転生者は自由に楽しく生きていく (しわす)
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終わりと始まり
いつも通りの日常は突然終わる
俺たちは自分の死がいつ来るのかなんて分からない。
それは神様が決めてることで、俺たちに選ぶ権利なんてない。
所詮、俺たちは神様の駒なんだ…
あの日、俺は友達と一緒に遊園地に遊びに来ていた。
ジェットコースターに乗り、皆で叫んでみたり、ウォータースライダーに乗ってびしょ濡れになったり、リア充たちを見つければ、皆で邪魔をしたりなど、楽しい日を過ごしていた。
その帰りの出来事だった
俺は皆と別れ、家に向かって歩いていた。
休日の日曜ということもあり、人が多い。
こういう日は何かしら起きるんだろうな~と俺は思っていた。今思えば、これが
俺の目の前で男の子の手からボールが道路へと転がった。男の子はそのボールを取りに、道路へ飛び出した。
おいおい、ヤベーんじゃねーか?
俺は考えるよりも先に、体が動いた。男の子の服を掴み、歩道へと投げ飛ばした。
投げた勢いで、俺はバランスを崩した。
次の瞬間、体に衝撃がはしった。
そこで俺は意識を手放した。
俺は…
目を覚ました場所はひどく明るい真っ白な空間だった。
「何処だ、此処?俺は…死んだんじゃ……あれ?」
「困惑してるね~」
「うおっ!」
突如目の前に現れた少年は、クスクスと笑っていた。
「ああ、そんなに不機嫌そうな顔しないでよ~」
いきなり現れたうえに笑われれば誰でも不機嫌になるわ…てか、誰だこいつ?
「ごめんごめん、君の反応が面白かったからついね。それと、僕は君達でいうところの神様だよろしく」
わー神様に会えたうれしいー
「ボー読みだね、まぁいいや」
コホンと咳払いをひとつして、神様は言った。
「君が何故、この場にいるのかというと…君の死は予定外なんだよね。だから神様皆が困っててね!ホント困っててね!」
「なんで二回も言うんだよ!迷惑かけたのは分かったから、なんで俺が此処にいるのかって聞いてんの!」
怒鳴る俺に神様はまたクスクスと笑いだした。
腹立つなこの神様…
「そんな事言うと生き返らせてあげないよ?」
「じゃ、別にいいです」
「待って!そんな事言わないで!嘘だから、生き返らせるから!てか、生き返らせないと僕が怒られるの!」
神様でも慌てるんだな~面白いなぁ~この神様。からかうのオモシロ。
「まぁ、生き返らせてくれるんなら話を聞こう。」
「はぁ…疲れる。…気を取り直して、生き返らせると言っても、もとの世界じゃない。別世界に転生してもらうんだ。これは僕達が決めたことだから、従ってもらうよ?」
俺が頷くの確認してから、神様は無邪気な子供のように目をキラキラと輝かせ、楽しそうに話した。
「と、いっても君が転生する場所はアニメや漫画の世界。好きに選べるわけじゃないから、転生先は僕達でも分からない。でも、アニメや漫画の世界に転生出来るってあり得ないことだから、僕めちゃくちゃ楽しみなんだよね!
だから君は僕の代わりに楽しんで生きてね!僕は君の生きざまを空から見守ってるよ!」
「おぉ…分かった任せろ。」
なんだこの神様…まさか!オタク…
「じゃないよ!」
「わー残念」
「ボー読みじゃないか!はぁ、早く転生しないと…君のせいで全然進まないよ……よし!仙堂真谷、君は此処でこの名を失ってもらう。そして、新しい君の名は
「なら、強靭な肉体を貰おう」
「OK、最高のものをプレゼントしよう…それじゃ、行ってらっしゃい」
神様の言葉と同時に俺の体が淡い光に包まれて消えていく。
「神様」
最後くらい、お礼を言わないとな…
「ありがとう」
「どういたしまして」
俺の体は完全に消え、本当の意味で、仙堂真谷を終えた。
初投稿です!
次回も頑張ります!
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人生再スタート
転生した俺は、新しい世界で新しい家族と暮らしていた。
5歳になった俺は、この世界がどういう世界なのかすぐに分かった。個性を持った人達がヒーローを目指すこの世界の名は、
僕のヒーローアカデミアの世界だった
両親共々とても優しい人で、めちゃくちゃ幸せだった。
そんな俺にも、個性は発現した。
今日はとても良い天気で、外で遊ぶにはもってこいだった。
「母さん、外で遊んでくる!」
「気をつけてね。」
玄関を開け、外へ出掛けた。
遊ぶために出掛けるわけじゃないんだけどね~
とある人通りの多い場所。
ガヤガヤと騒がしいほどの足音や信号の音が色々な建物に当たり、こだまする。
幼い少年にとっては、耳を塞ぎたくなるほどの大きな音。
だが、熾音にとってはそんなの気にしない。
なぜなら、慣れているからだ。
この世界に来るまでは熾音は大学生だった。
友達と色んな所に遊びに行ったのだから、当然騒がしいところにも行っている。経験済なのだ。
まぁ、そんな話はここまでにして、何故熾音が此処に来たのかというと…
それは、己の
「一通りあの医者からは聞いたけど、やっぱり試してみねぇーとな!」
ニッと笑い、熾音は個性を発動した。
すると、今まで避けていた人達がいきなり熾音の小さな体にぶつかりだした。
よろけながらも、熾音は自分の
「外は結構人がいたでしょう?」
「うん」
母親の問いに答えつつ、熾音は夕食のオムライスを口に含んだ。
少しトロミのある卵とケチャップと絡み合ったご飯が口いっぱいに広がり、おもわず頬が緩む
───────旨い
「熾音は旨そうに食べるな~父さんも腹減ってきたよ~おーい、
「あら、お帰りなさい
視織は嬉しそうにそう言い、オムライスを作り始める。透は熾音の目の前に座り、「ただいま」と笑顔を向けると、熾音も笑顔で「お帰りお父さん」と返事を返し、再びオムライスを頬張る。
「………」
俺の小さい時もこんな感じだったのかな?
熾音には、家族の思い出があまりない。
それは、熾音─真谷は幼いとき、孤児医院に預けられた子なのだ。だから、熾音には家族とどう過ごしたのか知らないのだ。
熾音にとって、今の家族はとても大切で失いたくない
大切なものを守るためには、ヒーローが良いのかもしれないが、熾音はヒーローになろうと思っていない。
ヒーローにならなくても、この人たちは必ず俺が守る。
そう、強く思っている。
この人たちを守るためには、自分が強くならないといけないんだ。神様から貰ったこの身体を鍛え、磨き、そして、
─────自由に生きていく
ヒーローにならず、それでも己の道を進んでいく
次の日から熾音は身体を鍛え始めた。
どんなに辛くても、泣き言を言わず、必死に身体を鍛えた。5歳にして、肉体を鍛え始め、強くなろうと決意した。
何年も何年も、身体を鍛え続けているうちに月日は流れ─────
───────────13年がたった。
18歳になった熾音の身体は成長し、身長も178㎝と大きくなった。
鍛え上げられたその身体は、素手でコンクリートさえも砕く程の力を身に付けた。足も普通の人とは比べ物にならない程速くなり、ジャンプ力も並外れていた。
「さーて、どうやって過ごそうか…」
ニヤリと口角をあげ、熾音は呟いた。
そして、此処から始まる仙ヶ炉熾音の新たなスタートは
───────幕をあげたのだった。
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出会い
学校からの帰り道、どこからか爆発音が響いた。
歩みを止め、音のしたほうへ顔を向けると、黒い煙がもくもくと空にのぼっているのが見えた。
「へぇ~面白そうだな、ちょっと行ってみるか」
ニヤリと笑い、足早にその場所へと向かった。
───僕のせいだ
「ヒーロー何で棒立ちィ?」
「中学生が捕まってんだと」
捕まってるって…あんな苦しいのを耐えているのか!!?
僕のせいで、僕の自分勝手のせいで、皆を困らせている。迷惑をかけてしまっている……僕の…せいで……
───情けない……
時間ばかりに気を取られた!
情けない……情けない!!!
ガリガリの痩せ男は痛む脇腹を抑えながら、自分の情けなさを恨んだ。
「まだ緑谷は飛び出していないなぁ~」
楽しそうにその様子を見ながら、熾音は呟いた。
とあるビルの屋上、熾音の視線の先には深い緑色のクセッ毛が特徴の少年─緑谷がいた。
何故、緑谷のことを知っているのかというと、熾音は転生者だ。前の世界で、熾音は漫画が大好きな青年だった。色々な漫画を読んだ熾音は当然、僕のヒーローアカデミアも読んでいる。だから知っているのだ。この先の展開も緑谷がオールマイトから力を貰うのも、捕まってもがいているのが爆豪ということも─全部知っているのだ。
だからといって、そこに邪魔をしたりなどしようと熾音は思っていなかった。
前の世界ではあり得ないことが起こっているのだ、ぶち壊したくないと思うだろう?
だから熾音は眺めるだけ、傍観者として、その様子を見る。
「そろそろ助けに行けよ
風になびく青黒い髪が揺れ、群青色の瞳が髪の間から覗く。ニヤリと笑い、群青色の瞳が怪しく光る。
あのヘドロは掴めない!有利な“個性”のヒーローを待つしかない!!
頑張って…ごめん!!ごめんなさい…!!
すぐに救けが来てくれるから…
誰かヒーローがすぐ……
爆豪の苦しそうな顔が、緑谷を動かした。
「!?」
制止の声も聞かず、飛び出した緑谷は自分でも、なんで飛び出したのかわからなかった。
「かっちゃん!!」
色々理屈はあったと思う
ただ、その時は
「君が救けを求める顔してた」
「もう少しなんだから邪魔するなあ!!!」
ヘドロの手が、緑谷に迫る──
「君を諭しておいて…己が実践しないなんて!!!」
誰もが安心するその声の主は、血を吐きながら、拳を握る。
「プロはいつだって命懸け!!!!!!
DETROIT…SMASH!!」
爆豪の身体にまとわりついていたヘドロは風圧で吹き飛ばされた。その風圧で雨が降り、人々はオールマイトの強さを垣間見た。
散ったベトベトは回収され、緑谷はヒーロー達に怒られ、逆に爆豪は称賛された。
その様子を見ていた熾音は楽しそうに笑い、屋上を後にした。
「さて、
傍観者といっても見てるだけなんてそんなつまらないことしたくないよ?
ちょっとは関わっといた方が面白いに決まってる。
ニヤリと口角を上げる熾音はゆっくりと緑谷に会いに行く─
とぼとぼと家に向かって歩いていると、角の道からオールマイトが現れた。
突然のことに驚きながらも、緑谷は何故、ここにオールマイトがいるのか、何故自分の前に現れたのか気になり、聞いてみると、
「抜けるくらいワケないさ!!
何故なら私はオールマゲボォッ!!!」
と血を吐きながら答えてくれた。
血を吐くのにはびびってしまう……。
血を拭いながら、オールマイトは緑谷を見据える。
「礼と訂正…そして提案をしに来たんだ
君の身の上を聞いてなければ、口先だけのニセ筋となるところだった、ありがとう!!」
緑谷はお礼を言うオールマイトに申し訳ない気持ちが強く、俯いてまともに顔を見れなかった。
自分が悪いから、仕事の邪魔をした“無個性”の自分が、生意気に……
「あの場の誰でもない小心者で“無個性”の君だったから、私は動かされた!!」
トップヒーローは学生時から逸話を残す者がいる
逸話を残してきた者の多くが、話をある言葉で結ぶ。
「「考えるより先に体が動いていた」と!!」
オールマイトの言葉を聞き、緑谷は母の言葉を思い出していた。
ごめんねごめんねぇ出久……
そう泣きながら緑谷に抱きつき、涙を流す母の姿。
「君もそうだったんだろう!?」
心臓が、鼓動が、強くはねる。
「……うん…」
「君はヒーローになれる」
オールマイトの言葉が、胸を刺激する。
「頑張んないと…!!」
「あんただっけ?飛び出したの?」
声が聞こえ、体がビクッと跳ね上がる。後ろへ振り向くと、青黒い髪の青年が立っていた。
「あ、あの……」
「ん?ああ、ごめん。さっきのヘドロの事件見てたんだよね~…で、飛び出したのって君かい?」
ニヤリと笑う青年に少しビクつきながらも、答える。
「はい…そうです……」
視線をその青年から外しながら答える緑谷を見て、青年は笑い声をあげて笑った。
「アハハハハ!そんなにビビんなくても平気だよ?お前をどうこうしようなんざ考えてない。だから、そんなに怯えんな」
そう言い、青年は緑谷の頭の上に手をのせて、わしゃわしゃと撫でた。
「えっえっ?」
突然頭を撫でられ、困惑する緑谷だったが、次の青年の言葉で、緑谷は驚いた。
「頑張れよ」
「えっ?怒らないんですか?」
顔を見ながらそう言うと、青年は笑いながら言った。
「あんなキモイモノに立ち向かう勇気があるんだから、俺は怒ったりなんかしねぇよ?」
「なんでですか?」
緑谷の問いに、撫でる手を止め、考える仕草をとると、再びニヤリと口角をあげて、答えた。
「そっちの方が、面白そうだから」
「まぁ、俺が言いたかったのはこれだけ。じゃぁね」
くるりと踵を返し、歩き出そうとする足を止め、緑谷の方へ顔を向けると
「俺は仙ヶ炉熾音、またいつかなあ~」
名乗った。緑谷も、熾音に自分の名を言った。
「僕は緑谷出久です!」
「じゃあな」と手を振りながら、熾音は歩き出した。
「これからどんどん強くなれよ出久、そんでもって、俺と戦ってみようぜ」
楽しそうに呟き、熾音は家に向かい、歩みを進めた。
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偶然を装い出会う
━━━春、新しい制服を身に纏い、桜のしげるこの季節。新入生は新しい場所で、自分がこれから生活するためにこの場所に慣れることから始まる。
それは、緑谷出久も例外ではない━━━━
雄英高校ヒーロー科
全国同科中
最も人気で最も困難。その倍率は例年300を越える!!
平和の象徴「オールマイト」
燃焼系ヒーロー「エンデヴァー」
ベストジーニスト8年連続受賞「ベストジーニスト」
何故、300を越える倍率なのかというと
一般入試定員36名
18人ずつの2クラスしかないからだ
「ドアでかっ…バリアフリーか?」
緑谷の目の前に、二メートルは越えるであろう大きなドアが設置されていた。
見慣れたドアでなく、大きなドア。様々な人が入れるようにそうにしたのだろう。
さすが雄英と言ったところか
大きすぎるドアに思わず息を飲む。
だが、すぐに気を取り直し、ドアに手をかける。
「ふーっ」
息を吐き、ドキドキする心臓を落ち着かせる。
どうか、かっちゃんとあの人とは違うクラスでありますように…
そう祈りながら、ドアを開けた。
「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」
「思わねーよてめーどこ中だよ端役が!」
━━━━2トップ!!
「ボ…俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」
メガネと謎の手の動きが特徴の少年は答えた。
「聡明~~~~~!?くそエリートじゃねぇかブッ殺し甲斐がありそだな」
ヒーローらしからぬ発言をする少年に、メガネをかけた少年━飯田は驚きを隠せなかった。
「君ひどいな本当にヒーロー志望か!?」
飯田はふと、ドアの方へ視線を向けると、緑谷と目が合った。飯田は自己紹介をしようとするが、先程の話を聞いていた為、その必要はないと思い、自分から名乗ってみた。
「僕は緑谷よろしく飯田くん…」
オドオドしながら飯田と話していると、明るい声が聞こえた。
「あ!そのモサモサ頭は!!
地味めの!!」
ふわふわとした感じの少女は、嬉しそうに緑谷に話しかけていると、廊下側から声が聞こえ、後ろへ振り向くと、寝袋を着て横になっている男の人がいた。
寝袋から出て、立ち上がった。
「担任の相澤消太だよろしくね」
自分の紹介が終わると、先程の寝袋の中をゴソゴソしていると、雄英の体操着を取りだし、グラウンドに出ろと言った。
「個性把握…テストォ!?」
◆
緑谷が相澤の理不尽発言を受けているちょうどその頃、熾音はというと…
「さ~て、
楽しそうに、
「確か、死柄木達がいるところってどっかのバーだったよな~何処だったかな?」
死ぬ前に読んでいた内容を思い出しながら、熾音は薄暗い路地で絡んで来た不良たちをボコボコにしていた。地面に寝転んで動かない者もいれば、痙攣している者もいた。腕がおかしな方向へ曲がっている不良その1に熾音は笑顔を浮かべて話しかけた。
「ちゃんと人を選んでから、カツアゲしねぇと今日みたいになるぜ?」
「ごめんなさい…許して下さい…」
怯える不良その1は熾音に許しを請う。
だが、熾音は笑顔を浮かべたまま、意識を奪った。熾音は自分のスマホを取り出すと救急車を呼んだ。
「あーすみません、怪我人が3名ほど路地裏で倒れているんです。はい、3人とも意識はないです。場所は━━━━━」
「はぁ、全く皆もう少し身体を鍛えた方がいいぜ?個性に頼りすぎんのも良くねぇよな…はぁ」
溜め息を着き、熾音は街中を歩きながら死柄木のいそうな場所を探していた。
しばらく歩いていると、それらしい場所に出た。銀座一丁目かのような場所にはスナックなど様々な看板などが合った。熾音は人がいそうにない場所を探し、それっぽい店を見つけた。絶対に見落としそうな場所に建てられたその店は他の店とは明らかに違う雰囲気が漂っていた。
薄暗い路地のような場所の奥に、ひっそりと建たずんでいる店に熾音は足を向けた。
キィ
甲高い音と共に、ドアを押し開ける。
店のなかは薄暗く、微かな光が点いているだけだった。まるで誰かが怪談話をしている時のような、そんな不気味な雰囲気を漂わせていた。
なんか、いそうな感じだな…
中に入り、ドアを閉める。気配を探り、人がいるのかを確認していると殺気を感じ、そこへ視線を向けた。カウンター席に座っている細身の男がこちらを睨み付けるように見ていた。身体と顔に血の気のない手をはめている男の目は、薄暗い店内の中でも、赤く怪しく光っていた。
その男の姿を見た熾音は、ニヤリと笑った。
「お前誰だ?なんでこんな所にいる」
男は熾音に問いかける。
こんなに簡単に見つかるなんてな…
「アンタに会いたくてな……」
真っ直ぐと群青色の瞳が男を見据える。
「━━死柄木弔」
さーて、どうやって仲間に入れてもらおうかな
楽しませてくれよ?
相変わらずの下手っぴ小説でした。
なんか熾音をかっこよく書いてるつもりではいますが、書けているのか不安です…
次回は死柄木、黒霧、熾音の話を書きたいと思ってます。
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同盟
タイトルの通り、熾音は死柄木と組みます!
薄暗い店内に似合わない程、笑みを浮かべ楽しそうに笑う熾音に死柄木は警戒していた。
なんだ、この男…俺が殺気を放ってるいるにも関わらず平気な顔して笑っていやがる……
いや、それよりも━━━
「お前、なんで俺の名前知ってんだ」
「さ~なんでだろうね?」
ニヤニヤと笑いながら答えをはぐらかし、熾音は自分の要件を言った。
「俺を
「は?何言ってんだお前バカかよ。知りもしねぇ相手を入れるわけないだろ?」
吐き捨てるように言う死柄木に、熾音は笑みを浮かべ、ゆっくりと死柄木に近づく。
「確かに、知らないやつと一緒にやるなんて嫌だよなぁ~でもよ、」
死柄木の目の前に立つと、その瞳で死柄木を見据え、言葉を続ける。
「チンピラ同然の奴を仲間に引き入れるのは、そいつらを知ってるからか?違うだろ?
なら、俺の事を知らなくても仲間に出来るだろ?それとも……
何か理由がないと駄目なのかな?死柄木弔さん?」
体が、動かない……
なんで俺は、こいつに恐怖してんだ…?
俺の個性なら、こんな奴、殺すことなんて簡単じゃないか…なのに、体が言うことを訊かない…
目の前にいるこいつは一体何者なんだ…?
死柄木は目の前にいる熾音を見て、やっとの思いで、言葉を吐き出した。
「…っ、お前は、誰…なんだ」
「やっと知りたいと思ったかい?
俺は━━」
「何を、話しているのですか?」
低い声が、薄暗い店内に響く。
熾音の自己紹介を中断した男は、先程までいなかった筈のカウンターに頭や手、服から出ている箇所が靄状態の男が、立っていた。
熾音が会いたいと思っていたもう一人の男…黒霧は熾音に視線を向けながら、聞いた。
「貴方は誰ですか?」
その問いに、熾音は楽しそうに笑みを浮かべ、答えた。
「俺は仙ヶ炉熾音。自分が楽しみたいことをする自由人さ」
「なんだよそれ、俺達とそんなに変わらないじゃないか」
はぁ、と頬杖をつきながらそう言う死柄木に熾音はニヤリと笑った。
「たいして変わらないなら、俺を仲間に入れられるだろ?」
熾音の言葉に、死柄木は苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべ、黒霧の方へ視線を向けた。
死柄木の視線に気付くと、黒霧は熾音に言った。
「何故、仲間になりたいのですか?ヒーローになりたいとは思わないのですか?」
黒霧の疑問は、死柄木の疑問でもあった。
幼い時、誰もがなりたいと願ったモノ
悪を倒すその姿はとてもかっこよく、憧れのモノ
どんな困難にも挫けず、諦めないで前に進む姿は、見る人の胸を熱くする。
応援したいと思う。
特別な力があるからこそ、誰かを守る。
特別な力があるからこそ、悪に立ち向かう。
誰かが助けを呼ぶ声が聞こえるから、助ける。
どんなにボロボロになっても、どんなに諦めそうになっても、声が聞こえるから、助けを必要とする人の声が聞こえる以上、それを無下には出来ない。自分なら、この力なら、守り抜くことが出来る。悪に屈しないその姿を、人々はヒーローと呼び、称賛する。
力がある者が、無い者を守る。
助けを求める人がいれば、手を差し出す。
力の無い者は夢を抱き、憧れ続ける。
他とは違う力を持つ者はヒーローになり、人々を救う。
誰もが憧れるヒーローに、この世界は全員が叶えることが出来る可能性を秘めている。
だからこそ、人々はその夢を現実にするために、その道の学校へ行き、職業になったヒーローを目指す。
憧れのモノになれるというのはとても嬉しいことで、有り難いことだ。
ほとんどの人が、
だからこそ、わざわざ敵になりたいと言う熾音に二人は疑問を抱いたのだ。
何故、敵になりたいのか
何故、ヒーローを目指さないのか
必ずしも、ヒーローになれとは言わない。全員がヒーローになりたいと思っていても、己の力がヒーロー向きではないのであれば、その夢を諦め、別の仕事に就く人もいる。
でもそれは、初めっからヒーローになりたくない。と思っていた訳ではない。己の力が、向いていないと分かったからこそ、他の道を進むことを選ぶのだ。
だが、目の前のこの男は違う。
初めっからヒーローになどなろうとしていない、そんな目をしていた。
━━俺もヒーローなんかなりたいとは死んでも思いたくない。あんな社会のゴミなんかいらないんだ。偽善者面したあいつ等の皮を剥がしてやりたい。粉々にしてやりたい。
この男もそうなのか?
…いや、違うな。こいつは、自分さえ楽しければなんでも良い奴なんだ…
ヒーローじゃなくても、面白いと思ってるんだな、こいつは………仲間に、入れるべきだろうか…?こいつの個性は知らないけど、でも、強いことは間違いなさそうだ。
チラリと黒霧に視線を送ると、死柄木の言いたいことが伝わったのか、コクりと頷いた。
死柄木は熾音の方へ顔を向け、両手を広げて、言った。
「歓迎するよ、仙ヶ炉熾音。
ようこそ
「よろしくなぁ~弔ちゃんと黒霧」
「おい、弔ちゃんてなんだよ」
熾音は死柄木を無視し、黒霧に握手を求め、右手を差し出した。黒霧は熾音の手をとり、握手した。
「何故、私と死柄木弔の名を知っているのか気になりますが、まぁ、良いです。
よろしくお願いします仙ヶ炉熾音」
「熾音で良いよフルネームはちと言いづらいだろ?」
熾音の言葉に、黒霧は少し考える仕草をして、答えた。
「では、お言葉に甘えて呼ばせていただきます
熾音」
「うん、仲が良くなった感じでいいな」
ニヤッと笑い、熾音は満足げに言った。すると無視をされていた死柄木は手を熾音に伸ばした。五指で触れれば触れた場所がボロボロに崩れる個性。それが熾音に迫っていた。せっかく、新しい仲間が出来たというのに、死柄木の短気さに、黒霧は溜め息を吐いていた。
死柄木の五指が、熾音の首に触れようとしていた。
だが、その手は熾音に捕まれた。
「そう攻撃的になるなよ……もしかして、寂しかったのか?一人にされたから?」
熾音は死柄木の手を掴んだまま、椅子に座らせた。掴まれたことが不服なのか、手のしたでよく見えない顔が、子供のようにすねているのが見てとれた。
熾音は笑いながら、死柄木の手を離し、その手を頭にもっていき、ポンポンと子供にしてあげるときのように、優しく撫でた。
「何すんだ…」
「こうすりゃ、落ち着くかな?ってね」
こんなんで落ち着くわけないだろ━━そう言おうとしたが、死柄木は何も言わなかった。
優しく、優しく撫でる熾音の手が気持ちよくて、死柄木は目を瞑って、味わっていた。
「な、落ち着けるだろ?」
「……少しな」
子供に撫でられて、何喜んでんだ俺…
気恥ずかしくなったのか、死柄木は熾音の手を振り払った。熾音は振り払われたことに特に何も気にしていないのか、ニヤニヤ笑いながら、死柄木に話しかけた。
「ああそうだ、俺は自由にやらせてもらうからな~あと、オールマイトと戦ってみたいから、良いかな?」
「何故それを?」
黒霧の問いに、熾音は答える。
「ん~なんとなく。でも、オールマイトがいなくなれば、皆が困るよね?
一人に頼りすぎ、助けてもらえるのが当たり前だと思い込んでいるあいつらに、知らしめてやりたいって思ってる。
まぁ、自分が楽しければそれで良いんだけどな」
死柄木の隣に腰をおろし、ニヤッと楽しそうに笑う。
「分かりました、良いでしょう。
ですが、我々の邪魔などはしないでください。」
「分かった」
「それじゃぁ、俺達の作戦を教えるよ」
死柄木は楽しげに、口元を緩め、これからする事を熾音に教え始めた。
━━仲間に入ったのはいいが、これからどうなるのか楽しみだな~
「まずはな━━━━━」
一人は社会のゴミを排除するため
一人は自由に生きるため
楽しみたいがために入った
その選択が、熾音にとってどう出るのか、
それはまだ、誰も知らない━━━
いまいち熾音の喋り方が掴めない…
死柄木は熾音にわりと心許したりしてます。
次回もお楽しみに!
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宣戦布告のお手伝い
どうか、暖かい目で見てください。
薄暗く、雰囲気のあるバーに甲高い音が響いた。
音のする方へ視線を向けると、上下黒の作業着を身に纏った青黒い髪をした青年━熾音が、店内へと入ってきた。
「弔ちゃん、黒霧、昨日ぶり~」
陽気な声で挨拶をすると、熾音は死柄木の隣に腰を降ろした。
「チッ、弔ちゃんやめろ」
頬杖を付きながら舌打ちする死柄木に「良いじゃん」と笑いながら言い、熾音はカウンターの向こうにいる黒霧に視線を向けた。
「熾音、今日はいきなり帰らないでください。仕事がありますので。」
そう言い、黒霧は熾音にグラスを差し出した。
「了解。気が利くね、サンキュー」
差し出されたグラスを受け取り、一気に飲み干した。冷たい水が、喉を一気に潤す。
「冷たくてウマイな~」
「昨日の話の続きだ。」
冷えた水に心を癒されながら死柄木の言葉に、熾音は視線だけを向けて言った。
「宣戦布告、付き合うぜ━━弔」
「クソ!マジムカつく…」
死柄木は悪態を付きながら、足下に転がっている石を蹴りつけた。石は遠くの方へと飛ばされ、溝の中に入っていった。
「俺だって外ぐらい出るに決まってんだろが……」
俺はニートじゃねーし
そう呟いた死柄木の言葉に、陽気な声が返ってきた。
「そんなに怒んなって弔ちゃん。ハゲるぞ~」
「お前のせいで苛ついてんだぞ、熾音。あと、俺の毛根は強いからハゲねーよ」
舌打ちをしながら、死柄木は熾音に答えた。
「ハゲないんなら怒らせても大丈夫そうだな~
てか、めちゃくちゃマスコミ来てんじゃん。」
熾音と死柄木の目の前には、カメラマンやアナウンサーなど、マスコミ達が雄英高校の門の前に集まっていた。
「とっとと済ませて帰るぞ…」
面倒臭そうにそう言う死柄木に熾音は欠伸をしながら適当に返事を返した。
「ふぁ~い……にしても暑いね〜こんないい日は外に出るのが一番だよ。そう思うだろ、弔ちゃん?」
「ふざけんな、こんな暑い思いは嫌だね。アジトで寝てる方がいいに決まってる。」
頬を伝う汗を拭いながら、死柄木は吐き捨てるように言った。
「はいニート発言〜」
その言葉をバッサリと切り落とすかのように、熾音も言う。
「おい熾音、俺はニートじゃねぇって言ってんだろ!」
「そう怒鳴るなよ弔ちゃん。目立っちゃうだろ?」
熾音の言葉に、死柄木は後ろを振り向くと何人かのマスコミがこちらをチラチラと見ていたのが目に入った。
「チッお前、絶対殺すからな……」
舌打ちをし、熾音に殺害宣言すると、当の本人は笑みを浮かべたまま死柄木の肩に手を置いて、一言言った。
「おお、殺れるもんなら殺ってみろ期待してるぞ弔ちゃん。てか、早く行ってこいよ俺の個性でお前の姿は逸らしといたからさ〜」
ほれ、とっとと行ってこい。と言うように片手でしっしっと払った。死柄木はため息をつき、舌打ちをしながらマスコミ達の中へと消えていった。
しばらくして、マスコミ達が崩れた門の中に入り始めた。
ドタドタと音がしそうなぐらいの勢いで次々と取材陣が入っていく。その中から必死にこちらに来ようとする細身の男が「助けろ」と言わんばかりの顔で熾音を凝視していた。だが、熾音は助けるどころか何もせず、ただその様子を眺めていただけだった。終いには
うわ凄い状況だな〜
と他人行儀だった。
見ているのも飽きたのか、熾音は死柄木の細い手首を掴み、自分のほうへ引っ張った。
取材陣から逃れられた死柄木の表情はいつにも増して、青白くなっていた。
「どうした弔ちゃん、疲れきっているぞ?」
「お前が、早く、助けに、来ないからだろ…!」
途切れ途切れに言葉を放つ死柄木を見て、熾音は
「面白かったからさ、見ていたくなっちゃってね〜」
と、笑顔を見せながら答えた。
いちいち文句を言うのも疲れたのか、死柄木は大きな溜息をつき、元来た道を戻り始めた。
「あれ、もう帰るのか?」
「何時までもいたってしょうがねぇだろ。ヒーローに捕まるなんてことしたら情ねーだろが。」
死柄木の言葉に、それもそうかと呟き、死柄木の後に続いた。背後で騒ぐ取材陣達の声を聞きながら、熾音も歩き始めた。不意に後ろへ振り向き、ゲートの後ろにある高い建物を見つめると、ニヤリと口角を上げた。
「ここからが本番だぜ、
油断するな、常に気を配れ。
周りを見ろ
お前等の目の前には━━━
━━━━
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やって来ましたUSJ!
「やぁ、雄英の諸君。とは言っても、一クラスしかいないけどねー」
「おい熾音、何ヒーロー共に手なんか振ってんだよ」
「えっ何何?手を振って欲しいって?仕方ないな〜ほら、ペロキャンあげるから勘弁して」
「誰が手を振ってほしいっつたよ!ふざけんなよ熾音!」
ペロキャンを差し出してくる熾音にキレながらも、素直に受け取り、包み紙を開いて口に含む弔に子供だな〜と思いつつも、弔から視線を外し、雄英生のいる場所へと視線を向けた。視線の先には、縮れ毛のそばかす少年━━緑谷出久の姿があった。
熾音は口角を吊り上げ、ニヤリと笑って見せた。
「さて、ひと暴れしますかな」
その言葉と同時に、全身黒い服を身にまとい、首元には包帯のようなものを巻いた男━━イレイザーヘッドが飛び込んできた。
◆
雄英のゲートを破壊されたのは、先日の事だった。
簡単には壊れない様に造られたはずのゲートは、口の中に含めば、直ぐにボロボロと崩れてしまうお菓子のように、崩されていた。マスコミ達の仕業でないとすれば、それはもう、敵しかいない。
そう思ったからこそ、教師を二人から三人に変えたのだ。
念の為の警戒態勢が、役に立つとは……そう思いながらも、イレイザーヘッドこと相澤消太は、生徒達を守る為に、飛び出した。
飛び出したイレイザーヘッドは、自分に攻撃を仕掛けてくる敵達を、首元に巻いてある包帯のような物を使い、個性を消しながら、敵を倒していた。
イレイザーヘッドこと相澤消太の個性は『抹消』見ただけで相手の個性を消し、その一瞬の隙を狙って相手を倒す。首元に巻かれた、包帯のような物は実は武器であり、その布は特殊合金で造られた、とても硬い布なのだ。その硬い布を使い、相手を捕まえる捕縛武器を、相澤は愛用していた。
「生徒達の事を思っての行動かな?イレイザーヘッドさん」
「………ツ!」
敵を地面に打ち付けた直後、相澤の耳に届けられた声の主は、いつの間にか相澤の背後にいた。慌てて後ろを振り返れば、そこには青黒い髪をゆらゆらと揺らし、ニヤリと口元に笑みを浮かべている、ぐるぐる巻のメガネという可笑しなものを身につけながら、そこから覗く群青色の瞳を持った青年が、そこに居た。先程まで弔をからかっていたその青年━━熾音は相澤を真っ直ぐと見つめた。
いつすり抜けたのか、どうやって気付かれないように通ったのか、そいつの個性なのか、そして、あのメガネは何なのか、疑問が相澤の頭に浮かぶ。だが、その事を考えるよりもまずは、先に目の前の敵を倒す事に集中しようと思考を中断させる。
「………どんなものであれ、俺がお前らを食い止める。ここから先には、行かせねぇ」
絶対に行かせまいと、相澤は目の前の青年を睨みつけた。すると、ザワザワと相澤の髪が何かに引っ張られるようにして、オールバックになり、瞳の色が赤く光った。個性を発動したのだ。だが、熾音は攻撃を仕掛けようとはせず、ニヤリと笑みを浮かべているだけだった。
「イレイザーヘッド、……いや、相澤消太」
「?!」
突然フルネームを言われ、相澤の身体が硬直した。それもそうだろう。見ず知らずの人間に突然名前を呼ばれれば、誰だって驚く。
名前を呼ばれたことから、相澤は自分の素性を把握されていると思い、警戒心を強めた。
(やっぱ名前呼ばれると警戒するよな〜いい事学んだ。転生前の記憶もあるに越したことはないな……)
熾音は心の中で呟きながら、うんうんと頷いた。
「ところで、何で俺がアンタの名前を知ってるのか気になるだろ?」
「ああ……だが、教えてくれそうには見えないな」
相澤の言葉に、熾音は楽しそうに笑った。
「正解。教えるつもりはないよ……それよりも、俺と話してていいのか?ヒーロー」
熾音の言葉に眉を顰める相澤だったが、次の瞬間、
SKLIT!
BOOOOM!
階段の上の方から爆発音が、響いた。
顔を上げて、音のした方へと視線を向ける。そこには、逃げ道を塞がれ、逃げられない雄英生と雄英生の前に立ちはだかる、全身黒い靄に覆われた敵が対峙していた。先頭には赤い髪の少年━━切島鋭児郎と目付きの悪いクリーム色のツンツン頭の少年━━爆豪勝己がいた。先の爆発音からして、この二人が攻撃したのだろう。
━━しまった一瞬まばたきの隙に…!一番厄介そうなやつを!
首元の捕縛武器を掴み、瞬きをしてもう一度個性を使い、助けに行こうと駆け出すが、次の瞬間、
「行かせるわけないだろ」
「がはっ……!?」
背中から地面に叩きつけられ、息が止まりそうになるほどの強烈な衝撃が、相澤を見舞う。
「悪いな、行かせるわけにはいかないんだよ」
群青色の瞳で相澤を見た熾音は、優しい笑みを浮かべ、呟いた。
「………できれば、このまま眠ってくれると助かる」
熾音は立ち上がり、未だ動いていない弔の方へ視線を向けた。
全身に手をつけた細身の男は、熾音と視線が合うとにやりと口端を吊り上げ、笑う。
「俺らの役目が無くなっちゃうだろ熾音?折角
そう言うと細身の男は、背後でじっとしている脳みそが丸出しの怪物を指さした。玩具をひけらかしたい小さな子どのように。
「
「はぁ?何だよそれ、黒霧に頼んで買ってきてもらうからいいよもう……」
「黒霧頼るなよ弔ちゃん。甘えん坊さんだな〜」
熾音はケラケラ笑いながら、一瞬で弔の背後でじっとしている怪物の前に移動した。
━━速い!?
それはとても捉えきれない速度だった。未だ地面に倒れ込んでいる相澤は、一瞬の出来事に目を見開いた。
捉えきれない速度、恐らくオールマイトの速さと同等。いや、それ以上なんじゃ━━━
でかい爆発音は聞こえない。まだ戦ってる最中かな?出久
熾音はニヤリと口元を吊り上げた。
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