ボクと異能と召喚獣 りめいく (アルス@大罪)
しおりを挟む

プロローグってやつです! by主人公

一応「」等の使い分けをこちらに。

「」:キャラクター達のセリフ。
『』:2人以上が同時に言うセリフ。または人のセリフの引用等。
[]:電話越し、壁等を挟んで聞こえるセリフ。



ー優子sideー

 

「我々CクラスはAクラスに試召戦争を申し込みます!」

 

Aクラスのドアを開けて入ってきたCクラスの……小山友香さんだったかしら?……が突然宣戦布告をしてきた。

 

「……木下優子、あなたを許さない!」

「え!?」

 

小山さんはそう言いながらアタシを睨みつける。

身に覚えのないアタシは非常に戸惑った。

 

「とにかく!三十分後に戦争を始めるわ。いいわね!」

「……わかった」

 

アタシの代わりにクラスメイトの霧島翔子が返答してくれた。

 

「…………」

 

振り返りながらも、小山さんはアタシを睨んでAクラスから出ていった。

 

「……受けちゃったけど、良かった?代表(・・)

 

翔子はどうやら代表であるあの子から受けるよう言われたわけではなく、独断で宣戦布告を受けたらしい。

 

「…………」

「代表?」

 

代表からの返事が無い、もしかしてーー

 

「…………すぅ…………すぅ…………」

 

やっぱり!

 

「代表!起きて!!」

「なひゃい!?」

 

我らが代表は変な声をあげながら起きた。べ、別に可愛くてお持ち帰りしたいとか思ってないわ!

 

ー優子side outー

 

 

ー???sideー

 

「ぅぅ……まだ眠い……」

 

気持ちよく眠っていたところを、木下優子さんに起こされました。

 

「……いつから寝てたの?」

「えっと……HR終わってすぐ……ですか?」

「アタシに聞かないでよ……」

 

ボクの返答に木下さんは呆れたように額に手をやる。

とりあえず昨日からのBクラスとFクラスの戦争はどうなったのかな?

 

「Fクラスの試召戦争は終わったんですか?」

「まだよ、それよりもウチのクラスがCクラスに宣戦布告されたわ」

「え!?なんでですか!?ボクなにかしました!?」

「理由なんて知らないわよ!とにかくあと三十分もしたら試召戦争が始まるわ」

「……作戦はどうする?」

 

んーと、どうしよ……

 

「とりあえず時間もないので3人1組の部隊を5つ程度作ってその人達メインで攻めてもらいましょう。

遊撃隊として10人程度用意、近衛兵は5人でいいかな……?

更に5人を伝令要員として確保あとは防衛ラインとしてでてもらいます。これでどうでしょう?」

 

Aクラスの点数ならこの部隊構成でCクラスまでは勝てるかな、いろいろ不安な部分もありますけどね。Aクラス並みの点数保持者とかくると厄介です。

 

「部隊をどう動かすの?どこからCクラスに入るとかその辺り考えないと……」

「Cクラスは隣に位置してるから戦場を限定されるので戦う人数は少なくなります。現状このまま正面突破でいいかと。また空き教室なり屋上に行かれても遊撃隊、メインの部隊で攻めきれると思います」

「なるほどね、ならその部隊構成でいきましょ」

「キーになりそうなメインの部隊はバランスよく編成したいですね。霧島さんお願いいてもいいですか?」

「……わかった。あと翔子でいいって前に言った」

「え、でもーー」

「…………」

 

霧島さんは無言で、でも目を潤ませてボクを見てきます。

む、無言のプレッシャーってやつですか……!

 

「……お、お願いします、翔子さん」

「……ん。」

 

そう言って霧……翔子さんは満足そうに頷いた。

これから戦争が始まるのかぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やだなぁ。内心ボクは涙を流して、汗を滝のように流してました。

 

ー???side outー




次回はCクラス戦です。
かつて読んだ下さった方々も初めての方々も、暇つぶし程度に読んでいただければと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Cクラス戦 by優子

リメイク前の2話と3話を合わせました。


ー第三者sideー

 

Cクラス対Aクラス

 

Cクラスの教室出入り口にてAクラスと戦闘となった。

 

試獣召喚(サモン)!』

 

キーワードを叫んだ生徒の前に幾何学模様があらわれ、召喚獣が出てくる。

Cクラスの生徒の召喚獣は柔道着に薙刀のいう装備。

対するAクラスの生徒の召喚獣は西洋風の鎧に直剣と小さな盾。

 

化学

 

Cクラス Cモブ1 148点

 

VS

 

Aクラス Aモブ1 357点

 

「クソッやっぱり高いな……」

「さっさと終わらせるよ」

 

Aクラスの召喚獣の剣がCクラスの召喚獣の薙刀ごと切り裂き、Cクラスの生徒の召喚獣が縦に真っ二つにされる。

 

Cクラス Cモブ1 DEAD

 

VS

 

Aクラス Aモブ1 357点

 

戦闘が始まってはすぐに終わるが、また新しい相手が出てくるために攻め切れていない。

しかし開始10分たらずでCクラスの生徒の約半数が戦死した。

対するAクラスの戦死者は0。圧倒的と言える。

 

「戦死者は補習だ!さっさと来い!」

 

この声とともに、何処からともなく現れたのはこの学校の教員西村宗一郎。通称、鉄人。

 

「て、鉄人!?い、嫌だ!!あんな拷問耐えられるわけがない!!」

「拷問?何を言っている、これは教育だ!

趣味は勉強、尊敬する人は二宮金次郎という理想的な生徒に教育してやる!」

 

これを聞いた生徒は皆それは拷問だと思ったそうだ。

 

「だ、誰か助けーーー」

 

西村教諭の肩に担がれたCクラスの生徒は抵抗することさえ出来ぬまま、補習室に連行された。

 

「このまま押しきれればいいんだけどね」

「そうだね久保君、まぁ即興の部隊構成でここまで攻めることができてるのなら良いんじゃない?」

「それもそうだね。よし、そろそろ僕達も攻撃に参加しようか」

 

遊撃隊の指揮を任された久保利光、同じく遊撃隊のメンバーの佐藤美穂を含めた数名が攻撃部隊と共にCクラスへの攻撃を開始する。

 

 

その頃Aクラス本陣は、

 

 

「ーーーで、身に覚えがないと」

「ええ、だからなんであんな態度をとられたのかわからないのよ」

「ふむ」

 

今回の試召戦争を挑んできたCクラスの小山友香の言ったことについて、話し合いをしていた。

 

「ーーー考えてもしょうがないかなぁ……」

 

宣戦布告されたときの様子を聞いていたAクラス代表は、腕を組んで考える素振りを見せたが、10秒もしないで考えることをやめた。

 

「え、ちょっと真面目にーーー」

「今は戦争中です。

戦後対談のときにでも聞けばいいだけです」

「そ、そうね」

「まぁ、この戦争が個人の感情によるものならそれを利用しましょう。工藤さん」

「はいは〜い。何かな、代表サン?」

 

代表に呼ばれてやってきたのは、黄緑色の髪をショートカットにした女子生徒、工藤愛子だ。今回の戦争では伝令部隊を任されている。

 

「遊撃隊に伝令を」

 

指示を聞いた工藤は教室を出て行った。

戦場となっているCクラスの教室出入り口では、Aクラスの遊撃隊が攻撃に参加したもののーーー

 

「狭いね」

「そうだな、下がった方が良くないか?

久保、どうする?」

 

そう、隣の教室へ攻めに10人以上で行けば通路、戦場での自分の立つ位置が確保できない。

おそらくそれ見込んで攻撃部隊が3人1組になっている。

 

「そうだな「伝令ダヨ」ん?工藤さん?」

 

戦況を見て指示を出そうとした久保に伝令部隊の工藤が代表からの指示を伝える。

 

「…………了解した」

 

伝令を聞いた久保の指示の元、遊撃隊と攻撃部隊が入れ代わる。

遊撃隊は2人1組でそれぞれCクラスに攻めていく。

攻撃部隊はAクラスへ戻っていった。

 

「……ん?……!Aクラス代表の霧島翔子だ!木下優子もいるぞ!」

 

戦闘中のCクラスの生徒がAクラス代表を含む数十名が教室から出ていくのを目撃し、Cクラス代表小山に告げる。

 

「なんですって!?Aクラスを足止めして!木下優子、そして代表を討ち取るわよ!」

 

小山の指示により、Cクラスの教室にいた全生徒が出てAクラス遊撃隊を足止めする。

 

試獣召喚(サモン)!』

 

Aクラス1人に対してCクラスも1人になるように対峙する。点数差があるもののそうしなければ、Aクラス代表を討ち取れる人数を確保できないからだ。

 

化学

 

Cクラス Cモブ31〜40 平均135点

 

VS

 

Aクラス 久保利光、佐藤美穂、モブ×8 平均331点

 

戦闘している間に残った十数名がAクラス代表の元に向かう

 

「作戦通りかな」

 

久保は眼鏡を指であげてそう呟いた。

 

「Aクラス覚悟ぉぉ!」

「Cクラスに負けるかよ!」

試獣召喚(サモン)!』

 

古典

 

Cクラス Cモブ41 110点

 

VS

 

Aクラス Aモブ25 240点

 

「木下優子!覚悟なさい!試獣召喚(サモン)!」

「なんでアタシを目の敵にするのよ!試獣召喚(サモン)!」

「代表!援護する!試獣召喚(サモン)!」

 

小山と木下がほぼ同時に召喚獣を召喚。小山を援護するためにクラスメイトの男子も召喚する。

 

古典

 

Cクラス代表 小山友香 & Cモブ49 200点 & 240点

 

VS

 

Aクラス 木下優子 390点

 

全身を包む銀色の鎧を見に纏い、身の丈程の大きさの鎧と同じ色のランスと体の半分以上を隠す大盾を軽々と持ち上げる木下の召喚獣。

対するCクラス代表の小山の召喚獣は、和服に制服の同じ赤いスカートを着て、三叉の槍を持っている。

男子生徒は、鎧というより服に近い軽装に長刀という装備だ。

左右、あるいは前後から木下の召喚獣を追い詰めていく。

木下も回避、防御を使い分け、隙を窺うが全てを回避しきれず、少しずつ点数が減っていく。

 

Aクラス 木下優子 307点

 

「クッ少しキツイかしら……?」

 

対するCクラスは、点数を減らすことなく攻めていく。

 

「あっ!」

 

ギィィン…………という鈍い音とともに、木下の召喚獣のランスが弾かれ、床に刺さる。

 

「これで終わりよ!」

「……試獣召喚(サモン)

 

ザンッ!

 

「え?」

 

Cクラス代表 小山友香 DEAD

 

VS

 

Aクラス 霧島翔子 420点

 

「Cクラス代表戦死によりAクラスの勝利です」

 

突如現れた霧島の召喚獣の一撃により決着がついた。

 

ー第三者side endー

 

〜数分後〜

 

ー???sideー

 

「……戦後対談」

 

Cクラスの教室にAクラスの人数名を連れて戦後対談に来てます。交渉人は翔子さんです。

 

「対談もなにもこちらの設備のランクが落ちるだけでしょ?」

 

Cクラスの代表さんが、ぶっきらぼうに言ってきます。

 

「……条件をいくつか呑んでくれれば無しでいい」

「え?いいの?」

「……って代表が言ってた(・・・・・・・)

「代表って霧島さんじゃないの?」

 

Cクラス代表さんが驚いたように翔子さんを見てます。やっぱり知られてないですね。まぁ、なるべく知られないようにしてましたし。

 

「……代表は私じゃない。この娘」

 

そういいながらボクの背中を押す翔子さん。

 

「……『この子』の字が違う気がしますがまぁいいです。はじめまして、Aクラス代表の----といいます。」

「え?この子が!?」

 

Cクラス代表さんは、信じられないとボクと翔子さんを交互に見てきます。

 

「はい、ボクが。で、条件言ってもいいですか?」

「え、ええ」

「条件はこの紙に書いてありますので読んで下さい」

 

ボクは戸惑っている代表さんの様子を気にすることなく、用意した紙を渡しました。

 

ー???side outー

 

 

 

ー第三者sideー

 

条件

 

1. 1学期終了までAクラス代表の名をCクラスは他クラスに言わないこと。

 

2. 1年間CクラスはAクラスと同盟を結ぶこと

 

3. 同盟クラス間は互いに宣戦布告をしないこと

 

4. 同盟クラスが宣戦布告を受けた場合、同盟相手から代表を除く5名までを借りることができる

 

5. Cクラスは3ヶ月間宣戦布告をしないこと

 

6. Cクラスは他クラスと同盟を結ばないこと

 

「この条件を呑めばいいの?」

 

AクラスからCクラスに出された条件はかなり甘いものだろう。

設備のランクは下がらない。

宣戦布告されたときだけだがAクラス5人という戦力強化。

同盟を結べばAクラスの設備が直接手に入らなくなるが他のクラスがAクラスを倒した後、宣戦布告できる2学期にでもそのクラスを倒せばいい。

そんな条件を突きつけてきたのだ。

 

「はい、相手は少ないほうがいいですから。あ、あと今回の戦争をおこした理由を教えていただければ」

「そう。なら教えてあげる。

それはそこにいる木下優子よ!」

 

右手人差し指を木下に向る小山。

 

「あ、アタシが何かしたっていうの!?」

「とぼけないで!今朝貴女が私達を豚呼ばわりしたのを忘れたとは言わせないわよ!」

「アタシはそんなことしてない!」

「まだ白を切るの!?」

 

忌々しい、と言いたげに木下を睨む小山。平行線のままの両者に、第三者が割り込んだ。

 

「まぁまぁ落ち着いて。木下さん、

たしか貴女には双子の弟さんがいましたよね?」

「え?ええFクラスに」

 

若干ほ戸惑いを見せながらもしっかりと答える木下。

 

「その人の特技とかは?部活とかでもいいです」

「……演劇部に入ってるわ」

「ん〜なら、もしかしたらそれを利用したかもですね」

 

少し考える素振りを見せたあと、小山を見てそう言ったAクラス代表。

 

「どういうこと?」

「小山さん、Bクラスと共謀してませんでした?」

「え?ええたしかに……」

「なら弟さんに木下さんの真似をさせてCクラスをAクラスに向かわせた、と」

 

推測の域を出ないが辻褄は合うと思える答えを出す。

そして1人の生徒ある行動にでた。

 

ー第三者side outー

 

 

 

ー???sideー

 

「まだ確認できないけど多分代表のいうとおりね。弟に代わって謝るわ

ごめんなさい」

 

ボクが予想したことを事実と思ったのか、そういいながら頭下げる木下さん。

普段からこういう真面目な空気を吸っていてほしいです。

 

「……もういいわ。たぶんそこの代表さんの言うとおりだと思うし。」

「……ありがとう」

 

戦争のきっかけがわかったので、あとは条件をどうするか聞かないとです。

 

「で、小山さん。条件を呑みますか?それともーーー」

「条件なら呑むわ。こちらとしても戦力を他のクラスから手に入れることができるのはありがたいし、

でもこれって大丈夫なの?」

 

戦争中のクラス以外の生徒が戦争に参加することは禁止されています。

同盟を結んでもルール違反で即失格になってしまうのが気になるんでしょう。

 

「その辺は大丈夫です、高橋先生に確認を取りましたから。

質問は以上ですか?以上でしたら書類にサインを」

 

Cクラスの代表が書類にサインをしてくれました。

 

「では戦後対談はこれで終了です。

ありがとうございました」

 

終わったぁ〜!

教室に戻ってお菓子食べましょう!

チョコはありましたっけ?

 

ー???side outー




次回はFクラスとAクラスの交渉です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ぼ、ボクは何も見てないですよ! by主人公

バックアップが消えました……
次の話以降は話の流れ的なものは変わらないと思いますが、内容的にはリメイク前と異なる可能性があります。
その場のテンションに任せて書いていたので……


ー久保sideー

 

ワイワイガヤガヤ

カリカリカリカリ

 

初めての試召戦争が終わり授業時間が終わるまで仲間と雑談したり、勉強したりしている。

僕は後者で勉強をしているのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポリポリポリポリポリポリポリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

代表が僕の前の席でお菓子を食べている。否、女子達に食べさせられている。

 

「はい、代表あ〜んして」

「や、だから1人で食べれますよ」

「あ〜ん」

「や、だから」

「あ〜ん」

「……」

 

ポリポリポリポリポリポリポリ

 

女子生徒の1人がお菓子を食べさせようとして、代表なこれを拒否、しかし女子生徒がしつこく食べさせようとして代表が折れてお菓子を食べる。

こんなやりとりが数回行われている。

正直、音が気になりだしてる。

 

「君たちすまないがーーー」

 

注意しようと席を立った直後、

 

「し、失礼する」

『ギャアアアアアアアアアアアアアア!!!』

『キャアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

ガラララという音とともにドアが開けられ、現れたのは女子用の制服を着た、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Bクラスの代表、根本恭二君(男子生徒)だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ、我々BクラスはAクラスに対して試召戦争をする準備ができている」

 

女装をした根本君はそう言ったが、BクラスはFクラスに勝ったのだろうか?それと同時に気になることがある。

 

「そ、それは宣戦布告と受けとっていいのかしら?」

 

顔を青くした木下さんが僕が思っていたことを代弁してくれた。そう、言い方が曖昧でそれをどう受けとるべきか判断しづらい。

 

「い、いや、あくまでAクラスに対して戦争する意志と、その準備ができているという事を伝えにきただけだ」

 

……?そんなことをする意味がわからない。宣戦布告ならまだしも、意志と準備があると伝える必要はないはずだ。なのに何故?

 

「そ、それでは失礼する」

 

根本君は教室を出ていったがクラスの皆のショックは大きいようだ。

ほとんどの人が机に伏してしまった。

 

「な、なんだったんだろ……アレ」

「さぁ……それより、あんな事言いにくる意味が僕にはわからない」

 

工藤さんがやってきて相談していると……

 

「……多分雄二」

 

いつのまに来ていたのだろう、霧島さんがそう言った。

 

「雄二っていうと、Fクラスの坂本雄二君かな?」

「……うん」

 

なるほど、とするとFクラスは勝ったのか。

宣戦布告をさせず、Fクラスとの戦争次第でBクラスに攻めさせる、とかかな?

 

キーンコーンカーンコーン

 

考えている間に放課後になってしまったようだ。

 

ー久保side outー

 

 

 

翌日

 

 

 

ー明久sideー

 

「一騎討ち?」

「ああ。Fクラスは試召戦争として、Aクラス代表に一騎討ちを申し込む」

 

今回初登場の吉井明久です。

僕は今クラス代表の雄二、親友の秀吉、ムッツリーニあと姫路さんとAクラスで試召戦争の交渉に来ている。

Aクラスからは秀吉の双子の姉の木下優子さんが交渉のテーブルについてる。

教室の奥にあるソファに雄二が座って脚を組んでいる。

木下さんは、テーブルを挟んだ向こう側のソファに座っている。

 

「何が狙いなの?」

「もちろんFクラスの勝利だ」

「んー……悪いけど却下かな。

手軽にすませられるのはありがたい、けどリスクを冒す必要もないし」

「賢明だな」

 

確かにAクラスとしては敗北するリスクはない方がいいに決まってる。僅かに目を閉じた雄二は再び目を開けると同時に「ところで」と話を切り替えた。

 

「Cクラスとの試召戦争はどうだった?」

「時間は取られたけど問題なし、それが?」

 

多少の疲れが残っているのか、疲れを声色に滲ませる木下さん。それを聞いた雄二は「そうか」と顎に手を当ててそう呟いた。

 

「Bクラスの「やめて、思い出させないで」…………なんかスマン」

 

雄二が「Bクラス」と言っただけで木下さんが必死の形相で遮った。根本君のアノ姿を思い出したくないらしい。無理もない。

Aクラスの人たちも顔色を悪くしている。

 

「わかったそっちの提案、受けてあげる」

「いいのか?」

「あんな連中と戦いたくないもの」

 

木下さんは視線を逸らしてそう呟いたあと、「ただし」と前置きして続けた。

 

「1回勝負じゃなくて5回勝負で3勝した方の勝ちってことで」

「いいだろう、ただ科目の選択権はこちらが貰いたい」

 

たしかにそれくらいのハンデは欲しいよね。僕達は最底辺のFクラスだし。

 

「え?う〜ん……」

 

木下さんは悩むようなそぶりをみせる。

すると背後から声が聞こえた。

 

「……受けてもいい」

「しょ……代表!?」

 

Aクラスの霧島さんが後ろにいた。

正直心臓に悪い。

 

「いいんだな?翔子」

「……うん」

「じゃあこうしよ?科目選択権はこっちが2、そっちが3」

「まぁ、妥当だろう」

「それと……」

 

まだなにかあるの!?

 

「……負けたら勝った方のいうこときく」

 

その言葉を聞いたとたん僕は姫路さんを見た。

霧島さんは同性愛者って噂があるし、さっきからチラチラと姫路さんを見てる。

ムッツリーニもカメラのメンテナンスを始めている。

雄二、どうするの!?

 

「交渉成立だな」

「ちょっ、雄二何勝手に決めてるのさ、姫路さんが了承してないのに!」

「大丈夫だ姫路に迷惑はかけない」

 

本当に大丈夫なんだろうか……?

ババァとの約束もあるし……

不安しかない……

 

「……いつ始める?」

「今日の昼休み終わってからでいいか?」

「……わかった」

 

僕たちはAクラスを出た。

そういえばアイツがいなかったなぁ。

 

ー明久side outー




次回はAクラス対Fクラスです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

……Aクラス対Fクラス 雄二 対 私 by翔子

第4話です。
ここは特に変化無かったかと思います。


ー明久sideー

 

「では、両名共準備はいいですか?」

「ああ」

「……問題ないです」

 

AクラスとFクラスの一騎討ちが始まる。

会場はAクラスの教室。こっちの方が広いし、腐った畳のFクラスじゃ締まらないしね。

 

「それではひt「待ちな」……学園長!?」

 

Aクラスの担任で今回の立会人を務める高橋先生が驚いたような声を上げる。

学園長が来ることを知らなかったんだろう。

 

「やっときたかババァ」

「来てやったんだ感謝しなよ」

「何故学園長がここに?」

「そこのジャリどもとちょっとした賭けをしててね。ここにきたのはそのためだよ。」

 

顎で雄二を指しながら面倒そうにAクラスの教室の奥にあるソファに座った。

そう、僕と雄二は学園長に頼んである賭けをしてもらった。

その内容はまだ言えないけど。

っていうか読者の皆は大体予想つくよね?」

 

「明久、メタ発言するな」

「え?口に出てた?」

「改めまして、1人目の方、前へ」

「……はい」

 

僕と雄二のやり取りを無視して高橋先生が進行する。

静かな声で返事をして前に出て来たのは霧島さん……ってちょっと!?

 

「どうするのじゃ雄二!?

いきなり霧島が出てきたぞい!?」

 

ざわつくFクラスで秀吉が雄二に問い質す。

けど雄二はすぐに

 

「なら俺が出るしかないじゃねぇか!!」

 

好戦的な笑みを浮かべて、活き活きとした顔で前にでた。

 

「科目はどうします?」

「日本史。ただし内容は小学生レベルで方式は100点満点の上限ありだ!」

 

ザワザワザワザワ……

 

雄二の言葉にAクラスがざわめく。

雄二は対Aクラス、というより対霧島さんの策で、ある問題が出れば勝てるって言ってたけど大丈夫かな……?

 

「わかりました。では問題を用意しなくてはいけないので、少しこのまま待っていてください」

 

そういってノートパソコンを閉じ、

高橋先生は教室を出ていく。

先生が出ていくのを見送って、雄二に近づく。

 

「雄二、いきなり霧島さん出てきたけど大丈夫なの?」

 

さすがに予想外だから不安になる。

 

「大丈夫だ。たかが順番が変わっただけだ、なんの問題もねぇ!」

 

自信満々に言う雄二。

この調子なら心配なさそうだ。

 

「そっか、じゃあ任せたよ」

「ああ。任された」

 

互いに拳を軽くぶつけてその場を去る。皆も言いたい事があるだろうしね。

 

「…………」

 

雄二に歩み寄り、サムズアップするムッツリーニ。

 

「お前には随分助けられた。感謝している」

「…………」

 

ムッツリーニは口の端を軽く上げて、元の位置に戻った。

確かに、ムッツリーニの情報収集、Bクラス戦で根本君を討ったりと、

ムッツリーニがいたから、ここまでこれた部分もある。

 

「問題の用意ができました。

霧島さんと坂本君は視聴覚室に向かって下さい」

「うし、行ってくるか」

 

これから、これから戦いがはじまるんだ。

 

「皆さんはここでモニターを見ていて下さい」

 

機械を操作してディスプレイに視聴覚室の様子が映し出される。

下の方に黒い部分があるけど、おそらく問題を表示するのだろう。

 

「制限時間は50分。100点満点の上限あり。カンニング等の不正行為は即失格になります。いいですね?」

「……はい」

「おう」

「では、始めてください」

 

そして次々と問題が表示される。

あの問題がなければ集中力、注意力で劣る雄二は負け、良くても引き分けだろう。

 

≪次の(___)に正しい年号を記入しなさい。≫

 

(___)年 平城京に遷都

(___)年 平安京に遷都

 

このレベルの問題ならFクラスの生徒でもわかりそうだ。

これなら出ているはず…………

 

(___)年 鎌倉幕府設立

 

違う、この問題じゃない。

出てないのか………?

 

(___)年 大化の改新

 

!!…………出てる

 

『お、おい!』

『ああ!』

『これでまずは1勝だ!!』

『『『うぉぉぉぉっ!』』』

 

Fクラスの歓声にAクラスの生徒たちは驚きを隠せないでいる。

雄二はAクラス戦前に霧島の対策を教えてくれていた。

それは雄二と霧島さんが幼馴染みで、昔大化の改新の年号を間違えて教えていたらしい。

そして、霧島さんは1度覚えた事は忘れないという。

それを利用して、Aクラスに勝つというものだった。

 

「時間です。テストを終了してください」

 

テスト終了。あとは採点と結果発表。

雄二がミスしてなければ1勝を手にいれる。

 

「採点が終わりました。結果を発表します。」

 

ディスプレイに結果が表示される。

 

Aクラス 霧島翔子・・・・・・97点

 

Fクラス代表 坂本雄二・・・・・・100点

 

この瞬間Fクラスの1勝が決まった。

 

『『『うぉぉぉぉっ!』』』

 

歓声に包まれるFクラスと驚き、落胆するAクラス

まずは1勝、この流れで勝ちにいこう!

 

ー明久side outー

 

 

 

ー雄二sideー

 

「……雄二、今回は私の負け」

 

翔子が歩み寄り無表情に言う。

だが俺には少し落ち込んでいるようにも見えた。

 

「ああ、あと2勝でFクラスの勝ちだ」

「……頑張って」

 

おう、と軽く返事をしてFクラスに戻る。

途中妙な違和感を感じディスプレイを見る。そして、あることに気がついた。

 

「む?どうしたのじゃ雄二?」

 

秀吉が俺の様子に気づいて話しかけてくる。

 

「な、なんで……」

「む?ディスプレイになにかあるのかの?」

「……あ、それと」

 

翔子が振り返って何か言っているが気にしてられない。

 

「なんであいつの所属欄に代表の文字がないんだ(・・・・・・・・・・)!?」

「……私は代表じゃないから」

 

翔子は俺の疑問に答えをだした。

 

ー雄二side outー




次回は優子の出番です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Aクラス対Fクラス 姉上 対 島田じゃ by包帯巻いた秀吉

一ヶ月と少しぶりです。
そしておそらく年内ラストの投稿。
間に合えばあと1話投稿したいなぁ……(願望)
今回は1箇所だけ所謂台本形式をとりました。
どちらが喋っているのかわかるようにです。


ー雄二sideー

 

FクラスとAクラスの5対5の勝負。

第1戦、俺の幼馴染でAクラス代表であるはずの霧島翔子が出てきた。

翔子には俺が当たることになっていたので、代表の俺が出る。

俺が指定したフィールドで勝負して、計画通りに俺の勝ちに終わった。

計画通り。

そう、計画通りのはずなんだ。

翔子の所属欄に、『代表』の2文字が無いことを除いては……

 

ー雄二side outー

 

 

 

ー明久sideー

 

まずは1勝、それも霧島さんから取った1勝ということで、Fクラスは盛り上がり、この勢いに乗って勝ちにいきたいと思っている中、勝った本人の雄二だけはどこか浮かない様子だった。

おそらく、霧島さんが代表じゃないことに気付いたのだろう。

僕もさっき知ったし。

となると、やっぱりアイツが代表なのかな……勉強に関しては化け物だし。

 

「それでは両クラス、2人目を」

「アタシが行くよっ!」

 

高橋先生の声に促されて出てきたのは、秀吉にそっくりな女子生徒。木下優子さんだ。

僕達Fクラスからは誰を出すのか、雄二に視線を向けると、僕に気付いたのか自分の頬を軽く叩いて意識を切り替えた。

誰が代表なのか考えていたみたいだ。

雄二は相手を確認すると、直ぐに誰を出すのか答えた。

 

「秀吉、頼む」

「うむ!」

 

雄二の指示で秀吉が出る。

秀吉を見た木下さんは笑っているはずなのに、どこか恐怖を覚える笑みを浮かべた。

 

「ねぇ秀吉」

「なんじゃ?」

「Cクラスの小山さんって知ってる?」

 

Cクラスの小山さん……綺麗だよね。正直僕の好みの女の子だ。

だけど、根本君と付き合ってるんだよね……はぁ……

 

「ふぅん……まぁいいや。ちょっとこっち来て」

 

そう言って木下さんは秀吉の腕を取って廊下に連れて行った。

 

[どうしてアタシが、Cクラスの人達を豚呼ばわりしたことになってるのよ!]

[それはワシなりに姉上の性格を……ってちがっ、関節はそっちには曲がらな……っ!!]

 

不穏な言葉と、ボキッという嫌な音の数秒後、木下さんだけが教室に戻ってきた。

 

「秀吉は体調が悪いって保健室に行ったわ」

 

そう笑顔で言った木下さん。

綺麗なんだけど、どこか恐怖を感じさせるその笑顔に、誰も文句は言えなかった。

 

「…………仕方ない。島田頼む」

「えっ、ウチ!?」

 

代わりに出ることになったのは、ポニーテールと絶壁と言って差し支えないぺったんこが特徴の美波。性格は強気……というかガサツ?

 

「…………今すっごくアキを殴りたくなったわ」

 

……一部の単語に対して異常な反応を見せるのも特徴だ。美波がこちらにやってこようとするが、雄二がそれを止める。

 

「時間がないから止めろ。今は試召戦争優先だ」

「…………」

 

納得いかないといった様子で前にいく美波。

ゆっくりと雄二に近づく。

 

「雄二、なんで美波に行かせたの?」

「近くにいたからだ。この後出てもらう予定のムッツリーニ、姫路、お前のうち誰かが代表とぶつかる。向こうはまだ学年次席……いや、三席のはずの久保がいるから、ここは捨ててでも戦力を温存すべきだと判断しただけだ」

 

…………?なんで捨てるの?こっちの最高戦力は表向きは姫路さんだ。Aクラスの久保君とは僅かな差とはいえ(「科目の選択はどうしますか?」)去年の点数では勝ってたから(優子「数学でお願いします」)

そこに姫路さんを置くのはわかる(『試獣召喚!』)

仮定の話だけど、これで2勝として残る3戦のうち1戦は勝たないといけないから、むしろここでムッツリーニか僕を行かせて勝ちを取りに行けばいいのに……あ、でもムッツリーニのときに向こうに科目を選択されたらダメなのか。じゃあ僕がいけば……あ、でもアイツが出てくるから、これが正解なのかな?

 

「勝者Aクラス」

 

考え事している間に美波が負けたらしい。

 

「負けた……」

「気にするな。勝つだなんて微塵も思っちゃいない」

 

肩を落として帰ってくる美波に見向きもせず、言葉だけかける雄二。

 

「っ!なら、アキでも良かったじゃない!」

「お前は良くて数学がBクラス程度だ。明久は点数差をものともしない操作技術がある。明久かお前かなら、お前を捨てるのが道理だ」

「〜〜〜〜っ!!」

 

美波は怒りで顔を真っ赤にして僕を見る。僕、何もしてないんだけどなぁ……

 

「3人目の方、前へ」

 

高橋先生が次の勝負へと進める。

次は誰が出るんだろう……?

 

ー明久side outー

 

 

 

ー???sideー

 

「勝ってきたわよ」

「お疲れ様です」

 

Aクラスの奥で待機していると、木下さんが帰ってきました。最初から翔子さんを送って流れを掴もうとしましたが、フィールドを限定されて、僅かな差で敗北。流れを向こうに持っていかれましたが、木下さんが勝ってくれたおかげで、いーぶんになりました。

 

「じゃあ、ご褒美頂戴!」

「ご褒美!?」

 

そ、そんなこと言ってもないし、聞いてもないです!い、いったい何をさせようというんでしょう!?え、えっちぃのはダメですよ!ボクのお菓子もあげません!

 

「抱っこさせて!」

「だっ……!?」

 

肉体的接触を要求されました!で、でもそんなにえっちぃのじゃないですし、木下さんなら……い、いやダメです!

 

「……だ、ダメです!」

「間があったわね」

「……それにちょっと詰まった」

 

木下さんと近くにいた翔子さんに突っ込まれました。

そ、それでもダメなものはダメなんれす!か、噛んでないです!噛んでないですよーう!

 

「……まぁいいわ。じゃあハグさせて」

 

は、ハグですか……それなら……って同じです!さっきのと言い方が違うだけで実質同じもの要求されてます!

 

「ダメです!ダメなものはダメです!」

「3人目の方、前へ」

 

無限ループになりそうな空気を、高橋先生が壊してくれました。えっとえっと、次は……

 

ー???side outー




次はムッツリーニが鼻血で瀕死になる話です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Aクラス対Fクラス2連戦。 工藤 対 ムッツリーニ & 久保 対 姫路 by雄二

超久しぶりです。


ー???sideー

 

「3人目の方、前へ」

 

木下さんによるおかしな空気から、ボクを助けてくれた高橋先生の声に従って次の人を出します。

えっと、次は……

 

「工藤さん、お願いします」

「はいはーい!行ってくるネー!」

 

気負った様子もなく、工藤さんは前に出ました。Fクラスからは誰が来るんでしょう?

 

「さぁ代表。ご褒美の抱っこを!」

「だからダメですっ!」

 

ー???side outー

 

 

 

ー明久sideー

 

Aクラスからの3人目は黄緑色の髪をショートカットにした女の子だ。

 

「1年の終わりに転入してきた工藤愛子です。よろしくね!」

「…………」

 

スッと静かに立ち上がって前に出たのはムッツリーニ。ここは科目を選択して確実に勝ちたいところだ。

 

「科目の選択はどうしますか?」

「…………保健体育」

 

高橋先生の問いに、ムッツリーニが静かに答える。直後、召喚フィールドが保健体育に切り替わる。

 

「土屋君って言ったっけ?キミ、保健体育が得意なんだネ?」

「…………」

「ボクも保健体育が得意なんだ〜。キミとは違って…………実技がね」

 

保健体育の実技。本来ならスポーツを意味しているのだけど、Fクラスの大半の生徒はいやらしい意味に捉えてしまい、ムッツリーニはブシャァァァアア!!と勢いよく鼻血を出し、反動で身体が仰け反りその勢いを殺すことなく床に倒れた。

それを見た僕はムッツリーニの元に駆け寄る。

 

「ムッツリーニ!大丈夫!?」

「…………問題……ない……!」

 

自分の鼻血で顔を真っ赤にして、肩で息をしていても説得力が無いけど、ムッツリーニは膝をガクガクと震わせながら立ち上がる。まだ始まってもいないのに瀕死の重傷だ。

 

「そっちの君、名前は?」

「……吉井明久、だけど」

「ヨシイクンね。よかったらボクが教えてあげようか?保健体育の実技」

 

誘うような声色にムッツリーニが反応し、再び鼻血が教室に撒き散らされる。さっきの鼻血で血が足りないのか、先程より勢いが無い。

 

「悪いけど僕にはーーー」

「アキにはそんな機会永遠に来ないから必要ないわよ!」

「そうです!明久君には必要ありません!」

 

断りを入れようとしたら、美波と姫路さんに割り込まれた。

2人には関係無いんだけどなぁ……

この話を転がす意味も無いと思い、ムッツリーニを助けようとすると、Fクラスの男子がムッツリーニに輸血を施していた。

 

「しっかりしろムッツリーニ!Aクラスに勝つんだろ!」

「勝ってAクラスの大型ディスプレイでDVDを見るんだろ!」

 

割と私欲にまみれた蘇生だった。

しかし、私欲にまみれていようと、しっかりとムッツリーニは輸血されて復活した。

……彼らはどこから輸血パックを持ってきたんだろう……?

 

「アハハハッ!Fクラスの人達って面白いネ〜」

 

心の底から楽しそうに笑う工藤さん。ここだけ見れば楽しそうなんだけど、週5以上のペースで命を狙われるからなぁ……多くの生徒はFクラスの男子のほとんどが入っているFFF団に迷惑しているんだよね。

 

「工藤さん。遊ぶのはそれくらいにして、始めてください」

 

痺れを切らしたように高橋先生が工藤さんに勝負を始めるように促す。

 

「はーい。試獣召喚っと」

「…………試獣召喚」

 

気軽に召喚する工藤さんに対し、瀕死の状態からある程度回復し、立ち上がりながら召喚するムッツリーニ。

 

保健体育

 

Aクラス 工藤愛子 428点

 

召喚された工藤さんの召喚獣は、セーラー服に巨大な斧というミスマッチ感のある姿だ。

Fクラスのほとんどは点数よりも斧に注目している。

 

「バイバイ、ムッツリーニ君」

 

召喚獣の斧が帯電する。テストの点数が400点を超えた人に与えられる腕輪を使ったんだろう。

対するムッツリーニは黒装束に口をマスクで隠した忍者のような服に小太刀二刀という装備そして点数は……

 

「…………加速」

 

ムッツリーニが小さく呟いた直後、召喚獣の姿がブレて消える。

 

「…………加速、終了」

 

再び呟いた直後、工藤さんの召喚獣の後ろにムッツリーニの召喚獣が現れ、工藤さんの召喚獣が倒れた。

 

保健体育

 

Aクラス 工藤愛子 DEAD

 

VS

 

Fクラス 土屋康太 568点

 

ムッツリーニの点数は、400点どころか500点を超える圧倒的な点数だった。

 

「勝者、Fクラス」

「そ、そんな……このボクが……!」

「…………」

 

高橋先生から勝鬨が上がり、膝から崩れ落ちる工藤さんに背を向け、悠々と歩き出すムッツリーニ。

次は姫路さんの番……かな?

 

ー明久side outー

 

 

 

ー???sideー

 

工藤さん負けちゃいましたか……保健体育の実技が得意と聞いて鼻血アーチ作る人に……たぶんえっちぃ方向に考えてたんでしょう。お名前がむっつりでしたし。

結論を出して次に備えていると工藤さんが戻ってきました。

 

「ごめんネ〜、負けちゃったよ……」

 

しょんぼりとさせて戻ってきた工藤さんに『気にしないでください』とだけ言って次の人を呼びます。

 

「久保さん、お願いします。もう負けられないので、勝ってください」

「最善を尽くすよ」

 

眼鏡をクイッと掛け直してくーるに歩いていく久保さんかっこいいです。ボクがやると子供の背伸びだと思われるので、ちょっとだけ憧れます。ボクはいつになったら大きくなれるのでしょう?

 

「代表は代表のままよ」

「それはボクがちっちゃいままだって意味ですか!?」

 

ボクの表情で察知したのか、木下さんから意味深なこと言われました。

……今日から牛乳の量を増やしましょうか……

 

ー???side outー

 

 

 

ー明久sideー

 

「4人目の方、前へ」

 

ムッツリーニが瀕死の状態で圧勝して2勝1敗。

僕達Fクラスからは姫路さんが出る。対するAクラスからは知的眼鏡を装備した久保君だ。雄二の読みでは、両者の点差はほとんど無いらしい。というのも、姫路さんと久保君は去年の定期試験で次席と三席で僅差だったことからこの結論になったらしい。

 

「科目の選択はどうしますか?」

「総合科目でお願いします」

 

当然のように言う久保君。科目選択はこっちが2で向こうが1だから最後はこっちが選ぶことになる。姫路さんが勝ったら選ぶこともないけどね。

 

『試獣召喚!』

 

2人同時に召喚する。

姫路さんの装備は西洋風の鎧に身の丈ほどもある大剣。

対する久保君の召喚獣は肩と胴体を隠す鎧に袴、鎌を2つという装備。

 

総合科目

 

Aクラス 久保利光 4239点

 

VS

 

Fクラス 姫路瑞希 4471点

 

表示された点数に両クラスがどよめいた。

去年のテストでは、毎回50点も差がなかったから、今回も接戦になると思っていたからだろう。僕も雄二も驚いている。

 

「姫路さん、それだけの力をどうやって……」

「私、このクラスが好きなんです。

誰かのために一生懸命なFクラスの皆が」

 

姫路さんは自信持って言ってるけど、Fクラスの9割以上は自分のためにしか行動しないよ。他人のために何かしても十中八九下心あるし。

 

「誰かのために一生懸命……か。残念だよ」

「えっ?」

 

突如、久保君の召喚獣が動き出し、姫路さんの召喚獣の左腕を切り飛ばした。

 

Fクラス 姫路瑞希 4471点→4280点

 

「い、いきなり!?」

「誰かのために一生懸命。姫路さん、それはどうだろう?君のいるFクラスの男子生徒のほとんどが『異端審問会』なる組織に属して、一方的な感情で、交際している男女の仲を割いている。そんな彼らが誰かのために一生懸命になるだろうか?」

 

片腕だけで大剣を振り回さなければならない姫路さんの召喚獣を、久保君は手脚を中心に、少しずつ攻撃し、異端審問会のメンバーについて話しだす。

 

「そ、それは……!」

「彼らは交際している男女どころか、普通に女子生徒と会話しているだけで、男子生徒に暴力行為をしていると聞く。警察沙汰になってもおかしくないほどにね。もちろんFクラス全員がそうだとは言わない。だが、そんな連中のいるクラスに、努力した僕らAクラスの教室は渡さない。絶対に!」

 

大剣の方が大きく重いはずなのに、久保君の召喚獣が鎌で大剣を宙に弾き飛ばし、丸腰の姫路さんの召喚獣の首を跳ね飛ばした。……今後久保君と戦うことがあったら全力で逃げよう。痛いもん。

 

「勝者、Aクラス!」

 

これで2勝2敗。最終戦での決着となった。

最終戦はきっとアイツが出てくる。Aクラスが試召戦争をしたのは1度だけ。五分五分……だと嬉しいなぁ……。

希望的観測を込めながら一歩前へ踏み出した。

 

ー明久side outー

 

 

 

ー???sideー

 

これで2勝2敗になりました!

ボク、いざ初陣です!前回召喚してないので初陣です!ちょっとワクワクドキドキしてきました!

 

「代表、大丈夫?」

 

ドキドキしながら椅子から降りると木下さんが心配そうにボクを見てました。いえ、心配されました。心外です。

 

「大丈夫れす!」

 

噛んでないです!緊張なんてしてないですよーう!脚が震えてる?武者震いってやつれす!

 

「ハンカチ持った?ティッシュ持った?」

「木下さんはボクのお母さんですか!?」

 

なんか制服のポケット以外のところも触られました。変なところは触られてないです。肩とか腕とか、腰に抱きつかれたくらいです。

 

「と、とにかく行ってきます!」

 

木下さんから逃げるように前に行きますが、前は女の人に塞がれてます。

 

「あ、あのっ!ボクの出番なんで、ちょっと退いてくれませんか!?」

『…………』

 

耳を塞がれました。聞こえないフリされてます。

 

「…………」

 

振り返ると木下さんがニヤニヤしてます。確信犯です!きっと前を塞ぐ人達は木下さんに言われてボクにイジワルしてるんです。

こうなったら強行突破しかありません!

突撃です!

 

ー???side outー




次回は明久と今作主人公の対決です。前後編の予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Aクラス対Fクラス 最終戦前編 by明久

2ヶ月ぶりの投稿です。
戦闘内容はリメイク前と異なりますが、ご了承ください。(覚えてる人いるのかな……)


ー明久sideー

 

「5人目の方、前へ」

 

Aクラス対Fクラス最終戦。

Fクラスからは僕が。

Aクラスからは代表であるアイツが出てくるはず。

確信しながら前に出ると、Aクラスからは誰も出ていない。家は出たから、来てないってことはないんだけど……

 

「…………す」

「ん?」

 

少しすると、Aクラスの人達の奥から小さな声が聞こえた。たぶん奥にいるから来れなかったんだろう。

 

「んっ……んにっ……にぃぃぃぃ……ふにゃぁっ!?」

 

Aクラスの人達の間から無理矢理に出て来たせいで勢い余って転んだAクラス代表。

肩までかかるくらいの黒髪にエメラルドグリーンの瞳のちびっ子がAクラスの代表だ。

 

翡翠(ひすい)、大丈夫?」

「だ、大丈夫だよ……アキ兄(・・・)

 

お互いの名前を呼んだことで高橋先生以外の人が驚いたように左右前後の人と話しだした。

そして動揺したような表情で雄二がこっちに来た。

 

「あ、明久……あのチビのこと知ってるのか?」

「うん。僕の従弟だよ」

「ボクはチビじゃないです!相坂翡翠ってお母さんとお父さん、もしかしたらお爺ちゃんかお婆ちゃんがつけてくれた名前があるんです!」

 

『チビ』に反応したのか両腕を上げて怒りを表す翡翠。しかし、雄二は翡翠を無視して翡翠と僕の関係に驚いていた。

 

「まだ12才なんだけど、なんか飛び級の試験的導入だとかなんとかでこっちに来てるんだ。ついでに家に居候してる」

 

翡翠の母親である叔母さんが詳しく教えてくれたんだけど、途中で眠くなって寝ちゃったんだよね。叔母さんが。

 

「どうしてあのチビが代表だと教えなかった?」

「翡翠が教えてくれなかったから」

「情報は武器なんですよ、少年」

 

若干ドヤ顔なのがムカつくけどとりあえず、お前の方が少年じゃないかと心の中で突っ込んでおく。

 

「とにかくそういうことだから、雄二は下がってて」

 

納得はしてないみたいだけど、渋々戻る雄二。それを見届けたあと、翡翠に向き直る。

 

「高橋先生、世界史をお願いします」

「世界史ですね。承認します!」

 

高橋先生によって、世界史のフィールドに変化する。こと勉強においては翡翠には勝てない。たまに小学生に教わる高校生の図が家で発生するくらいだから。

だから総合科目は点差を広げるだけ。なら僕が得意な教科で、かつ腕輪が使える科目に絞って戦うべきだ。

 

「アキ兄、ちゃんとテストはしてきた?」

「うん。やってきたよ」

 

Fクラスに行くために点数を調整して、あとでまたテストを受けるのは面倒だったけど、楽しかったから良しとしよう。

 

『試獣召喚!』

 

2人同時に召喚する。

僕の召喚獣は改造制服に木刀といったシンプルな装備。

対する翡翠の召喚獣は制服の肩と肘から手の甲、膝から足先に銀色の装甲をつけ、赤い柄の刀と青い柄の刀の二刀流。

見た目だけだと攻撃の手数、防御力共に僕が不利だ。

あとは肝心の点差だけど……

 

世界史

 

Fクラス 吉井明久 548点

 

VS

 

Aクラス 相坂翡翠 769点

 

相変わらず化け物みたいな点数を取る。

翡翠が勉強できるのは僕とAクラスの人と雄二、秀吉、ムッツリーニしか知らないから、Fクラスの皆が驚くのはわかるけど、Aクラスの人達が驚いているのはなんでだろう?

 

「ご、500点オーバー!?」

「吉井って観察処分者だろ!?バカの中のバカのはずなのに、なんであんな高得点なんだ!?」

 

僕の点数に驚いていたみたいだ。僕だってちゃんと勉強してるよ。じゃないと姉さんが襲ってくるから……

 

「500点ってなんだよ500点って!吉井のクセに!」

「まさか、カンニング……」

『それだっ!!』

 

僕が高得点なのが信じられないのか、Fクラスからカンニング疑惑が浮上した。まさか味方に疑惑を持たれるとは思わなかった。まるであの本の人達のようだ。

Fクラスから出たカンニング疑惑にAクラスもまさかと騒ぎだした。

 

「カンニングはありません。吉井君がこの点数を取ったときは私とそう……西村先生でしたので」

 

ああ、そういえば鉄人に回復試験を頼んだのに、何故か高橋先生も来てたっけ。別に良かったけどさ。微妙に鉄人と高橋先生の距離が物理的に近かった気もしたなぁ。

高橋先生によってカンニング疑惑が晴れたので、翡翠に意識を切り替える。

 

「……なんでボクの召喚獣の装備は防御力が低そうなんだろう……武器も刀だけ……頑張ってこんな点数取ったんだから自動で動く盾とかつけてくれてもいいのに……」

 

翡翠は僕のカンニング疑惑はどうでもいいのか、贅沢なことを言っている。

 

「翡翠、今日の晩御飯は抜きだ」

「なっ!?ず、ズルいよアキ兄!ボクの夕食代を削って自分だけ贅沢しようなんて!」

 

別に贅沢はしないけど、僕のこと擁護してくれてもいいじゃないか。だから晩御飯は抜き。

 

「代表!アタシの家に来たら秀吉のご飯をあげるわよ!」

「行ったら変なことされそうで怖いです!」

 

木下さんからの誘いを速攻で拒否した翡翠。木下さんのことかな?翡翠が言ってた『ちょっと気になる人』って。でも誘いには乗らなかったし……子供はよくわからない。

 

「…………早く勝負を始めてもらえますか?」

『あっ、すみません』

 

翡翠と一緒に謝って互いに意識を集中させる。

数秒後、僕と翡翠の召喚獣は同時に駆け出した。

 

ー明久side outー

 

 

 

ー第三者sideー

 

明久は接近しながら戦い方を決める。

 

ーーー翡翠の武器は二刀流。なら鍔迫り合いはできない。ヒットアンドウェイで戦うしかない!

 

刀と木刀による鍔迫り合いをしている間に、翡翠の第二の刀が明久の召喚獣を倒しにくることが目に見えている。

だから連続攻撃ではなく、回避と攻撃を繰り返して少しずつ翡翠の点数を削ることにした。

 

ーーーこうかな?それとも……うー、ちょっと難しい。

 

対する翡翠は初めて動かす召喚獣に若干苦戦していた。思ったより速度が出ない、しかし練習している暇を明久は与えてくれないだろうとわかっている。

前回の試召戦争で召喚しておけばよかったと後悔しながら明久の召喚獣と激突する。

 

先に攻撃したのは翡翠の召喚獣。

右手に持った赤い柄の刀を左に振り明久の召喚獣の首を狙う。

対する明久は召喚獣の身体を反らせて紙一重で回避するようにその場で宙返りし、サマーソルトキックで翡翠の召喚獣の顎を蹴り上げる。

翡翠はダメージは免れないと判断し、右肘を突き出してダメージを軽減しながら左の刀を突き出してカウンター。

明久の召喚獣の右腰を掠めた。

 

Fクラス 吉井明久 502点

 

VS

 

Aクラス 相坂翡翠 750点

 

最初より点差が広がるのは点数差による攻撃力の差か。

フィードバックによる痛みが襲い、思わず腰を抑える明久。

 

---それでも!

 

自分に言い聞かせるように思考し、前に出る。

全身の加速を乗せた突きを放つ。

翡翠は確実な防御をと刀を交差させて正面から受ける。

木刀は刀の刃に削られながらも突き進む。

しかし、喉を貫くかと思われた木刀は、翡翠のとっさの判断で刀を翡翠の右に逸らしながら首を左に捻ることで回避され、首の横を通り過ぎるだけに終わった。

 

「まだ!」

 

叫ぶ明久。突撃した速度のまま腹に膝蹴りをぶち込む。

 

Aクラス 相坂翡翠 658点

 

防具がほとんど無いと言っていい腹部への一撃により、点差が一気に100点近く縮んだ。

しかしそれで安心せず、すぐに退がって翡翠の間合いから出る。

 

「逃さない!」

 

翡翠もやられっぱなしではない。攻撃を受け、一瞬硬直した召喚獣に突進させる。

高速で近づいて右手の刀を左腰に回してから右に斬りはらう。それを明久は回避不可と判断して木刀を縦向き、切っ先を下にして受け止める。

カシャァッ!と木と鉄がぶつかり、擦れる音が教室に響き、明久の召喚獣の身体が開く。

すぐさま左手の刀で突きを繰り出す。目標は顔。身体を狙えば手首の回転で木刀による防御をされると判断したからだ。

 

ガチッ!

 

妙な音が聞こえた。直後、翡翠の口から『にゃっ!?』という声が出た。明久が召喚獣の首を左に倒し、歯で翡翠の刀を受け止めたからだ。

 

ー第三者side outー




次回は後編です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Aクラス対Fクラス 最終戦後編です! by翡翠

10話が1文字も書けてないですが投稿します。


ー第三者sideー

 

ーーーあっぶなー……こういうときだけ観察処分者で良かったと思う。そうじゃないと歯で白刃取りみたいなことはできなかったよ……

 

明久は召喚獣の歯を翡翠の召喚獣の刀から話して距離を取りながら内心ドヤ顔を決める。

 

ーーーあんな技があるなんて聞いてない!ズルいよアキ兄!

 

『情報は武器なんですよ、少年』とドヤ顔していたクセに情報収集力の無さを披露した翡翠は、焦りながら噛まれた刀を振り、刀についた明久の召喚獣の唾液を飛ばす。召喚獣はあくまでデータでしかないので唾液がついているはずはなく、実際にもついていないのだが。

 

「刀噛むとかバカなの!?アキ兄のばーかばーか!」

 

理不尽な怒りを明久にぶつけるが、明久は秒もかからず無視することにした。

その様子に翡翠は頬を膨らませて怒りをアピールし、両手の刀を鞘に収めて叫ぶ。

 

想造(クリエイト)!」

 

直後、翡翠の召喚獣の前が青白く発光。

腕輪の力と判断した明久は、フィールドの限界まで退がる。

青白い光が消えると、翡翠の召喚獣の両手には、白と黒の大剣が。鍔はなく、グリップ部分は刃に対して垂直となっている独特のフォルムだ。

 

「ちょっ、翡翠、それって……!」

大罪武装(ロイズモイ・オプロ)悲嘆の怠惰(リピ・カタスリプシ)!」

 

明久が大剣、悲嘆の怠惰について問い詰めようとするが、翡翠はそれを無視して大剣の刃を背中の方向へ向ける。

AクラスもFクラスも刃を何故後ろに向けるのかと疑問するが、直後にその疑問も晴れた。

青く発光する砲台が大剣の柄の先に現れたからだ。

砲台の先からいくつもの黒い手が放たれ、明久の召喚獣を襲う。

 

「遠距離攻撃はズルいよぉぉぉおお!!」

 

必死に召喚獣を走らせる。召喚獣の顔も必死だ。

 

「ボクの腕輪は『想造』。イメージした武器を作る能力だよ!大罪武装級に強力だと消費点数も大きいけどね!」

 

世界史

 

Fクラス 吉井明久 502点

 

VS

 

Aクラス 相坂翡翠 458点

 

確かに点数は200点減っているようだが、砲撃によって点数を消費したのかはわからない。ここで点数を消費したか否かによって戦い方は多少変わる。

砲撃を躱しきった明久は、召喚獣を翡翠の召喚獣に向かって走らせる。

 

ーーー悲嘆の『掻き毟り』を封じる手は僕にはほとんどない。腕輪を使うと点数でまた負ける。なら接近して『掻き毟り』を封じる!

 

現在は操作経験、点数で勝る明久はこのアドバンテージを維持しつつ、砲撃『掻き毟り』を封じる手を数秒で決定する。

 

ーーー『掻き毟り』を封じに来た。さっきからアキ兄がいじわるしかしてこない……

 

勝負にいじわるも何もないのに自分本位な考えをする翡翠も、『掻き毟り』を止め接近戦に切り替える。

剣のリーチは翡翠の方が長い。つまり間合いもそれだけ広いということだ。

翡翠の召喚獣の間合いに明久の召喚獣が入る直前に、右手に持った悲嘆を左に振るう。

明久はそれを読んでいたのか、はたまた偶然か召喚獣をしゃがませて右回転。

刃が頭上を通過して、回転の勢いを合わせて翡翠の召喚獣の脇腹に木刀を叩き込む。

 

「スフィア!」

 

回避されたと判断した翡翠はすぐさま叫ぶ。

すると、翡翠の召喚獣の制服から4つの光球が現れ、明久の召喚獣に向けて光線を放つ。

 

「ぐっ!?」

 

Fクラス 吉井明久 320点

 

回転の途中だったのが幸いしたのか、光線は左肩に直撃して戦闘不能を回避。しかし点数は大きく削られ、吹き飛ばされる。

 

「まさか同時に複数の武器を作れる腕輪なんてね……」

「?スフィアは元々ある武器だよ?」

 

『えっ?』と小さく呟いた明久だったが、翡翠から答えが来ることはなく、

 

「行けっ!スフィア!」

 

代わりに光球からの連続攻撃が来た。

前から2発の光線が連続して明久の召喚獣の足元を襲い、それをバックステップで回避する。続いて左前方から地面に対して水平にやってくる光線を前に出てやり過ごす。それを翡翠は読んでいたのか、右から頭めがけて光線がやってくる。

前に出た勢いのまま前転して回避するが、立ち上がったところを前から光線がやってきて素早く左へ避ける。

 

ーーー翡翠の召喚獣が攻撃してこないのが救いだけど、反撃どころか接近も腕輪も使えない……!

 

前と左右を集中して光線が明久の召喚獣に向かい、接近するどころか腕輪を使う暇さえ無い。

 

ーーー右、前、前、左、前、右、えっとぉ、えっとぉ!

 

対する翡翠は光球を操作するのに必死だった。召喚獣を動かすことは放置してしまうので、基本的には接近させないように光球を動かして戦う。

 

ーーーイチかバチか、翡翠の召喚獣の喉目がけて……!

 

このままではいずれ捕まると判断した明久はここで賭けに出た。

木刀を逆手に握り直し、光線を回避しながら翡翠の召喚獣の身体の正面に移動し、

 

「いっけぇぇぇ!!」

 

全力で木刀を投げた。

しかし、木刀を投げたことで身体の位置が1秒以上その場に留まる。その隙に光線が明久の召喚獣を襲う。

 

「ぐぁああああああ!!」

 

一方、明久が投げた木刀は狙った場所には行かず、翡翠の召喚獣の左脚の脛に当たる。

 

「たぁっ!?」

 

世界史

 

Fクラス 吉井明久 DEAD

 

VS

 

Aクラス 相坂翡翠 DEAD

 

両者が同時に倒れ、消滅した。

 

ー第三者side outー

 

 

 

ー明久sideー

 

頭を狙われなかった分は楽だったけど、すぐに終わらなかったから結局拷問だと思いました吉井明久です。

 

「両者同時に戦死しました。映像を確認するのでしばらくお待ちください」

 

高橋先生がノートパソコンを操作している間に翡翠に拷問された仕返しをする方法を左足首あたりを押さえて床を転がっている翡翠を見ながら考える。

晩御飯抜きはもう宣言したから却下。となると部屋の目覚まし時計の電池を、切れたやつと交換してやるか、冷蔵庫にあるチョコを取ってやるか……

 

「結果が出ました」

 

真剣に仕返しを考えていると、勝負の結果が出た。

 

「結果は同時に戦死。引き分けです」

 

ー明久side outー




次回は戦後対談です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。