真かみさま転生200X(未完) (tbc)
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一キャラ目(出落ちサマナー)
俺転生


 

>転生元日

 神様転生することになった。

 

 転生神アマラと名乗る聞いたこともないような名前の女神だ。くりくりした黒目、黒髪でやや褐色気味の肌なロリ少女なんだが、まあ可愛いんだけどニタニタしたその目が気に入らない。あと誠意がないというか、あからさまに俺を舐めきってる風情がある。間違いなく善人、もとい善神ではないだろう。いや、トラックに轢かれて死んだ俺を転生させてくれるってんだからそこは黙って受け入れるけどさ。

 ちなみに理由は「魂の雰囲気が気に入ったから」だと。よく分からん、見た目とかじゃないんかい。何、神ともなると見た目性別で好みを選んだりはしない?なんだよその曖昧とした理由、もっと人間にわかりやすく言えよ。とは言わないけど。

 

 転生するってんで詳しい話を聞こうとしたら、転生先はテーブルトークRPG版やや準拠の「女神転生」の世界、チートは特に無いが転生前に才能を選ぶ権利は与えるとのこと。

 よりによって女神転生……メガテン世界かよ。つーか神が雑魚敵キャラクターみたく束で出てくる世界観じゃん。それにアマラって確かにメガテンに出てくるけどそれ神の名前じゃねーだろと突っ込んだら、新興の神だからね、と言った。つまり由来も由縁も宗教も信仰もクソもない奴じゃねーか。メガテンに出てくる悪魔ってマグネタイト、要するに生物の血とか精神力とか魂とかパワー的なのを食わなきゃいけないのにどうやって生き延びてんだ。特に隠す気もなさそうだから思い切って聞いたが、するとこから搾取してるからねと誤魔化しもなしに言いやがった。こいつ絶対に質の悪いダーク悪魔の神だ。

 下手に転生するよりこのまま死んだ方が俺も搾取対象にならないんじゃないだろうか、と思い直しかけたが、じゃあ東京の学生としてちゃんとした戸籍も身分も整えてあげるし、もし万が一不慮の事故で死んでも何度でも転生させてあげるよと言われ、まあ死んでも契約反故だって訴えることは出来そうだからひとまずはいいかな……と思った。思ってしまった。

 

 くれるっていう才能一つはメガテンなんだし、当然サマナーだつってよくわからない空間から気づけば転生後の自室にいた。

 悪魔を従え、召喚するのに必要な召喚器は持ち運びに便利な携帯電話形式で、初期悪魔もついてた。ここまで嘘はなかった。うん、嘘は。

 でもやっぱあいつダーク悪魔だったわ。

 

>転生後一週間くらい

 自衛隊が東京都心部を占拠し、それから戒厳令が始まった。

 テレビではゴトウとかトールマンとかちらほら話題に出てるし、完全に真女神転生1の世界観じゃねーか!!111

 

 学校なんて自衛隊の戒厳令に、悪魔が出現し始めたことによる治安悪化もあってすぐに休校になったし学生の身分なんて意味が無い。というか原作考えると、この後ICBM―――大陸間弾道ミサイル、要するに核ミサイルが飛んでくるので学校は再開すらしないだろう。おのれー異能パワーを活かした俺のモテモテ青春時代がー。

 つーか原作の主人公とかいるのかな?まああいつらが何してもストーリー上は核ミサイルが止まらないんだけど……え、もしかして全力で避難しなきゃいけない?自衛隊の戒厳令で凍結した交通網の中、悪魔が跋扈するフィールドを?

 まあでもサマナーなんだし、交渉やら戦闘やらである程度はなんとかなるだろう……と思っていた時期が俺にもありました。

 

 TRPG準拠で1レベル開始ってなんだよ!!! 3レベルのピクシーすら召喚できねえサマナーなんてただの一般人だよ!!!

 幸い、家があるとこはゲーム開始地点と同じ吉祥寺だったのでとりあえず原作知識で武器の密売をしてる質屋に行き、銃……を買おうとしたけど金が足りなかったので仕方なく安かった鈍器を購入し、武器片手にエンカウントした野良悪魔へ殴りかかった。

 

 ぅゎガキのひっかきっょぃ。

 

 

※ちなみに誰が見るのか知らんが説明しておくが、女神転生TRPGはデジタルゲーム版の原作と違って、基本的に5レベルからスタートするが、それでも能力値ポイントがカツカツで、こと低レベルのうちはHPは低いわ攻撃の成功率=命中率が低く泥仕合になりやすい。

 1レベルとなると当然ながら5レベルより更に能力値ポイントが少ないため、戦う以前に攻撃が全然当てられない(高くて30%くらい?)酷い環境なのである。レベル上げとかする前にまず死ぬんじゃが……

 



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二キャラ目(新人剣士)
真・俺転生


>再び転生元日

 某人修羅のごとくガキパトした俺の弱さに意気消沈していたが、それよりもあの弱さで転生させてくれやがったニヤニヤしながら指差してプギャーしやがる女神の姿を見てついカッとなって殴った。反省はしていないが反射された。

 返ってきたダメージでヒリヒリする手を抑える俺を「物理属性等倍が許されるのは低レベルだけだよねーキャハハ」とかどこぞの常識を抜かしやがるクソ神を睨むが、当然俺ごとき格下にビビる気配はナッシング。

 

「で、初めての転生の感想は」

「てめえぶん殴る」

「もう既に殴ったわけだが」

「クソが」

 色々と喚いた気がするけど以下省略。

 とりあえず……気は済んでないがグッとこらえた俺に、あいつはどっからか冊子を投げ渡して、俺に説明する。

 曰く、俺を転生させる対象に選んだのは魂の雰囲気が気に入ったからなのは間違いないが、本当の理由は奴が転生させた人物が死亡した時、手に入れたマグネタイト……という名の「経験点」を搾取するのが目的であると抜かしやがった。

 その徴収率は8割。残った2割の経験点は俺に返し、次の転生後にそのまま経験点を引き継ぐなり、転生特典を配布してくれるなりするそうだが、「残念だけど初戦のガキごときに負けちゃったから経験点は0点だよねー」と再びpgrしてきたので思わず手が出る。反射される。痛い。

 学ばない俺をよそ目に、奴は言う。

「で、約束通り改めて転生してもらうけど、次もサマナーで行くの?」

「行くわけねーだろ、レベル1のサマナーとかゴミにしかならんわ。

 おい、ホントに何度も転生してくれんだな?」

「死ぬ度に経験点は徴収するけどね。それと、経験点を引き継がないならクラスは変えていいけど、経験点を引き継ぐならこの転生特典一覧に従って、幾らか徴収するよ」

と、奴が俺の手元の冊子を示すと、パラパラと勝手にページがめくれて、経験点あたり手に入れられる転生特典を見せてくれる。

「……チートって言えるほどじゃない、控えめな恩恵ばっかりだな。クラスを変更する場合は100点からか」

「だって本気で転生チートしたら全然死なないから損するし、つまらないじゃん」

「神が利益と打算で動いてんじゃねえ」

 神ってのはこう、一人で誰にも邪魔されずなんていうか信念とか宗教、信仰や理念で動いてなきゃあダメなんだぁ。だからお前の神っぷりは絶対に間違ってる。

 いや、神なんて所詮メガテンでは悪魔の一種族、一形態でしかないんだから、悪魔らしく欲とか感情で動くのは特性上確かに間違ってない気もするけど。

 

「とにかく、サマナーは強いけど低レベルじゃ役に立たねえ。

 せめて人間の仲間がいればいいんだが、あまり出会いに期待しちゃいない」

「ぼっち気質だね。オンラインゲームでもソロプレイとかするタイプ?」

「うるせえ、とにかく低レベルなら脳筋だ。

 序盤をしのげるだけの経験点を集めるためにガチで行く、【剣士】だ。【剣士】クラスで行く」

 TRPG版の女神転生のプレイヤーキャラクターは、クラスという職業とか能力適正を選択することでスキルを習得し、そのスキルによって剣技を放ったり魔法を撃ったり悪魔を使役したり、時には原作にない悪魔に変身するスキルや、悪魔を宿した武器を振るうスキルなどを手に入れることが出来る。逆に言えば、クラスで手に入らない能力は使うことが出来ない。

 そのため、なるべく将来的に有用なサマナーとかを選びたかったのだが、1レベルでは将来を考えるどころか目先の悪魔を倒すことすら叶わない。だからひとまず、低レベルの地獄を脱出できるまで経験点を蓄えることを目指してから後のことを考えようと思う。

 低レベルでも強力なクラスは幾つかあるが、その中で武器を用いて戦う前衛系全般である【剣士】クラスは女神転生TRPGの中でも最強格である。システム上武器を用いる攻撃は武器威力がダメージに乗る分高威力であり、更にそこに早くから安定した高威力の格闘武器スキル【ヤマオロシ】を習得する上、相手の防御点を無視するため恩恵の高いクリティカルが狙いやすくなる【会心】スキルを7レベルで覚えることから、たった7レベルでキャラクターが完成すると言われるほど強クラスなのだ。後に数々の多種多様なクラスが追加された後でも、最強の五指から外れることはないとされる。欠点は、物理相性しか習得しないので物理相性に耐性を持った悪魔が多くなる高レベルでは通用しにくくなること、攻撃一辺倒なため応用性に欠けることか。

 だが応用力はある程度装備で補えるし、低レベル脱出の経験点稼ぎを目的とするなら属性の偏りも関係ない。

 

「あ、そうそう。今のうちに言っておくけど、悪魔クラスは禁止だし、悪魔になることは許さないよ」

「なんでだ?悪魔がチート級に強いからか?」

「いや、単純に悪魔の魂は人間の魂と別物だから、そうなると転生できなくなるからね。……それでも搾取はできるから、嫌がらせにもならないと言っておく」

 なるべくチート級に近い、強力な能力を目指すには悪魔化も厭わぬと考えていたのだが、釘を差された。曰く、悪魔の魂は人間のそれと勝手が違い、記憶とか自我といった余計なものが削ぎ落としてしまうので薄っぺらい魂になるとかどうのこうので転生が上手くいかなくなる原因になるらしい。万が一、俺が望まずに悪魔化しそうな場合はそうなる前に手を出す気でいるとかなんとか。記憶を失ってしまえば、死ぬのと同じようなもんだ。

 

「よし、スキルも決めた。今度こそまともに生き延びてやる、転生してくれ」

「あいよ。じゃあ振るね。なにが出るかな、なにが出るかな」

「振る?ちょっと待て、そのサイコロはなんだ」

 準備が出来たので声をかけると、女神の奴は両腕に抱えるほど大きなビーチボールサイズの六面体……サイコロを抱えている。

「何って、転生先の決定だけど」

「転生先の、決定? どういうことだ、ってうぉおい!」

 

 俺の静止を聞く気はないとばかりに、奴はサイコロをその腕から手放した。コロコロ……

「……5か。ちっ、まあマシなところか」

「もしかして、サイコロで転生先が変わるのか?」

「東京の学生として身分は整えると約束した。約束したが、安全な東京に転生させるとは言ってない……!

 それにその説明書にも書いてるよ?」

 

 冊子を指さされて、え、と思って最初の方を読みなおす。利用規約みたいな長ったらしい文章がずらずらと書かれていたが、転生後の攻略にばかり気を取られて読み飛ばしていた。読み直してみれば、きちんと『転生する世界観は転生ごとにダイスを振ってランダム。転生特典の経験点消費で確定も可能』と書いてある。

 ダイス目の5は……ボルテクス界とある。ボルテクス界、真女神転生3の東京受胎で人間が滅んだ後の世界のことだ。マジかよ。悪魔が跋扈してて、人間とか獲物でしかない世界じゃねえか。

 

「それでも一つだけ決められるけど。病院の中と外、どちらがいい?」

「それなら、外……いや、やっぱり中だ」

 ゲームの開始後、主人公人修羅は受胎を迎えた新宿衛生病院の中で目覚める。病院には既に悪魔が住み着いているが、外に比べればヌルい悪魔が多い。ただし、病院唯一の出入り口には堕天使フォルネウスという強力な悪魔が潜んでおり、うまく弱点を突けない限り倒すのは困難だろう。

 でも病院外のフィールドで現れる鳥悪魔の先制羽ばたき連打でゲームオーバーはどうしようもないので、それよりはマシだと考えた。それに、とにかく初期レベル突破のレベル上げ目的で死ぬ前提でもやはりまだ安全な中の方が良い。

「賢明だね。それじゃあ最早人間のいない世界で頑張るといい」

 

 

>ボルテクス回初日

 気づけば病院の地下に転がってるところを目覚めた。あたりに人や悪魔の気配はない。服もきちんと着ているし、上着を取られてることもなかった。

 【剣士】のクラス特典として同じく転がっていた日本刀を手に、地下の捜索を開始する。外の文明はもはや滅んでいるはずだけど、不思議なことに電気は通っていた。非常用電源がまだ生きているのだろうか?

 中央棟に繋がる地下通路の扉を確認すると、既に開いていた。原作では確か、上階を通らないと鍵をあけられなかったはずだが……既に原作主人公の人修羅が動いているのだろうか?ということはフォルネウスが倒されていることを期待していいのかもしれない。

 ひとまず拠点として、中央棟1階にある回復の泉を目指す俺だがその途中、ついに悪魔と遭遇する。俺の半分くらいしかないが、二足で直立して洒落た服装で着飾っているネコ型の悪魔だった。こんな悪魔、原作の病院にいたか?猫の悪魔といえばネコマタだけど……ひょっとして魔獣ケットシーの方か?俺の能力と同様に、悪魔分布が真女神転生3原作ではなく、TRPGの方に沿って出現しているのなら納得だ。

 思わぬ悪魔の姿を見て怯んでいる俺を与し易いと見たか、ふしゃーとやる気満々で威嚇してきた。TALK(悪魔会話)しようかと思ったが、取引材料なんてこの身一つしかない。それにこの先タイマンで戦える機会なんてそうそう無いかもしれない、最初のお相手には悪くないだろう。

 TALKを諦め、BATTLEに移る。前回転生時に比べればずっと勝ち目はあるが、厄介なことに相手は【ディア】……回復魔法持ちのはずだ。悪魔なのでHPもそれなりにあり、持久戦に持ち込まると圧倒的に不利である。なので、少し手傷を与え回復せずにダメージを残したその隙を突いて、大ダメージを与えなければならない。

 

 戦闘の姿勢に入ると、ケットシーは四つ這いになり折角の服装を床の汚れで台無しにしながら、体のバネをしならせて飛びかかってきた。迎撃しようと日本刀を叩きつけるが、振りが間に合わず当たったのが刃の鈍い根本で、クリーンヒットには程遠い。しかしケットシーの額を鍔で叩く形になり、奴は朦朧としながら一旦距離を離す。

 追撃を加えたかったが、今の気まぐれな当たりで日本刀の握りが滑って刀を落としかける。握り直すうちにケットシーは状態を回復し、今度は立ちの構えから跳び蹴りをかましてきた。全然猫らしくないが、先ほどの額への攻撃を恐れた結果だろう。

 今度はその足を叩ききって迎撃しよう……とするがタイミングが合わず外す。それどころか懐に潜りこまれて組み付かれる有様。俺の首筋を狙っては噛み付いたり爪で引っ掻こうとするのを必死に左手で食い止め、右手の刀を逆手に持ってなんとかトドメを刺そうとする。

 正直危ういところだったか、半獣型の悪魔とはいえ素の体格差もあってかなんとか奴の首筋を掻っ切って致命傷を与えることに成功した。勝利は収めたが、今ので殆ど運を使い果たした。

 

 レベルは2に上がったものの、低レベル突破には全然遠い。

 



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ガキのひっかき

 

>初日を生き残った次の日

 ケットシーとの激戦の末勝利を収めたものの、気力が抜けてワンパン喰らえば死にそうな状態でビクビクと病棟の1階に上がったが、なんとか無事悪魔と遭遇せずに回復の泉にたどり着いた。

 利用もしないし金もないしけど泊めてくらはいとお姉さんに頼み込んだら、優しいことに泉の隅っこで寝かせてもらえることになった。人間はまず残ってないこのボルテクス界、人間見らば御馳走だマガツヒだと即襲ってくる悪魔ばかりのこのご時世に中立で気を休められる場所の存在はありがたい。

 それにしてもエロいのう、この姉ちゃん……原作ではそうじゃなかったのに妙に妖精っぽいのは真女神転生2の回復の泉の影響だろうか。何にせよ強制的に難易度ハードな今、人恋しいので慰めていただきたい、色んな意味で。でも搾り取られそう、マグネタイトとか色んなのが。やっぱりいいです。

 さて、ゆっくり休んだことで全快ではないがまた1体悪魔を倒せそうな程度には回復した。さあ、回復の泉のねーちゃんには頼れないが、代わりの仲魔を探そう。原作通りにピクシーがいるといいんだけど……人修羅と一緒に出ていっちゃったかなぁ。ううむ、しかし先ほど1階の廊下を通る際、エイっぽい姿が見えたのだがあれはフォルネウスだったろうか?念のため仲魔探しのついでにもう一度確認するとしてこよう……

 

 うわああ餓鬼だあああ!!

 

 

>更に次の日

 幽鬼ガキ、それは序盤の最初にして最難関とも言われる運ゲー敵。

 特にハードモードにおいて奴は攻撃が外れるか、あるいは奴の攻撃がクリティカルしたその瞬間ほぼ敗北が決定、最初の戦闘だけに抗う手段も無いという恐怖の象徴。これまで奴の前に何体の人修羅が血の海へ沈んだものか。

 しかし幸いなことにこの世界のガキは動きが遅く、貪欲からなる力は相当にあるが、その攻撃を当てることも精一杯。うっかり一発良いのをもらって死にかけたけど、何とか撃破しました。【気合い】さまさまである。

 おかげでようやく3レベルに上昇した。ついに【ヤマオロシ】を獲得し、瞬間火力が3倍に向上した。更に当たりさえ良ければこれまでのケットシーやガキも一撃で沈む火力だ。【気合い】後のダメージ2倍から繰り出すと並の10レベル悪魔くらいなら確実に沈められる、元祖最強クラスは伊達じゃない。しかし攻撃を外すとスキルに必要なHPコストで逆に自爆する模様。合掌。

 

 ところでガキを倒したついでに例のエイっぽい……フォルネウスっぽいやつを確認したんだが、色が黒かった。王冠も被ってなかったし、そもそも200Xにフォルネウスのデータいないし……あれひょっとしなくても、エイはエイでも弱い方のエイ、妖魔イソラじゃないか?

 堕天使フォルネウスはソロモン王のなんたらの72柱の悪魔の1体で、それなりの高レベルの悪魔だが、妖魔イソラといえば日本のなんかこうすごい地味な水を操る神っぽい雑魚悪魔だったはず。原作真女神転生3にも登場するが、ここより少し先に進んだ地下水路に大量に出現しては、よくファイアブレスで焼かれ後のマタドールに備えて経験値稼ぎされる運命にある悲哀の悪魔。まあ要するにフォルネウスとは比べ物にならない雑魚悪魔だったので、非常に安心した。

 とはいえ、今の俺がすんなりと倒せる悪魔だってわけじゃない。この病院に出るどの悪魔よりも強く恐れるものなど何もないとばかりに空中を泳ぐ奴の姿を見れば、恐らくボス……この病院のヌシであると察しがつく。ボスであることにより、2回行動、即死無効の他バッドステータスへの強靭な耐性、そして通常の5倍のHPを持つ……ガキやケットシーと違い、レベルが高いため攻撃を失敗することも早々無いのが特に辛い。少なくとも一人では無理だ、特に防御力、回復手段の2つが必要となる。

 防御力を上げるには防具が、回復するには【傷薬】が必要だが、人間のいないこのボルテクス界では、人間が使える道具や装備を調達するのは難しそうだ。医療品、医療器具くらいなら手に入るかもしれないけど……「東京受胎」の地揺れで薬品の多くは落ちて割れたりしてそうだし、そもそもどれが傷薬になるのか知識のない俺には分からない。

 だから、そこは悪魔をハントして補う。サマナーじゃないので仲“魔”の召喚契約を結ぶことはできないが、それでも交渉でイソラを倒すまでとか仲“間”の約束なら結べるだろう。それは所詮口約束で簡単に破れるが……この状況を打開するには、この病院に生息しているはずの地霊カハクの【ラクカジャ】、そしてケットシーでも誰でもいいから【ディア】を使える悪魔の協力が必要だ。交渉は全然下手だけど、それでもなんとかして突破しなければ……

 

 

※追記:TRPG版のイソラは真女神転生1準拠なので水系の悪魔だから、電撃系悪魔だったことを思い出したので忘れずに付け加える。

 

 



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俺の仲間がこんなに低レベルなわけがない

 

>ヤマオロシゲーの日

 

 俺の攻撃!【ヤマオロシ】!魔獣カブソに67のダメージ!カブソを倒した!

 

 俺の攻撃!【ヤマオロシ】!幽鬼ガキに70のダメージ!ガキを倒した!

  俺は4レベルに上がった。力が1上昇。

 

 俺の攻撃!【ヤマオロシ】!地霊ブラウニーAに63のダメージ!ブラウニーを倒した!

  ブラウニーBは命乞いをした!地霊ブラウニーBは仲間になった!コンゴトモヨロシク・・・

 

 

 悪魔と遭遇し、殴り倒しては回復の泉に戻って手に入れた僅かな金でHPを癒やしてもらう繰り返しを続け、はや4レベル。悪魔が2体出てきた時はどうなるかとも思ったが1体殴り倒した時に命ばかりはと降参してきたのでここぞとばかりに仲間にした。

 お目当ての悪魔ではないが、【スクカジャ】【スクンダ】を持つブラウニーは補助に壁にと何かと役立つ存在だ。攻撃能力はろくにないが、縁の下の力持ちである……それだけだとも言えるけど。敵で出てもなんとも言えないが、味方にすると頼もしいタイプである。

 ついでにこの病院にいる悪魔について聞きこみをした結果、今まで出会った悪魔以外にも地霊カハクと、それからなんと妖精ピクシーもこの病院にいることが分かった。原作の病院内ではイベント限定でしか仲間にならない悪魔だったが、近くの代々木公園で何かあって移住したんだろうか。人修羅の動向のことも気になって、このブラウニーに外のことやら何やらを聞いたけど、こいつらはイソラが怖くて外に出ず、病院内に同族で固まり引きこもっていた臆病者なので世の中のことは全然知らなかった。

 俺は病院脱出するつもりだから、同族なんだしカハクも誘ってこいよと言うが

「シャイなボーイのおいらはキュートなガールにはとてもトークできないのよ……恥ずかしッ」

なんてことを抜かしたので、結局交渉は俺任せである。交渉は運の能力値に依存するものだが、脳筋の剣士は初期値が1なのでお察しくださいだ。ああ、早く運特化サマナーになってハーレムとか築きたーい。

 

 

>さすがメイン盾は格が違った日

 このブラウニー、意外と便利だ。強いとか弱いとかじゃなくてヘイト稼ぎに。

 あいつが横にぶらぶらしてるだけでガキとかおつむの弱い悪魔連中は50%の確率であいつに攻撃が飛んでいくし、弱いけど俺より頑丈だからひっかかれても噛まれても平気である。

 なんとかしてくれよーと泣きついてくるけど、お前スクカジャ以外にできることないんだから盾役で我慢しなさい。

 おかげで戦闘のリスクは楽になったが、経験点も分散されてるのでレベリングのペースは下がった。

 

 こんな関係なのに何故だか妙に尊敬されつつあり、好感度が溜まっている。お前それでいいのか。

 好意を向けられるのはいいんだが、変に媚びた目つきが混じってるのは気のせいだろうか。

 俺にショタコンの趣味はねえぞ。

 

 

>逆ナン曜日

 回復の泉と1階廊下周辺をうろつく繰り返しでレベリングを続ける日々だったが、やっと5レベルに達したこともあって2階へ進出、遠出する。そしてついにカハクと遭遇!

 遭遇、したのはいいが……イソラ討伐に勧誘する前に、ブラウニーの奴が勧誘されやがった。何してんだてめぇ。

 【スクンダ】をかけてこちらの命中力を下げてくるブラウニー。ええい、ただでさえカハクのアギは高火力で危険な相手だというに。しかし、殺られる前に殺ればいいだけのこと。ヤマオロシで撃たれる前に倒してしまえば怖くはない。

 

 とはいえ倒してしまえば元も子もないということで、瀕死で寸止めし、威圧交渉。ビビらせてイソラ打倒に協力させることに成功した。

 俺にロリコンの趣味はないんだが、ブラウニーの野郎が怯えたカハクに抱きつかれて恥じらうどころか鼻の下を伸ばしているのを見ると嫉妬……というかイラッと来る。シャイボーイの設定はどこに行った。ともあれ、あとは回復役のケットシーなりピクシーなりを拉致ればメンバーを揃えてイソラを倒しに向かえる。弱い相手ではないが、まあなんとかなるだろう……

 

 

「ねえ、あなたが今噂のイソラを倒す人間って奴ー?私も一口乗せてよー」

 回復の泉への帰り道になれなれしい口調で話すピクシーが飛んできた。即採用。

 

 

 

>決戦の日

 良いか、ピクシー。我々はインペリアルクロスという陣形で戦う。

 防御力の高いブラウニーが前衛、両脇を俺とカハクが固める。

 お前は俺の後ろに立つ。お前のポジションが一番安全だ。

 安心して戦え。

 

 一人足りない気もするが、【ラクカジャ】のカハクに【ディア】のピクシー、おまけで壁役のブラウニー、そして俺の4人PTが完成した。レベルは心配だが、所詮相手もLv11のイソラ。平均レベル5もあれば倒せない相手ではない。

 行くぞオラァ!!

 

 新たなこの建物の主を名乗るイソラは、フォルネウスほどのレベルではないがそれでも破格の強敵だった。

 攻撃力の高い【かみつき】攻撃に加え、【マハジオ】【ジオンガ】を筆頭とする範囲および単体への電撃相性魔法攻撃。そして、本来フォルネウスが使う【死門の流氷】と並ぶボス悪魔にしか使えない超強力な隠し玉、電撃相性でも最上位の魔法攻撃に並ぶ威力を持つ【震天大雷】が飛び交った。まあ、その盛大な隠し玉は命中せずに外れてたんだけど。

 しかしレベル不足とはいえ、俺には強力な仲間がいた。カハクの【ラクカジャ】の重ねがけにより敵の攻撃を5割以上カットし、受けたダメージもピクシーの【ディア】で即座に回復。防御が万全の布陣で、アタッカーとして【気合】からの【ヤマオロシ】により一撃で3割を削る俺の攻撃。ブラウニー?ああ、あいつは必死に囮役をこなしてたよ。

 一つのミスが壊滅に繋がりかねない危ういバランスだが、俺らはそれを乗り切った。危うく【マハジオ】のクリティカルで落ちかけたけど(TRPGでは攻撃なら全てがクリティカルしうるのだ)、文字通り命運を使い果たしてでも紙一重で耐え切った。ピクシーのディアを受けて常に全快の俺を削り切るには一手足りず、イソラはそのまま俺の筋力に任せて振り落とされる日本刀、【ヤマオロシ】の圧力の前に散った。

 イソラを倒し、ついに初めてのボス討伐完了となる。決して強敵とは言えないが、ボスの格を備えたかなりの難敵だった……

 感慨にふける俺に、共にイソラを倒した仲間たちは、俺に向かって

 

 

 

 【ジオ】【アギ】の連続で焼き殺されました^q^

 

 





【震天大雷】は、原作真女神転生3でフォルネウスが使う【死門の流氷】の電撃相性版のようなものです。
そもそもTRPG版の【死門の流氷】は、威力は【マハブフーラ】並の中威力でそれなりだけど、条件付きでスクンダ(命中・回避率低下)の副効果が発生するなどかなり強化されています。
一方で電撃相性である【震天大雷】は、特筆すべき副効果はありませんがダメージがマハジオダイン並に高く、また感電(SHOCK)の発生率も若干高くなっています。また条件次第で更にSHOCK率は上昇します。……ただし今回の戦闘ではその条件を満たすのは難しかったので、単に強力な範囲魔法攻撃でした。


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三キャラ目(続・剣士)
平和な世界


>やっぱりヤマオロシはダメだったよ……の日

 目覚めたら三度目となる転生ルーム。

 早速プギャーしてきたあの女神がムカつくので【ヤマオロシ】を放った。当然反射された。自爆して死んだ。転生ルームだからすぐに復活した。

 

 いや原因はわかってるんだ、悪魔は契約に従おうとする奴が多いみたいだけど、所詮口約束だったし……それにその約束もイソラを倒すまで、だったから倒した後は契約履行完了ということで裏切り上等なわけだ。サマナーとして契約した仲魔でもないから、勿論そういったフレンドリー・ファイアへの拘束力もねえ。

 しかしそれにしても両方が裏切ることはねえだろ!ピクシーもカハクも初めての女の子悪魔ってことで少なからず惹かれてたのに!

 

 え、何、ブラウニーの奴は最後まで味方としてあの2体に立ち向かってくれてたって?いや野郎は別にどうでも……

 

 

 

>仕切り直しの日

 再度転生する前にちょっと作戦考えなおさせてって頼んだ。厳密には一日も経ってない気がするが、気分を改めたので一日経過ってことにしとく。

 

 まず、前回の転生で俺は224の経験点を手に入れた。ただし、このうち8割は徴収されるので、実際に引き継げるのは2割の44点だけだ。これだけで3レベルになれる計算ではある。

 しかし、よくよく読み直せば経験点は残しておいて、次回の転生まで残しておくことも可能らしい。正直、今の調子だと死んでばかりになりそうなので、ここらで低レベルを繰り返して地道に貯金をしようと思った。

 そう考えた最大の理由が、どうやら俺は今のままだと「覚醒者」にすらなれないらしい。

 

 真女神転生TRPGでは、「クラス」は最大3つまで取得できるが、最低限必要なレベルの条件がある。

 全てのプレイヤーキャラクターはクラス1個の「異能者」から開始し、5レベルに上がることでクラス2個の「覚醒者」に進むことが出来る。「覚醒者」が40レベルに上がると、クラス3個の「超人」に進むことが出来る。

 2個目のクラスを得るのは簡単だ、素質のある人ならば、なりたいと思ったクラスを得るのにふさわしい場と条件を整えるだけで、簡単にきっかけを掴んで簡単に次の段階へ登ることが出来る……らしい。これは女神にもしつこく確認して、お墨付きを得ている。だから5レベルになった俺が「サマナー」のクラスを得たいと思ったら、悪魔と交渉して契約を結んだり、悪魔召喚プログラムを入れた機械や装置を入手するだけで良い。

 ところが、今のままの俺では……そもそも元は平凡な一般人の魂だった俺は、「覚醒者」になれる素質すら持っていないらしい。前の転生でイソラ戦前に5レベルになったにも関わらず、2つ目のクラスを得られなかったのにはアレとも思ったが、そういう事情があったようだ。

 で、その素質を得る方法だが、流石に魂の問題なんて自力では解決不可能。しかし女神が提示した転生特典一覧とやらの中に、「覚醒者」になれるようになる特典が混ざっていた。ただしその額は100経験点と、今の俺ではまだ半分ほど足りない。

 この先、俺TUEEEするなら覚醒者、あるいは超人になるのは必要不可欠なのであと2回は死ななければならないだろう。……順調に行ってもあと2回は死にリセットするのか、とちょっと凹みそうになるけど、とりあえず気を取り直して女神に転生の手続きを頼む。3レベルになれる最低経験点21だけを消費し、あとの23点は次回に持ち越し、100点の差額残り67点を得るのに必要な335点を入手するのが目的だ。レベルに直すと、7レベルまで上がる必要がある。

 とりあえずまだまだ低レベルで四苦八苦する必要があるのだし、クラスは「剣士」のままで良いだろう。女神の奴がまたサイコロを振って、俺の転生先を決める。出目は4だった……初回が1らしく、前回が5でまだ見たことのない世界だ。あいつの言い分では人のいる世界らしいが、果たしてどのような世界に飛ぶことやら。

 できれば開幕詰んでないような世界観だと良いなぁ……。

 

 

 

>私のパンを焦がす日

 気づけば夜中の電車に乗っていた。どうやら前みたく世界が滅亡し、文明が残ってないような世界観ではないようだ。

 しかし電車スタートとはどういうことだろうか?なんか見覚えのあるようなないような光景だし……と、とりあえずいつの間にか持っていた電車の切符を通し、改札口を抜けて外に出る。

 ポケットに入っていた、この世界での俺の身分が書かれた印刷紙を片手に街中を歩く。どうやら俺は私立学園の新入生になるらしく、また東京でも無いようだから大破壊に巻き込まれてまともな生活が送れない展開もないだろう。

 見たところ湾岸都市でかなり近代的な様相をしているが、パッと特徴的な建設物なんかは見当たらない。電脳的なあれこれとかも無さそうだし、ソウルハッカーズではないか……? んー、向かい先が住宅街だけしか広がってないのもあってこのへんだとわかりにくいなぁ。とりあえず地図を参考に、手配してくれたらしい俺の住居に向かう。

 

 ポツンと夜空に浮かぶ三日月が照らす住宅街に面した街路を一人寂しく歩く。やはり、それとなく感覚を揺さぶられるのだが、その正体にピンとこない……。

 それとも、何か身に危険が迫ってて本能が知らせてるのだろうか?足を止めて周囲を確認するも、俺以外に人の気配はないし、悪魔の影すら見当たらない。運能力値の低い俺は、そこまで察知に長けているわけではいないがそれでも念入りにあたりを見渡せば見つけることもあるだろうと、じっくり周辺を眺めるがやはり何の悪魔の姿も見えない。

 ううむ……ふと思い立って夜空を見上げるも、この暗い星空の下を飛ぶ鳥の姿があるわけもない。やはり気のせいだろうか?そう思って時刻を確認すれば夜の12時前。やべ、大家さんへのあいさつとかもあるだろうし大丈夫かな……?

 

 

 

 

 

  ぺるそな

 

 



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平和といったな、あれは嘘だ

>2009年の3月30日……らしい

 あのあと気を取り直して歩きだしたはずの俺だが、そこで記憶は途切れ、気づけば俺はどことも分からぬ部屋のベッドの上で目覚めていた。

 は?

 

 

 本格的に既視感を感じ始めた部屋から外に出ると、扉の音に気づいたのか一組の男女のペアが上がってきた。

 学生服を着けた背の高い赤髪の凛々しい会ちょ……女性と、銀髪の肉ひ……じゃなかった、男性だ。

 おはようという挨拶と共に昨夜倒れたのを我々が発見したのだが覚えているか?と聞いてきた。嘘を言うわけにもいかず、覚えてませんと答えたが……だいたい察しはついた。

 この世界には今日と明日の境目、夜の0時に誰にも知られぬ1時間――「影時間」が存在している(はず)。

 つまりペルソナ3の世界だ。

 

 俺、ペルソナ使いじゃねーんですけど。

 ……って思ってたら異能者だってバレた。何故だ。

 

 

  >3月30日影時間

  どうやらペルソナ使いでない俺は「影時間」の間の記憶が残らないようなので、別々に記す。

  この世界は、悪魔の代わりにシャドウと呼ばれる異形の存在だけが動ける「影時間」が一日と一日の間に存在し、人を襲ってその感情だか精神だか魂だかを抜き出して、シャドウにしてしまう。

  影時間の間は、シャドウに狙われた人間以外は「象徴化」と呼ばれる動けないし影時間に気づけない状態になるのだが、唯一「ペルソナ使い」と呼ばれる、心のある悪魔的な一面「ペルソナ」を呼び出して攻撃させたり身を守ったりする能力を持つ影時間への適性者たちのみがシャドウに対抗する力を持つ。

  一応ペルソナ使いでなくとも影時間への適性を持つ人間は存在するのだが、シャドウはペルソナ使い以外の攻撃が通用しないらしく、それ以前に機械の多くは影時間でダメになるのでまともに火器が運用できないそうな。

  ただ、どうもペルソナ使いではないがメガテン由来の異能者である俺はシャドウをぶっ倒せる能力があるようで、試しに臆病のマーヤと呼ばれる最下級のシャドウを日本刀で【ヤマオロシ】てみれば見事に真っ二つだった。桐条先輩……ペルソナ使いを率いる月光館学園の生徒会長(予定)には大層驚かれたが、特別なことをしたわけでなく割りと力でぶった切ってるだけなので驚くことでもないんだがなぁ。

  だが異能者であってもペルソナ使いでない俺は適性者でないらしく、影時間が終わるとその間の記憶を失うようだ。現に昨夜3月29日の影時間の出来事を日中は全く覚えていなかった。

 

  あの後影時間でペルソナ3だと気づいた俺は、周囲に現れたシャドウをなんとか一部撃退するも、全てを倒しきれずに手傷を負う。そのままシャドウに精神を侵されて危うく死にかけていたが、巡回中の桐条美鶴先輩、真田明彦先輩らが駆けつけて助けられる。明らかにシャドウと戦った痕跡が残っていたこともあってペルソナ使いかと問われるが、その時はまだ適性者でないと知らなかったのもあり「腕に自信のあるだけで、ペルソナ使いではない」とだけしか答えなかった。

  ひとまず新入生だけど負った傷を癒やさせてくれということで、彼ら特別課外活動部(S.E.E.S)が利用する巌戸台分寮の一室を借りて休むことになった。

  そうして体を休めたところで、影時間が終わった後で今後について相談しようと思っていたのだが……まさか記憶が残らないとは思わず、影時間が終わった途端に彼らの前で気を失う醜態を晒してしまう。

 

  それを見て、彼らもまさかと思い念の為に影時間を知らない風に今朝はコンタクトしたのだが、記憶はなくとも彼彼女らの知識がある俺の挙動不審さに気づき、うっかり名乗られてないのに名前を呼んでしまったりとボロを出し、隠していることを幾つか聞き出されてしまった。いやあこわいこわい。それでもなんとか転生の件と原作知識は言わずに守り切ったよ……。

  俺が話したのは俺が(本来)悪魔と戦える能力を持つ「異能者」であること。悪魔ってのはシャドウと同じで異形の存在。月光館学園にはそのシャドウの噂を聞いて悪魔ではないかと思い、進学ついでに経験値稼ぎにやってきた……ということにした設定を話した。そのへん手回しのいい女神の奴が作った設定資料集をアパートの住所に置いてあるのかもしんないけど、俺まだそっちにたどり着いてねーから!

 

  間に合わせの誤魔化しだったが、俺の存在自体が彼らにとって初耳の半信半疑ものだったのでなんとか誤魔化しきれたようである。とりあえず異能者である証明として、今夜桐条先輩の前でもう一度シャドウと戦ってみせた。HPさえ十分なら、臆病のマーヤ1体ごとき楽勝よ。

  【ヤマオロシ】のコストで息切れしつつも、確かに目を見張る戦闘力があると評価していただき、予備戦力として無事S.E.E.Sに加入させていただけることになった。

 

 

>4月1日(水)

 思えば初めての原作キャラとの遭遇だったってことに後から気づいたが、その感動も驚きで吹っ飛んでいた。

 まあそれはさておき、ちょっと変則的な形だが彼彼女ら――特別課外活動部(S.E.E.S)に協力することになった。

 ペルソナ使いではなく記憶が残らない問題があるので本戦力としては数えがたいが、影時間下でシャドウと戦える能力を持つ人間は貴重ということで、予備戦力として動いてもらいたいそうだ。

 あと、S.E.E.Sに加入する場合は巌戸台分寮に入寮してもらわなければならないんだけどそのへんアパート契約とかしたばっかで手続きが大変だしあと一人暮らしの方が色々遊べるってこともあり、俺が色々言って勘弁してもらった次第。あまり力にはなれないけど、原作主人公がきっとなんとかしてくれることでしょう。

 

 それにしてもボルテクス界と違って休むところに困らないし、装備品だって調達できる。悪魔合体とか悪魔関係の施設が無いのは不満だけど、この世界はレベル上げにかなり適している。

 多少ながらも未だに身の危険はあるし、将来的に世界滅亡が待ち受けてるのは他所とも変わらないけどボルテクス界と比べれば全く天国である。

 




※なお月光館学園の入学式の日取りは不明ですが、初日である8日始業式の午後に割りと暇があったことから同日ではないだろうと思い、一日後の4月9日(水曜日)の午前ということとします。


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肉彦先輩の憂鬱

#08/29 美鶴先輩→桐条先輩に修正


>4月2日(木)

 ふと気づいたが、俺は月光館学園の新入生である。つまり1年生なんだが、原作主人公ことキタローおよびゆかりっち、テレッテ他は新2年生。つまり主要人物ら全員が俺の先輩である。折角の原作介入なのに彼らとダベれないってマジかよ。次回死んだ時にクレーム入れてくれる。

 まあ、1年生は1年生で関係が無い頃だから、友達作りやすい頃だってメリットもあるけどね。……友達……休み時間……腕組んで昼寝……うっ頭が。

 

 いかん心の闇が。さておき、今日は原作でもあった物流ルートを紹介してもらいました。ポロニアンモール、武器防具売買を行う黒沢巡査がいる辰巳東交番である。

 どっから仕入れているのかは謎だが、刀剣や銃といった違法あるいは軍用品やら、最終的には霊性を秘めた神話で語られるような準・伝説的武器を仕入れてくれたりもする。とはいえ、今のところはせいぜい軍用品に毛が生えた程度しか置いてなかった。

 手持ちの金はあまり無かったけど、場所を教えてくれた真田先輩におねだりして五千円ほどもらった。まともな防具が揃えられた……これでもう【ひっかき】で簡単にパトることは無い! といいなぁ。

 

 夕方、シャドウの巣窟、夜に月光館学園が変化して出来る塔タルタロスの話を聞いた。それからゆかりっち……もとい、岳羽ゆかり先輩とも顔を合わせたが、彼女はまだペルソナが不安定で、戦力に数えられないようだ。原作では確か主人公がOPイベント終わらせたあたりで安定するんだっけか。桐条先輩はオペレーターに専念しなければならないので、探索人数が足りず潜ることは出来ないがいずれタルタロスに登りシャドウの調査を進めたいとの話。

 代わりといってはなんだけど、真田先輩のシャドウ退治(という名目の、シャドウを相手にしたボクシングの実戦訓練であるが)に付き合い、戦闘経験を積むことになった。手合わせがうんたら言われたけど、こちとら武器持たないとまだろくに戦えないレベルなので勘弁して欲しい。

 

 >4月2日影時間

  新学期の準備で忙しい中、真田先輩の頼みに応じてくれた桐条先輩を連れて影時間のポロニアンモール周辺を巡回した。途中、2、3度シャドウと遭遇したが、どれも臆病のマーヤ……シャドウどころか悪魔全般でも最弱の奴しか見当たらなかった。何の相性にも耐性を持たないどころか、魔法全般の相性が弱点という、魔法を使える異能者なら簡単に倒してしまえるシャドウだ。時折り強いシャドウが外に現れることもあるが、殆どはタルタロスの中にだけ巣食っているため、以前それで痛い目を見たこともあって簡単に踏み込むことは出来ないんだそうな。

  ちなみに戦闘の方だが、真田先輩は原作通り、ポリデュークス(双子座の由来となった、ギリシャ神話のボクシングの神様)のペルソナを降ろしていた。電撃魔法【ジオ】でシャドウをかっ飛ばす一方で、【ソニックパンチ】のようなスキルで殴り飛ばしていたあたり、TRPGの何かの悪魔データを流用してるわけでなくどうやら原作通りのオリジナルなペルソナデータである。羨ましい限りだ。

  こちらも負けじと【ヤマオロシ】でふっ飛ばしたが、HPコストの消耗が激しく多用は出来ない。真田先輩も回復魔法【ディア】は使えるが、そちらに専念してもらうわけにもいかないため難しい限りだ。

  早いところ、全体回復に魔法攻撃にと優秀な後衛であるゆかりっちにはペルソナを安定させてほしいところである。

 

  4レベルに上がったけど追加スキルとかは無い。早く強くなりたーい。

 

>4月5日(日)

 後に戦闘馬鹿になる真田先輩も、原作開始の時期はまだマシな方である。きちんと体力の回復を考えて影時間に挑む日を決めて数日の休憩を挟んでいるあたり、自分の管理はきちっとしてる。後にあの戦闘馬鹿になるとは思えないくらい理知的なスポーツマンだ。

 さておき、学園寮の空き部屋が無い都合で転校生が巌戸台分寮に暫く住み込むため、S.E.E.Sの活動は転校生の都合が整うまで自粛するそうだから最後に暴れるお誘いが先輩から来た。後の展開を知ってる立場としては心配はいらないのだが、それを言えるわけもないので普通に付き合った。

 

 

 >4月5日影時間

  あいかわらず臆病のマーヤばかりだったが、桐条先輩にもHP回復だけ手伝ってもらい、少々シャドウを多めに倒してまわった。おかげで5レベルにアップ。武器格闘攻撃の威力が上がり、臆病のマーヤくらいなら確実に倒せるように。シャドウから得られる欠片を桐条先輩に売却し(恐らく背後についている桐条グループで研究に使われている)、小銭を貯めているが微々たる金額なので装備の調達は著しくない。もう少しレアなドロップが手に入れば収入も変わるのだろうが、あいにくドロップ率を上げる【宝探し】スキルを習得する機会はなく……仕方ない。

 

  ところで真田先輩がペルソナ使わずにシャドウをぶん殴る戦闘をじっくり観察する機会があったのだけど、ペルソナ使いであると共にTRPGのボクサークラスでもあるからなのか、やたら素手が強い。ペルソナ使わない方がマジで強いんじゃなかろうか。

 




※1マッカあたり100円とする。
 真女神転生TRPG200Xのルールブックでは1マッカ1000円と決められているが、そうすると一見普通の衣服に近いレザーブーツやヘッドギアが2万とか5万とか10万とか桁が跳ね上がりすぎるので、妥当な価格に近づく100円/マッカに変更した事情。


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大型シャドウ「マジシャン」

#08/29 美鶴先輩→桐条先輩に修正


>4月6日(月)

 今日は転校生……原作主人公の来る日だ。ちなみに事前に聞いた話から転校生は男だそうな。ハム子こと女主人公子なんていなかった!まあ、俺は鳥海先生か桐条先輩の方が好みだから別にいいんだけど。

 俺は寮生じゃないので、まだ一般人ということになってる彼を出迎えることは出来ないけど、初日は何も起きないはずなので大丈夫だ。事が起こるのは、満月……つまり明々後日、3日後の木曜日の夜。自分の入学式のこともあるんだし、その時までは身体を休めておこう。

 

 

>4月7日(火) 満月まで後2日

 入学式の日。サクッと済んで、クラス割を確認したが1年A組だった……だからといってS.E.E.Sの誰かがいるわけでもないが。

 でも知ってる原作キャラはいた。おでこちゃんこと、伏見千尋ちゃんだ。メガネの子で、話下手な内向的な女の子。若干のヤンデレ気質があるかもしれない。やがて生徒会会計に入り、キタロー、じゃなかった男主人公の恋人候補にもなる存在である。おのれうらやましい。別にいいけど。好みじゃないからいいけど。

 クラスの担任は原作に出てこない、覇気のない男性だった。あまり特筆すべき人物ではなかったので彼は省略する。

 教科書受け取りやらオリエンテーションを済ませ、半ドンで下校がてら、クラスの男子に混ざってカラオケに行った。皆してJPOPを歌う中、俺はアニソンを歌ったが受けは良くなかった……ヲタ趣味で悪かったな!

 とりあえず俺でも知ってる無難な普通の曲で場を紛らわせ、内心では気不味いまま解散となった。借家に帰りつつケータイを確認したら、桐条先輩から連絡が入っていた。内容を詳しく書いているわけではないが、どうやら転校生が影時間の適応者だってことを伝えているようだ。1、2週間もあれば月光館学園の本学生寮で部屋割りの都合がつくので、暫く特別課外活動部は活動できないがそれまでゆっくりと学校に慣れてくれとか。心配無いと思いますけどね。

 了承のメールを送るが、今度は真田先輩から影時間の訓練に誘うメールが飛んできた。桐条先輩、そっちは止めないんですか……と思ったが、そういや原作でも転校生のいる最中に活動してたな。俺としても経験値を稼ぎたいので付き合うのはいいけど、明日のこともあるし消耗は避けなきゃな……。

 

 

  >4月7日  影時間

  臆病のマーヤを今日も4、5体ほどなぎ倒して終わりかと思ったが、どうやら俺の知らないタイミングで原作のイベントが起こる日だったようだ。

  伊織順平……通称テレッテこと主人公の同級生である影時間への適合者、ペルソナ使い候補と遭遇したのだ。コンビニのあたりでパニクってるのを発見し、真田先輩と身元を確認し、後日改めて勧誘することになった。

  しかし影時間に適合したばかりなのか知らんが、今夜ずっとパニクっていた彼が後のS.E.E.S一のお調子者になるとは……ひょっとすると俺含めた並の転生トリッパーより逞しいメンタルではなかろうか。

 

>4月8日(水) 満月まであと1日

 放課後、自宅に理事長が訪問してきた。幾月修司、月光館学園の理事長にして、特別課外活動部の顧問。更には桐条グループのシャドウおよびペルソナ研究の第一人者でもある。……そして一連のシャドウ問題の黒幕でもある。

 それを知っているだけに、奴の顔を見た時に頬がひくついたが、誤魔化して話を聞く。S.E.E.Sに加入して、巌戸台分寮に転居しないかという話だった。親もいないし(どうやら俺は両親を失っている設定になってるらしい)、手続きやそれに伴う金銭は向こうが受け持つとのことなので特に障害はなく俺一人がうんと頷けばいい話なのだが、それでも断らせてもらった。……俺だって夜遊び(意味深)したいですもん。

 それに原作の男キャラは最大5人、寮の男子部屋も5つで足りなくなっちゃうじゃないの。

 

 俺が断ると、暫く俺の能力に関しての話をしてから理事長はアパートを出て行った。後で学生寮に行って今度はキタローと会話をするんだろうな。……キタローに、ラスボス・ニュクスが封印されてることも知ってるんだったっけ?どこかで計画を台無しにしてやりたいけど、アイギス倒さなきゃいけないのが難しいなぁ。物理耐性持ちのあの子に剣士だと相性悪すぎワロエナイ。

 

>4月9日(木) 満月デー

 今日は満月。原作通りなら、大型シャドウ「マジシャン」が活動する日である。

 クラスメイトには今度はゲーセンに誘われたので俺の格ゲーの腕を見せつけたかったけれど、残念ながら準備しなければならないので断らせてもらう。

 念入りに日本刀のメンテ……といっても研ぎとか知らないので布で刃を拭き取るだけだが、掃除して影時間に備える。新入生やら新学期でボクシング部の練習がうまく出来ず、昼間のストレスが溜まっている真田先輩に今夜も付き合えと言われたのだが、その途中で大型シャドウと遭遇するはずだ。倒せればそれに越したことはないが、きっと無理なので原作通り途中で先輩と共に撤退するとしよう。

 回復アイテムを買う金はなかったけれど、【ディア】使いは多いんだし逃げ切れればなんとかなるさ。

 

 

  >満月の影時間

  巌戸台駅で合流し、そのまま街に出没するシャドウ探索を開始する。途中、雑談としてこの前であった適合者の男子、伊織順平のその後の件が話題になったが、桐条先輩から隠れて秘密裏に交渉を行い、驚かせようとしてる途中なんだと。折角だから俺も交渉に参加しろと言われたが、俺も新入りなわけだし、後輩の立場で先輩には頼みづらいので勘弁して欲しい。

  そんな話をしながら駅周辺の商店街を歩いていると……巨大な身体を引きずりながら、アイツが現れた。

 

 

  臆病のマーヤと同じような粘体状の、しかしながら体躯は巨大で、無数の腕のうち1つに青い仮面を携え残りの腕に剣を持ったシャドウ。ゲームではイベントで撃破されたものの、真田先輩を苦戦させるほどの力を持つ「マジシャン」の大型シャドウだ。

  面白そうだと声を漏らし、先手必勝とばかりに殴りかかる先輩。しかしながらそこらの雑魚シャドウと違って、パンチ一発ではちっともそのHPは削れない。

  仕返しに、手に持った剣で攻撃される。……やべ、クリティカルしてる。慌ててカバーに入ったが、それでも真田先輩は結構なダメージを受け、動きが鈍っている。二人で倒せるとは信じてなかったが、こうもあっさりと崩されるとは思わなんだ。

  巌戸台分寮への撤退を提案し、真田先輩は素直に従ったので殿を務め防御に専念する。図体こそでかいが、基本的にレベルは高くないようだ。それでもイソラより若干上のようだ……12レベルといったところか。使用スキルは【アギ】【ひっかき】、それから【九十九針】らしき飛び道具技と、周辺を焼きつくすほどの大技【地獄の業火】か。後者は1ターンほど集中する隙があったので、俺には無理だが戦法によって妨害が可能かもしれない。桐条先輩と合流したら試すチャンスだ。……物理攻撃も強い傾向はあるが、典型的な「魔術師」のアルカナにふさわしい魔法攻撃タイプのシャドウだ。

  防御に徹していても、回避しきれなかった攻撃でじわじわとHPが削れる。そろそろ“命運”がなくなりそうだ、というところで真田先輩が逃げる距離は稼げただろうと俺も逃走し始めた。巌戸台分寮への連絡は先輩が既に行っているはずだが、できるだけ早く駆けつけてほしい……。

 

 

  やっと寮に到着し、玄関から出てきた桐条先輩と合流、怪我を負ったままの真田先輩には後方から補助に徹してもらうとして、マジシャンとの再戦に入る。前衛はレベルの低い俺、それから桐条先輩と不安だが……桐条先輩のペルソナ、ペンテシレアによる氷結魔法【ブフ】が刺さった。火炎相性の魔法使いだけに、対立相性の氷結が弱点のようで【地獄の業火】を放とうとする隙に【ブフ】が刺さり、凍結(FREEZE)状態に陥ることで集中が阻害される。しかも凍結状態の副効果で固まって動けないマジシャンに、俺の渾身の【ヤマオロシ】がぶっ刺さり、体力の大半を削る。このまま倒せそうだ……と思ったが、今度は凍結から回復したマジシャンが俺らの前から逃走し、周囲の住宅街の障害物を乗り越えながら寮の方に向かっていった。桐条先輩が通信で寮のメンバーに知らせながら慌てて追いかけるが……この展開、完全に原作通りである。

 

  寮に到着するが、どこにいるのか姿の見えないマジシャンの位置をカメラで確認するため向かった4Fの作戦室で、初めてペルソナを降ろし、マジシャンおよびその残滓のシャドウにトドメを刺して倒れ伏すキタローの姿を見届けた。

 




「マジシャン」のデータ(200X相当で自作)
怪異マジシャンLv12  力8魔13体10速8運8  HP660MP150(ボス補正込)  火炎無効、氷結に弱い
【九十九針】【ひっかき】【アギ】【地獄の業火】【格闘武器】【追加射撃威力】

ただし「地獄の業火」は、それに[集中](1行動消費し、宣言した行動の次の判定+20%)を行った次のターン最初にしか使用しない。


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ニアどうでもいい

 

>4月10日(金)

 次の日、キタローはぶっ倒れてた。どうやら結局マジシャンはキタローが倒したらしい。

 しかし俺も消耗してるあたり、記憶は無いがきちんと一戦交えたようだけど……レベルが上がってる様子もなし。やはりシャドウも、倒さなければ経験値は手に入らないか。生体マグネタイトっていう、人間悪魔(恐らくシャドウも)共通の生命エネルギーを取り込むことで強くなる世界観だから倒したものしか強くなれないのは仕方ないけど、逆に言えば高レベル養殖が可能そうでもある。まあ、それはかなり遠くの話。

 ところで真田先輩だが、随分と手酷い傷……怪我よりも、むしろ精神力とも言うべきものを消費したようで全治一ヶ月ちょいかかるようだ。単なるDYING(戦闘不能)状態とかHP減少なら治せるんだろうけど、そうならないのはストーリー補正なのかはたまた別の何かなのか。彼が戦線離脱している間、俺は暇を持て余すことになるが、生徒会長立候補で忙しそうな桐条先輩に同行を頼むのも迷惑だし、暫くは活動自粛するとしよう。

 

 

>4月12日(日)

 ふとテレビ眺めてたらトリッシュ見かけたんだけど、確かこの番組って前作前前作のキャラが登場する奴だったよね?と思って期待してみてたら、全く見覚えの無い……多分……ネンフィアとかいう会社のおっさんをインタビューしてた。おのれそういうのいいから舞耶ねーちゃんはよ映せや。

 

 ……とその時は思ってたんだけど、ふと思い出したが漫画版ペルソナ2のキャラだったんじゃね?マイナーすぎて誰も分からんぞアレ。

 

 

>4月13日(月)

 生徒会長選挙が始まりました。思うんだけど生徒会長選挙って普通夏か秋頃にやるもんじゃないの?転生前の高校はそうだったんだけど……1年生とか、この時期だと出馬してる先輩の素性とか全然知らないんじゃないの?現に桐条先輩じゃない方の人とか俺知らんのですけど。当然ながら投票は桐条先輩に入れました。

 先週アニソンで滑ったので再び同級生連れてカラオケにリベンジ。今度はみんなも知ってるメジャーな演歌歌手の歌、“地上○星”だ!自宅で何度も聞いて練習したんだからな!

 ……あえてJPOPから外してみたんだが受けは悪かった。ウケ狙いはダメかー

 

 

>4月15日(水)

 ところで高校生のこの時期の問題って、だいたいは中学生の復習なのよね。でも一応月光館学園は進学も目標に据えた進学校なので科目のペースは早いけど、それでもまだ余裕な範囲。

 でも暗記科目の英語と日本史とかは勘弁してくれ!

 

 

>4月17日(金)

 拝啓、名も知らぬこの世の父上母上。高校初めての友達が出来ました。

 

 ……そう思っていた時期が俺にもありました。ポートアイランド駅のはずれに連れられて、カモられそうになった。とはいっても、たかがペルソナも異能も持たない不良にそうそうやられはしないけど。

 とりあえずぶちのめして逆にカモろうか……と思ってたら見覚えのある男性を見かけた。ガキさん!荒垣先輩じゃないですか!見た目は悪いけど、実のところペルソナ3で最も女子力の高い荒垣先輩! 危うく原作知識で名前を呼びかけたけどギリギリで堪えた。

 ペルソナ使いは惹かれあう、といっても俺はペルソナ使いじゃないけど何かしら異能に感じられるところがあったようで、抑えはするからほどほどにしておけと諌められた。そっちでこいつらを叱ってくれるってんなら構わないかな。また目をつけられたり、暴力振るったことを学校にチクられちゃ面倒だし。

 

 友達と言える友達を作り損ねたことにちょっと涙出てきそうになりながら自宅に帰った。

 

 

  >4月17日 影時間

  ついカッとなって(シャドウを)ヤった。反省はしていない。

 

  うっかり影時間に起きてしまったので暫く日本刀片手に散歩したけど、臆病のマーヤじゃないシャドウのシルエットを見かけたので殴りこんでみた。羽根が生えて飛行してるシャドウに見えるけど、確か恋愛のアルカナのシャドウだっけな……アロー系のスキルに注意しなきゃ。

  と思ったら矢を使わずに【ジオ】が飛んできた。あれ、流石に雑魚のデータまではうろ覚えとはいえ、電撃相性のクピド型なんていた記憶がないぞ?不審に思いながら殴りあってたら、素手攻撃で殴ってきたり【ディア】や【ハピルマ】なんて飛ばしたため正体に気づいた。こいつシャドウの皮被ってるけど、中身ピクシーじゃねーか!

 

  中身が女の子悪魔と知ってちょっと戸惑ったけど、シャドウはシャドウ、悪魔と違って交渉出来そうになかったのでそのまま殴り倒した。思ったより消費したので今夜は1戦で帰還。

 

 

>4月18日(土)

 今日は半ドン。それと、週始めにペルソナを使った転校生……キタローが昨日の午後に目を覚ましたと桐条先輩から連絡があった。それで影時間のこととか、SEESの顔合わせするそうなので巌戸台分寮に来るよう言われた。ほいさっさ。

 それと……もう一つ。真田先輩がこっそりと進めていたテレッテの勧誘が完了し、明日にも寮へ連れてこれることになったのでキタローについて話をした後に美鶴と理事長にだけ打ち明けるんだそうな。これであの塔にも挑めるぜ、と意気込んでいた。俺も経験値稼ぎが出来るならとwktkします。

 

 夜、早めに巌戸台分寮にやって来、4階の作戦室で先輩らと共に俺のことについて、記憶を失うのはペルソナ能力ではないから、しかし異能があるから影時間への適合能力を半端に得た結果、影時間外では記憶を失うんじゃないだろうか、異能って必ずしもいいものではなイノウ、という幾月理事長のくだらない洒落を交えた仮説を聞きながら待っていると、ゆかりっちに連れられてキタローが入ってきた。ゲームやアニメの印象では無気力ダウナー気味な印象はあったけれど、実際に見ると意外と目に輝きを……というか全身が煌めいて見える。こ、こいつ輝かんばかりのリア充オーラを放ってやがる!

 それはおいといて、彼に話される内容は影時間のこと、シャドウのこと。そして巌戸台分寮に住まう特別課外活動部(S.E.E.S)のメンバーたち……その実態はシャドウを倒すことが出来るペルソナ能力を持つ集団であることを話す。俺と理事長は別だけどな!

 なので、この前の晩でペルソナ能力を持つことが判明したキタローには是非ともS.E.E.Sに加わってほしいと、理事長、桐条先輩ともども頼みこむ。月光館学園の生徒会長に頭を下げられてまで頼まれるこの空気、断りづらいだろうなーと他人事だと思うも、動揺の欠片すら見せずYESと頷くキタロー。お前それでいいのか。

 キタローの代わりにゆかりっちが不満を見せるも、当人が嫌な気配を見せないのでそういうことでと話は終わった。詳しい活動内容については、明日明後日に話すとのこと……これから真田先輩がテレッテのことを伝えるんだろうなぁ。

 キタローの姿をよそ目に、俺は自宅に戻るが、その前に一つ、彼らとの絆が深まった……ような気がした。多分、“愚者”のアルカナのコミュニティをキタローが獲得したのだろう。でも愚者のペルソナって総じてレベル高いから序盤使えないけどね。

 

 ちなみに、コミュニティの力……絆の力は俺も使うことが出来る。未だ十分な関係を深めておらず、絆は結べていないが、絆の力により火事場の底力とか今愛と絆と友情の必殺技を決めるとかで攻撃の成功率や威力を上げたり、ダメージを軽減したりすることが出来るようになるだろう。

 もうちょっと真田先輩と仲良くなれたら、彼との絆も使えそうなんだけどね。

 

 

>4月19日(日)

 夜。多分今頃キタローとゆかりっちが、寮入りしたテレッテに驚いてるんだろうなーと思いつつテレビ番組を見る。今週もトリッシュが番組をやっていた。紹介する人物はお互いライバル企業のおもちゃ会社に務めるユーキとソータという二人で、やはり原作ペルソナシリーズでは見覚えのない人物。おもちゃ会社ってなんだ、ヒーロー戦隊ものとかそういうテレビ関係のキャラか?しかしこんなパッとしない名前の人物が二人もいたっけなぁ。

 

 会社の製品である黒とピンクのモデルガンが画面に映ってそこはかとなく思い出した。今回はゲーム原作キャラだけどせめてペルソナシリーズのキャラから持ってこいよ!

 



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テレッテッテー

>4月20日(月)

 今日はたるたるそーす、もといタルタロス体験させるから来いって真田先輩に呼ばれた。

 そろそろ新しい装備が欲しいけど金がない。タルタロス内でお金拾えるといいなぁ。

 

 >4月20日 影時間……タルタロス

  タルタロスとは、影時間になると月光館学園が変形合体して、空高くそびえるシャドウの巣窟の塔になった姿のことだ。誰が最初にそんな名前で呼んだのかは知らんが、多分幾月理事長だと思う、あの人隠れ厨二なんだし。

  テレッテが先輩風吹かせてた。奴は何故か5レベルスタートの「異能者」(クラス2つ)だし、向こうが確かに格上だったりするけど、ペルソナ使いって弱クラスじゃん。200X最強クラスこと剣士様に敬意を払えよと、ついつい日本刀を突き付けると、へいへいビビってやんの。

  桐条先輩に怒られた。

 

  そんなこんなで真田先輩によりリーダーがキタローに決められた。戦闘経験済みという理由なら俺もそうだが、ペルソナは使えないし前衛で【ヤマオロシ】するしか能がないので、緊急時にいくらか柔軟性のある能力を持つキタローの方がマシだと思う。問題は命令されようがされまいが俺は殴るしか出来ないってことだが。

  メンバーが4人に決まったところで、エントランスの階段を登りタルタロス2階へ挑む。

  迷宮となった2階を上がったところでふと後ろを見れば登ってきた階段が消滅することを知らない一同は驚くが、気を取り直して探索すると4体のシャドウに遭遇する。臆病のマーヤが4体。3人のペルソナ使いから【アギ】【アギ】【ガル】が飛び、弱点突いてサクッと瞬殺。俺も【ヤマオロシ】で1体を殴り倒し、1ターンで片付いた。

  初めての戦闘だったがペルソナが無事使えたことに喜ぶ一同。だがゴールにはまだ遠いと桐条先輩の叱責が飛び、探索を再開。傷薬の入った宝箱を引き当てたりしながらまた新たなシャドウに遭遇する。魔術師アルカナのシャドウ風の、「手」の形をした独特な悪魔に見えるが、中身は妖精ジャックフロスト。氷結魔法【ブフ】が飛び【ラクカジャ】が張られるが、幸い氷結魔法を弱点とする者がこちらにいないこと、また相手の弱点である火炎魔法使いが多いことから難なく撃破した。あと、今回の戦闘でテレッテがマハブフの石をシャドウから発見していた。【宝探し】担当お前かよ!

  拾った石はゆかりっちに持たせた。疾風……もとい衝撃以外の魔法攻撃手段はあった方が良いからね。

 

  そのまま2階の探索を続けると上階への階段、およびタルタロスエントランスへ一方通行の小型ターミナルを発見したが、それ以上シャドウとの遭遇はなかった。今回はシャドウが何故だか少なかったようだが、練習には丁度良いと桐条先輩の指示でそのまま帰還した。

  エントランスに戻ると、皆慣れないペルソナの連続使用だったからか疲れを訴える。タルタロスにはまだ奥があるけど、今日は慣れるだけで終わり。もう1戦くらいでレベルが上がったんだが、残念。

  そういえば、エントランス周辺を探してみたけど、裏ダンジョンこと深層モナドは当然として、ベルベットルームの入り口も見当たらなかった。ワイルドのペルソナ使い限定でしか見えないのか、それとも悪魔使いなら誰でも見えるのだろうか……サマナーになってみなければ分からないな。

 

  S.E.E.Sへのコミュポイントがたまり、絆のレベルが1になった。攻撃に使っても補正はちょっとだけしか増えないけど、万が一の時には絆の対象である仲間の【カバー】やHPMP回復、ダメージ軽減およびバッドステータス発生率減少に利用できるなど、ペルソナシリーズのコミュと違って戦闘に直接恩恵がある一方で、ペルソナ(悪魔)合体にボーナスを反映する場合はその悪魔と結んだ絆を使用しなければならないため、絆の対象を【カバー】する効果とは両立できない。

  悪魔が使えない今は関係ないが!

 

 

>4月23日(木)

 知らない先輩がクラスに押し寄せて、剣道部に勧誘された。真田先輩あたりが俺のことを噂したか。確かに暇してるけど運動はちょっと苦手…… シャドウ退治?あれは趣味だから別。

 

 

>4月24日(金)

 第2回タルタロス攻略。今夜はチュートリアルでない、探索本番である。

 確か、5階あたりに鳥型のボスがいたと思うのでそこを目指して攻略すると思う。でも鳥型悪魔って白兵武器に対する耐性持ちが多いんだよな……ちょっと対策考えよう。

 

 交番で武器のラインナップを見ながら財布に相談したが、無理そう。しかもどのみちこのレベル帯だと市販の属性武器なんて売ってない。銃ならあるが、速の低い俺が使ってもな。

 うーん、仕方ないから文字通り【気合い】でゴリ押しする。

 

 

 >4月24日 影時間

  タルタロス。……に入る前にキタローが何やら違うペルソナを入手したようだ。物理系の……え、幽鬼ガキ?【シャッフルタイム】でランダムに手に入れたのだろうが、随分とまた微妙なものを。

  とりあえずそれ魔法全般弱点だから降魔するのやめとけって。

 

  探索開始。

  2階では臆病のマーヤとシャドウ・ピクシー2体ずつの混成部隊と戦闘に。前衛の臆病のマーヤを足の早いゆかりっち、キタローが魔法攻撃で倒し、前列にピクシーを引きずり出したところに俺が【ヤマオロシ】。残った1体は【ジオ】を放ってこようとするが失敗、隙が出来たところを皆でボコボコにし勝利。魔石をゲット。

  ここで俺が6レベルにレベルアップ。特にスキルなどは増えず、火力が上がっただけ。

  3階では正義のアルカナに属する、警察官の格好をした人型のシャドウ――中身は屍鬼ゾンビコップ、レベル8――が2体。平均レベル5前後のこの階層にしては早くもレベルが高めの強敵だ。敵シンボルが見えたなら赤シャドウだろうか。しかし屍鬼といえば火炎が弱点。キタローのオルフェウスとテレッテのヘルメスによる【アギ】で無事焼き払われる。

  同階で再びシャドウに遭遇。運命のアルカナに属する、器物系のシャドウのようだが……物理攻撃が普通に通るので中身はマシン系の悪魔データじゃない。いまいちパッとしないまま倒してしまった。桐条先輩の【アナライズ】による解析だとレベルは低かったそうだが、Lv3の電霊メビウスかな?

  4階。シャドウ・ジャックフロスト4体と遭遇。例によって【アギ】で焼き払う。低レベルだと流石に火炎弱点が多く、活躍の差が大きい。ゆかりっちはたびたび俺に【ディア】をかけてるので結構な消費をしているのもあり、MPの消費が激しい。

  5階に到着した。この階層までワープ出来るターミナル・ポイントを起動し、試し乗りする。無事1階まで帰還できることを確認するが、やはり残りMPが厳しいということで今夜はタルタロスを撤退。ボス戦は次回に持ち越しだ。

 

 

>4月26日(日)

 あなたのテレビに時価ネットタナカ。は関係ないんだけど、ちょっと聖典買ってきた。ただの本と侮ることなかれ、これを携えているだけで魔法防御力が下手な低レベル防具よりも上昇するのだ!

 何と間違われたのか街でうさんくさい人に話しかけられた。いえ俺別に神とか信じてないんで……

 

 今週のトリッシュの紹介は、ソウルハッカーズのペットショップの人だった。意外性もなく、なんつーか普通。

 

 



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モノレールにも乗れーる

>5月1日(金) 満月まであと8日

 真田先輩が桐条先輩に隠して影時間に誘って来た。チクッておいた。

 ふと思い立って、帰り際にポロニアンモールで有名な喫茶店に寄る。原作ではここで過ごすだけで「魅力」が上がる効果があった、毎日通えばこれで俺もモテモテだ!

 

 (魅力への絆が少し上がった)

 

 ……1点だけて。一ヶ月毎日通ってようやく30……そこまで金に余裕がないので諦める。

 

 

>5月3日(日)ゴールデンウィークと休みが重なると悲しい  満月まであと6日

 あなたのテレビに時価ネットたなか。マッスルドリンコを2本で20マッカ。安いといえば安いが、効果はランダムだからなぁ……でもついついポチってしまった。テレッテか真田先輩にでも飲ませるとしよう。特に真田先輩ならマッスルと名がついてるだけでプロテインかと思うんじゃないかしら。

 それと今夜再びタルタロスに挑むようだ。今回は鳥型ボスシャドウから。

 

 >5月3日 影時間

  鳥型シャドウ(悪魔)は剣に耐性があるのもそうだけど、【羽ばたき】スキルを持つ奴も多いから衝撃弱点のテレッテは危ないんじゃね?とは思いつつも、どう説明したものかと言い出せずに、結局フルメンバーで挑むことに。テレッテもやる気だし……やがて来る満月のモノレール戦で調子に乗らない戒めにも丁度良いかも知らんね。

 

  中身は妖鳥ベンヌLv8、同じ8レベルの鳥型シャドウが3体!来るぞ遊馬!

  別にエクシーズ召喚はされないけど、厄介なことに……うすうすと予想はしていたが、3体とも全部ボスである。ボス特性によりHP5倍MP2倍、被バッドステータス率半減および2回行動を持つ。幸いにして妖鳥はレベルの割にステータスがちぐはぐなことで名高く(速が高めなのに格闘スキルばかりだったり、力が高めなのに射撃や魔法スキルばっかだったり等)、能力は控えめだが……それでもこれだけ手数が多いと数撃てば当たる。

  戦闘開始早々、運悪く【マハザン】が前列に2回直撃し、俺重傷テレッテが撃沈。キタローが前に出るが飛び道具の羽でチクチク刺され重体。しかしテレッテが落ちる前に張った【ラクカジャ】によりかろうじて持ちこたえる。ゆかりっちは【ディア】で怪我を癒やしてくれるができれば攻撃に回って欲しいところである。

  なんとか【気合い】から【ヤマオロシ】をぶちこむが、剣耐性の上からでは大してダメージは通らない。通信で【アナライズ】による解析を終えた桐条先輩から奴は衝撃が弱点との報せを受けるが、衝撃魔法を使えるゆかりっちは回復に手一杯。このままでは不味いと、ゆかりっちに攻撃に移ってくれと頼む。だが回復の手を休めるわけにはいかないと方針転向をためらうが、ここでキタロー。ペルソナチェンジを行う……夜魔インプ!?

  どっから手に入れたか知らないが、新ペルソナで【ザンマ】を放ち大ダメージを与える。これがきっかけとなったか、敵の調子が狂ったように攻撃が失敗し続け、対してこちらは【ザンマ】クリティカルで1体瞬殺する幸運に恵まれ、2体落とす。残り1体になって相手も死に物狂いと暴れるが、絆スキルと命運で凌ぎ、とどめを刺した。

 

  満月の大型シャドウよりタルタロスのボスのほうが強いことが多いのは知っていたが、これほど厳しいとは思わなかった。予想以上の激戦で、ここからの探索続行は不可能だとして先の撤退したが、奇しくもキタローの、ペルソナを交換できるワイルドの強みを見せつける機会になり、桐条先輩が通信先でブリリアントと驚く声が漏れる一方、早々に倒れたテレッテが悔しそうな表情をしていた。あ、これはモノレールで暴走するフラグが立ったな。

  ゲーム原作ではこの階に何か高価な消費アイテムが落ちてた気がするけど、見当たらなかった。良い臨時収入になるのに……

 

  7レベルにアップ。【会心】を習得……原作ゲーム以上にクリティカルの恩恵が大きいので、TRPG版だとクリティカル率上昇は高レベルでは必須なのも、剣士が強い理由の一つ。

 

 

>5月6日(水) 満月まであと3日

 前回の影時間はかなり苦戦したようだけど、そろそろ疲れも癒えてきた頃。

 リーダーのキタローに行かないのかと尋ねたが、シャドウの動きが不安だからもう暫く力を蓄えていてくれと言う。……満月に備えろということだろうか?原作ではエリザベスから満月までに行ける範囲の最上階で資料を手に入れる依頼されてたと思うけど、スルーする方針なんだろうか。

 桐条先輩、真田先輩らもここ最近シャドウに襲われて無気力症を発症した「影人間」が増えてきているという。次の大型シャドウのプリーステス、あるいはその取り巻きシャドウが活動し始めたようだ。この時点で満月とまでは分からずとも、何か起こりうると皆警戒しているようだ。

 でも真田先輩、まだ調子戻ってないのにこっそりシャドウ退治に行こうとするのはダメです。

 

 今のうちにブレーキの位置をゲームで学んでおく。

 

 

>5月9日(土) 満月

 今日は大型シャドウの出る日だ。ただ、出る場所、出る時刻は分かっていることだし昼間のうちに下準備を整える余裕は十分にある。

 クラスメイトの再三のカラオケの誘いを断り、交番でディスチャームを購入。確かプリーステスはマリンカリン使いでもあったので、万が一の備えがあって損はないだろう。火炎弱点は俺ではつきようがないからどうしようもないけれど、【気合い】【ヤマオロシ】で素で2倍出せばどうにでもなろう。

 

 夜、影時間になる前に巌戸台分寮の方へ向かうことに。

 

 >満月の影時間

  影時間前に寮へ到着。

  寮1階のリビングで暫く待つと、桐条先輩から大型シャドウが現れた報せを受ける。俺がいたことに驚きを受けるが、丁度一ヶ月近く今日あたり何かあると踏んだので、例え予定が外れても毎日来るつもりだったことを伝える。まあ、ホントは分かっていたから来たのだけど。

 

  桐条先輩から出現場所であるモノレール駅にて先に待機し、先輩が通信用機材とともにバイクで駆けつけたので行動開始。真田先輩は怪我の療養中ゆえ寮で控えている。

  影時間中はちょいとした道具を組み込んだ特製品以外の電子機械は基本動かないため、安心して線路上を歩きシャドウが潜んでいるモノレールに到着。深夜で乗客の少ないモノレール内を探索開始。だが気配のないモノレール内にテレッテがしびれを切らし一人突撃、追いかける前に潜伏していたシャドウから足止めを食らう。

  なんとか退けるも、直後モノレールが動き出す。桐条先輩から通信が入り、大型シャドウが悪さをしているらしく、急いで撃破し電車を止めなければ大事故が発生すると伝えられる。

  制限時間は残り9分。時間にして18ターン。時間は無いが、今から急いで大型シャドウを倒せば間に合……ん?電車が動くのって原作だとテレッテ合流後じゃなかったっけ?

 

 

  やべ、足止めのシャドウが邪m

 

 

 

 

 

>転生元日@4回め

 プリーステスに到達するも停止が間に合わず激突事故、衝撃のダメージかはたまた気絶中にシャドウにとどめを刺されたかで死んだようだ。

 原作だと割りかし簡単に倒せた印象のあるプリーステスだが、ディスチャーム買ったのに魅了と読み間違えて【プリンパ】放たれたのはともかく、女神転生仕様で後列にいるため俺の格闘攻撃が届かなかったり、なんで【大冷界】なんて撃ってくるんですかねぇ……防御点無視で瀕死だったテレッテが倒れたり、ゆかりっちが即死しかける等で立て直す間にタイムオーバーしてしまった。

 

 特に成長していないのでニヤニヤあんどプギャーと指差してくる女神を殴りたくなる気持ちを抑え。女神曰く、なるべく原作を踏まえた敵が出てくるが全てのボスはその限りではない。特にスキル等システム関係が女神転生と違うペルソナ3に限っては、TRPG仕様でボスが大きく調整されるとのこと。主に原作で戦わないマジシャンとか。うぐぐ……まあ原作通りの性能で出られると、真3仕様の40上限のステータスとか無視して余裕で5能力値カンストしたシャドウばっか出られても困るから仕方ないが。

 原作といえば、なんで影時間の記憶が残らないのかと問うと、簡潔に「ペルソナ使いでも影時間への適合者でも無いから」とのこと。異能者とは別の才能が求められるようで、ちゃっかり経験点を消費してのリストに乗っていた……1回で以降ずっと永久的に適用されるとはいえ、これにも100点必要なのか。

 なんとか今回の分83点と、前回溜めた23点と合わせて106点得たので支払うことは出来るが、それよりも先に覚醒段階を増やすことが優先である。次回スタート時の経験点に余裕は無くなったが、これでようやくクラス2つを得られるようになる。

 

 少し考えたが、そろそろ悪魔使いとなるべく剣士からサマナーに転向することを考慮し、MPを増やせるクラスになることにした。だが、最大MPを増加する【魔脈】スキルを獲得するクラスの多くは悪魔か悪魔混じりか魔法系クラスばかりで、ソロでスタートする場合は防御に不安が残る。

 そんな中で防御問題を解決し、更に【魔脈】を獲得するし、火力も解決可能な便利クラスがある。

 アウトサイダー、悪魔変身能力者。ほぼTRPGオリジナルだが、女神転生関連の原作ではアバタールチューナーの「喰奴」が近い。ただし宿す悪魔は悪魔合体することが出来るし、変身中はHPMPを除き完全にその変身悪魔のステータスおよびスキルを用いる、ただし合体を除いて基本的に変身する悪魔は固定など、むしろ原作ペルソナ3・4シリーズのワイルドとアルカニストを足して割った能力に近い。

 そしてこのアウトサイダーとサマナーを組み合わせたキャラクター、女神転生TRPGでは屈指の強キャラを誇る構成である。

 

 




「プリーステス」のデータ(200X相当で自作)
怪異マジシャンLv15  力10魔15体10速8運10  HP750MP240(ボス補正込)  氷結反射、火炎に弱い
【ウィップアタック】【マハブフ】【プリンパ】【大冷界】【エレメンタルスラッシュⅡ】【※手下召喚】【デュアルモード】【格闘武器(鞭)】【一分の魔脈】

手下召喚は補助動作で1ターン1回、夜魔アルプのシャドウを召喚。無限回使用可能、経験値マッカは倒した分だけ手に入る。
また既にアルプを2体召喚した状態で、後列からスタートする。


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四キャラ目(悪魔変身サマナー)
TOKYOミレニアム


デスループというほど頻繁に死に戻りをしていなかったので、タイトルを「真女神転生200Xデスループもの」から変更しました。



>ここから俺のイケメン街道が始まる……!予定日

 契約悪魔もろもろ初期プリセットを決定後、女神が転生先を例によってサイコロを振っていた。出目は3、まだ行ったことのない世界の出目だ。あいつが微妙な顔をしていたあたり、ボルテクス界ほど酷い世界では無いようだ……正直まともな装備も買えない世界とか下手しなくても積みうるから助かる。

 

 

>真サイバーパンク転生

 目が覚めたらコロシアムのグラディエーターだった。

 

 グラディエーターというと古代ローマを思い浮かべるが、それほど古い世界ではなく、むしろ現代より数十年後の未来世界ですらある。時代は現代を超えて近未来にまで電子技術が発展し、サイバーパンクとなったTOKYOミレニアムの世界である。真・女神転生2、かつてICBMを打ち込まれて滅んだ日本が、ノアの方舟の逸話に習って大洪水を経ることで、悪魔の蔓延がリセットされほぼ唯一残った大聖堂の浮き島カテドラルに残った人間が第二のTOKYOとして再興させた日本の姿だ。

 1990年代の、やや古臭い近未来の香りがする電子電脳機械に囲まれたこのミレニアムは、5つのエリアに大きく分けられる。北側には敬虔なメシア教徒(いわゆるキリスト教徒の一派だが、メガテン世界では世界最大の教派となっている)のみが住める「ホーリータウン」、南側にはミレニアム全体の食糧を生産する「ファクトリー」、東側にはメシア教会が完全な実現を目指すための取り組みである全くもって“平和”な実験エリア「アルカディア」、中央にはミレニアムを管理する官僚やテンプルナイトが務める「センタービル」がある。そして最後に今俺がいる場所が、この西側にあるセンターやホーリータウンから脱落した、あるいは敬虔でない人間の掃き溜めとなるスラム街「ヴァルハラ」である。

 

 ヴァルハラエリアでは、日雇いで稼げる金だけでも最低限の衣食住生活を送るくらいには平和だが、低級市民は調味料で味をごまかしたゴムみたいにクソな味のジャンクフードに、極端な赤・黄・黄緑にピンクとド派手で目が痛くなるような原色の上下衣服、鉄板やプラスチック板そのままの硬いってもんじゃないベッドしか満喫できない。上級市民でさえも、味は確かによろしいが、そのせいかレシピのレパートリーが完成されており、ファミレスのメニュー冊子1冊に載ってる程度の食事しか存在しない。もっと多彩な食事を食べたいと思うと、ヴァルハラエリアを出てセンターかホーリータウンにしか行かなければ味わえないのだ。

 幸いなことに、俺は羽田ジム……原作で主人公である「ホーク」(アレフ)とコロシアムの優勝をかけて争う、最初のボス「レッドベアー」が所属するグラディエーターと同じジムに所属しているようだ。転生特権の学生の身分はどうしたと思いたくもなるが、こんな世界なら学校なんて滅多にあるもんじゃないし仕方ないのだろう。ともかく、そのおかげで訓練所には事欠かない。

 最新スペックのヴァーチャル・トレーナー訓練機を無料で使わせてもらい、悪魔を模した電霊と戦いを日夜繰り広げる。訓練で死ぬことも消耗することもないため、毎回全力を出し切って電脳ダンジョンを攻略していれば、ボルテクス界で苦労したのが嘘であるかのように、あっという間に5レベルになってしまった。サマナー解禁である。

 

 

>サマナー覚醒を目指す日

 5レベルになった後も、たびたびヴァーチャル・トレーナーに潜っている。時には羽田から小遣いをもらい、他所のジムのヴァーチャルトレーナーを借りに出かけることもある。目当ては一つ、この時期にヴァーチャルトレーナーに出没しホークに悪魔召喚プログラムDigitalDevilSummoning-programを渡そうとする、その開発者スティーヴンに接触し俺もDDSを獲得するためだ。

 DDSを起動させるCOMPデバイスはきちんと先に入手しておいた。外付けデバイス型のコンピュータよりも、埋め込み型のICチップやサイバーウェアがありふれた世界で入手するのに苦労したが、そういった埋め込み機械は悪魔変身により肉体が変化する俺とは相性が悪く、最悪装置が外れてしまう可能性もあるので仕方ない。なんとかアクセサリ扱いのCOMPを(本来、貴重品で「非売品」であるはずなのに)格安で入手出来たのが不思議だが、やがてサマナーに覚醒するフラグの前段階なのだろうか。

 ともかくスティーヴンを探してヴァーチャルトレーナーを渡り歩く俺だが、成果が得られないままそろそろうちのレッドベアーと無名の新星ホークが戦う前情報を聞き、時期的に羽田ジムが失墜すれば身動きが取りづらくなってしまうと焦り出した矢先、ついにスティーヴンと接触した。

 

 

>念願のDDSを手に入れた日

 スティーヴンからDDSをもらい、サマナーに覚醒!あんどレッドベアーが敗北し、ホークが所属していた岡田ジムに羽田ジムが乗っ取られました。最近はレッドベアーに依存し、他の育成を怠っていたツケが回ったんだから仕方ないね。

 DDSのついでにスティーヴンに便宜を図ってもらいたかったけど、この時期のあいつは動く気が無いようで断られた。ヴァルハラエリア脱出くらいは手伝ってほしかったんだけども……。

 

 第二の新星として羽田は俺を頼ろうとしてたけど、この先ヴァルハラにいると大変なことになるので断らせていただいた。ホークが実はセンターで生まれた次世代メシアのアレフだとかなんだかと判明した後、各地で悪魔絡みのテロが起こりだし、その一環でミレニアムが悪魔ごとヴァルハラを切り離し、最終的に魔王アバドンの体内で消化される運命にある。街ごと滅びたくなんか無いよ俺。

 例えもしヴァルハラエリアを脱出出来たとしても、原作ルートによってはミレニアムが焼きつくされたり崩落したり、どの勢力に就くか(就かないか)で変わる3ルート中2ルートでTOKYOミレニアム一帯は全滅する運命にある。それを避けるためには魔界、もしくは地下に残されたカテドラル以前のかつての東京あたりに引きこもるしかない。

 

 できればニュートラルルート、もしくは崩壊がミレニアムだけで済むカオスルートに主人公らを誘導したいが……そうするとどのルートだろうとも最終的に四文字ことメシア教の唯一神と相対するハメになるんだよな。化身とはいえ、かなりの力を持つ唯一神と相対して果たして転生者である俺の魂は無事にいられるのか。確かアレフって呪われて死後の魂が酷い目にあうって与太話を聞いたんだけど、それ転生しまくってる俺にピンポイントで特効じゃないですかねえ……。

 そういう理由があるため、あまり積極的介入はしたくない事情がある。頑張ればルシファー閣下やサタンくらいなら多分倒せなくはないんだが。

 

 そうそう、スティーヴンからもらったDDSだが、マグネタイト収集機能およびマグネタイト消費しての召喚に対応していた。原作では当然のシステムだけど、TRPG版の初期は自らのマグネタイトともいうべき命運をひねり出して召喚しなければならない、かなり非効率な召喚しかなかったのでありがたい。マグネタイトは魔界でも共通して使える貨幣マッカの代わりに入手するが、マグネタイトを売却して手に入るマッカは普通にマッカを入手するよりも効率が良いので収入面でも美味しい。俺TUEEE街道始まったな!

 

 

>先生!お願いされます日

 スラム街に近い、893連中に腕っ節を見込まれて雇われた。Ten-DO組とかいうどっかのデビルサマナーで聞き覚えのあるような893者だったが、精神は臆病ものな俺でも腕っ節を尊敬してきちんと応対してくれるので意外と付き合いやすい。

 なんだ893連中って良い奴らじゃん!

 

 敵対893組織との抗争に駆りだされては、ゴブリンに悪魔変身して悪魔の腕力で殴り殺してまわる日々。異能者ですらない人間はせいぜい3レベルにも満たない連中ばかりだから、相手が楽でいいねえ。

 

 

>どおれ日

 今回もまた抗争に駆りだされたんだが、アジア系多神教を崇めるガイア教と手を組んでて、悪魔がめっちゃわんさかしてた。ブラウニーとかガキ、あと邪鬼グレムリンといった雑魚悪魔ばかりだったのでまだ問題なく倒せたが、ガイアーズ(ガイア教徒の通称)である傀儡師が出てきた時は精神魔法で行動不能にされて少しやばかった。

 初期仲魔のピクシーちゃんが頑張って【ディア】で回復してくれたり、【ジオ】でふっ飛ばしてくれたから無事倒せたけど。そろそろ変身悪魔の更新や、仲魔の強化も考えなくてはならないな。幸い今回の抗争でレベルも上がったので、地霊カハクくらいなら作っても良いかもしれない。ピクシー経由ならディアも習得させられるけど、この低レベルで

そんな合体ルートあったかな……

 

 そうそう、倒したブラウニーをこっそり【カードハント】(※)しておいた。200Xは悪魔が手に入れやすくていいよね!

 

 

>衝撃だけどある意味当然の事実が分かった日

 妖精×デモノイドで地霊が作成可能だったけど、素材悪魔のレベルがぎりぎりオーバーして1ランク高い悪魔しか作れなかった。【ディア】も【ラクカジャ】も出来る、歌って踊れる女の子悪魔地霊カハクちゃんが作りたかったのだが……しょぼーん。

 別に経由する悪魔カードは自分のレベル以下でなければいけないというルールはないので、精霊を使って無理矢理ランクダウンさせてでも作る方法はあるのだが、そこまでする金はないため仕方なく当分はピクシーちゃんのままで居ていただく。

 変身悪魔をブラウニーと合体させ、妖鬼アズミLv13に変更。アウトサイダーは「自分の現在レベル+5+(運能力値÷5)」レベルまでの悪魔が作れるおかげで序盤の低判定値に悩まされることないのが救いだ。絆スキルや各種スキルと組み合わせると更に13レベルほど跳ね上がることもあり、時折りシナリオのボス悪魔よりも変身悪魔の方が格上になるのはアウトサイダーあるある話。

 

 それより、邪教の館で素材となる悪魔カードを購入(※)できないか尋ねている時、ミレニアム特製の人造悪魔デモノイドが扱われていることが分かった。どうやらファクトリーエリアと密輸するルートを彼らが独自に持っているらしい。

 ファクトリーエリアには地下の旧東京へ繋がる洞窟があるはずだ。このルートに潜り込ませてもらえればうまく地下へ逃げ込めるかもしれないと思い、暫く邪教の館通いすることを決定した。

 

 

>危険が危ない日

 俺が雇われてるTen-DO組のボスの女が俺を誘惑してきてる。性的な意味で。

 ミレニアム特有の化粧やきつい香水が濃くてキツイとこはあるけど、俺好みの胸がたわわな女性。思わず手を出しそうになるけど、手を出してバレたら絶対ボスと敵対だよな……割りと美味しい思いできてる現状を変えるのは流石に尻込みするわ。

 かといってボスに告げ口するのも、この人が処分されるかもしれんので、保留ってことで。

 

 

>三日と持たなかった日

 バレなきゃいいよね!

 

 

 

 

(※邪教の館では、真・女神転生3以降にある悪魔全書のように悪魔を直接購入することが出来るのだが、作ったことがある悪魔という縛りがなく、なんと扱えるレベル以内の悪魔カードならだいたい無制限に買えるのだ!)

 




 ※悪魔カードや【カードハント】について
 女神転生TRPGでは、悪魔とのTALK交渉により仲魔にすることが出来るのは原作ゲームと同じだが、直接その悪魔を仲魔にするのではなく、そのやり取りは悪魔カードという分霊……分け御霊とも言うべき悪魔の一部を介する形で契約する。メタ的に言うなら、COMPやらを持たず直接仲魔にする力を持たないアウトサイダーや、サクセサー(魔晶武器使い。原作でもあった練気の剣に悪魔をぶちこんで強化して使う奴)のためにカード形式になったものと思われる。

 だが、TRPG版では更に交渉をせずとも、【カードハント】あるいはペルソナ使いの【シャッフルタイム】というスキルにより、倒した悪魔に応じた悪魔カードを命運の消費により直接入手することが出来る。そのせいで、悪魔を交渉して仲魔にするよりもむしろぶっ倒して経験点とマッカごと悪魔を手に入れる方が手っ取り早いという酷い話になっている。
 しかも【カードハント】スキルには特に制限がないので、合体不可のメシアンやガイアーズといった人間、果ては合体不可の魔人や神霊といったボス悪魔もハント可能だったりするが……この話では合体コードを持つ(合体素材に使用可能な)悪魔のみカードハント可能と裁定する。魔人は後期サプリにより合体作成可能になったのでハント可能とする。


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最序盤のボス

>僕にも恋人が出来ました日

 ………………やってしまったことは仕方ない。ヤったこととかけているとかでなく。

 幸い、Ten-DO組の誰にもバレてないようだし素知らぬフリで隠せば先日の過ちは無かったことに出来るだろう。

 

 俺と関係を持ったボスの「元」愛人は、アリス・リデルさんと言うそうな。メガテンでアリスというと某魔人化した少女が真っ先に出てくるが、この人は間違いなくそれとは無関係。本来は真・女神転生1の大破壊後に、海賊ラジオ放送局を流しているTRPG版オリジナルNPCだ。何故大破壊後の人物がこのミレニアムにも存在するのか知らないが、きっとあの転生女神の仕業でないだろうか。転生特典のリストに、死亡時に持っていた絆を引き継ぐというものがあった。だから桐条先輩との絆を持ち越していれば、この世界でもその絆が使えるように桐条先輩(と似通った人物)が存在するのではないだろうか、と考える。憶測でしかないので、このあたりは次に死んだら奴に確認を取る。そうそう死ぬつもりはないが。思い出したが、Ten-DO組もデビルサマナーに登場した天堂組と同じなのかな、やっぱり。

 話を戻す。アリスさんとは事後に色々喋り合ったが、異形の悪魔を平然と退ける俺の実力にボスよりも惚れてしまい、声をかけようと思ったそうな。声だけじゃないのですが、話してみると思ったより魅力的な人物で云々と言っていたがどこまで真実なものか。彼女の

 服を整えて別れる時、彼女が胸元に飾る百合のコサージュが気になった。

 

 思い出した。この時代で百合って四大天使の一、ガブリエルの秘密組織の象徴じゃなかったか?

 いや、ただの偶然という可能性もあるし……それに確か百合の組織は救世主アレフの動向を把握するのが目的で、こんなスラム街にいるような連中じゃあるまい。ストーリーの流れ上、アレフはスラム街に寄るけど捜索対象が偶然ここに流れ着いただけだし、そこまで動向を読んだわけではないだろう。うん、考えすぎだな。

 

 

>こんなことしてる間にも原作は進んでゆく日

 スラム街に、本格的に悪魔が湧き始めた。これまでにも頭がハイになった妖精ピクシーLv4や地霊ブラウニーLv4、屍鬼ゾンビLv3みたいな小者悪魔を見かけることはあったが、今や悪霊ゴーストLv8や屍鬼ゾンビドッグLv10、凶鳥チョンチョンLv9といった高レベルな悪魔が出没するようになった。身内が悪魔に狩られることも増え、図らずも自警団のごとく悪魔を退治する治安維持行為をTen-DO組が行うことに。

 突然悪魔が現れた事情だが、恐らくミレニアムの本拠地センタービルから逃げ出した、科学者花田が魔界への門を開く試みを行ったのだろう。メシア教の手によって浄化・聖別され、悪魔が出没しにくくなったミレニアムも色々内ゲバで弱体化しつつある。一度魔界の門が開いたことでメシア教の聖別を突破して魔界の瘴気が流れ込み、悪魔が出現しやすくなったのが原因だ。魔界の門自体は儀式の失敗により開通は不十分、勝手に自閉したのでこれ以上の悪化は無いし、儀式を試みた花田は湧いて出てきた悪魔に食い殺されているため、儀式により再び魔界の門が繋げられることはないだろうけど……この事態が起こったということは、真・女神転生2の主人公アレフは順調にストーリーを進めているということだ。彼が一通りミレニアム全体を回った後、やがてこのヴァルハラはアバドンに食べられる運命にある。それまでに脱出しないとヴァルハラごと消化されてBAD ENDだ。早くヴァルハラからの脱出手段を手に入れなければ。

 

 

>だが悪魔退治の日

 ゾンビドッグの経験点うめえwwwww

 やたら強い敵が数多く出るため戦闘は苦労するが、アウトサイダーでレベルの高い悪魔に変身できるおかげでさほど無理ゲーでは無かった。その割に経験点は独り占め出来るためレベルが上がること上がること。

 あっという間に8レベルである。

 

 

>ぬっぺらぼーと言われても違和感はない日

 最近ちょっと悪魔が多くて変身を多用しすぎて連戦が辛い。ただでさえマグネタイトに余裕はないのに、戦闘ごとに命運を消費するのはちょっとどうかと。

 なのでせっかくドリーカドモンを拾ったのだから造魔(※)を作って【造魔召喚】スキルを得ることにした。いや、正しくは【造魔召喚】スキルを得たからドリーカドモンを拾ったのだが。

 邪教の館でマグネタイトを売り払って得た悪魔カードを合成、妖精ゴブリンに妖樹ジュボッコをくっつけて【物理耐性】をもたせた即席前衛の完成である。俺の変身先悪魔、妖鬼アズミと共通して火炎に弱いのは厳しいが、【水の壁】で弱点打ち消しに回る手段はあるのでなんとかなるだろう。

(ややこしいが、【物理耐性】は物理攻撃への防御力を高める常時発動のスキルであり、真・女神転生3から登場する「剣・ガンに強い」相性を半減する【耐物理】とは別のスキルである。ただし物理防御力は剣・ガン相性のみに適用されるので、実質【耐物理】の下位互換に近い)

 

 コストが不要だからと俺自身のボディガードとして常に造魔を召喚しているのだが、その何が起きても無表情なところからTen-DO組の下っ端に第二の「センセイ」と崇められていた。確かに前衛系だし腕っ節は強いが……まあ突っ込みはいいや。

 

 

>討ち漏らし疑惑の日

 悪魔が集まって組織化し出している場所があるとのことで、Ten-Do組恒例のスラム自警団紛いの活動を再開。カチコミをかけるが、思わぬ強敵、妖魔メルクリウスがいた。お前花田を食い殺してアレフに倒されたんじゃなかったのかよぉ!

 真・女神転生2ではレッドベアーに次ぐ最序盤のボスとして登場するメルクリウスだが、TRPGでは23レベルとやたらと高い。堕天使オリアスもそうだが、原作序盤に出る悪魔が何故こうもTRPGでは強く、原作再現をさせる気は無いのかと問い詰めたくなる。

 

 70ダメージオーバーのザンマをぶっぱされて危うく死にかけ、こないだ悪魔からドロップした「くらましの玉」(煙玉みたいなもの)を使って下っ端ともども逃走する。俺も強くなったが、流石に無対策のソロで高レベルボス悪魔を相手にするのは無理。

 逃げ帰ったことに親分からため息をつかれ、アリスさんから若干失望したような眼差しを向けられるが近いうちにリベンジするとその場で誓った。放っておけばすぐにでも悪魔がスラム街の人間を襲い出すのは目に見えているし、俺のレベルが上がって余裕になるまで待つことも出来ない。だから今このレベル、状態で出来る限りの手を使ってメルクリウスを倒さなきゃならないだろう。

 自分の実力、努力、そして知識がそっくり反映されるこの状況。まさに俺好みである、燃える展開だ。ちょっと本気出す。

 

 

>作戦会議の日

 聞き役のためだけにピクシーを召喚し、作戦を組み立てる。

 ボスなので完全ではないが、通常雑魚悪魔としてのメルクリウスの基本データをCOMPでアナライズしたためステータスは知れている。HP1050、MP320。ボスによって追加されたスキルは分からないが、奴は「BS(バッドステータス)に強い」相性を持つため弱点はなく耐性もないが、【魔法耐性】スキルにより魔法防御点はかなり高い。BSは、そもそもボス特性で半減されるので初めから滅多に効くものではないため、期待すべきではないだろう。

 攻撃面については、主な攻撃手段は衝撃相性の攻撃魔法【ザンマ】のみ。他には相手全体をCLOSEにする【マカジャマオン】、PANICにする【怪音波】、それと物理攻撃力と命中・回避率を同時に上げる【パワーブレス】……あとは素手攻撃くらいで、衝撃相性さえ対策を取れていればダメージソースとしては頼りない素手攻撃のみということ。特にそれ以外の攻撃スキルが追加されている気配は無かったため、あるとしても【死門の流氷】のような乱発出来ない奥義だろう。

 

 仲魔の衝撃対策によさ気な悪魔を探す。現在9レベルなので、使役出来るのは9レベルまでだが、作成出来るのは命運上限値と地味に溜めていた契約悪魔への絆レベルを足して、15~16レベルまで。かといって回りくどい合体をするほど金に余裕があるわけでもないし……先に金策から考えるか。

 

 まずはTen-DO組に良さ気なアイテムを用意してもらいます。

 次によろず屋でそれを売ります。以上!

 

 

>ゴリ押しの日

 逆に考えるんだジョジョ。衝撃相性対策とか、BSに強いとか警戒する前に殴りきればいいんだって。

 造魔に邪龍カダを合成、これにより「衝撃に強い」を得て不沈艦の完成。および【巻きつき】を習得し、メルクリウスがBSに強かろうが、ボス特性で更に半減しようが、10%を何度も撃てば引っかかる。

 で、BINDしたらすかさず俺が殴って自動的にクリティカル。上手く決まれば一発150は削れる。そこに更に邪教の館の主からせしめた神威――絆スキルの使い方の一種みたいなもの――【因果応報】により、1発限りで敵のザンマを弱点扱いで反射して約200ダメージほど与える。残りのHPはひたすら地道に削って削って削りまくる。

 長期戦は不利なように見えて、変身悪魔の妖鬼アズミを魔獣カブソと合体させ妖獣バイコーンにしたことでステータスが上昇、防御力が上がり更に変身悪魔と結んだ絆効果により【魔法耐性】を取得。衝撃相性への耐性がなかろうが自前の【ラクカジャ】を重ねることでザンマでも一発20ダメージ程度に抑え、乱数2発程度に抑えることが出来た。

 じわじわと削り倒す形になったが、意外とあっけなく倒せるものよ。

 

 9レベルから15レベルに上がった。地道に成長していく過程を2段階くらい飛ばした気がする。

 おっとドロップアイテムの【宝探し】運判定がクリティカル。……ラウリンの指輪、だと……?

 




※造魔とは、デビルサマナーシリーズに出てくる、ドリー・カドモンという人形を核に悪魔を吸収させて作成する人造悪魔である。女神転生200Xではサマナー系クラス専用の【造魔召喚】スキル、もしくは「完全造魔」というクラスの形で登場する。

 造魔の見た目は顔の平坦なマネキンみたいな形をしており、意識が希薄で召喚者の命令に従い、殆ど自発的な行動を取らない。召喚や維持にマグネタイトなどのコストが不要、合体に用いた悪魔のスキルや能力をそのまま引き継ぐ特性を持ち、条件を満たせば英雄や猛将といった特殊な造魔になる。ただしTRPG版では造魔からそれら特殊造魔に変化することはない。
 完全造魔はソウルハッカーズに出てくるメアリのように、ただ命令に従うだけのはずの造魔に意識を持たせてより人間らしく、人間に近づけたアレである。その自意識故に仲魔として使役出来ず、プレイヤーキャラクターが持つクラスの一つとなる。
 ルール的にはサマナー系クラスなら割りと簡単に習得(取得)できるのだが、希少なものなのでどちらも滅多に見かけることはない。


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いざ地下へ

合体楽しい。


 

>僕が百万長者になった理由の日

 ラウリンの指輪。腕部位の防具に該当し、防御力は控えめだが魔法の威力が上昇する珍しい防具。実用性はさておき、それ故に価値は4万マッカと非常に高い。だから当然、半額で売っても2万マッカ。

 でもこれだけの金があっという間に消えるのが悪魔合体。

 

 全然気持ちをそそられない造魔はさておき、そろそろピクシーを気に入る悪魔に合体しよう……と思ったが今の適正レベルでは俺好みのむちむち悪魔は怪異ワーキャットしかいない。変身悪魔に造魔にと既に前衛過多なので見送り、妥協して別の女の子悪魔に。

 

 ベースの妖精ピクシーに堕天使ウコバクを合体し、天使ハファザを作成。地霊ノッカーに精霊アーシーズを合体し地霊ファハンを。堕天使ウコバク、地霊ファハンおよび天使ハファザを3身合体すれば、【追加魔法威力3】および【スクカジャ2】、絆スキルで【能力上昇(魔)】でとにかく魔法威力を底上げし、ひたすら【メディア】での回復量を増やすことに特化した霊鳥スパルナLv16の完成だ。費用はお安く、2200マッカ。

 造魔には邪鬼ドンコウと屍鬼ゾンビを合体し、作成した邪鬼ウェンディゴを元に邪鬼グレムリン、デモノイド・オラクルスと3身合体し、国津神を経由して地霊ブッカブーを作成。また妖精ピクシーと堕天使ウコバクから天使ハファザを作り、ハファザと妖精ホブゴブリンから妖鬼スパルトイを作成。造魔に地霊ブッカブーを、そして妖鬼スパルトイを合体し、Lv16の造魔が完成。新たに【不動剣】【会心】の強力な物理攻撃要素、【フォッグブレス】によるデバフ、そして【スクライイング】による情報収集能力、更にスパルトイの耐性を引き継ぎ剣・ガンに強く電撃に弱いと、常時出せる前衛として素晴らしい造魔が完成した。ただし見た目は骨っぽい。費用は4300マッカ。

 変身悪魔には妖獣オキクムシを合体し、とりあえずダーク悪魔から通常悪魔の聖獣シーサーに変換。しかるのち、造魔の時の手順と同様にドンコウ、ゾンビ、グレムリン、オラクルスを2身3身合体織り交ぜて地霊ブッカブーを作成。また魔獣カブソと魔獣ケットシーより精霊フレイミーズを作成。シーサー、ブッカブー、フレイミーズの3身合体により、前者2体が処理されて出来た龍王ノズチをフレイミーズでランクアップされ、龍王ヤトノカミが完成する。剣・ガンに強い、火炎に弱い相性を持つがフレイミーズより【耐火炎】【炎の壁】を習得し弱点補完。【石化かみつき】【魔法耐性】、【不動剣】【フォッグブレス】、また絆スキルにより【能力上昇(力)】で火力を底上げし、造魔と同じく立派な前衛悪魔が完成した。費用は3200マッカ。

 

 更に【デュアルモード】をレベル10で習得、レベル13で重ねて習得しランク2になったことで最大3体まで仲魔を使役出来るように。それに合わせて後衛役の悪魔を追加する。妖精ピクシーをベースに妖精ジャックフロストを加え精霊アクアンズに。妖鳥ベンヌとデモノイド・オラクルスを購入、それとは別途魔獣カブソと魔獣ケットシーを購入し即合体して作成した精霊フレイミーズにオラクルスを合体、デモノイド・スレイヴに1ランクアップ、この際【耐火炎】と【アギラオ】を継承。デモノイド・スレイヴ、妖鳥ベンヌ、精霊アクアンズを3身合体すると、前者2体の合体が処理され凶鳥フケイに、続いてフケイとアクアンズが合体されると1ランクアップし凶鳥モーショボーになる。【耐火炎】【アギラオ】、【メディア】【ディア】、【生得武器(羽)】を継承した攻防多彩な後衛ショボーたんの完成である。費用は2900マッカ。

 

 以上で仲魔、および変身悪魔のスキルと能力を万全に整え、レベル相応の実力は身についたがあっという間に手持ちマッカが半分以下にまで減った。それに合体に手間をかけすぎたと邪教の館の主に怒られた、合体ルート考案だけでリアル3時間もかけて申し訳ない。

 やはり悪魔合体は金と時間がかかる……でも手間と費用をかければかけるだけ強くなれるのが楽しい。

 早く良さ気なむちむち悪魔作りたい。地母神とか鬼女とか、あと女神とか?

 

 更にその他消耗品類を買うと1000マッカしか残らなかった。流石に使いすぎたかも。

 

 

>情報収集シーンの日

 メルクリウスの撃破を機に、悪魔の活動は目に見えて落ち着いた。20レベル超えの大物は早々いないようで、時折り15レベル前後の悪魔が現れるがボスではない。Ten-DO組が最近センターから流れた中古の「マシン」を手に入れたこともあって、その程度の悪魔なら異能無しでも自力で沈静化出来るように。

 余裕が出来たため、ヴァルハラ脱出に向けて邪教の館の主と交渉するが反応は著しくない。中立を保とうとするだけにメシア教の法に反すると分かってて、無理に手を貸す気はないようだ。その代わり、ストーカーたちと知り合った―――名前を聞くと変質者みたいだが、旧時代の遺物を発掘するいわゆる遺跡漁りのことである。彼らは大破壊後から続く東京をメシア教が制覇しても、ミレニアムの地下にはまだまだ悪魔が蔓延っていることを知ってるので、前時代から続く対悪魔のノウハウを忘れずに残し持っている。ある意味でメシア教のテンプルナイトよりも経験を積んでいるが、残念ながら異能者の割合は少ないため勢力としては弱い方なのが残念なところだ。

 話を進め、今度彼らの発掘作業に同行出来ることになった。場所はこのヴァルハラエリアの一角にある地下世界へ繋がる通路だが、常に闇で覆われているダークゾーンが存在、悪魔も潜伏する危険な地域であるから普段は使えないルートだそうな。普段はもっと安全な通路を使うのだが、悪魔と戦える異能者がいるならば新規ルートから開拓する方が未発見の遺物も多く、実入りが良いんだと。俺への分け前は1割とかなり少ないが、彼らから秘密のルートを教わる情報料も含まれていると考えれば、それだけの情報を金で買えたと思えば安いものだ。

 

 ところで、彼らは時に悪魔と交渉・交流することもありメシア教から異端認定されているものと思っていたのだが、意外なことに彼らはミレニアムと付き合いが良いらしい。それもそのはず、遺物の売り先で最もお得意様なのはセンタービルで旧時代の技術を再生しようとする科学者たちであるからだ。それに地下世界の悪魔とは交渉するより襲われる方がずっと多く、自衛のために聖水やお守り、天使の破魔の加護は多くの悪魔に覿面だし、メシア教がセンタービルで開発している最新鋭の武器やマシンは欠かせないため、並のメシア教徒よりも神への信仰心はとても厚いんだそうな。

 

 

>続・情報収集シーンの日

 Ten-DO組の親分にストーカーの依頼の件を話し、暇を貰いたいと話をつける。近頃の悪魔増加から、ヴァルハラが危険になりつつあることを薄々親分も感づいており渋りつつも許可をくれた。支度をするため組合事務所を出ようとしたところで、アリスさんに話しかけられる。関係がバレると困るのだから人目につくところで接触するのはやめてほしいのですが……。

 話の内容は次の逢瀬のことでした。ストーカーの依頼が終わったら、一度戻るのでその時にダウンタウンの安宿で落ち合おうと申し出た。ついでに、Ten-DO組事務所とは別の住居を取っておこうと思う。幸い金はまだまだ残ってるし、住居1つ借りればこれからの逢引も楽になるだろう。うん、向こうに支障がなければ同居するのも良いな。終わった後にそれも聞いてみよう。

 

 ダークゾーン解決に【ライトマ】持ち悪魔を仲魔に探すが、思ったより持っている悪魔が少ないし、レベルが届かない。コスパは悪いが、仕方なく光玉を数個購入して解決。またダウンタウンのBARに立ち寄り、ホーリータウンやファクトリーエリアの噂を集める。聞いた話だとファクトリーエリアでデモノイドの暴動が起こっているらしく、食料の配給が滞りがちらしい。ホーリータウンの悪い噂は特に無い……情報が入ってきていないだけか、それとも原作と違ってファクトリーエリアが先なのか。メルクリウスの能力がTRPG基準だったことを考えると、堕天使ベテルギウスより魔王キングフロストのほうがレベル高くなるので、その関係もあるかもしれない。

 ……あれ?そういえばセンタービル元老院で中盤のボスになる四大天使(ただし1体足りない)って、TRPG基準だと真女神転生1のラスボスデータだから偽四文字より強いんだけど。アレフはあいつら倒せるんだろうか?

 

 

>地下世界へGOの日

 ストーカーと約束した日になったので、ダウンタウンで合流し、柵が壊れた出入り口から下水道へ。臭いのを我慢し、パイプの間を通り抜けると、やがて下水道に入った亀裂から下にトンネルが続いている。どうやらここが地下世界へ繋がる例の危険なルートらしい。

 ここからは悪魔が出没するそうなので、造魔を従えながら最前列を進む。ダークゾーンに突き当たったので、早速光玉を使用して道中を照らしながら地下世界の入り口を探す。時折り悪魔が出現するが、やはりミレニアムの管理下から外れているだけあってヴァルハラよりも悪魔が強い。堕天使ガギソンLv15や悪霊ポルターガイストLv17、更にはこの前倒した妖魔メルクリウスLv23まで出てくることも。幸い、ボス格の強さを持つ悪魔は出なかったし、それに以前よりレベルアップしてることから最早【ザンマ】1発で死にかけることもない。

 だが悪魔が強いだけあって正面からの殴り合いは少し厳しい所がある。雑魚払い用に【ハマ】が欲しいところだ、地下世界に到着したら邪教の館で新規作成することも考えよう。

 なんてことを【石化かみつき】しながら思うのであった。石化って呪殺相性のBSだから、呪殺無効な大概のダーク悪魔には効かないんだよね。

 

 雑魚悪魔は楽なんだけど、変身するたびにMAGを消費してるもんだから辛い。倒した悪魔から手に入る分とトントンなんだけど、それはつまりマッカの代わりに手に入るMAGの収入が無いってことである。カードハントや【宝探し】のドロップアイテムで僅かながら稼いでるけど、1回で何千マッカと飛ぶ悪魔合体するのに十分な額ではない。

 

 

>地下世界到着寸前の日

 土質からそろそろ地下世界に近づいたとストーカーさんが言い出した直後に、堕天使ベテルギウスとエンカウントした。ついつい倒しちゃったけど、お前もしかしてファクトリーエリアで悪さしてた奴じゃないよね?アレフの仕事奪ってないよね?

 奴はレベルが上なだけあってメルクリウスより強いではあるけど、主な攻撃手段が火炎一辺倒なおかげで、【耐火炎】継承して火炎に強い俺には正直そのへんのポルターガイストの方がよっぽど苦労した。あいつら物理に強いもんだからロクに攻撃通らないでやんの。

 

 19レベルに上がった。ちょっとレベルアップのペース早くね?と思ったけど、普通なら4人分の経験点独占してるんだからそれもそうだわ。

 

 

>旧き懐かしき日本の姿を見たでござるの日

 念願の地下世界に到着したぞ!

 つい先日習得した【マッパー】で付近を探ったところ、通路の繋がった先はどうやら渋谷、新宿の中間あたり。ここから更に南方の赤坂、六本木方面にも向かえるし、良い場所に繋がったと思う。早速向かってみたいところだけど、ストーカーさんらの目的は旧東京都に立ち寄ることでなく、このへんの廃墟から遺物を漁ることだ。帰りの護衛もしなければならないので、残念ながら立ち寄るには次回自分で訪れなければならない。ああ、【トラポート】持ち悪魔も作らなければ。

 ストーカーさんらが探索に専念する合間、出現する悪魔と格闘を繰り広げる。やはり地下世界だけあって悪魔は更に強さを増した。メルクリウス級のレベルの悪魔が平然とポンポン出てくるわ出てくるわ。妖精ハイピクシー、妖鳥ケライノー、妖樹マンドレイクなど、妖精王オベロンが統べる妖精の街・新宿に近いだけあって妖と名のつく悪魔種族が多い。しかし邪神や魔王、邪龍のようなダーク悪魔の上位種族が出てこないのだから全然楽だ。

 

 そう思っていたが妖鬼オニの群れに囲まれた時は死ぬかと思った。確かにお前も妖のつく種族でしたね。

 あいつら剣耐性で半減してるにも関わらず、耐性の上からHP削ってくるでやんの。流石20レベル定番仲魔と名高いガチ悪魔なだけはある、スパルナの【マヒ針】で弱点突いてやったら麻痺って憤死したけど。

 

 探索中、僅かな地震が起きた。そういえば大悪魔モロクの尻尾がホーリータウンに開通する布石として、地震がたびたび起こるんだっけ。少し早い気がするが、地下に近いここ旧東京なら早めに感じられてもおかしくはないか。

 

 

 

>行きはよいよい帰りはなんとやらの日

 ストーカーさんの発掘で実りが得られたので、また行きと同じ地下通路のルートを通って戻ろうとした。

 

 落盤で道が塞がっていた。

 

 



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行ったり来たり

>よくよく考えればそれほど焦る展開ではなかった日

 通路が使えなかったため地下世界へ引き返した。

 これからどうするか話し合い、ストーカーさんらは別の通路を利用して帰ることになった。俺は折角だから観光するため地下世界に留まるので、護衛はその通路の入口付近まで。

 

 俺自身の帰還は……まあ金はかかるけど、サマナーならどうとでもなる。地下世界にもターミナルはあるから転送装置を起動すればなんとかなるし、最悪邪教の館で【トラポート】持ち悪魔を作る手段もある。魔獣カーシーLv14が覚えてるから作成代に召喚代を含めても100MAGくらいで済むだろう。……こう書くと意外と高いな。

 

 

>妖精の街シンジュク

 新宿に到着。旧東京はかつて大洪水や様々な災害に見まわれ、北エリア・中央~西エリア・南東エリアの大きく3つのエリアに断層で分かれており、乗り越えるために新宿や赤坂都市内を通行しなければならない。

 ストーカーさんが普段使っている通路は新宿を超えて、北……およそ池袋のあたりにあるらしい。いつもは悪魔が出没するため地下世界を渡り歩くなんてことは出来ないけど、今回は俺がいるので無理をして突っ切ることが出来るというわけだ。

 

 珍しい人間の姿に、妖精がちょっかいをかけてくる。いたずら程度の……いたずらというには悪質なものも含まれているが、そこはやはり自由気ままの妖精か。【ハピルマ】で酔わせるのはともかくセキレイの羽でCHARMしてくるのは止めろ。

 根気で耐え、ついていきかけたストーカーの方々も止める。いたずらの頻度が随分と激しいので、気休めに新宿の防具屋に立ち寄ってアメジストの魔除けを購入。CHARMの確率を半減するだけのチンケなアクセサリだが、無いよりはマシ。

 防具屋を出た直後に待ち構えていたハイピクシー集団はさしもの俺も激おこプンプン丸。

 

 

>護衛完了そして地下世界を探索する日

 ストーカーさんをミレニアムへ繋がる地下通路の入り口まで届けてきた。通路内にも悪魔はいるが、他所と比べればずっと弱く、また出現頻度も少ないので彼らで十分だそうな。報酬として、手に入れたアイテムの一部……物反鏡を頂いた。希少品だけど売値250マッカか……このレベルだと有用だから悪くないけど。

 

 造魔を引き連れて一人道を戻り、新宿へ。ターミナルを発見、COMPを接続しジャンプポイントを記録し、ヴァルハラエリアへ開通させる。これで帰路は問題なし。

 引き続いて、新宿の散策を開始。妖精や妖鳥といえば女悪魔が多いし、好みのむちむちした悪魔がいないかエンカウントがてら探してみるものの、やはり妖精にはロリっ子が多く、妖鳥はまあ体型は希望に沿うのだけど、性格や口調が悪女魔女だから萎えるわー。やはり俺の要件を満たすのは鬼女か女神か、地母神か。

 手近なところでは鬼女ユキジョロウなんて、雪女だけど悪くな……NGワードが好色だ。浮気したらひどい目に合うからやめておこう。

 

 

>お待ちかねの日

 地霊の街、赤坂にも寄りたかったが日数が嵩むため、ストーカーさんらの帰還がTen-DO組の耳に入る頃だろうと、アリスさんとの約束もあってそろそろ帰る。ターミナル起動、転送装置で一発ですよ。

 だがそのままTen-DO組事務所へ帰らずに、ダウンタウンへ。飾り気のない安宿へ暫く宿泊すると、数日してアリスさんが訪れた。帰還したストーカー達から落盤の噂が流れてたようで、俺のことを心配していたそうだが見ての通り無事である。

 組員の人目につかないということで心置きなく触れ合う。

 

 ふー。

 

 

>メシアの忍び寄る足音が聞こえる日

 今はTen-DO組の事務所を間借りしてるが、ダウンタウンに住居を取ってそこで落ち合わないかと提案すると、喜ばれた。今後定期的にアリスさんと人目を憚らずコミュニケーション(意味深)出来るように。やったぜ。

 別に本拠地にするわけでもなく部屋さえあればいいので、100マッカほどでサクッと賃貸物件を借りつつTen-DO組へ顔を出す。俺がいない間、大きな問題は無かったようだが少し情勢が変わったようだ。

 最近、ヴァルハラエリアで悪魔退治や救済を行おうと活動し始めた、ダレスという“メシア”の存在が現れたそうな。今のところTen-DO組の縄張りには来てないが、やがてスラム近くにも足を運ぶだろうと考えられている。そうすれば、暴力行為にも手を出すTen-DO組との衝突は免れないと親分は言う。

 ダレスか……奴は原作にも登場する主人公のライバル的ポジションのキャラである。主人公アレフが“メシア”となるための当て付けのために生み出された“アンチメシア”、主人公を際立たせるために存在する主人公ぶったチンピラだ。ミレニアムの偏向教育により自分こそがメシアであると思い込まされ、同じくメシアに仕立てあげられつつあるアレフをアンチメシアだとして、ミレニアムの自作自演により目の敵にしている。彼自身はメシアだとまでは言いきれないが、異能者としてかなりの才能を秘めているだけに、ミレニアムに踊らされたことが何よりも哀れな存在。

 

 もしダレスがこのスラム街に踏み込むことがあれば、用心棒である俺に倒してほしいと依頼された。奴は強いが、今の俺なら倒せない相手ではないが、原作でも逃げ出しては何度もアレフに挑む彼のことだ、倒しても生き延びて再び挑みかかってくる姿が想像できる。それにアレフ以外が彼を倒してしまえばダレスだけでなく、その裏に隠れているミレニアムや元老院にまで目をつけられる可能性すらある。元老院が直接俺を消しに来る可能性は無いが、テンプルナイトくらいなら仕向けられるだろうし、最悪この時期まだミレニアムに従っているアレフが来る可能性すらある。原作主人公がどの程度の強さかは知らないが、ペルソナ3のトキのキタローから見るによほどぶっ飛んだ実力ってことは無いと思うが……問題は倒してしまえば元老院の立場が崩れなくなること。エデンの方舟、および地上を焼きつくすメギドアーク計画は元老院から離れた、ガブリエルやサタン側の目論見だからある意味その心配はなくなるが、元老院が同じようなことをしでかさないとも限らない。ううむ……原作の流れが読めなくなるから、崩したくない。

 ひとまず親分に、やっこさんの背後にはミレニアムの影がちらつくのでなるべくダレスとの衝突は避けた方がいいし、戦いは一度は受けるがトドメは刺せないし、ミレニアムには関わりたくないので二度は行わないと述べた。

 理由は言えなかったので親分は渋い顔をするも、考えておくといった表情で軽く頷いた。

 

 だが、それでも結局対決は避けられなかったようだ。

 

 

>戦士ダレスが1体現れた日

 後日、Ten-DO組の事務所に居たところにダレスが乗り込んできた。当然この状況で力添えを頼まれないわけもなく、事務所から組員を逃がして代わりに戦闘になる。

 ダレスのレベルはメルクリウス、ベテルギウスらとほぼ同じ。ただしガッチガチの戦士なので、物理攻撃力は高い。……しかし相手が物理対策を済ませた俺なので、お得意の打撃は殆ど通用せず。サブ技の【ザンマ】を放ってくるも、不得意な魔法攻撃では大したダメージを与えられない。【ディアラマ】で粘るも、それだけでは流れを押し返すことは出来ないまま俺に倒される。

 戦闘後、案の定ダレスはとどめを刺す間も無く逃げていった。あれだけ傷ついたのに、驚くほど逃げ足の早い男だ。こちらの顔はしっかり覚えられてしまったので、彼がアレフに敗れヴァルハラを追い出されるまではもうこのエリアにいられないだろう。

 戻ってきた親分に、ダレスは倒したが、逃げられた。ミレニアムと関係を避けるためにヴァルハラから地下に潜る旨を伝えると、ではもう会えるのは最後かもしれないからご苦労と、最後の晩餐のつもりか酌をしていただけることになった。

 転生後も変わらず酒の飲める年齢ではないが、法の緩いヴァルハラなら未成年だろうと問題ない。メシア教統治下のこのご時世では非常に希少な日本酒を頂き、飲み慣れてない胸が熱くなるような清酒を味わわせてもらいつつ別れの言葉を頂く。

 

 

 アリスさんと不倫のこと突き付けられた。アイエエエなんでバレてるの!?

 

 

 

>別れの言葉(物理)の日

 死ぬかと思った。

 酒に毒盛られてたり、隠された部下に銃火器で蜂の巣にされかけたり、マシンをけしかけられたり。

 BSセービング失敗して毒は食らったけど、銃火器は変身してなんとかダメージを防いだし、マシンは【ジオンガ】でショートさせたから無事だったけど。

 まあ不義理をした俺に制裁を加えるのなら、それくらいはしなきゃならなかったろう。仕方ない。

 

 しかし何よりも驚いたのはアリスさんが夜魔リリムだったこと。百合のコサージュってなんだったんだよ、天使どころか真逆の淫魔じゃん!

 けしかけられたマシン・タロンを薙ぎ倒して事務所を脱出したところで、合流した彼女がこっちよとばかりにダウンタウンまで手を引かれ、その後この前に間借りしたダウンタウンの貸し部屋についたところで正体を現されて驚いたというか、混乱した。

 

 詳しい話は明日ということになったが、ヴァルハラではまだTen-DO組の追撃が来る危険があるため翌日にはターミナルで地下世界に飛ぶことに。しかしなんでリリムなんだ……

 

 






転生先決定のダイス2番は大破壊後の東京の予定でしたが、恐らくICBMを止められる可能性は低いことから変更することにしました。結果、1番が真女神転生1、3番が真女神転生2で間に関係ない作品が入ることになりますがご了承ください。


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エンジョイ地下世界ライフ

>大人の女性って怖かった日

 人目を避け、Ten-DO組とエンカウント無しにアッパータウンのターミナルへ到着し、地下世界の新宿へ。

 今はむしろこちらの方が安全ということで、アリスさんがリリムの姿に戻る。悪魔は見慣れていても、親しい人間が悪魔になる光景には慣れぬ……。俺自身も同じようなものだけど。

 

 地下世界新宿はヴァルハラと違って悪魔が跋扈する人間には危険な街。オベロンの統治下にあって死ぬような危害を及ぼす妖精は少ないものの、それでも悪質ないたずらをする妖精や、妖精以外の悪魔は沢山いるので、人間がいても安全な場所というところは早々無い。

 とりあえず、扉がかかっておらず安全とは言えないが悪魔の目をやり過ごすには十分な小部屋を発見し、そこで落ち着いて……正直ここへ来るまでに嫌な予感を彼女に感じているが、それでもアリスさんから話を聞く。曰く、

「力がある男性は好き。異能があるのはもっと好き」

 だから親分より俺を選んだ。

「でも安全に逃げようとする軟弱な考えは嫌」

 だから親分に伝わるよう情報を流して、私と逃避行出来るように企てた。

「私はアナタのモノよ、コンゴトモヨロシク(はぁと)」

とのこと。き、聞かなければ良かった……。大人の女性って怖い。

 正直ここで彼女を捨てていこうかと思ったが、一度肌を触れ合い情の移った相手を捨てることが出来ず、終わってしまったことだと……納得してないけど割り切ることにした。

 

 ところで百合のコサージュって何なん?と聞けばリリムをもじったリリーから着けたものという。そりゃねえよ。

 

 

>愛の巣を探し求める日

 新宿で寝床を探して、妖精相手に交渉。アリスさんが悪魔であることが役に立ち、妖精と夜魔、魔族という同じ大種族に分類されるだけあり、共感し話をつけられた。

 新宿妖精郷の外輪に近い一角を借りられることになったが、多少問題を解決してほしいとのこと。そこから先の荒事は俺の担当だと、代わりに話を聞く。ホーリータウンから逃げ込んだ悪魔が妖精郷を乱しているため、それを退治してほしいそうだ。

 ……逃げ込んできたということは、ホーリータウンの一件はいつの間にか解決したのだろう。そろそろ本格的にヴァルハラに危険が近づいている、早いうちに幾つかのやり残しを済ませばなければならないだろう。

 

 流入した悪魔は殆どが妖精ジャックフロストだが、外で育ったため同じ妖精でもやたらと乱暴な気性で仲良く出来そうにはない。特に強力な力を持つ黒っぽいジャックフロストのリーダーが率先して新宿を攻撃しているのが問題らしい。俺が頼まれたのはそのジャックフロストのリーダーを倒すこと。

 黒いジャックフロストといえば、魔王キングフロストよりも強い夜魔ジャアクフロストだろうが、それだけ強い悪魔が何故アレフから逃げてきたものか。違和感を覚えるが、現に存在して迷惑かけているんだから倒せばいいだけだ。

 しかし、ジャアクフロストは37レベル。俺も実力をつけたが、流石にこれまでとは比にならない強さの悪魔だ。準備に念を入れるに越したことはない。邪教の館で氷結対策を……しまった、新宿には邪教の館が無い。少し遠出しなければならないようだ。

 

 

>悪魔合体魔境2回目の日

 新宿を南出口から降り断層を超え、クソザコ妖鳥の群れをなぎ倒して赤坂へ。道中で23レベルに上がり、スキルを習得。あまり使えないものだが……。

 妖精の街・新宿に対して赤坂は地霊の街となっており、多くのドワーフが遺物発掘や鍛冶屋を営んでいる。赤坂の悪魔は新宿より強いが温厚なものが多いので人間には過ごしやすいが、情報が入らないためミレニアムの状況を掴みづらいのが問題である。アレフの動向を掴めないし、逃げる時期を間違えるとメギドアークで焼き払われかねない……。

 

 テングのちょっかいを蹴散らしつつターミナルポイントをCOMPに登録後、邪教の館へ。前々から考えていた雑魚散らし要員やトラポート等支援要員を考慮に入れながら悪魔合体ルートを考える。

 現在23レベル、変身は33レベルまで、仲魔・造魔は23~24レベルまで。もう1レベル高ければ電撃高揚持ちの魔神トールが見えたのは残念だが仕方ない。

 デビルアナライズを吟味中、手近な種族でフロスト対策になり、僅かに縁のある悪魔を見つける。龍王ミズチ、真・女神転生3でじゃあくフロストの前に歌舞伎町を占拠していたボス悪魔だが、TRPGでも専用スキル【蜃気楼】を携えてほぼ同じスペックで存在する。仕様上、味方が使ってもそこまで強いものではないが、MPコスト無しの全体魔法攻撃という点で雑魚散らしにはそう悪くないだろう。

 

 いつものごとく、邪鬼ドンコウに屍鬼ゾンビを添えて邪鬼ウェンディゴを作成。邪鬼グレムリンと邪鬼ドンコウのダーク悪魔同種族2身合体から国津神オオヤマツミを作成。更に邪鬼グレムリン、邪鬼ウェンディゴ、国津神オオヤマツミを3身合体すると、国津神オオヤマツミ同士の合体となり精霊ノームが作成出来る。3身合体の途中で出来る仮悪魔は、合体に用いられている悪魔と同じでもそのまま処理されるのがミソ。また地霊ブラウニー、妖鬼イヒカ、鬼女ダツエバの3身合体も、同様に鬼女ハッグと鬼女ダツエバの合体となり、精霊ウンディーネが作成される。比較的格安で作成した精霊2体を、現在の変身悪魔龍王ヤトノカミに合体させると、2ランクアップして龍王ミズチとなる。ヤトノカミから【不動剣】【格闘武器】そして弱点を補う【耐火炎】を継承し、剣・ガン耐性は無い以外はジャアクフロストの全攻撃に耐性を手に入れた。ノームから【フォッグブレス】【物理耐性】【真空投げ】、ウンディーネから【魔法耐性】【ディアラハン】【メディラマ】など補助や回復も忘れずにいる。

 造魔には、この前カードハントした妖精ハイピクシーの悪魔カードに最安値の魔獣2体から作った精霊フレイミーズを合体し、【耐氷結】を持つ妖精ケルピーを作成。それから魔獣カブソ、妖精ピクシー、妖精ケルピーの3身合体で破壊神アレスを作成。造魔にはこのアレスを合体させたため、剣ガン耐性を持ちながら氷結弱点を耐性スキルで上書きした優秀な前衛を維持している。【八相発破】など強力な全体攻撃も得たため、火力は今まで以上でもある。

 予算の都合で、最後に回復要員の霊鳥スパルナに、魔獣ケットシーと妖精ジャックフロストから聖獣ユニコーンを作成し、2身合体して神獣マカミを作成。ユニコーンから【エストマ】【ハマ】、スパルナから【メディア】【スクカジャ】を継承し、自前の【リカーム】【ディアラマ】もあって更に便利度が増した。

 属性攻撃要因のモーショボーの強化や、【デュアルモード】をランク3まで上げたことで最大4体まで出せるようになったのもあり、新しい仲魔も作成したかったところだが、予算の問題でここまでとする。【宝探し】スキルのランクを最大まで成長させたことでレアドロップを得やすくなったため、もう暫くすればお金に困ることも減ると思うのだが……

 

 赤坂ターミナルから新宿に転移。その後アリスさんとイチャイチャした。

 でも悪魔モードで絞るのはやめてくださいしんでしまいます

 

 変身すれば耐えられるけど非人型なんだよなぁ……

 

 

>妖精悪魔合戦ひーほーの日

 アリスさんは置いてきた。はっきり言ってこの戦いにはついてこれそうもない。……と言ってやりたかったのだが。

 彼女も力にはなろうとしてくれてるんだけど、氷結に弱いリリムはフロスト族とは相性が悪い……せめて回復やカジャ・ンダ補助魔法が使えるなら検討するのだけど、ジオンガくらいしか使えないのだから無理に連れて行きたくはない。なら悪魔合体をと言うが、俺はそのままの君が好きです。合体してサキュバスならまだしも、魔女婆とかカバとかになられるとマジで泣くから。

 それでもと言うから、少し考えて御魂合体を行った。御魂はデビルサマナーシリーズで初登場した、悪魔の姿を保ちながら能力値を強化することの出来る特殊な悪魔だ。後に真・女神転生3では御魂の持つスキルも継承出来るようになった。

 TRPG版では、サラマンダー・ウンディーネ・シルフ・ノームの上位精霊いずれかを含んだ精霊同士の3身合体により、素材に用いた上位精霊に対応した御魂1体を選び作成出来る。ただし能力値の上昇は御魂の持つ【能力上昇】スキルを継承する形で行われ、また【能力上昇】スキルや耐性系スキルは2つ以上同時に継承することは出来ない縛りがある。しかしあくまで同時に継承することが許されないだけで同時に所持することは許されること、そもそもTRPG版にはコンシューマで存在するようなスキルの上限もないこと、御魂は素で四属性の耐性系スキルを持つため、TRPG版ではむしろ【能力上昇】よりも耐性スキルを目当てに何度も作成、御魂を融合し、お気に入りの悪魔の耐性を強化するのに多用される。(尤も費用の問題が厳しいので、全ての相性へ耐性を与えるまで繰り返すのは難しいが……)

 凶鳥オンモラキを4体、ゾンビを2体購入し、オンモラキを2体ずつ凶鳥チョンチョンへランクアップさせ、凶鳥同士のダーク悪魔合体により霊鳥スパルナを作成。更に凶鳥2体を含めたスパルナとの3身合体により、仮悪魔を経由した同霊鳥の2身合体により精霊シルフが完成。そこへ精霊アーシーズと、魔獣経由で安く作り上げた精霊フレイミーズと精霊3身合体させ、御魂ニギミタマを完成させる。これをアリスさんに合体させることで、リリムの姿を保ったまま【耐氷結】および【メディア】を継承する。計4300マッカなり。

(用いる上位精霊と出来る御魂はレベルで対応しているので、風の精霊シルフから水っぽい御魂ニギミタマが出来るのは少しややこしい)

 とりあえずこれで連れてってもお荷物にはならないと思うが……

 

 新宿を出て少し北へ離れたところへ。ジャアクフロストとその取り巻きフロストらはそこを拠点としているようだ。

 連中の縄張りに近づくと、早速雑魚のジャックフロストたちが……ちょ、多い多い。

 想定はしていたがジャアクフロストの前哨戦として、フロスト軍団とのバトルになった。数の暴力により火力は20レベルの悪魔相当まで増してはいるが、……だが所詮は5レベル悪魔が群れをなしただけである。しかも得意の氷結はこちらに通じない。悪魔を仕向けるまでもなく、造魔が【八相発破】するだけで埃のように散らされた。

 そして前哨戦を終えたところに満を持して登場する、ジャックフロストを何倍も巨大化した、黒い雪だるまの姿。ジャアクフロストである。よく見れば胸に光る魔石のようなアイテムを輝かせており……

 ってマガタマじゃねーか!あいつが現れたのは本当に原作と同じ原因か!

 

 さてそのジャアクフロストだが、お得意の【マハブフーラ】から、弱点を克服して身につけた【アギラオ】、更には【マハムド】と多彩な属性を身につけて実にやりたい放題である。尤も氷結は効かないし、火炎も単体対象では万全の布陣を崩せるほどではない。【マハムド】の対策は取れてないが、そもそもが即死率20%なので弱点でもなければ簡単に死ぬ確率ではない。【ラクンダ】で防御力を減らし、耐性の上からなんとか削ろうと頑張ってはいるが、それでもダメージより【メディア】の回復量が上回る始末。

 きちんと主力に対策を練っただけあって、さほど苦労せずに撃破する。高レベルの素材はあって損しないため、しっかり悪魔カードハントも行った。26レベルに上昇。新規スキル習得はないが、【一分の魔脈】を【二分の魔脈】に進化させた。43レベルで自力習得出来るが、流石に遠いので今のうちに習得しておき、将来それを変化させるつもりである。

 

 撃破したところでその死骸に残ったマガタマを剥ぎ取る。色から判別するに氷結系のマガタマだが……あれ、真3でジャアクフロストが獲得したのって「サタン」の呪殺系マガタマじゃなかったかな?

 少し考えて、そういえばTRPG版だとキングフロストがミアズマのマガタマを持っていたはずだと思い出す。恐らく、ホーリータウンで倒されたキングフロストが落としたこのマガタマを拾ったジャックフロストが、地下世界に来てジャアクフロストに進化したんじゃないかと思われる。アレフくんきちんとマガタマ回収してくれよ。

 

 約束を果たし、無事妖精たちの居住まいを借りられることになった。室内に生える謎の巨木にある「うろ」の一室だが、人間が出入りできるくらいには穴が大きく、また中もシングルベッド2つ分くらいの広さがある。

 床の凹凸が気になるが、とりあえず寝具代わりに毛布を敷き詰めてアリスさんと添い寝して戦闘の疲れを癒やした。ちゅっ。

 

 PALYZE

 

 

 

 




まだ生きてるよ


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原作通りに

本日2話目


>復活のアンチメシアの日

 えるしっているか、【悪魔のキス】されるとMAGを抜かれて体がしびれたようにうごかなくなる。ちゅーはうれしいけどやめてくださいしんでしまいます。

 手持ちのディスパライズを使用。今のうちに買い溜めしておこう。

 

 ジャアクフロストを殴り倒した翌日、ダレスが地下世界の新宿にやって来た。そして俺の顔を見るや喧嘩を売ってきた。なんとこの短期間で奴は10レベルも上がっており、造魔の剣耐性の上からダメージを与える火力を得ていた。が、ダメージが通るのと戦えるのは別問題で、火力不足である。【フォッグブレス】撒いて回避率下げてーの【不動剣】してBINDさせてーのフルボッコで乙った。やられる間際にきちんと逃げるあたりは前回と変わらない、いつものダレス。

 とはいえ悪魔なしのタイマンだとミズチに剣耐性が無い以上は競り負けるし、お前は強いと思うよ?

 

 ふとこの後の展開を思い出して、新宿の薬屋……アヌーンちゃんとこに顔を出すとダレスがいちゃついていた。貴様、新宿のアイドル、ダヌーンちゃんの施しを受けるとはうらやm、けしからん!

 もう一度軽くボコっておいた。しかしその間もアヌーンちゃんの目はずっとダレスに向いていたので手遅れだろう……

 

 

>真夏の夜の夢の日

 こないだ悪魔退治を受けた妖精ピクシーらを通じて、妖精たちとどんちゃか騒ぎした。暴力的なリーダーを失い、既に新宿に馴染みつつあるジャックフロストらの仇討ちを受けて手合わせしたり、気づけば同席してたダレスと飲み比べしたり、俺の腕に惚れ込んだ女妖精らのハニトラを受けかけたり、浮気の匂いを嗅ぎつけたアリスさんに【ジオンガ】されたり。

 色々あったけど、一夜明けて酒で頭痛くてダレスとの因縁とかお互いどうでも良くなった。これが真夏の夜の夢か。

 

 ダレスと面向かって話してみると、意外にもかなり知性的。物理スキルだけでなく、【ザンマ】や【ディアラマ】など魔法を習得していることからもその片鱗は伺えたが、改めて話を聞くとメシア教で基礎だけを受けて、あとは独学で異能を伸ばして習得したものらしい。彼もまた人工的に作られたメシア候補生の一人とはいえ、才能に溺れず努力したのがよく分かった。少し好感度が上がる。

 それを受けて、真面目に一人じゃ手数が厳しいと思うので、敵を倒すなら共に立つ仲間を作るべきだと提案してみるが、俺の言葉に多数の悪魔を従えるアレフの姿を覚え、奴と自分は全く正反対のメシアとアンチメシアだから仲間すら不要と思い込みたいのか、詳しく聞かぬまま否定した。

 そこさえ直せばダレスもアレフを倒せそうなんだが……ひとまず、せめて属性のついた武器握っておけと助言した。メシアかぶれなんだから、属性制限満たしてるプラズマソードとかマジおすすめ。

 

 

>それはそれ、これはこれの日

 アレフとヒロコが地下にやって来た。ダレスの俺への恨みは無くなったが、メシアであるアレフへの恨みはやはり別らしい。アレフにこだわらなければ、奴も立派なヒーローになれるのに……。

 

 ダレスがパックを仕掛けて、浮気草の露という強力な魅了のアイテムでアレフに屈辱を味合わせようとするも、ヒロコに防がれて代わりにヒロコがダレスにベタぼれする。ダレスに惚れてるアヌーンがアレフに協力してパックを捕まえ、浮気草の露の効果を解除しすかさずアヌーンがダレスに浮気草の露をぶっかけ自分に惚れさせる。

 以上、原作通りの展開でした。介入する余地は無し。

 ……正直言えばヒロコママンは俺の好みなのでダレスに協力しようか悩んだけど、アレフの恨みを買うほどではないこと、アリスさんが嫉妬の目で俺を睨んでくることから断念した。

 

 アヌーンに惚れてた妖精たちが嫉妬から俺にダレスをぶん殴るよう依頼される。また今度な。

 

 

>忘れていたことを思い出す日

 ホーリータウンの地下から新宿にやってきたストーカーさんらが、ミレニアムの現状を知らせてくれた。

 ヴァルハラがアバドンに飲み込まれたらしい。しまった、ヴァルハラに立ち寄る時期を逃した。日用品とか諸々を揃えたり、スティーブンと接触を取りたかったのだが……いや、ヴァーチャルトレーナーならホーリータウンにもあるな。

 ちょっとホーリータウンに行ってくるとアリスさんに言い残し、新宿北から池袋のあたりを捜索する。予めストーカーさんらにおおよその場所は聞いたので、細かい地点はサマナーの習得スキル【マッパー】で調べる。

 地下通路を見つけ、逆行しミレニアムに。道中出現する悪魔はもはや相手にするまでもなく、省略。

 

 キングフロストやバジリスク出現の影響で一度治安の悪化したホーリータウンは、俺のような部外者が入り込んでも見咎められることが減っている。ヴァルハラがアバドンに飲み込まれた今や、センタービルを除けば唯一ミレニアムに残された市民の居住区なのだから、自然と人が集まるのも仕方ない。

 ホーリータウンのターミナルへCOMPを接続、ターミナルポイントを記録。地下世界ではなかなか集まらない日用品を買い揃え、新宿に一度帰還する。するとそこで意外な出会いが。

 

 なまスティーヴンが1体現れた!

 

 

>上げて落とす日

 生アイドルみたいな言い方をしたが、あいつだいたい電脳越しにしか接触できない人間なのでニュアンスとしては間違ってないと思う。

 

 さておき、よくよく考えると原作後半では普通にそのへんでアレフとエンカウントしていたスティーブンが直接姿を現した。向こうから姿を現すあたりに嫌な予感を感じるが……とりあえず悪魔召喚プログラムの使い心地を聞かれた。サマナーとしては悪魔召喚およびスキルを問題なく運用できてる時点で文句はないが、できればサブアプリが欲しいなぁと思う。MAG収入を増やして実質収入を増加するサブアプリとか、特殊種族を作成できるようになるコンバータとか。そう提案すると、MAGを投資してくれればすぐに作れるだろうというので、この場で380MAGを支払い【ヒロエモン】と【ダブルバリュー】、【珍獣コンバータ】をインストールして貰う。やったぜ。

 といい気になったところで、スティーヴンからの用件を話される。

 

 アレフに代わって元老院を倒せ……だと……? またまたご冗談を。

 

 

>今回の死亡ポイントが見えてきた日

 元老院がマジで四大天使だった。何を言ってるのかと思うが、スティーブンから託されたアナライズデータを見るに間違いない。

 真・女神転生2で中盤最後の大ボスとして登場する、ミカエル・ウリエル・ラファエルの三大天使。中盤なだけあって、シナリオ補正からレベルはそこそこ控えめのはずなのだが……TRPGの影響を受けたこの世界では、四大天使の強さはTRPG版のデータに準拠しているようだ。メルクリウスやベテルギウスと同じ理屈だが、TRPG版の四大天使は真・女神転生2ではなく、真・女神転生1のラスボスとしてのデータに基づいている。

 だから90レベル超えの悪魔が3体。いくらアレフが救世主でも、そこまでぶっ飛んだラスボス級の悪魔を3体も倒せるわけがないと、スティーブンが俺に助力を請うたわけだ。

「勿論断ってもいいが、アレフがしくじった場合ミレニアムに残された人々がどうなるかは保証できない」という言葉つきでな!

 

 

>ゲームの勇者ってこんな気持ちなのかなと思う日

 少し考えたが、元老院がどうするかは分からないが、ガブリエルやサタンの計画を知らない連中は恐らく今後もミレニアムの形を残すことに執着すると思われる。

 アレフが奴らを倒すのに失敗した場合でも、やがてルシファーがモロクを通じて集めたマグネタイトで九頭竜を呼び起こしミレニアムを破壊するだろう。一方でガブリエルはミレニアム上層部にこっそり建造した方舟「エデン」を飛ばし、そこからメギドアークで地上を焼き払う。

 元老院がどちらを妨害するかは不明だが、九頭竜を止めにかかった場合 ガブリエルの計画が野放しになり、エデンを飛ばされメギドアークで地上を一掃。逆にエデンの出発を止めにかかった場合九頭竜は野放しになりミレニアムは崩壊するが、地上は無事。こちらのルートなら安全だが……果たして元老院が真に神の指示を受けているガブリエルを止めようと思うだろうか。

 

 色々考えたけど、原作に関わらざるを得なさそうだ。正直神やルシファーに目をつけられるとか勘弁してほしいのだけど。アレフくんなんとかしてくれよー!

 なんとか出来ないから俺が関わることになったんですよね、はい。くそう。

 

 



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気づけば魔王と魔人だらけ

気づけば全く戦闘していない


>確認だけで半日

 この先の流れを再確認する。

 

・アレフくんヒルコに頼まれ将門公のパーツ集め、および天津神解放

→ファクトリーの収容所およびセイレーンをベルフェゴールから解放or先に魔界へ行きセイレーンの旦那と合流し裏アルカディアからギメル撃破

→ザインが元老院に出頭、敗北し石化。アレフも元老院と対決

 

 簡単にまとめると以上の流れだ。……あれ、ギメルって倒す必要あったっけ?人形使って裏口入場して、魔界から帰る時にアルカディアを通るんだったかな。

 こうして見ると意外と元老院との対決は早かったことに気づく。天津神解放のボスが30~40レベル、ベルフェゴールが50レベル、そして元老院が(本来)60レベルと考えるとバランスは取れているのだろうが……誰だよわざわざ4大天使を強化したの。せめて真3版とかあったろうに。

 

 スティーブンに渡された三大天使のアナライズデータを確認する。基本的にはボス特性で強化されることなく、TRPGのデータそのまんまだ。ミカエルのみ無限回【龍の眼光】を持ち常時5回行動、火炎の最強全体魔法【ラグナロク】と万能攻撃魔法【メギドラオン】、前列には【なぎ払い】が飛び、耐性は魔法全般無効、BS無効。物理が通ると思いきや【テトラカーン】を持つため場合によっては万能しか通らなくなる、とこれでもかと言わんばかりに真・女神転生1、LAW側ラスボスの風格を漂わせている。

 ラファエルは【マハブフダイン】、【羽ばたき】、それから前列武器格闘攻撃の【デスバウンド】とミカエルより格は落ちるが舐めてはいけないダメージが飛ぶ。ちゃっかり【デカジャ】を持っているため、バフって優勢に立ちづらいのはミカエルと別の意味で苦労しそうだ。耐性は火炎と衝撃無効。BSは通るのでBIND攻めは有効。

 ウリエルは……【テトラカーン】と、防御力無視の【アカシャアーツ】は強いと思うよ? 一人だけボスデータじゃないからスキル8個だけど。耐性は火炎無効のみ。

 共通して物理攻撃が痛いので剣耐性は必須。また剣耐性はなくとも【テトラカーン】を持つので、万能相性や【ガードキル】などダメージを通す手段の確保も必要。妖魔クルースニクLv47の持つ【至高の魔弾】に届けばいいが、そこまで作るのに40レベル近くまで上がらなければならない。貫通まで目指そうとするとLv51……いやこちらはスティーブンの協力があれば、魔人を使うことで手間も費用も幾らか軽減できるな。とにかく、35レベル程度は目指さなければならないだろう。

 

 アリスさんもこちらが思いつめてるのを見て手伝おうとしてくれるのはありがたいけど、経験値配分の問題で一人の方がありがたいんです今は。

 

 

>再び地霊の街赤坂の日

 道中襲いかかってきたオニから狼牙棒をふんだくりつつ、ドワーフの街・赤坂へ。気難しいことで有名なドワーフの鍛冶師に、前回のジャアクフロストが落としたマガタマを手土産に、COMPのカスタマイズを頼み込む。

 店に入るなり門前払いされかけたが、すんでのところでマガタマを見せると顔色を変え真剣な目つきに。マガタマのは普通、真・女神転生3のように人間が「人修羅」化するのに用いられるが、それとは別にシュミットという魔晶武器を強化するのにも使用できる。魔晶武器を通じて、打ち込んだマガタマの幾つかのスキルをサクセサー(魔晶武器使い)が利用できるようになるのだ。魔晶武器を鍛える技術を持つ魔匠としても有名なドワーフがシュミットを知らぬわけもないと思い、こうして交渉の材料に用意したのだ。

 ただ、てっきり俺自身の武器を強化するためにマガタマを用意したものかと思われたのか、COMPのカスタマイズをしてほしいと言うと嫌そうな顔つきをされたが、もし後日、練気の剣やまたマガタマを手に入れることがあれば間違いなく頼みに来るだろう等の世辞を尽くして、COMPのカスタマイズを了承してくれることになった。運能力値が高まったことで、ニコポナデポとまでは行かないがカリスマ力の上がった俺の交渉力は伊達じゃないのだ。

 

 アイテムのカスタマイズに必要な魔術的触媒としての素材兼改造代金にガーネットの宝石1つを差し出し、店の奥に行ったドワーフさんを見届けて暫く待つと、1時間もかけずにややすす汚れたCOMPを手に戻ってきた。説明によると、COMPの魔術的干渉力を高めたことにより悪魔の制御能力、コントロール力を向上うんぬん……要するに【COMPサポート】のカスタマイズを付けたことで契約・使役できる仲魔のレベル上限が1上昇した。ついでに余った宝石のお釣りで魔法防御力の向上のカスタマイズも付けてもらったが、こちらは変身前にしか適用されない、隙を多少軽減する程度の気休めだ。

 ともかく礼を言い、これで今後カスタマイズを行う取っ掛かりが出来たことを喜びながら赤坂を北口から出て、西を目指す。いつぞやヴァルハラから初めて地下世界にやってきた時の地点もあのあたりにあるが目的地はそこではなく、丁度同じ渋谷のあたりにある国津神オオナムチが封じられた祠である。

 原作的に、あそこには国津神の封印を見張る悪魔、堕天使バフォメットがいたはずだ。レベル上げの対象としては手頃な強さで強すぎることもなく、丁度いい相手だ。

 

 突進してきた妖獣バイコーンを跳ね返しながら西へと突き進んで行く。

 

 

>ぐるぐる日

 オオナムチの祠は強制移動床、それに落とし穴が蠢く、把握するまでが面倒極まりないダンジョンである……最初はモーショボーの【飛行】で無視しようと思ったが、飛行するほどの空間の高さがなく、また床だけでなく壁や天井にも強制移動ギミックの一部が仕込まれているようで、面倒だが仕方なく正攻法でダンジョンを攻略することにした。

 こまめに【マッパー】を使用し、落とし穴部屋とフロアの移動先を把握する。道中襲い掛かってくる悪魔ども(主に堕天使)は時折り神獣マカミに【ハマ】で蒸発してもらいながら、経験値の糧にしつつ1階、2階と地図を埋めていく。

 そしてようやくたどり着いた3階最奥の間で待ち構える、堕天使バフォメットの姿。良かった、まだアレフはここに到着していなかったようだ。こいつを倒しに来たのは経験点目当てもあるが、たしか原作で練気の剣を落とした覚えがあったからというのがもう一つ。しかし実際にデビルアナライズしてみると、練気の剣を落とす様子は無し。あれー……と思ったが、そういえばあれはifのアキラルート限定のバフォメットだった気がした。なら気のせいだろう。

 

 戦闘?【マカトランダ】と【デスタッチ】しかろくに攻撃しない奴に負けるわけないじゃん。

 

 祠からオオナムチを解放したけど、将門公の身体を集めてるわけでも無ければ特に用はない。しかし後にアレフという人間が助力を求めに来るかもしれないので、もし恩を感じるならその時彼に協力してくれ……と軽く話を通しておく。

 

 

>レベル上げ先に困る日

 罠にかかったなと廃墟の合間から襲来するツチグモを正面から捻り潰しつつ赤坂に戻るが、レベル上げ先に困る。今後原作で残っているボスといえばファクトリーエリアを管理するベルフェゴールや、メシアプロジェクトの一人ギメルといった主要キャラばかりで、先に俺が倒してしまっても良いようなボスが残っていない。雑魚をちまちまと倒して経験点を稼ぐことも出来なくはないが、それで元老院までに40レベル近くまで間に合うかというと疑問。

 

 仕方なく一旦新宿に戻り、アリスさんといちゃいちゃしながら妖精たちに強い野良悪魔などの情報を尋ねるが、今のところ特にいないらしい。くそ、こういう時に限って暴れる悪魔はいやしねえ。

 それはそうと、なるほど羽の付け根が弱いのか。ってあがががが(PALYZE)

 

 

>具体的にはあと2万5千点くらい必要な日

 無駄にディスパライズを1個使いながら、最近ミレニアムから逃げ込んだ人間をさらっているというガンダルヴァの情報がようやく舞い込んだ。26レベルか……しかし探してくれた妖精たちに文句は言えないので討伐に向かう。

 ガンダルヴァはミズチと同じ精神系魔法【蜃気楼】を何故か用いることが出来る。他にも【ジオンガ】が使え、魔法耐性を持つため魔法相性にはめっきり強い。しかし物理耐性を持たないこと、活泉系スキルを持たないためHPが少ないことから造魔と【不動剣】を合わせ打つだけで2ターンで潰れてしまった。

 

 おかげで33レベルになったが……40レベルには遠い。どこかそのへんで強い悪魔と遭遇出来る手段はないものか。ん……なんかそういうのあったような。

 

 

>メノラーはいらない日

 そうだ。メガテンで偶然の遭遇といえば魔人様がいるじゃないか。そして魔人といえば真女神転生3、真3といえばルシファー閣下。そして閣下といえば、真女神転生2では気軽に酒場をうろついている御方だ。

 僅かな望みを携えて、ターミナルでホーリータウンに転移。そして酒場で金髪だかブロンドだかの、スーツで気取った男性の姿を探す。

 いた。金髪で、サイバーファッションのフリをした異色の肌を持つ男性を見つける。

 閣下に一縷の望みを託して、元老院の三天使と戦うための力を手に入れるために魔人との戦いを求めた。何故知ってるかとか転生バレとかはこの際抜き。

 

 だがそれは無理だと一言に切って捨てられる。そもそも、閣下と魔人は関係ないとも付け加えられて。

 やはりボルテクス界のある宇宙とは違うからか、この世界のルイ・サイファー閣下―――その正体は魔王ルシファーだが、彼と魔人には何の関係も無いらしい。マガタマを作ったことはあるようだが、人修羅製造に関わってもいないし、メノラーで外宇宙への野望をかけたこともないようだ。

 意気消沈するが、だが俺が力を求める理由……元老院を倒さなければならないことを話すと、それならば力になれるかもしれないと閣下は話す。魔人ではないが、五日後に魔人ほどに強い悪魔を用意する当ては出来るから地下世界の南東エリアにある東京タワーで戦えるように約束した。元老院というLAW勢力を倒す目標が閣下の意に沿ったのだろうか。なんにせよありがたい。

 

 ただし、最後に言われた一言「戦闘は勿論、心構えもしっかりと備えておくように」との言葉が非常に気にかかる。ルイ・サイファー閣下はあれほど優しい言葉をかける悪魔だったろうか?

 

 

>合体も念入りにする日

 ターミナルで新宿に戻り、アリスさんに一言伝えて赤坂へ。心配そうな顔つきで声をかけられるけど、大丈夫だ、問題ない。なあにすぐ戻るさ。合体前に、仲魔たちと改めて絆を確認しあう。この世界で何体もの悪魔らと戦ってきた戦友だ、仲魔である以上にもはや言葉をかけるまでもなく絆は繋がっている。

 

 以前にターミナルを介した連絡手段を得ていたため、赤坂のターミナルでスティーブンを呼び出し、必要なMAGを支払って、【魔人コンバータ】を購入。魔王種族を作成時、代わりに結果が魔人となるサブアプリだ。魔人は強力な悪魔が多い割に、ダーク悪魔なのでゾンビを食わせるだけでランクアップ可能な点から非常に調達が楽な種族でもある。

 ついでにアレフの動向を聞くが、現在ファクトリーエリアで収容所の解放を目指しているらしい。行動がかなり早いな、恐らく俺が東京タワーに向かっている最中に解決してしまうんじゃなかろうか。

 

 それはさておき今回の合体だが、全ての手持ち悪魔を合体するのに加えて、追加で新たに1体仲魔作成する。

 変身悪魔の龍王ミズチをベースに、聖獣ヘケト+地霊ブラウニーから龍王マカラを作成、ミズチと2身合体し精霊ウンディーネに変換。魔獣カブソ、地霊ブラウニー、妖精ジャックフロストの3身合体で龍神マヤを作成しすぐに妖精ピクシーと合体して神獣カマプアアを作成。別個に魔獣カブソ、妖精ピクシー、魔獣ケットシーの3身合体で神獣マカミを作成。マカミとカマプアアを合体させて精霊サラマンダーを作成。これで精霊が2体揃ったので、本体となる魔王を作成すべく、まずは魔人コンバータを起動させて地霊ブラウニー、妖精ピクシー、妖精ジャックフロストの3身で地母神タウエレトを作成、更に堕天使ウコバクと組み合わせて魔人ドウマンを合体。ドウマンにゾンビを3体合体させ、魔人青怪人を作成。そこからゾンビと魔獣経由で安く作ったフレイミーズとでランクアップおよびランクダウンする合体を2回繰り返し、青怪人を2回作成し直すことで【火炎貫通】をランク3持ちに。そうして出来た青怪人に、魔人コンバータを切ってウンディーネとサラマンダーを合体させることで2ランクアップし、【アギダイン】【火炎高揚】【火炎貫通Ⅲ】、更に絆スキルで【火炎ブースター】を習得した火炎特化の魔王ヘカーテが完成する。計9200マッカ。

 次に造魔の強化を行った。上述の3身合体でタウエレトを作成からのウコバク合体で魔人ドウマンを作成、コンバータを切ってゾンビを2回合成し魔王オーカスを作成。コンバータを付け直してゾンビを組み合わせ、魔人マタドールに。また、タウエレトを作成し手持ちの妖魔メルクリウスの悪魔カードと合体させ、女神アリアンロッドを作成。造魔に女神アリアンロッドを、そして魔人マタドールを順次合体させることで、【耐物理】およびマタドールの「魔法全般に強い」耐性により全門耐性を獲得した造魔が完成した。計4400マッカ。

 3番目は、前回合体を見送ったモーショボーにゾンビを組み合わせ、まずは凶鳥フリアイにする。魔獣カブソ、妖精ピクシー、妖精ジャックフロストから一旦破壊神アレスを作成、聖獣ヘケトと合体して魔神トールを作成。精霊同士の2身合体を活かし、赤坂のGPは28なのでアーシーズとアクアンズからは地霊ツチグモLv27が出来る。このツチグモに更にアーシーズを合体させ出来た地霊ウベルリを魔神トールと合体させると、最低レベルで【メディアラハン】を持つ国津神オオモノヌシが出来る。グレムリンとドンコウを合体させ出来た国津神オオヤマツミと合体させ、【メディアラハン】を持った精霊ノームを作る。例によってタウエレトを作り、ウコバクを合体させ魔人ドウマンを作成、コンバータを切ってゾンビを2回合体させると魔王オーカスになり、そこからコンバータをつけて精霊フレイミーズでランクダウン合体すると、魔人アリスが出来る。ベースの凶鳥フリアイを、このアリスと精霊ノームと合体させると、素体のスキルを継承した、【メディアラハン】等を持つ補助特化の魔人アリスが再作成しなおされる。計9900マッカ。

 神獣マカミは、凶鳥オンモラキにゾンビを7回合体させて凶鳥グルルにし、凶鳥オンモラキと合体させて霊鳥ホウオウを作成。夜魔アルプ、夜魔インプを合体させ【耐呪殺】を持つ精霊アーシーズを作成し、鬼女ダツエバに合体させて鬼女ハッグを作成。更にハッグとダツエバを合体させて精霊ウンディーネを作成。神獣マカミと霊鳥ホウオウ、そして精霊ウンディーネを3身合体すると、前者2体で出来た天津神が1ランクアップする形となり、天津神フツノミタマが完成する。凶鳥グルルから【衝撃高揚】【衝撃ガードキル】【生得武器(羽)】【羽ばたき】、そして自前の【真空斬り】が合わさった衝撃属性特化の格闘型前衛悪魔である。計6400マッカ。

 最後に新規仲魔として、例によってタウエレトからウコバクをくっつけ魔人ドウマンを作成。ゾンビを2体合体し、魔人ゴーストQを作成。個別に邪鬼ドンコウにゾンビを2体くっつけ、邪鬼ガグを作成してゴーストQと合体させると、【雄叫び】【ラクンダ】【フォッグブレス】等を習得したデバフ特化の魔人青怪人が完成する。複数回攻撃を何度も飛ばしてくる【龍の眼光】持ち高レベル悪魔対策として、【雄叫び】は意外と悪くない働きをするのだ。計4500マッカ。

 

 これらの合体により34400マッカをあっという間に消費し、3800MAGあったのが合体後は550MAGまで減ってしまった。仲魔を召喚出来るだけの分は残してあるが、最早これ以上削ることの出来ないぎりぎりである。

 以上の仲魔を引き連れて、俺は赤坂を南口から降りて南東の六本木を経由し、東京タワーに向かう。

 




ミレニアムが終わるまでおよそ2話


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(No title)

>所変われば出没悪魔も変わる日

 地下世界東京は断層により新宿の北エリアが上層、新宿-赤坂間の中央エリアが中層、そして赤坂以南六本木を含む南東エリアが下層に分かれているのは以前にも述べたこと。エリアごとに妖精、地霊と都市を統べる人間も異なるが、ここ下層の六本木エリアにはミュータント(この時代ではミレニアムの改造や、悪魔による身体への悪影響を受けた人間)が僅かに残る日本の神々の力を得て統べることに成功している。

 多分。

 

 しかし日本古来の神々、天照大神を含む天津神は天の岩戸に強制封印、国津神らも封印されたり利用されていたりと神族勢力としては壊滅状態。結果、ミュータントらが住む六本木の街以外は全く手付かずで、悪魔がごろごろと襲い掛かってくる。妖精ハイピクシー、妖鳥ケライノーに地霊ツチグモ、それから幽鬼デュラハンと、だいたいは上のエリアと似たようなメンツだが。

 物理が通るのは殴り倒し、通らない相手は高揚ブースタ込みの【アギダイン】で蒸発させる。300ダメージも出せば、このレベルで活泉も火炎耐性も無い悪魔は確1だ。

 東京タワー到着前日にレベル34になった。レベルアップでHPMPも回復し、使った分のMAGも補充し終えて用意は万全である。さて鬼が出るか蛇が出るか。

 

 

 

 

 

 

 

 近づいて気づいたが、東京タワーが異界に包まれていた。ルシファーの仕業かコレ。

 異界というのは普通、生物の血液や空気中・大地に含まれる魔力といった生体マグネタイトを他所から獲得し、身体を構成している悪魔にとって、現代日本のように治安が良く、戦いや争いで血が流れることがない=空気中にMAGが漂わない地球上ではMAGが足りず「窒息」してしまうため、生存するために作成するMAG溜まりで、かつ狩り場も兼ねる結界だ……しかし大破壊後で悪魔が周知の存在となり、争いが絶えなくなったこの東京では悪魔はMAGで窒息することはなくなりほぼ無縁の代物のはず。

 それでも異界を張るのは、今の状況でもまだ足りないほど高位の、それこそ魔界からやってきた大悪魔が中にいるのか。あるいは結界として、内部の悪魔の存在を外に悟らせないものとして張ったものなのか……どちらにせよ、中に入ってみれば分かるだろう。

 すぐさま戦闘になることはないだろうが、目の前で悠長に準備させてくれるとも思えないと感じ、入り口付近で出せるだけの全悪魔を布陣しておく。道中雑魚戦がなければ、1回の召喚でボス戦まで持つだろう……まさか雑魚まで用意してるってことはないよな?

 

 雑魚はいなかった。

 いたのはルイ・サイファー閣下と、それから対戦相手の悪魔が1体だけ。

 だがなんであなたがここに

「心はしっかり整えてきたかな?」じゃねえよ。

「強くなるとは、力が強くなることだけではない。いずれ自分の弱き部分も捨てることが強さになる」じゃねえよ。

「だから君の手伝いをしてあげることにした」、って。

 よけいなおせわだ。

 いや、なんであなたもわかったようにうなずくのさ。ねえ、アリスさん。

 

 

 

>リリム、いや夜魔リリスが現れた日

 

 悪魔は契約を……たとえ口約束であろうとも守る。

 しかし契約の隙を突いて不履行したり、契約の合間を縫って危害を加える悪魔は多い。薄情者とされることも多々ある。

 でも、サマナーの仲魔のように悪魔と交流することで相手への感情が生まれ、契約がなくとも害しなくなることもあれば、無償で利することだってある。

 例えば、アリスさんがそうだった。最初は、俺の力を見て仕掛けてきたんだろう。でも肌を重ねるうちに、言葉を交わすうちに情が生まれ、絆を結んだ。代償がなくても力になってくれようとした。

 そんな絆が生まれたからこそ、このような行いに出ようと思ったのだろうか。

 

 

 



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ミカエル、ラファエル、ウリエル

連続投稿也


 

>夜魔リリスLv72の悪魔カードを手に入れた日

 高レベルで、BS無効、魔法も無効など強い耐性を持つこと。BINDやFREEZEハメのような卑怯地味た手を取れないこと。

 無限回【龍の眼光】により毎ターン5回行動を行えること。攻撃を運任せに回避して凌げない、正面からの殴りあいに耐えるだけの耐久力が、高レベルでは必要になること。

 多彩な攻撃相性、あるいは万能相性【メギドラオン】により全門耐性ですら防げない攻撃があること。

 いわゆるラスボス級の悪魔は、下手に小手先の技を使うこともなく、高いレベルで万能で殴ってくる力バカであるのだ。

 

 夜魔リリスは、そんなやがて戦うだろうミカエルら高レベル悪魔が備えるのと同様の性能を持ち、なおかつレベル72とラスボス格に比べればやや低めということもあってまだ力の足りない俺にも相手できる、ラスボス級悪魔という条件を満たしているので経験を積むのに最適な相手であり、ルイ・サイファー閣下の采配が確かなことは分かる。

 だが分かっていて彼女を連れてくるあたり、非常に悪質。

 糞野郎、この悪魔め。

 

 

 

>決戦の日

 スティーブンが、ザインが元老院に出頭したことを知らせてくれた。やがてアレフも元老院に向かうのだろう。俺も行かなければ……わざわざ俺への犠牲になった、彼女を無駄にしないためにも。

 

 仲魔は邪神ニャルラトホテプ、魔王ヘカーテ、大天使クシエル。造魔は最後に魔王アバドンを合体した。俺自身は夜魔クイーンメイブとなって、全員例外なく【耐物理】等により剣への耐性を獲得している。魔法全般耐性を持つものも多く、ほぼ雑魚悪魔相手なら完璧だが……それでも足りないくらいだ。

 幸い、ドロップ品の貴重な武器を売却したことにより金は溢れるほどに手に入ったため、妖魔クルースニクから【至高の魔弾】を全員に持たせ、何人かには【ラスタキャンディ】や【ランダマイザ】を習得させた。全員ではないが、【リカーム】や【サマリカーム】、【メディアラハン】も習得し、ダーク悪魔には【回避強化】も持たせた。リリス戦で顕著になった、メギドラオンの連発に味方が耐え切れない問題はある程度解決したつもりだが……果たして本気のミカエルに耐え切れるかどうか。

 

 俺はセンタービルに向かった。途中ゲートのパスコード等はスティーブンから全部聞いているし、道中の雑魚は万能相性の攻撃すら持ってないため俺に攻撃は通じず、もはや相手にならない。

 メシア教徒と天使には【八相発破】、時折り現れるマシンは【真空斬り】と強引になぎ倒し、センタービルの22階、元老院の間の前に来た。既に石化したザインの石像が扉前に突っ立っており、中では戦いの気配が感じられる。アレフに遅れたか……?

 仲魔を呼び出し、変身し戦闘態勢を整えて中に突入すると、今にもアレフが正体を現した元老院のウリエル、ラファエルの二柱と矛を交えようとする寸前であった。魔獣ケルベロス、国津神サルタヒコに女神フレイア等を従えるアレフとそしてヒロコは仲魔から判断するに俺と同程度のレベルだが、そのレパートリーはとてもではないが万全な対策を施した布陣ではない。特に【マハブフダイン】を使うラファエルと回復の要【サマリカーム】を使えるケルベロスの相性は最悪だ。三体全てを受け持つ予定とはズレたが、俺は戦いの場に乱入しラファエルに攻撃を加え、強制的に向こうの意識をこちらに割かせた。

 

 最奥の間でアレフ・ヒロコとウリエル、俺とラファエルの二つの戦いが繰り広げられるが、やがて片方の戦いはすぐに終わった。多少【デカジャ】が使えるからといっても、万能相性の使えないラファエルではとても有効打を与えられないからだ。途中で残りの手勢が加わったりすれば大変困るところだが、この間ミカエルは見に徹していたようだ。

 飛び交う【至高の魔弾】の傷を刻むような攻撃により、ラファエルは徐々に削れるHPへ悲鳴を上げて倒れた。前哨戦は命運の消費も少なく、ラファエルの経験点でのレベルアップによりHPとMPもリセットされミカエルへは万全の状態で挑むこととなる。アレフは未だウリエルと戦闘中だが、時間稼ぎの【テトラカーン】に苦労しているだけで心配は無用そうだ。

 

 腰を上げたミカエルはアレフをよそ目に、奴も真の巨体を現し、手に持つ大天使の剛槍を振り回し、仲魔ごと俺を薙ぎ払ってきた。しかし物理攻撃はかすり傷だ。それを奴も小手調べにもならないと分かっているのか、【テトラカーン】の守りを張り……見に徹したことでこちらの弱点を見ぬいたか、速攻を仕掛けてきた。

 時間をかければ、【ラスタキャンディ】【ランダマイザ】により補助を積む時間があり、そして【メギドラオン】を撃てるMPがなくなる。だがじわじわと削っても【リカーム】からの【メディアラハン】で簡単に体勢を建てなおされる。それをウリエルとの戦闘で分かっているからか、次の手に集中に集中を重ね……自身のMPの半分を一息に費やす、怒涛の【メギドラオン】15連発を繰り出した。

 流石に仲魔全員を守り切ることは出来ないが……俺一人生き延びることに集中すれば、どうとでもなる。クリティカルは急所を防ぐ観音神符を切り、最初の数発は仲魔に【カバー】をしてもらい、半分は自力で回避を、残り半分はライフで凌ぐ。リリスでの経験から、高レベル悪魔のメギドラオン連発を全ての仲魔が生き延びることはできないと早々に見切りをつけ、敵が手を緩めるまでは俺だけで耐えることに専念すると決めていた。

 メギドラオンをしのいだ俺がリカーム、サマリカーム、メディアラハンで次々と仲魔の体勢を立て直すのを見て、愕然とした表情を浮かべる。最強の切り札を切って、俺のMP以外のリソースを削れなかった時点で最早負けが決まったようなものだ。

 しつこく、ミカエルは再び15連メギドラオンを繰り出すが、今度はクリティカルも少なく、生き延びる仲魔まで現れる。またその程度の火勢では、当然俺が倒れるわけもなく、回避の目は悪かったが僅か2点の命運を切るだけで凌ぎ切った。MPの9割を消費し、もはやあと数発しか【メギドラオン】を撃てない状況に陥ったミカエル。“詰み”だ。

 

 ミカエルを屠り、後ろを振り返るとウリエルは倒され、ガブリエルが次の戦いへ向けてアレフを癒やしているところだった。苦戦はしていたが、向こうは無事に勝てたようだ。回復もあって、次なる作られた偽神への調子は万全だろうが、それだけで足りるように見えない。

 本当なら手を貸してやるべきだが、元老院を倒すスティーブンとの約束を遂げた以上、そこまでする理由はない。それに……もう、疲れている。

 後の敵はそちらに任せたと告げ部屋を出る前、COMPを通してアレフに大天使クシエルの仲魔データを送る。元はピクシーから付き合ってくれた最古参の悪魔だが、これからの俺よりもアレフに使ってもらった方が役に立つ。きっと。

 アレフには何か言われそうになるが、結局何も言われないまま彼らは現れた偽の唯一神へ戦いを挑んだ。その始まりだけ見届けて、俺は石化が解けつつあるザインを横目にセンタービルを離れ、ミレニアムの西へ向かう。

 

 ミレニアムのエリア間通路を抜け、今はもうアバドンに食われ、地下世界か魔界か、どこまで続くのか底が見えないヴァルハラ跡地に着く。

 羽田ジムから抜けた俺を拾ってくれたものの恩を仇で返す形になったTen-DO組、ヴァルハラを離れるきっかけの戦いを繰り広げたが後に酒の会で悪くない友人になれそうだったダレス、そして俺の生前生後を通しての正真正銘初めてを捧げたアリス・リデル。

 ミレニアムに居た時間はペルソナ3よりも短い間だったけど、ここ数回の転生の中で一番好きにやれて、何よりも楽しかったと感じた。それだけに……

 

 何もなくなったその空間へ一歩踏み出し、自由落下中に我が身を守るように包む風を肌で感じながら、俺は目を閉じた。

 

 

 

 




ミレニアム終わり。


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五キャラ目(転生者ともう一人)
悟り


>自殺しようがやっぱり転生する日

「折角クリア寸前まで行ったのに自殺するとか、バカジャナイノ。もう俺TUEEEの舞台が整っていたのに、女性一人、しかも元は下級悪魔を失っただけで心が折れるなんてハーレム転生オリ主の風上にも置けやしませんね」

 もう転生やめようか。そう思いつつあったのに、女神が嘲笑してくるものだから、怒りがぶり返した。

 

 まだ経験点やアイテムは取り上げられてないようで、レベルはそのままだしCOMPはまだ手元にある。仲魔も……一体はアレフに与えたが、十分フルメンバーが揃っている。ミカエルを倒した今なら、例えこの女神が真の唯一神級であろうと倒せる自信がある。

 俺の眼差しから戦意を受け取ったか、女神はくいっくいっと手のひらを上に向け、招くように指を曲げ挑発してくる。余裕ぶりやがって、舐めた真似をしたことを後悔させてやるから今に見てろよ。

【ラスタキャンディ】でバフ、【ランダマイザ】でデバフをかけるが……デバフが効いた様子はない。もしや、女神というだけあって稀人(マレビト)に神族覚醒しているのか?【プライムワン】という、バフデバフを受け付けなくなると共に攻撃の全てが万能相性に変更できるというスキルを習得しているなら納得だが……

 

 ともかく、攻撃・反撃の様子はないため手始めに【至高の魔弾】を放つ。万能相性は普通の悪魔の耐性や、防具では無効化できないし、例えどれだけステータスやレベルが高くても防御力無視の魔弾ならば通用するはずだが……効いてない、むしろ吸収されたように見える。TRPG版で万能相性への耐性持ちというと唯一神の三つの化身(分霊)の一つ、神霊ツァバトが思い当たるが……アレは物理反射は持っていなかったはず。かといってベル・デルのように相性に関わらず無敵化しているタイプならば、吸収ではなく無効化になるはずだ。……こいつ、恐らく既存の悪魔のものではない独自のアバターを持ってやがるな。

 疑問は残るが、【アギダイン】を放つ。同じスキルを3回、継承により重ねて習得したことでランク3となった【火炎貫通】は必ずではないが、反射さえも高確率で貫通し、通常のダメージを与える。防御力は有効だが、【火炎高揚】【火炎ブースタ】【火炎ハイブースタ】スキルの3つの威力増強効果により約3倍の威力となった【アギダイン】のダメージは全パラメータ最大、レベル255の悪魔の防御力さえをも貫く。

 俺の攻撃に、初めて女神が痛みを顔に浮かべた。やはり、ただ全門反射とか規格外な耐性を持つだけのアバターだったようだ。レベルは分からないが、ダメージさえ通るならば勝てる。例え唯一神だろうが絶対神だろうが、攻撃でダメージを与えられる、データを持つ敵ならば倒せるのだ。

 ダメージを受けたことに、女神は微笑を浮かべてその身に覇気を帯びた。俺がようやく敵になりうると分かったことで、やる気になったようだ。ご褒美に必殺技を見せてやろう、という上から目線と共に奴は目が焼けるような眩しい光による攻撃を俺たちにぶつけた。

 

 回避も防御も反撃も出来ない万能相性1000ダメージ固定連打とかみんな死ぬしかないじゃない。

 

 

 

>必殺技で殺された日

 奴が攻撃する際に無尽無辺光とか技名を叫んでたので、あいつ真・女神転生3のカグツチっぽい。カグツチがこいつみたいな意地汚い性格してるとは思えないので、それっぽい能力を得ただけの悪魔なんだろうけど。とにかく奴は俺を軽々と転生させる権能にふさわしい、ぶっ飛んだ強さを持つことが分かった。舐めるだけの実力はあるわけだ。

 ……決して倒せないわけじゃないけど50レベルでも足りない。少なくとも仲魔のHPが1000を超えるような、それこそ100レベルまで上がらないとアレの相手は無理だと思う。ミカエル8体分の経験値が必要かぁ……ミレニアムと魔界の敵を全てぶっ倒せばそれくらいは手に入りそうだけど。でもそれ、俺の理想とは程遠いなぁ……

 

 もう一度死んでる間に経験点と装備は取り上げられてたので、次の転生の予定を見直そうとする俺に奴がこう提案してきた。俺が望むなら、転生者の仲間を増やせるとかなんとか。暗に私を倒すなら複数人でかかってこいってことなんだろうが、それじゃアリスさんの転生をよろしく、と言うと悪魔の転生は無理だとかなんとか抜かす。人種差別反対。

 転生者が増えても経験点の徴収はそれぞれに行うとか、ボーナスは転生者ごとに費やしてもらうとか詳しい説明を聞き流しながら今後の予定を考える。やっぱりこのクソ女神を一度は倒しておきたいので毎ターン1000ダメージ×2回を乗り越える手段を手に入れなければならないが、正直言って命運やスキルを使わなければ生き残れる威力ではない。しかし仲魔の悪魔は命運を持たないので、サマナーの俺が命運を消費して軽減しなければならないが、そうやって仲魔全体のダメージを軽減していると3ターンも持たずに命運は無くなってしまう。命運はプレイヤーキャラクターごと、この場合は恐らく転生者ごとに所持できるため、そういう意味であのクソ女神は転生者仲間を増やすことを提案してきたのだろう。

 そうと分かれば、わざわざ自分を倒す手伝いをする自作自演に憎むところはあるけど仲間を増やす提案を飲んだ。素直に聞き入れたことに女神はつまらなそうな顔をしたが、お前の話は聞くことにしたけどそれでも一度くらいお前をぶっ倒したい気持ちだけは変わってないことを告げると、イタズラが成功したワルガキのように口をニヤリと歪めた。

 

 とりあえず、クソ女神をぶっ倒すならば火力が必要と感じた。あのぶっ壊れ攻撃がある以上、長期戦は不利だし、仲魔の悪魔の火力だけではまだ不足している。【高揚】や【ブースタ】を載せられるだけでは足りず、もっと爆発的な火力が必要だ。

 悪魔では手に入らない、クリティカル時の2倍ダメージを3倍にする【大地鳴動】、そのターンの行動を2回の格闘攻撃にする【連続技】、次の武器格闘攻撃の回避を不可能にする【切り落とし】など、人間の前衛でなければ手に入らない火力増強スキルを手に入れるためにも剣士、あるいはそれに次ぐ前衛クラス持ちを探すのを次の転生の目的とする。

 

 

>転生準備を再開する日

 クラスはそのまま、アイテムはCOMP本体と【珍獣コンバータ】、【ダブルバリュー】のサブアプリ2つを継承するだけにした。できれば絆ごと手間暇かけた仲魔も継承したかったけど……作成時に使役できるレベルの問題までは考えていなかったため、例え引き継いだところですぐには使役出来やしない。今度から高レベル時に余裕があれば、転生直後に使える仲魔の作成なども考慮しておこう。

 転生特典の項目に絆の引き継ぎがあり、注釈を読めば例え別世界でもその人物が現れるようになる等、アリスさんの絆を引き継ぐことも可能だと気づいたが……やめておくことにした。俺が一度手に掛けた事実は変わらないし、また会えたとしても逆に気後れすると思い、彼女のことは俺の思い出だけに留めておくことにした。グッバイ初恋の人。代わりに、妖精郷とスティーヴンとの絆を引き継いだ。前者は悪魔繋がりで情報を、後者はCOMPとDDS(悪魔召喚プログラム)関連の調達と良いコネになる。利益優先。

 あとは覚醒段階3の開放。まだ次に行きたくはないが、ペルソナ3の影時間の適性獲得。それと転生先の決定権を「購入」した。これは約6万ある経験点のうちの100や1000費やすくらいで選べるものなら安いものだ。ついでに、転生先の候補に何があるのか確認しておけるというのが一番の利点だ。

 

 ネタバレするのを惜しむように、女神がしぶしぶとサイコロに対応した一覧表を見せる。既に行ったことのある世界のうち大破壊前の東京、ミレニアム、ボルテクス界、それからペルソナ3まで判明しているが……

 まだ行ってない残り2つの世界は、デビルサバイバー1と、デビサバ2+ストレンジジャーニーの複合だった。複合ってなんだそれはと女神を問い詰めると、別に原作知識に支障はないからいいじゃん!と逆ギレされる。南極と日本、どちらも遠く離れて独立しているから確かに問題はないが……。

 さておき、どちらも剣士や前衛系の異能者が多そうな世界には思えない。ストレンジジャーニーは南極探査部隊に潜りこむまでが大変そうなので敬遠。尤もCOMPのアプリが豊富な世界、かつ適度な悪魔とそのへんで出会える世界観は捨てがたいので、行くとしたら同行者を見つけてから次回を稼ぎ回とした時だろう。

 

 効率から言えばコロシアムがあり戦士も多く、羽田ジムスタートで他のグラディエーターとも付き合いやすいTOKYOミレニアムに戻るのが最適だけど、今は続けて行きたい気分ではないのでそれ以外。真田先輩のいるペルソナ3か、異能者の多い大破壊前の東京か。

 前者は目当ての真田先輩を誘えなかった場合は他を当たるのが難しいため、当たりの多そうな大破壊前の東京に決定。4310経験点を残し、38レベルの経験点を引き継いで転生した。大破壊前は最強の悪魔がトールマンの34レベルなので、生存ルートさえ確保できれば余裕でしょう。……いや、ゆり子がいるな、この前リリスの強さを味わったばかりだし慢心はいかんね、慢心は。

 




今章から転生者を増やす予定です。
転生者複数が嫌いな方には悪いですが、前回で一人で出来る分は力を尽くしたということで、ご了承ください。


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強すぎると逆に困る図

>わずか一週間の学生生活、月曜日

 同じ世界に二度来るのは今回が初めてだ。とはいえ一度目の経験ではろくに情報を得られなかったが、一週間も経てば学校が休みになることは知っている。そのまま不登校してもいいんだが……不特定大多数の人間が通う学校は異能者を探すのに便利なので登校している。教室や廊下で目に映る男子女子を片っ端から目測【アナライズ】しているのだが、誰もかもレベル0。TOKYOミレニアムでTen-DO組の893たちとの経験から、異能を持つ人間は少なくとも1レベル持っていることを目安にしてるのだが、そんな人間全然見当たらぬ。武道系の部活動も覗いてみたが、スポーツの域を超える人間はおりませんでした。

 教室で女子をガン見してる様子をクラスメイトからそんなに童貞卒業したいのか?と茶化されたが、悪いが俺は非童貞なんだと返して逆に驚かれる。でも肉体関係の経験はあるけど肉体に関係の経験はない、って複雑ね。

 

 吉祥寺スタートだから原作主人公が同じ学校にいる可能性は高そうなんだけど、それらしい学生も幼なじみのヒロインと名前違いちゃんも見当たらぬ。アームターミナルなんて自作してるあたりオタクだったりして、実は不登校生やの可能性は……悪魔をアタックナイフでしばき倒す奴なんだし流石に無いよな。

 ところで関係ない話だけど、幼なじみという貴重な属性持ちの女の子を放っとくなんて主人公くん勿体無いよね。

 

 

>火曜日

 本日も学校で異能者を探すが成果なし。

 放課後、場所を変えて井の頭公園へ。人気のない場所に足を踏み込むと、悪魔の作り出した異界に捕らわれる。早速ブラウニーやらピクシーやらが襲い掛かってくるが、この程度であれば変身するまでもなく素手で伸した。レベルの力ってすげー。

 異能者がうろついてないかなーと期待してうろついていたのだが、そんなこともなく飛びかかってきた異界の主の夜魔エンプーサを変身して返り討ちに。主を失った異界は当然消滅し、残っていた悪魔たちは方々に散っていった。

 異界に迷い込んだところを助けられた恩義から慕ってくれるかわいい女の子なんていなかったんや!

 

 

>水曜日

 そうだ、間違いなく人間を拉致って連れ込んでる悪い悪魔がいたじゃん。

 原作序盤の流れを思い出して、そのへんの裏路地を飛んでたピクシーをとっ捕まえて秘密病院の場所を調べる。先日の噂が早速流れたのか俺に怯えてたけど話しているうちにすっかり恐怖は抜けきっていた。交渉に持ち込めさえすれば運特化は伊達じゃないってね。

 強い奴の仲魔になりたいというお願いを断り、その代わりに今度代々木の妖精郷に案内してくれよと約束を結びつつ、最近人間が連れ込まれているという秘密病院の下見へ。秘密病院の入り口はシャッターが閉まっており、一見営業してるようには見えないが日除けの奥には薄っすらと明かりが漏れてるのが見える。もっと近づいて調査したいが、病院入り口に監視カメラが設置されてるようなので今日はこのへんにしておこう。

 だが、この秘密病院は主人公とロウヒーロー、それから現実世界で初めてスティーブンが会うきっかけになる場所だ。それだけでなく主人公が不在の間に(ピー)が起こることでエコービルから転送ターミナルを使い、都心へ行く展開に繋がることもあって、病院の主の堕天使オリアスを倒すのは原作崩壊に繋がり、特に大破壊以後に多大な影響が及ぶと考えられる。動くとしても、閉じ込められている人間を解放するまでしか許されないな……。

 

 病院近辺から離れようとしたら、人目を感じた。パッと振り向くと同い年くらいの小柄な姿が曲がり角に隠れるところが見えた。よく見えなかったが、女性のようだった……異能者かは分からない。ここ二日で人間の噂に上がることをした覚えはないけど。俺と同じく、秘密病院について探ってる奴か?

 しかしその場を離れて暫くすると尾行の気配を感じたので、先ほどの人物の目的が俺に移ったことを悟る。病院の関係者と思われたか。誤解を解くこと自体は簡単だが、まだ病院に対する立ち位置を決めてない以上は下手に協力を求められると面倒なことになる。なまじ実力がありすぎる分、弱いからとか言い訳が効かないし。

 適当な路地裏に回り込んで、COMPを起動。地母神キクリヒメを召喚し、ノコノコとついてきた尾行者に【マリンカリン】をかけて、魅了して情報を吐き出させた。

 ……うちの学校とは異なる制服を着た女の子だな、しかもアナライズしてみたら5レベルもある。ほぼ新人だが異能者に違いない。

 武装は見当たらないし、お目当ての前衛系クラス持ちではないようだけど、この際異能者ってだけでも貴重だ。場合によっては彼女にお願いすることになるかもしれないと、俺を追いかけた理由等を尋ねる。

 

 

 やっべ、予想してたのとは全然関係なかった。つい先日井の頭公園の異界を潰したことで俺が思っていた以上に悪魔の噂になっていた俺のことを調べるのが目的だったとか。ここまで異能者の動きが早いとは思わなかったけど……、これは彼女がどこにも属してないフリーの異能者だからってのもあるかな。どこかの組織なら、噂を聞いて調査に向かわせる等の命令系統とかがある分動きが遅れるだろうし。

 しかし、下手な組織の一員でない彼女は俺の目的に取り込むのに丁度良い人物だったんだけど……俺と同じ悪魔変身能力者でさえなければなぁ。せめて魔法系だったらまだ良かったのに。

 ひとまず魅了が効いてる間に、俺のこと、ここで話したことは気にせず忘れ、帰るように命じて退散する。

 

 

>木曜日

 そういえばまだ一度も異能者繋がりの施設に顔を出してなかったのが、先日の原因の一つでもあったかもしれないと反省し、井の頭公園付近の邪教の館に顔を出す。どうせ遅かれ早かれ調査されるなら、早いうちに顔を出しと場所は【マッパー】で調べた。

 どもーこのへんに越してきたサマナーです、との適当な挨拶と共に合体施設を利用する。キクリヒメといい変身といい、収入の割にレベルが高すぎてMAG消費が激しすぎるため、低レベル程度の悪魔が欲しいと思ったところである。【ディア】、もしくは【マリンカリン】用として魔獣ケットシーの悪魔カードを購入し、即契約。そういえば俺が最初に倒した悪魔もケットシーだったなと少し感慨に耽る。まあ後日予算が貯まったらまた合体するんですけどね。

 と、合体が終わったところに昨日の学生の女の子が邪教の館に飛び込んできた。そして魔法少女の誇りだかなんだかを賭けて勝負を挑まれた。何故そうなる。

 

 聞けば、どうも一般人出の異能者な彼女は、妖精と知り合って覚醒した悪魔変身能力を魔法少女かなんかと思い込んでいるようだ。プリティーでキュアな彼女は、力が(あんまり)ない妖精に代わっておしおきよ!とゾンビやらゴーストやらヤクザやらを妖精に言われるがまま退治してたらしく、その流れで妖精たちの国(井の頭公園、エンプーサの異界)を荒らした俺をこらしめに来たとのこと。やってることはいいんだけど、根本的に間違ってるから反応に困る。

 邪教の館の主が迷惑そうな顔をしてたので彼女が暴れる前に外に出て、ケットシーで【マリンカリン】をかけ……たかったのだけど聖獣ユニコーン(BS無効)に変身されたため無力化は諦めて、こちらも妖魔クルースニクに変身して相手をする。

 必殺技と称して【ハマ】で即死、それが効かぬと見るや【突撃】してくるも、言うまでもなく変身悪魔のレベル差で攻撃は通じない。逆にこちらの攻撃はほぼワンパンでDEAD状態に追い込めるのだが、やりすぎはいかんということで手加減しながら射撃で削る。削れた体力を【ディア】で回復しようとするが、形勢を覆すにはそもそも手数が足りてない。

 一生懸命なつもりの女の子には悪いけど、回復するMPが尽きるまで手足を居抜くなどして徹底的に動けなくさせてもらった。私は決して挫けないんだから!とか叫んでるけど、いや俺は別に敵対組織の悪の親玉とかダークヒーローとかじゃないから。

 こないだのピクシーを呼び、執り成してもらうまで彼女の勘違いが解けることはなかった。これからまだ、悪魔に関する説明をしなきゃいけないんじゃが邪教の館の親父さんに丸投げしちゃだめ……?

 

 場所を井の頭公園に変えて、ベンチに腰掛けながら悪魔の説明をする。そもそも妖精もゾンビもゴーストも全て悪魔という一括りで呼ばれる存在で、見た目や能力の差はあれど人間を食い物にする(出来る)という点でまったく同じである、云々。変身能力のみならず、常軌を逸する、悪魔と戦える不思議な能力は異能と呼ばれ、悪魔との邂逅や神秘的な体験、物品の継承などで元より素質を持つ、あるいはそういう血筋や魂に素養のある人間が目覚めるものである、云々。決して魔法少女みたいな何も考えずに気楽に出来るものではないと、強く説明したが、目を回していたので多分把握していない。

 とりあえず覚えててほしいこととして、妖精も含めた人外の存在はすべて悪魔と呼ばれること。悪魔は人間の生き血や生命力を栄養にしてるから気を許してはいけないことを注意した。彼女が俺の理想の異能者だったなら、もっとしっかり面倒見てあげたんだけどもそうでないからテキトーに。

 

 

>金曜日

 昨日の女の子といたところをクラスメイトに見られていたらしく、まさか彼女がお前がえろえろえっさいむした相手かと問い詰められた。いやあれは昨日一方的に声をかけてきた、自分を魔法少女と名乗る電波さんだったからすげー扱いに困った旨を伝える。実際困るよああいう話が通じないの。

 

 放課後、まだ人目のつきそうな場所にいるにも関わらずピクシーが飛んできた。

 え、あの女の子が秘密病院に攫われた? えー……助けなきゃダメ?

 

 




原作ありの世界で完全オリジナルキャラとか気安く出したら負けかなと思ってる


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魔法少女の先輩

 

>金曜日の夜

 ピクシーには大きな貸し一つと言って、日が暮れてから秘密病院に特攻。変身していれば人間の姿はわからないし、シャッターは悪魔の力でぶち抜けばいい。アラームが鳴り響き、大量の悪魔が現れるが【天扇弓】より放たされる無数の矢にて片端から全て打ち倒す。

【マッパー】により病院内の構造を把握するが、少女の居所は掴めない。手近な病室――中には人や悪魔、半魔人が閉じ込められている檻があった――の扉を開けては中を覗くも、見つけられず。そうこうしているうちに増援の気配が近づいてきて、焦る俺。そこに近くの病室の中から、「こっちだ」と声をかけられる。

 一瞬罠ではないかと思うも、ピンと来るものがありその部屋の中に飛び込んだ。予想通り、原作同様にスティーブンが―――相手は異なるがこの病院内の一室で待っていた。残してて良かったスティーブンとの絆。

 不思議な事に部屋へ入ったことに全く気付かず通りすぎる悪魔たちをやり過ごしつつ、スティーブンに状況を聞く。どうやらまだ主人公は捕まっていないが、自衛隊は悪魔と手を組んで研究や支配を広げつつあるようだ。

「出来れば相当な強さを持つ君にこそ、この病院の悪魔オリアスを倒して欲しいが……」とそこで一旦口を止めるスティーブン。

「悪魔召喚プログラム製作者の私も知らないより進んだ機能を持つ、まるで未来から持ってきたかのようなプログラムを持っている君にはきっと色々な事情があるのだろう」と勝手に悟られる。つーかこっちの事情半分バレてーら。

 あまり多くこちらの事情を話せば、またミレニアムの時のように利用されんとも限らんと、適当に話を合わせながら最近運び込まれた悪魔変身能力者の女の子を知らないか、と尋ねるとCOMPのマッピング機能に彼女のいるポイントを記してくれた。サンキュー、でもミレニアムの恨みを忘れてないから礼はしないぜ!

 

 異界化しつつある病院のフロアをどしどし進み、近道とばかりに壁をぶちぬいて現れた俺に驚く自称魔法少女を片腕でひっつかんでそのまま病院外壁をぶちぬいて脱出。少し離れたところで夜闇に紛れて変身を解き、そのまま井の頭公園の回復道場まで連行。悪いとは思いつつもなけなしのMAGで迷惑料を支払って、少女を預かってもらう。

 後は朝になったら気をつけて帰るようにとだけ告げて撤収した。寝る。

 

 

>土曜日

 しまった、黙って立ち去ったところで既にピクシーにバレてるんだから意味なかったじゃん!

 半ドンの後に学校を出ようとしたところで例の魔法少女に捕まった。文字通り抱きしめられる形で。他校の学生と校門でハグしてたと明日にも噂されるのは間違いないだろう。来週から戒厳令で学校が休みになるから全く問題ないけどな。

 

 逃げたいけど情報通のピクシーがいる以上はもう逃げられないんだろうなー、と諦めて近くの喫茶店にて内心泣きながら少女の感謝を受け取る。そういえば名前も聞いてなかったが、九条ななみちゃんと言うらしい。そんな魔法少女風悪魔変身能力者がTRPGリプレイにいたっけなぁ……。

 彼女が俺を尋ねたのは、何もお礼のためだけではない。魔法少女では無いが同じ変身能力者として、しかも窮地の自分を助けてくれた俺を先輩と崇めて自分をシゴいてほしいと述べてきた。まあ、これは予想出来た展開だし、彼女の異能が俺の求めるところと大きく外れているところさえ除けば、恩を売って仲間に取り込める理想の流れとも言える。魔法少女という変に異能への願望がある分、動かしやすそうだし。

 でも悪魔変身だと出来ることが全く被るんだよー。

 

 未だに自らの異能のことを妖精と契約した魔法少女だと勘違いしている彼女に現実を教えるべく、邪教の館へ連れていき悪魔合体を見学させる。病院内でしばき倒したついでにカードハントした妖精ゴブリンに、館で購入した妖精ジャックフロスト、所持する魔獣ケットシーを3身合体。破壊神アレスを爆誕させ……即座に造魔にシュート。

 コポコポと水槽の中に浮かぶ悪魔らにビビる彼女に、お前の変身悪魔もあそこに浮かべられるんだぜと現実を教えてやると私はユニコーンのままで戦い続けます!と叫ぶ。

 でも魔法少女に見た目が変わってパワーアップする展開はつきものやん?と聞けば「それもそうですね」とあっさり手のひらクルー。思ったより飲み込みが早いわ、この子。

 さて、具体的に俺に何を望むのかと九条ちゃんに尋ねる。色々説明してほしいのか、強くなりたいのか、魔法少女に協力してほしいのか、その他etc……。すると彼女は、「正直……(もにょもにょ)……けど、代わりに私の倒すべき敵、魔法少女が対決する邪悪な悪魔を教えてください!」と途中恥ずかしがるように発言を誤魔化しながら、大きく出たことを言う。しかし誤魔化したつもりのようでも、正直全部手伝ってほしいという言葉は聞こえてたぞ。

 魔法少女という勘違いはさておいて、倒すべき悪魔と一概に纏めるのは難しい。この東京にいる強大な悪魔の多くは、アメリカ大使館でメシア教大天使の手先となったトールマンや、ガイア教や悪魔と手を組み日本の独立を目指す自衛隊のゴトウ司令官の一派といった、それぞれの正義を主張する勢力を担っており、彼女の思う敵とは異なっている可能性が高い。最悪、相手の主張に感化されて逆に取り込まれる恐れすらあると考えるなら迂闊に答えるわけにはいかない。

 故にこの時代ではまだ現れないが、いずれLAW勢力の手先として神の降臨を手助けする魔神ヴィシュヌの名を上げた。奴が現れる頃には、大洪水が発生しメシア教もとい神の残酷さを彼女が知ることになるため、そう簡単に取り込まれることはなくなるだろうと思ってのことだ。

 それを知らぬ彼女は、それとなく聞き覚えのあるインドの創造神の名をハッキリ記憶に残したようだ。

 頑張るのはいいが、大天使ミカエルほどではないが相当高レベルな悪魔なので決して彼女一人で倒せる悪魔では無いことを念頭に。

「つまりもう一人魔法少女と集まってふたりはプ○キュアですね!」

 違うそうじゃない。けど落ち着いてくれるなら、今はそういうことにしてもいいか。

 

 

>日曜日

 いけない、ついついあの後流してしまったが明日には戒厳令で身動きが取れなくなってしまう。

 クラスメイトからハグされてた女の子を問い詰めるメールボムを無視し、急いで九条ちゃんに連絡を入れて駅で集合。吉祥寺から代々木まで電車でGOする。今日を逃せばエコービルからターミナルの転送装置を利用するしかなくなり、原作に関わらないとならなくなるところであった。危ない危ない。

 

 遠出した事情を尋ねる彼女に、今日はピクシーたちの集まる本拠地、妖精王と妖精女王のおられる妖精郷へ顔を見せることを伝えると目を輝かせて期待した。パワーアップイベントの前後とかで妖精の世界を訪れるのは魔法少女あるあるだけど、今日はそんなものじゃないから。

 例の情報通ピクシーをひっつかんで代々木公園へ。女神転生世界では明治神宮は日本の神々である天津神の神域であり、LAWにもCHAOSにも大きく影響されない中立地帯となっている。そこに隣接する代々木公園も影響を受けているが、日本の神の代わりに妖精たちが入り込み、妖精たちだけの世界を築いている。

 

 代々木公園の敷地内にある異界へ入り込むなり妖精たちの警戒に引っかかるが、情報通ピクシー案内により奥へと通される。TOKYOミレニアムの地下世界では一度も会うことはなかったが、初めて妖精王オベロンそして女王ティターニアと面を合わせた。何気にレベルだけならゴトウやトールマンよりも高い彼彼女らだが、妖精らしい中立的立ち位置を好むだけに外に干渉することは一切ない。尤も情報収集活動でピクシーを派遣したり、また下っ端の妖精たちに限っては例外もあるようだが……それは後で述べる。

 ともかく、日米、ガイアメシアの戦いに干渉する気もされる気もない妖精郷は現世と異界の間に非常に分厚い結界を張っており、東京にICBMが着弾した大破壊後の世界でも一切変化ない状態を保つほどの防御を備えている。更に、妖精の輪(フェアリーサークル)とも呼ばれる魔界へのゲートがあることから万が一の避難にも事欠かないと、フリーランスの人間としては協力関係につけられればこれ以上ない拠点が得られる中小勢力なのである。唯一弱点があるとすれば、経済力が一切無いことくらいだろう。

 一応九条ちゃんにも、中立を保つ性質のある妖精という悪魔の特徴について簡単に説明しておくが、そもそもLAWやCHAOSについて分からない彼女には中立が何を意味するのかいまいち分からないようだった。そのへんはぼちぼち鍛えながら説明していくとして……今は妖精たちとの交渉に専念することにした。

 オベロン様は、外部から人間が立ち入ることに難色を示していたが、ピクシーの執り成しに免じて取引条件を一つクリアすることで許可をくれることになった。外の政情が怪しくなってきた今、妖精種全体の中立を保つためにも外で暴力活動しているジャックフロストたちの軍団、邪悪帝国とやらを解散させろとのことだ。手持ちは苦しいが、俺の実力なら簡単なレベルだろう。しかしミレニアムでもそうだったが、妖精郷とフロストにはたびたび縁があるな。

 連中は大井町の冷凍倉庫を勝手に占拠して、フロストだけの異界を作り上げているらしい。新宿圏外なため、今日中に行かなければ戒厳令で締め出されるのは確実だろう……だが、どうせならそこの自称魔法少女のレベリングをついでに熟したいものだが、キングにしろジャアクにしろ少しレベルが高すぎるだろうか。

 しかし合体させられるほど手持ちのお金に余裕はない。ということで、彼女は随分苦労するだろうが【ラクカジャ】は張るので根気で耐えてもらうことに決定。回避だけに専念するなら、結構なんとかなるんじゃないかと思うし。

 

 情報通ピクシーを引き続き借りて、代々木から大井町まで電車で乗り継ぎ、【マッパー】やピクシーの情報を頼りながらその日のうちに件の冷凍倉庫を発見。魔王キングフロストと配下の無数のジャックフロストを相手に戦闘を開始した。

 ジャックフロストの群れに【ハマ】を打ち込んで数を減らしたり、氷結魔法による凍結を無効化したりと意外に善戦する九条ちゃん。しかし、やはりボスであるキングフロストにはハマの即死は通用しないし、ユニコーンの【突撃】ではキングフロストの防御力を抜くには不足している。挙句、【マハブフーラ】の巻き添えを食らいヒーヒーと泣き声をあげていた。

【雄叫び】により相手の攻撃力を低下させ(※)、なんとか耐えられる程度に防御面は仕上げたけど、今の彼女ではキングフロストにダメージを与えることが出来ず一方的に体力と命運を削られていた。本当に強い悪魔と戦うには力不足だということを実感してもらえたろうか、そう思いながらサクッと【至高の魔弾】でキングフロストの巨体を撃ちぬく。本気でやればこの程度はまだまだ余裕です。

(※キングフロストが強化魔法を消す【デカジャ】を持っていたので、【ラクカジャ】は通用しなかったのを忘れていた)

 キングフロストを倒した後の戦利品を漁っていると、マガタマをゲットする。ミレニアムでもそうだったが、TRPG準拠によりキングフロストだからこのマガタマを必ず持っているのだろうか。しかしそれよりも、戦利品を漁る【宝探し】のクリティカルでゲットしたフロストずきんを九条ちゃんが早速被っていたところが印象に残った。コミカル路線のかわいいファッションと魔法少女のファッションは別路線では?

 

 キングフロストを倒したことで直に邪悪帝国も解散するだろうし、妖精王との約束は果たしたことになるだろう。

 戒厳令で締め出される前にと急いで九条ちゃんを連れて冷凍倉庫を離れる間際、突然銃声が響いた。

 

 何事かと思ってあたりを見回せば、ちらりと見えた倉庫の合間に隠れようとする長髪と女子学生服。

 それと血を流し、苦痛に倒れ地に伏せる九条ちゃんの姿があった。

 

 



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闇のプロファイル

 

>月曜日。戒厳令、そして魔都東京200X開始の日

 あの後キクリヒメを召喚し、急ぎ【サマリカーム】を使用して応急処置。

 血のついた服の代わりを調達し、血の臭いも誤魔化して(その際に服選びのセンスないとか酷評されたがそれは割愛)。急いで戒厳令が始まる前に妖精郷に戻る。キングフロストを倒し、暴力妖精らを解散させたことで妖精郷の出入りを許された。当日はピクシーたちの住まいを借り、妖精郷内で一日過ごす。

 その間に俺はあの九条ちゃんを撃った学生服の女の子の正体について考える。九条ちゃんが特に恨みを買ったり、因縁を持つとは思えない。かといって隣に俺という人間が控えている状況で、無差別に撃ったとは考えづらい……つまり何らかのターゲットになるだけの理由が九条ちゃんにあったのではないかと考えた。

 少なくとも妖精関係ではない。悪魔や悪魔変身能力者という線では俺も狙われなければおかしいし――実力的に勝てないと思い、襲うのを諦めた可能性はあるが――かといって九条ちゃんのもう一つのクラス、「遊び人」は異能とは全く無縁なのでそれが理由とは思えない……

 

 と次の理由に進みかけたが、ふと思い付きから九条ちゃんを改めて【アナライズ】し、襲われた原因を悟る。

 

 女神転生TRPGでは、どんな異能を持つか定めるクラスごとにクラススタイルというものを選ぶことが出来、例えば格闘(打撃)のスタイルを選んだ「探偵」ならバリツなる武術を嗜んだシャーロック・ホームズのように格闘術に長けた探偵で、情報(捜査)のスタイルを選んだ「探偵」なら文字通り現代における調査行為を仕事とする探偵であることを示す。クラススタイルはそういうクラスの方向性を定める特徴であると共に、クラススタイルごとに定められたリストからスキルを習得することが出来る利点もある。

 さて、ここで問題の九条ちゃんの持つクラス「遊び人」のスタイルだが、遊び人のクラススタイルには情報(メディア)と候補者という二つのスタイルがある。情報(メディア)は報道関係者や芸能人のように、マスメディアに深いつながりを持ったり、それを介しての情報操作・入手に長けていることを示す、割りと平凡なスタイルである。

 しかし九条ちゃんが遊び人のクラススタイルに定めているのはもう一つの「候補者」だった。このスタイルは、真・女神転生の各原作主人公たちのように世界を変革したり、神殺し、龍殺し、勇者のように世界を変革する、あるいは変革しうる特別な才能を持って生まれ出たことを示すスタイルである。つまりは、ザ・ヒーローになれる……とは言い切れずとも、何かしらの天性の素質を持っていることが含まれるスタイルなのだ。

 故に、メシア教は神の教えへ導く救世主「ロウヒーロー」の才能があるものとして、ガイア教はカオスの勢力を束ねるために強い力を得た修羅「カオスヒーロー」の道を歩むことが出来るとして、「候補者」の素質を持つ異能者たちを秘密裏に探している。一方で、逆に相手方のヒーローを現れさせないためにもわざと「候補者」を狙って殺して回る連中がいる。これは特に、メシア教と違って候補者を絶対に必要とは思っていないガイア教側に根強い考えである。

 

 さて、ガイア教にはネクロマンサー一派「CAGE」というTRPGオリジナルの集団がおり、その中に候補者を狙って潰すために幹部によって生み出された、影の銃姫とも呼ばれる屍鬼がいる。彼女もまた候補者であったがその幹部によって候補者キラーに仕立てあげられ、UDARと呼ばれる銃を愛用するガンスリンガーであり、また元女子高生である。あの場で屍鬼の痕跡が残っているか確かめる暇は無かったし、今さら調べに行くことも出来ないが、三つのキーワードが一致する時点で犯人候補として濃厚である。原作にいないガイア教勢力であることが疑問だが、何かとTRPGの設定に準拠しているこの転生世界だ、TRPGオリジナルの組織やNPCが戒厳令下の東京に混じっていてもおかしくはない。

 

 

 回復はしたが、失血の影響、それから急激にレベルアップしたことで実力の変化に体調を崩した九条ちゃんを妖精たちに任せ、俺はTRPG追加設定が原作に及ぼす影響を確かめるべく、妖精郷がある代々木公園にすぐ隣接する、明治神宮を訪れた。

 昨日にも述べたが、明治神宮はTRPGの設定により天津神の集まる神域になっており、また日の本を守る破魔の巫女を育てる一大拠点でもある。原作葛葉ライドウシリーズに登場し、ライドウを霊的にサポートする「ヤタガラス」の存在がこれに近い。とはいえ勿論、一般公開されている場所に神宮の巫女たちはおらず、奥の神域に入らなければ話も出来ないが……当然、勝手に立ち入れば不法侵入になる。

 こういうところには異能者専用の窓口があるはずだが、あいにく初めて訪れた俺にはその知識が無い。故に、少し手間はかかるが少し離れた森にぽつんと漂っていた地霊に話しかけ、交渉の末 魔石と引き換えに案内を頼む。

 

 地霊に神宮裏手の森へ案内され、暫く待つと汚れ一つない袴を着けた巫女が森の奥から御用を尋ねに来た。俺はまず自らの表向き学生である身分を伝え、東京都郊外で異能組織と関わることなく悪魔との戦闘で経験を積んだ異能者であること、同じく一般人出の異能者を拾ったが彼女が悪魔について相当間違った知識を持っているため、伝聞に聞いた異能組織に彼女の教育を相談するために初めて都内を訪れたことを話す。

 訝しげな顔をするも、地母神キクリヒメを召喚して見せると顔色を変えて少々お待ち下さい、と再び待たされる。やがて奥から戻ってきた巫女さんに申し訳ありませんが、後日改めて担当者を決めますのでまた明日の午後いらしてください等と言われる。こちらの寝床はすぐ隣だし、もう一度来る分には構わないが……素性の知れない俺を警戒しての罠だったりするか?並大抵の罠であれば食い破るだけだが。

 こちらも明日は彼女を連れてきますと伝えて、明治神宮を去る。次は少し遠いが新宿へ。やや原作に近づくことになるが、新宿駅地下街の南口を重点的にBARを探す。後々自衛隊とアメリカ軍に対するレジスタンスの連絡地となるBARには、主人公やヒロイン、そしてゴトウ秘書であり正体は夜魔リリスのゆり子が訪れるなど重要人物が度々訪れるため、原作の進展具合を測るのに適した場所でもある。事前に場所を調べておいて損はないだろうと思い、半日を費やしてそれらしいBARに幾つか当たりをつけておいた。

 

 新宿から代々木への帰り、アメリカ軍のマシン部隊と自衛隊に与するガイア教徒の小競り合いに巻き込まれる。原作より恐ろしく強いマシン・ビットボールを手間かけて破壊し、ガイアーズ特攻隊を叩き伏せながら妖精郷に戻る。

 

 

>ななみちゃん育成計画発令の日

 一日経って、レベルアップ酔いが治まってきた九条ちゃんを連れ、午前中に新宿へ。レベルも上がったことだし、邪教の館で合体を経験させようと思った次第。今のうちに日本神話系の悪魔にしておけば、明治神宮側の好感度も上がるんじゃないかという打算もある。

 原作的には精霊アクアンズを経由させたかったけど、もうそのレベルをとっくに通り越してしまったため違う悪魔に。効率を考えれば前衛悪魔が望ましいが、九条ちゃんが不満気だったのでアメノウズメに決定する。

 合体魔境はいずれ学んでもらうとして、今回は悪魔合体の初体験だけ済ませる。まず彼女の聖獣ユニコーンに精霊フレイミーズを合体し、聖獣シーサーに。魔獣カブソ妖精ピクシー魔獣ケットシーの3身合体で神獣マカミの悪魔カードを作成、彼女の聖獣シーサーと合体させ女神アメノウズメが完成。継承スキルは【リカーム】【ディアラマ】【バインドボイス】、そして【耐電撃】と【アギラオ】である。2000マッカなり。

 自身の一部とも言うべき悪魔が変身に使用する媒介のお守りから抽出され、コポコポと液体で満たされる水槽に浮かぶのを見て慄くが、いずれは何ら感慨もないまま淡々と合体作業を進める彼女が見られることだろう。はよ慣れろ。

 

 合体を終えて明治神宮への道中、今度は新宿に現れるようになった悪魔たち……襲撃してきた妖獣ガルムの対応を彼女に一任した。自信満々に新技【アギラオ】を放つも、火炎に強いガルムはやや傷ついただけでがぶりと【毒かみつき】。POISONで攻撃力が減少し、まともに攻撃が通せずひーひー喘ぎながら自力で倒す様を見届けた。

 ドロップしたダンシングヒールを折角だからと履きこなし、見せつけるように踊る彼女を引っ張って明治神宮へ。これから日本を守る異能者組織と交渉し、九条ちゃんに悪魔に纏わる政情を学んでもらう目的を先を話しておく。頭を使う話に嫌そうな顔をするもこればかりは知っておいてもらわないと、この先メシア教にいいように使われる未来が見える。

 さて、昨日のうちに罠を張って待ち構えてるんじゃないかと心配になっていたがそんなことはなく、宮の結界内へ案内され、「葛葉」の人間と話をすることになった…… 葛葉!?

 

「葛葉」とはヤタガラスと同じく、古来から日本を守る退魔組織である。ヤタガラスが霊的な防備、結界の維持を担当する内政組織とするなら、葛葉はその逆、外国からの外敵や国内での危険分子、悪魔を排除するために実力を行使する退魔特化の軍事組織だ。時代は異なるが葛葉ライドウという戦艦もぶった切る俺TUEEE主人公や、敵を滅ぼすためなら最悪手段を選ばない葛葉キョウジなど強力なデビルサマナーらが多数所属している。上のほうには天津神、一部国津神など日本神族が見られるが、実働部隊・構成員の殆どは人間で占めるため下手な悪魔や神族の思想の影響を受けてない中立的立ち位置として、異能と悪魔の世界を知るならこの上ない組織か。

 この戒厳令下、一日で連絡を取り、葛葉が出てきたことには驚いたが、こちらが接触を取った理由である九条ちゃんの扱いについて話すと、基本知識の教育については受けるがタダでは動かない。代わりに葛葉の仕事の一部を受けてもらうと言って、とあるダークサマナーの討伐を依頼された。

 

 マヨーネ。デビルサマナーソウルハッカーズで、ダークサマナー組織「ファントムソサエティ」に所属する、中堅どころのデビルサマナー。パラソル型の悪魔召喚器が特徴で、爆弾や爆発物を多用する。戒厳令により身動きが取れない状況を利用してテロを計画しているとのこと。

 

 

 フィネガンとかもっと強いのが出なかっただけマシだと思う。

 

 

 



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Shin Megami Tensei: Devil Summoner: Reincarnate hero vs. The Phantom Society

 

>情報収集の日

 葛葉め、こちらを試すつもりかロクに情報渡さなかった。ヤロー見てやがれ。

 九条ちゃんを明治神宮に預け、新宿駅で聞き込み調査。ミレニアムと違って高レベルスタートな今回は、習得順を調整して情報系スキルを入手する余裕があったため、そのスキル補正および運(≒魅力)を活かした高速情報収集により一日でパッと集めることが出来た。話によると、

・目立つ日傘を持った女性が歌舞伎町の暴力団を出入りしている。

・その暴力団「天堂組」は海外の武器を密売している噂がある。

・西口、都庁前付近に展開する自衛隊に混じり活動するダークサマナーを見かけた。

などの情報が得られた。特徴的な大型COMPを持つサマナーは見た目から特定しやすく、容易に……ここで出るか天堂組。倫理規範の崩れたミレニアムではだいぶ世話になったが、現代の法治国家日本ではその無法ぶり故に付き合えない相手となる。

 さて、肝心のマヨーネだが原作(ソウルハッカーズ)での戦闘スタイルは強力な悪魔、幽鬼ヴェータラを前衛に置き怪異・紫鏡や火炎系の魔獣、それと氷結系の何かの悪魔で範囲魔法対策を敷き、本人は後列から魔法攻撃と回復支援を行う意外とダーク悪魔を使わないスタイルだったと覚えている。火炎系と氷結系の悪魔は忘れたが、紫鏡のレベル帯から考えるに30前後……魔獣オルトロスか妖獣アツユ、それと龍王ミズチではないかと考える。注意すべきは、TRPGだと他の悪魔より高レベルな幽鬼ヴェータラか。強力なダーク属性用スキル【毒手】を持つため呪殺対策がなければ痛手を負う可能性が高い。

 幸い、物理耐性のある悪魔はいないと思うので、紫鏡に【マカラカーン】を張られる前にまとめて【天扇弓】で落とし、あとは個別に撃破していくのが妥当だろう。

 

 この前倒したキングフロストの悪魔カードを素材にランクアップダウン、耐火炎を継承させ弱点補完した仲魔にしておく。呪殺は通るがBS無効で即死を防ぎ、あとは三分の活泉によるHPで耐える方針で。

 念のため切り札代わりに、幾つかアイテムを補充しておく。

 

 

>マヨーネ討伐の日

 情報のあった歌舞伎町と都庁前、どちらを張り込むか迷ったが都庁前に決定。経験を積ませるため九条ちゃんを連れてきたが、今回戦力には数えられないだろう。

 

 マヨーネとは関係ない自衛隊の方々に見つかり、攻撃されそうになるが、会話と九条ちゃんのみりきにより戦闘回避。場所を変えて張り込みを続けるとやがて目深に帽子をかぶった婦人が現れる。顔は見えないが、【アナライズ】せずとも感じられる異能者臭がある。あれっぽいな……

 確認のために近寄って声をかけると、返事より先に爆弾が飛んできた。変身前に攻撃ぐわあああ

 

 死にはしないが、防御の薄い人間形態で攻撃されたものだから結構ダメージを負った。九条ちゃんは死にかけである。しかし回復する暇はなく、痛む身体を引きずってマヨーネを追跡。近場の路地裏で追い詰め、悪魔を召喚しての戦闘に突入した。

 マヨーネ自身はクラス「クイーン」を持つ、電撃魔法を備えるレベル30のダークサマナー。召喚する悪魔は予想通り、召喚者のレベルにしてはオーバースペックな幽鬼ヴェータラLv44、それから怪異・紫鏡Lv25と魔獣オルトロスLv26、龍王ミズチLv30だ。紫鏡に動かれると厄介だったが、レベル差もあってこちらが先手を取りキングフロストを召喚、継承させた【冥界破】で周囲ごと紫鏡を粉砕させる。運良く追加効果が決まり、ミズチも即死した。反撃にオルトロスが【ファイアブレス】をキングフロストに吹くが、生憎【耐火炎】で上書きしているため全くのノーダメージ。

 ヴェータラの【毒手】が俺に飛ぶが、即死さえ避ければ一撃では倒れることもない。遅れてアメノウズメに変身した九条ちゃんから【メディラマ】が飛び、ダメージが癒やされるのはありがたいが……回復ヘイトが向かい、マヨーネから【ムド】が飛ぶ。あかん。

 即死しかけたが、【幸運】にも耐えたようであった。ほっ。

 

 しかし時間をかけると何度【ムド】が飛ぶか分からない。何気に俺も呪殺対策は取ってないし、40%即死は結構当たるものなので心配がつきないと、早めに決着をつけることにする。やっぱダーク悪魔にはこれだよね、施餓鬼米ポイー。ボス補正なんてついてなかったヴェータラとオルトロスは即死する。

 残ったサマナー本体に造魔が【回転斬り】クリティカルを決め、彼女の防御の上からマヨーネのビルの壁面に叩きつけ気絶させる。人間ボスはそこらの悪魔より戦略的な行動を取り、アイテムや装備を多数揃えていることもあり厄介だが、反面HP的に脆いのが与し易いとも言える。

 マヨーネの懐に残っていた観音神符(クリティカルを通常に防ぐ消耗品)や聖明神符(破魔呪殺の即死を防ぎダメージを半減する消耗品)の他、装備していた防具や傘型召喚器を取り上げて、とどめを刺そうとした。

 しかし目の前で命を取ろうとした俺を九条ちゃんが人殺しイクナイ!!(・A・)と止められた。

 

 気持ちは分かるし、俺もなるべくであれば手を汚したくないが、戒厳令下の新宿は悪魔遭遇率が増加しており、それに自衛隊やガイア教徒、アメリカ軍が行動しているため輸送中に絡まれること必至。戦闘で生まれた隙を突いて逃げる危険性を考えると、ここで始末して召喚器だけ討伐の証に持ち帰る方が確実だと主張する。

 しかし九条ちゃんは神宮で日本の悪魔について教育を受けてきた成果か、自身の理念を述べるだけだけでなく、ダーク属性の異能者や悪魔は屍体を操り生前同様の能力を発揮させる【ネクロマ】が使えることから身柄ごと持っていった方が良い根拠を持って反論してきた。確かにそれも正しいが、それならそれで死体を跡形残らず焼けばいい。

 そう意見を切り捨てたかったが、今後彼女と信頼を深め、信用されねばならないことを考えると頭ごなしに批判するのはダメだろう……と、仕方なく彼女の意見を呑むかわり、「ここから先、俺はマヨーネの身柄の輸送に専念する」との条件をつけた。俺の実力を察知したか、襲ってくる悪魔の割合は減ったが、それでもガイア教徒やアメリカ軍は問答無用で襲ってくる。そうした戦闘が起きた場合、彼女一人で担当してもらうということだ。

 彼女は俺の条件を即座に呑んだ。考えなしに受けたのであればわざと敵を引きつけてでも苦労してもらう気だったが……彼女の目に覚悟の色がそれなりに浮かんでいたので不要だろうと、真面目に輸送することにした。

 

 ところでマヨーネの契約悪魔を奪えないかと試したのだが、傘型召喚器の操作方法が分からなかったことから断念した。まさか専用召喚器にこんな利点があったとは……。

 

 

>またまたご冗談をおっしゃる日

 特攻隊やピットボールを渾身の【アギラオ】で吹き飛ばし、敵からの集中攻撃は命運で耐えたため、変身のコストもあって終いには命運がからっけつ、HPも瀕死のフラフラだったが、九条ちゃんは明治神宮までに起きた襲撃を戦い抜いた。

 途中、マヨーネは気絶から復帰したが俺と造魔が常に見張っていることから逃走を諦めたようで。まあ、そうでなくとも起きる度にBSかけたり再び攻撃を加えて失神させたので逃げる隙はなかったと思う。

 明治神宮にマヨーネの身柄を引き渡し、傘型召喚器も使いようが無かったので共に引き渡す。後日また葛葉の人とお話することになるだろうと、巫女さんが言う。本日のところは九条ちゃんも消耗し切ってるので、話に付き合わせるためにこちらも明日以降にしてほしいところだ。

 

 とまれ約束は果たしたということで妖精郷に帰還。

 

 

>まさかの原作主人……こう……?の日

 翌日も九条ちゃんが教育を受けるために明治神宮へ。

 まさかの生ライドウが来るとは。でもコレジャナイー

 もみあげ、学帽はどうした。というか魔法型かよ、ポン刀もどうした。眼鏡着けててどっちかってと漫画版のコドクノマレビトに出てきた友人の……なんだっけ、陰陽師の方と言われた方がそれっぽい。

 それより何よりもレベルが俺と同等なのに突っ込みたい。ライドウといえば日本の最終スーパーマンなんだから超人成り立てとかでなくもうちょっとですね。

 

 内心がっかりしながら交渉を進める。

 内容は大真面目に、俺と九条ちゃんのスタンスについての話だ。まず葛葉とどういう関係を望むのか聞かれたため、俺は葛葉内でなく外部の協力者として友好的な関係を保ちたいことを伝える。一般人出なため、異能や伝統的な魔術や召喚術について一切の知識もないし、特に興味もないため葛葉に誇りを持つ人間とは付き合いづらいというのが半分、葛葉にいては動けない行動を取るため、あるいは依頼を受けるためにもあえて葛葉に加入しないのがもう半分である。

 それは、まさしく今(の戒厳令下の状況)のことを指して言ってるのか?と聞かれ、頷く。表面上は同盟国でも、水面下では日本神族とヘブライ神族の対立から冷戦となっており、更に迂闊に手を出せば道連れにICBMを飛ばすアメリカ軍に、また堕天使だけでなく仏教等アジア圏神族を含むガイア教や同じ日本国内の国津神の助力も得ており関われば神族間戦争不可避の自衛隊、どちらも天津神が深く根付いている葛葉やその支援組織ヤタガラスにとって動きづらい状況だろう。そういう状況で、俺のような力があり葛葉ではない人間が動けるなら丁度良いスケープゴートにもなってくれるというわけだ。

 ……だからといって、それを安請け合いする気は一切ないが。実行すれば当然、アメリカ、メシア教、ガイア教のみならず表面上の同盟国として日本は実行犯として俺を突き出さねばならず、日本人さえ事情を知らない人間を敵に回すことになる。故に、安い金や物だけで働こうと思える仕事ではない、最低でも逃げ道をどうこうしてくれるくらいの報酬で無ければ。その問題さえ解決出来るのなら、俺としてもこの戒厳令下の状況は行動に支障をきたすだけなのでトールとゴトウをぶっ倒すこと自体は全く構わないのだが。そのへんを伝えると、上に話を通しておくそうだ。

 話を戻して、九条ちゃんと葛葉の関係だが……彼女が何をどう望むかは深く関与する気はない。ただし彼女はまだまだ悪魔と異能者の世界を全然知らない人間である以上、一通り知識を身に付けるまではどこにも所属させない気でいると俺の考えを述べた。今代ライドウも、ならば特に言うことはないと納得した。

 次に、スタンスを聞いた上での俺についての話。どうやってその力を身につけたのか、召喚器はどこで調達したのか、といった俺の能力について問われるが、サマナーでかつアウトサイダーであることを伝えるのみで、それ以上の事情は俺が隠したい別の“能力”に関わるため、言うことは出来ない。ただし経歴、経験は見た目通りではないので……と、転生については伏せておおよその能力は、仕事の斡旋にも関わるので伝えておいた。とはいえ真女神転生1原作主人公が金剛神界での修行を経験するように、意外と別世界や別次元で経験を積んだ異能者の存在は珍しくはあるが全くいないわけでもないので、ニュアンスは伝わったろう。念押しとして、今回の試験代わりの依頼は自力で調べたが、情報収集はあまり得手ではないため次からはなるべく戦闘だけで済む仕事を回して欲しい旨も伝えるが、善処するとのいまいち芳しくない返答が帰ってきた。これは……苦労しそうだ。

 あとは、葛葉について聞きたいことはあるかと言われたので、平時・緊急時の連絡口や物品の調達などに使える店を紹介してもらう。ついでに戒厳令下の封鎖網を抜けて新宿外に出る方法も教えてもらったが……ただしこれはダークゾーン下で更にDARK悪魔が出没する地下を経由するルートなので、頻繁に使いたいルートでは無さそうだ。

 以上の会話をもって、今代ライドウは葛葉の代表としてこれからの協力を俺と交わした。次からは新宿にある窓口を通して連絡してほしい、そうだ。望むなら葛葉の回復施設兼宿泊施設も利用できるようになったが、明治神宮での九条ちゃんの教育もあるし、暫くは妖精郷を出入りする方が便利だろう。

 

 

 葛葉との協力関係に合わせて、明治神宮の神域の一部への立ち入りも許可されたため九条ちゃんに葛葉との交渉結果を伝えに行ったのだが、逆に九条ちゃんから明治神宮に所属すると宣言された。

 うおおい!?

 

 予定が狂った。

 

 

 




筆の速度が落ちてきました。

葛の葉との絆がどれだけ増えるかのダイスを振ったら爆発的な出目になったので、予定変更しライドウ(ほぼ名義だけ)を出した次第。


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セフィロトの魔界

 

>巫女系魔法少女誕生!の日

 少し悩んだが、葛葉に加入するよりはマシだったと結論。攻撃的な中立のニュートラルに比べれば、ライト属性な神宮の方々は下手に突っ走ったり暴走を煽ることが無くて良い。何かと口うるさくはなるだろうが……

 しかし本格的に組織に所属されると、今までのように無知に付け込んで九条ちゃんに手を加えることが出来なくて困る。暫くは教育漬けなので外で修行させることもないだろうし(そもそもレベルだけなら中の下の実力はあるので、一般的にはすぐさま鍛える必要すらない)彼女を用いれるかどうか怪しくなってきた。とりあえず選別代わりに、だいぶ前にエンプーサから剥ぎ取ったアセイミイナイフを渡して「これを使いこなせるようになれ」と前衛化フラグを立てるつもりで言い残し、彼女を見送った。

 さて、一方で俺はどうするかだが……この際に少々レベル上げ兼レアアイテム入手をしてこようかと思う。数日単位で予定が空きそうだし、戒厳令も始まって数日、原作主人公たちはまた吉祥寺すら出てないことだろう。あとでスティーブンに確認も取るが、それより先に……オベロン様ちょっと魔界行かせてくださいな。

 

 

>魔界行き準備の日

 昨日スティーブンに連絡を取ったが、先日ザ・ヒーローたちは秘密病院内でDDSの調子を聞いたところだそうな。多分今頃はおかんがムシャられてるところ。そのイベントを乗り越えたらそろそろこっち来るな……まあ時間はあるでしょう。

 合体をして、魔界へ行く戦力を整える。あまり遠くに行くつもりはない、ただちょっとセフィロトの魔界でイツェラー回廊におられるヘカーテ様を倒してレアドロの練気の剣をもらいに行きたいだけである。妖精郷の裏世界イェソドの隣にあるから多分近いはず。

 大した時間に余裕も取れないから弱体化する新月とか日を選ぶ暇はないし、そもそもTRPG版のヘカーテ様は自前で月齢を動かすスキルを持ってるので新月に行く意味すら少ない。なので魔法全般反射、物理に強いという鬼耐性を真正面から相手せねばなるまい。つまり【至高の魔弾】ゲー。攻撃面はそれでいいとして防御面は……確か奴は【ムドオン】と魔力系を除けば【テンタラフー】、ひょっとすると【メギドラ】くらいしか攻撃手段が無かったのでBS対策があれば問題なし。【フォッグブレス】を持っていた気がするので【デクンダ】くらいは欲しいな。

 というわけで現在の変身悪魔・妖魔クルースニクに、凶鳥経由でエアロスくっつけて安く作り上げた霊鳥ホウオウ、それに魔獣イヌガミから【生得武器(牙)】を継承させた精霊フレイミーズの3身合体で龍王ヴリトラLv48完成。火炎弱点をフレイミーズの【耐火炎】で打ち消しつつ【至高の魔弾】を継承。ついでに【リカーム】も継承できたことだし立て直しも万全である。一方で【デクンダ】持ちとして、地霊+妖精+魔獣の安価なルートから龍神マヤを経由し、精霊ウンディーネを合体させ龍神ケツアルカトルLv39を完成。

 しかし本体だけでは火力が足りないので、造魔にも……魔獣妖精妖精の3身合体から破壊神アレス、地霊妖精魔獣の3身合体から龍神マヤに妖鳥を加え天津神アメノトリフネを作り、合体した大天使ラグエルに凶鳥→霊鳥経由の精霊シルフ1体を合体させると万能相性のノーコスト前列格闘武器攻撃スキル【雲耀の剣】を持った大天使ラグエルが出来るが、ヘカーテの得意な呪殺に弱いため相性を補うために、魔獣地霊魔獣の3身合体で作成した邪神ネビロスを最後に合体させることでレベル38の造魔が完成した。邪神ネビロスの作成時に夜魔アルプと地霊ノッカーから作成した珍獣マメダヌキを組み合わせることで、【煌天の会心】を拾ったため1発限りだが火力も向上している。

 予算および、相性面の問題でこれ以上の合体は不可能だが、やはり合体は楽しい。

 

 

>セフィロトの魔界の日

 九条ちゃんの件で出来た借りを返してもらうと妖精ピクシーを案内役につけ、九条ちゃんにちょっと魔界行ってくる、なあにすぐ戻るさと言い残してフェアリーサークルからセフィロトの魔界へと旅立った。本来は何十年、もしくは百年後のTOKYOミレニアムの時に訪れるべき地だけどこの時代に来るなんて気が早い話だ。

 とはいえ時間の流れが曖昧な魔界だ、多分現世よりも進行が早いと思われる。故にミレニアム時代の魔界とそう状況は変わってないはずだ……ミレニアムと関連する出来事以外は。

 

 さて、妖精郷が表の妖精の世界とするなら、フェアリーサークルから繋がる魔界イェソドは裏の妖精の世界である。ジャックランタンやゴブリンのように醜い、悪の妖精が住まう世界だ。故にそのへんで漂っている妖精は俺を見るや、悪質なイタズラを仕掛けようと惑わしてくるので、片端からご丁寧に相手をする。

 ジャックランタンとかルサールカとかジャックランタンとかケルピーとかジャックランタンとか……ランタンの出現率高いな。

 それに流石魔界というか、悪魔の遭遇率自体も高く、同じ悪魔の地と化していたミレニアム地下世界と比べても2倍に匹敵する。むしろありがたいけどねドロップアイテム美味しいです。

 ルサールカは好みの姿な悪魔だけど使役するタイミングを逃してるなぁ……

 

 

>イツェラー回廊到着の日

 真・女神転生2では各魔界について解説されることはないが、TRPG版のセフィロトの魔界では各エリアごとに異なる神族、あるいは同神族でも異なる陣営がそれぞれを占有している傾向にある。

 ここイツェラー回廊はギリシャ神話、オリュンポスの冥府ハデスとしての側面を持つ。といってもここの主である月と魔術の女王ヘカーテは、オリュンポス神々に対抗するガイアネス……ガイアに生み出された子どもの怪物らに属する陣営であるため、鬼女や妖鳥、およびヘカーテに従う魔族やダーク悪魔たちの住処となっている。

 また、ここから先が本格的に魔界の深層に繋がることもあって、悪魔の平均レベルは格段と上昇している。その平均レベルは30、妖鳥オキュペテーLv20やアエローLv25、鬼女アルケニーLv29に夜魔ヴァンパイアLv35そして幽鬼サンニ・ヤカーLv40といった多数の悪魔が群れを成して襲いかかってきた。特に鬼女ラミアが10体も勢揃えてきた時は流石に慌てふためいた(なお【八相発破】でイチコロだった模様)。

 それだけレベルの高い悪魔が出たおかげで、ようやく経験点がたまりレベル40に達した。ついに3つ目のクラスを取得し、超人に覚醒できるレベルになったけど……3つ目のクラスに何を取るかは少々保留する。セオリーでいけば情報系クラスなのだが、九条ちゃんの成長も考えると「魔匠」――魔晶武器を鍛えることが出来る、魔晶武器使いクラスの亜種に走る方が良いように思ったのだ。

 

 強めの雑魚を散らし、イェソドとホド、ネツァク、そしてティフェレトの4つの魔界を繋ぐ分岐路の間に到着。魔王ヘカーテは魔界の浅層からやってくる者を迎撃するために、女王は常にこの間で待ち構えている。

 俺がやって来た時は満月でも新月でもないため、女王は自らが誇る完全耐性に傲った態度でまず俺に傅けと命令してきた。当然、聞く理由は無い。悪魔混じりの人間ごときが女王に逆らうか、と言い放つがむしろ俺は初めから戦うつもりでやってきたと強気な言葉で返す。その言葉、後悔するなよとの最終通告とともに女王は魔術を解き放った。

 月と魔獣の女王ヘカーテはその二つ名の通り、高い魔力と優れた月の守りを持つ。後者に関しては対策は取れていたが、女王は対策していなかった【マハブフーラ】にてこちらに傷をつけ、【テンタラフー】で惑わし、【メギドラ】により問答無用の大打撃を与えた。更には【ダークブレス】により魔法威力と防御点を高めながら、【フォッグブレス】でこちらの動きを阻害して来る。

 補助を許してはこちらの体勢が悪くなる一方だと、キングフロストが【デカジャ】を、ケツアルカトルが【デクンダ】でその効果を打ち消し、キクリヒメが味方の傷を回復しながら俺と造魔が万能相性のスキルにより着実にダメージを与えていく。しかし女王は体勢が苦しくなったとみるや、切り札【龍の眼光】の手札を切って怒涛のメギドラ連打を放ってき

 

 

 ここまで書いたがめんどくさくなったので結果だけ書く。楽勝でした。

 いや、だってメギドラにせよマハブフーラにせよヘカーテの火力が足りずロクに防御力を貫けない時点で負けようが無かったし……命運すら使わなかった。

 彼女の胸をズキューンと【至高の魔弾】で撃ち貫いてトドメを刺し、レアドロップの練気の剣に悪魔カードに秘蔵品のウムギの玉にと彼女が残すものは全て余さず持っていく。よし、撤収。

 

 帰り道の道中に出てきたベリスをカードハントし、即座に練気の剣にINして魔晶剣化する。火炎属性のこの武器、名付けるならシュミットルールに因んで……赤光紅蓮政宗だろうか?

 なお、魔晶武器にカードを打ち込むのに必要なツールは覚醒時に天から降ってきた。いや、マジで。ピクシーちゃんも横で目を疑ってる。

 

 

>イェソドから帰還……したかった日

 全身青タイツの兄貴じゃないクーフーリンに闇討ちされかけた。女王ヘカーテを倒したと噂される人間と一つ刃を交えてみたかったって、俺前衛じゃないから、サマナーだから。奇襲はやめてお。いやマジでギロチンカットはやめーや。

 物理対策してないし……ヘカーテよりも苦戦した。あげく、状況が悪くなったと見るや逃走するし。くそう、消耗させといてそれかよ。

 魔界イェソドの途中、湖で1回、森で1回と計3回ほど襲撃されたが毎回撤退しやがるあいつ。あいつの気配のせいで雑魚は一切近寄ってこないし、倒せてないから経験点もMAGも手に入らなければ、変身や召喚のためにたびたび消費されてホントもうね激おこぷんぷん丸。

 

 魔匠の習得スキル【大地の声】でそのへんの妖精から取り上げた「ドクロの稽古着」着て挑んだら、物理攻撃しか出来ない脳筋は泣いて帰っていった。満足。

 

 

 




同じ女神転生TRPGでも、覚醒編では卓によって新たなクラスに覚醒した時に装備品を手に入れる場合はその装備が天から降ってきたという与太話を見かけたことがありました。天より降り注ぐ柔道着とかボクサーパンツとかまわしとかが結果的に敵を滅ぼす。

※スキル【大地の声】……そのへんの妖精や地霊から合法的にカツアゲ、もといアイテムを1つ貢いで貰うスキル。大抵のスキルはシナリオ終了時にアイテムが残ってれば返す必要があるし、売れないという一文があるのに、これは返す必要がなければ売ることも出来るし、非売品すら手に入るところが酷い。具体例を上げるとM134ミニガン売るだけで7.5万マッカ(≒750万円)手に入ったり。


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CAGE

 

>いわゆるウラシマ効果の日

 フェアリーサークルをくぐって妖精郷に帰ってきた。九条ちゃんに日数を確認すると、どうやら1週間近く経っていたらしい。体感的には3日だったが、やはり思うより経つな……とりあえず原作シナリオの段階を知るためにも情報収集へ。

 スティーブンに連絡を取って状況を聞くが、最近レジスタンスのリーダーの女の子が捕まったところだそうな、救出作戦はまだ行われていない。……ゆり子やヒーローたちとの遭遇には間に合わなかったけれど、大破壊前には一応間に合ったか。

 

 九条ちゃんにどれだけ知識を得たか、メシア教やガイア教への印象について尋ねる。悪魔との付き合いはガイア教が上手だけど、生活環境はメシア教が平和という、中立的な感想。異能についての理解も尋ねるが、自分の他にも変身能力と異なる異能者が沢山いると知ったことで、魔法少女という特別意識がだいぶ薄れたようだ。明治神宮は良い教育をしたが、代わりに若干上から目線というか、自分は運命に選ばれて悪魔と戦う守護者だなんて選民思想じみた考えが付きつつある……カオスに寄ったか?

 実際、勢力としてのカオスやロウに属さなければ俺は別に構わないのだけど……守護者という考えはこの先の展開を考えると死ぬ可能性が高いな。少し早いかもしれないが、明日、彼女に俺の正体を話しておこうと思う。ICBMで人が大勢死んで、心がポッキリ折れないためにも。

 

 

>俺にだって出来ることと出来ないことがあると伝えた日

 九条ちゃんは激怒した。必ず、彼の邪智暴虐なるICBMを除かねばならぬと決意した。九条ちゃんには政治がわからぬ、けれども邪悪に対しては人一倍敏感であった。

 

 冗談はさておき、俺が転生者であることと、この先この世界がどうなるかを知っていることを話した。転生者の下りに関しては、彼女が異能者に憧れていたこともあって先輩はそういう由来で異能を手に入れたのだと、パワーソースであると誤認しているようだったが……了承してくれた。

 しかし、世界の行方、未来について、特にICBMが必ず降ることを知っていると告げると彼女は激怒した。「どうしてそんな酷いことが起きると知っていて、動かないのか」と。

 俺は三つの理由を話した。一つは、俺が知っている未来は殆どICBMが降った後のことだけで、降らなかった場合はどうなるのか、またICBMに狙われることが起きないのかどうかは分からないと告げた。もう一つは、例えICBMを発射するトールマンを倒しても、倒さなくても……どちらにせよ彼が殺された時に今際の際で発射する流れになっており、止める方法が思いつかないこと。最後は、もしICBMを止めたとしても、その後多数の勢力の敵意を受け止める実力も自信も、今の俺には無いことだ。幾ら強いといっても、所詮40レベルの人間でしかない。四大天使が首揃えて殴りこみに来たり、魔王ルシファーやアスラおうたちの相手は難しい。襲う側ならともかく、敵意を受け守勢になると単身で彼らに勝てる実力は、無い……。

 だが九条ちゃんには、俺が諦めた理由を分からない。彼女にとってトールマンやゴトウと、大天使たちおよび魔王ルシファーは同列で「単身では勝てない相手である」にしか思っていないのだろう。実際はレベルが上がれば楽に倒せる悪魔と、例えレベルがカンストしても消耗が避けられない強力な悪魔の差があるとしても、彼女の尺からは等しく「強い悪魔」という認識。これは知識だけでなく、そのレベルを体験しないと分からない経験から生まれるものであるため、口で説明するのは難しい。

 

 言い訳ばかりになった俺に愛想を尽かし、九条ちゃんは私がなんとかしてみせると単身で妖精郷を出ていった。20レベル近い彼女は、準備と戦いようによってトールマンを倒せる実力は確かにあるけど―――現在の【耐電撃】持ちアメノウズメをランクアップさせ、女神アリアンロッドにするだけでトールマン対策は済む―――怒りに駆られた彼女の様子では、今すぐにでも赤坂駐日アメリカ大使館駆け込むんじゃないかと思われる。間違いなく返り討ちに遭うだろう、しかし今の俺が彼女を追いかける資格はあるだろうか?

 

 明らかに博愛と正義感に満ちたLight属性な彼女に、転生を前提として動く打算的なNeutral属性の俺は合っていない。恩を売り、彼女の無知に漬け込んで利用しようとしても、いずれ知識を身に付けた彼女に反旗を翻されるとも俺は感じていた。それを避けるために、俺が早々に知識をつけさせたことで、それが今すぐに早まって発生しただけの話。

 ……利用するなら徹底的に利用するか、早いうちに利用している旨を告げた方がマシだったかもしれない。自分の要領の悪さに自己嫌悪して、立ち直れない。早く動かないと九条ちゃんの身が危ないと分かっているけど、合わせる顔が無くて動けない。

 このまま妖精郷にいるだけでも、ICBMは避けられるからいいけど……いや、それでいいのか?

 

 

>的殺(偽)の日

 ライドウくんに万能パンチ食らった。痛い。

 

 彼は俺が九条ちゃんに何を言ったかは知らないが、彼女がICBMが発射されることを知り単身大使館に突入したことを聞いて、俺と何かあったのだろうと察して妖精郷を訪れたらしい。実際そのとおりであるが……しかし、彼は俺の知ってるもみあげライドウじゃないけど、彼は彼で人情味のある人間だと知る。つまり主人公を投影するだけの無口なキャラではないということだ。彼を見る目が変わった。

 ライト属性寄りらしい彼は、九条ちゃんと違って理論的に俺を諭した。ICBMを止められないのであれば、止められるものの力を頼ればいい。それこそ悪魔でも……悪魔を信じ、用いてこそのデビルサマナーだろう、と。

 

 気付けを入れられたこともあって立ち直した。ふと前回の転生からダメージを受けっぱなしで、心が弱ってたせいでこの度ショックが長引いたかもしれないと後になって思う。今代ライドウくんに感謝を述べ、九条ちゃんの現状を聞く。未だ会わせる顔が無いのは変わらないけど、彼女を怒りのあまり突撃させピンチに陥れた原因として、助けねばならない責任があるだろう。

 しかしライドウから聞かされた彼女の現状だが、大使館に突撃した後に九条ちゃんの消息が失せたという話だ。内部で捕まっているんじゃないかと尋ねるが、そもそも大使館内で九条ちゃんが戦闘を繰り広げた気配すら無いらしい。暴れる間もなく無力化された?

 可能性を色々考えたが……情報が足りない。まずは彼女の消息を調べるところから始めよう。しかし一方でICBMの問題だが、ライドウが葛葉上層部と東京大結界を司る四天王に掛けあって、ICBM着弾を防ぐ結界の瞬間強化を試みるそうな。そもそも俺にはICBMを防げるパワーを持つコネに縁がないこともあり、そちらに関しては彼らに一任する。

 

 ……それでも、多分失敗するだろうな、と俺は気づいている。結界を強化したり、強化しようと思って簡単に防げるのなら原作で東京が滅ぶことはなかったろう。

 それに行うべきは、ICBMの着弾を防ぐでなく、発射自体を止めるべきだ。原作真・女神転生では触れられないが、原作の原作、小説「デジタルデビルストーリー」にてアメリカとロシアの冷戦下で東京へ向けて核ミサイルが発射された時点で全世界が核の撃ち合いとなった流れを考慮すると、この真・女神転生世界でも、東京以外がその他のICBMの標的になるに違いない。

 だからこそトールマンが誰にも殺されず、勝手に病死した設定のデビルサマナー世界線が平和だという理由があるのだが……。

 

 ライドウくんにいいから動けってもう一回ぶん殴られた。痛い。

 

 

>マネーイズパワー、金はリソースだとハッキリ分かる日

 蛇の道は蛇……で調査する時間も暇も無いとして、金で解決する方針に。

 邪教の館にて、妖精ピクシーと堕天使ウコバクを大量購入。そして2体を合体して天使ハファザを大量に作成し、次々と召喚して【スクライイング】で九条ちゃんの居場所、状況などを占わせる。

 1回につき作成費用で1300マッカ、召喚費用で2800マッカ相当を使用するため何度も使えたものではないが、金で手段と時間が買えるなら安いものだ。

 調査の結果、場所は大久保のビルにおり【屍鬼】が関わっていること、状態は死にかけ……気絶か瀕死か生命の縁に立たされており【ヴードゥー神族】が関わっていること、状況は隙をついて襲われ捕われており【怪異】が関わっていること、が判明した。屍鬼にヴードゥー神族(南アフリカから派生した、アメリカ黒人たちネクロマンサーの神族一派)と、間違いなくガイア教徒の一派、「CAGE」による候補者狩りに合ったと見られる。妖精郷や神宮の森から出たと見るや、襲ってきたか。だがそれにしては不可思議なことに、既に死んでいてもおかしくないのに何故生きているのだろうか?生かされている?

 

 不審に思いながら、何があっても問題ないように状態異常対策の回復アイテムや各種御札を整えておく。戦力的には問題無いはずだが、相手は呪術師。不可思議な術の一つや二つ打ってきてもおかしくはない。そもそも偽りの情報を掴まされた可能性すらあるが、そこまで行くと最早お手上げだ。だから組織や世界を相手にするのは怖い。

 

 スクライイングで把握した、新宿の北、戒厳令の封鎖網ギリギリにある大久保のに屍臭漂う雑居ビルに殴り込む。男女の死体から作られたゾンビを秒殺しながら上へ上がる。出てくるものといったら最下級のゾンビばかりで、これといった強敵や罠は出ない。CAGE自体は百年以上生きている屍鬼マンイーターが代表を務める小勢力で、百年かけてもレベル25の悪魔でしかない屍鬼がトップなのだから戦力はさほどでもないが、知識や経験は日本の戦時中、戦後アメリカとメシア教が介入した動乱期を生き延びたベテランである。十中八九何か仕掛けているだろうと警戒しながら、ビルを上がる。

 しかしゾンビの出現以外、何も起こらずに九条ちゃんのいる部屋へと到達する。……すごい死臭がする。扉を開けると、わんさかとゾンビが飛び出してきたが、すかさず造魔が【雲耀の剣】で切り飛ばす。あまりの数に中の様子を確かめる暇はなかったが、幸い部屋の中の血濡れの寝台の上に寝かせられていた九条ちゃんを巻き込むことはなかった。

 が、しかし俺が部屋に入ると同時に、周辺から敵の気配が湧き上がる。どうやら罠として敵を伏せてやがったようだ。死臭がしないあたり、ゾンビとは別物……恐らく情報のキーワードでも出た【怪異】だろうか。レベル的に、怪異ワーキャットだろう……移動が早いな。早くしないと続々と集まってきて九条ちゃんを回収する暇がなさそうだ。

 奴らが接敵する前に九条ちゃんを回収する。意識は無いようだが息はある。蘇生の必要はないだろうと、彼女に近づいて……怪しい気配に気づく。何か仕込んでいる、呪術か?いや……これは彼女から死臭が

 

 ネクロマとトントン・マクートのあわせ技だ!

 

 

>死ぬよりも惨めに踊らされた日

 やられた。やられた……

 

 わざわざ九条ちゃんをビルに捕らえていた理由だが、多分俺への攻撃か、実力の観測が目的だったんだろう。他にもあるかもしれないが、九条ちゃんが釣り餌に使われていたのは間違いない。そして九条ちゃんのことも生きて帰すつもりがなかった。というより、とうの昔に殺され死んでいた。

 ネクロマンサーお得意の、動く死体であるゾンビ化して蘇生させる【ネクロマ】に、ヴードゥー教の秘術でシャーマニズムである【降魔】、つまりペルソナを死霊術に組み合わせることで支配した相手に憑依させる【トントン・マクート】を併用し、あたかも魂が宿った動く死体であるかのように巧妙な偽装を施していたわけだ。部屋にみっちりと詰まっていたゾンビのせいで鼻が効かず、不意打ちを受ける時まで死臭にも全く気づけなかった。

 不意打ちのダメージ自体は、別に大したものではない。しかし動揺して行動が遅れ、怪異らが到着し、乱戦になり、九条ちゃんの憑依を解く暇はなく……その死体ごとまとめて薙ぎ払った。ネクロマされているため、どうせ死んでいると分かったから、というのもあった。

【サマリカーム】や蘇生魔法を試したけど、生き返る気配は無かった……時間が経ちすぎたか、死体の損傷が激しすぎたか、あるいはネクロマをすると蘇生ができなくなるのか、それとも蘇生防止の何かをネクロマンサーに施されたか。何にせよ俺の手では生き返せられないことは確定した。

 

 

 これまでにも人を殺すことは、Ten-DO組に与していた時にそれなりに経験した。親しい人物を殺すことは、アリスさんで耐性はついたつもりだった。今回、九条ちゃんはアリスさんのように愛していた相手ではない……ないのに、何故あの時と同じくらい心にダメージを受けているのだろう。

 九条ちゃんは何で死んだんだろうか。誰のせいで死んだんだろうか。俺のせいと言っていいんだろうか。でも彼女は、なんとなくだけど……

 

 

 

>原作なんてもう勝手に進んでくれる日

 スティーブンから連絡があった。レジスタンスリーダーの公開処刑だが、先日ザ・ヒーローたちが救出し、今からゴトウとトールマンを倒しに行く動きを見せているらしい。つまりそろそろICBMが降ってくるということだ。まあ、これから東京を離れる俺にはもう関係なくなってしまったけれど。

 

 葛葉の今代ライドウや、明治神宮の方と九条ちゃんを死なせてしまった件や、これからの件、その他幾つかの件について話をした。九条ちゃんについての話の詳細は割愛する。蘇生の術は、俺の権限では利用できないし、そもそも利用できる暇が無さそうだ。ICBMが降ってくるのを止められるか怪しいことが分かったから。話によると、セフィロトの魔界で最南にあるマルクトとイェソドを繋ぐアッシャー回廊は日本神族の魔界エリアでもあり、そこに日本の結界の要を担う将門公と四天王がおられるのだが、現在マルクトの方から天使の侵攻を受けており結界強化を交渉しようにも対応できる状態ではないことが判明したそうな。マルクトは天使たちが魔界へ侵攻する橋頭堡となる神の王国で、大破壊後に建造するカテドラルを先に建造しているという話もある場所だが……この時代にきっちり天使たちがそういう方面で日本に攻撃・妨害を行っていたとは。

 しかし、そちらを潰せばICBMを防げる可能性があると分かったのだ、次回からは参考に出来るだろう。

 そう、次回からは。

 

 ちょっともう一度魔界行ってくるわ。

 

 




【ネクロマ】は屍鬼として一時的に蘇生し、相性も変化させる蘇生魔法ですが、屍鬼同様に精神相性への耐性こそ得ても、精神相性のバッドステータス自体への耐性は得ません。よって【魅惑かみつき】のように他相性を経由することで精神相性のBSは通ります。
【トントン・マクート】は、CHARM状態の相手に自らのペルソナを憑依させることで、CHARMを優先順位の高いBSで上書きされるか(DEADやSTONE、PALYZE等)、憑依が解けるまでCHARMを永続化させるスキルです。
 ルール的には耐性がないためPALYZEで上書き可能なこともあるし、そもそもこの2つの組み合わせはあまりシナジーも何も関係ありませんが、魂のない死体に擬似蘇生させてペルソナを憑依させることで、あたかも魂のある生者のごとく死体が動くネクロマンサーの秘術という演出です。カッコツケタカッタダケー


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ぶらり魔界ひとり旅

>ちょっと魔界行ってくる日

 転生女神なる邪神曰く、「転生者への同行者は生死問わず、俺が望んだ人間であれば誰でも同行可能」「能力は俺の死亡時、あるいはその人間が死亡する直前の状態を引き継ぐ」「ただし相手が転生または俺との同行を望まない場合は指定不可とする」そうだ。最後の条件については円滑な進行がどうのこうのと言っていたが、多分……俺が無理矢理に同行させた奴が暴れるのを相手するのが面倒だからとかそういうのだと思う。完全耐性持ってるくせに……。

 

 なので、死んでしまった九条ちゃんを同行者に指定した場合、妖精郷を離脱して一人突撃していった時の状態で転生させられると思うのだけど、正直言ってあの時の彼女が俺との同行を望んでくれるとは思わない。思っていない。ついぞ話し合いが出来なかった今、幾ら俺が態度を見直しても彼女の意見が変わることは多分ないだろう。

 諦めて他の人物を当てにする、というのも一つなのだが……今の俺の心境は、アリスさんを殺してしまった時に近くなっていると自分でも感じる。すぐさま死にたくなるほどではないけれど、後ろ髪引っ張られる思いが強すぎてこの先リセットするまで残念が引っ張られると思う。昨日ライドウと話し合った時に、今の俺は気狂いじみた目になっていると言われた。だから多分、今の俺にまともに人間は寄り付かないだろう。つまりスカウトは無理なんじゃないかなと。

 

 しかし、ふと魔界のことを思い出し、真・女神転生2のあるイベントを思い出した。魔界は、いわゆる神様の世界であるわけだが、場所によっては地獄や黄泉国のような死後の世界となっているところが多数あり、死んだ人の魂が残っていることもある。そんな中でケセド寺院にある一画にて真・女神転生2の主人公アレフが、かつて自分を守って死んだテンプルナイトの女性ベスの魂と再会し、その最後のパワーを貰うというイベントがあった。

 全ての人の魂が残るわけではないようだが、残念の強い人の魂や、異能を持つ者の魂、特に強い異能者の魂は残りやすい傾向にあるらしい。パワーレベリングによる即席のものではあったが、レベル18まで上がった九条ちゃんは異能者として中堅に近い。故に魂が残っている可能性に一縷の望みをかけて、残るハファザたちに九条ちゃんの魂の居所を調べさせた。

 するとケセド寺院に彼女の魂が残っている、という結果が得られた。ベスと同じ魔界に魂がいるのは偶然か必然か知らないが、この機会を逃す意味はない。

 

 だからちょっと魔界行ってくる。

 

 

 

>行きは良い良い、帰りはもはや気にしない日

 妖精郷のフェアリーサークルを再び借りて、イェソドの魔界へ。今度は帰れるかも分からない(そもそも帰るかすら分からない)し、時間も気にすることはないので案内はいらないと言ったのだが、ピクシーは自発的にまたも案内役を買ってくれた。

 イェソドに着くや例のクーフーリンがすかさず喧嘩売ってきたので、ドクロの稽古着をちらつかせて黙らせる。魔獣ネコマタを捻り潰して先へ。

 

 

>実はヘカーテよりレベルが高い鬼女ボルボを倒した日

 妖獣ブラックウィドウを焼き払い、ヘカーテがいなくなった間で増長している中ボスじみた鬼女ボルボLv49をすりつぶす。そのままティフェレトに向かいたかったが、魔界の深層へ向かう門は閉じており鍵が無い。魔界の門だけあって力づくで壊すことは不可能なため、鍵を求めて西のホドへ向かう。

 原作だとこの門の鍵は東のネツァクにいるマスターテリオンも所持しているはずだが、TRPG版では未だホドにいるティアマットにしか鍵を預けられていない……という設定になっていた。この世界ではどちらかは不明だが、どちらにせよ鍵を手に入れるために両方倒すまでである。この世界でのアレフの冒険がどうなるかなど最早知ったことではない。

 

 

>暴走カーチャンをドラゴンスレイした日

 ホドの主、邪龍ティアマットといえば別作品ストレンジジャーニーでも後半最初のボスを務めた、氷結相性の魔法攻撃が強力な悪魔だったが、TRPGの設定を受けたこの世界のティアマットは強力なマガタマ「カイラース」を飲み込んでしまっており、マガタマの影響で意識を乗っ取られつつある。飲み込んだカイラースからはスキル【テトラカーン】【マカラカーン】、更に万能相性の【メギドラ】【至高の魔弾】など強力なスキルを数多く有する。……が、レベルは68と強い方ではあるのだが魔能力値が控えめなこともありメギドラでは火力不足、至高の魔弾は単体なので次々とリカームを使用する俺と仲魔たちを全滅させることは不可能。【テトラカーン】【マカラカーン】に至っては、そもそも万能相性で殴っているのだから関係ない……と、MAGの消耗はしたが案外あっさりと撃破する。腹をかっさばいて、飲み込んでいた鍵と秘蔵品をゲットしたためイェツラー回廊に戻る。

 ティアマットを倒して手に入れたマガタマ「カイラース」は、練気の剣に打ち込んだ。相性こそ火炎だが、万能相性の影響を受けたこの魔晶武器は赤光太極正宗に改銘しよう。万能相性はいいぞぉ。

 

 

 道中、手に入れた秘蔵品を確認したらカイラース以上にやばい品物だった。PCに【龍の眼光】使わせていいのかこれ。

 

 

>ティフェレトへ侵入した日

 鍵はティアマトからの一つで足りた。門を開けて、魔界の中層ティフェレトに到着する。

 この魔界の主、邪神セトは封印され続けており、遠く未来のTOKYOミレニアムの時代にサタンの転生体と合体し、神霊サタンを目覚めさせるまで封印が解けることはない。しかしデータは記されており、しかも高レベルで【火炎ガードキル】持ち、火炎相性特化の高火力ボスなので魔界の中でも有数の強悪魔だ。火炎抜きでも、防御点無視物理スキルなどもあり無対策ではボロ負けしかねない奴である。戦う必要がなくて本当に良かったと思う。

 

 この先、ベリアー回廊はそこそこの強さの悪魔がうろついている上に、常に炎が燃え盛る火炎地獄となっており火炎耐性が無い者はただちに焼け死んでしまうと言う。またボスの魔王アスタロトが徘徊していることもあって耐性を整えておかないとやられてしまう可能性もあるだろうと、ここらで悪魔のメンツを強化しておくことに。

 丁度ティフェレトにある邪教の館を利用……する前にターミナルとして利用できるターミナルストーンを調べたが、やはり起動しなかった。確かスティーブンがいじくることで初めて使えるようになるんだったか?しかしスティーブンは東京で健在だからこの時代に魔界へ現れることはないだろう。そもそも東京は今頃ICBMが降ったか降らないかといった時期なので転移すると危険だ。

 それはそうと合体。しかし初めは仲魔を強化しようと思っていたが……以前よりさほどレベルが上がっていないこともあり、スキル面から見ても大した強化にはならなさそうだと気づく。ならばいっそのこと新たに仲魔を作った方が早いだろうと、霊鳥ヴィゾフニル、魔獣ケルベロスを作成。ヴィゾフニルは下位の霊鳥スザクから【火炎無効】を継承させたため、この先のベリアー回廊でも通用する。また本体の変身悪魔も、一度上位の邪神ギリメカラからランクダウンし、【物理無効】を継承させた邪神ニャルラトホテプに合体した。物理無効、魔法全般吸収と真の意味で全門耐性の獲得である。……このレベルのボスは貫通やガードキル、万能相性の攻撃手段を持っているのが常だけど。合体ルートは略す、だいたい下位の悪魔を作成してから精霊やダーク融合合体でランクアップさせまくっただけなので。

 それと一応、魔王キングフロストを魔王ヘカーテに、造魔に【耐物理】を持たせ魔王アバドンの魔法全般吸収を継承し、俺と同じく全門耐性を獲得させ強化した。キクリヒメ、ケツアルカトルはそのまま。

 

 なお費用は【大地の声】で地霊からカツアゲしたM134ミニガンを売った金で済ませた。素材に6万マッカ近く使ってまだお釣りが来る。

 

 

>ソロモンの72柱のなんたらの日

 ベリアー回廊に突入。早速というか、ある意味真・女神転生2の原作通り、ここを通る人間を試すためにアスタロトが喧嘩を売ってきた。が、貫通もなければガードキルもない、万能相性もせいぜい【メギドラ】程度の威力しか攻撃手段が無いのだから楽勝である。退けばいいものを、最終的には【バーサーカー】のスキルで暴走、打点を上げて強引に造魔を落とそうとして横に並んだヘカーテに反射されて自爆した。そこは【メギドラ】使えよ。アスタロトを悪魔カードにカードハントし、封印しておいたのでビナーの魔界へ持っていけばイシュタルとアシュターに分離するだが、ケセドと反対側なので終わった後に気が向いたら訪れるかもしれない。

 ドロップ品はそこそこ強い火炎魔法が使える秘蔵品、極炎塊と、覇王の剣?あれ、これって……。

 

 ベリアー回廊進んでたらルイ・サイファー閣下、というかルシファーが顔を見せた。お前に用はないし前世の恨みは忘れてないぞ、帰れ。

 

 

※武器「覇王の剣」は持っているだけで魔王ルシファーへのコネが手に入る。解説文によると、面会する権利が得られるらしいがデータ的には絆3レベル分も親しくなるので割と謎アイテム。

 

 

 

>ケセド到着の日

 ケセド仏殿に到着した。

 大日如来……万物全ての真理、宇宙を体現したとも言われる仏教の最高神、魔神ヴィローシャナが治める仏殿である。数々の邪悪な悪魔が蔓延る魔界の中でも極めて清浄な魔界である。ダーク悪魔は一切おらず、魔神、龍神、女神や神獣、霊鳥などLightまたは鬼女や妖鬼などのChaos悪魔が多く生息する、レベルだけ見れば魔界の中でもトップクラスの危険度である。とはいえ人を喰わないようなLight悪魔が多いので、逆に安全とも言えるが。

 

 魔界人たちに道を尋ね、死者の魂が集うケセド仏殿へ上がろうとするも、門兵の悪魔らに塞がれたため一旦退き、ハファザの【スクライイング】で九条ちゃんの魂の在り処を探る。強大な悪魔のオーラにでも防がれたか、詳しい場所はわからなかったが、やはりケセド仏殿の中にいるのは間違いないようだ。それと……占っている最中に【強烈な後光】が映しだされたことからヴィローシャナが関わっていることも。

 九条ちゃんの魂を救済しようとしている?よく分からない、とりあえずどうにかして仏殿の中に入らないと。しかし門を抜けるコネなんて……

 

 

 覇王の剣を壊す勢いでガンガン地面に殴りつけてたら閣下が来てくれた。紹介状ちょーだい。

 

 

 




そろそろ更新速度が落ちます。


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俺が死んで、俺が生まれた

>ライトな魔神とダークな魔王って相性悪いよねって日

 閣下の紹介状を使ってケセド仏殿の門を通った。

 ありがとうルシファー閣下。

 

 お前いつか絶対ぶん殴るからな。(無事通れたとは言ってない)

 

 

 

 

 紹介状が紹介状として機能しないどころか喧嘩を売る内容だったらしく、門番と戦いに。

 流石Light-Chaosの大御所だけあって、門番も下手な魔界のボスの格がある魔神アタバクLv55と妖魔ハヌマーンLv63のセット。それもボス補正付きでHP増大、2回行動とまともに相手をすれば手数の多さから敗北必死だったろう。

 しかし生憎ながら万能相性の攻撃を持たない彼らは変身した俺を倒す手段がない。故に応援を呼び、どっから持ちだしたのかメギドの石なんぞ使って必死に削ろうとするが、幾らなんでもアイテムの火力ごときで倒れるわけもなし。

 門番らを削り倒し、強さを見せつけたところで威圧し、ヴィローシャナとの面会を求める。穏便には行かなくなったがここまで来たらChaosの流儀に合わせ、「力こそ正義」を振りかざす方が話が早い。返答を聞くまでもなく、ドシドシと悪魔を引き連れたままで仏殿の奥へ侵攻する。

 

 そして最も奥の広い一室、仏間にて魔神ヴィローシャナと面会する。レベル70、レベルこそ控えめだが門番と違って【メギドラオン】を有する他、大破壊後には地上の現状に怒って真女神転生1ラスボスの片割れ、アスラおうと化しカテドラルに降臨したという説もある方なので、勝てない相手ではないが決して舐められない相手だ。

 だからといって後ろから追ってきた木っ端悪魔の前で態度を軟化させれば、調子を取り戻した悪魔たちと再び乱戦になる。あくまで門番を正面突破してきた強者として、人間らしからぬ傲慢な態度で交渉に挑む。が、

「呪われし輪廻転生に縛られた人間よ、未だ悟りを得ぬか」

の語り出しで動揺させられる。

 そういえば、転生って元々仏教用語じゃないか。

 

 

 須弥山神族……いわゆる仏教の神々には魂の歪を見抜く力があるのだろうか、俺が転生し、前世の記憶を持つ者であることを前提にヴィローシャナは俺を諭すように言葉を発した。既に流れは向こうに奪われたが、仏殿の主が話している最中なだけに周りの悪魔が手を出す気配は無い。

 ヴィローシャナの説法は、栄華には限界なく転生を繰り返しても際限がないことから始まり、転生の無意味さを知るために良き指導者が必要だろうという話にまで続いた。

 大人ぶりやがって、という反抗心に駆られるが流れを掴まれているこの状況、しかも目的は九条ちゃんを探しに来たわけであり、居場所を尋ねるために先に手は出し難い。転生から解脱すべきであるという“ありがたい”仏の説法を半分聞き流して、ようやく話の主導権を譲られた。

 東京で死なせてしまった女の子を探しに来たと俺の目的をヴィローシャナに告げる。このケセド仏殿にいることは分かっていたが、入る手段がなかったので(結果的に)正面突破した、悪いとは思っているが用を済ませればすぐに立ち去るとお願いするように言うが、断られれば無理矢理にでも九条ちゃんの魂を拉致るつもりでいる。

 俺の言葉の裏に隠れた戦意を読み取ったか、警戒を強めた口調で考えこむヴィローシャナ。少しして、お供の悪魔にここへその少女を連れて来るように告げる。暫くして、死んだ時の(センスないと評された)衣服のままで半透明になった九条ちゃんが仏間にやってきた。彼女は俺を見てハッとした表情で、そのままうつむく。

 人違いでないことをヴィローシャナに伝え、俺はこの場から彼女を連れていくと宣言する。ヴィローシャナが救済すべき魂を勝手に連れていこうとする俺に、周りの悪魔が止めるべく襲いかかる気配を見せるも、ヴィローシャナの「救済を望むなら我が座所に再び訪れるが良い」という間接的な発言が、暗黙の許可となってそのまま手を出されることなく仏殿を安全に去ることが出来た。

 

 

 ヴィローシャナの近くでは色んな意味で緊張していたため気を緩めることはできなかったが、ケセド仏殿から離れた場所に来、落ち着いたところでようやく彼女の顔をまともに見ることが出来た。とはいっても、俺が見ようとした瞬間に彼女はすぐ顔を俯けたが。

 まずは何から話したものかと、理由から述べそうになったが……そうではないだろうと言い訳しかけた己を罰して、彼女に三つのことを謝った。一つは九条ちゃんのことを暴走させ、結果的に死なせてしまったこと。一つは俺の正体、目的をわざと伏せていたこと。最後の一つは、彼女の無知に付け込んで利用しようとしていたこと。

 彼女は俺の謝罪に何とも言えなさそうに俯いていたが、意を決して俺に言葉を返してくれた。

「正直に話してくれて、嬉しいです。

 死んではしまいましたが、それでも魔法少女ななみちゃんは愛と正義の名の元に先輩を許します」と。

 

 許しを受け、ようやく俺の罪悪感の半分は消化された。残り半分は、これから彼女に好きでもないのに辛く苦しい経験をさせることになるが、俺の転生への同行者になって欲しいことを頼む心境からなるものである。

 九条ちゃんに改めて俺が転生者であること、俺の強さはこれまでに他の世界で転生して経験を積んだものからなること、また転生させてもらっている相手だがその女神を一度は殴り倒したいために少しでも力添えが欲しいことを話した。

 驚いたのは、彼女は既に俺がどこかの邪悪な神によって転生し続けている存在であることを、ケセド仏殿にいる時ヴィローシャナに聞いていた。ここに来て下手なウソを交えていればバレていたということだろう。その時にヴィローシャナ曰く、九条ちゃんには俺と同じ邪神の手により蜘蛛糸が絡むように魂へ輪廻転生に引き込む呪いがかけられつつある……つまり俺が転生の同行者として見初めつつあることを察したから、彼女の魂がケセド寺院に来るよう手をつくしたと言っていたそうな。どうして私をお救いになられるのかと尋ねたが、大日如来の慈悲は善人悪人全ての魂に齎さん、としか仰らなかったそうな。少し考えたが、はぐらかしただけとも深い意味があるともどちらとも受け取れるため、又聞きでは分からないと裏を読むことを諦めた。神族を束ねる大悪魔の思考は並の者には測り知れないのだ。

 

 話が逸れたが、同行についての彼女の返答。

「構いませんが、ただし一方的に使われるのは望みません。わたしにもわたしの生き方、目指す目的はあります。魔法少女ななみちゃんは例え死んだ後でも悪の行いに屈するヒロインではありませんから。

 ……特にこの前みたく、大勢の人が死ぬのを仕方ないと諦めるのはもう止めてください。例えダメだとしても、できうる限りのことを考え、思いつく限り何度も手を尽くして、……本当に手段がなかったその時は、諦めないといけないかもしれませんが。

 でも、何度死んでも何度も生き返るのなら、ヒーローのごとく世界を救ってください。ヒーローになってください。それこそ、力ある者の宿命です」

 言い方は独特だったが、このように条件付きで彼女は賛成してくれた。

 彼女は俺にヒーローであることを望んだ。力こそあれど、TRPGというルールの中で成長するだけで、至って特別な要素を持つわけでもない俺に、ヒーローたれと彼女は言った。

 難しい、と俺は彼女に正直に言う。ICBMを止めるのも、ミレニアムの崩壊を食い止めるのも、シャドウの根源であるニュクスを犠牲無しで再封印するのも、ヒーローだろうが俺単独で、犠牲無しで防げるものではないからだ。そこに九条ちゃんが加わっても焼け石に水でしかない。沢山の人々が悪魔や神々の手により犠牲となる、それが女神転生シリーズの世界の宿命だ。

 俺の呟きに、彼女はこう返した。

「先輩はヒーローが何かって、勘違いしていませんか?ヒーローもヒロインも、世界を救うからヒーローと呼ばれるんじゃないんです。人を救い、人を助けようって思ったり、愛や正義のために頑張ろうって思ったらなれるものなんですよ。

 だから、先輩はヒーローになれます。ヒーローになるには、その思いだけで十分なんです」

 

 ……彼女の言葉に、俺は本気で悩んだ。ここまで数々の大悪魔をぶちのめす大立ち回りをしてきただけに、今更ヒーローになる恥ずかしさに悩んでいるわけではない。俺は彼女のいう、眩しいばかりの正義のヒーローを突き進む道を女神転生世界で歩むのが苦難の道と分かっているため、それを歩む覚悟を決めるのが難しいと尻込んでいるだ。

 この約束は、これまで経験してきた、転生すれば環境ごとリセット出来るそう簡単な話ではない。彼女が同行者になる以上、例え何度死んでも彼女が横にいる限り、俺はヒーローでいなきゃならんのだろう。間違いなく辛い。何度も死ぬだろう。でもここで断ったら、俺はなんのために彼女を死なせて、魔界くんだりまで来たんだ。

 罪悪感?そんなもの自堕落に生きるなら初めから気にしなければいい。

 利用価値?それこそ、大破壊後で悪魔の支配下を狙えば心の壊れかけた奴隷同然の異能者も居ただろう。

 原作崩壊が怖い?ミレニアムで見た通り、原作なんてあってないようなものだし、原作主人公なんてそれに対応しきれない程度の単なる異能者だった。悪魔と違ってちょっと手こずるが、悪魔ほど強くもない雑魚だろう。

 己の思うがままに手段を選ばなければ、人道外れながらも己の赴くままに欲の限りを尽くすことが出来ただろう。その確信も既に得ていた。しかしそうしないのは何故だったか。悪に落ちるのが怖いから?人に嫌われたくないから?女性にモテたいから?多くの敵意をその身に受ける心の強さがないから?

 確かに、どれも理由に当てはまる。でもそれは転生してから怖くなりだしたことで、転生できると分かった時に一番強く意識したものじゃない。俺が転生者になってやりたかったこと、それは前世で全く出来そうになかったこと。転生者という特権を得て、異能者という補正を獲得して、世界の特別になって。

 

 俺にしか出来ない、一世界に響き渡るような何かを成し遂げられるんじゃないかと、喜んだんだ。

 

 

 

 

>エクストリーム自殺の日

 青空ではなく赤に染まった魔界の空に、ケセド仏殿から後光が差すように美しき陽光が黄昏色に染める朝を迎えた、翌日。

 俺と九条ちゃんは再びケセド仏殿を訪れた。倒した2体の代わりに霊鳥ガルーダが門番を務めていたが、ヴィローシャナに会いたいと言う俺の顔を見るや、抵抗は無意味だろうと黙って素通ししてくれた。

 そのまま仏殿の最奥の一室に再び訪れる。ヴィローシャナは昨日と変わらない場所に座して、俺の言葉を待っていた。

 

 俺はヴィローシャナに、まずは九条ちゃんの魂を保護してくれていた礼を。それから昨日の仏殿での暴虐を謝罪した。

 またもう一つ、わざわざ手間をかけさせることになるが……ヴィローシャナ自らの手で、俺たちを転生の輪に戻してほしいと。要するに痛みを知らず安らかに眠らせてほしいと頼んだ。

 輪廻転生からの解脱を推奨する仏教を馬鹿にするような頼みではありながらも、大日如来ともされる慈悲深き仏神は怒ることなく、その引き締まった顔で驚くほどにこやかに笑みを浮かべ、承知してくれた。

 その時に一言、俺に対して「悟りは得られましたか」と尋ねた。

 悟りではないが、目指すところは得られましたと答えると、仏神はますます笑みを深くしたような気がした。

 その後、仏神から破魔のような白き後光が発され、俺と九条ちゃんを包む。

 生きている人間である俺に破魔は通じないはずだが、不思議なことに痛みもなければダメージもなく、望み通り安らかにこの世を立ち去らせてくれた。

 

 

 

 

「先輩、そういえばもう一つ条件があります。

 ……私のこと、ななみって名前で呼んでくれませんか」

 



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六キャラ目(転生者と、とある少女の発火能力)
魔法少女育成計画


 

>魔法少女は永遠に不滅です日

 転生の間に戻ったら今まで以上に女神が露骨に態度悪くて逆にビビった。

 タチが悪いのは知ってたから今更印象は変わらないけど……

 

 九じょ……ななみちゃんの姿は見当たらなかったが、「少し待ちなさい」との言葉とともに女神が姿を消し、暫くしてななみちゃんとともにこの場に戻ってきた。女神の姿が消えたのは10秒にも満たないほんの僅かな間だったが、その間にななみちゃんに自己紹介や、転生についての説明、確認を済ませていたらしいと後で聞いた。俺への対応はフランクなのに、転生のルールといい意外と何かにつけて律儀なんだな、この女神……。

 ともかく、俺の姿を認めたななみちゃんはワーイと手を広げて駆け寄ってくるその身体を受け止める。無事再会出来たことだし、今後の相談をしたいと思う。

 というわけでななみちゃん。早速だけど魔法少女やめてくれるかな?

 

 

 そう言うとななみちゃんは激怒した。ヒーローなるって言ったのに、ハッまさか私を騙して後で思うがままに操るのが目的だったんですね!とかなんとか。そういう意味で言ったのではない、俺はきちんとヒーローになってやると言うと大人しくなったが、その後ハッと息を呑んで赤面したのは何を思い浮かべたんだか。

 まず、改めて俺の現在の目的……そこでブーたれてる女神を一度くらい正面からぶちのめしたいことを改めて話す。やっぱあれがその邪悪な女神だったですねーとか、やはり先輩は邪悪な女神に属するダークな変身ヒーローだったんですねとか、そんな感想を述べた後にじゃあなんで魔法少女の力が必要じゃないんですか?と疑問を浮かべるななみちゃん。

 前々から思ってたことだが、ぶっちゃけ戦闘面に関して今の君は俺の下位互換でしかないのだと告げる。悪魔変身能力者って、人間にしてはHPMPがタフでかつ悪魔のデータを使えるってだけなので、変身したまま人間形態のスキルは殆ど使えないから能力に関しては純悪魔や人間のまま戦うことに特化したキャラには中々勝てないのだよ。特に火力と防御力。

 別に彼女を魔法少女、もとい悪魔変身能力者のままサマナーにして、俺が前衛に切り替える手もあるのだが、悪魔合体や悪魔データに関して彼女はノウハウが無ければ、知識も経験も少なく、まだまだ未熟。合体から戦闘中の助言まで何かと俺のサポートが必要だろう。

 そうやって逐一手間をかけるくらいならば、まだ未熟な彼女が異能を変える方が早いだろうと思っての、魔法少女やめない発言である。

 

 異能を変えたり、転生におけるルール的な説明をした上での彼女の反応は、やはりそれなりに魔法少女に思い入れがあるらしくウンとは頷き難いようだった。せめて魔法は使いたいとのこと。

 ……俺の考えているクラス構成なら魔法も使えなくはないのだが、レベル不足の問題がある。クラス取得の順番を入れ替えれば今すぐにも使えなくはないが、その場合前衛クラスが手に入らないためいまいち能力値が歪になるだろう。うーん、まあレベル不足のうちは俺が助ければいいか。

 相談の末、ななみちゃんには「ファイアスターター」という発火系の超能力者クラスと魔晶武器使い「サクセサー」クラスに覚醒してもらうことにした。超能力だけどデータ的には魔法とほぼ同じ【アギ】だから一緒一緒。専用ロッド(格闘武器)もあるし魔法少女っぽいで!

 アイテムの引き継ぎはCOMPとマガタマシュミット済みの練気の剣、それからティアマトより強奪した竜眼石である。できればななみちゃんの経験点で引き継いでもらいたかったが、死亡後の譲渡は不許可とのことで諦めた。絆の引き継ぎは葛葉とスティーブン。妖精郷の方は、ななみちゃんが引き継いだピクシーとの絆を介してなんとか交渉する方針で行く。

 

 あとは、今回の転生先だが……ななみちゃんの要望により、人死を防げるヒーロー活動が行えるところとなった。しかしミレニアムで暴れた直後で経験点が豊富だった前回よりもスタート時の経験点が少ないため、ラスボス級悪魔を倒せる目安の超人覚醒が遅れることから無理な戦闘は行えない。よって、具体的には真1の東京へとんぼ返りし、ICBMを防ぐために四天王のいるアッシャー回廊を攻める魔界のマルクト王国へ逆侵略し、そこを守る大天使メタトロンを倒すというのは難しいだろう。真・女神転生2のTOKYOミレニアムも、早期になんとかしようと考えるとやはり4大天使を倒す必要があるため無理。ペルソナ3世界は危険こそあれど殆ど人死はなく安全であるが、積極的にヒーローらしい行動を取れるかというと疑問符。しかも悪魔が全く関わらない現代が舞台なだけに、幾月関連の物事は力づくで解決するのはまず不可能である。ボルテクス界は色々と論外。

 などと、転生先の選択肢それぞれの世界で起こる問題、原因を説明しながらななみちゃんの意見を聞きながら次回先を決めるが……先ほど述べた事情により、やはりまだ行ったことのない2つの世界のどちらかになるなと結論。デビルサバイバー1世界と、謎の2作品複合世界。前者は未然に防ぐのであれば翔門会のベル・ベリト(ベリス?)がデータ的に未知数、しかし普通に考えればレベル60は下らないことが予測される。……超人覚醒してなくとも倒せそうな相手だが、ななみちゃんのレベルが十分育ってからでないと厳しいだろう。

 となると消去法から、最後に残ったデビルサバイバー2とストレンジジャーニーの複合世界が次の転生先となる。ストレンジジャーニーといえば南極に発生した地球上をリセットするため悪魔が発生させた異常現象「シュバルツバース」を探査、最終的に悪魔たちに同意するか、シュバルツバースを破壊しようと試みる物語だ。原作が始まった後は南極だけで展開が進むこの作品の一方で、デビルサバイバー2は日本を舞台に、同じく世界をリセットしようと文明を破壊するセプテントリオンという侵略者(特殊な悪魔?)と闘いぬいて約一週間を生き延び、既に滅びつつある食い止めれない世界の崩壊をどうリセットするかが主題となる物語である。どちらも同じく悪魔(や、侵略者?)が世界をリセットしようとするストーリーだが、首謀者は全く異なるためこの2つがどのように作用するのかが分からない。

 だが恐らく、南極と日本とで別々にストーリーが進むのは間違いないと考えている。シュバルツバースで出現するボス悪魔の殆どは、TRPGにデータが存在するため4大天使のように仕様で強化されることは早々無いため、おおよそ原作通りに進むはず。南極探査隊に潜り込むのも大変そうだし、介入するなら何が起きるか分からないデビルサバイバー2が優先か。ヒーロー活動も、そっちがやりやすいからね。

 

 

 予定が決まったので、早速転生してもらおうと女神に頼むこもうとしたところで「ちょっと九条さん来てくれる」と俺を差し置いてななみちゃんだけを呼び出す女神。そして何やら俺に聞こえないようにヒソヒソと耳打ちして、ななみちゃんがビクッと反応する。僅かに頬を朱に染めながら少し考えこみ、ななみちゃんは何やらお願いするように女神にナイショ話を返していた。一体何の相談やら。ななみちゃんの様子を見る限り、変な悪巧みではないだろうが……。

 

 




デビサバ2内での地理を把握し直すのに時間かかりそうなので、ちょっと短いけど導入だけ先に。


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初めての新聞デビュー

 

>9月××日 直ちに実害はない日

 時期は秋の初め、学校の二学期が始まった頃に俺は高校二年生として吉祥寺の高校に転校することになっていた。大破壊前の東京で通っていたところと同じだが、あの時よりも時代が後だからか雰囲気は異なる。

 ペルソナ3や真・女神転生1と違って、日常の裏で悪魔が蠢くことも……多分無い、平和な世界だ。

 しかし、忍び寄る悪魔の足音は着実に近づいている。

 

 南極に謎の強磁性のブリザードが発生して二ヶ月。各国は撤退の動きを見せつつあるという噂話がネット掲示板で流れていたが、その正体は人口増加、人類の飽和により環境バランスが崩壊した地球をリセットするためにシュメール神話の『母』、メムアレフが生み出した文明を飲み込むための亜空間である。

 原作では各国の撤退後、秘密裏に調査隊を派遣する流れだったのであと一、二ヶ月もすればシュバルツバース調査隊が出発するのだろう。今からコネを通じて国に接触すれば、調査隊のゲストに加入出来るかもしれないが、それは行わない。

 南極外の状況がどうだったか、原作では焦点が当たらないこともありいまいちうろ覚えなのだが、だんだんと思い出してきて、この先の流れが読めてきた。確か途中、シュバルツバースから脱出しようとして失敗した頃に外部と通信し、悪魔が出現し始めたニュースが入ったはずだ。この世界がデビルサバイバー2も重なっているのだとすれば、出発して暫く経ったそのタイミングで始まるのだろうと思われる。しかし未だに南極のメムアレフと侵略者のポラリス、その両方の計画がどう重なり合うのかは全く分からない。シュバルツバースを解決すれば、東京の問題も自動的に解決するとは思えないのだが……逆順はそうでもなさそうだけど。

 

 ところでななみちゃんはどこに?

 

 

 

>10月△△日

 ななみちゃんが魔法少女してた。何を言ってるのか分からないと思うが、俺も何をどうやってなったのか分からない。

 より正確にいうとテレビ人気アイドルとして実写ドラマ番組で魔法少女になっていた。お前はデビサバ1のドリーか、世界が違うぞ。まあ彼女がプライベートで何をしようがそれはいいんだ、デビルサバイバー2の原作開始まで時間はあるだろうし……。

 でも現役JKアイドルの熱愛報道とかで俺を巻き込むのは勘弁!

 

 あのヤロー、何を吹き込んだと思ったら、これを仕込んでやがったのか。

 マスコミが連日インタビューと称して押しかけてきてたまらない。何と答えようが揚げ足を取るような質問を繰り返し、ほどほどに切り上げようにも自宅まで追ってくる始末。ななみちゃんも、アイドルとしてはハプニング報道にも関わらず否定してくれないし……。

 色々あったおかげで最近おまわりさんと仲良くなった。

 

 

 

>10月□□日

 死に顔動画のメール配信サイト『ニカイア』が開始したことを噂話で知る。そろそろデビサバ2の時期が迫ってるようだ。悪魔召喚プログラムは既に持っているが、邪教の館が見つからないこの世界ではここで手に入る各種アプリだけが頼りなので登録した。

 具体的な開始タイミングの目処として、銀杏の落ちる時期を調べておく。一見なんのことやらと思うかもしれないが、原作で茶碗蒸し好きの子がしきりに拾っていたため意外と目安になる。だいたい11月の終わり頃か、それを目安に大学入試模擬試験のある時期も調べておいた方がいいだろう。始まりは日曜日からのはずだが……どの週からだろうか。

 プライベートの話。マスコミはまだまだ落ち着かないし、最近は同級生も周りではしゃぎだした。アイドルのサインをくれだの紹介してくれだの……まだこの世界ではななみちゃんと片手で数えるほどしか会えてないというのに。

 

 

 

>10月○○日

 やがて11月が始まる頃、自宅にまた変な大人が接触してきた。初めはマスコミかと思ったが見た目と雰囲気、そして何よりも異能者特有のレベルを持っていた。訝しがりつつも中に招くと、この世界の葛葉に代わる日本の退魔組織の一員だと話してくれた。

 表向きは気象庁の指定地磁気調査部、通称『ジプス』。その裏では各地に現れる悪魔を封印する退魔部隊で、有事の際には武器を携えて出動する異能者の集団がマスコミ報道を通じて俺のことを知り、スカウトしに来たんだそうな。少し急な接触に気になりはしたが、加入してくれるならばマスコミ報道を抑えてくれる条件を提示してくれた。

 就職ではないので学生は続けるが、卒業後は云々という話を済ませスカウトの方は帰っていった。ところで彼の姓がどうやら葛葉らしい。……この世界の葛葉は随分と小さくなってしまったようだ。

 

 

 

>11月▽▽日

 ジプスに依頼された悪魔を討伐したけど、やはり弱い。装備は向こうで用意したものを使う流れだったし、わざわざ手の内を晒すこともない(というか説明が面倒)と思って召喚は造魔すら抜き、悪魔変身だけを用いて、時には変身すらせずにぶん殴った。MAG回収のためだけに護符代わりと言い張ってCOMPだけは持っていたが。

 強い悪魔は地脈やら何やらを使って影響ごとまとめて封印するそうなのだが、今回は(一般的に見て)弱い悪魔だったのでそうする必要も無し。

 

 そうそう、突然だが俺のCOMPに謎のメールが飛んできた。悪魔かウィルスかと警戒していたが、ユーバー・ゲシュタルトなる謎の電霊もどき(電脳ネットワーク上を漂うウィルス的悪魔)から接触があった。SJ(ストレンジジャーニー)原作の後半で現れるご先祖様みたいなネタバレ多数抱える存在なのに唐突な、と思ったらこいつ絆を引き継いだスティーブンの枠だった。納得。

 あまりシュバルツバース内の状況は知らないようなのでお外に影響を及ぼすことも少ないでしょう。

 

 

 

>11月○○日

 前回よりも悪魔のレベル、というか担当箇所の難易度が上がった。山奥の悪魔巣食う霊地のまっただ中にいきなり突っ込まさせないでください。前回の討伐時にカードハントして毟っておいたピクシーを臨時の回復要員にし、妖獣ヌエやら凶鳥フリアイやら、最後はボスの魔獣オルトロスを【氷結高揚】【震脚】つき【アイスバウンド】で殴りきった。流石脳筋系地母神、セドナ様だぜ。

 でもどうせならレベリングにななみちゃん連れてきたかったなぁ。相変わらず魔法少女ドラマに忙しいみたいだし、そのうち予定合わせを検討しよう。

 

 ところで初めて死に顔動画のメールが飛んできた。同級生の女の子が電車に轢かれる姿だった……うーん、見知ってるだけで別に親しい関係じゃないけど、どうしたものか。

 

 

 

>11月○×日

 とりあえず【隠密行動】でもないが事前調査で場所を突き止め、その日付に止めておいた。電車到着時、読書に夢中になってると突風に煽られてホーム内に……という、うっかりじゃ済まない眼鏡っ子を、悪いと思いつつ首ひっつかんで止めるだけのお仕事です。

 気をつけるように、の一言だけ告げて退散退散。俺も学校行かなきゃ。

 

 学校の後。ななみちゃんとお話して予定のやりくりしようとしたら、来客。マスコミはジプスが対処したろうし、誰だろうか。ななみちゃんのファンが変な事でも目論んだか?

 と思ったら全然違うというか、アルコr……憂う者が来た。

 お前ラスボス前座だろ、こんなとこほっつき歩いて何しとん。この世界のNPCたち積極的すぎんよー。

 何か大事な話したいことがあるとか言うので聞く。とはいえ俺、別に主人公らと違って変な素質とか秘めてないんですが……。

 え、俺に現ポラリスが持つのと同じ、管理者権限を持っていたような形跡がある?

 

 サラッと原作の核心に触れる話をした気もするが、どうもあの女神の影響で誤認したという結論になった。転生のことは話してないが、ポラリスと同じ、あるいはそれに似た奴の干渉を受けたとかいつまんで話したら憂う者は驚きつつも納得してくれた。とりあえずそんな形跡があるからといって彼のアレの代役を務められるわけでもないらしいので、原作には全く影響無い与太話になった。しかしあいつがねー……なんだかんだ言ってあの女神サラッと転生とか不可解なことしてるし、アカシックレコードにアクセス出来ていてもおかしくなかったし、驚くことでもない。

 憂う者はまた来るよと言い残して帰ってった。来なくていいから。

 だってジプスの局長に目をつけられるじゃん、あいつ原作でも龍脈パワーで下手なラスボスよりクソ強いから怖いんだよ。

 

 

 

>11月下旬 土曜日

 そろそろ……というか明日に全国統一模擬試験があることを聞いたので、多分もうすぐに起こりうる。ジプスのほうからも南極のシュバルツバースの様子が怪しくなってきたか、あるいはセプテントリオンの前触れでも出たのか、出勤要請が出されたので、うまく予定を合わせられたななみちゃんと共に出勤した。ちなみにななみちゃんも異能者であること、というか同じ異能者という関係で知り合ったということで話を合わせ、それを報告している。

(何故か知らんが、先方はななみちゃんとそれで付き合い始めた、とか思っているようだが)

 

 近日に悪魔が大規模に出現する可能性が高く、同時に都市に攻撃を受けることが予測されているため、結界を強化すること。また悪魔の出現に備え、ジプスのメンバーは装備をいつでも出撃できるように用意することを通達される。俺とななみちゃんの分の防具も供給されるが、生憎先日の悪魔退治でななみちゃんの分の防具は手に入れたので、断ってそっちを使われる。紅の具足は足防具の中でも優良な防御点からイニシアチブ増加量、回避強化つきと耐性以外は文句をつけるところ無いし。これ一つで下手な全身鎧より硬いし。

 俺たちは先日の霊地(強い方)の再確認を頼まれる。封印が間に合っておらず悪魔が再出現しつつあるそうなので、応急処置としての再探索だ。レベル上げにも丁度良いし喜んで承る。

 

 霊地に入ろうと思ったら変な男が絡んできた。ジプスから身を引け、奴らはとんでもない悪行を為そうとしてるって?

 俺らがジプスでは新参であることをどっからか聞いたのか、そんなことを勧めてくる男は一体どこのどいつだと顔を見てみれば……

 

 ……ああ、こいつロナウドじゃん。

 




主人公は多分こぐま座


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クリきんとん

10/02 9時頃 マコトさん忘れてましたごめんなさい修正
10/02 15時頃 スカイツリーはまだなかったので修正


 

>0日目(土)15:00  同日

 ロナウドは嫌いだ。原作でジプスの揚げ足を取ることに必死で、大した活躍をしなかった男だという印象があるのだが……。はっきり拒絶しようとしたが、ななみちゃんに口を出された。初対面の相手に理由も言わず拒絶するのは相手に失礼だし、いつも冷静に判断してる先輩らしくないですよって。さほど冷静で真面目でいるつもりはないが、一理ある。

 俺が転生者だと知っているななみちゃんだけならまだしも、ロナウド自身にその内容を言うわけにもいかず(絶対に原作以上に話がこじれてややこしくなるから)、真面目に話を聞いてやる。だがロナウドは、「ジプスやばい」と遠回しに言い、俺たちの危機感をなんとか煽ろうとするだけでイマイチ内容を言おうとしない。こいつは……

 

 原作でのロナウドに何があったか、ある程度知っている俺から逆に踏みこんでやる。

「ジプスが薄汚い手口に手を染めていることを指しているのか?」と。ロナウドが目に見えて動揺する。

 知っているのかと問い返されるも、知らないが珍しくはないことだ、特にジプスのような目的を持つ組織にはなと答える。多分、今のロナウドは悪魔についてよく知らないのではないか?と俺は思っている。

 俺の知る原作のこいつ……栗木ロナウドは元刑事で、峰津院大和(ホウツイン ヤマト)が局長を務める退魔組織ジプスを捜査中だった先輩が口封じされ、その復讐心からジプス及びヤマト局長が犯罪に染めている証拠を独自に捜索している人間だ。それだけなら筋は通るのだが、後のジプスがセプテントリオンという強大な敵と戦う一方で、彼はただひたすら妨害を行うことに専念した結果、仲間の人死の原因の一つになることが問題にあげられる。確かにジプスの動きに不平を漏らしたくもなるが、小を捨てて大につく目的がしっかりしているジプスと、ヤマト局長への反骨心から動いているロナウドとでは反応が異なるのも当然だ。

 しかし、ななみちゃんにはまだそれを教えていない。故に先入観のない彼女は、ロナウドの話を真摯に聞いており、まともに取り合おうとしない俺とロナウドの間を執り成している。これ以上、余計に意地を張ればななみちゃんとの関係もこじれるか。

 ならば仕方ない。原作はだいぶ変わるが、少しロナウドの思想を変えるために、話を続けたいのなら霊地での活動へ同行するように呼びかける。悪魔が出ると聞いているななみちゃんは顔色を変えるが、悪魔なんて存在すら知らないまだ一般人のロナウドは軽く請け負う。

 どうせ後日、悪魔が出現して知るのが早くなるか遅くなるか変わったところで、大筋は変わらない。それより、ここで早いうちにロナウドに釘を刺すことが重要だと俺は感じた。

 

 

 

>0日目(土)15:30

 ストレンジジャーニーの世界観と同じく、まだ一般人である栗木ロナウドには肉眼では悪魔を認識出来ないようだった。しかしながら、ななみちゃんが炎を纏った武器を振りかざし、俺の姿がぼやけた奇怪な輪郭に変化して“何か”と戦っていた姿は認識出来たようである。その実際の相手は魔獣ネコマタである。

 

 一戦終えたところで、これがジプスの本当の裏の仕事だとロナウドに伝える。『悪魔』(といっても見えないものを言葉だけで理解させるのは難しいが)、を倒したり封印するために十分な火力……まさか戦車を持ち出すわけにもいかないため、代わりに悪魔と対抗する相応の力(異能のことだ)を秘めた人間をスカウトし、集めている。俺たちはそのスカウトされた人間だったわけだ、とロナウドに分かりやすく伝える。ななみちゃんも俺より経験は浅いが、悪魔との戦いを前にも経験したことのある異能者であり、こういった薄暗いところに隠れる奴らが人を襲わないように「山狩り」のようなことをしている、と発言を補ってくれる。

 常軌を逸した話に取り乱していたロナウドだが、ようやく復帰しての一言。

「その力は人を支配するために使える武器じゃないのか?」と。お前いい加減にしろよ。

 その問題は例えば黒帯の空手家の拳は凶器だという話や、銃刀法のように政治や法律が関わって、素人の俺が語れる内容じゃない。

 

 話は終わった、まだまだ聞きたいことはあるだろうが今はジプスへの思いを見直すべきだし、俺もよく分からないが明日は悪魔が災害を起こしそうだから避難に備えておけとだけ情報を漏らし、一旦霊地を出て栗木だけ追い出した。体力も防御力もロクにない一般人を守りながらの戦いは危険だし、何より経験値泥棒を連れて行くつもりはない。お前にも分配されてるんだよさっきの経験値。

 必要な分は見せたということだ、これ以上は見せぬ。

 

 

 

>0日目(土)16:00

「先輩、本当のところどこまで知ってるんですか?」と霊地探索している最中に尋ねられる。

 彼女が言ってるのがどの発言の内容を指してるのかは分からないが……だいたい全部知っているし、嘘を言ったつもりはないと返す。ただ一部、擁護する内容はあったかもしれないが。

 ジプスは、ヤマト局長が指揮する只の退魔組織……ではあるのだが、トップのヤマト局長には野心があり、実はポラリスを利用して『実力主義からなる世界』への変革を目論んでいる。そのため全くの善意からジプスを指揮しているわけではなく、ロナウドならそこを衝くことも出来たろうがわざわざそれを言ってやる義理もない。ヤマトの野心は悪しき野望としても、彼が指揮するジプスがやってる退魔や異能の秘匿は全くの悪いことか?

 悪魔や異能の秘匿は、それこそ先ほどロナウドが言った通り、国家が知ることで「異能の力を人の支配に使うこと」に繋がりうる。これが悪化した場合の例が、大破壊後の渋谷を支配するオザワだ。奴は国津神タケミナカタによって渋谷に悪魔が出現するのを防ぐと共に、圧倒的な暴力を振るうことで人々に恐怖を抱かせ、反抗する気を無くさせ統治した。

 あいにく大破壊前に倒れた彼女にその知識も経験も無いが、明治神宮で受けた教育の内容にその辺りの事情を聞いたと答えるななみちゃん。なら話が早い、悪い奴がいるとすれば、それはジプス全体ではなく野心を持つヤマト局長の方だろうと俺は言う。しかしロナウドのように、必ずしも悪い奴とは断言出来ないけどね……。

 俺がななみちゃんを助けた時のように、全くの善意から動く人間はそうそういない。かといって、全くの悪意から動く人間も少ない。ロナウドは善意でジプスとヤマト局長を危険視しているのだろうが、その彼の行動が必ずしも善であるとは限らない。人間を擁護する奴が悪くなって、悪魔側が良い奴に見える、メガテンシリーズではよくあることです。

 要するに「良い」とか「悪い」とか言ってる奴は信用ならないんだよ!

 

 

 

>0日目(土)16:30

 現れた堕天使ガミジンを倒してからまた一息つく。その間に、今度は「なんで先輩は彼を嫌ってたんですか?」と尋ねられる。

 その内容を話すには、これからの原作の流れを説明する必要があると、俺は大雑把にシナリオを語った。

 

 まず、日曜日にポラリスがこの世界を消すために攻撃を仕掛ける。しかしヤマト率いるジプス、東京タワー等のタワーが発する結界により主要都市だけでも防ぐ。

 リセット攻撃を防がれたポラリスは、結界のあるタワーを破壊するため約7体いるセプテントリオンを順次仕掛ける。ジプスは現れたセプテントリオンを討伐しようとするが、その際現れた新参悪魔召喚師、モジャ公(原作主人公)たちの手で最初のセプテントリオンが倒される。セプテントリオンを倒す実力に目をかけたヤマトによって、モジャ公らがジプスに加入させられる(ライフラインがそれ以外で機能していないこともあって加入せざるを得なかった)。

 大阪で第二のセプテントリオン討伐、主人公がヤマトに完全に目をつけられる。しかしジプスが沢山食料を残しているのに(ヤマトの実力がない、人にすがろうとする人間はいらないという実力主義方針のせいで)民衆に配らないことに怒りを募らせ、名古屋にあるジプスの拠点を悪魔召喚アプリを手に入れロナウド率いる民間人たちが襲撃する。この時、応援に来ていた主人公の友人の一人が襲撃に巻き込まれ、行方不明になる。

 次の日、名古屋ジプスの連絡が途絶えた原因を調査しつつ、友人の消息を探しに訪れた主人公がジプスを襲った民間人たちや、ロナウドと戦闘になる。しかしその途中、主人公と同じく名古屋ジプスにスカウトされた民間人出の青年が、主人公の友人を人質にされ抵抗できず暴徒に殺される可能性がある。デビルサバイバー2では多くの人間の仲間が死ぬことがあるが、何かの犠牲や悪魔が原因ではなく、終盤のルート確定前後を除けば同じ人間に殺されるのは唯一この時だけ。

 その殺された仲間は格別すごい能力を秘める人間というわけではないが、だからといって無碍にしていいほど悪い人間でなく、むしろななみちゃんのように天真爛漫ですごく人当たりのいい奴だった。だからこそ彼が殺される原因になった暴徒たちを集めたものの統率しきれず、ジプスに所属している人員だからと青年を殺してしまう状況を作ったロナウドが嫌いだ。

 

と、俺は原作であったこと、俺が思っていることを正直にななみちゃんに伝えた。なおこの話の途中、ふつふつと沸き上がってきた怒りを、まだ途中にも関わらず襲ってきた妖鬼オニを怒りのあまりに瞬殺している。

 

 

 

>0日目(土)17:00

 この霊地の悪魔たちの主として新たに君臨していたボスの妖魔ヤヌスをぶっ飛ばした。ガチガチの物理型なだけあり、正直オルトロスよりも強かったのじゃが。【暗夜剣】クリられた時は格下に負けるかと思った……まあ勝ったわけだが。

 ちなみにななみちゃんは開幕の全体攻撃【夜桜の舞】連発で軽く吹き飛んだ。ごめんね、蘇生手段整ってないのよ。

 

 一仕事終え、麓で待機していたジプスの車に載っけてもらい帰る途中、ななみちゃんがまたロナウドのことを口にしてくる。あれだけ俺が嫌いになる理由を伝えたのに、まだ何か疑問があるのだろうか、と軽く考えてたら意表を突かれた。

「先輩、それなら先輩がロナウドさんの歩む道を踏み違えないよう、導いてあげるべきではないでしょうか!」

 

 その発想はなかった。なかったけど、えー。俺にも事情抜きで好き嫌いはあるよ?

 しかしロナウド魔改造か……1キャラ強化して原作崩壊って転生モノだとよくあるけど、年食ったおっさんをわざわざ強化するってあんま無いな。

 確かに斬新だけど、単に好みに合わねえ!

 そう言ったらななみちゃんはしょげた。え、本気で期待してたの?

 

 

 

>0日目(土)19:00

 ジプスに装備を返却し、帰るその途中でななみちゃんから食事へ誘われる。

 あんまり豪勢なとこ行っても身の丈に合わないし、適当なファミレスに。なおアイドルである彼女は変装として伊達メガネを装着中である。しかも随分とキラキラしたラメを貼ってあってへんてこなのを。確かにメガネに目に行って気づき辛いかもしれないけど……。

 

 俺が肉っぽいものを注文する一方で、彼女はオムライスの後にデザートにパフェやら幾つか注文する。

 仕事の報酬金はかなり貰っちゃったし、お腹に入るなら幾ら注文しても文句をつける気はないけど、わざわざ俺の口にスプーン運んでくるのはなんなの?

 この前、恋人騒動でアイドルとして危うくなりかけたってのにまだクソ女神のイタズラに付き合うつもりかと尋ねる。

 

 

 え、本気? アイドルの方……じゃなくて恋人?

 ……あのクソ女神から何か聞いてない?前の生で何があったかとか。

 ああ、やっぱ聞いてたのね。そうそう、俺恋人作ってたのよ。

 でも色々あって心にダメージを受けた後だし、そういうのはちょっと……

 

 おい馬鹿やめろ恥ずかしい

 

 

 

>0日目(土)21:00

 ななみちゃんが公衆の面前にも関わらずファミレスで告白してきた。大声で。

 恋人騒動再発するぞ……いやしても困らないか、どうせ多分、明日には地震起こってそれどころじゃないしな。

 まさかそれを狙ってあんな恥ずかしいことしやがったってのか。

 くそう、衆目集める断りづらい空気作りやがって。策士か。断れなかったぞおいどうしようアリスさんごめんなさい。

 

 告白受けて、ファミレスから逃げ帰るかのごとく自宅に帰ってきた。つーか逃げ帰った。ななみちゃんも付いてきたけど。彼女は今は別の部屋で、マネージャーと電話をしているようだ。多分、じわじわとネットで炎上しつつあると怒られてるのだろう。怒られろバカヤロー。

 ちなみにななみちゃんは帰るつもりがないようで、今晩はこの狭いアパート内で一緒の布団に共寝である。今までよりやたら狭い住まいだなと気になってたはいたが、わざわざ転生前にしていたナイショ話といいこうなることを最初から狙ってやがったのだろうかあのクソ女神。いや、企んだ一員なのだから、ななみちゃんも有罪だな。

 

 

 ななみちゃんのお叱りの電話が終わるまでの与えられた僅かな猶予で、俺はこの世界のスティーブン、もとい、かつて世界が生まれる前の世界、あるいは未来の果てに行き着く世界で生まれる人間の超進化形態であるらしいユーバー・ゲシュタルトと、現代の利器であるパソコンを通じてメールする。相手の凄さの割に通信方法が見合ってない気がするけど、あとはケータイ電話くらいしか無いのだからマシな方だ。

 ともかく彼と連絡を通じ、悪魔召喚プログラムについて相談する。特に造魔や魔晶武器、俺の変身悪魔を合体させる手段が欲しいと伝える。後にニカイアを通じて貰える悪魔召喚アプリだが、仲魔は問題ないにしてもそれ以外の合体方法については対応していない可能性がある。よって今のうちにスティーブンポジである彼にねだっておけば、インフラが壊滅する前に間に合うのではないか?と思って相談したのだ。

 できれば明日の昼前か、昼頃にまで調達してほしいと無理を言うと、承知してくれた。迷惑をかけるが済まない、代わりに人間は、少なくとも日本国内の主要都市だけでもなんとか救ってみせると彼に約束した。どうせデビサバ2の流れなら、ポラリス倒しつつ日本と世界を救うわけだしね。シュバルツバースが気がかりだけど、きっと内部は内部で調査隊がきっとなんとかしてくれるだろう。というか今更どうしようもねえしな!!

 

 

 ななみちゃんの電話が終わり、ウキウキと部屋にやってきた。つまり時間切れ、ベッドインの時間である。

 あーもー、女の子に好かれること自体は嫌ではないけど、アリスさんへの思いは残したかったのにどうしてこうなった。止めろよクソ女神ー。

 

 ……あいつが俺を喜ばすことするわけねーわな。

 

 

  >ななみちゃんと特別な関係になった

 

 

 



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憂鬱の日曜日

2016/10/06 総括追加。
2016/10/21 フミを見かけた下りの文を消去。



 

>1日目(日)07:00

 特別な関係になったとは言ったが一線を超えたとは言ってない。迫ってくる割にはこと本番となると奥手だったし。

 それより起きたらヨダレで布団がベトベトだった、ひでぇ。ななみちゃんマジ寝癖悪い。

 

 レトルトで悪いが飯を食う。

 飯といえば、一応2L飲料1ダースと野菜ジュースと乾パン、おまけでピーナッツは用意しといたけど。

 使う時は来るかね?

 

 

 

>1日目(日)07:30

 ななみちゃんのマネージャーさんがウチまで車で迎えにやってきた。今日までは迷惑かけます、向こうはそうと知らないけれど。

 今からアイドル事務所で色々話し合いになるそうだ。ななみちゃんもポラリスの騒動を利用して雲隠れしようとしたのだろうが俺を辱めた事は許さん。きっちり叱られてこい。

 昼頃まで時間を稼げば有耶無耶に出来るから、なんとか頑張れ。謝罪会見がなくなるといいな。

 連絡網が使えなくなることも考えて、前もってジプス東京支局のある国会議事堂前で18時頃に合流する約束をする。それでもダメだったらジプスの方で合流だ。

 

 パソコンを確認。悪魔合体アプリの『追加パッチ』という形でユーバーゲシュタルトからデータが送られてきた。まだ配布されてもいない物のパッチ出すとか流石ですわ。

 しっかりケータイとCOMPの両方にダウンロードした後、昨日のななみちゃん騒動再発でマスコミが押し寄せる前にジプスの方へ退散した。

 

 

 

>1日目(日)09:30

 国会議事堂地下にあるジプス東京支局へ。俺がエレベーターを降りる時にも次々と物資が搬入されており、ポラリスの攻撃が来ることを完全に察知しているようだ。邪魔にならないよう戦闘員の詰所で状況の確認や、ジプス局員服に着替えて時間を潰す。

 

 ポラリスの攻撃をタワーの結界でどれだけ防げるか分からず、各地に封じている悪魔の封印が衝撃で解ける可能性も高いため、ポラリスの攻撃後、ジプス局員は都内にある悪魔の封印を見まわってもらうとのこと。

 俺の担当は、G地点……衛国寺?何を祀ってるお寺だったっけ……仏教系の神族は数少ない魔神しかいないし、そっち方面じゃないよな。寺の眷属の悪魔を封印してたりするのかな?

 ジプスに資料もあるし、時間までちょっと調べてみよう。

 

 

 

>1日目(日)11:30

 データ探すのめっちゃ苦労した。電子データとかじゃなく慣れない資料室で書庫漁らなきゃならなかったんだもの。でも、おかげで悪魔の調べはついた。龍王ナーガが封印されているらしい、あれもそういえばインド寄りの仏教系悪魔だ。

 ふと気づけばもうお昼前。ポラリスの攻撃って何時だっけ? 昼頃ってのは覚えてたし、早めに飯食って備えよう。

 

 

 

>1日目(日)12:30

 とんかつ弁当食って今のうちに脂肪分を貯めつつ、テレビでななみちゃんの記者会見を見て地震まで時間つぶし。どうせ何しても後には響かないけど、真面目な場で遊ぶのはほどほどにしろよ。顔がにやけてるぞ。

 ネット見たら俺ともどもすげー叩かれてた。ははは愚民どもめ、今のうちに余裕かましているが良い。

 

 

 

>1日目(日)13:00

 大地震発生。記者会見中だったが、すごい衝撃でテレビカメラが逝ったのか、映像が途切れる。地震と違って前揺れのない、突然の衝撃だっただけに分かってたはずの俺でさえビビった。しかもジプス内のどこかで爆発音っぽいのが聞こえたんだけど大丈夫か……?

 本気でやばそうなので応援に向かう。

 重火器の火薬が衝撃で漏れて、金属物の擦れで火花が散り引火するなど偶然の事故が原因だった模様。

 ジプス局内が落ち着いたので、戦闘班は各自、指定の封印地点を確認するよう出発を呼びかけられる。勿論、俺も出発する。

 支給されたチャリでな!!

 

 

 

>1日目(日)14:30

 衛国寺、地図を片手に、チャリで来た。

 交通網機能してねーんだもの、車もなけりゃ、地震で道も荒れてるわ人で混雑しているわと、そりゃそうなるな。……原作って30分でいろんなとこ歩きまわってた気がするけど、車使ってたのかアレ?

 

 手引書を片手に、墓碑に扮した封印制御器を出現させて状態を確認する。理屈は知らないが、悪魔召喚器の召喚機能がなく、帰還と収納だけするような装置らしいが……素人目で見ても分かるくらい凹みが酷い。手動で外部コントロールを受け付けるスイッチを操作し、無線でパスワードを入力、状態をチェックする。自己チェック機能を作動させて様子を見る限り、問題は無い。……戦闘は無いだろう、残念。

 

 制御器を元に戻し、衛国寺を後にしようとしたところで、ケータイに通知が。ニカイアからのメールだった。まさか誰かの死に顔動画……、ではないな。

「生きますか、生きませんか?」といった文面を見るに、どうやら悪魔召喚アプリを実行するかどうかの確認画面だ。

 ようやく使えるようになるんだな、丁度近くに人もいないことだしドンパチやっても大丈夫だろうと「はい」のリンクを押す。最初に出てきた悪魔を倒さないと使役出来ないしアプリも使えないが……悪魔1体くらいどうとでもなるしな。

 

 どうせピクシーやブラウニーだろと余裕かましてたら魔人アリスが1体現れた。なんでやねん。

 

 

 

>1日目(日)15:00

 多分、出現する悪魔はサマナーの現在レベルに依存するんじゃないかと思われる。確かにデビルサバイバー……1の方だが、後半に悪魔召喚アプリを使い始めた自衛隊の方が呼び出した悪魔が割と高レベルだったはず。原作ゲームでも、主人公のレベルは引き継ぎ出来ず毎回リセットされるから確かに影響ないもんね、ってこっちは単なる仕様か。

 とりあえずアリスを仲魔にしたのだが、勝手に手持ちCOMPと無線で仲魔を同期連携してくれた。不思議な機能だが、ありがたいことに予備COMPが出来た。でもこれって逆に言えばアプリへのハッキングも同様に受けるってことですよね。うーんデメリットでもあるか。まあ、フミっぱいと敵対しなければ大丈夫でしょう。

 

 

 

>1日目(日)15:30

 ジプスへ帰る途中で再びメールが。

 またニカイアからだ、そういえばデビオク解禁も丁度この頃の時間帯だったかな?

 悪魔全書が使えるまでは他に悪魔を手に入れる手段も少ないし、ランダム覚悟で幾つか買っておくか……なんて軽く考えたら全然違った。

 

 ななみちゃんがドゥベに爆殺されてる動画だった。えっ、何してんの。

 

 

 

>1日目(日)16:00

 落ち着いて動画を確認する。背景に蒸気機関車が映っており、またななみちゃんの他に三人ほど人影が見えた。ななみちゃんと同じくらいの背丈が二人、大人が一人……というかあの特徴的な白パーカーは主人公じゃねえか!ってことはこれ原作のセプテントリオン対決イベントだな!

 

 更に落ち着いて動画を確認する。原作だと無敵だったドゥベは、敵の爆発に合わせて大地少年がトラックをぶつけることで上部についた「頭部」を破壊、まともに倒せるようになるはずだが……近くにボロボロになったトラックが残っている。しかし動画ではドゥベの頭部は健在で、前面に立っていたななみちゃんを爆殺している。……さては、まさかトラックをぶつけそこねて原作の物語が崩れたか?

 ……ドゥベはレベルこそ低いし、セプテントリオンの中では最弱だが、ゲームの都合故にセプテントリオンの中では最強の装甲を誇っている。万能相性だろうが貫通だろうが無効化する仕様。俺でもイベント抜きでは倒せるかも分からないけれど、ことここに至っては回避する理由もない。というか合流しないとななみちゃん死ぬし。

 俺と違って、ジプスに正式加入していないななみちゃんはケータイがジプス専用回線に対応しておらず、災害で基地局が死んだ今は連絡手段がないし、メールで死に顔動画を伝えることも出来ない。しゃあねえ、行くしかねえべさ。

 

 でもSL広場ってどこ……。

 

 

>1日目(日)16:30

 近くのコンビニで東京の地図を漁り、必死にSLの文字を探す。セプテントリオンの目的からして、東京タワーの付近か、その前に主人公がドゥベと遭遇した六本木ヒルズに近いことから、だいたい港区の当たりをつければ時間はかからなかった。新橋SL広場、これだな。ジプス東京支局のある国会議事堂の少し東、割とすぐ傍だ。

 

 うわーい反対側だーい。

 

 

 

>1日目(日)17:00

 都市のど真ん中であるにも関わらず湧き始めた悪魔にチャリをぶっ壊される。

 絶対許さんぞ虫けらども!じわじわとなぶり殺しにしてくれる!

 

 

>1日目(日)17:30

 だから雑魚に時間かけてる場合じゃねえよ!!!

 

 

>1日目(日)18:00

 ジプスに戻る。ななみちゃんは議事堂前では待っていなかった、やはり主人公たちと共に移動しているのだろうか。

 次の任務を託されそうになるが、ニカイアというサイトから死に顔動画が送られたこと、。ならばSL広場に先回りだ。

 

 

>1日目(日)19:00

 セーフ!!

 たびたびビルが崩れていたり、車が道を塞いでたが【隠密行動】さまさまである。本来は忍者の得意技で、潜伏調査のために使う情報系スキルなおかげか、やや移動能力に補正がかかるのが手助けになった。……しかしドゥベ戦には間に合った。間に合ったけど。

 

 少し勘違いしていたのは、大地少年は原作同様、しっかりとトラックを当てることに成功していたのだ。更にななみちゃんが加わったことにより、パーティの火力面が向上。ドゥベ1体を倒すことに成功していたという。うん、奴1体は。

 まさか2体目がいるとは俺も思わなかったわ。

 

 トラックと衝突し、ボロボロになっているドゥベをななみちゃんの魔晶剣でトドメを刺す前に俺は到着した。動画と違う光景を見届けて、あれ?と思うも、そこに落下してきた2体目のドゥベで状況を悟る。

 原作では戦闘終了時丁度で到着したはずのマコトさんら正式ジプス隊員も見当たらない。ななみちゃんの加入で、戦闘終了が早すぎたんだ。明らかに負傷している彼らじゃ2体目は無理だろうと、慌てて前衛を張り、彼女らを逃がす。

 

 

 問題のドゥベだが……【ハイ・アナライズ】で耐性を探っても原作同様、全ての攻撃を無効化するように見えた。だが奴のスキルを探ると、奴特有の種族スキル【貪狼星の証】が悪さをしていることが判明する。どうやらドゥベは、本体の代わりに防御力に等しい「バリア」を発生させ、ダメージを無効化しているようだ。

「バリア」がダメージを肩代わりしているため、耐性は関係ないから【火炎貫通】を持つななみちゃんであろうと関係ない。そして「バリア」は非常に硬く、劣化することもないため約100点以上のダメージを出さないと破れない。なるほど、やはり原作で倒せなかったのは単なるイベントでしか無かったわけだ。

 セドナに悪魔変身、【震脚】からの【アイスバウンド】をぶちこむことで「バリア」を破壊。その上から2発目、3発目を全身が弱点と化したその身に叩き込む。ドゥベも、【連星の炎】――アギラオ並の強烈な火炎連続攻撃だった――で反撃してくるが、レベル差からかすり傷でしか無い。

 攻撃が通じないと見て、利口にも逃げようとしたドゥベを追加の【アイスバウンド】で消滅させ、戦闘終了。耐性のタネさえ分かれば怖いものは無かった。ふう、と息をついてななみちゃんらを迎えに行こうとする俺に、ふと声がかかる。

 ああ大地くん、ずっと引っかかってたのね。

 

 

 彼を降ろすのを手伝っている最中に、逃げたななみちゃんと主人公パーティを引き連れたヤマト局長たちが到着した。

 ドゥベを倒したと聞いて俺を賞賛するが、あれくらいなら出来て当然である。それよりも1体目を倒した主人公らの手際を認めるべきだと、口添えする。

 逃げた彼女たちから聞いてなかったようで、初耳だったのか局長の興味が主人公らに移る。まあ、俺は既にジプスに所属しているし、いつでも話せますからね。どうぞジプスへの勧誘へ熱心になってくださいな。

 

 

 

>1日目(日)20:30

 ジプスに戻り、与えられた自室にてCOMPやケータイの充電、それからいつの間にか来ていた悪魔のスキルを奪う機能「スキルクラック」(TRPG仕様のデメリットが酷いので使わない)や、悪魔オークション「デビオク」などのアップデートを済ませていると、ななみちゃんが突撃してきた。先輩先輩と連呼しながら抱きつく彼女をあやすように撫でていると、大地くんも部屋の中にいたことに気づく。うげ、見られてた!?

 恥ずかしい気持ちを抑えつつ用を尋ねると、先ほどの礼を言われ、それからななみちゃんとの関係を聞かれた。

 俺が答えるまでもなく、ななみちゃんが「彼女です!」と即答し、目に見えて眼の色が変わる大地くん。俺の口からどうとは答えてないのだが、分かりましたありがとうございますと勝手に出て行ったので本当のところを答える暇も無かった。

 

 

 

>1日目(日)21:00

 今度は局長が来た。つい「勧誘は終わりましたか?」と軽いジョークのつもりで言うも「何のことだ」と躱される。無表情で言ったのを見て、そういえば局長が主人公の見る目が変わるのは2日目あたりからだったと思い出す。

 局長の真面目な雰囲気に押され、俺の横でごろごろしていたななみちゃんが姿勢を正すのをキリに、ヤマト局長から話が始まった。俺がどこで力を身につけたか、という件だった。……原作でも主人公に似たような質問をしていたな。

 俺は転生者だ、と真面目に言っても理解してくれるだろうけど、局長の性格からして与えられた実力でないと知ると喜ばないだろうなと思い、事情は伏せて「妖精の輪から魔界に落ち、死に物狂いで現世へ帰ろうとしてるうちに身に付いた」を話す。転生する前の前回は魔界にいて、ヴィローシャナに(輪廻に)帰してもらったわけだからある意味間違ってない。

 魔界への門が開いていたとは、信じがたいなと呟く局長。しかし否定しないあたり、納得はしたようだ。その後、悪魔に関する知識を問われ、同じく魔界でCOMPを手に入れサマナーと覚醒したうちに悪魔合体を通じて自己流で知識を積んだ話になって、流れで気になっていた局長のサマナーとしてのレベルについて尋ねる。確か原作だとケルベロスを使役していたけど、TRPG版だと43レベルのサマナーとなると超人覚醒してて強すぎるレベルのはずだが……。

 答えは51レベルだと。ひええ、普通に俺よりも強い。「凄いですね」と讃えると、所詮龍脈パワーによるものだとかなんとか……魔術的用語が多く要点しか掴めなかったが、どうやら正規に悪魔を倒して身に付けた実力でなく峰津院家の秘術により龍脈パワーを注入して得たレベルらしい。りゅうみゃくのちからってすげー。

 

 消灯時間が近いということで、ヤマト局長は話を切り上げ部屋を去った。

 二人きりになったことで、ななみちゃんがまたデレてくる。

 デレデレされるのは男として嬉しいんだけど、相変わらず複雑な心情。

 今後の原作展開をななみちゃんに語りつつ……それで思い出したが、ななみちゃんに彼女自らの死に顔動画を見せて、何故原作のストーリーに居合わせたのか事情を尋ねた。

 地震で火事災害が発生し、記者会見どころじゃなくなった彼女はフリーとなり、議事堂を目指そうとしたのだが道中浅草門で大地くんが封印の解けたユキジョロウ(ハクジョウシの代わり?)に襲われる悪魔騒ぎに出くわす。ジプス局員のマコトさんや主人公らがかけつけるけど、魔晶剣片手に乱入。

 俺に原作初日の流れを聞いていたこともあり、特徴的な白パーカーから彼が原作主人公だと彼女も即座に把握。マコトさんらと共に17時30分頃にジプスに戻るが、俺がまだ任務に行ったきりということから遅れてると判断し、途中まで主人公らを見送り、ドゥベ戦だけでも手伝おうと考えたのだとか。考えの甘い……。

 あとは秋江譲、「ジョー」と合流したくらいで、ドゥベとの遭遇までは原作通りの流れだったと。戦闘以外は変装用メガネでパッと見、分からないようにしていたこともありアイドルバレで騒がれることは殆ど無かったのだそうな。それは良かった。

 良かったけどやっぱ良くない。昔懐かしきグリグリ攻撃の刑に処し、今日は就寝。

 おら、一室もらったんだから自分の部屋で寝ろやい。

 

 

 

 

======

>1日目(日) ティコによる総括

「やっほー、主人公っち!

 あっちに行ったりこっちに来たり大変だったね~★

 今日あったこと簡単にまとめるけど、どうする?

 

 

 はいほ~、んじゃ……!

 えっとまず、ななみんと朝チュンしたら、テレビでごめんなさいしに行く彼女を見送って~★

 そそ、その後に悪魔追加パッチ手に入れたんだってね~。先読みして手に入れるなんて流石って感じ?

 それから~、ジプスに出勤して、地震が起きるまで馬鹿話とか、あと封印された悪魔のこと調べてたんだよね★

 主人公っちが行っちゃうG地点って、衛国寺とかいうお寺だったけどさ~、もし封印が解けても正直主人公っちの敵じゃなかったね~★

 むしろ解けてくれれば悪魔狩りの大義名分があってバンザイ、ってヤツ?

 あ、その後、お寺のこと調べてから、地震が起きるまでななみんの記者会見ってヤツ?を見てたけどさ、ななみん反省してなかったね★

 主人公っちのことにお熱で身が入ってなかったのかな~?

 でもそのすぐあとに地震があったから、うやむやになったけどさ★

 でも、ホントに大丈夫かな~。

 それから~、地震が起きて、早速お寺に向かったけど、やっぱし封印は解けてなかったね~、残念★

 ま、そこで召喚アプリが届いてたから、人気がない場所で丁度良かったけどね~★

 かわいいかわいいアリスきゅんが出てきたのは主人公っちには意外だった感じ?

 なにも起こらないといいね~★

 あ、起きたといえば、ななみんの死に顔動画、見たね~★

 主人公っちたら、慌ててななみんを探して三千里ってやつ?

 途中で悪魔に襲われてチャリが壊れて大変だったけど、なんとか間に合ったね~★

『ドゥベ』ってやつを倒したけど、まさか2体もいるなんて驚き★

 でも主人公っちなら楽勝だったでしょ~?

 あんなことが続くなら、いっそななみんをずっと守ってた方がいいのかもね~★

 そうそう、モジャっちとイオちゃん、シジマ、ジョーたちとも会ったでしょ~。

 ななみんと一緒に『ドゥベ』倒してたけど、大丈夫かな~?

 主人公っちは信頼してるけど、いわゆる信頼と信用は別ってヤツ?

 彼らがホントに原作通り進んでくれるかは、ななみんの死に顔動画見たし信用は出来ないんじゃないのかな?

 あとは~、みんなでジプスで泊まることになったけど、ななみんが夜這いしてきたね~★

 でも一緒に部屋にいるとこを、ヤマトっちに襲われたからノーカン?

 主人公っちの色々をお話したけど、ホントに信じてるのかな?

 ヤマトっちも色々考えてるみたいだし、今度こそ襲われても知らないよ~★

 それから~、あとはななみんと一緒のベッドでお話するだけして、追い出すなんて主人公っちはキチクだね~★

 でも、ななみんの目は諦めない女の目だったし、また深夜にでも夜這いしてくるんじゃないかな~?

 

 まあ、今日はこんなところかな?

 それではっ、ハブ・ア・ナイスた~★」

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ヤマトが同い年、主人公らが一つ上であることを割と忘れている主人公


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激動の月曜日1

>2日目(月)06:00

 おはようじょ。

 さらっと追い出したはずなのに部屋にいるななみちゃんをキャーエッチ、と叩き起こす。そんでもってケータイを確認。ニカイアから通知が来て、「邪教の館」が解禁されたそうだ。そこへ例の追加パッチを当てることで変身悪魔の合体、魔晶武器の合体も解禁された。使い方は、悪魔を宿している護符や武器に無線を近づけながら合体を操作すればいいらしいが……直接接続もなしに合体出来るのは不思議なことだ。

 昨日は時間がなかったこともあり、デビオクの使い勝手も確認する。やはりTRPGに沿った形式の、1日3回、指定したレベル帯からランダムに悪魔カードが手に入るものだった。原作が悪魔は固定、価格が変動するのに対してこちらは、価格は固定、悪魔が変動するものだ。どちらが良いかと言えば……まだ原作がマシかな。手に入る悪魔のレベルに上限があるし、使いにくい。とはいえ悪魔全書が手に入るまで悪魔抜きというのも辛いため、期待せずに使用権3回分ガチャる。

 妖魔イソラLv11、妖獣ガルムLv10、夜魔インプLv10。……まあこんなものだろう。

 

 

>2日目(月)06:30

 少し物足りない量の朝食を済ませて、本日も活動開始。……の前に各局員にお知らせ、「ニカイアの召喚アプリの使用を全面に許可する」? え、勝手に使っちゃダメだったの? やっべ。

 知らぬうちに危ない一線を超えてたことに内心ビクビクしつつ、本日は都内道路の瓦礫撤去に力を入れる方針を知らされる。戦闘員は、昨日から増えだした悪魔召喚アプリ悪用者を捜索し、使用禁止するよう勧告、反抗の意思が見られればデバイスを破壊することが当分の務めだそうな。

 朝礼の後、ふと思いついてななみちゃんにも召喚アプリをインストールするようおすすめする。前衛と召喚の食い合わせは非常に悪いが、無いよりもある方が便利なもので。【ハーモナイザ】なんてものもあることだしな!

 不思議回線により、ニカイアの直URLを指定すれば災害による回線の切断なんて関係なしに通じるのでサクサクッと登録。インストール……は局内で戦闘すると迷惑この上ないのでちょいと外で済ませてくる。ななみちゃんは「私にも妖精の相棒が得られるんですね!」とか感想を述べていた。うるせえ関西弁話すケルベロスでも連れてろ。

 

 ところでハーモナイザというと、原作デビルサバイバーで異能者でもないただの人間が悪魔と戦える身体能力を付与するものだが、TRPG版にはそんな機能は無く、通常の仲魔に種族専用スキル(原作に出てくる、魔王の【覇王の盟約】や妖精の【妖精のおまじない】等のマップ上で使用可能なスキル)を使えるようにする効果に変わっている。実際のデータは、デビルサバイバー2が発売される前に出たデータなので、鬼女や幽鬼、魔人、英雄などの種族スキルは原作と全然異なるが……それと通常のハーモナイザアプリは仲魔専用のもので、魔晶武器、変身悪魔、ペルソナなどに種族スキルを使えるようにするには【特殊ハーモナイザ】という別のアプリが必要になる。

 

 

 

>2日目(月)07:00

 初期悪魔は地霊ファハンだった。「可愛くない」など抜かすが大半の悪魔はそんなもんだってば。いやマジで。

 ついでにレアドロップでワイバーンの盾入手。回避よりも高い成功率で、代わりに防御点を大きく伸ばす、武器扱いの特殊な防具だ……装備するには体が足りないけど。ななみちゃんにぶん投げる。

 

 ジプスに入るのと入れ違いにモジャ公たちが外に出ていった。この時間だと……召喚アプリ悪用者のケータイを破壊するイベント戦闘に向かうところかな?

 そう呟くと案の定ななみちゃんは助勢を訴えた。俺のレベルで現在のレベル帯の悪魔や異能者の経験点は雀の涙だし、下手に分け前を貰うよりななみちゃんだけで行ってくるように、とりあえずピクシーの悪魔カード(ディア役)を押し付けて一人で行かせる。

 どうせ同じ任務なのだからとななみちゃんは俺も来るよう渋るけど、早く行かないと戦闘が終わるぞと催促すると渋々主人公たちの後を追いかけた。

 

 俺は昨日訪れたSL広場のあたりへ向かう。局長たちが出発する頃に悪魔が出現すると分かってるのだから、先に近辺を探し、ソロで狩り尽くせば経験値の足しになる。

 

 

 

>2日目(月)07:30

 少しずつ瓦礫や放置車両が撤去されつつある道路を通って、昨日よりスムーズに到着。

 近辺のレベル7前後の悪魔を狩り、めぼしい悪魔はカードハントする。特に攻撃1回を自動でクリティカルに変更する【凶化】種族スキルを持つ妖精(闘鬼)ゴブリンは使い捨てて良し、精霊や【格闘武器】スキル持ちの素材に使って良しの集めて損のない悪魔だ。

 

 ところでデビサバ特有の現象として、聖獣や女神のLight悪魔も雑魚悪魔扱いとして野良でも出て来るため、後半になるほど【カードハント】前提で素材に困らないかもしれない。

 

 

 

>2日目(月)08:00

 ななみちゃんから電話がかかる。昨日主人公らと共にドゥベを倒したことで局長に認められ、部外者だった彼女もジプスの回線を利用できるようになったとか。

 んでもって、彼女を含む主人公たち数名にヤマト局長から直々に話があるので、9時にはジプスに戻ってくるよう電話越しに伝えられたそうな。原作的には大阪への同行指示を与え、日本全体が滅びつつある現実を認識させる話を行うはずだけど、しかし何故か、その呼び出しに俺も指定されたらしい。既にジプスに組み込まれて目的を意識している俺をわざわざ指定するのは対セプテントリオンへの戦力を期待しての抜擢だろうか?……いや、この段階でどこに何が出るかなんて全く分からないはず。何か別の思惑があるのだろう。なんにせよ原作に置いてかれ、4日目まで何も現れない東京で稼ぎ損ねたり、ななみちゃんだけがセプテントリオンと対面して危うい事態に陥る心配が無くなったので少し安心。

 それと戦闘イベントの方はしっかり無双してきたらしい。この時期のレベル二桁もない相手ならそうなるな。

 

 ついでに良さげなスキル、【なぎ払い】も手に入れ……えっ、命運減るのに【スキルハック】アプリ使ったの?全くダメではないが、上限を使用する魔晶武器使いとはやや相性が……うーん、まあいいか。

 

 

 

>2日目(月)08:30

 いかつい兄ちゃんが悪魔引き連れながらケータイよこせよと迫ってきた。うむ、確信犯だな。

 とりあえず【アナライズ】してから相手を選ぼうか。泣くまで殴る。殴った。

 

 

 

>2日目(月)09:00

 ヤマト局長を含み、会議室に着いたのは俺が一番最後だった。待たせたことを軽く謝罪し、話に入る。

 局長は原作通りに、まず東京の現状を再認識させ、助かりたいならば行動すべきという方針を示した。その流れで、日本全国が等しく被害に遭っていることを知らしめるため、選択は任意だが大阪へ同行するよう呼びかけた。俺も含めて。

 この先どうするか主人公たちが考える時間が必要だろうと、集合時刻と場所を伝えて話が終わるその前に、既に東京支局へ所属している俺にも同行を呼びかけたのは何故かと理由を尋ねる。局長は当然と言わんばかりに、「たった十歩の距離をわざわざ車で走る必要はない」と適材適所を語る。要するに高レベルの俺をちんな仕事で腐らせる必要もないということか……こちらとしても経験値稼ぎになるのなら、とは口にしないが納得して了承する。

 

 集合時刻の10時が近づくまで合体で時間を潰そうとしたらマコトさんから手伝いを頼まれる。ななみちゃんもここぞと名乗りを上げ、共にお手伝いを申し出る……別にいいけど。

 頼みごとはトランク一杯に詰まった機械やら電子部品の輸送。異能者だから体が丈夫ってわけでもないんだぞ!SL広場近くの出入り口から昇降し、地下にあるジプス専用電車の車両へ積み上げる……原作では、消防署にあったようなすべり棒で出入りしてたから昇りはどうするのか疑問に思ってたけど、別個で隠し階段があったんですね。

 

 異能者とはいえ体力面しか見どころのない俺と違って、ななみちゃんは女手ながら俺より軽々と荷物を抱え、運んでいた。そういえば力特化だから当然ですね。

 

 

 

>2日目(月)10:00

 頼みをこなしているうちに、あっという間に約束の時間が来た。地上でヤマト局長と、心が落ち着いた主人公らを出迎え、SL広場に。

 朝にあれだけ散らしたにも関わらず、まだこの広場に巣食っていた悪魔たちを、局長のケルベロスが【メギド】で一瞬にして蹴散らす。ぶ、物理型悪魔に【メギド】……いやいいんだけど、どっから継承させたんだアレ?

(TRPG版には何故か、万能相性の攻撃魔法【メギド】を持つ合体作成可能な悪魔が皆無。一方で【メギドラ】を持つ悪魔はいる)

 

 その後は原作同様、マコトさんがケータイの無線操作で蒸気機関車を移動させ、下に隠してあったジプス専用地下駅への直通となるすべり棒を出現。マコトさんと局長が先に降りて行く。主人公らが予想だにしない移動手段にためらっている間に俺も迷わずサッと後を追い、更に俺を追いかけてななみちゃんも下に降りてくる。

 少し経って次々と主人公らも降りてきたところで、東京支局に残って指示を出す立場にあるマコトさんだけを残し、7人が大阪行きの電車へ乗り込んだ。

 

 

 

>2日目(月)10:30

 大阪へ向かって移動中なう。

 進路上に一切邪魔無し直通線とはいえども、移動にやや時間がかかる。その間に軽く自己紹介をしたいと、主人公らから誘われる。そういえば何度か顔を合わせていたし、俺は一方的に名前は知ってたけど彼らに名乗っていなかったか。局長が遠目に見守る中、モジャ公、大地少年、イオっぱい、それからジョーさんの四人と名を交換する。

 

 モジャ公は言わずもがな主人公、本名は……どうでもいいか。使役仲魔は魔獣イヌガミLv10。白虎や朱雀といったチート聖獣でないあたりはアニメ版ではない模様。なお、おふざけ選択肢を選ぶタイプの主人公なのか、ななみちゃんにどう告白して付き合ったのかと尋ねられて困った。付き合ってることになったのは否定しないけど、関係を持ったのはななみちゃんからだし……そう言うと驚かれた。俺TUEEEで恩を着せたものだと信じていたとか、お前ら俺のことを何だと思ってたんだ。

 大地少年は、主人公の友人にして男友達枠。ただし原作発売当初から頼りない、ルート次第で普通に敵になるなどと前作でスーパーハッカーだったアツロウ少年と比べられ、残念と評されることが多い可哀想な子。使役仲魔は地霊ゴブリンLv6と心許無いが、アニメ版ではずっと3レベル程度の初期悪魔だったのでこれでもマシな方。青少年らしく、女性をしきりに気にするがついぞ誰かと付き合うことはなく、ほぼ主人公に総取りされる悲しき運命の男だ。

 イオっぱい。主人公らとは同じ学校だが今まで交流はなく、地震をきっかけに彼らと知り合う。使役悪魔は精霊エアロスLv10とそこそこ優秀。人見知りではないが奥手で、学校で成績の良い優等生であっても優秀ではない、機転に欠けるタイプ。原作が別名おっぱいサバイバーと言われるだけあって胸がでかい。また主人公に気がある女性その1。実際は地震前から主人公を気にしていたという話もあるが定かではない。

 ジョーさん。この中では唯一の大人で、名古屋人。そして彼女持ち。こんな事態でも暢気なのは鈍感だが、良く言えば大人の貫禄とも言える。仲魔はがるがると名付けられた妖獣ガルムLv10。ジョーさんは変なあだ名をつけるのが癖だが、女性をいじくることはあまり無いように思う。俺には変なあだ名をつけられることはなかったが……さっきイオっぱいの胸に目線が移ってたことを指摘されて、ななみちゃんに足を踏まれた。痛い。

 

 彼らのことを聞いて、俺も自己紹介を返す。少し前にジプスに所属した新人異能者で、サマナーなこと。アプリを手に入れる前から悪魔召喚器と悪魔変身能力を持っており、ななみちゃんの熱愛報道をきっかけにジプスから勧誘されたこと等、あとは幾つかヤマト局長に話した嘘経歴とほぼ同じ内容を伝える。その話の中で地震前から悪魔がいて、悪魔召喚が可能だったと知って主人公らが驚くが、驚くのはまだ早いと言った。

 今まで世界に秘匿されていた悪魔召喚アプリ、この都市崩壊をきっかけにニカイアを運営する何者かがそれを公開する判断を下した。それが何を予期しての行動かに気づけば、これから何が起こるのかも予想することが出来るだろう。

 

 と若干意味深気に主人公らに言ったらヤマト局長からストップをかけられた。話しすぎとのこと。確かにこの先の未来も知らない彼らに情報を詰め込んでも混乱が加速するだけだったか……反省反省。話しすぎた罰として局長から会話に付き合わされた。あなたと話せる話題なんてサマナー談義くらいしか無いんですが……。

 とりあえず得意の合体テクについて話したら意外と好評だった。膨大な悪魔素材を用いる、悪魔全書を前提とした合体は局長に中々理解されなかったけれど、使える・使いやすい悪魔、効率的な悪魔合体ルートについての話題はウケが良く、実力人格その他はともかく、サマナーの知識と経験は私を超えるだろうとの局長お墨付きの悪魔召喚師となる。やったぜ。

 

 

 




流石の51レベルサマナー局長もリカームドラⅢ持ちナンディを大量に制作し、使い捨てる贅沢な戦闘スタイルには引いた模様


やたら長くなったので一旦ここまで。


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激動の月曜日2

 

>2日目(月)11:00

 大阪なう。

 俺からサマナー話を聞き出してほくほく顔のヤマト局長は大阪のジプス局員たちに迎えられ、大阪ジプス本部での会議に向かった。一方で俺たちは影の薄いツンデレボクサー和久井くんを案内役に押し付けられる。(案内するとは言ってない)

 

 和久井くんは原作通りにツンっぷりを発揮し、集合場所の名前と時間だけ伝えて案内役を放棄。その後渾身の階段落ちを披露する和久井くんの姿をメールで見届ける。いや、死に顔動画なんですけどね。

 原作キャラの死に顔動画解決は基本的に主人公に任せれば大丈夫だろうけど、念のためななみちゃんを監視役に押し付けて大阪旅行を満喫する。

 案内役なんかいなくたっても、【マッパー】は便利だよね、HAHAHA!

 

 

 

>2日目(月)11:30

 悪魔狩りしてもしゃーないので【マッパー】で目的地捜索。二週目以降でどこかの駅ホームに魔人時の翁が出るんだけど……どこだったかな。金箔じみたテカテカツヤツヤした構内と、ちょっと古くさいレンガまたは赤銅みたいな色をした電車が印象に残ってるんだが……。

 

 

 

>2日目(月)13:00

 発見。梅田駅だわ、でも全然ツヤツヤテカテカしてねー。ついでに狙ったわけじゃないが和久井くんの階段落ちポイントを発見。梅田ビックマン前……ここか。下手に教えるとヒナコ嬢との遭遇を妨げる可能性はあるが、時間帯的に既に合流した後だろうと思い、メールで梅田駅が死に顔動画の場所だったと主人公たちに知らせた。

 2周目準拠で奴が出現するかは知らないが、メラク討伐後にチェックしておいて損はないだろう。問題は寄る時間があるかどうかって話だけど、【トラポート】持ち悪魔作れるか?

 

 

 

>2日目(月)13:30

 俺氏、デビサバ仕様の邪教の館アプリでは2身合体しか出来ないことに気づく。このままではロクに上位種族が作れないため致命的……。3身合体が可能なアプリはTRPGには存在しないので、どこかで合体施設を借りねばならないだろう。ジプス関係者か、もしくはユーバーさんのコネで使えるかな……?

 とりあえず今は片道分の【トラポート】持ちさえ作れればいいと、悪魔狩り開始。天津神アメノトリフネ、または魔獣カーシーが作れればいいため前者は天使作成のための堕天使と妖精、後者は手持ちの夜魔と組み合わせるための地霊が目当て。

 

 地霊だ!なあ地霊だろうお前、悪魔カード置いてけ!

 

 

 

>2日目(月)14:00

 地霊スダマ、聖獣ユニコーンのめぼしい悪魔を発見し、即撃破して悪魔カードをハント。手持ちの夜魔インプとスダマを合体して、魔獣カーシーを作成する。

 折角見つけたのだから、万が一動画に間に合わなかった場合に備えて死に顔動画にあった階段前で待機していると、やがて主人公御一行様が原作と同じ時間通りにやってきた。新顔のヒナコ嬢も加わっており、杞憂だったか。

 彼らもこの階段が死に顔動画の場所であることを確かめ、和久井くんがまだ来ていないことを知るとそれまで大阪の様子を見ようという話になった。広い場所を探して淀川の畔へやってきた主人公たちは、全体的に崩壊した大阪の全景を見て言葉を無くす。その中で街の一部だけが壊れずに残っていることを不思議に思った彼らが疑問を口に出すが、ななみちゃんが「悪魔がやったものじゃないんですか?」と口にしてしまう。あ、それ今言っちゃダメな奴!

 

 彼らがななみちゃんにそう思った理由を尋ね、その質問がそのまま俺に流れる。それに答えると、電車内で局長に止められた意味がなくなるのだが……悪魔が地震を、あるいはそれに似た大災害を起こすことは可能である、しかし全ての悪魔が出来るわけでなく、特に魔王や神と呼ばれるほど強力な悪魔でなければ無理だと答えた。ジプス局長である峰津院大和はそういった強力な悪魔、あるいは滅ぼしきれない悪魔を封印しており、別の悪魔に対する対抗策として残しているため、悪魔が関わっているか確かめるならばヤマト局長に聞くのが手っ取り早いだろう……と問題を局長に丸投げしつつ、話の方向を逸らした。今はまだポラリスの話をするには早い。

 

 

 

>2日目(月)14:30

 俺から聞いた話で考えこむ主人公たちだったが、死に顔動画のことを思い出して急ぎ梅田駅へ。階段落ちをする前に和久井くんの元へ到着すると、さっきは見かけなかったケータイが沢山落ちていた。誰だよ落としたの。

 暴走アプリから次々と出現する悪魔を分担して潰していく主人公ら。一方で俺はここぞとばかりに拾ったメギド石をポイーし、レベルの暴力で一網打尽にするが流石に数が多すぎる。原作でもこんなに多かったっけ……?

 流石にメギド2発では片付けきれず、氷結に耐性がありそうなめぼしい悪魔がいないことを確認した上で【悪魔変身】。セドナの【アイスバウンド】でまとめて吹き飛ばし。

 4つあったケータイのうち、階段左方に落ちていた2個を潰したところで残りを主人公らとななみちゃんが抑えたらしく、悪魔の出現が止まった。

 残る悪魔を掃討し、和久井くんの無事を確認して死に顔動画のフラグは回避した。命を助けられたのに感謝の言葉も述べずツンツンする和久井くんへヒナコ嬢が突っかかり、ほんの少しだけデレを見せる。それを隠すように大阪ジプス本部へと案内する和久井くん。若いなぁ。

 

 ……しかし、原作での彼の見せ場はこれだけだったという。あまりに人付き合いが悪すぎて、他のキャラにも関わらず、目立った描写がないという肉彦先輩と似たキャラクターながらも更に酷い扱いだった。

 

 

 

>2日目(月)15:00

 会議が終わると言われた時間帯に、きっちりと新世界にあるジプス本部へ到着した。

 和久井くんを通じてヒナコ嬢がジプス加入希望をし、説明があると奥に通される。和久井くんは案内を終えたらすぐに立ち去り、残った東京もの6人にヤマト局長は既に準備出来ていると、奥のモニタールームに案内し、日本各地の都市がどうなったのかの映像を見せられる。

 東京、大阪、名古屋、札幌、福岡、そして別府……別府……?

 ジプスで『連絡が取れた』(=タワーの結界で初撃を凌いだ地)という都市の現状を見せられ、日本全国どこへ行っても災害からは逃げられないことを、通常の地震災害とは違うことを、主人公たちに認識させる。そしてヤマト局長は黙っていてもなんとかなる情勢ではないことを伝え、助かりたいのならば自ら動かなければならないのだと告げた。

 改めて直面した、日常に浸っていた一般人にはあまりに非常すぎる事態に混乱して、考えたいと次々と出て行く主人公の仲間たち。残ったのはヤマト局長に俺、モジャ公、それからななみちゃんだけだ。

 混乱せずこの場に残った3人に局長はやや感心したような物言いで、モジャ公とななみちゃんにも少し考える時間を与えると言葉を残し、俺だけ本部の奥について来るよう伝えてこの場を去った。

 局長についていく前に二人の様子を伺ったが、モジャ公は局長が思った通り、主人公なだけあってブレることなく芯の強い人間であることがその瞳から伺えた。むしろ「あの光景を知っていたのか?」と、こちらが動揺しなかった理由を見抜かれた節がある。曖昧な理屈で答えて質問を流しつつ、今度はななみちゃんの様子を伺うけれど、こっちは単純に俺から事前にある程度聞いていたため心構えが出来ていたこと、やや鈍感であることに加え、俺のことを信頼しきっていたことから全く動揺しなかったようだ。……局長が彼女に過度な評価をしてないか心配になる。

 

 モジャ公には仲間たちの心のケアを薦めておき(特にイオっぱいを慰めて女心を奪うチャンスだよ!と茶化したらななみちゃんにポカポカ叩かれた)、真面目な話をするだろうからとななみちゃんも置いて……置き……置いて行きたかったが、今日東京から大阪まで全く全然同行できてないことからどうしても付いてくるとこちらの言うことに聞く耳持たなかったため、べったりくっつく彼女を引きずりながら局長の元へ向かった。

 局長はななみちゃんまで来たことに驚いたが、俺もそれ以上に驚いたよ。

 ヤマト局長、憂う者と面識あったの? ……あ、ひょっとしてアニメ版の設定が混じったか!

 

 

 

>2日目(月)15:30

 憂う者まで居合わせて、一体何の話をするつもりだと様子見をするつもりが、「また会ったね」と向こうから面識あることを言ってしまったおかげで、先にこちらの事情を話さねばならなくなった。

 しかし以前憂う者が訪ねてきた時の理由と会話内容をそのまま話せば、幾つかヤマトに話した俺の経歴と齟齬が出る可能性が高い。内心嘘を看破されないかと動揺しつつも、憂う者に話した通り、この『現実世界』へ移動するのに俺がある神の力添えを受けており、それが憂う者の言う強大な力を持つ神と思しき悪魔で、(ポラリスと似通った)全能の存在だったと、それぞれに話した内容と齟齬のないよう、なるべく事実に近く、決定的な嘘となる言葉を使わないよう気を払って話した。

 

 途中少し言葉が詰まってしまったところで局長が眉を顰め、真実を隠していることを気取られたかもしれなかったが、特に追求されることもなかったため話を最後まで進めた。

 事情を話し終えた次は、局長が俺を呼び出した要件についてだったが……憂う者と面識があること、今の会話内容から確信を得たと局長は前置きして、俺に問う。

 

「どこで知ったかの話は置いておく。君は今回の災害の首謀者、『ポラリス』を知っているな?」

 

 

 

>2日目(月)16:00

 ここまでストレートに聞かれては、嘘のつきようがない。誤魔化しが通じる雰囲気でもなく……どこで俺『ポラリス』を知っていると思ったのだろうか。やはり、電車内で主人公に話しすぎたのがまずかったか。

 とりあえず、先に局長の質問に答えた。答えはYESである。ポラリスがおおよそ何の目的を持って、何をしようとしているのかも知っている、と。付け加えると、ポラリスがどんな力を持っているのかも知っている、と。そう答えると、局長はつくづく予想した通りの内容を更に問いかけてくる。

 

「ならばポラリスの力を借りれば世界が変えられることも分かっているだろう。

 私は、ポラリスが仕向ける全てのセプテントリオンを倒し、奴の座にて人類の力を示し、その変革の力を以って実力主義の世界を願うつもりだ。

 君は私の世界に賛同する人間か?」

 

 本来なら、4日は後に聞かれるべき質問だ。それが今この場で問われたことにより、敵対する場合のデメリットが非常に大きい。局長やジプスを失った場合、これから数日間のセプテントリオン迎撃は非常に困難になるからだ。

 だからといって賛同するのも、ななみちゃんと交わした「ヒーローたれ」という約束に反する。峰津院大和の理想の世界は、万民を救うヒーローの志に反するものだ。だからといって反対のロナウドの平等主義が最高だとは、とても言えないのだが……。

 

 少し迷ったが、日和るよりはきっちり答える方がむしろ局長の好みに合うだろうと思い、賛同しないが“まだ”敵対はしない、しようにも出来ないと答えた。まだまだ数日、悪魔は増加し、ポラリスの手先であるセプテントリオン(すぐそこにも1体いるが)は続々と繰り出されるだろう。それを前に疲弊しては、乗り越えられるものも乗り越えられないだろうと話す。少なくとも俺は、今いる都市の外にセプテントリオンが現れた場合にジプスの移動手段抜きで、駆けつける手段を持たないし。

 確かに合理的だと呟く局長。俺のとりあえずの解答に納得してもらえ、6体目のセプテントリオンを倒した時に改めて再び答えを尋ねる、ということになった。これで話の一つは終わり。もう一つはそこの闖入者について。

 憂う者くん、君なんでここにいるの? 

 

 ……特に理由無し?前にまたねと言ったからまた会いに来ただ、って?

 お、お前のそのテキトーな行動のせいでどれだけ肝を冷やしたかと思って……

 

 

 詫びに邪教の館アプリに三身合体機能の追加をしてもらうことで話をつけた。

 

 

 

>2日目(月)16:30

 長話を終えて、休憩所で一服。

 局長たちとの会話では一口も言葉を挟まなかったが、ここへ来てななみちゃんが俺に何故実力主義に賛同しなかったのかと問うてきた。実力主義の世界はある意味、俺みたいな人物が一番都合のいい世界だったんじゃないかって?

 

 いや何故ってそりゃ、ななみちゃんとの約束に反するからに決まってるじゃないか。誰が結ばせた約束だと思ってるんだ。

 そう言うと、ななみちゃんは一瞬きょとんとして先輩大好きとの言葉と共にダイブしてきた。もう彼女云々は諦めたけど、公衆の面前ではやっぱり恥ずかしいからそういうのやめなさいってば。

 

 

 




今まで通り一日毎区切りでは書けないため、時間単位で刻み刻み書いてるものの、そのせいか全然物語が進まない……


なお主人公は主要キャラ数人をくん・ちゃん付け等で呼んでいますが、この「世界」内で登場する主要キャラは約1名の名古屋人を除き、殆ど同年代か転生主人公より年上です


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激動の月曜日3

「日曜日」の最後になんか書き足しました。



>2日目(月)17:00

 午後5時を回り、そろそろかと思ってななみちゃんを引き剥がして立とうとした矢先に鳴り響く警報音。

 急ぎモニタールームへ駆けつけると、映し出された中継画面にはビルをも超える巨大な異形の姿が。火曜日の使者、巨門星メラクだ……ただしサイズはアニメ版。

 北と南側、同時に2画面が中継され、通天閣へと向かう2体のメラクがいることを確認する。これは原作通りだが、さてどう采配する?

 

 局長の指示は、原作通り北のメラクを局長が一人で担当。残る主人公たちとななみちゃんが南のメラクの迎撃に向かい、俺はメラクが通天閣へ与えるダメージを防ぐ指示を受けた。砲撃のような魔術的攻撃には結界があるため傷を受けづらいのだが、ビットの爆発による物理的破壊にはそうでもないのだそうな。

 メラクは火力、特に前全から発射する氷結砲が強力なものの、通天閣を狙うビットの射出以外にギミックを持つ敵ではない。そのビットを俺が受け持つのだから、彼らもセプテントリオン1体に集中出来るため苦労はしないだろう。

 念のためにその場で仲魔だった妖精ピクシーとカードハントしていた妖精ゴブリンを合体し、作成した精霊アクアンズをななみちゃんに預け、MP代わりのMAGを渡しておく。氷結反射のついた回復役がいるだけで、かなり安定するはずだ。

 

 

 通天閣の麓に残った俺からでも遠目に確認出来るほど、メラクはとんでもない大きさだった。

 タワー近辺だったことから地震でも崩れずに残っていた建物を無慈悲に崩しつつ進むメラクに、近場の建造物を登って切り込むななみちゃんや、主人公らが使役しているのだろう弱点の衝撃魔法を放つ飛行型悪魔や、ビルの壁面を跳ねて噛み付く獣型悪魔が必死に抵抗する。火炎に耐性を持つメラクだが、【火炎貫通】を持つななみちゃんは関係無いとばかりに安定した大ダメージを与えている。高レベル悪魔かと思わせる巨体だが、どうやらレベルは原作そのままであり、この時点では強敵ではあるものの図体はただの見掛け倒しのようだ。

 攻撃に阻まれ中々通天閣に近づけないでいるメラクだったが、ようやくビットを射出し始めた。本体から独立した浮遊生命体として通天閣に向かい、タワーの根本で大爆発を起こそうとするビットだが、強靭な本体に比べるとその耐性はあまりにも軟弱。ただし、常に防御しているため普通は弱点を突けても倒すのは一苦労。ただしそれは圧倒的なレベル差から成る火力を持つ俺には通用しない理屈で、近寄ってきたビットをまとめて【アイスバウンド】で屠る。

 

 そうこうしているうちに、ついにメラクが切り札の強烈なMAP兵器、【周極の巨砲】を撃ち始めた。凄まじい火力を誇る氷結のビーム砲で周辺の建物ごと敵を薙ぎ払う、耐性も無しに当たれば一撃でダウンしかねない攻撃だが、あまりに大ぶりで溜め動作も見え見えであることから、よほど足場に恵まれなければ回避は容易だろう。……その不運を引いてビームに巻き込まれた大地少年らしき姿を遠目に確認した。蘇生とかしなくて大丈夫かなアレ。

 

 ビームを放つ合間にも撃ち出されるビットを迎撃。第3波を倒し、第4波がこちらに近づこうとしたところで飛行型悪魔の攻撃がいいところに入り、ついにメラクの心臓部分を捉えたのかビット射出部をガクガクと異常に出し入れした後、霧散してMAGの気体と化し、本体は消滅した。第4波のビットも本体が倒されたのと同時に目に見えて失速し、やがて糸が切れたように地に落ちて溶けるように消滅していった。

 無事倒せたようで何よりだ。ふと気づけば、通天閣に寄り添うようにヤマト局長がこの場の様子を見ていた。北側のメラクは、俺がビットの第二波を凌ぐ頃に倒されていたのを確認している。セドナへの変身を解除した俺に、ドゥベを一人で倒した君ならこれくらいは出来て当然だろうなと言う。なんなら代わりにメラクを倒せと命じてくれても良かったのですがね。

 それにしたって俺には役不足だろうし、どちらでも過ぎた使い道にしかならないのなら、原作主人公らの力を見極めるのにアレ(メラク)を使う方が良いと判断した、と局長は語る。やはり原作同様、主人公に目をつけつつあるようだ……しかし同じ庶民出身の異能者である俺とななみちゃんについて、局長はどう思っているのだろうか。それが語られることはなかったけれども。

 

 メラクを倒した報酬代わりに、少し確認したいことがあるので、車など足を貸してほしいと局長に頼んでおく。

 

 

 

 

>2日目(月)17:30

 ところでビームに直撃した大地少年だが、命運パワーか彼の持つ【幸運】か、はたまた単なる不幸中の幸いかなんとか生きていた。ダメージで死にそうになってたものの、蘇生やら治癒やらを施して息を吹き返すことで動けるまでに回復した。

 夜には東京に戻るが、名古屋への物資運搬を誰かに手伝ってもらう話が聞こえてきた。日本全国の映像を見て、少しでも役に立ちたいと思った大地少年が自分はトラックを運転出来るからと喜んで請け負おうとする仕事だが、今夜明日には名古屋で暴動が起きるからなぁ……。ロナウドには地震前日に釘を刺しておいたけど、どれだけ効いたことやら。

 早めに悪魔を知ることで、峰津院家の裏を察して原作と考え方が変わり、原作と違う行動を起こしてもおかしくないはずだが……何か全く姿を見せないあたり、あまり変わってないんじゃないだろうか?と俺は思う。後でななみちゃんと要相談だな。

 

 時間があれば後でモジャ公らにも相談しておこう。魔人探しにかける時間を考えると、暇は無さそうだけど。

 先ほど局長に頼んで手に入れたアッシーで梅田駅に偵察に向かう。【マッパー】と【隠密行動】で探ったところ、強い悪魔の気配があった。主人公の強さ的に、二週目のイベントは起きないかもと思っていたが……これは、発生しているなと確信する。

 

 

 

>2日目(月)18:00

 一旦大阪本部へ戻って、原作主人公たちと楽しく会話していたななみちゃん……特に同じく明るい性格のヒナコ嬢と随分仲良くなったようで話が弾んでいたが、少し所用があると言ってパーティから引き抜く。

 この平和ながら時間の詰められた世界では今まで暇がなかったが、ようやくレベリングが出来るわけだ。目標は恐らく、TRPG仕様でレベル高めの魔人・時の翁。【ムドオン】などが得意だが、特にそれ以外の攻撃手段を持たない、いわゆる典型的な「BS(バッドステータス)系」の悪魔だ。BS無効以外は弱点も耐性もなくノーマルな耐性で、俺一人でも準備が無かろうが苦労する相手ではないだろう。ダメージ手段に【魔界のしらべ】か【テンタラフー】あたりを持っていたため、完封ではないが余裕余裕。

 往復させて悪いが二度目のアッシーを借りて梅田駅へ。帰りは【トラポート】で戻るので心配は要らないと告げる。

 

 

 

 

>2日目(月)18:30

 二日目というのに、二週目マップだけあって40レベル級の悪魔がわんさか。デビサバ2とはレベルが全然違うため膝女神はいなかったが、女神ベローナLv42、魔神トートLv44、邪神ナラギリLv42などの中ボスじみた上位悪魔を筆頭に多数の邪龍バジリスクLv22、妖精シルキーLv23が詰まっていた。

 原作と違ってリーチが無い代わりに、攻撃スキルの対象が全体と化す邪龍の種族スキル【邪念の波動】に巻き込まれたななみちゃんが早々に倒れる。しかしレベルアップにより蘇生、だが次戦でまたも全体攻撃に巻き込まれ倒れる……を暫く繰り返しながらレベリングを進める。俺という高レベルがいるおかげで、レベル差による経験点補正は入らないけど、それでも一戦一戦でレベルが上がるような高速レベルアップを果たしている。

 そして雑魚にしてレベルの高い強敵たちをあらかた倒したところでようやく現れた魔人時の翁戦……は省略。いやだって前座に出てきた氷結弱点を持つが物理型で火力の高いベローナと、魔法相性全般を反射するトート、ナラギリのトリオの方がずっと苦労したんだもの。下手に【アイスバウンド】を打てば反射で大ダメージを負うし、格闘攻撃でちまちま削ってる間に【暗夜剣】を打たれて酷い目に合うし。尤も、呪殺が効くことを思い出し、アリスを召喚したら楽勝だったが。

 

 レベル23を超えたことで、ついにななみちゃんが【火炎高揚】を手に入れた。未だに格闘スキルのない彼女だが、スキルハックで【なぎ払い】を取得してることもあり、なんとかなるだろう。ついでに使用可能なレベルに十分達したので、堕天使ベリスが込められた練気の魔晶槍・赤光太極政宗を使わせる。慣れない武器に戸惑うななみちゃんだが、そもそも君は技(スキル)を使わない力任せな戦い方なのだから武器の不慣れなどさほど関係あるまいに。

 いや、でもアレがあるな。ななみちゃんに新しい武器は今まで以上に愛用すべきだと推奨しておいた。武器の絆を高めて、あのスキルを取れるか否かで火力が倍に膨れ上がるのだから。

 

 

 

>2日目(月)19:00

 カーシー召喚、【トラポート】で行きにもやってきた、ジプス地下専用線のある新大阪駅へ直接ワープ。なんとか帰りの時刻に間に合う。

 遅刻しかけたことを軽く皆に咎められつつ、ツンデレ和久井くんとヒナコ嬢に見送られ東京行きの電車へと同乗する……と思いきやここで名古屋行きの話が初出。俺も話すのを忘れてた。

 和久井くんが、ジョーさんが関西生まれだと察して彼を勧めるが、名古屋に行きたくないジョーさんは渋る(確か実際は名古屋には病院寝たきりの彼女がいるのだが、色々複雑な心境があってなかなか顔を合わせづらいとかそういう理由だったはず)。

 

 渋るジョーさんの代わりに大地少年が立候補する。モジャ公とイオっぱいには特に反対する理由はないと、賛成するが……ここで俺も、名古屋行きの人間に立候補する。

 やや驚きの顔で理由を問われるが、名古屋に行ったついでに会いたい馬鹿がいるからだと話す。ロナウドのことだ。私情を交えた理由にやや無理はあると思うも、この場の局長のメッセンジャーである和久井くんは別に自分は話の内容に責任を持つ気はないと知ったこっちゃない素振りをしたので、責任は局長か俺自身に負ってもらう形で皆は納得した。

 ななみちゃんも同行したいと言うが、流石に3人は多すぎると俺含めて皆が止めたため渋々引き下がる。好色な大地少年だけは、女性を侍らせたい気分的に賛同しかけたようだが気持ちを抑えて彼も断った。俺は“何事もなければ”、明日の昼頃には会えるはずだから安心しろと彼女に伝えた。

 ……これは原作通り、ロナウドが暴動を率いてきたならという意味で言っている。先に明日に何があるか伝られている彼女は、困ったような表情をしながら俺に微笑みを向けた。

 

 名古屋行きが決まったところで、和久井くんが後で相談の結果を局長に伝えるとして、ヒナコ嬢と共に見送られた。モジャ公が大阪土産のイカ焼き羊羹なる謎名物を渡されていた。新味とか見たことない味の食べ物は非常に気になるタイプなんだけど、明日明後日に残ってるといいなぁ。

 

 

 

>2日目(月)20:00

 名古屋に到着。俺と大地少年が下車し、残り4人を載せた電車はそのまま東京へ向かう。

 

 早速名古屋支局のジプス局員がお出迎えに来て、物資運搬を頼まれる。市街で集めた食料や衣類など物資類を積み込むお仕事だ。大地少年はトラックで市街から支局への運搬を、俺は支局内での積み下ろしを担当した。

 全国規模で起こった地震のせいで交通ラインは麻痺しており、都外から食べ物を運ぶことも出来ない。そのため街中に残る物資は貴重品なのだ。放っておけば召喚アプリを悪用する市民が略奪しかねないし、それを防ぐためにもジプスが管理しようとしているのだろうが……。

 

 

 

>2日目(月)20:30

 おへそちゃんこと判アイリを発見。名古屋で悪魔召喚アプリを手に入れた、民間人の一人だろう。

 彼女もお手伝い中だったようで、すれ違っただけなこともあり特に挨拶をする暇はなかったけど、彼女がいるのだからもう一人のジュンゴくんもきっといるのだろう。

 ……名古屋のキャラ二人はどちらも好きなんだけど、明日の死に顔動画は……死ななきゃいいな。

 

 

 

>2日目(月)21:00

 やっぱり来ちゃったよロナウド。もとい、彼に率いられた暴徒集団が。

 大地少年が出ている時にやってきたのは幸いだった、下手しなくても足手まといになったろう。

 

 10~15レベル程度の中々の悪魔を引き連れる大勢の市民サマナーたちと、悪魔使い・非悪魔使い入り混じるジプス局員が競り合う。市民といっても、多くはガラの悪い連中ばかりでチンピラか不良か893上がりではないかと見られる。

 他の局員よりも前に出て、立ちふさがった俺にガンをつけて威圧しようとするが、もっと怖い局面を乗り越え、更に心的ストレスの重圧に耐え切った俺の精神力は、最早この程度でビビる豆腐メンタルでは無い。出来るなら逆に威圧仕返したかったところだが、生憎今の手持ちは婦女子悪魔ばかりで怖さのかけらもない。

 仕方なく、セドナに変身して【アイスバウンド】でまとめて吹き飛ばす。敵仲魔の中には氷結無効以上の耐性を持つものも多く含まれていたため、そいつら全てを倒すことはできなかったが、その氷結悪魔たちを召喚するサマナー本体をやってしまえば問題は解決する。低レベルでも【耐氷結】が得られる優秀なアゲハドレスらしき防具を着た女性サマナー以外の殆どは消し飛び、その残った数名も耐性の上からゴリ押し、あるいは【烈風波】で逐一撃破する。

 

 一際暴れたことで、手強い奴がいると暴徒たちの中で情報が伝わったのか、彼らを率いるリーダー、ロナウドが直々に顔を見せた。俺の顔を見て一瞬瞳に動揺が浮かぶが、すぐに立ち直り俺の前でジプスの悪行を告発する。

 いわく、ジプスは崩壊した日本の物資を独占している。

 いわく、ジプスは一般市民を見捨てた。

 いわく、ジプスは弱者を虐げている。

 

 など、ジプスは国家の守護という大義をかざして、乱暴を振るっているとロナウドは指摘した。確かに一般市民からすれば、ジプスは崩壊中の日本で実権を握ったように見えるだろうが……セプテントリオンやポラリスの危機へ対抗していることを知らないからこそ、ジプスが必要だと彼らは分からない。いっぺんくらいセプテントリオンとサシでやらせればその考えも変わるのだろうけどそんな暇はないし。

 また、この場でいちいち説明する余裕も暇もない。ロナウドには冷たい視線を返すだけで、無言のまま戦闘態勢に入る。それをジプスへの恭順と受け取ったのか、「お前も走狗に成り下がったか!」などと罵声を叩きつけ、堕天使オリアスを召喚し、俺に【ヒートウェーブ】を放たせる。

 多少手傷をもらうが、返しの一撃で自慢の悪魔を吹き飛ばすとロナウドはそれに驚きを隠せない様子。ヤマト局長にはまだ劣るが、俺だってジプスで現時点2位の実力を持っている。召喚アプリを手に入れたばかりの暴徒ごときに負ける要素はないね。

 

 仲魔では勝てないと見るや、ロナウドは力を振り絞って己が肉体で俺に挑もうとする。召喚アプリの影響でレベルを得ているとはいえ、専門の異能を持つわけでもないロナウドが勝てるわけもないがね……なんて、生暖かい目で彼を見つめていたせいで、乱入者が現れるまで周囲の動きに気づけなかった。

 

「動くな!動けばこいつを○すぞ!」と、無力化されていたジプス局員を引きずって脅しの言葉をかけてきたのは、ロナウドが引き連れてきた暴徒の一人だった。人質に取られたのは、大地少年でもジュンゴでもおへそちゃんでもない名無しの局員で、レベルや才能がある人物には見えなかった。全然惜しい命とは思わないが、ななみちゃんとの約束で無闇に人の命を見捨てることは、ヒーローとして許されない。かといってここで無抵抗を貫けば、原作ジュンゴくんのように暴徒たちにリンチされ、トドメをさされかねない。例えリーダーであるロナウドの目の前だとしても、だ。

 むしろ、ロナウドは暴徒を統率しきれてない節がある。仲間が勝手に人質を取ったことにロナウドは動揺しており、彼の本心ではないのは分かるが……投降したところで即座に人質が解放される保証は無いし、そもそも仲間を御しきれないロナウドとは無関係に、暴徒が私刑する可能性を考えれば、投降して状況が良くなるとも思えない。だが見捨てるわけにもいかず、俺はため息を吐いて、抵抗を緩めるかのようなフリをして稼いだ時間で逃げ先を決め、即座にカーシーを召喚し、【トラポート】で一人脱出した。

 

 

 

>2日目(月)21:30

 名古屋駅のジプス専用線ホームへ逃げ込み、そこから東京に連絡しようとしたら、電波繋がらねえ。しまった、襲撃があった時点で通信を妨害されるんだったか。原因は……フミっぱいのハッキングの仕業だったか?うーん、原作だと支局のあるタワーの近くで遭遇出来た気がするけど確証がないし、探しに行こうにもまた暴徒に遭遇し(て人質を取られ)かねないしで行動出来ねえ。

 とりあえずジプス制服のまま迂闊に出歩くと危険だし、着替えを探すか。こういう時に地味に【隠密行動】が便利。

 

 ……ここで使わずに、タワー近辺捜索に残して使えば良かったなと後で後悔。

 

 

 

>2日目(月)22:00

 ジュンゴくんらしき青年と遭遇した。名古屋支局が陥落したところを逃げてきたそうだ。

 初対面だったが、召喚らしきケータイを携えているところと、ジプス制服を見せたことでお互い素性を把握した。おへそちゃんの方は不明だそうだが、散り散りにはなったが脱出するまで無事を確認したとのこと。良かった良かった。

 流石に夜遅くから動くには眠気も疲労も辛いということで、夜食をいただいてから明日に備えて寝る。茶碗蒸しうめぇ。

 

 




この回にも、気が向いたらそのうち何か書き足します。


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不穏の火曜日1

 

>3日目(火)07:00

 おは茶碗蒸し。もうちょっとエネルギッシュなものください。

 ……いやおかわりじゃなくて、ご飯とかパンとかをですね。

 

 今朝からようやく、悪魔全書が解禁された。および憂う者より三身合体アプリも添付される。 ひゃあ我慢できねえ合体だ、デビオクなんていらんかったんや!

 とりあえず何かと便利な【スクライイング】を持つハファザ、【トラポート】を持つカーシーを数セット作っておく。トートにベンヌを合体させた堕天使エリゴール、および全書から3身合体を駆使して作成した精霊サラマンダーとの3身合体にて、変身悪魔をセドナからヘカーテに。

 3属性「ダイン」、および全門耐性を整えて攻撃面・防御面を充実させる。予算の都合から仲魔の方は見送りだが……暫く危険な相手が出るわけでもなし、問題は……あ、素で全門耐性持ちのフェクダ対策出来てねえな。どうしよう、貫通持ちのななみちゃんに任せるしかないか?

 少し考えて、【衝撃ガードキル】持ちのショボーたんを追加作成して解決する。これで問題なし。

 

 あまり物を食べた気分がしないけど、ジュンゴに朝食の茶碗蒸しの礼を言って【トラポート】で東京へ帰還。まずは報告しておいた方がいいだろう。

 

 

 

>3日目(火)07:30

 ジプス東京支局に顔を出すと、マコトさんに驚かれながらも事情を尋ねられた。丁度モジャ公たちを名古屋に送らせる準備をしていたところだったそうな。

 名古屋支局に起きた謎の通信障害、暴徒の襲撃の事を話せば連絡が復旧しないわけだと納得し、主人公以外にも東京駐在のジプス局員から名古屋行きの戦力を派遣するとマコトさんは言った。ただし俺が東京に戻ってきた手段を告げ、また名古屋に行くことも出来ることを教えると、先に主人公たちとななみちゃんだけでも連れていき、現地のジプス局員および大地少年を探し出して、名古屋支局を奪還する準備を整えながら、出来れば通信障害の原因を解決してほしいと頼まれる。

 東京からの派遣部隊は午後1時頃に出発する予定なので、2時までには支局突入の準備体制を整えろとのこと。先に現地に潜伏するのはいいが……別に倒してしまってもいいのだろう?

 

 

>3日目(火)08:00

 主人公たちに顔を見せ、名古屋の話を伝えようとする前にななみちゃんがダイブしてきた。力能力値が鍛えられてて普通に痛い。冗談で済まないダメージになってるからやめなさい。

 

 気を取り直して名古屋支局で暴徒の襲撃があったこと、通信障害で連絡が取れなかった状況を主人公たちに教える。大地少年の消息が分からない理由を知ってますます心配そうな顔を見せる彼らに、心配するくらいなら自分たちで探してやればいいと、名古屋へ転移するスキルですぐに向かえることを教えると一転してやる気を見せた。

 準備をするために主人公たちは各自部屋に戻るが、ななみちゃんだけはこの場に残った。そして、何故俺がいるのに暴徒を退けられなかったのかと、説明を端折った部分に鋭く気づき、尋ねてきた。

 暴徒たちのリーダー・ロナウドと戦いになったが、戦闘中に人質を取られたため、人命を無視して戦うわけにもいかず逃走した真実を話せば、ななみちゃんは憤慨した。尤も予め原作展開を俺から教わっているななみちゃんは、ロナウドら暴徒が決起した理由は災害で困惑する市民の救済だと知っているため、彼らを貶すことはなかったが流石に人質を取る手段を取ったことには怒りを露わにした。

 しかし彼らは弱者だ、善を為すために手段を選べない立場にあると言うと、ななみちゃんは困った様子で反論出来なくなった。私的には、そもそもロナウドが暴徒に汚い手段を取らせないような良き指導者足り得ないことに問題があると言いたいがね。あるいは何らかの強者か、ヤマトとジプスに対抗出来るような何らかの後ろ盾、もしくは複数の勢力を束ねて十分な力を得た上で交渉に望むべきだった。例えば、ガイア教団がメシア教会に対抗するために、様々な異教の神々と堕天使が結束したようなことを。

 暴徒たちはジプスに対抗するにとりあえずは十分な力だったかもしれないが、そこで暴力に訴え、あまつさえまだ力が足りなかったと知るや人質という汚い手段に出たのは行き当たりばったりにすぎる。そのへんをきちんと見積もらなかった、指導者が悪いよ指導者が。

 

 ななみちゃんは俺の返しにしばらく考え込むが、反論が出なかったようなので一旦話を打ち切って名古屋行きの準備に向かわせた。

 さて今のうちに俺もいらないアイテムをジプスに売って、マッカを補充しよう。今頃ゴーストQがお外でうろちょろしてるけど、時間が無いのでパス。

 

 

 

>3日目(火)08:30

 準備ができた主人公たち4人とななみちゃんを引き連れて、【トラポート】で名古屋へ。ひとまずジュンゴがいた寿司屋に戻ってくるが……彼の姿はない。アイリや他のジプス局員を探しに出たのだろうが、後で死に顔動画来るのかなぁやっぱり。

 ともかく、ひとまず大地少年を探して名古屋を探索しようと思うが、その前に折角なのだからハファザの【スクライイング】を一枚切って、居場所にあたりをつけることにする。こと土地勘が無く原作のリカバーがしづらい名古屋では、わざわざ原作通りになぞる必要などあるまい。

 

 

 

 

 

>3日目(火)09:00

 まだ名古屋テレビタワー近辺で無事に逃げている情報が入ったので、その近辺をうろつきまわる。今頃暴徒の大半はジプス内で物資かき集めてるだろうし、ロナウドと遭遇の心配はまだ無いだろう。

 

 おへそちゃん発見。暴徒追いかけてたので助力した。ジタバタしたり威嚇したりと子猫みたいな可愛らしさがあるよね、っていててて別に変な目で見てないからななみちゃん嫉妬しないで。

 土地勘の獲得や、現地局員を集めるためにこの判亜衣梨ちゃんが同行してくれることになった。

 

 

 

>3日目(火)09:30

 大地少年発見。召喚アプリを持っていても多勢に無勢で捕まりかけてて、多分もう少し遅れてたらジュンゴの時の人質になってたろう。ガラの悪い暴徒たちを蹴散らして救出した。

 おへそちゃんと俺の話から、名古屋支局にいるめぼしいサマナーとしてジュンゴと、それから管野史(かんの ふみ)がいることが伝わる。ジュンゴは癒やし、フミっぱいはハッキングに情報収集にと有能な彼女なので、原作のキャラクターでは欠かせない人物だ。

 

【スクライイング】で二人の場所を調べる。ジュンゴはどこかの公園、フミはタワー近辺にいる……か。近くにいるフミっぱいの方から探すとしよう。死に顔動画も来てないし、多分まだジュンゴは死に近づいていないからね。

 

 

 

>3日目(火)10:00

 フミっぱい発見。そしてそれを守るように出てきた……堕天使オセLv48。TRPG版にボティスのデータなんて無いからね、仕方ないね。しかしそれにしてもレベル高くね?

 まともに勝てる相手ではないと主人公たちは怯えるが、俺から見ればカモである。万能相性攻撃もなく耐性もイマイチな堕天使なんてただの経験点の塊だと、ここは俺たちに任せて先に行け!と主人公たちをフミっぱいの方に向かわせて、ななみちゃんと二人でオセを相手にした。堕天使をうまく足止めしてフミっぱいを止めるのは原作通りだが、別に倒してしまっても構わんのだろう?

 最初はななみちゃんを前列に立たせていたが、物理型悪魔であるオセの【ヒートウェーブ】1発で最大HPを超えるようなダメージを何度も受けては命運で耐えるどころでは無いと、一旦後列に下がって【アギラオ(乱舞)】を撃つだけの簡単なお仕事に就いた(ただし彼女は魔能力値を伸ばしてないため、全く当たらなかったが)。

 代わりに前列に立った俺にもオセは【ヒートウェーブ】を放つが、剣耐性と防御点に弾かれてダメージはほぼ0。時折りクリティカルで防御点を貫通させるが、その一撃では俺を倒すには不十分。【ディアラハン】自撃ちで一回の幸運は無意味と化した。

 ならばと、オセは操っているフミっぱいを持ち逃げする素振りを見せるが、その前に【ブフダイン】がクリティカル。FREEZEして防御ががら空きになったところを、即座に呼び出した魔獣カーシーの種族スキル【獣の跳躍】にてななみちゃんと隊列変更し、彼女のクリティカルにより逃げる間もなく倒した。種族スキルってやっぱ便利だわー。

 なお、俺たちがオセを倒した後もフミっぱい奪還の戦闘は続いていたことを記しておく。ゲームと違って、TRPGでは高レベルになるほど火力がインフレして、戦闘が短くなる傾向にあるし当然か。

 

 あとは雑魚悪魔だし助勢はいらないだろうと、その後のフミっぱいとのやりとりも含めて主人公らに残りを任せて、ななみちゃんとレベルアップの相談をいまのうちに済ませる。

 ところで俺もようやく、念願の40レベルになったぞ。超人覚醒は、前回と違ってななみちゃんがサクセサーに覚醒済みで魔晶武器の作成が不要なため、「民俗学者」になる方針で。情報系クラスの中では貴重な情報(医療)クラススタイル持ちで、また【大地の声】や、シナリオ終了時まで現在レベルよりも強いアイテムを調達出来る【オーパーツ】等といった優秀なアイテム調達系スキルを多数習得すること、クラス分の能力値で運が5伸びることから、命運上限値を高めたい悪魔変身者と食い合わせの良いクラスである。

 早速その優秀な調達スキルを使用し、ななみちゃんに優秀な胴防具と頭防具を調達して着せた。服選びのセンス無いですといつぞや聞いた酷評を再び聞くハメになった。き、機能性重視やし……。

 

 

 

>3日目(火)11:00

  フミっぱい覚醒。

 →早速頼み込んで通信復活。

 →ジュンゴに連絡して呼び出し。

 →ジュンゴ合流。

 ジュンゴの死に顔動画なんて無かった!いやー良かった良かった。

 ……幾つかイベントすっ飛ばした気がするけど問題は無い、はず。

 これからフミっぱいの頼みで一応、原作同様にメモリとか調達しに行くけど、その時間を差し引いてもジプス隊が到着するまで時間が余りそう。何すっべか。

 

 

 

>3日目(火)11:30

 暇な間にモジャ公たちに悪魔合体について意見を求められた。悪魔を倒し、人を守るためには、どう強くなればいいのか……他、カーシーの【トラポート】のように悪魔を活かすにはどうすればいいか等。確かに助言出来るが、俺が口出しすると強悪魔強スキルで揃えられるから味気無くなるけどいいのかな?いや戦いに好みとか求めるなって、ガッツリ経験積んだ玄人には笑われる話だけど。

 とりあえず邪鬼ウェンディゴを作成し、【フォッグブレス】撃って使い捨てる鉄板スタイルを教えた。イヌガミや精霊みたく、なんとなしに悪魔を従えるのもいいけど、中レベル帯からは回避率増減スキルは必須。今のうちにそれらのスキルを習得した悪魔を確保しておき、これから作成する高レベル悪魔に継承させてゆくとスムーズに戦法を固定化出来るだろう。多分。

 情報系スキル、便利系スキルは作成・使用する金に余裕ないことが多いので、全書の安価な悪魔を用いた作成ルートは教えるが当分はハファザで我慢した方がいいだろうということも告げる。ただし、天使は弱点が多いので戦力的にはいまいちだときっちり警告した。

 あとは……剣耐性を持つ悪魔は1体はいた方がいいよ、ってところだろう。人間と比べて丈夫な悪魔でも、格闘攻撃の強い攻撃を受けるとすぐに倒れてしまうため、簡単に倒されないように前衛を張れる悪魔の1体や2体は必須だ。17レベルになったら、Lv14のハファザとLv9のホブゴブリンと合体し、妖鬼スパルトイを作成出来るルートを教えておく。

 合体ルートの理解に頭を痛めてるが、優れたサマナーになるなら習得必須なので頑張って覚えてほしいものである。

 

 

 

>3日目(火)12:00

 通信が復活したことで東京のマコトさんから連絡が来た。もうこっち突入態勢できてるんだけど、先に突っ込んでいい?

 待て、と言われても……名古屋の現地人、特にジュンゴとおへそちゃんが突入しちゃったんですよ。ええ。

 ため息を吐きながらなし崩しに突入を許可された。行ってきます。

 

 ロナウド他、ジプスを占拠した暴徒たちと再戦。物資を運ぶ暴徒たちを召喚悪魔ごと叩き潰して無力化しつつ、止める。

 俺の顔を覚えていた奴がいるのか、またも暴徒が人質を取ろうとしたが召喚した魔人アリスが【ハッピーステップ】で人質ごと行動を阻害しているうちに暴徒だけを殴り倒す。一度やられた手段に対して、対策を考えてないわけがない。

 そうこうして暴徒たちを粗方減らしたところで、満を持して登場する栗木ロナウド。

 再び堕天使オリアスを従えて、モジャ公たちの前に立ち塞がる奴に今度こそ決着をつけようと俺が出ようとしたが……俺より先にななみちゃんが勢い良く飛び出し、奴に魔晶剣の先を突き付けて勝負を挑んだ。

 

 勝負自体はななみちゃんがオリアスを一撃で倒して、蹴りをつけた。しかし本題は、ななみちゃんとロナウドの語り合いにあった。

 ロナウドは物資をかき集め、市民を餓えさせるジプスを悪だと語るのに対し、ななみちゃんはジプスが悪魔や“侵略者”と戦っていることを訴え、ジプスは悪意を以ってその行いを為しているのではないと出張する。

 悪意がなくとも悪を為すものは悪だ、とそれに反論するロナウド。しかし実際、ジプスがいなければ悪魔や“侵略者”からもっと多くの被害を受けていたし、都市も無事では済まなかった、とななみちゃん。

 以下、語り合いが続くが最終的にロナウドが「ジプスがいなくても人間は生きていける!」と大言を吐く。

 

 じゃあやってみるか?

 

 

 

>3日目(火)12:30

 俺は正規ジプス局員であるため、ジプスの外部協力者である君たちに命令権があるとかなんとか言って、強権で以ってななみちゃんおよび主人公らを止める。唯一フミっぱいは正規局員なのだが、彼女にはお願いという形で従ってもらった。(ただし貸し1つ、と少し恐ろしいことを告げられたが)

 まだまだ言い足りない顔をしていたが、結局のところロナウドが全体を分かっていないところに問題があるのだ。ならばその一端である“侵略者”―――セプテントリオンだけでも身をもって体験すれば、奴も理解するだろう。

 俺は、やがてこのジプス支局に次の“侵略者”がやってくることを告げ、ロナウド他暴徒数名にそれと戦ってもらう。もしジプスの力無しに“侵略者”に勝てたならジプスが不要というロナウドの主張に俺も納得し、賛同するだろうと約束する。危険な条件の割に見返りが薄いと不平を言うが、ヤマト局長並の実力を持つ俺の協力じゃ不満か?と伝えると、局長を敵視するロナウドは驚きと共に条件を受け入れた。

 まあ、条件もなにも、暴徒たちが『フェクダ』を突破できるとは思えんがね。

 

 少し離れた場所で、モジャ公ら他全員にどうして“侵略者(セプテントリオン)”が来ると分かったのかについては、ハファザの【スクライング】でロナウド以外にも正体不明の危険があると感知して、恐らく昨日にも続いて3体目の連中が現れるのだろうと察した(ということにした)ことを説明する。

 おへそちゃんからロナウドを処さなかったことに文句をつけられるが、そもそもロナウドら暴徒にセプテントリオンを撃破する実力はないだろうと見込んだ上だと伝えると、引き下がった。代わりにななみちゃんが、暴徒らが敗れると分かっていて死地に向かわせるのかと言うが……暴徒たちは悪魔召喚アプリという力を手に入れて舞い上がっている最中だ。それだけでジプスと同じ力を手に入れたと思い込んで話を聞かない連中には、痛い目を見て失敗し、体で覚えないと納得しないのではないか、とななみちゃんに逆に問う。

 消極的ながらななみちゃんは頷くが、しかしやはり目の前で助けられるにも関わらず人死にが発生することは肯定しがたいようだ。彼女には悪いが、今回ばかりは命令口調で納得してもらう。

 

 ……はあ。

 

 

 

>3日目(火)13:00

 第三のセプテントリオン、『フェクダ』が現れた。おもったよりも早い時間帯の出現だ。

 輪っかの周りに赤と緑の水晶が生えたような姿をしているが、水晶部分と輪っか部分が分離し、独自に行動・片方を撃破してももう片方が分離前まで再生出来る能力を持っている。

「侵略者の反応が名古屋に現れたぞ」とこちらの様子を知らないマコトさんから連絡が来るが、ジプスを占拠していた暴徒たちの主張を話し、ジプス不要論を掲げる彼らにジプスが行っていた“侵略者”との戦いを経験させるべく戦わせていることを話すと、それは職務権限を超えた命令違反だと困った口調で伝えられた。

 知ってた。

 罰なりなんなりは受けますから、今は好きにさせてくださいと、後で相当に叱られることを覚悟で一方的にケータイを切った。

 

 ロナウドたち暴徒が戦闘を開始しているが、分離前の物理および魔法全般無効化状態では全くダメージを与えることが出来ない。15レベル程度の彼らでは万能相性や貫通攻撃なんてあるはずもなく、攻める手立てがないと。

 そのままでいても“フェクダ”は完封なのだが、都合よくフェクダが分離し、物理無効・魔法全般弱点と、物理弱点・魔法全般無効の形態に分かれた。今が機とばかりに攻撃しようとする暴徒たちだが……2体のフェクダが同時に放った強烈な電撃攻撃により電撃耐性を持たない暴徒の殆どが一掃される。ボス特性で2回行動、ターン開始時の自動発動マップ攻撃も合わさり、2体で1ターン6回攻撃とかひでぇや。

 残ったのは数人の頑丈な電撃耐性持ちの暴徒、運良く避けた暴徒、他の暴徒より高いレベル、および唯一命運を持ちダメージを半減することの出来たロナウドくらいだった。そのロナウドにしても、今の怒涛の攻撃で殆どの命運を使い切ってしまい、ふらふらといった様子。回復役の悪魔もおらず、魔の低いサマナー自身が回復スキルを担当するというパーティバランスの悪さも後押しした。

 次のターン、再び放たれた電撃放射を含む怒涛の6回攻撃により暴徒らは壊滅した。ロナウドだけは根気で立っていたが、限界には間違いない。

 間髪入れずななみちゃんが介入を開始、スキルハックで得た【なぎ払い】をサクセサーのスキル【フィジカルエンハンス】により火炎相性化して【火炎ブースター】【火炎ハイブースター】【火炎高揚】を載せ、【煌天の会心】でクリティカル化することで魔法弱点のフェクダその1を瞬殺しながら、魔法無効のフェクダその2にも【火炎貫通】してダメージを蓄積。俺が前回から継承したティアマットの秘蔵品「竜眼石」を使用し、【龍の眼光】による追加の3回行動であえてスキルも使わない普通の物理攻撃でフェクダその2の弱点をぶった切って見事に1ターンキル達成した。分かってたけどやっぱりサクセサーの火力は酷い。

 ななみちゃん一人で倒したことで経験点を独り占m……あ、ロナウドのやつ経験点泥棒しやがった!

 



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不穏の火曜日2

>3日目(火)13:30

 仲間に多大な犠牲を出し、ジプスの手を借りねば侵略者を撃退できなかったという大きな傷を受けたロナウドを尻目に、急いで名古屋に単独やってきたマコトさんのお叱りを受ける。東京で謹慎処分だそうな。

 ロナウドは、原作と違ってでフェクダ討伐に協力したわけでもなく、ジプスに貸しを作ったわけでもなかったが……マコトさんはフェクダに敗れ死屍累々と化した暴徒たちを見て、十分反省は積んだろうとロナウドのことを放免した。俺ほどじゃないけど、マコトさんも相当無茶な独断行動してるよね。

 とついつい口に出したら、反省しろと本気で怒られた。ごめんなさい。

 

 通信網が回復し、暴徒たちもリーダー敗北の報せを受けて大体逃げた。避難した名古屋局員たちも徐々に戻り始めており、支局も本日中には回復するだろう。

 もう俺たちや主人公の手を借りる必要は無さそうだと、帰りの時刻まで自由時間になった。ただし勝手な行動をした俺はお叱りがあるので除く。

 

 

 

>3日目(火)15:00

 ヤマト局長が名古屋の視察に来た。

 独断でロナウドを逃したことの罰を受けるぞと、同じく勝手な行動を取ったマコトさんに連れられて局長の前に立つ。

 が、原作通り局長はマコトさんに厳罰を与えなかった。ロナウドを逃がしたマコトさんがそうなのだから当然俺も罰は与えられず、むしろ暴徒たちに身の程を知らせ、自滅させたという理由で賞賛された。しかも、今回の俺の行動を認めて管理職に昇格させるとのことだ。マジかよ。

 他の局員に命令を出すほどの権限は与えられないが、必要とあらばモジャ公らジプスの協力者たちを用いることを認める権限を与えられた。

 

 確かに暴徒たちに身の程を知らせるつもりでやったとはいえ、人を見殺しにしたことについて賞賛されるのはあまり喜ばしくない。マコトさんと二人して微妙な気持ちのまま局長の前を外した。

 暫く神妙な気持ちでいたい気分だったがななみちゃんは許してくれなかった。だから人前で抱きつくのは止めなさい。

 

 

>3日目(火)15:30

 ななみちゃんと名古屋を観光しながら、今日の「2周目用の悪魔」が出現する公園を探す。

 俺のジプス制服を見て喧嘩を売ってくる暴徒は相変わらずいるものの、適度にはっ倒してCOMPを破壊してあしらう。

 名古屋の名物といえば「ういろう」だよね、と探してみるけれど、こんな災害時に開いているお店があるわけもなくしょんぼりしながら街を二人で散策した。

 

 その途中、彼女とロナウドの件を語り合う。

 彼女は最初、ロナウドのことを良い意味で気にしていたようだ。市民を率いてジプスの圧制に反抗する……弱きを助け、強きを挫かんとする彼の話は、伝聞だけならまさにヒーローに聞こえたろう。しかし実際には暴徒たちを統制しきれない、ジプスに強い恨みを持ち、大義よりも鉄槌を下すことを優先する彼の実情を知って、激おこぷんぷん丸。

 勿論、彼の言い分にも利はあるし、力が無い者故に己を貫けない人間たちだと知ってはいたが、それでも本当にヒーローなら力を持つものを味方にするなり、動きようはあったはずでしょう……と彼女は口にする。意外とななみちゃん、頭が回るなと口にしたら怒られた。

 さておき、ななみちゃんはロナウドの醜態を見た後ではあるが、それでも彼のことを随分気にかけているようだ。腐っても鯛、ロナウドはヤマトの対抗馬になりうる素質こそ持っているが、優秀なブレインあるいは彼自身に人を率いる素質が欠けているため、素質・実力・カリスマ溢れる超人ヤマトに比べると格が一段落ちるのは否定出来ない。しかし彼女が持つヒーローの信念と、これから先の世界を作る理念としてはロナウドの方こそ彼女の思想に一致するために、どうしても手を加えたいと俺に助言を仰いだ。ななみちゃんの頼みなら断れねえなぁ……。

 俺も組織だった上手い動きを知っているわけではないが、歴代女神転生シリーズの知識から、組織と対抗するには主人公の助力以外にも、何らかの超常的存在による後ろ盾が必須だ。真1のカテドラルの扉を開けるのに必要な「リング」しかり、真2のエデンやルシファーの居城に乗り込むための将門公の刀やスティーブンのターミナルしかり……ゲームの都合とも言えるが、何も全て主人公一人で障害を乗り越えたわけではない。そのための後ろ盾なのだが、デビサバ2世界では神族や悪魔といった勢力がおらず、出て来る悪魔もほとんどが好戦的なため普通に探すのは難しかったはず。

 ただ、忘れそうになるがこの世界はどうもストレンジ・ジャーニー世界と共通している模様……であれば、メムアレフ他、人間を排除しようとするカオス勢力はおいといて、天使たちロウ勢力がいるだろう。ロナウドの主義・主張と被るところもあるし、うまく味方につければ良い後ろ盾になるのではないだろうか。問題は、天使は「神の下に全ての人間は平等」みたいな、自由どころか権利すら束縛する性質が強いため協力を得るにはかなり厳しい交渉の綱渡りをしなければならない点。気を許した相手に馬鹿正直なロナウドだと、天使の思想に取り込まれて餃子じみた法衣を身に纏った姿が目に見えるようだ……。

 とりあえず、ヤマトとジプスの手を借りずに、この先現れる巨大だったり厄介な性質を持ち出すセプテントリオンをなんとかしうる手段は無いと話にならないと思います。

 以上のことをななみちゃんに伝えると、むむむと難しい顔で天使天使と呟きだしたので、決して一人で突っ走らないようにと天使のやらかしうる魔法的な洗脳から改造人間、蘇生まで色々とある恐怖の行いの例を厳密に伝えた。かなりの衝撃を受けていたので、これで軽い気持ちで接触することは無いだろう。

 

 

 

>3日目(火)17:00

 黒おじさん!黒おじさんじゃないか!

 先の話をしながら名古屋市内の公園の傍を通りかかると、唐突に「アリスの気配がする」と言ってネビロスおじさんが襲い掛かってきた。確かにアリスは連れているけど……、アリス違いじゃありませんかね。随分と威勢がいいけど、TRPG準拠で前日の時の翁よりも低レベルなネビロス本体より、取り巻きの妖魔ロアや鬼女ボルボのがレベル高いのはどうかと思いました(小並感)。

 返り討ちにサクッとネビロスをぶちのめすと、原作通り付近にいた取り巻きの悪魔に憑依して復活する。しかも【ネクロマ】で死んだ悪魔を疑似ゾンビ化して蘇生する……まさかネビロス道場が存在するのか!

 何度でもボスを倒せるなら大量に経験値を稼げるボーナスタイムだと、喜んで復活するネビロスを片っ端から叩いたのだが、複数回倒したところで経験点が手に入る様子が無い。あくまで復活してるだけなので、ゲーム原作と違ってネビロスという悪魔の経験点は一体分しか手に入らないのだろう。無駄な時間を過ごしたと嘆きつつも全ての取り巻きごとネビロスをぶっ倒した。隠せてない衝撃弱点に【ザンダイン】をぶちかませば、倒すだけなら楽勝である。

 アイテムドロップ(宝探し)運判定でクリティカルして魔力の香を2つ拾ったけど使いみちに迷う。俺が使うのが妥当だが、MPの貯蓄は十分だし、かといってななみちゃんが使うのもちょっと……。

 

 それより、今の戦闘でななみちゃんに与えたアクアンズが一切合体されてないことに気づく。本格的な戦闘時のバックアップは俺が請け負うからさほど必要ではないが、俺と別行動で動く時も多いんだからもうちょっとマシな悪魔を連れなさい。と、俺の悪魔合体魂が怒っている。

 

 

 

>3日目(火)17:30

 現在ななみちゃんは31レベル。31といえば破壊神アレスだが、前衛のななみちゃんとはポジションが被るため、後衛の方が望ましい。後衛で優秀な悪魔といえば、耐性面でいえば魔法全般反射の怪異・紫鏡だがダーク悪魔は嫌だというななみちゃんの意向を受けて、小さな体だけにHPは低いが、ちゃっかり剣ガン耐性が優秀な国津神スクナヒコナを作成。火炎ガードキルを持つ幽鬼サウォバクの同種2身合体からスキルを継承した夜魔インキュバスLv29を作成。魔獣妖精妖精の3身合体で作った破壊神アレスに聖獣ヘケトを加え作った魔神トールLv34と、地霊カハク、妖精ピクシーで合体した妖鬼アズミLv13。合計レベルを調整したこの悪魔たちを3身合体させると、オオヤマツミLv28を超える29レベル以上の国津神となり、スクナヒコナLv30が誕生する。

 明日、明後日の二周目ボスは夜魔リリスに魔王ベリアルにと、火炎無効以上を持つ悪魔に、70%の耐性完全貫通を過信するのはリスキーなのでガードキルを持ってて損は無い。

 それからもう一つ、魔晶武器に込めたベリスのレベルをななみちゃんが追い越したのでそろそろ中身を更新することにした。現在レベルに命運上限値を足した上限は36……このレベルだと妖魔ヴァルキリーや天津神フツノミタマだろうか。武器威力の合計パラメータは変わらないが、命中修正に関わる速能力値はフツノミタマが上。しかし合体コストや手間の面から、ヴァルキリーが楽に作成出来るということでそちらに決定した。中の悪魔のレベルが上がったことにより、銘も明星紅蓮政宗に改められた。

 

 さて、合体作成中にふと思うところがあったため、俺も鬼女ダツエバの悪魔カードを大量に用意しておく。それといい加減レベルの高い仲魔が必要なのでメディアラハン要員に国津神オオモノヌシも作成。……ところで種族スキルってホント便利だよね。

 明日のリリスはTRPG的にはどうか知らないが、原作的に男性キャラクターは凄い不利を受ける相手なため、ななみちゃんに頑張ってもらわなければならない……でもとりあえす精神無効防具を用意する準備から始めよう。

 

 

 

>3日目(火)18:00

 そろそろジプスに戻り、帰りの便に乗る時間を確認しよう……と思ったらロナウドに襲われた。

 おまえー!ななみちゃんがなー!折角なー!許さーん!

 

 秒殺。

 だがななみちゃんが許すので許した。仕方ない。

 で、どうして二度も馬鹿なことをしたのか問い詰めると、最早手段を選ばずにジプスの戦力を削るしか……とか意味不明なことを抜かしおる。

 イカン、あまりに追い詰めすぎて本気でボッキリ心を折ってしまったかもしれない。ストーリー進行に大きく影響は無いのがロナウドの良いところだけど、六日目の終わりに大地少年やモジャ公が発起する決意を得られるかが心配だなぁ。

 ななみちゃんも困った様子でロナウドを見つめている。そして何かを閃いたように顔をパーッと明るくさせて……。

 

 おいばかやめろ。ロナウドまで期待した目で見始めたじゃねーか。

 やべぇ断れる流れじゃない……俺がロナウドの代わりにヤマトの対抗に立つこととかちょっとハードル高すぎんよ。

 

 

 

>3日目(火)18:30

 目標は人間が皆笑って生きられるような世界!

 いや無理だから、というか嫌だから。人の精神・思考を操作したあからさまなディストピア擬きも、それを作るのにポラリスの力を借りるのも俺は大嫌いなんですー。というわけでやるとしても、大地少年が謳ったような管理者からの脱却。俺が目指すなら最低でもこれに尽きる、その上で何か目標を立てる分には悪くないが……。

 と、いうかどうせ大地少年と同じ目的を謳うんだから本当は俺が立つ必要すら無いはずなのよ。確かに初動が早いほど、後々こちらの勢力の動きがだいぶ楽になるけど……しかしセプテントリオンを全然減らせてない現状でジプスと正面対決が早まると、最悪共倒れになりかねん。

 勢力間抗争に関しては、相手が掲げるのが実力主義である以上、相手の土俵に立った上でヤマトを倒せば相手は認めざるを得ないのでぶっちゃけどうにでもなる。龍脈ヤマトすっげー強いけどな!!それで正面対決で敗れたら、その時はその時で諦めるしかないけれど。

 

 閑話休題。各女神転生の主人公ほど素で運命に恵まれた才能は持たないが、俺たちには転生女神の“祝福”(あるいは呪いか)がある。加護というにはあまりにも細々としたものだが、それを綱渡りに伝手を得ればジプスに対抗する勢力を築くのも夢ではない。

 具体的には、俺は持たないが、ななみちゃんが前世より引き継いだ“妖精ピクシー”との絆……このデビルサバイバー2世界では話せる悪魔とのコネは貴重なもの。未だななみちゃんは殆ど接触を取ってないそうだが、俺の体験やスティーブン、葛葉などの例からするに必ずコネは残っているはずだ。

 その、話せる悪魔の伝手を辿って、更に別の話せる悪魔を探し出し、ゆくゆくは数多くの比較的友好的な悪魔の協力を得る……ポラリスではないが悪魔と手を組むのにやや嫌悪感は存在するが、世界ごと人間の意識に手を加えられるのに比べればまだマシなものだ。

 

 うん、俺の中である程度理想は固まった。

 成功するかは疑問だが、目標は悪魔と友好的な関係を築いて、その協力を得ながら築く世界か。言ってみればロナウドが考えていた世界にポラリスの力を借りず、その友情の輪に悪魔も入れたバージョンのようなもの。人間をMAGの塊として見る悪魔が多いなど問題点は沢山あげられるが、ライト悪魔の血を介さないMAGの調達などもあることだし、相手を選べば単なる妄想では無いはずだ。

 勿論、全ての悪魔と手を組めるわけではないだろう。しかしそれは他の女神転生世界でも、ロウやカオスの悪魔が対立してどちらかを滅そうとするように、全ての悪魔が共生するのが無理だとは最初から分かっていること。どちらを味方につけるかはまだ決められないが、少なくともライト寄りの悪魔希望には間違いない。

 オーケーオーケー。どうせ失敗して死んでもまた転生するだけさ。あの転生女神をぶっ倒すのとは無関係な経験だけど、ぶっ倒した後にやりたいことを考えると経験を積んでおいて損は無いだろう。失敗した姿をななみちゃんに見られるのはすごく恥ずかしいが……実は俺より彼女の方が今や強かったりするし、威厳など今更だな。

 

 

 

>3日目(火)19:00

 ななみちゃんには明日、東京で妖精ピクシーに接触し、人間を襲わない友好的な悪魔を集め対セプテントリオン共同戦線を張ってくれる悪魔勢力を(なるべくジプスには秘密裏に)探すことを頼み、ロナウドには今後を考えてサマナーの市民たちに【トラポート】や瞬間移動の移動手段を持った悪魔を持たせることを頼んだ。……まだ生きて彼を慕う市民がどれだけいるかは知らないけど。

 明日にはジプス専用の電車が通じなくなり、ターミナルでしか行き来できなくなる時が来ても機動力を得られるかどうかで、やがて来る木曜日の動きがとても変わる。

 そうだ、何も考えさせられる問題はジプス&ヤマトや、ポラリスだけではない。明後日の木曜日に訪れる、日本の崩壊が進む第一歩となる超巨大飛行型セプテントリオン『アリオト』の来襲があるのだ。……あれ、マジでどうしようか。

 

 アリオトは東京上空に透明な姿で来襲し、毒爆弾を散布しながら東京をポラリスの無の侵食から守る東京タワーを破壊しに接近する。透明化自体はすぐに解析し、見えるようになるのだが問題は上空にいるアリオトをどう倒そうにも、その残った巨体が下にある都市を押しつぶしてしまうことにある。原作では、悪魔の中では最高位に近い破壊神シヴァの力を借りてアリオトを撃墜するのだが、それでも奴を消滅しきれなかったあたりどんな悪魔の攻撃でもあの巨体を残さずに消滅させるのは無理だと察せられる。

 だから東京タワーの一時的機能停止=東京の侵食が進むのはどうしても避けられない問題と割り切る。次に問題なのは、アリオトが向かう北海道、札幌市だ。原作では、シヴァの攻撃によりアリオトを撃墜し、北海道のタワーを巻き添えにしながら墜落するのだが、下に残された都市は……ヤマトの説明では「人は生存していなかった」とのことだが、実力のない人間をゴミ、クズと見做す原作ヤマトの発言は信じられたものではない。故に、ヤマトの目に留まるほどではないが生き延びる人間は何人か残っていると見て良いだろう。それを救助するために、人手が必要だ。そこでロナウドに頼んだ、移動手段の確保に繋がる。どれだけ人が残っているかは分からないが、北海道に残る市民を助けることは俺たちがヤマトと違う思想を持つ勢力であることをアピールするのにうってつけで、場合によっては勢力拡大にも繋がる行為だ。見逃せるチャンスではない。

 

 長くなったが、ここ数日ロナウドの目的は、僻地の救出活動に際し移動を可能にすること。ななみちゃんは悪魔たちとの接触になる。もし強い悪魔と遭遇した場合は俺に報せ、逃げに徹するように念を押したが……俺がやる気を見せたからって感動して話半分に聞いてた風があるので心配である。誰かつけるか。

 

 

 

>3日目(火)19:30

 東京に帰還の時間。ヤマトに敵対すると決めたが、少なくとも金曜日の『ミザール』撃退まで本格的に敵対する気はない。というか向こうにも余裕が無いかと思うので、心配はないだろう……ヤマトの性格を考えれば、この状況で目障りだからと闇討ちする心配もあるまい。本人にその気が無くても、部下が正々堂々と不意打ちをしかける可能性はあるが。

 

 

 

>3日目(火)20:30

 電車に乗られ揺られながらウトウトと。

 体に揺すられハッとしたら、電車はもう東京に着いていた。帰り道で色々考える予定が全くそんな暇なかったよ……。しかし肌が変にざらざらするんだけど、ななみちゃんなんかした?

 モジャ公たちが生暖かいような目線をしてた。本当に何もしてないの?

 

 

 

>3日目(火)21:00

 ジプス東京支局内に割り当てられた俺の私室にて、パソコンを借りて久々にユーバー・ゲシュなんとかスティーブン擬きと連絡を取る。突然の連絡を謝り、こちらの簡単な近況を話し、セプテントリオンやら悪魔に関する多数の戦いのことを話す。それから今後の悪魔増加を見据えて、悪魔と友好的に付き合える勢力作りを考えていることも話す。ネット上に漂う悪魔的なサムシングのデータである元人間の電霊、ユーバーゲシュタルト人としては人は人として悪魔とは独立して生きて欲しいことを願いたいのだがと呟くが、今の状況ではそうもいかないだろうと納得する姿勢を見せる。しかしその上で現存するジプスとの対立が非常に問題になるのでは、と指摘されるが憶測が多いものの相手に動けない内情があるはずだ、と理由を話す。相手がそれをブラフに脅迫したり揺さぶってきたり、俺の憶測と違って強行的な姿勢を見せる可能性はあるが……ヤマト相手に実力を示しさえすれば半分くらい自動解決するので、最悪特攻で頭を取ればいいんだと作戦を告げる。

 そんなこんなで彼と近況を織り交ぜた話をして、本題の友好的な関係になれそうな悪魔を知らないかと尋ねる。情報知性体と化した彼は生憎、他人との付き合いも随分薄れていたようだが……南極探査隊に向かった有人探査船に積まれたAIデータから得られた情報により、橘財閥または財政界に強い影響を持つオーディンの転生体「大城戸翁」への紹介なら可能かもしれない、と答えられた。マジか、大城戸老いるのかこの世界!

 橘財閥は真・女神転生3に登場する橘千晶様のご実家である、建設業界に強い大企業である。悪魔との関わりは薄いが、国内外に強い影響を及ぼす大企業である以上、その伝手を辿って悪魔が関係する企業への紹介状を確保するルートが出来るのが大きい。一方で、大城戸老はTRPGオリジナルのNPCキャラクターで魔神オーディンの転生体であり、財政界を引退している上に本人の異能者としての実力は恐らくそう高くないかもしれないが、顔の広さとコネの強さ、更に悪魔界隈に関する知識を持つことから悪魔関係において橘財閥より強い情報収集能力があるだろう。尤も、両者のどちらにしても現在崩壊しつつある日本の現状ではその表の顔がフルに発揮されるとは思えないが、ジプスの国家権力という妥当性に対抗する権威を得るには(元)大企業や財政界という儚い後ろ盾でも得られれば、強い勢力であると周囲に思わせるソースとなる。

 俺は少し考えて……大城戸翁への紹介を依頼した。橘財閥の顔役で誰が出てくるかは知らないが、万が一千晶様とか出てこられると交渉がスムーズに行く姿が見えず、お相手に困るもので。イケイケなJK属性はななみちゃんで十分ですってば。

 

 

 

>3日目(火)21:30

 電車内で結構寝たとはいえ、色々考えたり、負担が増してくると疲れの蓄積が酷い。明日はもっと動くことになるだろうし、今のうちにゆっくり身体を休めておかなければなるまい。

 明日はメグレズ出現の日。東京・大阪・名古屋の沿岸に三体同時に出現し、一人では倒せない相手ということ以外に大したことのないセプテントリオンだが、追加の地震攻撃で都内各所が崩壊したり幾らか都市への影響が大きい。そのせいで予定が崩れたり、行動に支障があるかもしれないので不測の事態にななみちゃんへ警戒を呼びかけておくべきか。

 

 何か違和感があると思ったら、そういえばジプス内にいるにも関わらず彼女が夜這いしてこないのは初めてな気がする。いや、それが普通のはずだよな?気づかぬうちに俺も変に心を許してたようだ。俺の初めての心は変わらずアリスさんへ捧げてるんですー。

 あ、アリスさんといえば……明日の隠しボス悪魔、そういえばリリスなんだよなぁ。リリスかぁ……変なことが起きなければいいんだけど、いやホント。

 

 

 

 




暫く原作沿いで進んでましたが、そろそろオリジナルな路線で進めます。
ようやく原作プレイ動画を見ながら書く作業から解放されるぞ!


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変容の水曜日1

 

>4日目(水)6:30

 ななみちゃん、おはようバズーカはやめなさい。

 

 

 

>4日目(水)7:00

 本日は昨日の働きをねぎらって、主にジプスのゲスト異能者たちを対象とした健康診断をするそうな。まあ実際は異能者としての素質・能力を調べる思惑も孕んでいるのだけど、それを説明したマコトさんはそんなこと知らないのでさておいて。データ取りをされるのはあまり気が進まないが、叛意に気づかれるのを無駄に早める必要は無いと承諾する。

 ま、その前に4体目のセプテントリオン、『メグレズ』の襲来を察知したんですがね。局内にアラートが鳴り響き、ジプス局員およびゲストたちの出動が要請される。この時間に出現するのは本体ではなく、射出された奴のビット、「芽」だが……メグレズはセプテントリオン随一の物理型ということもある。TRPG仕様で強化されている可能性を考慮し、彼らに同行して事前にデータを確認しよう。

 朝飯もまだで空いたお腹を抱えながら東京タワー近辺へ。予想通り、殻が壊れた後のドゥベみたいなカプリコのような「芽」が鎮座していた。ニカイア産アプリのアナライズではメグレズと表示されるところが、ミスリードを誘わせる。

 問題の実力だが、物語も中盤に入ってきたこともあり、露骨な弱点が減ってきた。とはいえ芽はボス特性を持たず、BS全般が弱点ということもあり、【ハマ】や【ムド】を撃てば一撃で倒せるだろう。それに一手使わせられるのは癪だが……かといって【S地母の晩餐】(頭についたSはSpontaneous、自動発動するスキルの意)なんて物騒なスキルを持っており、無視するわけにもいかない。TRPG版の地母の晩餐は【物理貫通】効果を持ち合わせる格闘攻撃スキルで、物理吸収や反射を持っている相手にも通用するため、必ずダメージを与えてくるのが嫌なところよ。

 

 データ検分を済ませたところで、主人公たちが処理にかかる。弱点を見ぬいた主人公が邪鬼ウェンディゴの【ブフ】でFREEZEを誘発、凍ったところに追撃の物理攻撃を仕掛けることで奴の地震(地母の晩餐)を連発される前に破壊した。戦闘不能等の被害も無く、楽勝であった。

 あまりの敵の弱さに主人公たちは戸惑いが先に来て、勝利を喜べない様子。そして自然とこちらに視線が向く。俺を困ったときの知恵袋にするんじゃない。

 あれは本体じゃない、メラクのビットと同じレベルのものだろうと答えておいた。となれば本体がどこにいるのかって話になるが、そこはジプスの仕事だとヤマトやマコトさんにぶん投げた。

 ともかく朝飯前の一仕事終わらせた次は健康診断である。8時半に開始するので集合とのことだ。

 

 ななみちゃんが代々木に行くというので、カーシーを2体貸し出して最寄りの場所まで【トラポート】させた。

 使った分以上に補充しなきゃ。

 

 

 

>4日目(水)8:00

【大地の声】でそのへんの精霊から紅の篭手をむしり、オーパーツで智慧の輪をむしる。後者はもったいないけど、主にリリス対策故。

 昨日オセから剥ぎとったデスブリンガーをジプスに売りつける、12万マッカなり。相変わらず上位アイテムの値段は桁がおかしいな。カーシーを10体セットで作ってもまだ余ってたので、そろそろミタマに手を出す。

 俺、一度くらいスーパーピクシー作ってみたかったんだ……

 

 

 

>4日目(水)8:30

 運以外の主要4能力値を御霊で最大まで上げ切り、マッカが半減したところでこれ今の手持ちじゃ完成させらんないなと冷静になり合体中断。全門耐性も付与してあげたかったけど、また金が必要になった時とかに残しとかんと困るし。

 

 健康ー診断ー。男女別に分かれて色々とチェックを受ける。詳しい内容は省略、しかし主人公大地少年ジョーさんの3人が見当たらないあたりさては覗きに行ったか、お主らも好きよのう。

 おトメさんに診てもらった後に、再度メグレズ襲来のお知らせ。憂う者登場のタイミングだし、戦闘はないな。よし任せた。俺は俺でこれから大事な用があるものでな。

 マコトさんに昨日のロナウドの件で、民間人の暴動を抑えるために幾つか動きたいことがあると告げる。本当は民間人を集めてジプスに対抗するためなのだが……真意を隠してマコトさんに頼むと、彼女も昨日は思うところがあったらしく許可を下ろしてくれた。何なら早速ジプスの局員を借りてもいいと提案されるが、交渉に赴くなら俺一人で十分なこと、これからメグレズの芽の掃討に忙しくなって手が足りなくなるはずなので断った。

 

 

 

>4日目(水)10:00

 東京都心部から離れ、小田急線沿いに世田谷区を進み、成城へ。高級住宅街として有名なこの地区に大城戸翁が引きこもっている。

 ポラリスの影響で、東京タワーから離れるほど侵食が進んで危険になっているのではないかと危惧したが、実際に足を運んでみれば今のところまだ大丈夫そうである。……しかし明日を境にこの辺も無に飲み込まれるんだろうなと思うと、少し物哀しいものがある。

 

 成城の某所にある邸宅を訪れ、ユーバー・ゲシュタルトの名を出すと屋敷の奥に通される。

 秘書に案内された先は過度な装飾のない、机やタンスが黒や木製の落ち着いた色合いの家具で揃えられたゴシック調の部屋だった。そこで暫く待っていると、後から悠々とした、しかしながら整列する豊かな髭を蓄え、足元まで伸びるのに皺の目立たないローブを身につけた姿からは全く隙が見えない姿を晒した、大城戸老がやってきた。

 交渉に身を固めていると、気張る必要はないと制される。その上で大城戸老は、戦には関われないが必要な知識だけは提供出来る、とこちらの要望はお見通しだとばかりに先手を取られた。流石は、一説には片目と引き換えに未来予知を得たとされるオーディンの化身だけはある。

 無駄な言葉遣いは相手の気を損ねるだけか、そう考えた俺は東京の政府が機能しておらず、ジプスが国家権力をかざして都心部を牛耳っている現状を知っているかの話から入り、続いてジプスに不満を持つ市民は大勢いるが、多くはジプスの権威や力に握りつぶされていること。ヤマト局長の悪巧みを知り、俺を含めたジプス内にいる現状への反感を持つ局員たちもいるが、『侵略者』迎撃のためにジプスの必要性から離反出来ずにいることを話し、俺はジプスに不満を持つ人々の受け皿となり、またヤマトの悪巧みの対抗馬となれる勢力を作りたいこと、そのために大城戸老の持つ国家権力への伝手や、あるいは魔術的・悪魔的な知識を借りたいことを告げた。

 大城戸老からはどうしてそのような結論に至ったか、あるいは俺自身のことや動機、理由について幾つか質問され、俺の出自に関わるがどうしても言えない(転生者である)ことだけは伏せて、別世界で経験したことであると明言した上で、できる限りの内容は説明した。

 

 ふうむ、と困ったように髭を撫でる大城戸老を前に、幾らなんでもしゃべりすぎたろうかと汗を垂らす俺。しかし、覚醒者を超えた超人だがあくまで人間の範疇であるヤマトと違い、神族の加護どころか神そのものの転生者である大城戸老とは、戦闘データでは測れないその身に秘める力はあまりに大きな差があり、ウソをついて見ぬかれないとも限らない。また、魔神オーディンはLight属性……正義や博愛、あるいは信念を大事にするスタンスであることから、より正直に交渉した方が相手の好みに沿う確信があった。

(もし交渉が失敗しても、政治から引退した大城戸老なら俺の情報を無闇に用いることはないだろう、と思ってたところもあるけど……)

 それは正解だったようで、困った顔は変わらないが俺の主張には納得した、と話す大城戸老。しかし、侵略者の首魁……『ポラリス』の力を借りず人間の手で頑張りたい、と言う割に悪魔の力は借りるのはアリなのかね?と俺の動機と目的の、特に痛いところをところを突いてきた。確かに、『ポラリス』も(明言されてはいないが)悪魔であり、俺が力を借りたいと思っている妖精たちや、目の前の大城戸老も魔神オーディンの化身(転生体)で、いわば一種の悪魔である。手段だけ言えば、ポラリスにせよその他の悪魔たちにせよ、悪魔の手を借りることは変わらないのだが……。

 しかし俺は、世界を自発的に変革するか、それともポラリスによって強制的にされるかで世界のその後は大きく違うと強く主張した。『ポラリス』はアカシックレコードを操作し、世界を直接書き換える権能を用いて強制的に人間の意志ごと世界を変革する力を持つが、変革した後の世界の状況を合理的でないと違和感を抱いた人間がいたとしても、アカシックレコードによりその人間の違和感は潰され……世界は進化も変化もなく、人間はずっと現状を維持、あるいは緩やかに衰退していき死滅する可能性が危惧されることを話した。これは、デビルサバイバー2のロナウドルートで進んだ場合のエンディングの様子で、俺が最も恐怖を覚えたことである。

 アカシックレコードが対象にするのは、人間の意志だけ。まさしくセプテントリオンのように、地球や世界の外から新たな悪魔や“侵略者”が訪れた時、アカシックレコードで意志の操作を受けた人間は“侵略者”を退けるだけの進化や目覚めを引き起こせるのか、果たして疑問である。そういう長期的な視点を見据えると、とてもじゃないが『ポラリス』そしてアカシックレコードによる強制的な意志統一を用いた、世界の変革は受けいられれないと、俺は話した。

 

 大城戸老からは「とてもじゃないが、寿命の短い人間の考えるべきことではないな」と苦笑される。

 ……まあ、確かにそうですけど。

 しかし、続けて「だが、逆にそれがいい」とも高く評価された。人間の身ながら、数多の平行世界に身を置く悪魔の思想を知るからこそ考えつく発想は、世界の破壊と創造を繰り返す神族たちには「ウケがいい」だろうと、大城戸老は俺の主張に筋が通っていると認めてくれた。

 

 だが協力は出来ない、と大城戸老は話す。何故、と理由を問えば単純に、この世界の悪魔たちは非常に弱体化しており、残った有数の悪魔たちは現在南極で事を起こしている真っ最中だ、とのこと。……ここにきて話に関わってくるかシュバルツバース!!

 それでは助力を得られないのか、と食って掛かる俺にまあ落ち着けと手を突き出し、代替案を述べる大城戸老。曰く、シュバルツバースがあることで得られる力もあると述べる。しかしそれには、まず『ポラリス』のことを語らねばなるまいと。

 

 ここから少し長くなるので、今のうちに休憩を入れておけと言われたため、許可を取って席を離れる。

 その間、メグレズの芽が起こしたものだろう地震が度々発生した。今頃、主人公たちは電車で大阪に向かおうとしていたところだろうか……。

 

 

 

>4日目(水)11:00

 トイレを済ませ、再び大城戸老の話を聞く。

 どうやら話は、DSの別作品……SJ(ストレンジジャーニー)とこのデビルサバイバー2世界がどう関わっているかについて語られるようだ。実際の内容は色々魔術的な専門用語が含まれていたため、自分なりに噛み砕いてなるべく簡潔にまとめる。

 

 まず、SJの物語から話す。SJは、文明の発達により地表を埋め尽くし、悪戯に地球を破壊、食い潰しつつある人間ごと地球をリセットするために、悪魔たちが地球を飲み込む亜空間「シュバルツバース」を生成したことから始まる。

 シュバルツバースを生成した悪魔たちの首魁メムアレフは「全ての母」とも呼ばれ、地球を“破壊”する人間たちを滅ぼすために、対となる“創造”の概念から地球のカオス属性の意志として顕現した悪魔である。故に、やがて亜空間内で準備が完了し次第、メムアレフがシュバルツバースを爆発的に拡大させ地球を覆い、文明を消滅させた後の地表で新たに陸地と生命を生み出す心づもりである。しかし、それを妨げるのが我らが南極シュバルツバース探査隊と、そしてメムアレフとまた別の対となる“管理(統制、統率?)”の概念からロウ属性の地球意志が顕現した三賢人、のはずなのだが……大城戸老の説明から、デビサバ2と共存するこの世界はその設定に重大な違いが生じていることが判明した。

 本来SJではメムアレフと対を為すはずの三賢人だが、この世界に彼らは存在せず、代わりにポラリスがメムアレフと対をなす宇宙意志として存在。メムアレフはシュバルツバースにより人間の文明をリセットすると共にポラリスの宇宙による無の侵食を止めようとしており、またポラリスはシュバルツバースごと地球の生命体を一度消し去って新たに管理し直そうとする、両者ともに原作と同じ手段を用いながら目的の半分が変わっているようだ。

 その影響で、シュバルツバース内で三位一体的な存在である三賢人の代わりに、ポラリスがゼレーニン(三賢人側につき、ロウ勢力のボスとなるはずだったライバルキャラクター)に干渉しているそうだ。その介入方法が天使なのかセプテントリオンなのかは不明だが、今のところメムアレフ側はシュバルツバース内に手一杯で地表に手を出す余裕はない。そこを突き、大城戸老は俺にメムアレフ勢力と交渉し、カオス側の手を借りることでセプテントリオン、およびヤマトらジプスと対抗する力を得られるだろうと案を話した。

 確かにその理屈なら力を得られるかもしれないが……メムアレフの考える地球リセットと、俺の考える世界存続の案では、例え一時はポラリスと戦うために手を取り合えても、事が終わればまたすぐに袂を分かつのではないだろうか?

 まさかそれも分からずに冗談で言ってやしないかと大城戸老に問い返すが、そんなことはない、答えは既に汝の中にあるはずじゃとはぐらかされる始末。つまりこの先は自分で考えろってことですかそうですか。肝心なところを投げやがって……!

 

 だが、とりあえず国家権力の方については紹介してくれることになった。メムアレフへの伝手は自分で見つけろとのことだが、一応ここを訪れた法的な後ろ盾は得る目的は達成したことになる。けど……悪魔的な後ろ盾はどうしたものか。

 

 

 

>4日目(水)11:30

 一旦【トラポート】で東京支局に戻ってきたが、ふと大城戸老に言われた話を思い返すと、何か心当たりが思い浮かんだ気がした。悪魔の思想と人間の共存というところで引っかかったのだが、なんだったかなーと少し足を止めて探っているうちにピンと来た。

 なんだ、確かに簡単に答えが出る話だった。デビルサバイバー1のアツロウくんみたく、人間の生活・知識に悪魔の存在を組み込めばいいのだ。

 悪魔が人間を脅かしたり、あるいは悪魔の庇護を受けることで生活出来るような環境下なら、人は地球を破壊し尽くすほどの傲慢な振る舞いを行えず、しかし悪魔の協力が得られる限り人は平和に生きていける。

 平和ではないが、ある意味平和でもある今こそがメムアレフの要望を満たせ、同時に人間の暮らしを保てる丁度いい塩梅だ。こと今になって、悪魔を隠す必要はないってね。正直が一番なのさ!

 

 ななみちゃんの方は妖精ピクシーを介した小妖精郷との交渉が終わり、比較的友好的な妖精たちの協力を得られることになったそうな。戦力としては心もとないが、悪魔であることがまた別の悪魔とのやり取りの役に立つことがあるだろう。悪魔を介して悪魔とのコネを広げるのが俺の目的だ。

 現在はイオっぱいや大地少年らと共にジプスの物資から一部を配給する準備を手伝っているとこらしいので、一段落ついたらまた彼女に妖精を通じた友好的な悪魔を捜索を引き続きお願いする。

 

 

 

>4日目(水)12:00

 大城戸老に紹介された、こんな状況下であるにも関わらず熱心に働いているという官僚の方へ早速挨拶に向かおうと霞が関へ向かう短い道中の間に現れた、憂う者。

 また唐突に現れ、何の話を切り出されるのかと思いきや……憂う者の大好きな、恒例の人間談義である。

 

 むづかし~言葉を使ってはいるが……要するにポラリスのように人間を弾圧したり、あるいはポラリスの力を借りて意志を統一するような、人間の自由な意志を失わせるのはどうなのか?という話だ。今更だな、否だ。だが憂う者、お前の考える世界の姿と俺の考える世界の姿は違うだろうよ。

 原作で憂う者ルートで行き着く先は、ポラリスを排した上で彼が新たなアカシックレコードの管理者となって世界を原始的なレベルからやり直し、人間だけで再進化、再成長、再発展するのだが……ポラリスにせよ憂う者にせよ大地少年の案にせよ元に戻るとかやり直しとかリセットとかばかりなため、正直言って無限ループって怖くね?という話。

 人間ならきっとなんとか未来を良くしてくれる、とか人間なら未来を変えてくれる、とか皆は仰るが……信頼と盲信は違うだろう。信念や信条を持つのは大事だが、それで視野狭窄に陥るのとはまた別だと俺は憂う者に語った。

 憂う者はいつもどおり、そうか、それも人の性か……みたいな何とも読み取れない反応を返し、俺の前から消え去った。あいつの考えは全然読めないなぁ……

 

 

 

 



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変容の水曜日2

 

>4日目(水)13:00

 霞が関の省庁なんてとこに足を運ぶのは初めてだが、魔界や大悪魔と対峙した時の重圧に比べればどってことはない。異能や悪魔関係ではない名も無きモブの官僚の方々であったが、彼らとジプスの独裁体制について話し合い、防衛省など幾つかの省庁に働きかけ、幹部や大臣と連携を取る約束を得られた。汚い手を取ったヤマトに途中で潰されるかも分からんが、そのへんの関係に手を出す暇が無い以上、政治の後ろ盾は彼らに任せるしかない。

 

 彼らとの話し合いが終わり、霞が関の省庁を出た後にマコトさんから連絡があった。東京・名古屋・大阪の湾岸に接近する3体のメグレズ本体全てを19時頃に同時に撃退する旨と、都市間の移動手段についてターミナルが解放されたことを伝えられた。モジャ公が東京を担当し、局長が大阪の援護を行うとのことなので、俺は名古屋の方を担当し、ななみちゃんは東京に配置すると伝えた。メグレズは耐久力の高いセプテントリオンなので、レベルまたは火力の高い異能者がそれぞれに一人いれば苦労することもないだろう。

 今日はセプテントリオンとの戦闘よりも早く、二週目悪魔であるリリスが出現するのでそろそろななみちゃんを拾って大阪に向かわねばなるまい。市民への物資配布を準備している主人公たちに、1時間もあれば戻るだろうと伝えてななみちゃんを借りる。別にデートではないです。

 CHARMされたサマナー対策として神獣マカミをサクッと作成した。PALYZEはCHARMよりも上位の状態異常なので、【マヒかみつき】すれば一応解消することが出来るため。

 

 

>4日目(水)14:00

 現実では今は無き大阪のゲフェス、じゃなかったフェスティバルゲートにて夜魔リリスとその取り巻きで絶賛魅了中の男性サマナーの群れと遭遇。仲魔を排し、【ペトラアイ】で的確にサマナー本体だけを無力化、呪殺の効かない相手にはマカミで【マヒかみつき】させることで敵だけを解除し、残るはリリスだけとなった。(石化とマヒは後で忘れずに解きます)

 リリスはなんと【プライム・ワン】を習得しており、自身のデバフ低下を無視した上で万能相性のCHARM化スキルを放ってきた。しかも魅了は強化されており、一旦かかれば魅了への絆を取得してしまい、それが解消されるまでは回復しない性能となっている……が生憎ながら、TRPGでは「無効」以上の耐性を取得すると、基本的にその相性のバッドステータスを無効化する耐性を個別に取得するため、万能であろうが関係ない。

 ならばとリリスは早速、【メギドラオン】連発の構えに入るが……ここで昨日用意した大量の鬼女ダツエバが生きる。

 TRPG版の悪魔の種族スキルはゲーム原作とは異なるものも多いが、「鬼女」の種族スキル【鬼女の献身】の場合は回復ではなく、「味方全体に選んだ相性無効の相性特性を得る」効果となっている。使用した悪魔のDEAD状態は戦闘終了時まで解除されないが、毎ターン次々に控えのダツエバと交換していけば在庫が尽きるまで問題ないし、そしてこの種族スキルで選択できる相性に制限はない。つまり万能相性を選択すれば、【メギドラオン】や【プライムワン】で万能化した攻撃を一切受けることが無いというわけだ。

 それに気づき、リリスは【デスタッチ】や格闘攻撃に切り替えるが、得意でない分野では大したダメージを与えられることもなく……回避が低下しないとはいえ、何ターンも費やした攻撃を続けられるといかに高レベル悪魔とはいえ耐えられたものではない。

 瀕死の間際になり命乞いをするが、聞く耳持たぬ……とななみちゃんがトドメを刺そうとした矢先、リリスが口走った発言に慌てて静止する。

 え、メムアレフ知ってるの?

 

 

 

>4日目(水)14:30

 70レベル代悪魔の経験点は残念だが、それよりも大事なことがあるので話をして帰した。

 どうやらリリスに限らず、時の翁やネビロスといった二週目悪魔たちはシュバルツバース内からやってきた尖兵だったらしい。彼らの対抗勢力、ポラリスの情報を集めがてら人間たちの勢力を削り取る役目を担っていたそうだ。大木戸老から得られなかったメムアレフへ繋がりうる伝手は逃せないため、「対ポラリスの同盟を組みたい」伝言を持たせてメッセンジャーとして彼女を送り返す。明らかに悪事を働いていた悪魔を逃がすことにななみちゃんが渋っていたが、仕方ないとすぐに納得させた。

 

 だが、リリスは去り際に憂さ晴らしとばかりに、不意に【あくまのキッス】してきた。

 メインアタッカーはななみちゃんが務めているため、俺がマヒしても致命傷になることはないし、ディスパライズですぐに治療したけどななみちゃんが本気で怒っている。

 こら、まだマヒの後遺症残ってるんだから変なことしな

 近

 

 それ以上を経験済みな俺でも、キスだけでそんな恥ずかしくされるとこっちも恥ずかしくなるぞななみちゃん。

 

 

 

>4日目(水)15:00

 ななみちゃんが嫉妬していつも以上にスキンシップの距離が近い。腕を掴むどころか肩を密着させて抱きついてるくらいなので歩き辛い。というかリリスから救助した人の目の前なんだから、恥ずかしい、やめなさい。

 戦闘中、無力化するために石化やマヒなどの荒い手段を取ったことを詫び、倒した悪魔を蘇生するなどの補填をして解散させた。この場で自勢力に誘うことも考えたが、悪魔にひどい目にあった直後に悪魔と協力する勢力に手を貸してもらうなんて無理な流れだろうと断念。

 

 当初の予定とは異なったが、リリスを解決したので今日は残りメグレズを倒すだけ……だがその前に、今日のうちに確認しておかなければならないことが残っている。明日の、北海道市民救出作戦の予定をロナウドと詰めねばなるまい。

 ななみちゃんを引きずって、名古屋に跳んだ。

 

 

 

>4日目(水)15:30

 さてどこにロナウドがいたかな……とふとケータイを確認したらジョーさんの死に顔動画が来てた。

 そうだ、公園に来るんじゃん。ネビロスの時に場所は確認したから先回りして向かおう。

 

 

 

>4日目(水)16:00

 サクッと飛び回ってサクッと悪魔を殲滅してサクッと解決。

 モジャ公たちが到着する前に殆どの悪魔を殲滅し切り、逃げ出す悪魔。悪いな、些細ながら経験点はもらったぞ。

 

 ロナウドをとっ捕まえて、【トラポート】の用意は出来たか確認を取る。いまいち準備は捗ってなかったようなので、ロナウドに手持ちのカーシーを全て押し付ける。自分の分はMAGも残ってるし、後で作ればいいとして……東京大阪名古屋と来て、今日は3都市全域に被害が及んだことから、明日にでもセプテントリオンの被害が北海道へ及ぶ可能性が高いことを話し、名古屋と東京の例を見るに防衛するだけのジプス戦力が向こうに残っているとは思えないため、少しでも市民を名古屋に避難させるようロナウドに指示した。北海道へ繋がるターミナルのパスコードは知らないが、複数名いる市民サマナーの中に一人くらいは旅行経験者がいるはずだろうし、その人物を介して転移するように作戦を話した。

 明日の正午、遅くてもアリオトが北海道に接近する2~3時頃までには撤収するよう忘れずに注意する。大阪から現地に下準備へやってきたジプスと遭遇する可能性もあるが……なるべく戦闘は避けるようにも厳命。指示ばかりで申し訳ないがうまくやってくれと頼めば、ちっとも嫌気も見せずに任せてくれとロナウドはやる気を出した。こういう役回りなら本当に良い人物なのなクリッキー……。

 

 ハッ、しまったイオっぱいに聞かれた!捕まえろ!!

 

 

 

>4日目(水)16:30

 なんとなく捕まえたけど、そこまで慌てることでもなかったな。乱暴になったが正直すまんかった。

 

 名古屋支局で対決したロナウドと密談をする俺を不審に思って追いかけてきたらしい。北海道の現状や未来がどうなるか知らないイオっぱいには、話の要領はよく分かってなかったようで一安心。とりあえずジプスに対抗するための活動であることは伏せ、全てを救おうとしない方針のジプスとは別個に市民救助活動を考えてて、リソースの無駄だと却下されるのを防ぐためロナウドを使ってこっそり準備してる。だからモジャ公らには言ってもいいけどジプスには告げ口しないでね?という部分的に真実の話を伝えた。出来れば私も助けたい、と義心を見せようとするイオっぱいにはセプテントリオンを撃破する大事な役目に専念させるため、控えていただいた。

 ふー、とりあえずこれで今日の根回しは終了。あとはサクッとメグレズ撃退に参加して、メムアレフとの使者と顔合わせもしくはユーバーゲシュタルト人経由でシュバルツバースに乗り込……めるかなぁ。最悪ななみちゃんのコネ使って妖精郷経由だ、後で確認しよう。

 と思ったらロナウドから写真を手渡される。名古屋ジプスを占拠していた時に集めたデータから、出てきた福岡の画像らしい。……無に侵食された画像か、原作で主人公に見せる奴だな。丁度いいと、イオっぱいに預けて、モジャ公に見せるようにお願いした。セプテントリオンの目的の伏線は撒いたし、原作よりもすぐに感づくだろう。

 

 

 

>4日目(水)17:30

 ななみちゃんを東京へ送り飛ばし、自身は名古屋で待機。

 ジュンゴとおヘソちゃん、それからフミっぱいと合流し、しばしお互いの戦力や作戦を確認する。とはいっても名古屋は俺が高揚つき【ブフダイン】で弱点殴り飛ばせばすぐ終わるし、東京はバカ火力に育ったななみちゃんがいるためむしろ局長のいる大阪が足並みを合わせられるかが心配である。……モジャ公には大阪に回るよう頼むべきだったかな?まあ、なんとかなるでしょう。

 そんな作戦も何もない結論を申すとフミっぱいに呆れられた。事前準備が完璧に整っていれば戦いなんて消化作業ですよ。

 

 

 

>4日目(水)19:00

 メグレズうぇーい。港からトゲ付きの球体……某モヤッとボールみたいな巨大なセプテントリオンが転がってきた。巨大なのは例によってアニメ仕様か。

 ともかく射程圏内に入ったので【ブフダイン】をぶちかます。ちまちまと地震を引き起こしHPを削ってくるメグレズの芽や、戦いを聞きつけて沸いて出る雑魚悪魔らはその他3人や仲魔に迎撃させて、ひたすら撃つべし撃つべし撃つべし。4ターンほどかけてHPを0まで削りきったが、メグレズの仕様上同時にトドメを刺さないと再生・復活するため、大阪が倒すまでの数ターンはなんとか時間を稼がなければならない。東京?3ターン目で削りきってたってよ。

 暇をもてあます間に、味方に補助や回復をかけて粘っていると、8ターンほどかかった頃にようやく大阪もトドメを刺せると連絡が来たのでここぞとばかりに火力をぶち込む。メグレズ、轟沈。

 原作の通常プレイだと逃げるわ物理耐性で硬いわ射程は長いわ、挙句にストーリーも中盤だから戦力揃ってないわと苦労させられるセプテントリオンだが、所詮こんなものである。まだ単純に数が多かったり、そもそも殴らせてくれないセプテントリオンの方が苦労させられるね。

 

 

 

>4日目(水)19:30

 ジプスのターミナルを初利用して東京へ帰還。部屋に戻ったらユーバーゲシュタルト人と連絡を取って、シュバルツバースに乗り込めないか相談したら、早速ジプスのターミナルを用いて南極に転移する手段を提案されるが却下。原作で脱出しようとした際に『三賢人』が妨害し、船を撃沈させる場面がある以上、万が一ターミナルという移動手段を破壊されると今後の防衛活動に支障が出るのが危険だ。

【トラポート】を用いて出入りすることは出来ないか確認したが、並の魔法的な手段では結界のようなものがあるため不可能だと否定される。期待はしてなかった。では妖精郷のフェアリーサークルのような魔界ゲートで遠距離移動は出来ないか?と聞けば、そもそも妖精郷のような中~大規模悪魔勢力が存在しないと突っ込まれる。そういえばそうだったわ……あったらここまで同盟探しに苦労してねえわな。

 悩みに悩んだ末、【銀の鍵】を持っているコネに当たることにする。時空や次元を渡るアイテムに因んだ名称の神威だが、出展故にクトゥルフ系NPCに多く有する他、ターミナルや何かしらのネットワークに関係するNPCに所有者が多い。そういう意味でユーバーゲシュタルト人(スティーブン)が頼りだったのだが、彼の神威リストには載っていなかった。ううむ、他に心当たりというと……この世界にイゴールはいないし、あとはヒーホーブラザーズくらい……橘財閥か、紹介状経由でいけなくもないが時間が残されているものかどうか……。

 

 暫く考えを固める時間をくれと通話を切って、ベッドに伏せながら思案していると扉をノックされる。ななみちゃんかと思って部屋に招き入れたが、入ってきたのは彼女ではなくモジャ公とイオっぱいだった。何故に?と思ったがそういえば昼頃に福岡の写真を渡して見せたことを思い出す。

 何か聞きたいことでもあるのかと、伝えられる内容をまとめていると予想外の質問をされる。ジプス局員なのにどうしてヤマトの意向と異なる、市民救助を援助しているのかと尋ねられた。この話がヤマトに漏れ、対立を早める可能性を考えるとあまり話したくないが……ななみちゃんの顔がチラつき、彼女なら敵を作ることより味方を増やすことを選ぶかな、なんて考えから正直に話す方へと天秤に傾いた。

 ジプスの対抗、というより受け皿だが、こっそりとそれを整えているところと彼らに答える。悪魔退治からセプテントリオン撃退までジプスにおんぶ抱っこである以上、日本の危機を救うためには例えジプスが市民に非情で、強引な姿勢を取ろうとも服従するしかない現状ではその姿勢に反対しにくかろうが、しかし彼らとは別個に勢力を得られれば彼らの力持つ者特有の傲慢な考えを見直させるきっかけになることが大事、だからこそ俺は勢力の下地を整える働きをこなしている最中だと話す。

 もしヤマトがその反対勢力の主張を認めなければジプスと戦うことになるが良いのか?とはモジャ公の言葉だが、それを恐れて独裁政治で弾圧され、後々ゲリラ的に暴動が勃発されるよりも、適度に反発した方がまだ多くの人間が納得するものよ。それに……、と一瞬ポラリスのことを言いかけて、これをまだ四日目の今言ってしまうとヤマトとの関係こじれが早まるなと思い、セプテントリオンを全て倒す頃にヤマトの真意が明らかにされるだろう。奴が言葉にするまでは、俺からもまだ言えないと口を濁した。六日目の『ミザール』大増殖を抑えるのにヤマトが龍脈使いそこねる展開になるとか、洒落にならんからな。

 悪いがモジャ公たちがヤマトとジプスへのスタンスを決めるまでは黙秘を貫かせてもらう。

 

 彼らを部屋から追い出して、またベッドで思考に耽ろうとした矢先に今度は携帯が鳴る。ななみちゃんからの連絡だ、なんでもロナウドたち北海道救助隊から緊急の連絡があったらしい。

 ちょっと外行ってくる。

 

 

 

>4日目(水)20:00

【ウォッチャー】――使い魔(あるいは仲魔)を飛ばす、地味にサマナーでは習得できない魔法系異能者クラスの情報収集スキルを持つサマナーが市民の中に混じっていたらしい。使い魔を経由してななみちゃんにコンタクトを取り、そこから俺へ連絡が回ってきたという。

 内容は北海道が思いの外、悪魔祭りで救助以前に苦戦してるとのことだ。だが少なくとも現時点で3人は助けられたらしい。やっぱりいるじゃないか、原作ヤマトの嘘つきめ。そちらに付き添って救助に参加するほど時間に余裕はないが、めぼしいボス悪魔だけで良ければ撃破の手伝いをしても良い、と答えて次の連絡を待つ。

 再度連絡が来た。明日の午前10時頃に、名古屋駅へ迎えに向かうのでよろしくとのこと。アリオトが東京に接近する時間帯だが、さほど問題はないだろうと了承。

 

 ふう……ななみちゃんがベタベタうるさいけどどうしたものか。ダメ元で携帯の連絡先を確認するが、当然ながらジプス関係者と主人公組を除けば、異能者の知人なんて残らない。ましてや神威【銀の鍵】を持つコネなんて……あ、いや待て。TRPG版にはデビルサバイバー2のコネこそ載ってないけど、デビサバ1に登場したアレとかなり似通った性質を持ってるはずはずだ。なら神威リストだって……!

 助けてうれたーん!!

 

 

 

>4日目(水)20:30

 毎回呼んでも無いのに唐突に来る憂う者だけど今回ばかりは助かった!

 実はニカイア管理者のお前なら、きっとラプラスメール互換として【銀の鍵】を有しているはず……ちょっくらシュバルツバースまで連れてって!

 

 

 

>4日目(水)21:??

 エリダヌスinシュバルツバースなう。

 

 




種族スキルは強い


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変容の水曜日3&驚愕の木曜日1

>4日目(水)22:??

 シュバルツバース内部にはアントリア(A)からホロロジウム(H)まで8つのセクター(区域)が存在し、各セクターを“母”と呼ばれる生命や創造を司る神・悪魔が守護している。特にここエリダヌス(E)は最も地上に近く、脱出が可能な浅いセクターなため唯一外部との出入りが可能である。ただし、外部からではシュバルツバースの侵食を防ぐことは出来ず、また脱出・侵入の際に悪魔の妨害を受けやすいため簡単には出入り出来ず、正攻法で脱出する時はそれこそシュバルツバースを攻略した時となるだろう。

 ただし憂う者という裏口を借りた俺は例外だが。しかし移動と引き換えに、彼に一つ用事を託される。シュバルツバース内にいる、もう一人の『輝く者』……彼の人としての意志を確かめてほしいとのこと。

 要するに、ストレンジジャーニーの原作主人公がどのルートを辿るのかを見定めてほしいのだろう。俺も気になるし、外部に影響が無いわけじゃないし確かめよう。あわよくばNルートに誘導するのも悪くない……が、出来るかなぁ。

 

 さてシュバルツバース内のミニターミナルに到着したところで移動を開始する。といってもシュバルツバースはセクター毎に亜空間で分かれているため、通常の移動手段ではセクターを渡れない。そして【マッパー】で周辺を確認する限り、どうやらこのセクターに南極探査隊のレッドスプライト号はいないようだ……。

 であればセクター間を移動せねばなるまい。内部に移動したところで改めてユーバーゲシュタルトと連絡を取り、ターミナル間の移動を手伝ってもらう。外部と内部の移動は難しくても、内部間の移動なら実に簡単なのだ!

 

 シュバルツバース内にあるターミナルを用いて、本来同セクター間でしか移動できないものを彼の協力により無理矢理セクター間を移動するのに用いる。目指すはホロロジウム、母(マー)を意味する言霊そのものだが、ことシュバルツバース内においては悪魔の母であるメムアレフが最深部に待ち受ける最終セクターだ。

 

 

 

>4日目(水)23:??

 ホロロジウムの上層はまるで熱帯に包まれたジャングルのように原始を思わせる風景をしているが、下層に行くに従ってまるで生命が生まれる時代よりはるか昔を思い浮かべる、地球が誕生した時のごとき溶岩と灼熱に包まれた世界となる。

 調査隊たちは未だこの最終セクターに到達してないようで、本来ならすぐに破壊され遠回りをせねばならなくなる最深部直通のエレベーターが機能しており、無事にメムアレフの元へ到達出来るはずだが……ケルトの暗黒の女神、地母神スカディがその前を塞ぎ、俺の素性と力を確かめるべく襲いかかってきた。

【地母の晩餐】、【会心】を持つ高レベル悪魔のスカディは流石の俺でもヘカーテに変身しただけでは完封することは出来ない。ある意味リリスよりも強烈な打撃を【メディアラハン】で受け流し、自らの大技で消耗したところを【ブフダイン】で叩き込み凍結したところをオオモノヌシが【不動剣】でクリティカル。見事と称賛を言い残してMAGと化すスカディが残した女性用最上級防具、カムライターオとスカディが落としたレアフォルマらしき謎物体を回収してエレベーターに乗り込む。原作みたく最後っ屁に壊されたりせずによかった……!

 超人になり、必要経験点が上がったこともありここ最近上がってなかったレベルが上昇し、46になった。シュバルツバース内はまだまだ危険な悪魔が一杯いることだしと、エレベーターで地下まで下るインターバルにスカディから得られたMAGで悪魔合体を行う。

 主にレベルの割に作成が楽という理由から、精霊ランクアップを駆使して霊鳥ジャターユを作成。

 同様にダーク悪魔でありランクアップが容易、かつ所持スキルが優秀である邪神ツァトゥグァを作成。素材にオオモノヌシを使用し、いつでも蘇生して【メディアラハン】を撃つことが出来る優秀な支援役だ。

 打撃役には三分の活泉のためだけに魔王オーカスをベースとし、ギリメカラからランクダウンして【物理無効】を引っ張った邪神ニャルラトホテプと組み合わせた造魔を作成。例によって【フォッグブレス】【魔法耐性】も継承し、全門耐性持ちの隙のないメイン前衛だ。ただし剣耐性は勘弁な。

 

 あと最後に神獣ナンディさんの束、5体。例によって【リカームドラ3】持ちのリセット要員だ。これで5ターンは最低持つという意味合いも兼ねる。

 

 

>5日目(木)00:??

 文字通り灼熱のまっただ中、スキルによってシュバルツバースのどこからともなく「掘り出し」た極地適応済み装甲服を身に纏い、なんとか環境ダメージを防ぎながらメムアレフとご対面。

 原作ではあまりに強すぎて主人公の自力だけでは姿を見られなかったとされる大神霊だが、超人である俺には裸眼で見える。その御姿は、例えるなら……寝そべった仏像。

 リリスを通じて協力を請い、スカディにその力を示した俺を直に見てメムアレフは、カオスの一端が感じられると高評価。しかしこれから彼女の期待を裏切るかもしれないと思うと、逆鱗に触れるのが怖くてしょうがない。四文字よりレベルが低いとはいえ、後期サプリ掲載のボス悪魔だけあって数種類の専用スキルは極悪。特にスクンダ内蔵の万能魔法【大洪水】やら、回復に加えデカジャデクンダ同時発動の【始祖の理】など、力押しだけで無い分、打点を除けばなんだかんだ言って四文字より強いかもしれない御方だ。

 否定はせぬように、しかし俺の願いを彼女に伝えるべく言葉を尽くし、あるべき人間と悪魔が共に立つ理想の世界を訴えた。メムアレフといった彼女ら母なる悪魔は原始の、人間が争い、生と死が蠢く文明の無い社会を望んでいるが、文明や知識という軟弱さは決して力なき者の逃げ道ではない、むしろ「知」という能力は魔術・魔法にも通じる、れっきとした人間の一つの力であり、それが発達した文明の利器というものも―――争う武器の使い方からは逸れているが――戦いのための武器である、等と俺は魔術の一側面が錬金術に、そして科学へと発達していった例を上げて人間社会の必要性を訴えた。その上で、彼らの主張する軟弱な文明に逃げ込まないように、人間が文明を争いのための武器とする理由として、我々人間の身を脅かす悪魔の存在が常に身近にあれば良い、という提案・妥協案を投げつけた。そしてこれこそが俺の望む、悪魔と人間が共存するがしかし平和でない、カオスでもありロウもある、しかし決して殺伐としただけではない、悪魔の存在が社会に組み込まれるライト的理想の世界だ。

 この一連のプレゼンテーションが終わるまで彼女から反対の声は上がらなかったが、語り終えてやや渋る口調でそれだけの力を持ちながら、何故自らがのし上がる世界を望まないかと問うてきた。それは勿論、一人の実力でやれることには限界があると知っているからだ。あのクソ女神……もとい、目の前のメムアレフよりも遥かにぶっ壊れた実力を身に付けた奴と戦っていれば、一人ではどうしても倒せない相手がいると知っていれば、どれだけ強くても限界があると分かっていれば、単純な力比べだけを重視しがちのカオスの世界では適材適所、有利不利、長所短所という言葉が残らないのだ。こと悪魔相手に隠す必要もないだろうと、俺が異世界出身であることを交えながらワケを話すと、メムアレフはふむふむと頷き、幾つかの条件と引き換えにポラリスへの共闘、場合によってはシュバルツバースの縮小や侵略により無と化した陸地の修復を呑んでくれることになった。

 その条件にはレッドスプライト号の説得や悪魔との関係構築の仲介など戦闘を行わずに済ませられるものも幾つか含まれていたが、特に戦闘が必要な条件として、俺が自らの理想を訴える一勢力のリーダーとして、彼女メムアレフの協力を得るのに妥当な実力を持つか、また俺が述べた力不足の経験がただ単に非力で及ばなかっただけではないという証明として、ここシュバルツバースに眠る「神」を打倒してみせよ、というとんでもないノルマを課された。

 ここで彼女が言う神とは、単にどこかの神族である悪魔とかではないだろう。このシュバルツバースには、二周目以降の隠しボスとして、他作品にはひっきりなしに登場するはずのメシア教の最大神―――の一側面である「偽神」デミウルゴスが封印されている。

 メムアレフは、俺にそれを打倒してみせよと述べたのだ。つまり、メムアレフでもポラリスでもないが、唐突なラスボス戦をしろとのことである。

 

 

 

>5日目(木)01:??

 偽神が封印されているセクター、グルース(G)に移動しつつ、対策を考える。案内としてつけられたのは、この前逃がした夜魔リリスだ。投げキッスを飛ばして誘惑してくるが気にせず思考に耽る。

 まずデミウルゴスのデータはTRPG版にはない。オリジナルデータも考えられるが、予想の出来ないそれよりは既存のデータが流用された悪魔であると考えた方がいい。

 まず予想されるのは四文字こと、唯一神YHVHと同一のデータであること。偽である場合はレベルが低い分、楽勝であるとして対策から外すが……龍の眼光による多数の【メギドラオン】および【雲耀の剣】連打は流石に耐え切れるものかどうか怪しい。全力で【ランダマイザ】【ラスタキャンディ】を仕込んで無理矢理ダメージを抑えても耐え切れるかどうか。かといって即行で落としにかかるには火力が足りないし、ほぼパラメータカンストの四文字の回避率は回避不可スキル抜きでは当てられたものではない。この場合は必然、【メギドラオン】が切れるまでの持久戦になるだろう。最も勝ち目の薄い相手だが、一度悪魔を展開さえ出来ればナンディの【リカームドラ3】連打や鬼女ダツエバの【鬼女の献身】による万能無効などで凌ぐ余地はある。戦闘がどのような状況で開始されるかが不明だが、なんとか出来る可能性は高い。

 次に可能性が高いのは、堕天した神であるとして、魔王ルシファーや神霊サタン、ひょっとすると大天使メタトロンである可能性も否めなくはないが、このへんは四文字に比べれば万能相性一択で無い分の行動に隙が多く、レベルも低いため打点も低いためまだ楽に戦える相手だ。ダツエバによる万能メタは効かないが、そこまで必要な相手とも思わない。

 最後に魔王アーリマン。打点もレベルも前述のボスたちに比べれば見劣りするが、雲耀の剣とは違い対象全体の格闘攻撃スキル【末世破】と持ち前の【会心】により、唐突な手痛いクリティカルを負う可能性がそこそこあるため油断はならない。あと指定した行動の種類を取った奴を即死させるスキルも結構危険であるが……強いか弱いかでいえばやっぱり弱いので、特に対策はいらないけど。

 こうして見ると、悪魔を展開出来るまでの数ターンをいかに凌げるかが問題となりそうだ。しかし勝ち目が決してないわけでもない。特にMPが削れるまで耐え切るか、【鬼女の献身】でメタってるうちに殴り切るかのどちらかとなるか。MAGの在庫は、幾分か使ってしまったが悪魔召喚やMPコスト肩代わりに使う分には十分に残っていることもあり、戦う前に負け確定ということはないだろう。だが、今のやや雑な合体を行った仲魔の構成では防御点を抜くことは出来ない、か……。仕方ない、ミレニアム以来だが再びあれを使う時が来たか。

 とりあえず鬼女ダツエバを束で購入、手持ちは計30枚に。そしてシュバルツバースの高いGPを活かして精霊2身合体により妖魔クルースニクを作成、同種合体で精霊エアロスを御霊のパーツにして【至高の魔弾】(とついでにガネーシャからもたせた【食いしばり】)を各種悪魔に持たせて削る準備は万全。

 んでもって問題のグルース地下4階へやってくる。案内はここまでだと、健闘を祈ると言い残して彼女は扉を離れる。この扉の中にデミウルゴスが封印されているということで、事前に仲魔を召喚して万全の体制を整えた状態で戦いに挑む。さて、何が出るかな……。

 

 

 

>5日目(木)02:??

 デミウルゴスのデータは、真四文字だった。予想していた中で最も強力であり、あのクソ女神を除けば俺が戦った中でも最強の悪魔であり、そして名実ともに真女神転生200X既成の悪魔データの中では最高のレベルを誇る「ラスボス」である。

 ご挨拶とばかりに放たれた【メギドラオン】3分割を早速ダツエバが【鬼女の献身】でカバーする。生じた隙に造魔が【フォッグブレス】で回避を下げ、霊鳥ジャターユ、邪神ツァトゥグァ、そして本体の俺が【至高の魔弾】を飛ばす。ある程度スキルを放って減ったHPはツァトゥグァの【メディアラハン】で早々に全快させる。

 こんなことを許すほど敵も馬鹿ではない。万能が防がれる状況ではあえてスキルを使わない攻撃を行うしかないが、それでも物理無効を持つ造魔や俺は削ることが出来ないと諦め、虎視眈々と隙が生じるのを待ち受けていた。鬼女のカード30枚が切れるまでの約60ターン以内に削りきれるかどうかは運だが……まあ、流石に60ターンもかけて毎ターンフォッグブレスかけて回避を下げつつ2~3回の防御点無視を放つ心積もりでいれば、いかに回避率50%だろうがHP6000超えだろうが死ぬものだ。やったぜ。

 ……四文字ってこんな簡単に倒せる相手だったっけ……?

 

 ところで【宝探し】しようとしたら真四文字はラスボスだからかドロップアイテムが設定されておらず、拾得物はなかった。こんだけ苦労しても生玉すらないとか、訴訟。代わりに特に意味はないけどカードハントをした。真四文字Lv108の悪魔カードゲットだぜ(使えない)。

 60レベルになった。これでもまだミレニアム死亡時のレベルより低いんですってよ。

 

 扉から無事な姿を見せたらリリスにドン引かれた。偽とはいえ神を倒すのがそんなに凄いのかと疑問に思ったが、そういえばHP消費はコストだけで実質無傷だったことを思い出す。そりゃ引きますわ。

 

 

 

>5日目(木)03:??

 戻ってメムアレフかーちゃんにご報告。リリスから伝わったのか反論も疑いもなく粛々と話の段取りが進む。あとは未だシュバルツバース内にいるレッドスプライト号の処理とか、ついでにポラリスの使徒でもある大天使マンセマットの扱いとかの話だが、デミウルゴスを無傷で倒すという彼女に予想以上の成果を見せてしまったせいか最早他の条件などどうでもいいような反応だったため、これが実力主義や力の世界では目立たない、知の力だ!なんて言い放つと薄ら笑いのかーちゃんが真顔になった。シュール。

 とにかく約束は取り付けたので、ホロロジウムを出る。レッドスプライト号は現在フォルナクス(F)を攻略中、やがてティアマットの元に到達しそうということで、出来るなら彼らも説得してポラリスへの共闘の方針に転換してほしいとの要請をメムアレフから受ける。どのみち憂う者の用で確認をせねばならないので、それも考えておきます。

 案内役、および今後のメムアレフとの連絡役として例のリリスをつけられた。その見た目は俺に効く、やめてくれ。流石に狼狽してしまい、思わぬ弱点を見つけたと積極的にアプローチするリリスをあしらいながらフォルナクスへ。

 

 

 

>5日目(木)04:??

 フォルナクスはなんとも特徴を挙げづらい、一面金色でメタリックな通路が張り巡るセクターである。

 そこに停泊中だったレッドスプライト号を発見し、調査隊の方々に銃をつきつけられるお出迎えを受けながら彼らと話をする。

 こちらの素性―――といってもこちらの表向きの身分はジプスという日本国の対悪魔組織に所属中の元民間人の悪魔使いである、としか言えないのだが―――を伝え、地球上がシュバルツバースとは異なる悪魔の侵略による被害を受けておりその解決のために別の悪魔の協力を得ようと、シュバルツバースへ交渉に取り付けにきたところだと話す。外人構成部隊なだけに受け答えは英語なため、日本人の隊員を通じて彼らメンバーに通訳される。

 シュバルツバースに存在する悪魔と協力を取る行為を批難するものもいたが、調査隊のリーダー代理らしき通訳に当たっていたのとは別の男性日本人が主導を取り、訪問の理由を尋ねる。ようやく本題に入れるということで、彼らにこのシュバルツバースの中心であるメムアレフと協力関係を結び、亜空間の拡大を止めさせたことを話して、シュバルツバースで行動する理由は無い、今すぐ地上に戻って別悪魔の侵略への抵抗に参加すべきだと忠告した。

 ……つい南極の事情や、探査隊の目的を知っている前提で話してしまったため本当に民間人か?と再びこちらのことを疑われてしまったが、案内役として付けられたリリスを紹介すると、少なくともシュバルツバース内に詳しい悪魔と友好関係を結んで付き合っている人間とは納得されたようだ。

 船には上げてもらえないが、出来れば情報を聞きたいと引き続き会話を要求される。時間制限はあるが構わない、ただし引き換えにこちらの用も済ませたいと、この調査隊の現リーダーに……正しくは実力的な意味でトップの者、恐らく日本出身者に聞かねばならないことがあると伝える。用を託された憂う者から第二の輝く者は『日本人』であると聞いていたので、人違いを抑えるために伝えても問題はない。

 少し船内への伝達に時間を取られたが、聞き取りの場に同席するということで、デモニカスーツを着込んだ隊員が降船してきた。【アナライズ】で調べた感じ、40近い飛び抜けたレベル的にも彼がSJの原作主人公で間違いはないだろう。

 

 俺の用件はひとまず後に回し、シュバルツバース内の説明を続けるが彼らはそもそもシュバルツバース内を治める悪魔たちが何なのか、ただの思考し、知恵を持ち、喋るモンスターでしかないという傲慢な認識を改めるために、悪魔の成り立ちから説明する。メガテン世界にほぼ共通する悪魔の性質として、多くの悪魔は宗教や物語、時には空想や概念などに、人間の信仰や恐怖、尊敬畏敬などを通じてその概念を核とした悪魔にマグネタイトが流れ込むことで、実世界や異界・亜空間内にその悪魔が発生するものだ。真・女神転生2で四文字が「神は信仰がある限り滅びない」と述べた通り、人間の記憶や記録に残る限り、神や悪魔は本質的には不滅ということを教える。

 その上で、シュバルツバース内のセクターを治める悪魔たち、例えばここフォルナクスのティアマットはメソポタミア神話の海の女神であり、他のセクターを治める悪魔たち、特にエリダヌス以降に出るボス悪魔たちは神話で語られる母だとか、原始や概念の神々である。ラスボスであり首魁であるメムアレフも同様に母の概念から生まれた悪魔だ。そんな彼らがシュバルツバースを作成し、地上を侵食しようとする目的は地上に飽和した人類が環境の破壊と汚染を続ける人類への制裁にあることを伝えた。故に彼女らは言うなれば地球の自浄作用として生まれた悪魔たちで、人類にははた迷惑な存在かもしれないが警戒を呼びかけるために現れた彼女らを倒してシュバルツバースを解決しても、生き延びた人類は引き続き地球を破壊し、遠い未来に自滅の道を辿ることになるだろう。

 地球の代表でもある貴方たちはシュバルツバースを解決し、人類を救える選択肢を持つが、同時に未来の人類を自滅の道へ招く選択肢をも選びかねない。悪魔のことは恐ろしいだろうが、俺としては自浄作用である悪魔たちとうまく付き合い、恐ろしくも親しい隣人として過度な地球破壊を防ぐことを考えてほしいと話した。

 

 俺がシュバルツバースについて知っていることはだいたい話し終えたが、余分な話も混じえたしまったせいで、調査隊を戸惑わせることになり原作主人公に彼のスタンスを聞ける状況ではなさそうだ。調査隊の皆には今の話を共有し、考える時間を取ってもらうとして、あとメムアレフや今後待ち受ける悪魔データの幾つかくらいは知っていることを伝えると、こちらが落ち着いて再度話を聞ける状態になるまで休みを取ってほしいと船内にリリスともども通される。

 念願のレッドスプライト号に乗車したぞ。

 

 

 

>5日目(木)05:??

 船内に上がり、シュバルツバースの(フォルナクスは安全ではあるけど)極地防御のために着けていたごっつい装甲服を脱ぐと、同行・船内を案内していた調査隊の面々から驚きの声が上がる。young、若いことに驚かれたのだろうか。異能者は一般人と違い、短期間で悪魔退治などにより経験を積めば簡単に強くなれるので、才能が最も強さに関わるので、若くして強いことはさほど珍しいことでもないのだけど。……そういえば、原作のデモニカスーツはレベルアップ機能を備えているので異能の有無は関係なく、本体の強さを見て調査隊が選ばれたんだったか。先ほどはシュバルツバースということでそのへんは伝えなかったけど、次は従来から存在する悪魔と異能の話もした方がいいのだろうか。

 ところで船内を俺と共に移動中の夜魔リリスに、果敢にもに告白し、二言であっけなく振られた調査隊員がいた。もしかして、あれが何度も女悪魔に告白しては恋破れることで有名なアンソニー隊員か……?

 

 俺たちは管制室に案内され、調査隊の作戦班所属の面々と挨拶を交えながら、レッドスプライト号のシステム処理や作戦プラン・ミッション発令を管理する疑似人格プログラム「アーサー」との対面を済ませる。そしてシュバルツバース内についてまだ話せることがあれば、隊員の代わりにこのアーサーが担当すると伝えられた。混乱している調査隊が落ち着くまでは常に冷静なAIが話を引き継ぐということなのだろう。

 初めまして、と丁寧な挨拶から始まり、早速異能者と悪魔についての質問が始まった。俺は知っている限りのことを(憶測、予想が混じる内容はそれも伝えなから)音声を通じてアーサーに入力した。悪魔という存在について質疑応答を繰り返して、どんどんと詳しくなっていくアーサーに調子を良くした俺は、異世界渡航の経験があることもバラし、他の女神転生世界で起きた出来事を俺が知った・聞いた話という形にして伝えていく。その上で再度、アーサーに俺の理想である「悪魔と人間が共存する世界」の形を伝え、おかしな点があるかないかを「彼」に逆に聞いてみた。

 アーサーはその理想に「筋道は通りますが、それで多くの人間が救える可能性は低い。むしろ場合によっては争いを助長する可能性もあるため、貴方のいうLightな考えには完全に必ずしも一致しない」と評した。

 むう、やはり数日で思い描いた形にしては穴があるか……と再び悩みかけた俺にアーサーはスピーカーから音声を響かせて、こう伝える。

「しかし悪魔が不滅である以上、悪魔を一時的に倒しても将来リバウンドする可能性が何度もあるというのであれば、最初から悪魔の知識を人類に公開するというのは理に叶っています。英雄的ではありませんが、小を捨てて大を救う決断は後年になって初めて賞賛されるので、必ずしも間違っている行いではありません」

 情を排した擬似人格プログラムという第三者の視点から己が理想を認められたことで自信を取り戻した。ななみちゃんの馬鹿が移ったわけではないが、人を助けることに利益とか打算とか、深く考えすぎる必要はないよね!

 

 お礼というわけではないが、アーサーに俺の知るメムアレフやティアマットのデータを伝えて、今後万が一敵対関係になった場合に備えてボス対策を伝えておく。隣でリリスが怖い顔をしているが彼女たちが人類と二度と敵対しなければいいだけなのだ、それにどれだけ対策をしたところで強い悪魔はそれだけで強いのだから関係ないものもある。

 

 

 

>5日目(木)06:??

 少し仮眠を取らせてもらい、ようやく調査隊の面々が落ち着いた頃に話を再開する。とはいっても伝えられる事項はおおよそアーサーに伝えてあるので、話せることはそう多くない。せいぜい、外の世界で何が起こっているのかについてだろうか。

 現在、外の世界はメムアレフとは別のポラリスという宇宙悪魔に侵略を受けており、シュバルツバース前から世界の裏に隠れていた異能者たちが主要都市に張った結界外の大部分はもはやブラックホールのように謎空間へと削られる“無の侵食”を受けてしまい、残った都市もセプテントリオンというポラリスの手先が結界基部を破壊しようと侵略を続けていることを話す。セプテントリオンは今のところ先日まで無事撃退出来ているが、差し向けられるセプテントリオンはだんだんと強化されており、やがて人類の力では撃退しきれないレベルに至るだろう予測を話す。

 俺がメムアレフと協力関係を結んだ理由には、そんなセプテントリオン撃退のために助力を得たい事情があったからだと話す。ただし人類側に全く用意がないわけでもなく、日本を秘密裏に守護する国家組織ジプスの長、峰津院家は様々な悪魔の秘密兵器を所蔵しており撃退する秘策も有するはずだが、そのジプスが力無い民間人を切り捨てる方針なので彼らを当てにすると間違いなく大勢の人々が死ぬ。それを避けるためにもジプスとは別の民間人を守れる勢力が必要、だから少なくとも外の事態が解決するまでメムアレフを倒さないでほしい……とまで話し、ようやく俺の理由と目的を調査隊員たちに伝えられた。

 ただしシュバルツバース調査隊たちはあくまで国際組織、日本だけの部隊ではないので日本のことを危惧する必要はないとも言える。ヨーロッパやアメリカ、海外がどうなっているかも俺は分からないので、彼らの心に危機感を訴えるほどの情報は有しておらず、彼らの心が人々の救出を優先に考えるのか、それとも部隊の目的であるシュバルツバース調査および打開を優先するのかは俺には予想出来ない。

 

 とりあえずメムアレフや幾らかのボス悪魔たちを倒さずにさえいてくれれば俺としては協力関係を維持できるということで、その他の調査とか採取・収集活動は彼らと敵対しなければ何ら問題ないと伝え、この前倒したスカディのレアフォルマ「御先の勾玉」を渡して、シュバルツバースを立ち去ろうと考える。

 だがその前、最後にSJの原作主人公に彼の思想を確認する。これは最終的な決断と同じでなくてもいい、今の貴方がどの理想に傾いているのかを教えてくれと、「原始の悪魔と人が争いを繰り広げる輝く生命の世界」ことメムアレフの理想、「神や絶対的な秩・法律の意思の下に人々が生きる世界」こと天使やポラリス(三賢人)の理想、もしくは「調査隊の任務を遂行する」ことを絶対に考えているのか……ここに、あるいは俺の理想に共感を抱いてくれやしないか?と僅かな期待も込めて尋ねてみた。

 回答は調査隊として任務は最後まで遂行すべきだ、というニュートラル寄りの意思だった。やはり俺ごときの意思では、原作主人公の意思を動かせなかったかとやや失意に沈みながらレッドスプライト号をリリスと共に後にした。

 ふと、船を去る時に強い視線を感じたので振り向くと、赤い鬼のような悪魔の面を顔に半分だけ被った悪魔人がこちらを覗き見ていた。あれは……SJのカオスヒーローこと、機動班隊員のヒメネスか。俺の理想と、メムアレフや彼の理想は似て異なるためにいずれは敵対することもあるかもしれない。

 ただ、俺がシュバルツバースを訪れることは二度はないだろう故、戦いは原作主人公に預けた。信念は否定しない、せいぜい頑張るといいさ。

 

 

 

>5日目(木)07:30

 シュバルツバース内外の転移を俺だけ妨害対象から外してもらい、自前の【トラポート】にてリリスともどもジプス東京支局に帰還する。緊張に包まれていた亜空間から脱出して、一晩中起きていたことによる眠気が酷い。

 ええと、確か10時頃にロナウドたちの援護をしなければならないはずだ。そ、それまでにちょっと仮眠を……

 

 え、異常現象発生の調査?ああアリオトビットの毒素のやつね、ちょっとこのタイミングで呼び出すのは勘弁……

 

 

 

 




最初はサタンの予定でしたが、デミウルゴスはメガテンNINEで四文字になってたのを思い出したので四文字化


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驚愕の木曜日2

前回からとうに一週間経ってやがる、ゆっくりしすぎたんだ


>5日目(木)08:00

 はれときどきどく。豚は降ってこない。ところであのシリーズって割と最近も刊行してたんだってね。

 じゃなくて、謎のセプテントリオンの攻撃で毒素がバラ撒かれているため、場所を特定するために局長が観測するまで護衛を頼まれたという話。ななみちゃん、それからモジャ公たちも一緒。メムアレフの使い、リリスについては暫く妖精郷(というより、ただの妖精たちが集まったグループでしかないが)の方で待機してもらうことにした。

 こういう時に限って妙にアクティブな悪魔たちを返り討ちにするが、ボス対策ばかりで雑魚集団への範囲攻撃スキル継承を疎かにしていたため随分と苦労させられる。そのせいか殲滅速度でモジャ公たちに負けた。ちょっと悔しい。

 他世界では珍しい野良のライト悪魔、国津神ヒトコトヌシ(こいつの出現は原作通り)をぶっ飛ばしてそのレアドロップである貴重な氷結属性武器を剥ぎ取りながら局長の観測結果を聞く。やはりというか謎のセプテントリオンは上空から毒素を撃ち出していたようで、場所を特定し『アリオト』の透明化を見破るが、奴は既に東京タワー直上へ到達していた。迎撃も間に合わず、このまま奴を倒しても残った外殻がタワーを押し潰してしまえば守った意味がなくなると、タワーの機能を緊急停止させる苦渋の決断を下す。

 連絡から少しの通信途絶の後、タワーを停止させてアリオトが東京を離れた報告を受ける。『アリオト』は原作通り、東京の次は北海道を目指しているそうだ。時間も手段も無かったとはいえ、東京崩壊が早まる決定的な事件を防止できなかったことはやんなるかな。アリオトが北海道のタワーを無視して引き返す可能性があるため、奴が北海道側へ近づくまでタワーは停止しなければならない。それまでの数時間でどれだけポラリスの侵食が進むのだろうか……。

 

 タワー停止のあれこれはさておき、アリオト撃墜のための対策を練るということで局長に案はあるかと声をかけられる。案も何も、峰津院家の龍脈とか封印している悪魔の手を借りたパワーで撃墜し、あとはこれまでのセプテントリオンと同じように直接本体を倒せばいいのでは?と答える。

 それもそうだな、と局長は謎の納得を見せて、君なら伏せ札を握っているのではないかと期待してたのだがね、と意味深げに話す。

 ……俺が敵対勢力を作ろうとしてることがバレたか? いや、あの言い分だと怪しまれてはいても確信してないか、あるいは局長の性格から行動を調べた上で俺たちが牙を研ぎ終える(そしてそれを自らの実力で叩き潰せる時)までを待つ強者の挟持か。まとめて反乱分子を消すために、あえて人数が揃うのを待って隙を狙っている可能性もあるが、それを恐れて慎重に足取りを消す暇は俺たちには残されていない。

 まー成功しても失敗しても、ヤマトを潰せばなんとかなるんでモジャ公の動向さえ気をつければ大丈夫だ。今やレベルは逆転し、例え龍脈パワーを用いた超ヤマトでも倒せないレベルではない。というかあいつも万能とレベル差でごり押すタイプだし、完全にとは言えないが鬼女の献身で主な攻撃手段は封じられるでしょう。つまり雑魚。合掌。

 

 スヤァ

 

 

>5日目(木)09:30

 1時間の仮眠を取って、本調子ではないけど眠気は覚めた。マコトさんとモジャ公たちがアリオト撃墜の手段として、シヴァの『バスパタ』を使う準備しているのをよそ目に身支度を整え、リリスを呼んで名古屋駅へ出立。おへそちゃんのヘソチラとか気になるシーンではあるけど……横にいるななみちゃんが邪念を感じたとかで小突いてきた。イテテ。

 

 名古屋駅へ迎えが来るまで待機するが、少し時間があるので今のうちにななみちゃんの能力を見直す。とはいっても前回からさしてレベルが上がってるわけでもなし、悪魔を更新するにも早く特に金を費やす先はないが……毒素を撒き散らすアリオトへの対策に、POISON耐性もつく【魔力無効】を得られる「ラトルスネーク」と、それから貴重な耐物理を得られる「王の盾」を例によって【財力】や【大地の声】スキルで調達する。それから彼女に回復要員として、地母神タウエレトと大天使ラミエルから女神クシナダヒメを作成する。原作と違って、種族スキルの【女神の慈愛】はPOISONなどの回復しないBSを治療する効果を持たないため使い所に困るが……まあ、そもそもアリオトは火炎に弱いため接敵出来ればななみちゃんのワンパンで終わるだろうけどNE!

 合体が終わり、それでも時間が余ったところでリリスとななみちゃんが話し込む。女の話、ということで暫く俺は場を離れたが……彼女たちを遠目に見守っていると、時折り熱い視線を感じる。ななみちゃんは分かるけど、何故にリリスの方からも受けるのかね。

 

 

 

>5日目(木)10:00

 ロナウドを慕っている市民サマナーの一人が、【トラポート】で転移して迎えに来た。仮にも大悪魔のリリスに驚かれたが件の協力を得た悪魔勢力の使者だと話すと納得し、相乗りして北海道へ。

 北海道でも雪が降るにはまだ早い時期だが、東京との温度差にブルブルと体を震わす。あまり長居はしたくないな……ともかく救助を妨害する悪魔集団というのをさっさとやっつけに行こう。

 

 

 

>5日目(木)10:30

 ロナウドと合流し、札幌駅付近の大学構内へ。ここを巣として徘徊する竜型の悪魔がたびたび救助の邪魔をする、しかもやたら強くて市民サマナーたちには倒せないと聞く。その悪魔を呼び寄せるため、わざと目立つように周辺の雑魚悪魔へ攻撃を仕掛けて暴れる。すると間もなく付近の水源から大量の水が渦を為して巻き上がる。あの水の竜巻こそが、龍神イルルヤンカシュLv58そのものだ。

 龍神種族内では上から数えて二番目と、やたらと強い悪魔にもしやシュバルツバース出身の悪魔ではないかと疑うが、リリスに確認を取ったところ単なる野良悪魔であると判明したので遠慮なくぶっ潰す。「火炎に強い」耐性を有していたが、火炎貫通を持つななみちゃんは容赦なくぶった切る。しかも得意の【氷結高揚】つき【アイスバウンドⅢ】は青龍の兜を着込むななみちゃんには通じず、必死に【ヘルファング】でHPを削るがそれすら王の盾の【盾防御(物理に強い)】により半減される始末。涙目でサブウェポンの【消化液】を放つが……運の悪いことにアリオト対策でラトルスネークを着けたななみちゃんには【魔力無効】で無効化される。詰んでいた。

 上位悪魔の端くれなだけに、【三分の活泉】持ちで非常にタフだったが攻撃面が封殺された奴に短期決戦を挑む必要もなく、ゆっくりと4ターンほどかけて魔晶剣でぶった切った。道案内ついでに同行していたロナウドにもちゃっかり経験点を取られたけどもういいです。

 

 用事を済ませたところで、北海道の市民救出の進捗を聞くと20人ほど助けられたようだ

 間もなくセプテントリオンが札幌へトドメに刺しに来ること、ジプスが北海道と引き換えに撃墜するためやって来ることを伝える。それまでに可能な限り救助し、ジプスとの争いを避けるため撤収作業を済ませておくことを通達し、12時をリミットとして、最悪悪魔を呼び寄せるデメリットを覚悟の上で拡声器を用いた大音量で避難を呼びかける手段を提案しておく。一応強力な悪魔が現れた時の備えとしてななみちゃんを貸し付けて、俺とリリスだけ先に東京へ戻った。ななみちゃんの不満気な顔は黙殺する。

 

 

>5日目(木)11:00

 東京に戻り、霞が関の官僚の方々に元・東京の偉い人を紹介される。なんか名前を聞いたことある大臣とかなんとからしいが、正直政治を気にしてない俺は知らんので適当に挨拶し、名前だけは覚えておく。こちらもメムアレフからのリリスを紹介し、ヤマトが実力主義的世界をポラリスの力により意識操作を行って築こうとしていることを話す。異能に詳しくない一般人の方々には精神支配とか意識操作とか言われても分からないようだったが、リリスのCHARMで精神支配の例を実演するとおののきながらも理解してもらえた。

 そしてポラリスやメムアレフの目的――人間が地球破壊を続けることに怒っての振る舞いであることを伝え、単に彼らを撃退しただけでは根本的な解決にはならないこと、悪魔たちを倒してもいずれまた別の悪魔の襲撃や、復活した本人との戦いが繰り返されることを話し、その解決のため、人間の生存のために悪魔たちの存在を認め、彼らを良き隣人とする社会を築く俺の理想を訴えた。それで大臣や官僚の方々には悪魔たちと手を組んだ社会の具体的な法律の構築やら運用、検討やら政治的な何やらを任せたいことを頼む。このへんはデビルサバイバー1のアツロウルートの二番煎じだけどね。

 一応、彼らを了承させる分かりやすい利益として悪魔たちの能力により、不老……とまではいかずとも長寿延命若返りが可能であること、堕天使や幾つかの悪魔は本来の意味での錬金の技術を持つこと等を話して人間の欲をそそれば、大臣たちは簡単に協力を頷いてくれた。お主も悪よのう。

 

 ……この取引を告発されると結構な致命傷になるが、こうでもしなければ政治的な連中は動かせない。ななみちゃんやロナウドに知らせれば反感を買うし、こればかりは俺が背負わなければならない。うぐぐ、優秀なブレインが欲しい。原作登場人物の中ではマコトさんかフミっぱいあたりが良い腹心になってくれそうだけど、どちらもヤマト側だからなぁ……つくづくジプス陣営の分厚さを思い知らされるわぁ。

 

 霞が関を出たところでマコトさんとエンカウント。しかも大臣らと密談してることがバレた! キャー

 

 

 

>5日目(木)12:00

 マコトさん、昨晩中帰ってこなかった俺の振る舞いを怪しんでこっそりと足取りを追っていたらしい。【トラポート】でたびたび瞬間移動する俺を直接追跡することは諦め、ジプス専用回線のログを通じて俺のケータイ移動先を見張っていると、札幌や霞が関庁舎など明らかに不審な場所を訪れていることから確信を持って問い詰めた、と。

 俺の戦闘力を警戒してか、ちゃっかりジプスの部下を数名引き連れて来ているので、原作のロナウドのようにヤマトへの不満を煽って誤魔化すことも出来ぬ。かといって部下の口封じを行えば、マコトさんは確実に俺を敵と見做すだろう。他に釈明の手段も咄嗟に思いつかない……詰んだー。

 

 弁明を求められるが話せることなんてねーよ、と端から交渉を諦めて強引な逃走にかかる。といっても撃破するのではなく、リリスに頼んで【セクシーダンス】で足止めするのだった。

 しっかり耐性を備えてきた俺たちとの戦闘では使われなかったが、このリリスは【BS強化】というスキルを所持し、本来高レベルなら一瞬で治るBS(バッドステータス)のかかり具合を強化し、数ターン(あるいは数度)かけて治療しなければ治せないように強度を増したCHARMを付与するスキルを持っている。全ての局員がかかったわけではないが、残ったメンバーには俺が【ペトラアイ】やアリスの【悪魔のキス】で無力化する。これらは全て、治しさえすれば死にはしないBSなのがミソだ。

 そうしてほぼ行動不可、戦闘不能になったマコトさんらをおいて、政治家たちを安全な場所に逃がす。ジプスに翻意がバレた今、ジプスの支配が甘い名古屋に逃げこむのが最適だったけど俺一人で彼ら全員を運ぶことは出来ないし、札幌で活動中のロナウドたち市民サマナーに増援を頼むのにも時間がかかる。ゆくゆく追撃部隊が派遣されるだろうけど、今夜、あるいは明日まで時間を稼げればヤマトが実力主義を表明するだろう。それに載っかってこちらも勢力を―――言うならば悪魔との「協調主義」か、それを表明して原作主要キャラクターの幾人かを味方をつける。ジプスは明日、大増殖するミザール処理に追われてこちらに手を出す余裕は無くなるし、その間にメムアレフに戦力を派遣してくれるよう算段をつけて……決着は土曜日、だな。

 ただし懸念事項もある。ジプスが余裕のある今日中に態勢を整えて侵攻してこないかと、主人公やダイチ少年たちの動向が心配だ。前者は……ヤマトがロナウドに対してそうしたように余裕ぶってくれれば問題ないのだけど。後者はどうしようもない。キタローにアレフ、それからSJ主人公とこれまでに三度、他の世界を含めた各々の主人公たちを見た限り皆ニュートラル寄りらしい性格のようでヤマトに与する可能性は低いが、だからといって味方になるとは限らない。原作のニュートラルルートとも言うべきダイチ少年のルートでは、ポラリス襲撃前に時を戻すルートとポラリスを撃破し脱却するルートがあるが、後者はともかく前者の主張と、俺が主張する悪魔を組み入れた社会の改新は決して咬み合わないだろう。そうして敵になった主人公を俺が倒せるかは、果たして疑問だ。

 ほら、目に見えない主人公補正とかありそうで怖いし。

 

 

 

>5日目(木)12:30

 ジプスに盗聴される危険性は承知の上でななみちゃんにケータイで電話。ジプスに動向がバレた非常事態であることを話す。救助活動はまだ調べられる場所を調べきっててないそうだが、アリオトの毒素弾が落ち始めたために切り上げるタイミングを向こうでも考えていたらしい。

 まだ助けられる命はありそうなのに……と渋るななみちゃんに、今すぐ切り上げることを命令する。他ならぬ俺の言葉なら、とななみちゃんは了承の言葉を紡ぐ。思えば今まで彼女の善意をそそのかす形で行動させていたため、こうして命令するのは初めてかもしれない。

 それからロナウドの方に東京へ【トラポート】人員を寄越してくれるよう頼もうとした……が、ふと思うところがあり、通常戦力だけでいいから政治家たちを保護する面子を要求する。

 

 最初は名古屋に逃げ込もうかと考えたが、よくよく考えてみれば名古屋を維持しているタワーの存亡を握っているのは現在ジプスだ。北海道や福岡のように名古屋のタワー維持をカットされることがあれば、「協調主義」勢力ごと一網打尽にされてしまう。ロナウドを舐めプしていた原作ならともかく、ヤマトが俺を格上とみなして警戒していた場合、地盤ごと俺を切り崩しにかかることは大いに有り得る。……やばいな、対処すべきことが増えた。忙しすぎて暇が無い、あばばばば。

 

 

 

>5日目(木)13:00

 政治家たちを日比谷の野外音楽堂へ避難させる。避難先にここを選んだのにも理由があるけど、後述。

 北海道からの撤退が完了した報告と共に、ロナウドから派遣された市民サマナーたちが東京へ転移してきた。withななみちゃんが来たのは予想外だったけど、丁度良いと市民に政治家たちの保護を頼んで、俺はななみちゃんを連れてリリスと共にメムアレフと増援の算段をつけにシュバルツバースへ向かう。どうせまた援軍と引き換えにメムアレフに戦闘を頼まれるだろうしな。

 

 

 

>5日目(木)13:??

 エリダヌスを経由して、再びホロロジウムなう。

 レッドスプライト号は現在、ティアマトを撃破しグルースセクターに到達してるようだ。セクターのボスたちを倒さないでほしい、というお願いは足止めにすらならなかったか。非常に残念だ。

 

 再びメムアレフと相対し、約束の協力として二つ、ポラリスの無の侵食から拠点を守る手段の提供と、ジプスに対抗するための援軍を要求する。

 条件として、今度こそレッドスプライト号への対処(武力行使的な意味で)を求められたのはある意味予想の範疇だが、そこでウンと頷くわけにはいかない。主人公の存在はモジャ公と同じく、レベルでは測れないものもあって確かに恐ろしいが相手出来なくもない、しかし悪魔の要求を呑んで人間に手をかけるのはあまりにも悪魔贔屓にすぎる。代わりにシュバルツバース内の天使―――ポラリスから反メムアレフとして派遣された悪魔どもを駆逐することを提案し、それを呑んだ。時期的に餃子もとい天使に感化したロウヒーローもどきが敵となるかもしれないが、それで人間を手に掛ける分には仕方ないと妥協するが……人間を守ろうとする人間を手に掛けたくはありませんて。

 ところで援軍兼結界構築の悪魔としてベリアルさんを派遣する話が出たのは意外ながら納得。そういえば真・女神転生1で対のネビロスと共に六本木に結界張ってたなあの悪魔。しかも今日の夕方頃に二周目裏ボス悪魔として出ることもあり、知ってはいたが納得の配材。

 東京に残した政治家たちの護衛が心もとないこともあり、早く戻らないといけないため時間はないので、早速天使が拠点を築きつつあるというグルースへ向かう。

 

 

 

>5日目(木)14:??

 グルースなう。天使の隠れ家入り口近辺で絶賛探索中のシュバルツバース探査部隊と出会い、ティアマトを倒した彼らと一悶着起こりそうになるが直接戦う気はないと適当にあしらい、リリスの案内で隠れ家へと侵入する。

 守衛のプリンシパリティを蹴散らしながら、奥へ。めぼしい悪魔、特にマンセマットがいればそれを、いなければ手当たり次第に倒さなければならなかったが……都合よく向こうの方から現れてくれたため杞憂だった。

 もっともマンセマットに加え、メタトロンまでいたのは予想外だったけど。天使9体がどうのこうの……と言ってたあたり、あれか、魔王マーラと対になる大天使セラフの代替か?

 思わぬ強敵の出現に顔を顰める俺。しかし、実際の戦闘は予想と違って瞬殺だった。メタトロンの【メギドラオン】を鬼女ダツエバの献身で凌ぎ、厄介な全回復スキル【メシアライザー】を持つマンセマットを、【龍の眼光】を切ったななみちゃんが両断。ボスの大量のHPさえ全回復出来ようが、回復する暇なしに瞬殺されればそんなもの関係ないのである。マンセマットを1ターンキルしても余った返す刃でメタトロンを削るななみちゃんの後ろで俺が補助回復をバラまき、お得意の【メギドラオン】連打が通じなくなったメタトロンはななみちゃんに物理で殴りかかるが、【スクカジャ】で判定値が上昇した王の盾による【盾防御】で当然のごとく防がれる。耐物理を獲得することもあり、【盾防御】にかかるコストを除けばノーダメージという有様だ。ならば【羽ばたき】をと衝撃相性を試みるも、丁度装備していた白虎の鎧で無効化される有様。……最近似たような光景をどこかで見たような、まあいいか。

 私に火炎は半減するぞ!と主張するメタトロンを火炎貫通で貫いたななみちゃんを他所にバフデバフをかけ続け、必死にクリティカルを期待して斬りかかるメタトロンをあざ笑うかのごとく「物反鏡」を投げたりしたこともあったけど、特に難なく撃破する。撃破後に遅れて餃子もといゼレーニンが現れるが、天使の庇護を失った彼女なんて最早手にかけるまでも無いと放置してホロロジウムに戻る。

 

 ななみちゃんがここで初めて40レベルを超え、超人への覚醒権を得る。何のクラスを得るのかは後々彼女の相談を受けるが、現時点で1発あたりの打点が600を超えることは確定している。インフレってすげー。

 しかしウソみたいだろ、格闘クラスを持たない専門家でも無しにメタトロンぶった切ったんだぜこの子……。

 

 

>5日目(木)15:??

 天使ぶっ倒してきたぞゴルァ!とメムアレフに報告を入れて、引き換えに魔王ベリアルを紹介される。俺を見るなりネビロスの残滓やアリスの気配がするとかで敵意を向けられるが、メタトロンやデミウルゴスを殴り切った話をメムアレフから聞くと畏敬の念に変わった。俺を大魔王みたいな目で見るのやめーや、カオスヒーローと違って親人間でもあるだから一応。

 結界を敷く準備をしなきゃならないとかで、先に名古屋へ向かってもらうことにした。お目付け役代わりにななみちゃんを同行させることを伝えるとベリアルは不満を言うが、正直俺より彼女の方が強いと断言出来るからね?

 

 再びリリスをお供につけ、シュバルツバースを脱出し東京へ。政治家たちを名古屋に避難させる動きに移る。

 

 

 

>5日目(木)15:30

 東京へ帰還……したが流石にあれから時間をかけすぎたか、ジプスたちと市民サマナーたちが鎬を削っていた。ジプス陣営にはケイタ少年とマコトさんと主要キャラクターが二人混ざっており状況は悪いかと思われたが、いつの間に駆けつけたのやらロナウドが参戦していたことで均衡を保っていたようだった。しかし状況を打ち破る余裕はなかったようで、後ろで政治家たちは逃げ道も護衛も無いと来ておろおろしている。しかしモジャ公たちが動いていないのは好都合だ。

 横合いから唐突に乱入し、リリスにジプスを撹乱を任せ、政治家たちを【トラポート】で名古屋に連行。即座に音楽堂へ戻り、一時の撹乱から立ち直ったマコトさんの前に立って(殿となってロナウドや市民サマナーたちを逃がしながら)……悪魔の手を借りてポラリスと戦う「協調主義」勢力の創立を宣言する。

 

 眉唾といった表情をするケイタとは違って、マコトさんは俺の不審な行動をした理由を悟ったのか、本気でジプスと敵対するのか?と問うてきた。正しくは、ヤマトの主義と敵対するのであって皆が皆と敵対するのではないが……説明が面倒だからアリオト倒した後にでも局長に聞けよオラァ!と逆ギレ気味に言い放って、【トラポート】で離脱。

 

 

 

>5日目(木)16:00

 名古屋に戻り、みんなの科学館でベリアル、ななみちゃんやロナウド、それと市民サマナーたちと合流する。明らかに強大な悪魔、魔王ベリアルの協力を得たと平然と言い放つ俺の姿に皆慄くが、これくらいでビビっているようでは龍脈、すなわち日本の大地に宿る力そのものを味方につけるヤマトは勝てないぞ、と断定する。(終盤の敵のレベル的に、龍脈の龍のデータは恐らく神霊クズリュウだろうと予想している)

 まあ、実際にヤマトと競り合うのは俺やななみちゃん、場合によっては協力を得る悪魔方の役目として、皆には名古屋の治安維持や、災害からの復興に悪魔の手を借りて頑張っていただく。ベリアルが連れてきた堕天使の軍勢はサマナーでない一般人の指示を受けることも出来るし、当面はシュバルツバースから供給されるMAGで彼らの身体を維持出来ることもあって大助かりである。細かい指示は政治家たちに詰めてもらったり、名古屋で警察官自衛官を募るなりする必要はあるが……ともかくこれで、俺のやるべき最低限の根回しは済んだろう。あとはジプスや各勢力との対決に備え、ひたすら力を蓄えるのみである。

 

 

 

>5日目(木)16:30

 ベリアルから名古屋を守る結界の構築について、既にあるタワーの結界を改変した方がコストがかからず、また敏速に完成出来るということから、リリスとななみちゃん、堕天使の軍勢と市民サマナーの一部を伴ってジプスを襲撃。速やかな退去を勧告し、反抗的な局員はCHARMしたりして無理矢理名古屋支局から彼らを追い出し、無血開城を成し遂げる。

 ベリアルがタワー結界の仕組みを把握し、改変して名古屋全体を一種の異界にして無の侵食から守る。悪魔の魔術的な結界に切り替えたことにより、名古屋内は悪魔の出現頻度・密度が上がるがベリアルの部下の堕天使が人間を襲わないよう根回ししていることから、被害はあっても少なく済むだろう。

 

 

 

>5日目(木)17:00

 モジャ公らから連絡が来た。てっきり既にジプスへの犯行声明(ならぬ反抗声明)を出した時点で回線を切られたかと思ったけど、対応が甘いな。

 ともかく、俺らが何を企んでるのかと聞かれたが、むしろヤマトの企みから人々を守るための行いであり、セプテントリオンを倒しきった後の世界を運営するための根回しであること、そして俺の今後の理想等を包み隠さず述べた(私事が混ざってないとは言い切れないが)。

 ヤマトの主張はどうせ今日中にでも彼自身が述べるからさておき、彼が力を持たない市民を助ける気が無いことは明白であることから、彼に淘汰された力無き人々を救う受け皿が必須であったと俺が答えると、電話向こうのダイチ少年は何とも言いがたい嗚咽を漏らしていた。一方でモジャ公は冷静に分かったと言葉を返し、仲間内で相談すると言って電話を切った。

 

 ……電話向こうのあの様子だと、これだけ平和的な根回しをしたというのにダイチ少年はやはりポラリスや悪魔の力を受けることを拒否し、第三勢力を築きそうであった。となるとモジャ公も敵に回る可能性が高まった。本当に、主人公だけは主人公補正が怖いから相手にしたくないんだけど……こればかりは仕方ないか。

 

 

 

 




後日、木曜日の終わりまで文章追加もしくは新話に分離するかも。


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驚愕の木曜日3

 

>5日目(木)17:30

 せいぞんーせんりゃくー。

 明日、東京に出現する6番目のセプテントリオン『ミザール』は、物理特化の脳筋だが恐らく際限なく無限に増殖することが可能である。ゲームでは、本体のミザール大サイズに一定量のダメージを与えるたびにミザール小サイズを生成し、小サイズは時間をかけると中サイズへ成長する。ミザール中サイズはやられた時にミザール小サイズへ分裂する性質を持ち、当然その小サイズはやがて中サイズに成長するため放置することは出来ない。とまあ本体性能よりも数で押してくる厄介な奴だが、大サイズにダメージを与えつつ生成された小サイズを各個撃破していくのが正当な撃破手段である。

 TRPG的には恐らく、ミザール本体はTRPG独自の展開スキルという――ボス補正による展開スキルを使うたびHPが最大に生き返る、いわゆる「残機性」型のボスだと予想出来る。サプリメントの追加データやクラスによって一発火力に特化した環境を抑制する他、1キル防止やボスの段階的な本気を演出するシステムだが、通常のスキルで得られる効果とは一線を画する効果を持つ展開スキルは少なくない。以後戦闘終了時まで攻撃相性を万能相性に変えられる【万能攻撃】から始まり、弱点相性を失う【弱点克服】、防御力が激減するが全てのクリティカル率が上昇する【激怒モード】に、激怒モードを解除しつつ強化・低下系を解除する【冷静モード】他、有利な効果を得る展開スキルと不利な効果を得る展開スキルがそれぞれ10種ずつある。尤も特記がなければどの展開スキルも次の展開スキルを使用した時に失われるため、ななみちゃんのように一撃ではなく数回に分けて高火力を叩き出すタイプには有利な展開スキルをスキップされる等、結局相性が悪いのだが。

 ただ、今までのセプテントリオンを見る限り、メラクのビット射出やフェクダの分裂は種族スキルとして扱われていた。ならばミザールの増殖も展開スキルとは別に起動すると考えられる。例えばダメージを受けるたびに中サイズを生成するとか……だったら、洒落にならん増殖速度だな。特にサマナーばかりで火力特化の人間が見当たらないTRPG仕様のデビサバ2世界では、ちまちまサマナーとその仲魔が本体にダメージを与えるたびに中サイズが生成されて、ひょっとしなくても彼らでは火力不足なんじゃないか? うむ、ヤマトが切り札の龍脈の龍を用いる理由も納得する。

 というわけで放っておいてもヤマトがなんとかするけど、それで結界の崩壊が更に早まるのを見過ごすのはちょっとどうかと思うの。デビサバ世界では貴重なイオっぱいの神族覚醒を潰すことになるが、ルーグパワーって龍脈現出と敵対した時にしか発揮されないし。

 ということをななみちゃんに相談。俺たちで先にミザールぶっ倒そうぜ!という結論に至る。

 

 

 

>5日目(木)18:00

 ロナウドを含め、市民サマナーたちから特に30レベルを超える幾人を見繕って明日現れる“侵略者”(セプテントリオン)を我々で打倒し、ジプスの対抗馬として正式に広く名乗りを上げることを伝え、ミザール対策の手持ちを配布する。何人かは名古屋に現れた『フェクダ』や『メグレズ』の話を聞いていたようで、納得してくれたため話が早く済んだ。

 これまでに現れた奴らの傾向から明日現れるものは物理か衝撃を得意とするセプテントリオンだろうとの予測を伝え(ドゥベが火炎、メラクが氷結……という風にセプテントリオンの得意とする相性は全て異なる。実際、明日現れるミザールはこれまでに出現していない物理特化のセプテントリオンである)、そのどちらにも耐性を持ち、更に強力な火炎相性の格闘攻撃スキル【火炎斬】を継承させた聖獣バステトLv28の仲魔を10体ほど配布する。本来30レベルのサマナーには手が届かない天津神ヒノカグツチLv44が所有するスキルだが、レベル制限の高い俺が手間暇かけて作成し、彼らにも使えるレベルの悪魔まで継承させれば問題なく使役出来るのだ。素で所有する【耐衝撃】に加え、合体経路の副産物【耐物理】を継承したバステトはミザールの群れを相手取ってもなんら致命傷を負うことなく、【火炎斬】で文字通り激戦を切り抜けるであろう。

 作成に際して9000MAG(現金に換算すると900万円くらい)ぶっ飛んだが、デミウルゴスだとかメタトロンとか倒した直後で所持金が溢れかえる俺たちには2割り程度の些細な消費だ。上を目指すなら幾ら金があっても御霊作成で消費するけど、目先のところそこまで強化が必要な敵が現れることはないだろう。ヤマト含め。

 

 明日の説明を終えた後、暫く放っておいたななみちゃんの成長を見直すことに。主に超人覚醒とか魔晶剣の強化とか。

 色気を出すなら探偵とかクイーンとか、一見格闘を得意としないような格闘系クラスは色々あるけど、やっぱり剣士に敵うクラスはそうそうないね。というわけでななみちゃんが剣士に覚醒する。ただしクラススタイルは【切り落とし】が手に入る格闘(武器)スタイルではなく、格闘(打撃)スタイル。一撃必殺よりも、高火力の連打を得意とするななみちゃんには、ターン中の攻撃全ての回避を難しくする【縮地】の方が似合っているからだ。

 というわけで習得スキルを幾つか組み替えながら成長作業を完了する。魔晶剣は龍神ペクヨンLv53に。普通に使役すると【武器強化(牙)】された【生得武器(牙)】からの【マグマ・アクシス】を放つ強力な悪魔なのだが、ステータスだけしか見ない魔晶剣では所有スキルは殆ど関係ないのが残念である。

 あと札幌で龍を狩った時に手に入れた具足、カムライターオをななみちゃんに着せたりしながら彼女の成長結果を見直すと、1発当たりの最大打点が900を超えたことが判明。クリティカルや【気合い】を乗せれば1発で3600ダメージである、四文字のHPが軽く半分消し飛ぶ。ひえー。

 命運コストの問題点とか、まだ伸びる余地があるのが恐ろしいところ。レベル60へ達する頃には打点1000点を超えるだろう。そこまでレベルが上がるよりも先に、全ての敵を倒しきってしまうんじゃないかとは思うけど。

 

 ふとレベルが上がっても仲間がそのままだったことを思い出し、ひとまず造魔を強化してレベルを60まで引き上げておく。あと大天使カマエルから【雲耀の剣】を継承させ、万能ゲーの準備も万端に。サマナー戦を見据えるならばガードキルか貫通を揃えたいが、今そこまでする必要はないかねぇ……。

 

 

 

>5日目(木)18:30

 ベリアルからの通達、異界外周にジプスの侵入を確認したとのこと。地の利を味方につけた異界で凌いでいるが敵がしぶとく、また強いサマナーが数名いて突破されそうだという。こちらはベリアルを倒されたら負けだ、試運転も含めバステトを渡した市民サマナー数人、連絡係に数名の悪魔を引き連れて迎撃に向かう。ななみちゃんとリリスはベリアルの護衛に置いていく。決戦兵器なものの、継戦がやや苦手なななみちゃんを連れてってもすぐバテるんだから、我慢してこの場は引っ込んでなさい。

 

 防衛力を重視し、悪魔の禍々しさを取り繕うともしていない異界内では、主であるベリアルの意志に従い通路を変形させられる。突如壁から現れることでうまく不意を突き、ジプス局員らを撃退していくが、任せろとばかりに出てきた後続の第二波がなんとモジャ公らだった。ジプス側として、名古屋を奪取しに来たらしいが……そういえば具体的にどうジプスへ対抗するのか、彼らに喋っていなかったことを思い出す。電話で告げたのも、ジプスと対立を決めたことだけで悪魔のことなんて一言も言わなかったからね、そりゃ仕方ない。

 未だジプスと悪魔たちが争い合う戦場ではあるが、丁度いいと彼らに俺の考えるポラリス撃退後の世界、悪魔と手を組んで地球を再生する「協調主義」を彼らに伝える。例えポラリスを全て撃退しても、世界の崩壊や無の侵食は治らない。傷跡が残り、活動範囲が狭まった人間社会を人の手で完全に復興することは叶わないが、ならば人の手ではなく悪魔の手を借りればいい。そうして手を結んだのが異界を張ることが出来るほどの強い悪魔、魔王ベリアルや夜魔リリスである、と(この場にいないメムアレフの名は、まだ伏せる)。

 彼ら悪魔の力を使えば、ジプスの持つタワーの機能を使わずとも侵食から都市を守る結界――「異界」を張ってポラリスを防ぐことが出来るし、徐々に異界を広げることで逆に侵食された部分を「上書き」して埋めることが出来る利点を説いて、彼らを引き込んでみる。

 が、ダメ。ダイチ少年が悪魔の手を借りるなんてとやんわりとした否定をし、イオっぱいら他が争うのはどうだと思うと。攻めてきたのはそっちやんけ。

 話をしてる最中にジプスの攻勢が激化しつつあり、奥へ突破したジプス局員も度々見受けられるため冗長に話す時間の猶予は無いと、彼らにこの場で立場を決めてもらう。ジプスに与して悪魔を倒すか、与せず見届けるだけなのかを、この場のリーダーであるモジャ公に問う。戦うか、戦わないか。

 

 

 

>5日目(木)19:00

 勝った!第三部完!

 

 そんなことはありません、ええ。負けてないのは事実だが、別に下ってもらう約束とかしたわけでも主義のぶつかり合いをしたわけでもなければ、倒したわけでもない。単にまともな万能相性攻撃手段もガードキルも貫通も有していなかったモジャ公らパーティが全門耐性で詰んだため、向こうが先に撤退しただけである。勝ったとは言えぬ。

 あとイオっぱい、さり気なく【弱点看破】チェック入れるのやめなさいこら。

 素で全門耐性のヘカーテなら、自動効果の相性変化スキルを剥がれても影響は少ないが、迂闊に変身悪魔の強化を行えなくなったなぁ。それにこちらの最大の防御、全門耐性を知られてしまった以上、次回は対策を練ってくることも予想される。そろそろレベル差のアドバンテージもなくなってきて、またレベル的にもクルースニクに届きそうだし万能貫通ガードキルゲーが加速するなぁ……それこそ対策あるけどね。

 

 この話はおいといて、モジャ公らを退けた後、奥へ到達したジプス局員らの対処に戻……ったが既にななみちゃんが片っ端から切り払った後だったため、死に体の戦闘員たちを悪魔たちに運ばせ、まとめて【トラポート】で東京にすっ飛ばした。

 今もまだ気を張りしめて余裕のない市民サマナーたちに、パンパンと手を払って戦いの終わりを知らせ本日の解散を告げる。ジプスの中堅戦力が集まっていたし、今回の戦闘で手痛い被害を受けた後に二度の夜襲はないだろう。あったとしても小規模な、巡回する悪魔たちで凌ぎきれる程度だろう。それくらいであれば連絡を飛ばす余裕は十分にある。まあ、念を入れて俺も支局内で休みますがね。異界でおどろおどろしく、快適とは言いがたい寝心地なのは我慢する。

 そういえば、全てを見届けたわけではないがバステトの運用は中々良い活躍をしたように見受けられた。対火炎耐性持ちには通じてないが、火炎耐性と剣耐性を併せ持つ悪魔は滅多にいないことから【火炎斬】が効かなければスキルを使わない物理で殴り倒す、といった運用で無力化される心配も無いことは良いことだ。バステトは弱点の多い悪魔だけど、元より絡め手への防御を意識した悪魔ではないし、そっちはそっちで別に支援用の悪魔を配布すればいいだろう。【耐物理】持ち紫鏡とか定番。……でもミザール相手に出すと反射して分裂を促進しかねないから迂闊に渡せないわな。

 

 

 

>5日目(木)19:30

 俺氏、NAISEIを始める。

 

 ジプスを漁って市民の飯を確保したが、それら物資だけで凌ぐには数日しか保たないということで急遽、メムアレフのとこから食料生産できる悪魔を連れてこようと提案。リリスさんを通じて派遣を依頼する。ほら、蝿王様ことベルゼブブとかいいんじゃないかな?貶められてないバールの方だと豊穣神でぴったしだと思うんですが、どうでしょう、なんて。

 

 

 

>5日目(木)20:00

 やってきましたホロロジウムinシュバルツバース。メムアレフに面会……って見覚えのあるバケツスーツの姿がちらほらと。まさかもう最終セクターに到着したのかレッドスプライト号!?早い!

 直通エレベーターが既に破壊されていたこともあって、やや遠回り気味に最深部へ。メムアレフと面会し、挨拶がてら近況を尋ねる。エレベーターが破壊されているということは、既にルート選択が起こった後のはずだけど……。

 

 ……ううむ、やはりシュバルツバース隊は任務を果たすことを選択したようだ。このシュバルツバース内で豊穣神といえば地母神、地母神といえばメムアレフたち母なる神に連なる主要神格ばかりということで大事な戦力を派遣する余裕はないと、断られる。あるいはレッドスプライト号を撃退することを条件として要求される。当然か。

 同じ人間を救いたいと考える同士と敵対するのは望ましいことではないな……それに現状シュバルツバース内で唯一の敵対勢力であるメムアレフ側を助長させるのは、かえって危険である。少し考えさせてほしいと彼女に伝え、レッドスプライト号側へ面談を取ろうと考え、その場を辞した。

 しかし、ロウルートを事前に潰し、レッドスプライト号がメムアレフに協力してない以上はニュートラルルートか。となると元ゴア隊長ことユーバーゲシュタルトも向こうについたか、あるいは何らかの援助をしてることだろう。一度敵となるかどうかの確認も含めて連絡を取っておいた方がいいな。

 

 ホロロジウム上層に戻り、レッドスプライト号へ足を向ける途中、女声のバケツスーツを着た調査隊員に呼び止められる。単身で母艦へ向かうこちらの姿を警戒して呼び止めたのかと思えば、なんだか普通の隊員とは様子が異なる。隊員の中でもカオス寄りか、あるいはロウ寄りの非協力的な隊員かとも思ったが、異能や悪魔に詳しい風な様子を見せつつ、俺に近況を尋ねてきた。そちらの人類救済の進捗はどうだね?なんてまるで他人事のような……。

 とそこまで言われてピンと来た。微妙にスーツの合間から見える金髪、でシュバルツバース内の怪しげな女といえば女神転生シリーズを知ってて、原作をプレイ済みなら正体を察せる。人間側らしくない発言もヒントのつもりですかね、ねえルイ・サイファー閣下。

 

 

 

>5日目(木)20:30

 正体を言い当てられたルイ・サイファー閣下こと、魔王ルシファーはバケツメットごとスーツを脱いで(抜ぎ捨てたスーツはどこへともなく消えた)、ニヤリと頬を歪めて策略に頭を悩ませる君に良い助言を与えよう、と前置きしてシュバルツバース上層にある4つのあるアイテムのことを語った。

 そのアイテムは、宇宙卵。放射能とか核弾頭じみた超エネルギーを秘めた触媒であるが、レッドスプライト号の隊員はそれを利用してシュバルツバースを消し去ろうと考えている。それを先回りして君が持っていってしまえば、彼らがシュバルツバースをどうこうすることは出来なくなるし、もう一つ君が懸念している事項も解決……はしないが残り3、4日の時間は稼げるだろう、と、閣下は原作ストーリーの〆を担うアイテムのことを告げた。

 ちゃっかり人の内心を察しやがって、というのはおいといて……何故それを伝えたのかと聞き返しかけたが、ふと「メムアレフ側が宇宙卵を何に使うのかを知らされてない」ことは、「知らずにメムアレフ側を妨害してしまうのに都合が良い」ことに気づき、何も言わずに礼を言い、近くのターミナルに向かった。

 確かに良い助言だった……以前のぶん殴りたいと思った気持ちはまだ残ってるけど、今回はそれに免じて殴らないでおいてやる。

 

 

 

>5日目(木)21:00

 ターミナルにて、ユーバーゲシュタルト人を呼び出すが、いつもはメール等で連絡する彼が今回は違ってこの場に実体で現れた。タキシードでキリッとした筋肉質の黒人の姿は、レッドスプライト号の故・ゴア隊長のものだ。わけあってユーバーゲシュタルト人と化した彼は、てっきりアーサーのデーターベースと同期(同化)して宇宙卵の情報を渡したものかと思ったが、少し原作の展開と違ったようだ。

 ゴア隊長―――呼び安さもあるが、現在取っている姿のこともあってそう呼ぶ――に現在のレッドスプライト号のスタンスを尋ね、そして悪魔と手を組んでの人類生存を考えている俺に対する今後の態度を尋ねる。ゴア隊長は、やはり原作と同じくレッドスプライト号に与し、シュバルツバース消滅の任務を達成する術を教えたらしい。そして現在、シュバルツバース内に眠るあるアイテム(宇宙卵のことだ)の在り処へ向かって各機動隊が移動中とのこと。故に、メムアレフと手を組むためにシュバルツバースを残そうとする俺には協力を出来ないが、人類を活かそうと模索している者として尊敬する。だから絶縁は出来るならばしたくない、とゴア隊長は仰った。

 故にお互い、手を組めないだろうか。共に人類を生かす道を歩むためにと、彼は言う。手を組むのは吝かではないが……しかしシュバルツバースに囚われている彼らが、現在東京でポラリスやジプス相手に四苦八苦してる俺らへ協力する術がないのは、手を組む以前の問題ではないか?と俺は言う。ううむ、とゴア隊長は唸って考えこみ……ならばこれはどうだと、【フォルマサーチ】アプリとレッドスプライト号で開発・生産中の装備品の横流しを約束すると言った。

 戦力強化としては良い取引だが、肝心の状況解決にならんのがなぁ……シュバルツバース解決だけを考えている調査隊と違って、こっちは戦後を考えると悪魔たちの関係を崩したくはないこともあり、頷くことは出来ない。

 まあ、協力は呑めないがお互い縁を切ろうとは思ってないし、それにポラリスとジプスの対処に追われている今は余裕がないわけであって、もう二日もしてヤマトを潰せば、メムアレフ勢力の手を借りずとも動く余裕は出来てくる。それまでは時間稼ぎでお茶を濁すということでどうだ?とゴア隊長に告げる。

 苦い顔をしつつも、仕方ないといった顔でゴア隊長は頷いた。ただし時間稼ぎを出来るかは、お前の腕次第であるとも。ああまあ、宇宙卵を回収に向かった調査隊と衝突する可能性は考慮してますよってね。モジャ公とはまた別の、主人公との対立。それも今度はお互いそれなりに本気の戦闘になるが……果たして勝てるかどうか。

 

 

 

>5日目(木)21:30

 セクター「ボーティーズ(B)」なう。見た目には歓楽街のような奇妙な色をした“町並み”に、遠くにはかつて魔王ミトラスが支配していた宮殿が見える。ここで回収すべきは、不時着したまま眠るギガンティック号にあるはずの宇宙卵と……起爆のための核弾頭も積まれていたはずだが、それを回収したところで扱いに困るのでそっちは置いておく。

 とにかく、宇宙卵を回収するのだ。あちらを回収すればシュバルツバースを爆破する火力が足りなくなるはずだと、原作の脳内マップを頼りにギガンティック号のある地点へ歩を進める。

 

 そうしてやってきた不時着地点では、万人の悪魔を倒し今にも宇宙卵の捜索に入らんとしていたところだった。外面からでは伺えないが、原作主人公らしきひときわ強そうな気配を漂わせる隊員もいる。レベル50といったところだろうか、原作ゲームならともかくTRPG的には50レベルはかなり高い。レベル差のアドバンテージも薄い領域だから、あとは手持ち悪魔の鍛え具合とクラス構成のぶつかりあいといったところか。

「悪いが宇宙卵とやらを持って行かせるわけにはいかない、(まだ)シュバルツバースを破壊されると困るからな」と彼らに敵対を告げ、近くにいる弱そうな隊員を狙い、気を失う程度で済むよう(殺しの意図は無いことを伝えつつ)手加減しながら数を減らす。調査隊は気絶した奴を助けに入る隊員と、俺の迎撃体勢に入る隊員の二つに分れる。ここで無視して宇宙卵の捜索に入られ、ゾンビアタックで時間稼ぎに徹されるのが一番不味かったが……安心した。

 

 平均レベル40程度(しかし才能がないのか超人ではなくクラス2つの覚醒者止まりのようだ)の隊員たちは、大した痛手を与えてくる相手ではなく造魔が【雲耀の剣】でバッサバッサと薙ぎ払ってやれば簡単に勢いを削げた。問題はひときわ強い主人公だ。別に戦法があれだとか、悪魔の継承スキルが凝っているなんてことはないのだけど、よりにも寄って悪魔のメンツが魔人ラインナップ。しかも何かしらレベル上限を超える恩恵を得ているのかマザーハーロットLv69にデイビッドLv67にペイルライダーLv63にブラックライダーLv61と、自身のレベルを超えるボスではないかと思わせるえぐい悪魔がズラッと並んでいる。揃いも揃って【三分の活泉】なのはともかく、【メディアラハン】で全回復されたり【サマリカーム】で蘇生役を起こされたりと倒す片っ端から回復される泥仕合の様相を見せる。攻撃しても高レベル悪魔の超回避されるし、【フォッグブレス】を撃っても【デクンダ】でデバフを解除される等、負けはしないんだが勝ち筋が見えない。ただ向こうも強力な万能相性や貫通を有しているわけではなく削りきることが出来ない、傷つけてはメディアラハンで回復する互いに千日手だ。辛い。やってらんねえ!!

 

 敵の仲魔全員をほぼ倒しきっても蘇生連打により仲魔を全員生き返され【メディアラハン】で戦況リセット、を3回食らったあたりで完全に戦う気を無くす。もっと仲魔を揃えてくるべきだった、火力が足りてねえ。

 

 

 

>5日目(木)22:00

 突如現れたゴア隊長の調停により、痛み分けながら俺が引き下がることになった。悔しいが、時間稼ぎをされると困るのはこっちだとゴア隊長が知っていることもあり、また1プレイヤーとしても敵を突破できる戦力を用意しなかった俺に原因があるとも言える。レベル差やななみちゃんの火力に頼って、合体を怠ったツケが回ったのだ。

 

 メムアレフにはなんと伝えたものかと悩みながらボーティーズを戻る道中、天使の残党に襲われる。まあ、所詮プリンシパリティ程度の雑魚だったわけだけど……つい最近の癖でとどめを刺さずに戦闘不能にしたところで、あることを思い出す。

 そういえばロウ勢力の神威に、ピンポイントで食料を賄う効果のものがあったよな……。

 

 

 

>5日目(木)23:00

 グルースの天使たちの隠れ家を訪れ、門前払いを食らった後に一旦シュバルツバースを抜けて、ロナウドを連行して再侵入。天使たちへの交渉に立たせる。当初は俺への敵意を沸々と滾らせていた天使たちだが、頭を欠いて秩序の下に統一する意志が崩れたこともあってか、純粋なロナウドの心情に当てられて幾分か緩和させる様子があった。今日中に約束を交わすことはできなかったが、この様子だとぼちぼち何度か交渉に赴けば神威を融通してもらうチャンスが出来そうだな、と感じる。

 メムアレフへの弁解は……まあ明日でいいか。

 

 




TRPG版の仕様として、ペルソナ3~4のように速度順に動き、ターンが回ってきた時点でキャラクターが何を動くかを決定します。そんな中で召喚された仲魔はサマナーと同じタイミングで動くのですが、動く順番は問わないのでもしサマナー以外全ての仲魔が倒れていても、サマナーがアイテムで仲魔を蘇生し、蘇生された仲魔がリカームで蘇生、更に……を繰り返して最後に蘇生された仲魔がメディアラハンを撃ってHP全回復という行動が可能です。酷い話ですね。


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決別の金曜日1

遅れました。


>6日目(金)07:00

 朝一で使用回数が回復したスキルを使い、高レベル相応となると通常の手段では決して手に入らないレア防具を調達しようとすると、現れた妖精たちが恭しい態度で献上してきた。スキルという名分でかっぱいでるのはいつものことだが、今日はいつもに増して様子がおかしい。レベル差を感じ取ってビビってる的なサムシングだろうけど、手に入れた女性用防具をななみちゃんに横流そうとした時にこのことがバレてて、妖精たちをいじめるなと怒られた。

 

 

 

>6日目(金)07:30

 ミザールへの警戒、また討伐の準備を呼びかけ、東京へ諜報員を送り込む。一方で俺は昨日の件をメムアレフと話すためにリリスを連れてシュバルツバースへ舞い戻る。

 

 しかしセクター・ホロロジウムへやってきたが、上層は既にレッドスプライト号に制圧されており、メムアレフの居る最深部へ向かうまでに何度か調査隊員と交戦する羽目になった。一度矛を交えたこともあり、向こうはこちらへ攻撃をためらうことはない一方で、こちらはあまり積極的に人間を害したくない心象もあり普通に戦えば倒せる相手なのに随分苦労させられた。全門耐性を貫ける手札を持つ隊員は僅かなので負ける心配だけはまず無いのだけれども、HPが豊富な高レベル悪魔をたびたび相手にさせられるのはホント辛い。

 

 最深部に差し掛かる道中、中層の天空に足場が浮かぶエリアへ侵入したところで悪魔人・ヒメネス元調査隊隊員と遭遇する。以前よりレベルが上がり、メムアレフの神話形態に属する神族覚醒を済ませたのかますます人間離れした彼は、同じく人間離れした力量を持ちながらも実力を奮って我を通すことを好まない俺に対し、力の世界への誘惑をかけてきた。しかし今更その道を歩む気はないし、随分と苦労はさせられて不平不満を呟くことも多々あるけれど、何だかんだで俺の取り柄の戦闘以外で何かを為すことに充実感を抱いていることもある。というかその選択を選ぶなら、とっくにヤマトの実力主義に傾いているわいって話。

 するとヒメネスは俺をメムアレフの、カオス勢力の敵だと断定する言葉を発し、襲い掛かってきた。仲間にならない奴は敵だなんて、ちょっと血の気が多すぎんよー。思いもよらない突然の出来事に戦闘態勢が整っておらず不意打ちとばかりに手痛い万能相性の一撃を受ける。すぐ後ろにいたリリスは巻き添えを食らう前に避難しており、しかもヒメネスの戦いを止める様子はない。こりゃ戦いは止まらないなと一旦交渉を諦め、死なない程度にダメージを受け流しつつヘカーテへ変身、ダツエバを展開して【鬼女の献身】による万能相性無効のバリアを張る。ヒメネスは物理に切り替えるが耐性と防御力の上からでは大したダメージを与えきれず、デミウルゴスやリリスの時と同じ、いつもの封殺パターンにハマる。

 完全にパターンにハマり、仲魔の展開も完了して最早負ける要素が殆ど無くなったところでヒメネスに降伏を呼びかけるが、クリティカルによる防御点を貫く一撃のワンチャンを狙っているのか諦めずに何度も攻撃してくる彼に、俺は諦めて顔を振りアタッカーの造魔へ攻撃の指示を出す。【雲耀の剣】による攻撃はヒメネスの防御を貫くどころか、クリティカルしてオーバーキルに至った。

 戦いに敗れ、命を失ったヒメネスの遺体はずぶずぶと、まるで悪魔の体のようにMAG化して大半が溶けてシュバルツバースに消えていった。相手が早まったとはいえ、メムアレフ一派の「悪魔」に手を下した事実が出来てしまった。もう少し融通してほしかったが、これは交渉決裂するかもな……という悲観的な思いを胸に抱きながらシュバルツバース最深部へ向かう。

 リリスは戦いを挑んできたのは向こうだし、相手を下した俺にこそ正義があるとカオス理論を主張するが、悪魔となったヒメネス、すなわち悪魔たちの母であるならばヒメネスの母でもあるメムアレフが我が子を殺されたことにどう思うかは定かではない、と私感を述べられた。要するにメムアレフが戦闘を挑んできても戦いを止める気はないってことだ!幸いなことにリリス自体は、一度俺に敗れたこともあり二度と敵対する気は無いと誓ってくれたが……メムアレフだけでも他の悪魔とは格が違うんだよなぁ。しかもアタッカーのななみちゃん抜きで相手しなければならないのは正直厳しいが……仕方ない、この先のことを考えるとMAGの出費は痛いが仲魔を鍛え直すか。

 

 

 

>6日目(金)08:00

 現在68レベルになった俺は、装備による補正もあって69レベルまでの悪魔を使役出来る。このレベルにもなると流石に魔獣や妖精、地霊のような下位種族は頭打ちしており、魔神や破壊神に大天使、あるいは魔王や邪神、魔人のような上位種族しか存在しない。更にゲームと違って通常の2身・3身合体で作成出来る組み合わせがあるかも怪しいため、サラマンダーなどの上位精霊によるランクアップを駆使しなければ作成すら出来ないような環境である。尤もダーク種族の場合は例によってゾンビをくっつけるだけで容易に成長するし、魔神や破壊神はダーク悪魔の同種族合体で作成出来たりするが……継承スキルの問題もあり中々安上がりで済ますわけにもいかない。

 流石の俺も、60レベルを超えた環境の経験はそうそう無いため手探りで役に立ちそうな悪魔、安く素材を作れそうなルート、また継承できそうなスキルを模索しながら合体作業に時間を費やした。【魔人コンバータ】は手元にないため、現在使役・作成出来る中で最高レベルの悪魔は堕天使フラロウスLv69のみだが、生憎ながら素の堕天使はいまいちステータスが良くないため、レベルを落としてでも有用そうな悪魔を見繕う。種族スキルのこともあって鬼神(魔神)ビシャモンテンLv68、それから耐性が優秀な妖精ティターニアLv64と霊鳥ホルスLv63を終着点に見据えるが、手持ちの邪神ツァトゥグァや地母神ハリティーとはレベルも種族も、合体経路に組み込めそうにない。手間はかかるが仕方ないと、継承スキルから素材悪魔まで一から作成するルートを考案した。

 これまでの手持ち悪魔は後でななみちゃんに横流しするとして……魔王のダーク同族合体による魔神への変化を利用しつつ、途中ランクアップダウンを繰り返して何度も魔王ケートゥを作成することで【雲耀の剣】をランク3まで重ね、魔神ビシャモンテンに継承させる。更にランクダウンには珍獣マメダヌキを素材にした精霊フレイミーズを用いることで、【煌天の会心】を持たせた火力特化だ。万能が効かない相手(滅多にいないが)にも【火炎高揚】つき【マグマ・アクシス】や、【八相発破】があるので逆に【鬼女の献身】で万能を封殺されても安心設計。

 霊鳥ホルスは妖鬼プルシキ、地霊ゴグマゴグに天使ケルビムの3身合体から作成したもので、【衝撃貫通】を持つプルシキを前述のケートゥ同様にランクアップダウンを繰り返し、貫通をランク3まで引き上げており反射でも70%の確率で貫くことが出来る。【衝撃高揚】つきの【竜巻】、あるいは【羽ばたき】は武器を用いた格闘攻撃スキルの威力には劣るものの、それらの高威力スキルに比べれば低コストなため、気軽にマルチアクションによる数撃ちゃ当たる戦法を取れるのがメリットか。尤も、そちらは主砲ビシャモンテンが通じない場合のサブウェポンであり、主な役目は【ランダマイザ】バラマキや【サマリカーム】による蘇生要員であるが。

 妖精ティターニアは自慢の魔法全般耐性を活かした、落ちにくいヒーラーだ。夜魔リリスと妖魔ハヌマーンを合体させて作成されたティターニアは、【デクンダ】やら【メディアラハン】を毎ターン撃ち続けるポジションになる。MPはMAG代替消費やランク3【リカームドラ】で全回復出来るし、ナンディを5体全てを撃ち尽くすより先に戦闘は終わらせる程度の火力はある。

 あとは……本体の変身悪魔であるヘカーテに、ランク3の【ラスタキャンディ】を搭載した。そろそろレベルの低さから来るステータスの低さ(特に防御点)が目立つが、ヘカーテの他に全ての相性に耐性を持つ悪魔がいるわけでもない。またイオっぱいに【弱点看破】(情報収集・解析した敵が持つ「相性を変化させる自動効果スキル」の利益を失わせる効果がある。しかも看破した当人との戦闘中だけでなくその他の戦闘でも半永続)をされかけたことから、御霊や継承スキルで相性を補うのもこの先の戦いでは信用ならない。とりあえず、無いよりマシと御霊の【能力上昇(速)】スキルで速能力値(=回避率)を幾分か上げたが、どれほど有効だろうか。

 

 しかしなんにせよ、この後はメムアレフとの会談だ。結局シュバルツバース調査隊は退けられなかったし、ヒメネスまで倒してしまった以上、向こうがどう出るかは分からない。

 

 

 

>6日目(金)08:30

 思っていた以上に、メムアレフは激怒していた。

 既にレッドスプライト号がセクター・ホロロジウムまで到達してる以上は奴らが我が元へやってくるのももうすぐだと、どっちつかずの俺へ手を貸すわけにはいかないと通告を食らう。悪魔に与するか、それとも敵になるかの2択をつきつけられるが、その2択で前者を選ぶわけ無いじゃないですかやだー!

 上手く会話を運んでなあなあ路線を納めようとしたが、腹心のつもりか邪神スルト、魔王マーラが会話に割り込んで決断を迫ってくる。こいつらも強化されたボス仕様だし、デミウルゴスを倒した俺が敵対しても勝てるように本気でメンツを揃えてきたようだ。……この中に蝿王様がいないのは救いかな。

 だが高レベル悪魔を揃えられたところで、今更怯える俺ではない。勝てるかどうかは分からずとも、そう簡単に負ける気はしない。自信を持って先ほどの通告にきっぱりNO!と答えれば、では絶縁だとメムアレフら三体は敵意を露わにする。

 まあ待て、だからといってこちらは戦うと決めたわけではない。ポラリスが残っている以上、敵対するシュバルツバースが早々に滅ぶと人間に矛先が向いて困るため、もう暫くあなたたちはあなたたちで戦い続けてもらいたいのだ。それにもしレッドスプライト号の調査隊を倒せれば有利なのは貴方たちでしょう?というか今後予測できないヤマトやモジャ公らとの戦闘が控えてることを考えると正面対決でのリソース消費は勘弁願いたいものだ。と、表向きの理由を言い訳にして敵対的な彼らの戦意を和らげる形でその場を納め、三体の目前から逃げることに成功する。(裏向きの理由は後で話す)

 メムアレフと手を切ったにも関わらずなんでか知らんがついてくる気のリリスさんは放っといて、近場のターミナルでゴア隊長に連絡を取り、【トラポート】で名古屋に戻る。

 

 

 

>6日目(金)09:00

 名古屋に戻って、異界を管理してくれているベリアルに彼のスタンスの確認を取る。

 メムアレフと決別することになったが、貴方はどうする?メムアレフの陣営として路線を変更し、敵対するか。それともこのまま人間と付き合ってくれるかどうかという内容を尋ねる。

 ここまで名古屋勢力に食い込んだ後に敵対されるとかなり危ない状況ではあるが、神話体系的にメムアレフとは縁が薄いベリアルならば多分、わざわざ敵対しないだろうと見積もっていた。実際、ベリアルはその通りに別の条件を俺に呑んでもらうことでこのまま協力してくれることになった。

 条件とは、俺が仲魔にしている[魔人アリス]の悪魔カード――本物のアリスではない、レプリカのアリスだが、それを譲渡すること。真・女神転生1の赤男爵であるベリアルにとって、例え偽物であろうと彼らがこよなく愛するアリスが他人の手に委ねられるのは我慢ならんというのが一つ。

 もう一つは今日中に復活するネビロスと共に、アリス復活の儀をこの名古屋で行うためそれに必要なMAGを提供し、またそれ以外で向こうが触媒を用意するのを黙認するよう要請された。MAGはともかく、触媒というのがピンとこなかったけれど、ベリアルの「説明しない方がいい」という説明に、恐らく後ろめたい行い――例えば人間を材料に使うような――をするのだろうと想像がいった。ななみちゃんが絶対許さないタイプの行為であるが、協力してくれる悪魔が限られてる現状では他を探すのも難しい、こちらは実質何もせずに今後ベリアルらの協力を得られるのなら高くふっかけられない分、安いと言える。

 少し考えて、決して行いがバレることないようにと、また「それ」以外で何事かが発覚した場合は黙認することは出来ないと前もって念を押すことで取引を結んだ。

 これで後方に憂いは無くなったな。よし!

 

 

>6日目(金)09:30

 ななみちゃんに連絡を取り、シュバルツバースへ直帰。

 さっき言ってなかった裏向きの理由だけど、倒してもいい高レベル悪魔3体分の経験点が手に入るなら、ここでななみちゃんに分配しないのは勿体無いからだよ!

 

 ななみちゃんにこれまでの状況……シュバルツバース内を探索する人間と(不殺縛りで)争ったりしたが、色々失敗があってメムアレフと決別したこと、またベリアルと取引を結んだ(後ろめたいことは言わず、あくまで彼らのアリス復活にMAGを提供することを求められただけのように話した)のでもはやメムアレフと決別することに躊躇う必要は無くなったことを報告し、これよりメムアレフ陣営を打破するのに付き合ってもらうと述べると、ななみちゃんは不満そうな顔をした。ラスボスな悪魔を倒せるヒーロー的活動に喜ぶことに思ったのにあれー?

 と思ったら最近俺が忙しくて構ってくれないから、終わったらそろそろ恋人ムーヴがしたいとゴネられる。そっちか。惚れられるのは嬉しいが、正直ななみちゃんは付き合いたいって女の子じゃないんだよなぁ……と欲張りなことを思いつつ、今日の夕方頃に時間を取ると約束すると、ついさっきまでしていた不満顔はどこにいったんだという至福の表情を見せてどこでもついていくと高らかに謳う。

 

 さて、素直にシュバルツバースに入れるか分からないしもう一度ゴア隊長に連絡を取ってターミナルの補助をしてもらおうか。

 

 

 

>6日目(金)10:00

 ななみちゃんと共にシュバルツバースにやってきた。ゴア隊長に今回でメムアレフを倒すと伝えると、彼は諸手を上げて喜んだ。レッドスプライト号に連絡して共同で攻略に当たろうかと提案されるが、以前交戦してから関係がぎくしゃくしていることもあり、こちらの事情が変わったことだけを伝えてくれるよう頼む。

 

 メムアレフと敵対したことにより、これまでシュバルツバース内の移動を黙って許してくれていた雑魚悪魔たちも次々に襲い掛かってくるようになった。雑魚といっても、軽く50レベルを超える悪魔ばかり、高い奴は60にも届いている。幸い、その中に厄介な上位種族は少なく、極めて強烈な攻撃を放ってくるような悪魔は少なかった……堕天使アガレスの【マグマ・アクシス】にななみちゃんが焼かれたり、モロクの猛反撃で派手に血しぶきを上げたことは忘れよう。このレベルにもなると倒れて後から蘇生した方がむしろリソース消費が少なく済むからなぁ。

 

 

 先ほどヒメネスと矛を交えた中層へ差し掛かったところで、再び強敵の気配。まさかメムアレフの不意打ちか、と思ったら魔王マーラ様が単独で襲いかかってきた。素直にメムアレフと共に襲いかかってくればいいものを、何故愚策を行うのか。……人間より強力な悪魔だからこそ、小細工を弄するのはプライドが許さないというのもあるのだろう。データ的な強弱はさておいて。

 さて魔王マーラ戦だが、【龍の眼光】を所持する以外、特筆すべき特徴は無い。典型的な素手物理型悪魔で、ボスの追加スキルか【愛用の武器(素手)】により格闘武器並、あるいはそれ以上の威力を叩きだしてくるのは強烈であるが、生憎ながら俺は元より物理耐性、ななみちゃんも対ボス用に【カードシールド】でヘカーテの耐性を獲得させたため、万能相性でもなければまともに通用しない。更に破魔呪殺無効以外に碌な耐性を備えていないこともあって、造魔のフォッグブレスで回避が下がったところにななみちゃんの魔晶剣攻撃が直撃、マーラ様は僅か3ターンで沈む。何やら散り際に言い残してた気もするが、ななみちゃんが赤面してたくらいで大したことではなさそうだ。

 

 

 

>6日目(金)10:30

 中層を越えて深層に到達し、60レベル超の悪魔たちを蹴散らしながらようやっとメムアレフの元へ到着。魔王ケートゥに邪龍ミズガルズオルム、龍王ラハブといった威圧感溢れる面々が群れを成して襲ってくる様子はまさにメガテンの終盤戦だと実感させてくれる。また、そういった悪魔を切り捨てるななみちゃんの姿を見ると、やっぱり悪魔より人間の方がずっと強いよなと変な感覚に陥りそうになる。

 

 そうしてメムアレフの間に到達。レッドスプライト号調査隊の気配は無く、彼らに先んじて到着したようだ。ならば遅刻した彼らからイイトコどりをすることに何の躊躇いも覚えない。最後の扉を開けて、決戦に臨む。

 最早語る言葉も無しと、神霊メムアレフと邪神スルトと戦闘に。メムアレフは命中・回避率低下の追加効果を持つ万能相性魔法攻撃【大洪水】にてこちらの足を止め、スルトはななみちゃんばりの火炎特化の攻撃スキルで攻めてくる。ヘカーテの耐性なら万全、かと思いきやちゃっかり【原初の炎】なる神威により攻撃力超上昇、しかも戦場の全てのキャラクターが持つ火炎相性への耐性を失わせるなど凶悪な対策を持ち合わせていた。流石は初代火炎特化悪魔、実はメムアレフよりレベルが高いだけはある。

 なんて舐めたことを言ってる場合じゃなく、700ダメージを龍の眼光つきで数回、なんて攻撃を受け前衛にいたななみちゃんと造魔が早々に落ちる。引き出された俺にも等しく【火炎斬】の洗礼が降りかかり、手立てなくまさかの全滅の危機かと冷や汗を垂らした。変身中の今は【幸運】では凌げない、命運にしてもヘカーテのレベルの低さが災いして、防御点が高くないため2回3回は凌げてもそれ以上はHPが足りない。或いは、奴の神威によって張られた取り巻く「火炎」の場を打ち消せるならば良いのだが、そういったスキルや神威は俺の持ちあわせには一切ない。

 メムアレフを舐めたわけではないが、まさか火炎一辺倒のスルトが本命だったとは。

 詰んだか?

 

 しかしゲームオーバーを覚悟した瞬間、突如「火炎」の場が剥がれ、耐性が復活して【火炎斬】が弾かれる。何事かとスルトと俺があたりを見回すと、ななみちゃんの持つCOMPから顔を出す妖精ピクシーの姿が。あれはななみちゃんが絆を結んだピクシー……そうか、妖精が持つ神威を使ったのか!

 レベル一桁の妖精と、レベル100近い邪神スルトの神威とでは比にならない力の差がある。しかし絆を結んだ妖精たちが力を合わせれば、スルトの力の一端を削ぐくらいの助けにはなる。スルト自身の火勢は止まらずとも、俺たちに降りかかる原初の炎の呪いは収まった。最早、スルトなど恐れるものではない。

 俺はすぐさま生贄用のナンディを召喚、【リカームドラⅢ】によりななみちゃんと造魔を蘇生し、必殺への布石としてデバフをばらまく。友情と絆の力を得て復活したななみちゃんは、スルトとメムアレフへ必殺の連撃を放つ。スルトの火炎反射は火炎ガードキルにより打ち消され、また俺の放ったデバフとななみちゃんの【縮地Ⅲ】により回避率は最低に落ち込み、最早避けることすら能わずメムアレフとスルトはその身に必殺の直撃を受け、消し飛んだ。

 

 この間、わずか1ターンの出来事である。

 

 

 

>6日目(金)11:00

 戦後処理中、遅れてシュバルツバース調査隊の面々、およびゴア隊長がメムアレフの間へやってくる。メムアレフが倒れたことで悪魔たちの抵抗が弱まり、随分楽にここまで来れたらしい。……正直、あのスルトを彼らは倒せるのだろうかという疑問が浮かぶが、全滅したらそれはそれで事なのでこれで良かったと思うことにする。

 一度は戦ったこともあったが、もう敵対する理由はこちらには無いと正直に伝えながらメムアレフの残した最後のレアフォルマを渡す。ななみちゃんが俺の代わりに謝る姿を見て、何人かは苦笑を浮かべて謝罪を受け取っていた。……流石に俺の所業を彼女に謝らせるのはどうかと思うので、俺からも仲直りを頼む。石化やら何やらを食らった恨みを持つ隊員は多かったが、メムアレフを打倒した立役者たちをないがしろにするのは忍びないというゴア隊長の一声で不満の声は収まった。この場で復縁とはいかないが、彼らの敵意は薄れたように感じる。

 今後、シュバルツバースを脱出してもポラリスの侵食が続いている以上、地上に戻った彼らは引っ張りだこが予想される。その一環で、いずれセプテントリオンが出現している日本へやってくる時があるかもしれない。そもそも無の侵食が進んでいて、来れなくなっているかもしれない。……そのどちらにしても、あるいはポラリスを倒した後で再会した時には、笑って話せる関係になってるといいなとは思いつつ、撤収作業に入る彼らを見送った後は、先に【トラポート】でシュバルツバースから脱出する。

 

 

 南極で事を済ませ、地上へ戻ってきた俺たちを待っていたようにミザール出現の報せが入る。結界と引き換えに倒すミザールを、ここで俺たちの手で倒すことで絶好のアピールになるだろう。それが出来なければ、結局俺たちはジプスやヤマトのおこぼれに預かって美味しいとこどりしただけの勢力になり、LAWやCHAOSの先人たちに恥ずかしくて顔向け出来ないね、ってのは個人的な話。

 まあ、口先で言うよりもまず行動で示してみせましょうか。ちょっと東京行ってくる、なあにすぐ戻るさ。

 

 



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決別の金曜日2

終わらない金曜日


 

>6日目(金)11:30

 シュバルツバース隊との一難が去っても、まだ一難が残っている。ジプスとの対立、そして尤も厄介なセプテントリオン、『ミザール』の出現。初報から人数を揃えるのに時間が経ったこともあり、既にミザールの数はかなり増殖しつつあると予想される。

 だが俺たちには対ミザールに特化した火炎悪魔が、そして大物殺しのななみちゃんが、そして更にある一つの切り札を用意した。それは現在ロナウドが持っており、彼なら十分使いこなせるだろう。

 イクゾー!

 

 

 

>6日目(金)12:00

 ヒノカグツチのちからってすげー!

 

【スクライイング】と【マッパー】で場所を調査後、ジプスとの遭遇に気をつけながら【トラポート】で場所取り。本体を補足できる位置に移動し、レベルが上がったことで丈夫な体を存分に活かし、皆でビルの上から飛び降りてミザール本体へ襲いかかった。そしてななみちゃんの眼が光り、一瞬の連撃で本体を蒸発させる。しかし飛び散るミザール小型中型たちを、ロナウドが振るうヒノカグツチが焼きつくした。原作でジプスがあんなに苦戦したのが嘘のようであるが、実際圧倒的な火力の前には多少の数なんぞ脅威ではない。

 いやしかし、スルト倒した時にドロップした高価な売り物が、こんな活躍するとは思わなんだ。流石はメガテンif...の最強武器なだけはある。個人的には早期に手に入るKフロストロッドのほうが思い入れ深いけど。

 

 

 少し離れた場所にいてヒノカグツチの全体攻撃を喰らわなかった、目につく小型ミザールたちとかの後片付け中にようやくモジャ公たちwithフミっぱいが駆けつけてくる。遅かったじゃないか……

 ジプスが動く前に、ミザールは片付けた。ジプスが倒せなかったミザールを、俺たちはジプスの手を借りずともセプテントリオンを倒し、侵略者ポラリスから人類を守る能力があることをここぞとばかりにモジャ公に誇示した。ヤマトの、ジプスだけに頼る必要が無いことを明らかにした今こそ、実権を振りかざして実力主義の世界を作ろうとするヤマトから離反する時だと俺は彼らに訴える。

 飄々とした性格で反応が知れぬモジャ公。相変わらず悪魔と手を組むことに苦手意識のあるらしいダイチ少年。拍子抜けといった表情で放心したままのイオっぱい。そして、そもそも研究さえ出来ればどこでもいいフミっぱいの4人は、反応が著しくなかった。まあ、この辺は仕方ないとさほど期待していなかった。

 本命は東京四人組の一人、ジョーさん。原作では、実力主義の世界では病気がちな彼女が到底生きられないと察し、平等主義に加担する男だがこの世界ではどうか。反応を伺ったところ、ややこちら寄りではあるが決定的に賛同する様子は見られなかった。ううむ、やはり俺なりの主義主張では彼を惹きつける要素は得られなかったか。

 この場では仲間を得られないと見切った俺は、今夜ジプスへ挑戦状を叩きつけて明日にはヤマトを倒すと彼らに宣言して、東京を立ち去った。それはそうとミザール残党の処理もそっちでよろしく。

 

 

 

>6日目(金)12:30

 名古屋に戻ってきたところで早速明日の対決へ向けて戦力強化の時間である。ミザール討伐を早めた都合上、今日の予定は夜まで特に無い……と思う。ジプスやモジャ公が急に攻めてくる可能性はあるので、それを踏まえても早めに済ませておこうと思う。といっても例によって悪魔を配布するのですが。

 戦力を確認すると、素質の問題か、超人覚醒には至っていないが40レベルを超える市民サマナーが2、3名現れていた。あとは30レベル前半から20レベル程度までまばらに20名ほど。平時なら高レベル悪魔も打倒しうる戦力だが、強烈な全体攻撃が飛び交うシナリオ終盤直前の環境では数合わせにもならない。

 

 とりあえず火力は以前のラミエルで十分だろうと、今回は困った時の全門耐性、耐物理持ちオモイカネを配布。ただし耐性は優秀でも体は脆いので終盤の万能ゲーにはついてこれないかもしらんね。各自で合体することを推奨する。

 

 

 

>6日目(金)13:00

 僅かな揺れが起こる。こんな時勢に地震なんて起こるか?と不審に思い原因を調べたらベリアルから名古屋テレビ塔本来の結界が切られたと報告があった。既に乗っ取って大部分を変更済みなので名古屋に影響はないが、どうやら結界が本来使用していたエネルギー源、龍脈をヤマトが強制的に遮断したらしい。野郎……そこまでしたら戦争じゃねえか!

 ミザールは殆ど片付けたし、セプテントリオン迎撃のため龍脈パワーを用いる必要は無くなったはずだが、あくまで名古屋に対する攻撃だろうか?ベリアル配下の悪魔に指示を出し、東京と大阪の龍脈の状況をチェックさせる。

 

 

 

>6日目(金)14:00

 東京への龍脈パワーの供給が減少し、名古屋は完全に。一方で大阪に減った分の龍脈パワーが集中しているそうだ。また、地震の原因も富士山が噴火したんだとか。富士山には峰津院家が管理する龍脈パワーの出力制御器があるため、決戦に備えて自ら解放したのではないかと。ミザールを倒してわざわざ龍脈を費やし、侵食が進むリスクを無くしたのになんてことするんだあんにゃろー!

 ななみちゃん、ロナウド、それからベリアルとリリスも呼んで名古屋首脳会談を行う。議題はジプスとの決着を本日中に済ませるか、明日に回すかという話。わざわざヤマトが龍脈を解放したのは、原作でミザールに使った龍脈の力をそのまま名古屋の悪魔たちに対して振る舞うのではないかと危惧している。起動するための魔法陣は東京にあるから、使う絶好のタイミングはヤマトら実力主義勢力が大阪に撤収する前の今晩中だろう。ちょうどミザールに対して発動した龍脈の力が俺ら相手にすり替わりかねないわけだが、それを防ぐなら今晩中にヤマトへ攻撃するべきではないか。

 その場合のデメリットは、未だモジャ公ら主人公たちがジプスと行動を共にしている以上、まとめて相手しなければならないこととか、つい先ほど挑戦状を叩きつけると事前告知したのに奇襲を仕掛けるのは、例えそれで下しても不満が溜まるとか。このへんはダーク悪魔であり義理人情を信用しないベリアルとリリスから反対を受けた。故にメリットが大きいとして、ロナウド、ベリアル、リリスの三名の意見から奇襲を行うことが決まった。しかし実際どう奇襲するかについては、結局のところ実働部隊である俺たちが判断する形になる。

 とりあえず……ヤマトが龍脈を使おうとした時に、先んじて出鼻をくじく方針で決まった。

 

 

 

>6日目(金)14:30

 ななみちゃんと共に東京へやってきて、まずは俺一人で東京都庁地下にあるはずの龍脈起動の魔法陣の在り処を捜索する。原作から既にあたりはつけていたので、ジプスの警戒網を抜ければすぐに目的の場所は見つかった。この場で破壊できれば憂いはなくなるのだが、この手のエネルギーを蓄えた仕掛けに力技を行うとろくでもないことが起きる印象がある。東京都庁が大爆発なんて洒落にならんし。

 幾つか戸締まりに細工を施して、後々再侵入しやすいようにした後は地下を脱出、ななみちゃんと二人敵地ながらデートする。夕方に予定が入ったので暇がある今のうちに済ませておこうという話になった。観光名所なんて巡れる状況ではないから、代わりに六本木ヒルズのシャッターが閉じたビルに潜り込んで、服を選んだり試着したり、女の子のわがままに付き合う形だ。ただし泥棒になるので持って帰れません。ななみちゃんにはもっと積極的なアプローチをしてほしかったと後に評されるがモテ力0のダメ男に無茶言わんでください。

 普段は可愛らしい服装を好んで着けてるななみちゃんが、きりっとしたスーツやセクスィーなすらっと大人びたスタイルの装いをするのは、なんというか……子どもが背伸びしてるようで、別の意味で可愛かったと茶化すと赤面して殴りかかってきた。力カンストのマジ殴りは洒落にならんからやめて。

 

 

 

>6日目(金)16:00

 シュバルツバース外であるにも関わらずルイ・サイファー閣下(女装)が俺たちの前に姿を表す。しかも先ほどななみちゃんが着けたのと同じスーツをより完璧に着こなしていたのに草生えた。

 恥じらいのあまり魔晶剣を振り回すななみちゃんを抑えつつ、閣下の御用を伺うが特に用はないという。ただし近いうちにかつては豊穣神であった蝿王様ベルゼブブが降臨するぞ、喜べよ(意訳)という情報を頂く。豊穣神に助力を得たいと常々思ったけど、冷静に考えると豊穣を司るバールとベルゼブブはまるきり別悪魔じゃないですかやだー!

 

 ヒルズを出たところに蝿王様降臨してた。原作より1、2時間は早い上にしかも出現場所が違う……いやある意味合ってるのか?

 

 

 

>6日目(金)16:30

 この蝿王様に豊穣の権能があるかどうか、あるのならば助力を得られないかと尋ねたが鼻で笑われる。唯一神のメシア教に貶められたこの姿は大悪魔ベルゼブブであり、人々が恐れ畏怖するのみの存在であると語る。故に、交渉は決裂し、そのまま戦いになった。

 戦闘では、いつものようにななみちゃんが蝿王様を2ターンで焼き払った。メムアレフ戦と同日のため、リソースは完全回復しておらず火力は不十分だったが、それでもボス一体を相手にするだけなら十分である。近年の蝿王様の代名詞、【死蠅の葬列】(シリーズの多くでは万能相性のダメージ魔法+呪殺相性依存の即死付き、だがTRPG版だと大僧正の【回転説法】と同じく万能相性の即死効果である)が数発飛んでくるがダメージは普通にHPで、即死は根気と命運で耐えて返しのターンで倒しきる。余裕の勝利ではないが、十分にHPが増加し猛攻を幾分か受け切れることもあってもはや並のボス1体であれば全力を尽くすこともなく倒せてしまう。

 問題があるとすれば蝿王様でなく、その出現を感じ取って駆けつけたジプス、およびモジャ公たちだ。蝿王様との戦闘後にやってきたのは仕切り直せて良かったとも、リソースが更に削れたところで戦闘になったのは不味かったとも言えるが。しかしボス悪魔でもなければ、例え万能相性の攻撃が飛んでこようが低下系デバフをかけられようが命を脅かされることもない。TRPGのプレイヤーキャラクターは最終的に防御力が高くなる傾向にあり、また極端なビルドをしない限り高い火力は出ないため、プレイヤーキャラクター同士で殴り合えば防御力が攻撃力よりも高いために泥仕合になりがちだ。そういったデータ同士の決め手となるのは、やはりレベル、相性、そして何よりもスキル構成次第である。

 デビルサバイバー世界で異能者の多くを占めるサマナーというものは、悪魔を使役することで対応力および支援に長ける一方で、攻撃面はレベルの壁を覆せない、防御よりの性能になってしまう。無論、悪魔合体次第で火力を補えなくもないが、スキル継承の問題でやはりレベルの壁、資産の壁に当たり、どうしても何時かは伸び悩むことになる。そして単純な攻撃力を伸ばすのに比べれば、優秀な相性を持つ悪魔の採用や耐性・活泉スキル、メディアラハンなどの回復スキルの継承で防御を補うのは楽である。故にある程度のレベルを持つサマナー同士の殴り合いとは、お互い消耗を繰り返し相手が尽きるのを待つか、幸運の訪れを待つだけのドロドロの泥仕合になる。

 

 モジャ公らと直接は対決しなかったが、彼らの影響を受け優れた悪魔を連れるようになったジプス局員エリートとの戦闘は非常にしんどかった。有効打はほぼななみちゃんの相性を変更した【ベノンザッパー】のみ、落としきれなかった悪魔やサマナー本体を俺の悪魔が習得した【至高の魔弾】で撃ち落とす。それに失敗した場合、【リカーム】や【メディアラハン】でほぼ全回復され、また立て直した連中をななみちゃんと合わせて削りなおす……の繰り返しの戦闘だ。レベル差の地力の差がなければ、決着がつくかも分からないレベルでもっと苦労しただろう。

 なんとかこの場のジプス局員を退け、名古屋に帰還したが今後の戦闘が危ぶまれる。プレイヤー性能のキャラクター同士の殴り合いは不毛で、時間は地力にやや劣るこちらに味方しない。ボス火力が欲しいよ……

 

 

 

>6日目(金)17:00

 リリスさんのほうを熱い目で見る。ベリアルもボス悪魔だが、地力でいえば彼女のほうがレベルが高い分、強い。メムアレフが去った今、消極的な協力をする彼女になんとか積極的になってもらえないものだろうか。

 

 



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