GATE;「扉ガバガバじゃねえか!」と叫ぶ転生者 (水の水割り)
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プロローグ(ほんへはまだ先)
生きかえったぜ!投稿者、普通の大学生


初投稿です


 

 

「お主は死んだ、これからお主には転生してもらおう」

 

 

 

 呆然と"ソレ"を見上げる俺は、"ソレ"が放った言葉よりも他の事が気になって仕方がなかった。

 

 未だ認める事の出来ない自身の死、残してしまった家族、俺がいなければいけないまだ中学一年生の妹、親孝行もやっと出来そうだった親父とお袋、やっと馴染めてきた会社、この人についていこうと決めた社長、気の良い仲間達。

 そして最後に頭の中で浮かぶのは決して多くはないが仲の良い友人達。

 

 

「なんでだよ……どういう事だよ!! 一体何がどうなって……」

 

「言いたい事はわかる」

 

 

 頭が痛くなって、パンクしそうになって、膝をついて、およそ人間が普通に発せられるような声ではない"ソレ"の声を無視して両拳を降り下ろす。

パシャァン! と水音と共に握った拳に痛みが滲み出てくる。

 

 ……痛い、だって?

 

 そうだ、痛いし体だって傷1つないじゃないか! これのどこが……!!

 

 

「痛っ……。おい! 俺は死んでないぞ! 痛いし身体だって普通じゃないか!!」

 

「ふむ......ここは"狭間"。生者の世界と死者の世界の間にある場所、これから死者の世界に行く者としてお主の()は造られておる。つまり痛覚があるのも異常がないのも当たり前だと言っておこう」

 

 

 俺の主張を、"ソレ"はフヨフヨと白い服をたなびかせながら軽く否定する。

 俺はただ、足下まである水目掛けて地団駄を踏むしかなった。

 

 

「くそったれ……! とにかくこんなふざけたエンターテイメントに付き合ってられるか!! 俺は――――」

 

「妹なら無事だ」

 

「――――え……?」

 

川内(せんだい)(まい)、13歳。そのお主の妹なら先程駆けつけた警察官に保護されておる」

 

 

 俺が"望んでいた事"が初対面の"ソレ"に伝えられ、電撃が走る。

 そして次々と浮かび上がる思考。

 

 ――――コイツは一体何なんだ?

 

 ――――何故コイツは舞を知っている? 何故こんな初対面の奴から舞の無事を、まだ確認も出来ていないのに口頭で伝えられただけで"安心"出来るんだ?

 

 そう考えてくると頭痛がスーっと引いてくる。

 やっと俺は冷静になってきたみたいだ。

 海辺の様で違う、水平線の彼方までずっと続いているであろう浅い水に真っ白な地面。上をふと見上げると、まるで神秘の体現の様に光が溢れ、汚れのない雲が漂っている。

 よし、周りを見る余裕もできた。

 

 ならばやることは1つ、奴の目を見て唾を飲み込み。

 

 

「お前――――なんだ?」

 

「やっと気を戻したか。だがその物言いは関心出来んな」

 

「……貴方は、一体どちら様でしょうか? 何者なのでしょうか?」

 

 

 割と正論だった、正直恥ずかしい。

 改めて丁寧な口調で話し上げる。

 

 

「うむ、わしはお主らで言う"神"、その辺りに該当することになるかの」

 

「……神?」

 

 

 あまりにも規格外な事についおうむ返しに返答してしまう。

 死んだ、神、転生、そのキーワードはまるでテンプレ切り張りのラノベを思い出させる。

 

 

「左様、わしはこの"狭間"の管理者。解ったかいの?」

 

「……一応、わかりました」

 

「よろしい。とにかくお主は死んだ、そこでお主には別世界にて転生してもらう」

 

「……本当に、俺は死んだんですか?」

 

 

 自分が死んだ。

 俺を見下ろすアイツが神なのも狭間がどうのこうのも微妙な所で納得出来るが、これだけは納得がいかなかった。

 

 

 

「ふむ……。それはお主が一番よくわかっている事じゃろう? わしに聞くまでもあるまい」

 

「……は、い…………」

 

 

 身体が震える。

 そうだ、俺は大学のサークル活動中に友達から舞が危険だといきなり電話を受けて、チャリで急いで家まで帰って、リビングで友達は腕を怪我していて、近くには友達に寄り添う舞がいて、犯人らしい血に濡れた刃物を持つ男はガタガタと震えていて――――

 

 

 ――――兄さん、逃げて! この人刃物を持ってて――――

 

 ――――この野郎! ぜってぇに許せねぇ!!

 

 ――――だ……黙れぇぇえ!! お前も殺してやるからよぉぉぉぉ!!

 

 

 それから、特に格闘技を習っているわけでも身体能力に恵まれているわけでもないただの一般人な俺はあの男に殴りかかり、返り討ちに遭ったのだ。

 

 "思い出してきた"、刃物が自分の体に刺さった時の冷たい痛みを、血が流れ出ていくと共に訪れる脱力感を。

 ダメだ! 頭を振って感覚を振り払う。

 

 

「……これも、わかったようじゃの」

 

「最後に1つだけ、残ってます」

 

 

 俺の目の前でフヨフヨ浮いているラムウの様な奴がこの場所の管理者だということは理解できた。

 俺の死も……理解できた。

 

 だが!!

 

 

「"転生"、これは一体どういうことなんでしょうか?」

 

「ふむ…………」

 

 

 困った、という風に狭間の管理者は腕を組んで唸る。

 

 

「悪いの、その質問に関しては答えられん」

 

「……書類を間違って破いたとかコーヒーをこぼしたとか、ですか?」

 

 

 もうラノベテンプレよろしくを俺が体験するのだろうか、なら俺が死んだ理由がこの辺りかなと適当にチョイスして聞いてみる。

 

 

「お主のう……色々と言いたい事はあるが違うぞい。ちなみに神々の争いに巻き込まれたとか書類ミスだとかでもない、そもそも人生の管理等わしも他の連中もしてはおらぬ」

 

「アッハイ」

 

 

 凄い呆れられた様な目で見下ろされた、滅茶苦茶解せぬ。

 というかその辺りの返答してくる辺り狭間の管理者もミーハーなのだろうか……?

 

 

「とにかくお主が転生する理由についてはわしの口からは言えぬ。ほれ、こういうのを人間は"テンプレ"と言うのであろう? さっさと転生したい世界と使いたい力を言うが良い」

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! そんな……」

 

「悪いがこれについてはもう決定された事での、すまん」

 

 

 そんな事をどんどん俺の意思を無視して進められたって困る!!

 多分もうこれはラノベとかでの《本当にテンプレの如く転生したい世界といわゆる"神様特典"を得て転生する》シーンなのだろう。

 

 だからって、俺は嫌だ!!

 

 確かに"神様特典"とかは欲しい、滅茶苦茶欲しい。分割思考とかめっちゃ性能の良いデバイスとかあったら便利だろう。だって2次元にある物は現実と違って理想を形にした物なのだから。

 

 別世界へ行くのだってそうだ。さぞかし神様特典を得てチート化した俺は焼き増しの創作よろしく敵をバッタバッタと薙ぎ倒し憧れた2次元の美少女に囲まれてウハウハな人生を送るのだろう。

 

 

 でも、皆はどうなるんだ? 舞だって側に俺がいなきゃまだまだダメだ。色んな未練がまだ俺には残っているんだ。

 

 

「断ります!!」

 

「すまん、無理じゃ。お主の転生は覆せぬ」

 

「な、ならそんな転生出来るぐらいの力があるなら別世界なんてまだ行かなくていい! 俺を元の世界のまま生かしてくれよ!!」

 

「ぬ、別世界でなくていいのか……。出来るぞ」

 

「だったら…………え?」

 

 

 は?

 

 

「で、出来るの? あっいえ、できるんですか?」

 

「出来るぞ。別世界ではなく元の世界を選ぶのだろう?」

 

「アッハイ、ソウデス」

 

「うむ、問題なく出来るぞ」

 

 

 ……や、やったぞ……俺、なんだか戻れるっぽいぞ……?

 なんだよ全く驚かしやがってヘイヘイ! ザオリクかけてもらえるならさっさと頼めばよかったぜ!

 舞が警察に保護されたことを聞く限り、俺が死んでからちょっと経ってから狭間の管理者と会ったみたいだし1時間も経ってないだろう!

 つまり今頃救急車で俺は今病院に運ばれているぐらい!

 

 

「そうと決まれば早速頼んだぜ管理者! 管理者先輩! 兄貴!」

 

「ぬ、ぬぅ……本当に別世界でなくとも」

 

「構わない構わない! いやー、にしても助かりました! ありがとうございます!」

 

「そ、そうか……なら力……特典は何」

 

「そーんなの何でもいいですって! ほらほらさっさとやっちゃってくださいよぉー兄貴!」

 

「そうか……ならば、今からお主を送る!」

 

 

 ふんす! と管理者ニキは謎ポーズをすると俺の体が光の粒子となり始める。

 お、おお、お!? なんだかそれっぽいぞ!

 

 

「あ、ありがとうございます! ありがとうございます!」

 

 

 それだけ言って、未だ困惑している管理者ニキの顔が見え……そこで俺目の前はまっくらになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まさか自分の世界に留まるとはな……。だがそれもまたよし。にしても初めての転生作業だったんじゃがこのhow to 本役にたたんのう……、〈別世界に転生できるよ! 今ならチートも付くよやったね! と言えばホイホイ頷くよ!〉なんて嘘っぱちじゃったわい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に目を開けると、予想していた病院の白い部屋とは全く違う、外。

 夕暮れ時でカアカアカラス兄貴が鳴いてる。少し遠くにはいつもの高校生達がランニングしているのが見える見える。

 

 それも見覚えのある景色に見覚えしかない特徴的に割れたアスファルト。

 そして右側には、見覚えどころか覚えてなきゃヤバイ場所、俺の住んでいるアパート。

 

 

「戻って、こられた……」

 

 

 俺が感極まって言おうとした事を、"誰か"が代弁してくれた。

 

 そうだ、戻ってこられたんだ。

 ほんの1時間ぐらいの体験だったが、今思い出すとそれが遠くへの旅だったかの様に思える。

 

 

「とにかくなんだか疲れた……今日はもう休むとしよう」

 

 

 またもや"誰か"が代弁してくれる。全くその通りだ、ザオリクかけてくれてありがとう管理者様。命って大切なんだね、俺も死にそうな人を見かけたら絶対に助けるよ。約束する。

 

 ふらふらとした足取りでアパートに入る、途中柱とかで妙に多く金属っぽい物が擦れたり引っ掛かったりするがもう気にしていられない。俺は疲れたんだ、加えて眠い。

 

 俺に割り当てられた部屋は二階の一番奥。ドアの前にある植え木鉢の底にある鍵を引っ張り出して開ける。

 この帰ってきた感パネェ、とりあえずドアに鍵をかける。

 色々と舞と連絡とりたいし友達に怪我は大丈夫か聞きたいけど先ずは……悪い。

 

 

「ああぁぁ~……、お休みぃぃ……」

 

 

 ベッドにたどり着き、布団もかけずにイン。ありがとう代弁者ちゃん、キミ可愛い声だからきっと声優目指せるよ、多分。俺と一緒に寝ようぜ。

 

 なんだか服がごつごつしていて妙だがどうだっていい……今は俺を眠らせてくれ。

 




次回→ハンターハンターが完結したら


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なんてこった!俺の体はセイバーに!?

前回は酔っていたので初投稿です


 

 

 

「むしゃむしゃ」

 

 

 なんて言おうか、どうすっかなー俺もなー。

 

 

 座っている俺と菓子パンを頬張る青セイバーさん。

 俺と青セイバーさんの間には大きめの鏡が一枚。

 自分は正座。勿論青セイバーさんも正座。

 

 

 ……食べている手を止め、食べかすが頬についたまま俺は。

 

 

 

内なる俺「これは何ですか」

 

俺「青セイバーさんです」

内なる俺「これは何ですか」

 

俺「…………俺、です」

内なる俺「何をしていましたか」

 

俺「菓子パンを頬張っていました」

 

内なる俺「何をしていましたか」

 

俺「…………現実逃避していました」

 

内なる俺「あなたは何ですか」

 

俺「青セイバーさんです」

内なる俺「あなたが青セイバーさんなんですか」

 

俺「そうです」

 

内なる俺「あなたが青セイバーさんなんですね」

 

俺「はい」

 

 

 ただひたすら英語直訳調の対話を鏡とし続ける俺。

 

 正座したままじっと鏡を見つめる。食べかすさえついてなければそれはそれはキリッとした美人な人なんだろう。

 恥ずかしがらずに鏡から出ておいで青セイバーさん。むしろ食べかすで可愛さが溢れてるよ。

 

 はい嘘です、俺が青セイバーさんです。めっちゃ青セイバーさんです。アホ毛ピンピンしてます。格好が滅茶苦茶青セイバーさんでした。青の騎士甲冑かっこいいよ。あったよ! エクスカリバー! つよそう!

 

 でも俺の股間のエクスカリバーが無くなってんだよ!!!!

 

 

「なのに声が赤セイバーってなんだよもうこれわかんねぇな」

 

 

 容姿は髪型と格好含め普通のfate/staynightとfate/zero出身のサーヴァントであるセイバー、通称青セイバー又はアルトリアさん。

 

 だが声がどう聞いても青じゃない。赤セイバーさんの方、fate/extraとか出身のネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクスこと赤セイバーさん、もといかまってワンコ系セイバーの声になっているのだ。混ざってる混ざってる、別人なのに。

 

 で、試しに赤セイバーを象徴するスキル、"皇帝特権"使ったら普通に使えたよ! やったぜ!

 

 

「余はゲームの天才だ!」

 

 

 とか言いながらコールオブビューティーやったらかなりヤバイ。一人で敵全員討って自分は無傷なの。おかげでチーター扱いされたよ馬鹿野郎!!

 で、後でリプレイで敵視点で見たらガンゲイルのキリト君みたいに弾丸を避けながら敵を討ってんの。射撃予測線とか無いのに予測して避けてるよこの赤セイバーさん()

 

 

 いや、もうマジでなんなの。俺は一体どうなっちゃったの。やべぇよやべぇよ……。

 あっそっかぁ……全部管理者ニキのせいに違いない(暴論)。明らかにおかしい、特典を蔑ろにしてしまったのが原因で激おこしちゃったの? クーリングオフきかないの?

 

 

 でも……。

 

 

 

「舞……」

 

 

 ふと、()の顔が思い浮かぶ。

 そうだ、舞は本当に無事なのだろうか。友達も……怪我したのは腕だけだったようだが心配だ、とりあえず実家に一度行かないと。

 

 

「……この格好で?」

 

 

 再び鏡を見直す。

 青のド派手な騎士甲冑

 金髪、にょーんと立ったアホ毛

 極めつけに2次元から飛び出てきましたと言わんばかりの美人、美人。

 

 いかん危ない危ない。俺だぞ俺、鏡のセイバーは俺なんだ、気をしっかり保つんだ俺。

 

 幸い自宅なんだ、普通に着替えればいいじゃんっていうツッコミはセルフでするから許して。

 fate/Zeroみたいに男装すればいいべ。

 

 

 

 

 

 

 

「……うん、行こう」

 

 

 すんません一瞬忘れてました、俺がセイバーさん(TS)になってるって。

 普通に騎士甲冑脱ごうとして胸が引っ掛かった辺りでチキンな俺は上を見ながら服を着替えた。

 

 だってセイバーさんスタイル良いんだもん、俺はバリバリ2次元ダイスキーの三次元アレルギーだがセイバーさんの眩しい半裸体の前ではただ(天井)を見上げるしかなかった。

 ごめんセイバーさん、頑張ってこの体に慣れるから許して。

 

 というわけで着替え完了である、変な汗を流しながらノロノロ着替えていたので1時間ぐらい掛かった気がする。

 あ、時計見たら40分ぐらいじゃん、やってやったぜ。

 

 

 そんなわけで鍵を持ってもう数日ぶりに感じる外出。

 今やっと気がついたんだが視点の高さがやけに低い、そういえば青セイバーさんの身長は150とちょっとだったような気がする。

 道理でいつも見えるものが見えないわけだ、また一つ納得した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………は?」

 

 

 おかしい。何故。どういうことだ。

 えっえっえっ、マジでどうなってんの? 何のドッキリ?

 

 

「お忙しい中、兄のお通夜に来て頂きありがとうございます……。兄さんも、貴女の様な美人な方にお越し頂いて、きっと、喜んでくれてますよ……」

 

 

 目の前の光景にただ愕然と突っ立っているセイバー()()は隣で微笑む。

 違う、俺が見たかった舞の笑顔はこんな泣きそうな笑顔じゃない。

 

 

 

「凄かったんすよあいつ、あのクソ野郎にこう……ドコッ! と一発決めて! いやぁーにしても川内も隅に置けないやつっすねー! こーんなに可愛い子が彼女なんて……幸せなやつっすよ、馬鹿野郎……」

 

 

 左腕を怪我していて吊っている、仲良しの友人が"初対面の"セイバー()に、気さくに話し掛けてくる。

 

 

 薄暗い雰囲気の実家のリビング、どうやらお通夜は実家で開かれるらしい。

 

 だが、誰の?

 

 俺は管理者によって生き返ったはずだ、その結果特典だかなんだかでセイバーさんになってしまったが"俺"であることに変わりはないはずだ。

 

 確信……ではないが、なんとかやっていけるだろうと考えていた。

 

 

 

 なら――――

 

 

「兄さん……ほら、ご友人がいらっしゃいましたよ」

 

 

 

 ――――舞が優しげに頭を撫でる、棺桶の中の俺は一体なんなんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回:感想と評価が114514ぐらい来たら


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つらかねぇ!もう一度俺は生きるんだ!

感想と評価、お気に入り登録がドバーっと来たので初投稿です。

この作品には
・真夏の夜の淫夢語録、又はその系統の汚い語録 が少々
・地雷作品によくある成分 がたっぷり
・隠す気が無い店の名前や地域 がなまら

含まれています。それらがアレルギーの方はさっさとプラウザバックボタンを押して、どうぞ。


 

 

 あれからどのぐらいの時間が経ったのだろうか。

 

 

「……」

 

 

 自宅へ帰ってくる途中の記憶がまるでないまま、俺は空腹を無視してベッドに潜り込んだ。

 

 実家。俺が生まれ育った家ではお通夜の準備が行われていた。

 

 棺桶の中には、俺。笑えない冗談だ。

 勿論冗談でもなんでもない、舞の悲しそうな顔と友達の空元気な所を見る限り俺は死んだままなのだろう。

 実際棺桶の中にはもう動かない毎朝見る顔、俺がいた。

 

 となると必然的に。

 

 

セイバー()は......俺じゃないのか」

 

 

 管理者は恐らく、"俺"を"セイバー"にしてそのまま俺の家の前に放り出したのだろう、死んだ俺の体を無視して。

 別にどうせなら生き返らせてくれたっていいじゃないか……。ケチな管理者だ。

 

 枕に、ポツリと染みが出来上がる。

 

 

 騙された、とは言えないが。やりきれない思いが出口を求めて腹の中でぐるぐるしている。

 

 

「セイバー……fate……」

 

 

 そういえば……とふと思いだし、ベッドに潜り込んだままそばにある本棚へ手を伸ばし、目当てのものを掴みとる。

 

 コミック版、fate/staynight、その第一巻である。

 

 

 ……とりあえず、読み直すか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……パタン、と読み終えた最終巻(第20巻)を閉じ、本棚へ仕舞う。

 

 

 正義の味方、アーサー王、魔術師、サーヴァント、聖杯戦争。

 

 所詮これは物語(仮想)なのだろう、現実じゃないといえばたったそれだけで切り捨てられる。

 

 

「だが、ここにいる()は、確かにセイバー(サーヴァント)だ」

 

 

 そう、確かにfate/staynight の登場人物として(セイバー)は今、確かに生きている。

 胸に手を当てれば、心臓が確か鼓動している。

 

 ならば、やることは一つ。

 

 

「余は……サーヴァントセイバーだ!!」

 

 

 とりあえず実家にもう一度行こう、覚悟を決めよう。

 出来るさ、きっと出来る。だってもう()(セイバー)なのだから。

 

 どのセイバーだよって言われたら返答に困るけど。

 スキルは赤セイバーだけど青セイバーの格好だからアルトリアじゃないの?(適当)

 

 

 簡単に着ているラフな服の乱れた部分を直し、ベッドに潜り込んだせいでもしゃもしゃになった髪を櫛で梳かす、凄いなアホ毛、こいつだけピンピン立ってやがる。

 髪は結わえるのが面倒なので却下、というか女性の髪型とか知らないし降ろしておこう。

 

 タンスから全財産と通帳を取り出しておき……いや通帳はやめておこう、あくまで(セイバー)は俺とはさっき適当に舞に話した通り友人の関係なんだ。

 死んだ後の友人の通帳から金を降ろす友人なんて端からみたら犯罪者じゃねえか。

 

 

 あっ問題が発生した。しちゃってた。

 そう、このオタク極まりないフィギュアとゲーム、キャラクターポスターに囲まれた全く場違いも甚だしい騎士甲冑とエクスカリバーだ。

 

 騎士甲冑、絶対これかさ張るだろ。エクスカリバーに至っては抜いて確認したらバリバリ真剣だった。

 たまげたなぁ……こんな平和な世界に宝具とか絶対いらないって。これ絶対目立つし銃刀法違反で捕まるゾ。

 

 

 さて、本格的にどうしたものだろうか。

 時計を見ると深夜の1時過ぎ頃、俺の部屋の合鍵は舞が持っているので明日ぐらいにはここに舞や家族がやってくる可能性がある。

 つまり、時間があまり無い。

 それまでにそそくさとここ(俺の家)を出ていかねばならない、なんだか自分の家族から逃げるようでややこしい話だが仕方がない。とにかくこの騎士甲冑とエクスカリバーをどうにか――――

 

 

 

 ――――ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぐぎゅるるるるるる…………

 

 

 

「ご飯……食べよう。お腹空いた……」

 

 

 

 とりあえず、ご飯食べよう……。よく考えたら今日は菓子パン以外何も食べてない気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして時は丑の刻ぐらい。

 

 

 

 

「これは私のファミチキです!! 貴方はそこの飲料で十分でしょう! サラダもありますよ!!」

 

「やかましいわ! 腹ペコ王はマスターの家で飯食わせて貰え! その惣菜は俺↓の↑だァ↑↑!!」

 

「え、えーとお客様。当店での喧嘩は……」

 

「「黙ってろ!!!」」

 

「アッハイ」

 

 

 ファミリーマートでは、惣菜戦争が()と目の前の男によって起こっていた。

 

 

 時はほんのちょっぴり遡る。

  

 

 

 家の冷蔵庫に何も無いことに絶望し、そう言えば買い出しに行っていなかったと過去の俺を恨みつつ、なんとかファミリーマートまでやってきた私はそこでご飯を調達しようと考えていた。

 

 だがしかし、今は深夜2時前。

 悲しいかな、深夜のファミリーマートでは弁当、おにぎり、サンドイッチ、そしてパンすら全滅していたのだ。

 最早何かの陰謀としか考えられない。ひでしね(八つ当たり)

 

 とにかく食べるものだ、食べるもの。肉、そうだ肉が食べたい。肉を食い荒らしたい。

 ()は目をバーサーカー化させてファミリーマート店員を怯えさせながらすっかり綺麗になった弁当コーナを睨み付ける。

 セイバーの中身が俺でよかったな、愚民共。

 

 

「……ん? すんすん……」

 

 

 が、ここで"匂い"に気がついた。油っこいような、そんな匂い。

 

 この匂い……惣菜か!!

 

 ()は即座に弁当コーナーから跳び、一直線にレジ前へと着く。

 よし――――あるぞ、いっぱい。

 

 

「惣菜、全部下さい!」

 

「ファミチキ下さい」 

 

 

「「は?」」

 

 

 ()が店員に声をかけるとほぼ同時、もうひとつの声があった。

 

 反射的に声がした方、右に向いてその不届き者を見る。

 不届き者も又、此方を向いていた。

 

 

「え? あ、ちょ、あんた……セイバー!?」

 

 

 わなわなと震えた指を此方に向ける男。

 特徴らしい特徴は……多分無い、30前後だろう歳の割にはよく鍛えられているであろう身体がTシャツ越しにわかる。

 

 ……ん? セイバー? こっちを見て、セイバー?

 そうだった、()はサーヴァントセイバー、最近増えてきた所謂セイバー顔のアルトリアだったんだ。

 

 信じられない。幻の具現した存在を見ているといった顔で()を見て、震える男はパクパクと口を動かす。

 

 

 うーん……まぁ、いいか。知らない人だが勿体ぶる必要もないんじゃないだろうか。

 

 

「サーヴァントセイバー、聖杯無くとも参上……。とでも言えば満足か?」

 

 

 セイバー(アルトリア)がすぐにわかるならこの男、相当のオタク(同族)だろう。

 

 深夜。

 月明かりではなくファミリーマートの照明と。

 ファミリーマートの店員が見守る中で。

 

 

 ()と、伊丹耀司はこうして出会った。

 

 

 

 

         

 

                           

 

 

 

 

 

 

 




ここでオリ主君視点のセイバーは一旦終わり、次回からGATEしてるほんへに入ろうと考えています。
ですが、足りません。どうしても私に足りない物があります。
そう、援助です。このクッソくだらないガバガバ作品を続けるには皆様の援助が必要なのです。
具体的に言うと、お金です。皆様のその薄汚い財布からですね、小汚い野口さんを、僕に恵めって言ってるんd





次回→遊戯王アニメシリーズが終了したら


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ほんへ
真夏の夜の悪夢


僕がガンダムです。
つまり、初投稿です


 時は流れ、夏。

 自身の死、家族や友人との事実上の別れ、そしてこの身体(セイバー)との、恐らく一生の付き合い。

 

 そして今、()が何をしているのかというと。

 

 

「伊丹、おかわりを要求します」

 

「ふっざけんなやめろ馬鹿! もうお前5杯目だぞいい加減にしろ!」

 

「ダメ……ですか?」

 

「幾ら可愛く言ってもそのエクスカリバーをチラチラさせてる時点でただの脅迫なんだよ!! ったく……」

 

 

 仕方ねえなぁ、と食卓を支えるテーブルの席から男が立ち上がり、()の茶碗を持っていく。

 そしてキッチンまで行き、彼はほかほかのご飯を()の茶碗によそう。

それを一通り確認した()はさっきからチラチラさせていたエクスカリバーを収納した。

 どこに? さあ、粒子になって消えるから自分でも知らん。便利っすね。

 

 

「うむ、大義であるぞ伊丹。伊丹のご飯は大変美味であるからな」

 

「ただ単に自分で飯作るのが面倒だからだろ腹ペコ謎セイバー」

 

「謎セイバーゆーな」

 

 

 ふんぞり返って尊大に誉めたらジト目で返された。あれーおかしいね。

 ちなみにテーブルに向かい合って夕食を食べている男の名は伊丹耀司。

 

 そう、あの日ファミリーマートで会った男である。

 

 あの第一次惣菜戦争がどう終わったのかと言うと、キレた店員が。

 

「あったまきた……(冷静)本気で怒らしちゃったねぇ! 私のことねぇ! お姉さんのこと本気で怒らせちゃったねぇ!」

 

 などと意味のわからない事を言い出し、錯乱した様子でどこからともなく取り出した日本刀片手に私達に襲いかかってきたのだ。

 腐っても(中身俺でも)身体は青セイバー。ついでに深夜のテンション+空腹で凶暴化していた()は難なくその錯乱した店員に男女平等腹パン。白い床に沈めた。

 

 その後、正気に戻った私が沈めた店員を見てオロオロしたり、脈が無い事を確認してしまった伊丹が必死に店員に心臓マッサージして蘇生したり、やってきたお巡りさんに厳重注意を受けたり(絶対厳重注意じゃ済まないだろうと考えて肝を冷やしたが伊丹が自衛官らしく、上手く話をつけてくれた)

 

 そして伊丹の一言。

 

「まぁ……その、なんだ。とりあえずウチ来るか? 腹空いてるみたいだし簡単なものなら作れるぞ」

 

 勿論()は即OKである。その優しさに甘えさせてもらった。

 

 以上が、伊丹と()の馴れ初めである。

 

 それ以来、()は伊丹の住居に転がり込んだのだ。

 

 

 

「にしてもセイバー(お前)が来てからもう早3ヵ月か……。まだ何もわからないのか? 自分の事」

 

 

 感慨深く、野菜炒めを頬張りながら伊丹が見つめてくる。

 

 ……ご飯を進める手を止める。

 

 

「……すみません、色々考えてみましたがどうしても私が"ここにいる理由"がまるでわからないんです」

わからないんです。」

 

 

 詳しくは〈()がセイバーとして転生した理由〉になるわけだが。

 これについては伊丹には全く話していない。

 転生したんです、なんて言えないし今の私は〈なんか知らないし聖杯無いけど勝手に参上したセイバー〉として話を通すことにした。

 

 

「そっか」

 

 

 私の曖昧な答えにそれだけ言って伊丹は自分の食事に戻る。

 騙して悪いが許してくれ。いつか必ず、私に決心がついたら話そう伊丹。

 

 

 

「それにしても……あのときは本当にあっさり信じましたね、私がセイバー(サーヴァント)だと」

 

「まぁ初めて見た時はまさかとは思ったけど……。普通の人間は店員を腹パンで心肺停止させないだろ。そんなヤバイ奴ほっとけないしな」

 

 

 全くその通りだな、と()が微笑み、伊丹もそれにつられて笑いだす。

 まぁ笑い事で済んでよかった。

 本当におかしな出合いだ。

 この平和な日本で、こんな奇妙な出合い方をしたのだから。

 

 

「そういえば伊丹、明日の準備は済ませていますか? 夏の同人サークルイベント」

 

「準備したってへーきへーき。熱中症対策の保冷剤も冷凍庫で冷やしてあるしそれ以外は全部バッグに詰めてあるよ。バッチリだ」

 

「ああ、それと……」

 

「全く心配性だなぁ……」

 

「居候の身ですから」

 

「お前本当に何セイバーだよ……」

 

 

 げんなりとする伊丹は無視、ぱくぱくと夕食を進める。

 うん、美味しい。ご飯はつやつやもちもちだし野菜炒めも歯ごたえがよく味もしっかりしている、味噌汁に至っては一口飲めばそのまま身体が溶けてしまいそうなぐらいほっとしてしまう。

 

 つまるところコイツ(伊丹)、料理が普通に上手い。

 ここ、伊丹の住居に転がり込んで以来大体毎日()は伊丹の料理を食べている。

 自衛官(多人数組織)だし大量に作ることに慣れているのだろうか、それでもどれも中々美味しいものばかり作る、ラノベ主人公かコイツは。

 

 

 

 あ、そういえば忘れてた。と自分の空になった皿と伊丹の皿を片付けながら思いだす。

 

 

「おっと、忘れていましたね伊丹。今月の居候賃です」

 

「お、やったぜ。確かに受け取ったぞー」

 

 

 茶封筒を渡すとひらひらとさせてニッコリ笑顔で返す。

 中身は諭吉が10枚、()が稼いだ居候賃だ。

 

 どうやって稼いだかはもうお察しの通り赤セイバー(ネロ)のスキル"皇帝特権"で新たなスキルである"黄金律Aランク"を主張したのだ。

 結果、株をやれば大儲け。宝くじをやれば2等が当たり前。とりあえずお金が向こうから来る勢いになる訳だハッハッハッ。

 

 ちなみに"皇帝特権"について適当に説明すると。

 

 

 本来自身が持ち得ないスキルでも"主張"すれば短期間だが獲得することが出来るスキル。

 

 

 それだけ。本当にそれだけのあっさりとした説明になったが、これが本当に便利過ぎて困る。

 何せ「余はセイバーである!」と半分適当に主張した結果が今の口調(セイバーフィルター)になっているのだから。

 

 そう、俺が何かを話したり行動する度に大体ほとんどがまるで一度フィルターか検閲がかかって修正が入ったかの様にセイバーっぽくなる。

 演技力Aでも獲得したのか俺は。

 

 

「それにしても本当便利というか何というか……いいなぁ、それ(皇帝特権)。羨ましい限りだ」

 

セイバー(ネロ)ですからって、それ一番言ってます」

 

サーヴァント(過去の英雄)の割にはやけにミーハーだよなお前……」

 

セイバー(型月キャラ)ですからね」

 

「自分で言うのか……(困惑)」

 

 

 そういえばそうだ、と伊丹はタブレットを操作し始め。()に画面を見せる。

 

 

「ん、何ですか?」

 

「まぁまぁ、見ろって」

 

 

 開いているのはネットブラウザで、サイトはまとめか何かっぽい、"聖杯速報"ってタイトルがある。

 えーとどれどれ……。

 

 

 

 

〈聖杯戦争が密かに行われている可能性が微レ存……?セイバーさんが⭕⭕市に出没!!?〉

810スレ目

 

 

 

931:体は名無しで出来ている: 20XX/0X/XZ(金) 15:32:54.ID:aksry893.net

俺もさっきセイバーさんっぽい人を商店街で見かけたゾ、ちなみに>>1の言った通り髪を降ろしてたゾ。

 

 

932:体は名無しで出来ている: 20XX/0X/XZ(金) 15:34:58.ID:810animal.net

んにゃぴ……。可愛いっすねぇ~、じゃけん見守りましょうね~。

 

 

933:体は名無しで出来ている: 20XX/0X/XZ(金) 15:35:32.ID:MURkrt89.net

>>932 おっそうだな。じゃあさじゃあさ、そのセイバーネキの写真上げてくれよなー頼むよー。

 

 

934:体は名無しで出来ている: 20XX/0X/XZ(金) 15:35:42.ID:go1sg0d00.net

>>933 は?(威嚇)

 

 

935:体は名無しで出来ている: 20XX/0X/XZ(金) 15:35:59.ID:hidesine0.net

>>933 は?(迫真)

 

 

936:体は名無しで出来ている: 20XX/0X/XZ(金) 15:36:11.ID:AUOgolden.net

>>933 は?(慢心)

 

 

937:体は名無しで出来ている: 20XX/0X/XZ(金) 15:36.57ID:nnk118zk.net

>>933 本人が了承してくれるならともかくなぁ……。多分誰も許可なんて取れてないだろうから諦めて、どうぞ。

 

 

938:体は名無しで出来ている: 20XX/0X/XZ(金) 15:37:27.ID:MURkrt89.net

ファッ!?辛すぎるッピ!

 

 

939:体は名無しで出来ている: 20XX/0X/XZ(金) 15:38:32.ID:katyou19.net

というか他のとこも見回ったし俺も頑張ってはみたけど今んとこ誰もそのセイバーネキの写真をまともに撮れてないんだよなぁ……。

 

 

940:体は名無しで出来ている: 20XX/0X/XZ(金) 15:39:01.ID:1919TDN.net

>>939 うせやろ?

 

 

941:体は名無しで出来ている: 20XX/0X/XZ(金) 15:40.25.ID:RIMkukkiy.net

>>940 マジなんだよなぁ

 

 

942:体は名無しで出来ている: 20XX/0X/XZ(金) 15:41:11.ID:DDDN893kbs.net

セイバーネキはアサシンネキだった……?

 

 

 

 

 

 懐かしいな、久しぶりにこういうまとめサイトを見た。

 俺もまとめサイト、よく見てたなぁ。最近はめっきり見なくなっちゃったけど今でもあの心の躍動は残っているのだろうか。

 ()は借りているタブレットを伊丹に返す。

 

 すると伊丹はふっと微笑んだ。

 草原を優しく撫でる様な笑みに、()も笑顔になる。

 なんて優しい世界なのだろうか、笑顔が笑顔をつくるということは。

 

 

 

「明日のイベント、お前留守番な」

 

「ん!?」

 

 

 




5000UA、お気に入り登録者数100超え、平均評価7超え
正直言ってこんな色々混ぜた二次創作がここまで伸びるとは思いませんでした。

だから皆さん、私にFGO水着サーヴァントを全種類ください。全種類です、全種類あればいいです。
僕に全種類の水着サーヴァントをくださるならば、僕が喜びます。
僕が喜ぶということは、すなわち全銀河の喜びだと何故わからないんでs


次回→雁夜おじさんが幸せになったら


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自重せよ、セイバー

少年の心をまだ忘れていないので初投稿です
今回やっつけかも


エクス(約束された)……カリバー(勝利の剣)!!!」

 

 

 力任せに、しかし手加減して振るわれた光が、"奴ら"を呑み込む。

 

 

エクス(約束された)……カリバー(勝利の剣)!!!!!」

 

 

 地を走る緑色のセイバー()よりも身長が低いが、手には剣や棍棒等思い思いの武器を携えた"奴ら"、それに続く......オークだろうか、尖兵とは反対に大きな体躯の奴だ。

 どちらも二足歩行というぐらいしか人間との共通点が見当たらないし、顔も人とはかけ離れた造形である、明らかな"敵"。

 

 開け放たれた"門"から次々に沸いて出てくるそんな異世界めいた"敵"をリスポーン狩りの如くエクスカリバーを振るい薙ぎ払っていく。

 

 何せ、()がさっきから振り回してビームを撃っているこのエクスカリバー(宝具)

 敵が弱過ぎるのか(セイバー)が強過ぎるのかはよくわからないが大抵の"奴ら"が手加減して撃ったエクスカリバービーム一発程度で塵になるのだ。これは助かる。

 

 ついでにエクスカリバー(約束された勝利の剣)を幾ら連発しようが全く私は疲れもしない。

 文字通り必殺技撃ち放題だ、やったぜ。

 

 

 

「さぁ、私を倒さぬ限りここから先は交通止めだ! 後ろの方は下がって避難を!!」

 

 

 そして場所はというとなんと大都会、東京の銀座ど真ん中、人通りも勿論少なくない昼前の大通りでのこの大立ち回りである。

 そんな大通りに目の前にある、石造りの"門"が突如道を無視して現れたのだ。

 

 もっと交通会社や車の人に優しい場所に現れようとは思わなかったのかこの門は……。

 

 

 ちなみに、何故ここに私がいるかと言うと……まぁあれだ、留守番に飽きた。

 伊丹より早く帰ってきて家事をパパっと終わらせ、何食わぬ顔で出迎えれば問題ないと思って来たのだが。

 この"門"によからぬ直感スキルが働いたのである、以上。

 

 

 とにかくエクスカリバー(ビーム)を連発した結果、突っ込んで来た連中は全員塵と化した。最早そこにいたことすらわからない様な事になっていると共に、門の前にはエクスカリバービーム(約束された勝利の剣)によるクレーターが幾つか出来ている。

 

 殺っちゃったけど人間じゃないからセーフ、グロ死体でもないからセーフセーフ、辛くない、SAN値も減ってない。

 

 

「ゴ……ゴブリンとオークの混成部隊が全滅……だと……」

 

「やべぇよやべぇよ……」

 

「ポッチャマ……」

 

 

 恐らくは人間……であろう。突っ込んで来たゴブリンやらオークとは違い中世の騎士の様な武装で身を固めて大盾と槍を装備した連中が、今しがた見る限り全てのゴブリンとオークを全滅させた()を警戒して大盾を構えている。

 その綺麗な横列は、稀に見るドラマや映画で活躍する機動隊を思いださせた。

 

 

「ふふふ……怖いか? 今なら見逃してやるぞ」

 

 

 完全に萎縮している"奴ら"にエクスカリバーの切っ先を向けて、宣言する。

 

 何人かは「ヒェッ……」と、身を引いた。いいぞ、もっと私を怖がるんだ。

 

 正直なところ、逃げ帰ってくれるならそれが一番良いし、()も精神すらセイバースペック(鋼鉄の塊)とはいえど、人殺しは可能な限りしたくはない。

 

 

 それに問題は()よりも……。

 

 

 

「うおすげーー! 映画の撮影か!?」

 

「セイバー! セイバー! (オレ)だーー!! 結婚してくれーー!!」

 

「あれってアルトリアセイバーだよね! キャーこっち向いてー!!」

 

「ホラー! 横向くんだよ90度! 写真撮らせてくれよオォン!!(無断撮影兄貴)」

 

「いやいやあれはアルトリアネキの格好したネロネキだって! 声がそうだルォ!?」

 

「あれーおかしいね、あの腰にあるのってアヴァロン……たまげたなぁ」

 

 

 

 

 ……この、後ろにいる野次馬(平和ボケ達)である。

 危ない現場で野次馬してる一般人に避難勧告を出してる人の気持ちが分かるぞこれは。これはかなりイライラする。

 

 さっきから何回か声を張り上げて避難勧告を飛ばしているが、当の野次馬達は全く()の言うことを聞かずに留まっている。

 

 一応門から来た"奴ら"が危険な存在である事、私が応戦している事、危ないから下がっていることを踏まえてはいるようだが……。

 

 正直な話、本当にすっごく邪魔くさい。

 

 守りながら戦うとか討ち漏らした敵が向こうの方に行くとかもそうだが……。

 門を前に私が真ん中、そして私の周りをぐるっと一周野次馬が囲ってしまっているため、滅茶苦茶周りが気になる。道路の破片とかを誤って飛ばしたら負傷者が出るのは確実だし、エクスカリバー(約束されし勝利のビーム)も手加減しないといけなくなる。

 本気でぷっぱなすなら気が楽で簡単だが、幾ら疲れないとはいえプレッシャーがヤバイ。

 機動隊とか警察がこういう時なんとか避難させてくれるのだろうが、稀にそれっぽい声が聞こえてくるだけだ。

 

 

「ええい! ここは危険だから避難しろと言っている!」

 

 

 未だ騎士兵が私にビビって攻められないのを確認し、つい苛立って声を荒くして叫ぶ。

 考えたくないが……奴らがこの"門"だけから来ているとも限らないのだ。

 

 もしそうだとしたら大惨事も良いところだ。東京がヤバイ。明らかに侵略しに来てる気満々だしいくら日本な自衛隊やらの戦力があっても少なかれ被害は出るだろう。

 

 私が声を荒げても……ダメだ、誰も避難はしてくれない。

 

 

 更にここで、想定していなかった事態が起きた。

 

 

「落ち着け者共! 恐らくあの女騎士一人だけが強大なのだ! 散って付近の者を盾にしていけ!!」

 

「おおっ、流石隊長! やりますねぇ!」

 

「おっそうだな」

 

「そうだよ(便乗)」

 

「じゃけんザコを盾にしましょうねぇ^~」

 

 

 

「何っ!?」

 

 

 なんと、奴ら騎士兵が隊長らしき目立つ男に指示されるやいなや、私ではなく門を出て直ぐ真横、野次馬を目標にして左右に散って行ったのだ。

 途端、やっと野次馬も状況の悪化が解ったらしく逃げ出そうとするが、人数が多く更に私を見ようと詰めていたみたいで全く避難出来ていない。

 

 ま、不味い……とりあえず右! まずは右に行った奴を叩く! 死ね!(手加減)

 

 一瞬、対応が遅れたが流石はセイバー(この身体)、ほぼ数瞬で右側へ行った騎士兵数人に追い付き、野次馬へ危害が及ぶ寸前で(エクスカリバー)をその辺りにポイ捨てし、青の騎士甲冑をたなびかせて殴りかかる。

 

 

「だぁ!」

 

「ンアーッ!!」

 

 

 まず一人、いつもの(腹パン)で道路に沈める。 

 

 

「行くな、止まれ!」

 

「イキスギィッ!? イクッ!!」

 

 

 二人目、側面からショルダータックルを決めてぶっ飛ばし、壁にぶつける。そのまま追撃は……よし、気絶したみたいだ。

 

 

「オラァ! ケツだして盾になれっつってんだル」

 

「止まれと言っただろう!! シュバルゴ!!」

 

「であいたいっ!!」

 

 

 右に行った最後の一人を、首根っこを引っ付かんで二人目と同じく壁に、今度は投げて叩きつける。

 

 

「あ、ありがとナス!」

 

「いいから避難しろ! あっちは……!」

 

 

 襲われかけていた男性を軽く流し、急いで振り返って反対側を確認する。

 

 

「ちょっと手錠貸せ! よし、確保! このヤロお前らのせいで夏の同人祭典が台無しなんだよオルァ!! わかる? この罪の重さ、を、YO!!」

 

「放せコラ! 流行らせコラ! ア゛ッー!!」

 

 

 反対側に一人行ったのを見知った男……、伊丹が取り押さえていた。

 そのいつも優しげな顔は怒りで歪んでおり、手錠を掛けているようで無力化しているものの追い打ち気味に関節を極めている。痛そう。

 

 服装を見る限り、同人イベントに行く途中だったのだろうが、多分騒動に勘づいて来てくれたのだろう。こういう奴が自衛官の鏡というのだろうか。

 普段やる気はないみたいだけど、このファインプレイは感謝だ。

 

 

「伊丹!」

 

「行けセイバー! あいつらを"門"の向こう側に押し込めろ! 今自衛官や警察官が総出で市民の避難誘導をしているから後ろは気にしなくていい!!」

 

「了解!」

 

 

ポイ捨てしたエクスカリバーを回収して再び"門"の前、"奴ら"の前に立ちはだかる。

 

 

「ぬ、ぬぅ……! 怯えるな! 門から出られれば……」

 

 

 数秒経たずして散開する事も出来ず、完全に仕掛けるタイミングを失った大半の騎士兵。

 その隊長が更に萎縮した兵に激を飛ばそうとしているが、そうはいかない。

 本当に申し訳ないが――――。

 

 

「まぁまて、折角だ。余のこれも見ていけ(つわもの)よ。後ろの黒い者共も見ておけ」

 

 

 ――――いつの間にか、()の後ろでライオットシールド(防護盾)を構え、私ごと門を包囲している機動隊らしき人物も含めて。

 

 "戦う気"を喪失させようと思う。

 

 

「な、なんだ……今度はどんな魔法を使うのだ!?」

 

「アルトリアセイバー……鞘……あっ(察し)」

 

「カエリタイ……カエリタイ……」

 

 

 前からも後ろからもどよめきの声が上がるのに満悦し、叫ぶ。

 

 暴君という代名詞を持つ、セイバー()の宝具の名を。ゲームで何度も世話になった、あの名前を。

 

 軽やかに舞う様に、ステップを踏み。

 自身の才に酔いしれる皇帝の如く、高らかに。

 青の騎士甲冑のままの青セイバーで似合わないが、まぁいいだろう。大切なのはノリと勢いである。

 

 

「我が才を見よ! 万雷の喝采を聞け! 座して称えるがよい……黄金の劇場を!!!

 

招き蕩う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア)!!!!」

 

 

「マジで何やってんのお前!?」

 

 

 伊丹が何か言ってるが気にしない。

 要は"奴ら"の進軍を阻みつつ、逃げられない様にすればいいのだ。

 

 宣言すると同時に世界が。

 具体的に言うと銀座大通りだったはずのクレーターだらけだった道路は赤い絨毯と金の床へと変貌し。

 下から、上へと。周囲の建築物やらを無視してそれは投影されてゆく。

 

 

「こマ……うせやろ?」

 

 

 機動隊の一人が呟く。

 

 金と赤に彩られたその皇帝の劇場は()を中心として完成し、後ろにいた機動隊と前にいる奴らの一部を完全に閉じ込める。

 

 建築物()を無視して投影された劇場だ。当然奴ら、前にいた敵の隊長と騎士兵数人は此方側(黄金劇場内)に無理矢理招かれ、残る後ろは招かれざる客として黄金劇場外に隔離した。

 

 そしてこの招き蕩う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア)は"門"を塞ぐかの様に投影してある。

 

 これで"門"から"出る"事も"入る"事も()が許可するまで不可能となった。

 

 

「さて……黒い兵(機動隊)よ、あの者共をどうこうするのは任せ……」

 

 

 

 

「「「「「検挙ォォーーーーー!!!!!!」」」」」

 

 

 

 

「……たぞ……」

 

 

 最早茫然と、案山子同然に立っている騎士兵達に、機動隊がライオットシールド(防護盾)で襲いかかる。

 騎士兵達は戦意喪失し、全く抵抗していない。

 

 

「そんな……嘘だ……あり得ない……出鱈目だ……」

 

 

 先程まで叱咤激励していた隊長ですら、目を虚ろにして大人しく身を拘束されている。

 まぁ……うん、ここ日本だしそこまで悪いようにはされないだろう。

 そんな事を祈りながら、周りに拘束の指示をしている伊丹に声をかける。

 

 

「どうだ伊丹、余の招き蕩う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア)は? 凄いであろう、壮観であろう、美しいであろう? 敵の兵を捕らえると同時に"門"を塞ぎ新たな兵を食い止めるという余の素晴らしい策に感動し、今日の夕食(ゆうげ)はピザーラにするがよい、ん?」

 

 

 ()としては。

「門は塞いだから敵を食い止めたぜ! ついでに尋問用に捕らえたぜ! だから今日の夕飯はピザにしようぜ兄貴!」

 ぐらいの事を言いたかったのだが流石は常時発動している皇帝特権(セイバーフィルター)。勝手にセイバー(ネロ)っぽく翻訳されて口からでる。

 

 

「ああ、お前が"門"の前でこいつらを食い止めてくれたおかげで"市民への被害は"全く出ていないな」

 

「ふふん、そうであろう? もっと余を誉めるが良い!」

 

 

 どやぁ、と言わんばかりであろう()にいつもの様に微笑み。近くにいる適当な機動隊員を伊丹は呼ぶ。

 そして「だがなぁ……」と続け、()の腕を掴みあげ。

 

 

 

 がしゃんっ。と。

 

 ……え、何コレ。手錠? 私に? 手錠? 何で?

 

 

「とりあえず検挙なセイバー。道路壊したから往来妨害罪だ、悪いがちょっと来てくれ」

 

「それと銃刀法違反っすね。すんませんねー、ちょっと来てくだせえ」

 

「ま、まてまて伊丹! 余は市民を守ったのだぞ!! 伊丹ーーーーーー!!!!」

 

 

 壊そうと思えば楽に引きちぎれそうだが、伊丹の前である以上荒事には出来ない。

 二次創作にありがちな組織アンチじゃあるまいし。

 

 

「伊丹ーー!! 伊丹ぃぃーー!!!」

 

「悪い! 頼むから大人しく拘束されててくれセイバー! 後で必ず迎えに行くから!」

 

「くっ……約束ですからね!」

 

 

 

 結局、私は自分で黄金劇場の出口を解放し、機動隊に連行されてしまった。

 何故……とは言えはしないが、あんまりではないだろうか。

 

 




皆さん、お久しブリーフ。僕がウィロー博士です。

こんな作品を、今か今かとアホみたいに待ち続けている皆さんに、私も早くしなければという焦りから今回はガバガバが更に加速したものとなりました
よって、僕は悪くありません。
えっこら、やんのか?いいよ、纏めて相手をし


次回→決意の朝が来たら


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セイバー 拘置所にて カツ丼を食せり

生きていく意味を忘れたので初投稿です


「伊丹耀司、33歳。自他共に認める"オタク"。趣味に生きる為に仕事をするとぬかしとるが……ブツブツ……」

 

 

 俺、伊丹耀司は自衛官である。

 別にこの頃流行りの転生者とかでも無い俺はごくごく普通のオタクであり、それ以上でもそれ以下でもない。

 ついでに言うと生まれた時から力がアホみたいに強いとか悪魔っぽい実を食べたとか、魔法の力に目覚めちゃったりとかもしていない。

 

 そんな異能力とか憧れるよなぁ……とは思うがなんか思ってたのと違うのが同居人(セイバー)なので、どうにも微妙というかなんというか。あいつ(セイバー)の話し方とか性格、能力を見てると大学時代ふざけてやった闇鍋を思い出す。

 大学時代の友人三人は。

 

 

 にしてもセイバーは元気だろうか……。

 拗ねてなけりゃいいんだがなぁ……。

 

 

 ……先日の事件(銀座門攻防戦)から、実に丸一日が経った。

 

 銀座門攻防戦といっても実際聞いた話だと、俺が到着するまであいつ(セイバー)一人で"門"から出てくる敵を一掃していたらしい。

 

 そして門をそのまま塞ぐかの様に投影された黄金劇場(宝具)である。

 今も尚銀座大通りに"門"以上にでかく交差点のど真ん中にあるが、いつ消えるかわからないシロモノだ。

 勿論あの黄金劇場が消えたら開いたままの"門"が残るのではないのかと懸念され、現在は自衛隊が戦車を引っ張り出して警戒にあたっているらしい。

 又、黄金劇場を一目見ようという一般市民が出てきているらしい。

 暇だなーお前ら……俺ら(自衛隊)はマジで忙しいってのに。

 

 

 

 あ、そうだった。もう1つあった。

 

 

 なんか俺、"銀座門攻防戦の英雄"って形で一躍有名人になったっぽい。やったぜ。

 なんでも現場にて味方戦力(セイバー)と共に未知なる"侵略者"と交戦した事で、冷静な判断と多大なる勇気を称賛し~。

 

 ……と、いう何か賞状を防衛大臣から貰った。

 多分セイバー(ゲームのキャラ)が現実に出張ってきて敵をなんとかしちゃいましたー、なんて公表出来ないからだろうなあ上も。

 

 あと多分、その場にいた機動隊やらが俺とセイバーが親しげに話しているのを上に報告したから……なのだろうか。

 

 要は英雄(の友人)である俺を動かしやすいようにしてくれたのだろう。

 サンキュー機動隊の皆、今度俺一押しの秋葉原名物でも差し入れに行ってやろ。

 

 

 まぁ実際、目の前の上司に俺が呼ばれた理由は多分。

 

 

「まぁ、そうなりますよねぇ」

 

「"まぁそうなりますよねぇ"じゃない! 君しかいないんだよ彼女と親しい者が!! 彼女と問題なく交流を深められそうな人物が!!」

 

 

 上司である檜垣三佐は声を荒げるが、俺としては別にそこまでセイバーについては問題視していない。

 まぁ周りからしたら彼女は超ヤバイ爆弾のようなものだろうが……。

は超ヤバイ爆弾のようなものだろうが......

 

 

 俺は、あいつを信じてる。

 

 うーん、なんかしっくりこないな。信じてるってよりも……。

 

 

 ……慣れてる、とか?

 

 

「とにかく伊丹二等陸尉! 君を彼女のお目付け役として任命する、"今後の協力"を得る為にも可能な限り親好を深めるのが今後しばらくの任務とする。頼んだぞ」

 

「え? あっ、はい……」

 

「本当に大丈夫かね君は……」

 

 

 随分気が抜けた返事だなぁ、と自分で思いながら俺はその部屋から退室した。後ろからは檜垣三佐の溜め息が聞こえる。

 

 セイバーに、会いに行かなきゃなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「セイバーさん! 俺、ネロ様でオナシャス!」

 

「ふむ、カツ丼とはいい心がけですね――――――いいだろう、存分に余とツーショットを撮るが良い!!」

 

「ヒャッホー! 赤セイバー(ネロ)様だぁ!!」

 

「セイバーさん! 次は俺と……!」

 

「おっ待てい(江戸っ子)次は私でしょ! 順番守りなさいよ!」

 

 

 

 

 

「え、何これ」

 

 

 場所はとある拘置所……の、なんでもセイバー1人だけの為に急遽用意されたらしい、拘置所にしては無駄に豪華な一室。

 

 そのど真ん中でセイバーが赤セイバーの格好、例の半ケツ舞踏服を着ている。

 そういやあいつ、自分がセイバーだって言ってたけどアルトリア()セイバー以外のセイバーでもあるって言ってたような言ってなかった様な……。

 

 あー……あった、あったなー。

 その日の気分で赤になったり桜になったり白くなったりすんのはマジで朝起きた時ビビるからやめて欲しかった……。

 梨沙は梨沙で大興奮してたが俺にとっては絶世の美女が、顔はほとんど同じだが大体日替わりでいるんだ、かなり心臓に悪い。

 

 で、そんなセイバーの周りには男女関わらず……格好から見て色んな連中が来てるなありゃ、あー誰も止める人がいないなあこれは。

 ちょっとしたパーティーになってるよ。

 

 うわあ……、これは機動隊員で。これは自衛隊員で、ああ、こっちは拘置所の人員か、間違いない。なんだこれは……たまげたなあ。

 

 

 ただの撮影会じゃねーーか!!

 

 

「む? おお伊丹! 伊丹ではないか! 遅いぞ!!」

 

 

 そんな事を思いながら入口に突っ立っていると、セイバーは俺に気付いたようで、ぶんぶんと俺に手を振ってくる。

 髪降ろしの青セイバー(アルトリア)赤セイバー(ネロ)の格好をしているのは正直どうかと思うが……まぁなんだ、似合ってるな。

 

 

「ったく、元気そうで何よりだ謎セイバー」

 

「だから謎セイバー言うでない!」

 

 

 俺の謎セイバー発言にむきになり、ぷんすか! と言わんばかりに怒りだすセイバー。

 いやだってマジで謎なんだもん、お前セイバーっていう概念かよ。

 まぁとりあえずここでへそを曲げられても困るので適当に宥めておく。

 

 そうしてセイバーを宥めている内に、セイバーの周りにいた連中がわっと俺の所に集まってきた。

 ええ……(困惑)

 

 

「ふうん、貴方が"銀座門攻防戦"でセイバーさんと一緒に戦ってた人? やだ……想像より格好悪い……」

 

「いや勝手に期待されてもなぁ……」

 

 

「うぃいいいいいいいいいいい↑っす!

どうも伊丹さん、浜崎ッス!!」

 

「いや誰だよ、知らないぞ」

 

 

「おい、決闘(デュエル)しろよ」

 

「この作品に決闘(デュエル)成分は皆無な筈なんだよなぁ……」

 

 

 

 ああ、何だ何だお前ら俺に興味でもあんのか……。

 しかしまぁ連中も空気を読めるらしく、一人、又一人と俺に嫉妬の腹パンや小突いたりしていきながらもその場から退散していく。

 

 

「ちっくしょー! 桜セイバーとツーショット撮りたかっほ、ほーっ、ホアアーッ!! ホアーッ!!(チンパンジー)」

 

「来いっつってんだよオォン!!」

 

 

 最後の一人が無理矢理連れていかれ、扉が閉められる。

 まぁ、当然俺と赤セイバー(の格好をした青セイバー、ややこしい)が残るわけで。

 

 

「……食うか?」

 

「ああ、貰うよ」

 

 

 この後二人で滅茶苦茶カツ丼食った。

 しっかし珍しいな、こいつが食い物で人に自分のをあげるなんて。

 

 

 

 

 

 食い終わったカツ丼の食器やらをまとめて入口に置く。

 いつの間にか青セイバーに戻っているこのセイバーは、優雅に紅茶を飲んでいた。本当絵になるなー。

 

 

 

「って事だ。わかったか?」

 

「わかりました、つまり私は変わらず伊丹の協力者として振る舞えばいいのでしょう?」

 

「あー、うんそう。半分合ってる」

 

「ついでに私を危険視する者をアサシンの能力で殺っちまえ……と。伊丹、確かに私はアサシンクラスの適性もありますが……」

 

「違うからな!? 普通にいつもみたいに可愛くしてれば良いって言ってんの!」

 

「え、可愛いだなんて……告白ですか? 貴方既婚者なのに浮気か何か?」

 

「とりあえずお前が対話する気/Zeroだって事はわかったよ……」

 

「冗談です」

 

「チカレタ……」

 

 

 まぁ、うん……一応わかって貰えたようで何よりだ。

 

 俺がセイバーに話した事は勿論、今後の事である。

 

 俺とこれからも仲良く接して欲しい事。これは問題なかった、逆に「お前は何を言ってるんだ」みたいな目で見られた。

 

 そして、今までとは違って色々な人と関わる事になるだろうが……要するに良い子でいろって事だ。

 なんたってこんな奴でもセイバー(サーヴァント)だ。

 しかも青赤その他諸々のバリューセットなんだよなーこいつ。実質一人でどのぐらいの戦力になるのだろうか……あまり考えたくはない。

 しかも聞くとまだまだやれそうな事はあるらしい……闇鍋だ、かなり闇鍋だよコレ。手がつけられん。

 

 

「まぁ心配は無用でしょう! 私がついています!」

 

 

 セイバーが、笑顔でえへんと胸を張る。あんまない癖に無理すんな。

 

 いや、付いているの(お目付け役)は俺なんだけど。

 

 ……ま、なんとかなるでしょ。

 

 

「ああ、頼んだぞセイバー」

 

 

 手を差し出すと、セイバーも意図がわかったらしく俺の手を握る。

 

 握手し……その握り返してくる手がやっぱり女性のそれで、昨日戦っていた彼女とはイメージが違う。

 なんだか俺は、それがどうにもツボにはまった。

 

 

 

 




皆さん、二日ぶりですね
朝ランキングを見たら、見覚えしかないクッソ作品が19(イク)位に上がっていて悶絶しました。
ちなみにこの作品は淫夢成分がたっぷりも入ってないので、タグに追加する予定はありません

そう、僕が僕の作品内で運営に怒られさえしなければ、何をしようが、許されるのです。つまり読者さんはですね、その小汚い野口を、僕に恵めって言っ




次回→終わりの無いディフェンスが終わったら


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セイバー 拘置所にて 振り切れり

生きている限り人はいくらでもやり直せるので初投稿です


 "銀座門攻防戦"から早1週間が経った。

 

 ()はというと、未だにこの拘置所にしては無駄に豪華な一室にいる。

 マジでここ拘置所なの?

 連行とは名ばかりの保護だったらしいけど、いくらなんでも豪華過ぎるだろ……ロイヤルホテルか何か?

 

 

 それでこの部屋はというと、最早完全に()の自室と化している。

 インターネット環境完備!

 勿論ゲームも完備!

 テレビは最新の大型!

 ベッドはふっかふかのキングサイズ!

 備え付けの電話で内線に繋げばいつでもピザとかが食える!

 

「外出だけは勘弁してください! オナシャス!」

 と、偉そうな人から懇願されたのでそこだけは不便だが、まぁいいんじゃない?

 食っちゃ寝し放題だし天国だ。大学に比べたらマジで天国!!

 

 つまるところが、そう。

 

 

アヴァロン(全て遠き理想郷)とはここにあった!!」

 

「いや何言ってんだお前」

 

 

 ベッドに寝たまんま声がした方、後ろを見ると伊丹が自衛隊っぽい格好で入口にいた。

 全く、ノックぐらいして欲しい。

 

 

「こんなに散らかしやがって……ハァーメンドクセーマジで……」

 

 

 そうはいいながらもアヴァロン(理想郷)と化した部屋に入り、溜め息混じりに()が脱ぎ散らかした服を丁寧に畳んで片付けていく。

 

 

「あと下着姿で食っちゃ寝するのやめろよなー、周りの目に毒だし太るぞ」

 

「ふん、余の体を見せつけてやっているのだ。ついでに余は太らないぞ」

 

 

 やれやれ、と再び溜め息を吐いて部屋を片付けて行く。

 片付けは伊丹に任せて()はベッドでゴロゴロだ。

 もう私はとにかく好き勝手に生きたい。

 どうせ"俺"は死んだんだしヤケクソだ、ワガママに生きてやろうじゃないか。

 

 

「ったく漫画も散らかしっぱなしだしよ……お? お……おおおおおおお!!?」

 

「……今度は何だ伊丹。余のパンツならやらんぞ」

 

「いや普通にいらねぇけどさ……。コレ! 一体なんだよコレ!!」

 

「伊丹よ、ついにおかしくなったか……。それはラノベという娯楽でな」

 

「そうじゃなくて!!!」

 

 

 伊丹は()がAmazon で購入した戸棚から一冊の文庫本を取りだし、震えながら手にとっている。

 

 出版社はファンタジア文庫。

 そして気になるタイトルは『デート・ア・ライブ"15"』

 伊丹はそれをまじまじと、もう穴が空くのではないかと思うほど見つめている。

 

 

「これ……どうした?」

 

「続きが気になったから貰った」

 

「なあセイバー、これ来月発売の奴だよな?」

 

「うむ、だから貰ったのだ」

 

「来月なら待てよ! ってまさかお前……!!」

 

「自衛隊員に頼んだら次の日に貰った。便利だな」

 

「もうやめてくれよ……(絶望)」

 

 

 たまにここに来る自衛隊員やらと雑談を交わす内に仲良くなっちゃったりして、ついつい言っちゃったのだ。

「これの次の巻はまだなのか」と。

 よりにもよっちゃって一番修正(フィルター)が入るネロの時にである。

 

 それを聞いた自衛隊(オタク仲間)はどっかにすっ飛んで行き、次の日にデートアライブの15巻を何処かから仕入れてくれたのだ。

 それにしても自衛隊の彼はどうやって来月発売の文庫本を手にいれたのだろうか……。

 

 

「な、なあセイバー。ものは頼みというか」

 

「よいぞ」

 

「うっひょー! サンキューセイバー様ぁぁぁ!! いやー気になってたんだよなー俺もなー」

 

 

 うーん、そろそろここ(拘置所)での生活も飽きてきた。

 やっぱりアレだ、外の空気に触れたい。体を動かしたい。

 ここでの食っちゃ寝生活も素敵だが、本格的にダメなセイバーとなりつつあるのでそろそろニート卒業したい。

 という訳で。

 

 

「伊丹ー、余は外に出たいぞー」

 

「んーもうちょっと待っててくれセイバー。多分そろそろだからな」

 

「その言葉、三回は聞いたぞー伊丹……」

 

 

 ちい、ダメか。

 あぐらをかいてデート・ア・ライブ15巻を読みながら、適当にひらひらと手を()に向けて振る。

 

 しかし本当に赤セイバー(ネロ)になるのが多いなー()

 いやまぁ他のセイバーが嫌いって訳じゃないんだけどね、赤セイバーが一番好きだから他のになる機会が少ないだけで。

 後は修正(フィルター)のかかり方が中々面白くてついつい……。

 

 

「あーそうだセイバー。後でまた聴取入るからそれまでに服ぐらい着ろよー」

 

「ぬ……またか……」

 

 

 そう、聴取である。

 正体不明戸籍不明本名不明の()は4日程前から当然の如く毎日、朝と夜二回に分けて重要参考人として聴取を受けているのだ。

 

 これがまた面倒なもので。

 

「貴方は誰ですか?」

 

 から始まり。

 

「年齢は?」

 

「住所は?」

 

「我が国、日本についてどう思われますか?」

 

「貴方はとある作品のキャラクターだそうですがその事について自覚はありますか?」

 

「あのさぁ……。うち、鰻重とかあるんだけど……(本当の事)言ってかない?」

 

 ……等々、とにかくみっちり延々と質問されるのだ。

 一応向こうも()に市民を守ってくれて、ありがとナス! と感謝を述べてきてはいるものの……。

 

 どうにも日本国内にある"門"と違って()についてはそうそう事が運ばないらしい。

 なんでも海外諸国から()を国民として受け入れたい! という話が数多く飛んできており、その理由が……。

 

 偶像(アイドル)......らしい。

 アイドルになるつもりはないっす。

 いやまあね、こんなゲームのキャラクター(セイバー)が出てきたら祭り上げたい気持ちもわかるけどさ、中身俺なんやで。

 

 

 と、まぁとにかく()は今、かなり面倒な立場に立たされている……らしい。

 

 じゃあこれからどうするのか?

 いつまでもここでニートしている訳にもいかない。

 かといって海外諸国に行くのもやだなぁ……ご飯美味しくなさそう(偏見)

 

 という訳で、答えは決まっているのだ。

 

 

 ぬんっ。と気合を入れると、下着姿から頭の中で想像していたジャージ姿(X)のセイバーへと服装が瞬時に着せ替えられる。

 

 性格が、口調が、フィルター(修正)が。

 まるでゲームカートリッジを差し替えるかの様に切り替わるのを感じる。

 

 ジャージ姿にマフラーと帽子で顔を中途半端に隠したセイバー……じゃなくてアサシンのクラス、ヒロインX(アルトリア顔絶対殺すマン)である。

 ちなみにチョイスに他意は無い、適当に選んだだけだ。

 にしても本家ヒロインXが()を見たらどう思うんだか……あまり考えたくはない。

 

 

「……ふぅ」

 

「お、んじゃ行くか? まー上の方も上手くやってくれてるっぽいし近い内に仮釈放されるだろうなぁ」

 

 

 着替え(クラスチェンジし)終わった()をチラッと確認して、伊丹は読んでいた最新刊を本棚にしまう。

 私はその呼び掛けに「ん……おKです」とだけ返し、ついでに。

 

 

「伊丹、聴取を受けるのは構いませんがあの"門"の向こう側……別に制圧してしまっても構わないのでしょう?」

 

「えっ」

 

 

 さぁ、特地(向こう側)解体ショーの始まりや。

 

 

 

 

「いや、普通にまだ無理だろ。流石に我慢してくれセイバー」

 

「アッハイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流石にもう飽きてきたよ……アーイキソ(退屈)

 

 

「えーと……じゃあまず"今の貴方"のお名前をお聞かせ願えますか?」

 

「ヒロインXです」

 

「ウッソだろお前……」

 

 

 場所は拘置所内、()が保護されている場所より3階上、1階にある取調室。

 言わずもがな、いつもそこで聴取を受けている。

 

 今回の聴取相手は優男……のような雰囲気の男。

 何故男なんだ……そろそろ女性と触れあいたい。

 むさ苦しい……とにかく女性と……女性と触れあいたい。マジで。

 

 

「えっと……もしかしなくても"あの"ヒロインXさん、ですよね?」

 

「ええ、間違いなく合っています」

 

「……僭越ながら宝具を見せて貰っても?」

 

「構いませんよ」

 

 

 別に隠す必要もないし()は協力はするつもりだ。

 どこからともなくひみつかりばー(無銘勝利剣)を持ち出して、ゴトッと机に置く。

 それをまじまじと見つめるので、()のどうぞの一言で聴取相手はひみつかりばー(無銘勝利剣)を手に取り始めた。

 その様子は何処か戦隊モノやらの玩具で遊ぶ子供の如く、目をキラキラさせている。

 

 

「あの、僕もその、所謂オタクに分類される者でして……。いやぁ、まさかこんな形で本物のアルトリアさんと出会えるなんて感激です!」

 

「いえ、私はヒロインXです。断じて賢く強くカッコいいアルトリアさんではありません」

 

「えっ、でもどう見ても貴方」

 

「私はヒロインXです。いいね?」

 

「あっ、そっかぁ……(思考放棄)」

 

 

 聴取相手さんのアルトリア発言に、つい口が勝手に否定してしまう。

 

 こうせいのう せいばー ぼでい!

 

 ……なのはいいんだけど口が勝手に動いたりするのにはいつもヒヤヒヤするからやめて欲しい。

 

 

 あっそうだ(唐突)

 最近、拘置所ぐらし! をしている内に判明した事があったゾ。

 

 なにを隠そうこの身体(セイバー)について、俺が勝手に思い違っていただけなのである。

 

 初め、俺は《セイバーならなんでもありなんじゃね?》と赤セイバー(ネロ)白セイバー(リリィ)黒セイバー(オルタ)とコロコロ姿を変えていたのだが……。

 ついぞ一応セイバーの筈であるランスロットやガヴェインには姿が変わらなかったのだ。

 

 これには()も滅茶苦茶困惑した。

「何!? セイバーならガヴェインにもなれるのではないのか!?」

 と。もしや女性限定なのか? とも考えた、合ってるようで違う。

 

 そして3日前。

 うん、ヒロインXになれたってことは……。

 "セイバーならなんでもあり"じゃなくて"アルトリア顔ならなんでもあり"じゃね?

 と、やっと理解した。そりゃそうだよランスロットやガヴェインはアルトリア顔じゃないもの。

 

 

 まぁこんな感じに思い違いが解けた訳で、それ以外は"門"の向こう側には異世界が広がってるぐらいしかわかってなかった。

 

 ぶっちゃけネットの情報も銀座攻防戦で戦って(蹂躙して)いた()についてが大半を占めているし、肝心の"門"は未だに投影中の招き蕩う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア)で無理矢理塞いでいるからか、あまり触れられていない。

 

 うーん……伊丹にこの前聞いたが。私がこの人達に協力する意志は見せてはいるが、どうにも足踏みしているらしい。

 仮釈放はもうじきされるっぽいけど、あくまでも"仮"だしなぁ……。

 

 ここは思いきるべきか。

 

 脱線し続け、FGO(ぐだぐだ)の話となっている最中を一旦切り。真剣な顔で聴取相手へと考えていた事を伝える。

 

 

「へっ? ああいや、うーん……確かにそれはそれで上も首を縦に降りそうですが……」

 

「いいですよね?」

 

「え、でも僕の一存では」

 

「いいですよね?(威圧)」

 

「アッハイ、上にかけあってミマス……」

 

「ならば良し」

 

 

 

 仮釈放期間は、むさ苦しくならなそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




展開が遅いのは積みガンプラを消化していたからなので僕は悪くありません。シャイニングガンダムが悪いのです。

こんな作品なので賛否両論が激しかったり激しくなかったりしますが、僕はとりあえず皆様に呼んで貰えているので嬉しいです。
その読者が僕に114514円分ぐらいのiTunesカードを恵んでくれる人なら、もっと嬉しいです


次回→年内


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反抗期セイバー

ガバガバなので初投稿です


 これはなんだ?

 

 

 前方に出ていた筈のゴブリンとオークは一瞬にして吹き飛んだ。

 

 

 ――――イキスギィ!!

 

 ――――ンギモッチイ!!

 

 

 続く兵も次々に炎に焼かれ、光に照らされ、轟音と共に消し飛んでいく。

 何故だ?

 

 これは一体なんなのだ?

 

 

 敵の姿はまだ見えない、恐らく強力な魔法の一種なのではないかと推測が頭を過るがこんなに強力な魔法は聞いたこともない。エルフや魔導師ですらここまで強力な魔法は使えないだろう。

 

 

 ならば、今我らが相手にしている敵は何だ?

 敵はそこまで脅威となるものだったのか?

 

 

 ――――ゲホッ! ゲホッ!(致命傷)

 

 

 ただ盾を構えて魔法のような正体不明の攻撃を必死に防ぎながら考える間にも味方は吹き飛ばされ、消し飛ばされ、ただただ為す術もなく蹂躙されていく。

 防いでいる盾がどんどんへこみ、ひしゃげ、使い物にならないようなものになっていく。

 

 

 ――――SEALDs(シールド)! SEALDs(シールド)壊れチャ↗ーウ!! ほ、ほーっ、ホアアァー!! ホアーッ!!

 

 

 やめてくれ、死にたくない! 俺には帰る場所があるんだ!

 

 

 そんな思いを叫ぼうと、無慈悲にも攻撃は止まない。

 そうだ、これが(いくさ)だった。

 戦に慈悲など不要。俺も戦士だ、そんなことはわかっている。

 わかっているが……わかっているが!!!

 

 

「こんなもの……こんなものが!! (いくさ)であってたまるものかぁぁぁ!!!」

 

 

 

 光が、墜ちてきた。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 見渡す限り、元は綺麗な丘だったのであろうその場所は焼きつくされ、クレーターだらけ。

 代わりにあるのは最早死体、死体、死体、死体。あと焼けた武器、ひしゃげた防具。

 

 残党がここにはいない事は確認したが、念のためだ。銃器を携えて辺りを見回す。

 

 

「うへぇ……にしても凄い数だなこりゃ、たまげたなぁ……」

 

 

 "門"の向こう側。

 そこは通称"特地"と呼ばれており、一応日本国内として扱われてはいる。

 丁度、日本国民擬きとして扱われているセイバーみたいにな。

 

 で、捕虜に聞いた話からすると、ぶっちゃけ異世界なんだよなあこれ。

 ゴブリンとかオークとか魔法とか中世風ファンタジーかよ。

 ファンタジーラノベ成分ならもううちのセイバー(問題児)だけで十分だ、やめてくれと願いたい。

 でもエルフはいて欲しい、エルフはいい文明だからなー。

 

 

 そんなアルテラ(セイバー)さんみたいな事を考えていると、日本に置いてきたセイバー(問題児)を思い出してくる。

 

 そう、今回の特地攻防戦及び特地調査にセイバー(問題児)は含まれてはいない。

 ……建前としては、特地の住人との円滑な交流を図るためだーとか過剰な戦力がーとか聞いてはいるが……檜垣三佐曰く。

 

「君に渡された"資料"をかじっては見たが彼女、要するに大昔の英雄の集合体なのだろう? あの堕落具合(だらけっぷり)を見るに到底無い可能性だが……。上は恐れているんだよ、"もしかしたら彼女が特地に自分の国を建国してしまうのではないか?" とね。」

 

 ……らしい。

 アホな話だが、そういう事だ。

 アーサー王(アルトリア)やら暴君(ネロ)やらが特地を好き放題にするのが怖いんだとよ。

 俺としては留守番扱いにオルタ(闇堕ち)化してまで猛抗議する方が怖いわ。

 

 ちなみに"資料"とは勿論、Fate/staynight、それの一般向けゲーム版である。

 漫画や派生作品も是非とも檜垣さんにはプレイしてほしかったがやはり忙しく暇が無いらしい。

 ならばこれだけでもと、fate/staynightを布教したのだ。

 ゲームの設定、キャラクター(セイバー)を知ってもらうにはそのゲームをプレイしてもらうのが一番手っ取り早い。

 そしてゆくゆくは型月信者って訳よ。

 

 

 とにかく今回の特地調査にはセイバーはついてきていない。今頃やけ食いでもしているだろう。

 

 

「とりあえずここはこんな所か……」

 

 

 聖地アルヌスの丘、ここはそう呼ばれているらしい。

 とりあえずここの門と周辺の安全を確保した事だし今後はここを拠点として基地が作られるだろう。

 

 

「あ、いたいた! 伊丹陸尉ーー!!」

 

「ん、ここにいるぞー」

 

 

 ひとまず戻るか。

 また書類仕事が大変になるなこりゃ。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「もぐもぐ……納得いきません、はむっ……何故私が留守番など……むぐむぐ、むっきゅむっきゅ」

 

 

 相変わらず拘置所の無駄に豪華な部屋の中、()は一人でヤケ食い(マックのバーガーとか)をしていた。

 食う、とにかく食う。もっきゅもっきゅと食う。

 

 原因は言うまでもなく留守番。

 露骨に戦力アピールや赤セイバー(ネロ)の皇帝特権での言語や料理、他にも色々と出来るから連れてけとごねたのだが、ついぞ伊丹が首を縦に振ることは無かった。

 怒りと悲しみのオルタ(黒セイバー)化である。

 

 連れてけ連れてけと黒セイバー姿に赤セイバーの声で猛抗議したが、やはり伊丹は首を縦に振らず。

 難しかったり困ったりした顔で。

 

「悪いなセイバー、この調査12人乗りなんだ」

 

「すまない」

 

 ……などとしか言わず、詳しい理由を聞けばはぐらかされる。

 確かに()は何故か伊丹の言うことは聞くがそれもそろそろ限界である。

 

 特地(異世界)、良い響きじゃないか。

 最早"俺"でなく"私"となってしまった今、最愛の"妹"とは"家族"ではなく"友人"。

 "俺"はもうこの世にはいないんだ。

 

 だが未練が無いと言えば嘘になる。

 勿論出来ることならもっと"俺"で在りたかった。

 もっと友達と、馬鹿みたいに遊んでいたかった。

 

 

「…………」

 

 

 ……そう、考えているとハンバーガーを食べる口が止まり、袋に包んで紙袋に突っ込む。

 そうだ、もういいじゃないか。好き放題にやってしまっても。

 

 

 体は(セイバー)で出来ていて、心は"俺"で出来ている。

 出来ない事なんてあまり無いはずさ!

 

 

「……行くか」

 

 

 大量にハンバーガーやポテト、その他食料が入った袋を担ぎ。再び姿を黒セイバー(オルタ)からヒロインXへと変身。

 別に裸ギリギリのシルエットになったりするわけではないから前回みたいに変身のシーンは細かく説明しない。

 なんともまぁ日曜朝のヒーローとは違い雑な変身だが許して欲しい。

 

 ()のせいじゃないし! ()のせいじゃないし!!

 

 

「とにかく変身完了! あなたのお近くの聖剣は不足していませんか!? お呼びとあらば即参上!」

 

 

 一人寂しく適当な参上口上を上げる。

 ……どうしてもどのセイバーに変身しても声だけが赤セイバー(ネロ)なのがちょっぴり悲しくなる。なんで?

 

 と、そんな一人漫才していたらキリが無い。

 せっかくセイバー(アサシン)にもなれるのだからここから出ていくには使うしかないだろう。

 

 

「アルトリウム粒子開放!!」

 

 

 ()の掛け声と共にシュバァッ!! ……と、ジャージのジッパーが自動で開き、胸にコルセットの様にぴっちりついているコスモリアクターがチラチラと覗く。

 

 

「コスモリアクター、起動!!」

 

 

 ヴォン! とコスモリアクターが起動し、緑色に輝く。

 正直な所、私にもこの辺りの原理はよくわからない。

 

 まぁその辺はおいといて。

 

 

「ヒロインX、特地へと飛翔します!!」

 

 

 

 右手を振り上げ、拘置所地下から空へと飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着きました、異世界!!」

 

 

 気配遮断を乱用してスーパーマンよろしく飛ぶ事一時間。アルトリウム粒子があれば大抵の事は出来たりする。

 

 

 広大に続く草原!!

 青い空と白い曇!!

 遥か彼方には村がある!!

 

 ……ってこれだけじゃ全く異世界チックじゃないだろ! いい加減にしろ!

 もっとこう、ないの? 異世界といえばみたいな物は。

 

 遠く後ろに見える"門"と自衛隊のものらしき戦車等があるのを見るに異世界っぽいけど……。

 

 

「エルフとか……ワイバーンとかは居ないんですかねぇ、折角ピクニックに来たのに」

 

 

 動物園に来てみれば動物が居ないかの様なこの寂しさ。

 ただの草原しかないこの場でどうピクニックをしろと?

 

 遠くにある村もRPGによくある最初の村みたいにパッとしないものじゃないのだろうか……。

 やだなぁ、こんな異世界デビュー。どうせならもっと華々とした石造りの街スタートとかにしてほしい、味気がない。

 

 とりあえずあの森にある村を目指すか……。

 

 

 

 




皆さん、お久しぶりです。
最近どうにも僕の頭が不調なので今回も展開が遅いです、なので僕は悪くありません。

後、僕が嫌いだからってTSや型月、GATEを嫌いにならないでください。
TSは素晴らしいものだと何故愚民はわからないのか、ならばこの水の水割りが愚民を粛清せねばなら


次回→今世紀


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ほのぼのセイバー

ランキングに入ったり入らなかったりしているので初投稿です

(今回は特に面白い所)ないです


『まぁ! つまり貴女は旅の人なのね!』

 

『ええ、私はヒロインX。極東からやって来た者です』

 

『へぇ~! ねぇねぇ貴女の住んでいた場所はどんな所? その服装を見るに随分と遠い場所から来たんじゃないかしら?』

 

『そうですね……』

 

 

神様門様管理者様ありがとう。

管理者ニキは特にありがとう、許さないけど感謝するよ。

 

続く()の他愛もない地元話に、しかし目の前の"彼女"はまるで面白おかしな童話を読み聞かせてもらう子供の様に興味津々に聞いてくれる。

ええ子や……! この良い子具合が妹を思いださせる。

 

実際"彼女"は良い子……というか……

 

 

『それにしてもエルフですか……本当にいるものなのですね』

 

『あら、いてはいけなかったかしら?』

 

『あー……いえ、そういう訳ではなくてですね……』

 

 

良エルフ……と言ったところだろうか。

尖った耳、自然と一体化してる雰囲気を醸し出す、日本では到底普段着として着ているところ等目にかかれない服装。

 

 

これがエルフちゃんですか

 

はい、彼女が金髪エルフちゃんです。

 

 

無邪気な笑顔、白い陶器の様な肌、そして北半球も南半球も主張はしていないが、一目で"デカイ"と感じる体の一部。

エルフ、最早ファンタジーの鉄板だ!

ここまでに通ってきた村がファンタジーもクソもない人村だっただけに、この喜びは半端ではない。

……うん、本当によかった。持ってきたハンバーガーとかを全部食いつくしつつも諦めずに馬を走らせ、ここまで来た甲斐があった。

 

昂る……昂るぞ!!

 

 

『あ……ごめんなさいね。村について案内するわ、ついてきてねヒロイン・エックスさん』

 

『おっと、ありがとうございますテュカ』

 

 

"テュカ"、彼女はテュカ・ルナ・マルソーと名乗っていた。

いいね、凄くファンタジー溢れる名前だと思う。名前1つだけじゃなくて3つぐらいが連なって長くなってるところがベネ(良し)

 

 

ちなみにもう気づいているだろうが『』は特地言語だ。

これまで3つぐらいの人村を通ってきたのだが、1つ目の村でエルフやワイバーンの情報を得ようと村人に話しかけたところ、どうにも話が相手に通じない。

 

なので最早フリースキルと化した皇帝特権(いつもの)発動である。

今回発動(主張)したのは言語能力A。

 

ヒロインX(セイバー絶対殺すマン)ネロ(赤セイバー)のスキルを活用するのはどうかと思うけど……。

 

それはそれとして、今の()は言語能力Aランク持ちである。

多分神のカード(ラー)とかのテキストが読めるんだろうし異世界の言葉ぐらい余裕っしょ。

 

 

出 来 ま し た。

 

 

これで特地言語はペラペラである。

()が思い、フィルターを通し言った事を勝手に翻訳するから便利、マジで便利。

向こうからの言葉も当然、まるで生まれた出身がこの地です、と言わんばかりに理解出来る。やったぜ。

 

それでもう一度村人に聞いたところ、エルフが住む村があるという。

 

槍トリアとなって全力疾走で来た。

そりゃもう馬を酷使した、滅茶苦茶無理させた。

結果、槍トリア(ランサー)となった私のおっぱいがばいんばいん揺れてすごく痛かったので、今はヒロインXである訳だが。

 

 

『こっちよこっち! ヒロイン・エックス! お腹空いてるでしょ?』

 

『とと……そうですね! 空腹は敵ですね!』

 

 

……おまけに言うと、何故かやけに向こうは親交的だ。

いやまぁ構わないんだけどさ、最初から好感的に話しかけられるのは……悪いけど、変な気がする。

 

……怖いから念のためいつでもひみつかりばー(無銘勝利剣)出せるようにしとこ。

 

 

 

それにしても......エルフの村にしては少し人間くさい? 違和感? を感じる。

勝手に()がエルフに対して抱いているゲームとかのイメージだけど、エルフってもっと自然と暮らしている感があるようなイメージがある。

 

大きな木をそのまま住居にしてるとか!

もっと森っぽいとこに住んでるとか!

確かにここは森が近いけど!けど!

 

 

『ここが私の家! さあ上がって頂戴ヒロイン・エックス』

 

 

テュカに案内された場所はどう見ても木造の家。

所々に石材やらが使われており、ただの木造より遥かに耐久性に優れているだろうが.........。

 

なんだろう、私のイメージと大分違う。

 

階段を上がり、ドアノブをガチャっと回してドアを開けて帰宅するエルフはどことなくファンタジーが現代にやって来た感満載である。

 

 

『……ん? どうしたの?』

 

 

私に振り返り言葉通りに、首を傾げる彼女。

……うん、考えすぎだな。折角好意にしてくれている彼女に悪いし、素直になろう。

 

 

『いえ、素敵な家だなと見惚れていただけですよ』

 

『ふふ、ありがとう』

 

 

うんうん、やはり美人さんの笑顔は可愛い。

 

そんな笑顔にホイホイ釣られ、テュカの家へとお邪魔する事にした。

 

 

 

中は……うん、テュカ一人で住んでいるには広い。

まあ食器とか部屋とかをチラチラ見ると複数あるし誰かと一緒に住んでいるのかな。

 

 

『お父さんがもうすぐ帰ってくるからそれまでちょっと待っててくれるかしら? あ、今お茶を淹れるからそこで待っててね!』

 

 

入って直ぐに窓際のソファーを指さし、反対側にあるキッチン……らしき場所へパタパタと早歩きで駆けていく。

父親と暮らしてるんだ、へえ。

 

お言葉に甘えて、一先ずソファーに座る事にした。

 

 

「(中は……うーん、中世……っぽい)」

 

 

今思ったのだが、特地って中世ヨーロッパ的な雰囲気を感じる。

以前、銀座で蹴散らした敵兵にしろこの建造物にしろ、なんだか中世っぽい。

 

前の村で聞いたりした話だと"帝国"が特地においての大国であるらしく、いつかは"帝国"で働く事が夢だったりしているらしい。

 

帝国ねぇ……ラノベとかだったらとにかくふんぞり返った連中がいるイメージだけどその辺りどうなんだろ、テュカにそれとなく聞いとこ。

 

 

「……ん?」

 

 

ふと、柱の下に弓と矢が矢筒に入っているのが見えた

 

エルフっていうと魔法とか弓とか得意なサポート、遠距離系というがこの辺りのイメージは合ってるらしい。

魔法で矢を強化とかすんのかな、炎の矢とか。

 

 

『その弓はね、知り合いに作ってもらった弓なの』

 

『わひゃっ!?』

 

 

じっと弓矢を見ていると、唐突に横から声がかかった。

声が裏返り、アヒルか何かみたいな声を上げてしまう。

はっとその声の方に向くと、テュカが湯気たつマグカップを両手に1つづつ持って目の前にいた。

 

 

『あら、驚かせちゃった? ごめんね』

 

『い、いえっ! 大丈夫ですよ!』

 

 

いつの間に!?

 

 

『じーっと私の弓を見てたから気になっちゃって。ヒロインも弓を使うの?』

 

『あ、いえ私は……』

 

 

ここで言葉に詰まった。

()のメイン武器って剣……?

確かにエクスカリバーばかり振っているが、セイバーでもアサシンでもランサーでもライダーでもアーチャーでもルーラーでもある私のメインってなんだ?

 

そのうちキャスターとかバーサーカーにもなれてしまいそうで怖い。

アルトリア顔多すぎるっピ!

 

 

『色々と!』

 

『あら、多芸なのね!』

 

 

あ、多芸で済ませるんだ。

 

 

『はい紅茶よ、口に合うといいんだけど……』

 

 

隣に腰掛け、此方に片方のマグカップを手渡してくる。

匂いは……なんだろう、アップルティーに近いような果物の風味がある。

 

イザァ……

 

 

テュカが私を凝視する中、マグカップに口を付けて中の温かな紅茶を口内へ。

 

 

 

 

……メ、ロン?

 

 

 

多分()はこの瞬間、不思議そうな顔でいたことだろう。

何だこれ、マジで何だこれ。メロンの味がする、匂いと味が合わない。

たとえるなら醤油だとおもったらソースだったかの様な感じ。要するに不味くはないけどクセが強い。

 

 

だが……!!

 

 

……えっと、テュカがめっちゃこっち見て不安そうにしてる。

あの、そんなに見ないでくださいます?

 

 

『……その、やっぱり口に合わなかった?』

 

 

そんなテュカの声を無視し、ごくごくとマグカップを傾けていく。 

 

そのまま一滴残らず飲み干し、微笑む。

 

 

『もう一杯、頂けますか?』

 

『えっ? ああうん! 今淹れるわね!』

 

 

うん、美味しい!

ドクターペッパーみたいな不思議な感じがしてるが、メロン味なのが私の好みに合っている。

 

つまり美味しい、普通に美味しいのだ。

紅茶というかジュースに近いかな、冷えたのも飲んでみたい。

 

 

パタパタと再びキッチンへ向かったテュカを見送り、今度は首を回して窓の外を見る。

 

 

「(日が落ちてきましたか……)」

 

 

窓の外は、いつのまにか日が落ちはじめて少しずつ暗くなっている。

今日拘置所を出発し、この村を含めて4つを一気に訪れた訳だが、何故か疲労感があまりない。これもセイバーさんボディのステータスなのだろうか……。

 

コスモリアクター(気配遮断もどき)を使用からの槍トリア(ランサー)に変身して移動。

元々サーヴァントとしてのスタミナが備わっているのかは知らないがここまでやってもほぼ疲れ知らずなのは少し不気味である。

 

 

『おまたせ』

 

 

そんな思いで黄昏る空をぼんやり眺めていると、テュカの声がかかった。

早い……早くない?

 

 

 

 

 

 

 

 

8杯目ぐらいの紅茶のおかわりを頂きながらテュカと話す事数十分。

一旦適当だった話に区切りをつけ、テュカの声のトーンが急に落ちた。

 

 

『最近ね……アルヌスの丘の方で戦争があったみたいなの』

 

『戦争? 穏やかではありませんね』

 

 

アルヌスの丘……アルヌスの丘……あっ。

この前自衛隊が連合軍とドンパチしたらしいとこだ、他の話題に夢中でその辺り全く忘れてた。

 

そんな事は露知らず、テュカは話を続ける。

 

 

『敵は異世界の侵略者。数では圧倒的に勝ってたみたいだから勝ち戦の筈だと聞いてたんだけど……"相手が悪かった"らしいわ』

 

『あー……その、テュカ、さん?』

 

『どうしたの?歯切れが悪いけど……』

 

 

うーん、騙し通すのも無理そうだしここは言うべきか。

一応先に手を出して来たのはあっちだし、勘違いはして欲しくはない。

 

 

 

『ごめんなさい。私その異世界から来た者です』

 

 

『……は?』

 

 

『おーいテュカ、今帰った……あれ、お客さんかい?』

 

 

 

 

 

 

 

 




僕がランサーです(真名開放)
最近、この作品がランキング20位だったり19位だったり5位だったりして、とても面白いです。


ついでなので、今回は皆さんが疑問に思った事や質問等に答えてあげようかなと思います

Q.槍トリアさんは?槍トリアさんはでないの?
A.槍トリアは馬と合体している為、わかりません

Q.なんでTSなの?
A.知りません、僕の管轄外です

Q.アルトリウムって?
A.ああ!

Q.見づらいんだけど
A.スマホからの投稿なので、僕は悪くありません(喧嘩腰)


以上です、多分これで皆さんの見解も深まったものだと感じます。

というかですね、他にクソつまらない上に意味不明な評価コメントを飛ばしてきたりする暇があるなら、もっと高い評価をですね、つけろって言っ



次回→昨日始めたFGO でピックアップの槍トリア引いたので遅くなります


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ドラゴンってなんだよ(直球)

失踪していたので初投稿です


デュラハン(首なし騎士)、というお化けを私は知っている。

私がまだ幼い頃、お父さんに読み聞かせてもらった童話に登場した主人公だ。

 

その童話の内容はうっかりものだけど優しいデュラハン(首なし騎士)がいく先々で困った人を助けながらも自分の首を探すというもの。

当時の私はその優しいデュラハンの童話が大好きで、よくお父さんに何度も聞かせてとせがったものだった

 

 

何故今、デュラハン(首なし騎士)の話になるのかですって?

 

 

ただ━━━━━

 

 

『ふう......。 ところでドラゴンって食べられるのでしょうか.........』

 

 

━━━━━今目の前で力尽きている、頭部から胴体がすっぱり離れている首なしの炎龍を見て、そういえばなーって思い出しただけよ......。

 

 

 

 

 

♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 

龍は、この地上における生物の頂点に立つものだった。

 

 

実際強かった。

 

 

その羽ばたきは全てを吹き飛ばし

 

その爪は全てを引き裂き

 

その顎は全てを噛み砕き

 

ドバーッと吐き出す炎はけっこうよく燃えた。

 

 

だから実際強かった、エルフとか人間とかを蹴散らせるぐらいには強かった。

 

自身でも"俺tueeeee!"と感じていたし、周りも勝手に自分が最強にして頂点だと恐れていた。

 

そんな炎龍くんだったが、"今回は"いつもよりちょっと早く目覚めた。

そう、炎龍くんは活動期間が大体決まっておりそれ以外の時期は大人しく火山に引きこもっているのだ。

 

 

"もうこんな時期かーまだ眠いのになー"。と、火山口からもぞもぞと這い出てくる炎龍くん。

 

グゥゥ......と、お腹が鳴るのを聞き

 

 

"そういえば最後に食べたのはちっこい肉だったなぁ"

 

 

......しみじみ思い出す。

眠りにつく前、最後にむしゃむしゃしたのはちっこいウサギだった。

 

"腹八分目ぐらいにしておこうかな、最近の龍はスタイリッシュでキリッとしたフォルムが人気みたいだし、健康に気を使わないとすぐ太っちゃう...ヤバイヤバイ"

 

そんなよかれと思ってむしゃむしゃを控えめにして眠りについたのだが、どうやらそれが原因で空腹になり、起きてしまったのである。

 

 

"いやあ失敗失敗。じゃあちょっとむしゃむしゃしにいこうかな、そしたら後50年ぐらい寝よっと"

 

 

ふるふると頭を振って砂利を落とし猛々しい翼をにょーんと、固まった筋肉をほぐすように伸ばす。

 

軽いストレッチをし終え。炎龍くんは翼をばっさばっさと羽ばたかせた。

その巨体に合った翼はばっさばっさするだけで辺りにぶわっと旋風を巻き起こす。

そしてふわり、と吹き上がりどっか行った。

 

 

"せっかくだから森とかでむしゃむしゃしようかなぁ、行ってないとこがあったからそこでむしゃむしゃしよう"

 

 

説明しよう!

炎龍くんはなんとマッハ5ぐらいのスピードで空を飛べるぞ! 遠いところでもあっという間だ!

 

 

空を隕石の如く駆け抜ける赤い一筋、炎龍くん。

ぐんぐんとスピードを上げていく。

 

目的の森の上空へ近づいてきたところで、あるものを炎龍くんは捉えた。

 

ヒトである。

 

エルフの女が一人に、ヒトが一人。

どちらも薄着で、武器は持っていない。

散歩か何かだろう、近くに見える森にはよく見ると村もあった。

 

 

"あっ、ヒトだ!そういえば......"

 

 

炎龍くんはその場で急停止し、考える。

 

 

"ヒトってまだ食べた事なかったなぁ、美味しいのかなあ?"

 

 

今まで動物等を捕食してきた炎龍くんだが、"ヒト"だけはもぐもぐした事はなかった。

炎龍くんにとって"ヒト"は炎龍くんをみるなり慌てて逃げ出したり、姑息にも集団で歯向かってくる、"愉快だけどウザいやつ"なのだ。

 

弱いくせにわざわざもぐもぐ中に歯向かってくる。

大人しく逃げればいいのに。

 

とにかく炎龍くんにとって"ヒト"はそんな分類だった。

カとかハエぐらいである、後ノミとか。

 

 

"とりあえず食べてみよう!不味かったらペッてすればいいし!"

 

 

ばっさばっさと翼を羽ばたき、上空で待機しながら結論を出す。

 

結論が出た途端、炎龍くんの目が光る。

 

まずは、隼の如く獲物(ヒト)まっしぐらに急下降し始めた。

体を折り畳んだ巨体が落下するスピードはぐんぐんと上がり、どんどん地上へと近づいていく。

 

と、この辺りで女二人の内一人、エルフの方が炎龍くんに気づいた。

慌てたエルフはもう一人の女の手を取り、逃げ始めたがもう遅い。

炎龍くんの方がヒトが走るよりずっとずっと速いのだ。

 

間もなく追い付き、炎龍くんは口をあんぐりと開ける、先ずはエルフじゃない方をもぐもぐする気らしい。

 

 

"いただきまーす!!"

 

 

獲物を見定め、開けられた炎龍くんの口は━━━━━━

 

 

 

「デートの邪魔をするんじゃねぇぇぇぇぇぇエェェェェェェェェェェェェックス!! カリバァァァァァァァァァァァァァァァァァァ↗↗↗↑!!!!!」

 

 

 

━━━━━もう閉じることはなかったとさ

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

び、ビビった...。

マジでビビった!

 

エルフの村に住み着いてから早三日。

元々こういう環境の変化に強い()は村のエルフ達の狩りやら何やらを手伝う事ですっかり馴染んでいた。

大体いい人だよねエルフって、精霊と共生しているからかな?

 

 

そんなある日の事。

テュカと二人でフレンドリーに散歩中、いきなり血相を変えたテュカが錯乱したかの如く()の手を引いてガチに走り出したと思ったら後ろにはドラゴンがいたのだ。

 

めっちゃ来てた来てた! なんで()気づかなかったん!? ヒロインXって直感スキルCぐらいだったけどいくらなんでも鈍感過ぎるだろ!

確かにテュカに気をとられていたのはあるが鈍過ギィ!!

 

 

......と、まぁそんな事はさておき。

 

 

 

『えっと......。 これ、どうします?テュカ』

 

『えっ、私に振るの?』

 

 

 

折角テュカと二人きりの散歩 (いつもは大体テュカの父やら友達が付いてくる)

 

を邪魔した......レウス? レウスでいいか。

 

レウスを死刑にした訳だが、死体がグロい。

首がポーンって飛んでて首根っこからまだケチャップがドクドク垂れている。

 

テュカは興味津々に首がぴょんぴょんしたレウスを見たり触ったりしてるけど()には無理だよ......平然としてるのがやっとだ。 下手したらゲロゲロしそう、ゲロゲロゲロッピ!!(snro感)。

 

とはいえ見た目は美少女(ヒロインX)がゲロゲロなんて色々とヤバイわけであることには間違いないわけである。

 

 

『うーん。成体の炎龍ってやっぱり大きいんだね......うん、うん.........。』

 

 

あっ、全然興味津々そうじゃなかった!

目が死んでる!死んでる!

 

 




今回は皆様に、お詫びをしてあげようかなと思います


フレームアームガールズを組み立てたり塗装したり改造したりしていたら、いつの間にか換気不足による軽い塗料の中毒で寝込んでいたので、僕は悪くありません

又、「今回やっつけなんとちゃうん?」という意見も出てくるかもしれませんが、僕は悪くありません

何故、僕が謝らなければならないのでしょうか?何故、僕がお詫びをする必要があるんですかね? (喧嘩腰)
むしろ皆様が僕に謝罪し、悔い改める必要があr


次回→台風が消え去ったら


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