ルーシィとウルキオラと双子のメイド(仮) (終わりの昼寝)
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消滅するはクアトロ・エスパーダ
またこれからよろしくお願いします。
目に見えず
手では触れられず
胸を引き裂いても
頭蓋を砕いても
それは決してわからないだろう
”心とは何だ”
その理解出来ない心を持つが故に目の前の男、黒崎一護は俺にこの言葉を投げかけたのだろ。
勝負をつけるんなら今のてめぇと同じ状態にならなきゃ対等じゃねぇだろ!と。
俺の手足がないならと黒崎一護は自分の左腕と左脚を切れと言う。
理解出来ないが………いいだろう、それが望みと言うならそうしてやろう。
「………ちっ…ここまでか」
だがそれは叶わなかった。
どうやら俺はここまでらしい。
それもそうだろう。再生不可能な臓器を先程の文字通り
死ではなく完全なる消滅……ふ、俺らしい最後だな。
だが少し残念だ……残念か………俺からこんな言葉出るとは…な。
やはり黒崎一護、井上織姫、両名に興味が湧いてきたからだろうか。
どうせこのまま消滅するならばと俺は黒崎一護に殺せと言うが断られ
「こんな……こんな勝ち方があるかよ‼︎」
と言ってくる。
……何故だ?俺はお前の敵であり先程まで俺とお前は殺し合いをしていたんだぞ。
ただ、この状況下でこんな言葉を口走るからこそ俺はお前に興味が出てきたのだろう、他の誰でもないお前に。それにしてもお前は…………最後の………………
「最後まで……思い通りにならん奴だ………ようやくお前達に少し興味が出てきたところだったんだがな」
井上織姫、何故そんな顔をする。
なぜ俺は今更またこのような言葉を口にする。お前に掌を向けながら。
「…俺が怖いか女…」
女は言う
「こわくないよ」
と、差し伸べた俺の掌に女は触れようとしながら。
そうかこわくないか。
お前達と話をもっと交わせばより心を感じ取る事が出来たのだろうか。
出逢った形が違えば空いた穴を埋め尽くす事が出来たのだろうか。
”妬み”喰らい”奪い”傲り”惰り”怒り”だが、お前達のそれはこれらとは違い
それは無意識の内に最も俺が欲していたものだったのかもしれない。
井上織姫の手と触れる事叶わず俺の手は体は霧散して消えゆく。
だが俺の掌にはお前達から感じた心を一欠片だけだとしても………。
そう
そこには
あったのだ
それは確かに
俺の掌に
俺が欲していたであろう
”心が”
消えゆく最期に見えたものは井上織姫という人間の優しい表情だった。
他の誰かが見たら違う表情だったかもしれないが俺は確かにそう見えのだ。
そして女の瞳に写っていた俺の顔は、いつもと違った、表情をしていた。
これが俺、
投稿していた機械が壊れてしまいユーザー名うたた寝から現在のユーザー名終わりの昼寝です。
初めて読んでくれた方やルーシィとウルキオラ(仮)を読んでいてくれた方、これからもよろしくできればと思っています。
一話を読んでくれた方々に感謝を。
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小さな女に惹かれたのは偶然ではない
ッ⁉︎ なんだこの感覚は?
俺は消滅したのではないのか?
何故身体の感覚がある?
何故失った臓器がある?
俺は目をゆっくりと開けるがそこには何処か虚夜宮にあった豪華で煌びやかに装飾された部屋に似ていた場所があった。
…ここは何処だ?少なくとも俺の知っている霊圧が近くには存在しないし虚夜宮には似た様な部屋があれどここまで狭くはなかった。ここは虚夜宮ではないのか?
しかも霊圧に似た感じの物は一体何だ?………情報がない今はここで考えても埒が明かないか。丁度いい、そこにいる女にでも聞くか? どうやらこの女、俺が見えている様だしな。それにしても害がないからと捨て置いたがこの幼い女には微かであるが先程感じ取った何かを感じる。この女の霊力は一般人以下程度しかない様だが何故俺が見えている?まさかとは思うが先程感じた物と何か関わりがあるのか?
まぁいい、これからこの疑問らを解消すればいいだけか。
「質問に答えろ女、ここは何処だ?」
「……………………」
何だ? 固まったまま動かんぞ?俺は今
今の状態では卍解した黒崎一護にも劣るだろう。
………この女に聞かなくてもいいが不用意に動き回るのは得策ではない。
霊力に似た力が何なのか、そしてその似た力の大きさが明確に判別出来ない今は危険だ。
………成る程。
よく見ればこの女の表情は驚きに満ちている。
…俺が突然女の目の前に現れたからだろう…いや、それもあるかもしれんが俺の姿も原因の一つか。今は服で隠れている孔は見えてないにしても俺の肌の白色、見馴れないであろう服装、そして一番印象的なのは頭部分だ。両目下には垂直に伸びた緑色の線状の仮面紋があり角が生えた仮面の名残を左頭部に被っているからだろう……………。
何故俺がこの弱くて小さい女相手にここまで考えている?
この手で体に触れれば簡単に砕けてしまうだろう女に
まさかこの女に井上織姫に似たものを感じているのか⁉︎
目をゆっくりと閉じ消えゆく間に感じていた井上織姫を思い出す…………………………………………。
全く違うな………突然の出来事で少々冷静さが欠けていたか?…ん?まぁいい。如何やら女も硬直から解かれた様だしな。
「…やったー!わたし星霊魔導士になれたんだー‼︎やったやったー!」
喚くな五月蝿い。
俺の周りをピョンピョト跳ねるな目に余るぞ女。
俺が口を開くよりも先に女が俺の顔を見ながら口を開く。
「ねぇねぇ、なんで星霊さんは泣いているの?」
泣いている?俺の両目下のこの線を言ってるのだろうが星霊だど? どちらかと言えば悪魔ではないのか?
それに先程の星霊魔導士と言う言葉も気なるな………。
女からの問いは違うとだけ答え問う。
「女、星霊とはなんだ?」
「星霊さんはもしかして記憶がないの?」
問いに問いを返すとは面倒な女だ…。
「俺は星霊と言う存在ではないぞ、女」
「だけど星霊さんはこの鍵から出て来たんだよ?」
何⁉︎鍵からだと………その白黒の鍵から俺が出現したとでも言うのか?
「星霊さん…お顔が怖いよ。大丈夫?」
今更怖いか…。怖いと言うえば俺を心配する。黒崎一護のそれと似たことを吹くな女。
しかし女の言う鍵から出て来たと言っていたのはあながち間違いではないかもしれんな。
理由はわからんがこの鍵から俺に霊子が僅かながら注がれているのがわかる。今まで気にしなかったが空気中に漂う霊子が明らかに現世よりも少ない。これは人体に多少の支障がでるかもしれんな。しばらくは力を使うのは極力避けるべきか?だが鍵は俺が持っていた方がいいかもしれん。この女は弱くまだ餓鬼の中の餓鬼だ。この鍵を壊されたら俺に何をもたらすのかわからないからな。
「俺が怖いか? …女?」
「うん! こわくないよ‼︎」
「そうか……。ならその鍵を貸せ、少しそれに興味がある」
少し戸惑いながらも俺に白黒の鍵を差し出してくる女。
それを受け取ろうと鍵に触れた瞬間だった。
「なッ⁉︎ 拒絶した? たかが鍵の分際でこの俺の
ッ⁉︎
今だに霊力が僅かしか回復しておらず何時に霊力がある程度回復出来るかわからない今、それは愚策だ。
仕方ない、鍵のことは一時捨て置くとしよう。
………女。
何故そんな顔をする?
何故その目で俺を見る?
俺は先程から大体は無表情でいて微動だにしていない。
ならば不気味がられ俺を恐れるか敵意を向けてくる筈だ。
だが今のこいつにはそれらを全く感じない。
理解出来ない………か、あの刹那に感じたあれらと似たようなものを感じるな。
ふ、興がのった。
ここが何処であれこの大きい孔を埋め尽くせるやもしれないならばここが何処であろうと関係などない。
「…名は何だ女…」
「ルーシィ・ハートフィリアだよ!」
「そうか…ルーシィ、俺の名をお前の魂に刻み込んでおけ…」
”ウルキオラ・シファーだ”
少し文を増やしました。
文字の間違いや文面の不適切がありましたらどんどん指摘してください。
もちろん自分も読み返して何かあれば修正していきます。
二話を読んでくださりありがとうです。
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男の手は思ったより暖かった
俺は女と名乗りあった後問答を交わし幾つか有益な情報を手に入れた。
その情報を聞いた限りでは認めたくないがここが異世界であることを理解した。
それにしてもこれからどうするべきか?
女の話では星霊は星霊魔導士と契約することで正式に鍵を使い星霊を召喚出来る物らしいが俺の場合だとどんな形で契約を交わしたのか不明であり現在の女の力では俺を帰還させることが出来ん。星霊魔導士としての力が足りないから出来ないのか、または別の原因なのかはわからない。
そして霊力に似た物は魔力と呼称される力らしい。細かい部分まではこの女からは分からなかったが魔力とは命と密接してる物らしく魔力が無くなると死んでしまうらしい。
まだ魔力感知は上手くいかず近くにいるこの女の魔力を微かに感じるだけで他は皆無だ。
さて、そろそろこの場所にいても意味をなさなくなったな。
外の様子でも確認するか。ここ周辺に脅威なる者が存在してるか調査も必要だろう。
しかしここは換気する為か大人の頭位の穴に鉄格子が四本縦についた物しかないようだ。窓があればそこから楽に外にとも思ったのだが仕方あるまい。
俺は壁に向けて拳を放つ構えをすると女が不思議そうな顔をしながら俺に話しかけてくる。
「どうしたの?」
「…外に出る為に壁が邪魔だから壊すだけだが?」
「…………えぇぇぇぇ⁉︎ 駄目だから! 扉から出ればいいだけだから!」
「…ふん、お前の指図は受けんしここが最短距離だ…さてやるか…」
「いやいや、さてやるかじゃなくて⁉︎」
喚くな鬱陶しい。
しかし俺に対してこの態度をまだ取れるとは…ふ。
「なら、案内しろ…外までな」
「え、えっと実は扉のね、鍵、閉まってるの………」
「それがなんだ」
「…え?」
俺は木造の扉の前まで移動してドアノブを回さずに軽く押す。
すると扉は開くのではなく容易く扉ごと外れたのだった。
「ふえぇぇぇぇぇ⁉︎ じゃ、じゃあさっきの壁のも本気でやる気だったんだ…。」
「何を驚いてるのか知らんがさっさと行くぞ」
俺は扉を捨て早く案内しろと女を急かす。
………だが女は怒られる怒られるとブツブツと言いながら自分の背丈より大きい扉を必死に元の場所に戻そうとしていた。
何をしている? 壊れた物に意味など無いというのに。
だが今の女の表情は、この女と出逢ってから初めて今の俺ではわからない何かを感じた。
俺は無言で女が必死にどうにかしようとしていた扉を片手で元の位置に戻し、女を抱き上げ廊下の窓から躊躇なく外に出る。その時お姫様抱っこされてるとか色々キーキー騒いでいたが知ったことではない。
外は雲一つない青空を魅せていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は今だ騒がしい女を持ちながら空を走り思う。
難しい…。
大気中の霊子が少な過ぎるせいか普段は気にせず出来ていた霊子を足元に固め踏み台とすることが今では集中しないと出来ないとは…難儀だ。
………………あの辺りでいいか?
「今から地上に降りる………騒ぐな…」
緩やかに地上に降りる。
目の前に広がる光景は水が透き通っていて近くにある三角の様な山を写し出していた大きな湖があった。
この光景を見たウルキオラは何も感じることはないがルーシィは目を輝かせてこの初めて目にする神秘的な風景を見ていた。
一刻経つ頃、女は座り易そうな丸みのある石に座ると次第にちらちらと女は俺を見る。
………お前の口は何の為にある?話があるなら首を動かすのではなく、口を動かせ女。
………………………まだ続ける気か?面倒な女だ。
俺は女の近くまで移動し、一度だけ女と目を合わせ前を向く。
石像の如く無表情で微動だにせずそのまま一刻一刻が過ぎていく中女は意を決した様な表情をして語りだす。
「わ、わたしね、ママがいたの………美人で料理も上手でわたしとたくさん遊んでくれて、わたしがイタズラした時なんかはしっかり叱ってくれるんだ………自慢のママだったの…………」
女は言葉を発する毎に口が重くなったかの様にゆっくりとゆっくりと話していく。
「…でもママがいなくなってからパパ、別人になっちゃたの。ママみたいにいつも遊んでくれたわけじゃないけどね、お仕事の合間に時間を作って遊んでくれたけど今は仕事が忙しいからってあれから一度も遊んでくれないし………パパはわたしのこともう、邪魔者としか見てないんだよ…だって………今日はパパの誕生日だったからパパの似顔絵描いてわ…た…し…たら………………」
少しの間沈黙してから女は瞳から大粒の涙を流しながら言う。
「い”ら”な”い”っ”て”…うゔ…なんで?…頑張って描いたのに……いらないって………もぅやだよ」
それからも女は話し続けるが俺は無表情で目の前に広がる夕焼け色の湖をただただ見ていた。
…どうやらあの部屋にいたのは罰としてといったところか…どうやらその親は、関わることを放棄してるようだな。
「…わたしがいてもいなくても一緒なら…」
女の消え入りそうなある言葉に俺は女に目線を向けることになる。
「このお家から遠くの、もっと遠くのどこかに………い…き…た…いよ………」
…………………………………。
「女、手を出せ」
「…え?」
「…二度は言わんぞ女」
俺に差し出された手を一瞬握って壊れないか躊躇うがゆっくりと割れ物の様に握る。
「あ………ありがとう…ウルキオラ」
俺は無言のまま決して離さぬように握り返してくる女の手を見る。
俺と女の握られてる手にはある筈のない空間の様なところから暖かな何かが宿っている感覚がある。
”この感覚はあの時のものと同じだ”
この暖かなものを想い出させてくれた他の誰でもないお前だからこそ
”ルーシィ”
”その願い”
”俺が叶えてやろう”
次の話からは一からとなりますので土日の間には投稿したいと思います。
三話を読んでくださり感謝です!。
感想待ってます!。
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赤と青
次の更新もいつか分からないのですが暖かい眼で見てくれればと思います。
屋敷内にある厨房で瓜二つの顔立ちをした双子の少女がいた。
ショートボブの髪型をした青髪に大きな青目の少女は右目を髪で隠しこの少女用にオーダメイドで造り上げられたであろう露出が若干高めの黒を基調としたメイド服を着こなしている少女は、頭のホワイトプリムを落とさないよう器用に頭を左右に陽気な鼻歌のリズムに合わせて軽く振っていた。
無論少女は料理の手を休める事なく手際良く調理していた。
「ふん〜ふん〜ふん、ふんふん〜ふん〜〜」
今日はルーシィ様の大好きなあの料理を作って差し上げましょう。ふふ、ルーシィ様の喜ぶ姿が目に浮かびます。
「レム、今日は随分と御機嫌ね?」
青髪の少女、レムと同質の声で話しかけた桃色の髪にこれまたレムと同様に可愛らしい大きな赤い瞳をした少女は、レムと揃いのなりをしており、違うのは髪や瞳の色と左目を隠しているところだろう。
それと料理の方はただひたすらに野菜の皮剥きをしていた。
そしてレムはよくぞ聞いてくれましと言わんばかりに表情をニンマリしながら左手を頬に当て右手だけで素早くキャベツを千切りにしていく。
……但し、千切りされていくキャベツたちは次々と山になりこの量を果たして料理に全て使うのかは.....不明である。
「はい姉様!今日は久々に、ルーシィ様に料理を作ってあげられるのがとても嬉しいんです!」
それを聞いたレムから姉様と呼ばれた少女、ラムは徐ろに赤いトマトを手に取り自分の鼻近くにトマトを持っていき悪戯っぽく言う。
「ふふ、今日はコックの赤っ鼻が体調不良で休みだわ、だから思う存分にレムが作ればいいわ!」
どうやらトマトを鼻近くに持ってきたのはその言葉から察するにコックの特徴的な赤い鼻をマネをするためだった様だが先程の思う存分にレムが作ればいいわ、という言葉は皮剥き以外は全く手伝いをする気がないという意味が含まれた言葉なのだろうか。だかレムは、それが当たり前かの様にそれについては何も言わず口を開く。
「ね、姉様、赤っ鼻なんてエイドさんに失礼ですよ。アレでもルーシィ様の父、ジュート様の舌を唸らせる料理が作れる数少ないコックさんなんですよ?」
彼女は気づかなかった。
この屋敷で十五年料理長として働き、ここで働く前のコック歴を合わせれば三十年以上とベテランであるエイドは当主ジュードの舌を唸らせる料理を数多く作ってきた。
そんな人物をアレと呼んだ事を。
だがラムはその事に気づき悪戯顔で話す。
「あらあらレム?そんな凄い方をアレ呼ばわりするなんて、レムはラムより度し難いわね?」
ラムに指摘されたレムは顔を赤くし、皮剥きをされている野菜を次々とキャベツと同様に千切りしていく。しかも目線はラムに向けたまま先程よりも素早くかつ的確に千切りしているそれは神業、いや鬼業であった。
だがラムは思う。これでなんの料理が作れるのかしら?と。
あれからレムはアレ呼びの件について弁解したりしてから徐々に気も収まりふと我に帰る。目に写るのは千切りされた幾つもの山となっている食材たちがあった。
最初に作ろうとしていた料理はとてもじゃないが現実的に作れず弱々しく姉にどうするか聞くとラムは少し考えた素振りを見せてから何か閃いたのか調理器具が置いてある棚から両手で持ってきた魔力式ミキサーを見せて提案する。
「これから新しく料理をお作りしてもルーシィ様が寝てしまう時刻になるでしょうしこれだけの食材を冷凍庫には入らないから数減らしかつスピードさがある野菜ジュースはどうかしら?」
それを聞いたレムは尊敬の眼差しで姉を見ながら興奮気味に話す。
だが、レムは知らない。
姉はただ楽をしたかっただけだった事を。
「流石です姉様!それにルーシィ様の御食事は昼時に作り過ぎたシチューにすればなんとかなりますからね!」
「そうよレム、もっとラムを褒め称えなさい!」
そんな言葉を言いつつこれだけの野菜を野菜ジュースにすれば当分は紅茶類の上品な飲み物は飲めないなと思いつつも、後の事はすべて赤っ鼻のエイドに丸投げしようと考えていたラムだった。
あれから時間が経ち外は夕陽から入れ替わる様に月の光が外を照らしていた。
レムは夕食を持ってルーシィがいるであろう部屋の扉前にいた。
「少々御夕食の時間が遅くなりましたが、ルーシィ様ならヒマワリの様な笑顔で出迎えてくれる筈なのです」
鍵を開けてカチっと音が鳴り鍵が開いた事を確認してから扉をノックし扉を開ける。
「ッ⁉︎…はっ‼︎」
扉を開けようとドアノブを引っ張ると扉は引っ張られた方にそのまま倒れる。
だがドアノブを掴んだままの右手で右方向に扉を放り投げる。
突然の事で力加減を間違えたのか扉はかなり遠くの方まで行き廊下に小さな丸い木のテーブルに置いてある花瓶に勢いよくぶつかり辺りに花瓶の破片が飛び散り中に入っていた水も廊下のカーペットにぶち撒ける。
しかしレムは気にする様子もなく部屋の中に入る。
部屋の中にはルーシィはいなかった。
部屋の中をくまなく探すも意味をなさなかった。
「…そんな…ルーシィ様がいない?き、きっと違う部屋にいる筈です、そうに決まってます!そうだ、姉様の千里眼の力でルーシィ様を探して貰いましょう!」
大丈夫、大丈夫と、ブツブツと似たような言葉を繰り返しながら姉がまだいるであろう厨房に向かう。
一方ラムは厨房にて洗い物をしていた。
「…………」
無言で洗い物を片付けていくが時折食器類の割れた音がするのは気のせいではない筈だ。
「残りは赤っ鼻のエイドに任せればいいわね」
そんな事を言いながら動かしていた手を止めて丸い椅子に座る。
厨房にある時計を見ると懐ろから何かが包まれている小さな布袋を取り出し結び目を解き広げると一口サイズより小さなビスケットがありそれを食べることなく口笛を吹く。
すると何処からともなく滑空しながら小さな動物達がラムの元へ集うこと十数匹。
手の平サイズの丸い目が特徴的なモモンガであった。
「餌の時間よ、レムが作ったんだからよく噛みしめて味わうといいわ」
モモンガ達は一斉に我先にと餌に行きムシャムシャモシャモシャと口一杯にしながら勢いよく食べる。
その光景を見やるとモモンガ達の飼い主は溜息を深く吐き冷たい目線で見やる。
「品性の欠片もないわね、けどそこまで貴方達には求めていないもの」
そう言うと後方で餌を食べずにいる他のモモンガ達より一回り大きいがやはりそれでも手の平サイズなのは変わらないモモンガに手の平を向けるとゆっくりとした動作で手の平に乗るモモンガ。その手を自分の顔近くまで寄せてから空いた手でレムが作ったのと違うモモンガに食べ易いように小さく作られたであろう丸い黒々しい餌をモモンガにやる。
「貴方には特別に私が作ったのを食べさせて上げる、泣きながら感謝して食べるといいわ」
それを聞いたモモンガは餌に近寄り匂いを嗅ぎ始める。すると焦げた臭いがしたのだろうか鼻を抑える仕草をして一瞬よろめく。本当にこれを食べないといけないのかと飼い主を見やるがそれに応えるように笑みを浮かべてただ「食べなさいと」一声かける飼い主にモモンガは小さく鳴いた後どうにでもなれと言わんばかりに豪快に食べる。しかし二口目には眼から涙が流れそれでも食べ続けるも無理がたたったのか弱々しく鳴いた後コロンと横たわり気絶してしまうモモンガ。
一部始終見ていた飼い主は、良いものを見たと言わんばかりに深い笑みを浮かべ「ふふ」と声を漏らした後突然厨房の扉がバタン!と強く開けられ息を切らしながらレムが厨房の中に入る。
服装が乱れ青白い顔に瞳に涙を溜めているレムは弱々しく滅多に言わない言葉をラムに言った。
”助けて…お姉ちゃん”
…この言葉により彼等の物語は加速する。
この先どうなるかまだ分からないですが次の話も楽しみに待って貰えれば幸いです。
これからもよろしくお願いします!。
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