戦姫絶唱シンフォギア×仮面ライダーゴースト・歌姫を守る魂 (にゃはっふー)
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序曲・爆ぜる魂

仮面ライダーゴースト見てて思いついたので、やってしまいました。
すでにしてる仮面ライダーとシンフォギアとはは違う物語を目指してがんばります。


 人を炭化させて即死させる、特異災害ノイズ。

 13年前から正式に発表されているが、大昔からある古代の兵器らしいそれは、人々の命を奪う災厄して、すでに認知の元になっている。

 そんなものがある世界で、いま、それが人々を襲っている。

 

「くっそ」

 

 人が混乱して、多くの人達が我先に逃げ出す中、一人の少年は叫び声を上げ、落ち着くように避難させていた。

 何人か声を聞き、我に返り、逃げている中で、それでも声を聞かず、逃げ出すもの達がいる。

 ひどいものには、転んだ人を踏んででも、外に出ようとする二次災害がひどかった。

 だが少年は諦めず、多くの人を誘導して、外に出させていた。

 避難誘導が終わるのを見て、まさかと思い、建物へと走り出す少年。

 

(間違っててくれよ)

 

 そう願っていたが、間違いではない。

 先ほどまで綺麗な歌姫の歌が響き渡り、多くの人を幸せにした会場。

 だれもいない中で、彼女はいた。

 

「響!!」

 

 彼の友人であり、幼なじみ、立花響。彼女のもとに急いで向かう。

 彼女の目線、ノイズと戦う者達がいるのに驚愕するが、いまはどうでもいい。

 

「あっ・・・」

 

 呆然となっている様子だが、構わずその腕を引き、急いでその場から離れようとする。

 だが、突如足場が崩れ、響をかばいながら落下する。

 観客席から落ちたが、致命傷を負わず、すぐに立ち上がり、響を見た。

 

「響!?」

 

 突如叫び、響を突き放す。

 

 だが少年の目の前に鮮血が舞う。

 

 彼女に、何かが突き刺さった。

 

 彼女の血が、目の前に広がる。

 

 だが彼女の目には、

 

「・・・」

 

 大きな風穴を開けた、幼なじみがそこにいた。

 

 

 

「おい頼む!! 止まってくれ!? くそっ、くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 

 一人の少女が泣き叫ぶ。

 一人は破片が刺さった少女。もう一人はもう助かる可能性がないほど、大きな風穴が開いた少年だった。

 

「せめて、お前だけでも生きてくれ・・・頼む」

 

 周りのノイズ達を睨みながら、槍を掲げる少女。

 それにもう一人の少女が叫ぶ。

 

「奏まさか」

 

 彼女が何かを口紡ぐ、少年はそれを、まだ見ていた。

 

(・・・だめだ・・・)

 

 何故かは分からない。だがそれは、命を奪う歌だと知る。

 

 手を伸ばす、力無く、だが動かない。

 

 意識だけがある。だけど動かない。

 

 だが、けど、しかし、それでも、

 

(いま動かないで、いつ動く!!)

 

 その時、少年の魂は燃えた。

 

「!?」

 

 絶唱が歌われる瞬間、彼女が纏う光が少年の元に集まる。

 奏と言う歌姫はそれを振り返り、そして少年が、口紡ぐ。

 血が流れ出ながら、口紡ぐ。

 絶唱と言う、血の歌を歌った。

 

 

 

「!? 響っ!?」

 

 叫び、起きあがる。辺りを見渡せば知らない場所。

 白い空間、何もなく、自分の身体を見る。

 けがは無く、何事もなかった身体だが、覚えている。

 風穴が開き、即死していてもおかしくない傷を負った。

 

「ハッロ~」

「!?」

 

 見たこともない格好のオッサンがいて、それに警戒する。

 その様子にまあまあと手振りして、落ち着かせる。

 

「あんたは・・・」

「私? 私仙人、君にね、お願いあるの」

 

 フランクに話しかけてくる仙人に、首を傾げる。

 仙人はその様子を見ながら、静かに聞く。

 

「君さ、生きたい?」

「? それって」

「うん、君、もう死んでる」

「・・・」

 

 否定したかったが、無理だろうと思う。

 なぜならば、胸を貫かれた感覚が、いまでも思い出される。

 

「生きたいって、俺は生き返られるのか?」

「うん、普通は無理よ。けどね、英雄の魂を15個集めれば、生き返るよ」

「英雄?」

「そう」

 

 その時、腰に不思議なベルトが出現して、それに驚く。

 その様子に感心しながら、仙人は静かに、まじめに告げる。

 

「英雄と魂を繋げ、そして願いを叶えるんだ」

「・・・」

 

 それに対して、彼の答えは・・・

 

 

 

 あれから、数年。バカだなと思いながら、電柱の上に座る。

 誰も気づかない。当たり前だ、自分はいまゴーストなのだから、見えるはずがないのだ。

 そして気づく、ゴーストとして、いや、特別に調整された者としてわかる。ノイズの気配に気づく。

 

「さて、仕事仕事」

 

『ア~イ』『バッチリミールー!!』

 

「変身」

 

『開眼! ハーツ!!』『スタート覚悟!! ガンガンゴースト!!』

 

 黒紫のパーカーが幽霊のように浮遊して、それを纏う。

 フードを取り外し、三つの角のようなものを見せ、黒紫の亡霊が移動する。

 ノイズが無数現れるそれに、チョーガンガンセイバーを取り出す。

 

「名前相変わらず変だよな・・・」

 

 特注品だって仙人に言われていても、大人ほどの大きさの大剣を構えながら、それを見た目のわりに軽いと思いながら、片腕で振るう。

 首を鳴らしながら、ノイズ達へと斬りかかる。

 

「おっら!!」

 

 ノイズを斬りながら、ノイズにはこちらがわかるのか、向かってくるが、

 

「俺は炭化しねぇぜ」

 

 そう言って切り伏せながら、数が多いと思い、赤い眼魂を取り出す。

 

『炎魂』『ホノオ・炎で吹っ飛べ爆裂だ!!』

 

 深紅のパーカーが現れ、それを纏い、チョーガンガンセイバーを二刀モードに替えて戦う。

 刀身に炎が宿り、吹き荒れる嵐は爆炎のように、ノイズを飲み込む。

 

「次はこいつ」

 

『風魂』『カゼ・疾風!!烈風!!シュシュッとな!!』

 

 深緑のパーカーを纏い、今度はナギナタモードにして、それを投げ飛ばす。

 風を纏い、手裏剣のように吹き飛ばす。

 亡霊もまた姿を消すと共に、木の葉が舞い上がり、ノイズを撃退する。

 

「よし、今日も問題ないっと」

「本当か?」

 

 突然後ろから話しかけられ、ベルトから眼魂を取り出す。

 

「仙人」

「お前しか仙人って呼んでくれないのか・・・」

 

 突然落ち込む仙人。あれ以来、たびたび心変わりしていないか聞きに来るので嫌になるんだが、チョーガンガンセイバーなど、専用装備くれたりした恩があるため、むげには出来ない。

 

「仙人、今日も俺の答えは変わらないよ」

「・・・ハーツとして、五行眼魂で戦い続ける気か?」

 

 真剣な顔だが、ああと答えながら、仙人は難しい顔をする。

 

「本当にそれでいいのか」

「くどいよ、最初、俺が集めた英雄眼魂を素直に受け取ったじゃないか? フーディーニやニュートン、ツタンカーメン。グリムやサンゾウ、ちょうど五つ渡してるんだからいいじゃないか」

「・・・」

 

 言いにくそうにする仙人。いい加減にして欲しいが、どうしたんだろう?

 

「それに、もうとっくに百日だって過ぎてるし、いまさら15人も集めている暇がない、最近ノイズの動きが活発化してるんだ」

「・・・本当にいいのか?」

「十分助かったよ」

「・・・」

 

 その言葉に険しい顔をする。

 仙人は静かに、

 

「やはり間違っていた、お前さんが英雄眼魂、願いの代わりに別の用件を言ってきたとき、こちらを優先するんじゃなかった」

「気にするなよ」

「気にするわい、いまだに仙人って呼んでくれるの、お前さんだけじゃぞ」

 

 なに言ってるんだろうと思いながら、その場を去ろうと歩き出す。

 

「ともかく、ノイズと戦える力、武器や能力くれただけで十分だよ。俺の世界で手に入れた眼魂は、あんたの世界のために使え」

「・・・」

 

 そう言った少年は帰る。

 深いため息を吐きながら、仙人は黄昏れていた。

 

「ああ龍よ、ワシは愚か者過ぎるよ・・・」

 

 自分の世界を優先するあまり、彼が生き返る為に集めた英雄眼魂と引き返し、ハーツとして永続するように調整し、五行眼魂と言う、別の眼魂を渡してしまった。

 いまとなっては後悔しかない。

 

「・・・お前さんはそれでいいのか・・・『神代(かみしろ)ハヤト』」

 

 

 

 ライブ会場の悲惨な事件、死亡者はノイズよりもパニックになった人達による二次災害が多いが、一人の少年の活躍により、僅かなものに収まる。

 だが、その少年は遺体すら残さず消えていた。

 

 

 

 とある学園で、一人の茶髪の少女が、空を見上げていた。

 幼なじみに助けられ、生き残った彼女は色々あった。

 まず彼が自分をかばった死んだことが受け入れられず、荒れに荒れた。

 だがその親に悟られ、いまは家族共々お世話になる。

 世間はその後、事件の生き残りに対して辛辣な態度であり、自分の父親も仕事先で色々と差別があったらしい。

 自分が生き残っても、精神的に荒れていたため、そちらに付きっきりで、仕事はほとんどやめていたため、大きな問題になることは無かった。

 いまでは彼の父親の手伝いで、取材記者の助手している。いまでは電話相手だ。

 色々あったな~と思いながら、もう一人の幼なじみが近づく。

 

「響、そろそろ行くよ」

「あっ、待ってよ未来~」

 

 そう言い、微笑む少女。

 

「?」

 

 一瞬誰かとすれ違った気がしたが、誰もいない。

 

「気のせいか」

 

 そう言って走り出す。

 その様子をフードからのぞき込みながら笑い、前を向いて呟く。

 

「さあ、魂爆ぜるぜ」

 

 仮面ライダーハーツ、その心は燃えるどころか、爆発していた。




天羽奏は生存してます。
響の父親は、仕事はやめてしまいましたが、オリ主の父親の手伝いして、飛び回っている設定です。
オリ主の設定は、日本人で銀髪の黒眼、響達より一つ上のハーフくんです。
仮面ライダーハーツ、ハートとかぶるが、仕方ない。
それでは、お読みいただきありがとうございます。


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第1話・歌姫の覚醒

オリ主・神代ハヤト 立花響より一つ上、銀髪と黒目とハーフ。
母親が外人で専業主婦、父親は日本人で、記者。現在仕事を無くした響の父親と共に、活動中。母親は響家族と共に暮らしている。

当初は生き返るため、英雄眼魂を集めていたが、止めた。
五つの眼魂を仙人に渡して、かわりにチョーガンガンセイバーと、五行の力を宿した五行眼魂を持ち、ノイズを倒す日々を過ごす。

愛機は自動的に動くバイク、ウルバイク。狼の頭部を持っていて、意志があるため、初期は運転を任せていた(免許取れない年齢だが、途中でゴーストだからいいやと開き直り、いまでは自分で運転している)

チョーガンガンセイバー 仙人がくれた、ガンガンセイバーを大きくしたもの。その所為でナギナタ形態など、単体の変形しかできないが、威力は増した。

五行眼魂 炎、水、雷、土、風の五つの力を宿す、特別な眼魂。炎は火力、火を宿す。
水は水を操り、凍らせて氷も操る。雷は瞬間移動したり、エネルギー操作。
土は重力制御に防御力が上がるが、かわりにスピードが落ちる。
風はトリッキーな動きができ、他のものとは違って、炎の次に愛用している。


 一人の少年、フードにもふもふの白い毛並みがふちにつく灰色パーカーを着込む少年は、いつものように高いところから町並みを見ている。

 誰も気づかない。彼はいま姿を消していた。

 

「・・・」

 

 することがないときはほとんどここで過ごすが、少しだけ考える。

 ここ最近、この辺りのノイズ発生率が高い。

 どういうことだろうと思いながら、ため息を吐く。

 

「よく考えたら、ノイズってなんなんだろう?」

 

 よく考えずにやっぱり亡霊になったのではないか?と思いながら、夕焼け空を見ている。やることないときはやることない。

 知り合いがこの町の女学園にいるが、覗きに行く気はない。もう十分の確認はした。

 もう自分のことは忘れ、もう一人の幼なじみと友達達で日常を生きている。

 亡霊はもういない方がいい。

 

「と、ノイズか」

 

 警報が鳴り響く、最近のは凄い。前は自分の方が察していたのに、いまでは同じくらいかと驚嘆する。

 まあ、姿を見せようとしなければ、自分に気づく者はいない。

 高いところから降りると共に、ウルバイクに乗り込む。

 すぐに急ぐ、夕闇へと変わりつつ町の中、建物の窓や屋根を走ると言う、独特の走行をする愛機。

 

「んじゃ、命爆ぜるぜ」

 

 『開眼! ハーツ!!』『スタート覚悟!! ガンガンゴースト!!』

 

 パーカーを纏い、姿を戦士、仮面ライダーハーツに変わり、スピードを上げる。

 ノイズはすでに目の前にいて、面倒だから、ウルバイクをスピンさせてそのまま体当たりする。

 狼の咆哮のようにエンジン音が鳴り響き、ノイズを吹き飛ばす。

 取り逃しはガンモードで撃ち抜く。

 それだけでだいたい片づく。というより、もう終わった。

 

「相変わらず強いなハーツ」

 

 そう思いながら、歌が聞こえる。

 

「!?」

 

 何かが、体の中でざわめいた。これは魂?

 歌が光を放ち、それに胸騒ぎを起こし、ウルバイクを走らせる。

 

(いまの歌、まさか、アイドル組さんらの・・・けど)

 

 疑問に思いながら、走り続ける。

 そして見た、異常な光景。

 

「・・・響?」

 

 

 

 体が重い、ノイズと戦えるのに、身体は思うように動かない。

 このままでは一緒の少女が危険にさらされてしまう。そう考えていると、

 

『雷魂』『イカズチ・神鳴り、鳴る神、神倒し!!』

 

「えっ」

 

 謎の声と共に、黄色のパーカーが現れ、ノイズを蹴散らす。

 雷が斬るように放たれ、そして誰かが纏う。

 その瞬間、それが現れた。

 

「お、おばけ!?」

 

 そう言ってしまったが、その人は銃のようなものを取り出し、辺り一面のノイズを撃つ。

 ビリビリと感電する弾丸が、辺りに放たれる。

 

(・・・守ってくれてる?)

 

 そう思ったとき、向こうのノイズも何者かに倒されていた。

 

「えっ」

(!?)

 

 戦士さんも驚き、それを見た。

 そこにいたのは、風鳴翼。剣を構え、ノイズを倒していた。

 

「あれって、私と同じ・・・」

 

 そう呟いたとき、

 

『オメガバレット!!』

 

 そう鳴り響くと、銃口を空へと放ち、弾丸を放つ戦士さん。弾丸が雷鳴のように分かりて、ノイズを貫いた。

 ノイズが数が減ったのを確認すると、こちらと眼があった?

 

(・・・あれ)

 

 なにか心がざわめいた。

 そして後退すると共に姿が消えていく。

 何があったか分からず、その後、

 

「ご同行お願いします」

「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

 叫び声を上げる羽目になるのであった。

 

 

 

「・・・響・・・」

 

 その様子を呆れながら、ちっとも女の子らしくない悲鳴を上げる幼なじみの後を付けていく、ハヤトであった。




肉体は成長しているので、クリスよりやや背は高く、髪は伸びて切っています。
ご飯は食べなくて済み、睡眠は気分でしたりして過ごす日々です。
どうして? それにはある秘密があります。
本来のゴーストである、天空寺タケルとはかなり変わったケースで、ゴーストになっているので、色々仙人を悩ませています。
それではお読みいただきありがとうございます。


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第2話・選択肢

ハーツ魂、基本形態、基本的に強く、仙人曰く、他のゴースト達よりも一回りスペックを高めているらしい。詳しくは彼は知らない。

炎魂、ワインレットのパーカーで火を操り、熱に対して強くなり、刀身や弾丸に炎を纏わせ、破壊力を増す。足裏などを爆発させることで一時的な脚力を上げ跳び、単体による戦闘力はずば抜けているが、あまりの破壊力のため、周りの被害は大きい。

雷魂、雷を操り、サンイエローのパーカーで雷を操る。応用で磁力にしたり、電気を帯びた機械やレーダーを察する他、メディカルチェックなどもできる。知識は雷魂が教えてくれる。


 立花響は黒服の人と風鳴翼に連れてかれて、いま彼女が通うリディアン女学院、そこに隠された地下施設へとやってきている。

 不安そうな顔の響に、翼はそっと微笑む。

 

「大丈夫?」

「えっ、あっ、その」

「ごめんなさい、だけど覚悟して」

 

 小さく、鋭い目で響に、

 

「この先は戦場、気を引き締めて」

 

 そう言ったが、司令室全員が響をパーティーか何かのように招待して、翼は両手で顔を覆う。その顔は真っ赤だった。

 

 

 

「悪い悪い、そう怒るなって」

「なんで止めないのか~な~で~」

 

 奏は大いに笑い、翼はその肩を掴み揺らす。

 その様子に響は苦笑すると共に、驚愕していた。

 

「奏さん、あの奏さんですよね? 確か、いまは歌うことができないから、翼さんの良き理解者として、あの事件のあと、現役引退したって・・・」

「あっ、ああ、まあその・・・そうなんだよね」

 

 天羽奏は、ライブ事件で大きな被害を受け、歌を歌えなくなり、現役を引退した。

 いまは音楽関係兼友人として、歌い手風鳴翼を支えていると囁かれていたが、見た限り、健康そうである。

 奏もばつが悪そうな顔で頬をかきながら、響を見た。

 

(やっぱり、あの時の子か・・・)

 

 これからする話を考えて、顔が曇る。

 それは、彼女にしてみればトラウマをえぐる話だからだった。

 

「それでは、立花響くん、色々と君が置かれている現状を教える」

 

 風鳴弦十郎、司令官がそう言うと、周りの雰囲気が凍り付いた気がする。

 それに響はびくっと振るえた。

 

「いまからする話はいまの君がどうなっているのかと、君にとって許しがたい話だ」

「許しがたいはなし・・・」

「・・・」

 

 その言葉に、奏は言う。

 

「神代ハヤト」

「!!?」

 

 目を見開き、響は奏を見た。奏もまた、静かに目を瞑る。

 

「忘れるもんか、私が殺したようなもんだ」

「わたし、が・・・」

 

 

 

 ライブ事件における神代ハヤトの活躍は、英雄と囁かれている。

 彼があの現場で一番冷静であり、彼の避難誘導のおかげで助かった命は多くいる。

 そして彼は、会場内にいる友人のもとに駆けつけていき、亡くなったと世間は語った。英雄として、世間が祭り上げた。

 だが彼の功績はそれだけではない。

 

「彼は君をかばったのは、わかるかい?」

 

 弦十郎の言葉に、かすめるのは、風穴が開いた幼なじみだった。それに静かに頷く、弦十郎はそれに頷きながら、話を続けた。

 

「その時もまだ会場には多くのノイズが大量にいた。だが、その時、シンフォギア装者である、奏くん、翼の二人がいたが、彼女らでも殲滅は不可能な事態になっていた」

「そして私は、限界がきてた」

 

 聖遺物シンフォギア、唯一ノイズに対抗する太古の道具。それを使用する者達を装者と呼ぶらしい。

 だがそれを使うには、適正者でなければいけない。だから奏は薬を使い、それを無理矢理上げていた。それが無理が来て、限界だった。

 

「だから私は、絶唱って言う、シンフォギア装者の身体の限界を無視して、聖遺物の力を使う歌を歌おうとしたんだ」

「限界を、無視してって・・・」

「言ってしまえば、絶唱は本来自爆技だ。私はたぶん、本当だったら死んでた」

「!?」

 

 困惑する響に対して、翼はずっと黙り込み、下を向いていた。

 だが、その時に弦十郎は指示を飛ばして、モニターを見せる。

 それに映るのは、当時の記録だ。

 

「ハヤト・・・」

 

 血が流れている。遠目からでも分かる大きな穴に、絶句する。

 側に自分もいるが、血はあまり出てない。何かが刺さっているからだろうかと思いながら、胸を触る。

 自分をかばうために、彼は突き放したが、自分を貫通して自分に刺さってしまった。

 その光景は、ハヤトにとってどんな風に見えたのか分からない。

 だがそんなこと考えていると、モニターに変化が起きた。

 

「えっ」

 

 奏が纏うシンフォギアが突如解けて、彼にまとわりつく。

 血を流しながら、手には槍を構え、ただ叫ぶように歌った。

 歌えるはずもないのに、傷口は何かの結晶で塞がれ、無理矢理歌った様子に見える。

 そして光りが辺りを包み、彼は消え、ノイズが消えていた。

 

「・・・まさか」

「そうだ、彼奴が私の代わりに絶唱を歌って、死んだ」

 

 それを聞き、血の気が引く響。

 奏は静かに、その光景を見る。何度も胸に刻みつけるために。

 

「その後、ガングニールは彼と共に消滅を確認。奏くんはいままでの薬の副作用か不明だが、聖遺物との適正値は0になってしまった」

「けど奇跡的にそれだけなんだ・・・本来なら、寿命とか削られててもおかしくないのに、それが綺麗になくなった・・・」

 

 少し泣きそうな顔になりながら、響に頭を下げる。

 

「あんたには、あんた達には大きな傷をつけておいて、いままで黙ってすまない!!」

「奏さん!?」

「私からもだ!! 彼のおかげで奏は生きていると言っていい、なにより、会場の死者が少ないのとて、彼が誘導し、絶唱を歌ったおかげなんだ」

 

 翼も続いて頭を下げる。それに響は困惑する。

 そう、死亡者は奇跡的に二桁程度。出てきたノイズの数、混乱して暴徒と化した観客など、専門家が考えたうえ、そう言いのけた。

 その所為で色々問題も起きた。が、それも英雄の両親の言葉で収まられた。

 

「あ、頭を上げてくださいっ、そんなこと彼、ハヤトはきっと気にしてません」

「・・・すまない」

 

 そしてしばらく落ち着いてから、了子と言う人から色々と話を聞く。

 どうやら自分の身体に、ガングニールの破片があり、それが自分が装者として戦えた理由らしい。

 それを聞き、奏はまた目を瞑る。

 

「神代ハヤトを殺したのは私だ、私の、ガングニールの破片が、彼奴を貫いたんだ・・・」

「そんな、そんな悲しいこと言わないでください!!」

「いや、それでも私は私を許せないッ。もう少し周りに気を配っていれば、私がもう少し、聖遺物と相性がよければ・・・」

 

 そんなことを言う奏に、首を振る響。

 

「それこそ、ハヤトは悲しみます。ハヤトはきっと、文句言いません、だって、ハヤトは誰かを恨む前に、誰かのために走り出す人なんです」

「立花・・・」

「それに、彼の両親から言われました。ハヤトのこと気にするのなら、それを背負ってもいいから、それでも、いまを生きなさい。私は、そう言われました」

「!?」

 

 それを聞き、奏は覚悟を決めた。

 静かに頷き、翼もまた、はっきり言う。

 

「彼の両親には真実を告げられない。だが、その言葉、胸に刻む。彼の死、自分らの弱さと未熟さで失わせた彼のことを、私達はけして忘れないと約束する」

「・・・はい」

 

 その様子を、ため息混じりに見ている者がいる。

 神代ハヤト、いまは亡霊であり、床でごろごろしてた。

 

「ん? 話終わったか」

 

 自分の死に関する話だが、彼から言えば、んな気にすんなと言う感想だ。

 もう何年も前だし、奏の話を聞いても、彼女に非がないとしか思えないため、何も思わなかった。

 だが、気になることはあるため、こうして姿を消して、尾行していたが、

 

「まさか響の学園の地下に、こんなんがあるなんて・・・雷で調べるか? なんかやばい気がするし」

 

 どうして響をここまで呼んだんだろう? ガングニールと言うものを回収するためだろうかと思いながら、その様子を見ていた。

 だが実際は、彼の思いとは違う話だった。

 

 

 

 とある時間帯、ノイズの軍勢が現れた。

 対するは天々羽斬を纏う、風鳴翼と、ガングニールを纏う響。

 

「最初は私の戦い方、シンフォギアの戦いを見てから、どうするか考えて」

「はい、わかりました」

「・・・」

 

 正直仕方ないこととはいえ、彼女を戦場に立たせている現状に、血だらけの少年の顔が思い浮かぶ。

 当初自分も何度も思い出す。彼が奇跡を起こしたおかげで、奏は延命している。

 最初、彼女から薬の副作用が消えたことを喜んだ。内心ではある。彼女は戦いたがっていたため、もう戦えない悔しさを知るため、それを言えなかった。

 だが素性を隠して、彼の友人、彼がかばった少女の様子などを見に行ったとき、考えが変わった。

 

『死なせて!! どうして私が、ハヤト!! どうし、どうしてぇぇぇぇぇ、ハヤトおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ』

 

 泣き叫びながら暴れる少女。自分をかばい、死体すら無くなった幼なじみの名前を呼びながら、暴れていた。

 目の前で死んだ、彼が自分をかばった。死んだ。

 自分はなんて愚かなんだ。奏が生きててよかったと内心喜んでいた自分を呪った。

 その奇跡の代価が、これなのではないか、友人や親、彼の両親に落ち着くように叫ばれても、自分が彼を殺した、見殺しにしたと泣き叫ぶ少女。

 自分をかばい死んだ。そう泣き叫ぶ。

 止めに入ろうとする奏を、制止する仲間達。当然だ、言えるはずがない。

 真実は隠蔽され、少女は友人を殺したと泣き叫ぶ。

 あの叫び声が消えない。その少女はやっとそれを乗り越えて、いま隣にいる。

 

「・・・本当に戦うの?」

「・・・聖遺物、シンフォギアでしか、ノイズを倒せない。なら、ノイズから人を、誰かを守りたいです」

 

 その瞳は真っ直ぐで、だがそれだけでは足りない。

 奏の意志、ガングニールを纏う少女。色々な思いが渦巻くが、奏は言った。

 

「響を頼む、私の代わりに戦いたいっていう、あの子を支えてくれ」

 

 そう言われ、そして彼女はまだ未熟だ。

 間違いも有れば、未熟な部分もある。

 その思いを考えながら、自分がしっかりしなければいけないと強く剣を握る。

 

(防人として、剣として、もう過ちを繰り返しはしない)

 

 静かに研ぎ澄ます。戦場の先にいる者として、彼女には選択させなければいけない。覚悟を決めさせなければいけない。

 そう決めて、彼女は歌う。まずはシンフォギアという戦い方を見せるために。

 

 

 

 ノイズを倒しきり、響のもとへ戻る翼。

 

「翼さん」

「これがシンフォギア、装者の戦い方よ。まずは貴方はアームドギアを取り出せないといけないけど、これが戦い。覚えておきなさい」

「はい!!」

 

 そう言い合いながら、後は組織の人に任せ、今後のことを奏や司令と共に話し合わなければいけない。

 そう考えているとき、

 

『アイ』『ハーツ!!』

 

「「!?」」

 

『バッチリミールー!! バッチリミールー!!』

 

「お、音!? どこから」

 

 その時、黒紫のパーカーが襲いかかってくる。それに剣で防ぎ、響は叫ぶが、離れなさいと叫び、距離を取る。

 だが、その後ろにパーカーが来たとき、

 

『開眼! ハーツ!!』『スタート覚悟!! ガンガンゴースト!!』

 

 大剣を持つ戦士が突如現れた。

 剣と剣がぶつかり合い、響からより距離を取る。

 

「な、何者!?」

「ただの亡霊だ・・・命、爆ぜるぜ!!」

 

 両刃の剣が変形して、二振りの片刃になり、二刀流で斬りかかってくる。

 それに対処しながら、歌い出す。

 戦い慣れているのか、こちらの手はそれなりに見抜かれており、何より、ここまでの相手は戦ったことがない。

 

「やるな」

「貴様はいったい」

「だが、彼奴からここまで距離が有れば使える」

 

 その言葉に疑問を思った瞬間、何かを取り出す。

 

『炎魂』『ホノオ・炎で吹っ飛べ爆裂だ!!』

 

 爆炎のように燃え上がる敵に対して驚愕する。

 その炎を巻き起こしながら、爆発している。まるで爆弾と斬り合いしているように、ダメージを追っていく。

 

「くっ」

 

 ワインレットのパーカーを纏う敵は、静かにこちらを見て睨む。

 殺気を込めた目線、それで彼は人とであると認識するが、

 

(人? それなら司令室から連絡が入るはず・・・なにより、こいつは立花のことを意識している)

 

 そう余計なことを考えている翼に、爆薬のように辺りを吹き飛ばしながら迫る剣撃に、翼は苦戦する。

 

「お前はいった」

「お前らはなに考えてる」

「!?」

 

 話しかけてくるそれに、翼は驚く。それは気にせずに、

 

「彼奴を戦いの場に連れ込むな!!」

「貴様はいったい」

「亡霊だ!! ただの・・・彼奴を戦いの場に出すのなら、俺はお前らの敵だ」

 

 そう叫び、つばぜり合いしている刃が爆発して、体勢を崩された。瞬間、隙を見逃さずに、ベルトのようなものに剣のツバを重ねる。

 

『アイコンタクト!!』『ダイカイガン・ホノオ・オメガドライブ!!』

 

『オメガスライサー!!』

 

 二つの剣が、距離があるのに振り下ろされる。

 それから炎が走り、爆音を響かせながら迫る。

 

「くっ」

「翼さん!?」

 

 そのど真ん中に響が飛び込んでくる。

 急いで翼を担ぎ、その場から跳んでいく。

 

「立花!?」

「間に合えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 その場から飛び立とうとするが、炎が迫る。

 

『土魂』

 

 そう鳴り響き、炎を防ぐ土のような茶色のパーカーが現れ、炎を防ぐ。

 吹き飛んだものの、傷はなく、響達はそれを見る。パーカーであることから、彼の力であると認識する翼。

 

(立花を・・・守った?)

 

 先ほどの発言と言い、彼は立花響に執着している気がする。

 翼はそれを見ていたが、霧のように姿が消え、その場から消えた。

 だが、最後に声だけが、

 

「無関係な奴を、戦いに巻き込むな・・・」

 

 そう虚空に響く。こうして彼と装者は出会った。




ハヤト(とりあえず、なるべく響から離れないようにしないと)
了子「それじゃ、脱いでもらいましょうか♪」
響「ふへ!?」
ハヤト(・・・・・・・・・・・・いやいやいやいやいや、すまん、ここで待つから)

お読みいただきありがとうございます。


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第3話・特別な力

風魂、黒い近い緑パーカーで、木の葉と共に風を操る。トリッキーであり、ツタのようなものも操れ、辺りの音に敏感になったり、隠密行動に長けているが、すでにゴーストであるため、活躍する機能ではない。だが、分身も作りだし、相手を騙す能力はよく使う。集団戦で活躍する。

土魂、完璧な土色パーカーで、防御力は全てにおいて高い。だがかわりに身体が重くなり、動きが遅くなるが、実は重さ、重力を操れるため、うまく扱えれば炎魂以上の破壊力をたたき出す。


「・・・」

 

 神代ハヤト、現在ゴーストであり、ストーキング中。

 

「だよな・・・」

 

 いまは窓際に座り、授業中の響を見ている。ここはリディアン女学院、男子禁制の女学院なのだが、ここの地下には対ノイズ組織がある。

 ここの本来の役目は、聖遺物の適正者を見つけだすためらしい。これは雑談する人達から聞き取った話だ。この姿になってから、あまり人目は気にしない。

 フードはかぶっているのは、なんとなくだ。いまだフードをかぶりながら、響を見ている。

 ここ最近の響は、鍛錬したり、ノイズを倒したりと、ハードスケジュールになるはずだったが、ノイズは先に自分が片づけたりする。

 それでも響は勉学が苦手だ。大丈夫かと思いながら、ノートをのぞき込むが、のの字が書かれている。なにしてるんだ。

 

「お前がそれじゃ、困るんだが・・・」

 

 聞こえさせようとしなければ聞こえない言葉を呟く。

 そして響は今日も、オーバーヒートしながら、勉強していた。

 

 

 

「だーーー疲れた・・・」

「お疲れ響、未来、頼む」

「響だらしないよ、もう」

 

 もう聞こえないが、いまこの場には幼なじみ三人が揃っている。

 小日向未来を見ながら、静かに笑う。正直自分がいなくなってから、彼女には頭が上がらない。

 自分の所為で傷付いた響がこうして笑っていられるのは、未来のおかげだ。感謝しても足りないなと苦笑する。

 

「とりあえずご飯ご飯、きょ~うはクリ~ムコロッケだよ♪♪」

「・・・響が料理だと!?」

 響からお弁当を受け取る未来に、驚愕する。普通逆な気がするが、二人ともそんなのできないのは、知っている。

 まさかの事態に、やはり苦笑する。

 

「俺はやっぱ死人なんだな」

 

 ばかばかしいと思いながら呟くと、

 

「なら生き返る?」

「仙人ここ女学院だぞ」

 

 女子しかいない建物に、姿の見えない男性二人。

 仙人と呼ばれた男はるんるんと言いながら、彼の周りを動く。

 

「若いっていいね、青春だね~」

「いいけど、どうしたんだよ最近。前は英雄眼魂手に入れようとしないって知ってからは、連絡無かったじゃないか。そっちでなんかあった?」

「おーおいしそう♪ 女の子の手料理か、食べたいね」

 

 明らかな話の逸らしに、ため息を吐く。

 仙人はすぐにまじめな顔をして、こちらを鋭く見る。

 

「人前で姿を現したが、何を考えておる?」

「・・・別に、知り合いが戦場に立とうとしたから、止めたいだけだ」

 

 他の女友達、この学園でできたのか知らないが、三人組も混ざり、楽しそうにする響と未来。

 響の料理に信じられないと驚愕しているところを見ながら、はっきり言う。

 

「ノイズは俺が殲滅する、どんな手を使ってもな」

「!? 待てハヤト!! その眼魂は使ってはならぬぞ」

 

 取り出した眼魂を見て叫ぶが、フードの中にある眼は、決意した者の目つきだった。覚悟はすでにしてあると言わんばかりに、鋭かった。

 

「どうせ死んだ身だ、気にすることはないだろ」

「しかし・・・」

「・・・もういいだろ、俺は地下の方に行くから、長居するなよ」

 

 そう言って、窓から飛び降りて、去っていく。

 その様子を見ながら、和気藹々して談笑する少女を見る仙人。

 

「・・・すまない・・・」

 

 響は少しだけハシを加えて、周りをキョロキョロする。

 仙人はそれだけ見て、静かに去っていく。

 もう止められない、彼はもう選択した。

 もう生きることをやめて、生きてるもの達のために、命を使うと決めてしまった。

 

「止められない・・・ワシが始めたんだ、止める資格なぞ無い・・・」

 

 仙人はそう言いながら、時間だけが過ぎていく。

 

 

 

 響はアームドギアは発現しないものの、奏など本人の努力でそれなりに動きは良くなっている。

 そんな日々の中、またノイズが現れる。

 

「がんばりましょう翼さん」

「ああ、行くぞ立花」

 

 二人は深夜の公園で戦い始めるが、翼はすぐに動きに違和感を覚える。

 

(なんだ、立花のもとばかりにノイズが・・・)

 

 気のせいか、自分と響の距離が少しずつ空いていく。響は気づかず、ノイズを蹴散らしているが、その所為で離れていっている。

 

「まさか、立花」

 

 その違和感に答えるように、ノイズの数が増え、新たな敵が現れた。

 

 

 

 ネフシュタンの鎧、それを着た少女の戦いに、なんだと思う。

 実は戦場のど真ん中にいるのだが、姿が見えない所為で知られずに、その子の顔をのぞき込んでいる。

 いまは翼と牽制しあっている状態のため、動きが止まっている。触れようとしなければ気づかれない。

 

「髪の色は銀? あとはわからん」

 

 よく見ようとしたが急な殺気を感じて、すぐに動く。

 攻撃が始まり、翼とあの子が戦い始める。

 

「おいおい、響って」

 

 そっちはノイズが拘束していた。その様子にん?とすぐおかしいことに気づく。

 

「なんでノイズが拘束なんかしてる?」

 

 ノイズはただの兵器の暴走だ。大昔の災いであり、意志なんてないはずだ。

 考えても仕方ないかと、周りを見て眼魂を取り出す。

 

「命爆ぜるぜ!!」

 

『アーイ』『バッチリミールー!! バッチリミールー!!』

 

「「「!?」」」

 

 突如現れたパーカーが響のノイズを吹き飛ばし、二人の戦いの間に入る。

 

「これは」

「報告にあったもんかよ」

「これって」

「変身」

 

『開眼! ハーツ!!』『スタート覚悟!! ガンガンゴースト!!』

 

 突如ネフシュタンの鎧の子に斬りかかり、フードを外す。

 

「テメェなにもんだ!?」

「俺はゴースト、仮面ライダーハーツ・・・」

「!? ゴースト」

「よくわからないが、お前らの敵だ!!」

 

 響にだけは聞こえない程度に宣言して、剣を振り回す。翼でもネフシュタンでもなく、全員の敵と宣言して戦い始める。

 

「ちっ、るっせぇんだよ」

「はあぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 二刀流にして、二人に割り込んだり、ノイズを切ったりする。

 響の方はノイズが多く、戦いの場に割り込めないでいたが、明らかにおかしい事態になっいるのは分かる。

 

「待ってください!! 相手は人ですよ!! 戦うなんてそんな」

「戦場でなにをバカなこと言ってる!?」

「そうだ立花!! いまはそんなこと言っている暇はない」

「俺ゴーストだし・・・・」

 

 小さく呟きながら、攻撃をゆるめない面々。

 翼よりも攻撃を早め、攻めてくるネフシュタン。

 その攻撃に、仕方ないと思いながら、眼魂を取り出す。

 

『土魂』『ツチ・不動の大地!! 鉄壁巨人!!』

 

 新たな姿、土魂を纏うと、ネフシュタンは驚いてこちらを見ている。

 それに気づいて、だがナギナタモードにしたチョーガンガンセイバーを大きく振り上げると共に、ネフシュタンは横に跳ぶ。

 それに驚きながら、それは大地を砕き、浮いた岩がノイズへと迫る。

 

「ノイズが・・・なんでもありかよくそ!?」

 

 戦いの中、重力を駆使して、動きが重いことを悟られないように戦うが、これは精神を使う。

 まったくと、目の前の生前なら同い年くらいの子を見つめる。

 

「・・・どうしてだ、どうして戦ってるんだよ!! 響も、君も」

 

 その時、片手に眼魂を持つ。それを見た瞬間が合図のように鎖のような刃が放たれるが、それと共にかける。

 

(やっぱ、そのめんたまみたいなもん使うと、使ってたパーカーが消えるんだな)

 

 ネフシュタンは狙ったとおり、パーカーがないいま彼は特殊な力を使えない。その鎖が彼を貫いたとき、それは、砕け散った。

 

「はあ!?」

 

『水魂』『ミズ・見ずに活躍、披露だぜ!!』

 

 大量の水滴を払いながら、突如横に現れる。

 サファイヤ色のパーカーであり、格闘術で戦う。

 

「なっ」

 

 触れた箇所、鎧が凍っていたのを見て、叫ぶように文句を言う。

 

「さっきのからして水だろ!? どうして凍ったりするんだよ!?」

「そういうもんだからいいだろ、ちなみにさっきのは氷で作った氷像ね」

「ふざけんな!!」

 

 そんな戦いの中、水と氷を操る。

 その様子に杖?のようなものを取り出し、そこからノイズを取り出していた。

 

「ノイズを・・・なんでそんなもんが」

「悪いが、答える気はねぇよ」

 

 戦いの中、翼とその様子を見る。

 響のもとに来るが、ノイズの数が多い。それに、一瞬あの時の光景がよぎる。

 

「翼さん・・・」

「このままでは・・・」

『二人とも』

 

 通信機から連絡が入り、弦十郎から指示と情報が入る。

 ネフシュタンの鎧、そしてソロモンの杖。どちらも聖遺物の欠片ではなく、完全体というものであり、力はこちらが劣る。

 

『このことも考えて、君らではネフシュタンの鎧並び、ソロモンの杖の回収は無理だ。ノイズだけ倒すか、その場から離脱しろ』

「しかし!? ネフシュタンの鎧は我々の落ち度で奪われたものです」

『だがそれを取り戻すほどの余裕はないんだ!! 諦めるんだ翼』

 

 その言葉を言われたとき、目の前によぎる。

 幼なじみの少女をかばい、身体に穴を開けた少年を。

 それでも彼は、誰かを助けるのを止めず、親友を救ってくれた瞬間を。

 だけど、そのかわりに、彼は死に、泣きわめく、少女の悲痛な悲鳴を。

 

「翼さん・・・」

 

 いまここで、あの時の汚名をそそがず、なんとする。

 

「・・・この身は剣、防人の生き様を示すとき」

『!? 翼おいっ、やめろ!!』

 

 奏の叫びを聞くが、インカムを外し、その場から走り出す。

 

「翼さん!?」

 

 

 

 二つの影が重なった瞬間、それが放たれた。

 二人、ハーツとネフシュタンは動けず、その場にとどまる。

 

「これは」

「テメェか人気もん!? 邪魔すんな!!」

「悪いがネフシュタンの鎧の回収させてもらう・・・あの時、命をかけて立花を救い、私の親友を、周りの命を救った彼、神代ハヤトのかわりにも」

「あんた・・・」

「彼の守った、大切な立花になぜ関わろうとするか知らないが、彼女は彼の代わりに、私が、防人として守り通す!!」

 

 その時、口紡ぐものに、覚えがある。それを聞き、ネフシュタンは青ざめた。

 

「まさか、絶唱か!? アホか、自滅技だろそれ!?」

「ちっ、まずっ」

 

 二人ともあわて出す中、響も気づくが、周りから行くなと言われたり、ノイズが迫って進めない。

 覚悟を決め、いま絶唱が紡がれる。

 そう思ったとき、

 

「ふざけんな!!」

 

 立花響は、その叫び声を聞いたとき、胸が跳ね上がった。

 一瞬、その一瞬、彼がよぎる。

 そして次の瞬間、それが鳴り響く。

 

『ガングニール魂!!』

 

 パーカーが消え、矛のような袖を持つ金色のパーカーが光速で動き、周りのノイズを貫き、翼の絶唱の邪魔をした。

 

「なっ、んだと!?」

「ガングニール!?」

 

 それは獣のように吼えて、ハーツの真上に来る。

 ハーツは静かに、それを纏った。

 

『ガングニール・撃槍!! 裂槍!! 貫く決意!!』

 

「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」

 

 咆哮すると共にフードを外し、獣のような爪は刃のような腕であり、月下の元、獣が生まれた。

 獣は走る、全てを貫くように、ノイズ達を蹴散らしながらネフシュタンへと迫る。

 あまりの出来事に呆然となるが、殺気を向けられ、すぐに我に返り、ノイズを取り出す。

 だが全て貫かれ、その爪は、腕はまさに槍だった。

 

「くっ、なんだよ・・・まさかお前もシンフォギアか!?」

「これで終わらす」

 

『ダイカイガン・ガングニール・オメガドライブ!!』

 

 空高く飛び立ち、そのまま地面へと突進する。

 腕を前に突き出し、地面をえぐる。

 杭が地面に刺さるような光景に、余波だけで全てが消し飛んだ。

 

 

 

 光りが収まり、周りを見る。

 彼を中心に巨大クレーターが生まれ、響は吹き飛び、少し身体を打ったのか、すぐに動かなかったが、外傷はない。

 翼も急いで起きあがるが、まさかの威力に驚いていた。

 

「まるで絶唱・・・あの時のようなエネルギー・・・」

 

 ネフシュタンはその隙に、ボロボロになりながらも立ち上がり、その場から走り出す。それを見て駆けだそうとするが、それよりも先に、悲鳴が響く。

 

「くあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 金色の閃光が身体を駆けていて、ハーツはその場で暴れている。

 痛みからかは知らないが、その場に膝をつき、姿がかわっていた。

 まるで普通の、私服姿の少年だ。

 

「シンフォギアが解けたのか!?」

 

 その顔を見ようとした翼。

 駆け寄り、その襟を掴み、剣を向けてその顔を、

 

 見た。

 

「・・・・・・・・・えっ・・・・・・」

 

 見た。

 

 フードの中、その少年の顔を、見た。

 

 世界が止まった。時間が止まった。思考が止まった。

 

「なん・・・・・・・で・・・・・」

 

 いままでにないほど動揺する翼に彼はすぐに腕を振り払い、フードを深くかぶる。

 汗が滝のように流れ、呼吸も荒い。まるで生きているようにだが、

 

「響に言うな・・・」

 

 そう言って彼は消える。

 それに翼は愕然となる。

 わからない。なにもかもわからない。

 剣を落とし、身体のふるえが止まらず、その場に座り込む翼。

 誰にも分からず、その場は混乱の中で終わった。

 

 

 

「がっ、ぐっ・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

 

 痛みが全身を駆けめぐる。

 死のような痛み、いや、魂の痛みを感じながら、闇夜を歩く。

 

「ぐっ・・・ま、だだ・・・まだ、消えられない・・・」

 

 拳を握りしめ、前を、暗闇の中を歩く。

 まだ消えない命、まだ燃え尽きていない。

 なら、まだ進める。

 

「命、爆ぜろ・・・終わるまで、まだ、爆ぜろ・・・」

 

 そう決意しながら、彼は闇の中を進む。




翼さんにバレました。この場合、この人のメンタルはどういったことになるだろう(やっといてなに言ってる

響とハヤト、未来の関係も、次回話せればいいと思います。
それでは、お読みいただきありがとうございます。


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第4話・この命の使い方

水魂、サファイヤブルーのパーカーで、水と冷気を操ることが出来る。氷像を創り出したりと、以外とかぶりが多いなと思いつつも、実は霧を生み出したり、熱湯など、応用力がある。けどかぶってると内心思っている。

ガングニール魂、金色の荒ぶる獣のようなパーカーで、腕を覆うほどの鋭い爪や刃があり、足にも刃がついていたり、触れただけで人を傷付ける矛そのもの。
仙人曰く、使ってはいけない眼魂。
使えばどうなるか、彼は知っている。


 小さい頃だった。

 ただ幼稚園から面倒を見る機会があり、たまたま会う機会が多かった。

 家族ぐるみの機会もあり、三人は仲のいい幼なじみとして育っていた。

 響、未来、大切な幼なじみ。

 また会い、話すために生き返るはずだった。

 だけど、俺は死んだ。

 

 

 

「ぐっ・・・ツッ」

 

 体を起こすが、半身起こすだけで激痛が走る。いまの状態では誰かに見られる可能性があるため、人気のない場所で休んでいた。

 正直、痛みで眠ることもできない。

 

「ガングニール魂・・・ここまで、か・・・」

 

 そう言いながら、その眼魂を見る。

 金色の、刃のような感覚を感じる眼魂。

 初めて使ったときは気絶した記憶が思い返す。

 

「・・・」

 

 そして知った。自分はもう、

 

「・・・俺の命は、もう・・・」

 

 

 

 リディアン地下施設で、バイクをいじる翼。

 その顔は優れず、黙々とバイクをいじる。

 

「翼」

 

 その言葉に体を震わせ、振り返らず、返事をする。

 

「なにかようか奏」

「・・・彼奴は何者だ」

 

 モニターで見た、翼は明らかに、顔を見た。

 そして翼から想像できないほどの動揺も見た。その後、彼女はけして誰にも話さずにいまにいたる。

 響も心配していたが、問題ないの一方通行。

 だが、それでもわかったことがある。

 

「彼奴から生命反応が無かったことと、ゴーストとか言うこととか、色々関係あるのか?」

「・・・」

「・・・だーーーー翼!!」

 

 生命反応が無く、未知のエネルギー生命体。ノイズにかわる謎の存在だが、彼は敵ではないと翼は言った。

 そう、翼は知っている。聞き出さなければいけないのだが、

 

「・・・」

 

 無理矢理振り向かせると、いまにも泣き出しそうな顔の翼がそこにいた。

 それを見て、奏は黙り込む。

 翼自身、何を見たか分からないが、彼女には受け入れがたいものだったのはわかるからだ。

 

「かなで・・・」

 

 弱々しく呟き、だきついてくる翼。

 それを撫でながら、静かに考える。

 

「・・・頼む、彼奴は何者か、教えてくれ。でないとなにも、できないんだよ」

「・・・」

 

 そう言われ、体が震えている。

 そして、

 

「彼は・・・」

 

 その言葉に、奏も絶句した。

 

 

 

「何時間経ったか、わっかんねぇ・・・」

 

 やっと自由に動けるようになり、身体が消えてるか確認するために、町に出てきたが、誰もいない。

 往来のど真ん中、町から人という人がいない。

 何がどうなってるんだろうと、ゴミ箱などで新聞見ると、

 

「・・・お偉いさんの事故死? まあ関係・・・ノイズか」

 

 気配を感じて、ウルバイクを呼び出す。すぐに走り出して向かう。

 その時、ふとっ考える。

 またあの子達と、響と出会う可能性。

 それでも、

 

「俺はハーツ、ゴーストだ・・・命、爆ぜるぜ!!」

 

 

 

 バイクを走らせていると、海面を走ることになるが、ウルバイクにとってそこも道であり問題ない。

 橋には車が何台か走っていて、そのすぐ側にノイズの反応がある。

 

「車を襲う? また意志持ったノイズ!?」

 

 彼からすればどうなっているかわからないが、やることは一つ。

 ノイズと戦う、それがゴーストになった理由だ。

 

「変身」

 

『水魂』『ミズ・見ずに活躍、披露だぜ!!』

 

 突如現れ、すぐにベルトのハンドルを引く。

 

『ダイカイガン・ミズ・オオメダマ』

 

 海面でバイクをスピンさせ、それが早まると共に、大波となり、橋を飲み込んだ。

 それに全員驚き、車が止まるが、ノイズが海水の中で飲まれ、消える。

 フードを外しながら、車を見ると、

 

「貴方は・・・」

 

 風鳴翼がバイクに乗り、こちらを見ている。響も車の中に、了子?さんという方と共にいる。

 響に聞こえないほどの声で、静かに、

 

「まだノイズは潜んでる、構えろ」

「!?」

 

 ノイズがまだ出てくるが、その言葉にバイクを走らせ、側に来る。

 

「お願い、いま大事なものを私達の基地に輸送中なの。力を貸して」

「・・・わかった」

 

 そう言って、いまは揃ってバイクを走らせることにする。色々思うことがあるが、基本彼女たちは日本政府の組織だ、信用できる。

 インカムで話をしているが、その様子に、

 

「響には」

「・・・他の人には、伝えた・・・」

 

 苦しげに言うが、それだけならいい。

 

「なら行くぞ、援護する。撃ちもらしを頼む」

「わかった」

 

 ガンモードにしたチョーガンガンセイバーと共に走る。

 ノイズが次々と出てくるが、それを粉砕している二人。

 だが巨大なノイズも出てくる中で、車が別の移動した。

 

「これは」

「指示で移動先をかえた、大丈夫、彼女も戦えるし、我々も急ぐ」

「・・・響はもう、戦力の勘定に入ってるのか」

 

 その言葉に肩が振るえた。

 それを咎めることは出来ないだろう。ノイズは倒せる人物が限られている。

 

「すまない・・・」

「・・・」

 

 悲しそうにこちらを見る風鳴。誤ったのは、彼女の立場を考えていなかった。

 それでも、悲しそうに、こちらを見ている。

 

「とっとと終わらして、響のもととに俺は出向く」

「わかった、殿は任せろ」

「いや、俺から離れろ」

 

『炎魂』『ホノオ・炎で吹っ飛べ爆裂だ!!』

 

「命爆ぜるぜ!!」

 

 爆炎が巻きあがり、ノイズを一掃する。

 

 

 

 ノイズを倒しきり、急いでウルバイクに乗り、急ぐ二人。

 戦いの中、翼のは大破してしまったからだが、

 

「「!?」」

 

 突如光りが響達がいる場所から放たれる、なにか嫌な予感がするため、速く走らせた。

 

「響!?」

 

 響は剣のようなものを持ち、黒い何かに覆われていた。

 獣のような咆哮を放ちながら、剣を構えている。

 

「なんだあれは」

「完全聖遺物デュランダル!? なぜ立花が」

「このままじゃまずい!?」

 

 明らかに正気じゃない響を見て、ある眼魂を取り出す。

 それに翼ははっとなり叫ぶ。

 

「ダメ!?」

 

『ガングニール・撃槍!! 裂槍!! 貫く決意!!』

 

「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

 

 二人の雄叫びが轟く中、光りと光りがぶつかり合う。

 その余波だけで、翼は近づけず、静観するしかなかった。

 

「バカな、立花はともかく、彼のは聖遺物ではないのか!?」

 

 ぶつかり合う刃の中、彼の身体に異変が起きる。

 光りの閃光が走り、彼が苦しそうに歯を食いしばる。

 

「くっ、ひび、き・・・」

 

 その剣を握りしめ、静かに、

 

「命、爆ぜろ!!」

 

『ダイカイガン・ガングニール・オメガドライブ!!』

 

 その瞬間、光の閃光が放たれた。

 

 

 

 その場に崩れる二人。その中心はクレーターができていて、フードが外れて素顔を逸らす。

 それに弦十郎、彼と共にいた奏は驚愕し、息をのむ。

 

「神代・・・ハヤト・・・」

「なん、で・・・」

「響・・・」

 

 彼は倒れている響の様子を見る。

 気絶しているだけで、それにほっとするが、身体がふらつきながら、その身体が一瞬透けた。

 

「まだだ!! まだ消えるわけには」

「もうよせハヤト!!」

 

 その瞬間、仙人もまた全員の前に姿を現せる。

 全員が警戒する中でも無視して、仙人はハヤトに叫ぶ。

 

「その眼魂は本来の用途と違う!! たまたま眼魂の形になった異物そのものだ。お前の魂を入れた眼魂が壊れれば、お前は消滅するぞ」

「なっ・・・」

「このまま本当に死ぬつもりか!?」

 

 それに全員が驚き、仙人を見るが、ハヤトは、

 

「俺はもう死んでるんだ!! もう期限もなにも過ぎてるんだっ、いい加減にしてくれ仙人」

「いい加減にするのはお前さんじゃ!! 本当は」

「俺の身体は傷さえ塞げば生きかえさせられたんだろ!?」

「!?」

 

 仙人が驚き、驚愕する。

 だがそれに静かに首を振る。

 

「だけど知っている、あんたが想定していない事態が起きて、それもできないこと、俺が生き返られない可能性がことを、知っている」

「なん、だと・・・お前さん、まさか知ってて諦めたのか!?」

 

 その言葉に、静かに首を振る。

 

「諦めたんじゃない、決心したんだ・・・俺はゴースト、ノイズを倒す、亡霊として命を爆発させる・・・それが、俺が選んだ俺の命だ」

「・・・ハヤト・・・」

 

 その瞬間、ウルバイクが動き、その場に乗り、去っていく。

 止めようとしたが、翼はすぐに動けず、仙人はその様子を見る。

 

「馬鹿者が・・・」

「あんたは知っているのか」

 

 弦十郎は睨みながら、仙人を見る。仙人は静かに考え込みながら、弦十郎達を見る。

 

「ワシは仙人、神代ハヤトをゴースト、仮面ライダーハーツにかえたもんだ」

「ゴースト? 彼はいま幽霊ということか」

「少し違うが、だいたいは・・・半死半生の状態だ」

 

 その言葉に奏達は驚く。それは、

 

「それは半分生きてるのか!?」

「・・・ああ」

 

 下を向きながらの答えに、全員が疑問に思う。

 弦十郎だけが言葉の意味を知りながら、険しい顔で見ていた。

 

「・・・いま彼の状態はどうなってるんだ」

「・・・」

 

 

 

 眼魂、魂を入れる器。そして身体を保存するカプセルがある。

 異世界の人間である仙人は、ある計画の保険のため、英雄の魂が込められた眼魂。英雄眼魂が必要不可欠だった。

 なるべく早く、手に入れなければいけなかった。そのために、数多くの次元に目を付けて動いた。

 そして、ほぼ即死と言う状態でありながら、強い魂の輝きを持つ、神代ハヤトに白羽の矢を立てた。

 

「百日の間、15個の英雄眼魂を集めたとき、ワシはハヤトを生き返らせるという取引をした。そして奴は五つの英雄眼魂を手に入れた」

「百日って待てよ!? んなもんとっくにすぎてるじゃねぇか」

「・・・彼奴は」

 

 

 

「仙人、頼みがある」

「なんじゃ?」

 

 ある日のことだった。

 

「俺が持つ英雄眼魂五つ、全部やる。だから俺をゴーストのままにしてくれ」

「なんじゃと!?」

 

 百日過ぎれば消滅する身体より、ノイズと戦い続けられる身体が欲しい。そう願った。そのため、仙人の出した答えは、

 

 

 

「まさか」

「ワシは、ワシの世界のために、五つの英雄眼魂と、世界の五行を司る、五行眼魂と交換したあと、奴の身体を永続できるようにした」

「ふざけんな!!」

 

 奏は吼え、使いかかろうとするが、そこから姿を消し、別の場所に現れる仙人。

 だが奏は叫ぶ。

 

「なんで彼奴がそんなことしてるんだよ!? せっかく生き返ることができるのに」

「・・・」

 

 その話を聞きながら、弦十郎はある疑問を考えていた。

 

「本当に生き返るのか?」

「・・・勘がいいな」

 

 仙人はその言葉に頷き、静かに語る。

 

「お前さんの言う通り、普通に死人が生き返るんじゃなく、一時的に死んでいる肉体と魂、ワシはそれを一時的に分けただけだ」

「それじゃ」

「ああ、奴の肉体は別の場所、安全な場所で保管されている」

「それならば神代は」

「・・・本来なら生き返られるはずだ」

「本来なら?」

 

 その言葉に疑問に思いながら、響からううっと意識が戻りかけていた。

 

「悪いが、もうこれ以上意味がない話だ。奴はもう生きることをやめている。ゴーストとして、ノイズを、その娘を守ると言う決意をしている。少なくとも、始めたワシに、止める資格はない」

「おい待て!!」

 

 奏の叫びよりも早く、姿を消す仙人。

 翼も奏も、それだけでは納得できず、周りを睨む。

 弦十郎も静かに憤りながら、これだけはわかった。

 

(神代ハヤトは生きている・・・だが、半ば死んでいるに近い状態。あるいは生き返られない状態であるということか・・・)

 

 響は起きても、誰もこのことを教えられない。

 弦十郎が後でそう通達した。

 こうしてデュランダルは、基地に移送されたのであった。

 

 

 

「・・・まだ、消え、な・・・い・・・」

 

 そう呟きながら、消えかける身体のまま、前を歩く。

 ただ一つ、決めたことのために。

 

「響・・・」

 

 守る。そのためにこの命はある・・・




ちなみに、感想で書きましたが、作者が考えているハヤトが集めた英雄眼魂は、ニュートン、ツタンカーメン、フーディーニ、グリム、サンゾウの五つ。ニュートンは仙人が元の世界に持ち込む際、何かしらあり、落としてしまった。

残りの四つは、マコトの手に渡り、うち二つは眼魔側に交渉材料として渡していたなど、裏取引に使われた設定です。

それではお読みいただきありがとうございます。


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第5話・消えていく命

オリ主の容姿、白いもふもふ毛のついたフードパーカーを着ている後は普通の16(クリスと同い年)歳です。
成長はしてますが、睡眠は気分、ご飯は食べずに行動。主に高いところ、町が見下ろせる場所で暇を過ごす。
景色を眺めるのが好きで、以外と勉強していますが、中学でストップしてます。


 どうやら姿はまだ見えている。ガラス窓、ウインドを見ながら、ため息をつく。

 身体は問題ないが、姿を消せないのは問題だなと、気を付けつつ町の中を歩く。

 いつもの調子で屋根まで跳んだりしたら、ニュースになるし、この辺りはリディアンの生徒もいる。まさかと思うが、未来や響、もしくばそれ経由で自分を知る人物と出会う可能性がある。

 そう思いながら町を歩く。

 

「ん?」

「・・・」

 

 マジかと思う。天羽奏がサングラスを傾けて、こちらを見ている。目が合うレベル、しかも至近距離。

 向こうは風鳴翼のポスターを見ていたところを、発見すると言う奇跡を起こした。

 すぐさま手を伸ばし、その身体を掴んだ。

 

「神代ハヤト!?」

「よりにもよって姿消せないときに・・・」

 

 

 

 どこかの公園のベンチ、お互い人目を気にしてだが、天羽奏は先ほど連絡らしいことはしてないため、渋々話をすることにした。

 

「まさか元とはいえ、トップアーティストと会話するとは、生前ならよかった」

「・・・それについて話が聞きたい」

 

 そう言いながら、天羽奏。奏で言いそうなので、奏さんは言う。

 まず生き返る権利のことや、自分が殺したこと、それを言われた。

 

「ふざけるな、あれは事故だろ。気にすることじゃない」

「だけど、それがきっかけでゴーストになったんだろ、お前は」

「・・・そうだけど、俺はいまの生き方で満足してる。いまさら生き返る気はないんだ」

「・・・本当にか?」

 

 その目を見て、嘘は言えないと察する。

 生き返りたい、当たり前だ。俺は響に、会いたい。

 

「お前は響に会いたいんじゃないのか?」

「だからって、いま会ってどうするんですか? 彼奴が死んだとき、どうなったのかは・・・見てました」

「・・・そうか」

 

 だから急いで英雄眼魂を集めた。半死半生状態でもいいかとも思ったが、それでも傷付ける気がした。

 だから生き返り、会うしかないと思っていた。

 だけど、

 

「だけど俺は生き返らない」

「どうしてだ!?」

「・・・」

 

 そのことをこの人には言えない。

 仙人が予想できなかったイレギュラーである理由、この人にはけして言えない。

 

「黙らないでくれ・・・お前を、お前達の人生を壊したのは、私なんだ」

 

 だから言えない。傷付いて欲しくない。

 

「あんたがそう傷付くのなら、俺はなにも言わない」

「それは・・・私に関係あるのか」

「・・・」

「黙りはそうだって言ってるようなもんだ・・・私の所為で、生き返らないのか?」

「違う!!」

「ならなんだ!?」

 

 その問いかけに、何も言えない。

 

「・・・あんたなら、真実を知ってもそういう風にしか受け止めないから、言わない・・・たまたまだ。運が悪かった、それだけなんだ」

「それで、はいそうですかって納得できるかよ・・・」

 

 黙り込む二人。

 どうするべきかわからない。答えが出ずに、ノイズの気配に付く。

 

「ノイズ!?」

「なに!? わかるのかよ」

「仙人に頼んで、ノイズの気配がわかるようにしてもらったんだ」

 

 そう言ってから、ウルバイクを呼び、それに乗り込む。

 奏も連絡してみると、驚愕する。

 

「響がネフシュタンの奴に襲われてる!?」

「!?」

 

 それを聞いた途端、すぐに走り出す。

 奏はいま戦えない。そのためその後ろ姿を見るしかなく、舌打ちする。

 

「・・・彼奴らの人生滅茶苦茶にしておいて、私はなにもできないのかよ・・・頼む翼・・・」

 

 その言葉を仙人はそっと聞いていた。

 仙人もまた考える。自分が壊した人生を、それを考え苦悶する。

 

「タケル、龍よ。お主らならどうする・・・ワシは彼女たちに、どうすればいい」

 

 

 

『開眼! ハーツ!!』『スタート覚悟!! ガンガンゴースト!!』

 

 巨大な剣に阻まれる少女は、よく見ればネフシュタンの子だった。

 その鎧がはがれ落ち、赤い鎧、重火器を纏っているとところに、ハーツが現れる。

 

「テメェ・・・」

「!?」

「あなたは」

「・・・」

 

 内心状況はわからないが、彼女は何かしらの事情がある子なのはわかるが、気になる点がある。

 例の、ノイズを取り出す杖を持っていない。

 

「・・・君はなにがしたい」

「・・・テメェには関係ねぇ」

 

 四者というべき状況下、その時、はがれ落ちているネフシュタンの鎧が一カ所に集まる。

 

「なんだ!?」

「!? フィーネ!?」

 

 赤い子が、離れた位置にいる、コートの女性にそう呟く。彼女の手元に、ネフシュタンの鎧が集まっている。

 

「使えない子・・・あなたは用済みよ」

 

 それに驚愕する赤い子。その様子を見て、なんか知らないが、

 

「気に入らない・・・」

 

 ウルバイクを走らせ、その女性へと迫る。

 だがノイズ、それを取り出す杖を向けられたが、

 

「亡霊には効かねぇよ!!」

 

 チョーガンガンセイバーで切り伏せるが、後ろからミサイルが迫る。赤い子が狙ったらしいが、それも効かない。

 バイクを回転させ、その間にガンモードにして撃ち落とし、再度回転して、女性を見る。

 その様子にほうと、サングラスなどで素顔が見えないが、長い金髪は呟く。

 

「やはりおもしろいな、神代ハヤト」

「!!?」

 

 この女性が自分の名前を言った。着地する瞬間だったため、少し隙を作りだしてしまう。その瞬間、女性は姿をくらましたが、逃がすわけにはいかない。

 

「待て!!」

 

 その間知らなかった。

 響が未来に、シンフォギアを見られたこと。それに気づかず、町を走った。

 

 

 

 数日が過ぎた。あの後見失い、姿がいまだに消えないゴースト。

 ウインドガラスを見ながら、ため息をつく。

 

「・・・ガングニールの所為か? はあ」

 

 見た目高校生のため、あまり町中をうろつく訳にはいかない。中卒のようなものだが、身元を聞かれるのはまずい。

 そうして歩いていると、赤いワンピースの子が視界に入る。

 

(ん?)

 

 その足取りはふらついていて、次の瞬間、倒れた。

 とっさに身体を動かし、その子を支えた。

 

「おい、しっかりしろ」

「・・・」

 

 気を失っている。まずいと思いながら、どうするか考える。

 自分はゴーストだ、救急車や、知り合いに頼むこともできない。

 どうするか考えていると、

 

「あの」

 

 その声に戦慄する。

 真後ろ、フードを手にかけずに、深くしたいと思いながら振り返る。

 そこで、僅かに見た子は、

 

「大丈夫ですか!?」

 

 幼なじみの小日向未来だった。

 

 

 

 とりあえず、未来の案内で、彼女の知り合いのお店に、ワンピースの子を運び、いま女性の看病のため、別室にいる。

 フードのおかげで知られてはいないが、声で知られる可能性があった。

 それを考えると、いち早くここから立ち去るべきなのだが、ワンピースの子をあのままにしておくのもできず、結果がこれだ。

 

(・・・未来)

 

 そして隣の部屋から叫び声や怒声が聞こえる。なんだと思いノックしたが、入るなとワンピースの子に叫ばれた。

 しばらくしてから、了解を取り入る。

 無言のまま、フード越しで二人を見た。

 

「私は小日向未来、この人がここまで運んでくれたんだよクリス」

「・・・雪音・クリスだ」

 

 そっぽ向かれたまま答えられ、どうするか考える。

 声も名前も出せない。どうするか考えつつ、無難な答えを選んだ。

 

「通りすがりだ、気にするな・・・」

 

 なるべく小さく、未来を気にかけながら答える。それにむっとなるクリスだが、気にしてはいられない。

 

「名前くらい教えろよ、その・・・感謝、してる」

「・・・気にするな」

「ふざけんな!!」

 

 その様子を見ながら、穏やかに微笑む未来。いつも側にいる未来。

 昔と変わらず、優しい友人だった。

 

「ほらクリス、落ち着いて」

「ったくよ」

「・・・」

 

 その様子を見ながら、もう問題ないと思いながら、その場から去ろうとする。

 

「じゃあな」

「あっ、待って」

 

 そう、

 

「まだ話は聞いてないよ、ハヤト」

 

 そう聞くまでは、

 

「・・・」

 

 あまりのことに時が止まった気がした。

 

 振り返れば、真っ直ぐな瞳がこちらを見ている。

 

「・・・なんの」

 

 だがすぐにフードを捕まれ、顔を見られる。

 

「幼なじみの顔や仕草ぐらい、わかるよ」

 

 少しお怒り気味、いや優しい方だ。

 そう思いながら、喉が渇く、ここまで緊張したのはいつ以来、自分のことを知った時以来だろうか。

 

「どうして、生きて」

「・・・未来、俺は生きてないんだ」

「えっ」

 

 どうするか考える、ここにはクリスがいる。クリスはどうなってる?と思っているが、未来はその返答に叫ぶ。

 

「いままでどうしてたの!? どうして生きてたのに私達の前にいなかったの!? 響みたいになにかあったの!?」

 

 その言葉に、クリスも僅かに顔を動かすが、いまは、

 

「待て、なんで未来が響のこと知ってるんだ」

「響のことって・・・響は」

「俺のことは知ってない。ああくそ・・・全部話すよ、それでいいだろ」

「・・・」

 

 ゴーストになったことを、クリスの前とは言え、話さなければいけなくなった。

 未来は信じられない顔をするが、響のことでクリスが反応したことに、ある違和感を感じた。

 だから無視して、全部話した。

 俺が生き返る可能性があったが、実際は無いこと。

 だから、生き返ることをやめて、ノイズと戦えるいまの身体を選んだことを教えた。

 

「ふざけないで!!」

 

 未来は叫んだ。それはどういう意味かと思うが、それは、勝手に決めたことだろう。

 その通りのように未来は叫ぶ。

 

「生き返る生き返らないの時点で、その状態でもどうして私達の前から姿を消したの!? 響がどれくらい傷付いたか、知ってるんでしょ!?」

「だからって、百日過ぎたら消滅だって知ったら、あの状態の響になんて言えばいい!? そもそも信じられないだろ、俺だって最初は信じられなかったんだぞ」

「それでも会いたかったんだよ、響は!! 響にとって、ハヤトは大事な人なんだよ!?」

「わかってる!! 目の前で死んだことについては悪いと思ってるし!! だけど、だけど俺は死んでたんだ!!」

「生き返ることができるんでしょ!?」

「生き返らないんだ!! むしろその可能性が高かったからやめたんだ」

「なんで!?」

 

 泣きそうな未来の叫びに、静かに、

 

「・・・消滅するくらいなら、お前らの未来を守る力が欲しかった・・・わからない可能性より、確実な方を選んだんだ」

「ハヤト・・・」

「・・・」

 

 黙り込む中、未来はいまにも泣きそうな顔をしている。

 フードをかぶり、静かに身体を見る。姿が、手が透けられた。

 

「悪い、俺はもうゴーストだ。響には言うな、彼奴の知るべきことじゃねぇ」

「!?」

 

 その瞬間、姿を消して去る。

 何かの叫びが聞こえたが無視した。それしかできない。

 

 

 

 少し離れた位置、姿を消しながら、後ろを振り返る。

 未来は、泣いているだろうかと思いながら、だけど、

 

「生き返らない・・・そうだ、生き返ることができないんだ」

 

 その叫びに反応するように、ノイズの気配と、警報が鳴り響く。

 それに驚きつつも、やることはかわらない。

 

「命爆ぜるぜ・・・」

 

 

 

 歌が聞こえる。この歌はなんだろうと思いながら、ハーツはノイズを討つ。

 その歌い手と目があった。それは、

 

「クリス」

「お前・・・」

 

 それは先ほどの少女、バイザーがないおかげではっきりわかる。

 クリスがシンフォギアを纏い、ノイズと戦っていた。

 

「言いたいことは後だ、ノイズを倒すぞクリス」

「私に近づくな!! これは私を狙ってきた奴らなんだ」

「知るか、俺はノイズを倒す。そのためにゴーストになったんだ!!」

 

『炎魂』『ホノオ・炎で吹っ飛べ爆裂だ!!』

 

 爆炎と弾幕が火を噴き、辺り一帯のノイズは殲滅する。

 いつの間にか背中合わせで戦いながら、クリスは何か言いたげな顔でこちらを見ていた。

 

「一気に叩く、火力が凄いから気を付けろ」

 

『ガンガンミーナー!!』『ダイカイガン・ホノオ・オメガドライブ!!』『オメガバスター!!』

 

 チョーガンガンセイバーガンモードから、放たれる紅い閃光が辺りを包む。

 その火力に驚くクリスだが、その様子を見ながら、静かに近づく。

 

「なんで助けた・・・私はお前の」

「俺はノイズを倒す亡霊だ、それ以上の意味はない」

「・・・お前」

「・・・」

 

 そう言ってから、もとの姿に戻る。

 ただ静かにクリスはこちらを見るが、すぐに姿を消して、その場を去る。

 そうだ、ゴーストである。

 もう、生きてない。

 

「この命は、爆ぜ尽くすまで使う・・・」

 

 そう決意して、前へと歩く。




 とあるカプセルの前で、仙人は静かに見つめる。

「・・・やはり無理か・・・」

 カプセルの中に眠る少年、その胸を多う鉱石を見ながら、あるものを取り出す。

「・・・ワシにできることは、天羽奏、お前は戦う力を欲するか?」

 そう言いながら、眼魂と共に、ベルトを見つめながら、静かに考え込む。
 もう間違えることはできない。だから考えなければいけない。

お読みいただきありがとうございます。


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第6話・イレギュラー

オリジナルライダーのストック無いよ。


 さまよう中、クリス見つけた、つけてみた。

 

「というわけだ」

「わけだじゃねぇ!!」

 

 どこかの古いマンション、そこで姿を見せておく。クリスは激怒していて、それでも出ていけともなにも言わない。

 その様子を見ながら、腹でも減っているのか、とりあえず食い物渡す。

 

「なんで食べ物」

「いや、死んだときの所持品の唯一の金使った。まあ、いまの俺にはいらないから気にするな」

 

 彼女には全部話しているから気が楽だなと思いながら、そう言う。

 なにか言いにくそうな顔になるが、あんパンと牛乳をいただいているクリス。

 そしてしばらくして、

 

「!? 誰か来る」

「なに!?」

 

 警戒する二人だが、姿を消して除いてみると、驚いた。

 

「響んとこの司令官さんだ」

「!?」

 

 そしていま、三人は重々しい空気の中、静かに雨音を聞いている。

 クリスは昔、戦争に巻き込まれ、捕虜として生活していて、保護する子供として覚えていたらしい。

 そう言えば、ライブの日の新聞で、そんなんがあったなと呟く。

 

「その時の子がクリス?」

「ああそうだよ、神代ハヤトくん」

「・・・」

 

 黙り込むクリス、なにも言わずに、周りを警戒するが、人気はない。

 雨を見ながら、静かに思い出す。

 

「そう言えば、響はともかく、どうして未来まで響の、ノイズのこと知っていたんだよ!?」

「それは・・・」

 

 クリスをちらっと見るが、なんだと思うと、クリスが、

 

「あの時、私とあのバカが戦ってるとき、偶然いたんだよ・・・」

「・・・俺の運の悪さ呪うぞ世界・・・」

 

 そう言いながら、ため息をつく。

 その言葉に、弦十郎は静かに聞く。

 

「奏から聞いた、奏には言えない理由らしいが、いまならどうだ。自分のこと、もしかすれば」

「もしも、なにもない。俺は死んだんだ」

「・・・頼む」

 

 弦十郎は静かにそう言う、クリスも何か言えと言う顔で見ている。

 なぜクリスも聞きたがるのかわからないが、

 

「それは胸の鉱石の所為じゃ」

 

 突如現れた仙人が説明し始めた。

 クリスに仙人のことを伝え、仙人は静かに、真剣に言う。

 

「本来、ハヤトは死ぬはずだったが、ワシが死ぬ瞬間、肉体を永久保存するカプセルに、魂を、眼魂と言う物に封じた」

「本来の目的は、仙人の世界、眼魔世界での騒動を止めるため、15個の英雄達の魂が宿った眼魂、英雄眼魂を集めたかったんだ」

「そこまでか・・・そうだ。ワシは本来の世界の他に、保険として異次元の世界にいる英雄も含めて、眼魂を集めるために動いた」

 

 そして神代ハヤトを目撃し、白羽の矢を立てた。

 身体は大きな傷を負ったが治せるし、魂も問題なかった。

 

「じゃから、たとえ百日過ぎようとも、15個も集めなくても良かった。もとより、ハヤトは保険だけじゃ。ギリギリになったら、持っている眼魂と交換で、生き返らせるつもりだった」

「・・・ではなぜ、彼はこのままなんです?」

「・・・この世界の技術、ワシにとって、未知の技術の所為じゃよ」

「なんですと!?」

 

 仙人の予想外は、ハヤトはガングニールと適合者として、天羽奏から瀕死の重体だと言うのに、ガングニールを奪い取り、絶唱を歌ったこと。

 それが運命の分かれ道だった。

 

「ワシが回収した肉体は、その未知の鉱石が傷口を防ぎ、肉体を維持している。だがそれは一時的なもので、カプセル、外界に触れれば炭化する。まるでノイズ被害者のようにな」

「!?」

「調べた結果、ガングニール魂と連動していることから、それと関係がある。それを聞いて、推測が出来るか?」

「・・・」

 

 今度は弦十郎が考える版になり、難しい顔のままに、おそらくと付け加え、

 

「元々、奏は薬による強化で、ガングニールを纏っていた。本来限界をすでに超えている状態であり、あの場合、絶唱を歌っていたら、肉体は持たず、ガングニール共々消滅していたという結論だ。ということは」

「おそらく、その薬による不可がかかったガングニールを、その使用者の適正値ごと奪い取ったんだろうな・・・で、なければ説明がつかぬ」

 

 その言葉に、喉が渇く。けして奏には言えない。

 本来自分が背負うものを、他人に渡して延命しているようなものだ。奏が知ればどう思うかわかってしまう。

 しかもその所為で、その人物が死んでいると同じ事態ならなおのこと言えない。

 

「運が悪いな俺」

 

 本人はその一言で終わらした。

 

「ざっけんな!!」

 

 叫んだのはクリスだ。

 

「なに他人事のように聞いてるんだよ!? お前、見ず知らない奴のかわりに死んでるんだぞ!?」

「だからって、奏さん恨む理由にはならないしな・・・」

「それに理由がわかったなら、もしかしたら生き返るかもしれないんだぞ!? なんでそんな」

「必ずまたこれ使うから」

 

 それはガングニール魂。それに仙人は鋭い目つきで見る。

 

「わかっているのか、それを使い続ければ、魂を入れたハーツ魂が壊れ、魂が行き場を無くし、消滅する・・・お前さんはそこまで知っていて」

「響が戦ってるんだ、俺も戦わなきゃな」

「もう十分戦ったじゃろ、お前さん、ゴーストとして、多くの命や、人を、人生を守った!!」

 

 仙人はそう言いながら、だが首を振る。

 

「最も救いたい奴は助けられずに傷付けた」

 

 そう呟く。

 

 静かに、

 

「ニュートン、フーディーニ、ツタンカーメン、グリム、サンゾウ・・・俺が出会った英雄の魂達からも言われたよ。それでいいのか?って・・・」

 

 ニュートンは納得できず、フーディーニはそれでもいいが、自分を縛る鎖が外れることを祈ろうと言ってくれた。

 ツタンカーメンは静かに受け入れて、グリムは悲しそうに、サンゾウも受け入れた。

 

「戦争とかで、勝手に力使ったとき、ノイズが多く出たあのとき、ガングニール魂を使ったときに分かった、俺は、生き返らない。だからこそ、俺は選んだ、響達の世界を守るための力、この身体であり続けたいって」

「お前さん・・・」

「ノイズを倒さなきゃ、響達の未来は守れない」

「お前はいいのかよ!?」

 

 クリスは立ち上がり、襟を掴む。

 なんでだと言わんばかりに、こちらを睨む。

 

「どうして自分が死んでいいって言えるんだよ!? それで誰が、誰が喜ぶんだよ!?」

「・・・誰も喜ばない、不幸にするだけだ」

「!?」

 

 その言葉に、クリスは驚く。

 弦十郎と仙人は、その言葉に険しくなる。

 

「わかっているのか、自分のしていることが」

「意味求めてない、俺は、俺は亡霊だ・・・意味なんてない」

「君はそれでいいのか、君のこを思っている者、響くん達のことは」

「あんたら、生きてる人に任せるよ・・・」

 

 そう言って、フードをかぶり、姿を消す。

 それに弦十郎は何も出来ず、仙人は静かに座り込む。

 

「ワシは・・・なんで愚かなんだ」

「!」

 

 弦十郎は仙人を掴み上げ、その顔を見る。

 最初は殴ってやろうかと思ったが、その顔は、本気で後悔している顔であった。

 だからこそ、

 

「・・・なぜそこまでして眼魂を集めようとした・・・」

「・・・友のために・・・ただそれだけだった・・・だが、ワシは間違えた。ワシはハヤトから、無限の可能性を奪った・・・」

「無限の可能性か・・・確かにな」

 

 静かに放して、弦十郎は静かに目を瞑る。

 

「あれくらいの若者だ、どんなことも、なんにだってなれただろう」

「それだけではないだろう・・・命は無限の可能性がある。ワシは友の息子である、タケルを見てそれを確信した。だからこそ、ハヤトを救いたい」

「勝手だ・・・」

 

 クリスはそうつぶやき、仙人を睨む。

 だがその言葉を受け入れて、静かに頷く。

 

「それでも、ワシはやらなければいけない」

「・・・彼の肉体は」

「ほぼ、謎の鉱石、ガングニールでできている。全神経は全てガングニールでできていると言っていい」

「そんな事態・・・」

 

 完全共鳴、立花響の顔が一瞬よぎる。

 その時、がっしゃんと窓を割り、ベランダからクリスが逃げ出す。

 

「あの子は」

「訳ありの子だ・・・すまないが、俺はここで」

「待て」

「!?」

 

 その時、あるものを弦十郎に投げ渡す。

 それに弦十郎は驚いていた。

 

「奏と言う子に渡せ、元々はあの子の力だったから、調整しておいた」

「奏用の力・・・」

「あとはおぬしが決めろ」

「・・・」

 

 厄介なものをと思いながらも、仙人は姿を消す。

 あの男もまた、悩み、苦しんで答えを選んでいるのだろうと思いながら、それを持って立ち去る。

 

 

 

 ノイズを倒す日々の中、クリスを守るような形が起きる。

 

「私に構うな!?」

「気にするな」

 

 そう言い、雷魂で辺りに雷を放つ。斬撃のように切られたそれを見ながら、赤いそれを見せる。

 

「それは」

「聖遺物イチイバル・・・私達はシンフォギアって呼んでるもんだ。お前の身体の奴だよ」

 

 そう投げやりに答えながら、ハーツの姿のままだったが、クリスは歩き出すので追いかける。

 

「待てよクリス」

「ついてくるな」

 

 そう言われても、やることはないこともあり、ノイズに狙われているクリスの側にいる。

 と、あるライブ映像が見えた。

 

「生中継・・・風鳴さんのライブか」

「けっ、のんきなもんだよな・・・」

 

 離れていた位置だからか、それとも対処が早かったのか、彼女達の出撃は無かったようで、ライブ映像の中で、響達を見つけだした。

 

「よかった」

「なにがだよ」

 

 クリスは悲しげにこちらを見ている。

 フードを外させて、その顔をさらさせる。その顔を見ながら、

 

「お前だってあそこにいたかもしれないんだぞ!? なのに、なにがよかったなんだ・・・」

「・・・クリスは優しいな」

「なっ、なにいってるんだお前!?」

 

 顔を真っ赤にするが、少しだけ、心の重りが消える気がする。

 ライブの映像を見ながら、翼が前を向いて歌う姿、響の応援など、それを見ながら、もしもと呟く。

 

「俺的には、あそこにお前もいて欲しいな、響は友達少ないと泣くから」

「・・・お前は」

「俺は死人だ」

 

 苦笑して、フードをかぶる。

 だがその手を掴みクリス。静かに、

 

「どうして戦えるんだよ・・・お前には、もう戦う理由なんてないじゃないか」

 

 そう言うが、それに簡単に、

 

「それでも戦うさ、彼奴は泣き顔より、バカ面で笑ってて欲しいからな」

「・・・意味わかんねぇ」

「俺も」

 

 とりあえず二人でしばらく行動する。クリスはなぜか文句言うが、それを許す。

 そんな感じで、あの事件まで一人じゃない日々を過ごす。

 ハーツ魂が砕ける、その日まで・・・




仙人なに弦十郎さんに渡してるんだよ。
次回で無印は最終回、ハヤトがどうなるか、響は彼と出会うことができるかお楽しみに。
それでは、お読みいただきありがとうございます。


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第7話・月が欠ける日

 ある日のことだった。大量のノイズ相手に、すぐ側に人身売買、つまるところ犯罪者の組織がいた。
 そいつらは炭化するのはどうでもいいとも思っていたが、無理矢理連れ込まれた、さらわれた人達は守りたいと思った。
 だから、ガングニール魂。未知の眼魂を使用した。

『これが君の身体に起きていることだよ』

 ニュートンを始め、心を繋ぎ、生き返りたいと言う身勝手な願いを聞いてくれた英雄達から告げられた、現実だった。
 始めは、目の前が真っ白に染まった。その場で崩れ去り、消えてしまうほどだ。
 思い出すのは、自分が死に、その原因が自分にあると嘆き、苦しむ幼なじみ。
 違うと伝えたいがために、生きろと伝えるために、今日まで探し続けた。
 町の中をさまよう、人に見られず、知られず過ごすのに、慣れていた自分がいる。
 そんな中、彼女見つけだした。

「おばさんくすぐったいです~」
「響ちゃんがかわいいからよ~」

 少しぎこちないが、実の母親と響が仲良く、家で暮らしていた。どうやら事件後、自分の家に厄介になっていたらしい。
 その様子を見て、ああと知った。
 自分はもう、いいんだと。

「・・・」
『何を考えている?』

 英雄達のパーカーが現れ、目の前の、可愛い服着てとお願いして、響の母親とおばさんを困らす、実の母親に苦笑しながら、

「俺の願いは、もう叶ってた」
『・・・』
「なら次の願いだ」

 そう言って、彼らはそれを受け入れたり、反対したり、道の一つと納得したり様々であるが、答えは変わらない。
 未来のために、ゴーストとして有る道を選んだ。
 後悔はない、するとすればただ一つ、

「ごめんな響、勝手に死んで、勝手に選んで・・・」

 そう呟きながら、彼は生き返るのをやめた。


 町を見下ろしながら、静かに過ごす日々は、今日に終わりを告げた。

 響の学園、リディアンに迫るノイズの大群。

 

「急いで逃げてくだ」

 

 軍関係者が生徒を逃がす中で、ノイズが迫る。

 だが、ハーツとなったゴーストが、それを切り伏せる。この場合、姿を見せた方がいいなと思い、姿は見せている。

 

「ケガはないか」

「!?」

「こちらに銃口向けてる暇があるのなら、彼女達を避難させろ」

 

 それを言われ、一瞬ためらうが、急いで生徒達を避難させている。

 ノイズを片っ端から破壊するハーツだが、数が多い。

 炎魂を使い、建物ごと破壊し出すが、それでも数が多い。

 

「くっそが・・・」

 

『雷魂』『イカズチ・神鳴り、鳴る神、神倒し!!』

 

 雷でいま連絡し合う通信機をジャック、全ての通信機による会話やノイズの行動パターンを確認している。

 それと共に敵を討つ中で、連絡網の中に、未来と言う言葉を聞く。

 

「!?」

 

 いま未来さんをどうとか、地下の方で聞こえた。だが途中で通信機、未来側のが破壊された。

 

「未来!?」

 

 一気に地下まで透過する。一気に、真っ直ぐに未来のもとへと出向く。

 そこで未来を掴み上げている、女性がいた。

 

「放せ!!」

 

 それにチョーガンガンセイバーを振り下ろし、それに気づき、鉄のムチのような鎖が放たれるが、その姿に覚えがある。

 

「ネフシュタンの鎧・・・あの時、クリスを用無しとか言った女か」

「ハヤト!?」

「神代ハヤト、貴様か」

 

 ネフシュタンの鎧を纏う女性、何者かは知らないが、僅かによぎる。

 

「お前さん、姿消して司令室で響を看た人じゃないのか?」

「ご名答、あの時、あの場にいたのか?」

「司令室で暇つぶしててね、確か了子さん、だったか?」

「それはこの身体の名前だ、私の名前はフィーネ、まあ、聖遺物と無関係のお前では、理解できないだろうな」

 

 そう言いながら構え合う二人、未来を背にし、その廊下に誰か倒れている。確か風鳴翼のマネージャーだろうか。

 そんな中、静かに自分の獲物を見て、内心舌打ちする。

 

(眼魂を換える隙があればいいが)

 

 雷魂では、未来達を巻き込む。チョーガンガンセイバーではでかすぎてこの狭い通路で振り回せない。

 水か風の方がいいと思いながら、構えている。

 

「貴様のおかげでだいぶ計画が崩れたが、問題ない。お前はいま、何がどうなっているかも分からないのだからな」

「・・・なに企んでる」

「お前の知る必要はない亡霊、お前はここで、二度目の死を迎える」

 

 鎖がムチのようにしなり、その動きに、避ければ未来に当たる軌跡と知る。

 ならば仕方ない、接近戦で最も強く、確実に終わらす。

 

『ガングニール魂!!』

 

 鎖を掴み、現れるそれに、フィーネは舌打ちして睨む。

 

「命削ると知りながらもう使うか!?」

 

『ガングニール・撃槍!! 裂槍!! 貫く決意!!』

 

「命爆ぜるぜ!!」

「ならばこの場で燃え尽きろ!!」

 

 

 

 狭い通路の中、獣のように動き、攻撃を仕掛けるゴーストハーツ。

 壁や床など透過する辺り、彼女は睨みながら四方を見る。

 

(完全聖遺物たるネフシュタンの鎧を凌駕する、おそらく絶唱時の力を引きずり出していると推定される。それが自在に飛び回るとは、不愉快極まりない!!)

 

 一瞬気絶する緒川に駆け寄る未来へと攻撃を仕掛けようとするが、やめておく。

 

(そんなこと向こうも百も承知、ならば、タイムオーバーを狙う!!)

 

 無数の鎖をどこからでも現れても凌ぐフィーネ。両腕を振るいながら、敵の予想を見て、焦るしかない。

 

(オメガドライブを使わなきゃ、すぐに限界は来ないが、いつまで保てる!?)

 

 ガングニール魂での戦闘経験は無いに等しい、これで制限時間がどれくらいなんてわからない。

 なにより、少しも気を抜けば、後ろの未来達に攻撃を放つだろう。

 緊迫した瞬間を、天井を壊して現れた者がいた。

 

「「なっ」」

「ふんっ」

 

 その男はただの拳で、ネフシュタンの鎧に亀裂を入れた。その瞬間を見逃さず、強化された蹴りを放ち、壁へとたたきつけた。

 

「なんた」

「いますぐガングニール魂を解除しろ、あとは俺がやる」

「お前」

 

 風鳴弦十郎、拳を構えながら、ネフシュタンの鎧と互角に戦う。

 それにガングニール魂でのハーツもいる。フィーネの顔が歪む。

 

「解けと言うのに、了子くんのあとは君の説教だ!!」

「ならおわすぞ」

 

 弦十郎は生身の人、ノイズを取り出すソロモンの杖を構えるが、振り上げられた爪がそれを天井に舞い上がらせ、弦十郎はその隙に、床を僅かに砕き、固まりを蹴り投げた。

 その一瞬、隙を見せたフィーネに、距離を縮めて拳をたたきつけようとする。

 内心これで終わればと思ったが、

 

「やめて弦十郎くんっ」

 

 突如人が変わったように叫んだ。

 それに動きが止まり、彼女の手には、真っ直ぐに伸びた鎖が、

 

「!!?」

 

 剣のようにそれは貫いた。

 弦十郎は目を見開き、フィーネは歪んだ笑みを見せる。

 

「愚かだな、亡霊」

「・・・」

 

 貫かれたハーツの剣を引き抜くと共に、無数の鎖が放たれる。

 弦十郎はハーツを掴み避ける際、何かを取りこぼし、それを手に入れる。カードキーか何かが、それを持って、取りこぼされたソロモンの杖を手に取る。

 無数のノイズを出し、道を牽制して見下ろす。

 

「バカなものだ、亡霊も、お前も・・・」

 

 そう言って奧へと進む。

 弦十郎は待てと叫びかけたが、ノイズが無数に向かってくるが、すぐにハーツ魂からパーカーが現れ、ノイズを払う。

 

「ハヤト!?」

「・・・早く下がれ」

 

 傷口から光があふれている。

 ハヤトはそう言いながら、前を見る。

 

「待て神代ハヤト!!」

「未来を、響を頼む!!」

 

 そう言って、ノイズの元へと走る。

 その瞬間、道は瓦礫に閉ざされる。その際、未来の叫びが聞こえた。

 

 

 

「その剣でなにする気だ」

「・・・まだ戦うか亡霊」

 

 いい加減に目障りという顔のフィーネに対して、ガングニール魂のハーツは、両腕を構える。

 だが、光の傷口は消えず、むしろ広がっている。

 

「その様子、限界のようだな」

「ならやりようがある」

「ほう、相打ちか? できるか?」

「・・・やるしかないのなら」

「ちっ!! 亡霊が、消えろ!!」

「命・・・燃え爆ぜろ!!」

 

『ダイカイガン・ガングニール・オメガドライブ!!』

 

 デュランダルがある部屋で、大爆発が起きた。

 

 

 

 戦いが始まった、月を壊そうとする砲台。それを止めるために、戦い合う装者三人とフィーネ。

 だが、それでも完全聖遺物の力である、砲身は止められない。

 それでもクリスは、あの歌を歌おうとした。

 放たれた銃撃を撃ち落とすために、歌う歌。

 

「絶唱か!?」

「クリスちゃん!?」

 

 響の叫び声の中、僅かに笑うクリスだが、

 

『炎魂』『ホノオ・炎で吹っ飛べ爆裂だ!!』

 

『雷魂』『イカズチ・神鳴り、鳴る神、神倒し!!』

 

 二つのパーカーが現れ、二つともガンモードのチョーガンガンセイバーを持っていた。

 

「なっ!?」

 

『ダイカイガン・ホノオ・オメガドライブ』『オメガバスター!!』

 

『ダイカイガン・イカヅチ・オメガドライブ』『オメガバスター!!』

 

 絶唱よりも早く、砲身を止めたそれを見て、すぐに攻撃に移ろうとしたフィーネだが、その前に動く影がある。

 

『水魂』『ミズ・見ずに活躍、披露だぜ!!』

 

『土魂』『ツチ・不動の大地!! 鉄壁巨人!!』

 

『風魂』『カゼ・疾風!!烈風!!シュシュッとな!!』

 

 風はナギナタを手裏剣のように投げ現れ、土は振り回しながら、巨大な瓦礫に引っかけて投げてくる。

 水は水をムチのように操り、それはウォーターカッターのように、切る。

 

「これって・・・仮面の戦士さんの」

 

 響の顔がほころぶ中だが、翼と、空から舞い戻ったクリスは辺りを見渡す。

 何も出てこない。本人が、彼が現れない。

 五つのパーカー達は、響達を守るように、武器を構えていた。

 

「くっ、亡霊風情が!! 完全消滅してもなお、立花響を守るか神代ハヤト!?」

「・・・・・・・・・えっ・・・・」

 

 それに響が固まり、ああと苦笑する。

 

「そう言えば貴様は知らなかったのだな、神代ハヤト、彼が半死半生の状態で、人々を守っていたことを」

「どういう・・・こと」

「おい待て!?」

「神代ハヤトが消滅したとは、いったい!?」

 

 そう言われ、うっすら笑いながら、何かを投げ渡す。

 粉々になった二つの何か、それを見て、翼とクリスは愕然なる。

 

「奴は最後の一撃を放つ瞬間、粉々に砕けた。命爆ぜる、奴の口癖か?」

「・・・・・・・仮面の戦士さんが、ハヤト?」

 

 響が揺れ、翼を見る。翼はなにも言わず、剣を構える。

 

「知ってたんですか・・・翼さ」

「お前以外知っていたぞ、奴の正体を」

「!?」

 

 その言葉に、翼は口を紡ぐ。

 響は驚きながら、粉々になった眼魂を見つめる。

 

「いい話をしてやろう、これはまた了子として弦十郎から聞いた話だ」

「!?」

 

 五つのパーカーが動き、それと共に翼もクリスも動く。

 聞かせちゃいけない。二人はそう思い、身体が動いた。

 だが無数のノイズが、ネフシュタンの鎧が、完全聖遺物が道を阻む。

 そして聞かされる、神代ハヤト、その死に様を。

 翼も聞いていない、奏が背負うはずの傷を、彼が背負っていることを。

 

「だからこそ、天羽奏は五体満足で延命できていた。あの薬は確実に寿命を縮めていたはずだが、奇跡の代価は、神代ハヤトが支払っていた」

 

 それを聞き、世界が歪んだ。

 響のガングニールが黒く染まりかけている。

 

「立花!?」

「あっはははは、適合したガングニールに意識を奪われるか」

 

 響の心が、壊れかけている。

 翼もクリスも叫ぼうとする中、二射目もまた、エネルギーが集まりだしていた。

 

「まずいぞ、また撃つ気か!?」

「立花!?」

 

 雄叫びのように吼える響、フィーネはただ待てばいい。

 もう誰も、止められない。

 

 

 

 はずだった。

 

 

 

「てい」

 

 チョーガンガンセイバー峰打ちで、暴走しかかる響を叩く。それはいた。

 

「なっ・・・」

 

 全員が驚愕するが、それは苦笑する。

 響は黒く覆われた顔で、彼を見た。

 

『・・・はやど・・・』

「ひっでぇ顔してるな・・・悪いな、響」

 

 フードを外して、苦笑しながら、静かに告げる。

 

「・・・俺は守りたい」

『・・・』

「全部守りたい、あの時、お前を守れなかった、あの時の、あの景色・・・俺はもう味わいたくない。だから」

 

 砕け散った眼魂が集まり、それを手に取る。

 最後の最後、最後だ。

 

「命、爆ぜろッ。全てを守る、その瞬間まで」

 

『ア~イ』『バッチリミールー!!』

 

「変身!!」

 

『開眼! ハーツ!!』『スタート覚悟!! ガンガンゴースト!!』

 

 一人のパーカー戦士、仮面ライダーハーツが現れ、チョーガンガンセイバーを構えると共に、五つのパーカー達も構える。

 その様子に我に返りなり、ムチのように鎖を振るうが、二人の装者が前に出る。

 

『ダイカイガン・ハーツ・オメガドライブ!!』

 

「爆ぜろッ!!」

 

『オメガエンド!!』

 

 六つの斬撃が、塔のような銃身を切り伏せ、破壊する。

 僅かに射撃が放たれていたが、それは逸れて、月は欠けるだけにとどまった。

 それと共にフィーネの悲鳴が響く中、それよりも、ハーツは静かに、響のもとへと歩き出す。

 

「・・・まだ終わらない、響」

『・・・はや、ど・・・』

 

 赤い眼光になっている響だが、その眼から涙が流れ、静かに戻っていく。

 その時、歌が聞こえ出す。未来を始めとした、多くの人達の歌。

 

「応援されているようだな」

「・・・うん」

「・・・話、いっぱいしなきゃな」

「うん・・・」

「・・・いくか」

「うん!!」

 

 

 

 シンフォギアの力を解放させた三人の装者、そしてハーツと言う異物に対して、フィーネはノイズを取り込むことで、力を増した。

 だが、いまの四人、響がデュランダルを振るうことにより、それは収まった。

 

「・・・」

 

 夕焼けの中、響はフィーネに話しかけている。

 その様子を二人と共に見ていたが、彼女の鎖が、欠けた月へと伸ばされた。

 欠けた月が落下する中、それでも響はフィーネと話し合いながら、その最後を見る。

 

「んじゃ、いくか」

 

 砕かれたガングニール魂を取り出し、その様子に三人も頷く。

 未来が心配しに出てきて、響と会話した後、こちらに来た。

 

「ハヤト、ゴーストでもなんでもいい!! 私だって、私だって貴方と話があるんだからね」

「・・・わかった」

「それなら私もだな、テメェには色々と話したいことがある」

「ああ、確かに」

 

 クリスと翼もそう言い、奏でも複雑そうに顔を出し、静かにこちらを見る。

 

「あんたには色々と言わなきゃいけないことがある、逃げんなよ」

「わかりました」

 

 そして三人の歌姫と共に空へと向かい、月の欠片へと迫る。

 歌う歌姫達を見ながら、ガングニール魂を使う。

 

「・・・」

 

 静かに、月の欠片を見ながら、全員が大技を構える。むろん、自分も、

 その時、ハーツ魂に亀裂が入る音を聞きながら、

 

『ダイカイガン・ガングニール・オメガドライブ!!』

 

 光が、月の欠片を包み込む。

 

 

 

 とある場所、歌姫達を草の上に寝かし、静かにその寝顔を見る。

 力を使い切り、眠ってはいるが、呼吸はしていた。

 

「お前さん・・・」

「仙人」

 

 フードを外しながら、町を見下ろす。壊れて、煙が立っている場所がある。それを悲しそうに見つめながら、彼は静かに、仙人を見る。

 

「ありがとう、少しの間、命をくれて」

「・・・ワシは、そんな言葉をもらうような男ではない・・・」

「・・・いいや、俺は感謝してるよ、響を、歌姫達を守れた」

 

 身体に亀裂が走る。そこから光があふれ出る。

 だけど、その顔は穏やかだった。

 

「ずるい・・・」

 

 そうつぶやき、手を伸ばして、手を掴む響。

 いまにも泣きそうな顔で、こちらを見ていた。

 

「話するって約束した・・・」

「・・・ごめん」

「謝らないで・・・」

「・・・」

「未来になんて言えばいいの・・・自分だけ助かって・・・またなの・・・」

「違う」

 

 翼もクリスも、気が付き、目の前の光景に目を疑う。

 響はその手を掴みながら、ハヤトは、やっと願いを叶えられる。

 

「あの時、死んでごめんな・・・お前を助けられなかった」

「どうしてそんなこと言うの・・・私は、私はハヤトのおかげで、生きてるんだよ・・・」

 

 泣きながら、顔を胸に埋める。少しずつ、感覚が無くなる。彼がいなくなる、それを感じながら、響に続けた。

 

「俺はずっと後悔してた、死んだことに。お前だけ残したことに・・・お前を傷付けた、たくさん傷付けた」

「そんなの気にしてないよ・・・だから、だから」

「・・・生きろ」

「ハヤト」

「生きてくれ、みんなと一緒に・・・俺は」

 

 少しだけ戸惑いながら、静かに、

 

「お前の笑顔が好きなんだ・・・だから泣かないで、笑顔で生きてくれ」

 

 その言葉を聞きながら、涙を流しながら、無理矢理、笑った。

 

「・・・ありがとう」

 

 その瞬間、砕け散る眼魂。

 その場に六つの眼魂が落ち、翼もクリスも、その光景に、響と共に涙を流す。

 三人の歌姫を発見した弦十郎だが、一人の少年の死を知り、静かに目を閉じた。




 時間が過ぎるのは早い、一時的に死んだことになっていた響達は、出られるようになった後、すぐに集まり、遊びまくった。
 奏や翼、クリスだけでなく、友達の三人と共に、カラオケや買い物、買い食いと、遊びに遊び回った。
 未来は響の顔を見た。少し無理しているが、笑顔で前を向いていた。

「・・・」

 仙人はその様子を少しだけ見て、心痛めていた。
 誤りに出るべきだろうが、それは自分が楽になりたいだけだと思い、静かに彼の関わった力である、五行眼魂とウルバイクなどを残しておこうと思った。

「天羽奏には使えるように力を渡したんじゃし・・・もうこの世界に、災いが無いことを祈るか・・・」

 一人の少年、神代ハヤトを思い出しながら、静かに、

「結局、お前さんは好きな女の子のために、戦ってたんじゃな」



 違う。



「!?」

 一瞬誰かの声が聞こえ、振り返ったが、そこには誰もいない。
 仙人も首を傾げながら、静かに去っていく。
 こうして、一つの事件が幕を下ろした。


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G編
第8話・彷徨う爆ぜる魂


新たな戦いの中、新たな魂が爆ぜる時、新たな魂が目を覚ます。


 ルナアタック事変後、風鳴翼とマリア・カデンツァヴナ・イブによるライブ日。

 そんな前日だった。

 

「・・・あれ?」

 

 知らない荒野に立っていた立花響。

 気のせいか、風鳴翼、雪音・クリス、天羽奏がいる。

 それだけでなく、顔が分からないが、あと三人いる気がした。

 

「あれって・・・」

 

『開眼! ハーツ!!』『スタート覚悟!! ガンガンゴースト!!』

 

 彼女達装者に衝撃が走る、それは彼女がよく知る人物である、彼のもう一つの姿。戦士である、仮面ライダーハーツの姿だった。

 

「命爆ぜるぜ!!」

 

 そう叫び、空間の割れ目から出てくるノイズを、次々と切り伏せる。それでも外からノイズが大量に迫っているが、それを切り伏せて、前へと進む。

 何度も何度も、たった一人で、ノイズと戦う。

 

「悪いがもう誰も悲しませない!! 俺がいる限り、俺の魂は、命を全て守る!! 偽善だろうとなんであろうと、守るものがあるのなら、俺は何度も現れる」

 

 ノイズの群れが人々に迫る前に、彼はノイズを斬る。人は誰も彼に気づくことはなかった。誰も彼も、たまたま時間が来て消えたんだろうと言う顔で見向きもせず、戦士はそれでも戦う。

 

「必ず、守らなきゃいけない・・・自分勝手に死んで、彼奴を傷付けた分まで」

 

 ノイズの攻撃に傷付きながらも、一人で彼は戦った。

 時には丸一日中、誰にも気づかれることなく、たった一人、意味もなく戦った。

 その命が消える、その日まで、

 

「ハヤト・・・」

 

 目が覚めると、静かに五行眼魂を見る。

 戦いの後、自分が持つべきと弦十郎が渡してくれた、彼と共に戦ったアイテム。

 その五つに見守られながら、未来と共に朝日を見る。

 

「あれって・・・ハヤトの記憶なのかな」

 

 だとしたら寂しい。彼は誰にも知られずに一人、黙々と戦った。

 自分を傷付けた罪悪感を背負いながら、ずっと戦ってきた。

 彼に会いたい。そうつぶやき、ご飯の支度を始める。

 

 

 

「ふ~ふん、ふ~」

 

 ウルバイクを手入れしながら、奏は鼻歌を歌っていた。

 ここのところノイズの出現もなく、出番はないので助かるが、

 

「とはいえ、響とクリスはソロモンの杖の輸送任務か。私らが出ればいいのになウルバイク」

 

 同意するようにエンジン音が鳴り響き、ライトがつく。その様子によしよしと狼の頭部を模した部分を撫でてやる。

 ハヤト以降、ウルバイクは奏の愛機となり働いていて、翼が時折壁からのぞき込むのを可愛いな~とからかう機会が多い。

 

「翼が別の誰かと歌うのか・・・少し複雑だけど、いまの翼は、歌い手としてがんばって欲しいからな」

 

 シンフォギア装者としての資格を失い、アイドルと言うより、翼のサポートが大事になったため、アイドルをやめた自分。

 いまさら戻るのは虫が良すぎるので、戻る話は断っているし、残してもらった力で戦えるため、彼女達、普通の日常がある響達の代わりに戦う面もある。

 

「ガングニール魂・・・ハヤト、お前の魂、借りるからな」

 

 そしてライブ中継をテレビで見る。どこでなにがあってもいいように待機するためだし、ウルバイクにも見せるために、待機していた。

 だが、予想外の事態に、奏の顔が曇る。

 

 

 

 突如として放たれた、テロ宣言。その主格と思われるマリア・カデンツァヴナ・イブ

と、黒いガングニールに、全員が驚いた。

 ウルバイクに乗り、現場近くまで走る奏、そして、

 

『ウオォォォォォォォォォォォ』

「!? どうしたウルバイク」

 

 突如ウルバイクが吼えた、急停止して辺りを見渡す。

 気のせいかと思ったとき、電柱、欠けた月を背に、誰かいる。

 

「!?」

 

 突如ウルバイクからの謎の機関部、武器の収納口なのだが、そこからチョーガンガンセイバーと別の獲物が放たれ、それが影の手元に飛ぶ。

 

「なっ」

 

 そして影は消えた。ウルバイクにすぐさま問いかけようとするが、ウルバイクは何も答えない。

 

「いまのは彼奴の武器・・・けど、彼奴の獲物は剣だけなのに、二つ?」

 

 疑問に思いつつも、インカムから連絡が入り、大急ぎで現場に向かう。

 

 

 

 戦場は打ってかわり、観客は避難済みであり、生中継が止まり、装者達は力を振るう中で、彼女達を見る。

 

「どうして戦わないの」

 

 ツインテールの子が、丸鋸のような武器を振り回しながら響に迫る。

 そんな中響は、

 

「戦えないよ!! どうして同じ人間同士で争わないといけないの!? いま、この力は誰かのために、誰かを守るためある力だよ」

「ふざけないで!!」

 

 丸鋸を防ぎながら、響は叫ぶが、それをにらみ返される。

 

「誰かのためだなんて、痛みを知らない貴方みたいな人が使わないで!!」

「痛み・・・」

 

 一瞬、響は彼がよぎった。

 自分のために生き返ろうとした、自分のために諦めたり、戦い続けたり、勝手に生きた幼なじみがよぎった。

 その瞬間の隙を、丸鋸が迫るが、クリスが銃撃で防ぎ、我に返る。

 

「しっかりしやがれ」

「ご、ごめん・・・」

「に、しても・・・何者だ!?」

 

 新たに現れた二人の装者に対して、観客席に経つ三人。緑の装者は叫ぶ。

 

「イガリマ装者、暁切歌」

「シュルシャガナ装者、月読調」

 

 それを聞き、響以外構える中、調はそんな響を睨む。

 

「戦わない気!?」

「だって、私達が戦う理由なんて」

「立花、気持ちは分かるが」

「戦わなきゃ、こいつら話聞く気がないぜ」

 

 そう言われ戸惑う響、その時、彼の顔がよぎる。

 彼ならば、

 

「・・・戦わなくちゃ、ダメなの・・・はや」

 

 その時、身体に変な感覚が襲う。

 力が入らず、シンフォギアが重く感じる。

 その様子を見た三人組も、険しい顔で辺りを見る。

 

「ドクターね・・・余計なことを」

「まあいいデス、このまま倒すデス!!」

 

 そう言い、切歌が叫び、突っ込んでくるが、そこに、ウルバイクのエンジン音が鳴り響く。

 

「デス!?」

「うっらあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 バイクの突進をすぐによけ、奏を睨む切歌。

 だが、奏はすぐにドライバーを腰に巻く。

 

『ガングニール魂!!』

 

「デス!?」

「!? 気を付けなさい!! 未知の聖遺物よ!!」

「借りるぜ魂!!」

 

『ガングニール・撃槍!! 裂槍!! 貫く決意!!』

 

 パーカーと言うよりコートが現れ、奏はそれを纏う。

 全身ではなく、頭部の部分は素顔を逸らしたまま、ヘッドホンのような三つの角を持っており、ガングニールの槍を構えながら、その場に現れる。

 

「奏・・・」

「悪い、少し出遅れた。少し待って、なっ!!」

 

 槍を地面に刺して、ドライバーを押す。

 

『ダイカイガン・ガングニール・オオメダマ!!』

 

 その瞬間、辺りに何度か空間を振るわす衝撃波が放たれ、無理矢理空気中に漂う毒素を身体に入ったものまで消し飛ばす。

 その荒技に、全員が驚いた。

 

「彼奴の魂が込められてんだ、これくらいできるってもんさね」

「あっはは・・・まあ、ハヤトらしいです」

「おかげで幾分か身体が動くか」

「ったく、この先輩は・・・」

 

 その様子とエネルギーに、マリア達も驚いていた。

 

「これが眼魂の力・・・未知の聖遺物」

「凄い力デス、デタラメすぎますよ!?」

「・・・」

 

 構える三人に、奏はため息をつく。

 

「響、言いたいことは分かるけど、やるしかないようだぞ」

「!?」

 

 周りからノイズがあふれてくる、その様子は三人組も予想外のようで、ノイズを倒すために散る装者達。

 そしてその隙に、三人組が消えていった。

 

 

 

 響達の絶唱の光が、巨大ノイズを吹き飛ばす。その様子に三人組も見ていた。

 天すら貫く光を見ながら、その時、切歌が気づく。

 

「ドクターの奴、外にまでノイズはなってるデスよ!?」

「外まで!?」

 

 その言葉に、マリアはガングニールを構えるが、

 

『ア~イ~』

 

 その言葉に三人が驚く。

 

『バッチリミ~ル~!! バッチリミ~ル!!』

 

 黒い、真っ黒なパーカーに、紅色の線が入ったものが鎌のような袖で、ノイズを切り刻む。

 その様子に驚いていると、それは何かに羽織られた。

 

『孤高魂・孤独覚悟!! ザシュザシュゴォゴォゴースト!!』

 

 現れた瞬間、その場にいたノイズは全て切り裂かれた。細切れ、そう言えばいいのか、現れたそれに、瞬時に切り裂かれていた。

 

「!?」

 

 あわてて武器を構えるが、それはその場から消えた。

 それに切歌は青ざめながら、その場を見る。

 

「い、いまのなんデス? ゆ、幽霊デスか!?」

「落ち着きなさい、そんなことはあり得ないわ」

 

 調も平気そうな顔をしながらも、マリアのマントを掴んでいる。

 何者かは知らないが、いまのはいったいとマリアも思いながら、その場から去る。

 

 

 

 そこから離れた位置、血の涙のようなラインを持つ仮面の戦士は、パーカーを脱ぎ、町を見下ろす。

 血の涙で身体を覆い、黒いコートを纏うその姿は不気味であり、どこか悲しげだった。

 そしてまた静かに、孤独な戦いが始まった。




 夢は繰り返す、たった一人、感謝されたい訳でもなく、ただ一人、少女を傷付けたことへの身勝手な償い、そのためだけに戦い続ける。
 一人で、誰にも知られず、誰にも見られず、戦士は戦う。
 そんな夢が、たびたび見る。
 たった一つの魂が望むのは、一人の少女が笑っていられる世界。

お読みいただきありがとうございます。


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第9話・血の涙

ウルバイク 狼をもしたバイクであり、どんな扱いを受けても、転倒せずに、爪のようなものがワイヤーのように放たれ、相手を拘束したり、壁に爪を差し込み、無理矢理方向転換したりとギミックあり、他にもバイクタイヤに隠し刃もあるため、ウィリー状態で斬りかかったりも出来る。

翼「奏、ウルバイクに乗りたいんだが」
奏「ええ~見た目、普通のバイクじゃねぇんだから、走行できないぞ。速度も、F1カー並みにも出そうと思えば出せるし」
クリス「完璧に常人用じゃねぇなこいつ」
翼「・・・」わくわくそわそわ
奏(こりゃダメだわ)


 また夢を見た。今度はリンゴ園であぐらかいでた。

 

 目を瞑り、何か待つ。

 

 そしてその時が来た。

 

 彼は走る、すぐにそれを手に取るために、それを手に入れる。

 

「よし」

 

 目を瞑っていたが、彼はそれを手に入れた。リンゴだ。

 

 そのリンゴに目の模様が浮かび上がり、それに印を描くと、眼魂にかわる。

 

「ニュートン、これだけでいいのか?」

 

 その時、ニュートンパーカーが現れ、うむと頷く。

 

「君は、いつ落ちるか分からない可能性に賭けて、そしてそれをものにした以上、私からはなにも言わない」

「ニュートン、たまたまリンゴの落下を見た逸話での、試練か・・・」

 

 彼の周りのリンゴ園はだだっ広く、そしていつ落ちるか分からないリンゴ園である。その中から彼は自然に落ちるリンゴを手に入れた。

 

「それだけで十分だ、きっかけ、偶然を手にする心構え、君に求めたものはそれだ」

「偶然ね・・・」

「無論、待っていれば手にはいることではない。手にするために行動するのも大事だ。君がいましているようにね」

「ああ、待つのは性に合わない。俺は先に進む、彼奴のためにも、俺は続ける」

「そうだ、手にしたい願いのために迷わずに進め、そして、偶然の中にあるものも手にするんだ。君ならできる、私はそう確信して、君に力を貸そう」

 

 そしてニュートン眼魂を手にして、彼は駆け出す。

 そんな夢だった。

 

 

 

 あれから数日後、彼女らのアジトらしき廃屋を見つけだし、進入することになる。

 響はあの時の夢、ニュートン眼魂を手に入れたハヤトの夢を思い出す。

 

「・・・」

 

 偶然の中にあるものも手にする。

 その言葉を思い出しながら、静かに前を向く。

 

 

 

 廃屋中にはノイズが多くいて、またシンフォギアが重くなる。

 前の時と同じ、何かされているようだ。

 

「だけど、私には効かない!!」

 

 槍を振るいながら、ノイズを倒す奏に負けず、吼えるように力を込めて、ノイズを倒す響。それに二人は驚いていた。

 

「少しだるいだけだ、負けてられっか!!」

「ああ、防人の剣、見せようぞ!!」

 

 そんな中、一人の男が現る。

 ドクターウェル、ソロモンの杖を預けた際、謎の襲撃で行方不明になっていた男だった。

 それにクリスは激怒しながら、それを睨む。

 

「テメェ、ソロモンの杖をかっさらってたのか」

 

 その手元にはソロモンの杖があり、そして謎の化け物が向かってくる。

 それに弾幕を張るが、威力が下がっているため、皮膚で止まっていた。

 

「くっ」

「ネフィリム!! 聖遺物を食べて成長するのです!!」

 

 そう叫びを聞き、口を開くネフィリムだが、響の、シンフォギアを纏った際に消えているはずの懐から光が放たれる。

 それはホノオ、炎魂のパーカーだった。

 

「ハヤト・・・」

 

 クリスがそう呟くと、炎をまき散らし、爆発しながら、ネフィリムを牽制する炎魂に、ウェルは驚き、顔を歪めている。

 

「眼魂・・・ネフィリム、それを食べなさい!!」

 

 だがネフィリムは苦しむように、炎を睨む。

 その反応が予想外で、ウェルは焦りながら、その様子を見ていた。

 次の雷が放たれ、ネフィリムを貫いた。

 

「ネフィリム!?」

 

 雷魂が現れると共に、奏達も異変に気づく。

 

「なんで五行眼魂が・・・」

「我々を守るのか、神代ハヤト・・・君の思いは、死してもなお、私達を守るのか・・・」

 

 奏と翼はそれを見ながら、そして、

 

『ア~イ~』『バッチリミ~ル』

 

「「!?」」

 

 それに気づいた、黒い血の涙を流すパーカーが、ネフィリムやノイズを切り裂きながら、吼えている。

 

「な、なんだ!?」

「新たな眼魂!?」

 

『孤高魂・孤独覚悟!! ザシュザシュゴォゴォゴースト!!』

 

 静かに、それは顔を上げて現れた。

 両腕に鎌を持ち、眼を催す仮面から、血のような赤い線が描かれているその姿は、仮面ライダーハーツ、彼に似ているが違うものだった。

 

「・・・ハヤト?」

 

 だがそれは何も答えず、片手に持つ、片手斧を引きずりながら、静かにネフィリムに近づいてくる。

 その様子にネフィリムは襲いかかるが、すぐに動き、斧で切る。

 

「ネフィリム!?」

 

 斧の柄は銃身でできており、持ち手を換えると、それは銃のようになる。

 それを至近距離で撃ち、すぐに斧とし振り回す。

 短い分、前の彼が使う獲物より、スタイルの換えが早い。

 斧も刃の部分が変動して、鎌のようになり、引っかけたり、投げたりと、攻撃方を次々と換える。

 時には両腕に付く鎌が動き、カマキリのように腕を動かしながら斬りつけた。

 

「な、何者だ!?」

「ハヤト!? ハヤトなの!?」

 

 それはなにも言わず、敵しか認識していない。

 それだけで困惑だというのに、五行眼魂もまた動く。

 彼に向かって、炎と雷を放ち、それを防いでいた。

 

「なっ」

「五行眼魂が攻撃って!? 彼奴はハヤトじゃねぇのか!?」

「わけわかんねぇぞおい!?」

 

 翼は驚愕、クリスは叫び、奏は頭をかく中、それは無反応だった。

 足のかかとにも刃がついており、それをネフィリムに食い込ませた際、レバーを押す。

 

『ダイカイガン!! ココウ!! オメガドライブ!!』

 

 その瞬間、赤い刃が鋭くなり、ネフィリムの腕を切り裂いた。

 ウェル博士の悲鳴が響く中、それは切り落とした腕を踏み砕き、まだ動くネフィリムに近づく。

 ウェル博士は急ぎノイズを取りだし、襲わせながら、ネフィリムと言うものを回収する。

 ノイズの群れを倒している間、装者達はウェル博士を取り押さえる。

 

「ウルバイク!! 翼」

「心得た!!」

 

 ウルバイクに乗り、空を飛ぶノイズが運ぶネフィリムを追う翼。

 海岸線、海まで逃げる様子だが、インカムからそのまま走るように指示が来る。ウルバイクもまたエンジン音を轟かす。

 

「行くぞ」

 

 狼の雄叫びと共に、浮上する潜水艦を足場に、檻の中のネフィリム。そして空飛ぶノイズへと迫る翼。

 だがそれを、黒いガングニールが阻む。

 

「マリア・カデンツァヴナ・イブ!?」

「・・・」

 

 槍の力で海面に浮かぶ彼女。檻を片手に持ち、静かにたたずむ。

 

「彼女こそ、我らを導く者、フィーネです」

「フィーネだと!?」

「了子さん・・・」

 

 フィーネはある遺伝子を持つ者が、聖遺物に接触する際、記憶を塗り替えて転生するシステムで長い月日を生きた人物を言う。

 それがフィーネと言う人物であるが、前の戦いでもう戦うことがないと思われた人物が、別の人になり現れた。

 響は困惑する中で、炎魂と雷魂がマリアへと迫る。

 

「!?」

 

 だがそれを、

 

「行かせない、デス!!」

「邪魔はさせない!!」

 

 二人の装者が前に出て、翼は黒いガングニールと戦い、二つの装者は響達へと迫る。

 ノイズの群れは黒い仮面戦士が倒す中で、響は困惑していた。

 

「なにが起きてるの・・・了子さん!! ハヤト!!」

 

 二人の名前を叫ぶ瞬間、丸鋸が響に迫る。

 だが炎魂が前に出て切り裂かれた。

 爆発して、眼魂へと変わる炎魂は、調の手元へと落ちる。

 

「これは・・・」

「!?」

 

 響もそれを見て、すぐに手を伸ばすが、切歌が防ぎ、それに雷魂が前に出て切られた。それもまた眼魂へと変わる。

 

「聖遺物ゲットデス!!」

「だ、だめ!!」

 

 響が前に出て、その手を伸ばすが、二人の攻撃を避けながら、眼魂を取り戻せない。

 ハヤトの魂、その相棒を。

 

「!?」

 

 そう思ったとき、響は歯を食いしばる。

 悲しそうに、辛そうに、悔しい。自分がしっかりしない所為だと自覚しながら、後ろに下がる。

 

「・・・」

 

 黒いそれは、真っ黒な眼魂を取り出す。

 ノイズの群れを倒しきった。残るは、ネフィリム。

 

『開眼!! ダークライダー! 光の闇、影と狭間!!』

 

 現れたそれは、複数のマークを刻む紋章を持った、黒い戦士。

 静かに折を見て、距離があるが、腕の紋章を構える。

 

【ダークカブト!!】

 

 瞬間、黒いガングニールの側にいた。

 

「!?」

 

【エターナル!!】

 

 動きがトリッキーなものへとかわり、無数の光が身体から放たれ、また身体へと集まる。その際、アクセル、AからZまでの文字が鳴り響く。

 

「!?」

 

 ネフィリムの檻を空へと投げ、それは空中に消える。

 だがそれは止まらず、腕に未知にエネルギーが集まり、斬りかかるが、それを防ぐマリア。

 

「くっ」

「・・・」

 

 無言のままそれを見て、吹き飛ぶマリア。

 それを二人の装者、切歌と調が受け止めたが、それでもまずい。

 無数のノイズがまた現れ、それに全員が困惑するが、戦士は変わらない。

 

【ダークキバ!!】

 

 緑の紋章が足下から広がり、ノイズを飲み込み、吹き飛ばした。

 自分達は無傷だが、圧倒する力を見せたそれは、何事寝なかったかのようにしている。

 

「ハヤト!? 神代ハヤト!!」

 

 近くにいた翼が駆け寄り、話しかけるが、その身体に触れようとする瞬間、すり抜けた。

 

「なっ!?」

 

 そしてそれは静かに消える。まるで幽霊のように静かに、何事もなく消えた。

 

「いったい・・・何が起きてる・・・」

 

 全員が困惑する中、響はハヤトのことを思いながら、二つの眼魂を思い出す。

 

「・・・ごめんハヤト・・・ごめん・・・」

 

 

 

「「「聖遺物じゃない「デス」!?」」」

 

 彼女達はいま眼魂を調査した結果、いま装者達にそのことを伝えていた。

 

「確かに彼らの報告では、これは五行眼魂と言う、聖遺物として登録されてますが、調べてみましたが全くの別物、未知の異物です」

「通りで聖遺物を食べるネフィリムが嫌がるわけです、聖遺物ではないのですから」

「デスけど、そんなことあるんデスか?」

「そもそも、これを使用していた神代ハヤト事態の扱いも、いささかおかしな点があります。なぜ彼を長期に渡って、死人にしていたのか、理解できません」

 

 神代ハヤトについては、ほとんどが謎に包まれていると、マムこと、ナスターシャ教授はそう言い、炎と雷を手に取る。

 

「なにより、ネフィリムを圧倒したあの戦士もまた未確認です。ですがこれで面白いことがわかりました」

「面白いこと?」

 

 マリアの言葉に、ナスターシャ教授は静かに、

 

「この二つで我々が現在集めた、フロンティア浮上エネルギーをまかなえます」

「デデス!?」

 

 全員が驚く中、それを聞き、マリアは前に出る。

 

「確か、現状のエネルギーだけじゃ足りないって話だったわね」

「ええ、そのエネルギーを集めるのに、膨大な時間がかかりましたが、この二つだけでそれがまかなった」

「そしてそれって、五行ってことは」

「五つあるってことデスね♪」

「もしも五つ、五行眼魂を手にすれば、フロンティア浮上は可能でしょう」

「私としても、ネフィリムと同時進行で進めたい話ですね」

 

 そんな話をしながら、ある夢を思い出す。

 謎の少年が、眼魂を集めている夢であるが、誰にも言っていない。

 

(・・・あれと関係あるのかしら)

 

 そう思いながら、二つの眼魂は静かにしていた・・・




響側眼魂、風魂、水魂、土魂、ガングニール魂 ハーツ魂欠片

マリア側、炎魂、雷魂

謎の戦士側、孤高魂、ダークライダー魂

お読みいただきありがとうございます。


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第10話・二人の関係

 ある場所で、猿、豚、河童と戦うハーツ。
 素手の戦い、三人の連携に苦戦するし、何度も倒れる。
 それでも尚、彼は立ち上がり、連携攻撃を拳で沈めた。

『なぜ最後まで剣を取らなかった?』
「・・・武器持ってなかったから」

 三人のお供達はそれを聞き、不思議がりながら、それはほうと頷く。

『己の信じる道を進むか、それが君の道か』
「ご託は良いよ、結局俺は俺のわがままだから、力貸してくれるかどうか、聞きたい」
『君の持つ力は誰かを救うことが出来る、そのために使い続けるのか?』
「救うことなんて、できなかった・・・俺は彼奴を傷付けた。だから、もう一度会いたいだけだ」
『わがままだ』
「身勝手なのは分かっているよ、けど、どうしても俺は彼奴に会わなきゃいけない。俺は全部を救えない、だから、救える、救いたいと思うことはやるよ。サンゾウ様」

 そして彼はサンゾウ眼魂を手に入れた。

『身勝手、偽善と知りながらも、尚それを背負うのならば、私は君の力になろう』


 最近見る夢のことは、すでに司令室に伝えている。

 だが、現状何も出来ない。

 

「仮面ライダーハーツ、神代ハヤトの二年間の記憶か・・・」

「どういう意味なんだろうな」

 

 奏と共に考える弦十郎。いま装者達はさらなる特訓メニューを受けていて、色々と準備している。

 学業も装者としても、彼女達は多忙である。

 そんな中見る、謎の夢。

 英雄眼魂を手に入れる、ハーツの夢だ。

 

「神代ハヤト、ライブ襲撃事件において、彼は一般人でありながら避難誘導を率先した結果、多くの人達が、他の出入り口付近のようなことを起こさず、避難させた英雄」

 

 ライブ襲撃時の被害は、多くは逃げまどう人のパニックによるものが多い。それ故に、彼の功績は輝かしいものとして語られた。

 一部の人達は生き残った人達に、多額の保険金のようなものが入ったが、彼の働きが目立つため、そんなに荒波は立たなかった。

 だが当本人達は、大きな傷を背負った。

 

「片や、幼なじみの心に、大きな傷をつけたことを悔やみ、片や、幼なじみを失った。英雄談として語られてはいるが、実際は彼は英雄ではなく、一人の少年だった」

「・・・っていうより、響とハヤトの関係って、幼なじみか?」

 

 その一言は、別のところで話し終えていた。

 

 

 

 それは響が特別というより、ただ単純に別件で居ないとき、そしてたまたまた翼、クリスと三人の知り合いがいるとき、未来が爆弾発言した。

 

「私達、ハヤトに告白しましたよ」

 

 その時、全員が驚愕して、未来を見た。

 

「なっ、なっ、なっ」

 

 クリスはもの凄く動揺し、翼はなぜか落ち着きはなく、他の三人は本当か!?と言う顔で、未来は普通に、昔話するように、

 

「小さい頃、幼稚園のつきあいですから。親の話じゃ、その時にキスもしてるようですし・・・」

「き、キス!?」

「あと、小学校低学年で、響が「ハヤトと未来と結婚して、幸せになる」って言ったりとか、まあそんな関係です」

「そんな、関係・・・」

 

 クリスと翼は驚きのあまり、未来を見る。三人もだ。

 正直、そういう話は何もない。

 そして同じような感じの響が、まさかだと、誰もが思った。

 

「お、お前は、その、好きだったの、か?」

 

 動揺するクリスは、未来に聞くと、文化祭の作業をしながら、

 

「はい、告白されたら頷いてます」

 

 今度こそ、作業を忘れて、未来の言葉に固まる面々。

 未来はそれを気にせずに、黙々と作業している。

 

「だけどたぶん、私より、響の方がいいと思いますけどね」

「なぜだ!?」

 

 翼が身を乗り出して聞くと、未来は少し驚きながらも、静かに、

 

「それは・・・私は、響でも、私でも、ハヤトが好きな人ならいいと思いますけど、響は違うからです」

「そそそそ、それって」

「まさか」

「響は自覚はないですけど、ハヤトのこと好きですよ」

 

 いつだったか、ハヤトと響が仲良く歩いたりしているのを見てそう感じた。

 響の好きは、自分よりも深いと思いながら、見ていた。

 そして、

 

「ハヤトも、本人は否定しますが、響のことが好きだと思います」

「そう、なのか・・・」

「・・・」

 

 翼とクリスがなぜか放心状態に入り、未来は黙々と作業する。

 

(!? 私はなぜ、これほどまでショックを受けている!? もともと分かり切っていたことではないか)

(な、なんで私は、こんなことで驚いてるんだよ!?)

 

 そんな二人の他にも、友達三人も動揺していた。

 未来は黙々と作業を続けている。

 

(まあ、正直どっちも言わず知らずで終わりそうだな~って思いますけど)

 

 どちらも恋愛として意識しないようにしているようなのか、まあ分からないが、友達感覚で接していた。

 無意識にしては面倒くさいこの上ない、相思相愛ならもうつき合えと思うほどの関係だった。未来ももう私が告白していいかとか思うほど、二人は想い合いながら、けしてそれを自覚してなかった。

 

「こっちの用事終わりましたって、なにがあったの!?」

 

 教室はあり得ないとぶつぶつ言う友人や、放心する友人。黙々と作業する幼なじみと、謎の空間で響は驚くのであった。

 

 

 

 文化祭当日だった。

 とある廃屋でノイズが大量発生。それはとあるテロリストへ攻撃を仕掛けるものであるが、撃退されていた。

 そんな中、民間人も巻き込まれる、その瞬間、

 

『孤高魂・孤独覚悟!! ザシュザシュゴォゴォゴースト!!』

 

 ゴーストが現れ、それを阻止する。

 子供達は大慌てで逃げ出して、亡霊は静かに、ノイズを倒す。

 

「・・・」

 

『開眼!! ダークライダー! 光の闇、影と狭間!!』

 

 ハンドルがついた剣を取りだし、紋章が輝く。

 

『ダークドライブ!!』『ターン、ターンターンターン!!』

 

 ノイズを切り伏せる中、突然、黒いガングニールが迫り、それを防ぐゴースト。

 二人は見つめ合いながら、マリアは叫ぶ。

 

「貴方は何者・・・あの夢と関係あるの・・・」

「・・・」

 

 なにも言わず、ノイズだけ倒しきれば姿を消す。

 亡霊はただそれだけに存在するように消え、マリアは歯を食いしばる。

 

 

 

 また時間は突き進む。

 響は崩壊した塔を見つめる。

 そして約束の時、それは破られ、ネフィリムが現れた。

 本来、二人の装者と戦うはずだが、ウェル博士とネフィリムの出現に驚きながらも、響達は戦う。

 ノイズの群れに押さえ込まれる奏、ノイズに拘束される二人の装者。

 ネフィリムと対峙する響の拳が放たれる瞬間、その腕がネフィリムの口の中に、

 

「!」

 

 戦慄する瞬間、土魂、風魂、水魂が現れて、食い破られるのを阻止した。

 だが計算の中のように、ウェル博士は笑う。

 

「いまです、一定量のダメージを与えて、眼魂に変えるのですネフィリム!!」

「!?」

 

 その言葉に攻撃を受けながら、風魂が吹き飛び、爆発して眼魂に変わる。

 響は焦り、前に出ようとするが、奏がすぐにそれを止めた。

 

「待て、彼奴は強い!! 下手すればやられるぞ!?」

「けどハヤトの魂、眼魂が!?」

 

『孤高魂・孤独覚悟!! ザシュザシュゴォゴォゴースト!!』

 

 その時、また唐突に現れるゴーストが、ノイズを切り裂く。

 その手には彼の武器、チョーガンガンセイバーも握られ、二刀流でノイズを斬る。

 

「ハヤト!?」

 

 だが何も答えず、響は前に出ようとすると、胸が熱く、苦しみ出す。

 

「がっ、アァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!?」

「響!?」

 

 だがゴーストはそれを聞こえていないのか、戦いに集中していた。

 苦しみ出す大切な存在が見えないのか、彼は戦い、別の仲間達が集まり出す。

 

「立花!?」

「これはいったい・・・」

「か、らだが・・・あつ、い・・・」

 

 水魂と土魂が側に来る。

 響の身体から鉱石のようなものが現れ、全員が困惑する中、

 

「ネフィリム!? 僕のネフィリムが、やめ、やめろぉぉぉぉぉぉぉ」

 

『ダイカイガン・ココウ・オメガドライブ』

 

 彼はネフィリムを討ち取り、ノイズの殲滅に入る。

 ウェル博士はその隙に逃げ出すが、響を守りながら、その様子を見るしかない。

 

「神代!! 君が彼なら答えろ」

「テメェ、なにシカトしてるんだよ!! 響が苦しんでるんだぞ」

「ハヤト!!」

 

 だが彼は何も答えず、ノイズだけを倒す。

 倒しきった後、彼は姿を消す。まるで役目を終えたように。

 

「どうして・・・」

 

 それはなにも答えず、どこかに消える。

 響にもなにか起きている。誰も彼も、答えが見えない闇の中、静かに流されていくしかなかった。

 風魂だけを失い、響は静かに、彼を見続けた。




 ハーツと鎌のような武器を振るう戦士が戦う。
 ピラミット内部のような場所で戦い、彼は切り裂かれた三角の異次元空間に閉じこめられるが、ニュートンの力を借りて、重力と斥力を利用、その場から出てくる。

「命爆ぜるぜ!!」

 会心の一撃を放ち、彼を納得させた。

『見事だよ、これからよろしく』
「ああ、力を借りるぜツタンカーメン」

 彼の眼魂集めは、順調だった。

お読みいただきありがとうございます。


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第11話・魂

 サンゾウとは道を示し、心を結んだ。

 ニュートンには、偶然という可能性を掴む為の努力を教えられた。

 グリムには笑顔の大切さを教えられた。

 ツタンカーメンとは戦いで分かり合った。

 フーディーニとは奇抜な戦いをして、分かり合えた。

 そしてノイズの戦いで知った。

 俺の身体は、別の物に浸食されていて、蘇るどころか、出れば消滅するだろうと言うことを知った。

 だからこそ、生き返れない、もう会えないことに絶望した。

 だけど、

「俺は彼奴が笑っていられればいい」

 そう英雄達に伝え、そして彼は決めた。

 永遠の亡霊として、戦い続けるため、闇に身を沈めた。


 水と土、二つだけになった眼魂しか手元にない響に、ある事実が突きつけられた。

 それは神代ハヤトと同じ、体内のガングニールの融合化が進んでいる。

 

「それって」

「ああ、神代ハヤトが生き返れない原因と同じだが、彼と違う点は、まだ完全ではないと言うことだ。使わなければ問題ない」

 

 そう言われ、戦うことを、シンフォギアを使うことを禁止された響。

 いまは友達と共に、町を歩く。

 ハヤトと同じであり、違う。

 眼魂もまた、狙われている可能性が高いため、水は翼が、土はクリスが持つ。

 二人とも少し渋るが、響が狙われることの方が彼は喜ばないと考え、彼女から受け取った。

 

「響? 聞いてる?」

「あっ、うん、へいき、へっちゃら・・・」

 

 そんな返しをする響。それにみんな心配そうに見つめる。

 その瞬間、警報機が鳴り響く。

 

「これってノイズ!?」

 

 その時、目の前に無数のノイズが現れる。

 後ろにある人物が居る。

 

「ウェル博士!?」

「どうも~」

 

 その手にソロモンの杖を持ち、ノイズを操る。

 すぐに構えるが、友人達に構えるが出る。

 

「ダメだよ響」

「そうだよビッキーはいま戦えないんでしょ!?」

「け、けど・・・」

「友達が大事ですか? なら眼魂を渡してください」

 

 そう言って、彼は風魂を取り出す。それに響が驚く。

 

「風魂!? 返して、それはハヤトの、ハヤトの魂!!」

「悪いですが僕はこれで、大事なようがあるんです!! 大人しく他の眼魂を渡してください!!」

 

 そう言って、ノイズが迫る。

 それに、響は結局戦う。

 ノイズを倒すため、力を使う光景に、未来は絶望する。

 

「ハヤト・・・」

 

 高熱を身体から放ちながら、ノイズを倒す響。

 急いでくる装者達に、翼がタンクを斬り、水をかぶせて熱を引かせる。

 熱気がひどく、全員が見守る中、

 

「!?」

 

 水魂が飛び出て、その時、響を抱きしめる。

 

「水魂・・・」

 

 その瞬間、光が辺りを包む。

 

 

 

「・・・仙人、五行眼魂ってこれでいいのか?」

「ああ、これと英雄眼魂、確かに受け取ったぞ」

 

 仙人とハヤト、その二人は話し合いながら、仙人が去っていく。

 これで完全に蘇ることはできない。

 その後、姿を消して、我が家に訪れた。

 

「響ちゃ~ん~かわいい~」

「うっえ~これは少し変ですよ~」

「響がワンピースって・・・」

「未来ひどい!? っておじさん写真構えないでぇぇぇぇぇ」

 

 その楽しそうな様子に、僅かに微笑む。

 

「・・・父さん、母さん、みんな、ごめんな。勝手に死んで、死んでも顔出さなくて・・・」

 

 そして静かに、眼魂、自分の魂が込められた物を握りしめる。

 

「もう迷わない、覚悟は決めた」

 

 

 

「勝手だよハヤト・・・」

 

 いま響はついに弦十郎達から戦うことを禁止されている。

 いまは未来と共に、展望台から町を見ていた。

 ハヤトは主に、ここで町を見ていたのだ。

 

「どうして会ってくれなかったんだよ・・・ハヤト、会いたかったよ・・・」

 

 ベンチに座りながら呟く。水魂も先の戦いでいずこかに、ウェル博士もどこかにいない。最悪、持って行かれた。

 だがそれよりも、流れてきた記憶が痛い。

 ずっと一人、物も食べず、誰にも知られず、ずっと一人で戦っていた。

 ノイズはこちらが分かるのか、反撃があり、それを受けて傷付いても戦う。

 誰も望んでいない、彼のわがままだ。

 だけど、

 

「会いたいよ、ハヤト・・・」

 

 そう呟く中、未来もまた思う。

 

(私は友達達のために、何も出来ないの・・・)

 

 そう心の中で呟いた。

 

 

 

「・・・なんだここ」

 

 暗闇の中だった。気が付いたらこんなところ、ここで死後の世界かと納得する。

 

「俺の名前は神代ハヤト、確か、響達を月から助け出して、んでここか」

 

 少しだけ笑い、仕方ないなと思いながら消えていく中、

 

「君はそれでいいの?」

「ん?」

 

 子供が二人、少年少女が現れる。手を繋ぎ、仲のいい兄妹だろうか?わからない。

 

「どうした? ここは天国か?」

 

 そう言いながら、ある叫び声が聞こえた。

 

『未来ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ』

 

「!!?」

 

 それは響の叫び声、そして胸が痛い。これはいったい。

 

「いま土魂が、多くの人をかばい、黒のガングニールの手の中に」

「貴方は知らないうちに、孤高の魂として、現世を彷徨う、亡霊です」

「君らは・・・」

 

 その時、黒いパーカーが現れる。それは、

 

『孤高魂・孤独覚悟!! ザシュザシュゴォゴォゴースト!!』

 

 現れたのは孤高魂のハーツ、すぐさまハヤトは眼魂を取り出そうとするが、一個も無いのに気づく。

 

「なん」

 

 武器を構え、振り回してくる。見たこともない斧と思いきや、鎌になって投げたり、銃のように乱射したりする。

 チョーガンガンセイバーまで持って戦ってくるそれを睨みながら、それに蹴りや拳を放つが、効かない。

 

「いったい何なんだ!?」

「このままでは立花響は死んでしまう」

「!?」

 

 その言葉を聞き、次に暗闇の中から、見たこともないもの達が現れる。ハンドルのような剣を持つ者、黒い龍を従える者など、さまざまだ。

 それらが一斉に襲いかかる。

 

「ふざ、けろ!!」

 

 それらに挑むが、身体が、心が追いつかない。

 彼らに一方的にやられていく中、蹴り飛ばされ、身体を地面に引きずる。

 

「ぐっは」

 

 倒れそうになりながら、そんな中、響の叫び声が聞こえる。

 未来の声も聞こえ出す。

 

「!? なにが起きてる・・・おい!! なにが起きてる!!?」

「現世でいま戦いが起きている」

「だけど貴方にはなにもできない」

「!!? だからって」

 

 剣が迫る、だが、その剣を掴む腕を掴み、それに耐える。だが横から黒いカブトムシのような戦士の蹴りが放たれ、吹き飛ぶ。

 

「諦めることができる、もう戦う理由は」

「ふざけるな!!」

 

 立ち上がりながら、向かってくる敵を睨む。

 

「まだ俺がいる、魂が消えてない!! 俺の命はまだ燃え尽きてない、いや違う!!」

 

 立ち上がる、心が、魂が爆ぜる。だが、

 

「それでは彼らには勝てない」

「いずれ尽きる魂では、彼らには勝てない」

「誰が終わるか!!」

 

 その輝きが、ハヤトから放たれる。

 静かに、そして熱く、夜を照らす。

 

「何度爆ぜようと、俺は終わらない!! 響を救う、彼奴の笑顔を、世界を守る!! 彼奴が泣いてる限り、何度でも、何度でも、俺の命は」

 

 光が一カ所へと、集まっていく。

 

「命駆けるぜ!!」

 

 

 

 未来は神獣鏡を纏い、ガングニールを纏う響がぶつかる中、その瞬間、光が駆ける。

 

「!?」

 

 鏡を通して、ガングニールを貫くと共に、鏡を砕き、二人を担ぐ誰か、すぐに近くの船の上に立ち、未来と響を見る。

 未来は意識がもうろうしているが、響ははっきりと彼を見る。

 しっかり、はっきり、彼を、見た。

 

『孤高魂・孤独覚悟!! ザシュザシュゴォゴォゴースト!!』

 

 その姿の彼だが、静かに、

 

「・・・えっ、なにが起きてる?」

 

 そう、彼が言った。

 

「・・・ハヤト」

 

 元に戻る。そこにいたのは間違いない、神代ハヤトだった。

 よく分からず、周りをキョロキョロ見ると、二人揃って起きあがる。

 

「「ハヤト!?」」

「響、未来、どう」

 

 立ち上がり、こちらを見る二人。その時、二人してシンフォギアが解けた。

 

「!?」

「にゃ!?」

「!!?」

 

 その一瞬、彼女達のあられのない姿を見てしまい、ハヤトはぶっと吹き出す。

 すぐに元の服に戻る中、二人は真っ赤になり、睨んでくる。

 

「ま、待て、俺はまだよくわからんないんだけど!!」

「わ、私だって、響のために、シンフォギア纏ったりしてて・・・」

「私も、未来のために戦いだして」

「俺、月で響達のあと記憶が・・・」

 

 なんか姉弟?らしい子達と、暗闇の空間で色々あった気がした。

 と、ノイズが何故か出てきている。

 

「お、おいおい・・・」

「!? 二人とも」

「お前ら下がってろ」

「ハヤト!? だけどハヤトの魂は」

「無くても俺はゴースト、触れても死なない」

「けどハヤト」

「響と未来は、俺が」

 

 その時、

 

「俺が必ず守る!!」

 

 その時、手のひらに一つの光が宿る。

 それに振り返ると、それを見ると、眼魂が握りしめられていた。

 

「これは・・・悩んでる暇はない!」

 

『カモン・アイ!!』『バッチリ! シッカリミテロ!! バッチリ! シッカリミテロ!!』

 

 いつもの違うパーカーが現れ、それでも構わず、俺はゴーストドライバーにセットした。

 

「命、駆けるぜ!!」

 

『絶好大開眼!! 月光魂 月下に咆哮!! 絶好調!!』

 

 金と紫のパーカーを纏い、新たに吼える。

 その瞬間、全てのノイズが吹き飛ばされる。

 

 姿はまるで爪のようなガントレットが腕を覆い隠し、かかとの部分の刃がある。

 紫の鎧を着込み、黄金の刃を持つ、その姿。

 フードを外して、翼のようなものを広げている。

 

「とりあえず、ノイズを倒す。任せろ」

「ハヤト」

「もういなくならない」

「・・・信じるよ」

「ああ、未来にも約束する!! 俺は必ず戻る」

 

 そして新たな姿に、彼は静かに、駆け出す。




新たな姿、響のガングニールと未来の神獣鏡を取り込み現れました。肩にコードのようなワイヤーがあり、紫と響の橙色を纏う、夜の光を纏う戦士です。

分かる人には分かると思いますが、出てくる子供達は、平成魂の時での子達です。

次回、暴れます。


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第12話・蘇り、結ぶ魂

月光魂 響が持つガングニールの欠片、未来が纏う神獣鏡、ハヤトの持つ孤独の中でも彷徨い続けた魂が、光り輝き、姿を変え、融合した真の眼魂。
日だまりの反対のように、月明かりのような光を纏い、だが夜を朝日に変えるほどの輝きを秘めた力を持つ。


 海から浮上する島を見ながら 彼はいまノイズの群れを倒していた。

 ノイズの群れを片づける中で、静かに気配を探る。

 

「やっぱりこの島、五行眼魂使って浮いてるな・・・ってか、ホント、なにがどうなってるんだ?」

 

 よく分からずに飛び出したため、正直何も分からない。

 しばらくしたら島も浮上すると言う、正直よく分からない中で、

 

「デス!!」

「っと、なんだ」

 

 爪のようなガントレットで受け止める鎌、緑の鎌を持つ金髪の装者を見ながら、ん?と首を傾げる。

 

「誰だ君」

「お前、喋られるデス!?」

「まあいい、とりあえずこの状況はまずいんだが、とりあえずこの施設破壊するか」

「そんなこと、させないデス」

「そうかい」

 

『シッカリミテロ!! シッカリミテロ!! デッドブレイク! 覚悟!! メ・チャ・ク・チャゴースト!! 死線、激戦、爆進ソォル!!』

 

 その瞬間、銀色の光が翼のように広がり、両腕に金色の光の爪が備わる。

 その威圧に、険しい顔で鎌を構えるが、

 

「おせぇ!!」

 

 紫の閃光が緑の装者を斬り、倒すのは一瞬だった。

 

 

 

「でどうすんのこの子」

 

 とりあえず、気絶しているだけのその子、おーいと話しかけたりと、状況がいまいち分からない。

 とりあえず変身を解き、その子を抱える。

 すると、

 

「ハヤト!!」

「切ちゃん!!」

「響と、その子はだれ?」

 

 

 

 やっと彼、神代ハヤトは状況を理解する。

 いま切歌と言う少女も目を覚ますが、まだ戦うかのように睨んでくるが、イガリマは取り上げている。

 

「それでフロンティアか? 本当に月の落下が止まるのか? 俺には迫ってるとしか見えないぞ」

「どういうことデスか・・・」

「ほら」

 

 よく見ろと言わんばかりに、様子がおかしい。月が妙に近く感じる。

 それはいまいるフロンティアと言う施設が浮上しているとの同じように、接近しているかのように見えている。

 

「ま、まさかドクター・・・そんな」

「やっぱり、ドクターのやり方じゃ、世界を救うことはできないんだよ切ちゃん」

「デスけど、このままじゃ」

「・・・ところで君、魂二つある?」

「デス?」

 

 ハヤトがそんなことを言い、調を見る。言われた本人はえっと言う顔でハヤトを見る。

 

「俺はゴーストだ、聞こえてるだろ、いまの状況はあんたの方がわかりやすい、少し表に出てくれないか? 了子さん」

「えっ!?」

 

 そう言われた瞬間、調ががくんと少し体制を崩すが、すぐに身体を支えて、ため息をつく。

 

「さすが亡霊ね、魂の存在と言うより、記憶の上書きがフィーネの正体なのに」

「デス・・・」

 

 息をのむ切歌だが、フィーネはああ気にするなと言う。

 

「一応身体を借りてるだけよ、すぐに返すと、いまの会話も聞こえてるわ」

「えっ、し、調がフィーネ!? 私じゃなくって」

「ああ、そうね。あの時、力使ったわね。その時で勘違いしてるのね貴方」

「デ、デスぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」

 

 驚く切歌だが、響が嬉しそうに調を見る。

 

「了子さん!?」

「貴方も変わらないわね・・・はあ、それと、このままだと色々危険よ」

「マジか」

「せっかく出てきたから、用件だけ言うわ。私はもう表に出る気はないわ、後は貴方達ががんばりなさい。亡霊も、生き返るか死ぬかはっきりするのね」

「ハヤトはずっといますよ、それよりいまどうなってるんですか!?」

 

 どうもフロンティアがネフィリムの操作でいま月の落下か速まり、いまも尚危険な状況下らしい。

 そしてそれを止めたいのなら、

 

「立花響、急いで中枢部へ急ぎなさい。五行眼魂って言う力が使われているのなら、彼なら分かるはずよ」

「はい、わかりました」

「っていうか、響はいま」

「バカね、そのマリアって女性がガングニールを持っているのなら、それを使いなさい、必ず使えるから」

「それでいいのか」

「それじゃ、急いでいきましょう!!」

「まっ、待ってください!! 私も止めに行きますデス」

「そうね、この子もそう言うでしょう。それじゃ、神代ハヤト、急ぎなさい」

「ああ」

 

 そして前に出て、先を歩く際、響達に、

 

「立花響」

「はい?」

「気を付けなさい、ああいうタイプは、色々な子に好かれるから、手を出すなら早めにしないと、奪われるわよ」

「は、はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?」

「じゃ、急ぎなさい、恋する乙女達。貴方達もあれはおすすめだから、奪うならいまのうちよ」

 

 そう言って意識を返して、装者二人と、響はハヤトのあとを追う。

 

 

 

 全てがいま明かされる、人類の救済はウェル博士により歪められ、いま彼の暴走が世界を危機に追いつめる。

 そしてそれをナスターシャ教授が止めようとするが、それを止めるために、彼女の居る施設を切り離そうとする。

 マリア達では力が足りず、ウェル博士の暴走を止めるため、ウェル博士に槍を向けるが、

 

「相変わらずだな」

 

 目の前でそれを止め、撃槍ガングニールへと纏う響に呆れる。

 それに二人の装者も驚いているが、

 

「誰も死なせないさ、俺も響も」

「そんなきれい事・・・」

「やり遂げてやるぜ、ハーツ魂!!」

 

『開眼! ハーツ!!』『スタート覚悟!! ガンガンゴースト!!』

 

「命・・・駆けるぜ!!」

 

 ノイズが迫る響達をかばうハーツ、ひっと怯えるウェル博士。

 

「ま、まだだ、まだ僕には五行眼魂が、この力が」

「悪いが、それは俺の魂だ!!」

 

 その力へと、フロンティアへと向ける。その時、五つのパーカーが現れる。

 

「!? バカな、それは僕の、僕が英雄になるための力だ!!」

「俺が求めたのは英雄になる力じゃない、英雄と、共に戦う力だ!!」

『よく言った!!』

「!?」

 

 その時、外から何人か、パーカーが入り込み、エネルギーの周り、五行眼魂の周りへと集まる。

 そのパーカーの五つに、覚えがある。

 

「なんで」

『話は後だ、いまは』

『ここの施設と同調した五行眼魂を取り出すのが、先決です』

『それと、切り取られた施設の人は、我らと心結びし者達が側にいる』

 

 それを聞いて、マリア、切歌、調が顔を上げた。

 それに15人、彼らに静かに叫ぶ。

 

「なら力を貸してくれ、英雄眼魂」

『応ッ』

 

 フロンティアの中、組み込まれた五行眼魂が現れ、彼の手元に現れる。

 それにウェル博士は信じられない顔をするが、全員が睨むと、すぐにその場から逃げ出す。

 それと共に、司令や緒川さんも来てくれたが、通信が響く。

 

『みなさん』

「マム!?」

「マム無事デスか!?」

『ええ、彼らのおかげで・・・』

『それはいい、早くこの事態の止めなければ』

 

 知らない男性の声が響き、三人は驚くが、15人の英雄達を見ながら、静かに、

 

「俺達戦えるのは外のノイズを倒す、そっちは任せていいですか」

『問題ないよ、ハーツ。外で会おう』

『いま施設を元の位置に戻す、すぐに終わらせる』

 

 そしていまフロンティアの機能を使い、自分達を排除しようとするウェル博士。それを止めるために、外に出てネフィリムの心臓を破壊しなきゃいけないらしい。

 それを聞き、装者達は急いで外に出る。

 

 

 

「クリス、翼さん、奏さん」

「神代・・・ハヤト!?」

「お前、やっぱりまだ生きてたのか」

「ハヤト!!」

 

 ソロモンの杖を取り戻したクリスを見ながら、15人の眼魂と五行眼魂を持ついま、彼らの前に、ネフィリムが現れる。

 

「向こうさんが来てくれたと言うことか?」

「そう言うことらしいな」

「みんな、準備はいい!?」

「それはこっちのセリフデス」

「こっちは万端」

「・・・俺は無論」

『行くぞ、異世界の友よ』

「応、力借りるぜ」

「え!?」

 

 一人、地面から突如現れるネフィリムに飛び込む戦士、その手には、

 

『ムサシ・決闘! ズバッと!超剣豪!!』

 

「行きますムサシさん!!」

「武蔵!? 宮本武蔵か!?」

『貴殿も使えますよ、使いますか?』

「本当か!? 頼む力貸してくれ」

『ええ』

「って、奏さん!?」

 

『運命! 曲名! ジャジャジャジャーン!!』

 

「おお、これってベートーベンか!? 槍もあるし、助かるぜっ。行くぜウルバイク」

「ちょっ、奏達!?」

「私達も行くぞ!!」

 

 周りのノイズを討ち、接近するハーツ。ウルバイクに乗り、駆け抜け、音の衝撃波を槍に纏い、放つ奏。

 それに弾丸や、各々の技を放つ中、奏とハヤトはお互いを見る。

 

「ハヤト、ここは」

「俺らの番」

 

『百発!百中!ズキューン!バキューン!』

 

『ピラミットは三角!王家の資格!』

 

「ビリーザキットとツタンカーメン!?」

 

 槍を振るうとピラミットを作りだし、ネフィリムを閉じこめ、そこにチョーガンガンセイバーと例の斧銃を取り出し乱射する。

 

「これで」

「まだよ!!」

 

 その言葉に、煙の中からの攻撃を避ける。

 声がした場所を見て、全員が集まる。

 そこには、

 

「「マリア」」

「貴方達は・・・」

 

 その時、15人の英雄眼魂が現れ、それに微笑む一人の男性。

 

「俺の名前は天空寺タケル、仮面ライダーゴースト」

「仮面ライダーゴースト!? それじゃ」

「ああ、俺は深海マコト、仮面ライダースペクターだ。この世界には借りがあると言われて、急いで駆けつけた」

「私はアラン、仮面ライダーネクロム。君達に力を貸させて欲しい」

 

 それを言われ黙り込む。彼らの世界を救うため、ハヤトはゴーストになり、現在に至る。

 だが、

 

「いいんですか!? ありがとうございます」

「それじゃ、力貸してくれ、タケルさん」

 

 当本人らは気にせずそう言い、翼、奏、クリスは苦笑する。

 そして、

 

『立花響、君の繋げる力を使い、君達の力をつなぎ合わせるんだ』

「ムサシ」

「ムサシさんですね、分かりました!! シンフォギアの方は任せてください!!」

「なら、眼魂組は」

「その時間稼ぎだ」

 

 三人は眼魂を取り出し、スイッチを押す。

 

『ムゲン進化!』『ダイブ・トゥ・ディープ』『イエッサー』『カモン・アイ!!』

 

「「「「変身!!」」」」

 

 その時、火球が迫るが、無数のパーカーがはじき、そして15の英雄と、四人の戦士と装者が現れ、各々の武器を構える。

 

「命、燃やすぜ!!」

「俺の生き様、見せてやる!!」

「心の叫びを聞け!!」

「魂借りるぜ!!」

「命駆ける!!」

 

 そして飛び出す彼らに、ネフィリムは切り刻まれる。

 装者達もまた、その聖遺物の力を解放して、その一撃が放たれていく。マリアもまた、聖遺物を纏っていた。

 チョーガンガンセイバーを振り回し、斧と一つにする時、先ほど切歌を一撃で仕留めた状態へと代わり、剣が鳴り響く。

 

大大剣星刃(ダイタイケンセイバー)

 

『イノチダイカイガン・シンネンインパクト』

 

 斬撃を飛ばし、強力な弾丸が撃ち込まれる中、様子がおかしい。

 熱エネルギーが強まり、それを見て、

 

「どうやら自爆する気らしいぞ!?」

「野郎、面倒な」

「任せろ」

 

 クリスの考えで、ソロモンの杖を使い、ノイズが保管されている、宝物庫へとネフィリムを押し込み、爆発させることにする。

 それにネフィリムは入れ込むことが出来たが、その時、鞭のようなものがマリアへとからみつく。

 

「ちっ、行くぞ」

「待ってハヤト!!」

 

 それを見た瞬間、彼ら、仮面ライダー達は躊躇無く、先に宝物庫に入り込み、周りのノイズをなぎ払いながら、ネフィリムの根本を切り落とそうとする。

 装者達はマリアの側に近づき、マリアは何か言う前に起きたことに驚いていた。

 

「彼らは・・・」

「ハヤトらしいや、考える前に、マリアさん助けようとして・・・」

 

 響はそれに微笑む。

 だが、それに続くのは、仮面ライダーと言う戦士達。

 

「まだまだ行くぜみなさん!!」

『次はワッシゼヨ』

 

 リョウマを始めとした15人の英雄の力を振るい出す、その様子に負けずと、装者達も飛ばす。

 だがネフィリムは辺りのノイズを飲み込み始める。

 そしてなにより、もう一つの出口の側に、それは立つ。

 

「最後まで邪魔する気か!?」

「まだだ、まだ終わってたまるかよ!!」

 

 ハヤトは叫び、拳を握りしめて、それを見る。

 その時、ゴーストは光を見た。輝く、無限の可能性を、

 

「それは、少し待って」

「えっ」

「はっ」

 

 眼の紋章を描く瞬間、ハヤトの手に、一つの眼魂が握られている。そこから、

 

「すげぇ力を感じる、これは」

『強く、優しい魂を感じる。彼女と共に、我らも力を貸そう、五行眼魂よ、お前達も力を貸せ!!』

 

 ムサシの一声に、五行もパーカー姿で現れる。

 マリアはその言葉に、一瞬、ある少女がよぎる。

 

「まさか」

 

『歌姫魂・歌姫、綺羅姫、奇跡の担い手セレナーデ』

 

 白銀の優しい光を纏うと共に、全てのパーカー達に姿形が与えられている。

 その奇跡を見ながら、その光に覚えがあるマリアが呟く。

 

「セレナ・・・」

「行くぜ、全員合わせろ」

 

 その言葉に、マリア達は全員意識を集中して、飛び立つ。

 

「貫けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

『チョームゲンダイカイガン!! 全員大々集合!!、オメガフュージョン!!』

 

 光の一閃がネフィリムを貫き、地上へと降り立つ。

 

 全員がその瞬間、変身などが解けてしまうが、まだ入り口が閉じていない。

 

「まずいぞ」

 

 誰かがそう言うが、響とハヤトは、

 

「「大丈夫」」

 

 そう言った瞬間、潜水艦が現れ、未来が駆けつけてソロモンの杖を握りしめ、空へと投げる。

 

 それが全てを終わらせる。きっかけだった。

 

 

 

 爆発が異次元空間で起きるのを確認してから、はあとため息を吐く。

 

「全員無事か」

「まったくお前さんは」

 

 そう言って現れたのは、

 

「オッチャン」

「仙人」

「やっぱりなんなの扱いの違い!?」

 

 そう言う中で、潜水艦からナスターシャ教授を背負った、お坊さんが現れる。

 

「タケル殿~異世界の方々~ご無事ですか~」

「マム!?」

「車椅子が壊れてから、この人に背負ってもらってます」

 

 他にも何人かタケルに近づく者達、装者達もナスターシャ教授に集まり、司令も集まり出す。

 仙人はマジマジとハヤトを見る。

 

「やはりおぬし、タケルと同じ奇跡の奇跡、大逆転を起こしたようじゃな」

「タケルさんと?」

「俺と?」

「そうじゃ、タケルは一度、眼魂が砕け、消滅するはずが、ムゲンゴースト眼魂という奇跡で蘇った。そしてお前さんも」

「月光眼魂か」

 

 それを取り出す瞬間、それが震え出す。

 突如英雄、五行眼魂が空へと飛び上がり、何かが起きる。

 

「なんだ!!?」

「こ、これはまさか!!? いや、まさかまさかの、超超超超超、奇跡だと言うのか!?」

 

 仙人が驚きながら空を見る。そこに浮かび上がるのは大きな眼だった。

 それを見て弦十郎も叫ぶ。

 

「これはいったい!?」

「いま神代ハヤトの肉体は、完全に鉱石、聖遺物と化して、人体へと変化するエネルギーの固まりに成り果てている!! だが、逆に言えば、それは肉体が無い魂の器にもなると言うことでもある」

「!? それはつまり」

「ハヤトが生き返る・・・」

 

 響がそう呟くと、全員がハヤトを見る。

 だが暴風のように、エネルギーがまき散らし、荒れに荒れている。

 

「こ、これは!?」

「オッチャン殿!? 前の時とは、いささか違いますぞ!!」

「あの時はまだグレートアイへと接触は妨害も何もなかった、だがいまは偶然だ!! 偶然、異世界、異次元空間の超爆発、15の英雄眼魂、そして世界の理、五行眼魂。それらの偶然が噛み合わさり、まさに偶然にも、グレートアイへの入り口が開かれ要している!!」

「それって、タケルが生き返る!?」

 

 タケルさんの知り合いがタケルを見る。だが、

 

「待って!! この世界なら、彼が、神代くんが生き返るべきだ」

「何を言っているんだタケル!! お前はもう期限が無いんだぞ!!」

「それに彼の場合」

「いや、神代ハヤトの肉体は、いまは人体創造のエネルギーへと変わっている。魂だけでもあれば、グレートアイが魂だけでも、そのエネルギーを使えば生き返らせることは可能だ!!」

 

 仙人がキリッと言う擬音が付くぐらいに宣言する。

 それに装者達はハヤトを見る。タケルもまた、

 

「なら君が願いを叶えるべきだ、神代くん」

 

 そう言って、彼の肩に触れた。

 その時、タケルは目を見開いた。

 

「・・・君は」

「・・・俺は」

「ハヤト!!」

 

 風の所為でその場に座り込む一同、だが響は嬉しそうな顔でハヤトを見る。

 だけど、その顔が優れないハヤト。

 

「ハヤト・・・」

「神代・・・ううん、ハヤトくん」

 

 タケルが静かに、

 

「君は、君が決めるんだ」

「タケルさん」

「俺はなにも言わない、ただし、逃げちゃダメだよ」

「・・・」

 

 そしてしばらくして、彼は飛ぶ。

 その様子に全員が疑問に思うが、マコトが気づく。

 

「待て、魂があれば生き返る!? ということですか」

「あっ、ああ、魂が眼魂にあれば」

「まさか!? タケル!!」

「彼がそれでいいのなら、俺は構わない」

 

 眼の中に入っていくハヤト、それに全員が困惑する。

 

「た、タケルさん? いったいどういう」

 

 眼鏡をかけた人と、もう一人同じ服装の人がナスターシャ教授を支えながら、坊主の方がまさかと叫ぶ。

 

「まさか、この異世界の方に、眼魂の中に、魂が込められた方がおられると言うことですか!?」

「まさかタケルさん!? あの人は私のように」

「カノンのように、自分ではなく、その子を」

「・・・えっ」

 

 

 

 真っ白な空間の中、一人の少女とハヤトは言い争っていた。

 

「いいから、君が願うんだ」

「ダメです!! それは貴方が完全に生き返ることができなくなるってことじゃないですか!!」

「それでも、俺は・・・グレートアイ!! 俺の願いはただ一つ」

「ハヤトさん・・・」

「この子を、セレナ・カデンツァヴァナ・イブを、俺の肉体、ガングニールの力で、普通の女の子として、生き返らせてくれ!!」

 

 そして世界は光に包まれる・・・

 

 

 

 全てが終わり、セレナが医務室へと運ばれる中、彼は夕焼けを眺めていた。

 姿を消したままだが、

 

「タケルさん」

 

 同じ存在同士、同じように夕焼けを見る。

 

「俺もそうだった、自分が生き返るよりも先に、カノンちゃんをって思ったよ」

「後悔しましたか?」

「ううん、だけど、御成達を悲しませたことは反省してるよ」

 

 そう言い合う中、ハヤトは少しして立ち上がる。

 

「俺は、元は男の身体だから、嫌じゃないかなって思って落ち込んでますよ」

「あっははは・・・それもそうだね」

「だけど、やっぱ、俺は眼魂の中にいる、あの子の存在を知った時から、考えてましたから・・・後悔してません」

 

 そう言った後、彼は前を向いて、そしてタケルを見る。

 

「君は諦めちゃダメだよ、君を思う人達のために、まだ君の魂がある。魂には無限の可能性がある、だから信じるんだ、この世界に、まだ生き返る手段があるって」

「・・・響達は許してくれるだろうか」

「許してくれるよ、きっと」

「・・・なら、あんたも生き返れよ、タケルさん」

「ああ、今度はお互い、生き返って会おう!!」

 

 そして全てが本当に終わりを告げた。




 全てが終わり、響に誤りに行く。だが響は、

「じゃ、代わりに」

 そっと静かに抱きついてきて、

「もう離れないでね、ハヤト・・・」
「・・・響・・・」

 静かに抱きしめ合う中、それでも彼はまだ生き返っていない。

「しっかしまあ」

 その様子をモニター越しで見る一同は、静かに、

「家でやって欲しいな、若人達は・・・はあ」

 そう言って、苦笑する。


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第13話・孤独からの解放

大大剣星刃(だいたいけんせいばー) チョーガンガンセイバーと斧の武器が一つになり、巨大な剣になった形状、ありとあらゆるものを斬る、というより、でかすぎてそれしかできない。
月光魂・爆進モードと呼ばれる、エネルギーをまき散らしながら戦う状態で使用、全エネルギーを斬撃へと変化させ、光速移動しながら振り回す。広い場所なら相対したくない派手な状態。


 新学期の季節が来た。俺からすればそれはどうでもよく、姿を消して屋上にいる。

 ここは私立リディアン学園、そして休み時間、彼女達が来た。

 

「ハヤト~友達連れてきたけどいる?」

「こんにちわデースー」

 

 何も居ないはずの空間から、彼が姿を現し、フードを外す。何人かが驚くがその前に、響が抱きついてくる。

 

「ハヤト♪」

「響、抱きつくなよ」

「えっへへ♪」

 

 今年から翼さんが卒業と同時に海外進出、マリアは某国との裏取引兼罪の償いのため、アイドルを続けるために世界へと出ている。

 切歌、調、セレナ、ナスターシャ教授は、弦十郎が指揮する組織内で保護している。

 セレナの蘇りは複雑なため、マリアとの関係は気づかれないが、それでもかなり念入りに動いている。

 セレナはとりあえず、いまは中学には入れないが、来年度はリディアンに通うことになる。蘇った際、生前と同じ13歳のため、そこから新たな人生を生きると約束してくれた。

 等々、いま響と未来の友達である、三人組に挨拶している。

 時折屋上に、他の生徒が来ないか気にかけつつ、挨拶していた。

 

「正直、エネルギー物質になってたからって、元は男性の身体がベースだから、嫌がってないか心配だから、その辺のフォロー頼むぜ未来」

「そう言うこと、響だけで大変なんだけどハヤト」

「それってどういうことなの未来~ハヤト~」

「お前に頼めるか」

「ひ~ど~い~よ~」

 

 腕に張り付く響、未来はもうと言う顔でその光景を見る。

 あまりは砂糖を吐きそうな顔で見ていた。

 

「お、お前ら、いつもそんなんか?」

 

 クリスがつい聞いてくるが、何か悟ったような未来が頷く。

 ハヤトは?と顔に浮かべていて、響は嬉しそうに抱きついている。

 友達三人が何か絶望している。ビッキーが先に、ビッキーが先にと・・・

 

「先輩だけずるいデス、私も抱きつくデス」

「なら私も」

「はあ!?」

「おいおい・・・」

 

 そこに二人の年下も加わり、ハヤトは一瞬姿を消し、三人から離れ、クリスの背後から現れる。

 その様子はさすがゴーストだと、感心した。

 

「っていうか、慣れてるな」

「実際少し前からリディアン、響達の側にいたぞ。装者になってからだが」

「ほへ? 側にいたなら出てくればよかったのに、ひどいよハヤト」

「一応姿消して進入だから、色々気にかけてたんだよ・・・」

 

 そんな話の中、切歌はそう言えばと、ハヤトに尋ねる。

 

「調の中にいるフィーネはどうデス? まだいるんデスか?」

「あっ、ああ。かなり深いところにいるけどいるね」

「出てくることはないデス?」

「本人が出る気はないって言ってたし、これは誰にも言わない方がいいよ」

「デス」

「私も少し・・・あの人の知識、偏ってる・・・」

 

 少し頬を赤くしてちらっとハヤトを見る。クリスは何を教えたと中にいるだろう人を睨む。

 そんな中、友人三人の一人が話しかけてくる。

 

「ハヤトくんはこれからどうするの?」

「年齢的にクリスと同じだけど、ゴーストだから、司令室の下で勉学しながら、そっちの仕事優先で動くよ。それと同時進行で、代わりになる肉体探しかな? このまま死んだままは無理だから、探してみるよ、タケルさんとそう約束したし」

 

 そう、いまの目睫はいまの状態で生き返る術を探すことだが、実は装者には伝えていないが、あることは忠告されている。

 仙人から、

 

「いいか、眼魂状態での永遠は不完全だった。そのために眼魔の世界はタケル達の世界へと侵攻している。お前のいまの状態も、期限はむしろ、明確にはわからん」

 

 そう言って、彼らは彼らの世界での戦いに出向く。

 正直俺も加わりたいが、彼らは彼らでがんばると、英雄眼魂を見せながら言う。

 

「君からの思いは受け取ってるよ、俺からは何も渡せないけど、ただ一つだけ、思いだけは届いているって信じてるから」

「分かりました、俺も、俺の世界で、大切な人達を守ります」

 

 そして彼らと別れ、いまに至る。

 いまの状態で、聖遺物関係者としか関われないが、いまはそれでいい。

 

「そう言えば物食べられるよね? これ、私が作ったの、はい、あーん♪」

「あっ、私もするデス、あーんデス」

「・・・あーん」

「・・・」

 

 何か女子からの扱いに困惑しながら、未来は逃げるなと思った瞬間、姿を消して逃げた。

 その様子にクリスはあーあと呆れながら、少し考えて、未来に聞く。

 

「彼奴っていつも」

「響もハヤトもああですよ、もう、こっちの気も知らないで」

「・・・そうなのか」

「・・・」

 

 その様子を見ながら、考える。

 ハヤトもいつも、知らないうちに、知らない子と仲良くなり、その子に好かれていた。そう思い、ため息をつく。自分もその一人だが、何か悟りを開いたような気がする。

 

(どう転んでも責任取ってもらうおう)

 

 そうハヤトに思いながら、空を見上げていた。

 

 

 

「ウルバイク~もうこの子は私だからな~」

「え~・・・」

 

 ウルバイクに抱きつく奏に、ハヤトは呆れる。ウルバイクも反応せずに、奏はすねている。

 

「別に、お前には色々と感謝してるよ、肉体探しや、翼達のために、私ら裏方同士で、仕事するから、これからよろしくだけど、もうウルバイクは手放せない。代わりに翼やるよ、大事にしてくれ」

「どうしてそうなるんですか」

「翼が歳の近い異性で気にかけてるの、お前しかいないからな。響には悪いけど、翼優先で」

「いや、話が見えない」

「・・・まあいまはそれでいいよ、これからよろしくなハヤト♪」

「ちょっ」

 

 急に抱きしめなれながら、頭をぐりぐりと撫でられる。

 その様子にウルバイクは苦笑するようにエンジンを吹かす。

 

 

 

「ハヤトさん」

「セレナ、ナスターシャ教授はいまは?」

 

 病院施設にて、拘束監禁されながら、機械の前で仕事するナスターシャ教授。その助手のように側にいるセレナ。

 その様子を見に来たとき、セレナは微笑む。

 

「マムはいま少し、体を休めてます。色々無理してましたから」

「セレナは? その、エネルギーになったけど、元は俺の身体だから、虫ずが走るとかない?」

「考えすぎです!! 生き返らしてもらって、そんなひどいこと思いません!!」

 

 そう言われてから、色々と気にかけながら話しかける。

 優しく微笑むセレナは嬉しそうに、ハヤトと時間を過ごす。

 のちに未来から、女の子に優しくしすぎときつく説教されるハヤトであった。

 

 

 

 ハヤトはいま、弦十郎の家に居候している。いまは屋根上で、姿を消して、静かに考え込む。

 いまは一人ではないが、この時間がいつまで続くか分からない。

 だけど、諦めない。

 

「・・・響のあの笑顔、俺は守る・・・」

 

 その決意はもう変わらない。眼魂を握りしめ、静かに前を向く。




その後きっとバレンタインデーなどで、セレナを始めとした年頃の子からチョコもらったりしたりと、リア充します。
爆発しません、ゴーストですからね。
こっち作品の響は料理洗濯できて、ハヤトは驚いてます。女子力は高いのは、神代家で居候時に、手伝いしていたからです。
それでは次回はGX編、展開が読みやすい気もしますが、前の作品とかぶらないように気をつけて、物語を続きます。ん?

未来「はっきり言いますが、このままメインヒロインを響で固定すればいいんじゃないですか? どうして私はともかく、翼さんやクリスまで巻き込むばかりか、切歌ちゃん達もその気にさせてるんですか?」

そ、それは年頃の、信頼できる異性置けばそうなるとしか思えないからです。

未来「響の幸せを考えてやれば、鎧武の方とはかぶらないので、最低でも私がサブくらいにしてくださいね」

は、はい・・・

未来「それでいいんです。それでは」

作者・未来「お読みいただき、ありがとうございます」


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GX編
第14話・錬金術師と亡霊


GX編、もう一人の仮面ライダーゴーストこと、仮面ライダーハーツ。その魂の行き着く先は如何に?
どうぞ。


 マリアと翼が海外でライブする日、ため息を吐きながら潜水艦であり、組織名が変わった司令室でのんびりしていた。

 正直、身体を探すとしても、どう考えても未知の領域であり、ぶっちゃけ必要性を感じていないのもある。それは内緒だ。

 

「ハヤト、お前は響くん達のところじゃないのか?」

「クリスん家でしょ? いくら姿消す亡霊でも、女の子の家に一人で行くのもね」

「それもそうですね、奏さんも翼さんの方だからですから」

 

 オペレーターさん達も納得しながらの雑談。そんな感じで時間を過ごす。だが、ため息をつきながら、考え込む。

 最近は平和だが、いつまで続くか分からない。

 なぜならば、自分はいつまで存在し続くか分からない。

 そんな存在に、正直響は依存している。

 そのことを未来に話したのだが、仕方ない、諦める気?とお叱りを受けた。

 

「諦めたくはないんだけど・・・」

 

 だが分からないから、もう奪いたくないんだ。

 彼奴の笑顔を・・・

 

「!?」

 

 そして警報が鳴り響き、装者達並び、自分の仕事が発令する。

 

 

 

 原因不明の火災現場、火には水魂と、それで火を消し回る中で、連絡が入る。

 

「はいもしもし」

『ハヤトくん!! 緊急事態だ、翼達が何者かに襲撃された』

「えっ、奏さんは!?」

『奏が敵を撃墜、いや、目的を果たして姿を消した』

「目的って・・・」

『シンフォギアの破壊だ、翼の纏っていたギアが消滅はしていないものの、使用不可能にされている。響くんとクリスくんのもとに急いで出向いてくれ!! 相手できるのは装者じゃない君しかいない』

「了解!! まずは響を回収する」

『頼む!!』

 

 

 

「・・・ふん」

 

 巨大なクレーターを作り、一人の少女が姿を消す。

 そんな中、風魂の草木から姿を消して、いま姿を現せるハヤト。気を失う響を見る。まさに響が少女らしき、謎の人物から攻撃を受けようとした瞬間、風魂を使い、騙したのだが、連絡を入れる。

 

『そうか、響くんは?』

「ギアは纏ってないから、使用不可は問題ないが、気を失ってるよ。ケガもない」

『分かった、いま確認した。響くんは任せて、クリスくんのもとに急いでくれ、彼女の方も連絡が付かない』

「分かった」

 

 響を道路に寝かせながら、静かに頭を撫でる。

 

「任せろ響」

 

 取り出すのは月光魂、それに雷魂が光る。

 

「命、駆ける!!」

 

 

 

 クリスはギアを破壊され、前にいるノイズを睨んだ瞬間、それが雷鳴に撃たれた。

 

「これは派手だな、何者だ?」

「俺だ!!」

 

『バクエンソウルカイガン・ゲッコウイナズマ・オメガバスター!!』

 

 それが雷鳴が降り注ぐように乱射され、ノイズごと、敵らしき人物を壊す。

 着地して、クリスへと振り返る。

 

「クリス」

「ハヤト、って、見るなバカ!!」

「ぶっ」

 

 その姿は裸であり、その時、ギアを纏う切歌が現れ、布を渡す。

 

「切歌、なに」

「なにしてるんデスか!? 先輩の裸見て!!」

「俺が怒られるのは後だ、まだだ」

 

 そう言って、土魂を取りだし、パーカーがコインをはじく。

 煙が晴れて、カジノの人のような人の形をした、人形がコインを構えていた。

 

「なかなかに派手だな、お前は」

「切歌、あと調もいるだろ、クリスと、その後ろで倒れている子連れて逃げろ」

「デスけど」

「邪魔だ」

 

 炎魂のパーカーが、月光の魂と共鳴する。

 その威圧に、全員が戦慄した。

 

「これは・・・派手すぎるな・・・目的も達したことだ、撤退するか」

「・・・」

 

 いまここで争うわけにはいかず、それを見逃すしかない。

 消えたことを確認して変身を解き、上着をクリスへと渡す。

 

「平気かクリス」

「・・・悪い、色々と足引っ張った」

「いや」

「それとこれとは別で、後で殴らせろ」

「・・・分かった」

 

 そう言いながら、切歌と調を見る。すぐにギアを解かせ、様子を見る。

 

「二人とも、身体は平気か? 問題ないか?」

「あれくらいなら問題無いデス、ハヤトは心配しょうデス」

「平気だから、気にしないで」

「気にする!! 二人は薬での強化で適合率上げなきゃ、まともに戦えないんだ、戦場に出るな」

「デスが」

「まあいい、俺が言えたことじゃないし・・・助かった、ありがと」

 

 二人の頭を撫でると、二人は複雑そうに見つめてくる。

 そして眠る少女を見る。だが、

 

「この子は」

「ああ、彼奴らに追われてたんだ。何か知ってるみたいだぜ」

「・・・」

 

 だろうなと思いながら、その前髪を指で払う。

 その少女、その顔を見る。髪の毛は色が違う、だけど響に攻撃していた子と似ている。

 どうも、まだ色々と問題が起きる。身体探ししている暇はないようだ。

 

(タケルさん、すいません。やっぱ俺は自分より、響達優先します)

 

 そう心の中で誤りながら、彼らの戦いは再開する・・・




月光雷魂、超高速で移動し、攻撃が全て雷を纏い、敵を断つ。

月光風魂、こちらは凄きはトリッキーと言った方が正しく、相手に気づかれないようにしたりと、空中戦が得意。

お読みいただきありがとうございます。


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第15話・錬金術師とのやりとり

長かった、ただこれがしただけだったためです。申し訳ございません。

それでは、どうぞ。


 エルフナインが持ち込む、シンフォギア強化計画『イグナイトモジュール』と言うものがあれば、どうにかなるらしい。

 此度の事件を引き起こすのは、錬金術師キャロルと、彼女が作りだした四人の人形達。

 そして『アルカノイズ』

 

「アルカノイズにシンフォギアが触れれば崩れて壊れるか、だからクリスや翼さんのがダメに?」

「ああ、となると、危険なのは響だな」

 

 ウルバイクを調整する奏との会話しながら、それなら俺が行くと行って、姿を消す。

 いま彼女のコピーである、ホムンクルス、エルフナインの協力の下、聖遺物の強化を勧めている。

 その間に狙われる者達や、戦えない者達の警護を言い渡されていた。

 

 

 

「じゃ、ハヤトさんいるの?」

「ん~ハヤト?」

 

 学園の帰り道、友達と共に話しながら歩くため、それに姿を現す。

 

「念のため言えけど、あんま学園の中にいないからな。一応、女子校だし」

「まあ、その辺りは信用してるよ」

「それで、ビッキーは・・・」

 

 ハヤトが現れても何か考え込み、歩いていた。装者同士の会話でなにか話していたのだろうか?

 

「響」

「うっ、うわっ!? ハヤト!? 急に出てこないでよ~」

 

 それにみんな黙り込む中で、すぐに顔色を変える。

 

「変身ッ」

 

 パーカーゴーストが現れ、響に迫る激流を防ぎ、全員を後ろに下げ、変身する。

 

『絶好大開眼!! 月光魂 月下に咆哮!! 絶好調!!』

 

「命、駆ける!!」

 

 それと共に現れるアルカノイズ。だが、それを気にせず、響は戸惑いながら、聖遺物を握りしめる。

 

「響、未来、お前らは俺が守る」

「ハヤト・・・」

「いい加減にして欲しいんだけど亡霊」

 

 青い服装の人形が現れ、ノイズ達を従える。

 静かに構える中で、ハヤトは、

 

「響達は俺が守る、それが俺の、魂のあり方だ!!」

 

『シッカリミテロ!! シッカリミテロ!! デッドブレイク! 覚悟!! メ・チャ・ク・チャゴースト!! 死線、激戦、爆進ソォル!!』

 

「こいつの大事なもん、傷付けさせはしない!!」

「ちっ、暑苦しい奴だ、なッ!!」

 

 水を熱気で蒸発させ、ノイズを吹き飛ばすハーツ。

 安全な場所まで走る中、車が来る。

 

「立花響っ」

「マリア・・・さん」

「なにしてるの!? 彼だけに戦わせる気なの!?」

「わた、しは」

 

 

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 ノイズの群れを吹き飛ばし、人形はチッと舌打ちして、その場から消える。すぐに姿を消す様子に、やはり装者に目を付けているようだ。

 と、

 

「ん、マリア、響」

「どうして戦わないの立花響!?」

「それは・・・」

「待て、まり」

 

 その時、身体から粒子が吹き出す。

 全員が戦慄し、変身、パーカーが解かれた。

 

「なん・・・!?」

 

 身体から傷が無いのに、光の粒子が僅かに漏れ出ている。

 

「ハヤト!?」

「・・・」

 

 すぐに光が消えるが、いまの様子に、嫌な予感がよぎる。

 それを見て黙り込む響。未来も、全員が黙り込む。

 

 

 

「それでこっちデスかハヤト?」

「・・・」

 

 いまは司令室の休憩室で休むハヤトだが、クリス、切歌、調が見守る。翼もまたいる中で頷く。

 

「いま奏が立花の側にいる、マリアの方は」

「マリアは少し・・・色々思い詰めるところあるデスから」

 

 そんな会話の中、しばらく黙り込む。

 結局姿を消して、歩き回る。気を抜けば誰にも見られない。

 と、エルフナインの元に顔を出す。

 

「って、エルフナイン」

 

 少し目をこすり、それでも聖遺物強化のしているエルフナイン。いまのところ、やることがないので、飲み物を置いたりする。

 知らず知らずエルフナインは食べたりと、気が付くとお世話されているのだが、集中してエルフナインは作業に没頭する。

 姿を消す中で、エルフナインを見守る中で、静かに過ごすが、

 

「!?」

「警報!? って、は、ハヤトさん!?」

 

 警報と同時に姿を現し、エルフナインはびっくりする。

 だがいまは、通信機を使い、司令室に連絡した。

 

「おいいまなにが」

『ハヤトくんか!? 悪いが君は待機だ』

「いや、なにがあった!? 響は」

『響くんは奏に任せろ、君は君の仕事を考えるんだ。ここも襲われる可能性があるんだ』

「・・・・・・・・了解」

 

 こうして奏が襲撃者へ対処する。未来も側にいたが、ガングニールが破壊されること以外、響は軽傷で済んだ。

 奏の方は無事であり、ウルバイクは少し大破したが、自己回復機能ですぐに直る。

 だが、それを聞いたハヤトは、すぐに姿を消した。

 

 

 

「・・・ハヤトに迷惑かけたかな?」

 

 響は軽傷ではあるものの、いまベットで横になる。

 静かにしながら、少し考え込む。

 

「・・・ハヤト・・・いる?」

 

 そう虚空に呟くが、何も答えない。

 それになにか嫌な気持ちになる。そう、あの日、あの時、あの時期のようだと。

 

「ハヤト・・・ハヤト・・・」

 

 静かにそう呟きながら、ハヤトの顔を思い出す。

 

 

 

 そしてイグナイトモジュール完成間際、同時襲撃が行われる。

 何カ所は設備の放置などをすれば、死者は出ないだろうが、ここはそうは言わない。自衛隊の方々がアルカノイズへと発砲して、足止めするが、

 

『シッカリミテロ!! シッカリミテロ!! デッドブレイク! 覚悟!! メ・チャ・ク・チャゴースト!! 死線、激戦、爆進ソォル!!』

 

 その叫びと共に、ノイズを吹き飛ばす。巨大な爪を持つ亡霊、それに人形達が見る。

 

「お前か、亡霊? なんか変だぞ~」

「いや、あれで間違いない」

「? エルフナイン・・・いや、錬金術師キャロルか」

 

 金髪の少女、キャロルがノイズ達を引き連れて現れる中、静かに魔法陣のようなものを作りだし、こちらを見下ろす。

 

「悪いが亡霊を相手にしている暇はない、消えろ亡霊!!」

 

 攻撃を防いだりする中だが、急に光が消え出す。

 まだ時間が足りないのに、まだ戦わないといけないのに、身体から力が消えていく。

 

「くそっ」

 

 だが引く気は無く、二つの武器を構えながら周りを蹴散らす。

 その様子を鼻で笑い、ノイズで囲む。

 

「貴様にようはない亡霊、装者はどこにいる?」

「ここにいるデス!!」

 

 その叫び声に、攻撃に触れずにノイズを倒した、切歌と調がいる。

 

「何を考えてる!? お前らは」

「薬を使わないと、シンフォギアを維持できない」

「なら、使うだけデスよ、ハヤト」

 

 そう微笑み合い、静かに薬を見せる。

 ハヤトは驚愕するが、すぐに止められるほどの距離ではない。

 二人は微笑み、二人で同時に薬を使う。

 

「二人一緒なら」

「フザケルナァァァァァァァァァァァ」

 

 ハヤトが叫ぶ時、その時、

 

「それは医者としちゃ許せないな」

 

 そう言って、二人が持つ薬を撃ち込む注射器を蹴り飛ばす男性が現れた。

 

「!?」

「だ、誰デス!?」

「!?!!??」

「頼まれごとして来たんだけど、医者としちゃ、見逃せないな、この状況」

 

 錬金術師キャロルは不愉快な顔でそれを見る。見たこともない男性が、二人の前に立つ。

 

「ダメだ、普通の人間はノイズに触れれば炭化する!!」

「下がってくださいッ」

「患者がいるのに、後ろに下がれるかよ!!」

 

 そしてベルトのようなものを巻き付けた。それを見たとき、何かがよぎる。

 

「あんたは・・・」

「さあ、ノーコンテニューでクリアーしてやるぜ!!」

 

『レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム!?』

 

「変身!!」

 

『アイアム・ア・カメンライダー』

 

 そして現れたそれに、モニターで見ていた者達全員が黙り込む。

 

 分厚い手足、太い胴体、その姿に、全員が、

 

「か、かっこいいぞ・・・」

「おい!!」

 

 敵だけそう言い、そして攻撃が始まるが、

 

「!?」

 

 お菓子のような、チョコのブロックがあるため、それに飛び乗り、身体を動かすと共に、彼も動き出す。

 

「おお、お前もいい動きだな」

「これは」

「マイティーはお菓子を食べれば強くなるんだ!!」

 

 そう言ってハンマーを取り出すと共に、ハーツもチョーガンガンセイバーでブロックを破壊する。

 コインを取り出し、それを取った瞬間、二人のスピードが上がる。

 

「ふへっ!?」

「!?」

 

 二人の急な強化に驚き、ノイズを倒しきり、赤い人形の方をハーツが担当、現れた者はキャロルへ迫る。

 

「彼女は俺が、いや、俺達が運命を変えるぞ!!」

 

 そう言って、彼は戦う中、人形の方に迫る。

 

「ううぅ~お前の相手、するなって言われてるぞ~」

「知るか!!」

 

『ダイカイガン・ハァァツッソォル・オメガドライブ』

 

 その叫びと共に、跳び蹴りが迫る中、険しい顔ですぐに消える。

 それに切歌と調が近づいてくる。

 

「二人とも、周りは」

「ノイズは消えたデスよ、あっちの方、先輩達が向かってますデス」

「!? それじゃ」

「うん、イグナイトモジュールが完成・・・!?」

 

 二人が急にふらつき、二人を支えるハーツ。

 シンフォギアが消えて、一瞬はだけたが、いつもの衣装に戻る。

 

「み、みみ、見たデスか!?」

「い、いやその」

「・・・ジー・・・」

 

 そんな視線の中、黒い光が二つ、離れた位置で立ち上る。

 

「いまのは」

「イグナイトモジュール!?」

「先輩達デスか!?」

「ちっ、俺も出る」

 

 

 

 走り、たどり着いたとき、光は三つになる。それは響、翼、クリスだった。

 黒い光を支え合う三人、それに、

 

「邪魔だ白い!!」

「まだまだだ!!」

 

 さっきの奴が、大きくなったキャロルと戦っていた。

 

「おお来たか、それじゃ、第2Rと行きますか、ほら」

「!?」

 

 そう言われ投げ渡されたそれは、眼魂だった。

 

「これは」

「頼まれた、お前のアイテムだよ。俺はゲストキャラだ、後は任せたぜ、仮面ライダーハーツ。いまだけは俺もいる」

「・・・貴方は」

「俺は仮面ライダー・・・仮面ライダーエグゼイド。大変身」

 

『マイティジャンプ!! マイティキック!! マイティマティアクションX!!』

 

 その姿を変えて、ハンマーを剣へと変える。

 

「行くぜ、彼女達を守るんだろ?」

「・・・ああっ、力を、借ります」

 

『アイ!! グレートフル!!』

 

「変身」

 

『ケンゴウハッケンキョショウニオウサマサムライボウズニスナイパー!大変幻!!』

 

 15のマークが、月光と共に纏われる。その力に、キャロルは睨んでくる。

 

「これは・・・英雄眼魂!?」

「おう、頼まれたから連れてきたんだ」

「・・・ありがとう、行くぜ、無限の可能性、見せてやる!!」

「ふざけるな!!」

 

 

 

 三人がイグナイトモジュールを纏うその前に、二人の仮面ライダーが動く。

 

『フーディーニ・ゴエモン!! ダブルトリッキー』

 

 無数の鎖が舞い踊り、キャロルを困惑する中、その鎖を足場にトリッキーな動きをする。エグゼイド。

 

「あらよっと」

「!?」

 

 ハンマーにいつの間にか変えていて、後頭部を叩かれる。

 

「きさ・・・!?」

 

 怒声を飛ばす前に、キャロルは口を押さえる。鎖に捕まり、下りるエグゼイドは、手の中に何かある。

 

「医者として、こんな薬、子供に持たせられないね」

 

 そう言って握りつぶす薬に、キャロルは睨むが、

 

「まだまだ」

「一気に行くぜ」

「ほざけ!! ノイズ!!」

 

 無数のノイズが現れるが、その前に、三人が黒いシンフォギアを纏い、撃破する。

 

「ハヤト、それ」

「響、イグナイトモジュールか!?」

「よし、雑魚キャラは俺達が一気に片づける、君達は彼女を頼むぜ」

「だな、頼むぜ響、みんな」

「・・・」

 

 その言葉に少し黙り込むが、エグゼイドは、

 

「運命を変えるんだ」

「!?」

「君なら、君達ならできる!!」

 

 その言葉に響は、

 

「はいっ、へいき、へっちゃらで行きます!!」

「おう、行くぜハーツ!!」

「はいッ」

 

 

 

 ノイズの群れに向かって、施設にたどり着く前に、二人は叫ぶ。

 

「命駆けるぜ!!」

 

『キメワザ!!』

 

『ダイカイガン』

 

『マイティアクションX』

 

『グレートフル』

 

『クリティカルストライク』

 

『オメガドライブ』

 

 二人の必殺技が決まり、ノイズの群れは爆炎と共に消える。

 

『会心の一発』

 

「これでゲームクリアー!!」

「・・・あんたは」

 

 変身を解く、白衣の男。静かに微笑みながら、ハーツに言う。

 

「この世界はお前の世界だ、運命を変えろ。きっと変えられる」

「・・・」

「俺も患者の運命を変えてやる、じゃな」

 

 そう言って、オーロラのようなものに飛び込み、姿を消す。

 何も言えず、15の英雄眼魂から感じ取る。タケルさんが生き返ったことに。

 

「・・・なら俺も、蘇らないとな」

 

 向こうも終わりを告げる。キャロルは逃がしてしまったが、彼女の驚異に対抗する術を手に入れた。

 だが、静かに身体から粒子が出ていることに、まだ気づかない・・・




医者と聞いて、この光景を考えてしまっただけで、止めてしまって申し訳ございません。こういうのが好きなんです。
言い訳はこれで終わらせ、ともかく、タケル復活を知り、英雄達はもう一人のゴーストの元に来ました。
だけどまだ危険な状態、この先をお楽しみに。
それでは、お読みいただきありがとうございます。


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第16話・過去との対面

月光グレートフル魂、ハーツが15の英雄の力を借り、月光の元に現れる姿。

グレートフルに月光の装飾が付いたものであり、英雄の召喚や、英雄の力の同時使用など、本来のグレートフルよりも力を引き出す。

簡単に言えばディープスペクターとグレートフルが合わさった姿です。


 青空の下、装者並び、前線に出る者は、政府管理の下、プライベイトビーチでや休みと言うなの合宿をしていた。

 正直に彼は感想を言う。

 

「居づらい」

 

 彼だけは水着なんてものに着替えない。そもそも彼は半生半死状態のゴーストであり、食べ物などの生活リズムは無い。

 睡眠の行動も取らなくても済むが、感覚的にしていると言うだけであり、必要ではない。

 そのため、風呂などの生活面は全くしていない。そもそも着替える事が出来ない。

 だから、パーカー来た男一人、水着姿の少女達に囲まれていた。

 

「居づらい」

「そんなこと言わないでよハヤト~♪」

「そうデスよ~♪」

 

 周りから水着姿の響達がやってくる。エルフナイン、未来、セレナもいて、非戦闘員もいるので、居続けなければいけないし、

 

(なにより、姿見せてないとき、覗いてるとか言われたくないしな)

 

 姿を消して、物質の通過もできるため、それも考慮して姿はずっと見せている。

 そしてみんながみんな楽しんでいた。マリアは久しぶりの妹に喜び、全員がいまだけは戦いのことを忘れ、楽しんでいる。

 不意にエルフナインを見る。楽しそうなその子の姿に、あの顔が重なった。

 キャロル、古代の錬金術師であり、父親が苦労して流行病を治したが、奇跡の一言で片づけられ、火あぶりにされた。

 父親の命題、世界を知る。そのために、何を企んでいる少女。

 だが、

 

『迷うか?』

「!?」

 

 不意に眼魂が輝き、その中に入り込む。

 

 

 

「!? ここは・・・」

 

 そこは15人の英雄達が座り込み、各々がハヤトを見る。

 腕を組んだり、興味深そうに見ていたり、静かに見通す。

 

「こうして話すのは初めてだな、拙者は宮本武蔵。ムサシ魂の者だ」

「ムサシさん」

 

 ここは15人の英雄が集う眼魂の中、ムサシはここに呼び出し、静かに近づく。

 

「お前さんもまた、タケルのように思い、悩むか。フーディーニ達が言う通りだ」

「タケルさんも」

「ああ、お前のように悩み、苦しみ、そして答えを見つけだし、戦った。私達と同じ、仲間を守る英雄として」

「タケルさんが・・・」

 

 その言葉に黙り込む。自分はどうだろうか?

 自分は、最悪な結果しか出してない。

 響を助けるものの、悲しませ、傷付けてしまった。

 その傷は消えた? 果たしてそうなのだろうか?

 響が異常なまでに人を傷付けることを拒否するのは、自分の所為では無いのか?

 

「喝ッ」

「!?」

 

 ムサシは静かに、肩を叩く。

 

「道を見失うな、神代ハヤト」

「その通り、君は君、タケルはタケル」

「彼のことと、君のことは、違う話」

「だからこそ、違う答え、違う道、違う未来が待っている」

「ですが、俺は響を、みんなを守りたいッ」

『ならば信じよ、己の道をッ。そのために我らがいる!!』

 

 

 

 眼魂から出てきたとき、周りがこちらを見る。眼魂の中にいたのかと驚く。

 

「買い物嫌で、どっか言ってたと思ったよハヤト~」

「響・・・買い物?」

「コンビニに買い物、切歌と調と翼、奏がね」

 

 マリアの言葉に、少し苦笑する。

 しかしまさかのツヴァイウイングが買い出しかと思いながら、英雄眼魂を見た。

 

「どうしたの?」

「英雄のみなさんに、自分の道を見失うなって喝入れられた。ならがんばんないとな」

「そうなんだ~ハヤトがいれば、へいき、へっちゃらだよ♪」

 

 そう言って抱きついてくるが、さすがに赤くなるハヤト。

 いま響は水着であるため、姿を消して回避して、姿を出す。クリスはやれやれと苦笑して、周りは微笑む。

 そんな中、水柱が立ち上がる。

 

 

 

 時間は少し遡る。

 

「すいませーん、撮影するんで、少し離れてくださいね」

「デス?」

 

 通る人に注意しながら、謎の破壊後を取材する記者の二人組がいる。

 一人の人が頭を下げながら、もう一人はカメラを回し、色々と調べている。

 

「よし、ここの取材はここまでにしようか」

「はい、お疲れさまです」

「いや君こそ、少しハイペースだろ? 大丈夫かい?」

「なあに、へいき、へっちゃらですって」

 

 その言葉に、ん?と三人が止まる。その時、謎の爆発音と、警戒警報が鳴り響く。

 

「なっ、まさか!?」

「!? これって・・・」

「ともかく避難誘導が先だっ、取材はその後だ」

「はいっ」

 

 記者の人達は避難誘導を手伝い始める中、他にも人がいるのを察しながら、行動していると、不意にその子達が爆破する場所へと走る出すのを見た。

 

「お、おい君達っ、待ちなさいっ」

「洸くん!?」

 

 二人の記者もまた、走り出していく。

 

 

 

「!? マリア!?」

 

 マリアは黒い姿で暴走している様子に、おいおいと月光モードから、グレートフルを取り出し使用する。

 

『ベンケイ・ニュートン!! 重力マッスルッ』

 

 格闘戦に持ち込み、押さえ込む。重力の檻の中だが、それでも暴れ狂うマリア。

 

「イグナイトモジュールの暴走か!? くっ」

「ついでだ、お前をここで消すッ」

 

 水の自動人形が、そう言って水を放つが、そこに、

 

「悪いが一人じゃない、お願いしますッ」

 

『ムサシ・決闘ズバッと超剣豪ッ』『リョウマ・目覚めよ日本夜明けゼヨッ』

 

 二人の英雄ゴーストが現れ、その攻撃を受け止める。

 

「任されたッ」

「ワッシ達に任せんるゼヨっ」

 

 銃のようなものと、ガンガンセイバーの二刀流を構え迫る。

 重力の檻の中、マリアを助け出すためには、能力を変える。

 

「行くぜ」

 

『ヒミコ・グリム・ファンタジーミステリアス!!』

 

 幻想の世界が広かれ、マリアは困惑する中、茨がマリアを捉え、ヒミコの浄化の力がイグナイトモジュールを解いた。

 通れるマリアを抱えるハーツだが、

 

「なんでドレス?」

 

 ドレス姿のマリアに、疑問に思えつつ、お姫様だっこしてその場から離れる。

 

「ハヤト!? なにしてるの!?」

「響、マリアを頼む。一気に行くぜッ」

「「応ッ」」

「ちっ、やってられるかッ。こっちは装者が狙いなんだッ」

 

 舌打ちして去る人形相手に、全員が周りの置き土産、アルカノイズを見る。

 

「片づけるぞリョーマ」

「あいよっ」

「ビリー・ザ・キットさん、ノブナガさん」

 

 チョーガンガンセイバーを始めとした銃器、そして二人の英雄の攻撃に、ノイズを一掃する。

 そんな中、

 

「ノイズ!?」

「なっ、これは」

「危ないッ」

 

 響は叫び、ノイズを蹴散らす。

 一般人がそこにいて、響がすぐに対応する。

 

「大丈夫・・・って」

「「響っ!?」」

「・・・お父さん・・・おじさん・・・」

 

 二人の記者、記者見習助手、立花洸と、その雇い主。

 

「・・・」

 

 神代ユウジが、そこにいた・・・




お父さんはハヤトの父親の元で働いて、仕送りしてます。

ダメ人間じゃない、なりかけたところを回避しました。

どうなるだろう。では、お読みいただき、ありがとうございます。


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第17話・希望と絶望のカウントダウン

ハヤトの父親登場、その上、装者達の現場遭遇。無論、その場にいるのは、ハーツと言う亡霊もいます。
それではどうぞ。


 とある施設に拉致に近いが、二人はいまは記者と見習いと言う立場であり、カメラは没収されているが、丁寧な扱いをされていた。

 無論、弦十郎自らが一番だが多忙なため、モニター越しに、ガングニール装者である響の父親、洸を含め、説明会が始まる。

 それを聞き、洸は顔が青ざめながらも、響を見た。

 

「響は、その、大丈夫なのか!? 戦うってことはどういうことか」

「それは・・・」

「もしハヤト君のためにって思うのなら、自分的にはやめて欲しいというのが本音です」

「それは」

「ハヤト君がそんなことを望むような子じゃないのは、響が一番分かるだろ? 響が守りたい、救いたいから・・・まあすぐには答えなくて出せません。それでも、尊重します、ですが」

「それは大丈夫だよ、洸くん」

 

 神代ユウジ、神代ハヤトの父親はお茶で一息つきながら、

 

「この場にいない、戦える子がいるね」

「そ、れは・・・」

 

 響が言葉を閉ざす中、ここには多くの関係者がいるが、一人だけいない。

 それに、

 

「ハヤトは、どうしてここにいないんですか?」

 

 その言葉に、全員が絶句した。

 

 

 

 夕焼け空、砂浜で黄昏れる、姿を消す亡霊。

 そこに、エルフナインが探しに来る。

 

「ハヤトさん、いませんか? いるのなら出てきてください」

 

 慌てながら歩き回る、その時、段差で転び賭け、支えてしまう。

 それにあっと呟き、腕にしがみつく。

 

「いるんですね、ハヤトさん」

 

 抱き上げながら姿を現せるハヤトは、パーカーをかぶりながら、エルフナインを見る。エルフナインは少し困った顔をするが、放そうとしない。

 

「ユウジさん、ハヤトさんのこと」

「父さんらしいな、なんで分かるんだろう」

「記者の勘、って言ってました・・・」

「ははっ、父さんらしい」

 

 静かに座り込む中で、エルフナインは側にいる。

 考え、そして、

 

「答えなくて出ないな、いまの俺が、家族と顔合わせられないよ」

「それは」

「俺は亡霊なんだから」

 

 そう言ってすっとまた消え、それにあっと少し泣きそうな顔になるので、すぐに姿を現せる。

 姿を消せる、亡霊は静かに、エルフナインの頭を撫でた。

 

「その上、またいつ消えるか分からないんだ。俺は」

「そんなことさせませんっ、イグナイトモジュールは完成しました!! 僕の知識やみなさんが協力してくれてます。まだ消えることが確定した訳ではないです」

 

 そうはっきり言う、だから、

 

「俺はきっと、みんなを守るためなら、消滅覚悟で全力出すからな・・・」

「ハヤトさん・・・」

 

 その言葉に、静かに物陰から、誰かが出てくる。

 

「また勝手なことを言うのね、貴方は」

「!? マリア・・・」

「・・・」

 

 少し黙り込むマリア、静かにこちらを見る。

 

「貴方には助けられてばかりなのよ・・・セレナに第二の命を渡したり、暴走した私を助けてくれたり・・・私は、私達はまだ貴方に借りも何も返してないのよ」

「マリア」

 

 静かに睨むようにこちらを見る、マリアは近づいて、真っ直ぐ見つめる。

 

「どうして自分をそこまで捨てられるの!? もっと私が強ければ・・・あの時、暴走しなければ」

「それは違うよマリア」

「何が違うのよ!?」

 

 マリアの言葉に、ハヤトは静かに眼魂を取り出す。

 

「強かろうが弱かろうが関係ない、マリアだから、翼だから、クリスだから、切歌や調、響に未来、誰だろうと変わらない。守る、戦う。みんなを、そして・・・キャロルを救いたい」

「!? 貴方・・・」

「間違っていようと、俺はそのために命を捨てた。だから道を変えないと言うわけじゃない、変えられない、俺はそんな生き方しかできないッ。マリアだってそうだろ?」

「私は・・・」

「マリアはマリアだから、マリアにしかできない強さで戦ってる。マリアは強い、きっと大丈夫、俺はマリアがみんなを守ると信じて、俺は前に突き進む。命は駆ける、俺の命は止まらない」

 

 それにエルフナインもマリアも黙り込む。

 その時、水が迫ってきた。

 

 

 

 15のパーカーがそれを阻み、翼を持つパーカーがハヤトの元にいる。

 それに舌打ちしながら、睨んでいるのは、青い人形の水使い。

 

「またか、装者にしか相手にしないって言ってるだろ亡霊ッ。さっさと消えて欲しいんだけど?」

「悪いが、まだ消える命じゃないんだね。マリア、行くぜ」

「ハヤト!?」

「俺は信じる、人の心、信じる強さを・・・迷っていても、必ず掴み取れる未来があるんだッ、変身!!」

 

 

 

 月光に15の英雄の力を振るう戦士ハーツ。それに苛々しながら、水が放たれ、ノイズが放たれるが、粉砕する。

 二つの爪のようなものが光り輝き、トリッキーな鎖がノイズを縛っていた。

 

「ハヤトっ」

「マリア」

 

 マリアもまた装者として、静かに、

 

「・・・私は・・・私はまだ、戦わなければいけない、貴方に、まだ借りを返していない、まだ生きていて欲しい。マムやセレナ、みんなと共に、私は私として戦うッ」

 

 イグナイトモジュールの光に包まれるが、マリアは、

 

「弱くたって良い、彼を、彼の横で戦えれば、その可能性をッ」

 

 その瞬間、イグナイトモジュールを纏うマリア。その歌が戦場に鳴り響く、それにハーツが一斉射撃で援護する。

 そして、彼女の一撃が、水の自動人形を討ち取った。

 

「一番乗りィィィィィィィ」

 

 そんな叫びと共に爆発する中、マリアはシンフォギアを解除する。

 みんなも騒ぎを聞きつけ駆けつけるが、すでに終わっていることに安堵した。

 

「ふう、ともか」

「おかしぃぃぃいぃぃぃぃぃぃ!!」

「うおっ」

 

 突然、15の英雄が一人、ベートーベンが現れ、マリア達の前に現れた。

 

「ベートーベンさん!? どうした」

 

 音楽家、歌い手である装者の者達は、少しばかり緊張する。彼女らにとって、偉大な偉人だ。

 その彼が現れ、静かにマリアの、イグナイトモジュールを見る。

 

「彼女の先ほどの歌からは、強大な力を感じた。だが、妙な異音も聞こえた」

「異音?」

 

 それに頷くベートーベンにエルフナインは考え込む。

 

「ダインスレイフは本来、血塗られた生遺物ですから、もしかすれば」

「私がまだ未熟だからか、それとも」

「本来のままでも異音が聞こえるか・・・身体に害がないから問題ない、で、片づけるのもな・・・」

「ともかく、使う際、細心の注意は必要だろう」

 

 翼の言葉に全員が頷き、そしてその日は終わりを告げる。

 

 

 

「お父さん、ユウジさん。もう出るんですか?」

「ん、ああ。ユウジさんは仕事に出るって言うから、一応、助手だしね」

 

 洸はそう言いながら、響に言う。響は複雑そうな顔で下を向く。

 

「ハヤトくんは」

「・・・いまは会う資格は無い、私のこと、見てたんだって・・・あの時の、私のこと・・・」

「・・・そうか」

 

 自分の死に狂うように荒れた響、父親の洸からしてもショックが大きく、仕事を休み、なるべく娘達と時間を過ごすことにするほどだ。

 その後、彼は生き返る為に戦い、自分達は傷を癒すように、響に接した。

 

「神代さん達には、感謝しきれないな、親としても、友人としてもね」

「・・・うん」

「響」

「お父さん」

 

 難しい顔をする娘、少しばかり自分が嫌になる。こんな時、娘になんと言えばいいのか、はあとため息をつく。

 

「父さん、ハヤトくんを信じるよ。だからあえて言う。だいじょうぶ、へいき、へっちゃらだ」

「お父さん・・・」

「彼が響をもう悲しませたくないって言葉、信じる。ユウジさんも、信じているからこそ、なにも言わない。それだけは分かるよ」

 

 なにげに似たもの同士だしねと苦笑して、娘に微笑む。

 

「諦めることをしない親子だから、響も諦めちゃダメだ」

「・・・うん、ありがとう、お父さん」

「それじゃ、仕事に出かける。響も気を付けるんだよ」

「うん」

 

 

 

 しばらくして、車に乗りながら、洸はユウジに聞く。

 

「本当にハヤトくんに会わなくて良いんですか?」

「・・・問題ないさ」

 

 静かに運転しながら、優しく、

 

「彼奴は諦めないのなら、私は信じて待ちますよ」

「・・・強いですね」

「いいや~いい加減なだけですよ」

 

 そんな感じで、彼らは走る。最近謎の事故現場調べ、それでまた関わるとも知らずに、そして・・・

 

 

 

 その様子を見守る、二つの影。少年と少女、白い服を着込み、手を繋いで見守る。

 

「彼もまた、可能性に近い者」

「彼もまた、運命を選ぶ者」

 

 そう言って、彼らは静かに、

 

「「だが、その時間はもう残されていない」」

 

 そう告げて、静かにその場から去っていた・・・




ユウジ「しかし、別の心配があるんですよ」
洸「心配? なんですか?」
ユウジ「彼奴、あの性格でしょ? 未来ちゃんだけじゃ飽きたらず、他の子もって・・・響ちゃんか未来ちゃんとばかり思ってますからね、まさかと思いますが・・・」
洸「あー・・・響~・・・無理だな・・・響もな~・・・こういうのは母さん頼みですよ・・・」
ユウジ「ウチの子がすいません・・・」

響「ハヤトハヤトハヤト~♪」
ハヤト「首に捕まるな・・・エルフナイン、ほら、髪がまだ濡れてるぞ」
エルフナイン「あっ、ありがとうございます」大人しくタオルで拭かれる。
切歌「ハヤト~♪ 一緒にゲームするデス♪」

こうして装者達と仲良くしてます。ハッ、

未来「作者さん、少し向こうで話が・・・今回でマリアさんが意識してそうなところとか、また少し、話し合いましょうか?」

そ、それではお読みいただきありがとうございます!!


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第18話・父と子の生き方に

未来「作者さん、まだお話は終わっていないのに、もう話を・・・」

隠れながら、物語を楽しんでください。
未来「隠れてるのは作者さんですよ」
しまっ!?


 謎の襲撃事件からしばらく経つ、キャロル達は目立った動きは無く、いまのところ平和だが、そんな中、エルフナインは眠い目をこすり、眼魂の理論と錬金術師である自分の知識を照らし合わせていた。

 

「どうすれば、ハヤトさんを延命できるか・・・」

 

 そんな無理する子に、ハヤトは頭をかきながら、壁を通過して出ていく。ほどほどに様子を見てはやめさせているし、なにより、響の方も対外だ。

 

「未来、響はどうだ?」

「表だって変わりないよ、けど響だから、みんな分かってる」

 

 無理をして笑い、明日が来るのを恐れている。

 そんな様子が時たまに見られ、ハヤトは黙り込む。

 

「・・・」

「自分の所為とか思ってるでしょ?」

「未来には敵わないな」

「はあ、響もハヤトも、自分で背負いすぎなんだよ・・・いくら私が心配しても、気にしない、気にして傷付いて、勝手すぎるよ二人して」

「すまん」

「・・・」

 

 座りながら話し合う中、未来はその手を握る。

 

「響がまだ手を握りたいんだから、消えたりしないでねハヤト」

「ああ、約束する。俺は消えない、生き返るさ」

「うん」

 

 

 

 とある場所で、許可をもらい、取材に来た二人組。立花洸と、神代ユウジ。

 

「ん~次事件があるとしたらここかな?って思ったんだけど、ハズレかな?」

「ですかね・・・」

 

 そう悠長に言う中で、少しユウジはぼりぼりと後頭部をかく。

 

「はあ、息子のことで、やはり勘が鈍ったかな?」

「・・・念のために聞きますが、何を気にしてますか?」

「いや、装者って子達に手を出すんじゃないかって」

「そこですか!? ハヤトくん、消えてしまうってところじゃなく!?」

「しかし、響ちゃん、あの子も以外と奥手だからね。漫画的に愛の奇跡で蘇って欲しいな僕は」

「そんな無茶な!? っていうよりか響はそう言うのですかね!?」

「洸くんも知ってるだろ? 響ちゃんがウチのハヤトにキスしてたの?」

「ええまあ・・・あの時は、泣きましたよ。もう響、お父さん離れしたのかって思いましたよ・・・まさか、未来ちゃんと交代でするなんて、幼稚園児でも早いですよ・・・」

「もうお互い、奥さんから聞いたときとか、びっくりしましたね」

「ですね・・・」

 

 そう遠い目をしながら、静かに、

 

「僕はね、彼奴を信じたいんですよ、感じたんです。勘ですけど・・・彼奴は、覚悟を決めている、男としての覚悟をね」

「ユウジさん」

「それくらい息子持つと分かりますよ、洸さん」

 

 苦笑するが、それでも心配なんだろうと洸は思う。

 息子の死より、自分の娘、響のことを心配してくれた。それこそ、息子であるハヤトの願いだと、彼らの言葉に、救われた。

 なら今度は自分がと思い、出来る限り、彼の手伝いなど、がんばっている。

 そう思っていたが、

 

(結局自己満足・・・響にはへいき、へちゃらって言っておきながら、情けないな・・・)

 

 そんなことを考えていたとき、二人は・・・

 

 

 

「・・・はあ」

 

 響は青空を見ている。時折思い出す、この感覚が、心苦しい。

 ハヤトがいない時間、彼がいない、彼を失ったあの瞬間を思い出す。

 もう思い出したくないのに、時間が進む。そう感じるたびに思い出すのだ。彼を貫く姿を・・・

 

「響」

「奏さん・・・」

 

 外で青空を見ている響の元に、ウルバイクを背後に、奏が微笑みながら現れ、ヘルメットを投げ渡す。

 

「少しつき合え、響」

「・・・かな」

「いいから」

「・・・はい」

 

 しばらく進む響と奏。二人は高台へと来て、町を見下ろす。

 奏はウルバイクの頭部を撫でると、エンジン音で喜んでいる。

 

「ここはよく彼奴がいた場所らしいぜ、ずっとここで、みんなのこと見てたらしい」

「ハヤトが・・・」

「な、ウルバイク」

 

 それにウルバイクが返答し、その様子に驚きながら、町を見る。

 

「・・・私が彼奴を殺してから、彼奴はずっと一人だったんだな」

「奏さん!?」

「悪いけど、どう考えてもそうだ。お前を巻き込み、彼奴を殺したのは、私だ」

 

 そう言って静かに拳を、手を強く握る。

 あの時、自分が絶唱を歌えば、あの時、聖遺物の破片が彼らにとはなければ、彼らをここまで苦しめていない。

 

「奏さん・・・」

「・・・私も諦めない」

「・・・」

「私も、翼も、旦那やみんな、装者のみんなだけじゃない。未来や、他にも、彼奴のことを信じて、思ってる奴がいる。だから」

「奏さん・・・」

「自分だけ、全部背負うな・・・響」

 

 そう言われたとき、頬に何かが伝う。

 少しだけ涙が流れ、それを拭く。

 その後、前を見て、静かに頷く。それに満足そうに微笑む奏。

 その時だ。響の電話が鳴り響いた。

 

「? お父さん?」

「響のお父さんか?」

「はい、なんだろう? もしも~し」

 

 

 

「あー響・・・」

 

 小声で洸はひそひそと、それに向こうは首を傾げるが、すぐに、

 

「メール贈るから、急いできて、死にたくないから」

『えっ?』

 

 すぐに切り、写真をつけたメールを娘に送る。

 それを見た後のユウジは、

 

「それじゃ、洸さんは急いでここから離れなさい」

「ユウジさんも残るんでしょ? なら僕も残りますよ。これ以上、情けない男には成りたくないですから」

「ははっ、お互い、娘達が来たら即行で逃げ出すのにですか?」

「ですね・・・」

 

 乾いた笑いをしながら、アルカノイズと赤い自動人形が何かしているところを撮影し続けていた。

 

 

 

「ふふふ~んだぞ~」

 

 鼻歌を歌いながら、何かしている。そろそろ逃げ道など考慮しだしたとき、歌が響く。

 

「ぞっ!?」

 

 響、奏、切歌、調が現れ、その様子に予測内なのか、対して驚かずに、ノイズを放つ人形。その隙にこそこそと離れていく二人。

 

「魂借りるぜ!!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 

 歌い手達二人の攻防にくわえ、切歌と調も戦う。

 そんな中、

 

「父さん、洸さん」

「お前はこっちか」

「ハヤトくん」

「いいから早く、おれら以外、すぐに来れなさそうなんだ」

「ああそうか、それと」

 

 そしてそれを聞き、了解と言い、彼らを逃がす。

 

「邪魔だぞッ」

 

 炎のクリスタルが放たれるが、それを砕く響。通信機であることを知り、チャンスを待つ。

 その時、奏はおっりゃああぁぁぁぁぁぁぁぁとノイズを吹き飛ばす中、

 

「そろそろ次行く」

 

 その時、閃光のようなフラッシュが自動人形に瞬く。

 

「!? 目がチラチラするぞッ」

 

 それに向かってクリスタルの弾丸を撃ち込むが、シャッターをタイマーで設置した簡単な小道具なだけで、簡単にそれは壊された。

 その隙に響と奏が、迫る。

 

「!?」

「「貫けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」」

 

 炎の弾丸を無我夢中で放つ中、その一つがノイズを蹴散らす、切歌へと迫り、調が飛び出す。

 

「ダメっ」

「しらっ」

「バカかッ」

 

 それを月光パーカーが防ぎ、月光魂で現れるハーツ。

 

「危ないぞ調」

「ハヤト!? 貴方は二人を逃がしたらそのままじゃ」

「全員が心配だから来たんだ、ともかく、連携して」

「何言ってるの早く戻ってッ」

「しら」

「調っ、ハヤト、なに考えてるデス!?」

「ああもう」

 

 後ろから言い争いが聞こえるが、二人は自動人形を相手にしているが、無理矢理逃げ出す。

 その様子に疑問に思いながら、ノイズを倒す。

 

 

 

「なんでハヤトは逃げないの!? 私達は消えて欲しくないんだよっ」

「それもそうデスが、調もそうデスっ。無茶しないでくださいデス!!」

「私は無茶してない!! 切ちゃんを守りたいだけ」

「それが無茶なん」

「いい加減にしなさいッ」

 

 ユウジがそう叫び、ハヤトの方はもう反省モードだと言うのに、彼女達の言い争いが止まらず、止める。

 洸もそれに苦笑いしながら、奏ややってきた人達に撮影した映像などを渡していた。

 緒川さんがそれを受け取りながら、

 

「そう言えば、なぜ貴方達はあそこに?」

「私達は謎の事故現場調べで、次はあそこだと調べに来たんです」

「謎の事故現場?」

 

 それには通信機を使い、司令室やマムなどにも話が通り、マムが気づく。

 

「これはレイライン?」

 

 地球の地脈、エネルギーの流れに何かしら細工がされ始めていることに、気づき始める。

 何をどうしているかは分からないが、彼らの資料データを見たマムは、それに気づき、セレナに指示する。

 

「セレナ、急ぎフロンティア浮上時に使った、私のデータを彼らに。おそらく錬金術師達は、レイラインを使い、何かしようとしてます」

「分かったよマムっ」

 

 

 

 周りの言葉を聞きながら、そのデータ渡しなどで、外部協力者として一時期手を貸すことになる洸とユウジ。

 ハヤトは苦笑、響もまた戸惑うが、正直ハヤトは、

 

「父さん達より、切歌達だな・・・俺の所為で、ケンカ初めて・・・」

「ハヤトも悪いけど、二人とも、少し思い詰めてる感じだよね・・・」

 

 そんなことを話す中、ハヤトは少し考え、

 

「響頼むっ、エルフナインのこと俺の変わりに見ててくれ!! 少し見てくる」

「あっ、ず~る~い~私が二人のこと見るよ!!」

「姿消す」

「あっ!!」

 

 響の文句を無視して、姿を消して、二人の様子を見に出向く。

 響はもうと頬をふくらまして、それでも少しだけ、

 

「ああ・・・やっぱりハヤトだね」

 

 少しだけ優しく微笑んだ。

 

 

 

 二人は歩きながら考えているとき、またあの人形が攻めてきた。

 戦いながら、イグナイトモジュールに触れるが、発動する決意ができない。

 だが、15のパーカーが舞い上がり、それを見て、すでに月光を纏うハーツを見て、愕然とする。

 

「どうして・・・どうしてデスか!?」

「私達が弱いから・・・だから」

「それは違うぞ少女達よ」

「「!?」」

 

 パーカーであり、英雄である彼らが囲みながら、静かに告げる。

 

「カレは、いずれ消えるなど、考えてマセン」

「その前に生き返り、お主らの笑顔を守る。その覚悟がある」

「だからこそ、ワッシ達は信じ、あの男に手を貸してるんゼヨ」

「あの男は心の底から諦めていない、だからと言って、躊躇うことすらしない」

「汝らも信じよ、あの男を、仮面ライダーハーツを」

 

 そしてハーツのもとに一つになり、15の英雄と月光の力を振るう。

 

「『命駆ける!!』」

 

 その言葉と共に駆ける戦士を見ながら、切歌と調は考え込む。

 

「信じる・・・私は、私達は」

「まだ返して無いデス、大切な人を、救ってくれたあの人に」

「「イグナイトモジュール、抜刀」」

 

 そしてその歌が赤い人形を討つ中、静かに物語りは終わりへと進む・・・

 

 

 

「ふん、計画は順調か」

 

 とある場所で傷を癒しながら、静かに報告を聞き、片目を閉じる。

 閉じた視界に映るのは、眼魂と言うものと、詳細なデータ。

 それに、錬金術師キャロルは微笑む。

 

「・・・そろそろ消えてもらうぞ、亡霊風情が」

 

 そう言い、静かにしていると、静かにココアが差し出され、それに嬉しそうに返答し、亡霊はそれに優しく微笑みながら、頭を撫でる。

 その光景を見ながら、キャロルは黙り込み、静かに光景を見続けた・・・




未来「切歌ちゃんと調ちゃんが怪しいですね、ですけど仕方ないので目を瞑ります。次回は響をメインに。くれぐれも戦闘編で翼さん班とクリス班に入れないように」
作者「はい、分かりました」
未来「それでは」
未来・作者「お読みいただき、ありがとうございます」


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第19話・響とハヤト

そろそろこのシリーズも終わる。アホなこと考えてしまう。エルフナインがネコ耳魔法少女になる話とか、シリアス無い話とか思いつくな。
そんなことを考えながらですが、どうぞ。


 色々な話し合いの結果、ハヤト、響は待機命令を出されていた。

 

「なんでですか?」

「君ら、というより、君は戦いを避けるべきだ。それを止めるのは」

 

 横目でちらりと見られた響は、司令官と同じように腕を組みながら仁王立ちしていた。

 他の装者達も同意であり、奏、翼、マリアは風鳴家の方など、戦線から外されたとも言える状態にされた。

 なのに、

 

「なんで父さん達は司令室にいるんだよ」

「仕方ないだろ? ナスタージャさん達と、俺が集めた資料とか必要だから」

 

 そう言われ、なにか複雑そうなハヤトに、響と洸は苦笑する。

 用意された施設、そこでナスタージャ教授やセレナもいる中で、作業を手伝う。司令室がある本部からも外されたことに、若干違和感があるが、大人しくしているハヤト。

 本来あり得ないと思っていた二人の光景、それに二人は微笑みながら見るが、対して変わらない様子である。

 本人らに聞けば、

 

「どーせそのうち当たり前になるって言うな響」

「そうだね」

 

 そう言い合いながら、しばらくその様子を見る二人。

 そんな時間の中、

 

「おっと、ハヤト。悪いけど、この店で俺の変わりに、機材修理出してくれないか?」

「俺が?」

「仕方ないだろ? いま洸さんや俺は出れないし、こういうのはお前分かるし」

「それなら、師匠に言ってきますね」

 

 そう言って、響が出ていき、響と共に、父親の機材などの雑務を担当する。

 司令室では現状、ハヤトは前に立たせる訳にいかないので、丁度良いと判断して許可する。

 二人には内密にしているが、いま司令室ではある作戦が動いていて、二人を外している。それを知られないためにも、許可を出す。

 通信機を待たせているため、なにかあっても問題ない。こちらで問題が起きても、突撃する者達もいないこともあり、安心していた。

 とある錬金術師はそれに、微笑しているとも知らずに・・・

 

 

 地上で少し歩くと言うことを報告して、彼らは少し外に出る。

 できれば少し厚手の自分は姿を隠したいのだが、響が嫌だと言うため、姿を出しながら歩く。

 だが響は、

 

「えへへ・・・」

 

 嬉しそうに歩き、いま帰り道。

 そんな道中だと言うのに、彼女は嬉しそうだ。

 

「どうした響」

「ん~だって、またハヤトと一緒に、ユウジさんのお使いできるって思ってね」

 

 そう言えば、よく響と共に、父に頼まれてカメラの風景写真の現像などを受け取りに出向いたりと、よくお使いしていた。

 それを思い出しているのか、楽しそうな響。

 

「・・・響」

「ん? な~に~」

 

 嬉しそうにする響。その時、静かに考える。

 これから何かが起きる。もしかすればとも思う中、だが、

 

「・・・はあ、響」

「だからなあに~?」

 

 それを口にしようとした時、世界が揺れた。

 

 

 

『ア~イ』『バッチリミールー!!』『開眼! ハーツ!!』『スタート覚悟!! ガンガンゴースト!!』

 

「響」

「分かってるっ」

 

 ノイズも共に現れ、すぐに行動に移る二人。ノイズを倒し、一般人を避難させる中、空のそれを見た。

 二人して絶句する。何もない空間から現れたそれは、

 

「あれは」

 

 その時、魔法陣のようなものが出現。アルカノイズと共に、錬金術師、キャロルが現れ、静かに見下ろしてくる。

 

「キャロルちゃんっ」

「久しいな、装者、亡霊」

「キャロル・・・これは君が」

 

 空間から現れたそれは、ビルを破壊して、自分達は偶然にも出現地点近くにいたらしいことを言われ、キャロルは叫ぶ。

 

「もうすぐ、もうすぐ万象黙示録が、パパの命題が叶う・・・その前に、亡霊ッ」

 

 睨まれるハーツに、響が前に立つ。

 キャロルは何故か、こちらに対して憎悪をむき出しにして、睨んでいた。

 

「俺は認めない!! 死しても尚存在する貴様を、貴様が起こす奇跡の偉業をッ。世界を解体する前に、貴様を滅ぼすッ。散りすら残さず消滅しろ!!」

 

 その言葉に、琴を取り出すキャロル。あれは聖遺物、ダウルダブラ。あれを纏い戦う気かと身構えが、

 

「世界を壊す歌・・・その前に、お前を壊す。わざわざ調整したんだ!! 消え去れ亡霊!!」

 

 そして歌を紡ぐ前に、弦を弾いた瞬間、月光の眼魂を取り出していたのだが、

 

 音を聞いた途端、世界が崩れた。

 

 

 

「!? ハヤト!?」

「ぐっあ、アァァァァァァァァァァァァァア」

 

 キャロルは歌う、滅びの歌。シンフォギア装者のような歌と、その旋律が世界に鳴り響く中、ハーツのパーカーが解け、英雄眼魂からも英雄の人達が現れ、その場に崩れ出す。

 

「こ、この歌は・・・」

「我々を、分解する、歌・・・」

「ムサシさん!? ベートベンさん!?」

 

 彼らの言葉通り、英雄眼魂の人達、ゴースト関係者達が光の粒子へと分解が始まっていた。

 

「これはいったい・・・」

「あり得ない、我々のことを一も知らない者が、眼魂の中にいる我々へ攻撃できることなぞ」

 

 旋律はいつの間にか自動になり、世界に響く。響はそれを知り、急いでそれを止めに駆け出すが、アルカノイズやキャロルが前に出る。

 元素を操るキャロルは、ハヤト達を守りながら、旋律を止めようとする響を見下ろすように見、僅かに口元をつり上げた。

 

「ああ、ニュートン、エジソンの言うとおり。さすがの俺とて、異世界の眼魂、さらにその世界の奇跡とも言える、グレートアイの力を借りた眼魂の技術を知るのには、本当に骨が折れた」

「!?」

 

 先ほど発言した英雄ゴースト達の名前すら知っているキャロルに、全員が驚く。

 ロビンフットが弓、ビリー・ザ・キッドがライフルを構え撃つが、その弾丸がノイズに命中する前に消える。

 

「我々の力が・・・」

「くっ、ハーツ!!」

 

 ハーツ眼魂を何度も作動させようとするが、なにも起きず、身体から光の粒子がこぼれていくハヤト。

 

「なん、で」

「俺とエルフナインは一方的に感覚を繋げられる」

 

 その言葉に、全員が驚く。

 

「奴はお前を救うために、お前が持つ眼魂全てに目を通してくれて助かった・・・おかげで、お前を分解する戦慄が作れた!!」

 

 戦慄が重なる。それは世界を壊すため、装者達、ダインスレイフの滅びの戦慄も手に入れたと高らかに宣言し、響はそんな中でも、ハヤトを見ながら、すぐに突撃する。

 

「無駄だ無駄!! いまお前にできることは何一つ無いッ」

「そんなこと無いッ」

「そいつを救う? 世界を救う? それとも俺を救うか? なにも救えない身でありながら、まだ世迷い言を言うか!!」

 

 その言葉に顔を曇らせ、拳がゆるむ。

 

「・・・なにやってるんだ響」

 

『炎魂』『ホノオ・炎で吹っ飛べ爆裂だ!!』

 

 炎のパーカーが現れ、響の前にいるノイズを炎に巻き込む。

 

「なっ」

 

 

『風魂』『カゼ・疾風!!烈風!!シュシュッとな!!』

 

 風が舞い上がり、響へと鎖を放つ。すぐに意図を理解して、鎖を掴み、体制を整えて、ノイズを吹き飛ばす響。

 そんな装者を見ず、それを睨むキャロル。

 

『雷魂』『イカズチ・神鳴り、鳴る神、神倒し!!』

 

 雷が降り注ぐ中、それは身体が消えかけていると言うのに、立ち上がる。

 

「ハヤト!!」

「まだ消えないか、亡霊が!!」

 

 キャロルはそう叫び、元素が降り注ぐが、

 

『土魂』『ツチ・不動の大地!! 鉄壁巨人!!』

 

 土の壁が迫り立ち、防いでいる中、

 

『水魂』『ミズ・見ずに活躍、披露だぜ!!』

 

 その能力で別の場所に現れ、光へと分解しかかっているハヤトは響のもとにいる。

 

「ハヤト!?」

「なにしてるんだよ響・・・へいき、へっちゃら、だろ?」

 

 そう言いながら、五つのパーカーは静かに構える。彼らもまた一部が欠けたりしているが、英雄眼魂のゴーストパーカー達と違い、空に浮かんでいた。

 

「世界も、キャロルも、みんな助ける。そうだろ響」

「ハヤト・・・」

「貴様・・・そんな身で俺を救うだと?」

 

 それにああと、迷い無く呟く。

 

「こんな身だからこそだな」

「なに?」

 

 月光のパーカーとハーツのパーカーも現れる。光に変わりつつありながらも、それでも、

 

「ここで俺が消滅したら、今度は響だけじゃなく、エルフナインや、他のみんなだって泣かすからな・・・だから、消えるわけにはいかない」

「世迷い言だ。理想論だけで、俺の研究が、貴様を殺す歌が乗り越えられるはずがないッ」

 

 そう叫ぶ中、また元素の力が迫る。響が立ち上がる前に、巨大な剣が壁になり、それを防ぐ。

 

「すまない立花、遅くなった」

「翼さんっ、クリスちゃん、奏さん!!」

「私のパーカーは聖遺物も混ざってるからか・・・まあおかげで戦えるな」

 

 翼、奏、クリスが現れたのを見て、ふんと鼻で笑うキャロル。ただ奏の結果だけは残念そうにしていたが、

 

「いくら何人集まろうが、シャトーを止めることは愚か、そいつを殺す歌すら止められない」

「問題ない、俺は、消えない」

 

 光に消えかかる中で、キャロルにそう宣言する。その様子に苛立ち、声を上げるキャロル。

 

「ざっけるな亡霊!! 貴様は亡霊、すでに消えた魂だッ。奇跡にすがり、いまだいるだけの残りカス!! 認めてたまるか、貴様のような存在を、奇跡を、誰が認めるものかッ」

「・・・キャロル」

 

 顔半分が消える中で、ハヤトは静かに、

 

「・・・お前がエルフナインと共に、俺や眼魂を見ていたのなら、分かるはずだ」

「なにを」

「魂は、命は繋がってるッ。今も昔も、未来までも、俺達は繋がってる。それが異世界、異次元、異空間であろうともッ」

 

 自分の魂が込められた眼魂を前に出す、それはハーツ魂。静かにそれは前に出る。

 

「響、お前に言いたいことがある」

「ハヤト・・・」

「消えない」

 

 そう言って、静かに、

 

「俺はもう、お前を泣かせたくないんだッ。俺の魂は、まだ爆ぜ終わらないぜッ」

 

『開眼! ハーツ!!』『スタート覚悟!! ガンガンゴースト!!』

 

 パーカーを下ろし、顔を出す戦士は、剣を構え、静かに告げる。

 

「俺は仮面ライダーハーツ、この魂爆ぜる限り、全ての命を守る。それが俺の答え、始まりの覚悟だ!!」

「・・・ハヤト」

 

 その言葉に持ち直したのか、拳を握りしめ、静かに立ち上がる響。その様子に微笑み、構える装者達。

 

「命借りるぜハヤト、響ッ」

「この身は剣、防人の刃、いま冴えさせよう」

「威力マシマシだぜッ」

 

 その様子に苛立ちを隠さず、聖遺物ダウルダブラを纏うキャロル。

 

「ふざけるな、装者どもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

「命・・・駆けるぜッ」

 

 

 

 ・・・なんでだ・・・

 

 目の前にはすでに自分の歌により、消えかけているはずの魂が、迫る。

 

 なんで諦めない?

 

 何度も立ち上がり、そんな中、まただ、またあれは奇跡を起こす。

 

「ワッシ達の力をッ」

「受け取れ装者よ!!」

 

 響達の元に光が集まり、消える英雄パーカー達。

 だが、その変わり、弾丸が矢のように降り注いだり、能力が上がっている。

 

 またあれが奇跡を起こした。

 

「ふざけるな・・・」

 

 小さく呟き、それを睨み、迫る。

 

「ふざけるな亡霊がァァァァァァァァァァァァアッ!!」

 

 そんな叫びと共に向かってくるが、その女性を見るが、

 

(・・・ああやっぱり)

 

 剣で糸を防ぎ、斧を取り出し、迫る攻撃を受け取る中で思う。

 

「・・・やっぱり、俺はお前を救いたい」

「いい加減にしろ、俺は貴様らなんぞに救われないッ」

「・・・それでも」

 

 それでもと、

 

「俺はそのために、命を使う」

 

 その時、空間から現れた建物から光が、それに顔を歪める。

 

「あっはははは、もうすぐ世界が分解され、万象黙示録が完了するッ。パパの命題が、やっと、奇跡、お前も消せるッ」

 

 そう言う中、その時、マリア達が連絡が入る。彼女達は建物の中にいて、いま崩壊を止めようとしている。

 

「マリアさん!?」

「切歌、調ッ」

 

 三人がまさになにか使用とする中、キャロルは人生の悲願が止められようとしているが、それよりも何かがおかしくなっている。

 そうだ。

 

「先にお前を壊すッ、俺の前から消えろ亡霊がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 だが、それよりも先に、亡霊が叫ぶ。

 

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 光が辺りを包む、世界を、シャトーを・・・

 

 

 

『オメガドライブ』

 

 

 

「・・・なにが起きた・・・」

 

 シャトーの万象黙示録が止められた。シャトーがほぼ消え去り、マリア達は困惑する。だが一番分からないのは、キャロル。

 

「なに、が・・・」

 

 一人の男が周りにいないことに気づき、それに肩を振るわせ、笑い出す。

 おかしい、ああおかしい。

 

「そうか、また奇跡を起こすか亡霊・・・」

 

 その場にいない亡霊に対してそれを言うが、だがキャロルは、

 

「だがお前は壊したぞ、奇跡」

 

 そう自分がどんな顔しているか分からないまま、静かに呟いた・・・




そろそろ終わりへと向かいます。
お読みいただき、ありがとうございます。


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第20話・命、駆ける魂

万象黙示録を止めようとする三人の装者。

それを知り、仮面ライダーハーツは新たな奇跡を起こす。

その代価は・・・


 黒煙が立ち上る中、静かにたたずむ。

 キャロルはその様子に顔を歪める。狂気に満ちた悲しみと歓喜が混ざり合う。

 

「なに、が・・・」

「なにかしたんだろう、彼奴が、亡霊が・・・」

 

 その言葉通りなのか、眼魂がそこにある。響は急いでそれを手に取るものの、絶句する。

 いままで感じたこともないくらい、まるでそこに何もないように、存在感がない。

 

「ああ、ああ、ああ、ああそうか・・・彼奴が、亡霊が奇跡を起こしたか。あっは、あっははははははっ」

 

 狂ったように笑うキャロルは、その眼から涙が流れる。

 

「なにが救うだ、何が奇跡だッ。お前達もまた、奇跡によって、大事なものを失ったじゃないか!?」

 

 もう分からなくなった少女の叫び、悲しい叫びが、世界に響く。

 

 

 

「・・・ここはどこだ・・・身体が動かない・・・」

 

 何もない空間、身体が動かない。

 あの時とっさにオメガドライブを発動させたのだけは思い出せる。だがその後、自分はどうなった?

 分からない、ここはどこだ。

 

「・・・ざっけるな」

 

 まだ消えたくない、死にたくない。

 空間の中にもがく中、その時、光が差し込む。

 

「なんっ」

 

 知らない場所に出た。中世の町並みのようだが、人だかりが出来ていた。

 そして、

 

「パパっ」

 

 一人の少女が叫び、いままさに一人の男性が処刑されようとしている。

 なんだと思いながら、駆けだそうとするが、身体が動かない。

 少女は泣き叫ぶ、男性は穏やかな顔で微笑み、静かにしている。

 炎が点けられ、男が処刑される。炎に包まれる中でも、彼は娘の身しか考えずに、

 

「世界を知れ、キャロル」

「パパぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 誰も助けないその光景の中、手を伸ばす。

 

 届かないのは分かっている。変わらないことは分かっている。

 

 だからどうした!?

 

「俺の命は、魂が爆ぜる瞬間は、ここだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 その瞬間、身体が動く。人混みを駆け分けて、火の海の中に飛び込む。

 

 周りにはそれを防ぐ者もいるが、それを蹴り飛ばし、炎の中の男を助け出す。

 

「君は・・・ダメだ、こんなことをすれば」

「なんで助けちゃ、いけないんだッ、俺は助けたいッ」

「君は」

「助けたいと思った、世界だろうが、なんだろうか関係ない。偽善も何も関係ない。助けたいから助けるッ。それが」

 

 その時、巡るのは世界、命だった。

 

「俺の魂だ!!」

 

 

 

『それが答えか、ならばその望み、叶えよう』

 

 

 

「!?」

 

 突然光の柱が現れる、五つのゴーストパーカーと、15の英雄が現れる。

 彼らはその光を見つめ、そして、

 

『君の望みはなんだい?』

 

 そう世界に響く。少しの間、そして静かに、

 

『君の答え、命の可能性を見せよ』

 

 

 

 光から現れるのは、一人の戦士。

 戸惑いながらも、すぐに周りを見て把握する。

 

「言われなくても」

 

 その姿は神代ハヤトだった。それに静まりかえる戦場。ノイズがあふれ、装者達が戦う中である。

 

「・・・お前はまた奇跡を」

「奇跡なんてもん、俺は起こしてない」

 

 キャロルは虚空の瞳で認める中、シンフォギアを纏う装者達は、エクスドライブでノイズを倒していた。

 自分の姿を見て、みんなが喜ぶ中、彼は、

 

「奇跡なんてもんに頼っている余裕なんてないんだね」

「ならお前はなんでいる!? なんで在り続ける!!? パパは炎で焼かれたのにッ、どうして、どうしてお前だけはッ」

「・・・それでも、あの人の魂の、繋がっている命の可能性のために、俺は、お前を止めるッ」

「!?」

 

 五つの光から、五行眼魂の力が現れ、五行眼魂が一つになり、手の形になる。

 

『カモン・アイ・キャッチ!!』

 

 ベルトになった五行眼魂は、月光眼魂を捕まえ、静かに構える。

 

「世界の力、俺は世界と共に、この命の可能性を、お前に伝える・・・力を貸せッ、俺と共に歩んだ力、俺の命、世界と繋がった魂ッ。命、爆ぜ駆け続けるッ」

 

『森羅万象大回転!!』

 

「変身」

 

『ソウル爆発!! ヒーロー披露!! レッツゴーカメンライダー!!』

 

 黄金に輝くパーカーを纏い、現れる。

 

「俺の命は、まだ消えないッ」

「なら散りすら残さず消してやるよ、亡霊がッ」

 

 

 

 炎を始めとした全ての元素と元素がぶつかり合う。

 その様子に舌打ちして、世界を壊す歌を歌うキャロル。

 英雄達の力を借りながら、奏と目が合い、巨大な機体を創り出すキャロル。その両腕へと武器を構える。

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「貫けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

 両腕破壊され、頭部へとシンフォギア、アームドギアが放たれる。

 だが一手足りないはずが、そこに響の拳が放たれる。

 

「やったか」

 

 そんな中、長い束ねた髪がちぎれたキャロルが落ちてくる。だがそれに手を伸ばす響を見て、それに安堵する。

 

(響なら届く、なら俺は)

 

 その背後、膨大なエネルギーの固まりが爆発しかかっている。

 それに向かって、ハンドルを引く。

 

『セカイヒロウ・オメガマワル!!』

 

 手のように眼魂を掴むベルトの一部が周り、それと共に飛び上がる。

 すれ違いざま、響がキャロルを助けたのを見て安堵して、静かに、

 

「これが俺の、ライダーキックッ!!」

 

 火、水、風、雷、土が回転して混ざり合う。その力と共に、爆発する力を空へと蹴り上げた。

 

 

 

 爆炎の中、響は気絶している。キャロルは意識はあるが、抵抗せず、彼女を抱き上げて響を見る。

 

「な、にを・・・」

「・・・ごめんな響、まだかかる」

 

 そう呟き、眼の模様が浮かび上がり、キャロルを連れて、その中へと消える。

 

 

 

 白い空間だった。

 

 何もなく、雲の中にような世界。

 

 そこに双子の男女がいたが、一人になり、またいまの彼と同じ、黄金のパーカーを着込む戦士へと変わる。

 

『願いは、先ほどのものでいいのか? 神代ハヤト』

「問題ない」

『君は面白い、その願いを叶えよう』

「・・・ああ」

 

 そして光が辺りを包む、キャロルは何がなんだか分からなかった。

 

 だが、光が晴れた先、そこで、

 

「・・・」

 

 奇跡を越えた、偽善の我が儘が、現れた。

 

 

 

 魔法少女事件、その後、神代ハヤト、仮面ライダーハーツの姿は見せず、錬金術師キャロルの行方も分からないままだった。

 だが、

 

「ここでいいはずです」

「本当なの? エルフナインちゃん?」

 

 いまのエルフナインの身体は、キャロルの物だった。

 重傷を負い、ホムンクルスである身体は消えるはずだったが、キャロルがいま使っている身体を渡してくれた。

 そして、

 

「!?」

 

 装者達を始め、周りに控える者達も顔がこわばる。

 此度の事件、首謀者、キャロルが現れた。エルフナインの記憶では、あれもまた、キャロルが予備で用意しておいた、肉体である。

 

「キャロル!!」

「うるさいぞエルフナイン・・・これでも記憶のインストールでまだ不調なんだ。だから戦えないから殺気を解け装者」

 

 そう言うと、響がまあまあと言うが、他の装者達は武器、もとい聖遺物のペンダントを握り、静かに動作一つ一つ見ている。

 死者がいないのが良いことだが、やったことは消えない。

 その様子にふんと不機嫌そうにしているが、

 

「エルフナインから話は聞いてないのか? あの亡霊のこと」

「・・・ハヤトが」

 

 

 

『我が名はグレートアイ、さあ、願いを言え、神代ハヤト』

「願いは一つ、キャロルとその父親と会わせてくれ」

 

 

 

「あっははは、もうハヤトは・・・まぁた自分が生き返る機会、捨てて・・・」

 

 苦笑する響だが、それが痛々しく思い、切歌と調は顔を背け、翼達は黙り込む。

 そして魂の状態で会話したキャロルは、いまに至る。

 どんな会話をしたのか、それだけはエルフナインには伝えていない。それでもエルフナインは満足そうに微笑んでいた。

 自分がその後どうするかなどは全部伝えている。少なくとも、死にかけていたエルフナインを助け出したのは事実であり、エルフナインのことも、父親に話したらしい。その辺りのことはエルフナインも記憶にある。

 魂の父親、その会話にエルフナインもキャロルを捕まえる際、出来る限り穏便にして欲しいと言うほどであり、こうしてキャロルは逮捕と言う名の保護下に置かれた。

 そして、

 

「ハヤトは・・・」

「・・・グレートアイとどこかかに消えた、俺の旋律で大分ダメージも受けていたからな、どうなったか分からない」

 

 そっかと悲しそうに呟く中、静かに冷たい風が吹く。

 誰もなにも言わず、だけど響は、

 

「けどま、ハヤトのことだから、生き返って帰ってくるよ」

「いいのか立花、それで」

「平気ですよ翼さんっ、平気、へっちゃらですっ」

 

 そう笑顔で答える。それにみんな黙り込み、そしてキャロルは手錠をされ、エルフナインはおろおろしているが、静かにしてろと怒られ、落ち込む。

 その双子の姉妹のような様子に微笑んでいると、アラームが入る。

 

「!? なんだ!?」

 

 キャロルも驚く中、空間の一部が歪み、そこから見たこともない怪物達が現れる。

 それに驚きながらも、なにあれと響が驚く。

 

「いたぞ、立花響っ、その命もらう!!」

「えっ、わ、私!?」

 

 名指しで呼ばれ、無数の怪物達が向かった来る。

 装者達が全員武器を纏う中、戦いが始まるが、

 

「こいつら、全員響のもとに!?」

「私達は無視デスか!?」

「くっ」

 

 攻撃を受けようと、全員が響の元に流れ込む。

 そんな中、司令官のような怪物が叫ぶ。

 

「殺せ殺せッ!! その女を殺せば、この世界の奇跡が潰えるッ」

「!?」

 

 爪が迫る中、響はまずいと思いながら、後ろを見る。後ろには装者じゃない人達がいる。そう思ったとき、

 

「間に合ったッ」

 

 光の目が、それを阻む。

 

「・・・えっ」

 

 光から人の姿が現れ、それが肉を得るように姿を現す。

 人の姿、パーカーみたいなコートを羽織った、一人のパーカーを着込む男性。聞き覚えのある声の男性。

 

「貴様!? あの軍勢は」

「先輩ライダー達が受け持ってくれたぜなんたらショッカーさん達。異世界侵略とか、悪いがグレートアイの頼みじゃなくても、なんであろうと、させないぜ・・・」

 

 そして五つの光がベルトになり、その手に月光眼魂をセットする。

 

「まして俺の世界なら、いや・・・響に手を出すなら、俺が許さない」

 

『森羅万象大回転!!』

 

「変身」

 

『ソウル爆発!! ヒーロー披露!! レッツゴーカメンライダー!!』

 

 金色の五つの光を纏う、一人の戦士。ハーツが現れ、高らかに宣言する。

 

「俺の命はまだ燃え爆ぜ無いぜ、駆け抜けるッ」

 

 無数に武器を振るい、怪物達を倒すそれは、まさに駆け抜けていく。

 司令官らしき怪物が己と叫びながら突撃するが、

 

「命、爆ぜるぜッ」

 

『セカイヒロウ・オメガマワル!!』

 

 五つの力が跳び蹴りと共に纏われ、司令官の怪物ごと、全て討ち倒す。

 その光景を唖然と成りながら見る装者達。

 それに気づき、少し息を吐いた後、

 

「みんな」

「ハヤト・・・」

「悪い、まだ帰れない」

「えっ」

「帰ってくるから、少し待っててくれ。んじゃ」

 

 そう言って、輝く紋章の中に消えようとしたが、その手を握る響。

 

「待って」

「響」

「・・・」

 

 響は心の中で何を言うべきか、ただ静かにしている。

 その様子を見て、ハヤトは変身を解き、静かに、

 

「生き返って戻ってくる、文句はその後聞く」

「・・・ハヤト」

「信じろ響、俺は必ず、戻ってくる」

「・・・ずるいよ、ハヤト」

「・・・悪い」

「・・・」

 

 困った顔をして微笑むハヤト。それに響は、静かに近づき、唇を重ねた。

 

「「なっ!?」」

「デス!?」

「「!?」」

「「!?!?!?!?!?!!」」

 

 その場にいた少女達が各々似たり寄ったりのリアクションをし、響は少し頬を赤く染めて離れ、ハヤトは呆然となっている。

 

「・・・ひびき?」

「いままで黙って決めたお返し、必ず、帰ってきてね」

 

 そう言われ、その手が一度強く握りしめられた後、離れる。

 それを感じながら、ハヤトはすぐに気を取り戻し、

 

「ああ、行ってきゅる」

 

 舌をかんで紋章をくぐった。

 響はぷっと笑い出すが、装者達他は、唖然となっていた・・・




 怪物達が蠢き、集まる中、先輩ライダー達が揃っていた。

「来たか、異世界、ifのライダーよ」

 一号と呼ばれた男がそう言いながら、ハーツは静かに、

「・・・あっははは」
「? どうした」
「いえ少し・・・私情で暴れたくなりました」
「そうか、だが」
「分かってます、さあ」
『行くぞッ』

 異世界の戦いを終えて、速攻戻る。
 そう決めた一人の戦士は、

「命、駆けるぜっ!!」

 そう叫び、走り出した。


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最終話・その魂は

 魂が爆ぜた。

 魂が駆けた。

 そして、魂は世界と共に歩み始めた。


 ライブが終わり、マリア、翼はホテルで休んでいた。

 今日もまたアンコールを観客に求められ、多くの贈り物やエールがある。

 だが、最近携帯、スマホを見るのが億劫だった。

 

「・・・また来てる・・・」

「・・・そうだな・・・」

 

 マリアがそれを見てため息をつく、なにかが壊れているような気がする。気のせいではないのだろう。正直に言えば、翼と同じ仕事以外、ほぼ前科があるため、監視下に置かれる。その所為もあり、これは苛立つ。

 その思考にたどり着き、顔を振る。

 

(相手はセレナの恩人よ、我慢よ我慢・・・)

 

 対する翼の方は、何故こうも不機嫌になるか分からない顔だった。

 

(この身は剣、仲間が幸せなら良いはずだ。だが何故私はこうも心揺らぐ・・・くっ、そして充電器はどこだ!?)

 

 すでに充電器も失うほど、ホテルの部屋は荒れている。正直に言えば緒川の方もまずいと思っている。

 

(二人の様子から、影響が出始めている・・・どうするべきか・・・)

 

 そう危惧していた。

 

 

 

 少し時間は遡る。

 とあるカラオケ店で、熱唱する歌姫がいた。

 暁切歌と月読調である。

 他にもクリス、未来と、彼女の友達の三人もいて、正直、歌いながらストレスと言うストレスをぶちまけていた。

 セレナもいて、少しばかり威圧に怯えている。

 

「次は誰の番デス!? 今日は夜まで歌い続けるデスよッ」

「ちょっと待て後輩っ、いくらなんで」

「なんでもじゃないよっ、帰って来るなりずっとあの調子なんだよ!!」

「そうデスッ、相手のいない私達への当てつけデスッ。不愉快デスッ、羨ましいデス!!」

「おいこら待て」

「クリスもそうだよね、だからここにいるのに、少し落ち着いて」

 

 極寒の雪空のように何を歌うか見ている未来。眼が笑っておらず、静かにページをめくっている。

 クリスはべ、別にとか、顔を紅くして、それでもなにも言わずに席に座り、三人もまたなにも言わず、ページをめくり、お菓子やら食べ始めたりしている。

 そこにメールが来るため、全員が見てみる。

 メールには写真画像付きであり、それを見て、固まる全員。

 そして、震える切歌は、憤慨する。

 

「我慢できるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁデスッ!! ここまで耐えに耐えましたッ、私、いまから邪魔しに行ってきますッ!!」

「待てッ、気持ちは分かるが待ってやれ!!」

「待たないッ、私だって・・・本当は」

 

 調が何か言いかけながら、セレナはあーあと思う。きっと止められないなと、ふとっ、気づいた。

 

「み、未来さんがいない!?」

『!?』

 

 後には先に出た者のように、各々の会計を済ますのであった。

 

 

 

 そして、とある高台にて、町を見下ろす響がいた。

 風を受けながら嬉しそうに笑顔で見ていて、世界を見る。

 

「んーーーいい風だな~♪」

 

 そう言う響に、気配を消して、冷えた缶ジュースを首筋に当てた。

 

「ひゃ!?」

「油断しすぎだぞ装者」

 

 そう言って、薄手の青年が呆れながら、缶ジュースを渡す。

 それにもうと頬をふくらますが、彼を見て頬を赤くして微笑む。

 

「っていうか、もういいの? 向こうの戦い?」

「ああ、もう終わったよ響」

「うん、だからなんだよね・・・ハヤト」

 

 そう言いながら、町を見下ろすハヤト。ベンチの隣に座る。

 静かにしながら、リハビリなどもすんなり通り、彼はいま、ここにいる。

 それを喜びながら、腕にひっつく響。それに少し驚くが、なにも言わず、大人しくされるがままであった。

 

「けど、グレートアイって、結局なんなの? ハヤトの肉体を作り上げたり、異世界の壁越えたりして」

「さあ? 世の中、不思議がいっぱいだ。五行眼魂が進化して、一つ、セカイドライバーってもんに進化したようにな」

 

 そう言いながら、月光とハーツ眼魂を取り出してみる。

 彼?は言ったのだ。

 

『世界と共に歩め』

 

 そう言い終え、肉体をくれたグレートアイ。真偽は分からない、だが、一つ分かるのは、信じてくれた。

 神代ハヤトと言う、人間の可能性を信じてくれたから、自分に肉体を与えたのだろう。ならば、自分がするのは一つ。

 

「装者達と共に、世界を廻り、守る。いまの俺がやるべきことだな」

「・・・えっへへ」

 

 そう笑いながら、ぎゅーーーーと抱きつく響。正直恥ずかしいが、帰ってきてからや前々からのことを考え、何も言えないため、何より、

 

(・・・ああくそ)

 

 本人は断る気が起きない。

 響は嬉しそうにハヤトと共に、世界にいる。

 それが、叶った。

 

「おいそこのバカップル」

 

 と不機嫌な声で言われ、すぐに二人は離れ立ち上がり振り向くと、

 

「「キャロル」ちゃんっ!?」

 

 キャロルとエルフナインがそこにいて、奏もまた、よっと挨拶して、ウルバイクがエンジン音を鳴らす。

 ウルバイクは、いつの間にかサイドカーのようなものもあり、カスタムされていたりと、もう主を乗り換えた。

 

「キャロル、最近仕事ばかりだったらしいが」

「ああ、たまには外の空気吸えと、あの司令官が言うからな。俺が一応事件の主犯だってことで、奏が監視役だ」

「僕も少し休憩ですっ」

「悪いな、お邪魔だったか?」

 

 それに二人揃って顔を紅くする。正直なにも言えない。

 その様子に少し意地悪だったかとすまなそうな顔をするが、

 

「こんなメール送ってくるのが悪いんだぞ響」

「・・・・・・・メール?」

「えっへへ・・・さっきの、遊園地の観覧車の様子」

「!? おまっ、誰に送ったんだ!? あんな恥ずかしいの!!」

 

 そう言いながら、ごめんごめんと誤り、履歴を見ようとするハヤトの様子に、エルフナインは内心、いいなと思う顔で見ていて、キャロルはうんざり気味に見ていた。

 だが、

 

「おいハヤト」

「ん? キャロル、なんだ?」

「少しこっちに来い」

「うん?」

 

 そう手招きされて近づく。

 

「膝を折れ」

「ん」

 

 そう言われ、目線をキャロルへ合わせる。キャロルはよしと言う。

 

「お前には色々と世話になったな」

「? そうか?」

「ああ、だから」

 

 そして、

 

「責任は取ってもらうぞ」

 

 そう言って、無理矢理抱きつき、キスをした。

 

『!?!?!?!?!!』

 

 少しだけ長めだが、すぐに離れる。少しだけ頬を赤くするキャロル。

 響はなと言う単語を繰り返し、奏はあーあと額を抑える。

 

「きゃ、キャロルずるいですっ」

 

 そして本音を叫ぶエルフナインもいた。

 

「エルフナインもすればいいさ、俺は奪い取るからな」

「ふへっ!?」

「ふん」

 

 響は驚き、いまだに困惑しているハヤトは黙ったままだった。

 と・・・

 

「ハヤト」

「!?」

 

 壊れたブリキのように、極寒の冬空のような声を放った人へと振り返る。

 小日向未来、本来日向のような暖かい幼なじみが、激怒してそこにいた。

 

「私、言ったよね? 響なら諦めるけど、他の子に浮気したら許さないって」

「み、未来さんっ? それって幼稚園児か小学時代の話では?」

「覚えてれば関係ないよ?」

「ひひぃ」

 

 世界を越え、神の如き者に信じられた戦士は悲鳴を上げて、しりもちを付き、後ろに下がる。

 怖いものは怖いのだ。

 その後ろでは、

 

「きゃ、キャロルちゃん? い、いまの言葉って」

「あいにくと、これから育てば大きくなるようだからな、彼奴のために料理もできるし、後はいまの文化での家事だのなんだの覚えればいいだけだ。彼奴だって若い奴の方がいいだろ?」

「きゃ、キャロル!?」

「エルフナイン? お前は諦めてるが、俺は諦める気は無いからな。彼奴には責任を取ってもらう」

「そ、それだったら、僕だってっ」

「エルフナインちゃん!?」

「・・・」

 

 その話を聞く未来は、また静かに近づいてくる。怯える戦士は後ろに下がる。

 まだ続く。

 

「それなら、私達も」

「立候補するデス!!」

 

 そう言って左右から抱きついてくる切歌と調に、二人は驚く。

 

「毎日毎日イチャイチャするなデスッ」

「私達も、この人のこと大切だからね」

「そ、そんな~~」

「・・・ハ・ヤ・ト?」

「お、俺か? 俺が悪いのか!?」

 

 そんな中、多くの若者達が押し寄せてくる中、一人の男性を中心にわいわいきゃあきゃあしている。

 その様子を見ながら、奏は静かに思う。

 

「ったく、家でやればいいのにな、ウルバイク」

 

 エンジン音を鳴らす相棒、同意らしい。

 そう言えば、前の相棒もう、うかうかしていられないだろうにと、後で話してやらないとなとか思う。

 世界はいま、平和に廻り、命を育んでいた・・・




 遊園地の観覧者の中、隣同士で座る響とハヤト。
 そして、カメラモードにしているのを見たハヤトは首を傾げた。

「響、景色撮るのか?」
「ん~それはね~」

 少し意地悪な顔で、すぐに頬にキスして、写真に撮る。それに気づくと遅く、保存した。

「響!?」
「えっへへ♪ いままで待たされた罰だよハヤト~」
「・・・ったく・・・」

 そんなやりとりをしながら、静かに手を握り合う二人。

「・・・もう放さないからね、ハヤト」
「はいはい」

 そう笑い合いながら、響は遊園地を後にする際、幸せのお裾分けのため、一斉送信した。結果、酷いことになるのだった。

 完結


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