BLEACH/Excalibur〜約束された勝利の剣〜 (ザイソン)
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始まりの始まり
約束された勝利の剣


「あ〜、めんどくさぁ〜〜」

 

現世と尸魂界(ソウル・ソサエティ)をむすぶ穿界門の前で金髪の死神、十三番隊所属の百目木 望月(どうめき もちづき)はそう呟いた。

 

ただでさえ同期と遅れを取っているのだ。任務とはいえ現世に行く暇があったら副隊長に頼み込んで特訓してもらいたい。

 

「おぅ、望月。駐在任務がそんなに怖いのか?」

 

声の方を振り向くとそこには長い赤髪を後ろで結んだ眉に刺青を入れた死神、阿散井恋次がそこにいた。

 

「恋次・・・少なくとも鬼道に関してはお前より上だからな。恐るわけ無いだろ」

 

「フン、雛森は副隊長、吉良と俺も席官。早く自分の斬魄刀に名前を聞けるといいな。俺は忙しいからかえるぞ。なんたって席官だからな!」

 

「うっさい馬鹿変態マユゲ」

 

そう、斬魄刀にはそれぞれ名前がある。恋次の斬魄刀ならば"蛇尾丸"という名がある。しかし、望月は斬魄刀の名前が分からない。聞けなかった。

 

鬼道は達者、剣術もなかなかで霊圧も高いく、素養もあるが、斬魄刀の名前が聞けず、始解すらできないため未だに一般隊士だ。

 

望月がウダウダ愚痴を言っていると瞬歩で高速移動しながら望月の隣に人が現れた。

 

「斬魄刀の名前が聞けないのは何か理由がある。お前の実力なら逆に聞けない方がおかしい。現世に行けば何かつかめるかもしれない」

 

「う、浮竹隊長⁉︎」

 

彼は浮竹十四郎。護延十三隊十三番隊の隊長で望月の上官でもある。普段は肺が弱いため寝てることが多いのだが。

 

「・・・小椿さんと虎徹さんはどうしたんですか?」

 

「はは、母上みたいで少し煩いから瞬歩で振り切って来た。こんな天気の良い日は出歩かなければむしろ身体に悪い」

 

「いけません、寝てください。今から虎徹さんに連絡しますからおとなしく・・・しませんよね。縛道の六十三"鎖条鎖縛"、縛道の九"崩輪"」

 

浮竹の身体を太い鎖が巻きつき、黄色い霊子が足と手を縛って行動を封じた。

 

「詠唱破棄・・・!いやいや、なんで縛るんだ!」

 

「虎徹さんに連絡しましたからおとなしくここで待っててください」

 

望月は若干涙目の浮竹を縛ったまま体育座りさせて自分は任務のため穿界門に入った。

 

 

 

現世での駐在任務は滞りなく、順調に進んでいた。指令を受け、現地に赴き、虚を叩き斬る。斬魄刀の開放ができずとも優秀な望月にとっては簡単な任務だった。

 

しかし、

 

斬魄刀に名を聞けず、開放が出来ずにいた。

 

なぜ名を聞けないのか、教えてくれないのか。

 

「なぁ、お前の名前・・・なんなんだよ・・・」

 

望月は斬魄刀にそう語りかけるが答えてはくれなかった。

 

 

現地駐在最終日。何事もなく終わると思われた。

 

指令を受けて現地へ向かった望月は異様な光景を見た。

 

「・・・ッ。あの虚、虚を喰ってる・・・」

 

般若のような面をつけ猿の胴体をしている虚が鮫のような虚を頭から噛み砕いて捕食していた。

 

事はそれで終わりではなかった。

 

その虚の霊圧が急激に上昇した。

 

「なんだ⁉︎」

 

虚は一気に膨張、巨大化し、頭から黒い布状のものをかぶり、鼻の部分がとがった仮面をつける形状へと変化した。

 

「オイオイオイ・・・冗談じゃないぞ・・・成長したのか⁉︎」

 

ここで、一つ話をしよう。虚とは、現世を荒らす悪霊。その正体は何らかの理由で堕ちた人間の魂。人間の魂魄が主食で、生きた人間を襲っては死に至らしめる。が、時折人間の魂魄では飽き足らず共食いを始める個体がいる。そして、数百もの虚を喰った虚が成長して、巨大な虚、大虚となる。

 

望月の目の前に現れた虚も大虚で、隊長格ならともかく、一般の死神では手に負える相手ではない。

 

望月は尸魂界(ソウル・ソサエティ)に連絡を取り、援軍を要請した。

 

「こちら十三番隊所属 百目木望月です」

 

『御用件をどうぞ』

 

「虚が急遽大虚に変貌。ここは市街地であるため多数の魂魄が巻き込まれる可能性大。俺を中心とした半径100間の空間凍結を要請します。魂魄の保護を最優先にし、建造物に関しては通常通り出撃料から引いてください』

 

『了解しました。援軍をお呼び致しましょうか?』

 

「それもよろしくお願いします」

 

望月は斬魄刀を抜いた。勝てないのは分かっているが誰かが足止めしなければならない。

 

策はない。望月は跳び上がり空中に足場を作り、瞬歩で大虚の顔に迫る。

 

「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 千手の涯 届かざる闇の御手 映らざる天の射手 光を落とす道 火種を煽る風 集いて惑うな我が指を見よ 蒼火の壁に双蓮を刻む 大火の淵を遠天にて待つ 光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔 弓引く彼方 皎皎として消ゆ———破道の七十三"双連蒼火墜"!破道の九十一"千手皎天汰炮"!」

 

二重詠唱により巨大な蒼炎と長細めの三角形の光の矢が無数に大虚に降り注いだ。

 

爆炎か上がり、煙で大虚の姿が見えなくなったが少しくらいの手傷は与えられたと感じていた。

 

煙が晴れると同時に大虚の巨大な手で望月は地面に叩きつけられた。

 

「ガァッ!」

 

大虚は確かに手傷を受けていた。が、あまりにも大虚は巨大すぎた。

 

例えば蝿をハエ叩きで叩くと蝿は死ぬが、これで人間を叩いたとしてもいい大したダメージはない。

 

それは鬼道でも同じ。大虚にとって望月の鬼道にやるダメージは擦り傷にすぎなかったのだ。

 

(くっ・・・落ち着け・・・耐え忍ぶんだ。俺の役目はアイツを倒すことじゃない・・・)

 

望月は立ち上がった。

 

「軍相八寸退くに能わず・青き閂 白き閂 黒き閂 赤き閂・相贖いて大海に沈む 竜尾の城門 虎咬の城門 亀鎧の城門 鳳翼の城門———"四獣塞門"」

 

大虚の前方に“竜尾の城門”、左側に“虎咬の城門”、右側に“亀鎧の城門”、真上に“鳳翼の城門”という四種類の壁を発生させ、足止めを開始した。

 

大虚は破壊しようと暴れるが壁は全く壊れない。

 

望月は肩で息をしながら壁を維持させていた。流石に上位の鬼道、ましてや慣れないモノを連続使用するのはかなり力が必要だ。

 

九十番代の鬼道を放つ、二重詠唱。どれも出来はしたが霊力の枯渇を恐れて使ってこなかった。故に席官にも入れず、一般のままでいた。鬼道のスキルは席官クラスだが、誰にも見せてこなかった。

 

できれば大虚にはおとなしくして貰いたい。と、思っていたら唐突に大虚が叫び声をあげた。

 

「ゴオアアアアァァァァアアオオオオオォォォォ!!!!」

 

空気を振動させるほどの咆哮を放ったかと思えば、急に大虚の霊圧が高まり出した。

 

(まさか・・・虚閃か⁉︎さすがに俺の四獣塞門でもあれには耐えられない・・・いや、空間凍結させた範囲を超えて市街地を破壊する!)

 

もう霊圧が溜まり終える。もう逃げ場はない。望月はとっさに空中で斬魄刀を構える。

 

大虚の顔の先に光が見え、霊圧の集中された赤き閃光が発射された。

 

壁を破壊した閃光は望月の刀に激突した。

 

「グッ・・・!!!!」

 

手から血が滲み刀を支えている腕は今にも折れそうだ。

 

刀は、既に亀裂が入り始めている。

 

(無理なのか⁉︎俺には・・・ここで犬死にして果てるしかないのか・・・?せっかく死神になったってのに・・・まだ、斬魄刀に名前すら聞けてないのに!!!!)

 

ピキッと斬魄刀から嫌な音が聞こえたその刹那、

 

世界が突如青空と緑の丘へと姿を変えた。

 

「よくもまぁ・・・あれほどの窮地で私・・・斬魄刀の名の事を考えられるものですね・・・」

 

望月の前には王冠をかぶり金髪の髪を後ろで結い上げ、青と銀の甲冑を着た少女が立っていた。

 

「えっと・・・どちら様?」

 

「私ですか?私は貴方の剣。即ち、斬魄刀です」

 

「・・・つまり、斬魄刀の本体ってことか?」

 

少女は静かに頷いた。

 

「今で、見極めてきました。貴方が真に私のマスターに相応しいかどうかを。大虚の虚閃を受け止めさえしなければ危険にはさらされることはなかった。しかし貴方はそれをした。何故ですか?」

 

「え?・・・あれが市街地まで飛んでいったらマズイから・・・」

 

「ですがその結果、危険に晒されることとなりましたが」

 

「それは・・・なんとなくやったんだよ!悪いか⁉︎」

 

「いいえ。それならば文句はありません。なんとなくで身体が動くのはそれが心からやりたいことだから」

 

少女は望月の前に剣を突き出した。

 

「私は貴方をマスターと認め、剣になりましょう」

 

望月はその剣を掴んだ。

 

「私の名は———」

 

 

虚閃を受け止めていた望月は我に返った。そして、叫んだ。

 

「我が王に勝利を!『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』」

 

斬魄刀は一瞬風を纏って見えなくなったかと思うと黄金色に光り輝く西洋の剣に変換し、虚閃を上に弾いた。

 

『もう霊力も少ないから一気に決着をつけましょう。アレを使うのです。慣れないうちは使うには鍵となる呪文が必要になる場合があります。復唱してください』

 

精神世界から少女、エクスカリバーが話しかけてくる。

 

「言われなくても!」

 

望月は剣を構えた。

 

「『束ねるは星の息吹。輝ける命の本流』」

 

剣に星の光が宿り、輝き始める。

 

『そのまま振り下ろし、放て!』

 

「最大開放———『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』!!!!」

 




初投稿ですが読んでいただきありがとうございます。

この作品ではエクスカリバーは斬魄刀という設定です。本体である少女は、Fate/GOのセイバー、アルトリア(最終再臨)と同じ姿と考えてください。

最後の"最大開放・エクスカリバー"は例のレーザーっぽいヤツです。


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強さを求めて

望月が目を覚ましたのは四番隊の綜合救護詰所の病室だった。身体の痛みは既になく、疲労感のみ残っていた。

 

望月は大虚があの後どうなったのか覚えていない。エクスカリバーを放ち、剣を鞘に戻したところで霊力切れで気絶していた。おそらく援軍が助けてくれたのだろう。

 

「おー、目が覚めたみたいだな」

 

「まさか大虚を倒すとは思わなかったぞ、望月」

 

「海燕副隊長、ルキア・・・」

 

病室には十三番隊副隊長、志波海燕と十三番隊の仲間である朽木ルキアが居た。

 

「そうか・・・俺を連れて帰ったのは海燕副隊長だったんですね」

 

「そうだぞ。援軍は、俺と朽木と隊長だった」

 

「げ、隊長まで出てきたんですか・・・後で謝らないと・・・」

 

「そして服はボロボロだったが傷はなかった」

 

「は?」

 

それはおかしい。虚閃を受け止め大虚のビンタで地面に叩きつけられたのに無傷なのはありえない。これもエクスカリバーの能力なのだろうか。

 

望月が考え事をしているとルキアが申し訳無さそうに口を開けた。

 

「お前は助かったが・・・その、斬魄刀が見つからなかった。()()()()()()()()()()()

 

望月が部屋の隅を見ると、確かに鞘があった。斬魄刀の開放と同時に形状とデザインが変化しており、西洋の剣を収めるタイプのものになっている。

 

(・・・妙だな。見えないがそこに剣が有ることは認識できる)

 

望月は立ち上がって剣を抜いてみた。刀身も、柄も見えないが、確かにそこにある。どのくらいの大きさで、どんな形でをしているのかがはっきり認識できる。

 

「いや、ルキア。斬魄刀はここにある」

 

「いや、望月。何を言ってるんだ?」

 

「遂に頭まで逝かれたのか?」

 

「海燕副隊長まで何言ってるんですか⁉︎」

 

望月の頭にエクスカリバーの情報が流れ込んでくる。精神世界から本体が何かしているのだろう。

 

そして、第二の鞘である風を操る鞘、風王結界を外した。

 

「なるほど・・・見えないのか・・・しかも常時開放の斬魄刀ときた」

 

海燕は納得したようでもの珍しそうにエクスカリバーを眺める。

 

「海燕殿、そろそろ時間です」

 

「お、そうかそうか。じゃ、俺たちは帰るぞ。今から寝込んでる百目木の代わりに大虚の報告書を提出しなきゃなんねーからな」

 

「うっ、すいません」

 

海燕とルキアは足早に病室を後にした。おそらく提出期限が迫っているのだろう。

 

望月はもうひと眠りしようと布団に潜り目を瞑ると、

 

「ではこれから修行を始めます」

 

精神世界のエクスカリバーの元に飛ばされた。

 

「・・・エクスカリバー・・・もう少し寝かしてよ」

 

「傷は全て()()()()()()()()()

 

「ん?どゆこと?」

 

「あの後傷が酷かったので勝手ですが鞘の能力を使わせていただきました」

 

鞘の力は、"全て遠き理想郷(アヴァロン)"。発動すれば持ち主の老化を抑え、呪いを跳ね除け、傷を癒す。また、数百のパーツに分解して使用者の周囲に展開され、この世界では無い「妖精郷」に使用者の身を置かせることであらゆる攻撃・交信をシャットアウトして対象者を守る事も可能。ちなみに常時発動ではないのでいちいち発動する必要がある。

 

「なるほど・・・ところで、修行って何するの?」

 

「貴方はまだまだ未熟だ。取り敢えず霊圧の上昇から開始しないと最大開放を数回するだけで何回も倒れることになる」

 

なるほど、と望月は呟いた。確かに最大開放・エクスカリバーは強力だ。しかしいちいち倒れていては意味がない。

 

「で、何するんだ?」

 

「簡単な荒療治です。先ず貴方に"霊力放出"という技を教えます」

 

霊力放出。それは身体から霊力を噴射して加速する、いわばロケットのようなもの。直線移動ならば瞬歩よりも速く、攻撃力を増加させる事もできる。

 

「え?それって、連発すると霊力が直ぐ枯渇してしまうんじゃ」

 

「ええ、なので頑張って霊力を増やしてください。私と徒競走をして勝てばその場で終了。できなければ、毎日やってもらいます」

 

「フザケンナよ!エクスカリバー!!!!」

 

結果として、一日で霊力放出はマスターできたが、徒競走には負けた。霊力が無くなっって倒れてしまう。

 

「それではまた明日です。そうだ、貴方に一つ教えましょう」

 

「・・・何を?」

 

「彼処に白いテーブルがありますね」

 

エクスカリバーの指差す方向には確かに白いテーブルと椅子がある。

 

「私は美味しい物が好きです。貴方が心乱せばテーブルに雑な食事が、悲しめば美味しくない物がでます」

 

「何言ってんだエクスカリバー」

 

「私はそれを防ぐために貴方に力を貸します」

 

「うん、言ってる意味がわからん」

 

大丈夫、誰にもわからないから。取り敢えず、美味しいもののためにエクスカリバーは何でも協力するということだけはわかった。

 

「ところでさ、エクスカリバーって名前・・・長くね?人の名前っぽくないし」

 

「私は斬魄刀ですから」

 

「せめて本体の愛称を考えたんだけど・・・」

 

そう言って望月はどこからか紙を取り出し、書いていく。

 

 

腹ペコ王

 

獅子王

 

騎士王

 

 

「ロクなのがないですね。腹ペコ王って何ですか⁉︎」

 

「いや、さっきのセリフからね」

 

「却下!」

 

「えー。じゃ、セイバー(剣士)

 

「何というか・・・安直ですね」

 

「じゃ、腹ペコ王にするか?」

 

「やめてください」

 

エクスカリバーもとい、セイバーは呆れたように首を振った。

 

「私の事は腹ペコ王以外なら何と呼んでも構いません。ですが、霊力の底上げはきちんとしてもらいます」

 

それからというもの、セイバーとの徒競走は毎日続いた。肉体的苦痛よりも精神的苦痛のほうがデカい。

 

取り敢えず、セイバーに勝つまで5年の時を要した。5年の間に霊力放出の改良を行い、身体のどこからか、どの程度の力で、どの角度へ霊力を放出するかを研究し、一日中霊力放出を連発しても問題のないようにした。

 

5年もの間に霊力は何度も枯渇し、それに耐えるべく徐々に霊力及び霊圧は上昇していった。

 

望月はその後もセイバーとの鍛錬を絶やさなかった。昼は護廷十三隊としての任務をこなし、夜は精神世界でセイバーとの鍛錬。寝てるのかと言いたいがアヴァロンを使えば疲れも全てリセットされるようで徹夜には向いていた。

 

もっと強くなって十三番隊の仲間を守る。そう、セイバーと自分の魂に誓った。



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VS セイバー 〜炎の料理人(仮)〜

前半おふざけ、後半割とマジな話です。



望月は念願の席官になることができた。元々席官クラスの実力はあった。九十番代の鬼道、二重詠唱。それでも席官になれなかったのは、ただ単に慣れなてないから使ってこなかった。故に誰も実力を知らなかった。それだけだ。

 

十三番隊五席。かなり出世し、恋次に、

 

「ザマァ!」

 

「よし、ならば戦争だ!」

 

という事件が起こった。結果は十一番隊隊長の更木剣八が乱入してきて決着がつかなかった。

 

二人とも必死に逃げました。

 

斬られても倒れない不死身の化物なんて相手にしてられない。

 

望月は最近、新たな力を得るべく、死神として最終目標である、"卍解"の修行を開始することにした。

 

まずは具象化。これができねばならない。通常、具象化に至るまでに十年はかかると言われるが、

 

「オイ、セイバー。最高級の団子食わしてやるから出てこい」

 

「よろしい。ならば出陣です」

 

食べ物で釣ったら出てきてくれた。さすがは腹ペコ王。

 

セイバーを団子屋に連れて行ったら鬼の様に食われて望月の貯金がなくなったのは内緒だ。

 

セイバーが満足した時に卍解の話を切り出した。

 

「なるほど・・・それでわざわざ呼び出した訳ですね」

 

「卍解に必要なのは屈服なんだけど・・・」

 

正直言ってセイバーに勝てるかどうか分からない。エクスカリバーの本体なだけあって剣の扱いは達者で強い。

 

「よろしい。ならば作りなさい」

 

「・・・は?何を?」

 

「美味しい食事を。それが屈服の条件です」

 

そういえば、こいつは腹ペコ王だった。

 

 

 

望月の特技は料理である。理由は簡単。自分が食べるのが好きだから。貯金だってその九割が食費に消えていく。

 

好きな料理は豚の生姜焼き。ご飯と合うのが良い。

 

「駄目です」

 

「なん・・・だと・・・」

 

渾身のできの豚の生姜焼きがアウトになった。

 

「ば、馬鹿な・・・」

 

「あ、でも緑茶は美味しかったです」

 

「そりゃ、俺の家に有るのはわざわざ現世から取り寄せた、"最高傑作玉露 屋敷の茶"。めっちゃ高かった・・・って、なんで勝手に飲んでるんだ⁉︎」

 

"最高傑作玉露 屋敷の茶"。名匠 山下壽一作のお茶で、一キロあたり百十二万円位する美味しいお茶。

 

「いや、食べた後には飲みたくなりますから」

 

「まぁまて。まだ終わりだとは言ってない。この、俺が食べるつもりで昨日から煮込んでいた豚骨スープを使ったラーメンが・・・あれ?無い」

 

「美味しかったですけどまだまだです」

 

いつの間に食べたのか寸胴に入れておいたスープとともに麺が消えている。

 

「セイバー!チクショー!って、その今飲んでる紅茶って・・・この一番上の棚にあった・・・」

 

「いい紅茶ですね」

 

「"フォートナム・メイソン"の紅茶がぁぁぁ!!!!」

 

"フォートナム・メイソン"。イギリス王室御用達の紅茶。もちろん、美味しい。高い。

 

「まだだ、まだ終わらんよ!尸魂界(ソウル・ソサエティ)で最強の"海賊潰しの海賊(バイキング・キル・バイキング)"としてッ!絶対にッ!負けられない!!!!」

 

そう言って望月は立ち上がる。この腹ペコ王の舌を満足させる料理を作る為の戦いへ———!

 

(望月。貴方の料理は美味しい。それは確かです。しかし、真の美味しさとはまた別のところにある。それが気づくことができれば・・・)

 

 

注)ちなみに、これはあくまで、卍解の修行です。

 

 

結果として、セイバーを満足させる料理は作ることができなかった。ひとまずセイバーにはお帰りいただき、望月は新たな料理のレシピを求めて図書館に来ていた。ここには尸魂界(ソウル・ソサエティ)のあらゆる情報が揃っている。

 

「あらかた調べ終わったかな?そろそろ夕刻だから帰るか」

 

望月は借りる本を数冊持って立ち上がると、ふと、尸魂界(ソウル・ソサエティ)で起こった事件ファイルが目に入った。

 

そこには、かつて望月が起こした、"海賊潰し事件"が載っていた。

 

「・・・あの後、あの料理屋出禁になったっけ・・・」

 

興味本位でペラペラ捲っていると、興味深い事件を見つけた。

 

「・・・"虚化事件"?主犯、初代技術開発局局長 浦原喜助、当時大鬼道長 握菱鉄裁らによる非人道的な実験・・・当時五番隊隊長 平子真子らを含む多くの死神が犠牲・・・?」

 

そこには何十年も前に起こった事件の全容が書かれており、何故かそれは望月を深く引きつけた。

 

(ん?でもこの事件おかしく無いか?)

 

違和感その1

何故、握菱鉄裁は禁術を使用したか。

握菱鉄裁は禁術である、"時間停止"と"空間転位"を使用し、罪に問われていた。もしかしたら自身の研究室でじっくり調べたいのもあるかもしれない。

この事件は流魂街近くで起こっていた。が、そもそも実験したいのならば平子信子らを研究室に連れてきたほうが手っ取り早い。流魂街で事を起こす必要はない。つまり、禁術を使う必要がない。

そうなると自分の研究室を持ってないが故に外で行った者がいると考えられる。

 

違和感その2

当時十二番隊副隊長 猿柿ひよ里は虚化研究の事を知らなかったのか。

彼女は十二番隊副隊長。故に当時十二番隊隊長であった浦原喜助の設立した開発局には出入りしていたはず。というか彼女も研究室の室長だった。ならば虚化の研究に携わっていたと考えるのが妥当。しかし猿柿ひよ里も虚化事件の被害者であると資料にはある。なぜ猿柿ひよ里なのか。同じ研究室にいた現十二番隊隊長の涅マユリでもいい。

そうなると猿柿ひよ里と技術開発局自体はシロと考えるのが妥当。

 

(全て浦原喜助の秘密の研究としてしまえば話はそこで終わりなんだけど・・・どうも、キナ臭いな)

 

ここでやめておけばよかったが、望月はこの事件について調べ始めてしまった。

 

当時の事をしる浮竹や享楽、卯ノ花、マユリ、東仙に話を聞き、資料を読み漁った。

 

藍染と市丸にだけ聞かなかった。理由は、望月は藍染が好きではない。なんとなく、胡散臭い。市丸は、普通に不気味というか謎の恐ろしさがある。

 

 

 

尸魂界(ソウル・ソサエティ)、某所。

 

「どうやら数十年前の虚化事件について百目木望月とかいう死神が嗅ぎ回っているようです」

 

東仙要がとある男に望月の事を報告しており、男は胡散臭い笑みを浮かべた。

 

「気にすることはない。どっちみち、証拠はアレで隠してある」

 

「いえ、百目木望月は、ソレすらも掻い潜って証拠を見つけ始めたようで・・・」

 

「いやぁ、その子はやるなぁ。面白い。まさか、"鏡花水月"の完全催眠を破るとは。どないすんの?」

 

「なら、早いうちに始末するしかない。行くよ、二人とも」

 

「了解しました、藍染様」

 

藍染と市丸、東仙は斬魄刀を持ち、夜の尸魂界(ソウル・ソサエティ)に消えていった。




アヴァロンって鏡花水月の催眠を打ち消せる前提でのお話です。


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聖剣VS三隊長

流魂街の外れの森で望月は事件のことについて調べていた。

 

(事件当時の事を知る人達に聞いても結果的に犯人が浦原喜助に行き着く。矛盾も何もなく)

 

事件現場は尸魂界(ソウル・ソサエティ)の掟で現場保存の為九十九年の間特別に、禁術"時間停止"を使用し事件現場の全ての物体の時間を止めてあるため風で飛びもしなければ動植物も動かない。ただし死神側からの干渉は可能。

とはいえ、流石に時間が経ち過ぎており解決もしているため人々の記憶から忘れ去られている。故にコッソリ侵入する必要がなかった。普通なら捕まってしまう。

 

今まで発見したのは、各地の流魂街の虚化事件現場と隊長格らの虚化事件現場に、三人の同一人物の指紋と毛髪。浦原喜助のは隊長格らの虚化事件現場にしか無かった。

 

浦原喜助のデータは事前に書類で確認済みである。犯罪者のデータ開示は尸魂界(ソウル・ソサエティ)にとっては普通のことのようだ。

 

「そうなると、浦原喜助は犯人では無いのか?この毛髪の持ち主は、四番隊の知り合いに聞けば分かるかな・・・?」

 

そう言って望月はそこを立ち去ろうとエクスカリバーを背に担いで座っていた岩から立ち上がる。その刹那、巨大な霊圧を感じた望月は本能的に霊力放出でとっさに横に跳んだ。すると、

 

「破道の九十"黒棺"」

 

黒い直方体のような物が現れ、座っていた岩を重力の奔流で押しつぶした。

 

望月は霊圧の発生源を見て驚愕した。

 

「九十番代の詠唱破棄・・・⁉︎いや、そんなことより・・・何故・・・ですが・・・藍染隊長、市丸隊長、東仙隊長?」

 

三人の隊長が望月の前に現れた明確な殺意を放っていた。

 

特に藍染の発する霊圧は他の隊長格を軽く超えている。

 

「何故か?そうだね。君が邪魔になったからだよ。百目木望月」

 

藍染はいつもの笑顔でそう答えたが目が笑ってない。

 

「・・・このタイミングでやってきたという事は、あんたら三人が虚化事件の真の黒幕ってことか」

 

「そうなるね。どうやって鏡花水月の完全催眠を解いたか気になるな。どうやったんだい?」

 

「・・・」

 

望月は辺りを見た。三方を三人の隊長に囲まれている。逃げれないと感じた望月は、エクスカリバーを鞘から抜いた。

 

「なんや?まさか徒手空拳で隊長格三人とやる気なんか?」

 

「とりあえず・・・四肢を潰す。清虫二式・紅飛蝗」

 

東仙の刀の刀身が無数の針状の刃に増え、望月に向かって襲いかかった。

 

「エクスカリバー、風王結界開放!」

 

エクスカリバーの輝く刀身が現れ、

 

風王鉄槌(ストライク・エア)!」

 

暴風で刃を全て吹き飛ばした。

 

「射殺せ『神槍』」

 

市丸の刀の切っ先が高速で喉元に迫って来るのをエクスカリバーで弾いた。

 

が、背後から再び東仙の無数の刃が飛来し、数本弾いたがその殆どを受けてしまった。

 

「私の一撃を受けてまだ生きているのか・・・中々に強いのか、しぶといのか」

 

「一撃っていう数じゃないだろッ」

 

望月は刺さった刃を抜きながら東仙に切り掛かるが、それは浅はかであった。

 

「敵に背を見せたらあかんやろ」

 

市丸の刀に腹部を貫かれた。

 

どちらかを攻撃しようとすれば背後から襲われる。もう手詰まりであった。しかも隊長格。一対一でもない限り望月に勝利などありえなかった。

 

このまま戦えば死ぬことは必須である。

 

(とりあえず、ここから逃げて隊舎に・・・そして、浮竹隊長にこのことを進言すれば・・・リーダーは・・・今まで一度も攻撃してない、藍染か。なら———頭を潰せば一瞬位は隙を作れる!)

 

望月はわずかな希望を持ち、エクスカリバーを構える。

 

「束ねる星の息吹よ。輝ける命の本流———」

 

エクスカリバーが光り輝き、霊圧が上昇していく。

 

「———最大開放!"約束された勝利の剣(エクスカリバー)"!!!!」

 

霊力を光に変換、集束・加速させることで運動量を増大させ、光の断層による望月の最強の斬撃が藍染を襲う。

 

それを、

 

刀一本の一振りで軌道を逸らした。

 

「・・・かなり強い斬撃だったけど、まだ届かない」

 

藍染は瞬歩で望月の懐に入り、肩から脇腹までを斬りつけた。

 

「ゴフッ・・・」

 

望月は片足をついて口から血を吐き出す。

 

「このまま殺しても面白くない・・・だから、アレを仕込んだ」

 

「何・・・がッ・・・⁉︎」

 

突如、望月の口から白い何かが噴き出し、顔を仮面の様に覆っていく。

 

精神が別の何かによって犯され、苦痛が望月を襲う。

 

「これは、虚化というやつだよ。しかも、数十年前とはまた違ってね。より、強力にしてある」

 

「・・・虚・・・化・・・?」

 

望月はエクスカリバーが黒く染まっていくのを目撃し、なんとかしようと必死で鞘に戻した。

 

「・・・なるほど。斬魄刀にまで影響が出るのか」

 

「藍染様、斬りますか?」

 

「いや、尸魂界(ソウル・ソサエティ)に死体が残っては不味い。現世に捨てておこう。鏡花水月も万能ではないとわかったから現世の方がいい」

 

そうして、望月は鏡花水月で隠されながら穿界門に連れて行かれ、現世に落とされた。

 

恐らくこの後藍染は鏡花水月で誤魔化し、大方現世での任務中に死亡とでもするつもりだろう。

 

望月は現世の道路で寝そべりながら虚化の汚染に必死に耐えていた。

 

だんだんと自分が自分で無くなっていく感覚。

 

しかし、苦痛とは感じていなかった。既に、脳が考えるのを止めてしまっていた。

 

顔の大部分を仮面で覆われ、意識が無くなっていく。

 

「ア・・・イゼ・・・ン」

 

そうつぶやいて意識は消えた。

 

しかし消える寸前に長髪の男を見た気がした。



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闇の聖剣

———ここは何処だ。

 

空は紅い。地は焼けていて僅かに残る草木も燃えている。

 

ふと、後ろを見た。

 

セイバーがいた。しかし、普段のセイバーではない。

 

黒い鎧に身を包み漆黒のエクスカリバーを持つ。瞳は碧から金に、肌は白い。

 

セイバーとは似て非なる存在。

 

———お前は誰だ?

 

「私はセイバー・・・いや、貴様にとってはそうではないのか。私は、内なる虚。名は、そうだな。セイバーオルタと名乗っておこう」

 

———セイバーはどうした?

 

「私がセイバーだ。今はな。虚の力が剣を犯し、その斬魄刀(カラダ)を乗っ取った」

 

———お前を倒せば、セイバーはまた出てこれるってことか?

 

「ほう・・・やるのか?」

 

二つの相反するエクスカリバーを向け合う。

 

その刹那、

 

「・・・邪魔が入った」

 

焼けた部分が少しずつ緑に覆われていき、セイバーオルタの金の瞳が徐々に碧に戻っていく。

 

「仮面が割られたか・・・仕方ない。しかし、またすぐに会える(殺せる)

 

 

 

望月が目をさますと、布団の中にいた。枕の横にはいつも通りの姿に戻ったエクスカリバーがあり、少し安心する。

 

何故か義骸に入っているが。

 

辺りを確認するため身体を起こすと、

 

「おはようさん」

 

倉庫のど真ん中に寝せられていた事に気付いた。

 

瓦礫の上には八人の人がいる。

 

「・・・おやすみなさい」

 

「うおぉぉい⁉︎」

 

望月はめんどくさい空気を感じて二度寝に入った。

 

 

 

叩き起こされて渋々起きた望月は取り敢えず八人の自己紹介を受け、自らも自己紹介した。

 

「ところで・・・俺を助けてどうするつもりなんですか?」

 

「何って・・・分かってんやろ?その身の内にあるモノを」

 

平子真子は親指で自分の胸を指差す。

 

望月は胸に手を当てる。

 

あの黒いエクスカリバーとセイバーオルタ。即ち、内なる虚だ。

 

「これ、なんやと思う?」

 

真子は顔に手を当て、白い、虚の仮面を取り出した。

 

「オレらは、死神から虚の領域に足を踏み入れてしまった者、"仮面の軍勢(ヴァイザード)"」

 

「俺の、同類?まさか藍染の手によってですか?」

 

「なんや、オマエもそういう理由か?」

 

「まぁイロイロと・・・」

 

次あったらワンパンチ、ワンキック、テンエクスカリバーしなければ気が済まない。

 

「オレらの仲間になれ、望月。そしたら抑え方、教えたるわ。もう、戻られへんのやろ?」

 

「・・・確かに」

 

どうせ死んだことにさせられてるだろう。戻ったら藍染から狙われて今度こそ死ぬだろう。

 

「一つ、条件があります」

 

「・・・なんや?」

 

真子を含めたメンバー全員がじっと望月を見つめる。

 

「1日3食食べ放題で間食自由がいいです」

 

ズココッと全員ずっこける。

 

しかしこればかりは絶対に譲れない。

 

メンバーの中で最も早く起きた拳西が頭を掻きながら聞いた。

 

「一応聞くが、どれくらい食うんだ?」

 

「・・・尸魂界では"海賊潰しの海賊(バイキング・キル・バイキング)"と呼ばれてました」

 

「頼むから自重してくれ」

 

ちなみに、時々卍解習得のためにセイバーを呼び出すつもりなので更に食費がかかる予定なのは内緒だ。

 

さっきから少し不満そうな顔をしているひよ里が立ち上がった。

 

「ハッチ、結界何枚か張りィ」

 

ひよ里は斬魄刀を背負って望月の前に立つ。

 

「うちは、まだ認めてへんのや。見た目弱そうやし、自己紹介で五席にいたと言ったやろ?ウチらは全員元隊長か元副隊長や。あんたをホンマに仲間にしたいかどうか、試したるわ!!!!」

 

ひよ里は虚化して望月に斬りかかる。

 

「えっ、ちょっ、エ、エクスカリバー!」

 

望月らエクスカリバーを最初から風王結界を解除して刀を防ぐ。

 

凄まじい霊圧がぶつかり地面にヒビが入る。

 

(重い・・・!開放したエクスカリバーでここまでのダメージがあるなんて!)

 

「虚化しィ、はよせんと死ぬで?」

 

「やり方とか分かりませんからッ!」

 

望月は風王結界の風を巻き起こしてひよ里を吹き飛ばす。虚化しても体重は変わらないようでよかった。

 

風王鉄槌(ストライク・エア)!」

 

暴風がひよ里を狙うがそれを刀の一振りで払う。

 

「その程度なんか?じゃあ、死ねや」

 

まずいと感じた望月は早くも奥の手を使う事にした。

 

束ねるは星の息吹よ。輝ける命の奔流(卑王鉄槌。極光は反転する)———」

 

(なんや?ノイズがかかって、声が二重に———)

 

最大開放!(光を呑め!)

 

その刹那、望月の虚化が一気に進行し、獅子の意匠を施した兜のような仮面が現れた。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!」

 

「あかん」

 

真子はそう呟き、腰を上げた。

 

闇に落ちたエクスカリバーの闇がひよ里に迫る。が、その闇は結界を破るだけに終わり、ほかのメンバーに望月は取り押さえられ、仮面を割られた。

 

「やれやれ、"逆撫"使わんかったらひよ里、死んでたわ」

 

真子の斬魄刀、逆撫の能力は相手が認識する上下前後左右及び、見えている方向と斬られる方向の感覚を逆にすること。つまり、望月は逆方向に闇を放ったのだ。

 

「流石にあれはあかんやろ・・・まさか、一気に進行して斬魄刀まで乗っ取るとかそうとうや。ま、合格や。教えたるで、虚の抑え方を、骨の髄までな」




この作品でのアヴァロンは任意発動です。常時発動では無いのでバッチリ逆撫の効果を受けます。


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セイバーオルタ

「えっほ、えっほ、えっほ」

 

望月は仮面の軍勢(ヴァイザード)の隠れ家(倉庫)で延々と"スーパーひよ里ウォーカー(笑)"をこぎ続けてきた。

 

「昼飯遅いのォ」

 

「確かにそろそろ昼時ですね、えっほ、えっほ」

 

「ひよ里、オマエなんか作れや」

 

「なんでうちが作らなあかんねん。作ったとしても食べさせんわ、ハゲ真子」

 

「あー、確かにひよ里さん致命的に料理できませんからね、えっほ、えっほ」

 

「ぶはっ!ローズ!今週のジャンプ読んだか⁉︎これやべーな!後で望月にも貸してやるよ!」

 

「羅武さん、あざっす。えっほ、えっほ」

 

「ラヴ、なんでいつも貸してくれないんだい・・・」

 

「リサ、今日当番だろ?」

 

「見とるやん、拳西」

 

「いや、貴女が見てるのはタダのエロ本です。えっほ、えっほ」

 

「「「「「「黙ってこげよ!!!!」」」」」」

 

望月が会話に参加していたら一同の総ツッコミが飛んできた。

 

「え?だってだんだん飽きてきたですもん。えっほ、えっほ」

 

「「「「「「その掛け声なんだよ!」」」」」」

 

総ツッコミその2。

 

「え?じゃ、1、2、3、4、アル○ック。ネットで安心ア○ソック」

 

「「「「「「地味に古い!!!!」」」」」」

 

総ツッコミその3。

 

「スタートで安心?」

 

「アルソッ○・・・なにやらさせてんだよ!」

 

拳西が勝手に言っただけである。

 

「ところで、いつまでこいでればいいんですか?」

 

「最低三日間や。というかなんでまだ元気やねん」

 

このスーパーひよ里ウォーカー。触れるだけで多くの霊力を持っていくシロモノだ。

 

「・・・慣れ?」

 

「いや、なんの」

 

「だいたい戦闘時には霊力を噴射して高速移動してますから」

 

それを聞いて真子は頭を掻きながら少し考え、

 

「なるほどな。ならこのポンコツひよ里ウォーカーは無用やな」

 

スーパーや!とひよ里の叫び声が聞こえるが真子はこれを華麗にスルー。

 

「ちょうど昼飯の時間まで一時間。昼飯前の運動やと思って」

 

真子は掌を望月の顔の前に突き出した。

 

「虚化の特訓といこか」

 

その刹那、望月の意識はブラックアウトした。

 

 

———聞こえるか?望月。オマエは一度完全に虚化する。

 

———・・・えー。

 

———えー、やない。なんで反応できんねん。まぁええ。喰われるなよ?逆に喰ったれ。以上。

 

もっと具体的なアドバイスが欲しかったと思う望月だが、そうも言ってられないようだ。

 

世界は再びセイバーオルタの燃える丘に変化する。

 

そこには勿論、セイバーオルタがいる。

 

「来たな・・・」

 

「おまえもな。アンタを斬って、セイバーを呼び戻す」

 

「やってみろ」

 

セイバーオルタは黒いエクスカリバーを構えて霊力放出で望月に迫り、それを望月は風王結界を解除したエクスカリバーで防ぎ、風で吹き飛ばす。

 

(タダの斬りつけがなんて重さだ・・・エクスカリバーってそこまで強い斬魄刀だったのか)

 

とりあえず望月は霊力放出で突撃し、10合ほど剣をぶつけ合った。

 

望月は瞬歩で後ろをとり、詠唱破棄の蒼火堕(そうかつい)を放ち追撃に赤火砲(しゃっかほう)を放つ。

 

「何処に撃っている?」

 

しかしセイバーオルタは霊力放出でかわして望月の上に飛び、

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)

 

詠唱なしで闇のエクスカリバーをブッパする。

 

それを右にかわして体制を立て直そうとするが、その隙を突かれ右肩から脇腹にかけてを切り裂かれる。

 

「さっきのエクスカリバーは囮だっていうのか・・・」

 

囮に使うような気軽な技では無いのだが、勝つためにはなんでもやるセイバーオルタの性格を表している戦闘法だろう。

 

斬魄刀の世界でセイバーとは何度か手合わせしたがセイバーは騎士のような正々堂々とした戦いと剣技を重んじていた。

 

姿は似ても、手段が違う。

 

「うつがいい、光の斬撃を。そして絶望せよ」

 

セイバーオルタの剣に闇が収束し始める。

 

「卑王鉄槌。極光は反転する———」

 

「束ねるは星の息吹。輝ける命の本流———」

 

望月のエクスカリバーに極光が宿る。

 

「光を呑め!約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!!!!」

 

「最大開放!約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!!!」

 

光と闇の相反するエクスカリバー同士がぶつかり合い周囲は衝撃で弾け飛んでいく。

 

本来なら起こることの無い現象だ。

 

はじめは拮抗していたものの徐々に闇が押してきた。

 

(グッ・・・セイバーのカラダに虚の力を出している・・・そりゃ強いはずだ!・・・ごめん、セイバー・・・)

 

闇が光を塗りつぶし望月の身体を包み、後にはなにも残らなかった。

 

「終わったか・・・」

 

唯一残っていた光のエクスカリバーを拾う。

 

その刹那、

 

「縛道の六十一『六杖光牢(りくじょうこうろう)』」

 

背後から縛道を受けて動けなくなる。

 

「貴様・・・剣だけ捨てて・・・!」

 

「まだだ、縛道の六十三『鎖条鎖縛(さじょうさばく)』」

 

鎖を巻き付けられて行動が完全に封じられる。

 

「油断したな。セイバーオルタ」

 

望月はエクスカリバーを回収してセイバーオルタの心臓に突き立てた。

 



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鉄拳!炎の料理人

虚化修行を終え、仮面の軍勢(ヴァイザード)のメンバーとして認められ、1年が経った。

 

仮面の軍勢(ヴァイザード)の食費が、跳ね上がった。

 

料理当番は拳西と望月の2人による交代制である。好評が良いのは、

 

「俺だ!」

 

「いや、そればっかりは譲れませんね!」

 

喧嘩するほどに譲らない。

 

「ここは皆さんに決めてもらうほかないっすね」

 

「どっちだ⁉︎」

 

くるりとほかのメンバーの方に向く。

 

メンバーは汗をかきながら、

 

答えようと2人をみると、

 

「「・・・」」

 

望月は風王結界を解除したエクスカリバーを肩に担ぎ、拳西は包丁と自分の斬魄刀"断風"の2つを持っていた。

 

((((((答えたら殺られる・・・!))))))

 

「「どっちだ・・・⁉︎」」

 

「では、こうしまショウ。2人がいまここで料理を作り、それを我々が食べ、審査するというのハ」

 

(ナイスや、ハッチ)

 

こうして、第一回"鉄拳!炎の料理人"が始まった。

 

「さて始まりマシタ。"鉄拳!炎の料理人"。実況はワタシ、ハッチこと鉢玄。解説に真子サン」

 

「どうも」

 

「ゲストにわざわざ自力で具象化して現れた望月サンのエクスカリバーことセイバーサンを迎えてお送りしマス」

 

「望月選手の作る料理は食べるものの味覚にビックバンを巻き起こす至高の一品です」

 

「なにゆうてんねん」

 

「対する拳西選手は長年仮面の軍勢(ヴァイザード)の我々の食卓を支えてきたベテランデス。どういった料理が出てくるのか非常に楽しみデス。判定は一般の方(仮面の軍勢(ヴァイザード))のみなサンに食べていただき美味しかった方の札をあげてくだサイ」

 

望月は若干不利だがきっとなんとかなるだろう。

 

「それでは、始めてくだサイ」

 

ハッチのスタートの合図で双方料理に入った。

 

望月はジャガイモを左手に握った鍋で茹でながら、右手で玉ねぎをみじん切りにし、炒めていく。

 

「二刀流デスね」

 

「さすがマスター、手際がいいです」

 

「拳西もさすが。見事な包丁さばきや」

 

拳西は包丁で人参をみじん切りにしていく。

 

「望月選手、茹でたジャガイモを手に取り・・・粉砕しマシタね」

 

次々と茹でたジャガイモを握りつぶしていく。そしてそれをソフトにボールへ。

 

「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 焦熱と争乱 海隔て逆巻き南へと歩を進めよ———」

 

「オヤ?拳西選手のこれは・・・」

 

「破道の三十一『赤火砲(しゃっかほう)』」

 

拳西、まさかの赤火砲(しゃっかほう)で着火。中華鍋をふるっている。

 

「元副鬼道長としてはなんだか複雑な気分デス」

 

「なんという荒技。驚きです」

 

「いや、まだだ!破道の三十三『蒼火堕(そうかつい)』」

 

火力を上げて一気に仕上げていく拳西。

 

「これ炎で料理燃え尽きんか?」

 

「完成だ」

 

〜拳西特製鬼道チャーハン〜

 

「それでは冷めないうちに食べてくだサイ」

 

メンバーの各々はチャーハンを食べていく。

 

「皆サン、食べ慣れているせいか表情が若干薄いデス。解説をセイバーサン、お願いしマス」

 

「このチャーハンは口に入れた途端、美味しさが火山の如く爆発いたします。そしてこの絶妙なパラパラ感・・・素晴らしいです。これは一歩リードといったところでしょう」

 

「さて、望月はここからどうやって巻き返しを図るか・・・」

 

望月ら揚げ物をしながらじっと見極めていた。上げるタイミングを。

 

「微動だにしまセンね」

 

 

 

あれは、一ヶ月前のことだった。時折セイバーを呼び出して料理を食べさせているが案の定、不合格のままだった。

 

望月は消費した食材の補充に買い出しに出かけ、その帰りにとある店に立ち寄り、コロッケを買い、

 

(こ、これはッ・・・!)

 

感動した。

 

「て、店主!このコロッケは・・・一体どんな食材を使って・・・?」

 

「え?家庭で使っている食材だけど・・・」

 

「馬鹿な・・・!」

 

「あぁ、でも、()()はたっぷりと入れてあるねぇ。それは———」

 

 

 

望月は目を見開き、揚げ物、コロッケを油から上げる。

 

「料理には欠かせないものがある・・・それは、食材への感謝、食べてもらう人への愛情、すなわち、まごころだ!」

 

〜望月特製まごころコロッケ〜

 

「それではどうぞ、お食べくだサイ」

 

メンバーはコロッケを一口食べた。その瞬間、泣き出した。

 

「えー、解説できる状態ではないのデ、真子サン、どうぞ・・・あなたも泣いてマスね・・・」

 

「これは・・・美味しい。とても素朴で・・・やけど、味覚だけやない・・・心にダイレクトに響く・・・」

 

「それでは、結果発表をお願いしマス」

 

全員、望月に票を入れた。

 

拳西は馬鹿なと言って望月のコロッケを一口食べた。

 

「・・・カーチャン・・・」

 

「拳西選手、以外に涙もろかったようデス」

 

「チクショウ!今回は負けにしといてやるよ!」

 

拳西は泣きながらどこかに走って行った。

 

(これが・・・まごころ。でも、俺のはまだ未完成・・・師匠(コロッケ屋の店主)には程遠い・・・そして、いつかセイバーを・・・)

 

 




この話には元ネタがあります。わかる人はわかるでしょう。


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主人公のプロフィール

【名前】

百目木 望月(どうめき もちづき)

 

【プロフィール】

身長 185cm

体重 72kg

好物 食べ物全般、猫

苦手 藍染、カゲロウ

誕生日 7月31日

特技 料理、鬼道

顔と体型はFate/Prototypeのアーサーに近い。

 

【略歴】

護廷十三隊十三番隊に所属する。

後に第五席に出世。

流魂街の出身で流魂街に自宅がある。

現段階では藍染によって虚に現世で殺された事になっている。

現世で仮面の軍勢(ヴァイザード)協力の元、内なる虚を抑える。

 

【人物】

食べることが好きな美食家で大食い。美味しいものの為なら金を惜しまないため流魂街の自宅には高級な食材や調味料がある。しょっちゅう自宅に帰っては料理を楽しむ。

尸魂界(ソウル・ソサエティ)では料理屋に恐れられ、食べ放題(バイキング)を開催したが最後、全てを食べ尽くす。そして、出禁になる。異名は"海賊潰しの海賊(バイキング・キル・バイキング)

興味がある物はとことん調べるタイプでそのせいで藍染にやられた。

彼の特有の技、"霊力放出"は瞬歩よりも直線移動が速い。

乱戦があまり得意ではない。

戦闘能力は隊長格と比べても遜色ない。

 

【斬魄刀】

約束された勝利の剣(エクスカリバー)

常時開放の斬魄刀で解号は、「我が王に勝利を『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』」。

普段は"風王結界"により刀身が見えないが開放することで真の刀身、黄金に輝く剣が現れる。

直接攻撃系と鬼道系の両方の側面を合わせ持った斬魄刀。

本体はFate/のアルトリア。モチロン、ハラペコ王

 

風王鉄槌(ストライク・エア)

纏わせた風を解放することで破壊力を伴った暴風として撃ち出す。

 

・最大開放『約束された勝利の剣(エクスカリバー)

所持者の霊圧を光に変換、集束・加速させることで運動量を増大させ、光の断層による「究極の斬撃」として放つ。攻撃判定があるのは光の斬撃の先端のみだが、その莫大な魔力の斬撃が通り過ぎた後には高熱が発生するため、結果的に光の帯のように見える。

「束ねるは星の息吹。輝ける命の本流。最大開放———『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』」で発動する。言わなくてもよいが鬼道の類であるため言ったほうが威力は高い。

鬼道の類であるが、縛道の八十一"断空(だんくう)"で防ぐことは不可能。威力を減らすことも鬼道を逸らすこともできない。

 

全て遠き理想郷(アヴァロン)

エクカリバーの鞘。

持ち主の老化を抑え、呪いを跳ね除け、傷を癒す。"鏡花水月"、"逆撫"の能力を無効化できる。

数百のパーツに分解して使用者の周囲に展開され、この世界では無い「妖精郷」に使用者の身を置かせることであらゆる攻撃・交信をシャットアウトして対象者を守る事も可能。

ただし制約として常時発動ではなく任意発動。

鬼道では無さそう。よく分からない技。

 

【鬼道】

二重詠唱、詠唱破棄、九十番代が使用可能。能力は高いが霊力消費量が多く使いすぎると疲弊する。

 

【虚化】

獅子の意匠を施した兜風の仮面。Fate/GOのアルトリア〔ランサー〕の兜と同じ。

斬魄刀にまで影響を与えエクスカリバーが闇に染まる。



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