イェーガーズの下請け部隊 (薩摩芋)
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ユーリィー=マクタヴイッシュと言う人間

 

私の人生は、まぁ一般的には不幸と言える道のりだった

 

私は、帝国と言う大きな国の本の少しだけ裕福な家庭で育った、家族は私の他に二人の兄と父がいた、母はいない

 

ここで勘違いしがちなのは、まるで私の父は妻と死別してしまったかのようだが、彼にはちゃんと妻と呼べる存在がいるし、当時はまだ生きていた、が、それは私にとって母とはなり得なかった、俗に言う腹違いと言うヤツだ

 

何も難しい話ではない、簡単に言えば私の父が立場を弁えず、どことも知れない女性と気持ちいい事をしたついでに生まれたのが私だ、ゴムくらい着けてほしい

 

とまぁそんなこんなで私は生まれた、当たり前だが自身の生活のために春を売るような女に子供を養える金などある筈もなく、私はある程度大きくなるとその家に引き取られた、別れ際使用人のような男たちに手を引かれながら私はおもむろに後ろを振り返り、見た

 

母は泣いていた、泣いて喜んでいた

 

引き取られた当初は‘犬の餌にならないだけマシか’なんて思ったりもしていた、しかし引き取られた先の屋敷での生活は‘いっそあの時犬の餌になっておくべきたったな’なんて思わせるほどの毎日だった

 

私の屋敷での日課を簡単に纏めればこんな感じだ

 

朝起きる

ご飯を食べる

猟犬に追われる

気絶する

朝起きる

 

我ながらどうして生き残れたのか疑問でいっぱいな人生である

 

向こうからすれば娼婦の子である私はさぞや目障りだっただろう、ならばその場で殺すか放っておけば良いものを、わざわざ引き取ったのはそうゆうことだったのだか、と、犬に追われた初日に私は気付いた、大方タダで玩具が手にはいるとかそんな感じの理由だろう、金持ちのクセにケチな連中だ

 

その上奴等は家族全員一人のこらず変態だった、父の妻はサディストで、父は性欲モンスター、兄二人は両親の変態性を足して二で割ったような存在である、屋敷にいれば押し倒され、外に逃げれば猟犬に追われる、外に逃げようにも大きな柵があって出られない、詰み状態とはこの事なのだろう、お陰で私の髪はストレスで真っ白だ、髪は女の命だと言うのに、大ショックである

 

とは言え何も悪いことばかりではなかった、散々あのワンコどもから追いかけ回されたお陰で私の逃げ足はとても早くなった、それこそ直線距離で同じ位置からスタートしても逃げ切れるくらいには、ちなみに当時私は八歳である

 

そんな生活がもう二年過ぎた頃、そう、丁度私がブリッジをしながらでもワンコから逃げられるようになった時、私はふと周囲を囲むように設置された柵を見て思った

 

『これは、ワンチャン飛び越せるぞ?』と

 

思い立ったら即実行

 

私は柵から距離を取り、助走を着けて走り出し、そのままスッ転んでゴロゴロと転がりながら柵を突き破った、当初想定していた事とは若干違う過程を辿ったが結果的に私は自由を手にいれた

 

これが私が10歳の時の物語

 

私にとっては人生の半分にも充たない期間であり、本当に語りたいのは屋敷から脱出したあとの話なのだが、それは追々話していこう、自己紹介を含めたプロローグのつもりが随分と長くなってしまったが、そろそろ締め括ろうと思う

 

私の名前はユーリー=マクタヴィッシュ、帝国陸軍に所属しているしがない兵士、年は26、階級は中尉、性別は女、体重はヒミツである。



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1話 田舎者を忙殺する!

 

ある晴れた 昼下がり

 

市場へ続く道 荷馬車が

 

ゴトゴト子牛を乗せていく

 

可愛い子牛売られてゆくよ

 

哀しい瞳で見ているよ

 

ドナドナド~ナド~ナ

 

子牛を乗せて

 

ドナドナド~ナド~ナ

 

荷馬車が揺れる~ 」

 

「なぁあんた、その歌止めてくれないか、聞いてると何か哀しくなってくるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1話 田舎者を忙殺する!

 

 

 

 

 

 

 

ガタガタと揺れる馬車の中で、私の目の前にいる茶髪の少年が何やらそんなことを言ってくる、まったくもって心外だ、この歌は私が南部戦線に駆り出されたとき仲間とともに輸送中ずっと歌っていた懐かしの一曲であると言うのに、あの時はドナドナの部分はアドナイ アドナイ(神よ 神よ)であったかな?昔の事だからよく覚えてない

 

あ、ちなみに目の前にいる少年の名前はタツミ君というらしい、ついさっきこの馬車に乗り合わせたらしいのだが、その時私は寝ていたため詳しい事はよく分からない、その為まだ会って二時間程度しか話していないのだが、何故だろう、タツミ君の口調が急激に砕けていっている、砕け散っていく、私の記憶が正しければ彼は最初敬語だった気がする

 

「黙れタツミ、私は長旅で疲労とストレスが貯まっているんだ、見ろ私の髪を、真っ白になってしまっているではないか」

 

「あんたの髪は最初から白かったよ!」

 

「そうだったな」

 

タツミ君のキレのあるツッコミをよそに私は頭を働かせる、お題はもちろん‘これから如何に帝都に着くまでの暇を潰すか’である、私とタツミ君が乗っている荷馬車はお世辞にも早い速度とは言えない、その分揺れも少なく快適なのだが、如何せん暇だ、この速度では目算帝都に着くまであと半日と言ったところだろう、何もしないには長すぎる、考えただけでキノコが生えてしまいそうだ

 

「何?」

 

と、そこまで思考して私の目の前にいるタツミ君を見て思った、そう言えば私はこの子の事を何も知らない、折角同じ馬車に乗り合わせたのだ、これも何かの縁だろう、旅は道連れ世は情けと言うし、いや、違ったか、人の出会いは一期一会だ、ならばこの出会いにも意味はある、これを期に互いを知るのも面白いだろう

 

「タツミ」

 

「……何だよ?」

 

なんだかタツミ君が激しく私を警戒している、何で?まぁ良いか

 

「私は暇だ」

 

「うん、だから?」

 

「だから私は暇なんだ」

 

「だからそれがどうしたんだよ!」

 

「察しが悪いな、暇だと言っているだろうッ!!」

 

「えぇ!?俺が悪いのか?」

 

「はぁ……これだから童貞は」

 

「やかましいわ」

 

「私は退屈しのぎに君の話を聞かせろといってるんだよ」

 

「最初からそう言えよ!」

 

「あ、やっぱりいいや、童貞の話を聞いても愉しくないからな」

 

「こ、コイツっ!」

 

「はははっ!たのしー」

 

「おいお前ちょっと表出ろ」

 

ついに‘あんた’から‘お前’になった

 

さて、途中からつい面白くなってタツミ君を必要以上にからかってしまったが、これではとてもじゃないが互いの事を話すような空気ではない、さてどうするか、私は頭を働かせる

 

自分でぶち壊しておいて今度はそれを修復するのに苦心する、私と言う人間はつくづく無駄が多い、しかしまぁこんなのもたまには悪くない、仕事に戻れば一切の無駄を省いたような生活が待っている

 

つまるところ人が生きるに於いて楽しみとは皆総じて無駄なことである、心さえ強く持てば、それらは決して必要なものではないからだ

 

要するに私が何を言いたいのかというと、こうして無駄な事をしている私はとても楽しくて、そして、それは君のおかげということだ、タツミ君

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君はキングダムの主人公か?」

 

私は今思った感想を率直に述べた

 

 

 

 

あれからなんとかタツミ君の機嫌を直した私は、さっそくタツミ君に聞いてみた

 

『君は何しに帝都に行くのか?』と

 

そしたらタツミ君はこう答えた

 

『軍に入って将軍になる』

 

なんでも、彼の故郷は北の端っこにある辺境の村で、過酷な環境と高い税金に苦しめられて最早後がないのだと言う、そこでタツミ君はこう思った‘自分が帝都で名をあげて高い地位を得られればその分故郷の村が楽になるかもしれない’と、かもしれないというかそのとうりなんだが、そこで将軍を目指すところが流石男の子と言ったところだろう、きっとタツミ君を主人公にしたマンガを描けばジャンプ辺りで連載されているだろう

 

「それにしても将軍か、大きく出たなタツミ」

 

私が素直にそう思って感心していると、タツミ君が怪訝な目で私を見ている、まぁ大体言いたい事は分かるぞ、二十歳にも充たないガキンチョが‘帝国の将軍に俺はなる!’なんて到底不可能な話だ、いっそ海賊王とかの方が余程現実味がある、そしておそらくタツミ君の次の言葉はこれだ‘なぁあんた笑わないのか’

 

「なぁあんた笑わないのか」

 

そらきた

 

「なぜ笑う?全然面白くないだろう、それにエスデスという前例もある、君の実力が未知数な現状、完全に不可能だなんて私には言えない」

 

本音を言わせて貰えば、笑わないのではなく、笑えない

 

今帝国は慢性的な将軍不足だ、有能な軍人は先のない帝国を見限って皆革命軍に行ってしまうし、抜けた穴を埋めるために軍事の事などまるで分からない文官がその席に座る、私の知る限りまともな将軍なんてエスデス(ドS)ノウケン(全身チン○野郎)ブドー大将軍の三人しか知らない、お陰で中間管理職たる私は大忙しだ、見ろ私の髪を、真っ白になってしまっているではないか、だからタツミ君、将軍を目指すなら定員が割れている今だ、早く将軍になってくれ、そして可及的速やかに私に楽させてくれ

 

「あんた案外良いヤツなんだな!」

 

「そのとうりだ」

 

さて、私の本音を知らないタツミ君はキラキラした純水無垢な瞳で此方を見ている、が、下心がまったくないでもない私としては、ほんの少しだけ罪悪感がくすぐられた

 

「ふむ、私が君に聞きたいことは概ね終った、それでは攻守交代といこう、今度は君が私に質問をしたまえ、私に答えられる範囲で教えよう」

 

その為、というわけではないが、今度は私が受けに回ろうと思う

 

「え、良いのか?俺まだ1つしか答えてないけど」

 

「良いのだ良いのだ、もともと私が知りたかったのはその一つだけだからな」

 

「そうは言ってもな……」

 

「ほら遠慮するな!今の私は機嫌が良い、今回だけ特別に私のスリーサイズまで答えてやろう!さぁドンと来なさい!と言っても、私に人に聞かせるほどのスタイルなど何一つ無いがな!」

 

「あんたソレ自分で言ってて悲しくないのか?」

 

「悲しい!」

 

「何でこの人こんなテンション高いの?」

 

タツミ君に引かれてしまった、悲しい

 

しかしまぁ自分でもビックリだ、これほど気分が良いのは久しぶりだろう、これはたぶんあれだ、タツミ君がイケメンだからかもしれない、男子だって可愛い女の子と面と向かって話したら何かテンションおかしくなるだろう?それと同じだ、いや、待てよ

 

「割りと何時もこんな感じのテンションだった」

 

「これがデフォルトかよ!」

 

そんなこんなで私とタツミ君を乗せた馬車は進む、帝都への旅は、まだ始まったばかり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帝都よ!私は帰ってきたぁ~~~ッ!」

 

両手を大きく広げなが叫ぶ私からタツミ君が3歩程離れる

 

「何故離れる?」

 

「知り合いって思われたくないから」

 

ふむ、タツミ君は随分私に対して遠慮が無くなった気がする、まぁそれだけ私が親しみの持ちやすい魅力的な女性ということだろう、あぁ私とは一体なんて罪な女なのだ、出会って半日も経たないイケメンのハートをキャッチしてしまうとは

 

と、そんな下らない事を考えていると、タツミ君からこう、何とも言いがたい複雑な視線を感じる、例えるならアレだ、残念な子を見るような目だ

 

「おいそんな目で見るなよ、つい嬉しくなってしまうではないか」

 

たとて含みのある視線だろうが、イケメンに見つめられて嬉しくない女などいるのだろうか、いや、いない

 

「あんた最強だな」

 

「そう誉めるなよ、つい嬉しくなってしまうではないか」

 

あ、また離れた

 

さて、このままふざけているのも楽しいが、そろそろ真面目な話をしよう、お互い目的地である帝都に無事到着できたのだ、途中たしか土竜(‘もぐら’ではなく‘どりゅう’と読むらしい)に襲われた気がするがイケメン、間違えた、タツミ君が一瞬で倒してくれたから何も問題はない、いゃ~あの時のタツミ君はイケメンだった、え?私は何をしてたかって?当然一生懸命応援していたさ、帝国陸軍兵士は声援だけは惜しまない

 

「それにしてもタツミ君、本当に良いのか?今日くらい、とゆうか何かアテが見つかるまでなら、私の家に滞在させても構わんぞ?帝都の夜は冷えるからな」

 

「良いって良いって、てめぇの世話くらいてめぇで焼ける、気持ちだけ貰っておくよ」

 

「そうか」

 

残念だ、自分でも何とか出来たとは言え、土竜を殺す手間を省いてくれたお礼をしたかったこともそうだが、何よりも残念なのは、この純水無垢なイケメンと会うのはこれで最期かもしれないのだ、今の内に出来る限りの忠告くらいはしておこう

 

「ではなタツミ、良いか?例え親切そうに見えても知らない人にはホイホイついて行くんじゃないぞ、不審な人に声をかけられてら大声出して周りの大人に助けを求めるのだ、分かったか?」

 

「あ~はいはい、わかりましたわかりました」

 

「何だその適当な返事は、油断してると悪い人に連れていかれてしまうからな!」

 

「だぁ~ッもう!しつこいな!あんた帝都ついてからずっとそんな調子だろ!いい加減しつこいわ!」

 

「しかしだなぁ~」

 

「大丈夫だって!俺の実力みただろう?大抵のことは自分でどうにかできるからさ」

 

う~ん、タツミ君も多少腕に自信があるようだが、それだけで生き残れる程この帝都は甘くない

 

まぁそんなことはきっと口で言っても伝わらないだろう、彼とて生半可な覚悟で来てはいないだろうし、そもそももし最悪なことになってしまえば、そんな覚悟でカスみたいなものだ

 

私がタツミ君に出来ることは全てした、後はあの子の運次第だ、生きるも 死ぬもな、私としてはあの子がその中間に位置しないように願うばかりである

 

おっと大事な事を忘れていた

 

「タツミ」

 

既に帝都の検問所に向かって足を進めているタツミ君を声で呼び止め、私は若干の駆け足で彼に近付き、自分の両手を彼に向かって差し出した

 

「何だよ、まだなんかあるのか?」

 

「握手をしよう」

 

「は?」

 

「だから握手だ、お別れの握手をしようと言ってるんだよ」

 

はて、私は何かおかしな事を言っただろうか?確かに握手は出会いにするのが一般的であるか、べつに別れ際にするのもおかしくはないと思うのだが、それともタツミ君のような田舎っぺには無い文化なのだろうか、成る程、これがカルチャーショックというやつなのか

 

「どうしたタツミはやく手を出せ、ただの握手だぞ?何も難しい事ではないと思うのだが」

 

「お、おぅ」

 

そう言うとタツミ君はおずおずと自分の片手を私に差し出す、何だ?この子、もしかして私と手を繋ぐ事に緊張しているのか?たかが握手に、童貞かよ……童貞だった(笑)

 

そうと決まれば、俄然この子と握手をしなければ

 

「あ~もうっじれったい!握手とはこうするのだ!」

 

「お、おい!ちょっ」

 

私は無理矢理タツミ君の両手を取る、ぎょっとするタツミ君だが顔はしっかり赤くなっているぞ少年

 

そして私は掴んだ手を上下に激しく振るのだった

 

「頑張れよタツミ!」

 

「お、おう!」

 

「ご飯はしっかり食べるんだぞ!」

 

「あ、あぁ!」

 

「悪い人に騙されるなよ!」

 

「分かったからはやく手を放してくれよ!」

 

ふふふ、可愛いんだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あまり関心しませんね」

 

「ん?どうした軍曹」

 

「ですから、あまりあの少年に執心するのが感心しないと言ったのです、中尉」

 

タツミ君と別れ、帝都の検問所にて荷物のチェックを済ませている最中、私の隣にいる男、すなわち先程まで私とタツミ君が乗っていた馬車の御者、イェン軍曹が渋いイケボイスでそう言った

 

「私は執心していたか?」

 

「えぇ客観的に見れば」

 

イェン軍曹は優秀な軍人だ、私の部下でもあるし南部戦線を共に生き抜いた戦友でもある、彼とはそれなりに長い付き合いだ、そんな彼が言うからには、成る程確かに私はタツミ君に執心していたのかもしれない、やはり普段からソフトモヒカンやらジャーヘッドのマッチョばかりに囲まれていると知らぬ内に正統派のイケメンを求めてしまうのだろうか

 

まぁもう会うこともないだろうから、既にどうでも良いことだ

 

そんなことより

 

「最近、帝都で辺境から出稼ぎに来たものが相次いで消息をたっているらしいじゃないか」

 

私は馬車の移動中に軍曹がボソッと言った独り言を思い出した、あの時は特に興味をそそられなかった為そのまま寝てしまったが、こうして目の前に犯行現場があるとなかなか気になるものだ

 

「はい、最初は人売りの仕業かと思ったのですが、調査員の資料を見る限り奴隷市場にはこれといって変化はありませんでした」

 

「だろうな、私はこの案件、革命軍か上級貴族の仕業ではないかと睨んでいる」

 

辺境の者はやはり遠くはるばる来ただけあって皆有能だ、途中に危険種や野盗などに出くわすこともあっただろうに、それら全てを撃退ないし回避してきたのだ、少なくとも実力に関して言えば兵士としては申し分ない、剣を持たせ、戦術を叩き込めば即席だが完成した兵隊の出来上がりだ、時間も金も大してかけずに戦力が増すのだ、革命軍からすれば欲しい人材だろう

 

問題は後者だ

 

「革命軍はともかく上級貴族ですか?何故彼らのような無駄を嫌う生き物がわざわざそんなリスキーなことを?辺境とは言え帝国国民、罪がばれる可能性を踏まえればスラム辺りから拉致していけば良いでしょう」

 

「さぁな、連中の考える事なんて知らん、前例があったから候補に入れただけだ」

 

とは言うものの、十中八九犯人は上級貴族なのだろう、根拠は特に無い、強いて言えば勘だが、まぁ実際私からすればどっちでも良い、やることは変わらない、ドアを蹴破り標的の額に風穴を開けて執務室に帰る、それだけの話だ

 

「軍曹はどっちだと思う?上級貴族か革命軍か」

 

「自分は革命軍だと思いますが、まぁどちらでも変わりませんよ、迅速に行動し速やかに始末する、これだけです」

 

どうやら軍曹も私も最終的には同じ結論に至るようだ

 

「おいお前たち、通って良いぞ」

 

おっと、どうやら荷物のチェックが済んだようだ、帝国兵の一人がわざわざ報告しに来てくれた

 

そのまま彼の誘導に従って自分の馬車のあるところまで行く、イェン軍曹が馬の手綱を握り、私も荷台乗ろうとすると

 

「まて」

 

先程の帝国兵に制止をかけられる、はて?何か問題でもあるのだろうか、と、考えを巡らせて私はあることに気が付いた、そう言えば荷物のチェックはされたが私達の身体検査はされてない

 

「あぁ身体検査がまだだったな、イェン降りてこい」

 

「あ、違っ、結構です、馬車にお戻り下さい!」

 

どうやら違うようだ、それに目の前の帝国兵も何故か口調が改まっている、頭が疑問でいっぱいだった私だが、その後の彼の行動で全て理解した

 

「おかえりなさいませ中尉殿、南部戦線の英雄とお会い出来て光栄です」

 

ビシッとした良い敬礼だ

 

多分だが、彼は荷物のチェック中に私の制服を見つけたのだろう、肩についた階級も、胸に並んだ勲章も、私としては英雄なんて呼ばれるのはこそばゆいが、敬意には敬意で返すのが礼儀だ

 

「私も君のような真面目な兵士がいることを嬉しく思う、今後とも職務に励みたまえ」

 

そう言って私も負けじとビシッとした敬礼を返す、目の前の帝国兵はなにやら感極まった様子だが、私は構わず馬車に乗った、流石に荷台に乗るのはかっこがつかないのでイェン軍曹の隣に座る、私はどうにも彼のような尊敬や憧憬の篭った視線を向けられるのが苦手だ

 

イェンに馬車を出発させるよう促す

 

「軍曹早く馬車を出せ」

 

「おや?ファンサービスはもう良いのですか?」

 

「うるさいぞ、良いから早く出せ」

 

「まったく、せっかちな上司だ」

 

こうして馬車は進む、そして私は帰ってきた、この糞溜めのような都に、さぁ休暇は終わりだ、仕事をしよう、いつ終わるとも分からないゴミ掃除を




主人公の見た目はFF13のライトニングの髪を真っ白にした感じです。


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2話 上級貴族を忙殺する

 

「帝国陸軍体操 その場駆け足の運動から よ~い 始めっ!」

 

1 2 3 4 5 6 7 はち!

 

ふぅ~

 

「腕回転膝半屈」

 

1 2 3 4 5 6 7 8

 

1 2 3 4 5 6 7 はち!

 

ふぅ~

 

「腕水平……

 

「おい見ろよ、練兵場で誰か帝国陸軍体操してるぞ」

 

「マジッ!あんなギャグみたいな体操するのなんてユーリィーさんくらいだろ、てかあれユーリィーさんだ、休暇から帰ってたのか」

 

「よくあんなの白昼堂々とできるよな」

 

「よしてやれ、本人は大真面目なんだから」

 

「そうだな、ところで」

 

「言うな、分かってる、俺も必死に目反らしてるんだから」

 

「いや、言わせて貰うぞ」

 

 

 

 

 

「じゃあ何で大将軍も一緒なんだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二話 上級貴族を忙殺する!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はきっと良い日だ」

 

私は、自分以外誰もいない執務室で思わずそう言ってしまった、朝っぱらから機嫌が良い日など久しぶりである、何故なら普段の私なら

 

朝起きて「あぁ今日も仕事か……ハァ~」と溜め息をして

 

昼食を食べれば「やっと午前が終わった、でも午後からまた仕事だ……ハァ~」と溜め息をして

 

一日の仕事が終われば「やっと終わった、でも明日も仕事だ……ハァ~」と溜め息をする

 

最早私にとって溜め息とは呼吸の一種である、溜め息をするだけ幸せが逃げていくと言うが、私はその言葉を考え付いた者にこう言いたい「幸せが逃げていくから溜め息をするのだ」と、まぁ言ったところで虚しいだけであるが、とにかく普段の私に上機嫌な時など滅多にないのだ

 

しかしだ、しかしである、今日は違った

 

私は今日の朝、毎朝行っている帝国陸軍体操(発案者が私だから‘ユーリィー体操’とも呼ばれている)にて汗を流していた、この体操、あまりにも私のセンスが超次元的すぎるせいか私以外誰もやろうとしない、その為私は毎朝一人で行っている

 

そして、今日もまた一人で帝国陸軍体操をしていると、なんと、いつの間にか私の隣でブドー大将軍が一緒に帝国陸軍体操をしていたのだ!しかも、大将軍の行為に触発されたのか、近くを通っていた近衛兵士二名も加わり、総勢四名と言う過去最多の人数で帝国陸軍体操をすることができたのだ!

 

あの一体感、あの充足感は忘れられない、これぞ正しく青春である、齢26にしてそれを味わえるとは思わなかった

 

と、そんな事があったのだ

 

「あぁ今日はきっと良い日だ」

 

おっと思い出したら感極まって二度言ってしまった、いや良い、何度でも言ってやろう、決めたぞ、私は今日一日10分に一度は‘今日はきっと良い日だ’と言おう、そうすればきっと良い日になる気がする

 

そうだ、どうしてこんな簡単な事に気付かなかったのか、どれだけ嫌な事があろうと、その先は本人の気持ちの持ちようではないか、常にポジティブに、常に明るくしていれば人生はもっと豊かになるに違いない

 

おっと気が付けばもう10分以上経っている、ふふふ、やはり楽しい気持ちでいれば時間が経つのも早く感じるな、さぁ言おう、私の人生を豊かにしてくれる言葉を、今日この日この時をもって、私のハッピーうれピーライフの始まりである

 

「あぁ今日はきっと良い日だ」

 

 

 

「そんなわけ無いでしょう、馬鹿ですか?貴女は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~10分後~

 

 

 

 

 

 

「ファッ○!!ガッテムサノバビッ○!あ~もうっ!なんて日だ!」

 

今なら、やたらハイテンションだったバイきんぐ小峠の気持ちも分かる

 

「落ち着いて下さい中尉」

 

「これが落ち着いていりるかぁっ!何者かに屋敷が襲撃され護衛もろとも貴族一家全滅!しかも屋敷の倉庫から身元不明の遺体が多数発見!それどう考えてもナイトレイドの仕業だから!私一人のの手に負えるわけないなら!でも仕事だし!やらなきゃいけないよなぁ~、クソ!もう一回言ってやる、なんて日だ!」

 

誰だ、今日は良い日だなんて言ったの、ぶっ殺してやる、帝都にそんな日あるわけないだろ!

 

「お気持ちは分かりますが落ち着いて下さい」

 

「分かった落ち着いた」

 

一先ずは落ち着こう、愚痴も不満も仕事には不要だ、兵士になってからこう言う切り返しは巧くなったと思う

 

 

「では軍曹報告を頼む」

 

「はい、分かりました」

 

イェン軍曹は手に持った分厚い紙束に視線を移す、私の勘だが、多分私の知りたい情報は2~3枚分くらいだろう、必要じゃないものは纏めた者には悪いがはしょらせて貰おう、時間の無駄だからな

 

「被害者の名前は

 

早速か

 

「あ~軍曹、その部分は別に要らない、飛ばせ、死んだ人間に興味など無い、死人の良いところを教えてやろう、もう思い出さなくて良いって所だ、被害者の人数と犯行日時だけ教えてくれれば良い、あ、あと第一発見者も教えてくれ」

 

「遺体の状況などは?」

 

「要らん、直接現場を見に行く」

 

「容疑者をリストにしてあるのですが」

 

「それも要らん、犯人はナイトレイドだ」

 

「ではナイトレイドを雇った可能性のある者は」

 

「そいつは戴こう、ただここで報告する必要はない、現場に移動がてら参考までに読ませて貰う」

 

こうして必要な物のみ抽出していくと、やはりイェン軍曹の手には二枚の資料が残った

 

「先ず被害者の人数ですが、屋敷の倉庫から出た遺体を覗けば、恐らくこの屋敷の住人であろう遺体が3つ、その護衛の遺体が4つの計7つ、死因は……結構でしたね、ですが何れも手練れの犯行です、生存者、目撃者共に無し、第一発見者は屋敷からの銃声に気が付いた帝都警備隊の兵士です。報告は以上で終わりますが、宜しいですか?」

 

「あぁ十分だ、後は現場を見て判断する、イェン軍曹お前も私に随伴しろ、馬車の手配も忘れるなよ」

 

「了解」

 

「あ、あと資料の方はリストを残して他は全てそのこ暖炉に焼べておけ」

 

「わかりました」

 

それだけ言うと、黙々と私の指示に従うイェン軍曹をよそに、私は出掛ける準備を始める

 

先ずは壁に掛けてある陸軍仕様の防刃コートを着て白い手袋を嵌める、少々重いが、これが冬の陸軍の制服であるから仕方ない、結構格好いいから秘かに気に入っているのは、私と君との秘密だ

 

あとは……

 

「軍曹、馬車の他にもう一つ手配してほしいのがある」

 

 

 

 

「何でしょう?」

 

 

 

 

「焼却部隊だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

護衛A 死因 呪毒による心配停止

 

護衛B 心臓を大型の刃物で一突き、大量出血に伴うショック死

 

護衛C 後頭部から額にかけて貫通する形の銃跡を発見、頭部を激しく損傷したことによるショック死

 

護衛D 胴体を両断されるが、同時に呪毒も検出、死因は大量出血に伴うショック死及び呪毒による心配停止

 

貴族A 屋敷の執務室にて発見、恐らくこの屋敷の家主、外部からのからの強い圧力による重度の脊髄損傷、それに伴うショック死

 

貴族B 屋敷の2階廊下にて発見、恐らく貴族Aの妻、両腕を巻き込む形で胴体ごと切断、大量出血によるショック死、被害者の顔を見る限り唯一自身に起きたことを理解出来ていないようだ

 

貴族C 屋敷の倉庫入口付近にて発見、恐らく貴族A貴族Bの娘、胴体を両断、大量出血に伴うショック死

 

 

 

 

 

「ふぅ~際立った手掛かり無し、まぁ当然か、相手はプロなんだし、こんなものだろ」

 

庭先の日陰に木を背もたれにし腰を掛けて、私は図番の上に載せた報告書から目を離す

 

涼しい風、差し込む木漏れ日、荘厳な館、ここが殺人現場でなければ絵の一枚でも描きたいくらい和やかな風景だ、私絵なんて描けないがな!

 

「中尉」

 

「ん?」

 

どうやら私が馬鹿な事を考えている間に、イェン軍曹は屋敷の森の調査を終えたらしい

 

ここに来る間に、私と軍曹は互いの調べる場所を決めていた、私は庭を含めた屋敷の調査、イェン軍曹には敵の逃走経路などを調べて貰うために屋敷を囲む森を調べるようなに言っている、まぁ手掛かりなんて無いだろうが、ダメもとで聞いてみよう

 

「どうだった?」

 

「森の周りを屋敷を中心に時計回りに見て回りましたが、自分や中尉、そして第一発見者の警備隊以外の足跡などは見つかりませんでした」

 

「そうか」

 

落胆はしない、分かりきっていた事だからな

 

「ただ、所々木の幹にワイヤーなどで擦り付けたような跡を見つけました、自分の憶測にすぎませんが、恐らく犯人は、張り巡らされたワイヤーや木の枝などを足場にして屋敷まで進入したのでしょう」

 

「そして脱出するときもまた然り、故に足跡は残らない……か」

 

「はい」

 

ハァ~調べれば調べるほど相手にしたくない連中だ、ナイトレイド、まぁ良い、今彼らの事を考えてもしょうがない、いずれ彼らの逮捕も指示されるだろうが、今ではない

 

私はこの屋敷に別にナイトレイドの手掛かりを求めて来たのではなく、ましてやこの大量殺人の事件を捜査しに来たわけでもない、そう、私は既に別の案件を抱えているのだ、今回はその大詰めと言ったところだな

 

「さて、行くか軍曹」

 

「はい」

 

私はゆっくりと腰をあげて歩みを進める、その後ろにイェン軍曹がつく、私達が今から向かうのは、貴族Cの遺体があった場所、即ち屋敷の庭先にある倉庫、そこにきっと連続田舎っぺ誘拐事件の真相があるはずだ、根拠はない、強いて言うなら勘である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……酷すぎる」

 

何なんだこの館は、いや、私もある程度の惨状は予測していたが、しかし、今私の目の前にある光景は、そのずっと上を行っている

 

 

四肢欠損、切られた足や腕は天井からぶら下がっており、宙釣りになっている死体も多い、壁に打ち付けてある死体には皮が無く、変わりにその下に折り畳まれるように置いてあるのが、もしかして彼らの着ていた皮なのだろうか、目にはいる遺体の表情はどれも苦悶に満ちており、恐らくは彼らは生きたまま四肢をもがれ、皮を剥ぎ取られたのだろう

 

何故こんなことをするのだろうか、私には到底理解出来ない、したいとも思わないが、彼らは何かここの貴族に恨みでも買ったのだろうか、いや無いだろう、帝都に来た出稼ぎの者がこんなピンポイントで恨まれるだなんてあり得ない、であれば、ここの貴族の連中は、何の恨みもない人間にこんな酷い事をしていたのだろうか、笑っていたのだろうか、愉しんでいたのだろうか、人の悲鳴を、流れ出す血に酔っていたのだろうか

 

生存者は、いないのだろうか?

 

 

 

「……ァーーーゥィー……ーー」

 

「ゥーー……ぁ、ーー」

 

「ァーーー……コフッーーゥ」

 

 

 

「ッ!!何処だ!?」

 

今、微かに人のうめき声が聞こえた気がする、しかも複数人だ、いや考えてみれば当然か、ここの貴族どもは生きながら拷問することを楽しんでいたようだ、なら玩具が壊れた時の為に何処かにストックを溜めているはずだ、そして昨晩そのストックを消費するよりも早く、自身の元に罰が下った、ざまぁみろ

 

つまり、まだ何処かに生存者はいるはずだ!

 

「カーーコフッ」

 

「そこかぁ!」

 

一番右奥の牢屋の中、男性1人、女性1人、少女1人の計3人、どれも栄養失調なのか相当痩せこけているがまだ大丈夫だ!出血の跡もない!間に合う!

 

「ぇ?ーーた。すけ」

 

「あぁ助けてやるとも!檻から離れろ!」

 

ズガァーン!!

 

私は鉄格子を無理やり引きちぎる、少々力を入れすぎた為か、ぶち壊れた檻から煙が立ち込めてしまった、生存者は何処だ!?

 

「おい!返事をしろ!いるのは分かっている、姿を出せ!」

 

そして漸く煙が晴れ始めて、3人の姿が現れた、男性を真ん中にして彼の後ろに女性が一人と少女が一人、彼は後ろの二人を庇うように前に立ち、逆に後ろの二人は前の男性を支えるように背中に張り付いている

 

私の憶測だが、この3人は家族なのではないのだろうか、でなければ咄嗟にこんな陣形を取れるわけがない、きっと今までもそうやって困難に立ち向かって来たのだろう

 

こうやって、何時までも彼らの絆を見ていたい気持ちはあるが、先ずは警戒を解いて貰わねば、他と比べればまだマシとは言え、彼らもまた重度の栄養失調だ、早急に措置しなければ

 

先程はつい興奮して口調が乱暴になってしまったからな、次はもっと優しく語りかけよう

 

「すまない、脅かせるつもりはなかったんだ、信用してくれ、とは言わない、しかし私の話は聞いてくれ」

 

私の声が聞こえたのか、中心の男性がゆっくりと口を開く

 

「ァー」

 

「あ~ッ!喋らないでも良い!口を動かすのも辛いだろう、ただ私のする質問に頷くか首を振るかくらいはしてくれ、良いか?大丈夫、時間は決して取らせない」

 

男性が、ゆっくりと首を縦に振った

 

「ありがとう、協力感謝する」

 

「先ず初めに、君達は辺境から来たのかな?」

 

縦に振った

 

恐らく犠牲になった他の者達も辺境から来たのだろう、夢とか希望とかを抱えて

 

「君達やここの者たちをこんなにした者は身形の良い格好をしていたか?」

 

これもまた、縦に振った

 

分かっていたが、この事件の犯人は屋敷の住人だな、しかし、それは困ったことなった、ナイトレイドは宮殿にて勤務している私をも凌ぐ情報力を持っていると言うことか、彼らが優秀なのは知っているが、どうやら想像していたよりも、私達は無能らしい、何せ私達が違和感を感じ始めている頃には、既に連中は真犯人を見つけ、こうして見事に殺して見せた

 

もしも彼らが来ていなければ、被害はもっと広がっていただろう、そんなことになってしまえば……いや、やめよう、考えるだけ無駄な事だ

 

今時間を割くべきはそんなことではない筈だろうが、しっかりしろ私

 

「これが最後の質問だ」

 

 

 

 

「君達の他に生存者はいるか?」

 

 

私の問いに大人の二人は答えない、下を向いて目を伏せるのみ、代わりに少女が、その細い首をフルフルと横に振った

 

 

「そうか」

 

一瞬私の胸に、強烈な酸を流し込まれたような感覚に見舞われるが、グッと抑え込む、後悔も反省も今すべき事ではない

 

「さぁおいで、早くここから出よう」

 

おいで、と言いつつ私は少女を持ち上げる、早く処置したいと言うのもあるが、急ぐ理由はまた別にある

 

私はここへ来る前に馬車と一緒に焼却部隊の出動を要請している、彼らは帝国軍のなかでも屈指の真面目さを誇る部隊だ、出動を要請すれば必ず応えてくれる、しかし同時に冷徹であることも知られている、何でも、命令とあらば町一つ燃やし尽くすらしい、恐ろしい部隊だ

 

今私が助けようとしている三人の家族は皆軽度だがルボラ病に感染している、ルボラ病とは、感染すると体の皮膚の一部が腐り始めその箇所が酷くかゆみ、皮膚同士の接触により腐れは体全体に広がってゆく、やがてウイルスは皮膚だけでなく肺も腐らせ始める(恐らくはかきむしった皮膚の一部が何らかの理由で口内から浸入したと見られている)こうなればもう末期だ、幸いあの家族にその症状は診られない

 

問題なのはクリーナーズ、じゃなかった、焼却部隊の方だ、彼らが出動させられる主な要因はこういったウイルスの滅菌である、今回は死体処理として呼び寄せているが、軽度とは言えルボラに感染したあの家族を見てどんな行動をするか分からない、大量虐殺をする連中にまともな者など一人もいないのだ、場合によっては戦闘に移ることも考慮しなければならない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~やっと全部終った」

 

「お疲れさまです中尉」

 

あの三人の家族を病院に預け、その後の書類祭りを何とか終わらせた私は、夜の帝都にてめいいっぱい大きな背伸びをする

 

「いやぁ~軍曹」

 

「何ですか?」

 

「人は見かけによらないな」

 

三人の家族は、あの後特に何事もなく病院につれてゆくことは出来た、一つ問題があったと言えば私達が庭に出ると、そこには既に焼却部隊の面々が集合を完了していた事だろう、本当は、彼らが来る前に現場を出ようと思っていたので、あの時は本当に肝を冷した、まぁ私が思っていたより彼らはずっと好い人達で、私達が生存者を発見したと知るやいなや「ならば他にもいるかも知れない」と皆ぞろぞろと倉庫の中に入ってしまった

 

善人の皮を被って人殺しを楽しむ豚屑もいれば、小銃の先に火炎放射器着けた善人もいる、本当に人の見かけは信用できない

 

「そうですね」

 

まぁ軍曹にとってはどうでも良い話だったか、彼は他人にまるで関心を寄せないからな

 

「ところで軍曹、お前お腹は空いていないか?」

 

肘を曲げて時計を見れば、短い針が8よりやや手前に刺さっている、少し遅いが夕飯刻だと私は思う、因みに昼食は食べていない、昼間にあんな光景を見てしまえば当たり前だろう

 

つまり私はお腹が空いている

 

「いえ、これと言って空腹は感じません」

 

「そうなのか、しかし私はペコペコだ」

 

「それはお気の毒に」

 

「加えて言えば私はあの家族の治療費を払ったせいで金もない」

 

「尊い犠牲です」

 

「しかし目の前に金を持った部下がいるんだ」

 

「…………自宅で食べれば良いじゃないですか」

 

「それがな、休暇前に冷蔵庫の処理を忘れていたのだ、おかげで今、私の冷蔵庫はナウシカの腐海のようになっている」

 

「例えがよく分かりませんが、それは自分の知る限りではありません」

 

「率直に言おう、ご飯を奢れ、これは上官命令だ」

 

「ですから自分は」

 

「中華が食べたい」

 

「いや、ですから」

 

「チャーハンが食べたい」

 

「中尉、話を「軍曹」」

 

「諦めろ」

 

「はぁ……この距離なら自分の自宅の方が近いです、チャーハンくらいなら創りましょう、それで我慢してください」

 

「そうこなくてはな」

 

 

 

 

 



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3話 警備隊長を忙殺する!

今回は短めです、それでは、どうぞ。


 

「警備隊長オーガが何者かに殺害されました」

 

「あぁそう、で?」

 

「早急に下手人を見つけ出し速やかに捕縛せよ、との事です」

 

「無理って言っといて」

 

「自分で言って下さいよ」

 

 

 

 

 

 

 

3話 警備隊長を忙殺する!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まったく、どうして私がこんなことをしなければならないのだ、警備隊長殺害、確かに大事件だ、しかしそれを調べるのは帝都警備隊の仕事だと思う

 

 

私は大将軍直属の部隊である近衛兵士の隊員だ、当然部下であるイェン軍曹も近衛兵士である、主な仕事は隊員の給料や物品購入の為の資金管理と言ったところで、決して犯人逮捕に尽力するような仕事ではない

 

 

因みに、これは独り言だが、極秘で各地に送り込んだ調査員の報告書や、それに適する資料を纏めて大将軍にお届けし、顕著な異常が見つかればこれを詳しく調査し報告する、そんな隊員もいるらしい

 

 

誰とは言わないが

 

 

多分だが、今回私がこの事件を担当することになってしまったのはそのせいなのだろう、帝都警備隊では少々心許ない、そう思った誰かが私という存在に目を着けたのではないか

 

 

まぁその事を知っているのは、私や私の部下であるイェン軍曹、上司のブドー大将軍、そして数人の文官しかいない、どのみち私に断る権限などないがな、めんどくさいがやるしかないか

 

 

後で大将軍に文句言っとおかなければ、このままではペット探しまで私達にさせられてしまう、冗談ではない

 

 

 

「軍曹、悪いが今纏めている資料、点検が終わったらアレン副官に渡しておいてくれ、それが終われば今日はもうあがっていいぞ」 

 

 

「了解、では提出が終わり次第自分も現場に向かいます」

 

 

「悪いな」

 

 

私は良い部下を持った、しかしイェン軍曹を巻き込むとなれば尚更早く終わらせたい、てゆうかそもそも簡単に暗殺なんてされるなよ、死人に言ってもしょうがないか

 

私は少々乱暴な手つきで壁に掛けてあるトレンチコートをぶん取り、ズホンのポケットから白手袋を取り出す、シワシワだけど別に良いだろ、新調するのも手間だ

 

あぁ~めんどくさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そこの君」

 

 

「そ、そんなオーガさん、どうしてあなたがこんな姿に……昨日、私に稽古付けてくれると言ったではありませんか……どうして、こんな……酷すぎます」

 

 

「……」

 

 

うむ、確かに遺体の状態は酷いな、殆んどバラバラじゃないか、今の季節が冬じゃなかったら確実に腐っていただろう、だからそこの警備隊の君、遺体に抱きつかないでくれるかな?

 

 

「……おい」

 

 

「いったい誰が、誰がこんな酷いことを……赦せない!」

 

 

確かに赦せない、私の貴重な執務の時間だけでなくイェン軍曹にまで迷惑をかけられた、これで今週は二人揃って残業決定だ、犯人は見つけ次第ボコボコにしてやる

 

 

それはそれとして私の話を聞け

 

 

「……ちょっと」

 

 

「お父さんだけでなくオーガさんまでっ!必ず見つけ出して正義の鉄槌を下してやる!震えて眠れナイトレイド!」

 

 

「……」

 

 

私は何時まで無視し続けなければならないのだろうか、しかも自分より階級が下の兵士に、別に無視されたくらいで怒ったりはしないが、これは思ったよりもショックだ、事件が解決したら酒でも飲んでイェン軍曹に慰めてもらおう

 

 

 

 

 ~30分後~

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ~っ!……グスン、オーガさん……スピー」

 

 

「警備隊は精強だな」

 

 

死体の上で寝るなんて、警備隊はいったいどんな訓練を受けているのだろうか、いやまぁ単純に泣き疲れただけだろうが、それにしても図太い娘だ、将来が楽しみだな、誉めてない皮肉だ

 

「しかし、実際これからどうするか?」

 

既に警備隊の娘は死体から退かしてある、その上でもう一度現場を見渡す

 

人通りの少ない裏路地、恐らくオーガは誘い込まれた、いや、戦闘の形跡があるから敢えて誘いに乗ったのかな?しかし相手の実力がオーガを越えていた為あえなく殺害された。

 

こんなところか?う~んオーガの遺体の状態が悪すぎるな、両腕を切断されただけでなく、上半身をX字に斬られている、しかも飛び散った血痕を見る限り上二つの動作はほぼ同時に行われている、複数による犯行か、犯人が2刀使いの達人か、う~ん……ダメだ、やめよう、証拠が圧倒的に不足している今では何を考えても徒労にしかならない、いや寧ろ無用な先入観を持ってしまう

 

 

今しなければならないのは、兎に角情報を集めることだ、先ずはここ最近のオーガの行動、そしてオーガの人となりだな、後者は警備隊と一般市民の両方から聞き出さねば

 

あ~やることがいっぱい過ぎて気が遠くなりそうだ、私の他にせめてもう一人人手が欲しい、そう

 

 

「まだ現場にいたのですか中尉」

 

 

そう、調度今聞こえた軍曹のような……ん?

 

 

「おぉ軍曹いたのか、いつからここに?」

 

 

「つい今しがた着いたところですが、捜査に進展はありましたか?」

 

 

気付かなかった、どうやら相当考えこんでいたらしい、周りに気を配れなくなっているとは、勘でも鈍ったかな?まぁ良いか

 

 

 

「ない、共同で捜査に当たる筈の警備隊が職務放棄してそこで居眠りを始めてしまってな、もともと戦力として数えていなかったが、まさか足を引っ張られるとは思わなかった、おかげさまでついさっき現場検証が終わったところだ」

 

 

「目撃者は?」

 

 

「まぁいないだろうな、なんせ現場は‘人通りの少ない裏路地’ではなく‘人通りの少ない道の裏路地’なのだから」

 

 

「そうですか」

 

 

やはりこの事件請けるべきではなかったな、大将軍辺りに相談すれば代わりの人事を動かしてくれただろうが、あまりあの方に迷惑はかけたくないし、過ぎた話だ、現場に足を踏み入れた以上半端では終わらせないのが私の主義だ、この事件も例外にするつもりはない、完璧とは言わずとも、納得のできる所まで行ったらさっさと警備隊に引き継ぐとしよう、さて!

 

 

「では軍曹、事後の行動を指示する」

 

 

「はい」

 

 

「私はこれから警備隊の本部に行ってここ最近のオーガの行動を調べる、警備隊長なんて仕事しているのだ、抱えている怨みはてんこ盛りだろう、その傍ら別の警備隊員からオーガの人となりも聞いてみる」

 

 

「自分は?」

 

 

「軍曹には市民視点でのオーガの評判を聞いて欲しい、お前の裁量で良いから、十分な情報が集まったら私と合流だ、歩きどうしの一日になると思う、苦労をかけるようで申し訳ないが、やってくれるか?」

 

 

「もちろん」

 

 

「ありがとう、それと私と合流する最は途中でコーヒーを幾つか買って来て欲しい、今夜はオール決定だ、コーヒーの種類は軍曹のセンスに任せる」

 

 

「了解」

 

 

「さて!早急に行動を開始するぞ、迅速に行動し可及的速やかに私達の睡眠時間を確保する、かかれ!」

 

 

私がパァン!と手を叩くと同時に軍曹も動き出す、当然私も裏路地から出ようと足を進める、気の乗らない事件だが仕方ない、てゆうか、私の本来の仕事は事務職なんだが、どうしてこんなことをしているのだろう?今更すぎるが疑問である、まぁいくら考えても仕方ない、これがデキル女の宿命なのだと諦めるか

 

 

「はりきって行くか」

 

 

何事も元気が大事だ、元気があればなんでもできる、そう心に言い聞かせて、私は現場を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うむむ……スピー、仇を取りましたよオーガさん……スピー」

 

 

「……」

 

「誉めて下さい……スピー……」

 

「……」

 

「スピー……」

 

「……はぁ~仕方のない子だ」

 

 

背中に警備隊員を乗せて

 

 

 




毎度思うのですが、タツミ君あの体制からどうやって斬ったらあんな切り傷になるのでしょうね?いやまぁ漫画の世界なので深く考えたら負けなんでしょうけど。

感想待ってます。


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4話 警備隊員を忙殺する!

 

「ずみまぜんでじだぁ~」

 

「いや、もういいから、別に怒ってないから」

 

 

「で、でも、わだしこのままじゃクビになっちゃいます」

 

「ならないから……」

 

 

「だっで~っ!宮殿勤めの士官なんて私達からすれば隊長よりも偉いんでずよ!それを無視したどころかお手間をかけてしまうなんて……」

 

「だから気にしてないって」

 

 

「すみませんオーガさん、私はもうダメみたいです」

 

「君、少しは人の話を聞いた方が良いと思うぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4話 警備隊員を忙殺する!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあセリュー、次はこのファイルナンバーAの11~15を持ってきてくれ、ちなみにこれは独り言だが、取りに行くついでに、今まで見た1~10の資料を置いてくると後々片付ける手間が省けてとてもスマートだと、私は思う」

 

「はい!つまり自分の任務は資料の返納と拝借ですね!了解しました!」

 

 

それだけ言うと、物凄い早さで資料を抱えたセリューは本部の会議室を後にした、廊下を全力疾走することはあまり関心しないが、何も役に立たない他の隊員に比べれば遥かにマシだ

 

私は今警備隊本部の会議室にいる、本当は資料室の中で調べようと思ったのだが、ここの職員がサボっていたのか部屋のなかはかなり埃っぽくなっていおり、とてもではないが調べものを出来る環境ではなかった、また一通り情報が集まったらやろうと思っているが、ここの隊員の何名かにオーガの人物像を聞こうと思っている、別に取り調べをするわけではないので、こうゆう場合はなるべくストレスのかからない場所でやるのが一番効率的に情報を引き出せるのだ

 

しかし、そのせいでセリューを使い走りにしてしまった、彼女は特に気にした様子はないが、自分の部下でもない人をこき使うのは、なんだか自身の権力を傘に強いているようで居心地が悪い

 

資料漁りは少々早めに切り上げて、とっとと面談に移りたい

 

 

「それにしても、オーガとは随分働き者だったんだな」

 

 

資料でここ最近のオーガの逮捕履歴を見ると、大体三日に一回くらいのペースで犯罪者を逮捕している、しかもその殆どが現行犯だ、多分日頃からマメに帝都の見回りでもしているのだろう、今回の事件も、もしかしたら見回り中に襲われてしまったのかもしれない

 

本当に今時の帝都では珍しい程仕事熱心な人だ、これならセリューのあの取り乱し様も少しは納得のできる、きっと多くの部下に慕われていたのだろう、そうゆう人材が喪われてしまった事は、私は素直に残念に思う

 

まぁそれはそれ、死んでしまったからには既にどうでも良い話だ、今は兎に角オーガの死の背景を探らなくては

 

これだけ人を逮捕していれば、やはり同じだけ怨みを買う、今回の事件のきっかけも恐らくは、その買った怨みの一つか、それとも幾つかが同時に発動した結果なのかは分からないが、それもこれも、セリューが資料を持ってくるまで進むことはない、気長に待つさ、どうせやることはたくさんあるんだから、一つずつ慎重に、ミスなくこなして行くのが一番手っ取り早い

 

 

「お待たせしました!ナンバー11~15しっかり持ってきましたよ!!」

 

 

おっと、どうやらセリューが資料を持ってきてくれたようだ

 

「うむ、ご苦労様」

 

「手伝いますよ!」

 

「大丈夫だ」

 

だって、お前読んだ資料グチャグチャにしちゃうだろ、とは言わない、私はアホだがそこまでデリカシーが無いわけではないのだよ、それよりも

 

 

「そろそろ休憩するか?」

 

ちらりと時計を見れば調度12時、お昼時だと私は思う

 

「いえ!自分はまだまだ元気です!」

 

「そうだな、じゃあご飯にするか?」

 

「食事などしている場合ではありません!」

 

「そのとうりだ、よし!出掛ける準備をしろセリュー!食堂に向かうぞ!」

 

「はい!え?、えぇっと?」

 

「今日の献立はなんだ!?セリュー!」

 

「は、はい!素麺とお冷やです!」

 

「それは素晴らしいな!さぁ行くぞセリュー!早くしないと折角の食事が冷めてしまう!」

 

「素麺もお冷やも最初から冷めてます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、話の舞台は変わり、警備隊本部から帝都のメインストリート、から少し脇にそれた薄暗い路地にあるストリップバー、それなりの広さがある店内だが、今はカウンターに一人、そしてまるテーブルの四人席に二人の男女が座っているのみ、ここも夜にはさぞ賑わうのだろうが、流石に昼間は大人しくしている、そこにあるのはバーテンダーのグラスを磨く音と、男女の話し声だけ

 

 

「それじゃあオーガの町での評判はクソだったと言うことか?」

 

「えぇそうね、酷いものよ、酒に酔った勢いで人を切り殺したり、町中で処刑したり、少なくとも優しいおまわりさんじゃなかったわ」

 

 

女の言葉に男は唸る

 

 

「それでは殺されても文句は言えないな、警備隊長までこんなザマじゃこの国もおしまいだ」

 

「あら?貴方に国を想う気持ちがあったなんて驚きね」

 

「何を馬鹿な事を、俺にそんなものあるわけないだろ?この国の先なんて次の日の天気程度の関心しかない」

 

「宮殿勤めのエリート軍人が言うことではないわね」

 

「そうだな」

 

話を早々に切り上げて、男は考えに浸る、が、すぐにやめて再び女に視線を移す

 

「何かしら?そんなに熱い視線で見られたら妊娠しちゃうんだけど、責任とってくれるの?」

 

 

「お前オーガ殺しの犯人知っているか?」

 

女は軽口にも男はまったく動じない、坊主頭に仏頂面、半袖に長ズボンの飾り気のない武骨な普段着、見ればすぐに分かる、この男は冗談が好きではないのだろう、まぁ女の方はそんなことをわかりきっているのか「相変わらず真面目ねぇ」と言って、一度溜め息をつくだけだった

 

 

「知ってるわ、本当はここから先は有料だけど、お互い死線を潜り抜けた仲だし、お酒で舌が滑ったと思って聞き流してちょうだい」

 

そう言って女はグラスに入った液体を一気に喉に流し込んだ、その豪快な動作に似合わず、女の容姿は色白で線の細い、儚くも美しい女性だった、それでも何処か強かなのが、この女の魅力なのだろう

 

 

「飲み込んだのか牛乳でなければの話だがな」

 

「う、うるさいわね!真っ昼間から酔っぱらったら仕事にならないでしょ」

 

別に牛乳である必要はどこにもないのだが、それは言わぬが華だろう

 

「別に牛乳である必要はないだろ、お茶とか」

 

どうやら男にはわからなかったようだ

 

 

「まぁ良い、兎に角情報をくれるのはありがたい、それと金なら断られても払うからな、他の奴なら知らないが、少なくともお前とは俺は対等でいたいと思ってる、一方的な施しなんていらん」

 

「はぁ~相変わらず真面目ねぇ」

 

またこの流れか、と、男は内心溜め息をついた、別に男とてこの女性との会話にうんざりしているわけではない、寧ろかつての戦友との会話は純粋に楽しいとさえ思っている、だが今は仕事を優先しなければならない

 

そんな男の複雑な内心を察したのか、女はハキハキした声で話し出す、今回の事件の真相を

 

だが男にはこの事件の概要というか背景が、何となくだが掴めていた‘どうせ何時もどうりのつまらない復讐記なのだろう’と、それはつまり 人を呪わば穴二つ と言うことだ 

 

まぁ一応女の話も聞いてみる、概要は大体予想がつくが詳細な事は分からない、状況とは詳しく知れば知るほど良い、男はその事を良く理解している、それに、今目の前で話している女があんまりにも楽しそうにしているから、自分から頼んどいて今さら「もういい」とは言えなかった

 

女は元軍人でかつての同僚だが、今はフリーの情報屋だ、情報屋にとって自身の持つ情報とは宝そのものだ、そんな彼らが一番楽しそうにしているのは、自分の持つ情報を他者に話すこと、彼らは普段は常に仏頂面か必要以上に感情を明るく見せて本性を眩ますような生き物だが、この時だけは皆例外無く何処か楽しそうにしている、その姿はそう、まるで自分の持っている秘密の宝物を自慢する子供のような、そんな無邪気さを感じる

 

そして、それは目の前の女にも同じことが言えた、男はただ女の話に相槌を打っているだけなのに、女の方は聞いてもないことをペラペラと喋ってくれる、無論日頃からそんなわけではないのだろう、あくまで対面しているのが気の許せる相手だからこそ、ここまで口が達者になるのだ

 

そんの女の姿が微笑ましくて、男は本当に久しぶりに口が緩んだ

 

 

 

 

 

一方その頃のユーリィー

 

 

「は、は、……マイケルジャクソンッ!」

 

 

「うひゃっ!ちょ、汚いっ!何でいちいち隣見てくしゃみすんるですか!」

 

「だって、正面向いたら私の食事にくしゃみが直撃してしまうではないか」

 

「私なら良いんですか!?」

 

「うん」

 

「言いきりましたね」

 

「ふ、それにしても我ながらハイセンスなくしゃみをしてしまった」

 

「聞いてないし……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……報告は以上です。」

 

会議室にてイェン軍曹の報告を聞き終った私は、イスのクッションに深々と体を沈めた、控えめに言って最悪の気分である

 

 

「なんだ?つまり警備隊長オーガは町で好き放題やってるクソ野郎で、つもり積もった怨みのツケが回って死んだと?」

 

「まぁ平たく言えばそうですね」

 

「しかもその実行犯はナイトレイド」

 

「彼女の情報が確かなら、そうです」

 

「そうか……クソ!なんてザマだ軍属」

 

 

また、ナイトレイドに先を超された、しかも今回の件は完全にウチ(軍属)の尻拭いをされたようなものだ

 

政府機関が民間企業に賄賂なんてのは今時珍しくない、私もたまに金を贈って情報を入手することもある、しかし罪状の擦り付けまでいけば、それはもう違う、完全に個人がやって良い範疇を越えている、オマケにそれで私腹を肥やしていたなど、どう考えてもアウトだ

 

普通これだけ派手な動きを見せれば気付く者や脚がつくものだが、どうやって今まで隠せとおせたのだろう……知れたこと、大方勘付いた者全て消したのだろう、たしか警備隊員の殉職率が大幅に跳ね上がった時期があったな

 

セリューの父もこの時期に殉職していた筈だ……この場にセリューがいないのが唯一の救いだな、あの子は不器用で大雑把だが決して頭の回らない馬鹿ではない、今の軍曹の話を聞いていたら、きっと自分で警備隊内の闇を見つけてしまうだろう

 

人の闇を見つめるにはあの子はまだ、若くて純粋に過ぎる

 

「何なのだこの国は、中央が腐りきっているのは知っていたが、まさか警備隊までとは」

 

私達が監視しているなかオーガ一人で今での悪事を隠しとおせるわけがない、きっと警備隊内にも共犯者がいる筈だ、そっちも追々調べていかなければ、このまま警備隊の腐敗を放っておけばセリューのような隊員が片身の狭い思いをさせてしまう、いや、最悪消されてしまうかもしれないのだ

 

そんなことはさせない

 

「軍曹、オーガ殺しの下手人がナイトレイドならその暗殺を依頼した人間がいる筈だ、その辺の調べもついているか?」

 

「勿論です、容疑者は現在所持している住所はありませんが、最近までスラムで売春をしていました、行動範囲もおのずと絞り込めます」

 

「外見的な特徴はわかるか?」

 

「辞めた売春宿から売り子をパッケージにした際の似顔絵があります」

 

「十分だ、出掛ける準備をしろ軍曹、念のため武装しておけ」

 

「了解、これか犯人の確保に向かうのですね?」

 

「違うぞ軍曹、私達は犯人の逮捕に向かうのではない」

 

 

 

 

「私達はな、警備隊内の集団不正に関する重要参考人の保護に向かうのだ」




作者はセリューが大好きです、なので、この物語では原作よりはもっとマシ扱いをしたいと思ってます。


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5話 やりきれなさを忙殺する!

 

スラムとは帝都の中に所々存在する貧民街のことである、大抵は必ず近くに栄えた区画があり、その小さな栄華を支える為に多くの人が虐げられる、つまりスラムとは一部の区画の繁栄の裏にある闇のようなものだ、発する光が強ければ強いほど影とは濃くなり闇もまた深くなる、ならば1000年間栄え続けた帝国の影は、いったいどれ程の大きさとなっているのだろう、それは誰にも分からない、確かめたくば自ら赴く他は無し、その好奇心に釣り合う勇気があるのなら、ただし心せよ、君が深淵を覗くとき、深淵もまた君を覗きこんでいるのだ

 

 

 

 

「嘘ばっかりだなチクショウ!」

 

 

 

 

 

5話 やりきれなさを忙殺する!

 

 

 

 

 

 

 

 

私は自分の手に持っていた本を地面に思いっきり叩きつけた、本の題名は『そうだ帝都に行こう』スラムに関する情報が欲しくて警備隊の資料室から勝手にパクッてきた、罪悪感はない、どうせ取ってもアイツら気付かないだろうし、資料室が誇りまみれとか意味がわからない、彼らは過去の資料を見ないでどうやって今まで捜査してきたのだろう?まぁどうでも良いことだがな

 

今度休日とかに嫌がらせで抜き打ち検査でもしてやろう、そして連中の給料を小学生のお年玉くらいにしてやる、私は近衛兵士の給料の管理が仕事だが、警備隊も上部連中まで行けば私の管轄だ、覚悟しておけ警備隊、私にデタラメな資料をパクらせたこと後悔させてやる

 

おっと、興奮のあまり話が横に逸れてしまった、とにかくこの『そうだ帝都に行こう』によると、まるでスラムは深淵に飲まれたウーラシールのような場所のようだが、実際に来てみれば決してそんなことはなかった

 

 

確かに治安は悪い、衛生環境も悪い、しかしそこには帝都にない活気があった、活きるために生きている、そんな感じだ、辛く厳しい中にあっても、強く逞しく生きようとする様は、私にはとても眩しく見える

 

「スラムとは、思ってたよりも賑やかだな」

 

私は少し浮いた気持ちで隣にいる軍曹に話しかける

 

「そうですね」

 

まぁ軍曹にとってはどうでも良いことだったか、私がスラムの活気に見惚れている間にも、彼は隙なく周りに気を配っている、今頃軍曹は視界に写る全ての人間に今回保護する筈の女性の顔を照らし合わせているのだろう、まるでターミネーターだ

 

私もそろそろ真面目にやるとしよう、思考を観光モードからお仕事モードに切り替える

 

「イェン」

 

階級ではなく名前で呼ぶ、私も軍曹も今は私服である、治安の悪い地域に軍人がいても悪目立ちするだけだ、今回に限り素性は隠しておくべきだ、と、軍曹とは認識を共通させてある

 

「何だユーリィー」

 

低くドスの効いた圧力のあるダンディーな声だ、そんなイケボイスで呼び捨てにされると、私はドキドキしてしまう

 

「手分けして捜そう」

 

「わかった」

 

手短に会話を済ませて、お互い少しずつ距離をとってゆく、もう今日一日余程の事か偶然がない限り私と軍曹が合流することはない、これから先は完全なスタンドアローン(単独行動)だ、精々明日の事後報告で良い報告が聞けるよう祈るばかりだ

 

さて!私も仕事をするとしよう、ターゲットの女性の顔はもう頭に入ってる、似顔絵も持ってる、これだけあれば今日一日で見つかりそうだ、まだ、彼女が生きていたらの話だがな

 

まぁ何れにしても先ずは聞き込みからだ、ちょうど今、私の目の前を通り過ぎた巨乳の金髪美女に聞いてみよう

 

 

「そこの露出の多い金髪の美人さん」

 

「ん?」

 

 

あ、振り向いてくれた、ついでに胸まで揺らしてくれた、素晴らしい、スラムの女性は胸まで逞しいのか、このまま堪能したいという煩悩を振りほどき、私は自分の任務に勤めることにする

 

 

「すまない、尋ねたい事があるのだが」

 

「人と話すときは相手の顔を見るのが礼儀だろ」

 

「許せ人見知りなんだ」

 

「それなら私の胸から視線を外すべきだね」

 

「……」

 

「……」

 

「……まぁ顔も私好みだから良いか」

 

「アンタ人と話す気あるのか?」

 

 

  

 

 

 

私の捜査の出だしは順調だった、最初に会った金髪美女からは特に情報は得られなかったが、その後粘り強く聞き込みをして遂に私は女性の住居を突き止めた、その時は留守にしていたが、いずれ帰ってくるだろうと思い、同じタイミングでやって来た軍曹に捜索の続きを頼んで、私はここで張り込みをした

 

このときはまだ私は事件の解決を信じて疑わなかった、半日も待てば彼女はやって来る、それでなくとも軍曹がスラムで見つけてくれるだろう、と

 

だが、3日張り込みをしたがこれと言って成果は何もなく、新たにわかった事と言えば、その女性は性病に感染していたこと、そして彼女はつい最近無惨な形で恋人を喪ってしまったことくらい、どの情報も重要だが彼女の所在を示すモノはなく、ただ私のモチベーションを低下させるにだけだった

 

そして結局私と軍曹は、3日の張り込みと捜索、一日を女性の身辺調査に費やしたが、消息を絶ったその女性の足取りを掴むことは、ついぞなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは軍曹」

 

「今は早朝です中尉……寝ていないのですね」

 

私の執務室にうず高く積み上げられた書類の山、いや、山というかビルの方が近いかもしれない、さしずめ目の前に広がる光景は紙で作った摩天楼といった所か、まぁどちらにしても‘紙の量がすごく多い’ということさえ伝われば良い

 

これらは全て私の決済待ちの書類だ、武器や食糧等軍需品の調達要求書、また軍人の退職金の計算を依頼する書類などetc ……本来なら毎日来るこの書類は、その日の内に全て終わらせているのだが、ここのところ捜査続きで全く手をつけていなかった、今はそのツケを払っているところである

 

「ここに来たと言うことは何かわかったのか軍曹?」

 

カキカキと羽ペンを全力疾走させながら軍曹に問う、私が徹夜で書類の処理をしている間にも、軍曹には件の女性について調べてもらっている

 

私は知りたかった、どうしても、今彼女がどうしているのかを、生きているのなら良し、もし……死んでしまっているのなら、花の一つでも贈らなければ、だってあまりに哀れだろう?理不尽に婚約者を奪われ、身を売って復讐を果たしたが、性病に感染してもう余命幾分もない、そんな中で、その死に際すらも誰に象られるわけもなく独り息をひきとるだなんて、そんなのあんまりだ

 

他者への哀れみを忘れてしまうほど、私は堕ちたつもりはない

 

「はい、女性が以前、そう調度婚約者と同居していた際の住居を突き止めました、いまだにいるとは思えませんが、何か手がかりはあるのではないのでしょうか?」

 

彼女にはたしか住む家など持っていなかった筈だが……成る程、おそらく婚約者名義で購入した家なのだろう、たしかにそこなら何かあるかもしれない、行くか

 

「どっこいせ」

 

私は重い腰をあげて立ち上がる、ついでに背伸び、バキバキバキと関節が唸り体中に血が巡る、そのためか心なしか少し体がホカホカするきがする、そしてそのまま部屋の壁に掛けてあるトレンチコートに手をつけたたところで、軍曹が待ったをかけた

 

「行くのですか」

 

「あぁ」

 

いや、正確には明確に停止を言われたわけではないな、ただ、私の返事を聞いた軍曹の顔には明らかに不満の色が出ている、彼がここまで露骨に感情を表に出すのは珍しい、まぁ気持ちは分かるがな

 

「言いたいことはわかるぞ軍曹、従来の仕事を放っておいて、既に終わった事件に執着するだなんて自分でも馬鹿だと思う」

 

そう、もうこの事件は既に終わっているのだ 実行犯はナイトレイド、依頼したと思われる容疑者は現在逃亡中、事後の捜査は警備隊に依託するものとし、我は己が職務に帰する そう書かれた報告書が既に出来上がってる、後はコイツをアレン副官に提出すれば私の仕事は終わりだ、落とし所としても悪くない、いや潮時と言っても良いかもしれない

 

「私の我が儘に付き合わせてしまっていることには、本当に申し訳なく思ってる」

 

きっと軍曹は、無駄に働かされることを不満に思っているのではない、私が引き際を間違えていることに不満を感じているのだろう

 

だが、だからといって今更辞めるわけにもいかない

 

「軍曹、お前はもう十分働いてくれた、ここから先は私一人で大丈夫だ、3日休養をあげるからしっかり体を休めておけ、それが終わればまた仕事だがな」

 

私の我が儘にこれ以上軍曹が付き合う必要はない、私は軍曹の手にある資料を貰おうと近付き、紙を受け取ろうとすると軍曹が手にもった資料をひょいと腕ごと上に持ち上げた、資料が欲しい私としては自然とつられて自分の腕も上にあげる、ただ身長がやや足りないので軽くジャンプする、すると軍曹も一緒にジャンプする、よって私はいつまで経っても資料を入手出来ない

 

「どうした軍曹、遂にドSに目覚めたか?受けてたつぞ?私の守備範囲を甘く見るな」

 

相手が美人、美少年、イケメン、又はそれにカテゴライズされた魅力溢れる人間なら、私は基本何をされてもダイジョーブなタイプの人間だ、もし軍曹にサディストな一面があるのならば、私は上官として、同僚として、戦友として、そして一人の淑女として、全身全霊をもって彼の期待に応える所存である

 

私が万全の姿勢でもって軍曹の次の行動に備えていると

 

「はぁ~貴女という人はまったく……」

 

ポスッ

 

「お?」

 

そう言って上にあげた紙で私の額を軽く叩いた、私は思わず「お?」なんて間抜けな声をあげてしまった

 

たしかに私は褒められるのも責められるのも大好物だが

 

「後ろの資料は自分が全て点検しておきましょう、中尉がここに戻るまでに決済以外は全てやっておきますので、どうかこの仕事が終わったら一度お休み下さい、最近ろくに寝ていないのでしょう?」

 

 

 

甘やかされるのだけは苦手だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軍曹に渡された資料に挟まっていた地図を見ながら、私は女性の住居……いや、正確には彼女の婚約者の住居だったな、を訪ねているが到着はしていない、まだ早朝ということもあって、誰もいない道をテクテクと歩く

 

帝都は異なる四つの文化が混ざり合ったような町並みをしているが、私が今いる区画は全て西の国、わかりやすくいうと洋風で統一されている、レンガ造りのアパートメントがズラリと並び、なかなか良い眺めだが、やはり寒いな

 

吐く息が白い、石やレンガは丈夫そうだが暖かみがないのが欠点だな、これらに囲まれると、まるで巨大な冷蔵庫の中にいるようで寒気がする

 

とまぁ、そんなこんな下らないことを考えている間に目的のアパートに着いた、こちらもやはりレンガ造り、変わったところは特に見当たらない

 

私は扉を開けて中に入ると、待受であろう女性がぎょっとした目で私を見た、私は目付きがキツいからな、無理もない、それに軍服とは着ているだけだ着用者に圧力を纏わせる不思議な力がある、私だって鏡に写った軍服姿の自分にぎょっとすることがある……冗談だ。

 

「こんばんは、私はユーリィー=マクタヴィッシュというものです、貴女はここのオーナーで相違ないですか?」

 

一応丁寧に笑顔で接してはいるが、多分逆効果だろうな

 

「は、はイ、!そうでありまする!」

 

駄目だこりゃ

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ 

 

扉の鍵を解錠する、ドアノブを回して扉をくぐれば、外よりはマシ程度の気温となんとも言えない良い匂いがした、上手く伝えられないが、そうだ、友達の家の匂いだ、人の家に遊びにいくと入った瞬間何か違う匂いがするだろ?あんな感じだ、この家は何処か柔らかい匂いがする

 

ちなみに私の家はカレーの臭いがするらしい

 

 

 

閑話休題

 

 

 

玄関を抜けてトイレを横切りリビングに出る、フローリングの床、テーブルの上にはセンスの良い花柄のテーブルクロス、その奥にあるカウンターの向こうにあるのがキッチン、少々埃が被っているが全体的に整頓されていて綺麗だ

 

普通なら素直に関心するだけなのだが、何故だろう?何処か違和感、いや既視感を覚える、今私の目の前にある光景、ちょっと前に見た気がするのだ、どこだったかな~答はもう喉元まで来ているぞ、そう思い、私はおもむろに冷蔵庫の扉を開けた、何故かはわからない、強いて言うなら気紛れである

 

私はどちらかと言えば理屈っぽいが、たまに勘に身を任せる事がある、そして大概大当たりなのだ

 

「そうゆう事か」

 

右手で握った拳を左手の手のひらにポンと置く、納得がいった

 

片付けられた部屋、何も乗っていないテーブル、そして、空っぽの冷蔵庫、これは私が長期休暇を取って旅に出る直前の私の家にそっくりだ(私の場合は冷蔵庫に食材を入れっぱなしだったが)

 

ただ、これは困った、彼女が長期間家をあけるつもり、いや最悪もう戻ってこないのだとしたら、ここにはもう手掛かりはないかもしれないな、まぁ一応調べるが

 

 

 

 

 

 

そうしてその後も部屋を捜索してゆく、怪しい物だけ最低限動かし、他にはなるべく手を付けなかった、気が引けるのだ、彼女が自身の身を売ってまで守った家を荒らすのは

 

ここを売れば、わざわざ風俗なんかに勤めなくてもナイトレイドを雇う金くらいなら仕立てることはできた筈だ、それでも彼女はそうしなかった、きっとそれだけ大切なのだろう、彼女にとってこの場所は亡き恋人との想い出が詰まっているのだから

 

「几帳面な男だな」

 

棚の引き出しを開ければ、そこには沢山の日記があった、一日一日事細かにその日の出来事が書き記してある、日によっては一日で二ページ使っている所もあった、そしてその日には必ず彼女が出ている、見れば日にちは今から十年以上も前、この二人はきっと幼馴染みだ、写真も何枚か挟んである

 

虫を両手に持った少女が逃げる男の子を追いかけている、随分と活発な女の子だ、他にも何枚か写真があったが撮影者は全て少女の方の親だな、写真の真ん中にいるのはいつも少女だった

 

ページを捲り年代が今に近づくにつれて写真の女の子からは活発さが抜けてゆく、段々笑顔の柔らかさが増していき、顔つきが大人びていく

 

男の子の方も体が大きくなるにつれて顔つきも締まり、髪の短いなかなか良い男になっている、少なくとも、もう虫に怯むような男には見えない

 

人生の幸せをそこまま本にしたような、とても素敵な日記だった、正直言うと、私はここの婚約者を疑っていた、悲惨な最期を向かえたからといってその者が必ずしも善人とは限らない、だから、そもそもこの婚約者は本当に無実だったのか?そこら辺をハッキリさせるのもここに来た理由の一つだった、そして今ハッキリした、彼は間違えなく善人だ、偽善じゃ私の心は動かない

 

これだけ良いものを見せてくれたのだ、それに似合うだけのお礼を私はしたいと思う

 

 

 

新たな決意を胸に、私は日記をもとの位置に戻した、その時一枚の手紙が日記から滑り落ちた

 

 

「ん、なんだこれは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ

 

「戻りましたか中尉、書類の点検は済みましたよ、後は貴女の決議待ちです」

 

「……あぁ、ありがとう軍曹、だが悪いな、ちょっとまってくれ、少し休む、今日は……疲れた」

 

ドサッと私は執務室のソファーに背中を埋めた、制服にシワがつくかもしれないが、今はとにかく休みたかった

 

「捜査は進展しましたか?」

 

軍曹が尋ねてきた、彼は私が進まない事件に落ち込んでいると思ったのだろうか?まぁどうでも良い、嘘をついても仕方ないので真実を述べよう

 

「あぁ大進展したさ、何せもう解決したんだから、いやまったく……最悪の気分だ」

 

私はそう言って懐に入っている手紙を軍曹に渡した

 

「何ですかこれは?……あぁなるほど」

 

手紙の全文を読む事もなく、軍曹は理解した、オーガを殺した黒幕は、婚約者を殺された女性でも、ナイトレイドでもない、他の誰かだ

 

軍曹に渡した手紙は私が女性の婚約者の家で見つけた物だ、婚約者が恋人に宛てたモノで、内容は要約するとこんな感じだ

 

警備隊に無実の罪を着せられた、俺はガマルのスケープゴートにされるらしい、納得できるわけないが、もうどうしようもない、程なくして俺は処刑されるだろう、だが、どうか君には俺の無念を晴らしてほしい

 

勿論本文はもっと長く、文の合間合間に愛を囁く文字が散りばめられているが、吐き気がするので割愛した、何故かって?

 

だって、どう考えてもこの手紙を書いたのは婚約者ではないからだ

 

普通に考えればわかる、そもそも手紙が送られてくるというのがおかしいのだ

 

彼はどうやって手紙を書いた?紙は?ペンは?獄中でどうやって仕立てたのだ、そして仮にもし手紙を書けたとして、どうやってそれを女性の元に届けた?もしかして留置所のスタッフに頼んだのだろうか、もしそうなら随分と警備隊はサービスが行き届いている、まさか郵便局まで兼任しているとは、そんなわけあるか

 

 

……それに、彼が恋人に復讐を望むとは思えなかった、実際に会ったことはないが、大体彼の人となりはわかる、真面目で、優しくて、誰よりも恋人のことを大切に想っている、自分から恋人を危険に巻き込むようなことするわけない、きっと彼なら……止めよう、死人を想ってもしょうがない

 

兎に角私が言いたいのは、この手紙を書いたのは婚約者ではなく、彼ら二人の事情を知り、オーガを消したいと思っていた誰かと言うことだ、そして彼女もう今頃は、

その真の手紙の送り主に消されてしまっているのだろう、こうゆうことをするヤツは念の為に人を殺すからな

 

「やってられないな」

 

今まで私がしてきたことは全て無意味に終った、捜査が徒労に終った事は別にいい、気にしない、ただ悔しい、彼女が最後の最後で頼ったのが私達(軍属)ではなく、ナイトレイドであったことが

 

気持ちはわかる、最愛の者をよりにもよって治安維持の要である警備隊に奪われたのだ、軍属全体に不信感を持つことは当然なのかもしれない、でも、だからといって納得はできない、腐っているのは上層部数人だけなのだ、他の者は皆しっかりと働いているのに、こんなことばかりでは、まるで真面目に働いている私達が馬鹿みたいではないか

 

我々軍人は、報いは受けても、報われることはない、もう気にしてない、諦めていると言ってもいい

 

どれだけ働こうと人々からの信用は得られず、革命軍ばかり英雄視される、それが今の帝国だ、帝国が腐っているのではない、腐っているのはこの国の国民性だ、何処までも利己的なこの国は、その証拠に1000年間他国との争いは一秒たりとも途絶えたことはない

 

断言しよう

 

たとえ革命が成功しても救われるのは帝国だけだ、帝国を囲む四国との争いは絶える事はない、絶対にな

 

 




主人公は色々と諦めています


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6話 新任務を忙殺する!

まず謝罪

スミマセン  ⤵本文の書き方を修正するよう感想欄に要望があったにも関わらず、書き方……変えられませんでした⤵

高卒の頭脳では無理です。

それでも良いよッ!!!と言ってくれる心の広い方には感謝がつきません、また、今回は無理でしたがこれから少しずつ改善しようと心掛けますので、悪いところがあったらビシバシ感想欄で言っちゃって下さい。

それでは、どうぞ


 

カキ

 

カキカキ、カキカキカキ

 

カキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキ下記カキカキ柿カキカキカキ下記カキカキカキ火気カキカキカキカキカキカキカキカキカキ夏期カキカキカキ牡蠣、カキカキカキカキカキカキカキカキカキかき

 

ペラ

 

…………

 

……ふぅ

 

 

「やっとこさ終った!」

 

「マクタヴィッシュ中尉!至急見てもらいたい書類が!」

 

「……は?」

 

「ヒィ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

6話 新任務を忙殺する!

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここと……ここ、それとここ、計算が合わない、元の数字がわからないから私からは何とも言えないが、何処かで桁でも間違えたのではないか?」

 

「は、は!至急確認及び修正していただきます!」

 

「君が書いた書類ではなのか?」

 

「そうであります!」

 

「……まぁいいさ、もう行っていいぞ」

 

「失礼しました!」

 

元気の良い返事と共に私の執務室から出ていく兵士、悪いことをしてしまった、先程は溜まった書類を全て片付けた解放感を邪魔されて思わず凄んでしまったが、彼から点検を頼まれた書類、これ多分文官から流れて来たものだ

 

ここ最近宮殿内部の優秀な文官が次々と粛清されていってる、おかげで人手の足りなくなった文官達が処理しきれなかった書類が私達武官にまで回ってくる始末、罪の有無に関しては別にどうでも良いが、仕事が増えるから悪いこととかしないでほしい、私は切実にそう思う

 

さて、主だった事務仕事は終ったが中間管理職たる私にはまだまだやるべきことが残ってる

 

コンコンコン

 

ドアがノックされた

 

「入ってもい「失礼します」」

 

おぉっと、まさか私の返事よりも先に入ってくるとは思わなかった、ノックの意味無くない?

 

「私これでも上官なんだけど?」

 

「ですから失礼しますと先に言ったではありませんか」

 

成る程、事前に失礼をすることを通知しておくことで、それで機嫌を損ねられても、悪いのは対応できなかった私だと、軍曹はそう言いたいのだろう、う~ん、……んなわけあるか

 

「いやそれとこれとは話が別じゃ……まぁ良いか」

 

軍曹だしな、深く考えたら負けだ

 

それよりも私としては軍曹の手に持っている物が気になる、左手に持っているのは多分命令書だろう、見慣れた封筒にブドー大将軍のサインが書いてある、間違いない、ただ右手に抱えるように持った分厚い本には見覚えがない、大体サイズで言えばジャンプくらいか?

 

「軍曹、その手に持っているものは何だ?」

 

「それをお伝えしに来たのです、おめでとうございます中尉、仕事がまた増えましたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然だがここで用語解説をしようと思う

 

帝具

 

約1000年くらい前に帝国を築き上げた始皇帝が、当時の技術を集結させて造り上げた兵器、全部で48個あるらしいが、なにぶん1000年前の事なのでその全容は帝国ですら把握できていない、ただ、48という数字はちょっと前に流行ったとあるアイドルグループを彷彿させる、もしかしたら始皇帝は、帝具を装備した 歌って 踊って 殺せる女性のみの部隊、名付けてTIG48というユニットを創りたかったのかもしれない。

 

流石にふざけすぎた

 

まぁ実際帝具の事はよくわかっていないが、一つ言える事は、その一つ一つが大きな力を内包しており、500年前の内乱ではその猛威を大きく振るったらしい、国の後を愁い護国の為に創った兵器の性能を自国の国民で示すとは笑える話だ、私が始皇帝ならきっと大爆笑してこう言うだろう「やっぱりこうなったか」と

 

おっと話が横にそれた

 

兎に角、ほとんどの帝具は500年前に散々になってしまっているが、一応創ったのは始皇帝なのでその所有権はいまだに帝国のままだ、とは帝国の弁、なので帝国で帝具を所持したものは直ちに軍に入隊し、帝国に忠を誓って皇帝陛下に下賜して頂くか、もしくは帝国に返上するか、このどちらかが義務付けられている

 

そうして返上された帝具は、適応者が見つかるまでは宮殿の何処かで一時的に保管される

 

さて、どうして私がこんな話をしているのかと言うと……秘密、と言いたいところだが、私もいい加減喉が乾いてきたので、ネタバレといこう

 

ズバリ私にその保管された帝具の管理を任されたからである。

 

 

 

 

 

あぁそれと、私が帝具の保管を任された事は本当に極秘だからな?だから誰にも言うなよ、私と君との秘密だ

 

 

 

 

 

 

 

 

「……エクスタス」

 

「2213~2350ページまでですね、巨大な鋏のような形状をしています。奥の手は不明ですが、凄まじい切れ味と高い硬度を誇っています」

 

 

「ブラックマリン」

 

「68~117ページまでです、水性危険種を素材にした宝石の帝具ですね、触れたことのある液体を自在に操る強力な能力ですが、使用者には心身共に多大な負荷がかかるとリヴァ少佐の報告書に書いてありました」

 

 

「うむ、では逆だ、1042ページ」

 

「そこは……煉獄招致ルビカンテが記載されている筈です、精神エネルギーを熱、いえ、炎というカタチで発射する火炎放射器の帝具の筈です。吐き出された炎は特に生命活動をするものに過敏に反応し、一度引火すれば対称の精神エネルギーと有機物を餌にして燃え上がります、よって水による鎮火は期待できません、酸素などなくとも、精神エネルギーのみで存在することができますので」

 

「……完璧だな、もう良いだろ」

 

 

そう言うと、大将軍は手に持った分厚い本を部屋の暖炉に投げ入れた

 

私は今、ブドー大将軍の執務室にいる、先程まで私とブドー大将軍がしていたのは、まぁ確認作業みたいなものだ、帝具の保管が仕事なのに、知らない帝具があるとか意味わかんないからな、一通り文献に載っている帝具は、全て頭に叩き込んだ

 

 

ただ、あくまで私が目を通したのは文献であって資料ではない、有名な帝具ならともかく、マイナーなものは情報が曖昧だったり消失してたりするので、ある程度私の想像が入っている

 

覚えた帝具の数は26個くらいだったかな?

 

 

「わかっていると思うが、お前に任せる仕事は非常に機密性の高いものだ」

 

「存じております、大将軍」

 

 

 

机一つ挟んで椅子に座る大将軍、見下ろしているのは私の方なのに、目の前に存在するだけで何処か強い圧力を感じる、この人の積み上げられた武錬の高さは、もはや隠すことのできない位置まで来ているのだ、これぞ正しく大将軍、この国の武の頂点に相応しい偉容だ

 

 

既に宮殿の殆どの者にアホ認定されている私とはえらい違いである

 

 

「一応表向きではお前の役職は武器庫の管理ということになっている、こちらも重要な仕事だが、お前が常に多忙なのは知っている、帝具に関わらなければ一人だけ補佐役を入れることを許可する」

 

 

「お心遣い痛み入ります」

 

 

はぁ~

 

 

表面上は無表情を装ってはいるが、私は内心の溜め息が止まらない、仕事が増えた、しかも2つ、なんだこれ?

 

 

つまり、あれか?これから私の一日はこんな感じになるわけだ

 

朝起きる

仕事場に向かって書類を受けとる

点検、決済をしながら調査員の報告書を纏める

その他諸々の業務が終わったら武器庫の点検をする

問題なければ帰宅……なわけあるか

帝具の調査

 

 

そして帝具の情報が入ったら、休みの日はその回収、と

 

……死ぬぞ?

 

いや、本当に死ぬわけではないが、それくらい忙しいのは確実だ、しかも補佐役が一人だけというのも辛い、確かに役職の特性上、知っている者も手掛かりになる者も少なければ少ないほど良い

 

頭では理解出来ているのだが……あぁもう止めだ!深く考えるな、私は軍人、ただ与えられた任務をこなしていれば良い

 

 

「兵庫管理の要領は前任者のフィスに聞け、お前が誰を補佐役するかは知らないが、申し受けにはソイツも同伴させろ」

 

「わかりました」

 

 

それに、大将軍には恩がある

 

この人に引き抜いて貰わなかったら、私はきっとまだ軍曹と共に戦場を這いずり回っていただろう、それに比べれば、事務仕事で忙しさを感じること事態十分すぎる程贅沢だ

 

 

「他に何か質問はあるか?なければ今日はもう上がっていい、お前のことだ、もう粗方業務は終わらせているのだろう、どのみちフィスは今日非番だ、お前も少しは休んでおけ」

 

「ご恩情、感謝いたします」

 

 

その言葉に、私は万感の想いを籠める

 

 

「すまない、お前にはいつも苦労ばかりかけてしまっている」

 

「お気になさらず」

 

 

こうして労いの言葉をかけてくれるだけでいい、頑張った甲斐がある、そして、また頑張ってあげようとう思える

 

私には、愛国心もないし、ましてや何も知らないただのお人形に捧げる忠誠心もない、ただ、受けた恩は返さなければならない、私をこの国にとどめているのは、本当にそれだけだ

 

いや寧ろ、心情的には革命軍向きだ、帝国の圧政に苦しむ‘おそらく’無垢な民を助けるために是非とも彼らには頑張ってもらいたい、革命ついでに産業革命も起こして貰えれば私としては万々歳だ、1000年前に帝具なんてハイテクな兵器があったくせに、何でいまだにパソコンすらないのか不思議だったのだ、パソコンさえあれば私の事務仕事は今よりずっとましになる、気がする

 

まぁどうでも良いがな、相手がどれだけ崇高な使命を抱いたって、敵である私には関係のない話なのだから

 

そんなことを考えながら、私は大将軍の執務室を後にした

 

 

「失礼します」

 

 

パタン

 

 

 

「ふふふ、午後から丸々休みになった、うれしい」

 

「あ、あのマクタヴィッシュ中尉……」

 

「もう、何もする気が起きない、家に帰るのもよし、軍曹の仕事が終わるまで待って一緒にお酒を飲むも良し……うれしい」

 

「さ、先程の書類なんですが……」

 

「聞こえんな、非番の私に仕事の話など一言も聞こえない」

 

「そんな……」

 

「……」

 

「部屋に行ってもいなかったから、ずっと待ってたのに……」

 

「……」

 

 

「…………」

 

「……ッ、……」

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

 

はぁ~

 

 

 

 

 

「…………帰りま「一緒にやってやるから直ぐに終わらせるぞ」」

 

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局私の帰宅時間は何時もどうりの深夜となった

 

書類を手伝っている途中に、この兵士が頻繁に私のところを訪ねてくる事を危惧した私は、彼に一から会計業務を教える事にした、遅くなったのはその為で、全て私の自業自得だ

 

よくもまぁ文句一つ言わずに付き合ってくれたものだ

 

机に突っ伏して、スヤスヤと寝ている真面目な青年を見て、知らない間に頬が緩む、いい気分だ

 

とは言え、突っ伏したままというのは良くない、変に寝違えてしまう前に移動させた方が良さそうだ

 

 

「よっこらせ」

 

 

今更起こすのも悪いので、なるべく丁寧に担ぎ、部屋のソファーにそっと寝かせる、ついでに私のコートも掛けてあげた、部屋の暖炉も消してしまうし、体が冷えるといけないなからな

 

「私も帰るか」

 

自分の着るコートがないので私服で帰る

 

彼は執務室に置きっぱでも良いだろう、私も仕事が遅くなると、家に帰るのも億劫になって執務室で夜を明かすこともある、今更人の気配があったところで誰も怪しむまい

 

シャツのボタンを外して、ズボンを脱ぐ、下着一枚で部屋のクローゼットを漁っていると

 

 

「……ッ!、~ッ!ッ!!……ー」ーーッ!!!

 

 

後ろから強烈な気配を感じた

 

多分、寝ていた彼が起きてしまったのだろう、声こそしなかったが、いっそここまで聞こえて来そうな程激しい心拍音だ

 

まぁ良いさ

 

彼も疲れているだろうし、いや寧ろ折角のラッキースケベがこんな貧相な体で申し訳ないくらいだ、ユーリィー=マクタヴィッシュはクールに去るぜ

 

おっと、大事な事を言い忘れていた

 

 

「おつかれさま」

 

 

パタン




感想、待ってます。


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