ハイスクール・フリート~自衛艦隊 彼の地にて斯く戦えり~ (Honorific88)
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プロローグ 自衛隊とブルーマーメイド
始まりの海
誰がこんなことになると予想できただろうか。
この世界に来てから半年。
この近海を航行しているのは海上自衛隊第五艦隊と“みらい”、そして横須賀海洋学園教育艦“晴風”。
ここから始まるのは自衛官と学生の海で結ばれた物語
20XX年10月02日 海上自衛隊横須賀基地
秋の景色に変わってゆき冬が近づいていることを知らせるような寒さの中テレビ局の男性アナウンサーはカメラに向かってこう告げる
「3年前に新設された海上自衛隊第五護衛隊群は来週始まるRIMPACKに参加するためここ海上自衛隊横須賀基地を出港しようとしています。今回の参加艦艇は旗艦いぶき、ちょうかい、あたご、あさひ、あけぼの、みらいの計6隻。参加艦艇の規模は過去最大レベルで、日本の空母が戦後初めてアメリカに向けて出港することになります」
多くの人々が出港する様子を見ようと横須賀基地を訪れていた。
そんな中を6隻の艦艇は堂々たる様子で横須賀を出港してゆく。
「こないだみたいに中国との軍事衝突が起きなけりゃいいけどな」
「全くだ、それもあのいぶきが事の発端じゃないのか?」
「それはよくは分からないが原因の一部であることに違いはないだろう」
などといぶきに関して不満や不安を持つ声も上がっているのもまた事実だった
20XX年10月5日 西之島沖西50マイル(80km)
訓練を続けながらハワイ、パールハーバーを目指す6隻の艦隊
訓練は依然として5分遅れ。
練度を上げながらの航行となっている。
今日の訓練を終えた頃“みらい”艦長、梅津1佐は天候の異変に気がついた
「天気がおかしいな。こんな天気は船に乗って以来初めてだ。航海長、気象庁に問合わせてくれ」
「了解しました」
艦隊はそのまま不審な天候の中に突入してゆく。
超巨大な低気圧。大雨暴風雷と最悪の天候の中を進んでゆく。
雷は高い所に落ちる。
海の上にある高いものは船である。
つまり何が言いたいかお分かりいただけただろう。
落ちたのだ雷が。
6隻の船はみな雷の直撃を受けて通信機器及びレーダーなどの諸々の装備が使用不可能になてしまっていたのだ。
更には磁気嵐にまで突入し更に電子機器がジャミングを受けたように使えなくなってゆく。
その後無事に磁気嵐を抜けたが、異常が発生していた。
僚艦はレーダーで探知したもののGPS使用不可。横須賀自衛艦隊司令基地に連絡を使用にも連絡は途絶えている。
それにはレーダーに
艦数は2。サイズはDD型だが反応がない。
そして読者の皆さんならここまでくれば彼らの身に何があったのか理解できるだろう。
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とある男の物語
今から3年も前のことになるだろうか。
俺はこの世界にやってきた。理由は戦死によるものだった。
中国の攻撃を受け住民を守るために行動していたのだが敵に見つかり俺は殺されてしまったはずだった。
気が付くとベットの上で寝かされていた。
死んだはずの俺がベットの上で寝かされていること自体が意味不明ではあるが生きていることはウレシイには嬉しいのだ。
それから俺はこの時代について色々と知った。
この世界の日本は日露戦争後地盤沈下などの理由により国土の大半が海に沈んでしまったこと、航空機がないこと(飛行船はあるらしいが・・・)などもといた世界とはかなりの違いが有りかなり手間取っていた。
さらに自衛隊という組織は存在しておらず代わりにブルーマーメイドとホワイトドルフィンという組織があるらしい。
そして俺はそのブルーマーメイドに海上を漂流していたところを助けてもらったそうだ。とりあえず医療船に入院してた。
意識が回復してからは事情聴取等が行われた。そのあとは俺の処遇についての話になった。
元々俺は海上自衛隊に所属していたので国防関係の職に就きたいと申請したが男性中心のホワイトドルフィンではなく女子中心のブルーマーメイドに所属することになってしまった。
ほんとに謎でしかない。分かる人がいるなら誰かこのことに関しての解を教えてくださいお願いします。
そんなことはさておきブルーマーメイドに所属することになった俺は教員艦さるしまに航海科として乗船することになった。
そして現在俺は来年度の学生艦の教員として臨時で横須賀海洋学園に出向している。
担当艦は巡洋艦晴風。旧帝国海軍の陽炎型に非常に似ている艦隊で学校の中では底辺の生徒が乗船し海洋実習を行うらしい。
学校で底辺と思われているような奴らでもしっかりと練度を積めばいい船乗りになると考えている俺は全員平等に教育するつもりでいる。
そのため事前演習を行うらしいので最初の集結ポイント、西之島付近へ“さるしま”で向かっていたときレーダーがいきなり所属不明艦を6隻探知した。
それはもう艦内は大騒ぎになった。
ブルーマーメイド本部に応援を要請するか、このまま単艦で突入するかの二択であった。
そんな感じに討論が行われていたとき不明艦から通信が入る
『こちらは海上自衛隊第5護衛隊群旗艦いぶき。貴艦の所属と航行目的を教えていただきたい』
その6隻の艦隊は俺の前にいた世界の職場だった。
彼らに一体何があったのかここにいる誰ひとりとして知らなかったがこの艦の中で唯一この通信をとってきた艦の所属を知っているものがいる。
それが俺だ。だからこその疑問が有る。なぜ6隻同時に時空と世界を跨いでしまったのか。
そして彼らはこれからどうなるのか・・・それだけが心配だった。
晴れ風が出てくるまでまだまだ時間がかかりそうな気がする・・・
っていうか絶対に時間がかかる。
本当にごめんなさい
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とある男と女の解析1
という思いもなくいつも通りに書いている私
これは今回の休暇も課題が終わらないパターンのような気がする
そんなことは気にせずにどうぞ!
3年も前になるのだろうか。
私はブルーマーメイドの仕事として海上の巡視活動を行っていた時だった。
横須賀港を出港して1時間ほどしたとき私は一人の人が海上に漂っているのを発見した。
それを乗艦していた艦の艦長に報告したところ直ちに救助の指示が出た。
私は第1発見者として救助作業を行うことになり、スキッパーで漂流者のところに向かった。
私はその漂流者をスキッパーの上にあげてから脈拍ほかの確認をしていたので気がつかなかったのだが彼は白色の軍服を着た状態で漂流していた。
直ぐに艦に戻り衛生科の人に後のことを任せて艦長に報告をしに行くことにした。
漂流者は危険な状況にあると分かり艦は直ぐに横須賀港に引き返すことになったため私は救助を行った人として彼の搬送に同伴することになった。
幸い峠は越えて命に別状がないと判断されたものの意識は2週間たっても回復しなかった。
その事を聞いて私は艦での自分の役目をしっかりはたあすことができなくなった。
その救助した時の航海が私のブルーマーメイドとなってから初めての航海だったのだから自分の責任と思い込んでしまい業務が滞ることが増えてしまった。
ついには艦長室にまで呼び出しを受け説教される始末。
理由を説明したら艦長は「しばらくの間休暇を取らせるので彼のもとにること」という命令を下した。
後に聞いた話ではあるが彼の持ち物から名前が判明したので保健所に問い合わせたところ「そんな人物は存在しない」ということだった。
そのことを不審に思っていた当時の私の艦長は同じ人物で悩んでいた私をその人のそばに置きあわよくばその人の素性を明かさせようとしていたらしい。
そして私はその思惑通り彼のそばにいることとなりほぼ毎日彼のそばにいた。
私が病院行き始めてから3週間のことだっただろうか、彼は意識を取り戻した。
それを受けて私の艦の艦長に連絡した上で病室に戻り彼のそばについていた。
初めはここがどこだかわからなかったようで困惑している様子だったが病院いることを説明すると彼は落ち着きを取り戻し私に尋ねた。
「今、何年の何月何日ですか」
「平成25年5月5日です」
それを聞いた彼は驚きの表情でこちらを見ていたがしばらくして口を開く。
「俺は別世界にでも来てしまったのか?」
かすれていてよく聞こえなかったが確かに彼はそういった。
これは彼の戸籍ほかがないことに関係しているのかもしれない、と思った私は彼に質問をした。
「いきなりですみませんがあなたの身元確認のため、名前、生年月日、年齢、住所、職業を答えてください」
「上里勇樹(かみさとゆうき)、平成元年5月5日生、25歳、住所は神奈川県横須賀市西逸見町1丁目無番地海上自衛隊横須賀基地護衛艦いぶき、職業は海上自衛官で階級は三等海尉」
「えっと・・・あなた夢でも見てるの?この世界に海上自衛隊なんて組織はないし貴方の言う西逸見町は今となっては海の中よ」
「どういうことだ!説明してくれ!」
「わかったから落ち着いてください」
「すまん。取り乱してしまった」
「いいえ。この国では日露戦争以後にメタンハイドレートが見つかり日本は資源輸出国となりましたがメタンハイドレートの採掘のしすぎによる地盤沈下によって国土の大半が海中に沈んでしまったんです。だから今は海の中なんです」
「そうか・・・ご丁寧にどうもありがとうございます」
私の説明に対して感謝を述べながらも何か考えていることがあるようでしばらく沈黙が続いた。
そしてその沈黙を打ち破ったのは又しても彼だった。
「今までの話を考えると私は元いた世界とは違う世界・・・つまり異世界に来てしまったということなのでしょうか」
「ええ、そういうことだと思います」
「それでは自分はこの国にとっては異国人ということになりますね」
「そうなりますね・・・・」
コンコン
突然のノックに二人して驚きながらも彼は「どうぞ」と声をかけた
『失礼します』
断りとともに入ってきた人物はブルーマーメイド最高責任者の宗谷真霜一等監督官だった。
彼女の入室とともに私は直立不動の敬礼を行い、上里君も直ぐに敬礼をした後に彼女が返礼をしてから元に戻した。
「北里舞子三等監察官お疲れ様です。ここからは私も話を聞かせてもらうけど大丈夫かしら?」
「私には問題ありません」
「同じく自分にも問題ありません」
「ありがとうございます」
彼女は私が譲ったパイプ椅子に座り彼のことを聴き始めた。
どれも先ほど私たちが話している内容ではあったがその時以上に内容の濃いものになっていたのは言うまでもない。
そして肝心の話になった
「私はこの病院を出てからどうすれば良いのでしょうか」
どうしようにも今彼には戸籍も何もない状態なのだから本当にどうしようものか、そう考えていると彼女はこう提案する。
「それならば私のいるブルーマーメイドに所属してはどうでしょうか。女子の多い場所ではありますが男性職員も少なからずいますし水上艦に勤務していただけると何かとありがたいんです。それにこちらとしても貴方の支援と監視をしやすいんです」
なんかあっさり監視なんて言っているがいいのかな?
でもあんまりいい思いはしないような気がする。
「それしか選択肢がありませんからそれに従わざるを得ませんし、なにか海に関する仕事をできるのであれば船乗りにとってありがたいことこの上ない。その話に是非とも乗らせてくださいませんか?」
「分かりました。それではこちらの世界の資料と貴方の身分等の書類の準備がありますので1週間ほどこちらでお待ちください。ここを退院するまではそこにいる北里舞子三等監察官が担当します」
「よろしくお願いします」
「それではこれで」
なんか簡単に終わっちゃったみたいだけどこれでいいのかな?
彼がいいならいいんだけど・・・・
「北里さん」
「ひゃい!?」
考え事している時に呼ばれた事に驚いて面白い声を上げてしまった・・・・
なんか彼の方震えてるし!!絶対に笑いをこらえてる!!
「・・・ふぅ。それじゃこれから宜しくお願いしますね」
「こちらこそ。でもさっきの私の声聞いて笑ってた理由をしっかり教えてもらいましょうか?」
彼は慌てて謝罪をして私は起こってそっぽを向くわけのわからない構図が出来てしまった。
そのあと面会終了時間までその状態が続いたそうだ・・・
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とある男と女の解析2
宗谷一等監督官と上里君が会ってからちょうど一週間の今日。
彼女は一週間待ってくれといったが本当にちょうど1週間たった日に再び上里の病室を訪れた。
「というわけで準備が出来たわ。これがあなたの身分証だからちゃんと間違いがないか確認してください」
「了解しました」
氏名 上里勇樹
年齢 25歳
生年月日 平成元年5月5日
住所 神奈川県横須賀市ブルーマーメイド横須賀基地
職業 ブルーマーメイド 準監督官
横須賀基地航海科訓練生及びテスト訓練生
「航海科の訓練生なのは前世で航海科だったから問題ないけどこのテスト訓練生は?」
「それはあなたがブルーマーメイドに所属するために必要なの。前にも話したけどうちは女所帯だから男子なんて事務方くらいしかいないの」
「それでですか・・・分かりました。それではそういうことで。それより俺はいつから訓練生活に入るんですか?」
「明日が入隊式だから今日このあと退院してから生活用品を確保してからホテル移動して宿泊。翌日の早朝には基地に移動するわよ」
つまり私が彼と一緒に行動できるのはあと少しなんだ・・・せいぜい1,2時間ってところかしら・・・
「それと明日の入隊式までの行動には引き続き北里舞子三等監察官が行います」
「へ?」
「分かりました」
えー。なんか今何気なく落ち込んでいた自分がバカみたいに感じる・・・
でも一緒に行動できる時間が増えたからいいかな?
「それでは私はこれで。あとは任せます」
「は、はい」
・・・なんか妬ましい視線を監督官から感じたんだけどきっと気のせいだよね?
気のせいであって欲しいと願いましょう。っていうかそれしかないと思う・・・
「どうかしたのか?怖い顔して」
「ううん、何でもないよ。気にしないで」
「そうか?」
それよりもこれからどうしましょうか。要は私は彼の監視役だから現在職務中。そうなったら彼に同行動するか決めてもらうしかないわね
「上里さん、何か買っておきたいものはありますか」
「・・・一応衣類等、洗面用具を。おそらく訓練生となれば必要になるので」
「分かりました。とりあえず退院の処理をしてから行きましょう」
今彼はこの世界に来た時の世界の服装でティーシャツにジーンズの状態。
これだったら別に外に出ても大丈夫でしょう・・・
ということで退院の書類作業を終えてショッピングモールへと向かう。彼が買ったものは一応こちら側で持って後から返してもらうということにした。買い物ということでかなり期待していたが(何がとは言わないが)彼は下着等の最低限の生活必需品だけを購入したため期待(何がとは言わない)は打ち砕かれてしまった。
そのあともただ淡々と彼と行動して気づけば翌朝、横須賀基地の前で彼との別れの時になっていた。
「北里さん。これまで何から何までお世話になりました」
「いえいえ、上里さんもこれからですから頑張ってくださいね・・・」
「はい、ありがとうございます。それでは、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
こうも簡単に終わってしまうとは思ってはいなかった。せめて何か話すことがあればよかったのに。
そう諦めて帰ろうとしたとき彼は言ってくれたの
「そうそう、言い忘れてた。この訓練生活が終わったらどこかに飲みに行きましょう。それで同じ職場になれたらいいですね」
「へ・・・!?」
「それじゃ」
最後の最後で彼はとんでもないことを言ってくれた。その時だったかな?私が彼のことを好きだって本当に自分で気づくことになったのは・・・
いつでもいいから最終的には結ばれたらいいな~なんて思っていた時期が私にもあったけどそのあとはそんなことも考えられなくなるくらいに忙しく彼との連絡も途絶えていた。そんなこんなで一年もの日にちが過ぎて私は昇級して二等監察官になった頃。「ちょうど彼と出会ったのは一年前のこの頃だったな~」なんてことを考えていたとき私が乗艦している教育艦『さるしま』の艦長である古庄館長は全員を後部甲板に集合させて朝礼を行った。どうやら新人が入るかららしいが新人はいったい誰なんだろう?とかぼーっと考えていたら新人が後部甲板に入ってきて自己紹介をした
「この度教育艦『さるしま』に配属になった上里勇樹三等監察官です。男性ではありますがよろしくお願いします」
彼だった。一年前に基地の前で彼が私に言ってくれたことが実現したのだ。最初は夢なんじゃないかと私は思っていたけど実際に夢なんかじゃなかった。
彼と一瞬ではあるが目があったとき彼は私を見て笑ってくれた。
やっぱり彼しか私にはいない。そう確信した私はこれからどうするかを少しずつではあるが考えるようになった。
前回から思ったのですが実際にあるかは知りませんが勝手に階を作りました
上から考えて
監督官
↑
監察官
↑
警視官
↑
巡査官
の順で階級を作ります。それぞれの中にも位の差はありますが区別は数字の1~3で分けて位の順は自衛隊と同じです
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存在しない艦隊との接触
ここまでがとてつもなく長かった気がする
気がするだけだけど・・・・
注意:「空母いぶき」のメンバーには変更点があります。
涌井継治群司令・・・任期満了のため階級は変わらずに海上自衛隊統合幕僚室へ移動
新波歳也副長・・・一佐になり新型艦“あさひ”の艦長に
秋津竜太艦長・・・海将補になり第五護衛隊群司令に任命された
海上自衛隊サイド
12:11 西之島沖10マイル地点 護衛艦いぶきにて
『This is Japan Maritime Self Defense Forces. Tell me your organization.』
(こちらは海上自衛隊。あなたの所属を教えなさい)
「沖野艦長。あちらは応じると思いますか」
「それはわからない不明艦というわけで中国などではない可能性だってある。それにあの磁気嵐から横須賀への通信も通じなくなっているしGPSも使えない。幸い僚艦は全艦無事だったから問題はないが・・・」
今まで経験したことのない磁気嵐や機材不良。いったい何が起きているというのだろうか。とりあえず原因究明を急ぐほかあるまい。
「秋津群司令。どうされますか」
「情報がないとどうしようもないから機材の総チェックを急がせてくれ」
「了解。・・・・船務班に次ぐ。機材の総チェックの進行状況とあと何分で完了するかを船務科長に報告。船務科長は報告をまとめて艦橋の艦長へ報告せよ」
これで少しでも状況が改善すればいいのだが・・・
と思いつつ艦長は艦橋で艦の指揮を執る。
これが最善策であると思いたいがはたしてどうなるかな?
『こちら、ブルーマーメイド横須賀基地所属の教育艦“さるしま”。西之島沖合にて航行中の6隻の艦隊が先ほどの無線の送信者で間違いないか』
「艦長反応がありました!どうなさいますか?」
「私が変わろう。・・・・こちら海上自衛隊第5護衛隊群旗艦“いぶき”。そちらは日本艦か?」
『そのとうりである。私は艦の代表ではないがそちらとのコンタクトを命じられたもので北里勇樹三等監察官である。貴艦の代表者の名前を教えていただきたい』
この北里というやつ、どこかで聞いたことのある名前だ。一体どこで聞いたか忘れたが・・・
「北・・里?艦長、あいつ今北里って言いましたよね!?」
「どうした山下三尉」
「あいつ三年前の武力衝突で殉職した北里勇樹三尉と同じ声で口調も一緒です!」
「は!?一体どういうことだ。殉職者が生きていたということか!?」
なんか聞いたことのある名前だと思ったがそれか!?しかし・・・
「それしかありえませんよ艦長。一応確認をして頂けませんか?」
「・・・万が一ということもあるな」
もしも山下三尉の言うことが本当であるのなら大変なことになるがこれが偶然似ているだけでそうでないという可能性も否定できない。しかし彼ここは彼の意見に賛同すべきか・・・。
「・・・・こちらいぶき艦長の沖野修一等海佐。北里三等監察官へ質問があるがよろしいか」
『構いません』
「本艦に貴官が三年前に殉職した北里勇樹三等海尉であるというものがいるのだが事実であるか」
『事実です。私は三年前の中国との軍事衝突にて死亡した北里勇樹三等海尉で間違いありません』
「・・・そうか。色々と貴官には聞きたいことがあるのだが貴官と会うことはできないか」
『少々お待ちください。艦長に確認をとります』
「了解」
まさか本当に殉職者だったとはな・・・一体どうやって彼は生きていたのだろうか。
さるしまサイド
まさか俺のことを知っているものがいるとは思わなかったな。この会話は俺しか聴いていないから会合に関しては艦長に確認を取らないとな・・・
「艦長。相手方の艦隊から会談を持ちたいとの要望が来ています。以下がなさいますか」
「そういうことはあの艦隊はあなたの知り合いであるということね・・・分かりました、許可します。ただし会談場所はこちらの艦で行うことを条件にして」
「了解・・・・こちら“さるしま”北里三等監察官。会談という形で会うことは可能」
『・・・了解した。会談場所はどうするのか』
「本艦にて行います。そちらは移動するのにSH-60を使用してください。本艦の後部甲板には着艦するだけのスペースは確保されています」
『了解。1時間後にそちらへ向かう。艦隊はどうすればよいか』
「古庄艦長。相手方が艦隊はどうすればよいか確認をとっています」
「こちらの後方を航行し付いてきてもらうように連絡して」
「了解・・・・貴艦隊は我艦の後方を航行しこちらを追従せよ」
『了解した。それでは一時間後に』
これでオッケイかな?こっちとしても色々と事情を説明しないとやばいし・・・。
とりあえず了承したことを艦長に報告するか
「艦長。相手側はその条件で了承しました。一時間後にこちらへ向かうとのことですのでそのころあいを見て後部甲板への移動をお願いします」
「後部甲板?なんで甲板なのか説明してください」
「あちらはこの世界には存在しない装備を持っているのでそちらを見てもらいたかったからです」
「それは後部甲板でないといけないの?」
「ええ、後部甲板でないといけません」
「・・・分かりました。それでは一時間後に向かいましょう」
「お願いします。それと北里二等監察官も同行させてもよろしいでしょうか」
「?別にかまわないけど・・・」
「ありがとうございます」
とりあえずあいつに言っておくか。今頃あいつはで昼食でも食ってるだろうから俺もまだだったしついでに食べるとしようかな?
さるしま食堂
さてさて今日は生姜焼きか。いつもうまいんだよな艦の飯ってw
そういえばあいつはっと・・・いたいた。いつも端っこの方に座ってるけどなんでだ?これ一応ブルマーの船だしそんなに一人になる理由もないだろうに。そんなことよりいくか・・・
「うーす。向かい大丈夫か?」
「?あ、上里君。いーよ」
「そんじゃ。そういやおめー一時間後くらいになんか用事あるか?」
「うーん。得にはないけどっていうーか私も航海科なんだからそんなの知ってるでしょ!」
「悪い悪い」
この艦に配属されてから知ったのだが彼女は航海科だったらしく俺の上司に当たる人なんだよな・・・こんなにタメ口だけど。
それよりも本題を話さないと。
「そんじゃお前あとで後部甲板に来てくれ。ちょっとばっかし用事があるから」
「こ、後部甲板!!?アンタ一体何するつもりよ!」
「何勘違いしてんのかはしれねぇがとりあえず落ち着け!!」
こいつ事あるごとに騒ぐもんだからたまったもんじゃねぇ。とりあえず事情を説明するか・・・
「お前さっきから不審艦から交信が来てるの知ってるか?」
「知ってるよ。私が昼食行く前だったし、それに北里くんが対処してたでしょ」
「そうなんだよ。そこでだ、昔お前に俺が話したこの世界に来る前の所属覚えてるか?」
「覚えてるよ。海上自衛隊でしょ・・・・あ」
「そういうこと。それでこれからあっちのお偉いさんが来るからお前にも同行してもらおうと思って」
「な、なんで」
「だってこの間にいる中で俺の救助とかのことに深く関わってんのてお前ぐらいのもんじゃん」
「・・・確かに」
「それじゃ1300(13:00)に後部甲板な」
「了解」
一応こいつは話せば理解してくれるからありがたい。前の世界の俺の知り合いはまったくもって人の話を聞かない連中ばかりだったからな・・・特に妹が
そんなこんなで世間話をしつつ昼食を食べたあと(10分後くらい)再び自分の持ち場に戻った。
そんでもって13:00になりそうなので後部甲板に移動
「それにしても後部甲板てことは飛行船で来るのかしら」
「それはみてからのお楽しみです」
『艦長!電探に感有り。何かしらの飛行物体が本艦に向かって飛行中!距離20マイル、速度120km/h!』
「時速120km!?飛行船の速度じゃないし砲弾の速度でもない・・・一体何なの」
「それはお客さんですよ艦長・・・・CIC。それはお客様だ。決して攻撃行ってはならない。繰り返す。攻撃するな」
『CIC了解』
「それにしても一体どんなものが来るんでしょうか・・・」
バラバラバラバラバラバラバラ
「?何の音かしら」
「きましたね・・・もうすぐ目視できますよ。右舷170度に確認」
艦長と北里が双眼鏡を片手に確認する。見えたの驚きの声を上げるふたり。
驚いて当然だろう。この世界には飛行船以外のそれ飛ぶものがないのだからなヘリを見たらそら驚くわ。
艦の上空でゆっくりと後下して着艦しようとするのを見てふたりは感嘆の声を上げる。
ヘリが着艦すると三人の男性が出てきた。
「“さるしま”航海科の北里勇樹三等監察官です。お待ちしておりました」
「“いぶき”艦長の沖野修一等海佐です。出迎えご苦労」
「それでは早速階段会場に向かいます。よろしいでしょうか」
「分かりました。それでは向かいましょう」
こうして二つの世界の海を守る組織が会談を始めた。
今回は初めて3000文字大に行きましたね・・・
普段からこれくらい書けたらいいのに
というわけで次回は会談回です。
はたして海上自衛隊のこれからが決まりかねない階段ではどのようなことが話されるのか。
次回、異世界の組織
「大してすごいことを話し合うわけじゃないと思うけどね」
by上里
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2人の海の守護者の会合
本年もこの作品をよろしくお願いします。
という新年の挨拶を終えて本編スタートです!
13:51 さるしま小会議室にて
結局会議が始まるまでに時間がかかってしまったがこれは俺たちのボスとでも言える宗谷真霜一等監督官がこの会合にテレビ電話で参加したいという用があったためである。そのための準備として時間がかかってしまったというわけであるのだがそれでも時間がかかっている気がしなくもないが気にしたら負けな気がするから気にしないでおこう。
「それではこれから海上自衛隊とブルーマーメイドの会合を始めます。初めにこの会合に参加する方々の自己紹介から始めたいと思います。今回の進行を行います。ブルーマーメイド海上保安局横須賀本部“さるしま”航海科所属の上里勇樹三等監察官。元々は海上自衛隊第5護衛隊群“あさぎり”航海科所属の三等海尉でした。それではブルーマーメイド側の自己紹介を古庄艦長からお願いします。」
「“さるしま”艦長の古庄薫二等監督官です」
「同艦航海科の北里舞子二等監察官です」
『テレビ電話越しではありますが安全監督室室長の宗谷真霜一等監督官です』
「以上がブルーマーメイド側の参加者自己紹介となります。次に海上自衛隊側の自己紹介をお願いします」
「海上自衛隊第五護衛隊群群司令秋津竜太海将補です」
「同じく第五護衛隊群旗艦“いぶき”艦長の沖野修一等海佐です」
「以上が海上自衛隊側の自己紹介です」
なんとか穏便な始まり方にはなっているけど小会議室の空気が重すぎてスゲェやりにくい・・・。どうにかなんないのかねぇ?
とりあえず今回の本題に移るといたしましょう。
「早速ですが双方の世界が違うためそれぞれの世界についての情報交換から始めたいと思います。それではブルーマーメイドを代表しまして、宗谷真霜一等監督官お願いします」
『分かりました。我々の世界では日露戦争終戦後に日本の地下にメタンハイドレートがあることが判明しこれの採掘を始めました。それと時を同じくして日本本土は地盤沈下を始めメタンハイドレートの採掘開始時期が同じ時期であったため国は採掘を中止を決定。それでも地盤沈下を抑えることはできず巨大フロート艦を建造することで居住区を確保し日本は海洋大国になりましたが地盤沈下による農業・工業の被害は甚大で輸入大国ともなっていた日本でしたが近年では屋内農業の試験・実用化が始まり、工業専用フロート艦を建造したことなどから一定値までの水準回復に成功しました。そしてこの世界では日露戦争の後、1914年に始まった世界大戦(第一次世界大戦)以降は戦争は起きておらず、国間の問題等もありますがおよそ百年近い平和が続いています。そして我々ブルーマーメイドは国の海上の安全を確保するために女性を中心におき戦争を行わない象徴として艦長を女性が行う組織で主に領海侵犯や違法な漁を取り締まり、救難活動を行い我々の対処出来るレベルを超えた場合は男性を中心とした組織であるホワイトドルフィンが対処するようになっています。この二つの組織の人員は全国4校ある海洋学校で高校生を育成し合格したものを採用するという形をとっています。以上がこちらでの歴史です』
「ありがとうございました。何かご質問はありますか?」
質問がないか聞いてみると案外直ぐに挙手をする人がいたので指名する
「秋津海将補どうぞ」
「それでは質問させて頂きますが、海洋学校についてです。海洋学校ということは海洋実習があるはずですがその海洋学校の高校生はどのような艦を使用して海洋実習を行っているのですか?」
「古庄薫二等監督官お願いします」
「世界大戦後に日本は対欧米戦線ように軍備増強を行っていましたが結局開戦しなかったためにその時に建造された艦は民間に転用されその艦を教育用の艦として使用しています」
「ありがとうございます」
「それでは次に海上自衛隊を代表して秋津竜太海将補お願いします」
・・・・・・・・省略!!!・・・・・・・・
(みんなが知っている世界なのであえて書きません。めんどくさいわけじゃないわけがない)
・
・
・
・
「・・・以上で双方の情報交換を終えます」
長い。ともかく長かった。こっちの世界の人たちは気球とか飛行船以外の空を飛ぶ乗り物を知らないもんだからその説明とか気になることとかの質問でとにかく時間がかかった。それにしてもなんでそんなに疲れてるのかって?簡単な話なんで説明をしていなかったのかを双方から聞かれまくって終いには説教ですぜ・・・・
とりあえず次の題材に移りましょうか。
「次に海上自衛隊の今後に関してですが海上自衛隊の代表の方々はここで決定しても構いませんか?」
「ここにいる人間の判断に任せると他の艦の艦長からも承諾を頂いているので何も問題はありません」
「分かりました。それでは宗谷真霜一等監督官。何か提案はありますか?」
『我々ブルーマーメイドとしては海上自衛隊をブルーマーメイドの所属部隊とすると同時にこちらにない技術(主にミサイルや航空機)をそちらは持っておりそちらにはない技術(対艦用墳進魚雷や飛行船の技術)がこちらにはあるようなので可能であれば技術交換を求めます』
「・・・司令。我々としても好条件かと思われますがどうなさいますか」
「いずれは補給を受けなければならない。それに乗員の精神衛生面で危険になってしまう可能性が考えられる。確かに好条件ではあるが受けるにはこちらにも条件がある」
『可能なことであれば対処いたします』
「海上自衛隊の隊員全員の身の安全の保証および上陸許可だ」
『・・・それならば可能ですのでその条件を受けますがそのほかには何かありますか?』
「・・・・ありません」
『それでは海上自衛隊はブルーマーメイドの所属部隊となるということでよろしいですね』
「はい」
『分かりました。それではこれからよろしくお願いします。ようこそブルーマーメイドへ』
「こちらこそよろしくお願いします」
『古庄艦長』
「はい」
『彼らを横須賀基地に案内してちょうだい。接舷等に関しては追って連絡します』
「了解」
「それでは海上自衛隊の艦隊は本艦の後ろを航行する形で付いてきてください。横須賀までご案内します」
「案内に感謝します。よろしくお願いします」
こうしてやっとの思いで海上自衛隊とブルーマーメイドの第1回目の会合は幕を閉じたのである。
またこれはかなり短く感じるものもいるかもしれないが会合終了時間は16:59およそ5時間も会合を行っていたことになる。
この苦労を理解してくれる人が居ることを心から願うよ・・・
正直に言うと余りにも眠くて文章がおかしいかもしれませし誤字脱字があったりする可能性があるのでその時は感想欄にでも文句タラタラで書き込んでください。
そんな感じで次回をお楽しみに
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いぶき艦隊入港
ここまでの流れを考えるのがとにかく大変で途中からやつれてきそうになったわ。
宿題なんてあとは丸付けだけで終わるし余裕余裕!
ということでどうぞ
会合から3日過ぎた日。“さるしま”および第五護衛隊群は横須賀入港まで残り1時間を切っていた。この横須賀入港が決まった会合での裏側での話があった。
第五護衛隊群の存在を知った海上安全委員会は緊急会議を開き今後の彼らについての決議が行われていた。あるものは戦ったでも沈めなくてはならない、またあるのもは彼らの技術を得るためにも受け入れるべきだ沈めるのはそのあとでもいい、そしてあるものは彼らを仲間に招き入れこの国の国防の力を強めるべきだと言う。まさに三者三様の状態となっている。しかし、沈めるという意見はそのすぐ後に出た技術を身につけてからという意見が出たことでなったが実質は沈めるか、仲間として受け入れるかという意見に分かれていた。そしてこの意見を一致させる元となったのが“いぶき”に搭載されているF-35JB戦闘機の存在だった。なんせこの世界にはそれとぶ乗り物は飛行船と気球ぐらいのものであり例え戦闘機を無力化したとしても護衛の5隻の護衛艦が戦闘艇であろうが飛行船であろうが謎の墳進弾によって撃墜されてしまう。そんな力を持つ艦隊を沈める前にこちら側の戦力が大幅に削られてしまい有事の際にまともに戦うことができなくなってしまう。そんなことになるよりも国のために仲間として受け入れることが重要であるという決議に満場一致で可決された。それを受けて彼らをどこの部隊に所属させるかという問題になってしまうが普通ならホワイトドルフィンであるが最初にコンタクトを取ったブルーマーメイドがいいのではないかとホワイトドルフィンの責任者が発言したためブルーマーメイドの所属となり交渉役に安全監督室室長の宗谷真霜一等監督官が指名されある程度の条件であれば飲むように伝えられた。これが第五艦隊を受け入れる際に起こった裏側の話である。
19:00 さるしま艦橋にて
「古庄艦長。横須賀基地まで一時間となりました。入港準備をさせますか?」
「ええ、そうしてちょうだい。それと上里君。入港したら北里さんと私で(部隊)司令部まで出頭します」
「了解・・・・・全艦に次ぐ。入港用意」
陸地に近づいているせいか街の灯りがよく見える。フロート艦の上に建物が建っているはずだが既に日が落ちているせいか特に気にもならず元いた世界での横須賀の夜景を思い出す。あの世界には色々な思い出があったが今となってはもう戻れないような場所である。忘れてしまったほうがいいと思いつつわすれられないものなのだなぁと物思いにふけっていた。
甲板上では入校準備が着々と進む。暗くて手元が見えづらいが慣れたものでまるで見ないのに見えているんじゃないかと思わせるくらいの手際で準備を進める。
無線でも連絡したので後ろに居る第五護衛隊群も入港準備を進めていることだろう。
一時間過ぎたぐらいに艦隊は横須賀港に入港。“いぶき”以外は並んで停泊し、艦が巨大な“いぶき”のみ隣の埠頭に単独で停泊することとなっている。
入港したら海上自衛隊の各艦の艦長および司令は基地司令部に行きそこで宗谷真霜一等監督官との面会の予定でそのほかの隊員は艦内にて燃料、食料の補給を受けそれが終わったら待機の命令が出ているそうだ。一方俺と北里は艦長の後も追って何気なく今までほとんど足を踏み入れていない部隊司令部に向かう。正面玄関から入り(むしろそれ以外にどこから入るのだろうか)階段で2回ほどのぼて艦長に連れてこられたのは司令長官室。つまり俺たちの上司の上司ってことになる。艦長の先導で長官室の中に入ると二人の女性が待っていた。片方は俺でも知っている人物で俺たちの上司の宗谷真霜であるのだがもう一名がよくわからない。スーツを着ていることからそれなりの方なのだろうとは思う
「古庄薫二等監督官以下2名まいりました」
「ご苦労様です。どうぞ座ってください」
「失礼します」
艦長と司令どうしの確認が終わると座るように勧められたためスーツ姿の女性の向かい側に座る。
「上里三等監察官と北里二等監察官はこちら方は初めてかな?」
「はい」
「はい。私は呉女子海洋学校出身なので存じ上げません」
こいつ出身高校の話をしたということは学校関係者か?女性ということは横須賀女子海洋学校になるのかねぇ
「はじめまして。横須賀女子海洋学校校長の宗谷真雪です」
・・・まさかの校長先生でいらっしゃいましたか。それでも何故校長先生が来ているんだ?北里はまだしも俺は男だからなぁ~
「宗谷校長は君たち二人を横須賀女子会用学校の教員として採用させていただきたいそうだ」
・・・・ちょっとまてい!何故?Why!?男子の俺がなんで女子高の教員するなんてことになるんだ!!?
それこそ北里だけで十分じゃねぇか!
「上里君には説明してなかったのだが毎年ブルーマーメイドの戦闘艦乗員は学生の教育を行うようになっているのだけど今年は“さるしま”から2名というふうに去年から決まっていたのだけれどまだ教員経験のないのはあなたたち二人だけだったの。だから今回あなたたちがその番ってわけなの」
決まりっていちゃったら文句言えないじゃん?これでも一応縦割り社会の一員ですし?元自衛官ですし?理不尽なことになれていますし?大丈夫ですけど、それでも俺はなんで女子高の教員なんだ!?東舞校(東舞鶴海洋学校)でもいいじゃん!
「それと君が女子高の教員になる理由なんだが・・・・」
そう、それが俺は気になってるの。是非ともお聞かせ願いますよ司令!
「君の所属がブルーマーメイドだからよ。男子校はホワイトドルフィンの管轄だからね」
つまり俺が所属しているのがブルーマーメイドだからだと・・・こりゃどうしようもねーな。諦めましょうかね。
「了解しました」
「それでは。・・・上里勇樹三等監察官、北里舞子二等監察官。以上二名は来年度より三年間、横須賀女子海洋学校への出向を命じる」
「上里勇樹三等監察官拝命します」
「北里舞子二等監察官拝命します」
「二人の担当に関しては宗谷校長より伝えられます」
指令が事例を言い渡し、それを俺たちは拝命する。そして宗谷校長から俺たちの新たな職場での仕事が伝えられる。
「はい、それでは二人には来年度の入学者第二十一期生航洋艦“はれかぜ”の担任を上里勇樹三等監察官、副担任を北里舞子二等監察官にお願いします」
「「了解しました」」
そういえば何気なく聞き逃していたけど三年間も教員として活動するのね・・・しかも担当が新入生だから卒業するまでずっとってことだし何気なく俺担任じゃなねぇか北里じゃなくて。これは俺も大変なことになったと考えるべきかもな。
・・・そういえば真霜さんは自衛隊幹部と面会じゃなかったけ?
一方自衛隊の幹部たちは艦隊旗艦のいぶき士官室に集合し食事の準備をした上で来客者の宗谷真霜を待っている。今いるのは群司令の秋津海将補他各艦の艦長と航空自衛隊の82航空団司令淵上一等空佐の8名である。彼らは知る由もなかったがそのとき真霜は上里と北里に辞令を下していたのだから結果として待つ羽目になってしまっていたために真霜が来た時には準備されていた料理も冷えてしまっており何とも言えない空気がその場を支配していたそうな。
そんなことがあったせいかそのあとはおぞましい速度で日々が過ぎていった。俺は教員になるのでそのための講義を受けに行ったり、海上自衛隊との交渉役に駆り出された上に国産の護衛艦“あさひ”を解析しコピー艦を作らせてもらえるように交渉しろとか途中からよくわからないものになってしまっていたがなんとか終わらせた。しかも結果として“あさひ”のコピー艦建造に関してはあまり問題も起きず残りは搭載しているレーダーとミサイルをどうするかだけの段階まで来ていて船体に関しては55%くらいが既に建造されている。艦名は決まっていないが早ければ来年の10月には進水式を行うらしいが一体どうなるのだろうか先は見えていない。
自衛隊部隊については安全監督室に新たな部署である特殊作戦艦隊群を編成。これは自衛隊が男部署であることと兵器に関しての問題点が多く補給のためにも必要な処置であったと言える。自衛隊部隊は2つの艦隊に分けられ第1艦隊がいぶき、あたご、あさひ。第2艦隊はみらい、ちょうかい、あけぼのという形になりさらにそれぞれ1隻安全監督室の艦艇が所属することになった。
そしてああだこうだしているうちに新年を迎え三月も終わりを告げ桜の季節。四月を迎えた。それは俺が教員として横須賀女子海洋学校に出向する日が来たということだ。最初があんなんだったけど今はどんな生徒がいるのか気になって仕方がない。これからのことへの期待を胸に俺は校門をくぐる。
しかし、入学直後の海洋自習であんなことになるとは誰が予想できたであろうか。
あれは神のいたずらなのか。その真相を予想できた者は今この時点で学校にはいなかった。
次回から原作道理の流れになりますがと途中途中で原作と違うところがあると思いますがよろしくお願いします
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第1章 始まりは突然に
少女たちと転生自衛官の交わり
この先に起こるでろうことを知らずに・・・・
真新しい制服を身に付けバナナを片手に食べながらスキッパーで水上を駆ける少女、岬明乃はこれから迎える入学式に心躍らせていた3ヶ月前の入学試験で彼女の入試に対する自身は皆無。正直山が当たればいいくらいの感覚で筆記試験と実技試験を受けたところものの見事に山があたり入試に合格したのだ。それも彼女が行くのは関東圏内でもトップレベルで倍率の高い高校で女の子の憧れの職業であるブルーマーメイドの養成学校なのだからじしんが皆無であっても仕方がないのかもしれない。
横須賀にある学校のスキッパー係留所用の埠頭にスキッパーを止めてから埠頭に上がる。近年はフロート都市も増えてきたためこの学校もフロート艦だが埠頭に関してはコンクリートで出来ている為そのことを不思議に思いながら岬は校門に向かう。これから過ごす学び舎を興味深そうに眺めながら歩いていくと三毛猫がこっちを向いて座っていたのでそこに駆け寄って座り込むと笑って
「こんなところに三毛猫がいるんだ~」
と楽しそうな声で触れようとすると逃げ出してしまったのだが偶然すぐそこを歩いていた生徒が過剰に反応した為岬も同じように驚いてしまった。その反応した生徒は
「なんでこんなところに猫がいるんだ・・・」
といったので罪悪感から
「ごめんね?私があの猫を脅かしちゃったから」
と謝りながら立ち上がろうとすると足元に自分がおいていたバナナの皮がありそれを踏んであたかもギャグマンガのように滑ると謝ろうとした生徒にぶつかる。ぶつかったおかげで岬は埠頭から落ちずに済んだが目の前では海に落ち用としている生徒が居る。あ、と気付いた時にはもう遅かったのだが走り込んできたスーツの人が落ちようとしていた生徒の手を握ると引っ張り落ちるのを防いだ。
「君、大丈夫かい?」
女性にはいないであろう深く体に響くような声でその人は聞く。岬がその人の顔を見るとここにはいないであろうはずの男の人だった。
「はい・・・あの、ありがとうございます・・・」
「構わないさ。それよりも入学前に海に落ちたりしなくてよかった。そんなことになったら新しい制服が大変なことになるからね」
そう言って男の人は笑うっていると後ろから女性の声が聞こえる
「上里君!いきなり走ってどうしたの!?」
この男の人の名前らしい-------と聞くと
「ここにいる生徒が物の見事にバナナの皮で滑ってそのとばっちりで海に落ちそうになっていた生徒引き上げたんだよ・・・ってか損だけのことで叫ぶなよ」
「う、うるさいわね!びっくりしただけよ」
そんなことを言い合っていたが我に帰ったのか咳払いをするとこっちに振り向いて
「失礼したわね。それじゃ私たちは用事があるからもう行くけどあなたたちも入学式に遅れないようにね。それじゃ」
とそれだけ言って上里さんを引っ張って校門を通り入学式会場の武蔵の停泊する埠頭の方に向かっていく。
しばらくほうけていたがどちらともなく吹き出すと二人して笑っていた。そのままさっきのことなどなかったように武蔵へと向かっていく。
*
入学式は武蔵の前甲板で行われている。超弩級戦艦らしく大型の砲塔が目立つがそんなのは気にせずに入学式は続く。校長祝辞では校長は「穏やかな波は良い船乗りを育てない」といったが確かにそのとおりだと少なからず俺は思っている。困難が目の前に立ちはだかりそれを乗り越えてこそ人は成長するのだということを示している言葉だと考えているが事実そうなのかどうか俺は知らない。入学式の最後に予定されていた各クラスの教員紹介上級クラスの武蔵から順に発表されていき最後に晴風が紹介される紹介の時は生徒の前に出るのが基本のため俺も前に出たのだがあちらこちらから疑問の声が上がる。それも当然で、俺以外の教員は全員が女性。女子高の中で男性教員が一人だけだったらそれは疑問の声も上がるだろう。スピーカーから教員紹介が行われる。
「航洋艦晴風。担任、上里勇樹三等監察官。副担任北里舞子二等監察官。共に安全監督室、沿岸警備艦さるしま、航海科所属」
正規のブルーマーメイドであることを聞いた新入生はさらに驚きの声を上げるがすぐに収まり教員紹介が終わり入学式の全てが終了した。
解散の掛け声がかかると新入生たちは自分の配属艦と役職を確認するべく掲示板と資料を確認する。その様子を横目に見ながら担当の晴風に移動する。晴風は駆逐艦陽炎型であるが実際には存在しなかった艦なのでこちらの世界だけのものだろうと考える。
教官室はどの船にも1室で2人部屋であるため俺と上里が一緒にこの部屋で過ごすことになる。部屋は10畳ほどで引き出し型のイスとテーブル、本棚、ベッド、クローゼットがある以外は何もない簡素な部屋である。部屋についた二人はクローゼットに自分の荷物を直し今後の行動を確認するとお互いに少し落ち着いたらしく
「そういえば上里君に造船についての意見書が来ていたわ」
「レーダーとミサイルについてだろう?レーダーのFCS-3については“あさひ”のものを取り出してコピーすればいいと思うんだけどな・・・電気機器に関してはこっちのものを流用しても十分だろうし。ミサイルは・・・まるまるコピーしかやりようかないんだよなー。そもそも俺は兵器担当じゃないから俺に聞かずに1科(砲雷科)に聞いて欲しいんだけどな」
そんな風に愚痴をこぼしながら上里は卓上の本棚に持ち込んだ書類を収めてゆく傍らで送られてきた意見書に目を通してゆく。全て目を通した上でタブレットPCを起動し意見書を送ってきた造船会社の担当部署にこちらの意見を書き込み送信する。送信を終えてたタブレットPCを起動させたまま閉じて時計を見ると既に教室集合時間の2分前になっていた。
「そろそろ時間だし教室にいくか?」
「ええ」
とお互いに一言交わして部屋を出て艦内の教室に向かう。
流石に軍艦ということもあってか艦内にはホコリ1つ落ちていないことを見るに以前この艦を使っていた者たちがしっかりと清掃したらしく途中には『ようこそ!晴風へ』という自作の垂れ幕がかかっている。
以前使っていた人たちがここまでしっかり清掃していたなら俺たちの清掃レベルまで持ってきてやれば十分だろう。
これから会う生徒たちへの指導について考えているうちに目的地の教室へとついた。
担任ということで俺が先導して教室に入り教壇の前で立ち止まり生徒の方を向いてひとりひとりの顔を瞬時に確認してから口を開く
「艦長、号令を」
上里の一声を聞いて茶髪の少女は号令をかける
「起立。・・・礼!」
新入生であるためかバラバラに起立したのだが初めてではあるにしろそれなりには揃っていたので及第点といったところだろう。
「よろしい。着席」
着席に関しては起立よりも揃っている。それを受けて上里は改めて生徒一人ひとりの顔を確認して話し始める。
「初めに、皆さんご入学おめでとうございます。今年1年間君たち航洋艦晴風クラスの担任を務める上里勇樹三等監察官です。入学式で紹介があったとおり安全監督室沿岸監視艦さるしま航海科に所属しています。そのため基本的にはブリッジにいますが必要に応じて各科の指導を行っていきますのでよろしくお願いします。次に副担任」
北里は俺と入れ替わる形で教壇の前に立ち明るい表情で
「皆さんご入学おめでとうございます。副担任の北里舞子二盗監察官です。初めに勘違いしてそうだから言っておくけど・・・」
そうやって北里は間を溜めると爆弾を投下してくれやがった。
「彼、見たとおり男でみんな怖いと思ってるかもしれないけど・・実は先まで君たちの顔を必死に覚えようとしてラッタル踏み外してたんだよ?」
「何ばらしてくれちゃってんだバカ野郎!!」
実際に上里は生徒情報のファイルを見ながら生徒のことを覚えようと必死で晴風に乗艦し用としたのだがファイルを見すぎて足元をろくに確認していなかったために物の見事にラッタルを踏み外したのだった。
そのことを知った生徒たちは驚きの声を上げて上里を見ると何やら諦めたような表情で北里を見ている。その視線に築いた北里は上里をみてニヤリと笑い再び生徒の方を振り向いて
「私たちは初めて教官という立場に立つので迷惑をかけることが多いかもしれませんが、まずはここにいるみんなで頑張って演習を終わらせていきましょう!」
先ほどの北里の爆弾投下のおかげか明るい雰囲気で北里の挨拶は終わった。
「・・・というわけでこのふたりで今年1年間君たちを指導していくんでよろしく。それとあんなことを言われちゃ何とも言えないからなぁ・・・とりあえず最後にこれだけ言わせてもらおうと思う。これから向かう道の中に上下関係なんて関係なく意見を言い合わなくてはならないことがある。その時に互いにしっかりと意見を言い合える船を俺は目指していきたいと思ってるから、その時は君たちもそれに答えて欲しい。・・・それじゃちょっと重くなっちゃったけど出港準備に入ろうか。艦長、号令を」
「起立・・・礼!」
「各自出港準備。解散」
最後に指示を出して北里とともに教室を出て一旦教官室に向かおうとすると後ろから茶髪の少女(艦長)が走ってきた。名前は確か岬明乃だったと記憶している。
岬は上里に近づくと彼を呼び止めこう質問した。
「教官。どうして私が艦長なのでしょうか・・・私より艦長にふさわしい人がたくさんいたのに・・・」
要は何故自分のような人が艦長になったのか理解できなかったため人事の理由を知っているであろう教官の自分のもとに来たということか。
「・・・では聞くが岬艦長。艦長とはどんな人物であると君は考えるのかい?」
その質問の意味をよく理解できていなさそうだったが少し考えてこう返した。
「それは・・・えーっと・・・船の中のお父さんみたいな・・・あの!船の仲間は家族なので!」
なかなか大きなイメージだなと考えつつ北里は笑いなが返す
「それならそうなれるように頑張ればいいのさ。岬艦長の考えるような艦長に・・・」
そう言って艦橋に向かう。
*
早めに艦橋に来ていた上里と北里はタブPCで積載品の確認を行っていた。内容は主に食料や真水、燃料、弾薬である。現状では12.7cm連装砲3門、61cm4連装魚雷発射管2門、爆雷投下機2機。25mm単装機銃4門の武装を搭載している。食料は補給艦間宮に合流予定の1週間分、真水は2日分をタンクに入れており順次海水を真水に変えてから使用する形になっている。
確認を終えた時点で艦長を含めた4人となぜか猫1匹が艦橋に上がってきた。
「あ、教官。もういらっしゃってたんですね」
初めに口を開いたのは黒髪ロング、副長の宗谷ましろ。
「ああ、積載品の確認をしていたんだ。航海において積載品の量は重要になる。特に航洋艦のような小型の艦艇には特にな・・・補給までは物資の補給は不可能だからな」
その言葉を聞いた北里は
「お?教官らしいことを言うわね」
又しても茶化して来たのでもっていたタブPCで頭を軽くたたく。
「馬鹿なこと言ってないで、てめーは出港準備の手伝いをしようとは思わんのか?」
「ない!」
今度は拳骨で殴る。
「ったい!?」
痛そうに頭を抱えている北里をほっといて上里は改めて自己紹介をする
「改めて担任の上里だ。主に航海科を担当するのでよろしく。そんじゃそこでうずくまってるバカはほっといてなんか宗谷がオレに向かって“猫を追い出して欲しい”みたいな視線を向けられているけど、ねずみ対策のためと時間的な問題で諦めてもらうのでまずはそれぞれ自己紹介をしようか」
ということで上里から時計回りに自己紹介をする。
元気よく
「艦長の岬明乃です。よろしくね」
少し落ち込んだ様子で
「副長の宗谷ましろだ」
それを固めに見て笑いながら
「水雷委員の西崎芽衣よ」
そこまで言ったところで右舷デッキの方から走ってくる足音が聞こえたのでそちらの方を見ると艦橋に入ってきた。息ついたまま自己紹介をする。
「はぁ、はぁ・・・航海長の知床鈴です。えっと・・・あなたは?」
知床が見た方向にいるのは先程から何も喋っていないショートカットの白い髪をした子だった。
「うっ・・うっ・・・」
なにか喋ろうとしているようだが上手く言葉にできないような感じがする
「砲術委員の立石志麻さんだよね?」
「うい!」
どうやら極度の人見知りらしいがうまく言葉に出来だけらしくコミュニケーションには苦労するだろうが問題はないだろうと考えていた頃に出港を知らせる鐘が鳴った。それに驚いた岬は俺のほうを向いて
「出港時間になったので出稿準備に入ります」
「了解。初仕事だ、失敗してもいいから気楽にいけ」
「はい!・・・総員持ち場について。出港準備!」
俺に出港していいかの指示を仰いだ岬に出港許可を出した。岬はそれに頷き返し艦首の方向を向いて指示を出す。
「前部員、描鎖詰め方。出港用意。錨を上げー」
艦首で錨が上げられてゆくのを確認したラッパ手の万里小路がラッパを吹くがお世辞でもうまいと言えるようなレベルのものではなかった。
これは俺が教えてやったほうが良さそうだな・・・
心中でそんなことを考えていたが前甲板でラッパに気を取られていた等松が青旗を上げて用意よしも知らせる。
「両舷前進微速、150度ヨーソロー。晴風出港!」
『両舷前進微そ~く』
機関室につながる伝声管から威勢のいい声が帰ってきた。恐らく機関長の柳原麻侖だろう。
埠頭からある程度離れたところで岬はさらに指示を出す。
「・・・航海長操艦」
「「「「航海長操艦」」」」
その場にいる全員の複勝を確認しさらに指示を出す
「両舷前進原速、赤黒なし。進路150度」
「いただきました航海長。両舷前進原速、赤黒なし。進路150度」
岬の指示を復唱しその通りに操艦を始めた航海長の技量を見て(初めてなんだよな?)少々舌を巻きつつ
「よろしい。演習集合地点までの操艦もそのまま頑張ってくれ。艦長は1700までに夜間当直のシフトを各科ごとに組み上げてくれ。もちろん俺と北里も入る」
「分かりました。それじゃ教官は何科なんですか?」
「・・・俺は主計科じゃなければどこでもOKだが・・・ここでしれっと眠りかぶっているバカに関しては航海科でいいだろう。どうせそれしかできまい」
そう話していると晴風の横に巨大な艦影が姿を現した。
上里の元の世界でも有名な大和型戦艦2番艦の武蔵で武蔵艦橋のから手を振っている少女がいた。今年度新入生主席の武蔵艦長知名もえかだ。それに気づいた岬は知名に向かって手を振り返した。さらにその奥からは武蔵には劣るが巨大な全通甲板の艦艇とそれに続く7隻の艦艇は徐々にではあるが学生の艦隊を追い越してゆく。
俺と北里以外のメンバーは驚きの顔で見たこともない全通甲板の艦艇を見つめる。
「何、あれ・・・」
そんなつぶやきに答えるように上里が口を開く
「ブルーマーメイド安全監督室に発足した特殊作戦艦隊群の艦艇だ。あの平べったい艦艇が旗艦の“いぶき”。今回は最近太平洋に出没している海賊の対処のために出港するらしい」
そのことに又しても驚くが岬が
「教官はあの艦艇について詳しんですね?」
と質問すると苦笑いしながら
「実は3年前までは俺はあそこの艦隊に航海科として配属されてたんだ。その時の同期からいろいろ聞いたってわけさ」
「「「「へ~」」」」
意外そうな顔をするクルーを見回してから
「とりあえず実習は始まったんだ。これから頑張って行くぞ!」
「「「「「おー!!」」」」」
えーっと、とりあえずむちゃくちゃ長くなってしまいました・・・
初めての6000文字声ですので何とも言えない感じですがやりきった感じはあります。
アニメ本編編が今回から始まりましたがストーリー展開に関してはオリジナル展開(そりゃいぶきとかが出てくるから当然ではあるのが)となっていますがある程度は原作通りの物語にしていきたいと思っているのでどうぞよろしくお願いします!
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音速の稲妻
航海開始2日目 1300
硫黄島沖西100km
特殊作戦艦隊 旗艦いぶき
訓練のために出港した艦隊は現在哨戒および訓練のために艦載機を発艦させようとしている。
サイドエレベーターからは対潜哨戒機のSH-60Kが登ってきており、甲板上では既に3機のSH-60Kが発艦準備を終えてエンジンをスタートするのみとなっている。
このSH-60Kはむこうの人たちも見たことがあるがこのあとに離陸させるあれに関しては、見たら腰を抜かすに違いない。
登りきったサイドエレベーターに乗っているSH-60Kも牽引車に引っ張られて発艦位置に移動していく。
全艦が発艦準備を終えると第5分隊(航空科)の士官が艦長に発艦準備完了の報告をする。
艦長が発艦許可を出すとそれぞれがエンジンをスタートさせローターの回転率を増やしてゆき、後方から順に発艦して各自の行動を開始する。
SH-60kが発艦作業しているうちにサイドエレベーターは再び新たな艦載機を載せて上昇してくる。
「艦長」
サイドエレベーターが登ってきているのを確認しつつ第5分隊の士官と話している艦長を呼ぶ
「どうかしましたか、司令」
「あちら側の方々にこれから我々の特殊な装備が発艦するので情報秘匿の指示をお願いしたい」
「・・・何故情報秘匿を行う必要があるのでしょうか」
「これから発艦する機体はこの世界においては最も理解できないものだろう・・・。つまり彼らから上に伝わるとどうなるだろうか?」
「・・・研究のためにその装備を取り上げる・・・ですか?」
「それだけではない。仮に完成したとしてもそれを操縦する人間が必要になるし完成品が完璧なコピーでなく欠陥品である可能性もある。そんな状態のもので操縦資格試験などの訓練を行うとどうなるかわかるだろう?」
「最悪、その機体に乗っていた搭乗員は死亡。それに乗じて我々のことをよく思わない連中がここぞとばかりに我々を叩く」
「そうだ。そのためにも情報秘匿は重要なことだと考える」
「了解しました。それではあちら側にこれから発艦する機体についての情報秘匿を連絡します」
「頼んだ」
この会話が本当に怒れなければ一番いいのだが、はたしてそううまくいくものであろうか・・・
いぶき搭載機SH-60K 1番機“シーホーク01”
シーホーク01は予定の航路を通りいぶきの前方20kmにて対潜警戒任務についているが、あと数分異常がなければ訓練に移行するだろう。
『対水上レーダー目標探知。数1、前方約30mile』
探知の報告をした搭乗員の言葉に少し疑いを持つ
「それは事実か?」
『本当です。西之島方面へ航行中』
西之島方向ということは演習艦だろうか・・・
「とりあえず報告する・・・・こちらシーホーク01。水上レーダー探知。数1、西ノ島方面に航行中」
『こちら、いぶきCIC。データリンクにて確認した。IFF応答無しにつき所属確認を行う。シーホーク01は予定航路を飛行せよ。所属確認はピーコック隊が行う』
「シーホーク01、了解。引き続き予定航路を飛行する」
ピーコック隊が来るなら問題ないだろうからこのまま任務を続けるとしよう。
いぶき甲板 発艦位置 F-35JB “ピーコック03”
隊長機がサイドエレベーターで登って行きいざ自分の番になろうとしたとき通信が入る
『こちら管制。ピーコック01。訓練前に任務が入った。本艦前方70km地点にて所属不明艦を発見。ピーコック、貴隊はこれの所属を確認し報告した上で訓練を開始せよ』
『Peacock01,
『Peacock01, you are first in line.』
『Peacock01, roger.』
隊長機が管制と通信しているうちにサイドエレベーターに乗って甲板上に出るために登り始めたのでこの時間で離陸するために各種動作のチェックを始める。
はじめに機体の各種操作を確認するために操縦桿を握り縦横に倒し、ラダーを左右交互に踏み込む。F-15のように油圧操作ではなく電子制御のため動かしたい方向に力をかけるだけで操作できるのでゲームのような操作感覚だ。
次にフラップの動作だ。F-35JBはVTOLのためフラップは必要ないように感じるが着艦前のアプローチには必要になってくるので必ずチェックをしなくてはならない。
これらの確認を行っているうちに上部甲板に登り、発艦準備位置に移動させられる。
隊長機が発艦するタイミングでエンジンスタターのスイッチを押す。現代の戦闘機はスイッチ一つでエンジンをつけられるようになったため様々な手順を踏まなくてはエンジンをつけられないF-15のような戦闘機よりもスクランブル発進にかかる時間は短くなってくると言っても過言ではないだろう。
エンジンの回転率、排気温度の異常がないことを確認したところで2番機が発艦したので発艦位置に移動する。現代の空母では一般的(米海軍および一部の海軍空母を除く)のスキージャンプ式の発艦装置をいぶきは採用しており、いぶきの他には中国の保有するロシアの中古空母遼寧やイギリス海軍の空母クイーン・エリザベス級などが採用している。
さて、この機体も発艦位置についたことだ。所属不明艦の様子でも確認しにいくとしよう。
特殊作戦艦隊 弁天
「艦長。いぶきから通信でこれから見られるモノについては貴艦乗組員に対して情報秘匿を要求する、とのことですがどうしますか」
「・・・あのお人好しの奴らが秘匿しろというくらいのもんなんだからよっぽど重要な装備なのだろう。だとすればこちらは応じるのが当たり前のことだ。全艦に通達。これから見ることになるいぶきの装備に関しては情報秘匿を命ずる」
「了解しました」
あのいぶきがああいうくらいなのだからこの世界には存在するわけのない装備であることは想像に固くない
そう考えているといぶきの方向から耳をつんざくような轟音が鳴り響くと同時に何かが飛び立つ。それはあっという間に小さくなっていき見えなくなる頃合でさっきと同じような轟音が再び鳴り響く。それをもう1度繰り返したあとはしばらく同様の轟音がなることはなかった。
“ピーコック01”
「Peacock01, approaching area. 」
(ピーコック01、まもなく現場海域に到着)
『This is Ibuki CIC. Peacock01, contact unknown ship, target heading 190. 目視確認急げ。』
(こちらいぶきCIC。ピーコック01、所属不明艦は方位190にいる。)
「Peacock01 copy, heading 1-9-0.」
(ピーコック01了解)
『ツー』
『スリー』
いぶきCICの指示に沿って旋回ししばらくすると対地レーダーに反応が1つ。CICから指示された目標とはこれのことだろう。
「Peacock01, target insight.」
報告すると同時に不明艦の情報を機体下に搭載されているガンカメラで撮影しCICに送信する。見た目は陽炎型駆逐艦だが、赤い帯状の塗装をした陽炎型なんて見たこともないし排煙塔のところにどこか見たことのあるようなマークが見て取れたがどのようなものかまでは流石に分からない。
『Peacock01, RTB. Unknown ship is Harekaze, this is belonging to Yokosuka girls high school.』
「Peacock, mission complete. RTB.」
所属不明艦と思われた艦艇は横須賀女子海洋学校所属の晴風だったらしい。どうりで見たことがあると思ったが出港時に見ていたのだなと今更ながら理解する。
CICからの帰還命令が出たので帰投する。
時間をかけて書いていきましたが時間がかかりすぎて全然進んでいませんね・・・
本当に申し訳なく思ってはいますがいろいろ忙しいのですよ?
まぁ~来年はこれよりも更新速度が遅くなると思うので今年のうちにやれるだけやっていこうと思います
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飛ぶのは何か
西之島沖 晴風艦橋
「で?こんなことになってしまっていると?」
「すみません・・・」
入学式を終えた後から始まった航海演習に向かっている途中の晴風だが、様々な問題(航海長が進路を間違えたり機関が停止したりなど)によって現時点で集合時刻を過ぎており巡航速度で進んでも3時間かかるため集合時刻から大幅に遅れ古庄艦長の指導が待っていると。
と言ってもこの晴風は試験艦(機関が新型の高温高圧缶で試験運用を行っている)のようなものだし学生は初めての航海だから多少の問題は大目に見てもらえるだろう。
それでも3時間もの遅刻となると怒られてしまっても仕方ないのかもしれない。
「ま、仕方がないさ。北里、猿島への報告はしたのか?」
「ええ、既に報告済みだけど・・・・」
「古庄艦長はお怒りか・・・?」
「・・・・(コクリ)」
ああ~これはまずいな。学生ならかなり早く説教は終わるだろうが教官となれば話は別だ。本来教官は生徒を導く必要があるのにこの遅刻はそれができていないという証拠になってしまう。つまり、生徒の倍の時間は指導を覚悟しておかなくてはならない。そう考えただけでもう今から憂鬱に感じるてしまうのは俺が悪いわけではないことを祈っておくことにしよう。それにもしもの時はもしもの時でしっかり反省していれば古庄艦長も許してくださるでしょうし?
「それじゃぁ航海長。進路このまま西ノ島沖に向けて航行し、異常があれば報告せよ。」
「了解」
その時、どこからか腹に響く低く轟くような音が聞こえてきた。どこかで昔聞いた・・・いや、この世界に来る前まではほぼ日常的だった音だ。この世界に存在するそんなものはといえば・・・
「・・・何なんだこの音は・・・」
「・・・総員、耳をふさいでおけ・・・」
言うのと同時に音のする方向に黒い斑点のようなものが見えた。それは少しづつ近づいてきて晴風の上空を通過飛行してゆき反転する。
「・・・やはり・・・F-35JBか!」
「・・・教官知ってるんですか?」
「ああ・・・・」
こいつが来るということはそれなりの距離のところにいぶきがいるということが分かる。理由はこっちが不審船と認識されたから・・・。
それならさっきの通過飛行で所属と艦名がわかっているはずだな。
『教官!護衛艦いぶきという船から通信が入っています!』
「わかった」
そう言って艦橋後方の無電電話をとる
「こちら晴風。いぶき送れ」
『こちらいぶき。感度良好。晴風は現在猿島に集合しているはずでは?何かあったのか?』
「こちら晴風。機関故障により集合時刻に遅刻した」
『了解』
そうやって受話器を下のところに戻そうとした時だ
『前方にさるしまを発見』
「さるしまが?なんでこんなところにいるの・・・?」
北里がつぶやくがそれもそのはずで本来ならば猿島は予定表ではこの時間帯は西ノ島沖にいて演習参加艦とともに演習の準備をしているはずだ。
イマイチ理由がわからないままさるしまは接近してくるが艦艇の所属上航行の優先権はさるしまにあるのでさるしまに進路を譲らなくてはならない。
「航海長、右へ回頭する。面舵へ5度、さるしまとの間隔200になり次第取舵へ5度」
「面舵へ5度」
知床が舵を切るとゆっくりと晴風が回頭する。それを見てさるしまは頭を抑えるように回頭してくる。
「おかしいな・・・左へ回頭する。取舵へ10度回頭」
「取舵へ10回頭」
「上里君。何かおかしいと思わない?」
「ああ、遅刻した艦艇に対してわざわざさるしまが出張る理由はないからな」
何かがおかしいんだ・・・・
さるしまの艦首部分が光ったと思ったが気のせいだろうか・・・・
そう思ったときに艦に衝撃が走り、海面には水柱が上がる。艦橋メンバーの血の気が下がる・・・
おいおい、まさかだよな?
『さるしま発砲!』
見張りの野間からの報告がきたのは予想どうりのことだった。
流石に旧帝国海軍の駆逐艦陽炎型と同型の晴風にインディペンサー級のさるしまに勝機はないし、下手をすればこっちは撃沈させられる可能性もある。今握っているのはいぶきとの通信を行っている受話器。やむを得ないか・・・
「こちら晴風、いぶき応答されたし!」
『こちらいぶき。どうかしたか?」』
「こちら晴風!さるしまより砲撃を受けた。救援を求む。繰り返す!さるしまより砲撃を受けた、救援を求む!」
『・・・それは事実か?』
「事実だ!現にデータリンクを確認すればわかるはずだ。すぐに確認してくれ!」
『・・・・確認した。こちらはみらいを送る。それまで攻撃を回避せよ』
「了解!」
いぶき艦隊との距離はそうとうはなれているはずだから当分救援は来ないだろう。それまではとにかく回避しつつ逃げるしかない。
「北里は学校に報告。最悪の場合さるしまを撃沈する恐れがあると報告してくれ!」
「わかった」
とにかくこの場は生きることに専念しなくてはいけない。この船に乗る俺の生徒が生きて丘の地踏ませるためは俺にできることを全力でするしかない・・・!
「取舵いっぱーい!180度回頭!最大戦速!とにかくこのまま逃げるぞ!」
正直に言えば機関が故障して止まったりしないかが不安だがとにかくできるだけ最大速力で逃げる以外方法がない。だからみらい。こいつらのために早く。ほんとに早く来てくれ!
またまた遅れてしまいましたが8月になれば多少は出せるようになると思うのでお願いします!
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戦う理由はみらいのために
それでは本編の方をどうぞ!
晴風救援要請から一時間後
西之島沖 DDH-181 みらいCIC
CICの暗い部屋の中にレーダーや兵装状況などを映し出す画面の光で僅かに明るい。そこにいるのはみらい艦長梅津1等海佐と菊池3等海佐、第1分隊(砲雷科)の隊員たちである。現在艦長の目の前にある大型モニターにはみらいの現在位置とその他の艦の位置情報が写っており、画面上の方にはY-467晴風という
「艦長、九〇の射程内まで五分です」
「うむ。合戦用意」
『合戦用意!』
みらい艦長の梅津艦長の号令とともに艦内で総員戦闘配置の放送とともにカーンカーンとサイレンが艦内に鳴り響く。食堂や居住区画にいた隊員は自分の持ち場へと走り、最後のものが水密扉を閉鎖する。
「水密扉閉鎖よし!」
「戦闘配置よし!」
次々と報告が入ってくる。号令から報告までの時間が短いことから、隊員の練度と訓練の質の高さが窺い知ることが出来る。
『こちら通信室、海上安全整備局より入電!『海上安全整備局、横須賀女子海洋学校との協議の結果、生徒の安全を確保することに決定した。貴艦は速やかにさるしまを攻撃し生徒の安全を確保し、状況完了次第海上安全整備局、安全監督室室長 宗谷真霜に報告せよ』・・・以上です』
正式な攻撃命令が来たという報告を受けた上で梅津は次の指示を出す。
「対、水上戦闘用意・・・」
「対水上戦闘ぉ用ぉー意!」
「対水上戦闘ぉ用ぉー意!これは演習ではない。繰り返す、これは演習ではない!」
梅津の指示を菊池が復唱し、砲雷科員が艦内放送で伝達する。
「面舵いっぱい、90度回頭。・・・砲雷長。戦闘の指揮を取れ」
『面舵いっぱーい、90度ヨーソロー」
「了解しました。・・・対水上戦闘、九〇攻撃はじめ。目標さるしま、発射弾数二発」
「目標さるしま、発射弾数二発、・・・諸元入力よし!」
梅津はさるしまへ向いている艦首を右に向けるよう指示し、砲雷長の菊池に戦闘指揮権を移譲、菊池が戦闘の指揮を執り始める。
みらいには試験用にトマホーク巡航ミサイルが搭載されているが、威力的な問題と対地攻撃用という本来の用途が異なることから、今回はSSM-1B―日本が開発した地対艦ミサイルを改良した九〇式艦対艦誘導弾―を使用することになっている。それにいくらこの世界に航空機やミサイルがないといっても近接防御火器システム―CIWS―は流石にどの艦艇でも搭載している。それならば機動性に優れるSSM-1Bにしたほうが命中率は高かろうということだ。
「九〇、発射用意よし」
「九〇、発射はじめ!」
「1番発射用意ぃ・・・てぇー!」
SSM-1B発射のスイッチが押されると同時に艦が少し揺れ、轟音を轟かせながら本艦から何かが飛行してゆく感覚がする。
「7番発射用意ぃ・・・てぇー!」
最初の轟音が収まると同時にSSM-1Bの2発目を発射する。再び轟音が響くCIC中で新たな緊張感が現れる。
「ナッ!砲雷長!さるしまより高速目標分離、数2,3,4、・・・数5、本艦にまっすぐ突っ込んでくる!」
「っ、対空戦闘、SM-2攻撃始め!」
あろう事かさるしまが対艦ミサイルらしきものを発射してきたためすぐに迎撃策のSM-2の発射を命じる。
「前甲板VLS、1番から5番。SM-2発射はじめ・・・
今度は2秒間隔で起こる連続した轟音。VLSだからこそなせるミサイルの連続発射、対空迎撃ミサイルであるSM-2の発射音だ。大型レーダーには今の短時間の間にみらいが発射したSSM、SM-2、そしてさるしまの発射したSSMの
「九〇、インターセプト10秒前!」
「SM-2、
迎撃の結果をレーダー要員が確認すると報告を上げる。
「SM-2、全弾迎撃!」
「九〇、1発迎撃されるも1発命中!さるしま、爆発炎上中!」
「海上安全整備局安全監督室室長に報告!さるしま乗員の救助を行う!航空機、即時待機。準備出来次第発艦!!」
敵を無力化したことと、敵SSM迎撃に歓喜が湧いたのはほんの束の間だった。彼らは忘れていたのだ、この世界には対艦ミサイルというものはないが、墳進魚雷と言われるものがあることを。
「あっ・・・そ、ソーナー探知!これは・・・ぎょ、魚雷です。魚雷音聴知、左90度距離2700・・・み、ミサイル迎撃地点とほぼ同じところからです!」
「なんだと!じゃあさっきのはASROCだとでも言うのか米倉!もういちど確認しろ」
「ま、間違いありません。魚雷です。魚雷、探針音を放ちつつさらに接近!距離2200!」
魚雷である事実に驚く菊池をおいて梅津は指示を出してゆく
「本艦にはデコイは搭載されていない、短魚雷を囮に使う!対潜戦闘!!左舷、短魚雷攻撃始め!発射後速やかに取舵いっぱい!魚雷に対して正対する!」
梅津の指示の直後無電が入ってきたのでCIC内に流す。
『左舷短魚雷1~3番発射管、用意よし!』
「了解!短魚雷用意、打てー!」
大型画面に映し出される状況図には新たにデコイの
「魚雷、我の短魚雷に反応しました。距離1800!」
水測員からの報告とともにいっときの安堵を感じるが放った短魚雷はあくまで気休め。一定時間経てば魚雷に搭載されているであろう搭載ソナーが目標ではないと判別され再びこちらへ襲って来ることになるだろう。それでも魚雷の燃料を使ってもしかしたらこちらへと届かない可能性もあるのだからこの艦の乗員はそうなることをのぞむだろうが現実はそう甘くはないらしい。
「魚雷反転!距離1900!」
「マスカー始動!航空機発艦急がせ!!」
後部甲板で発艦準備を終えていた対潜哨戒機-SH-60K-に艦長が指示を出すと、管制に報告する前までチェックが完了し、暖機運転を充分に行ったロクマルの様子が後部甲板に設置してあるカメラが映し出されていた。
「距離400」
『雷跡視認!左5度よりまっすぐ接近中!』
『取舵5!』
「距離50!!!!」
「衝撃に備え!」
艦のすぐ近くに接近した魚雷が命中した時のために対ショック姿勢をとる。
5秒が過ぎた。未だになんの衝撃もなく、いまもこのみらいは航行している・・・
「魚雷、本艦を通過!……報告、航空機発艦!」
魚雷が命中しなかったのと同時に対潜哨戒機が離陸し、さるしまの方へと機首を向けて飛行する。そのあとを追うようにして飛んでいく別の対潜哨戒機がいる。おそらくいぶき他から発艦した機体だろう。
「状況終了!我々は晴風の方へと向かう。取舵、艦首を晴風に向けろ」
『とぉーりかぁーじ』
『通信士、晴風に状況終了と救援に向かうことを連絡しろ!』
『了解!』
一つの峠を越えて一息付けるかと思ったがまたひと仕事となりそうだ。だがしかし、確かにこの艦は守ることができたのだ。イージスはこれからを生きるみらいある子供達をまもることができたのだ。と、みらい乗員はそのことを胸に次なる仕事への準備を進めるのだ
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力を振るわれ得る意味
特殊作戦艦隊への救援要請から2時間後
西之島沖
晴風 艦橋
「取舵いっぱぁーい!」
「取舵いっぱぁ~い~、取舵三十度~!」
「針路268度!」
明乃の指示に知床が泣きながら復唱し舵輪を左に勢いよく回転させ航海長補助をしている北里が現在の方位を報告する。艦橋正面上方にある舵の各度をメモリで示す計器は鈴が舵輪を取舵30度に回したので取舵を示す左側に30度を示すメモリのところまで微調整することなく一発で傾く。すぐに舵の効かない船で微調整することなく舵輪を回すのは大変難しいのだが、それを一発でやりきるあたり怖がりな性格の鈴が実は並みの航海長以上の実力を持っていることを認識して軽く脅かされる。ヘタをしたら今年の他の一年の航海長よりも実力はあるのかもしれない、それも各学科の学年トップの集まりである武蔵の航海長よりだ。
『右舷に着弾!』
野間の報告から数瞬後に水柱が上がると同時に弾頭爆発の衝撃が艦に伝わり激しく揺らされる。弾頭が爆発することからさるしまが実弾を使用しているということと本気でこの晴風を沈めようとしていることが分かる。墳進魚雷は高価で弾数が少なく貴重だ。―一発あたりの値段が何千万とするものだから訓練では弾頭回収の可能な訓練弾を使用する―相手がまだそれを撃ってこないからこそ、俺たちはまだ生きているというものだ。もしも仮にさるしまが墳進魚雷を発射してきたらこの船に乗る乗員の命は一瞬にして消し飛ばされてしまうだろう。
『こちら機関室!もうそろそろ限界だ!このまま使っていたらぶっ壊れちまうぞ!』
さるしまが最初の砲撃を行ってから晴風は一杯と4戦速の間を行き来している。
試験中の機関のせいかここに来るまでに故障があったので2時間も動かし続けることができたのも機関科の腕がいいからだろう。しかし、機関に無理をさせていることに変わりはなく、蒸気タービンのせいで機関室は今頃サウナ室のようになってしまっているだろう。つまり、機関だけでなく機関科員も熱中症の危険性がある。
「機関室、後どれくらいならもつんだ!?」
『最低だともう無理だが、この状況を維持するのであればもっても5分だ。それ以上は保証できねぇ!』
「了解した。くれぐれも熱中症にならないようにこまめに水分と塩分を補給しておけ!補給員をそっちに向かわせる!」
「ココちゃん、みかんちゃん達に塩分と水分を機関科員に届けて、その後はダメコン班に合流し指示を仰ぐように連絡して!くれぐれも自分自身の安全を最優先にするっていうことも一緒に!」
「分かりました!」
艦橋で艦長と俺が様々なところに指示を出して行く。直後に衝撃。砲弾の爆発音が後方からしたので艦橋横の見張り台に移動する。
水飛沫が上がってなかったということは・・・艦に命中しやがったが!?
上郷は焦っていた。さるしまの砲撃を避けるための回避運動や逃走のために機関は無理をさせているし、砲弾の命中した後部は主砲が2機に爆雷がわんさかある。いくら現代の技術で改修されて直撃弾による誘爆の確率は減ったとしても誘爆する確率は存在するし、実際に誘爆でもしたら晴風は乗員もろとも海の底なのが目に見えてわかってしまっているからだ。
「各部、被害状況を報告!」
『爆雷投射機損傷!』
『射撃指揮所、2,3番砲塔大破により使用不可!』
『機関室浸水!』
「ダメコン班、対応に迎え!」
『ダメコン班了解!」
今の攻撃による被害は大きいが弾薬が誘爆もしていなくて良かった。それでも今の攻撃で浸水が発生しているので気は抜けない。特に機関室は今最もデリケートな場所だ。浸水によって機関停止なんてことが起こったらこっちは確実にチェックメイトだろう。とにかく浸水対応のためにダメコンを向かわせる。
「けが人の有無は!?」
『第一魚雷発射管、大丈夫です』
『第二魚雷発射管、姫路大丈夫です』
『射撃指揮所、全員無事です』
『機関室、柳原麻侖以下全員無事でぃ』
『房水室、炊飯器以外は伊良湖美柑以下二名無事です』
明乃がとっさの機転でけが人の確認を行うが確認されなかったことにひとまず安心する。
『さるしまの砲塔が左に旋回しています!』
「えっ?!」
さるしまが砲塔を旋回させる?なぜだ、なぜそんなことをする必要があるんだ・・・?
『さるしまが墳進魚雷を砲塔照準方向へ発射しました』
この報告から分かるのはその方向へさるしまにとっての敵がいるということになる。つまり・・・
「・・・来たぞ!救援が来たぞ!」
「それってどういうことですか上里教官!?」
『さるしま主砲発砲!』
『こちら電探室。高速飛来物数2。さるしまに向けて飛行中!着弾までおよそ10秒』
「まじか!・・・機関室、最後の踏ん張りどころだ!機関がどうなってもいいからもつところまででいいから機関一杯!さるしまから離れるぞ!」
『お、おう!わかったけど、その後航行できなくn「いいからやれ!!」ったよ!』
「機関一杯!おもぉーかーじ!」
「機関一杯、おもぉーじゃーじ!面舵15度!」
とにかくさるしまから距離をとるために回頭する。そうしなくてはこっちまで被害―近距離過ぎると誤射の可能性も考えられる―を受けるかもしれないのでとにかく距離をとる。
『高速飛来物、着弾まであと5秒!』
「総員衝撃に備え!」
『『『「へっ!?」』』』
「いいから早く!」
疑問の声も上がったがとにかく全員に対ショック姿勢を取らせて、来る衝撃に備える。上里以外の人間は対ショック姿勢をとらせたことに対して疑問を持っていたのだがその理由はすぐ知る事になる。それは巨大な爆発音と衝撃波が襲ったからだ。それも2回である。その正体は晴風救援の命令で救援に来ていたみらいから発射された九〇式対艦対誘導弾、SSM-1Bによるさるしまに対する攻撃の爆発だ。おそらく一回目は運良く撃墜できたのだろうが、二発目は命中したようだ。そのことに気がつくと同時に艦の後方から破裂音が響いてくる。
『こちら機関室!蒸気バルブが圧力で破損しちまったからもう機関が動かせねぇぞ!』
「機関室!バルブ破損によるけが人はいるか?」
『バルブ破損の衝撃でクロちゃんが肩を壁に強打しちまってる』
「了解した。黒木を医務室に連れて行ってくれ。・・・現在をもってさるしまとの戦闘を終える。負傷者はすぐに医務室へ搬送するように」
「わ、分かりました。・・・こちら艦橋です。現時点を持って戦闘終了します。負傷者は医務室でみなみさんから治療を受けてください」
終わった。晴風の危機を、乗員である生徒の命の危機を生徒の力だけではないにしろ無事に乗り切ることができたのだ。これ以上の幸福はないだろうが機関の故障による航行不能はかなり痛い。これは学校まで曳航してもらって機関を根本から修理、若しくは交換してもらわないとどうしようもないな・・・。
とにかくいまは護衛艦の到着を待つとしよう。
ということで今回は前話の裏側、晴風サイドということでした。
『~の裏側』といったものを書いたことがなかったので出来上がりは不安でしかありませんが自分の中では満足できています。
以下はこの物語には関係ないものですので興味のない方はスルーしていただいても構いません。
さてもうすぐ太平洋戦争、そして世界で初めて原子爆弾を実戦使用された8月6日ですね。
そしてすぐに長崎の9日、終戦の15日が訪れようとしていますがこの日に皆さんは何を考えられておられるでしょうか?
私は今、海上自衛官になりたいと思っているのですが果たしてそれがいいのかどうかに迷っているのです。というのも私が海上自衛官を志願するのは太平洋戦争においてこの国を守るために戦った先人たちとイギリス海軍の漂流者を救助した工藤俊作海軍中佐の意思を最近問題となっている某国への抑止力や人を守るための力と慣れればいいと思ってのことだったのです。太平洋戦争の終戦日が近づくと必ずこの思いが頭をよぎってしまう・・・。それでも自分の考えに従ってこれからも勉学とこの物語の投稿を頑張って行きたいと思っているので、これからも応援をよろしくお願いします。
長文を読んでいただきありがとうございます。
それでは、次話でまたお会いしましょう
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戦闘の痕
時間があまりなかったため今回は(というか今回も)短くなっています。
西之島沖
いぶき CIC
「救難隊、スクランブル!」
さるしまにみらいのSSMが命中を確認し、人命救助のための救難隊を出動させる。さるしまの現状は分からないが水上レーダーには反応がないことから沈ん出しまった可能性もある。
現在、甲板で待機しているのは艦橋前の1機のみですぐに機体は発艦用のスポットに移動させられ、2機エレベーターは直ぐに降下を始める。
移動させられたヘリは艦内から出てきたパイロットと
降下させた2機のエレベーターから合計3機のSH-60が登ってくる。
『レスキュー01、発艦準備よし』
「レスキュー01、発艦を許可する。発艦後はさるしま撃沈地点に向かえ」
『了解、発艦する。発艦後はさるしま撃沈地点に向かう』
「こちらいぶき、海上安全整備局応答せよ」
『こちら海上安全整備局、いぶきどうぞ」
「さるしまに対する攻撃を行いさるしまは撃沈した恐れ有り。救助の援護を要請す」
『海上安全整備局了解。現在、高速救援艦隊を派遣中。現場海域到着は一時間後。貴艦隊はさるしま乗員の救助および晴風の救援を行え』
「いぶき了解」
CICの内部では先の攻撃から様々な通信が行われている。いぶきではさるしま乗員の救助のためのヘリを発艦させている。
「司令、みらいを晴風に向かわせます」
「わかった。到着まではどのくらいだ」
「およそ20分です」
「晴風の被害状況を調べてくれ」
「了解しました」
司令席に座っている秋津は一息ついて次々と指示を出してゆく。
ひとまずは海上安全整備局の高速救援艦隊の到着を待つ間はさるしま乗員の捜索・救助を行い、晴風の救援をみらいが担当することになっている。ここを乗り切ればと思い気合を入れ直して指示を出してゆく
晴風 艦橋
「各部の被害状況の詳細が分かりました」
これまで各部署の被害状況を確認しに行っていた納紗が艦橋に戻ってきた。
やはり相当の被害があったためか確認を行った納紗の表情は暗い
「やはり、相当の被害だったのか?」
「はい、幸い重傷者はいませんが・・・」
「・・・わかった。教員用のデバイスに被害状況の報告書を送信してくれ。それが終わり次第休憩に入ってくれ。船が動かせない今、特にできることはないが後々納紗はこの船の書記として仕事が出てくる。休めるうちに休んでおいてくれ」
「・・・はい」
そう言うと早速納紗は手持ちのタブレットを操作するとウエストポーチに入れている教員用タブレットから着信音が鳴る。タブレットをウエストポーチから取り出して件の報告書が規定塚を確認してから納紗休憩に入って良いというとラッタルを下りて介したへと向かう。
「岬艦長被害状況の確認を行うから各科長を教室に集合させてくれ」
「了解しました」
さて、軽く見た感じの被害は相当のものだ。何をするにしてもまずは学校に連絡して、本来なら演習の補給をしてもらうためにこっちに向かているはずの明石に依頼して破損箇所を修理してもらわなくてはならないだろうな。ってことは教室に行く前に通信室に寄っていくとしよう。
『そういうことだからしろちゃん、ここよろしくね?』
『・・・艦長、副長もしくは宗谷と読んでください』
『えぇ~他人みたいだよ~』
『他人でしょう!』
・・・仲がいいんだなあの二人
通信室と書かれた扉を開き中を確認すると中には八木鶫。
「あ、上里教官。いぶきいう艦艇から被害報告を求められたあのですがどうしましょう」
「いぶきからか?・・・そうだな、機関故障、およびその他の被害のため貴艦隊の中からダメコン班と機関科員を数名送るように言ってくれ。それと学校に明石の修理を受けたいというのも一緒に頼む」
「了解しました」
扉を閉めて教室へと向かう。この間にタブレットをウエストポーチから再び取り出し今度はしっかりと被害報告書を確認する。
晴風戦闘被害報告書
二、三番主砲・・・さるしま主砲弾命中、大破使用不可(弾薬庫への誘爆はなし)
魚雷発射管 装填中の訓練用魚雷一発状況確認および整備なしには使用不可(破棄の可能性有)
爆雷投射機 破損、使用不可
爆雷 さるしま砲撃による誘爆を避けるために全弾投棄
機関 蒸気パイプが数箇所破損するもエンジン自体には現在以上は確認されない
浸水 8箇所の小破口と少量の浸水を確認(現在は4箇所を塞ぎ、残りの4箇所の該当区画を封鎖中)
正直に言えばこの程度で済んでよかったと言いたい。みらいの到着が遅れていればこれどころではなかったし下手をすれば沈没のおそれもあった。特に浸水がほかの被害と比べると軽かったことも今晴風が無事(というわけではないが)であることに関係しているだろう。
「本当、よくみんな頑張ってくれたよ・・・」
みらい 艦橋
「艦長はいられます」
艦長が艦橋にくると同時にかかった士官の掛け声に反応し、操舵手・出力変更盤の前にいる乗員以外が艦長に対して敬礼する。
「艦隊司令より指令です。機関科員、ダメコン班を編成し晴風に救援に向かえとのことです」
「わかった。晴風までは?」
「50キロです」
「よし、両舷前進強速、艦首を晴風に向けろ。副長、晴風への機関科員、ダメコン班の応援チームの編成を頼みたい」
「了解しました」
『了解、艦首を晴風に向けます。操舵担当士官、取舵30度両舷前進強速』
『取舵30度』
『両舷前進強速』
艦が左に回頭して遠心力で艦が少し右に傾く。
副長が艦内無線を使い機関室の機関長と更新する。おそらく誰を救援の部隊に編成するのかを相談しているのだろう。
「航海長。どれくらいで晴風に到着する」
「このままでしたら、1時間ほどです」
「・・・止むを得ん。ダメコン、機関科員の応援のみ先行させよう。ヘリ即時待機、応援部隊搭乗完了しだい発艦」
「艦橋CIC。ヘリ即時待機、応援部隊搭乗完了次第発艦。発艦後は晴風に向かい、応援部隊を晴風に下ろせ」
『CIC了解』
後部格納庫からSH-60が引き出され、第5分隊が飛行準備にかかる。エンジンが暖気運動に入ってからおよそ15分後、艦内からダメコン派遣班が編成されSH-60に持ち込んだ道具とともに乗り込む。発艦担当士官の指示でSH-60はローターの回転数を上昇させ、発艦してゆく。
『シーホーク021、コンタクトみらいCIC。以後はみらいCICの指示に従え』
『シーホーク021ラジャー。コンタクトみらいCIC。以後はみらいCICの指示に従う』
発艦担当士官とSH-60のパイロット(シーホーク021)との交信が艦橋に響く。シーホークは艦の左側を飛行してゆき、しばらくすると見えなくなった。
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そうして物語は動き出した
受験のために休載していましたが、この度再開します
といいつつ、大学には行かずに社会人になったので、またとびとびの更新となってしまいそうです。
小笠原群島沖 70マイル
晴風 教室 1600
猿島による晴風砲撃から4時間後
「上里教官、状況は!?」
「落ち着いて岬さん」
晴風医務室にて砲撃の衝撃で転んだことによって足を捻ってしまった艦長の岬が治療の途中にもかかわらず、医務室の扉を開けると同時にこちらに駆け寄ってくる。治療を行っていた鏑木も迷惑そうに(見える)顔を顰めながらも仕方がないというように肩を透かして首を振る。
横須賀女子海洋学校 校長室
猿島による晴風砲撃から5時間後
「猿島が晴風を砲撃!?その報告は本当なの・・・?」
校長の真霜が報告を受けて机をたたき立ち上がる。当然のことだろう。本来であれば学生を導くはずの教員艦が学生艦を砲撃するというあってはならないことが起こってしまっているのだ。
真霜は自分自身が冷静になる必要があることを自覚し、心を落ち着かせるようにして部下に報告を続けさせる。
「本日1200集合完了予定だった晴風は3時間と2分遅刻している状態で演習海域に接近していたところ、猿島が晴風に接近。無警告で砲撃を行ってきたとのことです。一連の行動は特別作戦艦隊のイージス艦みらいがレーダーでとらえています。念のために確認しましたがみらいのレーダーには異常はなかったとのことです」
「それで?猿島と晴風は?」
「晴風に乗艦している上里勇樹三等監察官からの緊急救援要請を受けた特別作戦艦隊がみらいを派遣。猿島からの攻撃を受けたうえで対抗措置、および生徒の生命を守るために猿島に対し噴進弾を発射し大破。現在、生存者の捜索・救助を特殊作戦艦隊のいぶき・みらいを中心におこなっています。晴風ですが、猿島は榴弾を使用していたようで直撃が数発、それに加えて至近弾による損傷が大きいようです。晴風の被害についてはこちらに」
そう言って渡してきたA4サイズのコピー用紙には上里三等監察官からの戦闘報告書が印刷されていた。
晴風戦闘被害報告書
二、三番主砲 猿島主砲弾命中、大破使用不可。ただし、弾薬庫への誘爆はなし
魚雷発射管 装填中の訓練用魚雷一発状況確認および整備なしには使用不可(※1)
爆雷投射機 破損、使用不可
爆雷 猿島砲撃による誘爆を避けるために全弾投棄
機関 蒸気パイプが数箇所破損するもエンジン本体には現在異常は確認されない
浸水 8箇所の小破口と少量の浸水を確認(※2)
※1:破棄の可能性有
※2:現在は4箇所を塞ぎ、残りの4箇所の該当区画を封鎖中
「これは・・・・可能ならドッグに入渠。最低でも明石に修理させないと・・・・。明石の現在位置は?」
「演習が始まってから合流の予定でしたので現在、現場海域に向かっています」
「明石に晴風の修理を指示して頂戴」
「了解しました。それと海上安全委員会から事情聴取を行うので明朝7時に海上安全整備局 危機管理センターに出頭せよとのことです」
「そう。明日は直接海上安全整備局へ向かいます。何か新しい情報があれば連絡を」
(なにか嫌な予感がする。猿島の砲撃だけじゃない、もっと大きなことがこれから起こる予感がしている)
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