インフィニット・ストラトス 亡国の一夏 (OLAP)
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1話

 

「ひっぐ、ひっぐ。どうしてみんな僕と百春(ももはる)を比べるの、どうして僕を僕としてみてくれないの。」

 

とある道で少年が泣いていた。少年の名は織斑一夏、両親に捨てられ今は姉の千冬、弟の百春と3人で暮らしている。

 

一夏は優秀だった。しかし、それ以上に2人は優秀だった。だから、一夏は比べられ、褒められることがなかった。

 

「泣き止まないと千冬姉が心配しちゃう、だからなきやまないと。」

 

 

 

「ただいま。」

 

「おかえり、一夏。今日はテストが返ってきたそうだな、百春は見せてくれたから、一夏も見せてくれないかな。」

 

「一夏兄、僕は100点だったよ、一夏兄は何点だったの。」

 

また負けた、一夏はそう思った。

一夏の点数は90点、今回のテストは普段よりも難しく回りのみんなが60点台ばかりだったので、一夏も優秀といえる。

 

しかし

 

「90点か、百春と比べて少し劣るがよくがんばったな、よし今日はご褒美としてお姉ちゃんが2人の食べたい物作ってあげる。」

 

「本当!じゃあ、僕はハンバーグが食べたい。」

 

「また、百春と比べた。」

 

「何か言ったか、一夏?お前は何が食べたい。」

 

「百春と同じでいいよ、僕、自分の部屋で勉強してくるからご飯出来たら教えて。」

 

そう言って、一夏は自分の部屋にいった。

 

 

 

 

 

 

織斑一夏と百春は誘拐された。

千冬がISの世界大会、モンド・グロッソに出場するためにドイツに行くので、一夏と百春もついて行くことになった。

   千冬の応援をするため、会場に行っていたのだがその途中で百春と共に誘拐されてしまったのだ。

 

(ここは何処だろう。それに百春は何処にいるの?まさか、別の場所に連れていかれたのかな。)

 

一夏は不安だった。1人でここにいる不安と、千冬が助けにくるかどうかという、不安だ。

 

(助けて、千冬姉。)

 

一夏は願った。姉が助けに来てくれることを。

 

「おい餓鬼!お前に良いお知らせがあるぞ。」

 

突然、男が入ってきた。男は日本人ではなかったが日本語を喋った。

 

「良い知らせって何?」

 

「お前の姉がモンド・グロッソを辞退したそうだ。そしてお前の姉はお前ではなく、弟の百春の奴を助けに行ったそうだ。」

 

「えっ……」

 

一夏は自分の中で何かにヒビが入る音が聞こえた。

 

「つまり、お前の姉、織斑千冬は優秀ではないお前ではなく、優秀である弟、百春を選んだ。」

 

「あぁ、あぁ。」

 

何かが割れた。一夏は自分の中にある大切な物が割れた。

 

男は続ける。

 

「つまり、織斑千冬にとって、お前は大切ではなく、弟である百春の方が大切だった。そして、織斑千冬が二連覇を達成出来なかったから、俺たちの目的は達成された。」

 

「ふふ、ふふふ」

 

「つまり、お前は用済みだから死ね。」

 

「ふははははははは、ひゃーはっはっはっはっは」

 

一夏は笑った。面白くて仕方がなかった。信じていた姉は自分のことなんてどうでも良いと思っていた。その事がとても面白かった。

 

織斑一夏は死んだ。

 

 

 

数ヶ月後、織斑一夏はとある施設にいた。その場所は少年兵を育てるための場所で一夏はISと戦い、とある組織と戦うために少年兵として鍛えられていた。

 

毎日、毎日、訓練という名目で仲間と殺しあい、薬を打たれ続けた。一夏の精神は限界だった。いつ自殺してもおかしくはない、しかし、自殺しようとすれば薬を使われマインドコントロールをされる。

 

そんなある日、施設が襲撃された、襲撃した相手は一夏が戦うとある組織のようだ。

 

あちこちから聞こえる大人達の悲鳴、それを一夏は震えながら自分の部屋できいていた。

 

その時、自分の部屋の扉が開かれた。

 

扉から女性が入ってきた。

 

(千冬姉がきてくれた。)

 

一夏は思った。しかし、入ってきた女性は金髪だった。女性は一夏に近づくと

 

「私はとある組織に所属している者よ、あなた達少年兵を開放するためにきた。君達の国に連れて帰るからついて来て」

 

立ち去ろうとする金髪の女性、しかし、一夏は女性の服を掴み

 

「僕は死んだ、居場所がない。だから、連れていって、お姉さん達の組織に」

 

その言葉を聞くと女性は優しく微笑み告げる。

 

「あなたの名前は?」

 

「一夏…織斑一夏」

 

「いいわ、私の名前はスコール・ミューゼル、そして組織の名前は亡国企業。ようこそ織斑一夏、私たちの組織へ。」

 

こうして、一夏の新たな人生は始まった。

 

 

 

 

 

 



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亡国の一夏

一夏誘拐から数年後

 

某国企業本部

 

そこは四方を海に囲まれさらにはバリアによって不可視状態になっている島。

 

「ゼロ、ただいま任務から帰還しした。」

 

「おかえりなさいゼロ、次の任務だけど、まだ先になると思うわ。」

 

上司であるスコールに報告を終えたゼロは自分の部屋に戻った。

 

コードネーム[ゼロ]

    以前の名を織斑一夏という。何もかもを失い、ゼロから始めるという意味を込め、ゼロと名付けられた。

 スコールに助けられたあの日から一夏は亡国企業に入った。一夏は努力した。そして後にIS適性があると判明し、現在はISに乗り違法研究所を潰している。

 

「兄さん、戻ったのね。」

 

少女が部屋に入って来た。

 

「マドカか、たった今戻って来たんだ。」

 

織斑マドカ

    コードネーム[エム]

    一夏の義理の妹だ。過去に一夏の義理の母親が出て行く時に一緒に出て行った少女だ。

   義理の母親が連れ去る前は一夏と仲が良くいつも一緒に遊んでいた。その様子はまるで本物兄と妹であるかの様に。

 

「おい、ゼロ大変だ、これを見てみろ。」

 

突然部屋のドアが開かれロングヘアの女性、オータムが入ってきた。

 

「おい、どうしたんだオータム、そんなに慌ててはいってきて?」

 

「いいから、これを見てみろ!」

 

そう言うと、オータムは手に持ったノートパソコンをゼロとマドカにみせる。

 

「これは……」

 

「まさか!」

 

ゼロは驚きもせず、対象にマドカは驚愕の声を上げる。

 

ノートパソコンの画面に映し出された文字を見て。

 

<世界発の男性IS操縦者、織斑百春現る!>

 

 

「やっぱり百春の奴もISを操縦できたか。」

 

「兄さん、やっぱりってどういうこと?」

 

「俺が操縦出来るんだ、双子の弟であるあいつができてもおかしくはないだろう。」

 

「でも、どうなるんだよこれ。お前の存在はうちらで隠してるけど、こいつの存在はばれてしまった。」

 

「十中八九、IS学園にいくだろうな。」

 

 

「ちょうど良かったわ、みんないるならここで話しましょう。」

 

スコールが部屋に入って来た。

 

「みんなもう知っていると思うけどゼロとエムの元家族である織斑百春がISを動かしたわ。そこでIS委員会は百春をIS学園に入学させると思うの。そして、織斑百春はクラスの女子達によって、クラス代表になる。そして、その後行われるクラス対抗戦に出場するはずよ」

 

「つまり、何が言いたいんだ。」

 

ゼロがスコールに問う。

 

「次の任務はIS学園で行われるクラス対抗戦に乱入し、織斑百春のデータをとることよ。」

 

 




次回はクラス対抗戦になります。


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クラス対抗戦 VS楯無

黒零の装備と装備の名前はロックマンゼロのゼロの装備からとっています。


〜IS学園アリーナ屋上〜

ここに1人の男が立っていた。ゼロだ。今は顔を隠すために仮面を付けて、試合を見物していた。

 

(暇だなぁ)

 

「こちらスコール、ゼロ聞こえる。」

 

「はい、大丈夫聞こえています。」

 

現在、スコールはゼロと違い観客席で試合を見物していた。

 

「そろそろ、目標の試合が始まるわよ。準備してね。」

 

「了解」

 

今回のゼロの任務は織斑百春の試合に乱入し、実力を測るというものだ。

 

(さてと、どれくらい強いか試させてもらおうか元弟よ。)

 

ゼロが乱入するための準備をし始めたその時

 

「何をしようとしているのかな君は。そんなに戦いたいなら、お姉さんが相手してあげるわよ。」

 

声のした方を見てみると、そこにはIS学園の制服を身に纏い、巨乳で水色の髪をした少女が立っていた。

 

「更識…楯無か」

仮面につけられたボイスチェンジャー機能を使い、機械的な声ではなす。

 

「あら、お姉さんの名前を知っているのね嬉しいわ。それで、あなた達の目的は何かしら?」

 

「織斑百春の試合に乱入し、データを撮ることだ。」

 

意外にも楽に話したので、楯無は驚いた。

 

「そんなに簡単に話していいの?重要な事じゃないの?」

 

「大丈夫だ、これから起こることを話しているだけだからな。」

 

「そう、それなら生徒の安全を守る為にあなたと戦わないとね。」

 

そう言うと、楯無は自らのISである、ミステリアス・レイディを展開する。

 

「スコール、邪魔物が来た。敵の実力から考えて織斑百春の試合に乱入するのは難しい。」

 

「了解したわ、試合を中止させない為にあまり大騒ぎしないでね。」

 

「了解した、ゼロ、目標を撃破する。」

 

そう言うとゼロは自分自身のIS、黒零を展開する。

 

黒零(こくれい)

一夏が昔、篠ノ之束に教えて貰った知識を使いコアから作り上げた全身黒色の機体。

 

ゼロは武装であるビームセイバー[ゼットセイバー]を構え、楯無は蒼龍旋を構える。

 

ゼロは瞬時加速を使い楯無に接近する。

 

「はあ!」

 

楯無に対してゼットセイバーを片手で振るが蒼龍旋に防がれる。

 

「ちっ!」

 

ゼロは空いている手に伸びる槍[チェーンロッド]をコールし楯無目掛けて伸ばす。チェーンロッドは楯無の腹に巻きつき、楯無を投げ飛ばすが、空中で体勢を立て直し、着地する。

 

 

「あなた、やるわね。」

 

「IS学園の生徒会長にそんな事を言ってもらえるなんて光栄だな。」

 

ゼロは遠距離武器[バスターショット]をコールし楯無に向ける。

 

すると、突然スコールから、

 

「ゼロ、所属不明機体が接近しているから気をつけて。」

 

「どういうことだスコール、俺達以外にも奴を狙っている奴がいるということか?」

 

ドッゴォーーン!

 

いきなり、巨大なレーザーが上空からアリーナに向かって放たれ、アリーナのシールドを破壊する。

 

「何だ今のは!どんだけ遠くから撃った!」

 

ゼロが驚いていると上空から腕の長い黒色のISがアリーナに突入した。

 

「何だったんだ今のは?」

 

ゼロがアリーナの方を見ていると楯無が

 

「よそ見してていいの?それより、ちょっとむしむししない?」

 

「はっ!」

 

ゼロは気づいた、さっきよりも湿度が上がっていることに。

 

「戦いの途中でよそ見するなんてダメよ、くらいなさいクリア・パッション!」

 

その瞬間ゼロの周りで爆発が起きた。

 

 

 

 

 

 

 




皆様からのご感想お待ちしております


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決着

(ミスっちまったぜ、今の爆発のせいでシールドエネルギーが減っちまったぜ。それに仮面の鼻から下がわれちまってボイスチェンジャー機能がなくなった。)

 

楯無と対峙していたゼロは油断してしまったすきに、楯無のクリア・パッションをくらってしまった。

 

「さあ、観念して捕まりなさい。今捕まれば罪は軽いわよ。」

 

「誰が貴様に捕まるか!」

 

その言葉を聞いた瞬間、楯無は驚いた。

 

(男の人の声、どういう事よ。百春君以外にもISを使える男がいるっていうの。」

 

ゼロは楯無が驚いたことによってできた隙を逃さなかった。

連続瞬時加速を使用し、楯無に接近し、ゼットセイバーで切ろうとする。

 

「なにっ!?」

 

「でりゃぁあ!」

 

楯無は蒼龍旋で防ぐが、最大威力までチャージしたバスターショットの一撃を腹に撃ち込む。

 

バスターショットが直撃した瞬間、楯無がひるむ。ゼロはその一瞬を見逃さず、チェーンロッドを楯無の腕に巻きつけ、アリーナ内部に向けて、楯無を投げ飛ばした。

 

楯無は空中で体勢を立て直そうとするがゼロが放った連続バスターショットによって、体勢を立て直せず落下する。

 

 

楯無との戦闘を終えたゼロはスコールに連絡をとる。

 

「こちらゼロ、応答を頼むスコール。」

 

「こちらスコール。」

 

「すまない、楯無との戦闘のせいで、シールドバリアーが減った。このまま戦っても楯無ともども相手にするので戦闘は困難だ。」

 

「大丈夫よゼロ、あの乱入機のおかげで良いデータが取れたわ。だから、あなたの任務は完了よ。私も今から戻るから。あなたもアジトに戻りなさい。」

 

「了解、帰還する。」

 

そう言うとゼロは飛び立った。

 

〜とある海上〜

 

 

(最悪だ、まさか更識楯無の実力があれ程のものとは思っても無かった。だが、あいつとの戦いは面白かったな、そうだろ黒零。)

 

ゼロの思いに呼応するように機体に走る灰色のラインが光る。

 

 

 

 

〜生徒会室〜

 

なぞの乱入機のせいでクラス対抗戦が中止になり、教師が事後処理に追われる中、楯無は生徒会室で考え事をしていた。

 

(何だったのよ、あの少年と機体は、あの少年の反応からすると乱入機と少年は別組織のようね。それと、あの少年は何者よ、まさか百春くん以外にも男性操縦者がいるなんて、まって確か百春くんにはモンド・グロッソで百春くんと同様に誘拐されて、行方不明になった双子の兄がいた。もしかして、その子があの機体の操縦者、確かに双子なら操縦できてもおかしくはないはず。そう、確か名前は織斑一夏!)

 



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五反田蘭

(あー、やることが無い)

 

今現在、一夏は東京の秋葉原にいた。何故秋葉原にいるかというと、数日前、

 

「ゼロ、最近あなたは頑張っているから休暇をあたえるわ。明日から一週間日本ですごしてもらうわ」

 

いきなり、スコールがそんな事を言ってきた。

 

「スコール、それは休暇というのか、休暇っていうのは自分の好きなように過ごすもんだと思うんだが」

 

「じゃあ、あなたに任務を与えわ、明日から一週間、日本で過ごしてきなさい」

 

「そんな横暴な!」

 

「いいじゃねえかゼロ、お前は最近休んで無いからな」

 

「オータムまで」

 

「そうよ兄さん、偶には休息も必用よ」

 

「マドカ、お前までもか。はぁ、わかりましたその任務受けます」

 

「そう、わかったわ、明日から一週間楽しんできなさい」

 

 

という事があったのだ。

 

(それにしても暇だ、京都にも行ったし、大阪にも行ったがまだ後3日も休みがあるよ)

 

何をするか考えていた一夏はふとある物に目がいった。ビルとビルの間、その場所に少女が複数の男にかこまれているのを。

 

(面倒事は嫌いだが、助け無いのも後味が悪いな。)

 

そう思うと一夏は少女の所へむかった。

 

 

 

「ちょっと離してください!」

 

あたしの名前は五反田蘭、聖マリアンヌ女学院の生徒で生徒会長です。

 

今日は兄と買い物に来たんですが、兄とはぐれてしまい、運悪く変な男たち10人くらいに絡まれてしまいました。

 

「俺たちと遊ぼうぜお嬢さん」

 

もうダメだ、あたしは思った。

 

しかし、その時

 

「何をやっているのかなー、お兄さん達」

 

一人の男性が現れた。身長は180cm前後、年齢は多分兄と同じくらい。

 

「なんだてめえ、邪魔するってのか!」

 

1人の男が助けに来た男性に殴りかかるが

 

「遅いよ」

 

簡単にカウンターを喰らう。

簡単に男が倒されたことに驚く仲間たち。

 

「全員でやるぞ、さすがに全員でやれば倒せるはずだ。

 

「「「「「「「「おお!」」」」」」」」

 

男達が一斉に襲いかかる。

 

 

 

 

数分後、そこには無傷で立っている男性とボロボロになっている10人の男たちがいた。

 

「きみ、怪我は無い?大丈夫だった?」

 

「あっ、はい。大丈夫です。助けていただきありがとうございます」

 

「気にしなくていいよ、ただあいつらがムカついたからボコボコにしただけだよ」

 

あたしが男性にお礼を言っていると

 

「おーい、蘭」

 

兄がきた。

 

「何処行ってたんだよ蘭、心配したんだぞ」

 

「バカお兄、もう大変だったんだよ、この人がいなかったらあたしやばかったんだよ!」

 

「すまん蘭、それでこの人の名前は?」

 

そういえば聞いてなかった。あたしはそう思い男性に名前を聞こうとしたその時

 

「一夏、国野一夏だ」

 

一夏さんが自分で話し始めた。

 

「一夏か、俺は五反田弾、そしてこっちが妹の蘭だ。妹が世話になった、ありがとう」

 

「気にするな、それよりも妹さんを大切にしな。じゃあな」

 

そう言うと一夏さんは立ち去った。

 

カッコよかったなぁ、まるで白馬の王子様みたいで。

 

 

 



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休暇後

一週間の休暇が終わり部屋の中でくつろいでいたゼロ。

すると突然、オータムが入ってきた。

 

「おいゼロ、IS学園に潜入している諜報員から面白い情報が届いたぞ」

 

「面白い情報?なんだそれは?」

 

「なんでも、2人ほど代表候補生が来たらしい。そのうちの1人はドイツの軍人で確か名前はラウラ・ボーデヴィッヒってやつでよ、そいついきなり、織斑百春の頬を殴ったらしい」

 

百春が殴られたことにゼロは驚いたがそんなことよりも

 

「それで、もう1人は?」

 

もう1人の転校生が気になるようだ。

 

「それがなんとフランスからの代表候補生で男らしい」

 

 

「男だと、それで名前は?」

 

「たしか、シャルル・デュノアだったかな。それで、お前はそいつの事をどう思う?」

 

「どう思うと言われても、100%女だと思う」

 

ゼロからの言葉で少し驚くオータム。

 

「なんでそんなことが言い切れるんだ、ゼロ?」

 

「そいつの苗字がデュノアだからだ、フランスでデュノア、そして代表候補生、多分デュノア社のものだ」

 

「でもよお、それだけで女と断定するのはどうかと思うぜ」

 

「デュノア社は最近業績不信で赤字になりかけだ、それにイギリスのブルー・ティアーズ、ドイツのシュバルツェシリーズの様な第3世代機がでているなかで、フランスはまだ第3世代を開発してない。だから、白式を所持している百春と仲良くなり、白式のデータをとるために男として入学した。そして、その後はデュノア社の客寄せパンダに使う」

 

「そういうことか」

 

「それにしても次の任務は何か聞いているか?」

 

「いいや、聞いてないね」

 

「そうか、わかった」

 

そう言うとゼロとオータムは部屋から出て廊下を歩く。

 

「そういえばオータム、アラクネの調子はどうだ」

 

「お前の整備のおかげで最高に調子がいいぜ、ありがとな」

 

「当然だ。俺の整備ミスで仲間に死なれたらたまったもんじゃ無いからな」

 

「そうか」

 

しばらく廊下を歩いていると

 

「こちらスコール、ゼロとスコールはすぐに私の部屋にくるように、任務の知らせが有ります」

 

スコールからの放送があった。

 

「行くぞオータム、待ちに待った任務だぜ」

 

「あいよ、さあて今回はどんな任務なのかな」

 

〜スコールの部屋〜

「いらっしゃい、ゼロ、オータム」

 

「で、スコール、今回の任務はなんなんだ?」

 

「落ち着けオータム、今からスコールが話すはずだ」

 

「ゼロの言うとおりよオータム。今回、あなた達にやってもらう任務はISの強奪よ」

 

「強奪?何を盗むんだ?」

 

「イギリスの第3世代機、サイレント・ゼフィルス」

 

 

 



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サイレント・ゼフィルス強奪戦

ゼロの仮面はガンダムseedのラウ・ル・クルーゼの仮面の顔全体を覆うものを想像していただければ結構です。


〜イギリスとある工場付近の山〜

 

ここにある2人の男女がいた、1人はゼロ、もう1人の女の名をオータムという。

 

「ゼロ、作戦開始までは後どれくらいだ?」

 

「5分後だ。5分後の午前1時に俺たちの工作員の手によって工場の電気が止まる。そして、その隙に俺とお前で工場を襲う。それが今回の任務内容だ」

 

「了解、でもよお、いくら電気が止まったからといっても、ISは動くぜ」

 

「だからこそ、戦闘能力の高い俺たちが選ばれたんだ、もしかしたら量産型劣化ISコアを使った量産機ぐらいは出てくるかもな、おっと無駄話もここまでだそろそろ午前1時だ」

 

そうしているうちに午前1時となり電気が消える。

 

「行くぞオータム、任務開始だ」

 

そう言うとゼロは仮面をつけ、ゼロとオータムはそれぞれのISを展開し工場へ向けて飛び始めた。

 

 

〜工場内〜

 

工場内に突入したゼロとオータムは大量の量産型劣化ISコアを搭載したイギリス製第2世代機ホワイト・ティアーズと戦闘を行っていた。

 

しかし、数が多いといってもゼロとオータムの敵ではなかった。すぐに無力化されてしまったのだ。

 

 

「オータム行くぞ、サイレント・ゼフィルスはこの奥だ」

 

「おいゼロ、本当にこっちであってるのか」

 

ホワイト・ティアーズとの戦闘を終えた2人は廊下を通っていた。 

 

「工作員の情報ではこの奥だ、あったぞあの扉のなかだ」

 

2人はある扉の前で止まり、ゼロはそのトビラをゼットセイバーで切り開いた。

 

部屋の奥に鎮座していたのは黒色のIS

 

「行くぞオータムあれを回収し帰還すれば任務完了だ、早く待機モードするぞ」

 

「了解」

 

部屋の中に入り作業をする2人。

するといきなり

 

「動くな!」

 

女性の声が聞こえたのでそちらを見てみるとそこにはこちらにむけ、ISを展開している少女がいた。

 

「貴様らの狙いはサイレント・ゼフィルスか!」

 

ゼロがボイスチェンジャーを使い答える。

 

「あぁそうだ、俺たちの狙いはサイレント・ゼフィルスだ。そしてそれもすでに待機モードにしてしまった。」

 

オータムが右腕にサイレント・ゼフィルスを待機モードにしたものを持っていた。

 

「そして、我々はここから脱出すれば任務完了だ」

 

「させない、イギリスの代表候補生、エリナ・グレンジャーの名にかけて、あなた達を倒す!」

 

「オータム、先に行け俺はこいつを倒してから追いかける」

 

「わかった、必ず来いよゼロ」

 

そう言うとオータムとゼロは天井を破壊し飛翔する。

 

「待て!」

 

エリナもすぐさま追いかける。

 

〜工場屋外〜

 

オータムを見送ったゼロはエリナと対峙していた。

 

(みたところ多分、奴の機体はブルー・ティアーズだろう。確かビット兵器を搭載した第3世代機体。だが、勝てないわけでわない)

 

「くらえ!」

 

エリナはゼロに向け、スターライトmarkⅢを構え放つ。しかし、ゼロはシールドブーメランとバスターショットをコールし、シールドブーメランでビームを防ぐ。そしてシールドブーメランをエリナに向け投げ飛ばす。

 

「なに!」

 

投げられたシールドブーメランを紙一重で躱したエリナはシールドブーメランが飛んで行った方向をみた。

 

「隙だらけだよ」

 

ゼロは余所見しているエリナに対し最大威力のバスターショットを放つ、驚いたエリナは躱そうとするが直撃する。

 

「いきなり攻撃するなんて卑怯な!」

 

「余所見しているほうが悪い、私も余所見して攻撃をくらってしまったこたとがあるからな、それよりも、さっき投げた武器戻ってくるよ」

 

「なんだと!?」

 

そう言うとエリナの横腹をシールドブーメランが直撃した。

 

(なんなんだよ、あの機体は?あんなの何処の国のあいつだよ、さっきくらったビームの威力が凄すぎる。これはブルー・ティアーズを使う必要があるな)

 

そう思ったエリナはブルー・ティアーズを分離させる。

 

「どう、これがこの機体の切り札ブルー・ティアーズ。多方面からの攻撃をいつまでよけれるかしら」

 

そう言うとエリナはティアーズをゼロの周りに展開しティアーズ4基を一斉射撃させる。

 

「よける?そんな必用は無い」

 

次の瞬間、ゼロはティアーズから放たれたビームをシールドブーメランで弾き返し、弾き返されたビームによって2基のティアーズが破壊される。

 

「まだまだ!」

 

そういうと、ゼロはチェーンロッドをコールし1基のティアーズに巻きつけ、もう1個のティアーズにぶつけ、2つとも破壊する。

 

「そんな、あんな一瞬に4基のティアーズを破壊するなんて」

 

「終わりだ!」

 

瞬時加速を使いエリナへと急接近するゼロ。

しかし

 

「まだティアーズは2つある」

 

エリナの腰からミサイル装備のティアーズが発射される。

だがゼロはそれをセイバーとロッドで破壊し、ロッドをエリナに巻きつけ、セイバーで何度も斬る。

 

「ユニバァァァス!!」

 

その掛け声とともにゼロはエリナを地面に投げつけた。

 

地面に投げつけられたブルー・ティアーズはエネルギーがなくなったらしく解除される。

 

「ゼロ、これより帰還する」

 

ゼロは飛び去った。

 

「ま……て…」

 

その光景を見ていたエリナは叫ぼうとするが声がでず、気絶してしまった。

 

 

 

 

 



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VTシステム

〜IS整備室〜

「サイレント・ゼフィルスの整備は進んでいるの、ゼロ?」

 

「ああ、進んでいるぜスコール。思ったよりも早くサイレント・ゼフィルスが心を開いてくれてな、そのおかげで予定よりも早く整備が進んでいる」

 

「それしにても兄さんは凄いね、ISコアの声が聞こえるんだからさ」

 

「そんなことはないさ、マドカ。それよりもスコール、やっぱりあったぜ、どうやらこの機体に搭載されていたようだから解除しておいたぞ、VTシステム」

 

「何それ、兄さん?」

 

「簡単に言ってしまえば人の動きを真似するシステム、だが真似するのはただのヒトではない、モンド・グロッソ優勝者、つまり、織斑千冬の動きを真似する為のシステムだ」

 

マドカの問に対し返答するゼロ、そして、付け足すようにスコールが

 

「でも、これには弱点があるのよ、それはVTシステムの動きに登場者がついていけなくなって、身体がボロボロになってしまうのよ」

 

「でも、そんなのアラスカ条約で禁止されてるはずじゃないの!?」

 

「エムの言うとおり禁止されているわよ、でも、イギリスとドイツの研究者が手を組んで極秘裏に開発していたのよ」

 

「それでスコール、他にもVTシステムが搭載されている機体に目星はついているのか」

 

「もちろん、VTシステムが搭載されているのは残り1機、ドイツのシュヴァルツェア・レーゲン、搭乗者はラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

「ラウラ?確かそいつはIS学園に所属していなかったか?」

 

「その通りよゼロ。だから、今度の任務はまたIS学園に侵入し今度開かれる学年別タッグトーナメントの時、ラウラ・ボーデヴィッヒを襲撃しISを奪う。わかったかしら、ゼロ、エム?」

 

「了解した」

 

「わかりました」

 

「ちなみにエム、あなたがサイレント・ゼフィルスに乗りなさい」

 

「私が乗ってもいいんですか?」

 

「ええ、もちろんあなたの実力ならきっとサイレント・ゼフィルスを操れるわよ、あなたもそう思うでしょ、ゼロ?」

 

「そうだな、それにサイレント・ゼフィルスのコアもマドカのことを気に入っているみたいだしな」

 

「本当なの、兄さん?」

 

「本当だ」

 

「そう、だったらこれからよろしくねサイレント・ゼフィルス」

 

マドカが触れるとサイレント・ゼフィルスは黒色のブレスレットの待機モードになり、マドカのうでに装着された。

 

「それで、俺たちはこれからどうすんだ?」

 

「ゼロとエムにはこれから日本に行ってもらいます。そして、その後トーナメントの時にはマドカはアリーナ上空で待機、そしてゼロはすぐにラウラと戦えるようにアリーナ屋上で待機。そして、ラウラが試合でエネルギーを消費したら襲撃しなさい」

 

「「了解」」




VTシステムの解釈がまちがっているかもしれません。そして、原作ではドイツがかってに作ったVTシステムですが、サイレント・ゼフィルスを奪うためにイギリスとの極秘裏開発にさせていただきました。


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更識との会話

学年別タッグトーナメント当日、ゼロは前回と同じようにIS学園のアリーナの屋上で目標の試合が始まるのを待っていた。

 

 

「こちらゼロ、待機地点に到着しました」

 

「了解、そのまま待機していて」

 

「なあスコール、一つ聞いていいか?」

 

「なに?」

 

「もし、ラウラ・ボーデヴィッヒのISに搭載されているVTシステムが暴走した場合にはISを奪わずにその場で黒零を使いVTシステムを破壊してもいいのか?」

 

「ええ、構わないわよ、寧ろそれが今回の目的なんだから」

 

「了解、では引き続き待機してお……」

 

その時、ゼロは誰かがこちらに接近している事に気が付いた。

 

(この気配……)

 

「どうしたのゼロ?」

 

「いや、なんでもない、引き続き任務を継続する」

 

そう言うとゼロは通信を切った。

 

すると

 

「誰と話していたのかな?」

 

若い女性の声がした。

その女性の髪は水色で髪は外側に跳ねている。さらにIS学園の制服を着ている。ゼロはこの女性を知っている、以前のクラス対抗戦でこの場所で戦った人間。そう、その女性の名は

 

「更識楯無」

 

「あら、覚えていたなんて光栄ね。ええっと、そういえばあなたの名前はなんていうのかしら?」

 

「ゼロ」

 

ゼロは自分の名前を更識につげる。

 

「そう、ゼロっていうの。ボイスチェンジャーはしなくていいの?それと今回のあなた達の目的は何なの?」

 

更識はゼロの近くに座る。

 

「お前にはすでに声を知られてるからな使ったところで無駄だ、それに今回は前回と違って任務の内容は話さねえぞ」

 

「あらそうなの」

 

更識はゼロの言葉を聞くと残念そうな顔をする。

 

「更識、お前はこんなところにいてもいいのか?お前は確か生徒会長だろ?」

 

「どっかの誰かさんを見張らないといけないのよ」

 

「そうか大変だなお前も」

 

ゼロはからかうよう話す。

 

「あなたって妹さんいる?」

 

突然、更識が聞いてきた。

 

「いるけど、それがどうした?」

 

「妹さんとは仲良いいの?」

 

「それなりにな、そんなこと聞いてどうする?」

 

「どうやったら妹と仲良くなれるか知りたいの」

 

「……は?」

 

ゼロはわけが分からなかった。なぜ敵である更識にこのようなことを聞かされているのか。

 

「だから、私にも妹がいるんだけど、ある事の所為で姉妹の仲に溝ができてしまったんだけど、どうにかしてその溝を埋めたいのよ」

 

「何故俺に聞く、クラスメイトかルームメイトにでも相談すればいいだろ」

 

ゼロのいう事は尤もだクラスメイトやルームメイトではなく、敵であるゼロに相談するのか訳がわからなかった。

 

「いやね、私さ学園では完璧超人に見られてるらしくてさ、相談されるけど、相談する事はできないのよ」

 

「なるほど、それで敵だけど妹と仲の良い俺に相談するのか」

 

「そういうこと、どうやって妹と仲良くなったの?」

 

「俺の妹も俺と仲は悪かったが、接していくうちに仲良くなったぞ。それより、どうして仲が悪いんだ?」

 

「うっ……それは」

 

事情を説明する楯無

 

「なるほどね、よし、お前は一回妹に謝罪してこい、それが一番手っ取り早い」

 

ひどく考えた更識に対し、バッサリと言い放つゼロ。

 

(姉に対する劣等感か……昔の俺もそんなんだったのか)

 

そんなことを考えるゼロ。そしてふとアリーナの内部に目を向けると今まさに百春のコンビとラウラのコンビが戦っていた。

 

 

(百春の相方はラファールのカスタム機という事はアレがデュノアか。そして、ラウラの相方は一般生徒……いや、あいつは確か篠ノ之箒?) 

 

アリーナを見ているゼロに対し更識が

 

「また今回も百春くんのデータ撮りが目的?」

 

「そんなどうでもいいことではない、今回はもっと大事なことだ」

 

「大事なこと?」

 

更識は疑問に思った、百春のデータ撮りが目的ではなかったら何が目的なのだと。

 

「見ていれば分かるかもしれない」

 

「そう。ねえ、あなたから見て彼女達の戦いはどう思う?」

 

「ノーコメント」

 

そうこうしているうちに篠ノ之が百春によって倒され、ラウラはデュノアによって壁際まで追い込まれ、腹にパイルバンカーを撃ち込まれる。

 

「これで終わりかしらね」

 

「そうだな」

しかし、突如としてラウラが叫び、ラウラのISから黒い泥が出現しラウラを包み込み、やがて、黒色の女性剣士の姿が現れる。

 

「なんなのよ、アレ」

 

「VTシステム、俺の今回の任務はアレの破壊だ。じゃあな、更識」

 

そう言うとゼロは黒零を展開し、アリーナ内部へ降りた。



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VSVTシステム 前編

VTシステムは原作と違い強化されていると思います。
あと、文書かわ読みにくいです。


〜アリーナ〜

「何なんだよこれは……」

 

   織斑百春は今自分がおかれている状況に混乱してた。ラウラのISが倒されたと思ったら突如として姿を変えたり、正体不明のISが空から降りて来たりして訳がわからなかった。

 

「ねえ、君は一体何者なんだい?」

 

    百春は謎のISのパイロットに問いかける。

 

「貴様に話すことなど今はない。大人しく、向こうでおどおどしているポニーテール女をピットまで運べ、邪魔になる」

 

    パイロットはボイスチェンジャーを使って機械的な声をだす。

 

「わかった、君の正体は気になるけど、まずは安全第一だ」

 

そう言うと百春とデュノアは箒のところまで行き、箒を抱きかかえるとピットまで飛んで行った。

 

百春とデュノアがピットにはいるのと同時に観客席のシャッターが閉じられた。

 

(学園に潜入している奴らがシャッターを下ろしてくれたのか、それにしても凄い様だな)

 

ゼロがVTシステムを発動したシュバルツェア・レーゲンを見ると、その姿はすでにレーゲンだった頃の面影はなく、普通のISよりも大きく、その姿はかつて織斑千冬が搭乗していた機体、暮桜にそっくりだった。

 

「ゼロ、聞こえる?」

 

突然、エムから連絡が来た。

 

「どうした、エム?」

 

「私はこれからどうすればいいの?」

 

「そのまま待機していろ。俺が撤退するまで絶対に手を出すな」

 

「……わかった、頑張ってね兄さん」

 

「わかった」

 

エムとの連絡を終えるとゼロはゼットセイバーをコールし、VTシステムへと向き直る。

 

 

「「…………」」

 

ゼロとVTシステム、両者は無言で武器を構える。

 

「っ!」

 

    刹那、ゼロは瞬時加速を使い、VTシステムとの距離を詰める。VTシステムがゼロに向かって右手の泥で作られた剣を振るうがゼロによって剣を切られ、ガラ空きになった腹をゼットセイバーで縦一文字にきる。斬られた腹からラウラの顔が見える。

 

    ゼロは急いでラウラを救出しようとするが

 

「っ!」

 

黒い泥によってゼロに斬られた部分が再生される。再生された剣をVTシステムがゼロに向かって振るう。ゼロは咄嗟に距離を取り、この一撃を躱す。

 

 

(どうなっていやがる、確か資料によると、VTシステムに再生機能はなかったはずだぞ、それなのに何故奴の剣と腹が再生したんだ)

 

    ゼロがそのような事を考えていると、VTシステムはこちらに左手を向ける。すると、突然VTシステムの左腕が伸びる。

 

「なにっ!」

 

突然の事に驚くゼロ。

 

しかし、瞬時加速を使い腕を躱す。躱された腕ら勢いそのままに壁に突き刺さる。

 

(あんな能力はサイレント・ゼフィルスのVTシステムには搭載されていなかったぞ、もしかするとラウラとVTシステムの相性が良かったから、こんな事が出来ているのか?)

 

突き刺さった腕を元の長さに戻したVTシステムはこちらを向く。すると、VTシステムの両肩付近に浮いている肩アーマーの形が変形し、機関銃の様な形になる。

 

「やばい!」

 

ゼロが叫ぶのとほぼ同時に機関銃から泥が放たれる。何発かは当たってしまったが、大半をブーメランシールドで防ぐ。機関銃からの弾丸の雨が止むと、VTシステムは再び左腕を伸ばした。ゼロは腕をブーメランシールドを投げ切り裂く。

 

「コロォス!」

 

腕を切り裂かれたVTシステムがゼロに対して叫ぶ。VTシステムは高速で移動し、ゼロに接近する。

 

「やれるもんなら、やってみろや!」

 

ゼロはバスターショットとチェーンロッドをコールする。振り降ろされるVTシステムの剣にチェーンロッドを巻き付け、剣の軌道をずらす。

 

「ガァア!」

 

叫ぶVTシステムの腹にゼロはバスターショットを突きつけ最大威力までチャージし放つ。衝撃で倒れこむVTシステム。

 

「まだまだ!」

 

ゼロはチェーンロッドを収縮し、VTシステムの上にのしかかりバスターショットを連射する。

 

「オォ!」

 

VTシステムは左手でゼロを掴むと、腕を伸ばしゼロを壁に叩きつける。叩きつけられた衝撃で少しだけ壁にめり込む。

 

VTシステムは立ち上がり、両肩のアーマーを槍に変型させてゼロに放つ。ゼロはバスターショットを放ち一つを破壊するがもう一つを破壊することができなかった。

 

(やばい!)

 

ゼロは思った。しかし、突如として水のカッターが降り注ぎ泥の槍と泥の左腕を破壊する。

 

(水?)

 

そして、上空から第三者の声。

 

「情けないわね、お姉さんと互角に戦ったんだから、もっと頑張りなさいよ」

 

「ずいぶんと遅かったんだな、更識」

 

第三者の名は更識楯無。IS学園の生徒会長にして、ロシアの国家代表。

 

「生徒達を避難させていたのよ」

 

「お前だけが来たのか?」

 

「そうよ」

 

ゼロは壁から脱出し、更識はゼロの近くに着陸する。

 

「いいのか、犯罪者の手伝いなんかして?」

 

「今回はIS学園のピンチを解決するために手伝ってもらっているんだから問題はないわよ」

 

「そうか、ならば行くぞ!」

 

「ええ」

 

ゼロと更識はVTシステムに指を指し告げる。

 

「「第2ラウンド開始だ!」」

 

 

 

 

 



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VS VTシステム 後編

〜管制室〜

「何が起きているんだ……」

 

織斑千冬は混乱していた。ラウラのISが突然暴走したり、謎のISが出現したりして。

 

「山田先生、シャッターはまだ開かないんですか?」

 

「今やっているんですが、セキュリティがかけられているんです」

 

「ISは出撃できないのか?」

 

「IS格納庫の方にもセキュリティがかけられていますし、専用機持ちであるケイシーさんやサファイアさんは試合直後で出撃できません。」

 

「それで唯一準備ができていた更識が一人で出撃しているのか」

 

「はい、それにしても何者なんでしょうねあの機体とパイロットは」

 

麻耶は管制室に備えられている巨大なモニターを見ながら呟く。

 

「そうだな、多分だが奴の実力は見たところ国家代表レベルの実力者だろ」

 

「国家代表……だとしたら何処の国のパイロット何でしょうね」

 

「それは解らない」

 

千冬と麻耶が会話していると。

 

「 千冬姉」

 

百春とデュノアが管制室に入ってきた。

 

「どうしたんだ織斑、デュノア。それと織斑、ここでは織斑先生と呼べと言っているだろうが!」

 

千冬は出席簿で百春を叩く。

 

「痛いよ千冬姉。それよりも、僕とデュノアはまだ戦えるから出撃させてよ!」

 

「それはダメだ」

 

百春からの頼みを断る千冬。

 

「どうして何ですか!織斑先生」

 

デュノアが千冬に問いかける。

 

「お前達はあの2人の邪魔をせずに戦えるのか?あの2人は国家代表レベルの実力者だ、いくらお前たち2人が代表候補生レベルでも足でまといになるのがオチだ」

 

そう言うと千冬は管制室に備えられているモニターを眺めた。

 

 

 

 

〜アリーナ〜

 

「オラオラ!」

 

更識と共闘しているゼロはVTシステムの周りを更識と対角線上に円状に旋回しながら射撃していた。

 

「グオォ!」

 

VTシステムはゼロに近づき右手の剣を振るうが、ゼットセイバーによって防がれる。

 

「やれ、更識」

 

「了解!」

 

更識はVTシステムの背中に水の弾丸を撃ち込む。

 

「ウオォ…」

 

「せいっ!」

 

弾丸によって怯んだVTシステム、ゼロはすかさず剣を弾きVTシステムの両腕を回転斬りで斬り裂き、後退し距離をとる。

 

(さすがに国家代表レベル2人を相手にするのはキツイらしいな)

 

 

 

(たすけて)

 

突如、頭の中に少女の声が響く。

 

(誰だ!?)

 

(どうしてお前は強いんだ)

 

(俺は強くなんかない、それよりもお前はだれなんだよ!?)

 

(ラウラ…ラウラ・ボーデヴィッヒ)

 

(なん…だと)

 

その名前を聞いた瞬間、ゼロに隙ができる。その隙をついてVTシステムは接近しゼロの顔に剣を振るう。ゼロは躱しきれず直撃する。

 

「何やってんのよ!」

 

更識がVTシステムを蒼龍旋で切り裂き、ゼロとVTシステムの距離を取らせる。

 

「どうしたのよ一体?」

 

「声がしたんだよ、たすけてって声が」

 

「誰の声だったの?」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「でもどうして?」

 

「多分だが、ISコアを通じて彼女の意識が俺とリンクしたんだと思う」

 

「それで、彼女はなんて言ってたの?」

 

「たすけてって言ってた」

 

「どうして」

 

「VTシステムは搭乗者に莫大な負荷を掛けるんだよ、彼女はもうその負荷に耐え切れなくなったんだと思う、だから、さっさと蹴りをつけるぞ」

 

「そう言いう事なら、さっさとやるわよ!」

 

ゼロはもう一つゼットセイバーをコールし2本のゼットセイバーを構え、更識は蒼龍旋を構える。

 

VTシステムは左手を前に突き出すと、左手は何十本にも分裂しそれぞれ触手の様に伸び2人を襲う。ゼロは2本のゼットセイバーで切り裂き、更識も蒼龍旋で切り裂く。

 

(たすけて!)

 

再びラウラの声が脳内に響く。

 

(やばいな、そろそろ救出しないとあいつの肉体に影響が出始める)

 

ゼロは瞬時加速を使いVTシステムとの距離を詰めようとする。

 

(私は誰だ)

 

(てめえはてめえだろうが)

 

(私は教官みたいにはなれないのか?)

 

(そんな事は知らない)

 

(怖い、嫌だ!ならば私はだれなんだ!)

 

ゼロは距離を0に詰める。ゼロはVTシステムが振り降ろす剣と左腕を2本のゼットセイバーで切り落とす。

 

「お前はお前だろうが!誰の変わりでもない、お前はお前だ。だからお前はお前なりに生きてみろ!」

 

ゼロはボイスチェンジャーの声ではなく、自分自身の肉声でラウラに対して叫ぶ。

 

「うおおお!!」

 

ゼロは両腕のゼットセイバーでVTシステムの腹を十字に切り裂く。

 

切り裂かれたVTシステムの腹にからラウラ・ボーデヴィッヒが落ちる。それをゼロは優しく抱きかかえる。

 

「任務完了……」

 

ラウラは涙を流していたが安らかな寝息を立てていた。




まだこの作品を書いている途中ですが、次に書く作品の予定を書きます。

インフィニット・ストラトス 凱再誕
ジェットマンのブラックコンドル、結城凱がISの世界に転生するお話です。予定としてはヒロインはナターシャです。

インフィニット・ストラトス×Gガンダム
千冬に捨てられた一夏が東方不敗に拾われ流派東方不敗を学ぶ物語。

インフィニット・ストラトス×マイクロン伝説
人間に転生したスタースクリームがISに乗る話。


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VSVTシステム 事後処理

(さてと、これからどうした物かな)

 

ゼロはラウラを抱きかかえたままそんな事を考えていた。

 

(ここはIS学園で俺は侵入者、ならば教師達は俺を捕まえようとする筈だ)

 

「おーい、大丈夫」

 

ゼロと共にVTシステムと戦っていた更識がゼロもとに駆けつけた。

 

「ああ、なんとか救出する事に成功したよ。ほらよ」

 

ゼロはそう言うと更識に安らかな寝息を立てているラウラを渡す。

 

「それよりも、あんな大きな声で叫んで良かったの?ボイスチェンジャーの声じゃなくて肉声だったけど」

 

「……あ」

 

ゼロはようやく気付く、VTシステムの攻撃を食らった事によって仮面に付けられたボイスチェンジャーの機能が壊れていた事に。

 

(やばい……気づいてなかった。どうする、さっき叫んじまったからな、十中八九俺の声は聞こえている)

 

ゼロがそのような事を考えているとピットのハッチが切り裂かれ、中から白色のISとオレンジ色のISが飛び出して来た。

 

(あれは白式とフランスの代表候補生のラファールのカスタム機。やばいな、さすがに今の状況で代表候補生レベルの奴ら2人を相手にするのはキツイな……撤退するか)

 

ゼロはそう思うと次の瞬間、垂直に上昇し始める。

 

「させるか!」

 

接近した白式がゼロに攻撃を仕掛けるが、ゼロはそれを躱し踵落としを決める。踵落としを食らい地面に落下する白式。

 

「よくも百春を!」

 

白式が倒された事に怒ったラファールがゼロに向け銃を構える。すると、上空から無数のレーザーの雨が降ってきて、ラファールと倒れている白式に直撃する。

 

(エムが援護してくれたのか。それにしてもスコールになんて報告すればいいのやら)

 

ゼロはそのまま飛び去って行った

 

「待て……よ」

 

地面に叩きつけられビームを食らった百春は最後の力を振り絞り叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜学園長室〜

 

「どうして捜査する事ができないんですか!あの侵入者はもしかしたら男なのかもしれないんですよ!ならばこちらで保護するべきでしょう!」

 

織斑千冬は学園長てある轡木に対して激怒していた。

 

「落ち着いて下さい織斑先生。今回の事件ではあの侵入者は生徒であるラウラ・ボーデヴィッヒさんを助けようとしただけであって、何も破壊行動はしていませんよ」

 

「ですが、織斑百春は攻撃され怪我をしています」

 

「それは百春くんが先生の忠告を聞かずに出て行ったからじゃないんですか?」

 

「ですが……」

 

「もうこの話は終わりです。織斑先生、まだ事後処理が残っているようですから早く済ませてきなさい」

 

「……わかりました」

 

千冬は苦虫を噛み潰したような顔をしながら学園長室から出て行った。

 

 

〜保健室〜

 

保健室のベッドで1人の少女が寝ていた。少女の名はラウラ・ボーデヴィッヒ。VTシステムの影響で疲れてしまい、現在は寝ている。

 

「すやすやと寝てるわね」

 

ラウラが寝ているベッドの近くのイスに腰をかけている少女、更識楯無が呟く。

 

(それにしても彼がいて助かったわ、彼がいなかったら今頃、ラウラちゃんは再起不能になっていたかもしれないわね。)

 

更識はラウラの頭を優しく撫でながらそんなことを考える。

 

「ん……んん」

 

(あら、起きた見たいね)

 

「ここは……何処だ?」

 

「ここは保健室よラウラちゃん」

 

「あなたは誰ですか?」

 

「あら、ごめんなさい。自己紹介がまだだったわね、私の名前は更識楯無。この学園の生徒会長よ」

 

ラウラに対して簡単な自己紹介を済ませる更識。

 

「あなたはあなたのISかわ暴走したのよ、それを私とそしてもう1人、侵入者で倒したのよ」

 

「そう……ですか」

 

「?どうかしたの?」

 

更識がラウラの異変に気付く。

 

「いえ……ただ、暖かい声がしたんです」

 

「暖かい声?」

 

「はい、私が捕えられている時に冷たかったんですけど、奥底は暖かい声を感じたんです、とても心地良い声を」

 

とても穏やかな表情で話すラウラ。

 

「そう……」

 

その言葉に対して、優しく微笑む更識。

 

「それであなたは何者なの」

 

更識は優しく微笑みながらラウラに尋ねる。

 

「私は…」

 

尋ねられたラウラは暖かい声で言われたことを思い出し、にっこりと笑い答える。

 

「私はラウラ・ボーデヴィッヒです。それ以外の誰でもないです」

 

 

 

 

 

 



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静な休日

〜レゾナンス付近〜

 

「あ、あの……ありがとうございました」

 

「いいって、気にしなくていいぜ」

 

ゼロは休日を利用し買い物に出かけていた。そこで、不良に絡まれている少女がいたので、不良をボコボコにして助けてあげた。

 

(以前にもこんなことあったよな確か、あの子今頃どうしてるんだろう。それにしてもこの子、どっかで見たことがあるような)

 

ゼロが助けた少女は内側に跳ねた水色の髪に、眼鏡を掛けていて気弱そうに見える。

 

「あ…あの…どうかしましたか?」

 

「いや、なんでもないよ。それにしても、どうして不良に絡まれていたの?」

 

「その…お姉ちゃんと友達と一緒に買い物に来てたんですけど……途中ではぐれてしまって……そしたらあの人達に絡まれたんです」

 

弱々しく話す少女。

 

「そうか、それは大変だったな、早くお姉さんと連絡をとって合流しな」

 

「あの…すいません、お名前は何ですか」

 

「一夏だ」

 

ゼロが少女に対してそう話すと、ふととある方向から声が聞こえる。

 

「簪ちゃーん」

 

「かんちゃーん」

 

2人の少女がこちらに向かって走ってきた。1人の少女は先ほどゼロが助けた少女と同じ髪の色をしていて、少女とは違い髪の毛が外側に跳ねている。もう1人はどこかのほほんとした雰囲気を出している。

 

(あれは更識楯無、なるほどそういうことか)

 

「簪ちゃん何処行ってたのよ、お姉ちゃん心配したのよ」

 

更識は少女に抱きつく。

 

「ごめん、お姉ちゃん。でも、一夏が助けたくれたんだよ」

 

少女はゼロを差しながらそう話す。

 

「気にするな唯の気まぐれだからな」

 

ゼロの声を聞いた更識は何かに気付いたらしくニヤリと微笑む。

 

「妹を助けてくれてありがとう。久しぶりね一夏」

 

「(やはり気づいたか)そうだな、久しぶりだな更識」

 

「お姉ちゃん、この人と知り合いなの?」

 

「ええ、ちょっとした知り合いよ。それと簪ちゃん、この人と話があるから本音ちゃんと一緒に買い物してきてくれる」

 

「わかった、行こうか本音」

 

ゼロが助けた少女、簪は本音と呼ばれた少女と共に何処かに去って行った。簪と本音が見えなくなった時、更識の口が開く。

 

「それで今回は何が目的なのかな?ゼロ」

 

「やはり気付いていたのか更識、安心しろ今回は休日を利用して遊びに来ているだけだ、それじゃあな」

 

ゼロはその場から立ち去ろうとするが、肩を更識に掴まれる。

 

「どういうつもりだ更識」

 

「休日なら暇でしょ、だったらこの前の事件と簪ちゃんとの事での相談についての御礼がしたいから一緒に買い物しましょ」

 

「御礼はいらない、任務としてやったからな」

 

「まあまあ、そういう事言わずに一緒に買い物しましょ、ね!」

 

「……わかった、さっさといくぞ」

 

折れたゼロが更識と共に行く。

 

 

〜レゾナンス内部〜

 

ゼロと更識は並んでレゾナンス内部を歩いている。その姿は2人の容姿も合わさり、まるでモデルのカップルの様にも見える。

 

「それで何を買うつもりなんだ?」

 

「何も買うつもりは無いわよ」

 

「どういう事だ?」

 

「あなたに色々と聞きたい事があったのよ」

 

更識からの言葉に顔を顰めるゼロ。

 

「それにしても貴方、とても顔が整っているのね、戦う時は何時も仮面をつけていたからわからなかったけど、カッコ良いのね」

 

ゼロを褒める更識。ゼロの顔立ちは思春期特有の少年と大人が混ざったような幼げのある顔立ちでは無く、幾つもの戦場を駆け抜けた事によってできた、凛々しい顔付きである。他人がみれば十人中十人がカッコ良いと答える完璧な顔付きである。

 

「どうとでも言え」

 

更識からの言葉を冷たくあしらう。

 

「それじゃあ、本題に移るわね。貴方の本名って織斑一夏?」

 

「そうだ、それがどうかしたか。今、この日本で織斑一夏は死んだ事になっている、あの第二回モンド・グロッソの決勝戦が行われた日にな」

 

更識からの質問に対して楽に答えるゼロ。

 

「それじゃあ、貴方はどうしてあの組織にいるの?」

 

「モンド・グロッソの決勝戦が行われた日に俺と百春は誘拐されたんだ、そして織斑千冬は百春のみを助けた。その後の俺は今いる組織とは別の組織に少年兵として育てられていたところを今の組織に助けられた。その後の俺はIS適性がある事がわかり、今に至るってわけさ」

 

「そういう事だったのね、それじゃあ最後にあなた達の目的は何?」

 

「地域紛争の鎮圧と違法施設の破壊。今俺が言えるのはそこまでだ」

 

「そう、質問に答えてくれてありがとう」

 

「問題があるわけではないからな、それにお前は他人にこの事を話す様なまねはしないだろうからな」

 

しばらくレゾナンス内部を歩いていると

 

「まったくあなた達は何を考えているんですか!

 

女性の怒鳴り声が聞こえた。ゼロと更識が声のした方向を見てみると、そこには緑色の髪をした女性、黒色の髪のスーツ姿の女性、IS学園の制服を身に纏った金髪縦ロールとツインテール、そしてその人達の前で正座している2人の

男女がいた。

 

(織斑千冬、織斑百春)

 

ゼロにとっての元家族。そして、自分が自分として見られなかった原因、それが今目の前にいる。

 

「ちょっと!貴方何をしてるの!」

 

突然、更識が形相で怒鳴ってきた。

 

「どうした、そんな大声をあげて」

 

「どうしたもこうしたもないわよ!貴方が今手に持っているのは何!」

 

「はあ?俺は何も持って……」

 

そこでゼロは気づく、何も持っていなかった手には何時の間にかバスターショットが握られていた。ゼロが無意識の内にコールしたのか、それとも、黒零が勝手にコールしたのかは分からない。

 

「……」

 

ゼロは無言の間々、バスターショットを収縮する。

 

「戻りたいの?」

 

更識が問いかけてくる。 その瞳には好奇心は無かった。 

 

「いや、戻りたくはない……かな。今の居場所は俺を俺として見てくれる。織斑千冬の弟して、織斑百春の兄としてでは無く、唯の俺としてな」

 

「ふーん、残念だわ。もし貴方が戻りたいなんて言ったら、すぐさまIS学園の生徒にするのに」

 

ゼロの答えに対して残念そうな楯無。

 

「じゃあな、更識。今日は色々と面白かったぜ」

 

「ええ」

 

更識に別れの挨拶をするとゼロは人ごみの中に消えていった。

 

 




この作品での一夏くんは原作よりもカッコいいです。


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銀の福音争奪戦

百春の外見はキリト足す一夏割る2です。


 

「何をやっているんだまったく」

 

とある海上にある密漁船の上でゼロは呆れながら呟いた。ゼロが見ている光景は3機のISによる戦闘。1機は織斑百春が操る白式、2機目は篠ノ之箒が操る謎の紅いIS、そして最後にアメリカとイスラエルが共同開発を行った銀の福音。

 

「こちらスコール、銀の福音の様子はどう?」

 

スコールから連絡が来た。

 

「そうだな……白式と紅いISに対して少しばかし優勢だな。紅いISが足をひっぱっているように見える。機体のスペックは高いようだが、パイロットの方は操縦に慣れてないのか知らないが全然ダメだ……あ」

 

「どうしたの、ゼロ?」

 

「白式が紅いISを庇って撃墜された」

 

ゼロが見ているその先には白式を強制解除され気絶している百春とそれを抱き締めながら撤退している篠ノ之箒がいた。

 

「どうするスコール、このまま俺1人で奴と戦うか?」

 

「いいえ、一度戻ってからオータムとエムの三人がかりで倒しましょう」

 

「了解」

 

ゼロは黒零を展開し、密漁船から飛び立った。

 

 

〜とあるホテル〜

 

「それでスコール、これからどうするんだ?」

 

オータムがスコールに対して質問する

 

「どうするって言われても……単純にゼロ、オータム、エムの三人がかりで倒すだけよ」

 

オータムの質問に対して簡潔に答えるスコール。

 

「もしIS学園の代表候補生が来たら、どうすればいいの?」

 

次はエム。

 

「敵意が有るならば作戦の邪魔になるかもしれないから倒しても良いけど、なかったら攻撃はしない。ゼロ、あなたは何か聞きたい事はない?」

 

スコールはベットで横になっているゼロに声をかける。

 

「そうだな……」

 

ベットから上体を起こし、考えるゼロ。

 

「奴らは来るのか?今回の銀の福音の暴走も奴らが引き起こしたものだろ」

 

いつにもまして真剣なトーンで話すゼロ。その声を聞いた瞬間、オータムとエムの表情に緊張が走る。

 

「いいえ、何故か知らないけど奴らはまだ動いてないわ。だからこそ、銀の福音を今倒すのよ。銀の福音は現在、移動を停止しているからね」

 

「わかった。行くぞ、オータム、マドカ」

 

三人はホテルをあとにした。

 

 

 

 

 

 

「私の所為で百春が……百春が」

 

とある旅館の客室、ここには気を失って布団で横になっている百春とそのすぐ近くに座っている篠ノ之箒がいた。自らのミスで大切な人が傷ついてしまい、箒は落ち込んでいた。

 

「あんたがそんなに落ち込んでいてどうするのよ!」

 

いきなり障子が開けられ三人の女子が入ってきた。鳳鈴音、セシリア・オルコットそしてシャルロット・デュノアの三人だ。

 

「あんたが落ち込んでいて、百春が治るの!?答えてみなさいよ!」

 

鳳は箒の胸倉を掴み、叫ぶ。

 

「そうですわ、篠ノ之さん。落ち込んでいても仕方がないですわよ」

 

「そうだよ、箒」

 

オルコットとデュノアも話す。

 

「あたしたちはこれから百春の仇を取りに行くけど、箒はどうする?」

 

箒は俯いたままその声を聞いていた。そして、徐々に顔を挙げていく。挙げられた顔は決意を露わにしていた。

 

「私も行く!そして百春の仇をとってみせる!」

 

「そう……なら行くわよ、三人とも!

 

鳳の掛け声と共に四人は部屋から飛び出し、ISを展開して大空へ飛び立った。

 



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誰の為に鐘は鳴る

「目標は500m先で現在停止中。オータム、エム準備はできているか?」

 

「OK」

 

「いいわよ、ゼロ」

 

三人は現在、太平洋海上で戦闘準備を行っていた。500m先には目標である銀の福音が体操座りの様な体制で浮かんでいた。

 

「よし、ならば行く……」

 

ゼロが号令をかけようとした時、銀の福音がいる場所とは反対の方向からレーザーが飛んで来た。ゼロはシールドブーメランでそれを防ぎ、エムに命令する。

 

「エム、敵の数は何機だ!?」

 

「4機よ。多分IS学園の奴らね。ブルー・ティアーズ、ラファール、甲龍そして紅いISよ」

 

エムはすぐさまゼロに敵の情報を伝える。

 

「わかった、敵意が有るとして奴らを撃破する。エムはブルー・ティアーズを、オータムはラファールを頼む。残りの二機は俺が倒す」

 

「「了解」」

 

「GO!」

 

ゼロの合図とともに三人は突撃していった。

 

 

 

 

 

 

 

「防がれてしまいましたわ」

 

先ほどゼロ達に対してレーザーを放った少女、セシリア・オルコットが話す。

 

「敵が高速で接近しているわよ!」

 

鳳が叫ぶ。次第に接近して来る機体の形がわかってくる。それを見たとき、オルコットとデュノアが驚く。

 

「あれはサイレント・ゼフィルス……どう言う事ですの」

 

奪われた自国のISが敵として君臨している事に驚くオルコット。

 

「嘘でしょ……皆、気をつけて。一機はこの前のタッグトーナメントの時にIS学園に侵入して来た機体だよ。もしパイロットが同じなら、国家代表クラスの実力者だよ」

 

デュノアの言葉を聞いた三人は緊張する。

 

「国家……代表か。だが、邪魔するのならば倒してみせる。私と紅椿で」

 

しかし、篠ノ之は恐怖するどころか気分をどんどん高揚させていった。

 

 

 

 

 

ゼロは二重瞬時加速を使い一気に四人との距離を詰めていった。少し遅れて2人が飛行しているが、ゼロについて行くので必死だった。敵からレーザーや実弾が放たれたがそれら全てを躱したり、切り裂いたりしながら接近する。

 

「はあああ!!」

 

四人と接近したゼロは勢いそのままでドロップキックをラファールにおみまいする。ラファールは蹴られた勢いで海面すれすれまで飛んで行き、オータムがそれを追いかける。

 

「さて……と!」

 

ゼロは停止し、オルコットへと狙いをつける。オルコットはスターライトmkⅲを構えるがチェーンロッドで弾かれ、巻きつけられ、飛ばされる。そして飛んで行ったオルコットを追いかけるエム。

 

「これでようやく戦闘準備はできたな。どうするお前たち、ここで引き返せば逃がしてやるけど?」

 

ゼロは残った篠ノ之と鳳に問いかける。

 

「逃げる?冗談も大概にしておきなさい。私たちはあんた達を倒して銀の福音を撃破する!」

 

「そうか……ならば戦うのみ!」

 

ゼロが叫ぶと同時に篠ノ之が雨月と空裂を持ち、鳳は青龍刀を構え突撃して来る。ゼロはゼットセイバーとチェーンロッドを構える。接近して来た2人の斬撃を時には躱し、時には弾く。

 

「貴様のその仮面を剥いで素顔をさらしてやる!」

 

「やれるもんならやってみな」

 

激情している篠ノ之の言葉をれいせいに受け流すゼロ。ゼロは一度距離をとるが篠ノ之が空裂を構える。

 

「いけ!空裂!!」

 

篠ノ之が空裂を降り下ろすと空裂からエネルギーの斬撃が飛びたした。

 

「……斬鋭弾」

 

ゼロはゼットセイバーを下から上へ振り上げ空裂同様にエネルギーの斬撃を飛ばす。斬鋭弾は空裂のエネルギー斬を切り裂き、篠ノ之に直撃する。篠ノ之はそのまま落下して行く。

 

「よくも箒をやったわね、喰らいなさい龍砲!」

 

甲龍から何かが放たれた。ゼロはそれを回避することが出来ず直撃する。しかし、すぐさまゼロは体制を立て直し鳳へ接近する。

 

「龍砲!」

 

また何かが放たれるが今度は躱した。弾丸は見えなかった、しかし、直感のおかげで全て躱すことが出来た。ゼロはゼットセイバーで甲龍の両肩付近に浮かんでいる装備を破壊する。

 

「嘘でしょ……」

 

「嘘ではない、事実だ」

 

ゼロはチェーンロッドを凰の腹に巻きつけ、ゼットセイバーで何度も斬りつける。

 

「はあああ!」

 

何時の間にか接近していた篠ノ之は雨月で背後からゼロを切ろうとする。しかし、ゼロはチェーンロッドを解き鳳を篠ノ之に向かって投げつける。篠ノ之はこれを躱せず鳳とぶつかる。

 

「吹っ飛べ!」

 

何時の間にか2丁のバスターショットをチャージしていたゼロは2人目掛けてはなった。その攻撃を喰らい落下して行く鳳。しかし

 

「まだだ、まだ私と紅椿は戦える」

 

篠ノ之箒は戦う意思を見せていた。

 

「まだ戦うか……やめておけ、今のお前では俺には勝てない」

 

「うるさい!そんなことはまだ分からない」

 

「周りを見てみろ、既にお前の仲間は撃墜されている」

 

ゼロの言うとうり、ブルーティアーズ、ラファールそして甲龍は海上に浮かんでいた。

 

「そんな事はわかっている!だが、私は貴様達を倒し、銀の福音を倒して百春の仇をとる!展開装甲!」

 

篠ノ之がそう叫ぶと紅椿の両の腕肩脚部と背部に装備されている装甲が変形した。

 

「行くぞ!」

 

「展開装甲……か、面白い見せてみろ!お前の力を」

 

篠ノ之は瞬時加速を使いゼロとの距離を詰めようとする。そのスピードは先程よりも速かった。

 

「はあああ!」

 

「オラァ!」

 

篠ノ之は雨月と空裂を振るう。しかし、二本のゼットセイバーによって弾かれてしまう。

 

「烈風撃」

 

ゼロは瞬時加速を使い篠ノ之との極僅かな距離を詰め、スピードを利用してゼットセイバーを槍の様に篠ノ之に突き刺す。突き刺された篠ノ之は無惨にも落下していく。

 

「敵の無力化に成功。オータム、エムこれから目標を停止させる」

 

「「了解」」

 

ゼロはオータムとエムに連絡を取る。

 

「なんだ……この反応は」

 

ゼロは何かが接近しているのに気づいた。ゼロは接近している物が何かわかると、仮面の内側に薄っすらと笑みを浮かべた。

 

 

〜旅館〜

 

 

(一夏そしてマドカを失い、今度は百春まで私は失ってしまうのか……)

 

織斑千冬は旅館の一室で酷く落ち込んでいた。そんな中突然

 

「織斑先生、大変です!」

 

山田先生が障子を開けて入ってきた。

 

「山田先生、すいませんが今は1人にしてもらえませんか」

 

何時もの千冬ならば考えられない様な低いトーンで返答する。

 

「そんな事を言ってる場合ではありません。篠ノ之さん、オルコットさん、デュノアさんそして鳳さんが勝手に出撃したみたいなんです。それに」

 

「それに?」

 

「織斑くんも見当たらないんです」

 

「な……」

 

山田先生からの言葉を聞いて一瞬だけ頭が真っ白になってしまう千冬。しかし、直ぐに何時もの様な冷静さを取り戻し

 

「直ぐにボーデヴィッヒと更識を出撃させろ!」

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

「織斑千冬の恥さらしが」

 

「お前のの姉ならこんな事簡単に出来るぞ」

 

「姉と弟は優秀なのに」

 

頭の中に流れる死んだ織斑一夏の記憶、その一つ一つを思い出しながらゼットセイバーを強く握る。

 

「来たか……」

 

こちらに向かって接近する物体に対して呟く。

 

「織斑百春!」

 

 

 

 

 

 



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鐘はまだ鳴らない

「よくも皆を!」

 

織斑百春はゼロに対して雪片弍型を振るいながら叫んだ。

 

「俺はあいつらに対して逃げるチャンスを与え、あいつらがそれを拒んだ。それにあいつらもお前も今は出撃命令は出てないらしいね、来て良かったの?」

 

ゼロは両手に何も持ってないまま冷静に百春の攻撃を躱し続ける。

 

「うるさい!俺の攻撃に圧倒されてるくせに!」

 

そういいながらも百春はゼロに対して雪片を振り続ける。

 

「圧倒?何だ俺は攻撃しても良いのか?」

 

「どういう意味ゔぉえ!」

 

喋っている百春の鳩尾にゼロの拳が入る。殴られた百春の肺から空気が吐き出される。

 

「貴様……汚いぞ!武器を持って戦え」

 

肺に残っている僅かな酸素を絞り出しながら叫ぶ百春。

 

「汚い……だと。お前、これをスポーツか何かと勘違いしてないか?これはスポーツじゃあないんだぜ。卑怯も汚いも無いんだよ!」

 

ゼロは百春の胸倉を掴み、顔面目掛けて右ストレートを食らわせた。吹っ飛ばされる百春をゼロは追いかけもう一発右ストレート食らわせた。

 

「何処にいる」

 

何とか体勢を立て直した百春は先程まで目の前にいたゼロがいなくなっているのに気がついた。

 

「後ろだ」

 

ゼロの声に反応した百春は振り返ろうとする。ゼロは白式の二つのウイングスラスターを掴み、百春の背中に足をつけた。百春はゼロを振りほどこうとするがゼロは全く離れない。

 

「銀の福音の元に先に行ったあの2人を援護しなきゃならないんでね、さっさと終わらせる」

 

次の瞬間、ゼロウイングスラスターを引っ張り、百春の背中を足で押し始めた。

 

「ぐぁ……ぐぁぐが」

 

百春は自らの背中にかかっている痛みに耐えきれず、声にならない音を放つ。

 

「さーて、どっちが先に壊れるかな。お前の背骨?それともウイングスラスター?」

 

何処か楽しんでいる様な声色で喋るゼロ。こうしている間にもウイングスラスターと百春の背中から悲鳴が聞こえる。ウイングスラスターの付け根はもう既にヒビが入っている。

 

「おらよ!!」

 

ゼロはウイングスラスターを引きちぎり、翼を失った百春は海へと落下して行く。

 

 

 

 

 

(俺には皆を守る事なんて出来ないのかな)

 

落下して行く中で百春はそう思った。

 

<力が欲しいですか?>

 

突如頭の中に少女の声が響く。

 

「欲しい……皆を守るための力が欲しい!俺に力をくれ!白式!」

 

百春と白式は白い光に包まれる。

 

<白式   第二次移行    雪羅>

 

 

 

 

「愉しいな」

 

ゼロは接近してくる第二次移行した白式を見ながら呟いた。

 

「第二次移行した強さを俺に見せてみろ、織斑百春」

 

ゼロはゼットセイバーを持ち、百春へと接近する。

 

「「はあああ!」」

 

互いに接近した2人、ゼロはゼットセイバーを振るい、百春は雪片二型を振るっていた。

 

「貴様は誰だ!答えろ」

 

「何故赤の他人である貴様に対して答える」

 

ゼロと百春は鍔迫り合いながら言葉を交わす。しかし、ゼロは至って冷静であるが、百春は熱くなりすぎていた。

 

「何故お前は男のくせにISを使える」

 

「お前も男だろ、なら男である俺がISを操縦できてもおかしくはないだろ」

 

ゼロは雪片二型を弾き、百春の腹に蹴りをいれ距離をとる。

 

「放て!雪羅」

 

白式の新装備多機能ブレード雪羅を変型させ荷電粒子砲をゼロに向けて放つ。

 

「……」

 

ゼロはバスターショットをチャージして荷電粒子砲に向けて放ち相殺した。ゼロはすぐさまバスターを連射するがシールドモードになった雪羅によってかき消される。

その様子を見たゼロは興味を示す。

 

「なるほど、零落白夜を利用したシールドか面白いな」

 

「そうだ。これでお前の遠距離武器は使えない」

 

ドヤ顔を決める百春。

 

「そうだな……だが」

 

瞬時加速を行い、百春の顔面に膝蹴りをいれる。

 

「さっきと同じ様に接近戦をすれば問題は無い」

 

 

 

 

(私はどうすればいいのだ……せっかく手に入れた力なのに百春を傷つけてしまい、百春のピンチになっている今もどうする事も出来ない)

 

海に浮かびながら箒は目の前に広がっている光景をただ見る事しかできなかった。百春がゼロによって一方的に殴られ蹴られる光景を。

 

「力をよこせ紅椿、百春を助けるための力を!」

 

箒が叫ぶと紅椿から金色の光があふれる。

 

<単一能力発動    絢爛舞踏>

 

「エネルギーが回復する。これなら助けられる」

 

落ちた椿は再び飛び立つ。

 

 

 

 

 

 

 



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鐘を鳴らすのは勝者

(俺はこんな奴に対して劣等感を抱き、比べられていたのか……弱い、なんて弱かったんだ……昔の俺は)

 

抵抗する力もなくなった百春の胸倉を掴みながらゼロは過去の自分に対して嫌悪感を抱いていた。

 

(さてと、そろそろ終わらせるか)

 

ゼロが拳を構えると下の方から斬撃が飛んできた。百春を盾にしてその斬撃を防ぎ、ゼロは攻撃が放たれた方向を見る。するとそこには先程撃墜したはずの紅椿が接近していた。

 

(どういう事だ……何かの単一能力でも発動したか……まあ、考えるのはやめよう)

 

ゼロは考えるのをやめ目の前の敵に集中する。

 

(まずはこいつをぶつけるか……)

 

ゼロは百春を箒に向かって全力で投げつけた。体勢を崩しながらも何とか百春をキャッチした箒はゼロの方向を見る。

 

するとそこには……

 

「吹き飛べ……」

 

二丁のバスターショットを構えているゼロがいた。

 

箒は危険を感じ逃げようとスラスターを噴かせ移動するがその程度の事でゼロから逃れる事はできない。空から降り注ぐレーザーの雨、箒は百春を庇うようにレーザーをくらう。

 

「ほう……き、すまない。助けにきたつもりが助けらてしまった」

 

弱々しい声色で百春が呟く。

 

「百春、今エネルギーを分けてやる。手を掴め」

 

箒は自らの右手を百春の前に差し出す。百春は箒の右手を握る。その瞬間、紅椿のエネルギーが白式の内部に流れ込む。

 

「百春!この力で奴を倒せ!」

 

「わかったぜ箒、あいつを倒して見せる!そして戻ったら皆でお前の誕生日を祝おう、な!」

 

再び覇気を取り戻した百春は箒に向かって宣言する。

 

「そうか、わかっ」

 

そうか、わかった。その言葉を言おうとした箒の姿が百春の前から突如として消えた。そして突如として声が現れた。

 

「まったく、大人しく海の上でプカプカと浮かんでいれば良かったものを、わざわざ自分から痛い目に会いに来るなんてな」

 

声の主はゼロ。そして右手にはチェーンロッドが握られていた。

 

「さてと」

 

ゼロは高く飛ぶ。そしてその先には先ほど消えた箒がいた。そう、箒が消えたのはゼロによってチェーンロッドを巻かれ、空高く投げられたのだ。

 

「今回はさっきの様に復活させないぜ」

 

ゼロは箒にチェーンロッドを巻きつけ手繰り寄せる。そして、手繰り寄せた箒の腹にバスターショットを突きつけるゼロ。

 

「やめろ!」

 

百春はさけぶが、ゼロはそれを無視する。そして零距離でバスターショットを連射する。

 

「うあ……うが」

 

箒から訳のわからない声が漏れる。

 

「次」

 

ゼロは再び箒を上空に上げるそしてゼロもスラスターを噴かせ追撃する。

 

「おらああ!!」

 

箒を他方向から何度もゼットセイバーで切り裂くゼロ。もうすでに箒の意識はなくなりかけている。

 

「やめろおおお!!」

 

百春が瞬時加速を使い接近して来る。ゼロは箒の腹を蹴り上げ、三度箒を飛ばす。

 

「まだ挑んで来るのか」

 

接近して来る百春を睨みながら、ゼットセイバーを構えるゼロ。接近して百春は雪片を振り下ろすがカウンター気味にゼットセイバーで切りつけられる。そしてそのまま背中を蹴られ吹き飛ぶ。

 

「finish」

 

発音の良い英語を呟き、自由落下する箒に背後から接近する。そのままゼロは両脇から腕を通しホールドする。ゼロは箒を掴んだまま海面にむけて瞬時加速を行い、更に螺旋状に回転する。

 

「うおおおお!」

 

スラスターを噴かせ更に加速し回転するゼロ。海面ギリギリまで接近するとゼロは箒を海へ叩きつけて、ゼロは上空へと飛翔する。箒を叩きつけた衝撃で発生した凄まじい水飛沫をバックに百春へと接近する。

 

「さあ、とっとと終わらせるか」

 

仮面の奥でゼロは笑いながら百春をみる。

 

「まだだ、まだ負けてないぞ!」

 

絶望的な状況にもかかわらずその瞳に闘志を燃やす百春。

 

「可哀想だ……実に可哀想だ」

 

ゼロはいきなり謎の言葉を喋る。

 

「何が可哀想なんだ」

 

ゼロに質問する百春。

 

「いや、ただ単に貴様の様な男の為に敵討ちをしに行き、そして傷だらけになったあいつら。そして……」

 

「そして?」

 

「織斑千冬のせいで死んだお前の双子の兄だ」

 

「なっ!」

 

その言葉を聞いた時、百春の顔が歪む。

 

「どうして兄さんの事を知っている!」

 

「どうして?そんなの調べたからに決まっているだろ。俺らの情報収集能力を舐めているのか?ならばもう少し詳しくお前の情報を言ってやろうか?」

 

「どういう事だ!」

 

「織斑百春。父、数児。母、季菜の間に双子として兄の一夏とともに出生。その後、7歳の時に母の季菜が病死。その翌年、数児は再婚し、今の姉でありIS学園の担任でもある織斑千冬と現在行方不明の同い年の妹、織斑マドカと出会う。小学生時代は兄の一夏や周りの人間と比べて優れていた為に神童、天才などと呼ばれる。そして10歳の時、父数児が死亡。その後、再婚した母がマドカを連れ行方を暗ます。その後、ISが開発され開発者である篠ノ之束からISについての講義を兄の一夏と共に受ける。姉の織斑千冬は第一回モンドグロッソに出場し優勝。第二回モンドグロッソでは織斑千冬の優勝を妨害する為に兄の一夏と共に誘拐される。その後、百春は織斑千冬によって助け出されるが、兄の一夏は救出されず現在では死亡扱いになっている。そして今年、世界初の男性IS操縦者としてIS学園に入学……どうだこれが俺たちの調べた情報だ」

 

機械的にボイスチェンジャーの声で話すゼロ。

 

「なんでそんな事まで調べた!」

 

「世界初の男性IS操縦者、上の奴らが気になるのは当然だろ。それよりもさっさとケリつけようぜ、お前の新しく出来た武器はもう使い物にならないだろ?だから俺も刀一本で戦うからお前も刀を出せ」

 

ゼロはそういうとゼットセイバーをコールし構える。

 

「……いいだろう」

 

百春もゼロと同様に雪片二型を構える。

 

「「……」」

 

無言の二人。百春は緊張し、それとは対象的にゼロは冷静でいた。

 

「っ!」

 

先に動いたのは百春。一気にゼロに接近し雪片二型を両手でゼロへと振り下ろす。しかし、ゼロはそれを片手で持ったゼットセイバーで受け止める。鍔迫り合う二人、その2人は対象的であり、百春はゼロを倒そうと必死であり、それに対しゼロは冷静に対処していこうとしている。

 

「お前は誰だ!」

 

「俺は俺だ他の誰でもない。そして、亡霊でもある」

 

「亡霊……つまりお前は死んだのか」

 

「ああ、そうだ」

 

ゼロは雪片二型を押し返すと素早く百春の腹を三回斬りつける。

 

(やばい、技量が全く違い過ぎる。瞬時加速もあと二回ぐらいしか使えない。ここはなんとかして零落白夜をもろに当てるしか勝てない)

 

百春はゼロに向かって瞬時加速を、使わずに接近する。ゼロは接近する百春に向けてセイバーを振り下ろすが空振ってしまう。

 

「……上か」

 

ゼロが上を見上げるとそこには百春がいた。そう、百春はセイバーが振り下ろされる直前に瞬時加速を使い上へ飛んだ。

 

<単一能力発動     零落白夜>

 

百春はした向きに瞬時加速を行いゼロへ近づく。

 

「もらったあああ!!」

 

百春は零落白夜の剣をゼロへと振り下ろす。ゼロも同様に下から上へセイバーを百春めがけ振り上げる。

 

一瞬だけ交差した二人。そして

 

       宙をまう雪片二型の剣

 

「嘘……だろ」

 

剣の根元から先が切り裂かれている雪片二型を見て今の状況が全く信じられない様な表情をした百春。

 

「零落白夜はエネルギーを打ち消す必殺の単一能力。しかし、打ち消せるのは剣の部分だけだ」

 

ゼロは冷淡に告げる。

 

交差した刹那、ゼロが行った行為は単純で雪片二型の剣の根元を切り裂いたただそれだけだ。

 

「終わりだ」

 

ゼロは両手でゼットセイバーを振り下ろし、百春はかわす事も出来ず直撃する。そして落ちて行く百春。

 

「なかなかつまらなかったよ、元弟」

 

ゼロは百春に向けてそう呟くがその声は百春にはもう聞こえない。

 



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荊に囚われた姫

更新遅れてしまいすいません。


「ちょっとヤバイなこれは」

 

半笑いでオータムが呟く。

 

「ええそうね。でも、もう少ししたらゼロが来る」

 

エムが30mほど離れたところにいる敵を見ながら返答する。

 

エムとオータムが今闘っている敵。それはアメリカとイスラエルが共同開発した軍事用IS[銀の福音]

。最初闘っていた時には2対1という事もあり、エムとオータムが優勢でいた。しかし、トドメをさそうとしたその時、銀の福音が白い光に包まれ第二次移行をした。それから、形勢逆転されオータムとエムは軽いピンチに陥っている。

 

「♪♪」

 

歌う様な機械音を奏でる銀の福音。その音はオータムとエムを応援している様に聞こえる。

 

「♪……!」

 

突如として奏でるのをやめ、2人に接近する銀の福音。エムもすかさずスターブレイカーを構え放つ。銀の福音はそれを踊る様に躱す。

 

「やばい!」

 

エムの頭を鷲掴みにしようと腕をのばす銀の福音、その攻撃をただ見ることしか出来ないエム。銀の福音とエムの距離、3m……2m……1m。しかし、突如として銀の福音の腕が止まった。第三者の妨害があったわけでもなく、それはまるで自らの意思で止めた様に見えた。

 

「何が起きたの?」

 

戸惑うエム。

 

そして、突如として上空からレーザーが銀の福音目掛けて飛んできた。これを躱しエムとの距離を取る。

 

「大丈夫か!エム!」

 

上空からゼロが降りてきて、エムの隣に浮かぶ。

 

「私もオータムもシールドエネルギーが半分近い。それよりもあなたの方はシールドエネルギーの心配は要らないの?」

 

「ああ、大丈夫だ。あいつら弱過ぎて俺のシールドエネルギーの半分も減らしてない」

 

「それよりも、どうすんだよ!」

 

オータムも駆け寄ってきてゼロとエムに問いかける。

 

「遠くから見てたが、あいつのスペックは紅椿って奴には劣るが操縦技術が段違いで高い。それに第二次移行したとなれば装備が増えているかもしれない、だから俺がメインで闘って、エムは援護射撃、オータムは面倒だが隙を見て射撃と接近戦の両方を頼む」

 

「「了解」」

 

エムとオータムは四方に散らばり、ゼロは銀の福音を見る。

 

「♪♪♪」

 

音を奏で続ける銀の福音、その音は先程と同じ様に応援している様に聞こえる。

 

(どういう事だ、暴走していると聞いていたが何だあの音は、まるで俺を応援している様に聞こえる。まだ、意思が残っているのか?)

 

「♪……」

 

奏でるのをやめた銀の福音は 両腕を振るう。すると爪の先が伸び、長さ約75cm、片手5本合計10本のブレードが完成する。ゼロは両手にセットセイバーを持ち構える。

 

「……!」

 

先に動いたのは銀の福音、ゼロに対して高速で接近すると両腕を振るう。それをゼロはゼットセイバーで受け止める。

 

「はあ!」

 

エムが背後からビットとスターブレイカーを使い狙撃する。これを躱しきれずに銀の福音は怯んでしまう、その隙を見計らって爪を弾き、ゼットセイバーの連撃をくらわせる。

 

「ふん!」

 

ゼロは剣を大きく振りかぶり銀の福音を吹き飛ばした。銀の福音は体勢を何とか立て直す。しかし、すぐさまエムとオータムによる一斉射撃を喰らう。

 

「まだまだ!」

 

エムは射撃を継続する。しかし、銀の福音は回転して翼で弾丸を防ぐ。さらに回転する速度は増していき、翼からレーザーがゼロたちに向けて放たれた。

 

「ちっ!」

 

ゼロはレーザーをシールドブーメランで防ぐ。しかし、エムとオータムは視界一面に広がる圧倒的な量のレーザーを躱す事が出来ず食らってしまう。レーザーをシールドで防ぎながらゼロはシールドを前に突き出しながら銀の福音目掛けて体を一本の槍の如くして突撃する。

 

「ギギギギギ」

 

ゼロの一撃を何とか受け止めようとする銀の福音。しかし、衝撃を吹き飛ばせず後ろへと下がって行く。

 

「あらよっと!」

 

シールドブーメランを収縮し、縦回転しながら銀の福音を上を通り過ぎ真後ろへと移動する。ゼットセイバーを使い背中を斬りつける。銀の福音は振り返りながら右手の爪をふるってきたが、これをゼットセイバーで受けとめる。続いて左手を振るうが左手首をつかむ。しかし、銀の福音は足のスラスターを噴出しながらゼロの横腹に蹴りをいれる。

 

「ぐっ!」

 

痛さのあまり左手首を離してしまう。その隙をついてもう一度左手を降ろうとする。しかし、レーザーが飛んで来た為後ろに後退する。

 

「大丈夫ゼロ」

 

エムとオータムが心配そうに駆け寄って来る。

 

「助かった、大丈夫だ。それよりもやばいな」

 

ゼロは再びセイバーを構える。

 

「……」

 

銀の福音は翼を円を描く様に回転させている。さらに回転する速度は増していき、2つの光の輪が出来上がる。2つの光の輪はエムとオータム目掛けて飛ばされる。エムとオータムはそれぞれの武器で受け止めようとするが、突然光の輪は大きくなり、2人を拘束する。必死に引きちぎろうとしてもなかなか切れない。

 

「……」

 

次に福音はビームの爪を伸ばしゼロ目掛けて突撃し、爪を振り下ろす。ゼロはこれをセイバーで受け止める。福音は空いている手の掌をゼロに向ける。するとそこからビームが発生し放たれた、ゼロはこれを何とか躱し、もう一本セイバーをコールしビームが放たれた剣にぶつける。

 

(お願い、彼女を救って)

 

頭の中に突如として声が響く。そしてゼロは白い光に飲み込まれ、目を瞑った。

 

「何だここ……」

 

目を開けた時に広がっていた光景は先程までゼロがいた海ではなかった。その場所は全体的に白くそして果てしなく広がっていた。そしてそこには、磔にされ何本もの荊が巻きつけられている女性とその荊を取ろうとしている少年がいた。

 

「何をしている」

 

ゼロは少年へと近づき声をかける。

 

「彼女を救おうとしてるんだよ」

 

少年はゼロの方を振り向かずに弱々しい声で呟く。

 

「でも……僕には力が殆ど残ってない。僕の力だけじゃ彼女を救う事が出来ない。」

 

少年は悲しくそして弱々しい声で喋る。

 

「お前……名前は何だ」

 

「銀の福音……今はそう呼ばれている」

 

(やはりここは銀の福音のコアが見せているのか)

 

ゼロは納得した様な表情をする。

 

「だからお願い、彼女を救ってあげて。僕はまた彼女と一緒に空を飛びたいんだ。彼女と一緒に……」

 

銀の福音は思いの内を話すと顔を俯かせ泣き始めた。

 

(凄いな、ここまでコアに信頼されているパイロットなんて久しぶりに見たな)

 

ゼロは一歩一歩歩き出し磔にされている女性の前に立つと一本の荊を掴む。

 

「泣くのやめな。今から……」

 

掴んでいる荊を引き抜くと引きちぎると再び光に包まれる。

 

すると目の前には光に飲まれる前の光景が広がっていた。ゼロは福音の手をセイバーで弾くとそのままクロスさせる様に福音を切り裂いた。

 

「助けてやるからよ!」

 



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福音の終曲

「はあ!」

 

叫び声と共に二本のゼットセイバーの連撃を放つゼロ。しかし、銀の福音は両手の爪で防いでいく。

 

「まだまだ!」

 

ゼロはセイバーを二本とも収縮した後、二丁のバスターショットを福音の腹に突きつける。ゼロは引鉄を引き、バスターを連射する。流石にこれを見切ることは出来ず福音は後ろに吹き飛ばされる。

 

(流石は軍用ISと言った所か……あのIS学園の雑魚どもとはまるで違う)

 

   体勢を立て直した福音は素早く両翼を羽ばたかせる。すると、何十ものビーム__銀の鐘が直線的に放たれた。ゼロはこれを躱すが、躱した先にもビームが放たれていた。ゼロは避け切る事が出来ず、何十ものビームを食らってしまう。

 

(銀の鐘って確か、広域攻撃じゃあなかったか?あんな直線的にそれにあんな短時間で再発射できるなんてデータにはなかったぞ。これも第二次移行の影響か)

 

   ゼロはシールドブーメランをコールし投げつける。福音はブーメランを受け止めようとする。しかし

 

「ビームコンフュ!」

 

   チャージしたバスターをブーメラン目が放つ。ブーメランに当たったビームは前方に扇状に拡散する。咄嗟の事に反応出来ず福音はビームをくらう。さらにブーメランが飛んできて直撃する。

 

「……」

 

   ブーメランを受け動きが止まる福音。だが突如としてゼロに背中をみせ飛び立った。

 

「な!待て」

 

   ゼロもすぐさま福音を追いかける。福音は海面すれすれを高速で飛行する。ゼロも同様に海面すれすれを飛行する。

 

(何のつもりだ、いきなり逃亡するなんて……)

 

   ゼロは追いかけながらバスターを放つが福音はそれらすべてをかわす。そして、福音は海面を後ろに蹴りゼロめがけて大量の水飛沫を飛ばす。その水飛沫は壁のようにゼロを襲う。ゼロは水飛沫の中に突入する。一瞬だけ視界が遮られるがすぐさま元の視界に戻るがそこには福音の姿はなかった。

 

「どこへ行った!」

 

   ゼロがハイパーセンサーを使い辺りを見まわそうとしたその瞬間、誰かに背後から羽交い締めにされる。その正体は銀の福音。そう、福音は海面を蹴り上げると同時にゼロの真上を通り、後ろについたのだ。

 

(逃げたのは作戦、最初からこうするのが目的だっのかよ。やばいな羽交い締めにされて両手が使えない)

 

   ゼロは羽交い締めから抜け出そうとするが福音の力は強く、抜け出すのが難しい。福音はゼロを掴んだままゼロを抱きしめるかの様に翼を動かす。

 

(零距離での銀の鐘だと!?こうなりゃ)

 

   福音の翼が銀の鐘を放つ為に光り始めた。ゼロは唯一自由に使える両脚を振り上げ、脚部スラスター最大出力で噴出する。ゼロを羽交い締めにしたまま福音はゼロごと海の中に突入する。突入した衝撃で福音の右手の拘束が弱まった。素早く右手を振りほどき、ゼロは素早くシールドブーメランをコールし銀の鐘を防ぐ。何十、何百ものビームがブーメランによって防がれる。

   ビームの雨は止み、再びゼロは海上へと浮上する。シールドブーメランを収縮し代わりにゼットセイバーをコールすると、福音の左腕を切りつけようとする。しかし、福音はゼロを投げ飛ばしこれを回避する。体勢を立て直したゼロはセイバーを構える。

 

[シールドブーメラン__破損、防御の為にこれ以上使うのは困難]

 

黒零から突如として情報が送られてきた。その情報はゼロにとっては残酷であった。

 

(どうする……これ以上奴のビームを防ぐことは出来ない)

 

再び接近してくる銀の福音、だがその進路にビームと実弾の雨が降り注ぐ。

 

「大丈夫、ゼロ!」

 

「すまない、輪っかを引きちぎるのてこずっちまった!」

 

光の輪による拘束から解き放たれたエムとオータムが駆け寄ってきた。

 

「エム!オータム!一気にカタをつけるぞ!」

 

「「了解!」」

 

その言葉と同時にゼロは福音の正面、エムは右斜め後ろ、オータムは左斜め後ろに、巨大な正三角形状に位置を取る。

 

「……」

 

銀の福音は何をするか警戒しながら構える。

 

「スターブレイカーコール、ビット全展開」

 

エムがそう言うとスターブレイカーが現れ、体からビットが離れる。

 

「さっきの借りは返させてもらうぜ」

 

オータムもビーム機関銃をそれぞれの手に一丁ずつ、そして背中にある8本の脚が展開し前方に向けられる。それらの脚一つ一つに銃口が取り付けられている。

 

「行くぞ!」

 

ゼロは矢の様に高速で突撃する。それと同時にエムとオータムは福音目掛けてビームを放つ。福音は銀の鐘を全方向に放ち、相殺しようとするがビームの量が違いすぎて直撃を喰らう。

 

「うおおおお!!」

 

    ゼロは二本のゼットセイバーを使い福音を切りつける。福音は後ろに下がりながら爪で攻撃を防ごうとする。しかし、爪で防いだ瞬間、爪は切り裂かれてしまった。

   福音は最後の足掻きとゼロ目掛けて手のひらから強力なビームを放つ。ゼロはこれを食らってしまい煙に包まれる。

 

「ユニバァーース!!」

 

叫び声と共に煙を霧散させながらゼロが出現率する。福音は咄嗟に距離を取ろうとするがもう遅い、ゼロはゼットセイバーを両手で持ち、福音の左肩から右腰目掛けて一気に振り下ろした。

 

(ありがとう)

 

その言葉が一瞬だけ頭の中に響いたかと思うと福音の動きが止まりゼロの方へ倒れた。ゼロはそれを優しく受け止める。すると福音は解除され中から女性が現れた。

 

「任務完了」



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騒動いろいろあって

太平洋海上、この海域を猛スピードで飛行する二機のISがある。

 

「ったく、何で私達があいつらを回収しにいかなくてはならないのだ!」

 

一つはドイツ製の第三世代IS[シュヴァルツェア・レーゲン]、パイロットはラウラ・ボーデヴィッヒ。

 

「しょうがないよ、命令だもの我慢しよ」

 

もう一つは日本製の第二世代型IS[打鉄・二式]パイロットは更織簪。

 

「任務だが、これはあいつらが勝手な真似をしたせいで起きた事だぞ、任務として納得できるか!本当なら今頃本音や清香達と一緒にUNOをしてるはずだったのに、ドロー2の連鎖したかったのに!」

 

ラウラが不満や私的な怨みのこもった事を言う。

 

「そうだね」

 

簪もラウラの意見に同意する。接点の無い様に思われがちな2人では有るが、共通の友人である布仏本音を介して知り合ったのだ。

 

「そろそろ目標のポイントにつく、さっさと回収してUNOするぞ……何だあれは?」

 

ラウラと簪の視線の先には一つの影、それが最初何かは分からなかったが近づくに連れてわかってきた。ISだ、それも黒色の。ラウラと簪は警戒して戦闘体勢を整える。しかし

 

「おい、お前らIS学園のパイロットか!安心しろこっちは攻撃する気なんか無い!」

 

突然、黒色のISのパイロットがボイスチェンジャーによって変えられた声で叫んだ。

 

「そんな事信じられるか」

 

ラウラとが少しばかりの喧嘩口調で喋る。

 

「いや、攻撃する気は無いよ。こっちだって人を抱っこしてるんだよ、戦えるわけねえよ」

 

ラウラと簪はゼロをよく観察して見る。すると遠目では逆光になっていて分からなかったが確かに女性がゼロにお姫様抱っこされる形で寝ていた。

 

「彼女を君たちの方に渡すから近づいてきてよ」

 

「分かった。だがあいつらはどこだ。ここにきていた筈だろうが!」

 

ラウラがゼロに叫ぶ。

 

「あいつらなら、こっちの邪魔をしてきたから、無力化させてもらったよ。ほら下見てよ、下」

 

ゼロの言葉通りにしたを見て見るとそこには棒状の浮き輪に捕まっている五人がいた。しかし、百春と箒は気を失っているのか、他の三人によって支えられる事によって浮き輪をつかんでいる。

 

「ほら、あいつら見殺しにしたく無かったらさ、早くしようよ」

 

そう言うとゼロは2人に近づく。敵意を放つ事無く、ゆっくりと近づいていく。そしてゆっくりと福音のパイロットであるナターシャ・ファイルスを引き渡す。

 

「これで任務完了っと……あとついでに言っとくけど、俺に攻撃しない方が良いよ、攻撃したらあいつら殺すよ」

 

先ほどまでとはうってかわって殺気を放つゼロ。その殺気を感じた2人の肌に嫌な汗が流れる。右手にはバスターショットが握られており、その銃口は百春達の方に向けられていた。

 

「冗談だよ。それじゃあね」

 

ゼロは振り向き飛び去った。その様子を見ていた2人は緊張がほどける。

 

「……何だったのあれ?」

 

「わからない、だが物凄い実力者だ。それよりも早く回収して戻るぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「任務完了……戻って来たぞ」

 

ゼロは今回の任務の拠点となっていた高級ホテルの一室に戻って来た。

 

「お疲れ様ゼロ」

 

そこには上司であるスコールがソファーに座ってお酒を飲みながら待っていた。

 

「マドカとオータムはどうしてる?先に戻ってきた筈だろ」

 

「あの2人なら別に借りた部屋で寝てるわよ、疲れてたみたい」

 

「そうか」

 

ゼロは着ていた上着をハンガーにかけ、クローゼットに収納する。部屋に備え付けられた冷蔵庫から水の入った1Lサイズのペットボトルを取り出す。その後ゼロは倒れるようにソファーに体をあずける。

 

「2人から聞いたわよ、織斑百春と闘ったんでしょ。どうだった?」

 

ゼロはペットボトルから口を離す。

 

「どうだったと聞かれても……只単に弱かった。がっかりするほどにな、昔の自分に対してそして今のあいつに対して。そうとしか言いようが無い」

 

ゼロは目の前のテーブルに置かれた籠からクロワッサンを取り出し囓る。

 

「ふーん、まあ何にせよお疲れ様。本部には明日戻ることになっているから今日は休みなさい」

 

スコールはソファーから立ち上がり二つあるベットのうちの一つに移る。

 

「分かった。なら、報告書は明日書かせてもらう」

 

クロワッサンを食べ終えたゼロは立ち上がり、飲み終えたペットボトルを5mほど離れた所にあるゴミ箱の中に投げ入れる。その後ゼロはシャワールームへと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園の生徒たちが止まっている旅館から少し離れたところにある海岸に2人の男女が居た。1人は織斑百春、そしてもう一人は篠ノ之箒。

 

「ごめんな箒、お前の誕生日なのにこんなボロボロになっちまって……」

 

「そんな事は無い!私は百春が無事で良かった」

 

「箒……本当はちゃんと渡したかったんだけど」

 

百春は制服のポケットから簪を取り出し、箒に付ける。

 

「誕生日プレゼント、似合う思ったから買ったんだ」

 

「ありがとう百春」

 

次第に2人の距離は縮まり0になろうとしたその時

 

トントン

 

誰かが百春の肩を叩いた。百春が振り返るとそこには三匹の鬼が居た。

 

「なにをしていらっしゃるのかしら、百春さんは」

 

「箒も何抜け駆けしようとしてんのよ」

 

「ダメだよ百春、箒2人だけで過ごすなんて」

 

イギリスの鬼、中国の鬼そしてフランスの鬼の目に光は無かった。

 

「「「さあ、楽しい楽しい鬼ごっこの始まりよ!」」」

 

「うわあああああああ!!!!」

 

七夕の日に1人の男の悲鳴が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、旅館には2人の女性がいる。1人は織斑千冬、そしてもう1人はナターシャ・ファイルス。

 

「体調はもうよろしいのですか?」

 

千冬はナターシャに問う。

 

「ええ、もう大丈夫よ。一つ聞きたい事が有るんですけど、良いですか?」

 

「はい、何でしょうか?」

 

ナターシャはふっと息を吐き、真剣な眼差しになる。

 

「私を助けてくれたのは本当にここの学校の生徒かしら」

 

その言葉を聞いた瞬間、千冬の口角がピクリと反応する。

 

「ええ、確かに助けたのはボーデヴイッヒと更識て「違う」え?」

 

ナターシャは反論する。

 

「その2人に昨日、お礼を言ったのよ。そしたら何て言ったと思いますか、あなたを助けたのは謎の黒いISです、って言ったのよ」

 

その言葉を聞いて千冬は渋々口をわる。

 

「隠しても仕方がありませんね。確かにあなたを助けたのは謎の黒いISです。しかし、そいつは以前学校を襲撃したんです。それに今回も百春達は襲われた。だからあなたには「関係ない」!」

 

「だけどそいつは私を助けた。だから、お礼が言いたいのよ……では私は帰らせてもらいます」

 

ナターシャはそのまま何処かへ行ってしまった。

 

(あのIS、またしても百春を傷つけた。マドカもいなくなり、そして一夏も死んでしまった。これ以上家族を失うわけにはいかない。今度は私が自らの手で倒す!)

 

千冬は闘争心を燃やしていた。死んだと思っている弟に対して……

 




次は多分、亡国機業のオリキャラ登場話になります。


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ティファニア

ごめんなさい。今回のお話は内容が短くてそして薄いです。


「お前は一体俺の部屋でなにをやっているんだティファ……」

 

ゼロは呆れながら呟く。

 

銀の福音事件の2日後、ゼロは亡国機業本部にある自分の部屋に戻ってきた。そこで見たのは自分の部屋に備え付けられたテレビでDVDをみようとしてる少女。

 

「あー、ゼロ任務お疲れ様。私の部屋テレビが無いからさ。テレビの有るゼロの部屋で見ようとしたの」

 

少女の名前はティファニア。元々は何処かの国の貴族だったらしいが家族を全員殺され、連れ去られた。ゼロが初任務の時に捕らえられていた所を救出した少女。その後は亡国機業に入り、スコール部隊の一員として働いている。また、オタクでもある。

 

「私も行ってみたかったなあ、日本」

 

不貞腐れるティファ。その様子を見兼ねたゼロは声をかける。

 

「そう落ち込むなって、今度秋葉原にでも連れてってやるからさ」

 

「本当!」

 

その言葉を聞いた瞬間、機嫌が直った。

 

「ねえ、あなたがISを動かしたばかりの時ってどんなんだったの?」

 

DVDをセットし終えたティファはソファーに座る。ゼロはゆっくりとソファー近づき座る。ゼロは目の前のテーブルにノートパソコンを置く。

 

「そうだな、最初の頃は奇異な目で見られたりした。女性にしか動かせないISを男が動かしたんだからな。スコールに基本的な動作を教えてもらい、何週間後にスコール部隊の一員になった」

 

「まあ確かに、私もここに来た時はおどろいた。だって、私を助けたISパイロットがまさか男だとは思わなかったから」

 

ティファはゼロとの会話を終えるとテレビに集中する。目の前のテーブルには何処から持って来たのかキャラメル味のポップコーンとコーラが置かれている。

 

(さてと、そろそろ黒零を改修すべきかな。火力に少しばかり問題があるからな、どんな装備を付け加えるかな)

 

ゼロはパソコンにある黒零のデータを眺める。

 

「なになに、黒零の改修案?ゼロが担当してるの?」

 

ティファはゼロの肩によっかかりながらパソコンの画面を覗く。

 

「まあな。お前のISも作ってやっただろ」

 

「うん、わかってるよ」

 

そういうとティファは胸元からネックレスを取り出す。

 

「そいつを作るのには苦労したんだぞ、お前の訳のわからない要望のせいでな」

 

少しばかり睨むゼロ。

 

「わかってるって、感謝してるよ」

 

ティファは慌ててゼロとの距離をとる。

 

(はあ、どうするかな改修案)

 

ゼロはテレビを見るとそこには白色のロボットが闘っていた。その瞬間ゼロの中になにが走った。ゼロは立ち上がり、そのまま部屋を飛びたした。

 

(これだこれだ)

 

 

 

 

 

 




キャラクターちょっと紹介

ティファニア

年はゼロ、マドカと同じ。髪の色はクリーム色で腰近くまで伸ばしている。胸のサイズはD。身長165cm。
スコール部隊の全員を信頼しているが中でもゼロを特に信頼している。

ゼロ
色々な意味で大人です。


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三国合同IS展覧会

オリジナルストーリー。



8月。世間一般の高校生にとっては課外や夏休みなどが始まる時期である。ちなみにIS学園では代表候補生などが所属している事もあってか、8月は夏休みになっている。では亡国機業はどうだろう。

 

「暑い……」

 

「我慢しろ。俺だって暑いんだから」

 

今現在、ゼロとティファは任務でフランスで行われる仏英独三国合同のIS展覧会会場に来ている。

ゼロの現在の格好はビジネスマンの様な長袖のカッターシャツにサングラスをかけている。ティファニアはキャリアウーマンの様な格好をしている。

 

「今回の任務の内容を確認するぞ」

 

「うん」

 

「今回俺たちがする事は各国の最新機の調査だ」

 

「うん」

 

気だるそうにティファニアが返事をする。

 

「この任務が終わったら休暇貰えるから、そしたら前約束してた秋葉原に連れてってやるからよ」

 

「わかった!」

 

すぐさま元気になるティファニア。その様子を見たゼロは少し微笑む。

 

「正直なやつだな」

 

 

 

 

〜フランスエリア〜

 

「ラファール・ネオ、最終調整に入ります」

 

「わかりました」

 

今現在フランス会場の裏側で一機のISの調整が施されていた。

 

ラファール・ネオ(仮)

フランス初の第3世代型IS。オレンジ色のボディ。前作ラファール・リヴァイブの万能性を引き継ぎ、特に秀でた性能は無く全体的に万能な機体。追加パッケージの多さも特徴の一つ。だが量産の目処は立っていない。

 

(百春のおかげでなんとか完成出来たな、感謝しないと。百春は立場があるから自分の名前を出さなくていいって言ってたけど、僕の事をおもってふふふふふふ……)

 

今現在、脳天お花畑になっている少女、シャルロット・デュノアは今回のラファール・ネオのテストパイロットだ。

 

 

 

 

〜イギリスエリア〜

 

2人の少女がいる一人はイギリスの代表候補生セシリア・オルコット。そしてもう1人はセシリア同様、イギリスの代表候補生エリナ・グレンジャー。この2人は同い年という事もありとても仲が良い。

 

「災難だったね、セシリア」

 

エリナがセシリアに対して優しく声をかける。

 

「エリナこそ目の前でISが奪われたじゃありませんか」

 

「痛いとこつくね」

 

エリナが顔を引きつらせる。

 

「ですがわたくしも目の前にサイレント・ゼフィルスがあったにも関わらず、奪還できずにやられてしまいましたもの……」

 

溜め息を吐くオルコット。

 

「そうだ、私もIS学園に入学するかもしれない」

 

「本当ですか!」

 

「ええ、同じクラスになれるいいね」

 

(それはダメですわ。百春さんの毒牙にかかるかもしれませんもの)

 

 

 

 

〜ドイツエリア〜

 

今回、ドイツはIS部隊であるシュバルツェ・ハーゼの公開演習を行うことになっている。

 

「いいか!今回は我れらがシュバルツェ・ハーゼの実力を他の国々に知らしめるいい機会だ!全力で取り組む様に!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

綺麗に隊列を組まれた隊員達の前で銀髪で赤目、左目に眼帯をした少女、シュバルツェ・ハーゼの隊長ラウラ・ボーデヴィッヒが隊員達に喝を入れる。それにたいして同じく眼帯をした隊員達が返事をする。

 

 

 

 

 

 

〜フランスエリア〜

 

現在2人はアリーナ状の会場の1観客席の1番上の席の手すりにもたれかかっている。

 

「そろそろ時間だね、ゼロ」

 

ホットドッグを食べながらティファが喋る。今現在、観客席はかなりの数が埋まっている。それだけ今回の第三世代機に対する世間の注目度の高さが伺える。

 

「そうだな。それにしても人が多いな……あれは」

 

ゼロは何かを発見すると手摺から離れ、歩きだした。

 

「ゼロ、どうしたの?」

 

「安心しろ、すぐ戻ってくる」

 

 

 

 

 

 

 

 

私の名前はナターシャ・ファイルス。アメリカ軍所属のISのテストパイロット。今日は休暇を利用してこの展覧会に来ている。今私がいる場所は観客席の1番上の席。

 

「隣に座っても宜しいでしょうか?」

 

突然、サングラスをかけた男性が声をかけて来た。

 

「良いですよ」

 

男性は私の隣に座った。その男性は長袖のかったシャツにサングラスをかけていた。

 

(この人……強い)

 

私は直感でそれが分かった。決して表には出さず自らの内側に潜めている力、多分私と同じかそれ以上強い。彼が何者なのか私は気になった。

 

「ナターシャ・ファイルスさんですよね」

 

彼は私の名前を言ってきた。私は驚いた。

 

「この前の事件は大変でしたね」

 

何者だこの人は

 

「あなたは誰……?」

 

私は彼に質問した。すると彼は左袖をまくり始めた。

 

「俺ですか?俺はこういう者です」

 

彼は左袖をまくり終えると、左腕を見せてきた。そこには黒色のブレスレットがつけられていた。それを見た瞬間、何かがわかった。

ISの待機形態である。だが、女性が付けているのならわかるが男性が付けているのはおかしい。織斑百春の様なイレギュラーでも無い限り。

 

「何であなたがそれを身につけている……の」

 

「それは貴方の身に付けている銀の福音に聞いてください。その子は貴方を信頼してますから。この前暴走した時も貴方のことを思っていましたから」

 

「あなた……あの時の!黒いISの操縦者!?」

 

私は自分で自分の言ってる事が信じられなかった。当然だ、2人もイレギュラーがいるはずはない。

 

「ええ、そうですよ」

 

彼は私の考えていた事を否定し、自分がイレギュラーだと告げた。情報が処理しきれず頭が回らない。

 

「今回はあなたに言いたい事があります」

 

彼は私の事なんかお構いなしに話す。

 

「その子を大切にしてください。その子は貴方の事をとても信頼しています。それも滅多に見かけないぐらい」

 

私はようやく頭が回ってきた。

 

「わかったわ、この子は大切にする。この前の借りがあるから貴方のことは黙ってて上げる」

 

そうすると彼はニコッと笑い。

 

「貴方ならそう言うと思いましたよ、なんせその子に信頼されてますから」

 

彼は席を立ちまた何処かへ行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻ったぞ、あとこれクレープ」

 

ティファの元に帰ったゼロは買ってきたクレープをティファにクレープを渡す。今現在アリーナではフランスの第三世代機、ラファール・ネオが演習を行っていた。次々と出現するターゲットを打ち落としていた。

 

「イマイチだな」

 

ゼロが演習の様子をみながら呟く。

 

「そうね。あのIS私の機体よりかスペック低いんじゃないの」

 

クレープを食べ終えたティファが返事をする。

 

演習は順調に進んで行き最後のターゲットを撃とうとしたその時

 

ブオオオオオオオン!!!!

 

轟音と共に巨大なビームが落下してきた。ラファールはそれを避け上空をみる。会場の観客全員上空をみる。そこにあったのは黒い塊、それも一つや二つではない。百以上の黒い影が空から落下してきた。黒い影の一つがアリーナに着陸する。それは右手に大剣を左手に銃を持った、全身装甲タイプのIS。

 

「ねえゼロ、あれってもしかして……」

 

周りの観客達がザワザワと騒ぐ中、ゼロとティファは冷静でいた。

 

「多分奴らだろうな」

 

ゼロは空から落下してくる物体を見る。すると突然、秘匿回線から連絡がきた。

 

「ゼロ、聞こえる?」

 

回線の相手はスコール。

 

「今から貴方達に追加の任務を与えるわよ、あのISを破壊して」

 

「スコール、今回やつらが来る事を分かっていたから俺たちをよこしたんだろ」

 

「あら、分かってたの」

 

「当然だ、わざわざIS見物のために俺たち2人を使うなんておかしいだろ」

 

「物わかりがよくて助かるわ。そういうとこ好きよ」

 

ふふっと笑ながら答えるスコール。

 

「任務については了解した」

 

ゼロは回線を切る。

 

「スコール、なんて言ってたの?」

 

「あいつらを殲滅しろだってさ」

 

すると、ゼロ達の後ろで何かが落下する音が聞こえた。2人が振り向くとそこには落下してきた奴と同じタイプのISがいた。ISは右手を上げ、横薙ぎに大剣を2人目掛けて振るう。ティファはしゃがんでそれを躱し、ゼロはその剣を飛び越え背後に回る

 

キャアアアアアア!!

 

その様子を見ていた観客達から悲鳴が上がる。次第にパニック状態に陥り始め、下の方にある出口へ向かう人達。

 

(人前で黒零を呼び出すのは流石にまずいな……)

 

すると左の方からビームが飛んできた。ゼロはかわそうとするがビームはゼロではなく黒いISに直撃して吹き飛ばした。ビームの飛んできた方向を見るとそこには右手を前に突き出しているIS、銀の福音がいた。

 

「大丈夫!」

 

福音が飛んでよってきた。

 

「ああ、なんとか」

 

「それよりもこれは貴方達の仕業?」

 

「残念ながらちがうぞ。どちらかと言えばこいつらを破壊する側だ」

 

「だったらさっさとISを呼び出したら」

 

「そうしたいが周りに観客がいるからできないんだよ」

 

ゼロは出口の方向を見るとそこには係員に誘導されている観客達がまだいた。ついでに言うと、ラファールと最初に落下してきた機体は現在交戦中だ。

 

「なら、あいつは私に任せて!」

 

ナターシャは吹き飛ばしたISへ突撃しにいった。

 

「どうするゼロ」

 

少しばかり空気になりかけてたティファが声をかける。

 

「観客もほとんど逃げたし係員達もカメラもなさそうだから、呼びたすぞ」

 

「了解」

 

ゼロの左腕につけられたブレスレットが光り、黒零を展開する。

 

続いてティファのネックレスが光り、ISシエルが展開される。

 

<シエル>

ゼロが開発したティファ専用の第三世代型IS。開発するにあたってティファから多数の要望があったため、ゼロ曰く作るのにかなり面倒くさかったIS。

ピンク色のボディに四つのウイングスラスターが特徴的な機体。

 

 

「行くぞ!」

 

その言葉を合図に2人はアリーナから飛び出した。

 

 

 



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VS VS VS

ゼロとティファはフランスエリアにあるアリーナの上を飛行していた。2人の目の前に二機のISが出現する。2人は加速し、二機へと接近する。

 

「……」

 

ゼロが近づいた一機はゼロ目掛けて大剣を振り降ろす。ゼロはこれを横にずれて躱す。

 

(なんだこの感じ、人の気配がない)

 

今の動作を見て、ゼロはそう思った。ゼロはゼットセイバーをコールし、黒いISの右肘に斬りかかる。ゼットセイバーがISの腕に触れた瞬間、絶対防御は発動されることは無く右肘から先が宙を舞う。

 

「は?」

 

ゼロは素っ頓狂な声を上げる。切れた腕の断面を見ると血は一滴も流れていない。

 

(まさか無人機!?なら人の気配が無いのは納得出来る。だが絶対防御が発動しなかったのはなぜだ)

 

黒いISは左腕で銃を構えるが、懐に入り込まれ、胴体を十字に切り裂かれ落下して行く。ティファの方を見るとビームサイスを振り回し、ISの首を刈り取っていた。

 

「え?」 

 

ティファは吹き飛んだISの頭を呆気に取られながら見ていた。まだ起動出来るISは大剣を振り上げるがゼロに背後から一刀両断される。

 

「ゼロ!あれ何なの!?」

 

ティファはバイザーを上げ、ゼロに近づく。

 

「落ち着けティファ。多分あれは敵の開発した無人機だろう。使われているのは多分、量産型コア。そして絶対防御が存在しない」

 

仮面を装備しながらボイスチェンジャーの声で話すゼロ。

 

「無人機……なら、遠慮せず倒せるわね」

 

ティファはバイザーを下げビームサイスを両手で強く握る。

 

「ああ、そういうことだな!」

 

ゼロは後ろを振り向きながらセイバーを振るう。するとそこには無人機がいて、右手を切断される。ゼロは無人機の腹を蹴り、地面へと叩き落す。

 

「別々に行動するぞ、そっちの方が効率が良い」

 

「了解」

 

ゼロとティファは互いに真反対の方向へ飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ドイツエリア〜

 

現在、ドイツの黒ウサギ部隊は無人機20機ほどと交戦していた。

 

「うおおお!」

 

黒ウサギ部隊の隊長、ラウラ・ボーデヴィッヒは愛機であるシュバルツェア・レーゲンに搭乗している。接近してきた無人機をプラズマ手刀で胴体を切断する。

 

「隊長、こいつらは一体なんですか」

 

ラウラと背中合わせになりながら黒ウサギ部隊副隊長、クラリッサ・ハルフォーフはラウラに疑問を投げかける。

 

「無人機だ。だが以前学園を襲撃してきたやつとは形が違う。同一人物の作り上げた別型か、はたまた別人が作り上げたものか……」

 

ラウラは冷静に敵機について考察する。

 

「ヤバイですよ隊長、こっちの戦力が5機なのに向こうは15機近くあります。このままじゃ……」

 

すでに2人は10機程の無人機に囲まれており、残りの三人も残りの5機と戦闘を繰り広げていた。2人を囲んでいる10機が左手の銃を構える。

 

「くっ……」

 

下唇を噛むラウラ。無人機の銃が光り始めた時

 

スパン……

 

一機の無人機の上半身と下半身が分断され地面に落ちる。何が起きたのか2人にはわからなかった。気付いた時には無人機は切断されていた。

 

ズドドドドドドドド!

 

上空からビームの雨が無人機達に降り注ぐ。無人機達はこれを躱そうとするが二機、ビームの雨によって爆散してしまう。

 

「何だ……何が起きてる」

 

現在の状況について来れず呆然としてしまうラウラとクラリッサ。すると上空からフワリと一機のISが着地する。

 

「大丈夫?危なそうだったけど」

 

そのISの色は薄いピンク、背中にある二つのウイングスラスターは薄いピンク色であり、バイザーを装備している為に顔は分からない。パイロットの名はティファニア。

 

「何者だ、貴様」

 

殺気を放ちながら問い詰めるラウラ。

 

「私は亡国機業の1人よ」

 

ラウラの殺気に怖気づくこと無く平然として答えるティファ。

 

「なんだと、これは貴様らの仕業か」

 

「違うわよ、もしそうだったとしたらあいつらを破壊する訳ないでしょ。今回の任務はこいつらの殲滅」

 

「ちっ、貴様らのいう事は信用出来ないが、こいつらの殲滅をしてくれるのなら邪魔はしない」

 

「そう、なら助かるわ」

 

ティファはビームサイスを構える。

 

「貴方達は向こうの4機をお願い、私はあっちの3機を倒す」

 

ティファは無人機の集団へと突撃して行く。無人機のうち一機は大剣を構え接近する。一機が大剣を振り下ろしたその時、ティファは瞬時加速してカウンターの様にサイスで切り裂く。その一瞬の接触で無人機の胴体は引き裂かれ、膝から倒れる。

 

「次」

 

ティファが残りの二機に狙いを定める。二機は既に銃を打つ準備をすましており、一斉にビームを発射する。ティファが左手の甲をビームの飛んでくる方向に向けると、左手からビームシールドが出現してビームを防ぐ。

 

「まだまだ!」

 

   ティファは左腕を後ろに引いた後、水切りの様な投球フォームで左腕を素早く振り抜く。するとビームシールドがフリスビーの如く飛んで行き、無人機一機を縦に真っ二つにする。先程、無人機の一機を上下に引き裂いたのはこの武器だ。

   残った一機はビームを連発するが、ティファはサイスを収縮し、地面を滑る様に移動し接近する。間合いを詰めたティファは右手を無人機の顔に突きつける。無人機は両手の武器を収縮してティファをつかもうとするが。

 

「撃つ!」

 

右腕の装甲に装備されているビームマシンガンから弾丸が放たれ、無人機の顔に直撃する。怯む無人機は一歩一歩後退して行く。それでも撃ち続けるティファ。遂に耐えきれなくなったのか無人機の頭部が爆発する。

ティファは撃つのを辞め、背後に回り込むと腰から一本のビームサーベルを取り出す。それを爆発した無人機の首の断面に突き刺すと、無人機は力を失い、膝からうつ伏せに倒れる。

 

「胴体の部分を傷つけたら機能は停止するのね」

 

無人機からサーベルを背中を経由して引っこ抜き、ビームを解除してくるくると回すティファは今までの戦闘から得たデータを元に結論づける。

 

「でも、最初に落下してきたビームとこいつらの使っていたビームじゃ出力が違う。どうして?」

 

無人機の残骸を見ながら、顎に手を添えて考えるティファ。しかし、真横から挟み込むように二機の無人機が接近してくる。するとシエルのウイングスラスターからビームの翼が出現し羽ばたく様に動かすと、無人機は躱しきれずに切断されてティファの足元に転がってくる。

 

「さてと、次はどうしましょう」

 

 

 

 

「はっ!」

 

シュバルツェア・レーゲンの大口径リボルバーカノンによって放たれた弾丸は無人機の胴体を貫く。現在、黒ウサギ隊が交戦している

ティファの参戦によって戦況はこちら側に傾いている。一機、また一機と敵を粉砕していく黒ウサギ隊。最後の一機を4人がかりでワイヤーによって縛り上げ、身動きが取れないようにする。

 

「……ずいぶんと苦しませてくれたな」

 

ラウラは一歩一歩ゆっくりと無人機へ接近していく。そして無人機との距離が1mまで縮まると歩くのを辞める。

 

「だが、これで終わりだ」

 

右手を横に降ると、右手から赤色のビームブレードが出現する。これこそがドイツの開発したシュバルツェア・レーゲンの新装備。その名も

 

「ベルリンの赤い雨!」

 

振り下ろされた手刀によって、無人機の機会音は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

「これで、ラストォ!」

 

ゼロは無人機を壁に叩きつけ、セイバーを突き刺す。ここはフランスエリアとイギリスエリアの境目、ティファと離れた後のゼロは15機の無人機と交戦していた。辺り一面には四肢の千切れた無惨な残骸達が残っていた。

 

「ちっ、まだ残っていやがったか……」

 

ゼロは舌打ちをしながらセイバーを引っこ抜く。空中から接近する三機の無人機、ゼロは直様バスターショットを構えるとチャーショットを一機の心臓目掛けて放つ。ビームは無人機の心臓を貫き、爆散する。

残りの二機は二方向からゼロを攻撃しようとするが、ゼロは一機に向けて突撃する。無人機が振り下ろす大剣を躱し背後に回り込むと、無人機の両腕を掴み、足で背中を押しながら引きちぎる。接近して来たもう一機を千切った腕で叩きつける。無人機は空中での制御を失い落下していく。続けざまに、腕を引きちぎられた無人機の背中にセイバーを突き刺し、高速で落下する。

 

「落雷牙」

 

落ちた無人機目掛けて、落下していくゼロ、無人機は 落下してくるゼロに気付き転がりながら移動する。

地面へと突き刺さるセイバー、既に腕の千切れた無人機は機能を停止している。ゼロはセイバーを引き抜き収縮する。体制を立て直した無人機と向かい合う。互いの距離は約30m。

 

「「……」」

 

沈黙の両者、辺りには静寂が広がる。

 

「は!」

 

静寂を破ったのはゼロ。武器を何も持たず、無人機へと突撃する。無人機はすかさずチャージしたビームを放つ。ゼロは迫ってくるビームに対して右手を突き出す。

 

ゼロの右手が白く光り、唸る。

 

圧縮された高濃度のビームが右手を包み込み、発光している。無人機のビームとゼロの右手が接触した。無人機のビームは川が岩によって流れが変わる様に二方向に別れる。接近した後、ゼロは右手で無人機の銃を握りつぶし破壊する。

 

「これがぁ!」

 

ゼロは右脚を力強く踏み込み、ビームをまとった右手を無人機の腹に突き刺し、天高く掲げる。地面を強く踏んだ衝撃で、足元の地面に亀裂が走る。

 

「シャイニングフィンガーというものか!!」

 

暴れていた無人機は力を無くした様に動かなくなった。すると突然、無人機が内部から爆発した。ゼロは残っている残骸ごと右手を横に振るい、残骸を飛ばす。

 

(アニメを見て試しに作ってみたものの、威力が高いな。全力の一撃を人間に使うのは控えた方がいいな)

 

右手についた残骸を左手で払い落とす。辺りには戦闘音が響いているが、周りは異様に静かだ。近くにあった建物の壁に体を預けて休憩するゼロ。

 

(流石に数が多いな……だが、まだ敵の大将がでて来ていない)

 

ゼロは空を高く見上げる。

 

(おそらく、まだ敵の大将は空の上にいる)

 

ゼロは壁から離れ飛びたとうとするが突然、横から実弾が飛んで来た。咄嗟にその場から離れ、銃弾の飛んで来た方向を見る。其処にいたのはオレンジ色のIS、ラファール・ネオ。

 

「シャルロット・デュノア……か」

 

ゼロはデュノアの方向を見ながらバスターショットを構える。相手も同様にアサルトライフル[ガルム]を構えている。

 

「動かないで!もし変な事をしようとしたら、君を倒すよ」

 

デュノアがゼロに対して注意する。しかし、その唇はゼロに対する恐怖のせいか、僅かに震えている。それに対してゼロは余裕そうな様子でいる。

 

「今回のことも君たちの仕業なんでしょ」

 

唇を震わせながらもデュノアはゼロに尋ねる。

 

「いいや、違うね」

 

「そんな事は信じられないんだよ!」

 

ガルムの引鉄を引き、弾丸を放つ。しかし、ゼロはスライド移動をしてそれらすべてを躱す。

 

「いいぜ、お前が俺を邪魔する気なら、任務の為に撃破してやるよ」

 

ゼロは何処か愉しそうに喋る。ほんの僅かだが右手が光っている。

 

「来いよ」

 

右手の指をクイクイっと動かし挑発するゼロ。

 

「そんな手には乗らないよ!」

 

デュノアは後方へ下がりゼロとの距離を取ると両腕にサブマシンガン[レイル]、そして背中にある

ビームランチャー[クード]を構える。ゼロは落ちていた無人機の大剣を拾い、デュノア目掛けて投げつける。デュノアはこれをクードで吹き飛ばす。ゼロは比較的胴体に損傷の少なかった無人機二機を盾代わりにしながら突撃する。

 

「吹き飛べ!」

 

クードから放たれた一撃、ゼロは無人機に当たらないようにしながらこれをかわす。ある程度接近したところでゼロは無人機をデュノア目掛けて投げつける。レイルにより撃ち落とそうとするが、無人機は突然閃光を放ち、続いて爆発し大量の煙が発生する。

 

「閃光弾とスモークグレネード、そんな事をしても無駄だよ」

 

デュノアは正面から接近してくる物体に向けて、クードそしてレイルを乱射する。手応えはあった、銃弾の直撃する音が響く。

 

「まだまだ」

 

うち続けるデュノア、弾丸の直撃する音が止まった。その感覚に気づいたデュノアは銃を打つのをやめる。するとコロコロと足に何かが当たる。視界が悪い中でそれを確認する、それは無人機の頭部だった。

 

「敵は何処!」

 

ハイパーセンサーセンサーを使い

、ゼロの位置を確認するデュノア。真後ろから機体が接近してくる。後ろを振り向くと其処には右手を振り下ろすゼロがいた。レイルを使い光る右手を受け止めるが、一瞬にして握り潰される。ゼロは離れて距離を取る。辺りを埋め尽くしていた煙はなくなった。

 

「なかなかやるな、正直見くびっていたよ」

 

「それはどうも、百春の作ってくれたこいつなら君でも倒せるよ」

 

「ふっ……ずいぶんとその機体と自分を過大評価してるみたいだな」

 

デュノアを鼻で嗤うゼロ。

 

「過大評価じゃないよ、僕は君を倒す」

 

力強い視線でゼロを睨むデュノア。しかし、ゼロは余裕な態度を崩さずにいる。

 

「笑わせてくれるなぁ、デュノア社の奴隷」

 

「今なんて言った!」

 

ゼロの発言に激昂したデュノアはレイルを収縮しし代わりに二本のビームサーベルをコールし瞬時加速でゼロに接近する。

 

「聞こえなかったのか、デュノア社の奴隷って言ったんだよこの野郎」

 

「誰が奴隷だ!」

 

振り下ろされた二本のサーベルを右手とコールしたセイバーで受け止める。

 

「親の会社の都合でIS学園に男として入学し、男性操縦者である織斑百春に接近して白式のデータを奪おうとした。そして正体が暴露たあとは百春に惚れたといってつきまとっている。この惚れたのもデュノア社の命令じゃないのか?」

 

「黙れ!」

 

ゼロを押し返し、追撃をしかけるデュノア。しかし、ゼロは接近してくるデュノアを中心に円状移動を行い背後に回る。右手を使い、クードごと敵のバックパックを破壊する。

 

「このぉ!」

 

振り返りゼロの方向を向こうとするデュノアだったが、振り向いた瞬間に威力を半分以下に抑えた光る右手のストレートが顔面に直撃する。錐揉み回転しながら吹き飛ぶデュノア、何回も地面にバウンドしながらようやく仰向け状に倒れる。

 

「それでやっとのことで手に入れたデータを使ってつくった機体がこのざまかよ」

 

一歩一歩近づきそしてデュノアの頭部を踏みつけるゼロ。

 

「お前の敗因を教えてやろうか」

 

デュノアの腹部を右手で掴み、持ち上げる。

 

「距離をとってサブマシンガンなんかをつかっていたら良かったのに、接近戦が得意な俺に対して接近したことだ」

 

右手が仄かに光ると同時にデュノアが暴れ出す。

 

「が……あが……あっあ」

 

「安心しろ殺しはしない」

 

右手の光が弾け、デュノアは気絶したのか力を失い暴れなくなった。ゼロが手を離すと、デュノアは地面に倒れこんだ。




ラファールの武器の名前は適当です。


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すいません、今までこの小説を書く気が失せていました。


 

 

「ふーーーっ」

 

デュノアとの交戦を終えたゼロは大量の息を吐くが、疲れている様子は無い。セイバーを地面に突き刺し、辺りをハイパーセンサーを使い敵がいないかを確認する。

 

「……いた」

 

こちら側に接近してくる二機のIS、機体のデータから判断してティファでは無い。機体との距離は400m。敵のいる方向からビームが飛んできた。これを光る右手で弾き、足元できぜつしているデュノアを蹴り飛ばし戦闘準備をする。

 

(中遠距離型か?それにあのビームの感覚は……まあいい)

 

セイバーを引き抜き、スラスターを展開し敵にむかって飛行する。放たれるビームを全て弾き、飛び続ける。敵の姿が見えてきた。二機とも青色のボディーにビームライフルを装備している。ゼロはこの2人と戦ったことがある。

 

「デュノアさんの応援要請を受けて来てみれば、まさか貴方がいるとは」

 

1人はセシリア・オルコット。暴走した銀の福音を止める時にIS学園1年の専用機持ちと一緒にゼロ達を邪魔した少女。

 

「貴様はあの時の!」

 

こちらにスターライトmkⅲを構えている勝ち気な目をした金髪のブロンド髪の少女、エリナ・グレンジャー。彼女とは以前、サイレント・ゼフィルスを強奪する時に直接戦闘を行った。

 

「デュノアさんは何処ですの?」

 

「さあな、そこらへんで誰かにむかってケツでもふってんじゃねえのか!」

 

頭にむかって飛んで来たレーザーをギリギリで躱すゼロ。撃ってきたのはエリナ、続けざまにもう一発を心臓を狙って放つ。ゼロはバスターショットを放ち相殺する。

 

「エリナさん! 」

 

「後手に回ってたら倒される!ブルー・ティアーズを展開して、セシリア!」

 

「わかりました」

 

セシリアとエリナの装甲からそれぞれ六つずつブルー・ティアーズが射出される。

 

「ちっ!」

 

ゼロは瞬時加速を行い一気に下降する。それを追いかける12機のブルー・ティアーズ達。12機がそれぞれ放つビームを上手く躱していく。更に上空からはスターライトmkⅲによる援護射撃がゼロに迫る。

 

(流石に12機はキツイな。だが、敵が追撃してこないとうことは奴らはビットを動かしている間は移動する事ができない)

 

地面スレスレを飛行するゼロ、後ろからはビット達が上空にはセシリア達がいる。

 

(やるなら今だ!)

 

ゼロは覚悟を決め上空を見上げると直角的な移動を行い上昇する。

 

「はあああ!」

 

背中のスラスターそして両脚につけられたスラスターを段階に使い分け個別連続瞬時加速を行い、ビット達との距離を離す。敵との距離が近づいてくる。狙うはセシリア・オルコット、ビットを展開している彼女達は動く事ができない。

 

(もらった!)

 

セシリアにむかって振り下ろされるセイバー。直撃するとゼロは確信した。しかし

 

グァン!

 

「インターセプター!」

 

ゼロによる一太刀は近接武器であるインターセプターをコールしたエリナによって阻まれてしまった。動いた、なぜ自分がビットを展開しているにもかかわらず、動く事ができるのかエリナ自身もわからなかった。只倒したい、ゼロを倒したいと思っていた。

 

「はああああああああ!!!」

 

セイバーを弾き返し、一瞬にして二回斬りつける。一回目は 胴体に直撃するが二回目は外してしまう。もう一度斬りつけるがゼロに腹を蹴られてしまう。ゼロは蹴った反動を利用して後ろにさがる。

 

「やるじゃねえかてめえ」

 

「あんたと以前戦った時は接近戦がダメダメだったからな、鍛えたんだよ!」

 

エリナ達の周りにビット達が集合する。

 

「そうかい、なら俺も新たな武器を使わせてもらう!」

 

ゼロの周りの空間が少しだけ歪んだ。

 

「行くぞ、牙(タスク)!」

 

ゼロの周りから6機のビットが出現する。全体的に黒色で所々に灰色のラインがある。

 

「さて、何処まで楽しませてくれるか……」

 

合計18機のビット達が一斉に動き始める。自分達の方が数が多く、

稼働時間も長いから有利だろうと2人は思っていた。

 

だがそんな幻想は打ち壊される。

 

一時的には互角にやりあっていたが、牙の放ったビームによって一機のティアーズが破壊された時に戦況は変わった。瞬く間に一機、また一機と撃墜されていき全てのティアーズが撃墜されてしまった。

 

「嘘でしょ……」

 

エリナが信じられないといった表情で牙たちを見る。ティアーズを

撃破した牙たちはゼロの周りに集合する。

 

「まだだぜ、まだまだ」

 

二丁のバスターショットと6機のビット達がエリナ達に照準を合わされ、放たれる。

 

「くっ」

 

2人は二方向に別れてそれらを躱し、セシリアはライフルを再び構えるが、牙を収縮して接近していたゼロに頬を殴られ、落下していく。なんとか体制を立て直すが今度は瞬時加速を使い威力をあげた蹴りを腹に入れられ落下した。

 

「さてと」

 

ゼロは振り向きながらゼットセイバーを構えるとエリナが振り下ろしたインターセプターとぶつかる。

 

「何故お前たちはサイレント・ゼフィルスを盗んだ!」

 

「VTシステムが積まれていたからだ」

 

インターセプターを弾き、後ろに下がるゼロ。二人は再び剣を構える。

 

「VTシステム?何でそれがサイレント・ゼフィルスに積まれていた!?」

 

「それについてはお前の国のババアが言ってたが、この事件の黒幕の組織に所属していた奴らががスパイとして潜入し、積み込んだそうだ」

 

「ババア?黒幕?お前何を言って……!」

 

グォォオオオオン!

 

突如として無人機が落下してきた時と同じ規模のレーザーが落下してきた。

レーザーが直撃し、炎上していく建物。

 

「何だよ……おい」

 

呆然とするエリナ。

 

「……」

 

それに対して無言で空を見上げるゼロ。そして

 

「ティファ、聞こえるか?」

 

ティファニアに対して連絡を取るゼロ。少ししてから返事がくる。

 

「やっぱり、空に待機してたね。それでこれからどうするの?」

 

「決まっているだろ、空へ上がってあいつら倒すぞ」

 

ティファとの連絡を切り、両脚そして背中のスラスターを噴かせ、一気に上昇した。



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ガーベラ

 

 

空へと上がって行くゼロは腰のアーマーに手をかけ、中からゼリー飲料を取り出し、仮面を口の周りだけ外し素早く飲む。ゼリーを飲み干すと仮面を元に戻し、ゼリー飲料の袋をアーマーの内部に収納する。

上昇する速度を上げる。すると後ろから何かが近づいてくる。後ろを確認すると、ブルー・ティアーズに搭乗しているエリナが接近してきている。そして上を見ると四機の無人機が落下してくる。

 

「まだ、いやがるか……」

 

直様ゼットセイバーをコールして無人機めがけて突撃する。だが、四機の内、二機はゼロではなくエリナへと向かう。

そして、残った二機はゼロに向けて剣を振るう。しかし、ゼロは円周運動を行い一機の背後に回り込み、ゼットセイバーで左右真っ二つに切り裂く。そしてそのままセイバーを収縮した後、残った一機の胸めがけて光る右手を放つ。

 

「うおおおお!」

 

光る右手によるストレートを相手の装甲に当たった瞬間、内側に捻りこむように回転させ、コークスクリューブローの容量で一気に敵の装甲を貫いた。右手を引き抜くと無人機は力を失い落下して行った。

 

再びスラスターを吹かせ一気に上昇して行く、そして空を覆い尽くす入道雲へと突入する。

 

視界が不安になる。しかし、どんどんスピードを上げて行く。そして…

 

ブォン

 

入道雲から勢いよく脱出し、ゼロが見たものは

 

何十体もの無人機

 

無人機達は一斉に攻撃しようとするが、その動きが止まり急降下して行く。残ったのは一機。だがその見た目は明らかに無人機とは違う。紫色の全身装甲タイプのIS。機動性を重視しスマートなフォルムをした黒零とは反対のずっしりとした重圧感のある姿。大型ビーム砲を腰に装備している。

 

「くっくっく……久しぶりだなあ、ゼロ」

 

紫色のIS操縦者は愉しそうにゼロを呼ぶ。それに対してゼロはバスターショットとゼットセイバーをコールする。

 

「やっぱりてめえ等が犯人だったか、ガーベラ」

 

ゼロが紫色のISの操縦者、ガーベラを呼ぶ。

 

「ああ、そうだな。今回の騒動の中心にいたのはあたし達だ。そして今回はこの三国合同IS展覧会をあたし達が新しく開発した無人機、アントの発表会にしようというつまらない目的があったんだが!お前達がいてくれたおかげで楽しくなった!」

 

嬉々として話すガーベラ。 すると彼女はビームライフルをかまえる。

 

「さあ、闘おうぜゼロ。お前と闘うのをいつも楽しみにしていたんだ。このパープル・ペインでな!さあ、早く!」

 

話終えると同時にライフルを放つ。しかし、ゼロはそれを躱してバスターショットを放つがビームシールドによって防がれる。

 

「いいねえ、いいねえ、やっぱりこうじゃないと」

 

ガーベラはランチャーとライフルを収縮し、代わりにビームサーベルを二本手首の装甲から射出され、それを掴むみ構える。ゼロも同様にバスターショットを収縮し、もう一本ゼットセイバーをコールした後構える。

 

「いくぜ、いくね、いくよー!」 

 

計四本の刀による壮絶な斬撃の応酬。ゼロがセイバーを振るえば、ガーベラがそれを受け止める。ガーベラが薙ぎ払えば、ゼロがセイバーで弾く。

数十度にも及ぶ打ち合いの後、ゼロは後ろへと距離をとりながら斬鋭弾を二連続で放ち、それがガーベラに直撃する。

 

「少しだが遅いな、その機体」

 

一息いれるかの如く話しかけるゼロ。

 

「ああ、そうだよ。この機体は元々一機による超高々度からの砲撃と拠点制圧がコンセプトだからな、お前の機体みたいに速い動きはにがてなんだが……だからどうした!」

 

瞬時加速を使い、急接近してくるガーベラ。接近すると同時に二本のサーベルを振るい、それをゼロが受け止める。

そして突然、パープル・ペインの腰のスカート状の装甲が変形し腕の形になる。

 

「なに!」

 

ゼロは隠し腕によって両脚を掴まれ、さらにセイバーを弾かれ今度は両腕を掴まれる。

 

「スピードは確かに足りねえが、機体のパワーだったら負けてねえぞ!」

 

「うおおおお!」

 

必死に暴れ、拘束から離れようとするゼロ。しかし、パープル・ペインのパワーは凄まじくびくともしない。

すると、パープル・ペインの胸の装甲が開き、だんだん球体状のビームを形成していく。

 

(これの直撃は流石にマズイ!相打ち覚悟でやるしかねえ)

 

ゼロは一旦暴れるのをやめる。ガーベラはその様子を不思議に見る。

 

「どうした?負けることでも確信したのか、ゼロ?」

 

「そうだな、確かに黒零と俺の力じゃこの拘束から逃れるのは無理だ……だが、まだ負けたわけじゃない」

 

「強がりを」

 

「それはどうかな…………牙!」

 

ゼロが叫ぶと同時に一機の牙が出現する。牙は直様動き出し、二人の間に入り込むと球体状のビームに突撃すると牙は爆発し、さらには球体状のビームも爆発する。爆発の衝撃に驚いたガーベラはゼロを拘束から外してしまい、ゼロはすかさず後方に瞬時加速を使い爆発から逃れるように距離をとる。

 

「ふうーー」

 

息を吐き、一息いれるゼロ。それに対してガーベラは手で頭を抑え震えている。

 

「やるね〜、やっぱりこうじゃないと。てめえと闘うのは楽しい!まさかあんな方法で脱出するなんてな」

 

純粋に闘うことを楽しんでいるガーベラ。

 

「そんなことはどうでもいい……それよりてめえ等の仕業だったのか、銀の福音の暴走は」

 

ゼロからの問いかけを聞いたガーベラは今までの嬉々とした様子から豹変し、落ち着いた様子で返答する。

 

「そうらしいな……あたしも詳しくは知らないんだが、どうやらあたしとは別の部隊の奴らがやったらしい……」

 

「そうか、目的は多分……暴走した銀の福音で都市部を襲撃し、甚大な被害を出した後、パイロットごとお前等の仲間に引き入れる、そうだろ?」

 

「そうだな、あたしは乗り気じゃなかったんだけどな。そんなことよりも、今は闘いに集中しようぜ!」

 

サーベルを収縮し代わりにビームマシンガンを四つコールすると、それぞれを手に持つと発砲し始める。

 

「ちっ!」

 

ゼロは攻撃を避けながら敵の背後に回り込みセイバーを振り下ろすがパープル・ペインの背中から飛び出た十本の先端がビームサーベル状になっている触手によって阻まれる。

 

「あっはっはっは、後ろからなら攻撃できると思った?残念でした。後ろを守るための装備もちゃんとあんだよ!」

 

急いで距離を取ろうとするが触手の先端についているビーム方からビームが放たれ食らってしまう。

 

「どうしたんだい?もっと楽しませてよ」

 

背中触手をうねらせながらゆっくりと接近してくるガーベラ。それを息を乱しながら見るゼロ。すると、一本のセイバーを収縮してから構える。

 

(使いたくはなかったがやるしかねえか、いくぞ黒零、最大稼動!)

 

[OK]

 

するとゆっくりと黒零の装甲の灰色のラインが金色に光始めた。

 

「すげえ!すげえよ!てめえは次に何を見してくれるんだい!?」

 

「……」

 

互いに武器を構える両者、先に動いたのはガーベラ。マシンガンそして触手達からのビームの弾幕が一斉にゼロに襲いかかる。そして同時に球体状のビームをチャージし始める。ゼロはそれをいとも簡単に躱していく。さらにゼロは速度を上げていき、ガーベラの周りを動いていく。

 

(さっきまでと速度や機動力が違う。あの光の影響か……!)

 

ガーベラは驚愕する。先ほど迄、ビームを躱していたはずのゼロが目の前に出現したからだ

 

「舐めるな!」

 

ガーベラはチャージした球体状のビームを放とうとするが、光る右手とビームがぶつかり、先ほどと同じように爆発してしまう。だがゼロは爆発する瞬間に瞬時加速を行い爆発から逃れていた。

 

「はあ、はあ、なんて速さだよ、おかげで胸の砲門が使えなくなった」

 

爆発の衝撃をモロに食らったガーベラは破損状況を確認しながらつぶやく。

そして、触手を動かしゼロに攻撃し始める。

 

「はああああああ!!」

 

迫り来る触手達を僅かな動作で躱していくゼロ。さらには左手のセイバーで触手を切り裂き、光る右手で触手を掴み引きちぎっていく。瞬く間に触手はすべて破壊される。

 

「嘘でしょ…」

 

ゼロは一気にガーベラへと接近し四つのマシンガンを全て切り裂いた。

 

「これで終わりだ!」

 

ゼロがセイバーを上に掲げ両手で掴む。するとセイバーの刃が大きくなり、それを振り下ろす。

ガーベラは力を失い、地面へと落下していく。

 

 



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騒動の後のホテルにて

 

 

ガーベラとの戦闘が終わったゼロはセイバーを収縮し、金色に光っていたラインは何時ものように白くなっていた。そしてそれと同時に疲労感がゼロを襲う。

 

「……ッツ!」

 

一瞬だけゼロの頭に頭痛が走りふらついてしまう。さらにはバランスを崩したことにより、落下してしまいそうになる。

 

「大丈夫!?」

 

誰かから不意に声をかけられ、落下しそうになった身体が支えられる。ゼロは疲労感を振り切り身体を支えている人の顔をみる。そこにあったのは普段の任務でよく見かける装甲を纏った少女。

 

「ティファか……すまない、助かる」

 

「どうしたのよゼロ、そんなに疲れて」

 

バイザーを上げ顔を見してくるティファ、そして彼女は心配そうにゼロを見つめた。

 

「そんなことより、敵が落下してこなかったか?紫の全身装甲タイプのISが」

 

「いいえ、落下してこなかったわよ」

 

「そうか……(入道雲の中を飛んで行ったのか)」

 

ゼロは下方に広がる広大な入道雲の海を眺めながら呟く。

 

「つーか、お前無人機はどうしたんだよ!?さっきかなりの数が行ったはずだろ」

 

「あー、そのことね。イギリスの代表候補生とアメリカの銀の福音とドイツの黒ウサギ隊が戦っていたから、バレないように通り抜けてきた。それよりもこれからどうするの?帰る?それとも下にもどって闘う?」

 

ゼロは顎に手を添えて数秒間思考を巡らせる。そして

 

「……いや、撤退するぞ。敵の司令官は倒したし、なにより俺の体力がきつい。最大稼働なんて使わなきゃ良かった」

 

「だったら、無人機は回収する?」

 

「スコールなら俺たちじゃなくて別の部隊に回収させるはずだ、いやきっとそうする。というわけで戻るぞ」

 

「了解」

 

ゼロはティファから離れると二人とも入道雲目掛けて落下していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホテルに戻ってきたゼロはテーブルにノートパソコンを置き、今回の事件に関する報告書を纏めていた。

 

「よし、これで終わりっと」

 

キーボードのエンターキーを押し、データを保存するゼロ。ふと、時計を確認してみるとすでに時刻は午後11時を過ぎていた。ゼロはパソコンをシャットダウンする。そしてその後立ち上がりベッドへと向かう。その部屋に一つしかないキングサイズのベットに腰をかけ、自分の左腕に装着されてある黒零の待機形態である黒いブレスレットをぼんやりと眺め始める。

ガチャリ……浴室のドアが開かれる音が聞こえ、浴室からシャワーを浴びたばかりのティファがでてくる。彼女は今、寝間着に着替え、首にはタオルを掛け、身体はほんのりと火照っている。

 

「どうしたのゼロ?そんなに難しい顔なんかして」

 

彼女はそういうと、ベッドの上に乗りゼロの後ろに移動すると後ろからゼロの首に腕をまわしながらゆっくりと抱きついた。

 

「いや……なんでもない」

 

ブレスレットを見つめたまま、返答するゼロ。その言葉を聞くとティファはゼロの頭をゆっくりと撫で始める。

 

「そう、ならいいんだけど」

 

「心配させて悪かったな……それよりもどうする、明日本部に帰ってスコールに報告書を渡せば任務は終わる。そしたら休暇を貰えると思うから、2人で旅行にでも行くか?」

 

その言葉を聞くとティファは頭を撫でる手をやめ、にっこりと笑う。そして両腕でゼロを抱きしめる。

 

「行く!」

 

「そうか、なら」

 

ゼロは抱きついているティファを離すと立ち上がる。

 

「シャワー浴びてくるから、そしたら寝るぞ」

 

「うん、じゃあ待ってるから」

 

ティファは笑顔で返事をする。そしてゼロはシャワー室へ入っていった。



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赤黒色の空の下での二人

年内最後の投稿!





赤黒色の空、大地は豪炎に呑み込まている。しかし、ただ一箇所だけ炎に呑み込まれないでいた。円状の土地に立っている2人の男性。一人は黒色の髪に白を基調とした軍服を身に纏い、そしてもう一人は金色の長い髪に黒色のロングコートを身に纏っている。

 

「こんなとこに呼ぶなんてどうかしたのか?」

 

黒髪の男性が問いかけると、金髪

の男性は無言で左手を天高く掲げる。すると金髪の男性の左手にあるガントレットが光ると、光は男性を包み込む。光がなくなると男性は黒色の機械を装着していた。全身を纏う装甲に、クリスタルのようなものが埋め込まれているヘッドギア、腕、脹脛と肩の装甲にはそれぞれスラスターが装備されている。全身を走る灰色のライン。左右非対称の腕、右腕だけが特殊な装備を付けている。さらに何処からか取り出した刀を構える。

 

「なるほど……そういうことか」

 

黒髪の男性がそう呟くとさっきと同じように光が男性を包み込み、金髪の男性と全く同じ機械を装着した。さらに此方も刀を取り出し構える。

 

「「…………」」

 

無言のまま構える両者、その姿はぶれることはなく互いに相手を見ている。

 

「はあ!」

 

先に動いたのは黒髪の男。身に纏っている機械の両脹脛に備え付けられているスラスターを使い、単純にかつ高速で接近する。距離をどんどんと詰めていく。するとそれまで微動だにしなかった金髪の男が刀を居合斬りの様に構える。

 

「……斬鋭弾!」

 

金髪の男は一気に刀を振り抜く。すると刀からビーム状の斬撃が黒髪の男性に向けて飛ばされる。地面を刳りながら進んでいく楔形の斬撃。

 

「くっ!」

 

黒髪の男は横向きにスラスターを使い進行方向を変えて、斬撃を躱す。さらに方向を変えた力を利用して金髪の男の周りを円周上移動を行う。金色の男を中心に円状移動を行い続ける黒髪の男。そして彼はあることに気づいてしまう。

 

 

金髪の男は眼を閉じていた。

 

 

恐怖、怒り、絶望

 

そんな感情、黒髪の男にはなかった。高揚感、唯一つその感情が男の心で昂ぶっていく。

 

「そういうことなら!」

 

円状移動を行っていた黒髪の男が急に金色の男に向けて直線移動を行う。それは側面でも背面からではなく、真正面から。黒髪の男は刀の先端を金色の男に向け、槍で敵を貫く様に突撃する。

 

「烈風撃!」

 

勢いよく直進していく黒髪の男。すると金髪の男が今まで閉じていた眼を開け、刀の側面を盾代わりにする。

ぶつかる刀と刀。金髪の男は相手の勢いを殺しきれずに後ろへと下がってしまう。

だが金髪の男は刀の向きを僅かに変え、さらに身体をずらして、突撃を受け流す。受け流されてしまったことにより、体制を崩してしまう黒髪の男。

さらに続けざまに黒髪の男の腹目掛けて、刀が振るわれる。体制を崩してしまったことによりまともに躱すことができない。しかし

 

「ぬおおおお!!」

 

黒髪の男は全身にあるスラスターを使い、体制を強引に変える。金髪の男の刀が擦りながら黒髪の男の腹を通過する。

 

「まだまだ!」

 

黒髪の男は体制を立て直すと、左足を軸にしながら右足を大きく踏み込み刀を上から振り下ろす。金髪の男の左肩に直撃する。しかし、金髪の男もお返しとばかりに黒髪の男の腹に刀をあて、身体を滑らかに移動させながら斬る。今度は先程の様に擦った訳でわなく直撃。

黒髪の男は斬られた腹を左手で抑えながら離れる。

 

「……強くなった……だが」

 

金髪の男が今迄閉じていた口を開く。そして、右手に持っていた刀を地面に突き刺し右手を握る。すると右手は眩い光を放ち始める。

 

「それはお前だけのものじゃねえぞ!うおおおおお!」

 

黒髪の男も刀を地面に突き刺した後、大声で咆哮する。さらに此方も右手が光始める。

そしておたがい同じタイミングで高速で直線移動し始める。右手によって大地を砕きながら進んでいく両者、そして距離が零に近づくつと腕のスラスターを勢いよく噴射させ渾身の一撃を叩き込む。

お互いに放った右手と右手がぶつかり巨大な爆発が起こる。吹き飛ばされる両者、だが途中で空中でバランスをとり綺麗に着地する。

 

「強くなったな、オレと始めてあったときから…………一夏よ」

 

金髪の男は黒髪の男のことを一夏と呼ぶ。

 

「当然だ。誰がお前の相棒だと思っている、黒零……それとも別の呼び方がいいか」

  

「黒零で構わない。オマエさっきオレに尋ねたよな、なんでここに呼び出したのか……」

 

空気が変わった。そう表現するのが最も適しているだろう、黒零の装備している機械に走る灰色のラインが金色に輝き出す。

 

「最大稼動?」

 

金色に輝き出す機体を見て一夏はそう呟く。

 

「いや、違う」

 

返答する様に黒零が喋る。すると金色に輝いていたラインはその輝きを失っていき、全身完全な黒色へと変貌を遂げる。すると何処からか黒い霧がたちこめ、黒零の身体を包み込む。それを固唾を呑んで見守る一夏。

すると突然、霧の中から右手が飛び出る。先程迄の黒零の手とは違う。威圧感のある右手、右手を天に掲げるとそれを霧を取り払う様に動かす。

 

「これが新しい力……いづれオマエが手に入れるもの」

 

そう話す黒零、その姿はぼやけて見えない。だがそこには圧倒的な存在感がある。黒零は右手で拳銃の形を作ると一夏に向ける。

 

「また、いづれ会おう」

 

その言葉を聞くと一夏も右手で拳銃の形を作り、黒零に向ける。

 

「じゃあな、相棒」

 

そう言った途端、一夏の意識はなくなった。

 

 

 

 

 

 

「んん」

 

一夏は眼を覚ます。ふと隣を見るとティファが抱きついて寝ている。幸せそうな顔で寝ている。一夏は彼女を起こさない様に左手で頭をゆっくりと撫でる。

 

「ふへへ〜」

 

なんとも幸せそうな声でニヤニヤしながら寝言を言うティファ。それを見た一夏はふっと微笑む。そして布団から左手を出すとぼんやりと眺め出す。

 

「そろそろ……か」

 

左手を布団の中に潜りこませて、再び眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様からのご感想お待ちしております。
来年もよろしくお願いします。


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