アルター・イゴス (nightrex)
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設定紹介

あくまでも”アルタ―・イゴスはこんな感じです”という意味で書きました。

ネタバレなどが含まれているかもしれないので、1話を読んだ後に見る事をおすすめします。別に気にしないという場合はお任せします。

代表的な登場物から必要な情報しかありません。これを見ればアルター・イゴスがどういう作品か少しは分かると思います。

物語内で新しい単語や知った方がいい情報が出た場合、設定紹介の方に書いておきます。

登場人物について更新する予定は今のところありません。


―登場人物―

八神桐之(やがみ・キリユキ)

本作の主人公。アルター使い。星空高校に通う高校2年生。小学校の頃からいじめなどの羞恥を受けており、卒業するまで続いた。トラブルや問題を起こして周りに迷惑をかけたくないという理由で誰にも相談せずずっと耐えてきた。ある日、コンビニ帰りに”黒い霊”に襲われ、無意識にその霊を取り込んだことによりアルター使いとして目覚める。
クラスの友人に自ら”根に持つタイプ”と言っており、「ヴァ二ック」と名付けたアルターを使って嫌いな人物を次から次へと粛清する。個人的な恨みや気に食わない事があれば彼はその”力”で全てを焼き尽くす。

剣崎勇人(けんざき・ハヤト)

本作のもう一人の主人公。アルター使い。芹沢学園に通う高校2年生。住んでいる寳坂市を管理する剣崎家の24代目当主。代々鬼神を式神として使役する一族の血を引く勇人は、家系に伝わる召喚法でアルター「デスリード」の召喚に成功する。極めて真面目で女性に対して優しい。常に90点台の成績でスポーツ万能。蔓延る野生のアルターから悪質なアルター使いと戦いながら、寳坂市の平和を守っている。

天ヶ瀬莉子(あまがせ・りこ)

本作のヒロイン。芹沢学園に通う高校2年生。。代々アルター使いを輩出してきた天ヶ瀬家の出身だが、アルター使いとしての素質を持っておらず、剣崎家と違って素質の薄い子供が生まれることは珍しくはない。青髪で長いため普段は、後ろ髪をダンゴ状にしており、可愛らしい黒いリボンの髪飾りをつけている。非常に明るくチャーミングであり、天然なところもある。
同じクラスのハヤトとは友人関係である。

瀬戸真昼(せと・まひる)

星空高校に通う高校2年生。キリユキと同じクラスであり友達の一人でもある。学校の帰りなどにキリユキと一緒によく”嫌いな人”や嫌な出来事について話す。アルターの存在を知っており、また重要な秘密を握っている..........

―設定―

・アルター(Alter)

人間界とは異なる異空間に住む霊的な生物のこと。空間の歪みにより、寳坂市に現われたアルターは普段は黒い半透明な姿をしており、”オバケ”や”幽霊”を連想させる。無差別に人間を襲い、場合によっては憑依する。アルター使いとしての素質を持った人間に取り込まれた場合、その人に応じて戦うための肉体を形成し、使い魔<専用アルター>となる。また人型タイプのアルターは上位クラスに入っており、それ以外のアルターはレアリティで言う「コモン」や「アンコモン」に入る。
どういう訳か寳坂市で大量発生しており、外の地区や他の県では確認されていない。
本人の代わりに戦ってくれるという意味で「ALTER EGO(別人格)」から「ALTER」という名で呼んでいる。

また戦いや環境に応じて姿を変化するという「ALTERATION(変化)」という意味も含まれている。

・アルター使い/操縦者(Alter User/Driver)

アルターと呼ばれる霊的な生物を使役する者。アルター使いとしての素質を持つ者は、人間界に迷い込んだアルターを体内に取り込み、主と僕の関係になる。取り込まれたアルターは主の素質次第で絶対に逆らえない。使役するための力と素質が弱ければ取り込んだアルターに食われるか、あるいは憑依される危険がある。また本人の精神状態の影響で取り込んだアルターの肉体が形成される。遠隔操作でアルターをラジコンのようにコントロールするため「操縦者」とも呼ばれている。呼び出す際に必ず与えた名を呼んで召喚する。アルターは最大で3体まで所有が可能。


・寳坂市(Housaka City)

アルターの物語の舞台となる街。東京都に存在する人口119万人を誇る政令指定都市。土地としては剣崎家が管理している。強力な霊脈<レイライン>が通っており、アルターの大量発生地である。特殊な結界が貼られているため、迷い込んだアルターは寳坂市の外には出られない。そのため渋谷や秋葉原などの地区では、アルターは存在しない。高速ビルが多い事で知られており、その最先端な風景と景色でドラマや映画の撮影場所として有名。また”都市伝説の街”と言われほど奇妙な噂が多い。


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第1章―寳坂編― 第1話:炎の魔人

どうも。前からジョジョに出てくるスタンドやペルソナみたいに”何か”を召喚して戦うというストーリーを考えていました。

スクライドに出てくる「アルター」という名前と被っていますが無関係です。

一応、設定紹介があります。1話を読んだ後に設定紹介を見る事をおすすめします。

主人公は二人います。今回の1話はその一人の主人公がメインです。次回の2話は、そのもう一人の主人公のストーリーになります。

3話以降からその二人の主役が出会い、物語が本格的に動く形となります.....

またこのストーリーに「テーマ」があります。もしアルター使いになってしまったらどうするか?

アルターは何に使うか?誰のために使うか?貴方ならどう使うか?

主人公および様々な登場人物が「アルター」と呼ばれる制御不可能の怪物を使役し、戦う―――それがアルター・イゴス。

いろいろと長くなりましたが、そんな感じです。


この世には説明の出来ないものがたくさん存在する。


2019年の春。俺の人生は大きく変わった。元々はふつうの高校生だった。そんな”ふつう”だった俺が、今じゃ危ない性活を送っている。いつ死んでもおかしくないような人生だ。もしかしたら俺は進むべき道を間違えたかもしれない。いや、俺を嫌う神様の仕業なのか........

―――俺は何処で道を間違えたのか.....?


2019年5月24日、金曜日。時刻は17:36分。学校から帰って来た俺は部屋でパソコンを立ち上げる。ほぼ毎日、俺は「カルマ」と呼ばれる小説投稿サイトで小説を書いている。・・・と言ってもあんまり評価は高くない。読んでいる人も少ない気がする。

俺の名は八神桐之(やがみ・きりゆき)。星空高校に通う1年生。趣味は小説を書くこと。今、書いている小説は『見えない炎』と言ってジャンルはサスペンス。主人公が放火魔を追うシンプルなストーリー。7話まで書いた。しかし、感想や評価がほとんどなく、少しがっかり......

しかし、一人だけ読んでくれる人物がいた。

「また..... アイツからだ」

感想欄をチェックしていたらいつもの人から感想がきた。そう、一人だけ読んでくれる人がいる。カルマでは「デュナミス」と名乗るその人は、周りに知られるほど有名人である。書いている小説もどれも評価されており、よくランキング上位に入ってる。このまま小説家、あるいはラノベ作家デビュー出来ると言われるほどの人物だ...........

あんまり他人の作品に感想や評価せず、お気に入りに登録するぐらいの人だが、たまに俺の作品を見て感想を書く。

「,,,,,チッ。またダメ出しかよ」

イライラしながら書かれている感想を内心で読む。そう、ヤツの書く感想はどれも上から目線だ。悪い部分や間違ったところだけ拾って、それ以外は無視。

つまり、悪いところしか評価しない。指摘するのは悪いことではないが、コイツの場合は俺を見下ろすように指摘する。残念ながらこのサイトにブロック機能は存在しない。

(本当イライラする.....)

酷い時は、アイツの信者が俺の作品を読んで悪意のこもった指摘を残したりする。そう、アイツは俺の作品をいろんな人達に教えた結果、周りから馬鹿にされている..........

俺はアイツとは違って別にプロでも人気者でもなんでもない。ヤツは完全に俺を見下ろしている。

「あー!マジむかつくー!」

感想を読み終わったキリユキはイライラしながら部屋を出た。アイツがきっかけでいろんな作家から悪口と見せかけた指摘メールが届いてばっか。もう、書くのやめようかな........

「あぁ、キリユキ。父さんと母さんは出掛けて来るから作ったシチューを温めて食べてね!」

台所でパックの牛乳を飲んでいたら、玄関に立つ父さんが大きな声で言った。振り向くと母さんと父さんはいつも以上におしゃれしていた。ちなみに父さんは有名なバンド『赤狼』のギターを担当している。母さんと一緒にどこへ行くのかあんまり興味なかった。なみに自分はそういうの目指していない。

「うん...... 分かった。いってらっしゃい!」

「遅くなるかけど..... 何かあったら電話してね!」

母さんがそう言うと、キリユキは「うん」と言って頷く。二人が家を出た後、一人になったキリユキはリビングのソファに座り、テレビを付ける。

「―――つまんねぇ........」

チャンネルを全て変えてもつまんないバラエティ番組やドラマしかやっていない。未だにアイツの書く感想や送ったメッセージの内容を思い出す。そのせいかすごいイライラしている。

―――誤記が多すぎて酷い。あとキャラがどれも地味すぎる。何が書きたいのか理解出来ない。

正直言って・・・・君、小説書くの向いてないな。出直してこい―――

「あ、あの糞野郎.....!」

拳を握りながら歯を食いしばるキリユキは、震えながら言う。思いだしたくもない事を思い出してしまった。過去にメッセージのやり取りで感想について揉めたことがある。その時は、今までの感想について思っている事を言った。

しかしヤツに”可笑しい人”や”小説書くのやめた別のことすれば?”とかムカツク返事を送られた。

「デュナミスト...... あの野郎..... 絶対に思い知らせてやる....!」

それを言われた俺はムキッになり、いろいろと言い返した。その結果、ヤツは俺達のやり取りをサイト内の作家達に見せた。俺の存在が知られる、バッシングを受けるようになった。

その後、デュナミストもしくはヤツの信者の一人が運営に報告した結果、俺は小説おろかアカウントを失った...........

今、書いているのは第2のアカウントだ。

「あー!もう、ふざけじゃんねぇよー!」

ソファにあるクッションを掴み、床目掛けて投げた。どうせ帰り遅いから、コンビニでも行くか。イライラが収まらないキリユキは、財布を手に取り、家を出てコンビニへ向かう。


◇◆◇


時刻は18:10分。コンビニでジュースやお菓子を買ったキリユキは5分近く置かれている雑誌を読んだ後、店を後にする。既に外は暗く、不審者が潜んでいてもおかしくない雰囲気だ。駐車場には無数のハエが飛んでおり、見ていてうっとおしい。

「帰るか.......」

ボソっと呟いたキリユキは俯きながら自宅へ向かう。歩いている最中、変に気配を感じる。気のせいだろうか。何かが後ろにいるような..........

もちろん振り向いても誰もいない。不審者とかそんなことを考えていたからそう思ってしまうんだ。早歩きで前へ進むキリユキ。しかし、それでも気配を感じる。足音とかは聞えないけど、何故か”気配”を感じる..........

(チッ、なんなんだよ.....)

急にそわそわしてきた。片手で自分の胸元を掴むキリユキは歯を食いしばりながら走った。走ればコンビニから家まで2分ぐらいで着く。いや、本気出せば30秒ぐらい!

そんな事を考えながら走っていたら、さっきまで感じていた気配が大きくなった気がする。何もいないと分かっているのに後ろを振り向いたその時......!

「――――ハッ!?」



『ヌ”ワ”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ッーー!!!』



振り向いた途端、黒い人影のような”何か”が口を大きく開けながら襲うつもりでこちらに向かって来た。


◇◆◇


目を覚ますと俺は、小学校の頃によく遊んでいた”恐竜公園”の前で倒れていた。何故こんなところで倒れているのかまったく分からない。ちなみに部活帰りと思われる体操服を着た中学男子二人が「コイツ何してんの?」という目でこちらを見ている。

しばらくすると変な目で見ていた男子二人は駆け足でその場から去った。起き上がったキリユキは、買った物の袋を手に取り、盗まれていないかと確認する。得に盗まれた形跡はない。ちゃんと買った物が残っている。

「な、なにが起きた.....?」

何故こんなところで倒れていたのか。たしか変な気配(・・)を感じて走ったのは覚えている。しかし、その後が分からない。とにかく家に戻るため走った。


時刻は18:30分。家に戻った俺は自分の部屋で買ったお菓子を食べながらヤツ(・・)の感想を見た。さっき1時間前にも見たが、別作品に新しい感想が来ている。恐る恐る見て見ると.......

―――文章力なさすぎ。頑張って書いているつもりだと思いますが、正直言って人々の前で見せるような内容とは思えません。むしろ休み時間にノートに書くレベルです。アカウント消えて、復活して前回より変わったと期待していましたが、結局いつものVanicでした。いろいろとアドバイスや指摘しましたが、以前よりも上達していない。こんなのじゃ誰も読まない。何度も言いますが、貴方はこのサイトに向いていません。本当にやめたら?―――

この時、怒りが火山のように噴火する。震えた手でマウスを掴むキリユキの表情が一変する。

アドバイス?指摘?お前のアドバイスはどれも否定的で納得出来ない内容ばっかだよー!

アカウントが消えたのは、お前の仕業だろう!

しかも消える前に俺の小説およびアカウントに関する情報などのやり取りを周りにバラ撒いたのもおめぇの仕業だろうがァー!!

怒りが収まらない。俺は見下ろされるのが一番、嫌いなんだよぉ....!

―――こんなヤツ今すぐでも燃やしたい.....!

心の底から湧き上がるこの気持ちは何だ。他人にはこの気持ちが分からないだろう。自分は周りから愛され評価されている。自分は誰よりも上。自分より下で目立つ存在を貶す。多くの人なら指摘されて喜ぶだろうけど、俺は違う。

指摘するのは悪いことではない。しかし、アイツの場合は悪意と侮辱をまとめて指摘している。

俺のアカウントやプライドまで潰したコイツに未来はない....!

「殺してやる.....!殺してやりたい.....!」

殺意込めてその言葉を口にした瞬間、キリユキの影が別の”何か”に変わる。形が変わった瞬間、キリユキ周辺から真っ赤な炎が出現する。何か焦げ臭いと思って振り向くと部屋は炎に包まれていた。

「な、な、な、なんだよこれー!?」

あまりの驚きに回転椅子から落ちたキリユキは、慌てながら逃げようとしたが.......

「ど、ど、どうしょう!?どうすればいいんだよ!あー!」

パニックの中、燃え上がる炎がみるみると形を変えていく。そんな時、炎の中から”何か”が現われる。

「な、なんだよ......... あれ.......」

キリユキの前に現われたのは、2メートルもある装甲を纏った怪人だ。ベースカラーは赤・オレンジ・金で両目のレンズがエメラルドのような色をしている。両肩に金色に光るイバラらしきオブジェがある。口はフェイスマスクで覆われており、その姿は漫画かアニメに出てくるようなメタルヒーローを連想させる。

さらに目立つ事に右胸部に「火」と書かれた漢字のエンブレムがある。謎の怪人が現われた途端、周辺の炎が何もなかったかのように消えた。足元の影から宙に浮く怪人は何もせずただキリユキを見ている。

(な、なんだよこの怪物!?攻撃しないのか....?)

とりあえず声を出さないで心の中で呟く。突如現われた謎の怪人を前にするキリユキは石像のように固まっていた。下手に行動を起こせば襲われるかもしれない。そう考えたキリユキは怪物が消えるまで固まることにした。

(お願いだ...... 何もしないでくれぇ......)

心の中で怯えながら呟くと、すっーと目の前から姿を消した。思いが通じたのか、怪人は何もせず消えた。この時、心臓が止まりそうになった。

「ハァ........... アァ........ ゆ、夢じゃいよねぇ.....?」

いいえ、紛れもなく現実だ。今でも部屋が熱く感じる。さっきから心臓がバクバクして辛い。俺の前に現われたアレは何なのか。そしてどこへ行ったのか...........

そんな時、ある事を思い出す。怪人が現われる前に心の中で”燃やしたい”と言った。その後、突然周りに謎の炎とあの怪物が現われた。まさかだが、俺が呼び寄せたのか?

考察するキリユキは、恐る恐ると気持ちを込めてさっきの言葉を言う。

「.......こんなヤツ今すぐでも燃やしたい!」

その時、さっき消えたあの怪人が再び現われた。驚いたキリユキは立ち上がり、びっくりした表情で呟く。

「まさか..............」

それでも怪人はずっとこちらを見ている。もし本当に俺の言葉に反応するなら........

「う、腕を上げろッ!!」

強めに言うと怪人はそのまま両腕を上げた。この時、心の中で「マジかよ」と言ってしまった。その後、様々な事を言って怪人を動かした。”右脚を伸ばせ”と言うと、言葉の通りに右脚を伸ばした。

この怪物は、犬や猫とは違う。俺が思っている事や口にした事を全て聞いて実行する。その時、俺は考えてはならない事を考えてしまった..............



――――人を殺せと言えば、本当に殺すのか?



この怪物は一体何なのか。どこから来たのか。そして何故、俺の言う事を聞くのか。いろいろと気になってネットで「悪魔」や「悪霊」また「精霊」について調べた。調べるのに3時間も掛ったが、変わった情報を目にする。

ここ―――寳坂市に謎の霊体の目撃が相次いでいる。寳坂市で撮られた写真に黒い煙の物体がいくつか写っている。どうやらその黒い霊は「アルター」と呼ぶらしい。その黒い霊は本来見えないが、気配を感じた者、またそれを見た者は”霊”を体内に取り込む素質がある。取り込まれた霊はその人専用の「アルター」となり右腕として戦う。

つまり・・・・主と僕みたいな関係か。

知らない内に俺は、その(アルター)を取り込んだみたい。まさか、あの時.....?

公園の前で倒れていた時の光景を思い出す。倒れる前に変な気配を感じて後ろを振り向いたその時、記憶が飛んでしまった。まさか、あの時にアルターと遭遇したのか?

もちろんそのサイトの書き込みでは、「妄想乙」や「何その厨二病過ぎる設定」などの否定的なコメントが多かった。たしかに何も知らずに見たら信じるのは無理がある。

―――それから1週間。俺は取り込んだアルターを使いこなした。分かった事はいくつかある。属性は「火」で両手のひらの銃口みたいなところから炎を出す。さらに両肩にあるイバラみたいな物体を使ってパソコンのデータを改ざんしたりハッキングが可能。見た目的に炎を出すイメージはあったが、まさかパソコンや機械を狂わせるような能力を持っているとは.........

さらに機械の中身をいじくるのだけではなく、入り込むことも可能だ。どうやらテレビやパソコンの画面を”出入り口”として使う。仕組みやよく分からないけど、例えば俺の部屋のパソコンの画面を「入口」として使う。行き先次第で知らない人の家のパソコン画面が「出口」となり姿を現す。

つまり、あのクズを直接攻撃出来るッ!

アルターのおかげでヤツの名前や住所、そして住んでいる街も全て特定した。


6月2日の午後3時半。回転椅子に座るキリユキはパソコンの前でポテトチップスを食べていた。真顔で画面を見るキリユキだが、実は電源はついていない。そう、画面は真っ黒のまま。肝心のアルターもいない。彼は一体何を見ているのか.........


◇◆◇


「.....続きでも書くか~」

シャワーを浴び終えた黒髪の男は、タオルで髪を拭きながら部屋の回転椅子に座る。パソコンの電源を付けて小説の続きを書こうとしたその時―――

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ッーー!?」

突然、男は悲鳴を上げながらパソコンから離れた。電源を付けたその時、画面から”赤い両手”が現われ、男を襲うとした。手の後に顔が出現し、画面から出てきたその”何か”は男の部屋に上がり込む。緑色に光る両目を持つメタリックな怪人は首をゴネゴネと鳴らしながら、座り込んだ男の首を掴む。

「だ、誰かーーー!!」

(見つけたぞ....... このゴミカスがァ!!)

首を掴まれ、そのまま天井まで上げられた男は必死に助けを呼んだ。異常の握力を持つ怪人の手からは逃れない。謎の怪人に首を掴まれ必死に足をバタバタする男。怪人の正体は――キリユキが送り込んだアルター。

遠隔操作が可能であり、アルターの視界を借りてその光景を見ている。そう、遠く離れたところでキリユキはポテトチップスを食べながらその場にいるつもりで男を見ている。

(このまま殺すか......)

そう命じると謎の怪人ことアルターは、持ち上げている男を壁目掛けて思いっきり投げる。部屋の壁に激突した男は、肩と腿を傷める。

「あっ!?だ、誰か........」

倒れ込んだ男をもう一度掴み、握力を上げる。苦しそうに口から泡を出す男。アルターの視界を借りて見ているためはっきりとその苦しみが伝わってくる。殺すつもりで首を絞めるアルターだが、その時、キリユキはある事を考えた。

(いや、コイツを殺しても俺の怒りが収まる訳がない...... いや、あっさりすぎて意味がない)

一度、中断の命令を与えたキリユキはチップスを食べるのやめ、深く考えた。デュナミスをどうするか。殺すじゃあんまり意味がない。

小説....... 作家...... ペン、またはキーボード....... 書くためには「手」が必要.......


(ッ!?)


顎を触りながら深く考えていたキリユキはある事を思いつく。殺すのではなく、ヤツの「手」を破壊する。二ヤリと微笑むキリユキは、アルターに言う。

(ヤツの両手を粉砕しろ........ 片手を燃やせぇ!)

キリユキの言葉を受け取ったアルターは、片手で男の右腕を掴む。何が起きているのか理解が出来ない男は半泣きで必死に助けを呼ぶ。右腕を掴んだ瞬間、そのままアルターの熱で溶かした。

「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ッ!!!!」

男の右腕はアルターの熱で赤く染まり、手首当たりがだんだん黒く変色していく。喉が潰れるぐらいの叫びを上げる男の顔はピンク色に変色。右腕を終え、さらに左手首を掴み、そのままへし折る。バキバキという骨が砕かれる音が部屋中に響き渡る。

こんな残虐な事をアルターにやらしているにも関わらずキリユキは、腹を抱えながら笑っていた。男の悲鳴と苦しむ姿が見れて大喜びのキリユキは最後の命令を与える―――


―――そのまま投げ飛ばせぇ........


頷いたキリユキのアルターは、両腕の機能を失った男を外目掛けて勢いよく投げ飛ばす。リビングのガラスを突き破って男は、5メートル近く飛んだ。

男を投げ飛ばして10分後。近所の道路の右側で犬の散歩する女性は、中央に倒れている片手だけが黒焦げの男性を発見する。

「き、きゅ、救急車をー!!」

『ワンワンッ!!ワーンー!』

慌てながらバッグからスマホを取り出す女性。必死に鳴くペットの犬。頭から血を流す男は、そのまま女性が呼んだ救急車に運ばれた...................


◇◆◇


「カンパーイ~!!」

6月3日。リアルでユーザー名「デュナミス」を叩きつぶしたキリユキは、部屋で2リットルもあるペットボトルのコーラーをグラスに注ぎ、盛大に飲み干す。テーブルにはのり塩味のポテトチップスやフライドチキンなどがある。

心の中のストレスや怒りが消えてスッキリした。両脚を伸ばすキリユキは、お皿に並べられている野菜スティックの一つを手に取り、横にいるアルターに向けて言う。

「アンタのおかげで俺の人生は最高だよ!ほら、お前も食うか?」

「........................」

にんじんスティックを向けても無反応。まさか食べられないのか。よく見ると口の部分はフェイスマスクか何かで覆われている。そりゃ食べるのは無理か。

あのクズを投げ飛ばした後、アカウントおよび書き途中の小説および全てのデータを削除。ついでにパソコンも破壊。アイツの家のテレビを使って戻って来た。

わざわざそのクズのところに行かずアルトにやらせる遠隔操作は便利だ。いろいろ使い道がある。

そういえば呼ぶ際に名前が必要だ...........

「―――そうだ。お前の名は今日からヴァ二ックだ!」

笑みを浮かべながらキリユキは大きな声で言った。名前の”ヴァ二ック”は、小説投稿サイトの「カルマ」のユーザー名だ。そう俺のユーザー名。さらに書いている小説のタイトルが『見えない炎』という意味でヴァ二ックという名前と火属性がマッチしている。

気に入ったのか、ヴァ二ックはそのまま左拳を握りながら頷いた。

ちなみに今朝のテレビニュースによると―――どうやらあのクズの本名は前林智紀(まえばやし・ともき)と言うらしい。病院に運ばれてすぐに救命手術を受け、なんとか一命を取り留めたみたい。しかし、右腕は溶岩のように固まり、切断することになった。ちなみに左腕から手首までは複雑骨折らしい。あの距離で投げ飛ばして生きているとは............

まあ、永遠に右腕を失ったから小説書くのは無理だね。そういえば右だけじゃなく左腕も使えないのだ。あとは、そのまま絶望して自殺するか...........

もし周りこんなこと話したらみんなこう思うだろう。


――――そんな小さな理由で怪我させるか?


こう見えて俺は今まで我慢してきた。中学なんかでは、女子達やクズ達の奴隷として働かされた。もちろんその場でぶっ飛ばそうと思えば出来たが、俺はどうしてもトラブルを起こしたくない。親や周りに迷惑をかけたくない。だから今まで我慢したきたのだ........

こう見えて俺は根に持つ(・・・・)タイプだ―――

仮に超能力か魔法でヤツの作品やデータを永遠に消しても俺の怒りは収まらない。だからアルターを使って物理的にぶっ潰す。その結果、今じゃ何も苦しみやストレスも感じない。平和的な気分だ。

『夕飯出来たよー!』

リビングの方から母の声が耳に入った。お菓子食べるのをやめ、「分かった!」と大声で返事したキリユキは駆け足でリビングに向かう。


◇◆◇


「まだ残りあるから、明日の弁当に入れようか?」

母がそう尋ねると、キリユキは「うん」と言って頷く。

「明日の弁当にする~」

今日の夕食は母手作りラザニア。俺が生まれる前、父と一緒にいろんな国へ旅していたらしい。それが理由か、和食を食べる事が少ない。ラザニアやパエリア、キッシュなどのヨッローパ系の料理を食べる事が多い。

もちろんうまいけどね。

「あ、そういえばさっきニュースで見たけど。埼玉県のどこかで若い男が”怪物に襲われた!”と叫んでいたなぁー」

運ばれたクズは、必死に”怪物に襲われた”と叫んでいたが、麻薬を使った可能性があるため調査している。そりゃそうだ。誰も信じるわけがない。もちろん吹っ飛ばされた流れから溶岩と化した右腕については説明が出来ない。

父がニュースについて話していたら、キリユキはラザニアを食べながら台所でメラメラと両手から炎を出す霊体化のヴァ二ックにウィンクを送る。もちろん母おろか父でさえその存在に気づいてない。

「アルター最高........」

「ん?何か言った?」

ボソッと呟いたキリユキの声に反応した母は瞬きしながら尋ねる。それに対して何事もなかったかのように笑みを浮かべながらキリユキは言った。

「え?母さんの”ラザニア最高”って言ったけど?」

「そんなの今更じゃないか!ママのラザニアは世界一に決まってるじゃないかー!」

金髪に染めた父が笑いながら大きな声で言った。あぁ、否定はしない。母さんの料理はたしかにうまい。しかし一番美味しいのは”アルター”という存在だ..........

こう見えてまだまだ粛清すべきクズはいる。得に通っている高校なんて山のようにいっぱいいる。そうだ。決めた。

―――次のターゲットはあのクソビッチだ。

待ってろよ。お前の夢と希望を俺が打ち壊してやるよ..............

続く。



【名前】:八神桐之

【性別】:男

【生年月日】:2002年4月29日(牡牛座)

【身長】:175cm

【体重】:62kg

【血液型】:AB型

【好きなもの】:お散歩、海外ドラマ鑑賞

【嫌いなもの】:クレーマー、偽善者、変な団体、不良など

【使用アルター】:ヴァ二ック

子供の頃から酷いいじめを受け、我慢してきたせいで根に持つようになり、ずっとストレスを抱えてきた。コンビニ帰りに野生のアルターに襲われたその時、体内に取り込み、アルター使いとなった。「ヴァ二ック」と名付けた火属性の人型アルターを使って気に食わないあるいは今まで恨んでいた人間を病院送りにさせたり、彼の恨みと怒りは絶える事はない。またお金がない時は、不良やチンピラを襲い、金を巻き上げる。そんな感じの彼だが、家では真面目で両親の言う事は絶対に聞く。友人関係も崩さない様に明るく振舞っている。

【アルター名】:ヴァ二ック

【操縦者】:八神桐之

【タイプ】:人型

【戦闘型】:遠隔操作型

【属性】:火

【パワー】:A+

【スピード】:B

【耐久】:B+

【知性】:A

【適応能力】:A+

【霊力】:B

【名付け親】:八神桐之

八神桐之を襲うとして取り込まれ、「人型」として誕生したアルター。赤・オレンジ・金をベースカラーとしており、特撮番組かあるいはアニメかゲームに出てくるようなメタリックヒーローを想起させる。また全身が鉄のようにメタリックなため”斧を持たないブリキ”も現している。両手のひらの銃口から1700度以上の炎を放射する。発火能力(パイロキネシス)を持ち合わせており、周辺の炎をコントロールしたり人体自然発火現象も引き起こす。
第2の能力としては、両肩にある「イバラ」を使ってパソコンなどのデータを改ざんおよびハッキング。またテレビやケータイなどの画面を「出入り口」として使って入り込む。テレビゲームで言う「ワープゾーン」に近い。パソコンやテレビが存在する限り国内どこでも移動が可能。もちろん操縦者は、電車やバスを使わずに遠隔操作でアルター(ヴァ二ック)を自由に送り込んで召喚が可能。人型であり、高性能の上位アルターである。名前の”ヴァ二ック”は、桐之が使っている小説サイトのアカウント名から取った。


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第2話:蒼き鋼の剣土

今回は第2の主人公である剣崎勇人のストーリーです!

一応W主人公なので、どっちを応援するかは任せます。第1話で登場したキリユキはいろんな意味でクレイジーな主人公だと思います。たぶん世の中にキリユキみたいな人間はいっぱいいると思います。

あくまでもキリユキはアルターという力を手に入れ、実現出来なかった事を実現する。

ある意味、危ない思考の人間ですが、実際に近くにいるかもしれません.....?

ハヤトを見れば印象などが変わると思います。

次回の3話から本格的に二人の物語となります!

会ってはならないような二人が出会った時、物語は動き出す....!


この世にはあってはならないものがたくさん存在する。


2019年の春。俺は生きるため、誰かのためになったわけではない。あくまでもこの街を守るために選んだのだ。幼い頃に母を失くし、さらに何者かの手によって父は死んだ。一人になった俺は、家系とその意思を引き継ぐため鬼となる。

―――鬼になるためには、本当の”鬼”を呼ぶ必要がある............


2019年6月5日、水曜日。時刻は21:57分。今日の天気は大雨。しかし、俺にとっては都合がイイ。自家の道場の床に赤く巨大な「魔法陣」が描かれている。円の真ん中で正座する上半身裸の黒髪の少年。

「ハヤト様..........」

瞑想する少年―――剣崎勇人(けんざき・ハヤト)を身守る黒いタキシードの園田嘉彦(そのだ・ヨシヒコ)。代々剣崎家に務めるハヤトの執事。69歳。

ハヤトがやろうとしていることは、”剣となる式神”の召喚だ。特定の「式神」を呼び出すためには、肉体と触媒が必要になる。下半身以外、何も着ていないのは、式神を体内に取り込むためだ。呼び出された際、”鎧を身に付けていない”という判断により襲いかかるからだ。さらに特定の式神を呼ぶ最大の条件は「触媒」だ。

今、目の前に古く錆びた日本刀が置かれている。俺が呼びだそうとしている式神はこの刀と縁がある。

あとは待つのみだ...........

―――瞑想から7分が経過。外からザーザーという雨の音が聞えてくる。不安で仕方がない執事のヨシヒコは、ズボンの右ポケットから白いハンカチを取り出し、頭の汗を拭きとる。

(俺の前に現われろ.........)

内心でその式神に声をかけるハヤト。さらに10分が経過した。その時だった....!

「あ、ハ、ハヤト様........」

驚いたヨシヒコが見たものとは。気配を感じたのか、片目だけ開けたハヤトの前に現われたのは、青銀色に輝くの怪人だ。ベースカラーは青・白で両目のレンズはルビーのように赤く、両肩が少し尖っている。西洋の騎士と武士を掛け合わせたような姿で漫画に出てくるメタルヒーローを連想させる。

宙に浮いており、両手には青銀色の刀を持っている。

「......来たか」

そう呟いたハヤトは、挑発するかのような視線を送った。反応した青銀色の怪人は、正座しているハヤト目掛けて飛んだ。

「ハ、ハヤト様ー!」

左腕を伸ばし、驚いたヨシヒコは”早く離れてください”という意味を込めて彼の名を叫んだ。しかし、無防備であるにも関わらずハヤトはその場から一歩も動かず、怪人との接触を待つ。

―――そして.........

「うぅうぅうぅうッ!?」

襲うつもりで飛んだ怪人がハヤトに接触した時、吸い込まれるかのように体内の中へと消えてしまった。死ぬ覚悟で待ち望んでいた式神をついに取り込んだ。しかし、取り込んだ際に胸に激痛が走る。苦しそうに片手で胸を押さえるハヤト。

苦しそうなハヤトを見た執事のヨシヒコは、焦りながら駆けつけた。

「ハヤト様!」

「あぁ........ 俺は大丈夫だ......... うぅ....... ついに「デスリード」を取り込んだ.....」

大丈夫だと言うハヤトは胸を押さえながら立ち上がった。「デスリード」と呼ばれる式神の召喚および吸収に成功した。

召喚を終えたハヤトは、白シャツを着てヨシヒコが入れてくれた麦茶を飲む。道場で麦茶を飲むハヤトは胸に手を当てながら小声で言う。

「デスリード......」

―――俺の名は剣崎勇人(けんざき・ハヤト)。剣崎家の24代目当主。平安時代まで遡る「剣崎家」は様々な将軍に仕えており、表向きでは刀職人であり裏では陰陽師の家系である。式神を使役し、戦いに参加したとも伝えられている。また式神の力を借りて妖刀「蒼銀」を生み出した。しかし、明治時代に入ってその存在を恐れた政府は、剣崎家を滅ぼす。

陰陽師の家系として滅んだ剣崎家だが、血を引く生き残りによって新たに再結成した。いろいろあって政府に認められ、こうして現在まで剣崎家という家系が続いている。異界からやって来た”魔”を退治し、世界に蔓延らないようにに何代にもわたって封じてきた。

住んでいる街、寳坂市は言わば巨大な「結界」だ。そのため異界からやって来た”魔”は、寳坂市の外から出ることは出来ない。

俺の使命は―――寳坂市に蔓延る魔物<アルター>を1体残らず除外し、元凶である”異界の門”を閉ざす事だ。

魔物や式神にあたる存在は、現在では「アルター」と呼ばれている。

「これでハヤト様もアルター使いですね」

「あぁ、この時をどれだけ待ったか.......」

胸部に手を当てながら中に眠るデスリードを考えるハヤト。アルターの相性が悪ければ戦いで敗北する可能性がある。アルターは「分身」であり「化身」でもある。だからこそ負けるわけにはいかない。

何としてもデスリードを俺だけのアルターに仕上げる....!


―――翌日。


2019年6月6日、木曜日。時刻は7:57分。通っている高校「芹沢学園」に行くため、執事のヨシヒコに「行って来る」と言って屋敷を出た。昨日は大雨だったが、今日はとても熱い。太陽に手をかざすハヤトはこれからの事を考えていた。

―――どう、デスリードと向き合うべきか..........

屋敷を出て歩くこと役7分。木で囲まれた芹沢学園の校門に着く。校門を抜け、靴を履き替え、2年A組の教室に向かう。教室に入ろうとしたその時、後ろから女子生徒の声が聞える。

「ハヤトさん!」

振り向くとそこにいたのは、青髪の女子生徒。彼女の名は天ヶ瀬莉子(あまがせ・りこ)2年B組の生徒だ。後ろ髪をダンゴ状にしており、黒いリボンの髪飾りをつけている。莉子と同じクラスの冬織とはよくつるんでいる。

非常に明るく真面目な人だ。名前を呼ばれたハヤトは、彼女に近づく。

「おはようございます」

「ふつうに”おはよう”でイイよ!」

「そうですか....... 個人的には”おはようございます”の方が言いやすい」

「本当、ハヤトさんって変わってるね~!」

クスクスと笑いながら莉子は言った。それにつられて無表情だったハヤトも少しだけ笑った。後から一人の男子生徒がやって来た。茶髪で右手首に赤いリストバンドを付けている。

「ハヤトさん~」

「冬織君~!」

手を振りながらやって来た弾施肥生徒の名は松崎冬織(まつざき・とおる)。同じ2年A組の生徒。バスケ部に所属している。どうやら俺に憧れているみたい。莉子と一緒にいることが多い。

「おはようございます」

敬語で挨拶するハヤト。教室に入らずその場で話す二人。

「昨日、酷い雨だったなぁ........ 晴れているのはいいが、今日は熱いなー」

熱そうに語る冬織。たしかに彼の言う通り、昨日は酷い雨だった。午前中は晴れていたが、午後から雨になった。傘を持たない生徒は全速力で走っていた。個人的には都合がよかった。

「うん!雨のせいでシャツとスカートびしょびしょになった.......」

(びしょびしょッ!?)

莉子が昨日の状況を言った途端、冬織は「びしょびしょ」という言葉に反応する。冬織の驚く表情を見たハヤトは、”何でそんな驚いた顔をしているんだ”と疑問に思った。ともあれ二人を後にして教室に入る。

―――教室に入って”お馬鹿トリオ”に「よう!ハヤトさん!」と言われる。2年に上がってから周りに「さん」付けされている。変わった髪型のトリオに挨拶されたハヤトは、笑みを浮かべながら返事する。

「おはようございます」

「いや~今日は熱いですね!あ、カバンは俺が持ちます!」

「お、おう........ ありがとうございます」

赤く染めたポニーテールのリーダー”キリト”はニヤニヤしながらハヤトのカバンを手に取り、机まで運ぶ。

「喉渇いていませんか!?水をどうぞー!」

今度は、太った体系のロングヘアの”ダイ”がカバンからペットボトルの水を取り出し、ハヤトに渡す。もちろん”喉が渇いている”なんて一言も言っていない。

「渇いているわけではないが...... ありがたくもらう」

「家まで遠いみたいですから肩などお疲れでは~?オレのマッサージならスッキリしますよー!」

ダイの後に紫色に染まった髪の”コウ”は、近くにある椅子に座らせ、彼の言う”神のテクニック”でハヤトの両肩を揉む。もちろん”やってくれ”なんて言っていない。しかし、意外と気持ちいい。”神”と言っていいぐらいだろうか。

「ど、どうですか!?」

「あぁ、肩凝ってるから丁度イイ.......」

その言葉を受け止めたコウは嬉しそうにマッサージを続けた。どういう訳か俺はこの三人に好かれている。1年の時は、三人に嫌われていたが、去年の冬に不良に囲まれた三人を救ったところ俺を”聖人”か”英雄”として見ている。

はぁ、やれやれだ..........


◇◆◇


時刻は8:57分。朝のホームルームを終え、1時間目の授業中、ハヤトはデスリードを召喚する。霊体化しているため周りに見えていない。ペンを握りながら横に浮くデスリードにアイコンタクトを送る。頷いたデスリードはそのまま教室出た。

召喚した目的は・・・・周辺にアルターおよびその操縦者がいないか調べるためだ。しかし、残念ながらデスリードは遠隔操作型ではない。そのため遠くへ送り出すことは出来ない。少なくともデスリードが動ける距離は約10メートルが限界。

遠隔操作型は、距離とかあんまり関係なくどんな遠い場所でも送りだす事が出来る。「出入り口」となるスポットがあれば別だが........

(頼むぞ......)

廊下および他のクラスに顔を出すデスリード。しかし、アルターおよび操縦者の気配はない。ハヤトがいるクラスに戻ったデスリードは、首を左右に振りながらいない事を知らせる。

「......分かった」

授業中に小声で呟くハヤト。どうやらアルター使いは自分だけかもしれない。しかし、気配を完全に消すことが出来るアルターも存在するらしい。

父を亡くした後、厳しかった伯父に剣崎家の知識や思想を教え込まれた。アルターの存在や使い方だけじゃなく剣術も教わった。伯父の話だとどんなに遠くてもアルターと操縦者の距離が離れている場合、霊力が弱まる。

つまり、操縦者が近くにいない限り力を発揮しない。もし遠隔操作型のアルターが学校の周辺にいるとしたら見つかるはずだ。操縦者が近くにいなければ霊力が弱まり、たとえ存在を消せても感知される恐れるがある。

(遠隔操作型.........)

今朝のニュースで埼玉県に住む青年が”何か”に襲われ右腕を焼かれ、さらに住宅街の道で頭から血を流しながら発見された。意識を取り戻した青年は”怪物に襲われた”と言っていた。もちろん『不可能犯罪』として調査している。

ここ寳坂市だけじゃなく全国でアルターによる事件が相次いでいる。ふつうの人間じゃ起こせないため『不可能犯罪』と呼ばれている。結局、分からないまま終わってしまう事が多い。

―――そう、知らないところで必ず事件が起きる.........


◇◆◇


時刻は15:06分。6時間目および帰りのホームルームを終え、冬織と一緒に教室を出た。校門を抜け、冬織と話しながら下校する。今日の体育やいろんな出来事について話していたら、突然黙り込んだ冬織は空を見上げながらある事を言い出す。

「なぁ...... 莉子だけど.....」

「ん?」

「莉子って彼氏とか思いを寄せている人とかいるのかな....?なぁ、どう思う?」

首の裏を触りながら一切目を合わさず話す冬織。その質問に対して、ハヤトは疑問に思った。

「分からない.....」

「だ、だよね!分かるわけないよねぇ.....」

しかし、ハヤトは別の意味で言った。

「いや、分からないのは、何故君がそのような事を気にしているのか?莉子さんに恋人がいると何かまずいのですか?」

そんな真面目な質問に対して冬織は、顔を赤くしながら必死に否定しようとする。

「い、いや!別に困るとか..... 俺が困るって....!いや、いるのかなと思って.....」

(変わったヤツだ)

内心で呟くハヤト。何故、そのような事を気にしているのか理解が出来ない。しかし、二人は子供の頃から遊んでいると聞いたことがある。だとしても意味が分からない。直接、彼女に聞くばいいだけの話だ。

いや―――まさか........

頭の中でいろいろと考察していた中、背後から霊体化したデスリードが現われる。ハヤトと目がった瞬間、突然現われた意味を知る。真顔になったハヤトは冬織に言う。

「悪い。用事を思い出してしまった...... 寄り道はまた明日」

「あぁ....... そう........ じゃ、また明日」

「すまない」

最後に頭を下げ、全速力で屋敷に向かって走った。一人だけになった冬織は、キョトンと鳩のような顔つきになる。


◇◆◇


時刻は15:24分。屋敷に着いたハヤトは真剣な表情で道場に向かった。すぐにデスリードを召喚し、確認する。

「見つけたのか?」

ハヤトの質問に対してデスリードは頷く。話せないため具体的にどのようなアルターを見つけたのか分からない。デスリードと向き合っている中、執事のヨシヒコが麦茶入りのグラスを持ったままやって来た。

「おかえりなさいませ。麦茶はいかがでしょうか?」

「後でもらう。それよりヨシヒコ!」

「あぁ、はい!」

「すぐに刀を持ってきてくれ......」

腕を組みながらハヤトは言った。「刀」という言葉に反応したヨシヒコは内心で「ついに来ましたか」と言って道場を去る。しばらくすると鞘に納めた刀を持ってきた。包んでいる鞘袋を外し、刀を手に取ったハヤトは小声で言う。

「蒼銀.........」

紺色の鞘を抜くと銀色に煌めく刀が光る。剣崎家に伝わる妖刀「蒼銀」だ。しかしこれはオリジナルではない。デスリードを呼ぶ際に使った刀がオリジナルだ。しかし古く錆びているため戦いには使えない。ヨシヒコが持ってきた「蒼銀」はいわゆる2代目だ。

通常兵器が効かないアルターを切り裂くための刀だ。

「ついにハヤト様も蒼銀を使う時が........」

蒼銀を見つめるハヤトを見たヨシヒコは、ハンカチを取り出し目から涙流しながら言った。剣崎家では、アルター使いになった者は蒼銀を持つ事を許される。アルターという名の分身の力を借りるのだけではなく、直接操縦者を斬るための刀でもある。

「―――深夜の1時過ぎに屋敷を出る」

そう宣言したハヤトだが、それを聞いたヨシヒコを持っていたハンカチを落とす。

「そ、そのような時間帯でよろしいのですか!?」

「アルターおよび操縦者にとって”深夜”は好き放題出来る時間帯だ......」

夜だと野生のアルターおよび使用アルターが活発になる。多くの『不可能犯罪』は夜で起きている。得に人気のないところで.........

間違いなくデスリードがマークしたアルターおよび操縦者は深夜に現われる。追跡能力を持つデスリードは嘘をつかない。

霊体化せず表に出しているため、目が合ったヨシヒコはデスリードに麦茶入りのグラスを向ける。

「あーデスリード様もいかがでしょうか?」

笑みを浮かべながらそう尋ねるとデスリードは、首を一切動かず無視した。デスリードの反応に対してヨシヒコは残念そうに俯く。さっきまで真剣な表情だったハヤトがそのやり取りを見てクスッと笑った。

「フッ...... さすがに飲まないでしょ」

「そ、そうでしょうか....?アルターにも意思はあると聞いたので飲むかなと思って......」

ヨシヒコの言う通りアルターに「意思」はある。しかしファンタジーに出てくる妖精や精霊と違ってアルターはその人の手や足となる存在に過ぎない。自分に出来ない事や考えている事を読み取り、実行するいわゆる『分身』だ。

―――屋敷を出る前に少しだけウォーミングアップする必要がある。


◇◆◇


時刻は2;09分。黒く染まった空と人の気配を感じない街。車がたまに走るぐらい静かだ。そんな人がまったくいないこの時間帯はアルター使い達のたまり場である。深夜に出入りする人のほとんどは”幽霊”を目撃する。当然ながらその”幽霊”はアルターだ。

そんな人気のない街を堂々と歩く者がいた。黒いズボンと夏用の白シャツを着た黒髪の少年。左手には紫色の刀袋を持ちながら歩いている。戦う覚悟を決めたハヤトの表情と瞳から「殺意」が籠っている。

デスリードが捉えたアルターがいる場所に向かって歩くハヤト..........


―――その頃。人気のない路地裏で一人の若い女性が三人の男に囲まれていた。仕事帰りの女性は、見知らぬガラの悪い男達に掴まれ、路地裏で強く求められる。

「痛い...... 離してッ!」

左手首を強く掴まれている女性は、強めに言った。しかし、掴んでいるサングラスの男はニヤニヤと微笑みながら女性の耳元で囁く。

「離してあげるよ。俺達と朝まで付き合ってくれればねぇ......」

耳元で囁かれた女性は、歯を強く食いしばった。下っ端と思われる二人の男は「そうだそうだ」、「ボスの言う通り」などと言っている。

「ふざけるな!早く帰らせろぉ...!」

「だ・か・ら~俺達と朝まで付き合ってくれたら帰してあげるよ~丁度イイホテルを知っているから.....;..」

「ふざけるなぁ......」

男達から逃げるのは不可能だ。立ち向かう力もない。変なことすれば何をされるか。もはや諦めるしかない。そのまま引っ張られ、男の言う「ホテル」に向かおうとしたその時.........


『見つけたぞ』


「あん~?」

突然、見知らぬ声が聞えた。後ろを振り向くと刀袋を持った高校生だと思われる少年が立っている。獲物を前にした猛獣みたいな目つきで少年は言う。

「その女性を今すぐ解放しろ」

「はぁ?なんなんだお前........ コイツの彼氏か何かか?」

(この少年........ 一体........)

男に掴まれた女性はハヤトを見て心の中で呟く。リーダーと思われるサングラスの男は、言われた通りに女性を解放したが・・・・下っ端の二人に預けた。

「おいおい...... 学生がこんな時間で何をしているのかな?」

両手をズボンのポケットに入れて煽るような発言をする男。そんな低レベルな発言に関してハヤトは表情を変えず、刀袋から太刀を取り出し、紺色の鞘から銀色に煌めく刀を抜く。妖刀「蒼銀」を構えるハヤト。

しかし、そんな刀を構えるハヤトを見て男は盛大に笑う。

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッーーー!!!何~?厨二病か何か?そんなプラスチック製の刀で俺を斬るつもり~?」

(ムッ........)

蒼銀を貶されたハヤトは、無言で力のある眼差しを目の前の男に向ける。

「フッ、たとえ本物の刀だとしても........ 俺を斬るのは無理だなー!」

「―――あぁ、だろうね。何故ならお前は”アルター”を所有しているから......」

「ん?」

少年から聞き捨てならない言葉が耳に飛び込んだ。その言葉がきっかけで男の表情と口調が一変する。

「おい........ テメェ......... 俺の何をしてるんだ?」

「残念ながら貴方の名前から性癖まで知りません。ただ分かっているのは、お前はアルター使いである事。いや―――正確にはアルターを持った哀れな人、かなぁ?」

「んだとぉ........」

ハヤトの発言にイラッときた男は歯を食いしばり、そのままサングラスを投げ捨てる。煽られて怒った男はその”アルター”の名を唱える。

「前に出ろッ!!ブルーベリージャムッ!!!」

アルターの名を唱えた瞬間、男の目の前から7メートルもある紫色のスライム状の”何か”が現われた。足はなく代わりに発達していない両手を持つ。オオサンショウウオを連想させるスライムの怪物は大きく口を開け、奇声を上げる。

その姿を一言で言うと”巨大なジャム”だ。

「ムオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッーーーー!!!!」

ジンベイザメ並の口を持つアルターの名は―――ブルーベリージャム。全身がスライムのようにドロドロとしており、他のアルターを上回る巨体だ。見た感じではスピードは遅い。パワーと霊力および知性は未知数。

謎のスライムの怪物を目の当たりにした女性は驚愕する。

(な、な、なんなんだよあれ!?)

「ブルーベリージャムに勝てる者はいないッー!特別に逃げるチャンスを与えてあげる!」

しかし、そんな事を言われても逃げるわけがない。男のアルターを見たハヤトは一切反応せず「それがお前のアルター」って感じの表情をしている。ハヤトが驚かないことにイラッときた男は大声で言う。

「どうした!?逃げないのかー!?食われたいのか!?」

「―――なるほど。それがお前のアルターか....... 蒼銀を使うまでもない」

「あぁん!?」

そう宣言したハヤトは目を瞑りながら小声でアルターの名を唱える。

「.......デスリード」

名前を唱えた直後、瞑っていた目を開ける。目を開けたタイミングにハヤトの背後にメラリックブルーに煌めく騎土と武士を掛け合わせたようなフォルムの人型アルターが現われた。赤く煌めく両目のアイレンズ。両手にはメタリックブルーの刀を持っている。

「な、なんだとぉ...... テメェもアルター使いなのか!?」

ハヤトのデスリードを見て驚く男。

「こう見えて昨日アルター使いになったばっかだ......」

その言葉を聞いた男は、余裕の表情で言う。

「昨日?はぁ、ド素人じゃん!俺なんか1ヶ月前に手に入れたんだよぉおぉおぉ!」

「1ヵ月の貴方から見ればド素人ですね。―――しかし、アルター使いとしての知識は頭の空っぽの貴方よりはあります......」

そう言われた男は左拳を握りながら所有アルターのブルーベリージャムに向かって言った。

「.....あのクソガキを潰せッー!!」

「ヌオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

命令を受けたブルーベリージャムは口を大きく開けながら周辺の物を飲み込みながら両手を使って全速力で進む。戦車のように進むブルーベリージャムを前にしてハヤトは、後ろにいるデスリードに向かって言う。

「デスリードよ。俺の剣となれ.......」

その言葉を受け止めたデスリードは頷き、両手に持っている刀<蒼穹ノ太刀>を構える。距離が近くなった瞬間、一歩も動かないデスリードを飲み込んだ。

「ブルーベリージャムはどんな物も飲み込む!飲み込まれたアンタのアルターはそのままドロドロに溶けて消滅だぜぇ!」

丁寧に自分のアルターの性質を教える男。しかし、デスリードが飲み込まれたにも関わらず一切動じないハヤト。

(なんだコイツ...... アルターが飲み込まれたにも関わらずなんだあの表情は.....)

ハヤトを見て男は不審に思った。すると真顔のハヤトが最後に宣言する。

「―――勝ったな」

「ん?」

その時、デスリードを飲み込んだブルーベリージャムの様子がおかしい事に気づく。ウゥウゥウと唸り声を上げるブルーベリ―ジャムの色が青く変色していく。いや、それだけではない。みるみると凍っていく。

「ブ、ブルーベリージャムが....!」

凍るブルーベリージャムを目の当たりにした下っ端の二人は無意識に女性を離してしまった。今起きている状況を理解出来ないおろか、怯える女性はその場から逃げ去った。


―――そして、次の瞬間....!


「グ”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ッーーー!!!」

全身氷漬けになったブルーベリージャムは断末魔の叫びを上げながらバラバラに粉砕した。氷の破片となって壁などに激突し、さらに砕け散る。ブルーベリージャムがいた位置に無傷のデスリードが立っている。

「う、嘘だろう....... 嘘だ....... 俺のブルーベリージャムがぁ.,....」

アルターを失って絶望した男。その怯んだ隙に腰を下ろし、刀を抜く。抜いた瞬間、男目掛けて真空波を放った。スッーと謎の風が男を通り抜けると、左手の指が三本ほどポロッと落ちた。自分の手を見た瞬間―――

「あ”ぁ”あ”ぁ”あ”ぁ”あ”ぁ”あ”ぁ”あ”ッーーー!!お、お、俺の指ガァーー!!」

残っている指は、親指と小指だけだ。顔の前に手をかざしていたため、指に当たったと思われる。見下ろすと切れた指が転がっている。その光景を目の当たりにした下っ端の二人は、怯えながら大きく一歩ずつ下がった。

「本当は腕を狙うつもりでやった。言っておくがこれは警告だ。死にたくなければ寳坂から消えることだ」

「ヒィ......... ヒヒィ........」

「―――まだここで残るつもりなら、今度は「首」を狙う.......」

咎めるような厳しい目つきでハヤトがそう告げると、下っ端の二人はリーダーの男よりも先に大声を上げながら逃げ去った。

「ま、待ってくれえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえッー!!」

出血している左手を押さえながら先に逃げた下っ端を追った。見た限りでは、あの下っ端は「操縦者」ではない。もしそうだとしたらヤツのアルターと会わせて俺を襲うはずだ。言われた通りに街の外から出ればいいのだが........

アルターを断ち切っても寳坂市にいる限り、何らかのきっかけで新たなアルターを手に入れる恐れがある。寳坂市から消えればアルターに関わることはない。寳坂市の外にアルターはいないからだ。ただしアルター使いは別だ。

「ふぅ、大した相手じゃなかった........」

抜いた刀を鞘に収めたハヤトは、「ふぅ」と息を吐いた。一方デスリードは両手に持っているメタリックブルーの刀を消した。

「――よくやったデスリード」

笑顔でそう告げると宙に浮くデスリードは頷いた。

「俺は前の主と違うかもしれない。しかし、達成しなければならない悲願は同じだ...!かつての主に出来なかった事を俺がやってみせる......」

左拳を握りしめたハヤトは、デスリードに向けて誓った。

「デスリードよ。俺のアルターとして共に戦ってくれ」

真顔でハヤトは言った。その言葉を聞いたデスリードはそのまま頷き、青白い光に包まれながら姿を消す。


表向きでは単なる優等生。しかし、夜では”鬼”の面を被る。寳坂市に蔓延るアルターと所有者達を一人残らず倒す。そして―――元凶である”異界の門”を閉ざす。あるいは二度と現われないために破壊する―――

―――幼い頃に両親を亡くし、伯父に剣崎の人間として育てられた俺は、最後の血族者として戦う。

デスリードの主として俺は全てのアルターを斬る.........

続く。



【名前】:剣崎勇人

【性別】:男

【生年月日】:2003年2月25日(魚座)

【身長】:177cm

【体重】:64kg

【血液型】:A型

【好きなもの】:麦茶、読書、 庭での昼寝

【嫌いなもの】:悪質なアルター使い、偽善者、梅干し

【使用アルター】:デスリード

寳坂市で生まれた剣崎家の24代目当主。謎の病により命を落とした母と何者かに暗殺された父。両親を亡くし一人ぼっちになったハヤトは、海外から帰って来た伯父に剣崎家の思想や知恵を叩きこまれた。伯父が亡くなれた後、代々剣崎家に務める執事、園田嘉彦は親代わりとしてハヤトを支えてきた。成長したハヤトは、アルターおよび異界の存在を理解し、正式なアルター使いになる事を決め、デスリードの召喚に成功する。通っている芹沢学園では有名人として扱われている。スポーツ万能で相談にも乗るハヤトは欠かせない存在だ。学校や外では敬語で話すハヤトだが、屋敷の中ではタメ口。梅干しなどの酸っぱい食べ物を嫌う。アルター使いとして寳坂市に蔓延るアルターと戦うことを決意する。

【アルター名】:デスリード

【操縦者】:剣崎勇人

【タイプ】:人型

【戦闘型】:追跡型

【属性】:水

【固定武器】:蒼穹ノ太刀

【パワー】:B

【スピード】:A+

【耐久】:B

【知性】:A

【適応能力】:A

【霊力】:AA

【名付け親】:不明

西洋風の屋敷に住むハヤトにより召喚されたアルター。メタリックブルー・白ををベースカラーとしており、騎土と武士を合わせたようなフォルムとメタリックなボディが特徴。両手にはメタリックブルーが目立つ刀・蒼穹ノ太刀で戦う。水属性であるため両手のひらから水を放射する以外に自ら液体となり敵の攻撃を防ぐことも可能。さらに触れたものを瞬時に凍らせる事ができる。内部から表面まで凍結した者は最終的に砕け散る。またスピードに優れており、パワーが低くても操縦者の剣術とその素早い動きでダメージを稼げることが出来る。さらに水溜りや川の中に潜って身を潜めることも可能。ハヤトに呼びだされる以前に専用アルターとして戦っていた。


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第3話:宿命の二人

いろいろと遅れて申し訳ございません!

他の作品に集中していて............

これから少しペースを上げていくつもりです!

1話でキリユキがメインで2話はハヤト。二人の主役を紹介し終えたので、3話から本格的にアルター使い達の物語が幕を開けます!

キリユキを完全に悪に見えると思いますが、自由に生きる少年です。新世界の神と名乗る人と違って、ただ人生を楽しんでいる少年です。そう、アルターという都合のイイ存在の力を借りて..........

もちろん、キリユキの場合はやりすぎです。さて、人生を楽しんでいるキリユキはどのような結末を迎えるか...........




――――アルター同士の戦いは、”災い”を齎す。

2019年6月7日、金曜日。時刻は6:57分。昨日同様、今日も熱い。朝食を済ませたハヤトは、白シャツと黒ズボンに着替える。学校に行くための準備を終えたハヤトは冷蔵庫からお気に入りの麦茶を取り出し、コップに注ぐ。ゴクゴクと生き生きとした音をたてながら飲むハヤト。

「..........はぁ、うまい」

麦茶を飲んだ後、デスリードを呼び出し、挨拶した。

「おはよう」

「..............」

無言のデスリード。そりゃ当然だ。デスリードは「人」ではなく「アルター」だ。言葉の意味が分かっても犬と違って返事は出来ない。それでも主としてデスリードとコミニュケーションをとりたい。デスリードからすれば俺は絶対に逆らえない存在だ。

「デスリード様。おはようございます」

執事のヨシヒコが宙に浮いているデスリードに向けて挨拶したが・・・もちろん無反応。
外にいる連中と違って正式なアルター使いとなった俺は、デスリードと共に寳坂市を守る。

.......しかし、ここ最近アルター使いが増えていることに違和感を感じている。正式なアルター使いとは、代々アルターなどの霊的な存在と縁がある者のことを呼ぶ。魔術師、錬金術師や陰陽師などの家系の血を引く人間こそがアルター使いになる権利がある。

しかし、ここ寳坂市に住むアルター使いの大半は一般人に過ぎない。特別な家系に生まれたわけでもなく、知恵もないふつうの人間が知らない間にアルター使いとなっている。
多くの『不可能犯罪』は、そういった「アルター」という都合のいい存在を悪用する者が引き起こしている。

それに関して俺は許せないのだ。では、アルターは何のために使うのか?
病や呪いを取り除いたり、世のために使うのだ。もちろん家系にもよるが、本来は殺人や遊びで使うものではない。これだけは言わせてもらう・・・アルターはおもちゃではない。

―――俺はデスリードと共にそういったアルター使いを一人残らず斬る。

今、俺が出来ることはそれぐらいだ............

◇◆◇

時刻は8:10分。寳坂市にある進学校、「星空高校」に着いた少年、キリユキは下駄箱の前でため息をつく。あんまり睡眠が取れておらず、異常に眠い。そして遣る気が出ない。実は深夜3時過ぎに寝た。ずっとヴァ二ックを使って様々な実験をしていた。まだまだ分からない事が多いから。

「ねみぃ..........」

あくびした後、小声で呟くキリユキの前に一人の男が「おはよう!」と言って近づいてきた。ウルフカットのヘアスタイルを保つ一人の男子生徒は、テンション高くキリユキの背中を戦く。

「おいおい!目の下のくまひでぇぞ~!」

この男の名は――瀬戸真昼(せと・まひる)。友人であり同じ2年B組の生徒。休み時間や学校の帰りでよく話す仲。けっこうテンション高い。

「悪かったなァ........ 眠いんだよ.........」

「何時に寝たの?」

「3時半ぐらいかな?」

「遅っ!寝るなら遅くても1時だろう!」

こう見えて1~2時に寝ている。ただ、アルターの事を詳しく知る為に時間を潰した。気づいたらもう3時だった。そんな感じで真昼と話しながら教室に向かった。向かっている途中、廊下で一人の女子生徒とぶつかる。

「痛っ!」

「あ、ゴメン.....」

ぶつかった相手は、黒髪ロングの女子生徒。2年C組の小西真生子(こにし・まおこ)だ。水泳部に所属し、男子や女子の間では人気者。しかもオリンピック候補生らしい......
ぶつかってすぐ謝ったが、彼女は睨みながら言った。

「チッ、どこ見てるの.......」

彼女はそう言って目の前のキリユキを軽く押す。押してすぐ彼女はトイレの中へ。噂では、彼女は大の男キライだ。ちなみに俺はあの女が大嫌いだ。ちなみに彼女が今回のターゲットだ。俺に対していつもあんな感じだ。
見下ろされ、否定され、もうウンザリだ。ちょっと泳ぎがうまいからって調子に乗るなよ。

「本当、学園の人魚はお前のこと嫌いみたいだな~」

他人の事のように真昼は言った。ちなみにあの女は周りから”学園の人魚”と言われている。俺からすればアイツは人魚ではなくただの”魚”だ。

真昼の言葉を無視して、そのまま教室に入った。教室に入る前に俺はある”もの”を送り込んだ。トイレから出た小西真生子は、黄緑色のハンカチで手を拭きながらC組の教室へ向かおうとしたその時。

「あっ!?」

突然、教室の前で盛大に倒れた。すぐに起き上がった真生子は、「イテテテ」と言いながら→足首を掴む。一体何が起きたのか。不思議に思った彼女は周りを見渡す。教室に入ろうとした瞬間、突然誰かに足を掴まれた気がした。

「何が.........」

起き上がったすぐ、教室にいる女子生徒が何人か駆けつけた。

「大丈夫!?」

「血、出てない!?」

「何が起きたの?」

真生子を心配する三人の女子生徒。もちろん本人も何が起きのか分からない。しかし、彼女は気づいていない。すぐ後ろに”霊”がいるということを..........

三人に「大丈夫」と言って不思議に思いながら教室の中へ入った。一方、2年A組にいるキリユキは机に肘を置いた状態で悪そうに微笑んでいた。

(フッ、調子に乗るなよこのクソビッチが......)

心の中で嬉しそうに呟くキリユキ。たしか3時間目の授業がプールだった気がする。プールと言えばあの女が活躍する授業じゃないか。後でたっぷりと苦しめてやる。覚悟しろよ........
キリユキのそばで腕を組むヴァ二ック。霊体化しているため、誰にも見えていない。そんな時、後ろ席にいる真昼が話かけてきた。

「なぁなぁ!ニュース見たか?」

「ニュース?」

「埼玉に住む男が化け物(・・・)に襲われたって!」

キリユキの机に両手を乗せ、大きな声で彼は言った。「埼玉」と「化け物」という言葉に反応したキリユキは真顔になり、目を細くする。もちろんそのニュースは知っている。あっちこっちで話題になっている。

化け物に襲われたと言う男は、右腕は焼かれ、さらに自宅から5メートル近く飛んだらしい。右腕は完全に壊死しており、すぐに切断したと聞いている。5メートルも吹っ飛んで地面に頭をぶつけたにも関わらず生きているらしい........

男は「パソコンの中から化け物が現われ、襲われた」と連呼している。麻薬検査も行われたが反応は無し。

「あー見たそのニュース...... どう見ても『不可能犯罪』だよね.......」

「だろうね!だってふつうじゃありえないもん!俺は宇宙人の仕業だと思っている!」

笑みを浮かべながら真昼は、宇宙人だろ宣言する。事件の犯人が誰なのか、そしてどうやったか俺は知っている。何故なら俺がやったからだ。さすがに俺がやったなんて言えない。いや、言ったところで信じるわけがない。

東京の寳坂市に住む俺が埼玉にいる男をどうやって襲うか。

数日経ってばみんな忘れるでしょ..........

ちなみに俺は後悔していない。もちろん罪悪感もない。生きているだけでもありがたく思え。

~2時間後~

時刻は10:35分。三時間目の授業はプールだ。水泳用のパンツを忘れたため体操服に着替え、ベンチに座っている。わざとではない。カバンに入れるの忘れていた。まあ、正直言ってプールとか好きではない。そもそも「体育」自体が嫌いだ。

俺以外に何人かが体操服を着てベンチに座っている。忘れた者、具合が悪い者。

(あの女..........)

ベンチから真生子を見下ろすキリユキは、心の中で呟く。華麗に泳ぐその姿は、まさしく人魚を連想させる。スタート台に立つ何人かの生徒が彼女を見て言う。

「さすが真生子」

「綺麗..........」

「勝負したら間違いなく負ける!」

もちろん彼女の泳ぐ姿を目の当たりにした先生は、小声で「すげぇ」と呟く。みんなが彼女に夢中だ。しかし、見ていてムカムカする。どういう訳か、俺はあの女に嫌われている。話かけた最に何度か舌打ちされた。さらにいつも俺を睨む。一番酷かったのは..........

片思いの女子生徒に告白したことを2年の女子達にバラしたことだ。もちろんその話は男達にも伝わり、2ヵ月近く馬鹿にされる羽目になった。ちなみにその片思いの子はどこかに転校した...........

(あのクソビッチめぇ.......)

思いだす度に反吐が出る。嫌われてる理由は別として、アイツはどうしても許せない。こう見えてアイツからいろんな嫌がらせを受けてきた。もちろんそれはアルターを手に入れる前の話だ。

―――アルターを持っている今ならどうかな.....?

二ヤリと微笑むキリユキは小声で言う。

「ヴァ二ック........」

霊体化した状態のヴァ二ックはプールの中へ送り込んだ。もちろんプールの中にその”化け物”がいることも知らずに泳ぐ真生子。そして、次の瞬間――――

「うっ!?あっ......」

泳いでいる途中、突然”何か”に足を掴まれた真生子は必死に助けを求めた。足をつったわけではない。たしかに何かに引っ張られている。片足だけでバタバタと動かしても、もう片方の足が重くて動かせない。

「だ、誰かー!たすけてっ!」

「先生ッ!!」

「待ってろよー!」

何度も沈むと同時に顔を上げる小女。ざわめくなか、溺れている真生子を助けるためジャージを脱ぎ捨て、先生はプールへ飛び込む。意識を失いかけた真生子は先生に助けられ、すぐに保健室へ運ばれた。突然の出来事で唖然とする生徒達。

ベンチに座るキリユキを含む見学者は一斉に立ち上がり、目を見開く。

他の生徒と同じく驚くキリユキだが、内心では・・・・・・

(勝った.........)

心の奥で勝ち誇るキリユキはみんなの見えないところで微笑む。見えないヴァ二ックに足を掴まれ死にかけた真生子にとってはトラウマになるでしょ。場合によってもう泳げなくなる可能性もある。しかし、キリユキにとっては都合のイイ事だ。

ヴァ二ック・・・・よくやったぜ。

しかし、これじゃまだ終わらない。俺はあの女の夢やプライドを打ち壊すッ!

◇◆◇

時刻は15:36分。帰りのHRを終え、友人の真昼と一緒に帰るキリユキ。校門を抜け、今日起きた出来事について話す二人。得に3時間目のプールで溺れた真生子について盛り上がっていた。

「やばくないか?あの学園の人魚が学校のプールで溺れたんだぜ?」

「あぁ。でも足つったんじゃないのか?」

溺れた原因はこむら返りだと言うキリユキだが、先生に聞かれた際、本人は否定したらしい。溺れた本人の証言だと「誰かに足を掴まれた」。筋肉に異常があるのではないかと保健室の先生が言っているけど、どちらにせよ謎だ。

あの後、6時間目のHRまでずっと暗いムードだったなぁ。見ていて面白かった。

「下手するとプール恐怖症(・・・・・・)とかになるんじゃない~?」

「プール恐怖症?何だよそれ?ハハッ」

それを聞いて笑うキリユキ。そんな感じで様々な話題を上げながら話す二人。下校途中、コンビニに立ち寄り、メロンパンと500mlパックのミルクティーを買って帰った。ムシャムシャとメロンパン食べながら話すキリユキだが、焼きそばパンを食べる真昼があることを思い出す。

「あ!やべぇ!忘れたぜ......」

「ん?」

「あーちょっと用事事を思い出したから、先に帰らせてもらうぜ!」

「あ、そう。じゃあ、また明日.......」

焼きそばパンをくわえながら手を振る真昼は、全速力で走り去った。一人になったキリユキはスローペースで家に向かう。空は真っ黒。人気のないジャンクヤードに通り過ぎた瞬間、突然背後からヴァ二ックが現われた。ヴァ二ックの気配を感じたキリユキが後ろを振り向いた瞬間、何処からともなく歯車が飛んで来た。

「なっ!?」

キリユキが驚いた瞬間、飛んで来た歯車を掴み取ったヴァ二ックがそのまま燃やした。燃えたはぐるま塵となって消えた。突然の攻撃を受けたキリユキは、慌てながら周りを見渡す。しかし、周りには誰もいない。

しかし、不審な気配だけを感じる..........

この気配は何なのか......... どこから来ているのか.........

「さすが人型アルターですね」

「誰だ!?」

少年の声が聞え、後ろを振り向くとそこにいたのは―――

「誰だお前.............」

メガネをかけたおかっぱの少年だった。見た感じでは中学生だと思う。腕を組む少年は、クスクスと笑いながら名を唱える。

「来い!マウストラップ!」

名前を唱えた瞬間、少年のすぐ隣に2メートルもあるネズミに似たロボットが現われる。全体的にエメラルドグリーンでアイレンズは赤。手や足、歯は金色。後部から何枚も重なった歯車や機械の部品が見える。

少年が召喚したそのアルターは、一言で言うと”ロボットネズミ”だ。マウストラップと呼ばれるネズミに似たアルターを召喚した少年はキリユキに向けて言った。

「ねぇ、相手になってくれないかな~?」

「はぁ?」

「君、アルター使いでしょ?だから戦おうと言ってるんだけど........」

(まさか、俺以外にアルターを使う人間がいるとは..........)

自分以外にアルターを操る人間を知ったキリユキは、一歩後ろに下がった。家に帰ろうとしたらいきなり喧嘩を売られた。しかし、何故俺がアルター使いである事を知っている。いろいと疑問を抱くキリユキは謎の少年に尋ねる。

「なんで......... 俺がアルター使いであること知ってるんだ.......?」

「君・・・まさか、初心者だな?教えてやろう。俺のマウストラップは「追跡型」だ。遠距離型と違った動ける範囲は限られてるけど、一度送り込めばアルターおよびその操縦者を探し回る。アルター使いがいそうな高校周辺にマウストラップを送り込んだ。そして、君を見つけた!」

指差しながら少年はドヤ顔で言った。「遠距離型」以外に「追跡型」もいるのか。

「もう分かったんだから、戦おう?ちなみに俺のマウストラップは多くのアルターを倒してきた。君のアルターがどれだけ強いのか、見せてくれよ..........」

生意気な少年に喧嘩を売られたキリユキは歯を食いしばる。もし彼と戦って負けたら、俺はヴァ二ックを失う。それだけは絶対にあってはならない。生きる上でヴァ二ックは必要だ!

拳を握りしめるキリユキは何も言わず、無意識にジャンクヤードへ走った。

「高校生が中学生から逃げるなんて........... 哀れですねぇ~」

ズボンのポケットに両手を入れる少年は、ダルそうに言った。使えない車がたくさん積んであるジャンクヤードへ逃げたキリユキは、ヴァ二ックを出す。

「何なんだよあのガキ!」

積んである車のガラクタの山の後ろで隠れるキリユキ。このまま真っすぐ家に向かった場合、ヤツは間違いなく追いかけて来る。親や周辺の人間を巻き込みたくない。目をつけられた以上、戦うしかない。

少年から逃げてこのように隠れているのは、攻撃のチャンスを狙うためだ。

「ヴァ二ック。何があってもあのアルターを倒せ。あと、俺を守れ!」

ヴァ二ックに命じると、無言で頷いた。しかし、相手の気配を感じない。

――――だが次の瞬間!

後ろドーンと衝撃音が鳴り響く。ひたすらキリユキがいる瓦礫の山を突進するマウストラップ。ヤバイと感じたキリユキはヴァ二ックと共にその場から離れたが・・・・その時、マウストラップに目をつけられた。

「ヴァ二ックッ!!」

アルターの名を叫んだ瞬間、キリユキの前にヴァ二ックが瞬間移動し、目の前のマウストラップとぶつかり合う。両手でマウストラップの顎を引っ張るヴァ二ック。へし折る勢いで引っ張っていたその時、マウストラップの喉奥から金色のガトリング砲が飛び出す。

それを目の当たりしたキリユキは、目を見開く。そして、次の瞬間..............

「避けろッ!!」

キリユキの声に反応したヴァ二ックだが、ガトリング砲が回転し、ダダダダダダダと連射し始めた。近距離で何発もマウストラップの弾丸を受けたヴァ二ックはすぐに離れた。左アイレンズが砕け、体中は傷だらけ。

ヴァ二ックとの距離が離れたマウストラップは、後ろ足を折りたたみ、左右に巨大な金色のタイヤを展開する。ジョイント付きの長い金色の尻尾を真っすぐ伸ばさ、フォーミュラを思わせるフォルムになったマウストラップは、そのまま弱っているヴァ二ック目掛けて突進する。

マウストラップの突進を受けたヴァ二ックは勢いよく吹っ飛び、積んである車の山に激突する。その時、ヴァ二ックが吹っ飛んだと同時のタイミングでキリユキに激痛が走る。

「イタッ!?いてえぇえぇえぇ........」

胸を押さえるキリユキは、苦しそうに言った。さっきヴァ二ックが弾丸を受けた時も体中に違和感を感じていた。まさか・・・・ヴァ二ックとシンクロしているのか?

たしかにヴァ二ックは俺の分身だ。ネットではそう書いてあった。アルターとは、その人の代わりに動き、戦ってくれる存在。または―――分身。

「なんだよ............ お前、初心者なのか?はぁ~がっかりだわ.......... 珍しく人型のアルターと戦えると期待していたのに、その操縦者が初心者とか萎えるわ~」

ズボンのポケットに両手を入れて歩く少年は、何度もため息をつきながら言った。様々なアルターを倒してきた少年からすればつまらない戦いだ。

高速で動き回るマウストラップをどう倒すか。必死に考えるキリユキは、やけくそに命じた。

(燃やせぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえッ!!!)

キリユキと繋がっているため、思考を読み取ったヴァ二ックは両手を伸ばす。5本の指を広げ、両手のひらの発射口から高熱の炎を放射する。直線に伸ばす炎は、周りの車やガラクタの山を燃やす。ヴァ二ックの炎を高速で避けるマウストラップだが、反射神経が悪いせいか囲まれているゴミの山に激突する。

さっきまで余裕ぶっていた少年は、激突するマウストラップを見て思わずうわーっと声を上げる。

「うわーっ!おい、マウストラップ!」

「破壊しろおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおッ!!!ヴァ二ックッーーー!!!」

力強く叫んだ瞬間、それに反応したヴァ二ックの右目のアイレンズが光る。炎を避けることしか考えていないマウストラップは他の障害物に目が入らず、ぶつかっている中、両手で”火炎玉”を生成するヴァ二ックが赤く燃え上がる。

「馬鹿野郎ッ!!マウストラップ!」

操縦者の声に反応したマウストラップだが、もう遅い。止まっているマウストラップ目掛けて火炎玉を放つ。ヴァ二ックの火炎玉を受けたマウストラップは、そのまま爆発した。

「や、やったのか........?」

キリユキがその言葉を呟いた途端、少年は二ヤリと微笑む。煙が晴れると、火炎玉を受けたマウストラップがいる。装甲のほとんどが焦げているが、それでもまだ動ける。

「そ、そんなぁ....... まだ生きているのかよ............」

「ククッ、僕のマウストラップを甘く見るなァ!」

するとタイヤを回転させるマウストラップが動き出す。高速で飛び出すマウストラップは、2本の金色に煌めく鋭い歯でヴァ二ックを噛みつく。ガリガリガリと音を立てながらヴァ二ックの装甲を削る。精神的に繋がっているキリユキは、右肩を押さえながら痛みに耐える。

「くっ......... あっ!?」

「アルターの使い方がわかっても、戦い方が分からなければ意味ないねぇー!」

初めてアルターと戦うキリユキを煽る少年。噛みつくマウストラップをひたすらパンチするヴァ二ックだが、全然びくともしない。このままだったら本当に負ける。ヴァ二ックが失ってしまう。ダメだ。それだけはあってはならない..................


ヴァ二ックはどうしても必要だ!生きる上で必要なんだよぉ!


膝をつくキリユキは、歯を食いしばりながら襲われているヴァ二ックに左手を伸ばす。さらにジョイント付きの尻尾でヴァ二ックの腹部を突き刺す。受けた直後、口を覆うフェイスマスクの隙間からポタポタと、地面に赤い血を垂らすヴァ二ック。

戦いに慣れていないキリユキにとっては絶対絶命。だが、そんな時――――

「..........ん?」

気のせいか。寒気がする。痛みに耐えるキリユキだが、不思議なことに周りが冷たく感じる。さらに鳥肌まで立っている。キリユキだけじゃなく異変に気付いた少年は、周りを見渡す。

「何だこの冷気は.........?」

どう考えてもあの赤いアルターではない。なら、一体誰がやっているのか。小年が見渡している中、ヴァ二ックを襲うマウストラップに異変が起きる。ガリガリと音を立てながらヴァ二ックを噛んでいたマウストラップが突然停止した。

「おい.............. 何止めてんだよ...........」


すると、次の瞬間・・・・!

停止していたマウストラップがみるみると凍っていく。焦げたエメラルドグリーンの装甲が薄い半透明な水色に染まっていく。完全に凍ったマウストラップは死んだも同然。突然凍結したマウストラップを目の当たりにした少年は、何度も瞬きしながら焦り出した。

「ぼ、ぼ、僕のマウストラップがー!?な、な、何が起きていると言うのだ!?」

(アイツのアルターが凍った?まさか、ヴァ二ックがやったのか...........)

ヴァ二ックの仕業だと思い込んだキリユキだが、そんな時、テクテクと後ろの方から足音が聞えてくる。ゆっくりと後ろを振り向くと―――二人の前に一人の男が現われる。白い半袖のワイシャツに黒ズボン。さらに刀が収まった紺色の鞘を握っている。

驚くべきはそこではない。現われた高校生ぐらいの少年のすぐ横に、アルターらしき人物がいる。赤く煌めくアイレンズ。口を覆うピュアホワイトのフェイスマスク。「武士」と「剣土」を掛け合わせたような青いフォルムのアルター。

両手には青色に煌めく細長い刀を握っている。ヴァ二ックと似た雰囲気を持つ青色のアルターは、2本の刀を構える。

「――――斬れ」

主と思われる黒髪の男が小声で言うと、刀を構えるアルターはスパッと姿を消す。どこへ消えたのか。すると、次の瞬間、凍っていたマウストラップがバラバラに切断された。手や足、頭が地面に落ちた瞬間、カチンという音とともに粉砕。

「そ、そんなぁ!お、俺のマウストラップがー!!」

バラバラになったマウストラップを目の当たりにした少年は、頭を抱えながら叫んだ。何が起きたのか、理解出来ないキリユキは恐怖を感じていた。一瞬でマウストラップをバラバラに切断した謎のアルターは、主のすぐ横に現われた。

一切瞬きしていないのに、何なんだあの動きと速さは.....................

「次はお前だ...........」

鞘から刀を抜き、怯える少年に向けて男はドスを利かせた声で言った。専用アルターを一瞬で失った少年は、恐る恐る目の前の男に向かって言う。

「し、し............... 死神.........!?」

(死神?)

どうやら男は”死神”と呼ばれている。死神と言った少年は、死ぬ気でその場から走り去った。突然の出来事で戸惑うキリユキは立ち上がり、片手で刀を持つ男を見つめる。

(あの男........... 何者なんだ?)

「デスリード。まだ一人残ってる..........」

”デスリード”と呼ばれる青いアルターに向けて男は言った。

「な、何なんだお前.......!?」

警戒するキリユキは、左腕を抱えながら言った。突如、キリユキの前に現われた謎のアルター使い。目と目が合う二人のアルター使いは、心の奥で呟く。


―――あの赤いアルター使い(キリユキ)は、さっきの操縦者とは違う―――

―――何なんだこの胸騒ぎは?あの男から嫌な気配を感じる―――

(ヤツもその辺にいるアルター使いと同じだ)


(アイツを倒さないとこの胸騒ぎは収まらない気がする...........)


会ってはならない二人の少年。この時、運命の歯車が動き出す......................


続く。



【アルター名】:マウストラップ/カラクリネズミ

【操縦者】:不明(男子中学生)

【タイプ】:動物型

【戦闘型】:追跡型

【属性】:土

【固定武器】:/

【パワー】:A

【スピード】:A+

【耐久】:AA+

【知性】:D

【適応能力】:C

【霊力】:D

【名付け親】:不明(男子中学生)

キリユキの前に現われた男子中学生が召喚したネズミ型アルター。別名カラクリネズミだが、マウストラップとよく呼ばれている。ヴァ二ックやデスリードと違って「人型」ではなく「動物型」である。全体的にエメラルドグリーンでアイレンズは赤く、下半身には歯車が何枚か重なっており、後ろ足にはタイヤが収納されている。その姿は一言で言うと”ロボットネズミ”ってところ。後ろ足を折り畳み、タイヤを展開した時「激走形態」になって時速400キロでフィールドを駆け巡る。喉奥にガトリング砲以外に火炎放射器が収納されている。耐久性やパワーが優れている分、知性や適応能力は低いところが大きな欠点。最後はデスリードの冷気で凍結し、そのままバラバラに切断される。

――追記――

元ネタは『帰ってきたウルトラマン』第45話に登場した鼠怪獣ロボネズ。


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