聖秀高校に天才入れてみた (ホタル隊長)
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1話
リトルリーグ全国大会ベスト8
『ホントお前って凄いよな』『お前いなかったら県予選で負けてたわ』『なんだよあの守備範囲』『打っても圧倒的な打率残すしよ』『やっぱ天才だな、半端ねーわ』『将来どうすんの?やっぱプロ?』『どこの球団好き?やっぱ地元のブルーオーシャンズ?』『中学はシニア?それとも海堂付属?』
この頃はまだ気分が良かった自分が優れているという優越感を感じられた。
シニアリーグ全国大会第2位
『ホントお前だけ桁が違うわ』『1人で野球できんじゃね、冗談だけどさ』『お前だけ次元が違うよな』『こんだけ上手いなら今すぐにアメリカ行っても通用するんじゃね』『おーい、また取材だってよー誰かってそりゃ1人だけ桁の違う天才様だとよ』『何でここ来たんだよ、もっと強い所行けばよかったのによ』『お前の所為で俺らは晒し者だよ、楽しく野球がしたかっただけなのに』
うるせーよ。
俺だって野球を楽しくやっていただけだよ、お前たちが下手くそなのを俺の所為にすんじゃねーよ。
『進路はどうするの?』『やっぱり地元神奈川の海堂高校?それとも他県の高校?』『プロ目指してる?それだけ上手いんだから目指すよね』『あ〜同級生がプロか〜』『なんか世界が違うな〜』『高校で自慢しよ、俺あの天才高校球児と同じクラスだったんだ〜って』
たかが中学で同級生だからなんだよ、何の自慢にも何ねーよ。馬鹿じゃねーの、うぜーから話しかけてくんじゃねーよ。
引っ込んでろモブ共。
『高校はどうするんですか?』『強豪と言われる各校からスカウトされているという情報が入っていますが、一体どこに?』『プロを志望しているんですか?』『希望はどこの球団?』『東京スポーツです!〈この春大注目の天才球児!いったいどこの高校に行くのか?〉を書いているモノなんですけどインタビューお願いしまーす』
毎日毎日、家まで押しかけて騒ぐマスコミ連中。
そんなん知らねぇーよ。
野球ってこんなに辛い物だったんだっけ?
俺はただ野球を楽しみたかっただけなのに、
甲子園………行ってみたかったんだけど
このままじゃ高校でも騒がれて辛い日々を送る事になるんだろうな………
野球辞めよう………
◇
私立清秀高校
数年前に共学になった元女子高。
元女子高とあって男女比は全校生徒350人中、全学年を合わしても女子が圧倒的、男子生徒の数は驚異の5人。
当然男子の運動部は存在しない。
◇◇
元女子高に入学してから3カ月が過ぎた。
入学した直後こそ新聞にも載るほどの天才野球球児と同じ名前をしているということで騒がれたが、そんな人が運動部もない聖秀高校に来るわけがないだろ。ただの同姓同名だよ、と言葉を返す度にどんどん騒ぎは収まりマスコミにも同級生にもチームメイトにも荒らされる事のない平和な日々を送っている。
マスコミ連中に実家が知られている事もあって少し離れた町で1人暮らしを満喫している。
ただ、下調べをする事なく部屋を借りてしまったお陰で、登下校する道の途中にバッティングセンターがある事に気付かず、前を通る度に嫌な思い出が頭をよぎる。
元々悪くない顔をしているからか学校ではそこそこモテる、夏休みが始まるというわけでパーっと遊ぼうとも誘われたが、気分が乗らず女子達の誘いを断り家に帰る事にした事がこの先の俺の運命を変えたんだろう。
◇◇◇
いつも通りの道を歩いていると聞き馴染みのあるカーンだったりキーンだったりと球を打つ音が聞こえるバッティングセンターについた。
野球から離れ3ヶ月、何の気まぐれか俺はバッティングセンターに入ってしまう。
店主の此方を見る顔を見てしまうと何もせずに出るのは気が引ける。
久々だしちょっとだけ打つか。
ヘルメットを被りバットを持ちコインを入れ打席に立つ。
ピッチングマシンの腕の部分がゆっくりと動き球が飛んで来て、それに合わせてバットを振る……とはっきりとジャストミートした感覚が手に残り、球はカキーンと音を上げホームランの的へ飛ぶ、ホームランの音は聞いた事がなかったが此処のバッティングセンターは歓声がなるようだ。
「…………」
なんだよ今の感覚、こんなに気持ちのいいものだったか野球って。
体が痺れる……血が流れる……
もう一度、もう一球。
マシンのアームが動き始める——
まだか——
焦れったい——
早くしろ——
アームからボールが放たれる。
振り抜く——
気持ちのいい音が周囲に響き打球は的に当たりワァーっという歓声が起こる。
ヤバい、止まらない、気持ちいいが止まらない。
もう一球、もう一球、もう一球!!
アームから球が飛びバットを振り抜く——
歓声はならない
早く、次だ!
アームから球が……振り抜く——
打つ——
打つ——
打つ——
打つ——
打つ——
打つ——
打つ——
なんだ?切れた、もう一回。
コインを入れる。
球—
打つ—
球—
打つ—
球—
打つ—
球—
打つ—
球—
打つ—
狂っているのか俺は、今はいい、狂っていても、ただ打ちたい——
◇◇◇◇
手が痛い。
真っ赤になる程バットを振っていた事がわかる。
店主の人がもう辞めてくれと伝えに来るまで打ち続けていた。
財布の野口さんも何枚かいなくなった。
麻薬かよ……もうやらねぇ…いや、まぁたまにはいいか。
◇◇◇◇◇
もう野球はやる気はない、ただの趣味として野球をやる。
あのバッティングセンターの日から早1年と1ヶ月、夏休みも終わり2学期が始まる。
草野球チームに加入して休みは野球を楽しんでいる。
チームのおっさん達は俺の過去に関わる事をせず今の俺を見てくれる。
捨てる事もできず、実家の自室に眠っていたグローブを送ってもらい野球を楽しむ。
放課後は女子達と遊び、偶にバッティングセンター、休みの日には草野球。
たまらなく楽しい。
そしてこの夏俺は運命に出会う。
◇◇◇◇◇◇
「茂野吾郎だ!よろしくな!!」
止まっていた俺の時が流れ始めた。
希望があれば続き書くかも
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2話
「なぁ野球やろうぜ」
「だからやらねぇって言ってんだろ!」
「そう言わずにちょっとだけ!先っちょだけだから!」
「何の事を言ってんだよ?野球?野球だよな?そういう趣味とかないよな?」
転入生、茂野吾郎。
第一印象………スポーツマン。
今の印象………しつこい。
転入生、茂野吾郎から見た〝松井裕之〟という男。
野球は好きだが、それをする選手。プロだったり同年代の有力選手に全く興味を持たない茂野吾郎という男であってもその名を知っている程の実力者である。そこに養父から聞いたとつくが……
中学の同級生でありバッテリーを組んでいた小森大介は詳しく。名を知っている程度であった茂野吾郎の〝松井裕之〟に対する知識を強く与えた。
曰く、同年代では並ぶ者のいない天才選手であると。
曰く、U-15のキャンプテンを務めたとか。
曰く、並以下のシニアを1人で全国準優勝まで連れて行ったとか。
小森大介によれば、その男は13歳になる頃には既にプロスカウトが注目するほどの選手であり、中学1年で既にU-15に召集されていたとか。
もっとも茂野吾郎本人はU-15ってなんだ?と意味を理解していなかったみたいだが
————————
「野球部作ろうぜ!」
「いい加減しつこいぞ!茂野!」
「頼むよぉー、藤井しかやるって言ってくれなかったんだよ」
「なら諦めろよ」
「そんな事言わずによー……っ!なら、ならよ!練習試合なら出てくれねぇか?それで俺1人で勝てる事を証明できれば入部してくれねぇか?」
———思い出す———
『おまえ1人で勝てんじゃねぇーの?冗談だけどさ』
———嫌な記憶を———
「1人でか………いいぜ、入部の件はともかく練習試合は出てやるよ」
「お!マジかサンキュー!絶対だかんな!」
「で?試合はいつなんだよ?」
——練習試合なら草野球みたいなもんだろ、正式な部でもないし——
「…………」
——おい、こいつまさか——
「おい!茂野!いつなんだよ?」
「い、いやそれがよ」
「はぁ〜もういい。とりあえず日程決まったら教えてくれ」
「お、おう悪いな」
熱がないせいか、それともただのトラウマかはわからない。本気で野球をしようとすると吐き気が襲う。軽い気持ちなら、草野球なら楽しくできる。
なのにこんな野球バカが毎日熱心に「部活作ろうぜ!」なんて誘ってくるもんだから、野球バカの熱が伝染して……いや、ただ練習試合に出るだけだ。
1人で勝つなんて………無理に決まってる。
勝てたとしてもそんなのただ辛いだけだろ。
そんな野球…そんなの少しも楽しめねぇよ
——————————
練習試合当日
「ポジションは?」
「適当でいいだろ、1人で勝つなんて事を言ってんだからよ」
1年生の1人がケガをしている為、人数が足りずに女子ソフト部の清水薫が参加している聖秀高校野球部(仮)打順や守備位置などあってないような物だ。
1番 ピッチャー 茂野
2番 キャッチャー 清水
3番 ファースト 藤井
4番 セカンド 松井
5番 サード 田代
6番 ショート 内山
7番 レフト 宮崎
8番 センター 野口
9番 ライト 高橋
対戦相手は強豪、横浜帝仁高校。
初回、宣言通り3者連続三振に抑え裏の攻撃へ、
先頭茂野は初級を振り抜き、軽々と柵越えの打球を放つ。続く清水藤井は凡打に倒れ打順は松井へ。
「俺が全部ホームラン打って全部三振にとれば4-0で勝利!んで連中も野球部に入部!完璧だろ!清水!」
「そんな簡単なものじゃねぇと思うぞ本田、それに…」
「ん?なんだよ?しみ」
金属バット特有の甲高い打撃音が響く——思わずグラウンドを向く茂野。
そこにはベースをゆっくりと回る松井の姿。
「お、おい清水!松井って何者なんだよ?」
「やっぱりお前何も知らずに誘ってたのかよ!あいつの名前は〝松井裕之〟流石のお前でも聞いた事あるだろ?」
「松井裕之……ってまさか!?」
「やっぱりか……」
——————
今更高校で野球をする気はないが、バットを持ったのなら、グローブを着けたのなら、ユニフォームに袖を通したのなら俺は野球に手を抜く事は絶対にしない
バッターボックスに立ち自然に構える
——初球は外に、ボール
流石強豪校。草野球では中々お目にかかれない、いい球を投げる。
続く2球目、内角へのストレート——こういう打球は腕をたたんで背中へ引くように腰を回し強く——バットを振り抜く!!
手への気持ちのいい感覚、痺れを残し打球は茂野の打球同様、柵を越えていった。
短いけどキリがいいのでここで、多分書き足します
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3話
俺のホームランの後は特に描写する必要もなく攻撃が終わり表の守備が始まる。
投手は1人で勝ってやる宣言の茂野、捕手に女子ソフトボール部の清水。この時点で既に1人でやっているわけではないのだが、これを言ったらいけない気がするので黙っておくことにする。
茂野は仮にも高校野球界の絶対王者である、海堂高校出身であるだけあって表の守備を見事3人で終わらせた。
簡単に言ってはいるが正直かなり驚いている、圧倒的な球速に……だ。目測ではあるがおそらく150キロはでている筈だ。
1人で試合に勝つ、なんて言える実力は持っているのだと理解できる、………だがあの球速、それにミットに収まる時の凄まじい音、衝撃はとてつもないものである事は理解できる。
故にあのボールを受ける清水は一球毎にどこか苦しそうな痛みに耐える顔をしているが、茂野の球に驚いているのと、清水がキャッチャーマスクをしていることによって気づいた奴はいない。とてもじゃないが9回まではもたない。
2回の攻撃は3人であっさり終わり3回へ、ここも茂野は3人で抑え再び攻撃を迎えた。
「おっしゃぁぁ!!」
気合い充分、打席に向かう茂野だが仮にも相手は強豪校、茂野が投手としての圧倒的な才能、がっしりとした体格、初回のホームラン、相手にしても勝機はないと判断したのか対策を取ってきた
圧倒的な力を持ち勝負をしても勝ち目がない打者を歩かせる行為………敬遠である。
確かに言っては悪いが相手の投手の球では茂野と勝負をしても勝ち目はない、良くて長打。それくらい力の差は歴然だ。
続く清水は相手投手の制球が定まらず四球で出塁、藤井は三振に倒れ打席が回ってくる。
初打席こそホームランを打ったが茂野には及ばないと判断したのか俺に対しては敬遠はしてこない、真剣勝負といったところだろう。
「松井ー!もう一回ホームラン打てーー!!」
「藤井うるさい!!」
ベンチで叫ぶ藤井に同じくベンチに座るマネージャーの中村の怒号がとぶ。
俺はそこまでパワーのある打者ではないんだがな、
初球——外に大きく外れボール、2球目——ゾーンより僅かに上に外れボール、3球目——初球同様外に外れた球だがバットは届く距離!レフト線へ流す様に当てる!!
キィィーン!!
打球は狙い通り三塁手の頭を超えライン際を転々と転がる。
その間にセカンドランナー茂野がホームへ帰ってくる、際どいが判定はセーフ。送球&審判の判定の間に俺は二塁へ、清水は三塁へそれぞれ出塁。
続く田代はバットを振る気もなく三振、そしてベンチに戻ってきてそれは起こった。
「ふざけんじゃねぇよ!!女にボール捕らせて何が1人で勝つだよ!?」
「じゃあボールは俺が捕る!!」
捕手変更、清水→藤井
仮にも野球経験者であり、現在もソフトボール部に所属している清水だからこそ捕れていた茂野のボールは野球初心者の藤井には到底捕れるものではない。
思った通り数球の投球練習、いや捕球練習は散々な結果に終わり決められた数を投げ終わった両者からこんな声が聞こえてきた
「いいから黙ってミットを真ん中に構えておけ!!俺がそこに投げ込んでやる」
調子に乗りすぎだろう、幾ら何でもふざけすぎだ!なんて思っていたが、いざ始まってみると茂野は宣言通りに真ん中に構えた藤井のミット目がけて投げ込んだ。
……しかし仮にも相手は強豪校、例え150キロの球とはいえ真ん中にストレート……振れば当たる。相手の打者は徐々に茂野の球をバットに当て始めた。
運良く4回の守備は3人で終える事ができた。運良くだ!
手をスプレーで冷やす藤井を気遣うこともなく攻撃は3人で終わり再び守備へ。
…………これまでだろう、ラッキーは続かない。
案の定、茂野の球はミートされるようになりファールで済んでいた球はサードに転がる。球威に押され簡単なゴロではあるがサードを守るのは田代。
茂野に反感を持つ男である。そんな男の前にボールが転がる。当然何もしない。
ボールは田代の横を転がりレフト前へ
これじゃ野球にもなんねぇな、ただの処刑にしかならない。
次の打者は運良く投手前に打ち上げ1アウト。
次の打者は再びサード前へ——
「おっと!あまりに正面すぎてグラブが出ちまったぜ」
素早いグラブ捌きで捕球した田代。
「ファーストに投げろ!!」
清水がそう声をかけるが、
「いや1アウトランナー一塁なら投げるのはこっちだろ」
球をセカンドベース上に投げる——捕球するものがいるならばここ!というくらい高さも位置もドンピシャだ。
バシッ!
球を捕球、ベースを踏みファーストに送球、田代の送球を見て唖然としてファーストミットを動かすこともできずに唖然としていた清水のミットにボールは収まりツーアウト。
ダブルプレーでスリーアウト攻守交代
ベンチへ戻ると藤井が左手を押さえ軽く悲鳴を上げた
左手を大きく腫らした藤井のを見て茂野、清水そして顧問の英語教諭の山田先生が棄権を申し出る、藤井は「まだやれる!こんな所で辞めたらまた俺は前みたいに戻っちまう!!する事もなくただ毎日無駄に過ごす日々に!!」
「よくやってくれたよ藤井、もういいんだ。1人で勝つなんて無理だったんだ」
「そんな事言うなよ!俺、俺はあの時感動したんだよ!!人間ってこんなに早く球投げられんだってよ!そんなお前が諦めんなよ!!俺に夢を見させてくれたお前がよ!!」
熱い言い合いが茂野、藤井間に続く——その時、
「今回だけだ!俺が捕ってやるよ!……お前の球をよ!」
「お前に捕れんのかよ?気持ちは嬉しいけどよ」
「ふざけんなよ!リトルシニアで正捕手6年間やり続けた俺に手加減なんかしたらぶっ飛ばすぞ!」
茂野の全力の球を田代は見事捕球する。
この試合の勝敗が決定した瞬間である。
4 — 0 試合終了
勝者——聖秀高校野球部(仮)
早足で進めます
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4話
サクサク進みたい
前回までのあらすじ
茂野「1人で勝つ!清水捕ってくれ!」
↓
清水「手痛い」
↓
藤井「俺が捕る!…手痛い」
↓
田代「俺が捕る!勘違いするなよ!今回だけだからなっ!」
↓
勝ったー
「田代助かったぜ!これから練習出てくれんだろ?」
試合に勝利した後に茂野が浮かれた様子で田代に声をかける。問題点が何個もあるんだが気づいていないのか?
「はぁ?練習?どこでやんだよ?硬球使えるグラウンドがあんのか?ソフトボール部に借りるのか?その辺の申請考えてんのか!」
「…………」
沈黙の茂野。
「練習に参加云々はそれ全部解決してからだろーが!」
「す、すまん」
その後、茂野は学園長に交渉し顧問と練習できる場所を獲得してきた。
驚異の
練習できる場所というのが屋上である。……屋上である。当然、地面はただのコンクリート、こんな所で練習なんかできるはずもない……そこで!交渉人、茂野五郎はその持ち前の
聖秀高校野球部(仮)土木作業員に転職。
自分を除く現2年生部員(仮)と現1年生部員(仮)が茂野を手伝っている光景の中、流石に無視はできないと俺も手伝うことにした。
山から掘り出した土をバケツに込めてせっせっと屋上まで運ぶ。
1年近くマトモなトレーニングをしてない俺からしてもめちゃくちゃ辛い……のに内山宮崎の凸凹コンビはなんで、あんなに頑張れるのだろうか?
土を運ぶこと約1ヶ月…等々グラウンドが完成した。まぁいい運動になったからよし!
これで聖秀高校野球部(仮)からはおさらば!
「松井!明日から練習だかなら!」
………したかった。
練習試合が思っていたより楽しかった。とか、実は未だに甲子園への憧れがある。とか、茂野が楽しそうに野球をやるのを見た。
………そんな事は関係あるのかもないのかもわからないけど、自惚れでもなく〝茂野五郎〟という男は少なくとも確実に俺〝松井裕之〟と同レベルで野球をやれるだけの実力を持っている選手だ。
それだけでも、リトルやシニアの時みたいな思いはしなくてすむ。
1人で野球をやって、勝っても喜びを共有できる仲間……チーム内で同じ目線で野球をできるチームメイト……
何より一緒に野球を楽しめる。……そんな存在。
シニアの時、心が望んだ。
1人でやってやる宣言の、今の茂野では難しいが。
これから先の茂野なら可能性はある。
貪欲に勝利を目指し、
楽しみながら勝利を掴み、
勝ったら喜ぶ。
そんな当たり前がもし、
できるのならば約1年程度しかない短い期間だけど………
高校野球をやってもいいかもしれない。
もう1度、甲子園を目指して野球を楽しんでもいいのかもしれない。
総文字数1096文字……み、短い。
けどキリがいいのでここまで。来週中には次を投稿したい。
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