真剣で忍界最強なんだか.... (柚ちょこ)
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番外編
プロローグ: 転生はいかが?


「あれ?ここどこだ?」

 

目を開けたら、そこは真っ白な空間だった。

周りには何も無い....いや、一つだけあった。

地面に自分の頭を付けている白い服を着た人の頭があった。

 

見事な土下座だった。未だかつてこんな綺麗な土下座を俺は見た事があっただろうか?いや、無いと断言出来る。

 

「すまんかった!」

 

それがその人の第一声だった。声的に老人だろうか?

 

「え〜と、とりあえず頭を上げてくれないですかね?」

 

俺がそう言うとゆっくりと老人が顔を上げてくれた。とても長い髭が特徴的な優しそうな老人だった。

 

「で、俺はどうなったんですかね?」

 

確かトラックにひかれそうになっていた女の子を助けようとしたらこんな所にいたわけなんだが....

そんなことを考えていると老人は申し訳なさそうに話し始めた。

 

「実はお前さんは儂の手違いで死んでしまったんじゃ」

 

「え?死んじゃったの?俺?」

 

俺は自分のことを指さしながら言った。老人はうんうんと激しく頷いた。いや、頷かれても....

 

ん?待てよ。俺確か女の子を助けようとして死んだよな?

 

「あの、女の子は?無事なのか?」

 

「あぁ、それなら心配はいらんよ。彼女は無事じゃよ。お主が命を救ったのじゃ」

 

「そっか、ならいいか」

 

なんというか、安心した。これで女の子まで死んでしまったら元も子もない。

 

「随分と軽いの。お主は死んだのじゃじょ?」

 

「それでも、女の子は助かった。だったらいいよ。俺は」

 

本気でそう思う。俺なんかの命で人を助けて死んだなら本望だ。

 

「そうか....変わっておるのだな。お主は」

 

変わってるか....確かにそうかもしれない。昔から人より感性がおかしかったっていう自覚はあったが、この老人までに言われてしまうとは

 

「さて、お主は儂の手違いで死んでしまった。よってこれから別の世界に転生してもらい新たな人生を送ってもらう」

 

「え?いいのか?そんなことしても」

 

「まぁ、今回の場合は特別じゃ。さて、転生先はお主が最後に遊んだゲームから取るかの」

 

最後に遊んだゲーム?何だったかな?あ、友達に勧められて買った。真剣で私に恋しなさい!だったかな?たしかそれのA5をやった記憶があるな。最上旭が可愛かったことしか覚えていない。

 

「ふむ、真剣で私に恋しなさい!か」

 

俺は老人に自分が最後に遊んだゲームを教えた。まさか、あんな強い人達がいっぱいいる世界に行くとは俺大丈夫かな?

 

「さて、転生先も決まったし、特典選びに移るかの」

 

「特典って?」

 

「お主には三つまで特典をやろう。このまま、お主を転生させるほど儂は鬼ではない」

 

「特典ってなんでもいいのか?」

 

「基本なんでも大丈夫じゃが。悪用はしてくれるなよ。あくまでお主の人柄を信用しての提案じゃ」

 

俺の人柄って俺とあんたは会ってそんなに経ってないんだが。まぁ、いいか

 

「でもな、俺あんまりそういうの分からなしな」

 

「前いた世界で見たアニメでも漫画でもいいから強かった奴の能力とかでも大丈夫じゃ」

 

強かった?俺が見た漫画で強かった奴....。あっ!

 

「じゃあ、う〇はマ〇ラの能力とかは?俺それくらいしか漫画読んだことないんだ」

 

自慢じゃないが俺はもといた世界では、漫画やアニメは某忍者漫画しか読んだことない。その中でも俺が一番好きなキャラだ。

 

「なるほど、それは六道の力までということでよいか?」

 

「あぁ、それで頼みたい」

 

「ふ〜む、随分ぶっ飛んでいるが、お主なら悪用はせんじゃろ。うむ、了解した。それであと二つはどうする?」

 

そこが問題だ。特に無いんだがせっかく、くれると言う特典を無下にもできないらな〜

 

「爺さんは何がいいと思う?」

 

気付いたら俺は老人にそんな質問をしていた。まぁ、これでいい回答がきたらそれを参考にしよう。

 

「う〜む、そうじゃな。やはり金かの」

 

身もふたも無かった....

 

「金、か?」

 

予想外過ぎる返答に若干驚いた。

 

「どんな、世界にも金はあった方がいいじゃろ。お主専用の口座を作りそこにある程度の資金を送ろう」

 

「分かった、それでいいや」

 

「さて、最後の一つ何にする?」

 

そうして、また老人が俺に質問する。最後の一個何がいいだろうか?やっぱり、何も浮かばない。そう考えていると、ふと自分の名前が変わるのか疑問に思った。

 

「なぁ、爺さん。次の世界での俺の名前を指定したいんだが、いいかな?」

 

「それは特典でいいかの?」

 

「あぁ、構わない。オレの名前は明人で頼む。前の世界で親に貰った大切な名前だから変えたくないんだ」

 

「そうか、明人。良い名じゃな」

 

そう言って老人は優しく微笑んだ。

 

「では、明人よ。二度目の人生じゃ。思う存分楽しんでくるとよい!」

 

「あぁ、行ってきます」

 

俺も老人に優しく微笑み返した。そして、俺の足元に穴が空いた。

 

「え?」

 

そのまま、急降下。

 

「うそおぉぉぉぉん!!」

 

「たっしゃでの〜〜」

 

そして、俺は無事に真剣で私に恋しなさい!の世界に転生したのだった....




小説を書くのはなかなかに難しいんですね。改めて痛感しました。


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主人公設定と技集

ここでは、主人公の設定と作中に出てきた技の説明をします。

お時間あればどうぞ!


名前:立花明人(たちばなあきと)

 

誕生日 4月13日

 

血液型 B型

 

身長 171cm

 

好きなもの 仲間、家族、自分の居場所

 

嫌いなもの 前記を脅かすもの

 

容姿

 

逆廻十六夜を黒目黒髪にした感じ

 

概要

 

トラックに引かれそうになっていた少女を助けようとして死んでしまったが神の力で以下の特典を得て、転生した転生者。

 

・うちはマダラの力、全て。

六道マダラまでの全ての力を使える。また、作中では使用してない技や自身で編み出した技も使える。気は限りなく無限に近いが大技を連発するとかなりの疲労感に襲われる。

また、作中で使われていた巨大なうちわなどの武器も使える。これは明人が中学生の時に宅配便で届いたらしい。

 

・一生遊んで暮らしてもお釣りが来る大金

 

神の特典の一つでこれも明人が中学生になった時に家の机の上に通帳とカードが置いてあり、それの額を見て明人は腰を抜かしたとか....

 

・明人と言う名前

 

前の世界で両親に貰った名前をこの世界でも引き継ぐことを特典とした。人を支えられる人、常に明るく生きて欲しいと言う意味が込められたそうだ。

明人自身もこの名前を気に入っており、苗字より名前で呼ばれるのを好む。

 

 

以下の能力を特典として授かった。

 

 

・性格

 

普段はファミリーのために問題を独自のやり方で処理し、ファミリーに害が出ないように行動するが、できれば怠けていたいらしく家にいる時はグータラしてるそうだ。

仲間と自分の居場所をとても大切に思っており、それを脅かすものには容赦はしない。また、困っている人がいると放っておけない。

両親が共働きなので家事全般は明人がやっており、中でも料理は得意分野でお菓子作りなどもお手の物。

実はかなりの戦闘狂で普段は隠しているが、一度スイッチが入ると戦闘中でも笑みを浮かべるなどの狂気ぶりを発揮する。

 

・家庭

 

立花鬼平(たちばなきへい)

 

誕生日5月6日

 

身長185cm

 

好きなもの 家族 強き者

 

嫌いなもの 弱き者

 

概要

 

かつて鬼神と呼べれていた程の強さを持ち、川神鉄心の教えを受けていた。妻の明奈に会うまではかなりとんがっていたと鉄心は語る。容姿は黒い髪を後ろで結び、漢という雰囲気を醸し出しているが涙脆い。妻の明奈には頭が上がらない。

鬼神と呼べれていた頃は毎日戦いに明け暮れ、鉄心からも忠告されたが己の力に満足できずに世界中を旅し、回っていた。 戦闘スタイルは自身の気を鬼のような形に変化させ、戦う彼独自の戦い方。『鬼流一殺式決闘術』。

 

 

立花明奈(たちばなあきな)

 

誕生日7月24日

 

身長163cm

 

体重 秘密♡

 

スリーサイズ 87-58-87

 

好きなもの 明ちゃん

 

嫌いなもの 特に無し

 

概要

 

薄い栗色にカーブがかかった長髪を持ち、タレ目が特徴的な女性。明人曰く、ひつじ系女子。おっとりとした性格だが、言う事は言う。

鬼平とは最初、雨の日に鬼平と出会いお互いに同じ場所で雨宿りしたことがきっかけで知り合い、鬼平の戦闘の様子を見ても全く動じず、「ずっと、辛い思いをしていたのね」と鬼平の心をいたわった。鬼平曰く、ここで自分は堕ちたと言っている。

明人を深く愛しており、明ちゃんと呼ぶ。今でもお風呂に一緒に入りたがるがその度に明人に叱られる。料理の腕は錬金術みたいなもので肉じゃがを作ると蒸したいもができ、ハンバーグを作るとひき肉の炒めたやつが出てくるが食べられなくはない。

 

 

 

・技集

 

分布月読

 

薬を打ったものに強制的に写輪眼を開眼させ、幻術に掛けてる操る技。

 

五遁(ごとん)大連弾(だいれんだん)の術

 

明人本体を含む五体の分身を作り出しそれで敵を囲み火・雷・水・土・風の五属性の力で同時攻撃する。その威力は絶大で須佐能乎の中にいる術者にすら大きなダメージを与える。

 

六道・神羅界叫(しんらかいきょう)

 

須佐能乎の遠距離武器の八坂ノ勾玉に五大属性と陰と陽の力を合わせ放つ最大遠距離攻撃。この攻撃はあらゆる物を消し飛ばすほどの威力を持つその気になれば惑星一つ消し飛ばす程の力を持っている。

 

(まとい)須佐能乎金剛神(すさのおこんごうしん)

 

明人が生み出した須佐能乎に自分がイメージした姿を取り付け、金剛力士の姿を模したもの。この技は明人の想像力次第でどんなこと姿にも変わることができ、かなりの応用力を有する。

金剛神の場合は攻守共に優れているが攻撃手段が素手のみなので室内戦などの行動が限られる戦闘に向いている。




編集した際は後書きに書きますのでよろしくお願いします


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第一章: 川神での生活編 幼少編
第一話:修業をしましょう!


俺こと坂井明人とはとある事情により転生したのだが....

 

「おぎゃあああああ〜」

 

まさか、赤ん坊からやり直しとはあの爺さんめ....!

 

「おめでとうございます。元気な男の子ですよ」

 

俺がそんなことを考えていると助産師さんらしき人が俺を抱きしめている女性に言った。

とても、優しいそうな女性だ。額には汗をかき、息が荒い。それでもその顔は幸せそうな顔だった。

 

「この子が私の息子....。絶対に、守るからね」

 

俺を抱きしめながら泣き出してしまった。この時に俺はいい人の所に産まれてきたんだなって思った。

 

それから、父親にも会った。こちらも普通の人だったが、涙と鼻水で顔をグチョグチョにしていた。とりあえず、いい両親の所に産まれた良かった。

 

それから、何年か経ち。俺は小学一年になった。この時から特典として貰った能力が開花してきた。

最初は写輪眼が開眼した。これにより大体の人の攻撃は見切れるようにはなった。これで生存率はグッと上がったはずだ。

でも、今のままでは技も何も使えないので俺は親の目を盗んでは術の練習をしていた。だが、それをある日父親にみられてしまった。すると父は

 

「明人!その術は誰におそわったんだ!」

 

と俺の両肩を掴んで問いただしてきた。

 

「全部自分で覚えたんだよ。それと、父さん痛い」

 

そう言うと俺の父は俺の手を引き、ある場所に連れて行った。そこは俺にも見覚えある場所だった。

 

「父さん。ここって....」

 

「そうだ。川神院、武の総本山だ。いいか、お前には素質がある。俺は昔ここで総代川神鉄心に教えを受けていたことがある」

 

まじか....俺の父は意外にも凄い人だった。

 

「明人。ここで総代の教えを受けなさい。お前のその大きすぎる力はいつか自惚れを生む。お前にはそんなふうにはなって欲しくない」

 

父の表情はいったて真剣そのものだった。ここで母さんの了承は?と聞くほど俺も野暮じゃない。

 

「分かったよ。父さん!俺ももっと強くなりたいから入るよ!川神院!」

 

我ながら良い返事だった。

 

そして、俺は父に連れられ川神鉄心の元まで行った。

俺は父が鉄心さんと話している様子を遠くで見ていた。話が終わると父は鉄心さんに一礼して俺に手を振って帰っていった。

 

そして、川神鉄心が俺の元にやって来た。あ、この人どことなくあの老人に似てるな。そんなことを思った。

 

「さて、お主があやつの息子かの」

 

そう言うと鉄心さんは俺のことをジッと見た。俺はその一時もその人から目を逸らさなかった。そうすると鉄心さんは優しい笑みを浮かべた。

 

「うむ、昔のあやつにそっくりないい目をしておるの。儂は川神鉄心じゃってもう知っておるかの」

 

「立花明人です!よろしくお願いします!鉄心さん!」

 

「元気があって良いの。さて、お主は儂の孫と戦ってもらうぞ」

 

........ん?今なんて言った?この爺さん。孫と戦ってもらう?あれ?川神鉄心の孫って....まさか!!

 

「紹介するぞ、おいモモ。こっちに来なさい」

 

そう鉄心さんが声を掛けるとこちらに走って来る少女が。あぁ、間違えない。こいつは....

 

「儂の孫の――」

 

「川神百代だ。よろしくな立花明人」

 

鉄心さんの声をさえぎって自分から名乗った。やっぱり、こいつが川神百代....後に武神と呼ばれる。

 

 

俺詰んだかな....

 

 

「では、早速じゃが試合の準備を始めるぞい。明人付いてきなさい」

 

「いや〜楽しみだな。お前そうとう強いんだろ?明人」

 

え〜話が勝手に進んでる。ここは腹をくくるしかないだろうな。今の実力でどれだけ百代に太刀打ちできるかを把握するいい機械を貰ったと思おう。うん、ポジティブ思考だ!

 

そんなことを考えているとあっという間に試合場所に連れてこられた。周りには何人もの修行僧達やあれはたしか釈迦堂さんだったかな?その隣にいるのはルー先生だ。うわぁ、二人とも若いな。ゲームでは少し、老けていたからこう若い頃を見るのは新鮮だ。

 

「西!川神百代!」

 

「あぁ!」

 

そして、お互いの名前が呼ばれる。

 

「東!立花明人!」

 

「あ、はい!」

 

「何かあった時は儂や釈迦堂達が対処するから思う存分やりない」

 

ってことは百代も全力で来るのか。これはいよいよヤバい。

 

「それでは、初め!!」

 

鉄心さんの合図で戦いの幕が開いた。




展開が早い気もしますし、雑な気もします。難しいですね。小説書くのは。

それに短いと自分でも思いますがどれくらいが良いのかイマイチ分からないので感想等で教えて下さるとありがたいです(^^)


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第二話: いざいざ!尋常な勝負を!

「川神流・三連突き!!」

 

鉄心さんの合図と共に百代がいきなり技をキメてきた。鋭い拳が三連続俺めがけて飛んできた。俺はそれを身をよじってなんとか回避する。

 

「あぶねっ!」

 

「おっ、避けたな!いいぞ明人!もっと私を楽しませてくれ!」

 

この戦闘狂がっ!こっちはまだ写輪眼になってもいないってのにいきなりエンジン全開!フルスロットル!みたいな感じで来やがって。俺は目を閉じ、気を集中する。まだ、すぐに写輪眼になるっていうことはできない少しの間時間が必要となる。といってもものの数秒だが....

 

「よし!来い!」

 

自分の目を写輪眼に変え百代と向き合う。

 

俺の目を見た百代は少し、驚いた表情を取ったがすぐに表情を元に戻す。

 

「さっきと雰囲気が変わったな。それになんだその目は?」

 

「これが俺の臨戦態勢みたいなもんだ。こっから本番だぜ!」

 

「望むところだっ!!」

 

百代は俺に近づき拳の雨を俺に浴びせるが、俺はそれを全て見切り捌いていく。

 

凄い!これほど相手の動きが読めるなんて。この目だけでもかなりの強さだ。

 

「はぁっ!!」

 

百代は右パンチを俺の顔目掛けて放った。俺はそれを紙一重で回避し、百代を一本背負いで投げとばしたが、綺麗な受身を取られた。

 

だが、これで俺と百代の間に距離が生まれた。一つここらで仕掛けてみるか....!

 

印を結び、大きく息を吸い込み。そして!

 

「火遁・鳳仙花の術!」

 

火の玉を口から吐き出し、百代目掛けて飛ばす。

 

「なんだ、そんなこともできたのか!ならばこっちも」

 

百代も気を練り、技を放つ。

 

「川神流・致死蛍!」

 

こちらも小さな気弾を出し、俺の鳳仙花とぶつかった。その瞬時、鳳仙花が爆発し、あたりに煙を撒き散らした。

 

「なに?!」

 

百代は驚きの声を上げていた。

 

この写輪眼なら、煙の中でもはっきりと百代の位置が掴める。俺は百代目掛けて走り出した。

 

「煙に紛れて攻撃する気か!だが、甘い!私にこんなもは効かない!」

 

百代は俺に目掛けて拳を飛ばした。

 

「予測済みだ!」

 

その拳を俺は回避し、百代の肩を掴み。百代の目を見た。

 

「な、に....」

 

すると、百代は糸が切れた人形の様に力なく倒れた。

 

写輪眼特有の幻術、これが決まらなかったらどうしようかと思ったが、なんとかなったな。

 

やがて、煙が消え。その場に立っているのは俺だけ。ということはおのずと

 

「そこまで!勝者 立花明人!!」

 

鉄心さんが勝利の宣告をした。周りにいた修行僧達もすごい歓声をくれた。

 

「みごとだ!」

 

「まかさ、百代を!?」

 

などの声もちらほら聞こえてきた。

 

「明人よ、お主モモにいったい何を....」

 

「幻術にかけました。今は夢の中です。おおかた自分が勝った夢でもみてますよ」

 

「うむ、そうか。今日は疲れたじゃろ。本格的な鍛錬は明日からするから今日はもう帰りなさい。モモには儂から伝えてく」

 

「はい、今日はありがとうございました!」

 

一時はどうなるかと思ったが、なんとかなったな。これで俺も正式な鍛錬を受けられる!

 

これから自分がどんなに強くなるのか楽しみだっ!そんなことを思いながら俺は駆け足で家に帰った。

 

 

 

――後の川神院では....

 

「総代」

 

「ん、ルーか」

 

「まさか、百代が負けるとハ。思いもしませんでしたネ」

 

川神院のルーと釈迦堂が川神鉄心と話をしていた。

 

「まさか、あれ程とはね。立花明人あいつの息子ってだけはあるんだなジジイ」

 

釈迦堂が鉄心にそう言う。あいつとは立花明人の父、立花鬼平。

 

「うむ、儂も最初は驚いたはわい。久しぶりに顔を見せたと思ったら自分の息子を鍛えて欲しいと言ってきおった」

 

「でも、総代が驚いているのはそれだけではありませよネ?」

 

「うむ、あの鬼神と呼ばれた奴があんなに優しい顔をするようになるとはやはり恋とは素晴らしいものじゃの。あ〜儂も若きの炎を取り戻したいわい」

 

そう言って、鉄心は川神院の奥へと歩いって行った。

 

「まったく、総代は真面目な話をしてるのですヨ!」

 

「まぁ、ジジイらしな」

 

その後に続いてルーと釈迦堂も歩き出した。

 

 

場所は変わって、百代の部屋。

 

百代は明人の幻術にかけられ夢を見ていた。自分が明人に勝つ夢を。

 

「はっ!!」

 

だが、夢は覚めるもの。百代は勢い良く布団から飛び起きた。

 

「あれ?わたしはたしか勝ったのか?」

 

イマイチと釈然としない記憶。そこに鉄心がやって来た。

 

「ようやく起きたか、モモ」

 

「ジジイ!わたしは勝ったのか?負けたのか?」

 

「負けたよ。言い訳できんほどにの。お前は幻術に掛かられたのじゃ」

 

「幻....術?」

 

「まぁ、一種の催眠術みたいなものじゃが。立花明人のはそんじょそこらの催眠術とはわけ違う。相手を完全に眠らせ戦闘不能にさせる。これが本当の試合であったならモモお主はとうの昔に死んでおるわ」

 

百代は初めて負けた。しかも、自分より年下にそれが何より悔しくてならなかった。

 

「くそぉ!次は絶対に勝つ!ジジイ早速走ってくる!」

 

百代は勢い良く、部屋を飛び出した。

 

「うむ、モモに必要だったのは敗北じゃ。それをこの歳で味わったのは良かったのか、悪かったのか。さてさて、モモはまだまだ強くなるじゃろうな。まったく困ったものじゃの」

 

そう言いつつも川神鉄心は百代を見つめていた。美しく落ちていく夕日を見ながら。




戦闘描写はとても難しいものですね....。

なかなか骨が折れます。

今回は少し長めにしてみましたがどうだったでしょう。感想等でご意見お聞かせくださいm(*_ _)m

それではまた次回でお会いしましょう!


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第三話: お友達になりましょう!

俺が百代と戦った次の日から俺は川神院に通いつめていた。早く強くなりたいというのもあったが、それよりも自分の力がこの世界ではどれくらい通用するのかが、とてもなる気になっていたのだ。

 

最初は基礎鍛錬から言わいる体力作りから始まり毎日決まったメニューを消化して行き、それに加えて俺自身で組んだメニューもやっていった。

 

百代から何度か再戦を申し込まれたがお互いの力が高まったらまた戦うと約束をした。

 

それから、数年が経って、俺は小四に百代は小五になってお互い切磋琢磨していたある日、百代が俺にこんなことを言ってきた。

 

「なぁ、明人〜」

 

「ん?なんだ?」

 

俺は今組まれたメニューを消化して、自分で組んだメニューを消化してるところだった。上半身は裸で片腕で腕立て伏せをしている。ちなみに数は百回ぐらいがノルマに設定してる。

 

「わたしが今遊んでいるグループに風間ファミリーっていうのがあるんだ」

 

風間ファミリーなるほど、最近いないと思ったらあいつらと遊んでるのか。

 

「ふ〜ん、それで?」

 

「それで明日、縄張りをかけて上級生とバトることになってな。お前も参加してくれ」

 

随分も最初から飛ばしているんだな風間ファミリーはまぁ、それもキャップらしいか

 

「分かった。場所は?」

 

「明日公園に集合だ。遅れるなよ!じゃあな」

 

そう言って、百代は走って行ってしまった。

 

「風間ファミリーか....」

 

と言って俺はトレーニングを続けていた。

 

 

 

翌日・とある公園

 

 

 

「お前がモモ先輩が言っていた奴だな!俺は風間翔一。キャップって呼んでくれ」

 

俺の前にはバンダナを付けた元気そうな少年。キャップが立っていたそれにしても今も昔も変わらないかキャップは

 

「立花明人だ。よろしくなキャップ」

 

「おう!おい大和お前の番だぞ」

 

と言ってキャップは後にいた大和に言った。そういわれた大和は俺の前に来たのだが、あれ?たしか大和って昔はかなりの厨二じゃなかった。

 

「直江大和だ。ファミリーの頭脳だ」

 

....痒い。なんだか、とても背中がムズムズする。一つ質問をしてみるかこれでこいつが厨二病かどうか分かる。

 

俺は大和と握手をしながら質問した。

 

「立花明人だ。直江大和一つ質問していいか?」

 

「なんだ?」

 

「お前にとって人生とはなんだ?」

 

「ふん!死ぬまでの暇つぶしよ!」

 

あぁぁぁぁ!!痛い!痛いよ!この子!俺は思わず額に手をやった。

 

先生この子は重症です。お薬を処方してください....

 

「そ、そうか....これからよろしくな大和」

 

「あぁ、こちらこそ」

 

俺、大丈夫かな〜

 

「よし、自己紹介も済んだし、早速その上級生をこらしめに行くぞ。キャップ」

 

「モモ先輩!勝手に仕切るなよ!ファミリーのキャップは俺だ」

 

そんな会話をしながら俺達は上級生が待つ縄張りに行った。

 

結果はまぁ、圧勝だった。俺と百代で十分というかやっぱり俺いらなかったかな?

 

それからはトレーニングを終えると百代と一緒に風間ファミリーと遊んでいた。ファミリーにはどんどん仲間が増えっていった。モロこと師岡卓也。ガクトこと島津岳人。犬じゃなくて岡本一子そのうち川神一子になるがな....。

 

でも、一つだけ気掛かりがあった。京のことだ。あいつがたまに学校でいじめらているのをたまに見かける。もちろん見れば助けるが、その度にあいつはもう助けなくていい。と俺を突き放してくる。そのことが心に残って仕方ない。

 

京は大和に惚れている。それは大和が京を助けたからだ。だったら、その通りに俺は行動する!大和に京を助けさせる。そのためにはまず大和を説得する!

 

そんなことを考えていた数日が経ち。大和が京をいじめらているのジッと見ているのを見つけた。

 

「見てないで助けたらどうだ?」

 

「明人....俺には関係ないことだ」

 

「また、ニヒルか?いい加減したらどうだ?そんなじゃ誰も救えない。お前は百代の弟になったんだろ?」

 

「それとこれは話が違う」

 

「分かった。今日は俺が助ける。だが、忘れるなよ大和」

 

俺は大和に振り返った言った。おそらく、俺は無意識に写輪眼になっていたのだろう。大和が少し、怖がっていたから

 

「そんなことを続けていたらいずれ必ず後悔する!絶対だ!!」

 

自分でも驚くほどその日は怒ったかもしれない。

 

そして、俺はいつもの通りに京を助けるたが案の定。助けないでいいと言われてしまった。

 

それから数日経って、京がクラスの生物係になった。その時にクラスの中で京をいじめている奴の顔が気になった。

 

そして....

 

「お前が殺したんだ!」

 

「椎名菌!椎名菌!」

 

「死んじまえよ!」

 

京が世話してた、金魚がころされた。

 

俺が行った時には遅かった。京は泣いていた。初めて俺は京が泣いてるところを見てしまった。情けない!こんな女の子を泣かせるなんて

 

「お前らいい加減にしろ!」

 

声を発したのは俺ではなかった。大和だった。

 

「なんだよお前」

 

「お前も椎名菌の仲間か!」

 

京をいじめていた奴らは今度は大和を攻撃し始めた。大和は殴ったり、殴られたり。その目には涙が滲んでいた。

 

「このヤロー!」

 

いじめっ子の拳が大和の顔に当たることはなかった。俺が受け止めた。

 

「お前は!?」

 

いじめっ子は驚愕の表情だった。

 

「大和ニヒルはもういいのか?」

 

「あぁ、あれじゃあ何も変えられないからな明人の言葉で目が覚めた!」

 

「そうか!ならいっちょ派手に行くか!」

 

「おう!」

 

そして、俺と大和はいじめっ子から今度こそ京を救った。そして、京の元に行こうか、行かないか迷っている大和に

 

「大和、これはお前の人生だ。どんな道を行くかはお前が決めるんだ。でも、どんな選択にも責任が付いてくる。だから、後悔しないようにな」

 

そう言って俺は大和の背中を押してやった。

 

「じゃあな、先に帰るわ」

 

その後は、京は大和にべったりだった。うん、やっぱりこっちの方がしっくりくるな。風間ファミリーに京を入れる件についてはガクトがあーだこーだ言ったが、大和との喧嘩により解決した。これでやっとファミリーらしくなってきたな。

 

 

 

それから、月日は流れ....

 

俺は中三に百代は高一になったそして今日は....

 

「この日をどれだけ待ったか、明人!!」

 

場所は川神院。今日は百代との決闘の日。ついにこの時が来てしまったか。お互いの実力はかなり高まったからそろそろ試合をしても良いと鉄心さんからの提案に俺達は了承した。周りには修行僧達が待機しており、今回は風間ファミリーのみんなも見物に来ている。

 

「できれば、俺はお前と二度と戦いたくはなかったんだけどな」

 

「つれないこと言うな。私は瞬間回復を身につけた。お前も何かを会得したんだろ?今日は存分に楽しませてもらうぞ!」

 

「双方準備はよいな?」

 

鉄心さんが試合の進行を始めた。

 

「前回と同様に儂とルーが全力で結界を張っておるからそちらも全力でぶつかると良い」

 

「では、西!川神百代!!」

 

「あぁ!!」

 

始まる!

 

「東!立花明人!!」

 

「あぁ!!」

 

「では、初めえぇぇぇ!!」

 

神と神とのぶつかり合いが....!!




さて、今回は京と風間ファミリーとの出会いを描きました!

これで良かったのかな?まぁ、細かいことは気にしないようにします!

次回は成長した百代と明人とガチンコ勝負です。明人のチートっぷりが炸裂しますので楽しみにしていてください。

では、また次回さようなら(^_^)/~~


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第四話: 決闘しましょう!

武神と呼ばれている川神百代。

 

その理由は百代が習得したチート技瞬間回復だろうと俺は思ってる。自身の細胞を気で活性化させ、傷の治りを早める。

 

かなり強い技だが、突破口はある!

 

「川神流・無双正拳突き!!」

 

百代の気を纏った拳が俺に飛んでくる。

 

子供の頃とは違い百代の動きは洗練され、無駄の無い動きに変わっている。通常の写輪眼で動きを見切るのは難しくなってきた。

 

それでも、これぐらいならまだ避けられる!

 

「流石だな明人!やはりお前との戦いは面白い!」

 

「少しは自重しろ百代!」

 

「いいや!できないなお前との戦いは!」

 

そう言ってまた、百代は俺に拳を浴びせるが、オレはそれを避け、百代を投げ飛ばす。

 

「子供の時と同じだな」

 

百代がそんなことを言う。

 

たしかにここで俺は鳳仙花の術を使ったが、今回は威力が違いけどな

 

「いくぞ!百代は死ぬなよ?」

 

印を結び、大きく息を吸い込み。

 

「火遁・豪火滅却!!」

 

火の壁が百代に迫り来る。

 

「その技は対策積みだ!はぁっ!」

 

百代は地面を殴り隆起させ、壁を作りそれを盾とした。

 

百代はすぐさまに上へ飛び、気を練った。

 

「いくぞ!明人!死んでくれるなよ!」

 

気を使った壮絶な一撃。

 

「川神流・星殺し!!」

 

百代の手から極太レーザーが発射される。

 

回避は....無理そうだな。ならば!

 

ドオォォォン!!

 

百代の星殺しは俺には当たらなかった。俺の前にある青い骸骨に阻まれた。

 

「!なんだそれは?!」

 

百代も周りの観客も驚愕していた。

 

「須佐能乎って言ってな。まぁ、気を具現化した物だ」

 

その骸骨はどんどん筋肉と皮が付いていき、最終的には二面四碗の阿修羅みたいな物になった。

 

『オォォォォ!!』

 

須佐能乎は雄叫びを上げた。

 

「私に内緒でこんな技を習得してるとは、妬けるじゃないか明人!」

 

「百代ここからが本番だ。すぐにバテるなよ!」

 

「こっちにの台詞だ!」

 

百代は勢い良くこっちらに向かい、渾身の一撃を須佐能乎にあてる。

 

だが....

 

「なに!?」

 

「どうした?そんなものか?」

 

須佐能乎はびくともしない。俺は須佐能乎の拳で百代を殴り飛ばした。

 

「ぐわあぁ!」

 

百代は派手に壁に激突し、地面に倒れ込む。

 

「やるじゃないか!明人!だったら、こっちも」

 

百代が気を纏い傷の治癒に入り出した。

 

「川神流・瞬間回復!!」

 

みるみると傷が治ってく、やっぱり反則だろ....あの技。まぁ、須佐能乎の方がよっぽどチートか。

 

俺は須佐能乎に剣を持たした。これで攻撃と防御ともに強くなる。

 

「今度はこっちから行くぞ百代!」

 

須佐能乎が百代目掛けて剣を振り下ろす。それを百代は右に避けたが、叩きつけた剣をそのまま百代に薙ぎ払う。地面をえぐりながら百代に剣が直撃する。

 

「なに!ぐぁ!」

 

またしても、百代は豪快に右に吹っ飛んで行ったが、すぐに受身を取り、瞬間回復で傷を癒した。

 

「いいぞ!こんなワクワクは久しぶりだ!」

 

「そろそろ、終わりたいんだが....」

 

「ダメに決まってるだろ!川神流・星殺し!!」

 

「無駄だ!」

 

百代が出したレーザーを剣でかき消したが、俺の前には百代はいなかった。

 

「なに?」

 

直後、百代が俺の足元から出てきた。

 

「はぁぁ!」

 

百代の正拳突きを俺はとっさに腕で防いだが、豪快に後ろに吹き飛ばされてしまった。

 

須佐能乎の形が徐々に崩れていった。

 

「やっぱり、中に人がいないと消える仕組みか」

 

「星殺しを陽動に使うとはやるな百代」

 

「お前と戦うんだこれくらいはなっ!」

 

百代がそう言ってこちらに向かってくる。須佐能乎は連発して、使えない。

 

俺は親指を噛んで血を出し、地面に付ける。

 

「口寄せの術!」

 

煙が俺を多うが百代は止まならない。

 

「川神流・無双正拳突き!!」

 

百代の拳は俺に届かずに俺が口寄せしたうちはに当たる。

 

「うちは返し!」

 

「なっ!ぐっ!」

 

百代はうちはから出た風で吹き飛ばされた。

 

「そんなものまで隠し持ってるとな」

 

「別に隠してたわけじゃないさ、必要なら最初から使ってた」

 

とはいえこのまま、長期戦になればジリ貧なるそれは避けたい。まだ、須佐能乎をリスク無しで使えるわけでもない。

 

仕方ない、少し疲れるが今日は出血大サービスだ!

 

「木遁・花樹界降臨!」

 

試合場全体に木々が生え出す。それは何度か百代を攻撃したが、それを百代は全て回避した。まぁ、本命はそれじゃない。

 

「凄い技だな」

 

「全部避けといて良くいう。だけど、本命はこっちだ」

 

木々から花が咲き、花粉を撒き散らす。

 

「!毒か」

 

「その毒は神経に作用する麻痺毒だ。しかも、それは発火性に優れてるんだぜ」

 

「まさか!」

 

百代は勘づいたが毒で思うように体が動かない。これで終わらせる!

 

「火遁・豪火滅失!」

 

火炎放射器の様に周囲にある木々を燃やし、そして花粉引火した炎は大爆発へと変わる。

 

轟音と共に樹海はあっという間に木炭へと変わっていった。

 

「まだ、やるか?」

 

爆発の後、焼け焦げた樹海の中心に立っていた百代に言う全身傷と火傷があり、息も荒い。気も尽きたのだろう。

 

「いや、ダメ....みたいだ....」

 

と言って百代はその場で倒れた。

 

「勝者!立花明人!」

 

俺は百代に勝ったが、少しだけ不満だった。もう少しマシには戦えなかったのか?と自分に問いかけるもその答えは返ってこない。

 

なんとも虚しい戦いなのだろう。

 

その後、傷を直した百代はまたいつか再戦を申し込むと言って一から修行を初めた。俺もまだまだ発展途上お互い切磋琢磨しようと約束をした。

 

そして、時を流れ。俺も川神学園と入学し二年生となった....

 

一つの節目いや、ここからが始まりなのか。

 

これから俺はどんな道を行くのだろうか?ずっと戦うのだろうか?それはそれでいいかも知れない。

 

でも、俺はマジ恋をやっていた時に思ったのが自分もこんな恋が出来るのだろうか?と俺は思っていた。

 

どんな道を歩むかは己次第。せめて、後悔の無いように道を歩んでいこうと俺は二年生になった時に決意した....

 

 




む〜相変わらず戦闘描写は難しいですね( ̄▽ ̄;)

どうも、トロンボーンと呼ばれた男です。

さて、今回は百代との激闘を描きました。どうだったでしょうか?満足していただけたら幸いです。

次回からマジ恋の舞台となる川神学園の二年生になります。どんなふうに話を進めて行くと考えるとワクワクして来ます。ヒロイン等についきましてはまだ未定ですが、おいおい考えてまいります。

次回も気長に待って頂けるとありがたいです。では、また次回お会いしましょう!さよなら〜(^_^)/~~


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第二章 : 川神の生活 高校生編
第五話: 波乱の予感?


川神市の川原でワン子は明人に修業をつけてもらっていた。

 

「川神流・蠍撃ち!」

 

「ダメだ!踏み込みがなってない!」

 

「押忍!!はぁっ!!」

 

俺にひたすら技を打ち続けるワン子、それを弾き何度も反撃を入れる。それでも、ワン子は負けじと俺に向かってくる

 

なぜ、こんなことになってるかというと話は数ヶ月前に遡る....

 

俺はワン子が川神院の師範代になり、百代を支えるという夢を聞いた時にワン子のことを写輪眼で見たのだが、ワン子に流れる気はそれほどの力を感じなかった。

 

そこに関しては俺がとやかく言うのは良くないと思い、俺は鉄心さんに話を聞いた。そして、ワン子はこのままでは師範代になるのは難しいことを知った。

 

鍛錬の問題とかそんな問題ではなく、才能の話....

 

俺はそれをワン子に伝えた。話してる時も俺は自分が最低なことをしていると思っていた。ワン子はそれを聞いて、泣き崩れた。

今まで夢のために百代のために頑張ってきたのにそれが才能と言うたった二文字で片付けられるのが耐えられなかったのだろう。

 

納得がいかなかった。俺はワン子が誰よりも努力して来たのをずっと近く見てきた。それなのに才能が無いなんて....

 

「ワン子!」

 

俺はとっさにワン子の両肩を掴んでいた。ワン子はそのまま、俺に泣き付いてきた。

 

「ワン子、これはお前の人生だ。何をどうするかはお前が決めることだ。だが、もしもお前が師範代の夢を諦めないなら俺が鍛えてやる!」

 

「え?」

 

ワン子は涙を流し、赤くなった目を俺に向けた。俺は滲んでいた涙をそっと拭き取り言った。

 

「ワン子、まだお前には色んな選択肢がある。なにも師範代だけがお前の全てじゃない。でも、俺はお前が誰よりも努力して来たのを知っている。それを才能なんて言葉で片付けるのはあまりにも酷だ」

 

そうだ。それは事実かもしれないし、必然なのかも知れない。だけど納得がいかなかった。なぜこいつだけこんなに悲しまなければならないのか?

 

何もしないうちから諦めるのはひどく怠慢な事だから

 

「だから、もしお前が武道を続けるなら俺が鍛えてやる!でも、それで確実にお前が師範代になれるかは分からない。それはお前が決めるんだ師範代として努力するか、他の道を見つけるか。すぐに決めろとは言わないゆっくり考えろ。自分が後悔しない道を」

 

ワン子の答えは一つだった。

 

「アタシやるわ!諦めたくないから!」

 

その瞳は真っ直ぐに俺を見据えていた....

 

 

 

 

そんなことがあり、今俺はワン子を鍛えている。才能の壁を超えるのは難しいが、できないことじゃない。

 

「はぁはぁ」

 

ワン子は膝を付き息を整えていた。俺は後ろからアイスキャンデーを首に付けてやった。

 

「きゃあ!びっくりした!」

 

「はは、悪いな。ほれ」

 

そして、くっ付いていたアイスキャンデーを二つに割りワン子にあげる。

 

「ありがとう明人」

 

「気にするな。アイスぐらい、いつでも買ってやる」

 

「うん、それもあるけどもう数ヶ月ぐらいアタシの鍛錬付き合ってもらってるし....」

 

「言ったろ?俺が鍛えてやるって」

 

そう言ってワン子の頭を優しく撫でる。

 

「うん....」

 

ワン子はどこか申しわけなさそうな顔をしてる。

 

俺はその頬をグイッと優しく引っ張った。

 

「あひぃと?」

 

「もう、何回その顔してると思ってんだ?気にするなって言ってるだろ?」

 

「うん、ありがと」

 

「さて、今日はもう帰るかな。明日からまた学園だからな」

 

「そういえば、明日転入生が来るってじいちゃんが言ってたわ」

 

このタイミングで転入生といえば....あいつか。

 

あの空気読めない奴。キャップのことだあいつも仲間に誘うだろ。

 

京がキレる前に手を打っとかないとな....

 

「そうか、ワン子明日そいつに勝負挑んでみろ」

 

「え?まだどんな人かも分からないわよ?」

 

「安心しろ。俺の予想が当ったていればパツキンで碧眼の女子がくるはずだ」

 

「え!?なんでそんなこと分かるの?明人は預言者かなにか?!」

 

「勘だ」

 

まぁ、あながち間違ってもいないな転生者だし、俺。

 

「ちなみにそいつは強いぞ、武器はレイピアを使ってくるだろ。これ以上のヒントは無しだ」

 

「たまに、思うけど明人となんで先に起こることを知ってるのかしら?」

 

「この目があるからかな?」

 

と自分の目を指しながらはぐらかす。

 

「さて、じゃあ今日はもう帰れ」

 

「分かったわ!じゃあね!明人!」

 

と言ってワン子は走って帰って行った。

 

この数ヶ月の修業の成果を転入生との決闘でハッキリさせるワン子が勝てば良し、負ければ....いや、やめておこう。

 

「さて、俺も帰るかね〜。あ、晩飯は何を作ろうかね〜」

 

 

そんなことを言いながら帰る明人を見つめる少女がいた。

 

黒い髪に馬のストラップを持っており、なにより帯刀している。

 

「また、お話をする機会を逃してしまいました松風!」

 

「まゆっち焦りは禁物だぜ。明日学園で話し掛けるんだ」

 

「そんな!私にはとても....」

 

「そんなじゃいつまで経ってもお礼が言えないぜ!まゆっち!」

 

「はい!が、がんばります!」

 

....傍から見たらかなりのヤバい人である。ストラップと会話している。

 

彼女と明人は入学式に正門でぶつかり明人が松風を拾ってくれたのが出会いだったが、明人は彼女の話を聞かずに入学式の準備に行ってしまったために彼女は明人にお礼すら言えてなかったのである....

 

「黛由紀江。推して参ります!」

 

「そのいきだ!まゆっち!」

 

彼女の叫びが夕陽で照らされる河川敷に響いたのだった....

 

 

 

 

翌日....Fクラス

 

ここは明人達風間ファミリーがいる二年F組。

 

俺の予想通り転入生のクリスが来た。

 

「クリスティアーネ・フリードリヒ推参!」

 

まぁ、そこまでは良かったのだが....

 

「ヒヒーン!」

 

なぜに馬に乗っている!?

 

クラスの大半が口をポカンと開けてるぞ!

 

そんな事を考えているとワン子が行動に移った。

 

「あなたを川神の流儀で歓迎するわ!」

 

ワッペンを地面に叩きつけるワン子。

 

「なるほど、受けて立つ!」

 

クリスも担任の梅先生から説明を受け、決闘を受諾した。

 

「よし、では全員グラウンドへ。遅い奴は私の鞭で叩く!」

 

相変わらず梅先生は怖い....あれでリピーターがいるのだからたちがわるい。

 

 

二年S組

 

「お、なんだか決闘が始まるみたいだぞ」

 

Sクラスの担任、宇佐見巨人がSクラスの生徒に呼び掛ける。

 

「フム、どれ。っ!あれは一子殿ではないか!」

 

外の様子を見た、九鬼英雄が声を上げる。

 

「隣にいるのは今日転入して来た者か。ん?おぉ、我が友、立花明人もいるでないか!あずみ!我も一子殿を応援しに行くぞ!」

 

「かしこまりました!英雄様ぁぁ!!」

 

と言って英雄とあずみは教室を出ていった。

 

「まったく、山猿のケンカにいちいち騒ぎおって」

 

そう言ったのは優雅な着物を着た不死川心だった。

 

「まぁまぁ、たまにはいいではないですか。ねぇ、準」

 

Sクラスの頭脳役の葵冬馬がとなりにいたハゲ....ではなく、井上準に同意を求める。

 

「そうだぞ、不死川。アメちゃん食べるか?」

 

「いきなり気持ち悪いことを言うではないわー!」

 

「まぁ、心。マシュマロ食べる?」

 

今度は榊原小雪が不死川に言う。

 

「どいつもこいつも此方をバカにしよって!」

 

Sクラスは賑やかだった。

 

 

 

川神学園 グラウンド

 

今まさに、ワン子とクリスの決闘が始まるところだった。

 

「行くわよ!クリ!」

 

「なんだその呼び方は?だったら、貴様は犬だな!」

 

「どちらとも準備はいいか?」

 

梅先生が試合の進行を開始する。

 

「それでは、時間無制限!一本勝負!始め!」

 

ワン子の未来が掛かった一戦が始まる....!!




最近の楽しみとして、この小説の評価を見てニヤニヤしたり、感想を見てニヤニヤしてたりしてます。

どうも、トロンボーンと呼ばれた男です。

今回から二年生編と言うことで始まりました。ワン子の才能のお話やちょっと出てきた、まゆっちのお話など。

色々と詰め込みました。次回はワン子とクリスの決闘となります。楽しみにお待ちください!

それと、読まれている実感が欲しいので良かったら読者の皆様、感想を書いてみてください。どんな事でも構いませんので....

では、また次回!お会いしましょう!さよなら〜(^_^)/~~


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第六話: 見守りましょう!

決闘はワン子が劣勢だった。

 

「せやぁぁあ!」

 

クリスのレイピアによる連続の突きがワン子にどんどんダメージを蓄積していく。

 

「はぁぁぁ!!」

 

ワン子も負けじと薙刀をクリスに振るがクリスはそれを回避し、連続の突きを仕掛けてくる。

 

そして、ワン子が大振りに一撃を仕掛けた。薙刀に叩きつけ、だかクリスはそれを待っていたかのように後ろに下がり突きの体制を整えた。

 

「せやぁぁあ!!!」

 

クリスのレイピアがワン子の額に直撃した。

 

誰もが、ワン子の負けを確信した....明人以外は

 

「ぐっ!!」

 

額を突かれ、フラフラしていたワン子は倒れるのを耐えた。額から血を流し、意識も朦朧としているはずだ。

 

でも、ワン子は倒れない根性みたいなものだ。

 

「ならば!もう一度!」

 

そう言ってクリスは突きの体制に入る。ワン子はそれを....

 

「はぁぁ!」

 

武器を持たずに、突っ込んでいた。

 

「無防備だぞ!そこだぁ!」

 

ワン子はその自分の顔に向けられたレイピアをぎりぎりで回避した頬が多少切れたが、ワン子は気にせずクリスの懐に入り込んだ。

 

「しまった!」

 

クリスは急いで後ろに飛ぼうとしたが

 

「川神流・蠍撃ち!!」

 

「ぐぁ!」

 

間に合わず、ワン子の蠍撃ちをもろに腹に受けた。クリスはそのまま、後ろに吹き飛び動かなくなった。

 

「そこまで!勝者川神一子!!」

 

「やったわ....」

 

ワン子はそのまま、後ろに倒れそうになったが、それを俺が支える。

 

「お疲れ、ワン子」

 

「明人....アタシ」

 

「あぁ、成果が出てたな。おめでとう」

 

「う、ん」

 

ワン子もそのまま、意識を失った。

 

 

 

ワン子とクリスを保健室に運び終えると俺のもとへ九鬼英雄がやってきた。

 

「一子殿の戦いは見事であった!」

 

「英雄か....」

 

「うむ、礼を言うぞ我が友、明人よ。一子殿の夢を一緒に追い掛けてくれて。我は何もできなかった」

 

「気にするな。もともとは俺が言い出したことだからな」

 

「そうか、では我は一子殿に顔を見せてくるとしよう。ゆくぞ!あずみ!」

 

「かしこまりました!英雄様ァ!!」

 

そう言って、英雄は保健室に向かって行った。

 

英雄とは一年生の時にお互いのクラスの代表同士で決闘し、勝ったクラスは負けたクラスに命令できるというルールで戦ったのだが、俺と英雄が決闘をし、お互いに認めあった。それからというもの英雄が俺のことを我が友と呼ぶようになった。

 

「あ、あ、あの!」

 

そんなことを思っていると後ろから声をかけられた。

 

「ん?」

 

振り向くとそこにはまゆっち....黛由紀江が立っていた。

 

「あぁ、この前の正門でぶつかった子か。怪我とかないかな?あの馬のストラップは無事かな?」

 

「あ、はい!私は問題ありません」

 

「オラも大丈夫だぜ〜」

 

相変わらず、面白いなまゆっちはだから友達ができないのかもしれないが....

 

「それで、俺に何か用かな?」

 

「えっと、先日はあ、ありがとうございましたっ!」

 

怖い、怖いよ。まゆっち。笑顔が引きつって凄い顔になってる。

 

「ま、まぁ、とりあえず落ち着いて黛由紀江さん」

 

「わ、私の名前を....」

 

「まぁ、それくらいはね。はい!深呼吸!」

 

「え、はい!スーハー、スーハー」

 

何度か、深呼吸をして息を整えるまゆっち。

 

「先日はありがとうございました!あ、あの....その。よ、良かったら私とその....お、おとも」

 

「おとも?」

 

「あのな〜まゆっちと友達になって欲しいんよ。まゆっちは友達百人作るのが夢なんだ」

 

「松風!余計なことを!」

 

自分で言って自分で叱っているとはやっぱり、面白い子だなまゆっちは

 

「あぁ、俺で良ければ喜んで」

 

「本当ですか!?」

 

「やったな!まゆっち友達一号ゲットだ」

 

「黛....いや、まゆっちって呼んでいいか?親しみも込めて」

 

「はい!是非!」

 

「友達作りをするなら、俺と会話の練習をしないか?まゆっちはそのひきつった笑顔とかが無ければきっと、友達ができる」

 

「いいんですか....そんな」

 

「あぁ、俺で良ければ」

 

「はい!こちらも是非お願いします!」

 

「あぁ、じゃあ、俺は教室に戻るな。また、放課後」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

そう言って俺はその場を後にする。まずは、ワン子がクリスに勝てたことを喜ぼう。

 

その日の放課後から俺はまゆっちの話し相手になったり、ワン子の修業をつけたり、クリスと仲良くなったりこれからすることに必要な立場を作っていた。

 

そんなことをしているうちに金曜日になった。今日は金曜集会だ。

 

廃ビルにみんなで集まるのだ。

 

やる事といったら、週末の予定を決めたり、みんなで話したりとかだ。だけど、それだけでも俺は凄く楽しい。

 

「明人、はいこれ。この前話してたマンガ」

 

師岡卓也ことモロがマンガを貸してくる。

 

「あぁ、ありがとなモロ」

 

「ううん、いつでも言ってよ」

 

モロは色々なマンガとかを俺に勧めてくれる。面白い物に疎い俺にはありがたい話だ。

 

「明人どうよ。このグラサン」

 

と言ってグラサンを自分に掛けてみる島津岳人ことガクト。

 

「俺様のダンディーさが引き立ってないか?」

 

「え〜と、今のうちに言っとくが似合ってないぞガクト」

 

「くっ!やっぱりダメか....」

 

「デザインが良くないな。ガクト合コンのセッティングできたぞ」

 

「お!マジか大和さすが心の友だぜ」

 

携帯をいじりながらガクトと話す直枝大和ファミリーの軍師だな。そして、その横に座る椎名京。

 

「友達にために頑張る大和素敵。結婚して?」

 

 

「お友達で」

 

もう、このくだりを何回やってるんだか....京は相変わらず大和にベッタリだった。

 

「聞いたぞワン子。転入生に勝ったんだってな」

 

「明人が鍛えてくれたおかげよ。でも、まだ夢のために勇往邁進よ!」

 

「ありがとな、明人ワン子の面倒を見てくれて」

 

百代が俺にそんなことを言ってきた。百代は俺がワン子に才能の話をした一件を知っている数少ない人物だ。

 

「いや、俺が好きでやってることだからな」

 

そんな話をしていると秘密基地のドアが勢い良く開いた。

 

「みんな集まってるな!商店街で寿司貰ってきたぜ!」

 

我らがキャップが登場。キャップも相変わらずの豪運で....

 

みんな、寿司を食べている時にキャップはその話を唐突に話し始めた。

 

「俺はクリスとまゆっちをファミリーに入れたいと思ってる!おまえらはどう思う?」

 

キャップはみんなに意見を求める。

 

「私は反対。ファミリーはこれ以上いらない」

 

最初に京。

 

「僕も反対かな」

 

次にモロ。まぁ、この二人に関しては反対すると思っていたから問題無い。

 

「俺様は賛成だぜ。美人は何人いてもいい!」

 

「私も賛成だ」

 

「アタシも賛成よ!クリが入れば楽しそうだし」

 

ガクト、百代それにワン子は賛成派。

 

「俺は中立かな」

 

大和の回答も予想通り。

 

「で?明人はどうする?」

 

キャップが俺に聞いてくる。

 

「俺は賛成だ。もし、二人が入って問題が起こりそうになったら、俺が対処するよ」

 

「よし!じゃあ、決まりだな。まぁ、入ってもらって合わなかったら切るみたいな感じでいいだろ?京」

 

「分かった」

 

「僕もそれでいいよ」

 

「じゃあ、この話はこれで終わりにしようぜ。寿司食うぞ!」

 

と言ってキャップが寿司に食いつく、それに負けじとファミリーのみんなも寿司を食べ始めた。俺はその光景を見ていた。

 

さて、これから大仕事が始まる。クリスのことと、まゆっちのこと。この二人がファミリーに馴染めるように俺がサポートをしてやらないとな。

 

 

金曜の夜は徐々にふけていった....




ペルソナの発売が楽しみです。

はい、いきなりすいません。トロンボーンと呼ばれた男です。

今回はクリスとワン子の決闘とファミリーに勧誘と言うお話でした。次回は色々と忙しくなると思いますのでよろしくお願いします。

それと、感想を書いて下さった方々本当にありがとうございました。

より一層に執筆がはかどるというものです!

では、今回はここら辺でさようなら(≧▽≦)


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第七話: 勧誘と誘惑

キャップがクリスとまゆっちをファミリーに勧誘すると言った次の日。

 

俺達はファミリーと休日を過ごしていたクリスとまゆっちを誘い野球をしていた。

 

「とまぁ、こんな風にみんなで遊んだりしてるんだ。どうだ?クリス、まゆっち。風間ファミリーに入ってみないか?」

 

みんなが野球をしている様子を見ながらクリスとまゆっちに風間ファミリーの説明をする。

 

「確かに面白そうだ。自分で良ければ入れてくれないか?明人」

 

「私も是非お願いします!明人さん」

 

クリスとまゆっちはお互いに元気の良い返答をくれた。

 

「あぁ、これからよろしくな。さて、じゃあ下でみんなと野球するか!」

 

「はい!」

 

「分かった」

 

説明を終え俺達もみんなのもとへ向かう。クリスは普段からファミリーに関わっているから簡単な挨拶をして終わったが、まゆっちは俺以外のファミリーとはあまり、関わっていないから....

 

「ま、黛由紀江と申します!改めて宜しくお願いします!」

 

案の定、顔がこわばってしまって怖い顔になってしまった。

 

「まゆっち落ち着いて。はい!深呼吸!」

 

「は、はい!スーハースーハー」

 

まゆっちは島津寮で暮らしているから大丈夫だと思ったが....

 

「改めてよろしくお願いします」

 

「オラもよろしくな」

 

まゆっち、松風の順で挨拶をした。ファミリーのみんなは松風の存在も受け入れてくた。良かった。

 

挨拶が終わると各々が自分のポジションに付き始めた。

 

「行くわよクリ!私の剛速球!」

 

「こい!犬!騎士はどんな球も打ち返す」

 

ワン子とクリスはまた張り合っている。あの二人は本当に仲がいい。

俺はそんな風景を少し離れた所から座って見ていた。

 

....別にファミリーのみんなから距離を置こうって訳じゃない。でも、たまに思う。俺はここにいていいのか?と俺は転生者だから、これから先のファミリーになにが起こるか分かるだから、それをあらかじめその問題を解決してしまおうと思っている。

 

でも、俺はワン子を一度泣かせてしまった....俺のせいで。俺が余計なことを言わなければワン子はあんなに苦しまずにすんだのかもすれない。こんな俺がファミリーにいる資格はあるのだろうか?そんなことをここ最近頻繁に考えるようになった。我ながら滑稽な話だな。普段から人には後悔するなと言っているくせに自分が後悔していたら世話がない。

 

「....」

 

「あ〜きと」

 

そんな事を考えていると俺を呼ぶ声が

 

「ワン子か....どうした?」

 

ワン子がピッチャーをガクトに変わってもらいこっちに来ていたみたいだ

 

「明人もやりましょう。明人もファミリーなんだから」

 

「いや、俺はいいよ。見ていた方が楽しい」

 

「嘘よ。だって、明人凄く悲しそうだわ」

 

....気づかなかった。俺はそんな顔をしていたのだろうか?分からない。

 

「悲しそうか....なぁ、ワン子。少し話さないか?」

 

「うん!」

 

ワン子は嬉しそうに俺の隣に腰を下ろした。そういえば、昔からワン子はオレの隣にいてくれたっけ。安心する。

 

「なぁ、ワン子。お前は今幸せか?」

 

「いきなり難しい質問ね。う〜ん」

 

ワン子は少し、考えて笑顔で答えた。

 

「幸せよ。ファミリーのみんながいて、友達がいてなにより明人がいてくれる」

 

その言葉が意外だった。俺がいるから。

 

「俺はお前の夢を潰したんだ。普通なら俺を恨んでもおかしくないんだぞ?」

 

「そんなことしないわ。だって、明人を鍛えてくれているじゃない。それにアタシに後悔しない道を行けって言ってくれた。アタシ後悔してないわ。今、凄く幸せ」

 

笑顔だった。ワン子は太陽の様な笑顔を向けてくれた。こんな俺に夢を潰した俺なんかに....

 

「そうか....」

 

「もしかして、明人。後悔してるの?」

 

「分からない。でも、俺なんかがファミリーにいていいのかとたまに思うんだ」

 

「明人がいないとファミリーは誰がまとめるの?キャップはいるけどみんなのことをきっちりと見ていつも守ってくれるのは明人よ」

 

それはとても優しさに満ちた言葉だった。今までの考えを解きほぐすようなそんな言葉。

 

「だから、明人。そんなこと言わないで」

 

「そっか、ありがとなワン子。一つ吹っ切れたよ」

 

「そう、なら良かった。さぁ!明人も野球やりましょう!」

 

「あぁ!」

 

ワン子に手を引かれ俺もみんなのもとへ向かう。

 

ワン子が俺に言ってくれた、言葉。俺はファミリーみんなのこれからを守りたい。苦しんでいるなら助けたい、みんなに災害が起きるなら俺が全て防いでやる。そうだ、俺がなんとすると昔に決めた事だ。

爺さんから貰った力をみんなのために使う。

 

 

 

 

明人は未来を知っている....

 

それは明人が転生者だからである。だが、この時に徐々に未来は変わり歯車は狂い初めているのを明人はまだ知らない。

 

 

 

 

 

....川神市・親不孝通り。

 

とある廃墟となった音楽ホールがある。会場は広く、パイプオルガンまで完備している本格的なホールだ。

 

そこで片目だけ穴が空き、まわりには螺旋の様な紋様が入った仮面をかけた男と若者が取引をしていた。

 

「へ〜、これが新しい薬か...」

 

男は細長い銀色の容器に入っている液体と仮面の男を交互に見ながら言った。

 

「しかし、驚いたぜ。売人が変わったと思ったら薬まで変わるとな」

 

男が今まで売人から買っていたのは粉の薬物だったが、今日貰ったのは赤い液体が入った容器。

 

「効果は前回まで貰っていた薬とさほど変わりわない。しいて言えばそうだな目が良くなったりとかだな」

 

「へぇー、それは試しがいがありそうだな。じゃあな」

 

男はそのホールを後にしようとすると

 

「まて」

 

「ん、なんだよ」

 

「その薬の名前ぐらい知っといた方がいいだろ?」

 

「まぁ、そうだな。なんていうんだ?」

 

「その薬の名は....」

 

男の声は冷たく、冷えきっていた。この世に絶望したそんな声で男は言った。

 

「月の目」

 

その言葉を口にした男の仮面の穴から赤く、勾玉の紋様が浮かんでいた....

 

 




どうも、トロンボーンと呼ばれた男です。

今回はそんなに話が進んでないんですが、申し訳ないです。

最後に出てきた仮面の男はトビのグルグルお面をしてると思ってください!

次回はどこまで進められるか....今から構想を練らねば!

では、また次回さようなら〜(^_^)/~~


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第八話: 説明と予兆

「クリス、ちょっといいか?」

 

クリスとまゆっちを風間ファミリーに勧誘して数日が経ち、学園がある日に俺はクリスに声を掛けた。

 

「なんだ、明人?」

 

「今日の放課後空いてるか?」

 

その言葉を口にした瞬間にクラスの男子の目線が俺に向かってきた。

 

「おい、聞いた?」「立花の奴めっ!」「まじか....立花のやつもクリス狙ってるのか」

 

など、聞こえてきたが気にしない。

 

「大丈夫だが....なにか用事か?」

 

「あぁ、すこし付き合って欲しい場所があってな」

 

付き合って欲しい場所とは秘密基地だ。クリスには先にあそこに行ってもらい感想を言ってもらおうと思うそうすれば今週の金曜集会には問題が起きない。

 

「了解した。じゃあ、正門で待ち合わせで」

 

「あぁ、じゃあまた放課後」

 

と言って俺は席に着いた。

 

 

 

親不孝通り・再奥にある音楽ホール

 

 

「薬の配布はどうなっている?」

 

片目の空いている仮面をかけた男が誰かと話している。

 

「いたって、順調ですぜ。この調子なら一週間ぐらいで撒き終わりますよ」

 

「よし、薬の配布が終わり次第、次のステップに移行する」

 

「にしても、あんたもエグいことを考えるな仮面さんよ」

 

男は笑い混じりの声で仮面の男に言った。

 

「それを協力しているお前には言われたくないな。なぁ、釈迦堂....刑部」

 

男は静かに笑った。その後ろには四人の影があった....

 

 

 

 

川神学園・放課後・正門前

 

「よし、クリス行くか」

 

「分かった、出発しよう。で、どこに行くんだ明人?」

 

「ん〜秘密基地かな?」

 

クリスに聞かれ、軽く答える。別に嘘は言っていない。事実俺達はみんなあのビルのことを秘密基地って呼んでるし

 

「なんだか、面白そうなところだな」

 

「あぁ、楽しみにしときな」

 

そんな話をして、しばらく歩くと秘密基地の廃ビルが見えてきた。クリスは最初に「ここか?」などと戸惑っていたがとりあえず中を案内し、俺達がいつもいる部屋に行く。

 

「ここが秘密基地?」

 

「そうだ、俺達風間ファミリーの拠り所みたいなもんだ。この本棚には漫画があって....」

 

俺はクリスに大まかな秘密基地の説明をした。どこに何があるか、飾ってある写真はどこで取りどんなエピソードがあったなど....

 

それを聞き終え、クリスは話始めた。

 

「ふ〜ん、で?ここに何の意味があるんだ?集まるなら他でもいいだろ?」

 

やめろ、それ以上....

 

「こんな廃ビルは」

 

言わないでくれクリス!

 

「さっさと、取り壊すべきだな」

 

分かっていた。こいつがこの言葉を口にするのは分かっていたのにとても、とても辛かった。

 

俺は思わず額に手をやった。

 

「俺がお前をここに連れてきたのは、今の発言が問題だからだ」

 

「なぜだ?自分は正しいこと言ったはずだ」

 

「クリス頼むから京の前でそんなことを言わないでくれ。下手したら殺されかねん」

 

京は誰よりもファミリーを大事にしている。それなのに今クリスが言った言葉を聞いたら激昴するに違いない。

 

「だから、なぜだ?自分は─」

 

「それはお前の価値観....だろ?」

 

クリスの言葉を遮って俺が言葉を重ねる。思いのほか俺自身も怒っているようだ。

 

「確かに世間一般的に見たらここはただの廃ビルだ。取り壊せと言うやつもいるだろう。だけどなクリス、俺達にとっては何よりも大切な所なんだ。例えば、お前にも大切な物があるだろ?」

 

「あぁ、両親から貰ったぬいぐるみなどが自分にとってはそうだ」

 

「じゃあ、もし俺がそのぬいぐるみのことを邪魔だと言ったらお前は怒るだろ?」

 

「当たり前だ!そんなことを言ったら許さない!」

 

クリスがグイッと距離を詰めてくる。

 

「今のお前が俺にとってはそうだ」

 

「っ!」

 

クリスはやっとここで気付いた。自分が過ちを犯したことに

 

「人にそれぞれ大事な物がある。それは当たり前なことだ俺達ファミリーにとってはここがそうだ。だから、ここを悪く言わないでくれ」

 

俺はクリスに微笑みかける。クリスは少しうつむき、声音を弱くして言った。

 

「すまなかった。そんな場所とは知らずに....」

 

「いや、分かってくれたならもういい」

 

「まさか、明人は自分にこのことを言うために?」

 

「あぁ、お前は真っ直ぐすぎるからな。大和ともよく喧嘩してたし」

 

クリスの性格的には策を練る大和は気に入らなかったのだろう。

 

「クリス、お前のその性格はお前の長所であり、短所でもある。それを自覚しろ。今回は俺が相手で良かったが、これが京やモロならシャレにならない」

 

「あぁ、今後から気おつける。ありがとう明人自分のために」

 

クリスがこっちを真っ直ぐと見つめる。照れくさいので俺は少し、視線を逸らしながら。

 

「気にするな、それが俺の役目だからな。それと、大和とも仲良くしてくれ。お前の性格的にあいつは気に入らないのかもしれないが、あいつは誰よりもファミリーを大事にしてる。今度ゆっくり話してみろ」

 

そう言って、俺はクリスの髪を撫でる。クリスもまんざらじゃなさそうだった。

 

「よし、今日はこれで帰るか〜。腹も減ったし」

 

「そうだな、そういえば明人は寮には住んでいないがここの近くなのか?」

 

「あぁ、一軒家で暮らしてる。両親はいるが共働きだから基本的に家の事は全部俺がやってる。なんなら、今度遊びに来い。飯でも作ってやる」

 

「分かった。その時はお邪魔させてもらう」

 

これで一つ問題は消えた。

 

そうして、俺とクリスは秘密基地を後にした。

 

 

 

 

俺とクリスが河川敷を歩いて帰っていると前からふらふらと足元がおぼつかない。若い人がこっちに歩いてきた。

 

「なぁ、明人。あの人変じゃないか?」

 

「ん?確かになんかふらふらしてるな」

 

そんな話をしている合間にその人は倒れ込んでしまった。クリスがすぐさま駆け寄り声を掛ける。

 

「大丈夫か?どこか痛むのか?」

 

クリスは若者の元に駆け寄ってしゃがみ話しかける。

 

「いてぇ、いてぇよ!!」

 

少年は苦痛のあまりかその場でのたうち回った。

 

「どこがだ?」

 

「目がぁ、目がぁ!」

 

「うぁ!」

 

クリスは男が振り払った手にあたり後に飛ばされたが俺がすかさず受け止める。

 

「おい、あんた!人が優しくしてるのにその態度は....」

 

俺は言葉を失った。

 

「目がぁ!いてぇんだよ!どうなってるんだよ!俺の目はぁぁ!!」

 

男が手を目から離し、その目を俺に向けてくる。目からは血が流れ瞳は赤く染まっており、なにより

 

「なんで....なんでお前がその目を....」

 

勾玉の紋様がその男の目にはあった....。紛れもない写輪眼がそこにはあった。

 

「がぁ!」

 

男はそのまま、俺に襲いかかってきた。

 

「明人!てぇやぁ!」

 

男の攻撃が当たる前にクリスのキックが男の腹に直撃した。

 

「明人!どうしたんだ」

 

クリスの言葉で我に返る。今はこの男をなんとかしないと

 

「クリス下がってろ。あの目はやばい!」

 

「いてぇよ!たすけてくれよおぉぉ!」

 

男は俺に向かって突進してきた。俺はそれをかわし、男の腹にパンチを入れる。男はそれで気を失った。

 

「明人、この男は」

 

「とりあえず、病院に連れていこう」

 

そう言って、男を抱えた時に男のズボンのポケットから何か落ちた。それをクリスが拾い上げて俺に見せてきた。

 

赤い液体が入った、ビンみたいな物。これは一体?とりあえずクリスには俺のポケットに入れるように言い、男を連れて病院に向かった。

 

 

 

....とても、嫌な予感がする

 

 

 

親不孝通り・再奥・音楽ホール

 

「なんなんだよ!この薬は目がいてぇ!」

 

仮面の男の前で目から血を流し、跪いている若者がいた。仮面の男は嘲笑うかのように言った。

 

「ほう....最後に俺の元までくるとは褒めてやろう。褒美だ....お前は俺の中で眠れ」

 

そう言って、仮面の男はうずくまる男の顔を掴み自分の目を見させた。

 

「な、にをしやが...が、あぁぁぁ!」

 

男は直後、仮面の男の瞳の中に吸い込まれて行った。仮面の男は立ち上がり高らかに宣言した。

 

「もうすぐだ....もうすぐ川神は地獄に変わる」

 

ホールには仮面の男の笑い声がひたすら響いていた。

 

何が川神で始まろうとしていた....




クリスの喋り方ってこんな感じでしたっけ?

はい、トロンボーンと呼ばれた男です。

もうすぐペルソナ5の発売日です!本当にウキウキしております!

どうでもいいですね。はい。えっと、今回はクリスの説得と何が動きだすという所まで進められました。次回も頑張って参ります!

ちなみに仮面の男(CV内田直哉)と思いながら音声を再生してくださいな。

....地の文が少ないと言われているのに改善しされてないし、やっぱり小説書くのは難しいです(><)

では、また次回!さようなら〜(^_^)/~~


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第九話 : 紅き目

人は争い、奪い、憎しみ合う....それは今までの歴史が物語っている。

 

そして、そんな世界は矛盾した世界だ。何かを守るためには何かを犠牲にしなければならいない。それを繰り返せばまた憎しみが生まれる。

 

「フフ、まるでイタチごっこだな....」

 

広い音楽ホールに一人たたずむ仮面の男。彼はずっと、考えていた。人は何故こうも愚かなのか?何かを犠牲し、何かを守るなぜこんなにも不器用なのだと?彼はこの世界に絶望していた、そして彼はいつしか決心していた。

 

『こんな世界は壊してしまおう』

 

そんな時に彼は求めていた力に出会ったのだ。立花明人....世界を破壊できるだけの力を持つ者。彼はその力を欲した。そして、彼も辿りついたのだ自身の体を犠牲して、この世界を破壊する方法を彼は手に入れた。

 

「さぁ、いよいよ始まるぞ。川神崩しの時間だ」

 

その言葉を口にした仮面の男の目は紅く、ただ紅く、輝いていた。

 

 

 

 

川神学園・屋上

 

 

「立花明人、お前の言っていた薬の件調べておいたぜ」

 

「お忙しい中すいません。あずみさん」

 

「まったくだよ、アタイは英雄様に仕えて忙しいってのによ」

 

「他に頼れる人がいませんから」

 

俺は先日の男から回収した薬を英雄のメイドをしている忍足あずみさんに解析を依頼していた。あの男が何故写輪眼を持っていたは分からないがこの薬と関係あると俺は思ったからだ。

 

「それで、成分のほうは?」

 

「基本的な部分は麻薬と変わらないだが、少し妙なところがあってな」

 

「妙なところ?」

 

俺は思わず聞き返した。あずみさんは頷いて話し始める。

 

「この薬、投与してから何日か掛けて、脳の視神経に作用するんだ。おそらく、これがお前が言っていた目の変化ってやつだと思うぜ」

 

視神経に作用....間違えない、この薬を打てば誰でも写輪眼を手に入れられると言うこと。そして、確かなのはこの川神で何が起こっていること。これは早急に対処する必要がある。

 

「明人、九鬼から忠告だ。この件からは身を引け。この問題は九鬼で処理する」

 

「それは無理ですね。川神で起こる問題は俺の問題でもある」

 

「これは遊びじゃねぇんだ。もう、負傷人も出てる。しかも、お前は一般人で英雄様のご友人だ。そんな奴に何かあってみろ、それこそ問題だ」

 

確かにこれは遊びじゃない。この薬のせいで失目している人だっている。これはもう、一般人が出る幕じゃないのかもしれないがこのまま、放って置くわけにもいかない。それで、万が一にファミリーの皆に何かあったら俺は....

 

「俺なら、大丈夫ですよ。それはあずみさんが良く知ってるでしょ?」

 

俺はあずみさんに笑いかける。

 

「分かった。でも、何かあったら報告しろよ」

 

「はい、それはもちろん」

 

そして、俺とあずみさんはそれぞれの教室に向かった。

 

その日の放課後から俺は捜査を開始した。

 

 

 

 

川神・親不孝通り

 

「あの〜すいません」

 

俺は早速、親不孝通りにいる不良に薬の出どころを聞いたが....

 

「あ?誰だてめぇ?」

 

五人組の不良が俺の周りを囲んだ。

 

「この薬のことを調べてるんですが、どこで貰えるか分かりますか?」

 

そう俺が言うと周りの不良達は笑い始めた。そして、リーダーらしき男が俺の胸ぐらを掴み。

 

「知っててもお前なんかに教える分けないだろ!ボケェが!!」

 

とそのまま、俺に殴り掛かってきた。それと同時に周りの不良達も俺に向かって襲いかかってきた。

 

「はぁ、仕方ない」

 

結局は力づくか....上手くいかないもんだな。

 

 

数分後....

 

「で?本当に知らないの?」

 

リーダーを地面に倒し、その上にまたがり腕をいつでも折れるようにしておく、徐々に腕を上げていき、相手に痛みを与えていく。これが一番効果的だ。

 

「知らねぇって言ってんだろうが!早くどきやがれ!」

 

男はジタバタと暴れる。俺は男の顔を掴み目を見る。すると男は大人しくなり、目も朧気になった。

 

「で?この薬はどこで手に入る?」

 

再度男に同じ質問をする。すると、男は無気力な声で話し始めた。

 

「はい、この先の道のさらに奥に潰れた音楽ホールがあります。そこにいる仮面の男から自分は貰いました」

 

「仮面の男....はい、ご苦労さん」

 

俺は男を開放し、その場所を後にする。

 

 

 

 

男の言ったとおり、その音楽ホールはかなり奥にあった。潰れたとは思えない程外装は綺麗だった。

 

「川神にこんな場所が....」

 

扉は開いており、中に入ると広いロビーに出た。そこで聞こえてきたのはパイプオルガンの音だった。壁越しからでも聞こえる完成された曲。確かこれはアメイジング・グレイスだったかな。そんな事を考えながら音が聞こえてくる扉を開けた。

 

広いホールに観客は誰もいなく、パイプオルガンの席にポツンと座り演奏している者。背中しか見えないが体格からして男。その男が奏でるパイプオルガンの音色はとても落ち着くものがあり、聞いている者の心を癒すような演奏だった。

 

やがて、演奏が終わり。男はこちらに向き直る。片目の空き、螺旋の紋様が入った仮面を付けている男。

 

「まさか、ここまで来るとはな。初めましてだな、立花明人」

 

「そうだな、あんたは俺のことを知ってるみたいだが」

 

「まぁ、それなりにな」

 

その空いた穴からは紅く光る目が見えた。こいつも写輪眼を持っている。

 

「あんたは一体何者だ?」

 

俺の質問を鼻で笑った後に仮面の男は言った。

 

「俺は何者でもない、何者でもいたくないのさ」

 

「そうか、ならトビと呼ばせてもらうよ」

 

NARUTOで言うならこいつの立ち位置はそこら辺が妥当だろ。

 

「好きにしろ。で?俺に用があるんだろ?立花明人」

 

「あぁ、お前がこの薬を何の目的で撒いてるかは知らないが今すぐやめろ。これは警告だ」

 

「なるほど、お前はその薬についてどこまで知っている?」

 

「俺と同じ目を作る薬だろ?」

 

「近からず、遠からずだな。その薬はな俺の駒を作るための薬だ!」

 

と言うとトビは印を結びだした。

 

「分布月読!!」

 

その紅く輝く目がさらに怪しく光出した瞬間。あいつが立っているステージの端から続々と人が出てきた。そして、その皆が写輪眼を持っていた。

 

「これは?」

 

「その薬はな、たんに目を増幅させる薬ではない。その目を持つ者は皆俺の幻術に掛かるんだよ。恐れず、痛みを伴わず、ただ、俺のために動く俺だけの兵を作るための薬だ。すでにここ近辺には撒き終わっている」

 

「お前の目的はなんだ?」

 

「俺の目的か?そうだな、しいていえば世界の破滅。だが、今は川神を潰すことだ!」

 

仮面の男はそう言った。暗く、この世に絶望している声を出しながら

 

「そんなことはさせない!」

 

俺は仮面の男に飛び、須佐能乎を出し、トビに殴りかかったが須佐能乎の拳は届かなかった。黒い骸骨に阻まれた。

 

「ばかな!」

 

「お前だけがそれを使えると思っていたのか?」

 

俺はすぐさま距離を取った。俺がいた場所は骸骨の拳が振り下ろされていた。そして、骸骨はみるみる俺と同じ二面四腕の阿修羅の形になった。

 

『オォォォ!!』

 

トビの須佐能乎が雄叫びを上げる。

 

「さて、川神崩しの余興だ。存分に踊ってもらうぞ!立花明人!」

 

トビが俺に須佐能乎で向かってくる。

 

「舐めるな!」

 

俺も須佐能乎を展開し、迎え撃つ。両者ともに刀を須佐能乎に持たせ、切り合う。ホールに剣がぶつかり合う轟音が鳴り響く。

 

「八坂ノ勾玉!!」

 

俺は須佐能乎に勾玉状の遠距離武器を持たせ、トビへと投げた。トビはそれを刀でホールの上へと弾き飛ばした。上から崩れた天井が落ちてくる。

 

「なかなかやるな、立花明人。少し、甘く見ていたか....。もう少し遊んでやりたいんだがな。あいにく俺は忙しい。後はお前達に任せるとしよう」

 

そうトビが言うとステージから飛び出してくる影が四つ。

 

三人は女子で一人は男。薄紫の髪に棒のような武器。青髪に眠そうな目。赤いツインテールにゴルフクラブ。黒髪の長髪の男。

 

「板垣一家か!」

 

俺がそう言うと棒を持つ、女性が

 

「へぇ、私達を知ってるのかい。面白いじゃないかい」

 

「ウチら知ってるならウチのヤバさもしってるだろ?」

 

「Zzzzz〜」

 

「おい、辰ねえ。寝るなよ」

 

そして、こいつらがいるっているってことは....

 

「やっぱり、あなたですか」

 

板垣一家の後ろから歩いて来た男。かつて、川神院の師範代。

 

「釈迦堂さん!」

 

「よぉ、明人元気そうだな。相変わらず怖い目だ。お前ら相当強いぞ覚悟して行け」

 

釈迦堂さんがそう言うと四人は一人づつ名乗りを上げた。

 

「長女板垣亜巳!」

 

「次女の板垣辰子」

 

「長男板垣竜兵!」

 

「三女板垣天使!」

 

そして、四人は同時に俺に向かってきた!

 

崩れ行く、ホールの中で激闘が始まろうとしていた。




次回は板垣一家と釈迦堂との戦いです。

気長にお待ちください!


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第十話: 仲間とは

最初に仕掛けてきたのは竜兵だった。

 

まっすぐ、俺に突進してきて拳を振りかざす。

 

「オラァ!」

 

「ぐっ!」

 

それを腕でカードしたが予想をはるかに超えた威力に俺は後ろに吹き飛ばされる。

 

「まだまだ!」

 

拳を放った竜兵の後ろから天使が勢い良く飛び出し、武器のゴルフクラブで攻撃を仕掛けてくる。

 

「須佐能乎!」

 

天使のゴルフクラブが届く前に俺は須佐能乎を発動させ、それを防ぐ。

 

「これは対策してるぜ」

 

すると、天使がニヤリと笑みを浮かべて即座に須佐能乎から距離をとった。

 

「辰ねぇ!」

 

天使の後ろから辰子が現れバス停で須佐能乎を攻撃した。普通の攻撃なら須佐能乎はびくともしないが辰子の攻撃は壁越えの力とほぼ同じそれを真正面から受けた須佐能乎には亀裂ができ、それが徐々に大きなっていった。

 

「こっちも忘れんなよ」

 

俺の背後に回っていた釈迦堂さんの気を込めた拳を須佐能乎の背後に直撃する。そして、須佐能乎の背中にも大きな亀裂がはしり須佐能乎が砕け散る。

 

そして、辰子が追撃の構えをとる。

 

「決めるよ。たつ!本気でいきな!」

 

長女板垣亜巳のその言葉を聞き辰子の目は鋭いものに変わり。さっきとは比べ物にならない威力の攻撃が俺の左脇腹に直撃した。

 

「ぐはぁ!」

 

自分の体から無数に鈍い音が聞こえ、俺はドアを突き破りホールの外に吹き飛ばされる。何度も地面に叩きつけられようやく俺の体は安定した。腹には痛みが走り、上手く体に力が入らない。

 

「クッソ!」

 

立ち上がろうとすれば力が入らずまた俺の体は地面に倒れる。そして、腹から何か熱いものが逆流してきそれを吐き出した。

 

「ごほ!ごほ!はぁはぁ。まじかよ....」

 

地面には赤い血の塊が落ち真っ赤に染めていた。これ全部俺の血かよ。

 

「へぇ、辰のあれをくらって生きてるとはね」

 

さっきまでホールで戦っていた。板垣一家と釈迦堂さんがいつの間にか俺の前に立っていた。

 

「まぁ、これで終わりだけどね。天やりな」

 

亜巳に命令され天使が俺の前に立ちゴルフクラブを振り上げる。

 

「ま、ウチらを相手にしたのが間違えだったな」

 

ダメだ....意識が....。

 

『これが俺の限界か....』

 

俺はそっと瞼を閉じた。そして、天使のゴルフクラブは俺の頭部に当たらなかった。

 

「随分な姿じゃないか。明人」

 

聞き覚えのある声に俺は目を開ける。そこには幾度となく俺に勝負を挑んで来た武神の姿があった。

 

「もも....よ?」

 

朦朧する意識の中に確かに俺は仲間の姿を見た。百代が天使のゴルフクラブを受け止めていた。

 

「私だけじゃないぞ」

 

そう言うと百代は後ろに目線をやる。俺はそれに合わせ後ろを見る。そこには

 

「風間ファミリー参上!」

 

俺の大事な仲間がいた。

 

「大丈夫か明人。さぁ、自分が肩を貸そう」

 

クリスがすぐさま俺に駆け寄り肩を貸してくれる。

 

「みんな、どうして?」

 

「水臭いぞ明人!全部一人で抱え込むなんて」

 

俺の質問に対してキャップこと風間翔一が言う。

 

「俺達仲間じゃねぇか!もっと俺達を頼れよ!」

 

「そうだぜ明人。全部自分でしょいこむなよ」

 

「僕達も力不足かもしれないけど精一杯頑張るよ!」

 

「頭脳戦ならやれるさ」

 

キャップの言葉に岳人とモロ、大和が続けてくれる。

 

「そうよ、明人。アタシも明人を手伝うわ!」

 

そして、俺の隣には風間ファミリーの女性陣が並んでいた。

 

「はい、私も明人さんには大きな恩がありますから」

 

刀を鞘から抜きながらまゆっちが言ってくれる。

 

「うん、困った時はお互い様」

 

次に弓を引きながら京。

 

「そうだな、明人は自分の過ちを正してくれた恩人だ。その恩返しをさせてくれ」

 

そして、俺の肩を持っていたクリスが俺の目を見て言った。皆自分の危険をかえりみず俺に協力してくれる事にとても嬉しかった。

 

これが仲間か....

 

俺が一番欲しかったものだ。この関係が壊れるのが怖かった。だから、俺は一人で色々やって来た。でも、それは間違えだったと痛感する滑稽な話だな。

 

「明人。ここは私達に任せろ!お前は追う奴がいるんだろ?さっきから丘の方で黒い気配を感じる」

 

俺がそう考えていると百代がそう言って。天使のゴルフクラブを弾き飛ばす。

 

「釈迦堂さん!あなたは私が相手する!」

 

百代は釈迦堂さんに威圧的な目を向ける。

 

「ちっ、面倒なことになったな」

 

釈迦堂さんはそう言いながら。構えをとり、それに合わせ板垣一家も各々臨戦態勢に入った。

 

「クリスありがとう。もう大丈夫だ」

 

「無理をするな。骨が折れているぞ」

 

「大丈夫だ応急処置は終わっている」

 

クリス肩を担がれている間に自己修復し、なんとか一人で立てるようにはなった。俺は百代達に背を向け、あいつの元へ走り出す。

 

「みんな!死ぬなよ?」

 

「「「「「「「「「当たり前だ!!」」」」」」」」」

 

俺はその言葉を聞き、丘へと走り出した。

 

最後の戦いが始まろうとしていた。

 

 

川神市・丘

 

ここでは、川神の町並みを一望できる。時刻は既に夜になっており街の光がとても綺麗に輝いていた。

 

それは一人で眺めている男がいた。片目が空いた仮面を付け、どこか寂しげな雰囲気を出し、ただ町を見ていた。

 

男はこの世を憎んでいた。

 

人が織り成す憎しみの連鎖。妬み、嫉みから争いは産まれ小さな物はいつの間にかに大きなものになり戦争へと発展した。男は家族を失った人が作った憎しみによって男の家族は殺されたのだ。以来男は全てを恨み生きてきた。そして、一つの答えが男の胸に生まれたのだ。

 

『この世界に希望は無い。あるのはただ深い絶望のみだ。だったらこんな世界壊してしまえばいい。そして、新たな世界を作ろう』

 

そんは時にあの目にあったのだ。男は一目で直感した。この力さえあれば世界を作り直せると。そして、男はあらゆる知識を貪りあの薬を完成させたのだ。

 

『この力があれば世界を創れる!まずは川神から滅ぼす!』

 

その信念抱き男は川神へと足を踏み入れた。それがある一人の男に阻止されつつある。

 

「希望など無い!あるのは絶望のみだ!」

 

男は誰もいない夜空に叫んだ。返すものはいないと思っていた。

 

だが....

 

「そうでもないさ」

 

後ろから男に声がした。自分の力の根源を持つ者の声が男はゆっくりとその者の方を向いた。

 

「来たか....立花明人」

 

「止めにきたぞトビ。この世界にはお前が思うほど絶望なんか無いってこと教えてやるよ」

 

そう言った者の目の色は赤では無かった。紫色の目に螺旋状の模様が入り見ているだけで吸い込まれそうになる。そんな目をしていた。

 

「なんだ?その目は?」

 

「これの目は輪廻眼、写輪眼の行き着く先だ。これでお前を打ち倒す」

 

「面白い!やれるもんならやってみろ!」

 

闇に生きる者。光に生きる者。それは必然だったのかもしれない。偶然だったのかもしれない。そんなことは誰にも分からない。ただ、目の前の者を倒すことこそが自分の使命だと彼らは直感したのだ。

 

「「この世界は」」

 

今ここで

 

「終わらせる!」

 

「終わらせない!」

 

光と闇の戦いが始まる....




長い間お待たせしました。

トロンボーンと呼ばれた男です。

色々と一身上の都合がありまして、投稿が遅れてしまいました。すいませんm(*_ _)m

さて、やっとここまで来れたと自分の中で大きな達成感がありますね。次回は遂に決着でございます!首を長くしてお待ちください!

それと次回から語り手を明人の一人称から三人称に変えたいと思っています。読者の皆様は混乱するかも知れませんが宜しくお願いします!

では、今回はこのあたりでさよなら〜m(*_ _)m


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第十一話 : 明日なる希望

二人の力は互角だった。

 

「おぉぉ!」

 

「はぁぁ!」

 

二人の須佐能乎が激しくぶつかり、辺りには衝撃が走りそれは川神の町にも被害が出ていた。

 

「何故俺の邪魔する!立花明人!貴様も思ったことぐらいあるだろう?この世界に希望は無いと」

 

明人にその質問をした男の目は怪しく光っており、仮面の下から赤い光が漏れていた。

 

「ふざけるな!お前は自分の苦しみを他人に押し付けて苦しみから逃げてるだけだ!」

 

「黙れぇぇ!」

 

男の須佐能乎は明人の須佐能乎に拳を振りかざす。明人はそれを受け止め自分の拳を男の腹部に直撃させる。男は数歩後ろによろめいた。そして、嘆息をして次の攻撃に移る。

 

「このままではラチが開かないな。どうだ?そろそろ次に進まないか?」

 

「俺には次もねぇよ。やるならさっさとやりな」

 

「ふっ、そうか。ならば!」

 

男の須佐能乎はその言葉と同時に変化し始めた。筋肉が付き、皮が付き、最終的には金剛力士の様なものに姿を変えた。

 

「それがお前の須佐能乎か....随分とごついな」

 

その須佐能乎のは明人との二面四腕の須佐能乎の大きさを上回り腕の太さは倍以上あった。

 

『あの腕で殴られたらさすがにヤバイ』

 

明人がそう思っていると男はすぐに攻撃の体制に入った。

 

「いくぞ!」

 

男は大きく踏み込み明人に急接近した。

 

「速い!」

 

明人は須佐能乎が持つ四本の刀を重ねガードした。

 

「剛破拳!!」

 

だが、男の須佐能乎の攻撃は容易に刀を全て砕き、明人の須佐能乎に拳を直撃させた。明人はその反動で後ろに大きく吹き飛ばされる。その様子を男はその場で見ていた。

 

「馬鹿力かよ....」

 

「ほう、あれをくらって生きているとは感服の至だな」

 

明人の須佐能乎は原形を留めていなかった。腕も顔も無くなり明人の周りをボロボロの骨があるだけだった。

 

「だが、次で終わりだ」

 

と言い、男はまた大きく踏み込んだ。

 

「木遁秘術・樹界降誕!」

 

だが、先に動いたのは明人だった。数多の木が現れ男の須佐能乎を捕縛する。

 

「時間稼ぎか?くだらん!」

 

男の須佐能乎は軽々と木々をへし折り捕縛を易々と突破し、明人の方へと向き直るがそこには明人の姿は無かった。

 

「こっちだ!」

 

男は後ろに振り向くそこには

 

「木遁・木分身!」

 

木で作られた分身が本体含め五人おり、一人を残し男の須佐能乎を囲んだ。

 

「これは強烈だぜ!」

 

五人の明人がそれぞれ違い印を結びそして、術の発動に移る。

 

「「「「「五遁・大連弾の術!」」」」」

 

火・水・土・雷・風の五つの属性の力を同時に須佐能乎に迫り来る。

男はそのまま、五属性の猛攻を須佐能乎で受けた。幾ら同時に受けた所で須佐能乎には効かないがそれが互いの威力を高め合えば話は別だ。風は火を、水は雷を高め、破壊力は想像を絶するものとなった。

 

「ぬおぉぉぉ!!」

 

火の熱は須佐能乎の中にいる男にも伝わり体を焼き、水によって威力が上がった雷は男の体を蝕んでいた。そして、それぞれ属性の威力は最大値になり、大爆発を起こす。

 

辺りには煙が立ち上り、明人と男の姿を眩ませていた。

 

「はぁはぁ」

 

大量の気を使い明人の顔に疲れが見え始める。明人はこの前の戦いで板垣辰子に大きな攻撃をくらっていた。応急処置はしたが別に完治した訳ではない。それがじわじわと明人に鈍い痛みを与えていた。

 

「やってくれたな!小僧ォォ!!」

 

煙をかき分け、仮面の右上を剥がれた男が明人の前に現れる。その剥がれた場所からは写輪眼が顔を覗かしていた。

 

「はぁはぁ、うっ!ごほごほ!」

 

男はその場でうずくまり苦しそうにする。仮面の下からは赤い液体が滴っていた。だが、これは明人の攻撃によるものではない。

 

「須佐能乎のリスクだ。尋常ではない痛みのはずだ。」

 

須佐能乎は使えば使うほど使用者に多大なダメージを与える。それを知っていて男は須佐能乎を使っていた。

 

「細胞の一つ一つが痛む。これが須佐能乎のリスクか....。だがな!」

 

男は立ち上げり、須佐能乎を展開するがその須佐能乎とは比べ物にならないほどボロボロのものだった。顔は無く、骨の腕と周りを覆うあばら骨があるだけだった。

 

「これが限界か....」

 

「終わりにしよう。トビ」

 

そう言って、明人は左手に黒い球体を作る。

 

「あぁ、これで最後だ!」

 

男は須佐能乎に刀を持たせ、明人に接近する。

 

「消えろ!立花明人!!」

 

男は巨大な刀を明人に振り下ろした。だが、それを明人は避け黒い球体を須佐能乎を当てる。すると須佐能乎は上空に打ち上げられる。まるで何かに吸い寄せられるかのように。

 

「なんだ?!」

 

「それは重力の塊だ。これで最後だ....」

 

そう言った。明人の周りから地面が地上から剥がれ黒い球体に吸い寄せらて行く。やがて、丘全ての土が黒い球体の元へ吸い寄せられる。

 

「くそ!」

 

その言葉を言った男の体は土に埋もれ姿を消した。そして、川神市の上空に巨大な惑星が出来上がった。

 

「地爆天星。これが六道の力だ」

 

明人は須佐能乎を作り出し、最後の攻撃の準備をする。骨だけの手に勾玉のような物を作り出した。

 

「八坂ノ勾玉。けど、これじゃダメだ」

 

そう言い、明人は作った勾玉に力を込める。

 

「これに全ての力を!」

 

火・水・雷・土・風全五属性に陽と陰の力を合わせる。紛れもなく明人が出せる最大の技だった。全て力を乗せた勾玉は凄まじいエネルギーを放っていた。それは目で見ても今までの物とは異質だと分かる。

そして、須佐能乎はその勾玉を投げる体制へと移動した。

 

「うおぉぉぉ!!」

 

勾玉は凄まじい速度で上空にできた惑星に飛んで行き、やがて惑星に接触し、込めた力が爆発する。その威力は町一つを容易に消してしまう惑星を覆い尽くす威力だった。

 

「六道・神羅界叫!!」

 

上空で大爆発を起こし、夜空を明るくしている様子を見て明人はそう言った。

 

「すまない....俺にはこの方法しか思い付かなった。守るために俺はお前を倒す。恨むなら俺を恨んでくれ俺はそれを背負って生きていく」

 

それは明人の決意だった。仲間を自分を居場所を守る為に....

 

やがて、爆発が収まり空から一人の男が落ちてくるところを明人は瞬きをしないで見ていた。

 

 

 

明人と送り出し、百代達は釈迦堂達と戦っていた。最初は劣勢だったが最後には皆の力が逆転し優位に立ち回っていた。

 

「くそっ!こいつらいきなり強くなりやがった」

 

赤い色の髪を左右で結んでいる少女板垣天使はそう言った。彼女は一子と戦い優勢に戦えていたが一子の力が飛躍的に強くなっているのを彼女自身も感じていた。

 

やがて、釈迦堂達は一箇所に集められ風間ファミリーに前方に固められる。

 

「ヤバイよ師匠。どうする?」

 

板垣家長女の板垣亜巳が釈迦堂にそう聞いた瞬間。丘の上空から轟音と共にその場に目に入って来たのは大爆発だった。その光は遠くにあるこの場所おも明るく照らしていた。

 

「潮時だ!ヅラかるぞ!」

 

釈迦堂の言葉を聞き、板垣一家はその場を去って行った。

 

「あれは明人?」

 

百代はそう言い、気を探り明人の気を掴んだ。だが、今まで感じてきた明人の気とは全く異質なものだと百代は直感した。

 

「こっちは終わったぞ明人」

 

そう言って百代は爆発の方向を見ていた。風間ファミリーを爆発の衝撃で生まれた風がユラユラと揺らしていた。

 

 

 

明人は倒れた男の前に立っていた。男の仮面は全て剥がれ素顔があらわになる。

 

青年だった。歳も明人と二三歳しか違わない。若い男だったのだ。

 

「なんで、お前みたいな奴が」

 

明人は膝を付き、男に近づき抱き上げる。その顔には涙が流れていた。

 

「せめて、安らかに....」

 

明人はそのまま、男を抱え自分の居場所へと向かった。自分が守った居場所へと....

 

 

 

 

数日後....

 

 

明人は川神院に来ていた。鉄心に事情をはなし男を弔ってもらおうと思っていた。客間に案内され鉄心と話しているとテレビで流れているニュースが目に入る。

 

『先日起きた川神市での上空の大爆発については未だに解明されておらず以前と調査が進んでおります。なお、この爆発による被害は....』

 

ニュースは流れ続け鉄心が明人に話す。

 

「随分と派手にやったもんじゃの。まぁ、お前さんがやったとはバレまい」

 

「そう信じたいですね。一応九鬼が情報をストップしてくれているみたいで」

 

明人は少し微笑みながら言った。それを聞き、鉄心は髭をなでながらか続ける。

 

「そうか、男のことは任せて良いぞい。こちらで手厚く弔おう」

 

「ありがとうございます」

 

明人はテーブルに頭を付け言った。

 

「よいよい、今回の件はお主達だけの問題でもないからの。釈迦堂が関わっている以上儂ら川神院も出張らなくてわの」

 

「はい、それについては鉄心さんにお任せします」

 

「ところで明人よ。そろそろ時間じゃぞ」

 

そう言うと鉄心が襖の方を見つめその奥からは

 

「おーい!明人行くぞ〜」

 

キャップの声が聞こえる。

 

「行ってきなさい。お主が守った場所じゃ」

 

「はい」

 

明人はそっと立ち上がり襖を開ける。そこには明人の大切な仲間と居場所があった。

 

「おーし、今日はみんなで野球だぜ!」

 

キャップが今日やることをみんなに告げる。

 

「よし!自分に任せておけ!」

 

それを聞き、クリスがグッと拳を作る。

 

「負けないわよ!クリ!」

 

それに対抗して、一子も拳を作る。

 

「俺様のスイング見せてやるぜ」

 

「僕も頑張るよ」

 

岳人、モロ。

 

「私も精一杯頑張ります」

 

『ファイトだぜ。まゆっち!どでかいホームランを打つんや』

 

由紀江に松風。

 

「俺も全力で行こう」

 

「一生懸命な大和も好き。結婚して?」

 

「お友達で」

 

大和に京。

 

「おい明人。なにボーっとしてるんだ?」

明人の肩を組みながら百代が言う。

 

「いや、なんでもない。行こうか!」

 

明人は一歩を踏み出す。自分が守った者達の元へ。

 

人はいくつもの感情を持っている。嬉しいこと、悲しいこと、時には人を憎むこともあるかもしれない。たけどそれと上手く付き合って人は生きている。

 

誰しも『明日なる希望』を持って....

 

 

 

 

第二章・完




終わった....

と思っているそこのあなた!すいません。まだまだ続きますのでお付き合いください。

どうもトロンボーンと呼ばれた男です。

さて、とりあえず二章は終わりです。最後まで見て下さった方には感謝しかございません!

次回からは第三章と言うことですので首を長くしてお待ちください!

それでは今回はこの辺りで感想やご意見などありましたらご自由にお書きください。

さよなら〜ヾ(*´罒`*)


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第2.5章 : ファミリーとの生活編
番外第一話 : ワン子との一日


ここでは、第二章の後日談をお送りします。

普段見れない主人公の一面など見れるかも知れませんお楽しみください!


一部の者しか知らない川神襲撃からはや数日経った。あれから川神は平和そのものだった。釈迦堂、板垣一家の行方を九鬼が突き止め監視を始め不安の種は徐々に消えて行った。

 

そして、川神襲撃事件の一番の貢献者はというと....

 

「う〜ん、分からないわ。明人助けて〜」

 

武神川神百代の妹である川神一子に明人の家で勉強を教えていた。明人はこの事件がきっかけで仲間達との親睦を深めようと思っていた。明人はファミリーの皆にどことなく距離を開けていたと思う様になっていた。自分の居場所なのに結局一番繋がりから逃げていたのは自分だと明人は再確認したのだ。

 

「ワン子、そこはさっき教えたろ?ノートを見返してみろ。公式が載っているから」

 

「う〜分かったわ。え〜と、あった!これね」

 

一子は明人と先程一緒に覚えた公式を見つめ数式と格闘していた。かくゆう明人とはというと

 

「♪〜」

 

鼻歌をしながらお茶の準備をしていた。キッチンは綺麗に整理されており清潔感に溢れている。明人との家は住宅地にある普通の家だが明人の両親は共働きのため現在は一人で暮らしている。一人であればこの家の広さなら充分過ぎるぐらいである。リビングには食卓机があり、そこから少し離れた所には大きめのテレビに小さめなテーブルにソファと本当に充分な設備があった。一子はテレビの前に置いてあるテーブルでノートと格闘していた。

 

「どうだ?分かったか?」

 

お茶と焼き菓子を持って一子の隣に座る。一子は明人が持ってきた焼き菓子を一つ食べ苦悶の表情を浮かべた。

 

「分からないわ」

 

「はぁ、じゃあ一緒にやるか。見せてみろ」

 

「うん!」

 

その言葉を聞き、一子の顔には笑顔が戻っていた。

 

それから、一子は極力一人でやりどうしてもの時は明人の力を借り着々と問題を解いていった。

 

「終わったー!」

 

「お疲れ様」

 

用意したお茶もお菓子も全て食べ終え一子の今日のノルマは終了した。すると一子は電池が切れたロボットの様にテーブル突っ伏した。

 

「普段から勉強してればこんなことにはならいんだぞ?」

 

「分かってるけど、どうしても鍛錬を優先しちゃうのよね」

 

「ワン子は俺との鍛錬してるんだからもう少し鍛錬の量を減らしても問題無いんだぞ?それにもしワン子が体を壊したりしたら大変だ」

 

「心配してくれてるの?」

 

「当たり前だろ?」

 

「ありがと」

 

一子は明人に満面の笑顔を見せた。明人はそれに返すように優しく微笑んだ。すると、ふいに一子が明人の方に頭を寄せてきた。

 

「ワン子?」

 

あまりに突然なので明人も戸惑う。明人の問いかけに一子は答えずに明人の服を掴む。そして、先程とは悲しげな表情で話し始めた。

 

「本当はね。怖いんだ」

 

「怖い?」

 

「もし、このまま実力が付かなかったら明人の努力して来たのが無駄になっちゃうって」

 

それは一子の本心だった。一子は滅多に弱音を吐かない。だから明人は意外だった。だからこそ明人は一子の頭を優しく撫でる子供をあやすように

 

「無駄にはならないぞ。お前が努力して来たことは俺が誰よりも知ってる。それにまだ結果が出てないのにそうやって決めるなよな」

 

「うっ、ごめんなさい」

 

その言葉に明人は微笑む。

 

「一子久しぶりに髪とかしてやる」

 

明人は近くにあったブラシを持ち、自分の膝をポンポンと叩く。明人は昔一子の髪をよくとかしていた。一子もそれを受けいれていた。

 

「うん!」

 

一子はなんの抵抗も無く明人の膝の上にチョコんと座る。一子は小柄なのでとても軽く華奢だった。

 

『こんなに華奢だったんだな。一子って』

 

一子の後ろ髪をとめている髪飾りを外すと上で結ばれた綺麗な髪がフワッと降りてくる。その瞬間に甘い香りが明人の鼻をくすぐり脳を揺らす。

 

「明人が髪とかしてくれるの好き」

 

「そうか?俺もお前の髪をとかすのは好きだからな」

 

と言って一子の髪を丁寧にそして優しくとかしていく。

 

「一子大丈夫だ。お前がどんなに道に迷っても俺が引っ張るやる。だから安心しろ。俺はもうどこにも行かないから」

 

「うん、明人。これからよろしくね」

 

それはお互いの決意だった。一子は川神院の師範代を目指す夢を諦めずに進んで行く。勇往邁進の心で

 

「でも、いつまでも引っ張られるつもりは無いわ!いつか明人を追い越してみせるわ!」

 

「はは、そのいきだ」

 

それから一子は明人の手料理を食べ満足そうに川神院に帰って行った。




この番外は甘めに作って行こうと思います。

追記

番外の技集を更新しましたのでよければ見てみてください。


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番外第二話 : 日本にふれましょう

「おぉ〜これは凄いぞ明人」

 

「本当だな」

 

明人とクリスは日本展に来ていた。日本の文化に興味があるクリスに日本の歴史をもっと知ってもらおうと思っていた。日本展の内容は『日本を支えた武士達』というもので元々城だったものを改装し、見た目は城だが中は展示会場にするという大胆なものだった。現在は武士達が腰にしていた刀をクリスと明人は一緒にみていた。

 

「なぁ、明人」

 

明人が刀の説明欄を読んでいると隣にいたクリスが明人に声を掛ける。

 

「ん?なんだ?」

 

「大和丸の刀はないのか?」

 

大和丸とはクリスが日本の勉強に使っている。時代劇のドラマである。もちろんそれはフィクションなので大和丸もいなければそんな歴史などは存在しない。

 

「あれは架空の話だからな?大和丸に出てくる人物に似ている人物はいるかもしれないがあれはあくまでもフィクションの話だからな」

 

「そうか....」

 

明人がそう言うとクリスの先程までのテンションが急に下がってしまった。明人はその様子を見て頭をかきながら

 

「まぁ、絶対にいないとは言い切れないし探してみるか?」

 

「....あぁ!」

 

その言葉を聞いてクリスのテンションはすぐに元に戻った。それから、二人は展示会場を見て回った。展示されているものは武士達が使ったとされる茶器や書いた手紙など色々な物があった。その中でも二人が揃って見入っていたのは刀だった。展示会場には二十本近くの刀が展示してあり、クリスと明人はそれらの全てを見て回った。

 

 

「ん〜甘い物はなんでこんなに美味しいんだ」

 

展示会場を一通り見て回った二人は展示会場の近くでやっている甘味処に来ていた。明人は和紅茶をクリスはクリームあんみつを頼みそれぞれ展示の余韻に浸っていた。

 

「それは良かった。誘ったかいがあったよ」

 

「誘ってくれてありがとう明人」

 

「前々から日本の文化に興味があるって言っていたからな喜ぶんじゃないかと思ったが思った以上の反応で嬉しいよ」

 

「あぁ、日本の文化にも触れられたし甘い物も食べれた自分は満足だ」

 

クリスの笑顔は無邪気な子供がはしゃいでいるものだった。それを見て明人も和んでいた。

 

「でも、ここまでしてもらったからには自分も何か明人にしてあげたいのだが」

 

「気持ちだけでいいよ。最初に俺が誘ったわけだしさ」

 

「いや、そういうわけにはいかない。何かないだろうか....。う〜ん」

 

クリスはしばらく考えて「はっ!」と何か気付いた顔をして明人に言った。

 

「明人こんなものでお礼にならないと思うが....」

 

と言ってクリスはスプーンで自分が食べていたあんみつを取り、少し頬を赤らめ明人に向ける。

 

「ほら、明人。あ、あ〜ん」

 

「え、いや。えっと....」

 

「すまない!自分が口をつけたやつなどは嫌か」

 

「いや、それはぜんぜん大丈夫なんだがクリスは嫌じゃないのか?」

 

こういうことは女性の方が嫌がるものだと明人は思っていたがクリスは恥ずかしそうに言った。

 

「自分は明人なら構わない」

 

「そうか、ならいただきます」

 

「で、ではあ〜ん」

 

クリスがスプーンを再び明人に向ける。明人はそのスプーンを自分の口に入れた。

 

「うん、うまい」

 

「そうか!それなら良かった」

 

「クリス。何も俺にこんなことしなくてもいいんだぞ?」

 

「いや、させてくれ。自分は明人に返し切れない恩があるからな」

 

そう言ってクリスは先程の雰囲気から一転し、真剣な面持ちをした。

 

「明人が自分に気付かせてくれた。人の心を思いやるということ。自分に足りなかった物を明人はくれたんだ」

 

そう言ってクリスは明人の顔を見つめる一瞬もそらさずにただ明人を見ていた。

 

「大げさだ。俺がいくら言ったところで変えるかどうかクリス次第だったんだ。だから変えたのはクリスお前自身だ」

 

「たとえそうだとしても変えるきっかけをくれたのは明人だ。それは変わらないだろ?」

 

「はぁ〜。その頑固さは変わらないんだな」

 

明人は呆れながら少しだけ微笑んでクリスを見た。クリスはそれに答えるように言う。

 

「あぁ、事実だからな。これからは自分もお前の手助けをしたい。ドーンと自分を頼ってくれ!騎士クリスは全力で協力するぞ!」

 

そう言い、クリスは胸を張った。

 

「あぁ、そうさせてもらうよ。これからもよろしくなクリス」

 

明人はクリスに手を差し出す。

 

「あぁ!」

 

その手をクリスはガッチリと握り返した。二人の絆をより深いものとなったのだった。




短いですね....すいません。

次回はまゆっちのお話です首を長くしてお待ちください!

では、また次回さよなら〜ヾ(*´罒`*)


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番外第三話 : まゆっちのお料理教室

お気に入りが400越えだと....( ゚д゚)

圧巻でございます。皆様のご期待に応えるように努力していきますので今後ともよろしくお願いしますm(*_ _)m


川神の街にある商店街にて明人は同じ学園の後輩であり風間ファミリーの黛由紀江と買い物をしていた。明人との会話や笑顔の作り方を練習したおかけで由紀江は少しずつクラスにも馴染めようやく一人友達ができたということで明人へお礼に手料理を振舞ってくれると先日明人と由紀江は話していた。

 

買い物袋を両手から下げている明人に由紀江は話し掛ける。

 

「すいません明人さん。荷物私の分まで持っていただいて」

 

「別に気にするな。まゆっちはもっと俺に甘えてもいいだぞ?」

 

「私は今でも充分明人さんに甘えさせてもらってます」

 

そう言って由紀江は明人に微笑んだ。明人との特訓をした由紀江は以前より話すことができるようになったのともう一つ大きな変化があった以前から由紀江が会話の中で腹話術で会話をする携帯ストラップの松風と呼ばれている馬が会話に出なくなったということだ。明人からもそこは前々から指摘されていた由紀江は友達ができたことをきっかけに松風に別れを言い、松風を会話に入れることをやめたのだ。本人は松風から付喪神が消えたと言っているが。

 

「新しい友達、たしか大和田さんだっけ?」

 

「はい、伊予ちゃんです。とても優しくしてもらってます!」

明人が由紀江にできた友達由紀江と同じクラスの大和田伊予の話をふると由紀江の目はきらきらと光っていた。

 

「仲良くやれてるみたいで良かったよ」

 

「これも全て明人さんのおかげです」

 

その言葉を聞き、明人は手に持っていた買い物袋を持ち直し

 

「まゆっちが頑張ったからさ」

 

「明人さんのおかげで順風満帆です」

 

「そうかい」

 

明人は照れ臭くなり由紀江から顔をそらす。由紀江はその姿をニコニコしながら見ていた。そうして二人は明人の島津寮に向かった。

 

 

「よし、着いたか」

 

由紀江と他愛もない会話をしているとすぐに寮についた。

 

「まってください。今開けますので」

 

由紀江は寮の戸を開け、明人を中に入れる。

 

「今日はみんないないのか?」

 

「はい、皆さんそれぞれご予定があるみたいで」

 

「そうか....」

 

明人はそう言うと由紀江は少しもじもじして明人に聞こえるか聞こえないかの声量で

 

「つまりこの寮に私たちだけです....///」

 

「お、おう。そうか....」

 

その言葉を聞いた時に明人の頭には様々な想像が飛び交ったがすぐに頭を振り煩悩を消す。

 

─何を考えている!まゆっちは大事な仲間だ。そんな目でみるな

 

そう何度も自分に言い聞かせ、明人は由紀江の後に続いて台所に入る。

 

「明人さんはそこに座っていてください。腕によりをかけて作りますので」

 

明人が椅子に座ると由紀江はエプロンを着て調理台に立ち、料理の支度に掛かる。明人は後ろ姿を眺めていた。

 

─しかし、ただ待っているってのもな....

 

そう思い、色々な所に視線を動かしはじめる。普段とは違う調理台やテーブルに椅子に明人は新鮮さを感じていた。明人の視線が由紀江に戻った時に明人は気付いた。

 

「!」

 

由紀江が着ている服の下は短いズボンだったこともあり、明人の位置からではズボンの隙間から緑色の下着が少し顔を覗かせていた。その由紀江は料理をしていて気付く様子もない。

 

「まゆっちやっぱり俺も手伝うよ」

 

明人は椅子を立ち上がり、由紀江の元へ歩いて行く。

 

「え?大丈夫ですよ明人さんは─」

「いや、手伝わせてくだい。お願いします」

 

由紀江の声を遮って、明人は反射的に敬語でお願いをしていた。明人自体、下着をチラチラ見せられながら料理をされたら頭がどうにかなりそうなのだ。

 

「そこまで、言われるなら野菜の下処理をお願いできますか?」

 

「任された」

 

明人はすぐさま料理に取り掛かる。こうして二人の共同料理作業が始まった。

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

空っぽになった皿を二人で囲み手を合わせる。出てきた料理は和食から洋食まで幅広くそのどれもが美味しく明人は箸を止めずに食べていた。

 

「やっぱ、まゆっちの料理はうまいな」

 

食後のお茶を飲みながら明人は由紀江に言った。

 

「嬉しいです。頑張って作ったかいがありました」

 

由紀江は明人の言葉を聞いて笑顔を浮かべる。

 

「明人さん、食安めも兼ねて少しお昼寝しませんか?」

 

「え?でも迷惑じゃないか?」

 

由紀江の突然の提案に少し戸惑う明人だったが

 

「大丈夫ですよ。少しだけなら縁側に行きましょう。今日は天気が良くてお昼寝日和ですから」

 

明人の返事を待たずに明人の手を引き縁側まで誘導する由紀江。

 

「とわいってもここ硬いぞ?直で?」

 

「では....」

 

由紀江はその場で正座をし、自分の膝を明人へと向ける。

 

「ど、どうぞ」

 

少し頬を赤らめ言った。

 

「それはもしかすると膝枕ってやつですか?」

 

「はい、少し硬いかもしれませんが」

 

明人自身戸惑いがあったが食後の眠気というのは恐ろしくそんなことより眠気の方が勝っているのだ。

 

「では、失礼して」

 

そう言って明人は由紀江の膝の上に頭を乗せる今までに味わったことのない感触と甘い匂いで明人を包み込んできた。

 

「どうでしょうか?」

 

「すごい。それしか言葉が出てこん」

 

「そうですかそれは良かったです。私に色々と教えてくれた明人さんには頭が上がりません」

 

そう言って由紀江はおもむろに明人の頭を軽く撫で始めた。明人はそれを気にせず。

 

「大げさだ」

 

「いえ、私はここまで変わったのは明人さんがいてくれたからです。返し切れない恩です。だから....」

 

由紀江はそこで言葉を飲み込んだ。明人は少し顔を上に向け由紀江の顔を覗き込んだ。その表情は少し悲しげだった。

 

「いなくならないでくださいね」

 

その言葉は明人の胸に重く刺さった。あの時に大怪我をおったことを由紀江はまだ心配していたのだ。

 

「あぁ、いなくならないよ」

 

「はい、お願いします」

 

由紀江の表情には再び笑顔が戻っていた。

 

「まゆっち....ごめん眠い」

 

「はい。おやすみなさい明人さん」

 

由紀江は明人の頭を優しく撫でる。明人はそれに身を任せ眠りにつく。

 

この後、寮のみんなが帰って来てからかわれたのはまた別のお話。




次回から新章でごさいますのでよろしくお願いします。

次回の章で主人公のヒロインが決定しますのでお楽しみに。


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第三章 : 立花恋物語
第十二話 : デアイと出会い


おぞましい視線を感じ、明人の意識は覚醒した。

 

しかし、明人が目覚めた場所は家の自室ではなく薄暗い空間だった。

足元は水に覆われ近くでは水が落ちる音が際限なく聞こえてくる。

 

『ようやっと目が覚めたか....』

 

今までに聞いたこと無い声に明人は振り返る。そこには明人の何十....いや何千何万倍の巨大な体があった。体は白く、人間のものではなかった。そして、何よりも明人のことをジッと見つめる巨大な目が明人の目の前にあったのだ。明人はこの生物を知っていた。この生物は明人の中にずっといることを知っていたのだ。

 

「お前は....十尾なのか?」

 

明人の心には初めての感情....『恐怖』があった。自然と声にも恐怖の色がついている。

 

『こうして会うのは初めてだな....立花明人』

 

その声は明人が今まで聞いてきた声よりも遥かにおぞましく重圧がある声だった。その声を聞く度に明人は押し潰されそうな感じになる。

 

「あぁ、俺に何の用だ?」

 

恐る恐る明人が聞き返すと十尾と呼ばれる生物は大きな目をさらに見開いて明人に言う。

 

『貴様はいつまで我の力を使わないでいるのだ?』

「なに?」

 

それは意外な質問だった。明人の中には十尾がいることは前々から知っていた。そう明人自身が望んだことなのだから。しかし、十尾はその力をなかなか振るう片鱗も見せない明人に嫌気がさし、こうして明人を呼んだのだ。

 

『我が力は破壊と創世の力なり、その力を欲したから貴様は我をその身に宿しておるのだろうが。何故我を使わん?』

 

十尾は明人に巨大な目を近づける。その距離はほとんどなくなり両者どちらかが動けば触れてしまうぐらいの距離を保っていた。

 

「俺はお前の力を破壊の力として使わない。俺は仲間を守るためにこの力を使うだけだ」

 

その言葉を聞いて十尾はますますその目を見開き明人を見つめる。明人は一時もその目から視線をそらしはしなかった。それが明人の決意だから。やがて十尾は明人から体を離した。

 

『グフフ....我を前にそのような事を申すとは肝が座っているのか馬鹿なのかどちらにせよ大したものだ。さすがは我が主といったところだろ』

「悪いね。こんな主で」

 

明人はそう言って肩をすくめる。十尾はその巨大な体を横に振る。

 

『いや、我は我で楽しませてもらっているから結構だが....気をつけた方がいいぞ我が主よ』

「何がだ?」

『いずれ何か大きなものがお前を襲うだろう。我の力を使う時は近いかもしれん。その気を持っておけ....ではな。また会おう』

「おい!何なんだ?その大きなものって?」

『時がくればおのずと知ることになる....』

 

その言葉は言い放って十尾は明人の静止を聞かずに暗闇に消えていき、明人の意識もだんだんと遠ざかっていった。

 

 

 

 

明人が十尾と会ったその日の放課後に明人とは商店街にある牛丼屋に来ていた。

 

「いったいなんだったんだ?」

 

牛丼屋の椅子に座り、他の人に聞こえない程度の声で自分に問いかける。

 

明人がここに来たのは食事をしに来たのともう一つ。

 

「なんだ明人。悩み事か?」

 

明人が頼んだ牛丼を手に近寄って来る人物がいた。その人物は明人もよく知る、人物だった。

 

「いや、なんでもないですよ釈迦堂さん」

 

黒いワイシャツにズボン、その上から牛丼屋梅屋のエプロンと帽子をつけている。釈迦堂が明人に近づいてきた。

 

「そうか、何かあったら言えよ。ほれ、牛丼大盛りお待ち」

「ありがとうございます」

 

釈迦堂が牛丼を明人の前に置き、明人は箸を持ち食べ始める。

 

釈迦堂がこの場所で働き始めたのはほんの数週前の話だ。九鬼による監視が続いた釈迦堂は板垣一家が自分に操られていたことにし、自分だけが罪を被ったのだ。板垣一家は川神院で正式な修業をし、釈迦堂は九鬼の息がかかった店で働くということになったのだ。一連の事件に関わっていた明人に監視役が命じられたということだ。

 

「それにしても似合ってますね。エプロン」

 

牛丼を食べならが明人は釈迦堂にいう。釈迦堂の外見もあいまってベテランの社員の雰囲気を出していた。

 

「だろ?ここは俺の天職だわ」

「その調子で頑張ってくださいね」

「あいよ。お前がくれたチャンスだからな。無駄にはしねぇよ」

 

そんな会話をしていると他にいたお客から呼び出しが来て、釈迦堂はそっちの対応に行った。その後、明人は牛丼を食べ終わりその店をあとにした。

 

 

『大きなものが近づいている』

 

その言葉が明人の頭から離れずにいた。十尾に言われたことは不吉で不気味で明人の心に楔を打ち付けたのだ。明人はそのことを考えながらぼんやりと商店街を歩いていた。

 

そんなことを考えていた明人が曲がり角を曲がった時にそれはおこった。ドンッと音と共に一人の女性に明人はぶつかったのだ。

 

「あっ!」

 

明人が我にかえると女性が手にしていた買い物袋に入っていた物が地面に散らばっていた。

 

「すいません!ぼんやりしていて....」

 

明人はその場にしゃがみ込み、落ちた食材を拾いはじめる。女性の方もすぐに落ちた物を拾い始めた。

 

「いえ、こちらもごめんなさい」

 

その言葉を聞いた瞬間に明人の心にすこしの電撃が走った。明人は顔をゆっくりと女性の方へと上げた。そこにいたのは明人がよく知っている人物だった。

 

腰まで伸びた綺麗な黒髪に黒い瞳。川神学園の夏服のワイシャツを着て、その上からは黒いベストを着ていた。そこには川神学園の評議会議長の最上旭がいた。

 

「あら、その制服川神学園の生徒ね」

 

その言葉に明人は放心していた心を元に戻す。

 

「あ、はい。そういうあなたも川神学園の生徒ですよね?」

「ええ、私は最上旭。三年生で川神学園の議長をしているわ。見ない顔だけど学年は?」

 

旭は落ちた物を拾いながら明人に尋ねる。明人も物を拾いながらその質問に答える。

 

「二年の立花明人です。どうぞ先輩」

 

落ちたトマトを拾い、旭に渡す明人。そして、落ちた物を拾い終わり。お互いが立ち上がる。

 

「二年....そう、よろしくね明人」

「っ!」

 

下の名前で呼ばれドキッとする明人。

 

─そうだ、この人は人を下の名前で呼ぶんだったけな。

 

「どうかしたの?」

 

少し明人の顔を覗くかのように首を傾げる旭。それと同時に黒い髪がサラッと傾げた方向になびいてとても魅力的だった。一つ一つの行動に明人は目を奪われる。

 

「いえ!なんでもないです。先輩はここに買い物に?」

 

心の高鳴りを誤魔化すために別の話題へと話を持っていく明人。それに答えるように旭の方も話を合わせる。

 

「ええ、家では私が料理をしているのよ。今日は買い出しにね」

「そうですか。俺と同じですね。俺も両親が共働きで基本家のことは俺がやってるんですよ」

「そうなの、偉いのね明人は」

「いえ、大した事はしてないですけどね。持ちますよ」

 

旭が持っている買い物袋の一つを手に取り、一緒に歩く。旭はありがとうと言って明人の横に行く、商店街の出口を二人で目指した。

 

「ここでいいわ。ごめんなさいね持ってもらって」

「いえ、これくらいは」

 

明人は持っていた買い物袋を旭に手渡す。そして、明人と旭の前に黒い車が走ってきた。旭はそれに乗り込みドアの窓を開け

 

「ばいばい明人。また学園でね」

 

と言って車は前に進み明人との距離を離して行った。明人はその車を見つめながら頭をかいていた。

 

「まいったな。まさかもう会うとは....」

 

明人の儚い声は夏の始まりを知らせるような真っ赤な夕陽の空に溶けていった....

 

 




最近になって読んでない本が多すぎて困っています....

どうも主です。

さて、如何だったでしょうか?今回から新しい章です。明人の恋沙汰や新しい敵の匂いをすこしでも皆様に伝わればと思い書きました。まだまだ未熟ですが暖かい目で見守ってやってくださいm(*_ _)m

では、このあたりでさよなら。


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第十三話 : 誘いとお誘い

かなりお待たせしました。申し訳ないです。


明人が最上旭に出会った翌日、明人は学園の屋上で寝ていた。

 

「ふぁ〜〜あ。やっぱりここは風が心地いいな」

 

屋上に出るドアについているハシゴを上がり屋上が一望できる所に明人は寝そべり、風を感じていた。

 

静かに寝息をたてている明人の顔を覗き込む人物がいた。明人自身もその人物の存在に気付き、目を開ける。そこには明人がよく知る人物がいた。

 

「ありゃ、起きちゃた?」

 

腰まである黒い髪に川神学園の夏服に腰には道具をしまうショルダーのような物を付けていた。明人はうっすり目を開けながら聞いた。

 

「え〜と、どなたですか?」

 

明人はこの女性を知っているが向こうは明人のことを知らないので明人も知らないふりをする。

 

「あぁ、ごめんね。お昼寝の邪魔をするつもりは無かったんだよん」

 

「いえ、それは構いませんけど」

 

「私は松永燕。明日からここに三年生で編入するの。よろしくね」

 

松永燕。西のほうで活動している納豆小町と呼ばれている女性だ。彼女の家で作っている納豆は味は美味しくそして、何より彼女自身の美貌目当てに納豆を買う客も多いとか

 

「立花明人です。二年のFに所属してます」

 

明人はそう言って座りながら礼をした。

 

「そっか、明人クンね。よろしくねん」

 

そう言って燕は明人に笑顔を向けた。

 

(それにしても間近で見ると美人だな....)

 

そう思っていた明人だが、すぐに我に返る。

 

「ところで先輩は何故学園に?登校は明日からですよね?」

 

「うん、でもね楽しみで先に学園を探索しにね。最後に屋上に行こうと思って来たら明人クンがいたわけだよ」

 

「なるほど、ここは風が心地いいんで昼寝に最適なんですよ。先輩も良かったら使って下さい。俺のイチオシですから」

 

「うん、ありがと。じゃあ、私は行くね。ばいばい明人クン」

 

そう言って燕は屋上から去って行った。その後ろ姿を明人はぼんやりと眺めながら少し不安を抱いていた。

 

松永燕は九鬼の人物からある依頼を受けている。

 

武神の討伐という大きな仕事を....

 

「ん〜〜。さて、松永先輩は今の百代にどう立ち向かうのかな」

 

明人と昔から戦い敗北を知っている百代は自身の力を理解し、基礎から応用からの修行をおこない日に日に強くなっている。川神院の師範代であり学園の体育教師でもあるルー先生は百代は進化の途中だとのこと。明人も百代と手合わせするたびにその成長に驚かされるのだ。

 

「ま、いっか」

 

そう言って明人はまた寝そべる。すると、明人の携帯がなった。

 

「ん?誰だ?」

 

メールの送り主は同じ風間ファミリーの島津岳人だった。

 

『今日の放課後にナンパにくり出すから明人も来てくれ』

 

と言う内容だった。

 

「はぁ、岳人のやつ....。まぁ、たまには付きやってやるか」

 

そう言って明人はOKと岳人にメールを返し、浅い眠りについた。

 

 

 

放課後になり明人とは岳人ともにショッピングモールに来ていた。ここには放課後に遊んでいる女子高生がいるからここを狙うと岳人が言い、明人ともに来たのだ。

 

「さて、これからどうするんだ岳人?」

 

「決まってるだろナンパだよ。俺様今日は行けそうな気がするんだよな」

 

と言って岳人は早速辺りを見回し、最初のターゲットを発見した。一人で買い物をしている女性のようだ。

 

「よし、最初はあの人から行ってくるぞ明人」

 

「あ、そう。じゃあ俺はそこの喫茶店でお茶してるわ」

 

「おい!まてまて」

 

喫茶店に向かう明人のシャツを掴む岳人。シャツを引っ張られマンガのように後ろに戻る明人。

 

「なんだよ。まさか俺に来いっていうのか?」

 

「そのまさかだよ。明人がいれば明人に釣られて来るだろ?そこを俺様が華麗にゲットする算段よ」

 

「はぁ〜、あのな岳人。ナンパなんだから一人でやれよな。それに俺なんかに女性が釣られるとは到底思えない。俺はそんなにカッコよくない」

 

明人は自身の評価は下の下あたりだと思っている。ここまで来ると自己嫌悪に近い。だが、岳人は力説し始めた。

 

「お前それまじで言ってるのか?お前は男の俺様からも見ても相当なイケメンだぞ。それに加えて性格も良いとか優良物件すぎる」

 

「誰が家だ。バカタレが」

 

「ものの例えだよ!とにかく一緒に来てくれ。行くぞ!」

 

そう言って岳人は明人の首根っこを掴み最初のターゲットの女性に向かって行った。

 

一時間後....

 

「お茶すらしてくれないとは....」

 

明人と岳人は先程の喫茶店で休息を取っていた。

 

明人を連れてナンパを開始した岳人だったが、一時間経過しても結果は悲惨なものだった。最初は明人に釣られて手応えのある女性もいたがその都度岳人の方が鼻息が荒くなったり目が血走ったりして女性を引かせてしまっていたのだ。

 

「まぁ、肝心なお前があれじゃあな」

 

ケーキセットを注文していた明人が運ばれてきたチーズケーキを食べながら岳人に言った。

 

「俺様なんかしてたか?」

 

「自覚なしかよ....」

 

明人は小さく嘆息した。

 

「岳人さ、もう少し女性と話す時に冷静になったほうがいいぞ?お前だって話してる時に目が血走ってたり、鼻息が荒かったり、ましてやアソコが勃っている奴なんていやだろ?」

 

「そんなにひどいのかよ」

 

「あぁ、かなり」

 

その言葉で岳人はテーブルに突っ伏してしまった。

 

「俺様どうすればいいんだ明人?これじゃあ、大和がセッティングしてくれた合コンとかも全部ダメにしちまう」

 

「そうだな、俺はさっき言った点を除けば岳人はけっこうイケてると思うんだ。だから、相手を男だと思って話せばいいんじゃないか?」

 

「男?」

 

明人の言葉にテーブルに伏せていた岳人は顔を上げ、明人の方を見る。明人は頷いて続ける。

 

「岳人が色々とダメなのは相手を女性として意識しているからだと思うんだ。だから相手を男性として見て徐々に女性に置き換えていけばいいんじゃないか?」

 

「なるほど」

 

明人のアドバイスを岳人は聞き入っていた。そして、よし!と言って立ち上がった。

 

「明人のアドバイスをもとにもう少し頑張ってみるわ」

 

「あぁ、頑張ってくれ。すまないな。これくらいしかできなくて」

 

「何言ってんだよ。充分過ぎるぐらいだぜ」

 

「そうか?ならよかった。じゃあ、俺は今日の買い出しがあるからこれで帰るな」

 

「おう!ありがとな」

 

そう言って明人と岳人はお互いに別々の方向へと歩き出した。

 

 

 

明人は今日作る夕食の材料を買いに商店街に来ていた。とは言っても作る明人が何を作るかノープランなので明人は献立を考えながら商店街を歩いていた。

 

「さて、今日は何を作るかな」

 

明人が商店街を歩いていると道行く人達やお店の人達にも声を掛けられる。ここの人達とは小学生からの付き合いで肉屋のおばちゃんからコロッケを貰ったり魚屋のおじちゃんから魚のアラなどをタダでもらったりもしている。

 

「明人ちゃん、今日は豚が安いよ!どうだい?」

 

道を歩く明人に肉屋のおばちゃんから声を掛けられる。

 

「そうですね。少し回ってからまた来ます」

 

「はいよ!」

 

そう言って明人はまた商店街を歩きだす。夕方になればここは人々の声で賑わう。近くのスーパーに人を取られているが、それでもこちらに来る人は大勢いる。店の人の呼び込みや話声。明人はそれを耳で聞き、肌で感じていた。

 

「あら、明人じゃない」

 

そんなことを考えている明人に思わぬ人から声が掛かる。

 

「あ、最上先輩」

 

黒い髪が腰まで伸びている美しい女性最上旭。学園の三年生にして評議会議長の肩書きを持ち、さらに学園トップの成績をほこる人物なのだが何故か学園では目立たない。

 

「明人も買い物?」

 

旭は片手に買い物袋を持っていた。明人は自然とその袋に手が伸び、それを持つ。

 

「ありがとう。明人」

 

「いえ、これくらいは全然。先輩も買い物ですか?」

 

「ええ、そうなの。今日はお父様が仕事でいないから私一人だから軽くね」

 

「先輩もここに来るんですね。スーパーとかに行くものかと」

 

「私こういう雰囲気が好きなのよね。だれもが活気に満ちているいいことだわ」

 

「実は俺もです。」

 

「あら、そうなの?奇遇ね」

 

明人の言葉に旭は小さく微笑む、明人もそれにつられるように口元を緩める。

 

「それはそうと実は俺も買い出しに来たんですが、なにせ献立が決まらなくて困ってるんですよね」

 

「そうなの?」

 

「はい」

 

その言葉を聞いて旭は少し考えて明人に言った。

 

「だったら、うちに来てご飯食べていく?」

 

「え?いや、そんな悪いですよ」

 

旭の突然の提案に明人は戸惑った。旭はそんな明人を気にせずに話を続ける。

 

「さっきも言ったけどお父様いないの明人さえよければどうかしら?」

 

明人は少し考えこんだ後にこう続けた。

 

「じゃあ、お言葉に甘えてもいいですかね?」

 

「ええ、じゃあ今日は腕によりをかけないとね」

 

そう言って旭は嬉しそうに笑った。

 

「じゃあ、行きましょう」

 

そう言って旭は明人の空いている手を握り、引っ張った。そのことに明人は少しドキッとした。

 

「分かりましたから、引っ張らないでください」

 

そう言って明人は旭に引かれて最上家にお邪魔することになったのだ。

 




お久しぶりです。

長らくお待たせしました。ただ、執筆をする時間を作れず今にいたります。本当にお気に入りをしている方には申し訳ないです。

また、遅くなるかもしれませんが首を長くしてお待ちください。


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第十四話 : 思いとオモイ

「お邪魔します....」

 

明人は玄関をくぐる時から挙動不審だった。憧れの先輩に家で食事に誘われたら当然なのかもしれない。

 

「ふふ、お邪魔されます」

 

そんな明人を見て少し笑いながら旭が明人を家に案内する。

 

「随分と大きな家ですね」

 

「そうでもないと思うけど。とにかく上がってちょうだい」

 

「あ、はい」

 

旭の買い物袋を持ったまま、明人はリビングに案内される。

 

「おぉー」

 

明人が案内されたリビングはどこかのホテルのような気品さが出ていた。

 

「(いや、これはいわゆる豪邸ってやつだな。うん)」

 

そんなことを思っている明人。

 

「結局最後まで袋持っていてもらってごめんなさい」

 

「あぁ、大丈夫ですよ。これくらい」

 

そう言って明人は買い物袋を旭に手渡す。それを受け取った旭は台所へと向かい料理の下準備に取り掛かった。

 

「すぐ、作るから明人は座って待っていて」

 

「俺も何か手伝いますよ」

 

「いいのよ。お客様はどっしりと構えていてちょうだい」

 

そう笑顔で言われた明人は渋々椅子に腰を下ろした。

 

「そういえば、先輩のお父さんは何をしてる人なんですか?」

 

椅子に座りながら台所で作業を続けている旭に問いかける。

 

「九鬼で働いているわ。詳しいことは私にも分からないわ」

 

「九鬼ですか....あそこは本当に広いですよね」

 

九鬼は世界に展開している大企業だ。様々な分野で民の生活を支えている。九鬼は民の幸せを第一に考えている理想の企業だ。明人自身も九鬼英雄からスカウトを受けている。

 

そんなことを思う明人の視界にテーブルの端に置いてあった一冊の目に留まった。明人はそれを手に取り表紙を眺める。題名は一文字で『恋』と書かれていた。そして、表紙の下には作者であろう名前貴羅光と書いてあった。

 

「(恋愛小説かな?先輩もこういうの読むんだな)」

 

そう思いながら少しページめくる明人。そして、ペラペラとページをめくっていく。すると、徐々に異変に気付いく明人。ページを読み進めて行くうちにだんだんと本の内容が官能的になっていく。

 

「(これは....官能小説だ!!)」

 

思わず額に手を当てる明人。明人自身、旭がこのような性格だということを忘れていたのだ。

 

「(これはそっとしていた方がいいな....)」

 

「あら、それ見つけたのね」

 

「!」

 

明人が本を元の場所に戻そうとした時に丁度振り返った旭と目が合う明人。

 

「あ、えっと先輩この本は....」

 

「?私の私物だけど?」

 

まるで、持っているのが当たり前な口調で言う旭。

 

「そうなんですね。意外です」

 

「あら、女の子だって、性に興味無いわけじょないのよ。むしろ、男の子より興味ある子だっているわ」

 

「確かに女性は性欲強いって良く聞きますね」

 

「そうよ、私は処女だけど、そういうのにかなり知識はあるわ。明人は童貞?」

 

そう聞かれて素直に答えると負けた気がするが素直に答える明人。

 

「まぁ、はい。そうですけど。それとあまり処女なんて言葉を口にしないで下さい先輩は年頃の淑女なんですから」

 

「ええ、ありがとう明人」

 

そう言って旭は明人に微笑みを向ける。そして、少しモジモジしながら旭は明人に聞く。

 

「明人はこういう本読んでいる女の子は嫌い?」

 

その表情はとても可愛く、ドキッとする明人。あくまでも平然を装って答える明人。

 

「いえ、大変結構だと思いますよ。女の子だって人間なんですから、それに生と性は切り離せませんから」

 

「そう、ご飯すぐに用意するわね」

 

それを聞いた旭はとても上機嫌に夕食の支度に取り掛かった。

 

「はい、楽しみに待ってます」

 

そう言って、戻そうとした本を結局気になって夕食が出来るまで読んでいた明人だった。

 

 

「美味すぎた....」

 

「お粗末様でした」

 

夕食を食べ終わり、旭が入れてくれたお茶を飲みながら二人はゆっくりしていた。

 

「先輩の料理、美味しすぎました」

 

「明人、途中から黙って食べてたものね」

 

「あまりの美味しさに言葉をなくしました。何かお礼をしたいんですけど」

 

そう言われた旭は少し考えて躊躇いながら明人に言う。

 

「じゃあ、携帯の使い方を教えてもらえるかしら?」

 

「携帯ですか?」

 

「そうなの。どうもメカは苦手で」

 

「メカ....」

 

旭の口からメカと言う言葉が出て来てたまらずそれを復唱する明人。その言葉には少し笑いも混じっていた。

 

「今馬鹿にしなかった?」

 

そんな明人に感づいたのか旭は明人をジト目で見つめる。

 

「いえいえ、可愛らしい所があるんだなと思いまして」

 

「可愛い....。そう、それならいいわ」

 

明人の可愛らしいと言う言葉を聞いて少し嬉しそうな旭。そんな旭の様子を見ながら旭の隣に席を移す明人。

 

「で、何を教えればいいんですか?」

 

「メールとか連絡先の確認とか諸々と分からないからお願いね明人」

 

「はい。承りました」

 

そう言って、明人は旭に携帯の使い方をレクチャーし始めた。

 

 

「で、ここを押すとメールが送信されます」

 

明人が旭に携帯の使い方をレクチャーし始めてからかれこれ数十分が経過し、明人は旭にメールの仕方を懇切丁寧に教えていた。最初は不慣れだった旭も今ではぎこちないが少しづつ使える様になってきていた。

 

「ここを....押す。あ、できたわ」

 

画面に表情された『送信しました』の文字を見て嬉しそうに明人の方を見る旭。

 

「明人は魔法使いだったのね」

 

「これくらいで大袈裟ですよ。先輩も慣れれば使いこなせます」

 

「そうなりたいものね。あ、もうこんな時間」

 

「あ、本当だ」

 

明人と旭が時計を見ると時刻は八時を回っていた。

 

「だめね。明人といると楽しくて時間を忘れちゃうわ」

 

「俺もですよ」

 

旭は嬉しそうに明人に言う。明人もそれに答えるように微笑む。

 

「じゃあ、俺はそろそろ帰ります」

「玄関まで送るわ」

 

二人で玄関まで行き、明人が靴を履いたところで旭が口を開いた。

 

「ねぇ、明人」

 

いつもは堂々話す旭だが、その時の声は少し不安に包まれたものだった。

 

「もし、もしよ。私が最上旭が違う人物だったらあなたは私から離れてしまう?」

 

その質問は普通の人間なら、意味が分からない質問なはずだが明人は自然とその質問の意味が理解できた。最上旭は木曾義仲のクローンなのだ。それが明人にバレた時の事を旭は気にしていた。

 

旭は明人が口を開く前にこの言葉を訂正した。

 

「ごめんなさい。いきなりこんな質問して、じゃあ、気お付けて帰ってね」

 

そう言って、明人の方に背を向けた旭に明人は優しく声を掛けた。

 

「変わりませんよ」

 

「え?」

 

明人のその言葉を聞いて振り返った旭。

 

「先輩が例え誰であっても、それで俺が離れるなんてありえません。先輩は俺の憧れですから」

 

そう言って、明人は旭に優しく微笑んだ。

 

「そう....ありがとう明人」

 

「先輩?」

 

すると、旭は明人の胸に飛び込んだ。

 

「せ、先輩!?」

 

あまりの突然の出来事に処理が追いつかない明人だが、そんなことはお構い無しに旭は話し始める。

 

「あなたの事がもっと知りたくなったわ。これからもよろしくね明人。これはお礼よ」

 

そう言って、旭は明人の頬に軽くキスをした。そして、明人から離れ優しく微笑むながら

 

「バイバイ」

 

と手を振った。

 

帰り道、ようやく頭の処理が追い付いた明人はさっきの事を思い出して家へと帰って行った。

 




戦闘シーンを書きながらワクワクして、恋愛シーンを書きながらニヤニヤしている....

変態かよ....俺(´△`)↓


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第十五話 : 願いとネガイ

「武士道プラン?」

 

明人は素っ頓狂を声を屋上で上げていた。

 

昼休みにあずみから屋上へと来るように言われた明人はそこであずみに武士道プランのことを聞かされていた。

 

「そうだ、歴史の偉人のクローンを現代に蘇らせて互いに切磋琢磨させようっていうプランだ」

 

「クローンって....相変わらず九鬼も凄いことを考えるもんですね」

 

九鬼が発案した武士道プランは四人の英雄を蘇らせると言うものだった。蘇らせるのは源義経、武蔵坊弁慶、那須与一、そして、まだ誰のクローンか知らされていない葉桜清楚。その四人が来週から学園へ転入して来ると明人はあずみから聞いた。それを聞いた明人は腰に手を当てながらあずみに尋ねる。

 

「それで?あずみさんは俺に何をしろと?」

 

「時間もねぇから、単刀直入に行くぞ。立花、お前にS組に来い」

 

「やっぱ、そう来ますよね〜」

 

あずみから武士道プランの話を持ち出された時点は明人は薄々勘づいていた。

 

「Sは実力主義だからな、入ってきたクローン達を素直に受け入れるとは考えにくいんだ。お前は英雄様とも親しいし、Sでも顔が効くから、サポートして欲しいんだ」

 

「確かにSの人達って意識高いですからね。でも、Sに入るとなると人数とかは?」

 

「それなら、大丈夫だ。今日一人、家の家業を手伝うとかの理由でSを一人抜けた。川神鉄心にはあたいからも話はしてあるから。後はお前が行けばいいだけだ」

 

「勝手に話を進めないで欲しんですけど....。俺が断ることは視野に入れてないんですか?」

 

「断れば、九鬼がストップした情報をバラすぞ」

 

情報とは川神が襲撃された時に明人が放った一撃で大爆を起こしたことだ。

 

「それを出すとは汚いですよ」

 

「汚くない大人がいると思ってんのか?」

 

明人の言葉になんら躊躇いなくそんなことを言うあずみ。その言葉に明人は苦笑し、少し考えてから嘆息をする。

 

「はぁ、分かりました。放課後に鉄心さんに話します」

 

「あぁ、頼む。じゃあ、あたいは英雄様のところに戻る」

 

「はい、じゃあまた」

 

そう言って、明人とあずみは屋上を後にした。

 

 

屋上での話を終え、自分のクラスに帰える途中の明人に見知らぬ女性が話しかける。

 

「あ、あの!立花先輩!」

 

「ん?」

 

後ろから声をかけられ振り返る明人。そこには見たこともない女性が立っていた。見かけないところから察するに一年生だと明人は思った。

 

「え〜と、俺に何か用かな?」

 

明人がそう聞くとその少女は後ろに持っていたクッキーを明人に差し出した。その顔は少し赤く染まっていた。

 

「これ受け取って下さい!」

 

「え、俺にか?」

 

「はい!今日家で作りました!いつも応援しています。これからも頑張って下さい!」

 

そう言って、少女はクッキーを明人に渡し、走って行った。その先には二人の少女がいて、三人でテンションが上がっていた。

 

「え〜と、これどうするかな」

 

貰ったクッキーを眺めながら明人は困惑する。そんな明人の目の前が急に真っ暗になった。

 

「だ〜れだ」

 

どうやら手で目を隠されたらしい。しかし、その聞きなれている声に明人は返事をする。

 

「その声は最上先輩ですね」

 

「当たりよ。こんにちは明人」

 

名前を当てられ明人の目から手を離し、振り向いた明人に優しく微笑む。その笑顔に明人も心が安らぐ。

 

「こんにちは先輩。どうしてここに?」

 

「評議会の帰りよ。明人は?」

 

「そういえば、先輩は評議会の議長でしたね。俺は屋上でダラダラしてその帰りです」

 

さっきのあずみとの会話を他人するわけにもいかないので適当に誤魔化す明人。

 

「そうなの、ところでその手に持っている物は何かしら?」

 

「え?あぁ、これですか。さっき一年生から貰ったんですよ」

 

「あら、明人ってばモテモテね」

 

「よしてくださいよ。名前も知らない子だったんですから」

 

その言葉に旭は少しムスッとした表情を見せたがすぐにいつもの顔に戻る。

 

「そう、明人は名前も知らない子からプレゼントを貰う甲斐性無しだったのね」

 

「もしかして、先輩怒ってます?」

 

そっぽを向いている旭の顔を覗き込む明人。

 

「いいえ。でも、少し妬いちゃうわ」

 

「じゃあ、今度俺が先輩にクッキーでも作ってきますよ」

 

そう明人が言うと旭はクスクスと笑う。

 

「普通そこは私があなたにお菓子をあげる流れだと思うんだけど。でも、ありがとう明人楽しみにしてるわね」

 

そんな話をしていると予鈴のチャイムが学園に鳴り響いた。

 

「じゃあ、ここでお別れね。またね明人」

 

「はい、先輩。また今度」

 

そう言って、二人はお互いの教室に帰って行った。

 

 

 

放課後になり、明人は学園にある花壇にいる鉄心の元に来ていた。

 

「鉄心さん。あずみさんから聞いてると思いますけど」

 

「聞いておるよ。お前さんをSに入れてくれと、しかしのぉ、本来なら厳正なテストをするんじゃがの」

 

「まぁ、そうなりますよね。でしたら、テストを受けてなおかつ何にかしらの条件を出すのはどうでしょう?その条件を守れなかったら早急にS落ちってことで」

 

「まぁ、それなら問題無いかの。では、条件を出すぞ。一つはそうだの、学年順位を十位以内をキープすること」

 

「はい、それくらいなら」

 

「随分と余裕そうじゃの」

 

「学校のテストなんて授業を真面目に聞いていれば8割方とれますし」

 

明人は強がりでもなんでもなく、平然と鉄心に伝える。前の世界では、暇さえあれば勉強していた。明人からしては簡単な話だった。

 

「うむ、学業はそれでいいとして」

 

そう言って、鉄心は少し考えて明人に伝える。

 

「明人よ、もう一つ条件を出す」

 

「はい、なんですか?」

 

「そうじゃの、明日川神院に来なさい。そこで条件を出す。今日は金曜日じゃから集会があるじゃろ。モモ達に説明するとよい」

 

そう鉄心は明人に伝えた。若干疑問がある明人だが、とりあえずは納得する。

 

「分かりました。では、明日伺います」

 

そう言って、明人は鉄心に一礼してその場を後にした。

 

それから、明人は金曜集会に行き、自分がSに行くと仲間に伝えた。最初は戸惑っていたファミリーだったが、明人の学力などを考えるといたって普通の選択だと思い。皆分かってくれた。

 

そして、翌日の土曜日。川神院にて、明人は困惑していた。

 

「どうして、こうなった....」

 

目の前には百人にのぼる川神院の修行僧達が明人に立ちはだかっていた。そして、近くにいた鉄心は笑顔で

 

「明人もう一つの条件はこヤツらと組み手をやってくれ。それが条件じゃ」

 

その言葉を聞き、明人は額に手を当てて俯く。そして、一言。

 

「まじで、勘弁」

 

そんな明人の言葉も虚しく修行僧達は明人に勢いよく明人に向かって行った。

 

 




私事では、ごさいますがSAOの映画を見てきました。あまり、詳しくは話せませんがとても面白かったです。皆さんも是非見てみて下さい。

さて、次回は明人の新技オンパレード回ですのでお待ち下さい。では、さようなら


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第十六話 : 最強の力

この日の川神院はいつもと違い殺伐とした雰囲気に包まれていた。百人にのぼる修行僧達がたった一人の少年の前に立ちはだかっていた。その双方の中間に入る一人の老人がいた。名は川神鉄心。前世には最強の武神と呼ばれていた人物だ。今はその称号は孫の川神百代に与え本人は学園長をして、隠居生活をしている。そして、鉄心は長い髭を撫でながら双方に説明する。

 

「組み手のルールを説明するぞ。とは言っても大きなルールは無いが明人よ、あまり派手な技を使わんでくれると助かる。修復が大変じゃからの」

 

そう腰に手を当てて、修行僧の前に立つ明人に伝える鉄心。明人はこの人数を前にしてもまったく動かずにいた。それどころか余裕すらその表情からは感じ取れた。それの表情を見た一人の修行僧が明人に話しかける。

 

「明人よ、我らが昔と同じと思わないことだ。我らは成長しているのだ!」

 

その言葉を聞き、後ろにいた修行僧達が一斉に声を「そうだ!」「行くぞ!」などの言葉を上げる。その言葉に気圧されること無く、明人は余裕そうな表情を崩さずにあっけらかんと返す。

 

「別に昔と同じとは思ってませんよ。ただ....」

 

そう言って、明人は少し俯むく。そして、再び明人が顔を上げた時には明人の目は怪しく赤に輝く写輪眼になっていた。

 

「どれだけ、あなた達が強くなろうと俺に勝てると思うのは....大きな自惚れだと思いませんか?」

 

そう言った、明人の口は少し笑っていた。その言葉を聞いた修行僧達は見事に明人の挑発を受け、何人かは怒りを表していた。

 

「では、そろそろ始めるぞ。双方準備は良いな」

 

その鉄心の呼び掛けに

 

「いつでも」

 

明人から

 

「押忍!」

 

修行僧が応える。

 

それを確認し、鉄心は大きく息を吸いこみ。

 

「それでは、はじめぇぇぇ!!!」

 

その掛け声と同時に修行僧達は明人目掛けて突っ込んで行った。

 

「「「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」

 

何人にもの雄叫びが川神院内に響き渡る。その声はその空間そのものを震えていると錯覚させる程だった。

 

明人は向かって来る修行僧を一人一人を的確に行動不能にしていく。

一人目は腹に蹴りを入れ、そのまま、顎を蹴り付け吹き飛ばし、二人目は腕を掴み、そのまま何回か体ごと回し、修行僧が密集しているところに投げつけ一網打尽にしていく。

 

この現状を一言で表すなら『無双』と言う言葉が一番近い。

 

それからも明人の猛攻は止まることなく人数はたったの数十秒で20人はやれていた。

 

「おらぁ!」

 

一人の修行僧が明人の後ろから殴りかかる。明人は少しチラッと後ろを見て、その腕を掴み背負い投げの容量で地面に叩きつける。

 

「ぐぁ!」

 

そして、叩きつけた修行僧の顔面を容赦なく、踏みつける。修行僧は数秒ピクピクと痙攣し、やがて気絶した。明人は掴んでいた修行僧の手を離す。すると、その手はまるでゼンマイが切れた人形の様に力なく地面に落ちていく。その様子を見た、修行僧達はたじろいでいた。

 

その様子を見た明人は少し口角を上げ

 

「修業の成果とはこの程度のものですか?ほら、どんどん来てください」

 

と言って、明人はかかってこいと言わんばかりに手招きをする。それを見た修行僧は明人に向かって走って行くが、その努力も虚しく修行僧達の方向へ吹き飛ばされ、転がっていく。

 

「さて、そろそろ本格的に数を減らすか」

 

と言って明人は印を結び始める。それを見た修行僧達は

 

「来るぞ!隊列を組め!」

 

横に並び明人の技に対抗する準備をする。それを前に明人は印を結び終わり、大きく息を吸いこみ

 

火遁(かとん)豪火滅却!(ごうかめっきゃく)

 

明人が息を吐き出せば、修行僧達に火の壁が向かって行く。通常の人間などはこれに対処できず、火だるまになるが修行僧達は己の拳を地面に突き立てる。

 

「「「「「川神流(かわかみりゅう)畳返(たたみがえ)し!!」」」」」

 

すると、地面の板が起き上がり、火の壁を修行僧に向かうのを見事防いだ。火の壁を止めた板は熱でボロボロになり、地面へと倒れる。その後ろにいた修行僧は明人に向かい

 

「我々もその技には対策済みだ」

 

この技を一度、百代との戦いで使用しているので対策が練られていてもなんら不思議ではない。明人は対策されていたことが少し嬉しくなる。

 

「いやぁ、さすがは川神院の名を背負うだけはありますね。じゃあ、今度は少し....本気でいきますよ」

 

この言葉を口にした明人の目は薄紫に輝いていた。そして、この場にいた数人はその言葉に自然と込められている殺気に気付いてた。明人が印を結び始めると修行僧達もすぐに体制を整え始める。それを少し離れた所で鉄心と川神院の師範代のルー・イーは見ていた。

 

「やはり、明人は戦っている最中にスイッチが入ると人が変わるのぉ」

 

髭を撫でながら鉄心はルーに言う。ルーは独特のポーズを取りながら鉄心に返す。

 

「自分の力ニ絶対的な自信を持っていますよネ。明人ハ。それでいて、自惚れている様子も無イ。とても、素晴らしい人物ですヨ。彼ハ」

 

明人は子供の時から川神院に入った時から他者を寄せ付けない力と才能を表していた。それでいて、百代ように力に溺れることも無く、ただただ力を求めていた。自分の限界を決めつけることなく、だからこそ今の明人があると鉄心とルーは思っている。

 

「あれは、モモでも勝てんわけだのぉ」

 

と鉄心の声は晴れている空に消えていった。

 

そんな話を鉄心がしている最中、状況は大きく動こうとしていた。

 

「なんだ!?あれは?!」

 

修行僧達が見つめる先には無数の黒い獣が現れていた。現れた獣はそれぞれが意思を持っているかの様に動いている。そして、何よりビリビリと雷の様に帯電しているのだ。

 

「さてと、行きますよっと」

 

そして、明人は印を結び直し、獣達を修行僧へと向ける。

 

嵐遁(らんとん)漆黒班纏遇(ブラックハンティング)!!」

 

『グオォォォォ!!!』

 

無数の雄叫びをあげながら獣達は修行僧に突進していく。

 

「はやいっ!?ぐわぁ!!」

 

修行僧達が何かをする前に獣達は修行僧に襲いかかっていく。全てが電撃で形成されているためカスっただけで感電する。そんな物が高速で自分達に向かって来るとなると対処できる者は少ない。

 

そして、獣達は修行僧達の後ろまで走り抜け、そこで獣達は一つに融合していき、やがて巨大な豹の様な姿になる。

 

『グオオォォォォォォオオ!!』

 

耳をつんざくような雄叫びと共に巨大な豹はその姿を黒い雷光に変え、トドメと言わんばかりに無慈悲に修行僧達に襲い掛かった。院内に修行僧達の悲鳴が響いた。黒い豹が消えた時には既に立っているものはいなく皆地面に伏していた。

 

「やりすぎたかな?」

 

そう言って、頭をかく明人に後ろから迫る一人の少女がいた。

 

「せやぁぁぁ!」

 

「一子か....」

 

明人は振り下ろされた薙刀を掴み前方に投げ飛ばすが、一子を上手く受け身を取り、ダメージを逃がす。

 

「飛び入り参加か?一子」

 

「ええ、じいちゃんからも許可は貰ったわ」

 

そう言い、薙刀を回して再び構える一子の後ろで何人かの修行僧が立ち上がるの見えた。その光景を見た明人は少し驚いていた。

 

「これは驚いた。あれをくらって立てるとはなかなかのタフさですね。皆さん」

 

修行僧達の足元はおぼついてはいないがその目には確かな闘志が宿っていた。

 

「一子殿ばかりにいいとこは持っていかせませんぞ!」

 

「そうだ!何のこれしき!!」

 

「まだ、我らは戦えるぞ!明人!」

 

そう言って、倒れていた修行僧のほとんどが立ち直ってきた。その光景に明人は歓喜していた。

 

「ハハハ、いいですね。なら、もっと踊ってみせてくださいよ」

 

そう言って、明人は(いぬ)の印を結び。それを見た一子達は構えるが何かが起きる気配は無かった。

 

「なに?」

 

その不自然な光景に一子は声を上げた。特に変化が無いと思っていたが、徐々に明人の周りに黒い粉が集まってきた。それは院の下に敷いてある大理石の間から流れる様に明人の方向へと集まっていく。

 

「何かしてくるぞ!体制を」

 

その言葉の先が発せられることはなかった。

 

「遅いな、砂鉄時雨(さてつしぐれ)!!」

 

集まっていた黒い粉が突如として、小石くらいの小さな大きさになり、一子達の方へ弾丸の如き速さで飛んで行く。それをいち早く察知した一子は修行僧達の前に出る。

 

 

「下がって!川神流(かわかみりゅう)大車輪(だいしゃりん)!!」

 

薙刀を高速で回して、砂鉄を弾いていくが弾き漏らした砂鉄の弾丸が数人の修行僧を襲う。

 

「っ!みんな!」

 

薙刀を回しながら一子が後ろの状況を確認する。

 

「よそ見なんかしていいのか?一子」

 

「くっ!」

 

一子が明人の方向へと向き直ると黒い巨大な鉄球が空に浮かんでいた。

 

「そら、これもやろう!砂鉄結襲(さてつけっしゅう)大玉(おおだま)!!」

 

「うそ!?」

 

大玉が迫ってくる瞬間に一子は薙刀の回転をやめて横に飛び込む様に退避する。そして、一子の後ろにいた修行僧達は回避できずに大玉の餌食となった。

 

そして、とうとう立っているのは明人と一子だけになる。倒れた修行僧達はすぐに医療班が運び出し、手当を受けている。

 

「さて、残りは俺達だけだな。一子」

 

「えぇ、そうね明人」

 

辺りに砂鉄が散らばっている中で一子と明人対峙している。一子は薙刀を地面に下ろし、そのまま明人に走り出す。

 

「全力で行くわ!明人!!」

 

「あぁ!来い!」

 

一子は薙刀を引き釣りながら明人に向かって行く。明人はただ、その場に立っているだけだった。

 

川神流(かわかみりゅう)水穿ち(みずうがち)!!」

 

一子の渾身の一撃を明人は

 

「まだ、遅いな....」

 

左手で受け止めた。その瞬間に一子は薙刀を捨て、明人のふところに飛び込む。

 

川神流(かわかみりゅう)蠍打ち(さそりう)!!」

 

一子の拳は明人の腹部に直撃した。その光景を見た修行僧達は驚きの声を上げていた。だが、この場で一番驚いていたのは

 

「明人....どうして?」

 

技を放った一子自身だった。その問いに明人は少しだけ口角を上げ、答えた。

 

「お前の....成長を見るためには技を食らうのが一番だと思ってな」

 

そう言って明人は後ろにおぼつかない足取りで後ずさる。さすがの明人でも一子の渾身の技を直に受ければタダでは済まない。

 

「最初の頃と踏み込みが深くなったな一子。お前は強くなってるよ自信を持っていいぞ」

 

「明人....」

 

「でも、勝負は勝負。勝たせてもらうぞ!」

 

そう言って、明人は一子と目を合わせた。明人の目はいつの間にか写輪眼になっており、その目を見た一子は力なくその場に倒れ込んだ。それを近づき優しく支えて地面に下ろす明人。そして、そのまま明人も地面に膝を着いた。そこで鉄心の組み手終了の声が院内に鳴り響いた。

 

「ハーイ、組み手ハここまで。怪我人はすぐに手当てするようニ」

 

鉄心の声の後にこの場の指揮を取り始めた。ルーが明人の近くに倒れていた一子を運んで行く。その様子を眺めている明人に鉄心が近付いていく。

 

「鉄心さん。条件は完遂しましたよこれでいいですか?」

 

「うむ、明日Sへの編入試験を行うので学園に来なさい。お主なら余裕じゃろ?」

 

「はい、では明日伺います」

 

そう言い、明人は立ち上がり鉄心に一礼してその場から立ち去る。

 

その後日に行われたテストで明人は満点叩き出し、月曜日から正式にS組へと編入を許されたのであった。




戦闘描写なのでノリノリで書きました。

皆さんもノリノリでどうぞ。


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第十七話 : 出掛けませんか?

明人がS組に編入してくる噂は月曜日には他のクラスの耳にも届いていた。

 

「失礼しました」

 

そんなことは知らずに明人はS組への編入の最終手続きをして、学園長室を後にする。

 

「よし、終わったな」

 

明人の出てくるのを待っていたS組の担任の宇佐美巨人が頭をかきながら明人に言う。

 

「はい、わざわざすいません。宇佐美先生」

 

「これも仕事だからな。終わったならとっとと行くぞ」

 

そう言って、S組へと歩き出す巨人。明人もその後ろを付いて歩き出す。すると、巨人は間が悪そうに口を開く。

 

「まぁ、Sの奴は歓迎する奴もいるだけど。中にはお前を目の敵にする奴もいるぞ」

 

明人はS組のリーダー的存在の九鬼英雄とも親しいので葵冬馬や井上純などとも顔が効くがもちろん全員がそうとは限らない。Sは闘争意識が高いからだ。

 

「まぁ、そこはなんとかしますよ」

 

「てきとうだね」

 

明人の返答に巨人も少し呆れる。

 

「それに」

 

「ん?」

 

明人の言葉に巨人は後ろを振り向く、そして明人は少し悪い顔を巨人に向け

 

「Sは実力主義ですよね?」

 

その笑顔を見て、巨人はため息の後に

 

「悪い顔しやがる」

 

と言って、再び二人はS組の教室への道筋を歩き出した。

 

 

巨人に連れられSクラスへとやって来た明人だったが生徒の反応は予想通りだった。歓迎している人もいれば嫌な空気を漂わせている人もいた。歓迎してくれている人は明人の予想した通りの人物だった。

 

「フハハハハ!よくぞSに来たな。我が友、明人!お前を歓迎するぞ」

 

まずは金色のスーツに身を包んだ。額にバツの傷がある九鬼英雄。

 

「ご学友の編入をも全力で歓迎する。流石でございます!英雄様っー☆」

 

その一歩で後ろで英雄の事をいつも通りに褒めちぎる忍足あずみ。そして、明人のことをみて「来たか」と目配せする。明人もそれに答え「来ましたよ」と目配せで返す。

そんな中でも明人が来たことをよく思わない者もチラホラと見られた。

 

「ふん、どうせすぐにS落ちするさ」

 

「本当だな、F上がりの奴なんか底がしれてる」

 

そんな声が明人の耳に入ってくる。

 

「(まぁ、次のテストであいつらよりも点を取れば収まるだろ…)」

 

明人は、無理なS組への転入を認めてもらう条件として試験の順位を10位以上をキープする条件を鉄心から出されている。その順位を見せ付ければ今色々と言っている人たちも納得すると。

 

そんなことを考えている明人のことなどお構いなしにその声の主へと、声を掛ける人が一人。

 

「他人のことを気にする余裕があるなら少しは自分磨きに時間を掛けなさい」

 

その強い言葉に生徒はあっという間に縮こまってしまった。その言葉を放ったのは燃えるように真紅の長い髪を持ち、目に眼帯をしている女性。

 

「マルさん、別にそんなこと言わなくてもよかったのに」

 

「私が言いたかったまでのことです。それとマルさんはやめなさい。私の名前はマルギッテです」

 

マルギッテ・エーベルバッハ。クリスと同時期に学園に転入してきたドイツ軍人。クリスの父親が娘を思うあまりにマルギッテを学園に派遣し、様子を見張らせている。

 

明人とマルギッテが初めて会ったのはファミリーの皆と箱根の旅行に言った時だ。同時に明人がクリスの父親にも会った日でもある。

 

マルギッテは明人を見た瞬間に明人が只者ではないことを察し、戦いを挑んだのがその時は相手にされなかった。それからマルギッテは明人に戦士としての興味が湧き、それ以来明人はマルギッテに目を掛けられている。

 

「え〜、いいと思うけどなマルさんって呼び名。可愛いし」

 

「可愛いからいけないのです。私は軍人です、可愛いとは無縁の立場なんですから」

 

当の明人はマルギッテのことをマルさんと呼び、少しからかうことしばしばでよくマルギッテの手を煩わせているが、マルギッテも満更でもなさそうな態度を取っている。

 

「軍人である前にマルさんは一人の女の子だ」

 

「あなたはそうやって、私をからかう」

 

「いやいや、本当にそう思ってるって嘘なんかつかないよ」

 

その言葉にマルギッテも少し、嬉しそうな表情をとるがすぐにいつものクールな表情に戻る。

 

「んん、とにかく歓迎します。ようこそSクラスへ」

 

「どうも、とりあえずはのんびりやらせてもらいますよ」

 

マルギッテが咳払いをして明人には歓迎の言葉を送る。それに明人も友好的に答えた。

 

「そろそろ授業が始まります。席に着きましょう」

 

「了解」

 

そうして明人は自分の席に着き、一日の授業を消化していっていった。

 

 

 

 

「ん〜、流石にSクラスとなるとも授業の内容がより一層濃いものになるな」

 

午前の授業が終わり、明人は一人で屋上に訪れ、背伸びをしていた。

 

「やっぱり、ここは落ち着くな」

 

と言ってベンチに横になる明人。そこにとある来客が一人。

 

「お、いたいた」

 

その来客の声を聞き、目を開ける明人。

 

「ん、キャップか。どうしたんだ?」

 

明人の昔からの幼馴染であり、風間ファミリーのキャップである。風間翔一がそこにいた。

そう言ってベンチから体を起こす明人、そして、空いたスペースに座る翔一。

 

「お前を探してたんだよ。Sクラスへの転入祝いを渡そうと思ってな」

 

「わざわざそんなことしなくてもいいのに。ちなみにお祝いの品とは?」

 

明人がらそう聞くと翔一は誇らしげに制服のポッケから二枚の紙を勢い良く取り出し、明人に見せた。

 

「じゃーん!七浜の遊園地のチケットだぜ!商店街の福引で当たったからな。これやるよ」

 

そう言って、チケットを明人に渡す翔一。それを明人は素直に受け取り、翔一に感謝の言葉を言う。

 

「ありがとう。キャップ。それにしても二枚か....誰と行くかが問題だな」

「んー、そんなもん岳人とかモロとかでよくね?」

 

「何が悲しくて野郎と二人で遊園地行かなきゃならんのだ。まぁ、しばらく考えてみるわ。恩に着るよキャップ」

 

「おう!じゃあ、俺は今から名古屋の手羽先を食いに行ってくるぜ!」

 

と言ってキャップは風の様に去っていった。

 

「相変わらずだなキャップは」

 

再びベンチに横になり、貰ったチケットを眺める明人。最初はファミリーの中で選ぼうと思っていたが、この数週間の間に明人は様々な人と知り合った。

 

「一緒に行きたい人か....」

 

その言葉を発した明人の頭の中には一人の人物が浮かんでいた。いや、本当は最初から浮かんでいた。自分の最も憧れであり、そして最も好意を寄せている女性。

 

「思い立ったが吉日ってな」

 

明人はベンチから立ち上がり、屋上を後にし、自分の教室に戻った。ある決意を胸にして。

 

 

放課後になり、生徒がそれぞれ部活をしたり、帰宅する時間帯になっても明人はまだ学園の中にいた。それはある計画を実行するためだった。その計画の実行場所はというと

 

「そろそろかな....」

 

とある教室の前だった。ここで誰を待っているかというと

 

「議長、お疲れ様でした」

 

ふいに教室の扉が開き、そこから出てきたのは黒い腰まである長い髪に雪の様に白い肌の持ち、まさに絶世の美女という言葉が似合う女性。学園議長の最上旭。

 

「先輩、議会お疲れ様でした」

 

「あら、明人。どうしたの?こんな時間まで」

 

今日から出てきた旭に声をかける明人。

 

「先輩にお話がありまして、時間大丈夫ですか?」

 

「ええ、後は帰るだけだから大丈夫よ」

 

明人の問に旭は笑顔で答える。その笑顔に少し、ドキッとした明人だったがすぐに心を平静に戻す。

 

「え〜とですね、俺がSクラスに行ったのは知ってますよね?」

 

「ええ、知ってるわ。おめでとう明人」

 

「あ、ありがとうございます。で、ですね。そのお祝いでこういうものを貰いまして」

 

と言いながら明人は翔一から貰った七浜遊園地のチケットを旭に見せる。

 

「七浜遊園地のチケット?」

 

「そうなんですけど、二人分ありまして....その先輩、今週の休み空いてますか?良かったら一緒に行きませんか?」

 

その言葉を聞いて、旭は明人からも分かるような嬉しそうな表情を浮かべた。

 

「いいの?私で?」

 

そんなことを言った、旭に明人は微笑みながら旭に言う。

 

「もちろん!先輩がいいんです!」

 

思わず声を大きくする明人、それにふと我に帰り咳払いをする。その様子を見て旭クスクスと笑いをこぼす。

 

「そんなに言われた行くしかないわね。じゃあ、土曜日に行きましょうか」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「ええ、こちらこそ」

 

そう言って明人と旭は別れた。帰り道、明人がいつもよりも上機嫌で帰って行ったのは誰も知らない話。




現実が作業時間をくれない....

どうもお久しぶりです。皆様には作品をお待たせしすぎてしまって。本当に申し訳ない気持ちです。なかなか書く時間が取れずに気付いたらこんな時期になってしまいましたm(*_ _)m

さて、今回は主人公がデートに誘うと言うことでしがいかがだったでしょうか?次回はデート回にするつもりですのでろくろ首もびっくりするほど首を長くしてお待ちください。

それではまた次回!さよならm(*_ _)m


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第十八話 : 愛してみませんか?

今回は少し長くので、ゆっくりとお楽しみください。


明人は極度に緊張していた。

 

学園で旭と遊園地に行く約束をし、そして今日がその約束の日となった。待ち合わせ場所の川神駅前に予定時間の30分も前に到着した明人は自他共に見てもソワソワしていた。

 

「(まずい....今思えば好きな人とどこかに遊びに行くなんてことをしたことがない。何も考え無しに誘ったが大丈夫なのか?)」

 

家を出た時からそんなことをばかり考えている明人。せっかくのデートだと言うのに当の本人がずっとこの調子では上手くいくものも上手くいかない。

 

「(いや、とりあえずはデートに集中しよう)」

 

と心で呟き、頭をぶんぶんと振り、余計な考えを頭の中から消し去る。そして、腕時計を見て時間を確認する明人。色々と余計な事を考えている間に時間は立っており、約束の10分前になっていた。

 

すると、明人の視界は急にフェードアウトした。

 

「だーれだ?」

 

そして、聞きなれた声が聞こえた。明人は落ち着いて声の主に答えを告げる。

 

「最上旭先輩ですね」

 

明人がそう答えるとフェードアウトしていた視界はいつもの様に明人に光を伝えだした。

 

「正解よ、おはよう明人」

 

明人が振り向くと薄い黒を基調とした大人びた服装の最上旭が立っていた。

 

「おはようございます先輩。その服とても似合ってますよ」

 

「ふふ、ありがとう明人。明人こそ普段のイメージとは違っていい感じよ」

 

明人の服装はジーンズに黒いTシャツ。その上から半袖の白いシャツを着て、前を開けているものだった。明人の身長や顔付きもあいまってそれなりの雰囲気にはなっている。

 

「これでも結構悩んだんですけどね」

 

「そうなの?でも、よくに似合っているわ」

 

「ありがとうございます。じゃあ、早速ですが行きますか」

 

と言って歩き出す明人。その横に旭も付いて行く。その並んで歩く姿はどこから見てもカップルそのものだった。

 

「あ、歩くの早かったら言ってくださいね。先輩に合わせますから」

 

「大丈夫よ、明人は優しいのね」

 

「そうですか?これくらいは女性に対して普通の対応だと思うんですが」

 

「そういうところも明人が女性に好かれるポイントなのかもしれないわね」

 

「そんなもんなんですかね?」

 

と明人は旭に返した。そして、明人と旭は電車に乗り、目的地の七浜の遊園地に向かった。電車の中でも会話が途切れる事はなく、明人自身にも充実した時間だった。

 

 

 

電車を降り、少し歩いた所に目的の遊園地があった。遊園地に近づくと大きな観覧車が明人と旭の視界に入ってきた。その観覧車を見ながら歩いているとようやく目的地に着いたのだった。

 

「俺自身も初めて来たんですけど、かなり広いんですね。さすがは七浜」

 

「そうね、私も初めて来たわ。みんな楽しそうね」

 

休日なためか、人は多かったがどのアトラクションも数分並ぶだけのストレスがない混み具合だった。

 

「さて、先輩は何か乗りたいものありますか?」

 

明人がそう聞くと、

 

「私は明人が乗りたいものに乗りたいわ。私をエスコートしてちょうだい」

 

「エスコートですか?」

 

突然の旭の発言に戸惑う明人。それを目に入れながら旭は意地悪く呟く。

 

「楽しみだわ、明人がどんなチョイスをするのか。言っとくけど私はちょっとやそっとじゃ、満足しないわよ」

 

「はぁ、分かりました。誘ったのは俺ですし先輩を満足させてみますよ!」

 

と明人は強気に旭に言ってみせる。

 

「あら、かっこいいわね。ハリウッド男優ばりに」

 

「じゃあ、軽いジャブから行きますかね」

 

そう言って、明人は周りを見渡し目的のもの見つけると自然に旭の手をとり、エスコートをして行った。

 

 

遊園地を二人で一通り楽しんだ後、明人と旭は近くのベンチに腰掛けていた。最初は二人で楽しんでいたが最後に乗ったジェットコースターで明人が完全に撃沈していた。

 

「まさか、明人がジェットコースターがダメだったとは新しい発見ね」

 

グロッキーになり、天を眺める明人に旭がそう話す。その言葉に明人は上見ながら答える。

 

「生まれてこのかた絶叫マシーンに乗ったことがなかったんですが、自分でもかなりの驚きですよ」

 

「また少し、明人のことを知れて私は嬉しいのだけど、明人はそうでも無いみたいね」

 

「ええ、でも、さっきよりは大分マシになりましたよ」

 

と言うと明人は自身の腕時計を見て時間を確認する。時間は丁度昼時を指していた。

 

「先輩、そろそろお昼ですけど、どうします?」

 

明人がそうゆうと旭は少し、嬉しそうに明人に切り返した。

 

「実はね、お弁当を持ってきているの。良かったら食べてちょうだい」

 

と言って旭はバックの中から少し大きめな弁当箱を取り出す。中を開けると卵焼きや唐揚げなど多種様々なオカズと一口サイズの可愛らしいおにぎりが入っていた。

 

「え、わざわざ作って来てくれたんですか?」

 

「ええ、腕によりをかけて頑張ってみたの」

 

明人の質問に旭は笑顔で返す。

 

「迷惑だったかしら?」

 

明人の様子を伺いながら旭がそんなことを言う。

 

「そんなことないです!すごい嬉しいです。今度お礼させてください」

 

旭の言葉をすぐさま否定し、笑顔を見せる明人。その笑顔も見て、旭も嬉しそうにする。

 

「そう、良かったわ。いっぱい作ってきたからたくさん食べてちょうだい」

 

「はい、いただきます!」

 

そう言って、明人は旭が作ったお弁当を食べ始める。そのあまりの美味しさに食べることに集中しすぎた明人のだった。

 

 

「本当に美味しかったです。ありがとうございました」

 

「ふふ、お粗末様」

旭の作ってきたお弁当を二人で完食し、明人が旭に感謝を伝える。

 

「それにしても、作り過ぎたと思っていたのだけれど、やっぱり男の子ね。あっという間に無くなちゃったわ」

 

旭が嬉しそうに明人に言う。

 

「相変わらず先輩の料理は美味し過ぎてついつい食べるのに夢中になってしまいます」

 

旭が入れた食後のお茶を飲みながら明人は旭に言う。その言葉を聞いて旭も明人にありがとうと返す。

 

「さて、次はどこに行くの?紳士さん」

お弁当をバックにしまい、明人の顔を覗き込みながら旭がそう言った。

 

「そうですね、七浜の魅力は遊園地だけじゃありませんから色々回ってみますか」

 

「いいわね、実は七浜に来ることはそうないから色々見ておきたいと思っていたの」

明人の提案を聞き、旭は嬉しそうに目を細めた。

 

「じゃあ、行きますか」

 

「ええ♪」

 

明人が立ち上がり、歩き出すと旭はその腕に組み付いた。いわゆる、カップルの腕組みをしながら、明人と旭は七浜の街を歩き始めた。その様子は仲睦まじいカップルの様に見え、周りの通行人から嫉妬の視線が明人に向けられたのは言うまでないことだった。

 

 

明人と旭が七浜の街を二人で歩き始めてから既に数時間が経ち、それは茜色に染まっていた。最初に七浜の野球チームの七浜ベイの試合を観戦し、七浜の伝統の赤レンガを見て周ったところでこの時間になっていた。

 

「今日は本当に楽しかったわ。誘ってくれてありがとう明人」

 

夕暮れになり、明人と旭は七浜の海を見に公園に来ていた。旭はそこから七浜の海岸を見渡していた。

 

「お礼を言うのはこっちの方ですよ。楽しい休日をありがとうございました先輩」

 

「あら、それはこっちだってそうよ。こんなに楽しかった休日は久しぶりだわ」

 

そう言って、また旭は茜色に染まった海を見据える。その表情はとても美しくもので明人の心をあっという間に奪っていた。

 

「ねえ、明人」

 

旭の言葉にどこかに行っていた意識をすぐさま呼び戻す明人。

 

「あ、はい。なんですか?」

 

旭は明人の方へと振り返り、満面の笑顔で

 

「また誘ってね」

 

そう言った、その瞬間に夕日が旭に輝き、今まで明人が見てきた旭の姿で最も心を奪われた。

 

「....」

 

「明人?」

明人が放心状態だったのが旭の声で呼び戻される。そして、明人はその場をてきとうな返しで乗り切る。自分が旭の姿に見とれていたとは言い出せるわけもなく。

 

「じゃあ、そろそろ帰りましょうか」

 

そう言って、旭は明人の先を歩き出す。その後姿が自分から立ち去るようにその時の明人には見えたのだった。

 

「先輩!」

 

その言葉は明人の本心から出たものか、またこの瞬間をまだ終わらせたくないという思いから出たものか明人自身にも分からなかったが、この場で言わなければ一生言えないと明人自身が直感していたのだった。

 

「なに?」

 

旭が明人の方へと振り向くと明人は旭にゆっくりと歩き出す。そして、この場で紡いだ脆い言葉を発していく。

 

「先輩は前に言いましたよね。もし、自分が自分じゃなかったらって」

 

旭が明人に言って言葉、普通ならまず分からない。だが、明人にはその言葉の本意が伝わっていた。だからこそ明人はあの時、その言葉に返答ができた。

 

「その時に俺は言いましたよね、変わらないって。今までもこれからもずっと変わりません。先輩は俺の憧れだって」

 

「ええ」

 

明人の言葉をしっかりと聞き、返事をする旭。その表情はどこか刹那げだった。

 

「あの言葉は嘘じゃないです。これからも先輩の近くにいたいです。それで少しでも先輩の力になりたいんです」

 

「ええ、嬉しわ。そう言ってもらえて」

 

「でも....今のままじゃ、ダメなんです」

 

「え?それってどういう....」

 

旭の言葉を遮るように、明人が距離を詰める。その目はまっすぐ旭の目を見つめていた。

 

「先輩、俺はあなたが好きなんです」

 

明人の口から出た言葉は旭の思考を一時停止させた。

 

「人としてではなく、一人の女性として愛してるんです。」

 

そんな旭のことなどお構い無しに明人の言葉は続いていく。

 

「俺はあなたを支えたいです。後輩として恋人として!ずっとあなたのそばにいたいんです。」

「....」

 

明人の言葉に旭は言葉を失っていた。そんな旭の様子を見た明人は急に我にかえる。

 

「でも、これは俺のわがままなんです。すいません。いきなりこんなこと」

 

「嬉しいわ」

 

「え?」

 

旭の口からは出た言葉は歓喜の言葉だった。明人の告白を旭は正面から受け止め、旭はそれに真剣に返していく。

 

「私もあなたのことを愛しているわ、明人。人としてではなく一人の男性として。だから、本当に嬉しわ」

 

「先....輩?」

 

「旭さんって呼んで、好きな人には名前で呼んで欲しいわ」

旭は笑顔でそう言った。そして、明人はその愛しい人の名前を呼ぶ。

 

「旭さん....」

 

「はい」

 

そして、明人はもう一度自分の気持ちを目の前の人に伝える。心を一つ一つ乗せて。

 

「旭さん、俺と付き合ってくれませんか?」

 

そう言って、明人は手を差し出す。弱々しく普段の明人なら予想もつかないくらい震えて。旭はその手をすぐ握りしめ、満開の花が咲いたような笑顔で

 

「はい、喜んで」

 

その言葉に明人の気持ちのリミットは外れ、握られた手を引っ張り、抱き締める。華奢(きゃしゃ)で力を入れたら折れてしまうんじゃないかと思うほど細いからだを明人は優しく抱き締めていた。旭もその体にそっと手を置き、抱き締め返していた。

 

「好きよ、明人。これからよろしくね」

 

「はい、こちらこそ」

 

その言葉を口にして、二人は少しだけ回した手の力を抜き、互いの顔を見つめる。そして、そのまま吸い合うように軽いキスをした。

 

「ファーストキスを貰われちゃったわね」

 

「はは、貰ってしまいました」

 

旭の言葉に明人が笑いを漏らし、そう返すと旭は少し頬赤らめ明人に伝える。

 

「ねぇ、今度はもっと長く....して」

 

「はい」

 

そう言われて、二人はまた見つめ合い、互いに顔を近づけまたキスをする。

 

「ん....」

 

旭の声が明人の耳に入ってくる。心臓が張り裂けそうなくらい鼓動が上がるのを明人自身が感じていた。

 

そして、徐々に互いの顔が離れていく。

 

「明人は意外に強引なのね」

 

「そういう旭さんだって、お願いしてきたじゃないですか」

 

「そうだったわね」

 

そう言って、二人の体は徐々に離れて言った。

 

「えっと....これからよろしくお願いします。旭さん」

 

明人が改めて、旭にそう言う。

 

「ええ、こちらこよろしくね。明人」

 

そして、二人はしっかりと互いの手を握りながら長くて、甘い一日の帰路に着いていった。

 

 

夜・最上邸

 

この日の夜、旭は一つの決断をしていた。最愛の者との相思相愛を成した旭にはやらなければいけないことがあった。これからのことを決めると言う事を

 

「お父様」

 

旭はそう言って、自分の家にいた一人の男に話しかける。

 

旭の父、最上幽斎。九鬼で働いているこの男に旭は一つの決意を伝えればならなかったのだ。

 

「どうしたんだい?旭。今日はお友達と遊びに行っていたんだろう。楽しかったかい?」

 

「ええ、とても。それとお父様に伝えたいことができました」

 

「伝えたいこと?なんだい?なんでも言ってごらん」

 

幽斎は笑顔のまま、旭に語りかける。

 

「お父様....『暁光計画』を中止したいんです」

 

「それはまたどうしてなんだい?」

幽斎は笑顔のまま、旭に言う。

 

「彼氏が出来んたです、今日に。私はその人とずっと一緒にいたいんです。お別れなんてしたくないんです」

 

「そうかい....分かったよ旭。大事なのは君の気持ちだ。君がそう決めたのなら私は何も言わないよ。よく話してくれたね」

 

幽斎は怒りなど全く、感じさせなかった。むしろ娘の成長を多いに喜んでいた。

 

「ありがとうございます。お父様」

 

「ううん、お礼を言われることなんてないんだよ旭。今度、旭の彼氏を連れてきておくれ。この目でしっかりと見ておきたいからね」

 

「はい、是非。じゃあ、ご飯にしましょうか」

 

そう言って、旭は夕飯の準備に取り掛かった。

 

また一人の運命が大きく動き、後の出来事にも影響することがこの日に起きたことを明人が知るのはもう少し先になっからのことだった。

 




ようやっと二人をくっつけることができました。

次からは違う章に入りますのでお楽しみに!

では、また次回。さようなら〜


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第四章 : 英雄対戦
第十九話 : 旭の告白


今回も長めですのでゆっくり読んでください。


明人と旭が恋仲になってから初めての月曜日がやって来た。今週には九鬼のクローン達が川神学園へと転入して来る。

 

だが、明人の日常はいつもなんら変わりないものだった。

 

いつもと違う点を上げるとすれば

 

「おはよう、明人」

 

そう言って、明人を通学路の途中で迎えてくれる最愛の人がいることだった。雪の様に白い肌と黒くて長い美しく髪を持つ、最上旭。学園の評議会議長にして、学園トップの学力を取り続ける実力を持つ。

 

「おはようございます。旭さん」

 

そう明人も旭に朝の挨拶を返す。そして、明人と旭は二人並んで通学路を歩き出す。

 

「わざわざ俺の通学路で待ってたんですか?」

 

「ええ、あなたと一緒に登校しようと思って待っていたのよ」

 

明人の質問にそう返し、明人に微笑みかける旭。その仕草一つ一つが明人にはとても愛おしいく思える。

 

「明人、今日の放課後は空いているかしら?」

 

「え、特に予定はないですけど?」

 

「そう....ならうちに来てくれないかしら?大事な話があるの」

 

「え....」

 

その言葉に明人は少し嫌な考えを頭に浮かんだ。

 

「(まさか....別れ話!?いや、まさか一日で!?)」

 

そんなことを考え込んでいる明人の顔を覗き込み旭は状況を察したようだ。

 

「明人、あなたが想像していることじゃないから安心して」

 

「え、あ、はい。それは良かったです」

 

我に返った明人の様子を見て、旭はクスクスと笑いをこぼす。明人もその様子を見て、はははと笑い返す。

 

「私が明人に別れ話なんてする訳ないわ。毎日あなたのことを好きになっていくもの。もちろん、今もね」

 

「それは俺も同じですよ。こんな魅力的な人を好きになるなって言う方が無理な話です」

 

「ありがとう、明人」

 

いつの間にかにラブラブな雰囲気になっていた。

 

「あら、なんの話だったかしら?」

 

そう言う旭に明人はさっきの話を旭に振り直す。旭はそれを聞いて、そうだったわと言って、明人に先程の話の続きを話し始める。

 

「とにかく、明人が思ってる話じゃないから安心してね」

 

「その話は学園とかじゃダメなんですか?」

 

「そうね、誰かに聞かれても困るし、それに明人にはお父様を紹介したのよ」

 

彼女の父親に付き合ってから一日目で会おうとしている。明人とっては一大事なことだった。

 

「かなりハードルが高いんですが、それは」

 

「大丈夫よ、明人ならお父様もきっと気に入ってくれると思うわ」

 

「だと、良いんですが」

 

そんな話をしていると学園に付き、互いに自分の教室へと移動して行った。その日の明人には授業の内容は左耳から右耳へと抜けていくだけであったのだった。

 

 

 

放課後となり、明人と旭は車に乗って旭の家へと向かっていた。車内に入った時から旭は少し不安そうな顔をしていた。(うつむ)いて自分からは話そうとはしていなかった。

 

「旭さん、大丈夫ですか?」

 

そんな状況を不安に思った明人が旭に声をかける。

 

「ええ、大丈夫よ。ありがとう明人」

 

と言った旭だが全然大丈夫そうではない。そんな旭の様子を見かねた明人は旭に近づき手を優しく握った。

 

「明人?」

 

明人の突然の行動に戸惑う旭。

 

「大丈夫ですよ、旭さん。どんなことがあってもあなたを嫌いになることなんてないですから」

 

と言って明人は旭に優しく微笑みかける。旭はその笑顔に少し安心した顔をし、ありがとうと明人に伝える。

 

そして、目的地の最上邸へと二人は到着する。

 

「お邪魔するのは二回目ですかね。またお邪魔します」

 

「ええ、またお邪魔されます」

 

旭はいつもの調子に戻っていた。明人と旭が最上邸に入ると一人の男が二人を出迎えた。

 

「おかえり旭。そして、いらっしゃい立花明人くん。」

 

スーツ姿の男は明人そう言って、微笑んだ。

 

「初めまして、えっと....」

 

明人が言葉に詰まると男は気づいたように自己紹介をし始めた。

 

「これは失礼したね。僕は最上幽斎。旭の父親だよ。いつも娘がお世話になっているね」

 

「あ、いえ、こちらこそ旭さんには色々と良くしてもらってます」

 

幽斎の言葉に明人はそう礼儀良く返す。

 

「さ、立ち話もなんだし、上がってくれて構わないよ」

 

「はい、お邪魔します」

 

そう言って、明人は最上邸へと二回目の訪問をした。リビングに案内され、旭はお茶の準備をし、明人と幽斎は椅子へと腰掛ける。明人の対面には幽斎がゆっくりと腰掛ける。しばらくして、旭がお茶を持ってきて、それぞれの前にお茶を用意してから自分の椅子に腰掛ける。

 

「明人くん、今日は旭から少し大事な話があって君を呼んだんだよ」

 

「ええ、それは旭さんから聞いてます」

 

「そうかい、でもどこから話すべきか私自身も困っていてね。旭から話をする前に私の話を少し聞いてもらっていいかな?」

 

「もちろんです」

 

明人がそう幽斎に返すとネクタイに手をかけながら話始めた。

 

「明人くんはクローン技術を知っているかい?」

 

幽斎から出たのは突飛押しない言葉だった。だが、明人にはクローン技術と言う言葉は既に聞いている言葉だった。

 

「ええ、丁度今週に九鬼のクローン達が川神学園に転入してきますよね」

 

「まさか、そこまで知っているとは驚いたよ」

 

幽斎は笑顔を絶やさないまま、明人に語りかけていた。

 

「理解が早くて助かるよ。ここからは旭から話してもらった方がいいかな」

 

幽斎がそう旭に振ると旭は固く閉じた口を開き話始める。

 

「明人、私も実はクローンなの。転入してくるクローン、源義経のライバルとしてお父様が育ててくれたクローン。私は源義仲のクローンなの」

 

旭は落ち着いた表情で明人に告げる。普通なら驚くところのなのだが明人は落ち着いていた。

 

「なるほど、正直言うと川神に長いこと住んでるとこういうことが多々あるんですよね。だから別に驚きもしませんし、旭さんのことを嫌いなるなんてありませんよ」

 

そう言って、旭に語りかける。その会話の横から幽斎が口を挟んでくる。

 

「明人くん、話はそれだけじゃないんだよ」

 

「というと?」

 

明人がそう言うと幽斎ではなく、旭が話し始める。

 

「私の存在理由は二つ、源義経のライバルとして生活することと、義経より優れクローンだと証明してある計画を実行することだったの」

 

だった(・・・)ということは

 

「その話は辞退したわ。計画参加したらあなたとお別れしなければならいからお父様は分かってくれたわ」

 

そう言って、旭は自分の父親の幽斎を見据える。幽斎はその視線に答え、笑顔で明人に話し始める。

 

「大事なのは旭の気持ちだからね。旭がそうしたいなら私がどうこう言うことじゃないからね。良かったね、旭。一緒にいたいと思う人に出会えて」

 

「ええ、お父様。私は明人に会えてとても幸せよ」

 

そう言って、旭は幽斎に笑顔を向ける。

 

「なるほど、色々と話は把握できました。じゃあ、この話は終わりにしましょう。こんな重い話は俺の性にあわないし、何より旭さんが打ち明けてくれたことが何より嬉しいです」

 

「ありがとう明人」

 

明人のその言葉に旭が心からの感謝の言葉と安堵の表情を表した。そして、旭はすぐさま表情を切り替えた。

 

「明人、今日はうちでお夕飯食べて行って。美味しい物をご馳走するわ」

 

と言って、旭は明人の返事を聞かずに台所に行ってしまった。テーブルには明人と幽斎の二人だけが残される形となり、その場に沈黙が流れる。

 

「えっと....最上さんはいいんですか?旭さんが決めたことについて」

 

その沈黙を破るために明人が幽斎に質問を投げかけた。幽斎は笑顔のまま、その質問に返答した。

 

「もちろん、旭が自分で決めたことだからね。僕がとやかく言う必要がないよ」

 

そう言って、幽斎は旭を見ながらおもむろに語り始めた。

 

「旭はずっと私の言う事を守って来てくれたんだ。学園では目立ない評議会にも入ってくれたし、その旭が初めて自分の意見を私に言ってくれたんだ。これほど嬉しいことはないね」

 

幽斎は嘘ついている様子など微塵もなかった。本当に娘の成長を心の底から喜んでいるようだった。

 

「明人くん、これからも娘をよろしく頼むよ」

 

「はい、こちらこそ」

 

幽斎のその言葉に明人はしっかりと返事をした。

 

「門限とかも設けるつもりもないから君さえよければ旭を色々連れましてあげてくれないかい?」

 

「分かりました。精一杯頑張ります」

 

「うん、僕は幸せものだよ」

 

そうして、明人と幽斎の会話は旭の調理中もしばらく続いていったが、ある異変が最上邸に起きた。それに一番早く気が付いのは明人だった。

 

「幽斎さん、今日は俺以外に来客でも?」

 

一応確認のために幽斎にそんなことを聞く明人。

 

「いや、招いてはいないけど」

 

とそこで幽斎も異変に気づいたようだった。その様子を見て、明人は少し口角を上げた。

 

「どうやら、招かねざるお客のようですね」

 

「こんなにめでたい日なのにね」

 

明人がそう言うと幽斎も嘆息混じりにそう呟いた。

 

「明人くん、こっちへ避難用のシェルターがあるから」

 

そう言って、幽斎は明人のことを誘導し、庭に出た時。

 

「シェルターには逃げ込ませない」

 

二人の女性が明人と幽斎の前に立ちはだかった。一人は真紅の長い髪を持つ、無表情な女性だった。もう一人は長いく、黒い髪をもつ女性で手には槍を持っていた。

 

「お前がMだな。梁山泊を愚弄した罪をここで償ってもらう」

 

槍を持った女性はそう幽斎に視線を向けて言った。明人は梁山泊のことを知っているが、幽斎に一応確認をとる。

 

「梁山泊っていうと世界一の傭兵部隊ですよね?」

 

「よく知っているね明人くん」

 

明人の知識に関心する幽斎に明人は続けて、質問する明人。

 

「で、その梁山泊に何をしたんですか?幽斎さん」

 

「少し、試練を与えたんだよ。僕は人が成長する姿が見たくてね」

 

そう言って、笑顔を絶やさない幽斎。その時、明人は今まで忘れていた記憶を思い出し、額に手を当てる。

 

「(そういえば、こういう人だったけ最上幽斎って人は....)」

 

最上幽斎は普段は普通の一般人なのだが、人に試練という名の妨害などを仕掛けてそれを乗り越えて成長する人の姿を見るのが嬉しいという趣味を持っている。そして、幽斎の一番タチが悪いのが自分が行っていることを本気で善行だと思っていることだ。

 

幽斎はMという名を使い世界中に試練という名の様々な妨害工作を仕掛けている。それなら、往復の一つや二つ受けても仕方ないことなのかもしれない。

 

「幽斎さんは下がってください。ここは俺がやりますよ」

 

明人は幽斎の前に出て、二人の女性の前へと対峙する。

 

「あんたらのことは知ってる。武松に林冲だろ?どっちも梁山泊の最高戦力だな」

 

「私達のことを知っているのか?」

 

明人が林冲と呼んだ黒い髪を持つ、女性は明人へと視線を移した。

 

「まぁな、ちょっと訳ありでね」

 

お互いに距離を詰めあうが先に動いたのは武松だった。

 

「二人まとめて大人しくしてもらう!」

 

そう言って、武松の体から炎が湧き上がり、それはすぐさま明人と幽斎を狙って飛んできた。それを二人は避けてかわす、明人は既に写輪眼になっている。攻撃はほとんど見切れる。

 

「自慢じゃないが回避だけは得意でね。色々と無茶をしてきたからね」

 

炎を避けてから幽斎は明人にそう話す。

 

「分かりますよ、俺もこの目のおかけで大体の攻撃はかわせますけど....」

 

「明人くん!」

 

そう幽斎が放った瞬間に追加の炎の玉が明人に向かって放たれた。その玉は明人に直撃をし、煙を撒き散らした。

 

「話している余裕など与えない」

 

武松はそう言い放った。しかし、その無表情の顔が少し驚きの表情へと変わる。煙の中から青い何が現れる。

 

「まぁ、でも....戦う方がもっと得意なんですけどね!!」

 

煙を払い明人が姿を現す。明人は青色の骨に覆われて守られていた。その場にいる全員が唖然としていた。

 

「なんだあれは?」

 

「明人くん、それは?」

 

林冲と幽斎の質問に明人は答える。

 

「これは須佐能乎って言いましてね。まぁ、俺だけの大技みたいなものですよ」

 

明人は梁山泊の二人の方へと向きをかえ、万華鏡写輪眼へとなった目を見開く

 

「世界最強の傭兵がお相手だ。相手にとって不足はない」

 

そう言って、明人は構える。梁山泊の二人もすぐさま構えを整える。すると、その場に遅れて

 

「明人!お父様!」

 

旭が家の中から飛び出してきた。旭は明人が出している須佐能乎に驚くが明人はそんなことはお構いなし、旭に告げる。

 

「旭さんは幽斎さんを!この二人は俺がやりますんで」

 

「ええ、分かったわ。」

 

そう言って、旭は幽斎を連れ、後に数歩下がる。

 

「さて、梁山泊のお二人さん。久々の実戦でね、少しリハビリに付き合ってもらうぜ」

 

そう言うと梁山泊の二人は互いに守り合うように構えを取る。林冲ディフェンス、武松がオフェンスといった形だ。

 

「かと、言って。ここを派手に壊すわけにもいかないからここはこれでいくかな!」

 

そう言って、明人は須佐能乎の中で合掌し、気を整える。そして

 

須佐能乎纏(すさのおまとい)金剛神(こんごうしん)!!!」

 

そう明人が言うと骨だけだった気の塊は徐々に筋肉と皮を纏い始め、金剛力士の姿へと変貌した。

 

「私が守る、攻めろ武松!」

 

明人の須佐能乎に臆すことなく、林冲と武松は明人に攻撃を仕掛ける。

 

「ハァァ!」

 

武松が巨大な炎の弾丸を明人の須佐能乎に向けて放つ、それは須佐能乎に直撃し、大きな爆炎を上げる。

 

「なんだ?その程度か?」

 

爆炎から明人の声が二人の耳に入る。その瞬間、巨大ない須佐能乎の拳が爆炎の中から現れ、武松に向かって放たれる。

 

「下がれ!武松!」

 

その拳をいち早く察知した林冲が前に出て、拳を防ぐ。

 

ドオォォン!!

 

轟音と共に須佐能乎の拳と林冲の槍が激突する。しかし

 

「ぬぁ!!」

 

林冲の防御も虚しく盛大に体ごと吹き飛ばされる。

 

「っ!豹子頭!」

 

その様子を見て、武松は声を大きくする。

 

そして、爆炎の中から傷一つない金剛力士の姿をした須佐能乎が姿を現す。

 

須佐能乎纏(すさのおまとい)金剛神(こんごうしん)。攻守共に優れた姿だが、武器が使えない分、破壊力は低めって感じだな。まぁ、それでもあんたら倒すには申し分ないけどな」

 

金剛力士の姿をした須佐能乎はまるで本物の金剛力士像のポーズを取り、直立している。

 

吹き飛ばされた林冲もダメージをそんなにくらっている様子はなかった。

 

「あの須佐能乎と言うもの厄介だな」

 

立ち上がった林冲が武松の隣に並びそう話す。

 

「あぁ、今までにない相手だ」

 

武松も林冲の言葉にそう切り返す。

 

「さて、今度はこっちからいくかな!」

 

明人がそう言った瞬間。この場にふさわしいない音が唐突になり始めた。猫の鳴き声の様な音だった。

 

「この音声は」

 

林冲がそう言って懐から小さな物体を耳に当てる。どうやら通信機器らしい。

 

「どうやら、間に合ってくれたみたいだね」

 

少し離れた幽斎がそう口を開き始めた。

 

「刺客の到着より、少し早めに動いたのは予想外だったけどね」

 

「なるほど、手は打ってあったと」

 

幽斎の言葉に明人がそう返す。しばらくして、林冲が会話を終えた。

 

「最上幽斎の秘書と名乗る者が我々と曹一族両方に大きな仕事を持ってきそうだ」

 

曹一族、梁山泊とトップ争いを続けている傭兵部隊の事だ。

 

林冲が武松に電話の内容を告げる。武松はそれを聞き、二人は撤退し始めた。明人はその様子を見て嘆息をした。

 

「はぁ、興ざめ....だな」

 

そう言って、明人は須佐能乎を解除していく。金剛力士の姿をした須佐能乎は徐々に形が崩れ始め、最終的には跡形もなくなった。

 

須佐能乎が消える頃には林冲達の姿もなかった。

 

「今日は済まなかったね、明人くん。こんなアトラクションが起きる家だがまたいつでも遊びに来てくれ」

 

林冲達がいなくなるやいなや幽斎が明人へと近づき謝罪を口にする。

 

「ええ、その時はお世話になります」

 

「じきに警察が来るから君はもう帰りなさい。旭、送って行ってあげなさい」

 

「ええ、お父様」

 

そう幽斎に言われ、旭は明人の手を引いて最上邸を出て、明人を途中まで送って行った。

 

「今日はごめんなさい」

 

「気にしてないですよ、旭さんのせいじゃないですし」

 

「ご飯はまた今度ご馳走させてちょうだい」

 

「はい、楽しみにします」

 

そう明人が言うと旭は明人の胸に顔を(うず)めた。

 

「戦ってる時のあなたとても素敵だったわ。また一段と好きになったわ」

 

そう言って、旭は明人にそっと触れる程度のキスをして微笑んだ。明人も満更でもなそうな表情をしていた。

 

「ばいばい、明人」

 

と言って、旭は明人に背を向けて歩き出した。明人もしばらくその後ろ姿を眺めていた。すると、旭が再び明人の元に戻ってきた。そして、また明人に近づくと

 

「おかわりしに戻って来たわ」

 

そう言って、また明人にキスをする。そして、しばらく二人はキスを続けていた。

 

 




さて、今回は明人の新しい力に旭の告白という内容でしたが、如何でしたか?

今回の章はバトル多めで行こうと思います。明人の新しい技やチートぶりを改めて皆様に見てもらおうと思っておりますのでよろしくお願いしますm(*_ _)m

技集も更新しておりますので良かったら読んでみてください。

では、今回はこの辺りでさよなら〜



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