欲望の化け物 (ミスターサー)
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ヒトノメダル

「・・・、がっ!」

 

西暦1200年、まだ魔法が表に出ていた時代。一人の仮面を着けた男がフードを被った男に手を胸に刺されていた。

仮面の男は錬金術の達人で、人工生命体を作る事を命じられていた最高責任者の一人で有った。

 

「な、なぜ・・・アナタが?」

 

「何故?何故だが分かるかい、---くん。君は実に優秀な錬金術師だ。しかしだ。しかしだ!何故、君はグリードの産みの親なのに破壊のメダル、地のメダル、殻に包まれたの生命のメダル、ヒューマンメダルなど様々なメダルを作ったのかね?しかもそれを隠すとは・・・。私はその事に関して今、怒っているのだよ?」

 

「お、-よ・・・それは、誤解です。たとえ欲望の王の姿に成られたとしても、あの者達は寿命の無い生命!危険視する必要が!」

 

「だが君は危険と言いながらヒューマンメダルを作った。彼等にそった欲望を、命の根源を与えようとした。

アンクには命、メズールは人の愛を得られる暖かさや温もり、ガメルには無邪気のようで優しい心と力の加減、カザリには社会性の過酷と素晴らしさ、ウヴァには学ぶことの重要性を埋めようとした。」

 

「そ、それは!私の欲望で!」

 

「そうかね?私は、君のは欲望じゃないと思っている、もはや責務だとね。

それで君には失望したんだよ、私は・・・。

あぁ・・・一応言っておくが、君を殺すのではないんだ。今から生まれ変わさせるんだよ。」

 

「!、まさか!」

 

「そう!君は人間の欲の象徴となるグリードして降臨してもらう!ヒューマングリードして!十枚目のコアメダルとしてね!」

 

「まっ!」

 

フードを被った人物は、ズルリと気味が悪い音を立てながら仮面の男の心臓を引きずり出し、見せ付ける。

だが、不思議に心臓は血も出ても、ついていない状態で動き続けている。

 

「あ、あぁ・・・!あぁああああああああ!」

 

仮面の男はその場から怯えるように数歩下がり、自分の手を見る。

 

「さぁ、君の意思は・・・欲望は何だ?」

 

「嫌だ・・・嫌だ・・・嫌だ・・・嫌だ!私は私で居たい!私は人として生きたい!人として死にたい!何かを残して死にたい!全てを知り尽くしたい!」

 

「そう、それが君が見る、人の欲だ・・・。個人の感情、個人の遺産、個人の名誉、人として文化を学ぶ、それが人としての欲だ。

実に素晴らしい、実に、実に!君は素晴らしいぃ!」

 

「嫌だ・・・私は、何になる?」

 

カーン!と高い音を立てながら男から仮面が外れる。

 

「私は、化け物で、僕?」

 

男の手が何かに変わる。

 

「僕は俺?」

 

男の心臓が透明なメダルに変わる。

 

「俺はオレ?」

 

足がメダルに変わっていく。

 

「じゃあ・・・アナタは誰?欲望の王?」

 

身体がメダルの塊となり始め、ジャラジャラと音を立てながら衣服以外の部分が無くなっていく。

 

「あぁ、知りたい、知りたい!!自分がなにかしりたいいいいいいいいいいいい!!」

 

男は断末魔のような声を上げ、ついに者では無く、物になり、存在がこの世に消えた。

いや言い直そう、存在がメダルになり、人工の物となった。

 

「そうだ、と言いたいが、いいえとも言える。

私は欲望の王(オーズ)であり、完全なる世界(コズモエンテレケイア)の造物主(ライフメーカー)さ

そして君は、この時代の・・・私の友人、ジェイド・グリードさ」

 

残った男は、フードを取りながら悲しい声色で言いながら、笑顔で友人だった者を見た。

 

 

 

 

 

西暦1600年

一人の長い金髪の少女が複数の男に追われていた。男の数は三人で全員十字架が書かれている甲冑を着て追いかけてきている。

 

「ハァ、・・・ハァ!」

 

少女は逃げる、小柄な身体を利用しながら木々の間を抜けて走る。そのためか、男達は追いつけずにだんだんと距離を取られていく

 

「クソ!あのチビ吸血鬼が!チビのくせに速い!」

 

追っ手の一人が文句を吐き出す。

 

「外見に惑わされるな!成り立てと言えど吸血鬼の真祖だぞ!」

 

真ん中を走っている追っ手が文句を言った男に注意を促す。

 

「それに、ぜえ!アイツが盗んだ、げほ!物は!おェ、あの錬金術士の意思が、うぷ、入った硬貨!」

 

「分かってるさ!つか無理すんな!」

 

最後尾に居る追っ手は息を切らせながら、何か吐き出しそうになりながらも説明をする。

 

「とにかくお前は後から来い!」

 

「ま、手柄は俺達二人で頂くがな!」

 

「お、おう、すまん」

 

最後尾の男は足を止め、残りの二人は少女を追いかけた。

 

 

 

 

 

一方、少女は洞窟に潜んでいた。

洞窟は、深く、声や音が返りやすいような構造をしており、最深部には円盤が乗っけられた棺桶が有った。

少女は必死に、しかし希望を期待した顔で手に持っていた箱の蓋を開け、円盤に次々と透明のメダルを嵌めていく。

 

そして全て嵌め終わると少女は膝を付き、希望の顔は絶望した顔に変わる。

 

「そんな・・・」

 

「やっと追いついたぞ化け物!」

 

「手間を掛けさせやがって・・・」

 

すると丁度、追っ手の男二人が現れ、少女の足を剣で切断する

 

「あッ!」

 

「たく、このバケモンが」

 

一人が少女に殴ろうとするがもう一人に「やめろ」と止められる

 

「でもよぉ!コイツは!」

 

「お前の言い分は分かるが、コイツの処理は上が決める事だ。下っ端の我々が関与する訳にいかない」

 

「・・・ちっ、わぁかったよ。クソ」

 

一人は悪態を表し、少女を紐で縛り始め、もう一人は棺桶に近づく。

そして手に持った松明(たいまつ)を円盤に近づけ、メダルを見る。

 

「・・・これは?」

 

「あ?どうした?」

 

「いや、メダルの描かれているのが変なだけだだと気づいただけだ。」

 

「は?んだよ。見せてみろ。」

 

少女を見ていた男は、すれ違いに松明を受け取り、円盤を照らす。

 

「・・・、なんだこりゃ?」

 

「だから言っているだろう、変だと。」

 

円盤はまるで人が棺桶の中で眠っている人の形を描いており、メダルには人が描かれたメダルが九枚有った・・・。が、一枚だけ違う。

 

「変も、変すぎるだろ。なんで一枚だけが動物じゃないんだよ。」

 

「あぁ、なんで一枚が心の臓なんだろうな?」

 

そう、その一枚こそが人間の心臓であった。

 

「・・・知らん」

 

「おいおい・・・」

 

「実際にそうだろ。

昔、母から聞いたんだが、その呪いの硬貨は意思を持ち、動物の絵柄の力を持つというらしい」

 

「そうなのか?」

 

「らしいだよ、らしい・・・この吸血鬼もソレを聞いて助けてもらおうって魂胆だったんだろう」

 

「んだよ、たく。化け物は化け物とつるむってか?冗談じゃねえよ。けど」

 

「どうした?」

 

「いや、確認したくてな」

 

「確認?」

 

「この化け物がどういう奴に助けを求めたのか知りたくてな」

 

片手で松明を持ちながらメダルを手に取り、心臓が描かれているメダル以外は嵌めていく。

 

「おい、やめておけ。嫌な予感がする」

 

「んだよ、心配しすぎだって。ほい最後。」

 

カチリと心臓のメダルを胸の位置に嵌め込む。

 

「「・・・」」

 

「なんだ、やっぱり迷信だったじゃないか」

 

「・・・、らしいな」

 

少女の隣に立つ男は安堵の声を出した。

 

「け、んじゃさっさと行こうぜ」

 

「あぁ、そうしよう」

 

男は少女を腋(わき)に抱えるが、その少女はカタカタと震える。

 

「・・・いや、」

 

「は?」

 

先程まで寡黙だった少女は呟き始める。

 

「いや!はなして!早く離して!逃げないと!早く逃げないと!」

 

「!?、五月蝿い!おい!手伝ってく、れ?」

 

男は腋に抱えた少女の口を塞ぎ、後ろを見るが先程の乱暴口調の男は居らず。棺だけが開いていた。

 

「・・・おい、嘘だろ」

 

「ウソダトオモウナラ、オレヲミテミロ」

 

無機質で感情がこもっていない声が入り口から聞こえ、ソッチを見た瞬間。人の皮膚が無い状態で立つ化け物が立っていた。

 

「イタダキマス」

 

「う、-----!」

 

男の悲鳴が鳴り響き、少女は自身の終わりを感じながら悲鳴をBGM代わりに気絶していった。




・・・、始めからホラーなような感じになりましたね


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