暗殺教室・その転校生、未来人で、仮面ライダー! (真田丸)
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1つの終わり1つの始まり

祝!初原稿ぉぉぉーーー!! 今まで読む専門でしたが読んでるうちに自分も作ってみたいと思い、始めました。
初心者で不定期ですが、温かい目で見てください。
宜しくお願いします。


2016年突如現れた108体の謎の機械生命体【ロイミュード】により人類は支配された。

ロイミュードの支配から100年後、人類はライダーシステムを開発し反撃に出た。

両軍は激しい戦闘を繰り返し人類はとうとうロイミュードを追い詰めた。

 

「はあっ!」

「であっ!」

かつての首都、東京の中心で3つの影が戦っていた。

タイヤを身に付けた赤い戦士【仮面ライダードライブ】マフラーをなびかせる白い戦士【仮面ライダーマッハ】

対するは、紅き鬼の様な異形、ロイミュードのリーダー【ハートロイミュード】

戦いは1時間に及んだ。

「はぁ、はぁ・・・くっそぉ!!」

マッハは荒い息遣いで膝をついた。眼前ではドライブの剣とハートの拳が激しく激突していた。

 

「どうした!?こんなものかぁ!!」

ハートの拳を受けたドライブが吹き飛ばされ瓦礫に激突した。

「くっだったら・・・これで!」<ターン!>

ドライブは剣のハンドル部分を操作すると回転してハートに迫った。ハートは光弾により迎撃しようとしたが、すべて躱した。

「まだだ!<ゼンリン!シューター!>っ!?」

ハートがさらに攻撃しようとすると数発の光弾がハートに命中した。

「はぁはぁ・・・俺を・・忘れんなよ・・・」

攻撃したのは体力が尽きかけ膝をついていたマッハだった

ハートがマッハに気を取られているとハートの懐に飛び込んだドライブの剣がハートの身体を切り裂いた。

 

「ぐぅ!」

ハートの身体が大きく揺らいだ

 

『いまだ。2人とも!』

「「ガレット!!」」

ドライブのベルトから発せられた声に答えた2人のライダーは最後の力を振り絞りそれぞれ必殺の動作を取った。

『ヒッサーツ!フルスロットール!』<ヒッセツ!フルスロットル!>

『スピード!』<マッハ!>

「「はあぁぁぁぁーーーー!!」」

2人のキックがハートに激突した。赤と白のエネルギーが周囲に拡散、瓦礫を破壊していく。

「はははは~~~!!そうだ!この胸の高鳴りこそが、俺の喜びだーー!楽しかったぞ!仮面ライダー!!!」

ハートの身体が爆発し周囲を爆炎が包んだ。

 

 

爆炎が収まるとそこには黒と白の髪の2人の少年が倒れこんでいた。その腰にはそれぞれのライダーのベルトが巻かれていた。

「はぁはぁ・・・やったな・・・」

「ええ・・・やりましたね・・・」

『2人ともよくやった。リーダーを失ったロイミュード達の指揮系統は破壊されたはずだ。残りのロイミュードを撲滅すれば我々の・・』

次の瞬間、どこからかの攻撃が2人を襲った。

「うわぁ!?」

攻撃によって吹き飛んだ黒髪の少年が顔を上げるとそこには何十体ものロイミュードがいた。その中にはハートと同クラスのロイミュード【001】が居た。そのうちの1体が気絶した白髪の少年を抱えていた。

「アレン!」

助けようと立ち上がろうとするがハートとの長時間の戦闘と先程のダメージにより身体が動かなかった。

 

「ハートは敗れましたか・・・まあ良い。もはやこの時代に用はない。ロイミュードが次なる進化を遂げるために我々は過去に行く」

「過去に?・・・」

「ではさらばだ。仮面ライダーそして・・・」

『はっ離せぇ!』

001は白髪の少年の腰からベルトを引きはがし黒髪の少年のそばに投げた。

「クリム・スタインベルト」

ロイミュード達は後ろに現れた光の中に消えていった。

「アレン!」『アレェェン!!』

 

 

 

 

半年後

ロイミュードの消えた世界で人類は100年ぶりに自由を手に入れた。人口は数百万になってしまったが、これから少しずつ復興を遂げかつての繁栄を取り戻す時が来るだろう。

そんな中、少年は仲間たちとある研究を続けていた。

「やった・・・完成だぁ!!」

1人の男が叫ぶと研究所内が歓喜で包まれた。

そして男たちの中でリーダーの男が少年に語り掛けた。

「本当に・・・良いんだな?」

「・・・ああ、これは俺がやらなきゃならない事だからさ・・・・俺が過去に跳ぶ!」

「・・・分かった。・・・死ぬなよ・・」

 

少年は白いバイクに跨りエンジンを噴かした。すると目の前に光が現れた。

《目的地は2015年だ!一応その時代に向けメッセージは発信してあるがどれだけ信じてもらえているか解らない!気を付けてくれ!》

「ガレット!」

『行こう郷、我々の目的は・・・』

「過去に跳んだロイミュードを追跡そして、撲滅だ!」

バイクを走らせ少年は光の中に消えた。

 

 

 

 




今回は取り合えずプロローグ的なものです。
次回はライダーに変身する少年の設定です。


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オリキャラ紹介

寝る前にキャラクター紹介だけでも投稿しておきます。


詩藤 郷(しどう ごう)

 

身長・167㎝

体重・53kg

血液型・AB型

好きな教科・歴史

嫌いな教科・英語

趣味特技・写真撮影、プログラム製作

宝物・父親の形見のカメラ

好きな食べ物・ドーナッツ、焼き魚

弁当派or買い食い派・買い食い派

選挙ポスター・最速!故に最強!

所属・レジスタンス・ライダー隊→椚ヶ丘中学3年E組

 

個別能力値(5段階) 生徒基準/レジスタンス基準

体力・5/3

機動力・5/5

近接戦闘・5/4

遠距離戦闘・5/4

学力・2/3

固有スキル(重加速)・5/4

 

作戦行動適正チャート(6段階)

戦略立案・4

指揮統率・2

実行力・6

技術力・5

探査諜報・5

政治交渉・2

 

外見は髪を黒くした甲斐刹那(デビルチルドレン)

 

未来から来た転校生

【マッハドライバー炎】と【シグナルマッハ】で仮面ライダーマッハに変身する

未来での豊富な戦闘経験のため、戦闘能力は生身でも群を抜いている。特にスピードに関しては烏間以上でその気にならば世界記録も塗り替えられる程但し未来の世界において戦闘や開発以外にろくに学ばなかったため、学力はクラスで最下位である(所々で外国語を使うがレジスタンス内にいた外国人の言葉を真似しているだけで英語の成績は特に悪い)

家族は父親と母親、そして5歳年下の妹が1人但し本当の家族ではなく3歳の時に地下の下水道内で気絶しているところを助けられ、引き取られた関係である。

親は7歳の時、妹は10歳の時に殺された。

その後1人で野良犬のように生きてきたが12歳の時にレジスタンスに保護され所属、生まれ持っていたプログラムの技術でライダーシステム開発に貢献しライダーの素質を見込まれ仮面ライダーマッハとなる。

家族を助けられなかったことからどんなに遠くでも助けに行くことのできる速さを求めるようになった。

過去に来てからは未来では見れなかった色々な物に興味を持ち所構わず写真を取っているためよく盗撮魔に間違えられる。

 

仮面ライダーマッハ

パンチ力 9.7トン

キック力・16.7トン

ジャンプ力・ひと跳び40.3M

走力・100Mを2.4秒(通常時)

 

郷がマッハドライバーとシグナルマッハで変身した未来の戦士専用武器【ゼンリンシューター】で打撃も射撃も可能で更にドライバー上部の【ブーストイグナイター】を押すことで名前の通り音速での行動が可能になりそのスピードを生かしたヒットアンドアウェイを得意とする。

シフトカーや他のシグナルバイクの力を使うことで様々な能力を使用可能になるまた、自身もロイミュード同様重加速を起こすことができる。

 




とりあえずはこんな所です。
今後話の進み具合で随時更新していきます。


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降り立つマッハ

や~と!投稿で来た~~!!
思ったより時間が掛かってしまいました。
やっぱり戦闘描写は難しいですね。


その日、速水凜香は親と喧嘩し公園のベンチに座り込んでいた。

クラスメートに頼られてばかりで自分の勉強をおろそかにしてしまいE組に落とされたのが原因だった。

 

「はぁ・・・」

速水はそっと溜息を吐いた。昔から感情を表に出すのが苦手で頼まれごとも嫌な顔せず引き受けてしまう.

自分でもどうにかしないといけないとは思っているのだがなかなかうまくいかない。

 

「あっ雨・・・」

顔を伏せていると首筋し水滴が当たった。顔を上げてみると空は雲に覆われ雨が降り出していた。雨は少しずつ強くなりすぐに土砂降りになった。

「ちょっ!うそでしょ!?」

雨宿りのため公園内の屋根のある休息所に向かおうと立った時だった。

「きゃっ!?」

謎の衝撃と共に速水の視界がいや、世界がまるでスロー再生されたようになった。

雨は一粒一粒がはっきりと見え道を走っている車も止まっているようだった。そして速水自身もまるで身体が鉛になったように動かなかった。

「なっ何よこれ?」

 

「見つけたぞ」

困惑する速水に複数の足音が近づいた。首もまともに動かすことができない速水は足音の主を見ることは出来なかった。だが、なぜかその声を聴いた瞬間とてつもなく嫌な予感がした。すぐにでもこの場から逃げ出したかった。

やがて足音の主達は速水の視界に入った。その姿は蛇や蜘蛛、蝙蝠を思わせる異形の怪物達だった。怪物たちの胸にはそれぞれ3桁の数字が刻まれていた。

(なっ何よこいつら?)

驚きのあまり声を出すことも忘れてしまった速水に怪物たちが近づく

「こいつだな。奴の生徒になる1人は」

「ああ、間違いない。」

「じゃあさっそく・・・」

怪物の1体が手から光のコードを伸ばした。

「あ・・ああ・・・」

コードは速水の頭に刺さるとまるで頭の中を覗き込まれている感覚が速水を襲った。

 

「・・・もう良いわ」

数秒後怪物はコードを引き抜いた。

「今から私が速水凜香よ」

次の瞬間怪物の姿を見て速水は目を見開いた。とても見覚えのある顔が、毎日手入れを欠かさない髪が、たまに友人に怖いと言われたりする鋭い眼がそこにはあった。

怪物は速水凜香になった。

「こいつはどうする?」

「もう必要ないわ」

「だったら・・・」

怪物な1体が頭部の翼を広げると速水を掴み飛び上がった。

「きゃっ!?」

数10メートルの高さに飛ぶと速水の顔を覗き込んだ速水にはその顔が笑っているように見えた。

「じゃあな~お嬢さん」

怪物がその手を離すと速水は地面に向かって落下していく

「きゃあぁぁぁ~~~~!!!」

だんだんと地面が迫っていく中色々な事が頭を駆け巡った。

喧嘩したままだった両親の顔が、一緒に遊ぶ約束をしていた友人の顔が浮かぶ

(嫌っまだ死にたくない・・・助けて・・・助けて・・)

「助けて~~!!」ブオオオン!

 

その時どこからかバイクのエンジン音が聞こえた。

怪物たちがあたりを見回すと丁度速水の落下点に一筋の光が現れた。

光は次第に大きくなり落下していく速水を包み込んだ。

光が消えるとそこには白いバイクに跨った少年が居た。その腕には気絶した速水がしっかりと抱えられていた。

「ふぅ~なんかバッチリなタイミングで着いたみたいだな」

『もうすでに活動を始めていたか・・・ゴー!シフトカー!!』

少年のバックから無数のミニカーが飛び出て四方に飛んでいく

「さ~~てと、俺は此処の掃除をするかっと、その前に・・」

バイクから降り近くの屋根のあるベンチに速水を寝かせた。

そこで怪物たちは少年の顔に見覚えがあることに気付いた

「おっお前まさか!?」

少年は懐からバイクのマフラーに似たものを取り出すと腰に当てるとベルトが装着された。

「さ~て、マッハでいきますか」

ベルトに白いバイクのおもちゃの様なものを差し込んだ

《シグナルバイク!》

「レッツ!変身!」

《ライダー!マッハ!》

未来のを救った英雄の1人【仮面ライダーマッハ】が降り立った。

 

 

「追跡!撲滅!いずれも~~マッハ!仮面ライダ~~~マッハ!!行くぜ!」

マッハは専用武器ゼンリンシューターを構え駆け出す。

速水に擬態したロイミュードも本来の姿、スパイダー型ロイミュード【083】に戻りコブラ型【055】と共に駆け出した。

「はあ!」

マッハのゼンリンシューターが055に回し蹴りが083に炸裂した。

「がぁぁ~!」

すると空からバット型【097】が襲い掛かった。

《シューター!》

マッハはゼンリンシューターで撃ち落とそうとするが097は右へ左へ動き躱していく、097の拳が命中し怯むマッハに055の光弾が迫った

「くっそ!」

ゼンリンシューターで反撃しようとするが097の攻撃もあり苦戦した。

『郷!あの子が!』

クリムの声にベンチを見ると083がベンチで気絶している速水に近づいていく

「待て!」

止めようと駆け出すマッハの前に097達が立ちふさがった。

「邪魔なんだよ!」

《ズート!マッハ!》

ベルト上部の【ブーストイグナイター】を3回押すと音速のスピードで2体のロイミュードを吹き飛ばした。

 

 

「速水凜香は2人も要らないわ」

083が速水の首に手を伸ばすが、その手をマッハが掴んだ

「なっ!?」

「じゃあ要らないのはお前だな」

083の手を振り払うと高速のラッシュを叩きこんでいく、最後に大ぶりのパンチで083を吹き飛ばすとベルトに手をやった

《ヒッサツ!フルスロットル!マッハ!》

空高く跳び空中で高速回転をした。

「はあぁぁぁぁーーーー!!」

回転により強化された蹴りが083達に迫る。

しかし、083は両手から出した糸で097達を拘束し楯とした。

「なっ!?083キサマァァ!!」「ぐあぁぁーー!!」

楯にされた2体にマッハ必殺技【キックマッハー】が炸裂し爆発した。

爆炎の中からマッハが出てきて辺りを見渡すがそこに083の姿は無かった

『・・・逃げられたか』

「くっそぉ~!」

悔しがりながらも上空を見ると097と055のコアが空中に漂いそして、爆発した。すると周囲のスロー現象も元に戻り雨が降り注いだ。

「まぁ、こんなもんかな」

《オツカ~レ!》

マッハは変身を解くと元の少年の姿【詩藤 郷】に戻った。

 

 

郷はベンチに眠る速水に近づき覗き込んだ。

「・・・・」

しばらく眺めるとおもむろにバックからカメラを取り出し寝顔を撮りだした。

『こっこら!郷!女性の寝顔を勝手に撮るなどいかんぞ!』

「いいじゃんかよ~この時代で初めてあった人なんだし、記念だよ。それに・・・結構可愛いじゃん。可愛い娘の写真は何枚あってもいいしな~~」

『まったく・・・』

 

「・・・さてとそろそろ行くか」

『ああ、他の場所でもロイミュードが活動しているだろうからな』

「たく、どの時代でも多忙だな~~仮面ライダーは」

郷は降り続ける雨の中をバイクに跨り走り去った。

 

 

その日世界の各地でまるで時間の流れが遅くなったような現象が起こった、数日の間世界はその話題で持ちきりになったが数日後にはその話題も別のニュースに塗りつぶされた。

月の約7割が消滅したのであった。




今回はここまでですね。
早速お気に入りに入れてくれた方々がいてとっても嬉しいです。
今後、期待に応えられるよう頑張っていきたいです。


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一学期
暗殺教室の始まり


ギリギリ今日中に投稿できた・・・
今回は速水視点ですが・・速水のしゃべり方これで大丈夫ですかね?
変だったら教えてもらえるとありがたいです。


「今から私が速水凜香よ」

「じゃあな~お嬢さん」

「ふぅ~なんかバッチリなタイミングで着いたみたいだな」

「追跡!撲滅!いずれも~~マッハ!仮面ライダ~~~マッハ!」

 

 

「また,あの夢・・・」

数週間前、世界中がまるで時間が止まったみたいな現象に襲われた。

世界が止まった日【グローバルフリーズ】って呼ばれている。

原因はいまだに解っていない。電磁波の影響や宇宙人のせいなんて言っている人もいるけれど私は知っている。あの怪物たちのせいだ。あの日私を襲った怪物たち、どうして助かったかなんて分からない気づいたらベンチで寝ていた。

あの後、親に怪物の事を話したけど信じてもらえなかった・・・当然だ私だって実際に見ていなかったら信じないだろうし結局の怪物の正体もグローバルフリーズの原因も分からないままだ・・・今じゃそんなことを議論する人も少なくなった。

「・・・やっぱり今日も三日月だ」

カーテンを開けるとすっかり明るくなった空にうっすらと月が見える・・・数日前に突然月の7割が消滅したらしいそのおかげでずっと月は三日月のままだ・・・

「もう、満月は見れないな・・・」

なんてことを考えながら学校に行く準備をした。

 

 

「おはよ~~凜香!」

学校に行く途中に同じE組の矢田とあった

「おはよう」

暫く2人で歩いていると目の前で地図を片手に当たりを見渡している男子が居た。

見たことない顔だけど来ているのは椚ヶ丘の制服だ。すると私たちに気付いたみたいで近づいて来た。

「あ~ちょっと良いかな?椚ヶ丘学園E組校舎ってどこか分かるかな」

「え~と、私たちもこれから行きますけど・・・」

「誰よあんた?」

つい強めの口調で聞いちゃったけどそいつはへらへら笑った。

「あっ俺、今日から転校して来たんだ~~詩藤郷だ、よろしく」

そいつ、詩藤郷が手を出してきた。少し戸惑いながら矢田と顔を見合わせてから握手をした。

「速水凜香よ」「矢田桃花、よろしくね」

 

 

「この上よ。」

暫く3人で歩いていると急斜面の坂道が見えた。いつもこの坂道を見ると気が滅入る。

「お~~ずいぶんと高いところにあるんだな~」

詩藤は呑気に見上げているけどこの坂は初めての奴だと絶対に途中でばてる。時間を見ると急いでギリギリな時間だ。悪いけど、こいつに合わせていると間に合わないな・・・

「私たちは先に行くから。行こ、矢田」

「うん・・・じゃあ急いでな」

私たちは少し早歩きで坂を上り始めた。詩藤はその後をのんびりと上り始めた。

 

 

「はぁはぁ・・」「はぁはぁはぁ・・・」

数分後やっぱりこの坂はきつい・・少しづつ歩くペースが遅くなる・・・なのに・・・

「お~い、速くしないと間に合わないんじゃないのか?」

何でこいつは平気そうなのよ。詩藤は一切ペースを落とさないで歩き続けている

「すっすごいね・・・詩藤君・・・」

「ええ・・・」

「よっと!」

すると詩藤はいきなり逆立ちをしだした。

それを見て私たちは目を疑った。この坂道を逆立ちで上るなんて・・・人間なの?

「じゃ~先行ってるな~~」

そのまま詩藤はさっきよりも速いスピードで上って行った。

 

その後、何とか時間に間に合った私たちはクラスメートに適当に挨拶をして席に着いた。

しばらくして教室の扉が開くと見たことのない人たちと黄色いタコが入って来た・・・・・って、タコォ!?

 

 

「初めまして私が月を破壊した犯人です。来年には地球も破壊する予定ですが・・・君たちの担任になったのでよろしく」

・・・まず、5・6か所ツッコませてほしい・・・たぶんクラス全員がそう思っているはずだ

「私は防衛省の烏間というものだ。まず、ここからの話は国家機密だと理解して聞いてほしい。単刀直入に言おう。君たちにこの怪物を殺してほしい」

 

簡単に言うと・この月を破壊した怪物が来年には地球を破壊する。・マッハ20のスピードで動けるため殺すことができない。・何でかこのクラスの担任をやると言い出した。・教師として毎日教室に来れば監視がしやすい。・私たち30人あまりの人間が至近距離から殺す機会を得られる。

と言うことらしい。

でもどうして私たちが怪物の暗殺なんて・・・そんな考えも次の烏間さんの言葉で吹き飛んだ。

「成功報酬は100億円だ」

100億円!?私だけじゃないみんなの目の色が変わった

「当然の額だ。暗殺の成功は冗談抜きで地球を救うことだからな・・・見ろ、こいつの顔を緑のしましまの時はナメている証拠だ」

どんな皮膚よ!

「当然です。どの国も殺せない私が君たちに殺せるわけがない」

「君たちにはこいつのこの隙をついて殺してほしい。君たちには無害でこいつには効く球とナイフを支給する。」

渡されたのは緑色のBB弾とゴムのナイフだった。本当にこんなので殺せるのかしら?

 

「しかし、こいつを殺すうえで1つ障害となるものがある・・・」

烏間さんが黒板に3枚の写真を貼った。その写真を見た瞬間私は目を疑った。その写真にはあの日私を襲った怪物達が写っていた。

「君たちは数週間前に起こったグローバルフリーズを覚えているな。その原因がこいつらロイミュードだ」

ロイミュード、それがこいつらの名前・・・

 

「えっと・・・何ですかなんかのヒーローものの敵ですか?」

「いや、こいつらは実在する。こいつらは今から100年後の未来から来た。そしてなぜかロイミュードはこいつを狙っている。君たちにも危害を加えるかもしれない。・・・そこで、君たちを守るため1人の戦士をこのクラスに転入させる事になった。入ってくれ」

何を言ってるのか訳が分からないまま全員が扉に注目した・・・・でもいつまでたっても誰も入ってこない

「・・・詩藤君?」

烏間さんが廊下を覗き込むけど誰もいないみたいだ

 

『こら郷!速く教室に入らないか!』

「もうちょっと待ってくれよ。ここ中々いい景色だしさ」

窓の方からそんな会話が聞こえた

『いいから行くぞ』

「てっ!ちょっ!まっ!」

屋根から何かが落ちてきた。けど落ちてきたなにかは地面に激突する瞬間に受け身を取って地面を蹴ると次の瞬間には窓際の茅野の机の上に立っていた。そいつはやっぱりさっき会った詩藤郷だった。その腰にはさっきは無かった車のメーターみたいなベルトが巻かれていた。

「いや~すいません。写真撮るのに夢中になってつい・・・」

「まったく・・・クリムもしっかり見ていてくれ」

『いや~すまない。郷をうまくコントロールするのは難しくてね~』

詩藤とは違う声が詩藤の腰のベルトから聞こえた。

「じゃあ~とりあえず自己紹介するな。2116年から来た詩藤郷と・・・」

『今日から君たちに科学を教えることになった。クリム・スタインベルトだよろしく』

 

「「「「はぁぁ~~~!!!?」」」

今日何度目かわからない驚きで私たちは叫んだ。

未来から来たなんて訳のわからない事を言う転入生と授業を教えるなんていうベルトだ叫んで当然よね?

 

 

この時から私たちの一生忘れられない。忘れることのできない1年が始まった・・・・




次回も速水の視点で進む予定です。
出来るだけ早く投稿できるよう頑張ります。


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初襲来

土曜日に投稿。間に合わなかった・・・



ペタン ペタン ペタン

今日もあの足音が近づいてくる。緊張で手に力が入る。落ち着くのよ。落ち着いて・・・

 

「では、HRを始めます。日直の人は号令を!」

「・・・き、起立!」

日直の渚の号令で私たちは一斉に銃を構える

「気をつけ!!・・・・れーーーい!!!」

一斉に放たれたBB弾を先生は避けていく。

「発砲したままで結構ですので出欠を取ります。」

先生は球を躱しながら出席を取っていく

「速水さん」

「はい!!!」

今日もダメか・・・分かってはいたけどやっぱりへこむな・・・

「詩藤君」

「は~~い!!」

出席番号最後の詩藤が返事すると同時に先生の触手が一本破壊された。

「・・・ヌルフフフ今日も先生にダメージを与えられたのは詩藤君だけですね~~」

・・・私たちが暗殺者になってから1週間がたった・・・この間に私たちはいろいろな方法で殺しにかかったでも、どれも殺すどころか触手一本破壊することも出来ていない・・・詩藤を除いては・・・こいつは初日から今日まで毎日触手を1本破壊している。でも、1本だけだ。詩藤は毎日1本触手を破壊するとその日は暗殺を仕掛けない。まるでその日のノルマは終わったかのようにだ・・・・

 

 

「では、先生はお昼は中国で麻婆豆腐を食べてきます。暗殺希望者が居れば携帯で呼んでください。」

昼休み、先生が飛んでいくと教室は重い雰囲気に包まれた。

この教室は落ちこぼれの集まり・・・先生の授業はとても分かりやすいけどどうせ落ちこぼれの私たちが頑張っても意味は無い。

 

『郷、ちょっと良いかね?』

矢田や中村とお昼を食べていると教室にクリム先生が入って来た。何故か意思を持っているベルトのクリム先生は普段、車輪の付いた専用の台座で移動している。

郷とクリム先生が出ていくのを眺めていると中村がニヤニヤと見てくる

「何?はやみ~ん、詩藤の事気になるの~?」

「ち、違うわよ!ただあの2人よく授業を抜け出すけど何してるのか気になっただけよ!」

そう言っても中村だけじゃなく矢田までこっちを見てくる。

本当に詩藤の事が気になるわけじゃないんだから////

 

 

 

 

「クリム、この先か!?」

学校を出た郷はシフトカーが発見したロイミュードの元に向かっていた。

『ああ、もう少しだ・・・・っ!郷来るぞ!!』

クリムの警告とほぼ同時に1体のロイミュードが飛び掛かって来た。

ライドマッハーから落とされたが何とか受け身を取ってダメージは最小限に抑えられた。

「来やがったな。仮面ライダー!!」

ロイミュードはコブラ型で胸には029のナンバーが刻まれていた

「昼休みもそんなにないんでね・・・一気に終わらせてやるよ」

郷がドライバーを装着するが029は変身させまいと襲い掛かった。

「ふっ!」「うおっ!?変身ぐらいさせろ!!」

029の攻撃を躱しながら変身の機会を窺うが素早いジャブでの攻撃は躱すのが精いっぱいだった

「おら!」「うあぁっ!」

027の拳をガードするが拳の重さに吹き飛ばされた

「貴様の相手は後だ。もうすぐ俺は新たな力を手に入れる!」

そう言い残すと029が去っていく

 

 

 

今私たちは5時間目の授業を受けている。

「では、お題に沿って短歌を作ってみましょう。ラスト7文字を【触手なりけり】で締めて下さい。出来た者から今日帰って良し!ポイントは文法の正しさといかに触手を美しく表現できたかです。」

・・・触手って季語なの?そんなことを考えながらもつい、詩藤の席が目に行く、結局昼休みが終わっても詩藤は帰ってこなかった。

「先生。しつも~ん」

「何ですか?茅野さん」

「先生の名前ってなんて言うの?他の先生と区別する時不便だよ」

確かに。このE組には先生以外に教師は居ないけど本校舎の先生と区別する時に不便だ

「名前・・・ですか。名乗るような名前はありませんからね~何なら皆さんでつけてください」

「は~い」

 

その後、渚が寺坂たちの主導の自爆テロを仕掛けたが失敗して先生の名前が殺せんせーに決まった。

 

 

烏間は暗殺の状況を見にE組校舎への道を歩いていた

すると後ろに何か得体のしれない気配を感じ振り返るとガタイの良いタンクトップの男が立っていた。

この先にはE組しかなくこの男はどう見ても学校関係者には見えない

「この先に何か用か?」

警戒しながらも問いかけると男は怪しい笑みで烏間を見た

「お前中々強そうだな。お前と戦えば俺はさらなる強さを手にできそうだ」

男が構えたその構えは素人の物ではなかったが烏間はあくまで相手を喧嘩好きの物好きと判断し相手にしなかった。

「悪いが仕事の途中だ。相手にしてる暇はない」

烏間が背を向けるが男はお構いなしに殴り掛かった。

烏間は何とか躱すがその拳はかなりのスピードだった。

「どうしてもやる気なら仕方ない」

烏間はスーツを脱ぎ構えた

 

 

授業が終わり生徒たちが下校しようと準備をしているとき、殺せんせーは校舎に向かって来る気配を感じた。最初は烏間が来たのだと思ったがすぐに気配と共に血の匂いがするのに気付いた。

 

「おい!誰だあれ?」

グランドに出た生徒たちの視線の先、坂道の方からガタイの良い男が登って来た。

「きゃあ!」

男の姿を見た瞬間倉橋が悲鳴を上げ他の生徒たちも戦慄した。男の身体は血だらけで特に両腕の拳からは血が垂れていた。

男が生徒たちを見渡していると殺せんせーが生徒たちをかばう様に前に出た。

「何か用でしょうか?」

「ああ、あんたにな」

男は殺せんせーを指差し怪しい笑みを浮かべた。

次の瞬間生徒たちは初めて殺せんせーを見た時以上の衝撃を受けた

「うおおおぁぁーーーー!!」

男が雄叫びを上げるとその姿を紫色の怪物に変えた

「自己紹介だけしといてやるよ。俺はロイミュード029。そして新たな名前は・・・アイアンだ!!」

怪物【アイアンロイミュード】からが名乗ると同時にE組の敷地全体を謎の衝撃が襲い舞う土埃や落ち葉そして、生徒たちの動きがスロー再生のように遅くなった。

「うわっ!動けねーよ!」「これってグローバルフリーズの時と同じ!?」

生徒たちが混乱しているのを見てアイアンロイミュードは高らかに笑った。

「ぎゃははははーーー!!どーだ!重加速は中々おもしれーだろ!?」

 

 

 

「烏間さん!烏間さん!大丈夫か!?」

029を追いかけた郷はE組校舎への坂道の途中で倒れている烏間を見つけた

「ぐっ!・・詩藤君か?」

「何があったんだよ!?」

「ああ・・突然襲われてな・・」

その時郷たちにも重加速現象が襲い掛かった。

「ぐぅっ!?」

烏間が突然の事に驚いている中郷は校舎のある山頂部を睨んでいた。

『これは重加速?いかん!』

「烏間さん!ここで待っててください!クリム、ライドマッハを!」

『もう呼んでいる!』

そこに郷の愛車ライドマッハーが来た。すぐに跨ると猛スピードで駆け上った。

「・・・頼むぞ。仮面ライダー!」

 

 

「「「うわぁぁ~!」」」

グランドでは生徒たちがアイアンロイミュードから逃げようとしているが重加速の影響でまともに動くことができなかった。殺せんせーは何とか動くことができたがそれでも普段のマッハ20のスピードを出すことができずにいた

「くくく・・」

アイアンはそんな生徒たちの様子に笑って見ていたがやがて逃げる生徒の中で1人逃げ出さず自分を振るえた目で見ている速水に近づいた。

「そう言えば083の奴がお前を消して欲しいって言ってたな」

「あ・・ああ・・・」

速水はあの時のグローバルフリーズの時の恐怖が甦り逃げる事さえ出来なかった。

「速水さん!」

殺せんせーが速水を助けようとするが重加速の中では満足に動くことができずすぐに捕まってしまった。

「お前は大人しく見ていな大事な生徒が無様に死ぬ瞬間をな先生」

「っ!」

殺せんせーの脳裏にある光景が甦った。崩れ落ちた施設の中で血だらけで動かなくなった大切な人の姿がその人の最後の言葉が・・・

〔なんて・・素敵な職種・・・この手ならあなたはきっと素敵な・・教師に・・・私の・・・大切な・・生徒たちを・・・・〕

「止めろーーーー!!!」

ブオオオン!!

その時1台のバイクのエンジン音が校庭に響いた。

坂道から1台の白いバイクが飛び出ると一直線にアイアンロイミュードに向かっていった。

「うぉぉ!」

引き飛ばされたアイアンロイミュードが倒れると校庭を覆っていた重加速が解け生徒たちもまともに動けるようになった。

「速水さん!大丈夫ですか!?」

殺せんせーがすぐに速水に駆け寄り怪我がないかチェックした。

「はっはい・・」

 

「ぐうっ・・誰だーーー!!?」

アイアンロイミュードは邪魔をした白いバイクを見るがそこにはもう誰も乗っていなかった。

「どっどこだ!?」

アイアンだけでなく生徒たちもバイクに乗っていた人物を探しているとどこからか笑い声が響いた。

「はははは~~!!」

「あっあそこ!」

岡野が指さす場所をみんなが見ると椚ヶ丘中学の制服にヘルメットを被った人物が校舎の上にいた。

ヘルメットを脱いだその顔は間違いなく詩藤郷だった。

「レディース!エ~ンド!ジェントルメ~~ン!!」

「ふざけんな!!」

アイアンが手から光弾を出すが郷を大きく跳躍して躱し次は倉庫の屋根に降り立った。

「イッツタイム!フォー!スーパースターアクション!!悪いけどお前の見せ場はここまでだ。こっからは、俺のお楽しみだ。」

《シグナルバイク!》

郷がベルトを装着しシグナルマッハを装填するのを見て速水はあの時、自分を助けた者の正体が、なぜ郷の事が気になっていたのか分かった。

(まさか、詩藤が?)

「レッツ!変身!」

《ライダー!マッハ!》

 

 

「くっ!なりやがったな・・・」

郷の変身した姿をアイアンは睨みつけ他は目を点にして見ていた

「追跡!撲滅!いずれも~~マッハ!!仮面ライダ~~マッハ!!行くぞ!」

倉庫から飛び降りたマッハはアイアンへと駆ける。アイアンも迎え撃つべく構えた。

「シッ!」

アイアンがパンチを打つがマッハは最小の動きで躱す

「らぁ!」《ゼンリン!》

そのまま懐に入り込みゼンリンシューターの打撃を食らわした。

怯んだアイアンにマッハはさらに連続で攻撃する。

アイアンは地面蹴り距離を取るがすかさずゼンリンシューターの引き金を引く。

《シューター!》

ゼンリンシューターから放たれた光弾がアイアンに命中した。

「まだまだ!」

「なめるなぁ!」

アイアンは素早いジャブで光弾を弾いていくとそのまま腕を変形させた。

変形しリーチが伸びたパンチがマッハを襲う。パンチを受けたマッハは大きく吹き飛んだ。

「ふっこれが俺の力だ」

アイアンは自身の力を誇示するかのように掲げる。

「へっすげえな。でも俺は~」

マッハはベルトに新たに緑色のバイクを装填した。

《シグナルバイク!シグナル交換!マガール!》

右肩に装備されたタイヤ【シグナコウリン】に矢印が浮かび上がった

再び光弾を放つとアイアンも構えた。

《マガール!》

マッハがブーストイグナイターを押すと光弾が曲がり側面からアイアンに命中した。

「もっと凄い」

 

「さ~と、そろそろ決めるか。」

再びシグナルマッハを装填したマッハは必殺の動作を取った。

《ヒッサツ!フルスロットル!マッハ!》

空中で高速回転したマッハが必殺のキックマッハーを放った

「ぐぁぁ~~!!」

キックマッハーを食らったアイアンが爆発し029のコアが砕けた。

「ふぅ~良い絵だったでしょ?」

最後にマッハは戦いを見ていた生徒たちと殺せんせーに言った。

 

《オツカ~レ!》

ベルトからシグナルマッハを取り出し変身を解いた郷は呆然と見ているみんなを見た。

「これがロイミュードとの戦いだ。これから先もあんな奴らが襲って来るけど心配すんなよ。俺が守ってやるよ。そのために俺はこの時代に来たんだからな」

郷の目には確かな決意が宿っていた。

 

 

 

椚ヶ丘から離れたとある山中にある廃墟で1人の男がタブレットでE組の様子を見ていた。

「029は失敗か・・・まあ良い。じっくりと確実にな・・・」

男の眼下には多くのロイミュードのコアが漂っていた。

「お前たちも行動を始めろ」

コアは四方に飛んで行った。

「くくく・・・ここからさ。クリムそして、郷・・・」

男の視線はタブレットの中の生徒たちに質問攻めにあっている郷を捉えていた。




登場ロイミュード
・アイアンロイミュード
029が進化した姿
見た目は原作のアイアンロイミュードと同じ
強力なパンチ力と優れたフットワークを持つ。腕を変化することでリーチが伸び離れた相手にも攻撃が可能
コピー元は元プロボクサーの喧嘩屋


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再びの宿敵

中々戦闘描写がうまくならない・・・
相変わらず駄文ですがよろしくお願いします。


夜遅く1人の少女が駅前の道を走っていた。

少女は椚ヶ丘中学の生徒であるが最近成績が落ちてきて遅くまで塾に通っていた。

「はぁ、はぁもうこんな時間・・・!」

最近この辺りでは少女が行方不明になる事件が多発しており、少女も急いで帰ろうと急いでいた。

少女は家への近道の路地裏に差し掛かった。この道を行けば家にすぐ着くが街灯も少ない暗い道である。

(まあ、少しぐらいいいか・・)

少女は一瞬考えたが結局近道を選んだ。数分後路地裏に少女の悲鳴が響いた。

 

 

 

 

「ま~た行方不明者が出たのか~フレア、少し調べてくれないか?」

郷は昼休み、校庭の隅で木にもたれ掛かりながら新聞を読んでいた。

新聞の片隅に小さく書かれた記事に椚ヶ丘の行方不明事件の事が書かれていた。

郷が懐からオレンジのシフトカー【マックスフレア】を取り出すとフレアは町に向かい飛んで行った。

ふと視線を新聞から校庭の一角に移すとクラス委員の磯貝と片岡を中心に数人の生徒がかき氷を食べている殺せんせーに笑顔で向かっていた。

「殺せんせー!!」「俺たちにもかき氷食わせてよ!!」

笑顔で近づく生徒たちだが郷から言わせればわざとらし過ぎて逆に不自然だった。

殺せんせーにもバレており隠し持ったナイフで襲い掛かる生徒たちから素早くナイフを奪い代わりに花壇の花を持たせた。

「笑顔がわざとらし過ぎます。そんな危ないものは捨て花でも愛でていい笑顔を学んでください」

「・・ん?てっ!殺せんせー!!この花、クラスのみんなで植えた奴じゃない!!」

「にゅあ!?そうなんですか!?」

「ひどいよ・・やっと咲いたのに・・・」

女子の抗議と涙に慌てた殺せんせーはマッハで球根を買いに行き女子の監視の元植え始めた。

「なーあいつ、地球を滅ぼすって聞いたんだけどよ・・」

「あ、ああ・・・その割にはチューリップ植えてるな・・・」

磯貝と前原は呆れてその光景を見ていた。

 

 

放課後になり昼間のチューリップのお詫びとして殺せんせー提案のハンディキャップ暗殺大会が行われた。

木に吊るされた殺せんせーにナイフや銃を撃つが全く当たらない。

その様子を屋根上から郷とクリムが見ていると右手にギブスを着けている烏間と茅野が話しているのが見えた。

「烏間さん!」

郷が屋根から飛び降り茅野の隣に立った。

「うわっ!いきなり降りてこないでよ!」

「わりわり。ところで烏丸さん。傷はもう大丈夫ですか?」

烏間の身体には以前アイアンロイミュードに受けた傷が見えていた。

「ああ、心配をかけたな。思ったより軽傷で済んだ。ところであいつは?」

「ああ、殺せんせーなら」

茅野が指さした先を見て烏間は言葉をなくした。そこで行われていたのは暗殺とは程遠いモノだった。

「こっこれはもはや暗殺と呼べるのか?」

「ま~あんな状態でも一発も当たらね~んだけどな」

すると、殺せんせーを吊るしていた木の枝が折れ殺せんせーは地面に落ちた。

「「「あ・・・・今だ殺れーーーー!!!」」」

「にゅあ~~~~!!!」

一斉に襲い掛かる生徒たちを躱し殺せんせーは先程まで郷がいた屋根の上まで跳んだ。

「ヌルフフフ~ここまでは来られないでしょ~基本性能が違うんですよ。バ~カ!バ~カ!・・・今日の宿題を2倍にします」

「「「「(器が)小せぇ!!!」」」」

殺せんせーが逃げるように飛んでいくと郷は地面に膝をつきうなだれた。

「に・・2倍・・・リアリー・・・マジで・・・・」

 

 

 

 

夜になり郷は行方不明者達の足取りを追っていた。

「あ~頭痛て~~」

その日の勉強を終わらせてから来たためとても頭が痛そうだった。

そこに昼間、調査に向かったマックスフレアがやって来た。

「見つけたか」

マックスフレアの誘導でに従い走るととある空き家に付いた。

「何だ此処?」

『ふむ、ここはかつて天才と言われた画家、麻生浩二の家だね』

リュックから出てきたクリムが言った。

「へ~で、その画家は今どうしてんだ?」

『記録によると1年ほど前から消息不明らしい』

「・・・臭うな」

郷がドアノブに手を伸ばすと鍵が開いていた。

「ビンゴ」

 

家の中は埃だらけで家具には布が掛けられていた。一見すると人が出入りしている様子はないが郷はあるところに注目した。

「・・・場所によって埃の量が違うな・・・やっぱり誰かが出入りしているな」

2階に上がると奥の部屋の扉が半開きになっていた。覗いてみるとそこには幾つもの少女の絵が飾られていた。

『これは・・行方不明になった少女たち!?』

「やっぱり、当たりか・・・」

「そこで何をしている?」

振り返ると扉の影から1人の初老の男性が睨みつけていた。

「麻生浩二ってあんたか?」

「私のファンかね?悪いが私はもう引退してね。今は静かに余生を過ごしているんだよ。」

「人間を絵に閉じ込めるのが静かな余生かよ」

「くっ!」

「まてっ!」

逃げ出した麻生を追い外に出ると2体のロイミュード、コブラ型の086とバット型の071が麻生を守るように立ちふさがった。

「出たな」《シグナルバイク!ライダー!》「レッツ!変身!」《マッハ!》

「追跡!撲めってうお!」

何時ものキメ台詞を言っていると086が襲い掛かって来た。

「この、最後まで言わせろ!」

マッハもゼンリンシューターで反撃に出た。

マッハと086の戦いを麻生と071は静かに眺めていた。

 

086が指から光弾を撃つがマッハはバク転で躱し距離を取りゼンリンシューターで反撃する二人が撃ち合っていると086の背後で麻生が逃げようとしていた。

「おい、待て!」

マッハも追いかけようとするが086の弾幕が激しく動けないでいた。

「くそ、まずはこいつを片付けるか」

マッハはドライバーに新たに青いシグナルバイク【シグナルカクサーン】を装填した。

《シグナルバイク!シグナル交換!カクサーン!》

「はっ!」《カクサーン》

光弾を放ちブーストイグナイターを押すと光弾が拡散し086の弾幕を打ち破りそのまま086に命中した。

086が怯んだ瞬間マッハはを距離を詰め蹴りを食らわせた。

流れる様に蹴りを浴びせ続け086を追い詰めた。

《ヒッサツ!フルスロットル!カクサーン!》

空中で一回転したマッハのキックが086に当たるとマッハは続けざまに高速でキックを浴びせ続けた。

やがて086のボディは耐えきれなくなり爆散、コアが破壊された。

 

 

086を倒したマッハが周囲を見るがもう麻生と071の姿は無かった。

『逃げられたか・・・』

「いや、まだ近くにいるはずだ。探せば見つけられる」「「きゃああぁぁーーー!!」」

その時曲がり角の先から悲鳴が聞こえた。

「っ!あっちか!?」

悲鳴の聞こえた席に行くと絵具やベレー帽等画家を思わせる姿のロイミュードが速水に襲い掛かろうとしていた。

「速水!?」

すかさずゼンリンシューターを撃ちロイミュードを速水から遠ざけ速水に話しかけた。

「速水大丈夫か!?」

「お・・岡野が・・・絵に・・・」

「えっ!?」

『郷!奴の持っている絵を見ろ!!』

ロイミュードの手には1枚の絵がありその絵に描かれていたのはクラスメイトの岡野ひなただった。

「くくく。中々の力作だよ」

「お前・・!」

怒りからゼンリンシューターを握る右手に力が入る。

「おっとこの子がどうなっても良いのかね?」

ロイミュードが岡野の絵を盾にし攻撃ができない。

「くく、では、私はここで失礼するよ。君は・・彼の相手をしたまえ」

次の瞬間マッハを1発の紅い光弾が襲った。

攻撃を仕掛けた者が路地の先から歩いて来た。マッハはゼンリンシューターを向けるがそのものを見た瞬間動きが止まり驚愕の声を漏らした。

「お・・お前・・・まさか・・!」『そんな・・バカな・・!』

その正体は紅いコートを身にまとった。男だった。

「よお、久しぶりだな。仮面ライダー」

男はその姿を深紅の鬼の様な姿に変えた。その姿を郷は忘れたことがない。未来の世界で死闘を演じ親友と共に打倒した宿敵

かつてロイミュードを率い人類を支配した最大の敵

「『ハート!!」』

ハートロイミュードが再び立ちふさがった。

 




復活のハート、そして絵にされた岡野はどうなるのか。
次も期待せずお楽しみに。


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無謀な戦い


の作品内のハートの強さは大体フォーミュラ初登場時ぐらいの強さです。
まだデットヒートの無いマッハでは勝てません。


連続して発生した少女失踪事件を調べていた郷とクリムは1年前に消息不明となった画家、麻生浩二の屋敷で少女たちの絵を発見した。

そこに現れた麻生浩二を追った先でロイミュード086と交戦、撃破したがその隙に岡野が進化体ロイミュードによって絵に変えられていた。

その場にいた速水を守るマッハの前にかつて激闘の末倒したハートロイミュードが現れた。

 

 

「まさか、また貴様と合いまみえる事が出来るとはな・・・仮面ライダーマッハ」

「ハート・・・!」

構えるマッハであったが速水が見るとその体は微かに震えていた。それが武者震いでなく恐怖によるものだという事が分かった。

『郷・・逃げるんだ・・・』

「クリム先生!?」

クリムもまた震えた声だった。だがそれ以上に速水はその言葉に驚いた。岡野がつかまっている状態で逃げる事を提案しているのである

「岡野はどうするんだよ!?」

『君1人で勝てる相手ではない!今は引いて体勢を立て直すんだ!!』

「1度倒した相手だ!勝てないわけじゃない!」

『もうアレンは居ないんだ!!』

「アレンて・・・?」

「関係ね~よ・・・俺1人でも・・やれる!!」

マッハはハートに向かい走りだした。

「『郷!!』」

走りながらゼンリンシューターを撃つがハートは手で払い向かって来るマッハに拳を振るう

マッハもゼンリンシューターを叩き込む

2人の攻撃で周囲に衝撃が走った

「きゃっ!」

衝撃に襲われた速水は思わず乱れる髪とスカートに裾を押さえた。

2人はなおも交戦を続ける

ハートの大振りの拳を躱したマッハがゼンリンシューターを振り上げる。

火花がハートの身体を裂くように走る

「ぬぅおおぉ~~!!」

だがハートの拳もマッハを捉えた。

「がっ!?」

吹き飛ばされ地面を転がるマッハに対しハートは平然と立っている。

「どうした?仮面ライダー。こんなもんじゃないだろ!」

迫るマッハにゼンリンシューターを撃つがハートは銃弾を受けながらも迫り来る。

ハートの砲弾のように重い拳が襲い掛かる。

何度も喰らい徐々にマッハは後退していく。

渾身の一撃を受け速水たちの傍まで吹き飛んだ。

「郷!」

速水が駆け寄るとハートが両手を掲げると深紅の巨大な光弾を作り出す。

「行くぞ!仮面ライダーぁ!」

「くそぉ!」《ゼンリン!ヒッサツ!フルスロットル!シューター!》

マッハもゼンリンシューターにシグナルマッハを装填しエネルギーを充填した。

「「はああぁぁーー!!」」

2人が同時に光弾を放つと2つのエネルギーが激突し爆発した。

《ズート!マッハ!》

爆煙の中聞こえた電子音にハートが光弾を放つがそこにマッハたちは居なかった。

 

 

 

「はぁ!はぁ!はぁ・・」

マッハは数キロ離れた廃ビルの中にいた。

「ここは・・・?」

傍らにいる速水は何が起こったのか理解出来ずあたりを見渡した。

「速水はここに居ろよ」

マッハが立ち上がろうとするが速水がそれを制止した。

「どこ行くのよ?」

「決まってるだろ。岡野を助けに行くんだよ」

「勝てるの?あいつに・・」

速水の質問にマッハは答えない。勝てる。とは言えなかった。先程の交戦でも一見互角のように見えたが実際にはマッハのダメージは大きく今も立っているのもやっとの状態だった。

「やるだけやるさ」《ズート!マッハ!》

イグナイターを連打しマッハは音速の速さでその場を去った。

残された速水はクリムにハートの事を聞いた。

「あのロイミュードは?いったい・・・」

『奴はロイミュード002、ハートだ。未来においてロイミュードを指揮していた。我々は多くの犠牲を出しつつも奴を倒した。・・倒したはずだ・・・』

「郷は勝てるんですか?」

『厳しいな・・・」

「そんな!」

『あの時は郷ともう1人の仮面ライダーの2人でようやく勝てたが。もう・・・そのライダーは居ない。戦いの後残党のロイミュードに拉致された。おそらくもう・・・』

 

 

 

進化体ロイミュード【ペイント】は麻生宅に戻っていた。

岡野の絵を他の少女たちの絵と一緒に飾るとペイントは麻生浩二の姿になり絵を眺めた。

「ふむ、今回もなかなかの絵が出来たな。だが、仮面ライダーにこの場所をかぎつけられたのは計算外だったな。

そろそろここから離れるか・・・」

その時玄関が開く音が聞こえ麻生はニヤリと笑った。

「懲りずにまた来たか。任せたぞハート」

部屋の隅にいるハートに言った。

 

「麻生!ハートぉ!」

屋敷に入った郷は一直線に絵の飾ってあった絵やに向かった。

まだハートを倒す方法は思いつかないが隙を見て絵を奪い麻生を倒すことは出来るはずだ。

郷が部屋の扉に手を掛けようとした瞬間、深紅の拳が扉を粉砕し迫り来る。とっさに腕をクロスさせガードするが腕が嫌な音を立てそのまま廊下の壁にたたきつけられた。

「がはっ!」

口から血を吐きながらもハートを睨みつける郷にハートが突進してくる。

屋敷の壁を破壊し2階から庭に叩き落され肋骨部分からバキッと音がし更なる激痛が走る。

それでも、手に持つゼンリンシューターで反撃をした。

ゼロ距離からの銃撃はさすがのハートもダメージを受け郷から離れる。その隙にドライバーを着けた。

「レッツ!変身!」《マッハ!》

 

変身しても体の痛みは変わらない。痛む身体を起こしながら目の前に立つ強敵に勝つ方法を考える

(って、そんな簡単に見つかるわけがねーな・・・)

パワーでは明らかに向こうが上でスピードで翻弄しようにも先程からの度重なるダメージで何時ものスピードは出せそうにもない。

(こりゃあマジで覚悟を決めないとな・・・)

「行くぞぉ――!」

「上等だぁ!」

2人は同時に走り出し拳を振るが一瞬早くハートの拳が届いた。重い一撃を受けたマッハに次々とパンチを放つ一方マッハはわずかな隙を突き攻撃するが突破口を開くことは出来ない。

「止めだーーー!!」

ハートの拳にこれまで以上のエネルギーが集まる不味い!そう感じたマッハはドライバーに手を伸ばす。

《ヒッサツ!フルスロットル!マッハ!》「らああぁーー!!」

マッハの回し蹴りがハートの頭部に炸裂した。

その衝撃でエネルギーが暴発しハートの身体中で爆発が起こった。

「ぐあぁぁーー!!」

するとハートの身体がまるで絵具が落ちる様に色が無くなっていきその姿は071の物となった。

「はっ!?」

今までハートだと思っていた者が全く別の物だったことに驚くマッハ、そんな中071はなおも苦しみ続けている

「うあぁぁ~~~!!ペッペイントォ!助けてくれ!身体が・・・!」

「うむ、私の能力で君をハートに塗り替えてあげたが・・・やはり体が耐えられなかったか。いきなりハートはやはり強力すぎたかもしれんな」

冷静に分析するペイントの目の前で071の身体は崩れていき最後にはコアも爆散した。

「では、私はこれで、他の絵は返してあげようただしこの絵は人質としてもらっていくよ」

「ま・・・てぇ!」

岡野の絵を持ち去ろうとするペイントを追いかけようとするがペイントは屋敷の壁をデータ化しマッハに放った。

データ化した壁はマッハの目の前で元に戻りマッハに降り注ぐ。

「うわあああ~~!!」

避けることも出来ずマッハは瓦礫の下敷きになった。

 

 

 

 

麻生は港の倉庫に来ていた。ここで仲間のロイミュードと合流し他の拠点に映る計画だった。だがいつまでたっても迎えが来ない。イライラしながら時計を見ていると倉庫の扉が開く音がした。

「やっと来たか。ずいぶん遅かったな」

だが、入ってきた人物を見た瞬間麻生の顔が恐怖に歪んだ。

「お・・お前は・・・・まさか・・し・・・死が・・!」

麻生の腹部を一発の銃弾が貫いた。麻生はペイントの姿に戻るがその体はもはや持たなかった。

「なぜだ~~!!私の力ならロイミュードの勝利は確実のはず・・・」

「・・・貴方の勝手な行動は目に余ります・・・・もう、やり直す資格もない」

襲撃者は手に持つグリップの様な武器でペイントの身体を裂きコアを破壊した。

「さようなら・・・ペイント・・・・せめて安らかに眠ってください」

襲撃者は憐みの眼差しでペイントの砕けたコアを見つめていた。すると、ペイントの持っていた岡野の絵が光を放ち、光が収まると岡野が気絶していた。

 

「郷!郷!!」

耳元で自分を呼ぶ声で目を覚ますと目の前で速水が心配そうな顔でこちらを見ていた。

「い・・てぇ~~ここは?」

数秒の間何があったのか考え、思い出した。

「おっ岡野は!?」

郷が立ち上がろうとするがうまく立てず倒れかけ速水が肩を貸す。

『落ち着け!岡野君なら屋敷の近くで発見され今は他の子たちと一緒に病院だ!』

「え・・・?あのロイミュードは?」

『ん・・・?君が倒したのではないのか?』

「いや・・・俺は・・負けた・・・負けたんだ・・・」

「・・・郷・・」

 

 

ペイントを倒した襲撃者は岡野を屋敷の近くに寝かせた後夜道を歩いていた。

「いい仕事でしたね」

襲撃者に声を掛けたのは1人の初老の男性だった。

「001ですか」

「ペイントは残念でしたね。彼には期待していたのですが」

「関係ありませんよ。あの方に逆らうものは誰だろうと倒します。」

「期待してますよ。死神君」

死神と呼ばれた襲撃者はその銀色の目で空の三日月を見つめた。

 

 

 





登場ロイミュード
・ペイントロイミュード
010が進化した姿
見た目は原作のペイントロイミュードと同じ
生物・無機物問わずデータ上にして絵の中に閉じ込める事が出来る
また、他のロイミュードを別のロイミュードに塗り替えコピーさせる事が出来る
コピー元は画家の麻生浩二


出してから思ったのですがこのペイントの能力・・・もっと後に出せばよかったーーー!!
掻きながら後悔しましたが途中で書き直すのも嫌だったので結局書きました。


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焦る郷

この連休中に二話投稿したかったため今回は急いで書きました。
そのため今まで以上に駄文かもしません。
それでも良ければどうぞ。


ペイントの事件から数日後、岡野も病院での検査を終えた授業に復帰したがみんなは授業に集中できずにいた。その理由は・・・

「あの~~・・・郷君・・・」

「53・・54・・・はい・・・55・・」

「授業中に筋トレはやめませんか?」

郷が授業中にも戸の縁で懸垂をしながら授業を受けているからであった。

「56・・・57・・気に・・しないでくらさい・・・58」

「いえ、そうは言われましてもね~」

 

授業中だけでなく休み時間も、昼休みも郷はトレーニングを続けた。

「どうしたんだろうね。詩藤君」

昼食を食べながら茅野が校庭を走り続けている郷を見ながら言った。

「う~ん・・この前から急にだもんね・・・」

茅野と渚以外も教室のほとんどの視線が郷に集まっていた。

「あいつ、この所昼食ってねーよな」

「大丈夫なのかな?」

岡島や倉橋が心配している中、先日の事を知っている速水と岡野も心配そうに業を見ていた。

「ねえ、凜香、やっぱりあの時の事かな。詩藤が鍛えてるのって・・・」

「たぶんね・・」

岡野はあの後病院で検査を受けている最中に烏間から事件の詳細を聞かされ、自分がロイミュードによって絵にされた事や郷がロイミュードに負けたことを聞かされた。

その後速水と岡野は今回の事は誰にも話さないように言われた。

その次の日からであった郷が所構わずトレーニングをするようになったのは。

 

「はぁ・・はぁはぁ・・・このままじゃダメだ。もっと強く、もっとマッハの力を使いこなせないと・・・」

郷は自分の未熟さを恥じていた。

思い出すのは先日の戦い。

ペイントロイミュードによってハートの力を与えられた071に全く歯が立たなかった。もしあれが本物だったら間違いなく死んでいた。

さらに岡野だけでなく速水も絵に変えられていただろう。

(また・・失う事になる・・・)

思い出すのは未来の世界でのことだ。戦いの中で今まで共に戦ってきた戦友たちが死んでいく光景が、助ける事が出来なかった人たちが、そして家族たちの顔が。

(もっと強く・・・もっと速く!)

「にゅるふふ・・自分を高めようとするその気持ちは素晴らしい」

郷の前に殺せんせーが現れた。

「はぁはぁ、殺せんせー・・・」

「先日の事は聞きました。ですが、君は少々焦りすぎです。」

「ほっといてくれよ。これは俺の問題なんだからさ」

その後も郷はトレーニングを続けた。

 

 

放課後、渚は茅野や杉野たちと下校していた。

「ねぇ君たち」

突然話しかけられ振り返るとスーツを着たサラリーマン風の男がいた。

「君たち椚ヶ丘中学のE組生かな?」

「はい、そうですけど・・」

すると男が茅野の腕を掴み電柱の上まで跳んだ。

「きゅああ!!?」

「仮面ライダーに伝えろ。友達を助けたかったら三丁目の廃工場に来いとな!」

男は茅野をつれ消えてしまった。

「茅野おおぉぉ~~!!」

 

 

 

校舎裏の森の中で郷はシフトカー達との訓練をしていた。

フレアが放つ火炎弾をゼンリンシューターで撃ち落とすが爆炎の中から緑色の刺々しいデザインのシフトカー【ファンキースパイク】が回転しながら襲い掛かった。

「うおぉ!?」

郷は上半身を反らすように躱すがその隙に郷の足にレッカー車型のシフトカー【フッキングレッカー】がワイヤーを巻き付け木に吊るした。

そこに紫のシフトカー【ミッドナイトシャドー】が手裏剣型のエネルギーを放つ

「くそっ!」

ゼンリンシューターでワイヤーを切り地面に着地するとゼンリンシューターのタイヤ部分【ゼンリンストライカー】を回転させ光弾を放つ

シャドーの攻撃を打ち落とし郷は素早く移動し四台のシフトカーを叩き落とした。

『そこまでだ!』

訓練を見ていたクリムの号令と共にシフトカー達も行動を止めた。

『郷、今日はここまでだ』

「まだ・・・やれるさ・・」

『いい加減にしたまえ!このまま無茶を続けても悪戯に身体を壊すだけだ!』

「無茶でもやらなちゃ何も救えないだろ!!・・この時代でロイミュードと戦えるのは俺だけだ!・・・俺が強くならないといけないんだよ!!」

「詩藤ぉ!」

そこに渚と杉野が慌ててやってきた。

「詩藤大変だ!茅野が攫われた!」

『何!』

「仮面ライダーを三丁目の廃工場に連れて来いって!」

「くっ!」

それ聞くと郷はすぐに山を下りだした。

『待て!郷!くっ2人ははこのことを烏間と殺せんせーに伝えてくれ!』

クリムもシフトカー達と一緒に山を下りた。

 

 

「くそっおおぉぉ~~!!」

山を下りた郷は無人で走って来たライドマッハーに乗り廃工場に向かった。

「郷?」

その光景を下校中の速水が目撃した。

 

 

三丁目の廃工場では茅野をさらった男がタブレットに向かって話していた。

「もうすぐ仮面ライダーが来ますよ」

『では、死神をそちらに送ろう。確実に仕留めてくださいね。073』

「お任せください。001しかし、死神は必要ありません。こちらには切り札がいますからね」

『ほう、それは期待しているよ』

 

通信を終えた男が上を見るとそこには吊るされ気を失っている茅野がいた。

「くくく、速く来い。仮面ライダー今日がお前の最後だぁ!ははははは!」

高らかに笑う男の後ろで一体のロイミュードが佇んでいた。




近々別の小説も投稿予定です。
そうなると今まで以上に投稿が遅くなるかもしれませんが今後もよろしくお願いします。


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共に戦うもの

仕事で投稿が遅れてしまいました。
その割には駄文ですが良ければどうぞ。
感想待ってます。


「茅野ーー!!」

 

茅野が捕らわれている工場に着くと天井に吊るされる茅野がいた。

 

「はぁ・・はぁ・・・」

っ!?様子がおかしい?あの顔色は毒か!

「今助ける!」

ゼンリンシューターで落とそうと構えるとどこからか攻撃が来た。

やっぱり居るよな・・・

「来ましたね。仮面ライダー」

出てきたのはスーツ姿のサラリーマン風の男だ。こいつは大したことなさそうだな。ただ・・・

「ん?ああ、気づきましたか。あなたの相手は特別に改造されたこの044がしますよ」

男の後ろにいるフードの奴・・・こいつはやばい・・・・

「おや、どうしました?後ろに下がって。怯えましたか?」

「なっ!?誰が!」

一気に終わらせてやる・・

トップスピードで近づいてゼンリンシューターを振るう

―ガキッ―

ゼンリンシューターはフードの奴044の右手に防がれた。044の左手が引かれたのが見えてあわてて距離を取る

「うっ!うう・・!」

茅野がうめき声を上げた。

やばいな。速く治療しないと・・・でも・・・・

「行くぞ・・・」

044の攻撃が激しい。さっきからパンチが高速で襲って来る。

何とか躱しているけど反撃に出れない。

「調子に乗るな!」

反撃に出ようと044の拳に弾いてそのまま体を回転させて遠心力を加えた蹴りを食らわせた。

そして044が怯んだ隙に距離を取ってベルトを装填した。

「変身!」《シグナルバイク!ライダー!マッハ!》

俺が変身すると044もスパイダー型のロイミュード体になった。

 

「では、私も行きましょうか」

サラリーマン風の男もロイミュードの正体を現した。

その姿は、紫色の禍々しい色に右手が注射器のようになっている。

一目見て分かった。茅野に毒を打ったのはこいつだ!

「わたしは、ポイズンと言います。宜しくお願いします」

ポイズンは深々とお辞儀をするが、右手の注射器からは毒が垂れたいる。

044が向かってきてポイズンは右手を向けてくる

ポイズンの手から毒が飛び出る。躱すと毒は後ろにあったコンベアに命中した。

するとコンベアは溶け出し、数秒後には影も形もなくなった。

その間に迫った044が攻撃してくるさっきより速いパンチが迫る。けど、マッハになった状態なら十分見切れる!

パンチを捌きながら攻撃していく、時折ポイズンの毒液が飛んで来るけどスピードは遅い。十分対処できる。

「りゃあぁ~!」《ゼンリン!》

ゼンリンシューターをを振り上げ044を打ち上げさらにポイズンに光弾を撃った。

いける!このまま一気に!!

―ドクンッ―

っ!?まずい!時間が・・・

メット内に警戒音が響く活動限界時間が近づいている

一瞬の動揺の隙にポイズンの毒が掛かる

「がっ!あああぁっぁ~~!!」

顔が焼けるように熱い!ポイズンの毒がメットを通り顔を焼く

「今だ!044!」

ポイズンが044に右手の針を刺し薬物を注入する。すると044の身体が赤く変色し蒸気を発する

「があーー!!」

獣のような雄叫びを上げ044が飛び掛る。その拳を避けると拳は地面に2メートルほどのクレーターを作った。

「うそだろっ!?」

すぐさま2撃目3撃目が迫り、その気迫に避けることしか出来なかった。

この気迫何処かで・・・まさか!

「気づきましたか?そう!私が044に投与した薬にはハートの細胞を元に作り出した物、つまり!今、044はハートと同等の力を持っていることになる!」

またっハートかよ!

「いい加減・・・しつこいんだよ!」《ゼンリン!フルスロットル!》

ゼンリンストライカーを回し突っ込む。044の光弾を弾き懐に入りゼンリンシューターを叩き込む

しかし、044はまったく動じず静かに右手を引いた

「・・・その程度かーー!」

ハートを思わせる重い衝撃が顔面に響いた。

砲弾のような拳が何度も叩き込まれた。

一発食らうごとに飛ばされそうになる意識を何とか踏み留まらせるが次に受けた腹部への拳で大きく吹き飛び機材に突っ込んだ。

それと同時に変身が解け生身の体に機材の部品が刺さった。

もう・・・駄目か・・俺一人じゃ・・ハートには勝てない・・・

一歩づつ近づいてくるポイズン達を睨み付けるがゼンリンシューターもポイズンたちを挟んだ反対側に飛ばされ抵抗も出来ない。

く・・そぉ・・!

044が静かに手のひらを向ける深紅のエネルギーが徐々に大きくなる

結局俺は何も・・・

《シューター!》「きゃっ!?」

一発の銃声と悲鳴と共に044の背にゼンリンシューターの光弾が命中した。

背後を見るとゼンリンシューターを持ち尻餅をついている速水がいた。

「ばっ!お前なんでこんな所に!?逃げろぉ!」

「友達が捕まってるのよ!黙ってられるわけないじゃない!」

「これは俺の戦いだ!お前らが首を突っ込むことじゃな「ふざけないで!!」え・・・?」

速水の叫びに郷は言葉が詰まった

「あんたが未来でどんな戦いを経験したかも何で焦ってるのかも知らないわよ!でもね!ここは私たちの時代よ!だったら私たちにも戦う理由はあるわよ!」

速水が再び引き金を引くが反動でまた倒れてしまう。さらに先程は不意を突かれただけだったのか044は何事もないかのように速水に手のひらを向ける

「っ!?逃げろ!」

だが、速水は足が竦んでしまい動けない。

044が放った光弾が速水に向かう。

速水の居た場所が爆炎に飲み込まれた。

「速水ぃ!!」

 

「にゅ~・・・ギリギリでしたねぇ」

郷が後ろから聞こえる声に振り返ると速水を抱える殺せんせーがいた。その触手にはクリムも巻き付いている。

「速水さん大丈夫ですか?」

「は、はい・・・」

殺せんせーは速水を静かに降ろすとゼンリンシューターでポイズンたちを牽制し茅野を救出した。

 

『殺せんせー!速くドクターを!』

「ええ!」

クリムが連れてきた救急車型のシフトカー【マッドドクター】をゼンリンシューターに装填した。

《ナオール!》

銃口を茅野に当て引き金を引くとゼンリンシューターから解毒薬がデータとして茅野の身体に打たれた。

茅野の顔色が少しづつ治っていった。

「馬鹿な!?私の毒が!」

ポイズンが驚いている隙に郷はマッハドライバーを拾った。

 

「変身!」《ライダー!マッハ!》

 

「くぅ!044!」

ポイズンが叫ぶと044がマッハに襲い掛かる。

マッハと044は互いの拳が交差し互いの腹部に命中する。

やはりパワーで勝る044の方が強くマッハは後退するがすぐさま蹴りを放つが044に掴まれ投げ飛ばされた。

殺せんせー達の所まで飛ばされたマッハにクリムが言う

『郷!1人で戦うな!君は1人ではない!』

「ああ・・そうだったな・・・速水!」

「なっなによ・・」

「謝謝(シェイシェイ)・・」

 

再び走り出したマッハ、その手にはフレアが握られていた。

《シフトカー!タイヤ交換!モエール!》

ドライバーにフレアを装填し拳に炎を纏わせた拳で044に殴り掛かる。フレアの力が加った拳は044のガードを破った。

炎の拳が何度も044に叩き込まれていく、ポイズンが援護しようとするがそこにスパイクが割って入る。

回転しポイズンを退けたスパイクはそのままフレアと入れ替わるようにドライバーに装填された。

《ササール!》

マッハの足に緑色の棘状のエネルギーが纏われた。その蹴りはポイズンに刺さり確実にダメージを当てえていく。

「殺せんせー!シューターを!」

殺せんせーからゼンリンシューターを受け取りスパイクを装填した。

《ゼンリン!ササール!》

銃口から無数の棘が撃つ出され044とポイズンを攻撃した。二人は防ごうとするが命中した棘が爆発した。

「確かに俺1人じゃハートの力には勝てないけどな!シフトカー達や仲間と一緒なら俺はもう負けねぇ!」

マッハは爆発で怯んだ044に向かい跳びながらシャドーを装填した。

《シノービ!》《ヒッサツ!フルスロットル!シノービ!》

5人に分身したマッハが一斉に蹴り掛かった。

「ぐあっ!」

5人のマッハの蹴りを受けた044は吹き飛び機材の中に突っ込み爆発した。

 

「次はお前だ!」

マッハはドライバーにシグナルマッハを装填しポイズンと対峙する。ポイズンも右手の注射器を構え毒打ち出す。

《ズート!マッハ!》

高速移動したマッハは毒を躱していき蹴りを打ち込む。

その蹴りはポイズンの注射器を破壊した。

そのままドライバーに手を掛けた。

《ヒッサツ!フルスロットル!マッハ!》

「はぁぁーー!!」

マッハはその場で回し蹴りを放つ。

「がっぁぁーー!!」

ポイズンのボディは破壊されコアも爆発した。

 

 

 

変身を解いた郷が駆け寄ると丁度茅野も目うを覚ました。

「う・・ん・・あれ?わたし・・・」

「茅野さん!大丈夫ですか!」

「殺せんせー・・・うん・・大丈夫・・・詩藤君もありがとう」

「ああ・・良かった」

 

 

その後駆けつけた烏間に連れられ茅野は病院に行った。それを見送った郷に殺せんせーが近づく

「詩藤君、君がロイミュードと戦う使命を持っているのは分かります。しかし、どんなに力を持った者でも1人では限界が訪れます。だからこそ共に戦う仲間が必要なのです。今日、あなたを助けようとした速水さんのような仲間がね。」

「わかったよ。もう1人で無茶はしない。みんなを守る。みんなと一緒にな。な、速水」

郷が笑顔で速水に話しかけるとその顔を見て速水は顔を赤くした。

「////とっ当然よ!しっかり守ってよね・・・・いきなりあんな笑顔反則よ」

「えっ!なんか言ったか?」

「////何でもないわよ!かっ帰るわ!!」

足早にその場を去っていく速水を見ながら郷は訳が分からない顔をしている隣で殺せんせーは顔をピンク色にしてニヤニヤ笑っていた。

 

 

 

 

病院での診察を終えた茅野は家に向かいっていた。

「あ~あ、今日は災難だったな~思わず使っちゃいそうになっちゃったし・・・」

線路下のトンネルに入った時。壁際で誰かがうめき声をあげていた。

「う・・うう・・・」

フードを被ったその人物は044だった。

一瞬顔を強張らせ後ろ髪に手を伸ばす茅野だったが何かを考えた後笑顔で044に近づいた。

「ねえ、助けてあげるから私に協力してね!」

044はその笑顔に深く悲しい何かを感じた。




登場ロイミュード
・ポイズンロイミュード
034が進化した姿
毒々しい紫色の姿で右手が注射器になっている
注射器から様々な薬物を打ち出せる
ハートのデータから作った薬物を打つことで他のロイミュードをパワーアップさせる。
コピー元は医師免許を剥奪された元医者の男


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停学明けの赤髪

今更ですが郷の口調を少し変更することにしました。
理由としては、一つでも特徴を着けないと口調が安定しないと考えたからです。
今までの話は時間を見つけて直していきます。


「「「いっち、に~~さ~~ん、し!!」」」」

「晴れた午後の運動場に響く生徒たちの掛け声、平和ですねぇ~~生徒たちの武器が無ければですが・・・」

 

五時間目の授業の体育では現在新たにE組に教師として派遣された烏間の監督の元、ナイフの素振りをしていた。

「・・・なぜ前がここにいる。体育の時は俺が受け持つからどこかに行っていろと言ったはずだ。此処に居るなら精々そこの砂場で遊んでいろ」

 

烏間に追い出された殺せんせーは泣きながら砂場で何かを作り出した。

「ひどいですよ烏間先生、私の体育は生徒たちに評判がいいのに・・・」

「いや嘘つけよ殺せんせー、この間なんか反復横跳びで視覚分身しろなんか言ってよ~」

菅谷の言葉に他の生徒も首を縦に振る。

「身体能力が違い過ぎてね~・・・」

「体育は人間の先生に教わりたいわ」

「ガーーーーーン!!」

 

 

殺せんせーが泣きながら砂山を作っている中、授業が進むが生徒たちは基礎の授業の内容に意味があるのか不安だった。

そこで、烏間を相手に磯貝と前原が実戦をすることになったが、二人のナイフを烏間はいとも容易く捌いていく。

「このように多少の心得があれば素人のナイフを捌く位俺でも可能だ」

2人の腕を掴み怪我をしない様に倒れさせた。

「俺に当たらないようではマッハ20の奴に当てることは出来ない。だが、ある程度基礎が出来てくれば・・・詩藤君良いか?」

「ガレット!良いっスよ!」

 

 

今度は烏間も対殺せんせー用のナイフを構え二人が向かい合った。

「あんまりナイフって使ったことないっすスど、やるからには勝ちますよ?」

「ああ、手加減せずに来てくれ」

生徒たちが2人を固唾をのんで見守る

先に動き出したのは郷だった。地面を蹴り一気に近づきナイフを突き出す。

烏間がナイフで捌くが、すぐに引き戻し振り払う。烏間は身体を後ろに反らし躱すと勢いをつけナイフを振るう。

ナイフで防ぐ郷であったがその威力に抑えきれず後ろに下がった。

その一連の動作が僅か数秒で行われた。

「よし、だいぶコツは掴んできたんでこっからは本気で行くっスよ」

 

そこからは更にスピードが上がった攻防が行われた。

果敢に攻める郷の攻撃を烏間が防ぎながら時折攻撃をしていく。

ジャンプをし空中から郷が攻めかかるが烏間は落ち着いて対処し投げ飛ばした。

 

「にゅあ!?先生の力作がーーー!!」

丁度着地したところに殺せんせーが作った大阪城があったが郷は気にせず駆け出す。二人が同時にナイフを突き出した瞬間終業のチャイムが鳴った。

「・・・今日はここまでだな」

「いや~もうちょっとで勝てたんっスけどね~」

 

 

生徒たちが教室に戻る中一部の女子たちが集まっていた。

「烏間先生ちょっと怖いけどカッコイイよね~」

「うん!ナイフ当てる事が出来たら頭撫でてくれるかな~」

「おっ陽菜乃ちゃんは烏間先生押しか~じゃあ,速みんは詩藤押し?」

「なっ何言ってるのよ中村!?///]

「わ~凜香ちゃん赤くなってる~~!」

 

そんな中,郷は校舎の前に誰かが立っているのに気付く椚ヶ丘中学の制服を着た赤髪の少年だった。

「カルマ君!?」

近くにいた渚が少年を見て言った。

「やあ、渚君久しぶり」

少年も微笑みかけながら渚に歩み寄るが渚を横切りそのまま殺せんせーに近づく。

「すっげ!本当にタコみたいだ」

「赤羽業君ですね。今日から停学明けだと聞いています。しかし、初日から遅刻とは感心しませんね~」

「ごめんなさ。中々生活のリズムが戻らなくてさ。下の名前で気軽に読んでよ先生・・」

「ええ楽しい一年にしましょう」

2人が握手した瞬間だった、カルマに握られた殺せんせーの触手が破壊された。

「っ!?」

殺せんせーが一瞬の動揺を見せていると袖に隠し持っていたナイフで切り掛かる。すぐさま回避しカルマから離れる殺せんせーであったがその顔には焦りがあった。

「へえ~ホントに速いし、ほんとに効くんだこのナイフ」

カルマの手には細かく切られたナイフが貼り付けられていた。

「殺せないから殺せんせーって呼ばれてるって聞いてたけど・・・ひょっとして先生ってチョロイ?」

カルマの挑発に殺せんせーは顔を真っ赤にした。

 

 

 

 

ブニョン、ブニョン、ブニョン、

六時間目の小テストの時間、教室に柔らかい音が響く

「何やってるんだ?殺せんせー」

「さぁ・・壁パンかな?」

「さっきカルマにおちょくられて悔しいんだな」

「全然壁にダメージ行ってないけどな」

こそこそと話す生徒たちだがいつまでも響くブニョン音にだんだんイラついて来た。

「あ~~~もう!ブニョン、ブニョン、うるさい!!」

「しっ失礼しました!!」

岡野が切れるとすぐさま殺せんせーも誤った。

 

 

「ねぇ~君でしょ?未来から来た転校生って」

後ろの席でテストに頭を悩ませている郷にカルマが話しかけてくる。

「ん~?ああ」

「俺、赤羽業って言うんだ。宜しく」

握手を求めるカルマに郷も手を差し出すが手を握った瞬間ベチャとした感触がした。

「っ!?」

「ははは、駄目だよこんなのに引っ掛かっちゃさ・・・」

カルマの手にはミニトマトがあり握手の時に潰れ郷の手には潰れたトマトがベッチャリと付いていた。

「カルマ君!駄目ですよ!テスト中に悪戯して!」

怒る殺せんせーにカルマは自分の答案を渡して教室から出ていく。

「ごめん、ごめん、俺もう終わったから帰るね。たぶん満点だと思うからさじゃ~ね~」

帰っていくカルマを郷は恨めしそうに見送った。

「・・・あんにゃろぉ」




感想やアドバイスなどお待ちしています。


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赤羽の暗殺



・・・・お待たせしました~~!!
言い訳は言いません。単純に筆が進みませんでした。こんな駄文でも見てくれている方々には大変待たせてしまいました。
今後も不定期の更新になりますが完結まではしっかりと書いていきますので末永く宜しくお願いします。


「おはよ~っス」

赤羽業の停学が空けた翌日、時間ギリギリに登校してきた郷が教室に入ると全員が気まずそうな表情で教卓を見ていた。

郷もつられて教卓を見るとそこには対先生用のナイフが深々と刺さったタコが置かれていた。

 

「皆さん、おはようございます」

そこに殺せんせーも教室に入って来た。当然殺せんせーの視界にも教卓のタコが入って来た。すると、カルマが待ってましたとばかりに席を立った。

「ごめ~ん殺せんせー!先生と間違えて殺しちゃった。片付けるから持ってきてよ」

「・・・分かりました」

 

殺せんせーはタコを持ちゆっくりとカルマの席に近づくしかし、途中で立ち止まると触手をドリルのように高速回転させ校舎の外に出た。

いつの間にか用意した紙袋とミサイルも持っている。

 

「見せてあげましょう。触手ドリルと自衛隊から頂いたミサイルの威力を」

殺せんせーが高速で作り出したものがカルマの口に放り込んだ。

 

「あっつ!?」

殺せんせーが作ったものはタコ焼きだった。

「その顔色では朝食を食べいませんね?これを食べて栄養を取りなさい」

「ちっぃ!」

カルマが舌打ちしながら教室から出て行くのをみんなが見送くる

「もったいない。せっかく美味しく出来たのにって、にゅあ!?先生のタコ焼きは、って詩藤君!?」

「中々うまいっスね」

「「「お前が食うのかよ!?」」」

「いや、俺も朝食ってこなかったから」

 

その後もカルマは様々な場面で殺しに掛かるがその全てが巧に躱されてしまう。

 

 

 

 

 

放課後になり郷が速水と千葉と一緒に崖下で射撃の練習をしていると崖上に渚とカルマが居るのが見えた。

「ん?あの二人何やってんだ?」

「カルマが新しい暗殺方法でも考えてるんじゃないか」

そこに殺せんせーが加わりしばらく話しているとカルマが崖から飛び降りた。

「えっ!?」「なっ!?」「リアリ~!?マジかよ!」

カルマが銃を構えているため殺せんせーも助けに入れない。郷が変身しようとドライバーを巻くが間に合わない。

その時殺せんせーが触手を蜘蛛の糸に用に張り巡らせネットを作った。粘着性のネットのためカルマの腕も封じ銃が撃てないでいた。

 

「どんな状況でも助けないという選択肢は私にはありませんよ。何度でも飛び込みなさい。何度でも助けてあげますよ。」

(はぁ・・・ダメだなこりゃ殺せないや・・・少なくとも先生としては・・)

カルマから刺々しい殺意が消え代わりに爽やかなきれいな殺意が生まれた。

そこに郷たちと渚がやって来た。

 

「カルマ君!大丈夫!?」

「うん、なんともないよ」

「しかし・・・無茶するな。此処から飛ぶなんて・・・」

千葉は崖を見上げながら言った。

「これが一番殺せる確率が高いと思ったからね。まあ、失敗だったけど」

「にゅるふふ、そう簡単に先生は殺せませんよ」

「ちっまあいいや、何度でも殺しに行ってやるよ」

 

 

「見つけたぞ」

聞き慣れない男の声が聞こえた瞬間その場の全員を重加速が襲った。

「うおっ!?」「なっ!?」

「うわっ!これが重加速かよ。聞いていたけどおもしれ~」

「言ってる場合か!ほらこれ持って離れてろ」

一早く重加速から解放された郷が全員にシフトカーを持たせた。重加速から解放された4人を殺せんせーに任せ前に出ると1人の男が立っていた。

「誰だって、聞くのは野暮かな?」

「ああ要件は分かってるだろ?邪魔をするな仮面ライダー!」

男はコブラ型の031になった。

 

「最近苦戦ばっかりだったからな偶にはマッハで決めるとスッか」

《シグナルバイク!》「レッツ変身!」《ライダー!マッハ!》

「追跡!撲めってうお!?」

 

何時ものキメ台詞を言っていると031は容赦なく攻撃してきた。突然の奇襲に怯んだマッハにさらに追撃が加わる。

「ッ~~!最後まで言わせろ!!」

何とか体勢を立て直いたマッハが反撃に出た。ゼンリンシューターの射撃で031と距離を取った。

「たくっ、じゃあ改めて・・・追跡!撲滅!いずれも~~マッハ!!仮面ライダ~~マッハ!!

「前見なさいよ!来てるわよ!」

 

速水が叫んだ通り031の拳が迫るがマッハは僅かに体をずらし躱すと同時にカウンターと喰らわした。ゼンリンシューターの打撃を顔面に受けた031が大きく吹き飛んだ。

「悪り~な、この後ドラマの再放送があるから早く終わらせてもらうぜ」

《シグナル交換!キケ~ン!》

 

上空に向けゼンリンシューターを撃った。

《キケ~ン!》

弾がモンスターに姿を変え031に襲い掛かった

「くっ!来るな~!」

031は必死に逃げようとするがモンスターは容赦なく噛みつきそのまま振り回した。

 

投げ飛ばされた031が起き上がると上空に跳ぶマッハの姿が写った。

《ヒッサツ!フルスロットル!キケ~ン!》

「じゃあな!」

モンスターのオーラを纏ったマッハのキックを受け031のコアは砕け散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~スゲェモン見たな~~」

「気楽なもんだなカルマ」

戦いを終え変身を解除した郷にカルマが近づく

「面白いモノ見せてもらったお礼にさ、飯奢ろうか?」

そういうカルマの手にある財布を見た殺せんせーが慌ててポケットを探る

「にゅあ~!?カルマ君!その財布は~~!!?」

「ああ、これ?職員室の机の上に落ちてたんだ~」

 

話の内容が分かった郷もニヤリと笑いカルマに乗った

「そっか~じゃあ遠慮なく奢って貰かなぁ~」

「郷君!?ちょぉっ!君ドラマの再放送は!?」

「ノープログレム、予約してあるから大丈夫っスよ。速水たちも行こうぜ~!」

鼻歌を歌いながら山を下り始めた2人と涙目になりながらそれを追う殺せんせーを戸惑うながら見ていた残された3人に郷が手を振りながら叫んだ

「・・・どうする?」

「う~んここはあの2人に乗っかろうか」

「そうね・・・」

3人も郷たちを追い山を下りて行った。

 

「寿司行こっか?」「焼肉なんかどうだ?」

「待って~~!!先生、今月ピンチなんですよ~~!!」

夕日が落ちる山中に2人の笑い声と殺せんせーの絶叫が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 





昨日、ドライブサーガが届きました。
とっっても楽しかったです!
特にマッハのアクションが素晴らしく何度も見直しました。いつか作中でもあんなアクションを出したいですね。
マッハサーガの小説を読んだ後に見るのをお勧めします。直接の続編と言えるので小説と合わせて一つの物語として楽しめます。

ハートの方もまさかのあの姿が登場するとは驚きました。
本編ではなかったハートと現さんの絡みがとても新鮮でした。


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毒と愛する者のため


今日、1月に日本武道館で行われる感謝祭のチケットを見事にゲットできました!
まだ一ヶ月ありますが今から楽しみで仕方ないです。


『以上でお菓子から着色料を取り出す実験は終了する』

「では,余ったお菓子は先生が回収しておきます!」

 

クリムの授業が終わった瞬間、殺せんせーはみんなの机からお菓子を回収した。

「ちょっと待てよー!」

「それ俺たちが買ったお菓子だぞー!」

「殺せんせーズル~い!」

クラス中からヤジが飛ぶが殺せんせーも涙目で叫んだ

「だって先生今月もうお給料無いんですよ!郷君やカルマ君に奢らされて!」

「「「うっ!・・・」」」

一緒にご馳走になった速水たちは気まずそうに顔を反らすが主犯の2人はどこ吹く風といった様子だった。

 

 

生徒たちの罵声が飛ぶ中1人の生徒がゆっくりと教卓に近づいた。

「あ・・・あの、殺せんせー!毒です飲んでください!!」

 

・・・・・

教室中が静かになった。此処まで堂々とした毒殺が今まであっただろうか?

「・・・奥田さん。随分と正直な暗殺ですねぇ~」

流石の殺せんせーもどう対処すればいいのか困っていた。

 

「私、皆みたいにふいうちとかうまく出来ませんから・・・でも!得意な科学を生かして真心こめて作りました!」

『・・・奥田君・・・君の科学の成績は確かに優秀だが・・毒だと言われて飲むものは居ないと・・・「それはそれは、では頂きます」って飲むのかね!?』

 

殺せんせーは迷うことなく奥田の持つ毒を飲んだ

「っ!?・・こ・・・これは・・」

すると、殺せんせーがうめき声を上げた

「きっ効いてるのか?」「まさか・・奥田が?」

生徒たちもまさかの伏兵の登場に驚いた

 

 

「ぐっ・・・ぐあぁぁ!!」

―ニョキ―

(((なんか角生えたーーー!!!?)))

「うーん・・この味は水酸化ナトリウムですか。人には有効ですが先生には聞きませんねー・・・では此方は?」

殺せんせーは続けて次の毒を飲んだ

「うっうううう~~」

―バサァ―

(((今度は羽が生えた!!?)))

(うわーおもしれ~)パシャッパシャッ

殺せんせーの無駄に豪華になっていく顔に戸惑うを隠せない生徒たちの中郷は次々と変わっていく殺せんせーの写真を撮っていた。

 

「これは酢酸ナトリウムですか・・では最後の一本は・・・」

―・・・・・・-

(真顔になった?)(どういう法則だよ?)

「王水ですねぇどれも先生の表情を変える程度ですね」

「いや、先生の真顔薄っ!!」 「顔文字みてーだな!!」

「・・・先生の事は嫌いでも、暗殺の事は嫌いにならないでください」

「「「どうした急に!?」」」

 

『奥田君、生徒一人で毒を作るのは感心しないな。安全上私か殺せんせーの監督のもと行う様にしないといかんよ』

「・・・はい、すみません」

「では、奥田さんこの後時間があるのなら一緒に先生を殺す毒薬の研究をしましょうか」

「は、はい!!」

「・・・いや!ターゲットと一緒に作る毒って何だよ!?」

あまりにスムーズに行われた矛盾に思わずツッコんだ郷だった。

 

 

 

 

 

「はぁ~」

放課後殺せんせーとの研究を終えた奥田は俯きながら下校していた。

結局殺せんせーに有効な毒を作り出す事は出来なかった。初めに毒による暗殺を思いついた時はもしかしたら自分が暗殺を成功させられるかもしれない。国語が苦手で科学しか取り柄がない自分でも長所を伸ばせば役に立つ、そう思っていた。

 

 

 

「おや、この香りはエタノールですか?」

すれ違った男性が呟いた言葉に思わず振り返った。

身体に着いた薬品の僅かなにおいをかぎ取られたのだった。

男性は緑色の服を着た眼鏡を掛けた知的な人物だった。常に胸部を押さえており時折苦しそうに顔を歪めている

「貴女、随分と珍しく難関で特異な調合を行いましたね?」

男は特徴的な喋り方で奥田に近づいた。

 

「1つ調合を教えてあげましょう」

「え・・・?」

「とても斬新で個性的で素晴らしい物が出来ますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの!殺せんせーこれを飲んでみてください!」

翌日、教室に入って来た殺せんせーに薬品の入ったフラスコを差し出した。

 

「きっ昨日新しく作ってみたんです。お願いします!」

「奥田さん・・・・分かりました。生徒願いをを断る教師は居ませんからね」

 

殺せんせーは迷うことなくフラスコを受け取り中身を飲んだ。

「グッ!!」

殺せんせーの触手からフラスコが滑り落ちた。

床に落ちたフラスコの割れる音に生徒たちの視線が殺せんせーに集まった。

 

「グッオオオオオオオオオオォォォォ!!!!」

校舎全体が震えるほどの雄叫びと共に殺せんせーの身体が光を放つ

今までにない変化に生徒たちの生唾を飲んだ。

視線を覆う光にみんなが目を塞いだ。

「オオオオオオオオオォォォォォ!!!!」

そんな中でも殺せんせーの雄叫びが響き続ける。

 

「「「「・・・・・」」」」

数秒の後光が収まり全員が目を開けた。

数秒前まで殺せんせーがいた教卓に視線を向けるとそこには・・・・

 

「ふぅ~」

「「「「溶けたぁぁぁぁ~~~~!!!!!??」」」」

まるでスライムのように液状化した殺せんせーが居た。

「これはすごいですね~まさか先生の細胞を活性化させ流動性を増す薬とは・・・しかも」

 

殺せんせーはそのまま近くの片岡の机の中に入り込んだ。

「液状ゆえどんな隙間にも入り込むことが可能です~~」

「どこ入ってるんですか・・・」

 

「さぁ!先生を殺せてみなさぁい!」

教室中を縦横無尽に飛び回る殺せんせーに生徒たちはなす術もなかった。

「ちょっ・・無理無理!床や天井じゃ手が出せねーよ!」

「なんだこのはぐれ先生!?」

 

教室中がパニックになる中殺せんせーは奥田の前に出た。

「奥田さんこの調合はどうやって?」

「いえ・・あの・・・昨日ある人が教えてくれたんです。自分も殺し屋だけど飲ませる事が出来ないから代わりにお願いするって言われまして・・・」

「そうですか・・・良いですか奥田さん。いかに毒物を作れても相手を騙し飲ませる事が出来なくては意味がありません。君の理解の才能は素晴らしい。それを多くの人に伝えるためにも毒を渡す国語力を鍛えてください」

「は・・・はい!!」

 

 

 

 

 

「さて、彼女たちはこのヒントに気付く事が出来ますかね。これで・・よかったんですよね・・・ハート・・・」

離れた場所から教室の様子を見ていた男は昨日奥田と接触した男だった。

 

「やっぱりお前かよ。ブレン」

そこに教室から抜け出した郷がやって来た。

郷は男にゼンリンシューターを向けいつでも発射できるように構えた。

 

「久しぶりですね。仮面ライダー・・・」

「お前もこの時代に来てたなんてな・・・てかっ生きてたんだな」

「今でも疼きますよ。あの時の傷は」

男は胸部を押さえながら呟いた。

 

「・・・何しに来た」

表情を強張らせゼンリンシューターを持つ手にも力が入った。

「なに、私はハートの指示に従っただけですよ」

「ハートの?どういうことだ!?」

「いずれ分かりますよ」

男はゆっくりと郷の横を通り歩いていく。

その時郷は見た男の胸部から激しく火花が散っていることに

「おい!ブレン!!」

「気をつけた方だ良いですよ。この時代に来たのは私たちだけじゃない。」

男は最後に不敵に笑うと静かにその場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ!私も・・ここまでですかね?」

その夜、男はとある湖畔に来ていた。

近くの木に寄り掛かるとそのまま座り込んだ。

「まさかこのわずかに残された時間を私に致命傷を与えた仮面ライダーたちのために使うとは・・・全く滑稽で馬鹿馬鹿しくておかしな話ですね」

そう言いながらもその顔は清々しい表情だった

「これもすべて貴方の言いつけを守ったからですよ。ハート・・・本当に私は・・優秀で・・・誠実で・・・・」

 

 

男は静かに消滅していく、かつて愛する者と共に生き、愛する者のために戦った男は、最後まで愛する者に従った。

その体はチリのように消えていき身体から出た003のコアはゆっくりと天に昇っていく。そこにいる愛する者の元へ行く為に・・・

 

 

 

「・・・良い絵だよ・・・ブレン」

郷はたった今撮った1枚の写真を見つめた。その顔はどこか悲しそうだった。

 

 

 

 





はい、いつも通りに駄文でした。
見ていてくださっている皆様申し訳ございません。
何とか完結までは頑張りますのでこれからもこんな駄文ですがよろしくお願いします。

また、ブレンやハートとの未来での戦いはいずれ描きます。(予定)


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新任のビッチ

本当は平成ジェネレーションズを見てそのテンションで投稿したかったんですがもう1つの小説や仕事で中々書けませんでした。
今回はややセリフが多いいのでご了承ください。


『っ!此処は?まさか!』

 

今、クリムはとある民家にいた。

その内装に、窓から見える景色にクリムは見覚えがあった。

「待って貴方!何で?何で出て行くんですか!?」

「許してくれ。私は行かなくてはならないんだ!」

 

家の奥から1人の男性が荷物を持って出てきた。その後ろからは女性が少女と共に男性を止めるように縋り付いていた。

「お願い!あの子が居なくなって、貴方まで出て行ったら私たちはもう・・・」

「パパ!行かないで!!」

「っ!・・・すまない・・」

 

2人が泣きながら男性の手を掴むが男性はその手を振りほどき出て行った。

 

『・・・・』

その光景をクリムは黙って見ているしかなかった。

 

だが次の瞬間、凄まじい爆発が家を覆った。

ソファやテーブル家中の家具が粉々に吹き飛び壁は砕け屋根は崩れ落ちた。

そして、クリムの視界に入ったのは崩れた屋根の下敷きになり血塗れで倒れる女性と女性に庇われる様に気を失った少女だった。

 

 

『っは!?』

気付くとクリムは政府から手配されたマンションの一室にいた。

向かいのベットでは郷がイビキを立てながら眠っており周りを見渡しても崩れ落ちた家も倒れる女性も見当たらない。

『・・・夢か。全く面倒な機能が残ったものだな』

 

 

 

 

 

 

ホームルームの時間、普段ならエアガンから発射される対殺せんせー弾が飛び交うのだ今日はみんな困惑の眼で教卓に立つ殺せんせーを見ていた。

いや、正確には殺せんせーの横でその触手に抱き着く女性を見ていた。

 

「今日から皆に英語を教えるイリーナ・イェラビッチと申します。皆さんよろしく!!」

挨拶をしながらも殺せんせーにべったりの新任教師に生徒たちは反応に困った。

 

一方、ベタベタされている殺せんせーは・・・

「(・∀・)ニヤニヤ///」

((((普通にデレデレじゃねーか!!))))

 

「ああ・・・見れば見るほど正露丸みたいな瞳。曖昧な関節。私虜になってしまいそう」

「いやぁお恥ずかしい」

(((騙されるなよ殺せんせー!!そんなツボの女なんていないから!!)))

 

生徒たちは分かっていた。この新任の教師がただの教師ではない殺し屋だという事に・・・

 

 

 

『イリーナ・・・』

「・・やっぱりクリムの奴、朝から変じゃないか?」

「そうね心此処に在らずって感じね」

 

職員室の机の上で何か考え事をしているクリムの様子を郷と速水は窓から眺めていた。

「今朝起きた時から変だったけどあの先生を見てからは更に様子が変だったんだよなぁ~・・・まさか!」

「何か心当たりがあるわけ?」

「先生の胸にムラムラしてッギャァ!?」

郷の腹に速水の膝が突き刺さり郷は地に伏せた。

「ガッハァ!な・・・ナイス膝・・」

「変なこと言ってるんじゃないわよ!///」

 

すると生徒たちと遊んでいた殺せんせーにイリーナが近づいた。

「殺せんせ〜!烏丸先生からお聞きしましたわ。すっごくお速いんですって?」

「いやぁそれほどでもありませんよぉ」

「私1度本場のベトナムコーヒーを飲んでみたくて、私の英語の授業の間に買って来て下さりませんか?」

「お安い御用です。ベトナムにいい店を知ってますからすぐに行ってきますよ」

そう言って殺せんせーはベトナムに向かい飛んだ。

すると丁度授業のチャイムが鳴り生徒たちが教室に向かうがイリーナは一向に動こうとしなかった。

 

「あの~イリーナ先生もう授業が始まりますので教室に行きませんか?」

クラス委員の磯貝が言うがイリーナはさっきまでとは全く違った冷めた目で生徒たちを見た。

「授業?ああ、適当に自習でもしてなさい。それと・・気安くファーストネームで呼ばないでくれる?

あのタコの前以外であんたらと仲良し演じるつもりは無いから」

 

「・・・何よあの態度」

「裏表を使い分ける。まあ、プロの殺し屋としては正しいことなんじゃねぇの?」

俺はあんまり好きになれないけど・・・そう呟き郷はカメラにイリーナを写した。

 

 

 

現在教室の教卓の前ではイリーナがタブレットを操作し時々静かに笑っていた。

どうやら暗殺の計画を練っているようだ。

そんな様子を生徒たちは静かに見ていたがやがて前原が・・・

 

「なービッチ姉さん授業してくれよーー」

—ズルッ―

前原のビッチ発言にイリーナがこけると教室中からビッチコールが響いた

「そーだよビッチ姉さん」「一応ここでは教師だろ?ビッチ姉さん」

「あーーー!!ビッチビッチうるさい!!大体あんたら日本人は発音が違うのよ!今から正しい発音を教えてあげるわ先ずは歯で下唇を噛む!」

 

やっと授業をやる気になったのかと生徒たちは言う通りにしたが

「ほらそのまま授業が終わるまで静かにしてなさい」

(((・・・何だこの授業)))

 

 

 

結局、英語の授業はまともに行われず終了した。

その後の昼休み、生徒たちがグランドで訓練をしている時、烏間とクリムはイリーナを呼び出した。

『イリーナ、なんだねあの授業は?本業が殺し屋だろうと今の君はこのクラスの教師だという事を忘れてはいかんぞ』

「うるさいわね。ベルトのくせに一々指図しないでくれない?」

『・・・」

「・・妙な連中を連れだしているらしいな。そんなことは聞いていないぞ」

 

烏間が体育倉庫に視線を向けた。

先程授業の間に見知らぬ3人組の屈強な男たちが体育倉庫に入り込んでいたのだった。

「ああ、あいつらは私の忠実な僕よ。口も堅くて私のためなら無償で手を貸してくれるのよ」

 

丁度その時殺せんせーがコーヒーを片手にグラウンドに降りた。

「見てなさい。プロの殺し屋の手際を」

イリーナは不敵な笑みを浮かべ殺せんせーに向かい歩いて行った。

 

 

「殺せんせー!」

「イリーナ先生、お待たせしました」

「まぁ!ありがとうございます!午後のティータイムに欲しかったんですの」

イリーナは満面の笑顔であるが生徒たちから見たらその笑顔はもはや白々しい物でしかなかった。

 

「あの~殺せんせー・・・実は折り入ってご相談があるんですけどぉ・・」

「おや、何でしょうか?」

「ここでは何ですので体育倉庫の方で二人っきりでお願いします」

ワザとらしく胸を押し付け上目づかいで迫るイリーナに殺せんせーの顔はピンク色見なった。

「もちろん構いませんよ~では行きましょうか」

 

2人が倉庫に入っていく様子を生徒たちは軽蔑の眼で見ていた。

「何かガッカリだな~殺せんせー・・」

「あんな見え見えの女に引っ掛かるなんてな~~」

 

「烏丸先生。私たちあの人の事好きになれそうにありません・・・」

「すまない・・・国からやり方は彼女に一任するように言われているんだ。だが、わずか1日ですべての準備を整える手腕、彼女が一流であることは間違いない」

 

 

「なあ、郷はうまくいくと思うか?」

「い~や無理だろうな~~」

隣にいた千葉の質問に郷は即答した。その当然とばかりの態度に今度は速水が問いかけた。

 

「何でよ?ムカつくけどあの先生準備は万全だと思うけど・・・」

「殺せんせーの事甘く見過ぎなんだよあのビッチ。殺せんせー今までの相手と同じって考えてる時点で失敗だろ」

 

その時倉庫内から銃声が響いた。

突然の事に生徒たちは思わず身構える。10数秒後銃声が止むと次は、

「きゃあぁぁぁx~~~~!!!」

イリーナの叫び声が聞こえてきた。

「なっなんだぁ?」

 

すると殺せんせーが倉庫から出てきた。

「殺せんせー!何があったんですか?」

「おっぱいは!?」

 

生徒たちが殺せんせーに詰め寄るとイリーナも倉庫から出てきた。しかしその恰好は・・・

(((なんか健康的でレトロな格好で出てきた!!?)))

昔懐かしいブルマの体操服姿だった。

 

「ま・・・まさかこの私が・・触手で・・・・あんなことをぉ~」

(((どんなことされたんだ??)))

 

「殺せんせー・・・いったい何をやったの?」

「さあね、大人には大人の手入れがありますから」

「悪い大人の顔だ!」

 

「さあ授業が始まりますよ。教室に行きましょう」

殺せんせーと生徒たちが教室に向かうが郷は1人倒れるイリーナに近づいた。

 カシャッカシャ

骨抜きにされたイリーナのブルマ姿を撮影した。

「よし・・とろけた顔の金髪美女のブルマ姿。これをマニアの連中に売ればそれなりの臨時収入に・・」

「何やってんのよあんたは!」『何をやっているんだ君は!』

「ぎゃぁぁぁ~~!!?」

速水の銃弾とクリムの指示を受けたシフトカー達の攻撃を受け悶絶した。

 

 

(くそ!くそ!!くそ!!!)

翌日、イリーナは見るからに苛立っていた。

色仕掛けが通じた時点で楽な仕事だと考えていたがとんでもない化け物だった。

予定外の事にプランの練り直しを行っていた。

しかし、今は英語の授業中であり生徒たちとしてはちゃんと授業をして欲しかった。

 

「あの~先生ちゃんと授業しないなら殺せんせーと変わってもらえませんか?俺たち一応受験生何で・・・」

「何よあんたら地球の危機より受験の方が大事なんてガキは平和ね。どうせあんたら落ちこぼれじゃあこの先碌な人生じゃないでしょ?それよりも私の暗殺に協力しなさいよ。そうすれば一人に付き500万あげるわよ」

「ふ・・・ふざけんな!」「出てけよクソビッチ!」「殺せんせーと変わってよ!」「そーだ!そーだ!巨乳なんていらない!」

一部関係の無い物が混じっていたが生徒たちの気迫にイリーナもタジタジになった。

 

 

「あ~も~!なんなのよあのガキども!」

「問題はお前にあるぞ」

『その通りだイリーナ。君はこの教室の事を何も分かっていない。あれを見たまえ』

昼休みクリムと烏間はイリーナを森に連れて行った。

2人の視線の先では殺せんせーがジュースを飲みながら作業をしていた。

 

「あいつは生徒一人一人に合わせてプリントを作っている。一人一人をよく見ているんだ」

『生徒たちもそうだ。』

3人は次はグラウンドにいる生徒たちを見た。

生徒たちは殺せんせーを模したボールとナイフ状のラケットを使い遊んでいた。

 

「何よあれ?」

「俺が教えた暗殺バトミントンだ。動く目標に正確にナイフを当てる訓練になる。暗殺の経験なんて全くない彼らだが、勉強の合間に必死に腕を磨いている。」

『郷も勉強の合間に仮面ライダーとしてロイミュード達と戦っている』

分るか?ここでは生徒と教師、暗殺者とターゲット、皆が2つの立場を両立している」

『それが出来たいない君はこの教室で一番劣っている事になるんだ』

「・・・・」

2人の言葉にイリーナは何も言えなかった。

 

 

その様子を暗殺バトミントンをしながら郷も見ていた。

「あっちはもう大丈夫そうだな。」

「おい郷!行ったぞ!」

「分かってるっよ!」

横から飛んできたボールをラケットで相手コートに叩き付けた。

 

 

「今まで悪かったわね・・・ごめんなさい・・」

次の日イリーナは生徒たちに今までの事を謝罪した。これからは1人の教師として接していうことを誓った。

「これからよろしくなビッチ先生」「いろいろ教えてねビッチ先生」「この間の写真売って良いっスか?ビッチ先生」

「ビッチビッチ言うんじゃないわよ!それとそこぉ!勝手に売って見なさいよ宿題100倍にするわよぉ!!」

生徒たちと言い合うその姿はまるで姉弟の些細な喧嘩の様な微笑ましい物だった。

 

 

『良かった。立派に成長したんだな。イリーナ・・・』

廊下からその様子を見るクリムはとても嬉しくそしてどこか悲しそうだった。

 




年内にあと一回投稿したいですね。
本当は今年中に島まで行きたかったんですが・・


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集会で大惨事?

思ったより早く投稿できました。
このペースならあと一話ぐらいは投稿できるかもしれません。(出来るとは言いません)

それにしても・・・最近サブタイトルが決まらず投げやりなもの位なってしまっているのが悩みですね~


椚ヶ丘学園は月に一度全校集会を行う。

基本本校舎への立ち入りを制限されているE組もその時は本校舎の体育館に集合する。しかし、どのクラスよりも早く整列していなくてはならず、遅れたらペナルティーが課せられる。その為昼休みを返上する覚悟でE組校舎から本校舎までの道を走らなければならない。

 

「よし、皆急ぐぞ!」

磯貝の指示で素早く昼食を終えたE組は教室を出ようとするが・・・

 

「う・・うう~~」

「ちょっ、どうしたのよ郷?」

郷が苦しそうな表情で机に蹲り速水が心配していた。

その様子を見た磯貝も郷に駆け寄った。

「どうしたんだ郷?具合でも悪いのか?」

「は・・腹が・・・!・・・カルマの野郎ぉ~~!」

「カルマが何かしたのか?」

「げっ下剤を・・・メシに下剤を盛りやがった~~!!」

そこまで言うと郷は勢い良く立ち上がりトイレに向かい走り去った。

 

その様子を杉野と渚は呆れながら見ていた。

「何やってるんだよカルマの奴・・・」

「そういえば昨日、『仮面ライダーにも下剤って通じるのかな?』って言ってたっけ・・・」

 

 

「仕方ない。郷には悪いけれど先に行ってるか」

磯貝の指示でトイレに篭る郷に先に行っていることを伝え本校舎に向かった。

 

 

 

途中、岡島が蜂に襲われたり岡島が転がって来た岩から逃げたり岡島が川に落ちたりとあったが全員無事に本校舎に到着した。

「無事じゃねーよ!」by岡島

 

 

休んでる暇もなく体育館に入るとそこには・・・

「カルマ殺すカルマ殺すカルマ殺すカルマ殺すカルマ殺すカルマ殺すカルマ殺すカルマ殺すカルマ殺す」

呪文のようにブツブツと呟いている郷がいた。

「「「何で先にいるんだよ!!!?」」」

「ん?遅いぞみんな」

「え?何で先にいるんだ?」

「いや~トイレに行ってたら結構時間が掛かってな~~仕方ないから獣道を真っ直ぐに突き進んできたんだよ」

千葉が良く見ると郷の服には所々葉っぱが付いていた。

 

「いや、それにしたってな・・」

呆れる千葉をしり目に郷はあたりを見渡した。

「ところでカルマは?」

「カルマ君なら来てないよ。ペナルティーなんてへでもないって」

「ちっ!しょうがない仕返しは後にしてやる。覚悟してろよ~カルマァ~」

 

「っ!?」

その時、E組グラウンドで昼寝をしていたカルマは謎の悪寒を感じたとかいないとか・・・

 

そして同じくE組校舎職員室では・・・

「なぜ私たちは集会に参加できないのでしょうか?」

『烏間曰く、私たちが行くと面倒なことになるらしい・・・』

取り残された人外教師2人が落ち込んでいた。

 

 

 

「え~~間もなく定期試験ですが、皆さん油断せず勉強に励むように、でないとE組のようになってしまいますからね~~」

「「「はははは!!」」」

校長先生の話はその殆どがE組に対しての嫌味の様なもので、他の生徒たちもE組を笑った

 

周りからの馬鹿にした視線に顔を撃つむ向かせていると菅野の前に立つ郷が何かに耐えるようにプルプルと震えていた。

「おっおい郷!落ち着けよ」

菅野は郷が周りからの視線に怒っているのだと思い落ち着かせようと震える肩に手を置く

「ウグッ!」

すると郷はビクッと跳ね菅野を親の仇のように睨んだ。

「す~が~のぉ~~頼む、今俺に触るな~~~」

見ると郷は震える手で必死に腹を押さえていた。

「お・・お前まさか・・・」

「さっさっきの下剤が・・また・・・効いて来た・・もう駄目だ・・・」

 

今にも爆発しそうな郷は列から外れようとするがそれを菅野や郷の前の渚が止める。

「郷君もう少しだから我慢して!」

「今お前が抜けると俺たちまで馬鹿にされるんだよ!」

「いや・・・悪い・・もう・・・げっ限界だぁ!!」

叫びながら郷は二人の手を振り切りトイレに向かい走った。当然その様子は全校生徒及び教師が見ていた。

 

「こら~~いくらE組だからって途中でトイレに行っちゃいかんぞ~~」

注意するその声も馬鹿にしており周りからの視線もさらにニヤニヤと馬鹿にしたようなものになった。

E組は集会の間その視線に耐えるしかなかった。

 

 

「あ~~さすがにやばかったな~」

数十分後郷がトイレから出るが既に集会は終わっている時間だった。

「もうみんな戻っちまったかな?」

E組校舎に戻ろうと歩いていると渚が2人の生徒に絡まれていた。

 

「お前ら調子に乗ってんじゃね~のか~?」

「エンドのE組がデカい顔してんじゃね~よ」

 

郷から見て渚は観察力こそ優れているが体格や身体能力的に荒事に向いているとは思えなかった。

「しゃ~ない。助けるか」

郷は渚を助けようと近づくが・・・

 

「あんまり調子に乗ってると殺すぞ!」

「・・・殺す?」

「ん?」

渚の纏う雰囲気が突然変わったのに気付いた。

「殺そうと思ったこともないくせに」

 

次の瞬間、郷は反射的に制服に潜ませていたゼンリンシューターに手を伸ばしていた。

すぐにそのことに気付き手を放す。すると渚が近づいて来た。

 

「あ、郷君もう大丈夫なの?」

「あ、ああ・・」

「じゃあ戻ろうか」

笑いながら校舎に向かう渚からは先程の雰囲気無く、いつも通りの渚だった。

「・・渚の奴、意外な刃を隠し持ってたんだな」

渚の後姿をカメラに収め郷も校舎に戻っていった。

 

 

 

 

 

その後・・・

「カ~ル~マ~!!」

「いててて!!ギブ!ギブ!!」

「出たーーー!!テリー一族伝家の宝刀スピニング・トゥ・ホールドだぁ!!」

教室に戻った郷はカルマを見つけるなりタックルを食らわし倒すと片足を取り自分の脚でを差し込み締め上げた。その様子を見て漫画大好きっ子、不破がノリノリで解説を始めたのだった。

 




モチベーションが上がるので宜しければ感想を宜しくお願いします。


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中間テストで第二の刃

エグゼイド12話を見ての感想・・・・貴利矢さ~~~ん!!
早すぎるって・・いくらなんでも死ぬのが早すぎる・・・せっかくこれからエグゼイドとレーザーの真の共闘が始まると思ったのに・・・
悲しい感情がある中、仲間の死によって生まれるドラマも大好きです。
貴利矢さんの死を乗り越えて永夢には医者として仮面ライダーとして大きく成長してもらいたいです。


「さて、始めましょう」

((((何を?))))

 

集会から数日後、教室は多数の殺せんせーの分身で溢れていた。

「いよいよ一学期の中間テストが迫ってきました。」

「と、言うことで」

「これから分身した先生達が1人1人の苦手科目を教えていきます」

 

殺せんせーの分身達は一斉に生徒たちに対し授業を始めた。その頭にはそれぞれの苦手科目が書かれた鉢巻が巻かれていた。

「けっ!くだらねぇ」

「な~んか殺せんせー無駄に能力上がってんなぁ」

 

反抗的な態度の寺坂と呑気にその光景を撮っている郷の前にも分身が来たがその頭には・・・

「「って、なんで俺たちはNARUTOなんだよ!!」」

木の葉の里の額当てが巻かれていた。

「お二人は苦手科目が多数ありますからねぇ特別です」

 

 

「でも殺せんせー、そんなに分身して疲れないんですか?」

「心配いりませんよ神崎さんちゃんと一体は外で休ませていますからね」

「「「「それ余計に疲れないか!?」」」」

 

案の定授業が終わった時には殺せんせーは疲れ果てていた。

「大丈夫かよ殺せんせー?」

「心配ありませんよ。それにあなた達の成績が上がれば・・・・『殺せんせー!先生のお陰で成績が上がったよ!もう俺たち先生無しじゃいられないよ』となったり、近くの女子大生から『殺せんせ~!私たちにも教えて~』となり、殺される心配も無くなりますからね~~」

何を想像しているのかピンク色の顔でニヤニヤしている。

 

「いや勉強はそれなりで良いよな」

「どうせ俺たちE組じゃあ碌な高校行けないしな~」

「暗殺成功させて賞金貰う方がよっぽど現実的だよな」

「・・・そうですか・・」

殺せんせーは静かに教室から出て行った。

 

 

 

暫くすると殺せんせーがグラウンドに集まるように言われ生徒たちは外に出た。

外で殺せんせーがグラウンドのサッカーゴールなどを端に寄せていた。

「イリーナ先生、プロの殺し屋としての貴女にに質問です。あなたは仕事に時、何時も1つのプランだけ立てて仕事に当たりますか?

「・・いいえ、本命ののプランなんて成功する方が少ないわ。不測の事態を想定して第2、第3のプランを立てておくわ」

「では烏間先生と郷君、ナイフ術を教える際やロイミュードとの戦いにおいて重要なのは大1撃だけですか?」

「いや、確かに第一撃は重要だが」

「手練れ相手だと躱される時の方が多いいっスからね。その後の動きも大事っスよ」

 

「3人の言ったように次の第二の刃があるからこそ安心して刃を振るう事が出来るのです。」

殺せんせーはその場で回りだすと次第にその回転は速くなり竜巻を起こした。

竜巻によりグラウンドに散らばった石や凸凹だった地面が整備された。

 

「このように先生には月を破壊できるだけのパワーがあります。明日ののテストで皆さんが学年で50位に入らなかったら先生は校舎ごと平らにしてこのクラスから去ります。」

その殺せんせー放つ雰囲気から本気だと理解した生徒たちは生唾を飲み込んだ。

 

「お~い殺せんせー」

「?何ですか郷君」

「格好つけてるところ悪いんスけどあれ・・」

郷が指さす方向を見ると先程の竜巻で花壇の花すべて散っていた。しかもその花壇は以前殺せんせーが摘んでしまい新しく植え直した花壇だった。

「・・・にゅあ~~!?またやってしまった~~~!!!」

「あ~あ酷いな~殺せんせー」

「教師が2度もクラスの花を台無しにするなんてな~~」

「「教師失格じゃないかなぁ~~」」

「すぐに植え直しま~す!」

郷とカルマに散々に言われ殺せんせーは以前のように球根を買い丁寧に植え始めた。

((((なんだか閉まらないな・・・))))

 

 

 

 

その夜、郷はクリムに教わりながら勉強をしていたが・・・

「うがぁ~!もう無理だーー!!」

『何を言ってるんだ!クラスで一番成績が悪いんだぞ君は!このままじゃ学年50位どころか100位にもなれんぞ!』

一向に理解できない勉強に精神的にも限界に達していた。

「くっそ!いっその事シフトカー達を使って・・・」

『させる訳ないだろそんな事!』

「冗談だよ。じょ~だん。でもど~すっかな・・・」

 

その時街に出ていたシャドーが部屋に入って来た。

「ん?ロイミュードか・・・よし!ずっと机に座っててイライラしてたんだ。発散させてもらうぜ!」

 

 

 

「もうすぐだ・・もうすぐ俺も進化できる!」

路地裏では一体のロイミュードスパイダー型の074が己の中にたまっていくエネルギーを感じていた。

そこにフレアとスパイクがやって来て襲い掛かった。

一瞬怯んだ074であったがすぐに冷静になり攻撃を躱すと糸でフレアたちの動きを止めた。

「無駄だ!今の俺を止める事なんてできなーい!」

「止める必要はねーよ!ノンストップでぶっ潰してやるからよ」

 

シャドーに連れられてやってきた郷は074を見つけるなりゼンリンシューターを撃った。

銃撃は074の腹部に命中し怯ませた。

「ちぃ!来たな仮面ライダー!だがなぁ間もなく進化体になる俺はそう簡単には倒せな・・」

《シグナルバイク!ライダー!マッハ!》

「レッツ!変身!」

074の言葉を遮るように郷はマッハに変身し突っ込みパンチを放った。

「うおっ!」

ギリギリで屈み躱した074であったがそこにマッハの膝蹴りが炸裂した。

「ちょっと待て!まだ喋ってる途中だろ!」

「知るか!こっちはな今日一日勉強付でストレスが溜まってるんだよ!」

「それこそ知るかぁ!」

074は口から糸を放ちマッハの動きを封じようとするが

 

《ズーット!マッハ!》

高速で移動するマッハには全く当たらなかった。そのまま懐に入ったマッハのゼンリンシューターの打撃が炸裂する。

容赦ないマッハの攻撃に074は押されっぱなしだった。

ゼンリンシューターで打ち上げられた074に向け跳びながらベルトに手を伸ばした。

《ヒッサツ!フルスロットル!マッハ!》

空中で高速回転しながら074に接近すると勢いのまま必殺のキックマッハーが炸裂する。

 

「もう少しで進化できたのにーー!!」

無念の断末魔の叫びを上げた074はそのままコアごと爆発した。

 

「はぁ~スッキリした~~!!」

変身を解除した郷はその場で体を伸ばした。

『さあ、かえって勉強の続きだな。郷』

「げっ!やっぱりかぁ~」

クリムの言葉に落胆しながらも帰路に就いた。

 

その後郷たちの部屋の明かりはつく続けたのだった。

 

 

数日後、返却されたテストを前にE組の空気はまるで重加速のように重かった。

テスト前日に突然テストの範囲が変更されていたのであった。

烏間が抗議をしたがそれに対しての返答は、進学校のため直前の詰め込みに対応できるかの試すのも方針の一つだと言うものだった。

結果、クラスの多くが50位はおろか100位にも届かない結果に終わった。

 

「・・・先生の責任です」

重い空気の中、殺せんせーが呟いた。

「この学園の仕組みを甘く見ていました。皆さんに顔向けできません」

 

そんな殺せんせーに一本のナイフが飛んで来た。後ろを向いた状態でも察知して躱した殺せんせーであったが予想もしてなかったタイミングでの暗殺に動揺した。

「良いの~顔向けなかったら遠慮なく殺しちゃうよ~?」

 

ナイフを投げたのはカルマであった。カルマはそのまま教卓に近づいていく。

「カルマ君!いきなり何をするのです!先生は落ち込んで・・・」

 

カルマは教卓に自身の答案を広げた。

殆ど満点に近い答案に生徒たちも驚いた。

「あんたが余計な範囲まで教えたおかげで問題が変わっても関係ないし。でさ~どうすんの殺せんせー?クラス皆が50位取れなかったら出て行くって話・・それってさ~結局殺されるのが怖いから逃げるだけじゃないの?」

 

「なんだよ。殺せんせーそうなら早く言ってくれればいいんスよ~」

カルマの挑発に郷が便乗すると他の生徒たちもその流れに乗った。

「そうだよ殺せんせー」「殺されたくないから逃げますって言えばいいのにな~」

 

クラス中からの言葉に殺せんせーは顔を真っ赤にしてプルプルと震えた。

「にゅや~~!!怖くなんてありませんし逃げたりもしませんよ!!こうなったら次の期末テストでリベンジです!次こそ勝ちますよ~~!」

 

散々な結果に終わった中間テストであったが、このテストでE組は一歩暗殺者として成長する事が出来たのかもしれない。

 

 

「あっちなみに学年最下位だった郷君は今日から一週間特別補習をしますから」

「ガッテム!!」

 

 

 

 




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旅行の楽しみは準備から

もう3日ですが・・・明けましておめでとうございます!
今年のうちに完結を目指して頑張りますのでよろしくお願いします。




中間テストから1週間が経ち特別補習から解放させた郷は、放課後裏山の森の中で速水と千葉と共に射撃の訓練をしていた。

 

「・・・やっぱり動く的だと上手く当たらないな・・・」

千葉は自身の的役のシグナルマガールを見ながら呟いた。

 

「そりゃあお前らまだ訓練初めて2ヶ月だろ?それだけ出来れば上出来だろ〜が」

そう言う郷の撃つ弾は動き回るシグナルマッハに正確に命中していく。

 

「・・・なんか嫌味にしか聞こえないんだけど」

速水は郷を睨みつつ撃つがその弾は木々の間を掛けるシグナルカクサーンに躱されていく。

 

「あのな~俺はもう何年も実戦で鍛えてきたんだぞこれで負けてたらこっちが凹むって~の」

 

 

 

「そう言えば郷、もう班は決めたのか?」

暫く訓練を続けた後、近くの石に座り休憩していると千葉が言った。

「班?・・・何の?」

何のことかわからない郷はペットボトルの水を飲みながら聞くと速水が呆れたようにため息を吐いた。

「はぁ、忘れたの?今度の修学旅行の班よ」

「あ~~そう言えばそんな話あったな~」

「決まってないんなら俺たちの班に入んないか?」

「そうだな・・・じゃあ宜しく」

 

 

 

 

翌日、午後の授業では各班ごとに修学旅行の計画を組んでいた。

「全く、中間テストも終わったばかりだと言うのに修学旅行だなんて、先生乗り気がしませんねぇ~」

「そうっスよね~こっちは人類の未来を掛けて戦っているのにの楽しめるかって~の」

と言いつつも殺せんせーの後ろには大量の荷物が詰められたリュックがあり、郷のポケットからは京都のパンフレットがはみ出ていた。

 

「「「「どっちも乗り気じゃねーか!!!」」」」

「良いだろ別に!こっちとら初めての旅行なんだよ!」

「先生も実は皆さん一緒に行く旅行が楽しみで仕方ありません」

 

「たく、皆ガキね~私なんて世界中のセレブにリゾートに連れてってもらっているから旅行の一つや二つ、行く気にならないわね~」

「じゃあ、ビッチ先生は留守番しててくれよ」

「花壇の水やりよろしくね~」

 

楽しそうに旅行の計画を練っている生徒たちの姿に段々とイリーナも我慢できなくなり。

「何よあんた等ばっかり楽しんで!私も混ぜなさいよ!!」

「うわ!暴れんなよビッチ先生!」

「ちょっ、郷君抑えてよ!」

「え~~めんどくせぇな~」

「良いから止めなさい!」

 

 

暴れるイリーナと押さえる生徒たちを見ながらクリムは楽しそうに笑った。

『ははは、みんな楽しそうだね』

「ええ、このメンバーでの修学旅行は一生で一度しかありません。だからこそこの旅行は一生の思い出にするべきです。私たちも皆さんが心からこの旅行を楽しめるように頑張りましょう」

『Yes、その通りだね殺せんせー』

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「だっ大丈夫よね?何所も変じゃないわよね?」

日曜日の朝、街を歩く速水は足を止め近くの店のガラスでその日5度目の身だしなみのチェックをした。

寝ぐせなんかは無いか?服にシワは無いか?隅々までチェックをし再び駅前の広場に向かい歩く出した。

「何でこんなに緊張しなくちゃならないのよ・・」

速水は昨日の夜の事を思い出しながら呟いた。

 

 

昨晩、眠る前に予習でもしようかと机に向かっていると不意に枕元に置いてあったスマホがなった。見ると千葉からの電話だった。

「どうしたのよ千葉?」

『悪い速水、明日郷と買い物に行く約束をしてたんだけど急に用事が出来てな。代わりに行ってくれないか?』

「え?」

チラリとカレンダーを見るが明日は特に予定もなく、自分も買い忘れていたものがあるのを思い出した。

 

「良いわよ」

『悪いな。郷にはメールで伝えておくから頼むな』

 

電話が切れスマホをベットに置いた時に気付いた。

郷と二人で買い物に行く?それは客観的に見ればデートなのではないか?

そう考えた瞬間、顔が熱くなっていくのを感じた。

何を着て行けばいいのか?かわいい服は在ったか?クローゼットを漁り手ごろな服を見つけては鏡の前に立った。

そんな事をしている間にすっかり眠るのが遅くなってしまった。

 

 

(よく考えれば緊張する必要なんてないのよね。ただクラスメートと修学旅行の準備をするだけなんだから・・)

そう思えば少しは気が楽になった。

 

 

広場に着くと人だかりが出来ていた。速水が覗いてみると警察官に土下座している郷がいた。

「ちょっ!何やってんのよ!!」

思わず速水は叫んでしまうと周りの視線が一斉に向いた。

 

警察官によると、何でもカメラであたりを撮りまくっていた所を職務質問を受けてカメラを確認したところ女性の脚が撮られていたらしい。

郷はマンホールや花を撮っていたと言っているけど信用してもらえなかったらしい。

結局、速水が郷はずっと海外に住んでいて日本の全部が珍しく所構わず写真を取る癖があるって言うと一応納得してもらえた。

 

「いや〜助かったよ。サンキュー速水」

「もう、これから少しは自重しなさいよね」

その後、2人はショッピングモールに向かった。

歩きながらも郷は周りの写真を取っている。

 

「にしても・・・」

郷が速水の方をじーと見だした。速水はひょっとしてどこか変なところでもあったのか?と少し不安になった。

「なっ何よ///」

「いや、速水の私服って初めて見たけど意外と・・・可愛いな」

「な///」

「一枚撮って良いか?はいチーズ」カシャ

「〜〜〜////は、速く行くわよ!///」

恥ずかしさから歩く速度が速くなった速水を郷は笑いながら追い掛けた。

 

 

ショッピングモールに着くとまず、服を買いにいった。

聞くと郷は私服をほとんど持っていないらしいからこの機会に買う事にした。

「これなんて良いんじゃないの?」

「お、良いかもな。じゃあこれにスッかな」

私が渡した服を見ると郷は迷うこと無くレジに持っていく

 

「少しは自分でも考えなさいよ」

郷はさっきから私が選んだ物ばかり買って自分で選ぼうとしない

「いや俺この時代の服のセンスって良く分かんね〜しさ。速水に任せるよ」

結局服はほとんど私が選んだ。

 

 

 

 

 

今日私は今度の修学旅行のための買い物に来ていた。

本当はひなたやメグと行く予定だったんだけど二人とも急に予定が入ったらしくて一人できたんだけど…

「ねえお嬢ちゃん俺達とカラオケでも行かない?」

いきなり絡んできた高校生ぐらいの人達に人気の無い場所に連れ出されちゃった。

「いえ、今日はこれから用事があるので結構です」

横を抜けていこうとすると腕を思いっきり掴まれた。

 

「きゃあ!?」

腕に痛みを感じたと同時に力一杯引き寄せられた。

「いいから大人しく来ればいいんだよ!」

「楽しませてあげるからさ〜」

高校生達が嫌らしい顔で近付いてくる。

イヤ・・・誰か助けて・・

 

「彼女嫌がってますよ。やめてあげたらどうですか?」

突然背後から声がした。

振り返るとこの時期にしたら厚い黒いコートを着てフードを被った男の子が居た

年は私と同じくらいかな?

 

「何だテメェ?邪魔すんなよ!」

高校生の一人が男の子の胸ぐらを掴みながら拳を振るう

私は思わず目をつぶって顔を背けた

 

「い・・・イテテテ!!」

でも聞こえてきたのは男の子の悲鳴じゃなくて高校生の悲痛な声と他の高校生達の動揺だった。

 

恐る恐る目を開けると男の子が高校生の拳を掴んで捻っていた。

「野郎ぅ放しやがれ!」

他の高校生たちも殴り掛かっていくけど男の子は捻っていた高校生を押して他の高校生にぶつけると怯んだ隙に腕を掴んで次々と壁に投げつけた。

 

「おっ覚えてろ~~!」

なんだか古臭いセリフを残して高校生たちは逃げて行った。

 

「あの、ありがとうございます!」

私は男の子に頭を下げてお礼を言った。

「いえ、当然の事をしたまでですよ。では僕はこれで」

「名前!聞いても良いですか?」

自分でも何でこんなことを聞いたのか解らなかったけど、気づいたら口が動いていた。

 

「名前ですか・・・アレンです」

「私、矢田桃花です!あの・・本当にありがとうございました!」

アレン君は最後に優しく笑って歩いて行った。

 

「アレン君かぁ~~・・・・また会えるかな?・・・////なっ何言ってるんだろ私?///」

また絡まれたら嫌だし早く帰ろ///

 

 

 

 

 

アレンはショッピングモールの3階から下の階を見ていた。其処には、ペットショップで猫を満面の笑みで頬擦りしている速水と気付かれないようにこっそりとその光景を写真に撮っている郷がいた。

「ちょっ!何撮ってんのよ///!!」

「良いじゃんかよ~減るもんじゃね~しよ」

「そういう問題じゃないわよ!消しなさいよ////!」

「だが断る!」

挑発するようにカメラを頭上に上げながら逃げる郷を真っ赤な顔で速水は追い掛ける。二人の表情は本当に幸せそうだった。

 

「・・仮面ライダー・・・」

アレンは手すりを掴む右手に力が籠る。鉄で出来ている筈の手すりは小さな悲鳴を上げながら握り潰されていく。

 

 

 

 

「いや~今日は助かったよ」

「良いわよ私も楽しかったし」

夕方になり買い物を終えた二人は帰路に着いていた。

ふと郷の視界に小さな雑貨屋が入った。

 

「ちょっと待っててくれないか?」

「え?」

速水を待たして雑貨屋に入った郷は暫くして小さな紙袋を持って出てきた。

「ほら、コレ」

手に持った紙袋を速水に差し出した。少し困惑しながらも受け取った速水が中身を見るとRのマークが付いたヘアゴムが2個入っていた。

「結構似合いそうだと思ってな。ちなみにRは凜香とライダーのRな。」

「あ・・ありがとう///」

 

駅に着き速水と別れた郷は笑顔で手を振りながら歩いていく速水をカメラに収めた。

その笑顔を見ながら郷は思った。『この笑顔を守っていきたい』と。

 

 




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修学旅行1日目

今回から3回に分けて修学旅行編をお送りします。
自分も中学の時の修学旅行はとても楽しかったです。
でも、自分の班は映画村に行かなかったことが今でも心残りですね。


修学旅行当日、椚ヶ丘駅には既に多くの生徒が集まっていた。

その中には当然E組の生徒もいるがやはり周りからは見下されたような視線が向けられている。

 

「俺たちは自由車なのに・・・」

「他はグリーン車か〜」

菅野と中村が愚痴る中、E組以外の生徒たちはまるで見せ付けるように乗車していく。

 

「うちは学費は成績優秀者に優先されるからな〜」「おやおや〜君たちは貧乏臭いね〜」

何時かの2人の生徒が渚に絡んでいるとまるでセレブのような恰好をしたイリーナがやって来た。

「ごきげんよう。坊やたち」

そのセレブオーラにE組だけでなく本校舎の生徒たちも圧倒されているなか、烏間がこめかみに青筋を浮かべていた。

「何だその格好は?とても引率の教師の格好ではないだろう」

「フフ、プロの殺し屋にとってはファッションセンスも大事なスキルの一つよ。ターゲットに近づく際、ダサい恰好じゃ近づけないもの。それをガキどもに教えてやるのよ」

得意げに語るイリーナであるがとても教師と思えないその姿その容姿と相成って明らかに浮いていた。

 

「今のお前は殺し屋としてじゃない。あくまでも教師として行くんだぞ。さっさと着替えろ」

「固いこと言わないでよ。この服何百万もするのよ~」

だが、烏間の青筋はさらに増えていく

「着替えろ。いいな」

烏間から放たれる威圧感に流石にイリーナもやばいと感じた。

「は・・はい」

 

 

車内でジャージに着替えさせられたイリーナを生徒たちが苦笑していると、発車を告げるアナウンスが鳴った。

だがそこにはまだ、3名の姿が無かった。

 

 

 

「やっべ~~!!クリム!あと何分だ!?」

『あと2分・・いや!1分だ!』

数分前、郷はライドマッハーで駅に向かっていた。背中のバックに入っているクリムから告げられた残り時間に焦りながらも流石に法定速度を超える訳にはいかずもたついていた。

 

『だから昨日は早く眠る様に言ったんだ!』

「しゃーねーだろ!楽しみで眠れなかったんだから!」

言い争いながらも駅に着きホームに走る。しかし、ホームに飛び込んだ郷を待っていたのは誰も居ない静かなホームだった。

 

「あ・・ああ・・あ~~~~」

『・・・どうやらもう行ってしまったようだね・・』

崩れ落ち膝を付いた郷はそれでも何とか追いつけないか考えた。

 

「い・・今からライドマッハーで追い掛ければ名古屋あたりで追いつくよな・・・」

『ばっ馬鹿を言うな!そんなことで全速力で走ることは許さんぞ!大人しく次の車両で行くべきだ』

「ふざけんなよ!俺はな~車内でみんなでやる為に徹夜でUNOの練習したんだぞ!」

『そんなことで寝坊したのか君は!?』

するとそこに大きな影が現れた。

「おや?郷君じゃありませんか」

振り向くとそこには何故か殺せんせーが居た。

 

「殺せんせー!?何でここに?」

「いえ、駅中スイーツを買っていたら乗り遅れてしまいましてね~~」

見ると殺せんせーの背後には以前教室で見た大きな荷物の他に、大量の紙袋があった。

「これから追い掛けようとしていたのですが・・・一緒に行きますか?」

「『え?・・』」

ニヤリと笑う殺せんせーに2人は何か也な予感がした。

 

 

 

 

「はぁ・・・」

一方、車内では速水が1人ため息を吐いていた。その髪型は以前までとは違い郷に貰ったヘアゴムで二つ結びになっていた。本当はゴムをくれた郷に感想を聞きたかったのだが当の本人が乗っておらず落ち込んでいた。

 

「うわぁ!?」

すると後ろの席から渚の驚いた声が聞こえ他の生徒と一緒に振り返ると渚の席の窓から・・・

 

「にゅあぁぁぁ~~~!!」「だあああぁぁぁ~~~!!」『うおおおおぉぉぉ~~~!!』

車体にしがみついている殺せんせーと車体と殺せんせーの間に挟まるようにしがみついている郷、更に郷にたすき駈けのように巻き付いているクリムが居た。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

次の駅で乗車した3人であったが流石に時速200キロ以上に長時間掴まっていて郷はほぼ虫の息だった。

「馬鹿じゃないの?」

呆れた速水が言い放つがそこに中村がニヤニヤしながら近づいた。

「そんな事言って~本当は郷が来て嬉しいんでしょ?はやみ~ん」

「///そっ!そんな事無いわよ!どうせ向こうで合流できたんだし・・・」

「まあ~はやみんが誰を好きになるかははやみん次第だけど「だからそんなんじゃない!」しっかり釘指しておかないといけないよ。あれ」

速水は中村が指さす先を見ると・・・

「ところで岡島、下調べは万全か?」

「ああ抜かりなねぇよ。これを見てくれ」

回復した郷が岡島と何か図面を広げていた。

「?暗殺の計画でも立ててるんじゃないの?」

「どうかね~良く見なよ」

 

「AルートとBルートから行けば比較的安全だな・・」

「でもよ~Cルートの方がターゲットに近づけるだろ?」

「いや、岡島の能力じゃこのルートは無理だ」

「くっ!俺はこの桃源郷に行けないのか・・・」

「心配するな。俺がお前の分まで桃源郷を堪能してきてやるよ」

「・・・何やってるんだ2人とも?」

隣で見ていた千葉が図面を手に取るとそれは今回泊まる旅館のしかも風呂場付近の図面だった。

 

「何って決まってるだろ。今回の旅行のメインイベント・・・」

「桃源郷(女子の風呂)を見る計画だろ!」

郷と岡島は拳を握り力強く宣言した。その時2人は気付いていなかった。背後からいや、四方から向けられる殺意の視線に。

 

「安心しろ千葉、何ならお前も連れてってやるよ」

「は?」

郷は察した様に千葉の肩に手を置くが千葉は何言ってるんだコイツといった顔をした。

 

「見たいんだろ?お前も、同志になるんならお前にも俺がCルートから見た桃源郷の景色の写真を見せてやる「死ね!」じょうがっ!?」

突然後頭部に衝撃を受け郷は珍妙な声を上げ倒れた。

「ご・・ごーーう!?」

岡島が駆け寄ろうとするがその首に対殺せんせーナイフが当てられ動けなかった。

気付くと周囲には銃を構えている速水を筆頭に女子たちに完全に囲まれていた。どうやら先程郷を襲ったのは速水の撃ったBB弾だったらしい。

 

「・・・何か言い残すことは?」

速水の冷たい言葉に頭を押さえながら起き上がった郷は清々しい笑顔で言った。

「フッ・・・欲望に生きてこその人生だ」

次の瞬間女子たちは一斉に2人に襲い掛かり車両には2人の悲鳴が響いた。

 

 

「はぁ・・何をやってるんだ・・」

烏間が呆れているがその向かいの席に置かれたクリムは笑っていた。

『ははは、良いじゃないかせっかくの旅行だ。多少羽目を外すぐらい。まぁ流石に覗きはさせんがね』

「・・多忙な旅行になりそうだ」

烏間がチラリと横を見れば買ってきたスイーツをものすごい勢いで食べている殺せんせーとビールを飲んでいるイリーナが居た。

「教師も教師でだ・・・はぁ」

だらしない同僚の姿に烏間はまた溜息を吐いた。

 

 

 

「なぁ、これ見ろよ。」

杉野がいじっていたスマホを渚に見せた。それは数日前から京都で謎の崩落事故が数件起こっているとのニュースだった。

「せっかく今から行くのになんか不安になるな~」

「うん、原因は一切不明らしいね」

「・・・・」

その会話を死体と化した岡島の下敷きになりながら郷は聞いていたが・・・

パンッ

「ギャッ!」

速水の撃った弾で止めを刺された。

 

 

―――――――――――――

 

京都に着いたE組はそのまま今回泊まる旅館に来た。

A~D組までは市内の高級ホテルであるがE組は市内中央から離れた古い旅館に泊まることになっていた。

 

「にゅあ~~・・・」

ロビーでは殺せんせーが青い顔でソファーに座っていた。どうやら新幹線に酔ったらしい。

「大丈夫?殺せんせー」

岡野が心配するように声を掛けながらナイフを振り下ろすが最小限の動きで躱される。

「心配ありません。先生はこれから忘れ物を取りに一旦戻ります。枕が変わると眠れないので」

「「「「あれだけ持ってきて忘れ物かよ!?」」」」

 

 

 

郷は1人外で旅館の周囲を撮っているとそこに1台のシフトカーがやって来た。

「お、来たな。待ってたぞキャブ」

シフトカー【ディメンションキャブ】は郷の掌に乗った。

郷はゼンリンシューターにキャブを装填し、自身に銃口を当て引き金を引いた。すると脳内にキャブの記憶データが流れ込む。その中にはここ数日起きている崩落事故の記憶もあった。

「・・・な~る。やっぱりな・・」

 

 

 

 

 




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修学旅行2日目

なんか調子が良かったのでもう1話投稿します。
今週中には修学旅行編を終わらせる予定です。


修学旅行2日目、今日は各班に分かれ行動しそれぞれが計画した暗殺ポイントに殺せんせーを誘導する。

今回は国が手配したプロの狙撃手が各ポイントで殺せんせーを狙うことになっていた。

 

「映画村・・・来た~~~!!」

郷たち2班は三村の推薦もあり映画村に来た。

着くなり郷は拳を突き上げ高らかに叫んだが・・・

「うっさい!」

速水から拳骨を食らった。

 

 

中に入った郷たちはさっそく衣装貸し出しの場に行き各々扮装をした。

「俺と言ったら速さ、速さと言ったら・・・これだろ!」

郷は忍者の恰好をしノリノリで出てきた。

「俺は・・・これでいいのか?」

新選組の恰好で出てきた千葉は可笑しくないかと隅々までチェックした。

「流石映画村、良い出来だな~」

三村はお奉行の恰好でその出来の良さに感心しており

「なんか・・・俺だけ地味じゃね?」

岡島は町人の恰好だが妙にマッチしていた。

 

「いや、良いんじゃね?THEエロ町人て感じだぞ」

「嬉しくね~よ!」

 

「いや~お待たせ~~!」

そこに中村を先頭に女子たちもやって来た。

「「おお~~!」」

郷と岡島は女子たちの姿に思わず声を出し他の2人も声こそ出さないが見惚れていた。

 

「どうどう~中々似合ってるでしょ~」

お姫様姿の中村は見せびらかす様にクルリとその場で回った。

「いや~本当は漫画のキャラクターのが良かったんだけどな~」

不破は町娘風の恰好で少々不満気だった。

 

「おっ!速水もそれにしたんだ」

郷は2人の後ろにいた速水を見た。

「////たっ偶々よ。別にあんたに合わせたわけじゃないわよ//」

速水の恰好は郷とペアになるくノ一だった。

 

 

7人は扮装したまま園内を歩いた。

時折女子たちが男性客から写真を要求されるがたまに千葉も女性客に一緒に撮って欲しいと頼まれていた。磯貝や前原に隠れがちだが千葉も普段隠れている目元は中々のイケメンだ。

「くそっ隠れイケメン死ね」

「ははは・・」

岡島は呪いの言葉を呟き千葉は苦笑するしかなかった。

 

「はい、撮るっスよ~」

郷はカメラマン役を買って出ているが実は嫌らしい眼で女子を見ていた男性客に対しては密かにカメラから女子を外していた。

そうとは知らずに嬉しそうに去っていく男性客を見送ると後ろから服を引っ張られているのに気づき振り返ると速水が顔を赤くし何か言いづらそうにしていた。

 

「どうした?」

「いっ一緒に撮らない?///」

そう言って速水は郷のカメラを撮り千葉に渡すと手を握り横に並んだ。

 

「ほら、千葉早く撮って!///」

「お・・おう」

千葉がシャッターを切ると速水はすぐに手を放し中村たちの方に行った。

「こっこれで良いんでしょ///」

「おお~頑張った頑張った」「漫画ならいい流れだよ~」

赤いままの速水を他の2人が何やら褒めていると郷は背後からの殺気に気付いた。

「お前もかこのリア充が~!」

振り返ると岡島がものすごい形相で跳び蹴りを繰り出していた。

「ふん!」「ごふっ!?」

横に動き躱すとすれ違いざまに腹に肘を叩き込んだ。

「な~にしてんだよ?」「ぐうっ・・・おおお~~~」

悶絶する岡島する岡島の呆れていると1人の外国人が近づいて来た。

 

「スイマセ~ン。シャシンイイデスカ~?」

片言の日本語でしゃべるその男はいかにも初めて日本に来たといった感じだった。

「OK~OK~」

「お~Thank You」、デハコレオネガイシマスネ」

中村が承諾すると男は自分のカメラを近くにいた三村に渡した。

 

「デハ、オネガイシマ~ス」

女子たちと並んだ男はウキウキとピースをした。

「じゃあ撮りますよ」

三村がシャッターを切ろうとすると郷が待ったをかけた。

「俺がやるよ。貸してくれ」

「ああ・・」

カメラを受け取った郷はそのままカメラを向けシャッターを切った。

 

「アリガトウゴザイマシタ~」

大きく手を振りながら歩いていく男を見送ると丁度殺せんせーがやって来た。

「いや~お待たせしました。おや?皆さん良く似合ってますね」

2班の恰好を見た殺せんせーはカメラを取り出すと色々な角度から写真を撮った。

「おお~郷君!速水さん!忍者カップルの写真を是非!」

「カップル!?///」

殺せんせーのカップルと言う単語に速水はまた赤くなるが郷は心配無用とばかりに笑った。

「それならもう撮ったからノープロブレムスよ。殺せんせー」

「そうでしたか。あとで焼き増ししてくださいね」

「ガレット」

 

 

着替えた2班は殺せんせーと一緒に殺陣を見学していた。

「いや~生で見るのは初めてですがなかなか迫力がありますね~」

興奮して殺陣を見ている殺せんせーと違い2班は緊張しながら殺せんせーを見ていた。

2班の計画はこの殺陣で殺せんせーの気を逸らしスナイパーに狙わせるものだった。

中村がスナイパーの潜んでる先をチラリと見て合図し再び殺せんせーを見るが・・・

 

そこに殺せんせーは居なかった。

「「「「は?」」」」

周囲を探すと殺せんせーは侍のコスプレをし殺陣に参加していた。

「「「「何やってんだ!?あんたーー!」」」」

 

素早くしかも一般人の役者に紛れている状況ではいくらプロのスナイパーでも無理だ。そう判断した郷はどうしようかと困惑する他のメンバーを尻目に殺陣の見学に集中することにした。

 

 




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修学旅行・夜

予定より一日遅れで投稿します。

今日のエグゼイドを見たらOPで貴利矢が消えていて悲しかった。
本編ではエグゼイドが爆走バイクのガシェットで呼び出したレーザーレベル2を呼び出して戦ったしゲンムの貴利矢の形見って言葉でやっぱり貴利矢は死んじゃったんだなと改めて思い知らされました。


修学旅行2日目の夜、郷と岡島はロビーの隅で神妙な顔をしていた。

「・・・行くのか。郷・・」

「ああ・・・新幹線の時の図面はあくまでも囮、本命は・・・これだ!」

郷は小さなペンライトのような機械を取り出すとスイッチを押した。すると旅館内の詳細な情報が3Dマップで現れた。

「おお~!スゲ~!」

岡島はその技術に驚きつつもマップを入念に見る。

「でも、向こうも警戒している筈だろ?危険じゃないか」

「危険?はっ大好物だね。じゃあ行くぞ」

「ああ、俺たちは・・」

「「夢の桃源郷に俺たちは行く!!」」

2人は勢い良く立ち上がり拳を突き上げた。

だが・・・・2人は気付かなかった。自分たちがすでに獅子の尾を踏んでいた事に・・・

 

「どこに行くって?」

背後から聞こえた氷のように冷たい声に郷は拳を上げたまま固まった。そして体面にいる岡島も顔から笑みが消え、代わりに大量の汗と絶望の顔をした。

 

「え~~・・・と・・もしかしなくても・・いる?いるのか~~そうか・・・三十六計逃げるに如かず!」

岡島の顔がブリキのおもちゃの様に縦に何度も振られるのを見た郷はダッシュでその場から離脱しようとした。

 

「あべしっ!?」

だが突然足に巻かれたワイヤーによりその思惑は無残にも砕かれた。

「レッ、レッカー!?お前ぇ!」

郷を妨害したレッカーはそのまま郷を吊し上げた。

『郷、流石に置いたが過ぎるね』

そこにクリムが女子たちを引き連れやって来た。各々が武器を手にし郷と恐怖のあまり動けない岡島に迫る。

「「あ・・ああ~~~!!」」

「「「「「死ね~~!!変態どもが~~~!!!」」」」

「「ギィイッヤ~~~~~!!!」」

 

 

 

「あ~~ひどい目にあった・・大丈夫か~?岡島」

「お・・おう、何とかな・・・・」

30分後、女子たちにボコボコにされた後クリムと烏間から説教を受けた2人は身も心もボロボロになりながらも何とか生還する事が出来た。

部屋に向かっていると風呂場の入り口に渚にカルマ、中村と不破が居た。

 

「よう、どうしたんだ?珍しい組み合わせで」

ボロボロの2人を見て一瞬動揺した渚であったが中村たちが向けた冷たい視線で大体の事を理解した。

 

「あれよあれ」

中村が指さしたのは無作為に置かれた大きな服だった。

そしてその先の浴室の明かりは付いており中からは鼻歌が聞こえる。

 

「脱ぎ捨てられた服に聞こえる鼻歌、誰が入っているかもう解るわね。覗くわよ」

「おい!俺たちをボコっておいて自分らも覗くのかよ!?」

「そうだそうだ!不公平だぞ!!これは俺たちの役目だぞ!!」

「何言ってるのよ。殺せんせーの服の中身を知る。これは今後の暗殺に役立つ情報よ。ほら行くわよ」

「まさかこの世にこんな色気のない覗きがあるなんて・・・」

「何でタコの行水なんて見ないといけないんだよ・・・」

 

中村に引き連れられる形で脱衣所に忍び込み浴場の扉に手を掛けた。

「行くわよ・・・」

「「「「ごくっ」」」」

緊張しながらも振り返った中村に頷くと勢い良く扉を開けた。

 

 

「にゅ~や~~~」

「「「「って、女子かよ!!?」」」」

そこに居たのはまるで乙女の様に泡だらけの湯船で体を洗う殺せんせーだった。

「にゅ?にゅあ~~~!!?なっ何ですか皆さん!?人の入浴中に!」

「殺せんせー・・・ここ入浴剤禁止だよね?」

「心配いりませんよ渚君、これは先生の粘液ですから。体の汚れを隅々まで絡め取りますよ~」

「便利だな相変わらず・・」カシャ

「にゅや!?郷君勝手に撮らないでください!」

女性の様に身体を隠す殺せんせーだがはっきり言って色気は皆無だ。

 

「まあ良いわ。出口は私たちが押さえてるからね。暗殺は無理でも裸は見せてもらうわ」

逃がすまいとナイフを構える中村だが殺せんせーは不敵に笑う。

「甘いですね」

バサァと殺せんせーが立ち上がると湯船のお湯も固体になり一緒に持ち上がる。それはまるで煮凝りの様だった。郷達が呆然としている間に殺せんせーは窓から逃げて行った。

 

 

 

「あ~あ、殺せんせーの裸とかいいネタだと思ったんだけど。結局撮れたのは入浴シーンだけかよ・・」

「まぁ良いんじゃない?今度その写真をネタに飯でも奢らせればさ」

「・・・ナイスアイディア」

売店で飲み物を買ってきた郷とカルマが部屋に入ると男子たちが一か所に集まり1枚の紙を見ていた。

「何やってんの?」

「おっ二人とも丁度良い。今みんなでクラスで気になる女子のアンケート取ってるんだけど2人は誰かいないか?」

磯貝が見せた紙には女子たちの名前と似顔絵それと正の字で集計結果が書かれていた。ちなみに一番はクラスのマドンナ神崎だった。

 

「ん~俺は奥田さんかな?」

カルマの挙げた名前にみんな以外そうな顔をした。

「だって彼女下剤とかいろいろな薬作れそうじゃん。そうなら俺の悪戯の幅も広がるし」

「絶対組ませたくないカップルだな・・」

怪しく笑うカルマの頭と尻に悪魔の耳と尻尾が見えた。

 

「じゃ、じゃあ郷はどうだ?」

気を取り直す様に磯貝は郷に聞くと他もみんな郷を興味ありげに見た。

「俺は・・・ん~~・・速水かな?」

「「「「ああ~~~やっぱり」」」」

郷の回答にほぼ全員が納得したような顔をした。実際、郷が1番接している女子は速水だった。互いに射撃を主としており訓練を共にしていることが多くまた、郷がこの時代に来て最初に出会ったのも速水である。

 

「じゃあみんな、この結果は男子だけの秘密だぞ。バレたら嫌な奴も居るだろうしな」

「ん?おい磯貝~後ろ・・」

郷が指さした先を見ると殺せんせーがピンクの顔でニヤニヤしながら襖の間から覗いていた。そしてアンケート結果をメモすると風のように去っていった。

 

「「「「・・・・・・」」」」

「逃げたぞーーー!!」「追え~~~!!」「と言うより殺せ~~~~!!!」

それぞれの武器を持ち殺せんせーを追い掛ける男子を見送った郷は真面目な顔つきでドライバーを取り出した。

「さてと、行くか」

 

 

 

その頃、女子に部屋にイリーナが就寝時間を伝えに来た。

「ガキども~そろそろ寝る時間よ~~」

部屋に入ると男子同様に女子たちも一か所に集まり紙を見ていた。イリーナはそっと近づき紙を取った。

「ふ~ん・・気になる男子ランキングね~~」

紙には数人の男子と何故か烏間の名前が書かれていた。

「てっ何で烏間が入ってるのよ?」

「だって烏間先生カッコいいもん」

にっこりと笑って言ったという事は烏間に居れた1人は倉橋なのだろう。

「烏間以外だと・・・やっぱり磯貝が1番ね。あとは・・・・へ~~郷にも入ってるじゃない。誰かしらね~~」

イリーナが探るように見渡すとある1名がサッと視線を逸らしそれを見たイリーナは小さく笑った。

 

「駄目だよ~ビッチ先生検索しちゃ」

「そ~そ~みんな秘密なんだからね。そんな事よりさ~ビッチ先生の恋愛話聞かせてよ~」

やはり年頃の女子は人の恋愛話が好きらしいみんなが期待するようにイリーナを見る。

 

「良いわよ。ガキどもにはちょ~と刺激が強いかもしれないけれどね。あれは・・・17の時だったわ・・・」

昔話を始めようとして時、女子の中に1匹のタコが紛れているのに気付いた。

「そこ~!何女子の花園に入り込んでるのよ!」

「にゅ?いや~先生もイリーナ先生の恋愛話に興味がありましてね~」

ニヤニヤとピンクの顔で笑う殺せんせーだったが次の矢田の言葉で立場は逆転することになる。

 

「そういう殺せんせーはどうなの?何か恋バナとか無いの?」

「そ~だよ。人の事ばかりさ~」

「・・・・・」シュバッ

「逃げたわ!捕まえて吐かせて殺しなさい!」

旅館中で男子と女子による殺せんせー捕獲作戦が始まった。

 

「ん?あれって、郷?」

速水はみんなと別れ殺せんせーを探していると旅館の外を歩く郷を見つけた。もうとっくに外出時間は過ぎているのに何かあったのか?そう思い速水は追い掛けた。

 

 

 

E組の泊まる旅館から100mほど離れた街道を1人歩く影があった。

「さて、力の実験は終わった。そろそろ動くか」

影が旅館に向かい歩を進めようとするとその足元に一発の光弾が飛んで来た。

 

「おいおい勘弁してくれよ。みんな一生に一度の思い出を作ってるんだからな」

影の前に立ちはだかるように郷がゼンリンシューターを構え現れた。

「昼間は様子見のつもりだったのか?ロイミュード」

「ふっヨクワカリマシタネ。カメンライダー」

影の正体は昼間写真撮影を頼んできた外国人だった。次の瞬間にはバット型の033になり構えた。

 

「ここじゃみんなに気付かれるかもしれないしな・・場所を変えさせてもらうぞ」

《シグナルバイク!ライダー!》「レッツ変身!」《マッハ!》

マッハに変身した郷は走りながらブーストイグナイターを押した。

《ズーット!マッハ!》

加速したマッハは033にタックルを食らわしその場から消えた。

「郷!?」

その様子を陰から見ていた速水は辺りを見渡すが既にマッハも033もどこにも居なかった。

 

 

「ぐうっ!」

「ここなら良いかな?さぁってと・・・追跡!撲滅!いずれも~~・・マッハ!仮面ライダ~~~マッハァ!」

旅館から数キロ離れた寺の屋根の上でマッハと033は対峙していた。月の光が2人を照らしさながら舞台のワンシーンの様だった。

先に動いたのは033だった。指からの光弾を撃つが、加速したマッハに次々と躱されていく。

接近したマッハはゼンリンシューターを振り払う。打撃を受けた033の身体から火花が散った。

すぐに反撃に移ろうとする033だったがその場には既にマッハは居なかった。

「何っ?」「おっせーよ!」

 

背後に回り込んでいたマッハは透かさず攻撃する。

ゼンリンシューターを上に投げパンチとキックを流れるように浴びせる。

反撃に放ったパンチを掴むとそのまま投げ飛ばすと同時に蹴りこみ遠くに飛ばした。

丁度落ちてきたゼンリンシューターをキャッチすると余裕を表す様に掌で回すガンスピンをした。

 

「おいおい、こんなもんかよ?」

「くっ舐めるなよ。今私の進化した力を見せてやる!」

033は胸にカメラのレンズの様なものが付いた姿に変えた。

「私は、スクーパーロイミュード」

スクーパーは胸のレンズでマッハを写そうとした。とっさに躱したマッハが見たのはスクーパーが写真に触れる事でそこに写された五重塔が突如崩壊するところだった。

「へぇ〜面白い能力だな。だけど・・・」

再び写真を撮ろうとするスクーパーのレンズから逃れるように縦横無尽に動くマッハにスクーパーも照準が合わせられなかった。

 

「くっちょこまかと・・」

「撮られなきゃどうってことね〜よ」

打って離れ打っては離れのヒットアンドアウェイで攻め続ける。

 

「らあぁ!」

強力な一撃がスクーパーのレンズを破壊した。

苦しみ悶えるスクーパーにマッハはシグナルマッハを装填したゼンリンシューターを構える。

《ヒッサツ!フルスロットル!》

「じゃ〜な!」

《シューター!》

銃口から放たれたバイク状のエネルギーがスクーパーを貫きコアごと爆発した。

 

「ふ〜〜良い画だったな」

 

マッハが一息ついたときだった。

1発光弾が背後から襲い掛かった。

「ぐあぁ!?な、何だ!」

振り返ると寺の屋根の上部に1つの影がこちらに銃口を向けている。

 

「何だお前は?」

「僕は魔進チェイサー、ロイミュードを守る番人にして仮面ライダーを殺す死神だ」

月の明かりが当たり魔進チェイサーの姿が見えた。紫のボディにまるでエンジンの様な仮面を付けている。どこか仮面ライダーに似た姿だった。

「よくも僕の仲間たちを何人も・・・仮面ライダーマッハ、ここが墓場です」《ガン!》

チェイサーは自身の武器ブレイクガンナーを向け引き金を引く。放たれた光弾を躱したマッハも透かさずゼンリンシューターを撃つ、2人の光弾は相殺し合いその衝撃で屋根は寺ごと揺れ続ける。

マッハは屋根を走り回り攪乱しようとするがチェイサーは動じる事無くその場から撃ち続ける。先程のスクーパーとの連戦で疲労がたまって来たマッハの動きは次第に鈍くなっていく

 

《ブレイク!》「はっ!」

チェイサーはマッハの動きが止まった一瞬を見逃さず接近した。ブレイクガンナーによる打撃マッハを襲った

「がっ!くっそ!」《シフトカー!タイヤ交換!シノービ!》

シャドーを装填したマッハは5人に分身しチェイサーを囲む。

「無駄です!」《チューン!チェイサー!コブラ!》

チェイサーはブレイクガンナーに銀色のコブラバイラルコアを装填すると鞭状の武器【テイルウィッパー】を装備した。

振り回された鞭にマッハの分身達は次々と倒され消滅していく。

そして残された最後の1対も攻撃を受けた瞬間他の分身の様に消滅した。

「なに!?」

チェイサーは周囲を見渡すがもうマッハの気配はなかった。

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・流石にあれ以上は不味かったな・・」

変身を解除した郷は息を切らしながら旅館への道を走っていた。

「郷!?」

そこに速水がやってくるが疲労を隠せないでいる郷を見るとすぐに駆け寄り肩を貸した。

「サンキュー」

「また1人で戦ってきたのね?」

「はは、せっかくみんな思い出を作ってるのに余計な心配させるわけにいかないだろ?悪いけどクリムの所に連れてってくれないか?ちょっと疲れたから・・少し・・・眠るわ・・」

郷が静かに意識を失うと速水に郷の身体の体重が全部かかった。

決して重い物ではないが中学生の速水にはやはり負担はある。だが速水は嫌な顔一つせず安らかに寝息を立てる郷を優しく見た。

「・・・お疲れ」

 

こうしてE組の修学旅行は終わった。

新たな強敵魔進チェイサーの出現は今後の郷の戦いをさらに激しい物へと変えていくだろう。だが、今だけは安らかに休んでいいだろう。守るべき相手の傍で、1人の少年として・・

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

誰も居ないE組の教室に今までなかった箱があった。

『明日からミッションを始めます。楽しみですね殺せんせー』

教室に佇むその箱はまるで棺桶の様だった。

 

 




モチベーションが上がるので宜しければ感想を宜しくお願いします。


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その転校生、AIで、自立砲台?

ようやく、みんな大好き二次元娘の登場です。
1話にまとめるつもりでしたが長くなりそうでしたので2話に分けることにしました。
後半も早いうちに投稿します。

そして・・・明日、21日はいよいよ武道館に行ってきます!
前日から楽しみで仕方ありません!


修学旅行の翌日、郷は何時もより重く感じる身体で校舎への山道を登っていた。京都での戦闘の疲れがまだ取れていなかったのである。

普段なら一晩眠れば疲れは取れるのだが、魔進チェイサーとの戦闘は予想以上に負担になっていたらしい。

 

しばらく歩くと前方で渚と杉野それと岡島が何やら話しているのが見えた。気になり近付いてみるとスマホの画面を見ているらしい。

 

「はよ~っス。どうしたんだ?」

「あっおはよう郷君」

「よぉ、何か疲れてるみたいだな」

「そんな事より同志よ!これ見てくれよ」

岡島が見せたスマホには可愛らしい少女の顔が写っていた。

 

「誰だこの子?」

「昨日の烏間先生からのメール見てないのか?今日転校生が来るんだってさ」

「でだ!女の子だって言うから顔写真無いんですか?て言ったらこれが送られてきたんだよ!あ~~こんなかわいい子が転校してくるなんて・・・E組でよかった~!」

1人テンションがおかしい岡島を無視し改めて写真を見ると郷は何か違和感の様なものを感じた。それが何なのかは解らないがどちらにしろこのクラスへの転校生だ普通じゃないとういのは容易に予想できた。

 

 

「もう来てるかな~」

意気揚々と教室には居る岡島に続き3人が教室に入ると窓側の一番後ろの原の席の後ろに見慣れない黒い箱の様な物が置かれていた。

箱の上部の画面が光るとそこには先程写真で見た少女が映し出された。

『お早うございます。本日よりこちらのクラスでお世話になります自律思考固定砲台です』

それだけ言って消えた画面に教室にいる全員が思った。

((((・・・そう来たか)))))

 

 

 

 

「と言う訳で、ノルウェーから転校して来た自律思考固定砲台だ」

『皆さんよろしくお願いします』

朝のホームルーム、烏間が教台に立ち自律思考固定砲台の紹介をするが生徒たちからは気の毒そうな視線を向けられている。

(烏間先生も大変だなぁ・・・)(俺、あの人だったら今頃どうかしちまってるかも・・・)

そんな中、殺せんせーは1人笑っていた。

「ぷーー!クスクス」

「笑うな。お前やクリムも同じ色物だろうが」

『わっ私もかね!?』

「言っておくが彼女はれっきとした生徒だ。お前は彼女に危害を加えることは出来ないが彼女はあの場所からお前を殺しにかかるぞ。良いな」

「ええ、構いませんよ。自律思考固定砲台さん。あなたをE組の生徒として迎え入れます」

『宜しくお願いします。殺せんせー』

 

 

1時間目の授業が始まっても生徒たちは自律思考固定砲台をチラチラと見ている。

一見武装などしていない自律思考固定砲台がどの様な暗殺を仕掛けるのか。

その時、自律思考固定砲台の内部から複数の銃口が現れた。

「やっぱり変形した!?」

「カッケー!」

渚と杉野の声をかき消す様に銃声が響く。

生徒たちは飛び交う銃弾に当たらない様に身を伏せた。

 

 

 

 

突然やって来た転校生、自律思考固定砲台の銃撃に身を伏せながらも速水が前を見ると、殺せんせーは躱しながら授業を進めていた。

だけど速水たちはとても授業が出来る状況じゃなかった。

「にゅるふふ~~ショットガン4門に機関銃2門、濃密な弾幕ですがこの教室の生徒はみんなやっている事ですよ」

暫くして撃ち尽くしたのか自律思考固定砲台の弾幕が止んだ。

 

はぁ~これで落ち着いて授業を受けられる・・・

そう思ったのもつかの間

「授業中の発砲は他の人の迷惑になるので禁止ですよ」

『申し訳ありませんでした。続けて攻撃に移ります』

(うそ!?まだやるの?)

自律思考固定砲台はさっきよりも多くの銃口で殺せんせーを狙う。

「全く、懲りませんね〜」

殺せんせーはさっきと同じように躱していく。

 

ダァン!

次の瞬間、ころ先生の触手が破壊された。

今まで郷やカルマもダメージを与えたことはあった。しかし郷は他の生徒たちの射撃に紛れてでカルマは不意を突いてだった。

単体で正面から殺せんせーにダメージを与えたのは自律思考固定砲台が初めてだった。

 

「・・・隠し弾(ブラインド)か」

(え?)

振り返ると郷が眠そうな目で自律思考固定砲台を見ている。

「弾の後ろに全く同じ軌道でもう一発撃って殺せんせーから見えないように撃ったな」

(そんな事が出来るの?)

自律思考固定砲台のあまりの性能に速水だけでなく全員が驚愕した。

 

『触手の破壊を確認。次の射撃で殺せる確率0.001%、未満次の次の射撃で殺せる確率0.003%未満、卒業までに殺せる確率90%以上』

自律思考固定砲台の無機質な声が速水にはとても恐ろしい物に聞こえた。

『続けて攻撃に移ります。宜しくお願いします。殺せんせー』

 

 

 

1時間目が終わった時には教室は対殺せんせー弾だらけだった。

「これ・・俺たちが片付けるのかよ・・・」

「お掃除機能とか付いてないのかよ?自律砲台さんよ~」

『・・・・・』

村松が絡むけど画面は消えたままでなんとも言わない

「ちっ!シカトかよ」

「やめとけよ。機械に絡んだってしょーがねーよ」

 

その時、自律思考固定砲台の画面が突然ついた。

『只今より第二ミッションを開始します』

(第二ミッション?殺せんせーの暗殺以外に何をやるっていうのよ?)

すると自律思考固定砲台は銃を取り出しその銃口を机で寝ている郷に向けた。

「んぁ?」ダァン!

郷が眠たそうに振り向いた瞬間銃声が響いた。

 

速水は一瞬何が起きたのか理解が出来なかった。理解できた瞬間まるで重加速が起きたみたいに感じた。銃口から昇る硝煙も椅子から倒れこむ郷も郷に駆け寄ろうとするみんなも、当然速水自身も時間が止まったように動かない。

薬莢が床に落ちた音がしたと同時に時間が動き出した。倒れて行った郷は手両手を床に付けバク転して距離を取った。それと同時に後方の廊下の壁に銃弾が命中した。

 

「アッぶねーな!いきなり何すんだよ!?」

『詩藤郷さんいえ、仮面ライダーマッハあなたのデータを貰います。変身することを要求します』

銃を向けたまま感情の無い声で話す自律思考固定砲台を睨み付ける郷は懐に手を伸ばした。

しかし何を考えたのかその手は途中で止まった。

 

「やだね、何でお前の言うことを聞かなきゃいけないんだよ」

『では、強硬手段を取らせてもらいます』

自律思考固定砲台が殺せんせーの時と同じように大量の銃を出すと同時に郷は走り出し窓を突き破ってグラウンドに飛び出た。

自律思考固定砲台の容赦ない射撃を郷はひたすら走り続けて回避していく。

並の人間ならもう50回はハチの巣になってるだろう弾幕躱しながら生徒たちが射撃の練習に使っている的の影に隠れた。

だが、所詮木で作った的は一瞬で原型がなくなった。

すぐさま横に跳び出た郷もゼンリンシューターを構えた。

 

「何事ですか!?」

銃声を聞きつけ教室に入ってきた殺せんせーは破壊された郷の机、銃をグラウンドに向けている自律思考固定砲台、グラウンドから睨み付けている郷、そしてどうすれば良いのか戸惑っている生徒たちを見て状況を把握した。すぐに郷と自律思考固定砲台の間に入るその顔は赤黒くなっていた。

「これはどういう事ですか?」

『退いていただけませんか?私はマスターから授かったミッションを実行しているだけです』

「貴女のターゲットは私のはずです!生徒を傷つけることは許しませんよ!!」

殺せんせーの顔はどんどん黒くなっていく。

 

『私が攻撃しているのは仮面ライダーです。この程度では死にません。そして私の妨害をするのは先生の契約違反となります』

淡々と話す自律思考固定砲台が再び郷に銃弾を放とうとした時、授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。

すると自律思考固定砲台は銃を仕舞い正面に向き直った。

『時間です。殺せんせー、早く授業を開始してください。』

何事も無かったかのように振る舞う自律思考固定砲台に生徒たちの不満は積もっていく。




前回やらなかった登場ロイミュード
・スクーパーロイミュード
033の進化した姿
見た目は原作と同様
胸のレンズで撮影した写真に触れることで実物にも干渉する事ができる。
また胸のレンズから光弾を放つこともできる。
コピー元はアメリカから来た観光客


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変化のAIと電脳バトル

思ったより時間が掛かりすぎまして申し訳ありません。

大まかな流れは思いついてたんですがその中の描写に苦戦しました。


自律思考固定砲台が転校生としてE組に来て2日目、授業開始と同時に起動した自律思考固定砲台はある違和感に気付いた。

 

『・・・・これは?』

自律思考固定砲台はロープで縛られ銃を出せない状態だった。

 

『殺せんせー、これは貴方の仕業ですか?私への危害と判断し契約違反となります。直ちに拘束を解くことを要求します』

「違げーよ俺だよ」

寺坂がカバンから出したロープを見せるように言った。

 

「どう考えても邪魔だろうが。常識ぐらい身につけてから来いよなポンコツ」

すると郷がスッと立ち上がり寺坂に近づいた。

「寺坂・・・」

「何だよ?」

「良くやった寺坂!褒美に俺の秘蔵の際どい水着写真をやるよ」

「いらね〜よ!!」

 

その日、自律思考固定砲台は一度も暗殺を実行することが出来なかった。

 

 

 

 

放課後、生徒たちの帰った教室で殺せんせーと自律思考固定砲台は話していた。

「どうでしたか?今日一日」

『理解不能でした。私の邪魔をすることは暗殺の成功確立の大幅な低下に繋がります』

「生徒たちからしてみれば、貴方の暗殺はプラスになりません。仮に貴方のが私を暗殺しても報酬は貴方の開発者の物になります。さらに貴方の射撃により授業も満足に受けられない。」

『・・・・』

「貴方は確かに優秀な暗殺者です。しかし皆と協力する協調性があれば私を殺せる確率は格段に上がるはずです」

『しかし・・・私には皆さんと協力するプログラムがありません・・』

「心配ご無用です!そう思いまして」

 

その時、教室の扉が開きいくつかの機材を持った郷が入って来た。

「殺せんせーこれで良いのか?」

「ええ、ありがとうございます」

 

機材を適当な席に置き一つのタブレットを持ち自律思考固定砲台に近づいた。

『詩藤郷さん。なぜ貴方が?』

「クリムと烏間先生がノルウェーに交渉していてな、俺はもうすぐでお前のターゲットからは外されるだろうよ」

「郷君には少し手伝ってもらいたいことがありましてね」

 

郷と殺せんせーは機材のケーブルを自律思考固定砲台に接続した。

「では、始めますか」

「ガレット」

 

 

 

 

はぁ~今日もあの自律思考固定砲台が居ると思うと足が重くなる・・・

「おはよう」

『おはようございます!速水さん』

「・・・・は?」

思わず口を開けたまま思考が停止してしまった。昨日までは感情なんかとは程遠かったその顔には満面の笑顔が咲いていた。

・・どういう事よこれ?

「よぉ・・・・はやみ~~」

声の聞こえた方を見ると郷がほとんど死に掛けのような状態で机に顔を沈ませていた。

「どうだ?すごい変わりようだろ?」

「何があったのよ?一晩であんな・・」

改めて自律思考固定砲台を見るけど矢田と話しているその顔はとても華やかで、はっきり言って私よりも全然人間ぽいかも・・

 

「結構苦労したんだぜ。なんせ、兵器としての機能は充実してるってのに1人の生徒としての機能は殆ど組み込まれていなかったからな。徹夜で一から組み込んだんだぜ。なっ、律」

『はい、郷さんと殺せんせーのお陰で皆さんとコミュニケーションが取れるようになりました!』

 

へぇ~郷ってそんなことも出来たんだ・・・て、律って?

「いつまでも自立固定砲台なんて堅っ苦しい名前じゃめんどくさいだろ?自“律”思考固定砲台だから律で良いだろ」

確かに、そっちの方が親しみやすいかもしれないわね・・・

「じゃあ、改めてよろしく律」

『はい!よろしくお願いします。速水さん!』

 

 

 

休み時間には律の周りにはみんなが集まっている。

「わぁ~体の中で何でも作れるんだ!」

『はい、体内にある特殊プラスチックで設計図があれば自在に整形できます』

「じゃあさ花とかも作れる?」

『分かりました花のデータを学習しておきます。千葉さんこれで王手です』

「も・・もう勝てなくなった・・・」

 

「すっかり人気者ね」

「ああ・・元々俺ら位の年だと最先端技術に自然と惹かれるしな。何よりあの社交性だ。そりゃあ人も集まるさ」

そこに殺せんせーが焦ったような表情で来た。

 

「・・・しまった・・・先生とキャラが被ってる!」

「「被ってないわよ!(ねーよ!)何一つ!」」

思わず郷と一緒にツッコんじゃったけど。どこが被ってるのよ!

 

「ほらぁ!愛くるしくて生徒たちから慕われるマスコットキャラの様なところとか!みんなから浴びせられる」

・・・何言ってんのよこのタコは・・アンタが浴びせられているのは銃弾だけでしょ

 

「皆さん!先生だってモノマネとか色々出来ますよ!」

殺せんせーの皮膚が所々色が変わって人の顔が浮かび上がったけど・・・

「「「「キモイわ!!」」」」

 

「しくしく、そこまで言わなくても・・・」

「はは、まぁこのまま律が今の状態で居られればいいんだけどな・・・」

隅で落ち込んでいる殺せんせーを苦笑しながら郷が言う。

どういう事かしら?

 

 

 

次の日になって郷が言っていたことの意味が分かった。

教室に入るとみんなが律の周りに集まっていた。間から覗いてみるとそこには。

『皆さん。今日もよろしくお願いします。』

以前の様に無機質な表情の律が居た。

そんな・・・せっかくいい仲間になれると思ったのに・・・

 

「郷!もう一度律を変えることは出来ないの!?」

「出来るっちゃ出来るけど・・・結局はまた、戻されるだけだろ?意味がねーよ」

そうよね・・・いくら郷が律を変えても結局はまた・・・

 

「まぁ律自身はどう思ってるかにもよるけどな・・」

 

 

授業が始まったけどみんな集中できない。また律の射撃が始まるからだ。

―ブウウウゥゥゥン―

律から機械音が聞こえだした。来る!

私たちは一斉に教科書を頭巾の様にして飛んで来る銃弾に構えた。

 

『昨日約束しましたからね。お花を作ると』

え?律が出したのは銃じゃなくて花?

これって昨日矢田と話していた・・じゃあ律は

 

「律さんあなたは自分の意志で?」

『はい!私自身の意志でマスターの命令に背きました。ただ誰かを攻撃するだけのために生み出された私に殺せんせーと郷さんは誰かを喜ばせる事や皆さんと一緒にいる事の大切さを教えてくださいました。そして皆さんは迷惑ばかりかけた私に笑顔で接してくださいました。それは私にとって決して失くしてはいけない大切なデータだと認識しました。殺せんせー私は悪い子でしょうか?』

「とんでもない。中学三年生らしく実に結構」

 

これで律も正式に私たちの仲間ね。これから一緒に殺せんせーを殺すように頑張りましょう。

 

 

 

 

 

 

 

『そうは行かないぞ』

え?律から律とは違う男性の声が聞こえた。

律も原因が分からないみたいで困惑している。

 

『今の声は一体?・・きゃぁ!?』

『お前は大人しくしていな』

律が画面から消えて次に映し出されたのはロイミュードだった。

 

「ロイミュード!?」

『よぉ仮面ライダー。せっかくの良い場面だがこの自律思考固定砲台は俺が頂くぜ』

「させると思ってるのかよ!?」

『良いのか?こいつを破壊すれば俺ごとこいつのAIも破壊されるぞ』

 

郷は悔しそうに拳を握り締める。こいつ、律を人質にして郷に手を出させないつもりだ。

 

『少し待ってな。もうすぐコイツの人格プログラムを完全に破壊して俺の僕にしてやるよ』

ロイミュードが画面から消えた。

一体どうすればいいのよ・・・

 

 

「・・・こうなったら仕方ないか」

「郷君、何か方法があるのですか?」

「まぁ見てなって」

 

郷はそう言うとベルトを巻いて律に近づいた。

「じゃあちょっくら、データの世界に行ってくるわ」

郷は律に手を当てて目を閉じると胸のあたりからモーター音みたいな音が聞こえた。

 

「郷?」

声を掛けるけど全く反応が無い。どうなってるの?

『郷は今、律君の中に入り込んだんだ』

「クリム先生!」

律の中に入るってそんな事が出来るの?

 

『・・・マッハドライバーの機能で意識をデータにする事が出来るのだよ。但しデータ上でもし敗れれば郷の意識は完全に消滅してしまう危険な賭けだがね・・・』

 

そんな!・・郷・・・大丈夫よね?

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「ここが律の中か・・」

俺はロイミュードに狙われた律を救うため自分の意識をデータにして律に中に入り込んだ。

目を開けるとそこは上も下も無い広い空間だった。

周囲には世界中の花や将棋の戦略と言った様々な情報が漂っている。

出来る事は知っていたけど実際やったのは初めてだからな~ホントに律の中に入れたみたいだな。

 

「そろそろ観念しな!」

「きゃっぁ!」

頭上から聞こえた2つの声に顔を向けると律がロイミュードに襲われていた。

スパイダー型の094が光弾を放ち律に襲い掛かっていた。律は空間から作り出した障壁で防いでいるが少しづつ

削られている。

俺はデータからゼンリンシューターを作り出した。

 

「律ぅ!」

ゼンリンシューターの射撃で094の注意が俺に向かった瞬間に近づき蹴りで吹き飛ばし律の前に出た。

律は所々傷つき両眼に涙を浮かべている。

「大丈夫か?」

「郷さん・・・はい!」

 

「仮面ライダー!こんなとこまでよく来たなぁ!なら此処で殺してやるよぉ!!」

「はっ、俺は仮面ライダーだぜ。ロイミュード居る所、たとえ火の中、水の中、森の中、あの子のスカートの中、どこにだって行くさ。そして・・」

《シグナルバイク!ライダー!》

「俺はお前らを撲滅するまで死なねーよ。レッツ変身!」

《マッハ!》

 

「データでも・・追跡!撲滅!いずれも~~・・・マッハ!仮面ライダ~~マッハァ!」

変身した俺は律の作り出した壁を蹴りその勢いで094との距離を詰める。

 

「らぁ!」

勢いのままゼンリンシューターで殴り掛かる。続けて回し蹴りを繰り出す。

094も腕をランチャーに変形させ反撃して来た。

 

「喰らえぇ!!」

094のランチャーは光弾の数倍の威力を誇っていた。

「ぐぅ!」

ゼンリンシューターで弾くがその威力に腕が痺れた。その隙を突かれ更に数発喰らった。

 

コイツ、律のデータを吸収して強くなってやがる・・こうなったら一気に決めるか!

《ヒッサツ!フルスロットル!シューター!》

俺のヒットマッハーと094のランチャーがぶつかり合い衝撃が周囲に拡散した。

 

「きゃぁ!」

背後で律の悲鳴が聞こえたが構っている余裕はない。少しづつ俺の方が押して行ってる。もう少しで・・・

 

「ふっ甘いなぁ!」

「なぁ!?がああぁぁ!!」

上からいきなり銃が出現して重案が襲い掛かって来た。俺が怯むと同時にヒットマッハーの威力も弱まり094の攻撃の押し出せれた。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

―ガッハァ!!-

「郷!?」

律に触れて目をつぶったままの郷の口から突然血が噴き出た。

『不味い!郷が押されている!』

クリム先生の言葉にみんなの顔が曇る。

私は持っていたハンカチで郷の口の周りの血を拭いた。悔しいけど今の私にはこれくらいしか出来ない・・郷・・・ちゃんと帰って来て・・

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

「残念だったな!もうこの空間の支配は8割俺の物だ。だからこんなことも出来るんだよ」

くっそぉ!094は更に俺を囲むように四方に無数の銃を出現させた。流石に不味いな・・・

 

「死ねぇ!仮面ライダー!!」

094の叫びと同時に無数の銃弾が迫り寄せる。

「くっそおおおぉぉぉーーーー!!!」

銃弾によって俺の身体はハチの巣になった。そう思っていたが・・・

 

「私の友達は傷つけさせません!」

まるでドームの様に現れた壁が俺を銃弾から守った。振り返れば律が俺の方に手の平を向けている。

「今の私ではこれが限界です。勝ってください。郷さん」

俺の手元に律が作り出したシグナルカクサーンが現れた。

サンキュー律

 

「ちぃ!ならばもう一度」

「同じ手が喰らうかよ!」《シグナルバイク!シグナル交換!カクサーン!》

 

再び094によって発射された銃弾に対して俺はシグナルカクサーンをベルトに装填しゼンリンシューターを発射した。

《タクサンカクサーン!》

ブーストイグナイターを連打し分裂した光弾は銃弾を破壊しそのまま周囲の銃をすべて破壊した。

 

「なんだとっ!?そんな馬鹿な!」

「俺と俺の新しい立ちの力を舐めんなよ」《ヒッサツ!フルスロットル!シューター!》

無数に分裂した光弾【ヒットマッハーカクサーン】が094の身体を貫きコアを破壊した。

 

 

《オツカーレ!》「ふう~助かったぜ律」

「はい、私こそありがとうございました」

変身を解いた俺に律が駆け寄った。

 

 

「さってと俺もそろそろ戻るかな」

「あ・・・そうですか・・」

?なんか律の様子がおかしいな

「どうかしたか?」

「は、はい・・あの・・・たまにで良いのでまた此処に来てくれますか?////」

 

そうか・・画面越しで会話は出来ても直に触れ合うことは出来ない。律も寂しいよな・・・

「・・・ああ!何度でも来てやるよ!」

「はい!!」

律の太陽の様な笑顔を見て俺は目を閉じた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

再び目を開くとそこにはなんかニヤニヤしているクラスメートたちと機嫌の悪さが前面に出ている速水が居た。

「随分と仲良くなったみたいね・・」

「え~~・・・と速水さんはどうしてそんなに不機嫌なんでしょうか?」

「ふん!」

そのまま自分の席に着く速水を見送るしかない俺に周りからの生暖かい視線が降り注ぐ。

 

 

 

 




先に言っておきましが律はヒロインではありません。

それから今回バトルのステージになった律の電脳空間はデジモンアドベンチャー僕らのウォーゲームの戦闘ステージをイメージしました。


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戦友は追跡者

予定してたよりも一週間ほど遅くなってしまいました。
毎回戦闘描写と終わり方に悩みますね。

話は変わりますが、ヒーロー大戦ではまさかのアマゾンズ参戦で楽しみが倍増しました。


――――雨は嫌いだ――――

6月、梅雨の季節になり数日降り続ける雨を忌々しそうに郷は見ながら郷は思った。

今までの人生で嫌な思い出の殆どが雨の日に起こった。

あの日も、あの時も、あの瞬間も雨の日だった。

「なんか・・嫌な予感がするな・・」

 

「はい、皆さんおはようございます。席に着いて下さい」

殺せんせーが教室に入って来たため席に着くが教室には2つほど空きがあった。

 

「殺せんせー、岡野と矢田がまだ来てませんけど・・・」

「心配ありませんよ片岡さん。岡野さんは昨日の訓練で痛めた足首の検査のため、矢田さんは弟さんのお見舞いのために病院に寄っているんですよ」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「あれ、ひなた?」

「え?桃花じゃん!」

病院では診察室から出て待合室に来た岡野と2階から降りてきた矢田が鉢合わせになった。

 

「奇遇だね。教室には今から行くの?」

「うん、ひなたも今からでしょ?じゃあ一緒に行こうか?」

 

すっかり雨が上がった空の下を2人は病院から出てE組校舎へ向かった。

何気ない会話をしながら歩いていると通りかかった公園から3歳ぐらいの子供が車道に飛び出してきた。

「あ!危ない!!」

1台のトラックが子供に気付かず迫ってくるのに気付いた矢田が叫ぶ。

岡野はとっさに道路に飛び込み子供を助けようとした。

「早くこっちに、痛っ!」

だが、包帯を巻いていた足首が痛み出し車道の真ん中で動けなくなった。岡野達に気付いた運転手もブレーキを踏むが間に合わない。矢田や周囲の人の叫び声が耳に響き驚愕の表情の運転手の顔が迫る中、岡野は襲い掛かる衝撃に耐えようと目をつぶる。

 

―――キキーーー!!————

ブレーキ音を響かせながらトラックが通り過ぎた。

矢田が視界を遮っていた手を退かすとそこには、1人の少年が岡野と子供を抱えていた。

 

「大丈夫ですか?」

「・・・えっ?あ、あれ!?」

一瞬何が起こったのか理解できなかった岡野だが、歩道から矢田が慌てて走ってくるのに気付きやっと自分が目の前の少年に助けられたことに気付いた。

子供も無事の様で少年の腕の中で泣いていた。

 

「もう大丈夫ですよ」

少年は岡野と子供を優しく降ろすと怪我がないか確認しだした。

 

「ひなた!大丈夫!?」

「う・・うん・・なんともないよ・・・いった~~」

大きな怪我こそなかったが衝撃で足首がまた痛み出した。そこに怪我がないのを確認し子供を親に引き渡した少年が近づいて来た。

「どこか怪我しましたか?」

「う、ううん大丈夫ちょっと痛めただけだから・・・」

「あの・・友達を助けてくれてありがとうございまし・・あっ!」

 

そこで矢田は少年の顔を見て思わず声を上げた。

その顔は以前、修学旅行前の買い物の時絡んできた高校生たちから助けてくれたアレンだった。

 

「アレン君?」

「えっ?あ!矢田さんお久しぶりです」

「桃花の知り合いなの?」

「うん!この前助けてくれたアレン君」

「初めまして。アレンです」

頭を下げながら自己紹介するアレンに岡野も慌てて頭を下げた。

 

「えっと・・岡野ひなたです!あの、本当にありがとうございました!」

「いえ、当然の事をしたまでですよ。それよりも、その足ではうまく歩けないでしょうし・・・」

そう言ってアレンは岡野に背を向けしゃがんだ。

 

「乗ってください。送りますよ」

「い・・良いですよ!そんな悪いし///」

悪いという気持ちもあるがそれ以上におんぶされている所を人に見られるのが恥ずかしいため断ろうとするが。

 

「無理に歩くと悪化してしまいますよ。大丈夫です!こう見えてもそれなりに鍛えていますから!」

アレンの優しい笑顔に負け大人しくその背中に身を預けた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

「おい!岡野が男子に背負られて来たぞ!」

授業中すっかり睡魔に負けていた郷はその声で目を覚ました。

見るとクラスのみんなが窓からグラウンドを見ていた。ちゃっかりと殺せんせーもピンク色の顔でニヤニヤしながら見ていた。

クラスの女子の中でもボーイッシュなイメージのある岡野が男子に背負ってもらっている。確かに面白そうだ。そう思い郷もカメラを片手に窓に近づいた。

 

「さ~て、岡野にフラグを立てたのは一体どんな奴なん・・・なっ!?」

その瞬間、郷は窓を飛び越え岡野を背負う少年に近づいた。

 

「お前っアレン?アレンだろ!?」

「詩藤・・・郷・・」

アレンの肩を掴み話しかけるその顔は驚きと同時に喜びの表情でもあった。だが、岡野を優しく降ろしたアレンは先程までと違い感情が感じられない表情で郷を見ていたが郷は気付かない。

 

「お前、無事だったんだな!無事ならすぐに連絡しろよな~クリムも心配してたんだっ〈バキッ!〉ガッ!?」

アレンの拳が郷の顔面に直撃し法を吹き飛ばした。

 

「アレン君!何するの!?」

突然の事に矢田が叫ぶがアレンはその問いに答える事無く懐に手を伸ばした。

 

「あ・・アレン・・?」

何が起こったのか理解できない郷はただアレンを見ているとその手に握られているものに目を見開いた。

 

「それは!まさか・・・お前が?」

「仮面ライダーマッハ・・ここで殺してあげますよ」

アレンの手に怪しく光る物それは、以前京都で戦った魔進チェイサーが持っていた武器と同じだった。

アレンは一切の躊躇いも無く引き金を引く。すぐさま後ろに転がり躱す郷だが、すでにアレンは目前まで迫りブレイクガンナーで殴り掛かる.

 

 

「くっ!」

何とか取り出せたゼンリンシューターで防ぐことは出来たが押し負けバランスを崩した隙に強烈な蹴りを食らった。

 

 

「ぐっ!くそぉ!」

さらに迫り来る銃撃を掻い潜りながら郷は校舎の屋根に跳び移った。

アレンもそれを追う様に跳び2人の戦いは校舎上へと変わる。

 

「アレン!一体どうしちまったんだよ!」

「どうもしてませんよ。僕はただロイミュードの敵を倒すだけです」

屋根上を目まぐるしく動く2人の武器がぶつかり合いながらも郷は必死に語り掛けるがアレンはただ表情を変える事無く返すだけだった。

 

校舎から出て2人の戦いを見るE組だが矢田と岡野はアレンの突然の変化にいまだに戸惑っていた。

「アレン君・・一体どうしたの・・」

 

 

 

アレンの攻撃を受けた郷は大きく弾かれ地面に叩き落された。

「がっ!ガッハ!ゴホッ・・」

腹部を押さえながら起き上がるがその表情は苦痛に満ちていた。

 

「・・・遊びはここまでです。変身・・」《ブレイク・アウト!》

アレンがブレイクガンナーの銃口を力強く押し込むと全身に紫の走行を身に付け魔進チェイサーへと変身した。

 

「ッ!あいつも変身したぞ!?」

「しかも滅茶苦茶強そうじゃないかよ・・」

生徒たちは一目見ただけで魔進チェイサーの力を感じ取った。

 

 

「ちぃ!こうなったら力ずくで目を覚まさせてやる。変身!」《シグナルバイク!ライダー!マッハ!》

郷もマッハへと変身する。数秒の睨み合いの後、2人はゆっくりと銃口を向け合いE組も静かに傍観している。その静寂の空間の中、グラウンドの隅にある木の葉から一滴の水滴が落ちる。その瞬間、2つの銃口から同時に光弾が発射される。

2人は光弾が相殺し出来た爆煙に飛び込み互いの武器が激突する。

そのまま鍔競り合いになるがパワーではチェイサーの方が分がありマッハは徐々に押されていく。

 

しかし、マッハはわざと力を緩めチェイサーのバランスを崩す。そしてそのままその場で回転し遠心力を加えた一撃を叩き込む。

だがチェイサーも素早く反転し空いたボディに強力な一撃を叩き付ける。

2人は受けた攻撃の衝撃で後退しながらもそれぞれの手にシフトカーとバイラルコアを持つ。

 

《シフトカー!タイヤ交換!アラブル!》《チューン!チェイサー!スパイダー!》

ダンプ車型シフトカー【ランブルダンプ】とスパイダー型バイラルコアを2人は同時に装填する。

マッハの右手にはドリル型の武器【ランブルスマッシャー】が装備され、チェイサーもクロー型の武器【ファングスパイディー】を装備する。

 

 

「はあぁぁぁ!!」「・・・ふ!」

互いの武器が何度も交わりその度に音を立てながら火花が散り衝撃が木々を揺らす。

 

「おらぁぁ!」

マッハの渾身の突きをチェイサーは防ぐがその瞬間、ランブルスマッシャーが高速で回転する。

「はああああぁぁぁ~~~!!」

「くっ!・・」

少しずつマッハがチェイサーを押していき吹き飛ばす。ファングスパイディーを地面に突き刺しブレーキ代わりとしたチェイサーはすぐさま地面を蹴り飛び上がった。

それを見たマッハも同じように跳ぶ。

 

《ヒッサツ!フルスロットル!アラブ~ル!》《フルブレイク!スパイダー!》

ランブルスマッシャーを左脚に装備したマッハの【アラブルキックマッハー】とエネルギーを収縮したチェイサーの蹴りが激突し、周囲を衝撃が覆う。

 

 

「「「「「うわああぁぁぁーーーー!!!」」」」「皆さん危ない!」

広がる衝撃はE組にも襲い掛かり殺せんせーが庇う様に前に出るが何人かの生徒は数メートルほど飛ばされる。

 

 

衝撃が収まり視線を2人に向けるとそこには

 

「うっ・・アッ・・」「はぁ・・はぁ・・はぁ・・」

変身が解け倒れこむ郷と足を引きずりながらも郷に近づくアレンが居た。

 

「はぁ・・はぁ・・・これで終わりです」

「郷君!」

郷に銃口を向けるアレンに対し殺せんせーが止めようとしたが、殺せんせーが動くよりも早くブレイクガンナーの光弾が生徒たちの足元に撃たれる。

「動かないでください。あなた達に危害は加えません」

 

 

アレンは再び郷に銃口を向けようとするがその時、視界の隅で先程の衝撃で吹き飛ばされた岡野の頭上で今にも折れかかっている木があることに気付く。

とっせに銃口を機に向けると同時に木が折れ、岡野に当たろうとする。

 

「っ!」

「きゃっ!?」

ブレイクガンナーから撃たれた光弾が木を粉々に砕きアレンは岡野の無事を確認する。その時初めて殺せんせーや他の生徒も岡野自身も気の存在に気付いた。

 

 

 

「・・・僕は・・なぜ今?」

アレンは自分の行動が理解できなかった。自分の使命はロイミュードの敵、仮面ライダーを殺す事、それが何より優先すべきことのはず、なのに今、自分は目の前の標的よりも1人の少女を守ることを優先した。

 

「っ~~~~!!?」

その時、激しい頭痛がアレンを襲う。まるで、頭の中の全てがぐちゃぐちゃにかき回されているみたいだ。

 

(痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイいたいいたいいたい!!!)

何かが違う!?自分は仮面ライダーを倒す存在じゃない!?ロイミュードの守護者じゃないのか!?

 

「くぅぅ~~~!!!」

アレンの頭痛が頂点に達しようとした時、一台のバイクがグラウンドに飛び込んできた。紫のボディに髑髏の装飾が施されている。

 

「くっ・・・!」

バイクがアレンの前に停まると未だに痛む頭を押さえながらも跨る。

 

「ま・・てぇ!」

郷の停止の声を振り切るようにアレンはフルスロットルでその場から走り去った。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

『そうか・・アレンが・・・』

数分後、郷は現在保健室で速水が簡単な手当てをしており教室には2人を覗いたE組が集まっている。

そこで、出来事の全容を聞いたクリムはどこか悲しそうだった。

 

「クリム、そのアレン君と言うのは?」

『アレンは・・・かつて、郷と共に戦った仮面ライダーの1人だ』

 

クリムの言葉に全員がやはりと言った顔をした。

『だが、アレンは未来の戦いにおいて私たちの目の前でロイミュードに連れ去られた。その後必死で探しても消息はつかめず殺されたものだと考えていたが・・・』

「まさか、ロイミュード側になってたなんてな・・」

 

声が聞こえた方向を見ると体の所々に包帯や絆創膏を付けた郷が速水と一緒にいた。

「郷!もう良いのか?」

何人かの生徒が駆け寄るが郷は「無問題(モーマンタイ)」と言い流した。

 

「あいつが何でロイミュードに味方してんのかは知らないけど、一発デカいの喰らわして目を覚まさせる。それしかないだろ?」

『ああ・・単純だがそれしか今は方法はないな・・郷、頼んだぞ』

「ガレット!任せとけって」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

「うっ・・・僕はっ・・一体・・・!」

アレンは河川敷の橋の下でいまだに続く頭痛に苦しんでいる。

頭の中に覚えのないビジョンが浮かんでくる。顔は見えないが2人の男女と1人の少女が自分を見ている。それはとても幸せそうだった。

次に浮かんできたのはどこか廃墟のような場所で何人もの少年少女が楽しそうに笑っていた。着ている服は誰もがボロボロであるにも関わらずそこには明日を生きようという強い意志が感じられた。

 

「僕は・・・僕はッ!・・」

「君は、何も迷う必要はないのだよ」

背後から聞こえた声に振り返ろうとした瞬間、アレンの首筋に何かが刺さりアレンは気絶した。

 

「・・・やはり、接触するのは少し早かったようだね」

アレンに近づく影、その胸には【001】のナンバーが刻まれていた。

 




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ビッチへの試験

今日のエグゼイドを見て思った事、

ブレイブレベル50強すぎじゃね!?
戦闘員出すし、バリア張るし、ワープするし、マントをドリルみたいに使うし、まさに魔王の力でしたね。
次回のスナイプは絶対元ネタは艦これですよね?どんな力なのか今から楽しみです。


今更だが、郷は英語が苦手だ。他の教科も決して良いと言えないがその中でも特に英語の成績は悪い。

時々使う外国語も昔、聞いたことのある言葉を真似しているだけであり発音も決してよくはない。そんな郷だが最近はますます英語の授業が嫌になっている。その理由は・・・

 

「はい、わかったでしょ?今の会話の中に難しい単語は一つもなかったわ」

教室の前方に置かれたテレビにはアメリカのエロ映画が流れている。と言っても過激な場面があるわけではなくあくまでも会話の中にエロい単語があるぐらいである。

 

「日常的な会話なんて大雑把で何とかなる物よ。マジすげぇとか、マジやべぇなんかでね。そのマジに当たるのがreajjy(リアリー)よ。木村、言ってみなさい」

「リ、リアリー・・」

「ハイ駄目ね。RとLがごっちゃね。罰のディープキスよ」

そう言ってみんなが見てる前で木村にディープキスをするイリーナを生徒たちは苦笑しながら見る。

 

「さてと次は・・・郷あんたよ」

「げっ!リアリ~、マジで?」

次の標的がに指名された瞬間、郷は分かり易く嫌な顔をした。

 

「はい、あんたもダメね。ホラ、キスしてやるわよ」

唇を舐めながら近づいてくるイリーナに対し郷は椅子から立ち上がり少しづつ後ろに下がる。

「悪いッスけど、ビッチはノーサンキューなんスよ」

「はい、また発音が駄目ね。大人しく・・・キスされなさい!」

 

そのまま二人の鬼ごっこで授業は終わった。

 

「はぁ~・・たくっ冗談じゃね~よ。隙あればキスしようとしやがってよあのビッチ・・」

皆と下校しながら溜息を吐いていると岡島が近づいてくる

「でもよぉ~あんな美人にキスされるなら役得じゃね?」

「俺は気軽なキスとかはしないんだよ。するなら一生で一人だけ、本当に好きになった奴だけって決めてんだよ」

「意外と固いんだなお前って」

 

「・・・一生に一人だけか・・・」

その会話を近くで聞いていた速水はそっと自分の唇に触れた。

が、すぐに顔が赤くなり何かを振り払う様に何度も振った。

 

 

 

 

「たっく、ガキの面倒なんてやっぱり面倒なだけね」

職員室ではイリーナが椅子に座りながら愚痴っていた。

「その割には生徒からの受けは中々良いようだな」

窓から下校する生徒たちを見ながら烏間が言うとお茶を飲んでいた殺せんせーとクリムも同意した。

「生徒たちが興味を持つ話題も豊富で良い先生だと思いますけどね」

『いっその事、本当に教師になったらどうだね?』

「冗談じゃないわね。私は殺し屋よ。そのタコを殺したらさっさと出て行くわ」

 

イリーナが帰り支度をして職員室から出ようとした瞬間だった。

イリーナの首にワイヤーが掛かり吊るされた。

 

「どうやら、殺し屋としての勘がだいぶ鈍っているようだな」

そこに、1人の初老の男が入って来た。男を見た瞬間、殺せんせーも烏間も男が只物じゃないのを感じ取った。

 

『シャドー!』

クリムの指示でシャドーがイリーナの首に絡まるワイヤーを切った。

 

「せっ師匠(せんせい)・・・」

「イリーナ・・そこまで落ちぶれるとはな・・・本当に殺し屋をやめて教師になるか?」

「・・・・」

男の言葉に反論しようとするイリーナだったが男の威圧感に何も言えなかった。

 

「もう貴様では此処に居てもターゲットを仕留めることは出来まい。この仕事は辞め他の依頼を受けるんだな」

「待ってください」

イリーナを連れて行こうとする男の手を殺せんせーが止めた。

 

「確かにイリーナ先生程度の殺し屋では私を殺すことなど無理でしょう「何ですってぇ!!」ですが、今やイリーナ先生は生徒たちにとって必要な方です。そこで・・・勝負をしませんか?」

殺せんせーはニヤリと笑い話を続けた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

(狙っている・・・)(狙ってるぞ・・・・)

翌日、体育の授業でナイフの素振りをしている生徒たちはグラウンドのある一点に視線が行ってしまっている。

そこには・・・・

 

(((((何か狙っている)))))

イリーナと見知らぬ男性が獲物を狙う野獣のような目で烏間を見ていた。

 

「あの・・烏丸先生あれは?」

たまらず磯貝が質問をすると烏間は頭を押さえながら昨日の事を説明した。

今日1日で先に烏間に対殺せんせー用ナイフを当てた方が勝ち、イリーナが勝てばこのまま残留だが負ければE組を去る事になる。

因みに、2人ともナイフを当てられなかったら殺せんせーは一秒間烏間の前で動かない事になるがこれは2人には秘密である。

 

 

「ホント、烏丸さんも苦労が絶えないよな~」

「でも、この勝負に負けたらビッチ先生居なくなるんでしょ?それもちょっと嫌ね」

授業が終わり教室に戻りながら郷と速水が話しているとイリーナが笑顔で烏間に駆け寄っていく、その手には水筒を持っていた。

「烏丸先せ~~い!お疲れ様で~~す!」

「「「「・・・うわ~~~・・・」」」」

見るからにあからさまな態度に思わず引いてしまう生徒たちだった。

 

「どうぞ、飲んでくださ~い!」

「・・・結構だ」

烏間は無視して職員室に戻ってしまった。

 

 

「いやいや、ビッチ先生よぉ~流石に今のは無いだろ」

「あんなのじゃ、私たちも引っ掛からないよ」

生徒たちのダメ出しが次々と胸に刺さる。

 

「しょうがないじゃない!手の内を知られてる相手にハニートラップなんて、キャバクラで働いていてお客で父親が来るようなものなのよ!!」

「「「「いや、知らね~~よ!!」」」」

 

 

その後、男の方も暗殺を仕掛けたが、烏間の予想以上の実力に失敗に終わった。

そして、時間は過ぎ昼休みになり郷が昼食のドーナッツを食べていると外の木の下にいる烏間とイリーナが見えた。

 

「ま~た仕掛けてるのかよビッチ先生・・・」

また色仕掛けを掛けるのかと見ていると烏間の背の木からワイヤーが烏間の首めがけ飛び出た。

予想外の事に反応が遅れた烏間の動きをワイヤーが封じイリーナが切り掛かる。しかし、烏間もすぐに反応しナイフを受け止める。

暫く、力比べが続くがやがて観念した烏間が力を抜きナイフが当たる。

 

 

『ロヴロ』

イリーナの成長を知り男は帰ろうとした時、背後からクリムが話しかけた。

「クリムか・・・」

『久しぶりに会った幼馴染に挨拶も無しに帰るのかね?』

「ふ、人生何があるか分からないものだな。そんな姿で再会するとは」

 

2人はとても親しそうに話し始めた。やがてロヴロは申し訳なさそうな顔で生徒たちに囲まれているイリーナを見る。

「すまなかったな。あの子を助けるだけで精一杯だった」

『・・・いや、感謝してるよ。ありがとう』

「まだ言ってないのか?自分の事を」

『私にはそんな資格はないさ。だが・・・いつか、許されるならもう一度・・』

クリムはただイリーナの笑顔を見ながら呟く。

 

 

 




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第三の転校生

仕事が忙しく、ようやく落ち着いたと思ったら高熱を出し遅くなりました。

ホントはもう少し長いのですがあまり間を空けたくなかったので少し中途半端ですが投稿します。





「早速ですが皆さん。今日は転校生が来ます」

教室に入るなり殺せんせーが言った。

 

「また転校生か~」

「郷と律に続いて三人目だね」

「やっぱり殺し屋なのかな?」

それぞれどんな転校生なのか思考を巡らせている中、原が後ろの律の方を向く

 

「律は何か知らないの?転校生の事」

『はい、本来は私と彼二人が同時に投入される予定でしたが二つの理由で私だけ先に送り込まれたのです』

「理由って?」

『一つは、彼の調整に予定より時間が掛かったため。そしてもう一つの理由は・・私が殺し屋として彼より大きく劣っていたからです』

 

律の言葉に教室が静かになった。殺せんせーの触手を容易に破壊した律以上の殺し屋、いったいどんな技で殺しに来るのかそもそも人間なのかも怪しい。

その時、教室の扉が音を立てて開かれた。入って来たのは全身を白ずくめで覆った怪人物だった。

男は教卓の前まで来ると右手を出すとそこから一羽のハトが飛び出た。

突然の手品に驚いているとそのリアクションが嬉しいのか白ずくめは大きく笑った。

「ははは!驚かせちゃったかな?僕は転校生の保護者さ。見ての通り白いから・・・シロと呼んでくれ」

 

「いきなり手品なんてやられたら普通驚くよね」

「うん、殺せんせーでもない限りは・・・」

渚の視線の先には教室の端に隠れるように潜むスライムが居た。

 

「何ビビってるんだよ!殺せんせー!!」

「切り札の液状化まで使ってよぉ~!!」

「だって、律さんがあまりにも物騒な事言うんですもの~~!!」

 

 

気を取り直して元に戻った殺せんせーはシロと向かい合う。

「初めまして殺せんせーコレお近づきの印です」

そう言ってシロは羊羹を差し出した。

「どうも、わざわざすみませんね~ところで転校生の子は?」

「ああ、少し変わった子でね。心配だから先に私がクラスの雰囲気を見に来たんですよ」

 

クラスを見渡すシロはある個所で視線を止めた。

「にゅ?どうかしましたか?」

「いえ、みんな良い子そうで安心しましたよ。これならあの子も馴染めそうだ。お~~い、イトナ!入ってきな!」

・・・・・・

誰も入ってこない。どうしたのかと困惑していると

――ドゴォ!——

「うぉっ!危ねぇっ!」

大きな音を立て教室の後ろの壁が壊れ瓦礫が丁度正面に座っていた郷に襲い掛かる。ギリギリでつかむ事が出来た郷が壁の奥を見ると一つの人影が見えた。

 

「・・・俺は勝った。この教室より強いことが証明された」

入って来たのは白い髪の小柄な少年だった。少年はそのまま後ろの空いている席に座った。

「「「「「いや、ドアから入れよ!!!!」」」」」

 

「堀部イトナだ。仲良くしてやってくれ」

シロの説明も生徒たちの耳には入っていかない。殺せんせーもどうリアクションを取ればいいのか分からず微妙な顔をしている。

 

「ねぇ~イトナ君、今外から来たけれどさ外スゲ~雨なのに何で濡れてないの?」

カルマの指摘通り現在外は強い雨が降っているにもかかわらずイトナの身体は全く濡れていなかった。

 

「・・・・」

イトナは教室を見渡すとカルマに近づく

 

「お前は多分このクラスでもかなりの強者だ。だが安心しろ、俺より弱いから俺はお前を殺さない。そして・・・」

イトナは次に郷に近づく、一方郷は先程飛んで来た瓦礫でお手玉をしていた。

 

「お前は生徒たちの中では間違いなく一番強い。お前は後で殺してやる」

「はっ!出来るかな?」

 

「俺が最初に殺すのはあんただ」

イトナは教卓で羊羹を食べる殺せんせーを指差した。

「ニュルフッフ〜先生と戦うには普通の人間には難しいですよ」

「出来るさ・・・だって俺たちは兄弟なんだからな・・兄さん」

 

「「「「・・・・・・・」」」」

その瞬間、教室の時間が止まった。

郷も呆然と殺せんせーとイトナを見比べて上に投げていた壁の破片を取り損ない地面に落とした。

破片が音を立てて砕けたのを合図にしたかの様に教室の時間が動き出した。

 

「「「「「「きょっ!兄弟〜〜〜〜!!!!!???」」」」」」」

クラス中の驚愕の叫びと共に。

「放課後にこの教室で勝負だ。負けた方が死刑な。兄さん」

殺せんせーから奪った羊羮を食べながらイトナは宣戦布告をした。

 

 

 

――ムシャムシャムシャ・―

昼休み、昼食を取る生徒たちの視線はイトナに集中していた。

イトナは他の生徒と机をくっつけず一人山盛りのスイーツを食べていた。

教卓では殺せんせーが同じく大量のスイーツを食べており生徒たちはつい、二人を見比べてしまう。

 

「甘いモノ好きなところは殺せんせーと同じだな」

「あと、表情が読めないところもな・・・」

 

「にゅ〜〜〜・・・皆さん私と彼を必要以上に比べますねぇ〜ムズムズします。こんな時は!今朝買ったグラビアでも見るとしますか////これぜ、大人のたしなみっ!?」

 

殺せんせーが巨乳のアイドルが写る表紙のグラビア雑誌を開いたと同時にイトナも全く同じ雑誌を開いていた。

 

その光景にほとんどの生徒が呆れるなか、岡島は確信していた。

「こっ、これは・・・俄然兄弟説に信憑性が出てきたぞ・・・・何故なら!!巨乳好きは!皆、兄弟だからだ〜!!」

岡島の手には二人と同じ雑誌が握られていた。

 

「「「・・・・・・・」」」ガシッ!

無言のまま集まった3人はそのまま固く手を握った。(一人は触手)

 

 

「・・・あんたは行かないの?」

速水はジッと向かいに座る郷を見るが当の郷は他の生徒と同じように呆れた表情で三人を見ている。

 

「おいおい、速水ぃ~人を勝手に巨乳フェチにしないでもらいたいあぁ~~」

そう言って郷はカバンから取り出したのは三人とは違った雑誌だった。

 

「巨乳好きなんてべた過ぎるんだよ。最先端はやっぱり・・・・ギャップだろぉ!!」

雑誌の表紙にはいかにも真面目なキャリアウーマンの女性が猫耳でポーズを取っていた。

「普段は真面目でクールな女子が猫耳でにゃん♡とか言っちゃう!そういったギャップこそが女子の魅力を最大限に引き出す究極の調味料になるんっ「大して変わらないわよ!」ぎゃずぁ!?」

速水の投げた箸が額に刺さり郷は床に沈んだ。

 

 

 

一方、職員室ではクリムたちは、シロの動向を監視していた。

怪しい風貌に掴み処のない性格、それでいて今のところ怪しい動きは見せていない。何より気になるのは彼が連れてきた転校生堀部イトナの事であった。殺せんせーの兄弟を名乗るがどういう事なのか?その疑問が消えない。

そして当のシロは現在、漫画を読んで呑気に笑っていたが三人からの視線に顔を上げた。

「気になりますかね?彼の事が」

 

三人の顔を見渡し正解であると確信したシロは小さく笑うとさらに続けた。

「確かに生まれは違うし血も繋がっていない。それでも確かに2人は兄弟ですよ。・・・間違いなくね」

 

昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴りシロは職員室から出て行く。

「では、私は少し準備があるのでコレで・・・」

 

 

『殺せんせーと兄弟・・・まさかな・・』

シロの後姿を見ながらクリムは一つの仮説が頭によぎった。




続きも出来るだけ早く投稿しますので待っていてください。


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もう一つの触手

昨日のエグゼイドで社長が退場しましたね。
キャラ的には間違いなく最悪なのですが個人的には最後まで自分の野望を曲げずに死んでいく悪は結構好きですね。
エグゼイドの今後にも大きく期待しています。


放課後になり、教室には机で囲んだリングが出来ていた。

教師陣や生徒たち、そしてシロがリングの外側から対峙する二人を見ていた。

 

「勝負はこのリングの中で行ってもらうよ。リングの外に出たら負け、死んだら・・・もちろん敗けだ。」

シロが簡単なルール説明をし二人は承諾するように頷いた。

 

 

「では、死合い・・・開始」

「ニュアッ!?」

シロの開始の合図と同時に殺せんせーに向かいナニかが襲い掛かった。

後退し避けた殺せんせーであったがそのナニかを見た瞬間、動きを止めた。

 

「あ、アレってまさか・・・・」

「ウソだろ?」

生徒たちもナニかを見て驚愕した。それは、とても見馴れたものだった。 そして、有り得ないものだった。

 

「は、リアリ〜〜・・・マジで?」

郷も余りの事につい声を漏らす。

 

そんな中、クリムだけは自分の立てた仮説が正しかった事を知った。

『やはり・・・・そうだったか・・』

 

その場の全員が驚愕したナニか、それはイトナの頭から生えた無数の触手だった。

 

「分かっただろ?確かに親は違う、生まれも違う、血も繋がってないけど君たち二人は確かに兄弟だよ」

 

「・・・・・何処だぁ・・・その触手・・何処で手に入れたぁ!!!」

その時の殺せんせーの顔は今まで見たことのない程どす黒くその殺気で窓ガラスが悲鳴を上げている。

「おやおや、怖い顔だねぇ何か嫌な事でも思い出したのかな?」

「シロさんどうやら貴方には聞かなくてはならない事があるようです」

「無理だよ。ここで死ぬからね」

シロの服の裾が光ると殺せんせーの動きが一瞬止まった。その隙を見逃さずイトナの触手が振るわれる。

触手が当たる直前に動けた殺せんせーだったが避けきる事ができず1本の触手が破壊された。

 

 

「君の事はよく知っているよ。この光線を当てれば動きが一瞬止まることも、触手を破壊されるとスピードが落ちることもね」

シロの言ったとおり触手を破壊された殺せんせーの動きは僅かに遅くなっていた。

もっとも、すぐに再生したためその変化に気付けたのは郷だけだったが。

 

シロの光線とイトナの触手、このコンビネーションは徐々に殺せんせーを追い詰めていく。

 

地球を破壊しょうとしている生物を追い詰めている。本来なら喜ぶべき事なのだが、生徒たちの表情は優れない。

皆が思っていたのだった後から来た誰かじゃなくて自分たちで殺したいと。

何人かの生徒は悔しそうに対殺せんせーナイフを握り締める。

 

 

「さて、イトナそろそろ終わらそうか」

「ああ・・」

イトナの触手が一つにまとまり殺せんせーに迫る。躱そうとする殺せんせーだがシロの光線がその動きを遮る。

 

「ニュアァァァ!!?」

リング内の床が破壊され教室に粉塵が舞う。強力な一撃は間違いなく殺せんせーを貫いたと誰もが思った。

しかし、イトナの触手は殺せんせーの横に逸れていた。しかも良く見てみると触手の一部が破壊されている。

 

「なっ・・なにが?」

流石のシロも動揺を隠せていなかった。殺せんせーを見てみれば服の上から対殺せんせー用ナイフを持っていた。

 

実は、イトナの触手が当たる直前、殺せんせーは比較的近くに居た渚の握り締めるナイフを拝借しイトナの触手を受け流したのだった。対殺せんせー用のナイフは当然、イトナの触手にも有効でありナイフに触れた触手はその表面を破壊され起動がズレたのだった。

 

「イトナ君、君は確かに強いですが今日は先生の勝ちですね」

動揺したイトナを捕まえた殺せんせーはそのまま窓から外に投げた。

イトナは窓を突き破り外に投げ出された。

 

「E組で皆さんと一緒に学びなさい。そうすれば君は強くなれますよ」

「まけた・・俺が・・・・俺は・・弱いのか?・・・・俺はっ!弱くない!!!」

まるでイトナの叫びに共鳴するように触手が蠢く

たが、シロが首筋に針のようなものを打ち込むとイトナは崩れるように倒れた。

 

「すいませんね。この教室に入るにはまだこの子の精神が安定していなかったみたいだ。暫くはこちらで教育を続けることにするよ」

「待ちなさい!シロさん貴方には聞きたいことがっ!?」

殺せんせーがシロに触れた瞬間、殺せんせーの触手は破壊された。

「この服は対殺せんせー性質の物で出来ていてね。あなたは触れることは出来ない。それではまた、近いうちに・・・」

イトナを抱え去っていくシロを殺せんせーはただ黙って見送るしか出来なかった。

 

 

 

「////ああ〜〜〜恥ずかしい・・・・////」

殺せんせーは真っ赤な顔を触手で隠すように覆っていた。

生徒たちが二人の戦闘で壊れた教室を修復しているなか、殺せんせーは先程の自身の態度に今更ながら羞恥心を感じていた。

「先生あんなキャラじゃないのについ、シリアスな感じになっちゃって〜〜〜///」

「スゴイ真剣だったものね、『何処で手に入れたぁ〜〜!その触手を〜〜!!』って」

「ニュアアアァァァァ〜〜〜!!!言わないで〜〜〜!!!!」

狭間の更なる追い討ちに殺せんせーのライフは限界寸前だった。

 

 

「殺せんせー・・・そろそろ教えてくれない?殺せんせーのことを・・」

「・・・渚君・・わかりました。教えましょう先生の正体を・・・実は先生は・・・・人工的に作られた存在なんです!」

 

・・・・分かってるよ・・全員が思った。そもそも殺せんせーの様な生物が自然に生まれるわけが無い。宇宙人でも無いとしたら後は誰かに造られたに決まっている。

今更何言ってるんだと全員があきれていた。

「リッ!・・リアリィーーーーー!!?」

約一名を除いてであるが・・

 

「殺せんせー・・・アンタ・・誰かに造られたのか?」

「いやっ!何今更言ってんのよ!当たり前じゃない、馬鹿なの!?

「えっ!みんな気づいていたのかよ!?」

郷の問いに隣にいた速水は元よりクラスの全員が頷いた。

 

「マッマジで・・」

「ニュ!?結構、衝撃の事実なのに!!」

 

「僕たちが知りたいのはその先ですよ。何で地球を破壊しょうとしているのか、何で僕たちの先生になったのか、教えてください」

「・・・・今は話す時ではありません。どちらにしろ、来年の3月までに私を殺せなかったら君たちは地球ごと終わりなのですから。逆に私を殺すことが出来たらその後、私の事を調べれば良い。答えを知りたければ私を殺しなさい」

 

殺せんせーのその言葉で速水たちは改めて決心した。強くなろうと、誰にも譲らない、殺せんせーは自分たちの手で殺そうと。

 

 

「気づかなかったの・・俺だけ?・・・俺だけ馬鹿ってこと?・・・」

そんな中、一人取り残されていた気分になった郷は教室の隅で体育座りをしていた。

 




モチベーションが上がるので宜しければ感想宜しくお願い致します。


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白球を追いかけて

今日のエグゼイド、三人のドクターライダーVS三体のバグスターの戦いが熱かったですね。
マキシマムのアーマー、あれ自立で動くんですね・・・・要所要所で良いアシストをしていてバジン思い出したのは自分だけですかね?
ライドプレイヤーは名前や武器がライオトルーパーに似ているし、人類VS敵種族の構造も555を連想させますね。

次回ではあの濃い新社長が牙を剝きますしホッピーに次ニコも変身をし、ダブルヒロインのダブルライダーですね。
今後のエグゼイドも目が離せません。


梅雨も明け、季節は本格的な夏に向かっていた。

本校舎では夏の大会に向け運動部が勉強の間の貴重な時間で練習に汗を流しているが、E組は部活動が禁止されているため本来体育の時間以外では体操着に着替える事はまず無い。

しかし今、グラウンドでは・・・・

 

「行けーー!郷!!」

「当たる!当たる!!しっかり見ていけーーー!!」

体育の時間でもないのに体操着に着替えた男子たちは手に汗握り一定の距離を取り睨み合う郷と殺せんせーを見ていた。

「はぁ・・はぁ・・・やりますねぇ・・郷君!」

「はぁ・・・はぁ・・はぁ・・・まだまだこれからっスよ」

相対す2人は相手の動き1つ1つに集中し互いの武器を握り締める。

 

「これで・・終わりです!!」

先に動いたのは殺せんせーだった。左側の触手に付けた防具の中にある球体を右の触手でしっかりと掴み振りかぶる。

「にゅうぁぁぁ!!」

そのまま、勢いをつけて投げられた球は郷に向かい時速200キロ近くで飛んでいく。

「もらったぁぁ!!」

それを見て郷は両腕で握り締めた武器を体の捻りと腕の振りで加速させ迎え撃つ。

そう!2人は今まさに互いの意地とプライドを賭けて・・・・・

・・・野球をしていた。

 

 

 

数十分前、教卓の前に立つ殺せんせーは野球のユニフォームを着ていた。

「さあ皆さん、来週は本校にて球技大会がありますねぇ。生徒たちが球技で汗を流す。まさに青春の一ページですね。ですが・・・」

不満気に殺せんせーは本校から送られてきたプリントを見る。そこには球技大会での対戦表が書かれていたがA組対D組、B組対C組と書かれている。

 

「なぜE組の名が無いのですか?今回の大会は全クラス参加のはずですよ」

「E組は大会自体には参加しないんだよ。一クラス余るっていうもっともらしい理由でさ、代わりに男子は野球部の女子はバスケ部のレギュラーメンバーと試合することになってるんだよ。

 

殺せんせーの疑問に答えた木村の言葉に殺せんせーも納得したようだ。

「なるほど・・いつものですか・・・」

 

毎日練習を続けてきている部活メンバーと素人ではまともな試合になるわけもない。試合は一方的なものになり本校生徒はE組の無様な姿を笑い同時にE組には行くまいと気を引き締める。部活側としても全校生徒に良い所を見せ、圧勝することで大会前の士気を上げようという事だろう。

相変わらずの学校側の無駄の無さに殺せんせーも思わず感心してしまった。

 

「大丈夫よ。殺せんせー!私たち普段の訓練で鍛えているもの。本校生が驚くような試合をして見せるわよ。ねぇ皆!」

片岡率いる女子たちはやる気十分であったが男子は・・・

 

「俺たちは笑いものなんて御免だからよ。勝手にやってろよ」

寺坂と吉田、村松の三人はやる気ゼロと言った感じに教室から出て行く。

「おっおい!寺坂!」

磯貝が呼び止めようとするが無視して行ってしまう。

「当てにすんなよ。それより野球と言ったら杉野だけどよ。どうなんだうちの野球部は?」

「・・・・勝てる訳ねーよ。あいつらみんな小学校の時から野球をやってるからな。素人じゃあ勝てる訳ねーよ。でも・・勝ちたい・・・みんなと一緒に勝ちたい!」

杉野のやる気に満ちた目を見て殺せんせー嬉しそうに笑った。

「いいですねぇ〜最近の皆さんは積極的に勝とうという強い意志を表に出す様になりました。任せてください。」

殺せんせーは瞬時に着替えたがその恰好は・・某野球漫画の主人公の親父のコスプレだった。

 

「先生一度でいいので熱血鬼監督をやって見たかったんですよねぇ〜〜ちゃんとひっくり返す用のちゃぶ台も用意しましたよ」

「「「「無駄に準備良いな!!」」」」

 

 

「・・・・なあカルマひとつ良いか?」

「ん?どうかした」

郷が気まずそうに近くに居たカルマに話し掛ける。

「野球て、どうやるんだ?」

「「「「「・・・・・・」」」」」

空気が凍った。その場の全員が言葉の意味を理解できないでいた。数秒後にようやく意味を理解できるようなったがそうなると次に取るべき反応はもう決まっているだろう。

「「「「「ハアアアアァァァァ〜〜〜〜〜!!!!!???」」」」」

E組校舎のある裏山中に怒号が響く。

 

 

その後、男子と女子に別れそれぞれの練習を知ることになった。

男子はグラウンドで殺せんせー相手にバッティング練習を始めたが・・・・・

 

「殺投手は300キロ剛速球を投げ!」

ズドン!と普通の野球ではまず聞くことのない音が響く

「殺野手は分身で鉄壁の守備を引き!」

何とか当てる事が出来てもマッハで守る守備にとっては譲り合う余裕さえある。

「そして、殺捕手のささやき攻撃が打撃主の集中力を奪う!」

耳元で自身の恥ずかしい秘密をバラされる事で生徒たちは精神的にも追い込まれていくのだった。

 

「「「「練習になるか~~~~!!!」」」」

あまりのチート野球に怒りも爆発する。特にエアギターの秘密を暴露された三村は恥ずかしそうに顔を隠す。

 

「たくっ、300キロなんてメジャーリーガーでも打てねーよ」

「まぁ殺せんせーのレベルに付いて行ける人なんて普通は居ないよ〈キーン〉ね・・・?」

グラウンドに響く金属音に振り返ると高く打ち上げられたボールが外野を守っていた殺野手のグローブに飛び込んでいった。

「なっ!?」

殺せんせーも驚愕の顔をする。はっきり言って外野分の分身は雰囲気として用意しただけで誰もそこまで飛ばすことは出来ないと考えていたのだから。

 

「いって〜〜〜結構飛ばないもんだな〜〜」

バッターボックスでは郷が腕の痺れに顔を歪ませていた。

 

「ルールブック読んで大体分かったけど要は・・・球を打てば良いんだろ?」

改めてバットを構える郷は不適な笑みを浮かべる。

「掛かってきな殺せんせー、スピード勝負なら俺の18番でもあるっスよ」

こうして二人のプライドを賭けた勝負が始まった。

 

 

 

「ニュアッ!!」ビュゥン

「らぁっ!!」キーン

殺せんせーの投げたボールを撃つ郷だがタイミングが合わずファールになる。そんなこんなで既に20分続いているこの勝負であるがもう時間も遅くなって来た。

 

「ハァハァ、次で決めますよ」

「ハァ・・・ハァ・・オーライ、良いッスよ」

殺せんせーは大きく振りかぶり渾身の一球を投げた。

今までで間違いなく一番速い一球だが、普段からロイミュードとの戦闘に明け暮れている郷の眼にはその軌道はしっかりと見えていた。

 

「貰い!」

迫るボールに合わせバットを振るう。

タイミングも芯もしっかり捉えまさにホームランを打つと思われた瞬間、

「昨日の放課後、速水さんとの訓練の途中眠ってしまった速水の寝顔に見惚れていましたね?」

「////んがっ!?///」

耳元で囁かれた言葉に動揺しバットはボールの数センチ上を通り過ぎた。

「ニュルフフフ〜♪先生の勝ちですね〜♪」

「てっ!ちょい待てや〜!何で知ってんだよ!?てか、ドコから見てたんだよ!?」

「実は先生、皆さんが非行に走らないよう定期的に放課後の皆さんを見守っているんですよ。因みにこれがその時の写真です」

殺せんせーが見せた写真には木の切り株に腰を落とし眠る速水の寝顔とそれを見ている郷が写っていた。

 

「ふっ甘いな殺せんせー、速水の寝顔写真ならもうスナップ済みさ!」

郷も速水の寝顔が写る写真を取り出した。

殺せんせーのよりも近い距離で撮影されたその寝顔はまるでおとぎ話のワンシーンのように綺麗でありながら口元から涎が垂れており普段はクールな速水が見せない年相応の可愛らしさがあった。

「にゅっ!?・・・やりますね郷君・・・」

「殺せんせーこそ、良いアングルじゃないスッか」

お互いの健闘を称え合い二人は固く握手をした。

「「「いや、野球はどうした!!?」」」

 

その後、顔を真っ赤に染めた速水に追い回され二人の写真は没収された。

そんなこんなであっという間に球技大会当日を向かえた。




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一打入魂

今日、仮面ライダースペクターのブルーレイを買いました!
まだ見ていない人もいますから多くは当たりませんが、ラストのバトルが最高でした!
あんなバトルが小説内で描きたいですねぇ~~・・・そんな文才は無いですが・・・
スペクターを見る前に超全集の応募者全員サービスのDVDを見る事をお勧めします。



椚ヶ丘中学は勉強だけでなくスポーツにおいても名門である。

野球部は理事長の人脈により集めた優秀な指導者の下、恵まれた環境で日々練習をし東京都の大会で常に上位の成績を収めている。

そんな強敵と今、E組は相対する。

 

「あっれ・・?渚ぁ〜殺せんせーはどしたんだ?」

「殺せんせー?それなら少し離れた所で目立たない様に見守るって・・・・」

郷と渚が周囲を見渡すと先程ウォーミングアップのキャッチボールを行っていたグラウンド端に転がるボールの中に一球、明らかに不自然なボールがあった。

遠近法で分かりにくいが良く見ると他のボールと比べ大きかった。

更に良く見てみると小さく目の様な物が見える。

「・・・あれ・・かな・・・?」

「・・・だな・・」

他の生徒も気付きボールに視線が集まる。

するとボールは次々と色を変えて地面に潜っていった。

 

「・・・渚、なんだって?」

「えっとね・・・・殺す気で勝てって」

それを聞いて生徒たちはニヤリと笑いグラウンドに出た。

「「「「了解!」」」」「ガレット!」

 

 

 

 

「プレイボール!!」

主審の先生の合図とともにE組対野球部の火蓋が切って落とされた。

「さってと・・・景気よくトップバッターを飾るか!」

バットを手に持ち郷はバッターボックスに立った。

『おっと!E組のトップバッターは全校集会の時にトイレに駆け込んだ転校生だぁ!ピッチャーの速球にビビってまた漏らさないでくれよ!?』

実況の放送部の言葉に本校生たちの笑い声が響く。

完全アウェイの状況でもE組は落ち着いていた。敵陣なのは百も承知、今更この程度の事では取り乱さない。

 

「誰が漏らすかーー!!てかっあの時も漏らしてねーよ!!待ってろよ!すぐにそんなこと言えない様に黙らせてやるからなーー!!」

・・・郷を除いて・・・

 

頭に青筋を浮かべながらバットを構える郷に対し野球部のエース進藤は第一球を投げた。

「ストラーイク!」

ボールは真っ直ぐにキャッチャーミットに吸い込まれた。

 

「どうした?振らないと当てることは出来ないぞ。最も、いくら振っても落ちこぼれのE組では俺の球は打てないがな」

進藤はニヤリと笑い二球目を投げた。

 

「そうかなっと」—コン―

郷がバントの構えを取るとボールはバットの中心に当たり一塁側に転がった。

 

「なにぃっ!?」

予想外の事に一瞬動揺したキャッチャーだったがそこは強豪校、すぐに対応しボールを拾うと一塁を見た。

 

「セ、セーフ!」

キャッチャーがボールを拾った時にはもう郷は一塁の上で欠伸をしていた。

「ふぁ~~~あぁ、遅せ~よ」

 

『なっなんだ今のスピードわ!?』

あまりのスピードに実況だけでなくヤジを飛ばしていた本校生徒たち全員が静かになった。

 

続いてバッターボックスに立った木村も進藤の投球に対しバントを取った。

郷には劣る物の元々E組最速であった木村も悠々と塁に出た。

次の磯貝も出て四番の杉野に回った。

 

「くっ!さっきからせこくバントを繰り返しやがって・・!」

次もバントが来ると思っていた進藤だったが杉野はバントの構えを取らない。

(勝負するつもりか?お前が一度でも俺の球を打てたかよ!)

進藤は自分のストレートに自信を持っていた。まともな勝負なら絶対に撃たれることは無いと、昔の杉野なら確かに打てないだろう

だが、今の杉野はあの時とは違う、あの時の自分の才能に自信が持てず一人で悩んでいたあの時とは・・・

(進藤・・確かに俺たちは落ちこぼれかもしれない、10回やったら9回俺が負けるかもしれないでも、この1回は俺たちが勝たせてもらうぜ!)−キーーン!―

杉野が振ったバットはボールを真芯に捉えた。

打球はライト深くまで飛んでいった。ライトが追い掛けるが追いつかない。その間に郷、木村、磯貝がホームに帰りE組は一気に3点を先取した。

 

 

 

 

「いや〜惜しかったね〜〜」

「もう少しで勝てたのにね〜」

バスケ部との試合を終えた女子達は男子が試合を行っているグラウンドへと向かっていた。

前半、油断していたバスケ部の隙をつき岡野がドリブルで翻弄し速水が正確なシュートを決め、ディフェンスでは片岡が手足の長さを生かし相手のパスを妨害しリードしていたのだが、後半に入りきを引き締めたバスケ部に反撃を許してしまい結果3点差で負けてしまった。

 

「う〜・・・ごめんね。私が何度もミスしたから・・・・」

「茅野ちゃんのせいじゃないよ」

「そうそう、気にすることないって」

落ち込む茅野を励ます倉橋と岡野であったが、茅野は落ち込んだままだった。

「バスケ部のキャプテンの揺れる胸が眼には入ると目の前が真っ赤になってボールをぶつけたくなっちゃって・・・」

「茅野っちのその巨乳への敵意はドコから来るの!?」

 

そんな会話をしているとグラウンドが見えてきた。

「さて、男子はどうなってるかしら?」

速水がスコアボードを確認すると現在、1回の裏、野球部の攻撃中得点は3対0でE組がリードしていた。

あの後、なんとか持ち直した進藤によって、追加点は取れなかったが杉野も野球部時代には持っていなかった変化球で野球部打線を翻弄していた。

 

「スゴイじゃん!野球部に勝ってるなんて!」

「おお!このまま行けば勝利間違い無したぜ!」

ベンチに来た中村に控えの岡島が答えていると打球が外野深くに飛んでいく。

「あっ!不味い!!」

「大丈夫、大丈夫、心配ねえよ」

焦る女子と比べてベンチに控えている岡島は落ち着いていた。

 

『行った〜〜!野球部、反撃の狼煙がとうとう上がったぞ〜!!』

実況も興奮し声をあげる。

 

本校生たちも先程まで沈んでいたテンションが一気に上がった。

やっとE組の無様な姿が見えると期待した。

ところが・・・

 

「ワリィけど、この距離は余裕で俺の守備範囲なんだよ」

地面に落ちようとするボールの間にグローブが入り込んだ。

「ア、アウト!」

審判の声が響くとグラウンド周辺が静まった。

確実にヒットとなると思われた打球は凄まじい速さで追い付いた郷がキャッチした。

これによりスリーアウトとなり唖然とするバッターや審判、観客を置いてきぼりにE組はベンチに戻った。

 

「郷、スゲーじゃねーか!」「良くあの球取れたなー!」

「よゆうーよゆうー大したことね〜よ」

盛り上がるE組ベンチだったが、ふと野球部側を見るとそこには何故か理事長の姿があった。

 

『えーたった今は言った情報によりますと、野球部顧問の先生が前日からの体調不良でたった今病院に運ばれた模様です。それに伴い理事長が自ら野球部の指示するとのことです』

そのアナウンスに周囲が沸くなか、E組は冷や汗を掻いている。

 

「いきなり来たな・・・ラスボスが・・」

理事長を中心に円陣を組む野球部は先程までとはまるで別人に見えた。

 

E組の攻撃に移りバッターの前原がバッターボックスに立つが野球部の守備を見てギョッとした。

内野手が全員異様な程前に出ているのである。

「おい!良いのかよ。あんなに前に出てよ!?」

「ルール上では野手がどこで守ろうと自由だよ。審判が違反と認めたら別だけどね・・・あの様子じゃあ審判は当てに出来ないね」

竹林の言う通り主審の教師はニヤニヤと笑っている。

 

そんな状態で落ち着いてプレーできるはずも無く、前原はバントを失敗、真上に打ち上げてしまいアウトとなる。流石の殺せんせーも打つ手なしでその回の攻撃は三者凡退で終わった。

そして野球部の攻撃、ここから野球部のそして理事長の反撃が始まることになる。

 

「んっ?おいおいリアリ~マジで・・?」

センターからバッターボックスを見た郷は唖然とするとした。

バッターボックスに立つ野球部がバントの構えを取っているのである。

数日練習しただけの初心者と経験者では技術の差は歴然である。

E組は殆どが野球初心者のため、バントの処理が出来ず守備のミスが連発する。

3点差はあっという間に同点まで追い付かれた。

何とかチェンジにするもこのペースでは次の攻撃で逆転されるのは目に見えている。

 

「カルマ君」

ベンチに戻ろうとするカルマに周りに気付かれない様に地面から顔を出した殺せんせーが話し掛けてくる。

「どうしたの、殺せんせー?」

「次の攻撃、君からでしたね。一つやって貰いたい事があるのですが」

 

 

 

E組の最後の攻撃、やはり野球部は前進守備を続行している。

「君!速くバッターボックスに立ちなさい!」

いつまでもバッターボックスに立たないカルマに審判が注意する。

 

「理事長さぁ~いくらなんでもこれは卑怯じゃないの~お前らもそう思うだろ?」

前半は野球部側のベンチに座る理事長に後半は観客の本校生対して言う。

 

「あっ!そっか〜お前らバカだからルールとか分かんないのか〜〜」

カルマの虫を見下すような視線は本校生たちの怒りを買うには充分な物だった。

 

「うるさいぞ!E組ぃ!」「たかがエキシビションでクレームつけてんじゃねーよ!」「文句があるんならバットで語って見ろ!!」

周囲からのバッシングが響く中、カルマはバッターボックスに立った。

 

「はは、スゲー野次・・・」

ネクストサークルで待機していた郷の足元に殺せんせーがやって来た。

「郷君、カルマ君が勝利のための布石を打ちました。次は君がお願いしますよ」

「ガレット!任せてくれよ」

 

カルマがアウトになり郷の番になる。

「ふ、次はお前か・・・いくら速くても塁に出さなければどうという事はない」

「安心しろよ。もうそんな小細工はしねーからよ」

そう言うと郷はバットを構える。

 

「ふ、その余裕が・・・どこまで続くかなぁ!!」

「何時迄もに決まってるだろ?」キーーン!!

郷の振ったバットは進藤の投げたボールの真芯を正確に捉えた。

ボールは一直線に飛んでいきフェンスを越えた。

 

「い・・・」「「「「「いよっしゃぁーーーー!!!」」」」

勝ち越しのソロホームランにE組ベンチは沸いた。

一方、観客の本校生や野球部、特に進藤は今起こったことが信じられなかった。

140キロを叩きだす自分のストレートを真芯で捉える事が出来る者など中学生で居るはずがない。

ついさっきまで心からそう思っていた。だが、たった今その自信は見事に叩き壊された。

理事長による教育によって作られた強者としてのプライドもまた音を立てて崩れて行った。

 

 

「では皆さん、最後の仕上げと行きましょうか?」

野球部最後の攻撃、E組はベンチ前で円陣を組んでいた。周囲には見えないがその中心では殺せんせーが顔を出している。

「守備を交代します。郷君がセカンドにカルマ君がシャーとに移ってください。そして・・・・」

 

「よーし皆!この攻撃をしのげば俺たちの勝ちだ!行くぞ!!」

「「「「おーーーーー!!!」」」」

 

バッターボックスには進藤が立っていた。まだ先程のホームランの動揺は残っているがそれでも、杉野の球を打つことには問題は無い。しかし・・・

「んじゃ、行こうか郷?」「ああ、やられた分は返さないとな・・」

郷とカルマはゆっくりとホームベースに向かい歩いていく。

 

『こっこれはぁ!E組も前進守備だーー!!』

「さっきそっちがやった時に反則にならなかったんだから文句はないよね?」

審判は何も言えずに黙るしか出来ない。

 

(ふん!コケ脅しを・・・一発フルスイングすればビビるに決まっている)

2人は野球部の前進守備と同じ位置まで来た。が・・・まだ歩き続ける。

(なっ!?正気か?こんなに近づいて・・・)

2人は進藤の目の前で止まった。一メートルも無いこの距離はバットを振れば間違いなく当たる距離だった。

「しっかり避けるんで遠慮なく振って構わねーよ」

郷はそう言うが、進藤は動揺したままだ。金属バットのフルスイングが当たればどれだけの怪我をするか分からない。

普段見下している相手でも怪我を負わせられる程の神経を進藤は持ち合わせていない。

咄嗟にベンチの理事長を見るがその目は〔構わず振りなさい〕と告げていた。

(しょっ・・・・正気かよ・・・?理事長もコイツらも・・・・)

理事長の教育に進藤は着いていけなくなった。そして同時に思った。

(今自分がやっているのは本当に野球なのか?)と

 

「う・・・・うああああぁぁぁぁ〜!!」

迫り来る投球に叫びならもバットを振る。

やけくそで振ったバットはボールのはるか上を通り過ぎ郷とカルマに迫る。

が・・・2人はバットが当たるギリギリでわずかに後ろに身を引き躱した。しかし進藤にはまるでバットが2人をすり抜けたように見えた。

 

「ほら、どうしたの?もっと腰入れて振りなよ・・・・殺す気でね」

「あ・・・ああ・・・」

カルマの言葉が止めとなり進藤の闘志は殺された。

 

「ゲッ・・・ゲームセット!!」

審判の戸惑いの声と共にE組の勝利が決まった。

 




なんだか最近クリムやマッハの出番が皆無な気がします・・・
次回は久しぶりに変身しますので宜しければ待っていてください。


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新任教師はお父さん?


1つ・・・一ヶ月投稿しなかった。
2つ・・・郷を変身させるといったのに今回も変身させなかった。
3つ・・・時間をかけたくせに文才が上がらない。

・・・・自分の罪は数えましたのでこれからも温かい目で見守ってください。


初夏の日差しの下、烏間は訓練を行う生徒たちを観察しながら手元のデータを見る。

「訓練を初めて三か月目・・・皆着実に力を付けているな」

今、目の前では郷を相手に実践訓練が行われている。

「その中でも戦果が期待できる生徒も何人かいるな・・・」

 

「さぁ、カモ〜ン・・・掛かってきな」

「いくぞ前原!」「おお!」

磯貝と前原は一斉に郷に切り掛かる。

 

二人の息の合った連携で絶え間なく迫り来るナイフを郷は身体を僅かに反らし避けるが磯貝の突きが頬を掠めた。

だが、その一瞬に磯貝に隙が出来た。突き出されたナイフを磯貝の腕ごと掴みそのまま前原のナイフを防ぐ盾に利用した。

 

「うわぁ!」

力を込め前原を押し出すと、磯貝の腕に足を絡め間接技を掛けた。

 

「イテッ!イテテテテ!」

「磯貝!」

前原は磯貝を助け出そうと走る。

 

「コレ、借りるな」

郷は力が入らなくなった磯貝の手からナイフを奪うと迫り来る前原の攻撃を身を低くし避け目前にナイフを突き出した。

 

「まっ・・・参った・・」

目の前に突き出されたナイフに冷や汗を流しながら前原は両手を挙げた。

 

「磯貝悠馬と前原陽斗は運動神経も良く、息も合ってある。二人同時なら郷君に攻撃を当てることも出来る様になったな。他にも・・・・」

 

 

「しっ!次ぃ!」

「やあぁぁっ!」

続いて片岡と岡野の2人が挑む。男子顔負けのリーチで攻める片岡に対し郷は素早く懐に入り込み掌底で腹部を狙う。

「させないよ!」

だが・・・片岡の影から飛び出してきた岡野の蹴りがそれを妨害する。

「ちぃ!」

咄嗟に蹴りを掴み取るがその隙に片岡は距離を取る。そして岡野は掴まれた足を軸に空中で回転、回し蹴りを繰り出す。郷はすぐさま手を放し身を引くが岡野の追撃の蹴りが迫る。

「あっぶね!」

バク宙で更に距離を離し着地と同時に片岡に迫った。

 

「えっ!?」

気付いたら懐に入られていた片岡は反応が出来ずナイフを奪われる。そのまま振り払われたナイフは片岡の喉元で止まる。

 

「隙ありぃ!」

背後から岡野が踵落としを仕掛けた。完全に背後を取ったこの攻撃は躱せない、岡野はそう確信していた。

 

「残念」

郷は手に持つナイフを自分の脚元に落とした。そして、踵で勢いよくナイフを蹴り飛ばす。

するとナイフは岡野に向け一直炎に飛んでいく、思わず手を前に出し防ごうとしたが、そのわずかな隙で郷は岡野を地面に叩き付ける。

「ぐっぅぅ!」

一応怪我しないように注意したがそれでも多少の衝撃があり岡野は苦痛の声を漏らす。

「あっソーリー、わりぃ大丈夫か?」

「う、うん・・大丈夫・・・」

 

「片岡メグは男子並みの運動能力とリーチの長さがあり何よりみんなを引っ張るリーダーシップがある。岡野ひなたは元体操部として意表を突いた動きが可能だ」

 

「ご~う・・次は俺ね」

続いて前に出たのはカルマだった。2人は一定の距離を取り構える。カルマがナイフを持つ腕を上げ攻撃の意志を見せるが、郷の視線はカルマの足元に集中して僅かでも動いた瞬間後ろに引いた。

カルマは腕に郷の意識を集中させ接近した瞬間足払いを仕掛けようとしていたが、郷はすぐにそれを察知していた。

「ちぇっ」

考えがバレていると理解したカルマは大人しく引いていく。

「へっ!俺を罠に掛けようなんて百年はえ~よ」

 

「赤羽業は、一見のらりくらりとしているが・・・その目には常に強い悪戯心宿っている」

 

「次はお前ら来ね~か?」

「冗談じゃねえ・・・誰がやるかよ」

郷は日陰に居る寺坂たち三人を指名するが興味なしと言った様子だった。

 

 

「うむ、今のところ接近戦で期待できそうな生徒は磯貝悠馬、前原陽斗、赤羽業。女子では岡野ひなた、片岡メグ辺りだな。「そして殺せんせー、彼こそまさに理想の教師像だ。あんな人格者を殺すなんてとんでもない」勝手に人の思考を捏造するな!」

烏間のナイフを躱し殺せんせーは定位置の砂場に戻った。

 

 

「全体的に見て生徒たちの能力は著しく上がっているな。他に目ぼしいせいとはいないが・・・「うおおおおぉぉぉぉっ!!?」っ!?」

突然聞こえた郷の悲鳴混じりの叫びに顔を上げると血の気の引いた顔で息を乱している郷の目の前で渚が尻餅をついていた。

周りのみんなも突然の事に訓練の手を止め見ている。

 

 

 

「何やってんだよ渚、ちゃんと受け身取らないと」

「う、うんありがとう」

杉野に手を引かれ渚は起き上がった。

 

「わっワリィ、大丈夫か?」

郷もすぐに渚を起こそうとするがその顔には未だに戸惑いの色が現れていた。

突如背後から感じた得体のしれない殺気、それは幾多の死線を乗り越えてきた郷が恐怖を感じる者だった。咄嗟に拳を払うとそこに居たのは渚だった。

郷から見た潮田渚は観察力は優れているが直接の戦闘には向かないサポート向きの評価だった。そんなに渚があの殺気を?

郷には信じられなかった。

 

 

「烏間先生♪放課後みんなでケーキ食べにいこう~」

訓練終了後、今回の訓練データを纏めている烏間に倉橋が駆け寄る。

 

「誘ってくれるのはありがたいがコレから防衛庁の方に戻らなければならないのでな、君たちだけで楽しんでくればいい」

そう言うと烏間は職員室へと戻って行く。

 

「・・・烏間先生って私達とは何処か距離を取ってるわよね」

郷や千葉と一緒に片付けをしていた速水が呟く。

「まぁ、烏間さんも任務で教師やってるわけだしな〜」

「殺せんせーを殺したらもう俺たちと関わる理由は無くなるしな・・・」

「一線引いて接するのは当然、て訳ね・・・」

 

「そんなことはありませんよ」

背後から殺せんせーが会話に入ってきた。

 

「あの人にもしっかりと教師としての誇りがあります」

 

 

 

 

「よ!烏間」

職員室に向かう烏間の前に両脇に段ボールを抱えた体格の良い二人の男が現れた。

その一人、声を掛けてきた方に烏間は見覚えがあった。

 

「お前は、鷹岡!?」

「明日からお前のサポートを命じられてな、また仲良くやろうな」

 

二人はそのまま生徒たちの方に歩いていく。

 

「・・・・」

『知り合いかね?烏間』

「クリム・・ああ、空挺部隊のときの同期でな、名前は鷹岡明今は確か特務部隊で新兵の教官をしていたはずだ」

 

 

 

 

「んぁ、誰だあれ?」

郷が速水や千葉と今日の射撃訓練について話していると校舎のほうから見知らぬ男たちが歩いてきた。

 

「よぉ!E組のみんな!!」

男の一人がお人好しな笑顔で話しかけてくるが突然の訪問者に全員困惑する。

それを察したのか男は両脇に抱えた荷物を降ろすとその場に腰を下ろす。

 

「俺は明日から烏間のサポートでこのクラスに来る鷹岡って言うんだ。今日は先にみんなと仲良くなっておこうと思ってな、土産を持ってきたんだ」

鷹岡が後ろに待機していたもう一人の男に目で合図すると男も抱えていた荷物を降ろし蓋を開ける。

 

「「「わぁぁぁ~~~!!!」」」

中身を見た瞬間生徒たち、特に女子は目をキラキラさせた。中には色取り取りのスイーツが所狭しと詰まっていた。

「お近づきの印だ。遠慮なく食べてくれ!」

「えっ・・と、良いんですかこんなに頂いて・・・」

「気にするなって、これから一年間仲良くやっていくんだからな!っと、勘違いするなよ?物で買収しているわけじゃないぞ。俺はお前らと家族みたいな関係を作りたいんだ。俺たち家族で地球を救おうな!」

「はっはい!じゃぁ・・・みんなお言葉に甘えて・・・「「「「いただきま〜す!!」」うあっ!?」

磯貝を押しのけるように女子たちはスイーツに群がっていく。

 

 

 

「何だか同じ防衛庁の人でも烏間先生とは真逆な人ね」

フルーツでデコレーションされているケーキをフォークで一口大に切りながら速水は何人かの生徒と楽しそうに話す鷹岡を見る。

「ああ、烏間先生が名門校の厳格なコーチならあの人は近所のお父さんだな」

千葉も切り分けられたバームクーヘンを食べながら同意する。

「・・・・近所のお父さんねぇ・・・」

一方、郷は鷹岡の用意したものではなく自前のドーナッツを食べている。

「郷はいつもそればっかりね。さっき見たらドーナッツもあったわよ」

「チャラチャラデコレーションされてるのは好きじゃないんだよ。こういった素朴な味が良いんだよ」

ドーナッツを食べながら郷は探るような目で鷹岡を見続けていた。

 

「ん?」

背後から何か視線を感じ振り返ると鷹岡と共に来た男が郷を睨みつけるように見ていた。

「・・・・何すッカ?」

「・・・・・・・・・」

スキンヘッドに無数の傷がある強面の男はいかにも歴戦の兵士のような印象であるが視線に若干の不快感を感じていた郷は臆すことなく話しかけた。

 

郷が近づくと男の視線は更に鋭くなる。

 

「おいおい、藤堂。そんなに睨み付けるなよ」

一触即発の空気に鷹岡が入り込んだ。

 

「悪いな〜コイツは俺の同僚の藤堂って言うんだけど見ての通り無愛想な奴でな、気を悪くしないでくれな」

 

藤堂を郷達から離しす鷹岡は周りに聞こえない様に藤堂に話し掛ける。

「おい、今はまだ飴の時間だぞ。勝手なことはするなよ」

「・・・・ああ」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

生徒たちと楽しそうに接する鷹岡の様子を烏丸は静かに見ていた。

あれが教師としての正しい姿なのかもしれない・・・

自分よりも鷹岡の方がこの教室に相応しいのかもしれない・・・

そんな思いが頭に過る。

 

『悩んでいるようだね、烏丸』

「っ!クリムか・・」

普段なら直ぐに気付くクリムの接近にも気づかなかった。

 

「俺の役目は生徒たちを一流の暗殺者に育て奴を殺すことだ。その為には生徒たちと必要以上に関わることはせず、ただ訓練に専念すればいいと考えていた。だが・・・」

烏丸の目に映るのは鷹岡と楽しそうに話す生徒たちの姿だ。自分と一緒に居る時生徒たちはあんな笑顔であるか?

 

「生徒たちの事を考えると俺なんかよりも鷹岡の方が此処に居るべきなのではないのか?」

『そう悩めるのなら君には此処に居る資格があるさ』

そう言ってクリムは職員室から出て行く

 

 

 




本当は今回変身させる予定だったのですがそれだと長くなってしまうので二話に分ける事にしました。
次は・・・次こそは絶対に変身します!!
もし変身しなかったら・・・・この命、神に返します。


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迫る暴力


・・・・私の投稿スピードに不備はない!

ただ・・いまいちモチベーションが上がらなかったり銀魂やエグゼイドと言った映画を見ていたために執筆が遅れたのは事実だ。

だが私は謝らない!!どんなに遅くなっても必ず完結させられると信じているからだ!!


時計が11時を回ったころ、郷はパソコンに向かい調べ事をしていた。

画面には今日、E組に来た新教師《鷹岡明》の経歴が出ている。中には一部の者しか見ることのできない非公式の情報もある。

もちろん郷にその情報を見る権限はない。そう、郷は今防衛省のコンピュータにハッキングしている。

 

「今のところ特に怪しい所は無しか・・・」

なぜ郷が防衛省のデータを盗み見しているのかそれは今日の放課後の事だった。

――――――――――――――――――――

放課後、帰宅するためグラウンドに出た郷を呼び止める人が居た。

「詩藤君、少し良いですか?」

 

呼び止めたのは烏間の部下である女性、園川であった。園川に呼ばれ2人は人目の無い校舎裏へと移動した。

「?どうしたんスッか」

 

一瞬の躊躇の後園川は小さく口を開いた。

「・・・・鷹岡さん達には気をつけてください」

「ワァッツ?どういう事っスか?」

「・・・・私の口からはそれしか言えません」

それだけ言うと園川は去っていった。

 

―――――――――――――――――――

 

【鷹岡さん達には気をつけてください】

その言葉がどうにも気になった郷は部屋に戻るなりパソコンに向き合い防衛省のデータを見ていた。

「ん?これは・・・・」

暫く目につくデータを見ているととあるファイルが目に入った。

なんとなく開いてみるとそこには鷹岡と肩を組んで笑う若い兵たちの写真があった。一見すると楽しそうに笑い合っていることから互いへの良い信頼関係が築かれている理想の教官と教え子たちに見える。

だが、郷はその写真から何か違和感の様な物を感じた。

 

『郷、まだ起きているのかね』

次の写真を開こうとした時クリムが部屋に入って来た。

「うぇっ!?って、クリムかよ〜〜びっくりさせるなよ。」

『明日も学校なのだから早く眠らないか』

「へいへい、もう寝ますよ」

しょうがなく郷はパソコンを閉じその日は眠ることにした。

 

―――――――――――――――――

 

「ふぁ〜〜〜あっ!ねみ〜〜」

郷は昨夜の寝不足がたたり欠伸をしながら校舎への山道を登っていた。

暫くすると前方に渚と杉野が歩いていた。

「よっ、二人ともおふぁひょ〜」

「郷君、おはよう」

「やけに眠そうだな」

「昨夜ちょっとな」

 

すると、何処からかパトカーのサイレンが聞こえてきた。

徐々に近付いてくるその音に渚と杉野は首を傾げた。

「何か近付いてくるね。こんな山の中に警察が来るなんて・・・」

「まさか、殺せんせーの事がバレて通報されたんじゃ!」

 

そんな心配を他所にサイレンはどんどん迫る。

そして三人の前にやって来たのは・・・・ミニカーサイズのパトカーだった。

「「えっ?」」

呆然とする2人に対し郷はパトカーに近づいていく。

 

「おぉ~ハンターじゃねぇか。おつか~れ」

パトカーは郷の掌に着くと何かを伝えるようにランプを点滅させた。

 

「郷君、それって・・?」

「ん?ああ、こいつはジャスティスハンター、情報収集のために全国に飛んでもらっているシフトカーの一対だよ」

「へぇ〜」

杉野は興味深々と言った感じでハンターを見る。その間にもハンターはランプを点滅させ続ける。

 

「どうやらロイミュードを見つけたみたいだな。殺せんせーには遅れるって言っといてくれな〜!」

来た道を戻りながら叫ぶ郷に2人は手を振り見送った。

「頑張って来いよ!」「気を付けてね!」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

山道を一気に駈け下りた郷が公道に出ると丁度自動操縦でライドマッハがやって来た。

「お!ナイスタイミング!」

 

「郷?どこ行くのよ?」

郷がライドマッハに跨りヘルメットを被ると背後から声を掛けられる。振り返ると速水が居た。

「ちょっと町までロイミュード狩りにな。二時限目ぐらいには戻って来るさ」

「そう・・・気を付けなさいよ」

「ガレット!」

サムズアップをしアクセル全開で郷はハンターの後を追った。

 

 

 

――――――――――――――――

 

「ふぅ、ここか・・」

数分後、郷は街中のビルの建設地にやって来た。今日は工事が休みなのか人は居なかった。

 

「おっかっしいな・・いね~じゃんかよ・・・」

いくら見渡してもロイミュードの姿は見当たらない。

「本当に居たのかぁ?」

思わずハンターを疑う様に見るがハンターは間違いないと主張するようにランプを点滅させ続ける。

「わあった、わあった。もう少し探すよ」

郷は建設中のビルの中に入る。すでにある程度の工事は終了しており内部も出来上がっていた。

 

ゼンリンシューターを構えながら室内を進むが一階、二階、三階と上がっていくがやはりロイミュードの姿はない。結局、屋上まで来てもロイミュードを見つけることは出来ずもう逃げたのかと思い戻ろうとした時、突然ビル全体が激しく揺れ始めた。

「なっ何だぁ!?」

次の瞬間、郷の足元の床が崩れ堕ちた。

「なっ!?うあああぁぁぁ〜〜〜!!!」

 

 

――――――――――――――――――――――

 

「よっし!今日から烏間の代わりに俺がお前らの体育を担当するぞ!」

 

三時限目の授業の体育が始まり生徒たちは体育ジャージでグラウンドに居た。生徒たちの前では新教師の鷹岡が立っている。

「少し厳しくなるけど頑張ったらまた旨い物食わせてやるからな〜!」

「そんなこと言って、本当は自分が食べたいだけじゃないの?」

「バレたか?お陰でこの腹だよ」

中村の言葉に鷹岡は自身の腹部をさすりながら笑いつられてっ生徒たちも笑いだす。だが速水はみんなと一緒に笑う気にはなれず溜息を吐く。

何時になっても郷が戻ってこない。グラウンドに出る前にクリムに話を聞いてみたがクリムにも連絡は来ていないようでクリムはシフトカー達と共に捜索に向かった。

 

「よ~し、今から新しくなった日程表を配るから回してくれー!」

鷹岡は手に持ったプリントの束を先頭にいた磯貝に渡した。

 

「えっ!?」「な‥何だよこれ!?」「うそでしょ・・・?」

プリントに書かれた日程表を見て生徒たちは驚愕した。そこには、朝の八時から夜の九時まで訓練が組み込まれておりその合間に申し訳程度に授業が入っていた。

 

「ちょっ!これ本気ですか!?」

思わず磯貝が異議を唱えるが、鷹岡は笑顔のままだ。

 

「世界を救うならこれくらいはしないとな。大丈夫さ、俺たち家族で力を合わせればこれくらいの困難乗り越えられるさ」

「冗談じゃねーよ!こんなのできる訳ないだろ!授業の時間をこんなに削られたら成績も落ちるし、遊ぶ時間だって!」

反論する前原の腹に鷹岡の膝が突き刺さった。

 

「がぁっ・・!?」

「出来ないんじゃないやるんだよ」

 

崩れ落ちる前原に生徒たちが駆け寄るがそれを見る鷹岡の目はとても冷たい物だった。

「言っただろ俺たちは家族だ。何処に父親に逆らう子供が居るんだよ?俺たち家族で地球を救おうぜ!」

再び笑顔になり生徒たちと肩を組む鷹岡だがもはや生徒たちにとってその笑顔は恐怖の対象でしかなかった。

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

鷹岡がその本性を明かした同時刻1台のスポーツカーが椚ヶ丘市内を走っていた。

深紅のボディーで颯爽と走るその姿はすれ違うドライバーや通行人達が思わず振り返ってしまう魅力があった。

しかし、外からは見えないがその運転席に人の姿はない。

「何処に居るんだ郷・・・」

フロント部分に設置された専用席からクリムは車を走らせる。

この車《トライドロン》はクリムの身体の一つであり、自在に操縦する事が出来る。

 

『ん、アレは・・・?』

街の外れまで来たトライドロンに並走するようにフレアがやって来た。

 

フレアは数秒の間並走を続けると進路を変えだした。

『見つけたのか!』

クリムもすぐに後を追うようにトライドロンを方向転換させた。

 

数分後、クリムが辿り着いたのは近日完成予定のマンションの建設現場だった。

だが、本来そこにあったはずの完成間近のマンションはそこには無く代わりに大量の瓦礫の山があった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

「いーち!にーっい!さーーん!ホラがんばれよーーー!!」

鷹岡の大きな声が響くグラウンドで生徒たちはスクワットを行っていたがその前に行ったグラウンド20周と坂道ダッシュ10本により生徒たちの体力は限界だった。

「くっそぉ〜・・・キツすぎるだろこれ・・・」

「このままじゃ、殺せんせー殺す前にこっちが死んじまうよ・・・・・」

 

そんな生徒たちを前からは鷹岡が後ろからは藤堂が見張っている。

 

「も・・もう無理・・・」

力尽きた速水がその場に崩れる様に座り込むと藤堂が無言で近付く

 

「誰が座って良いと言った?」

藤堂の平手が速水の頬に叩き付けられる。

悲鳴を出すことも出来ずに吹き飛んだ速水に倉橋が駆け寄る。

「凛香ちゃん!大丈夫!?」

「ッ!ええ・・・大丈夫・・・・」

そう言いつつもその顔にはくっきりと痣が出来ている。

 

「立て、早く続きをしろ」

「お願いですから少しだけ休ませてください!」

 

無理矢理立たせようと速水の腕を掴む藤堂に倉橋が叫ぶ。

 

「オイオイどうしたんだ藤堂?落ち着けよな~」

鷹岡は藤堂を制止すると座り込む速水に視線を合わす様に腰を下ろす。

「でもお前らもダメだぞ。父ちゃんの許可なく休むなんてなぁ~」

「なっ何が父親よ!あんたなんて只の独裁者じゃない!!」

「・・・凛香ちゃん・・」

「父ちゃんに対してそんな口をきく悪い子には、お仕置きが必要だなぁ!」

迫り来る鷹岡の拳に速水と倉橋は目を瞑る。しかし拳は二人に届く前に間に入って来た烏間によって防がれた。

「・・・いい加減にしろ鷹岡、これ以上生徒たちに危害を加えるというなら俺が相手になるぞ」

 

烏丸の気迫に鷹岡は一瞬たじろぐがすぐに余裕を取り戻したような笑みを浮かべた。

「オイオイ待てよ烏間、そこまで言うならこうしないか?お前が今まで育ててきた生徒の中から一人選んで俺と戦わせる。もしも勝てたら俺は大人しく引いてやるよ。どうだ?」

「何だと!?」

「もちろんハンデは付けるぞ。俺が素手に対してそっちはコレを使っていい」

鷹岡が取り出したものを見て生徒たちは戦慄した。

鷹岡の手には刃渡り数十センチのナイフが握られていた。

「コイツを俺に当てることができればお前らの勝ちで良いぞ」

 

鷹岡の突然の提案に烏間は考える。

このまま鷹岡を放っていてはいずれ生徒たちは壊されてしまう、上に掛け合い鷹岡を任から外そうにも既に手を回されているだろう。

たが、まだ訓練をはじめて数ヶ月の彼らが空挺特殊部隊の鷹岡に勝てるはずがない。ましてや対殺せんせー用ナイフでは無い本物のナイフを人に向けるなど出来るはずがない

もし郷がいれば烏間は迷うことなく彼を選んでいただろう・・・・・

 

数秒の思考の末、烏間は1人の生徒の前に立った。

「渚君、やってみないか?」

烏間の言葉に渚だけでなく全員が驚く、今までの訓練から見て渚は前線で戦うタイプではなく後方でのサポートに適していると思われていたからである。

「オイオイ、烏間ぁ〜いくらなんでも勝負を捨てすぎだろぉ〜?」

 

あざ笑う鷹岡の声を聞き流し烏間は真っ直ぐ渚を見る。

「良いか渚君、この勝負君は鷹岡に勝つ必要はない。ただ、殺せば勝ちなんだ」

そう言いナイフを手渡す烏間の眼は正しく1人の教師の眼だった。

 

 

ナイフを受け取り渚は静かに鷹岡と向かい合った。相手は屈強な現役の軍人だ。だが何故か恐怖は感じなかった。

そうだ・・倒す必要はない。ただ殺せばいいんだ・・・・

静かに一歩を踏み出した。また一歩、また一歩とまるで散歩をしているようにゆっくりと鷹岡に近づいていく。

そしてとうとう2人の間合いが無くなった。

 

「っ!?」

鷹岡がそれに気づいた時にはもう遅かった。

渚が突き出したナイフが目前まで迫る。とっさに顔を守ろうと腕を出すが、その為視界が一瞬塞がれる。

次の瞬間には勝負はついており渚のナイフのは鷹岡の首元に当てられていた。

 

予想を大きく覆す結果に周りで見ていた生徒たちは呆然とする。

数秒の沈黙の後、思考が追いついた。渚の勝ち、その瞬間生徒たちは一斉に渚に駆け寄る。

 

 

「ふざけるなぁ!!!」

突然聞こえた怒号が生徒たちの足を止める。

 

のらりと立ち上がる鷹岡の顔は夜叉の様に怒りに歪んでいる。

「ガキが不意打ちで勝ったぐらいで図に乗るなよぉぉぉ!!」

 

怒りのままに渚に殴り掛かろうとするがそこに烏間が立ちふさがった。

「邪魔するな!烏間ぁぁぁぁ!!げぶっ!?」

鷹岡の拳を躱した烏間の肘が鷹岡の顎に炸裂する。衝撃で大きく脳が揺れ鷹岡はその場で意識を手離す。

 

「皆すまなかったなうちの身内が迷惑をかけて、このことは俺から上に報告をしてすぐにでも鷹岡を任務から外す様にしよう」

それを聞いて生徒たちが喜んでいると突然背後からドゴッ!と言う音と共に振動が響いた。

振り返ってみるとそこでは藤堂が地面に拳を打ち付けている。その衝撃で地面は凹みその威力を物語っている。

 

「思った以上に使えない奴だったな、鷹岡は・・・まぁ良い」

ゆっくりと近づいてくる藤堂に烏間と離れてところでこれまで見ていた殺せんせーも生徒を庇うように前に出た。

 

「その力普通の人間ではありませんね。まさかとは思いますが・・」

「ふっ察しが良いな。馬鹿な防衛省の連中は気付いてなかったのだがな」

そう言い藤堂はその姿をコブラ型ロイミュード《054》に変えた。

 

「まさか・・防衛省の人間にもロイミュードが!?」

烏間は懐から取り出した銃を撃つがその弾丸を054は易々と掴んだ。

 

「くっ!早く郷君に知らせるんだ!」

「無駄だ。仮面ライダーなら一足早くあの世に送った」

「っ!、そ、そんな・・・!」

054のはなった言葉に速水は膝を付く、その光景を嘲笑いながらも054が近づいて来る。

「安心しろ。お前らもすぐに後を追わせてやっ《バシュッ!!》グウゥゥ!?」

山道の方から飛んできた光弾が054に命中する。

忌々しそうに山道に視線を向けると1台の赤いスポーツカーが飛び出してきた。車はそのまま054に向け一直線で走る。

 

「チィッ!?生きていたか・・」

ギリギリで車を飛び越え距離を取った054は舌打ちしながら睨みつける。飛び越えた時にフロントガラスの向こうに見えたからである。忌々しい相手が・・・

 

054と入れ替わるようにE組の前に来た車(トライドロン)の扉が開き、そこからマッハが降りてきた。

「いや〜〜毎度のことだけどいいタイミングで着くよな〜」

トライドロンから降りたマッハはE組を守るように054と対峙する。

 

「郷君、無事でしたか!」

「と~ぜん!瓦礫の下敷きになっている所をクリムが助けてくれたんスよ」

 

「ちぃ!まぁ良い、貴様は直接この手で痛みつける。俺の新たな力でなぁ〜〜!!」

054が叫ぶとその姿は徐々に変わっていく、右手は鋼鉄の竹刀のように左手は同じく鋼鉄の鞭になり身体中にはまるで返り血のような赤い染みが浮き出ている。

 

「俺の新たな名それは《バイオレンス》だぁ!!」

まさにその姿を表す名前を名乗りバイオレンス(暴力)は鞭を振るう。

鋼鉄で在りながら鞭はしなやかな軌道で迫り来る。撃ち落とそうとするマッハの銃弾を弾き飛ばしゼンリンシューターを持つ右腕に絡み付く。

そのままバイオレンスは左腕を引くとマッハの身体は宙に浮き引き寄せられた。同時にバイオレンスは身を屈めると右腕を構える。

 

「喰らえぇ!」「ぐぁ!?」

鋼鉄の竹刀はマッハのボディに炸裂すると火花を散らした。

 

「まだだぁ!!」

バイオレンスは更に左腕を巧みに動かし体勢を立て直そうとするマッハの動きを封じながら何度も攻撃を加える。

 

「あんま調子にぃぃ・・・乗んなよ!」

マッハは右手に持ったゼンリンシューターを投げ渡す様に左手に持ち帰るとゼンリンストライカーで鞭を切り裂く、そのまま無防備になった左側からゼンリンシューターを振るう。

 

「貰った!」

「アマァァイ!!」

バイオレンスの左腕が巨大な握り拳になりゼンリンシューターを殴り飛ばした。

丸腰になったマッハにバイオレンスの拳と刀が襲い掛かる。

 

「グアァァ!!」

拳一撃を受け大きく吹き飛び地面に叩き付けられる。

 

「ククク、鷹岡に付き合わずに初めからこうやって叩き潰せば良かったんだ」

ズシン、ズシンと威圧するように踏み締めながら近付くバイオレンスは拳を大きく振り上げた。

 

「これで・・・・終わりだぁ!!」

「ヤッベェ!」《シフトカー!タイヤ交換!・・・》

マッハのメット目掛け拳が振り落とされる。

隕石を思わせる勢いで振り落とされる鋼鉄の拳、E組の生徒たちは訪れるだろう最悪の結果にあるものは両手で視界を被いあるものは目を背けせめて直視しないようにしようとした。

 

 

―ガキィィン!・

周囲に鈍い金属音が響いた。

速水たちは恐る恐る顔を上げるとマッハのメットとバイオレンスの拳の間を鉄格子が遮っていた。

「セーフ・・・サンキュー、助かったぜハンター」

マッハのドライバーにはジャスティスハンターが収まっていた。

 

「こっからは・・・・俺の反撃だな!」

バイオレンスの腹部を蹴り上げ素早く立ち上がるとジャスティスハンターの力で呼び出された鉄格子、ジャスティスケージを構える。バイオレンスの両腕の攻撃を防ぐ盾として使い、隙を見ては攻撃のための武器として使う。

「うらあぁぁぁ!!」

隙を見てゼンリンシューターを拾い振り上げるようにバイオレンスにゼンリンストライカーを叩き付けた。

火花散り苦痛の声をあげるバイオレンスに追撃の回し蹴りが炸裂する。

 

「さ〜て、暴行罪で逮捕だ」

《ゼッタイ!トラエール!》

手に持つジャスティスケージを空中に放り投げブーストイグナイターを連打するとケージから無数の鉄パイプが降り注がれる。

パイプはバイオレンスの周囲を囲うように突き刺さる。最後にジャスティスケージが覆いかぶさりバイオレンスを捕える檻が完成した。

バイオレンスは抜け出そうと檻を攻撃するが高い強度を誇る檻を破壊することは出来ず逆に流れる電流でダメージを受けた。

 

「ロイミュード054、バイオレンス!器物破損及び俺のダチ達に対する傷害の罪で・・・ジャッジメント!!」

《Judgement time》

マッハの手には小型のスマホの様なデバイスが握られていた。画面には青い丸と赤いバツ印が交互に映し出される。

『ロイミュードに対しては郷の独断と偏見により問答無用に判決が下される』

 

 

 

 

「・・・・え~~・・クリム先生どうしたんですか突然?」

いきなりナレーションのようなことを言い出したクリムに殺せんせーも思わず突っ込んでしまう。それに対してクリムも恥ずかしそうに答える。

『しょっしょうがないだろ/////!郷がハンターで決める時はこのナレーションをしろと言うのだから!!』

「そもそも独断と偏見で決めるんじゃあの機械の意味ないじゃない」

呆れる速水の言葉にその場の全員が同意した。

 

そうこうしている間に判決が下された。デバイスに移ったのは当然のごとくバツだった。

「デリート許可!!」

《ヒッサツ!フルスロットル!トラエール!》

マッハの左右に巨大なタイヤが出現する。高速で回転するタイヤはマッハを挟み込むように迫ると押し出されるようにマッハは前に出る。

同様のタイヤが次々と現れマッハはさらに加速していく、もはや人の眼では負えない速度まで加速したマッハは真っ直ぐに檻の中のバイオレンスに迫る。

 

「はあぁぁぁぁぁぁ〜〜〜!!」

加速の勢いに乗ったマッハはゼンリンシューターで檻ごとバイオレンスを打ち砕く。

「ぐ、がぁぁぁ~~!!!」

断末魔と共にバイオレンスは爆炎に包まれていった。

「しゃ!良い絵だったろ?」

爆炎をバックにマッハはお決まりのセリフを言う

 

パチパチ

その場に拍手の音が響く、見ると校舎の方から理事長が歩いて来ていた。

「いや、仮面ライダーの戦い初めて見ましたが・・素晴らしいですね。まさに強者ですね。それに引き換え・・・」

理事長は気絶している鷹岡に近づくと口に無理やり一枚の紙を詰め込む。

「ばはぁ!?げほぉ!?」

突然の事に一気に意識を取り戻した鷹岡を理事長は見下す目で見る。

 

「ただの暴力でしか強さを主張する事が出来ない教師は私の学園には不要です。あなたはクビです今すぐ去りなさい」

鷹岡は理事長とE組を睨みつけると足早に去っていった。

 

「さて、詩藤郷君、そしてクリム先生見せてもらいましたよ。未来の戦士仮面ライダーの戦い。とても素晴らしいモノでした。また機会があればじっくりと拝見させてもらいますよ」

それだけ言うと理事長は山道へ向け歩いていく、鷹岡の理不尽な暴力とロイミュードの脅威、そして理事長の威圧感から解放された生徒たちは安どのため息を漏らした。

 

その場の全員の気が緩んでいたため誰も気付かなかった。裏山の木々の間を逃げていく054の数字に・・・

「コノママデハスマサンゾ・・・・ッ!」

 





登場ロイミュード
・バイオレンスロイミュード
054が進化した姿、鷹岡の暴力の感情を吸収し続けて進化した。
右腕が鋼鉄の竹刀、左腕が鋼鉄の鞭になっている。また、左腕は他にも巨大な握り拳のようにもなる。
身体中には血の様な模様が所々に付いている。
その名の通り暴力で相手をいたぶることに快感を得る。
その性格上武器も相手を殺す事よりも痛めつける事に特化されている。

コピー元は藤堂と言う鷹岡の同僚、隊内で暴行事件を起こし左遷されたところを鷹岡に見込まれ共に暴力による指導を行ってきた。


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夏のオアシス


エグゼイド最終回、良かったですね!
一話の冒頭及びオープニングのシーンをうまく取り入れた最終バトルは本当に良かった!

最後は初期の通常フォームのライダーキックで決める展開は燃えますね。
来週から始まるビルドにも期待です。



椚ヶ丘学園ではいかなる環境においても快適に勉強できるようにすべての教室に冷暖房が設置されている。

が・・・それはあくまでも本校舎での話である。E組の旧校舎にエアコンは愚か扇風機さえも置いていない。そして現在は7月、夏である。早い話が・・・

 

「あち~~~~~いいいいぃぃぃ」

E組は夏の暑さに完全に負けていた。

 

ある者は下敷きを団扇代わりに仰ぎある者は濡らしたハンカチを首に当てている。

殺せんせーもグニャ~~という音が聞こえてきそうなほど教卓にもたれ掛かっている。

 

「こんなんじゃ授業に集中なんてできね~よ」

「殺せんせ~・・北極にでも連れてってよ~~」

「何を言っているのですか!夏と言うのは暑いモノなんですよ良い歳の若者たちが情けないことを言うものではありません!!・・・ちなみに先生は放課後、成層圏に涼みに行きますが・・・」

「「「ずっけ〜〜〜!!!」」」

 

「なあ、郷ぉ〜シフトカーに涼しくしてくれるヤツって居ないのか?」

藁にもすがる思いで菅谷が郷に聞くとその手があったかと言わんばかりにみんなの期待の視線が集まる。が・・・・

 

「ムリムリ、今、丁度出払ってるんだよ」

机にうつ伏せのまま力無く郷は手を振る。

 

小さな希望が断たれ全員の気持ちが沈む。

 

「で、でも今日からプール開きだから楽しみだよね!」

そんな空気を変えようと倉橋が笑顔で立ち上がる。

 

「何言ってるんだよ。俺たちE組にとってはプールの時間は地獄になるんだぞ」

「どういう事?」

杉野の言葉に疑問を持った茅野が聞く

 

「プールは本校舎にしかないからこの炎天下の中を歩いて行かないとならないし、帰りはプールで疲れている身体であの山道だぞ。まさに地獄の行進だろ」

「うわぁ〜それは嫌かな?」

その光景が頭に浮かび上がり茅野はひきつった笑みを浮かべた。

「「「はぁ〜〜〜〜・・・」」」

 

「にゅ〜・・いけませんね。これでは授業になりません。仕方ない、皆さん水着に着替えて裏山の沢に行きましょう」

 

――――――――――――――――――――――

 

殺せんせーに言われるまま水着に着替えた生徒たちはその上にジャージを羽織り裏山を歩く

 

「裏山に沢なんてあったのね」

「ああ、そう言えばこの前速水が用事があるって言って先に帰った日に千葉と訓練の途中で見つけたっけなぁ」

「沢と言っても足元が浸かるような小さな奴だけどな・・」

 

「さあ着きましたよ」

数分歩いたのち、木々の間から見えてきたのは郷や千葉が言っていたような小さな沢では無かった。

そこには川から流れる豊富な水が大きく広がった空間にたまり25mコースまで完備された立派なプールがあった。

「昨日のうちに周りの整備を終わらせておきました。その後一晩掛け水を貯め終え後は・・・一秒でプールに到着ですよ」

「「「「「いやっほぉーーーー!!」」」」」

殺せんせーが言い終えると同時に生徒たちは一斉にプールに飛び込んだ。

 

 

 

プールに飛び込んだ生徒たちはそれぞれ思い思いに遊び始めた。

 

速水は矢田や岡野、片岡といった数人の女子達とバレーボールを始めた。

「ほら凛香!頼んだわよ!」

「任せて!」

 

岡野のトスしたボールに合わせタイミングよくジャンプした速水はそのまま倉橋と片岡の間に打ち込んだ。

ボールは狙い通りに二人の間に飛んでいき水面に激突した。

「あっ!?」

 

ボールは水面と激突したと同時に大きく跳ねプールの外、茂みの中に消えていった。

 

「ごっゴメン!すぐに取ってくるわ!!」

 

打った責任から率先して取りに向かった速水が茂みに入るとボールはすぐに見つかった。

 

だが、速水の視線はボールでは無くその側で倒れている三脚付きのカメラに向かっていた。

恐らく飛んできたボールが当たり倒れたのだろう。なら何故こんな所にカメラが設置されていたのか?

答えは明白だ。盗撮のため、しかもカメラ位置から狙いは自分達だ。

では誰が?盗撮と言えばクラス内では二人の該当者がいる。そして最後のピースはすぐそばにあった。

 

 

 

速水の視線の先にはいそいそとその場を離れようとするミニカーサイズの白いバイクがある。

自然とボールを持つ手に力が入る。

プールを見ると男子たちが25メートルコースで競争していた。

その中の一人、先頭を泳ぐターゲットに標準を合わせ構える。

ボールを顔の少し上の位置に上げ渾身の力で押し出す。

直線の軌道を描きボールは飛んでいく。そして、ターゲットがゴールし動きを止めた瞬間

 

「しゃっあ!俺のかっギブオッ!?」

 

顔面にボールをめり込ませ水面に浮かぶターゲットを確認し速水はゆっくりと近付いていく。

 

 

 

「ごっ郷!大丈夫かよ!?」

 

前原と木村が水面に浮かんだ状態の郷に駆け寄る。顔にめり込んだボールを外した郷は怒りの表情で周りを見渡す。

 

「誰だよ!人の顔面に無駄に強烈な一発撃ちこんでくれたのは!!」

「私だけど何か文句あるかしら?」

 

背後から聞こえてきたのは氷の様に冷たい声だった。耳に入った瞬間夏の日差しによって暑かった身体が凍えるほどの寒さを感じ始めた。

良く見ると先程まで自信を心配していた前原たちも顔を青くし少しずつ離れていくのが分かる。

ギ・ギギギ・・と古いブリキ人形のように後ろを振り向くとそこには岩場からまるで汚物を見るかのような目で見降ろす速水が居た。

その両手には郷が最近新しく買ったばかりの防水カメラとシグナルマッハが握り潰されかけていた。

「何か言い残すことは?」

「そ・・・ソーリーソーリ、髭ソーギブシュ!?」

 

軽いジョークでその場を乗り切ろうとした郷の顔面に今度はカメラとシグナルマッハがめり込み再び水面に浮かんだ。

 

ピピー!

「速水さん!暴力はいけません!」

 

そこに足の長い椅子に座った殺せんせーが笛の音と共に注意する。

渋々といった風に速水が返事をすると続いて触手を伸ばし郷の顔に納まっているカメラと少し離れた所にいる岡島のカメラを盗る。

 

「郷くんに岡島くん!プール内は撮影禁止です!木村くんもプールサイドは走らない様に!転んだら危ないですよ!」

 

更に潜水勝負をしていた中村と原、泳がずに本を読んでいる狭間と次々と生徒たちを注意していく殺せんせーに全員が想った。

 

((((小うるせ〜〜〜))))

せっかくプールで上がった好感度がまた下がってしまったことに気付く事無く上機嫌に笛を吹く殺せんせーであった。

 

「もぉ〜〜せっかくのプールなのに堅いことばっかり言う殺せんせーには・・こうだ!」

 

倉橋がほんの軽い気持ちで殺せんせーに水をかけた。

すると・・・

 

「きゃぁん!」

「「「「・・・・・はっ?」」」」

 

気色の悪い声を上げながら殺せんせーは避けた。

あまりに予想外の反応に生徒たちの動きが止まる。

 

それを見たカルマが殺せんせーの座る椅子の脚を掴み大きく揺らす。

 

「にゅあぁ〜〜〜!!!カルマくん!揺らさないでぇ〜〜!!落ちる!落ちるから〜〜〜!!」

 

そのあまりの慌てぶりに生徒たちは一つの可能性に行きついた。

 

「えっと、殺せんせーってもしかして・・・水苦手?」

 

磯貝が呟くと殺せんせーは誤魔化すように口笛を吹き始める。

 

「い、いいえ〜別に水を浴びると触手が水を吸って動きが悪くなるとか無いですし〜〜」

 

誤魔化そうとしているのだろうがはっきり言って逆効果だ。

意外なところで発覚した殺せんせーの弱点、これからの時期水辺に連れて行く口実を作るのは簡単だ。

うまく行けばこの夏に殺れるかもしれないそんな考えが生徒たちの頭に過った。

 

 




モチベーションが上がるので宜しければ感想宜しくお願いします。


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反発する心


仮面ライダービルド、中々良かったですね。

まだ一話ですが今後の展開に期待が持てます。

ライダーキックも個性的なエフェクトでしたしデザインも結構好みです。

次回の放送が楽しみです。




深夜、二つの影がE組校舎のある裏山にいた。

 

二人の内の一人はプールを探るような視線で観察する。

プールの広さ、周囲の岩や木の数、上流から下流まで見て回る。

 

「うむ、なるほどそれなら・・・」

 

しばらく考え込むとニヤリと笑い空に浮かぶ三日月の見上げる。

 

「となると、内部からの協力者が必要だね。あと・・・腕の良い傭兵が・・」

 

 

 

 

E組に専用プールができて数日、郷はその間何度も撮影を試みるがその度に速水や片岡に見つかり説教と制裁を受ける。

 

だが、決して諦めることはなく今日もプール前の休み時間にカメラの設置場所を探しに来た。だが、いざプールに着くと・・

 

「なっ・・・!なんじぃぃやっこりゃぁぁぁ!!?」

 

プールは何者かによって無惨にも破壊されていた。

周囲の岩にはスプレーによって書かれた幼稚な落書きがされ、休憩用のチェアーは強引に折られプールの中には無数の廃材が投げこまれている。

ゴミが大量に浮いているプールはお世辞にも入りたいと思えるものではなかった。

 

 

そこへ他のE組の面々もやって来る。どうやら郷よりも前にプールの異変に気づいた誰かが呼んだらしい。

 

「ひで〜」「誰だよこんな事したの・・・」「これじゃぁ泳げないよぉ」

 

みんなが口々に正体不明の犯人に文句を言う中、少し離れた位置でその様子をニヤニヤしながら見ているグループがいた。

「あ〜あ〜こりゃ〜もう泳げね〜な」

「ま、良いんじゃね?プールとかダルいしさ」

 

それは、寺坂を筆頭とした吉田、村松のE組きっての不良グループであった。

 

そんな三人の態度に誰もが疑いの目を向けるが暴力に置いては間違いなくE組トップクラスの三人に誰も文句を言えなかった。

 

「お前らかぁぁぁぁ!!!こんな事したのは!!せっかく絶対にバレない撮影スポットを見つけたのに・・・どうしてくれんだぁぁぁぁ!!」

 

バカを除いては・・・・

バカ(郷)は血の涙でも流すのではないかといった勢いで詰め寄ると寺坂の胸ぐらを掴み前後に激しく揺らす。

 

「知るかよ!!大体俺たちがやったて証拠でもあるのかよ!?」

「俺の勘が言ってるんだよ!俺の勘は当たる!」

 

すると口論を続ける二人の間に殺せんせーが現れる。

 

「止めなさい郷くん、犯人探しなんてする必要はありません。これぐらいでしたら・・・」

 

一瞬殺せんせーの姿が来たと思ったら壊されていたプールの一部がキレイに修復されていた。

 

「この様にすぐに元通りになります。ですから皆さんも犯人を探す必要はありませんよ」

 

生徒たちが返事をすると満足気に殺せんせーも微笑んだ。

するとそこに数台のシフトカーを連れたクリムがやって来る。

 

『殺せんせー、次の授業もあるだろう?残りはワタシ達に任せてくれないかね』

「おやクリム先生、よろしいのですか?」

『OFCOURSE任せたまえ』

 

クリムの指示のもとダンプ、ミキサーを中心にシフトカーは動き始めた。

 

「では、ここはクリム先生たちに任せ私たちは教室に戻りましょう」

「いや~良かった良かったたたたた!!痛ッてぇよ!」

 

それを見て殺せんせーに続いて生徒たちも教室に戻っていく、郷も付いて行こうとするがその肩を誰かがすごい力で掴み止めた。

 

「何そのまま行こうとしてんのよ・・・」

「・・ゲッ!」

 

振り返ると速水を筆頭に大変すばらしい笑顔の女子たちが居た。

その笑顔の奥に見える怒りのオーラが見えた郷は数秒前の自分の言動を思い出した。

 

〔せっかく絶対にバレない撮影スポットを見つけたのに・・・どうしてくれんだぁぁぁぁ!!!]〕

「あ~~~・・・・・・じゃあ俺、先に教室行ってるんで!!」

「「「待ちなさぁぁい!!!」」」

 

いつも以上のスピードでその場から逃げ出す郷を女子たちが追い掛けていく。

その光景を笑って見送る殺せんせーや他の男子たちと違い寺坂は面白くなさそうに舌打ちした。

 

 

 

――――――――――――――――――――――

寺坂はイラついていた。このE組は落ちこぼれの集まり、全員が自分の人生を諦め毎日を適当に過ごしていた。だからとても居心地が良かったのだ。それがあのタコ(殺せんせー)が来てから変わった。

周囲は成績が少しづつ上がっていき今までとは比べ物にならないぐらい生き生きと授業を受けている。

しかも最近はプールまで出来環境も良くなってきた。だからこそ気に食わなかった。

 

最初は自分と同じように反発していた生徒もいたが徐々に今のE組を受け入れている。

つい今も殺せんせーの補習を受けて成績が上がったと喜んでいた村松を八つ当たり気味に殴ったところだった。

イライラしたまま教室に入ろうとすると。

 

「うおおぉぉぉ!スゲーリアルだ!!」

中から吉田の興奮した声が聞こえた。

入ってみるとソコにはプールに投げ込まれていた廃材で作られたバイクに跨がる殺せんせーがいた。

 

「ヌルフフ〜〜先生は漢の中の漢ですからね〜こういう物にも興味はあるんですよ」

 

家がバイクである吉田はそのあまりにリアルな出来にすっかり夢中になっている。

仲間がどんどん今の教室に染まっていく、寺坂のイライラは頂点に達しようとしていた。

怒りに身を任せバイクを蹴り壊す。

 

「にゅあぁ~~~!!?」

 

一瞬で無残な姿に変わった自身の傑作を見て殺せん背は絶望の叫びをあげる。

 

 

「ちょっと寺坂くん!酷いじゃないのよ!!」

「見ろよ漢の中の漢の殺せんせーが泣いちまったぞ!」

 

周囲から非難の声が飛び交う。それがますます寺坂のイラつきを加速させていく。

 

「うっせ〜んだよ!!どいつもこいつも!!」

 

ポケットから取り出した小さな缶を床に叩きつけると小さな破裂音と共に煙りが教室に充満した。

突然の事に生徒たちは悲鳴を上げる。

そんな中、教室から出ていこうとする寺坂を殺せんせーが止めた。

 

「寺坂くん!いくらなんでもやりすぎですよ!!」

 

「うるせんだよ!!いきなり現れやがって気持ち悪~いんだよてめぇ~!!さっさと消えろバケモンが!!」

 

これまで溜まった怒りを爆発させるかの様に叫びながら肩の触手を振り払い寺坂は教室から出ていった。

 

 

ーーーーーーー

 

翌日、寺坂は教室に来ず昼休みを向かえた。

 

「グス、うう、うう〜〜グス」

 

その日殺せんせーは朝から泣いてばかりだった。今も教室で生徒たちと一緒に昼食を食べているがその目からは未だに涙が流れている。

 

「殺せんせーよぉ。いい加減元気出せよなぁ」

「幾ら寺坂くんに拒絶されたからってさ気にする事ないよ」

 

「いえ、これ涙ではなく鼻水です。朝からどうも止まらないんですよ」

 

よく見てみると目のとなりに小さな穴があり水はそこから出ていた。

 

「「「「紛らわしいな!!!」」」」

 

「ぶえっくしょん!!ズ〜〜」

 

そして教室にはもう一人似たような症状の者がいた。

 

「ちょっと郷!こっちに飛ばさないでね!」

 

速水と千葉と共に放課後の訓練の予定を考えながら昼食を食べている郷であった。

郷も殺せんせーと比べると軽い方であるが朝からクシャミと鼻水が止まらず常に手元にティッシュ箱を置いていた。

 

「ああソーリーソーリー、どうも止まんないんだよなぁ〜風邪でも引いたかな律どうだ?」

 

スマホを取り出し話しかけると画面に律が現れた。

 

『郷さんの手から伝わる体温、心拍数、血流の流れからは郷さんは健康そのものと分析できますが・・・』

「だよなぁ〜俺もとくにダルいとは感じないしなぁ」

 

因みに何故郷のスマホに律が居るのかと言うと、もっとクラスのみんなと親密になりたいという律の願いを郷が聞きクラス全員のスマホにデータをインストールできるように郷が改良した通称【モバイル律】である。

 

「しゃ~ない、ちょっとクリムの所行って来るな」

 

残りの昼食のドーナッツを咥え郷は教室から出て行った。

 

そして入れ替わるように教室に入って来たのは今日一度も顔を出していなかった寺坂であった。

 

「寺坂くん!よく来てくれましたぁ!!もう来てくれないのかと思って先生不安で不安でぇぇぇ!!」

 

歓喜のあまり寺坂に抱き着く殺せんせーであったが相変わらず鼻水を出し続けているため寺坂の顔は鼻水だらけになった。

だが昨日とは打って変わって寺坂は怒鳴り散らすことはせず殺せんせーの服で鼻水を浮くと手に持った銃を向けた。

 

「もうテメェの教師ごっこもお終いだ覚悟しろよバケモン今からお前を殺してやるよ」

「おや、先生に挑むのですか?良いですよではそれが終わったら先生と昨日の事に付いてゆっくりと話をしましょう」

 

殺せんせーは余裕の表れかシマシマの顔で笑う。

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

その頃、郷は職員室にてクリムに自信の体調について相談していた。

 

『う~む・・・特に体は問題なさそうだがねぇ。そもそも君は風邪をひくような体ではないだろ?』

「そ~何だけどなぁ・・・・」

 

その時、裏山の方から大きな爆発音がした。

 

「なっ!何だぁ!!」

 

慌てて窓から裏山を見るとプールの方角から土煙が上がっているのが見えた。

 

『あれは、プールの方か!?』

「くっそ!ロイミュードか!?」

 

郷は窓から飛び出るとそのまま一直線にプールへ向かった。

 

 




最近サブタイトルがいい加減になって来たので近々統一制を持ったモノに変更しようと思います。


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揺れる時間


今回からサブタイトルを○○の時間に統一していきます。

今までの話も少しずつ変えていくのでよろしくお願いします。


郷達が爆発音を聞く数分前、

プール前の岩場で寺坂は殺せんせーと対峙していた。

寺坂の指示のもと生徒たちは散らばるようにプールに入っていく。

だが、寺坂のあまりに横暴な態度に吉田や村松さえも良い感情を抱けなくなっていた。

 

「テメェは前からずっと気に食わなかったんだ。ようやく殺せると思うと清々するぜ」

 

寺坂は手に持った銃を向けるが今までの経験から誰もが銃だけでは殺せんせーをプールに落とすことは出来ないと確信していた。しかし、寺坂はどこか自信ありげだった。

 

「行くぜ・・・・死ねやバケモン!!」

 

寺坂が引き金を引いた瞬間、プールの上流で爆発音が聞こえた。

そして一秒も経たない内に凄まじい鉄砲水がプールに入っていた生徒たちに襲い掛かる。

 

「ツ!?皆さん!!」

 

一瞬の内に飲み込まれ流されていく生徒たちを助けようと殺せんせーは下流へと飛んだん。

 

 

「あ・・ああ・・・・なんだよこれ、まさか・・・俺のせいか?」

一人その場に取り残された寺坂はただ呆然と立ち尽くすしかなかった。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

郷は爆発音が聞こえたプールに向かっていた。

木々の間を駆け抜けていくと途中、同じようにプールに向かっているカルマを見つけた。

「おい、カルマ!」

「郷!?聞こえたかさっきの爆発?」

「ああ・何かあったんだ」

 

二人がプールに着くとそこには昨日まであったプールが影も形も無くなっていた。そして岩場では寺坂が1人呆然と座り込んでいる。

 

「おい寺坂!何があったんだよ!?みんなは?何でプールが無くなってるんだよ!?」

 

だが寺坂は郷の問い掛けに答えることなくただ呆然と下流を方を見ながら「ちがう・・・おれは・・わるくねぇ・・・・」と呟くだけだった。

 

その態度に苛立ちを感じた郷は胸ぐらを掴み詰め寄る。

 

「もう一度聞くぞ・・・此所で何があった!!」

 

「ぷ・・・プールが爆発して・・全員流されたんだよ・・・」

下流を指差しながら消え入り様な声で言う。そして、まるですがり付く様に叫び出した。

 

「俺は何も知らなかったんだ!全部アイツが・・・シロが仕組んだんだよ!!俺は悪くねぇ!!俺は何もッ!!」

言い終わる直前に郷の拳がそれを止めた。

崩れ落ちながらも尚自分の罪を否定し続ける寺坂に郷は呆れたようにため息を吐いた。

 

「カルマ、この馬鹿は任せた」

後の事をカルマに任せ郷は下流へと向かった。

 

 

暫く川を下ると数人の生徒が岩場に上がっているのが見えた。

 

「おい!大丈夫か!?」

「あ、郷君!」

 

近くで息を整えていた渚に近寄ろうとすると川の方から激しい戦闘音が聞こえた。

見てみると殺せんせーが触手で流されている生徒たちを助けながら必死に何かを防いでいた。

 

「あれは・・・イトナ!?」

 

そこに居たのは以前E組に現れた殺せんせーの弟を名乗る謎の転校生堀部イトナだった。

だが、以前とは少し様子が変わっていた。

以前と髪型が大きく変わっておりその影響か触手の動きも以前よりはるかに洗練されていた。

 

「やぁ、遅かったね仮面ライダー君」

 

そしてその戦闘を少し離れた所で見ていたのはイトナの保護者を自称する白ずくめの男シロだった。

 

「アンタかよ。寺坂を唆してこんな大掛かりな計画たてたのは?」

「唆したとは酷いな・・僕はクラスで孤立していた彼を仲間に入れてあげたんだよ。お陰でほら」

 

シロの視線の先ではイトナの触手の攻撃に苦しむ殺せんせーがいた。

流される生徒たちの救出も思うようにいっていない。

 

「チィッ!殺せんせー!アンタはイトナに集中しろ!残りは俺が助ける!!」

 

マッハドライバーを巻き救出に向かおうとする。

 

しかしその瞬間、何処からか飛んできた光弾が郷の足下に命中した。思わず立ち止まってしまい周囲を警戒すると丁度川を挟んで反対側の森の中にブレイクガンナーをこちらに向けている白髪の少年が居た。

 

「・・・アレン・・」

「・・・仮面ライダー・・今日こそ決着を・・変身」《ブレイク・アウト》

 

アレンは魔進チェイサーに変身すると川を飛び越え郷に殴り掛かる。

咄嗟に横に避ける郷だったがすぐさまチェイサーの追撃が迫り生徒たちの救出に行けない。

 

「あ~あ・・・大変だねぇ~ロイミュードが乱入してくるなんて予定外だなぁ~~」

 

そう言いつつもシロの口からは小さな笑い声が漏れている。

 

 

 

「邪魔すんなよアレン!・・レッツ変身!」《シグナルバイク!ライダー!マッハ!》

 

郷は一瞬の隙をつきマッハに変身しゼンリンシューターでチェイサーの攻撃を受け止め押し返すとそのまま川に飛び込もうとする。

 

《チューン!チェイサー!コブラ!》

 

しかし、川に向かうマッハの身体にチェイサーのテイルウィッパーが巻き付き引っ張られた。

 

「行ったはずですよ。君の相手は僕です」

 

チェイサーは勢いよくテイルウィッパーを引きマッハを木に叩き付ける。衝撃に耐えられなかった木は真っ二つに折れた。

 

「グゥッ!・・・クソッ、ハンター!レッカー!みんなを頼んだ!!」

 

マッハの声に答えるようにハンターとレッカーを先頭に数台のシフトカーがやって来た。

ハンターは下流へと向かい鉄格子状の柵を作り生徒たちが流されないようにしレッカーは一人一人生徒たちの救出に向かった。

 

しかし、水中から飛んで来た光弾がハンターたちを妨害した。

 

「シャッハーー!」

水中から飛び出してきたのはスパイダー型の【059】だった。

059はハンターたちの援護に来たフレアとスパイクの攻撃を川に飛び込み回避した。059はそのまま水中を泳ぎハンターの柵に向かった。

 

059の体当たりにより柵は無惨にも破壊された。

尚もシフトカーの妨害を行う059は両手から放つ無数の光弾でシフトカーたちの行く手を阻む。

 

「不味いっ!この先は・・・!」

 

マッハが下流へと視線を向けるとその先は急な滝になっていた。

 

すぐにでも助けに向かいたいがチェイサーのファングスパイディーが立ち塞がった。

 

「君の相手は僕だと言ったはずです」

 

振るわれるファングスパイディーをゼンリンシューターで防ごうとするが勢いの付いた一撃はゼンリンシューターごとマッハのボディを切り裂いた。

 

「ハァハァ・・・今はお前の相手をしている暇はねんだよ!!」

 

《シグナルバイク!シグナル交換!トマーレ!》

 

ドライバーに黄色いシグナルバイク【シグナルトマーレ】を装填しトリガーを引く

 

《ゼッタイ!トマーレ!》

光弾がチェイサーに接触する瞬間ブーストイグナイターを連打すると光弾はstopという字になりチェイサーの動きを封じた。

 

「ぐっ!これは・・・!?」

 

チェイサーの動きが止まったのを確認しシグナルマッハを装填し直し再びブーストイグナイターを押した。

 

《ズーット!マッハ!》

音速の速さに達したマッハは激流の水面を走り流れいく生徒たちを引き上げていく。

 

「原は殺せんせーの側か・・・じゃあ後は・・」

 

マッハの視線の先には木の枝に必死にしがみついている速水と矢田がいた。

二人を助けようと水面を走るマッハの横から紫の光の矢が飛んできた。

 

「ガアァッ・・・!?」

脇腹に矢が命中し反対側まで吹き飛んだ。

更にチェイサーが突っ込んでくる。組み合った二人であったが、速水たちのことで集中できないマッハは徐々に押されていく。

 

「っ!?アレン!何度も言わせんな!!今お前の相手をしてる暇は無いんだよ!!」

だが、ブレイクガンナーによる打撃は容赦なくマッハに打ち込まれていく。

 

「お前の相手は後で幾らでもしてやる!!だから今は・・・!!」

 

ブレイクガンナーから放たれた光弾はマッハのボディに炸裂し火花を散らせる。

 

「頼む!!このままじゃ速水も矢田も死んじまうんだぞ!!」

 

その時、チェイサーの視線が速水たちに向かった。

二人の掴まっている枝は今にも折れそうになっていた。

 

「ッ!・・・・」

チェイサーは静かにブレイクガンナーを下ろす。

「アレン?・・・」

 

その時、二人の掴まっていた枝が等々折れ再び激流が二人を流す。

 

「「!?」」

 

《ズーット!マッハ!》

《チェーン!チェイサー!バット!》

 

マッハとチェイサーは同時に動いた。

風よりも速いスピードでマッハは速水をチェイサーは矢田の腕を掴み岩場に運んだ。

 

「速水!大丈夫か!?」

「え・・・ええ、ありがとう・・・」

 

速水の無事を確認したマッハはそのままチェイサーを見る。

チェイサーは矢田を優しく降ろしとまるで自分が何をしたのか理解出来ないように呆然とした。

 

「ボクは・・・何でまた・・・・」

「あの、アレン君!」

 

そんなチェイサーに矢田は疲れきった身体で必死に声をかけた。

 

「あの・・・・助けてくれて、ありがとう!!」

 

「ッ!?」(ありが・・・とう・・?)

 

その瞬間、チェイサーのアレンの脳内に幾つものシーンが浮かび上がる。

重い足取りで歩き続ける群衆の中、転んでしまった女の子を起き上がらせる優しい手

 

迫り来るロイミュードの恐怖に怯える人々を護るように立ち塞がる赤い戦士、

 

傷付き倒れた戦士の肩を持ち諦めるなと叫ぶ傷だらけの少年

 

他にも数え切れないシーンが浮かび上がった。そのすべてに共通しているのがある者は笑顔でまたある者は涙ながらにそして最後の力を振り絞っての心の底からの〔ありがとう〕だった。

 

 

「何やっているんだ・・・・死神ィ!!」

 

水中から飛び上がった059がチェイサーに向け光弾を撃つ。

咄嗟に矢田を突き飛ばしたが一歩行動が遅れその仮面に光弾が炸裂する。

 

「うあぁぁぁっ!!?」

 

苦痛の叫びと変身が解けアレンは倒れこんだ。

 

「アレン君!?」

 

矢田や岡野など数人の生徒が駆け寄るがアレンは光弾が命中した顔右半分を押さえ呻く。

 

「役立たずが!何なら此処で俺が処分してやるよ!」

 

059は寄り添う矢田たちもろともアレンを攻撃しようとする。しかし、059の光弾はマッハによって相殺される。

 

「お前の相手なら・・・俺がしてやるよ!!」

 

ゼンリンシューターを撃つと059は再び水中に潜る。水中を高速で泳ぐ059はマッハの攻撃を躱しながら水上に飛び出し攻撃する。

マッハも何とか攻撃を躱していくが狭い岩場では何時までも避け切れず次第に攻撃を受けていく。

 

 

一方殺せんせーの方もイトナの触手に苦戦している。昨日寺坂が巻いた煙の中に含まれた薬物の影響で触手の機能が低下しておりまた、すぐ近くで原が木にぶら下がっている状態のため全力を出せないでいた。

どうにかしなくては・・・

そう思うが自分たちに出来る事があるのか?渚は必死に考えるが・・・

 

「どけよお前ら!」

 

そんな渚の横を誰かが走った。川に飛び込み水しぶきを上げイトナに対峙するように立ったのは寺坂だった。

 

「シロ!手前ぇよくも俺の事利用しやがったな!!」

 

「やぁ寺坂くん、危ないから下がっていた方が良いよ。この状況を作るのに協力してくれた君に危害を加えるつもりは無いんだ」

 

「うるせぇ!!イトナ、俺と勝負しやがれ!!」

 

寺坂はシャツを脱ぐと戦いの意志を示すかのように構える。

 

「はぁ~~、しょうがないな・・・イトナ、軽く遊んであげなさい」

 

イトナの触手が大きく振るわれ寺坂に直撃する。

 

「寺坂くん!!」

 

殺せんせーが叫ぶが寺坂は脱いだシャツで触手の衝撃を和らげ離すまいとしていた。

 

「うまく一撃は防いだようだね。でも次は持つか「へっくしょん!?」ッイトナ?」

 

突如イトナの様子がおかしくなった。くしゃみが止まらなくなり鼻からは鼻水が出続け先程と比べ触手の動きにも切れが無くなった。

何が起こったのか理解出来ないシロにカルマが種明かしをする。

 

「さっきから殺せんせーの動きがどうも調子が悪いと思ったんだよ。そこで思い出したのが昨日寺坂が教室に撒き散らした煙さ、多分あの煙には触手の細胞に作用する薬品が混ざっていたんでしょ?寺坂が昨日と同じシャツを着てたからその薬品が染み込んでると思ってさ。どうやらうまく言ったみたいだね」

まるで悪戯が成功し相手を嘲笑う様にカルマは語った。

 

「そして後は仕上げさ」

 

カルマの合図と共に生徒たちは一斉に川に飛び込んだ。

その衝撃で上がった水しぶきをイトナの触手は吸い込み膨らんでいく。

 

「俺らも賞金持っていかれるのは嫌だし何よりみんな殺されかかった訳だ。まだ引かないなら遠慮なく水遊びさせてもらうよ」

 

生徒たちは何時でも 水を掛けられるよう構える。

数秒の間考察するように黙りこんだシロはため息を吐き背を向けた。

 

「はぁ〜これは少し計画を練り間違えたかな?しょうがない、イトナ!今日は帰るよ」

 

「・・・・・」ギリッシロがイトナを呼ぶが当のイトナは殺せんせーや寺坂たちを睨み付けたまま動かない。

 

「イトナ!!」

 

シロが先ほどよりも強い口調で呼ぶとようやくそのあとを追うように去っていった。

 

 

 

「ハハハハ!どうした仮面ライダー!全く当たらないぞ!!」

 

059は水中を自由自在に泳ぎゼンリンシューターによる射撃を避け続ける。

時折飛び出してくると勢いの付いた拳でマッハを攻撃していく。

 

「ハハハ!!役立たずの死神なんか使う必要もなかったな!!」

 

059の渾身の一撃がマッハに迫った。

 

「・・・アレンが役立たず?ハッ笑わせんなよ」

 

059の拳をマッハは意図も簡単に掴んだ。

「アレンの攻撃に比べたらお前のは三流も良いところなんだよ!!」

 

そのまま059を引き寄せるように腕を引くとそのボディにゼンリンシューターの銃口を当てた。

 

「ヒィッ!?」

 

「こんな軽い攻撃で俺を倒すなんて百年早いんだよ!!」

《ヒッサツ!フルスロットル!シューター!》

 

ゼロ距離から放たれたヒットマッハーは059を貫きそのコアを破壊した。

 

 

「ふぅ〜、ちょっと手こずったな」

《オツカ〜レ》

 

郷が変身を解くとそのままアレンの元へと向かった。

アレンが痛む身体を必死に起こし森の中に入っていくのを見つけその後を追った。

「おいアレン!」

 

「・・・・何ですか?」

 

「ありがとな。お陰で矢田を助けられた。何だかんだで誰かを守るとするところは変わらないな」

 

「・・・僕はロイミュードの守護者で仮面ライダーにとっては死神です。人間なんて・・・知ったことではありません」

 

森の中に消えていくアレンだったがその背には確かにかつて共に戦った戦友(ダチ)の姿があり郷は自然と笑みが浮かんだ。

 

『寺坂、お前上司に何てことするんだよ!!』

『うるせー!一人だけ高みの見物していやがって!!』

後ろからは現在の友(ダチ)たちの声が聞こえる。その中には今まで良かった大きな声も混じっている。

何時かここにもう一つ声が混じることを願って郷はダチ達の元に走った。

 




先日9月13日(カイザの日)にプレバンでカイザギアの予約が始まりましたが・・・もちろん当日に予約しましたよ!!

というより予約しない理由が見つからなかった!!!

今から送られてくるのが楽しみです。


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期末前の時間

現在、スピリッツと言う週刊誌に連載されている仮面ライダーWの続編マンガ【風都探偵】にはまっています。

そして今週号ではとうとう変身しましたね。しかもカラーで、これはテンションが上がりましたね~~

次回はついに出ますあの名台詞が!

今から楽しみです。



7月も中盤に入り学生たちの前に1学期最後の試練が立ちふさがる。

 

「さぁ〜〜みなさん。期末試験までもう少しですよ!!中間試験の時のリベンジです。今度こそA組に勝ちましょう!!」

 

いつも以上に気合の入っている殺せんせーは中間試験の時の倍以上の数に分身し生徒一人一人に教えている。

 

「熱くいきましょう!!熱くぅぅぅぅ!!!!!!」

 

「「「「「暑苦しいわ!!!!」」」」」

 

「そう言えば殺せんせー!今回もみんなで50位を目指すの?」

 

倉橋が質問すると全ての分身が動きを止め教卓の前に立つ一人を残し消えた。

 

「いえいえ、前回は総合点ばかりに気にしすぎましたからねぇ。今回はみなさん各々の長所を伸ばしていこうと思います」

授業は一旦休憩し全員が殺せんせーを見る。

 

「以前シロさんが言ったように先生は触手を失いごとに能力が下がっていきます。このように・・・」

 

殺せんせーは対殺せんせー用の銃で自らの触手を一本撃ち分身をするが・・

 

「このように触手一本失うと分身の中に子供が混じります」

 

生徒たちの半分ほどの大きさの分身がいた。女子たちは可愛い感じている中、男子たちは口にこそ出さないが全員がこう思った。

(分身ってこんな減り方するのか?)っと

 

「さらに触手を減らしていくと・・・」

 

2本減るとさらに子供せんせーが増え大家族の様になり、3本で父親せんせーが家を出で行った。

4本で母親せんせーは女手一つで子供たちを育てるため水商売をするようになる。次第に家庭は崩壊していき長男は家を飛び出し、長女と次女は不登校に次男は不良になり家には昼夜問わず幼い子供たちの泣き声が響く・・・

 

「こうして疲れ果てた母親はやがて・・・・・ぐすっ・・では、次の授業は母親はどうすればこの結末を回避できたのかを議論していきたいと思います」

 

ハンカチで涙を拭いながら殺せんせーは教室から出て行こうとする。

 

「「「「ちょっと待てててぇぇぇぇぇーーーーーー!!!」」」」

 

「期末試験の話はどうしたんだよ!?」

「何ちゃっかりと話しすり替えてるんだよ!」

「そもそも話が重いんだよ!!」

 

~~~~~~~~~~~

 

「おっほん、話がズレましたね。まぁ今見てもらったように一度に触手を多く失うと先生の能力は大幅に低下させる事が出来ます。しかし普通に仕掛けても先生の触手を破壊することは出来ません。そこで・・・今回の試験で5教科のと総合成績でそれぞれ学年1位になった生徒には先生の触手を1本破壊する権利を与えます。どうですか?」

 

殺せんせーから出された破格の条件、これには生徒たちのやる気を出すには十分な効果があった。

E組は確かに落ちこぼれのクラスではあるが記して全員が勉強ができないわけではない。中には問題行動やある一部の成績からE組に落ちた生徒もいる。

その中には1教科限定なら学年上位に位置する者もいるのだ。

期末試験まで残り1週間、この間は暗殺の訓練も中止のため勉強に集中できる。仮に5教科全部で1位を取れば総合成績も合わせ計6本の触手を破壊できる。その瞬間こそ殺せんせー暗殺の最大の好機となる。

 

 

 

 

「あ〜〜〜〜〜・・・・・・」

 

「・・・しっかりしなさいよね」

 

昼休み、昼食を食べる速水の前ではまるで魂が抜かれた様に机にうつ伏せになる郷が呻き声をあげ続ける。

「ダメだ・・・数字が全部怪物に見える。勝てる気がしない・・」

 

「いや、本物の怪物を倒している奴が何言ってるんだよ」

 

千葉も呆れた様にいう。

今、郷の机には午前中の授業で行った各教科の小テストが広がっているがその内容は・・・・

国語・45点、理科・33点、数学・21点、英語・5点

 

「ホント・・・見事にダメね。」

「ウグッ!」

 

何気なしに放った速水の言葉は郷のハートを無情にも貫いた。

結局郷は昼休みの間碌に食事もとらずにうめき声を上げ続けるだけだった。

「はやみぃ〜〜〜ちばぁ〜〜ヘルプ、ヘルプミ〜〜〜」

 

まるですがり付く様に二人の腕を掴む郷に同時にため息を吐く。

 

「しょうがない、郷も速水も放課後空いてたら一緒にここに行かないか?」

 

千葉は一枚のチケットをカバンから取り出した。

 

「何これ・・・?」

 

意味がわからない郷はチケットを手に取ると探るように眺めた。

「ちょっとコレ、本校舎の図書室の使用許可の券じゃない!どうしたのよ?」

 

「部活の時の友達から貰ったんだよ。ここなら参考書も揃っているから勉強もはかどると思うぞ」

「そうね・・・郷、行くわよ」

速水も千葉の意見に同意するが件の郷は渋るような顔をしていた。

 

「え〜〜・・流石に放課後に勉強するのはな・・・」

 

はっきり言うと郷は乗り気ではなかった。

もともと身体を動かすのが好きな郷は長時間一ヶ所に留まるのが苦手であり、日々の授業も1限毎に必死に耐えている状況である。

なのに放課後も机に向かい勉強しろと言うのは郷にとって死刑宣告も同じであった。

 

「それにほら、ロイミュードが出たら行かなくちゃならないしさ・・・今回は遠慮しておくっ『良いじゃないか郷、一緒に行きたまえ』よっ?」

 

いつの間にか郷の机の上にはクリムがいた。

 

『ロイミュードは私とシフトカーたちが探しておいて見つけたらすぐに知らせよう。君は安心して勉強したまえ』

 

「いや、でもなクリム・・・俺は仮面ライダーとしての役目をだな『郷・・・』っはい!?」

 

あくまで反論しようとする郷にクリムは低い声で話す。

郷はそのなんとも言えない迫力に姿勢を正してしまう。

 

『君は今までのテストで一度でも50点以上の点数を取ったことがあったかね?』

 

「いえ、ないです・・・・」

 

気付けば郷は床の上に正座していた。一方クリムは机の上から突き刺す視線を郷に送っている。その迫力には郷だけでなく速水たちまでかしこまってしまう。

『私は言ったはずだがね。仮面ライダーとしての使命をも大事だが学生として最低限の勉強はするようにと』

 

「いや、そうは言うけど今までまともな勉強なんてしてなかったわけだしちょっとぐらいは大目に・・・」

 

『もし次の試験で前みたいな結果だったら・・・分っているね?」

 

「ッゥゥ~~~!・・・はい・・・」

 

―――――――――――――――――――――

 

 

放課後、郷と速水、千葉は本校舎の図書室へと来ていた。

試験前とういこともあり図書室の席はすべて埋まっていた。少し奥に入ったところにある三人用の机で郷たちは勉強している。

 

「あ~~~~、んん~~~??グ~~~~・・・」

 

「何いきなり寝てるのよ」バカッ

 

「イッテ!?」

 

開始十分で眠りだした郷の後頭部に辞書による一撃が決まった。

 

「クリム先生に言われてるのよ。郷がしっかり勉強するように見張っるようにって、しっかりしなさいよね」

 

「んなこと言ってもな~~こう参考書を見てると自然とまぶたが重く・・・・グ~~・・「だから早いわよ!」グアッ!」

 

先程よりもさらに強めの一撃が郷に決まる。

 

「それじゃあ少し周りを歩いてきたらどうだ?目も覚めるかもしれないぞ」

 

「あ~~・・そうするわ。ついでに持ってきてほしい参考書があったら言ってくれよ」

 

「良いのか?それじゃあ頼むな」

「あ、それなら私も行くわ」

 

郷と速水は千葉から頼まれた参考書の置いてある棚に向かった。

 

「あった、あれね」

速水は目当ての参考書を見つけるがそれは本棚の一番上にあり速水や郷の背では届きそうにない

。周りを見て脚立を見つけるとそれに昇り参考書を取った。

 

「これで良いのね。郷そっちは見つけたの?」

 

少し離れた所にある参考書を取りに行っていた郷に話し掛けようとすると郷は脚立の足元から速水を見上げていた。

 

「・・・・青か・・「何見てるのよ!!?//////」【バキッ】・ブオックス!?」

 

郷の呟きに一瞬何のことかわからなかったがすぐに自身の下着の色だと理解した速水は手に持った参考書を郷の顔面目掛け投げた。分厚い参考書を喰らい倒れる郷の手から飛び出た参考書は放物線を描きそのまま机の置いてあるスペースへと飛んでいく。

 

「グアッ!!?」「「「瀬尾ぉぉぉ!!?」」」

 

すると奥から何かがぶつかる鈍い音と悲鳴が聞こえる。

何事かと赤面のままの速水と鼻血を出した状態の郷が行くと渚と茅野、磯貝に神崎、奥田の座っている机の前で倒れる一人の男子生徒に心配する三人の男子生徒がいた。そして倒れる生徒の傍には先程まで郷が持っていた参考書が落ちている。

 

「「あ・・・・」」

 

参考書を見た瞬間2人は原因が自分たちであると瞬時に理解した。速水はこの状況をどうしようかと考えていると隣の郷はすぐに行動に移した。

 

「あれ~渚達も勉強かよ。奇遇だなぁ~~~」

 

         無視。

何事も無いかのように男子生徒を無視して渚達に話し掛けた。

 

「う・・・うん、郷君たちも何だね・・・」

「ホントに・・・偶然だなぁ・・」

 

渚や磯貝も一応の返事はするがやはり視線は倒れる男子生徒に向かう。

 

「じゃぁ、千葉が待ってるし俺らは行くわ。行こうぜ速水「「「「ちょっと待てぇぇぇぇ!!!」」」」チッ」

 

そのまま去ろうとする郷を四人分の叫び声が止める。めんどくさそうに振り返ると他の三人に支えられるように起き上がった男子生徒が睨んでくる。

 

「人に参考書をぶつけておいて勝手に帰ろうとするとはいい度胸だな」

 

「あ、ソ~リ~気付かなかったわ」

 

白々しく言う郷の言葉に男子生徒の額に青筋が浮かぶ。

 

「そもそも・・・・誰お前ら?」

 

「な!俺たちの事を知らないのか!?」

 

「あ~・・・・もしかして三日前にジュース買おうとした時に10円貸してくれた田五郎君か!いや~あの時はサンキュー、10円なら今返すよ」

「いや、ちげ~よ!!誰だよ田吾郎って!?」

 

叫びながら詰め寄る男子生徒を後ろにいたナルシストな雰囲気の生徒が止める。

 

「まあ落ち着けよ瀬尾、A組たるもの常に余裕をもってE組には当たるものだぞ。君もE組はE組らしく本校舎内では身の程をわきまえるモノさ特に僕たち五英傑に対してはね」

 

「なあ速水」「なによ?」

「あいつ・・・・散髪失敗してるぞ」

 

「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

その瞬間、図書室全体の時間が止まった。

特に郷から散髪が失敗していると言われた生徒は石のように固まる。対して郷はそんな生徒に近づくと耳元で囁く。

 

「失敗したならちゃんと店に文句言った方が良いぞ。何なら一緒に行って代わりに言ってやろうか?」

「ちょっ!郷!!」

 

周りより少し早く復活した速水は素早く郷の襟をつかみ引き戻す。

 

「あれはファッションよ!好きであの髪型にしてるのよ!!・・・多分・・・プッ!」

 

そう言いつつも速水は男子生徒の髪に視線を向けるとつい郷の失敗と言う言葉が頭に過り噴き出してしまう。それにつられるように周りからも抑えるように笑い声が聞こえ始める。

 

「・・・・・・」

「お、おい榊原・・・」

 

黙り込む男子生徒こと榊原に瀬尾が話しかけようとするが何を言えばいいのか思い浮かばなかった。

 

「ふふふふふh・・・・・まさかE組にここまで身の程知ら図がいるとは知らなかった・・・丁度いい」

 

榊原は伏せていた顔を勢い良く上げると郷たちE組を指差す。

 

「E組!さっきの話の勝負、必ずそこで借りを返すぞ!!」

 

 

去っていく榊原たちを見送る郷はどういう事かわからず磯貝に聞く。

 

「勝負ってどゆこと?」

「「「「「はぁ~~~~・・・・」」」」」

 

面倒なことになったそう感じた郷を除くその場のE組は溜息を吐いた。




モチベーションが上がるので感想宜しくお願いします。


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期末の時間


私は実を言うと高校のとき一度だけ英語で赤点を取ったことがあります。それ以降も英語は毎回赤点ギリギリの成績でした。
小さな分校だったからまだよかったけどこれが椚ヶ丘みたいな進学校だったらどうなっていたでしょうかね?(笑)


「「「「今度の期末試験でA組と勝負する〜〜〜!!!?」」」」

 

朝の教室に皆の叫び声が響く。

図書室での騒動から一夜明けHR前、磯貝は昨日のことをみんなに話した。

一週間後の期末試験で五教科+総合点で多く学年一位を取った方の勝ち、負けた方は勝った方の命令に従うというものだ。

 

落ちこぼれクラスのE組とは対称的にA組は学年上位の生徒たちで構成されているエリートクラスである。第三者から見たら結果の見えている無謀な挑戦である。

だが・・・

 

「良いじゃねぇか。どうせそれぞれの教科で学年一位を取るつもりなんだしついでにA組に恥かかそうぜ!」

郷の言う通りだ。E組の気持ちが一つになった。

殺せんせー暗殺と同時に本校舎の連中に目にものを見せる。今の自分達なら出来る。E組の士気は最高潮に上がった。

ただし・・・・・

 

「「「「「話をややこしくしたお前が言うなよ!!!」」」」」

ーーーーーーーーーー

 

「ところでさ、昨日のアイツら【五英傑】てナニ?」

 

休み時間、それぞれが自主的に勉強をしている時ふと、郷が呟く。

 

「五英傑てのは椚ヶ丘が誇る5人の天才のことだよ」

 

一緒にで勉強していた杉野が休憩がてらに教える。

【五英傑】それはエリートクラスのA組の中でも飛び抜けて優秀な5人の生徒、5人そろえば並みの教師以上の実力があると言われている。

まずは・・・中間テスト総合二位!!他を圧倒するマスコミ志望の社会知識!!放送部部長・・荒木鉄平!!中間テスト総合三位!!人文系コンクールを総ナメした鋭利な詩人!!生徒会書記・・榊原連!!

中間テスト総合五位!!四位を奪った赤羽への復讐に燃える暗記の鬼!!生物部部長・・小山夏彦!!

中間テスト総合六位!!性格はともかく語学力は本物!!生徒会議長・・瀬尾智也!!』

 

「・・・・おいちょっとタンマ、いつの間にか地の文が変わってるぞ」

 

耳を澄ますとその声は杉野の持つスマホから聞こえる。

 

「いや〜昨日野球部の進藤がノリノリでナレーションしてくれたのが面白くて録音しといたんだよな」

スマホからは続きのナレーションが流れる。

『そして・・・中間テスト一位、全国模試一位・・・生徒の頂点に君臨するのが・・・・支配者の遺伝子、理事長の一人息子にして生徒会長・・浅野学秀』

 

 

「・・・・・理事長って子供いたんだな。一体どんな遺伝子操作をして産まれたのか・・・・」

 

進藤のナレーションが終わり開口一番に郷は言った。

あの理事長の事だから普通に子供を作ったとは思えなかった。より完璧な子供を作るために人為的な手を加えていても不思議ではない。

 

「まぁ〜・・・気持ちは分かるけどよ・・・」

 

杉野も完全には否定できないことに苦笑する。

 

「こら、カルマくん、まじめに勉強しなさい!君なら充分に総合トップが狙えるでしょう!!」

 

切りの良い所で勉強を再開しようとすると殺せんせーの怒鳴り声が聞こえた。見てみると椅子にもたれ掛かりだらけているカルマに注意していた。

しかしカルマは一向にやる気を出さない。

 

「そんなことよりさぁどーすんの?A組が出してきたこの条件さぁ」

 

この日の昼休みA組から勝負の詳細が送られてきた。

その詳細は・・・【まず、勝った方が下せる命令は一つ、その命令はテスト後に発表する】と言うシンプルなものだった。

だが、E組としてはそのシンプルさが逆に不気味だった。あの理事長の息子の事だからその一つの命令がどんなものか想像が出来ない。

「なーんか裏で企んでる気がするよね」

 

「心配ねーよカルマ。俺たちにこれ以上失うモンなんかありゃしない」

「勝ったらどうしようかぁ?学食の使用権とか欲しいな〜」

 

「ヌルフフフ、それも良いですが先生さっき学校のパンフレットを見てとってもいいモノを見つけましてね」

 

殺せんせーはパンフレットのあるページを開く。

 

「これをよこせと命令するのはどうでしょうか?」

それは毎年成績優秀なA組が行く沖縄の離島リゾート二泊三日の旅行だった。

芸能人や著名人等も宿泊する高級ホテルに泊まりホテル前のビーチの一部が貸し切りで楽しめる豪華旅行である。本来E組では行きたいと思うのもおこがましいA組だけの特権、これを手にすることは自分たちはA組と同等だとアピールすることにもなる。

 

こうして倒すべき敵、目指すべき目標、そしてその先にあるご褒美が揃った。

 

『それぞれの利害が交錯する期末試験!!ある者にとっての勝利は別の者にとっての敗北!!それぞれが進んだ先にある勝利を求め・・・・やってきた試験当日!!』*ナレーション:進藤一孝

 

とうとうこの日がきた。期末試験当日、昨日も遅くまで勉強したけど不安は残るわね。

 

『凛香!早く降りてきなさい!』

一階から聞こえたお母さんの声に枕元の時計を見ると下に降りるには丁度いい時間だった。

 

「おはよう」

「うん、おはよう」

一階に降りてリビングに行くとお父さんはテーブルにつきながら朝刊を見ながら挨拶してくる。お母さんは奥のキッチンで朝食の目玉焼きを作っていた。

自分の席について置かれていた食パンを食べながらふとお父さんの読んでいる朝刊が目に入った。

内容は三日月になった月に関して国連で会議(多分実際には殺せんせーへの対策を話し合ったのね)、昼間の高速道路で謎の怪物がカーチェイス?(そう言えばこの前郷が063と東名高速でおいかけっこしたって言ってたわね)

今大人気!!教師はAI!?ネットティーチャーで成績UP!!(クリム先生と律がそんな事やるって言ってたわね)こうして見ると新聞の内容の大半が心当たりのある事ばかりね。

他には・・防衛局新長官真影壮一氏就任、50年前世界を騒がせた伝説の怪盗が復活!?、新秘書機能アプリmimi近日発売!

「凛香!いつまでのんびりしてるのよ!」

 

新聞の内容に夢中になっていてお母さんに言われ時計を見るといつの間にか時間がたっていた。

 

「行ってきます!!」

 

あわてて残りのパンを食べて玄関に向かう。

扉を開けると家の前を丁度郷が通り掛かった。

「郷、おはよう」

 

あいさつをしても返事が返ってこない?

おかしいわね、何時もなら普通に返事するのに・・・よく見るとなんだかフラフラと歩いている?

 

「・・・・・ガァッ!?」

 

あっ、電柱にぶつかった。

「ツ〜〜〜!!」

「ナニやってるのよ朝っぱらから」

 

顔を押さえてうずくまっている郷に話し掛けると振り向いた郷の目元には一瞬引くほどの隈があった。

 

「ウォォォ・・・速水ィィ、オッス・・」

 

「どうしたのよその隈は」

「一昨日・・から丸二日・・・一切寝て・・・ない」

 

はぁ!?ナニしてんのよ!!話ながら歩く郷の足取りはとてもおぼろげで右へ左へと揺れている。

 

「寝る・・と・・・覚えた・・内容を・・・・忘れるんだよ・・・Zzz〜〜」

 

そう言いながら歩いたまま眠りだして今度はバス停の時刻表にぶつかる。

まったく、こんなので今日の試験大丈夫なのかしら?

 

『そう言わないでくれ速水くん』

 

呆れてため息を吐くと郷の背中から声が聞こえた。

見てみると郷の背負うバックのファスナーが空いていて中にクリム先生がいた。

 

『郷も今回の試験に対しては本気で取り組んだんだ。無自覚にも話をややこしくした責任を感じてね。ワタシもそんな郷に付き合おうと思ってね。一睡も・・・して・・ないん・・・・Zzz〜・・』

 

クリム先生って眠るの!?ベルトなのに?

 

 

結局、このままじゃ遅刻しそうだから郷の肩を持って連れていくことになった。

 

 

-------------

 

「ホラ、着いたわよ郷」

 

なんとか時間前に着いたけどここに来るまでの周りの視線が痛かったわ////

教室の扉を開けると知らない女の子が座っていた。

髪型がなんとなく律に似ているけど誰?

「・・・律役だ」

 

教室前で戸惑っていると後ろから烏間先生の声が聞こえた。

 

「流石にAIの参加は認められなくてな。クリムと律がネット内で勉強を教えた上司の娘さんに代わりに出てもらったんだ」

 

烏間先生の顔にはコレでもかと精神的疲労が見えた。

 

「事情を説明した時の理事長の『この人も大変だな』と言った視線が、クウッ!」

 

烏間先生はそのなんとも言えない屈辱を必死に押さえ込むかのように拳を握り締める。

本当にこの人には頭が上がらないわ。

 

 

--------------

烏間先生はクリム先生を預かるとE組校舎に戻って行った。

別れ際に殺せんせーや律の分まで激励の言葉を残してくれた。

 

 

そして期末試験が始まった。

流石に名門進学校は授業のスピードが早い。

 

中間の時よりも格段に難易度が上がっている。

前に郷が数字が怪物に見えるって言ってたけど、少し共感しちゃうわね・・・

コレは問題と言うよりモンスターだわ!!

 

迫り来る問題(モンスター)に私たちは磨き続けてきたペン(剣)を力の限り振り抜いた。

 




モチベーションが上がるので宜しければ感想お願いします。


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終業の時間


今回は一学期のエピローグ及び、特別編のプロローグに当たる為短いです。


期末試験から数日後、この日は試験の返却及び結果発表と終業式が行われる。

 

結果としてE組は国数理社英の五教科の内、英語で中村莉桜が社会で磯貝悠馬が理科では奥村愛美がそれぞれ学年一位を獲得しA組に勝利した。

更に国数理社家の五教科の内で寺坂竜馬、吉田大成、村松拓哉、狭間綺羅々の4人が学年1位になり合計7本の触手破壊の権利を手にした。

 

尚、数学及び学年1位が期待されたカルマは今回順位を大きく落とす結果になった。

 

終業式でも普段のE組いじりはうまく機能しないでいた。今回多くのE組生徒が各教科で上位に名を連ねたためである。

生徒たちはみな、胸を張って本校舎の生徒たちと向かい合った。

 

「みなさん!!おめでとうございます!!」

E組校舎に戻り一学期最後のHRが始まった。

 

「今回みなさんは私の期待を大きく上回る結果を残してくれました!・・・まぁ触手7本は予想外すぎましたが(ボソッ)親御さんたちに見せる通常の通知表は先ほど渡しましたが今から渡すのは暗殺者としての通知表です・・・・当然!みなさん満点です!!」

 

教室中に花丸の紙が舞う。今この教室にいるのはかつての落ちこぼれ達ではない。学生としても暗殺者としてもそして・・・人としても大きく成長した殺せんせー自慢の教え子たちであった。

 

始まりの一学期が終わり次のステージに移る。始まるのは運命の夏休み。生徒たちは自らの手でつかみ取った最大のチャンスを生かすため刃を磨き始める。

そして仮面ライダーマッハ、詩藤郷にとってもこの夏休みはこの先の運命を変える大きなターニングポイントとなるが、郷はまだそのことを知らない。

 

「あっ、郷くんは英語が赤点でしたので夏休みの間補習がありますよ」

 

「嘘だぁ!!」

 

因みに今回の期末試験、郷の結果は

国語・66、点数学・47点、理科・51点、社会・61点、英語・29点であった。

 

――――――――――――――――――――――

 

椚ヶ丘の隣町にあるとある美術館、すでに時計は12時を過ぎ間もなく1時に差し掛かろうとしていた。

周囲は寝静まっているにも関わらず美術館の前は張り積めた緊張に包まれていた。何十台といったパトカーのランプが周囲を照らし警官、機動隊が周囲を警戒する。

正に蟻のはいる隙間もない状態であった。

 

警官たちはしきりに時計の針を気にする。そして時計の長針が12に短針が1を指したその時、館内から警報器の音が響き警官達を重加速が襲った。

突然のことに慌てふためきながらも重加速の影響で思うように動けない警官達を美術館の屋根の上から1つの影が眺めていた。

 

「ハハハハ!大分この身体にも馴れてきたな。肩慣らしはこの辺にしてそろそろ頂くとするか」

 

影はその手に持つタブレットを操作すると画面に写るある人物に注目する。

 

「英雄の称号、仮面ライダーの名はこの俺が頂く!!ハハハハ!!」

 

地上で乱れ光るパトカーのランプがタブレットに写る仮面ライダーマッハを照らす。





次回から特別編を始めます。
あの、ドライブにおいて確かな実力と誇りを持ちつつも決して表(TV版)に出てこなかった四人目の男との戦いが繰り広げられます


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特別編~ルパンからの挑戦状~
怪盗の時間①


 今回から数話にわたりあの怪盗との戦いをお送りします。
それほど長くはなりませんがよろしくお願いします!


夏休みが始まって5日がたった。今俺は烏間先生経由で受けたある任務のため街灯が照らす夜の国道でライドマッハーを走らせる。

 

『郷さん、間もなく怪盗ルパンが予告した時間です!』

 

「ああ、分かっている。律、ルパンが逃走に使いそうなルートを割り出してくれ」

 

『分かりました!』

 

かつて世界中を騒がせた伝説の怪盗【アルティメット・ルパン】が復活したらしい。

 

椚ヶ丘の周辺の美術館や富豪の屋敷から幾つもの窃盗を繰り返している。

もちろん、本来なら怪盗逮捕なんて仮面ライダーの仕事じゃない。

怪盗逮捕はインターポールの銭形平次の子孫にでも任せる。

 

でも、今回はどうやらそう言うわけにはいかないようだ。

現場の警官たちが毎回、重加速を体験しているらしい。実際犯行後の現場に行ってみると重加速の残留反応がびっしりとあった。

 

そこから考えられるのは1.ルパンはロイミュードである。2.ルパンとロイミュードは協力関係にある。のどっちかだという事で俺に白羽の矢が立ったわけだ。

 

『郷さん。ルパンが現れたそうです!』

 

「出たなぁ・・・逃亡ルートは?」

 

『今から誘導します!』

 

律の誘導に従い路地裏を進んでいくと目の前をフェンスが塞いでいた。そしてフェンスの向こう側を白いマントが走っていくのが見えた。

 

「見つけたぁ!!ルパ~ン!!」

フェンスを飛び越え白マントを抜き通せんぼするように前に出る。

白いマントに白いスーツ、白いシルクハット聞いていた通りの恰好だな。

 

「ようやく見つけたぞルパン。大人しくお縄を頂戴しろ」

 

「・・・・そのバイク・・なるほど君が仮面ライダーか会いたかったよ」

次の瞬間ルパンの姿が変わった。先程までの白尽くめとは違い黒いローブが全身を覆っている。しかもその間から見える手足は人間の物とは明らかに違う金属でできたモノだった。いや、手足どころか顔も胸もローブの間から見えるすべてが通常の物とは違う特殊な金属でできていた。ナニよりこの感じ、間違いない。

「やっぱりロイミュードだったわけか、律はクリムに伝えてくれ」

 

『はい、お気を付けて』

ライドマッハーから降りてマッハドライバーを巻く。

ローブの隙間、胸にナンバープレートが見えるってことはまだ進化前か。でも何だ?この感じは・・・

コイツがロイミュードなのは間違いないけどどこか違和感がある。

 

「まぁ、倒せば問題ないか!」《シグナルバイク!ライダー!》

「レッツ!変身!」《マッハ!》

 

変身と同時に距離を積めながらゼンリンシャーターを撃ち牽制する。

弾は簡単に防がれたがその間に間合いに入った。相手に反応の隙を与えないよう素早く攻める。

 

パンチをキックをゼンリンシャーターによる打撃を繰り出していくがルパンにギリギリの所で避けられていく。

「お前、戦う気があるのか?」

 

さっきからルパンは一撃も反撃してこない。ただ俺の攻撃に対処しているだけだ。

 

「一流の怪盗と言うものは本当に価値のある物しか盗まない物さ、今は品定め中でね。仮面ライダーの名前に私が頂くだけの価値が本当にあるのかをね」

 

「なに訳分かんねーことを」《シフトカー!タイヤ交換!トラエール!》

 

マッハドライバーにハンターを装填してジャスティスケージを構える。やっぱり泥棒相手なら警察だろ?

ジャスティスケージを振り回し攻撃していく。

相手の防御をケージで弾き出来た隙にゼンリンシューターを撃つ。

大きく飛ぶルパンの落下地点に合わせジャスティスケージを放り投げた。

《ゼッタイ!トラエール!》

ケージから飛び出た鉄パイプがルパンを囲い檻を形成する。

 

「年貢の納め時だな」《ヒッサツ!フルスロットル!トラエール!》

止めを刺すために必殺の動作を取る。左右に現れたタイヤによる加速で一気に迫る。

 

「ふむ、まさかこの程度の檻で私を捕えられると思ったのかね?まったく・・・なめられた物だね」

そう言うとルパンは檻に殴り掛かった。並のロイミュードの攻撃ではビクともしない檻はルパンの攻撃でいとも簡単に壊された。

けど十分だ。もうすでにルパンとの距離は目と鼻の先、右手で構えたゼンリンシューターに加速で着いた勢いを乗せた必殺の一撃をお見舞いする!

 

 

タイミングは完璧だ。今まで数え切れないくらい戦ってきたけどその中でもトップクラスで完璧なタイミングだった。

でも、この手応えは・・まさか・・・・衝撃で舞っていた土煙が晴れるとゼンリンシューターの一撃はルパンの右手に掴まれていた。

 

「リアリ〜・・マジで?」

「なるほど、噂通りの価値はあるようだな」

 

 

ルパンの蹴りが腹部に突き刺さる。咄嗟に後ろに下がりダメージを軽減出来たけどそれでも思わず膝を着いてしまった。このパワーは・・・?

「お前、本当に進化前かよ?」

 

ハンターの檻を破壊したり俺の必殺技を片腕で受け止めるなんて進化前の状態で出来るはずがない。

 

「いい加減に正体を明かせ!!」《ヒッサツ!シューター!モエール!》

 

ゼンリンシャーターにフレアを装填し高熱の火炎弾を撃つ。火炎はルパンを包み込みローブを燃やした。

 

炎から飛び出たルパンはすぐそばのビルへと跳び上がった。

そしてローブを失ったことでその姿が露になった。

 

『ZZZ(スリーゼット)?』

律が呟いた通り奴のプレートに描かれていたのはナンバーじゃなかった。

そしてその全貌も普段見慣れた進化前ロイミュードのどのタイプにも該当しない。

「充分に見せてもらったよ仮面ライダーの価値、正に俺が盗むに相応しい!」

 

雲一つ無い夜空の闇からババババと規則正しい音が聞こえる。

ビルの間から一機のヘリコプターが現れた。

 

「残念ながら今日のお楽しみはここまでだ」

人間の姿に戻ったルパンはヘリコプターから吊るされた縄ばしごに掴まり空高く去っていく。

 

ヘリコプターの音が次第に小さくなっていき先程まで激しい戦闘の音が響いていたとは思えないぐらい静寂に包まれた。

 

 

『・・・・郷さん、あのロイミュードは・・・一体?』

 

 

律が疑問に思うのも無理はない。あのロイミュードは他のとは確かに違う。

でも、俺はあの姿をよく知っていた。

「・・サイバロイド・・・ZZZ・・・・」

 

コレは・・・思っていた以上に厄介な相手かもな・・・

 




モチベーションが上がるので宜しければ感想お願いします。


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怪盗の時間②

 冬に公開の平成ジェネレーションFINALで平成二期のライダーが一挙に復活!
やはりFINALだけにとても豪華な顔ぶれで今からとても楽しみです!!


「「サイバロイドZZZ?」」

 

速水と千葉の声が見事に重なった。

 

今、俺たち三人は椚ヶ丘から離れた電気街に来ていた。

というのも8月に行く沖縄の離島での殺せんせー暗殺に備え烏間先生の紹介のスコープ専門ショップに行くためだ。

そこはサバイバルゲームのチームや各国の軍のスナイパーやプロの殺し屋まで利用する隠れた名店らしく。

E組きってのスナイパーである二人は今回の計画の要のため最高の装備で望もうとしていた。

因みに俺は単なる付き添い。

 

朝早くに椚ヶ丘を出て特注のスコープを作るため視力や空間認識能力なんかを図っていて今は手頃なハンバーガー屋で昼を済ませている最中だ。そこで自然に昨晩の戦いの話になった。

 

「サイバロイドZZZてのは、クリムがかつて自分の身体として造った強化型ロイミュードのボディだよ」

 

かつて、クリムがまだ人間としての身体を持っていた時、ロイミュードの反乱を想定していたクリムは自身の記憶及び人格データを移す為しロイミュードと戦うための器としてサイバロイドZZZを造り出した。

しかし、サイバロイドZZZへと人格を移すには莫大なリスクが発生することが判明した。

自分では耐えられない。そう判断したクリムはもう一つの対ロイミュード対策として考案していたライダーシステムの中核となるドライブドライバーに自身の人格を移し共に戦う戦士を待つことにした。

 

 

 

 

『昨日郷が戦ったのは間違いなくあのとき破棄したサイバロイドZZZだった』

 

 

クリムは烏間とその部下数人と共に人里離れたとある屋敷に来ていた。

 

雑草が生い茂った広い庭の先にある本館は全ての窓に板が打ち付けられており隙間から漏れる僅かな日の光だけが屋敷の中を照らしていた。

 

一歩踏み出すたびに床からホコリが舞い時折蜘蛛の巣が顔に引っ掛かりながら進んでいくと長い廊下の先に一際大きな両開きの扉が見えた。

 

「・・・入るぞ」

 

烏間が確認するように部下とクリムの方を振り返ると全員が静かに頷きながら懐から拳銃を取り出す。

烏間がゆっくりと扉を開けるとそこはまるで教会の様だった。

 

巨大なステンドグラスから光が入り込み扉から真っ直ぐ伸びている赤い絨毯の先に棺の様なものがあった。

烏間たちがゆっくりと近づくと棺の蓋は僅かに開いており中が見えた。

 

『・・・・やはり空か・・・』

 

そこにはナニもなかった。

かつてクリムはサイバロイドZZZをこの棺に保管した。万が一悪用されれば108体のロイミュードと同じくとてつもない脅威になると思ったからである。

「それを俺が探しだしたわけだ」

 

『「「「ツ!?」」」』

 

何処からか声が聞こえた。烏間たちは銃を構え周囲を警戒する。

 

「烏間さん!あそこ!!」

 

部下の一人がステンドグラスの上を指す。

そこには白いマントを纏ったアルティメットルパンが居た。

 

「ハハハハ!!はじめまして、クリム・スタインベルト!」

 

『アルティメットルパン!やはりキサマがサイバロイドZZZを!?』

 

「そう、俺が盗んだ。ベルト君にはムリだったようだが俺の精神はこの身体の負荷に耐えることができた。お陰で俺は全盛期を上回る力を持って復活できた!感謝しているよ!!」

 

サイバロイドZZZの姿になったルパンに烏間たちは身構える。

 

「止めておきたまえ、やるだけ無駄だ」

 

ルパンの言う通り、現在烏間たちが持っているのは通常の拳銃のみ、これではルパンはおろか通常のロイミュードさえも倒すことはできない。

 

「今の俺の獲物は仮面ライダーのみ、不必要に誰かを傷付けるのはポリシーに反する」

 

「仮面ライダー?狙いは郷くんか!何故彼を狙う!!」

「決して年を取らない不老不死とも言える肉体を手に入れた俺はもはや並の宝では満足できなくなった。今の俺の心を満たすもの、それは・・・・英雄、仮面ライダーの名前だ!!」

 

再び人間の姿に戻ったルパンに一発の光弾が被弾した。

 

「ッ!?・・・・おやおや、招かねざる客だな」

 

烏間たちが 光弾の飛んできた後方、扉の方を見ると白髪の少年が三体のロイミュードを引き連れ右手に持つ武器を構えていた。

 

『アレン!?何故ココに!!』

 

一瞬クリムを見たアレンはすぐさまその視線をルパンへと向ける。

 

「・・・・人間がロイミュードの力を持つことは許されません。アナタはココで消去します!」

 

三体のロイミュードがルパンを囲うように散らばる。

その様子を見ていた烏間はロイミュードたちの普段との違いに気づいた。

「クリム、あのロイミュードたちナンバーが・・・」

 

そう、三体のロイミュードにはナンバーが刻まれてるプレートが存在していなかった。

『アレは、【NN(ノーナンバー)】コア・ドライビアを持たない量産タイプのロイミュードだ』

 

 

三体のNNロイミュードは一斉に襲い掛かった。

しかし、ルパンは三体の攻撃を回避するとスパイダー型を殴り付け、助けようとしたコブラ型に回し蹴りを喰らわせる。そしてうずくまるスパイダー型を踏み台に跳び、空中に浮遊するバット型を蹴り落とした。

その僅か数秒の間でルパンは三体のロイミュードを圧倒する。

 

しかし、三体のロイミュードは尚も立ち上がる。そして加勢するようにアレンも前に出た。

 

「・・・・・変身」《ブレイク・アウト》

 

魔進チェイサーに変身し身構えるがルパンは余裕の態度を崩さない。

 

「丁度いい、仮面ライダーと戦う前のウォーミングアップに付き合ってもらおう」

 

懐に手を伸ばすルパン。その手には金色で宝石が散りばめられたブレイクガンナーが握られていた。

「っ!?それは・・・ブレイクガンナーのデータを盗んでいたのか」

 

「俺に盗めない物はない。見よ!新たな英雄の誕生を・・・変身!!」《ルパン!》

 

金のブレイクガンナー【ルパンガンナー】を持つ右手をZを刻むように動かすと宝石のオーラがルパンを包み込みルパンはその姿を変える。黒のシルクハットに肩から宝石のベルトを掛け黒のマントを纏った姿に・・・その姿はまるで・・

 

「仮面ライダー・・・?」

思わず烏間は呟いた。マッハとは明らかに違う・・・しかし全身からあふれ出るその雰囲気はどこか仮面ライダーを思わせるモノだった。

 

「今はまだ仮だが・・・仮面ライダールパン、ここに見参!」

 

高らかにルパンは宣言する。

 

「さて、肩慣らしと行こうか?」《チェーン!ルパン・ブレード!》

 

ルパンガンナーに装填された金色のバイラルコアを装填すると後部のブレードがせり上がり短剣のようになった。

振るわれたルパンガンナー・ブレードモードから放たれた金色の斬撃がチェイサーたちに迫った。

 

「くっ!?」

咄嗟に回避したチェイサーであったがNNロイミュード達は躱す事が出来ず金色の斬撃に切り裂かれ爆散した。

「なっ!一撃で!?」

その威力に烏間たちは驚く、いくら量産タイプとはいえ三体ものロイミュードが一撃で破壊されたのである。

 

「キサマッ!」

 

珍しく怒りをあらわにしたチェイサーが飛び掛かり組み合った二人は壁を突き破り庭に出た。

 

『ッ!?追うんだ烏間!!』

クリムに言われ烏間たちも庭に向かった。そこではブレイクガンナーとルパンガンナーから放たれた光弾がぶつかり合っていた。

 

ルパンの射撃はチェイサーを上回りチェイサーは徐々に押され出した。

 

「グウゥッ!それならコレで!」《チェーン!チェイサー!スパイダー!》

 

チェイサーはファングスパイディーを盾としながら距離を詰めるがその攻撃はルパンガンナーによって防がれた。

大振りになってしまうファングスパイディーに対しルパンは素早い剣技で追い詰めていく。

 

「さて、そろそろ幕引きとしようか」

ルパンガンナーから写り出されたフィルムの様なものがチェイサーを捕らえた。必死に抜け出そうとするチェイサーだったがその拘束を破ることが出来ない。

 

「散りたまえ!」

 

振るわれたルパンガンナーの斬激がフィルムごとチェイサーを切り裂いた。

 

「ウワアアァァァ!!?」

吹き飛ばされたチェイサーは庭から遥か彼方にて爆発した。

 

『アレン!!?』

「まさか、あの魔進チェイサーがこうも簡単に?」

 

常にマッハと互角以上の戦いを繰り広げてきたアレンこと魔進チェイサーの敗北は烏間たちに大きな衝撃を与えた。

 

「さて、肩慣らしも終わった事だ。コチラから出向くとしようか、仮面ライダーの元へ」

 

烏間たちが茫然としている中、変身を解いたルパンは颯爽と街へと向かった。

 

 





登場ロイミュード
・NNロイミュード(ノーナンバーロイミュード)
量産タイプのロイミュード
基本的な姿はバット・コブラ・スパイダー型と同じだが胸にナンバープレートが無い。
【コア・ドライビア】が搭載されていないため基本能力はナンバー付のロイミュードの半分ほどで重加速を発生させることは出来ない。
基本的にナンバー付のロイミュードに従って行動する。


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怪盗の時間③

前回のビルドで龍我の二号ライダーへのフラグが立ちましたね。
個人的に龍我の様なやや力不足にも拘わらず怪人に必死に食らいつくキャラが後にパワーアップするのが好きなので早く変身して活躍してもらいたいです。


昼食を終えて3人で電気街を見て回っていると不意にスマホが鳴った。見てみるとクリムからだ。

 

「クリム?どうしたんだよ。そっちで何かあったか?」

 

今日はあくまでもサイバロイドZZZの確認に行っただけだから俺は同行しなかったけどもしかして何かあったのか?

 

『郷、気を付けろ!!ルパンが仮面ライダーの力を手に入れて君を狙ってそっちに向かった!!』

「はぁ?どういうことだッ!?」

クリムの叫びにも似た警告が耳に入るするとそれに合わせたように何処からか鋭い殺気が感じた。

 

「どうしたのよ?」

「クリム先生がどうかしたか?」

 

速水たちの声も録に耳に入らない。

何処だ?何処から狙っている?

その時、小さな光が顔に当たった。自然に身体が動き速水と千葉を弾くように突き飛ばした。

「キャッ!?」「うわっ!?」

 

同時に地面を蹴りその場から素早くバックステップで下がる。

 

「ちょっと!ナニすんのっ、〈バシュン!!〉・・・・・えっ?」

 

速水が文句を言い切るよりも早く目の前の地面が爆ぜた。速水も千葉もそしてさっきまで賑やかだった周りの人たちもシンッと静まった。

 

「・・・・・・うっ、うわああああぁぁぁぁぁ!!」

 

1人の叫びの様な悲鳴を合図に周囲が蜘蛛の子を散らしたように逃げ惑う人たちで混乱した。

そんな混乱の中でもしっかりと見えた。100メートル程先のビルの屋上、火災の時の消火用貯水タンクの上から銃のような物を構えている影が!視線に気づいたのか影は逃げるように隣のビルの屋上に跳び移った。

 

「ッ!?待て!!」

俺たちを狙ったって事は十中八九ロイミュード関係だ。なら、ココで逃がすわけにはいかない。

 

「ちょっ、郷!?」

「お前らは来るな!先に帰ってろ!」

 

着いてこようとした二人に釘を刺して逃げ惑う人混みをかき分けながら影を追う。

次第に人混みも無くなり街の中心部からは離れたオフィス街のエリアに入った。

今日は休日だからか人影が無いオフィス街を進んでいくと建ち並ぶビルの1つに影が入っていくのが見えた。

 

 

「ふぅ、やっと追い詰めたか」

 

乱れた息を整えてマッハドライバーを装着しさらにゼンリンシャーターも構えビルに入る。

すでに倒産したのか中は電気は通ってなく薄暗いなか階段で昇っていくと各フロアにはディスクが並んでいる。

 

「ん、何だコレ?」

 

とあるフロアを探索しているとディスクの1つにカードが1枚置かれていた。

 

「なになに・・・ただ今より仮面ライダーの名前を頂戴する。怪盗・アルティメットルパン」

 

ルパンからの予告状いや、挑戦状ってところか・・・

「いいぜ、受けてやるよ!!」

挑戦状を読み終えたと同時に背後にゼンリンシャーターを撃つ。

弾が壁を壊して粉塵が舞う中、1つの影が飛び出てきた。

 

「さすがだね仮面ライダー」

 

影の正体、アルティメットルパンが不敵な笑みで目の前に立った。

 

「今度は逃がさねーよ」

「安心したまえ、ウォーミングアップならもう済ませてある。死神くんが相手をしてくれてね」

「アレンが!?」

「おや、怒っているのかね?かつての戦友が殺られたことに」

「・・・色々知ってんだな」

 

まさか俺たちの未来の時代のことまで知ってるなんてどんな情報網を持ってるんだよ?

 

「一流の怪盗とは獲物の全てを調べるものさ。勿論君の本当の姿の事もね。君の本当の姿は〈ズギャァン!〉・・・おやおや、気にしていたかね?」

 

気付いたら引き金を引いていた。弾はルパンの真横を通り後ろの枯れた観葉植物を粉々にした。

 

「オマエ・・・ドコマデシッテイル?」

 

自分でも驚くぐらい低い声が出た。身体の奥底から言い表せない感情が沸き上がってくるのが分かる。

自然とシグナルマッハを握る左手にも力が入る。余計な事を言う前にコイツはここでつぶす!

「変身!!」《シグナルバイク!ライダー!マッハ!》「ハアァァ!」

 

変身と同時に殴り掛かるがその拳はルパンに掴まれた。

 

「クッ!」

すかさず右手に持つゼンリンシューターを振るうがそれも同様に防がれた。強烈な蹴りを腹部に喰らいディスクに叩き付けられる。

 

「そう慌てるな」

ルパンが懐から取り出したのは金色のブレイクガンナーだった。

さっきクリムが電話でいってたやつか?

 

「変身!」《ルパン!》

 

金色の光がルパンを包むとルパンをサイバロイドとは違う姿に変えた。

 

「英雄、仮面ライダーの名はこのアルティメットルパンが頂く」

 

「ざけんなよ。仮面ライダーは未来の希望なんだよ。コソドロ風情が名乗ってほど安いもんじゃ・・・ねーんだよ!!」

 

互いの武器が激突する。その衝撃でフロアのディスクは吹き飛び窓ガラスは割れていく。

 

接近戦じゃキリがない。いったん距離を取ってドライバーにシャドーを装填する。

《シフトカー!タイヤ交換!シノービ!》

 

「いくぞ!」

シャドーの力で生み出した手裏剣状のエネルギーを投げ飛ばす。ルパンは躱すが誘導式の手裏剣は死角から次々と襲い掛かる。

 

「なかなかおもしろい力だ。だが・・甘いな」《ルパンブレード!》

 

ルパンが金色のブレイクガンナーにバイラルコアをセットするとバイラルコアから剣がせり上がった。

「ふっ!」

ルパンは手裏剣とのすれ違いざまに中心部の穴に剣を突き刺した。

 

「使わせて貰おうか」

「なにっ!?」

 

ルパンが剣を振るうと手裏剣が飛んでくる。避けようとしたら脚に一発の光弾が当たった。

 

「ギッ!?」

 

痛みで動きが一瞬止まり手裏剣がボディを切り裂いた。

 

「グアアァァ!!」

 

窓を突き破り道路に吹き飛ぶ。何とか体勢を立て直そうと上を見るとルパンが追い掛けるようにビルから飛び出ていた。

 

「どうしたのかね?こんなものではないだろぅ!!」

 

金色の斬激が迫る。避けようにも身体がうまく動かない。ゼンリンシャーターを前に出して受け止めるしかない!

ゼンリンシャーターを両手で持って盾のように構える。次の瞬間、凄まじい衝撃が襲ってくる。空中では踏ん張る事も出来ず勢い良く地面に叩きつけられた。

 

「グッ!・・・クッ・・ソ・・・・」

起き上がろうにも身体のあっちこっちに痛みが走りすぐに膝を着いてしまう。

数メートル前にルパンが降り立った。さっきまでの戦いでの疲れを微塵も感じられない。

 

強い!・・・認めたくないけどハート並みだ・・・だけどなぁ!

 

「仮面ライダーの名前は渡すわけには・・いかないんだよ!!」《ヒッサツ!フルスロットル!・マッハ!》

未来の人類の希望だった仮面ライダーの名前は、戦いで散っていった奴等の誇りは・・・誰にも渡さねぇ!!

「ウオオォォォォ!!!」

 

空中で限界まで回転しパワーを溜める。その勢いのまま必殺の蹴りを打つ。

 

「残念だが、そろそろお開きと行こうか?」

「ガアッ!な・・に・・・・うご・・けない・・?」

 

ルパンのブレイクガンナーの銃口から光が放出された。光が俺を包むとまるで古い映画のフィルムの様なものに動きを止められた。

抜け出そうとしてもまるで一時停止の様に動かない。

 

「終わりだ」《ルパ〜ンストラッシュ!》

 

さっきよりも巨大な斬激にフィルムごと切り裂かれ声を上げる間も無く変身が解除され倒れ込んだ。

 

「俺の勝ちだな。今この瞬間から俺の名は、仮面ライダールパン!!」

 

「グッ・・ウゥゥ・・・何度も言わせんなよ・・仮面ライダーの名前はなぁ・・そんなに安くないんだよ!」

まるで世界中に宣言するかのように叫ぶルパンに向けゼンリンシャーターを撃つが、ルパンはそれを読んでいたかのように右手を出し防いだ。

 

「懲りないな。それとも、どうせ殺されはしないと思っているのかな?」

 

ルパンが銃口を向けてくる。ゼンリンシャーターを撃とうとしたらそれより早くルパンが引き金を引きゼンリンシャーターは後ろの方に弾かれた。

 

「仮面ライダーは俺だけで十分だ」

 

次の瞬間、ドライバー越しに腹部に強い衝撃が走った。

まるでトラックとぶつかった様な勢いで吹き飛びながら視界の中に撃ち抜かれ火花を散らすマッハドライバーが見えた。

 




モチベーションが上がるので感想宜しくお願いします。


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怪盗の時間④

今日のビルド、龍我がとうとうスマッシュを倒すまで強くなりましたね~なんかもう龍我が主役なんじゃないかって思うぐらいの活躍ですね。

そして来週はとうとう龍我が変身!仮面ライダークローズの登場です!!いずれはクローズメインの小説を作ってみたいです。



・・・くん・・・ご・・くん!・・・・ごうくん!!・・・・・郷くん!!・・・ダメです全く目を覚ましません!こうなったら最後の手段です!!

 

おっおい殺せんせー・・・それは辞めた方が・・・

 

いえっ!もうこの手しかありません!!

 

「んっだよ、うるさくて眠れない「ん~~~」・・・・ウオバサシュセスガァ!!?」ビュンッ

 

「にゅあぁぁぁぁ!?」

 

耳元から何度も呼ぶ声に目を開けると目の前に突き出された黄色い唇が迫っていた。思わず意味不明な叫び声を上げながら拳を突き出すとこれまた妙な叫び声を上げながら黄色い顔が吹き飛んでいった。

 

「ハァ!ハァ!ハァ・・・最悪の眼覚めだ・・!」

 

「郷!気が付いたか!?」

 

「・・・千葉?」

 

えっと俺は確かルパンと戦っていて・・・・

 

「いっ!?」

今までの経緯を思い出そうとすると身体中が痛み出した。身体を良く見てみると着ている服は所々破けて隙間から見える肌からは血があふれ出ていた。そしてすぐ横にはバチバチと火花を散らしているマッハドライバーが置かれていた。詳しく見る必要も無く使用不能だってことが分かる。

 

「ッ!そうだ、ルパン!あいつドコに行った!!?」

思わず隣にいた千葉に詰め寄る。

「落ち着けよ!俺が来たときにはお前が倒れていただけで他には誰もいなかったよ」

 

「そっそうか・・・・ってなんでお前が此処に居るんだよ?」

 

千葉と速水には先に帰るように言ったはずだ。

 

「いやっそれが・・・あの後二人で駅までは行ったんだけどな、遠くから何かが壊れる音が聞こえて速水がやっぱり放っておけないって言って走っていったんだ・・」

 

「そっか・・・で、速水は?」

辺りを見渡しても速水の姿が見えない。

 

「途中で見失ってな、さっき連絡したからもうすぐ来ると思うぞ」

 

「郷!!」

大通りの向こうから速水が走って来た。息を切らし服も少々乱れている所を見ると随分走り回って探してくれていたみたいだな・・・あ、一瞬パンツが見えた・・

 

「はぁはぁ、全く心配したのよ」

 

「わり~わり~、それよりも・・・・中学生で黒は少し早いと思うぞ?」

 

「え?・・・・・ッ!ちょっ、何見てるのよ!?////」

 

顔を赤くしながらスカートを押さえる速水に自然と気持ちも落ち着いて来た。

 

「ところで、何で殺せんせーはそんなところで寝ているのよ?」

 

・・・・ん?殺せんせーなんていたか?速水が指さす位置を見ると殺せんせーがなぜか鼻血を出しながらぶっ倒れていた。何やってんだこんなところで?

 

「いや、お前が殴ったんだろ!」

 

「え?リアリ~・・・マジで?」

そう言えばさっき迫り来る気味悪い顔をぶん殴ったような・・・ああ、あれが殺せんせーだったのか。

 

「今なら簡単に殺せるんじゃないかしら?」

 

速水が対殺せんせー銃を持って近付くとタイミングよく殺せん背は飛び起きた。「チッ」

速水が悔しそうに舌打ちをするがまぁこんな簡単に殺せるんなら苦労はしてないよな。

 

「郷くん!!酷いじゃないですか心配していたのにいきなり殴るなんて!!」

 

「じゃあかしいぃ!!タコの人工呼吸で命拾うぐらいならそのまま永眠した方がマシだ!!」

 

「そこまで言わなくても・・・シクシク・・」

 

さーて、千葉が殺せんせーを慰めている間にマッハドライバーを回収するか。

 

「大丈夫なのソレ、かなり壊れているみたいだけど・・・」

 

速水の指摘通りドライバーは丁度中心部から火花を散らし機能は完全に破壊されていた。

 

「まぁ、ドライバーは予備があるから良いけど問題は・・・・」

 

本来、ドライバーの中にあるはずのモノがなかった。ドライバーと同じで俺が仮面ライダーに変身するために必要不可欠なモノ、シグナルマッハがそこにはなかった。

ーーーーーーーーーーーー

 

翌日、E組の教室に全員が集まった。それぞれの席に付き視線を前方の黒板に向けている。

黒板には律が写し出した昨日のルパンとの戦闘映像が映し出されていた。

 

「・・・・強いな」

思わず烏間先生が呟いた言葉に全員が静かに同意した。アレンを上回る正確な射撃に即座に相手の攻撃に対応する柔軟な思考、反撃の隙を与えない怒濤の斬激、なにより・・・

『厄介なのはこの拘束ですね』

 

律が俺とアレンを捕らえたフィルム状の技の映像を映した。

この拘束を受けるとまるで映画の1コマの中に閉じ込められたみたいに動けなくなる。その隙に強力な斬激で切り裂くのがルパンの必勝パターンだ。

ルパンを倒すためにはこの技を攻略しないとならない・・・

 

「でもよ、この技を攻略する以前に今の郷は変身が・・・」

 

岡島の言葉に周りの空気が重くなる。そ〜なんだよな〜、どうやら気絶している間にシグナルマッハをルパンに盗まれたみたいなんだよなぁ・・・

 

「まぁ、無い物ねだりしてもしゃ〜ない、何とかするさ」

 

「何とかって、どうするのよ?」

 

「それは・・・今から考えるさ」

 

「「「「・・・・はぁ~・・」」」」

 

おいやめろよな~そんな呆れたようなため息、こっちまで気が重くなる。

 

「まぁ、幸い今のところルパンからの予告は無い。今のうちに政府でも対策を考えておく」

 

教室を出て行く烏丸先生と入れ替わるようにクリムと殺せんせーが入って来た。

 

『郷、とりあえず予備のドライバーの調整は終わったがやはり問題はシグナルマッハだ』

「先生の方でも郷君の匂いを頼りに探してみたんですが・・・行きつくのは女子大のテニスコートやプールばかりです」

おおい!殺せんせーいきなり何言ってんだっ!「郷?」・・・痛いなんか知らないけど後ろからちょうど女子の人数と同じ数の痛い視線が突き刺さって来る・・・

 

そーーーっと少し後ろを・・・・「「「「「ジーーー・・・・・」」」」」うわ〜女子の皆さんのが冷たい視線で見てる〜〜〜

 

「と、とにかくルパンが尻尾を出すまでに対策を考えないとな。行くぞクリム!」

 

殺せんせーから素早くクリムを奪いその流れで教室から出る。

後ろから「逃げた」って聞こえるけどムシムシ、実際対策を考えないといけないのは事実だしな。

 

ーーーーーーーーーーー

「あ〜〜頭いって〜〜・・・」

教室を出てから数時間、部屋でクリムと一緒に何とか代わりのシグナルバイクを造ろうとしたがどうもうまくいかなくて息抜きもかねて街に出ている。

 

「不味いな・・・このままじゃルパンどころかロイミュードにも対抗できない・・・」

そもそもシグナルマッハは他のシグナルバイクやシフトカーとは違うからな・・この時代の設備じゃそろそろ限界か。

 

「あら、郷?」

「んあっ?」

 

呼ばれて振り返るとコンビニの袋を持った速水がいた。

「よっス、さっきぶり」

 

 

「どうなのよ変身できそうなの?」

 

「まぁ、あと一歩ってところかな」

俺はポケットから一台の赤いシフトカーを取り出して速水に見せる。

 

「何よそのシフトカー?」

「一応新しい変身用のシフト-なんだけど・・まだ未完成なんだよなぁ」

 

そう、一応変身は出来るんだ。だけどこのシフトカーは出力が強すぎて変身てもまともに戦う事が出来ない。出力を押さえる何かが必要なんだよなぁ

 

「・・・速水がパンツを見せてくれればやる気が出て完成できる気がする」

「なっ!?//////何言ってるのよ!!もう知らないわ勝手にやってなさい!///」

 

顔を赤くしながら家に帰っていくのを見送りながら考える。やっぱりいざと言う時は使うしかないよなぁ・・・

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

その翌日、早朝に烏間先生からメールが届いた。何でも防衛省宛てにルパンからの予告状が届いたらしい。その内容は・・・【本日、欲望に塗れし愚者どもに裁きが下る。古き仮面ライダーよその不完全な力で阻止して見せよ。仮面ライダールパン】

明かな殺人予告だなしかも俺をご指名かよ。ルパンは無意味な殺生は嫌うって聞いてたんだけどな・・・

 

『おそらく、サイバロイドZZZの影響だろう。そのエネルギーにルパンの精神が徐々に耐えられなくなり暴走を始めたんだ。このまま放っておくと更なる暴走を起こしかねないぞ!』

「その前に止めるしかないか・・・律、皆を教室に呼んでくれ」

 

『はい、分かりました!』

 

「クリムいざってときは力を借りるぞ」

『・・・OK、分かった』

 

 

――――――――――――――――――――

 

2時間後、教室に郷とクリムを除いたE組全員が集まった。

そこに教室の扉が開き郷とその腰に巻かれたクリムがやって来た。

 

「おい、呼び出した本人が一番最後かよ」

「いや〜ソ~リ~、ソ~リ~、ちょっと準備に手間取ってな」

 

軽く謝罪をしながら郷は教卓の前に立ち教室を見渡した。しっかりと全員が居ることを確認すると一度深呼吸をした。

「じゃあ早速、今日呼び出した理由を話すぞ。もう知っていると思うけど今朝、ルパンから予告状が届いた」

 

律が黒板にルパンの予告状を映し出す。それを見て全員が真剣な目になったのを確認して続ける。

 

「この欲望に塗れし愚者共、これが差すのは椚ヶ丘スカイビルだな」

黒板に新たに高層ビルが映し出された。このビルでは今日、政治家や著名人たちのパーティが行われる。

 

「政府もこのビルの警備を強化しているが恐らく無意味だろう」

 

「ならよぉ!こんなところでしゃべってねーでサッサと行かねーと!!」

 

「落ち着けよ寺坂、郷がなんの理由もなく俺たちを呼ぶわけないだろ。だよな」

さっすがカルマ、良くわかってるな。じゃあそろそろ本題に入るか。

 

「問題は予告状のこの部分だな。【古き仮面ライダーよ。その不完全な力で阻止してみせよ】この文章を見て確信した。ルパンは・・・・この中にいる!!」

「「「「「ッ!!!?」」」」

 

「ごっ郷くん!それは本当ですか!?」

「ああ、間違いない。人間レベルの変装なら殺せんせーは見抜けただろうけどな相手はロイミュードだ。殺せんせーが見抜けなくても仕方ない。実際、俺だって確実な確信があった訳じゃない」

 

最初の違和感は小さなモノだった。でも、どうしてもその違和感が消えなくていくつか何度か接していくうちにその違和感がどんどん大きくなっていった。

 

「そしてこの予告状を見たとき確信した。ルパンは・・・・お前だ!!」

 

俺はある人物を指差した。

今度こそ決着だ。ルパン!!

 




モチベーションが上がるので感想宜しくお願いします。


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怪盗の時間⑤

・・・・長かった・・・この話を作るのに2週間ぐらい掛かってしまいました。

日にちを掛けて作った分文面がバラバラかもしれませんのでご了承ください。

そして・・・・クローズカッケェェェェ!!!
デザインもキックもかなり好みです!これはもうクローズ主役の話を作るしかありませんね!いつの日になるかわ全く未定ですが必ず作ります!



「ルパンは・・・・お前だ!!」

 

俺が教室の一角にいる人物を指差すと全員がそちらを向き目を見開いた。

俺が指差した人物それは速水だ。

 

「ちょっ!なに言っているのよ郷!?」

「聞き取れなかったんならもう一度言ってやるよ。お前がルパンだ。速水いや、サイバロイドZZZ!!」

「ちょっと待って郷くん!!凛香ちゃんがルパンだなんてそんな・・・」

 

「倉橋の気持ちも確かに分かる。けどな・・・ルパンの予告状にかかれた不完全な力、それはこのシフトカーの事だ。このシフトカーの事は政府にも話していない。知っているのは俺とクリムそして昨日俺が教えた速水だけだ!」

 

クラスの視線は俺の右手に握られた赤いシフトカーから席でうつむく速水にいや、速水に化けたルパンに集中する。

 

「・・・・いったいいつ頃から怪しんでいたのかね?」

 

「「「「っ!?」」」」

 

その口から発せられた声が速水の声とはほど遠い男性のものに変わった。

みんなは静かに席から立って距離を取った。殺せんせーも烏間先生も生徒を守る様に前に出る。

「確信したのは本当に今日の予告状を見た時だ。でも違和感は初めから感じていた一昨日、お前が速水の姿で俺たちの前に現れた時からな!」

 

「ほっ本当かよ郷!?」

その言葉に真っ先に反応したのはやはりその時一緒に居た千葉だった。

「ああ、あの時走ってきたコイツをまだ俺も速水だと思っていた。だからいつものノリでパンツが見えたってからかったんだけどなその時コイツは顔を赤めただけだった。本物の速水ならなぁ・・・一発食らわせるくらいのツンを見せるんだよ!!」

 

((((いや、その疑い方はどうかと思うぞ・・・・))))

 

・・・なんかクラスの視線が冷めたものに変わった気がするがまあいいか、追い詰めるように【速水】に視線を戻す。

「クククク、なるほど君たち二人の関係を少し先読みしすぎてしまったみたいだね」

 

【速水】は自分の顔を掴みその皮を剥がした。いつの間にか背はのび服装も白いマントとスーツに変わっていた。

 

「いかにも!俺こそが世紀の大怪盗、仮面ライダールパン!!」

 

文字通り化けの皮を剥がしたルパンは俺たちの頭上を飛び越えグラウンドに出た。その時一瞬奴の手にスイッチのようなモノが握られているのが見えた。

 

「逃がすかよ!」

俺たちもルパンを追って窓を飛び越えグラウンドに出るが

 

「むにゅ!?」「なっ!?」

 

背後から殺せんせーと烏間先生の驚愕の声が聞こえた。振り返ると窓を飛び越えようとした二人は教室の床に倒れていた。

「無駄だ。今その校舎には特殊なバリアが張ってある。出られるのはコア・ドライビアを持つ仮面ライダーやロイミュードのみ」

ルパンの言う通り他のみんなも校舎から出られないみたいだ。寺坂たちがイスをバリアに叩きつけたり律が発砲しているけどバリアはびくともしていない。

 

「さて、そろそろ予告の時間になるので俺は行くが、一つ気にならないかね?」

 

「・・・・なにがだよ」

 

「本物の速水凛香の居場所だよ」

 

「なにっ!?

「凛香!?」

 

ルパンが空中に投影した映像を見て矢田が叫ぶ。そこに写っていたのは高層ビルに宙吊りになっている速水の姿だった。

すぐそばにはスパイダー型のNNロイミュードの姿もある。

 

『背後の風景からあのビルは椚ヶ丘マウンテンビルと予測できます!』

 

律がすぐに位置を特定する。けどそこって確か・・・

「スカイビルと真逆の方向じゃねーかよ!?」

 

「さあ、君はどちらを選ぶ?怪盗か囚われのお姫様か」

 

「っ!?待て!!」

 

悠然と去っていこうとするルパンを追い掛けようとすると物陰からナニかが飛び掛かってきた。

バク転で後ろに下がって避けて身構えながらナニかを目視する。それはコブラ型のNNロイミュードだった。

 

「邪魔だっ!」

時間が無い、サッサッと片付けようと殴り掛かるが逆にカウンターを喰らった。怯んだ隙をつかれ更に連続で蹴りを喰らう。

おかしい・・NNロイミュードにしては強すぎる。そう思っていると光弾が迫って来る。横に飛んで回避しながらゼンリンシューターを撃つ。

一瞬空中に移る映像を見ると少しずつ速水を吊るしている糸が切れかかっていた。このままじゃ後数分で・・・クソッ!

 

『おそらく以前対峙した時にデータを取り強化して復元したのだろう。中々の技術力だ』

 

「感心している場合かよ!時間が無い、行くぞクリム」

 

『・・・OK、START YOUR ENGINE!』

 

ポケットからブレスレット型のデバイス・シフトブレスを取り出して左腕に巻く、クリムのイグニッションキーを捻り内部のコア・ドライビアの回転させる。エンジン音が周囲の空気を震わせロイミュードを威嚇する。どこからか飛んで来た黒いシフトカーを掴み後ろ部分を回転させシフトブレスに装填する。

「行くぞ・・・レッツ、変身!!」

『ドライブ!タイプスピード!』

 

普段の白とは真逆の黒いアーマーが身体に装着されていく。クリムとシンクロしていく感覚が脳内に広がり俺は仮面ライダープロトドライブに変身した。

 

「郷くん、その姿は?」

背後から殺せんせーたちの驚く声が聞こえる。この姿の事は烏丸先生たちにも言ってなかったからな。そもそも俺がクリムと一緒に変身する日が来ること自体考えても居なかった。

 

「さぁ、行こうぜクリム。今は俺が仮面ライダードライブだ!ひとっ走り付き合えよ!!」

 

地面を蹴りロイミュードに接近する。そのまま拳を振るい顔面を殴る。怯んだ隙をつき追撃の回し蹴りを食らわす。

「ギィッ!ガアアァァァ!!」

ロイミュードも反撃をしようと飛び掛かって来る。互いに組み合ってそのまま森の中へと移動し殴り合う。初めのうちは拮抗していたが徐々に押されていく。

相手の光弾を至近距離で受け仰け反った隙に強力な拳を喰らい木に激突した。

 

「チィっ!やっぱりプロトタイプじゃあキツイか?」

 

 

追撃してくるロイミュードを蹴り飛ばして距離を取るが空かさず光弾が飛んでくる。木を盾に防ぐが長くは持たない。そもそもそんな時間はないけどな。

 

「一気に決めようぜクリム」

『OK、フルスロットルで走り抜けよう』

 

シフトブレスに装填されたシフトプロトスピードを起動させる。

『スピード!スピード!スピード!!』

 

マッハ程じゃないけど全身、特に脚の力が倍増していくのを感じる。

相手の光弾が止んだ一瞬の隙を突いて飛び出す。迫る光弾を避けながらロイミュードに近付き空いているボディを殴る。更に連続で拳を叩き付けていく。

 

「オラオラオラオラオラオラ!!」

 

次第にロイミュードの身体が浮き出す。足が完全に地面から離れた時、渾身のアッパーで空高く打ち上げる。

 

「トドメだ!!」

『ヒッサツ!フルスロット〜ル!!スピード!!』

 

ロイミュードを追うように地面を蹴り飛び上がる。空中で一回転し右足を突き出す。エネルギーを集中させたキックがロイミュードのボディを破壊した。

 

そのままグラウンドに降り立つ教室を見ると殺せんせーたちはまだ教室に閉じ込められたままだ。

 

「おい、郷!変身できたんなら速くこのバリアをぶち壊せよ!!」

「いえ、その必要はありません!」

 

寺坂がバリアを叩きながら叫ぶがそれを殺せんせーが制した。

 

「郷くんはそのまま行ってください!その装備ではおそらくこのバリアは破れません!」

「でも殺せんせー、郷くん一人じゃ二ヶ所同時には・・・」

片岡が不安そうな表情をするが殺せんせーは優しく微笑む。

 

「心配ありません。どうすれば良いのか郷くんなら分かっている筈です」

 

殺せんせーと視線が合う。それだけで何を言いたいのか十分理解できた。

「分かってるッスよ。期待に応えられれば良いけどな!!」

『急ごう、郷』

 

 

不安そうなみんなの視線を背中に浴びながら山道を駆け降りていく。

 

―――――――――――――――――――――

 

―ビュュュューーーーン―

「きゃぁぁぁっ!!」

 

強いビル風が吹いて体が大きく揺れた。私は今、マウンテンビルに吊るされている。

あの時・・・・郷と千葉と一緒に街を歩いていた時、突然狙撃されて郷は狙撃手を追いかけて行った。私も付いて行こうとしたんだけど郷に止められて千葉と駅まで行ったんだけど途中で爆発音が聞こえて引き返したんだ。

そして郷を探している途中で突然意識が遠くなって気が付いたら・・・

 

―ブチブチ―

「ッア!?」

 

今私の命はこの一本の糸に支えられている。今にも切れそうなこの糸の持ち主の蜘蛛型のロイミュードはまるで今のこの状況を楽しんでいるように私の顔を覗き込んでいる。

 

「ギギ・・ソロソロジカンダナ・・」

ロイミュードが右手を突き出すとみの前に映像が映し出された。

 

『気分はいかがかな?お姫様』

「ッ!ルパンッ!」

 

そこに居たのは私をこんな目に合わせている張本人の怪盗ルパンだった。何か乗り物に乗っているのか背景が少し揺れている。

 

『今から俺は椚ヶ丘スカイビルを破壊する。果たして愛しの騎士(ライダー)は君を取るか名も知らぬ大勢を取るのか・・・楽しみだ』

良く見るとルパンの後ろに映っているのは椚ヶ丘スカイビルだ。まさか、本当に破壊する気?そんな事したら大勢の人が!こんなの、どっちを選ぶかなんて・・・・決まっているじゃない・・・・・

アイツは・・・郷は人類の未来を守るために戦っている。いつもそう言っているのよ。私一人を選ぶ筈がない・・・

 

『さて、彼はどちらを選ぶのか『ウオオオォォォォ!!』ッ何!?』

映像の向こうから郷の叫び声が聞こえた。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

「ウオオオォォォォ!!」

「何ぃっ!?」

 

山道を下りた俺は真っ直ぐ椚ヶ丘スカイビルに向かった。その途中、上空に怪しい気球が飛んでいるのが見えて近くのビルの屋上に上がって見ると気球に乗っていたのはやっぱりルパンだった。

屋上の端から全力で走り跳んだ。距離は十分足りてオマケとしてルパンに殴り掛かった。動揺していたルパンは体制を崩して後退りする。

 

「何とか追い付いたな」

 

「くっ!詩藤郷、速水凛香を見捨てたのか!?」

 

「どっちを選ぶか?なんて質問ハナッから考えるまでもない。答えは決まってたんだよ!」

 

「なるほど、それが君の答えか・・・おろかな選択をしたな!」

 

ルパンが斬り掛かってくる。この狭い気球の中じゃ避けきるのは無理だな・・・だったら。

-ガッ!-

「何?」

 

俺は両腕を交差させてルパンの攻撃を止めた。但し刃をじゃない、振り下ろす腕をだ。意表を突かれたように隙が出来たルパンに回し蹴りを食らわす。更に続けて蹴りを食らわし続けるがまともに入ったのは初めの一発だけで残りはすべて防がれている。

それでも蹴り続けているとルパンの腕がまっすぐに伸びてきた。咄嗟に身体を引くが間に合わずその腕は俺の喉を捕えた。

 

「ガァッ!?アア・・!」

 

「あまり調子に乗らない事だな・・」

 

息が出来ない・・・声もまともに出せない・・・・振りほどこうとしても喉を握る腕に力を籠められる・・・

そのままルパンは俺の身体を気球の外に出す。このまま手を離されたら地上までの数十メートルを紐無しバンジー

することになる。

 

「見ているがいい。君の愚かな選択が結局何も守れない悲劇の結末になる瞬間を!」

 

『ギギ・・・ガアアアァァァ!!』

『えっ!?キャアァァァァ!!』

映像の先でロイミュードが速水を吊るす糸を切断した。

 

そのまま速水は地上に向け落下していく、そう誰もが思っただろう。だが・・・

 

 

―――――――――――――――――――――

 

『ドロン!トライドロン!!』

一台の車が地上からジャンプして来た。車は空中でその姿を変え巨大なアームで速水をキャッチし車内に乗せた。

 

「キャァッ!」

 

『速水くん、大丈夫かね?』

車内にはクリムが居た。

「クリム先生?・・・ココは・・」

『トライドロンの中さ、途中で郷と別れ郷がルパンの気を引いている隙に君を助ける作戦だったのだよ』

 

―――――――――――――――――――――

 

「くっ!おのれ・・・こしゃくな真似を・・「オラァ!」グゥッ!?」

 

映像に気をとられているルパンの腹部を蹴り拘束から脱出する。

 

「どちらかを選ぶ?そんな選択し始めから持っていね〜よ。お前を止めて速水も助けるに決まってるだろ!」《シューター!》

 

ゼンリンシューターを撃ち怯んだルパンに接近し攻撃する。すれ違うようによに横に抜けつつゼンリンシューターを振り払う。続けて振り返ったルパンの身体を真っ二つに割るかのように振り上げる。

 

「グゥッ!?おのれぇ!」

 

苦痛の声を上げたルパンだったがすぐさま怒りのこもった叫びと共に蹴りを繰り出した。

 

「ッ!?ガァッ、ア・・・・!」

 

迫る蹴りをガードしよう構えるが予想以上のその威力にガードした腕ごと気球の外まで押し出された。

 

「ウ、アアアアアァァァァァァ!!」

 

重力に逆らえないまま地面へと落下していく、無駄だと解っていても腕が勝手に何かに掴まろうと暴れる。勿論、こんな空中に掴めるモノなんかあるわけがない。視界の端には高笑いを上げながら見下ろしているルパンが映る。

 

・・・・・終わる?未来を変えられないまま?何もできないまま?俺は・・・ココで終わるのか・・・・・・・・・・・・ふざけんなぁ!!」

 

まだ終われない!まだ止まれない!俺のレースはココからだ!!

走り続けてやるよ!俺は、仮面ライダーマッハだぁ!!!」

 

その手にはシグナルマッハが握られていた。なんでルパンに盗られたシグナルマッハがあるのか?そんな事は思う間もなくマッハドライバーを装着、シグナルマッハを装填する。

 

《シグナルバイク!ライダー!》

「レッツ!変身!!」《マッハ!》

 

地面に激突する。地鳴りと共に舞い上がった砂塵の中から俺は現れた。眼前では気球から落下してきたルパンが起き上がる。

 

「追跡・・・撲滅・・・いずれもマッハ!」

 

腕を振り払って砂塵を払う。

 

「仮面ライダー・・・・・マッハァ!!!」

 

仮面ライダーの名前、返してもらうぜ!!




モチベーションが上がるので感想宜しくお願いします。


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怪盗の時間⑥


映画、平成ジェネレーションFINAL見てきました!
見終わって思ったことは、この映画は龍我がの成長の物語だなっと思いました。

少しネタバレになるかもしれませんが最も新しいライダーであるクローズが多くの先輩ライダーと接していき仮面ライダーとしての戦う理由を見つけていくいいストーリーでした!!

アクション面ではクライマックスのバイクアクションが圧巻でした。6人のライダーがスクリーンを縦横無尽に走る姿はまさに仮面ライダーでした!
機会があればもう一度見に行きたいです。


「これで終わりだなぁ!ハハハハハ!!」

 

地面へと吸い込まれていく郷を眼下にルパンは笑う。最早その姿にかつての殺しを嫌う誇り高き怪盗の面影は無かった。

 

力に飲まれ英雄の名に溺れた仮面の怪盗は自身の描いた劇のフィナーレを飾ろうと銃口をビルに向けた。

 

「これで俺は真の英雄の名を完全に手に入れた!!」

 

引き金が引かれ黄金の光弾が真っ直ぐと飛んでいく。もう1秒も経たない内に英雄の誕生を祝う巨大な花火が咲く、そう思われた。

 

その時、1つの黒い光弾が黄金と交わり破裂した。

 

「何だと!?」

 

黒と金、二色の光が輝く中、一匹の黒い蝙蝠が飛んでくる。ルパンが反応する間もなく蝙蝠はルパンに体当たりした。その衝撃で大きく体制を崩したルパンは気球から落下、同時に隠し持っていたシグナルマッハを手離してしまった。

強く地面に叩き付けられたルパンが起き上がると目の前に大きな砂塵が舞っておりその中に1つの人影が見えた。

 

「追跡・・・撲滅・・・いずれもマッハァ!!」

 

人影が大きく腕を振り払うと砂塵が払われ中から仮面ライダーマッハが現れた。

 

「仮面ライダーマッハァ!!」

 

高々と名乗りを上げたマッハの横にあの黒い蝙蝠が降り立った。

その正体は魔進チェイサーことアレンだった。

 

「やっぱ生きてたかよアレン」

「・・・・今日だけは一緒に闘います。コイツだけは・・・許せない!」

 

「オーライ!一緒に行くか!!」

 

二人はそれぞれの武器を構え同時に駆け出した。

「小癪な・・・」

ルパンが指を鳴らすとバット型とスパイダー型のNNロイミュードが現れた。

 

2体のロイミュードを引き連れルパンも駆け出す。

マッハとルパンがチェイサーと2体のロイミュードが激突した。

 

 

「コアを持たないコピーなら遠慮なく破壊できますね!」《チューン!チェイサー!コブラ!》

 

チェイサーはテイルウィッパーを装備し空中に居るバット型の首に絡ませそのままバット型ごと振り回しスパイダー型に向け投げ飛ばした。

 

当たる寸前にスパイダー型は糸をビルの壁に絡ませ上空に回避すると振り子のように左右に身体を揺らした。

 

「グワーッ!」

そのまま勢いを付けチェイサーに飛び掛かるスパイダー型に合わせるようにバット型も再び飛行し空中から光弾を撃つ。

 

チェイサーはそれを落ち着いて対応する。まず、飛び掛かって来るスパイダー型に対し身を屈めカウンターのパンチを打ち込む。続けてバット型の光弾をテイルウィッパーを振るい弾きブレイクガンナーの光弾でバット型を撃ち落とした。

 

《チェーン!チェイサー!スパイダー!》

「これで終わりです・・・・」《フルブレイク!!スパイダー!》「ハアァァッ!!」

エネルギーの集中したファングスパイディーのクローが起き上がろうとする二体のNNロイミュードを切り裂いた。

―――――――――――――――――――――

「「ハァッ!」」

 

マッハのゼンリンシューターとルパンのルパンガンナーがぶつかり合う。

互いの銃口を押し当てながら同時に引き金を引いた。ゼロ距離で激突した光弾は破裂し2人を弾くように吹き飛ばした。

 

「少しはやるな」《ルパンブレード!》

ブレードモードに変わったルパンガンナーを振るいゼンリンシューターの光弾を切り落としながら接近する。鋭い斬撃がマッハを斬り付けていく。

 

「チィッ!何度もやられる俺じゃね~よ!」《シフトカー!タイヤ交換!アラブ~ル!》

ランブルダンプをドライバーに装填し左腕にランブルスマッシャーを装備した。ルパンの斬撃を受け止めそのまま弾き飛ばしランブルスマッシャーを突き出す。ルパンのボディを高速回転するドリルが削る。激しい火花を散らしながらマッハは一歩づつ前へ出る。渾身の力でルパンを押し出すと十数メートル先へとルパンを吹き飛ばした。

 

追撃のためマッハが距離を詰めようとするとルパンガンナーから光がマッハを覆った。映し出されたフィルムがマッハの動きを止める。

「俺のこの技が破れない限り貴様に勝ち目はない」

 

動きの取れないマッハにルパンガンナーの光弾が容赦なく浴びせられる。

 

「ガッァ!・・・舐めんなよ。俺の走りがこんなチャチなモンで止められるわけないだろぉ!!」

 

マッハの叫びに呼応するように赤いシフトカーが来た。シフトカーそのボディに深紅のイカズチを身にまといマッハを拘束する光のフィルムに突っ込む。

シフトカーがドライバーに装填された瞬間とてつもないエネルギーがマッハの全身を覆った。

「ウオオオォォォォォォォ!!〜〜〜〜タッハァーー!!!」

マッハが真っ赤な光に包まれると光のフィルムは破裂するように飛び散りその余波でルパンも吹き飛んだ。光が収まるとシフトカーはドライバーから飛び出し地面に転がる。

 

「ハァ・・ハァ・・・・ハァ・・やっぱり・・・・この・・暴れ馬は・まだまだ調整が必要だな・・・でも・・破ってやったぜお前の技!」

 

フラフラな状態でありながらも立ち上がったマッハはルパンが起き上がるより速く動いた。地面を滑るように移動しルパンに迫る。ゼンリンシューターの銃口をルパンに当て引き金を引く。ゼロ距離からの光弾に後退るルパンであったがマッハは後方に後退るルパンとの距離が離れないよう足を動かし続ける。

ルパンは何度もゼロ距離からの光弾を浴び続け気付けばルパンガンナーを手放してしまっていた。

「オラヨッ!!」

走り続けた勢いをのせた蹴りがルパンを大きく飛ばした。

 

そこに速水を乗せたトライドロンがやって来た。

 

「郷!」

 

運転席から降りてきた速水は足早にマッハに駆け寄った。

 

「速水!無事だったか!?」

「ええ、クリム先生が助けてくれたわ。それよりごめんなさい・・・私があの時郷の言う通りに帰っていればこんなことには・・・・・」

 

速水は自身の軽率な行動が郷や周りを危険な目に合わせてしまったと後悔していた。

だが俯く速水の頭にマッハの手が優しく乗せられた。

「モーマンタイ、モーマンタイどっちにしろ結果は変わってなかったさ。俺がアイツに勝つ事はさ」

「・・・・クスッ、ありがとう」

 

 

「グゥッ・・・・!まさか俺がこんなところで・・・・」

 

なんとか起き上がったルパンだったがダメージの影響で最早立っているのもやっとの状態だった。

「さて、折角だからな今日は一緒に決めようぜ。速水!クリム!!」

 

「ええ!!」『OK!!』

 

速水はふたたびトライドロンの運転席に乗り込みクリムの操作で急発進する。

マッハは先程プロトドライブの変身に使用した黒いシフトカーをドライバーに装填する。

 

《シフトカー!タイヤ交換!ハヤーイ!ヒッサツ!フルスロットル!ハヤーイ!》

 

ルパンを囲うようにタイヤが出現する。高速で回り出したタイヤはその距離を縮めていきルパンは四方から高速回転するタイヤに挟まれた。

 

「グアァ!?」

その衝撃で大きく撥ね飛ばされたルパンの周囲をトライドロンが回り出し真紅の円になっていく。

 

「ハアアァァァーー!ハアァ!!」

その円の中に飛び込んできたマッハのキックがルパンに直撃する。

 

 

「まだまだぁーー!!!」

 

マッハは周りを旋回するトライドロンの車体を蹴り反転、再度ルパンにキックを当て再びトライドロンの車体を蹴っていく。

何度も反転してキックを放ち続ける。その威力は回数を重ねるごとに増していき渾身の力を込めた最後の一発がルパンを貫いた。

 

地面を火花を散らしながら滑り止まったらマッハの隣でトライドロンも停車した。

 

マッハとトライドロンから降りた速水の視線の先では身体中から火花を散らすルパンがよろめきながらもなんとか踏ん張っていた。

 

「み、見事だ・・・・詩藤郷!君にお返ししよう・・・仮面ライダーの・・・名を・・」

 

そう言い残し爆炎を上げ倒れたその姿は元のサイバロイドZZZのモノだった。

 

 

 

 

「・・・・・仮面ライダー、決着は次に必ず!」

 

ルパンの最期を見届けチェイサーは自身の愛車【ライドチェイサー】に乗り去っていった。

 




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怪盗の時間⑦


今回のビルドではやはり戦兎=葛城だという事が判明しましたね。
という事は龍我が見たあの葛城の死体は誰なのか?
予想としては佐藤太郎を殺害し顔を入れ替えたという事でしょうかね。今後の展開に期待です。


ルパンとの闘いから数日が経った。今は郷とクリムはルパンがE組校舎周辺に設置したバリアシステムの回収をしていた。

ルパンを倒すと同時にバリアは解除されたがいつまた作動するとも限らないためである。

 

「ふぃ〜、これで最後みたいだな」

 

郷は校舎前に見つけた装置を置きその場に座り込むと側に置いておいたスポーツドリンクに口をつけた。

 

 

『ご苦労だったね郷、後は私が烏間たちと解析をしておこう』

 

「まったく、貴重な夏休みがアイツのせいで無駄に使っちまったよ。ところでサイバロイドZZZのボディは結局どうすんだ?」

 

 

ルパンの精神データが抜けたサイバロイドZZZは現在政府の機関で厳重に保管されている。

 

『勿論、より厳重な隠し場所に近い内に移すつもりさ。烏間たちを信用していない訳ではないがやはりロイミュードの技術はこの時代の人間には早すぎるからね』

 

 

『そうか、確かにその判断は正しいだろうな』

 

「『ッ!?』」

 

誰もいない筈の背後から聞こえた声に二人はが振り返るとコブラ型のバイラルコアがあった。

バイラルコアから光が発せられると空中に怪盗ルパンの姿が映った。

 

「ルパン!?お前・・・・なんで・・?」

 

あわてて構えるがルパンからは敵意は感じられなかった。

 

『落ち着きたまえ、今日は礼を言いに来ただけだ』

「礼?」

 

ルパンの予想外の言葉に警戒心もすっかり解けてしまった郷は首をかしげた。

『どうやらサイバロイドZZZのボディは俺の手に余る代物だったようだ。少しずつ精神が暴走していきもう少しで俺の怪盗としての美学が汚れる所だった。止めてくれたことには素直に感謝しよう』

 

だが・・・・とルパンは不適な笑みを浮かべ続ける。

 

『お陰でますます君から仮面ライダーの名を頂きたくなった!我が永遠のライバル詩藤郷よ。まずは手始めに君の大切な彼女の笑顔のデータを頂いた!』

 

ルパンの隣に速水の満面の笑顔が写し出された。

『いつの日か必ず君から仮面ライダーの名を頂くぞ。さらばだ!!』

 

ルパンの笑い声を響かせながらバイラルコアは空の彼方へと去っていった。

 

 

「『・・・・・・・・・・・・』」

 

しばらくの間呆然と名にも言えなかった二人であったがやがて思考が追い付いてきた。

 

『・・・・どうやら厄介なライバルが誕生したみたいだな』

「ハッ!上等だ。いつでも来やがれ、返り討ちにしてやるよ!!」

 

郷はルパンが去っていった空に向かい叫んだ。

 

「それにな、本当のとっておきの写真のデータはココにあるんだよ!!」

 

郷は懐から一枚のチップを取り出す。そこにはマル秘永久保存版画像(速水)と書かれてあり郷はそれを勝ち誇ったように掲げた。

 

『ハァ、全く郷は・・・・アッ・・』

 

そんな郷を呆れてみていたクリムだったが丁度郷の背後から近づいてくる人影を見た瞬間思わず声を上げた。

 

『ごっ郷!背後に警戒した方が良い・・・』

 

「はっ?何だよきゅ・・う・・・・・に・・・・・・」

郷が振り返ると目の前に対殺せんせーエアガンを両手に握った速水が立っていた。

 

「郷、その中に入ってるのは何かしら?」

 

怖い・・・郷は素直にそう思った。それはとてもいい笑顔ではあるが青筋が浮かんでおり周囲からはゴゴゴゴ・・・と対気が震えている様気迫を感じる。

 

「はっ速水・・何でここに・・・?」

 

今日は校舎にはあまり近付かない様に事前に連絡を入れていた。その為、よっぽどの用事がない限りココに来ることはない筈である。

 

「今朝こんなメールが届いたのよ」

 

速水が見せたスマホの画面には夕方の教室で自分の机で開いたノートに覆い被さるようにうつ伏せになって眠っている速水の写真が写っていた。

 

「あ・・・・」

 

それを見た瞬間、郷の顔が青くなる。

見覚えがあるその写真は以前、放課後に忘れ物を取りに戻ったとき偶然見かけたモノだった。

普段は決して見せることのない速水の無防備な姿に自然とカメラを構えシャッターを切ったのであった。

 

その時とった写真が今速水のスマホに映っている。

その下には【詩藤郷はこれ以上の写真を隠し持って今、E組校舎にいる。奪還せよ。怪盗アルティメットルパン】

と書かれていた。

 

郷は理解した。ルパンの目的は最初からこれだったのだと。速水が校舎に近付いたタイミングで声を駆け郷にデータのありかを直接しゃべらせ速水に聴かせる。そうする事で次に何が起こるのか安易に予想がついた。

 

「・・・・・」ゴゴゴゴゴッ

(やっ、やっべ〜〜・・・・)

 

速水の周囲が歪む、郷の眼にはそう見えた。それほどの怒りの気迫を速水から感じた。

冷や汗が止まらずすっかり冷えた身体は身震いまでしてきた。

 

垂れ下がっていた速水の両腕がゆっくりと挙がっていく、それを見た瞬間郷は素早く回れ右をし走り出した。

 

「あっ、待ちなさい!!」

 

速水もすぐに追いかけながら郷に向け引き金を引く。二丁のエアガンから飛び出た弾は走る郷のすぐ横を追い抜いていく。

 

「ま、まて!待って!!落ち着いて話し合おうぜ!!」

 

「ならそのデータを全部消しなさい!!」

 

「だが断る!!」

 

 

『まったく、二人は本当に仲が良いな』

追いかけっこを続ける二人をクリムは呆れながらも微笑ましく見守った。

 

数十秒後、校舎のある裏山に郷の悲鳴が響く事になる。

 




今回で長かったルパン篇は終了です。ルパンの再登場は今のところ未定ですが機会があればもう一度出したいです。

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夏休み
昆虫の時間


今年最後の投稿です。




7月が終わり暑さも本番を迎える8月、裏山で渚、カルマ、杉野、前原の4人は昆虫採集に来ていた。

 

「お、いたいた」

 

1本の木にクワガタが停まっているのを見つけた杉野が手を伸ばしクワガタを捕まえた。

 

「いきなり見つかるなんて幸先良いね」

 

虫かごを持った渚が近寄りクワガタをかごに入れる。

 

すぐ傍の木でもカルマが大きめのカブトムシを見つけていた。

 

そんな中でも前原は双眼鏡を使って探しているほど気合いが入っていた。

「でも意外だよね。前原君が昆虫採集に着いていきたいなんて」

 

元々今回の昆虫採集は杉野の提案で渚とカルマを合わせた3人でいく予定だった。だが前日になり前原が自分も着いていくと言い出したのだった。

「当然だろ。もうすぐで沖縄のリゾートに行くんだぞ。だったらその前に用意しておくものがあるだろ・・・・・・金さ!!南の島でちゃんね〜と過ごすための資金を稼ぐだ!!」

 

そのあまりに中学生とは思えない考えに渚は呆れるしかなかった。

 

「だからこんな小さいのじゃなくてオオクワガタとかを狙おうぜ」

 

渚の持つ虫かごをつつきながら前原が言うと4人の頭上から笑い声が聞こえた。

 

「残念だけど今じゃオオクワガタにそこまでの値段は付かないよ」

 

見上げると木の枝に腰を下ろしている倉橋と速水がいた。

 

「倉橋さんに速水さん!?」

2人は枝から飛び降りると渚の側に着地した。

「へ〜2人も虫取りに来たんだ」

 

「うん!凛香ちゃんも誘ったんだ!」

「実際には無理やり連れてこられたんだけどね」

 

カルマの問いに笑顔で答える倉橋と溜息を吐き答える速水に渚達も苦笑する。そんな中前原は先程の倉橋の言葉が気になり詰め寄る。

 

「それよりもどういう事だよオオクワガタの価値が下がったって!?」

 

「昔は貴重で価値も高かったんだけどね。最近じゃあ繁殖されて価値も下がったんだよ」

寝耳に水の情報に前原は膝をつく。

 

「そんな・・・まさかのクワガタ暴落か・・・・オオクワガタ1匹、1ちゃんねー位だと思っていたのに・・・」

「ナイナイ!今じゃちゃんねーの方が高いよ」

 

早くも計画が崩れた前原を尻目に倉橋は1本の木を覗き込む。

 

木の枝には果実が入ったストッキングが吊るされており数匹の虫が集まっていた。

「うわっ!スゲ〜、これ倉橋が作ったのかよ?」

 

「うん!昨日の内に4つ仕掛けておいたの!みんなが手伝ってくれれば一人千円ぐらいの稼ぎになるよ」

 

「おお!バイトとしては中々だな」

「うん、オオクワガタ狙うより効率が良いね」

 

渚達も加わり6人は他の仕掛けたポイントへと向かう。

川の先に多く仕掛けたらしく川を渡ろうとした時渚がある物に気付いた。

 

「あれ、何だろこれ?」

川の上流から下流に長い一本の竹が掛けられていた。竹には水が勢いよく流れておりその合間合間に白い何かが流れていく。

 

 

全員が不思議そうに竹を眺めている中、おもむろにカルマが手を入れた。

カルマの手に白い何かが引っ掛かり見てみるとそれは一塊のそうめんだった。

 

「「「「・・・・・・」」」」((((なんでそうめん?))))

 

全員が思った。

自然と視線は下流へと向かい誰が言うでもなく下流へと下りていく。

しばらく歩くとE組のプールへと出た。そこには右手に箸を左手には黒いつゆの入ったガラスの器を持った郷が竹から流れてくるそうめんを食べていた。

 

「・・・・・・(ツルツルツル)」

「「「「・・・・・・・・」」」」

 

「・・・・・・・・(パシッ、チャプチャプ、ツルツルツル)」

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

「・・・・(ゴックン)フゥ、何やってんだお前ら?」

 

「「「「いや、お前が何やってんだよ!?」」」」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「何でこんなところで流しそうめん何かしてるんだよ?」

 

竹を流れるめんを掴みながら杉野がたずねると郷はめんを啜りながら答える。

 

「ひょっほぉ、ひょうひはふぁっふぁへぇふぁほぉほひぃふへぇひはぁほ」

 

「・・・・・えっと、凛香ちゃん何て言ったのか分かる?」

 

意味不明な言葉に倉橋は思わず隣の速水に訪ねた。

 

「ハァ、『ちょっと、用事があってなその休憩だよ』ちゃんと飲み込んでから喋りなさいよ」

 

と言いつつもしっかりと正確に通訳した。

「この前のルパンの時みたいに教室に細工されると色々と面倒だからな。これからは教室の敷地内で暮らすことにしたんだよ。で、今日はその為の設備を作りに来たわけ」

 

「えっ?でも校舎には特に変わった所は無かったけど・・・・」

 

渚達は森に入るときに校舎の前を通りっかかったがその時には特に校舎周辺に変化はなかった。

「そりゃそうだ、造っているのは地下だからな」

 

「「「地下ぁぁ!?」」」

 

郷が地面を踏みながら言うと渚や杉野、前原は眼を輝かせながら詰め寄った。カルマも期待するように郷を見る。

やはり年頃の男子にとって地下の基地というのは憧れるものであった。

 

「ああ、もう数日で完成するからなそしたら案内してやるよ」

 

男子組がそれぞれハイタッチをして喜んでいると不意に郷のスマホがなった。

 

郷はスマホの画面を見て続けて基地の事で盛り上がっている渚たちと流しそうめんを食べている速水と倉橋を見た。

 

「なあ、今から少し付き合ってくれないか?」

 

全員の視線が自分に集まるのを確認した郷はニヤリと笑った。

 

「面白いもんが見られるかもよ」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

郷たちはプールを後にし森の奥を進んでいた。

この先に何があるのか聞かされていない速水たちだか郷は、『着いてくれば分かる』と言い詳しくは教えてくれない。しばらく草木を掻き分け進んでいくと前方に身を伏せている1人の人影が見えた。

 

「待たせたな、助っ人連れてきたぜ」

 

「おう、いいタイミングだ」

 

人影の正体はE組のエロ大臣こと岡島だった。E組の中で性欲に忠実な2人が一緒にいるのは別に珍しくはないがなぜこんな森の奥に?そう疑問に思った渚に気付いたのか岡島はニヤリと笑いながら奥を指差した。

 

渚たちが奥を除いてみるとそこには・・・・

 

「にゆぅ〜〜////に〜〜ゆ///」

 

カブトムシのコスプレをした殺せんせーがニヤケ顔で大量のエロ本を読んでいた。

「見ろよ。あのスピード自慢の殺せんせーが微動だにしないだろ。俺たちが島で仕掛けると思っているから殺せんせーも油断しているんだよ。今なら・・・・殺れる!」

 

岡島は手に持ったエロ本の間からナイフを取り出した。

 

「岡島に頼まれてな、ここ一ヶ月毎日色んな種類のエロ本を同じ場所に置いて殺せんせーの好みを把握したんだよ」

 

郷が見せた写真には様々な種類の虫のコスプレをした殺せんせーが色々な表情でエロ本読む姿が写し出されていた。

殺せんせーの細かな表情の変化も分かる情報量に感心する渚に対し杉野は大の大人が一ヶ月もエロ本を拾い読みする姿に呆れるしかなかった。

一方速水と倉橋はひたすらにエロをんを読み続ける殺せんせーそしてそのエロ本を集めていた郷と岡島を汚物を見るような目で見ていた。

 

「殺せんせーがエロ本に夢中になっている隙に足元の網で捕獲して止めを刺すんだ。渚タイミングを見て紐を引いてくれ」

 

渚にトラップの紐を渡し岡島はいつでも飛び出せるように構える。

 

「俺は確かにエロいさ、でもなそんな俺だからこそ言えるんだ。エロは・・・地球を救う!」

 

そんな岡島を無駄にカッコイイ、そう思ってしまった渚達であった。

 

 

そしていざ岡島が飛び出そうとした瞬間、殺せんせーの目線がエロ本から離れた。

目が伸び目の前の木のある1点を見ていた。

 

「なっなんだあの表情は・・・データに無いぞ・・・・」

 

殺せんせーの予想外の行動に動揺した岡島はただ立ち尽くすしか出来なかった。

 

「何かあったのか?」

 

そして郷はゆっくりと殺せんせーの視線を追った。

その先には1匹のクワガタが停まっていた。

 

殺せんせーは素早く触手を伸ばしクワガタを捕らえた。

 

「にゆ〜〜やはりそうでしたか」

 

クワガタを見て笑う殺せんせーを見た倉橋が突然飛び出した。

 

「もしかして白なの!?」

「おや、倉橋さん。ええ間違いありませんこの森にも居たんですねぇ~」

 

女子中学生と巨大なカブトムシが大量のエロ本の上で飛び跳ねる。そんなシュールな中に意気消沈した岡島を連れて郷たちもやって来る。そして殺せんせーは自身の足元にある大量のエロ本と先程までの自身の行いを思い出し恥ずかしさが込み上げて来た。

 

「・・・・お恥ずかしい限りです。教師にあるまじき姿を見せてしまいました・・・・足元にトラップがあるのは分かっていたのですが日に日に好みになっていく本の誘惑に勝てませんでした・・・」

 

どうやら殺せんせーは岡島のトラップはお見通しだった様であり仮に倉橋が飛び出さなくても結果は変わらなかっただろう。

渾身の作戦が見破られていたことを知った岡島がさらにへこんでいるのを尻目に郷たちは殺せんせーの触手に捕まったクワガタを見る。

「それってミヤマクワガタだろ?そんなに珍しくも無いだろ」

 

「ううん、オオクワガタと違ってミヤマクワガタは繁殖が難しくてね価値も高いんだ」

 

「しかもこの眼を見てください」

 

殺せんせーがクワガタの眼を見せるとその目は通常とは違い白色だった。

 

「このミヤマクワガタはアルビノと言う非常に珍しいものでしてねこの大きさなら・・・数十万の値が付くでしょうね」

 

「「「「数十万!!?」」」」

 

そのあまりにリアルな数字に渚、杉野、前原、岡島が反応したがそれよりも早く倉橋が殺せんせーの触手からクワガタを取った。

 

「ゲスなみんな〜欲しい〜?」

 

「「「「欲しい!!」」」」

 

「ダメだよ〜〜!」

 

ミヤマクワガタを持ったまま走り出した倉橋と渚たち欲望に忠実なゲスいメンバーは森を舞台に鬼ごっこを始めた。

 

「まったく、私は帰るわよ!」

 

取り残された速水は倉橋に向け叫びに帰路につこうとしたがふと視線が殺せんせーの読んでいたエロ本の山に向かった。

 

「いや〜それにしても郷くん、中々チョイスがいいですね〜」

 

「結構大変だったんスよ。この年じゃ買えないから色々な所から拾ってさ〜」

そこでは暗殺の心配が無くなった殺せんせーと郷が一緒になって座り込みエロ本を読み漁っていた。

「・・・・・」(イラッ)

 

速水は物音1つ立てずにエアガンを取り出し標準を合わせた。

そんなことに気づかず互いのエロ本の好みを語り合っていた2人だったが次の瞬間、速水の持つエアガンから放たれた弾が郷の頭部を直撃した。

 

「ギャァッ!?」

 

短い悲鳴と共に気絶した郷を見た殺せんせーは冷や汗を流し振り返った。

「・・・・殺せんせー、教師が生徒と一緒にそんな本を読んで良いと思っているの?」

 

「ニュヤッ!?そ・・・それは・・・」

 

「今からこのゴミ(郷)を処分してきますからその間にこっちのゴミ(エロ本)は燃やしていて」

 

「そ・・・それは少し・・勿体無いと言うか・・・「アァッ!?」ニュッ!?ただいま処分します!!」

 

速水の圧に負けた殺せんせーはマッハのスピードでたき火の用意をしエロ本を燃やし出した。

それを確認しいまだに気絶している郷の首根っこを掴み森を出た。

 





今年も一年間ありがとうございました!
来年も細々と走っていくのでどうぞ付き合ってください。
では、良いお年を!!


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訓練の時間


ビルドにてついに始まってしまった戦争。
そして登場した強敵ハードスマッシュこと北都三羽烏(さん【バカ】ラス)と新ライダーグリスとどんどん面白くなって行きますね。
沈黙を守っている西都も気になりますしますます目が離せません。


ルパンの事件が解決してから数日後、E組生徒たちは島での暗殺に向け連日訓練に明け暮れていた。磯貝を中心に考えた計画に合わせそれぞれの役割をこなせるよう各自が自らのスキルを磨いていく。

 

「あらあらガキどもは頑張るわね~」

 

その様子を少し離れた所でパラソルの下でデッキチェアに寝そべり日光浴しながらイリーナは眺めていた。

 

「ビッチ先生もさぁ~訓練したらどうなの?ナイフや銃の腕は俺たちと対して変わらんないだろ・・・」

 

「大人って言うのはズルいモノなのよ。訓練なんて暑苦しいことはしないであんた達が取りこぼした蜜をしっかりといただくわ」

 

余裕の笑みを浮かべるイリーナであったがその背後から近づいてくる人物に気付かないでいた。その人物はイリーナのすぐ後ろに立ちパラソルを投げ飛ばした。突然降り掛かった日差しに忌々しく舌打ちし振り向いた。

 

「誰よ!大人の優雅な時間を邪魔すんのは!?」

たが、後ろに立つ人物の顔を見た瞬間イリーナの額に大量の汗が流れた。

 

「せ、師匠(せんせい)・・・・」

 

「ずいぶんと偉くなったなイリーナ」

 

その人物こそ、イリーナの殺し屋としての師匠であり世界的な殺し屋たちの元締め的存在のロヴロであった。

 

今回の計画に基づき烏間が特別コーチを依頼し急遽来日してきたのだった。

 

「1日の怠りが技を鈍らせる!落第点を貰いたくなかったらキサマもさっさと訓練に入らぬか!!」

 

「ヘイ!ただいま!!」

 

ロヴロの一喝にイリーナは即座にパラソルとチェアを片付けダッシュした。

 

弟子の腑抜けぶりにタメ息を吐くロヴロだったがすぐに視線を訓練に没頭するE組に向けた。

暗殺者としての訓練を始め4ヶ月程がたち、生徒たちの能力は確実に上達してきていた。

品定めをするかのようなロヴロに先程まで生徒たちの指導にあたっていた烏間が近付く。

 

「どうだ、プロの眼から見て生徒たちの実力は?」

 

烏間が聞くとロヴロは暗殺の計画書を見ながら周囲を見渡し射撃場で目を止めた。

 

「どの生徒も中々優秀だな。特に射撃に関してはあの2人が優秀だ」

 

ロヴロは速水と千葉を指差す。2人は他の生徒よりも離れた距離から的確に的を撃ちぬいている。

 

「プロの中に入れてもあれほどの腕前の物は中々いないな。ぜひとも私の部下に欲しい位だ」

 

そんな会話が聞こえ速水は密かに微笑んだ。どんなことであれその道のプロに認められるのはうれしかった。

自分には才能がある。人に認められている。落ちこぼれと罵られてきたE組だからこそより一層うれしく感じた。

 

「ところで、クリムと仮面ライダーの少年はどうした?」

 

「あの2人ならあそこだ」

 

烏間が指さした先、グラウンドの端には以前にはなかった大きなガレージがあった。

 

「クリムの要望で仮面ライダーの基地を新たに造ったのだがなそれ以降2人とのあそこに籠りっきりだ」

 

「そうか・・・せっかくだから挨拶ぐらいはと思ったのだがな・・・クリムは一度籠ると中々出てこないからな」

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

ガレージの中では現在、クリムと郷によりルパンとの戦いにおいて使用した赤いシフトカーの調整が行われていた。以前使用した時に感じた自身へのダメージを押さえるためこの数日の間試行錯誤が続いているが今のところ成果は得られていなかった。

 

『やはりここはシフトカーの出力を押さえるしかないのかもしれないな』

 

「いやでもよ、それだとコイツの持ち味が無くなっちまうしよぉ~・・・」

 

郷の手元のタブレットにはシフトカーのデータが事細かに映し出されていた。

 

「じゃぁ・・・こいつでどうだ!」

 

郷がいくつものケーブルにつながれたシフトカーにデータを打ち込み結果を見ようと近づいた。だが、郷がシフトカーを掴もうとした直前シフトカーから深紅のイナズマが発せられた。

 

『ッ!いかん離れるんだ郷!!』

 

シフトカーはイカズチを纏ったまま郷に向かっていった

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

ドゴォン!!とまるで落雷のような轟音が響いた。

全員が訓練の手を止め音の出所を見た。グラウンドの隅に新しくできたばかりのガレージのシャッターが大きく歪んでいる。

 

『みんな!急いで離れるんだ!!』

 

何人かの生徒が近付こうとしたがそこにシフトスピードがやって来た。

シフトスピードを通してクリムが叫ぶと再び轟音と共にシャッターが歪みだした。

 

ドオォン!!ドオォン!!と何度も轟音が響きガレージのシャッターは最早、限界寸前だった。

 

「みんな!クリムの言う通りに下がるんだ!!」

 

烏間が銃を取り出すのを見てガレージに近付いていた生徒たちは後ろに下がった。

 

「クリム、いったい何があったんだ?」

 

『ロヴロか!?すまい来ていることに気付かずに・・・』

 

一際大きな音と共にシャッターを突き破り郷が飛び出してきた。その身体には無数の傷が出来ており手にはゼンリンシューターが握られていた。

 

「郷ぉ!?」

「おい、大丈夫か!?」

 

「来るな!!」

 

明らかに何かと戦っている様子に速水や千葉が駆け寄ろうとしたが郷の叫びでその足は止まった。

 

ガレージの中から小さな影が飛び出し郷に向かっていく。

郷は横に転がり避けるとすぐさまゼンリンシューターを撃つが影は素早く回避していき接近する。

 

「クッソ!」

 

払い落とそうとした郷だったが予想以上の速度の影は郷の攻撃を抜け腹部に体当たりした。

その衝撃に吹き飛ばされ地面を転がるが影は更に追撃しようとした。

 

『マズイ!GOシフトカー!!』

 

クリムの命令にフレアやスパイク、シャドーたちが影の行く手を塞いだ。

 

「あのシフトカーは確か!?」

 

千葉を始め速水以外はその影の正体に見覚えがあった。

ルパンとの戦いの時、シグナルマッハを奪われた郷が新たな変身用として見せた赤いシフトカーだった。

 

「何でシフトカーが郷を襲ってるんだよ!?」

 

あり得ない光景に寺坂が叫ぶ。シフトカーの力を借りて戦ってきた郷がそのシフトカーと戦って傷付いているのだから。

 

『・・・・あのシフトカー、【シフトデッドヒート】はそのあまりの出力の為、今まで使用を禁じてきたんだ。たが、これからの戦いでアレンやルパンの様な強敵と戦うにあってデッドヒートの力が必要不可欠だと感じ調整を行っていたのだが・・・』

 

「暴走した訳か・・・」(だが丁度良い、彼の力を見させてもらうとするか)

 

ロヴロは密かに郷の実力を見る良い機会と考え郷の動きの一つ一つを観察した。

 

 

シフトカーたちの妨害を抜けたデッドヒートは再び郷に襲い掛かる。

だが、シフトカーたちの足止めの間に息を整えた郷は冷静に対処しデッドヒートを躱していく。その合間に合間にゼンリンシューターで攻撃するがイカズチを纏ったボディに対したダメージを当たえられない。

 

「チィッ!ならこれで・・・」《トマーレ!》

 

このままでは埒が明かないと思った郷はゼンリンシューターにシグナルトマーレを装填しデッドヒートの狙う。

 

『郷!急がなくてはデッドヒートは自らのエネルギーで自爆する!一発で決めるんだ!!』

 

「ガレット!任せなって・・」

 

高速で不規則な動きをするデッドヒートに対し郷はシフトカーたちに囲う様に指示を出すと指示を受けたシフトカーたちはデッドヒートの逃げ場を無くすように周囲を走りだした。

郷はシフトカーのわずかな隙間から見えるデッドヒートに標準を合わせる。

 

「まさかあの隙間を狙うのか!?」

 

走り回るシフトカーの間からデッドヒートが見えるのは一瞬、しかも弾一発分の隙まであり烏間から見ても無謀と思えた。

 

「・・・・・・フー・・・」

 

集中力を高めるように目を閉じ深呼吸をし静かに引き金を引いた。

 

光弾はシフトカーたちの一瞬の隙間を通り抜けデッドヒートのボディに直撃した。光弾はエネルギーフィールドとなりデッドヒートの動きを止めた。

抜け出そうとするデッドヒートであったがやがてエネルギーを使い切り糸が切れたようにその場に落ちた。

「・・・フィ〜・・・」

 

緊張の糸が解けたように息を吐きデッドヒートを回収した。

 

「たぁっく、ま〜た駄目だったかぁ〜また徹夜しないとか〜〜・・・」

 

「素晴らしい腕前だな」

 

「んあっ?」

 

これからまた行わなければならない作業に頭を悩ませていた郷にロヴロが拍手をしながら近づいた。

 

「直接話すのは始めてだったかな。クリムの友人のロヴロだ」

 

「えっと、どうも・・・」

 

いきなり話し掛けられた事に驚きながらも差し出された手と握手をした。

 

「どうかね。卒業したら私の下に来ないか?」

「・・・・は?」

 

『なっ!ロヴロ!!いきなり何を言っているんだ!?』

 

郷以上に驚いたクリムが声を荒げる。当の郷もいきなりのスカウトに思考が追い付かなかった。

確かに普通とは言えないが中学生の自分が殺し屋のスカウトを受けるとは思っても見なかったからだ。

 

「君の先程の動きは見せてもらった。あの身のこなし、瞬時に最善の策を見付ける思考能力、そして射撃の腕どれをとっても一流の物だ。それに聞くところによると君は電子関係にも精通しているらしいな。私の下で磨き上げればやがてあの世界一の暗殺者、死神を越えることも出来るはずだ」

 

ロヴロはこの逸材を逃すまいと肩を掴む。

 

「遠慮しときます」

 

郷は肩を掴む手を剥がしながら一言そう言った。

 

「まだロイミュードどもを撲滅出来てないし何より、この時代に残るかも決めてないッスから」

 

「そうか・・・それは残念だな。だが、気が変わったら何時でも言ってくれ歓迎する」

 

その場から下がるロヴロに続くように生徒たちも訓練に戻っていくが速水だけはその場に佇み郷を見ていた。【この時代に残りかは決めていない】郷のその言葉が何故か胸に刺さった。

 

(やっぱり帰るかもしれないのね。元の時代に・・・・)

 

「あ〜あ、こりゃもうしばらく徹夜だな〜」

『仕方あるまい』

 

そんな速水の視線に気付くことなく郷はクリムと共にガレージへと戻っていった。




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島の時間


しばらく投稿が止まっていた間にビドルは一気に進展しましたね。
特に青羽を殺してしまった時の戦兎は見ててとっても辛かったです。
ですがだからこそTVの前の子供たちに命を奪うという事がどういう事なのか理解させられるんだと思えました。

ビルドにはこのままの作風を最後まで是非通してもらいたいです。


大海原を突き進む船の上でE組生徒たちは目指す島に着くのを今か今かと待っていた。

 

「大丈夫?殺せんせー」

 

倉橋が心配そうに見る先では殺せんせーが船酔いでダウンしていた。

 

 

「にゅ~・・・ご心配なく・・・」

 

ダウンしながらも最小限の動きで生徒たちのナイフを躱していく殺せんせーの隣では郷も同様にダウンしており胸ポケットのスマホから律が心配そうに見ていた。

 

『大丈夫ですか?郷さん、あまり体調も良くないようですが・・・・』

 

「あ~・・・・モ~・・マン・・タイ・・・このところほとんど寝てなかったからな・・少し寝れば大丈夫・・・」

 

 

 

そう言い目を閉じる郷を速水は少し離れた所から見ていた。

 

ロヴロがコーチに来たあの日から速水は郷の事を避けるようになった。

千葉とも含めた3人での訓練も予定が会わなくなったと嘘をつき別の日に千葉と2人で行った。

 

【この時代に残るかも決めてない】あの時の郷の言葉が頭から離れないでいた。戦いを終えたら未来に帰るのか?本当は直接話して聞きたい。だが、いざ聞いて肯定されるのが怖く顔を会わせるのも怖く感じた。

「あっ!みんな見えたよ!!」

 

速水の気持ちとは対照的な倉橋の元気な声に全員が船のデッキから乗り出した。

 

進行方向の先に島が見えた。

「来たぞ、東京から6時間・・・殺せんせーを殺す舞台だぁ!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

島に着くと修学旅行の時の班で順番に殺せんせーと遊ぶ班と暗殺の準備をする班に分かれた。

 

現在は1班が殺せんせーと遊び気を引いている隙に他の班はそれぞれ暗殺の準備を進めている。

 

「行こう、速水」

 

「・・・ええ」

 

今回の要であるスナイパー2人は狙撃のベストポジションを探すため島を巡る。

その背中からは中学生とは思えない熟練者の風格が感じられた。

 

「なんだかあの二人はもう仕事人の域だな」

 

「ああ、雰囲気がちげ〜よ」

そんな周囲からの評価とは裏腹に速水の心中は穏やかではなかった。

 

(・・・ダメね。こんな気持ちじゃあ暗殺に集中出来ない・・・なんとか1度郷と話しておいた方が良いわね)

 

 

「あれ、お二人さんそんな物騒なモノ担いでデートですか?」

 

頭上から聞こえた声に落ち着き始めていた速水の心は再び乱れだした。

 

道端の木の上からカメラ片手に郷が飛び降りてきた。

 

「茶化すなよ郷」

 

「そうか?第3者目線からしたらお前ら結構お似合いに見えたけどな」

「あのな、俺と速水は別にそんなんじゃっ「千葉、ちょっと先に行っててくれないかしら?」えっ?あ、ああ分かった・・・」

突然速水が千葉を押し退ける様に前に出て来ると千葉に先に行っている様に促した。

千葉は一瞬戸惑ったが 速水の有無を言わせない態度に一瞥し去っていった。

 

「どうかしたか?」

「・・・・・・・・・・」

「お〜い、速水さ〜ん」

「・・・・・・・」

望み通りに2人で話す機会を得た速水であったがいざ2人きりになるとどう話を切り出せばいいのか解らなかった。

ここ数日避けてきた手前何事も無かったかのように話し掛けられるほど速水は図々しくない。

 

「お〜〜い・・・・用がないんなら行くぞ〜〜」

 

「「・・・・・・・」」

いつまで経っても話始めない速水にさすがに郷も困惑する。

「じゃ、じゃあ俺他の所の写真撮って来るから・・・」

 

沈黙の空気に耐えきれなくなった郷は適当に理由を言って背を向ける。

 

「この前言っていたことって本当なの?」

 

絞り出したような小さな声に郷は足を止めた。

 

「ワッツ?この前って?」

「・・・・ロイミュードとの戦いが終わったら・・・未来に帰るかもしれないって・・」

「あ〜・・・あれな。まあ、実際どうするかは決めてないんだよなぁ」

 

郷としても今のこの時代での生活はとても満足していた。毎日温かいご飯が食べられ水からドブの臭いはせず温かいお湯で身体を洗える。

 

未来の時代ではどれも滅多に出来ないことがこの時代では何時も出来る。あの地獄の時代を生きてきた者としてこれほで幸せな場所はない。が・・・・

「あの時代でもこれから復興とか色々あるだろうしな、その手伝いもしていきたいしな〜」

 

「そう・・・・」

 

郷としては軽い世間話程度の感覚で話していたつもりだったが速水はまた黙り混んでしまった。

このままじゃ暗殺に支障をきたすかもしれない。そう思い郷は激励のつもりで口を開いた。

 

「ま、まあそんなことよりも今日の暗殺頑張れよ。此所で殺せんせーを仕留めてくれれば俺も面倒な勉強から解放されてロイミュードに専念出来るからな」

 

「・・・えっ?・・・・どういう事よ?」

 

「いや、殺せんせーを暗殺出来ればもうお前らがロイミュードに襲われる事も無くなるからさ、俺がいる必要もないだろ?」

 

郷の声はとても明るいものだった。しかし、その明るさが今の速水にとってはとてつもなく腹立たしいモノであった。

 

郷が未来に帰るかもしれない。その事で自分がこんなにも悩んでいるのにコイツは学校から去ることを望んでいるかのようにヘラヘラと笑っている。

それがとてつもなく許せなかった。

 

 

「クリムもクリムでさ〜『学生にとっては勉強も戦いだ』何て言うしさ、こっちの身が持たないんッ【バチッン!】ダッ・・ガァッ!?」

 

突然右頬に強い衝撃を受け先程まで登っていた木に激突した。

 

右頬を赤くし倒れこむ郷の視線の先で速水は手を振り払った状態のまま睨み付けてくる。

その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。

 

「・・・・分かったわよ・・・アンタにとって私たちはその程度の存在だったって事ね・・アンタなんかの事で悩んでた私がバカだったわ!」

「・・・・・・」

 

走り去っていく速水を黙って見送ると背後から気配を感じた。

 

「盗み見はどうかと思うッスよ殺せんせー」

「・・・・ニユ〜・・・郷くん、先程の発言は少々デリカシーが無いですね。キミも薄々気付いているはずですよ速水さんの気持ちに・・」

 

「・・・・まぁ、どこぞのハーレム物の主人公じゃないッスからね、何となくは察してるッスよ」

 

「でしたらッ「だからこそ!」ッ!?」

 

「・・・・・俺じゃダメなんスよ」

 

「・・・・・・・・」

 

そのまま速水たちとは逆の方向に郷は歩いていった。

 

(・・何で俺なのかねぇ・・・俺には・・そんな資格は無って言うのにさ・・・・・)

 

 




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決行の時間


パソコンの調子が悪く携帯で細々と打っていたらだいぶ時間が掛かりました。




「「「「「・・・・・・・・・」」」」」

 

遊びと暗殺の準備で疲れた生徒たちがまもなく行われる暗殺に備えた腹ごしらえをする夕食の時間、普段では滅多に食べれないような高級品の数々がテーブルの上に所せましと並んでいる。

本来なら目の前に並べられた料理の数々に絶賛の声が響く楽しい時間になる筈だった。だがレストランに充満する重い空気に先程から誰も一言も喋らないでいた。

 

それどころか冷や汗を流しながらテーブルの一角を見ている。

 

全員の視線の先ではこの重い空気の元凶である2人がいた。

いや、正確に言えばこの空気を出しているのは速水の方だけだった。

目の前に置かれた料理を黙々と食べ続けており時折チラリと正面を見るとチッと舌打ちをする。

 

一方もう一人、速水の真正面に座っている郷は周囲からの困惑の視線や正面の席から聞こえる舌打ちなどまるで気付いてないかのように料理を食べている。

 

「モグモグモグ・・いや〜さすが特待生用の料理だけあってどれも美味いなぁ!」

「あ、ああそうだな・・・」

 

隣に座る千葉や岡島も同意はするがはっきり言って味わう余裕などなかった。

 

「あ~!そうだ~俺ちょっと三村に差し入れしてくるなぁ~~」

「えっ?お、おい岡島ぁ!?」

 

ワザとらしく声を上げた岡島は料理が盛られた皿を手に制止しようとする千葉を無視しそそくさと暗殺のための作業をしている三村の元へ向かった。

 

 

「ふぅ〜・・・ごっそさん!じゃぁ俺先に行ってるからなぁ〜」

 

一通りの料理を食べ終えた郷はカメラを持ちレストランから出て行った。

郷が居なくなったことにより場の空気も少しは和らぎ他の生徒たちもやっと料理を食べる余裕が出た。

 

「り、凜香・・・その・・郷くんと何かあったの?」

「・・・何でもないわよ・・ごちそうさま」

 

料理を食べ終えた速水はそのまま集中したいからと言い部屋へと戻っていった。

 

「なぁ千葉、あの2人何かあったのか?」

「さ、さぁ・・昼間に2人で何か話したみたいだけどそれからずっとあんな調子なんだよ」

速水は今回の暗殺計画の要の1人であるため今の精神状態がどう影響してしまうのか気が気でなかった。

 

 

 

 

「・・・・はぁ〜・・」

 

レストランから出た郷はそのままビーチ全体が見渡せる高台に来ていた。真夏の温かい夜風が潮の香りを運んできていた。

 

「・・・どうすっかなぁ・・・」

速水の気持ちには薄々気付いていた。あんな態度をとればどう思われるかも予想できた。

なのに何でよりにもよって大事な暗殺の前にあんなことを言ったのか?

 

自分でも理解できない行動に悩んでいた。

 

「もう少し空気を読めよなバカ・・・・」

戒めるように自分の頭を小突きビーチを眺める。視線の先にある海上の小さなコテージ、時間的に現在殺せんせーの恥ずかしい映像の数々が上映中だ。

そしてその周囲ではE組メンバーが今か今かと時を待っている。

郷もドライバーを巻きロイミュードの襲撃に備える。

 

 

 

 

(はぁ〜・・・何やっているんだろ私・・・)

 

狙撃地点で息を潜めながら速水は心の中でため息を吐いた。

食事を終え部屋で銃の手入れをしている内にイライラしていた感情も幾分か落ち着いていた。

 

(確かに郷は元々ロイミュードと闘いに来たんだから私たちよりもロイミュードと戦う事を優先するのは当然よね・・・・もし・・私も郷と同じ時代に居たら・・)

『千葉さん、速水さん間もなく皆さんによる牽制射撃が始まります』

 

「「っ!」」

 

耳に付けたイヤホンから聞こえる律の声に自然と銃を握る手に力が入った。

 

『カウントダウン始めます。3・・・2・・・・1・・・・・・今です!』

 

律の合図と共に二人は一斉に潜んでいた海中から飛び出した。

 

狙いはコテージに広がる水の檻に開いたわずかな隙間、そこから見える殺せんせーの顔面だ。

 

(これで終わる!)

 

引き金を引く瞬間速水の頭の中にある疑問が過った。

 

(ここで殺せんせーを殺したらもう郷ともお別れなの?)

それは一瞬の疑問だった。すぐに振り払われ引き金を引いた。

 

次の瞬間、殺せんせーから凄まじい光と衝撃が拡がった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

海上から拡がる光は高台にいた郷からも確認できた。

 

「おっ殺ったか!?」

 

カメラのズームで光の中心部を確認するが光が強くうまく見えない。それでも暫くすると光は弱まっていく。

 

改めて中心部を見てみるとそこには黄色いハンドボールの球がプカプカと浮かんでいた。

 

「・・・・・な〜〜ンだっアレ?」




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異変の時間


ビルドの新フォーム、ラビットラビットとタンクタンクどちらもかっこいいですね!

個人的にはスピードタイプが好きなのでラビットラビットの方が好きですがタンクタンクの戦車モードもなかなか面白いですね。

次回ではノーマルクローズが帰ってきます!やはり龍我は他の二号ライダーよりもストーリー上で優遇されてる気がしますね。


『あの状態では例え対殺せんせー弾でも効果はないらしい』

 

「リアリ〜〜マジで?チートかよ・・・」

 

島の高台に設置されたベンチに腰掛け郷はクリムから海に浮かんでいた球の正体を聞いていた。

 

どうやらあれは移動やその他ほとんどの能力を封じて防御に特化させた完全防御形態らしい。

 

『もっともその姿になると24時間はもとに戻れないらしいがね』

 

「ならその間にロケットにでも括り着けて宇宙の彼方へ・・・何てムリか?」

 

『ああ、そこはさすが殺せんせーだ。事前に24時間以内に飛ばせるロケットが無いことは確認済みとのことだ』

 

「だよなぁ〜〜・・・ん?」

 

話している途中ふと浜辺の方に視線を向けるとレストランの方向から走っていく人影が見えた。

 

「あれは・・・」

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「皆すまなかった。せっかくのチャンスだったのに・・・・」

「・・私も・・・撃った瞬間に解ったんだ。この弾じゃ殺せないって・・」

 

レストランに戻った開口一番速水と千葉は全員に謝罪した。

 

「律、さっきの映像を見してくれ」

『はい』

 

千葉に言われ律が映し出したのは2人の撃った弾のスロー映像だった。この映像を見ると2つの弾は少しの間隔を空け飛んでいき先行していた弾がガードしようとした殺せんせーの触手を破壊したがもう一発が届く直前に殺せんせーが光に包まれるのが確認できた。

『この映像を見る限りお2人のタイミングが僅かにずれていたと考えられます。もし、お2人のタイミングがもう少し合っていたら殺せていた確率は八割を超えていたでしょう』

 

「・・・・・・ッ!」

「凛香!?」

 

速水は悔しさのあまり唇を噛み締めながら飛び出していった。

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・・ハァ・・・!」

 

ただ闇雲に走った速水は浜辺まで来て脚を止めた。

 

「ハァ・・ハァ・・・・ハァ・・・・クソォ・・・!」

 

悔しかった、周りのみんなは自分の腕を信頼してくれて今回の計画を練ってくれた。

こんなにみんなに信頼されたのは初めてだった。だからこそその期待に応えようと必死に訓練をした。

そしてプロに認められるほどに上達した。

こんなに誰かに認められたのは初めてだった。

 

だからこそ悔しかった。みんなの期待に応えられなかった事が、自分勝手な理由でみんなの期待を裏切ってしまったことがとてつもなく悔しかった。

 

 

カシャッ

「ッ!?」

 

突如背後から聞こえたシャッター音に慌てて振り返るとそこにはカメラを構え歩いてくる郷がいた。その方にはシフトスピードが乗っかっていた。

 

「【月明かりの海に向かい涙する少女】って題名で今度のコンクールに出したくなる絵だなぁ~」

 

「・・・郷・・」

 

いつもと変わらずへらへらと笑う郷はそのまま速水の隣に立ち海を眺めた。

「・・・・惜しかったみたいだなぁ今日の暗殺」

 

「・・・だから何よ・・勉強から解放されなくて文句を言いに来たの・・」

 

「まぁ、これからも勉強地獄が続くと思うとなぁ〜」

 

わざとらしくため息をはく郷だったがその横顔はとても残念がっているように見えず何処か笑顔に見えた。

少なくとも速水はそう感じた。

 

「・・・・随分嬉しそうね。こっちは必死に練った計画が失敗したのに」

 

ジト目で睨む速水に郷は「え〜〜・・・」と言うかの様な視線を返す。

 

「どっちなんだよ。残念がればいいのか?それとも喜べばいいのか?」

 

「知らないわよ」

プイっとそっぽを向く速水だったがその顔は郷と同じくどこか笑っている様だった。

 

「「・・・・・・・・・・・」」

 

そっぽを向く速水とそれを見る呆れ顔の郷だったが

 

「プッ!」「クッ!」

 

「「ハハハハハ!!」」

 

ほぼ同時に吹き出すとそのまま笑いあった。

 

速水は先程までの後ろめたい気持ちが何処かに行ってしまった様な気がした。先程まであんなに悔しく落ち込んでいたのに郷との他愛もないやり取りをしていると心がすっきりとした。

 

今回の失敗を無かったことにする訳では無い、受け入れて次に生かそうと思った。

 

郷とも何時かは離ればなれになるのだとしても今この時は一緒に笑い合おうと思った。

 

 

「さぁ〜って、みんなにも謝んね〜とな」

 

「そうね、散々心配かけたみたいだし」

 

『郷さん!速水さん!大変です!!』

 

二人レストランに向かおうとした時二人のスマホから律の切羽詰まった声が響いた。

 

「ど〜したんだよ律、岡島が盗撮で訴えられたか?」

何時ものノリでふざける郷だったがスマホに映る律の表情からただ事じゃないと察した。

 

「・・・・何があったんだ?」

 

『岡島さんや中村さんを初め皆さんが原因不明の高熱で倒れたんです!!』

 

「なっ!?」「えっ!?」

 

『その後すぐに何者かからの電話が来て皆さんを助ける薬が欲しかったら殺せんせーを渚さんと茅野さんで上のホテルまで持って来いと』

 

「渚と茅野でって、そんなのどう考えても罠じゃない!」

 

『はい、ですから烏間先生の指示で残った皆さんでホテルに忍び込み薬を奪取するとのことです』

 

「わかった、すぐに戻る!」

 

電話を切り頷き合った二人はすぐにレストランに戻ろうとしたが

 

「ッ!?速水!」

 

「キャァッ!?」

 

何かに気づいた郷が速水の背を押した。

 

不意に押されたことで前に倒れ込んだ速水がすぐさま振り向くと郷は右腕を抑え踞っていた。

 

急いで駆け寄ろうとした速水だが、二人の間の砂浜が小さく爆発した。

 

「悪いが仮面ライダー、お前はここまでだ」

 

暗闇からフードを被った誰かが現れた。

 

その人物はゆっくりと郷に近付きながらその姿を変えていく。

 

速水が1度まばたきをするとそこにいたのはスパイダー型ロイミュード【044】だった。

 

「お前はポイズンの時の・・・」

 

郷の脳裏にかつてポイズンロイミュードによって強力な力を奮った044の姿がよみがえった。

 

「今度は以前のようには行かない。ここで眠れ、仮面ライダー!!」

 

襲い来る044の攻撃を躱しながらドライバーを装着し距離を取る。

 

「速水!先に行ってろマッハで倒して追いつく!」

 

速水は一瞬躊躇したが今は友達の命がかかっている状況のため急いでその場から走り去った。

 

 

「あれ、追い掛けないのか?」

 

てっきり速水の妨害をすると思い身構えていた郷だったが044は走り去る速水を無視し郷を見据えたままだ。

 

「俺の敵はお前だけだ。他の奴などどうでもいい・・」

 

「はっ!なら都合がいいな。レッツ・・・変身!!」

 

 




郷と速水の和解がちょっとあっさりしすぎている気がしますが個人的な力不足でこれが限界ですのでご了承ください。

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潜入の時間


今週のビルドのスカイタワー突入シーンを見ているとドライブの最終決戦時の突入シーンを思い出します。

ドライブの時にはかっこよく決まったトリプルキックでしたが今回はいまいち決まらなかったですね~まぁそれもビルドの良い所なんですが・・・

次回はクローズマグマ登場!二号ライダーのパワーアップで赤系統って珍しいですよね・・・ゼロノスぐらいかな?


レストランに着いた速水が目にしたのは真っ赤な顔で荒い呼吸をしながら横になったクラスメイトたちだった。

 

「速水さん!」

 

予想以上に酷い現状に茫然とする速水に奥から水の入った容器を持った茅野が気が付いた。

 

「茅野!みんなは大丈夫なの!?」

 

「分からないの!島にはまともな医療設備も無いし、本土からお医者さんが来るのも明日だって言うし・・・・」

 

明日まではどう見ても持ちそうにない。素人目ながら速水はそう感じた。

やはりホテルにいる謎の人物から薬を奪うしかないのだろう。

 

「あれ、郷くんは?」

 

「郷はロイミュードと戦っているわ。たぶん今回の事に関係しているはずよ」

「そんなっ!?」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

《ズーットマッハ!》

郷はマッハに変身し044と戦っていた。

 

音速の速さで044の攻撃を回避していくマッハは確実にダメージを与えていく。

 

以前戦いではポイズンロイミュードによるドーピングにより強力な力を奮った044だったが今の044からはその時の脅威は感じなかった。

 

《シューター!》

 

ゼンリンシューターから放たれた光弾が044に炸裂した。

 

「グッ!ハアァッ!」

 

攻撃に耐え一瞬の隙をつき距離を詰める044の拳が振るわれるがマッハはステップを踏むような動きで回避していき無防備となった懐にゼンリンシューターを叩き込む。

更に苦悶する044に跳び蹴りを放ち海へと吹き飛ばした。

 

「時間が無いんでね。チャッチャと終らせるぞ!」

 

 

《ヒッサツ!フルスロットル!シューター!》

ゼンリンシューターからバイク状のエネルギー弾が放たれ044に命中した。凄まじい爆炎が上がり周囲を昼間の様に照らした。

 

「ふ~、良い絵だったろ?さて、急がね~とな」

 

爆炎が収まるのも待たずマッハはすぐにでも速水を追いかけようと踵を返す。

 

「どこに行くつもりだ?」

 

「ッ!?」

 

背後から聞こえた044の声に慌てて振り返る。

見ると先程よりも収まった爆炎の中に1つの影が見えた。スパイダー型のロイミュードとは違う異様な気配を感じる。

その時、影が動いた。すぐさま身構えたマッハだったが次の瞬間視界から影が消え背中に衝撃が走った。

「グウッ!?」

 

急いで振り返ろうとするがそれよりも早くに腹部、右肩、頭部へと衝撃が襲って来る。

 

 

堪らず後退しようとバックステップで距離を取るが次の瞬間には背後から攻撃を受けた。

 

「クッソ!何なんだこの力は!?」

 

「油断したな。見せてやるお前を倒すために手に入れた俺の新たな力、名前を!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

倒れた生徒たちの看病を竹林と奥田に任せ速水たちはホテルの裏の崖下に来ていた。

「まず間違いなく正面からは監視をされている筈だ。よって、裏口から忍び込み薬を奪取する!」

 

烏間の指示を聞き生徒たちは崖の上にそびえ立つホテルを見上げた。

 

「尚、相手はロイミュードとも繋がっていると思われる十分注意するように!」

 

「「「「はい!!」」」」

 

「所で烏間先生、実弾は所持していますか?」

 

透明の袋に入れられ渚が抱えている殺せんせー(球体)の質問に烏間は苦い顔をし懐から拳銃を取り出した。

 

「念のため持ってきてはあるがあくまでも自衛用の一丁だけだ。万が一郷くんが戦っている以外にロイミュードがいたら・・・作戦は続行は困難になる・・・」

「そうですか・・・・」

 

『その時は、我々が引き受けよう』

 

そこに複数のシフトカーを引き連れクリムがいた。

 

「クリム先生、よろしくお願いしますね」

 

『ああ、任せてくれ』

 

 

「よし、では行くぞ!」

 

烏間の合図と共に生徒たちは一斉に崖を登りだした。

 

 

さすが日頃から訓練をしているだけあり生徒たちは険しい崖を順調に登っていく。

 

「ほらほら、みんな遅いよ〜!」

 

中でも元体操部である岡野は既に崖の半分まで登っていた。

続いて木村もあとに続いている。

 

「やっぱりあの二人は速いな〜」

 

「最近は郷と一緒に訓練しているらしいからな」

 

岡野と木村は元々E組で共にトップクラスのスピードのだったが郷という強力な力をライバルが現れてからは負けまいと訓練を行いよりいっそう速さに磨きをかけていた。

 

「それに引き換え・・・・」

 

菅谷が下の方を見ると・・・

 

「ちょっと!もうちょっとゆっくりと登りなさいよ落ちるじゃない!!」

 

「にゅるふ〜〜いや〜楽チンですね〜〜〜」

 

『すまないな烏間先生』

 

同僚3人(ビッチ・球・ベルト)を担ぎ生徒たちと変わらないスピードで登る烏間がいた。

「うちの教師たちは・・・」

 

そのあまりの不甲斐なさに生徒たちはため息をつくしかなかった。

 

 

そんなこんなで全員が無事に崖を登りきったが裏口は当然ロックされていた。

 

『ここは私にお任せください!』

 

片岡のスマホから名乗りを上げた律が画面から消える。

すると数秒後、裏口をロックしている電子機器から《ピー》と音がなりロックが解除された。

 

 

ホテル内に入るとすぐにロビーが見えた。

 

「ッ!止まれ!」

 

烏間の合図で止まり物陰に隠れる。

 

ロビーには多数のホテルスタッフや客がいる。

大人2人に複数の子供更に黄色い球にベルトという目立つ団体であるため極力人目は避けたいところだった。

 

(どうする?何とか周囲の気を逸らさなければ・・・)

「はぁ、しょうがないわね」

 

思考を巡らす烏間の横をイリーナが通り過ぎた。

 

「ビッチ先生!?」

「何やってんだよあのビッチ!?」

 

慌てる生徒たちを尻目にイリーナはロビーに置かれたピアノに歩み寄った。

 

途中、ホテルスタッフに止められたが

 

「ごめんなさい・・・明日ピアノの演奏をするものなんですけどどうしても事前にピアノの調子を確認したくて・・・・」

 

イリーナの迫真の演技と美貌にスタッフは即座に警戒を解きイリーナをピアノまでエスコートした。

 

ピアノの前に座ったイリーナが演奏を始めるとその音色と魅惑的な姿に周囲の人々が次々と集まってくる。

 

自身の周りにロビーの人々が集まった事を確認したイリーナは物陰に隠れる烏間に目線で合図を送る。

 

 

「よし、今のうちに行くぞ」

 

烏間が走り出すとイリーナ演奏に釘付けになっていた生徒たちも慌ててそのあとを追う。

 

 

ロビーを抜けると人影もほとんどなくなりスムーズに進む事が出来た。

 

『この先を抜けた所に階段があります』

律がホテル内の地図をダウンロードしナビゲートをする。

 

「よっしゃ!楽勝じゃねーか!」

「さっさと行こうぜ!」

 

寺坂と吉田が走り出すと前から1人の男が口笛を吹きながら歩いて来た。ラフな格好なため一般の客と思われたがその顔を見た瞬間不破が叫んだ。

 

「寺坂くん、そいつ危ない!」

 

「あ!?」

次の瞬間男は巻いていたスカーフで口元を覆うとポケットから取り出した何かを寺坂たちに突き出した。

 

「クッ!」

 

男が突き出した何かからガスが噴出されたが間一髪烏間が2人の腕を引っ張った。

 

同時に男に対し蹴りを放つが男はガードするとそのまま距離を取った 。

 

「おっと、中々やるな先生」

 

男はガードした腕を見ると赤く腫れていた。

 

「一番やっかいなのはあの化け物が押さえているとは聞いていたがまだこれ程のヤツが残っているとはな」

 

だが・・と男が笑うと同時に烏間はガクリと膝を付いた。

 

「烏間先生!?」

 

慌てて磯貝が支えるが見るからに意識が朦朧としていた。

 

「全く大したもんだぜ。あの毒を吸ってあれだけ動けたんだからな・・・そこのおかっぱの嬢ちゃんが叫ばなければこんな無駄な負傷もしなくて済んだんだがな」

 

「おかっぱじゃなくてボブカットなんだけどなぁ・・・まあいいや。だっておじさん私たちにウェルカムドリンクくれた人だよね?」

そう言われて男を改めて見た他の生徒たちも気付いた。男の特徴的な鼻が島に付いた時にドリンクを配っていたウェイトレスと全く一緒であることに・・・・

 

「ビーチに毒を撒いたら私たちだけじゃなく無関係な人も感染する可能性のあるし料理だったら私たち全員が感染しているはず、だから思い出してみたの今回倒れたのはみんなおじさんからドリンクを受け取った人ばかりだって!!」

 

不破はまるで某名探偵の孫や小さくなった高校生探偵のように男を指差したが、男は余裕な態度を崩さなかった。

 

「その観察力は大したもんだけどな厄介なやつは封じた。後はお前らに交渉に応じる気が無いことをボスに伝えるだけだ」

携帯を取り出しその場を去ろうとしたがその進路を数人の生徒が塞いだ。

 

更に残りも生徒も男を逃がすまいと通路の隅や壁に飾られていた観葉植物や模造品のハルバートを構える。

 

(何っ!?こいつら動きに迷いが無い?)

 

教師さえ封じれば生徒たちはまともな行動は出来ない。そう思っていた男は生徒たちの迷いのない動きに動揺した。

 

「残念だったな。無駄な話をしないでさっさとボスとやらに連絡を取るべきだったな」

 

「・・・・ッ!ガゴァッ!?」

 

男の顎に烏間の鋭い拳が炸裂した。

 

脳が揺れ意識を手放す直前、男は今にも倒れそうなほど意識が朦朧としている烏間を見てニヤリと笑った。

 

(あの毒を吸ってこれだけ動けるなんてな。アンタも十分化け物だ。だが引率も此処までだぜ先生・・・)

 

最後に勝ち誇ったように笑い男は意識を手放した。




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握力の時間

今回ローグが仲間になりましたがその前に立ち塞がる最強の敵、仮面ライダーエボル。

フェーズ1という事はここからさらに強くなっていくという事ですね。

4人のライダーはどう立ち向かうのかこれからも目が離せません。



「見せてやるオマエを倒すための俺の新たな力、名前は・・・・」

 

044の姿が砂煙の中で変わっていく。蜘蛛を思わせる頭部からは三編みのような分銅が伸び全身はより硬度な鎧のように変化させていく、両手には剣と銃をそれぞれ持ち右腕からはレバーの様なものが突き出ている。

 

「俺の新たな名は・・・バレット」

 

「バレット?弾丸か、面白い。どれだけの腕前か見せてみろよ!!」

 

マッハとバレット、互いの銃弾が激突する。

 

《シグナル交換!マガール!シューター!》

 

シグナルマガールの力で死角から銃撃を喰らわせようとしたがバレットは目を向けることもなく死角からの銃弾を打ち落とした。

「ヒュ〜♪やるなぁ・・・」

 

軽口を叩いてはいるが内心郷は焦っていた。

 

バレットの予想以上の実力そして倒れたクラスメイトたちの容態が気がかりでならなかった。

 

「ならチャッチャと終らせるだけだな!」

《ズーットマッハ!》

 

高速でバレットの銃撃を回避しながら死角に回り込んだマッハに対しバレット先程と同様に銃口だけを向け迎撃しようとした。

 

 

バレットが引き金を引いた瞬間マッハは再び高速移動を行いバレットの更に死角へと跳んだ。

 

引き金を引いた直後、いくらロイミュードの反射神経でも対処できない。

ゼンリンシューターの鋭い打撃がバレットを打ち砕く。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「烏間先生、大丈夫ですか?」

 

「あ、ああ・・・心配ない・・」

毒使いの男を撃破したE組だったが烏間は相手の毒を吸ってしまいまともに歩くことも出来ない状況になってしまった。

 

殺せんせーも今は動けない球状であり実質この先は生徒たちの力のみで進まなければならなくなった。

 

「にゅるふふふ〜〜いや〜まさに夏休みといった感じになってきましたね〜」

 

そんな中渚の手の中でニヤニヤと笑う殺せんせーに生徒たちの殺気のこもった視線が集まる。

 

「な~に一人だけ安全なところで笑ってるんだよ!」「渚、振り回してやれ!」

「にゅああぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!渚君そんなに回さないで〜〜〜ッ!!」

 

 

 

「にゅあ〜にゅぁ・・・みなさん今は潜入中だというのを忘れていまさんか?」

 

「誰のせいでこんな苦労していると思ってるんだよ!」

 

「でも殺せんせー、なんで今の状況が夏休みらしいなんて言えるの?」

茅野の疑問に殺せんせー生徒たちを見回す。

 

 

「夏休みとは普段の教室とは違い生徒たちが教師から離れ新しい何かに挑む時でもあります。今皆さんは我々教師から離れ自分たちの力で困難に立ち向かうときです」

 

『だが殺せんせー、あまり悠長なことは言っていられないかもしれないぞ』

速水の手の上でクリムが言う。

 

『今郷が戦っている044だが、どうやら進化体のようだ。しかもその性能は恐らくマッハと互角いや、それ以上かもしれない・・・』

 

クリムはビーチに残していったシフトスピードを通しマッハの戦闘を見ていたが044がバレットロイミュードへと進化してから戦況が苦しくなってきたのを感じていた。

それを聞きクリムを持つ速水の手に無意識に力が入っていた。

 

「解っています。郷くんも皆さんが心配で戦いに集中出来ていないでしょうしね急ぎましょう」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「リ、リアリ〜〜・・・・?」

絶対に対処できないタイミングで放ったはずの一撃だった。

 

そう思っていたが振るわれたゼンリンシューターは空を切りマッハはバランスを崩し砂浜に倒れ込んでしまった。

急いで起き上がろうとしたがバレットの蹴りにより吹き飛ぶ。

 

「お前は一つ勘違いをしているみたいだな。バレットとは俺の武器ではない、俺自身の事を指している」

 

バレットが右腕のレバーを引いた次の瞬間、視界からバレットが消え身体に衝撃が走った。

 

「ガアァツ!?な・・・なるほど、お前自身が弾丸のように撃ち出して高速で動けるわけだ・・・おもしれぇ!!」《ズーットマッハ!》

 

ビーチから2人の姿が消え同時に無数の衝撃が島中で起こった。

 

 

――――――――――――――

 

「「「「・・・・・・・・・」」」」

 

ホテル内を進んでいたE組だったが壁一面に大きなガラスが張られている廊下の影に隠れていた。

 

視線の先にはガラスに寄り掛かる見るからに只者じゃない雰囲気の男がいた。

 

「・・・・どう見ても一般人じゃないよな・・」

 

「ああ、いい加減に分かるようになったさ・・・・明らかに殺る側の人間だ」

 

男から隠す気は無いかのように漏れる殺気に中々進むことが出来なかった。

 

 

「・・・・つまらぬ」

 

男が小さく呟くと背後のガラスに大きなヒビが入る。

 

「何時までも隠れてないで出てくるが良いぬ」

 

男の視線が生徒たちを捉えている。

 

ゆっくりと近付いてくる男に生徒たちは観念し物陰から出る。

 

「・・・特殊な訓練を受けているとは言え所詮は子供ぬ。教師は特殊部隊の精鋭らしいがぬどうやらスモッグの毒を喰らったようぬな。これではオレの望む戦いは期待できないぬな」

 

スモッグと言うのは先程の毒の男の事だろうだが、そんな事よりも気になることが一つあった。それは・・・

 

「おじさん、ぬの使い方可笑しくない?」

 

(言ったーーー!!?)(みんなが思っていても言えなかったことを!!)((((ありがとうカルマ!!))))

言いたくても言えなかった歯がゆい気持ちを解消してくれたカルマに心の中で礼を言った。

 

「語尾にぬを付けるとサムライのようでカッコいいと思い付けたのだがな、間違っていたならこの場の全員を消し付けるのを止めれば恥にはならないだろう」

 

男がゴキッと手を鳴らす。とても重いその音に生徒たちに戦慄が走る。

 

「素手・・・・それがあなたの獲物ですか」

 

「その通りだぬ。ボディーチェックで止められることもなくワザワザ隠す必要もない。すれ違う瞬間相手のアタマを掴み・・・」

 

男が再び手を鳴らす。その瞬間を想像してしまい岡野はゾクリと身震いしアタマを押さえる。

 

 

「だが、子供相手にオレの技は勿体ないぬ。上に連絡して他の者に任せるとするかぬ」

 

男はスマホを取り出し連絡を取ろうとする。

このままでは潜入が失敗する。烏間は止めようとするが毒の影響で上手く動けない。

 

すると烏間の横にいたカルマが廊下に置かれていた観葉植物を掴み男のスマホを背後のガラスごと叩き割った。

 

「おじさんぬさ〜〜随分と自分の力を自慢しているけどさ、ガラスを割るくらい俺にだって出来るよ。それに、助けを呼ぶとかさ・・・もしかしてビビってるの?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

挑発的な笑みを浮かべるカルマに対し男は無言で観葉植物を握り潰した。

「何をしているんだ!?」

 

烏間は無用心に近付くカルマを呼び止めようとするがそれを殺せんせーが止めた。

 

「待ってください烏間先生 ここはカルマくんに任せましょう」

 

「な、何を言っているんだ!?」

『そうだ!幾らなんでも危険すぎる!!』

 

クリムも反対するがそれでも殺せんせーは心配ないとばかりに笑う。

 

「心配ありませんよ。今の彼ならね・・・・」

 

 

 

「・・・オレに勝負を挑みと言うのか?」

 

「うん、一対一でやろうか」

 

「良いだろう。その勇気を認めて相手をしてらるぬ!」

男の手がカルマを捕えようと伸びるとカルマは冷静に回避していく。

相手の握力は人間離れしたものであり一度掴まれれば即ゲームオーバーだろう

 

(一発アウトの殺し合いなら立場が逆なだけでいつもやってるんだよね)

次々と伸びてくる手を避けていくカルマ。その動きに烏間は見覚えがあった。

 

「あれは、俺や郷くんの回避術!?」

 

E組の訓練においては防御や回避の術は基本教えていない。

元々一撃必殺を基本とする暗殺者にはあまり必要としないためであった。

 

「恐らく訓練の中で学習したのでしょう」

 

殺せんせーは簡単に言うが烏間と郷が相応の訓練と実戦の中で身に付けていった動きを見よう見まねで物にする能力の高さは目を見はるものだった。

 

「クッ!?」

 

中々攻めきれていない状況に苛立ち男の動きに一瞬の隙が出来た。

その隙を突きカルマが蹴りを放つ。

 

男はギリギリでガードするがバランスを崩し膝をついた。

 

「どうしたのおじさんぬ。もう終わりかな〜?」

 

勝ち誇ったような笑みで男を見下すカルマだったが男の手が懐に伸びていくことに気付いた烏間が叫んだ。

 

「危ない!離れるんだ!!」

 

その直後カルマに向かいガスが噴出された。

 

「――ッ!?」

「カルマ君!?」

 

ガスを吸い崩れるカルマの首を男は掴み持ち上げた。

 

「コレで終わりぬ。スモッグの毒を吸ったら暫くはまともに動くことは出来ないぬ」

 

「テ、テメー汚ね〜ぞ!!」

寺坂が声をあげるが男は涼しい顔で返す。

 

「オレは素手だけで相手するとは1度も言ってないぬ。プロならつまらないこだわりで仕事に支障をきたすような真似はしないぬ」

 

男はそのままカルマの首を絞めようとするがカルマは小さく笑っていた。

 

「安心したよおじさんぬ」

「ナニ?」

 

「思った通り俺と同じことを考えていてさ〜」

 

カルマの手には男の使ったものと同じ噴出機が握られていた。

 

「――なぁっ!?」

男に向かいガスが噴出された。

至近距離からガスを吸った男の膝がガクガクと震え崩れ落ちた。

 

「お〜い!ガスが効いているうちに動けないようにするよ〜」

 

カルマに言われ男子たちは急いで男を拘束した。

 

「くっ!なぜガスが効かなかったぬ?」

 

「言ったでしょ、おじさんと同じことを考えていたって、おじさんが本当のプロなら俺1人に時間をかけるようなことはしないいざとなったら必ず手段を択ばないと思っていたよ。後はガスを警戒していればね」

 

そう言いカルマは右手に隠し持っていたハンカチをヒラヒラと見せた。

 

 

「・・・ふっなるほどハンカチでガスを吸わないように防いでいたわけぬ」

 

「ヌルフフ〜〜カルマ君はいままで相手を見下し油断をし足元をすくわれる事がありました。ですが期末テストでの敗北が彼を大きく変えてくれたようですね〜」

 

教え子の成長に殺せんせーはとても嬉しそうに笑う。

 

 

「さあ、先に進むが良いぬ」

 

「なに言ってるの?楽しみはコレからでしょぉ〜」

 

カルマの手にはどこから出したのかドクロマークの描かれた袋があった。

 

「な、ナンだぬ?それは・・・」

 

「さっきまでは迂闊に近づけなかったけどそれだけに縛っていれば警戒もなにもないよねぇ〜」

 

袋からは練りわさびやタバスコ等を次々と取り出した。

 

「さぁ~て、まずは鼻フックを付けてワサビを練り込んで口の中にはニンニクとタバスコあと鷹の爪も良いね・・・猿ぐつわで口も塞ごうかなぁ~~」

 

悪魔の笑みで迫るカルマに男の顔は恐怖に染まっていく

 

「さぁ~おじさんぬ。今こそプロの根性を見せる時だよ」

 

「ぬ・・ぬうううぅぅぅぅぅぅぅ~~~~~!!!」

 

男の叫び声が響く中、生徒たちはカルマの悪魔のごとく所業に全力で引いていた。

 

「殺せんせー、カルマ君ちっとも変わってないよ」

 

「にゅ~・・・彼の将来が心配ですねぇ~~・・・・」




モチベーションが上がるので感想宜しくお願いします。


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銃弾の時間


今週のビルド
不味いですね・・・か~な~り不味いですね!

現状最大戦力であるクローズが取り込まれボトルもほぼエボルとの物、しかも仮面ライダーエボルはパワーアップってまさに絶体絶命の状態ですね。

そして明かされた万丈とエボルの関係と葛城巧(佐藤太郎)殺害の真実

個人的に未遂とはいえ葛城巧の変身シーンが嬉しかったです。

次回、ビルド、グリス、ローグがどう逆転するのか楽しみです!


ビーチ沿いにあるレストランでは竹林と奥田の2人が倒れた生徒たちを介抱していた。

とは言ってもまともな設備の無い状況では水で濡らしたタオルを当てるぐらいしか出来ないで居た。

 

「奥田さん。水を代えてきてくれないか」

 

「は、はい!」

 

奥田が温くなった水の入った容器を持ち立ち上がったときビーチから風が吹いた。

 

バチィィィン!

 

「えっ?・・・・・きゃぁぁぁ!?」

 

風が吹いたと同時に自分のすぐ隣から聴こえる音に振り向いた奥田が悲鳴をあげた。

 

何事かと竹林も振り向くと尻餅を着く奥田の目の前でマッハと見たこと無いロイミュードが互いの武器で鍔迫り合いをしていた。

 

「ふっ!」

「ガァッ!?」

 

ゼンリンシューターしか持たないマッハに対し両腕にそれぞれ剣と銃を持つバレットは銃でマッハを撃った。

鍔迫り合いに気を取られていたマッハはノーガードで受けテーブルを壊し吹き飛んだ。

 

「どうした仮面ライダー。こんなものか?」

 

「クッソォォ!」

 

テーブルの破片を蹴り飛ばし立ち上がったマッハの目にうなされ寝込むクラスメイとたちが写った。

 

「――ッ!?」

「余所見をしている余裕があるのか?」

 

その隙を見逃すこと無く迫るバレットの猛攻を何とか防いでく。

が、このままここで戦ってはみんなを巻き込んでしまう。

その考えが頭に浮かび反撃できないでいた。

 

「ッ!竹林!奥田ぁ!みんなを奥に移せ!!」

 

「わ、分かった!奥田さん!」

 

「はい!」

 

慌てて生徒たちを奥に移し始めた竹林たちを横目に見ながらマッハはバレットの刃を防いだ。

 

「急げよ・・・・・あんまり余裕はないからなぁ・・」

 

 

―――――――――――――

 

ホテルの上階、コンサートホール前の廊下を2人の屈強な男が歩いていた。

そこに1人の少年がよそよそしく歩いてきた。

 

男たちの目の前を通りすぎたとき少年が何やら不快そうな顔をする。

「あっれぇ〜なんかクッサイなぁ〜まるで腐った牛乳を拭いた雑巾だなぁ〜〜」

 

あきらかに自分たちに対して言っている。そう理解した男たちは鬼のような形相で少年に近付く。

 

「オイッ!」

 

男の1人が少年にどすの聞いた声で話し掛けると少年はその場から駆け出した。

 

「なっ!?」「待て、このガキ!!』

 

男たちもすぐさま追い掛けるが少年の脚が速く中々追い付けないでいた。

その時曲がり角から2つの影が男たちに飛び掛かった。

横からの不意討ちに倒れる男たちの首筋に警棒の様なものが当てられると次の瞬間高圧電流が流れ男たちは短い悲鳴を上げ気絶した。

 

「ふぅ〜オイッもう良いぞ!」

 

男たちが気絶したのを確認した寺坂と吉田が階段の方に叫ぶと階段からE組生徒たちが出てくる。

 

「オイッ木村!オマエもさっさと戻ってこいよ!」

 

廊下の先からは男たちに追われていた木村が息を切らせながら歩いてきた。

 

「ハァ・・・ハァ・・・もう少し速く出てきてくれよ。スゲェ〜怖かったんだから・・」

 

 

「それにしても寺坂、良くそんなの用意できたね。高いんじゃないの?」

 

岡野が寺坂が手に持つスタンガンを指差しいうと寺坂は少し気まずそうに頭を掻く。

 

「あ~・・・・ちぃっとばかし臨時収入があってよ・・タコにも効くんじゃないかと持ってきたんだよ」

 

寺坂が言う臨時収入とは以前シロに協力していた時に貰っていた報酬の事だったがその結果みんなを危険にさらしてしまったため言い辛かった。

 

「なるほど、中々良い武器ですが・・その人たちの懐を探ってみてください。きっともっと良い武器がありますよ」

 

殺せんせーに言われ寺坂が男の懐を漁ると何やらずっしりとした金属の塊があった。手を引きそれを見た瞬間寺坂や周りの生徒たちの表情が強張った。

 

男の懐に会ったものそれは銃だった。

しかも対殺せんせー用のBB弾を飛ばすエアガンではなく本物の拳銃である。

 

「おい、こっちにもあったぞ」

 

吉田の方の男の懐からも同型の拳銃が出て来た。

 

「この先恐らくその武器が必要となるでしょうですが烏間先生はまだ万全ではありません。そこで・・・」

 

『殺せんせー・・・まさか!?』

 

殺せんせーが何と言おうとしているのか瞬時に把握したクリムが叫ぶ。

 

「千葉くん、速水さんあなた達2人がその銃を持ってください」

 

「「――ツ!?」」

突然の事に速水も千葉も他の生徒たちも驚く。今までエアガンは何度も使用してきたが本物の銃は当然持ったことも無かった。しかも場合によってはこの先で使用しなくてはならない。2人にはその小さな銃がとても重く感じた。

 

「大丈夫です。お2人の腕前なら十分に使いこなせるでしょう」

 

殺せんせーは確信している様に微笑む。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

ホテルの最上階の部屋で男はパソコンに移る映像に見入っていた。

画面には毒に苦しむ生徒たち、そしてバレットロイミュードに苦戦するマッハの姿が撃っている。

 

「ククク、良いなぁ~この苦しそうな表情・・・ただこの角度じゃ一部の奴しか見えね~な」

 

男の後ろではもう一人別の男がその様子を見ていたがチラリと時計を見るとそのまま部屋から出て行く。

 

(下の奴らからの連絡が無い・・・恐らく潜入して来た奴らにやられたか・・・・)

男は下の階のコンサートホールに入りステージに立つとすぐに気付いた。ホール内に散らばる無数の気配に。

 

(まさかもうここまで来ているとはな・・・楽な依頼だと思っていたが特殊訓練を受けた中学生か・・)

 

男は銃を取り出すと同時にステージ上の音響機器を操作し爆音をホール内に響かせた。

 

「良いねぇ!久しぶりにうまい仕事が出来そうだa・・ズキャァン!――ッ!?」

 

男のすぐ隣を一発の銃弾が通過する。

 

(しまった外した!)

 

客席の間から男の銃を狙った速水は苦い顔をした。

再度狙おうと顔を出そうとした。

 

『――ッ!?止まるんだ!!』

「えっ?」 ズキュゥン

 

足下からクリムの叫び声が聞こえ一瞬止まった。すると目の前をナニかが横切り後ろの席が小さく弾けた。

 

「―――ッ〜〜!?」

 

それが男の撃った銃弾だと認識し息を飲む。もしもクリムが叫ばなかったら死んでいたかもしれない。

そう思うと途端に寒気が襲う。

 

『速水くん!大丈夫かね!?』

「は、はい・・・・ありがとうございます・・」

 

 

「よ〜し!今撃ったやつの場所はもう把握したぞ!」

ステージから男の声がホール中に響く。

 

「下にいた二人は生粋の殺し屋だからな大人数との正面からの戦闘には隙があったかもしれないがな。俺は元傭兵だ。コレぐらいの人数との戦闘は幾度もこなしてきた!」

 

叫びながら男は再び発砲した。

 

「うわっ!?」

 

銃弾は移動しようとした木村の足下には着弾した。

 

不味い!全員がそう思った。このまま時間をかけているとジリジリと追い込まれていくだけだ。

 

 

「速水さんと木村くんはその場で待機してください!」

 

ホールに殺せんせーの声が響く。

 

「千葉くん先ほど撃たなかったのは良い判断でしたよ!君はまだ敵に位置を悟られていません。そのまま指示するまで待っていてください!」

 

「ナニッ!?一体どこからっ!?」

 

周囲を見渡す男だったがよく見ると男のすぐ目の前、ホールの最前列の席の上でニヤニヤと笑っているシマシマ模様のボールがあった。

 

「テメッ!なに最前席でかぶりついて見てんだよ!」

 

男は殺せんせーに向け発砲するが完全防御形態の殺せんせーには効果は無かった。

 

「ヌルフフ~この形態にはこういう使い方もあるのですよ。中学生がプロの殺し屋と戦うんですからこれ位のハンデは良いでしょう?」

 

「チィ、まあ良い。その代わり容赦はしねぇぞ」

 

「では、行きますよ!片岡さん、2列前進!不破さんは右へ回り込んで!」

 

「何っ!?」

 

殺せんせーの指示に従い生徒たちは素早く移動を始めた。その迷いのない動きに一瞬戸惑った男だったがすぐに冷静さを取り戻し始め一人一人の名前と位置を覚え始める。

 

「馬鹿が、この程度の人数なら覚えるのは訳ない。この程度で俺を惑わせようなんて甘いんだよ!」

 

だが男の余裕は次の瞬間に消えた。

 

「出席番号7番は3列後退!元テニス部はバイク屋と位置を入れ替えて!」

 

「ッ!?」

 

殺せんせーは名前だけでなく出席番号やかつて所属していた部活、生徒一人一人の特徴で指示を与えだした。

 

「クラス委員2人はそれぞれ斜め右に移動!100メートル走クラス2位は女装と合流!停学明けと最近郷君や竹林君と行ったメイド喫茶にはまりかけている人はその場で物音を立ててください!!」

 

「テメェ~!何でそれを知ってるんだぁ!!?」

 

次々と位置を変えていく生徒たちに男の思考が徐々に追いつかなくなっていく。

 

「千葉くんそろそろ出番ですよ。速水さんは千葉くんをサポートしてください」

「「・・・・・」」

2人は自然と銃を持つ手に力が入ってしまっていた。この一発を外したら恐らく男には自分たちの場所が完全にバレてしまうだろう。そうなったら次のチャンスは無いかもしれない。その考えがどうしても頭から離れない。

特に速水は先程目の前を横切った銃弾の恐怖から手が震えてしまっている。

 

『・・・速水くん、大丈夫かね?』

 

「は、はい大丈夫です・・」

 

速水に声を掛けるクリムであったがやはりその声は震えてしまっていた。このまま不安定な心ではまた失敗してしまう。速水も分かってはいた。

だが、どうしても先程の恐怖そして失敗してはならないというプレッシャーが拭えない。

『・・・・・速水くん、千葉くん、そう失敗を恐れるモノではない。失敗するということは決して駄目なことではないのだから』

 

クリムの語りに速水や千葉は耳を傾けた。

 

『君たち二人は普段あまり自分の心を明かすことはしない。それ故周りから頼られてばかりで弱気見せないでいた。

だが、今君たちの周りを見てみたまえ、君たちには頼ることの出来る仲間たちが、弱音を受け止めてくれる友たちがいる。何も恐れることはない。今は友たちを信じて自分のなすべき事をすれば良いんだ』

 

クリムのその言葉に速水と千葉の心に先程まであった不安が消えっていた。

 

そうだ、自分だけで背負わなくていい、今の自分たちにはこんなにも頼れる友たちが居る。たとえ自分たちが失敗しても友達たちが必ず何とかしてくれる。そう思うだけで心が楽になった。

 

もう外すのは怖くない。自分たちには仲間が友達がいるのだから!

 

「ヌルフフフ、では行きますよ。千葉くん、今です!!」

 

「馬鹿め!もう位置は分かってるんだよ。そこの奴が一切動いていないってなぁ!!」

 

席の一角から飛び出た影、男は予測していたような素早い反応で発砲した。銃弾は真っ直ぐと影の頭部を貫いた。

がそれは菅谷が密かに作り出していたモップなどで作られたダミーだった。

 

「何だとぉ!?」

 

『今です千葉さん!』

「OK律!』

 

男がダミーに気を取られた瞬間逆方向から顔を出した千葉は律が導き出した一点に向け引き金を引いた。

 

 

千葉の撃った弾丸は男のすぐ横を通り過ぎステージの奥へと消えていった。

 

「フ、ハハハハハ!!外したなぁこれでもう一人の居場所も完璧にぃ【ガシャァン!!】ィガァァァァ・・・!?」

 

千葉に向かい銃口を向ける男の背後から天井に吊るされていた音響の機材が振り子のように降って来た。

機材に跳ね飛ばされた男はそのままステージ上に置かれた機材まで飛びサンドイッチ状に挟まれた。

 

「グウウウ・・・ガキ・・どもがぁ・・・・・!このまま・・じゃぁ・・」

 

それでもなお銃を離さなかった男は必死に銃口を向けようとしたが速水が放った一発が男の手から銃を弾き飛ばした。

 

「ふぅ~今度は当たった」

『ウム、NICE SHOTだ速水くん』

 

 

数名の男子が男を拘束している間殺せんせーとクリムは座席の上で生徒たちを見ていた。

 

「いや~流石クリム先生ですねぇ~私が言いたかったことをしっかりと伝えてくれましたよ」

 

『いや、自分一人で抱え込まずに仲間を頼る、ワタシもかつて学んだことさ。・・・かつての私も自分一人で抱え込み続けてきた結果一度すべてを失った。生徒たちにはそんな思いをしてもらいたくないんだ。君も同じ気持ちだろ?』

 

「・・・そうですね。一度すべてを失ったことのある私たちだからこそ未来がある彼らに同じ過ちを指せないようにする義務がありますね。これからも共に導いていきましょう」

 

『・・・OK』

 

2人の視線の先では清々しいほどの笑顔でお互いを称えるように腕を合わせる速水と千葉が居た。

 

 




登場ロイミュード
・バレットロイミュード
044が進化した姿
見た目は特命戦隊ゴーバスターズに登場したダンガンロイドの頭部から三つ編みの様に鎖分銅が垂れさがっている状態
右手には銃左手には剣を持ち二つの武器を巧みに使い攻撃する。
最大の特徴として右腕に付いたトリガーを引くことで自身を銃弾のように撃ち出しマッハと互角のスピードでの戦闘を可能とする。


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黒幕の時間

 最近カラオケでアニメや特撮の歌を歌いながら自分の小説にOPを付けるならどんなのが良いのかなぁ。
なんてことを考えています。

個人的にはワールドトリガーのドリームトリガーがお気に入りですね。


俺とバレットロイミュードは常人には認識することも出来ないスピードで数十分にも渡りぶつかり合っていた。

 

《シューター!カクサーン!》

ゼンリンシューターから放った無数に拡散する光弾はバレットの斬撃によって全てを切り裂かれ逆に斬りかかってきた。

「ッチィ〜!ラアァァァァ!!」

 

ゼンリンシューターを盾になんとか防ぎ押し払う。

そのまま詰め寄りゼンリンシューターを振り上げる。

「グゥッ!?」

 

ゼンリンシューターはバレットのボディを切り裂くように火花を散らしバレットをは空中へと打ち上げる。

そのまま追撃しようと銃口を向けると奴は既に空中で回転し体勢を立て直していた。

「ハアァァ!!」

 

重力を味方につけ降り下ろされた刃は俺のボディを切り裂き更に直後に当てられた銃口が火を吹き大きく身体を吹き飛ばされた。

 

「グッアアァァ!?」

 

砂浜を滑るように吹き飛んでいると横から殺気を感じた。

 

考えるまえに身体が動き右腕を顔のすぐ横に持っていく。

その直後、右側に現れたバレットの攻撃により右腕を襲撃が襲った。

身体は進行方向を左に変え砂浜に叩き付けられた。

 

「ハァ!ハァハァ!・・・」

初めは互角だったスピードに徐々に差が出来始めた。

 

「フッ、スピードは互角でも所詮は人間ベースだな。時間と共に体力もスピードも落ちてきているな」

「はぁ・・はぁ・・・うっせぇ・・」

 

悔しいけどあいつの言う通り確かに遅くなってきている・・・それでも!!

 

 

「まだ止まるわけにはいかないんだよ!!」《ズーット!マッハ!》

 

「良いだろう。コレで終わらしてやる」

 

再度、音速の世界へと入る際手に持ったゼンリンシューターを投げ捨てる。

 

このほんの僅かな重量の違いが俺のスピードを上げた。

 

「なるほど、武器を捨てることでスピードを上げたか、だがな!」

 

スピードの代わりに武器を無くした為殴り掛かるが当たらない。

やっぱりまだあいつの方が僅かに速い!

「そんなやけっぱちな攻撃では俺には勝てない!」

 

大振りになった攻撃の隙を突かれ腹部に強力な一撃を喰らった。

 

「グアァァァ!!」

「コレで、最期だぁ!!」

 

足が地面から離れ後ろに引っ張られる。前を見るとバレットは腕トリガーを引き加速で迫ってきた。

でも!

 

「掛かったな!!」

 

迫るバレットを視界に捉えた瞬間、口元が思わず緩んだ。

そして確信した。俺の勝ちだ!!って

 

すぐ横を見ると投げ捨てたゼンリンシューターを今まさに追い抜こうとしていた。

 

空中で素早くドライバーからシグナルマッハを抜き追い抜きざまにゼンリンシューターに装填して引き金に手を伸ばす。

《ヒッサツ!フルスロットル!シューター!マッハ!》

 

照準は既に迫るバレットに合わせた。

 

「何だとっ!?」

 

「へっ、アバヨ!!」

 

意表を突かれたバレットが回避する間を与えずゼンリンシューターから放ったバイク状のエネルギー弾【ヒットマッハー】がバレットを貫いた。

 

「グッ、ガアァァァァ!!?」

断末魔の叫びと共にバレットは爆炎の中に消えていった。

 

空中での足場無しでのヒットマッハーの反動で吹き飛ぶ速度が上がったのを感じていると気を抜いたせいか変身が解けた。

「イデッ!」

 

生身での高速浜辺ダイブは以外と痛かったけどそれでもロイミュード一体と比べれば釣りがくる。

 

「ぜぇ・・・ぜぇ・・ぜぇ・・・・・・終わったぁーーーー!!」

満天の星空に向かい叫ぶでもまだ終わりじゃないんだよな。

 

「さてっ・・もう一仕事・・・だな・・」

 

おぼつかない足取りでホテルへ向かいながらスマホ内の律に連絡を取った。

 

「律、今ロイミュードを倒したからそっちに向かうって伝えておいてくれ」

 

『大丈夫なんですか!?そんな体で・・・』

 

「無問題(モーマンタイ)心配ね〜よ」

 

これぐらいでへばっていられるかよ。

 

―――――――――――――――

 

『皆さん!今郷さんから連絡があり044を撃破したとのことです!』

 

コンサートホールで銃の男を倒した私たちはとうとう黒幕の居る最上階の部屋の前まで来た。

その時律から郷がロイミュードを無事に倒したって報告がきた。

 

「良かったね凛香!」

 

隣にいた矢田が嬉しそうに手を取って言った。

他のみんなもガッツポーズを取ったりして喜んでいた。私もほっと息を吐く。

 

『ですが郷さんもかなり疲労しているようです』

 

『ウム、044の進化態はかなりの実力を持っていたようだ。律くん、郷には後は任せて休んでいるように伝えておいてくれたまえ』

 

『はい、了解しました!』

 

クリム先生の言葉に私ははっと気が付く、今までも郷は変身の後は疲労困憊な事がよくあった。校舎への坂道を逆立ちで歩ききることも出来る郷がそうなるほど仮面ライダーへの変身は体力を使うらしい。

 

そんな事を数十分も続けていたらきっととんでもなく疲れているに決まっている。

 

「郷くんは無事ロイミュードを撃破したようですからね。コチラも負けていられませんよ〜」

 

そうよ。郷がこんなに頑張ってくれたんだから私たちも負けられないわ。絶対にワクチンを手に入れて見せる!

 

「事前に律さんに部屋の内部の映像を入手してもらいました」

 

私たちのスマホに暗い部屋のなかで机の上のモニターをかぶり付くように 見ている男の後ろ姿が映った。

モニターには毒で苦しむみんなや必死に看病する竹林や奥田が映ったていた。

 

「このヤロー、あいつらの苦しむ姿をずっと見ていたっていうのかよ!」

寺坂のスマホを持つ手に力が入る。寺坂だけじゃないその場の全員が男に対し怒りを燃やす。

 

「皆、気持ちはわかるがここは冷静に対処するぞ」

 

烏間の言葉に何とか落ち着きを取り戻す事が出来た、そうねここで冷静さを無くして気付かれたら元も子もないわ。

 

烏間先生が物音を立てないよう扉を開けると私たちは素早く部屋の中に入った。

部屋の一番奥から小さな明かりが洩れている。そこでは黒幕であろう男が今もモニターを見ていた。そしてその足下にはワクチンが入っていると思われるトランクがあった。

 

「・・・・・・・」

 

 

烏間先生のハンドサインで私たちは右手と右脚、左手と左脚それぞれ同時に出す歩き方【なんば】で静かに男に近づく。

習い初めの時は苦労したけど今では普通に歩くのと同じように歩けるようになった。

 

気配を殺して近付きながら銃を構える。

他のみんなもそれぞれ武器を構えて男を囲む。

 

後は烏間先生の指示で飛び掛かるだけ。

 

 

 

各自が武器を構え男の距離が近付いた。

 

「・・・・痒い」

 

「「「「「――ッ!?」」」」」

 

男の声を聞いた瞬間足が動かなくなった。

 

「あの日から痒くて痒くて仕方ないんだ」

 

知っている声だった。

 

「でもそのお陰でなほんの少しの空気の流れが肌で敏感に感じられるようになった」

 

 

もう二度と聴くことは無いと思っていた。いや、聴きたくなかった。

 

「父ちゃんに会いに来るのに裏口からコッソリ来るなんて悪い子らだ。夏休みの補習が必要みたいだな」

 

「・・・・先日、防衛省の対策費用が大量に盗まれ同時に一人の男が姿を消した。一体・・・・何のつもりだ!?鷹岡ぁ!!」

 

かつて私たちを恐怖で支配しようとした男、鷹岡 明が狂ったような笑い声を上げた。

 

 

 

 




モチベ-ションが上がるので感想宜しくお願いします。


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黒幕の時間②

仮面ライダーアマゾンズ観に行きました!!

・・・でもその映画館では1日2回だけでどちらも満席のため観れませんでした・・・

家が田舎のため往復3000円の電車賃をつかったのに・・・・

仕方ないので今週また3000円かけて観に行ってきます。


ウイルスに感染した皆を救うためワクチンを手に入れようとする私たちの前に現れたのはかつて防衛省から烏間先生の補佐としてE組にやって来て私たちを巧みな飴と執拗なまでの鞭による恐怖で私たちを支配しようとした

鷹岡 明だった。

 

「まさかここまで乗り込んでくるとは思わなかったからな少し焦ったが、まあ良い屋上に来な。言う通りにしないと、分かっているな?」

 

アイツの手にはワクチンの入ったトランクに仕込まれた爆弾の起爆スイッチが握られている・・・ここは従うしかないわね。

 

 

 

 

先を行く鷹岡を睨み付けながら階段を上がっていくと手に持っているクリム先生が何か小声でしゃべっているのが聞こえた。

 

『疲れているところ悪いがすぐに動けるように準備してくれ』

 

「どうかしたんですかクリム先生?」

 

『おそらく鷹岡は初めからワクチンを渡す気はないのだろう。恐らく奴の狙いは屋上でみんなの前で爆破する事で君たちの絶望する顔を見る事だ』

 

「そんなっ!?」

 

だったら今すぐにワクチンを奪わないと!今ならあいつも油断している筈、不意を突けばトランクを奪えるかもしれない。

 

『落ち着きたまえ、ここで無理に奪おうとして奴が起爆スイッチを押したら此処に居る全員が無時では済まないぞ。今、郷にホテルのすぐそばで待機するように頼んでおいた。マッハのスピードなら今の郷のコンディションでも爆破より速くワクチンを手にいれられるはずだ』

 

確かにクリム先生の言う通りかもしれない。それは分かっているけどそれでも不安な気持ちは消えなかった

 

 

――――――――――――――

屋上に着くと鷹岡は1人ヘリポートの上へと登った。

 

「本当だったらなぁそこのちびの女、茅野だったかぁ?そいつに化け物を抱えさせて対先生弾をたっぷり入れたバスタブに入って貰ってその上からセメントで生き埋めにする。そう言う計画だったんだよなぁ・・・無事に元に戻るには生徒ごと爆裂しなくちゃならないが、優しい殺せんせーはそんなことできないだろぉ~完璧な計画じぇねぇ~かぁ~~は~~はははは!!」

鷹岡は傷だらけの顔を掻きながら狂ったような笑い声をあげる。

茅野を犠牲にする恐るべき計画を笑いながら語る鷹岡、その姿を見た時、言いようのない寒気が襲ってきた。

コイツは人間じゃない、ロイミュードと同じ怪物いや悪魔だ・・・・

 

「許されると思っているのですか?そんな事が・・・」

 

殺せんせーの顔が今までにないくらいの怒りでどす黒くなっていく。その殺気に私は恐怖を感じた。

 

「これでも人道的な方さ、お前らが俺にした非人道的な行いに比べたらな、そうだろぉ渚ぁ!!」

 

そんな殺せんせーの殺気に動じる事無く鷹岡は渚を睨みつけ吠える。

 

「上がってこいよ。お前のせいで俺のプライドはズタズタだ!その仮は何倍にもして返してやる」

「・・・・・・」

数秒ほどの沈黙の後渚はゆっくりとヘリポートに足を進めた。

 

「まって渚!絶対罠だよ!」

茅野が渚の腕を掴んで止めようとした。

確かに危険すぎると思う。ヘリポートへの道は1つだけしかも取り外し可能のもので間違いなく鷹岡は私たちが助けに行けないようにする筈だ。

 

「分かっているよ。でもここはボクが行かないと。烏間先生やカルマ君、寺坂君に吉田君、木村君も千葉君と速水さんそれに郷君も頑張ってくれたんだ。次は僕の番だよ」

 

渚の眼からはとても強い意思が感じらた。コレはどう言っても聞かないだろう。

茅野もそれを感じ取ったみたいでゆっくりと腕を掴んでいた手を離した。

 

 

渚がヘリポートに上がると予想通り鷹岡はヘリポートへと続く道を取り外した。いぞとなったら私たちが助けなくちゃ、千葉と目を合わせ頷き合った。

 

 

渚の足下にナイフが投げ出された。もちろん殺せんせー用の物じゃない本物だ。

 

「さぁ〜て渚ぁ、楽しい楽しい補習授業を始めようかぁ〜?ルールは前回と同じだぁ」

 

「待ってください鷹岡先生!僕は、先生と戦いに来たわけじゃないんです!」

 

「まぁそうだよな〜俺はもう油断しない。あんな不意打ちは二度と効かないぞ」

 

確かに以前渚が勝てたのは少なからず鷹岡が油断していたからだろうしいくら訓練を受けているとはいえ中学生が元特殊部隊の隊員に勝てるはずがない。

 

「土下座しろ・・・僕は卑怯な手を使って不意打ちで勝って調子に乗っていました。卑怯者です。申し訳ありません。てな」

こいつ・・・!どこまでも腐っているのよ!?自分がやってきあことを棚に上げて渚を卑怯者呼ばわりしている。

本来ならこんな屑に謝ることは何一つないはずなのに、渚はゆっくりと膝を曲げて正座した。

 

 

「・・・・僕は・・「それが土下座かよぉ!!?違げぇだろが!!頭つけろやぁぁぁ!!」・・・・僕は、卑怯な手を使って不意打ちで勝って調子に乗った卑怯者です。申し訳ありませんでした・・」

 

渚は頭を地面につけて鷹岡の言った言葉を1文字も違わず言った。それを見て満足したように鷹岡はトランクを手にした。

 

「よ~く言えたなぁ。素直な息子で父ちゃんはうれしいぞぉ~~ご褒美に夏休みの宿題を1つ手伝ってやろうか?」

 

「えっ?・・・」

 

その時私は鷹岡が何をする気なのかがすぐに分かった。

 

「スモッグの奴に生徒たちに使ったものと同じ毒で死んだ奴の映像を見せてもらったんだけどなぁ・・・傑作だったぞ!!まるでブドウみたいに顔が大きく腫れ上がってなぁ夏休みの観察日記にはもってこいだろぉ!!」

 

「やっ止めろぉ~~!!」

 

渚が飛び掛かろうとするも間に合わず鷹岡がトランクを空高く放り投げたと同時に起爆スイッチを押した。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

バレットとの戦闘を終えた後、俺はホテル裏の崖下まで来ていた。本当だったらすぐに追いかけようとしたんだけどクリムから待機しておくように言われて仕方なく寝ころんでいると数分後、クリムから今回の黒幕が以前E組に現れた防衛省の鷹岡であること、鷹岡はおそらくワクチンを渡す気はないことを聞き何時でも動けるように準備していた。

『それが土下座かよぉ!!?違げぇだろが!!頭つけろやぁぁぁ!!』

 

頭の中にクリム越しに鷹岡の不快な叫び声が響いてくる。その一言一言を聞くたびに怒りが沸き上がってくる。

 

その数秒後、予想通りの事が起こった。

 

『夏休みの観察日記には持ってこいだろぉ!!』

 

鷹岡の叫びと共に屋上の上に投げ出されたトランクが見えた。

 

「変身!!」《シグナルバイク!ライダー!マッハ!》

即座にマッハに変身し走り出した。

 

《ズーットマッハ!》

 

加速して崖を一気に駆け上がりホテルの外壁を蹴り屋上に跳ぶ。

司会の端には共学の顔で空を見上げる速水たちがいたがどうやらまだ俺の存在には気付いていないみたいだ。

 

視線を目の前のトランクに集中すると起爆装置が作動しだした。恐らくもう一秒も待たずにワクチンは爆炎に飲まれてしまうだろうが、今の俺のスピードならギリギリで間に合う。

 

今にも爆発しだすトランクに手を伸ばしたその時だった。

 

いきなり首に分厚い触手のようなものが絡み付き引っ張られた。

 

「――ッ!?ウアァァ!!?」

 

あと少しでトランクに届いていたその手は空を切り俺の身体は爆風で吹き飛んだ。

 




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黒幕の時間③

有休をとりアマゾンズ見に行ってきました!

・・・何というか、色々とスゴイ映画でしたね。単純なアクションヒーロー映画としてだけでなく命について考えさせられました。

初めて4Dを経験しましたが揺れや水しぶきのタイミングが絶妙でした。
お金は掛ったけど観に行ってよかったと思います。



私たちの目の前でワクチンの入ったトランクが爆発の中に消えていった。

そして同時に屋上の床にヒビが入る勢いでマッハに変身した郷が叩き付けられた。

 

「郷!?」

みんなが一連の出来事に呆然としているなか私は変身の解けた郷に駆け寄ろうとしたが

それより早く郷が私の足下まで飛んできた。いや、投げ飛ばされたと言うべきだった。

 

見てみると郷の首に太い触手のようなものが巻き付いていた。

触手は郷の首から離れてヘリポートを挟んだ反対側に引っ込んでいった。

 

「残念だったな、仮面ライダー」

 

触手の消えた先から声が聴こえた。それは鷹岡の時と同じでもう聞くことはないと思っていた声だった。

「ッ!?・・・お前も・・コアを壊せてなかったのか・・・054!」

 

触手の正体は鷹岡と一緒に私たちを支配しようとしていたロイミュード054の進化態、バイオレンスの鞭だった。

 

「アハハハハ!!お前らの考えなんてお見通しだったんだよ!!残念だったなぁ渚ぁ〜仮面ライダーが役立たずだったせいでお友達はもうお仕舞いだぁ〜」

「・・・・ろす・・・」

「はぁ?」

「殺してやる・・・!」

 

渚は静かにナイフを拾い鷹岡を睨み付けた。いつもは小動物を思わせる渚がまるでロイミュードと同じ怪物に見えた。

 

「・・・不味いぞ。ありゃあ・・・」

 

郷も私と同じで今の渚に危機感を感じたみたいで身体を起こそうとした。

慌てて肩を貸して支えるとずっしりと体重が掛かってきた。

やっぱり立つこともまともに出来ていないんだ・・・

「渚ぁーー!!怒りに飲まれるな!!」

 

郷の叫びは渚に届かなかった。ナイフを握り飛び掛かった渚を鷹岡の拳が弾いた。

 

「リーチが違いすぎる!突っ込むだけじゃ勝てないぞ!!」

 

「ウアアァァァ!!よくもみんなをぉ!!」

 

郷がいくら叫んでも怒り狂った渚に届いてない。

ナイフを振っては避けられて、痛み付けられる、その繰り返しだった。

 

成す術もなく痛め付けられていく渚は膝を付いて咳き込む。

それでもまた切り掛かろうとするその足下に何かが投げ込まれた。

 

それは警棒型のスタンガンだった。アレを持っていたのは・・・

 

「・・・・寺坂くん?」

 

寺坂が荒い息づかいで吉田に支えられながら渚を見ていた。

 

「おい寺坂!お前まさか・・毒に!?」

 

寺坂の症状は倒れたみんなととても似ていた。

まさか、感染している状態で今まで動いていたっていうの!?

 

「渚ぁ!!少しは落ち着きやがれ、お前らしくねぇぞ!!こんな程度で俺たちが死ぬかよ・・・!お前はそのクズをしっかりぶっ潰す事を考えろ!!」

 

息も絶え絶えの状態で叫ぶ寺坂に渚の表情が変わった様に見えた。

寺坂が投げたスタンガンを腰に挿してゆっくりと歩き出した。

さっきまでの荒々しさがなくなって落ち着いたその表情と足取りはあの時と同じだった。

 

「――ッ!?同じ手を喰らうかよ!!」

 

鷹岡が僅かに動揺したけどやっぱりあの時と比べて隙を見せない。

それでも近付く渚は鷹岡のすぐ目の前に立った。

 

「「・・・・・・・」」

 

二人が無言で相対して私たちも自然と黙ってその様子を見守る。

 

「・・・・・」 「――ッ!?」

 

渚の手が僅かに動いた瞬間、鷹岡も殴り掛かった。

でも渚の手にはナイフがなかった。

鷹岡の目の前に両手を出して次の瞬間・・・

――パァン――

渚が両手を叩いた音が静かだった屋上に響き渡った。

 

ただの猫だまし?

そう思っていたら鷹岡が膝から崩れれた。

 

「な、何が起こったの?」

仮にも特殊部隊の隊員があんな猫だましなんかであそこまでなる物なの?

そんな疑問を持っていたら隣から郷の呟きが聞こえた。

 

「・・・まさか、クラップスタナー?」

 

「クラップスタナー?」

 

聞いたことのない言葉に聞き返すと郷は驚いた顔で渚を見ていた。

 

「ああ、人間の意識は常に一定じゃない。波打つように常に変化し続けるものなんだよ。その一番敏感な瞬間に至近距離で音を鳴らすことで神経をマヒさせる技だ・・・まだ完璧とは言えないけど・・いつの間にあんなことを・・・」

 

 

「あ・・・ああ・・・・」

 

渚は膝を付いて焦点の合っていない目で空を見上げる鷹岡に近付きながら腰に挿したスタンガンを抜いた。

 

首にスタンガンを当てられたことで鷹岡の神経は僅かに回復したみたいで渚を睨んだ。

でもすぐにその顔は恐怖に染まった。

 

「・・・・・・・・・」

 

渚は笑っていた。嘲笑っている訳じゃない。哀れんでいる訳でもない。

お世話になった恩師に感謝するような笑みを鷹岡に向けていた。

 

「・・・・鷹岡先生、ありがとうございました」

 

感謝の言葉と同時にスタンガンから流れた電流が鷹岡の意識を刈り取った。




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融合の時間

 今週のビルドでは、ブロス兄弟久々の登場でしたね。てっきりこのままフェードアウトしていくのだと思っていました。(笑)

髭とジャガイモ、敵対していた二人の共闘はやっぱり燃えますね~そしてクローズの復活!!同時に葛城巧復活!!

やっぱりビルドは毎週がクライマックスで見ていて飽きません。
来週ではとうとうブロス兄弟とも共闘するらしいですがそまでしないといけないエボルの力とはいったい?
実に楽しみです。



前回の話でバイオレンスロイミュードの進化前が051になっていましたが正しくは054でした。申し訳ありません。


鷹岡は倒した。でも当初の目的だったワクチンは鷹岡の手によって爆発しみんなを助ける術を失った。

 

『・・・仕方ない。こうなったら一か八かでドクターを呼び寄せよう』

 

「でもクリム、ドクターは本島にいて着くまで時間がかかるぞ」

 

今回島に連れてきたシフトカーは8台、その中にマッドドクターは含まれておらず本島から呼び寄せても朝まで掛かってしまうだろう。

それまで生徒たちの体力が持つとは思えなかった。

 

 

「そんな心配しないでも、お前らに薬なんて必要ね〜よ」

 

声の方を見るとそこには殺し屋の3人がE組を睨んでいた。

 

 

「・・・・・・・・えっ誰?」

 

唯一3人の事を知らない郷が速水に問いかけるがそれに答える余裕は速水にはなかった。

 

「ガキ共が、よくもやってくれたな」

 

近付いてくる3人に対し生徒たちはそれぞれ構えた。

そして毒から回復した烏間が1歩前に出る。

 

「お前らの依頼人は倒した。俺も回復したし生徒も一筋縄では行かないぞ。大人しく降伏しろ!」

 

「ん?いいよ」

 

「わっかんねー奴らだな!コッチはお前らに付き合っている暇はないんだ・・・・え・・・?」

 

ワクチンが手に入らなかった事で気が立っていた吉田が噛み付くが3人がやけにあっさりと降参したため毒気が抜かれたような感じになった。

「言っただろ、お前らに薬は必要ないってな。お前らに使った毒はあと数時間で症状が消える特別製だ。ボスが使うように指示したものはこっちだ」

 

毒使いの男は透明な液体の入った小瓶を見せた。

 

「これを使っていたら本当にヤバかったけどな」

 

「ボスは初めからワクチンを渡す気はなかったぬ。それなら交渉のリミットまで症状が出れば十分だと3人で話し合ったぬ」

 

「でも、良いの?そんな依頼人を裏切るような事して・・・・」

 

毒使いの男とぬ男の話を聞き矢田はプロとして仕事を疎かにすることに疑問を口にするが銃の男はその疑問を嘲笑った。

 

「プロが金で何でもやるって思うなよ。カタギのガキ共を大量に殺すか依頼に沿わずプロとしての信用を落とすか、どっちが俺たちの今後に影響がデカイのか天秤にかけただけだ」

 

「お前たちの言い分は分かった。だが、信用するのは生徒たちの症状が治ってからだ。その後、話を聞かせてもらう。」

 

「OK、来週には別の仕事があるからなその前に終らせてくれよ」

 

何はともあれ生徒たちの安心が保証された事で全員が緊張の糸が解けたように座り込んだ。

郷を除いては・・・・

 

 

「で、お前はどうするんだ?054」

 

郷の視線は腕を組み黙ったままたつ054に向けられていた。

 

「やる気なら相手になるぜ?」

 

ドライバーを掲げ挑発する郷だったが内心は054の動きに一つ一つに警戒していた。

 

「・・・・・そうだな、相手をしてもらおうか?」

 

054は気絶したままの鷹岡に近付きその腹部を踏みつけた。

 

「ボホォ!?ガハ・・・ガハ・・・!!」

 

咳き込む鷹岡に054は赤いバイラルコアを投げ渡した。

 

『何だあのバイラルコアは?』

 

それはクリムも郷も見たことのない物だった。

バイラルコアを見た鷹岡はニヤリと笑い立ち上がる。

 

「ヒャハハハ!もうどうなろうと知ったことかぁ!!あいつらに復讐できるなら俺は・・・・人間を止めるぞぉ!!」

 

「見るがいい、ロイミュードの新たな進化を!!」

 

鷹岡の持つバイラルコアが光輝くと054のボディがデータとなりバイラルコアに吸収されていった。

更に光が増し鷹岡を覆いつくす。

 

『「ガアアアァァァァァァ!!」』

 

鷹岡と054、2人の雄叫びと共に光がはじける様に散っていきそこに立っていたのは赤いバイオレンスロイミュードだった。

 

『これは・・まさか・・・!?』

「鷹岡と054が・・・融合した・・!?」

 

それこそがロイミュードの新たな進化だった。

 




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デッドヒートの時間

今週のビルドでとうとうブロス兄弟が死亡してしまいました・・・・

なんやかんやで何度もビルドたちと激戦を繰り広げていて嫌いではなかったんですけどねぇ・・・

特に兄の方は最後に龍我庇って死ぬとか、もっと違う形で会っていたらいい仲間似れていたのかもしれませんね。
まあその後の難波では正直、ざまぁと思いましたが。

そして最後に・・・内海ぃぃぃーーー!!!


「レッツ・・・変身!!」《ライダー!マッハ!》

 

鷹岡と融合したバイオレンスロイミュードに対し郷は変身したがやはり連戦での変身は身体への負担が大きく既にフラフラの状態だった。

 

「郷・・」

隣で速水が不安な目で見ているがマッハは心配ないと言うように小さくサムズアップをする。

 

「ヒャッハハ!オイオイそんな体で大丈夫かよぉ〜?無理しない方が良いぞ〜」

 

「そう思ってんならロイミュードと融合なんかすんなよな〜・・・行くぞっ!」

 

ゼンリンシューターを構え走り出したマッハにバイオレンスの鞭が迫る。迫り来る鞭を弾いていくがその度に鞭は次々と枝分かれしていき四方からマッハに襲い掛かる。

 

前方からの鞭に気を取られていると背後からゼンリンシューターを持つ右手が拘束された。

 

「ヤベッ!」

 

更に左脚、左手、右脚と鞭が絡み付きマッハは完全に動きを封じられた。

 

『いくらスピード自慢でも動けなくては無力だな』

 

バイオレンスの身体に電撃が走り鞭を通じマッハに流れた。

 

「ガアアァァァ!?」

 

「「「「郷(くん)!!」」」」

 

速水や千葉、渚たちの声はマッハの悲鳴に下記消された。

 

「ヒャハハハ〜最高だ!これがロイミュードの力!下らねぇ人間の事なんてど〜でもよくなるぜ!!」

 

もはや鷹岡には人間としての心は残されていなかった。その心は完全にロイミュードの力に侵されていた。

 

「鷹岡・・・ッ!!」

 

もはや戻ることの出来ない一線を越えてしまった同僚に烏間は拳を握りしめる。

 

「鷹岡ァーーー!!」

 

烏間が撃った対ロイミュード用の特殊弾丸がマッハの右手を縛る鞭を撃ち抜く。

 

「ナイス、烏間先生!」

 

すぐさま自由になった腕で他の鞭を切り脱出した。

 

「チィ!烏間め余計なことを!!」

 

邪魔をされたバイオレンスはマッハの後方にいる烏間や生徒たちに向け鞭を振るう。

 

《シフトカー!タイヤ交換!シノービ!》

 

生徒たちに迫る鞭を横から紫色の手裏剣が切り裂いた。

 

「相手を間違えるなよ。お前らの相手は・・・俺だろ!」

 

シャドーを装填したマッハは両手からエネルギーの手裏剣を投げ並走するように走り出した。

 

「なら、もう一度縛り付けてやる!!」

 

「何度も同じ手を喰らうかよ」

 

バイオレンスの無数に別れた鞭が再びマッハに迫るがエネルギーの手裏剣もまた、無数に分身し迫る全ての鞭を切り裂いていった。

 

 

手裏剣はそのままバイオレンスに向かうが鋼鉄の竹刀によってすべて弾かれた。だが既にマッハは必殺技の準備を終えていた。

 

《ヒッサツ!フルスロットル!シノービ!》

紫のエネルギーを纏ったキックマッハーが炸裂した。

 

『同じ手は喰らわない?それは俺のセリフだぁ!!』

 

だが、その一撃を受けながらもバイオレンスはまったく動じていなかった。

バイオレンスの竹刀が降り下ろされマッハはコンクリートの床に叩き付けられた。

衝撃ではね上がったマッハに更に追撃の蹴りで屋上の端まで吹き飛ぶ。

 

「ヒャ〜ハハ!大したこと無いなぁ〜〜オラッ!!」

仰向けに倒れたままのマッハは何度も踏みつけられた。

100キロ以上の重量で何度も踏みつけられその度に悲痛な叫びが速水たちの耳にまで届く。

 

 

「ヒャハハハ、ヒャ〜ハハハ!!」

『オイ鷹岡、何時までも遊んでいるな。そろそろ終わらせるぞ』

「あ〜?・・・・そうだな、後が詰まっているしな〜」

 

渚たちをチラリと一瞥しバイオレンスは竹刀をマッハの胸へと突き付けた。

 

『コレで終わりだ。仮面ライダー!!』

 

一度引き突き出された竹刀が真っ直ぐにマッハの胸へと迫る。その一撃は間違いなくマッハのアーマーを砕き郷の心臓を貫くだろう。

 

 

「こんな所で・・・終われるかぁ!!来い、デッドヒートぉ!!」

 

竹刀がボディを貫く直前、マッハの叫びに反応するように深紅のボディのシフトカー【シフトデッドヒート】がバイオレンスにぶつかって行った。

深紅のイカズチを纏った不意の一撃に体勢を崩したバイオレンスにすかさずゼンリンシューターを撃ち後退りさせる。

自らの手に収まったデッドヒートを見つめる。

そこには以前は付いていなかった白いバイクのパーツが追加されていた。それを確認するとドライバーからシャドーを抜き取る。

その動作とマッハの手に握られたデッドヒートをみてクリムは叫んだ。

 

『待つんだ郷!!デッドヒートはまだ調整が済んでいないんだぞ。危険すぎる!!』

 

「危険?大好物だよ!こっちとらガキの頃から生きるか死ぬかのデッドヒートレースを繰り広げてきてんだ!!」

《シグナルバイク、シフトカー!ライダー!》

ドライバーにシフトカーを装填した瞬間、マッハの身体に深紅の稲妻が走った。

 

「グッ!ア・・・アアアアアアァアアッァァアァァアッァア!!!?」

 

稲妻はマッハの全身を駆け巡り更にその周囲にまで飛び散っていった。

 

『イカン!みんな早く屋上から離れるんだ!!』

クリムに言われE組や殺し屋の三人組は慌てて屋上から避難した。

 

ホテルの屋上全体に深紅の稲妻が走り焼け焦げていく。バイオレンスはその異常なほどのエネルギーを危険だと感じすぐにでも阻止しようとするが。

 

『ッ!?鷹岡、何をしている?サッサとトドメを刺すんだ!!』

「あ・・・ああ〜・・・・!」

 

だが、鷹岡はマッハから溢れるエネルギーに完全に気圧されておりただ立ち尽くすのみだった。

 

「ウウ〜・・・・・ダッシャァ!!」

 

身体中を走る稲妻に負けずマッハはドライバーを叩いた。

 

《ライダー!デッドヒート!》

 

マッハの白いバイクを思わせるアーマーに新たに赤いスポーツカーを連想させるアーマーが加わった。更に左肩からタスキのように装着されたタイヤが高速で回転する。

 

『なんだ・・・・その姿はぁ!?』

 

今までとはまるで違うマッハの姿にバイオレンスは叫ぶ。

 

「よ〜く眼に焼き付けろよ。これが俺の新しい力、仮面ライダー【デッドヒートマッハ】だぁ!!」

名乗りの叫びを上げマッハは床を蹴った。十数メートルあった距離は一瞬で詰められバイオレンスが反応する間もなく激突する。

 

マッハの拳はバイオレンスの竹刀を一撃のもと粉砕し屋上の外まで殴り飛ばしマッハも後を追うように飛び降りる。

両者は崖下の砂浜まで真っ逆さまに落ちていった。

 

砂浜に激突すると砂が爆撃でもうけたように舞いバイオレンスは落下によるダメージを感じながらも立ち上がった。

 

『クソッ!奴め、まだこれだけの力を・・・・』

 

「だっ・・・ダメだ・・オイ!逃げようぜ!!」

 

『ふざけるな!!このまま不様に逃げられるか!!』

 

落下によるダメージを感じながらも立ち上がったバイオレンスは逃げ腰の鷹岡を叱咤する。

 

「オイオイ、喧嘩なんてしていていいのかよ?」

 

バイオレンスの立つ位置からすぐそばにマッハも居た。

 

「もうこのレースは・・・止まんないぜ!!」

 

身体から溢れんばかりのエネルギーを放出させながらマッハは走り出した。

 

「ヒッ・・ヒィ~・・!!」

 

恐怖にかられた鷹岡がガムシャラに鞭を振るうが今のマッハにはその軌道の全てが止まって見えていた。

 

「遅いんだよ!そんなスピードじゃあくびが出るぜ!!」

 

迫るすべての鞭を掴み力いっぱい引きバイオレンスを引き寄せた。

 

「ダリャッァ!」

 

引っ張られたバイオレンスの顔面にマッハの膝蹴りが炸裂する。更に顔を押さえもだえ苦しむバイオレンスの懐に入り込み地面スレスレから拳を振り上げる。

 

「吹っ飛べっ!」

 

マッハのアッパーは100キロ以上あるバイオレンスを数十メートルと打ち上げた。

 

マッハの追撃は終わらない。打ち上がったバイオレンスを追うように真上に跳ぶと一瞬でバイオレンスを抜き去った。

 

「そらよっ!!」

 

落下のスピードも加わったキックは打ち上げられていくバイオレンスを反転、砂浜に再びダイブさせた。

 

先程よりも高く舞った砂煙の中をバイオレンスは苦痛の声を上げながら転げ回る。

 

「ヒイィィィ!イタイ・・・・イタイィィ〜〜!!」

 

今まで与えるばかりで感じることの無かった苦痛にもはや鷹岡の戦意は完全に死んでいた。

 

「どうした?まだ最終コーナーが残ってるぞ!」

 

「ヒイィィィ〜〜〜!」

 

先程までの余裕はもはや鷹岡には残されてはいなかった。ただ眼の眼に迫り来る暴力という恐怖から逃げたいという思いでいっぱいだった。

 

「ウ・・・・ウアアァァァァ!!」

 

鷹岡の叫びと共にバイオレンスから鷹岡が飛び出していった。

 

「なっ!?鷹岡ぁ〜!!!」

 

突然の裏切りに怒りの声を上げるバイオレンスだったが鷹岡には届かなかった。ただひたすら迫り来る恐怖から逃げるため脚を動かし続けた。

 

「さあ、ラストスパートをかけようぜ」

《ヒッサツ!フルスロットル!バースト!》

 

マッハの全身が深紅の光で包まれ稲妻が走った。

 

「ハァァァァ、ツアッ!!」

 

空中に跳び高速で回転をする事であふれ出るエネルギーが巨大なタイヤの形を作り出した。

 

「クッ、クッソォォォォォ!!」

 

融合することで得ていたパワーを失ったバイオレンスは自棄になりガムシャラに鞭を振るう事しか出来なかったが、鞭はすべて高速回転するマッハに弾かれていく。

 

「タッハァァァァァァ!!」

 

回転によって蓄積されていったエネルギーをすべて開放して放たれたキック、【キックマッハー・デッドヒート】はバイオレンスの身体を粉砕し054のコアを完全に破壊した。

 

「ヒッ・・・ヒャァァァァ!!?」

 

更にその余波は逃げようとしていた鷹岡を吹き飛ばし気絶させた。




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お帰りなさいの時間

普段自分は日曜日の朝ご飯はビルドを見ながら食べます。

そして今週の朝ご飯はお茶漬けにしていましたが半分以上食べる事が出来ませんでした。
理由は・・・・・玄徳ぅぅぅ!!!

あの私服は反則だと思います。今週はジーニアス強い!!だったりカシラカッケェェェェ!!など色々あったのに開始5分30分ですべて持って行かれました。

シリアスな中でも確かな笑いを提供してくれるビルドは315です。


「・・・・・・知らない天井だ」

 

身体中を締め付けられるような痛みから目を覚ますと自然とそんな言葉が口に出た。

 

「いって〜〜筋肉痛なんて久し振りだな」

 

少し身体を動かしただけで全身が悲鳴を上げそうに痛む。

それでも何とか身体を起こして周りを見てみるとE組にあてがわれた一室のベットの上にいることが分かった。

 

「え〜っと、あの時デッドヒートを使ってバイオレンスを倒して・・・・・その後どしたんだっけ?」

 

「砂浜に倒れているアンタと鷹岡を烏間が見つけたのよ」

 

不意に聞こえた声にドアの方を見てみるとビッチ先生が腕を組みながら立っていた。

 

「・・・・・チェンジで」

 

「なんですって!?せっかく様子を見に来てやったのにその言いぐさは何よ!ディープキスするわよ!!」

「シャラップ!何で起きて早々にビッチの痴女の顔を拝まなくちゃなんね〜んだよ!」

 

「そんなに他の顔が見たいなら右手を見なさいよ!」

「ああ、右手!?」

 

言われて自分の右手を見てみると見慣れたオレンジ色の髪が広がっていた。そしてその間から見えるまるで1つの作品のような寝顔があった。

 

「は、速水!?ワッツ!何で!?」

 

「感謝しなさいよ。凛香だって疲れているだろうにずっとアンタのそばに付きっきりだったのよ」

 

確かに速水の格好は昨日とまったく同じで髪の所々には砂やホコリが付いていた。たぶん風呂にも入らないでいたんだと思うけど・・・

 

「たっく、年頃の女子がすることじゃないだろ」

 

「ん・・・んん・・?」

 

髪に付いた砂やほこりを取っていくと速水が目を覚ました。

 

「ご・・・う・・?」

 

「よっ!グッモーニンッ」

 

「郷!」

 

「うおっ!?」

 

ガバッと起き上がった速水の顔がグイッと迫ってきて思わず後ずさる。

 

「このっバカ!全然目を覚まさないから心配したのよ!!」

 

速水の眼からは涙が出ていた。

ああ〜こりゃあ、本当に心配かけたんだなって感じた。

 

「ワリィワリィ、ところで今何時だ?」

 

窓から見える景色は夕焼けでオレンジ色に染まっていた。

 

「ちょうど6時半を回ったところね。他の連中ももう起きて外にいるわよ」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

速水と二人で外に出ると沖の方に巨大な四角いコンクリートの物体があった。

 

「何よアレ?」

 

速水もあれが何なのか分からないみたいだ。取り合えず一枚写真を撮っておくか・・・

 

浜辺には学校指定のジャージに着替えた渚達が居た。その中には毒で倒れていたメンバーも全員いてそこでようやく無事だったことが分かったため小さく息を吐いた。

「おっ郷!ようやく起きたのかよ?」

 

俺たちに気付いた岡島が声を掛けると他のメンバーも詰め寄って来た。

 

「心配したんだぞ郷、俺たちが浜辺に付いたら倒れていたんだからな」

「クリム先生は疲労で眠っているだけだって言っていたけどなかなか起きないんだもんな」

 

磯貝や千葉が心配そうに聞いて来た。

 

「ソ〜リ〜ソ〜リ〜、いや〜久しぶりに体力全部使い果たした感じだったからな〜」

そう言って肩を回してみるとやっぱりまだ痛むな・・・こりゃしばらくは何時も通りには動けないかもしれないか

 

「て゛・・・・何あれ?」

 

沖の巨大コンクリートを指差す。

 

「もうすぐ殺せんせーが元の姿に戻る時間だから烏間先生が無駄だろうけど殺せんせーを対先生用の弾の中に入れてコンクリートで周りを囲んでいるんだって」

 

奇しくもそれは鷹岡が行おうとしていた計画と同様の物だった。とはいっても向こうのは茅野を人質にするモノだったみたいだけどな。

 

浜辺では烏間先生が防衛省の職員たちに指示を出し続けていた。あの人も昨日から寝てないはずなのにスゲ~体力だな。

 

 

一方速水は女子たちに半ば事情聴取の様に詰められていた。

 

「でっどうだったの凛香ちゃん、郷君と何かあった?」

 

「だから何にも無かったわよ!////ほとんど郷は眠ってたんだしビッチ先生だっていたんだから・・・」

 

「おやおや~ちょっと残念そうだねぇ~~ビッチ先生が居なかったら何かする気だったのかな~~??」

 

「ッ~~~/////」

 

速水の挙動一つ一つにキャーキャー騒ぐ女子たちを見て岡島を筆頭に一部の男子は郷を親の仇のごとく形相で睨みつけた。

 

 

 

 

 

しばらく作業を見ているとすっかり辺りは暗くなっていく。

時間を確認するともうすぐ24時間経つな・・・・3・・2・・1・・

 

コンクリートキューブが轟音と同時に砕け散った。

「殺ったのか!?」

 

皆が身を乗り出す間を黄色い影が抜けていくのが見えた。後を追うように後ろを振り向けばそこにはやっぱり、触手が生えてすっかり元通りの姿になった殺せんせーが立っていた。

 

「オソオセヨ、殺せんせー」

 

「はい、ただいま郷君」

 

俺と殺せんせーの短いあいさつに気付いてみんなが振り返る。

 

「「「「殺せんせー!!」」」」

 

予想通り殺せんせーは生きていたにもかかわらず全員どこか嬉しそうだった。

やっぱり殺すなら自分たちの手で直接だよな。

 

笑顔で笑い合う殺せんせーやみんなをカメラに収める。

 

 

 

「皆さんにはご心配をお掛けしました。さあ!残りの時間はおもいっきり楽しみますよ!!」

 

「残りの時間って言ったて、もう夜だしな・・・」

「後は朝に帰るだけだね」

 

「ご心配なく、夜だからこその楽しみ方もありますよ〜今から三十分後に島の南にある洞穴に集まってください。では行きますよクリム先生!」

 

『ちょっ殺せんせー!?なぜ私まで〜!』

 

そう言うと殺せんせーはクリムを連れて何処かへと飛んでいった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――—————

 

三十分後、殺せんせーに言われた南の洞穴に集まるとそこには【3年E組肝試し大会】と書かれた垂れ幕があった。

「皆さん揃いましたね?ではこれより、3年E組肝試し大会を開催します!」

ドンドンパフパフと分身で盛り上げながら殺せんせーがルール説明を始めた。

 

「今からクジで男女のペアを作ってもらい順番に洞穴の中を一周してもらいます。中では先生の他にシフトカーの皆さんが色々な手で怖がらせますから覚悟してくださ〜い。もちろん、肝試しの最中に先生を殺しにかかっても構いませんよ」

 

この島に来てからは時間の殆どを暗殺とホテルへの潜入に使っていたためあまりいい思い出になるような事が出来ていなかっため最後に思いっきり楽しもうという殺せんせーの計らいに生徒たちのテンションも上がった。

 

故に誰も気付いていなかった・・・殺せんせーの背後に隠された【祝カップル成立!】と書かれたプラカードに・・・




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肝試しの時間


また一ヶ月近く空けてしまい・・・すみませんでしたぁぁぁ~~~!!

今後は極力このようなことにならないよう努めますのでよろしくお願いいたします!





「ひぃ〜〜・・・!!」「ギャァァ〜!?」「キャアァァァ〜〜!?」

 

 

殺せんせーの主催によってE組肝試し大会、生徒たちは順番に殺せんせーが用意したクジを引いて出来たペアが順番に洞穴に入って行くがその度に中からは幾つもの叫び声が聞こえてきた。

 

 

初めは所詮殺せんせーの事だから大したことはないと高を括っていた生徒たちだったが、次々と聞こえてくる悲鳴にその余裕は徐々に消えていき中には顔を真っ青にしている者までいた。

 

「えっと、次は・・・・・郷と速水の番だなって郷!大丈夫かその顔!?」

 

 

磯貝が順番の書かれた名簿を手に郷と速水を見ると郷は見るからに青ざめた顔で俯いている。しかもその身体は心なしか震えているようだった。

 

「ひょっとしてまだ疲れが残っているのか?だったら無理しないで休んで良いんだぞ」

 

 

磯貝が気遣うように言うとまるで待ってましたとばかりに郷は勢いよく顔を上げた。

 

「そっそうか〜!いや〜残念だなぁ〜参加したかったのに迷惑かけるわけにもいかないしなぁ〜〜!じ、じゃあ部屋で休んでるわ!!」

 

「あ、ああ・・・気をつけてな・・?」

 

先程までとは打って変わって元気にしゃべりながら足早に部屋へと行こうとする郷に磯貝が困惑しているとその様子を見ていたカルマが意地の悪い笑みを浮かべ叫ぶ。

 

「そっかぁ~!じゃあビビりの郷が抜けたからまたペアを組み直さないとなぁ~~!!」

 

「は?・・・ハァァァァ!!別にビビッてねぇし!!本当に体調が良くないだけだし!!こっちとら本物の怪物とバトッテいるんだぞ!!そもそも幽霊なんて非科学的なモノなんているわけないだろおが!!」

 

「ああ、わかったよ。そういう事にしといてあげるからさぁ〜ゆっくりベットで寝てなって〜〜」

 

 

「〜〜ッ!行ってやるよコンニャロ〜!!見てろよマッハでクリアしてやるからなぁ〜!!!」

 

「ガンバレ〜〜」

 

「カルマくん・・・」

 

 

速水の手を引っ張り洞穴に入って行く郷に笑顔で手を降り見送るカルマをみんなは引いた視線で見た。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

暗く狭い空間に気になる異性と二人っきり。ベタなラブコメの様なシチュエーションに本来ならドキドキと緊張するはずだった速水だがあいにくと現実ではそんなことは無かった。なぜなら・・・・

 

「お・・お化けなんてない~いさ~・・・お化けなんてう~そさ~~・・・」

 

件の異性が明らかにビビっているからであった・・・・

 

ガタガタ震えがっしりと手を繋ぎ白目をむきながら歌を歌うその姿は普段のおちゃらけた姿からは全く想像できない物だった。

 

「・・・・はぁ~」

 

はっきり言ってみっともないその姿に速水は思わずため息を吐いた。つい数時間前はとってもかっこよかったのに今はこれだ。ムードも何もあったものでは無かった。

 

「ねぇ郷・・」

「フアッシュ!?ななな・・・何だよ速水!?ビビったのか?しょしょしょ・・・しょうがないな〜!なら早く抜け出そうぜ!」

 

"ビビっているのはお前だろ"そんな言葉が出かけたが多分認めないだろう。

 

「フフッ」

 

見るからに怖がっているの強がるそんな郷が段々可愛く見えてきて自然と笑みがこぼれた。

 

 

 

歩き始めて数分後、前方に明るい光が見えてきた。

近づいてみると赤い火の玉が空中を漂っていた。

 

「ヒゥッ!?」「―ッ!?」

 

情けない声を上げる郷や速水も声は出さないがビクッと身体が動いてしまった。

 

火の玉がやがて壁際に近付くとそこには琉球の民族衣装のような格好の殺せんせーが琵琶をひいていた。

 

「ここは〜♪肉体が滅びし亡霊たちの住みか〜〜♪決して一人になってはならない♪もしも一人になったら♪♪・・・・・ヌルフフフ♪」

 

不気味な歌を歌いながら洞穴の奥へと消えていく殺せんせーと火の玉に郷だけでなく速水までも予想以上の怖さに青ざめた。

 

「けっ・・・結構、本格的ね・・・・」

「た、タタタタ大したことねねねねぇよ・・・!」

 

もう既に限界寸前の郷は滝のような汗を流し速水の手を絶対に離すまいと握り締める。

 

 

しばらく歩くと少し開けた場所に付いた。真ん中には何故か二人掛けの椅子が置かれてありそのさきは巨大な扉で塞がれている。

 

『ここではかつて永久の愛を誓いながらも死して離れ離れになってしまった恋人たちの霊が漂っている〜彼らを沈めるためにかつて彼らの想い出の舞を披露せよ〜〜』

 

何処からか聴こえる声と共に軽快な音楽が鳴った。

 

「この音楽って・・・?」

 

小学生の時などに速水はこの音楽を聴いた覚えがあった。

「フォ・・・フォークダンス///!?」

 

他に誰もみていないとはいえ、気になる異性とフォークダンスを踊れと言うのか?

速水の顔の体温は急激に上がっていった。

 

「お・・・オオオイ、速水〜・・・え、コレどう踊れば良いの?憑かれる、取り憑かれる〜〜!!」

 

一方の郷からしたら聴いたことのない未知の音楽に合わせて踊れと言われて恐怖も合わさりとてもテンパっていた。

 

「ッ〜〜〜///て、手出しなさいよ!//私がリードするから!!////」

 

仕方ない、コレは胆試しの一環で他のみんなもやったことなんだと自分に言い聞かせた速水は郷の手を取り前に回った。

 

二人が不恰好なまでもフォークダンスを踊る姿を見る影が二つあった。

 

「ヌルフフ、年頃の男女が互いを意識しながらフォークダンスを踊る・・・・甘酸っぱくて良いですね〜〜♪」

 

『いや、郷の場合はそれ所では無いようなのだが・・・』

 

影の正体は殺せんせーとクリムだったが、殺せんせーがピンクの顔でニヤニヤしながら郷たちをビデオカメラに映しているのに対しクリムは苦笑いを浮かべていた。

クリムからしてもまさか郷がここまで怖がるとは計算外のことであった。

 

 

 

――――――――――――――

 

無事にフォークダンスを踊り先に進む二人だったがその後も多彩な現象が襲い掛かってきた。

周囲に漂う冷気と2人羽織で食べるおでん

道を塞ぐ巨大な壁を開くためのツイスターゲーム

突然上から落ちてくるポッキーゲームをしている彫刻の首

等と言った障害?を乗り越えていった郷と速水であったが、2人とも最早限界をとっくに超えていた。

郷は主に恐怖心が、速水は羞恥心がという違いはあるが・・・・

 

 

「何なのよ・・・///これのどこが肝試しなのよ////?」

 

「こぇぇぇ・・・・もう嫌だぁぁぁあ・・・・」

 

「あんたは一体何を怖がっているのよ!?もっと色々あるじゃない////!!」

 

自分とアレやコレやあった事より恐怖が勝っていることに納得がいかない速水はが叫ぶと再び火の玉に照らされて琉球スタイルの殺せんせーが現れた。

「よくぞここまでたどり着いた〜〜♪最後の試練それは〜〜・・・愛のこくはk「ギショハラ〜〜!!!」《シューター!フルスロットル!コワ〜イ!》にゅわぁぁぁぁぁ!!??」

「きゃっ!?」

 

 

殺せんせーの登場についに限界が崩壊した郷は辺り構わずゼンリンシューターを撃つ。

 

「イワコデジマイワコデジマ!!テクマクマヤコ!!宇宙天地 與我力量 降伏群魔 迎来曙光ぉ!!」

 

「ニュアアアァァァァ〜!!!やめっ!止めてください郷くん!!先生っ先生ですからぁ〜!!」

 

テレビや漫画なんかで聴いたことのある呪文を片っ端から叫びながら乱射する郷には殺せんせーの声は届かず殺せんせーは情けない悲鳴を上げながら逃げていった。

 

「ウギィアアァァァ〜〜!!」

「ちょっ郷!!もう誰も居ないわよ!!」

 

速水が止めようとするが恐怖がフルスロットル状態の郷にはやはり届かない。

 

ゼンリンシューターの弾は洞穴の壁を削っていき次第に洞穴全体が揺れ初めた。

 

「ちょっと、この・・・・!いい加減にしなさい!!」

 

「ギブソッ!?」

 

速水のビンタが郷の頬に炸裂し3メートルあまり吹き飛ばした。

 

「ガッ・・・・アアッ・・・・アッ・・・・」《オツカ〜レ》

 

元々は筋肉痛等でダメージの貯まっていた郷の身体は速水の一撃で完全に沈黙した。

 

「・・・・ハァ、しっかりしなさいよね」

 

気絶した郷の肩を担ぎ洞穴を進みながら速水はその顔をチラリと見た。

 

普段はカルマと悪戯を仕掛けたり岡島や前原とエロい事をバカ丸出しで話しているが訓練の中では軽口を叩きながらも何時も真面目で真剣な顔でアドバイス等もしてくれる。

そしていざロイミュードと戦えばまさに歴戦の戦士といえる強い意思が宿った目をする。かと思えば幽霊が苦手なんて子供っぽい一面を持ち情けない顔をする。

 

何を考えているのか判らないと言われる自分と違って色んな表情を隠すことなく見せる郷、全く真逆の人の事がこんなに頭から離れないなんて・・・

 

郷の見せる表情一つ一つにこんなに魅せられる何て・・・

 

「・・・やっぱり私、郷の事が好きなのね・・・・」

 

誰にでもない自分自身に言い聞かすように呟いた。

 

 

 

 

しばらくすると奥から外の月明かりが差してきた。

 

「ほら郷、終わったわよ」

 

「ん・・んん・・・・?」

 

流石に今の恰好を人に見せるのは恥ずかしかったので外に出る前に郷を起こした。

 

「ハレッ?肝試しは?」

 

「もう終わったわよ」

 

「・・・・な、なんだよ意外と大したことなかったなぁ~~ハハハ・・・」

 

「クスッそうね」

 

郷の子供じみた強がりに合わせながら2人が洞穴から出るとそこには土下座をする殺せんせーとその隣にばつの悪い表情を浮かべポツンと置かれたクリムそしてそんな二人をを問い詰めるように囲むみんなの姿があった。

 

「どったんだよみんなして?」

 

「あ、お疲れ〜〜どうだった郷、途中で漏らしたりしなかった〜〜?」

 

「しねぇ〜よ///!!」

 

カルマのからかわれむきになる郷を尻目に速水が聞くと今回の胆試しはクラス内でカップルを造るために仕掛けたものだとの事である。

 

「ダメだよ殺せんせーもクリム先生も」

 

「だって・・・だって見たかったんですもん!生徒たちのお互いに気になりながらもなかなか素直になれないむず痒くも甘酸っぱいそんなラブストーリーを!!」

『わ、私はただ殺せんせーにお願いされたから手伝っただけで・・・」

 

「みんながみんな、先生たちみたいにゲスい訳じゃないんだよ」

 

「『・・・・はい、すみませんでした」』

 

生徒たちに諭された異形の教師コンビだった。

 

 

 

「もぉ〜何よっ!結局何にも無かったじゃないのよ!!」

 

「だったらいい加減に手を離せ!」

 

「何よっ!この私が腕を組んであげてるのよ。もっと喜びなさいよ!!」

 

そこに最後に出発した烏間イリーナのペアが出てきた。殺せんせーもクリムも外に出ていたためシフトカーたちに指示を出す者が居らずただ暗い洞穴を歩いただけだったためイリーナはかなり不満そうであった。

「もう良いだろ。俺は今回の件の報告をまとめないといけないんだ。夕食まで部屋にいるぞ」

 

元々胆試しには乗り気ではなかった烏間はイリーナの腕を振り払い部屋へと戻っていった。

 

「あっ!・・・・なによ、少しくらいに反応してくれても良いじゃない・・・」

 

 

自分の事を異姓として見てもらえなかった。その事にうつむくイリーナだったがその様子を見ていたE組メンバーは・・・・・

 

 

「なぁ、前から思ってたんだけどビッチ先生ってさ・・・」

「うん、烏間先生のこと絶対意識しているよねぇ〜」

『なっ!?そうなのかね?』

 

「間違いありませんね。ならば、我々がする事はただひとつです!」

 

クリムは気付いていなかったのか狼狽えるように驚くが殺せんせーはいつの間にか七三のカツラと眼鏡を付けニヤニヤと笑う。

 

「いいですか皆さん、この旅行の間に・・・」

 

殺せんせーだけでなく郷やカルマを筆頭に生徒たちもニヤリとイリーナを見る。

 

(((((くっ付けちゃいますか、あの二人)))))

 

E組の心が1つになった瞬間だった。

 

後にクリムは語った。

『結局全員ゲスいのだな』と・・・・・




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恋愛の時間

 カシラァ・・・・

恐らく・・いや!間違いなく世界一かっこいいドルオタが決まりましたね!

仲間たちのためにかつての仲間の姿をした敵とかつて仲間の力を使い心火を燃やして戦う。あんなカッコイイ漢に憧れます。


「いや〜でも意外だよね。ビッチ先生が男の扱いに苦戦するなんて」

 

胆試しをお開きにしたE組はレストランまで移動するとイリーナを座らせ尋問するように取り囲んだ。

 

「何時も男を手玉にとっているのに自分の恋愛には奥出なんだね〜」

 

「――ッしょうがないじゃない!!烏間ったら私がいくらアピールして全部スルーするのよ!それでついムキになったら・・・いつの間にか・・・・」

 

「「「うっ////!」」」

 

その時のイリーナの顔はまさに恋する乙女であり何人かの男子が見惚れた。

 

「ビッチ先生にドキッとしちまった・・・」

「不覚だ・・・」

 

「どういう意味よそれ!!」

 

『しかし、信じられん・・・あのイリーナが本気の恋愛をするとは・・・・』

 

「何よ私が恋愛しちゃいけないっていうの!?ベルトの癖に〜〜!!」

 

いまだに信じられないといった感じのクリムをイリーナがつかみ前後に激しく揺らした。

 

『そ、そういう意味でいった訳じゃ〜〜!』

 

揺らされながら弁解しようとするクリムだがなぜか少し喜んでいるようでもあった。

 

 

 

「ヌルフフフ、何はともあれここは恋愛コンサルタントである私に任せてください」

 

七三カツラと黒縁眼鏡を付けた殺せんせーが【恋愛マル秘作戦】と書かれたホワイトボードを持ってきた。

「何だか殺せんせーもやけに乗り気だね」

 

「当然です。同じ職場の同僚との恋愛・・・甘酸っぱい作品が書けそうです」

 

殺せんせーは表紙に【恋愛教室】と書かれたノートを持ちニヤニヤと笑う。

 

 

「ではまず第一に誰か烏間先生の女性の好みを知っている方はいませんか?」

殺せんせーの質問に生徒たちは考える。烏間があまりプライベートな会話はしないためみんな今一つ思いつかないでいた。

 

「ん~~・・・アッ!」

 

しばらく考え込んでいると矢田が目に移ったテレビを指差し叫んだ。

 

「そう言えばこの前このCMを見て『俺の理想の女性だ』って言ってた!」

全員の視線がテレビに集中する。そこに移っていたのは・・・

 

『1,234アルソッ〇!ホームセキュリティもアルソッ〇!』

 

「いやこれは・・・・」

「「「「理想の戦力じゃね〜かよ!!」」」」

 

 

「いや、ひょっとしたら力強い女性がタイプという可能性もあるよ」

 

「あ〜確かに、仮にそうだったらビッチ先生の体格じゃあ望みは薄いなぁ〜」

 

竹林の意見に賛同した郷がイリーナの身体を見る。

元々、女性としての色仕掛けで隙を突くタイプのイリーナの体格は一般的な女性よりも更に華奢である。

仮に烏間の好みのが竹林の言うような強い女性であった場合まったくの真逆の存在と言えた。

 

「ビッチ先生・・・・恋愛は一度じゃないッスよ。次を探せばいいって」

 

「「「イヤイヤイヤ!諦め早すぎだろ!!」」」

 

「そもそも烏間先生が強い人が好きかもって言うのはあくまでも可能性の一つですからねぇ~」

 

「あっ、じゃあ料理で攻めるなんてどうですか?烏間先生の好きな食べ物を作って「惚れ薬を混ぜる」のが良いと思うんですよ。丁度ここに試作品が・・・・って違いますよ!郷君も変な音言わないでください///」

 

と言いつつ慌てて隠した奥田の手には怪しい液体の入った試験管が握られていた。

 

 

『ですがなかなか良い作戦だと思います。調べた所料理は男性へのアピールでもっとも主流かつ効果的とのことです』

 

「なるほど・・・・ではどなたか烏間先生の好物を知っている方は?」

 

「「「・・・・・・・」」」

 

再び考え込む生徒たちだったが次第にその顔は険しくなっていく

 

「・・・烏間先生いっつもカップ麺やハンバーガーばっかり食べてるよな」

「なんか早く食べれればいいみたいな食生活だしね・・・」

 

みんなの頭には夜の月明かりで輝く海をバックにハンバーガーをオカズにカップ麺を啜る男女というシュールな光景が浮かんでいた。

 

「なんか段々と烏間先生の方に問題があるような気がしてきた・・・」

「ねぇ!そうでしょ。私のせいじゃないわよね!!」

中々決まらない作戦にしまいには烏間に責任を押し付ける始末であった。

その後、ああだこうだとしているうちに夕食の時間が迫ってくる。

 

「にゆぅ〜!もう時間がありません!取り合えず男子は飾りつけを女子は料理の準備をしてください!なんとか雰囲気だけでも作るのです!!」

 

殺せんせーの指示で生徒たちは右往左往と動き出す。

 

 

 

 

―――――――――――――

 

「・・・・・なんだコレは?」

 

夕食の時間になりレストランへとやってきた烏間だったがレストランは何故か色とりどりの光でライトアップされており風船や星などで飾り付けが施されていた。

一見するとサーカス会場かアミューズメントパークかと勘違いしてしまうが間違いなくそこはレストランのはずだ。

 

悩んでも仕方ない。そう考え中に入っていく烏間を背後から監視していた男子たちだったが・・・・

 

「オイ!誰だよなんな飾り付けした奴は!?」

 

「あれじゃムードもナニも無いだろ!」

 

「そう言えば外観は任せろ!って郷くんが一人でやっていたような・・・」

 

男子たちは一斉に視線を郷に向けるが当の本人は

 

「いや〜我ながら良くできているよなぁ〜サーカス」

肩に派手な色合いのシフトカーを乗せ満足げにシャッターを切っていた。

すっかり様変わりした外観と比べ中はとても落ち着いた雰囲気に模様替えされていた。

テーブルの一つ一つに料理が並べられていたがよく見ると微妙に椅子の数が足りていないように見えた。

 

 

「烏間先生とビッチ先生はコッチだよ〜!」

 

そんな時小走りに近付いてきた倉橋が烏間の腕をつかみそのまま外に置かれたテーブルまで引っ張っていく。

 

そこには既にイリーナが座っておりテーブルには様々な料理が所狭しと並べられていた。

 

 

「二人でたっぷりと楽しんでね〜!」

 

倉橋が何処か意味深な言葉を残し室内に入って行くと烏間も黙って席に座った。

「なんだか悪いな俺たちだけ・・・」

 

「ま、まぁ良いじゃない、ガキどもの好意にも素直に受け取りましょ」

 

イリーナは一見普段と変わらないように見えるが背の顔はほのかに赤く染まっておりいつも以上に色気があった。

だが、やはり烏間は気付いていないのか接し方はいつもと変わらないでいた。

 

「今回はご苦労だったな」

烏間はテーブルに置かれたシャンパンをイリーナの手元にあるグラスへと注ぎ続けて自分のグラスにも注ぐ。

 

「まったくよ!折角タダでバカンスが楽しめると思ったらとんだタダ働きだったわ」

 

フンッと注がれたシャンパンを飲むイリーナを烏間は微笑ましそうに見る。

 

「だが、良くやってくれた。お前が居なければ今回の作戦はうまく行かなかったかもしれない」

 

「——ッ!?と、当然じゃない!私を誰だと思っているのよ。世界的な殺し屋、イリーナ・イェラビッチよ!」

 

 

それからしばらく2人は特に会話も無く食事をしていたがイリーナは何か思いつめたように烏間を見ていた。烏間もその視線に気付く

 

「どうかしたか?」

 

「・・・ねぇ烏間、聞いてくれないかしら。何で私が殺し屋なんてしているのか・・・」

 

 

イリーナは静かに自らの過去を語りだした。

 




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過去の時間

 
・・・・・・・はいっ!ようやく投稿が出来ました。

いつの間にかビルドが終わりジオウも6話まで終わってしまいましたねぇ~~・・・・・
ホント・・スミマセンでしたっ!!!

次回、次回こそは早めの投稿を心掛けますので今後もよろしくお願いします!!



9才の時まで私は日本に住んでいた。

 

私のパパとママはお互い留学生として入学した日本の大学で出会って卒業と同時に結婚したらしい。

 

パパとママ、私と幼い弟の4人で裕福とは言えなくても仲良く暮らしていたわ。

あの日、弟の4才の誕生日までは・・・・

 

 

「ねぇ〜まだパパたちかえって来ないの〜?」

 

「フフ、もう少しで帰って来るわよイリーナ、いい子だからもう少し待っていましょう」

 

その日、パパは古い友人に会いに行くと言って朝から弟を連れて出掛けていた。

どうやらその友人にも弟と同い年の子供がいていい友達になるだろうからって言っていた。

 

私とママはその間に弟の誕生日会の準備を終えていた。

リビングを飾り付けしてケーキを焼いてごちそうを作って、弟が欲しがっていた赤いミニカーもプレゼントとしてキレイに包装して椅子の下に隠してある。

 

早く弟の喜ぶ顔が見たくて2人の帰りを今か今かと待っていた。

 

 

 

ーガチャー

 

「あっ!帰って来た!」

 

玄関が開く音が聞こえて私は急いで駆け出した。早く弟を喜ばせたいその一心で玄関へと向かった。

 

「お帰りなさい。パパ!アr・・・アレ?」

 

玄関ではパパが1人険しい顔をして立っていた。

 

「パパ・・・どうしたの?アレnッ「すまないが退いてくれないか」――ッ!パパ!!」

 

弟はどうしたのか?私の問を押し退けてパパは自室へと入っていった。

「ウッ!・・・・ヒッグ・・エッグッ!」

 

怖かった。いつも優しい笑顔で頭を撫でてくれていたパパがまるで悪魔のような顔をしていた。

 

ガチャガチャと物音がするパパの部屋の前で私はただ泣いているだけだった。

そんな私を様子を見に来たママが抱き締めてくれた。

「イリーナ、どうしたの?そんなに泣いて」

 

「ヒッグ、ママァ!パパが!パパがぁ!!」

 

 

ママに連れられてリビングに戻ったあとも私は泣き続けていた。

 

「アナタ、一体何があったのですか?」

 

ママが部屋の前で幾ら声をかけても返事は帰ってこなかった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

「・・・・・ナタ!一体何処に行くのですか!?」

 

「離したまえ!ワタシは行かなくてはならないんだ!!」

 

 

いつの間にか泣き疲れて眠っていた私は玄関から聞こえる言い争うような声で眼を覚ました。

 

「パパ・・・?ママ?」

 

玄関に行くと大きな2つのカバンを持って出ていこうとするパパをママが必死に引き留めようとしていたわ。

 

「アナタまで居なくなったらあの子が、イリーナがどんなに悲しむと思っているんですか!?」

 

「・・・頼む分かってくれ、 このままではやがて人類が滅びてしまうんだ!」

 

「・・・パパ、何処か行っちゃうの?」

 

「――ッ!イリーナ・・・すまない」

 

「アナタ!!」「パパ!!」

 

最後に一言の謝罪を残してパパは私たちの前から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

その後私たちはママの母国の小さな田舎町で2人で暮らした。

とても貧しくてその日食べるので精一杯だったわ。

 

「大丈夫よ。すぐにあの人が迎えに来てくれるわよ」

ママはまるで自分に言い聞かせているように毎日毎日そう言っていたけどもうその時の私にはパパをあの男を信じることが出来ないでいたわ。

私とママを捨てて弟の事も何も話さないで出ていった。そんな男を何時までも待っているママに苛立ちすらも感じ始めていた。

 

 

「いい加減にしてよ!何時までもあんな男を信じて、私たちは捨てられたのよ!!」

 

ある日の晩御飯の時、私はとうとう耐えられなくなって怒りを爆発させた。テーブルの上のご飯を触れ払うと床に叩き付けられたお皿は割れて床には食事がばら撒かれた。

 

「ママはッ!何時まであんな男を待っているのよ!あんな男なんて忘れて次の幸せを見つければいいじゃなっーバチンッ!ー・・・・えっ?」

 

その時私は初めてママに叩かれた。

今まで暴力はおろか怒鳴ったことさえなかったママに叩かれた。

「ママ・・・?」

 

しばらく呆然としていると床に水滴が落ちる音が聞こえた。

 

「ーーッ!」

 

それはママが流した涙だった。初めて娘に手をあげた事への後悔の涙なのか夫と息子が居なくなった事への悲しみが溢れた涙なのか判らなかったけど、私はそんなママの顔をこれ以上見ていたくなくて家から飛び出した。

 

 

 

 

 

 

しばらく街中を走り続けた私は気付けば町はずれの高台まで来ていた。町全体が見渡せられるここから思いっきり叫べば少しは気も晴れると思って限界まで息を吸った。

 

「なによ。ママのバカ、私はママの事を思って言っているのに・・・・ママのバカーー!!パパの・・・・パパのバカァァァーーーーーー!!!」

今までの人生で一番大きな声で叫んだけどちっとも気は晴れなかった。

寧ろママがあんなに寂しがっているのにこんな事しか出来ない自分の無力さだけを思い知らされた感じだった。

 

 

「・・・・帰ろ」

 

帰ってママに謝ろう。そう思って顔を上げたとき、町の奥が赤く光っていることに気が付いた。

 

まさか、火事?一瞬そう思ったけれどもその考えは次の瞬間に耳に入ってきた無数のパパパパ!と連続で響く音で吹き飛んだ。

 

「もしかして、クーデター!?」

 

この国は数年前から軍の一部によるクーデターによる内乱が続いていた。

戦火は都市部から徐々に国全体に拡がってとうとう私たちの住む町まで拡がった。

「――ッ!ママ!!」

 

私はすぐに家に向かって走り出した。

大丈夫、ママならすぐに避難したはずだ。そう自分に言い聞かせながらもどうしても不安を拭いきれなかった。

 

止むことのない銃声と悲鳴が響き建物が燃え崩れる町中を家に向かって走り続けた。

 

道中、行き付けのパン屋が砲撃で破壊された瞬間を目撃した。よくお裾分けをしてくれた近所のおばさんが悲鳴を上げながら火だるまになっていた。瓦礫の下に同級生のレイアちゃんのお気に入りのブレスレットを付けた腕が見えた。

 

 

「ママッ!?」

 

ようやくたどり着いた家のドアを開けた瞬間、目の前が真っ赤に光って私は引っ張られたように後ろに飛ばされたわ。意識を失う直前に見たのは昔家族4人で撮った写真を抱きしめながら倒れる血塗れのままの姿だった・・・

 

 

 

 

 

 

「・・・ここ・・は・・?」

 

気が付いたら私は町から少し離れた隣町の病院のベットの上に居た。

周りを見渡してみると見覚えのある同じ町の人たちが何人か同じようにベットで眠っていた。

 

「あら、イリーナちゃん気が付いたのね。」

 

病室の入り口から私の名前を呼ぶ声が聞こえて振り向くと見覚えのない女の人が居た。

 

「ちょっと待っててね。今うちの人を連れてくるから」

 

しばらくすると女の人は怖そうな顔つきの男の人を連れて戻って来た。その迫力に思わずヒッ!と悲鳴を上げてしまいそれを見た女の人に笑われた。

男の人はそんな女の人を一瞥すると私の目の前まで迫った。失礼な態度を取ったことを怒られるのではないかと怯えていた私に男の人は一言だけ

 

「お母さんの事は残念だった」

 

そのたった一言が私の中で何度の繰り返し響いた。ママはやっぱり・・・

思い出すのは最後に見たママの姿、昔家族4人で撮った写真を抱えてまるで笑っているように目を閉じたその姿はあの日以来の心からの笑顔に思えた。

でも・・・それじゃあ私は?パパも・・・・弟も・・・そしてママも居なくなって私は1人ぼっちになった。

 

 

「・・・もし、君が望むのなら生きるすべを教えよう」

 

男の人の言葉に私はえっ?と顔を上げた。その隣では女の人も驚いたように男の人を見ていた。

 

「アナタ、一体何を!?私たちはこの子を守るように頼まれたんですよ!私たちの世界に連れていくためじゃっ!」

 

「黙っていろオリガ、これはこの子が決める事だ。私たちは表沙汰には出来ない裏の仕事をしているからな私たちの元に来ればいずれは君の父親を見つける事が出来るかもしれない。だが、それは同時に血塗られた道を歩むことになる。」

 

男の人のその言葉に私はすぐに返答は出来なかった。身寄りのない私は恐らく難民キャンプでもまともに生きていくことは出来ないと思う。でも、この人に付いて行くことはもう普通の生活は出来ないという事なんだと分かったからだ。

 

「・・・・すぐに決められることではない。私たちは3日程此処に居るからなその間に決める事だ」

男の人は踵を返して部屋から出て行こうとする。

 

「連れてってください」

 

「・・・何?」

 

私の小さな呟きの様な返答をその人は聞き逃さなかった。

 

「私を、一緒に連れて行ってください!!」

 

そこが病院であることも忘れ私は叫んだ。周りのベットで眠っていた人たちが何事かと見て来たけどそんな事は気にしていられなかった。ただ置いて行かれない様についていくという意思を見せる用にその人を見た。

 

「・・・後戻りは出来ない。志半ばで死ぬかもしれない。それでも構わないのだな?」

 

男の人の念を押すような問いに私は強く頷く。

 

「・・・・ふっ一度決めたら頑固なところはアイツにそっくりだな。良いだろうならば死ぬ気で付いてきなさい」

 

男の人、ロヴロ先生が差し出した手を握った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「それから私はロヴロ先生のもとで殺し屋としての術を学んだわ。最初のターゲットとしてクーデターの首謀者を殺してその後も殺し屋としての仕事を続けてきて今に至るってところかしら」

 

自身の過去を話し終えたイリーナはしゃべり続けて渇いたのどを潤す様にグラスを傾けた。

 

 

「「「「・・・・・・・・」」」」

 

想像していた以上に重いイリーナの過去に密かに聞き耳を立てていた生徒たちは何も言えないでいた。

 

『・・・すまない。私は少し席を外させてもらうよ』

 

そんな沈黙が続く中レストランの外へと出て行くクリムを郷と殺せんせーは黙って見送った。

 

 

「それで、父親には会えたのか?」

 

「いいえ、殺し屋として築き上げてきた情報網を使っても足取り1つ掴めないわ。そもそも昔の事過ぎて私自身があの男の事をあんまり覚えていないのもあるんでしょうけど」

 

イリーナはもう一度シャンパンを飲み立ち上がると烏間に近づく。そして、シャンパンによって濡れた唇を押し当て烏間の口内へとシャンパンを流し込む。

「今まで誰にも言えなかった話だけどアンタに話してなんだか気が軽くなったわこれはそのお礼よ。お休みなさい」

 

イリーナは烏丸の顔を見る事無く足早にレストランへと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「ッ〜〜〜〜!//////」

 

レストランに入り烏間の視界から抜けた瞬間イリーナの顔はトマトのように真っ赤になった。

 

(何たかだかあんなキスで恥ずかしがっているのよ私は〜〜////あんなのもう何百回とやって来たことじゃないのよ〜〜〜!!////)

今だに残る唇に残る烏間の熱が全身を駆け巡り思わずその場で座り込んでしまった。

今までしたどのキスよりも緊張し頭に焼き付いた。目を閉じればその光景がすぐに思い出されてきてまた身体が熱くなってしまった。

 

 

 

身体中の熱が引くまでしばらくその場でうずくまり唸っていると周囲からなんとも言えない視線を感じた。

 

顔を上げてみるとイリーナの周りにはE組勢が何か言いたげにイリーナを見ていた。

 

「なっ何よ、その目は!?」

「何だよ!せっかく場を用意してやったのに!!」

「何時もみたいに舌入れろよなぁ〜!!」

「ビッチ先生らしくな〜い!!」

 

「う///・・・うるさいわね!!大人には大人の恋愛手順ってモンがあるのよ!!」

 

マシンガンのように放たれるブーイングに一瞬怯んだイリーナだったが大人の女としてのプライドからかすぐさま言い返すが強引な言い訳で説得力は皆無であった。

 

 

因みに一人取り残された烏間は・・・・

 

「・・・・今のは一体何だったんだ、新しい暗殺術の特訓か?」

 

全くイリーナの気持ちに気付いていなかった。

 

 

 

 

 

 

イリーナと生徒たちが言い争っているその時、クリムは1人ビーチに佇み星空を見上げていた。

 

「・・・イリーナ・・・エリーサ・・すまなかったな」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「みんな~まったね~~!!」

 

翌日の夕刻、島から帰って来たE組は椚ヶ丘駅で解散となった。駅でみんなと別れ自宅へと向かう茅野は途中コンビニにより大量のスイーツを購入した。

 

「ふっふ~ん、島のホテルのスイーツも美味しかったけどコンビニのスイーツはまた違う美味しさがあるんだよね~」

 

3日ぶりとなるコンビニスイーツに胸躍らせる茅野は我慢できず両手に持ったビニール袋からプリンを取り出しフタを開けた。

 

「はむっ、んんっ~~!やっぱりおいし~~!!」

幸せそうにプリンを口にする茅野はやがてとあるマンションへと入っていく、両手にビニール袋を持ったまま誰も乗っていないエレベーターに乗り最上階のボタンを押す。その間にも次々と袋からスイーツを取り出し胃袋へと収めていく。

やがて最上階へと付いたエレベータから降りるとそのまま突き当りの扉まで行く

 

「ただいま〜〜!」

両手にビニール袋を持ったまま部屋の鍵を開け中に入るとすぐさまキッチンの冷蔵庫に残りのスイーツを詰め込んだ。

 

「あれっ?何だもう帰って来てたんだね」

 

スイーツを仕舞い終えプリンを1つ手にしてリビングへと来た茅野はベランダに転がる044のナンバーを見て呟いた。

窓を開けると044は這いずるように茅野に近付きすがり付く。

 

『バイラル・・・コアを・・・・速くっ!!』

 

「仕方ないなぁ〜」

 

茅野はリビングのテーブルの上に置かれたケースからバイラルコアを取り出し044に向け投げた。

バイラルコアを吸収した044はその姿をバレットロイミュードへ変えすぐに少年の姿へとなった。

 

「ハァ・・ハァ・・・クッ!」

 

息を荒げながらソファに座る少年に茅野はにこやかな笑みを浮かべる。

 

「せっかく進化したのに郷くんに負けちゃったんだね?」

 

「・・・・次は勝つ!必ずな!」

 

「まぁ君が郷くんに勝とうと負けようとどっちでもいいんだけどさただ、わたしの復讐の役に立つんならさ・・」

 

その時の茅野の顔には普段の人懐っこい笑顔は無く代わりにすべてを捨てた冷酷な復讐者の笑みがあった。

 




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夏祭りの時間①

 現在放送中のアニメ、SSSS.GRIMANが面白いです!
原作である電光超人グリッドマンが大好きだったのですがまさか今になってアニメで復活するとは夢にも思っていなかったです。
細かい所に原作の小ネタがあり原作ファンなら見て損は無いでしょう。
まだまだ序盤ですが今後のGRIMANに期待したいです。



一般的に学生には3つのタイプがいる。

夏休みの宿題は最初の1週間以内に終わらせるタイプと夏休み全体を通してやっていくタイプそして・・・・

 

「グア〜〜〜!!お〜わ〜〜ん〜〜〜ねぇ〜〜〜〜!!」

最後に地獄を見るタイプである。

 

時は前日にさかのぼる。

その日は「たまにはのんびりしないか?」という千葉の意見で郷は速水と千葉と共に裏山で魚釣りをしていたのだが、ふと千葉が呟いた。

 

「もう夏休みもあと3日で終わりだな」

 

「ん?ああ〜なんやかんやであっという間な感じだよなぁ〜」

 

ぷかぷかと浮かぶ浮きをボーッと眺めながら郷も返すが次の速水の一言でその態度は一変する事になった。

 

「殺せんせーも夏休みの宿題を見るのが今から楽しみだって言ってたわね」

 

「・・・・・・・アッ」

 

郷の声は速水たちの耳にもしっかりと届き2人は郷を見るが等の本人はその顔にドッと滝のような汗を流し小刻みに振るえていた。

 

「もしかして郷、宿題が残っているのか?」

 

「・・・・・・・・」コクリ

 

「・・・もしかして、残り3日じゃあ終わらなそうなぐらい残っているのか?」

 

「・・・・・・・・・・・」コクリ

 

 

千葉の問いに無言で頷く郷、その姿に千葉の顔からも汗が流れ出す。

一方速水は1人探るような眼で郷を見ていた。

 

「というより郷、アンタ夏休みに入ってから1回も宿題をやってないんじゃないの?」

 

「ッ!」

 

速水の視線が突き刺さるような鋭いものに代わり郷の顔から生気がなくなっていく。

 

千葉はいくらんなんでもそれはっといった顔をしていたが郷の様子を見て唖然とした。

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

3人の間に会話が無くなった。

郷の浮きが動き出したが1人もそんなこと気にも留めず速水と千葉は郷を見続ける。

 

「・・・・郷、どうなのよ?」

ゆっくりとエアガンを取り出しながら速水は再度問う。

 

「・・・・・・イッ・・・・イッグザクトリー・・・」

振るえる口からようやく出した言葉はマイナスイオンに満ちた森中に良く通った。

サムズアップをし覚りを開いたような笑みの郷に千葉は絶句し同時に感じた。郷を挟んだ反対側から漂う鬼の殺気を

 

「・・・・さと・・」

 

速水の言葉は何故かうまく聞き取ることができなかったが千葉は反射的に自分が座っていた岩の影に隠れた。

 

一方、速水に向けサムズアップを続けていた郷はそんな千葉の行動に気づかないでいたが目の前の速水から溢れる殺気に先程以上に汗が止まらないでいた。

 

「あの〜〜・・・・速水・・さん?」

「・・・・サッサと・・・宿題やって来なさいよ!!」「ギアァァァァ〜〜〜!!!!!」

 

「待ちなさい!!」

 

「まったく、相変わらず仲が良いな」

 

両手に持たれたエアガンから発射された無数のBB弾から逃げ出す郷と追う速水、残された千葉は1人呟くと竿を片付け2人の後を追う。

 

 

 

10数分にわたる鬼ごっこの末、郷は後頭部に数発の銃弾を喰らいその衝撃でバランスを崩し顎を木の枝に強打、気絶し速水と千葉によりビット内にいたクリムの元へと突き出された。

 

郷が宿題にまったく手を付けていなかったことを知ったクリムは烈火のごとく怒り郷をレッカーのワイヤーで椅子に縛り付けた。

 

しばらくして目を覚ました郷に待っていたのはクリムと速水による心がすり減るような説教とビットの端で車雑誌を読む千葉の苦笑だった。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

「なぁ〜クリムゥ〜〜ちょっと休憩しよぉぜ〜このままじゃ頭がオーバーヒートする〜〜」

 

机に広げられた宿題にかぶさる様にだらける郷の頭からは煙が出ていた。

 

『まったくしょうがない、では10分間だけだぞ』

 

「いよっしゃ〜!!!」

 

クリムからの許しを貰い郷は机からガバッと起き上がりマンガを読もうとしたが丁度タイミングよく郷のスマホから律が顔を出してきた。

『郷さん!速水さんからメールが来ていますが』

 

「んぁ速水から?読んでくれるか」

 

『はい!え〜・・・「郷、ちゃんと宿題はやってるんでしょうね?サボってたらただじゃおかないわよ。ところで・・・明日の夕方までに宿題が終わったら一緒に夏祭りに行かないかしら?べっ別に一緒に行きたいわけじゃないんだけど殺せんせーがみんなの事誘っているからアンタ一人だけ仲間外れはかわいそうだと思っただけだから///明日の夕方5時半に迎えに行くからそれまでに宿題を終わらせておきなさいよ!」・・・以上です』

 

「あ〜うん、メールの内容は良いんだけどよ。何でわざわざ速水の声で読んだわけ?」

 

『その方が速水さんの気持ちが伝わりやすいと思いまして!』

 

「あ、そうですか・・・にしても夏祭りかぁ〜まぁ行ってみたいとは思うけどよ流石に明日の夕方までに終わらすのはなぁ〜〜」

 

『ちなみに椚ヶ丘では夏祭りの際浴衣を着る女性の割合が多く去年の祭りはこのように華やかだっあらしいですよ』

 

そう言って律はSNSからいくつかの写真を選び画面に出した。そこには色とりどりの浴衣を着て祭りを楽しむ女性達が写っており中には下着が見えてしまいそうな少々きわどいものまであった。

 

「ッ!」

 

それを見た瞬間、郷は目を限界まで見開き手に取ったマンガを放り投げ机に座った。

「さぁクリム!休憩なんてしてる暇ないぞさっさと終わらそうぜ!ハリ~アップ!!」

 

『あ、ああ・・・そうだね・・?テッ・・・ハァ〜郷、君ってやつは・・』

 

先程とは打って変わってやる気に満ちたその姿勢に戸惑うクリムだったがチラリと見えたスマホに移る写真を見て全てを悟った。

そして律は作戦成功と言わんばかりの笑みでピースをしていた。

 

 

 

 

 




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夏祭りの時間②

ジオウにて壇黎斗がオーズに変身する。過去の作品のキャラが別の過去作品のライダーの力を使う。
記念作品だからこその展開で子損敵に結構好きですね。




夏休み最終日の夕方、速水はアサガオの柄の白い浴衣を身に纏い裏山の山道を歩いていた。

 

昨日、勇気をもって送ったメールはすぐに返信が来た。

『オッケー!宿題なんてマッハで終わらせてやるからな!!』

 

その文面を見て無意識にガッツボーズをしてしまったことに若干の恥ずかしさを感じながらもすぐに祭りで着ていく浴衣の用意をした。

 

 

そして祭り当日の今、速水は郷を迎えにいくためE組グラウンドの片隅にあるビットに向かっていた。

念のためにと家を出る前に律に宿題の進み具合を聞いたところ何とか終わりそうとのことだった。

 

 

「フゥ、何時もより時間がかかったわね」

ようやくビットの前まで着いた速水だったがなれない浴衣姿では思っていた以上に時間がかかり既に祭りが始まった時刻になってしまった。

 

(まぁ最悪花火に間に合えば良いわね)

 

出来れば一緒に屋台を廻りたいが今から会場に向かうとなるとどうしても着くのは祭りの終盤になりそうだった。

仕方ないと思い直し速水はビットの扉を開けた。

 

「って、あっつ!?」

 

柄にもなく叫んでしまったがその反応も仕方ないような熱気がビット内から流れ出てきたのだった。反射的に閉めた扉を今度はゆっくりと開ける。

 

「ウッ!・・・アッツ・・・」

 

再び熱気が襲い来るが先程ので多少は空気が入れ替わったお陰か少しはマシになっていた。

 

まるでサウナの様に纏わりつくような熱気を感じながらもビット内に足を踏み入れるとビット内の一角に置かれた机の上でうつぶせで倒れ頭に氷の入った袋を乗せている郷がおりその隣ではクリムと律もいた。

 

 

『あっ速水さん!御早いお着きですね!』

 

「えっええ・・・クリム先生もこんばんわ・・・」

 

『ウム、good evening』

 

2人とあいさつを交わす速水だったがやはり目の前で死に体となっている郷が気になって仕方が無かった。

 

「あの・・郷はどうしたんですか?」

 

『ん?ああ、気にしないでくれたまえ。集中的に勉強をやり過ぎて頭がオーバーヒートしただけだからねすぐに治るよ』

クリムの説明を聞いている間にシフトカーたちによって溶け切った氷が新しいモノに交換されたが郷の頭に乗った瞬間に瞬時に溶け出した。

 

「ああ〜〜〜・・・・・」

 

『郷さん、速水さんが来ましたよ。起きてください』

 

「んあ〜〜??」

 

律に起こされ顔を上げた郷はうつろな目で速水を見る。

 

「・・・よぉ〜〜速水ぃ〜〜しゅ、宿題ならちゃんと全部終わらせたぞぉ〜〜・・・」

 

郷はまるでゾンビの様なぎこちない動きで机に積まれた宿題のノートを差し出す。受け取った速水は見ても良いのかとクリムに視線を向けるとクリムも『構わないよ』と言ったためノートを開いた。

所々間違っているところはあったが確かに全部終わっていた。

 

「まったく、最初からちゃんとやっていなさいよね」

 

「ウエ〜〜イ・・・まあそれは置いといて・・・」

 

郷はいきなりガバッと起き上がった。

 

「速く祭り行こうぜ!祭り!ハリ~アップ!!」

 

いつの間に用意したのかその手にはパンパンに中身が入ったサイフといつものカメラが握られていた。

 

『ですが郷さん、今から会場に向かいますと到着するのはお祭りの終盤になりそうですよ』

 

「ん?ああ、モ~マンタイ」

 

そう言い郷はビットの一角に置かれた盛り上がったシートに近づく。

「オレが誰か忘れたのか?アイアム・仮面ライダー!」

 

シートを勢いよく剥がすとライドマッハーが姿を現した。

 

「コイツでマッハで行けば全然余裕だろ?」

 

「確かにそうだけど・・・ロイミュードが出た訳でもないのにバイクを使っちゃって良いんですか?」

 

郷やクリムのことは殺せんせーと同様に各国が認識している事だとは聞いていたが仮にも中学生が堂々とバイクを走らせて良いのか?速水はクリムに聴くが

 

『まぁ、今回は郷も頑張ったことだからね。烏間にはワタシが後で言っておこう』

 

「お〜い!2人とも速くしろよ!」

 

ライドマッハーに跨がりながら郷は速水に自分のと同じデザインのヘルメットを投げ渡す。良く見てみると取り付けられたスタンドに収まったスマホの画面では律もピンクのヘルメットを被り今か今かと待っていた。

少し戸惑いながらも速水はヘルメットを被りクリムを持ち郷の後ろに跨がった。

 

「んじゃ、飛ばすぜ〜」

 

郷がアクセルを全開にした次の瞬間、速水は風が全身を走るような今まで感じたことのない感覚を味わった。

 

「キャァッ!!」

 

郷の腰に回した腕に力が入る。周りの景色が目回しく変わっていく。

 

「どうだ速水、風を切って走るのって気持ちいいだろ!?」

 

郷の心から笑っているような声に速水の顔も思わず綻びる。そして改めて流れていく景色を見る。いつの間にか山を抜け街中に出ていたらしく街灯や家の明かりが光の川のように流れて行った。

「・・・・キレイ・・」

 

口からそんな言葉が出てことに気付かない程に速水はその景色に心を奪われた。今まで何度も通ってきた街がまるで初めて訪れたようにさえ思えた。

 

 

 

「よっし、到着!」

 

「えっ?」

 

速水が高速の世界の光景に見惚れていると不意にその世界は終わった。気付かなかったがいつの間にか祭り会場の神社の目の前に来ていた。あの光の川が見納めになったことに少しばかり名残惜しいと感じながらも速水はバイクから降りた。

 

「もう着いたのね・・」

 

「んじゃ、邪魔になんないところに停めてくるからさ先行っててくれ」

クリムと律を渡された速水はライドマッハーを押しながら神社の脇へと歩いていく郷を見送り神社の境内へと入った。

 

 

既に境内は多数の出店とそれを廻る人たちで溢れていた。その中を速水はクリムと律を抱えながら歩いていく。

 

『コレがお祭りですか、やっぱり動画で見るのと実際に見るのとは違いますね!』

 

『そうか、律くんは祭りに来るのは初めてだったね。やはり日本の祭りは賑やかな中にもしっかりと風情があり良いものだからね思う存分楽しむんだよ』

 

『はい!分かりました!』

 

ベルトとスマホという間違いなく世界で最も変わっている教師と教え子の会話聞きながら歩いていくと焼きそばの屋台の前に矢田と倉橋の2人がいた。

「あ、凛香〜!こっち、こっち!」

 

2人も速水に気付き手を振る。

それに答えるように速水も2人に近づく

 

「矢田たちも来てたんだ」

「うん、他のみんなももう来ててそれぞれで回ってるよ」

 

矢田に言われ速水が周囲を見渡してみると確かにあちこちの出店にE組生の姿があった。

 

 

「律もクリム先生も来たんだ」

 

『はい!ワタシも本物のお祭りを是非とも体験したく思いまして!』

 

倉橋は速水から受け取った郷のスマホに映る律と楽しそうに会話をしながら手に持つりんご飴を口にする。それを見た律もまた真似するようにりんご飴を取り出し口にする。

「それにしても・・・郷ったら遅いわね」

 

しばらくの間矢田たちやその後合流した中村と話をしていた速水だったがバイクを止めに行った郷がいつまでたっても来ない事に若干の違和感を感じた。

 

「あれ、郷ならさっき向こうで見たけど?」

 

そう言って中村が指差し先を見た速水は手にもったフランクフルトの串をバキッと握り折った。

 

「「「ヒィッ!?」」」

 

速水から溢れ出る怒りに向けられた訳でもないのに身震いをした矢田たちがその視線を追うとそこには・・・・

 

「はい、もう1枚撮りますよ〜!あっそうだ、現像できたら写真送りますんで住所教えて貰えますか?」

浴衣を着た大学生と思われる女性にカメラを向けながらナンパをする郷の姿があった。

 

「あの・・・バカ・・・・コロス!」

 

速水は2つに折れた串を持つ腕を振りかぶりながら殺気の込められたカタコトを口にする。

その目が見据える先では件のバカが女子大生たちの周りを縦横無尽に動き回りながらシャッターを切り続けている。

 

 

 

「こうやって出会ったのも何かの縁ですし奢りますから綿あめ食べませんか?」

 

バイクを置いた後、速水と合流しようと境内に入ったが3日間に渡る缶詰生活からの解放と初めての夏祭りによる興奮によりいつも以上にテンションが高まっていた郷は視界に入る浴衣女子に片っ端から声をかけていた。

 

「おね〜さん!夏の思い出に1枚どうですか?住所教えて貰えれば後で送りますよ!」

 

たった今声を掛けた女子大生グループが快く撮影に応じてくれたため少し距離を取りカメラを向ける。彼女たちからしたらちょっとした時間つぶしのつもりなのだろうが郷としてはそれでも構わなかった。初めての夏祭りの思い出に華やかない写真を1枚でも多く飾る事が出来るのだから。

 

「は~い!撮りますねぇ~~チ~・・・・ズッ!?」

 

シャッターを切る直前カメラ越しに見た女子学生たちの横からこちらに向かって来る何かが見えたような気がしたがそのままシャッターを切った。するとその瞬間、頬を何かが掠めた。

「・・・・・エエ?・・リアリ~・・・マジで?」

 

ハラハラと耳元で自分の髪が数本音ていく音が聞こえた。ギギギギと古いブリキの様な音を立てて後ろを振り向くと木に折れた串が突き刺さっていた。

再びブリキのような音を立てて首を戻すと人の波の間にソレは見えた。両手に大量の串を持ち今まさに振りかぶろうとする白い浴衣の殺し屋の姿だった。

 

 

 




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夏祭りの時間③

 平成ジェネレーションFOREVERの予告がカッコよすぎる。

九郎ヶ岳遺跡も登場しクウガ好きとしては何があっても見ないといけないと感じました。


「ズビバゼンデジダ・・・・気の迷いだったんです・・今後、このようなことを繰り返さないようワタクシは心を入れ換えます。だから・・・・・助けてくださ〜〜い!!」

夏休みの最終日を彩る夏祭りを楽しむ人々の目に留まらない神社の裏手の林、その1本の木に逆さまに吊るされた郷が叫ぶ。

 

そんな郷をゴミを見るような眼で見る速水の後ろでは矢田と倉橋、中村の3人が郷の財布から支払われた焼きそばを食べていた。

 

「・・・・本当に反省したのね?」

 

「はい!心の底から反省しましたので下ろしてください!慈悲を、どうかご慈悲をぉ!!」

 

もはやプライドなどとうに捨て去ったのだろう溢れんばかりの涙を流しながら悲願するその姿に速水もバカらしくなった。

「・・・ハァ〜レッカー、下ろしていいわよ」

 

速水が頭上に向け言うと木の上から郷を逆さ釣りにしていたレッカーは拘束を解き郷は頭から地面に激突した。

 

「イデッ!?」

 

痛みに耐えるようにその場に蹲る郷は恨めしそうに速水の肩に移動したレッカーを睨む。

 

「お前ェ〜いつの間に手懐けられたんだよ」

 

「あら、レッカーだけじゃないわよ」

 

「ワッツ!?」

 

いつの間にか速水の傍らにはハンターやスパイク、ドクター等複数のシフトカーたちが集まっていた。

 

「お、お前ら揃いも揃って長年の戦友を裏切りったのかぁ〜!?」

郷の恨めしいばかりの言葉にシフトカーたちはオマエが悪いと言わんばかりに車体を振る。

 

「ほら、時間も限られてるんだし行くわよ」

 

「あ〜ハイハイ、分かりました」

 

「じゃあ後は若い2人に任せて律は私らと一緒に行こうか?」

 

『分かりました!では郷さんも速水さんも楽しんできてください!』

 

「えっ!?ち、ちょっと中村///!!」

 

そう言って律と一緒に去っていく中村たちだったがそこで郷はあることに気付く

 

「アレ?さりげな~く俺のスマホ持って行かれたんだけど・・・」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

何はともあれ2人で周ることになった郷と速水はいろいろな出店を回っていると途中やけに多くの荷物を抱え落ち込む千葉と出会った。

 

「あ、やっぱり2人も来てたんだな」

 

「よっ、3日ぶり」

 

「どうしたのよその荷物?」

 

「いや、その先で射的屋があってな。軽い腕試しのつもりでやったんだけど・・・・見事に出禁を喰らった」

 

千葉の歩いて来た方向を見てみると確かに射的屋があり店のおじさんがうなだれていた。

 

「お前なぁ~もう少し自重しろよな~こういうのはな適度に楽しむくらいがちょうどいいんだよ」

見本を見せてやるよと言いながら郷は射的屋に向かう。お客さんが来たと分かればそこはプロ根性なのかおじさんは笑顔で応対し始めた。が・・・・

 

2分後、千葉以上の景品を抱えた郷は見事に出禁を喰らった。

 

「アッレェ〜〜??」

 

「言ったそばから何やってんのよ」

 

「イヤイヤイヤ、あの出店がイージーすぎるんだよ!」

 

「だよな!手を抜いても落ちちゃうんだよな!」

 

「まったく、ちょっと待ってなさいよ」

 

もはや魂が抜ける勢いのおじさんの射的屋に向かう速水の後ろ姿を見ながら郷は千葉に小声で話し掛ける。

 

「何分で出禁喰らうか賭けようぜ。俺は10分以内に焼きそば1つな」

「じゃあ俺は10分以上にたこ焼きだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・確かにイージー過ぎた」

 

「結局、3人揃って出禁喰らったな」

 

8分後、人混みから外れたスペースで速水と千葉、焼きそばを食べる郷は更に増えた景品の処分に困っていた。

 

因みに射的屋のおじさんは速水に出禁を申し付けたと同時に精神的疲労で救急車に運ばれていった。

 

「んでっ、ど〜するよ?コレ」

 

お菓子や時計等は3人で分け合えば良いが中にはぬいぐるみや小さい子供向けのオモチャも数多く含まれていた。

 

「速水も千葉も弟か妹って居ないのか?」

 

「ウチは一人っ子よ」

「俺も生憎兄弟は居ないな」

 

「「「ハァ〜〜」」」

 

3人は揃ってため息を吐いた。

 

「しゃ〜ない。とりあえず俺が預かっておくよ。ピットには空きスペースも沢山あるしな」

 

このままではらちが明かないと思い郷が提案した。

実際、ドライブピットには複数の小部屋があるのだがそのほとんどは使われていない空き部屋になっていた。

 

「悪いな。出来るだけ早くに引き取り先を探すようにするよ」

 

「私も近所の子供にそれとなく聞いてみるわ」

 

「んな気にしなくて良いって、どうせ使ってない部屋なんだしさ」

 

景品の保管場所が決まり3人は改めて祭りを楽しむことにした。

金魚すくいでは郷がポイが完全に破ける前に高速で金魚を取り型抜きでは千葉が正確に型を落とした。

輪投げは射的とは違い1回も成功しなかった郷を尻目に速水が次々と潜らせ勝ち誇った笑みを浮かべた。

 

「グッ、おっさん!もう1回だ!!」

 

ムキになった郷は何度もチャレンジしたが結局1回も成功することはなかった。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「クソ〜〜・・・・・あの店絶対細工してたって」

 

「まだ言ってるの?いい加減に負けを認めなさいよね」

 

「まぁまさか郷があそこまで輪投げが苦手だったとは思わなかったよな」

 

ひとしきり出店を周り終えた3人は現在とある出店の前でたこ焼きを食べていた。

『3人ともよく楽しんだみたいだね』

 

「ヌルフフフ〜明日から2学期もスタートですからね〜今日は思う存分満喫してくださいね〜」

 

そんな3人に出店の台に置かれたダルマに巻かれたクリムとたこ焼きを焼く殺せんせーが言う。

 

郷たちを始めE組が訓練で磨きあげた技術で次々と出店を閉めていく傍ら殺せんせーは分身を活用し空いたスペースに店を出し荒稼ぎをしていたのであった。

 

「皆さんの宿題を見るのが今から待ち遠しいですよ〜」

 

「楽しみにしてて良いッスよ。俺の完璧な宿題を見せてやるからさ」

 

自信満々に楊枝を向け殺せんせーに宣言する郷だが、それを隣で聞いている速水は知っていた。郷の言う完璧な宿題には所々解答ミスがあることを・・・

『3人とも、そろそろ花火が始まる時間だね』

 

クリムが言った通り花火の時間が迫り人の流れも花火が見やすい場所へと変わっていた。

 

「よっし!折角だから1番のベストショットを撮ってやるか!!」

 

「ちょっと郷!!」

 

「そんな人混みで走ったらぶつかるだろ!」

 

カメラを持ち人混みを縫うように走り去る郷とそれを追う速水と千葉、3人の姿を見送りクリムは今回無理をさせてでも郷が祭りに参加できるようにしてよかったと思った。

友人たちと祭りの夜を楽しむ。この時代の人間にとってはごく当たり前の事が郷にとっては初めてのかけがえのない思い出になっているのだから

『やはり友人と過ごす1夏の青春とは良いものだね殺せんせー』

 

同意を得ようと振り返るが殺せんせーは背中を向けしゃがみながら何かを数えていた。

 

「ひい・・ふう・・みい・・よ・・ヌルフフフ!ずいぶんと稼げましたね〜コレで当分はスイーツに不自由はしないで済みそうです」

 

イヤらしい顔でお札を数えるその姿はとても教師には見えずクリムも思わず苦笑する。

 

『まったく、とても地球を爆発させる超生物には見えないね』

 

そこへ人の流れに逆らうように1人のE組生徒が近付いてくる。

 

『おや?キミも来ていたんだね!』

 

「どうでしたか?お祭りは存分に楽しめましたかね」

 

「・・・・・・・・」

 

笑顔で迎える2人に対しその生徒は表情1つ変えず静かに口を開いた。

 

『えっ?』

「E組を・・・抜ける?」

 

丁度その時、夜空に1発目の花火が上がった。




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夏祭りの時間④

仮面ライダージオウのゴースト回、タケルとマコト、シブヤにナリタと4人も登場して今まで以上に豪華でしたね。
ゴーストとスペクターのダブル変身もあり何と言っても世界の破壊者の参戦が大興奮でした!W以降のライダーにも変身可能となりチートにさらに磨きがかかって今後どうソウゴたちと関わっていくのか目が離せません。


「じゃあ俺は菅谷たちと合流する約束になっているからここで別れるな」

 

「えっ!?千葉、ちょっと待ってなさいよ!!///」

 

「お〜〜明日学校でな〜!」

 

千葉が離れたことで2人っきりとなったことで急に気まずく感じだした速水に対し郷は特にかわりなく花火が上がるのを今か今かと待っていた。

その様子は普段のおちゃらけた軽さではなく心から花火を待ち望んでいる純粋な子供のように見えた。

 

「あ〜〜早く始まんねぇ〜かなぁ!俺、花火見るの始めてかもしれないからなぁ!!」

 

「・・・そっか、未来じゃ夏祭りなんかしていられる状況じゃなかったのよね」

「ああ、そもそも外を気軽に歩く事も出来ないで地下にコソコソ生きているような生活だったからなぁ〜」

 

懐かしむように語る郷だったがそんな日の光も満足に浴びることのできない生活は平和な現代に生きる速水には想像もできなかった。

 

「花火だけじゃなくて、学校も旅行も新幹線もプールも、この時代に来てから見たもの経験したもの全部が未来じゃ無いものばっかなんだよなぁ・・・」

徐々に小さくなっていく声に速水はチラリと隣を見れば郷は哀愁が漂う顔で俯いていた。

 

「・・・・・・」

 

余計なことを聴いたかもしれない。速水は自身の軽率さを後悔した。

郷にとって未来の出来事は辛い思い出なのは知っていた筈なのに・・・・

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

 

2人の間に静かな時間が流れた。

速水は何とか声を掛けようとするが言葉が見つからならないでいた。

 

「ね、ねぇ郷・・・・」

 

「・・・おっ!始まった」

 

何とか話そうとしたその時、丁度一発目の花火が夜空に上がり速水も出しかけた言葉を飲み込み空を見上げた。

 

 

幾つもの光の花が咲き乱れていく夜空を皆が見上げている中1人、空を見る事無く手に持ったお好み焼きを食べながら人込みをかき分けていく少年が居た。

その視線の先に白い着物を着た少女と共にカメラを構えながら空を見上げる少年の後ろ姿を捉えると同時に空になったパックを腕にぶら下げた袋に仕舞い新しく取り出したたい焼きを頬張りながら真っ直ぐに脚を進めた。

 

「そう言えば、こういう時ってなんか叫ぶんだよな?なんつったかな・・・・ぽーちやー、だったけ?」

 

「たーまやー、よ。何よぽちやって?」

 

「あ、そっちかなんか犬の名前と猫の名前とでごっちゃになってたなぁ〜・・・じゃあ改めて、ンッン・・・・た〜まっ「いいわよ言わなくて!」ブォッ!?」

 

叫ぼうとした郷の腹に速水の肘が刺さり前のめりで咳き込んだ。

 

「おまっ!いきなり何すんだよ・・・」

 

「いまどきそんな叫ぶ奴なんかいないわよ・・・恥ずかしいわね・・」

 

と言いつつもその顔は笑顔であり花火の光に照らされとても輝いているように郷には見えた。

 

「・・・・・・・ッ!?」

 

自然とカメラをその笑顔に向けようとした時だった。視線の端、本来だったら気にも留めないであろう程の位置にとても見覚えのある白髪が見えた。

隣にいる速水に悟られまいとゆっくりと眼を動かしその白を視界に入れる。

 

「・・・・リアリ~~・・・マジで?」

 

「何か言ったかしら?」

 

「・・・いや、何でもない。・・・・ちょっとトイレ行って来るな」

 

「ちょっと!郷!?」

 

呼び止める間もなく郷は人込みを掛けていくがその先には確かトイレは無いはずだった。追いかけようとする速水だったが人が多く思うように動けないでいた。その間に郷の姿は人ごみの中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「・・・・たっく、何も夏休みの最終日、それも祭りの時に来なくてもいいだろうが。なぁ、アレン」

 

人混みを抜けた郷は境内裏の林に来た。祭りの明かりは届かず空に咲く花火によって時折照らされるその中を郷は迷うことなくある一点にのみ視線を向けていた。

 

「ズズ・・・生憎とズズズ〜・・ボクにはズズ・・関係のないことですからねモグモグ・・・」

 

木の陰から季節外れの黒いコートに身を包んだ白髪の少年、アレンが出てきた。すすった焼きそばのソースが口に付いているのもお構い無しに話を進める。

「新しい力をモグ手にしたらしいですねモグモグ・・見せてもらいまふよモグモグ・・そのちふぁら!」

 

「へっ!上等だよ。でもその前になぁ・・・・・・・・・・いい加減に食うのをヤメロやぁ!!」

 

アツアツのたこ焼きを頬張るアレンの両手には祭り中の出店を全部周ったんじゃないのかと思えるぐらいの量の食べ物が詰まったビニール袋が下げられていた。

 

今までは何とかスルーしていた郷だったがいっこうに食べるのを止める気配のないアレンに遂にツッコンだ。

だが、ツッコまれた当の本人は尚も食事の手を休めることはなかった。

 

 

〜数品後〜

 

「ングッ!フゥ〜〜・・・御馳走様でした」

 

最後の焼き鳥を食べ終えたアレンは口元を拭き空になったパックや串の入った袋を側の木の根元に置く。

 

「待たせましたね」

 

「イヤ、まったくだよ!!」

 

木に寄り掛かり貧乏揺すりしながら待っていた郷は思わず叫んだ。やる気満々だったのにまさかの挑んできた相手の食事待ちである。

 

すっかりやる気が削がれたが改めてやる気を出すため、頬を叩きドライバーを取り出す。

それを見てアレンもまたブレイクガンナーを取り出し構える。

 

 

「「・・・・・・・・・」」

「レッツ・・・「「変身!!」」

《シグナルバイク!ライダー!マッハ!》《ブレイク・アウト!》

 

大きな花火が上がったと同時に2人は変身した。

 

 

 

――――――――――――――

 

「郷っ!!・・・・・まったくどこ行ったのよ?」

 

いつまで経っても一向に戻ってくる気配のない郷を探しに速水は境内を歩いていた。

だが、ドコを見ても郷の姿は見当たらなかった。

まさか帰ったのか?そんな考えも一瞬浮かんだがすぐに否定した。

なんやかんやで郷は約束を守るタイプである。

 

「ハァ〜ちょっと休もうかな」

 

長時間人混みの中を歩き回り流石に疲れが出始めたため境内の少し外れにあるベンチで休むことにした。

祭りの喧騒から少し離れホッと一息つくと空を見上げる。

夜空には未だに幾つもの花火が咲いては消えていく。

背にある林から流れてくる風が祭りの熱気で火照った身体を丁度よく冷ましてくれる。

その心地よさに身を委ねようと瞳を閉じだ時、耳の中に入ってくる花火の音になにか別の音が混じっていることに気づいた。

金属と金属が何度もぶつかり合うような。花火とは別に何かが破裂するような。木が削られ倒れるような。

 

とても無視できるような音ではなく速水はベンチから腰を上げ林へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

境内裏の林ではマッハとチェイサーによる攻防が繰り広げられていた。

 

《ズーットマッハ!》

 

音速で動きまわり四方から攻撃を繰り出していくマッハに対しチェイサーは防御しながらブレイクガンナーにバイラルコアを装填した。

 

《チューン!チェイサー!コブラ!》

 

「フッ!」

 

振るわれたテイルウィッパーはチェイサーを中心とした周囲数メートルを手当たり次第に凪ぎ払っていく。

大蛇のように暴れまわるムチにマッハはスピードを一切殺すことなく掻い潜り接近、ゼンリンシューターの打撃を叩き込む。

 

「このままマッハでっ・・・《チューン!チェイサー!スパイダー!》ゲッ!?」

一気に攻め立てようとしたマッハだったがチェイサーはすぐさまスパイダー型のバイラルコアを装填しファングスパイディーを装備した。

降り下ろされた一撃をゼンリンシューターで受け止めるがその際脚が止まり出来た隙を突きチェイサーの蹴りがマッハを吹き飛ばす。

 

痛みに耐え起き上がろうとしたマッハの眼前にファングスパイディーの爪が突き付けられた。

 

「・・・・・どうしたんですか?早く新しい力を見せてみたらどうですか!」

 

「クッソ!このままでも行けると思ったけど、やっぱキツイか。じゃあ、お望み通りに・・・・!」

 

林の奥からデッドヒートがファングスパイディーを弾くとマッハはお返しとばかりにチェイサーを蹴り飛ばしその勢いのまま後ろに距離を取った。

「グウッ!?」

 

チェイサーも光弾を撃ち反撃するがデッドヒートによって全て弾かれた。

マッハはデッドヒートを掴みドライバーからシグナルマッハを抜きデッドヒートを装填する。

 

《シグナルバイク・シフトカー!ライダー!デッドヒート!》

 

ドライバーから雷と共に溢れ出たエネルギーがマッハの全身を走る。

 

「ウ〜〜〜ッ、ダッハァ〜〜!!」

 

全身を走る雷を払うかのように叫びマッハはデッドヒートマッハへと変身した。

 

「・・・・・それが、デッドヒート・・・!」

 

相対した瞬間にチェイサーはその驚異を感じ取りファングスパイディーを盾にする様に身構える。

対してマッハも拳を握り締め構えると地面を抉るように蹴った。

 

 

 

「ッア!?」

 

次にチェイサーが気付いたのは構えていたファングスパイディーに衝撃が走り自身が押し出された事だった。

 

「まだまだぁ!!」

 

腕を突き出した状態でいたマッハは更に前に脚を進めながらラッシュを浴びせる。チェイサーはファングスパイディーを両手で支え防いでいくが徐々に後ろへと押されていき背に木が付いた。

 

「ぶっ飛べぇ!!」

 

マッハは少し距離を取り身体を捻りながら脚を延ばし回し蹴りを繰り出した。

チェイサーは咄嗟にファングスパイディーを右側に向けるが再び衝撃がチェイサーを襲い幾本もの木を薙ぎ倒し吹き飛ぶ。

 

「ハァハァ、デッドヒート、まさかココまでとは!」

 

その力を直に味わいチェイサーは膝を付きながら改めて思った。この力はロイミュードの驚異になる。早い内に排除しなければ!と

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・・押し切れなかったかよ?」

 

一方のマッハもまた膝を付き息を乱していた。

バイオレンスとの戦いのあと幾度かの調整で身体を負担を減らしてきたがまだ長時間の戦闘は無理なようだった。

 

だからこそ一瞬で勝負を決めようと攻めたのだが攻撃はことごとくガードされ決め手にはならないでいた。

 

立ち上がろうとしたマッハの身体を電撃が走り郷を襲う。

「ググッ! もうあんま時間がないな・・・・」

 

マッハのメット内には限界を知らせる警報が鳴り響き警告する。急いで変身を解除しなければ危険だが前方からはチェイサーがゆっくりと歩いてくる。

 

「・・・・ハァ〜ヤダヤダ、何で夏休みの最後にこんな疲れないとなんないのかねぇ〜?」《ヒッサツ!フルスロットル!バースト!》

 

全身のエネルギーを増幅させ身を低く屈む。

 

「・・・・勝負です」《フルブレイク!スパイダー!》

 

チェイサーもまた全てのエネルギーをファングスパイディーに集中させる。

 

「「ハァァッ!!」」

 

マッハ地を蹴り跳んだと同時にチェイサーも駆け出した。

空中で高速回転するマッハの紅のエネルギーとファングスパイディーに走るチェイサーの紫のエネルギーが林を照らす。

 

「ダラァァァ~~!!」 「ハアァァァ~!!」

 

キックと爪がぶつかった瞬間、一瞬その場の空気が止まったように静かになった。そう思ったのもつかの間、次の瞬間には2人を中心に凄まじい突風が林を駆け巡った。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

「きゃぁっ!!?」

 

林から聞こえて来た音の正体を確認しようとした速水を突然の突風が襲った。咄嗟に近くのしがみついた為飛ばされることは無かったが飛んで来た枝や小石で着ていた浴衣は所々切れ整えていた髪も乱れた。

「何なのよ一体?」

 

風が収まったことを確認し再び歩きだすと先程まで聞こえていた激しい音は聞こえなくなったが代わりにバチッバチッとはじけるような音と微かに焦げ臭いにおいを感じた。

やがて生い茂っていた木々が途切れ眼に写ったの隕石でも落ちたのかと思うようなクレーターだった。そしてその中から見慣れた人物が出てくるのが見えた。

 

「あ~いってぇ~・・・」

 

「郷!?アンタ、何やっているのよ!」

 

「アレ?速水こそ何でこんなとこに居んだ?花火終わっちゃうぞ」

 

「そんな事よりその恰好はっ「ま・・・まて・・っ!」———ッあれってアレン!?」

所々焼け焦げている郷の姿を心配する速水だったがクレーターの中にもう一人の姿を見つける。

 

郷と同じく着ている服は所々焼け焦げ素肌は細かいキズができ血が流れている。

違うことと言ったら何とか起き上がり歩くことの出来ている郷に対しアレンは地に伏せました引き止めるように腕を伸ばすことしか出来ていない事だった。

 

「急がないと祭りも終わっちまうし、速く戻ろうぜ」

 

「良いの、アレンをあのままにして?」

 

速水からすれば今こそアレンとの決着を着ける好機であるはずなのに郷はこの場から離れようとしていた。

 

「・・・・俺もけっこうギリギリだしな。それに、この前の矢田を助けてくれた借りってことで見逃してやるよ」

 

「ギリッ、ふざけるな!まだ勝負は終わってない、戦え・・・・戦え!仮面ライダー!!」

 

アレンの悲痛な叫びを背に受けながら2人はその場を後にした。

 

 

 

―――――――――――――

 

 

速水に肩を借りながら歩いていると花火がクライマックスを迎えるかのように連続で打ち上げられた。

 

「もう夏も終わりね・・・」

 

そう隣で速水が呟いた。毎年祭りのクライマックスを飾る花火、数十発の花火を連続で打ち上げラストに特大の1発が上がる。それが椚ヶ丘における夏の終わりを告げる伝統らしい。

この花火が終わればいよいよ二学期が始まる。殺せんせーの暗殺期間、地球破壊の折り返し地点である。

 

「ひょっとしたらコレが最後の夏かもしれないのよね・・・」

 

自分で口に出しとたんに不安になった。もし殺せんせーを殺すことが出来ず地球が爆破されたらもう夏は来ない。前半は暗殺に後半は勉強に費やしてしまい結局最後の夏としてはなんとも味気ないモノだった。

 

「・・・・なぁ速水」

 

「なによ?」

 

「写真撮ってやろうか?」

 

「はっ?」

 

言うや否やよろよろとした足取りで距離を取りカメラを構えた。

 

「ホラ、笑って笑って~~」

 

いきなり言われても困ると困惑する速水に構わず郷は何度もシャッターを切った。

「ホラホラ〜速く笑わないと間抜け面の写真が大量生産されていくぞぉ〜〜」

 

まぁコレはコレでレアだから良いんだけど〜とイタズラに成功した様に笑う郷を見ていたら自然と速水の顔にも笑みが浮かんで来た。郷と一緒にいたら不安になって下を向いていた自分がバカらしく思えてきた。

 

「ありがとう郷」

 

速水の言葉は最後の花火の音に遮られたがこの日1番の笑顔と1番の花火が同時に咲き郷はその瞬間をしっかりと写真に納めた。

 




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二学期
竹林の時間①


・・・・・言う事は一つだけ。


ありがとう平成仮面ライダーーー!!!




2学期初日、椚ヶ丘中では始めに全校集会があるためE組も本校舎に直接登校していた。

 

体育館に着いた速水は本校舎の生徒に絡まれる前にE組の中に入っていくと倉橋が手を振って来た。

 

「凛香ちゃ~ん!」

 

速水も手を振り返し近付く。

 

「おはよう凛香ちゃん!」

 

「ええ、おはよう」

 

「そう言えば凛香ちゃんさ、昨日のお祭りの後どこ行ったの?」

 

「どこって・・・?」

 

簡単に挨拶を済ませると倉橋は思い出したように質問をした。だが、速水はその質問の意味がよくわからなかった。

 

「昨日は花火が終わった後はそのまま郷と帰ったわよ」

「え?でも昨日、凜香ちゃんが家とは反対の方に歩いて行くのが見えたんだけど・・・」

 

「他人のそら似じゃないの?」

 

「う~ん、そうだったのかなぁ~~・・・」

 

いくら言われても速水にはそんな覚えは無く倉橋は腕を組んで記憶を呼び覚まそうとする。

 

そんな2人の背後から中村が近付き後ろから速水に抱き付いてきた。

 

「は〜や〜み〜〜ん!」

 

「キャアッ!な、中村!?」

 

「聞いたよ〜今のはなし〜祭りの帰りに郷と二人っきりだったんだって〜?」

 

「だ、だから何よ?」

 

「いや〜どこに寄ったのかな〜って思ってさ〜」

 

ニヤニヤしながら問い詰める中村だったが速水は頬を少し染めながらも気丈に振る舞いながら答える。

「別にどこも寄ってないわよ///ただ家まで送ってもらっただけよ」

 

「な〜んだ。つまんないの」

 

 

 

一方男子の方では郷は周りをみながら何か違和感を感じていた。

 

「なあ律、ウチのクラスって全部で何人だっけ?」

 

『クラスの人数ですか?私を含めまして28人ですね』

 

「だよ・・・な・・」

 

何となく誰かが足りない気がするのだが、それが誰なのかイマイチ解らなかった。結局、その違和感の正体が分らないまま集会が始まった。

 

「では、最後にお知らせがあります。今日より落ちこぼれであるE組より一名の生徒が類まれなる努力の結果、見事A組に編入することとなりました!」

「「「「「エッ!?」」」」

 

壇上で司会を勤める五英傑の1人、放送委員の荒木鉄平の言葉にE組は驚愕の声を上げ誰がいないか確認するため互いに見合った。

 

「では、ご登場いだだきましょう!地の底でも諦めること無く努力を続け見事返り咲いた英雄の名は・・・・竹林 孝太郎君です!!」

 

全校生徒の視線が壇上の端に集まりそこから出てきたのは紛れもなく竹林だった。

 

 

「スゲ〜ぞ!竹林ぃ!!」「お前は他の奴らとは違うって思っていたぞ!!」「キャァーー!竹林く〜ん!!」

 

本校生徒の今まで態度から手のひらを返したような賞賛の声の中、竹林の挨拶が始まった。

――――――――――――――

 

「クッソ!竹林のヤツッ!」

 

教室に戻り早々に前原が八つ当たりするように机を叩く。

 

「止めろって、物に当たったってしょうがないだろ」

「でもよ、磯貝だって聞いただろ?アイツの言い草をさ」

 

「E組の事を地獄って言ったんだぞ!」

 

「しかも、私たちが何にも努力しないで諦めてるみたいにさ・・・・」

 

磯貝が落ち着かせようとするが前原だけでなく他の生徒も口々に竹林への不満を口にする。

 

郷はその様子を千葉と共に少し離れた場所で見ていた。

 

「郷はどう思うんだ?竹林のこと」

「まあ、そもそも途中から入ってきたからよくは知んないけどさ。元々そういう場所だったんだろE組ってさ?」

 

「まぁ・・・な・・・」

 

郷の言うとおり、元々このE組は通称【エンドのE】と言われていた落ちこぼれクラスだった。

今でこそ、優秀な教師陣や整備されたグラウンドにプールまであるがかつては正に見捨てられた廃棄処分所の様だった。

 

もし当時のままで本校舎に戻れるのだったら自分も喜んで戻っていただろう。

そう思いながらも千葉も他の皆も竹林の態度には納得ができないでいた。

 

「竹林君の成績が上がったのは事実だけどさ、それはE組で殺せんせーたちに教えられてこそだと思うの。それさえ忘れちゃったのなら・・私は彼を軽蔑するな」

片岡の言葉に前原や木村、岡野も頷く。

 

「とにかく、放課後に一言いいに行こうぜ!」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「なんていう事は無い、毎年やっている事ですよ」

 

放課後の本校舎、理事長室では殺せんせーとクリムが理事長と竹林のA組昇格について聞きに来ていた。

 

「この時期に頑張った生徒に対しE組脱出を打診する。竹林君も例年と同じく二つ返事で受けてくれましたよ。全校生徒が私の教えんとしている事を理解していることは、今日の集会で見ての通りですよ」

 

「『・・・・・・・・・・』」

 

「頑張った分報われる。弱者から強者になれる。殺せんせー、クリム先生、私の教えは何か間違っていますか?」

 

「・・・いえ、間違っていません」

 

『・・・・・ッ』

 

殺せんせーもクリムも反論できず部屋を退室していった。

 

 

 

同時刻、E組生は本校舎前で竹林が出てくるのを待っていた。

途中、他の本校舎生たちが通り掛けに笑ったりちょっかいかけてきたりしてきたが寺坂たちが威嚇し追い払った。

 

待つこと数分、竹林が本校舎から出て来たのを確認しその前に立ち塞がる。

 

「竹林、説明してくれないか、なんで一言の相談もしてくれなかったんだ?」

「何か事情があるんですよね!?夏休みの旅行でも竹林君が居てくれてすごく助かったし普段も一緒に楽しく過ごしていたじゃないですか!」

 

磯貝に続き奥田が叫ぶ。思い出すのは夏の旅行で毒に倒れた生徒たちを介抱する竹林、昼休みに男子を集めメイドの素晴らしさを力説する竹林、律にメイドの格好をさせ奉仕させる竹林、郷と組んで寺坂をメイド喫茶に連れ込む竹林・・・

 

((((思い出のほとんどがメイドじゃねーかよ・・・・))))

 

「殺せんせー暗殺の報酬100億円、場合によっては更に上乗せされるらしいけど・・・こんな一攫千金のチャンスを捨てるなんて、竹林って欲が無いね〜」

 

カルマが煽る様に言うがそれでも竹林は動じなかった。

 

「10億円だ。僕1人じゃどう頑張っても暗殺は成功しない。仮にみんなと組んで暗殺出来たとしても僕の能力じゃ取り分は良くて10億円が限界だ。ウチは代々医師の家でね、兄たちも東大の医学部を出ている。判るかい?10億って金額はウチの家なら働いて稼げる金額なんだよ」

 

竹林の手が強く握られていく。

 

「『出来て当たり前』の家なんだよ。出来ないヤツは見捨てられるっ!・・・昨日、初めて親に成績の報告が出来たよ。E組を抜けられることを伝えて何て言われたか分かるかな!?『頑張ったじゃないか。何とか首の皮一枚つながったな』その一言を聞くために僕が・・・どれだけ血を吐く思いで勉強したか!!」

 

 

竹林の拳から血が垂れ出した。今まで誰にも打ち明けたことのない苦しみを吐き出すその姿に誰も何も言えないでいた。

 

「裏切りも恩知らずもわかってるよ。それでも僕にとっては地球の終わりよりも100億よりも、家族に認められる方が大事なんだ。せめて・・・君達の暗殺が成功することを祈っているよ」

 

背を向け去っていく竹林を渚が追い掛けようとしたがそれを神埼が止めた。

 

「親の鎖ってね、すごく痛い場所に巻き付いていて離れない物なの。だから・・・無理に引っ張らないであげて」

 

それは自身も親の鎖に苦しめられたからこそ理解できる事だった。

そして、それは神埼だけでなくE組にいる多くの者に共通していた。

 

みんなからは少し離れ見ていた郷もふと自分の右手を見るとそこには逃がさない言わんばかりに絡み付く無数の鎖が見えた・・・気がした。

 

 

「・・・・親の鎖かぁ・・・」

 

 




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竹林の時間②

仮面ライダーシノビ、個人的にドストライクですね!

和系のヒーローが好きなんですよね~鎧武もそうですしシンケンジャーや忍者系の戦隊も好きです。そんな中忍者のライダーはど真ん中ですよ!

3月のスピンオフで主役をやるとのことですからね今から楽しみです!
今後登場する未来ライダーにも期待します。



竹林の説得に失敗した翌日、E組には何時もの活気はなかった。

決して目立つ存在ではなかったが1人居ないだけでこんなにも違うものなのかと思えるほどだった。

 

「皆さん、おはようございます!」

 

そこに、いやでも目立つ存在がやって来た。・・・・真っ黒になって

 

 

「なんでいきなり黒くなってんだよ殺せんせー」

 

「いや~急きょアフリカに行って日焼けしてきましてねぇ~ついでにマサイ族の方とドライブしながらメアドも交換してきちゃいましたよ」

 

(((何だそのハイテクだかローテクだか分かんない旅行は?)))

 

更に殺せんせーは黒い装束に身を包みおもちゃの刀を背中に背負い不敵に笑う。

「ヌルフフ〜〜これで先生は闇に紛れる忍者に変身ですね〜」

 

っと自信満々の殺せんせーだが・・・こんな目立つ忍者なんて居るかよ!とその場の全員が思っていた。

 

そもそも何で急に忍者なのか?そんな疑問をみんなが抱いていると再び教室の扉が開いた。

 

「おはざ〜す」

 

今度は迷彩服に迷彩のヘルメット、更に顔には迷彩のペイントを施した郷が入ってきた。

 

(((((何なんだよさっきから!?))))

 

連続してやってきたツッコミ所の多さにみんな頭が痛くなってきていた。

「おや郷くん、中々の隠密度ですね〜」

 

「いや、殺せんせーも相当なもんじゃないッスか!夜だったら完敗ッスよ」

そんなE組を置き去りに盛り上がる2人に磯貝がクラス委員としてのこの場をどうにかしなくては、そんな責任感からか遠慮がちに問う。

 

「あの〜何で殺せんせーも郷もそんな姿に?」

 

 

「もちろん、竹林くんのアフターケアのためですよ」

 

「アフターケア?」

 

「自分の意志でE組を出て行った彼を引き留める権利はありません。ですが、新しい環境で彼が馴染めているのか見守る義務が先生にはあります」

 

「そして俺は面白そうだからそれに付いて行く」

 

郷もカメラの手入れをしながらクックックと笑っていた。

 

「もちろんこれは先生のお仕事ですから皆さんは何時もと同じように過ごしていてください」

 

殺せんせーはそう言うがE組の全員がすでに付いて行く気満々の顔をしていた。

 

「殺せんせー、俺たちも行くよ」「何だかんだで同じ相手を殺しに行ってた仲だしな」「竹ちゃんが理事長の洗脳でヤな奴になったらやだしね~」

 

前原の杉野の倉橋の言葉にみんなが頷き殺せんせー、もそんな生徒たちの姿に微笑む。

 

「これぞ、殺意が結んだ絆ですねぇ」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

(これが・・・・A組の授業・・・!)

 

一方、竹林は目の前で行われているA組の授業に驚愕した。

 

(・・・E組じゃあ1学期にやった所だぞ・・)

 

ハッキリ言って効率が悪いと思えた。

生徒の事を全く考えておらず教師のペースでどんどん進んでいく。付いていけない者は置いていかれる。いや、むしろその為の授業とさえ思えてくる。

E組では殺せんせーが生徒一人一人にあった学習方法を考えており竹林に対しても殺せんせーお手製のアニメの替え歌によって苦手だった加法定理の解法をマスター出来た。(殺せんせーが音痴だったため逆に憶えづらい所もあったが・・・)

 

 

A組での1日が終わり竹林は理解した。今まで自身がE組だったため分らなかったがA組の生徒も勉強ができE組以外の生徒には普通に接している。だが、かつての自分の様に常に勉強に追われており授業の後にもすぐに塾へと走っていた。殺せんせーが効率の良い授業をしてくれるためそれぞれが放課後や休日を満喫できているE組とはえらい違いだった。

 

そこまで考え席を立った時、窓の外から視線を感じた。振り返ると外の植木の間に何かいた・・・・

 

 

 

 

「なんだかうまくやってるみたいじゃない」「むしろ普段より愛想良くね?」

 

片岡や前原が竹林がうまく馴染めていることに安堵している反面、郷や寺坂は少し面白くないような顔をしている。

 

「チェ~、せっかく環境の変化でアタフタしている写真でも撮ろうと思ってたのによ~~」

 

「だからほっとけって言ったんだよあんなメガネ」

 

その後、生徒会長の浅野に連れられた竹林を追うが途中、理事長室に入ってしまったため断念せざる得なかった。

「ウニュ〜・・今日はここまでみたいですね」

 

流石にこれ以上本校舎に居ては目立ってしまうと判断し殺せんせーは解散を告げた。

 

 

――――――――――――――

 

 

「あ〜あ、今日は良い写真は撮れなかったか〜〜」

解散後、街で写真を撮っていた郷だったが、思うように写真が撮なかったが時間も時間のためしぶしぶ帰路についていた。

 

住宅地の曲がり角に差し掛かると奥に竹林と殺せんせーを見つけた。

 

「お~いっ―――――!?」

 

話し掛けようとした時、殺せんせーの無数の触手が目にも止まらぬ速さで動いたと思ったらそこにザ・オタクと言った容姿の竹林は居なかった。代わりに居たのは・・・・

 

ビジュアルバンドのボーカルの様なイケメンだった。

 

「―――――ヴゥアッハァ!?」カシャカシャカシャカシャ

 

そのあまりの変わり様に郷は盛大に吹きながらシャッターを無我夢中に切った。

 

「おやっ?郷君じゃないですか。奇遇ですね」

「郷!?なんでここに・・・」

 

当然殺せんせーも竹林もその存在に気付いたが郷は笑いが止まらないまま竹林に近づく。

 

 

「おまっ!竹林ッ・・・何、お前っそんな、ダイヤの原石だったんッビィッ!かよっ!?・・・・ブハッ!」

 

「こっ・・こんなの僕じゃないよ・・・!」

 

「まぁそうですね。今先生は君の中のオタクという個性を殺してみました」

そう言いながら殺せんせーは竹林のメイクを元に戻した。それを見て郷は「アッ・・」と名残惜しそうな声を上げた。

 

「竹林君、先生を殺さないのは君の自由です。ですが殺すとは日常に溢れている行為なんですよ。君も家族に認められようと自由な自分を殺そうとしています。でも、君ならいつか自分の中の呪縛された君を殺せる日が来ますよ君にはその力があります。焦らずにじっくりとそのチャンスを狙ってください先生はいつでも相談に乗りますよ」

 

そう言い殺せんせーは闇に消えるようにその場から去っていき郷と竹林だけが残された。

 

「んじゃっ俺も帰るは、クリムも待ってるしな」

 

「えっ・・・あ、ああ」

 

「今度また、寺坂の奴メイドカフェに連れ込もうぜ~あいつあの後コッソリと通い詰めてるみたいだからさ」

 

「いや・・・僕はもう・・E組じゃないんだぞ・・・」

 

「?なんか関係あるのか?AでもEでも竹林は竹林だろたいしてかわんね~よ。アデュ~~!」

 

郷も帰り一人その場に残った竹林の頭の中には先程の殺せんせーや郷の言葉が浮かんでいた。

【君ならいつか呪縛された君を殺せる日が来る】【AでもEでも竹林は竹林、たいしてかわんね~よ】

 

 

「・・・ハハッそうだな」

 

静かに笑い竹林はある決心をした。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

翌日、再び開かれた全校集会。会の最後に竹林が壇上に上がった。

 

「あれ?また竹林がスピーチすんのか?」

 

「・・・なんだか胸騒ぎがする」

 

またE組に対しての批判のスピーチなのかとみんなが半ば呆れている中、千葉やカルマなど一部の生徒は竹林から溢れる殺気の様な物を感じた。

 

そして、同じく竹林の殺気を感じ取った郷はなんとなく竹林の意図を察し笑った。

 

「ハッ・・・アイツっ」

 

 

「僕のやりたい事を聞いて下さい・・・・」

全校生徒、そして壁に張り付いた殺せんせーやモニター越しの理事長が竹林に注目する。

 

「僕のいたE組は弱い人の集まりです。学力と言う強さが無かったため本校舎の皆さんからの差別的待遇を受けています。でも僕は・・・」

 

そこまで言うと竹林は1度眼を閉じ大きく深呼吸をした。そして再び開かれたその眼には今までの竹林には無かった強さがあった。

 

「そんなE組がメイド喫茶の次ぐらいに居心地良く感じます」

 

 

「「「「「ッ!!!?」」」」」

 

予想もしていなかった竹林の言葉にまるで時間が止まったようにみんなの動きが止まった。そんな中でも竹林は1人話を進める。

 

「僕は今までウソをついてきました。強くなりたくて、認められたくて、それでも・・・E組の中で役立たずの上裏切った僕を級友たちは何度も気にかけてくれた。先生は要領の悪い僕でもわかるよう手を変え品を変え教えてくれた。誰からも認められなかった僕のことをE組のみんなは同じ目線で接してくれた」

 

教師陣や壇上の脇が騒がしくなっていく中、E組のからは次第に笑顔が溢れていく。

 

「世間から認められる強者を目指す皆さんの事は正しいと思うし尊敬しています。でも、僕はもうしばらく弱者でいようと思います。弱いことを認め弱いことを楽しみながら強いモノの首を狙っていきます」

 

「ッ!撤回しろ竹林、さもないとっ!?」

 

たまらず壇上に現れ浅野が詰め寄るが竹林が取り出したものを見てその足が止まった。それは理事長の教育者としての経歴を称える盾だった。

 

「先日、理事長室からくすねてきました」

 

 

そして竹林はその盾を思いっ切り床へと叩き付けた。ガラスでできたその盾はガシャッン!と音を立て砕け散る。

 

「浅野君の話では過去に同じようなことをしてE組に落とされた生徒がいたとか、前例から考えると僕もこれでE組行ですね」

 

浅野と2,3言葉を交わし壇上から降りた竹林はそのままE組の列へと加わった。本校舎の生徒たちが呆気に取られている中、E組のみんなはそんな竹林を笑顔で迎えた。そして郷と目が合うと静かにサムズアップが送られた。

 

集会終了後、即座に竹林にはE組行きが伝えられたがその顔には公開は無かった。みんなと共にE組への山道を登っていくその顔はまるで憑き物が落ちたかのように晴れやかなものだった。

 




モチベーションが上がるので感想宜しくお願い致します。


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プリンの時間①

2人目の未来ライダークイズが登場しましたね。

前回の忍びというヒーローとしてはメジャーなモチーフの次がクイズ、中々個性的なモチーフですね。

こうなるともう1人はどんなライダーなのか?予想が出来ない・・・

個人的には未来ライダーということで仮面ライダーアクアがサプライズで出てもらいたいという願望がありますが・・・無理でしょうねぇ~


「あ〜今日は何っ食おっかな?」

 

郷がその日の晩ご飯のオカズを決めようと冷蔵庫を開けるが中にはスポーツドリンク数本とタマゴしか入っていなかった。

 

「ゲッ、タマゴだけか〜・・・しゃ〜ない、ご飯にかけるかな」

 

タマゴを取り出し米の盛られた茶碗と一緒にテーブルに置いた。

 

『ん?待ちたまえ郷、そのタマゴは期限が過ぎているんじゃないのか?』

 

「えっ、リアリ〜マジで?」

 

言われて確認してみると確かに1週間程過ぎていたが

 

「まぁ〜・・・大丈夫だろ?冷蔵庫に入れてたんだしさ、無問題、無問題〜」

 

1度は躊躇したが他に食べ物も無かったため結局はそのタマゴをご飯にかけて食べた。

 

だが、郷もクリムも気付かないでいた。実は数日前にビット内で作業をしていた時に冷蔵庫の線が抜けていたことに、そして残暑が残る9月の気温で日中温まったビット内に放置されていたタマゴが既に痛み出していたことに・・・

 

 

 

「グオォォォッ〜〜〜!?」

 

その夜、郷はトイレの中で1夜を過ごすこととなった。

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

「アアアッ〜〜〜・・・・」

 

翌日、郷は食料の買い出しのために街に出ていた。

昨晩ほどの便意は無いが未だに腹の辺りには違和感を感じる。

 

『郷さん、大丈夫ですか?』

 

胸ポケットに入れたスマホから律も心配そうにしている。

 

「決めた。しばらくはぜってぇ〜タマゴは食べない!」

 

郷の小さな決心に律も思わず苦笑した。

すると、メールの着信のメロディーが鳴った。

 

『あ、茅野さんから皆さんへの一斉メールですね』

 

「茅野から?珍しいな」

 

『えっと、「新しい暗殺の計画を実行するからみんなグラウンドに集合ね!」とのことです』

 

「へ〜〜茅野が暗殺の計画を立てなるなんて始めてじゃないか?」

 

基本、他の人のサポートに徹することが多い茅野が立てた暗殺計画、ソレに郷は少しばかりの興味を持つ。

「面白そうだな。よし!行くぞ律!」

 

面白そうな事にはには取り合えず飛び込む。郷は腹の痛みなど吹き飛び帰路を走った。

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

「ゴメンねみんな。せっかくの休みなのに」

 

全員集合したE組グラウンドでホワイトボードを背に茅野がみんなの前に立つがすぐに1人足りないことに気づく。

 

「あれ、郷くんは?」

 

「郷ならあそこよ」

 

速水が呆れ顔でドライブビットを指差す。

実は、郷は急に走った影響かグラウンドに着いたとたんに再び腹痛に襲われそのままトイレに直行していた。

 

仕方なく待っていること数分後、ゲッソリとした顔の郷が腹部を抑えながら出てきた。

 

「お、おお〜〜〜・・・またせ~」

 

ゾンビのようにゆっくりと近付いて来る郷に茅野は軽く引きながらも気を取り直す。

 

「あ、うん・・・じゃ、じゃあ私の計画を発表するね!今回の暗殺に使用するのは・・・・コレです!」

 

茅野が取り出したものを見た瞬間郷はゲッと顔を歪ませる。

ソレは今の郷にとって最も見たくないものだろう。それこそ現在進行形で郷を苦しめている元凶、タマゴであった。

 

「・・・・・・・・・・・(ガルル~~!)」

 

「・・・え~っと郷くん?なんか目が怖いんだけど・・・」

「・・・今の俺にはコレが親の仇の様に憎く見える」

 

「ちょっと落ち着きなさいよ茅野が怖がってるじゃない」

 

今にも噛みつきそうな勢いで茅野の手にあるタマゴを凝視する郷に若干怯え気味の茅野を見かねて速水が引き離す。

 

未だに唸りながらタマゴを睨む郷の視線を受けながらも茅野は説明を続けた。

 

「実は先日ね。殺せんせーと一緒にプリンを食べてた時に言ってたの『1度で良いから巨大なプリンに飛び込みながらお腹一杯食べたい』って、ええ、叶えてあげましょうその願い!!題して、《巨大プリン大爆発大作戦!》ぶっちゃけ私も食べたい!!」

最後に少しの欲望を見せながら茅野がホワイトボードを引っくり返すとそこに書かれた絵で作戦の概要を説明し出す。

「作戦は単純、全国の廃棄処分されてしまうタマゴを集めて殺せんせーが夢中になっちゃうような美味しい巨大プリンをみんなで作って殺せんせーに食べさせる。殺せんせーが食べることに夢中になっている隙にプリンの底に仕込んだ火薬仕様の対先生弾の爆弾を爆発させます!」

 

どうかな?と茅野は自信満々でみんなを見る。

 

「良いかもな」

「殺せんせーって甘いものに目がないから上手くいくかも!」

「何より今までサポートに徹していた茅野の作戦だから意外性もあるね」

 

みんなが口々に賛同の声を上げていくが、ここで一人空気の読めないヤツがいた。

 

「異議あ〜り!」

後ろの方でピシッと右腕を伸ばしながら郷が出てきた。

 

「オイオイ郷、いい加減にタマゴに目くじら立てるなよなぁ」

「ちげ〜よ。ソコじゃなくてだな」

 

タマゴに当たったことを未だに根に持っていると思っていた吉田に否定し郷はホワイトボードの前に立つ。

 

「タマゴを使うことには反対しないけどなどうせ作るならプリンなんかじゃなくて・・・・・ドーナッツだろうが!!」

 

「「「「「「「・・・・・・・・は?」」」」」」」「・・・・・ああっ!? 」

 

郷が腹の内から出した言葉に思わず間抜けな声が出た。(約1名の声には殺意が籠っていた)

 

「あからさまに巨大プリンなんか渡しても殺せんせーが警戒するに決まっている。そしてなにか仕込むなら底部だって言うのも容易に想像できる!対してドーナッツなら円状のドコに仕掛けがあるか予想が困難になるから成功率も上がるハズ!それにな、この前一緒にドーナッツ食ってた時に『1度で良いから巨大なドーナッツを食べながら一周してみたいですね〜』って言ってた!つーか俺もしてみたいっ――「ウラァッ!」――ガスガッ!?」

 

先程の茅野に負けず劣らずの熱弁(ついでに最後に漏らした自身の欲望)を繰り出す郷の意見に周りからは『一理あるかも』という雰囲気がではじめたのだったが突如繰り出された膝蹴りによって郷は地面に沈んだ。

 

「おっおい郷!?」

 

視界から飛ぶように消えた郷に駆け寄ろうとした千葉の前に郷を沈めた人物が仁王立ちで立ち塞がった。

その人物は言うまでも無く茅野であった。普段の小動物の様な可愛らしさは消え失せその眼は自身の道を妨げるものは力をもって排除する凶戦士の様だった。

そしてその眼は郷の意見に賛同しかけていた者達にも向けられる。

 

「みんなはどうなのかなぁ~?まさか郷くんの味方するわけじゃないよねぇ~・・・・」

 

 

「「「「イエッ滅相もありません!!」」」」

 

みんなわが身可愛さに一瞬頭に浮かんでいた郷の意見に対しての評価を消し飛ばした。そのことに満足したのか茅野から殺意が消え再び華やかな笑顔が咲く。

「だよねぇ〜!やっぱり作るならプリンに決まって――――「何すんだこのまな板娘ぇ〜!!」―――いぎゃぁぁぁぁ!!?」

 

茅野の笑顔を横から伸びて来た手が覆った。

郷のアイアンクローを受け茅野は悲痛の叫びを上げる。

 

「プリンなんか笑止千万!作るのはみんな大好き、ドーナッツに決まってん―――「うるさい出歯亀!!」――だぶさっ!?」

 

茅野はアイアンクローを喰らった状態から郷の腹へと膝蹴りを打ち込んだ。下痢ぎみの腹にそんなものを喰らい平気なハズなはく郷はその場にうずくまる。

 

「ドーナッツのおいしさは確かに認める。でもこの巨大プリンを作る一世一代のチャンスだけは誰にも渡さないんだからぁ!!」

茅野はうずくまる郷の両脚を掴むとその体型からは考えられない力で逆さに持ち上げた。

 

 

「うおっりあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ワッツ!?ちゃっとまっ――――!」

 

茅野は年頃の女子が上げるのはどうなのかと思う雄叫びと共に郷を持ち上げたまま跳んだ。

 

ドシィン!と地響きを起こしながら着地すると郷の首、背骨そして股に尋常ではないダメージを与えた。

 

「ああ・・・アレは!プリンス・カメハメが作り出した48の殺人技の1つ、キン肉バスター!!」

 

不破が両手を握り締め熱く語りだしたが、他のみんなは茅野の明らかに異常なその力に思いっきり引いていた。

 

 

「ウブッ!?・・・・ブハァ!!」

 

郷が吐血し白眼を剥いたのを確認し脚を離す。その際、郷の血の一部が顔に着いたがそれを拭うこともせず茅野はの笑顔がみんなに向けられる。

 

「じゃぁ~作ろっか!プリン」

 

「「「「「「「Yes・Ma‘am!!!」」」」」」

 

 

この瞬間、E組に1つの暗黙の了解が生まれた。【プリンに関して茅野に逆らってはダメ】

 




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プリンの時間②

ビルドNEW WORLO仮面ライダークローズ観てきました!

いや~・・・クローズエボルが格好良かった!!


TV本編で明かされなかったエボルトの暗躍やロストボトルの謎なども明かされクローズとエボルの夢のタッグなどビルドファンは見ないと絶対損しますね!

ジオウではアナザーリュウガの猛攻が激しかった。今まで常に余裕を見せていた白ウォズをも圧倒する強さ。
しかも変身しているのは他人でも過去の存在でもなくミラーワールドの真司本人ですからねぇ・・・そりゃ強いわ


結局何が言いたいのかというと・・・・ドラゴンのライダーは最高!!



翌日、烏間によってE組グラウンドには全国から集められた大量の廃棄予定のタマゴや巨大なプリンの型をはじめとした巨大プリン作りの材料が集められた。

 

この作戦を聞いたときは子供ながらの奇抜な発想に呆れていた烏間だったがそもそも相手がいろんな意味で常識では測れない存在のため何が決め手となるか分からない。

 

「その代わり、殺るからには全力で取り組むように!」

と激励の言葉をくれた。

 

そして、茅野を中心とした巨大プリン暗殺計画は始まった。

 

 

 

「はぁ~・・・ドーナッツ~・・・・」

 

郷も未だにドーナッツへの未練が残ってはいるようで文句を言いながらもタマゴを次々と割っていく

 

「郷、いい加減にあきらめろって」

 

「分かってるけどよ・・・・はぁ~~・・・」

 

 

「・・・・・・・・」

 

速水は倉橋とともに作業をしながらそんな郷の様子を見ていた。

 

「でもさカエデちゃん、この前テレビでも巨大プリンを作ってたけどさ自分の重みでつぶれちゃってたよ」

 

「そう言えばそうね。何か対策はあるの?」

 

倉橋と速水がふと思い出したように言う。

 

「じゃぁ今からでも遅くないからドーナッツに変更しよう――――ガっ!?」

 

攻め時かとばかりに横から口を出してきた郷を肘打ちで沈めながらも茅野は心配ご無用と言った。

 

「その対策はバッチリ考えてあるよ!」

 

そう言い茅野が取り出したのは粉末の寒天だった。

 

「凝固剤としてこの寒天を混ぜればその繊維で強度が増すの。しかも寒天は融点が高いから熱で溶けにくく野外でも崩れにくくしてくれるんだ」

 

 

 

作業は着々と進んで行き型に流し込むところまできた。

各班ごとに混ぜたプリンを順番に流していく。

 

「あっそうだ!これも時々投げ込んでね」

 

茅野が取り出したのは色取り取りのゼリーだった。

 

「何これ・・・?」

 

 

「フルーツの果汁をオブラートで包んだものなんだ。さすがに同じ味ばかりだと飽きちゃうと思っていろいろと味の変化が楽しめるように用意したんだ!」

 

プリンの知識だけでなく味への配慮も考えてある。茅野の妥協のない行動力に一同感心した。

普段は決して前に出ることがなくサポート向きだと思われていた茅野だが、好きなものに関してはこれほどまでの行動力を発揮する。これも一種の才能なのかもしれない。

 

 

「ねえ茅野、ちょっと良いかしら?」

 

みんなに的確に指示を出していく茅野に速水が話しかけある相談をした。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

作業開始から3日目、巨大プリン作りは最後の仕上げにかかっていた。

 

「じゃあ型を外すぞ!」

 

磯貝がみんなに確認をし慎重に型を取る。

ゼラチン寒天で形を整えカラメルソースをかけ表面をバーナーであぶり・・・・

 

「「「「「「できたぁーーーーっ!!」」」」」

 

3日間かけE組特製巨大プリンが完成した。

 

「うわぁ〜〜美味しそう!」

「あの中に爆弾があるなんて思えないよな」

その会心の出来に生徒たちは思わず唾を飲み込む。

 

「じゃあ早速殺せんせーを呼んで作戦開始だ!」

 

「「「「「おお〜〜〜!!」」」」

 

「・・・・・・・・」

みんなの士気が上がる中、作戦の立案者の筈の茅野はどこか寂しげに巨体プリンを見つめていた。

 

 

 

 

「はあぁぁぁぁあっ〜!」

 

殺せんせーは目の前の光景に眼を輝かせる。渚に呼ばれグラウンドに来てみるのと自身の夢である巨大プリンが目の前のあるのだ。

 

「こっコレを本当に頂いて良いんですか!?」

 

「良いよ良いよ、気にしなくて」

「廃棄処分されちゃうタマゴをちゃんと使ってあげたかっただけだしね」

「殺せんせーには何時もお世話になってるからそのお礼も兼ねてね」

 

それを聞いた瞬間、殺せんせーは大粒の涙を流しながらプリンに飛び込んでいった。

 

「じゃあ俺たちは教室にいるからさ」

「残さず食べてね〜!」

 

教室へと移動した生徒たちは窓から殺せんせーの様子を見ると既に巨大プリンの5分の1ほどを食べ進んでいた。

 

「すげぇ〜・・・もうあんなに食べ進んでるよ・・」

 

相変わらずの速さに若干呆れながらもその動向を見守る。

 

「みんな、そろそろ準備するね」

 

竹林が取り出したのはプリンに仕込んだ爆発の起爆スイッチである。

さらにパソコンのモニターには爆弾と一緒に仕組んであるカメラの映像が映されてあった。

 

「タイミングは殺せんせーが食べ進めこのモニターに光が差し始めた瞬間だけど誰が押す?」

 

「タイミングが早いと威力が落ちるし、逆に遅いと回避される可能性があるからな・・・」

「あっじゃあ俺がやろうか?」

 

そこで手を上げたのは意外にも郷だった。普段はあまり暗殺計画に加担することは少ないが今回はやけに積極的であった。

竹林からスイッチを受け取るとクククっと黒い笑みを浮かべだす。

 

「巨大ドーナッツを却下され、さらに茅野にボコられた。溜まりに溜まった鬱憤をあのプリンを爆破させることで発散させてやるよぉ〜」

 

 

 

 

どんどん食べ進めていく殺せんせー、それを見る生徒たちは息をのみその時を待っていた。

 

「・・・・・・ッ!?」

 

真っ暗だったモニターに微かな光が映る。

何人かが思わず身を乗り出すが郷はまだスイッチを押さない。

だんだんとモニターが明るくなっていく。

みんなはモニターを食い入るように見る。

 

そして、モニターの端にスプーンの一部が映った。

 

「今っ!――「ダメェ―――ッ!!!」ダブラァァァ!?」

 

茅野の右ストレートは郷の右頬に綺麗に決まり郷は切り揉み回転しながら机へと突っ込む。

 

「愛情込めて作ったプリンを爆破なんて、やっぱりダメェ〜〜!!」

 

茅野は郷の落とした起爆スイッチを拾い上げそのまま地面に叩き付けようとする。

慌てて寺坂が止めようとするが茅野の意外な力強さに苦戦する。

 

「バカ!プリンに感情的になるなよ!元々ブッ飛ばすために作ったんだろうが!!」

 

「嫌だ!嫌だ!嫌だ!! このままずっと、校庭にシンボルとして飾るんだぁ!!」

 

「腐るわ!!」

 

なんとか茅野からスイッチを奪い返した寺坂がスイッチを押した。反射的に生徒たちは耳を塞ぎ伏せた。

 

「「「「・・・・・・・?」」」」

 

 

いつまで経っても爆発音も衝撃も来ない。寺坂が何度もスイッチを押してみるがやはり爆発は起こらない。

どうしたんだと竹林がモニターを見ようとした時

 

「ふぅ~ちょっと休憩です」

「「「「ッ!?」」」」

 

 

そこには、プリンを食べている筈の殺せんせーが口元をナプキンで拭きながら立っていた。しかもその手にはプリンに仕込んだはずの爆弾があった。しかもしっかりと起爆装置は外されていた。

 

 

「プリンの中に異物の匂いを感じましてねぇ。土を食べて地中に潜り先に起爆装置だけは外しておきました。爆弾の材料には強めの匂いを放つものが多くありますからね。竹林君、今度は先生の鼻にかからない成分の研究をしてみる事です」

 

 

「・・・・っはい」

 

「さて、せっかく皆さんが作ってくれたプリンですが先生一人で食べるよりもみんなで食べた方が美味しいですね」

 

殺せんせーが全員分のスプーンと皿を取り出し配り始めた。

 

「しっかりと奇麗な部分を区切っておきましたからねこれより、E組プリンパーティーをはじめましょ!!」

 

「「「「オーーッ!!」」」」

 

みんなは一斉にプリンに駆け寄っていった。

それぞれ、巨大プリンから自分の分を取り分け食べだす。

茅野が用意したフルーツゼリーのおかげで様々な味が楽しめた。

 

 

「はぁ〜せっかく食べるんならやっぱりドーナッツの方がなぁ〜・・・」

 

「ごっ郷!///」

 

「んあっ?どった速水」

 

「材料が少し余ってたからコレ・・・作ってみたんだけど////」

 

速水が差し出した皿にはきれいな円ではなく少々不格好なドーナッツが盛られていた。

 

 

「初めて作ったからちょっと形が変だけど・・・原や茅野にアドバイスしてもらったから味は大丈夫だと思うわ///」

「おお〜!リアリ―マジで!?」

 

先程までの沈み具合はどこへやら、さっそく皿からドーナッツを取り食べ始める。

 

「・・・・どうかしら?」

 

「ん、普通に美味いけど」

 

「そう、よかった・・・!」

 

するとその様子を見ていた岡島が血の涙を流しながら詰め寄って来る。

 

「郷ぅ~~!!おまっ何イチャイチャしてんだよ!俺と結んだ【モテないエロ同盟】を裏切るのかぁ!?俺にもそのドーナッツをよこせぇ!!」

 

 

皿の上のドーナッツへと手を伸ばす岡島だったが郷が身を低くし懐に入り込む。

 

「誰がやるかあぁぁ~~!!」

郷のアッパーが見事に決まり岡島は空高く舞い上がった。

 

「これは俺のモンだぁ!指一本触れさせねぇ。ってかそんな同盟結んだ覚えはねぇよ!」

 

「うるしぇ〜〜!一人だけ速水の手作りを食べやがって、羨ましいじゃね〜か!」

 

「それは・・・アレだろルックスの差?」

 

「「「「ピキッ(怒)」」」」

 

郷が何の気なしに放った一言に岡島の他、数名の男子が殺意を向けた。

E組トップクラスの磯貝や前原、カルマと比べれば幾分か劣るものの郷の外見もそれなりに整っている方だろう。

 

「郷ぉ!お前は言っちゃいけない事を言った!!」

「リア充死すべし!!」

「俺たちにも・・・女子の手作りドーナッツをよこせぇ!!」

 

E組のルックス下位組が一斉に郷の持つ攫目掛けて飛び掛かる。

 

「上等だぁ!!盗れるもんなら盗ってみろぉ!!」

 

始まった一部の男子による見苦しい戦いをよそに茅野は次々とプリンを食べていく。

 

「惜しかったね茅野・・・むしろ大事なプリンが爆破されないで安心した?」

 

「あはは・・・少しね///」

 

渚の問いかけに茅野は恥ずかしそうに笑う。

 

「でも、また殺すよ。親しい友達にも隠してる刃ならまだあるんだからね」

 

プリン越しにその瞳はドーナッツ争奪戦に参加しだした殺せんせーを確かにロックオンしていた。




ルックス下位の男子、メンバーはご想像にお任せします。

モチベーションがあがるので感想宜しくお願いします。


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速水の時間①

真司と編集長、龍騎においては真司と連・北岡とゴロちゃんに次ぐ名コンビといえますね。
2人のやり取りを見ると当時を思い出しました。


そしてジオウ2、時間を戻したり相手の動きを先読みしたりとまさにやりたい放題!
流石魔王としか言いようがないですね。

二号ライダーの死の運命を時間を戻して救う主人公の強化フォーム・・・・アレ?デジャブですかね?

次回登場の最後の未来ライダー、キカイ。変死するのはまさにキカイだー!


休日の午後、矢田は入院している弟のお見舞いに訪れていた。昔から身体が弱く入退院を繰り返していた弟だが、最近は病状も落ち着いてきたため今日は医師からの許可も下りたので一緒に病院の敷地内を散歩することにした。

 

外に出ようと病院内の廊下を歩いていると階段を登っていく見覚えのある顔が見えた。

 

「あれ、凛香?お〜い!」

声をかけるが速水は聞こえないのかそのまま上の階へと上がっていく。

 

「あれ?聞こえなかったのかな・・・」

 

階段を除いて見るが既に速水の姿は無かった。

 

「ん~・・・誰か入院でもしてるのかな?」

 

しかし速水の知り合いで誰かが入院しているなんて聞いたことがない。

 

 

「おね~ちゃん!早くいこうよ~!」

 

「あ、うん今いくよ!・・・明日聞いてみようかな」

 

速水の事も気にはなるが弟が外に出られる時間は決められているため今はその時間を優先することにした。

 

 

 

 

 

 

杉野は休日になると近くの公園で投球練習をするのが日課である。基本的には公園の塀に向かい投げ込みを行う程度だが予定が合う男子が居ればバッターになって貰う事もある。

だが、今日は公園へ行くと実に意外な人物がバッター役を買って出たのだった。

 

「よっし、いくぞ!!」

 

「何時でもいいわよ!」

 

振りかぶる杉野と相対するのは握りしめたバットを構え鋭い眼差しで睨む付ける速水だった。

 

「いっけぇぇ!」

 

杉野の渾身の一投は直後、カキーンと良い音を鳴らしながら空へと吸い込まれていった。

 

 

 

「打たれた・・・俺の渾身の一投だったのに・・・」

 

公園内のベンチに座り込みうなだれる杉野に速水は買ってきたお茶を差し出した。

 

「何時まで落ち込んでるのよ。シャキッとしなさいよね」

 

「いくらなんでも女子に打たれるなんて自身が無くなるんだよなぁ~・・・」

 

 

差し出されたお茶を飲みながらも杉野のため息は止まらない。

 

「それにしても速水が俺に付き合ってくれるなんて初めてだよな。今日は郷や千葉と訓練しないのか?」

 

「本当はその予定だったんだけど・・・急に郷が用事が出来たって言ってきて中止になったのよ。それでこの前、郷が球技は動体視力鍛えるのに丁度良いって言ってたのを思い出したのよ」

 

 

「あ~確かにメジャーリーガーとかでも動体視力が良い人って多いいよな」

 

速水の説明に納得した杉野は自身のグローブを見つめる。

 

「メジャー、俺もいつかは行くんだってこのグローブに誓ったんだよな」

 

「そんなに大事なグローブなの?」

 

「ああ、実はこれ、メジャーリーグで活躍している大山選手が実際に使ってたヤツなんだよ!昔見に行った試合で貰った一番の宝物なんだよ!何時か俺もメジャーに言って大山選手にこのグローブを返すのが夢なんだよ」

 

 

グローブを太陽にかざし語るその顔はまぶしい位に輝いていた。ところが、その顔は長く続かず次第に青ざめて行った。

「・・・アレ?・・・なんだか・・・・ハラが・・?ちょっと・・・トイレ・・・・!」

 

腹を押さえトイレへと駆けこんでいく杉野。そして速水はベンチに置かれた杉野のグローブを冷たい眼差しで見ながら・・・

 

「フフ・・」

 

小さく笑った。

 

 

 

前原は駅前の喫茶店でデートをしていた。

相手は椚ヶ丘とは違う学校の生徒であった。

楽しくお喋りをしながらお茶を飲んでいたがふと店の入り口を見ると見覚えのある人物が入ってきた。

 

(アレって速水だよな?)

何時も郷や千葉、あるいは他の女子と一緒に居ることが多いい速水が一人で喫茶店に来ていることに前原は若干の物珍しさを感じた。

入店した速水はそのまま真っ直ぐに前原たちの席の隣、前原に背を向ける形で座った。

 

声をかけようかとも思ったが流石にデート中に他の女子に話し掛けたら相手に悪いし見たところ速水も気付いていないようすだ。

 

(まぁ明日学校で言えばいいか)

 

そう判断し前原はデートを楽しむことにした。

 

 

 

 

 

 

「じゃあお願いね倉橋ちゃん」

 

「は〜い!」

 

今日の休日を動物たちと一緒に過ごそうと動物園に来ていた。

年に何度も訪れている倉橋は持ち前のコミュニケーション力でスタッフの人たちともすっかり顔馴染みとなっており。たまに動物の餌やりなどの手伝いもしていた。

 

今日もまた急に体調を崩してしまったスタッフの代わりに猿山の餌やりをお願いされた。

餌の入ったバケツを両手に持ち馴れた足取りで猿たちの中に入っていくと今まで思い思いに遊んでいた猿たちがぞろぞろと倉橋に群がっていく。

普通だったら押し寄せてくる猿の大群に多少なりとも恐怖を感じるものだが倉橋は全くそんなものは感じておらず笑顔を振りまきながら猿たちと一緒にサル山の中央まで行く。

 

「あ〜!餌やりのお姉ちゃんだ!」

 

もはやこの動物園の不定期のアイドル的存在である餌やりのお姉さんの登場に子供たちが大はしゃぎし倉橋もそんな子供たちに手を振りながら猿たちに餌を与えていく。

 

 

「・・・・・・・フフッ」

 

 

猿山前に出来た人だかりの中、速水は猿たちに餌を与えていく倉橋を見ながら小さく笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

磯貝と片岡は図書館で次の暗殺計画の計画書を作っていた。E組みんなで考えた渾身の計画、これで殺せるとは思えないが殺せんせーの弱点の一つでも見つける事が出来れば上出来だ。

そのためにもみんなに正確に作戦内容を伝えるための計画書を作らないとならない。

 

これまでも何度も行ってきた作業だがやはりターゲットはマッハ20の超生物、生半可な計画では弱点を見つけるどころか遊びにもならない。そのため、常に前回よりも高度な計画を立てないとならない

 

 

「よし、これで完璧だ!」

 

 

開館直後から始めた作業は数時間が立ちようやく目途が付いた。計画に必要なもの、適したポイント、当日の一人一人の行動などをまとめ上げた。

 

「後はコレを全員分コピーして明日から準備に入ろう!」

 

「じゃあ私は没になった方を処分してくるね」

 

 

磯貝はコピー機へ片岡はシュレッダーへ向かった。

 

そんな二人の背中を本で顔を隠しながら速水は見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

E組校舎のある裏山の中を郷は駆け抜けていく。それに遅れる様に速水と千葉が追いかけていく。

2人は手に持ったエアガンで郷を狙うがまるで後ろに目が付いているのかのように郷は木の枝を掴み逆上がりの様に躱しそのまま木の頂上まで上がっていく。

 

「まだまだ遅いぞ~生身の俺に当てられないんじゃ殺せんせーに当てるなんて夢のまた夢だな~」

 

「ハァ・・・ハァ・・ッ!相変わらず速すぎるのよっ!」

 

「ハァ・・・ハァ・・もう・・百発は撃ってるのに・・ハァッ・・一向に当たる気がしないな・・・・」

 

 

「ホラホラぁ~一発当てれば昼飯奢ってやるんだから頑張れよぉ~!」

膝に手を着き息を乱す2人に対し郷は顔色ひとつ変えることなく木から飛び降り着地と同時に地面を蹴りさらに奥へと進んでいく。

 

 

「クッ、このままじゃきりがないわね・・・・千葉、私が郷の気を引くから隙をついて狙撃して!」

 

「ああ、分かった!」

 

速水が郷を追いかけ千葉は木に登り身を潜める。

 

 

「ん?速水だけか・・・・な〜る、やっぱりそう来たか」

 

飛んでくる弾の数が減った事に振り返ると追い掛けてくるのは速水だけで千葉の姿が見えない。

 

だが、郷は瞬時にその狙いに気付く。

 

共にE組トップクラスの射撃を誇る速水と千葉だが、千葉がじっとターゲットを狙う固定型のスナイパーである一方速水は特技であるダンスで鍛えた運動神経を生かした移動型のスナイパーと言えた。

 

怪しまれないよう郷を千葉が待ち構える狙撃ポイントまで誘導しようとする速水だが、

 

(・・・・やけに素直ね)

 

土を岩をそして木を蹴りながら縦横無尽に跳び郷に対し狙撃ポイントへの誘導がやけに順調だった。

まるで、速水が誘導しようとしているのを分かっているかのようだ。

 

(バカにしてッ!)

 

思わず奥歯を噛み締める。

確かに自分たちと郷の実力には雲泥の差があるが余裕の態度をとられるのはやけに腹が立つ。

 

(絶対にあっと言わせてやる!)

 

そう決心した速水は隠れている千葉へと合図を送る。

 

 

「さ〜って、どう仕掛けてくるかな――ッ!?」

 

速水が合図を送ったことには郷もすぐに気づいた。どこから来るのか周囲に気を張り巡らし右足を踏み締めようとするが。

 

「ワッツ!?」

 

踏み締めようとしたその一部の地面がぬかるんでおり郷は脚を滑らせた。

数日間は雨も降っておらずまた、先程から裏山中を走り回ったがぬかるんでいる場所など1ヶ所もなかった。

つまりこのぬかるみは速水たちが仕掛けたトラップだ。

 

(こんなピンポイントで仕掛けたのかよ!?)

 

木の上からは千葉の背後からは速水の撃った銃弾が倒れ込んでいく郷へと迫る。

 

((やった!!))

 

いくら郷でも倒れ込みながらでは回避できないはず。

 

とうとう郷に1発喰らわせた。そう確信し二人は顔を綻ばす。

 

その時、郷から謎の衝撃のようなものが周囲に拡がっていった。

すると郷に迫っていた弾がまるでスロー再生のように遅くなった。

 

弾だけでなく風に舞う草も流れる川の水もそして、速水や千葉までもまるで映像の世界のようにゆっくりと動く。

 

この現象を2人はよく知っていた。

 

(コレってもしかして!?)

(重加速、なのか!?)

 

止まった時間の中を体制を立て直した郷は自分に向かっていた2発の弾を掴み取った。

 

「あ〜〜・・・ビクッた〜!まさか足下に仕掛けておくなんてな〜」

 

「ちょっと郷!コレどうにかしなさいよ!」

 

「ウエッ!?ああ、ソーリー」

 

郷が指を鳴らすと先程とは違った衝撃が拡がり止まった時間が動き出した。

 

「キャアッ!?」

 

突然動き出した身体に思考が遅れ脚を踏み外してしまった。

 

「速水っ!?」「大丈夫か!?」

郷と千葉が駆け寄るとうずくまる速水の右脚に少しばかりの切り傷が出来ていた。

どうやら身体が崩れた時に木の枝で切ったようだ。

 

「わ、ワリ〜!つい咄嗟にやっちまって!」

「だ、大丈夫よコレくらい・・・ッ!?」

 

とは言いつつも傷からは少なからず血が出ているためそのままにしておくわけにもいかない。

 

「一旦ドライブビットに戻って手当てした方がいいな」

 

そう言い郷は速水を抱き抱える。

 

「ちょっちょっと!!自分で歩けるわよ///!!」

 

「な〜に言ってんだよ。無理に歩いたら傷が拡がるかもしれないだろ?千葉、悪いけど荷物は任せていいか!?」

 

「ああ、分かった。先に行っててくれ」

 

 

千葉は少し離れた場所に置いておいた3人の荷物を取りに行き郷も速水を抱えながらビットへと向かう。

 

 

 

 

「まあ、こんなもんで大丈夫だろ」

 

ビットに着くと郷は奥から取ってきた救急箱で速水の手当てをした。

とは言っても消毒をして絆創膏を貼ったぐらいだが。

 

 

「2.3日すれば治るだろうからソレまではあんま動かすなよ」

 

「ええ・・・・その・・ありがとう////」

「ま、元々俺がケガさせたみたいなもんだしな」

 

 

「悪い、遅くなった!」

 

そこに3人分の荷物を持った千葉が入ってきた。

 

「それにしても驚いたな。郷も重加速を使えるなんて」

 

荷物を適当な場所に置きながら千葉が言うと速水も確かにと頷く。

 

「・・・元々、ロイミュードとライダーシステムは心臓部が同じ【コア・ドライビア】を使っているからな。ライダーシステムでも重加速は生み出せるんだよ」

 

「ん?でもさっきは別に変身もしてなければベルトも着けてなかったよな?」

 

「えっ?・・・・・あ、ああ・・・シグナルバイクにもコア・ドライビアが使われてるからな!」

千葉のツッコミにキョドりながらもシグナルバイクを取り出し説明する郷だったが速水にはその様子がとても不自然に感じられた。

 

 

「それよりも!だ。この後はどうする?速水のケガもあるし訓練を続けるわけにはいかないだろ?」

 

速水の視線から逃げるように郷は話題を変える。

大したケガではないが無理に動かし悪化させるわけにもいかない。

 

「じゅあ街にまでも出るか?ちょっとミリタリーショップで新しいスコープが欲しいんだけど」

 

「そうね。私も見ておきたいかも・・・・」

 

「仮にも華の中学生がミリタリーショップってなぁ〜・・・」

 

2人の仕事人ぶりに苦笑する郷だが他に案があるわけでもない。

 

「まぁ良いけどさ。じゃあその前にミスド寄ろうぜ!」

 

「またミスドか?」

 

「もう何度目よ?」

 

「良いだろ〜お前らの希望でミリタリーには行くんだし、それに重加速を使わなかったら当たってただろうから約束通り今日は奢るからよ」

 

 

コレからの予定を決めた3人はビットに備え付けられたシャワーを浴び汚れを落とし街に繰り出した。




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速水の時間②

 仮面ライダーキカイの世界観がアレ、この小説の未来の時代みたい?
と失礼なことを思ってしまいました。

そしてゲイツ「お前が今やるべきことは勉強だ!」➔「お前が今やるべきことは寝る事だ!」・・・どっちだよ!





雲1つない晴天の下を元気いっぱいに歩き回る弟の姿を見ていると矢田は自分の顔が自然と笑顔になっていくのが分かった。

 

医師の話だとまだしばらくは入院することになるがこの調子なら来月には退院できるらしい。

 

 

「おね〜ちゃん!早く、コッチコッチ!!」

 

「今行くよ!」

 

大きく腕を降りながら叫ぶ弟の元へ向かおうとした矢田の視線がなぜか弟の上方、病院の屋上へと向かった。

 

「・・・・えっ?」

 

屋上に人影が見えた。基本的に屋上への出入りは禁止されており本来人がいるはずはない。しかも、そこに居たのは矢田がよく知る人物だった。

「・・・・凛香?」

 

先程の階段ではわずかに見えた程度だったため断言は出来なかったが。

今度は間違いない。そこにいるのは確かにE組の友達、速水凛香だった。

 

その友達が今、屋上から真下にいる弟を見ていた。

普段ならそんな気にならない。むしろ、弟に自分の友達を紹介していただろう。

 

だけど今日のこの時は何故だか恐怖を感じた。今すぐに弟を速水から隠さないといけないと思わずにいられなかった。

 

そして次の瞬間にはその胸騒ぎが間違っていなかったことが分かった。

 

「エッ凛香!?」

 

速水は屋上に置かれていた植木鉢を持つと一切の躊躇もなく下にいる矢田の弟へと落とした。

 

「―――ッ!?危ない!!」

 

この時、すぐさま動けたのは日頃の訓練のお陰だっただろう。

弟に向かい跳び抱き締めながら地面に倒れ込んだ。

その直後、矢田のすぐ後ろで鉢植えが音を立てて割れた。

 

「キャァーー!!」

 

近くにいた看護師の悲鳴と共に周りの人たちが集まってきた。

 

「イッタ!?」

 

何が起こったのかまだ理解できずにいた弟の無事を確認をしようとした矢田だったが膝に痛みが走った。

見ると僅かに血が出ていた。

 

少し擦りむいた程度で大したことはなかったがそれを見た弟は自分のせいで大好きなお姉ちゃんがケガをしたと思い泣き出してしまった。

 

「大丈夫、お姉ちゃんは大丈夫だから!」

 

泣き止まそうと声をかけるがそれでも弟は泣き止まなかった。

矢田の心に速水への怒りが沸き起こりキッと屋上を睨む。だが、速水はそんな矢田をあざ笑うかのように屋上から去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴメン、速水お待たせ!」

 

突然の腹痛に襲われた杉野は10分ほどに及ぶ激戦を終えようやくトイレから出て来た。急いでベンチに戻ったがそこに速水の姿は無かった。

 

「アレ?帰っちゃったのかな・・・」

 

ベンチを見てみるとお茶のペットボトルとバットが置かれたままだった。だがそこで杉野は自分の大切な大山選手のグローブが無いことに気付いた。

 

「アレッ!?どっどこ行ったんだ!!?」

 

辺りを見渡してみるがグローブはどこにも見当たらない。杉野が焦りだしていると少し離れた茂みから速水がニヤニヤ笑いながら出てくるのが見えた。その手には何故かナイフが握られてありそしてそのニヤリ顔が杉野に向けられるとそのまま公園から走り去っていった。

 

嫌な予感がした杉野は必死に頭の中で(そんなはずない)と否定しながら茂みへと走った。

背の高い草を払っていき開けた場所に出た瞬間、すぎのは目に移った光景に杉野は膝から崩れ落ちた。

 

「あっ・・・アア・・・・・ッ!」

 

そこにはズタズタに斬り付けられたグローブが無残な姿で捨てられていた。

 

 

 

デートを楽しみながらも前原は背を向けている速水の様子がどうも気になっていた。

 

店に入ってきてから10分は経っているが注文をする気配もなくただ静かに席に座っているだけだった。

 

「・・・・ねぇ前原くん、聞いてる?」

 

「エッ!?アア、聞いてるよ!」

 

そんな前原の様子に相手の女子は不満を抱いた。

彼女、【牧原 宇美】との付き合いはまだ短いがE組のマドンナである神崎に引きをとらない容姿であり前原はかなり本気であった。

 

このままじゃダメだと思い一度顔でも洗って来ようと考えた。

 

「ちょっとゴメン」前原が席を立ち店の奥に消えていくと同時に今まで微動だにしなかった速水が立ち上がると前原たちの席に近付いた。

 

「ちょっと良いかしら?」

「エッ?はっはい・・・・」

 

見ず知らずの人に話しかけられ戸惑う宇美に対し速水はニヤリと笑う。

 

 

 

しばらくして気持ちを切り替えした前原が席に戻ると速水の姿は無く宇美も何故か俯き何かを堪えるように震えていた。

 

「いや〜お待たせ」

 

前原が笑顔で話し掛けるとその直後、宇美によって右頬を叩かれた。

 

「ひどいよ!前原くん私だけじゃなくて他の娘たちともデートしてるんでしょ!?」

 

「なっ!?何でそれを!」

 

「前原くんのクラスメイトの娘が教えてくれたの!「アナタもただ遊ばれているだけよ」って!もう・・・私に近付かないで!!」

「あっちょっとまッ・・・・!」

 

前原が呼び止める間もなく店から出ていった。

取り残された前原だったが、話を聞いていた周りの客からの軽蔑の眼から逃れる様に足早に店を後にする。

 

宇美が言っていたクラスメイトが誰なのか?そんなものは考えるまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

次々と集まってくる猿たちに倉橋は平等に餌を与えていく。

本来、猿山にはボスを頂点とした縦社会が築かれてあり下の者は上へと餌を譲らなければならない。

だが、倉橋が餌を与えるときはそんな縦社会が存在しないかのように全ての猿が餌にありつけられる。

 

自然と生き物と心を通わすことができる。倉橋の1つの才能と言えた。

 

そんな彼女の才能は今、多くの人を笑顔にしていた。そして、それを見る彼女もまた笑顔を浮かべている。

 

(あれっ?あそこにいるのって・・・・?)

 

親子連れがほとんどのお客の中に友達がいることに気づいた。

 

(やっぱり凛香ちゃんだ!お〜い!!)

 

流石に他のお客の手前声を出すことはしなかったが速水に向かいとびっきりの笑顔と千切れんばかりに手を振った。

 

(・・・・・ニヤッ)

 

だが、そんな倉橋に対し速水が返したのは花のような笑顔でも恥ずかしげな控え目に手を振ることでもなかった。

「・・・・・えっ?」

 

速水が倉橋へと向けたものそれは普段、速水や倉橋も使っている対殺せんせー用のエアガンだった。

周りの客は猿山に夢中になっていて気付いていない。

速水は一切の躊躇もなく引き金を引いた。

 

『ウキャァー!!』

 

速水の撃った弾は倉橋ではなくその側にいた1匹の猿に当たった。

 

突然身体に走る痛みに暴れだした猿は近くにいた他の猿や倉橋に襲い掛かる。

 

「やっ・・・ヤメテ!・・・・・ヤメテェ―――!!」

 

1匹の暴走が引き金となり次々と猿たちは暴れだす。

やがて猿山の全ての猿が互いに傷つけ合い出した。

なんとか猿たちを落ち着かせようとする倉橋だが理性を失った猿たちにその声は届かず。猿たちの牙は倉橋にまで向かった。

 

「キャアァァァ―――!!!?」

 

異変に気付いたスタッフたちが倉橋を助けようとし更に猿の被害を受ける。目の前で拡がる地獄とも言える光景に悲鳴をあげる中を速水は楽しそうな笑顔でその光景を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

「アレ?動かない・・・」

 

磯貝と別れた片岡は没になった暗殺の計画書を処分するため図書館に設置されたシュレッダーの前まで来ていた。

 

だが、電源を入れても何故かシュレッダーは動き出さない。

「どうしたのよ片岡?」

 

「あっ、速水さん」

 

どうしたものかと悩んでいると数冊の本を抱えた速水が話し掛けてきた。

 

「実はシュレッダーが動かなくて・・・」

 

「ふ〜ん。コンセントが抜けてるんじゃないの?」

 

「えっ?・・・・あっそうかも」

 

何で気付かなかったのか?少し恥ずかしくなりながらも片岡がシュレッダーの裏を覗き込むと実際にコンセントが外れていた。

 

コンセントを挿そうと身を乗り出した片岡は気付かなかった。片岡の後ろにまとめた髪を見ながら笑う速水に・・・

 

 

「クゥ・・・もう・・少し・・・・入ったッ!?」

少し手こずりながらもシュレッダーのコンセントを挿した片岡だったがその瞬間、後ろ髪が何かに引っ張られた。

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

必死に抵抗する片岡だが引っ張る力は次第に強くなっていく。

原因は何なのか?なんとか目を動かし原因探る。

 

(そっ・・・・そんなっ!)

 

片岡の目に映ったのはシュレッダーに巻き込まれた自分の髪だった。

 

「うっ!・・・はっ・・速水さん!?」

 

側にいる速水に助けを求めるが速水はそんな片岡を見ながら笑っていた。

 

「速水さん!?たす・・・・助けて!このままじゃっ!」

 

「フフッ、イヤよ。せいぜい頑張りなさい」

 

「速水さん!?まって速水さん!!!?」

 

 

笑いながらその場を後にする速水に片岡はすがるように手を伸ばすがその手が届くことはなく速水は去っていく。

 

 

引き込まれていく頭を引き抜こうとするとブチブチと嫌な音がする。

その身長や性格からあまり女の子として認識されない片岡がせめてもと手入れをしてきた髪が次々と抜けていくが今はそれを気にしている余裕もなかった。

ただこの場を助かるための方法を考える。

 

(ッ!そうだ・・・コンセントを・・・!)

 

慌てていて考え付かないでいたがコンセントを抜けば!

 

先程自分で挿したコンセントに手を伸ばすが先程と違い引っ張られている今の片岡では手が届かなかった。

 

 

「も・・もう・・・・ダメ・・!」

 

踏み止ませていた手が限界に達した。

 

「あっ!アア〜〜!!」

 

「片岡っ!?」

 

片岡の頭部がシュレッダーに巻き込まれようとした直前、磯貝によってシュレッダーのコンセントが抜かれシュレッダーが停止した。

 

「大丈夫か!?片岡!」

 

「ハァ・・・・ハァ・・・ハァ・・い、磯貝・・・くん・・?」

 

磯貝の顔を見た瞬間、助かったことによる安心感からか押さえ込んでいた恐怖が一気に片岡の全身に駆け巡る。

 

「アッ!?・・・・アアア〜〜・・・・!!」

 

男子以上に男らしい。普段そんなことを言われる片岡はただ、自分を襲う恐怖に泣いた。

そして同時に、自分を見捨てた友人への怒りに震える。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ〜〜〜・・・ヒマだ」

 

街中のとあるビル内、郷は廊下の窓際に置かれたベンチに座り呟き目の前のミリタリーショップを眺める。

ガラス越しには速水と千葉が肩を並べ商品を物色しているのが見える。

 

時折笑顔を見せ合う二人の姿に郷は無意識のうちにカメラを向ける。

 

「・・・・やっぱりお似合いだよなぁ〜・・」

 

以前、からかい目的で言ったことがあるが改めて見てみてもあの二人は理想の組み合わせに見えた。

楽しそうな二人を・・・いや、速水を見ていると郷は次第にモヤモヤした気持ちになっていく。

 

「・・・・ハァ、俺らしくないっ・・・・か?」

 

気分を変えようと背中の窓ガラスの先の景色に目を向ける。人々が行き交う中にとても見覚えのある顔が見えた。

 

「・・・ワッツ!速水!?」

 

慌てて店内を振り返るがそこには確かに千葉と一緒に速水の姿がある。再び外を見るがそこに速水の姿は無かった。

 

 

 




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速水の時間③

 アナザージオウ、ジオウⅡと同じく相手の未来を見る事が出来る能力って何かその二人だけ戦いの次元が違う感じですね。

そして来週は、とうとうゲイツがゲイツリバイブへと変身!CMを見て分かったんですがあれって砂時計だったんだ・・・・


「うぃ〜〜グッモーニンッ「どういうつもりよ!!」・・・グ?」

 

郷が教室にはいると同時に片岡の叫びとバァンと机を叩く音が響いた。

 

見ると何故か室内で帽を被った片岡をはじめ、矢田や倉橋、杉野と前原の面々が速水の机を取り囲んでいる。

 

 

「なに、どったの?」

 

「さぁ〜?5人とも教室には入ってくるなり速水さんを囲みだしたからね〜」

 

自分の席につきながら近くのカルマに聞くがカルマも良くは分からないようだった。

そして、囲まれている速水も何のことだが分からず困惑していた。

 

「なっなによいきなり・・・」

「とぼけないで!昨日私たちにしたこと忘れたなんて言わせないわよ!!あなたのお陰でっ〜〜!・・・・コレを見て!!」

片岡が帽子を取ると今まで傍観していたクラスの全員が息をのんだ。普段後ろでまとめられていた片岡の髪が驚くほど短くベリーショートと言えるほど短く切られ・・・いや、千切られていた。

 

それだけでなく杉野はズタズタに切り裂かれたグローブを机の上に叩き付ける。矢田の膝には包帯が巻かれており倉橋の顔には無数の引っ掻き傷が出来ていて前原の右頬は赤く腫れている。

 

「俺の宝物のグローブをよくもッ・・・!」

 

「凛香のせいで弟は精神的に傷を負ってまた入院が伸びたんだよッ!」

「幾らなんでもデートの途中であんなこと言うかよ!!」

 

「猿山の子達やスタッフの人たちもみんな怪我したんだよっ!!」

5人の攻め立てる様に叫ぶ様子速水は思わずたじろぎ助けを求める様に郷に視線を向ける。

 

「これ、弁償で済ませられるモンじゃっ「はいっスト〜ップ」なぎっ!?」

 

流石にそのままにしておくわけにはいかず郷は速水に詰め寄ろうとする杉野の肩を掴んで引き離す。

 

「たっく、そんな一方的に詰め寄って騒がれても迷惑なんだよ。俺たちにもわかるように説明してくれよな」

 

 

 

 

 

片岡たちが昨日それぞれに起こったことを順番に説明していくと大半が同情や速水へ不審な目を向けるが何人かはその話に不自然な点を感じていた。

 

「・・・・・いや、おかしくね?」

 

「何だよ郷!?俺たちが嘘ついているって言うのかよ!!」

 

「落ち着けよ前原!郷の話も聞けって」

 

「速水なら昨日は俺や千葉と一緒にいたけどな?」

 

「ああ、それは間違いないな」

 

千葉も郷の言うことに頷く。2人は確かに昨日は速水と一緒にいた。速水が2人視界から消えたのは精々お手洗いの時の数分だった。

 

「でっでもよ!郷たちの言ってることが正しいとは言い切れないだろ!?」

 

だが、それでも前原は納得できずにいた。速水を見たというのは5人も同じであるし郷たちは速水と仲がいいため庇っていると思われても仕方ない。

「でもさぁ〜」

 

と、いままでそこでカルマが手を上げ会話の中に入っていった。

 

「仮に郷たちが速水さんを庇っていたとしても前原たち5人の言うことが全部本当っていうのは無理じゃない?だよね律」

 

『確かにカルマさんの言う通りです。片岡さんたちの当時の位置、速水を目撃した時刻を纏めましたが・・・・』

 

律が写し出した地図には図書館や公園、病院に動物園と喫茶店がマークされているがそれらはいずれも距離が離れていた。

 

 

『時間内にこの距離を移動するのは不可能です』

 

律がそう断言すると流石に片岡たちも納得するしかなかった。

「でもよ!じゃあ俺たちが会った速水は一体誰なんだよ!?」

 

杉野は昨日実際に速水と一緒に野球をしていたため見間違えとは思えなかった。

 

「・・・・もしかして、ロイミュードなんじゃ?」

 

渚の呟きが教室に拡がった。

 

「ロイミュードがボクたちを険悪にするために仕組んだ罠なんじゃないのかな!?」

 

「確かに、その可能性はありますね〜」

 

「「「・・・・・・エッ!?」」」

 

気付かない内に教室に殺せんせーが入ってきていた。

 

 

「いや〜焦りましたよ。授業の準備をしてたら片岡さんたちの声が聞こえましてね〜・・・先生、学級崩壊が始まったのかと思いましたよ!!」

殺せんせーの手には【防げ!学級崩壊】という題名の本があった。

 

 

 

 

 

「では、先程の話ですがロイミュードが皆さんを仲違いさせるのを目的と仮定しまして何故速水さんに化けたのでしょうか?」

 

殺せんせーが教壇に立ち生徒たちもそれぞれの席につく。

 

「E組をバラバラにするならクラスの中心人物である磯貝くんや片岡さんの方が効率がいいですからね〜〜その辺りについてはどう考えますか?・・・・郷くん!!」

 

「ワッツ!?」

 

いきなりの名指しにビクッとした郷に全員の視線が集まる。

 

「あ〜・・・今回のがロイミュードの仕業なら多分犯人はロイミュード083だろうな」

 

郷は即答でロイミュードのナンバーを断言した。

 

「何でナンバーまで分かるの?」

 

茅野の疑問は殺せんせーを含む全員の疑問であったが郷はそんなの決まっているとばかりだった。

 

「ロイミュードが人間に化ける時は対象の記憶を読む必要があるからな。速水がロイミュードと接触した覚えがないなら既に速水コピーしている083しかないだろ?」

 

郷は どうだ?と周りを見るがみんなはロイミュードの人間に化ける方法や速水がロイミュードにコピーされたことがあるという事実に驚いていた。

その様子に気付いた郷は、

 

「・・・・・アレ?言って無かったっけ?」

「「「「初耳だわ!!」」」」

 

「そだっけ?いや~まだ数か月前の事なのに懐かしいなぁ・・・・」

 

郷は何処か遠い目をしながら当時を思い出す・・・・

 

「あれは冷たい雨が降りしきる日だった。異形の怪物によって姿を奪われた少女は天よりその身を投げ出された・・・・まさに、一人の少女の命が無惨にも散ろうかと言うその時にっ「いいわよワザワザ振り返らないで///!!」ってオイ!!」

 

当時を思い出したのか速水は恥ずかしそうに叫び郷の回想を遮る。

 

「何すんだよ!コレから颯爽と現れた俺の活躍を語る所だったんだぞ!!」

 

「いいわよそんなことしないでも///!今は私に化けている083の事でしょ!」

「にゅ〜・・・話の続きはとても気にはなりますがぁ・・・郷くん何かロイミュードのコピーを見抜く方法は無いのですか?」

 

 

「それがあったら苦労して無いっスよ。まぁ取り合えずしばらくの間は速水に目印でもつけるしかないっスかね」

 

郷が指を鳴らすと教室にマックスフレアが入ってきた。

 

「しばらくフレアに速水のボディガードをやらせッから」

 

マックスフレアは速水の席へと着くとそのまま速水の肩に乗った。

 

「外で速水と会ったらフレアの存在を確認してもしフレアがいなかったら俺に連絡するってことで」

 

 

 

 

―――――――――――――——————————

 

 

放課後、郷はビット内で今までのマッハの戦闘データをまとめていた。

このデータを元にデットヒートのパワーを効率良く扱えるようにするためだ。

 

「・・・・ハァ〜・・・・つっかれた〜」

 

一区切り付き凝った身体を解す。

ギシッギシッと郷の身体から鳴る音に混じりスマホの着信音が聞こえた。

「ん?岡野からっ珍しいな・・・はいは〜い、どした?」

 

『あっ郷!?今、家に帰ろうとしてたら凛香がっ!』

 

「――てッいきなりかよ!?」

 

郷はすぐさまライドマッハーに乗り走り出す。

 

岡野の話ではニセモノの仕業だとわかってもやはりギスギスしている速水や片岡たちの仲を戻そうと女子たちで食事をしようとファミレスに向かっていた所、突然曲がり角からもう1人の速水が現れた。

 

もう1人の速水は自分が本物だと主張したがそれがウソなのは分かりきっていた。今日は1日、速水は常に誰かと一緒におりしかもその肩にはマックスフレアが留まっている。だからこそ岡野たちは今、隣にいる速水こそが本物であると分かった。

 

郷に連絡しようとするとニセモノはその場から逃走しだし速水がそれを追いかけたらしい。

 

 

 

 

「岡野、矢田、片岡!」

 

「「「郷(くん)!」」」

 

 

「速水は!?」

 

「あっちに行ったよ!」

 

岡野達の下に駆け付けた郷はそのまま岡野が指さした先へと向かう。街灯が少なくなり闇に包まれた道をライドマッハーをライトが照らす。

 

 

まだ視界には入らないが闇の先から2つの速水の声が言い合っているのが聞こえた。

 

「いい加減にしなさいよ!速水凛香は私よ!!」

 

「・・・うるさいわね。黙って私に速水凛香を譲れば命は取らないで上げようと思ってたのに、なら此処で死になさい!!」

 

「ッア・・・キャッァァ!!」

 

 

「—————ッ!?速水!」

 

ライトの明かりが二つの影を捉えた。郷がゼンリンシューターを構えたその先に居たのは・・・・

 

「はぁはぁ・・・郷!」「・・・・郷」

 

地面に倒れ息を乱す速水。そして・・・そんな速水に銃を向け冷淡な笑みを浮かべるもう1人の速水だった。

 




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速水の時間④

 舞台・仮面ライダー斬月見ました!!

いや~・・・テレビとも映画ともショーとも違う新しい扉を開くような感じがして初めは正直不安だったんですがそんな不安を一気に吹き飛ばしてくれる面白さでした!!

鎧武の世界にもう一つの鎧武の世界を作り出していてしかもそれを最終回まで凝縮したような濃さでした。まるでディケイド版の鎧武の世界を見ている気分にもなりました。

そして、ディケイドと言えば次回のジオウにて仮面ライダーディエンドこと海東大樹がネオ・ディエンドライバーを携え参戦。さらにブレイドこと剣崎一真とカリス、相川始も登場するとのことで楽しみで仕方ありません!!


(・・・・・何でよ)

 

速水は目の前の光景が信じられなかった。いや、信じたくなかった。

 

「083!速水から離れろ!!」

 

郷が、自分を睨み付け銃口を向ける光景が・・・・

 

 

 

 

 

今日、教室に入ると急に片岡たちに詰め寄られ覚えの無い事で責められた。

郷の機転で何とかその場は収まったが未だに片岡や矢田からは疑うような目を向けられ続けたため、岡野が間に入り一緒に食事をすることにした。

 

ファミレスで食事をしながらたわいのない話をしていくうちに片岡たちとも自然と笑い合えるようになっていき食事を食べ終えた後もしばらく店で話し続けていた。

 

だが、その帰り道に突如現れたもう一人の速水。

自身の振りをし友達に危害を加えたその存在と目が合った瞬間、速水の心に強い怒りが沸き上がった。

制止する岡野たちを振り切り逃げ出した偽物を追い掛けた。

 

暗闇の先にわずかな月明かりに照された自分と同じ髪を追って行くとやがてもう一人の速水は立ち止まり振り返った。

 

 

その顔は自分と同じでありながら自分では決して作れないような歪んだ笑みを浮かべていた。

 

 

「フフフ、久しぶりね」

 

「ッ!?アンタ、やっぱりあの時の!」

 

もう一人の速水は不適な笑みを浮かべながらその姿を変えていく。

 

「あの時は仮面ライダーの・・・郷の邪魔が入ったけど今度は確実に始末してあげるわ」

 

もう一人の速水はその姿をバット型ロイミュード083へと戻した。

 

「—————ッ!?」

湧き上がる怒りから何の考えも無しに追い掛けた速水だったが丸腰でロイミュード相手に戦えるわけがない。ゆっくりと近付いてくる083に対し詰められない様に後退するしか出来ないでいた。

そんな速水を守る為、鞄の中に潜んでいたマックスフレアが炎を纏い083に向かっていく。

 

「うっ!?コノッ、邪魔よ!」

 

フレアの攻撃に一瞬は怯んだ083だったがすぐにフレアの動きを見切り地面へと叩き付けた。

 

「フレア!?」

 

「フフ、このまま殺してもつまらないわね・・・少し遊びましょうか?」

 

そう言いながら083は何かを取り出し速水へと投げ渡した。

 

「コレは!?」

 

083が渡したモノ、それは一丁の拳銃だった。

しかも持った感じから普段使っている国の特注のエアガンとは違う。夏休みに島で手にしたのと同じ本物の拳銃だと分かった。

 

「コレなら少しは遊べるでしょ?」

 

再び速水の姿となった083はもう一丁の拳銃を取り出し構えた。

 

ニヤニヤ笑うその目を見て速水は舐められていると感じた。

 

「・・・バカにして!」

 

083へ銃口を向け引き金を引いた。

 

銃声と共に火薬のニオイが速水の鼻をくすぶる。

同時に083の後ろの塀が小さく破裂した。本物の拳銃を撃ったのは初めてじゃない。普段の速水なら決して外していなかったはずだが自分をコピーした083に対する怒りから冷静でいられず狙いが甘くなっていた。

 

「ダメじゃない良く狙わないと。折角先に撃たせてあげたのに」

 

083は呆れたようなバカにしたようなため息を吐き銃口を向けた。

 

「―ッ!?」

 

咄嗟に横に跳んだ速水のすぐ側を銃弾が通り過ぎる。

 

「ホラ、止まったら当たるわよ!」

 

083は遊んでいるかのように速水に当たるギリギリを狙い続けた。

 

「このッ!」

 

速水も撃ち返そうとはするが動き続けるのに精一杯でそんな余裕はなかった。

 

「速水凛香は射撃が得意なのよね?なら、今その射撃で勝っている私こそが速水凛香ね」

 

「いい加減にして!速水凛香は私よ!」

 

「・・・・うるさいわね。黙って私に速水凛香を譲れば命は取らないで上げようと思ったけど・・・なら、ここで死になさい!」

 

更に苛烈になっていく083の銃撃だったがしかし、速水にも勝機が無いわけではなかった。おそらくもう一人の自分が現れた事で岡野たちが郷に連絡を入れたハズだ。郷が来るまで時間を稼げればいい、それに・・・

 

「ホラ!少しは撃ち返して来なさい――ッ!?」

 

083の銃撃が止まった。

ロイミュードの光弾と違い拳銃なら撃てる弾数は限られている。普段から拳銃を使い慣れている速水と違い083はそんな事一切気にしないで打ち続けていたためすぐに弾を打ち尽くしたのだった。

 

(今だっ!)

 

083の動きが止まったのを見逃さなかった速水は距離を詰めしゃがむと083の脚を払った。

 

 

「きゃぁ!?」

 

バランスを崩し転倒した083に速水は素早く銃口を向けた。

 

「ハァ・・・ハァ・・・・私が速水凛香よ」

 

引き金に掛かる人差し指に力が入る。拳銃の銃弾でロイミュードが倒せるとは思ってはいないけどそのニヤついた顔に一発叩き込み自分こそが本物の速水凛香だと証明させる。

速水が引き金を引こうとしたその時、速水の顔に強いライトが当たった。

 

「速水!?」

 

ライトの正体は郷の駆るライドマッハーだった。

「ッ郷!?」

「・・・・・郷」

 

ライドマッハ―から降りた郷は目の前の光景に困惑し目を丸くする。

 

だが、すぐにその目を鋭く尖らせゼンリンシューターを構える。

 

「083!速水から離れろ!!」

 

「・・・・・えっ?」

 

郷が銃口を向けたのは083ではなく速水にだった。

 

速水が愕然としているとその隙をつき083は速水から離れ郷に駆け寄る。

 

「大丈夫か速水?」

 

「おっ遅いのよ///」

 

「ハハ、ソーリーソーリー」

 

笑顔で083と話す郷と文句を言いながらも顔を赤くする083、まさに普段の自分たちのやり取りそのものが行われている。でも、そこに居るのは自分ではないロイミュードだ。

速水が郷に近づこうとするがその足元にゼンリンシューターから放たれた光弾が破裂した。

 

「今度は逃がさねぇぞ083!」

 

「ちっ・・・違うわ!聞いて郷!私が本当のっ!」

 

だが、速水の言葉を聞く事なく郷の腰にはマッハドライバーが巻かれた。

 

「レッツ・・・・変身!」《シグナルバイク!ライダー!マッハ!》

 

郷はマッハへと変身するとゼンリンシューターを構えながら1歩づつ速水へとにじり寄っていく。

「何でよ・・・・?なんで・・・分からないのよ!?」

 

マッハの背後では083がニヤリと嘲笑っている。その後ろからは岡野や片岡たちが走ってくる。

「みんっ「大丈夫、凛香!?」ッ!?」

 

速水が声を掛けようとするがその前に岡野たちは083へと駆け寄る。

 

「アイツが凛香のニセモノ・・・」

 

「じゃあ、私たちを襲ったのはやっぱり!?」

 

岡野や片岡、倉橋たちまでが速水を敵意の目で見る。

 

(なんでよ?・・・・・なんでよなんでよなんでよナンデヨナンデヨナンデヨ・・・・)

 

さっきまで一緒に笑っていた友達からのその視線に速水はもはやどうすればいいのか分からなくなった。

 

「なんでよぉ!!?」

 

速水は怒りのままに岡野たちに寄り添わされる083に向け発砲した。すぐ側には生身の岡野たちがいるにも関わらず速水にはそんなことを気にする余裕はなく弾丸は083や岡野たちに迫る。

 

「ヤバッ!」

 

マッハが盾になろうとするが一瞬の反応の遅れから間に合わない。速水の撃った銃弾が岡野達に命中するかという時、空から黄色い影が岡野達の前に落ち銃弾から守った。

 

「皆さん、大丈夫でしたか!?」

 

 

「「「「殺せんせー!!」」」」

 

岡野達を守った影の正体、それはそれはころせ殺せんせーだった。普段はいろいろ情けないがいざとうい時には頼りになる担任の登場にみんなが笑顔になる。

 

そして、はやみもまた殺せんせーの登場に一筋の光明を見出した。

 

(殺せんせーなら私が本物だってわかってくれるはず)「殺せんっ「郷くん!速水さん達は私が守ります!ロイミュードはお願いしましたよ!」———ッ!?そん・・・な・・」

 

「オ~ライ!分かってるっスよ」

 

殺せんせーさえも自分の事を偽物と決めつけロイミュードを守る出した。マッハがゼンリンシューターを構えジリジリと近付いて来る。

 

殺せんせーが・・片岡や岡野、矢田たちが・・・そして、郷が自分を倒すべき敵として見てくる。

 

「いや・・・イヤァァァァァ!!」

 

速水はその場から逃げ出した。

ただ、一秒でもその視線を浴びないために・・・自分の友達に守られながら不適に笑う自分じゃない自分を見ないために・・・

ただ、ひたすらに速水は走り続けた。

 




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速水の時間⑤

ジオウトリニティ・・・アレ、どこのてんこ盛り?

初変身時のリアクションや戦闘時の動きは電王を彷彿とさせるものでしたね。
そして【トリニティ】という名前からやって欲しいとは思っていましたが来週元祖トリニティとの共闘!今から楽しみです。

ブレイド、アギトとかつてのレジェンドが続けて変身してくれて今後のレジェンドにも期待して良いんですかね?


「イヤアアアァァァ!!!」

 

「逃がすかよ!」

 

絶望の悲鳴をあげ逃げ出そうとする速水の頭上を飛び越えマッハが立ち塞がった。

 

「観念しな。ホラッ何時までも速水の真似してないで正体を見せ――ッ!?」

 

銃口を向けたマッハの目に飛び込んできたモノ、ソレは両目から流れる大粒の涙だった。

 

「・・・・はや・・み・・・?」

 

「―――ッ!?」

 

「アッ!?オイッ!!」

 

その涙を見た瞬間、僅かに動きが止まったマッハの横を走り抜けていく速水を追い掛けようとするも頭の中に浮かぶあの涙にマッハは脚を止めてしまった。

 

「俺、なんで・・・・今・・?」

 

去っていく速水の背中を見ながらマッハは何故追い掛けようとしないのか自分でも理解が出来なかった。

 

「郷くん!どうしたんですか!?調子が悪いのなら先生がッ「良い!!ストップだ殺せんせー!!」にゅっ!?」

 

変身を解除した郷に代わり追おうとした殺せんせーだがマッハの一喝で止まった。その間に速水の姿は闇の中に消えていく。

 

「ちょっと郷!なんで逃がしちゃったの!?」

「そうだよ!このまま凛香のニセモノを放っておいたら何するか分からないよ!」

 

「・・・・あ、ああ・・・でも・・・」

 

岡野や矢田が郷に詰め寄るが郷の思考は別の事に向いていた。

逃げた速水は本当にロイミュードなのか?あの流した涙が作り物だとは郷にはとても思えなかった。

 

(もし、あっちの速水が本物だったら此処に居るのは・・・・)

 

郷は探るような視線を片岡に付き添われている速水へと向ける。

 

「ごめんなさい!私たち、ニセモノが居るかもって言われてからも内心では速水さんを疑ってたの!」

 

「いっ良いのよ!分かってもらえればそれで・・・・」

 

頭を下げられ戸惑っていた速水は郷の視線に気づくとその眼を見てニコリと笑った。その笑顔はとても美しくそして儚く見え何に変えても護らなくてはならないと思えた。

 

(・・・ッ!?そうだ。悩む必要なんかなかったな。速水を護る為にあの偽物をぶっ潰す。今はそれだけを考えれば良いんだ)

 

郷の中にあった戸惑いは消え逃げたニセモノを今度こそ倒すと決意した。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ハァ・・・ハァ・・ハァツ!」

 

周りの住宅からも漏れる明かりに照らされた住宅地を速水はひたすらに走り続ける。脚を止めることは出来なかった。止まったらあの視線を感じてしまうから、自分をロイミュードとして見る矢田の片岡の岡野の倉橋の殺せんせーのそして、郷の視線を・・・

 

「ッ!?違う・・・・違うちがうチガウ!!速水凛香は・・・私よ!!」

 

速水の脚は家へと向かっていた。誰からも否定された自身の存在を肯定してくれる最後の人物である実の両親を求めて。

 

 

「ハァ・・・・ハァ・・・ハァ・・・お父さん、お母さん」

 

十数分間、走り続けた速水はようやく家へと辿り着いた。

リビングの窓から漏れた明かりと僅かに聞こえてくるテレビの音が両親の存在を教えてくれた。

 

E組に入って一時期はギクシャクした関係が続いていたが徐々に上がっていった成績やクラスメイトとの交流で感情を表に出すようになってきたことから少しずつ改善されていった。

 

 

速く両親の顔を見て【凛香】と呼んでほしい。自分の存在を肯定してほしい。

息も整わない内にドアノブに手を伸ばす。

 

「ただいっ「おおっ!今日のデザートはやけに美味いな!」・・・?」

家へと入った速水の耳に聞こえてきたのはやけにテンションの高い父親の声だった。

 

「そうなのよ。クラスのお友達から貰ったんですって」

 

「そうか、E組に落とされた時はどうなるかと思ったが良い友達が出来たんだな」

 

両親の会話するリビングへと向かうと2人はソファーに座りテレビを見ながらどら焼きを食べていた。

ソレは先日、茅野がオススメだと言ってクラスのみんなに配ったモノだった。

速水も食べるのを楽しみにしていたモノだったため

先に食べられていることに若干の不満はあったが今は何より両親と話したくリビングへと入る。

 

「ただいま・・・」

 

 

だが、リビングに入った速水を両親は不思議そうな顔で見た。

 

「あら凛香、只今ならさっき言ったじゃない」

 

「・・・えっ?」

 

「着替えてくるんじゃなかったのか。遅いから先に食べ始めていたぞ」

 

速水は一瞬、両親が何を言っているのか理解できなかった。だが何か嫌な予感し自分の部屋へと駆けあがっていく。

部屋に入った速水の目に移り込んだのは大好きな猫の写真がプリントされたお気に入りの部屋着に身を包みベットに寝ころびながら雑誌を読むもう1人の自分だった。

 

「あら、遅かったわね。てっきり帰ってこないのかと思ったわ」

 

「なっ何でアンタが此処に居るのよ!」

 

「何言ってるのよここは速水凛香の家よ。なら私が居るのは当然じゃない」

 

「———ッ!?ふざけないで速水凛香は私なのよ!」

 

 

もう1人の自分に掴み掛る速水だがもう1人の速水は「無いを言うか」と嘲笑う。

 

「さっきの忘れたのかしら?片岡たちも殺せんせーもそして、郷だって私を本物として見ていたのよ。つまり、それが答えよ。私が速水凛香で・・・」

 

 

速水の手を振り払いもう一人の速水は赤いバイラルコアを速水へと押し込んだ。

 

「アンタがロイミュード083よ」

 

「アッ!?アアッ・・・・!!」

 

もう1人の速水の胸元と赤いバイラルコアが怪しく光り出すと二つの光は速水の身体へと入り込んでいく。

 

「アアッ・・・アアアアアアッ~~~~!!?」

 

今まで感じたことのない何かが身体の中を駆け廻っていき速水の肉体を変化させていく。その様子をニヤニヤと眺めながらもう一人の速水はスマホを取り何処かへと連絡を取り始めた。

 

「郷ッ!?大変なの、部屋にロイミュードが!」

 

「アアアアアアッ~~~~!!!」

 

その苦しみから速水は窓を突き破り外へと跳び出した。連絡を終えスマホをベットの上へと投げ捨てたもう一人の速水はその姿を見下ろしながら笑う。

 

「・・さようなら。私」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

「あ・・アアアッ〜〜・・・」

 

速水は悲鳴を上げる身体を引きずるように歩き続ける家の近くの小さな公園へとたどり着いた。

燃えるように熱い身体を少しでも冷やすために公園の片隅にあるトイレへと入り全面台の蛇口に触れようとした。

 

「エッ・・・!?」

 

伸ばした自身の手が視界に入り速水は自身の目を疑った。そこには女子のシワ一つない手も細い指もきれいな爪も無かった。あるのはゴツゴツした手に丸く先には穴の開いた太い指だった。

 

「・・・ハァッ!?・・なによ・・・・・コレっ?」

 

視線を恐る恐る上へと上げていく。そんなはずはない!私は人間だ!そう自分に言い聞かせながら鏡に映る自分の姿を見た。

 

 

「なっ!・・・・なン・・デ・・?」

 

そこに映るのは速水凛香という人間ではなく胸に083というナンバーを持つ一体のロイミュードだった。

 

「わっ・・・ワタシハ・・・ロイミュード・・?」

 

「見つけたぞ。083!」

 

「ッゴ、郷?」

 

さらに鏡の向こう側にゼンリンシューターの銃口を向ける郷の姿も映っていた。

 




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年号が変わる前にもう一話は投稿めざします。


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速水の時間⑥

 ギリギリでセーーーフ!!


何とか平成最後の投稿間に合いましたぁぁ!!

ジオウはアギトの篇演出が最高過ぎでしたし響鬼ではまさかの京矢変身体の登場で嬉しかったです。
令和でもジオウに期待していきたいです!





※タイトルの数字が間違っているとの指摘を受け訂正しました。


速水からの連絡を受けた郷は速水の家へと向かう途中に夜道を走るロイミュードの後ろ姿を見つけた。

 

ナンバーは確認できなかったが背を向ける方向から見て速水の言っていた083だと判断できた。

 

だが、住宅地の今仕掛ければ人目につきやすい。幸い相手は郷に気付いていないらしくフラフラと移動している。

 

(・・・・少しタイミングを見るか)

 

そう考えた郷はライドマッハーから降りロイミュードの後を着けていく。

 

 

しばらくするとロイミュードは小さな公園のトイレへと入った。

 

(ココならいけるな)

 

郷は隙を見て仕掛けようとゼンリンシューターを手に中を除くとロイミュードは洗面台の鏡を見ていた。鏡に写ったロイミュードの胸のナンバー、ソレはやはり083だった。

「ワタシハ・・・ロイミュード・・・?」

 

「見付けたぞ!083!」

 

郷は083に銃口を向けながら叫びドライバーを装着する。

 

「――ッ!?ゴ、郷!?」

 

「レッツ、変身!!」《シグナルバイク!ライダー!マッハ!》

 

郷はマッハに変身すると有無を言わせず攻撃を仕掛けた。

 

ゼンリンシューターによる打撃が083のボディを打ち抜きトイレの壁へと叩き付けた。

 

「キャアァァッ!?」

 

壁はその衝撃に耐えきれずに砕け散り083は外へと吹き飛んだ。

 

「ウッ・・・アアッ・・・!」

 

「・・・・今度の今度こそ逃がさねぇよ」

083を追い砕けた壁から外に出たマッハは倒れ込む083にゆっくりと近付きながらゼンリンストライカーを回しながらエネルギーを貯める。

 

083の周りの地面には壁と共に割れた鏡の破片が刺さっておりそこに写る自身の姿を見て呟く。

 

「・・ソウダ・・・・ワタシハ・・ロイミュード・・ロイミュードナンダァ!!」

 

 

突然吠え出した083は指先から光弾を連射しマッハに攻撃するがゼンリンシューターですべて弾き落とした。

 

「おっ!ようやくやる気になったか?」

 

「アアアアァァァッ!!」

 

マッハは雄たけびを上げ殴り掛かって来る083の攻撃を躱してゆきバックステップで距離を開ける。

 

「さぁ~って、マッハで決めさせてもらうぜ!」《ズーット!マッハ!》

マッハは音速の領域に入り083の視界から消えた。

 

「・・・ッ!?アアッ!?」

 

 

083の背後に回り込みゼンリンシューターを叩き付ける。083は振り返り反撃しようとするがそれより早くマッハは距離を空け今度は側面から攻め立てた。

 

反撃の隙は与えない。マッハの怒濤の連続攻撃が083を追い込んでいく。

 

「そんじゃ、コイツでトドメだ!」《ヒッサツ!フルスロットル!マッハ!》

 

上空へと飛び上がったマッハは高速回転をしエネルギーをチャージ、その勢いのまま083へとキックマッハーを放つ。

 

(・・・・ソウカ・・・コウスレバ・・クルシマナクテイインジャ・・ナイ・・)

「ハアァ!?」

 

083は一切の抵抗を見せる様子も見せずむしろマッハの必殺技を受け入れるかのように両腕を広げる。

 

(コレデ・・・モウ・・クルシマナデ・・・・スム・・)

 

予想もしなかった083の行動に困惑するマッハだったがキックの勢いは止まらず083へと迫った。

 

だがその時、マッハの攻撃をナニかが弾く。

 

「グウッ!?」

 

バランスを崩しながらも何とか着地した郷は自身の妨害をしたモノの正体に仮面の下で目を見開く。

 

「お前ッ!?・・・・どういうつもりだよ?」

 

「・・・・・フレア?」

 

マッハの攻撃を防ぎ083を護るように立ち塞がったのはマックスフレアだった。

先程、083と戦った際のダメージを残した状態でボロボロのままにも関わらずフレアは自身に与えられた任務のためにこの場に駆け付けたのだった。

 

 

「フレア、そこを退けよ!なんでお前がロイミュードを守るんだ!」

 

マッハの叫びにもフレアは083の前から動こうとはしない。

 

「ッ〜〜!もう一度言うぞ。そこを退けよ!退かないなら・・・・」

 

マッハは銃口をフレアへと向けた。

「退かないならお前も撃つぞ!」

そう言っているかのように銃口はフレアに狙いを定めている。

 

 

「・・・・・フレア・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・バカ野郎」

それでも動こうとしないフレアにマッハは引き金を引いた。

 

「ダメ、郷!!」

 

フレアへと迫る光弾の前に083が立ち塞がった。

 

「なぁっ!?」

 

「アアアッ!!」

 

ゼンリンシューターの光弾を受け悲鳴を上げながら倒れていく083はその姿を速水のモノへと変えた。

 

「何なんだよ・・・・」

 

対してマッハは先程からの出来事に訳が分からなくなっていた。

 

シフトカーのマックスフレアがロイミュードを助けロイミュードの083がフレアを守る。

普通に考えてあり得ないことが立て続けに起こり理解が追い付かない。

 

 

マッハが呆然と倒れていく083を見ているとフレアがその身に炎を纏い向かってきた。

 

「アッ!?ガアァァ!!?」

 

対応が遅れフレアの突撃をまともに受けたマッハだったが、その衝撃とは別のナニかが身体を巡っていくのを感じた。

 

 

 

「アッ!?・・・・・・・ハァ・・ハァ・・・・」

 

変身が解除されたが何とか踏みとどまった郷だったがその視界に入った083だった速水の姿を見ると

 

「ハァ・・ハァ・・・・・はや・・・み・・・?」

 

先程まで、ロイミュードに間違いないと思っていたその姿が今は本物の速水にしか思えなかった。

「・・・・ご・・う・・・?」

 

「――ッ!速水!!」

 

郷は傷付き倒れながらも自分の名前を呼ぶ速水に駆け寄ろうとする。

 

 

 

「郷!!」

 

「――ッ!?・・・・・えっ?」

 

速水へと向かった脚が背後からの声で止まる。振り返ってみるとそこにいたのは部屋着姿の速水だった。

 

「・・・・・速水」

 

「郷、今度はちゃんと倒してくれるのよね?」

 

妖しい笑みを浮かべるもう一人の速水の眼が郷を見つめる。

 

「アッ・・・・アアッ・・・・!?」

 

もう一人の速水を見た瞬間、郷はまるで頭の中が書き換えられていく違和感を感じた。

「郷、あのロイミュードとそれを守ろうとするシフトカー、両方とも壊してくれるわよね?私の為に」

 

「アアッ・・・・・ア・・アアアッ!」

 

だが、その違和感は次第に弱まっていく。

 

「お願いよ郷、アイツラを壊して」

 

「アッ・・・・ああ、分かってる」

 

郷は未だ若干の困惑を残した眼で銃口を再び速水とフレアへと向けた。

 

 

「フレア・・・良いのよ。私に構わないで逃げて・・・!」

 

速水の言葉に対しフレアは絶対に逃げない。絶対に守る。言うかのようにその身に炎を纏い戦闘態勢に入り郷と対峙する。本来だったら共に戦う戦友のはずの仮面ライダーとシフトカーが敵対する事となった。

 

 

「・・・・フフフッ・・」

 

その様子を郷のすぐ後ろから見ながらもう一人の速水の卑しく笑みをこぼす。

 

 

「———ッ!ハアァァァァァァ!!!」

 

「———ッ!?キャアァァァァぁ!!?」

 

ゼンリンシューターの攻撃が速水へと繰り出された。

 

ゼンリンシューターの【打撃】が郷の【後ろにいる速水】へと・・・

 

 




モチベーションがあがるので感想宜しくお願いします。

あばよ平成!宜しく令和!!


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速水の時間⑦

ジオウにて続々と登場する歴代のレジェンドたち!

あるものはゾウゴたちと共に戦いあるものは強敵としてゾウゴたちの前に立ち塞がる。

カブト篇にてアナザーカブトとして登場したアニキこと矢車は原作でも天道と互角の実力を持っていたこともあり手強かったですね。

最後、「笑ってくれよ」と悲願するように呟きながらも光に向かい歩いていくアニキ・・・いつか再び光を手にする事が出来るのか。




そして・・・・ドルヲタ、推しと付き合うってよ!まさか・・・まさかの実写化!!?
これを知った時思わず、マジか!マジィか!!マジィで!!?と思ってしまいました。



「お願いよ郷、あいつらをコワシテ」

 

「ああ、分かってる」

 

郷はその照準を目の前に倒れるロイミュード(速水)とフレアに向ける。

 

アイツはロイミュードが化けたニセモノだ。そしてそれを守ろうとするフレアも裏切り者に過ぎない。倒すことには何の躊躇もいらない。

 

まるで聞き分けの悪い子供に言い聞かせる様に郷の頭にその言葉が何度も繰り返される。

 

 

 

(でもッ・・・・!)

 

郷の頭の中にはまだわずかな戸惑いがあった。

 

 

ロイミュードだと決めつけ戦っていたら急に速水としか思えなくなり、後に現れたもう一人の速水の目を見たらまたロイミュードに思えてきた。

今まで様々な人をコピーしたロイミュードと対峙してきてもこんなことは無かった。本当にコイツはロイミュードのコピーなのか・・・

 

目まぐるしく印象が変わる目の前の速水の姿に郷は引き金を引ききる事が出来ないでいた。

 

「郷?」

 

「――ッ!」

 

そんな郷を後押しするように背後から速水が声をかける。

 

「どうしたのよ?」

 

「・・・・速水・・」

 

振り返る郷の目に怪しい光を放つ速水の瞳が写る。

 

「コワシテくれるのよね?私の為に」

 

その声はまるで人を惑わす人魚の歌声のように郷の耳から脳の部分へと心地よく伝わっていく。

 

(ああ、そうだ。コイツはロイミュードなんだ。速水が言うなら間違いはない・・・・)

 

身体中がその声に服従するかのように動く。先程までの迷いが薄れていき郷はその言葉に従うままに引き金へと指を当てる。

「コワス・・・ロイミュードは・・・全部・・・・」

 

焦点の合っていない眼で郷は速水とフレアを狙う。

 

「そう、ソレで良いのよ。ソイツをコワシタラ後は私が、イッパイ・・・フフ」

 

 

 

「ロイミュードは・・・全部・・コワス・・俺が・・・・オレガ・・ヤラナクチャッ!」

 

その顔を怒りに、憎しみに、悲しみにそして、苦悩に歪み。握り締めた左手からは爪が食い込み血を垂らしながら引き金を引こうとした。

その姿は見ていてとても痛々しいモノだった。

 

「郷・・・・」

 

それを見ていた速水もまた悲しみに顔を歪め涙が流れた。それは郷に殺されようとしているゆえの悲しみでは無かった。敵であるはずのロイミュードを倒そうとしているのにこんなに辛そうにしている郷、普段は変身しているゆえに仮面に隠れていて見る事のないその顔を初めて見た。郷はいつもこんな顔をしていたのだろうか?

あんなに近くに居て自分はそのことに気付いていなかった。郷の苦しみを分かっていなかった。

 

「ごめんなさい・・・郷・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ッ!?」

 

引き金を引く直前、焦点の合わないぼやけた郷の視界に写ったモノがあった。目の前の自分自身のためじゃない誰かのために流れる涙と先程の戦闘で割れた鏡の破片のその奥に写る自分自身の欲望の為に浮かべる邪な笑みが。

 

 

「ウアアァァァァ!!」

 

「エッ!?キャアッ!!?」

 

郷は自分が引き金を引くよりも速く踏み出した右足を軸に反転した。

結果、ゼンリンシューターから放たれた光弾は後ろで笑みを浮かべていた速水の顔に向かい飛んでいった。一瞬前まであった余裕が消し飛んだ速水は咄嗟に両腕を前に出しガードする、その威力に耐えきれず小さな爆発と共に後ろへと吹き飛ぶ。

 

 

 

「グゥッ!?そんな・・・バカなッ!」

 

速水は空中で一回転し体勢を整えつつ地面に着地するがその顔は信じられないと驚愕していた。

 

 

 

「ハァ・・・ハァ・・ハァッ・・・速水!」

 

郷は息を乱しながらも倒れている速水の方に駆け寄り声を掛ける。

 

「大丈夫か?」

 

「郷・・・?」

 

「ワリィお前が、本当の速水なんだよな?」

 

「〜〜ッ郷!!」

 

優しい声で話しかける郷に速水の眼から涙が溢れ出し抱き着く。誰からも認めてもらえなかった速水凛香としてようやく認められた気がした。

 

郷も突然の事に驚きながらも速水の気持ちを察しその背を優しく擦った。

 

 

だが、その光景を良しとしないモノが一人いた。

「ッ〜〜・・・・何でよ?何でソイツを選んだのよ!?」

 

もう一人の速水が光弾を受けた腕を押さえながら叫ぶ。だがその腕はバチバチッと火花が上がる機械のモノへと変わっていた。

 

「私の力は完璧だった!郷、アナタには私こそが人間に、速水凛香に見えていたハズよ!!」

もう一人の速水は再びその眼の光で郷の瞳の奥底を捉える。

 

だが、郷は一瞬の動揺こそ見せたが腕の中の速水を守ろうという意思を変えはしなかった。

 

「ああ、確かに今まで・・・・いや、今だってお前のことも速水に思えるさ」

「だったら―「でもな!」――ッ!?」

 

「この時代に来てから、速水と一緒に居た時間は他の誰とより長かったからな、だから分かるんだよ。俺の知ってる速水は、俺が一緒に過ごしてきた速水は自分を護ろうとしているヤツの側で、あんなニヤついた顔はしないんだよ!!」

 

郷が思い出すのはあの夏祭りの日、夜空の花火以上に輝いていた速水の笑顔だった。

 

鏡越しに後ろの速水の笑みが見えた時、郷にはあの時の華のような笑顔と今見える歪んだ笑みが同じ者が浮かべたとはとても思えなかった。だから郷は信じることにした。速水と過ごした約半年間を、速水が流した悲しみの涙を・・・

 

 

「ごめんな、速水、信じてやれなくて・・・・」

「郷・・・・・」

 

「今更、こんなこと言ってムシが良いだけかもしれないけどな、約束する。俺が近くに居る限りもう速水にあんな悲しい涙は流させないってな。だから・・・」

 

郷は速水を起き上がらせその手を掴む。

 

「この手、離すなよ」

 

「ッ!?・・・・・ええっ!」

 

そんな二人をもう一人の速水は面白くなさそうに、イライラした目で見ていた。

 

「何、人の前でいちゃついてんのよ!!」

 

「羨ましいだろぉ?」

 

郷が挑発するように握りしめた手を見せるともう一人の速水の顔が更に歪みイラつくというよりも怒りに満ちていた。

 

「良いわよ。こうなったら直接ソイツを殺して今度こそ、私が速水凛香になるわ!」

 

もう一人の速水がタブレットを取り出し指を鳴らすとタブレットから無数のデータが飛び出し複数の人形を成していく。

 

「エッ!?」

 

「・・・・ハッ!リアリ〜〜そう来るかよ」

 

現れた人形の姿に2人は目を見開く。

タブレットから飛び出たデータ重なり合いやがて複数人の速水へと姿を変えた。

 

「たっく、とんだ速水ハーレムだな」

 

「私をコピーしたロイミュードが・・・・こんなに!?」

 

 

同時刻に複数人が目撃していたことから083以外にも速水をコピーしたロイミュードが居る事は郷も予想はしていたがその数は明らかに予想外だった。

だがその速水たちは一見、速水と同じに見えるが良く見てみるとどこか本物とは違うところがあった。髪の長い者や少し太っている者、背の低い者にそばかすのある者や眼鏡を掛けている者等がいる。

 

「こいつら多分、量産タイプのNNロイミュードに083がコピーしたデータを再度コピーさせたんだろうな。コピーのコピーだから質も悪くなったんだろうけど・・・・」

 

速水(ロイミュード)たちは2人を囲う様に散らばり拳銃を構えた。

 

「サァ、この数の私を相手にしてソイツ(本物)を見失わないでいられるかしら?」

 

速水(ロイミュード)たちは一斉に引き金を引き2人に襲い掛かる。

 

「ちょいと失礼」

 

「えっ?キャアッ!?」

 

郷は手を握ったまま速水をお姫様抱っこの形で抱えると大きく跳躍し速水(ロイミュード)の包囲から抜け出した。

目標を失った弾丸は対角線上の速水(ロイミュード)たちに命中する。

 

「囲めば良いって訳じゃないんだよ」

 

その様子を速水を降ろしながら見ていたが速水は突然のお姫様抱っこと体験したことのない高さの跳躍に心臓がバクバク鳴っていた。

 

「何やってるのよ!?乱戦に持ち込んで本物を始末しなさい!」

 

083の指示のもと襲い来る速水(ロイミュード)たちに郷と速水は互いの手を握る力を強める。

 

「行くぞ、速水!」

 

「ええっ!信じてるわよ。郷!」

 

迫り来る自分と同じ姿をしたモノたち、それでも速水に恐れはなかった。

その手はちょっとエロく、お調子者のだけどとてもかっこよく頼りになるヒーロー【ライダー】と繋がっているから。

 




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速水の時間⑧

グランドジオウ・・・・変身シークエンスが壮大の一言に尽きますね。

過去のライダーであれほどの変身があったかとまさに平成の最後を締めくくるにふさわしいと思いました。
過去の歴史からライダーを複数対同時に召喚するとかディケイドコンプリートフォームの上位互換と言えますね。

しかも時間の操作や武器の召喚など一つ一つがチートの能力のてんこ盛りでため息が出ました。


「行くぞ速水!手、離すなよ」

「ええッ!」

 

向かってくるNNロイミュードたちを前に二人は互いの手を固く握る。

 

先行した一体のNNロイミュードが速水に向かい上空から襲い来ると郷は速水の手を引き庇うように抱き締めながら空中のNNロイミュードを蹴り落とす。

 

続けて向かってきた一体に対し2人は互いの眼を見て合図を送ると手を繋いだまま同時に腕を伸ばし距離を開ける。

 

「グゥッ!?」

 

勢いを止められなかったNNロイミュードは2人が伸ばした腕に引っ掛かり動きを止める。次の瞬間にはゼンリンシューターが目前まで迫っていた。

 

 

 

「〜〜ッ!何なのよ!?」

083は思わず叫ぶ。いくら量産型で性能の低いNNロイミュードばかりとは言え手を繋いだままの郷に負ける事は無い。仮に郷を倒すことが出来なくても本物の速水を始末することは容易な事と考えていた。

しかし、既に2体のがやられており残りのNNロイミュードたちも攻め切れていなかった。

 

 

 

 

 

「ッ!速水、上だ!」

 

「えっ?キャッァ!?」

 

真上に跳んだ一体を見た郷は速水の腕を引き寄せ前かがみになる。

引っ張られた速水は勢いのままに郷の背中の上を反対側へと半回転する。その時、速水は上から来る一体に気付き脚を伸ばすとロイミュードの顔を蹴り払う。更に着地と同時に向かって来ていたもう一体に踵落としを喰らわせ地面に叩き伏せた。

 

「ナ〜イス」

 

郷が笑って速水にハイタッチを求めるが当の速水はそれどころではなかった。

 

「ちょっと!急にやられるとびっくりするじゃない!!」

 

 

「とか言いながらちゃんと反応してくれたじゃんかよ」

 

笑いながらゼンリンシューターで周りを牽制する郷にそういう問題じゃないと言い返そうとしたがやめた。言ったところでどうせ大して反省しないだろうことは分かり切っているからだ。

気を取り直して速水は自分たちを囲う者たちの姿を見渡す。

 

右を見ても左を見ても自分と同じ顔が居て目眩がしそうだった。しかも地面には先程倒したロイミュードが自分の姿のまま倒れている。

「やっぱり、ニセモノって分かっていても自分がやられるのは嫌な気分ね」

 

「まぁ〜だろうなっと!」

郷は向かってくる一体を撃ち倒しながら速水の呟きに答える。すでに5体、半数のNNロイミュードを倒し終えた。

最初こそ数の差から余裕を見せていたNNロイミュードたちだったが次々とやられていく仲間の姿に焦りを見せ始めた。

 

 

「ウッ・・・ウウ〜・・・・アッ!?」

 

たじろぎ後ずさる一体のNNロイミュードの首に083の腕から延びたコードが絡み付き上空に吊し上げた。

 

「アッ・・・アア〜!ゼッ083、ナニヲッ!?」

 

仲間からの突然の仕打ちに郷や速水だけでなく周りのNNロイミュードたちも驚く。

 

「勝手に下がるんじゃないわよ。そんなに戦いたくないなら・・・」

 

083が吊し上げたNNロイミュードの首元にコードを挿すとそのデータを吸収していく。データを吸われたNNロイミュードは速水の姿を保つ事が出来なくなりバット型ロイミュードとなりやがてその姿さえも保つ事が出来なくなっていき絶叫と共に完全にデータ化し083へと吸収された。

 

「戦えない役立たずはせめて私の力になりなさい」

 

083の視線は地面に倒れる5体に向けられた。右手の5本の指がそれぞれコードへと変わりその首元に突き刺さる。先程の1体と同様にデータを完全に吸収されたNNロイミュードたちが倒れていた場所には1つの痕跡も残っていなかった。

 

「自分の仲間を・・・吸収した・・?」

 

「まぁ、前に戦った時もアイツは仲間を盾にしてたからな」

 

速水は信じられないと呟くが郷は以前の戦いを思い出し083はそういう奴なんだと納得する。

 

「ほら、なにしてるのよ?早く戦いなさい」

 

6体のNNロイミュードのデータを吸収し終えた083はその様子を呆然と見ていたNNロイミュードに冷たく言う。

 

「「「「ウッ・・・・ウアアァァァ!!」」」」

 

残りのNNロイミュードが一斉に襲いかかる。だが、その顔にあるのは余裕でも焦りでもなく進んでも引いても待っている消滅への恐怖だった。

「・・・・ッ!」

 

その顔に速水は思わず同情してしまった。

相手は機械だと分かっていても死にたくない、生きたいと訴えるような表情が数ヵ月前まで普通の女子中学生だった速水の胸に痛く刺さる。

ましてや自分と同じ顔だから尚更だった。

 

「速水っ!」

 

「ッ!?」

 

 

気付けば速水の目前まで一発の光弾が迫っていた。寸前で郷がゼンリンシューターを間に入れ防いだが郷の反応があとコンマ一秒でも遅れていたら速水の顔は吹き飛んでいただろう。

 

 

「・・・無理矢理戦わされているみたいで可哀想。とか思ってるか?」

 

なぜ速水の反応が遅れたのか。その心情は何となく郷にも伝わっていた。郷の問いかけに速水は静かに頷く。

 

 

「・・・まぁ余計なことは考えるなとは言わねぇ~けどよっ!」

 

速水の手を引き後ろに下がらせると向かってくるNNロイミュードを蹴り飛ばしゼンリンシューターを振るう。次々と来る3体の攻撃をいなしながら郷は続ける。

 

 

「ロイミュードとの戦いは、倒すか倒されるか!正義だのなんだのって奇麗ごとで飾っても所詮はただの殺し合いだ!」《ゼンリン!》

 

体制を整えようと距離を取ったNNロイミュードたちを見て郷は自身の太股を使いゼンリンストライカーを回転させる。チャージされたエネルギーが銃口へと集中しNNロイミュードたちへと向けられる。

 

「戦う事に躊躇してもいい。敵に同情してもいい。命を奪う事に罪悪感を覚えてもいい。でも!・・・死なないでくれよ」

 

速水が見た郷の横顔はとても悲しそうな物だった。

 

「もし、速水が死んだら・・・俺が戦う意味を無くしちまうからさ。みんなが、速水が笑って生きていく未来のために俺はこの時代で戦っているんだからな!!」

《ゼンリン!シューター!》

 

ゼンリンシューターから放たれたエネルギーが一団となって迫ろうとしたNNロイミュードたちを貫き爆発させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ~て、残りはお前だけだな。083!」

 

郷は銃口を083へと向ける。が、当の083は爆発の中へとコードを伸ばし破壊されたNNロイミュードたちの残骸からそのデータを吸収していった。

 

「・・・そうね。残ったのは私だけ、でもそれで良いのよ。」

 

手下が全員やられたにも関わらずその顔はまだまだ余裕があった。

 

「速水凛香は私だけで良い。どちらにせよ本物を始末した後でデータだけを貰うつもりだったのが順序が入れ替わっただけよ」

 

10体のNNロイミュードのデータを吸収した083はその姿を徐々に変化させていく。

だが、その変化は他のロイミュードの様に全く別物へと変わるものと比べ思っていたよりも小さなものであった。ボディ全体はまるで椚ヶ丘中学の制服を思わせる色合いになり腰もスカートのような形状へと変わる。後頭部の左右からは二つに結んだようなオレンジ色の小さな分銅が垂れさがる。

両腕には二丁拳銃を連想させる小型の火器を持いる。

 

「・・・・速水?」

 

その姿に思わず郷は呟く。人間離れした機械の姿。だが、それを構成する一つ一つが何処か速水を思わせるモノだった。まるで、速水をそのまま機械化させたような姿だった。

 

 

 

 

 




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速水の時間⑨

今週のジオウ、とうとうアナザージオウⅡとの決戦!劇場版も含めて今までのアナザーライダーが総登場!(アナザーリュウガは除く)


そして次回、とうとう残りのアナザーライダー、アナザードライブとアナザーディケイドが登場!・・・予告で見て思った事「アナザーディケイドが何だかドラゴンオルフェノクに見える?」
それに仮面ライダーアクア登場ってマジで!以前【プリンの時間】の前書きで言ったことが本当になった!?と内心驚いています。



「私こそが・・・・私だけが速水凛香よ!」

 

変貌を遂げた083、その姿は機械化した速水としか言えないものだった。

 

椚ヶ丘の制服を思わせる配色に女性的なラインのボディに特徴的な髪色の頭部からは二つに結んだ髪のように小さな分銅が垂れ下がっており両腕には速水が得意な拳銃と同様の武器が握られている。

 

まさに速水凛香になろうとする083に相応しい進化だろう。

 

 

 

 

ロイミュードの進化はそのロイミュードの強い感情によってもたらされるモノ、つまりこの姿こそが083の速水凛香に成り変わろうという強い感情の表れと言えた。

 

 

「何なのよ・・・アレ?」

 

その執念とも言える進化を目にし速水は身震いをする。

 

「まぁ〜った、変わった進化だな。大方【速水ロイミュード】って言ったところか?」

 

郷も個人を此処まで意識した進化を遂げたロイミュードを見るのは始めてで083を興味深く観察しながらも流石に生身ではキツイと判断しドライバーを装着する。

 

「レッツ、変しっ―「遅いわよ!」 ダァンッ!

 

ドライバーに装填されるよりも早く、083の銃弾がシグナルマッハを弾き飛ばした。

 

「いっ!?」

 

「郷っ!」

 

弾き飛んだシグナルマッハを呆然と見つめる郷を速水が押し倒し跳ぶと2人のいた場所で083の銃弾が弾けた。

 

「ソ、ソーリー助かった」

 

「お礼なんて良いわよ。さっき助けてもらったからお互い様よ」

 

更に続く追撃に2人は素早く立ち上がり錆び付いた遊具の物陰に隠れた。

 

 

 

 

「あ〜ックソ、変身の妨害は反則だろ!」

 

物陰から少し離れた場所に転がるシグナルマッハ見ながら郷は悪態をつく。どうやら先程の一撃によるダメージからか自力で動くことが出来ないらしく横倒しの状態で車輪を空回りさせていた。

 

変身するためには直接シグナルマッハを回収する必要があるが少しでも顔を出せばすぐさま飛んでくる083の早撃ちから放たれる銃弾がそれを妨害している。

 

「あんなに撃ち続けていればスグに弾切れになるんじゃないかしら?」

 

「な~ッる、じゃあそこを狙うか」

 

郷はゼンリンシューターを握り何時でも走り出せるように構えた。

 

 

ダァッン!ダダダッダァッン!!・・・・・・

しばらくすると今まで嵐のように飛んできていた銃弾が止んだ。

 

 

「今だッ!」

 

その瞬間、郷はシグナルマッハの場所に向かうために物陰から飛び出す。が・・・・・

 

 

 

 

「ん?」

 

物陰から出ると同時に郷は警戒のために視線を083に向けたがその視線の先では083の胸のコアが光っていた。郷の身体が完全に物陰から出た時には銃を持つ両腕へとその光が走りそして、次の瞬間には再び銃弾の嵐が郷に向かい飛んで来た。

 

ダダンッ!

 

「ぬぉっさきぃ!!?」

 

急ブレーキをかけ変な叫びを上げながら物陰へとUターンした郷は冷や汗を流しながら速水と向かい合う。

 

「ムリムリムリィ〜!!アイツ、リロードが早すぎるって!」

 

「郷のスピードでも無理なの?」

 

「ああ、弾切れを確認してからじゃ遅い。せめて、弾切れのタイミングさえ分かれば・・・・」

 

「タイミング・・・・」

 

速水も物陰から少し顔を覗かせる。

絶え間なく飛んでくる083の弾丸には確かに所々で途切れる瞬間があった。だが、それも一瞬のことでほぼ同時に胸から腕へと走るエネルギーによりリロードを行い再び銃弾が飛んでくる。

 

ダンッダンッダンダンッ!!

 

「・・・・・・・・」

 

速水はその様子を静かに観察する。ナニか、何かに気付けそうな気がする。だが目では分からない。速水は両眼を閉じ精神を耳に集中させる。

 

 

「オイ、コラァ〜!変身させないなんて敵の風上にもおけないぞ!ヒーロー役が変身しないなんてアニメだったら子供から大ブーイングが来るぞ!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・」(イライライラ・・・)

 

・・・集中させたいのだが、隣では郷が変身できない不満を大声にして083に向けておりその声量は眼を閉じている速水の集中力を乱すのには十分すぎるモノであった。速水の額には若干の青筋が浮かぶ。

 

「大体なぁ〜!変身してない俺に勝ってそれで満足か!?進化したロイミュードの端くれなら仮面ライダーに正面から勝とうって気概を見せっ「うるさい!!ちょっと黙ってなさいよ!!!」・・・・スンマヘン」

 

 

 

怒られ体育座りで縮こまる郷を横目に速水は再び眼を閉じ083の撃つ銃声に耳を傾ける。その音に合わせ身体を揺らしていくと速水は自分が感じたモノが間違いないと確信した。

 

ダンッダンッダンダンッ!

 

「・・・・・・・・・ッやっぱり。郷、ちょっと良いかしら」

 

「ンあ?」

 

怒られたことで小さくなり若干いじけていた郷が顔を上げると速水は数メートル先のシグナルマッハを指差す。

 

「私がアイツのリロードのタイミングを合図するわ。タイミングさえわかれば届くのよね?」

 

「へ?あ、ああ・・・でもリロードのタイミングなんて本当に分かんのか?」

 

「ええ、間違いないわ。それに・・・信じてくれるんでしょ?」

 

「・・・・ハッ当然!」

 

今の郷に速水を信じないなんて選択肢はなかった。速水が出来るって言うなら出来る!心の底からそう思えた。

 

「んじゃ、タイミングを掴めたら言ってくれ。コッチは何時でも最速で行けっから」

 

郷が速水を信じてすぐにでも走れるように身体をほぐし出すと速水もまた、リロードのタイミングを間違えないために全神経を両耳に集中させる。

ダァン!ダァダァン!!

 

「・・・・・・・・・・・」トン、トトン

 

銃声に合わせ指で遊具を叩きながら身体を揺らしリズムを取る。

趣味のダンスの成果かそれとも083が速水のデータを持っているからか、速水のリズムは083の銃声と完全にシンクロしていた。

 

 

2人は互いのやるべきことを成し遂げようと一言も話さない。夜の公園にはただ083の放つ銃声のみが響く。

 

 

ダァンッ!ダダンッ!ダンッダンッダンダンッ!!

 

「・・・・・・・・・・」トン、トトン、トントントトン

 

銃声に合わせ指で遊具を叩き身体を動かす速水は今までの人生で最も集中している気がしていた。銃声以外に何も感じず夜風が肌に触れても汗が首筋を流れても銃弾がすぐ近くに着弾しても眉一つ動かさない。

 

「おい!もうちょっと隠れた方がッ!?」

 

その危なっかしい様子に思わず郷が身体を引っ張るがそれでも顔色一つ変えずひたすらに銃声に耳を傾ける。失敗すれば郷が死ぬかもしれない自分も殺される。絶対にミスが許されない場面にもかかわらず速水は失敗する微塵も思えなかった。今の自分には失敗する方が無理な気さえもしていた。

そして、その時はきた。

 

ダァッン!ダダダッ

 

 

「ッ!郷、今よ!!」

 

「オ~ライッ!」

 

ダァッン!

 

郷が飛び出した瞬間、足元に着弾した一発を最後に083の銃撃が止まった。郷はシグナルマッハに向かいひたすらに脚を動かす。083も慌ててコアからエネルギーを送りリロードをするがもう遅かった。

083が照準を向けると既に郷の手にはシグナルマッハが固く握られていた。

 

 

「悪いな。このレース、俺の・・・・いや、俺たちの勝ちだ!」《シグナルバイク!ライダー!》

 

「クゥッ!」

 

郷はまた撃ち飛ばされる前に素早くシグナルマッハをドライバーに装填する。083もすぐに攻撃するがその弾丸を郷の周囲に展開されたアーマーが防いだ。

 

「レッツ!変身!!」《マッハ!》

 

展開されたアーマーが白のライダースーツの身に纏った郷の身体を覆い最後に笑みの上に仮面を被る。

 

夜風で首から垂れるマフラーがなびく中、いつものキメ台詞を叫ぶ。

 

「追跡!撲滅!いずれもぉ~・・・・マッハぁ~!仮面ライダ~・・・マッハ!!」

 

 




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速水の時間⑩

仮面ライダージオウ、物語がクライマックスに入り参戦して来た2人の映画ライダー!アクアとエターナル!!

別々のライダーの映画に登場したライダーが本人同士で戦う何て前代未聞でまさに平成ライダー最後のジオウに相応しいサプライズですね!!ドライブの映画からもまさかの108が登場してアナザーディケイド登場から映画の世界が新たに組み込まれた気分です。


映画といえば・・・・見てきました!!



あんまりネタバレはしたくないので簡単に大雑把に言いますと・・・まさに平成ライダーいや、平成の仮面ライダーの最後に相応しい映画でした!!

単純な平成ライダーだけでなくまさかのあのライダーやあのライダー!あのライダーたちやあの〇〇ダーまで登場してまさに王の誕生を祝う祭りでした!


「仮面ライダ〜・・・・・マッハ!!」

 

郷がマッハへと変身したのを確認すると速水の身体からはドッと汗が流れ落ちてきた。

 

「郷・・・あとは・・おねがいね・・・・」

 

今までに感じたことのない疲労感が襲ってきて立つことはおろか意識を保っていることすら困難になり小さく郷へと激励の言葉を残し速水は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ~て、速水があんだけ頑張ってくれたんだ。後は俺の番だな!」

 

マッハはゼンリンストライカーを何度も回転させ闘志を高めていく。速水の頑張りに応えようと郷の気合は十分すぎるほど溢れ出ていた。しかし、やる気を出しているのは郷だけでは無かった。

 

「・・・・良いわよ・・分かったわよ!望み通りに正面からアンタを倒してから本物を殺してあげるわよ!!」

 

083もまた二丁の拳銃の銃身にE組が使う対殺せんせー用のナイフを思わせる刀身を伸ばし臨戦態勢を取る。その構えは偶然かそれとも意図的なのかマッハと酷似していた。

 

 

「オイオイ、速水の次は俺のマネか?」

 

「別にワザとじゃないわよ。速水凛香の記憶の中で一番強くあった構えがこれだっただけよ」

 

「あ、さよけ。まぁ・・一番強い構えって思われるのは悪い気はしないかな!」

 

 

会話が一区切りすると同時に互いに銃口を相手へと向けながら走り出した。光弾と銃弾がぶつかり合い相殺しながら距離を詰めていく。そして互いに距離が詰まった瞬間、マッハのスピードを乗せ放った回し蹴りを083は身を低くし躱す。すぐにマッハは身体を反転させながらゼンリンシューターを振るうがそれも083は後方の木の上へと跳び回避し銃弾を放つ。

 

「意外とすばしっこいな」

 

ゼンリンシューターで次々と迫る銃弾を防ぎながら再度接近しようとしたマッハの眼前に083の持つ拳銃の片方が飛んできた。

 

「うおっ!ブネッ!」

 

首を傾けて拳銃を避けたマッハの視線の横を更に1発の銃弾が通り過ぎる。すると、次の瞬間にマッハの背中を激しい衝撃が襲った。

 

 

「イッツ!?」

 

まだ敵が居たのか!?と振り返るがそこには人影は無く083の投げた拳銃が音を立て地面に落ちていただけだった。

 

「よそ見していて良いのかしら?」

 

083は木の上からマッハへ向け飛び降り右手に持った拳銃の銃身に付いたナイフで切り掛かって来た。マッハもすぐさまゼンリンシューターを振るい応戦する。

 

射撃においてはマッハと互角に渡り合う083だが、どうやら格闘においては1歩及ばずと言ったところでマッハの攻撃が徐々に追い詰めていく。

 

「ダラァ!」《ゼンリン!》

 

083の攻撃の隙をついてゼンリンストライカーを083の腹部に押し当てその場で回転するとゼンリンストライカーは火花を散らしながら083のボディを削り取る。

 

「クッ!このぉ!」

 

083も後退りつつも体制を整え蹴り放つが受け流し背中に更に一撃喰らわせた。

 

地面を滑るように倒れた083はすぐ側に先程投げた拳銃があるのを確認し拾うと二丁の拳銃で切り掛かる。手数が増え激しくなった攻撃だが、まだマッハにとっては十分対処できるモノだった。攻撃を捌きながら083の右手に握られた拳銃を打ち上げそのまま回し蹴りを放つと083は身を屈め躱し下から銃弾を放つ。

 

「ッと!」

 

顎に向かい飛んで来た銃弾を後ろに身を引き回避したマッハだったがその直後頭上から一発の銃弾が顔面に命中する。

 

「ダァッ!?またかよ!」

 

誰も居ないところからの攻撃がマッハを少しずつ追い込んでいった。落ちてきた拳銃を掴んだ083はそんなマッハがおかしいのか静かに笑いを漏らす。

 

「フフフッさっきからどうかしたかしら?」

 

そのおちょくるような笑みに若干の苛立ちを覚えながらも相手のペースに飲まれないようにしようと一度深呼吸をする。

 

(落ち着け〜落ち着けよ〜〜郷・・・・)

 

1度落ち着いてさっきまでの戦闘を思い出す。

083の攻撃は主に両手に持った拳銃による射撃と銃身に付いたナイフによる格闘、そして牽制の為の蹴りに時おり拳銃を投げてくる。

 

(・・・・・・・ワッツ?)

 

そこまで考えて郷は疑問に思った。何故わざわざ拳銃を投げるのか?遠距離なら普通に撃てば良い。

弾切れになったんだとしても083のリロード時間を考えれば投げるモーションの方が長い筈だ。不意を突くのが目的だとしても武器を手離してまでやるにはメリットが少ないし不意を突く目的ならその後の見えない相手からの攻撃で十分だ。

 

(・・・んん?)

 

郷はそこで見えない相手からの攻撃のどのタイミングで来るか気付く、そしてそのタネも予想できた。

「いつまでぼうっとしているのよ!」

 

そこまで考え終えた所でしびれを切らした083が再び攻撃を仕掛けてくる。二丁の拳銃を巧みに振るい切り掛かるその動きは舞を舞っているようにも見える。

 

マッハも即座に反応しゼンリンシューターを振るっていく。互いに決定打を当てられないまましばらく攻防を続けていくと

083は右手を横に大きく振り切りつける。マッハが一歩下がり躱すと手が滑ったかのようにその勢いのまま拳銃を手放す。が、動揺を見せる事無く同じ方向から残ったもう一丁で銃弾を放つ。

 

(フフッ)

 

マッハが避ける動作を見せると083は気づかれないように小さく笑う。仮面ライダーが自分の力に翻弄されていくその様に優越感に浸っていた。しかし、笑っていたのは083だけじゃなかった。

 

「アイ、フィギア〜ド(思った通り)」

 

「ッ!?」

 

083の撃った銃弾とのすれ違い様、横から伸ばしたマッハの左手が銃弾をキャッチした。同時にマッハはゼンリンシューターの照準を083とは反対側、放られた拳銃へと向け光弾を撃つ。

 

 

光弾が命中し小さな爆発と共に破壊された拳銃に083は大きく動揺した。それは決して武器を破壊された事に対してだけではなく自らの戦法を封じられた事に対しての動揺でもあった。

 

「やっぱりな、お前の戦法は大体わかった。二つの内、片方の銃をワザと手離して俺の視界から外し、銃口が俺に向くタイミングを狙って引き金に向けて手元に残った銃を撃つ。そうすることで俺の視界の外から攻撃をしていたわけだ」

 

マッハは小さく「にしてもスゲ〜な」と肩を竦める。空中で回転している拳銃の引き金に当てること自体が普通に出来る事ではなくましてや083は銃口が丁度マッハに向けられるタイミングでやっていた。ロイミュードである事を考慮しても神業としか言えなかった。

 

 

「でもま、ネタさえ分かればこっちのモンだ!ココからは、ノンストップで行くぜ!」《マッハ!》

 

マッハドライバーのブーストイグナイターを押しギアを一つ上げたマッハはゼンリンシューターを振るい083に攻撃する。083も動揺を残しながらもまともにぶつかるのは不利と判断し回避に徹した。単純なスピードではマッハが勝っているが083も巧みな身のこなしでマッハの攻撃を次々と躱していく。

1度後ろに退がり距離を取るとマッハを飛び越え公園を囲う様に植えられている木の上へ跳んだ。

 

 

「こんっの、ちょこまかとっ!」

 

「アンタが言える事かしら?機動力を生かした戦いは郷が良くやる事じゃない」ドンッ!

 

083は木の上から銃弾を次々と浴びせて来る。

ゼンリンシューターを盾にして防ぎながら反撃するマッハだったが素早い動きで木々を跳び移っていく083にはなかなか当たらない。

 

「上等だ!速さで俺に勝てると思うなよ!」《ズーット!マッハ!》

 

マッハはブーストイグナイターを連打し自身のスピードを最大限まで上げ083を追う。木から木へと跳び移る083と地を駆けるマッハの距離は次第に詰まっていき逆にマッハが大きく前へ出た。

 

「いい加減に、降りてこいよ!」

 

マッハは大きく跳ぶとオーバヘッドキックで次の木へと移ろうとしていた083を叩き落とした。

 

 

「クゥッ・・・!このっ!」

 

地面に叩き付けられたダメージから立ち上がった083は反撃しようと銃撃するがマッハは避けるそぶりを見せずその場で銃弾をすべてキャッチした。

開いた掌からジャラジャラと落ちていく銃弾の音は2人の実力の差を知らしめるものだった。

 

「今度こそ、これで終わりだ!!」

 

マッハの声に合わせるようにドコからか走ってきたデッドヒートを掴みドライバーに装填する。

 

《シグナルバイク、シフトカー!ライダー!デッドヒート!!》

 

真っ赤なエネルギーと装甲をマッハは纏いE組校舎のある裏山から飛んできたタイヤが装着された。

 

「これが・・・デッドヒート・・・ッ!」

 

速水の記憶から事前にデッドヒートの存在や強さは知っていた083だったが直接対峙してみて悟った。

 

(だめっ・・・・・勝てない・・・!)

 

既に見えた結果に地面に着いた拳を握り締めながら083は少し離れた所、遊具の陰で眠るように倒れる速水を見る。

 

(結局・・・・ワタシはロイミュード、本物にはなれなかったわね・・・・・)

 

 

 

半年前のあの日、速水凛香をコピーした日から083は幾度かの隙を狙い速水からデータを取っていた。いずれE組の仲を裂き分裂を図るという計画のために。

だが、ある時から083は思うようになっていた。【速水凛香になりたい】偽物としてではなく正真正銘ただ一人の速水凛香に・・・・

日に日に強くなっていくその思いに抗えず本来だったらもう少し時間をおいてから実行するはずだった計画を強引に早めた。

 

《ヒッサツ!フルスロットル!バースト!》

 

何故、計画を早めてまで速水凛香になりたいと思ったのか、083は視線を上げ空高く跳び上がり真紅のエネルギーを纏いながら今まさにキックを放とうとしているマッハ【詩藤郷】を見る。

 

(そう、ワタシは・・・・・)

 

速水凛香が胸に秘めていた郷への想い、それが083の中にも芽生えていた。郷の隣に居たいという想いが。

 

(本当、何でワタシは・・・・)

 

人間としてでなく郷にとって敵であるロイミュードとして生まれた自らの運命とそれでも芽生えてしまった報われない想いを呪いながら083は迫るマッハのキックを受け入れた。

 




登場ロイミュード
・083進化体(速水ロイミュード)
083が進化した姿速水凛香になろうという想いと速水のデータを与えたNNロイミュードたちのデータを吸収し進化した。
椚ヶ丘の制服を思い起こす女性的なボディに速水の髪と同色の頭部からは二つの小さな分銅が垂れ下がりさしずめメカ速水凛香と言える姿をしている。
E組で使うエアガンと同型の二丁の拳銃を持ち状況に合わせて銃身にナイフを形成し接近戦にも対応させる。

自分で投げた拳銃の引き金をタイミング良く狙う射撃能力とダンスの様なナイフ捌き、次々と木々に跳び移る身軽さを持つ。また、相手と眼を合わせる事で相手の認識能力を操る事が出来る。ただしロイミュードやシフトカーなどには効果が薄く衝撃を与える事で能力が効かなくなる。

本物の速水凛香になるという想いから進化ロイミュードとしての名は名乗らずにいる。(郷が仮称として速水ロイミュードと名付けたが本人は認めておらず郷もあくまで083と呼ぶ)

コピー元は速水凛香

モチベーションがあがるので感想宜しくお願いします。


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速水の時間⑪

今週の・・・ジオウ・・・

ミハル?・・・・えっ?ミハル・・・・?イヤイヤイヤ、ミハル、ゲストキャラっすよ。・・・え?・・・


そして次回予告、・・・えっ士も?・・・・えっ?





という衝撃の場面もありましたが、楽しみな場面もありました。
・甦る歴代怪人たち!もう敵の規模が映画並みですね。平成ライダーのラストはやっぱりこれぐらい派手じゃないと!

・ついに登場、ディケイドジオウ!何時かはやってくれるだろうと思っていましたが
満を持してですよ!士がどうやってディケイドの力を取り戻すのかも必見です!

・第二の死神現る!チェイス、キターーー!!映画では剛が登場したと思ったらまさかTVでチェイスが出るとは・・・

ジオウもとうとうラスト一ヶ月、このまま走り切ってもらいたいです!!



「・・・・みぃ〜・・・・は・・みぃ〜〜速水ィ〜〜〜」

 

自分を呼ぶ間延びした声と左頬に感じるツンツングリグリといった感覚に速水はゆっくりと瞳を開いた。

 

「速水ぃ〜いいぃ〜〜おっきろ〜〜」

 

 

イラっとするリズムで呼ばれ瞳を開いた速水の目に映ったのは机越しに屈んで目線を合わせた郷だった。その右手は速水の頬へと伸びていた。

 

「・・・・何してんのよ?」

 

「おっ?グッモ〜ニンッ・・・・いや、グットアイラ~イト・・・で良いのか?」

 

自分の顔で遊ばれていたと知り不機嫌そうに問い掛ける速水に郷はそんな不機嫌は知ったことかと笑いながら立ち上がる。

 

速水はまだ目覚めきっていない眼を擦りながら窓の方を見ると裏山の向こうへと沈む夕日の光が速水や郷、教室をオレンジ色に照らしていた。

 

 

「えっ?ちょっと今何時よ!?」

 

慌てて教室に掛けられた時計を見ると時刻はちょうど6時を回ったところだった。5限目が終わり帰りのHRまでの間に少し眼を閉じてから記憶がない速水は完全に眠ってしまったんだと理解し恥ずかしくなり顔を俯かせる。

そんな速水に郷が更に追い討ちをかける。

 

「いや〜、中々かわいらしい寝顔だったなぁ〜〜あまりの可愛さに・・・ほら」

 

俯く速水に見えるよう下から潜り込ませたモノは夕日に照らされて輝く速水の寝顔写真だった。

 

「なっ//!ななななっ何よコレ/////!!」

 

「マッハで現像しました!コレなら次のコンクールは大賞間違いなしだな!」

 

イエイ!っとサムズアップする郷と対象に速水はナワナワと震える手で自分の寝顔が写る写真を見ていた。

 

(も、もしこの写真を郷がコンクールに出したら///)

 

大勢の人が自分の寝顔を見る。

 

「ッ〜〜//!?」

 

その光景が頭に浮かんだ瞬間、速水は両手を力の限りを込め写真を引き裂いた。

 

「うえあぁぁ〜〜!!!?? 俺の写真んん〜〜!!!!」

 

パラパラと床に落ちていく郷の渾身の写真、絶叫しその破片をかき集める郷の横を通った速水は教室の窓を全開に開けた。

まだ肌寒さを感じる春の風が教室に一気に入り込み写真の破片を乗せ再び外へと飛んでいった。

 

「・・・・・・・ちょっ!ちょっとまぁっベシッ!?」

 

空の彼方へと飛んでいく破片を数秒の間見詰めていた郷だったが、ハッと我に帰り破片を追い掛けるため窓から飛び出そうとするが、慌てていたため足下がおろそかになり窓枠から足を踏み外した結果、外の花壇に顔を突っ込ませる事になった。

 

 

「・・・・・ハァ〜」

 

速水は夕日の向こうへと消えていく写真と花壇に突き刺さる郷を交互に見てタメ息を吐く。

もう遅いので帰路に着こうと帰り支度を始めそのまま教室を出ようとも考えたが、

 

(まぁ、私が起きるのを待っていてくれてたみたいだし)

 

郷の荷物も持っていってあげることにし机に置かれた郷のカバンを手にして教室を出る。

 

 

 

 

――――――――――――――

 

「ウェ〜〜っ・・・・まだ土の味がする」

 

「勝手に人の写真を撮るからよ。いい加減にその何でも写真を撮る癖止めなさいよ」

 

速水と郷は一緒に裏山を降りながら帰路に着く。

山道の入り口に着きふと速水は数週間前の事を思い出した。

 

「そう言えばこの辺りよね。郷と始めて会ったのって」

 

「んあっそうだっけか?」

 

「最初はハッキリ言って変なヤツだなって思っていたけど、一緒の教室で過ごしていって分かったけど・・・・やっぱり変なヤツだったわね」

 

始めて会っていきなり山道を逆立ちで登りだしたり自己紹介の時に屋根から降りてきたと思ったら未来から来たなんて言い出す。更にはまるで子供番組のヒーローの様な姿に変身し名乗りやポーズまで決める。殺せんせーや岡島と共に1時間以上に渡り魅力的な女性について語り合ったりしていた時もあれば、この前に休日に街中で見かけたときは盗撮と間違えられたようで街中で土下座をしていた。

 

何度振り返っても変なヤツとしか思えない隣のクラスメイトにクスクスと笑ってしまった。

 

カシャッ、と隣から聞こえた音に顔を向けると郷のカメラが自分に向けられていた。

 

「速水の笑顔、頂きました!」

 

「ちょっと郷///!今、写真は控えなさいって言ったばっかりじゃない//!」

 

カメラを奪おうと手を伸ばすが郷は軽やかにかわしてしまう。

 

「良いだろぉ〜減るもんでもないしさ、それに・・・・今この一瞬の笑顔が次には消えているかもしれない。そんな時代で生きてきたからこそ・・・その笑顔を忘れたくないんだよな・・・」

 

眼を伏せながらカメラを撫でながらそんなことを言う郷、時々見せるその表情はとても悲しそうで思い詰めたモノだ。

 

「郷・・・・・分かったわよ。別に笑ってるとこなら撮っても良いわよ」

 

別に郷の悲しい顔に同情したわけではなく笑顔は忘れないようにしておきたいという意見に賛同しただけだ。

 

「リアリ〜!マジで!!じゃあもっと撮って良いよな!?良いんだよな!?笑って笑ってぇ〜〜!!」

 

先程の悲しげな表情は何だったのか。速水からの承諾を得た瞬間、郷はカメラを構え速水の周りあらゆる角度からシャッターを切り出す。

 

そのあまりの変わり身の早さに呆気に取られた速水だったが、

 

(やっぱり、変なヤツ)

 

その郷らしさに意識せずに笑顔がこぼれていた。

 

 

「よっし、決めた!」

 

一通り写真を撮り郷は何かを決心したように頷く。

 

「この時代で何を沢山撮るか悩んでたんだけど・・・速水にするわ!!」

 

「・・・・は、はぁ!!?」

 

突然何を言い出すんだと叫ぶ速水を無視し郷は勝手に話を進めていく。

 

「んじゃあ、速水は今日から俺の専属モデルってことで、決定!」

 

「決定じゃないわよ!何、勝手にっ!!」

 

どんどん話を進めていく郷に対し若冠怒りが湧いてきて口調が強くなっていく速水だったが、次の郷の言葉に怒りとは違う感情が沸き上がる事になった。

 

「だって、速水の笑顔って見てて癒されるしさ」

 

笑いながら言うその言葉には一切の下心などは感じなかった。ただ、純粋に思ったことを口にしただけ。そんな透き通ったことは初めて言われた速水は

 

「う、うるさい////!兎に角、撮って良いのはちゃんと許可した時だけよ////!!」

 

「ちょっ!?最後に一枚、夕日をバックに撮ろうぜ!!」

 

紅くなっていく顔が見られない様に住宅地を走っていく速水とそれを追い掛ける郷、2人の影が住宅地の道路に隣り合わせに伸びていた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――

 

「ん?・・・・んんっ」

 

懐かしい夢を見ていた速水は心地よいリズムで揺れる身体にゆっくりと瞳を開いた。

 

「・・・・・・郷?」

 

「おっ起きた?グッモ〜ニンッ・・・・いや、グッナ~イト・・・で良いのか?」

 

背を向けながらも首を僅かに横に向けながらたった今見た夢と同じ様なことを言う郷にクスリと笑いながら胸元に感じるドコか安心する背中に自分が郷に背負われているのだと理解した。

 

普段なら恥ずかしさから無理矢理でも飛び降りようとするところだが、今は身体にまったくと言って良いほどに力が入らず、もう少しだけこの背中に頼りたいと思い顔を郷の背中に当て全身をその揺れに委ねることにした。

 

「・・・・・終わったの?」

 

「ああ、083は倒したさ」

 

「・・・・・そう・・・」

 

自分になりすまし、クラスを貶めようとしたロイミュードが倒されたと聞き本来なら喜ぶなり安堵するなりするものだが速水は素直にそんな気持ちにはなれなかった。

 

 

『私が速水凛香よ!』

 

083が何度も口にした言葉だった。まるで誰かに言い聞かすように、誰かにそうであると認めて貰おうとするかのように・・・・

 

その誰かが誰なのか、速水には分かっていた。何せ083はロイミュードであると同時に速水凛香でもあったのだから。つまり、それが速水の気持ちだという事だ。

 

 

(私もそろそろ自分に正直になろうかしら・・・)

 

「ヘイ、と〜ちゃくっと」

 

郷が立ち止まったのは速水の家の前だった。時刻は0時を過ぎていたため両親も既に就寝しているらしく家に明かりは付いていなかった。おそらく玄関の鍵も締まっているだろう。

 

「どうする?何なら二階まで跳ぶぞ」

 

「制服のポケットに鍵が入っているから大丈夫よ」

 

速水はポケットから取り出した鍵を見せながら郷の背中から降り玄関の鍵を空ける。その背を見ながら郷は「あっそうだ」と思い出したように声をかける。

 

「一応、083の能力や事の詳細は律からみんなに回させてるからな明日は堂々と学校に来いよな」

 

「じゃあ俺も帰るかぁ〜」と身体を伸ばし踵を返そうとする郷に速水はある決心をする。

 

 

「・・・・郷!」

 

「んあっ?」

 

呼ばれて振り替える郷の眼前に速水の真っ赤な顔が迫っていた。

そして次の瞬間には・・・・・

 

 

 

-チュっ!—

 

 

郷の口に温かく柔らかく甘いナニカが触れた。同時に鼻にはとてもいい香りが漂った。

 

ソレは一瞬の接触を終えすぐに離れていった。

 

「・・・・・・・・・・・・・へっ?」

 

何が起こったのか理解が追い付いていない郷は間抜けな声を出しながら微動だにしない。

 

「おっ///おやすみなさい!////」

 

対する速水はより真っ赤にした顔を精一杯の笑顔で飾り足早に家の中へと入っていった。

 

「へっ?・・・・・うえっ!??・・・・・」

 

取り残された郷は自分の唇に触れる。一瞬の接触だったにも関わらず未だに残っている心地よい温かさと香りに少しづつ何が起こったのか理解した。

 

「・・・・・・・・ッ!?////」

 

オーバーヒートしそうなほど顔を中心に身体中の温度が上がっていくのが分かったがまだ思考の処理が追い付かずその場を動くことが出来ない。

 

「うぇ・・・・あぇ・・・?・・・今・・・・えっ?はや・・・ワッ?キス・・?・・・・リアッ!?///」

 

あまりにも帰りが遅くクリムが迎えに来るまでの間、郷は速水の家の前で真っ赤な顔から湯気を立てながらうわ言を呟き続けていた。

 




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恋愛の時間2時間目①

ギリギリで・・・今週のジオウ!

ディケイド復活!士の用意周到さには脱帽です。様々な状況を想定して事前に対策しておく、10年間旅を続けて来ての経験ですかね?というより今まで半分の力で戦ってたんかい!?

魔進チェイサー復活!かつてドライブとマッハを苦しめたその実力を遺憾なく発揮しゲイツとウォズを撃破!自身の矛盾した記憶に悩むその姿にかつてのチェイスを思い出しました。

次々と壊れるウォッチと現れる怪人たち、その光景はディケイドの1話を彷彿とさせます。ディケイドはこの世界を破壊するのか?ソウゴはオーマジオウとの決着を付けられるのか?ジオウいや平成ライダーもとうとう後2話!平成に生きたライダーファンとして最後まで全力で応援していきます!!


「速水さん、本当に・・・ごめんなさい!!」

「「「「「ごめんなさい!!」」」」」

 

教室に入った速水を待っていたのは片岡を中心とした083の計画に巻き込まれたメンバーからの深々と頭を下げての謝罪だった。

 

昨日の深夜、急に律から連絡が入り083の計画の概要が伝えられた。自分たちに接触した速水がロイミュードがコピーしたモノであったこと、夕方に一緒に帰った速水が083で083だと思っていたのこそが速水であったことを知った片岡たちは朝一番に速水に謝罪をした。

 

いきなりの謝罪に面食らった速水だったがすぐにその顔には笑みが浮かぶ。

 

「そんな、気にしてないわよ。今まで通りに接してくれればそれで良いわ」

 

もちろん、始めに覚えのない非難を浴びたときはふざけるなという気持ちにもなっていたが誤解が解けてちゃんと誤って貰えた今となってはそれほど気にすることも無かった。またこれからも今までと変わらず友達でいられればそれで十分だった。

 

速水からの許しを得たことに片岡たちもほっと安堵する。周りでその様子を見ていた者達も無事に和解したことに笑みを浮かべていた。

 

 

矢田と談笑しながら席に着こうとした速水はチラリと教室の後方、郷の席を見る。昨晩はつい勢いでキスをしてしまったが後になって以前に郷が「俺は気軽にキスなんかしない!するなら一生に一人、本当に好きになった奴とだけ!」と言っていたのを思い出し謝ろうと思っていたが、どうやらまだ来ていないらしかった。

 

「ふぅ・・・えっ!?」

 

席に着いて一息ついた瞬間、速水の机一杯に大量の花や速水の好きな猫のグッズが並べられていた。周りのみんなも突然現れた花に驚いていると速水の前に黄色い巨体が現れそして・・・

 

「誠に!・・・誠に申し訳ありませんでしたぁぁぁぁ~~~~~!!!」

 

「・・・キャッァァッ!!?」

 

ガバッと持ち上がり穴という穴から涙、鼻水、汗と水分を溢れさせた殺せんせーの顔面が目の前に迫まってきて速水はらしくない悲鳴を上げながらカバンから取り出した銃を乱射した。

 

「にょぎゃぁぁぁぁ〜〜〜!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

しばらくして落ち着いた速水に殺せんせーは深々と土下座をしていた。

 

「情けないです・・・教師でありながら生徒をニセモノと疑ってしまうとは・・・あるまじき失態・・」

 

土下座したまま殺せんせーの姿が一瞬ブレたと思えばその身を白装束に包んでいた。

 

「この責任は、先生の命をもって償います!」

 

和紙で包んだ対殺せんせー用ナイフを持ち切腹しようとする殺せんせーをその場の全員が慌てて止めにはいる。

 

「離してください!!生徒を疑った私に、もう教師の資格はありません!!」

 

「馬鹿か!?ンなことで一々死のうとすんじゃね〜よ!!」

 

「凛香ちゃんももう許してくれてるんだからさ!ね、落ち着こうよ!」

 

 

後ろから羽交い締めする寺坂やナイフを持つ触手を抑える倉橋が説得するが殺せんせーは尚も切腹を慣行しようとする。

 

 

そんな騒がしい教室のドアが開きカルマが欠伸をしながら入ってきた。

 

「ふぁ〜っあ、ん?何してんの?」

 

「カルマ君!?ちょっと、一緒に殺せんせーを止めるの手伝ってよ!!」

 

「ん〜・・・・」

 

渚に言われ白装束にナイフを持つ殺せんせーとそんな殺せんせーを必死に抑えようとするみんなの姿を見てカルマは何となく今の状況を理解するとニヤリと笑う。

 

「みんなバカだなぁ〜100億のターゲットが自分で殺されてくれるって言ってるのに止めようとするなんてさぁ〜」

 

「「「「「「・・・・・・アッ」」」」」」

 

カルマの言葉に殺せんせーもその周りの生徒たちも動きを止める。

「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」

 

しばらくの沈黙が訪れる中、カルマは1人、悠々と自らの席に着きその様子をニヤニヤと眺め出した。

 

「「「「「・・・・・・・」」」」」

 

生徒たちはゆっくりと殺せんせーから離れていき目の前に並ぶ。その眼は先程までの必死さは無くみんな一様に笑顔で会った。磯貝が床に落ちたナイフを拾い丁寧に殺せんせーへと渡しみんなの中心に立つ。

 

その間、殺せんせーは無と言える表情で微動だにせずその様子を見ていたが生徒たちは笑顔のまま右手を出しそして・・・・

 

「「「「「「どうぞどうぞ」」」」」」

 

爽やかに切腹を勧めた。

 

「いや、待ってくださいよぉ〜!!いきなり変わり過ぎじゃないですかぁ~~!!?さっきまで見たいに止めて下さいよ!!」

 

「なに言ってんだ、生徒を疑ったんなら教師らしく責任をとれよな」

 

「凛香ちゃんは殺せんせーを信じていたのに・・・それを裏切ったなんて・・ひどいよ・・・」

 

あまりの手のひら返しに叫ぶ殺せんせーだったが先程までとはうって変わって生徒たちは切腹を薦め続けた。

 

「は、速水さん!速水さんは先生を許してくれるんですよね!?」

 

殺せんせーは一筋の希望を求め速水を見るが、

 

「殺せんせー・・・・100億は慰謝料として貰っておくわね」

 

なにか吹っ切れた様に周りに合わせ清々し笑顔を向けた。

 

「ハアアッ~~〜・・・・がくっ・・・・・・・・」

 

味方の居なくなった殺せんせーはその場に崩れ落ち教室には笑い声が溢れた。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

「では、気を新たに出席を取ります!」

 

始業のチャイムがなり殺せんせーは素早くいつもの恰好に着替えると教台の前に立ち生徒たちもそれぞれの席についた。

また今まで通りの日常が始まると誰もが思っていた。ところが・・・・

 

「では続いて・・・郷くん!」

 

「「「「「「・・・・・・・・・?」」」」」」」

 

出席を取っていく殺せんせーが郷の名前を読んだがいつまでたっても返事が帰ってこなかった。

全員の視線が教室の後方、郷の席に向けられたがソコに郷の姿は無くそれどころかカバンや郷が何時も持っているカメラも無かった。

 

(郷、どうしたのよ・・・やっぱり昨日の事を・・・?)

 

速水は荷物の無い郷の机を見ながら寂しそうな顔をすると同時に昨晩の自分の行いを改めて後悔した。自分の感情を優先して郷の気持ちも考えなかった。そのことで嫌われてしまったんじゃないかと不安になって来た。

 

「変ですねぇ・・・欠席の連絡は受けていないんですが・・・」

 

殺せんせーが困惑の顔をしていると教室の扉が開いた。郷が来たのかと全員が扉に目を向けるとソコには専用の移動用の台座に収まったクリムが困ったような顔でいた。

 

「クリム先生、どうかしましたか?」

 

『ああ、殺せんせー・・・それが郷がねぇ』

 

 

 

 

クリムの話によると今朝になって郷が急に登校を拒否しだしたとのことだった。何時まで経っても部屋から出てこなくクリムが何度声を掛けても

 

「ムリ・・・・今日は・・・行きたくねぇ・・・・・」

 

と弱々しい声が返って来るだけとのことだった。律もスマホから呼びかけようとしたが電源が入れられていないらしく郷のスマホに入れなくなっていたらしい。

 

 

「そ・・・それはいけません!皆さん、1限目の授業は中止です!みんなで郷君を説得に行きましょう!!」

 

殺せんせーは焦った顔で何時の間に用意したのか殺せんせーは触手一杯に【生徒との向き合い方】【現代っ子のメンタルケア】【Break the shell】等といったタイトルの本を読みながら皆に呼び掛けた。

 

 

 

 

グラウンドの片隅に建つ郷とクリムの基地兼住居のドライブピットに来たE組メンバー、だが流石に全員がいっぺんに入ると狭いので郷と特に中の良いメンバーが中に入ることになった。

 

選抜されたメンバーの速水に千葉、カルマと岡島に中村・木村・岡野そして殺せんせーがピット内に入った。

 

「さて、皆さんいきますよ」

 

どこぞの高校で長年にわたり3年B組を受け持ち続けて来た国民的教師のコスプレをした殺せんせーはピット内の郷の部屋の前に立ちドアをノックする。

 

「郷く~ん!みんなが待ってます。一緒に学校に行きましょ~~!!」

 

「殺・・・せんせー・・・・?ワリィ・・今日は・・・行きたくないっス・・」

 

部屋の中から帰って来るのはやはり弱々しい声であった。

続いては千葉がドアの前に立ち声を掛ける。

 

「郷、どこか具合でも悪いのか?だったら病院に行った方が良いぞ!」

 

「・・・千葉か・・・具合は・・・悪いわけじゃないんだ・・・ただ・・今日はちょっと・・・行きたくないんだ・・」

具合が悪い訳ではないと言いつつもその絞り出したような声はとても正常な状態とは思えなかった。

 

「ご〜う!いい加減に出てこないと郷の机にイタズラしちゃうぞ〜!」

 

「・・・・カルマ・・・やるのは勝手だけど・・後でぶっ潰す・・・」

 

カルマの挑発に対してもやはり何時もの覇気はなかった。

その後も岡島がエロ本で釣ろうとしても中村が渚の女装撮影会に誘っても、木村や岡野が競走を挑んでも返ってくるのは途切れ途切の返事ばかりであった。

 

「にゅ〜〜困りましたねぇ〜〜・・・・」

 

どうしたものかと殺せんせーが頭を悩ませていると速水が扉の前に立ち控え目に扉を叩く。

 

 

「・・・・・郷、良いかしら?」

 

「速水・・・・・か?・・・悪いけど今はっ・・・ファッ!?・・はっ速水!?ガヅァッ!!」

 

「ッ!?郷くん、大丈夫ですか!?こうなったら・・・・強行突破です!」

 

さっきまでとは明らかに違う反応と部屋から聞こえる何かが崩れるような物音にただ事ではないと感じた殺せんせーは部屋の扉をピッキングし中に突撃する。速水や千葉たちも続いて部屋の中に入る。

 

室内は意外と簡単な造りになっていた。部屋を四方に囲う真っ白な壁には窓が無く代わりに郷が撮ったであろう裏山の自然や街の景観、E組の日常など様々な種類の写真が貼られおり部屋の片隅に設置された机の上にはタブレット端末と数冊のアルバム、写真が乱雑に置かれている。

 

他には小さな本棚と部屋の真ん中に置かれたテーブルと机の反対側にベット代わりのハンモックといった内装だった。

 

そして丁度揺れるハンモックの真下、ひっくり返った体勢で倒れるこの部屋の主である郷は頭を押さえながら立ち上がろうとしていた。

 

「イッテテ・・・・・・・・ッ!?///」

 

 

そこで殺せんせーたちが部屋まで入って来ていたことに気付いた郷は速水の姿を見た瞬間その顔を異常と言えるまで赤くする。

 

 

「は・・・はやっ!・・はややややっっっ!/////」

 

「ご、郷くん・・・大丈夫ですか・・?」「お、おい・・・郷?」

 

その様子は明らかに普通ではなく殺せんせーたちが駆け寄ろうとするが・・・・

 

 

 

「ちょっと郷!?しっかりしなさいっ「キュ~~・・・・////」郷っ!!?」

 

速水が一歩近づいた瞬間、郷は顔から湯気を上げながら仰向けに倒れた。

 

 

「郷く~ん!!???」「「「「ご~うぅぅ!!???」」」」

 

「あ~らら・・・・ん?・・ああ、な~るほどねぇ~」

 

慌てて駆け寄る殺せんせーたち、そんな中でカルマはチラリとハンモックに視線を向けると何かを察した様に笑う。ハンモックの上にはクラスではめったに見る事のない速水の笑顔が写る写真が何枚も置かれていた。

 




モチベーションがあがるので感想宜しくお願いします。


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恋愛の時間2時間目②

あっぶな!本当にギリギリで・・・今週のジオウ!!


それぞれ別々だった平成ライダーの世界を一つにする・・・アレ?これディケイドだっけ?

約10年ぶりに共闘するディケイドとディエンド!作品を超えてかつての1号ライダーと2号ライダーの共闘が見れるとは・・・当時を思い出しました!

人間の守護者、チェイス!やっぱりチェイスはいつまでもチェイス、人類の守り神、仮面ライダーですね!

誕生、仮面ライダーツクヨミ!平成ライダー最後のジオウで誕生した最後のライダーにして平成女性ライダー最後の1人、ツクヨミ!以前から変身するという話は聞いていましたがまさか最終回直前での変身とは・・・その力がソウゴたちの作戦でどんな役目を果たすのか大いに期待です!

泣いても笑っても平成ライダーもあと一話!最後まで突っ走れ!!


「・・・・・・・・・・・」

 

「さぁ郷!何時までも黙ってないで吐けよ!!」

 

縮こまるように椅子に座る郷をE組男子一同が囲う。正面に立った岡島が目の前の机をダンッ!と叩けば郷はビクッと身体を震わせ更に縮こまる。

 

 

場所はE組教室、ドライブピット内の自室で気を失った郷はその後、保健室へと運ばれ目を覚ましたのは放課後になってからだった。

目を覚ました直後にそのまま男子たちに教室まで連れていかれ現在、尋問の様に詰め寄られていた。

 

「郷ぅ〜ずっと速水さんの写真を見てたんでしょ〜〜?そして本人を見たら顔真っ赤にして倒れたってことはさぁ〜〜・・・」

 

カルマはじらす様に郷へと詰め寄ると郷は気まずそうに顔を背けるが、それを周りの男子が許さない。

 

「郷!正直に話せよ!!」「速水と何があったんだ!?」「やっぱり速水に化けたっていう083を倒した後に何かあったのか!?」「郷!」「郷!!」「郷!!!」

 

「ウ・・ウウッ///・・うるへぇぇええ!!」

 

「グベェェッ!?」

 

ズイズイと迫ってくる男子たちの圧に押されていっていた郷だったがとうとう限界が訪れ絶叫と共に岡島の顔面に右ストレートを喰らわした。

郷の渾身の一撃を喰らった岡島は螺旋回転を描きながら机へと突っ込んでいった。

 

「「「「「岡島ぁぁぁあぁっ!!!???」」」」」

 

 

机に埋もれピクッピクッと動く岡島に駆け寄る男子たち。郷はゼェゼェと息を乱しながら叫んだ。

 

「速水とキスしたよ!!文句あっかぁ〜〜///!!?」

 

郷の叫びが教室に校舎中に響き渡った。

 

「「「「「・・・・・ナニイィィ〜〜〜!!??」」」」」

 

郷の叫びに岡島に駆け寄っていった男子たちだけでなく机に埋もれていた岡島さえもガバッと起き上がり叫ぶ。

 

因みに郷の叫びは職員室にいた殺せんせーにももちろん届いており殺せんせーは製作途中の小テストの用紙を仕舞うと代わりに【E組恋愛ノート】と書かれたノートを持ちマッハで教室に向かった。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ええ〜〜〜っ!!郷くんとキキキキ、キスしたのぉ〜〜!!?」

 

丁度同じ頃、ドライブピット内では同じように女子に囲まれていた。

 

耐えきれずに速水が昨晩のことを白状すると叫んだのは茅野だけだったが他の女子も予想外でポカンとしていた。

中にはその場面を想像したのか顔を紅くする者もいた。

 

「・・・・・・・・///」

 

速水もその時のことを思い出してしまい何時ものクールさは何処へやら小動物のように小さくなりコクリッと頷く。

 

 

「いや〜そっかそっかぁ〜〜誰からも信じてもらえなかった状況で唯一助けてくれたナイト様、そりゃ〜お礼のキスもしたくなるかぁ〜//」

 

中村も何時もの調子でからかおうとするがその顔は若干だが紅くなっていた。

 

 

その時、ピットのドアが開きイリーナが入ってきた。

 

「なによなによ。ガキどもは、キスの1つで真っ赤になっちゃって子供ねぇ〜」

 

そう言いながらイリーナはピットの中心に置かれたトライドロンのボンネットに腰を落としその長く細い脚を組み目の前に座る速水へと顔を寄せる。

 

「凛香、経験からアドバイスするわね。あの様子なら郷は間違いなく初キスで思考がマヒしてるわ。ここで強引に押していけば烏間レベルの堅物じゃない限り男なんて楽勝よ」

 

不適に笑うイリーナの纏う大人の女性のオーラに迫られる速水だけでなく周りの女子たちも息を飲んだ。普段はE組内でどちらかというと弄られることが多いイリーナだが仮にも世界を股にかける殺し屋にしてハニートラップの達人、男の扱いはお手のものと言わんばかりだ。

イリーナはどうする?と問いかけるような視線を速水へ向けるが速水は俯いたまま黙り込んでしまった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

「でさぁ~結局郷はどうすんの?速水さんの気持ちははかってるんだろうしさ」

 

カルマがそう言うと前原も乗り気に郷に詰め寄る。

「だよなぁ〜やっぱこういうのは男から告白した方がポイントは高いからな、何なら俺が告白のイロハを教えてやろうか?」

 

E組一のプレイボーイは今こそ出番かと言わんばかりに乗り気だった。が、郷の顔は乗り気ではないのか気まずそうに顔を背ける。

 

「・・・俺は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ凛香、女は度胸よ!このまま一気に郷を堕としちゃいなさい!!」

イリーナが鼓舞すると周りの女子も目を輝かせて詰め寄る。

その迫力に圧倒されかけたが速水だがすぐに決心したかのように唇を噛み締め口を開いた。

 

「・・・私は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「速水の想いにはこたえられない」「郷にこれ以上寄り添うことは出来ないわ」

 

奇しくも2人は同時に否定の言葉を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・は?」

 

予想もしていなかった返答に前原だけでなく男子全員が目を丸くした。

 

「いや、イヤイヤイヤ何言ってるんだよ?修学旅行の時に女子の中で速水が一番気になるって言ってただろ?」

 

その事からも少なくとも修学旅行時には郷が速水の事を異性として意識していた事は容易に想像できた。実際に今の郷は明らかに速水を意識している。

そんな相手に好意を持たれていると分かれば歓喜し自らも想いを伝えるのが普通だと思うが、確かに中には勇気を持てず胸の内に留めておくだけの者もいるが郷はそんなタイプじゃないと全員が分かっていた。

納得できないといった顔をする前原たちを見て郷は何時もの調子を取り戻していき椅子から立ち窓際に歩きながら話す。

 

「それとこれとは話が別だろ。前に言ったよな、俺は中途半端な恋愛はしない。するんなら一生に一度、本気で最後まで貫くもんだけだ」

 

「なんだよ。速水とじゃ本気の恋愛は出来ないってことかよ!?」

 

郷のもったいつけた話し方にイライラしてきた寺坂が強めの口調で問い掛けるが郷はゆっくりと首を振る。

 

「いや、正直に言うと速水のことが好きだって言うのに嘘はね〜よ。今までも、多分これからもこんな気持ちになることは無いだろうなぁ〜・・・・」

 

でも、と窓から顔を出し雲が流れる空を眺めながら郷は続ける。

 

「本来、俺はこの時代にいるべき存在じゃない。やるべき事をやったらいるべき場所に戻ることになるかもしれないしその前に途中でくたばるかもしれないな・・・」

 

自分が死ぬかもしれない、笑いながらそんなことを言う郷に渚がたまらず「そんなことない!」と否定しようとしたするが

 

「まぁ、もちろんそんなヘマをする気はないけどな。それでも俺には恋愛なんてしている余裕なんかねぇよ・・・そんな資格も権利も無いしな」

 

 

最後は周りに聞こえないような小さな声で呟き郷はこの話は終わりと窓から飛び出し裏山に向け歩いていく。残された男子たちは何も言えなくなりその背中を見る事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

ピット内でも速水の言葉にイリーナを含め女子全員が何とも言えない表情をする。

 

 

「えっ・・・と‥凛香、今なんて?」

 

「・・・・これ以上は郷に寄り添うつまりは無いわ・・・私は・・今までの関係で十分よ・・・」

 

矢田が再度聞き返しても速水の答えは変わらない。今までの関係で十分、つまり告白する気はないと言うことだ。何で速水はそんな考えに至ったのか?理解できず倉橋と茅野が詰め寄る。

 

「でも、郷くんも絶対凛香ちゃんのこと好きだよ!」

「そうだよ!お互いに好きなら想いを伝えるぐらい・・・!」

 

「そんな簡単に言わないで!!」

 

まるで自分の内側にため込んだものをすべて吐き出すかのようなその叫びは倉橋や茅野、その場の全員を気押させた。

 

「郷は、いつか未来に・・・本来いるべき場所に帰るかもしれないのよ!?そう遠くない内に別れないかもしれない位なら・・・私はこのままで良いわ・・・」

 

そう言い残しピットを出た速水の脚は自然と裏山へと向かった。

 




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恋愛の時間2時間目③

あっという間に・・・ジオウが終わった。

本当だったらジオウの終わった週に投稿するつもりだったのに既に01も4話に突入していますねぇ~・・・

とりあず、ジオウの最終回の感想を・・・



オーマジオウがヤバイ!!
歴代最凶のメンツがことごとくワンパンですよ!?おかし過ぎるでしょあれは!!でも、ソウゴの言った一言「オレの力は、すべてのライダーの力だ!」それだけであの強さに納得が行ってしまいました。
個人的には主人公最強の無双物は好きではないのですがオーマジオウは何故か受け入れられます。これが歴史の重さですかね?
遅くなりましたが・・・ありがとう、平成ライダー!お疲れ様でした、高岩成二!


そして、これからよろしく、仮面ライダー01!




教室から出た郷は裏山を歩いていた。

前原たちにはああ言ったが頭の中にはあの時の速水とキスした瞬間が何度も巡っていた。

 

「・・・ッ!?///ああ~~~!!///」

 

その度に顔を赤くし振り払うかのように首を振っていた。それを繰り返していくうちに気付けばE組プールまで来ていた。

今現在は授業ではプールとして使っていないが殺せんせーが定期的に掃除しており奇麗な水質を保っている。

 

「・・・・ハァ〜」

 

手ごろな岩に腰を落とし足を水に浸けながら郷は前原や寺坂に言われたことを考えていた。

 

『女子で速水が一番気になるんだろ?』『速水とじゃ本気の恋愛が出来ないって言うのかよ?』

 

「・・・・・・そんな訳ないだろ」

 

郷にとっても速水はもうただのクラスメイトでは無くなっている。この時代に来て多くの時間を一緒に過ごしていくうちにその姿を何度も目で追っていた。普段の強気な顔も、時々見せる年相応の笑顔も訓練の時のムキになった顔も全部が輝いて見えた。

たぶんこれが恋ってやつなんだろうということは理解していたし何時からか速水も自分にそういう感情を持っていたことも勘づいていた・・・

 

 

 

 

もしも、自分が仮面ライダーじゃなければ、自分がこの時代で生きていれば、自分が・・・・じゃなければ、この時代に来てE組で過ごすうちに何度もそんな事は考えた。その度にそんなのはただの願望に過ぎないと振り払ってきたが、

 

「本当に、何で俺は・・・」

 

 

 

 

 

『・・・郷』

 

 

そんな郷を呼ぶ声に振り返るといつの間にかクリムがシフトカーたちと共に傍まで来ていた。普段の郷なら直ぐに気付いていただろうがどうやら物思いにふけっていて気付かなかったらしい。

 

「・・・クリム、何だよ人がクールに黄昏ている時によ」

 

 

『その・・・速水くんとのことだが』

 

「ッ!?」

 

クリムが速水の名前を出した瞬間まるで「お前がその話をするか?」と言わんばかりに郷は目を細めた。

 

 

『・・・私が言えた事ではないかもしれんが、誰かと一緒幸せな時を過ごす。それは誰にだって与えられる権利だ。たとえ別の時代から来たものだろうと命を懸ける戦士だろうとね。だからっ「それはッ!【人間】に与えられる権利だろ?」———ッ!』

 

[人間]という言葉を強調して郷は叫んだ。その顔は何処か淋しげな表情をしている。

 

「絶対に未来に帰らないといけない訳じゃない。もちろん死ぬつもりもない。・・・でも、俺にはそんな人間らしい権利は無いし資格も無い・・・ロイミュードを撲滅したらE組からも出て行くつもりさ」

 

右手を握りしめた郷の身体が僅かに歪みだすと次の瞬間にその手は、全身は機械仕掛けの異形へと変わった。

 

「こんな冷たくて血の通っていない身体で人並みの幸せなんて持てるわけないしな?」

 

『・・・郷、それは・・』

 

皮肉るように笑うその姿はいつも通りの【詩藤郷】のモノへと戻っていた。そんな郷にクリムは何も言う事が出来なくなってしまった。先程見た郷の姿はクリムにっての罪の姿でもあったから・・・

 

 

「俺はこのままで良いんだよ。・・・命を懸けて戦って戦いが終われば、人知れず姿を消す・・・そういうのもカッコいいしな!」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

(・・・ウソ・・・・ッ!?)

 

 

 

笑いながらその場を後にする郷と思いつめたようにその後を追うクリムだが、2人は気付いていなかった。速水が木の陰に隠れ2人の会話を、郷の姿を見ていたことに・・・

 

 

「・・・・・ツ!?」

 

息をすることすら忘れ速水はその場に立ち尽くしてしまった。

 

知ってしまった。郷の覚悟を・・・自分が好きになったモノの本当の姿を・・・・!

始めてみた異形、だが速水はその姿を表す言葉を知っていた。

人の姿に偽る機械の異形、そして胸には3桁のナンバーのプレート、その名は・・・

 

 

 

 

「ロイ・・・ミュード・・?郷が・・・?」

 

その事実は速水の華奢な身体に重くのしかかった 。

 

 

 

 

「あっ、いたいた!凛香ぁ~!」

 

無責任な事を言ってしまったと思い速水を追って裏山へと来た女子たちが近づいてきたが速水に反応は無かった。目を見開きまるで金縛りにでもあったかのようにその場から動く事が出来ずにいた。

 

「凛香・・・どうしたの?」

 

その様子を不審に思った矢田が肩に手を置いた瞬間、金縛りが解けたかのように身体が動くようになった。同時に矢田たちの存在にも気づく。

 

「矢田・・・みんなも・・」

 

「速水さん、さっきはゴメンね。速水さんや郷くんの事を考えないで勝手な事ばっかり言って」

 

「郷・・・の・・・?・・・ッ!?」

 

 

片岡が謝罪と共に述べた郷の名に速水は先程の光景を思い出した。自分とは違いいつもいつも世話しないぐらいに表情を変えていく顔が一切変化することのない固定されたモノへと変わっていったあの光景を・・・

 

「・・・ふざけないで」

 

「凛香!?」

 

周りの矢田たちを押し退け速水はその場から走り出した。先程の光景から逃げる為ではない、向かった先は郷の歩いていった裏山の奥だ。速水はただ、郷に一言言いたかったか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒たちが行き来することが多い校舎からプールまでの道のりは殺せんせーによって安全に整備されていたがその先、更に奥へと行くと郷が独自に訓練するための敢えて手をつけていないエリアがあった。

 

「キャアッ!?」

 

普段から訓練をし同年代と比べ高い身体能力を持つE組でもまだ危険と判断され烏間と郷以外は実質立ち入り禁止になっている。だが、速水はそんなの知ったことかとばかりにそのエリアに足を踏み入れたが早速足下に転がる石に足をとられてしまった。

 

躓き前のめりに倒れそうになった速水の腕を誰かが後ろから引っ張った。

 

 

「おいおい、ココにはまだ来るなって言われてただろ?」

 

速水の腕を引っ張ったのは郷だった。

その顔は今朝のキョドった様子も先程の思い悩んだ様子もなく何時ものおちゃらけたモノだった。

 

「たっく、俺がいなかったらそのキレイな顔にキズが付いちまってたかもよ・・・なんてな!」

 

何時ものように調子の良いことを言いカッコを付ける、何時もの郷であった。

 

「あっ!ひょっとしてそっちも昨日のことで色々聴かれたのか?たっく、参るよなぁ~速水だって一時の気の迷いってヤツだっただろうにみんな面白がってな~」

 

が、このまくしたてる様な早口が速水には何処か強がっているだけのように見えた。まるで転んで痛いのに泣くのはカッコ悪いとムリに笑う子供のように。

 

その強がりが速水にはとてもイライラ感じた。

 

「待ちなさいよ」

 

距離を取ろうとする郷の腕をつかんだ。

 

「ッ!?・・・何だよ、みんなに指摘されてその気になっちゃったか?」

 

「・・・ええ、そうよ」

 

「ふぇっ?」

 

腕を掴まれたことに一瞬の動揺を見せた郷だったがすぐさま笑顔を被りからかうように振り返ると返ってきたのは予想外の言葉であった。間の抜けた顔の郷に速水が迫る。

 

デジャブ?そんな事が頭をよぎった時には郷の口は塞がれていた。

 

 

「んんっ~~!?」「んっんん・・・!」

 

昨晩の触れただけのキスとは違う。口の中に速水の舌が入り込もうとしてくる。そう感じた郷は慌てて口を閉じると速水から距離を取ろうとするが速水は腕を郷の背中に回し離れようとしない。

次第に速水の舌は郷の口を強引に開けその中に入り込んでいく、口の中に広がっていく甘い味に郷の抵抗心は徐々に弱まっていき心地よい夢の中にいる気さえした。

 

 

 

 

「んっ・・・・ぷはっ!ハァハァ・・!」

 

一分、二分と時間が経ち息が尽きた速水は名残惜しそうに郷から離れた。乱れた息を整える速水とは対照的に郷はまだ夢心地になっていた。

 

 

 

「・・・好きなのよ」

 

息が整い速水が発した言葉にようやく郷の意識が戻った。

 

「私は、速水凛香は!郷のことが好きなのよ!!」

 

その瞳に涙をため、今まで心の中に溜め続けていた想いを吐き出すかのように自分が出せる精一杯の声で速水は叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ!?ハッ・・・ハァ!?」

 

怒濤の展開に郷の頭はパニックになっていた。

 

「イヤ、イヤイヤイヤ!落ち着け!なっ?俺なんかのどこが良いんだよ!?俺なんかっバカだし、デリカシー無いしすぐに調子に乗るし!・・・スケベだし・・」

 

普段の郷なら絶対に口にしないだろう自虐的な言葉が次々と飛び出していく。速水はそれを黙って聴いていたが次第に郷の声は小さくなっていく。

 

「それに俺はッ!・・・オレは・・・・」

 

遂に言葉がつまった郷に速水はそろそろ良いか?とばかりに閉じていた口を開く。

 

「・・・その全部を含めて好きって言ってるのよ」

 

その言葉は決して大きなモノではなかったが裏山によく通るものだった。

 

「郷のバカな所もデリカシーの無い所も、調子に乗りやすい所も。出来れば治して欲しいけど・・・スケベな所も全部受け入れて郷が好きなのよ!!」

 

自分が挙げて行った短所を次々と受け入れていくと言われ後ずさる郷、それにっ!と速水は続ける。

 

「それに・・・郷が、ロイミュードなことも受け入れるわ・・・・」

 

「ッ!?・・・おまえ・・・何でそのことをッ!?」

 

速水から自分の秘密が暴露され郷の動揺は最大限になった。瞳は限界まで見開き顔は真っ青になりながら汗をかき体中が震える。

 

「ちがっ!・・・俺はッ!・・!」

 

郷はまるで自分の身体を射抜くかのような速水の視線に震えながらその脚は少しずつ距離を取ろうと後退っていく。

 

 

「待って!!」

 

 

が、速水は郷の腕をガシッと掴み逃がさない。そのままその手を引き郷を強く抱きしめた。

 

「ハァ・・・ハァ・・!はやっ・・・み?」

 

胸からは郷の鼓動が伝わってくる。よく耳を済ましてみると鼓動の中に微かな機械音が混じっている。だが、速水にはそれが不快なものには感じられなかった。

 

「言ったはずよ。私は郷の全部を受け入れて郷が好きなのよ」

 

 

「俺は、ロイミュード・・・機械仕掛けの・・化け物だそ!?」

 

 

「その前に、郷は・・郷でしょ?バカでデリカシーが無くて、すぐに調子に乗る。スケベな・・・・私が好きになった詩藤郷よ」

 

 

そこまで言うと速水の顔に冷たいモノが流れた。顔に上げると郷の眼から大粒の涙が流れていた。

 

「本当に・・・俺なんかで・・良いのかよ・・?」

 

「郷だから良いのよ」

 

「速水・・・ありがとう・・」

 

郷の身体から震えは止まっていた。その手を速水の背へと回し二人はお互いを強く抱き締め続けた。

 

 

 

 

 

 

 

『おめでとう・・・郷・・速水くん』

 

物陰からその様子を見ていたクリムとシフトカーたち、クリムは自身のボディが暖かくなっていくのを感じながら静かに祝福の言葉を贈った。

 

 

 

 




今回明らかになった郷の事実、【郷の正体はロイミュード】ですが、一応今までの話で伏線はあったのですが分かりましたかね?
今後、他の秘密も明かされていきますがそれはもう少し先になります。

それは一旦置いといて、ようやく速水は郷に想いを告げました。ただ、恋をする女子の心情が全然分かりませんでした。やっぱり恋愛描写は苦手です。



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恋愛の時間2時間目④

職場の修羅場や地元の祭りの演芸の練習からやっと解放されました!

これから少しずつですがペースを戻していきたいです!!


想いを告げた速水と郷が互いの温もりを感じるように抱き締め合ってしばらくの時間が流れた。ふと速水は顔を上げ郷を見上げる。

 

「・・・郷、まだ私に秘密にしてることってあるわよね?」

 

「あ~・・・分かる?」

 

ばつが悪そうな顔をする郷を速水はジド目で見上げる。

 

「全部、話してくれるんでしょうね?」

 

「・・・分かったよ。全部聞いてからやっぱり好きなのは訂正するなんて無しだからな?」

 

一瞬渋った郷だったが自分の正体がロイミュードである真実を知ってもなお、自分を受け入れると言ってくれた速水に郷も自分の秘密を全て告げる決心をした。

 

 

 

 

 

 

 

「以上がロイミュードと俺の歴史でした・・・っと」

 

数分後、郷は自分の出生や何故ロイミュードでありながらロイミュードと戦うのか、そもそもロイミュードとは何なのかその全てを話し終えた。

それまで黙って郷の話を聞いていた速水だったが郷がひと息つくのを確認すると再び郷に抱き付く。

 

「ごめんなさい。そんな辛いことを話させちゃって・・・」

 

「別に構わないって、俺も誰かに聴いて欲しかったしな、それに・・・受け入れてくれるんだろ?」

 

「ええ、例え郷が何であろうと私は・・・速水凛香は詩藤郷の側にいるわ」

 

速水はその日、いや今までの人生で1番の笑顔を見せた。その美しくさに郷は思わず見とれてしまったがすぐに首に掛けたカメラを構える。

 

「じゃあ、俺からも言わないとな。俺に・・・詩藤郷にこの先、誰よりも多く速水凛香の笑顔を撮らせてくれ」

 

カシャッとシャッターを切った郷が口にした言葉に速水は思わず吹いてしまった。

 

「ぷっ、なによその台詞?」

 

「ッ!?悪かったな変な台詞で///」

 

少々捻りすぎだがそれはそれで郷らしい告白に速水の眼には涙が浮かぶ。一方、郷は自分なりの一世一代の告白を笑われてふて腐れたようにそっぽを向いた。

 

「フフフ」

 

「・・・ハハッ」

 

その子供っぽい姿に速水はますます可笑しくなり笑ってしまう。そっぽを向いた郷もその笑い声につられるように笑いだした。

 

お互いの笑い声につられ合い2人はしばらくの間笑いあった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

「さぁ~ってと」

 

ひとしきり笑った郷はおもむろに足元に転がる小石を拾う。何をするのか?首をかしげる速水に背を向けると・・・

 

「はい!そこぉーー!!」

 

大きく振りかぶり近くの茂みへ投げつけた。その瞬間、茂みがガサァと音を立て揺れた。

 

「ニョァッ!?」

 

締まりのない叫び声と共に茂みから飛び出て来た殺せんせー、触手いっぱいにペンやノート、更にはカメラやボイスレコーダーまで持っている。その姿を見た速水は瞬時に今までの事を見られていたことに気付く。

 

「殺せんせ~~なぁ~~っにやってんっスか?」

 

郷がジド目で問い掛けると殺せんせーはあからさまに動揺し何とか誤魔化そうとする。

 

「ニュア!こ、これは違うんですよ!実は先生、最近バードウォッチングに嵌まっていましてね!眺めるだけじゃなく、スケッチしたり写真に納めたりポエムを詠んだり鳴き声を録音したり・・・!」

 

マシンガンのように言い訳をする殺せんせーだったがあいにく速水にはその言葉は届いてはいなかった。

 

「あっ・・・あのぉ~・・・速水さん・・?」

 

「ッ~~~///!!」

 

先程までの自分の言動を思い出しそれが見られていたことに言い様のない羞恥心に襲われその恥ずかしさのあまり顔を隠しながらその場に座り込んでしまった。

 

「ちょっと拝借ぅ~~」

 

「ちょっ!郷くんッ!?」

 

殺せんせーからボイスレコーダーを奪い取った郷即座に録音内容を再生した。

 

『私は、速水凛香は!郷の事が好きなのよ!!』

 

「ッ~~~~~///!?!???!?!??!!」

 

ボイスレコーダーから流れたのは先程の速水の告白だった。もはや速水の顔はトマトかと思うほど真っ赤になりパニックになりながら思考する。

 

このままじゃみんなに知られる、それを防ぐ為にはどうするか?

答えは決まっている。

 

この場で殺せんせーを殺すしかない!

 

隠し持っている銃を素早く抜き取り殺せんせーへと向けた。

 

「死ね!この覗きタコ///!!」

 

「ニョォ~~!!?」

 

明らかにキャラじゃない怒声を叫びながら銃を構え狙いを付け撃つ。恐らく今までで最も早く一連の動作を行った速水の弾丸だったがやはり殺せんせーには躱される。そのままの勢いで逃げようとした殺せんせーだったが不意に身体が重くなるのを感じた。

 

「ニュアッ!これは!?」

 

殺せんせーは重い身体を動かし何とか後方を見ると同じ様に身体の異変に驚く速水の隣で郷が地面に手を当てていた。

 

「殺せんせ~~、生徒の告白覗いておいて簡単に帰すわけないっスよねぇ~」

 

重加速を発生させた郷は速水にシグナルマッハを持たせ殺せんせーに近づく。シグナルマッハを受け取った速水も身体が軽くなったのを確認するとその後を追い二人で殺せんせーを囲う。

 

「二、ニュア~~~・・・」

 

さすがに不味いと冷や汗を流す殺せんせーだったが速水は兎も角として郷はあまり怒っている様子はなく指を鳴らすと同時に重加速を解除させた。

 

「悪いんだけど殺せんせ~、みんなを教室に集めといてくれないっスかね?」

 

「ニャッ?」

 

「えっ!?郷・・・?」

 

てっきり怒られると思っていた殺せんせーだったが郷からの要求に思わず変な返事をしてしまう。速水もその要求は知らなかったため目を丸くして郷を見る。

 

「ハイ、ハリーアップ!」

 

「はい!直ちに~!」

 

速水が瞬きをした間に殺せんせーはこの場から消え校舎へと向かっていた。それを見送った郷はのんびりと校舎へと向かっていく。速水もそれを追いかけながら郷に問いかける。

 

「何でわざわざみんなを集めるのよ?」

 

「いや~・・・どうせ殺せんせーにばれたならいっそのことみんなに公表しようと思ってなぁ~~」

 

「はぁ!?」

 

寝耳に水の速水は声を上げ郷に詰め寄る。速水としては郷との関係に関しては恥ずかしさもあり出来る事なら皆には内緒にしておきたいと思っていた。

 

「どういう事よ!?」

 

「いやだってさ・・・カルマとか中村辺りなんか感が良いからなぁ~どうせすぐにバレるって、なら先に言っておいた方がまだ良いだろ?」

 

「うっ・・・確かに・・そうね・・・」

 

郷の言い分に速水も納得した。確かに黙っていたらそれはそれでながいことからかわれる事になると容易に想像は出来た。なら、早いうちに公言しておいた方がましかもしれないっと。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「っというわけで・・・俺たち、晴れて付き合う事になりましたぁ~~イエ~イ!」

 

「「「「「いや、なんでだよ!!!??」」」」」

 

教室にて、顔を赤めうつむく速水の手を握り高らかと宣言した郷に男子たちは叫ぶ。

 

「おまっ!ついさっき付き合う気はないって言ってたじゃね~かよ!」

 

「おいおい寺坂ぁ~男心は秋の空って言葉を知らねぇ~のか?」

 

「それを言うなら女心と秋の空だろうが!!ちゃんと説明しやがれ!!」

 

寺坂を皮切りに男子たちは一斉に郷へと詰め寄っていく。

郷は身体を揺さぶられたり肩を強く叩かれたり頭をもみくちゃにされながらも笑顔でそれらを受け入れる。

 

 

一方で速水もまた女子たちに取り囲まれ根掘り葉掘り聞かれていた。

 

「凛香ちゃん!凛香ちゃん!どっちから告白したの?」「凛香ったら急に走り出したからびっくりしたけど、ちゃんと想いを伝えられたんだね!」

「も、もしかして・・・またキスってしたの!?///」「もし郷くんが速水さんを悲しませるようなことをしたら私たちが成敗してあげるわね!」

 

年頃の女の子らしく恋愛ごとに興奮する倉橋に友達として素直に喜ぶ矢田、真っ赤な顔に鼻息を荒くし詰め寄る茅野やとても頼もしい片岡

 

「フフッどうやら私のアドバイスが役に立った様ね」

 

生徒の輪に入って来たイリーナは腕を組みどや顔でウンウン頷く。

 

「みんな・・・ビッチ先生・・・ありがとう・・///」

 

みんなから心からの祝福されているんだと感じ速水は心から感謝する。

 

 

 

 

 

 

 

「ダァッ~~~!!いい加減にしろやぁ~~!!!」

 

散々にもみくちゃにされていた郷だったが散々に扱われることにやがて限界に達し纏わりつく男子たちを振り払う。

 

「人が我慢していたら図に乗りやがって!そんなにリア充になった俺が妬ましいか非リア充共!?」

 

郷のその一言に今の今まで祝福ムードだった一部の男子の眼の色が変わった。

 

「当たり前だぁ‼️」

 

岡島がまるで血の涙でも流さんばかりに目を見開き叫ぶ。

 

「郷ッ!俺は信じてたんだぞッ・・・ッ確かにお前は俺たちよりも顔は良い方かもしれない、それでも共にこのクラスのエロ仲間としてこれからも一緒に歩いていけるってッ!それなのに・・・それなのにッ!なに1人だけ彼女作ってんだぁ‼️」

 

「この裏切りもんがぁ~!!」「なぁ~にが速水と付き合う気はないだ!」「お前の罪を数えろやぁ~~!!」

 

先程までの祝福の小突きとは違う明確な敵意を持った拳が次々と郷へと振り下ろされていくが郷は素早くそれらを躱し距離を取り対峙した。

 

「上等だ、非リア充共がぁ!!リア充と非リア充の格の違いを教えてやらぁ~!!」

 

「「「「「非リア充舐めんなぁ~~!!」」」」」

 

 

唐突に始まった郷VS男子(一部)の闘いに残りの男子及び女子たちは溜め息を吐いた。

 

 

「全く、何をやっているのか・・・」

 

『良いじゃないか烏間、1つの恋であれだけはしゃぐことができるのも若者の特権さ』

 

教室の外の廊下からその様子を見ていた烏間も頭に手をやり呆れておりクリムは微笑ましそうに見ていた。

 

 

「シクシク・・・私はただ、生徒の甘い青春の記録を残そうとしただけなのに・・・」

 

ちなみに殺せんせーは2人の後ろで首に[私は生徒の恋事を隠し撮りしました]と書かれたプラカードが下げながら正座をさせられていた。

 

 

 

郷は向かって来る男子たちを次々と薙ぎ倒していき岡島の背に乗りながら両腕を絞り上げる。

 

「喰らえやァ~!パロ・スペシャル‼️」

 

「ギィヤァァァァ‼️たっ、助けてくれぇーー‼️」

 

技が完璧に決まり悲鳴を上げる岡島は助けを求めるが共に郷へと挑んだ同士たちは既に全員地に伏せっていた。

不参戦組も磯貝と渚は苦笑しておりカルマは面白そうにニヤニヤ眺めている。千葉に至っては巻き込まれないためにか目をそらしていた。

誰も助けてくれない。無情な現実に絶望する岡島に対し郷はさらに力を加えた。

 

「ギィヤァァァァァァァァァァァァ‼️‼️」

 

 

 

 

 

「よ~し!今日ははやみんと郷を祝して夜までお祝いだ~~!!」

 

「「「「「おおーーーー!!」」」」」

 

岡島の叫びを無視した中村の提案に倒れていた男子たちも起き上がりみんなが賛同した。

 

何人かが祝いの買い出しに行こうと教室を出ようとすると烏間が咳払いをしやれやれと言った顔で叫ぶ。

 

「騒ぐのは良いが各自、家には連絡を入れておくんだぞ!」

 

「「「「「はーーーい‼️」」」」」

 

 

烏間は教師の立場からあまり生徒が遅くまで騒ぐことに賛同はできなかったが笑顔で盛り上がる生徒たちを見て水を指すのは無粋だと思った。そんな烏間を見てクリムは小さく笑った。

 

 

1度は崩れかかったE組の絆は新しい繋りが生まれより強いものへと変わった。その日、夜遅くまで教室からは笑い声が絶えないでいた。

 

 

 

「タワーブリッジ‼️」

 

「もう勘弁してくれ~!郷ぅ~~‼️」

 

 




モチベーションがあがるので感想宜しくお願いします。


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新しい関係の時間

ひっ・・・・・・さしぶりです!!

一年以上ぶりに戻ってきました。ギリギリで年内に投稿が出来ましたが待っていてくれた人が果たしていたのかどうか?

これから少しづつでもしっかりと投稿していく予定なので改めてよろしくお願いします!


ピピピー!ピピピー!!

 

「んっ・・・もう、あさ?」

 

その日、いつもより早い時間にセットした目覚ましの音で目を覚ました速水は寝間着の上にエプロンを着てキッチンに立った。

 

 

 

以前、烏間の食事についてみんなであーだこーだと言った事があるが郷の昼食も大概だと思えた。

 

郷の昼食は基本的に片手間に素早く食べられるドーナッツやハンバーガーばかりだった。

 

今までは気にしながらも郷には郷は都合があると納得していたがつい先日に恋人になったのを契機に郷にはしっかりと栄養のあるものを食べてもらいたいと考え今日、お弁当を作っていくことにした。

 

「べっ別に手料理を食べてもらいたい訳じゃ無いわよ///‼️」

 

別に誰かに何か言われたわけでもないのに何故か叫んでしまった。叫ばずにはいられなかった。

慌てて周囲を見渡すがもちろん誰もいないが、自分の奇行に恥ずかしくなった速水は羞恥心から赤面した顔を俯かせていると手元から焦げ臭いにおいがした。見てみるとフライパンの上の卵焼きが真っ黒に焦げていた。

 

「あっ!?ちょっ!」

 

すぐに火から遠ざけるが既に卵焼きは炭状態になってしまいとても食べられるものでは無かった。

 

「ウウ・・・こんな失敗したことないのに・・・」

 

今まで母親の手伝いや親が留守の時に調理はしたことはあったがここまでの失敗はしたことが無かった。

どうやら自分が思っていた以上に浮ついていたらしい。

 

「・・・・ハァ、まだタマゴあったかしら?」

 

仕方なく冷蔵庫から新しくタマゴを取り出して改めて作ることにしたが、その最中にも郷が自分の作ったお弁当を喜んで食べている姿を想像して顔がニヤケてしまう。そしてまた卵焼きが焦げた・・・

 

結果、冷蔵庫内のタマゴをすべて使いきった速水は母親に怒られながらもどうにかお弁当を完成させる事が出来た。

 

・・・その日の速水家の朝食は大量の焦げた卵焼きに埋め尽くされた。

 

 

 

 

 

 

「ハァ・・・ハァ・・気持ち悪っ・・・」

 

大量の卵の犠牲のもと出来上がった弁当をバックに入れいつもより早く家を出た速水は裏山の坂道を登りながら押し寄せる吐き気に襲われ続けていた。自業自得とは言え一度にタマゴ8個分の卵焼きを食べる事になってしまい口の中にはいまだにタマゴの味が広がっていた。

 

慣れたはずの坂道を息を乱しながらも登り切った速水の耳にブォンと風を切る音が聞こえた。

 

「・・・・郷?」

 

グラウンドの真ん中で郷が1.8mほどの棒を振り回していた。その周囲を数台のシフトカーが駆け回り不規則なタイミングで郷に向かっていく。

 

「フッ!ほっと!」

 

手にした棒で迫り来るシフトカー達を捌いていく郷の顔には大量の汗が流れており訓練の濃さを物語っていた。

 

棒を振るう度に身体中の汗が飛び散り朝陽に輝く、訓練の時だけ見せる真剣な表情を眩しいモノへとした。

 

「・・・・・・///」

 

その姿に見惚れてしまった速水はその場に立ち尽くしていた。

やがて一通りの訓練を終えた郷はグラウンドの端に立ち尽くす速水に気付いた。

 

「お、お~い凛香ぁ~~!」

 

手を振りながら近付いてくる郷に速水も慌てて小走りで近づく。その顔には【凛香】と呼ばれた事に対しての嬉しさと気恥ずかしさが混ざりあっていた。 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

2人が付き合い始めた日、2人を祝い夜まで騒いでいたE組が総出ですっかり散らかった教室の片付けをしていた時だった。前原が「そう言えば」と切り出した。

 

「郷ってこれから速水の事は何て呼ぶつもりなんだ?」

 

「・・・はっ?なんてって・・・速水は速水だろ?」

 

端に寄せていた机を元の位置に戻していた郷は質問の意味が良くわからなかったが前原はわざとらしく溜め息を吐くと郷の肩に腕を組み耳打ちする。

 

「良いか郷、ただの友達ならまだしも、付き合いだしたんなら名前で呼び合うのが当然だろ」

 

「そうなのか?」

 

「試しに一度呼んでみろよ。絶対に喜ぶと思うぞ」

 

そう言われ郷は視線を速水へと向ける。速水は矢田と一緒に床に散らばったゴミを掃除しながら談笑しており郷たちの会話には気付いて無いようだった。

 

前原の言うことももっともかもしれない郷は思った。今まで郷自身は恋愛経験はなかったが未来の時代でも周囲には恋愛関係の人達はおりその誰もがお互いの事を名前で呼び合いとても楽しそうにしていた。自分たちもそんな関係になったんだからと。

 

 

「お~い、凛香~~!」

 

郷としては周りが基本的に速水と呼んでいたからそう呼んでいただけな為名前で呼ぶことに対しては特に抵抗は無かったので試しに呼んでみた。

 

 

「ッエ!?///」

 

カタンッと速水が持っていた箒が倒れ何故か教室が静かになった。大半の生徒がニヤニヤと笑っていて一部の女子はキャーキャーと声を抑えながらも騒ぎだした。

 

「ん?なんか変だったか?」

 

いまいち状況が飲み込めない郷が前原に問うように振り返るが当の前原は爽やかな笑顔で親指を立てていて郷はますます訳が分からなかった。

 

「ごっ郷・・・今、凛香って・・・?///」

 

「ん?ああッ、付き合ってるのに名字呼びはよそよそしいって前原が教えたくれてさ」

 

郷がそう言うと速水は郷の後ろの前原を睨むが、顔を真っ赤にした状態ではいまいち迫力に欠けておりむしろ可愛らしかった。

 

「あ~・・・もしかして嫌だったか?」

 

「そっ!そういう訳じゃないわ‼️ただ・・・少しビックリしただけよ・・・///」

 

「そっか、じゃあこれからは凛香で・・・改めて宜しくな」

 

周りのニヤニヤとした視線を気にもしない郷と対象的にみんなの前で改めて付き合い出したんだと認識した速水は恥ずかしがりながらも

 

「・・・ええ///よろしく・・・///」

 

出来る限りの笑顔で応えた。

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

あれから郷から凛香と名前で呼ばれることになったが未だに馴れず照れ臭くなる。

 

「お~っい、どうした?」

 

気付けば郷が目の前まで来ており顔を覗き込んでいた。

汗の臭いが朝風に乗って速水の鼻に届く。

 

「何でもないわよ///それよりも・・・コレ・・///」

 

何だか身体が火照って来るのを感じながらも速水はバックから丁寧に包まれた弁当箱を取り出し郷へと突き出す。

 

「おおっ!本当に作ってくれたんだなぁ~!ダンケッ!」

 

弁当箱を受け取った郷は本当に嬉しそうであり速水も思わず笑顔になっていった。

 

 

 

 

「ニュルフフ~~・・・・郷くん、今日のお昼ご飯は速水さんの手作り弁当っと・・・」

 

奥の森からその様子を見て怪しくうねる触手の存在に速水はもちろん郷も気付いてはいなかった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

郷は訓練で掻いた汗を流しに行った後、速水と共に教室で他のみんなが来るのを待っていた。

 

 

 

 

時間が経つにつれ続々と登校してくるクラスメイトたちだったが何故かそろいもそろって二人を暖かな眼で見ていた。

 

そんな中激しい足音を立てながら迫る者が1人・・・

 

 

「女子の手作り弁当を持つ悪い子は・・・居ねぇがぁ~!!」

 

目から血の涙を流した岡島が窓を飛び越え教室に入ってきた。

 

「みぃ~つぅ~~けぇ~~~たぁ~~~~~ぞぉ~~~~~!!」

 

岡島の真っ赤に染まった目線は郷の机に置かれた弁当箱をロックオンすると四つん這いになりゴキ〇リのごとき動きで迫る。

その気味の悪さに女子たちは悲鳴を上げ男子も引いていたが岡島は構ないとばかりに弁当箱を目指す。そして、弁当箱が射程内に入ると勢い良く飛び上がり手を伸ばす。

 

「おれにもよこせやぁぁぁ「だ~れ~が~やるかぁぁぁ~~!!」っがぁぁぁぁぁ~~~!!???」

 

その手が弁当箱まであと僅かの所で郷の回し蹴りが炸裂、岡島は窓を突き破りグラウンドへと飛んでいった。

 

「たっく、つかれてんだから余計な体力使わせるなよな~」

 

 

もはや見慣れ始めた光景にみんな苦笑いしていると同じく慣れ始めたのかボロボロで這いつくばった状態でありながらもすぐに戻ってきた岡島はその手に1枚の紙を握り締めていた。

 

「郷ぅぅぅぅ~~~・・・やっぱり俺は・・・・俺はお前が許せな~い!!」

 

ウガアァァァ!と叫び声を上げ迫って来る岡島をあしらいながら郷わざとらしく首を傾げた。

 

「ナンダヨ~岡島ぁ~オレガナンカシタカ~~?」

 

「うっせ~!!一人だけ彼女を作っただけども恨めしいのに、早速手作り弁当だとぉ~~・・・・・ふざけんなぁーーー!!」

 

岡島が手に持った紙をぐしゃぐしゃに丸め投げつける。郷は難なくその紙をキャッチすると広げ見る。その紙は新聞の様だった。

速水もその内容が気になり覗き込むが次の瞬間には目を見開き顔を真っ赤にし新聞を奪い取る。

 

「ちょっ、これって・・・・!///」

 

速水は慌てて周囲を見渡すが他のみんなはそれが何なのか分かっている様で苦笑いしている。再度、新聞を凝視する。

そこには【E組に咲いた恋の花、早くも満開!!】という見出しと共に今朝の郷に弁当を渡した瞬間や家で弁当を作っている写真が載っていた。しかも、2人の周りは大きなハートで囲まれている。

 

「・・・・・・・・・・・」

 

無言で新聞を見続ける速水の身体がワナワナと震えだしその手に力が入る。持っていた新聞はクシャリと歪み出し全身から謎の迫力を感じ教室に居る全員が本能的に後退りした。

 

「あ~~っと、凛香・・・さん?」

 

さっきまでおちゃらけていた郷も不味いと感じ恐る恐る声をかけると速水は新聞をグシャグシャに丸め握り潰した。

 

「ひぅっ!?なっ・・・・何でもないです・・・」

 

そのあまりの迫力につい敬語になり後退りしてしまった郷を尻目に速水は自身のカバンから2丁のエアガンを取り出すと「フフフ・・・」と笑いながら教室から出ていく。

 

 

 

数秒後、「にゅあ~~~~!!!?」と言う叫びと共に何十発もの銃声が校舎内に響き渡ったのだった。

 

その後、殺せんせーは烏間からの説教を受け一日中正座で過ごすことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 




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鬼ごっこの時間①

近くの映画館で滅亡迅雷の映画を見たことでモチベーションが上がりました!

賛否が分かれそうな内容でしたが個人的には嫌いじゃない内容でしたね。

次回のバルカン&バルキリー滅亡迅雷の四人の出した結論がどんな結末を迎えるのかとても気になります。


夏の残暑も収まり少しづつ涼しくなってきたある日の体育の時間、E組は新たなスキルを学ぶことになった。

 

「今日から新しい応用暗殺訓練、フリーランニングを行う」

 

裏山にある小さな丘の上で生徒たちの前に立った烏間が言うと生徒たちは聞き慣れない言葉に首を傾げる。

 

「例えば・・・今からあそこにある一本松まで行くとしよう。三村君、大まかでどのような道で何秒かかると思う?」

 

烏間が指さしたのは小川や茂みを挟み数十メートル先の岩の上にある松の木だった。問われた三村は立ち上がり丘の下を覗き込み松の木までのルートを考える。

 

「そうですね・・・この崖を這い下りるのに10秒、小川は狭い所を飛び越えて茂みの無い右側に回り込んで最後に岩を登りますから・・・・1分で行ければ上出来ですかね」

 

他の生徒も三村の予測は中々正確だと思えたがそれを見て烏間は不敵に笑う。

 

「そうか・・・では、俺が今から実演するから時間を測ってくれ。」

 

烏間は三村にストップウォッチを渡すと崖の端に立った。

 

「これは一学期でやったアスレチックやクライミングの応用だ。自分の身体能力を把握し受け身の技術や目の前の足場の距離や危険度を正確に測る力を身に付ければどんな場所でも暗殺が可能になる」

 

崖に背を向けみんなの方を向いたまま身体を傾け烏間は崖から落下していった。

誰かが「アッ!」と声を上げと同時に烏間は空中で態勢整え着地、そのまま側の岩の側面の駆け川渡ると木の上へ跳躍し木々跳び移って行き瞬く間に松へとたどり着いていた。

 

「タイムは?」

 

烏間の動きに驚きながらもしっかりとタイムを測っていた三村はストップウォッチへと視線を落とす。

 

「じゅっ10秒・・・です・・」

 

「まあ、そんな所か。では次は・・・郷君、やってくれるか」

 

「ん、へいッス」

 

烏間から指名された郷は待ってましたとばかりに前へ出ると先程の烏間と同じ様に崖の縁に立つと少し考え込んだ。

 

「ん~ただやるだけじゃつまんないしなぁ~~・・・凛香ぁ~!烏間先生より速くゴール出来たら明日の弁当に唐揚げよろしくなぁ~~」

 

「えっ?ちょっと待ちなさいよっ!」

 

速水の返事を待つことなく郷はバク宙しながら崖から飛び降りた。

 

「ちょっと郷!速いって!」

 

慌ててストップウォッチをスタートさせた三村だったが・・・

 

「お~い!何秒だぁ~~!!」

 

ストップウォッチのスイッチを押した時には既に郷はゴールの松の枝にぶら下がっていた。

そのあまりの早さに三村は正確なタイムを測れなかった。

 

「わ、悪い郷・・・もう一度やってくれないか?」

 

「ん?オーライ、じゃあそっち戻っから測ってくれ!」

 

枝から降りると次こそは失敗しないようにストップウォッチを構える三村を確認した郷は軽く屈伸をしながらゴールとなる丘を見据える。

 

「んじゃ、よ~い・・・GO!」

 

スタートと同時に崖から飛び出し数メートル先の木の枝に跳び移る。枝を掴むとその勢いのまま鉄棒の様に一回転し川を一飛び、崖をまるで平地かの様に駆け上がっていくと瞬く間に登り切った。

 

「ゴ~ル!っで、何秒だった?」

 

「よっ・・・4秒・・・・?」

 

そのタイムに測った三村自身も疑ってしまうほどだった。

 

「しゃっ!唐揚げゲットォ!!凛香、明日よろしくな!」

 

「勝手に決めて・・・分かったわよ」

 

啞然とするみんなを置き去りに郷は1人、明日の昼食に心躍らせていた。そこに烏間もこれまたいつの間にか戻っていた。

 

「フリーランニングとはこのように道なき道で行動する体術だ。極めればビルからビルへ忍者の様に踏破することも可能になる」

 

「すっ・・・すごい・・っ!」「俺たちもあんな風に出来たら超カッコいいよな?」

 

烏間と郷の動きを見て同じ様に山を掛ける自分たちを想像し興奮するE組だったが烏間は手を叩きみんなを注目させる。

 

「だが、初心者の内に高等技術に手を出せば命にかかわる危険なものでもある。この裏山は地面も柔らかくトレーニングに向いているが危険な場所や裏山以外で試したり教えた以上の技術を使う事は禁止する。いいな!」

 

「「「はい!!」」」

 

 

 

 

 

「ニュル~~~・・・・・」

 

烏間の指導の下、フリーランニングの訓練を始めたE組を見て殺せんせーは何かをひらめいた。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

フリーランニングの訓練を始めてからしばらく経ったとある月曜日の朝、不破は裏山を慌てて登っていた。

 

「まずいまずい!このままじゃ遅刻だよ!!」

 

間もなく始業時間になるのに焦っていると背後から足音が聞こえ振り返ると郷が坂と思わせないようなスピードで駆け上がって来ていた。

 

「おっ!不破じゃんオッス」

 

「郷、おはようって何で下から来てるの?」

 

郷はグラウンドにあるドライブピットで暮らしているため普段は登校で坂を上ってくることがないのだが何故か今日は山を登って来ていた。しかも時間ギリギリに・・・

 

「いや~それが今日ジャンプの発売日なのを途中で思い出してよぉ~慌てて買いに行ってたんだけどどこも売り切れで隣町まで行っちまったんだよ」

 

笑いながらカバンからジャンプを取り出す郷を見て不破は目を輝かせる。

 

「ちょっ郷!どこで手に入ったの!?」

 

「おっと」

 

奪い取る様に手を伸ばす不破を避け郷は隠す様にジャンプを仕舞う。

 

「まだ俺も見てないんだよ。どこにも売って無くて結局三つ先の駅まで行ってたから読む時間が無かったんだからな」

 

「そうなんだよね・・・私もいろいろ探してたら時間ギリギリになっちゃって」キーンコーンカーンコーン

 

「「・・・・・あっ」」

 

 

話していてすっかり時間を忘れていた二人の耳に無情なチャイムの音が聞こえた。今二人が居るのはまだ裏山の中腹辺りであり遅刻は確定していた。

 

「ああ~時間になっちゃったね。仕方ないから二人で怒られようか?」

 

諦めた不破が同意を求めようと横を向くがそこに郷の姿は無かった。

 

「アレ?」

 

「チャイムが鳴り終わる前ならセーフだろぉぉぉ!!」

 

「あっ!ずるっ!」

 

郷はチャイムがなっていると認識した瞬間に走り出しており既に坂を上り終えグラウンドに入ろうとしていた。自身の視線から郷が消えた事に不破も慌てて走り出すが間に合う筈がなくチャイムは鳴り止んでしまった。

 

「ああ~・・・・しょうがないか・・・・」

 

諦めた不破はトボトボと校舎に入っていく。

 

 

 

 

一方、郷はチャイムが終わるギリギリになんとか教室前へとたどり着いていた。

 

「ギリギリセー「郷君、遅刻の現行犯で逮捕です」フェ!?」

 

教室に入った瞬間、郷の腕に手錠が掛けられた。突然の事に困惑した郷の横にはクチャクチャとガムを嚙むアメリカンポリス姿の殺せんせーが立っていた。

その姿には郷だけではなくすでに席に座っていた他の生徒たちも困惑していた。

 

「何なんだよ殺せんせー、朝っぱらから悪徳警官みたいなカッコしてさ」

 

一番近くの席の木村が聞くと殺せんせーは楽しそうに笑う。

 

「いえ、最近皆さんがフリーランニングを始めたのを見ていましてせっかくだからそれを使った遊びをやろうと思いましてね」

 

「遊びだぁ?ケッどうせ下らないっ「それは、ケイドロです!!裏山を舞台にした3D鬼ごっこ!」・・・」

 

悪態をつく寺坂の顔に布を被せながら殺せんせーが宣言した。

 

 

「細かいルールは今日の午後に説明します。が、その前に・・・」

 

「すみませ~ん。ジャンプを探していて遅れちゃいました~」

 

不破が遅れて教室に入って来る。が、不破もその手に手錠をかけられた。

 

「えっ・・・?ええっ!?」

 

「不破さんも逮捕です。遅刻したお2人には罰としてホームルーム中は正座で聞いていてもらいます」

 

「ワッァァァァァツ~~~!!?」「ええぇ~~!?」

 

郷と不破がみんなの前で正座をする姿を一部(カルマ)を除いた全員が哀れな視線を向けホームルームは続けられた。

 

 

 

 

 




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