特別S級隊員比企谷八幡 (ケンシシ)
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比企谷八幡①

ちょっとだけ追記しました


『対ブラックトリガー訓練を始めます、各部隊転送開始』

 

オペレーターの声が響くと遠征部隊筆頭のA級1位太刀川隊、A級2位二宮隊が戦場へと転送された。

 

『今日の訓練のブラックトリガーの想定は遠中距離タイプのブラックトリガーが想定されてるよ〜』

 

太刀川隊オペレーター国近の間延びした説明を聞くと太刀川は少し思案し

 

『中遠距離隊員が中心に攻撃、近距離の俺たちは撹乱メイン。まずは定石通り行くか』

 

各隊員は了解の言葉を発すると

 

『見つかったみたい!!攻撃くるよぉ!!』

 

国近の声と同時に攻撃反応が示される。全員が散開すると同時にその場を光が薙ぎ払った。

 

『これはアイビスか?……ブラックトリガーに近づけるため改造されてそうだが』

 

二宮隊隊長、二宮匡貴はその威力を見て呟く

 

『第2射きます!!』

 

そして二宮とは反対に逃げた隊員達の方を再び光が薙ぎ払った。

 

「これは俄然楽しくなってきたな」

 

太刀川は嬉しそうに呟くと次の指示を全隊に飛ばした。

 

 

 

 

 

四年前に三門市は突如謎の異世界の住人、後に近界民(ネイバー)と知られるもの達の攻撃を受けた。未知の技術で作られたそれらは此方の技術では歯が立たず人々が絶望しかけた時、突如謎の集団が現れ告げた。

 

「こいつらの事は任せて欲しい、我々はこの日の為に備えてきた」

 

彼らの活躍によりネイバーの侵攻は終焉を見せたがそれでも2日間で犠牲者は1200人以上、400人以上が行方不明となった。

侵攻を止めた彼らはほどなく巨大な基地を建設、『対近界防衛機関』通称ボーダーが発足した。

 

 

『対ブラックトリガー訓練は終了です。お疲れ様でした。』

 

太刀川隊、二宮隊ともに犠牲者を出しながらも勝利し対ブラックトリガー訓練は幕を下ろした。

 

ブラックトリガーとは優秀なトリオン使いが己の命と全トリオンを注いで作りだすトリガーで、その力は通常のトリガーを遥かに凌ぐ性能を持っている。

 

 

本部休憩室の一角にて

 

「やっぱ比企谷はつえーな!!」

 

先程まで対ブラックトリガー訓練でブラックトリガーの役割をしていた男、比企谷八幡は訓練終わりのMAXコーヒーを飲もうと休憩室に来ていたところに太刀川がやってきた。

 

「太刀川さん達はもっと加減してくれていいんですよ?」

 

太刀川さんと二宮さんに狙われるの怖いんすからと内心愚痴り

 

「はっはっ、そりゃ無理だな。おまえと殺り合うの楽しいし」

 

八幡はため息をつきMAXコーヒーを早々に飲み干す。

 

「では俺はこれで……」

 

「おう!!今度はサシでやろうぜ」

 

八幡は考えときますと考える気のない返事を返し去っていった。

 

 

 

 

 

プロフィール

 

比企谷八幡 S級隊員

 

トリオン 36

攻撃 22

防御・援護 17

機動 10.

技術 13

射程 10

指揮 2

特殊戦術 2

 

合計 112

 

『存在がブラックトリガー』

生まれ持ったトリオンが尋常じゃなく高く、それに無理矢理引き上げられる形で攻撃などが高くなった。生まれた時からトリオン量が高かったことと、父母が旧ボーダーからのメンバーであったため旧時代からのボーダー隊員となる。ボーダー設立後はブラックトリガー持ちではないし、隊も組まなかったためB級だったがノーマルトリガーを使用しているにも関わらず規格外の力を出すため特殊な形でS級隊員となった。しかし高トリオン持ちなのにサイドエフェクトらしい能力は見当たらないという稀有な例でもある。あまりに地味すぎて気づいてないという可能性もある。



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比企谷八幡②

思うところあり書き直しました。


『青春とは嘘であり悪である。

青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲を欺き、自らを取り巻く環境のすべてを肯定的にとらえる。

彼らは青春の二文字の前ならばどんな一般的な解釈も社会通念も捻じ曲げて見せる。

例えば万引きなどによる犯罪行為、警戒区域などへの進入。これらを若気の至りと言って済ませてしまおうとする。それがどれだけの人に迷惑をかけるか想像せずにだ。

彼らにかかれば嘘や失敗や罪科や危険行為さえも青春を楽しむためだけのスパイスに過ぎないのだ。

結論を言おう。青春を楽しむ愚か者ども砕け散れ!』

 

「砕けちるのは貴様だ、馬鹿者!!なんだこの作文は?」

 

「高校生活を振り返って思った事を書いただけです」

 

高校生活も2年目を迎え、最初に国語の授業で課された課題、『高校生活を振り返って』のテーマにしての作文を提出した八幡は放課後に国語の担当教師の平塚に呼び出されたのだ。

 

「ほう?貴様の周りには犯罪者しかいなかったのか?ボーダーという環境でもここまでは思わんだろ」

 

ため息をつきながらやれやれといった感じでいう。

 

「いや、結構……いやだいぶ迷惑してますから警戒区域への進入とか」

 

「だからといってそんな奴らばかりではないだろう。穿った考えばかりしているから目が腐っていくんだぞ」

 

「目が腐ってるって……DHA豊富で体に良さそうですね」

 

八幡は適当に返事をすると

 

「はぁ……君は友達はいるのかね?恋人は?」

 

「友達?まぁボーダーの仲間とはそれなりに。恋人はいませんけど」

 

「うん、そうだろうそうだろう」

 

平塚は八幡の言葉に何故か満足そうに頷く。主に恋人いない宣言に

 

「先生は恋人いるんですか?」

 

少しムカッときた八幡が言うと八幡に向かって拳が飛んで来た。高速の剣技やら銃弾の嵐やらを経験している八幡……当たらないのはすぐにわかったため避けなかったが

 

「全く、女性に余計な事を言うなと教わらなかったか?それに次はあてるぞ」

 

「はぁ、なら避けるだけですね。痛いのは嫌いなので」

 

「ほう?」

 

好戦的な笑みを浮かべる平塚だが八幡はまだ中2病患ってるのかぁと別な方に思考がいっていた。

 

「まぁ、問題があったなら書き直しますよ」

 

「それは当たり前だが、君の発言に私は傷ついた。ちょっとしたペナルティを受けてもらう。ついてきたまえ」

 

そして平塚は職員室を出て行く

 

「俺結構忙しいんですけど」

 

「つべこべ言うな。君のシフトを見る限りボーダーの仕事は月に数回程度じゃないか」

 

「それには理由が……」

 

「早く来たまえ」

 

八幡は諦めてくれそうにない平塚を見てため息をつき今日の予定を確認する。幸か不幸か今日はあまり急がなくても大丈夫そうなので、一仕事すれば諦めるだろうと踏み平塚についていく八幡であった。



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奉仕部①

「雪ノ下、入るぞ」

 

特別棟のある1室まで連れてこられた八幡は内心何度目か分からないため息をつきながら平塚と一緒に中に入る。

 

「はぁっ、入る時はノックをして下さいと言ってませんか?」

 

「君は返事をした試しがないじゃないか」

 

「それは平塚先生が返事を聞く前に入ってくるからです」

 

深窓の令嬢然とした見た目に一瞬目を奪われるが……

 

「ところでそこのヌボーッとした人は誰ですか?」

 

「ん?あぁ、彼は2年F組の比企谷八幡。新入部員だ」

 

「入部って何の事ですか?部活関連の話なんてした覚えがないんですが……」

 

呆れながら言うと

 

「雪ノ下、こいつは目が腐ってる上に捻くれている。その矯正をしてもらいたい」

 

「(す、好き放題言いやがるな……)何の話をしてるんですか?てか部活なんてしてる余裕が俺にはないんですけど」

 

「黙れ、異論反論は受け付けん。頼めるか?雪ノ下」

 

八幡があまりの横暴っぷりに半分絶句していると

 

「お断りします。彼の下卑た視線を見てると貞操の危機を感じます」

 

「いや、そんな目で見てないんだが」

 

「安心しろ雪ノ下、こいつは捻くれ者なだけでそんな事できるような奴じゃない。生粋の小悪党だからな」

 

「いや、ただ常識的な判断ができるだけですから」

 

しかし先ほどから八幡の反論は耳に入っておらず、八幡は頭を抱えそうになる。

 

「小悪党……なるほど。分かりました、その依頼引き受けましょう」

 

「では頼んだぞ」

 

そう言い出て教室を出て行く平塚。

 

「では改めまして、2年J組の雪ノ下よ」

 

雪ノ下?まさか雪ノ下建設の?と思いつつ軽く自己紹介する。

 

「F組の比企谷だ」

 

改めて自己紹介すると

 

「とりあえず立ってないで座ったら?」

 

「お、おう」

 

そして八幡は椅子に座ると

 

「ところで、ここは何をしてるんだ?さっき依頼がどうだって言ってたが」

 

「ではクイズをしましょう、ここは何をしている部活動でしょう」

 

「本読んで寝る文芸部」

 

「それは文芸部というのもおこがましくないかしら……真剣に答えなさい」

 

八幡はため息を1つつくと

 

「興味ない」

 

ばっさりだった。

 

「なっ……まぁいいわ、貴方の社会非適合ぶりを甘くみてた私の落ち度だわ」

 

少し目が腐ってて捻くれてるだけでこの言われようである。そして初対面の人にも高圧的な態度、社会非適合ぶりは雪ノ下のが上なんじゃないかと八幡は思う。

 

「持つ者が持たざる者に慈悲の心を持ってこれを与える。人はそれをボランティアと呼ぶの。

途上国にはODAを、ホームレスには炊き出しを、モテない男子には女子との会話を。

困っている人には救いの手を差し伸べる。」

 

「ようこそ奉仕部へ。歓迎するわ」

 

「全然歓迎してるようには見えないがな。それに何だ?最後のは。モテないのは確かだが、女子との会話くらいはする」

 

主にボーダー関係者だがと内心追加する。

 

「これは重症ね……」

 

「何を考えてるか知らないが恐らく勘違いだぞ」

 

ため息しかでない八幡……

 

「何かしら?そのため息は。眼だけじゃなく脳まで腐ってるのかしら?」

 

「ため息も出るだろ、本人そっちのけで矯正だの何だのと……しかも少し捻くれている程度で」

 

「私が話すかぎり貴方のそれはすぐにでも変わらないとマズいレベルよ?」

 

「なら大きなお世話だ。俺は今の俺を変えたいなんて思わない。幸い俺には今の俺を肯定してくれる人もいるしな」

 

「貴方のそれは逃げよ」

 

またため息をつきそうなのをグッとこらえ

 

「仮にそうだとして逃げて何が悪い?今の自分に満足してる不便もない、変わる必要なんて今はないんだよ」

 

「それじゃ誰も救われないじゃない!!」

 

雪ノ下に何があったか知らないが、八幡はそう慟哭する雪ノ下を冷ややかな目でみていた。

 

「ふむ、手こずっているようだな」

 

「彼が問題点を自覚しようとしないからです」

 

「俺には矯正される覚えも変わる必要もないと言ってるだけです」

 

「この通りです」

 

「ふむ、なら少年誌に習いここは勝負といこう。この先私がここに依頼者を連れてくる。より多く悩みを解決できた側の勝ちだ。ついでに景品は、そうだな……勝った方の願いを負けた側は何でも叶えるということにしよう」

 

八幡だけでなくこの時ばかりは雪ノ下からも冷たい視線が平塚に向けられた。

 

「っぐ……良いから勝負だ!!それともあれかね?雪ノ下は負けるのが怖いのかね」

 

今どきそんな使い古した挑発に乗るのはいないでしょ……そう八幡が思った矢先に

 

「良いでしょう、そのしょうもない挑発に乗るのは癪ですが受けて立ちましょう」

 

八幡は開いた口が塞がらなかった。



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密航事件

「今日はよろしくお願いします、風間さん。オペレーター頼む、三上」

 

「あぁ、こっちこそ頼むぞ。比企谷」

 

「比企谷君、よろしくね」

 

八幡は奉仕部とやらに辟易しながら防衛任務に来ていた、恐らくもういかない。今組んでいるのはA級4位風間隊。No.2アタッカー、スコーピオン使いの風間蒼也率いる隠密戦法が得意な部隊でオペレーターは三上歌歩である。本来は別の隊が風間隊と防衛にあたる予定だったがその隊が来れなくなり、急遽比企谷が組むことになったのだ。

 

「あれ?いつもより目が腐ってるんじゃない?」

 

「お、おい菊地原」

 

この2人はアタッカーの菊地原士郎とオールラウンダーの歌川遼である。

 

「気にするな歌川、今日は自覚するレベルで腐っている」

 

「珍しいな、いつもはさらっと流すのに、何かあったのか?」

 

「えぇとですね……」

 

そして八幡は今日あった事を話した。

 

「うわぁ……流石は比企谷だね」

 

「比企谷……」

 

菊地原と珍しく歌川がドン引きしている。恐らく八幡の作文の内容に

 

「雪ノ下……」

 

「雪ノ下建設……ボーダーのスポンサーの1つだな」

 

三上が聞いたことがあったのか思い出そうとしたところに風間が答える。

 

「あぁ、それで聞き覚えが……」

 

三上がそう呟き

 

「まぁ直接関係があるかは断定できないけどな」

 

八幡がそう言ったところに

 

「!!っ、ゲート反応!誤差0.61、これは……」

 

「どうした、三上」

 

ゲートの指示を送っていた三上が何かに気づいた。

 

「反対側にも同じくゲート反応があり、何故か鳩原先輩のトリガー反応と未承認のトリガー反応が3つあります!!」

 

「風間さん、風間隊はそっちに向かってください。万が一のカメレオンと菊地原のサイドエフェクトが必要でしょう」

 

「分かった、こっちは任せたぞ。行くぞ菊地原、歌川」

 

八幡の提案に即座に判断を下した風間は隊の2人に指示し

 

「「了解!!」」

 

3人はトリガー反応の出た地点に向かった。

 

「さてヤりますか」

 

「比企谷君、開いたゲートは2つ。バンダー10体にモールモッドが5体出現」

 

「了解」

 

そう返事をした八幡は孤月を2本抜き

 

「『旋空孤月』」

 

獲物を探しているトリオン兵たちの近くに降り立つついでに孤月を二振りする。ボーダーのアタッカーが多く装備している攻撃トリガー『孤月』それに瞬間的に攻撃を拡張できる専用のオプショントリガー『旋空』を合わせた斬撃は5匹のうち計4匹のを一瞬で切り裂いた。

 

「……あとはバンダーか」

 

八幡に気づいた残りの一体は攻撃に移る間もなく弱点である目を切られ動かなくなった。

モールモッドから少し離れた位置にいるバンダーはすでに砲撃体勢に入って八幡目掛けて一斉砲射をするが

 

「『シールド』」

 

2本の孤月を納刀していた八幡はサブトリガーから防御系トリガー『シールド』を起動し砲撃を防ぎきると

 

「『バイパー』」

 

もう片方で発動させていた変化弾と呼ばれる射撃トリガーである『バイパー』を発動させる。弾の軌道を自分のイメージで変化させられるのが最大の特徴だがその弾の軌道をリアルタイムで変えられるのはボーダーの中でも極僅かである。ちなみぬ八幡の射撃トリガーを使う時に生成されるトリオンキューブはボーダートップクラスのトリオン量を誇る二宮のそれを大きく上回っていた。

 

「三上、次のゲートはないか?」

 

「お疲れ様、今は開いていないわ」

 

幾重にも別れたバイパーの弾丸は10体いたバンダーを残らず沈めた。

 

 

 

 

その後あまりゲートは開かずに防衛任務の終了の時刻がきた。

 

「任せて悪かったな、比企谷」

 

終わりになり立て込んでいたであろう風間隊が戻ってきた。

 

「これくらい大した量じゃないですから。それより鳩原先輩は?」

 

「民間人を連れての近界への密航だろう。俺たちがついた頃にはすでにもぬけの殻だった」

 

「そうですか……」

 

数日後に鳩原の所属していた二宮隊は密航事件に関しては伏せられたままにB級へと降格させられた。



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比企谷八幡③

何度も改稿すいません、これからはできるだけ無いようにしたいです。


時は少し遡り奉仕部入部騒動の翌日の放課後。

 

「どこに行くつもりだ?奉仕部はそっちじゃないぞ?」

 

八幡が今日はボーダーで忙しそうだなぁと考えながら帰ろうとすると平塚に呼び止められた。

 

「今日は無理ですよ、仕事あるんで。そもそも部活入るの承認した覚えはありません」

 

「嘘をつくな、シフト表では今日は防衛任務には入っていないではないか。それに異論反論は受け付けないと言ったはずだ」

 

八幡はあれはあくまで防衛任務だけの表だからな、と思いながら。

 

「はぁ、俺は開発室から呼ばれてるんですよ。試作トリガーの試験のために」

 

「そんな話は聞いたことないぞ。学校には他にもボーダーに所属する生徒はいるが防衛任務とランク戦とやらくらいしかしないとな」

 

八幡は総武に自分以外がボーダーにいると初めてしり驚いたがすぐに知らなくて当然かと思い直した。八幡のボーダーの知り合いはB級時代の人かB級中位以上もしくはB級でもA級並みの実力者として紹介された人くらいだ。

 

「あの雪ノ下やF組の葉山なんかもだな。昨年度の1月に入りもうB級に上がりチームを組んでいるそうだ」

 

昨日の雪ノ下もまさかボーダーだとは……と驚きつつもだいたい4ヶ月近くでまだ良くてB級下位、下手するとランク外レベルとなるとそんな才能ないのかと内心思う、少なくとも緑川や黒江のようなぶっ飛んだ才能は……飛び抜けた技能があるなら自分の耳に入るだろうとも考え。

 

「それは知らなくて当然じゃないすか。まだ入りたてみたいですし」

 

「ほう、君は何か?古株で特別な仕事が与えられていると?」

 

「まぁそんなところです」

 

仕方ない、鬼怒田さんに話をつけて貰おうと電話を取り出し

 

「今からする仕事の責任者に電話をかけるんで話してください」

 

そう八幡は言うと鬼怒田にコールする。

 

『なんじゃ?電話してる暇があったら早く来い。今日は忙しいぞ!!』

 

八幡は一言謝ると平塚に捕まっていることを簡潔に説明する。

 

『ふむ、総武はまだ提携してから日が浅いからのう。大方お前さんのS級と言うことの伝達不備があったんじゃろう。それはともかくその教師と替れ。話をつける』

 

「どうぞ、先生」

 

そう言って電話を渡すと

 

「替わりました。平塚です。」

 

そこから話していく時間がたつごとに平塚の顔が苦々しくなっていく。

 

「わかりました。お時間を取らせてしまい申し訳ありません」

 

そして通話が終わったようだ。

 

「では帰らせてもらいますね」

 

「何故S級隊員ということを黙ってた?」

 

恐らくそこらへんの事でボコボコにされたのだろう。外交関連は別の人の役回りだが開発室室長の鬼怒田も頭が回る。

 

「それは学校側の不備でしょう。俺は聞かれないだけで隠してませんでしたし。大方俺の見た目とかでそんな隊員ではないと踏んだのでしょうけど……もう少し考えて行動したほうがいいですよ」

 

「ぐっ……」

 

言葉に詰まる平塚を尻目に八幡はその場を離れていった。

 

 

 

 

 

「今日はありがとうございました。鬼怒田さん」

 

「ふんっ、別に構わんわい」

 

無事に開発室に来た八幡は試作トリガーの試験を終えると、鬼怒田に話しかけた。

 

「今度飯でも食べに行きましょう、小町も連れていきますよ」

 

「そうだな、楽しみにしとるわい」

 

八幡は鬼怒田の事をもう1人の父親のように思っている。八幡と妹の小町の両親は大規模侵攻で戦闘はからっきしな上に研究者だったにも関わらず人々を避難させるために行動していた時にトリオン兵に殺されたのだ。

 

「今日はこれで失礼します」

 

「うむ」

 

八幡と鬼怒田の話はいずれ……



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葉山隊①

「(今日は滅多にない完全な非番だからなぁ……たまにはランク戦でも観にいくか」

 

今日も平常通りに学校を無事にボッチで過ごした八幡。長らく顔すら出さなかったランク戦を覗きに行こうかと考える。

 

「(桐絵は玉狛に篭ってれば良いんだがなぁ)」

 

若干遠い目をしながらそう思う八幡であった。

 

「ヒッキー!!」

 

そして帰ろうとした時に遠くで誰かを呼ぶ声がする。

 

「(校舎内で叫ぶとかうるせぇな。これだからリア充は……)」

 

「ちょ、待つし!ヒッキー!!」

 

「(とっとと行くか)」

 

そう考えると八幡は校舎から出て行った。

 

「ヒッキー……」

 

無視され続けた少女は途方にくれた。(注:八幡は誰が呼ばれていたか気づいていません)

 

奉仕部にて

 

「ゆきのん……昨日教わったクッキーを渡そうと思ったんだけど、その人に無視されちゃった」

 

「え?」

 

色んな意味が込められた『え?』である。昨日平塚が奉仕部に連れてきた依頼者の由比ヶ浜からの言葉に雪ノ下は驚くと同時に内心フツフツと怒りが湧いてくる。

 

「どういうことかしら?」

 

「さっきなんだけど、ちょっと目を離したらヒッキー帰っちゃてて、慌てて追いかけて呼んだんだけど無視された」

 

「そのヒッキーとは誰かしら?」

 

「同じクラスの比企谷くん」

 

名前を聞いた瞬間さらに雪ノ下の怒りは燃えたぎった。由比ヶ浜は雪ノ下の 咤に臆せず格好良いとまで言ってくれた子だ。そんな純粋な彼女を傷つけた八幡が許せなかった。

 

「雪ノ下、ちょっと良いか?」

 

どうしようか話そうとしたところに平塚がやってきた。

 

「ちょっと確認したい事があってな……」

 

「ごめんなさい、由比ヶ浜さん。少し行ってくるわ」

 

しばらくして雪ノ下は戻ってきた。

 

「由比ヶ浜さん、彼に仕返しをしてみたくはないかしら?」

 

「え?」

 

 

 

 

ボーダー鈴鳴支部

 

「こんにちは」

 

「お、いらっしゃい雪乃ちゃん。今日は早いね」

 

ボーダーにいくつかある支部の1つである鈴鳴支部。鈴鳴第1こと来馬隊隊長の来馬辰也が迎える。

 

「はい、紹介したい人が……由比ヶ浜さん」

 

「お、お邪魔しまーす」

 

雪乃の後ろからピンク髪の少女が顔をだす。

 

「えーと、彼女は?」

 

「はい、ポジションはスナイパーで私達の隊に入って貰おうかと。葉山君にはこれから伝えるつもりです」

 

「葉山君とは同じクラスの由比ヶ浜結衣です」

 

「あはは、また賑やかになるね」

 

人の良すぎる笑顔を浮かべて言う来馬。

 

「えっと、大丈夫ですか?」

 

「それを決めるのは雪乃ちゃん達だよ」

 

「っ!……はい」

 

「そういえば村上先輩と三浦さんは?」

 

「2人ならボーダー本部にランク戦を観に行ってるよ」

 

「そうですか」

 

由比ヶ浜は話についていけない上に緊張していたが

 

「こんにちは!!」

 

「あっ葉山君!!」

 

「.結衣!?」

 

総武でも割と有名な2年F組葉山隼人がやってきた。そして雪ノ下は大した説明もなく

 

「彼女を私達の隊のスナイパーとして迎えるわ。良いでしょう?」

 

「あ、あぁ僕は歓迎するよ」

 

身内で隊を固めたい葉山はちょうど良く時期をみて由比ヶ浜を誘おうとしていたのだ。

 

「それじゃ軽くボーダーについて説明していこうか」

 

そして来馬は雪ノ下達が来た時と同じようにボーダーについて説明を始めた。

 

 

 

 

 

 

ボーダー本部

 

「ん?比企……谷?」

 

「え?……どちら様ですか?」

 

「え?同じクラスの三浦だし!あーしの事覚えてないん?」

 

八幡と同じクラスの三浦優美子が顔を合わせていた。

 

「いや、お前だけじゃないぞ。何ならクラス全員覚えてない」

 

「うわぁ……正直引くし」

 

「俺は学校ではボッチだからな。関係ない」

 

さらに呆れた目になる三浦を尻目に八幡はその場を離れようとするが

 

「ちょっと!!何でヒキオはここにいるん?」

 

八幡を止めるとリア充十八番のあだ名でさっそく呼ぶ。

 

「俺がボーダー隊員だからだ。何だヒキオって」

 

「テキトーにつけたあだ名」

 

「お、おう」

 

さらりと言われ何も言えなくなる

 

「ヒキオって強いん?今あーし暇してたからランク戦するし」

 

「あぁ……今のお前じゃ正直俺には勝てないよ」

 

三浦のペースに乗せられた八幡はつい馬鹿正直に答えてしまい

 

「へぇ、良いからやる!!」

 

好戦的な笑みを浮かべる三浦に引きずられていく八幡だった。



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三浦優美子①

『ランク外対戦開始』

 

機械音声が響くと瞬時に八幡と三浦は転送された。

 

「じゃあヒキオ、いくし」

 

最初は偶然にも極近い位置に転送された2人。三浦はメイントリガーであるスコーピオンを構え八幡と相対した。

 

「スコーピオンか」

 

八幡は孤月を1本引き抜き構える。

 

「っ!?……」

 

三浦は八幡と目が合った瞬間に三浦は全身が粟立つのを感じた。圧倒的強者ということを肌にヒシヒシと感じた。

 

「はぁっ!!」

 

気合いとともに三浦は切りかかるが

 

『戦闘体活動限界 緊急脱出』

 

三浦が振り切る前に切り抜けられていた。

 

「も、もう1度!!」

 

 

 

 

 

10本勝負をした結果、八幡の10勝0敗で三浦を負かした。

 

「ヒキオ強すぎ、どこのチームなん?B級?」

 

「俺はチームとかに所属してない、というかできない。S級隊員だから」

 

戦闘を終えた八幡達はラウンジに来ていた。

 

「エ、エス級?ヒキオが?」

 

「会った時に分かったが知らなかったか。そういう各ランクの隊員の事は調べなかったのか?」

 

半分呆れながら八幡が聞くと

 

「あーしらの隊の参謀様の命令で『なれないランクの隊員の事なんて知る必要ないわ』って言って調べてなかった。知って損はないって言っても、『ブラックトリガー何て規格外の力を使ってるだけよ?参考になるはずないじゃない』って言われたし」

 

八幡はぽかーんとするが気をとりなおして

 

「もしかしてだが、ポジションや武器もその参謀が決めてるのか?」

 

「そうだけど、何で?」

 

「はっきり言うが、三浦にはスコーピオンは向いてない」

 

さっきの戦闘を思い出し八幡は言う。

 

「スコーピオンはその軽量さと形状を自由に扱えるのが強みだ。だけど三浦はスコーピオンを振る時に必要以上に体に力が入っている。体から出しいれするような基本も上手く扱えてるとは言えない。というよりもイメージが追いついてないな。気づいてないだろうけど出すところを間違わないように視線が一瞬そこを向いて何をしたいか丸分かりだ」

 

八幡はチラッと三浦を見ると真剣に聞いていた。

 

「アタッカーで行くなら三浦は孤月が良いんじゃないか?シンプルで使いやすい。余計なことを考えなくてすむからな」

 

「それってあーしが馬鹿って言いたいん?」

 

ジト目で睨まれる。

 

「うっ……ちげぇーよ。人には向き不向きがあるってだけだ」

 

一緒八幡は怯んだがあらためて言うと

 

「やっぱりかぁ、村上先輩にも言われたんだよねー『お前は孤月のが向いてる』って」

 

三浦は思い出しながら言う。

 

「村上先輩って鈴鳴のか?」

 

「そそ、あーしら鈴鳴支部に所属してるから」

 

「来馬隊だけじゃかったのか」

 

八幡が呟くと

 

「あーしらの葉山隊ができたのは割と最近だしね。チーム作ってもランク戦には出てないから知らなくても当然かも」

 

「それも参謀の考え?てか葉山?」

 

八幡は葉山と言う名前を平塚から聞いたのを思い出し

 

「そう、『最低限のポジションも揃ってないのに挑むなんて無謀だわ、無様に負けるだけよ』らしい。同じクラスの葉山隼人が隊長してる隊。ちなみに参謀ってのは隼人がご執心の雪ノ下雪乃。」

 

三浦の喋る参謀の真似からまさかとは思っていたが本当に雪ノ下が参謀だったとは。無知な参謀とは笑えると思いながら呆れたのだった。

 

「てか意外だな。俺みたいなのがさっきスコーピオンの扱いボロクソに言ったのにキレないなんて」

 

「何で?こっちが相手してもらってる立場なのにそれは失礼っしょ」

 

それにと続け

 

「ヒキオと最初に目があった瞬間に今のあーしじゃ勝てないって理解しちゃったから」

 

八幡は三浦のことを見直すと

 

「三浦は強くなるぞ、相手との力量差が分かる人は強くなる」

 

「そっかぁ……まぁあーしなりに頑張るし。今日はありがとうねヒキオ」

 

「おう……あっそうだ、三浦」

 

帰ろうとしてた三浦を呼び止める八幡

 

「なに?」

 

「学校では俺に話しかけるなよ、目立ちたくない」

 

三浦は一瞬呆気にとられるが

 

「分かったし、でもたまにこうして本部で話しかけるから」

 

悪戯っぽい笑みを浮かべると三浦はじゃあね〜と去っていった。




三浦に甘々ですいません


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比企谷八幡④

「すいません、遅れました」

 

あまりしないのだがこの日八幡は防衛任務もないのに学校に遅刻した。真夜中まで鬼怒田と新トリガーについて話し込んでしまったのがおそらく原因。

 

「重役出勤だな、比企谷。何か言い訳はあるか?」

 

「いえ、ありません」

 

殊勝な態度に平塚は何も言えなくなる。八幡としては平塚と関わりをもちたくないだけだが。

 

「君もかね、川崎」

 

「おはようございます、平塚先生」

 

八幡の後ろから青みがかった白い髪をポニーテールにした少女が入ってきた。

 

「2人とも反省文を後で生活指導部に提出するように」

 

「うっす」

 

そして2人が席につくと授業が再開された。

 

 

 

 

「はぁ、やっぱりここが落ち着く」

 

昼休みになり八幡はいつも通りに運動場脇にあるベストプレイスにきていた。校舎からは自販機などがあり見えにくく、校庭からはテニスコートを挟んでいるためこれまた見えにくい。だからか人があまり寄りつかないため八幡のお気に入りの場所となっている。

そしてそこで昼食を食べていると

 

「ヒキオ?」

 

「ん?」

 

声がする方を見るとミルクティー片手にもった三浦がいた。

 

「何だよ三浦、学校では話しかけるなっていっただろ?」

 

「今は周りに誰もいないし」

 

「てか何しにきたんだ?いつもいる連中は?」

 

すると三浦はキョトンとし

 

「飲み物買いに来ただけだし。戸部達は隼人が今日は教室いないから珍しく自主練するとか言ってたからいない」

 

「葉山と女子はどうしたんだよ?」

 

「あー……」

 

すると三浦は不機嫌な顔になり

 

「隼人も結衣も姫菜も雪ノ下さんとこ。あっ……姫菜ってのはあーしらの隊のオペレーターで結衣は昨日隼人に誘われてボーダーに入るらしいし。」

 

結衣のポジションの勉強するんだってと続け

 

「お前は行かなくて良いのか?」

 

「結衣はスナイパー目指すらしいんだけど、あーしじゃ何も分からないし……」

 

悲しげに目をふせ

 

「行っても雪ノ下さんはもちろん隼人もあーしの意見は聞かないから

。姫菜は行くつもりなかったんだけど結衣を放っておけないし、オペレーターだし色々知ってるだろうから行かせた」

 

「ふーん、お前も苦労してんだな」

 

「でしょー」

 

そんな話をしていると

 

「あれ?比企谷くんに三浦さん?」

 

八幡が声の方を向くと美少女がいた。

 

「あぁ、すまん。誰だっけ?」

 

そんな事を言う八幡に三浦はため息をつくと

 

「戸塚彩加、同じクラスの」

 

「と、戸塚か。すまん、女子の名前は覚えてないんだ」

 

それを聞き三浦はため息をつき戸塚は苦笑すると

 

「あはは、僕は男子だよ」

 

八幡が驚いて三浦を見ると

 

「ほんとにヒキオ、クラスメイト知らないんだ」

 

「改めて、戸塚彩加です。」

 

「あ、あぁ。比企谷八幡だ。よろしく?」

 

何で疑問系だしという三浦はツッコミつつ

 

「戸塚は昼練?」

 

「自主的にだけどね。僕たちのチーム弱いからぼくだけでもしないとって……あっそうだ!!」

 

戸塚は何か閃いたのか八幡を見ると

 

「比企谷くんってテニス上手いよね?体育の時、打つときのフォーム綺麗だし」

 

「そーなん?」

 

「いや、テニスなんてしたことないぞ。体育もいつも壁打ちしてるだけだし」

 

八幡が言うと戸塚はそうなんだ!?と驚き

 

「もし良かったら何だけどテニス部に入ってみない?」

 

「あー……すまん。放課後は色々あって部活できないんだ。」

 

そっかぁと落ち込む戸塚だが

 

「じゃあ昼休み手伝おうか?練習」

 

三浦がそう提案した。

 

「ヒキオは昼休みどうせ暇だろうし、あーしも当分暇。それにこれでもあーしは中学生の頃に全国大会でた事あるから練習相手になるくらいはできるっしょ」

 

「俺の予定を勝手に決めるな……まぁ暇だが」

 

「えっと……じゃあお願いしても良いかな?」

 

上目遣いで頼む戸塚に八幡は断われるわけがなかった。



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比企谷八幡⑤

翌日の昼休み、八幡は戸塚と一緒にテニスコートに来ていた。三浦は

 

「女子には準備がいるから先行っといて」

 

ということらしい。

 

「じゃあストレッチでもして待っとくか」

 

「そうだね!」

 

明るく無邪気な感じすらする戸塚に八幡は癒されつつストレッチを始めた。

 

「待たせてごめん、ヒキオ、戸塚」

 

「そんな待ってないから大丈夫だよ、三浦さん」

 

「大丈夫……だ」

 

八幡が振り向くと美少女がいた。ただでさえ八幡は美少女だとは思っていたが、テニスウェアを着ることで健康的な肢体がさらに美しく際立っていた。

 

「ん?どしたん?ヒキオ」

 

一瞬見惚れていた八幡は意識をもどすが

 

「い、いや何でもないでしゅよ?」

 

超動揺していた。

 

「どうしたしヒキオ」

 

そう言いながら笑っていたが自分の姿をみて

 

「ふーん、そうかそうかー。あーしに見惚れてたっしょ」

 

意地悪そうにニヤニヤしながら三浦が聞くと

 

「っ……あぁそうだよ。ほら無駄話しないで戸塚の練習始めるぞ」

 

そう言いそそくさと戸塚のいる場所に向かう。

 

「……不意打ちは卑怯だし」

 

まさかストレートに来るとは思わなかった三浦はガチ照れしていた。

 

 

 

「次いくよ」

 

「おっす!」

 

三浦は取り辛くなるかならないかギリギリのところにボールを打ち続け、三浦の手元にボールがなくなったら戸塚が三浦に対してサーブを打つというのを繰り返していた。三浦のボールは普通にしていれば取れるが気を抜くと取れなくなる絶妙なラインを攻めているのをみて全国大会までいったのは伊達じゃないと感心していた。

 

「じゃあいくよ、三浦さん!!」

 

「オーケー!」

 

ちなみに八幡はボール集めが主だ。

そんな練習をしていると

 

「そんなヌルい練習で上達はしないと思うわよ」

 

雪ノ下雪乃がこちらにきた、後ろには葉山と由比ヶ浜もおり

 

「さいちゃん!テニスとか上手な人連れてきたよ……って何でヒッキーがいるし!?」

 

「それはまさか俺か?ならその呼び方やめろ」

 

八幡が面倒くさそうに言うと

 

「何で?ヒッキーはヒッキーじゃん」

 

「……引きこもりみたいだからやめろ。インドア派だが決して引きこもりではない」

 

「別に良いじゃん、ヒッキー」

 

ため息をつき、頭が痛くなるのを感じる八幡だった。

 

「由比ヶ浜さん、ごめん。今は三浦さんと比企谷くんに手伝ってもらってるから」

 

戸塚はそう言うが

 

「戸塚くん、三浦さんやそこの……腐り谷くんより私が教えた方が上達するわよ?」

 

「はぁ?」

 

三浦が怒鳴りそうになるが

 

「まぁまぁ優美子落ち着いて。みんなでやった方が練習のバリエーション増えるし楽しいよ、ほら試合形式とかさ」

 

間に葉山が入ってくる。

 

「隼人、あんさぁ……戸塚はまだ基礎練が良いレベルなの。それに試合形式とか放課後部活動としてした方が全体のレベルアップに繋がるし」

 

八幡はそこまで考えてるのかぁと再度感心しつつ

 

「なぁ戸塚?由比ヶ浜に何か頼んだのか?」

 

「ううん、頼んでないよ。部が弱いからぼくだけでも昼練してるんだって話をしたくらい」

 

「そうか……」

 

八幡は再び三浦達を見ると

 

「そんな生温いことをしてるからスコーピオンも上達しないのよ」

 

「今はボーダー関係ないし、余計なお世話だし。てか結衣のスナイパーの勉強はどうしたん?」

 

「今日は海老名さんが新しい参考資料用意できなかったからいったん休みよ」

 

「そんな姫菜のせいみたいな言い方っ……」

 

さらに三浦の色んな怒りが加速しそうだったが

 

「落ち着け三浦」

 

「っ!!」

 

八幡の声で怒りが収まった様子はないもののひとまず落ち着いた。

 

「おい雪ノ下」

 

「何かしら?」

 

「テニスコートの使用には学校の許可と練習に加わるなら戸塚とちゃんと話せ。最低それくらいしてから口をだせ」

 

「っ……分かったわ行きましょう。由比ヶ浜さん葉山くん」

 

学校の成績などだけなら優等生の雪ノ下は校則違反はできないのだろう。それにもし本気で戸塚の力になりたいなら明日からでもという言葉がでるだろう、そして不機嫌なのを隠そうともせずその場を去っていった。由比ヶ浜は三浦と八幡をチラチラ見ながら雪ノ下についていき、葉山は雪ノ下を宥めていた。

 

 

結局3人とも戸塚の事など心から助けようなどと思っていなかったのかと八幡は静かに怒っていた。

 

「はーっ……ふぅ……ごめん戸塚。練習再開しよ」

 

大きく息を吸って吐き自らを落ち着かせた三浦は謝りながら戸塚との練習を再開したのだった。



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川崎家①

「で?これはどういう状況だ?」

 

雪ノ下達とのテニスでの一悶着から数日。八幡は妹の小町に呼び出されていた。ちなみに三浦と八幡は昼練に付き合っている

 

「ハッハッハッ、良くぞ来た我が相棒よ。ほれ座るがよい」

 

「八幡!!あんた何で最近玉狛に来ないのよ!?」

 

「八幡は玉狛が嫌いなのか?」

 

「やっと来たね、お兄ちゃん!!」

 

ボーダー支部の1つ玉狛支部のメンバーに中2患者、小町と小町の『隣』に見知らぬ少年がいた。

 

「すまんな陽太郎、最近は忙しくてな。」

 

玉狛支部所属でボーダー最年少の陽太郎の頭を撫でながら座る。

 

「桐絵そういうことだ。で?何で材木座までいる?お前の相手をしてる暇はない。そこの少年をベイルアウトさせなきゃならん」

 

「わ、わたしはべつに?寂しくなんてなかったし?」

 

「我は偶然小南嬢と一緒にいたまで……小南嬢に八つ当たりされるから玉狛にもっと来てくれ八幡!!」

 

玉狛第1所属の小南桐絵がそっぽを向きながら言うが八幡には聞こえておらず、材木座の泣き言はあからさまに無視し、少年に目を向けながら八幡がトリガーを起動する素振りをみせると

 

「お兄ちゃん、ポイント低いよ?」

 

小町の低い声が響いた。

 

「はぁ、冗談だよ。で?誰なんだ?」

 

「はじめましてお兄さん!!比企谷さんと同じ塾に通う川崎大志っす」

 

「ハッハッ、お兄さんて呼ぶな殺すぞ?」

 

「小町ちゃん関わると相変わらずね、あんた」

 

小南が呆れながら言う。

 

「えと姉の事で悩んでたんですけど、姉がお兄さんと同じクラスって比企谷さんから聞いて、相談に乗ってもらってました」

 

いまいち要領を得ないので八幡が1つ1つ聞いていくと

姉の帰りが最近遅く心配してたところに、エンジェル何とかと言うお店から電話がきたそうだ。悩んでたのを小町に見抜かれ話をするとその姉は小町の兄の八幡と同じクラスと言うわけで呼び出されたのだ。

 

「直接お姉さんに聞けばいいじゃない。何してんだーって」

 

桐絵が言うが

 

「何言っても聞く耳もたずで、あんたには関係ないって言うばかりで……」

 

拒絶された時のことを思い出したのか大志は泣きそうになっているが

 

「ふむ、大志殿の1番の心配は無用でござろう。エンジェルと言うのがつくお店は2件しかござらん」

 

「あんたたまには役に立つのね」

 

小南が辛辣に言う。

 

「で?材木座。その2件ってどう言う店だ?」

 

「うむ、1つはメイド喫茶でもう1つがBARである」

 

八幡は少し思案すると

 

「多分BARの方だな。ただのメイド喫茶でそこまで遅くなるとは思えない」

 

川崎大志の話によると姉の帰りは朝方だと言う。そんな時間まで営業しているのは酒を扱う店のが可能性は高いだろう。

 

「ところでそのお姉さんが帰りが遅くなった原因は心当たりはあるの?」

 

小南が聞くと

 

「いえ、今年の4月から急に始まって……」

 

「ふむ、ならばその時期に何かあったか?」

 

「家の中では自分が塾に通い始めたくらいっす」

 

それを聞き八幡は話が繋がった。思い出すのは穏やかな性格の苦労人のモサモサイケメン。

 

「分かった。何とかしてみる。だから終わったら小町に近づくな」

 

再びシスコンの鬼と化すが

 

「まったく、お兄ちゃん。大志くんは霊長類ヒト科オトモダチだから何も心配しなくていいよ。あっ小町的にポイント高い!!」

 

流石の八幡も川崎大志に同情した。



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川崎家②

「八幡と出かけるなんて久しぶりね」

 

大志から姉の話を聞いた後ついでに夕飯も済ませその場は解散したが八幡はとっとと大志の姉、川崎沙希の問題をとっとと解決してしまいためその日のうちにバイト先と思われるエンジェルラダーに来ていた。小南も連れて。ちなみに2人ともしっかり正装だ。

 

「べつに桐絵までついてこなくて良かったんだぞ?」

 

「よく言うわね、あんなお洒落な場所に八幡1人で行ったら通報されるわよ」

 

やれやれといった感じに言う小南。

 

「まぁ良い、行くか」

 

「しっかりエスコートするのよ」

 

そう言い腕を組んでくる小南。八幡はため息をつき小南はルンルンとした感じでBARに向かった。

 

「いらっしゃいませ、比企谷様ですね?こちらへどうぞ」

 

予約を入れていた八幡達はすんなりと通される。

 

「ごゆっくりどうぞ」

 

そしてカウンター席に座る2人。八幡はとりあえず飲み物を頼もうと顔をあげると

 

「川崎?」

 

「……誰?」

 

以前一緒に遅刻していた川崎沙希がいた。

 

「八幡、この人?」

 

「あぁ、そうだ」

 

川崎はバイトがばれたのだと分かり、バツが悪そうにするがすぐ立て直し

 

「ご注文ですか?お客様」

 

「じゃあマックスコーヒーを」

 

「あんたバカじゃない?こんなとこにあるわ……」

 

川崎がどうぞと例のコーヒーを差し出すのを見て絶句する小南。

 

「桐絵も注文しろよ」

 

「え、えーと……ノ、ノンアルの美味しいので」

 

何が何だか分からなかったのであろう小南はそう注文する。

 

「かしこまりました」

 

そんな小南に和んだのか川崎は笑みを浮かべると手慣れた手つきでカクテルを作り小南に差し出した。

 

「あっ、程よく甘くて美味しい」

 

普通に楽しんでいる小南を無視して八幡は川崎を見て

 

「同じクラスの比企谷だ」

 

そう話しかける八幡。

 

「そっか、バレちゃったんだ。どうするの?学校に言う?それともここ?でも私はバイトをやめないよ。ここクビになっても他を探すだけ」

 

八幡を睨みつけるようにし、強い口調で言う川崎に八幡は一切動じずに

 

「べつにそんなつもりはない」

 

その言葉を聞いて驚く川崎。

 

「明日の朝5時くらいに下のマックまで来てくれ」

 

「何を考えてるの?」

 

訝しげにこちらを見てくるが

 

「妹がお前の弟の相談にのってな」

 

「じゃあ大志には私から話しとくから構わないで」

 

八幡はため息をつくと

 

「お前にとっても悪い話しじゃない。朝だぞ」

 

「美味しかったわ、じゃあ」

 

八幡と小南は足早にエンジェルラダーを去っていった。ちなみにマックスコーヒーはしっかり飲み干してます。

 

 

 

 

「で?話しって何?」

 

翌朝、待ち合わせた店で八幡と川崎が会っていた。

 

「姉ちゃん!!」

 

「大志あんた……こんな時間に!!」

 

「それは姉ちゃんも一緒だろ!」

 

川崎大志と小町が来ていた。

 

「小町お前……」

 

「小町も気になっちゃって」

 

来たものはしょうがないと八幡は諦め

 

「まず確認なんだが……川崎のバイトの理由は学費関連だな?」

 

八幡が本題を話し始めると川崎は観念したかのように目を伏せ

 

「そうだよ、といっても夏期講習の分だけだけどね」

 

そして川崎は理由を話し始めた。といっても内容は複雑なものでは無く川崎大志を塾に通わせると姉の川崎が夏期講習などにいく余裕が家庭には無いと言うものだった。

 

「姉ちゃん…….」

 

「だから大志には言いたくなかった。で?あんたはどうしてくれるの?親が用意できなかったお金用意してくれるの?」

 

川崎は八幡にその気がなかったとはいえ、大切な弟である大志の前で理由の話をさせられイラだっていた。

 

「女連れてあんなとこに来る余裕がある人間に私の気持ちが分かる?分かるわけないよね!?」

 

その言い方に小町は怒鳴りそうになるが八幡に静止され

 

「お前の気持ちはわからないな。俺は塾とかに通うほど勉学に執着してないし」

 

ただ……と続け

 

「川崎が間違ったことをしているのはわかる」

 

「なに?未成年は夜働いたらいけませんとか言うつもり?お生憎様、そんなことは百も承知。でもそんなことを言ってられるほど世間は甘くないの」

 

そう言い返す川崎を八幡は冷めた目で見返すと

 

「とりあえず要件はこれを教えたかっただけだ」

 

八幡は1枚のチラシを渡す

 

「スカラ……シップ?」

 

「じゃあな、1度帰るぞ小町」

 

そう言い八幡は店を後にする。

 

「あの、大志くんのお姉さん。お兄ちゃんが1番言いたかったのは誰かに相談しろってことと家族に心配かけるなってことだと思います」

 

いつになく真面目に話す小町

 

「そのチラシ、塾で見たことありますし、総武は進学校だから誰かに相談すれば多分無理なバイトまではしなくて良かったんじゃないかなぁって……」

 

「あとこれからは大志くんとかにもちゃんと向き合ってあげてください。無茶してるのは分かるのに止められないのは下の家族としては辛いので……」

 

小町は一時期の八幡を思い出し

 

「それじゃさよならです!!」

 

そして小町も八幡を追いかけ出て行く。

 

「大志……ごめんね」

 

「次は相談してくれよな」

 

「そうするよ」

 

そのあと川崎姉弟も仲良く店をあとにした。



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職場見学①

「今年の職場見学についての予定の変更を伝える。今年度からボーダー提携校になったと言うのもあり2学年の見学先は……」

 

『ボーダー本部となった』

 

 

 

 

「あぁ……めんどうくさい」

 

八幡は防衛任務まで時間があったので玉狛支部にきていた。

 

「人間諦めが肝心だぞ、比企谷」

 

「はい……」

 

木崎レイジ、A級隊員まででは唯一のパーフェクトオールラウンダーと言う人だ。見た目に似合わず料理上手である。専用トリガー『全武装(フルアームズ)』を持つ。ちなみに八幡はアタッカーよりのパーフェクトオールラウンダー。

 

「別に隠してはいないんだろ?」

 

そう話しかけてきたのは烏丸京介。モサモサイケメンでバイトで忙しくしている学生である。専用トリガー『ガイスト』を持つ。

 

「まぁ、そうなんだけどなぁ」

 

目立ちたくないなぁと続けていると

 

「別にバレると決まったわけじゃないんでしょ?」

 

「相棒のそれは今に始まった事ではないからな!!」

 

小南桐絵、専用トリガー『双月』を持ち、八幡とは旧ボーダー時代からの付き合いである。

材木座義輝、八幡と同じ総武に通うB級ソロ隊員。パーフェクトオールラウンダーの木崎の噂を聞きつけ師事しようと玉狛に押しかけてきた。メインは孤月だが、余りつかいこなせていないアステロイドやイーグレットも入れているなんちゃってパーフェクトオールラウンダー。八幡とは学校からの知り合いだったが玉狛にいた八幡をみてボーダーと知り勝負を挑み八つ裂きにされた(文字通り)現在は孤月くらい使えろと言う八幡の指示のもと、小南にしばかれている。

 

「ようぼんち揚食う?」

 

「食べます」

 

ニュっ現れたのはボーダー玉狛支部に所属するS級隊員迅悠一である。

 

「迅さん、どうかしたんですか?」

 

ぼんち揚をボリボリしながら八幡が聞くと

 

「あぁ、もうすぐ職場見学あるだろ?大変そうだから応援にきた」

 

「用は冷やかしっすね」

 

すると小南が

 

「なんなら私が准に話してこようか?八幡には触れるなって」

 

「いや、そこまでしなくて良い。嵐山さんに私情で迷惑をかけるわけにはいかない。まぁバレたらその時はその時だ。」

 

そう言うと八幡は膝の上で寝ているボーダー最年少で動物と意思を交わす陽太郎をソファーに寝かすと

 

「ありがとうな小南、じゃあ防衛任務行ってきます」

 

「フッ、フンッ!……」

 

「あれ?我無視されてる?」

 

お礼に小南の頭を撫でて玉狛をでようとしたとこで

 

「あぁ、そうだ材木座。今度あの小説読ませてくれた礼に稽古つけてやる」

 

顔が青ざめていく材木座であった。小説とは材木座が趣味で書いているライトノベルで八幡に送りつけては感想を貰っていたのだがボーダーに入っているのが分かってから感想のかわりにまずランク外対戦が通例になってきている(一応改善などはその後伝える、容赦なく)

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴鳴支部

 

「嵐山くん、いらっしゃい。今日は葉山隊に用があるんだって?」

 

「来馬さんこんばんは。そうなんですけどいますか?」

 

鈴鳴支部にA級5位嵐山隊隊長、嵐山准が来ていた。

 

「奥にいるよ」

 

そう言い客間に案内する。

 

「こんにちは、嵐山さん」

 

葉山が挨拶をすると由比ヶ浜まで含めた葉山隊メンバーが挨拶を続けるが……

 

「葉山くんと嵐山さんの爽やか系男子同士の絡みキマシタワー!!」

 

「はいはい、今は擬態しとくし」

 

暴走したのは海老名姫菜。葉山隊でオペレーターを務める腐女子。雪ノ下に不満がないわけではないが三浦がいたから何とか止まっている。

 

 

「それで?嵐山さん、私達に何か用でしょうか?」

 

海老名にびっくりしていた嵐山に雪ノ下が切り込む。

 

「あ、あぁ。総武高校の職場見学はボーダー本部だけどその時にチームランク戦のデモンストレーションを行う時に嵐山隊と総武高校の生徒でのみで構成されている葉山隊でやろうと思ってね」

 

大丈夫かい?と嵐山が聞くと

 

「はい、大丈夫です」

 

葉山が答えるとありがとうと嵐山は言い。

 

「じゃあこれで失礼するよ。本番楽しみにしてるよ」

 

そして鈴鳴支部を後にした。



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職場見学②

ちょっと由比ヶ浜の説明に無理があるかもですが……許してください


そして職場見学の日がついに来た。

 

「ボーダー本部長の忍田真史だ。今日は職場見学へようこそ。君達の入隊を歓迎しよう」

 

ボーダー本部長が挨拶を始める。

 

「ボーダーでは数多の隊員が日々研鑽を積み重ね、三門市の平和を守っている」

 

忍田は1度生徒を見渡すと

 

「そのボーダーの活動内容を少しでも多く学んで行って欲しい。それでは私はこれで失礼するが、この後は嵐山隊が案内してくれる。嵐山隊のみんな、よろしく頼む」

 

挨拶を終わらせた忍田は壇上を去り嵐山隊員が生徒の前にでる。

 

「「おぉっ」」

 

ボーダーの広報活動もしている嵐山隊はテレビなどにも出演しているためかなりの有名人である。その有名人が目の前にいると言うことで生徒から歓声があがる。

 

「総武高校の生徒の皆さんこんにちは!!紹介にあずかった嵐山隊、嵐山准だ。君達にはこれからボーダーの施設を案内するとともに、その施設で行う訓練をしてもらう。まずは訓練用トリガーを起動してくれ!!」

 

そう嵐山が言うとあちこちからトリガー起動と言う言葉が聞こえる。ちなみに各自の訓練トリガーは事前に学校で特徴などが説明が行われ、どれを使いたいか希望をだしたものがあてがわれている。

 

「みんな起動したかな?ではついてきてくれ!」

 

そう言い嵐山隊が先導する。そして程なくしてついたのは

 

「ここは仮想戦闘訓練の部屋だ!ここでは仮想戦闘訓練モードの部屋でボーダーの集積データから再現された近界民(ネイバー)と戦ってもらう」

 

そして嵐山がコントロールすると部屋の1つに捕獲用トリオン兵バムスターが現れる。

 

「今回戦ってもらうのはこの初心者級の相手だ。本物よりは幾分か小型化されており攻撃力ももたない近界民だがその分装甲が分厚いぞ!」

 

すると嵐山は

 

「では木虎、手本を見せてくれ」

 

「了解しました。」

 

嵐山隊のオールラウンダーの少女が答え部屋に入っていく。

 

『1号室訓練開始』

 

木虎が構えると機械音が鳴り響き戦闘が始まった。

 

『1号室訓練終了,記録1分50秒』

 

そして部屋から木虎が出てくる。

 

「彼女は本当の記録は9秒。今回はあくまでサンプルと言うことで長く戦ってもらった」

 

「あの、質問良いですか?」

 

1人の生徒が手を上げる

 

「何かな?」

 

「ボーダーで早い人だと他には何秒の人がいるんですか?」

 

「他だと、現在最速はA級草壁隊所属の緑川くんが4秒、同じくA級加古隊の黒江ちゃんが11秒。そしてこの後に紹介する葉山隊の由比ヶ浜さんが15秒といったところだね。」

 

葉山隊と言うのに少しざわつくが

 

「では次はみんなが近界民を倒す番だ。順番に部屋に入っていってくれ」

 

そう嵐山が言うと幾つかの部屋にバムスターが出現しみんなそこに集まる。

 

「来てたんですね、八幡先輩」

 

部屋のすみに隠れていた八幡を見つけた木虎が駆け寄る。

 

「まぁサボりたかったが残念なことに任務とかを入れられなかった」

 

「サボろうとは考えてたんですね……」

 

木虎が呆れた視線を向ける。

 

「当たり前だ」

 

「では私はもう行きますね、今度また稽古つけてください。では」

 

「おう、頑張れよ」

 

そう言うと木虎は少し笑みをこぼし、はいと返事をすると嵐山のところに戻っていった。

 

「では次の訓練に向かおうか」

 

少し時間はかかったが一通りの人が体験したのだろう。嵐山が前に立ち戦闘訓練の終了を告げる。

 

その後も地形踏破、隠密行動、探知追跡と各訓練を簡単に行いお昼が近づいてきた。

 

「昼からはランク戦と言う隊員同士による実戦訓練を行う予定だ。それでは午前はこれで終了だ」

 

そして嵐山が去るとそれぞれ案内された食堂などに行きお昼御飯を食べ始めた。

 

 

「では午後の部を始める。まずは個人ランク戦と言う個人対個人の戦いからだ。まずは木虎と時枝で手本を見せてくれ」

 

「「了解」」

 

2人が準備しているあいだにランク戦をするまでの工程を説明し

 

『ランク戦開始』

 

機械音声が響き2人が転送されモニターに映し出される。結果は木虎の勝利に終わった。

 

「これがランク戦の大まかな流れだ。ではみんな並んで入ってくれ」

 

そう言い数人づつ部屋に入っていき戦闘が始まる。

 

 

 

「よし、これで個人ランク戦は終了だ」

 

1時間ほどたち嵐山がみんなを止める。

 

「次はチームランク戦だが、これは正規隊員同士で観せたいと思う。組み合わせは俺たち嵐山隊と鈴鳴支部所属葉山隊だ。では葉山隊のみんな来てくれ!!」

 

嵐山が言うとF組から葉山隼人、三浦優美子、由比ヶ浜結衣、海老名姫菜が、J組から雪ノ下雪乃が出てきて歓声があがる。

 

「葉山隊隊長葉山隼人です」

 

そして全員が自己紹介をすると

 

「じゃあこれからチームランク戦を開始しようか」

 

そう言い部屋に向かおうとした嵐山を

 

「すいません、嵐山隊長。1つ提案があるのですが」

 

雪ノ下が止めた

 

「何かな?提案と言うのは」

 

「総武高校にはS級隊員がいますよね?せっかくのチームランク戦のデモンストレーション。せっかくですから総武生徒同士かつ滅多に観れないS級の戦いのが良いかと思いまして」

 

すると生徒からはS級?誰だ?と言う声とその提案を肯定する声があがる。

 

「それは正直やめた方が良いと思うけど」

 

嵐山が困りながらも止めようとするが

 

「嵐山さん、俺は構いませんよ」

 

八幡が生徒の中から現れる。

 

「良いのか?比企谷」

 

「こいつは嵐山さんが断れば生徒を使って攻めてきますよ、生徒全員そう言う雰囲気です」

 

簡単に、流されるでしょうし、これ以上嵐山さんを困らせたくないのでと言い

 

「あれがS級?」

 

「目が腐ってる」

 

などの声がちらほらでる。

 

「よく逃げずにでてきたわね」

 

「仕方ないだろ、出てこないと嵐山さん達に迷惑がかかりそうだったんでな」

 

八幡はこの暴挙を知っていたのかと他の葉山隊を見ると海老名は雪ノ下を冷めた目で見つめ、三浦は怒っていた。この2人にとっても寝耳に水だったのだろう。

 

「では特殊なランク戦だが始めよう。各自準備してくれ」

 

嵐山が言うと全員部屋に向かう

 

「ヒキオ、ごめん」

 

「三浦が謝ることじゃないだろ。まぁ勝負は勝負だ。手加減しないからな」

 

八幡と話して少し落ち着いた三浦は

 

「フフッ、わーってるし。あーしも全力で勝つつもりでいくし」

 

「それで良い」

 

『チームランク外対戦開始』

 

機械音声が響きわたった。



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職場見学③

「予定外ではありましたがチームランク戦が始まりましたね。私も出てくる予定はありませんでしたが実況と解説もできる状況になりましたので、出てきました。実況を担当します、嵐山隊オペレーター綾辻遥です」

 

そして

 

「解説にはこちらのお二方、嵐山隊長と木虎藍ちゃんです」

 

「「よろしく」」

 

2人も挨拶をすると

 

「このチームランク外対戦、お二人はどうみますか?」

 

「八幡先輩の圧勝ですね」

 

木虎が即答する。

 

「まぁ正直なところを言うと葉山隊の勝ち目は少ないかな。」

 

嵐山も苦笑しながら言うと

 

「これは葉山隊には厳しい評価です。勝つにはどうすれば良いかなどはありますか?」

 

絢辻の質問に2人は困るが木虎が

 

「八幡先輩には正面から挑むのは無謀、かといって小細工も何も通用しません。勝つには最低限でA級並みの実力を持ってして、なおうまくチームワークを駆使しなければなりませんから」

 

木虎の酷評に一部ブーイングが上がるが

 

「あっ、戦闘が始まったようです!!戦場は市街地Cとなります!!

 

 

 

 

 

「市街地Cか……」

 

八幡は自分の位置が最下段にいるのを確認し、レーダーに敵が映らないのを観ると全員バッグワームをつけたのだろうと目星をつけ

 

「バッグワームあんま意味ないのにな」

 

恐らく自分に頂上からフルアタックでも仕掛けてきそうなのを考えつつため息を吐く八幡である。

 

『相手は最下段だね。こっちは全員ヒキタニくんよりは上にいるから最上段での合流は簡単そう』

 

オペレーターの海老名が告げる

 

『では最上から彼を狙い撃ちにするわ』

 

『『了解』』

 

 

「葉山隊は全員バッグワームを起動した模様。ちなみにステージ選択にはどんな意図があると思われますか?」

 

「まぁスナイパーに加え他の隊員も一緒に最上からシューター、ガンナートリガーも使っての射撃戦をしたいんだろう。これが他の隊もいる通常のランク戦なら簡単にはいかないけどね」

 

嵐山が言うと続けて

 

「ですが通常ランク戦以上にマップと状況は八幡先輩相手には悪手も良いところですね。その証拠に八幡先輩はあまり動いていません」

 

「その行動にはどんな意味が?」

 

木虎は画面のマップ最上段を見て

 

「一箇所に集まるのを待っているんでしょう。一網打尽にするために」

 

 

 

『ヒキタニくんはゆっくり登ってきてるね。間違いなくこっちの合流が先になるよ』

 

『舐めてかかったこと、後悔させてあげましょう』

 

八幡からの妨害すらなかったのを雪ノ下はバカにされていると感じたが三浦は訝しんでいた。

 

『幾ら何でもおかしすぎるし、ヒキオはバカじゃない。多分何かある』

 

『優美子の考えすぎだって、多分』

 

由比ヶ浜はこんな時でも能天気である。恐らく普段学校の八幡を想像しているのだろう。

 

『まぁ最上段にいるこっちが有利なのには変わりないからね』

 

葉山が言うと三浦は内部通信を切り

 

「はぁ……」

 

盛大にため息をついた。

 

(あーしらが見たヒキオの数少ない戦闘は確かに孤月かシュータートリガーで戦ってたけど、ここまで油断しきるのはダメだし。)

 

『遅かったわね、三浦さん』

 

『悪かったし』

 

三浦を最後に全員が揃った。

 

 

 

「あー、全員あんな無防備に……」

 

「狙い撃ちされたらマズいですね」

 

解説の2人が言った瞬間である。

 

 

 

『警報!!』

 

葉山隊に海老名の叫び声が響いた。

 

『『え?』』

 

『戦闘体活動限界、緊急脱出』

 

光の砲撃に葉山と由比ヶ浜はなすすべなく吹き飛ばされた。

 

『今のは!?』

 

『ヒキオの攻撃に決まってんじゃん!!』

 

 

 

 

 

「撃ってみるもんだな、2人消し飛ぶとは思わなかった」

 

八幡がしたのは合流する時間にだいたい予測をつけ最上段の建物目掛けてアイビスを撃ち放っただけだ。だが八幡のアイビスはもはや射撃ではなく砲撃だ。その1発は射線も何も関係なかった。

 

「さて行くか」

 

八幡はそう言うとグラスホッパーを起動した。

 

 

 

 

『ヒキタニくんが一気に登ってきてるよ!!』

 

海老名が八幡の行動を言うと

 

『三浦さんは奇襲の用意を、私が迎え打つわ』

 

『わーったし』

 

三浦はもう結末が見えていた。以前雪ノ下から聞かされたのだが、自分は何でもすぐに極めてしまい、習い事の先生をみなすぐに追い抜いてしまったと。

 

『一応忠告しとくけど、ヒキオは近接も強いよ?』

 

『私は剣道の有段者レベルよ、問題ないわ』

 

(雪ノ下さんの剣じゃヒキオには届かない)

 

雪ノ下の剣と八幡の剣、両方知っているからこそ三浦はそう確信していた。

 

「あら、逃げ出さずによく来たわね」

 

「ん?射撃はしないのか?」

 

八幡が聞くと

 

「それは葉山くんと由比ヶ浜さんの役目よ。もういないけど。」

 

あわよくば、ベイルアウトしたのは誰か聞き出せればと思った八幡だがあっさり喋ったのに呆れていた。ただ八幡はそれが嘘の可能性も捨てていないの考慮し射線などに気をつけている。

 

「いくわよ!!」

 

雪ノ下が掛け声とともに踏み込むが

 

「……え?」

 

雪ノ下の首は宙を舞っていた。

 

「遅いな、話にならないぞ?」

 

その八幡の呟きが聞こえたのか雪ノ下の顔は歪むがすぐにベイルアウトした。

 

「ヒキオ勝負するし」

 

「てっきり奇襲仕掛けてくると思ったんだがな」

 

後ろから三浦が話しかけてきた。

 

「雪ノ下さんの作戦だと雪ノ下さんがヒキオを抑えこんでいる間にあーしがモールクローで倒す算段だったけど」

 

抑えこむどころではなかったため出てきたようだ。

 

「少しは成長したあーしを見てもらうし」

 

そう言い孤月を抜く三浦……

 

「はっ!!」

 

気合いとともに駆け出した。

 

 

 

 

 

「特殊なランクは葉山隊の敗北でしたが、敗因は何でしょうか?」

 

「八幡先輩に挑んだ事ですね」

 

綾辻の質問に木虎が即答する。

 

「比企谷の規格外の強さを全然理解していなかったことが原因だね。比企谷はノーマルトリガーにおいて全てが規格外。何を使ってもこちらの性能の2倍3倍の力を出す。それを考慮しないで対チームランク戦の動きをしてしまったのがダメだったね」

 

「改善点などはありますでしょうか?」

 

綾辻が聞くと

 

「改善も何も一番は経験不足ですね。葉山隊はまだ普通のチームランク戦の土俵にもあがれてませんから」

 

木虎の厳しい評価に嵐山と綾辻は苦笑する。

 

「嵐山隊長、藍ちゃんもありがとうございました」

 

「「ありがとうございました」」

 

こうして葉山隊のランク戦デビューはあっさりと終わりを告げた。




実況と、解説難しすぎます。精進したいです。


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比企谷八幡⑥

八幡と嵐山隊が生徒の待つホールに戻ると雰囲気はお葬式状態だった。

 

「実力で勝ったと思わないことね。貴方はその怪物並みの恵まれたトリオンに頼っているだけなのだから!」

 

雪ノ下がつかつかと八幡に近づいてそう言い放った。

 

「やっぱりなぁ」

 

「自分の力じゃないじゃん」

 

「同じ条件なら雪ノ下さんや葉山くんが負けるわけないしね」

 

「力にものいわすとかダサくね」

 

直後に生徒から八幡を批判する声があちこちから上がる。

 

「素直に負けを認めたら?雪ノ下さん」

 

生徒は驚いて声が止まる。何故なら雪ノ下の味方の隊員であるはずの三浦から声が発せられたからだ。

 

「ヒキオが強くてあーしらは弱い。それだけじゃん。何で認めないの?」

 

「この腐った目をした男に実力で負けてるですって?冗談も大概にしてほしいわ」

 

「あんさぁっ!!……」

 

三浦が怒り雪ノ下に詰め寄ろうとした時

 

「雪ノ下先輩、八幡先輩の努力を知っていますか?」

 

木虎が間に入るように聞く

 

「トリオンにものを言わせてるのに努力もなにもあるのかしら?」

 

「八幡先輩は私がボーダーに入隊した時にはすでにS級隊員でしたからその前の事はあまり知りませんが、私がみてきた限り、その立場に甘んじて驕った姿なんて一度も見たことがないです。」

 

木虎がさらにどれだけ八幡が尊敬できる人物か話そうとしたが

 

「木虎、時間だ。嵐山さんお願いします」

 

八幡が木虎を止めて嵐山に職場見学の続きをうながす。

 

「あ、あぁ。さっきまで観て貰ったのがチームランク戦という実践式の訓練の1つだ」

 

珍しい木虎の態度に驚いていた嵐山は八幡の声で再起動した。

 

「本来は複数のチームで行われるもので戦場も……

 

それから嵐山の説明が続き、程なくして職場見学は終了した。

 

 

鈴鳴支部にて

 

「葉山、今日の職場見学はどういうつもりだ?」

 

来馬隊エースの村上鋼が葉山と話していた。

 

「どういうこととは?」

 

「俺や来馬先輩は嵐山隊との対戦は許したが比企谷との対戦を許した覚えはないぞ」

 

葉山は視線を落とすと

 

「すいませんでした。」

 

「一歩間違えれば来馬先輩にも迷惑がかかるとこだったんだぞ?今回は嵐山さんが穏便に済ませてくれたから良かったものを!」

 

「まぁまぁ、何事もなく済んだんだし。次からは気をつけてね?」

 

来馬が葉山に説教をしている村上を諌める。

 

「鋼くんの言う通り大変なことになるとこだったんだからね?雪ノ下さんも反省しなさいね」

 

「はい……」

 

雪ノ下が小さく返事をするのであった。

 

 

ボーダー本部にて

 

「今日は大変だったみたいだな」

 

「まぁ、それなりに……」

 

八幡と鬼怒田が話していた。

 

「あの事件からもう三年と少し程 か?八幡がS級になってから」

「そうですね、もうそれくらいになりますね」

 

そして2人は思い出す。遠い日を

 

 

八幡がS級となったきっかけ、それは中規模の近界進行。当時まだ防衛任務に出れる隊もまだまだ少なく、その日は八幡1人で防衛に当たっていた。

 

「このまま何事もなく終わればいいなぁ」

 

『まだ防衛任務は始まったばかりよ、比企谷くん』

 

このときは現在忍田本部長の下で働いている沢村が本来はアタッカーだが代わりにオペレーターをしてくれていた。

 

『ゲート発生……これは!?』

 

沢村が驚いていると

 

「あぁ、こちらからも見えてます。できるだけ早い援軍を」

 

『りょ、了解!』

 

八幡の目の前には幾つものゲートが発生しており次々にトリオン兵がなだれ込んできていた。

 

 

 

 

 

「何だ、これは?」

 

すぐに頭角を現したとはいえまだまだ入隊したての太刀川慶が見たのは化け物だった。

バイパーをつねに体の周りに浮かせ近くの敵は切り倒し、離れた場所にいるのは見たことのない破壊力をしたバイパーが飛んでいき粉砕する。

 

「な、何だあいつ……化け物だ」

 

他の隊員がその姿を見て呟く。

実質このそれなりの規模をした近界の進行を1人で止めた八幡はこの後にS級へと昇格したのである。



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三浦優美子②

「材木座、あーしと10本勝負いくよ!!」

 

「ちょ、待っ、我さっき小南嬢にボコされたばかり!!」

 

職場見学から1週間たち三浦と海老名は葉山隊を抜けて八幡の紹介で玉狛支部に居座っていた。来馬や村上も仕方ないとあっさり受け入れてくれた上に何かあったら来いと言ってくれていた。

 

「来馬先輩×村上先輩も良かったけど烏丸先輩×木崎先輩も……いやそこに迅さんも加わって……愛憎巡るみつどもえ……

 

 

『キマシタワー!!』

 

「こなみ、あれはなんだ?」

 

「陽太郎は気にしちゃだめよ」

 

不思議そうな顔で海老名を見る陽太郎に小南が言う。

 

「いやぁ、ここもさらに賑やかになったねぇ」

 

玉狛支部長、林藤匠がやってきてしみじみと言う。

 

「八幡は何を考えてるのかしら?人を集めて……」

 

「そら小町ちゃんのためだよ」

 

小南の質問に林藤が答える。

 

「小町ちゃんのため?」

 

小南が聞くと

 

「そう、迅の予知によれば小町ちゃんが近々ボーダーに入隊するのは確定事項らしい。それである程度信用の置ける人材を集めてるんだよ」

 

「へぇ、小町ちゃんが。楽しみだわ!!」

 

小南が嬉しそうに言う。

 

 

 

そして三浦と材木座は

 

「ヌハハッ、まだまだだな!三浦嬢!!」

 

「ちゅ、厨二のくせにぃ」

 

三浦は孤月を使っているが、同じ孤月使いの材木座に今だ勝てないでいた。

 

「我に勝てぬようでは八幡を倒すなぞ夢のまた夢ぞ」

 

「そんなん、わーってるし」

 

三浦は思い出していた。孤月を使うようになってからたまに村上鋼に教えてもらいながら練習していたが

 

回想

 

『少しは成長したあーしを見てもらうし』

 

そう言い孤月を抜く三浦……

 

『はっ!!』

 

気合いとともに駆け出した。

 

全身に力を込めた一撃はあくまで剣道などの延長でしかなかった雪ノ下のと違い相手を殺すつもりなのが見て取れた。

 

『やっぱり孤月のが三浦には合ってるな。力の加減が取れている』

 

しかしそれでもあっさり防がれ

 

『まぁ、まだまだだけどな』

 

三浦が1度離れようとするがその前に

 

『戦闘体活動限界 緊急脱出』

 

孤月で首を飛ばされランク戦が終了した。

 

回想終了

 

「どうやったら強くなれるんだろ」

 

「ふむ、思うに三浦嬢は今だに自分の戦闘スタイルと言うものを見つけていないのではないか?」

 

三浦の言葉に材木座が反応する。

 

「正直に申すと今三浦嬢はただ孤月を振り回してるだけ、それでは良くてB級下位止まりでござる」

 

「いっ、言ってくれるじゃん」

 

「ひぃっ!!」

 

三浦の迫力に材木座が怯むが三浦が続けてと言うと咳払いしたあとに

 

「上手い人たちは自分の戦い方と言うのを持っておる。例えば八幡や小南嬢、太刀川先輩殿は徹底的に攻め立てる。村上先輩殿はレイガストを組み合わせた攻守のバランスを取り、那須隊の熊谷嬢は守備に重きを置いてるように。それぞれが戦闘スタイルを確立している」

 

「あーしにはそれがないと?」

 

うむ、と頷く材木座。

 

「じゃあ材木座はどうなん?」

 

「我が目指すは最強の戦士だからな!目指すはパーフェクトオールラウンダーよ!!」

 

三浦は内心、自己紹介で言ってた剣豪なんちゃらってのはどこに行ったと突っ込んでいた。

 

「じゃあ次いくし」

 

「ほむん、かかって参られよ!!」

 

そして2人はまた剣を交え始めた。



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東京ワンニャンショー①

「お兄ちゃん!!今年もやってきたよ!!」

 

開発室の手伝いも防衛任務もないある日、八幡は自宅ソファーでダラけきっていると妹の小町がハイテンションでやってきた。

 

「うん?……あぁ東京ワンニャンショーか」

 

八幡は小町が何を言いたいのかすぐに理解しダラけながら答えた。

 

「もう!!テンション低いなぁ!!」

 

「おまえが高すぎるんだよ」

 

そう言ってダラけていると比企谷家の愛猫のカマクラが八幡の腹の上に乗ってきた。以前は小町にしか懐いていなかったが陽太郎と話してから八幡にも懐いたのだ

 

回想(通訳:陽太郎)

 

『なぜ、はちまんに冷たいのだ?』

 

『ニャー(小町ちゃんしか遊んでくれないから、それにいつも家にいない)』

 

『はちまんはこまちとカマクラのためにいつも忙しいのだ』

 

『ニャア?(小町と俺のため?)』

 

『そうだぞ、はちまんはいつもこまちとカマクラの事を考えてるのだ。懐かれなくても大切な家族だといつもいってる』

 

『ニャー(ふ、ふーん……たまには優しくしてやるか)』

 

回想終了

 

こんなやり取りがあったらしい。

 

「今年はいつ開催なんだ?」

 

カマクラを撫でながら聞く八幡。

 

「今週の土日なのです!」

 

「早いな……おまえにも良いエサ買ってきてやるからな」

 

ニャーオと満足そうに鳴くカマクラであった。

 

 

 

そしてついにその日がやってきた。

 

「何で三浦もいるんだ?」

 

「私が連れ出したのよ。最近ずっと孤月のトレーニングしてるからたまにはね」

 

毎年小南と小町と八幡で東京ワンニャンショーには行くのだが今年はさらに三浦も加わったようだ。

 

「何?あーしがいたら問題なわけ?」

 

「別にそうは言ってねーだろ」

 

三浦がが八幡と親しげにしてるのを見た小町は

 

「お義姉ちゃん候補増えた!!」

 

と喜んでいた。

 

「じゃあ行くか」

 

そして4人は会場に向かうのだった。

 

 

そして

 

「か、可愛い!!八幡、ペンギン超可愛いわよ!」

 

ペンギンを見た小南が興奮気味に言う。

 

「お前毎年言ってるんじゃないか?……そういや最近知ったんだがペンギンって肥満って意味があるらしいな」

 

「ヒキオ、今言わなくていいし」

 

「これだから八幡は……」

 

「ごみぃちゃん……」

 

小町がボソッと言ったのにショックを受ける八幡だった。

 

「もう少しで猫のブースだな」

 

気をとり直した八幡が地図を見て言う。

 

「カマクラのご褒美を早く買いましょ」

 

「はい!」

 

小町と小南が猫ブースに向かって歩き出す。

 

「カマクラって?」

 

「我が家の愛猫だ。最近は俺にも懐いてきてより可愛くなった」

 

三浦の質問に八幡が答え、並んで小町達を追いかけた。

 

 

 

「あら、私たちから逃げた三浦さんじゃない」

 

猫ブースでカマクラのエサを探していたら八幡達はある意味最も出会いたくない人物に会った。雪ノ下雪乃だ。

 

「逃げたんじゃないし。愛想が尽きただけだし」

 

「話し合いの場で泣きながら去って、その後すぐに隊を抜けた人が逃げたんじゃないのなら何なのかしら?」

 

三浦は思わず黙りこんでしまう。

 

「八幡、小町ちゃん、優美子。もう行くわよ」

 

小南が3人……と言うより動かなくなった三浦を引っ張りいう。

 

「あら、また逃げるのかしら?」

 

「ハァッ…….」

 

小南の盛大なため息が漏れる

 

「何ノ下さんだか知らないけど、これ以上優美子に何かいうなら私が相手になるわよ?」

 

「雪ノ下よ、覚えておきなさい」

 

「ごめん、すぐ忘れると思う。私、弱い奴には興味ないから」

 

小南に言われ睨みつける雪ノ下だが

 

「ほら、行くんだろ。じゃあな、雪ノ下」

 

そうして八幡が皆を連れて去ろうとしたところ

 

「やっと見つけた、雪乃ちゃん。あれ?喧嘩中?」

 

1人の女性がやってきた。



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東京ワンニャンショー②

「姉さん……」

 

雪ノ下が小さく呟く。

 

「あっ、驚かせちゃったかな?雪乃ちゃんの姉で雪ノ下陽乃です」

 

雪ノ下陽乃がにこやかに言う。

 

「はぁ、比企谷八幡です」

 

八幡に続き他の面々も一応自己紹介するが

 

「それじゃ、私たち忙しいので」

 

小南が俯いている三浦を連れて行こうとするが

 

「え、ちょっとお茶していかない?お姉さんが奢っちゃうぞ」

 

陽乃が引き止める。

 

「あぁ、こいつらはこの後防衛任務もあるんで急いでるのは本当ですから」

 

「えー、そうなんだー」

 

八幡が言うと残念そうにする陽乃だが

 

「今の口ぶりだと君は大丈夫なのかな?」

 

「はぁ、俺は大丈夫ですよ」

 

「ちょ、お兄ちゃん!?」

 

一緒に来るもんだと思ってた小町から驚きの声が上がる。

 

「ほら、さっさとカマクラのエサと雷神丸へのお土産買ってこい」

 

「うぅ……後で話し聞かせてもらうからね」

 

そう言って小町達はその場を離れて行った。

 

「じゃ、オススメの喫茶店近くにあるから行こうか!!」

 

八幡と雪ノ下は陽乃についていくのであった。

 

「それで一体どんな用ですか?」

 

喫茶店に入り注文が来た段階で八幡が切り出す。ちなみに雪ノ下はずっと不機嫌そうにしている。

 

「雪乃ちゃんとかから色々話は聞いててね。あっ、ちなみに雪乃ちゃんはお母さん達からも怒られてね、私が監視って感じ。そうだ、私からも職場見学では雪乃ちゃん達が迷惑をかけてごめんね?」

 

陽乃が申し訳なさそうに言うが

 

「はぁ、どうも」

 

八幡がてきとうに返事をする。

 

「あ、あれ?何かお姉さん気にくわないことしちゃったかな?」

 

八幡はため息をつくと

 

「そんな露ほども申し訳ないなんて思ってない顔で言われてもって感じですね」

 

楽しいはずの東京ワンニャンショーを邪魔されたからか八幡はいつもより棘のある態度をする。

 

「あはは、そんなつもりはないんだけどなぁ。ごめんね、比企谷くん」

 

「だからやめてくれません?その薄っぺらい仮面みたいな顔」

 

その言葉に雪ノ下姉妹が驚いた顔をする。

 

「虫唾がはしるんで」

 

さらに追撃する八幡。

 

「へー……」

 

さっきまでとは一転、冷たい表情になる陽乃。八幡はチラ見するが興味なさげに

 

「もう良いですか?今からならまだ妹達と合流できるんで」

 

「私達もちょうど迎えが来たから良いよ、今日はありがとうね。比企谷くん」

 

そう陽乃が言うと黒塗りの高級車が近くに止まる。

 

「あれは……」

 

「あぁ、去年事故した車だよ。あれ?雪乃ちゃんとかから何も聞いてなかった?」

 

陽乃が言うと

 

「何も……まぁ事故は犬を助けに飛び込んだ俺が悪いですから。それに色々して貰いましたからね」

 

「そう言って貰えるとありがたいね」

 

「じゃあ俺は本当にこれで」

 

「またね〜」

 

そう言って店を八幡が出ようとした時

 

「あっ、私もボーダーに入隊する予定だから、その時はよろしくね。S級隊員さん」

 

「そうですか、まぁ頑張ってください」

 

そして八幡は小町達に連絡を取り合流した。

 

「お兄ちゃん!!大丈夫だった!?」

 

最初に小町が慌てて近寄ってくる。

 

「何がだ?」

 

「あの雪乃って人なんでしょ!?お兄ちゃんに迷惑かけたのは!!優美子さんから聞いたよ!!」

 

小町が怒りながら言うが

 

「もう過ぎた事だ。気にするな」

 

「うぅ……お兄ちゃんがそう言うなら……」

 

八幡が頭を撫でながら言うと小町は落ち着き

 

「姉の方はどうだったの?」

 

小南が聞いてくる。

 

「別に何とも、 どうかしたのか?」

 

「なーんかあの顔、胡散臭くて」

 

手厳しい小南に苦笑いする八幡。

 

「小南に見破られるようじゃ、あの人の仮面もまだまだだな。」

 

「どういう意味よ、それ」

 

「何でもない」

 

まぁそれも仕方ないかと思う八幡。八幡や小南は城戸司令や唐沢、根付や鬼怒田など、本当の意味で底知れない人達と付き合いがあるのだから。

 

「じゃあもう少し観てまわるか」

 

そうして八幡達は再び東京ワンニャンショー巡りに戻るのだった。

 

「そろそろ帰るか」

 

再びまわり始めてからしばらくたち、時間も良い頃合いになったので八幡が提案すると

 

「ヒキオ、ちょっと良い?」

 

「何だ?」

 

「ヒキオにも話しとこうかなって思って。何で抜けたか」

 

三浦が言うと

 

「私達は先に玉狛に帰ってるわね」

 

「また後でね〜」

 

気をきかせたのか小南と小町は先に帰り、八幡と三浦は近くのカフェに入っていった。



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三浦優美子③

三浦は注文した飲み物を一口飲むと話し始めた。

 

回想

 

『あんさぁ、話しがあるんだけど』

 

来馬隊所属の村上とオペレーターの今の説教が終わった後に三浦と海老名は葉山、雪ノ下、由比ヶ浜を隊室に呼んでいた。

 

『何かしら?三浦さん』

 

『分からない?今日のヒキタニ君と戦うのを私と三浦さんも知らなかったんだけど』

 

『あーしらが知らなかった理由はなんだし?」

 

きつい表情で問い詰める2人。

 

『それは職場見学の時に話さなかったかしら?同じ総武生徒同士のが生徒にわかりやすいと思っただけよ』

 

『それは戦う理由で隠してた理由じゃないでしょ?』

 

海老名が冷静に言う。

 

『そ、それは私が原因かも……』

 

おずおずと由比ヶ浜が言う。

 

『どういうことだし……』

 

『実は前にさ、ヒッキーにある事でお礼が言いたくて放課後に呼んだんだけど無視されたんだ。』

 

『ヒキオが?信じられないんだけど。確かにヒキオは捻くれてるし目も腐ってる。だけど話しかけられたら無視するなんてしょうもないことはしないでしょ』

 

三浦が睨みながら言う。

 

『それで彼女は私のところに来たのよ。それで私が提案したのよ、仕返ししないか?って』

 

『どうしてそうなるし』

 

雪ノ下はやれやれといった感じに

 

『分からないかしら?目には目を、歯には歯を。やられたらやり返すのが私の座右の銘なの』

 

『何で結衣は私たちに相談してくれなかったの?確かに私達が話したのは2年からだけど、そんなに信用できなかった?』

 

海老名が聞く。

 

『そ、そうじゃなくて…….』

 

結衣がもじもじと煮え切らない態度をした瞬間

 

『あぁもう!!はっきりするし!!あーしらはそんなに信用なかったん!?友達と思ってたのはあーしらだけだったん!?』

 

ついに三浦が吠えた

 

『優美子落ち着け!!』

 

葉山が声をかけるが

 

『隼人も隼人だし!!結衣ができなくても隼人があーしらに相談なりなんなりしてくれれば良かったんじゃないん!?』

 

『そ、それは……』

 

葉山が口ごもると

 

『それは私が止めたのよ。由比ヶ浜さんもね』

 

『どういう事?』

 

海老名が俯きながら聞く。

 

『単純よ、貴女達に話すと周りの目も気にせず、あの腐った男に問い詰めそうだったからよ。それを由比ヶ浜さんは嫌がったの』

 

『ごめん、優美子……』

 

『優美子、すまなかった』

 

由比ヶ浜と葉山が謝るが

 

『もう……』

 

『優美子?』

 

俯いた三浦に葉山が話しかけるが

 

『もういいし!!2人ともいつまでもその雪ノ下さんに縋り付いてればいいし!!』

 

三浦は怒りと悲しみが、ないまぜになって泣いていた。

 

『優美子、おちつ『触んな!!』

 

由比ヶ浜が三浦を落ち着かせようと肩を軽く押さえた瞬間強く振り払われた。

 

『あーしはもうこの隊を抜ける。今まで世話んなったし』

 

三浦は歯を食いしばりながらそれだけ言うと隊室を出て行った。

 

『私も隊を抜けるね。2人には……ううん、3人には心底ガッカリしたよ』

 

海老名も酷く冷めた目で3人を一瞥すると優美子の後を追いかけた。

 

回想終了

 

「これがあーしらが抜けた時の出来事」

 

「そうだったのか…」

 

「この後に来馬隊の人に謝って、姫菜と一緒にブラブラしてるとこをヒキオに助けられたわけ」

 

三浦は一呼吸置くと

 

「そういや、結衣が言ってたヒキオが無視したってどういうこと?覚えあるん?」

 

ふと思い出したかのように三浦が聞くと

 

「いや、覚えがない。そもそも由比ヶ浜を認識したのも割と最近だし」

 

「あーしはヒキオを信じるよ」

 

「なんでだ?」

 

三浦の言葉に少し驚きつつ聞くと

 

「あーしのサイドエフェクトがそう言ってるし」

 

「あぁ、なら仕方ないな」

 

「そうだし」

 

おそらく迅のセリフをパクった三浦に笑いながら2人は店を後にした。

 

「わんわん!!」

 

そとにでると東京ワンニャンショーの帰りだろうか、1匹の犬が八幡目掛けて走ってきた。

 

「な、何だこいつ!?」

 

「ヒキオ、凄い懐かれてるし」

 

擦寄るだけじゃなくしまいには腹をみせ、服従のポーズまでする犬に三浦が驚いていると

 

「サブレー!!」

 

犬の飼い主が走ってきた。

 

「すいません!!うちのサブ……レが……ヒッキーに優美子?」

 

「由比ヶ浜か」

 

「結衣……」

 

由比ヶ浜は信じられないようなものを見る目で2人を見る。

 

「そっかぁ……」

 

由比ヶ浜は俯きながら呟く

 

「結衣?」

 

「そりゃ恋人の事を悪く言われたら怒るよね」

 

暗い目をした由比ヶ浜が三浦を見ながら言う。

 

「はぁ?」

 

三浦と八幡、2人が同時に言う。

 

「気づかなかった私が悪いんだよね、ごめんね。三浦さん」

 

「ゆ……い……」

 

「名前で呼ばないで」

 

由比ヶ浜の冷たい声が響く。

 

「お、おい。由比ヶ浜?」

 

「比企谷くんも、さようなら」

 

そうして2人の前から由比ヶ浜は去っていった。



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比企谷小町①

小町は、この季節がやってきたと思いテンションが下がっていた。

三浦が由比ヶ浜達と決別してから時は過ぎ、ついに夏休みの季節がやってきた。

 

「おはよう、小町」

 

普段の休みなら朝早くなんて絶対起きない八幡が夏休みの初日から起きていた。

 

「おはよう、お兄ちゃん」

 

この日の夕方に八幡は遠征艇にのり近界(ネイバーフッド)へと行くのだ。

 

「小町、玉狛のみんなに迷惑かけるなよ」

 

「お兄ちゃんじゃないから大丈夫だよ」

 

「そうだな……」

 

いつもと違い静かな会話が流れる。

 

「そうだ、小町」

 

「何?」

 

八幡は小町をソファーの隣に座らせると

 

「おまえの人生だ。何かしたいならおまえが決めて良いんだ」

 

それが何であっても俺は反対しないと八幡は頭を撫でながら優しく告げる。

 

「お兄ちゃん、それって……」

 

「俺が気づいてないと思ってたか?ボーダーに入りたいんだろ?親父達の夢を追いかけるために」

 

八幡達の両親の夢はネイバーフッドとの和平の実現だ。ボーダーの創立した時にいたネイバーの人と八幡の両親やまだ若かった城戸などに混じり八幡もよく聞かされていた。

 

「うん……」

 

小町は小さく頷く

 

「玉狛の林藤さんたちにはすでに話している。後は小町が決めることだ。」

 

「お兄ちゃん、ありがとう!!」

 

まだ話してはいなかったが、まさか兄からボーダー入りが許されるとは思っていなかった小町は嬉しくて笑顔になり

 

「お兄ちゃん!!すぐに追いついてみせるからね!!」

 

「あぁ、楽しみにしてるよ」

 

じゃあ俺は行くと言い八幡は立ち上がる。

 

「お兄ちゃん!!頑張ってね!!」

 

「おう」

 

そして八幡はボーダー本部に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「こんにちは!!」

 

玉狛支部の扉が勢いよく開く。

 

「おぉ、小町ちゃん。ぼんち揚食う?」

 

「こまち、よくきたな。かんげいする!!」

 

玉狛支部には迅と陽太郎がいた。

 

「その顔は決めたのかな?」

 

「はい!!小町もボーダーに入ります!!」

 

「なら後輩だな!!」

 

陽太郎が胸を張っていう。

 

「宇佐美、準備はできてるか?」

 

「はいはい!いつでもいいよ!!」

 

奥の方から眼鏡女子が顔をだす。

 

「トリオン計ったり適正検査するこらこっちきてね!!」

 

「は、はい」

 

小町は宇佐美に連れて行かれトリオンを計ったのちに様々な質問をされ……

 

「小町ちゃんは射手か銃手がオススメかな」

 

「それってあの四角いの飛ばしたり銃で攻撃したりするんですよね?小町にできますかね?」

 

不安そうに聞く小町だが

 

「大丈夫!!小町ちゃんのトリオン量はさすがに比企谷くんほど化け物じゃないけどボーダーではトップクラス。多分二宮さんとかより少し低いくらい。それに運動神経も悪くない」

 

続けて宇佐美は

 

「まぁでも射手はめちゃくちゃ頭がいいか、センスがものを言うけどそこらへんは試してみてかな?」

 

「うぅ……」

 

小町は不安そうだが

 

「さっそく練習やってみよう!!」

 

「は、はい!!」

 

そして小町はトレーニングルームに通され

 

「そのトリガーホルダーにはアステロイド、メテオラ、バイパー、ハウンドが射手用で入ってるからね〜。あっ、各弾の説明はいる?」

 

「いえ、大丈夫です。鬼怒田さんや兄に教えてもらったことがあります」

 

ついでに小町は兄の勇姿が見たいと鬼怒田に無理言って戦闘データを見せてもらったりしていた。

 

「それじゃ、入隊時の訓練と同じ形式でいくね」

 

「は、はい」

 

小町が返事をするとバムスターが現れる。

 

「『バイパー』」

 

小町は半分無意識だがバイパーを出現させた。

 

「(イメージはお兄ちゃん。きっと力を貸してくれる)」

 

小町は鬼怒田から良く聞かされていたノーマルトリガー最凶の兄を思い出しバイパーを操り

 

「いけぇ!!」

 

バイパーは正確無比にバムスターの弱点を砕いた。

 

「流石は八幡の妹、センスの塊だな」

 

迅が小町を見て呟く。

 

「凄いよ!!小町ちゃん!!」

 

宇佐美の興奮した声が響く。それもそのはず、記録は9秒だった。

 

「(お兄ちゃん、すぐに追いついてみせるからね!!)」

 

決意を改めてする小町であった。



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比企谷小町②

「千葉村へのボランティアですか?」

 

小町が仮入隊してから約2週間ほどたったある日、玉狛の林藤支部長から小町は呼び出されていた。

 

「そう、ボーダーが今年から始めた地域協力の一環でね。林間学校のボランティアを依頼されたんだよ。もちろん正式入隊日までには戻って来」途中で切れている

 

小町は射手を磨いていた。そのセンスは目を見張るものがあり、もうB級中位に届くのでは?というところまで来ていた。

 

「うぬぬ、三浦嬢に中々勝ち越せないできたである」

 

「ふっふーん。あーしの手にかかればこんなもんだし」

 

そこに材木座に勝ち越すようになった三浦と悔しそうにしている材木座がやってきた。

 

「おう、お二人さんも来たか」

 

「林藤さん、話って?」

 

林藤は再び小町にしたように林間学校について話す。

 

「あーしは大丈夫です」

 

「我も大丈夫である」

 

2人はお世話になっている林藤からの頼みとあってすぐに了解した。

 

「うぅ、じゃあ私も行きます」

 

A級の何隊かが抜けてよく木崎隊は駆り出されるようになり小町は2人を相手によくしていたので、そんな2人が行くならと了解した。

 

「まぁ一応あと何人かボーダーから派遣されるから仲良くしろよな。話は以上だ」

 

 

 

そしてボランティアに行く日になり、小町、三浦、海老名、材木座の4人は本部前にいた。海老名は三浦がいくという条件で了解していたらしい。

 

「やぁ、君達が玉狛からくるボランティアだね」

 

そこに2台の車がやってきて、顔を出したのは嵐山と

 

「東隊の東春秋だ」

 

東が降りてきた。

 

「あ、よろしくお願いします」

 

4人が挨拶をすると

 

「4人はの車に乗って」

 

東がそういうと4人は慌てて乗り込んだ。

 

「君達の噂は常々聞いてるよ。比企谷の秘蔵っ子だとね」

 

「兄を知ってるんですか?」

 

小町が聞く。

 

「もちろんさ。よくランク戦で斬り伏せられたものさ」

 

ハッハッハッ、と、快活に笑う東。

 

「昔からヒキオって強かったんですね」

 

三浦が言うと

 

「小町ちゃんは知っているのかな?彼が今のボーダーを作る前身の組織にいたと」

 

「一応は」

 

小町が答えると

 

「簡単に言うと経験が段違いだね。比企谷と俺らとは。俺が入隊した時には独自の戦い方を持っていたよ」

 

「流石は我の相棒よ」

 

材木座が自慢気に言う。

 

「そう言えばヒキタニくんは何でS級なったんですか?やっぱりトリオンが多いからですか?」

 

海老名が聞くと

 

「それもあるが、一番のきっかけはちゃんとあるよ」

 

そして東は八幡の中規模のネイバー侵攻時の事を話した。

 

「ひ、ヒキオってそんな強いんだ」

 

強いことは知っていたがネイバーの侵攻をほぼ1人で止めたと言うのには4人は驚いていた。

 

「面白い話しだと、現A級1位の太刀川隊の太刀川やB級1位二宮隊の二宮は知ってるかい?」

 

4人が頷くと

 

「今でこそ、攻撃手、射手の頂点の2人だけど1度比企谷に心を折られてるんだよ」

 

「お、お兄ちゃんは何をしたんですか?」

 

小町がおそるおそる聞くと

 

「2人をそれぞれの得意なトリガーを使って真正面から叩き伏せたんだよ。それからかな。2人は比企谷に負けないようさらに腕を磨いたのは」

 

「ヒキタニくん、凄いんだ」

 

海老名が改めて八幡の強さに驚いていると

 

「今のA級はほとんどが比企谷に尊敬と畏怖の念を持っているよ、それは勝負で負けたり、アドバイスを貰ったり、中には比企谷がすでにボーダートップクラスなのにより強くなろうと特殊技術を教わったりと、形は違えど何かしらで比企谷が関わってるからね」

 

様々な八幡を見てきた東は懐かしそうに言う。

 

「おっとそろそろ着いたみたいだね」

 

そして目的地である千葉村に着くと

 

「じゃあ、嵐山。あとは頼んだぞ」

 

「了解です。東さん」

 

「最終日に迎えに来るから、俺はこれで」

 

そう言うと東は去っていき

 

「改めて自己紹介かな?」

 

そうして全員が自己紹介を終えた頃に1台の車がやってきた。

 

「結衣……」

 

その車から降りてきたのは雪ノ下、葉山、由比ヶ浜と平塚だった。



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比企谷小町③

「君達だったのか、ボーダーからの協力者と言うのは」

 

三浦達を確認した平塚が言う。

 

「比企谷はどうした?いつも君達といると聞いていたのだが」

 

平塚が聞くと

 

「兄ならボーダーの任務でいません」

 

「兄?君は……」

 

「比企谷八幡の妹の比企谷小町です」

 

小町が自己紹介すると

 

「お兄さんとは全然似てないのね。あんな腐った男の妹なんてさぞ大変でしょう。同情するわ」

 

雪ノ下が心底八幡が嫌いという風に言うと

 

「そうですか、兄は貴女達より凄い人達に認められてる自慢の兄です。貴女達が何と言おうと気にしませんよ」

 

小町がツンとした感じにいう。

 

「今日は別に喧嘩をしに来たわけじゃないんだから落ち着いて」

 

小町と雪ノ下の間に嵐山が入る。

 

「ふん……」

 

雪ノ下は不機嫌そうにだが引き下がると

 

「ではこれからの予定を説明しよう、遅れたが私が総武の責任者の平塚だ」

 

そう言うと平塚が日程などを説明し始めた。

 

「俺達が皆の手伝いをさせて貰う、短い間だけどよろしくね」

 

嵐山がボランティアを代表して挨拶をする。

 

「ボーダーの人だ!!」

 

「格好良い!!」

 

嵐山隊を見て子ども達から歓声が上がる。

 

「では先生、よろしくお願いします」

 

「はい」

 

小学校の先生に場を譲り嵐山は退くと

 

「みんなはこれから山道を通って……」

 

 

 

小学生の全斑がオリエンテーリングに出発したあと小学生の教師がこちらにきて

 

「まず頼みたいのは今日の夕ご飯作りの手伝いです。山頂に道具などは用意してあります。登るついでに出来れば子ども達の様子もみて欲しい」

 

「わかりました、じゃあみんな行こうか」

 

嵐山を先頭にボランティア組みも登り始めた。

 

 

しばらくして

 

「あの子達どうしたのかな?」

 

「少し迷ってるぽいすね」

 

迷ってる風の子ども達を見て由比ヶ浜が言うと佐鳥も反応する。

 

「ちょっと様子を見てきます」

 

葉山がその生徒達に近寄る。

 

「どうしたのかな?」

 

「あ、ボランティアのお兄さん!!」

 

「ちょっと答えがわからなくてぇ」

 

何人かの娘が甘えたように言う。

 

「ん?」

 

「どうしたの?」

 

葉山の方を見ていた佐鳥に時枝が聞く。

 

「いや、あの子何で離れてるのかな?っと」

 

視線の先には葉山と楽しそうに喋る集団をつまらなさそうに眺める少女がいた。

 

「仲間外れにされてるみたいね、彼女」

 

雪ノ下が言った時に

 

「チェックポイントは見つかったかな?」

 

葉山がその少女に話しかけていた。

 

「……まだ」

 

「名前はなんて言うのかな?」

 

「鶴見留美」

 

小さく名乗ると

 

「そうか、留美ちゃん。みんなと探せば見つかるかもよ」

 

そう言って葉山は鶴見を集団の中に連れて行く。するとさっきまで楽しそうにしていたのに

 

「早くいこぉ」

 

葉山の前だから取り繕っているものの、ギクシャクしていた。

 

 

「どんな所でもあるんですね、あぁいうの」

 

小町が言うと

 

「当たり前じゃない、学年など関係なく、みな等しく人間なのだから」

 

雪ノ下の言葉を最後に一行はその場をあとにした。



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比企谷小町④

全話でボランティアの手伝いをお昼ご飯としてましたが夕ご飯に訂正しております

カレーの説明のとこは自己流です。あしからず


「みんなのところにはボランティアの人達が行くから分からない事があったら遠慮なく聞いてね、じゃあ気をつけて料理して行こうね!」

 

嵐山が小学生に声かけをすると『はい!』と元気な返事をしてきたのに嵐山は笑みを浮かべ

 

「じゃあみんな別れようか」

 

嵐山がボランティア組みに指示をするとみんなは小学生のとこに向かった。

 

「どれくらい炒めれば良いですか?」

 

「柔らかくなるまでね、今はシャキッとしてるけどすぐにフニャフニャになるから」

 

「っぷ!!」

 

「な、何ですか!?佐鳥先輩!!」

 

普段なら絶対に言わなさそうな言葉を話す木虎に佐鳥が吹き出したのだ。

 

「な、何でもない」

 

笑いをこらえながら佐鳥は木虎の側から離れた。

 

「えっと、これくらいで良いですか?」

 

「うん、良いよ。どんどん野菜入れていこうか」

 

オペレーターの綾辻が答える。

 

「うはぁ、綾辻さん手馴れてるね。あーしはいっぱいいっぱい」

 

「三浦さんも結構手際良いよ?」

 

「そ、そう?ありがとう」

 

 

「うむ、良い匂いがしてきたのだ」

 

「おぉ……」

 

材木座が鍋の蓋を開けるとカレーの良い匂いがあたりに漂い始め子ども達は美味しそうと口々に言う。ちなみに材木座は最初こそドモッたものの玉狛で鍛えられたのかすぐに慣れたようだ。

 

 

 

「留美ちゃんはカレー好き?」

 

班から1人離れぽつんとしていた鶴見に話しかける葉山。

 

「……カレー嫌いだから」

 

目を伏せながら言う鶴見に

 

「そっか……」

 

 

 

葉山はそれ以上何も言えずに去っていった。

それから小学生達の夕ご飯は何事もなく終わりボランティア組みの食事の時間となった。

 

「やっぱり気になるね」

 

食事もひと段落した後に由比ヶ浜がポツリと漏らす。

 

「ふむ、何か心配ごとかね?」

 

平塚が由比ヶ浜に聞く

 

「1人孤立しちゃってる子がいて」

 

葉山が答える。

 

「ここに私達は奉仕部として連れてこられました。彼女が助けを求めるなら手を貸したいと思います」

 

雪ノ下が言うと

 

「ふむ、助けは求められてるのかね?」

 

「それは……わかりません」

 

平塚の疑問に雪ノ下が答えると

 

「まぁ良い、後は君達で話したまえ。私は先に寝る」

 

そう言い立ち去ろうとする平塚に

 

「ちょっと待ってくれますか?平塚教諭」

 

嵐山が声をかけた。

 

「何だね?」

 

「他校のイジメの可能性が高い問題に首を入れようとしている生徒を放って離れるのは監督者として間違っているんじゃないですか?」

 

「ぐっ……私は生徒の自主性に任せようと……」

 

「それは問題の内容によるのでは?今回のようなデリケートな問題では自主性を重んじたなど、何の免罪符になりませんよ?」

 

「はぁ……分かった。では嵐山くん。君には何か考えがあるのかね?」

 

ため息をつき席に平塚が戻ると嵐山に聞く。その顔は良い案があるなら言ってみろと語ってる。

 

「林間学校の先生にこの件の報告をして、俺たちは手を出さないことです」

 

嵐山が答えると

 

「ハッ……何か?君はイジメられてる生徒を放っておくのか?私は彼女達なら問題を解決できると思い任せようと思ったのだがな」

 

嵐山を小馬鹿にしたように言うと嵐山隊の面々は平塚を睨む。

 

「仮にこの林間学校の期間に手を出して、その後は?何か起きたら平塚教諭達は責任を取れるんですか?」

 

そう嵐山が言うと小町が手をあげ

 

「じゃあ、もしその、奉仕部?に助けを頼まれた場合にどうするか聞いて見ると言うのは?」

 

平塚と嵐山の話は平行線だと思った小町はそう提案すると

 

「ふむ、雪ノ下、由比ヶ浜、まぁ厳密には奉仕部ではないが葉山、案はあるか?」

 

平塚が3人に聞くと

 

「私も過去何度かイジメに会いましたが全て反撃してきました。そのやり方を教えます」

 

「やっぱり生徒の話し合いの場を設けたいと思います。きっと根はみんな良い子だから仲良くできると思います」

 

「えっと、まず誰かに留美ちゃんから話しかけるとか?」

 

雪ノ下、葉山、由比ヶ浜の順に答えると

 

「雪ノ下嬢よ、もし反撃したとして問題が大きくなったらどうする?イジメがより過激になったら?皆が皆強くはないのだ」

 

「あんさぁ、葉山。みんなが話し合いをしただけで仲良くなれるわけないじゃん?そんな事で解決するならあーしと姫菜は隊をぬけてないし」

 

「結衣、そういうのは誰かに強制されてすることじゃないよ。自分から行かないと意味がないんだよ」

 

材木座、三浦、海老名がそれぞれ反論する。

 

「ふむ、話し合いは平行線だな。今日は解散だ」

 

それをきっかけに奉仕部は離れていった。

 

「結局、本気で解決する気なんてなかったみたいですね」

 

「そうだね、本気で解決したいならこんな早く解散しないでこちらにも意見を聞いてくるでしょうし」

 

時枝と綾辻が言う。

 

「現実をみない人達だもの。自分達の意見を簡単に通せそうにないから諦めたんでしょう」

 

木虎が続けて言った後に嵐山側のボランティアは基本的には嵐山の方針で行くことを確認して解散した。



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比企谷先輩①

三浦、海老名、葉山は1年からの付き合いだったという、設定で……公式でもこうだったような気がしますが、違う場合もしくは明示されてない場合はこちらの設定ということで

木虎キャラ崩壊してるかも?とりまる君、出番とってごめん


「そういえば三浦先輩って何でボーダーに入ったんですか?」

 

嵐山側のボランティアの女性陣にあてがわれた部屋で雑談していると小町が三浦に質問した。

 

「まぁ、別に隠すことでもないか。今となっては黒歴史だけど」

 

そう前置きして

 

「1年の頃のあーしは葉山に惚れてわけ。んで葉山からあーしと姫菜が誘われて入隊したの。男子連中は部活したいって断ったみたい」

 

あーしは単純だったんだよねぇと言い。

 

「どうして雪ノ下……先輩は葉山隊にいたんですか?私から見ても、三浦先輩とかと雪ノ下……先輩とは馬が合わないように見えたのですが」

 

木虎は余程呼びたくないのか雪ノ下に先輩をつけるのにつっかえつっかえになり、

 

「それは葉山くんが雪ノ下さんに惚れてるからだよ」

 

海老名が答える。

 

 

「雪ノ下さんは最初ボーダーに入ったのは、何でもすぐ極めたからボーダーでもトップになれる。ここを足がかりに世界を変えてみせるって言ってたかな?それで雪ノ下さんに近づきたい葉山くんがチームの必要性を説いてチームを組んだの。」

 

鈴鳴支部には雪ノ下家の伝手で来馬家に話し身を寄せたと言う。

 

「葉山くんは雪ノ下さんの言いなりも同然で、最後は私達が抜けたの」

 

「それより、あーしは木虎ちゃんに聞きたいんだけど、昔ヒキオと何かあったん?凄い尊敬してるみたいだけど」

 

職場見学で八幡のために怒っていた木虎を思い出しながら三浦が聞くと

 

「お!!小町も聞きたいです!!」

 

「大したことじゃないですけど……昔、B級で当時トリオンが低かった私が戦い方に悩んでいた時に全てのトリガーを扱える凄い人がいるって噂を聞いて……見つけたのが比企谷先輩でした。」

 

木虎は思い出しながら言う。

 

「それで銃手から攻撃手の転向やスパイダーの使い方を教えてもらったの。それから私の戦術の幅は広がりました」

 

回想

 

『お願いします!私に戦い方を教えてください!』

 

『い、いや、俺じゃ参考にならないんじゃね?』

 

八幡は少女に請われ戸惑っているが

 

『お願いします、比企谷先輩は全てのトリガーに精通してると聞きました。』

 

『別に精通はしてない、触ったことがある程度だ……はぁ、じゃあまずステータスとか教えて貰えるか?』

 

『は、はい!』

 

そうして木虎は自分の資料を八幡に渡し

 

『はっきり言うが、このトリオンじゃ銃手はキツイな。攻撃手に軸を置いた方が良い。ただ攻撃手になったところでまともに打ち合うのはできないな』

 

『そうです……よね……』

 

木虎は今まで意地で何とかしてきたがやはり自分に、ボーダーは向いてないと落ち込みかけるが

 

『ただ戦績をみる限り頭は回るんだな。基本的にトリオン能力で負けてる銃手でこれだけの勝ちをあげるのは凄いな』

 

『あ、ありがとうございます!!』

 

『トリオンが低いなら低いなりの戦い方はあるだろ、例えばそうだな……スパイダーを使うとかな』

 

木虎は意外そうな顔をし

 

『スパイダーみたいなトラップを少しでも張れば、相手に何かあるかも、この先は危険か?って心理的圧迫を与えられる。それだけでもだいぶ違うんじゃないか?』

 

『な、なるほどです』

 

『もし攻撃手になりたいなら、俺が暇な時は教えてやる。今から防衛任務だから、今日はここまでだ』

 

『ありがとうございます!!』

 

回想終了

 

まだ女の子慣れしてなかった八幡から聞き出すのに苦労したのは伏せたまま話す木虎。

 

「はぇ〜、お兄ちゃんがそんなことを」

 

「ヒキオって結構頭いいしね」

 

それからも女子の夜話は続いた。

 

 

 

 



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比企谷小町⑤

「今日はお昼までは自由時間だ。昼からは夜にキャンプファイヤーのための準備をする」

 

嵐山が指示を出すと一旦解散となった。

 

そして

 

「冷たーい!!」

 

川に入った小町が叫ぶ。近くに川があるということで水着を持ってきていたメンバーは着替えて川に遊びにきていた。

 

「気持ち良いし」

 

夏に入ってからずっと玉狛で修行していた三浦も癒されているようだ。

 

「あいや、やはり女子もここに居ったか」

 

そこに厨二言葉が響く。どうやら男子も考えていたことは一緒だったようだ。

 

「おぉ……」

 

「賢、あんまジロジロ見ると蹴られるよ」

 

何にとは言わないが感嘆の声をあげる佐鳥に時枝が言う。

 

「冷たい川の中で絡む時枝くんと佐鳥くん、2人の体温は冷たい水の中なはずなのに高まっていき……」

 

『キマシタワー!!!!』

 

「ちょ、姫菜!擬態しろし」

 

「あはは、海老名さんは相変わらずだね」

 

暴走する海老名を見て笑う綾辻。

そうしていると

 

「あっ……」

 

「ゆ、結衣!!」

 

雪ノ下達も川に来たが三浦達を見た瞬間

 

「あっち、行こう。ゆきのん」

 

三浦の声を無視するように由比ヶ浜は雪ノ下達を連れてその場を立ち去った。

 

「優美子さん……」

 

「ん、大丈夫だし」

 

学校でもボーダーでも由比ヶ浜に徹底的に無視されている三浦は酷く落ち込んでいた。

 

「きっと結衣もいつか分かってくれるって」

 

海老名は三浦がどれだけ由比ヶ浜の事を大切に思っていたか知ってるからか慰める。

 

「わーってるし……ん?あれって……」

 

顔を俯かせていたが、海老名の声で顔をあげると遠くに

 

「あ、留美ちゃんですね」

 

遠くに1人川を眺める鶴見を小町が確認はした。

 

「どうしたの?」

 

綾辻が話しかける。

 

「……朝起きたら、みんないなかった」

 

「そっか……」

 

中々辛い出来事に言葉をなくす綾辻。

 

「……よし、留美ちゃんも一緒に遊ぼう!!」

 

周りに他の小学生がいないことを確認した小町は鶴見にそう話しかける。

 

「……あ」

 

「おぉ!!遊ぼうぜ!!」

 

佐鳥が明るく話しかけるが

 

「ロリコン?」

 

「ぐっはぁ!!」

 

馴れ馴れしすぎたのか、佐鳥にキツイ一撃がみまわれる。

 

「ふふっ……」

 

そんな佐鳥をみて初めて笑みを浮かべる鶴見に周りは同じように笑みを零した。

 

 

 

それから時は経ち夜になった。

 

「キャンプファイヤーとか久々だし」

 

赤々と燃える炎を見ながら三浦が言う。

 

「私の林間学校は大規模侵攻で潰れちゃいましたから、ちょっと羨ましいです」

 

優しい目で火の周りを踊る小学生を見る小町。

 

「今度は私たちでキャンプファイヤーすればいいし」

 

「俺たちもいくぜぇ!!」

 

「はい!!、あれ?嬉しいのに……」

 

小町は嬉しそうに返事をし涙を流していた。

 

「我らの分の食料を持ってきたでござる、あいや小町嬢どうしたでござる?」

 

「えへっ、何でもないです!」

 

食べ物を持ってきた材木座と時枝が加わりさらに賑やかになりそうだったが……

 

【バチバチバチッ!】

 

明るく照らされていた広場に黒い影……近界民が通るゲートが出現した。

 

「ゲ、ゲート!!」

 

三浦の声が響く。

 

「小町ちゃんと海老名さん、綾辻はすぐに小学生の避難を!!材木座くんと三浦さんは護衛を頼む。俺たちは出現したネイバーを片付ける」

 

嵐山はすぐにその場にいたメンバーに指示を飛ばす。

 

「了解!!」

 

全員が返事をするとすぐに行動を始めた。

 

「みんな、こっちに!!」

 

幸いなことに小学生はあまりの衝撃にか散り散りにならずにすんでいて、綾辻の声を聞くと慌ててそちらに走りだした。

 

「きゃっ!!」

 

しかし足をほつれさせた女子生徒が1人転んでしまった。

 

「あっ!?」

 

それをみた小町が助けに行こうとしたが

 

「大丈夫?」

 

「あっ……鶴見さん」

 

「早く逃げよ?」

 

近くにいた同じ班の鶴見が手を差し伸べ一緒に立ち上がるがモールモッドが迫っていた。

 

「手出しはさせん!!」

 

「こっちくんなし!!」

 

材木座と三浦が鶴見達に近づこうとしていたモールモッドを切り裂く。

 

「早く逃げるし」

 

「行こう」

 

鶴見は三浦に一礼すると女子生徒と一緒に走りだした。

 

 

 

「何でこんな場所にイレギュラーゲートが……」

 

バムスターを得意のツインスナイプで撃ちぬきながら佐鳥が喋る。

 

「わからない、だけど迅さんは予知していた。可能性は低かったらしいけどね」

 

「だから俺たちが呼ばれたんですね、念のために」

 

嵐山と時枝がバンダーを集中砲火しながら話し

 

「あれは、雪ノ下先輩達!?」

 

モールモッドを倒しながら木虎の驚愕の声が上がる。

 

「3人がゲートの中に!?」

 

佐鳥が叫ぶが

 

「くっ……」

 

追おうとするがトリオン兵にその気はないだろうが邪魔をして近づけず、3人が通ったゲートは閉じてしまった。

イレギュラーゲートの発生と3人の近界への渡航はすぐに本部に報告された。

 

『近界民の大侵攻が確定しました』

 

イレギュラーゲートの発生により大侵攻が発生するのが確定した事を迅が予知した。



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雪ノ下陽乃

林間学校の事件が終わり様々なことがあった。

 

「それでは君達は彼らの密航の理由は知らないんだね?」

 

林間学校が終わり、嵐山隊の面々に三浦、材木座、小町。そして来馬隊は本部に呼び出されていた。内容はもちろん元葉山隊の3人の近界への渡航についてだが、全員知らなかった。

 

「比企谷妹、比企谷は何か知ってると思うか?」

 

本部司令、城戸政宗が聞くと

 

「い、いえ……兄も知らないと思います。それにもし知っていたら兄なら容赦なく制裁していたと思います」

 

「だろうな、敵対するものを野放しにするような奴ではないからな、良いだろう。全員下がりたまえ」

 

そして全員退室した。

 

「ではこれより大規模侵攻についての会議をする」

 

密航問題は一旦置かれ、大規模侵攻の対策会議が開かれた。

 

 

 

 

三浦達が玉狛支部に戻ると

 

「お、戻ってきてくれたとこ悪いんだけど。3人にお客さんだよ」

 

「「「?」」」

 

宇佐美が客がいると教えてくれた。客間にいたのは

 

「雪ノ下のお姉さん?」

 

「こんにちは、三浦ちゃん」

 

3人が椅子に腰掛けると陽乃は話し出した。

 

「比企谷くんは?」

 

「兄なら任務でずっといません」

 

小町が答える。

 

「そっかぁ、ちなみに比企谷くんは雪乃ちゃん達がこんな事するって知ってたと思う?」

 

「ありえません、こんな人類に対する明確な敵対する行動を兄は見逃しません。」

 

「……そっかぁ」

 

答える小町をしばらく見ていた陽乃は少しするとため息をつき

 

「てことは手がかりなしか」

 

「雪ノ下さんは知らなかったんですか?」

 

小町が聞きかえすと自虐的な笑みを浮かべ

 

「私からしたら雪乃ちゃんは可愛い妹だけど、雪乃ちゃんからは恨まれてると言うか、妬まれてると言うか……少なくとも良い感情は持たれてなかったわ」

 

そして陽乃は震えた声で

 

「もしかしたらこの事件を起こしたのも私のせいかもしれない、私がボーダーに入ると雪乃ちゃんに告げなければ……」

 

「雪ノ下さんはボーダーに入るんですか?」

 

小町が聞くと

 

「雪乃ちゃんの監視とかで入る予定だったけど、その理由もなくなったし、ボーダーからすれば裏切り者の身内……スパイの可能性もあるから入れないわ」

 

そして3人を見ると

 

「もし雪乃ちゃんに関する情報が入ったら出来れば教えて欲しいの」

 

頭を下げてお願いしてくる陽乃に

 

「わかりました、もし情報が入れば可能な限りお知らせします」

 

小町の言葉にほっとした陽乃は3人と玉狛の人にお礼を言って出て行った。

そして衝撃的な林間学校の事件が嘘かのように静かな日がそれからは流れあっという間に夏休みは終わりを告げるのだった。



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三浦隊①

『ゲート発生ゲート発生 遠征艇着艇します 付近の隊員は注意してください』

 

ボーダー本部中央、外部からは見えない場所にゲートが開き長らく行っていた遠征艇が帰ってきた。

 

 

 

 

「皆ご苦労だった。無事の帰還何よりだ」

 

遠征に向かっていたS級、比企谷八幡とA級1位太刀川隊隊長 太刀川慶 A級2位冬島隊 隊長代理 当真勇 A級3位風間隊隊長 風間蒼也はボーダー本部司令室に呼び出されていた。

 

「今回の遠征で入手したトリガーです。お納めください」

 

風間が仰々しく渡す。

 

「ご苦労。鬼怒田開発室長、先に持って行ってくれ。比企谷は後で向かわせる」

 

「了解です」

 

鬼怒田はトリガーを受け取ると開発室に向かった。

 

「それでは本題だが……元鈴鳴支部所属葉山隊の葉山隼人、雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣の3人が密航する事件が起きた」

 

驚く4人に

 

「比企谷、おまえは何か知っているか?」

 

「いえ、何も。知っていたら始末しています」

 

底冷えするような冷たい目をして話す八幡。敵対しなければ基本的に人畜無害だが、親の夢を邪魔するかもしれない者には例え可能性であっても一切の容赦をしない八幡の本性である。

 

「(流石の比企谷、冷や汗がでるな)」

 

「(相変わらず鋭利な目だ)」

 

「(いつ見てもこの目には慣れないぜ)」

 

太刀川、風間、当真の3人はそれぞれ八幡の目を見て思う。

 

「だろうな……本題はこれからだ。恐らく年内、年を跨いだとしてもそう遠くない時期に再び大規模侵攻が起きる」

 

その言葉に全員が驚く。

 

「そのきっかけは恐らく、先の3人の渡航。その時点で大規模侵攻の予知が確定した」

 

今はまだ頭に入れておけばいい、そう城戸司令は伝えその場は解散となった。

 

 

開発室にて

 

「お疲れ様です」

 

そう挨拶しながら開発室に八幡が入ると、中は早速持ち帰ったトリガーの解析に移っていた。

 

「おぉ、八幡。遠征ご苦労だったな」

 

「いえ、今回は温和な国だったのでまだ楽でしたよ。少し距離がありましたけど」

 

「そうか、しかし来てもらって悪いが今はまだ八幡の手を借りる状況じゃない。早く小町ちゃんに顔を見せてやれ」

 

「了解です」

 

八幡は鬼怒田の気づかいに感謝し、開発室を後にした。

 

 

玉狛支部

 

「こんにちはー」

 

八幡が入ると

 

「お兄ちゃん!!」

 

小町が真っ先に抱きついてきた。

 

「ただいま、小町」

 

小町の頭を撫でながら言う八幡。

 

「やっと帰ってきたわね!さぁ!私と勝負しなさい!!」

 

小南が来て言うが

 

「すまんな桐絵、今勝負したら俺は死ぬんだ」

 

「え!?ご、ごめん。今日は諦めるね」

 

しおらしい桐絵は可愛いとか思っていると

 

「何ヒキオ嘘ついてるし」

 

「ハッハッ、その程度で死ぬ玉ではあるまい」

 

三浦と材木座も出迎える。

 

「ご苦労だった、はちまん」

 

らいじん丸にまたがり陽太郎も出迎えた。

 

「だ、騙したわね!!」

 

小南は怒ると八幡に噛み付く……物理的に

 

「小南、その辺にしといてやれ」

 

木崎が小南を止めようとするが止まらず

 

「小南先輩、長く小南先輩に噛まれると比企谷先輩は動けなくなるらしいですよ」

 

「え!?ごめん八幡。なんでもっと早く教えないのよとりまる!」

 

慌てて離れる小南、八幡が逃げたのを確認した烏丸は

 

「まぁ、嘘ですけど」

 

「だ、騙したわね!?って八幡いないし」

 

一旦小南は落ち着き

 

「比企谷くんなら今、小町ちゃん達と大事な話をしてるよ」

 

そこにきた宇佐美が教える。

場面はかわり八幡は……

 

「ヒキオ、あーしと材木座と姫菜と小町ちゃんでチームを作るのを許して欲しいし」

 

三浦、材木座、小町、海老名と話をしていた。



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三浦優美子④

「はぁ、別に俺に了解なんて取る必要ないぞ」

 

気構えている三浦達に八幡はあっさり告げる。

 

「小町が隊に入りたいならそうすれば良い」

 

ボーダーに入ったから、俺が口だすことじゃないと言い。

 

「じゃあ小町ちゃんがB級に上がったら正式に結成だね」

 

「うむ、楽しみである」

 

海老名と材木座が言うと八幡は立ち上がり

 

「三浦、少し話がある」

 

「う、うん」

 

三浦も立ち上がると八幡についていき

 

「三浦は葉山隊の事は知っているのか?」

 

外に出て川を眺めながら八幡が聞く。

 

「うん、あーしらがいった林間学校のボランティア先で3人は密航した」

 

「そうか……」

 

八幡は息を吐くと

 

「三浦、もしあいつらが敵になったらお前は、戦えるか?」

 

八幡が聞くと

 

「ど、どういうことだし」

 

「あいつらは人類の裏切り者だ。次会うときは敵の可能性が高い。そんな時にお前は友達だった人を相手して戦えるか?」

 

振り向いた八幡を見て三浦は死を覚悟した。八幡にその気はないだろうが酷く冷たい目をしていた。

 

「あ、あーしは……」

 

少し震えながら答えようとする三浦に

 

「……まぁ安心しろ、お前が出来ないなら俺が始末をつける」

 

それは由比ヶ浜への、いや恐らく葉山隊の死刑宣告も同然だった。

 

「戦うか戦わないか、まだ時間はある。ゆっくり考えとけ」

 

「わ、分かったし……」

 

三浦が何とか言うと

 

「なら良い、小町をよろしくな」

 

そう言うと八幡は中に入っていった。

 

「っ……はぁはぁ」

 

三浦はその場に腰を抜かした。由比ヶ浜と戦うかもしれないという事と初めてみた八幡の怜悧な眼。その2つで緊張が極限まで高くなったいたのだ。

 

「結衣……」

 

思いだすのは短かったが由比ヶ浜との楽しい日々。

人懐っこくて可愛いけど、自分の考えを押し殺して人に合わせすぎるのが、たまに傷。

 

「あーしは……」

 

しかし雪ノ下と出会ってから由比ヶ浜は変わりだした。最初は自分の意見を少しずつだが言うようになっていった。悔しいとも思うし基本的には雪ノ下が嫌いだが、その点は感謝していた。

 

「結衣に何もできてない」

 

改めて考えると三浦は由比ヶ浜に何もしてやれてない。三浦に相談しなかった由比ヶ浜にも非はあるのだが、三浦はそう考えた。

 

「なら今あーしに出来ることは……」

 

色々な事がぐるぐると頭を回ったが辿り着いた答えは……結衣を止める事だけだった。

 

「ならこんなとこで泣いてる場合じゃない…….」

 

三浦は立ち上がると玉狛支部に入っていった。

 

「お?案外早く覚悟決めたみたいだな」

 

八幡が入ってきた三浦に言う。

 

「あーしをナメんなし、結衣はあーしが止める」

 

「じゃあ頑張れ、俺はここで1度家に帰る」

 

そう言うと八幡は玉狛から帰っていった。



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相模南①

戸部最後の活躍かも。あと八幡の運命は収束する(むしろ酷くなる)


『男子実行委員 比企谷八幡』

 

防衛任務上がりで遅れてLHRに来た八幡が見たのは黒板に書かれたその文字だった。

 

「あの、先生これは?」

 

八幡が担任に聞くと

 

「あぁ誰もやりたがらなくてな、ちょうどお前は防衛任務も放課後にはなかったようだし、入れたんだが不味かったか?」

 

一応三浦が防衛任務などを理由に止めようとしたが、肝心のシフトは知られていたため失敗したらしい。

 

「あぁ…….いえ、大丈夫です」

 

当面の間は開発室でも八幡の出番はなく、しばらくは暇なのは事実。しかも平塚とは違いクラスの担任に嘘をついてまで断るのは気が引けるので受けた八幡。

ちなみに葉山達の件は裏切り者として認知されている。最初は拐われたという事にする案もあったが目撃者も多い上に一応は正規隊員が3人も、拐われただとそれではボーダーの技術を根幹から疑われかねないことから却下された。根付が相当に頭を悩ませていたが、少しずつ火は雪ノ下家に移っていってるというから、彼の調整力が並大抵ではないことが伺える。三浦によると夏休み明け数日はさすがに重い空気だったが、戸部というクラスメイトがみんなに元気だそうぜといった感じでふれまわり、明るさを取り戻したらしい。

 

「ありがとう、比企谷。じゃあ次女子決めるぞ」

 

案の定、女子も誰もやろうとはしない。しかも相方は自分達のアイドルであった葉山をボコした人間だ。誰もやりたがらなくて当然だろう。三浦と海老名は隊の関係もあり離れるのはできるだけ避けていた。

 

「相模さんとか良くね?ほら相模さん人気だし」

 

「え、えぇ?うちぃ?」

 

同じクラスの戸部がみかねたのか、相模を推薦した。確かに相模は三浦と海老名がボーダーに打ち込むようになってからクラスでは存在感がでていた。

 

「そうだよ、南やりなよ」

 

「相模さんならきっと出来るって」

 

周りから口々に相模を推す声が上がる。

 

「(うわぁ……)」

 

比企谷はクラスメイトの団結力に引いていた。

 

「じゃ、じゃあ。うちがやります」

 

「おぉ、そうか。じゃあ比企谷と相模。実行委員頼むぞ」

 

そしてクラスの出し物は喫茶店というありふれたものとなった。

 

放課後になり最初の文化祭実行委員の集まりが行なわれた。

 

「こんにちはぁ、生徒会長の城廻です。文化祭の生徒会の役割はあくまでフォローです。そして実行委員長は2学年から実行委員から選出してもらいます」

 

ぽわぽわとした雰囲気を纏った生徒会長の少女が言うが、誰もそんな大役をやりたがらない。

 

「誰かやる気のある奴はおらんのかぁ?」

 

文化祭顧問の厚木が言う。ちなみにもう1人の顧問は家庭科の先生だ。

 

「えと、誰もやらないならうちがやります」

 

そう控えめに手を上げたのは相模南だった。

 

「じゃあ次は副委員長だね」

 

「なら同じクラスの比企谷でええじゃろ。同じクラスの奴がそばにいればやりやすいと思うぞ」

 

飛び火された八幡はたまったもんじやまないがあれよあれよと言う間に……

 

「じゃ、じゃあ第1回文化祭実行委員会を始めます」

 

八幡とは違い自分から手を上げたにも関わらず相模はガチガチに緊張していた。

 

「では最初に役員決めから行きたいと思います。宣伝広報をしたい人!!」

 

相模が言うが手があがらない。

 

「え、え……えと」

 

「はぁ……」

 

徐々にテンパり始める相模を見かねた八幡は一枚の紙を相模にだけ見せる。

 

『宣伝で色んなとこにいってもらう』

 

「あ……色んなとこに宣伝でいけます!!」

 

それをきっかけにチラホラと手が上がり宣伝広報の役員が決まっていった。

 

「では次に……」

 

それから八幡のフォローのおかげで相模は何とか役員決めを行う事ができた。八幡もまさかボーダーで根付などの活躍を見ていたのが役立つとは思わなかった。



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相模南②

相模が第二の三浦となる可能性大


「そいや姫菜は何で文化祭で劇を出し物に推さなかったん?」

 

八幡が実行委員に決まった日の玉狛支部にてお茶を飲んでいた三浦が海老名に聞く。

 

「あー……」

 

海老名は暗い雰囲気を出しながら

 

「この私ともあろうものがヒキタニ君と戸塚くんの絡みを主軸にした以外に文化祭に出せる華やかな物語とキャストを想像できなかったんだよ!!」

 

一生の不覚!!と嘆いている海老名にやれやれとなる三浦である。

 

「優美子達は結局何をするの?」

 

話を聞いていた小南が話しかける。

 

「あーしらは結局普通の喫茶店だよ」

 

「玉狛みんなで食べに行くから」

 

「美味しいの楽しみにしてるぞ」

 

烏丸と料理上手な木崎に言われ

 

「木崎さんに期待されるとプレッシャーが……」

 

柄にもなく少しプレッシャーを感じる海老名だった。

 

 

 

それから文化祭の準備は特に問題なく進んでいた。

 

「ねぇ、比企谷くん。明日の定例ミーティングなんだけど……」

 

相模は最初の会議で八幡に助けられて以降ちょくちょくアドバイスをもらいにきていた。

 

「どうした?」

 

元来お兄ちゃん気質な上にボーダーでも後輩から頼られているせいか相模に答える八幡。

 

「今全体の進行がこんな感じなんだけど……大丈夫かな?」

 

最初を乗り切ってから自信がついたのか、責任感が芽生えたのかこうして本来はしなくても良い全体の進捗の確認なども積極的にする程度になっていた。

 

「あー……この感じだと……」

 

その日も2人は遅くまで残り翌日の会議をスムーズに済ませるために話し合いをした。

 

その帰り

 

「比企谷ちょっと良いか?」

 

平塚に八幡は話しかけられた。

 

「どうしました?」

 

あれだけ奔放であった平塚も前からは考えられないくらい憔悴していた。

 

「君は彼女達のことを何か知らないか?」

 

「俺は何も知りませんよ、事件の時は任務でいなかったですしね」

 

八幡が答えると

 

「君はS級隊員なんだろ?本当に何か知らないのか!?彼女達の居場所とか、本当は知っているんじゃないか!?」

 

だんだんと言葉が激しくなり八幡に詰め寄る平塚。

 

「俺が知るわけないじゃないですか、知ってたらボーダーに突き出してますよ」

 

あくまで冷静に返す八幡。

 

「そうか……すまなかったな」

 

そう言い立ち去る平塚。数日後、平塚には様々な理由から離島への転勤が命じられた。

 

 

 

翌日の文化祭実行委員会の定例ミーティングが開かれた。

 

「それでは各部門の進捗状況を発表お願いします。では宣伝広報からお願いします」

 

「掲示予定の7割くらいが終わり、ポスターも半分くらいが終了しています」

 

宣伝広報のリーダーに生徒が言うと

 

「すいません、少し遅れ気味なのでまずは掲示物を終了させて貰えますか?具体的な内容はともかく、文化祭がある事をまず周知して貰いたいので。同時にポスター協力の店舗への交渉を早めに開始してください」

 

相模が指示をだすとリーダー生徒は、はいと返事をし席につくと言われた事をメモにとっていた。

 

「では次は有志統制お願いします」

 

「はい、現在は校内で4団体、外部から3団体の応募があります」

 

有志統制リーダーが言うと

 

「校内の団体はまだクラスの出し物関係でゴタゴタしてるのでもう1週間くらい参加呼びかけ待ちましょう。かわりに外部団体ですが、過去参加してくれた方々に連絡を入れて参加を促してみてください。当日のスケジュールの予定などはまだ決めきれないとは思いますが、ざっくりとしたタイムスケジュールと必要な人員をだしてください」

 

「了解です」

 

そして有志統制のリーダーも座る。

それから各部門も同じように相模が捌き続けて定例ミーティングは無事終了した。

 

 

「ひ、比企谷ぁ。緊張した……」

 

「よく頑張ったな。上出来だと思うぞ」

 

八幡がアドバイスしたのは進捗状況に関してのみでどういう判断、指示をするかは相模に任せていたが八幡が口をださなくてもいい結果となった。この調子なら問題なく文化祭になるだろうと八幡は予測した。




ちなみに平塚は最後の最後に再登場予定


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相模南③

相模は拙いながらも実行委員長を続けていた。どうしても手に負えない部分は八幡がオーバーワークすることにより何とか持たせていた。

 

「ぐぅ……」

 

「はい、お兄ちゃん。今日は絶対安静だよ」

 

文化祭実行委員の仕事だけでなく、放課後にないと言うだけで防衛任務が0ではない八幡。体に無茶をさせすぎたのか微熱がでていた。

 

「さて、どうしたものか」

 

実際のところ、体は辛くはない。まだボーダーの部隊がまともにいなかった時は比ではないくらいに忙しい日々を送っていたのだから。

 

「するか……」

 

小町から何とか取り上げられずに済んだ文化祭実行委員の資料の処理を始める。

 

 

「相模、このプリント類を比企谷の家に見舞いついでに持っていってくれないか?」

 

「う、うちがですか?」

 

八幡が休んだこの日は三浦達は防衛任務でおらず、相模以外のクラスメイトは準備でてんやわんやしている。

 

「文化祭実行委員の仕事は割と余裕があるらしいじゃないか、1日くらい抜けて問題になるような状態じゃないだろ?」

 

八幡のフォロー付き相模の指示の元、文化祭実行委員は余裕を持って進んでいた。

 

「厚木先生や鶴見先生には俺から言っておくから頼んだぞ」

 

そして担任は去っていった。

 

 

 

そして比企谷宅についた。

 

「うぅ……」

 

相模はある意味、文化祭実行委員の初の顔合わせの時以上に緊張していた。

 

「落ち着くのよ、南……」

 

全然落ち着いていないが

 

「スゥッ……ハァ」

 

『ピンポーン』

 

深呼吸して意を決してチャイムを鳴らすと

 

「はい、どちら様ですか?って相模?」

 

「え、えっと。ひきぎゃやくん!!」

 

噛み噛みな相模に少し呆れた八幡だが

 

「とりあえず上がれよ。お茶くらいはだす」

 

「は、はい!!」

 

ぎこちない動きで八幡についていく相模だった。

 

「それで?何か用か?」

 

「えっと……これを」

 

八幡の質問に相模は担任から渡されたプリントを渡す事で答える。

 

「あぁ、悪かったな。プリントサンキュー」

 

「えと、思ったより元気そうだね」

 

その質問に八幡はため息をついた後

 

「妹がオーバーにしただけだ。朝微熱があったくらいで今は何ともない」

 

小町は最近八幡が忙しくしていたのが分かっていたため、休ませるために微熱とはいえ無理矢理抑え込んだのだ。

 

「ごめん、うちのせいだよね。うち、比企谷に甘えてた」

 

教師から比企谷が休みと聞いた瞬間に相模は自分のせいかもと思ったのだ。

 

「おまえの考えすぎだ。全部俺の責任だ」

 

「でもきっかけを作ったのはうちだし……」

 

八幡はそんな相模にやれやれといった感じで

 

「なら明日からはもっと頑張れよな。そうすれば俺が無理しなくてすむ」

 

別に多少のオーバーワークがあったとはいえ、無理してる程ではなかった八幡だが

 

「分かった、明日からもお願いします!!」

 

「……おう」

 

元の明るい表情に戻った相模に八幡は照れて顔を合わせられなかった。

 

「八幡、大丈夫?」

 

「ヒキオ元気?」

 

そこに小南と三浦がやってきた。主に小南の出現に八幡はこっちのが疲れそうと頭を抱えそうになったのである。



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相模南④

たまにはこんな乗りもいいですよね。日程のズレの理由はお察しください。


「八幡……この女誰?」

 

小南が冷たい声で聞いてくる。バトルモード寸前である。

 

「あ、えと、うちは相模南で比企谷くんのクラスメイトで文化祭実行委員で一緒で……」

 

「相模、落ち着けし」

 

パニックになっている相模に三浦が呆れながら言う。

 

「桐絵、何を考えてるのか知らないけど、こいつは俺にプリントを持ってきてくれただけだ」

 

「そ、そうなんです」

 

そう言われ小南は落ち着き

 

「てっきり八幡が小町ちゃんいない隙にいかがわしい事でもしてるのかと……」

 

「アホか」

 

そんなやり取りを見た相模が

 

「あ……2人は恋人同士?」

 

そう聞いた瞬間

 

「「はぁ?」」

 

「ひぃっ」

 

「(以外と打たれ弱いのな、相模)」

 

2人同時に睨まれた相模は怯み、三浦は微笑ましそうに見ていた。

 

「だ、誰がこんなのとこ、恋人なんて……」

 

「そうだぞ、相模。桐絵みたいな美少女に俺が釣り合うわけないだろ?」

 

「なっ…なっ…」

 

照れで小南が驚いていると

 

「ヒキオ、あーしは?」

 

「ん?三浦も美少女だろ。てかボーダーの女性みんな美人だよな」

 

ボーダーはひっそりと顔での判断をしているのではないかと疑うなと八幡が考えてる横で

 

「はぁ……」

 

「やっぱりヒキオはヒキオだし……」

 

2人が呆れていた。

 

 

 

 

「小南さんて強いんですね」

 

「まぁね、ボーダーでも私レベルはいないわね」

 

しばらくして、流石の相模も慣れてきたようだ。

 

「ほんと、あーしと材木座の2人がかりでもかなわないからね」

 

ちなみにまぐれで一本取れた後に三浦と材木座の2人は地獄を見た。

 

「三浦さん、何か学校より活き活きしてるよね」

 

楽しくて仕方ないっといった感じの三浦に相模が言う。

 

「うー……うん、今楽しくて仕方ないし。始まりはアレだったし、嫌な事もたくさんあったけど、あーしはボーダーが好き」

 

「ふーん、そうなんだ」

 

相模は三浦が羨ましく見えた。

 

「どしたん?……相模もボーダー入りたくなったとか?」

 

三浦がからかい半分に聞くと

 

「うん、今の三浦さん見てると……ね」

 

「良いわね、相模さん!!入りましょ!!」

 

ボーダー随一の戦闘狂が勧誘を始めてしまった。

 

「え……と、うちでもできるかな?大して運動神経もよくないし、頭もそんな良いわけじゃないし」

 

「大丈夫、大丈夫。優美子も最初は全然だったし」

 

「ぐっ……」

 

笑いながら言う小南に沈む三浦。

 

「何か入隊日は9月が最後なんだけどズレにズレて特例で10月、ちょうど総武の文化祭終わりくらいだから。大丈夫、入隊したら私が鍛え上げてあげるから」

 

「(ボコボコにするだけになりそうだし)」

 

小南の鍛え上げる発言に不穏な影を感じる三浦。そこに

 

「ほら飯できたぞ」

 

夕ご飯を作っていた八幡が戻ってきた。

 

「八幡!!新しいボーダー隊員よ!!」

 

相模の肩を抱きながら言う小南に

 

「え!?うちまだ、入ると決めたわけじゃ……」

 

「おい、桐絵。相模が困ってんぞ」

 

ごめんごめんと言いながら相模を離す小南。

 

 

今回の相模の比企谷宅訪問は相模に良い刺激になったのか翌日からさらに頑張りを見せた相模。その集大成である文化祭がいよいよ開幕である。



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相模南⑤

超オリジナル展開です


『文化祭開始します、カウント,5 4 3 2 1 0!』

 

カウントが0になると暗闇の体育館の中に吹奏楽部による壮大な音楽の演奏が始まる。その中を突然、ホタルのような無数の発光体が飛び始める。それらは音楽に合わせて様々な軌道を描き動いている。幻想的な動きに総武の生徒、教師、来客、来賓……様々な人から感嘆の声が漏れる。そしてそれらは音楽の終わりとともに壇上に中央に集まり……一気に霧散、同時にスポットライトが当てられそこには文化祭実行委員長、相模南がいた。

 

「総武高校、文化祭実行委員長相模南です。皆様、ライトショーいかがでしたか?ただいまのライトショーは本年度から正式に提携関係となりました、界境防衛機関ボーダーさまの全面協力の元に実現しました。というのも今年に我が総武高校の文化祭テーマは……

 

『絆〜ともに助け合う文化祭〜』

 

となっているからです」

 

相模の後ろに文化祭のテーマが先の光で浮かび上がる。

 

「三門市は四年前に異世界の住人から突如襲われるという悲劇に見舞われました。しかし皆が協力し助け合うことにより今では傷が癒えたとは言えないまでも、驚異の復興を遂げたのではないでしょうか?」

 

その言葉に頷くもの、涙するもの、色んな人がいる。

 

「本日からの文化祭ではその復興の象徴の一端となれるような文化祭になるよう、生徒一同全力で行きたいと思います。遠くからいらした皆様、文化祭を楽しんでいってください!!」

 

そして相模は一礼すると降壇し、会場がライトアップされる。その時は割れんばかりの拍手に包まれた。

 

「き、き。緊張したぁ……」

 

舞台裏に帰ってきた相模は早速ヘタれていた。

 

「ひとまずお疲れ様、相模」

 

そんな相模に八幡が労いの言葉をかける。

 

「比企谷くんもお疲れ様、バイパー?だっけ。綺麗だったよ」

 

ライトショーの光の正体は八幡の操るバイパーだったのだ。

 

「お、おう」

 

相模の言葉に照れた八幡だが、気をとりなおすと

 

「俺たちは校内の見回りからだから行くぞ」

 

「や、休む暇もないのね」

 

「当たり前だ。スケジュールびっちりだぞ」

 

とくに相模は実行委員長というのもあり、司会なども含めやることが盛り沢山だった。

 

 

 

 

2年F組

 

「いらっしゃいませ!」

 

玉狛支部の木崎隊一同は早速、八幡と優美子のクラスに来ていた。

 

「ん?比企谷のクラスは男ばかりだったか?」

 

「違いますよ、木崎先輩」

 

三浦の声がした方を向くと

 

「あーしらのは『男装喫茶』だし。男子は普通だけど女子はみんな男装です」

 

三浦もバッチリ男装で決めていた。スタイルが良いからか中々様になっていた。

 

「男装とは珍しいな」

 

烏丸が言うと三浦がある方を指差しした。そこには

 

「グフフ、男子がいっぱい……

 

『ハカドルワー』

 

暴走する腐女子がいた。

 

「ゆ、優美子。案内して?」

 

関わってはダメだと判断した小南は三浦にそう促す。

 

「じゃあこっちだし」

 

そして案内された席に4人がつく。陽太郎は中々見ない光景にずっと釘付けだったが

 

「うむ、たしかな満足。美味しいぞ、ゆみこ」

 

軽く食べた陽太郎は満足感たっぷりのようだった。

 

 

そして文化祭は総武高校一丸となりついに大成功へと相成ったのである。

 

「よく頑張ったな、相模」

 

「うん、多分うちの人生で一番頑張ったと思う」

 

相模と八幡の2人は学校を見渡せる屋上へと来ていた。

 

「うちさ、ボーダーに入ろうと思う」

 

「そうか……」

 

八幡がバイパーでオープニングを飾ったように今回の文化祭はボーダーが協力していた。それは提携校だから大々的にできると相模が案をだし、自らボーダーに交渉に行ったのだ(もちろん八幡や教師も動いてはいた)。それでボーダーと関わるうちに相模の気持ちは固まったのだろう。

 

そして数日後にボーダーの入隊式が行われた。その席にはついに正規の訓練隊員となる小町、文化祭実行委員長だった相模の姿もあった。



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三浦隊②

『今日はよろしくだし』

 

「あぁ……」

 

この日三浦達はA級7位の三輪隊と合同防衛だが、普段三浦達は玉狛に入り浸っといるからか、三輪隊隊長三輪秀次はそっけない反応をする。

 

三浦は現在、三浦と材木座、小町とオペレーターの海老名で隊を組んでいる。あと1週無事に相模がスナイパーの合同訓練で上位に入ればB級なので合流予定だ。

 

『噂に聞いてるぜ、比企谷の秘蔵っ子部隊がいるって』

 

珍しい槍型の孤月を使う少年、米屋がいう。

 

『やっぱり兄を知ってるんですね〜』

 

『兄?比企谷の妹!?』

 

米屋が凄い勢いで食いつく。

 

『は、はい』

 

『噂のルーキーが比企谷の妹とはなぁ、納得だぜ。今度ランク戦しようぜ』

 

小町の噂とは、バイパーの悪魔という噂だ。最初の戦闘訓練で5秒の記録を叩き出し、驚異的なスピードでB級まで上り詰めた少女がいるという話だ。

 

「ゲート発生、ゲート発生、座標誘導 誤差7.66」

 

『あーしらが近いので行きます』

 

三浦隊の面々はゲートの位置に向かうが……

 

「バラバラになっておるな」

 

「どういうことだし……」

 

三浦隊が現場につくとゲートから現れたであろうバムスターが粉々になっていた。

 

『姫菜、近くに他の隊員とかいた?』

 

『ほかの隊員も部隊も見当たらないよ』

 

「どういうことだし……」

 

ひとまず三浦達は三輪隊にも連絡を入れた。

 

 

 

 

 

「いやぁ、何だったんでしょうね。あのバムスター 」

 

玉狛に帰ってきた小町が切り出す。

 

「まぁ、あーしらが気にしてもしょうがないっしょ。」

 

「そうであるな、今解析されておるから結果を待つしかあるまい」

 

三浦、材木座が答える。そんな話をしていると

 

「つ、疲れたぁ……」

 

トレーニングルームから相模が這い出てきた。

 

「安心しろ、このまま無事にB級に上がれるだろう」

 

相模は合同訓練以外に木崎の手がすけば訓練をつけてもらっていた

。木崎も八幡の頼みと言うわけで引き受けたのだ。

 

『木崎さん、相模は叩けば叩くだけ伸びるんで。遠慮なく鍛えあげてください』

 

色々とスケジュールを変更せざるを得なかった遠征に行く前に、八幡が言った言葉だ。おそらく文化祭での相模をみての評価だろう。そしてそれは正しかった。言われた通り木崎は容赦なく技術を叩きこんでいくと相模はひぃひぃ言いながらも吸収していく、ある意味気持ちの良い弟子だった。

 

「全員飯食っていくか?」

 

飯当番に木崎が言うと全員迷わず食べていくと答えた。

 

 

 

とある場所

 

「俺は向こうの世界から来た、おまえらで言うとこの『近界民』って奴だ」

 

「……!?……っな……」

 

この日2人の少年が物語を動かし始めた。



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玉狛支部①

「まさか、ここ最近起きてるイレギュラーゲートの原因がこんなちっこいのとは……」.

 

「.驚いたでござるな」

 

数日後に突如、訓練生まで含めたボーダーの全隊員総出の害虫駆除が行われた。ここ数日頻発していた誘導のきかない異常なゲートの原因をS級隊員の迅悠一とC級隊員の三雲修が見つけたというお触れがあった。

 

「ここらへんは片付いたみたいですね!」

 

スコーピオンでラッドと呼ばれるイレギュラーゲートの原因を串刺しにして倒したばかりの小町が言う。

レーダーでは近くにラッドはいないようだ。

 

『みんな、よくやってくれた。作戦完了だ。お疲れさん』

 

そこに迅の通信が響いた。

 

 

 

 

 

「最近はおかしな事多すぎだし」

 

玉狛にいつも通りにいた三浦が先日のラッド討伐やバムスターの件を思い出しながら言う。

 

「みな、ご苦労だったな」

 

「何を偉そうにしてるかなぁ!?」

 

陽太郎を小町が捕まえ顔をムニムニしていると

 

「ただいま〜」

 

迅の声が響いた。横には眼鏡の少年と小柄て白髪の少年と小柄な少女がいた。

 

「しんいりゅか……」

 

小町に顔をイジられたままの陽太郎が言う。

 

「小町ちゃん、刑続行で」

 

「アイアイサー」

 

より激しくムニられる陽太郎であった。

 

「迅さん、おかえりだし。お客さん?栞ちゃーん迅さんがお客さん連れてきたよ〜」

 

「えぇっ……お菓子あったかなぁ……」

 

三浦の呼びかけに宇佐美が焦っていると

 

「大丈夫だし、材木座のお菓子がある」

 

そういうと急ごしらえだが少年達を出迎えた。

 

「ごめんね、慌ただしくて、アタシは宇佐美栞、よろしくね!」

 

材木座が溜め込んでいるお菓子とちょっと良いとこのどら焼きを出した宇佐美が自己紹介してると

 

「ウェッ」

 

白髪の少年のどら焼きに手を出した陽太郎にチョップをかましたようだ。

 

「ぐうぇっ」

 

「陽太郎、意地汚いことすんなし。さっき自分の食べたっしょ」

 

おまけに三浦からもゲンコツをくらった。

 

「あ、甘いなゆみこ。1つでまんぞくする、おれではない」

 

ゲンコツをくらってなお、この根性である。

 

「よかったら、私のあげるよ」

 

小柄な少女が自分にどら焼きを差し出す。

 

「きみ、かわいいね。けっこんしてあげてもいいよ」

 

「え……け、結婚?」

 

陽太郎の突然の言葉に困っている少女に

 

「俺と結婚すればらいじん丸のお腹触り放題だよ。けっこうきもちいい」

 

そういい陽太郎はカピバラ(陽太郎は犬と思い込んでる)を指差し言う。

 

「こうゴロんと……ゴロ……」

 

反応しないらいじん丸。

 

「けっこんしたらさわりほうだいだよ」

 

言うことを聞かないらいじん丸に涙目になる陽太郎であった。そして改めて全員が自己紹介し

 

「本部とは雰囲気が結構違うんですね」

 

「ここ、ちっちゃい支部だからね」

 

「スタッフ含めて10人くらいかな?ちなみにこっちの三浦さん率いる三浦隊は玉狛支部所属じゃないけど身内みたいな感じ。入り浸ってるし」

 

横で三浦が居心地良くてーと言っている。

 

「防衛任務にいくのも迅さん以外に3人しかいないけど全員A級のできる人達だよ」

 

「A級!?」

 

眼鏡の少年が驚いていると

 

「あの、さっき迅さんが言ってたんですけど、宇佐美さんや三浦さんも向こうの世界に行ったことあるんですか?」

 

「私はあるよ、1回だけだけどね」

 

「あーしらはまだB級だからないなぁ」

 

宇佐美と三浦が答える。

 

「じゃあ行く人はどうやって選ばれるんですか?」

 

「A級部隊の中から選抜試験をして選ばれるんだよね、部隊単位で選ばれるから私のもついてったわけ」

 

小柄な少女、雨取千佳が質問してくる。

 

「A級ってやっぱり凄いんですよね……」

 

「まぁね。400人のC級、100人のB級のさらに上をだからね。強者揃いだよ」

 

そうこうしていると迅がやってきた。

 

「よう3人とも、今日は親御さんに連絡して泊まっていけってよ。宇佐美、面倒みてやってくれ」

 

「了解!」

 

「遊真とメガネくんはついてきてくれ、支部長が会いたがってる」

 

そう言うと迅は2人を支部長の部屋まで案内した。

 

「失礼します、2人を連れてきました」

 

「お、来たか。俺が玉狛支部、支部長の林藤匠だ」

 

そう言い空閑をみると

 

「おっ、おまえさんが空閑さんの息子か、はじめまして」

 

「はじめまして」

 

そう挨拶したところで

 

「おまえのことは聞いている。うちは捕まえる気はないよ。ただ1つ聞かせてくれ。おまえの親父さんの知り合いに会いに来たんだろ?知り合いの名前は?」

 

「えと……モガミ ソウイチ と ヒキガヤフウフ」

 

「そうか……」

 

名前を聞いた瞬間、憂いを帯びた顔に一瞬なるが

 

「やっぱりそうか……皆ボーダー創設メンバーだよ。そして最上さんは迅の師匠だった」

 

そう言うと迅はブラックトリガーの風刃を机に置き

 

「最上さんはこのトリガーを残し死んだ。そして比企谷夫妻は大規模侵攻で亡くなられた。」

 

「そっか……」

 

顔を俯かせる空閑

 

「あぁ、ただ比企谷さんたちの息子は元気だ。今はいないが会ってみると言い」

 

そして本題だが、と前置きし

 

「玉狛支部に入らないか?俺は新人のころ空閑さんに世話になった恩もある。その恩を返したい」

 

どうだ?と聞く林藤に空閑は……



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玉狛支部②

三浦達が空気だが今回は仕方ないと思います。許してください。


「空閑にとっても良い話しだと思ったんだけど、何で断ったんだろ」

 

空き部屋で三雲が呟く

 

「……オサムには話しておこうと思う。ユーマがこちらの世界に来た理由を……」

 

 

空閑遊真のお目付役、レプリカが語るのは空閑の過去。心の傷の話し。

 

 

「悪いね、迅さん。せっかく誘ってもらったのに」

 

屋上では空閑と迅が話していた。

 

「別に構わないさ、決めるのは本人だ。後悔しないようにすれば良い……そうだ、それよりも聞かせてくれよ。おまえと親父さんの話し」

 

そして空閑は語りだした。自らの過去を……

 

 

空閑の過去はこうだ。空閑親子とレプリカは近界を度々してまわっていたが今から四年ほど前はある国で戦争に参加していた。

 

その国の防衛団長と空閑の父親は旧知の仲で、昔世話になった恩と縁から空閑親子は防衛に力を貸していた。

 

だがある日、敵国がブラックトリガー使いと思われる刺客を雇ったという情報があり、空閑は戦闘に参加するなと言われていたが言いつけを破り戦闘に参加してしまった。

 

圧されていた戦況を覆そうと空閑はしたが返り討ちに合い命はそこで消えるはずだった。

 

しかし空閑の父親はブラックトリガーを作ることにより空閑の命を繋ぎ止めた。死にゆく体はブラックトリガーに封印され、トリオンで新たな体が作られた。そして父親は……塵となり崩れ去った。

 

ブラックトリガーと父親の『嘘を見抜く』サイドエフェクトを引き継いだ空閑はそれからおよさ3年間戦い続け空閑を強くしていった。

 

粘り強く抵抗した甲斐あり、敵国は侵攻を断念。後に講話によって戦争は終結。後にいくつかの国を渡り空閑はこちらの世界にやってきた。

 

「じゃあ空閑は元の体に戻るために?」

 

三雲が聞くが

 

「私はそうであったが、ユーマは違う。ユーマの目的はブラックトリガーとなった父親を元に戻すことだった。」

 

「それじゃ……」

 

先ほどの迅のブラックトリガーの件でボーダーにもそれは不可能と悟った空閑は

 

「ユーマは今、生きる目的を失っている。」

 

レプリカは一拍置くと

 

「オサムに頼みがある。ユーマに生きる目的を与えてやってほしい」

 

「生きる……目的……」

 

 

 

 

「あぁ、この何日かは楽しかったなぁ」

 

迅に過去を話し空閑は三雲と出会ってからを思い出し言うと

 

「そうか……これから楽しい事がたくさんあるぞ。おまえの人生は」

 

そう迅は空閑に告げた。

 

 

 

 

「(目的?いったいどうやったら……)」

 

レプリカに言われた事を考えながら三雲が歩いていると

 

「修くん、修くん。ちょっと良いかな?」

 

部屋から顔を覗かせた宇佐美に呼ばれた。

 

「ボーダーに入りたい!?おまえが!?」

 

「ごめん、あーしらがつい色々喋ったら食いついちゃって」

 

「アタシ的には千佳ちゃん大歓迎なんだけど、一応修くんにも報告しとこうと思って」

 

三浦、宇佐美が言う。

 

そして千佳は自分も遠征に行き拐われた兄や友達を探したいと言う。

 

「A級ってテレビに出る嵐山さん達や昼間の人達と並ぶってことだぞ」

 

「それに遠征先は選べないからね。お兄さん達を攫った国には行けないかも」

 

三雲、宇佐美が言うが

 

「でも、じっとなんてしてられないんです。ちょっとでも可能性があるなら……」

 

強い目で言う雨取に

 

「そっかぁ、じゃあどうしようか。うちは精鋭だから新人が入れないし……」

 

「あーしらの隊も人数カツカツだしね」

 

宇佐美は少し考えたのち

 

「本気で目指すなら本部でチーム組んだ方が良いかな。アタシは千佳ちゃんにこっちに来てほしいけど」

 

その話しを聞いた三雲は

 

「千佳、ちょっと来てくれ。相談がある」

 

そして三雲と雨取は空閑のいる屋上に行き

 

「空閑……」

 

「おー、修どうした?」

 

そして雨取とともにチームを組み雨取の兄や友達を救うため遠征部隊を目指す事を話した。

 

「レプリカから話しは聞いた……」

 

「そうか、俺はこっちでやる事なくなっちまった」

 

そう言う空閑に

 

「ならおまえの力を貸してくれ!、俺たちには力強いリーダーが必要だ」

 

「……オサムは世話焼きなとこが親父に似てる気がする、損得考えないとことか。なぁ、何でオサムは人を死にかけても助けるんだ?見捨てれないタチなのか?」

 

空閑が聞くと

 

「そんなんじゃないよ、自分が『そうすべき』と思った事から1度でも逃げたら、本当に戦わなきゃいけないときに逃げてしまう。そういう人間だって自分が良く分かってるからさ。だから僕は自分のためにしてるんだ」

 

「なるほど、でも逃げないといけない時に逃げないと、いつか死ぬぞ?」

 

空閑の言葉に詰まる三雲だが

 

「さて、じゃあ俺も手伝うか。ほうっておくとオサムもチカがすぐ死にそうだし。部隊ってのも楽しそうだ」

 

そして結局、空閑と雨取の推薦により後に玉狛所属となる三雲修率いる部隊の結成が約束された。

 

「迅さん、この事予知してたの?」

 

「言っただろ?楽しい事がたくさんあるぞって」

 



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玉狛支部③

部隊を組むことになった三雲たち3人に宇佐美がランク戦やらについてレクチャーしていた。

 

「千佳ちゃんはスナイパーだな」

 

「ちょ、アタシが言いたかったのに!?」

 

話題は雨取のポジション決めで宇佐美がセリフを取られた、その時

 

「あたしのどら焼きがない!!誰が食べたの!?」

 

「我の買い置きを奪った狼藉者は誰だ!?」

 

小南と材木座が突入してきた。

 

「さてはおまえか!?」

 

小南が寝ている陽太郎を捕まえる。

 

「むにゃむにゃ……たしかなまんぞく」

 

「確定じゃあ!!」

 

材木座が吠える。

 

「ごめん、小南。材木座くん。お客さんにアタシが出しちゃった」

 

「材木座、今度買ってきてやるし」

 

宇佐美と三浦が謝るが

 

「あたしは今食べたいの!?」

 

「あっ、はい」

 

小南は食いさがるが材木座はあっさり撃沈した。

 

「何だ何だ、騒がしいな、小南、材木座」

 

「2人が騒がしいのはいつものことじゃないですか」

 

そこに木崎と烏丸も入ってくる。

 

「おっ……この3人が迅さんが言ってた新人ですか」

 

「えっ、あたし聞いてない!!」

 

烏丸の言葉に小南が驚いていると

 

「実はこの3人……比企谷の生き別れた弟と妹だ」

 

「えっ、そうなの?優美子知ってた?」

 

「もちろん」

 

三浦は当然のように答え

 

「材木座も!?」

 

「もちろんである」

 

材木座も肯定する。

 

「小町ちゃん、知ってたの!?」

 

「もちろん、可愛い妹は私だけです!!」

 

ようやく騙されたことに気づいた小南は

 

「騙したわね!!」

 

「ぶべらっ!!」

 

材木座に蹴りを入れていた。

 

「というわけで、この新人3人をレイジさん達3人に師匠になってもらいたい」

 

何もなかったように迅が話しを進める。

 

「えっとこの騙されやすい子が小南桐絵17歳」

 

「師匠って……私何も聞いてないんだけど」

 

宇佐美が改めて紹介を始める。

 

「こっちのモサモサした男前が烏丸京介16歳」

 

「どうも、モサモサした男前です」

 

手を上げて答える烏丸

 

「この落ち着いた筋肉が木崎レイジ21歳」

 

「落ち着いた筋肉って……それ人間か?」

 

しかし木崎の疑問は無視され

 

「改めて言うが3人には、訳あってA級を目指すこの新人3人を次の正式入隊日までに鍛えてもらいたい」

 

「はぁ!?あたしはまだ3人の入隊を認めてなんて……」

 

「これは支部長の命令でもる」

 

そう言われた小南はため息をつき

 

「じゃああたしがこいつ貰っていくわ、見たところ1番強そうだし」

 

「お目が高い」

 

小南が空閑を捕まえるとスナイパーの経験がある木崎が雨取になる以上、自然と烏丸が三雲をみることに決まった。

 

 

 

『城戸司令、遠征部隊から通達。無事メノエイデスを出立。およぞ68時間後に本部基地に到着予定、以上です』

 

「ご苦労……あと3日か」



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玉狛支部④

そして本格的な訓練が始まった。

 

トレーニング1号室では三雲と烏丸がいた。

 

「まずはどれくらいやれるか見せてもらう。遠慮はいらない。本気でかかってこい」

 

「はい!」

 

そして三雲の地獄が始まった。

 

トレーニングルーム3号室では木崎が雨取にスナイパーライフルの使い方を教えていた。

 

「だいぶ的に当たるようになってきたな」

 

「は、はい」

 

そして木崎は改めてボーダーのスナイパーライフルのトリガーの説明をする。

 

「ボーダーの狙撃用トリガーは良くできている。ちゃんと狙えばちゃんと当たる。まずは止まっている的に確実に当てる練習だ」

 

「はい!」

 

雨取は元気よく答える。

 

「俺はこれから防衛任務だから出て行く。2、3時間もすればトリオン切れを起こすだろうから、切れたら今日の訓練は終わりだ」

 

「わかりました!」

 

やる気も十分で素直な子だが、正直戦闘には向かなさそうだと木崎は思いつつ防衛任務に向かった、

 

トレーニングルーム2号室では

 

「正直言って、あたし感覚派だから人を鍛えるのとかって苦手なのよね」

 

小南と空閑が訓練していた。

 

「好きなトリガーを選びなさい。ボコボコにしてあげるから。何で敗けたか後で考えなさい」

 

「ほう、見分けがつかん」

 

空閑は見た目は同じトリガーをみて呟く。

 

「ところで思いっきり戦っちゃって良いの?」

 

「今仮想戦闘モードだから思いっきりやって大丈夫だよ」

 

仮想戦闘モードとはトリオンを消費せずあくまで戦闘を疑似再現する状態である。

 

「ようするにあんたは安心して何回でも負けられるってことよ、おチビ」

 

「おチビじゃないよ、空閑遊真だよ。こなみ」

 

「なっ、何で呼び捨てなのよ!?あたしの方が先輩なのよ!?」

 

そう小南が言うと空閑は

 

「じゃあ、俺に勝てたら先輩って呼んであげるよ『こなみ』」

 

その言葉に冷ややかな目をする小南

 

「ボーダーのトリガーであたしに勝てるつもり?あたしは迅より先にボーダーにいるのよ?」

 

そして小南は

 

「いいわ、あたしに勝てたらちゃんと名前で呼んであげるわ」

 

そして戦闘が始まった。

 

 

 

 

 

しばらくたち

 

「三雲、弱いな。本当にB級か?」

 

烏丸の言葉が突き刺さる三雲。そこに

 

「あ、ありえない……」

 

酷く落ち込んだ小南がトレーニングルームから出てきた。

 

「勝った」

 

その後から酷くボロボロだがそう言う空閑が現れた。

 

「小南先輩、負けたんですか?」

 

「ま、負けてないわよ」

 

烏丸の質問に小南がムキになっていると

 

「10本やって最後の1本だけ勝てた」

 

「そうよ!トータルではあたしのが圧倒的に上なんだから!」

 

そう小南と空閑が話してるよこで三雲は驚いていた。慣れてないトリガーとはいえ、あのA級部隊相手に互角以上の戦いをした空閑が負け越したのだから。

 

「ちなみに小南『先輩』より強い人いるの?」

 

「いるわよ、『遊真』」

 

三雲はまた驚いた。この小南より上がいるということに

 

「A級1位の太刀川隊隊長の太刀川とか、昨日会わせた小町ちゃんの兄、S級隊員の比企谷八幡とかは強いわね」

 

そういうと空閑も三雲も驚いた。

 

「S級隊員って迅さんと同じ?」

 

「立場はね。でも八幡はノーマルトリガーを使ってブラックトリガーと同等の力を持つ化け物よ」

 

小南は心なしか自慢気にいう。

 

「へぇ、それは戦ってみたいな」

 

空閑が呟く。

 

「今は遠征に行ってるから無理ね」

 

そして訓練を続けるべく小南と空閑は再びトレーニングルームに入っていった。

 

「どうする?まだやれるか?」

 

烏丸が三雲に聞くと

 

「は、はい!!」

 

三雲達も訓練に向かった。

 

 

 

数時間たち、木崎が任務から帰ってきた。

 

「雨取は帰ったか?」

 

宇佐美に聞くと

 

「あれ?まだでてきてないよ」

 

「何?」

 

木崎は慌ててトレーニングルームに入ると

 

「雨取!!」

 

「あっ、もしかしてここを閉める時間ですか?」

 

朝から撃ち続けてたと思われた。

 

「(こいつ、まさか比企谷と同じ……)」

 

木崎は雨取の訓練風景をみてボーダーのトリオンの化け物を思い出していた。

 

「(化けるかもな、雨取は)」

 

そう考える木崎だった。



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争奪戦①

『ゲート発生、ゲート発生 遠征艇着艇します。付近の隊員は注意してください』

 

ボーダーの建物の中でゲートが発生し遠征部隊がついに帰ってきた。

 

「待ちくたびれましたな、トップチームの帰還です」

 

鬼怒田が呟く。

 

 

「こちらが今回の収穫です、お納めください。城戸司令」

 

部隊を代表して風間が手に入れたトリガーをだす。

 

「ご苦労、無事の帰還何よりだ」

 

「未知の世界のトリガーありがとう、これでボーダーのトリガーはさらなる進化を遂げるぞ!今回は早速手伝ってもらうぞ、八幡。よろしいですか?城戸司令」

 

「…………あぁ、構わない」

 

鬼怒田は城戸の許可を取ると

 

「行くぞ、八幡」

 

「了解です、失礼します。城戸司令」

 

そして八幡と鬼怒田は司令室を出て行った。

 

「さて、帰還そうそう悪いがおまえたちには新しい任務がある。現在玉狛支部にあるブラックトリガーの確保だ」

 

その場にいた隊員全員が驚く。

 

「ブラックトリガー!」

 

「玉狛?」

 

太刀川達が驚いていると

 

「三輪隊長、説明を」

 

城戸に促され三輪隊の狙撃手、奈良坂が説明を始める。

 

12月14日に調査により近界民を発見、交戦したところブラックトリガーの存在を確認、能力は『相手の能力を学習して自分のものにする』

その後迅隊員が戦闘介入。迅隊員と近界民が面識があったため停戦中。

 

奈良坂の報告ではこうなる。

 

「近界民がボーダーに入隊!?どうなってんだ?」

 

当真が驚くが

 

「別に玉狛なら不思議な事じゃない。元々あそこのエンジニアは近界民だ。問題はブラックトリガー持ちということ。玉狛にブラックトリガー2本となるとボーダー内のパワーバランスが崩れる」

 

風間が冷静に言うと

 

「そうだ。だがそれは許されない。おまえ達には何としてもブラックトリガーを確保してもらう」

 

「ブラックトリガーの行動パターンは?1人になる時間とかあるの?あと奪取するのは良いとして、比企谷の介入の心配は?迅と比企谷に組まれたら厳しいと思うけど」

 

太刀川の質問に

 

「ブラックトリガーは朝7時頃に玉狛支部にやってきて、夜9時から11時の間に自宅に帰るようです。現在もうちの米屋と古寺が監視しています」

 

「比企谷のことは心配ないだろう。あれもボーダー内のパワーバランスの事まで頭が回らないようなバカじゃない。あれの妹や周りに手を出さなければ大丈夫だろう。同様に玉狛も比企谷の周りには支援は頼まないはずだ。」

 

奈良坂と城戸が答える。

 

「成る程、では今夜行きましょう。見張りの米屋達にも悪いしな」

 

「太刀川さん、いくらあなたでも相手をなめないほうが良い」

 

急な作戦に三輪が言うが

 

「なめる?何でだ?相手は学習するブラックトリガーなんだろ?時間が経てば経つほどこっちが不利になるだろ」

 

「成る程ね」

 

「確かに早い方が良さそうだ」

 

太刀川の言葉に納得する当真と風間。

 

「それで良いですか?城戸司令」

 

「良いだろう。部隊の指揮はお前がしろ、太刀川」

 

「了解です」

 

そうすると太刀川達は作戦をたてるため部屋を出て行った。

 

 

 

開発室

 

「そう言えばお前には言ってなかったな」

 

「何をですか?」

 

鬼怒田は現在起きているブラックトリガー持ちの近界民について説明した。

 

「そんな事が。まぁ俺が介入するべきじゃないでしょ。」

 

「ほう、何でだ?」

 

鬼怒田の質問に

 

「俺が玉狛につけば天羽が、城戸さん側につけば最悪忍田さんが出てくる。どっちにしたって警戒区域内の街への被害はでますよ。俺と天羽がやりあったらそこら中更地間違いなしですし」

 

「そうか……」

 

同時に八幡は思う。あの迅が何も考えてないという事はありえないだろうと。



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争奪戦②

心なし忍田さんが情けなく見える。彼は凄いひとなんですよ。


「おぉ、八幡以外に初めて見たわ。こんなトリオン量」

 

雨取千佳のトリオンを計測したがその量は凄まじく、僅かであるが八幡をも上回っていた。

 

「トリオンは比企谷と同等、集中力と忍耐力もある。スナイパー向きだから戦い方を覚えればエースになれる素質はある」

 

木崎が雨取を褒めていると

 

「そのS級の比企谷先輩の戦い方を千佳は覚えられないんですか?同じようなトリオンがあるんですし」

 

「正直無理だと思いますよ」

 

三雲の疑問に防衛任務などで忙しくしていた三浦隊の小町が答える。

 

「え?何で?」

 

小南がため息をつきながら言う。

 

「八幡はあたしよりもボーダー歴長いのよ?間違いなく最古参の1人。経験が違いすぎるわ。あいつがする、アイビスでの範囲攻撃は参考になるかも知れないけどそれくらいね」

 

「アイビス以外ではどんな戦い方なの?」

 

空閑が聞くと

 

「それは戦ってみたら分かる。ちなみに比企谷先輩は1人でA級上位部隊を複数相手して互角に渡り合うだけの力はあるぞ」

 

烏丸が言う。

 

「ヒ、ヒキオってそんなレベルなんだ」

 

いつの間にか混ざっていた三浦が八幡の強さを聞いて改めて化け物っぷりに驚いていた。

 

「それは楽しみだ……そう言えば迅さんは?」

 

「さぁ?どうせコソコソまた何かやってんでしょ、あいつの趣味、暗躍だし」

 

空閑の質問に小南が答えた。

 

「皆さん、お揃いでどちらまで?」

 

玉狛支部への道の途中で太刀川達を待ち構えていた迅が太刀川達に話しかけていた。

 

 

 

 

本部にて

 

「なぜ嵐山隊が玉狛に力を貸した!?ボーダーを裏切るつもりか!?忍田本部長!!」

 

会議室で鬼怒田が責めるように言う

 

「裏切る?論議を差し置いて強奪を強行したのはどちらだ?もう一度言う。私はブラックトリガーの強奪には反対だ!もしこれ以上刺客を向けるなら次は比企谷にも手を貸してもらおう」

 

全員を睨みつけながら忍田が言う

それに狼狽える鬼怒田と根付。それもそうだろう。迅1人でも強いのにノーマルトリガーでは他の追随を許さない八幡までだそうと言うのだから。

 

「なら仕方ない……次の刺客には天羽に行ってもらう」

 

それに本格的に根付が焦りだす。

 

「いや、比企谷くんと天羽くんが戦うとなると……さすがにボーダーのイメージが……」

 

さすがに止めようとする根付

 

「迅に加え比企谷まで加わられたら、こちらは手段を選んではおれまい」

 

「城戸さん、街を破壊する気か!?」

 

「失礼しまーす。皆さんお揃いで会議中に失礼します」

 

そこに能天気そうな上位がやってきた。

 

「迅、どのツラ下げてきた!?」

 

さっそく鬼怒田が噛み付くが

 

「落ち着いて、鬼怒田さん。血圧が上がるよ」

 

そうしてると

 

「宣戦布告でもしに来たか?」

 

城戸が聞く。

 

「違うよ、交渉しにきたんだ」

 

「何を!?裏切っておきながら!!」

 

鬼怒田がほえそうになるが

 

「いや、戦力で上回っている今がタイミング的には1番ベストでしょう。」

 

唐沢がタイミングの良さを言うと

 

「こちらの要求は1つ。空閑遊真のボーダーへの入隊を認めて頂きたい」

 

「私がそんな要求を飲むとでも?」

 

すると迅は風刃をだし

 

「もちろんタダとは言わない、こちらは風刃を差し出す」

 

しばらく熟考したのちに

 

「良いだろう、空閑遊真のボーダー入隊を正式に認めよう」

 

こうして空閑の入隊が無事決まった。

 

 

 

 

玉狛支部にて

 

「お、賑やかだな」

 

八幡が玉狛支部に来ていた。

 

「お〜、お前がハチマンか」

 

「噂に聞いてる、近界民だな」

 

2人がついに邂逅した。



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空閑遊真①

戦闘って難しいです、はい


「そうだよ、近界民だけど……どうする?」

 

まるで挑発するように聞いてくる空閑だが

 

「ん?別にどうもしないが。別にこっちの世界に何かしようってわけじゃないだろ?桐絵」

 

「そこは大丈夫よ、保証する」

 

そう話していると

 

「おぉ八幡、来てたのか。そいつ空閑さんの息子だからよろしくな」

 

「空閑さん!?」

 

やってきた林藤の言葉に驚く八幡。

 

「親父を知ってるの?」

 

「話に聞いてたくらいだ。俺の親父とお袋が夢を語り合ったってな」

 

そう八幡は懐かしそうに言う。

 

「ところでハチマン、俺と勝負してくれない?こっちの世界の頂点を見てみたい」

 

「……お前も戦闘狂一族か」

 

ボーダー本部の太刀川や玉狛の小南を始めとしなぜ俺の周りは事あるごとに戦いたがるのか……

 

「まぁいいぞ、宇佐美。トレーニングルームを模擬戦状態にしてくれ。ステージ選択は空閑に任せる」

 

「アイアイサー」

 

そして宇佐美が準備に取り掛かると

 

「そうだな、お前はブラックトリガーを使っていいぞ、と言うか使わないとボーダーのトリガーじゃ話しにならないだろうしな」

 

八幡は事実を淡々と告げるが

 

「あ、あの〜。流石にブラックトリガー使った空閑には勝てないと思います?三輪隊を1人で倒せるそうですし」

 

三雲がそう言ってくる。

 

「ん?君は?」

 

「あっ、僕の名前は三雲修、空閑の部隊長です。そしてこっちは雨取千佳です」

 

「よろしくお願いします」

 

三雲と雨取が挨拶すると

 

「準備できたよ!!」

 

宇佐美が告げたのでそのまま戦闘に八幡と空閑は向かった。

 

「今から見てれば分かると思うけど、八幡は三輪隊相手するより強いわよ」

 

先ほどの三雲の質問に答えるように小南が言う。

 

 

 

「さて、ブラックトリガーで良いって言われたし、遠慮なく行きますか」

 

市街地Aと言う無難なステージを選択した空閑は言われた通りブラックトリガーで戦うことにした。小南より実力が上な相手だ。元より慣れないトリガーで勝てるとは思っていない。

 

『シールドだ!ユーマ!』

 

突如レプリカが叫ぶ。空閑は反射的に二重盾の印を使う。

 

『何という破壊力。S級隊員と言うのは伊達ではないらしい』

 

八幡の十八番であるアイビスの範囲攻撃を見たレプリカが言う。

 

「これ使ってなかったら何も分からず消えてたな」

 

そう呟くと第2射がくる前に空閑は動きだした。

 

「レプリカ、相手の位置は?」

 

『分かっている』

 

そう言うとレプリカは八幡の位置を教える

 

「じゃ行きますか」

 

弾の印を使い一気に八幡に近づく空閑。

 

「強化、二重」

 

より強力な一撃へと昇華した拳で八幡を叩こうとするが

 

「『シールド』」

 

面積を拳が防げる程度まで圧縮されたシールドは強化された空閑の一撃でも破壊できず、すぐさま距離を取った。

 

『あのシールドを破壊するにはさらに強化するほかないが』

 

「分かってる。そんな悠長に強化してたら倒される……『射』」

 

射撃の印を八幡に複数方向からだす。

 

「距離取ったとこ悪いが……射程範囲内だ」

 

八幡は射撃の印の攻撃をかわすと無造作に旋空孤月を放った。

 

「『盾』……速いなぁ」

 

強化してない楯のシールドは一瞬で割られた。その一瞬で何とかかわすが小南の重い一撃と同等かそれ以上の斬撃を高速で放つのは空閑にとってやりにくいことこの上なかった。

 

「『射』+『錨』」

 

鉛弾の強化版を放つが八幡には当たらず

 

「これは相性悪いな……」

 

距離を取ればアイビスでの強烈な一撃が、半端な距離は旋空による斬撃が飛び交う。

 

「『強化』 『三重』」

 

強化の隙を突き八幡が攻撃してくるがギリギリ強化を間に合わせ回避する。

 

「弾……せーっの!!」

 

同時に回避先に弾の印を出現させ自身を大砲の弾のように扱い八幡を襲撃する

 

「これは完敗だ」

 

八幡は僅かな動きでかわすとすれ違いざまに空閑を切り裂く。そして空閑の戦闘体が解除された。

 

「お前のブラックトリガー、中々面白いな」

 

「どうも、ハチマン先輩」

 

色々応用が効きそうな空閑のブラックトリガーを褒める八幡に初めて先輩呼びする空閑。

 

「(あ、あの空閑を倒すなんて)」

 

三雲は本当に空閑を倒してしまった比企谷に驚いていた。

 

「八幡の長い戦いの中で培われた経験と勘、元からある強い警戒心に磨き抜かれた反射神経……そう簡単には倒せないわよ」

 

小南が八幡について説明する。

 

「(こ、これがS級隊員……)」

 

底知れない八幡に恐怖すら覚えそうになる三雲だった。



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入隊①

1月8日、ついに空閑遊真と雨取千佳の正式入隊日がやってきた。この日までに三雲は材木座と、空閑は三浦と、雨取は相模とそれぞれ一緒に稽古をつけて貰っていた。ちなみに小町は八幡が暇な時は八幡に、それ以外では主にランク戦で暴れていた。

 

「よし、確認だ。2人はC級からB級を目指す」

 

三雲が3人の目標の確認を促す。

 

「B級からは3人でチームを組んでA級を目指す」

 

空閑が引き継ぎ

 

「選抜試験を受けて、近界民の世界に拐われた兄さんとともだちを探しに行く」

 

雨取が続けた。

 

「よし、今日がその第1歩だ!!」

 

そして空閑と雨取は入隊式に向かった。

 

 

 

少し離れたとこにて

 

「青春、羨ましい!!」

 

先ほどの3人の確認を聞いていた相模が叫ぶ。

 

「我らには我らの青春があろうぞ」

 

カラカラと笑いながら材木座が言う。

 

「だね、あーしらもポジションは揃ったし本格的にA級目指そうか」

 

そして、結衣を連れ戻す。そう誓いつつ材木座に賛同しながら言う。

 

「そのための準備は十分過ぎるほどしたからね」

 

宇佐美に色々叩き込まれた海老名が言う。

 

「三雲君達には負けてられないですね!!」

 

締めに小町が言い、そんな話などをしていると空閑達の訓練は最初の対ネイバー訓練に移っていた。

 

「じゃあ、うちは千佳ちゃん達みてくるね!」

 

相模はそう言うと妹弟子のいる訓練場に走っていった。

 

「さて、ユーマは何秒だすかな?」

 

三浦達が訓練に目を移した時

 

『5号室、記録……れ、0.6秒!!』

 

「よし、どんどん行こう」

 

そこには当然だと言わんばかりの空閑がいた。

 

「さ、さすがですね」

 

小町が苦笑いしながら言う。

 

「まぁ、周りは信じてないみたいだけど」

 

三浦が指を指した方では他のC級隊員が機械の故障だと、空閑に難癖つけていた。

 

『記録、0.4秒』

 

周りはさらに記録が縮んだことに驚いていた。

 

「今、すべてが腑に落ちたわ。あなたの学校を襲ったあのネイバーを倒したのはあいつね?そうでしょ」

 

「そうだよ」

 

話しながら木虎と三雲が歩いてきた。

 

「あ、木虎ちゃん、三雲くん、やっほー」

 

「小町さん、こんにちは」

 

「こんにちは、比企谷さん」

 

見つけた小町が話しかける。

 

「それはそうと三雲くんなあんな芸当まだ出来ないと思ってたのよ!」

 

どこか嬉しそうに言う木虎に三雲がげんなりしていると

 

「お前らもここにいたんだな」

 

「修、バイトで遅くなった」

 

八幡と烏丸が歩いてきた。

 

「ひ、ひひ、比企谷先輩に烏丸先輩!お疲れ様です!」

 

テンションの上がる木虎。三雲は木虎の初めて見る態度を見て呆気に取られた

 

「今日も大変だな、嵐山隊は」

 

「このくらい全然大丈夫です!」

 

八幡の呟きに対して元気に答える木虎。

 

「あの!また稽古つけていただけませんか!?」

 

「いや、お前に教えられることなんてもうないと思うぞ?」

 

すでに自分の戦い方というのを知っているのに教えられることはないだろうという考えの八幡だが

 

「いえ、私なんてまだまだです」

 

少し元気なさげに言う木虎に八幡は

 

「はぁ、仕方ないな。今度時間あるときに付き合ってやるよ」

 

お兄ちゃんスキルを刺激された八幡は断りきれずにいた。

 

「そうだ。木虎は修と同い年だったよな?」

 

「はい、そうですが……」

 

烏丸の質問に答える木虎。

 

「実はこいつ、俺の弟子なんだがたまにでも木虎から何か教えてやってくれないか?」

 

「三雲くんから頼んでくるならやぶさかではありませんが……というかあなた、烏丸先輩に迷惑かけてないでしょうね?」

 

そっと視線をそらす三雲。

 

「まぁ、色々と先は長そうだな」

 

「す、すいません」

 

つい謝ってしまう三雲だった。

 

「じゃあ、俺は嵐山さんに挨拶してくる。比企谷先輩はどうします?」

 

「俺は今からスナイパー組をみてくる」

 

そう言うと三浦達や木虎にじゃあな、と言い八幡はスナイパーの訓練場に向かった。



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入隊②

「んじゃ次は狙撃手トリガーについて説明するね」

 

八幡がスナイパー用の訓練場につくと嵐山隊のスナイパー、佐鳥賢が独特のトリガーの説明をしていた。

 

「まぁ百聞は一見にしかず。試しに女の子2人に試し射ちして貰おうか!」

 

「あっ……」

 

あろうことか、佐鳥は雨取にアイビスを渡して試し射ちさせた。

 

「3 2 1 発射!!」

 

「『シールド』」

 

「どぅわっ!!」

 

雨取のアイビスからは八幡に勝るとも劣らない威力の弾丸を撃ちはなった。

 

”ズズズンッ”

 

それはほうっておけば下手すると本部に大穴を開けた可能性もあったがそれは八幡のシールドが防いだおかげで威力は拡散し穴は開かずにすんだ。それでも地響きがするほどの威力だった。

 

「ご、ごめんなさい」

 

顔を青ざめさせている雨取だが

 

「大丈夫だよ、訓練中の出来事だから。それに彼が防いでくれたおかげで被害はない」

 

もう1人のスナイパーの正隊員の東が八幡をみながら言う。

 

「あっ!比企谷先輩!」

 

同じく見つけた佐鳥が話しかける。

 

「おい、佐鳥。玉狛支部から何も聞いてないのか?……相模?」

 

八幡はまぁた迅さんの仕業かと思いつつ佐鳥に聞きながら相模をみる。

 

「何も聞いてないっす」

 

「迅さんから口止めされてたの!」

 

そう佐鳥と相模が返した時

 

「何の騒ぎだ!八幡がアイビスで暴れたか!?」

 

そこに鬼怒田が入ってきた。

 

「いえ、私がやりました」

 

今にも泣き出そうな雨取がでてくると鬼怒田に申し出た。

 

「玉狛支部、雨取隊員のアイビスです。比企谷くんのおかげで被害はありませんでした」

 

「何?玉狛の?」

 

 

 

八幡がスナイパー用の訓練場に向かった直後の訓練場では

 

「俺と勝負してみろ、三雲」

 

A級3位の風間隊隊長、風間蒼也が三雲に話しかけていた。

 

「風間さんが三雲くん模擬戦!?」

 

まさかの風間の行動に驚く木虎

 

「いきなり何を言い出すんだ、風間さん。また城戸司令の命令か?」

 

「三雲は正隊員だろう?俺と勝負するのに問題はないはずだ」

 

そして三雲もそれを受けた。

 

 

 

「(何がやりますよ、本当は弱いくせに)」

 

「み、三雲殿……」

 

木虎は呆れており、最近は烏丸との稽古でペアな分、一緒にいる時間が長い材木座はオロオロと心配していた。

 

「レイガストを盾として使う防御よりの射手か」

 

三雲の武器をみた風間が言うとその姿が消えていく。風間隊の十八番、隠密トリガー『カメレオン』である。

 

「っ!?」

 

次の瞬間には三雲はスコーピオンてトリオン供給器官が刺し貫かれていた。

 

「立て、三雲。まだ小手調べだぞ」

 

それから数回は倒された三雲

 

「(カメレオンは無敵じゃない、もし無敵ならみんな使っているはずだ……攻撃するときは姿が現れている。つまり姿を消している時は他のトリガーが使えないのか)」

 

その姿を消している時が一番脆いと判断した三雲はアステロイドを放つが

 

「正解だ。だがその手には慣れている」

 

そう風間は言うと再び三雲を斬り始めた。

 

 

「何あれ、玉狛という環境に比企谷も近くにいるのに普通すぎ」

 

風間隊のメンバーの菊池原が三雲の情けない姿をみて呟く。

 

「烏丸先輩、もう止めてください。見るに堪えません」

 

「何だ?修の心配か?」

 

木虎の言葉に烏丸が返すと

 

「違います」

 

即答する木虎。

 

「三雲は将来のために経験を積んでるんしょ」

 

三浦が厳しく言う木虎に見かねたのか言うが

 

「『負けて元々』『負けも経験』以下にも三流が考えそうですね。三浦先輩は格上相手でも一戦一戦勝ちにいかないんですか?勝つつも

でやらなきゃ勝つための経験は積めないわ」

 

「なっ……ふんっ」

 

木虎の言いたい事が分かった三浦は生意気だけどと思いつつ引き下がる。

 

「お前、中々良いこと言うな」

 

烏丸か木虎の言葉に感心していると

 

「もういい、手間を取らせたな」

 

「い、いえ……ありがとうございました」

 

ついに風間が終わりを宣言した。

 

「迅め、やはり理解できない。ブラックトリガーを手放す程のことなのか?」

 

「ブラックトリガー!?」

 

迅にとっては師匠の大事な形見であるブラックトリガーを手放したことが信じられなかった。

 

「何だ知らないのか。迅はあいつをボーダーに入隊させりために風刃を差し出した。お前らとチームを組ませ本部のランク戦に参加させるためだそうだ」

 

空閑を指しながら言う風間。

 

「風間さん、もうひと勝負お願いします!」

 

「ほう……」

 

そして三雲対風間の最後の勝負が行われた。

 

 

 

 

 

「あんなのと引き分けちゃダメですよ。僕なら100回やって100回勝てる相手ですよ」

 

そう結果は最後の最後で引き分けとなったのである。

 

「そうだな、張り合ってカウンターを狙った俺の負けだ」

 

三雲は最後にアステロイドを空間を埋めるように散弾状に放ちあぶり出した風間にシールドチャージ、シールド内に風間を閉じ込めると一点集中のアステロイドを浴びせたのだ。それに風間はシールドを張らずカウンターを狙い結果引き分けたのだった。

 

 

 

「いや、アステロイドをあんな使い方するなんて」

 

小町が感心しながら頷いている。

 

「風間さんも褒めてたし、やったね三雲くん」

 

海老名が三雲を褒める。風間は三雲の頭をフルに使う戦い方を一応褒めてはいた。そこに

 

「大変だ、君達のチームメイトが!!」

 

嵐山に連絡が入った。



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入隊③

「そうかそうか、千佳ちゃんと言うのか。凄いトリオンの才能だね。ご両親に感謝しなきゃだよ」

 

「は、はい」

 

三雲達がスナイパーの訓練場に飛び込むと意外な光景が見えた。雨取は椅子に座り、鬼怒田がべた褒めしていた。

 

「鬼怒田さんはロリコンだった!?」

 

「離れて暮らしている娘さんを思い出しているのだろう。ちょうど同じくらいじゃないか?」

 

ロリコンの疑惑をもつ佐鳥に東が説明する。

 

「千佳!!」

 

「あっ、修くんに遊真くん」

 

「……む?」

 

三雲達が千佳に駆け寄る。

 

「三雲?……そうか玉狛に転属しおったのか。こらメガネ!ちゃんと面倒みらんか!八幡が防いだから大事にはならなかったものを!!」

 

「は、はい!すみません」

 

三雲に気合いを入れた鬼怒田は

 

「そうだ、八幡。これから会議じゃ、行くぞ」

 

「お……分かりました。じゃあな、雨取に三雲達も」

 

そして鬼怒田と八幡は訓練場を後にした。

 

 

 

それから玉狛の新人の噂は一気に広まった。

 

『戦闘訓練で1秒を切った奴がいる』

 

『玉狛にはトリオンモンスターがいる』

 

『B級下位でA級の風間隊長と引き分けた』

 

「3人が注目されるのはこれからだ」

 

迅は電話相手に楽しそうに告げるのだった。

 

 

 

玉狛新人の3人が鮮烈なデビューをしてから数日たった。

 

「ふーむ、満点だと訓練1つで20点か、前回の戦闘訓練と今回の合わせてプラス100点……となると4000点超えるには……」

 

戦闘訓練の地形踏破、隠密行動、探知追跡の訓練を空閑は軽々と満点を取っていたが、

 

「合同訓練は週2回、満点を取り続けて19週間くらいで4000点になるね」

 

横についていた時枝が教える。

 

「19週間って何日?」

 

「133日」

 

「そんなに待てんなぁ……となるとランク戦で稼ぐことになるわけか」

 

そしてランク戦について教えてもらった空閑は

 

『ドンッ!!』

 

『バンッ!!』

 

『ズバンッ!!』

 

空閑いわく、新三馬鹿をテンポよく倒した空閑は

 

「訓練よりこっちのが断然早いな」

 

「取りすぎて心を折るなよ」

 

レプリカにたしなめられながらもランク戦を始める空閑であった。

 

 

 

「あれが空閑の息子か」

 

「そう、空閑遊真。なかなかの腕だろう?」

 

司令室で訓練の様子を見ていた林藤や城戸

 

「風間、お前の目から見て奴はどうだ?」

 

「確実なことは言えませんが明らかに戦い慣れた動きです。戦闘用トリガーを使えばマスタークラス以上8000点以上の実力はあるでしょう」

 

風間が率直に答える。

 

「なら一般のC級隊員と一緒にしたのは不味かったかもしれないな。木虎や小町ちゃんみたいに最初から3000点超えさせて早めにB級にあげるべきだったな」

 

忍田が呟く

 

「そうしたかったのは山々だけど、城戸さんに文句言われそうだったからな〜」

 

「なぜ奴はブラックトリガーを使わない?昇格するならS級になるのが一番早いだろう」

 

林藤の言葉を無視して城戸が言う。

 

「またまたぁ、色々難癖つけてブラックトリガー取り上げるくせに〜。ブラックトリガーの使用は許可しないとか言っちゃってさぁ」

 

城戸はそれには答えず

 

「あの比企谷並みのトリオンモンスターにブラックトリガー持ちのネイバーを組ませてどうするつもりだ?」

 

「べつに何も考えてないよ、俺や迅がいつも何か企んでいるとか思ってない?……チーム組むのもA級目指すのも全部本人達が決めたことだ」

 

林藤は一息つくと

 

「千佳の兄さんと友達が近界民に拐われてあの子は2人を取り戻したい。遊真ともう1人のチームメイトの修はそれに力を貸してやってるだけだ」

 

「色々バカげてるな、近界の特徴から探すのは困難を極め、生きてるかも怪しい。現実的ではないな」

 

城戸が冷たく言う。

 

「だから助けに行くのをやめろと?可能性で論じれることではないだろう」

 

「世界は子どもが想像するより残酷だと言うことだ」

 

「でもまぁ、救出だろうが復讐だろうが目的があった方がやる気だすでしょ」

 

忍田、城戸、林藤が話していると

 

「どもども、遅くなりました。実力派エリートです」

 

迅がやってきた。

 

「よし、揃ったな。本題に入ろう。今回の議題は近く起こるネイバーの大規模侵攻についてだ」



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空閑遊真②

次回から大規模侵攻編かな


「買い物するとお金が増えている、これも謎だ」

 

ランク戦の休憩中に自動販売機に飲み物を買いにきていた空閑はボソッと呟く。

 

『おつりだ、細かくなったんだ』

 

「あっ」

 

それにレプリカがツッコミをいれる。そして使い慣れない硬貨を落とした、そうしていると

 

「我が物顔でウロついているな、ネイバー!」

 

三輪がやってきた。

 

「あんたは……重くなる弾の人」

 

「どうも……」

 

三輪は無言で拾った硬貨を空閑に返すと自身も飲み物を買う。

 

「どうしたの?元気ないね。前はドカドカやってきたのに」

 

「本部がお前の入隊を認めた以上、お前を殺すのは規則違反だ」

 

空閑の質問にそれだけ答える三輪。

 

「おっ、黒トリの白チビじゃん」

 

「がんばっとるかね、しょくん」

 

そこに陽太郎を背負った槍バカこと米屋がやってきた。

 

「そういや、ボーダー入ったんだっけか」

 

「槍の人と陽太郎?何で一緒にいるの?」

 

珍しいコンビに質問する空閑。

 

「クソガキ様のお守りしてんだよ」

 

「ようすけはしおりちゃんの従兄弟なのだ」

 

「玉狛と本部は思ったより仲悪くないのか」

 

空閑がそう思っていると

 

「そいや、秀次お前何か会議に呼ばれてなかったっけ?」

 

「風間さんに体調不良で欠席すると言ってある」

 

そう答える三輪に

 

「そうか、体調不良だったのか」

 

「違う違う、ネイバーを殺すのは当然だと思っていたのに周りが急に逆のことを言いだしたから混乱してんだよ」

 

空閑の言葉を米屋が否定する。

 

「あぁ、そっか。お姉さんがネイバーに殺されてるんだっけ」

 

「何故それを!?」

 

驚く三輪に

 

「仇討ちするなら手を貸そうか?俺の相棒が詳しく調べれば、どこの国のトリオン兵が仇か結構絞れるかもよ」

 

「どうせやるなら本気でやった方が良いでしょ」

 

驚いていた三輪だがしばらく逡巡したのちに

 

「ふざけるな……お前の手は借りない、ネイバーは全て敵だ!」

 

そう言うと何処かに向かう三輪。

 

「何処いくんだ?秀次」

 

「……会議に出る」

 

三輪ほ米屋に答えると去っていった。

 

「そいや、お前オレと戦う約束だったよな。ポイントのやり取りのないフリーのバトルならできるからやろうぜ」

 

「ほう」

 

そして空閑、米屋、陽太郎の3人は対戦ブースに向かった。

 

「何だぁ?妙に観客多いな」

 

いつもより多い観客、モニターには

 

『10本勝負終了 10--0 勝者 緑川』

 

三雲が惨敗している姿だった。

 

「ふぅ(最後まで動きが読めなかった)」

 

ランク戦を終えた三雲がやってきた。周りの観客は三雲をバカにする発言が次々湧き

 

「なぁ?この観客集めたのお前か?」

 

空閑が緑川に聞くと

 

「違うよ、風間さんに引き分けたって噂聞いて集まって来たんじゃない?」

 

「お前、つまんないウソつくね」

 

緑川の嘘をあっさり見抜き冷たい目で見る空閑。

 

「俺と勝負しようぜ緑川」

 

そして空閑が負けたら空閑の持っている点数分三雲から緑川に奪われ、空閑が勝利した場合は緑川が三雲を先輩と呼ぶようにするという勝負が開始した。

ちなみにその勝負を仕掛けた空閑が怒っていると陽太郎は感じていた。

 

「あっ、三輪隊の……」

 

「米屋陽介、陽介でいいよ。メガネボーイ」

 

米屋が自己紹介していると

 

「ようすけはしおりちゃんの従兄弟なのだ。そしておれの『ようなかま』でもある」

 

その陽太郎の言葉に驚く三雲だった。

 

 

そして

 

『10本勝負、勝者 空閑遊真』

 

最初の2本わざと負けた以外は全て勝った空閑がいた。

 

「まっ、こんなもんだな」

 

「え?どういうことですか?」

 

米屋の呟きに反応する三雲

 

「緑川は才能もあるし実際につえーけど、その動きは覚えたばかりの芸を披露したいだけの犬っころの動きだ」

 

そしてと言い

 

「白チビの動きはもっと、ずっと静かで淡々とした、うまく相手を殺すための動きだ」

 

ラスト前の2人の会話

 

「お前が何でオサムの評判を落としたいのかは知らん、本来はオサムがお前をどうにかするとこだけど、あいつは鈍いから。お前くらいせこいとやられてる事に気付きすらしない。だから俺がやる。お前が2度とつまんないことできないようにな:

 

「(こいつは……いや、この人は強い!!)」

 

そう緑川が思っていると

 

「お前A級だろ?他のトリガー使わないの?」

 

そう空閑が聞くと

 

「これで良い、こっちの方があんたとの差がよく分かる」

 

「へぇ、良い顔になったじゃん」

 

そして試合は空閑の勝利となったのだ。

 

「メガネくん、遊真。ちょっと来てくれ。城戸さん達が呼んでいる」

 

どもども〜と言いながら迅がやってきた。

 

周りがS級の迅が来たとざわつくと

 

「おっと、俺はもうA級だからただの実力派エリートだよ」

 

周りに聞こえるように言う迅。

 

「あっ、迅さん!S級やめたの!?なら勝負しよ!!」

 

そこに部屋から緑川がやってきて、迅の周りを小躍りしながら周っている。

 

「これは一体……」

 

空閑がキョトンとして呟くと米屋から緑川はネイバーに襲われたところを迅に助けられ入隊したと教えられた。

 

「なるほど、だから玉狛に入ったオサムに嫉妬したのか」

 

そして緑川は三雲たちの前にきて

 

「三雲先輩、すみませんでした」

 

「え?なんで?」

 

いきなり謝ってきた緑川に三雲が驚いていると

 

「三雲先輩に恥かかそうと思ってわざと観客集めてたんです」

 

「あ?そうなの?……まぁそれはそれで良かったよ。何だかんだ実力以上の評判が立っちゃってたし。なんせ風間さんとは24敗1分だったんだから!」

 

ようやく言えたと三雲が満足し、

 

「次はボコボコにし返すから!」

 

「ほう、お待ちしています」

 

空閑と緑川も和解し、3人は会議室に向かった。



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大規模侵攻①

大規模侵攻編ではオリジナルトリガーなどがでて、オリジナルの展開あります。あと八幡のトリガーオリジナル設定あります。


「失礼します」

 

「遅い!なにをもたもたしとる!?」

 

三雲たちが会議室の中に入るとさっそく鬼怒田が怒ってきた。

 

「待たせたな、ぽんきち」

 

「何でお前がおる!?」

 

らいじん丸に乗ってついてきた陽太郎に突っ込む。

 

「時間が惜しい、早く始めてもらおうか」

 

城戸が言うと

 

「我々の調べた予想だと近く大規模な近界の侵攻があると予測できた。先日は爆撃型のネイバー1体の攻撃で多数の被害がでている。我々としては万全の備えで被害を最小限に食い止めたい。平たく言えば近界民の君としての意見を聞きたい」

 

忍田が続けて空閑に聞く

 

「近界にもいくつも国があることはわかってる、いくつかの国には遠征もした。だがまだデータが足らん。知りたいのは攻めてくるのはどんな国かどんな攻撃をしてくるかと言う事だ。元は近界民とはいえ入隊した以上協力してもらう」

 

鬼怒田が現状を伝えると

 

「なら俺の相棒に聞いた方が良いかも」

 

空閑がそう言うと空閑の傍からレプリカが現れた。

 

『はじめまして、私の名はレプリカ。遊真のお目付け役だ』

 

レプリカの存在を知っていた人以外は驚いていたが

 

『私はユーマの父ユーゴに作られた多目的型トリオン兵だ。私の中にはユーゴと旅した近界のデータがある。恐らくそちらの望むデータもあるだろう』

 

だが、とレプリカは言い

 

『その前にボーダーにはネイバーには無差別に敵意を向ける者もいると聞く。私自身まだボーダーを信用していない。そこでボーダーの最高責任者殿には私の持つ情報と引き換えにユーマの身の安全を保証すると約束してほしい』

 

そして城戸は

 

「良いだろう、ボーダーの隊務規定に従う限り空閑遊真の身の安全と権利を保証しよう」

 

その言葉に虚偽がないか見抜いた空閑とレプリカは

 

『確かに承った。それではネイバーについて教えよう』

 

そして得られた情報をもとに更に会議が進められた。

 

 

 

夜、ボーダー本部屋上にて

 

「ようぼんち揚食う?」

 

トリガーの調整を鬼怒田らと共にしており、休憩していた八幡のもとに迅がやってきた。

 

「頂きます、何か用ですか?…あっ、それとあいつらはどんな感じですか?」

 

ぼんち揚を貰いながら八幡が聞くと

 

「三浦隊の皆は小南にしごかれてメキメキ実力をつけてきてるよ。八幡はあのトリガーを使う気か?」

 

「もちろんです、こんな時のためにあれを作って貰ったんですから」

 

ぼんち揚をボリボリしながら言う八幡。

 

「確かにお前が本気を出せば被害は大幅に減るだろうけど……その場合の最悪の未来はお前が死ぬかもしれないぞ?死ななくても捕まったりとか」

 

「大丈夫っすよ。そうならないためにあんなトリガーを作ったんですから。それに今は昔と違ってたくさんの仲間がいるじゃないすか」

 

自信有り気に言う八幡。

 

「そうか……そうだな」

 

迅は安心したかのように笑うとその場を去っていった。

 

 

 

数日後、総武昼休み屋上

 

「最近ヒキオ、玉狛に来ないけどどうしたん?」

 

昼ご飯を食べ終えた三浦が八幡に聞く。ちなみに大規模侵攻が起きると聞かされてから三浦隊と八幡はすぐに確認できるよう、食事の場所を屋上にしていた。

 

「もう俺の専用トリガーの調整も終わったからな。今日からは顔出す予定だ」

 

「ならまた腕を上げたウチのスナイパー技術を見せてあげる」

 

相変わらず相模はすぐに調子に乗りやすいようだ。

 

「昨日、小南嬢に叩き斬られまくって泣いておったのは誰だったか」

 

「木崎さんに殴り飛ばされて無様晒してた厨二に言われたくないし」

 

材木座と相模は調子に乗りやすいという共通点があるからか妙なコンビネーションの良さを出しており玉狛メンバーからは漫才師扱いされている。

 

「先輩に厳しく当たられる後輩、しかしめげずに気持ちをぶつけていく!……

 

『キマシタワー!!』

 

✳︎注意 ただの模擬戦の風景です。

そうしていると

 

「始まったみたいだな」

 

本部を中心にゲートが大量に発生しているのが見えた。

 

八幡は今は総武の仲間や玉狛のメンバー、鬼怒田などの開発室の仲間に太刀川などの本部の仲間に囲まれている。もう誰も傷つけさせない。そう誓い

 

「トリガー起動」.

 

トリガーを起動した。



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大規模侵攻②

オリジナルトリガーではなかったです。パロ兵器?です


「トリオン兵はいくつかの集団に分かれて、それぞれの方角の市街地に向かっています!本部基地から見て西、北西、東、南、南西の5方向です!」

 

本部基地では本部長補佐の沢村が叫んでいた。

 

「現場の部隊を二手に分けて南と東に当たらせろ!」

 

忍田がすぐに指示を出す。

 

「そ、それでは西側はどうするんです!?」

 

根付が焦ったように言うが

 

「心配はいらない、西側には天羽、迅、比企谷を向かわせてある」

 

「その3人に任せておけば問題ない、頼もしいですねぇ」

 

忍田の言葉に安堵している根付だが

 

「問題は他の二方だが、鬼怒田開発室長!」

 

「わかっとる、すでに冬島と組んで対策済みだわい」

 

そしてトラップが起動しトリオン兵を足止めした。

 

「着いたようだな」

 

それぞれの現場に

 

「諏訪隊現着した!ネイバーを排除する!」

 

B級10位諏訪隊

 

「鈴鳴第1現着!戦闘開始!」

 

B級8位鈴鳴第1こと来馬隊

 

「東隊現着、攻撃を開始する」

 

B級の手練れが次々と現場に到着していった。

 

 

本部

 

「他にも風間隊 嵐山隊 荒船隊 柿崎隊 茶野隊もトリオン兵を排除しつつポイントに向かっています」

 

「よし、合流を急がせろ!各隊連携して防衛に当たるんだ!」

 

 

 

三雲たちは

 

「この前のラッド事件がこの大規模侵攻の国と同じなら、こっちの戦力はある程度予測がついているはずだ。なのに仕掛けてきたってことは勝算があるってことだ」

 

「……!」

 

その言葉に冷や汗が流れる三雲

 

「気を抜くなよ、オサム。戦いってのは基本的に数が多い方が有利だ……だからといって戦力を分散させたと言うことは何か狙いがあるはずだ」

 

そして空閑のその予想は当たっていた。

 

 

 

東隊

 

「忍田さん!こちら東、新型トリオン兵と交戦を開始!サイズは3メートル強、人に近いフォルムで二足歩行、厚い装甲に覆われ戦闘力は高い!特徴として隊員を捕らえようとする動きがある、各隊警戒されたし!」

 

「わかった、増援が行くまで凌いでくれ!」

 

そこにレプリカの声が響いた。

 

『忍田本部長、その新型は恐らくアフトクラトルで開発中だった捕獲用トリオン兵『ラービット』だ』

 

「捕獲用!?捕獲は大型の役目じゃないのか!?」

 

忍田が驚いて聞きかえす

 

『ラービットの捕獲対象は一般人ではない、トリガー使いだ。その性能は他のと比べない方が良い、A級でも単独で挑めば食われるぞ』

 

その言葉に苦虫を噛んだようになりそうになるが

 

「S級隊員比企谷八幡!新型ラービットを撃破しました!」

 

八幡の活躍が流れた。

 

 

 

時は少し遡り

 

「だいぶ湧いてるな」

 

三浦たちと別れた八幡は指示された南西に来ていた。

 

「『マステマ 起動』」

 

グラスホッパーで跳んでいた八幡はトリガーを顕現させると最も警戒区域外に近いトリオン兵を強襲した。

 

「さて、早く片付けないとな」

 

八幡の傍には八幡の体と同じかそれ以上の巨大な武器があった。中心に砲身があり、その周りには複数の刃がついている。八幡と鬼怒田達が開発した『全領域兵器 マステマ』だ

 

「『ハウンド』」

 

八幡が言うと砲身に光の小さな砲口が現れバイパーが射ち出され、周囲のトリオン兵に降り注ぎ

 

「『アイビス』」

 

そしてその巨大な砲身から放たれた一撃は複数のトリオン兵を巻き込みながら遠くで警戒区域を出ようとしていたトリオン兵を沈めた。

 

 

全領域……つまり遠中近全てに対応した八幡専用のトリガーである。刃には孤月を、砲身は改造されてはいるがアイビスを、それらを繋ぎとシールドモードにはレイガストがモデルに使われている。さらに射撃トリガーにはアステロイド、ハウンド、バイパーと使える。最強に近い性能を誇る。しかしそれらが複雑に絡まってできているトリガーだ。デメリットとしてベイルアウトが外されている。ベイルアウトがあるとそれほどの機能をフルに発揮できなかったのだ。それらもあって鬼怒田は最もブラックトリガーに近いノーマルトリガーと考えている。

 

「ん?……」

 

そして倒したトリオン兵の中から件のラービットが現れるが

 

「しつこいな……『スラスターON』」

 

ラービットは八幡の相手をまともにできずに沈んだ。

 

 

 

アフトクラトル『遠征艇』

 

「あれが例の金の鳥か?ユキノよ」

 

「えぇ、そうよ……でも問題ないわ。これがあれば、あれを捕まえるくらい訳ないわ」

 

美しい氷のような剣をもった雪ノ下がいた。

 

「なら行ってみろ、お前達2人は他のトリオン兵の援護だ」

 

リーダーと思われる視線の先には葉山と由比ヶ浜がおり

 

「ミラ、ゲートを」

 

「了解しました」

 

そして3人はミラと呼ばれる女性のトリガーによりついに地球に降りた。



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大規模侵攻③

「新型が3匹!?」

 

他の部隊と離れて避難誘導をしていたC級の援護に先に三雲と木虎が来ていたが

 

「早く逃げなさい!こいつらの狙いは……C級隊員よ!!」

 

敵の狙いがまだ弱いC級にあると気づいた木虎だが

 

「……っ!こいつら一体ごとに性能が!?」

 

色違いのラービットに攻撃された木虎は致命傷を負う。

 

「三雲くん!貴方は本部に連絡を……」

 

そして木虎が捕まりそうになったとこに

 

「『バイパー』」

 

四方八方から弾丸が飛んできてラービットの動きを止めた。

 

「あーしらの……」

 

「我らの……」

 

「「仲間に手を出すな!!」」

 

三雲達の後方から影が飛び出すと2本の孤月が木虎を捕獲しようとしていたラービットの弱点を斬り裂いた。

 

「こちら三浦隊現着、C級の援護をします!」

 

三浦が本部に連絡を入れると

 

「こちら本部だ。三浦隊了解した」

 

忍田が答えた。西側3方向を天羽、迅、比企谷が抑えるため徐々にC級の援護に戦力を割く余裕が出てきたのだ。

 

「三浦先輩!?」

 

「あんたはさっさと千佳ちゃんたち連れて逃げるし!!」

 

三浦は2匹目のラービットを抑えにいきながら叫ぶ。

 

「そうだよ、三雲くん。ここは私たちが何とかするから」

 

バイパーを飛ばしながら小町がやってくる。

 

「は、はい!お願いします!!」

 

そして雨取と連れ立って逃げようとした先に

 

「あまり気が進まないけど、雪乃ちゃんのためだしね」

 

「こんな世界壊しちゃお……」

 

2人の男女がゲートから出てきた。

 

『隼人くんに結衣ちゃん!?』

 

三浦たちの通信に相模の声が響く。ちなみに相模は残りの二体のうち1匹を淡々と牽制していた。

 

「はぁ!?」

 

「何と!?」

 

ラービットを抑えは出来てはいるが、仕留めきれない三浦達だったがそこに

 

「いつまで雑魚に時間かけてるのよ!!」

 

三浦とラービットの間に1人の影……小南が割って入りラービットを吹き飛ばした。

 

「ここは任せろ」

 

そして相模が抑えていたラービットを殴り飛ばし木崎が言う。

 

「三浦先輩達はあの2人と決着を」

 

ラービットの不意打ち射撃をエスクードと呼ばれる盾で防いだ烏丸が言う。

 

「ありがとうだし」

 

三浦達の努力を一番知っており、信頼してるからこそ小南達は向かわせたのだ。

 

 

 

 

「あら、久しぶりね。卑怯谷くん」

 

「雪ノ下か……覚悟は出来てるな?」

 

八幡の方には雪ノ下がゲートから現れていた。

 

「覚悟?ふふっ……それは貴方がするべき物よ?私は力を手に入れた。この世界を作り直すための力を!!」

 

八幡はため息をつくと

 

「現実を見ないで全てから逃げ回ってるようなのに世界どうこうなんて出来るわけないだろ」

 

「今すぐにその減らず口、叩けなくしてあげるわ!!『バシリスキオーン』……氷の女王の名を持つこのブラックトリガーの前にひれ伏すがいいわ」

 

 

 

 

アフトクラトル遠征艇

 

「兄……隊長、あの小娘はあの金の鳥に勝てると思うか?」

 

ガタイの良い男、ランバネインが聞く

 

「無理だろうな……だが少しはトリオンを削るだろう。その後にヴィザとミラ、俺で金の鳥を捕獲する」

 

戦闘が始まった雪ノ下達を見ながら言う隊長ハイレインだった。



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大規模侵攻④

「結衣!!」

 

「久しぶり〜優美子」

 

まるで裏切った事などなかったのように明るく言う由比ヶ浜。

 

「私ね、あっちで力を手に入れたんだ!そしてヒッキーが私に振り向いてくれないこんな世界壊しちゃうんだ」

 

そう言ってケタケタ笑う由比ヶ浜に三浦は怒りが湧いてきた。

 

「結衣はあーしが1発ぶっ飛ばしてやるし」

 

「優美子程度じゃできないよ、私とこの射撃トリガー『スフェラスキロス』の相性抜群なんだ」

 

そして由比ヶ浜は大きめの二丁のハンドガンを構えて三浦に放った。

 

「そんなの当たらないし」

 

散放たれた弾丸は犬のような形になり飛んでんできた。弾丸を飛びのいてかわすがそれらは三浦を追尾してきた。

 

「追尾弾か……問題ないし」

 

迫り来る弾丸を切り落とす三浦。

 

「ヒキオや小町のバイパーに比べたら単調で遅いし」

 

そして三浦は由比ヶ浜に向かった。

 

 

 

「葉山殿、よくもノコノコと出てこれたでござるな」

 

「えーと、君は?」

 

葉山は面識がなかった材木座に気持ち戸惑う葉山

 

「そうだな、面識はなかったでござるな。我はかの室町幕府第十三代将軍、足利義輝の生まれ代わり、剣豪将軍、材木座義輝であり……」

 

材木座は一息つき

 

「三浦優美子嬢率いる三浦隊の1人である。我の仲間を泣かせた貴殿は絶対に許さん」

 

「いわゆる厨二病ってやつかな?君みたいなのと組むなんて優美子らしくないな」

 

蔑んだ目で材木座を見る葉山だが

 

「カンラカンラ、そんな事は言われ慣れておるわ。では参る」

 

居合の構えをした材木座は葉山に飛びかかり

 

「『一閃』」

 

ただの居合切りだが技名を叫び斬り裂こうとしたが

 

「『ヘリオクシオス』……そんな程度じゃ俺には届かないよ。将軍くん」

 

光る剣で受け止めた葉山が言う。

 

「逆であるな。この程度でやられるようなら拍子抜けも良いとこである」

 

そして材木座は一呼吸おくと

 

「いくぞ、裏切り者よ。我の怒りを受けてみよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「『氷棘』」

 

雪ノ下がブラックトリガーである氷の剣を振るうと八幡の周囲に大きな氷の結晶のような物が浮かびあがりそこから大きく鋭い形をした氷が飛び出すが

 

「攻撃が丸見えだ」

 

シールドを張るまでもないとした八幡は身を捻りかわすと

 

「『グラスホッパー』『スラスターON』」

 

グラスホッパーとレイガストのスラスター機能を使い一瞬で間合いを詰め斬りかかる

 

「『氷剣』」

 

雪ノ下は巨大な氷の剣を出現させ受け止めるが

 

「大気中の……いや正確には水分を氷つかせ操るブラックトリガーか。それは剣というよりは操るための指揮棒といったところか」

 

「……それはどうかしら」

 

雪ノ下は正確な指摘に一瞬驚いてしまうがすぐにとぼけたように言うが八幡には十分であった。

 

「『アステロイド』」

 

八幡は雪ノ下を弾くと光の砲口を出現させ雪ノ下に撃ち込んだ。

 

「くっ……」

 

雪ノ下は氷剣を残し飛び退く。瞬間あっさりと剣は砕かれた。

 

「トリオンが少ないのか、氷だから脆いのか。いずれにしろ大した耐久力はないみたいだな」

 

余裕そうに、実際余裕なのだが八幡は構え

 

「雪ノ下。おまえじゃ俺には勝てない」

 

「舐めないで!!」

 

先ほどの巨大な氷剣を2本作り出し振り下ろす雪ノ下だが

 

「こんな程度か?俺の知ってるブラックトリガーはもっと理不尽に強いぞ?」

 

片手で受け止めた八幡はバイパーを撃ち出し氷剣をあっさり崩し去った。

 

「このっ!このっ!このっ!」

 

顔を憤怒に染め雪ノ下は怒涛の攻撃を仕掛けるが八幡には躱され砕かれていった。

 

「貴方みたいな人にこの私がぁ!!」

 

一際大きな氷剣を振り下ろす雪ノ下だが

 

「終わりだ……」

 

真正面から雪ノ下ごと切り飛ばした。

 

「わ、私が負けた……?」

 

トリオン体が解けた雪ノ下は茫然としていた。

 

「どこでどう歪んだか知らないけどな今度こそ現実をみるんだな。雪ノ下、お前は敗者で罪人だ。どうなるか分からないけど裁かれる事だな」

 

「っぐ……ひぐっ…」

 

悔しさからかこれから裁かれる恐怖からかはたまた後悔か雪ノ下は涙を流した。

 

「こちら比企谷、裏切り者でブラックトリガーを所持していた雪ノ下を撃破。回収してください」

 

本部に連絡し雪ノ下を切り飛ばした時に離れ飛んだブラックトリガーを回収しに行こうとした時

 

「まだまだでしたな、ユキノお嬢さんは」

 

「予想通りです」

 

「では予定通り、金の鳥を捕獲するぞ」

 

ブラックトリガーの場所にゲートが開き、好々爺然とした老兵ヴィザ、ワープを使うブラックトリガーの女性ミラ、そしてアフトクラトルのリーダー、ハイレインが出現した。



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大規模侵攻⑤

「これはマズイな……」

 

自分の担当を掃除していた迅は八幡の絶望的な予知をしてしまい冷や汗を流す。

 

「忍田さんちょっといいか?」

 

本部に通信を繋げる迅。

 

「こちら忍田。どうした迅?」

 

「A級以上で割ける戦力はいない?このままだと比企谷がヤバい」

 

しかし

 

「あの比企谷が?……分かった。何とかしてみるが……他の区も緊急事態でな。比企谷の区以外には異常なトリオン兵が集中したうえに人型も現れた」

 

それを聞いて迅は自分たちはまんまと嵌められた事を知った。

 

「この大規模侵攻……最大の狙いは超高トリオン持ちの比企谷だったみたいだ……俺が読み違えたばかりに……」

 

もちろん他の隊員や一般人も標的には違いなかったであろうが1番の目的は八幡。迅は八幡が危機に陥る可能性をベイルアウトのない『マステマ』の使用と考えていたが、それ以上に敵の狙いが八幡と言う事を読み違えていた。

 

「(比企谷……耐えてくれ……)」

 

そう祈るしかない迅だった。

 

 

 

 

 

「当たれ!当たれ!当たれ!」

 

「幾ら撃っても無駄だし」

 

由比ヶ浜はひたすら撃ち続けるが三浦に近づくのは切り落とされ、隙をつこうとしたのはちゃっかり相模が撃ち落としていた。

 

「ねぇ結衣?結衣は一度でもヒキオとちゃんと話したことある?比企谷八幡って呼んだことある?」

 

「な、ないけど!普通にヒッキーで分かるじゃん!」

 

三浦は盛大にため息をつき

 

「結衣は自分勝手に考えすぎだし、ヒキオは学校じゃほとんど人と話さないのにいきなしあだ名で呼んだって気づくわけないじゃん。あげく勝手に勘違いして、ボーダー裏切って……」

 

「煩い!!優美子には私の気持ちなんて分からないよ!!」

 

由比ヶ浜の攻撃を落としながら近づく三浦。

 

「分かるわけないし!あーしは超能力者でもなければ神様でもないし!嬉しいのも悲しいのも苦しいのも、全部話してくれなきゃ分かんないし!じゃないと助けになれない……」

 

「煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い」

 

まるで三浦の慟哭なんて聞きたくないと言わんばかりの由比ヶ浜

 

「しっかり聞くし!」

 

ついに由比ヶ浜の近くにきた三浦は由比ヶ浜を殴り飛ばした。

 

「あーしは今でも結衣の友達だと思ってる!だから今バカなことしてる結衣を止める!そしてあーしに結衣の気持ちを話して欲しい!そしてやり直そ?」

 

「う、煩い!優美子は私の敵!敵!敵!」

 

まるで言い聞かすように叫ぶ由比ヶ浜。

 

「私は優美子みたいに強くない!!優美子に私の気持ちなんて分からない!!そして私からヒッキーを奪った……そうだよ優美子は敵…

…」

 

そんなどんどん壊れていく由比ヶ浜を見て、自分の言葉が何1つ届かないことに三浦は悲しくなったが

 

「せめてあーしが止めないと」

 

八幡との約束でもある由比ヶ浜は自分が止めると言うのを

 

「ごめん、結衣」

 

ついに三浦は果たした。由比ヶ浜は三浦の旋空で戦闘体を解除され、三浦の指示で相模に撃ち抜かれ気を失った。

 

 

 

その頃他の戦場では

 

「ちっ、ガキばっかかよ。外れたな」

 

東には黒い角を持ったブラックトリガーが現れた。

 

「思ったより少ないな、拍子抜けだ」

 

「これから増えるでしょう」

 

南部には2人の青年が出現していた。



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大規模侵攻⑥

あんま戦闘とは言えないかも


「そうだ、我には1つ気になる事があった」

 

「俺との戦闘中に余裕……だね!」

 

葉山の攻撃をいなしながら材木座が問いかける。

 

「学校でのお主は何よりも周りとの関係を大事にしていたように思う。恐らくボーダーに入るまでは」

 

「……」

 

葉山は若干顔を曇らせる。

 

「そんなお主だからこそ三浦嬢や海老名さんはついていった。なぜ雪ノ下嬢についていき、あまつさえ三浦嬢達を引いてはボーダーまで裏切った?」

 

普段からは想像できないような声音で聞く材木座。

 

「君には分からないだろうね。小さい頃から恋い焦がれていたのに、1つの選択の間違いで疎遠になった寂しさも……近くにいるのに自分を見てくれない悲しみも、利用されるだけの苦しみも」

 

怒り悲しみなどの表情で顔を歪める葉山。

 

「君には分からないだろう!!これがどれだけ辛いか!!」

 

そう叫び材木座に剣を叩きつけるように振るう葉山。

 

「でも俺はそれでも良かった。雪乃ちゃんの側に居れるなら……俺は雪乃ちゃんをもう離したくなかった。離れたくなかった。そのためなら周りなんてどうでも良かった。ただただ雪乃ちゃんの側に居たかった……俺は雪乃ちゃんを心底愛してるんだ」

 

そして葉山は仄暗い眼で材木座を見て

 

「それの何が悪い?好きな人に尽くす。どこが悪い?」

 

「お主、やはり腐りきっておるな……」

 

 

材木座は今度こそ顔を憤怒に染めた。

 

「好きな人に尽くす!確かに美しいものかもしれん!!だがそれと周りをむやみやたらに傷つけるのは筋違いであろう!!そしてお主の行動のどこに雪ノ下嬢への愛がある!?」

 

鍔迫り合いになる2人

 

「本当に愛しておるなら何故雪ノ下嬢を止めなかった!?近界へ渡ることだけではない!!八幡への仕返しやそれ以前にも暴走を止める機会は何度もあったはずだ!!お主がやってきたのは愛ではない!周りを傷つけるだけの自己満足だ!」

 

そして材木座は葉山を吹き飛ばす。

 

「厨二病風情が煩いんだよ!!」

 

吹き飛ばされた葉山は体勢をすぐに立て直すと材木座に斬りかかり

 

「好きな人に嫌われたくない!!どこが悪い!周りなんて気にしてられるか!俺は必死だったんだ!」

 

「甘えるな!!今のお主に……何の魅力がある?ただの人形以下の傀儡に誰が振り向く!?」

 

「黙れぇ!!!!」

 

葉山は剣を振るい聞きたくないといわんばかりに剣からトリガーの能力だろう光弾を放ったが

 

「少し己を見つめなおすが良い」

 

たまにやる八幡との模擬戦で八幡のバイパーのフルアタックなどで虐められている材木座、てきとうに振り回す程度の攻撃などかわし、葉山を斬り裂いた。

 

「……雪乃……ちゃん……」

 

そして手筈通り相模が撃ち抜き葉山は気を失った。

 

 

 

 

八幡は3人の近界民と対峙していた。

 

「抵抗は無駄だ。大人しく捕まれ」

 

アフトクラトル、リーダーのハイレインが八幡に告げる。

 

「そう言われて大人しく捕まるわけないだろう」

 

八幡が何言ってるんだ?と言うと

 

「ふふっ、そうですな。では多少手荒になりますがご容赦を」

 

老兵ヴィザが言う。

 

「雪ノ下、全力で逃げろ。俺はお前を守る気はないし、余裕もなさそうだ」

 

少なくとも黒角が2人、つまりブラックトリガー二本に歴戦の猛者と見える老兵、八幡も冷や汗が流れていた。

 

「っぐ……」

 

雪ノ下は泣いていたからか完膚なきまでに負けたから八幡の言う通りに離れていった。

 

「いかがしますか?」

 

「放っておけ、始末はいつでもできる」

 

そして3対1の絶望的な戦いが始まった。




雪ノ下は追い詰めらて反抗心も何もないと言うことで


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大規模侵攻⑦

エネドラなら諏訪さんみたいに分かりやすくなかったらこうなるだろうなと言う妄想。


「はっ!おいどうした!?玄界の猿ども!!さっきから逃げ回ってばかりじゃねーか!」

 

突如謎の攻撃で風間隊の隊長の風間蒼也は体の内部からトリオン供給器官を破壊され緊急脱出していたが、残った風間隊の2人がエネドラを足止めしていた。

 

「おー、そいつか?ブラックトリガーってのは」

 

そしてそこにあご髭を生やした二刀流の剣士がやってきた

 

「遅いですよ、太刀川さん」

 

「助かります」

 

やってきたのはA級1位の部隊隊長にして個人総合1位の太刀川慶である。

 

「おう、こいつは俺が斬る」

 

そう不敵に笑う太刀川だが

 

「猿が1匹増えてどうな……」

 

そこに弾丸の雨が降り注いだ。

 

「すまん、言い間違えた。俺達がだ」

 

そして太刀川の隣に出水が下りてきた。先ほどの弾丸は出水のフルアタックだった。

 

「三上、今ので弱点見つけられたか?あと菊池原の耳を『一応』俺達にもリンクさせてくれ」

 

『了解です、硬質化しているトリオン反応を見つけました。敵の核と思われます』

 

「それ映してくれ、斬る」

 

そう太刀川が言った時に

 

『敵のトリオン反応が広がってるよ〜』

 

国近の間延びした声が響く

 

『離れろ!恐らく奴のそれは気体に変化している』

 

「なるほど、少し離れてください」

 

風間の注意を聞いた出水が

 

「バイパー+メテオラ=トマホーク」

 

出水は十八番の合成弾を一瞬で作成、自分達の盾となるように爆風を起こした

 

「ちったぁ猿でも頭が回るみたいじゃねーか!」

 

「『旋空孤月』……物足りないな」

 

「なっ……」

 

出水の攻撃をただの足止めと考えていたエネドラは弱点である核は見つからないと慢心しきっておりダミーなどを生成しておらず、一瞬の隙を太刀川に斬られたのだ。

 

「さて捕縛するか……」

 

そう言って太刀川が戦闘体の解けたエネドラに近づこうとした時

 

「っち!……ミラ!!」

 

「まさかボルボロスを使って敗けるなんて……」

 

ゲートからミラが現れ冷ややかな目でエネドラを見下ろす

 

「なっ!」

 

太刀川達は驚いた、何故なら

 

「ぐあぁっ!!ミ、ミラ……てめぇ……」

 

「気づいてないのかしら貴方のその目、トリガーホーンが脳にまで根を張った影響で黒くなっているのよ?もう命はそう長くないわ。それにボルボロスを持ちながらノーマルトリガーに敗ける弱い奴はいらないの」

 

「て、てめぇら……っ!」

 

まず腕を切り落としボルボロスを回収したミラはすぐにエネドラに止めをさした。

 

「さようなら、エネドラ」

 

そしてミラは太刀川達を見ると

 

「貴方達の相手をしてる暇はないの、さようなら」

 

全員が行動に移る前にミラは再びゲートを開き去って行った。

 

 

 

 

八幡サイドでは

 

「ボルボロスの回収、終了しました」

 

「分かった」

 

ハイレインの横にボルボロスを回収し戻ってきたミラが現れた。

 

「あの金の鳥、神にするのは惜しいな……部下に欲しいくらいだ」

 

「!?ヴィザ翁とまともに打ち合うなんて……」

 

ハイレインの視線の先には八幡とヴィザが激突していた。

 

「これはお強い、剣の腕には自信があるのですが」

 

「本気を出してないくせによく言うな」

 

そうヴィザは持っている仕込み刀のトリガーをただの剣としか扱っていなかった。

 

「ふふっ、私の預かるこの『星の杖(オルガノン)』は少々加減が難しく、殺してしまいかねませんので」

 

「なるほどね」

 

八幡はヴィザの言葉に小さな希望を見出した。

 

「(こいつらは俺のトリガーにベイルアウトがないことに気づいていない!)」

 

だからこそ、少なくともヴィザは自分相手に全開を出せない。今はだが。

 

「奴のトリガーはあの巨大なブレードにランバネイン以上の砲撃にトリオンによる射撃を複合させた物のようだ……さて、俺達も動くぞ。逃げられたら元も子もない」

 

「了解です」

 

様子見で八幡を観察していたハイレインがついにそのブラックトリガー『卵の冠(アレクトール)』を起動した。



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大規模侵攻⑧

リアルが忙しかったのとデータが1度吹き飛びなどあり更新できませんでした。


「ふむ……どうやら貴方との楽しい時間もここまでのようです」

 

八幡と打ち合っていたヴィザが突如告げると、八幡から一気に距離を離した。

 

「っな!?」

 

そこに大量の生き物の形をした何かが降り注いだ。

 

 

 

 

「不味いっ……」

 

読み違えた迅は集中して向かってくるトリオン兵を相手にしており、八幡の救援に向かえずにいた。

 

『誰か比企谷の援護にいけないか?あと少しで比企谷を助けるチャンスが無くなる!!』

 

迅の通信が響く

 

「小南!!三浦隊!!お前達は比企谷を助けに行け!」

 

 

「それは困るな、お前達の相手は俺たちだ」

 

そこに2人の人型ネイバーが現れた。

1人は巨大な砲身を持った大柄な男と目つきが鋭い青年だ。

 

「さぁ!玄界の兵達よ、楽しもうじゃないか!」

 

「作戦開始する……」

 

大柄な男ことランバネインは砲身を……そしてもう1人の青年、ヒュースは小さな謎の欠片を周囲に展開した。

 

「………京介、ガイストはどれくらい使える?」

 

「3分くらいですね……」

 

京介の答えを聞きレイジは判断を下した。

 

「小南!三浦隊!この人型は俺たちが倒す!お前達はすぐに比企谷を助けに行け!」

 

「分かったわ……」

 

「「了解!」」

 

そして小南と三浦達は八幡の戦場へと駆け出す

 

「逃がさ……っ!」

 

小南達に砲撃の構えを見せるがレイジの作戦を読み取った烏丸は専用トリガーガイストを起動、機動戦特化でランバネインの砲撃が出る前に攻撃したのだ。

 

「『フルアームズ』」

 

そしてレイジも自身の専用トリガー、フルアームズを起動した。

 

「悪いがお前達にはここにいてもらう」

 

そして人型ネイバーとボーダー最強の部隊の戦闘が始まった。

 

 

 

 

「何だこれは……」

 

八幡は忌々しげに呟く。

 

「ほう……あれを防ぐか」

 

八幡は降り注いできたのを限界までアステロイドで相殺、そして近くに来たのはマステマで斬ろうとして『しまった』

今八幡の周りにはトリオンのキューブが大量に落ちており、マステマは生き物に触れた部分が無くなっていた。

 

「っは!」

 

八幡は一瞬驚いていたが嫌な予感がし、足元を見るとクラゲのような生き物が右足に当たった。

 

「ちっ……」

 

そこから歪んで行きキューブにされると判断した八幡はまだ刃として使える部分で反射的に足を切り落とした。

 

「良い判断だ……やはり部下に加えたいくらいだ」

 

「はっ……ごめんこうむる」

 

恐らくさっきの派手な鳥などの攻撃は陽動、足元のクラゲが本命だったのだろう。

 

「次は確実に捕らえる」

 

「それはどうかな?」

 

八幡は切断した足に合わせるようにシールドを義足のように展開、万全にはもちろん程遠いがそれでもましになった。

 

「さてS級隊員の意地を見せますかね……」

 

そして第2ラウンドの幕が上がった。



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大規模侵攻⑨

「ぐっ……」

 

ランバネインは高揚していた。

 

「よもや玄界のトリガーがここまで進歩しているとは」

 

「……」

 

烏丸はひたすらに機動戦特化で攻撃を繰り返す。アイビスしかりマステマしかり……大きな砲身をまともに使われたら押し切られる可能性があるからだ。

 

「このままでも少し我慢すれば終わるだろうが……それではつまらんな」

 

ランバネインはすでに烏丸のガイストの弱点を見抜いていた。それは強化部位からのトリオン漏れによる時間制限……ランバネインはそれが発動者にあってないかもしくは完成しきっていないトリガーだと考えていた。

 

「こちらからもしかけさせてもらう」

 

そうランバネインは告げると飛行形態を使い飛び上がり

 

「ふっ……」

 

ついにその主砲が放たれた。

 

「くっ……」

 

烏丸は機動戦特化のまま何とかかわすが己の絶望的なまでの不利に冷や汗を流していた。

 

「まだまだ楽しませてくれ、玄界の戦士!!」

 

 

 

 

「中々厄介だな……」

 

レイジはヒュースの鉄壁の如き盾に攻めあぐねていた。

 

「『ランビリス』……」

 

ヒュースはシールドに回してない破片を刃にまとめ放った。

 

「攻防一体ぶりはフルアームズ以上か……」

 

展開していたシールドで防ぐがレイジもまた不利な現状に立たされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぅ……敵に囲まれなおかつ、片足を失ってなおこの気迫……幾人といない猛者ですな」

 

ヴィザは八幡が戦意を失わないどころか、さらに気合いが入った様子を見て賞賛する。

 

「……ミラ、他の状況は?」

 

「ランバネインとヒュースが交戦中、放っていたトリオン兵はまだ多くいますが防衛線を張られ突破できない模様……っ!」

 

説明していたミラに向けて弾丸が飛んできたがそれをヴィザが弾いた。

 

「新手のようですな、こちらは私が片付けておきましょう」

 

そしてヴィザが見つめる先には

 

「八幡!!まだ生きてるわね!!」

 

「お兄ちゃん!!」

 

「八幡!?無事であろうな!!」

 

小南と三浦隊のメンバーが到達した。

 

「お嬢さん方、ここから先に行かせるわけにはまいりませんな」

 

「そこをどくし!」

 

「『星の杖(オルガノン)……」

 

「危ないっ!!」

 

突っ込んでくる三浦に向けてヴィザのトリガーが発動するが小南がすんでのところで三浦を止めた。

 

「うわっ……」

 

「何という……」

 

小町や材木座の目に飛び込んできたのは一瞬で周囲が破壊された光景だった。

 

「これは不味いわね……」

 

小南は内心冷や汗をかいていた。広範囲を一瞬で破壊するトリガー……まともにぶつかっては双月も耐えられないだろう。そして三浦隊ではもちろん実力不足であるし、ノーマルトリガーではもちろん耐えられないだろう

 

 

 

「行くぞ……ハウンド」

 

そして八幡は動き出した。ハイレインの特徴は分かってきていた。

 

「ふっ……ミラ」

 

「はい」

 

ミラは自身のブラックトリガーたる影の窓口(スピラスキア)を展開、ハウンドの大部分を大窓で吸い込んだ。

 

「ちっ!ワープトリガーか」

 

八幡は奴らが現れた時も思っていたがワープするトリガーを持っていることを確信した。

 

「くっ……」

 

マステマに搭載されているシールドを使い防ぎながら回避したがハウンドに紛れハイレインに操る動物弾も混じっており、シールドは喰われマステマ自身もボロボロとなっていた。

 

「仕方ないか……メテオラ」

 

八幡はマステマのメテオラを撃ち出さずに展開、それをハイレインたちに投げ放った、

 

「無駄よ……」

 

それをミラは再び窓で奪おうとしたが……

 

「弾けろ」

 

それは窓の手前で大爆発を起こしハイレイン達の視界を奪った。



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決着 前編

 

「もう時間か……」

 

烏丸はもうガイストが切れる寸前だった

 

「その様子だとお前のそれは限界のようだな」

 

ランバネインは烏丸の様子を見て言い

 

「(一瞬でも……)」

 

射撃戦特化

 

烏丸は一瞬で射撃形態に移行、全力で攻撃するが

 

「楽しかったぞ、玄界の戦士よ……なっ!?」

 

ランバネインのシールドを破るにはいたらず主砲の反撃をくらったが

 

「あとはお願いします……」

 

烏丸はそう呟くとベイルアウトしていくと同時に

 

「あとは任せとけ……『変化炸裂弾』」

 

建物に隠れながら放った出水の変化炸裂弾、トマホークかランバネインを襲撃し

 

「新手の火兵……だけではないようだなっ」

 

少し前

 

「柚宇さん柚宇さん、京介が粘ってくれてるけどヤツの情報どう?」

 

烏丸とランバネインが激突してる場所から少し離れた場所にエネドラを倒した後に援護にきた出水、それに合流した米屋と緑川がいた。太刀川は数少ない、ラービットを圧倒できるという事でラービットの駆除及び捕まえられた隊員の救出を優先している。

 

『じゃあ解析できたデータ送るよ』

 

そう国近柚宇は言うと3人にデータを送った。

 

「うわぁ、完璧な射撃系じゃん。いずみん先輩と同じタイプ」

 

「出水と同じ弾バカ族だな」

 

「うるせぇ、槍バカ」

 

出水はまぁ、と言い

 

「トリガーの出力やら何やらは砲撃主体状態の八幡よりは低いから何とかなりそうだな」

 

「じゃあとりあえず京介に……」

 

そして出水は京介に通信を繋げ

 

『何とかなりそうだ、ガイスト使う前に来れなくて悪いな』

 

『いえ……あとはお願いします』

 

そしてその少しあと、烏丸はベイルアウトしていった。

 

「こいつは陽動か……本命は」

 

トマホークの爆発の影から緑川が飛び出しグラスホッパーを使いながら撹乱

 

「幻踊孤月」

 

そこに米屋の一突きが繰り出されるが

 

「やっぱかわされちまったか」

 

ランバネインのシールドをかわし首を切ろうとした幻踊孤月だがすんでのところでかわされ、体に少し傷をつけるに止まったが。

 

「くっ……」

 

すぐにバイパーの雨が降ってきた。

 

「おらっ……」

 

さらに米屋の幻踊孤月を使いながらの刺突の連続が繰り出され

 

「連続攻撃を得意とした火兵に白兵、このまま相手にするのは不利だな」

 

そして槍の射程からは引こうと飛行形態をだし離れたが

 

「いけっ!」

 

米屋の言葉と同時に緑川が飛び出し、出水がランバネインの動きを牽制するように縦横無尽にバイパーを繰り出し

 

「終わりだよっ」

 

グラスホッパーを使った緑川の神速の突撃でランバネインを突き刺した。

 

「見事だ……」

 

戦闘体が解けたランバネインは素直に出水たちとその前の烏丸含め讃えた。

 

「ヴィザ翁の言う通り、玄界の進歩は目覚ましい!!」

 

そこに

 

「わりぃな、サシでやらなくて。」

 

「謝る必要はあるまい……」

 

ランバネインは合図をミラに送った。

 

 

 

 

「ハイレイン様、ランバネインが倒されたようです」

 

「何?……ランバネインを回収してこい」

 

それを聞いたミラはゲートに消えていった。

 

「一気に決めさせてもらう」

 

1本目のマステマを爆破させ急遽再生成した2本目のマステマ……さすがの八幡もトリオンに余裕があるとは言えない。

 

「ハウンド……」

 

そして八幡はトリオンに対して鉄壁を誇るハイレインの守りを崩すため無数の弾丸を繰り出した。



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決着 後編

 

『作戦を伝えるわ……』

 

海老名と宇佐美の解析により相手のトリガーのネタは分かった。小南ですら真正面から戦っては到底太刀打ちできないと判断した。

 

『……以上よ』

 

『『了解……』』

 

三浦隊に面々は初めての人型ネイバー、しかも出力からして黒トリガーを倒す……緊張していたが

 

『何を緊張してるのよ、大丈夫よ。あたしが勝てると踏んだから作戦を伝えたんだから』

 

小南からそう言われ三浦隊の面々はようやく緊張が解け普段の顔付きになり

 

「行くわよっ!!」

 

小南の合図とともに全員が散解した。

 

「メテオラ!!」

 

「アステロイド!!」

 

「「ハウンド!」」

 

小南はメテオラをばら撒き、三浦はアステロイドを、材木座と小町はハウンドを放った。

 

「ふむ、中々の弾幕ですが。それでは私には届かない」

 

高速で軌道を描くオルガノンが弾幕を切り裂くが

 

「っむ……」

 

一発の弾丸がヴィザの肩を貫いた。相模のライトニングによる狙撃である。

 

「南!退きなさい!!」

 

小南が言うが

 

「まずは狙撃者から行きましょう」

 

確実にオルガノンの外から攻撃してくる相模に狙いを定めたヴィザはそちらに向かうが

 

「ハウンド!」

 

「アステロイド!」

 

グラスホッパーを使いヴィザの真正面に立った三浦が再びアステロイドをそしてヴィザの下から狙うように材木座がハウンドを放ち

 

「まさかオルガノンの死角をついてくるとは思いませんでした」

 

それらをヴィザは剣を重ね盾のようにして防ぐ

 

「はぁっ!!」

 

そしてヴィザの上から双月斧を小南が振り下ろす。

 

「スナイパーも囮の良い作戦ですが、まだ足りませんね」

 

ヴィザは盾には使っていなかった剣を起動させ小南を切り裂き

 

「ブラッディナイトメアスラッシャー!!」

 

「旋空孤月」

 

直後に材木座と三浦の旋空孤月が発動するが

 

「ぐっ」

 

「くっ」

 

2人は小南を切り裂いた後の刃によりベイルアウトしてしまうが

 

「メテオラ」

 

野生の感でギリギリベイルアウトを免れていた小南はヴィザの前に落ちながらメテオラを起動する

 

「っ!!」

 

そんな落ちてきた小南をヴィザは仕込み刀のオルガノン本体で切り裂くが、小南はメテオラを撃ち出さずに一緒に斬り裂かれるように配置しており一瞬ヴィザの視界が0.になる。

 

「バイパー!!!!」

 

「お見事……」

 

そして小町のバイパーのフルアタックを喰らったヴィザは戦闘体が解けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!」

 

「ヴィザ翁まで!?」

 

ランバネインとヴィザがやられたのが伝わりハイレインとミラは驚愕していた。

 

「ミラ、2人を回収しろ」

 

「了解です……」

 

そしてハイレインは八幡に目を向ける。そこにはマステマを再生成した八幡がいた。

 

「(もうトリオンも残りわずか……敵が1人になった今のうちにケリをつける)」

 

「アステロイド!」

 

八幡はハイレインに向かいながらアステロイドを放つ、1つの準備をしながら

 

「無駄だ、お前では俺に勝てない」

 

「それは勝ってから言うんだな……『アイビス』」

 

お互いに相殺しながら戦っていたが八幡は途中でアステロイドをやめ、準備していたアイビスを放つ。そしてグラスホッパーを起動し

 

「ぐっ……とてつもないトリオンの弾丸だな」

 

ハイレインは八幡から放たれたアイビスの一撃をギリギリのラインで相殺しており

 

「っ、何とか耐えたか」

 

「スラスターON!!」

 

グラスホッパーとスラスターで瞬間的にスピードを跳ね上げた八幡はほんの一瞬無防備になったハイレインの首を飛ばした

 

「っ!」

 

そこで八幡のトリオン体も解除された。

 

「見事なものだ、ヴィザと打ち合いアレクトールと撃ち合い奇襲すら防いだ……」

 

「そりゃどーも」

 

ハイレインは賞賛すると同時にその恐るべき強さをひしひしと感じていた。

 

「ハイレイン隊長!!」

 

ヴィザとランバネインを回収したミラが戻ってきたが

 

「隊長、こちらに玄界勢力が集まってきています」

 

「お兄ちゃん!!」

 

「比企谷!!」

 

そこにヴィザに最後止めを刺した小町と相模もきた。そして元々攻撃には向かないミラだけでは不利と判断したハイレインは

 

「仕方ない、ミラ。撤収するぞ。予定通りヒュースは置いていく。」

 

「了解……」

 

撤退を決めた。

 

「見事だ、玄界の戦士達よ」

 

そしてハイレインはミラの作ったゲートに消えていき

 

「さようなら、金の鳥」

 

「っ!!」

 

手に入らないなら殺せと、ミラは八幡に奇襲の攻撃をする。

 

「ガハッ……」

 

心臓や頭は避けたものの八幡は体の複数箇所を刺された。

 

「このっ!?」

 

小町はミラを倒そうとするが、ミラはゲートに消えていき、暗かった空が晴れていった。

 

 

 

 

「ふぅっ……城戸さん。もう大丈夫だ。敵の追加とかはないよ」

 

迅は城戸にそう通信すると

 

「迅、今回の結果はお前の予知ではどの辺りのできだ?」

 

そして迅はひと息つき

 

「2、3番目ってとこかな」

 

「そうか、分かった。ご苦労」

 

 

民間人

 

死者0名 重傷者16名 軽症者60名

 

ボーダー

 

死者0名 重傷者1名 行方不明者20名

 

拐われた隊員などを0にすることは叶わなかったがそれでも被害は大幅に抑えられた。

 

 

 

 

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!死んじゃやだよ!!小町を1人にしないで!!」

 

戦場の一角で小町は兄に必死に呼びかけていた。



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比企谷八幡⑦

遠い日を八幡は夢で見ていた。

 

「お父さん、此処はなに?」

 

まだまだ八幡がボーダーの前身組織に入る前、幼い八幡は父親にその組織に連れて来られた。

 

「ここはお父さんとお母さんが働いてる場所だよ」

 

「へー」

 

そこで八幡はトリオンの検査を受け、常人を遥かに超えるトリオンの持ち主だと発覚した。

 

「お母さん達の夢はね、この世界と向こうの世界。両方に世界の人が自由に行き来できる平和な世界を作りたいの」

 

母親が語り

 

「そのためには此方の世界も力をつけなければならない。お前には期待してるぞ」

 

若かりし頃の城戸がそう言い八幡の頭を撫で、八幡は少しくすぐったそうにしていた。

 

「あ、シノダさん!」

 

「八幡来てたのか、また剣を練習するか?」

 

やってきた忍田に八幡は剣を教えてもらい、八幡はどんどん強くなっていった。

 

「あたしは小南桐絵、よろしくね」

 

小南を始めメンバーはその数を少しづつ増やして行った。そして……

 

「迅の予知通りにネイバーの侵攻が起きてしまった、出撃するぞ」

 

城戸の言葉により戦闘員は出撃した。その中にはもちろん八幡も入っていた。

八幡達が出撃したあとに比企谷夫妻は住民の避難を助けていたが、八幡はそれを知らずにいた。

 

「お、親父?お袋?」

 

住民を助けるために慣れない戦闘をした比企谷夫妻は遺体となって発見された。

 

八幡はネイバーを憎んだ。両親は常々言っていた。向こうの世界と交流したいと、仲良くしたいと。それにこの仕打ちか……八幡の心は憎悪の炎が己の身まで焼き尽くさんと燃え盛っていた。

 

そしてついにボーダーは新しい根付や鬼怒田を始めとした新しい幹部を加えその活動を大きくした。

八幡は防衛任務にひたすら行った。人手不足や小町を養うためだけじゃなく、憎悪の炎を吐き出すためだけに戦っていた。

 

「こら比企谷!!妹ちゃんを泣かせるとはどういう事だ!?」

 

ある日本部に八幡が帰ると開発室に呼び出された。そこには鬼怒田にしがみつく小町と怒っている鬼怒田が話しかけてきた。小町は最も安全なボーダー本部においていたのだ。そしてよく見ると小町の目は泣き腫らしていた。

 

「お主の気持ちはわからんでもない!だがな?側にいる大切な人を泣かしてどうするんだ!?」

 

「お兄ちゃん、ワガママ言ってごめん。だけど小町、寂しいよ……」

 

そして小町の目からはまた涙が溢れた。

 

「こ……まち……」

 

そこで初めて小町に寂しい思いをさせてたのに気づいた。両親がいなくなり唯一の肉親である兄はずっといない……寂しくないわけがない、むしろ今までよく我慢した。

 

「小町、ごめんな……ごめんな……」

 

「ひぐっ!お兄ちゃぁぁあん!!」

 

小町を抱きしめ八幡は涙を流すと小町も一緒に泣いた。

 

「鬼怒田さん、小町をありがとうございました。そうだ、どうして小町と?」

 

ちなみにや小町は泣き疲れたのか八幡の膝の上で穏やかな寝顔で寝ている。鬼怒田によると寂しさを紛らわすために散歩していた小町が泣いているのを見つけ保護し、話を聞いたらしい。

 

「そうじゃ、比企谷よ。提案があるんだが……」

 

鬼怒田の提案とは開発室の手伝いをしないか?というものだった。それなら開発室から給料も出せるからお金は防衛任務にでなくてもある程度はよくなり小町との時間も作れるという事だった。もちろん八幡程の実力者に試作トリガーなどを試してもらいたいのもあった。

 

 

 

八幡が開発室を手伝うようになりしばらくたったある日のこと

 

「親父、お袋……どうすれば良い?」

 

「おーい、八幡。このトリガーの事じゃが……」原作で鬼怒田さんはじゃを使ってない

 

八幡の仮眠室で八幡の呟きを鬼怒田は聞いてしまい。

 

「どうした?何か悩みか?」

 

「鬼怒田さん……あぁ……ちょっと聞いてもらっていいですか?」

 

そして八幡は話した。八幡はネイバーが憎い。憎くて仕方ないが、両親の理想を追いかけたいという気持ちもあるという事を。この矛盾した感情を八幡はどうすればいいかわからないと……

 

「なんじゃ、そんな事か」

 

鬼怒田は笑いとばした。

 

「ネイバーが憎い、でも向こうと仲良くできる世界を作る。なんも矛盾しとらん。今の地球とてそんな2つの感情で歴史を重ねてきたんじゃ。いずれ八幡にも分かる日がくるだろう。」

 

「そう……ですかね」

 

吐き出したのと鬼怒田の言葉で少し気持ちが軽くなった八幡。

 

 

月日がたち八幡は1つの答えを出した。

 

『手の届く範囲は全て守ろう、それがきっと親父たちの夢に繋がる』

 

ネイバーがなぜ憎いのか?両親を殺しただけではない。己からまた大切な人を奪いかも知れない、それが許せなかったのだ。ならば自分の全霊をもって周りの人を守ろう、そう誓う。きっとその守りたいという範囲は広がるだろう、それが両親の夢に繋がると信じて。

 

 

 

 

 

 

「おはよ!お兄ちゃん!」

 

「こ…ま……ち」

 

目が覚めると泣き腫らした後があるが小町は笑顔で兄を迎えた。

 

 



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その後

「小町、俺が倒れた後どうなった?」

 

目覚めた八幡は様々な検査などを受け、安静にしていれば大丈夫と確認が取れて落ち着いたころに小町に聞いた。

 

「えーと、まずは戦功からだね」

 

そして小町は特級戦功から順にタブレットをみながら説明していった。八幡はもちろん特級、三浦達も人型1人と裏切っていた葉山隊捕縛などの功績から特級に数えられていた。

 

「八幡!?」

 

戦功の説明が終わった頃に部屋に人が飛び込んできた。

 

「あんたもう大丈夫なの!?」

 

「小南か……しばらくは入院だがもう大丈夫だとよ」

 

そう八幡が言うと

 

「そ、そうよね!ゾ、ゾンビみたいな、あんたが簡単にくたばるわけ……な、いものね」

 

小南は八幡に顔を見せないようにし、強がりながら言う。

 

「あー……その、何だ……心配かけたな」

 

「だ、誰も心配したなんて……」

 

なお小南が強がろうとしたが

 

「小南お姉ちゃん、今強がるとお兄ちゃんショック死しちゃいます」

 

小町が言うと

 

「えっ!?……うぅ……」

 

小南はひとしきり唸ったあと

 

「心配かけるんじゃないわよ!!バカ八幡!!」

 

小南は八幡に向き直り

 

「ホント……どれだけ心配したと……」

 

そして小南は泣き出してしまった。

 

 

 

 

 

 

「忘れなさい……」

 

「無理」

 

ようやく落ち着いた小南は泣き顔を忘れろと八幡に迫るが

 

「久しぶりに見たな、お前の泣き顔」

 

「うぐっ……はぁ、まぁ軽口叩けるなら本当に大丈夫か」

 

そして小南は用事があるからと病室を出ていった。

 

「そうだ、お兄ちゃん。今日ボーダーの会見があるんだよ!!」

 

今まで静かにしていた小町が思い出したように言い、テレビをつけるとちょうど会見が始まるところだった。

 

内容は最初に大規模侵攻に関しての報告が主に話された。そして

 

「次に大規模侵攻に大きく関わったと思われる、元葉山隊のメンバー、葉山隼人、雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣の3名につきましては昨年の夏に発表しましたように、国や司法機関とも協議した上で処分を決定いたします。」

 

そして

 

「今回の大規模侵攻で行方不明となった隊員達についてはどうなさるつもりですか!?」

 

1人の記者が叫ぶように質問した。

 

「この人は根付さんの仕込みだな」

 

八幡がボソッと呟くと小町が何で?と聞いた。

 

「普通の人の感覚なら葉山隊の処分に関して発表された直後ならそれに関係する質問がされるはずだ。例えば規律違反者にはどんな罰則があるかとか、重罰は何があるかとかな」

 

八幡はひと息つくと

 

「それを発表したら話す程度はどうであれ、ボーダーに陰を落とす。だからその陰をかき消す光を出すつもりだろうな」

 

「うぅ……小町にはよく分からないや」

 

「見てればわかる」

 

そして

 

「現在ボーダーは連れさられた隊員の奪還計画を進めている。我々はすでに無人機での近界への渡航、往還実験に成功した」

 

城戸の言葉にざわめきが広がる。

 

「この奪還計画は先の大規模侵攻だけではなく、四年前の第一次侵攻の犠牲者も含まれ、ボーダーにとっては過去最大の長期プロジェクトとなるだろう」

 

城戸は記者を見渡し、戦闘員だけでなくオペレーターや一般職員、エンジニアと幅広く募集してると告げ、会見は終わった。

 

「 大胆な事するねー」

 

小町も遠征の発表に驚いたようだ。

 

「また忙しくなるな……」

 

そして八幡はこれからの事を思いため息をついたのだった。



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エピローグ

「おぉ八幡、もう動けるのか?」

 

八幡は松葉杖がまだ必要だが動けるまでに回復しさっそくボーダー本部開発室に来ていた。

 

「まぁ無理しない程度なら……」

 

「そうか、やはりマステマは封印するべきかもしれんな……」

 

鬼怒田はマステマを八幡に使わせたのを後悔していたが

 

「いや、この怪我は俺の実力不足ですから……雪ノ下達はどうなりました?」

 

八幡が聞くと鬼怒田は室長室に呼び説明した。

 

3人は記憶操作を受けボーダーが関係するもの全てを消去され、ボーダーと国が管理する島に隔離されるらしい。近界への渡航は本来は自分達が防衛任務にでた時のゲートでする予定だったがボランティア先でイレギュラーゲートが偶然起き計画を決行したらしい。

辿り着いた先がアフトクラトルの属国の1つでそこからアフトクラトルへと連れていかれたようだ。しかし基本3人は隔離されたままの移動でアフトクラトルの情報はないも同然だった。

 

 

なお計画を考えたのは雪ノ下であり、由比ヶ浜は口車に乗せられ葉山は雪ノ下についていったという事だ。

 

「あいつらが持ってたトリガーは?雪ノ下にいたってはブラックトリガーって言ってたが……」

 

八幡が聞くと鬼怒田ははぁっとため息をつき

 

「葉山と由比ヶ浜のトリガーは我々のトリガーよりも性能が低かったわい、良くて試作。下手すると処分するだけのトリガーだった」

 

そしてと言い

 

「雪ノ下のもノーマルトリガーじゃ。出力はそれなりであったがな。こっちは恐らく試作トリガーじゃろう。特殊なタイプじゃからもしかしたモデルはブラックトリガーかもしれん」

 

「そうですか……じゃあ俺はこのまま城戸司令に会ってきます」

 

そして開発室を後にし

 

 

 

「無事でなによりだ。体も回復したようだな」

 

「おかげさまで」

 

司令室で八幡と城戸は対面していた。

 

「お前にはこれからも働いて貰うぞ。次の遠征は大規模なものになる。A級隊員はもちろんのこと、B級隊員からも選抜しなければならない」

 

八幡はその候補者選びを手伝だわされ、時期がくれば訓練もつけなければならない……酷く憂鬱だった。

 

 

 

 

「おぉ、八幡!ついに動けるまでになったか!」

 

「大丈夫か!?はちまん!!」

 

「大丈夫だぞ、陽太朗」

 

玉狛支部に来るとまず材木座が飛びつかんばかりの勢いで来たのでかわし、陽太朗の頭を撫で答えた。

 

「てか材木座、お前ら三浦隊は毎日のように病院に押しかけてきてんだから回復具合は知ってるだろ」

 

そう三浦隊の面々は八幡が目覚めた次の日から毎日のように見舞いに来ていたのだ。初日はあの三浦でさえ涙ぐんでおり八幡は驚いたたのを覚えている

 

「あっ!比企谷先輩!大丈夫ですか?」

 

「久しぶりだな、眼鏡くん。大丈夫だよ。それより荒船隊、諏訪隊とのランク戦に勝ったらしいな、おめでとう」

 

八幡は続けて

 

「次は鈴鳴と那須隊だったか……B級の壁はここらからだな、頑張れよ」

 

そして八幡は林藤支部長などにも挨拶してまわり

 

「いつまで落ち込んでるんすか?迅さん」

 

「あー、そのだな……」

 

外で黄昏てた迅に話しかけた。

 

「今回のは迅さんのせいじゃないっすよ。俺の実力不足です」

 

「だけどな……」

 

八幡は息を吐くと

 

「でも俺があの場にあの状態でいたからこそ、防げた被害もあるんすよね?なら良いじゃないですか。」

 

「……ありがとうよ、八幡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある島にて

 

「依頼者を連れて来たぞ」

 

「平塚先生、何度も言ってますがノックを……」

 

「まぁまぁ、ゆきのんおちついて」

 

「えーと、先生。依頼者の人を……」

 

「おぉ、すまんな葉山。この娘だ……」

 

「ようこそ奉仕部へ、歓迎するわ」




一応続きなどは考えていますが、話数多くなったので一区切りといたします。


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