バトルスピリッツ~戦国演武伝~ (真将)
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烈火伝 共通世界観

烈火伝の共通世界観
最初に置くべきだった項目


六統(ろくとう)幕府

 六国を取りまとめるジパングの統治機関である。

 7代将軍はムシャドラコ。

 15代将軍は覚醒龍スメラギ・ドラゴン。

 ムシャドラコの後代である8代目将軍は幼く、三魔と呼ばれた寵臣達の傀儡として機能していた。三魔の傀儡政治によって世界は荒れ果て、跡目争いに端を発した皇仁の乱によって権威が失墜する。

 

◆六国

 それぞれの色を持つ種族が暮らす国。六国ともそれぞれの理念を持ち、六統幕府の権威失墜を機に天下を狙っている。

 

炎武(えんぶ)の国

 武竜の武将たちが支配する火山地帯に創られた国。日々切磋琢磨し、己の武勇を磨いている。

 四章では若き龍皇が当主に襲名したことで、獣覇軍が離脱し戦力が低下した。

・主な勢力

 『天の部隊』『獣覇軍』

 

紫霊(しれい)の国

 呪鬼、夜族、無魔などが跋扈する黄泉とつながると言われ、海に面した光の届かない渓谷に存在する国。

・主な勢力

 『陰陽領』『霊獣軍』

 ・陰陽領

  紫霊の国を裏から操る組織。邪法師オグマを頭とし、死者を蘇らせることを得意とする。後にリクドウが後を継ぐ。

 

 

緑葉(りょくよう)の国

 国と言っても、他の国と違い集落の寄せ集めである。代表機関は存在するが、他の集落を統一している訳ではない。

 ・忍風の里

  異牙、甲蛾、風魔の三勢力で構成される忍の集団。依頼に応じて味方する勢力を変える。

・主な勢力

 『ヤイバノカミ』

  忍風の里きっての精鋭部隊であったが、戦をかぎつけては傭兵として名を上げていた三忠臣を率いて大名獣ヤイバノカミが独立。正式な軍として他国に知れ渡る。

 

機巧(きこう)の国

 武装、機獣が力を持つ北方の極寒の地に存在する機械の国。

・主な勢力

 『六天軍』『源氏八騎』

 ・六天軍

  「お屋形様」に率いられる軍団。最も天下統一に近いと言われていた力を持つ。

 ・源氏八騎

  六天軍の精鋭。数々の武功を重ね、六天軍でも突出した能力を持つ。四章では六天軍と対立している。

 

 

華黄(かおう)の国

 戦姫に統治されている国。現在は王位継承問題をかまかけており、世間の戦乱はどこ吹く風。妖戒の隠れ里がある。

・主な勢力

 『妖戒衆』

 四章にて進行する六天軍に隠れ里を襲撃され、逃亡のため散り散りになる。

 

青海(せいかい)の国

 闘神を中心とした明王や童子が支配する国。明王組織『巌陀羅(がんだら)』の四大明王が権力を握っている。

 主な勢力

 『巌陀羅(がんだら)

 輪廻転生を主な信仰としており、死者蘇生を行う陰陽領とは水と油であった。



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烈火伝第四章『戦歴600年:千鬼ヶ原の戦い』
一の戦 戦国龍皇


 戦歴582年。この年は天下統一にかけて大きな楔が打たれた年だった。

 六天軍、頭目――ゴッド・ゼクスの死である。

 飛ぶ鳥を落とす勢いを誇っていた六天軍は、まさに天下統一に最も近き勢力であり、六統幕府も彼らの勢いを止める事は出来なかった。

 向かうところに敵はいない。

 ゴッド・ゼクスのカリスマ性に引き寄せられるかのように、才のある武が彼の元に集った。その六天軍の前に、炎武の国、最大派閥を持つ戦国覇王ギュウモンジは敗走。そのカリスマに引き寄せられてか、戦国六武将センリュウカクと戦国六武将ムドウと言う二大勢力も過の力を認め、その軍門に下っていた。

 だが、戦歴582年――梵能寺にて、忠臣の裏切りに合い六天軍の本隊が叩かれ、多くの者達が命を落とす事となった。その中には六天軍頭目――ゴッド・ゼクスの姿もあり、その天下人は焼け落ちる梵能寺と運命を共にし戦国の世から姿を消した。

 これは後に『梵能寺の変』と呼ばれ、歴史的節目の一つと数えられる事となる戦国の分岐点ともなる事柄だった。

 圧倒的なカリスマを失った六天軍であったが精強な勢力である事は変わりなかった。

 統率者を失った事による暴走。それが唯一の懸念だったのだが、『機巧の国』は、過の軍を吸収する事で勢力の立て直しを図る。

 その時、全軍を掌握したのは古くより『機巧の国』にて名を連ねる名臣――機巧大将軍タイクーンであった。

 しかし、戦歴598年に機巧大将軍タイクーンは死去。それがきっかけで『機巧の国』は兼ねてより溝の存在していた“源氏八騎派”と“六天軍派”の二派の関係が悪化した。

 亡き主君へ忠義を貫く“六天軍派”は主君――ゴッド・ゼクスの死に“源氏八騎派”が関わっていると知り、和睦も不可能な程に決定的な対立を宣言。

 他国では、この派閥争いに便乗する形で、各勢力の対立が表面化して行った。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「だから、だ。貴殿に源氏八騎派の総大将になってほしい」

 白き鎧にマントをなびかせる一体の機巧者――源氏八騎衆頭目、八龍は目の前で鍛練に勤しむ者へ、そのような事を進言していた。

 「オレは構わないが……納得しない者の方が多いんじゃないか? 現に獣覇軍は納得していなかった」

 彼はこの国――炎武の国で一大派閥であった獣覇軍が、自分が主君になった事を機に去っていた事を今も懸念していた。そして、他国の密偵から六天軍に合流したと聞いている。

 「恐らく、君はまだ気づいていない。君のその魂――ソウルコアは何者にも絶やす事の出来ない炎だ。かつて戦乱統一間近まで歩いたゴッド・ゼクスに匹敵する輝きを持っている」

 使い慣れた槍を更に自在に使いこなすために、彼は振り続ける。目の前には吊るされた縄。その先端は結ばれており、彼は精神を研ぎ澄ませると踏み込んだ。

 「買いかぶり過ぎだ。この通り、オレは武術ガキでね。この槍がどこまで届くかにしか興味がない。主君を継いだのも仕方なく、だったんだ」

 吊るされた縄の先端は全て解けていた。彼が通り過ぎる際に槍を使って結び目を解いたのである。

 「それに、ゴッド・ゼクスは知ってるよ。彼はオレの憧れでね。実際に会った事は無いが……よく親父から寝物語にその武勇を聞かされたモノだ」

 その殆どが炎武の国が負ける話だったが、それでも父は敬意を称していた。だから、彼も天下人の足跡に憧れているのである。

 「それにアンタは直にゴッド・ゼクスに使えてたんだろ? アンタこそ六天軍に合流しなくていいのか?」

 「……私もその事で色々な所から非難を受けている。だが、選んだ道は間違いでは無かったと源氏八騎衆は後悔していない」

 「そうかい。なら、その志を見せてもらおう」

 「どのように?」

 彼と会う為に全ての武器は預けて来てある。その為、八龍は丸腰であった。その時、八龍の目の前に一本の剣が突き刺さる。

 「獅子王。名士が打った業物だ」

 二、三度、槍を回すと彼は構えを取った。熱を帯びる程に、その構えからは気迫が溢れ出る。

 「使え。ここからは無礼講だ」

 「…………」

 八龍は、眼前に突き立つ獅子王を掴み抜き放った。手に取っただけで凄まじい力を感じる。名刀、と言っても何の遜色のないほどの刀だ。

 「証明すればいいのか?」

 「できれば、だ」

 その瞬間、彼は八龍の後ろへ抜けていた。いつ、どのように? と考える間もない。ただ目の前で起こった事を八龍は事実として受け入れるしかなかった。

 「……ソウルコアを使ったのか?」

 「いや、いつも通りに動いただけだ」

 八龍は全く反応できなかった。それどころか影さえも捉える事の出来ない動きに、自分の眼に狂いは無かったと確信する。

 「あんたの申し出を受けよう」

 すると、彼からそんな事を聞き取る。先ほどまで乗り気ではなかった様子だったと言うのに、どう言った心境の変化だろうか。

 「源氏八騎衆は、ゴッド・ゼクスの次に憧れだった。だが、もう追いついたらしい」

 だから……と彼は告げる。

 「対等に戦乱を終わらせよう。ゴッド・ゼクスが目指した天下布武を」

 「よろしく頼む。いや、共に戦乱を駆けましょうぞ。お屋形様」

 八龍は跪き、こうべを垂れて新たな主君へ忠誠を誓う。

 「やめてくれ。“お屋形様”なん呼ばれ方はガラじゃない。対等で、と言っただろう?」

 「ならば、何とお呼びすれば?」

 修練用の槍を置き、彼は鎧を見に纏いながら告げた。

 「戦国龍皇バーニング・ソウルドラゴン」



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二の戦 源氏八騎派

 戦国の世の各所を制圧し、統一を進めている六天軍は、(ゴッド・ゼクス)を失いつつもその歩みはもはや躊躇いの無いモノとして止まることは無かった。

 その行進による被害は国に広がっており、六天軍が本気で天下統一を目指している事は誰の眼にも明白である。

 だが、その進行から逃げ延びた者、そして傍観しつつその脅威に気づいた者達は残った力をかき集め、ある者達の元へ集う。

 源氏八騎派。

 かつて、六天軍と対を成す一大勢力であり、兵力は互角以上とも謳われていた。そして、六天軍の進行に合わせるかのように源氏八騎派に新たな旗印が現れたと戦国の世に知れ渡る。

 六天軍と敵対する者達は、かの旗印へ集い始めた。

 

 

 

 

 

 その席には、多くの英雄たちが集っていた。

 「ひょっひょっひょ。これほどの面子が揃うとはのぅ」

 黄の席に座る妖戒衆、古老――ドンぬらりひょんは、眼を細めながら目の前の席に座る者達の存在を強く感じ取っていた。

 「六天軍の中核を担うのは陰陽領の主、陰陽皇リクドウぞ。奴の黄泉返りは、無限の軍と同義。いくら頭数を揃えるためとはいえ、烏合の衆では勝ち目は皆無ぞ」

 紫の席に座る霊獣軍、王霊――神霊王アメホシノミコトは元陰陽領の在軍である。此度は陰陽領を外側から変えるべく、この場の席に座っていた。

 「なるほど。状況は厳しい……と言う事でしょうか?」

 青の席に座る明王組織『巌陀羅(がんだら)』の総大将――蓮華王センジュは揃った面子を見て、戦力的には五分だと思っている。

 「いくらの決起しようとも! 所詮は寄せ集めの軍に過ぎぬ! そこに偽り無き“心”が無ければどれほど兵力で上回っていようとも、勝つことは不可能だ!!」

 緑の席に座るヤイバノカミ軍、総長――大名獣ヤイバノカミは質実剛健の武将であった。例え、万の軍が相手でも彼は背を見せて逃げる事など考えていない。

 「もはや、これはただの戦ではない。文字通り全てにおいて(つい)を決する大戦――乱刃であるな」

 白の席に座る源氏八騎衆――源氏八騎、薄金ストライカーは腕を組みながら、これからの戦いは今まで以上の大戦になると感じ取っている。

 「して、その我らが総大将はいつほど見えるのかのぅ」

 ドンぬらりひょんは、髭をいじりながら未だ空席の“上座”と“赤の席”を見ながら呟く。

 「あの源氏八騎頭目、八龍が選んだ者だと耳に入れている。ヤイバノカミ軍は何か聞いているか?」

 神霊王アメホシノミコトは長きにわたって、炎武の国と盟約にある緑葉の国の代表者に問う。

 「若い! ただそれに尽きる! だが、その内には何者にも左右されない強靭な心を持っている!!」

 「なるほど。しかし……我らを束ね、そして率いて行くほどの器があるのですか?」

 大名獣ヤイバノカミの言葉に蓮華王センジュはこれほどの大物たちを前に、ソレを引っ張って行くだけの存在はかつての天下人と同等かそれ以上の器でなければ成り立たないと見ていた。

 「ある」

 代わりに答えたのは源氏八騎、薄金ストライカーである。彼は八龍が選んだ者ならば間違いないと確信しているのだ。

 その時、大きく空間が揺らぎ、その場所へ侵入してくる気配を全員が感じ取った。

 「来たか」

 現れた影は三対。

 一人目はこの場の発起人である源氏八騎頭目、八龍。

 二人目は戦国の世に知れずと武勇を轟かせる『天の部隊』大将軍――剣豪龍サムライ・ドラゴン・(あまつ)である

 そして、その二人を左右に置く中心の者こそが――

 「此度より源氏八騎派の総大将を務める戦国龍皇バーニング・ソウルドラゴンだ。ここはまるで英雄の博覧会場だな」

 若き龍皇にして、自軍の旗印――戦国龍皇バーニング・ソウルドラゴンであった。

 

 

 

 

 

 「巌陀羅(がんだら)、妖戒衆、ヤイバノカミ軍、霊獣軍、源氏八騎衆、よくこれほどの強兵たちが集ってくれた。まずはこの席に座る英雄たちに感謝をしておきたい」

 戦国龍皇バーニング・ソウルドラゴンは万の軍の大将達を前に自分を見失う事はしていなかった。

 彼は根本的に他とは考え方が違っていた。だからこそ、この面子を前に自分を失うなどと考えられないのだ。

 「言いたい事は多々あると思う。だが、その前にオレから一言、質問をさせてくれ」

 この場に集まった者達。それは誰が天下を統一してもおかしくなかった者達。それが今回一丸となって最も強大な敵に挑むのだ。

 そして、この戦いが終わった時が戦乱の終わりである。だから今聞いておきたい。

 「天下統一とはなんだ? 各々の持つ志を聞かせてほしい」

 

 

 

 

 

 

 天下統一。この時代だからこそ実現可能な思想(ゆめ)だった。

 国を、領地を持つ者なら誰もがこの戦国の世に夢を見る。だが、その夢を叶えるためには、思想の違う他国に受け入れられなければならない。

 無論、他国にも自国の思想がある。そこに相違が生まれ争いになるのだ。

 だが、その争いを、自らの思想を、相手に一方的に押し付ける事が出来る時代が来た。

 六統幕府の権威が失墜し、枷の外れた六国はジパングを統括する為に戦国の世に酔う事を決めたのだ。

 そして、多くの時と戦いを得て、ジパングは二分する。

 六天軍派と源氏八騎派。

 決定的な亀裂。膨れ上がる両軍は8万の兵力を持つ、まさに戦国時代最後の大決戦にふさわしいモノとして戦史に語られる事となる。

 そんな中、彼は呟いたのだ。

 “天下統一とはなんだ?”

 自国同士を二つに分けた戦い。両軍に自国の戦士達が居るこの戦いの終わりで決まる――天下統一とは、各々にとって何の意味があるのか? と――




次は六天軍の視点かも


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