卯ノ花さん護衛します! (杉山杉崎杉田)
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原作前のお話
移籍:1日目


 

「水上祐作。この者を、四番隊副隊長に任命する!」

 

急に呼び出され、山爺にそう宣言され、俺は心底ビビった。

 

「………えっ、なんで?」

 

何も聞かされていなかったので、思わずタメ口きいてしまった。だって、確か四番隊って卯ノ花さんがいる所だよね?あの恐怖の卯ノ花さん。

 

「四番隊の治癒、救護をする部隊の戦闘員じゃ。救護中の者を狙われた時に護衛するためにの。……それと、自由過ぎる主を少々矯正してやろうと思っての」

 

「あ?自由過ぎるって、俺がですか?」

 

「うむ。自覚がないのか?」

 

「ないですね。俺は至って真面目です」

 

「ふむ、同期の雛森くんにストーカー行為をしているという報告が入っておるのだが?」

 

「なっ……⁉︎誰からですかそれは‼︎」

 

「吉良副隊長じゃ」

 

「あんにゃろ……。違いますからね⁉︎ちょっとストーカーに気付いて恥ずかしがったりぷんすか怒ってる顔が可愛いくて何度も見たいから尾行してるだけですからね⁉︎」

 

「山爺、僕こいつ牢に放り込んだ方が良い気がしてきた」

 

「京楽さん⁉︎」

 

「ふむ、それは儂も思っておるが、それ以上に此奴の実力は侮れん」

 

思ってんのかよ……酷いよ山爺。良かったよ、俺に戦闘のセンスがあって。

でも、四番隊かぁ……俺、卯ノ花さんって人見たことないんだよなぁ。何せ、一番無縁の部隊だと思ってたし。

怖い人ってのしか知らない。嫌だなぁ、ゴリラみたいな女の人だったら。女の子っていうのは、雛森さんみたいな守ってあげたくなる子か、身体中からエロスが溢れ出てる大人の女性じゃなきゃ需要ないでしょう。

ましては雌ゴリラなんてもう何の価値も無いよね。チンカスだよチンカス。

そう思ってると、ガラッと部屋の扉が開いた。

 

「申し訳ありません。少し用事で遅れました」

 

「来たか、卯ノ花。前の此奴が主の隊の新しい副隊長となる者じゃ」

 

けっ、出やがったか雌ゴリラが。

そう思って後ろを見ると、そこには着物の上からでも分かる巨乳、優しそうな表情ながらも凛とした顔、というか可愛いタレ目、両サイドから垂らした髪で結った三つ編み、大人の女性を絵に描いたような女性が立っていた。

 

「初めまして。卯ノ花烈です」

 

「……………」

 

雌ゴリラ?何処にいんのそれ?あ、ダメだ。緊張して上手く話せない。どうしよう。

 

「ほら、挨拶しなよ」

 

京楽さんに言われ、俺はようやく再起動する。

 

「あっ、やっ、えっと、あれだ。は、初めまして。水上祐作っス。初めまして」

 

「ふふ、よろしくお願いいたします」

 

「ふ、ふぁい!ヨロシクっス!」

 

や、ヤベェー‼︎ガッチガチだよ俺。どうしよう、どうすればいいんだろう。どうしたら結婚してくれるんだろう。

 

「うむ、ではよろしく頼むぞ」

 

山爺のその台詞で、俺は卯ノ花さんと一緒に四番隊隊舎に向かった。

 

 

うっあー、やっべー、緊張感やっべー。

雌ゴリラどころか大和撫子出て来ちゃったよ。どうしよう。

俺のバックバクの心臓とはおそらく真逆だろうが、卯ノ花さんは微笑みながら俺の前を歩いている。

 

「水上副隊長」

 

「ひ、ひゃい⁉︎」

 

「……何を緊張してるのですか?」

 

「や、すいません」

 

「………?まぁ、良いです。それでは、今日は早速副隊長としてお仕事を手伝ってもらいましょうか」

 

「仕事?隊長に仕事なんてあるんすか?」

 

「ありますよ。普段は書類などの雑務をこなしております」

 

「へぇ……そんな事してたんですね」

 

「ここですよ、執務室は」

 

言われて、到着したのは何とも卯ノ花さん……いや、卯ノ花隊長らしい、綺麗な部屋だった。

そうそう、これだよこれ。女性の部屋。雛森さんの部屋は覗いたことはあっても入ったことはないからなぁ。

 

「では、こちらの分をお願いします」

 

言われて、俺の前に差し出されたのは、俺の腰ほどまである書類の山だった。

 

「………あの、これは?」

 

「あなたの分です」

 

「や、あなたの分ですって……。え?卯ノ花隊長はそれしかやらないんすか?」

 

それしか、というのはジャポニカ学習帳1冊分ほどだ。

 

「そうですが?」

 

「や、これ完全に自分の仕事押し付け……」

 

「では、終わるまでこの部屋から出ないでくださいね」

 

言われて、俺は執務室に閉じ込められた。

 

「……………」

 

あの人は優しい大人なんかじゃなかった。

噂通り、鬼だった。

 

 



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1日目(続)

 

 

初日から仕事をサボりたくなった俺は、サボることにした。

俺は部屋から出て、足早に廊下から出て草履を履いた。よし、抜ける‼︎そう思った直後、後ろから肩をガッと掴まれた。ニコニコ笑顔の卯ノ花隊長だ。

 

「………あっ」

 

「水上副隊長?お仕事は終わったのですか?」

 

「や、あのっ……ちょっとトイレ……」

 

「草履を履いて?」

 

「や、その……アレだ。ひばんたに隊長ん所に借りようと……」

 

「わざわざ?それと日番谷隊長です」

 

「ち、違うの!お腹が痛かったの‼︎」

 

「タメ口?」

 

徐々に笑顔が怖くなっていってるんですが……。

 

「それで、お仕事は?」

 

「そ、そもそもあんな量初日から捌けるわけないでしょ‼︎」

 

「タメ口?」

 

「……ですよ。だって俺今まで事務作業なんてやった事ないんですよ⁉︎」

 

「それでも、今日から副隊長ですよ?隊長に就任したその日から敵に襲撃を受け、『俺初日なんですよ!』って言い訳しますか?」

 

「や、そう言われたらその通りなんすけど……」

 

「とにかく、あれは副隊長のお仕事です」

 

「でもあれは多過ぎるでしょ!隊長の書類なんてジャポニカ学習帳くらいしかないじゃないですか‼︎」

 

「私は今朝からあらかじめ仕事を終わらせておいたんです」

 

「嘘だね!絶対嘘だね‼︎」

 

「タメ口。3回目ですよ?次はないですよ?」

 

「………すいません」

 

何でこの人はこんなタメ口に厳しいんだろうか……。高校の運動部なの?

 

「で、でもあの量は……!」

 

「男の癖にグダグダ言わないでください」

 

「何だよ!男の癖にとかそんなん関係ないだ……」

 

直後、俺のボディに拳が減り込んだ。予想外の攻撃と威力に俺の意識は遠のいて行った。

学習しないなぁ、俺……。………いや、にしてもいきなり殴るって無くね。

 

 

目を覚ますと、俺は執務室に座らされていた。目の前には書類の山、そして俺の身体は椅子に縛られていた。見事に腕だけ解放されてる状態。というか、こんな事に縛道を使うなよ……。

 

「目が覚めましたか?」

 

微笑みながら現れたのは、やっぱり卯ノ花隊長だった。

 

「………こんな事しなくても仕事しますよ……。仕事しないと殺されそうだし」

 

「分かっていただけて何よりです」

 

「だからこれ解いてくれませんかね」

 

「ダメです。逃げるじゃないですか」

 

「逃げねーですよ。………つか、あんたに見張られてて逃げ出す奴なんているかよ(小声)」

 

「もう一撃いきます?」

 

「すいませんした」

 

………聞こえてんのかよ。地獄耳かババァ。

 

「では、私はここで見ていますので、さっさと終わらせて下さいね」

 

そう思うなら仕事の量を減らしてくれませんかね……。

まぁ、そう言ったところでこの人聞く耳持たないだろうけどね。鬼だし。

嘆いてても仕方ないので、仕事を進める事にした。

こんなに仕事の量あるって事は、それだけ山爺に報告することがあったって事だろ。どんだけ仕事してたんだ四番隊。

 

「………あの、これなんか十番隊の書類とかあるんですけど、何でですか?」

 

「日番谷隊長はまだ隊長に就いてから間もないですからね。少しお手伝いしてあげたんです」

 

「何でだよ……ですか⁉︎それ何で俺に回すんですか⁉︎ていうかさっきと言ってることメチャクチャですよ‼︎」

 

「いいから仕事して下さい」

 

「なっ……ちょっ、横暴でしょう流石に⁉︎」

 

「仕事して下さい」

 

「話聞けよ!」

 

「仕事、して下さい?」

 

「……はい、すみません。四度目でしたね」

 

くそう……人を良いようにこき使いやがって……。何処か隙があればこんな縛道なんて……‼︎

いや、必ず隙は出来る。今は待つんだ。書類は……責めて俺が請け負うべき分はやろう。時間は……そうだな、一時間半後ってとこか。

それまでは真面目にやろう。

 

「……………」

 

「……………」

 

ぽっぽ〜、ぽっぽ〜。

一時間半後、卯ノ花隊長は本を読み始めた。

今がチャンスだな。

 

「卯ノ花隊長、トイレ行きたいんですが」

 

「ダメです」

 

うっ、まだ警戒されてたか。

 

「や、でももう結構我慢の限界なんですけど……」

 

「……どのくらい進んだのですか?」

 

「まぁ、ある程度は進んだと思うんですけど……。あ、こっちが終わった方です」

 

右側の書類の山を指した。半分以上は終わっている。

すると、少し考えた卯ノ花隊長は微笑みながら答えた。

 

「だめです」

 

「なんで⁉︎」

 

「だって、逃げそうなんですもん」

 

初日でどこまで信頼落としてんだ俺‼︎

仕方ない、第二プランだ。

 

「卯ノ花隊長」

 

「今度はなんですか?」

 

「お綺麗ですね」

 

「褒めても無駄で……」

 

「両サイドから垂らした髪で結った三つ編み、可愛らしいながらも凛とした顔とタレ目、何より着物の上からでも分かる巨乳によって女性のエロスが身体中から捻り出されてま」

 

ボグッ‼︎

 

「寝てなさい」

 

「グフッ………」

 

やっぱりな、そんな気はしたよ。グフッ。

 

 

 

 

「卯ノ花隊長、御食事のお時間です」

 

「……………」

 

「卯ノ花隊長?」

 

「……はっ、な、何ですか?勇音」

 

「……どうかなさったんですか?顔が赤いですけど……」

 

「な、何でもありませんよ。これは、その、何。返り血です」

 

「何があったんですか⁉︎って、そこで倒れてるのは……?」

 

「新しい副隊長の水上祐作さんです」

 

「は、はぁ……治療しなくて大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫です。大丈夫でなくても知りません」

 

「は、はぁ……(あ、なんか機嫌良いなこの人)」

 

「では、夕食にしましょうか」

 

「そ、そうですね……」

 

 



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2日目

翌日。

 

「でさ、昨日結局徹夜したんだよ」

 

「マジかお前。卯ノ花隊長って怖いんだな」

 

昨日の愚痴を恋次に聞いてもらっていた。

 

「晩飯は食い損ねるし、結局十番隊の書類も俺がやるし、マジ初日から疲れたわ」

 

「大変だなお前も」

 

「ホントだよ」

 

「でもいいじゃん。女が同じ隊舎にいるってのは」

 

「は?なんで?」

 

「そりゃお前、女風呂覗けるからに決まってんだろ」

 

「………うわ、それはお前さすがに引くわ」

 

「引……⁉︎な、なんでだよ!」

 

「男ならその気持ちは分かるよ?だけど実行するのはちょっと流石にないわ」

 

「お、俺はしてねぇよ!」

 

「いや、さっきの発言はアレだよね。完全に『同じ隊に雛森がいたら覗く』って意味の発言だよね。流石にないよねそれは」

 

「ねぇよ‼︎つーかなんで雛森限定⁉︎」

 

「雛森さんだったら俺も覗くからに決まってんだろ‼︎考えろ馬鹿野郎‼︎」

 

「えー、なんで怒られたの俺?つーか雛森のこと好きすぎだろお前」

 

「好きだよ?けど、こう、恋愛とかじゃなくて、愛でたい?膝の上に乗せて喉ゴロゴロいわせながら撫でたい」

 

「ペット感覚⁉︎」

 

「でも、実際分かるっしょ?」

 

「わかんねぇ。全然」

 

「だよなぁ、お前朽木さん一筋だもんな」

 

「だ、誰がルキアなんか……⁉︎」

 

「や、俺は白哉隊長の方を言ったんだけど」

 

「ホモに見えるのか⁉︎お前には俺が⁉︎」

 

割と仲良い二人だった。

団子を食べながらそんな事を話してると、恋次が立ち上がった。

 

「さて、俺はそろそろ六番隊隊舎に戻るわ」

 

「うい。じゃあ俺もそろそろひばんたにのところに遊びに行こうかな」

 

「や、そこはお前も仕事戻るとこだろ」

 

「はぁ?ふざけんな覗き魔」

 

「誰が覗き魔だ‼︎」

 

「戻ったらどうせ必要以上の仕事押し付けられるに決まってんだろ。行かねーよ」

 

「いいのかそれで副隊長……」

 

「良いんだよ」

 

「良くありませんよ?」

 

「良いっつってんだろ。殺すぞ変な眉毛」

 

「ちょっ、ばっ、おまっ」

 

あ?何慌ててんだよウゼーな電子レンジと思いながら恋次の方を見ると、卯ノ花隊長が立っていた。

 

「あっ」

 

「……ふふふ、今なんと仰いました?」

 

「お美しい眉の卯ノ花烈女王様と……」

 

ヒュドフッと脳天に手刀が降って来た。顔面から地面に叩きつけられ、俺は半分気絶したが、そんな俺に構わず卯ノ花隊長は俺の襟首を掴んだ。

 

「まだ意識はありますね?さ、いきますよ」

 

「意識があればいいってもんじゃないでしょ⁉︎」

 

「タメ口の矯正、まだ必要ですか?」

 

「………すみませんした」

 

そのままズルズルと引き摺られてる俺に、恋次が敬礼をして見送ってきた。

 

 

デン、デン、デン、といった感じで俺、卯ノ花隊長、書類は並んだ。

 

「さて、ではがんばりましょうか」

 

「嫌だ……こんな作業は嫌だ………」

 

「がんばりましょうか」

 

「はぁーいがんばりまぁーす」

 

俺と卯ノ花隊長は、同じ机で並んで作業を開始した。

 

「今日は隊長も仕事あるんですね」

 

「昨日もありましたよ。何度も言いますが、昨日は本当に私の仕事はあらかじめ減らしておいたんです」

 

………ふむ、本当だったのか。いや、本当だとしても十番隊の件はあなたがやるべき案件でしょう。まぁ、今更そんなこと言っても仕方ないけど。

そういうわけで、お仕事開始。俺と卯ノ花隊長は一枚ずつ書類を片付けて行った。

 

「………………」

 

「………………」

 

おそらくわざとじゃないんだろうけど、この人のおっぱい机の上に置かれてて、すごくエロい。こう、ふっくらした感じが酷くエロイ。超触りたい。揉みしだきたい。最低でも突っつきたい。机が羨ましい。机は今、どんな気持ちなのだろうか。自分の上に胸を置かれ、ペンで身体を紙越しになぞられている。なんという羞恥プレイかつ焦らしプレイだ。俺が机なら、3秒で理性が崩壊し、襲い掛かる事だろう。だって、今すでに襲い掛かりたい衝動に駆られてるもの。

 

「………言っておきますが、女性は視線には敏感なものですよ。特に、胸と脚に対する視線はね」

 

「は?ぜ、全然見てませんが?」

 

「そうですか。素直に謝れば見逃してあげます」

 

「………すいませんでした」

 

「セクハラしてる暇があったら、さっさと仕事して下さいね」

 

はい、もっともですね。

そんなわけで、仕事開始。まぁ、今日は書類がたくさんあったわけではないので、昼過ぎには終わったんですけどね。

 

「ふぃ〜……終わったぁ……」

 

「お疲れ様です。本日はあとは自由にしていただいて結構ですよ」

 

「了解っす」

 

さて、じゃあ屋根でお昼寝でもしようかな。煎餅でも齧りながら。

 

「卯ノ花隊長」

 

「何ですか?」

 

「お煎餅ってありますか?」

 

「ありますよ」

 

「いただいてもよろしいですか?」

 

「いいですよ。少々お待ちください」

 

「あ、いえ、場所教えてくれれば自分で取りに行きますから」

 

「良いですよ、そんな気を使わないで」

 

「いや、気を使ってるわけじゃなくて、お年寄りを労ってるだけで……」

 

「水上さん?」

 

「すみませんでした」

 

卯ノ花隊長にいただいた煎餅を持って、屋根に上がった。のんびりと空を眺めながら煎餅を齧る。ていうか、濡れ煎餅かよ、渋いな卯ノ花隊長。

………良い天気だなぁ。あ、あの雲、純白のパンツみたい。あー、卯ノ花隊長のパンツ見たい。

 

「てかこの煎餅美味いな。後で何処で買ったのか教えてもらおう」

 

そんな事を呟いた時だ。

可愛らしいお団子の髪型を揺らして、パタパタと走る可愛い女の子の姿が見えた。

 

「………雛森さんじゃん」

 

ニイィッと俺の口が歪んだ。

屋根から飛び降りて、その後を尾行する。建物の陰から陰へ移動しながら、雛森さんを追った。

すると、雛森さんが動きを止め、後ろを恐る恐る振り向いた。

 

「………」

 

「………」

 

「……気の所為かな」

 

そう呟くと、再び目的地に向かって歩き出した。

 

「………」

 

か、かわええええええ‼︎妹にしてええええ‼︎まっっったく気付かねええええ‼︎

な、なんだあの可愛い生き物。雛森桃だって?うん知ってるよ。

 

「…………」

 

あ、またこっち見た。大丈夫、音は立ててないからバレてないはず……。

 

「コラ」

 

「痛っ⁉︎」

 

突然、後方から頭にチョップを喰らい、振り返ると藍染隊長が立っていた。

 

「君はまた雛森くんをつけてるのかい?」

 

「あ、藍染隊長。こんにちは」

 

「挨拶はいいから」

 

「だって、可愛いじゃないですか!雛森ちゃん!あの同期の男3人に比べて幼い顔立ち、道路整備された後みたいに真っ平らな胸、ストーキングされてるのがわかっても決して暴力を振るわない優しさ、頭撫でると顔を赤くしながら浮かべる恥ずかしそうな表情、シャワー浴びてる時は胸を大きくするために自分で揉んで、お風呂入ってる時にはアヒルに声を掛ける……なにこの可愛さの塊‼︎」

 

「………だ、そうだよ。雛森くん」

 

呆れた様子で、俺の後ろに声を掛ける藍染隊長。おそるおそる振り返ると、顔を真っ赤にして斬魄刀を構えた雛森さんが立っていた。

 

「…………今の、聞いてた?」

 

「どうして……私のお風呂の中とか知ってるの……?」

 

「や、その、」

 

「覗いてたんだね?」

 

「いや、あれ……」

 

「覗いてたのね?」

 

「はい。覗きました」

 

「〜〜〜‼︎ 弾け、『飛梅』‼︎」

 

「えっ、ちょっ……ま、待って斬魄刀は洒落んならないからゴメンナサイ雛森さ……」

 

爆破された。

「もう知らないっ!」と可愛らしく怒った雛森さんはプンプンと怒って何処かへ去ってしまった。

ぶっ倒れてる俺を藍染隊長は起こしてくれた。

 

「大丈夫かい?」

 

「大丈夫っす……慣れてるんで」

 

「君は……。一応、警告しておくけど、好きな子にちょっかい掛けるのはやめておいた方がいいよ。距離を置かれるだけだからね」

 

そう言った直後、少し藍染隊長の目が鋭くなった気がした。

 

「………特に、他所の隊の子には尚更、ね」

 

「……はぁ、気を付けます」

 

………なんだろう。随分と前からだけど、藍染隊長にかなり嫌われてる気がするんだよなぁ。極たまに、自分がやろうとしてる事を邪魔された時みたいな怒りを感じる。

………あっ、もしかして、藍染隊長も雛森さんの事好きなのかな。なら、少し自重しよう。

 

「す、すいません。藍染隊長」

 

「わかればいいよ」

 

「俺、応援してますから!」

 

「え?う、うん?ありがとう?」

 

困惑しながら去っていった。

 

 



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2日目(続)

 

 

夕方。俺は暇になったので、四番隊隊舎で漫画を読んでいた。

すると、同じ部屋にいた卯ノ花隊長が立ち上がった。

 

「? どうしたんすか?」

 

「いえ、そろそろお風呂に入ろうと思いまして」

 

なん……だと……⁉︎卯ノ花隊長がお風呂……それはつまり、着物越しでも分かるあのオッパイの周りのアーマーがパージされるということか⁉︎

 

「……水上さん。考えてることがすべて顔に出てますよ」

 

「はっ、いっけね!」

 

「訂正はしないのですね……。言っておきますが、覗きなんて考えない方がいいですよ?……さもないとその両目、失う事になりますから」

 

「…………すいませんでした」

 

「はい、よろしい」

 

謝ると、満足そうに卯ノ花隊長はお風呂に向かった。

………甘ぇ、甘ぇよ隊長。両目失う事が怖くて覗きなんか出来るかよ‼︎

恋次に言われるまでもない。俺は、四番隊に入る事になった直後から覗きをすることを決心していた‼︎

昨日は色々あって実行出来なかったが、今日は違う。まず俺は窓から飛び上がって、屋根の上に乗った。

その後、風呂場の天井まで走り、窓から風呂場の中を覗いた。

卯ノ花隊長の姿はない。他の女性の姿も。ならチョロいな。そう思った時だ。後ろからゴガッと蹴られた気がした。

 

「えっ」

 

間抜けな声と共に落下し、顔面から地面に落下する。

 

「な、なんだ⁉︎」

 

慌てて上を見上げると、卯ノ花隊長が笑顔で立っていた。

 

「その両目、失うと言ったはずですよね?」

 

あちゃー、バレてたかー……。じゃない!ホントに目を潰されかねない‼︎

どうする、言い訳するか?いや、下手な言い訳するとマジで消されるからな……。素直に謝ったほうがいいかもしれない。

 

「すいませんした」

 

土下座した。

 

「謝ってもダメです。私はあらかじめ宣告しましたよね?」

 

「すいませんでした‼︎」

 

「いえ、ですから」

 

「卯ノ花隊長を甘く見てました‼︎」

 

「謝っても……え、そっち?」

 

「次からはバレないようにやります‼︎すいませんでした‼︎」

 

「まるで反省してないのですね……。覗きをしないとは言えないのですか?」

 

「あともう覗きしません‼︎すいませんでした‼︎」

 

「薄っぺらいにも程がありますよ、その謝罪」

 

どうしましょうか……と、言わんばかりに卯ノ花隊長は眉間にシワを寄せた。多分、どうしようもない悪ガキをどう裁こうか考えてるんだろうなあ。

 

「………そうですね、決めました」

 

「? 何を?」

 

「あなたが私のお風呂を覗くことが出来れば、その日は一緒にお風呂に入ってあげましょう」

 

「マジで⁉︎」

 

なんでそうなるの?とは言わないでおく。

 

「ただし、その前に私に阻止されれば、お仕置きです。それも、とてもキツイお仕置き」

 

ああ……確かにこの人のお仕置きはキツそうだ。48時間横四方固め耐久とか言われそう。……いや、0距離であの柔らかおっぱい堪能し放題って悪くないな。

 

「どうですか?」

 

「良いでしょう」

 

二つ返事でOKした。なにその最高のゲーム。

 

「で、今日はどうなるんですか?」

 

「うーん……今日は私、見つけちゃいましたので……」

 

やっぱりお仕置きか……!

20%の覚悟と80%の期待を込めて、俺はキュッと目を閉じた。

その時だ。

 

「卯ノ花隊長!」

 

第三席の虎徹さんがやって来た。随分とお急ぎの様子だ。

 

「どうしました?勇音」

 

「それが、最近起こってる夜間の虚の出現の調査において、五番隊の方々が調べる事になったのですが、以前調査に出た二番隊の方々が失踪されていることから、回復役として選ばれる事となりまして……」

 

「そうですか……。それでは勇音、それと水上さん。行きなさい」

 

さも当然、とでも言うように卯ノ花隊長は言った。

 

「え、なんで俺」

 

「良いでしょう。あなたは元々回復役の護衛、少人数で戦うのであれば、尚更あなたの力は必要になります」

 

「えーヤですよー。もう眠いですもん」

 

「なら、先ほどの罰ゲームってことで」

 

うわっ、それはズルいわ……。

 

「仕方ないスね……」

 

「先ほど、というのは?」

 

「勇音は気にしなくていいですよ?」

 

「そうそう。虎徹さんは気にしなくていいです」

 

「むっ………」

 

「いいから行きなさい?五番隊の方々を待たせているのでしょう?」

 

「はっ、そうですね。行きましょう、水上副隊長」

 

「あーい」

 

卯ノ花隊長は誤魔化すの上手いなぁ……。

感心しつつ、五番隊の人達と合流しに行った。

 

 

はい、なんでこうなったのでしょうか。

俺の前には五番隊の隊員が3人、そこまではいい。ただ、問題は内1人が雛森さんであることです。まだ、怒ってるのか、俺と目も合わせてくれない。

 

「……あの、水上副隊長」

 

横から虎徹さんが耳打ちして来た。

 

「なんすか?」

 

「雛森副隊長が先程からすごい形相で水上副隊長を睨んでるのですが……何したんですか?」

 

「人には言えないようなことだよ」

 

「へ……?はっ、まさか……!さ、最低です!」

 

勝手に顔を赤くし、俺を虫を見る目で睨んできた。

違う、違うよ。強姦なんてしてない。このムッツリすけべが。

 

「そこ!おしゃべりしないでください‼︎任務中ですよ‼︎」

 

ビシィッと八つ当たり気味に雛森さんが俺と虎徹さんに言った。

それを見て、虎徹さんは生優しい笑顔で雛森さんの頭を撫でた。

 

「大丈夫ですよ、私は雛森さんの味方です。あの変態副隊長をいつかやっつけましょう」

 

「? は、はい?」

 

なんか勘違いと勘違いが結び付いて共通の敵にされてしまったんですが……。

まぁいいや。男の拳に粛清されたらキレるけど、女の子の拳なら大歓迎です。

そんな緊張感もへったくれもない感じで指摘の場所へ到着。特に虚の気配は感じない。

 

「………」

 

「何も、ありませんね」

 

「じゃあ帰ろうぜ。もう眠いよ俺」

 

「ダーメ。帰るのはある程度調査をしてからです」

 

雛森さんは真面目で可愛いなぁ……。はっ、いかんいかん。そんな事ではまた嫌われてしまう。いやもう嫌われてるだろうけど。

 

「じゃ、俺と虎徹さんはここで待ってるから、五番隊の人達で見てきてよ」

 

「ちょっとー、シレッと仕事押し付けないでよ」

 

「俺たちはこの辺り探すから。それでいいだろ?」

 

「………」

 

チラッと虎徹さんを見る雛森さん。

 

「お任せ下さい。私が責任持って副隊長を働かせます」

 

「なら安心できます。じゃあ10分後にここに集まりましょうか」

 

「あれれー?おかしいぞー?僕、虎徹さんより立場上だよー?」

 

「何か見つけたら一度こちらに報告すること。では、散」

 

俺の言うことなどまるで無視して、五番隊の子達は辺りを探索し始めた。

 

 



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2日目(夜中)

あれから10分ほど経った。雛森さん以外帰ってこない。

 

「………遅ぇ」

 

「うーん……連絡もないなぁ。ちょっと見てくるね」

 

「いや、俺たちも行くよ。いいですよね、虎徹さん」

 

「はい。何か、嫌な予感がします」

 

俺もだ。ニュータイプみたいなこと言うつもりはないが、何となく嫌な予感がする。

3人で、残りの2人が向かった方向に駆け足で向かうと、黒装束を着た男が倒れていた。

 

「おい、あれ……」

 

「!」

 

雛森さんが慌ててそっちへ向かった直後、虚の気配がした。かなり大きい、というかデカイ気配。

 

「なんだ?」

 

直後、砂煙が視界を覆った。

 

「雛森副隊長!」

 

虎徹さんが声を張り上げるとともに、俺は砂煙りの中に飛び込んで雛森さんの襟首を掴み、引っ張った。

 

「っ! 水上くん……‼︎」

 

急いで距離をとる。そして、砂煙りの中を見た。

 

「………ええ、ちょっ、嘘でしょ……?」

 

何で、こんな所に大虚がいやがんだよ……。

 

「これは……大虚……?」

 

虎徹さんが遅れて呟いた。雛森さんも目を見開いている。

しかも、サイズは中途半端に3メートルほど、人の形をしていた。まるで、虚の仮面を被った人の様な。

こいつはヤバイ、と直感的に感じた。何より、霊圧がもうね、尋常じゃない。

 

「引きましょう。二人とも」

 

早急に提案した。とてもじゃないが、回復役を守りながら勝てる相手ではない。

 

「引くって……?こいつを放っとくつもり⁉︎」

 

「分かってるって。だけどほら、現状じゃこのヤバイ奴にはどう足掻いても勝てないでしょ」

 

「ダメよ!五番隊の人がやられてるの‼︎このままおめおめ帰れるわけ……!」

 

「だからこそ、引くって言ってんの。これ以上、死者は出せない。つーか、元々俺たちの任務は調査だ。駆除じゃない」

 

「ッ………」

 

決まりだな。一応、男の俺がしんがりになろうと思い、二人が動くのを待った。

二人とも、渋々といった感じで引こうとした。俺は油断なく、大虚を睨みつけておいた。

直後、大虚の姿が消えた。そして、俺を素通りして雛森さんに向かって手を伸ばしていた。

 

「えっ?」

 

慌てて俺は雛森さんを突き飛ばし、身代わりになりつつ攻撃を躱した。大虚の一撃は、俺の顔の真横を素通りした。

 

「ッ‼︎」

 

思いっきり拳を振り抜いて、大虚の顔面に叩き込んだ。

ズザザザッと音を立ててぶっ飛ぶ大虚。だが、すぐに受け身をとってこっちを睨んできた。

っふぅ〜……あっぶねぇ……。ギリギリだったよマジで……。

 

「大丈夫か?雛森さん」

 

……だめだ、ドヤ顔抑えないと……。あまりにカッコ良く助けられたからってニヤけるのは全部台無し……!

と、思ったら虎徹さんも雛森さんも気まずそうな顔をしていた。

 

「え、何?」

 

「………い、いえ、キチンと躱せてました。うん、ありがとう、水上くん」

 

「そ、そうですね。今のは中々かっこ良かったですよ」

 

お、おいやめろよ二人とも。照れるだろ〜。

っと、そんな場合じゃないな。俺は大虚を睨み返した。

すると、大虚は俺に右手の握り拳をかざし、ゆっくりと開いた。そこから、ポロっと耳が落ちて来た。

 

「……………」

 

嫌な予感がして、俺の右の耳に手を当てた。

ドロリと生暖かくて赤い液体が、俺の手に付着した。そして、耳があるはずの場所には、代わりに大きな穴があるだけだった。

 

「………………」

 

今更になって痛みを感じた。

俺は、ギロリと大虚を睨んだ。

 

「テメエエエエ‼︎イヤホン出来なくなっちまったじゃねぇかああああ‼︎」

 

「「いやそこおおおおおお‼︎⁉︎」」

 

二人のツッコミを背に、俺は大虚に襲い掛かった。

腰から刀を抜いて、正面から叩き斬る。それを大虚は両腕でガードした。この野郎、素手でガードしやがった。

直後、俺の足元に廻し蹴りを放って来たので、ジャンプして回避する。その隙を見て、俺の刀を退かして殴りかかって来た。俺は刀を持っていない手の方でその拳を受け止めると、ジャンプしたまま顎に膝蹴りを叩き込んだ。

 

「っ………」

 

後ろに仰け反って退がりながらも堪えた大虚は、すぐに反撃して来た。

顎に掌底を叩き込んで来たので、それを刀でガードする。が、刀に手が当たる前に手を引っ込め、左足で俺の刀を持ってる左手を蹴り上げた。

 

「っ⁉︎」

 

手から離してしまった刀はヒュンヒュンと回転しながら空中を舞う。

刀に目を取られた俺の隙を逃さず、大虚は俺の脚を払った。

 

「ッ⁉︎」

 

転んだ俺の真上に立つと、空中の刀の柄を掴み、大虚は思いっきり俺の顔面に向けて突き刺した。

ドゴッと鋭い音を立てて突き刺さる刀。だが、俺に刺さったわけではない。首を横に傾けて躱し、刀は地面に刺さっている。

 

「目に砂が入った」

 

俺は言うと、腰の鞘を掴んで大虚の腹に思いっきりぶっ刺した。貫通はしなかったものの、クリティカルヒットし、後ろに大きくぶっ飛ばしてやった。

ぶっ飛んだ時に、大虚の手から離れ、空中に投げ出された刀を俺はパシッと掴んだ。

 

「この野郎、焦ったじゃねぇか」

 

そう言った直後、俺の頬からツウッと血が垂れる。どうやら、躱しきれてなかったようだ。

 

「……す、すごい。大虚と始解もせずに互角に戦ってる……」

 

「って、感心してる場合じゃないですよ!早く援護しないと……!」

 

「でも……こんな正面からの斬り合いでは、私の『飛梅』だと水上くんも巻き込んでしまいますし」

 

「…………」

 

それでいいよ、二人共。

あんたら傷つけたら、藍染隊長と卯ノ花隊長に殺されちまう。それだけはゴメンだ。というか、俺の耳の仇を討つまで俺一人でやりたいし。

すると、大虚が自分の右腕を伸ばした。爪が伸びて、それが五本の刀身のようになった。

 

「ッ⁉︎」

 

直後、正面から斬り込んで来た。刀でガードするも、親指と小指の爪が俺の肩に食い込んだ。

さらに、反対側の手の爪も伸ばし、俺に向かって突き込んで来た。

 

「ふぬをっ⁉︎」

 

慌てて上半身を後ろに反らして躱した。刺さった爪が俺の肩を抉ったが、それをまったく気にせずに両手を地面に着け、両足で大虚の顎を蹴り上げた。

蹴り上げられた大虚の真上に跳んで刀を振り上げた。

 

「フンぐッ‼︎」

 

息を吐きながら振り下ろした。その刀を、大虚は右手の爪だけでガードした。二本ほどへし折ってやったが、それでも完全にガードしやがった。

そして、左手の爪で突きを放った。俺は腰から鞘を抜いて、突きをガード。そのまま体を捻って顔面に廻し蹴りをブッ込んで、地面に叩きつけた。

俺も地面に着地して距離をとり、雛森さんを見た。理解した雛森さんは斬魄刀を抜いた。

 

「弾け、『飛梅』‼︎」

 

直後、刀身から飛ぶ火の玉。それが大虚に襲い掛かった。

爆発、炎上。これなら流石に仕留めただろう……。

そう思ってると、煙の中から大虚がまた飛び掛かってきた。しかも、雛森さんの方へ。

 

「ッ‼︎」

 

俺は刀をブン投げた。回転しながら大虚に向かって行く。

雛森さんの肩に、大虚の右の爪が刺さった。遅れて、俺の刀が大虚右腕を落とした。

 

「雛森さん‼︎」

 

慌てて俺は雛森さんの方へ駆け寄った。

が、読んでいたように大虚は俺の前に立ちはだかり、爪を振り下ろした。

 

「そこ、退けエエエエ‼︎」

 

鞘を抜いて爪を上に払うと、斬り落とした方の腕を掴んで、力任せにブン回してその辺の木に投げ付けた。

 

「虎徹さん、雛森さんの容態は⁉︎」

 

「だ、ダメです。意識がありません」

 

当たり所が悪かったか……。

 

「虎徹さん、雛森さん連れて精霊廷に逃げて下さい」

 

「み、水上副隊長は……?」

 

「あいつを殺します」

 

当たり前だ。あの野郎、我らが天使雛森さんに手を上げやがった。

 

「………わかりました」

 

虎徹さんは精霊廷に走って帰った。さて、ここからだな。

 

 

「藍染さん?」

 

「どうした、ギン?」

 

「何であんな副隊長に興味持ってはるんですか?」

 

「彼は、狙ってか偶然か私の邪魔をして来るからね」

 

「と、言いますと?」

 

「雛森くんへのストーキングだ。もしかしたら、私の意図に気付いて、盲信させようとしているのを阻止している可能性がある」

 

「考え過ぎやないですか?」

 

「いや、先程『あまり他所の隊の副隊長にちょっかい出すな』と警告しておいたんだ。そしたら、彼なんと言ったと思う?」

 

「さぁ?」

 

「『俺、応援してますから!』と元気良く言われてしまったよ。おそらく、我々のやろうとしてる事がバレてる可能性がある」

 

「いや、100%考え過ぎやと思います」

 

「何しても、彼はイレギュラーだ。仕留められずとも、力だけは見ておきたい」

 

(この人、意外とアホなんちゃうか)

 

 

爪がなくなったことにより、攻撃の速度が上がった大虚と正面から斬り合っていた。

刀を突き込むと、横に躱して爪を振り回してきた。鞘を縦にしてガードした。ボギッと音を立てて鞘が落ちた。もうこれは使えない。俺は鞘を投げ捨てながら、刀で縦に斬った。

後ろに大きく下がり、木を踏み台にしてジャンプする大虚。俺も別の木を踏み台にしてジャンプした。

 

「逃がすか……!」

 

後ろから追いかけたとき、大虚はクルッとこっちを見た。そして、爪を引っ込めた片腕をこちらに向けた。

 

「なんだ………?」

 

呟いた時、拳の前から白い光が現れた。

何だっけこれ……御虚閃(オセロ)

 

「やばい奴じゃん………」

 

俺の眼の前を、白い光が包んだ。

 

 



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3日目

 

「あらら、虚閃直撃やないですか。これは終わりやな」

 

「…………」

 

「どうかなさりましたか?」

 

「………いや、本当に彼は副隊長か、と思ってさ」

 

「と、言いますと?」

 

「見てれば分かるよ」

 

「そう言われましても………。はっ?嘘やろ?」

 

「思いの外、手強い相手なのかもしれないな」

 

 

御虚閃が当たる直前、俺は刀を正面に振り下ろした。

そう、御虚閃を斬った。もちろん、無事では済んでない。刀身が吹っ飛んだ。

あーあ、どうすんだよこれ。お気に入りだったのに。

 

「なんて言ってる場合じゃないか」

 

大虚は俺に再び飛びかかってきていた。

俺の顔面に拳がめり込む。その拳の手首を掴んだ。

 

「痛ェなこの野郎」

 

呟くと、折れた刀を大虚の右胸に突き刺した。

更に、掴んだ手首を引っ張って腹に膝蹴りを入れ、手を離して両手を組んで、後頭部に本気で振り下ろした。

 

「ッ……‼︎」

 

前のめりに倒れそうになる大虚。だが、足を踏み出して堪えると、俺の腹に爪を突き刺した。

 

「ゴフッ………⁉︎」

 

こんにゃろッ……‼︎

負けじと、折れた刀を首の後ろから突き刺した。さらに、後ろから頭を掴んで引っ張って後頭部に膝蹴りした後、顔面に拳を突き刺した。

だが、まだ大虚は死んでない。いい加減にしろ、と割と本気で思ったので、俺は大虚を力任せに背負い投げして、地面に叩きつけた直後、折れた刀を再び喉に刺した挙句、横に掻っ捌いて、切断した。

そこで、ようやく動かなくなり、消えて行った。

 

「ふぅ……やっと終わったか……」

 

そう呟いたところで、全身の力が抜けたように俺はぶっ倒れた。

そういや、ぶっ刺されたり耳取られたりでズタボロにされてたっけか。あれ、確か出血多量で死ぬ事もあるっけか。

 

「いやだああああ‼︎死にたくねええええ‼︎誰か助けてええええ‼︎」

 

気合を入れて立ち上がり、瀞霊廷向かおうとする。……あれ、なんか血で前が良く見えない。瀞霊廷どこですか?

犬のおまわりさーん、僕を家まで案内してくださーい。

ああ、これほんとにヤバイ。テンパると心の中で機関銃レベルのペースでボケ倒す癖が出てる。

本気でヤバイ奴だ。

すると、薄っすらと隊長羽織を着た誰かが目の前に立ってるのが見えた。

 

「………助かった……」

 

「はい、助けにきました」

 

思わず声を漏らすと、そう返ってきた。

安心しきったのか、俺はフラリと足をもつれさせ、前のめりに倒れた。

ポフッと柔らかい何かの上に顎が落ちる。

 

「ふふふ、頑張りましたね。これから、治しますからね」

 

俺の頭を撫でながらそう言う声が聞こえた。

………この優しい声、そして隊長羽織、何より弾力マックスの胸………、

俺の目はカッと見開いた。

 

「卯ノ花隊長のオッパイ⁉︎」

 

「寝てて良いですよ?」

 

直後、首の後ろに手刀が降って来て、俺は気絶させられた。

 

 

目を覚ますと、俺は布団の中に寝かされていた。

 

「痛ッ………」

 

『まだ起き上がらない方がいいですよ』、というおきまりの台詞がなくても、自分の身体の調子を把握できた。どうやら、起き上がらない方がいいようだ。

にしても、『まだ起き上がらない方がいいですよ』の台詞がないということは、誰も俺の事を診ててくれてたわけではないのか。やっぱ、漫画やアニメみたいにはいかないか……。

そう思って何となく横を見ると、卯ノ花隊長が椅子に座ったまま眠っていた。この人のこういう無防備な姿は珍しく、思わず見惚れてしまった。

 

「………………」

 

超綺麗だな、やっぱり……。普段は俺に対してやたらと当たりの強い卯ノ花隊長だけど、こうして見ると本当に俺の中でドストライクの美人さんだ。

すると、「んっ……」と色っぽい声を漏らして、卯ノ花隊長は目を覚ました。

 

「………眠ってしまってましたか。あ、水上さん。おはよございます」

 

「……………」

 

「水上さん?」

 

「………あ、ああ、はい。すいません、見惚れてました。おはようございます」

 

「………そういうことは、あまりストレートに言わない方が良いですよ?」

 

あ、(怒)の顔だ。や、でもそのくらいで顔が真っ赤になるほど怒らんでも……。

 

「昨日は、大変だったみたいですね」

 

「ほんとですよ。大虚が出るなんて聞いてませんよ」

 

「勇音があなたの事を心配してらっしゃいましたよ。血だらけのあなたを抱っこして持って帰った時に一番に飛びついてきましたから」

 

「………ああ、やっぱりあの時に俺を受け止めてくれたの、卯ノ花隊長のオッパイだったんですね」

 

「怒りますよ?」

 

「ごめんなさい」

 

「………まぁ、今回は良くやってくれました、と褒めてあげましょう」

 

微笑みながら、すごく上から目線で褒められた。

どうやら、素直に褒めるのが嫌になるほど、俺を褒めるのは癪なようだ。

 

「良くやったならご褒美下さい」

 

「また、そうやって……。はぁ、まぁいいです。モノによりますが、ご褒美をあげましょう」

 

「マジでか‼︎」

 

よっしゃ!それなら俺の答えは決まってる!

 

「オッパイを触らせて下さい‼︎」

 

「ダメです」

 

やっぱダメか……。いや、ここで諦めてたまるかよ‼︎

 

「そこを何とか‼︎」

 

「ダメです」

 

「お願いしますッ‼︎」

 

「ダメです」

 

「俺のオッパイも揉んでいいですからッッ‼︎‼︎」

 

「ダメです」

 

クソッ、懇願ではダメか……。なら交渉だ。

 

「………そういえば卯ノ花隊長。俺をここまで運んでくれたのは卯ノ花隊長なんですよね?」

 

「そうですが何か?」

 

「俺のこと気絶させましたよね?手刀で」

 

ギクッ、と卯ノ花隊長の肩が一瞬、跳ね上がった。

 

「あれはどうしてくれるんですか?」

 

「い、いえ、あれはあなたが余計なことを口走るから……」

 

「でも、第三者から見たらアレは戦闘を終えて重傷を負ったばかりの俺にトドメを刺したようにも見えますよね?」

 

「……………」

 

何も言わない卯ノ花隊長。頭痛を堪えるように、こめかみに人差し指を当てた。

 

「まったくあなたは……。そんなに女性の胸を揉みたいのですか?」

 

「揉みたいですッ‼︎」

 

俺の信念のある即答に、更に深いため息をついた。だけど、一つ間違いがある。

 

「違います、卯ノ花隊長。女性の胸が揉みたいんじゃない」

 

「はい?」

 

「俺はッ‼︎あなたの胸がッ‼︎揉みたいんだッ‼︎」

 

直後、俺の頭からブシッと血が噴き出した。

しばらく目をパチパチさせた卯ノ花隊長は、まるだ俺に顔を見せないように後ろを向いた後、咳払いをして言った。

 

「………仕方ないですね」

 

「…………はっ?」

 

「いいでしょう、揉ませてあげます。ただし、10秒だけです」

 

「マジで⁉︎」

 

「マジです」

 

…………え、ま、マジ?マジで?MA☆JI☆DE☆?

 

「ィィィイイイイヤッフウウウゥゥゥゥッッッ‼︎‼︎」

 

「あまり叫ばないで下さい。人が来る前にさっさと終わらせますよ」

 

卯ノ花隊長は俺の腕を持ち上げた。

ドックン、ドックンと心臓が五月蝿い。俺の手が胸に吸い寄せられて行く度に、その高鳴りが早くなっていった。

キタ……キタ……キタキタキタァ……‼︎

俺は全神経と五感のすべてを右手に集中させた。

ハートキャッチプリキュア‼︎この後すぐッ‼︎

そう心の中で叫びながら、俺の右手はフニっと胸に触れた。

 

「…………ありっ?」

 

………ありっ?

 

「どうしました?」

 

ニコニコしながら俺に聞いてきた。あ、この顔、何か企んでるというか、タネがあるって顔だ。

 

「………あの、全然手に感覚が伝わって来ないんですけど……どういうことですか……?」

 

恐る恐る聞くと、「良くぞ聞いてくれました!」とでも言わんばかりに微笑みながら卯ノ花隊長は答えた。

 

「実は、痛み止めも含めて水上さんには麻酔が打ってあるんです。簡単に言いますと、触覚は感じません」

 

「」

 

「ふふふ、残念でした。でも、良かったじゃないですか。念願の私の胸を揉めて」

 

「」

 

「…………あの、水上さん?」

 

「」

 

俺は今、どんな顔をしているのだろうか。まず間違いなく、落書き状態のようになっているのだろう。

真っ白に、体は棒人間、顔は点と棒(または曲線)だけ。

 

「あァァァんまりだァァアァ‼︎」

 

ビクッとする卯ノ花隊長。

 

「こんなの、こんなのないよッ‼︎こんな……‼︎」

 

思わず涙が流れた。ツウッと頬を涙がつたるのが分かった。ガチ泣きしてる俺にドン引きしたのか、卯ノ花隊長は言った。

 

「あ、あの、そんな落ち込まないで下さい。ほら、今ならどんなに揉んでもいいんですよ?」

 

「10秒間だけだし感覚ないし虚しさしか残りませんけどね⁉︎」

 

こ、この人は……‼︎どこまでサディストなんだ……‼︎少なからずそう思った直後だ。

ガシャンと音がした。うるせーなこの野郎と、八つ当たり気味に睨みつけると、虎徹さんがおそらく俺のための食事であろう器載せてあったトレーを足元に落として、信じられないものを見る目で俺たちを見ていた。

 

「」

 

「」

 

俺も卯ノ花隊長も言葉を失う中、虎徹さんは気まずそうな笑みを浮かべた。

 

「………お、お邪魔しました」

 

食器だけ片付けて、『? どうしたんですか?虎徹さん』『ひ、雛森副隊長。今はやめておきましょう』『どうしてですか?なんかこの世の見てはいけないものを見た時の顔と、いい特ダネを掴んだって顔が混ざったような顔してますけど』『い、いいから!後で教えてあげるから!』という会話を残して出て行った。

ふと卯ノ花隊長の顔を見ると、真っ赤になってぷるぷる震えていた。

その様子に、俺は我慢できずに噴き出した。

 

「ぶはははははッ‼︎ざ、ざまああああああ‼︎人を馬鹿にしてっからそうなるんだ!ぶわはははははは‼︎」

 

「黙って」

 

「はははははひゅっ⁉︎」

 

黙らされた。

 

 



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退院:1日目

数日後、退院した。俺は未だに、無くなった耳に違和感を感じながら、呑気に歩いていた。

耳以外は卯ノ花隊長のお陰でほぼ全快したのだが、今まで病室で寝かされていた分、働かされると思うと気が重かった。

 

「祐作‼︎」

 

突然、声を掛けられた。

恋次とイズルが立っていた。

 

「おう、どしたん?」

 

「卯ノ花隊長と付き合ってるってマジ?」

 

「…………はっ?」

 

今なんつったこいつ。

 

「誰と誰が?」

 

「お前と卯ノ花隊長」

 

「俺と卯ノ花隊長が?」

 

「付き合ってるのかい?」

 

直後、俺の拳が真っ赤に燃え、イズルを倒せと轟叫びながら頭を掴んだ。

 

「誰から聞いたんだ?その妄言」

 

「いだだだだ‼︎ご、ごめんなさ……‼︎」

 

「そんな良い妄想教えんじゃねぇ‼︎俺と卯ノ花隊長が付き合ってるってことは、あのおっぱい揉みしだき放題って妄想しちまうじゃねぇか‼︎」

 

「喜んでる?喜んでるの⁉︎」

 

イズルを壁に投げつけた。

 

「………で、実際どうなの?」

 

恋次が落ち着いた様子で聞いてきた。

 

「や、普通にねぇから。つか、何処から聞いてきたのそれ?」

 

「何処から、ってのはわからねぇけど、もう精霊廷中に広まってるぜ」

 

なん、だと………⁉︎

 

「ま、まさか、俺が寝てる時に卯ノ花隊長がお見舞いに来る時は必ず一人だったり、京楽さんや浮竹さんがヤケに俺に『頑張れよ』って言ってきたのって⁉︎」

 

「ああ。まぁ、俺はそんな詳しいことは知らないから。俺はイズルに聞いただけだし」

 

俺は壁にめり込んでるイズルの胸ぐらを掴んだ。

 

「オイ、テメェは誰から聞いた」

 

「ま、松本さん、です……」

 

よし、元を叩き潰そう。

俺はイズルから手を離し、十番隊隊舎に向かった。

 

「あ、待てよ祐作。はいこれ」

 

ホイッと恋次から缶ジュースを二本投げられた。

 

「ん、何これ」

 

「俺とイズルから、退院祝い」

 

イズルがフラフラと親指を立てた。

 

「サンキューな」

 

俺はそう短く言うと、十番隊隊舎に走った。

 

 

十番隊隊舎。俺はドアを蹴り破って入った。

 

「おいっすぅ‼︎もういっちょ、おいっすぅー‼︎」

 

「テメエエエエ‼︎だから一々ドア蹴り破って入ってくんじゃねええええええ‼︎」

 

「おう、ひばんたに」

 

「日番谷隊長だ‼︎」

 

怒鳴りながら斬魄刀を振り回すひばんたに。それを俺は躱しながら、聞いた。

 

「おいおい、病み上がりに、体を、使わせるんじゃ、ねぇよ」

 

「病み上がり相手に刀を振らせるんじゃねぇ‼︎」

 

「それより、松本さんは?」

 

「話聞いてんのか⁉︎」

 

「いいから答えろよ、来年まで投げるぞ」

 

「どゆことーッ⁉︎」

 

「お前じゃ話にならねぇ‼︎隊長を呼んでもらおうか‼︎」

 

「俺だよ‼︎」

 

「ちょっとさっきから五月蝿いわよ……って、あら。卯ノ花隊長の恋人さんじゃない」

 

松本がのこのこと現れて寝言をほざきだした。

 

「あ?テメッ、泣くまで殴るぞ。誰が広めてんだその噂」

 

「へ?知らないわよ。私はギンに聞いたけど」

 

「ギンって……市丸隊長?」

 

「そーよ。それより隊長、喉乾いた」

 

「テメェは隊長をパシる気か⁉︎」

 

「あ、ならこれあげるよ」

 

俺は恋次とイズルからもらった缶コーヒーを一本投げ渡した。

 

「あら、ありがとう。じゃあお返しにこれ」

 

投げ渡されたのは生八つ橋の箱。

 

「ああ、どうも」

 

「じゃあね」

 

 

三番隊隊舎。

 

「すみませーん」

 

「あ、ああ。水上副隊長。何か用でっか?」

 

「もう大体検討ついてるんで直接聞きます」

 

(大体検討がついてる……?まさか、藍染隊長の言う通り本当に……!)

 

「俺と卯ノ花隊長が付き合ってると噂巻いたのはあんたですか?」

 

(良かった、アホで)

 

ん、なんかホッとされてる気がする。

 

「いや、ボクも藍染隊長に聞きました」

 

「ありがとうございます。ではこれ、」

 

「? なんやこれ」

 

「生八つ橋っす」

 

「ああ、じゃあ僕からはこれや。豆腐」

 

「あら、いいんですか?」

 

「ええよええよ」

 

「じゃあありがたく。では、失礼します」

 

なんかわらしべ長者みたくなってきたな。

 

 

「………あ、あれ。藍染さんが欲しがってた奴やった」

 

 

五番隊隊舎。

 

「失礼しまーす」

 

「⁉︎ や、やぁ、水上くん……」

 

「藍染隊長。こんにちは、今日はお話があってきました」

 

「な、何かな……?(まさか、まさかまさかついにこの前のことがバレっ……⁉︎)」

 

「俺と卯ノ花隊長が付き合ってるって噂したの、藍染隊長すか?」

 

(⁉︎⁉︎⁉︎ な、何故それを⁉︎)

 

あれ、なんか今一瞬動揺があったような。

 

(いやいやいや、落ち着け私。確かに何となく腹立ったから精霊廷に広めたのは私だが、私もまた雛森くんに聞いただけだ。私が広めたわけじゃない)←矛盾

 

藍染隊長は咳払いをしたあと、言った。

 

「僕は、雛森くんに聞いたよ」

 

「んなっ……⁉︎結局あいつか……‼︎」

 

そういえば、あのおっぱい揉み揉み事件の時に廊下で虎徹さんと話してたな。

…………あいつらが犯人か‼︎

 

(⁉︎ なんか睨まれてる⁉︎ 歯軋りまでして缶コーヒーを握り潰して……!まさか、私の計画を止めてやるという決意か?)

 

「あ、藍染隊長。これ、お礼にお豆腐です」

 

「(な、何故僕の好物を⁉︎)ありがとう」

 

「……………」

 

「…………な、何かな?」

 

「いえ、その豆腐今までわらしべ長者のように交換しまくって僕の元に来たんですよ。だから、藍染隊長からも何か〜なんて思ってみたり」

 

「………(下手なものは渡せない)。これなんてどうかな」

 

「わぁ、コケシ!」

 

な、なんでこのコケシメガネかけてるんだろう……。

 

(しまった!あのコケシ、虚圏に置こうと思ってた藍染モデル!で、でも『やっぱ返せ』なんて言ったら、勘付かれるかもしれない……‼︎いや、すでに勘付かれてる可能性も……いやしかし……‼︎)

 

「じゃ、ありがとうございます。また今度」

 

「あ、ちょっ」

 

さて、雛森さんを探そう。

 

 

ふぅ……わらしべ長者で色々と回った結果はコケシか……。いや、雛森さんに何か貰えるかもしんないな。まぁ、コケシの時点で良いものとはとても言えないだろうけど。

で、雛森さんは何処にいるのだろうか。藍染さんに聞いときゃ良かったかな。気楽にそんなことを考えながら歩いてると、バッタリと卯ノ花隊長と出会した。隣には虎徹さんがいる。

 

「あっ」

 

「あら」

 

あ、どうしよう。俺の耳に回ってきたということは、間違いなくこの人も俺と同じ風評被害に遭ってるよね。気まずい。

 

「こ、こんにちは」

 

「はい、こんにちは。どうしました?こんな所で」

 

「や、ちょっと雛森さん探してて」

 

「へぇ、恋人の前で他の女性の名前を口にしますか」

 

「ブッフォ‼︎」

 

思いっきり吹き出してしまった。

 

「どうしました?汚らしい」

 

「いや、あんたがどうしたんすか⁉︎」

 

「あら、嫌ですか?」

 

「嫌じゃありません。恋人ならオッパイ揉みたいです」

 

「殴りますよ?」

 

「ごめんなさい」

 

「冗談に決まってるじゃないですか。というか、あなたは恋人をなんだと思ってるんですか」

 

はい、おっしゃる通りです。

 

「まったく、もう少し入院してれば良かったのに……」

 

虎徹さんからすごい毒が聞こえた気がしたが、流すことにした。うん、だってきっと多分気の所為だと信じてるもの。

 

「ていうか、卯ノ花隊長は意外と気にしてないんですね。てっきり俺と恋人なんてヘドが出るほど嫌がると思ってたのに」

 

「はい、吐き気をもよおすほど嫌です」

 

ハッキリ言うなあ、俺並みのメンタルがなきゃ自殺してるよ?

すると、虎徹さんがやけにニヤニヤしながら言った。

 

「そんなこと言って。それより、水上副隊長に言いたいことがあったんじゃないんですか?」

 

「ああ、そうでしたね。この前の任務の現地に、これが落ちていたのですが」

 

卯ノ花隊長は懐から俺の折れた刀を取り出した。

 

「俺のです、返して下さい」

 

「折れてるんですよ?」

 

「何言ってるんですか?懐から出たということは、あなたのおっぱいに触れてた刀ですよ?」

 

直後、卯ノ花隊長は刀を握り潰した。

 

「おっと、勝手に砕けてしまいましたか」

 

「いや無理あるでしょ……」

 

今思ったけど、この人もなかなかアホだよな。いや、普通に暴力的なだけかもしれんが。ほんと、人は見かけによらないわ。

 

「今、失礼なこと考えてませんか?」

 

「いえ、決してそんなことは。どうやったらそのおっぱい揉めるかを考えてました」

 

「いや、誤魔化せてませんし輪をかけて失礼ですし失言ですし失敬ですよ?」

 

「最初と最後は意味同じじゃね?」

 

「タメ口とは、失敗しましたね水上さん」

 

「何ですか?もしかしてイン踏むのにハマってるんですか?それともラッパー気取りですか?卯ノ花隊長にもマイブームがあってなんか可愛らし」

 

メキッと俺の顔面に拳がめり込んだ。

 

「………すいませんでした。調子こいてました」

 

「歯向かってみようという勇気だけは讃えてあげましょう」

 

「自分が怖いという自覚はあるんすね……」

 

この人、絶対結婚できねえよ。絶対鬼嫁になるよ。これはもう俺がもらってやるしかないんじゃねぇの?

 

「卯ノ花隊長」

 

コソッと虎徹さんが卯ノ花隊長の脇腹を肘でつついた。

すると、卯ノ花隊長は咳払いして、改めて、といった感じで言った。

 

「それで、ですね。あなたの斬魄刀は折れてしまったわけですし、涅隊長に直してもらいに行きませんか?」

 

「斬魄刀?誰の?」

 

「いや、あなたの」

 

「それ斬魄刀じゃありませんよ。ただの刀」

 

「へっ?」

 

珍しく卯ノ花隊長が間抜けな声を上げた。

 

「ただの刀です」

 

「………そう、ですか。驚きました。ということは、あなたは斬魄刀無しで大虚に挑むなんてバカなことをしたわけですね?」

 

………あれ?なんか怒ってる?

 

「何故、斬魄刀を出さなかったのですか?」

 

「や、俺さ。霊術院卒業する時、下痢気味だったんですよね。トイレで踏ん張ってたら浅打もらいそびれて、そのまま刀だけで戦ってたんすよ。だから、斬魄刀持ってないんすよね」

 

「………頑張ってたんですね。今まで」

 

「まぁ、そうですね。頑張ってました」

 

「浅打をもらってればしなかった苦労をしていたのですね……」

 

うわ、なんか馬鹿にされた気がする。

 

「じゃあ、浅打をもらいに行きましょうか」

 

「あれ誰から貰うんすか?山爺?」

 

「霊術院にあるでしょう。私から話を通しておきますから、取りに行きなさい」

 

「あーい」

 

てなわけで、浅打とコケシを交換した。

 

 



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2日目〜5日目

翌日、瀞霊廷の図書館。俺はそこで気まずい時間を過ごしていた。

朽木隊長と二人きりだからだ。

 

「……………」

 

「……………」

 

おかしい。なんでこんなに気まずいんだろうか。朽木隊長だからか?普通、図書館なんて何処にいても気まずくならないだろ。

あーちくしょう、仕事サボるために朝からこんなところ来るんじゃ無かった。

どうしよう。なんか話したほうがいいかな。や、でもなんで?そんな仲良いわけじゃないしぃ、てか仲良かったら気まずくなってないしぃ。

でも、ツレの恋次の隊長さんなわけだから、ある程度は仲良くしておいたほうがいいかも……。でも、あの人クソ真面目そうだからなぁ、馴れ馴れしく声かけたらキレられそう。

 

「あの、朽木隊長」

 

とりあえず、声を掛けてみた。

 

「なんだ。水上副隊長」

 

「オセロでも、やりませんか」

 

「………………」

 

………何言ってんだ俺。確かにこの図書館には何故かボードゲームが置いてあったりするが……。

 

「あの、やっぱ嘘で……」

 

「いいだろう」

 

「へ?」

 

「やろう」

 

マジで……?この人、意外とノリの良い人?

 

「じ、じゃあ借りてきますね」

 

「うむ」

 

そんなわけで、オセロの箱を借りてきた。

俺と朽木隊長は向かい合うように座り、真ん中の机にオセロ盤を置いた。

 

「デュエル!」

 

「?」

 

「何でもないっす」

 

開始した。

 

 

10分後。盤上は白で染まった。

ちなみに、朽木隊長は黒である。白哉なのに。

 

「……………」

 

「……………」

 

き、気まずいいいいい‼︎勝ったのに全然嬉しくないいいいいい‼︎

俺のバカ!何でこんな絵に描いたような完封勝利してんだよ!接待プレイって言葉を知らねえのかよ‼︎

 

「あ、あの、朽木隊長………」

 

「なんだ?」

 

「す……」

 

すいません、って言うのは喧嘩売ってるよな……。

クソッ、考えてから名前呼べばよかった!なんか言わねえと、なんか言わねえと!

 

「ぎ、ギャハハハハ‼︎ザマァ〜‼︎超弱っ‼︎朽木白哉(笑)。いや済まぬ、ぷっふふー‼︎」

 

「…………」

 

あ、朽木隊長キレた。何で笑ったの俺?

 

「縛道の六十一『六杖光牢』」

 

「えっ」

 

当然、俺の身体に光の板のようなものが現れ、俺の動きを封じるように身体に突き刺さった。

 

「………え、なにこれ」

 

「では、また機会があれば手合わせ頼む」

 

「え、ちょっ、朽木隊長何これ?どゆことこれ?」

 

俺の質問を無視して、朽木隊長は図書館から出て行った。

………ああ、これあれか。放置プレイって奴か。

 

「ちょっ、朽木隊長⁉︎戻って来るんだよね⁉︎ねぇっ⁉︎おーい、朽木隊ちょ……!」

 

朽木隊長は戻って来なかった。

 

 

3日後、たまたま本を借りに来た浮竹さんに助けてもらった俺は、とりあえず飯を食いに行った。

腹減ったなぁ……喉乾いたなぁ……便意を催さなかったのは奇跡だなぁ……。これからは食べ物を大切にしよう、そして朽木隊長を殺しに行こうと心から思いながら、とりあえず四番隊隊舎へ向かった。

 

「あっ、水上副隊長⁉︎」

 

虎徹さんが驚いたように声を上げた。

 

「今まで何処にいらっしゃったんですか⁉︎心配しましたよ!」

 

「図書館」

 

「は?と、図書館?」

 

「そう。それより早くなんか食わせて下さい……。死にそうです……」

 

「わ、分かりました?まったく……副隊長がいない間、私が代わりに仕事させられたり卯ノ花隊長が不機嫌だったりで大変だったんですから」

 

「あー、そういや仕事投げ出してたんだっけか。悪いことしたなぁ」

 

「いや、それもあると思うんですけど、それより最近は……こう、喧嘩友達を失くしたみたいにつまらなさそうにしてたんですよ」

 

「へ?喧嘩相手って俺のこと?」

 

「はい。水上副隊長が来てから卯ノ花隊長は……んむっ⁉︎」

 

後ろから口を手でせき止められる虎徹さん。

 

「………勇音?余計なことは言わなくていいのよ?」

 

卯ノ花隊長にそう言われ、涙目になりながらコクコクと頷く虎徹さんだった。

その様子に満足したのか、クソドS卯ノ花はニッコリ微笑んで手を離した。そして、パタパタと逃げて行く虎徹さんに目を向けることもなく、さらに不機嫌そうな笑顔になった卯ノ花隊長は俺を睨んだ。

 

「さて、何故サボったのか話を聞きましょうか?」

 

「サボったこと前提かよ……」

 

いや、キッカケは確かにサボろうとした事だったんだけどさ。だが、そこをバカ正直に話せば俺の首は飛ぶ(物理)。

だから、そこはかなり遠回しな説明をすることにした。

 

「3日前、少し気になることがありまして、図書館に行ったんですよ」

 

「サボりに行ったのですね」

 

一発で看破されました。まぁこの際いいや。

 

「その時に、朽木隊長とオセロをやりまして」

 

「え?あの朽木隊長と?」

 

「はい。ボロ勝ちしたら縛道で縛られて動きを封じられました。3日後に浮竹さんに見つけてもらったというわけです」

 

「そうですか。つまり、自分で蒔いた種に足を絡め取られたわけですね」

 

「いやいやいやいや、待て待て待て待て」

 

「学習なさい。またタメ口ですか?」

 

「そりゃあねーだろとっつぁん」

 

「殺すぞ」

 

「はい、すいませんでした」

 

この人もこんなストレートな暴言吐くんだな……。

 

「とにかく、今日はあなたはずっと仕事です。よろしいですね?」

 

「えっ、せめてご飯くらい……」

 

「ダメです」

 

「水の一滴でも」

 

「ダメです」

 

酷い。この人、結婚したら絶対に鬼嫁になること間違いない。

 

 

空腹と喉の渇きと戦いながら書類仕事を続けること二時間、そろそろ意識が遠退いてきた頃に、コンコンとノックの音がした。

 

「どうぞ」

 

卯ノ花隊長が返事をすると、ガララッと扉が開いた、

 

「祐作‼︎」

 

「れええええんんんんじいいいい‼︎」

 

恋次の声がして涙目で俺は飛び付いた。助かった!や、ほんまに助かった!

ムギューッとお腹に抱き付いてると、違和感に気付いた。柔らか過ぎる。おそらく俺だけが知っていることだが、恋次は朽木隊長より強くなるために修行してる。その恋次の腹がこんな柔らかいわけない。

誰だお前、と思って見上げると、ルキアが真っ赤な顔で俺を睨んでいた。恋次はその後ろにいる。

 

「………あっ」

 

「何をする貴様ああああああ‼︎」

 

「へぶっ⁉︎」

 

見事なアッパーカットが俺の顎にクリティカルし、後ろに大きくひっくり返った。その俺にルキアは馬乗りになり、拳を振り下ろす。

 

「いだっ!ちょっ、いだ!待っ……」

 

「死ね!死ね!死ね!死ねええええ‼︎」

 

「ちょっ、ゴフッ、ルキアッ、マジでッ、ガフッ、ブフッ……ウッ……」

 

「ケダモノケダモノケダモノケダモノケダモノ‼︎」

 

「………………」

 

「おーい、その辺にしとけルキア。本当にそいつ死ぬぞ」

 

恋次の声が聞こえ、ようやく俺への拳が止んだ。

だが、俺の意識は既に薄れて行った。

 

「おい、祐作起きろ」

 

無理。

 

「大事な話があるんだよ。あ、卯ノ花隊長、これ借りていいすか?」

 

「いいですよ」

 

無理だって。どいつもこいつも鬼ですか。

 

「いい加減にしろよ。はよ起きろっての」

 

無理無理無理。冗談抜きで心も体もHP1よ俺。

 

「卯ノ花隊長のおっぱい揉ませてやるから」

 

「おはよう」

 

「お二人共、歯を食い縛ってください」

 

ゴンッゴンッとゲンコツが俺と恋次の脳天に降って来たが泣かなかった。

引き続き、話を進める。

 

「とにかく、大事な話ですので、10分だけ借ります」

 

「それは構いませんが、どうかしたのですか?」

 

「いえ、卯ノ花隊長が気にするほどの事では」

 

「まあ、なんでもいいですが、祐作さん?遅れた分はちゃんとあとで働いてもらいますよ?」

 

「えっ、いや俺に選択権がない状態で連行されるのにそれは理不尽じゃ……」

 

「いいから行くぞ!」

 

「何もよくねえよ⁉︎」

 

俺の意見など無視して連行された。

 

 

「で、何の用だよ」

 

恋次とルキアの奢りで、俺達は茶屋に来た。

 

「簡単な話だ。お主、白哉兄様に何をした?」

 

「あ?」

 

「驚いたぞ。まさか、あの白哉兄様からオセロに誘われるなんてな」

 

負けて悔しくて練習してたあの人⁉︎

 

「俺もだ。まさか執務をほったらかしてまでオセロに誘われると思わなかったよ」

 

どんだけ悔しかったんだよ!意外とかわいいなあの人‼︎

 

「理由を聞いてみたんだ。そしたらよ、『水上副隊長に上下関係を教えるためだ』とか言い出しやがってな。それでお前のところに来たわけだ」

 

オセロで何を教えようとしてるんだろうか。もしかしたら、瀞霊廷の隊長達というのは愉快な人ばかりなのかもしれないな。

 

「俺は何もしてないよ。ただ図書館で二人きりだったから、オセロに誘って盤面真っ白にしてやったから煽ったら縛道による三日三晩飲まず食わずダイエットさせられただけだ」

 

そして今も卯ノ花隊長による断食中である。おそらく3キロは痩せるね。

 

「朽木隊長をオセロに誘ったのか?」

 

「ああ。あの人弱過ぎwwwぷーくすくす」

 

「怖いもの知らずだなお前」

 

「るせー。なんか話さなきゃって思った結果がこれだよ。とにかく、これでお前らの知りたいことは全部だ」

 

「全部だ、じゃない‼︎貴様のお陰で私と恋次は毎日毎日オセロに付き合わされているのだぞ‼︎」

 

「毎日って……たかがまだ3日だろ?」

 

「3日連続でオセロやらされた私の身にもなれ‼︎」

 

「3日連続断食ダイエットコースの俺に何を言うか‼︎」

 

「え?す、済まぬ」

 

いいよなテメェらはよう‼︎三日間ちゃんと飯も食えてトイレにも行けて風呂も入れてよ‼︎何も出来なかったからね俺⁉︎浮竹隊長にはちゃんと何か奢らないと。

改めてそう思いながら、俺は二人に奢ってもらった飯を食いまくった。

 

 

四番隊隊舎に戻った。これから書類仕事である。

 

「ただいま戻りました」

 

挨拶して執務室に入ると、中では朽木隊長がオセロ盤を前にして待っていた。

 

「………さぁ、やろうか」

 

やろうか、じゃねぇよ。

ちなみにこのあと、ボロ勝ちした。

 

 



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6日目

 

夜中。俺は真っ黒な服に目以外のすべての身体を包んで、二番隊の中に紛れ込んでいた。

 

「では、これより大虚の捜索を開始する」

 

砕蜂隊長の支持によって、二番隊の5人+四番隊1人は森の中で捜索を開始した。

 

「おい、水上。遅れるなよ」

 

「へーへー」

 

「ちゃんと返事をせんか貴様‼︎」

 

面倒くせえなぁ、クソ真面目貧乳女が。

 

 

そもそも、なんで俺がこの中にいるか。それは、卯ノ花隊長の気まぐれの所為だ。役割は違うとはいえ、四番隊なら応急処置の一つくらい出来るようになれ、との事で、応急処置を教わった俺に卯ノ花隊長が任務を言い渡したのだった。

 

「あ?二番隊と?」

 

「はい。あなた方がこの前倒した大虚が他にもいた場合の為、隠密機動隊の方々が出ることになりました」

 

「で、なんで俺なんすか」

 

「この前の調査の時にいて、尚且つ隠密機動隊の速さについて行けるのはあなただけでしょう。そういうわけなので、お願いします」

 

「………さては、ついでに回復役としても使えるようにするために俺に応急処置を教えやがりましたね?」

 

「その通りです」

 

こ、この野郎……。

 

「やーだー!隠密機動の隊長ってあの貧乳だろ⁉︎守ってあげたくなるタイプじゃねぇしやる気出ねえっすよ‼︎」

 

「だそうですよ?砕蜂隊長」

 

「へっ?」

 

卯ノ花隊長が俺の後ろに向かって言うので、つられて振り返ると砕蜂隊長がものっそい形相で俺を睨んでいた。

 

「あっ」

 

「貴様が応急処置を真っ先にしなければならない相手を教えてやろう」

 

そう言うと、砕蜂隊長は指をコキコキと鳴らし始めた。

 

「貴様だ」

 

 

で、気絶させられて起きたら森の中である。流石、隠密機動、人を拉致することに長けてやがる。

 

「おう、テメエが水上か?」

 

「あ?」

 

「俺は大前田ってんだ。お前とは気が合いそうだ、よろしくな」

 

「え、俺とお前に共通点があるの?どの辺?」

 

「隊長の愚痴」

 

「友達になろうか」

 

剥き出しの悪意を引っ込めて握手を求め、大前田がそれに応じようとした。

 

「そこのバカ二匹、後で覚えてろよ」

 

慌てて手を引っ込めた。

移動する事しばらく、目的地に到着し、俺たちは立ち止まった。

 

「二組に分けて捜索する。絶対一人にはなるなよ」

 

『了解』

 

「では、二組にわけるが……」

 

うーん……真面目な雰囲気だな。何となくつまらん。遊びを入れよう。

 

「おーい、そいそい隊長」

 

「砕蜂隊長だ。……なんだ?」

 

「せっかくだからグーパーで決めません?」

 

「水上、貴様ここに何しに来た?遊び気分か?」

 

「お、いいなそれ」

 

「せっかくだしな」

 

「たまにはそういう運要素があってもいいよな」

 

「おい、貴様ら。話を聞け」

 

「砕蜂隊長、やらないんすか?やらない人はボッチっすよ?」

 

「二人一組と言ってるだろう‼︎やる‼︎」

 

やだこの人、少し可愛いんだけど。

そんなわけで、グーパーをした。

 

 

結果、俺、大前田、砕蜂隊長の3人組になった。

作戦時間は30分。この辺一帯を徘徊したあと、何もなければ別のポイントへ移動する、ということだ。ちなみに、別のポイントで捜索を開始するときはチームグーパーをする事は言うまでもない。

二手に分かれ、捜索開始。

 

「まったく、なぜ私が貴様らなどと……!」

 

「いいよな、お前んとこの隊長は色気があって」

 

「ああ、お前んとこの隊長はど貧相だもんな」

 

「嫌なヤツらが仲良くなりおって、これだから男は……」

 

「ど貧相とか言ってやるなよ、あれでも女の子だぜ?」

 

「いやいや、だってぶっちゃけお前の方がおっぱい大きいじゃん」

 

「せめてどちらか一人なら良かったものを……!」

 

「やめてやれよ。女性と男の胸囲を比べてやるなよ」

 

「事実だからしゃーないだろ。つか何、じゃあお前は仮に彼女ができるとして、あんな大胸筋以下の胸でいいのか?」

 

「ッ……と、特に水上など斬魄刀すら持っていないとか、戦力になるのか疑問だな」

 

「絶対嫌だ」

 

「だろ?あんな胸で喜ぶのは一部のマニアかロリコンだけだっつの」

 

「………お、大前田もだ。あんな隠密機動に一番似合わない体型の男と一緒か私はついてないな!」

 

「かぁ〜!そう思うと四番隊のお前が羨ましいぜ!」

 

「だべ?………まぁ、あの人意外とクソドSなんだけどな」

 

「………皮肉が聞こえていないのか?それとも自分に都合の悪い言葉は聞こえないようになってるのか?男の癖に情けない奴らだ」

 

「そういや一時期、あの人と付き合ってるみたいな噂あったけど、アレは?」

 

「ねぇよ、ねぇ。ありゃ虎徹さんと雛森さんが蒔いたデマだ」

 

「お、おい。聞こえてるんだろ本当は?それとも本当に聞こえてないのか?」

 

「だよなぁ、そもそも卯ノ花隊長って恋愛とか興味無さそうだし」

 

「それな。だから難攻不落の要塞じみてんだよなぁ……。まぁ、俺は諦めないけど」

 

「き、きこえてるんだろ!なんだ?言い負かされるのが怖いのか?わかった、今なら何言っても暴力では訴えないから!」

 

「なに、お前卯ノ花隊長好きなん?」

 

「そりゃあもうね、一目惚れだよ一目惚れ。着物の上からでもわかる巨乳、優しそうな表情ながらも凛とした顔、というか可愛いタレ目、両サイドから垂らした髪で結った三つ編み、大人の女性を絵に描いたような大人の女性だろ?」

 

「ねぇ!反応しろ!無視って一番酷いんだぞ‼︎」

 

「外見だけじゃねぇか」

 

「バッカ野郎‼︎中身も可愛いんだぞ、あの人甘い物が好きみたいなんだけど、お饅頭を両手で持ってはぐはぐ頬張ってるところがハムスターみたいで可愛」

 

「………返事、してよぅ」

 

グスッ、としゃくりあげた声が聞こえたので、大前田と二人して振り返ると、砕蜂隊長がマジ泣きしてた。

 

「………隊長を、仲間はずれに……グスッ、するなよ……」

 

「「……………」」

 

なんで泣いてんのこの人。

 

 

一通り見回りが終わり、もう一組と合流した。

次のポイントへ移動し、砕蜂の謎の独断により、今度は二人一組で移動する事になった。

どういうわけか、祐作はまたまた大前田と一緒。

だが、とにかく二人から別れたかった砕蜂としては、すごい良い気分で他の隊員と見回りに出た。

 

「あームカつく!ムカつくムカつくムカつく‼︎すっごいムカつく‼︎」

 

「あ、あのっ、砕蜂隊長……あまり大きな声を出されると、万が一大虚がまだいた時に……」

 

「五月蝿い‼︎そもそもお前はここになんのためにいる⁉︎」

 

「それは調査のため……」

 

「違う‼︎私の愚痴を聞くためだ」

 

(何言ってるんだろうこの人)

 

二番隊の男はため息をついて言った。

 

「いいからさっさと任務を終わらせましょう。総隊長に叱られますよ」

 

「お前まで私を無視するのか……?」

 

「ええー、ほんと何泣いてんのこの人……。わかりました、わかりましたよ。任務終わったらいくらでも聞いてあげますから、とにかく任務を優先しましょう」

 

「………うん、わかった」

 

(やだちょっと可愛い)

 

そんな事を話しながら歩いてると、無線機に通信が入った。

 

『た、隊長!砕蜂隊長!』

 

「! 大前田か?」

 

ただ事じゃない声に、砕蜂は表情を一瞬で変えた。

 

『大変です!水上野郎か……‼︎」

 

「水上がどうした?」

 

『ウンコか漏れそうみたいで……‼︎』

 

「知るか、死ね、漏らせと伝えろ」

 

『え?ちょっ、隊ちょ……』

 

無線機を切った。

 

「チッ、緊張感もへったくれもない奴らめ……」

 

小声で毒づいた時、またまた通信が入った。

 

「はい」

 

『誰が漏らすかよクソ貧乳‼︎死ねバーカバーカ‼︎』

 

「あ?」

 

通信が切れた。イラっとした砕蜂はすぐに無線機を入れて言い返した。

 

「貴様、本当にあとで覚えてろよこの野郎‼︎」

 

『この電話番号は、現在使われておりません』

 

「〜〜〜ッ‼︎キィーーー‼︎」

 

とうとう奇声まであげ始めた隊長に、隊員の男は3人分くらいを間を空けた。

すると、またまた無線機に通信が入った。

 

「なんだ貴様‼︎調子に乗るなよ、卯ノ花隊長に言い付けるぞ‼︎」

 

『へ?は、はぁ、別にいいっすけど……』

 

「あっ」

 

別のもう一班の男だった。

 

「いや、すまん。何かあったか?」

 

『いえ、こちら異常無し。戻ります』

 

「あ、ああ。了解した」

 

『では、失礼し』

 

直後、ガシャンという轟音と共に無線機にザーッというノイズが入る。

 

「⁉︎ おい、どうした⁉︎おい‼︎」

 

「どうかなされましたか?」

 

「二班の通信が途切れた。行くぞ」

 

「了解!」

 

「おい、三班。二班との通信が途切れた。お前らも現場へ急行しろ」

 

『この電話番号は、現在使われておりません』

 

「本当にくたばっちまえバーカ‼︎」

 

そう言って、砕蜂は無線機を握り潰した。

 

 



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6日目(続)

 

二班の捜索範囲に到着した。その場では、二班の二人が倒れていた。

 

「! 貴様ら……‼︎」

 

すでに息はない。すぐに辺りを見回した。

虚の気配はない。自分の班の班員に命令した。

 

「おい、バカとデブを呼べ」

 

「了解」

 

一人一つずつ持ってる無線機で通信した。

 

「ダメです、出ません!」

 

「何やってんだあのバカ達は‼︎」

 

 

あのバカ達。

 

「未来融合、フューチャーフュージョンを発動!デッキからブルーアイズを三体墓地に送り、俺は2ターン後にブルーアイズアルティメットドラゴンを特殊召喚する!」

 

「サイクロン」

 

「うおっ⁉︎またかよ!」

 

「お前少し夢見過ぎだろ。ロマンにも限度があるぞ」

 

遊戯王やってた。

 

 

油断なく辺りを見回す砕蜂。

すると、辺りが突然、黒い煙っぽいものに包まれていってることに気付いた。離脱し、煙を眺める。

 

「………これは、」

 

なんだ?と、続けようとした直後、煙から手が首に向かって伸びてきた。

 

「ッ!」

 

首を後ろに逸らしながら、その手首を掴んで、強引に煙から引っ張り出した。

 

「! こいつは……!」

 

目の前には大虚。人型のものだ。

 

「クッ……!こいつが例の……‼︎」

 

『死神、見ツケタ……』

 

そう呟かれ、再び攻撃して来る。それを回避しながら言い返した。

 

「ほう、言葉を話せるのか貴様は。虚にも意思というものがあるのか?」

 

『イイノ?余所見シテテ』

 

「………何?」

 

『オイラノ本体ハ、ズットオ前ノ後ロニイルケド』

 

「ッ⁉︎」

 

慌てて後ろを振り返るが、黒い煙が晴れた場所には誰もいない。

直後、後ろから蹴り飛ばされた。

 

「! 砕蜂隊長‼︎」

 

目の前の木に突っ込んだが、その木を踏み台にして受け身を取った。

 

(チィッ……!『本体』という意味深な言葉に騙された。奴はそれほどの知能を持ってるというのか?)

 

攻撃力は普通、よりも少し高い。だが、それ以上の知恵に若干怯みつつも、斬魄刀を出した。

 

「尽敵螫殺、『雀蜂』」

 

指に装着している短い斬魄刀を武器に、大虚に突撃しながら隊員の男に叫んだ。

 

「直接行ってバカ二人を呼んで来い!嫌だ面倒だとごねたら卯ノ花隊長にチクると言え!」

 

「了解しました!」

 

男が行ったのを見ながら、大虚と戦闘開始。

大虚の拳を回避したあと、雀蜂をボディに思いっきり叩き込んだ。

 

『グフッ……‼︎』

 

食らった胸を抑えながら、大虚は退がる。

自分の胸に出て来た黒い花の様な紋様を見る。

 

『ナニ、コレ……?』

 

「そいつが雀蜂の能力だ。その蜂紋華に次、私の雀蜂による攻撃が当たれば、貴様は死ぬ」

 

『!』

 

「二撃決殺、という奴だ。せいぜい気をつけろよ」

 

砕蜂は再び大虚に襲い掛かった。

拳で顔面へ殴り掛かり、それを大虚は回避すると、胸に突きが飛んで来た。それを左腕でガードしながら退がって距離を取る。

その左腕にも蜂紋華が出た。

 

『…………』

 

「次からは右腕でガードするんだな」

 

得意げにそう言いながら再び斬りかかった。

それをあっさり躱す大虚。直後、砕蜂は膝を振り上げた。大虚はその膝を左手でガードした。

その左手に雀蜂を振り下ろした。それを右手の平で受け止める大虚。

 

「これで右手ももらったぞ‼︎」

 

『オイラモ、アンタノ腕ヲモラッタヨ』

 

「何?」

 

刺された右手で、砕蜂の手ごと雀蜂を掴み、固定した。

 

『二回刺ササレルト死ヌナラ、一回目デ封ジレバイイ』

 

「グッ……‼︎離せ貴様……‼︎」

 

直後、大虚は腰の刀を抜き、下から振り抜いた。

砕蜂の身体から下から斬られ、血が大きく噴き出した。かろうじて後ろに体を反らし、傷を浅く済ませた。

 

「クソッ………‼︎」

 

『オット、躱シタカ。ダガ、次ハ仕留メル』

 

そう言って大虚が刀を振り上げた時だ。

 

「隊長‼︎」

 

大前田が叫びながら五形頭を振り下ろした。

ガンダムハンマーのような物が飛んで来て、大虚は後ろに飛びながら雀蜂を離して回避した。

 

『チィッ……援軍カ………』

 

「無事ですか隊長⁉︎」

 

「大前田………!」

 

砕蜂を庇うように大前田は立った。

 

「………水上はどうした?」

 

「俺がなんだよ貧乳」

 

後から眠そうに祐作が降りて来た。

 

「ふん、生きていたか無礼者」

 

「いいからいいから、治療するから服脱いで」

 

「えっ?」

 

祐作は砕蜂の服に手をかけた。

 

 

監視してる二人。

 

「「えっ」」

 

「え?脱がすん?水上が?砕蜂の服を?」

 

「……………」

 

「うわあ……砕蜂ちゃん、ホンッッットに胸ないなぁ」

 

「……………」

 

「水上くんもまるで気にしてないやないですか。驚く程真顔やないですか」

 

「……………」

 

「藍染さん」

 

「……………」

 

「もしかしてそれ、勃ってます?」

 

「……………」

 

 

「ちょっと、その傷では応急処置くらいしないと危ないですって。暴れんな」

 

「ば、馬鹿者離せ!異性だぞ私と貴様は‼︎」

 

「何、医療器具見ただけでテンション上がってんすか。ガキかテメーは」

 

「そ、そういう問題じゃない‼︎自分でやるから‼︎異性だと言ってるだろ‼︎」

 

「オメーごときのオッパイで興奮なんかしねーよ。男前な身体しやがって」

 

「こ、殺す‼︎お前ほんとに後で殺す‼︎」

 

「治療してやるだけでもありがたく思えバーロー。えーっと、消毒ってどうやるんだっけ?傷口に塗るんだっけ」

 

「ぎゃああああ‼︎いだだだだだ‼︎なんか不安なんだけどあんたの応急処置‼︎」

 

「おい、素が出てんぞ」

 

ったく、いつまで経ってもガキなんだからこいつは……。

このままじゃあ、足止めしてくれてる大前田も保たねえぞ……。

そう思った直後、ズシャアァアァッと隣に大前田が転がってきた。

 

「クソッ……‼︎オイ水上、まだか?」

 

「お前んとこの隊長が暴れて中々治療させてくれねーんだよ」

 

「う、うるさい!責めてもっとこう……やり方というものがあるだろ‼︎」

 

「うるせーのはテメーだよカス。そもそも何あんなのにやられてんの」

 

「うぐっ……‼︎」

 

「おい、大前田。消毒は終わらせたから、なんかエロい感じに包帯巻いてやってくれ」

 

「わ、分かった。お前は?」

 

「お前もこの人も勝てねえんなら、俺しかいねえだろ」

 

俺は浅打を抜いて大虚の方に歩いて行った。

 

『次ハオ前?』

 

「おう。シロー・アマダってんだ。よろしくな」

 

意味のない嘘をついてみた。

 

『オ前ハ楽シマセテクレルノ?』

 

「御託はいいからさっさと掛かって来い。もう眠いんだよ」

 

『…………』

 

直後、大虚は腰の刀を抜いて斬り掛かった。

それをガードしようと、右手で刀を抜いて頭上に構えた直後、大虚は刀から手を離して、ガラ空きの俺の腹に拳を振り抜いて来た。

それを俺は膝を上げてガードして、左手で鞘を抜いて大虚の顎を殴りあげた。

 

『ガッ……⁉︎』

 

そのまま刀を大虚の腹に突き込んだ。貫通させた後、腹を足で蹴り込んだ。

蹴り飛ばされながらも受け身を取った大虚は、ジッと俺の顔を見てくる。

 

「虚が俺にブラフを掛けようなんて十年はえーよ」

 

『…………』

 

「おら、どうした?掛かって来い。化かし合いなら負けね……」

 

『ソウジャナクテ、耳ドウシタノ?』

 

「えっ」

 

『ナンカ無クテ遠慮シチャッタケド』

 

「………………」

 

俺は少し目を逸らしながらソッと耳に手を当てた。

 

「え、い、いや別に。ちょっと、落ちた」

 

『落チタ?ナンデ?』

 

「や、その、ちょっと邪魔だったから……」

 

『エ?邪魔デ耳ヲ取ッタノ?ワザワザ?痛イノニ?』

 

「わざと取ったって言うか……てか、なに、急に。て、敵に心配されたくないんだけど」

 

『ヤ、ワザワザ遠慮シチャッタダケナノニ、ナンカ「化かし合いなら負けねーよ、キリッ」トカ言イ出スシ、……チョット、面白クテ………』

 

その大虚の言い様に、大前田と砕蜂はプフッと吹き出した。

俺の頬がドンドンと赤くなっていくのが分かった。多分、顔真っ赤。

 

『モシカシテ、戦闘中ノ俺カッコイイトカ思ッチャッテルノ?』

 

「お、思ってねえし‼︎ただ、前回の時も今回の時もちょっと良いとこあっただけだし‼︎」

 

『ナwルwシwスwトwww』

 

ブチッと俺の何かがキレる音がした。

 

「うるせええええええ‼︎てんめええええええブッッッ殺おおおおおおす‼︎‼︎」

 

『ケラケラケラケラwww』

 

「笑ってんじゃねええええ‼︎」

 

ジャンプして浅打を振り上げて、思いっきり大虚に振り下ろした。

バゴォッと轟音と共に俺の浅打は地面を抉り、砂煙が舞い上がった。大虚は刀が当たる直前に後ろに跳んで回避した。

俺もすかさずジャンプして、大虚に追撃した。

 

『クッ、早イナ……‼︎』

 

「俺別に全然カッコつけようもなんてしねェし‼︎ちょっと雰囲気的にそういう事言った方が良いかなって思っただけだしィッ‼︎」

 

『マダソノ話シテンノ……?イヤ、カッコツケタクナルキモチ、オイラ若干分カルカラモウ弄ルノ止メヨウト思ッテタンダケド……』

 

「うるせええええ‼︎あとで貧乳とデブに弄られる未来しか見えねえだろうがああああ‼︎」

 

『オ前思ッタヨリ繊細ダナ‼︎』

 

浅打を横から振り、それをジャンプで躱す大虚。そこに手を伸ばし、首を掴むと顔面に刀を突き刺そうとした。

首を横に捻って躱され、大虚は刀を俺の腕に振るった。俺が手を離して回避した直後、顔面に拳が直撃し、俺は落下した。

 

「痛ぇな」

 

その俺に刀を突き刺すように大虚は降って来る。それを回避し、距離を取ると、追撃して来た。

俺に向かって突きを放って来たが、それを紙一重で回避した。

 

『!』

 

「もみ上げが散った」

 

胸に刀で突きを放った。それを左腕でガードする大虚。俺は横に刀を振り抜いて、左腕を落とした。

 

「はい、まず一本」

 

『チィッ……‼︎』

 

この前の奴ほど強くない。知力の分、戦闘力は落ちてるのか?まぁ、虚の知能が人間レベルになった所で問題にはならない。

俺をナルシスト呼ばわりした事を後悔させてやる。

そう思って再び斬りかかった直後、大虚は刀を飲み込んだ。

 

「⁉︎」

 

厄介な何かをしてくる。そう確信があったから、発動される前に斬ろうとした。

直後、大虚の胸から極太い刀の刀身が出て来た。

 

「ッ‼︎」

 

慌てて横に回避したが、右腕を掠めた。掠めただけでこの出血量はヤバイな。俺は距離を取りつつ、服の袖を引き裂いて、傷口を結んだ。良かった、応急処置を学んでおいて。

 

「! 水上、大丈夫か⁉︎」

 

砕蜂隊長が俺の横に駆け寄る。サラシ巻いてる姿みたいなのに全然ムラッと来ない。

 

「………今、失礼な事考えただろう」

 

「気の所為ですよ」

 

「どうする?やれるか?」

 

「相手の能力が分からない以上は厳しいでしょ。単調な動きになったところを読まれた。多分、知力は残したままだな。まぁ、やるしかないのは分かってるよ」

 

「クソッ……もう一撃、私の雀蜂が胸に刺せれば……」

 

「なに、どゆこと?」

 

「私の斬魄刀の能力だ。刺した箇所に蜂紋華が付き、そこにもう一度刺せれば、問答無用で相手を殺せる」

 

「なら、それに繋げよう。俺が奴の能力を把握して、それと共に隙を作るから、トドメは頼むわ」

 

「分かった」

 

俺と砕蜂隊長は並んで大虚と向かい合った。

 

 



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6日目(続・2)

大虚に俺は突撃した。

大虚は再び胸から刀を生やして、突きを放って来る。それをジャンプして躱し、刀の上を走って大虚に接近して刀を振り下ろした。

大虚は腰の刀を抜いてガードする。

 

「ウオラァアアアアッッ‼︎」

 

正面から刀と刀がぶつかり合い、ギリギリと押しあった。

筋肉が軋む、刀身からメキメキと音が鳴る、それでも瞬きすらする事なく俺は力を入れた。

 

「ォォオオオオオラアッ‼︎」

 

思いっきり振り下ろし、俺の刀は大虚の刀をぶった斬って、正面から大虚の身体の表面をぶった斬った。

大虚も負けじと、折れた刀を俺の肩に突き刺すと、刀から手を離して俺の手首を掴み、その辺の木に叩きつけるようにブン投げた。

背中を強打した俺に、胸から出した剣を引っ込めて、もげた左腕から刀の刃を伸ばしてくる。俺は低姿勢になって、下からその刃を打ち払うと、後ろの折れかけの木を掴んで、無理矢理引き抜いて正面から振り下ろした。

打ち上げられた刀でその木をガードする大虚。その隙を突いて一気に接近すると、俺は左下から刀を振り上げた。

 

『グッ……‼︎』

 

身体をそらしてギリギリ回避する大虚。

すると、左腕の刀を横に振り抜いた。スパッと斬れた音がして、布が辺りに飛び散る。だが、それは俺が身代わりにした黒装束の破片だ。

俺は背後に回り込み、後ろから刀を振り下ろした。

 

『‼︎』

 

前に回避した大虚の背中が斬れる。

………なるほど、大体分かった。俺は肩に刺された刀を抜いて、その辺に放り投げた。

奴の伸びる刀はおそらく、体の一箇所からじゃないと出せない。なら、その刀を封じてやれば、奴の武器はなくなる。

再び俺は大虚に突撃。左腕の刀を引っ込めた大虚は、俺の刀を引き気味に回避した。

お前の狙いはわかってる。元々の刀が折られて、武器が一本になった今、お前は逃げに徹して、俺の動きがまた単調になったところをサクッと反撃するしかない。

俺はわざと動きを単調にした。刀を前に構えて、思いっきり特攻をカマす。その直後、大虚は左腕を俺に向けて、刀を放った。

それを俺は身体を回転させながら回避すると共に、刀で思いっきり横に払った。

 

『‼︎』

 

バギィンッと鈍い音が響き、大虚の姿勢が大きく崩れる。

直後、俺は刀で大虚の腹を突き刺そうとした。払われた刀を強引に戻した大虚は、腹の前で刀を横にしてガードする。

 

「ッラァッ‼︎」

 

それでも俺は突きをやめなかった。

俺の刀が大虚の刀を貫通し、そのまま大虚の腹に突き刺さる。

 

「ァァァアァアアアアッッ‼︎‼︎」

 

さらに強引に押し込み、後ろの木に大虚を固定させた。

 

『ガッ………⁉︎』

 

俺は左手で腰の鞘を抜いて振り上げた。

 

「さぁて、ここからは撲殺タイムだ」

 

そう言って鞘を振り下ろそうとした時、大虚の肩から刀が伸びた。それが、俺の左手を貫通する。

 

『出セル刃ハ、一本ダケダト思ッタ?』

 

さらに、右肩からも刃が出て来て、俺の胸を貫通する。

 

『逃ゲラレナイノハ、ソッチ』

 

しまった、読み逃したか。この後に及んでまだブラフを掛けていたか。

だが、

 

「一手遅いな」

 

『………ナンダト?』

 

直後、俺の脇の下から伸びた砕蜂の雀蜂が、敵の蜂紋華に突き刺さった。

 

『⁉︎ コ、コレハ⁉︎』

 

「終わりだ、大虚」

 

『グォッ……ォォオオオオ‼︎⁉︎』

 

大虚は消滅した。

………ふぅ、任務完了だな。

 

「いやぁ、ナイス砕蜂」

 

「馬鹿者‼︎」

 

え、怒鳴られた。何よ急に?

 

「穴だらけではないか!なんという無茶苦茶な戦い方だ‼︎」

 

「穴だらけって……人間元々穴だらけだろ……って、あれ?」

 

本当だ。ていうかこの出血量、俺死ぬんじゃね?

 

「ふああああ⁉︎死ぬ、死ぬうううう‼︎」

 

「おい、仮にも四番隊が慌てるな」

 

「いやいやいや、だって死んじゃうものこれ‼︎もう死ぬってマジで‼︎やべっ、そう思うとなんか俺……」

 

身体の力が抜け、俺はドサッと倒れた。

その俺の真上に砕蜂は立った。………おお、まさか助けてくれるのか?そうだよなぁ、俺があんた助けたようなもんだし、そりゃそうだよなぁ……。

 

「そういえば、私の事を散々貧乳だなんだと言ってくれたな」

 

「えっ」

 

「少し覚悟しろよ」

 

邪悪に微笑むと、砕蜂は俺に馬乗りになるようにしゃがんだ。

 

「こちょこちょこちょ」

 

「うわっ、ぎゃはははっ!バカッ、やめっ……‼︎ふっはははは‼︎」

 

仕返しが可愛い!子供かあんたは‼︎

 

「って、バカ!くすぐった痛い‼︎これ傷口開く‼︎」

 

「知るか!少しは隊長を敬うということを教えてやろう」

 

「いだだだだ‼︎バッ、やめっ、死ぬ……‼︎」

 

「フハハハハ‼︎無様だな祐作うううううう‼︎」

 

「あ、ダメ、死んだ……」

 

「フハハハハ‼︎」

 

「………………」

 

「ハハハハ……あれ?なんか血が吹き出てきてる……」

 

「………………」

 

「あれ?だ、大丈夫だよね?起きれるよね祐作?」

 

「………………」

 

「へ、返事をしろおおおお‼︎祐作うううう‼︎」

 

「なあんちゃって、起きてました〜」

 

「雀蜂!」

 

「すいませんでした!」

 

「チッ、起きてるならさっさと行くぞ。大前田達は既に精霊廷に帰っている」

 

「いやー、そうしたいんですけどね……」

 

「なんだ、まだ私をからかうか?」

 

「そういうんじゃなくて、血ぃ抜きすぎてフラフラする。立てません」

 

「はぁ?」

 

「おんぶして」

 

「はぁ⁉︎」

 

仕方ないだろ……。もう身体動かないの、というか立てないの。

 

「ふざけるな!何故、私がそんな事を……!」

 

「だーかーらー、身体が動かないんだって。大丈夫、俺は貧乳には興味ないから」

 

そう言った直後、ピキッと砕蜂から嫌な音が聞こえた。

 

「貴様ぁ……さっきから貧乳貧乳とバカにしおって……‼︎ならば貴様に小さい胸の魅力を見せてやろう‼︎」

 

「えっ、いや結構です」

 

「見せてやる‼︎」

 

何を思ったのか、砕蜂は俺の事をお姫様抱っこした。

そして、押し付けるように自分の胸を俺の顔面に当ててくる。

 

「ほれほれ、どうだ?」

 

「やめろ!需要ないから!というか恥ずかしいから‼︎」

 

「ダメだ!このまま精霊廷に連れ帰る‼︎」

 

「ふざけんな!落ち着いて自分を客観視してみろ‼︎ヤバイ状況だぞこれ‼︎」

 

「貧乳をバカにした己を呪え‼︎」

 

「テメエエエエ‼︎男のプライドをなんだと思ってやがんだ‼︎」

 

「女のプライドをバカにした奴のセリフか‼︎」

 

ダメだこいつ、話を聞いてねえ‼︎なら謝るしかないか……。

 

「分かった、悪かった!だからせめておんぶ!そもそもおんぶしてもらうのもかなりプライド削ってるんだからな‼︎」

 

「ダメだ‼︎」

 

ええーこの人面倒臭い。………まぁ、恥ずかしい思いするこの人もだし、別にいいかもう。

それに、この時間なら誰も起きてないだろ。

 

 

このあと、ガッツリ卯ノ花隊長達に見つかり、今度は砕蜂と俺が付き合ってるという噂が流れ始めた。

 

 



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7日目

砕蜂にお姫様抱っこされながら精霊廷に到着。誰にも見つかりませんように、と全力で願ったが、出迎えてくれた卯ノ花隊長にバッチリ見つかり、「随分と仲が良いのですね」と、恐怖の笑顔で言われた。

一方、砕蜂は今更自分のやったことに恥ずかしさを感じたのか、顔を真っ赤にしていた。

今はその翌日、今日も今日とて書類仕事。俺の怪我など御構い無しに、卯ノ花隊長は俺をこき使っていた。

 

「あの、卯ノ花隊長……俺、腕……」

 

「砕蜂隊長とイチャつくことが出来るのですから、仕事くらい大丈夫でしょう」

 

「いやイチャついてないんですけど……。お姫様抱っこされるっていう羞恥プレイ食らっただけで……」

 

「というか、気に食わないのでダメです」

 

「はぁ⁉︎なんだそりゃ!完全に私情じゃねぇか‼︎」

 

「タメ語?」

 

「グッ……‼︎し、知るか‼︎いつもいつも他人と上下関係ばっか厳しくしやがって‼︎ナメんなババァ‼︎」

 

「……………あ?」

 

「すいません、調子に乗ってました」

 

すぐさま土下座した。くっ……情けねえ……。

その俺の様子を見て、卯ノ花隊長は少し考えるような表情になった後、微笑みながら言った。

 

「じゃあ一つ、お使い頼まれてもいいですか?」

 

「は?」

 

 

何が「じゃあ」なのかよくわからないが、俺はお使いに来た。十三番隊、つまり浮竹隊長の所だ。

 

「うぃーっす」

 

「むっ、水上か」

 

ルキアがで迎えてきた。

 

「浮竹さんは?」

 

「いるぞ、中だ」

 

………相変わらず、ルキア俺につめてーなー。まぁ、仕方ないっちゃ仕方ないけど。

や、でもこの前の朽木隊長の件の時は普通だったよな。もしかしたら、すでに俺のこと許してて、今だけなんか不機嫌なのかもしれない。

 

「HEY!ルキアちゃん、千年殺しィィイイイイ‼︎」

 

「うひゃあ⁉︎」

 

ルキアの肛門に二本の指をねじ込んだ。思いっきり前に吹っ飛び、ドンガラガッシャーンとでも言わんばかりに前に転がった。

 

「なっななな何をする馬鹿者‼︎」

 

「千年殺し。おっと、安心しな。俺は貧乳に興味はねえからな」

 

「う、ううううるさい‼︎ホンッッットに無礼者だな貴様‼︎私は貴様のそういうところが嫌いなのだ‼︎」

 

お、おう……。エラくストレートな物言いだなオイ。

まぁ、そらそうか。俺がこいつの大切な人を殺したんだ。恨んでも恨み切れないだろう。

 

「浮竹さん」

 

「ん、おお。祐作か」

 

「卯ノ花隊長から書類預かってるけど」

 

「ああ、ありがとう」

 

「では、私は失礼します」

 

ルキアは浮竹さんの部屋から退がった。

 

「よし、じゃあ浮竹さん。オセロやろオセロ」

 

「ああ、分かった」

 

「言っとくけど俺強くなったからね。朽木隊長フルボッコにしたからね」

 

「いやそれ彼が弱いんじゃ……」

 

「いいからやりましょう」

 

 

浮竹隊長とオセロをした後、ゆっくりお茶を飲んで甘いもの食べてカップ麺食べて酒飲んでスマブラやってマリカーやってフルブやって浮竹隊長の容態が悪化した所で、俺は四番隊隊舎に帰った。逃げてないから、その辺誤解しないように。

………いや、待てよ。今、四番隊隊舎に帰っても仕事手伝わされるだけだ。もう少しどこかで遊んで行こう。

 

「どこで遊ぼっかな〜」

 

ゲーセンでもあればいいのになーなんて思いながら歩いてると、「おい」と声が掛かった。

 

「なら俺たちと遊んでかねぇか?」

 

振り返ると、斑目一角が立っていた。木刀担いで。

うわあ、出やがった。

 

「うわあ、出やがった」

 

「おい、声に出てんぞ」

 

「喧嘩馬鹿集団」

 

「なんだコラその言い草はテメェ‼︎」

 

この十一番隊は俺の事が嫌いだ。何故なら、こいつらの道場で俺も一緒に稽古した時、目の前の斑目一角をボッコボコにしてしまったからだ。

勿論、お互い斬魄刀無しので木刀での戦闘だったが、それでも勝ったことには変わりない。それからずっと因縁付けられているのだ。

 

「それよりほら、喧嘩しようぜ」

 

まぁ、目の前のバカは何となく負けっぱなしは嫌だみたいな感じだけど。

だから、目の前のバカは正直そこまで問題ではない。問題なのはこいつらの隊長だ。

 

「うるせーよハゲ。お前馬鹿なの?死ぬの?一々喧嘩なんてしてられるかよ」

 

「てめっ、誰がハゲだ‼︎」

 

「ハゲてんだろうが。世界中の人間にアンケート取ったら全員が全員満場一致120%ハゲって言うわ」

 

「てんめぇ……‼︎」

 

「クリリンか天津飯か……ピッコロでもいいな」

 

「喧嘩したくなくても売ってきてんだろうがァッ‼︎殺す、絶対殺す‼︎」

 

「ああもう、面倒くせえなぁ」

 

一角の一撃を俺は浅打でガードして後ろに飛び退いた。

追撃して来る一角。俺は避けながら逃げ出した。

 

「テメェ、逃げんじゃねえ‼︎」

 

「るせーバーカ‼︎俺ァ、面倒ごとはゴメンなんだよ‼︎」

 

「売っといて何言ってやがんだテメェ‼︎」

 

逃げる俺と追う一角。命懸けの鬼ごっこが始まった。

 

 

二番隊隊舎。

 

「ふむ、ようやく届いたか。新しい隊服。この前の任務の時に引き裂かれたからなぁ。さて、早速着てみるか……」

 

「退けエエエエ‼︎」

 

ゴシャッ(←祐作が砕蜂を蹴り飛ばす音)

 

「貴様、祐作‼︎何をする‼︎」

 

「すいまっせーーーん‼︎後ろ、気をつけた方がいいよ」

 

「は?」

 

「退けええええ‼︎」

 

スパッ(←一角が新しい隊服を斬る音)

 

プチッ(←砕蜂の堪忍袋の緒が切れた音)

 

 

六番隊隊舎。

 

「おお、朽木隊長強くなりましたね」

 

「ふむ、まぁ訓練したからな」

 

「これなら祐作の野郎に勝てるんじゃないすか?」

 

「そうだな。ありえるかもしれん」

 

「じゃあ早速行きましょうか」

 

「待て、初勝利記念に写メ撮りたい」

 

「女子高生かよ……」

 

「退け退け退け退けええええ‼︎」

 

ピョーン(←祐作がオセロの盤を飛び越える音)

 

「うおっ!危ねえぞ祐作‼︎」

 

「ごっめーん!マジゴッメーン‼︎」

 

「いいところにきた、水上副隊長。少し私とオセ……」

 

「そんな事より後ろ、後ろ!」

 

「退け退け退けエエエエ‼︎」

 

スパッ(←オセロの盤が切れる音)

 

ドドドドッ(←そのあとに続いてる砕蜂が走る音)

 

プチッ(←白哉の何かが切れる音)

 

 

十番隊隊舎。

 

「………なんだ、ヤケに外騒がしいな」

 

「どうせ十一番隊の連中か水上クンが騒いでるんでしょう」

 

「はい、邪魔〜」

 

マゴッ(←祐作のラリアットが日番谷に減り込む音)

 

「テメッ、水上ァアアアア‼︎」

 

「シロちゃん後ろ後ろ!」

 

「テメェが白ちゃんって言うな……‼︎」

 

「はい、邪魔〜」

 

スカッ(←一角が日番谷の頭の上を空振る音)

 

ドドドドッ(←その後に続いてる砕蜂、白哉の走る音)

 

プッツン(←トーシロの血管の切れる音)

 

 

一番隊隊舎。

 

「ふむ……何やら不穏な者が近付いて来とるの」

 

「退けクソ爺ィイイイイ‼︎」

 

スカッ(←俺の跳び蹴りを避ける音)

 

「何事じゃ……」

 

「退いてください総隊長オオオオ‼︎」

 

スパッ(←山爺の髭が裂ける音)

 

ドドドドッ(←そのあとを続く砕蜂と白哉とトーシロの走る音)

 

ブヂッ(←山爺がキレる音)

 

 

五番隊隊舎。

 

(しかし困った……。相変わらず水上をどう対処するか……。奴は常に私の考えもしない行動をとってくる……このままでは虚圏の事も全て……)

 

「退け退け退けェ〜イヨロレイヒィ〜ッ‼︎」

 

「えっ」

 

メキャッ(←祐作のドロップキックが炸裂する音)

 

「な、なにするんだ水上副隊長‼︎」

 

「後ろおおおお!志村後ろォォォォォ‼︎」

 

「誰が志村⁉︎」

 

「退けエエエエ‼︎」

 

スパッ(←一角が藍染の眼鏡を斬る音)

 

ドドドドッ(←その後を続く砕蜂と白哉と山爺が走る音)

 

ズコッ(←その後ろでトーシロがコケる音)

 

プッツン(←藍染の色々な何かがキレる音)

 

 

なんで、なんで……なんで知らねえ間に隊長が五人も増えてんの⁉︎俺はちゃんと全部避けてたはずなのに‼︎(←錯覚)

 

「待ちやがれエエエエ‼︎喧嘩しろオオオオ‼︎」

 

「んなこと言ってる場合か‼︎後ろ見ろ後ろ‼︎」

 

「あれ?何で俺追い掛けられてんの⁉︎」

 

「あれ?じゃねぇだろ‼︎お前が何でもかんでも切り捨て御免するからだろうが‼︎」

 

「人聞きの悪いこと言うな‼︎俺はちゃんと退けって言いました‼︎」

 

「退けって言えばいいってもんじゃねぇだろ‼︎お前が避ける努力をしろ‼︎」

 

「誰彼構わず飛び蹴りしてたお前に言われたくねえよ‼︎」

 

「俺はちゃんと退けって言いました‼︎」

 

「テメェも同じじゃねぇかッ‼︎」

 

死ぬ!あのメンツは死ぬ‼︎特に山爺はヤバイ!焼かれる‼︎

そうだ、四番隊隊舎だ!卯ノ花隊長の覇王色レベルの覇気なら助かるはずだ‼︎

そう判断すると、俺は四番隊の隊舎へ向かった。入り組んだ道を利用し、なんとか距離が縮まらないように走った。

 

「ぐぬう、逃げ足だけは速いやつめ……‼︎」

 

「私が捕らえましょう。斬魄刀の使用の許可を得たいのですが」

 

「良いじゃろう、許可する」

 

「え?許可するんですか?」

 

「俺も手伝うぜ、朽木隊長」

 

あれ、なんか不穏な台詞が聞こえた気が………、

 

「散れ、『千本桜』」

 

「霜天に坐せ、『氷輪丸』‼︎」

 

「だああああ⁉︎殺す気かあんたら‼︎」

 

「「ああ。死ね」」

 

「まさかの殺人予告⁉︎」

 

ふおお!死ぬ、死んでしまう‼︎薄ら目一角の所為で‼︎

 

「んにゃろ……上等だよ畜生がッ‼︎」

 

「おっ!やる気になったか‼︎」

 

「お前は邪魔‼︎」

 

鞘に入った刀で一角を殴って黙らせると、俺は刀を構えた。

その俺に、朽木隊長が目を細めた。

 

「やる気か?だが、兄がヤル気になったところで、私の刀は既に貴様を覆ってるぞ」

 

辺りに桜の花びらのようなものが舞っていた。

………ああそうか、これ全部あの人の刃なんだっけ。死ぬじゃんこれ。

 

「って、ナメんなクソボケエエエエッ‼︎」

 

横の壁を刀で叩き斬ると、中に入った。その後を追ってくる千本桜。はっ、バカめ。俺が穴を開けたのは逃げるためじゃないわ。千本桜の軌道を絞る為だ。

 

「ウオラァッ‼︎」

 

「!」

 

刀を高速で動かし、目に見えない刃を斬り落とした。

だが、俺が入り込んだ壁は塀だった。つまり、天井はない。上からも千本桜が襲い掛かる。

 

「フンヌオオオオオオッッ‼︎」

 

さっき穴を空けた塀の切り取った部分を持ち上げて盾にしながら後ろに退がる。

直後、冷気を感じた。ヤケに寒いと思ったら、氷輪丸から出てきた氷の竜が俺の後ろにいた。

 

「終わりだ」

 

「うおおおっ‼︎⁉︎」

 

反射的に俺は鞘で正面から竜を突き刺した。ピシピシピシッと竜全体に亀裂が入る。

 

「何ッ……⁉︎」

 

「まだだ‼︎」

 

すると、死角から砕蜂が瞬歩で接近して来て、完全に捕まってしまった。

 

「捕らえたぞ‼︎」

 

「お、おまっ、お前らなぁ‼︎隊長が3人がかりで恥ずかしくねえのかよ‼︎」

 

「うるさい。死ね。尽敵螫殺、『雀ば……』」

 

「お前に捕まったって嬉しくねえんだよ貧乳が‼︎」

 

「んなっ……⁉︎」

 

解号の隙をついて力任せに背負い投げした。

よし、なんだかんだあと少しで四番隊隊舎だ!抜ける!

そう思った直後、何者かに頭を掴まれてグルングルン振り回され、壁にダンクシュートを叩き込むように叩き付けられた。

 

「グボァアッ⁉︎」

 

「何を暴れてるんですか?」

 

卯ノ花隊長だった。

 

「れつえもん‼︎あいつら、ひどいんだ!隊長格が揃いも揃って僕のことを虐めるんだ‼︎」

 

「……………」

 

すると、卯ノ花隊長は俺の事を離して隊長達の方に向かって、恐怖の笑顔で言った。

 

「どういうわけがあったのかは分かりませんが、私の部下への暴力は慎んでいただけますか?」

 

「し、しかし卯ノ花隊長。そいつは……」

 

「しかしもクソもありませんよ?砕蜂隊長」

 

うおお……この人、味方になるとここまで頼りになるのか……。

 

「いえーい、いいぞれつえもん‼︎もっと言ってや」

 

「あなたは黙ってなさい」

 

「ヘヴッ⁉︎」

 

また壁に叩き付けられた。

 

「………ふむ、卯ノ花隊長がそう仰るのなら仕方ないのう。行くぞ、そこの斑目だけ持って」

 

「「「了解」」」

 

「しかしのう、卯ノ花隊長。余り、そこの馬鹿者を甘やかさないようにのう」

 

「分かっております、総隊長」

 

四人の隊長は一角を担いで去って行った。あーあ……さようなら一角、今までありがとう。

………あれ?そういえば藍染隊長は何処へ行ったんだろうな……。確か、あの人は一角に眼鏡斬られてたはずなんだが…………、

 

「さて、水上副隊長」

 

俺の思考をせき止めるように、卯ノ花隊長は言った。

 

「覚悟は出来ていますね?」

 

………あっ、ヤベェ。激おこモードだ。

 

「仕事をサボった挙句、よその隊長に迷惑をかけるなんて、万死に値します。覚悟して下さい」

 

「あのっ、ごめ」

 

謝る間もなく、ボコボコにされた。

 

 



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数年後の春:1日目

そんなこんなで、数年が経った。四番隊にはすっかり慣れて、あまり慣れたくなかったが、卯ノ花隊長からの仕事の押し付けにも慣れた。あまり慣れたくなかったけど。

今日は恋次が副隊長に就任し、ルキアが現世へナントカ任務に行くことになった。

 

「と、いう日なのにあなたは行かないのですか?」

 

俺に仕事を押し付けて、自分はお茶とせんべいで和風ティータイムをしている卯ノ花隊長が俺に言った。

 

「別に祝うようなことでもないでしょ。てか俺の時は誰も祝ってくれなかったし」

 

「小さい男ですね」

 

「うるせーですよ」

 

はぁーあ、まぁいいか。っと、仕事完了。気が付けば、書類仕事の早さも随分と手際良くなった。この程度なら 半日掛からん。

 

「おーわった、っと」

 

「お疲れ様です」

 

お疲れ様、じゃねーよ。押し付けといてどの口が言うかコノヤロー。と、思ったところで殴られるので言えないんですけどね。

 

「あ、ところで祐作」

 

そういえば、卯ノ花隊長には下の名前で呼び捨てされるようになった。まぁいつも一緒にいるからそのくらいはいいけど、正直嫌われてると思ってたもんだから意外だわ。

 

「何ですか?」

 

「そろそろ、あなたの斬魄刀は始解くらい出来るようになったのですか?」

 

「あ、はい。一応、名前は分かりましたよ」

 

「では、私の前でやってみてくれませんか?」

 

「えー、ヤですよ」

 

「? 何故?」

 

「だってまだ俺も試したことありませんもん」

 

正直、アレから何度も任務行ってたけど、敵なんて普通に浅打で余裕で倒せるからあんま解放する必要なかったんだよな。

 

「あの、それであなたの斬魄刀は文句言わないんですか?」

 

「んー……特になんも言わないっすね。大人しいもんすよ」

 

「………まぁいいです。とにかく、解放してみてください」

 

「えー、どうせなら戦闘で解放したいんですけど」

 

「ダメです。自分の斬魄刀の能力も把握しないで戦闘で使うつもりですか?」

 

「いや、アレだよ。戦闘中に覚醒してみたいんですよ。やられそうになったところで」

 

「何言ってるんですかあなた」

 

「えー、その気持ちわかんないすか?」

 

「わかりません。とにかく、隊長としてあなたの能力を知る必要があります。解放してください」

 

「絶対嫌です」

 

「なんでですか。死にかけて覚醒なら別に能力分かってても良いでしょう」

 

「はぁ……こいつわかってねぇなぁ」

 

「あ?」

 

「ごめんなさい。……違うんすよ、そうじゃない。要はあれですよ、新たな能力に戦闘中に目覚めたいんですよ」

 

「いや『目覚めたいんすよ』とか言われても……。いいから見せてください」

 

「まったく、男のこの浪漫を理解できないとは……」

 

「給料引きますよ」

 

「すきませんでした」

 

………まぁ、実際俺も知っとかないと困るしな。使えない始解だったらへし折ってやる。

 

「………えーっと、なんだったかな……」

 

えーっと、解号は………、

 

「最古の樹海の中、女、目覚めし刻、中央に聳え立つ一千年の巨木、我に力を分け与えよ、吸えよ魂、射せよ光、磨けよ心、鍛えよ体、セントラルスポーツ訓、一ノ宮家家訓、他人に借りを作るべからず、この橋渡るべからず、一休さん、高級感、ゴージャス、ロジャース、キャプテン・ロジャース、スイカ、かもめ、メリッサ、さくらんぼ、ボボボーボボーボボ………」

 

「真面目にやりなさい。殴りますよ」

 

「だって中二臭くて恥ずかしいんだもん!そりゃボケに逃げるよ!」

 

「タメ語?」

 

「なんだよ我に力を分け与えよって!なんで植物に力懇願してんだよ俺‼︎光合成でもすんのか⁉︎」

 

「だからタメ語?」

 

「いいよなぁ‼︎他のみんなはシンプルでよう‼︎なんで俺の斬魄刀だけこんなんなんだよ‼︎ナメてんのかバーカ‼︎」

 

「殺しますよ」

 

「ごめんなさい」

 

これでたいしたことない斬魄刀だったらマジでキレっからな‼︎最低でも自動的に経絡秘孔を突けるくらいの機能が付いてないと………、

 

「いいから早くして下さい」

 

「わ、分かりましたよ………」

 

そんなわけで、再び詠唱開始。

 

「最古の樹海の中、女、目覚めし刻、中央に聳え立つ一千年の巨木、我に力を分け与えよ、吸えよ魂、射せよ光、汝の身を削って、我が剣となれ、『神木ノ太刀』」

 

直後、鞘から抜かれた俺の刀は形を変えた。

鍔は消え、刀身の刃の部分は若干丸くなり、全体が茶色く変化していく。

そして、俺の手元に残った刀は……、

 

 

木刀になった。

 

 

「………………」

 

「………………」

 

俺も卯ノ花隊長が黙り込む。えーっと……ちょっと待て。なんだこれ。神木ノ太刀だよな?

始解をxと仮定、x=浅打+解号、解号=『最古の樹海の中、女、目覚めし刻、中央に聳え立つ一千年の巨木、我に力を分け与えよ、吸えよ魂、射せよ光、汝の身を削って、我が剣となれ』=神木、浅打=刀、x=神木+刀………、

つまり、

 

「ただの木刀じゃねぇかああああああああッッ‼︎‼︎」

 

全力でシャウトしながら刀を窓からぶん投げた。

 

「ふざけんなああああ‼︎何が神木ノ太刀だよ‼︎意味深な名前つけやがって‼︎謝れよ、ちょっと期待した俺に謝れよおおおおおお‼︎」

 

俺が窓の外で転がってる木刀にボロクソ暴言を吐いてると、深刻そうな顔をした卯ノ花隊長が俺の肩に手を乗せた。

 

「………これは、少し異常ですね」

 

「そりゃそうだろ‼︎劣化してんだからよ‼︎」

 

「少し試してみましょうか」

 

「は?試す?」

 

「とりあえず、これ斬ってみてもらえませんか?」

 

言いながら卯ノ花隊長はサンドバックを置いた。そうだな、まずは試してみないことには始まらん。

俺は木刀を拾いに行って横に構えると、サンドバッグにむかって軽く振り抜いた。思いっきりくの字型に折れるも、すぐに元に戻るサンドバッグ。普通に打撃、といった感じだ。

 

「………これは、ただの打撃ですね」

 

「見りゃ分かりますよ‼︎」

 

「これでは本当にただの木刀……浅打の段階の方がまだ強いくらいです」

 

「言わないで!心が折れますから‼︎」

 

「…………」

 

少し考え込んだ後、卯ノ花隊長は言った。

 

「……この件は、一度考えましょう。私とあなただけの秘密にしておきましょう」

 

「は、はぁ、なんで?」

 

「斬魄刀の始解が木刀なんて誰にも言えるわけないでしょう。下手したら副隊長から外されるかもしれませんし、良いですね?」

 

「分かりました。はぁ……」

 

と、いうわけで、俺の斬魄刀は木刀だった。

 

 



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2日目〜4日目

涅語難しい


雛森は少し用があって、恋次、イズルと一緒に祐作のいる四番隊隊舎に来た。

用、というのは白哉の「今度こそ水上に勝つ」という台詞で果し状を渡しに行く途中の恋次に捕まり、3人で行くことになったものだ。ちなみに勝負内容はもちろんの事、オセロである。

 

「もお〜……それくらい一人で行きなよ」

 

「仕方ねえだろ。お前、前回渡しに行った時に卯ノ花隊長に暇人を見る目で見られた俺の気持ちがわかるか?」

 

「いや、知らないから……」

 

上から雛森、恋次、イズルと言った。

 

「というか、朽木隊長はなんでオセロ?」

 

「前に祐作に負かされてからハマっちまったんだよ。ルキアのいない今、俺は毎日付き合わされてる……」

 

「え?相手って君と朽木さんしかいなかったのかい?」

 

「んっ、そういえばそうだな。なんで俺とルキアにだけ頼ん………あっ」

 

「………友達、いないのかな」

 

「………………」

 

お通夜のようなムードになりながら、四番隊隊舎に入った。許可を取って、祐作の部屋へ向かった。

 

「水上くん、入るよ」

 

ノックをしてふすまを半分ほど開けた。中で祐作は椅子に座って背もたれに寄りかかり、足を組んで机に肘を着き、無くなった耳を撫でながら本を読んでいた(エロ本だけど)。

直後、雛森は若干ショックを受ける。あの耳は自分を庇って無くなったものだ。もしかしたら、かなり気にしているのかもしれない。

 

「…………」

 

「どうかした?雛森さん」

 

「あっ、いや、何でもないよ」

 

イズルに声を掛けられ、襖を開けた。

 

「って、何読んでるの水上くん⁉︎」

 

「あ?………あっ、ヤベッ」

 

「変態!すけべ!最低!」

 

「ち、違うから!これ俺のじゃないから!」

 

「じゃあ誰のよ‼︎」

 

「こ、これは、えっと……アレだ。藍染隊長の‼︎」

 

「えっ………」

 

ドン引きしたような顔になる雛森。これからは少し藍染隊長からは距離を置こうと思い、祐作はあとで新しいメガネ拭き買ってあげようと心に誓った。

 

「それより、なんかようかお前ら」

 

「朽木隊長から果し状だ」

 

「あー……またか」

 

恋次が果し状を取り出した。

 

「悪いな、毎回毎回」

 

「ホントだよこのヤロー。お前んのところの隊長オセロに心奪われすぎだろ」

 

「ほら、受け取ってくれ。一応、言っとくけど、場所は六番隊隊舎、明日の12時からな」

 

「はいはい……」

 

「って、おい破くなよ‼︎」

 

「概要聞いたんならいらねーだろこれ」

 

「ったくオメーは……」

 

「あ、せっかくだから遊ぼうぜ。この前(無断で)現世に行った時にゲームキューブ買って来たんだ」

 

「懐かしいな……」

 

「やろっか」

 

夜までおかし食べながらゲームした。

 

 

その次の日、朽木隊長を負かして、部屋でゴロゴロしてると、またノックが来た。

 

「あーい?」

 

「水上くん?」

 

「雛森さん?どったの?」

 

返事をすると、扉を開けて入って来た。すると、少しはにかんだような笑顔で言った。

 

「えへへ、来ちゃった♪」

 

「ごめん。もう一回言ってくれる?」

 

「へ?……え、えへへ、来ちゃった♪」

 

「オーケー、録音した」

 

「録音⁉︎んもー!なんでそういうことするの⁉︎」

 

「可愛いから」

 

「かわっ……⁉︎す、すぐ調子のいいこと言うんだからぁ……」

 

なんだこの子、満更でもないのか。

 

「それで、何か用?」

 

「あ、うん。ちょっと来て欲しいところがあるんだ」

 

「どこ?」

 

「それは着いてからのお楽しみだよ」

 

「ごめんそれもっかい言ってくれる?」

 

「やだよ!」

 

出掛けた。

 

 

………今にして思うと、夢のような感覚だ。雛森さんとデートできるなんて。

 

「どこ行こうか、ラブホ?」

 

「怒るよ?」

 

「ごめんなさい」

 

「まったく……男の子ってみんなそうなんだから……藍染隊長だって、しらばっくれて……」

 

ごめん、藍染隊長……今度、メガネケース買ってあげるから許してくれ。

 

「それで、どこいくの」

 

「十二番隊隊舎」

 

「ごめん聞き間違えたかも、もっかい言ってくれる?」

 

「十二番隊隊舎」

 

「あ、やっぱそう言ってたんだ……。それ本気で言ってんの?」

 

「え?うん」

 

「帰る」

 

「待って待ってお願い!話聞いてよー!」

 

雛森さんが可愛らしく俺の腕を引っ張るので、足を止めた。

 

「その……水上くんの耳、ないでしょ?」

 

「あ?ああ……これか」

 

「うん。それ、私のことを助けてくれた時に落とした奴だよね……」

 

落としたって……人の耳を自転車の鍵みたいに言うなよ。

 

「それで、その……私の所為だから……治してもらえるように涅隊長にお願いしたの」

 

「いや人選。なんでトップクラスの奇人に頼んじゃうのかな」

 

「許可をもらうために色々とさせられて……で、でもっ、水上くんのためだもんね!」

 

「やめろよ!なんかすごい俺やらしい奴みたいじゃん‼︎ていうか何させられたの⁉︎場合によっては今から戦争起こすけど……」

 

「とにかく、行こうよ。お願い」

 

「…………わかったよ」

 

渋々承諾した。

 

 

十二番隊舎。入ると、ネムさんが待っていた。

 

「こんにちは、涅副隊長」

 

「こんにちは。雛森副隊長、水上副隊長。どうぞお上がりください」

 

「おーっす、ネムさん!相変わらず柔らかくも弾力のあるいいおっぱいしてますね」

 

出会い頭におっぱいを揉んだ。この人は揉んでも反撃もして来ないので本当に最高です。

 

「んなっ……⁉︎」

 

「ありがとうございます。奥でマユリ様がお待ちです。ご案内いたします」

 

「ち、ちょっと!何揉んでるの水上くん⁉︎ネムさんもやめさせないと!」

 

「畏まりました」

 

直後、俺の頭を掴んで、壁にダンクするネムさん。

 

「これでよろしいでしょうか?」

 

「え?あ、うん。良いですよ?」

 

「………自分で命令しといて引いてんじゃねえよ……」

 

「おっぱい星人は黙ってて」

 

黙らされた。

 

「いやおっぱい星人て……俺、雛森さんのちっぱいも好きだよ?」

 

「ちっぱいって言うな‼︎」

 

減り込んでる所をさらに蹴られた。

このままでは話が進まないので、抜いてもらって奥の部屋へ。

 

「ここです」

 

「失礼しまーす」

 

間延びした声で中に入った。

 

「遅いヨ」

 

「すいませんね」

 

「それで、なんだったカネ?雛森桃」

 

「ああ、そうそう。水上くんの耳を治していただきたくて……」

 

「そうだったネ。じゃあ水上祐作、そこに座りたまえ」

 

「は、はぁ」

 

言われるがまま、俺は椅子に座った。

 

「希望はあるカネ?」

 

「や、特にないですね。強いて言うならイヤホン付けられるようになればそれでいいんで」

 

「ふむ、なるほど」

 

「すいませんねなんか」

 

「いいんだヨ。コチラとしても、いい実験道具が来た」

 

「あ?お前今なんつった?」

 

「動くなヨ」

 

「おい待て!お前今なんて……‼︎」

 

「ネム、おさえろ」

 

「畏まりました」

 

「おい!てめっ……!あ、おっぱい当たってる……柔らかい……」

 

「上手いぞ、ネム」

 

耳をいじられた。

 

 

ポッポー、ポッポー、30分後。

 

「ほら。できたヨ」

 

再び鏡を見ると、耳のあるべき場所に受話器が付いていた。

 

「イヤ(耳)フォン(電話)付けられたあああああ‼︎⁉︎」

 

下らねえにも程があんだろおおおおおおお‼︎‼︎

 

「ふむ、中々良い反応だネ」

 

「良い反応だネ、じゃねぇよ‼︎何だこれ!どうやって使うんだよこれ‼︎」

 

「まだ何か不満があるのカネ」

 

「不満しかねえんだよ‼︎ここはテメェ一人の大喜利舞台じゃねえんだよ‼︎いいから早く耳戻せ‼︎」

 

「そう急くな。それには別に機能がついていてネ。その外側に付いてるボタンを押したまえ」

 

「あ?これか?」

 

言われて、俺はボタンを押した。直後、イヤフォンが変形してバズーカになった。

 

「いや無駄な機能‼︎」

 

「今のは4のボタンだヨ。他に0〜9と*、#のボタンで機能が切り替わる」

 

「だからいらねーって‼︎普通に耳にしろって言ってんだろ⁉︎」

 

「ちなみにそれ、引っ張れば取れるヨ」

 

「じゃあ耳じゃねぇだろこれ‼︎ただの携帯暗殺道具じゃねぇか‼︎」

 

だめだ……これだからこいつ嫌なんだよ……。

 

「もういいよ……つーか、そんな事だろうと思ったわ。帰る」

 

「ったく、せっかく人が親切に直してやったというのに……失礼な奴だネ」

 

「人の体を魔改造するマッドサイエンティストに言われたくねぇよ‼︎行こう雛森さん」

 

「あ……うん!お二人共、失礼しました!」

 

俺たちは十二番隊隊舎を後にした。

 

 

帰り道。帰宅してると、雛森さんが心配そうに声を掛けてきた。

 

「あの、水上くん」

 

「んー?」

 

「良かったの?耳……」

 

「あーまぁね。つーかあの変態科学者になんぞなんも期待してなかったし」

 

「でも、不便じゃないの?耳ないと……」

 

「いいんだよ別に。この傷跡は、俺が雛森さんを守れたっていう証でもあるから」

 

「……………」

 

「だから、雛森さんも気にしないで」

 

「…………うん」

 

「さて、じゃあとりあえず帰ったら一緒にお風呂入るか!」

 

「それは嫌」

 

「……………」

 

お断りされた。

 

 



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原作はこの辺からになりそうかな
現世:1日目


ようやく原作に入りました。
眠気混じりに書いたので書き直す可能性あり。


さらに数ヶ月後、俺は総隊長に呼び出しを食らい、一番隊隊舎へ。

が、腹痛のため30分ほど遅刻して行った。中に入ると、俺の他に恋次と朽木隊長、卯ノ花隊長がいた。

 

「あ、どうも。遅れました」

 

「ほんとに遅いぞ。何してたんじゃ」

 

「ウンコ」

 

「そうか、それなら仕方ないのう」

 

「え?仕方ないの?……それはそうと、山爺。髭、元の長さまで戻ってよかったね。切られたばかりの時はセロハンテープで止めてたもんね」

 

「お前ちょっと校舎裏来い」

 

「え?どこに校舎あんの?」

 

そんな一幕は置いておいて、話を進めた。

 

「で、なんか用すか?」

 

「ふむ、実は現世におる朽木ルキアの件についてじゃ」

 

「ルキア?ルキアがどうかしたんすか?」

 

「奴に『人間への死神能力の譲渡』の容疑が掛けられておる」

 

「あ?」

 

「阿散井恋次、水上祐作の両名は早急に現世へ向かい、朽木ルキアを連れ戻して来い。抵抗するようなら、その場で抹殺しても良いとの命が出ておる」

 

「…………」

 

フゥン、そういう事か。

 

「………それ、俺がやらなきゃダメなん?」

 

「中央四十六室からの命じゃ。受けい」

 

「…………」

 

命令、ね。

 

「ちなみに連れ戻した後、ルキアはどうするんの?」

 

「極刑となる。朽木ルキアは、双極によって下す、と中央四十六室から命が出ておる」

 

「………………」

 

そういう事か。

 

「分かりましたよ。行こう、恋次」

 

「お、おう」

 

俺はしれっと返事をすると、恋次と一緒に総隊長の部屋を出ようとした。その俺に、後ろから声が掛かった。

 

「水上」

 

「………?」

 

「変な気は起こすなよ」

 

「………うっす」

 

俺は総隊長の部屋を出た。

 

 

現世。俺と恋次は一言も会話をすることなく、現世に来た。

 

「………さて、どうする?」

 

「まずはルキア探すしかないだろ。………いや、せっかく現世に来たんだから少し遊んでこうぜ!」

 

「はぁ?」

 

「ゲーセン行こうゲーセン!」

 

「バッカお前今回は義骸ないんだぞ」

 

「あれ、そだっけ?」

 

「バカ言ってないでルキア探すぞ」

 

「それよりお前いいの?」

 

「何が」

 

「ルキア。殺されるけど」

 

「……………」

 

言うと、恋次は黙り込んだ。

 

「………でも、命令なら仕方ないだろ。ルキアは連れ戻す」

 

「そりゃ仕事とプライベートを分けるのは大事だけどよ……」

 

スッゲェ辛そうな顔して何言うんだよこいつ……。

 

「もし、今俺を刺してルキアを助けても俺は文句言わないけど」

 

「…………はぁ?」

 

「今、分からない?」

 

「………ふざけんな。お前を殺してルキアを助けたって、俺がルキアに殺されるだけだ」

 

「バカ、俺のこと刺していいって言ったんだよ。そうすりゃ俺は止む無く尸魂界に帰還、俺は俺の手でルキアを捕まえずに済むわけだ」

 

「何だよ。お前もルキア捕まえたくねえんじゃねえか」

 

「……………」

 

バレたか………。

 

「だって嫌じゃん。友達殺すことになるんだぜ?」

 

「それはそうだが……。だけど、ルキアが人間に死神の力を渡したのは事実だ」

 

「何か事情があったんじゃねぇの?偉い連中はコミュニケーションを取ることをしないで問題犯したらすぐ死刑にするんだもんな」

 

「まぁ、上の連中にとって俺たち下っ端なんて替えのきく捨て駒でしかないからな。ちゃんと見てくれるのは隊長格だけだ」

 

「お前も隊長格だろうが」

 

「あ、そっか。そういやそうだったな。って、お前もやないかい」

 

「そうやったな」

 

「「………………」」

 

意味のない会話だけで時間が過ぎていく。どんだけ仕事したくねえんだ俺達。

………そろそろ仕事しないとダメだよなぁ。

 

「………まぁ、処刑になるかどうかはともかく、重罪を犯したことは事実だ。さっさとルキアを捕まえよう」

 

「そうだな。じゃあ、恋次」

 

「あ?」

 

「悪いけど寝ててくれ」

 

言うと、俺は恋次の顔面を思いっきりブン殴った。壁に思いっきり叩き付けられる恋次。

 

「お、お前……何を………⁉︎」

 

「んー、俺はほら、黙ってルキアが殺される所を傍観する気なんてサラサラないから」

 

そう言うと、俺は空に向かって叫んだ。

 

「と、いうわけだ精霊廷の馬鹿ども‼︎どーせ監視してるだろお前ら‼︎Lですかぁ、このヤロー‼︎そもそも、たかだか平隊員に双極の極刑って、アリ一匹にソーラーレイ使うようなもんだぞ馬鹿野郎‼︎」

 

あれ、ルキアを俺今アリって言っちゃったな。まぁいいや。

 

「と、いうわけで俺は真実が分かるまでルキアと一緒にいるから、お前らもちょっとは考えろバーカ‼︎あ、途中で奪いに来ても無駄だかんなバーカ‼︎俺が全員返り討ちにしてやるからなバーカ‼︎」

 

バーカって言い過ぎだな俺。

 

 

尸魂界のどっか。

 

「ははっ、だそうですよ藍染さ」

 

「な、なんだと……⁉︎やはり、奴は私の計画に気付いていたというのか‼︎」

 

「え?いや、」

 

「クッ……‼︎まさかここまで計画を狂わされるとは……このままでは、朽木ルキアはこちらに来ない……‼︎」

 

「あの、藍染さん」

 

「間違いなく奴は気づいている。事こうなった以上、崩玉に手を出すのも困難になってしまった……‼︎」

 

「藍染」

 

「尸魂界をどう動かす?奴の斬魄刀の能力がわからない以上、私が自ら動くのは危険か?いや、鏡花水月に死角はないし、まだ本来の能力もバラしていない……」

 

「藍染」

 

「いや、尸魂界側の隊長が一人でも奴の宣言に耳を傾けていたなら、私が自ら行くと怪しまれる可能性はある……‼︎四十六室から意見を出すには……‼︎」

 

「惣右介」

 

「己ぇええええ‼︎水上祐作ううううう‼︎」

 

「そーちゃん‼︎」

 

「そ、そーちゃん?」

 

「いい加減にしてくれまへんか?こうなったら、四十六室を利用して隊長格に水上くんを消させればいいやないでっか」

 

「………!た、確かに……‼︎そうだ、簡単な話だ。隊長格に向かわせ、奴の斬魄刀の能力を暴いてやればいい。いや、最高の形は相打ちになる事だ。ギン、僕は君を部下に持って本当に良かったよ」

 

「僕はすごく後悔してますけどね」

 

「すぐにその案を使わせてもらおう……。さて、誰に行かせようか………」

 

 



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1日目(続)

さて、啖呵を切ったはいいけどまずはルキアを探さないとな‼︎じゃないと何も始まらないもんな‼︎

そんなわけで、街の中を歩き回ろうとした。

 

「………ま、待てよ祐作」

 

声がした。振り返ると、恋次が立ち上がっていた。

 

「あれー?気絶してなかったっぽい?」

 

「ま、待て!そうじゃねぇ‼︎」

 

指をコキコキと鳴らしながら恋次の方へ歩くと、恋次は手を俺の前にかざした。

 

「じゃあなんだよ」

 

「テメェ一人じゃ、隊長格が襲い掛かってきた時に対処しきれねぇだろ」

 

「あー」

 

どうなんだろうな。隊長格とガチで喧嘩したことないから分からん。

 

「だから、俺もルキアを守るのに手を貸してやる」

 

「…………は?」

 

「だから、手を貸してやるって言ってんだ‼︎………俺も、このままルキアが殺されんのは納得いかねえ」

 

「本気で言ってんの?」

 

「ああ、マジだ」

 

「……………」

 

ま、いっか。この際、一人でも仲間が欲しいし。

 

「わーったよ。足引っ張るんじゃねぇぞ」

 

「はっ、こっちの台詞だよバーカ」

 

「それより、ルキア探さねえとな。あいつがいないと始まらん」

 

「ああ、確かにな。まずはルキアを探さねえと……」

 

ルキアが目の前の交差点から姿を現した。

 

「………………」

 

「………………」

 

「………………」

 

「「確保おおおおおおおお‼︎」」

 

「な、なんだ貴様ら‼︎なんでここに……わぎゃああああああああ‼︎⁉︎」

 

 

追いかけ回してたら調子に乗りすぎて蹴られました。

 

「………と、いうわけで、俺たちはここにいます」

 

「なるほど……。つまり、私の件は既にバレているというわけか」

 

あまり怒ってないのか、ルキアはそっちの方を不安げに感じていた。まぁ、それもそうか。捕まれば即処刑だ。しかも自分の護衛が副隊長二人。不安になるのも当然だろう。

と、思ってると俺と恋次の頭にゲンコツが二発きた。

 

「「いだっ⁉︎」」

 

「何をしているこの馬鹿者共‼︎私なんかのために、尸魂界を裏切りおって‼︎」

 

「何だよ!何キレてんだよ‼︎」

 

「怒りもするだろう‼︎何故、こんな無茶をした貴様ら‼︎」

 

「ああ?テメェの命繋いでやっただけでもありがたく思え馬鹿野郎‼︎」

 

「頼んでないわ‼︎というか質問に答えろ‼︎」

 

「おい、落ち着け二人とも」

 

俺とルキアの間に恋次が割って入った。

 

「ルキア。俺と祐作はお前に死んでほしくないから動いたんだ。だから、頼む。お前を守らせてくれ」

 

「………」

 

まとめるように恋次が言うと、ルキアは照れたように顔を赤くしてそっぽを向いた。

 

「………礼は言わんぞ」

 

「はい、いただきました〜。ルキたそのデレとデレ顏」

 

「貴様には本当に礼は言わん‼︎」

 

「顎が痛い‼︎」

 

昇竜拳バリのアッパーカットを食らった。

 

「………とにかく、貴様らは味方であると私は思って良いのだな?」

 

「ああ。そうだ。で、ルキア。テメェはどいつに死神の力をくれてやったんだ?」

 

「あ、ああ。それは……」

 

「ルキア‼︎」

 

途中で、誰かの声がした。俺も恋次もそっちを見ると、オレンジ色の髪に黒装束を着た男が立っていた。

 

「…………? 知り合いか?ルキア」

 

「テメェら、ルキアに何してやがる‼︎」

 

「奴は黒崎一護、色々と事情があったわけだが、私が死神の能力を分け与えた人間だ」

 

「へぇ、あんなナルトみたいな髪型したヤツに」

 

「まぁ霊圧は悪くねえんじゃねえの?」

 

「おい!聞いてんのか‼︎ルキアから離れろ‼︎」

 

「中々使えるヤツだ。この前は大虚を退けた男だ」

 

「おいおい、マジかよ。じゃあマジで強い奴なんじゃね?」

 

「そうだな。でも、ガサツそうで正直仲良くなれそうにないな」

 

「話聞けって‼︎斬るぞ、いいのか斬っちゃうよー⁉︎」

 

「それなりに事情はあるんだ。私は奴の家で厄介になっていたわけだが……貴様らに感づかれる前に立ち去ろうとしたのだ。……まぁ、貴様らが味方というのなら、その必要はなくなったがな。とにかく、詳しい事は奴の家で……」

 

「人の話聞けって言ってんだろうがああああああ‼︎」

 

「うるせええええええええ‼︎」

 

走って襲いかかってきたナルトの顔面を木刀でホームランした。ギャグマンガのようにフル回転しながら思いっきりぶっ飛び、15メートルほど飛んだあたりで落下していった。あれ、20メートルは飛んだな。

その様子を見ながら、恋次は呟いた。

 

「…………生きてるのかあれ?」

 

「さぁ?」

 

 

黒崎家。俺と恋次は一護くんとやらの部屋に集まった。

 

「……と、いうわけだ」

 

ルキアが死神の力を渡す羽目になった大体の事情を聞いた。

 

「………ふぅん、大変だったんだなお前らも」

 

「それより、煎餅の一つも出ねえのかこの家はよぉ」

 

ベッドの上でワンピースを読みながら呟くと、一護が立ち上がった。

 

「うるせぇ‼︎何、テメェだけ寛いでんだよ‼︎」

 

「あ、終わった。おい、ストロベリー。37巻取って」

 

「誰がストロベリーだ‼︎ていうかそこの本棚にあんだろ‼︎テメェで取れ‼︎」

 

「チッ、使えねえ召使いだ。いいよ、自分で漁るから」

 

「おい‼︎勝手に出歩くな‼︎ここ俺ん家、それ俺のワンピース、それ俺のかっぱえびせんんんんッ‼︎」

 

「落ち着け、一護」

 

「俺が落ち着くの⁉︎俺が落ち着かなきゃダメなの⁉︎」

 

隣のルキアが一護を止めた。

 

「奴には何を言っても無駄だ。ストライクフリーダム以上に自由な奴だからな」

 

「おいおい、ワンピース38巻までしかねえじゃねぇか。おい、一護。お前今から全巻買ってこい」

 

「あーだめだこれ。一発殴る」

 

「おい、良いから話を進めるぞ」

 

恋次の台詞で、俺以外の二人は真面目な顔になった。

 

「とにかく、尸魂界に喧嘩を売った今、向こうからは隊長格以上のメンバーが俺達の所に攻めて来る事は間違いない」

 

「隊長格以上だと?」

 

「祐作はお前も知ってる通り副隊長だし、俺も副隊長に昇進した。それなら、確実に俺達倒してお前を連れ帰れるように副隊長を3人以上連れてくるのが妥当だろ」

 

「なるほど……。しかしどうする?そうなると、我々だけでは凌ぎ切れんぞ」

 

「なぁ、その隊長格ってのはそんなにヤバイのかよ」

 

「ああ。隊長と副隊長ってのがいるんだが、特に隊長がヤバイ。卍解は始解の5倍〜10倍の戦闘力になる」

 

「待て待て、まずその始解って何なんだ?」

 

「はぁ?お前もしかして斬魄刀の名前も聞けてねえのか?そんなんで大虚を追い返したのかよ」

 

「うるせーな。つーか、お前らは斬魄刀に名前なんて付けてんのか?いてーなオイ」

 

「ダメだ、こいつはまるで戦力にならねえ」

 

「ああ?ナメんなオイ‼︎」

 

「まぁ待て。一護は死神になってまだ数ヶ月だ。今、我々のすべき事は各々の戦力の増強だろう」

 

「増強って……現世で修行しろとか言い出す気か?ていうか今から修行なんてしたって……」

 

「それについては、一人アテがある。奴がどこまで力を持っているのか分からないが、話だけでも聞いて貰えば良かろう」

 

「………信用できるヤツなのか?」

 

「一応、私が現世にいる間は色々とサポートしてくれた人だ」

 

「………じゃあ、一応明日行ってみるか」

 

「おい、えーっと水上、だっけか?方針決まったぞ」

 

「Zzz………」

 

「人のベッドで寝るんじゃねえ‼︎」

 

 



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2日目

眠気に勝った……。あとで修正するかもです。


 

翌日、ルキアの案内で俺、恋次、一護は駄菓子屋に連れて来られた。その駄菓子屋の前では子供が二人ほど箒で野球をしていた。

 

「うっしゃあ‼︎ジン太ホームラン‼︎」

 

「じ、ジン太くん。後ろ、お客さん……」

 

「あ?……ああ、またあんたらか。ん、知らないのが二人いるな」

 

「………ルキア、誰これ?」

 

「この駄菓子屋の子供のようなものだ。浦原はいるか?」

 

「いるぜ」

 

と、いうわけで中に入った。

 

「おお、いらっしゃいっス。朽木さ……ん?死神?」

 

出て来たのは変な帽子を被ったいかにも怪しい男だった。

 

「………朽木サンを、連れ戻しに来たンスか?」

 

「いやいや、逆逆。助けに来た」

 

俺が言うと、ピクッと浦原は反応し、目を少し鋭くさせた。

 

「助けに……?どういう事っスか?」

 

「ん、そのまんまの意味。説明したい所だけど……あんたの正体がわからない以上は話せないな」

 

「とにかく、話は奥の部屋でしましょう」

 

と、いうわけで男に連れられて俺達は奥の部屋で座った。

 

「改めまして、浦原喜助っス。さて、何から説明したらいいんスかね……」

 

「四番隊副隊長、ウォーターアップ祐作だ」

 

「水上祐作っスね。四番隊というと、卯ノ花隊長の?」

 

あれ?通じた?

 

「そうだけど」

 

「俺は六番隊副隊長、阿散井恋次だ」

 

「ほう。それで、あなた方が朽木サンと黒崎サンの味方だという証拠は?」

 

「あ?」

 

どういう意味だそりゃ。

 

「当然、警戒するでしょう。あなた方は今、尸魂界側の命令を背いている状態にいるンスよ?普通、副隊長二人がそんなことすれば、処罰は免れない。アタシの事は信用していない癖に、自分達が信用されるとでも?」

 

「うーん……証拠って言ってもなぁ」

 

俺と恋次は顔を見合わせた。

 

「友達だから、とか?」

 

「いやそりゃ証拠にはならねえだろ」

 

「じゃあ、同期だから?」

 

「だから無理だってそれじゃ」

 

「幼馴染だから」

 

「そりゃお前じゃなくて俺だろ‼︎つーかそれも同じで証拠にならねえよ‼︎」

 

「一緒にオセロした仲だから?」

 

「朽木隊長を相手にな⁉︎俺たち3人でやったことはないだろ‼︎」

 

「ああ、なんかもう面倒なんで信用するっス。お二方が特に考えもせずに行動したってことはよく分かりました」

 

「ほら見ろ‼︎てめぇの所為で呆れられちまっただろうが‼︎」

 

「あ?なに人の所為にしてんだ赤パインコラ」

 

「オイ、お前ら黙れよ。話が進まねえだろ」

 

「「お前が黙ってろってばよナルト‼︎」」

 

口を挟んできた一護に、俺と恋次は言い返した。直後、一護のおでこに青筋が立った。

 

「誰がナルトだテメェら‼︎上等だ、表出ろコラァッ‼︎」

 

「よろしいならば戦争だ」

 

「お前ら全員殺す‼︎」

 

「やめんか‼︎」

 

ルキアのゲンコツでバカ二匹と俺は黙って、話を進めた。

 

「……で、あんたは?」

 

恋次が浦原に質問する。

 

「アタシは……うーん、何処まで教えたら良いンスかねぇ……。お二人がそもそもなんで朽木さんの味方してるかにもよるんスけど」

 

「だーかーらー、友達だからに決まってんじゃん」

 

「それな、友達が処刑されそうになってんのに助けないわけがねぇぜ」

 

「お前は揺らいでただろ。俺は即決だったけど」

 

「揺らがない方がおかしいだろ‼︎お前自分の状況分かってる⁉︎雛森も吉良も卯ノ花隊長も裏切ってきたようなもんなんだぞ‼︎」

 

「えっ、卯ノ花隊長も?それは困るなぁ、後でどんなお仕置きが待ってることか……」

 

「お仕置きどころか俺らも処刑の可能性があるんだよ‼︎」

 

俺と恋次のやり取りを見て、浦原はさらに大きくため息をついた。

 

「ハァ……まぁ、アタシの正体は後で話すとして、ご用件はなんでしょうか?」

 

「ええ⁉︎処刑⁉︎正論言っただけで⁉︎」

 

「正論がいつでも正しいと思うなよ⁉︎」

 

「浦原、あのバカ二人は放っておけ。私から話す」

 

ルキアがそう言うと、話を進めた。

 

「ふむ、それで私を助けに来てくれたのは良いが、何を血迷ったか尸魂界に宣戦布告をしおってな。ほぼほぼ間違いなく隊長格が来る。だから、こいつらを鍛えてもらいにきた」

 

「や、鍛えて、と言われましても……」

 

ルキアが言うと、少し考えるような仕草をする浦原。しばらく考え込んだあと、頷いた。

 

「いいっスよ」

 

「本当か⁉︎」

 

「はい。アタシとしても、朽木サンを取られるのは困るっスからね。良いっスよ」

 

「良かった……助かる」

 

「…………と、いうわけっス。いいっスね、お3人方?」

 

浦原の確認に、俺たちは頷いた。

 

 

鍛える、と言っても敵はいつ来るのか分からない状態だ。

よって、二人は鍛えて残りの一人は見張りをするのをループさせて行く形になった。

 

「で、なんで俺が見張りなんだよ……」

 

浦原商店の前で俺は座っていた。まるで、『○○ダムの建設はんたーい!』と言ってる気分だ。○○ダムってなんかガンダムみたいだな……。

そんな事を思いながら早くもウトウトしていると、ピリッと嫌な感じがした。霊圧、そこそこのサイズの。二つ、いや三つか。

 

「………水上くん」

 

現れたのは雛森さんとイヅルだった。

 

「! お前ら……‼︎」

 

「よう、水上」

 

さらに後ろから現れたのは日番谷だった。

 

「おう、ひばんたに船長」

 

「日番谷隊長だ‼︎俺船持ってねえから‼︎」

 

「どうした、こんなところに親子で集まって」

 

「誰が子供だ‼︎」

 

「あ、自分が子供って自覚はあるんだ」

 

「なぁ雛森‼︎やっぱこいつ今すぐ殺しちゃダメかな⁉︎」

 

「だ、ダメだよシロちゃん。私達、ちゃんと許可もらってるんだから」

 

「日番谷隊長だ‼︎」

 

「許可ってなんの話だよシロちゃん」

 

「テメェにシロちゃんって呼ばれたくねえ‼︎」

 

「あ、じゃあ雛森さんだったらいいんだ」

 

「そういう意味じゃ……〜〜〜ッ‼︎殺す‼︎こいつと話してると腹立つ‼︎」

 

「じゃあ白ブリーフちゃん」

 

「今日は赤トランクスだ‼︎ていうか白ブリーフは三年前に卒業してます‼︎」

 

「割と最近じゃん。つーか意外と派手なパンツ履いてんのな」

 

しかし、赤トランクスか……。おっ。

 

「なら、赤トランクスちゃんを略して赤ちゃんとかどうだろうか?」

 

「どうだろうか?じゃねぇよ‼︎お前マジで話し合いで解決しなかったら殺すからな‼︎」

 

「あ?話し合い?」

 

俺が聞くと、ひばんたに校長は後ろに下がって木の下に座り込んだ。

 

「日番谷隊長だ‼︎」

 

「うおっ、ビックリした……!心の中にまでツッコミ入れるんじゃねーよ……」

 

と、いう無駄なやり取りのあと、ひばんたに村長は……、

 

「日番谷隊長だ‼︎」

 

「話進まねーんだよ‼︎」

 

今怒鳴ったやつは雛森さんに言った。

 

「5分間だからな」

 

「分かってる」

 

雛森さんとイヅルは口を開いた。

 

「お願い、朽木さんを連れて尸魂界に帰って来て」

 

「………あん?」

 

「中央四十六室は考えるつもりなんてない。徹底的に水上くんと阿散井くんを叩いて朽木さんをつれ戻す気なの‼︎」

 

「僕達との今この5分間の話し合いがラストチャンスだ。今、戻ると言わないと、本格的に尸魂界は奪いに来る気だ」

 

「おいおい、副隊長二人と平隊員一人にどこまで本気でくるんだよ」

 

「話を逸らすな。時間がない」

 

イヅルが口を挟んだ。

 

「とにかく、早く帰って来い‼︎僕達と戦うハメになるかもしれないんだぞ⁉︎」

 

「つーかさ、その現状がおかしいと思いやしませんかね君たち、とひばんたに係長も」

 

「日番(ry」

 

「どういう意味?」

 

「そのまんまだよ。明らかにおかしくね、前も言ったけど双極の事。ありえないでしょ、わざわざ手間の掛かる双極で処刑なんて」

 

「そ、それは……!」

 

「中央四十六室だか柔道一直線だかJR武蔵野線だかなんだか知らねーが、俺は上が言ってることが全て正しいと思うようなつまらない奴になりたくない。だから、反抗した。俺がルキアを助けたいと思ったから、今こうしてる」

 

「………………」

 

「修風に言うと、『自分が、そうすべきと思ったからです』」

 

「最後ので台無しだよ………」

 

すると、ひばんたに不死鳥が立ち上がった。

 

「………つまり、尸魂界に帰る気はねぇってことだな?」

 

直後、その台詞を合図にしたように、何処からか煙のようなものが出てきた。いや、灰か?俺が考えているうちにその灰は俺の周りにまとわりついた。

直後、ブシィッと俺の手足から血が噴き出す。

 

「っ⁉︎ なんだこれ……痛い」

 

直後、木の上から松本さんが降りてきて、ひばんたにアゲハ蝶の隣に降りた。

 

「刀身を灰にして、私が柄を振ると対象が斬れる……それが『灰猫』の能力」

 

「松本さん。いたんだ………。で、これは何の真似?」

 

「五分経った……交渉は決裂だな」

 

「し、シロちゃん⁉︎」

 

「退がってろ雛森」

 

ひばんたに十二指腸は斬魄刀を抜いて松本さんと並んだ。

 

「おいおい、隊長格二人がかりかよ。恥ずかしくないんだ?」

 

「うるせぇ。テメェにはラリアットの借りがあるからな。キッチリお返ししてやるよ」

 

「やってみろよクソチビ」

 

お互いに斬りかかった。

 

 



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2日目(続)

 

 

お互いに斬りかかろうと斬魄刀を構えて襲い掛かる。

 

「や、やめてシロちゃん、水上くん‼︎」

 

雛森さんの声が聞こえた。が、少なくとも俺は止まれない。副隊長と隊長相手だ、油断したら狩られる……と、思ったらひばんたにはホントに止まった。釣られて俺も止まってしまった。

 

「解放しろ」

 

「あ?」

 

「斬魄刀も解放せずに隊長と副隊長相手に勝てるわけねえだろ。さっさと解放しろ」

 

「……………」

 

今なんつったこいつ?斬魄刀を解放?あの木刀を?

 

「本気で言ってんの?」

 

「当たり前だろ。じゃないと、勝負にもならねえよ」

 

「…………いや、やだ」

 

「はぁ⁉︎やだ⁉︎なんでだよ‼︎」

 

「そ、それは……まぁ事情があるわけでして、ね?斬魄刀の解放だけは勘弁して欲しいなーみたいな」

 

「ふざけるな、しろ」

 

「ふざけてねーよ!てかいいのか?したら尚、弱くなるぞ?いいんだな?」

 

「は?なるわけねーだろ。何、痛い言い訳してんだ」

 

「バッカお前、自分の常識が世界の常識だと思うなよ。俺の斬魄刀は普通の斬魄刀とはわけが違うんだよ。ナメんなターコ」

 

「お前、そのセリフだと相当強そうに感じるぞ。その斬魄刀」

 

「ああ、ついでに言うと名前と解号も強そうだよ」

 

「ならしろよ」

 

「嫌だって言ってんだろ‼︎ホントもはや斬魄刀じゃないから。刀って言っていいのかすら分かんないから」

 

「えー、でもこのままお前倒してもこっちとしてもなんか嫌なんだよね。なんていうか、やるなら全力の相手をボコボコにしたいって言うか……」

 

「いや知らねーよお前のポリシーなんて。何その戦国大名みてーなポリシー」

 

「じゃあわかった。あっち向いてホイしよう。俺が勝ったら斬魄刀の解放な」

 

………ああ、分かった。そゆことか。

 

「わかったよ。ただし、俺が勝ったらお前らは尸魂界に帰れ」

 

「OK‼︎」

 

「おーい隊長?バカなのあんた?」

 

「「ジャン、ケンッ、ポンッ‼︎」

 

ひばんたに→ぐー

俺→パー

 

「あっち向いてホイ‼︎」

 

「ッ‼︎ はい凌いだ〜‼︎」

 

「「ジャン、ケン、ポンッ‼︎」」

 

ひばんたに→ぐー

俺→パー

 

「ねぇ、何これ。なんなのこの流れ?」

 

松本さんの台詞を無視して、試合続行。

 

「あっち向いてホイ‼︎」

 

「ほいっ!はい凌いだ〜‼︎」

 

「チッ!悪運の強え野郎だ‼︎」

 

「「ジャン、ケン、ポンッ‼︎」」

 

「いい加減にしてくれる?こっちも暇じゃないんだけど」

 

ひばんたに→ぐー

俺→パー

 

「また負けたあ‼︎」

 

「テメエ、さっきからぐーしか出してねえじゃねえか‼︎なめてんのか⁉︎」

 

「刀握った手でやってるからよバカ隊長」

 

「あっち向いてホイ‼︎……って、また凌がれた⁉︎」

 

「テメエこそさっきから右ばっか指してんじゃねえか‼︎ナメてんのか⁉︎」

 

「なめてんのはお互い様よバカ二人」

 

ハッ、甘ぇ。今のはこれまでの流れなら確実にまた右を指すという雰囲気を作るミスディレクションだ。今のでひばんたにが向く方向のパターンは掴んだ。

だが、奴はジャンケンでぐーを三回連続出すというミスディレクションを使ってきている。これはつまり、奴はまた自分がグーを出すと思わせようとしている。裏をかいて、ここはこっちもグーを出せば勝てる‼︎

 

「「ジャン、ケン、ポンッ‼︎」」

 

ひばんたに→グー

俺→グー

 

「何っ⁉︎」

 

こいつ……まさか、何も考えてないだけか⁉︎ならばっ‼︎

 

「「あい、こで、しょッ‼︎」」

 

ひばんたに→チョキ

俺→パー

 

「」

 

「ッシャオラッ‼︎やっと勝った‼︎」

 

「上等だテメエエエエエエ‼︎来いやああああああ‼︎」

 

轟ッ‼︎と俺とひばんたにを中心に霊圧が溢れ出し、風が舞い上がる。

 

「キャアァアアア⁉︎」

 

「な、なんだ………⁉︎」

 

「あっち向いてホイよ」

 

雛森さんとイヅルと松本さんから声が上がる。

俺とひばんたにの足元から霊圧によって地面が抉れ、徐々にクレーターが形成されていく。

ひばんたにが人差し指を伸ばし、俺の眉間を指した。

 

「あっち向いて……‼︎」

 

「最古の樹海の中、女、目覚めし刻、中央に聳え立つ一千年の巨木、我に力を分け与えよ、吸えよ魂、射せよ光、汝の身を削って、我が剣となれ、『神木ノ太刀』‼︎」

 

「卍解‼︎『大紅蓮氷輪丸』‼︎」

 

「あれ?始解した?」

 

松本さんの無粋なツッコミを無視して、さらに俺とひばんたには霊圧を高めた。ゆっくり剣を引くひばんたに、木刀……じゃない、神木ノ太刀を構える俺。

 

「ホイィッ‼︎」

 

※ここから先は1秒間のやりとりです。

 

俺は指を振られる前に手を伸ばし、ひばんたにの指を掴みながら横に首を右に振った。ひばんたにの指を振る方向を固定するためだ。

が、ひばんたには俺の掴みを回避した。そして、俺が振ろうとした右方向に指を回した。俺は首を無理矢理止めて、逆側に変えた。

すると、蛇のようにグネッと腕と手首を曲げて方向を変えるひばんたに。俺は右腕でその手首を止めた。そのまま右腕を左に向けて俺は首を右に向けた。

ひばんたには右手を拳にして、左手の指を立てて右に向けた。俺は右足を出して、膝で左手を上に払った。

 

※1秒経ちました。

 

右手を掴まれ、左手は上に跳ねられた状態のひばんたにと、左手を掴んで、片足を上げて立ってる状態の俺が止まっていた。

 

「い、今何か見えた………?」

 

「さ、さぁ……?」

 

「ていうか何これ……」

 

再び俺とひばんたには拳を引いた。ここまできたら小細工は無用、より速かった奴が勝つ、それだけだ‼︎

 

「「ジャケポン‼︎」」

 

俺→チョキ

ひばんたに→チョキ

 

「「アコショ‼︎」」

 

俺→パー

ひばんたに→ぐー

 

「あっち向いて………‼︎」

 

再び、最高潮まで高まる霊圧。

ゴクリと、誰かが唾を飲み込む音が聞こえた。相手の心理など読むな、全ては自分の勘を頼れ、それで勝て‼︎

 

「あっち向いてホイ‼︎」

 

「ウォラァッ‼︎」

 

直後、俺は人差し指を右に向けた。ひばんたにがその俺の指を握って、無理矢理上に向け、反対側を向いた。ボギッと俺の人差し指から鈍い音が鳴り、激痛が走る。

 

「………あっ」

 

直後、ひばんたにから間抜けな声が聞こえた。

俺は、人差し指と親指を最大限に開き、親指を反対側に向けていた。つまり、二ヶ所同時に指したのだ。

 

「ハイィィィイ‼︎俺の勝ちィイイイイ‼︎」

 

「いやいやいやいや‼︎汚いわよそれ‼︎」

 

横で見ていた松本さんが口を挟んできた。

 

「あ?何が?」

 

「あんた今、二箇所指してたじゃない‼︎反則よ‼︎」

 

「誰も人差し指で指すなんて言ってませんが?てか人差し指、もう指せませんが?」

 

「んグッ……‼︎こうなったら二回戦目は私が……‼︎」

 

「よせ、松本。お前の敵う相手じゃねえ」

 

ひばんたにが止めた。

 

「今回は俺たちの負けだ。退くぞ」

 

「あのっ、隊長?」

 

「良い、最初に俺たちの帰還を賭けてしまった時点で、俺の負けだ」

 

「や、そうじゃなくて」

 

「雛森、吉良、お前らも帰る準備をしろ」

 

「何泣いてんですか日番谷隊長」

 

「な、泣いてない‼︎」

 

おいおい、何泣いてんだよ。何処まで悔しがってんだこいつ。まぁ、ゲームで負けて悔しがるのはよく分かるけどな。

俺はひばんたにに声をかけた。

 

「良い勝負だったぜ、朽木隊長とのオセロより全然やり甲斐があった」

 

「………水上……!」

 

「またやろうぜ、日番谷番長」

 

「………隊長だよ、馬鹿野郎」

 

俺と日番谷は握手をした。グスッとしゃくり上げる声が聞こえた。

何故か感動して泣いてる雛森さん、呆れてものが言えないって感じで両手を広げてる松本さん、飽きて寝てるイヅル、あいつは後で殴ろう。

 

「じゃ、俺たちは約束通り帰る。でも、次はこうは行かねえぞ」

 

「…………上等だよ」

 

日番谷雷鳥は帰っていった。

………さて、防衛任務完了。俺もそろそろ駄菓子屋で寝るかな……そう思った時、新たな霊圧を感じた。

慌ててそっちを見ると、涙目の済まぬさんが立っていた。

 

「………朽木隊長?」

 

「…………私とのオセロはつまらなかったか……?」

 

あっ、やべっ、聞かれてた。

ああ……涙目でスッゲェ睨まれている……!

 

「あ、あのっ、何でここに……?」

 

「日番谷隊長が負けたときのために隠れていたのだ……。兄の戦闘力は底知れんからな……」

 

と言うことは連戦か?ヤバイ……人差し指が折れた状態で何処までこの人とやれるか……‼︎

と、思ったのだが、朽木隊長は背中を向けた。

 

「帰る」

 

「えっ?」

 

「帰る」

 

帰った。

そんなわけで、隊長を二人撃破した。

 

 



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3日目

 

 

精霊廷、一番隊隊舎。総隊長の山本が隊長達を集めて話し出した。

 

「事態は重要性を増した‼︎昨晩、六番隊隊長朽木白哉が『オセロ王に、俺はなる‼︎』という書き置きを残し旅に出た‼︎そして十番隊隊長の日番谷冬獅郎が『俺は絶対、あっち向いて火影になるってばよ‼︎』と言って隊舎に引きこもってあっち向いてホイを始めた‼︎奴の能力は未だに不明であるが、非常に危険なものと判断した‼︎」

 

別の意味でな、と全員が心の中で思ったのは言うまでもない。

 

「よって、これからは油断なく引き締めて掛かれ‼︎そして、隊長格ではなく必ず隊長が同行するように‼︎以上‼︎」

 

との事で、解散した。砕蜂はさっさと二番隊隊舎に戻ろうとした。が、その途中でいつもの無表情ながらも、何処となく不安そうな顔色の卯ノ花の顔が見えた。

 

「………祐作っ」

 

ギリッ、と奥歯をかみしめた。

 

 

浦原商店。穴の中に落とされて、よう分からん修行をしている一護と、卍解を習得しようと頑張ってる恋次を見ながら、俺は浦原の隣に座って話していた。将棋やりながら。

 

「……と、いうわけで、俺が奴らの卍解を乗り越えて副隊長三人と隊長二人追い返しました」

 

大嘘だけど結果はあってるので大丈夫だよね。

 

「ホウ、やりますね。隊長2人掛かりで追い返すなんてアタシでも難しいっスよ」

 

「はは、よゆーだよよゆー」

 

だってあいつらメンタル弱いんだもん。

 

「じゃ、しばらく見張りの方は水上サン一人でお願いします」

 

「えっ」

 

「阿散井サンの方も黒崎サンの方も、まだまだ隊長と戦うには戦力として心許ないんス。けど、隊長二人を退ける水上サンならしばらく大丈夫っスよね」

 

「い、いやいやいや‼︎無理無理無理無理‼︎一人は無理だって‼︎俺右手の親指こんなんだし‼︎」

 

「あらぁ?余裕で一人で隊長を二人退けたのならその程度のハンデはあってもいいんじゃないンスか?」

 

こ、こいつ……‼︎

 

「まぁ、大丈夫っスよ実際。今、アタシの友人が黒崎サンのお友達を鍛えてるンス。そっちはこっちほど時間掛からないと思いますし、それまで持ち堪えて下さい」

 

「はぁ?友人って?てか一護の友達って、人間?」

 

「はい。けど、ちゃんと戦力になる能力を持ってるっス」

 

「ふーん……」「その中の一人なら、その親指治してもらえると思うっスよ。多分、その無くなった耳も」

 

「…………耳も?」

 

「はい。ちょっと特殊な能力を持ってる子でしてね……。まぁ、治して欲しかったら今日あたり行ってきたらどうスか?」

 

「いいの?」

 

「はい。今回の件でどんな方法であれ、水上サンが隊長二人を追い返したのは事実っス。尸魂界側も、朽木サンや阿散井サンより、まず水上サンを潰しに来ると思うので、ここに居られる方が困るンスよね」

 

「あんた今ものっそい酷いことをなんの躊躇もなく言ったからね?その辺自覚あるんだろうね?」

 

「たぶん、この場所にいると思いますから、行ってみてください」

 

言われながら、俺はメモ用紙を受け取った。

 

「あ、ところで水上サン」

 

「うるさい、投了なのだよ」

 

「緑間サン?」

 

 

そんなわけで、義骸を借りて、「夜一」という人のいる建物へ。なんか名前がエロいな……。こう、夜の市場みたいな感じで。でもまぁ、名前の感じからかなりイケメンな男って感じするし、正直会うのはあんま楽しみじゃねぇなぁ。

………あ、ゲーセンある。

 

「………………」

 

寄ってってもいいよね!どうせ待ち合わせしたわけじゃないし‼︎大丈夫だよね‼︎

ご入店。お金は浦原商店からパクッ……貰ってきたし、大丈夫でしょ。さぁて、何やろっかなー。

ウキウキしながら、とりあえず太鼓○達人の前に立った。

 

「さて、やるか」

 

100円玉を入れた。鬼モードを選択し、選んだのは千本桜。どっかで聞いたフレーズのような気がする……なんだっけ?まぁいいや。

 

『さぁ、始まるドン!』

 

ゲームを開始した。

 

 

どっかの建物。

 

「⁉︎」

 

「どうしました?夜一さん?」

 

「すまん、二人とも、儂は一度ここを離れる」

 

「へ?」

 

「すぐに戻る!」

 

夜一は建物から飛び降りた。

 

「この霊圧は………⁉︎」

 

 

太鼓をリズムに合わせて叩き始めた。今のところはフルコンボ、そして「ICBM」の辺りまで差し掛かったところまできた時だ。

 

「見つけたぞ、祐作」

 

なんだ?声が聞こえた気が……気の所為か。

 

「我々を裏切っておいて、良く呑気に遊んでいられるな。祐作?」

 

うるせーだな、誰だよこいつ。ゲーム中だっつの。見てわかんねえのか。

 

「というか、あっさりと背後を取られるなんて随分と鈍ったようだな、祐作」

 

あっぶね、一つ打ち漏らすところだった。おい、マジてめっ誰だよ。邪魔すんなっての。

 

「ふむ、この姿勢からならいつでも貴様を殺せるわけだが……そうだな、貴様が許しを請うなら殺さんでやらん事もない」

 

おい、つーか俺がテメェを殺してやろうか?

 

「………お、おい、聞いてるのか?殺しちゃうぞ?いいの?」

 

神威かテメーは。俺がお前を殺しちゃいたい。

 

「わ、わかった!チャンスをあげよう!10秒だけ待ってあげる!だからせめて返事してよ‼︎」

 

おい、しつけぇんだよ。何様だよマジで。埋めるぞコノヤロー。

 

「はい、じゅ〜う!きゅ〜う!はぁ〜ちぃ……」

 

あ、不可………、

 

「しつけぇんだよこの野郎おおおおおお‼︎」

 

振り向きザマに顔面に拳をダンクした。「ぶべらっ」とぶっ飛ばされるそいつの正体は二番隊の隊長さんだった。

 

「あれ?iPhone?」

 

「砕蜂だ‼︎」

 

「何してんのこんなとこで」

 

「お前こそ何やってんだ宣戦布告しておいて‼︎」

 

「太達。一緒にやる?」

 

「やるか‼︎私はここに遊びに来たのでは……‼︎」

 

「まぁそう言うなって。対戦が熱いんだまたこれが」

 

「い、いや私は……!」

 

「いいからいいから」

 

「お、おい!手を握るな‼︎」

 

太達を始めた。

 

 



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3日目(続)

「ここか!」

 

夜一はゲーセンに到着した。そこでは、

 

「どうした祐作⁉︎随分と遅れているぞ‼︎」

 

「はっ、バーカ。お前そこには……」

 

「ああ⁉︎バナナの皮⁉︎」

 

「アイテムブロックの下に罠をセットする、マリカーの基本だよ砕蜂くん」

 

「ぐぬぬっ……‼︎だが、後ろから追い付いてやればッ……‼︎」

 

「馬鹿め、追い抜いてからスターを使うに決まってるだろう」

 

「あー!あーあーあー!」

 

「コーラス?」

 

「違う‼︎あっ……」

 

「ゴール」

 

「もう一回‼︎もう一回だ‼︎」

 

「何度でも掛かってきたまえ。あ、お金ある?ないなら出すよ?」

 

「大丈夫だ。隊長の稼ぎをなめるなよ」

 

「そ、そうか」

 

「…………何やってんのあいつら」

 

後ろから夜一は声を漏らした。

 

(あ、あれ?あれ砕蜂、じゃな。で、喜助の言ってた水上祐作、のはずじゃが……まさか、裏切ったのか⁉︎………ならば、ここで仕留めておいたほうが良いな……後ろから、首をへし折ってやる‼︎)

 

そーっと後ろから祐作に近付く夜一。そして、首の後ろに手を回そうとした時、

 

「ふぬをっ⁉︎」

 

「ブッ‼︎」

 

突然、頭を後ろに下げた祐作の頭突きをモロに喰らった。

鼻から血をダラダラと流しながら、予想以上のダメージに地面でゴロゴロと悶える中、祐作は一位でゴールしながら後頭部を抑えて立ち上がった。

 

「いった⁉︎何、何事?」

 

(し、しまっ……‼︎)

 

「誰あんた?何やってんの?」

 

「! 貴様、夜一……‼︎」

 

「そ、砕蜂。久し振りじゃのう」

 

「夜一……?どっかで聞いたな。誰だっけ?」

 

「私を捨てた元二番隊隊長だ」

 

「いやそういうんじゃなくて。確か浦原がなんか言ってたような……」

 

「浦原だと?」

 

マズイ……と、夜一は奥歯を噛んだ。この様子だと、砕蜂は自分を恨んでいる。それにプラスして、隊長二人退けた祐作(詳細は不明)、本気で戦っても無事では済まないかもしれない。

そんな夜一の内心を知ってから知らずか、砕蜂は好戦的な笑みを浮かべて立ち上がった。

 

「ちょうどいいところに来たな、夜一。貴様に復讐させてもらうとしよう」

 

「ほう、かなり自信があるようじゃのう。儂に勝てると思っとるのか?」

 

「当然だ。私は既に貴様より速い」

 

「………随分と腕を上げたようじゃな」

 

「さて、では始めようか」

 

「こんな所で始める気か?」

 

「当然だ。ここじゃなきゃ出来ないからな」

 

「…………は?」

 

「さぁ立て!そしてここへ座れ‼︎」

 

砕蜂の指差す先にはマリカーがある。ポカンと口を開ける夜一に砕蜂は言った。

 

「何ボンヤリしている‼︎ここに座れ‼︎私の方が速い事を証明してやる‼︎」

 

「………戦うんじゃないの?」

 

「そんな気分ではない‼︎」

 

思わず標準語で聞くと、アホな答えが返ってくる。

 

「あ、じゃあ3人でやろっか」

 

「え?あ、うん」

 

「ついでに、祐作にも勝たせてもらうぞ。今度こそッ‼︎」

 

言われるがまま流されて、3人はマリカーの席に座った。

 

〜30分後〜

 

「フハハハハ‼︎その程度か砕蜂‼︎最初の自信満々な態度はどうした⁉︎」

 

「クッ、まだまだ‼︎ナメるなよ‼︎」

 

「ねぇ、あんたらお願いだから静かにゲームしてくんない?周りの視線とかあるからさ」

 

「って、誰じゃこんな所にバナナの皮置いたの‼︎」

 

「あ、それ俺」

 

「先に行くぞ夜一‼︎」

 

「グヌヌッ……‼︎まだまだ‼︎」

 

「って、うおおおおお‼︎こんなカーブ曲がり切れるか‼︎」

 

「砕蜂、体振っても車は曲がらねーよ?」

 

仲良くゲームしていた。

が、またまた祐作、砕蜂、夜一の順番でフィニッシュ。ぷはぁ〜っと夜一は息を吐いた。

 

「もう一回!もう一回じゃ‼︎」

 

「えー、そろそろ別のゲームやろうぜ」

 

「勝ち逃げする気か貴様⁉︎」

 

「だってお前ら下手くそなんだもん。あと夜一さん身体振るたびにオッパイ揺れて集中出来ないんだもん」

 

「き、貴様何処を見ている‼︎」

 

「オッパイ」

 

「グヌヌッ……‼︎集中せずにやって余裕で勝つとは……‼︎」

 

「あ、そっちなんだ」

 

すると、夜一は砕蜂と肩を組んで自分の近くに寄せた。

 

「………砕蜂。手を組まんか?」

 

「……そうだな。いい加減、奴の一人勝ちは許せん」

 

「儂が奴にアイテムを片っ端からぶつける。砕蜂、お前が競り勝て」

 

「分かった」

 

(こいつら過去になんか因縁あるんじゃなかったっけ?)

 

そんな事を思いながら、ゲームを再開した。

 

 

その後、マリカー、太鼓○達人、リズム○国、クレーンゲーム、メダルゲーム、WC○F、EX○SマキシマムブーストON、ポ○拳、艦これ○C、ドラゴン○ールヒーローズ、そして最後にプリクラと対象年齢問わず色んなゲームをやりまくった。

今はゲーセン前のマックで3人は座っている。俺の前で「えへへ」と嬉しそうにプリクラを見て微笑んでる砕蜂と夜一さんに俺は言った。

 

「いやー、遊んだなオイ」

 

「そうだな。現世でこれほど金を使うことになるとはな……それに、少し疲れた」

 

「何じゃ、疲れたのか砕蜂?体力なくなったのではないか?」

 

「むっ、まだまだやれるぞ。次は何する?」

 

「やめろやお前ら……。一通りあそこのゲーセンは遊び尽くしたよ。あとは二階のパチンコか屋上のバッティングセンターくらいだ」

 

「「バッティングセンター‼︎」」

 

「はっ倒すぞマジで。………まぁ、後で行くか。休憩してからな」

 

そう言ってストローをくわえ、ファンタを少し口の中に含むと、一息ついてから俺は聞いた。

 

「………で、二人とも何しに来たの?」

 

「「えっ?………あっ」」

 

「なんかいきなり俺がゲームしてる時に後ろに現れたけど。特に砕蜂、お前俺の事を捕まえに来たんじゃないの?」

 

「………はっ、そうだ。そうだった!」

 

「そうだった!じゃねぇよ。どうすんの今から?これからもう戦う雰囲気じゃないよ?」

 

「た、確かに……」

 

「あと、黒オッパ……夜一さんとなんか因縁あったんじゃないの?」

 

「おい、なんと言いかけた貴様」

 

「そ、そうだった!よ、夜一貴様……‼︎」

 

「あーいや、思い出しながら文句言うのやめろ。もう無理あるから。『ずっ友☆』って描かれたプリクラ持ってる時点で無理だから」

 

「う、うるさい‼︎怒るぞ‼︎」

 

「や、何でだよ。まぁこれも良い機会だ。今、話し合ってみろよ。何があったか知らんけど、どうせ落ち着いて話し合いとかした事ないんだろ?」

 

「……………」

 

「……………」

 

言うと、二人は黙り込んで視線を逸らした。なんだこいつら、思春期か?

 

「………あ、俺邪魔?邪魔なら帰るけど」

 

「いや、ここにいて良い。貴様にもいずれ関係のある話じゃ」

 

俺に?何で?と、思ったが、すぐに夜一さんは話を進めた。

 

「砕蜂、百十年前の事を覚えてるか?」

 

「覚えている。貴様が私の眼の前から忽然と姿を消した時だ。浦原喜助などを庇ってな」

 

「あ?浦原?」

 

「奴は元十二番隊隊長だ」

 

………えっ、そうなの?あの軽薄そうなのが?

 

「喜助は当時、8人の死神を虚化させた容疑で刑に処されそうになった所を、儂に助けられて現世に身をひそめることにしたからのう」

 

「虚化?」

 

「そうじゃ。簡単に説明すると、死神が虚になってしまうということじゃの。霊圧も戦闘力も大幅に跳ね上がるわけだが、理性が飛んでいろんな奴に襲い掛かるようになってしまう。それを何とかするために喜助は8人を現世へ連れ帰ったのじゃ」

 

「何とかするため?」

 

砕蜂が眉を吊り上げた。

 

「私は浦原喜助本人が8人を虚化させたと聞いたが?」

 

「それが間違っておる。虚化させた犯人は別におる」

 

「………誰だ?そいつは」

 

砕蜂に聞かれて、夜一さんは一度ポテトを齧った。サクサクと少しずつ縦に口の中に入れて行って、飲み物を飲むと、言った。

 

「藍染惣右介じゃ」

 

「なっ……⁉︎」

 

直後、ガタッと立ち上がる砕蜂。

 

「馬鹿な‼︎馬鹿げている‼︎何故、藍染がそんな事を‼︎」

 

「奴は当時、本性をずっと隠していた。当時の平子も相当警戒しておった。が、警戒していたからこそ、平子は気付けなかったんじゃ。既に、鏡花水月の術中にあった事を」

 

「鏡花水月だと?アレの能力は」

 

「完全催眠、それが鏡花水月の能力じゃ」

 

「完全……⁉︎」

 

「奴の始解を見たものは必ず掛かる。五感すべてを支配されるわけじゃから、ぶっちゃけどうしようもない」

 

「………なら、なら当時の隊長達は何処にいる⁉︎それが分からないと説明がつかんだろう‼︎」

 

「平子達も現世で身を潜めておるぞ。虚化を上手く操れるようになり、藍染との決戦のために力を蓄えておる」

 

「ッ………‼︎ そんなこと、信用出来」

 

砕蜂が言いかけたところで、変な格好した8人がマックに入ってきた。

 

「なんや真子。結局今日もマックかいな」

 

「ひよ里、ここのマックのポテトは他とは違うで。塩の効き方が尋常じゃないんや」

 

「いや、知らねーよ。どこも一緒だろそんなもん。何でいちいちこんなとこまで遠出しなきゃいけねんだよ」

 

「まーたすぐ怒る、拳西のおこりんぼ」

 

「ぷっははは‼︎それよりお前ら今週のジャンプ読んだ⁉︎」

 

「いやだからいつも君読ませてくれないじゃない……」

 

「ああ、今読んどるよ」

 

「リササンのそれはエロ本じゃナイデスカ」

 

「………………」

 

その一行を見て固まる砕蜂。ああ、あれが虚化の8人か。

 

「………これで信用したか?砕蜂」

 

「………それで、どこまで分かっている?」

 

「分かっていることは、藍染の狙いじゃ。奴はあるものを欲しがっている。前は持っていなかったものじゃ」

 

「ヴォルデモートみたいな言い回しだな」

 

「それは『崩玉』。現在は喜助が隠し場所として、朽木ルキアの中に入れてあるものじゃ」

 

「⁉︎」

 

ルキアの、中だと?

 

「つーことは、尸魂界がルキアを欲しがってるのって」

 

「そう、崩玉のためじゃ」

 

「ま、待て」

 

そこで話を遮ったのは砕蜂だ。

 

「私は崩玉のことなんて聞かされていないぞ‼︎いや、私だけじゃなく他のメンバーも知らないはずだ。そもそも、その指令を出したのは中央四十六室……!」

 

「そう、だから中央四十六室は殺されておる。おそらく、百十年前よりずっと前からのう」

 

「ッ………」

 

砕蜂は黙り込んだ。ツーか俺もだ。何より、まさかゲーセン回でこんなシリアスな話することになると思わなかった。

 

「本来なら、恋次と祐作、貴様らがルキアを連れて来ることが、藍染にとって最善だったはず、じゃが祐作。貴様は奴の計画を狂わせた。今、現状は藍染にとって完全に想定外の事態となっているはずじゃ」

 

………今にして思えば、俺が藍染隊長に下手に毛嫌いされてたのって、もしかして何度か計画を狂わせてたからかなぁ。でもあの人、コケシくれたしなぁ。

 

「………まぁ、その、何じゃ。そういうわけで砕蜂。儂は主を見捨てる形になってしまった。すまなかっ」

 

「どうして、どうして私も連れて行って下さらなかったのですか……⁉︎」

 

「そりゃお前、巻き込みたくなかったからだろ」

 

「何⁉︎」

 

「俺だって今回の件、恋次も連れて行かないで一人でルキアを守る予定だったからな」

 

「………夜一様」

 

照れたように顔を背ける夜一さん。涙を流す砕蜂。

………あー、いづらい。まさかあの藍染隊長がねぇ……。

しかし、少し引っかかるな。今現在、尸魂界の護廷十三隊に命令を出していたのは藍染隊長って事になる。百十年も綿密に計画を立てるような慎重な男が、今回砕蜂一人を俺たち3人を奪還しに来させるだろうか?

特に俺なんて、経緯はどうあれ隊長2人、副隊長3人を追い払ったんだ。どう見積もっても、それ以上の戦力を投入するのは当然だろうに………。

 

「……そういや砕蜂」

 

「何だ?」

 

気になったので聞いてみた。

 

「今回、お前一人で来たの?」

 

「いや、そうじゃない。今回は五番隊と連携して……」

 

そこでハッとする砕蜂。

 

「五番隊⁉︎や、ヤバイ‼︎そういえば今回は祐作を私が足止めしている間に五番隊が他二人を奪還する作戦だった‼︎」

 

「いやお前ゲーセンで何やってんの⁉︎もう一回言うわ、何やってんの⁉︎」

 

「こうしている場合ではない‼︎行くぞ二人共‼︎」

 

俺たちは慌ててマックを飛び出した。

 




今更だけど全然卯ノ花さん護衛してねえな……。


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3〜4日目

 

大慌てで地下の勉強部屋に入ると、すでに戦闘が行われた後のようで、随分と地面とかが荒れていた。

 

「うわあ、スッゲェ……」

 

「言ってる場合か‼︎」

 

見渡す限り、恋次とルキアの姿がない。

一護が倒れているのが見えた。

 

「………一護!」

 

「……ゆ、祐作か?」

 

「どうした?何があったお前」

 

「すまん……尸魂界の眼鏡を掛けたヨン様みたいな顔した奴が現れたと思ったら、恋次とルキアを連れて行かれちまった……!」

 

「恋次とルキアが?つーか浦原は?」

 

「分かんねえ。何か気配を感じ取ったと思ったら、急用とか言って出て行っちまって……」

 

逃げやがったなあの野郎……と、思ったが、あの人も鏡花水月の能力を知る数少ない人物、勝ち目のない状況の上に、自分まで鏡花水月に掛かるのを恐れたのだろう。

すると、勉強部屋の入り口から、浦原や鉄裁、ジン太、雨が落ちて来た。

 

「! 浦原!」

 

「スミマセン、黒崎サン、水上サン。こうするしかなかったンス」

 

「テメエ!何勝手に逃げてんだ‼︎」

 

一護が食って掛かるが、俺がそれを制した。

 

「いや、いい。あのヨン様を相手になんの策も無く挑むのは自殺行為だ」

 

「お前まで何言って……‼︎ルキアと恋次が連れて行かれちまったんだぞ‼︎つーか何でお前は無事なんだよ‼︎」

 

「ゲーセンで遊んでた」

 

「げ、げげげゲーセン⁉︎」

 

「おい貴様、祐作は私と遊んでいたのだ。何も悪くない」

 

「いや悪いだろ‼︎何を持ってして悪くないって言ってんの⁉︎つーか誰だよテメェ‼︎」

 

「尸魂界の二番隊隊長、モルフォンだ」

 

「砕蜂だ‼︎」

 

「二番隊⁉︎じゃあ、そいつ敵なんじゃねえのか⁉︎」

 

「仲間になったんだよ。さっきな」

 

「………お前スゲえな。何したら敵を仲間に出来んの?」

 

「ゲームは人の心を円滑にするんだよ。ほら見ろよ、さっきまで『テメェぶっ殺す』『ごめん、事情があったの』の関係だったその二人も『夜一様……』『相変わらずペチャパイやな』の関係になってるだろ?」

 

そう言う祐作の隣では、肩を組んでガハハと笑う夜一と砕蜂の姿があった。

 

「つーか、隣の黒い人誰?」

 

「黒オッパイ夜一だ」

 

「四楓院夜一じゃ‼︎なんじゃその卑猥な苗字は‼︎」

 

「おや、夜一サン。人の姿とは珍しいっスね」

 

「うむ、色々あっての。それより、これからどうするんじゃ?朽木ルキアを取られてしまったぞ」

 

「あ?決まってんだろ」

 

祐作が口を挟んだ。

 

「取り返しに行く。恋次もルキアも全員」

 

「取り返しに行くって……尸魂界にか⁉︎」

 

大きく反応したのは一護だ。

 

「そりゃそうだろ。このままじゃルキアも恋次も処刑は確実、待った無しだ。なら、殴り込みに行って力付くで奪う」

 

「行けるのか?尸魂界に」

 

「そりゃそうでしょ。俺は元々、あっち側だし」

 

「………」

 

「じゃ、行ってくるわ」

 

そう言って俺は尸魂界に戻ろうとした。が、「待った!」と一護は口を挟んだ。

 

「俺も行く」

 

「………あ?」

 

「元々、ルキアが処刑されそうになってるのは、俺に死神の力をあげちまったからだ。なら、俺が助けに行くべきだろ」

 

「いい、いらん、やめろ。斬魄刀の名前も聞けない雑魚に来てもらっても困るわ」

 

「お前もつい最近まで聞けなかっただろ」

 

「黙ってろサイドン」

 

「砕蜂だ‼︎自分で言うのもなんだが、かなり正反対だろう

‼︎」

 

「だから、時間をくれ」

 

「あ?」

 

「一週間、いや五日間だ。それでテメエより強くなるって言ってんだよ」

 

「………いや、いい」

 

「なんで⁉︎」

 

「なんか気持ち悪い」

 

「き、キモっ⁉︎テメェブッ殺す‼︎」

 

「はい上等。戦争をしましょう?」

 

「やめんか馬鹿者共‼︎」

 

夜一さんの拳で、俺と一護は大人しくなった。

 

「とにかく、戦力は多いほうが良い。一護はもちろん、あの3人も連れて行くとしよう」

 

「あ?3人?」

 

「3人って……チャドと石田と井上か?」

 

「うむ。3人ともそれぞれ、死神との戦闘において力をつけている」

 

「おい、誰だよそいつら」

 

「人間じゃ。霊力を持ち、それぞれ特別な力を持っておる」

 

「ふーん……。あ、サイホーンは来る?」

 

「なぜ退化させた⁉︎いや、行くけども‼︎」

 

行くんだ。

 

「じゃあ雀蜂は使うなよ。相手はまだ藍染の正体に気づいてない奴らばかりだ。殺すことは無いからね」

 

「隊長格を相手に斬魄刀を使うなと言うのか貴様は」

 

「え?できるでしょ?」

 

「………そんな事が出来るのは貴様だけだ」

 

「あ、今俺より自分のほうが剣の腕ないって認めた?認めたよね?」

 

「き、貴様っ……‼︎今から試してやろうか⁉︎」

 

「よろしい、ならば戦争だ」

 

「だからやめんか馬鹿1号と3号‼︎」

 

また殴られた。

 

「………まぁ、大体わかりました」

 

まとめるように浦原が言った。

 

「出発は5日後、それまでに黒崎サン達は戦力になるように鍛え、砕蜂サンと水上サンは修行の手伝いなりなんなりして下さい。これでよろしいっスね?」

 

その確認に、全員が頷いた。

 

 

翌日、暇です。する事ない。なんかみんな修行に行っちゃってて俺も砕蜂も駄菓子屋でゴロゴロしてます。

 

「………することねぇなぁ」

 

「そうだな……。ここにある本もほとんど読んでしまったし………夜一様は忙しそうだし……」

 

「………そういや砕蜂ってさ、オシャレとかしないの?」

 

「何だ急に」

 

「いや、せっかく義骸に入ってんのに勿体無いなーと思って。普段と同じカッコしてるし」

 

「ふん、うるさい。服なんてどれを着ても同じだろう」

 

「そうでもないよ?例えばほら、夜一さんがこんな服着てたらどう思う?」

 

言いながら俺は監○学園19巻を見せた。スリングショットである。

 

「ブフッ⁉︎」

 

「こんなの夜一さんがしてたらどうよ?」

 

「ば、ばばば馬鹿者‼︎あ、あああアーノルド夜一様がそんな格好するわけないだろう‼︎」

 

「誰だよアーノルド夜一」

 

「噛んだだけだ!あの夜一様って言おうとしたの‼︎」

 

「まぁそれはいいとして……。で、どうなんだよ」

 

「だ、ダメダメだ‼︎夜一様にそんな破廉恥な格好……‼︎」

 

「じゃあこれは?」

 

次に見せたのはニップルシール。これも監○学園19巻である。

 

「ッッッ⁉︎⁉︎⁉︎な、なんだこれは⁉︎もはや下着でも何でもないだろう‼︎」

 

「まぁ、そうなるな」

 

「………で、でも、もし夜一様がこんなのを付けた……」

 

呟いた後、ニマニマし始める砕蜂。この子、ヤバイ子だなって一発で分かりました。

 

「……まぁ、今のは冗談だけど、尸魂界より現世の方が服とか良いものたくさんあるし、こっちでなんか買ってったらどうだ?」

 

「………ふ、ふむ、なるほど……」

 

「正直、黒装束ダセェし」

 

「今、サラッとすごいこと言ったな……」

 

砕蜂は少し考え込むように顎に手を当てた後、頷いた。

 

「よし、では買いに行こうか」

 

「いってらー」

 

「お前も来い」

 

「え?」

 

 



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4日目

何故か、俺は砕蜂とデートすることになった。卯ノ花隊長とした事もないのに。

………そういえば、卯ノ花隊長元気かなぁ。ちゃんと書類仕事してるかなぁ。事こうなった以上、まず間違いなく俺はもう副隊長でも何でもないんだろうけど、あの人の部下としてはすごい心配だ。

つーか、彼氏出来てないよね?出来てたらその彼氏の事ブッ殺さないといけないんだから、マジで勘弁してよ?例えそれが山爺でも殺しにかかる。………想像してたら不愉快になってきた。

 

「おい、祐作。顔怖いぞ?」

 

隣の砕蜂が口を挟んできた。

 

「ん、ああ。ごめん。ちょっと卯ノ花隊長が心配でさ」

 

「ああ、そういえば、随分と不安そうな顔してたぞ」

 

「あら、意外。割とせいせいしてるもんだと」

 

「そんな事はないだろう。というか、貴様が四番隊に入ってからは卯ノ花隊長はよく笑うようになっていたぞ。女性死神協会本部でも、よく貴様の話をされたもんだ」

 

「うわあ、多分ボロクソ言われてたんだろうなあ」

 

「いや、たまにだが顔がにやけていることもあったぞ」

 

「人の悪口言う時にほくそ笑んでる辺り、本当あの人悪魔超人だよなあ」

 

「………………」

 

「……なんだよ。何その目」

 

「いや、普段は頭の中も確かにパッパラパーだが、こういう事に関しては別の意味でダメな奴だなと」

 

「は?つーかパッパラパーじゃないし。パンパカパーンだし」

 

「そっちのほうが頭悪そうだが……。まぁいい」

 

なんか呆れられたぞ。まぁ呆れられるのには慣れてるからいいけど。

 

「それより、さっさと服屋に案内しろ。貴様はよく無断で現世に来ていただろう」

 

「え、なんで知ってんの?」

 

「いや、割とみんな知ってたけど」

 

マジかよ……。

 

「というか、自分で言ってたろう。『現世で遊戯王買ってきた!』とか」

 

「ああ、そうだったっけ?」

 

「そうだ。私の機甲忍者は強かったろう」

 

「あ、うん。懐かしいネ」

 

ほとんどブレードハート無双だったけどな……。

そんなことを話してるうちに、ユニ○ロに到着した。

 

「ここ」

 

「おお……服屋だ……」

 

や、どんな感動の仕方?

 

 

その頃、尸魂界のどっか。

 

「いやあ、一時はどうなることかと思いましたね」

 

「ふふ、問題ないよギン。まさか隊長格が返り討ちに遭うとは思わなかったが……今回は私が彼の裏を掛けたからね」

 

(うわあ、すごいドヤ顔)

 

「さて、朽木ルキアは無事、僕の元に来たわけだが、それだけではまだ足りない。水上祐作、彼は必ず私の天敵となる。その前に何とか仕留めておきたいものだ」

 

「うーん……そう言われましてもね……」

 

「頼むよギン。奴に対抗するには君しかいないんだ」

 

(なんで僕が対水上祐作用最終決戦兵器みたいになっとるんやろ)

 

「なぁギン」

 

「うざいなあ」

 

「え?今、ウザいって言った?」

 

「なら、いっそ総隊長と水上クンをぶつけてみたらどうです?」

 

「なるほど、現世にあのハゲを向かわせるんだな?」

 

「あほ、死ね、カス、ヨン様。違います」

 

「おい、お前今何つった?特に最後何つった?」

 

「そんな、直接的なことしたらバレるでしょう。タダでさえ、水上クンのお陰で何人かの隊長は怪しんでるというのに」

 

「じゃあ、どうするんだ?」

 

「何、水上祐作にはいくつか弱点があります。いえ、いくつか、というより何人か、と言った方が正しいですけど」

 

「………なるほど。やはりギン、君を部下にして良かったよ」

 

「ほんとですね。僕いなかったらほぼほぼ間違いなくあんたヤバかったですね」

 

 

「おおおおー」

 

俺の眼の前で、砕蜂が現世の私服を着ていた。とりあえずミニスカとキャミソールを着させて見たわけだが、思いの外似合っていた。

 

「お、おい……これは、その、露出が過ぎるんじゃないか……?」

 

「あ?現世の女の子はみんなこんな感じだよ」

 

知らんけど。

 

「うぐっ……な、なんだこのスカートは……。これではもはや下着が見えてしまうぞ……」

 

「どーでもいいけど、スカートでパンツ隠そうとしてると余計にエロいからやめたほうがいいよ」

 

「んなっ⁉︎き、貴様!」

 

「いや丁寧に忠告してやったんだろ……。じゃ、でもなんか、こう……キャミソールにミニスカってアレだな……」

 

なんか違う。短パンのがいいか。

 

「うん、そうしよう。短パンにしよう」

 

「タンパン?短いパンチ?」

 

「短いパンツだ。てかそれジャブでいいだろ」

 

「ぱ、パンツをむき出しにして歩けというのか⁉︎」

 

「いやそうじゃなくてズボンな。半ズボンって事だよ」

 

「ふむ、そうだな。隠密機動隊だし、動きやすい格好のほうが」

 

「馬鹿、任務に私服着てく奴がいるかよ。そうじゃなくて、そうだな。夜一さんとプライベートで出掛ける時とかに着てみろよ」

 

「よ、夜一様と⁉︎プライベートで⁉︎」

 

「何度か経験あるだろ。………あれ、あるよね?」

 

「ま、まぁ、百十年前ならあるにはあるが……」

 

「せっかく仲直りしたんだし、また行ってみればいいじゃん」

 

「………ふむ、そうか?そうだな。でも、行ってくれるかな……」

 

「恋する男子かお前は。女同士なんだから気楽に行け気楽に」

 

「で、でもなぁ……」

 

「…………」

 

なるほど、こいつクソレズって奴か。そいつは面白いな。

 

「………俺に任せな」

 

「…………えっ?」

 

ニヤリと口を歪めた。

 

 

〜砕蜂side〜

 

ある程度服を買った後、街に現れた虚を駆逐しつつ、浦原商店へ帰宅した。

結局、余りにも祐作が可愛い可愛いと言うので、調子に乗って服を10着以上買ってしまった……。けど、これで夜一様や祐作に可愛いと言ってもらえるなら安いものだ。

そう思って、お風呂を借りて階段を上がると、夜一様の部屋の前に祐作がいるのが見えた。

 

「………?」

 

祐作?こんな所で何を……?

不思議に思ってると、祐作はこっちを見た。気付かれたか?いや、気付かれてるなこれ。ジーッと睨めっこしてるもん。

そのまま目を合わせること数秒、祐作は突然ウィンクして、親指を立てた。

 

「ッ⁉︎」

 

あまりに血走ったウィンクに、私は思わず壁に隠れる。

 

「…………」

 

な、何する気だあいつうううう‼︎あんな血走ったウィンク見たことないぞ⁉︎どういうつもりだ⁉︎

 

「ラーカイラムに乗ったつもりでいな」

 

それ大船って言ってるつもりかああああ‼︎というかどっかで見たことあるぞこの流れ‼︎

私は慌てて部屋の中を覗いた。部屋の中では、祐作と夜一様が何か話していた。

 

「……それで、何の用じゃ?」

 

「単刀直入に言うわ。砕蜂が夜一さんと全裸で布団の中に入ってお互いの中に入るような関係になりたいそうです」

 

「」

 

た、短刀どころかビームサーベルを自分のブリッジにぶっ刺されたああああああ‼︎⁉︎

 

「………言ってる意味が分からないんじゃが」

 

「だから、子供は孕めなくてもベジータとブルマがトランクスを生むためにおそらくやったであろう行為を」

 

直後、私は飛び蹴りで部屋に突入し、あのバカの後頭部に蹴りをブチ込んだ。

 

「そ、砕蜂?」

 

「お前ええええええ‼︎何を言ってくれてんだああああ‼︎」

 

「いってえな。いや、あんま痛くねえや」

 

「うるさい‼︎おおおおお前はいきなり何を言い出すんだ‼︎違いますからね夜一様⁉︎わ、私はクレイジーサイコレズなんかじゃありませんからね⁉︎」

 

「俺別にそこまで言ってな、ゲフ‼︎」

 

「お前は黙っていろ‼︎」

 

蹴りを入れた。

 

「と、とにかく失礼します夜一様‼︎」

 

部屋を出た。この後、ボコボコにした。

 

 



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5日目

 

一護の修行は、とうとう最終段階になった。

斬魄刀を呼び出し、出発の日まで戦闘。

 

「………で、なんで俺がその戦闘の相手?」

 

「お願いしますよ、水上サン。アタシよりも水上サンの方が向いてると思ってのことッス」

 

「別にいいけどよ……」

 

チラッ、と一護を見た。やる気満々の顔で俺を睨んでいる。

 

「えっ、と……本気でやっちゃっていいの?」

 

「ああ、本気で来いよ。水上。いや、その前に斬魄刀を解放しろ」

 

「………は?」

 

「斬魄刀だよ、テメェの。こっちは斬魄刀使うってのにテメェは使わない気か?」

 

「………ほ、本気で言ってんの?」

 

「本気だよ。つーか本気でかかって来いって言ったろ」

 

「や、本気でやって欲しいなら斬魄刀じゃない方が良い気もするんだが……」

 

「良いから斬魄刀を出せって言ってんだよ」

 

「………わ、分かったよ……。その代わり、後悔するんじゃねぇぞ」

 

「!」

 

俺は腰の浅打に手をかけた。

すると、思い出したように砕蜂が呟いた。

 

「……そういえば、祐作の斬魄刀は私も初めて見るな」

 

「へぇ、今までどうやって戦ってたンスか?」

 

「浅打のままだ」

 

「へ、へぇ……」

 

「これがバカに出来ない強さなんだ。浅打のまま大虚とタイマン張ってたりするしな」

 

「す、すごいッスねそれは……。なら、どんな斬魄刀が出てくるのか尚更楽しみっス」

 

…………俺は浅打から手を離して、両手でTを作った。

 

「………あの、やっぱやめない?」

 

「ふざけんな‼︎いいから斬魄刀出せって言ってんだろ⁉︎」

 

「いや、真面目に。あとで夕食の肉一枚あげるから」

 

「………‼︎い、いやダメだ‼︎」

 

「悩んでんじゃねえか」

 

「いいから解放しろ‼︎」

 

仕方ねえなあ……。ほんとは嫌なんだけど……まぁ、仕方ないか。

 

「……笑うなよ」

 

「笑わねえよ」

 

「………最古の樹海の中、女、目覚めし刻、中央に聳え立つ一千年の巨木、我に力を分け与えよ、吸えよ魂、射せよ光、汝の身を削って、我が剣となれ『神木ノ太刀』」

 

直後、俺の浅打からかなりの霊圧が漏れ出し、爆発したように辺りに爆風が吹いた。そして、俺の手に出て来たのは、知っての通り木刀だった。

 

「…………は?」

 

「…………え?」

 

「…………ん?」

 

「ほら見ろォッ‼︎そういう反応になるから解放したくなかったんだよ‼︎」

 

「「「………ご、ごめん」」」

 

「これ言っとくけど俺のコンプレックスだからね⁉︎唇が厚いだとか、額にニキビが多いだとか、鼻の穴がデカイだとか、そういうのと同じだからな⁉︎俺の斬魄刀は木刀なんだからな⁉︎」

 

俺が怒鳴ると、3人とも気まずそうに視線を逸らした。

ああもういいよ!とにかく一護をボッコボコにすればいいんだろ⁉︎

 

「行くぞ‼︎一護‼︎」

 

「お、おう……あ、斬魄刀戻せば?」

 

「良いよ別に‼︎このままやるよ‼︎」

 

俺は正面から一護に殴りかかった。それを斬魄刀でガードしながらも後ろに下がる一護。つか、こいつの斬魄刀バカデケェな。

俺は逃さずに木と……神木ノ太刀で追撃する。下から振り抜き、それをガードする一護。ほんの一瞬、浮き上がった斬魄刀の下から手を伸ばし、一護の胸ぐらを掴んで引っ張り、腹に蹴りを入れた。

 

「グフッ……⁉︎」

 

さらに出来た隙を逃さず、一護の脚を蹴り払う。浮き上がった一護の腹に拳を叩き込んだ。

最後の一撃は斬魄刀でガードする一護だが、衝撃だけは受け切れず、後ろに膝をついて下がった。

 

「テメッ……!調子に、乗るんじゃねぇッ‼︎」

 

地に着いた脚でそのまま地面を蹴り、一護は横から斬魄刀を振り抜いた。俺はジャンプして回避する。

 

「………いねぇ」

 

「後ろだアホ」

 

振り抜いた一護の斬魄刀の上に乗っていた俺は木……神木ノ太刀で顔面を殴り飛ばした。

 

「ガアッ……⁉︎」

 

ゴロン、ゴロンも転がる一護。そこからピクリとも動かない。………やべっ、やり過ぎたかも。

 

「………浦原。気絶しちゃったかも」

 

「ふむ……仕方ないッスね。水上サン、次からはもう少し加減するように」

 

「あーい」

 

「砕蜂サン、叩き起こしてあげて下さい」

 

「……ふん、何故私が……」

 

ぶつくさ言いながら一護の方へ歩き、蹴りを入れる砕蜂。うん、あいつはツンデレの素質があるな。

 

「……にしても、不思議っスね」

 

「? 何が?」

 

「水上サンの斬魄刀っス。普通、木刀になるなんてありえないっスよ。今の所、何か能力があるようにも見えないですし」

 

「それな。卯ノ花隊長もおかしいとか言ってたし」

 

「斬魄刀っていうのは、普通持ち主の戦闘スタイルに合わせて共に育って行くものっス。そんな斬魄刀がもし、出るとしたら……」

 

「したら?」

 

「………水上サンが相手をただボコボコに殴りたいからそうなったか」

 

「どういう意味⁉︎」

 

「いやぁ、木刀ならホラ、刀と違ってどんなに殴っても死なないじゃないッスか」

 

「……ふぅん、そう?じゃあまずお前を殴ろうかな」

 

「やめてください死んでしまいます」

 

謝ってから浦原は続けた。

 

「………まぁ、もしくは真の力を発揮するには条件が足りないか……」

 

「………条件、ね」

 

そんなものがあるのか?そんな事を思ってると、砕蜂から「おい」と声を掛けられた。

 

「起きたぞ」

 

「さぁ、やろうぜ。水上」

 

「………考えるのは後にするか」

 

言うと、俺は木刀を軽く振りながら再び一護と殴り合った。

 

 

晩飯。

 

「ご飯できましたよー」

 

井上さんがそう言うと共に、晩飯を運んで来た。

この人はルキアと恋次を助けに行く人間二号だ。三号が茶渡泰虎さんです。

 

「ッシャ、来たかオラァッ‼︎」

 

「コラ、暴れるな‼︎」

 

後ろから夜一さんに殴られた。この駄菓子屋に世話になってから以来、俺は晩飯の時は夜一さんの隣と決められた。

お陰で、砕蜂から嫉妬ビームを身体中に浴びていて、迷惑なことこの上ない。

 

「主はすぐに飯になると暴れるからのう」

 

「今日はホント疲れてるんだって。何回一護を気絶させたと思ってんの?」

 

「ウルセェ‼︎明日はテメェに勝つ‼︎」

 

「百億年はえーよ」

 

「上等だよテメェ表出ろコラ‼︎」

 

「よろしい。格の違いを教えて差し上げますよ」

 

「学習しないガキは儂は嫌いじゃぞ?」

 

「「すいませんでした」」

 

指をコキコキと鳴らし始める夜一さんに、俺と一護は土下座する。

 

「ああ……いいなぁ、私も夜一様に怒られたい……」

 

一人、病気みたいなことをほざいた砕蜂を無視して、飯開始。

 

「あっ、てめっ一護!それ俺の唐揚げ!」

 

「他にまだたくさんあんだろうが‼︎」

 

「うるせぇ‼︎それは俺のなんだよ‼︎」

 

「ジャイアンかテメェは‼︎」

 

「ああそうだ‼︎お前のものは、俺のモノォッ‼︎」

 

「危なっ……てめっ、表出ろコラァッ‼︎」

 

「ま、まぁまぁ二人とも!落ち着いてよ。唐揚げならたくさん作ってあるから!ね?」

 

「ダメだ。一護に食わせる唐揚げはねえ。そもそもテメェ、俺に今日負けまくったんだから譲れ」

 

「はぁ⁉︎ふざけんな!それとこれとは話が別だろうが‼︎」

 

「もう、そんなこと言ってると、もう二度と唐揚げ作らないよ?」

 

「すいませんでした井上織姫様。俺のことは殺してもいいのでそれだけは勘弁してください」

 

「こ、殺さないよ!というか殺せないし!」

 

基本、人の話も人の言うことも聞かない俺だが、唯一頭が上がらないのが、この織姫様だ。この人の作る唐揚げより美味いものはない。俺はこの人と卯ノ花隊長のためなら死ねる。

すると、隣から腹立つ声が聞こえて来た。

 

「はっ、ザマァ見ろ水上」

 

「はいぃ、テメェの処刑確定ィイイイイ‼︎」

 

「だ、だから二人とも〜」

 

「ええい!いい加減にしろアホ二人‼︎」

 

「「貧乳は黙ってろ」」

 

「卍解してやろうか⁉︎」

 

その様子を見て、チャドは呟いた。

 

「………親子かこいつらは」

 

 



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尸魂界へ帰還:1日目

 

そんなこんなで、尸魂界に殴り込みの日になった。

浦原が穿界門を作るまでの間、一護、井上さん、チャドの3人は、現世で少し夏休みを送る事になった。まぁ、元々あいつらは学生だし、それが妥当だろう。

俺と砕蜂は、地獄蝶があるので先に行く事にした。敵兵力は二人と思わせて、後から援軍が来れば相手の隙を突けるのでは?という思いつきでもある。

 

「さて、行くか」

 

コキコキと首を鳴らしながら、俺は砕蜂に言った。

 

「……ああ」

 

恋次とルキアを助けに。

 

「準備、出来たようじゃの」

 

「ああ」

 

「すまん、儂も一緒に行ってやられれば良かったんじゃが、一護達の方に付かねばならんのでな」

 

「いいよ別に。あいつらにも働いてもらわないと困るからな」

 

「…………気をつけろよ」

 

「わーってますよ」

 

「砕蜂もな」

 

「はい。夜一様も、黒崎一護達を宜しくお願いします」

 

「あ、何。砕蜂、一護達を気に掛けてんの?」

 

「バッ、違う!ただ、短い間だったとはいえ、世話になった奴らへの社交辞令だ」

 

「いないのに?」

 

「そういえば、砕蜂は修行の時も井上とかなり仲良くしておったからのう。特にバストアップの秘訣とか……」

 

「わ、わーわーわー!夜一様、そんな歩くスピーカーみたいな奴を前にそんな事を言わないで下さい‼︎」

 

「大っきくしたいなら俺が揉んでやろうか?」

 

「殴るぞ貴様!」

 

そんなことをしてると、夜一さんが表情を変えた。

 

「まぁ、冗談はさておき、本当に気を付けろよ」

 

その台詞に、俺も砕蜂も頷いた。相手は尸魂界だ。はっきり言って、勝ち目はない。

 

「砕蜂、最終確認するぞ」

 

「ああ」

 

「向こうに着いたら、まず俺と砕蜂は二手に分かれる。向こうの砕蜂の認識がどうだか分からないが、味方と思っているなら好都合だ。二番隊を味方に付けて、恋次とルキアを助ける。その間、俺は隊長格を一人でも多く引きつけて逃げる。質問は?」

 

「もし、二番隊が私の敵なら?」

 

「それでも殺すな。あんたなら縛道かなんかで相手の動き封じれんだろ」

 

「………わかった」

 

それを見て、夜一さんは微笑んだ。

 

「準備、出来とるようじゃな」

 

「では、夜一様。行ってきます」

 

「うむ」

 

出発した。

 

 

尸魂界に足を着けた。直後、辺りは1、4、5、6、10番隊以外の隊長格に囲まれていた。

 

「……………」

 

「……………」

 

俺と砕蜂に大量の汗が浮かんだ。

 

「………やぁ、久し振りやなぁ。二番隊の隊長サンと四番隊の副隊長クン」

 

「悪いけど、もう前のように話し合いは無理だよ」

 

三番隊、市丸ギン隊長、吉良イヅル副隊長。

 

「悪いね、お二人共。投降しなよ」

 

「……(私も何かあった方がいいのかな)。その幻想をブチ殺す‼︎」

 

八番隊、京楽春水隊長、伊勢奈々緒副隊長。

 

「貴殿らに逃げ場はない」

 

(伊勢副隊長がなんか言ってた気がするが、気の所為かのう)

 

七番隊、わんこ隊長、ヤンキー副隊長。

 

「無駄な血は流したくない。投降してくれ」

 

「というか、あんたらにもわかんだろ」

 

九番隊、東仙要隊長、檜佐木修兵副隊長。

 

「チッ、大人数で二人を叩くのは好きじゃねェんだけどなァ」

 

「剣ちゃん、髪に虫ついてる」

 

十一番隊、更木剣八隊長、草鹿やちる副隊長。

 

「ククッ、まぁどちらにせよ研究し甲斐のある奴らだヨ」

 

「……………」

 

十二番隊、涅マユリ隊長、涅ネム副隊長。

 

「祐作……剣を置け……!」

 

十三番隊、浮竹十四郎隊長。

簡単に言えば、オールスターズだった。俺と砕蜂はフッと微笑んだ。

その笑みに、オールスターズは一瞬狼狽える。

 

「………何を笑っている?」

 

ワンコが聞いてきた。

 

「おいおい、逃げ場はないだとワンコ」

 

「狛村だ」

 

「俺たちが何の策も無しにここまでノコノコ来たと本気で思ってんのかワンワン」

 

「狛村だ」

 

「まったく、お前からもあのワンダフル魁になんとか言ってやれよ」

 

「ふっ、まったくだな」

 

「狛村だっつってんだろお前ちょっと便所来い」

 

俺は不敵な笑みを浮かべたまま続けた。

 

「こういう時のための策もちゃんと考えてあるぜ」

 

「はっ。奇遇だな。私もだ」

 

「全員構えろ!来るぞ‼︎」

 

わんこの声で全員が腰の刀に手をかけた。

俺と砕蜂は笑みを浮かべたまま声をかけあった。

 

「砕蜂!」

 

「祐作!」

 

「「ここは任せた‼︎」」

 

お互いに隊長の群れに押そうとしながら後ろに走ろうとした結果、二人揃って隊長の群れの方に転んだ。

 

「てめええええ‼︎何やってんだ‼︎お前隊長だろ、あいつら足止めするくらい言えねえのか⁉︎」

 

「こっちの台詞だアホ‼︎元々貴様が奴らを抑える予定だっただろ‼︎」

 

「ああ⁉︎尸魂界にお前が敵認定された時点でそれは無理なんだよ少しは頭使え貧乳‼︎」

 

「貧乳とか言うなああああああああああ‼︎‼︎毎日、寝る前に織姫ちゃんにおっぱい揉んでもらってたんだぞおおおおおおおお‼︎」

 

「たった5日で貧乳脱出できると思ってんのかテメェは‼︎」

 

「できるもん‼︎いや5日は無理だけど一週間で変わるって言ってたもん‼︎」

 

「じゃあ現時点をもってテメェは貧乳だろうが‼︎」

 

「卍解『黒縄天譴明王』」

 

「………グスッ」

 

「えっ?」

 

「……あんまり貧乳貧乳っていうなよお……」

 

………泣いちゃった。

 

「こっちだって……好きでこんな胸になったわけじゃないのに……」

 

「……………」

 

「ふええええん……」

 

「………や、ごめん。その、ついネタのつもりっていうか……俺、貧乳も嫌いじゃないから、な?いや、最近は貧乳はステータスってことも段々理解できるようになってきたんだ。だから泣くなよ、な?」

 

「………くれる?」

 

「え?」

 

「……バストアップ手伝ってくれる?」

 

「おう。任せろ。例えばそうだな、おっぱい揉んだりおっぱい揉んだりおっぱい揉んだりしてやるから、だから泣き止めって、な?」

 

「………なら、許すけど……でも次はないからなぁ……」

 

「はいはい……」

 

頭を撫でてあげてると、俺と砕蜂の上に影が掛かった。何事かと上を見ると、デッカい刀が降りてきていた。

 

「「えっ」」

 

 



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1日目(続)

 

 

「⁉︎ 狛村⁉︎」

 

「砕蜂‼︎」

 

俺は砕蜂を抱えてなんとか回避した。

 

「悪いが、貴殿らの茶番に付き合っている暇はない。一気にカタをつけさせて貰うぞ」

 

狛村がこっちを睨んでそう言った。すると、「⁉︎」と砕蜂が反応する。

 

「? どうした砕蜂」

 

「茶番って……私の、私の最近の一番のコンプレックスを、あいつ茶番って………」

 

「ああああ!泣くなってだから!あ〜もうっ!せっかく泣き止んでくれたのに……‼︎」

 

「やっぱり私の胸なんて……小さい胸なんて何の価値も……」

 

「落ち着け!そんな事ない、そんな事ないから‼︎……てんめ犬、カマセ、ヤムチャ‼︎何女の子泣かしてんだよバーカ‼︎謝れよ!」

 

「ふん、戦闘中にその程度の事で泣く方が……」

 

「言ったな?テメェは絶対泣かねえんだな?」

 

「えっ?」

 

「つーかなんで犬っころが生意気に人間に混じって死神やってんだよ、意味わかんねーよ」

 

「え、いや」

 

「しかもなんだよ黒縄天譴明王って。中二病かよ、たかだか七番隊の隊長ごときの卍解が明王ってwww何、王なの?ワンちゃん王なの?ワンニャン時空伝なの?」

 

「そ、それは……」

 

「つーかお前その服とか脱いだらどうなってんの?やっぱ犬?毛だらけなの?風呂とかどうしてんの?おしっこするときは四つん這いになって後ろ足あげてんの?」

 

「そ、そんなことな」

 

「え?犬なのに?ワンちゃんなのに?それ顔が犬である意味あるの?お前にみたいにキャラは濃いけど中途半端な出オチ隊長ってのはすぐに消えるんだよ。大体、お前のそのバカでかい卍解もあれだよね、巨大化する奴なんて大体雑魚キャラ扱いされるよね。ただの木偶の坊だよね」

 

「……………」

 

「お前のそのコンプレックスの塊みたいなキャラが貧乳っていう有力なステータスを持ってるうちのお姫様泣かすんじゃねぇよ。死ねよクズが」

 

「……………グスッ」

 

「あ、泣いたよ。泣いちゃったよ」

 

「………もう帰るワン」

 

「こ、狛村隊長おおおおおおお‼︎」

 

尻尾振って帰り始めるワンコと、その後を追いかける射場さんだった。

………よし、まず二人。

すると、今度は東仙隊長が口を開いた。

 

「き、貴様!狛村になんて事を……‼︎」

 

「うるせーよ黒人。ていうか、お前日本人みたいな名前なのな。外見も髪型も頭の悪いスケボー持った外国人にしか見えなかったわ。多分ジョニーみたいな名前の」

 

「畜生おおおおおおお‼︎それだけは言われたくなかったのにいいいいいいい‼︎」

 

「東仙隊長おおおおおおお‼︎」

 

えっ、今ので泣くの?まぁこれで四人だわ。

が、精神攻撃はここまで。残りの市丸隊長、京楽隊長、更木隊長、涅隊長、浮竹隊長はこうはいかないだろう。

 

「砕蜂」

 

「なんだ?」

 

「あの隊長達、何人止めれば逃げ切れる?」

 

「………わからん。だが私は隠密機動隊、速度においては尸魂界では誰にも負けん」

 

「じゃ、頼むわ」

 

「ああ、この後は?」

 

「二番隊は期待できない。恋次とルキアの救出を優先しろ。やり方は任せる」

 

「………わかった」

 

砕蜂は瞬歩によって消えた。

 

「やれやれ……逃すわけにはいかないンダヨ」

 

「じゃ、砕蜂隊長は僕と涅隊長で追いますわ。水上クンは3人にお任せしますわ」

 

「了解だ」

 

三番隊と十二番隊は砕蜂を追った。残りは八番隊、十一番隊、十三番隊の三つだ。

ったく、よりにもよって強い奴らが残りやがったか。ていうかこれ、俺生き残れんの?

 

「………チッ、俺もゴメンだ。1対1ならともかく、3対1で副隊長なんかとやれるかよ」

 

更木隊長も、そう言うと何処かに立ち去った。

なんかよくわからんけど、これであと二人だ。

 

「僕も、流石に2対1はごめんなんだけどね。………まぁ、みんないなくなってくれて都合が良くなったよ」

 

そう言うと、京楽隊長は腰を下ろした。浮竹隊長もだ。

え、何?何なの?お花見?

 

「………正直、僕らも朽木ルキアさんの処刑には疑問を持っててね」

 

そう言うと、京楽隊長は俺をジロリと見た。

 

「少し、お話ししようか」

 

「………話?」

 

「そうだ」

 

浮竹隊長もそう言った。

 

「お前がルキアを守ろうとしている理由を教えてくれ。返答によっては、俺たちもお前に協力してやる」

 

「………マジで?」

 

「マジだ」

 

マジでか……敵の中でもかなり厄介なこの人達が味方になってくれるなら、これ以上に心強い事はない。それなら、いっそ浦原とかの話もした方がいいかもしれない。

 

「……うーん、話すのは全然良いんですけど、でもその前に一ついいですか?」

 

「お二人は百十年前とかは何してました?隊長?」

 

「え?まぁ」

 

「俺も京楽も隊長だったよ」

 

「あーじゃあ話早いわ。これはマックで夜一さんに聞いた話なんですけど……」

 

「マック?」

 

 

砕蜂を追い始めて、すぐにマユリは足を止めた。

 

「マユリ様、追わなくてよろしいのですか?」

 

「いいんだヨ。どうせ、隠密機動隊に追い付けるはずはない。形だけでも追うふりをしておいただけダヨ。まったく……こんな下らない事で一々、私を出動させないで欲しいネ」

 

 

砕蜂はギンとイヅルから逃げていた。

 

(涅がいない?追うのをやめたか、祐作の方へ行ったか。まぁ、片方を自由にして困るのは向こうだ。私は私の仕事をする)

 

そう思いながら、走り続けた。直後、後ろから霊圧が高まるのを感じ、振り返るとギンが斬魄刀を構えていた。

 

「射殺せ『神鎗』」

 

「ッ⁉︎」

 

慌てて回避したが、腕を少し掠めた。

 

「クッ……‼︎」

 

さらに、イヅルが距離を詰めて斬魄刀を抜いた。

 

「表を上げろ、『詫助』」

 

振り下ろされる斬魄刀。それを砕蜂はガードした。

 

「チィッ、邪魔だ‼︎」

 

ガードした状態から、イヅルの腹に蹴りを入れる。それを膝で受けつつ、イヅルは後ろに退がった。

 

「吉良……!貴様は祐作の友人ではなかったのか?」

 

「友達?水上が?」

 

フッとイヅルは馬鹿にしたように微笑んだ。脳裏に浮かんだのは数日前、祐作を説得に行った時の日、帰還の途中で雛森が泣いていたことを思い出していた。

 

「……雛森さんを泣かすような奴を、友達とは言えませんね」

 

「ほう……」

 

イヅルの後ろに、ギンが微笑みながら立った。

 

 

その頃、祐作。

 

「へぇ、みんなでゲームかぁ……。僕も久々に現世のゲーセン行きたくなってきたなぁ」

 

「行くならお二人とも俺が案内しますよ」

 

「まだファミコンってあるのか?」

 

「ねぇですね」

 

ゲーセン談義に花が咲いていた。

 

 



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1日目(続・2)

 

 

マックの話をしたあと、新作ガンプラの話になり、ゲーセンの音ゲーの話になり、好きな音楽の話になったあと、どんな楽器が弾けるかという話になり、伊勢さんをボーカルにしてバンド組むかという話になり、けいおんの話になったあと、アニメの話で盛り上がり、荒川アンダーザブリッジについて盛り上がった後、最近現世の川が汚いという話になり、環境問題について話し合ったと思ったら、原発について話をして小一時間経った頃、一護達が侵入してきたのを確認してようやく本題の話をして、目の前の隊長達は唸った。

 

「………なるほどね」

 

「ちなみに、百十年前に消えた隊長達も俺と砕蜂が現世で確認しています」

 

「いやあ、そうだとすると彼らには悪いことしちゃったね」

 

「そうだな。……しかし、藍ぜ」

 

「あ、浮竹さん。奴がどこで話を聞いてるかわかりませんので、チンカスとコードネームを決めましょう」

 

「そうだな。しかし、チンカスが……」

 

「無論、お二方は浦原や夜一さん、鉄裁さんに会ったわけじゃないですし、チンカスが犯人だという物的証拠はどこにもありません。もしこの場で俺とやるなら、それはそれで仕方ないですし、俺も覚悟を決めますけど」

 

「……いや、信用するよ。確かに、僕もこの処刑は疑問だったんだ」

 

「ああ、俺もだ。それで、俺たちはどうすれば良い?」

 

「お二人がこちらの味方についてる事は尸魂界は誰も知らないはず、ですがチンカスだけは分かりません。もしくは、チンカスには仲間がいる可能性もあります。なるべくいつも通り動いて下さい。お二人なら俺や一護達を捕らえない言い訳を考えるのは容易い事でしょう?」

 

「……ああ、分かったよ」

 

「それと、オレンジ色の髪、頭に花のヘアピンを付けた女の子、黒い猫、ロン毛ゴリラは味方です。けど、戦力としてはオレンジと黒い猫以外は正直期待してません。ピンチになったら、お二人が仕留め、自分達の隊舎に捕らえてください。そうすれば、安全に保護できる」

 

「………なるほどね」

 

「とりあえず、各地でこれから混乱が起こると思いますが、よっぽどのことがない限りは敵のフリをして下さい。そこから先は臨機応変に対応して下さい」

 

「分かった。お前はどうするんだ?」

 

「俺は、まぁ隊長格を一人でもおおく引きつけます」

 

「無理するなよ」

 

「わかってます」

 

俺は二人と別れた。

 

 

とりあえず、二人の隊長を仲間にできた。

さて、これからまずは隊長達にちょっかい掛けないとな。

そんな事を思いながら走ってると、ものすごいスピードで迫って来る影があった。それをガードすると、そこにはワンコがいた。

 

「! ワンコ?」

 

「さっきぶりだな、水上祐作‼︎」

 

剣を押し込まれ、後転しながら受け身を取る。

 

「何怒ってんの?」

 

「貴様、先ほどあれだけ挑発しておいてよくそんな口が叩けるな」

 

「お前が砕蜂泣かすからだろ」

 

「ふん、まぁいい。とにかく、反逆者として貴様の命をもらう」

 

「!」

 

「卍、解‼︎」

 

わんこの霊圧が高まり、ワンコの上に巨大な何かが形成されていった。

 

「『黒縄天譴明王』‼︎」

 

………マジかよ、デッカ。まぁいいや、隊長が一人釣れた。

 

「死ね」

 

デッカい刀が振り下ろされる。それを横に回避した。

 

「オイオイ、ここ瀞霊廷だぞ。なんつーことしやがる」

 

「黙れ。貴公はただ殺されれば、良い‼︎」

 

わんこが刀を横に振ると、上の明王(笑)も刀を横に振った。

なるほど、つまり動きが連携してるわけだ。なら、本体を叩けばこっちのもんだよな。

地面を蹴って、走ってわんこに斬りかかった。

 

「ふん、甘い」

 

自分の前に剣を突き刺すわんこ。直後、俺の目の前に明王の刀が突き刺さった。

 

「………なるほど」

 

こりゃ迂闊に近付かんわ。なら、目の前の刀の強度はどうだ?俺は斬魄刀で目の前の刀を斬った。

が、傷一つ付かない。硬さも中々のもんだ。刀を折るのは難しいな。目の前の巨人を潜り抜けて本体を殴るしかないか。

けど、そんなことはワンコも気づいてるはずだ。それなりに対策しているだろう。なら、まずは向こうが対策してない部分から攻めさせてもらおうか。

 

「………打撃に変えよう」

 

俺は距離を取って斬魄刀を構えた。

 

「最古の樹海の中、女、目覚めし刻、中央に聳え立つ一千年の巨木、我に力を分け与えよ、吸えよ魂、射せよ光、汝の身を削って、我が剣となれ『神木ノ太刀』」

 

「むっ?斬魄刀の解放か?」

 

直後、俺の斬魄刀は木刀になった。

 

「………なんの冗談だ?」

 

「うるせぇよ‼︎俺のこと刀こんなんなんだよ‼︎」

 

「ふん、斬魄刀に恵まれなかったのか。残念な奴だ‼︎」

 

地面に刺した刀を抜いて横に払うワンコ。それを俺はジャンプして躱すと共に、刀の上に乗った。相手とのリーチが違うなら、機動戦に持ち込んだ方がいいだろう。その為に、軽い木刀に変えたのだ。

 

「何っ……⁉︎」

 

そのまま刀の上を走って、明王の顔面に向かう。

 

「このっ……‼︎」

 

刀を振って俺を振り落とそうとするわんこ。そんな事、俺が読んでないわけがない。刀を踏み台にして、明王に向かってさらにジャンプした。

空中に舞い上がった俺に、明王の反対側の手から拳が飛んだ。その拳が直撃する前に、拳の下から木刀を突き刺し、ぶら下がりながら回避した。

拳を明王が張り切ったところで、体を大きく揺らして木刀を抜きながら腕の上に立ち、拳に向かう。

相手のもう片方の手には刀が握られている。つまり、刀から攻撃はこない。ワンコに取れる行動は頭突きするか腕を振り回して落とすか。

わんこは後者を取った。腕を振って俺を振り落とそうとする。落とされる前に、再び大きくジャンプした。

目の前には顔面がある。

 

「なっ………⁉︎」

 

「寝てろ、巨人」

 

木刀で思いっきり顔面をブン殴った。

 

 







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1日目(続・3)

 

ひっくり返る明王。俺はその隙にワンコを殴ろうとした。だが、ワンコも何故かひっくり返っている。なんだ?巻き込まれたか?と、思ったらワンコの頬が赤く腫れあがってることに気付いた。さらに、明王と同じ感じで倒れている。

………これは、明王へのダメージはワンコにも入る、ってことでいいのか?

 

「グッ……!やってくれたな……‼︎」

 

顔を抑えながら立ち上がるワンコ。明王も立ち上がろうとしたが、俺は脚を木刀で殴り、再び転ばせた。

 

「ぬをっ⁉︎」

 

ワンコもひっくり返る。俺はニヤリと口を歪ませた。

 

「き、貴様……‼︎って、なんだその顔は……‼︎」

 

素敵な笑みを浮かべたまま、倒れてる明王の股間に向かってある。ワンコの顔が真っ青になってるのが、見なくても分かった。

 

「ま、待……‼︎」

 

「6番、ファースト、大竹文雄」

 

「お願いまって‼︎てか、何その懐かしい漫画のチョイス‼︎」

 

「一振!」

 

「おごっ!」

 

「二振!」

 

「うごっ!」

 

「三振ッ‼︎」

 

「ぬぐおおおおおっ……!お、おお……‼︎」

 

場外ホームランと共に、ワンコは股間を抑えて悶絶し、卍解が切れたのか明王は消え去った。

 

「木刀をなめてっからだワン公」

 

唾を吐き捨ててそう言うと、俺は次の隊長を探しに行った。

 

「………腹減ったな」

 

 

イヅルとギンの猛攻を避けがら、砕蜂はボロボロになりながら逃げていた。

 

(チィッ……!不殺でやるとすると雀蜂は使えん。斬魄刀無しで隊長と副隊長を撒けるのか⁉︎)

 

イヅルが侘助で突撃し、その後ろからギンが神鎗で援護する。

既に7回ほど侘助を受け、砕蜂の雀蜂はかなりの重量になっていた。

 

「チッ、仕方ない……。こんな所で使うつもりは無かったが……‼︎」

 

「………なんや?」

 

「精々、死なないように気を付けろよ」

 

砕蜂は斬魄刀を元の刀に戻すと、隊長羽織を脱ぎ捨てた。

背中と両肩に高濃度に圧縮した鬼道を纏い、霊圧が高まっていった。

 

「な、なんだそれは……⁉︎」

 

イヅルが声を漏らした。

 

「そうか、貴様は知らないか。これはつい最近まで私が編み出したと思っていた技だ。まぁ、夜一様に見てもらったら、『いやそれ瞬閧やん』と言われてしまったがな。これは、瞬閧という技だ」

 

「いや、なんで瞬閧二回言った?」

 

「………二回?」

 

「『いやそれ瞬閧やん』と、『これは、瞬閧という技だ』」

 

「…………」←顔真っ赤なそいぽん

 

「…………」←敵とは言え申し訳ないことをしたと思うイヅル

 

「…………」←腹抱えて爆笑のギン

 

「………本来は隠密起動総司令官に継承される技だ」

 

(なかったことにしようとしてる!何事もなく話を進めようとしてる‼︎)

 

「この技は、まだ私どころか夜一様にですら上手く手加減できん。怪我しないように気を付けろよ」

 

(ダメだ、笑うな僕……今更カッコつけるなとか思うな……!)

 

「イヅル、退き」

 

「隊長………?」

 

「これ以上はキツイ。隊長の斬魄刀は封じたし、十分やろ。それに、さっき旅禍が侵入して来たみたいやし、こんな大技出されたら、援軍が気付いてこっち来るのも時間の問題や」

 

「………了解」

 

ギンとイヅルはその場から退いた。砕蜂はそこで腰を下ろし、息をついた。

 

「………先を急がねば」

 

砕蜂は瞬閧をしまい、すぐに立ち上がって先を急ごうとした。その直後、

 

「嘘や」

 

ギンの声が聞こえた。後ろから侘助に思いっきり背中を殴られた。自分の体重が倍になり、動けなくなる。

 

「なっ……⁉︎」

 

「ははっ、相変わらず砕蜂隊長は純粋やなぁ。少し霊圧消して逃げただけで気を抜いちゃうなんて」

 

「貴様っ……‼︎」

 

「さて、じゃあ連行しよか」

 

縛道でしばられ、砕蜂は捕まった。

 

 

一護達は、兕丹坊との戦闘を終えて、瀞霊廷に侵入した。

 

「さて、とりあえずどうする?夜一さん」

 

「ふむ、あのデカイ白いのは見えるか?あれが双極じゃ」

 

「あれが、ルキアを処刑する奴か……」

 

「あそこの一番デカイ建物に檻があるはずじゃ。そこまで行くが、纏まっていると隊長達を全員相手にせねばならん。二手に分かれて……」

 

そう言いかけた所で、ピクッと夜一は空を見上げた。一護もだ。

 

「これは……!」

 

「砕蜂の霊圧が、消えた……⁉︎」

 

「………なんかパクられた気がする」

 

最後にチャドが余計なことを言ったが、少なからず夜一と一護に動揺が見えた。

 

「すまん、儂は砕蜂の元へ行く。一護とチャド、石田と井上に分かれて進め!」

 

「分かった。石田、井上。気を付けろよ」

 

「ああ」

 

「黒崎くんもね」

 

二手に分かれた。

 

 

一護とチャドは二人で檻を目指す。その途中、影が二つおりて来た。二人の前に、一角と弓親が現れた。

 

「死神……‼︎」

 

「出やがった……‼︎」

 

「………チッ、水上の野郎じゃねぇのか」

 

「どうする?一角、出直す?」

 

「いや、せっかくだ。さっさとぶっ倒して祐作をやるぞ」

 

四人は構えて殴りかかった。

 

 



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1日目(続・4)

 

 

瀞霊廷の公衆トイレ。そこに東仙はいた。涙目逃走の途中でお腹が痛くなり我慢できなくなったので駆け込んで来た次第である。

 

(水上祐作め……!この借りは必ず返す!)

 

心の中でそう誓いながら、ケツからブリブリ垂れてトイレットペーパーに手を掛けた。

直後、カランッと虚しい音。

 

「………?」

 

慌ててトイレットペーパーを手探りで探すが、見つからない。

 

(これは、まさか……!)

 

そう、紙切れである。東仙は思いっきり個室トイレのドアを殴った。

 

(クッ……!ここに来て盲目であることの弊害が出たか……!)

 

悔しそうに歯軋りしてると、隣からダンッとドアを殴る音がした。

 

「あ、ああ、済まない。少し、騒がしかったな」

 

素直に謝るが、返事はない。まぁいいか、と東仙はこれからどうするか顎に手を当てた。

ティッシュは無いし、下半身丸出しで出て行くわけにもいかない。ここは男子トイレだ。このトイレの中だけなら、下半身丸出しで歩いても問題ないだろう。

 

(しかも今は非常事態、こんな時に腹下すバカはいないだろう)

 

と特大ブーメランを投げなながら判断し、立ち上がった。

 

「…………」

 

歩き出せない、どうにもドアが開けられない。というか、上は着物着て、下半身は何も履かないで歩いた事なんて人生で、いや死神生で一度もなかった。そのため、かなりの勇気を必要としていた。

どうする、こうしている間にも水上はやり放題してしまうし、何より言うと藍染からいつ指令が下されるか分からない。

 

『要、作戦通り頼むよ』

 

『その前にトイレットペーパー頼んでもいいですか?』

 

3秒後には鏡花水月の餌食になるのは目に見えていた。

 

(いや、待てよ)

 

たった今、隣から壁を殴られた事に気が付いた。いや、今更気付くのもどうかと思うが、迷いはしなかった。

 

「すまない、隣に誰かいるだろう?こちらの個室は紙がないんだ!貸してくれないか?」

 

「あー、悪い。こっちも死紙状態」

 

どっかで聞き覚えのある間抜けな声がした。というか、聞き覚えしかなかった。

 

「つーかあんた。誰だか知らねーけど紙がないからって八つ当たりはダメでしょ。他に人がいるかもしんないのに」

 

「おい待て。その声、貴様水上祐作か?」

 

「そうだけど……え、誰?なんで声だけで分かんの?」

 

「き、ききき貴様!なぜこんなところにいる⁉︎」

 

「何故って、目的は皆一緒だろ。つーか、なんだこの銀魂みたいな状況」

 

「知るか!おい、貴様、今から殺してやる。覚悟しろよ!」

 

「殺してやるってお前……下半身丸出しでケツにう○こ付着した状態でやり合う気か?俺嫌だよそんなの。そんな殺され方、死んでも死に切れねーよ」

 

「貴様の事情など知ったことか!」

 

「いやいやいや、お前も冷静に考えてみろって。瀞霊廷をここまでしっちゃかめっちゃかにした黒幕を殺しましたって言って差し出した死体のケツにう○こ付いてたらどう思うよ。みんな『こんな奴に瀞霊廷は荒らされたのか……』ってなるよ。もっと言うと、そんな奴にワンコはやられたことになるよ」

 

「むっ、確かに……は?狛村をどうしたって?」

 

「キ○タマホールインワンして来た」

 

「き、貴様ぁ〜‼︎」

 

「まぁ落ち着けって。やり合うにしてもまずはトイレを出よう」

 

「グッ……!クソウ、敵の大将を目の前にして……!クソゥッ……!」

 

「おい、あんまクソクソ言うんじゃねーよ」

 

祐作は一息ついて聞いた。

 

「で、お前は誰だ?」

 

「東仙だ!知らずに話してたのか⁉︎」

 

「ごめん、つーか俺とあんたあんま話したことないし、仕方ないっちゃ仕方ないっしょ」

 

「おい、てめぇらトイレにいる時くらい静かに出来ねぇのか」

 

「!」

 

「!」

 

別の声がした。やけに若い声。

 

「その声、日番谷隊長か?」

 

「うるせぇ、東仙。大声出すな」

 

「何故、貴様はここにいる⁉︎今までまさかここにいたのか⁉︎」

 

「ちげーよ。あっち向いてホイを極めたから水上に挑もうとしたら、冷凍みかん食べ過ぎて腹下したんだよ」

 

「れ、冷凍みかん?」

 

「ま、ここに水上がいるのはラッキーだったな。てめぇ、あとで顔貸せや」

 

「いや、俺の顔が欲しければ整形なりマスク被るなりすればいいんじゃねぇの?」

 

「そういう意味じゃねぇよ‼︎レトロなボケしてんじゃねぇよ‼︎」

 

「おい、兄ら。貴様らいい加減、そのうるさい口を閉じれんのか」

 

そこでまた新たな声。

 

「く、朽木白哉か⁉︎」

 

「………あんた何やってんすか。言っとくけど、う○こじゃオセロとかできないよ」

 

「今まで貴様、どこにいた⁉︎」

 

「ふっ、私はオセロの極意を極めていたのだ」

 

「いや、フッ、じゃねぇよ。お前あれからそんなバカなことしてたの?」

 

「水上、一戦付き合え」

 

「わかったからその前にケツをなんとかしような」

 

「なんだ、兄は知らんのか?トイレの床がタイルである理由はそこでオセロができるようにだぞ?」

 

「なわけねぇだろうが‼︎ていうかここでやる気だったのかあんた⁉︎」

 

「白黒つけようじゃないか、オセロだけに」

 

「上手くねぇし、あんたの戦歴は真っ暗だろうが‼︎」

 

「えっ、朽木隊長ってオセロ弱いのか?意外」

 

「それな。俺も強いもんだと思ってた」

 

「いやいや、スペランカーより弱いよ、あの人」

 

「ふっ、それはこの前までの私だ。今の私は」

 

「しかし、このメンバーにあと誰か一人加わったらホント銀魂だな。なんか一人いそうなんだけど。最近、顔見てなかった奴」

 

「ねぇ、聞いて」

 

「私は誰の顔も見たことないが?」

 

「誰もてめぇの話はしてねぇ。しかし、誰だろうな。剣八とか、涅とかか?」

 

「おい、拗ねるぞ」

 

「僕だよ」

 

「「「「…………えっ?」」」」

 

四人から間抜けな声が出るほど、意外な声の主は藍染惣右介だった。

 

 



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1日目(続・5)

 

一護・チャド組、一角・弓親を撃破。

織姫・石田組、涅マユリを撃破。

夜一、砕蜂と恋次の奪還に成功するも、追っ手が現れたため一時的に退避。双極の地下に作った部屋にて、恋次の卍解の修行を開始。

そして、祐作、

 

「さて、そろそろ俺たちもやり合うとするか?そろそろここでずっと跨ってんの飽きて来たしな」

 

「ふん、断言しよう。貴様のような副隊長如きでは私に手も足も出んぞ」

 

「おい、東仙。状況はイマイチ分からねえが、水上に手を出したら殺すぞ。俺が先に倒すって決めてんだからよ」

 

「みんな落ち着かないか?血気盛んなのは悪いとは言わないけど、水上副隊長にも何かしら事情があってこのような行動に出たんだ。まずは話し合おう」

 

「話し合うだと?私が白黒付けたいのはオセロでだ。話し合うのは盤上の上で十分だろう。しかし、その前にやることがあるだろう」

 

それは、トイレから出ることだ。

ここからは、全員身動き取れないので、台詞だけになります。よって、誰が誰の台詞だか分かりやすくしておきます。

 

祐作「だな。じゃあまずは紙っぽいもの持ってる奴は言え」

 

藍染「そんなものがあるなら、みんな先に言っていると思うよ。少なくとも全員、お尻を拭き取れるようなものは持ってないということだ」

 

祐作「なら、もう全員持ち物を言おう。そこの中にヒントがあるかもしれない。じゃあ一番右の俺から、財布と斬魄刀」

 

東仙「財布と斬魄刀」

 

日番谷「財布と斬魄刀」

 

白哉「財布と斬魄刀とオセロセット一式」

 

祐作「揃いも揃って使えねー奴ばっかだな。つーか最後から2番目、お前は何を持ち歩いてんだよ」

 

白哉「オセロは我がオセロ也」

 

祐作「ごめんちょっと何言ってるか分からない」

 

日番谷(しかし、だ。今のところの様子を見た感じだと、東仙は祐作を殺そうとしている)

 

白哉(オセロをするためにも、私以外の奴に祐作を殺させるわけにはいかない)

 

東仙(娯楽バカ二人はまちがいなく、私の邪魔をしてくる。ならば……)

 

白哉・日番谷(少なくとも東仙よりは先に出なければならない。そのためには、)

東仙(少なかともあの二人よりは早くでなければならない。そのためには、)

 

3人(紙を誰よりも先に手に入れることだ‼︎)

 

藍染「みんな、一ついいかな」

 

3人「!」

 

祐作「どうしました?」

 

藍染「トイレの便器の裏にこんなものが置いてあったよ。『エロエロフルカラー』」

 

3人(え、エロエロフルカラーだとぅ⁉︎)

 

祐作「へぇ、どんな本なの?」

 

藍染「タイトルの通り、エロティックな本だよ」

 

日番谷(だめだ、そんなもので尻を拭くわけにはいかない!)

 

東仙(エロ本とは男の宿命だ。そんなもので尻を拭くのは……あ、いやある意味興奮するけど)←盲目であるのを忘れてる人

 

白哉(男としてのプライドが許さない……が、今、この事態においては、抜いてから尻を拭くという選択肢を選ぶことも可能な神と呼ぶべき代物)

 

3人(超欲しい!)

 

祐作「へぇ、どう?可愛い子います?」

 

日番谷(待て水上!そんな事を聞けばどんどん尻が拭きづらくなるぞ‼︎)

 

藍染「うっ……!ふぅ……まぁまぁかな」

 

東仙(既に使用しているだと⁉︎)

 

白哉「(くっ……!このままでは藍染の一人勝ちだ。どの位置に藍染がいるかは分からないが、東仙側である可能性がある以上は阻止せねば!)藍染、それは紙に他ならない。回せ」

 

東仙(くっ……!先手を打たれたか!朽木隊長は藍染様の隣、受け取りやすいことを利用してもらいにいくとは……!)

 

藍染「はぁ、はぁ……」

 

3人(二発目に夢中で聞いてない、だと⁉︎)

 

祐作「おい、何一人で楽しんでんだよ藍染隊長。俺も欲しいんだけど」

 

日番谷(そして、こいつも諦めない⁉︎)

 

藍染「ふぅ……。さて、そうだね。もう十分楽し……エッチじゃない部分もそこそこ多くあるから、君達にもそこを分けて渡すよ」

 

白哉(しかも渡すのか⁉︎)

 

東仙(いや、これは……!誰が先に尻を拭き終わるかによる勝負!)

 

日番谷(順番的には俺や朽木隊長が有利、だが!)

 

白哉(東仙には卍解がある。つまり、)

 

3人(先に卍解して尻を拭いた奴の勝ち‼︎)

 

藍染「じゃあ、下から回すよ」

 

3人(来た!)

 

ピンポンパンポン〜台本形式終了〜

 

直後、3人は斬魄刀を抜くと共に紙を拾い、肛門を拭いて袴をあげた。

敵の位置は分かっている、なら3人ともそっちに向かって全力攻撃をするだけだ。

 

「卍解、『千本桜景厳』」

 

「卍解、『大紅蓮氷輪丸』‼︎」

 

「卍解、『清虫終式・閻魔蟋蟀』」

 

大きな衝撃と共にトイレは吹き飛び、爆発した。3人揃って吹き飛び、その場に倒れた。ついでに藍染も巻き込まれてメガネが割れ、下半身丸出しで気絶した。

ヒラヒラと舞い降りたエロ本の1ページを祐作は掴むと、自分の尻を拭き、トイレに流して下半身をしまった。

 

「………なんかよくわかんないけど、一気に四人片付いたな」

 

そんなこと呟いてみた。

 

 



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1日目(続・6)

 

いきなり卍解が三つ出たと思ったら、四人倒れてた。まぁ、この人たちが何を思ってどうしようと卍解したのか知らないけど、勝手に自滅してくれたのはラッキーだったな。

さて、俺は恋次達を助けに………いや、その前に今のうちに藍染にとどめ刺すか。いや、もう下半身丸出しで寝てる時点で地に落ちてるけど、生物的に息の根を止めようって意味で。

斬魄刀を抜いて、藍染の元へ歩き出した直後、

 

「何の音⁉︎……って、あ、藍染隊長⁉︎」

 

顔を真っ赤にした雛森さんが現れた。その後ろには檜佐木さんもいる。

 

「おおう、もう……」

 

思わずおでこに手を当てた。さようなら、藍染。あなたの威厳はたった今、完全に落ちました。

 

「ど、どうなってやがんだ……⁉︎って、東仙隊長⁉︎朽木隊長に、日番谷隊長まで……‼︎」

 

檜佐木さんと雛森さんが俺の事を睨んだ。

 

「おい、水上……!テメェ、どういう事だ」

 

「……そこまで堕ちたんだね、水上くん」

 

「えっ?いや、それやったの俺じゃなくて」

 

「テメェ以外に誰がいんだよ‼︎」

 

「許さない……!さては、トイレに四人が揃ってるところを奇襲したのね……‼︎」

 

「違う!違うから!みんなでトイレ入ってて紙がエロ本しかなかったからとりあえずそれで拭こうとしたら勝手に卍解3連続で吹っ飛んで気絶してるだけだからこのバカ達‼︎」

 

「そんな馬鹿な真似をこのクソ真面目四人衆がやるわけねぇだろ‼︎」

 

「この人達、君が思ってる30倍くらい馬鹿だからね⁉︎」

 

「もういいです。これ以上は話しても無駄です」

 

「いやそれこっちの台詞!少しは人の話聞けよ!」

 

「私が、水上くんを正気に戻します」

 

お、おいおいマジかよ……!雛森さんと戦う流れ?無理だよ、俺女の人は砕蜂以外殴れないから。

 

「弾け、『飛梅』‼︎」

 

「ああもうっ‼︎最古の樹海の中、女、目覚めし刻、中央に聳え立つ一千年の巨木、我に力を分け与えよ、吸えよ魂、射せよ光、汝の身を削って、我が剣となれ、『神木ノ太刀』‼︎」

 

木刀なら俺の力の加減次第で殺すことはないだろう。まぁ、それ以前にこっちが手を出すことはないけど。

木刀にしながら火の玉を打ち返した。返した玉が檜佐木さんの顔面に直撃した。

 

「あっ、やべっ」

 

「檜佐木さん!………水上!」

 

「違う違う違う!今のわざとじゃないから!」

 

「はぁっ‼︎」

 

さらに飛んでくる火の玉、打ち返す俺。ああ、ダメだ。この子、正気じゃない。どこまで怒ってんのこの子。どうにかして、まずは落ち着かせないと……落ち着くといえばなんだ。考えろ、落ち着かせるにはなんだ。……童話だ!

 

「むかーしむかし、ある所に、おじいさんとおばあさんが……」

 

「私をバカにしてるの⁉︎」

 

逆上させてしまった!マジでどうしよう。落ち着かせるには……催眠術だ!

俺は五円玉の真ん中の輪を紐で結んでぶら下げ、飛梅の火の玉を避けながら目の前に出して振った。

 

「あなたは段々、眠くなるー」

 

「うっ……ふわあぁあ……て、そ、そうはいかないったら!」

 

やだこの子ったらかかり掛けたわ可愛い。これは使える。

 

「あなたは段々眠くなるー」

 

「ううっ……ね、眠気なんかに……!」

 

「あなたは段々眠くなるー」

 

「ま、負けない……んだから……ふわっ……」

 

「はよ寝ろや」

 

「……すーすー」

 

よし、一丁上がり。さて、助けに行きますか。

 

 

雛森さんを脇に抱えて、俺は走った。残りは山爺、市丸隊長、卯ノ花隊長、更木隊長、涅隊長の五人か。さて、随分隊長達倒せたし、そろそろ砕蜂は恋次とルキア助けられたでしょ。

そんなことを考えてると、トランシーバーに連絡が入った。

 

「もしもし?」

 

『祐作か?今どこにいる?』

 

「ああ、砕蜂。今、公衆便所出たとこ」

 

『こちらは阿散井恋次を奪還し、卍解を習得させている』

 

「ルキアは?」

 

『そっちはまだだ。守りが思いの外、厳重だった』

 

「てか何、別の場所に捕まってたってわけ?」

 

『ああ。朽木ルキアには崩玉がある。当然といえば当然だ』

 

「じゃあどうすんの?」

 

『処刑の直前にルキアを奪還する。隊長は今、どんな感じだ?』

 

「残りは1、3、4、11、12だけ」

 

『涅なら問題ない。石田雨竜から撃破したとの報告がある』

 

「へぇ、やるね。あ、あと京楽さんと浮竹さんは仲間になったよ。お二人には一護のお友達がピンチになったらさりげなく助けるようにお願いしといた」

 

『了解。なら、双極の護りの隊長は四人だ。処刑の時に隊長達を止め、朽木ルキアを奪還する』

 

「おk。じゃ、それまでは各自生き残るってことで」

 

『もしもーし、聞こえとる?』

 

別の声が割り込んで来た。この声は、市丸隊長か?

 

『貴様、誰だ⁉︎』

 

『その声、砕蜂隊長やん。僕が捕らえたはずなのにおかしいな。まぁ、ええか』

 

『市丸……⁉︎』

 

『今、旅禍の子達を二人捕まえたで。茶髪の女の子と黒髪のメガネくん』

 

! 井上さんと、石田、だっけ?

 

『それと、京楽隊長がロン毛のヤンキーみたいな子を捕らえたみたいや』

 

京楽さん、助かるよ。

 

『これで、逃げる泥棒は四人やな。警察の隊長は6人、覚悟しとれよ』

 

「どろけいかよ……!」

 

それを最後に、通信は切れた。ま、あの辺にはむしろ捕まっててもらった方が安全だ。助ける手間は増えたが、死なれるよりマシだ。

 

「さて、後半戦と行きますか」

 

そう呟きながら俺は、とりあえずそろそろ寝たいので隠れ家を探した。

 

 



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1日目〜2日目

 

 

さて、寝床は確保したぞ。あとは雛森さんを抱き枕にして寝るだけ……と、思ったら、「んっ……」と息を漏らして雛森さんが起き上がった。

 

「えっ」

 

あ、起きちまった⁉︎まずい!また戦闘が始まっ……‼︎

 

「えへへ〜、お兄ちゃーん‼︎」

 

「ええええええ⁉︎」

 

抱きついて来た。

 

「お兄ちゃーん、えへへー♪」

 

「ええっ⁉︎な、何これどういうプレイ⁉︎一時間いくら⁉︎」

 

「何言ってるの?桃はお兄ちゃんの妹だよ?」

 

「妹⁉︎」

 

「えへへー、お兄ちゃん。遊ぼ?」

 

「いやいやいや、待て待て待て!一体全体これはどういう……!」

 

そこで、ハッとした。確か、雛森さんを眠らせた時、催眠術をかけたよな……。まさか、あの適当な催眠術でこうなったのか⁉︎

マズいだろそれは!いくらなんでも流石に罪悪感がヤバイ!なんとかしないと……!

 

「桃ね、大きくなったらお兄ちゃんと結婚するんだー♪」

 

「そうか、俺も桃と結婚したいなー」

 

悪くないな。

 

 

翌日、確保した寝床である木の上で目を覚ました。すると、トランシーバーから声が聞こえた。

 

『こちら夜一じゃ、起きとるか?』

 

「はい、今起きたとこです……」

 

『そうか。こちらの準備はもう少し掛かる』

 

「りょかい。あ、一護もそっち呼べば?単独じゃ危ないでしょ」

 

『一護はこちらにいる』

 

「えっ?」

 

『というか、捕まってる連中以外はこちらにいる』

 

「ま、待てよ!なんで俺だけハブ⁉︎」

 

『それより、昨日の時点での報告はどうなってる?』

 

「ああ、あの後、桃……雛森さんと檜佐木さんに襲われて、檜佐木さんは返り打ちにしたよ。文字通りピッチャー返しで」

 

『ヒナモリ?は?』

 

「俺の隣で寝てるよ」

 

『待て祐作!それはどういうことだ⁉︎』

 

『なんじゃ砕蜂、うるさいのう』

 

『何してた⁉︎昨日の夜ナニしてた⁉︎』

 

「あーなんかよく分からんけど催眠術にかかって……」

 

『さ、さささ催眠術⁉︎どんなプレイだそれは‼︎』

 

「うるせーな」

 

『それで、倒した藍染はどうした?』

 

『今どこだ祐作⁉︎私か今すぐにそこへ行って貴様を……』

 

『瞬閧‼︎』

 

『ぎゃす!』

 

「それどころじゃなかったよ。雛森さんに襲われてトドメ刺す前に逃げられたっぽい」

 

『ふむ、そうか。奴が今回の事件の黒幕じゃ、そう簡単にはいかぬと思っておったが……』

 

「わーってますよ。もしかしたら、昨日気絶した藍染も鏡花水月かもしれねーんだ、倒したなんて思ってませんよ」

 

『それなら良い。とりあえず、朽木ルキアを盗むのを処刑当日と決めた今、戦力が揃うまで逃げよ』

 

「けど、向こうが先に処刑をはじめちまったらそうは行きませんよ。俺一人でも助けに行きます」

 

『その時は、砕蜂だけでも行かせる』

 

「りょうかい」

 

『じゃあの』

 

「え?あ、うん」

 

『あれ?おい恋次、そこにいた砕蜂はどこへ行っ』

 

切れた。と、思ったら背中から気配を感じた。後ろを見ると、砕蜂が指をコキコキと鳴らして立っていた。

 

「おい……祐作……」

 

「え、あ、うん。コンニチハ!」

 

「どういうことか聞かせてもらおう」

 

「あの、それはこっちの台詞なんですけど……」

 

寝てたはずの雛森さんの声が聞こえた。

 

「雛森、起きてたのか?」

 

「砕蜂隊長、藍染隊長が黒幕って、どういう事ですか?」

 

………そこから聞こえてたんだ。

 

 

事情を説明した。直後、雛森の顔は青ざめていった。

 

「そんな、まさか、本当に……⁉︎」

 

「ああ、残念だけど、その通りだ」

 

「ねぇ、桃。俺のことお兄ちゃんって呼ばないの?」

 

「う、嘘です!あの藍染隊長に限って、そんな……!」

 

「事実だ。現に、平子真子や六車拳西が現世で見つかっている」

 

「桃、ほら、お兄ちゃんって」

 

「………そんな、水上君のいうことが正しかったなんて」

 

「それを止めるために、とりあえず朽木ルキアを私達は救いに来た」

 

「桃ちゃーん、お兄ちゃんですよー?」

 

「ちょっと黙ってて変態」

 

殴り飛ばされた。

 

「分かりました。そういうことなら、私も藍染隊長を止めるのを手伝います」

 

「それは構わないが、お前は大丈夫なのか?立場とか」

 

「平気です。それに、水上くんのことを疑って、私は斬魄刀を水上くんに向けました。あの時、私が邪魔をしなければ勝っていたかもしれないのに……!だから、私もお手伝いしたいんです!」

 

「………わかった。祐作もそれでいいな?」

 

「任務了解」

 

「で、でもそれならマズイですよ!」

 

「へっ?」

 

突然、雛森さんが焦ったような声を出した。

 

「四十六室から命令があったんです。水上祐作が5人以上の隊長を倒した時、卯ノ花烈を人質にしておびき出し、仕留めろって……!」

 

………今なんつった?

 

 



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2日目

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。なんやかんやで復活しました。


「どういう事だ?」

 

砕蜂が聞いた。

 

「実は、中央四十六室から、余り水上祐作が捕まらないようなら最終手段としてそうしろと……」

 

「それで、卯ノ花隊長は今どこに?」

 

「途中で見つかったら計画が台無しとのことで、朽木さんと同じ場所にいます……」

 

「と、言うと?」

 

「1番隊隊舎です」

 

「おい、祐作。まだ手を出すな……って、あれ?祐作?」

 

いなくなってた。

 

 

1番隊隊舎前に到着すると、建物の前では山本が待っていた。

 

「クソジジィ、卯ノ花さんはどこだ」

 

「卯ノ花隊長なら、中でお茶を飲んでおるよ」

 

「は?お、お茶?」

 

「うむ。彼女は貴様をここにおびき寄せるための餌じゃ。本人はお主のことを知らずに中でナルトを読破しようとしておる」

 

 

一番隊隊舎の中。

 

「勇音、いちゃいちゃぱらだいすとは何ですか?」

 

「卯ノ花隊長が知るべき言葉ではありません」

 

 

マジかよ……と、祐作は膝をついたところでハッと気が付いた。

 

「………だったら別に俺帰ればいいだけじゃん。邪魔したね、山爺」

 

「お主は何を言っておる?」

 

「あ?」

 

「貴様はここに来た時点で、儂に捕まる運命なのじゃよ」

 

直後、霊圧をビンビンに放つ山本。祐作は立ち上がった。

 

「では、始めようかの。君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 焦熱と争乱 海隔て逆巻き南へと歩を進めよ、破道の三十一『赤火砲』」

 

直後、火の塊が飛んで来た。体を後ろに逸らして回避する祐作。

 

「あぶなっ」

 

その隙に杖を握って接近する山本、それを刀でガードした。

 

「良いのか?斬魄刀を解放せんで」

 

「あ?」

 

「破道の九十六『一刀火葬』」

 

「おいおい……‼︎」

 

直後、爆発。瀞霊廷内の全員が爆発の中央に目を向けた。

煙が舞い上がる中、山本は杖に手を置いたままジッと祐作のいた所を眺めた。

その煙の中から、ビュワッと木刀が飛んで来た。

 

「‼︎」

 

煙の中から、上半身の黒装束が燃えて上は白、下半身は黒という中途半端な姿の祐作が出てきた。

山本は杖で突きをガードする。

 

「生きておったか」

 

「服が燃えたんですけど。テメーオセロみたいにしてくれやがってどうしてくれんだコノヤロー」

 

「というか、木刀というのはなんの冗談じゃ?」

 

「そのクダりもう飽きた」

 

木刀を握っていない右手で山本の顔面に拳を突き出した。それを山本は左手で受け止めると、力任せに放り投げた。壁に背中を強打する祐作。

その祐作に山本の杖の突きが迫った。顔面の前でキャッチするも、あと1mmで目ん玉を抉られる距離まで突き込まれた。

 

「ッ……‼︎」

 

「諦めんか。お主ごときで儂に刃向かうのは自殺行為に過ぎん」

 

杖に力を入れながら山本は言った。

 

「朽木ルキアの処刑は決まった事じゃ、阿散井恋次ものう。ルール違反を犯したのは奴らじゃ、処刑して何の問題がある?」

 

「うるせーよ、耄碌じじいは黙ってろよ……!」

 

言いながら祐作は杖を退かそうとする手に力を入れた。

 

「問題起こしたら即処刑ですか……わかりやすいなぁ、そういうの。難しいこと考えなくて済まし、上からの命令に従うだけで楽でいいもんなぁ。けどな、あんたら動物じゃねぇんだろ。ある程度コミュニケーション取れるんだろ?だったら少しは話を聞いてやろうとか思えねぇのか」

 

「聞いて何になる。結果は変わらんというのに話を聞いても無駄じゃろう」

 

「はっ、無駄、ねぇ。なら俺があんたに教えてやるよ」

 

杖が段々と祐作の顔から離されて行った。山本も力を入れているのにだ。

 

「悪足掻きって言葉をな」

 

「ぬ、ぬぅ……‼︎」

 

完全に祐作の顔から杖が外れた。

祐作は懐に手を突っ込んでから拳を作った。

 

「オラァッ‼︎」

 

そのまま山本に殴り掛かる。防御しようとする山本。が、祐作の拳はその防御を避けて山本の髭の下に伸びた。そして、カチッとライターを付けた。髭に点火する。

 

「………はっ?」

 

「オイルSOS」

 

そして、そのライターをへし折り、中の液体を山本にぶちまけた。さらに、自分の懐からライターを取り出して、へし折っては液をブチまけ続けた。燃え上がる山本。

 

「⁉︎ あっづぁっ⁉︎お、おおおお前マジか⁉︎アレだけカッコつけといてそうやって攻撃すんの⁉︎汚ねえぞこの野郎‼︎」

 

「ハハハハハ‼︎知るかバーカ!戦闘員、しかも自分の斬魄刀は火系能力なのに髭をサンタみたいにしてるテメェの頭の軽さを恨むんだな‼︎フハハハハ‼︎……ハ?」

 

高笑いしてると、自分の服にも飛び火してることに気付いた。笑顔が凍りつく祐作。

 

「うおおおおおおおお⁉︎やっちまった!やっちまった!」

 

「フハハハハハ‼︎バカはお主のようじゃの!策士、策に溺れるとはこの事じゃ‼︎」

 

「笑ってる場合かテメェ‼︎テメェも燃えてんだよクソジジィ‼︎」

 

「儂は斬魄刀解放すれば平気じゃもーん!」

 

「じゃもーん、じゃねぇよ!気持ち悪ぃんだよクソジジィ‼︎」

 

「くそじじぃしか言えんのか。まぁ、良い。万象一切、灰燼と為……‼︎」

 

「させるかぁっ‼︎」

 

解放しようとした山本の顔面を燃えてる祐作は木刀で殴った。思いっきり殴り飛ばされる山本。

 

「お、おおおおお前!何するんじゃ!」

 

「斬魄刀の解放なんてさせるわけねぇだろ‼︎アホかクソジジィ‼︎くたばれやァッ‼︎」

 

「き、ききき貴様ァッ‼︎万象一切……!」

 

「だからさせるかバァァァァァァカッッ‼︎」

 

今度はドロップキックが炸裂する。お互いに火達磨の状態で。解放しようとしては殴られる、というバカ一色の絵面がしばらく続いたが、結局二人とも燃えて倒れた。

祐作は捕まった。

 

 



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2日目(続)

 

砕蜂と雛森は少なからず動揺した。祐作と山本の霊圧が同時に消えたからだ。

 

「! 祐作……!」

 

「っ!」

 

「まて雛森!」

 

走り出した雛森を砕蜂が止めた。

 

「止めないでください!」

 

「相手は総隊長だぞ!今、私達が向かったところで祐作を助けるのは不可能だ!」

 

※祐作は火遊びして自爆しました。

 

「で、でも、このままじゃ水上くんが……!」

 

「安心しろ、奴らはまだ祐作は殺さん。祐作から尸魂界を裏切った理由や、他の仲間は誰かを書き出さねばならんからな」

 

※祐作は火遊びして自壊しました。

 

「で、でも……!」

 

「安心しろ、私達が後で必ず助ける。だから、今は退くぞ」

 

※祐作は火遊びして自滅しました。

 

 

目を覚ますと、檻の中だった。えーっと……何があったんだっけ……。確か、キャンプファイアーしてたら、山爺の髭に火が燃え移って、なんやかんやで爆発したんだっけ。

とにかく、俺は捕まったようだ。

 

「………目を覚ましたか」

 

ルキアの声がした。俺の向かいの檻だ。

 

「あれ、お前なんでここにいんの?」

 

「こっちの台詞だ馬鹿者‼︎結局、捕まりおって‼︎」

 

「おい、なんでテメェに怒鳴られなきゃいけねーんだよ。こっちは助けに来てやったんだぞペチャパイコノヤロー」

 

「ペチャパイは関係ないだろ‼︎私のことを助けにきて……貴様もこれから殺されるのだぞ‼︎」

 

「まぁ、そうだな。斬魄刀も取られちゃったみたいだし。まぁなんとかなるっしょ」

 

「なるか!相手は尸魂界だ、そんな甘くない!」

 

「それよりしりとりしようぜ。『ん』が付いたら負けな」

 

「お前すごいな!どうやったらそんな能天気になれるの⁉︎」

 

「利子」

 

「しないからな⁉︎」

 

「永井」

 

「いや今のしりとりしたわけじゃないから‼︎」

 

「ライム」

 

「ムカつくわ!貴様と同じ空間でこうして話してることが‼︎」

 

「ガオガイガー」

 

「………アンドリュー・バルドフェルド」

 

なんだこいつ。ノリノリじゃねーか。

そんな感じで、しばらくしりとりをしながら、これからどうするか考えた。

 

「ドイツ」

 

「ツーレロ節」

 

脱獄は無理だろうな、ルキアの檻はレンジでチンと違って厳重な方は隠されているらしい。そのルキアと同じと言うことは、俺も厳重な方にいるということだ。

 

「シタノビール」

 

「ルカリオ」

 

一護とレンジで1分温めましょうは卍解の習得、それに夜一さんがついてて、砕蜂と雛森さんは多分合流してる。他の人間メンバーは捕まってる。

 

「オーソドックス」

 

「スラムダンク」

 

残りは浮竹さんと京楽さんだが、おれが目立つ真似はするなって言っちゃったし……、

 

「打つ手なし、か……」

 

「あ、今負けを認めたな?」

 

ルキアがニヤニヤしながら俺の独り言に突っ込んできた。

 

「いやちげーから」

 

「いや打つ手なしと言った。間違いなくいいましたー」

 

「そう言う意味じゃねーから!俺はテメェを助けるために色々考えてたんだよ!」

 

「貴様、人に勝負をふっかけておいて自分は別のことを考えていたのか⁉︎」

 

「んだよ、悪ぃーかよ」

 

「悪いわ!とにかく、今のは私の勝ちだからな!あとでジュース一本!」

 

「この最悪の状況で良くテメェは人に飲み物を奢らせようとするな⁉︎」

 

そんな事を話してると、「楽しそうですね」と声が聞こえた。

そっちを見ると、氷の笑顔の卯ノ花さんが檻の前に立っていた。

 

 

雛森と砕蜂が合流した地下の勉強部屋。自己紹介を終えて、一護と恋次は風呂に入っていた。

 

「ハービバノンノン」

 

「ビバノン」

 

「おい、二人とも。タオルはこの岩の後ろに置いとくぞ」

 

「イヤン!夜一さんったらエッチ!」

 

「一護、マジでぶっ殺すぞ」

 

自分の肩を抱くと一護を、虫を見る目で見ながら、恋次はつぶやいた。

 

「………お前そんなキャラだったっけ?」

 

「うるせー。現世にいる時の祐作の真似しただけだ」

 

「それ馬鹿が移ってるって言うんだよー」

 

「あ?黙れ赤パイン」

 

「あ?ブッ殺すぞってばよぉ」

 

「「喧嘩売ってんのかテメェ‼︎」」

 

二人してザパァッと立ち上がった直後、シャンプーやボディソープを抱えた雛森と出会した。

 

「「あっ」」

 

「……………」

 

「「いやん!雛森さんったらエッチ!」」

 

「弾け、『飛梅』」

 

「「すみませんでした!」」

 

謝った。

 

 



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2日目(夜中)

 

俺の檻の前に、なんか変な箱を持った卯ノ花隊長が座った。微笑みながらしばらく見つめ合う俺と卯ノ花さん。

すると、卯ノ花さんが箱のボタンを押した。

 

「あばばばばば⁉︎なんだこれえええええええ⁉︎」

 

あばばばばば‼︎なんか痺れるうううううう‼︎

 

「実は、あなたの体に細工をさせていただきました。私がイラっとするたびに、このピカチュウボックスのボタンで10万ボルトです」

 

「いやネーミングセンス!ていうか何このお笑い芸人みたいな仕打ち⁉︎てか俺の顔見ただけでイラっとしたの⁉︎」

 

「タメ口?」

 

「すいませんでしたああああああああ‼︎」

 

「……………」

 

「止めてええええ!謝るからまじ止めてえええええ‼︎」

 

「どーしよっかな♪」

 

「かわいい!あんたそんなキャラじゃないだろ‼︎」

 

「本音を先に出すスタンスで来ましたか」

 

「いや分析しないでいいからああああああ‼︎」

 

涙ながらに懇願すると、ようやく止めてくれた。

あー……○ケット団の気持ちがすごくわかった気がする。

 

「では、2ndステージ♪」

 

「いい加減にしろ‼︎話が進まないんでマジで‼︎」

 

一瞬、ピリッとしたものの、すぐに収まった。

で、ようやく話が進む。

 

「それで、何故こんな真似し」

 

「ヘッキシ!……え?何?」

 

「……………」

 

「すいませんでしたああああああ‼︎タイミング悪かったですうううううう‼︎」

 

くそッ……電気はさっきから卑怯だろ………!

 

「何故って言われましても……もうその問い何度も答えてるんですが」

 

「私は答えてもらってません。ちなみに、下手なことは答えないほうがいいですよ。返答によっては、電気ショックしながら私が斬り捨てる、ビリビリ斬です」

 

「ダセェ!って嘘ですごめんなさい押さないで押さないで」

 

と、言われてもなぁ、藍染がどこで聞き耳立ててるか分からんし……。

 

「僕も気になるね」

 

声がした。そっちを見ると、藍染隊長が檻に閉じ込められていた。………スウェットとトレーナーを着た状態で。

 

「何かしら事情があるんだろ?水上くん」

 

「…………なんでここにいんの?」

 

「わからない。猥褻行為などした覚えはないのだが、『隊長の公然猥褻により逮捕する』と、言われてね」

 

この人はもうダメだな。

 

「最近、雛森くんからの視線がやけに冷たくてね。………もう何度首を吊ろうと思ったか」

 

この豆腐メンタルがいると、俺も下手なこと言えないな。夜一さんとか、浦原の名前は出せない。

 

「だから、ルキアを助けに来たんだっつの。それ以上でもそれ以下でもない」

 

「なんだと?」

 

「俺は黙って知り合いを見殺しにするような奴にはなりたかなかったから、行動に移したまでだ。………まぁ、とっ捕まったけど」

 

「素晴らしい!」

 

突然、藍染から声が聞こえた。

 

「確かに、仲間を大切にし、護ろうとするのは悪い事ではない」

 

白々しいーなコノヤロー。

 

「はぁ、露出m……藍染隊長、うちのバカをあまり甘やかさないで下さい」

 

卯ノ花さんが呆れたようにおでこに手を当てた。

 

「まったく、そのために尸魂界を敵に回し、色んな隊長に喧嘩を売り、総隊長の腕を掻っ攫ったとは……」

 

「は?腕?」

 

「知らないのですか?一刀火葬は片腕を犠牲にして放つ破道なんですよ?」

 

え、あのおっさんそんな大技俺に使ったの?バカななあいつ?足りないのは髪の毛だけじゃなく中身も?

 

「いや、でもあの人腕あったよ」

 

「忘れてたみたいです」

 

「忘れてた⁉︎それでペナルティーはなかったことにされんの⁉︎」

 

「思い出したら朽ちたそうです」

 

「朽ちてるのは頭だろ‼︎」

 

「さっきからタメ口がひどいですね。痺れたいのですか?」

 

「ごめんなさい」

 

「それに、忘れてたのは総隊長ではなく作」

 

「それ以上はいけない!」

 

 

夜中。結局、藍染がいた所為で卯ノ花さんにまともに説明できなかったなぁ。どうしたもんか……。

そんなことを考えてると、コンコンと檻にノックがきた。

 

「ん?誰?」

 

「私だ」

 

………白哉がいた。

 

「………なんすか、てか何してんだオメー」

 

「兄こそ貴様ここで何してる?」

 

「捕まったんだよ。総隊長にボコられた。それより助けてくれ」

 

言った直後、白哉は頷いて背負ってる巾着から何か板のようなものを取り出した。それを開いて、檻の前に置いた。その後、黒と白の駒が大量に詰められた箱を二つ取り出し、片方を俺に渡した。

 

「やろうか」

 

「ここでもオセロ⁉︎この最悪の状況の人間に勝負を挑みますか⁉︎」

 

「先手は兄でいいぞ」

 

「相変わらず人の話を聞かない奴だなテメェ。わかった、わかったよ。とりあえず、俺とルキアを連れて逃げ出してください」

 

「了解した」

 

逃げ出した。………藍染を置いて。

 

 



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3日目

 

 

6番隊隊舎に逃げ込んだ。中には、ひばんたにと松本おっぱい乱菊がいた。

 

「! ひばんたに防衛庁」

 

「日番谷隊長だ!」

 

「なんでここにいんの?」

 

「いや、トイレの件の後、やけに尸魂界が騒がしかったから、とりあえず京楽隊長に聞いたんだ」

 

うおおい、ナイス人選マジで。

 

「その話が本当なら、俺と松本はテメェ側につくぜ」

 

マジか。それは助かるな。ひばんたにはまだ子供だけど隊長だし、この二人がこっちにつくのは実質、10番隊そのものがこっちにつくようなものだ。

 

「だが、私はそうもいかない」

 

白哉が口を挟んで来た。

 

「ルキアが掟を破ったのは事実だ。極刑、とまではいかずとも別の形でルキアには罰を受けてもらう」

 

「ッ……!」

 

「もし、兄がそれを止めたいと言うのなら、」

 

白哉はオセロの駒を人差し指と中指で挟み、俺に突きつけながらいった。

 

オセロ(デュエル)で、決めさせてもらおう」

 

「ただオセロやりたいだけだろうが‼︎なんでカタカナをカタカナでルビ振ってんだよ!なんなんだお前、くたばれよ、もう俺の負けでいいからくたばってくれよ‼︎」

 

「甘く見るなよ、私はもはや兄より強い」

 

「はいもう話を聞けないのはよくわかりました!相手になればいいんだろこの野郎‼︎」

 

「ふっ、吠え面かけるのも今のう」

 

勝ちました。

 

 

そんなこんなで、そこから先は面白い具合に上手くいった。まず人間達を檻から出して、夜一さん達と合流し、なんやかんやで京楽さんや浮竹さんとも合流し、なんやかんやで尸魂界は二手に分かれた。

藍染捕らえる組と、ルキア水上ブッコロ組の二つ。つーか、いい加減話し合いの場が欲しいよねこっちとしては。

 

「とにかく、複数の隊長を失い、向こうはガタついてるはずだ。人数の調整や、即戦力の追加前に叩き、総隊長を説得する」

 

というわけで、話し合いの場を設けるために俺は全員にそう言った。

 

「味方じゃ無いのは一、三、四、五、七、九、十一、十二番隊だ。が、本当に倒さなきゃいけないのは藍染、東仙、市丸の3人のみだ。よって、極力他の隊員との戦闘は避けたい」

 

「なんでだ?敵なら倒したほうがいいだろ」

 

「あほか日番谷隊長」

 

「日番谷隊長だ!………あれ?あれぇー?」

 

「能代かてめーは。倒した後の摩擦が少ない方がいいだろ。解決してもギスギスしてたらそこから先に色々と支障が出るだろ」

 

「………なるほど」

 

「藍染達を倒すために、まずはやっぱり山爺達を仲間に引き込みたい。何せ、鏡花水月の能力が能力だ。人数は多いに越したことはない。だが、話を聞いてもらうためには、こちらもそれなりに用意しなければならない。そのために、」

 

俺はそう言うと、目を見開いて言った。

 

「ここにいる女性陣に全裸で接待してもらいたい‼︎」

 

「「「するか‼︎」」」

 

夜一さんと砕蜂と雛森さんから拳を食らいました。

 

「まったく貴様は……珍しく真面目な話をしたかと思えば……‼︎」

 

「真面目に聞いて損した」

 

「ホントに男の子っていくつになっても男の子なんだから」

 

鼻血を抑えながら、話を戻した。

 

「ったく、なんだよ。じゃあせめて全裸になって股を開いた写真くらい撮らせ」

 

「瞬閧」

 

「雀蜂」

 

「飛梅」

 

「冗談ですごめんなさい」

 

すると、ひばんたにが隣の松本さんを見た。

 

「お前はキレねぇのか?」

 

「あたしはやっても構いませんし」

 

「……………」

 

マジかあいつ。痴女だろアレ。

すると、京楽さんが言った。

 

「まぁまぁ、冗談はこれくらいにして、みんなの意見を取り入れてみたらどうかな?」

 

「ふむ、確かに……じゃあ、みんな後ろを見てみろ」

 

俺が言うと、全員後ろを見た。

 

「なんとも不思議な話だが、そこには小さいホワイトボードがあるだろ?それに案を書け」

 

『いつ用意したお前⁉︎』

 

全員のツッコミが炸裂した。

みんながうーむ、と唸りながらボードに文字を書く中、俺は確信を持って、こう思った。

………これは、大喜利大会になるな、と。

 

 



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3日目〜4日目

大喜利の様子を途中までやったのですが、あまりにもつまらないので消しました。
短めですみません。


 

そんなこんなで、翌日。昨日の作戦会議で決まったことを実施することになった。

俺達は、一番隊隊舎に到着した。メンバーは、俺、ルキア、浮竹さん、京楽さんの四人。中に入ると、山爺以外に卯ノ花さん、雀部が待っていた。そりゃそうだろう、昨日のうちに夜一さんに、手紙を届けてもらっておいたからだ。

 

「ふむ、来たか。小童ども」

 

そう言いながら、山爺は杖に手をかける。が、俺も浮竹さんも京楽さんも、斬魄刀を手放した。

それに、眉を潜める山爺。

 

「………なんのつもりじゃ?貴様ら」

 

「戦闘の意思はないって事だよ、山爺」

 

「春水……貴様らに戦闘の意志が無くとも、裏切り者として主らを粛清する事を儂には出来るぞ?」

 

「護廷十三隊の総隊長ともあろうお方が、無抵抗の相手を殺してもいいんですか」

 

俺は挑発するように言った。

 

「構わん。これは、粛清と言ったはずじゃ」

 

「俺とルキア、京楽さんと浮竹さんは殺せるかもしれない。が、その様子を見ている奴がいるとしたら?」

 

「…………」

 

「戦う相手に名乗ったりと、礼儀も重んじてる死神のトップが、武装解除して話し合いをしに来た無抵抗の部下の話も聞かずに殺したりなんてしたら、指揮はダダ下がりっスね」

 

「お主ら以外に、儂に刃向かう者がいるとは思えんが。むしろ、叩き潰すことで他の者への見せしめにもなる」

 

「それをやれば護廷十三隊じゃなくなる。ただのあんたの恐怖政治による独裁部隊だ」

 

「…………」

 

言うと、山爺はふと目を閉じた。

………どうだ、これでダメなら砕蜂とその他2番隊に助けてもらわないと……!

 

「いいじゃろ、話を聞くだけ」

 

さて、ここからだ。藍染的には、現状は図らずともラッキーな展開なはずだ。自分の標的であるルキアの護衛が手薄な状態だからだ。だが、奴は浦原の話だと俺をかなり意識してるはずだ。下手には仕掛けてこないだろう。

が、それも限度はあるはずだ。この会談はさっさと終わらせたい。

よって、山爺がさっさと納得するような条件を出さなければならない。ここで、いきなり藍染は裏切り者、なんて話をしても信用されないだろうし、藍染に聞かれてたら台無しだ。

みんなで大喜利しながら決めた交渉をここで出す!

 

「俺たちと、サバゲーをしましょう」

 

「…………は?」

 

マヌケな声が山爺から漏れた。

 

「サバゲーですよサバゲー。それで俺たちが勝てばこちらの要件をすべて飲んでもらう。けど、あんたらが勝ったら俺たちを煮るなり焼くなり好きにすればいい」

 

「いや、ごめん意味わかんない」

 

「ただし、斬魄刀と鬼道の使用は禁止だ。使うのはワールドトリガーに出てくるような銃と、普通になんか盾のみ、弾はペイント弾で、身体の一部に当たればそいつはアウト。全滅した方の負け。これでどうですか?」

 

「や、ルール説明の前に根本的なこと聞くわ。なんでサバゲー?」

 

「斬魄刀は……そうだな。流魂街の人達に預かってもらうか。どうせ解号知らないと解放できないし」

 

「おーい、僕の声届いてますかー?」

 

「仲間同士で斬り合うのはもうごめんだしな。これなら安全に戦争できるだろ」

 

「ねぇ、聞いてる?てか安全な戦争って何」

 

「え、ちょっ、さっきからうるさい。もしかして自信ないの?」

 

「おもしろいのった」

 

このジジイちょろい。

 

 

〜ルール一覧〜

・片方のチームを全滅させた方の勝ち

・9対9チーム戦

・拳銃×2、突撃銃、狙撃銃、盾の中から二つ選んで装備

・弾はペイント弾を使用し、盾以外の身体のどこかに付着した時点でゲームオーバー

・斬魄刀、鬼道の使用を禁止

・殴る蹴るなどの暴力行為禁止

・回避以外の瞬歩の禁止

・霊圧の使用禁止

・オセロ、あっち向いてホイなどの遊戯禁止

・全裸になって相手の隙を作るなどの猥褻行為禁止

・範囲は瀞霊廷の中のみとする

 

 




ルールに明らかな不足などがあった場合は教えてくれると嬉しいです


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サバゲー:1日目

 

 

「井上織姫さんってさぁ、メチャクチャ良い子だよなぁ」

 

「………いきなり何を言いだすんだ。君は」

 

高台の上で寝転がり、双眼鏡を覗きながら俺が言うと隣の石田が冷たい声を発した。

現在、サバゲー大会が始まって一時間が経過したが、どこからも戦闘音は聞こえない。流石に瀞霊廷内は広過ぎたか……。

 

 

〜昨日の夜〜

 

「と、いうわけでサバゲーだ」

 

言った直後、全員から足や拳が飛んできた。

 

「いってぇな‼︎何すんだよ⁉︎」

 

「アホか!え、ほんとにサバゲーにしちゃったの?マジ?」

 

こういう時、いの一番に文句言ってくるのは大抵が砕蜂だ。

 

「なんだよ、お前が昨日言ったんだろ。『それで通るもんなら通してみろ』って」

 

「通ったの⁉︎マジで⁉︎」

 

「まぁ待て、そう怒るな。お前らの言うことも分かるがな?これでこっちも向こうも同じ戦力で戦えるようになったんだ。斬魄刀のまま斬りあって山爺やら更木隊長に勝てる奴いるか?」

 

俺が言うと、全員黙り込んだ。例えその二人がいなくても、向こうに隊長はまだたくさんいる。京楽さんや浮竹さんがこっちにいてもギリギリだろう。

 

「斬魄刀は流魂街の人達に預けることになったから、夜一さんお願いします。流魂街の人に化けて斬魄刀は誰も取りに来れないようにしてください。万一、虚が攻めてきたーとかの時は、敵も味方も関係なく全員に迅速に斬魄刀を配って下さい」

 

「承知した」

 

「で、メンバーだけど、」

 

今、この場にいるのはなんやかんやで俺、ストロベリー、静かなマッチョ、竜宮城乙姫、メガネ滅却師、夜一さん、そいぽん、ぶた前田、マイスイートエンジェル桃たそ、オセロ、電子レンジ、京楽さん、七緒さん、ひばんたに番長、おっぱい、浮竹さんとその愉快な十三番隊達、ここからメンバーを9人選択しなければならない。

夜一さんは斬魄刀預かり人、浮竹さんと京楽さんには不正のないように審判、そしてある役割をしてもらうとして、それ以外から選ばないと。

 

「よし、まずは俺だろ。それからー……一護」

 

「お、俺?」

 

「それと、メガネ」

 

「石田だ!」

 

向こうが詳しくない人間を選んだ。この二人の思考は向こうサイドは読めないだろう。

 

「白哉」

 

「前々から思っていたが、兄は私を何故呼び捨てにしている?」

 

「うるせーオセロ黙って俺に従えうんこ。あとひばんたに盲腸」

 

「落ち着け朽木!キレるのはわかるが……!って、日番谷隊長だ!」

 

隊長はこんなものだろ。これで5人、あと4人か。

 

「? どうしたんスか砕蜂隊長。何そわそわして」

 

「うるさい黙れ大前田」

 

ふむ、あと四人か……。

 

「よしっ、」

 

「!」

 

「桃たそ」

 

「…………」

 

「砕蜂隊長?」

 

「わ、私⁉︎なんで⁉︎」

 

「鬼道得意だし、斬魄刀もどっちかというと中距離ようだし、立ち回りとか分かってそうだからな」

 

「だ、大丈夫かな……」

 

「大丈夫、俺が守るから」

 

「えっ?」

 

「あーごめん、ちょっと言ってみたかっただけ」

 

まぁ、守るけどね。さて、残り3人。

 

「砕蜂隊長。何、チラチラ祐作見ながら咳払いしてるんスか。恋する乙女ですか。やりたいなら素直に」

 

「黙れ!違う!」

 

「あー、それなら」

 

「っ!」

 

「恋次なら雛森さんと連携取りやすいっしょ。霊術院からの中だし」

 

「ああ!任せろ!」

 

「砕蜂隊長………」

 

「…………」

 

大前田が切なそうな声を漏らした。

…………仕方ねえな。

 

「砕蜂」

 

「………何、今更」

 

………拗ねてるよ面倒くせぇ。

 

「突撃し過ぎんなよ。周りと連携して、合わせられるなら入れてやる」

 

「約束する!」

 

ガキかこいつは。さて、ラスト一人。

 

「ルキア」

 

「え?わ、私?」

 

「お前がいなきゃダメなんだよ」

 

俺の作戦では、こいつがいなきゃ始まらない。

 

「………わかった」

 

「よし、」

 

メンバーは決まった。

 

 

1番隊隊舎。

 

「と、いうわけで、サバゲーをすることになったのじゃが、サバゲーに出たいものはおるかの」

 

山爺は隊長全員を集めて聞いた。すると、剣八が手を挙げた。

 

「おい。つーか、まずサバゲーってなんだ?」

 

「ふむ、儂もようわからん」

 

このジジイは意味のわからないゲームを了承したのか、と全員が思ったのは言うまでもない。

すると、藍染が手を挙げた。

 

「サバイバルゲームのことですよ。エアガンという銃のオモチャで戦争ごっこを本気でやる、ということです」

 

「ああ?オモチャだァ?下らねぇ。しかも銃なんて楽しさゼロじゃねぇか。俺はゴメンだ」

 

剣八はそう言って隊舎から出ようとした。が、それに藍染が言った。

 

「そうでもないよ。サバイバルゲームは全体の士気やチームワークもさることながら、個人の器用さや戦力、技量の高さも必要になる。何より、これから先、銃を持つ虚が出てきた時、対応できるようになった方がいいと思わないかな?」

 

「そんなもん出てくるかなんてわかんねぇだろ」

 

「出るよ。僕の部下にスターグゴフッ⁉︎」

 

言いかけた直後、藍染にギンと東仙の拳が炸裂した。

 

「僕、出ますわ」

 

「私も出る」

 

「あとヨン様も出るそうや。な?」

 

「え?ぼ、僕は別に」

 

「出るよな……?」

 

「は、はい……出ます……」

 

「ふむ、了解じゃ」

 

これで山爺、藍染、ギン、東仙は決まった。

 

「ま、なんかよくわかんねぇが、俺も出てやるよ。あと、俺のとこから一角と弓親を出す」

 

剣八がそう言い、さらに7人に決まってあと2人。

 

「そゆことなら、僕のとこからイヅル出します」

 

「あと一人じゃが……卯ノ花隊長、任せても良いかの?」

 

「私ですか……?」

 

「奴らはおそらく、水上の小僧が指揮を執るじゃろう。奴の思考が一番読めるのは卯ノ花隊長、主しかおらん」

 

「了解致しました」

 

こっちも決まった。

 

 

で、現在に至る。俺たちのチームは、基本、二人一組で1チームだけ三人。司令塔は俺だ。

チームは誰と組みてぇだの、なんだのという希望が出るのは分かり切っていたので、独断と偏見で俺が決めた。

 

「で、なんで僕とチームなんだ……」

 

「いいじゃん、あんま話したことないし」

 

司令塔たる俺は高台の上で、辺りを見回している。狙撃は石田に任せた。

 

「分かってると思うけど、不用意に撃つなよ。自分の場所をバラすことになるからな(ワールドトリガー知識)」

 

「ああ、分かっている」

 

何より、このザバゲーはオペレーションの立場の者がいない。どこに誰がいるか、などの情報は現場の俺たちで探すしかないのだ。だから、俺がここにいる。

ちなみに、他のチームは白哉ルキア、雛森恋次一護、ひばんたに砕蜂の3チームである。

 

「で、石田。井上さんってどう思う?」

 

「ま、まぁ、確かに可憐だとは思うが……」

 

「だよなぁ、おっぱいでかくて可愛くて優しくて家庭的で……」

 

「おい、セクハラだぞそれは」

 

「なんだよ、じゃあお前おっぱい嫌いか?」

 

「超好き」

 

「だろ?」

 

「しかしだな、好きだからといって口に出すのは良くない。例えあのおっぱい揉みしだきたいとか、むしろ食い付きたいとか、なんなら枕にしたいとか思っても口に出してはいけないんだ」

 

「思いっきり口に出てんぞ。お前普段そんなこと考えてんの?」

 

「どこが良いとは言わないが、夜一さんも良いと思う」

 

「お、おお。まぁ確かに……」

 

「あの人って服の下どうなってんだろうなぁ……。全身黒いのかなぁ。僕さ、服の下は色白って少し好きなんだよね」

 

「………おまえ割と気持ち悪ぃーな。風俗とか行く人?」

 

「常連だ」

 

「……………」

 

通報したい。

 

 



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1日目(続)

雛森、恋次、一護の3人は瀞霊廷の中を歩いていた。

装備は、雛森が二丁拳銃に突撃銃、恋次は盾に突撃銃、一護は盾に2丁拳銃で、なんというか「雛森さんを護り隊」てな感じだった。

 

「ふわーあ、なんつーか、眠ぃな」

 

一護が欠伸をしながらボヤいた。その一護に恋次が言った。

 

「おい、一応戦場だぞここ。欠伸はマズイだろ」

 

「や、悪い。そうだったな……。でもよ、そんなん言われてもオモチャの銃の戦場なんてイマイチ緊迫感欠けね?」

 

「まぁ、言いたいことぁ分かるけどよ……。つか、なんでこんなことになったんだっけ」

 

「それはあれだよ、阿散井くん。水上くんが上手く総隊長を言い包めたんだよ」

 

雛森も会話に参加した。

 

「そういえば、あいつが副隊長になってからだよな。なんか色々おかしくなったの」

 

「あ?どういう意味だよ」

 

「お前は護廷十三隊じゃねぇから知らねーだろうけどよ、以前はこんなバカばっかじゃなかったんだよ。以前の護廷十三隊の隊長達をまとめるとな、」

 

山本元柳斎重國→最古最強の斬魄刀を使いこなす護廷十三隊の総隊長

砕蜂→隠密機動隊隊長でありながら、護廷十三隊随一の速さを持つ二撃決殺

市丸ギン→最速最年少で霊術院を卒業した蛇のような男

卯ノ花烈→女性でありながら総隊長に次ぐ長期の隊長で、護廷十三隊唯一の回復部隊隊長

藍染惣右介→直属の部下にも他の部隊の部下にも優しく面倒見のいい、上司にしたい人No.1

朽木白哉→若くして朽木家歴代最強と言われる朽木家党首

狛村左陣→わんこ

京楽春水→総隊長の教え子で、誰よりも思慮深く真実を見抜くベテラン隊長

東仙要→絶対正義の元に動く、盲目の身でありながら隊長になった

日番谷冬獅郎→最年少で隊長になった氷雪系最強の斬魄刀を操る天才

更木剣八→護廷十三隊最強戦力十一番隊の隊長

涅マユリ→技術開発局局長で、常に自身の研究の事を考えている

浮竹十四郎→病弱でありながら、京楽と同じく山本の教え子で、二刀一対の斬魄刀を操るベテラン

 

「って、感じだったのによ」

 

「待て、一人おかしくね?」

 

「それが今では、」

 

山本元柳斎重國→よくヒゲの落ちるハゲ

砕蜂→部下になめられ放題の泣き虫貧乳

市丸ギン→テロリスト1

卯ノ花烈→部下にやたらと仕事を押し付けるドS

藍染惣右介→露出魔テロリスト2

朽木白哉→オセロ

狛村左陣→わんこ

京楽春水→祐作の悪友1

東仙要→メンタル弱雄テロリスト3

日番谷冬獅郎→ひばんたに理事長

更木剣八→未だに出てこない人

涅マユリ→耳Phone(5800円)

浮竹十四郎→祐作の悪友2

 

「なんだよなぁ」

 

「おい、メタい話やめろ。あと一人だけ全く変わってねえぞ」

 

「でも、まったく否定できないのが悲しいよね……」

 

雛森も悲しげに目を伏せた。ほんと、どうしてこうなった……と、思った直後、目の前の十字路から誰かが飛び出してきた。

 

 

藍染、ギン、東仙の3人は呑気に歩いていた。

 

「おい、どういうつもりだギン。なんで私までこんな茶番に付き合わなきゃならない!」

 

藍染がギンに摑みかかるが、半分くらいキレ気味にギンは躱して、藍染の鼻の穴に指を突っ込み、背負い投げした。

 

「いっだ!鼻取れた?取れてない?」

 

「うるせーよカスメガネ。ええか、藍染はん。これはチャンスや。今現在は唯一、隊長達の監視を躱せている状態なんです。全員、これからの尸魂界の存亡を賭けて戦闘をしている。なら、この状況を利用して朽木ルキアから崩宝を取り除くのがベストやと思いまへんか?」

 

「な、なるほど……いや、しかし向こうにも狙撃手はいる。そこから見られているんじゃないか?」

 

「なら、身を隠せる場所に行きましょ。相手だってこっちと同じで二人一組以上で動いてるはずや。卯ノ花さんの指示をよく聞いて、こちらも戦況を把握しながらチャンスが来るまで待つのが得策やと思います」

 

「な、なるほど……。そうしよう。なぁ、これからは敬意を込めてギンさんと、呼ばせてもらってもいいかな?」

 

「ふざけんなや!それもう別のキャラやん。バカも休み休み言えアホ!」

 

「おい」

 

ツッコんだギンの肩に東仙が手を置いた。

 

「いくらなんでもさっきから言い過ぎだぞ。市丸」

 

「うっさいわ似非ラッパー‼︎いいからはよ身を隠せるとこ探さんかいボケェ‼︎」

 

「ひどい!そこまで言わなくても!」

 

直後、泣きながら東仙は走り出した。

 

「いや話聞いてたァッ⁉︎」

 

慌てて追いかけるギンと藍染。

東仙は十字路を飛び出した直後、ガガガガッという発砲音と共に東仙に乱射された弾丸が直撃し、ペイントまみれになって倒れた。

 

「東せ……‼︎」

 

直後、十字路から盾を構えた一護、恋次が現れた。

 

「っ!」

 

藍染とギンは塀を乗り越えてお互いに別々の壁に隠れた。

 

 



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1日目(続・2)

 

『東仙、アウトー』

 

何処から聞こえたのか、マユリの間抜けな声と共に東仙は、突然地面に開いた落とし穴に落ちた。

 

「やられたらああなるのか……」

 

「てかいつこの仕掛け作ったん?そしあの穴、どこに繋がってるん?」

 

壁に隠れながら藍染とギンはそう呟いた。そして、トランシーバーに言った。

 

「こちらチームヨン様。阿散井、黒崎と交戦中。東仙隊長がやられましたわ」

 

『了解。敵はその2名ですか?』

 

「パッと見ただけやからわかりません。もしかしたら、もう一人か二人いるかもしれん」

 

『すぐに他の部隊を回させます。ポイント1-Aで一度合流して体制を立て直して下さい。その後の指示は後ほど』

 

「了解」

 

一方、恋次と一護と雛森。

 

「水上くん⁉︎今、東仙隊長を落として藍染隊長と市丸隊長と交戦中!」

 

『おいっ、てめそれ俺の煎餅だ殺すぞメガネ‼︎』

 

『弱肉強食という言葉を知らないのかい?随分とマヌケなんだね君は』

 

『いやそれ意味違ぇーから‼︎マヌケなのはテメェだろカス‼︎』

 

「何やってるのよ……」

 

てんめマジいい加減にしとけよ、するのは君の方だおっぱい星人、てめーに言われたかねんだよむっつりエロメガネ、ブチ殺す、などと声が聞こえて数秒後、またまた何処からか声が聞こえた。

 

『石田、アウトー』

 

「何やってるのよ‼︎」

 

思わずツッコンだ直後、トランシーバーから声が聞こえた。

 

『えっと、何か言った?誰?』

 

「雛森よ!ていうか何してんの⁉︎」

 

『え、いや何もしてないけど』

 

「今、石田さん死んだよね⁉︎」

 

『え、いや違うよ。今のは違うよ。今のはこの人が悪いんだ。だから、狙撃銃(こいつ)の餌食になったんだ』

 

「やったのよねつまり⁉︎って、そんなことどうでもいいから聞いて‼︎」

 

『どうでもいいんだ』

 

「現在、藍染隊長と市丸隊長と交戦中!」

 

『ああ、見えてる見えてる。多分、向こうは引き気味に応戦して、他の部隊と合流して態勢を立て直して来るはずだ。なら、合流させて、別の部隊と挟み撃ちで一気に叩く。いいな?』

 

「了解」

 

雛森はそう返すと、戦闘中の二人にそのまま指示を伝えた。

 

「了解!っしゃ、サバゲーっぽくなって来たぜ‼︎」

 

「恋次、お前サバゲーやったことあんの?」

 

「ワールドトリガー読んでな!」

 

無視することにした。

 

 

日番谷は砕蜂と歩いていた。

 

((……き、気まずい))

 

(なんだ、なんで私とこいつなんだ?)

 

(大して話したことねーよ。隊長同士って別に仲良いわけじゃねぇし)

 

(なんだ、なんの話をすればいい)

 

(いや、戦場で話をするというのが間違いなんだが……にしても気まずい)

 

(私とこいつの共通する話……二番隊と十番隊にあんま共通することないよな)

 

(と、なると他に共通すること……)

 

(他にこいつと共通する話……あっ、)

 

((祐作の愚痴だ))

 

直後、砕蜂から口を開いた。

 

「祐作とさ、現世でゲーセン行ったんだよね」

 

「マジで⁉︎」

 

「なんか出会い頭にいきなり顔面殴られたんだ。あれは驚いた」

 

「え、なんで?なんでそんなことになったの?」

 

「や、なんかよくわかんないけど私だと思われてなかったらしい。でもそのあとは太達なりマリカーなり色々とやったぞ」

 

「俺はあっち向いてホイしかやってねぇってのに……」

 

「私は祐作には勝てなかったが、夜一様よりは強かったぞ」

 

「で、それ以来あいつと割りと仲良くなったわけだ」

 

「あー、まぁそうだな。結果的に見れば」

 

「しかし、普段のあいつは怠け者でアホで失礼で何を考えてるかわからんただのバカだ。よく仲良くできるもんだなお前」

 

「…………」←自分はボロクソ言うけど他の人が悪く言うのは許せないタイプ

 

「つかあいつの斬魄刀なんなんだろうな。なんで木刀なんだよ。どうやったらあんな斬魄刀になるんだ」

 

「…………おい、貴様」

 

二番隊と十番隊の間に亀裂が生まれた。

すると、トランシーバーから声がした。

 

『もしもしバカ二人?ちと、一護や恋次の援護に行ってほしいんだけど』

 

 



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