャワーを借りようと演習場から出ようとすると

 

「姉さん、聞きたいことがあるんですけど?」

 

振り向くと、鬼のような剣幕でアイリが立っていた、その光景にライラは

 

「あははは…シャワーを浴びてからね?」

 

声を震わせながら答えることしかできなかった。

 




うわぁ、戦闘描写雑だな〜


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何回も同じことを聞いた気がする

天敵の襲撃を難なく撃退し、その功労者の1人であるライラはシャワー室にいた。

 

「ふぅ、ルクスは既に知られてしたけど、アイリや三和音、さらには姫様にも私が《閃光の妖精》だとバレてしまったなぁ〜」

 

ライラが《閃光の妖精》と知られたくないのは、ただ単に有名になりたくないからであり、いつか正体を知られたら親が無理やりでも連れ戻しに来るからだ。

 

「仕方ないかな。それで学園を守れたんだし」

 

そう割り切ろうとした時、入り口から自分と同じ金髪の少女が現れた。

 

「まさか、《閃光の妖精》が伯爵令嬢だったとはな」

 

この人も私をお姉ちゃんと間違えているのだろうか、セリスと同じ家系ではあるのだが、今は伯爵令嬢ではない。

 

「えっと、すみません。どこかでお会いしましたでしょうか?」

 

「お前、セリスティア・ラルグリスではないのか?」

 

「えぇ、私はセリスティアという人ではありません。明日からこの学園に通うライラと言います」

 

「そうか、すまない。似ている人がいたのでな」

 

このやりとりはもう何度目なんだろうか。そう既視感を覚えていたライラの隣にリーズシャルテがやってくる。

 

「その…姫様、大丈夫ですか?」

 

「姫様は止めてくれ、リーシャでいい。大丈夫ですかというのはどういうことだ?」

 

「ならリーシャ様、特殊武装や神装を多く使ってしまって大丈夫だったのですか?特に精神的に」

 

「なっ!?」

 

最後の方が図星だったか、女王から聞いた話と同じでリーシャ様は素直である。素直だからこそ、言動に動揺を隠せないのだ。

 

「何故それを!?」

 

「ルクスは戦闘中に全て回避行動か防御行動しかしていないのに、直撃を入れてないことで手数を増やした。しかしそれら全ても防御に徹したルクスにリーシャ様はプレッシャーで焦ったのでしょう。学園内で無敗であるリーシャ様は」

 

「…その通りだ」

 

リーシャは小さく呟いた。仕切りの向こう側にいるライラは聞こえたが聞こえなかったフリをした。

 

「そうだ、お礼を言わなければな。学園を守ってくれてありがとう」

 

「いえいえ、そんな大したことはしていませんよ」

 

「そう謙遜するな、普通は大勢の機竜使いで戦う幻獣神を1人で倒したのだから誇ってもいいぐらいだぞ」

 

「それを言うなら、リーシャ様も倒したのでは?」

 

「あれは、ルクス・アーカディアのおかげで倒せたのだ。後でお礼を言わなければな」

 

「すいませんリーシャ様、先に失礼します」

 

シャワー室から出て着替えの服を着る。普段なら私服であるのだが、レリィに報告をしに行った時、制服が出来上がったと言い渡してきた。いくら何でも早くはないかと言ったが、レリィには

 

『乙女の秘密よ』

 

と言われた。まったく女王といいレリィさんといい、いい年をした女性は乙女と言いたがるのか、分からない。

制服の着方に戸惑いながらも、服を着終え、鏡で整える。

 

「なっ!?ライラ、まだ更衣をしていたのか!?」

 

リーシャ様がシャワーを終えたのだ。ライラがリーシャの方へ振り向くと、タオル無しの状態で、両手で変な風に隠していた。右手は胸を、左手は下半身を隠すが手首当たりでヘソを隠している。しかし、リーシャの手首は小さく何か烙印みたいなものが見え、何の烙印か聞こうとしたのだが、リーシャが隠す程の訳ありだろうと推測をし、何も聞かなかった。

 

「リーシャ様、後で制服を正しく着れているか教えてくれませんか?」

 

「お…おう、わかったぞ」

 

リーシャは手早く体についた水を拭き取り、制服へ着替える。そして、鏡の前にいるライラに近づく。

 

「またせたな。さてチェックをしてみようじゃないか」

 

「ありがとうございます。ではお願いします」

 

リーシャはライラを四方八方から見てみる。セリスと本当に似ていると思いながら細かなところをチェックをする。その時あることに気づく

 

「ライラ、お前は一年生なのか!?」

 

「えぇ、そうですよ。同じ歳の人と勉強するようにとレリィさんに言われたので…ってリーシャ様?」

 

ネクタイの色が緑色は一年生の学年のカラーみたいなものだ。二年生は赤色、三年生は青色である。リーシャはライラの大きな胸を見ながら

 

「この世は不公平だ」

 

落胆した声で言っていた

 



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今夜から寮生活

リーシャ様に服装の軽いチェックを受けた後、ライラはアイリに怒られていた。もちろん自分から怒られに行くほどマゾ属性はない。更衣室から出て逃げようと扉を開けたときにアイリが目の前にいた。その瞬間。アイリの寮部屋に連行をされ、散々なお小言を言われた。今まで自分が《閃光の妖精》であることを隠していたのか。どうしてルクスが知っているのかそんなことを延々と言われたのだ。

約三時間後、

 

「私とお姉ちゃんの間では隠し事は無しにしましょうね?」

 

「は…はい…」

 

初めてアイリとの口喧嘩で負けた。ライラはアイリの圧力で強制的に返事をさせられた。もう一度、家柄のことで怒られるなんてその時には考えれなかった。

 

「それなら私は寝ますので」

 

「ルクスの様子は見なくていいの?」

 

「兄さんが汎用機竜を数十分動かすだけでバテるような体力ではないし」

 

「そうだね、どこかの元姫様と違ってね」

 

「もう、やめてください」

 

そうアイリは拗ねながら布団の中へと行く。ライラはこれ以上いたらノクトにも迷惑がかかるだろうと気遣い、部屋の外へ出る。

 

(さすがに、ルクスのことが心配だなぁ)

 

ライラはルクスのことが気になるので、医務室へ足を運ぶ。

医務室へ行くと、ドア越しに静かであり、誰もいないと感じたため、ルクスで遊んでやろうとノックをせずに中へ入る。すると

 

「はっ!?」

 

「えっ!?」

 

リーシャ様とルクスが向かい合っていた。何故かリーシャ様が制服のブラウスをめくり上げ、スカートを下ろし、下着をずりさげ、めくらせていた。その光景にライラは

 

「ルクス、お腹フェチだったの?」

 

「僕はお腹フェチなんかじゃないよ!これはリーズシャルテ様が…」

 

ルクスの意外な性癖を冷静に分析をし発言する。これにルクスは反論をする。

 

「リーシャ様が?一国の姫様がこんなことをする訳ないでしょ?」

 

「だから、これには訳ありで!」

 

口論が続く中、リーシャ様はライラに見られてショックなのか、放心状態にありずっと同じ体勢で動いていない。

 

「だいたい、エロい要求をしたんでしょ?リーシャ様、お腹を隠してください。この変態にお腹をペロペロされるま…えに」

 

そこでようやくリーシャのお腹の異変に気づく。風呂場で見たときには手首で隠されていた烙印の部分を見れた。その烙印は旧帝国の国旗の形をしており、普通の人が知れば王家に裏切り者がいるなどと言われ非難されるだろう。

 

「リーシャ様!見せたいものは分かりましたのでお腹を見せないでください」

 

放心状態だったリーシャ様を軽く揺すり意識を戻す。

 

「ライラ…見たのか?」

 

リーシャ様は不安そうにライラを見つめる。小動物が強敵と対峙したかのように震えている。

 

「大丈夫です。このことは絶対に口外しません。私の機攻殻剣に誓って」

 

「そうか、ありがとう」

 

安堵の息をつき、安心をするリーシャ様。元々、決闘を申し込んだのは風呂場でリーシャ様がルクスにこの烙印を見られてしまったのではないかという勘違いで、口止めをしようとしたからである。

 

「誰にだって人に秘密にしたいことがあるでしょう」

 

「ライラにもあるの?」

 

「ルクス、デリカシーのない発言やめてくれる?」

 

「ごめんなさい…」

 

「ちゃんと反省をしなさい」

 

そう言ってライラは少し怒り部屋を出る。ルクスの様子を見に来ただけなので、元気な姿が見れただけで良かったのだ。それなのに、配慮のない発言にムカついた

 

「まったく、想ったことをすぐに言うのがルクスの悪い癖なんだから」

 

呟きながら女子寮の廊下を歩いていく。生徒とすれ違う度に尊敬の眼差しでライラを見てくる。セリスと瓜二つの顔のため、よく目立つ。

 

(はぁ…何かお姉ちゃんと区別できるものがあればな)

 

予想よりも遥かに有名人である姉と間違えられないようになにかアクセサリーを買おうか。そう迷っていると

 

「あっ、女王様から貰った紫水晶の髪留めを持ってきてたんだ」

 

ポケットの中から髪留めを取り出し前髪につける。ただ、急につけたため、綺麗に見せていない。あくまで姉と区別するためだ。

長い廊下を歩き、目的地である部屋の扉の前へ到着。この部屋がライラの寮部屋となるところ。既に就寝前という遅い時間のためノックをし、ルームメイトがいるか確認をする。

 

「どうぞ、入りたまえ」

 

部屋から声が聞こえ、失礼しますといい中へと入る。

 

「やぁ、ライラ。朝方ぶりかな?」

 

「そうですね。牢屋にいたルクスを呼びに行く前以来ですね」

 

「あはは…そうだったな。ここは元々ルームメイトがいたのだが、王都の騎士団と合同練習に行ってしまったから空いたのだ。おそらくその子達が来るまでは同室だと思うよ」

 

「それまでお世話になります」

 

「おいおい、他学年とよく交流するからルームメイトだけお世話になるのはちょっとおかしいのではないか?

 

シャリスさんが椅子に座ってライラへ笑いながら話す。ええ、そうですね。と一回会話を切る。ここは談笑したいところだが、夜も遅く明日の授業の為に寝ておきたい。

 

「ところでライラくん。セリスティア・ラルグリスという人は知らないかね?」

 

突然言われたことで、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をする。

 

「えっと、ここの騎士団団長さんでしたよね?」

 

誤魔化すように苦笑いをする

 

「そういうことは言っていない。もっと深い関係にあるのだろう?例えば肉親だったり」

 

図星だった。ポーカーフェイスで何か返答をしないといけないと返す言葉を考えると。

 

「実はさっき言ったルームメイトはそのセリスティアのことなんだ。彼女とは入学当初からの付き合いでな。可愛い妹がいるっていうことを何回も聞いたんだ。でも、家出をしてしまって、今は生きているかもわからない。などと泣きながら言っていたよ。その時に名前も聞いたんだ。ライラって」

 

お姉ちゃんから聞いたなら仕方がない。やっぱりウェイド先生を亡くし、妹と疎遠になったのは自分の原因だと思っているのだろう。

 

「そうだったんですか。確かに私はセリスティア・ラルグリスの妹でライラ・ラルグリスといいます。が、このことはあまり広げないでほしいです。私が学園にいると知ったらすぐにでも神装機竜で飛んできそうですから」

 

「なんか冗談で言っている感じがするが、本当にしそうだ…」

 

早く寝ようとライラは思っていたのだが、学園での姉のことについて知りたいとシャリスに言ったため、夜が深くなっても彼女達はセリスの話題で話し合っていた。



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依頼を受けるとは言っていませんけど!?

王立士官学校。

ここでは人類の敵である幻神獣を討伐するために若き機竜使いを育成するために築いた学校である。若き機竜使いと言っても男子禁制である女の園となっている。

 

「今日から一緒に勉強をするライラだ。みな、仲良くするように」

 

そう生徒を見回しながら教官は言う。その隣にいたライラは自己紹介に困っていた。なぜなら

 

「ねぇ、あの人セリス先輩に似ていない?」

 

「ほんとうだ、顔立ちだけじゃなくて、身体全体まで瓜二つ!」

 

ライラの本当の姉、セリスティア・ラルグリスに瓜二つというレッテルを貼られたからだ。ただ、瓜二つだけだとそこまで有名にはならないが、セリスは学園最強の騎士団団長であるため、転入した一年生の間でもかなりの人気を誇っている。このレッテルを剥がしたいと思い、考えついた答えが

 

「みなさん初めまして、ライラといいます。学業はあまり自信がありませんが精一杯頑張ろうと思います。ちなみに、そこにいるアイリちゃんとは5年ぐらい同じベットで寝た仲です。これからよろしくお願いします」

 

「なっ!!??」

 

アイリを巻き添えにすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

その日の昼休み

 

「姉さん!なんであんな事を言ったんです!」

 

食堂で昼食を摂る前に怒った声で言ってきた。ルクスはまぁまぁ落ち着いてと言うがアイリは無視して問いかけてくる。

 

「その事は事実でしょ?それに私は転入生なんだから変に警戒されると浮足立つもの」

 

「だけど、わたしを巻き込まないでください!」

 

「見ず知らずの人が転入してクラスの一員になるなんて何日もかかるものだよ。それが初日で解決する程アイリはクラスメイトに信頼されてる証拠だよ」

 

そう言ってなだめる。そ、そうですかとアイリは照れながら座る。

 

「で、ルクスはどうだったの?」

 

「あ、うん。僕の方は幼馴染がいたからなんとかなったよ。でもそのおかげで休憩時間に質問攻めが…」

 

「あはは、それはしょうがないよ。転入生の定めだよ」

 

「それだけだったらいいんだけど、『仕事』の依頼も受けちゃって…」

 

「ルクスは頑張るね、ここでも働くなんて」

 

「まぁ、こうやって自由にできるのは女王様のおかげだよ。お礼も込めて雑用をしないと」

 

「兄さん、働きすぎには注意してください。もし何かあったら私が困るんですから」

 

「わかったよ、アイリ」

 

「もう、アイリは心配性なんだから」

 

「べ、別に心配なんかしていませんよ!」

 

談笑しながら食事をしていく。こんな食事風景も久々であったため積もる話がたくさんあり、一つ一つ消化していく。

食事を終えたとき、

 

「すいません、ちょっと…」

 

と言って食堂の外へ出ていく

 

「どうしたんだろう。アイリ」

 

「ルクス、ちょっとはデリカシーないよ。察しなさい」

 

そう言って忠告していると

 

「ちょっといいかしら。あなたたち」

 

蒼い髪で顔立ちが整った少女が話しかけてきた

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「私はクルルシファー、ユミルからの留学生よ」

 

「で、その留学生が私たち転入生組に何か用でしょうか?」

 

「えぇ、ちょっと…」

 

ここでは話しにくいのかクルルシファーが口籠る。

 

「ルクスさん、場所を変えましょう。それでいいですよね」

 

「話が早くて助かるわ」

 

そう言って食堂を出て行った。アイリにまた怒られそうだとガックリしながらもついていくルクスであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここならいいわ」

 

クルルシファーがそう言って足を止める。そこは学園の屋上。演習場や女子寮などを一望できる場所の一つである。

 

「それで私達に話っていうのは?」

 

警戒を怠ってはいないような口調でライラが直球に問う。

 

「ひとつ、あなたたちに雑用の依頼を受けて欲しいの」

 

「僕はいいけど、ライラは…」

 

「ライラさんがこの依頼を受けたら報酬を支払うわ。それでいい?」

 

「…依頼内容次第です。内容を言ってください」

 

「『黒き英雄』、もしくは『閃光の妖精』を探して」

 

依頼された二人は息を呑んだ。ルクスとライラは両方知っている。だがここで明かすわけにはいかない。帝国時代のクーデターで先陣を切って行ったのが元皇子と言ったらどうなることか。『閃光の妖精』に関しても言ってはまずく、自分自身についてより詳しく調べられるのではないかと考えた。だからライラの答えは

 

「その両方の名は噂でよく聞きます。『黒き英雄』は正体不明の神装機竜で帝国騎士の機竜を全て破壊し、クーデター後はその姿を見せてない。対する『閃光の妖精』はクーデター後に出現、腐敗した政治を行った国、地域のお偉いさんを再起不能になるほど追い詰めた。『黒き英雄』よりは現実味のある噂もあるし、同一人物だとも言われている」

 

「そう。その2人をさがしてほしいの。ライラさんの報酬ははずませるから」

 

「あの、クルルシファーさん、『黒き英雄』と『閃光の妖精』は同一人物だと思わないの?」

 

「あら、それは2人を知っているかのような発言ねルクス君。」

 

「ルクスその線はないと思うよ。だって英雄は大半、男を指して、妖精は女を指すとクルルシファーさんが予想しているもの」

 

「そう、ライラさんの言うとおりよ。彼らは同一人物ではないと私は思ってる」

 

「それで、彼らに会ってどうするの?」

 

「そこは依頼内容には含まれていないわ」

 

そうクルルシファーが断言した時、昼休み終了のチャイムが鳴った。

 

「そういうことだから2人ともよろしくね」

 

クルルシファーは扉を閉めて屋上から出ていく。

 

「大変な仕事を受け持ってしまったね…」

 

「そうだね…」

 

二人でため息をつき、教室へ帰って行った。

 



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ルクスがまた風呂で

「なんで私がルクスの雑用の手伝いをやってるんだろう…」

 

「あはははー、ごめんねライラ」

 

日も落ちた夜に男女一組のペアがお風呂にいる。だが、健全男子が妄想するようなシチュエーションで、ライラは裸にはなってはいない。それどころか湯船にはお湯が入っていない。彼らがやっているのはお風呂場の掃除である。ルクスはもちろん雑用で受けてしているが、ライラがやっている理由は

 

「食堂で待っていないだけなのにお風呂掃除をさせられるの?普通」

 

アイリの命令で掃除をしていた。お昼の授業が始まる前にアイリが怒っていたので理由を聞いたら姉さんと兄さんはなんで食堂にいなかったんですか!!??と声を荒げていた。許してもらおうとなんでも聞くと言ったら、兄さんの手伝いでもしてなさいと言われたから授業が全て終わった後にルクスと合流し、雑用を一緒にしている。

 

「まあ、依頼の詳細を聞くために屋上とか行かないからね」

 

「それで、その依頼はどうするの?ルクス?」

 

「いずれバレちゃうことなんだけど、できるだけバレる人は少なくしたいから言わないかな」

 

「私もそうしたいなぁ…」

 

2人は喋りながらも掃除する手を止まらせない。その後に洗面台などを綺麗に掃除しているときに不意にルクスが呟いた

 

「僕なんかがこんなところに居ていいんだろうか」

 

そう言い終わったとき、コンコンと扉が鳴る音がした。ルクスは急いで弁明しようと慌ただしく

 

「す、すいません。もうお風呂は終わって、今は!」

 

「期待していたことじゃなくてごめんなさい。それとも私たちの裸を見たいと思ってましたか?」

 

入ってきたのはルクスの妹、アイリとその親友ノクトであった。ご期待通りの裸ではなくちゃんと制服を着ていた。

 

「な、何を言ってるの!」

 

「あれ、ノクトもいらっしゃい」

 

「Yes、こんばんはルクスさん、ライラ。それにしてもルクスさんは身内にでも欲情するのはいかなものかと…」

 

「欲情なんかしてないよ!それにその前にライラがいるし…」

 

「私の裸が見たいのですか?ルクス?」

 

「ライラ!悪ノリしないで!」

 

「ルクスさん、童顔だからエッチな事を考えるんですね」

 

「ノクト!もうやめて!童顔っていうのも関係ないからね!」

 

ルクスがゼイゼイ言っている。そろそろ弄るのをやめようか、そう思いライラは話題転換をする。

 

「そういえば2人とも何しにきたの?私たちに用があるんでしょ?」

 

「そうでした。二人とも雑用はいつ終わるんでしょうか?」

 

「これが最後だよ。後少しで終わる」

 

「なら、ちょっとしたお仕事です。二人とも大広間にきてください。寄り道は禁止ですよ」

 

「えぇ!私もう寝たい〜」

 

「姉さん。来てくださいね」

 

アイリから強い圧力を感じる。絶対に来てくれますよねと念を押している。ライラはそれに震えながらハイとしか言えなかった。

 

「それではお願いしますね」

 

「わかった。終わったらすぐに行くよ」

 

ルクスにも依頼の了承を得たアイリは嬉しそうな顔をしながら風呂場を出て行った。

 

「さて、可愛い妹分のためにさっさと終わらせましょうか」

 

「そうだね」

 

ライラの提案にルクスが返事した数分後にはこの依頼主である寮母さんにチェックをしてもらい、一発OKをもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってましたよ二人とも」

 

大広間の前にアイリがいた。そして、アイリは二人が見えた瞬間に走ってこちらへ向かい二人の手を取る。

 

「みなさんがお待ちかねですよ。さぁ、早く早く!」

 

ライラとルクスは首を傾げていたが、アイリに手を取られ、大広間の扉の前まで連れて行かれる。

 

「さぁ、開けてください」

 

二人は片側ずつドアの取っ手を掴み押す。開き切った後には

 

「編入おめでとう!」

 

ライラとルクスは大勢の少女達に祝福されていた。



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『騎士団』への誘い

編入祝いをした次の日、主役の二人であったライラとルクスはリーシャに呼ばれて演習場へ訪れていた。ルクスはライラが来る前から機竜の格納庫へ行っていたらしく、リーシャ様に機竜の整備をしてもらったらしい。なぜリーシャが整備してもらったのか理由を尋ねると。

 

「これから二人には騎士団の試験を受けてほしい」

 

そう言った。すると、名前も知らない女の子が

 

「大丈夫なんですか?二人を『騎士団』に勝手に入れてしまって…」

 

不安そうに言ったのだが、リーシャ様がドヤ顏で

 

「勝手に入れようとしていない。『騎士団』に入る条件の一つに現『騎士団』の過半数が認める人でなければならない。今は三年生がいないが『騎士団』の過半数はギリギリいるから大丈夫だ。それに…」

 

言葉を紡ごうとするが、そこにライラが横槍を入れる。

 

「すいません、リーシャ様。お誘いしてもらっているようですが、私は『騎士団』に入るつもりはありません」

 

「なにっ!?それはどういうことだ?」

 

リーシャは驚く。ライラ程のスピードと射撃の正確さ、剣筋は眼を見張るものがあるから『騎士団』へ誘ったのだ。

 

「私は誰かを守れるほど強くありません。それに私は団体行動は苦手で多くて10名以下の部隊でないと私の機竜は役に立ちません」

 

ライラはそう言って断った。半分本当で半分は嘘だ。団体行動は苦手というのは一度王国軍の訓練で体感したからであり、自分の持ち味であるスピードを活かせずに、もどかしい思いをしたからだ。基本的に単独行動が多いライラは10名の部隊編成で戦ったことがない。というより少人数部隊でも戦闘経験がないので少なく見積もってみた結果である。

その答えにリーシャは

 

「そうか…あのスピードが出せないならば仕方ないな」

 

と諦めていた。

 

「ということで、ルクスは頑張って認めてもらいなさい」

 

そういって不敵に笑う

 

「えぇ…」

 

ルクスが頼りたい人は頼みの綱を切られてしまった。

 

「そう言えばなんでそんなに急いで私達を『騎士団』に入団させようとしているんですか?」

 

「あぁ…それはだな」

 

「それは騎士団長であるセリスティア・ラルグリスに関係しているのよ」

 

リーシャが答えようとした時にクルルシファーが即座に言った。その瞬間にライラは疑問を感じた。なぜお姉ちゃんが関係しているのだろうかと疑問に感じる

 

「三年生で公爵家の令嬢。その人が非常に男嫌いであるから王女さんはその人が来る前にルクス君を『騎士団』に入れたいと思ったんでしょう」

 

(お姉ちゃんが男嫌い?そんなことはないはず、でもあれからしばらく経っているから変わっていてもおかしくはないけど…)

 

ライラの中では釈然としていないが、お姉ちゃんは男嫌いとしておこうと決めた。

 

「うむ、クルルシファーの言う通りだ。そこで今いる『騎士団』で模擬戦をし、ルクスの信頼を獲得しようとしているのだ」

 

そう言ってリーシャとルクス、その他の女子達は演習場のフィールドへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんなんだよーもう!」

 

リーシャが声を荒げる。リーシャは目論見通りにルクスの評価を上げるように計画を立てていたのだが

 

「さすがは最弱無敗ね。ここでも守りに徹するとは」

 

ライラの言った通りルクスは守りに徹していて、攻撃を一切しなかった。全ての機竜はリーシャが墜としルクス、リーシャチームの勝ちだったが、ルクスは評価に値する人ではないと少人数の生徒が言ったため『騎士団』に入れなかった。

 

「私の計画が台無しになったんだぞ!」

 

そう言うがルクスは騎士団に入るか入らないか迷っていた。雑用と雑用以外のもう一つの目的とを天秤にかけていたらしいが、結局後者を優先したらしい。

 

「ルーちゃん、はいオレンジ」

 

そう言ってフィルフィがオレンジを差し出しところで

 

「ちょっと、シャリスさん、いいですか?」

 

そう言ってこの場から離れるようにライラはシャリスを誘った。誘いを受けたシャリスを一旦、寮の部屋に連れてきたライラは早速、姉について聞き出そうとした。

 

「あの、お姉ちゃんのことについてなんですけど」

 

「セリスのことについてか?」

 

「この学園に来る前から男嫌いだったのでしょうか?それともここへ来て?」

 

「あぁ…そのことか…それは違うぞ」

 

意外なことを口に出されて驚く

 

「で、では何故、お姉ちゃんは男嫌いと噂されるようになったのですか?」

 

「以前、生徒に『男は少し苦手です』と言って、その生徒がセリスは男嫌いと噂をながしたんだ」

 

(なんていうか、相変わらずお姉ちゃんは不器用なんだから…)

 

「ありがとうございますシャリスさん。お姉ちゃんは相変わらず不器用なんですね」

 

「全くそのとおりなんだよ、この前なんて…」

 

姉についてシャリスと語り合うライラは少し嬉しそうな顔をしていた。



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鍛錬と迷い

演習場にて、3つの人間の影がある。1つは長い髪で残りの2つは短い髪をしており、後者の2人は前者と向かい合っていた。

 

「アイリ、久しぶりなんだから無理したらダメだよ?」

 

「わかっています。ノクトと一緒ならお姉ちゃんを倒せそうです」

 

「Yes、ですがアイリ。本当に大丈夫なんですか?」

 

「心配ありませんノクト。」

 

「アイリ、なんで心配されてるの?もしかして例の…」

 

「Yes、運動ができてないので機竜を扱えないのではと」

 

「ノクト!運動はできなくても、機竜を扱うには体力さえあればいいんですから!」

 

「NO、体力さえあればいいっていう考えではいけません」

 

「そうだよアイリ、技術や体力よりも精神が一番大事なんだから」

 

「ぐっ!」

 

アイリがライラに図星をつかれた。自分が機竜の扱いに慣れたのは体力のおかげだとは知っている。だが、もっと上手く操縦するには何よりも精神面を強くなければならない。

 

「でも、どれだけアイリが成長したか気になるな〜。もちろんノクトの実力も知りたいし」

 

「それは嬉しい限りなのですが、ライラは本当に2対1でいいのでしょうか?」

 

「ノクト大丈夫ですよ。なんだってお姉ちゃんは兄さんと同等またはそれ以上ですから」

 

「まぁ、間違えて急所に当たらせないように努力するよ」

 

「なんか、不穏な言葉が聞こえた気がしますが」

 

「さて、そろそろは始めますか!」

 

ライラの掛け声の後、3人は一斉に汎用機竜を呼び出し接続を開始する。初めて対戦するノクトに、試合開始の合図をライラから説明を受ける。

 

「私とアイリが模擬戦をするときは私がいつも石ころを投げ、それが地面に着くと試合開始ね」

 

「Yes、わかりました」

 

そしてライラは石ころを拾い上げ、そのまま上空へ投げる。コンッ!となった瞬間、機竜たちは相手の間を詰めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五分後

演習場から離れた芝生に1人が寝そべっていた

 

「はぁ…はぁ…」

 

「アイリ、すごいね。3分も私と戦闘できるようになったんだ」

 

「それは…ノクトがいましたから」

 

アイリは息を切らしながら答える。

 

「No、私はライラの情報を知ろうとしましたが、本気を出される前に倒されました」

 

「そういえば、さっきの戦闘で何割の力を出したの?」

 

「うーん、大体2割かな〜」

 

「えっ、2割で3分ですか!」

 

「ちょっと、2人とも3分を舐めすぎてない?カップ麺はもちろんできる時間だけど、世界を救うシュワッチ!な人なら世界を救うこともできるんだよ」

 

「何を言ってるのお姉ちゃん」

 

「Yes、言っている意味が全然わかりません」

 

ライラがたった3分で何ができるのかをわかりやすく説明したのだが、逆にわかりにくかったらしい

 

「さて、そろそろ夕飯時だから帰るよ。アイリ、おぶってあげようか?」

 

「大丈夫です。立てます」

 

無愛想に言いながらアイリは立ち上がり寮へ向いて行き、ライラとノクトはついていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、いつもよりも早く起きてしまったライラは水を飲もうと食堂へ行こうとするも、応接室に何者かがいると察知し、その扉の前に足音を立てずに移動をした。

 

(おそらく寮生のはずなんだけど…こんな時間だし警戒しないと)

 

腰に滞納していた機功殻剣を手に持ち、もう片方の手でドアを一気に開ける。

 

「うわっ!」

 

驚いた声の主は少年。この学園で少年はただ1人、ルクスが応接室のソファーの上にいた。

 

「どうしたの?ルクス、こんなところで。不審者だと思ったじゃない」

 

「ごめん。ライラ、ちょっと事情があってね」

 

「もしかして、学園を立ち去ろうか迷っているの?」

 

「それもあるんだけどね。やっぱりライラは鋭いなぁ…」

 

ルクスがため息をつきながら話を続ける。

 

「うん。僕は本当にこのまま学園にいるのは迷惑がかかるんじゃないかって」

 

「やっぱり、元皇子っていう立場が嫌なの?それならアイリだってそうじゃないの」

 

「そうなんだけど。ここは女学園だし、男がいても大丈夫なのかなって」

 

「ルクス、相変わらず難しいことを考えているのね」

 

ライラがルクスの対面にあるソファーに座る

 

「あのね、ルクス、お出迎え会のときはあんなに迎えてくれたじゃない。ここまで祝ってもらえるのは元皇子でも雑用王子でもないルクスをここへ迎えてくれてるの。大体、ルクスが編入してくることを反対する人がいたのならばそんなことしないし」

 

(個人的には女王からの任務を楽に進めたいから説得してるんだけどね)

 

「うん…だけどね」

 

そうルクスが言いかけた時に突然に鐘の音が鳴り始めた

 

「これは…ルクス行こう」

 

ルクスは言われずともライラと一緒に学園の格納庫へと走っていった。



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再びの襲撃

夜明けの空、響き渡る鐘の音。いつものような日常のような光景であるが、鐘の音は朝を迎えるためではなく、危険を知らせる音であった。

その音を気にせず、士官学園の教官が生徒へこれからの作戦を伝える

 

「では、全員揃ったので、士官候補生に通達する」

 

淡々と教官は告げてはいるが、機竜格納庫内では緊張の糸が張っている。が、

 

「城塞都市の警備隊の機竜使いが討伐に向かっている。しかし、敵は大型だ。城塞都市にまで可能性のために我々は迎撃部隊を編成し戦闘に備える。各自は司令があるまで待機しろ」

 

この発言によって多くの生徒が安心のため息をつく。

 

「随分と平和ボケしているのね。この学園のお嬢様は」

 

ルクスとライラの隣に蒼い髪の少女がやってくる。

 

「ここの人たちは最悪の場合を考えないお花畑な思考だからね」

 

「ライラ、それはさすがに言い過ぎじゃ…」

 

「でも、事実ね。ライラさんの言う通り、自分たちが出撃しないと思ってる」

 

「それでも、ほら、リーシャ様たちは出撃しようと」

 

「それは『騎士団』だからじゃないの?率先して出撃しないと待遇は悪くなるでしょ?」

 

「それでも、言い方ってあるでしょ!」

 

ライラの発言をオブラートに包み込んで欲しいと言わんばかりにルクスが注意をする。

 

「でも、安心するのもわかる。あの顔のリーシャ様だと、何故か出なくてもいいと感じさせる」

 

「でも、なんか嫌な予感がするんだ」

 

「あら?それは貴方の直感かしら?」

 

「あはは…そうかな。そういえば…」

 

ルクスが思い出したかのようにクルルシファーに問いかける

 

「クルルシファーさんは『騎士団』なのに出ないの?」

 

「私のような留学生には校則で戦闘基準があるの。幻獣神を相手に出撃することはないわ」

 

「そうなんだ」

 

「まぁ、妥当だろうね。他国のために命と機竜を失うなんてもってのほかだから」

 

クルルシファーが言った後にルクスは暗い表情をする。

 

「このまま、何も起こらなければいいんだけど…」

 

ルクスが不安と言葉にしているといつの間にか『騎士団』のメンバーが数人になっていた。

 

「まぁまぁ、ルクス。落ち着こうよ」

 

ライラは大丈夫だよと安心させようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後、教官から焦りの声が響いた

 

「安全に撤退をしろ!」

 

そして待機している生徒たちへ向いて説明をする。説明をしていくにつれて生徒たちが青ざめていく

 

「これがノクトさんから聞いた現在の戦況です」

 

説明が終わった時点では静まり返っていた。

 

「最悪の事態になったですね。これは城塞都市から撤退するか応戦をするかその判断もしなければなりませんね」

 

「ルクスの嫌な予感が当たってしまったね」

 

ライラが真剣な表情になり、ルクスへ振り返るとルクスは決心した顔つきになっていた。

 

「兄さん、どこへ行こうとしているんですか?」

 

ルクスを止めるようにアイリが言い放つ。

 

「リーシャ様を助けに行くつもり」

 

「ダメです!汎用機竜では幻獣神は倒せないし、もう一本の剣も使えない!今の兄さんには何も出来ないんです!兄さんの気持ちは分かります。ですが、この世界はどうしようもないことがあるんですよ!」

 

「わかっている。けど、僕の目的は帝国を討つことなんだ。それにアイリを1人になんかさせないよ」

 

「大丈夫だよアイリ。私が付いて行くからルクスを死なせないよ」

 

「お姉ちゃん…」

 

ルクスはアイリの頭を撫でながら説得をする。ライラが一緒に行くならば安心したのかため息をつく。

 

「クルルシファーさん、頼みがあります。僕とライラと一緒に出撃してくれませんか?」

 

「あら?私は幻獣神に関する任務は出撃できないのだけど」

 

「もし一緒に来てくれるなら『黒き英雄』の情報を教えます」

 

クルルシファーが知りたいことを教えてくれるということで目の色を変える

 

「仕方ないわね、いくわ」

 

そうルクスの提案を受け入れると、ライラとルクスは汎用機竜を、クルルシファーは神装機竜を纏い戦場へ向かって行った。

 




すいません。投稿予約を忘れていました
次は定時に掲載するようにします


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自分たちの立場

「はぁ、はぁ…」

 

息切れが聞こえるのは城塞都市から数百mel離れた荒野。1人の少女が多くの仲間を守りながら、さらには竜声を使って戦況を読みながら戦っていた。その少女と戦っている幻獣神は少なくなってはいるが、そう易々と倒れない。それに、旧帝国の近衛騎士団達も弱ったところで狙おうと伺っている。

 

『シャリス!ティルファー!早く撤退しろ!私がここで抑える!』

 

『しかし、姫!あなた一人でこの状況を何とかするのは…』

 

『そのために、お前たちは一度学園に戻り教官に出撃するように言ってくれ!』

 

『くっ!わかった。頼むぞ姫!』

 

シャリスが悔しそうにしながらも素直にリーシャの指示に従う。ここで助太刀するとかえってリーシャの迷惑になることぐらい分かりきっていた。仲間を抱えながらシャリスとティルファーは撤退していく。

 

「やっぱり、神装機竜ほどの性能でなければ姫の足手纏いになるのがオチか…」

 

「そうだよね…私たちの力じゃ、まだリーシャ様の足下にも及ばないというか…」

 

「今は何を言っても仕方がない、早く学園に戻って教官へ報せなければな!」

 

「あぁ!」

 

「どうしたティルファー?」

 

「ルクっちとライラに頼むのはどうかな?ライラはどうかわからないけど、ルクっちには雑用ということでやってもらおうよ。ルクっちは汎用機竜でリーシャ様と互角だし、ライラは神装機竜を持っているし!」

 

「そうか!でもこんな危険なことをルクス君に雑用して依頼するのは…」

 

ティルファーとシャリスが打開策を考え始めていると、学園側から3つの機竜がやってきた。1つは神装機竜、残りの2つは汎用機竜だ。シャリス達は目を凝らすと、さっき話題に出てきたルクスとライラがやって来ているのがわかった。

 

「シャリスさん、ティルファーさん大丈夫ですか?」

 

「あぁ、ライラなんともない。だが姫が…」

 

「リーシャ様がどうしたんですか?」

 

ルクスが不思議そうに問いかける。

 

「リーシャ様が戦場に一人残って未だに戦っている!」

 

ティルファーが焦っている。早く助けてあげてと言いたいぐらいに。それを聞いた瞬間にルクスがライラに向いてアイコンタクトを送る。

 

(先に行ってくれないか?)

 

(了解)

 

それを受けたライラはクルルシファーに向けて真剣な面持ちで提案をする。

 

「クルルシファーさん、私からお願いです。生徒たちを安全に学園へ運んでください。」

 

「提案っていうことは見返りもあるわよね?」

 

クルルシファーも真剣に答える

 

「えぇ、私からは『閃光の妖精』についての情報を知る限り教えます」

 

「わかったわ」

 

そう言って、ライラは機竜を解除する。ライラの汎用機竜は飛翔型のため普通は空中で解除したら危ない。

 

「ちょっと!ライラさん、あぶな…」

 

そう言おうとクルルシファーがライラが死なないように地面へ降下するが、ライラと地面がぶつかる前に消えていた。

 

「ら…ライラさんはどこに!?」

 

「それじゃ、クルルシファーさんは生徒たちをお願いします。後で戦場へ来てください。ちゃんと『黒き英雄』と『閃光の妖精』について僕たちから教えますので」

 

「え…えぇ…わかったわ」

 

ルクスはそういうと、リーシャがまだ残ってる戦場へ向かって行く。クルルシファーは何が起こったんだろうと疑問に思いながらも生徒たちを安全に学園へ運びにいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!そろそろ限界か…!?」

 

「ふっ、残念だったな雌犬」

 

大方の幻獣神は片付いたが、片付いたが瞬間に旧帝国近衛騎士団団長ベルベットの攻撃があり、2人の一騎打ちの形で戦っていた。リーシャは尻餅を地につけており、限界の声が聞こえたベルベットは機竜を停止する。その時を待っていましたと言わんばかりに予備の機攻殻剣をいつでも抜けるように手を添える。

 

「残念だったのは貴様の方だ!」

 

そう言って刃先をベルベットに向け投げる。が、ベルベットは読んでいたかのように避ける。

 

「私にそんな程度の小賢しい真似が通じると思うか?」

 

「くっ!」

 

完全に手はない。神装機竜を投げることは決してできない。自分が王族であるための絶対的証拠として死ぬまで持っていなければならない。そう思っているとベルベットは既にリーシャの前に立ち不敵な笑みを浮かべている。

 

「なぁ、お前はまだ気づかないのか?」

 

そういい、機竜の手でリーシャの装衣の腹部を引っ張る。そしてリーシャが一番気にしている烙印が露わになる。

 

「この烙印を押したのは俺様だってことをな!」

 

リーシャの頭の中は真っ白になる。本当に王女の地位にいていいのか、次期女王にこの烙印があったら国民が見たらどうなるのか。その恐怖心が蘇ってくる。

 

「はっはっは!あまりにショックすぎて言葉も出ないようだな!」

 

「…貴様の…せいか」

 

「あぁ?」

 

「貴様のせいだったのかぁぁ!」

 

「のわっ!」

 

その怒りを声に出した瞬間、ベルベットはリーシャの前からいなくなっていた。いや、リーシャの前にはベルベットのかわりに少女が立っていた。橙色の神装機竜を纏っている少女が。

 

「リーシャ様、お待たせしました」

 

「ライラ…?」

 

「もう、1人で戦うなんて無茶をしないでくださいよ?」

 

リーシャは暖かいライラの言葉に涙を落としそうになる。

 

「あぁ…ありがとう…」

 

「ゆっくり休んでください。後少しでルクスも来ると思いますから」

 

そして振り返り、旧帝国の騎士団に向けて言い放つ。

 

「さて、乙女の装衣を無理やり剥がしたのは誰?」

 

殺意と同時に

 



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いいとこ取り

「さぁ、誰が乙女の身体に触れた?」

 

少女から発された言葉は女らしからぬ声で、周りの帝国騎士たちに殺気を放っていた。

 

「おっとこれはこれは『学園最強』といわれてるセリスティア・ラルグリス嬢ではありませんか。先日の模擬戦はどうも俺たちを負かしてくれたな」

 

その威圧感を感じてないと思わせるような声色が聞こえた。

 

「あなたは…誰でしたっけ?」

 

ライラは聞こえた方へ視線をやり、機竜使いを見る。少々動きづらいような雰囲気を出しているが、そんなことを気にしていない。

 

「ふん…やはり男性には興味がないか、俺は旧帝国近衛騎士団団長のベルベットだ。つい先日、貴様に負けたばかりだからな。ちょうどいい、ここで仕返しとしようか」

 

そう言い、ベルベットは持っていた笛を口へ近づけて鳴らす。笛の音は高音域で少々うるさい。しかし、数秒吹いただけで鳴りやんだ。その代わりに幻獣神の群が向かってくる。

 

「まったく、こんな面倒なことを女性にするなんて、あなたモテないでしょ?」

 

続けて、リーシャに振り向かずに言う。

 

「リーシャ様、何もしないでいてください。大丈夫です。私が幻獣神を倒しますから」

 

「こ、この数を、どうやって… っておい!」

 

リーシャの返答を聞かずにライラは空へ飛び立つ。

 

「さあ、どこからでもかかってきなさい」

 

その言葉を聞いた幻獣神たちは容赦なくライラに突撃してくる。ライラは立ち向かうように剣を構え、向かってくる幻獣神を落としにいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…なんとかなったのかな」

 

10分弱が経つと、ライラは安堵のため息をつく。ほとんどの、いやライラが見える範囲の幻獣神は全て倒してしまったからだ。それはリーシャはもちろんだが、敵であるベルベットやその部下たちも驚愕を隠せていない

 

「なっ!」

 

「さて、次はどなたから殺りましょうか?」

 

「ま…まさか、『学園最強』が『閃光の妖精』だったなんて…」

 

「あんなにいた幻獣神が…」

 

「お前ら!何をうろたえている!さっさとその『閃光の妖精』を墜とせ!」

 

「っとその前に」

 

ライラが『神速』を使い、ベルベットに近づき首元へ剣の刃を向ける。もう少しで首の皮が切れるほどの距離をライラが保っている。

 

「その笛をこっちに渡してれないかな?後でそれは使えそうだし、それに逆らったらわかるよね?」

 

「ぐっ!」

 

反乱軍は一切攻撃ができない。いや、ベルベットがライラに笛を渡さない限り行動ができない。そう判断したのか、ベルベットは素直にライラへ渡す。

 

「どうも〜♪」

 

そう言って、剣を離し、ベルベットから距離を取る。その瞬間、反乱軍が群がってライラへ攻撃を仕掛ける。

 

「まったく、自分と相手の力量差ぐらいわかってほしいね…」

 

そうボヤキつつ、ライラは相手になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤバイヤバイ…あいつが来たせいで今までの作戦がパーになっている…」

 

ベルベットは部下たちに攻撃を指示したまま頭で考えていた。

 

「笛は取られたし、王女も交渉材料にできないなんて…ん?」

 

ベルベットの本来の目的はアティスマータ王国の王女を連れ去り、それを交渉の材料として連れ去るというものだった。今考えると、笛は取られたが、目的である王女を連れ去るだけでもいい。そう考えた末に思いついた案が

 

「王女を気絶させて、連れ去る…そうするしかっ!」

 

思いついたら即実行。リーシャに銃口を向けて、放つ。ただし、殺してしまっては意味がない。そう考え、リーシャの周りの直径1melで撃つ。リーシャは声をあげるが、それはライラには届かなかった。

 

「はっはっは!『閃光の妖精』よ!残念だったな!」

 

「ん?残念?何が?」

 

「お前のせいで王女が!」

 

ベルベットが説明しようと指でリーシャがいたところを指差すが砂埃で見えない。

 

「あぁ、そうね残念だったわね。あなたにとってはだけど」

 

「何っ!」

 

ライラが言ったことに疑問をもち、銃で放ったところを見る。砂埃がちょうど晴れてたところには1人の男性がリーシャを守っていた。

 

「おまたせしました。リーシャ様。」

 

「ルク…ス?」

 

旧帝国の皇子さまが、新王国の王女を守っていた。

 

「リーシャ様、遅れて申し訳ございません」

 

「いや、守ってくれてありがとう」

 

「さぁ、安全なところへ」

 

ルクスがリーシャを安全な場所へ移動するように催促する。

 

「でも、ルクス、お前はどうするんだ?その武器は折れてるから戦闘は無理だろ!」

 

「僕はライラと戦うよ」

 

そう言い、ルクスは汎用機竜をしまい、もう一本の剣、神装機竜の機攻殻剣を取り出す。

 

「顕現せよ!血肉を喰らいし暴竜…黒雲の天を断て!バハムート!」

 

そう言って、リーシャが見たルクスの機竜姿は漆黒でまとっていた。

 

「ルクスが…『黒き英雄』だったのか」

 

「リーシャ様は早く学園へ、ここは僕とライラで食い止めます」

 

「わかった!無事を祈ってるぞ」

 

そう言ってリーシャは戦域を離脱する。ルクスは反乱軍の機竜使いを払いのけながらライラへ近づく。

 

「ごめん。遅くなった!」

 

「ルクス、あの助けるタイミング狙っていたでしょ?」

 

「そ…そんなことはないよ!」

 

「じゃあ、そっちはお願いね」

 

「うん、わかった」

 

2人は背中合わせて敵との戦闘を再開した



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『黒き英雄』

「ひ…卑怯だぞ!」

 

そんな言葉が響いたのはライラとルクスが反乱軍を全て討伐した後だ。ライラとルクスはベルベットの言葉に疑問を持つ

 

「き…貴様ら2人と私1人で戦うなんて卑怯だぞ」

 

「ねぇ、ルクス、何を言っているのかなあの人は…」

 

「確かに。もともとは僕たちが不利だったんだけどね」

 

今、敵との比率は2:1、10分前までは2:250での対立だった。ベルベットは自分が不利になると言い訳というものを始めた。

 

「くっ、せめて一対一の勝負をしろ!」

 

「はぁ…なんか、実力がわかったから、ルクスがやっていいよ」

 

「えっ!?僕がやるの?なんで!?」

 

「私じゃ、ああいうタイプの相手に手加減なんてできないから殺っちゃうよ?」

 

ライラは笑顔で言う。ルクスは反乱軍にはきちんと罪を償ってほしい。償わずにして死ぬっていうのは極力避けてほしい。そういう思惑があるため、殺してしまうと言えばルクスが自ずと戦ってくれる。実際、ライラは冷静でいられたら峰打ちをするが、苦手な人たちには力加減ができず、殺してしまうこともある。

 

「はぁ…わかったよ」

 

「それじゃ、お願いね♪」

 

ルクスはため息をつきながら、ベルベットの前へ行く。

 

「あ…あなたは旧帝国の皇子、ルクス・アーカディアじゃないですか。なぜ、そのような機竜を…まさか…『黒き英雄』の正体が」

 

「旧帝国近衛騎士団団長ベルベット。お前のいう通り、一対一で決闘しようか」

 

「ま…まさかあの要求を飲むとは…旧帝国が墜ちた理由がわかったわ!」

 

「…」

 

ルクスは黙ったまま集中をする。途切れないように、雑念を振り払う。ベルベットも同様、集中をし、出方を伺っている。先に動いたのはベルベットだった。

 

「あの世で皇帝陛下に詫びろ!裏切り者め!」

 

ベルベットはブレードでルクスを切ろうと振りかぶる。スピードは通常ではありえない速さ。『神速制御』による一撃。普通、機竜には肉体制御と精神制御があり、どちらかで動かすことができる。『神速制御』はそのどちらも利用して高速の一撃を放つことができる。

 

「俺はこの五年でこれを修得したんだ!くらえ!」

 

ベルベットはルクスに向けて斬る。斬った。斬ったはずなのに斬った感触がない。おかしい、と自分のブレード見る。ブレードはあったが、機竜が壊れていた。

 

「なっ!なにぃぃぃ!」

 

「ど、どうしてだ!何故私の『神速制御』が敗れることが!」

 

ベルベットの中で一番自信のある技で敗れたことを驚愕する。

 

「あなた、技を開発した人にその技で勝てるわけないでしょ?」

 

「なっ!き…貴様、その時ははまだ、十二じゃ…」

 

「さようなら、ベルベット。僕は皇族として、あなたを裁くことができませんけど」

 

ルクスは落ちて行くベルベットを見ながら言い続ける。

 

「僕は戦うよ。帝国のためにではなく、僕を認めてほしいと思う彼女たちのために…」

 

「この!裏切り者が!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、殺っちゃったの?」

 

戦闘で疲労し、神装機竜を解除したルクスにベルベットの安否を問う。

 

「わからない」

 

「えっ?」

 

「多分、協力者がいたんじゃないかな?それほど大きな音が出なかったから」

 

「それじゃ、またやって来ると?」

 

「出来れば来てほしくないな〜」

 

「同感。でも次は私が殺っちゃうかも」

 

「あははは。ねぇライラ、1つ頼みごとをしてもいい?」

 

ライラはお姫様抱っこでルクスと話している。いいよ、と優しい声色で返事をすると

 

「しばらく寝かせて」

 

そういって眠りについたルクスを抱き寄せ、しょうがないな、とため息をつき、リーシャと一緒に学園へ戻っていった

 



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戦の後

「兄さんと姉さんは本当に無事なんでしょうか?」

 

学園の格納庫、『騎士団』のみんなは無事に帰還をし、ホッと一息をついている。突然の幻獣神の襲来、そして旧帝国騎士たちによる裏切り。この出来事には全てを知っている人もいれば、途中までしか知らない人も。中には何がなんだかわからなく、パニックに陥った人もいる。アイリは全てのことを知っているが、最後まで戦ったルクスとライラのことを心配する。

 

「Yes、心配ならば医務室へ行けばいいんじゃないですか?」

 

「…そうですね」

 

アイリは素直にその提案を受け入れる。ノクトはその返答を聞いてニヤリと顔を変える

 

「ノクト、言っておきますけど私はライラさんが心配なんですからね」

 

「Yes、わかっています。アイリ」

 

そういって格納庫から出て行くノクトにはちょっとした笑みを浮かべていた

 

(最初は『兄さんと』ってちゃんと言っていましたよね)

 

そう言おうとしたのだが、疲れもあってか、からかう余裕も無かった。

 

「アイリは以前よりも表情が豊かになりました」

 

親友の嬉しい変化に再び笑みをこぼした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄さん、姉さん、起きていますか?」

 

医務室の扉をノックし、応答を待つ。何秒か待っても返ってくるのは沈黙。まだ寝ているのだろう。そう決めつけて扉を開ける。医務室の中を入って漂うのはアルコールの臭いと静寂。2人ともぐっすり寝ているのだろうとベットの方に向く。しかし、カーテンに遮られ様子が見えない。カーテンの開ける音を抑えるようにゆっくりと開ける。

 

「「すぅ…すぅ…」」

 

2人は寝息を立てて寝ている。神装機竜を使って疲労が溜まっていたのだろう。その姿にアイリは

 

「な…なにしてるんですか!」

 

大声を出していた。疲れがたまり、ベットで寝てしまうのはわかる。が、ベットが二つあるにも関わらず、一つのベットで寝ていた。しかも、ライラはルクスを腕で抱きしめ、胸にあてている状態で。

 

「ん…んんっ…」

 

ライラが小さな声を出す。が、起きそうにもない。これにはアイリも気づいたようで

 

「姉さん、起きているんでしょ?」

 

と満面の笑みで冷たく言い放った。するとライラもバレてしまったと観念し

 

「あははは…」

 

笑って誤魔化すしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、もう…」

 

「ごめんね。アイリ」

 

ライラはアイリがノックしたことで起きてしまい、ちょっと遊んで反応を楽しもうと考え、ルクスが寝ていたベットに忍びこみ、抱きしめてしまった。と少々反省の色を見せながら謝った。

 

「姉さんは清楚で可憐で美人なんですから。それに…む…胸だって…」

 

「胸はいろんなものを好き嫌いなくして食べればアイリだって大きくなるのよ?」

 

「私だって好き嫌いなく食べています!」

 

「しっ!ダメよ大きな声を出しちゃ。ルクスが起きちゃうでしょ?」

 

「ご…ごめんなさい」

 

「アイリは好き嫌いがないっていうのはわかっているけどね?昔はあったでしょ?これでも私はアイリやルクスに料理を振舞っていたからわかるのよ」

 

「そうでした…」

 

アイリはガックリと項垂れる。

 

「ここでの評価は『騎士団』の団長に似ているからというのもあるかもね」

 

「姉さん、その事で聞きたいことがあるんですけど…」

 

「ん?なに?」

 

「姉さんは、セリスティア・ラルグリスと関係があるんですか?」

 

「どうしてそう思うのか聞いても?」

 

一瞬ビクッとなったが、ポーカーフェイスをし、冷静に対応する。

 

「姉さんとセリスティア先輩は余りにも似ています。あり得るのは双子、最悪でも姉妹でないと…」

 

「どうだろうね。そのセリスティアさんとは会ったことないし」

 

ライラは本当のことを言った。昔に会ったことはあるが、最近は会ったことがない。

 

「そう…ですか…」

 

ライラはアイリの弱々しい言葉を聞いてから立ち上がる。

 

「姉さん、大丈夫なの?」

 

「私よりも心配する人が起きてしまったからね。それに私はリーシャ様に会わないと」

 

アイリはその言葉を聞きルクスを見る。小さな呻き声をを出しながら覚醒しようとしている。その後にライラのいたところへ顔を向けるがそこにはもういなかった。

 

「に…兄さん!」

 

大きな声は医務室中に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良かったの?ルクス君と話をしないで」

 

医務室から出た後に不意に声がかかる。

 

「盗み聞きとは、趣味が悪いですね。クルルシファーさん」

 

「盗み聞きはできなかったわ」

 

「しようとしていたんですか…」

 

ライラはクルルシファーと話をすると何か調子が狂ってしまう。この会話でそう確信した。

 

「あなたが『閃光の妖精』でルクス君が『黒き英雄』だったなんてね」

 

クルルシファーは誰にも聞かれないように最低限のボリュームでライラに言う。

 

「えぇ、そうです。幻滅しましたか?」

 

「いえ、ただ予想外と言うか…」

 

「伝説の類いの結果はいつも下らない事ばかりですよ」

 

そう言ってクルルシファーから遠ざかる。

 

「ふふっ、そうね」

 

クルルシファーは残念な思いの反面、少し嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リーシャ様。無事ですか?」

 

「おおっ!私は無事だ。ライラ、貴様も無事だったのか?」

 

格納庫にて、リーシャの無事を知るとライラはホッとする。

 

「えぇ、私は無事ですけど…これは…」

 

見ればリーシャだけでなく『騎士団』全員が集まっていた。

 

「お前たちの功績を見た者たちだ。ライラとルクスの騎士団入りを今決定した」

 

「でも、私は…」

 

「ライラには特別に遊撃として任務についてほしい」

 

「遊撃として…ですか?」

 

「ライラはセオリー通りの一対一ではなく、ほぼセオリー無視の多対一の戦い方。私たちがいないほうがいいだろ?だから自由に戦える遊撃として『騎士団』に迎えたい」

 

確かにライラは単独がいいのだが、それだと、自分に返って負担がかかってしまう。でも、それほど出撃も多くないだろうしいいかと考える。

 

「わかりました。私の機攻殻剣に誓って、守ります」

 

その返事を聞いたリーシャは満面の笑みを浮かべた

 




次章からはライラ目線で書きます。
三人称の目線だと難しい…


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原作2巻
『争奪戦』


「ルクス君、ライラさん、学園生活はどう?」

 

城塞都市にある機竜使いを育てるための学園の学園長室。私とルクスは2人で学園長から呼び出されてここにいる。

 

「えぇ、私の方はまだ助かっています。でもルクスは…」

 

「僕はうまくやれていますよ。みなさん、よく話しをしてくれます」

 

私はこのルクスとアイリ。元皇族を監視するために私はここへ来た。だが、監視というほど堅苦しい程のものではない。元々、ルクスとアイリには良くしてくれた仲だし、2人とも現王国に反乱するような行動も起こそうとしないため、任務としてはとてもイージーである。女王に念のためと言われて軽くこなしている。

 

「話をするというよりも、ほとんどが雑用の依頼じゃないの?」

 

「あはははは…、でも最近は世間話もするようになってきたよ」

 

「依頼と世間話の割合は?もちろん、私やアイリ以外の人でだけど」

 

「ん〜、8:2ぐらいかな。」

 

「最初の方から比べたらましになったね」

 

編入当初、ルクスと生徒の会話はほとんどが依頼のことだった。ただ、ルクスのタイムスケジュールの管理をしていたのはティルファーであり。依頼の話だけをされていた。

 

「話を戻していいかしら?」

 

「すいません。学園長」

 

「いいのよ、ルクス君が楽しそうに学園生活をしてくれていたら」

 

レリィさん、あなたさっきの会話聞いていましたか?依頼の内容を話し、依頼をこなし、かつ勉学に励む。こんな鬼畜なことをやらせてるのに楽しそうはないでし。

 

「それに、セリスさんの帰りが遅くなってしまったおかげかもしれないけど」

 

レリィさんの発言にすこし、ポーカーフェイスが乱れてしまった。私のフルネームはライラ・ラルグリスで、さっきいったセリス、セリスティア・ラルグリスの妹である。でも、このことを学園内で知っているのはレリィさんとシャリス先輩だけで、他の人たちには「世界には数人同じ顔の人がいるんだよ」で通している。私とお姉ちゃんは本当によく似ていて、両親でも見分けるのは難しいと言われていたほど。現在は知らないけどね♪

 

「でもね。ルクス君。あなたに対する生徒の不満が学園長である私のところへたくさん来ているの」

 

「へっ?」

 

「学園長!ルクスの編入は正式に認められているはずですよ!」

 

「えぇ、正式に認めているわ。私もここの生徒たちも」

 

「な…なら何が不満なのです!?もしかしてルクスが童顔だから!?」

 

「ライラ、僕をディスるのやめよ!?」

 

「たしかに童顔なんだけど」

 

「ま…まさか、そのことを利用して、女装して学園を過ごさせるつもりですか!?女の園という名誉のために!」

 

「そのエ○ゲー的展開やめようよ!?」

 

「ルクス君が女装……いいかも?」

 

「私はルクスが女装するなら、協力します!」

 

「2人とも!?なにを言ってるのかな!?」

 

私がふざけた提案に乗ってくれた。学園長は常に面白い方向へ話を進ませてくれるから個人的には嬉しいのだけれども、そろそろ本題に戻さなきゃ。ルクスがかわいそうに見える。

 

「で、本題はなんでしょうか?」

 

「えぇ…もっとふざけていたかったのに…」

 

「いいから早く済ませましょう」

 

「そうね。この束を見てくれる?」

 

レリィさんが机の上に置いたのは数百枚にも及ぶ紙の束。先生たちがこれを目を通すのは学校の備品が壊れてしまい、その報告書と予想するのが相場と決まっている。が

 

「これ、全部ルクス君への雑用依頼なのよ」

 

「こ…こんなに…」

 

「ティルファーさんがタイムスケジュールを組む依頼は、私から許可を出した依頼のみ。そうじゃないと、あなた勉強をしないでしょ?あくまで生徒として編入してきたんだから」

 

「うっ…」

 

「そこでルクス君に優先順位をつけてもらおうかと思ったんだけど、あなたのことだし、順位を決められませんと言うでしょ?」

 

「はい…その通りです…」

 

「だから、生徒たちにこれから催し物を始めると言っておいたの」

 

「「その催し物は?」」

 

「『ルクス君争奪戦』をすることにしたわ!」

 

「えっ?」

 

「あなたにはこの『一週間だけルクス君に優先して依頼ができる特別依頼書』を渡すわ。これを制限時間内にあなたから奪い取った生徒が一週間独占できるというね」

 

「そ、そんな、冗談ですよね」

 

「ルクス、諦めたほうがいいよ」

 

「ま、まさか、ライラも参加するなんて言わないよね?」

 

「うん、私は参加しないよ。ただの傍観者になるから」

 

「そ、そっか、よかった」

 

ルクスは安堵のため息をする。そこへ私はルクスの耳元で囁く

 

「ルクス、普通に廊下へ出たら女の子達がたくさんいるよ。だから窓から逃げなさい」

 

「う…うん。わかった」

 

「レリィさん!ごめんなさい!」

 

「まぁ、いいわよ。最初っから捕まえられたら面白くないし」

 

「ありがとうございます」

 

そう言ってルクスは窓から外へ出て行く。ルクスが出て行くと私は出て行った窓を閉める。

 

「あなた、ルクス君には言っていないの?あなたの家族のこと」

 

「はい…ですが、彼が知ろうとしないから言う必要はないかと」

 

「そう」

 

「では、私はこれで失礼します」

 

「あっ、そうそう!」

 

「まさか、その左手に持っている特別依頼書を私にも持たせ『争奪戦』をさせるつもりありませんよね?学園長?」

 

私はかなりの強い殺気を込めて言う。面白いことを言うのはいいのだが、こちら側が相当疲れるような真似は絶対にして欲しくない。その意味を込めた眼光を放つ。

 

「え…ええ。なんでもないわ」

 

「なら、いいんです」

 

そう言い、私は学園長室の扉を開ける。すると周りには何十人ものの女の子で囲まれていた。その先頭には『三和音』の1人、ティルファーがいた。

 

「ねぇねぇ、ライラ、ルクっち知らない?」

 

「さぁ?どうだか。この学園長室の中にいるんじゃないの?」

 

「そうかそうか。あくまでルクっちを庇うか…ならば」

 

「あぁ、私の争奪戦は開始されませんよ?」

 

「えっ?なんで?」

 

「そうですよね?学園長?」

 

ティルファーの疑問にレリィさんが答えてもらおうと振り返ったが、レリィは虚ろな瞳で「怖かった。怖かった」と連呼しながらライラの特別依頼書をハサミで切っていた。

 

「そういうことなので」

 

私は人混みに紛れてその場から去る。

 

「どうやったら学園長をあんなにまで追い詰めることができるの?」

 

ティルファーの呟きはライラには聞こえたが、何も返答せずに立ち去った。

 




原作が次巻へ行くときには一回おやすみさせてください。


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争奪戦の結果

ゴーンゴーン

 

学園中に鐘が鳴り響いた。聞き慣れた鐘の音だったが、私が聞いた瞬間、周りの生徒たちを見ると落胆した表情をしていた。ルクス争奪戦がこの鐘の音で終わったのだ。

 

「はぁ…結局ルクス君を捕まえるどころか、見つけることすらできなかったよ…」

 

「そうだねぇ、ルクス君、転入してちょっとしか経っていないのに、学園内のっことを知り尽くしているっていうか…」

 

「雑用でいろいろなところに行くから穴場とか見つけてそう」

 

「あぁ…あのことを頼もうと思ったのにぃ」

 

そんな声が多く聞こえてくる。私はそんな話を聞き取る

 

まぁ、私の場合ルクスに脅迫すれば、ほぼほぼ何かしてくれるし…特別依頼書を使用しなくてもいいからね

 

これが私が争奪戦に参加しなかった理由。一週間どころか、一年間言うことを聞いてくれそう。いいよね?ルクスが私とアイリを置いて数年間雑用に明け暮れていたから、当然の報いだよね?

 

「さて、争奪戦が終わったから、アイリのところにいるのかな?」

 

そろそろ、アイリに争奪戦をしていたことをお説教されに行ってるだろう。ルクスのことだから誰にも渡されてないと思うけど…というか、学園内に巧妙な人がいるわけがない。そう思っていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイリの部屋に入るまでは

 

「もう、兄さんは何をやってるんですか!」

 

アイリは椅子に座り、ルクスは正座していた。私からしてみれば、アイリがお説教するときにいつもこのような体勢になっている。

 

「まぁまぁ、アイリ、依頼書は誰にも渡されてないんでしょ?」

 

私がアイリを宥めようとすると、ルクスが申し訳なさそうに言ってきた。

 

「その…ライラ…実はね」

 

私には話したことが信じられなかったが、あのつかみどころがわからないクルルシファーさんに依頼書を取られたので納得。一体、どこで?と聞いたら、ルクスは歯切れ悪そうにしていた。この人…絶対に変なところ取られたな

 

「で、一週間何してほしいって?」

 

一回、何か飲み物を飲んで気分を落ち着けようとカップに入ったお茶を口にふくむ。

 

「その…クルルシファーさんの恋人…」

 

「!?!?…げっほげっほ」

 

えっ?恋人?

 

「まっじで!?」

 

「姉さん…残念ながら本当です」

 

私は額に手を当て、これからクルルシファーさんがルクスにどんな支障を与えるか考えたくもなかった。

 

「ち…違うよ!恋人って言ったけど、詳細は恋人のフリだよ!」

 

「兄さんはこう言ってるのと裏腹にやった!って絶対に思っているんですよ」

 

「本当に恋人のフリなんだから!」

 

クルルシファーさんが恋人のフリをどうしてもして欲しい…か、確かクルルシファーさんはユミル公国の貴族令嬢。ということは…

 

「まあまあ、アイリ、恋人のフリならいいんじゃないの?それに一週間だし」

 

「姉さんが言うなら」

 

「ほっ…」

 

「でも、ルクス?ちょっとでも変なことに巻き込まれそうになりそうだったら、私かアイリに言うこと。いいね?」

 

「わかった。それは約束する」

 

「これでいいよねアイリ」

 

「はい」

 

そう言い、この話を終わらせ解散するようにアイリの部屋から出て行った。




言い訳はしません。
更新を月1で月末にしようと思います。
その代わり、文字数を多くしようと。原作一巻を三分の一ぐらいに割って
今後もよろしくお願いします。
今月末にまた更新します


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表の顔があれば裏もある

どうも約一年ぶりですね。
今後の方針を考えていると二ヶ月が経ち、その間にログインしていないのでパス忘れたりと、悲惨でした。
結局、行き当たりばったりの小説にしようかなと。



「ねぇ、ルクス君、ライラさん。隣いいかしら?」

 

「あ、うん、いいけど」

 

「じゃあ、私は席を外すね」

 

「えっ!?ちょっと、ライラ!!」

 

クルルシファーさんから特別依頼を受けた翌日の昼御飯時、こんな会話が流れ始めていた

 

「私がいたら彼女さんに迷惑でしょ?」

 

「うっ!…」

 

「ありがとう。ライラさん」

 

「いえいえ、どうぞごゆっくり〜♪」

 

そう言って私は2人から離れる。ちょうど昼食が終わったところだし、ルクスの特別依頼の邪魔をしてはいけない。なんせ、一応借金をしているからね。目の届く範囲以内だったら働きすぎと忠告できるし、それに…

 

「いつも一緒に座っているライラでさえ、許すなんて」

 

「もう私には無理かも…」

 

それに、面白そうな匂いがぷんぷんするし。しばらくはこれでいいかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいっ!そんな動きじゃ格好の的だぞ!」

 

「もうへばったのか!?やる気があんのか!?」

 

「もっと自分で考えて動け!」

 

午後の最初の授業は一年と二年が合同で行う実戦訓練なんだけど、さっきから男性の指導者が怒鳴り散らしていてうるさいんだよな〜。この指導者は軍の人で、わざわざ臨時講師として来たらしいけど…

 

「にしてもこれはひどいねぇ…下手したらパワハラになるんじゃない?」

 

「そうだね。言っていることは一理あるんだけどさすがにね」

 

私のボヤきにルクスが同意する。私たちは訓練場の観客席から見つめる

 

「こういう話、前々から来ていたらしいよ」

 

「「えっ」」

 

私は反射的に声がした方向へ振り返るとクルルシファーさんがいた

 

「隣いい?」

 

そう言って私の隣に座ろうとする。恋人のふりをしているはずのルクスの隣には座らず、私の隣だったことに少々驚いたが、特に断る理由もないのでどうぞと返す。

 

「ほら、一ヶ月ほど前から三年生が王都に行って軍と合同演習しているでしょ?そこで憂さ晴らしも兼ねて三年生がいないうちに学園に残っている一、二年生の子達にこんなことをしていると思うわ」

 

「よく学園長も許したよね…こうなることを容易に予想できるだろうし…」

 

「まぁ、戦闘指導という名目で断られたら軍との関わりが悪くなるでしょうから断れなかったんでしょうね。」

 

「「あぁ…納得」」

 

私とルクスは合点がいった。たしかに断れば学園と軍との関係が悪化し、今の三年生で終わるかもしれないけど、女王の信頼できる人が偽りなくこのことを報告すればこの人たちはもう学園に来ないのではないのでしょうか。というより、今週の休みの日に王都に行くつもりだったからそのついでに報告しに言ってやろう。

 

「で、ルクスはどうする?」

 

「どうするって?」

 

「それはもちろん、この指導者たちの指導法に異議があるかないかでしょ?」

 

そう言って私たちは訓練場の中央へ目を向ける。みんなが息上がっているようだしそろそろ助けに行かないと危ないぞ。これ

 

「ルクスが助けに行くなら私も行くけど?」

 

「いや、ライラが行ったら、余計に…」

 

「逆にいいと思うのだけれども」

 

私の意見に賛同してくれるクルルシファーさん。

 

「あいにくのところ、どうやら三年生の長であるセリスティアさんと似ているらしいから行ったらビビって帰るでしょ☆」

 

そういってライラは楽しそうに予想される結末を淡々と話す。

 

「それならいいんだけど…」

 

クルルシファーさんを観客席に残して訓練場の中央へ行くこととなった。どんな顔が見られるかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後、私は指導者と会話をしていた。

 

「おいっ!逃げるなよ!」

 

追いかけられながら。

 

「普通、攻撃されるとわかっててわざわざ避けない人はいないと思いますけどね?」

 

なんでこんなことになったのかな?男って負けず嫌いなのかな?ルクスには2人の指導者を相手に戦ってもらっている。まぁ、それでも相手にならないと思うけど。

 

「おっと!そこで避けたらどうなるかわかるよな?」

 

「くっ!?」

 

今まで意識して観客席に射線がいかないように注意していたのにちょっとしたことで気が散ってしまった。あーあ、ルクスの心配をしただけでこれだ。集中力が足りないなぁ。

 

「この状況で私が銃を撃ったらどうなるかわかるよな?セリスティア・ラルグリス?」

 

私は未だにお姉ちゃんと間違えられている。お姉ちゃんは神装機竜だけしか持っていないのに、誰かの汎用機竜を貸してもらったと思っているのかな。今の私には機攻殻剣は2つある。橙色の神装機竜と《ワイバーン》の二本、本当は三本だったんだけど、アイリがちゃんと機竜を扱えてから《ドレイク》を記念に贈った。アイリには伝えてはないが私の機竜に剣が当たったら《ワイバーン》を贈るつもりなんですけど、いつになるんでしょうね。まぁそれはともかくこの状況をどうにかしないと

 

「私が本気を出したらその距離を一瞬で詰めることができますけどね?」

 

私は本気のことを言うが、相手は動じない。というより、今までそのような動きを見せていないから仕方ないんだけどね。

 

「そんなことハッタリってわかってんだよ!」

 

「あら、私は『神速制御』もできますよ?撃たれる前に撃ったら?」

 

「このっ!クソガキがぁ!」

 

私の挑発に易々と乗ってしまったのが悪かったでしょうね。教官が銃で撃った瞬間に、私は教官が考えられなかった行動。つまり弾を避けるということをした。普通なら観客に当たるのだが、銃弾は思ったよりも早く撃ち抜いていた。ルクスを追いかけていた指導教官にあたったのだ。

 

「ほうほう…人は焦るとフレンドリーファイアをしやすいのですね。実戦で見ることができるなんて思ってませんでした。貴重なものを見させてもらいましたよ。」

 

「…この!」

 

相手にしている教官が味方を撃ったらことに呆然としていたが、すぐに気を取り戻して私に銃口を向ける。

 

「遅いよ」

 

私は呆然としている時間を見逃さず、『神速制御』で銃を撃つ。そのまま教官の機竜は地面に落ちていく。断末魔が聞こえた気がするが何を言っているのかがわからず。答えようもなかった。

 

「おつかれ。ライラ」

 

「あれ?ルクス?もう終わったの?」

 

気づいたら空を飛んでいるのは私とルクスだけ、もう1人の教官もルクスがすぐに倒したようだった。

 

「ライラのおかげだよ。でも、2人相手はちょっと厳しかったかな」

 

「何を言ってるの…私がいなかったらルクスだけで3人を相手にしていたかもよ?」

 

「ははは…さすがに合同演習っていうことに感謝しなくちゃね…」

 

そう笑い合いながら無事に着陸する。やっぱり、このことは女王陛下に伝えないといけないな。

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、教官として来た3人はライグリィ教官に学園に二度と来ないように釘を刺されていた




更新は不定期にしますが、必ず土曜日の23時更新にしていきたい。
なるべく月末の…


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ちょっとした息抜き

はい。また一年振りですね。
今回は短いです。
できるだけストック貯めないと…


「ふぅ…ようやく一息つける」

 

私は部屋で勉強をしていた。今まで機竜に関する知識や技術などは昔の家庭教師以来、自分で学んできた。自分の知らないことによって大分苦戦しているのだが、なんとか追いついたという自信がある。

 

「さて、食堂に行って何か飲み物でも飲もうかな」

 

そう言って、部屋を出ると偶然にもクルルシファーさんと出会ってしまった。

 

「あれ?クルルシファーさん?彼氏は?」

 

「私、いつでも恋人にべったりっていう訳じゃないのよ」

 

「あぁ…そうですか…」

 

 ルクスが恋人の依頼を引き受けたときからべったりのような気がするんですけど…と言いそうになったが、言ってしまうと私に何か茶化すようなことを言いそうな気がして諦めた。

 

「私はね、ちょっと喉が渇いたから食堂で何か飲もうかと思ってね」

 

「私もそうなんです。それじゃ一緒にいきましょう」

 

クルルシファーさんと食堂に行くまでの道のりで会話が弾むことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…何やっているんですか…ルクスは…」

 

食堂に着くと机に突っ伏して寝ているルクスが見えた。おそらく、様々な依頼をこなした後だろうと予想した。

 

「そういえば、あなたとルクス君って親しいけど、どういう関係?」

 

「う〜ん…私が困っているところを助けてくれた恩人かな?」

 

「その割にはかなり弄っているような気がするんだけど」

 

「それは…アイリが弄っているのを見て良いなぁって思ってから始めたからね。今では本物の兄妹のようなものだよ」

 

実際に、嘘はついていない。私が無計画で家出をした際に助けてもらっているし、ルクスやアイリたちと楽しい会話をすることで本当に3人兄妹みたいに育ったから、私が姉のようなポジションだったけど

 

「そういえば、あなたセリスティアさんに似ているけど姉妹なのかしら?」

 

「それについては私から何も言うことはありません」

 

「あなた、ファミリーネームも名乗ってないじゃない」

 

「それは…家の事情で言えないだけなので…」

 

「ごめんなさい。過去の事情を知らないとはいえ、配慮が足りなかったわ。」

 

「いえ、こちらこそ」

 

そうやって会話を強制的に打ち切る。お姉ちゃんが帰ってきたら学園中に広まるだろうけど、そのときはそのとき。お姉ちゃんには言えない事情があって、言いにくいし最悪私を拒絶するかもしれない。そんな顔を私は見たくない。

 

「はぁ…ルクス起きてよ」

 

頭の中を切り替えて私はルクスを起こすために体を揺する。

 

「んんっ…ライラ…?」

 

「ルクスおはよ。よく寝た?こんなところで寝たら風邪を引くよ?」

 

「うん…」

 

「兄妹っていうよりか、親子みたいよね」

 

私たちの会話にそんな分析をされてもこれが通常運転なんだし…仕方ないよね。ルクスが怠くなった体に鞭をうちながら背伸びをすると、ルクスが突っ伏していたところに教科書とノートがあった。

 

「ルクス…勉強していたの?」

 

「うん…ちょっと授業についていけないとか分からないところとかあってね」

 

「あはは…そうだね。私たちみたいな編入前何もしていない人が急に生徒になったらどうしても遅れが出てしまうからね。」

 

「それなら、私が勉強を教えようか?」

 

「「えっ!?」」

 

振り向くと3人分のティーカップに紅茶を入れたクルルシファーさんがいた。ありがたく紅茶をいただく。

 

「ありがとう。クルルシファーさん、でも私は遅れは埋めていってもう少しで終わりそうだから、恋人の勉強を見てやってください」

 

「ライラ…もう遅れを取り戻したの?」

 

「私の場合、1年生だし、ルクスみたいに雑用の依頼をしながらっていう訳じゃないから早いだけだよ。という訳でクルルシファーさん、面倒をおかけしますがよろしくお願いしまっすね」

 

「えぇ、分かったわ」

 

紅茶を飲み干して、私は恋人同士のラブラブな時間を作ってあげるために食堂を出た。

 

「さて、後もう少しがんばろうっと」

 

そういって私は自分の部屋に戻り勉強を再開した。




みなさんはおそらく原作三巻の方で期待していると思うのですが、そこまでは絶対にいきます。
作者本人としては原作五巻はいきたいですね。
それよりも原作の最新巻とこの小説とで矛盾が起きそうな気がして内心震えています


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