エリシア・ウィーズリーは救済に励む (妄想女子)
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第0話

初めまして。妄想少女です。
初投稿で、拙い部分があるかもしれませんが、よろしくお願い致します。


ッゴ、ッゴ、ゴ、、、

 

低く、鈍い音がする。

何度も何度も。

 

初めのうちは、抗っていた声も、もう聞こえない。

 

目の前に拡がるのは噎せ返る程の血液。

その中に沈んでいる大人2人は、ぴくりともしない。

 

後ろを振り返る。

部屋の隅で蹲っていた幼い男の子は、壁に叩きつけられた衝撃でか、口から血を吐いており、その呼吸はひゅう

、ひゅう、と言っている。

 

「ゆぅ...、大丈夫?」

 

その年の割には余りにも小さい少女が男の子によろよろと近付き声を掛ける。

 

「ひゅう...ひゅう...こ、来ないで」

 

少女は、心配で声を掛けた。

だが、帰ってきた言葉は、明らかなる拒絶。

 

その事で、少女は、何も考えられなくなった。

 

再び近付くが、ほぼ虫の息の男の子は拒絶する。助ける事も縋ることも出来ないまま、男の子の息は段々と衰えて、そして、途絶えた。

 

「どして...」

 

少女は、守るべき対象に拒絶され、更には目の前で何も出来ないまま死なせてしまった。

 

その事に、生きる意味を無くした少女は、裸足で、血にまみれた服のまま外に飛び出した。

 

周囲に人はいない。

 

それもそうだ。既に時刻は深夜3時を過ぎている。

昼間はそれなりに人が行き交う住宅街も、流石に寝静まっている。

 

もっとも、少女は今まで外に出たことが無く、その昼間の状態も知らない。

 

 

雪に足を取られつつ、赤くなり痛む足でとにかく走る。

どこに向かっているのかは少女でも分からない。だが、足を止める事は無かった。

 

走って、息を切らし、足を動かす事に集中する事で、何も思わなくても良くなるからだ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

だが、道というものは必ず終着点がある。

少女が走っていた雪道も然り。

 

少女が出た開けた場所には、凍りかけた川が横断していた。川と言っても、ゴミやヘドロで汚れており、お世辞にも綺麗とは言えない。

 

「ごめ、んね」

 

しかし少女はその川を見下ろし、足を1歩、踏み出す。

支えがなくなった片足から、重力に従って吸いこまれる様にして落ちていく。

 

最後に思った事は

 

(次があったら、ぜったいに守る)

 

だった。

 

ーーー

 

わたし、水の中にいる。

でも、温かい。暖かい。

 

わたし、川に、冷たい川に、落ちたのに。

 

心地いい。安心する。

 

あったかい。

 

 

 

 

「おぎゃゃゃゃゃ!!」

「ま、アーサー。女の子よ」

「モリー、こっちの子は男の子だ。良くやったね」

「おんぎゃゃゃゃゃ!」

 

 

?何だろう、急に騒がしくなった。

誰か、赤ん坊の声と、大人と子供たちの声。

 

騒がしいけれど、安心する。

嫌じゃない。

 

「ママ!女の赤ん坊だ!」

「ママ!双子だよ!」

「パパ、名前決めてるの?」

「ああ、女の子がエリシア。男の子がロナルドだ」

「じゃ、エリーとロンだね」

「ママ、ありがとう」

 

 

エリシア

 

何だか、それが私の、私の新しい名前なんだと思えた。

 

「今日からウィーズリー家の仲間入りよ」

 

ウィーズリー...ロナルド...

 

そうか、そうなんだ。

 

わたし、ハリーポッターの世界に来たのね。

 

今度は幸せになる。

誰も死なせない。

 

今度こそ、助けてみせる。

 

「あら、エリーは賢くなりそうね」

「そうだな、目がキリッとしてるよ」

 

 

 



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第1話

 

「エリー!ロン!起きなさい!」

 

階下からママの声が聞こえる。

もう3月とはいえ、春の陽気は遠く、暖かい毛布から起き上がるのが億劫だ。

そこに人肌があるのなら尚さら。

 

「...う、ん」

 

その人肌君が先にベッドから出たことにより、益々起きたくなくなる。

もぞもぞと、毛布を身体に巻き付けてミノムシ状態になる。

 

「エリー、起きなよ」

 

人肌君が肩を揺すってくるけど、嫌なものは嫌だ。

 

「ぃやぁ。にぃに、先に行ってよ」

 

毛布を肩まで引っ張り兄に先に降りるように言うと、その毛布をがしっと掴まれる。

 

「エリー、今日は僕らの誕生日何だぞ?」

「そぅですねー」

 

そっか、今日は誕生日。

 

誕生日...

 

誕生日!?

 

ガバリ、と一気に起き上がるのと同時に額に激痛。

 

「痛っ!」

「うぅ、...痛い」

 

どうやら兄と額がごっつんこしたらしい。

 

「誕生日おめでとう、エリー」

「...誕生日おめでとう、にぃに」

 

今のですっきりと頭がはっきりとして、目を開けるとわたしとお揃いのパジャマで赤くなったおでこを涙目で押さえる兄が、誕生日を祝ってくれた。

 

私と兄は何時も一緒なので、お互いに誕生日は1番初めに祝ってくれる人となっていた。

 

「エリー!ロン!早く降りてらっしゃい!」

「ママがそろそろ上がってくるよ」

「ん、...早く行こう」

「エリーがなかなか起きなかったんじゃないか」

 

ぺしっ

 

「うるさぃ...」

 

だって、人肌が暖かくて、気持ちよかったから。

それなのに、早く起きるとか勿体ない。

 

今日は誕生日。私エリシア・ウィーズリーと兄ロナルド・ウィーズリーの11歳の誕生日。

 

普段なら、ゆったりと朝の時間を過ごすが、今日だけは違う。

手早くパジャマからママ手作りのセーターに着替えて階下に兄と手を繋いで降りる。

 

こうしないと、背がちっちゃくて、ふらふらなわたしは階段や廊下ですぐコケる。

それ以外にも、わたしが兄の手を離さないこともあるけれど。

 

人の手って、暖かい。自分より大きな手って安心する。

 

「おはようママ」

「おはよ...」

「おはよう、エリー、ロン。手紙が来てるわよ」

「やったね!」

 

兄と一緒に一階の食卓に降りてママに挨拶した。ほっぺたに挨拶のキスを貰ってわたしもかえす。

手紙...ママが指した方向を見ると、確かにテーブルに用意された朝食の脇にあった。

 

と言っても、わたしの席の所にはいつもの様に10数通あるけれど。

 

「わぉ、僕宛のホグワーツからの手紙だ!」

 

兄は、これまで上の兄たちに届いてきたホグワーツ魔法魔術学校からの手紙が自分に来たことに喜んでいる。

 

かく言うわたしも、何時もの手紙達に埋もれている羊皮紙の、裏に紫色の印籠がしてある手紙を見て、口角が上がった。

 

「貴方達ももう11歳ねぇ、誕生日おめでとう!」

「「ありがとう、ママ!」」

 

そんなやり取りをしているとお手洗いからパパこと、アーサー・ウィーズリーが出てきた。

 

直ぐに兄がホグワーツからの手紙を持ってパパの所に行く。

夏休みなら、他の兄弟がいてパパを独り占めする事は出来ないが、今は3月。その兄弟達は今ホグワーツにいる。更に上の兄たちは家を出てそれぞれ働いている。

 

 

「パパ!見て見て!僕にもホグワーツから手紙が来たよ!」

「...ん、来たよ」

 

わたしも兄と並んで手紙を見せる。

やはり、嬉しいものは嬉しい。

 

「おやおや、二人ともパパに朝の挨拶は無いのかな?」

「おはよう!」

「おはよ」

「おはよう。そして誕生日おめでとう、エリー、ロン」

 

パパは、わたしと兄を抱きしめてほっぺたにキスしてくれた。

それに、兄と両側からパパのほっぺたにキスして返した。

 

魔法省の何とか部所に配属されてるパパの朝は早い。人数が少ないのに、仕事は増える一方だから忙しいんだ。

そんなパパが食卓に居るという事は、相当早い時間なんだろう。妹のジニーも降りてきてないし。

 

先に朝食を食べた様子のパパは、コーヒー片手に『日刊預言者新聞』を読み始めた。

わたしと兄は朝食そっちのけで手紙を開封する。

 

少し黄ばんだ羊皮紙の手紙には、こう書いてあった。

 

-------

 

ホグワーツ魔法魔術学校

校長 アルバス・ダンブルドア

マーリン勲章、勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟会員

 

親愛なるウィーズリー殿

この度ホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されましたこと、心よりお喜び申し上げます。

教科書並びに必要な教材のリストを同封致します。

新学期は9月1日に始まります。

ふくろう便にてのお返事をお待ちしております。

 

敬具

 

副校長 ミネルバ・マクゴナガル

 

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