ゼルエルさんが化けて出ました (つくねサンタ)
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ゼルエルさんが化けて出ました
そしてこの世界はアニメ版です。ゼルエルは第14使徒です。
これらのことに注意してお読みください。
「手紙?」
今日、本当に久しぶりに父さんから手紙が届いた。中には来いと一言だけ書かれていて、どうするか迷った僕は頼りになる僕の兄のような存在に相談してみることにした。
「内容は…来い?一言だけってずいぶん斬新な手紙だな。……ふむ」
彼は顎に手を当てて少し考えてから僕の眼を見て断言した。
「詐欺だな。間違いない」
「あ、やっぱりゼルエルもそう思う?」
第一話~ゼルエルさんが化けて出ました~
「いくらなんでも怪し過ぎだ。お前の父親がなんて書くか分からないからわざと一言で終わらせたんだろう」
「やっぱゼルエルもそう思うか~」
僕の名前は碇 シンジ。僕自身はどこにでもいる普通の中学生だ。でも目の前にいるゼルエルのせいで少し普通ではない。
目の前にいるゼルエルは別の世界線?とかでエヴァと言う兵器に乗った僕に殺されたらしい。言ってることはよく分からないが、ATフィールドという不思議な力を使えるのを見たことがあるので嘘を言ってるわけじゃないんだろう。
今のゼルエルは使徒という人類の敵ではなく、僕の守護霊の様なものになってるらしい。ゼルエル自身もよく分からないことだらけのようだが、一つ分かってることがある。
僕が死ぬとゼルエルも死ぬのだ。だからゼルエルは僕を守ってくれる。
「でも一言なのが逆に現実味あるんだよね…」
「う~む、確かに」
顎に手を当てて考え込むゼルエル。その姿は人にしか見えない。というか僕にしか見えない。
ゼルエルの容姿は僕と完全に一緒なのだ。まあだからなんだと言う話なのだが。
「じゃあとりあえず行ってみるか。俺も付いてけばどうとでもなるだろう」
「うん。ありがとうゼルエル」
「良いってことよ。よし、善は急げだ。さっさと行って偽物ぶっ殺そうぜ」
「それ善?」
ゼルエルのおかげで毎日楽しいし、僕は幸せ者だ。
♢
怪獣が暴れてるオワタ。
「いや、別にオワタってほどじゃない。普通に勝てる。というかあれが使徒だ」
「あ、そうなの?じゃあゼルエルも昔はあんなに大きかったんだね」
「あんなの覚醒シンジに比べれば蟻んこみたいなもんだ。………何度でも言うけど400%は卑怯だろいくらなんでも。なんで100%以上シンクロできんだよ。おかしいだろ」ブツブツ
ゼルエルが一人の世界に籠ってしまった。仕方ないので襟を掴んで引っ張って行く。途中で何度か近くで爆発が起きたけど、ゼルエルの張ったATフィールドのおかげで爆風すらこちらには届いていない。
「それにしてもこの残念そうな女の人はどこで待ってるんだろう。待ち合わせ時間になっても全然来る気配がないよ」
「待ち合わせに遅れてくるずぼらなタイプで、残念集が漂ってて、お色気が昭和的で、三十路近いとはかなりアレだな。まったく少しはシンジを見習え。14歳で肌はつやつや。性格は温和で、相手の2歩後ろを歩く大和撫子っぷり。家事も万能、チェロも弾ける。……あれ?おまえ超優良物件なんじゃ」
「男だけどね」
ぶぅぅ―――ん、と上空を戦闘機が数機飛び過ぎて行く。それを見上げたゼルエルが皮肉げに口元をゆがめた。
「それにしてもよくやるな。あの程度の威力の攻撃じゃあATフィールドを破ることもできないだろうに。というかATフィールドがなくても素の頑強さで耐えれるレベルだぞあれ」
「素でも耐えれるんだ?本当にすごいね」
「いや、元の俺なら素でも傷一つ付かない。でもサキエルじゃあ傷つくくらいはするだろ。でも軽い傷じゃあ何の意味もない」
「S2機関ってやつだね」
「そうだ。あっさり再生されて終わりだ。つまりあいつらじゃあ使徒には絶対勝てない」
そうやってゼルエルと道端に座って戦力について真面目に考察していると、かなり遅れてあの残念なお姉さんがやってきた。
「ごっみーん。ちょっち遅れたわ。って二人いる!?」
「「・・・」」
これは思っていたよりも残念な予感。
♢
父が働いているという施設についた。扉には堂々とネルフの文字が。
「ここが?」
「ええ、あなたのお父さんが働いているところよ」
「確かエヴァンゲリオンで使徒を倒すことを目的にしてるとか」
「…え?な、何でそれを!?あ、そうかお父さんから」
「いえ、ゼルエルが教えてくれました。ね?」
「おいシンジ。出来れば俺が教えたことは伏せとけ。どこまで俺らが情報を持っているかを相手に知られたくない」
「うん。分かった」
「ちょっち気になることがありすぎるけど…まあ後で聞くわ。時間がないし」
ゼルエルは“ネルフ超怪しい”と前言ってたから真っ白な組織ではないんだろう。こちらの切り札をなるべく多く取っておくことには賛成だ。…だが一つだけ言っておきたいことがある。
「急いでるって言う割にミサトさんさっきから同じところグルグル回ってばかりですよね?」
「バカ、察してやれ。ここ通るのももう4度目だけどそういうこと指摘すんな。“三十路近いだろうに完全に迷子で超恥ずかしいなこの人”とか思っても言っちゃだめだ」
「え?じゃあ、さっき通った通路に置かれたベンチに座ってた職員が“何であの人何回もここを通るんだろう”みたいな顔してたこともスルーすべき?」
「そういうときは笑顔で“この人迷子っす”とか言っとけバカちんが」
そうか、僕はやっぱりまだコミュニケーション能力が低い。エヴァに乗る際には結構重要になるらしいので必死に鍛えていたのだが駄目だったようだ。
「あ、あんたたちねぇ」ピキピキ
「「でも迷子だ」」
「はい。迷子です…」
意気消沈されても困るの。なにせ僕もゼルエルもここには初めて来た。(ゼルエルは昔一回来たらしいけど、ビームで全部吹き飛ばしてふわふわと降りてきたらしい)
つまりミサトさんが案内してくれないとたどりつけないのだ。(道は覚えているので帰ることはできるのだが)
「やけに遅いと思ったらこんなところでなにしてるのよ、ミサト」
「あ、リツコ!ごっめ~ん」
「この子が…って、え?二人?」
「あ、はじめまして。碇 シンジ、14歳です」
「よ、俺はゼルエル。元の世界では最強の第10使徒やってた」
挨拶はコミュニケーションの基本。僕はゼルエルに教わった通りにお辞儀をした。ゼルエルもかなり適当だが名前を名乗った。なのにそのこだまが返ってこない。
「おーしー」
「第10使徒?どういうこと?からかってる?いや、それにしては」ブツブツ
「え?こだまが返ってこねえ?」
どうやらゼルエルも僕と同じことを考えていたようだ。僕が口に出しにくいことを聞いてくれた。ありがとう。いや、ありがとうさぎ。
「あなたはいったい何者なの?」
「詳しいことは後にしねえか?外にいる奴ぶっ飛ばしたら簡単に事情説明くらいしてやるよ」
「………分かったわ」
リツコという女の人も今のところはそれでいいと鞘を収めてくれるらしい。よかったよかった。水着の上に白衣とかいう色ものなのに自制心はあるらしい。
「それは何より。金髪なのに黒い眉毛とか完全に色もののくせに自制心はあるみたいだな」
もしかして僕とゼルエルって結構似てるのかな?
※激似である
♢
リツコさんに案内された先にあったのは巨大な紫色のロボット。
「す、すごい!!ロボットだ!!ねえねえゼルエルロボットだよ!!半端ねぇ!!ロボロボロボットだあーーー!!」
「落ち着け!?」
はっ、ゼルエルの突っ込みのおかげでどうにか少し平常心が戻ってきたようだ。
…ふぅ、これがエヴァンゲリオンか。
「これが、これがエヴァなんだね?ゼルエル」
「ああ、嫌な思い出が噴き出してきやがった。腕一本ちぎってやったのにこいつATフィールドで腕を形成しやがったんだ」
「何それ怖い」
僕たちの会話を聞いていたリツコさんがますます思案顔になって行く。逆にミサトさんは清々しい顔になって行く。…多分考えることを放棄したんだろうな。
「これを運用するのが父さんの仕事」
「そうだ」
「!?」
後ろ、いない。右、いない。左、いない。フェイントで前と見せかけ下、いない。
「シンジ、あっちだ」
「あ、本当だ」
ゼルエルが指さした方向には確かに誰かいた。髭でグラサンの悪そうなおっさんだ。
…だれ?
「誰だあれ」
「知らない」
大物感を漂わせながら出てきてもらったところ悪いのだが僕もゼルエルも見覚えのない人だ。
というかなんで室内でサングラスをかけてるんだろう。
「なんであのおっさん室内でグラサンかけてるんだ?」
やっぱりゼルエルと僕はそっくりだ。もしかしたら人間の体になる際に僕の人格が一部コピーされてるのかも。
「司令!」
「司令?ってことはお偉いさんか」
「みたいだね。あ」
「どーした?」
「後ろにいる男の人は知ってるよ。母さんと父さんがお世話になってた冬月先生だ」
「ほほー、あの立ち位置を見るに結構偉いな。もしかして副司令か?」
冬月先生のことは知っていた。写真でも見たことあるし。あの位置に立っていると言うことは副司令か司令補佐などの高い地位にいると言うことだろう。出世したんだな。あれ?元から大学の教授だったっけ?…まあいいか。
「…なぜ二人いる」
「あ、僕が碇 シンジで」
「俺が第10使徒ゼルエルだ。警戒の必要はねぇぞ。もうシンジに殺されてるし、そもそもこことは違う世界の使徒だ」
「使徒だと?」
ズズン
髭グラサンが妙に顔をしかめてさらに言葉を重ねようとした時、上のほうで何か大きな音がした。
「ゆっくり俺のことを説明したいのは山々だが、今はそれよりも先に倒さなきゃいけない奴がいるだろう?」
「…出撃だ」
「どう言うこと?零号機は凍結中でしょ?……まさか!?」
「ええ、初号機を使うわ」
「他に道はない。シンジ、乗るんだ」
「別にいいけど一ついいですか?」
「あ、じゃあ俺も追加で一つ」
「…なんだ」
「これ、僕しか乗れないんでしょう?給料の方は僕の命に見合うだけの額をお願いします。少ないと感じたら裏切るんで」
「まじかよお前超クレバーだな。昔の暗くて弱虫だったお前はどこ行ったんだよ」
「あの世」
「弱虫のシンジィィ!!」
「で、ゼルエルも何か言いたいことあったんでしょ?早く言っときなよ」
「あ、そうだな。俺も初号機乗るからよろしこ」
♢
そして今、僕とゼルエルはエヴァ初号機の中にいる。
本当は僕一人で乗るはずだったのだが、超強力なATフィールドを出してサポートできるゼルエルも付いて来ることになった。ミサトさんとかリツコさんとかえらそうな髭のグラサンがシンクロ率がどうこう言ってたが、ゼルエルは全部無視していた。
『エントリープラグ挿入完了。LCL注水開始』
「うわっ!?なんだこれ!?」
「LCLだ。説明しただろ」
「ああ、たしかLCL、つまり血液をATフィールドで固定して、そこに魂を入れると人造人間ができるんだっけ?」
「そういうこと」
「でもさ、それで一つ気になってることがあるんだけど」
「なんだ?」
「ええっと、エヴァ初号機には僕と血のつながりのある人が溶けているんだよね?」
「そうだ。多分お前の母親だな」
「母さんが?まあ、それはいいや。それだとさ、LCL(血液)も魂も、ATフィールドもあるよね?」
「ああ。いや、なるほど。お前は“これ僕必要ないんじゃ?”と言いたいわけだな?」
「うん。僕いなくても成立するんじゃない?」
「いや、それだとコントロールできない。半端な使徒の出来上がりだ。中から操作できる奴が必要なんだよ。このポンコツのな。
ちょっと違うが、簡単に言うならこのエヴァ初号機が暴れ馬で、お前はその暴れ馬に気に入られてる乗り手だ。だから心を通わせるほど、シンクロ率が上昇するほど動きが良くなる」
「気にいられてる?あ、そうか。そこで血縁関係のことが出てくるんだね」
「ああ。俺が前の世界でお前にぶっ殺された時に感じたのは、お前を守ろうとする強い意志だった。多分母親じゃないか?お前の血縁でいなくなってるのお前の母親だけだし」
「そっか、母さんがここに…。母さん、僕だよ」
「………」
僕が母さんに話しかけると、僕の座っていた椅子が沈みこんだ。シンクロ率が上昇したんだろう。
「おい、今のシンクロ率は?」
ちなみに今の会話はゼルエルがATフィールドでカットしていたので向こうには聞こえていない。
『なっ!?エントリープラグ内部に異物がありながらシンクロ率62,3%!?』
『行けるわ!!』
『あの男、本当に使徒だと言うの?異物がありながらこのシンクロ率。シンジ君に真実を教えたとしか…」
『…ユイ』
「うるせえお前ら!!うちの子は今日が初陣なんだよちょっと黙ってろ!!」
ゼルエルは僕のことをオカンと呼んでからかうことがあるけど、結構ゼルエルもオカン気質だよね。
「大丈夫だよゼルエル。行ける」
「とりあえず上に出たら俺が相手の攻撃全部防ぐからお前はエヴァになれるのを優先しろ」
「分かった」
「ミサト、出せ」
『わーってるわ。エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ』
なにはともあれ初陣だ。
♢
勝った。特に苦労することもなく。
「というかゼルエルのATフィールド強力すぎるよ。あいつ絶対涙目だったよ」
そう、今回の相手、サキエルは恐ろしい相手だった。なにせ目玉から光線を放つという必殺技まで持ってるのだ。でもこっちに乗ってた奴の方が恐ろしかった。
なんでATフィールドを何重も張れるの?オーバーディフェンスだよ。オーバーガードだよ。
サキエルの攻撃一枚目のATフィールドさえ突破できてなかったからね?せっかくかっこいい技を使っていたのに、全然通用してなかったからね?
しかも僕がエヴァの動きになれるまで、完全にサキエルで遊んでいた。ATフィールドで吹き飛ばすとか意味分からん。
それにエヴァの操縦はイメージと気合とシンクロ率とか意味分かんないよ。
…でも確かにその通りだよ。
「俺は最強の防御をもつ最強の使徒だったからな。…あんまり覚えてないけど」
「いくらなんでも差がありすぎるよ。ヤ〇チャとブロ〇ーくらいの差があったよ」
「…〇ジロベーくらいだろ」
「武空術くらい使わせてやってくれよぉ!!」
今僕らが話してるのはネルフにところどころ設置されている簡単な休憩スペース。ちなみに飲み物は無料だ。
ゼルエルについてはだいたいのことは話した。でもゼルエルはあまり昔のことは覚えていないらしい。記憶は僕に殺されたこと、あとは僕はシンクロ率400%に達していたこと。そして自分を殺した相手の名前が“シンジ”だと言うことだけだった。
後は知識が少々。でもこっちはリツコさんは知っている内容ばっかだったらしい。でも根掘り葉掘り聞かれてかなりくたびれてる。
実は僕の方も契約書とか色々サインするものがあってかなり疲れた。今は二人してソファーにぐでーと横たわってる。
「まあいいじゃん。完勝だったし」
「そうだけどさー」
「それに今は楽するくらいじゃないと。俺の後、11使徒以降は全部俺より強いかもしれないんだぜ?」
「…確かに」
それはそうだ。ゼルエルですらまだ途中課程。もし僕はゼルエルよりも強い使徒が現れたらどうすればいいんだろう?
「俺が言っといてなんだけどあんまり心配しなくていいぜ」
「え?」
「俺が最強だったってイメージがかなり強いんだよ。だから俺より後とはいえ、俺よりも強い奴が出てくるとは思えない」
「んん?どうゆうこと?」
「あー、つまり俺の実力が上限いっぱいだからその後の敵も俺と同じか、別のベクトルで攻めてくるってことだ」
「あー、そういうことね」
つまりゼルエルを
「だからそんなに心配しなくていい」
ゼルエルは軽い調子で僕にそう言いながら、飲み終わってからになった空き缶をゴミ箱に向かって投げた。
カン
缶はゴミ箱の縁に当たって外れた。ゼルエルはそれを見て、舌打ちを一つしてから拾いに行く。
「大丈夫だって、お前は強いよ。俺も強い。合わさればどんな敵も一撃粉砕だ」
僕の暗い顔を見て何を考えてるのかすぐに分かったのだろう。缶を捨ててから、こちらに戻ってくる時にゼルエルはそう言ってくれた。
「そうだね。僕らが合わされば最強だ」
「当然。よし、帰ろうぜ」
「うん。晩御飯の買い物しがてら…」
「どうした?」
どうしよう。僕は今とんでもないことに気が付いてしまった。
「僕たちってどこに帰ればいいんだろう?」
「………」
…野宿、かなぁ?
※ミサトさんの家に泊めてもらえました。
こんな感じで行きます。
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偉大なるカイザー
本当ごめんなさい。
僕らはミサトさんの助けによりからくも野宿を免れていた。ただ車で送ってもらったはずなのに妙に疲れた。ネルフに向かうときも思ったんだがミカサさん運転粗すぎだよね。ガサツ過ぎだよね。
夕飯になぜか、な・ぜ・か。お惣菜を買いまくるミサトさん。やっぱり料理できないんだ。まあゼルエルも料理はできないんだけどね。
そしてその後僕たちはミサトさんに高台へと連れてかれた。
「これがあなたの守った街よ」
ミサトさんの視線の先には地面から生えてくる巨大都市。
「タケノコみてぇだな」
あ、僕も今同じこと思った。
第二話~偉大なるカイザー物語~
タケノコ都市を見た後は真っすぐミサトさんの家に向かった。中は…汚部屋だった。
「汚いですね」
「汚ぇな」
「あ、あははー。まあちょっち汚れてるけど気にしないで」
いや、気にしますよ。これから暮らす家なんだから。
「ゼルエル」
「ん」
僕は掃除道具を用意し、ゼルエルと共にこの汚部屋の掃除を始めた。ゼルエルは料理はできないけど掃除洗濯は普通にこなせるのだ。
「なんだよこのビールの山。飲み過ぎて死ぬんじゃねえのか?お前」
「うわっ、Gが!Gが!ゼルエル!」
「ああ、ちょっとまて」
汚部屋なのでもしかしたらいるかもと思っていたがやっぱりいた。人類の天敵、カサカサ動くあの姿、実は結構綺麗好き。Gだ。
「ボン」
Gはゼルエルが退治してくれた。でも今ATフィールドで上下に潰さなかった?そんなこともできるの?
~40分後~
「ふう。結構片付いたかな」
「いや~、綺麗な家は気持ちが良いわね。助かったわ」
「ずぼら三十路はこれだから困る」
「あ?」
「さてと、風呂にでも入ってきますかね」
さすがのゼルエルもミサトさんの眼付けにビビったようだ。そそくさとリビングから出て行った。
「(ってちょっと待って!こんな猛獣がいる部屋に一人にする気なの!?)」
「(許せシンジ。
出て行くゼルエルとアイコンタクト。しかし現実はいつも非常なものだ。
「シンちゃん、少し聞きたいことがあるんだけれども」
「は、はい!」
逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ。
ただ、ミサトさんが言いたいことはさっきのゼルエルのセリフではなかった。
「彼、本当に信用できるの?」
「え?」
………今さら!?
「司令や福司令、リツコなんかはあいつを利用するつもりみたいだけど、ちょっち不安なのよね」
「それ僕に聞いても無駄じゃないですか?僕が悪いゼルエルなら僕相手にそういう面は見せませんよ」
「…それもそうね」
それに、ゼルエルには弱点がある。僕と一蓮托生と言う弱点が。…ミサトさんに言う気はないが。
「小さい時に母親がいなくなって、父親に捨てられた僕はゼルエルと一緒に生きてきました。ゼルエルだけが僕のことを見てくれていた、理解してくれていた。少なくとも今日初めて行ったネルフよりははるかに信用できる」
「でも、彼はしt「カイザー!?」へ?」
「カイザー?」
いきなり風呂場から聞こえてきたゼルエルのカイザーという響き。何があったのだろうか。
「ゼルエルどうしたの?ってなにそいつ!?」
風呂場で見たのは大きな、羽の小さい妙な鳥。しかも二足歩行で歩いている。
「ああ、その子は同居人のペンペンよ。温泉ペンギンのね」
「ま、まさかこいつは!?」
「知ってるのか!?雷……ゼルエル!!」
「ああ、おそらくかつて鳥でありながら南極を支配していた
「いや、温泉ペンギンだって」
「皇帝だと!?」
「だから温泉ペンギン!!」
「彼の力は絶大で、その翼で神の住む天界近くまで飛ぶことができた。しかし、そんな
「…ごくり」
「絶望に打ちひしがれる国民達。誰もがもう生きていけないと思った。翼なしで生きるには、南極という大地はあまりにも過酷だったからだ」
「でも、そんな絶望に打ちひしがれる国民達の中、
「国民は尋ねた。“なぜ我らの誇りである翼を失ってもあなたは気高くいられるのですか”と」
「カイザーは答えた。“我には神にすら奪えぬ翼がある!!どこまでも高く、高く飛翔するための巨大な翼が。それは我だけにあるのではない。ここにいる全員が持っている希望という名の翼だ”」
「“これが折れぬ限り我らの誇りは折れぬ!!我らは何も奪われておらぬ!!”」
「“我らはペンギン。心に翼を宿すもの。この翼があれば我らはどこまでも、いつまでも羽ばたいて行ける!!”」
「…カイザーの叫びが終わるっころには、もうそこに翼を折られた哀れな鳥はもういなかった」
「高く高く
「そう、それこそが皇帝ペンギン!!」
「カイザー!!すごいよ!!渋いよカイザー!!」
「ペンペンペーン!!」
「………グス」
僕は感動のあまり叫んでいた。ペンペンも実にうれしそうだ。そして後ろで話を聞いていたミサトさんも目頭を熱くさせていた。
「カ・イ・ザー!!カ・イ・ザー!!」
「ペンペーン!!」
「少し感動してしまったのが無性に悔しい」
♢
「ほう、それで?」
「ペンペンペーン」
「うわ、そりゃひどい。冷蔵庫から出れねーじゃんか」
「ペンペン」
「最悪だな。まったくお前も苦労するな。同居人がアレだもんな」
コンビニで買ったお惣菜を食べる僕とミサトさんの横でゼルエルがペンペンと語り合っている。というか言葉分かるの?
「あなた動物の言葉が分かるの?」
「まあそれっぽいことはな。ちゃんと掃除しろよガサツ」
「ミ・サ・ト・よ!!」
「落ち着いてくださいガ…サトさん」
「ねえシンちゃん?今間違わなかった?ねえ」
僕はミサトさんから目をそらし、テレビに目を移す。ニュースでは今日のことをやっていた。でも、使徒やエヴァのことは報道されていない。まるであれが夢だったかのような。
「使徒のこと、本当に報道しないんですね」
「ええ、余計な混乱を招くだけだもの。でも使徒についてはほとんどの人が知ってると思うわよ」
「…そうですね。あれだけでかいんですから遠くから写真を取ったって言う人も少なからずいるでしょうし」
「エヴァも普通にばれてるだろうな。あのでかさに、製造に関わってる奴も大勢いる」
ゼルエルがペンペンの手(…翼か?)を振りながらこちらの会話に混ざってきた。
「ま、そんな話はいいじゃない。それよりもはい、これ。シンちゃんが転入する学校の生徒手帳。学生服も明日には届くわ」
「本当ですか?それなら明後日あたりから行けそうですね」
「ちゃんと勉強しとけよ?シンジ。これから使徒がわんさか来て勉強できなくなるからな」
「う、やっぱそうなのかな。そんな気はしてたけど」
ゼルエルはからかうように手をわきわきさせて僕に厭味ったらしい顔を向けてくる。いらっとするからやめてほしい。
「そういえばゼルエルは学校行かないの?」
「いかん。めどい。遊びたい」
「おいこら」
「いや、そうは言うがよ、俺が学校行っても学ぶこととかないぜ?俺超頭いいしな。それにビアンカ助けなきゃだし」
「ぐ、確かにゼルエルは頭いいけど…。いや、ちょっとまって。ビアンカは関係なくない?」
「うるへー。ジャミにさらわれたビアンカを助けるんじゃー」
「ジャミはよく分からないバリア張ってるから正攻法じゃ絶対勝てないよ。まあビアンカが天空の勇者の子孫だからバリア破れるし、そんな心配しなくていいけど」
「すっごいネタバレ!?」
ふざけんなー、とソファにダイブするゼルエル。ゼルエルは純愛派なのでビアンカを選んでいる。僕は利益重視なのでフローラを選んだ。
僕たちにも違うところもちゃんとあるのだ。
「何かやる気出ねー。この前手に入れたダイヤモンドネイルは誰にも装備できないし」
「あれデボラ専用武器だからね」
「デボラ?ああ、あのお前が将来付き合いそうなツンデレか。えー、あいつにしか装備できないのかよ」
数日後
「お前は明日から学校か?」
「うん。お土産買ってくるね」
「学校のお土産って何?」
「さあ?」
続くのかなぁ?
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