「ブラックブレット」 赤い瞳と黒の剣 (花奏)
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登場人物

神代沙耶(かみよさや)柊沙耶(ひいらぎさや)
所属 天童民間警備会社
戦法 神代式双剣術、神代式木刀術、天童式戦闘術、グロック26Gen4、イワトビカモシカの特性を生かした戦い方
天童民間警備会社のプロモーター兼イニシエーター。又、柊研究所所長もしている。
栗色の髪で、 普段はツインテールだが、戦闘時はポニーテール。
元陸上自衛隊東部方面隊第七八七機械化特殊部隊「新人類創造計画」の人間兵器。
脳内には機械が埋め込まれており、土地の環境、目の前の相手の情報等が他人には見えない画面となって出てくる。
イワトビカモシカ因子のガストレアウイルスを体内に宿している。力の解放で、最大6メートルの高さまで飛ぶ事が出来る。夜行性だが、朝、昼でも活動は可能。しかし、夜間が一番活発に活動できる。
神代沙耶、藍原杏ペアの現在の序列は1100位。(物語当初は12万位)

藍原杏(あいはらあんず)
所属 天童民間警備会社
戦法 二丁拳銃(ベレッタ92)、ウサギの特性を生かした戦い方
天童民間警備会社のモデル・ラビットのイニシエーター。
延珠の双子の妹。ポニーテール。一人称は「私」
延珠とは性格が違い、内気な性格。しかし、信頼している相手には、明るく接する。甘えん坊な一面もある。

里見蓮太郎(さとみれんたろう)
所属 天童民間警備会社
戦法 天童式戦闘術、XD拳銃
天童民間警備会社のプロモーター。
元陸上自衛隊東部方面隊第七八七機械化特殊部隊「新人類創造計画」の人間兵器。
不幸顔。子供に好かれやすく、生き物全般に詳しい。
口調の乱暴さに反して誠実で世話好きで家庭的なスキルが高く、料理を趣味としている。
里見蓮太郎、藍原延珠ペアの現在の序列は1000位。(物語当初は12万3452位)

藍原延珠(あいはらえんじゅ)
所属 天童民間警備会社
戦法 ウサギの特性を生かした戦い方
天童民間警備会社のモデル・ラビットのイニシエーター。
杏の双子の姉。ツインテール。一人称は「妾」
杏とは性格が違い、常に明るい。
蓮太郎の「ふぃあんせ」を自称し、木更にライバル心を持っている。

天童木更(てんどうきさら)
所属 天童民間警備会社
戦法 天童式抜刀術
天童民間警備会社の社長。
ストレートの黒髪で美少女。
普段はごく普通に振る舞っているが、その本性は天童家を憎む復讐者「天童殺しの天童」全ての「天童」は死ななければならないと思っている。
父母を失った際に患った腎臓の持病で人工透析を定期的に受けている影響から、長時間は戦えない。

滝沢蒼太(たきざわそうた)
所属 なし
戦法 神代式抜刀術
沙耶と友達であり、プロモーター。
茶髪で、全体的に横に流している。
脳内に機械が埋め込まれている。
沙耶とは、四歳(沙耶はその時三歳)の頃から知り合い。
滝沢蒼太、流星茉里亜ペアの現在の序列は1542位。(物語当初は1789位)

流星茉里亜(りゅうせいまりあ)
所属 なし
戦法 カンガルーの特性を生かした戦い方
モデル・カンガルーのイニシエーター。
シルバーの髪でセミロング。
父親はアメリア人、母親は日本人のハーフ。
日本語が少し変。
語尾に「です」をつける事が多い。

柊千代(ひいらぎちよ)
所属 天童民間警備会社
戦法 神代式神槍術
天童民間警備会社のプロモーター。又、柊研究所で沙耶の助手をしている。
茶髪でツインテール。
沙耶の従姉妹。
柊千代、千寿夏世の現在の序列は5万位。

千寿夏世(せんじゅかよ)
所属 天童民間警備会社(以前は 三ヶ島ロイヤルガーター)
戦法 大宇AS12
モデル・ドルフィンのイニシエーター。
穏やかな性格。
戦闘向きの能力が低い代わりにIQ値は高い。
以前は伊熊将監とペアを組んでいた。(当時の序列は1584位)


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第一章 神を目指した者たち 第一話 全ての始まり

西暦2021年。

突如この世界に現れた寄生生物ガストレア。

私達、人類はあっけなく敗北し、

ガストレアは私達の大切なものを全て奪っていった。



忘れもしない10年前のあの日。


ガストレアは私の大切なお母さんを喰い殺した。

たった一人、私の生きる意味を、価値を、全てを肯定した

私のかけがえのない家族。


そしてあの、第一次関東会戦。

私の家族も、友達も、住んでいた家も、

町も、思い出だって。

私の大切なものを全て奪っていった。



ガストレアが憎い。

助けれなかった私が憎い。


ずっとそう思っていた。



でも、

貴方は私を変えてくれた。

救ってくれた。

こんな私にもやるべき事があるんだって教えてくれた。



大切なものを

もう、失いたくない。

大切な人も、居場所も、

思い出も。

昔の様に

安心して生きる事は

難しくなったこの世界。

私は

私なりの

やり方で。



大切なものを

今度こそは

私が


救う。









「これが最後のチャンスだったのよ!」

天童民間警備会社では今日も社員 里見蓮太郎(さとみれんたろう)が社長 天童木更(てんどうきさら)に怒られていた。蓮太郎が報酬を貰い忘れたのだ。
そのとき、トントンとノックがあり、木更がドアを開ける。

延珠ちゃんかしら。でもノックって珍しいような...

「延珠ちゃん、里見君の事どうにか、あ」

そこには蓮太郎のイニシエーター藍原延珠(あいはらえんじゅ)ではなく、小柄で栗色の肩より長くウェーブのかかった髪を耳より少し低めの位置で二つに結び、ブラウスにグレーのプリーツスカート、黒のハイソックスに黒のローファー姿でブラウスについているリボンは赤色の学生だと思われるの少女。その少女の傍らには、延珠と同じ髪の色をポニーテールに結び、延珠と色違いの水色の上着、中には白色のTシャツを紺色のキュロットパンツの中に入れ、靴は延珠と同じ瓜二つの少女がいた。

「今日から天童民間警備会社で働く事になりました、神代沙耶です。よろしくお願いします」

「沙耶のイニシエーターの藍原杏(あいはらあんず)です。それで.... お姉ちゃんに会わせて頂けませんか」

蓮太郎と木更は驚いた。そのときだった。

「ただいま〜」

延珠が帰ってきた。

「お姉ちゃん!」

「お姉ちゃん?妾が...... もしかして、杏、なのか?双子の妹の」杏は笑顔で頷いた。

「「延珠/延珠ちゃん に双子の妹がいただと!/の」」

蓮太郎と木更は声を揃えて叫んだ。そして木更は申し訳無さ様に、

「沙耶ちゃん、大変いいにくいんだけど、他の民警に.....」

「あ、もう天童民間警備会社って決まっているから。ほらライセンス。聖天子様(せいてんさまし)に頼んだの」

木更はがっかりした。天童と神代は仲がとても悪いのだ。特に沙耶と木更は。

「じゃあ、歓迎会でもするか?」

「里見君のお馬鹿!何処かの誰かさんが報酬貰い忘れたせいでお金がないのよ」

蓮太郎が言うと木更がまた怒った。

「それなんだけど、たまたま蓮太郎君がガストレアを駆除した現場に居合わせて、報酬貰ってきたの」

「沙耶ちゃんナイス!じゃあ、ファミレスにでも行きましょう」

木更が言うと藍原姉妹が声を会わせ、

「やったー」

と喜んだ。




「お主は蓮太郎とどういう関係なのだ?」

ファミレスに着くなり延珠は沙耶に質問をした。

「うーん、同志?」

「恋人では無いのだな?」

その瞬間、沙耶は顔が赤くなる。沙耶は蓮太郎の事が好きなのだ。

「ううん。恋人では無いよ」

延珠はガッツポーズをつくる。延珠は沙耶には用が無くなったのか杏の方を向き、

「杏は天誅ガールズを知ってるか?」

「うん!私は天誅レッドが好きかな〜」

「杏もか?妾も天誅レッドだ。でも、バイオレット以外は好きだぞ」

二人は天誅ガールズの話で盛り上がっている。

「天誅ガールズって人気なんだね〜千代(ちよ)ちゃんも好きって言ってたな〜」

蓮太郎は千代という子が気になった。

「千代?」

「あっ、友達。同じ学校の」

沙耶に反応した延珠は、

「沙耶は何処の学校に通っているのだ?」

桜花学園高等部(おうかがくえんこうとうぶ)

杏を除く三人は驚いた。おかげで周りの人が一斉にこちらを見た。桜花学園はとても偏差値が高い学校で、小学部から高等部まである学校だ。

「グ〜」

すると木更のお腹がなった。

「木更さんもお腹空いてるみたいだし、そろそろ食べないか」

それから好きな物を頼み、話に花を咲かせた。





ファミレスを後にし木更と別れ、沙耶は蓮太郎の家に着いて行った。

「お前、ストーカーか?」

「あ、家無いから、蓮太郎君の家に住もうかな〜って。ダメ?」

上目遣いで蓮太郎に聞く。蓮太郎とは長い付き合いだ。どうすれば蓮太郎君を惑わすことが出来るか知っていた。蓮太郎は顔が赤くなり、

「お、おう」

と答えた。

蓮太郎の家に着き、杏、延珠、蓮太郎が寝た後、沙耶はボロアパートの部屋のベランダに出た。

「天童民間警備会社、儲かってないな。やっぱ止めとけば良かった。嘘を貫き通すのは大変だし」

すると沙耶のスマートフォンがなった。

「もしもし。天童民間警備会社との接近が完了しました。次の命令をお願いします」

柊沙耶(ひいらぎさや)に命令する。里見蓮太郎と行動せよ。奴と行動すれば蛭子影胤(ひるこかげたね)と接近する事が出来る。』

「はい。お父様」

そのとき、沙耶の瞳が赤く染まった。ガストレアと同じ。



駄作ですみません。文章力は無いですが今後ともよろしくお願いします。


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第ニ話 神代沙耶

沙耶が天童民間警備会社で働き始めて数日が経った頃、民警は防衛省から集合がかかった。

「最近はガキまで民警ごっこかよ」

大剣を背負った男、伊熊将監(いくましょうげん)が沙耶達の前に立ちはだかった。

「用があるならまず名乗れよ」

蓮太郎が将監に言うと頭突きをくらった。

「里見君!」

木更が駆け寄る。

「お前、プロモーターなら道具はどうした。イニシエーターだよ」

沙耶は将監と蓮太郎の間に割り込み、

「私達はイニシエーターの事を道具なんて思っていません。道具だと思われている方とはお話しする事がありませんのでお下がりください」

将監が大剣に手をかけた時だった。

「やめたまえ将監!いい加減にしろ!」

三ヶ島ロイヤルガーターの社長に怒られ、将監は黙ってイニシエーターの元へ行った。

「あいつは...」

蓮太郎が木更に聞く。

「三ヶ島ロイヤルガーター所属の伊熊将監。IP序列は1534位よ」

すると会議室へ防衛省の大臣が入ってきた。

「依頼を受ける前に、辞退者は退室してくれ。........よろしい。では依頼はこの方にしてもらう」

モニターの電源が入られそこに映っていたのは、東京エリアのトップの聖天子。そして、聖天子補佐官であり、関東会戦で両親を亡くした蓮太郎を引き取った木更の祖父の天童菊之丞(てんどうきくのじょう)だった。木更と沙耶はモニターの中の菊之丞を睨んだ。

『では私の方から依頼を説明します。まず、昨日東京エリアに侵入した感染源ガストレアの探索及び排除。そしてそのガストレアの中にあると思われる()()()ケースを無傷で回収してください』

聖天子からの説明が終わった時、木更が手を挙げた。

「そのケースの中身を教えて頂けませんか」

『貴女は...』

「天童民間警備会社の天童木更です」

『天童社長、ケースの中身はプライバシーの侵害ですのでお教え出来ません』

木更は思いっきり机を叩く。

「納得いきません!ガストレアの...」

沙耶は木更の腕を引っ張り、首を横に振る。そして蓮太郎の方を向き、

「嫌な気がする。気を引き締めて」

と言った。蓮太郎は辺りを見渡す。その時机の真ん中にタキシードを着た、シルクハット、笑顔の仮面の蛭子影胤が堂々と立っていた。

「これはこれは、無能な国家元首様。私は、蛭子影胤です」

「お前....何処から入ってきた!」

蓮太郎は影胤に銃を向ける。

「おやおや、これは里見君。またお会いしましたね。元気そうでなによりだ。そして堂々と正面から入ってきたよ。そうだね、君達に紹介しよう。おいで」

「はい、パパ。
蛭子小比奈、10歳」

「私のイニシエーターにして娘だ」

「パパ、あいつ銃、向けてる。切っていい?」

「ダメ」

「パパのいじわる」

「貴方は....蛭子影胤?」

沙耶が影胤に聞く。

「おや、なぜ私の名前を?まあいい。君、面白いね。名前は?」

「神代沙耶。率直に聞く。貴方の目的は?」

「神代....神代さんね。そして私の目的はね、『七星の遺産』をめぐるレースに参加する事だね。七星の遺産、そう。悪しき者が使えばモノリスを破壊し、大絶滅を引き起こす政府の封印指定物」

「全員かかれ!」

誰かの掛け声と共に一斉に銃弾が放たれた。しかし影胤には当たらない。影胤は斥力フィールド(イマジナリィ・ギミック)で防御し、そのガードを展開した。その為、銃弾が逆にこちらに向かって放たれた。蓮太郎と沙耶が

「しゃがめ!/しゃがんで!」

と叫ぶが、しゃがんだ者は少なく、数名に銃弾が当たってしまった。

「それではまた会おう。民警諸君」

と言い残し、窓から飛び降り消えてしまった。モニターの中の聖天子が

『皆さんにもう一つ依頼をします。蛭子影胤より速くケースを保護してください。さもなければ、東京エリアは絶滅してしまいます!』




「はあ、大変な事になったな」

防衛省を後にした3人は天童民間警備会社へ向かっていた。その時沙耶のスマートフォンがなった。蓮太郎達に先に行っててと伝えると速やかに木の裏に隠れた。

「蛭子影胤の目的が分かりました」

『柊沙耶に命令する。蛭子影胤接近で邪魔するであろう里見蓮太郎を排除せよ。お前なら出来るだろう』

「...........はい」

電話が切れたことを確認するとそのまま座り込んだ。

「救うって.......決めたのに.....」

沙耶はただ泣く事しか出来なかった。




その日の夜。蓮太郎は柊ビル横の空き地にいた。空も暗くなり始めた頃にお前を排除するという電話がかかってきたのだ。あたりは真っ暗。辺りを見渡すと赤い小さな光が見える。その瞬間、

「神代式木刀術 攻撃の型」

と聞き覚えのある声がした。辺りが昼のように眩しくなった。蓮太郎は息を呑んだ。目の前には、左眼が赤く染まった沙耶がいたのだ。

「そんな....」

蓮太郎は俯いたが、意を決し前を向いた。天童式戦闘術二の型十六番

隠禅・黒天風(いんぜん・こくてんふう)

鋭い回し蹴り。しかし沙耶には当たらない。

「神代式木刀術 百花繚乱(ひゃっかりょうらん)

蓮太郎の耳元に木刀を突き出す。左手で蓮太郎の脇腹を殴る。

「ぐわっ」

崩れかけた体勢を素早く直した。

「天童式戦闘術 一の型十五番 雲嶺毘湖鯉鮒(うねびこりゅう)

下から突き上げるような鋭いアッパーカット。蓮太郎の拳が沙耶の腹に当たり倒れる。

「うぐっ」

しかしまだ戦える沙耶は自分の力を解放した。助走をつけてジャンプ、隣のビルの二階にまで達している。木刀を蓮太郎に向け、こちらへ来る。ああ、もう負けてしまうのか。ちゃんと説得したかった。諦めかけた時、蓮太郎の頭の中に一つだけ方法が浮かんできた。左眼で標的をとらえる。沙耶が近くなってくる。

「今だ! 天童式戦闘術 二の型十六番 隠禅・黒天風」

蓮太郎の脚は沙耶の胴体に当たり、飛ばされる。壁に打ち付けられ仰向けに倒れる。蓮太郎は沙耶の方へ行きしゃがんだ。沙耶の瞳は黒色に戻っていた。

「蓮太郎.....君....私を...殺して.....」

蓮太郎は首を横に振る。

「沙耶はこんな事をしようとは思わないはずだ。お前に何があった」

蓮太郎君には教えようと思い沙耶は体力が回復した為、蓮太郎に向き合った。

「お母さんがガストレアに食われた時、お父様が言ったの。邪魔な奴だから良かったって。許せなかった。この前お父様が生きてるって知って殺したかった。だから近づいたの。そうしたらこんな事になっちゃった。本当にごめんなさい」

「人間を殺してはいけない。なぜか分かるか」

沙耶はゆっくり頷いた。

「分かってるんだったら良い。それと沙耶はガストレアウイルス宿主(呪われた子供達)なのか」

「ここだと聞かれるから付いてきて」

沙耶は蓮太郎の手を握り柊ビルの地下にある柊研究所へ向かった。




「ただいま〜」

すると奥から足音が聞こえ、目の前に黒色の短い髪を二つに結び、沙耶と同じ格好、しかしブラウスのリボンの色が緑色と違う 少女がいた。

「お帰りなさい、沙耶()()。私、寂しかったんですよ?」

「ごめんごめん。この方は里見蓮太郎君。同じ民警なの。でこの子は柊千代ちゃん。桜花学園中学部。千代ちゃん、蓮太郎君と二人っきりで話したいことがあるから部屋に戻ってて」

「はい、分かりました。先生」

千代は笑顔で頷きドアを開けて隣の部屋へ向かった。

「蓮太郎君、ここに座って。じゃあ話すね。ことの始まりは13年前ー」

忘れたかった記憶が鮮やかに蘇ってくる。




私が3歳の時、お父様と柊研究所の元所長、柊宅造(ひいらぎたくぞう)が実験という名で私の脳に機械を埋め込んだ。その機械はそこの土地の環境、相手の情報などが目の前に他人には見る事の出来ない画面となって出てくる。見たものを情報化。見ただけで完璧に真似が出来る能力を持った。その力のおかげでたった3年で神代式木刀術と双剣術を身に付ける事が出来た。私が6歳の時、唯一私の事をかばってくれたお母さんが私との買い物中にモデル・クリップスプリンガー、別名イワトビカモシカのガストレアに襲われ、喰い殺された。

『お母さん!』

私は必死にお母さんのスカートをつかんだ。

『大丈夫、お母さんが沙耶ちゃんを守るから。だから逃げなさい。お守りに私のネックレスをつけなさい。さあ、逃げて』

私は必死に逃げた。お母さんのダイヤモンドのネックレスを握りしめて帰ってくるのを待っていた。でもお母さんの帰りが遅い。心配になってガストレアに遭遇した場所へ行った。

『お母さん!』

でも、そこにはガストレアとお母さんの木刀があるだけだった。私の脳には機械が入っている。だから全てを知ってしまった。お母さんは戦いの途中、怪我をして身動きが取れないところをガストレアに喰い殺されてしまっていた。私はお母さんの木刀を拾った。だけど怖くて動けなかった。そんな時、蓮太郎君が私をおぶって、ビルの陰に連れて行ってくれた。

『大丈夫です.....か?』

私はゆっくり頷いた。

『僕は里見蓮太郎。よろしくね』

『わ、私......神代さ.......やです。えと......助けてくれてありがとう』

本当に嬉しかった。あの頃の蓮太郎君の口調は優しかった。
お母さんがいなくなった神代家では私に対する実験がより酷いものとなっていった。お母さんを喰い殺したガストレアのDNAを特殊加工して、私の体内に入れた。だから今も私の体内にはイワトビカモシカ因子がある。だけど特殊加工している為、体内侵食率は上がらない。クリップスプリンガーは最大で六メートル、ビル二階まで飛ぶ事ができる。そして、ガストレアとの戦争が激しくなった頃、家族は全員死んでしまった。実際はお父様だけ生き延びでいたけれど。一人になった私は柊宅造先生に引き取られ勉強を教えてもらった。宅造先生の紹介で天童家に通い、蓮太郎君と一緒に天童式戦闘術を身に付けた。




心が今、現在に戻る。

「ちょっと待った。俺の口調の事までは話さなくていいだろ」

目の前の蓮太郎は顔が真っ赤に染まっていた。沙耶は今の状況を把握し

「え?蓮太郎君、昔『僕』って言ってたの恥ずかしいの?うーん。でもまあ、今の蓮太郎君だと可笑しいよね」

「それで、沙耶はモデル・クリップスプリンガーか」

沙耶は身を乗り出した。

「蓮太郎君、クリップスプリンガーの事知ってるの?あ、そっか。虫マニアだからか」

「いや、関係ないだろ。それより、さっき千代が『沙耶先生』って呼んでいたけど、どういうことなんだ?」

沙耶は、はっとした。そうだった....沙耶はすっと立ち上がる。

「申し遅れました。私、柊研究所の所長、柊沙耶(ひいらぎさや)です。主にガストレアの研究と機械をいじって新しく作ったりしています。これから貴方に協力します。『柊沙耶』として」

柊?所長?協力?蓮太郎の頭は疑問で混乱している。

「蓮太郎君?大丈夫?まさかショートした?」

沙耶は心配そうに蓮太郎の顔を覗いてくる。

「いや、機械じゃないから」

二人は笑いあった。

その翌日に大変な事が起こるとは二人ともまだ思ってもいなかった。



蓮太郎と沙耶ばかりになってしまいました。延珠ファンの方、申し訳ありません。
やっぱり駄作ですね。こんな作品ですが、今後ともよろしくお願いします。


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第三話 仮面の男

午後三時。里見蓮太郎は天童民間警備会社のドアを開ける。事務所内には先日、自分自身の秘密を全て彼に明かした神代沙耶が掃除をしていた。ドアが開く音に気付いたのか彼の方を振り返る。



「おかえり〜遅かったね」



「しょうがないだろ。学校遠いんだから」



「私の方が学校近いけど、50分も待たせないよね。普通」



「お前も何か言えばすぐにあーだこーだ言うな」



「元はと言えば蓮太郎君が遅いのが悪いんでしょ!」



蓮太郎は沙耶から視線をそらす。



「そもそも沙耶は今日、学校に行ったのか」



「話そらさないでよ!っていうか学校行ってるし!」



沙耶はふと左腕につけた腕時計を見る。



「やっば!時間!杏達待たせちゃう」



沙耶と蓮太郎は事務所を飛び出し、杏と延珠の通う勾田小学校(まがたしょうがっこう)へと急いだ。











「これなんなんだよ」



勾田小から家への帰り道、蓮太郎はピンクのブレスレットをつけている。いや、正確にはつけさせられている。



「妾達の間で流行中の天誅ガールズのブレスレットだ!仲間を欺いたり嘘をついたりするとヒビが入って割れるのだ!」



「はい、沙耶にもあげる」



杏の幼くて小さな手のひらには天誅ガールズのブレスレットがあった。顔を赤らめ視線をそらしているが、内気な性格な為、これでも頑張っているんだと沙耶は知っている。



「うわぁ、ありがとう!これ、一生大切にするね!」



沙耶が喜ぶなり、杏の顔がパッと明るくなった。



「うん!」



「誰かー!そいつを捕まえろ!」





二人の成人男性に追われている一人の少女がこちらへ走ってくる。呪われた子供だ。延珠は戸惑いを隠せない様子で、杏は自分と同じ呪われた子供という事で手足が震えていた。そして少女は捕まってしまい、沙耶達の目の前で助けを求めている。沙耶は恐る恐るどこかの店の店員とみられる男性に声を掛けた。





「どうしてここにこの子が?」





「盗みを犯した上に、声を掛けた警備員を半殺しにしたんだ!東京エリアのゴミめ!」





延珠は差し出された手を掴もうとしたが、蓮太郎がそれを遮った。





なんで。蓮太郎君は呪われた子供達は人間だって言ってたのに。どうして......





すると警察が追いかけてきた。蓮太郎が保護を頼むが無視され、そのまま少女をパトカーの中へと押し入れた。
杏は私の服の裾にすがった。





「あの子、見たことある。沙耶、どうして助けてあげないの?なんで...」





「ッ...」





涙を流し訴える杏に沙耶は何も言えなかった。そして、沙耶と蓮太郎は延珠の瞳が赤く染まっているのに気がついた。





「蓮太郎、どうして助けてやらなかった。妾に助けを求めていたのに...なんで!」





「延珠!それだとお前まで!」





「蓮太郎は正義の味方だ!蓮太郎にできないことなんてない!」





蓮太郎は沙耶に荷物と延珠を預けこう告げた。





「悪い沙耶、延珠の事、頼む」





沙耶は蓮太郎の意図に気がついた。





「わかった。頑張って」





彼はそのままパトカーを追いかけた。残された3人は彼の姿が見えなくなるまでずっと見ていた。見えなくなり、沙耶は2人の手をつなぎ帰路を歩こうとした。その時、





「神代沙耶さんですね。
国際イニシエーター監督機構(IISO)の田中です。神代さんに話があります」



「私に話って何ですか?」



「そこの赤目に聞かれたらまずい話でしょう?だったら、黙って付いて来てください」



違う。貴女の言っている事は間違っている。杏達は人間だ。



「杏、延珠ちゃん。絶対帰るから、先に帰ってて」



そのまま沙耶は田中についていった。
延珠は相棒を心配そうに見つめる杏の背中をさすり、静かに手を握った。



「沙耶も蓮太郎も絶対戻ってくる。妾達に出来るのは、家で2人の帰りを待つことだろう?」











車に揺られながら沙耶は田中に用件を聞く。



「話とは何でしょうか?」



「聖天子様からのお呼び出しです。聖居に着きました。ここからは自分で行ってください。では」



そのまま田中は車を走らせ、どこかへ行った。



「聖天子様、か....」



適当に歩いていると、聖天子に出会った。



「これは神代沙耶さん。お待ちしておりました」



「それで、話って何ですか」



「ではこちらへ」



沙耶は応接間のような部屋へ連れて行かれ、聖天子が座った目の前のソファーに座った。



「神代さん、貴女、私にガストレアウイルスを宿していることを黙っていましたね。なぜですか」



「それは、お話ししたらプロモーターになれないと思ったからです」



「なぜ貴女はそこまでプロモーターにこだわるのですか?別にイニシエーターでも良いのでは」



「プロモーターの中にはイニシエーターの事を道具だとお考えの方が沢山いらっしゃいます。でも彼女達は貴女もおっしゃっている通り人間です。そして私も同じような存在です。でも私は侵食率が上がらず、彼女達よりも人間として生きれています。それなら、イニシエーターではなく、彼女達の事を理解出来るプロモーターになろう、と思ったのです」



「その考え、よくわかります。しかし、黙っていたという行為は決して許されるものではありません」



「ならばこういうのはどうでしょう。私もイニシエーターになれば、プロモーターとしての権利があるというのは」



「わかりました。しかし、そう簡単に見つかりませんよ」



「大丈夫です。もう、私の中では決めています」



「それはどなたですか?」



「それは、」




聖天子様との話が終わり、スマートフォンを見ると杏から

『蓮太郎さんの帰りが遅いため、お姉ちゃんと探しに行くことにしました。沙耶も話が終わったら、探すのを手伝ってくれませんか?』

という内容のメールが来ていた。スマートフォンをポケットにしまうと、人目のつかない所に行き、力を解放。民家の屋根に飛び乗り、蓮太郎を探した。





蓮太郎は少女を乗せたパトカーを追いかけだが、辿り着いたのは廃墟ビルだった。そこで警官は少女を銃殺した。しかし蓮太郎は、少女が生きている事に気がつき病院へ連れて行った。その帰り道、蛭子影胤に出会ってしまった。そのおまけに銃を下ろさなかった事で、小比奈が蓮太郎に向かって飛び出してきた。

「はぁぁぁぁぁぁ!」

上空からは延珠が小比奈に向かって飛んでき、地上からは杏が両手に銃を構え、しっかりと小比奈を捉えている。沙耶は蓮太郎の腕を掴み、安全な場所へ向かった。普段あまり耳にすることのない金属音がなったかと思えば、延珠と小比奈は地上へ降り立った。音の正体は、延珠の足と小比奈の剣の接触音と、杏の放った銃弾が弾かれた音だ。すると小比奈は延珠と杏を指差し、

「そこの小っちゃいの、名前は」

「むぅ〜お主も小っちゃいだろう!
妾は、モデル・ラビットの藍原延珠だっ!」

「同じくモデル・ラビット、藍原杏」

「延珠と杏、覚えた。モデル・マンティス、蛭子小比奈。接近戦では私は無敵」

3人の自己紹介が終わると、影胤が、

「里見君に神代さん、私の仲間にならないか?」

蓮太郎と沙耶は顔をしかめる。

「はぁ?」

「君達は、東京エリアのあり方は間違っている、そう思った事は一度もないかね?」

確かに思う。同じ人間なのに、杏や延珠ちゃんのようなガストレアを体内に宿した少女達が差別されるのは間違っている。

影胤はケースを地面に置き、大金を見せつけた。

「これは私からのほんの気持ちだ。
君達はその双子を普通の子のふりをさせて学校へ通わせているようだね。なぜそんな事をする。彼女達はホモサピエンスを超えた次世代の人類だ。大絶滅のあと生き残るのは我々、力のあるものだけだ。私につけ、里見君、神代さん」

蓮太郎はその大金に銃を放つ。

「貴様を初めて出会った時に殺しておけば良かったぜ」

影胤は笑いながら沙耶達の方を向いた。

「明日学校に行ってみると良い。現実を見るんだ」

その言葉の意味をまだ沙耶達は知らなかった。






「どういう事だよ⁉︎」

蓮太郎と沙耶は勾田小に来ている。延珠と杏が呪われた子供だという噂が広まったらしい。

「何で事前に伝えてくれなかったのですか」

彼女達の担任が焦った様子で話す。

「事前に伝えていれば入学を拒否したんじゃないんですか?」

「と、とにかく、藍原さん達はショックを受けているようなので帰らせました」

蓮太郎と沙耶は勾田小を後にし、家へと急いだ。

「延珠!杏!」

「杏!延珠ちゃん!」

2人は家の中を隅々まで探すがどこにもいない。すると蓮太郎はそっと呟く。

「お前らの家はここだろうが....」




沙耶は蓮太郎と別れ、東京エリアを探し回った。しかしどこにもいない。沙耶は最後の手段として外周区にあるマンホールチルドレンに会う事にした。マンホールをノックすると中から少女が出てきた。沙耶は杏と延珠の写真を見せ、

「この子、見てない?」

「う〜ん。わかんない。長に会って聞いてみたら?」

「長?まぁ、会ってみよっか」

中に入り広い所に行くと沢山の呪われた子供達がいた。沙耶は写真を見せると

「いや、この子達は見てないですね」

「そうですか.....」

「これから貴女はどこへ?」

「外周区を探し回ってみます」

沙耶はそう言いながら歩き出した。

「見た所イニシエーターに逃げられたプロモーターの様に見えますが、IISOに申請して他のイニシエーターと 組んでみては?ペアの相性が悪い事はよくある事です」

「私と杏が出会ったのは一年前。杏は今まで里親に酷い事をされ、恐怖で震えていました。私は杏とゆっくりゆっくり信頼を深めていったんです。私達の事も知らずに、簡単にペアの解約なんて事、言わないで下さい!」

沙耶は怒りで叫んでしまい、辺りが静かになる。

「ごめんなさい。それでは」

沙耶はその場を後にした。

「良いんですか?後を追わなくて」

長の視線の先には涙を浮かべる杏とギュッと手を握る延珠の姿があった。

マンホールを後にした沙耶は、雨が降る中、杏達が見つからないショックと彼女達を差別するこの世界への怒りで傘をさす気力がなく、ただとぼとぼと歩く事しかできなかった。












次回は七星の遺産巡りその1です。沙耶と聖天子の話はどうなったのかっていう感じですね。
この話はブラック・ブレットを知っている前提で書いていますので、初めての方は想像が出来ないと思います。すみません。
前回の更新から結構時間が経ってしまいました。これでも頑張っているのですが、まだ学生なので行事等で大忙しです。これからもご愛読、よろしくお願いします。
もうそろそろ、登場人物紹介を投稿しようと思います。ちなみに、杏はウサギ因子を生かした攻撃に加えて二丁拳銃も使います。火垂とややかぶり気味ですが、これでいきます。
それではまた次回。


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第四話 呪われた子供達

外周区を出た後、沙耶は蓮太郎と合流し、勾田大学附属勾田病院の地下にある死体安置所へ向かった。

「いらっしゃい。私のアビ....
どうしたんだい?沙耶ちゃんは兎も角、もとから不幸顔の蓮太郎君はもっと不幸な顔になっているぞ」

沙耶はため息を吐く

室戸(むろと)先生。少しは空気読もうよ」

室戸先生、と呼ばれた彼女は、四賢人の一人、室戸菫(むろとすみれ)だ。

「何があったんだい?話してみろ」

沙耶と蓮太郎は今日の出来事を話した。しかし、彼女はうんともすんとも言わない。

「せ、先生?」

「すまん。今晩の夕食を考えていたよ」

「え⁉︎室戸先生も献立考えるの?」

蓮太郎はそんな二人に呆れてしまう。

この二人、凄く頭が良いのに、何でいつもこうなんだ?

「沙耶。驚くところが違うだろ。先生は、話聞いてないのかよ!」

「延珠ちゃんと杏ちゃんが呪われた子供達だとばれ、彼女らとは会えず、しかも音信不通。君達の悩みは余りにも普通すぎてつまらんのだよ」

「聞いてたのかよ」

「そもそも、何故、人類はガストレアを選別しなければならない?」

「人類の敵だからだ」

「ガストレアは地球を救う神の使いだと神聖視している宗教団体もある。人類こそが資源を食い尽くして地球を駄目にする要因だ、とね」

「ガストレアが神の使いなら、呪われた子供達は何だっていうんだ!」

沙耶が口を開く。

「ガストレアと人類を繋ぐメッセンジャー。神の代理人?」

「そうだ」

蓮太郎は机を叩き、立ち上がる。

「延珠達は人間だッ!決してそれ以上でもそれ以下でもねぇッ」

沙耶はハッとする。菫は口角を少しだけあげる。

「分かっているじゃないか」

「ッ!」

「君達は自分が何処の誰かを知っているからまだ良い。しかし、彼女らはそれすらも知らない。彼女らを支え、導いていくのは誰だ?君達は、家族じゃないのか?」

「先生、ありがとう」

「室戸先生、また来ますね」

沙耶と蓮太郎は家へと急ぐ。

「あーそうそう」

菫が話しかけて来たが、蓮太郎がドアを閉めた為、沙耶は聞く事が出来なかった。

「杏。延珠ちゃん。戻って来て...」





翌日の朝。二人は学校に休むと連絡し、里見家で片付けをしていた。昨日、杏と延珠を探している時に部屋を散らかしていたのだ。沙耶はふと、昨日ランドセルが置いてあった所に物がない事に気がついたが、蓮太郎が片付けたのだと思い、なかった事にした。その時、蓮太郎のスマホに電話がかかってきた。

『里見さんですか?実は今朝、藍原さん達が登校していまして....』

蓮太郎の顔色が変わった。焦りが見える。

「す、すぐ行きます!」

沙耶は蓮太郎の様子が変になった為心配になった。恐る恐る話の内容を聞く。

「蓮太郎君?まさか....」

「延珠と杏が学校に登校しているらしい」

沙耶と蓮太郎は急いで家を出た。



学校に着いてまず見えた光景は酷いものだった。昇降口付近で数人が二人を囲むようにして言い争っている。(しかし二人とは2、3メートルほど離れていて、警戒している事が分かる)近づくと二人は杏と延珠だった。

「学校に来んなッ」

「お前らガストレアのせいで...俺ん家は...」

「違うッ!妾達はガストレアではない!」

「私達は人間ッ」

ふと杏と延珠の視界に友達の姿が見える。しかし、その少女は恐れてか逃げて何処かへ行ってしまう。ついこの間までは仲良くしていたと思い出すと胸が締め付けられる。

「妾達は.....妾達は....」

延珠の肩に蓮太郎が手をかける。沙耶は杏を思いっきり抱きしめる。杏は泣き出してしまった。

「蓮太郎....」

「沙耶ぁ」

周囲の子供達(沙耶の予測からするとクラスメイト)は延珠と杏の知り合いだと悟ると一二歩下がる。

「延珠、杏。学校、移ろう」

「妾は....負けたく...ない」

「友達も...沢山できた...のに」

蓮太郎と沙耶はかぶりを振る。

「もう、友達じゃない」

「友達なら、こんな酷い事は、しないはずだよ」

延珠は俯き、杏は沙耶の体にうずくまる。

「妾達は...それでも戦わないといけないのか?」

蓮太郎が何か言いかけた時、校庭にドクターヘリが大きな音を立て、着地し、沙耶のスマホがなった。木更からだ。

『感染源のガストレアを見つけたわ。今から私の指示に従ってちょうだい。沙耶ちゃんは司令室に来て、司令をして。里見君、延珠ちゃん、杏ちゃんはドクターヘリに乗って』

「木更ちゃんッ今は杏の精神が不安よ。お願い。私も戦いに行かせて」

『それは分かってるわ。でも貴女にしか出来ないの。お願い…』

「......... 分かった」

沙耶はすぐに司令室へ、蓮太郎達はドクターヘリに乗り込んだ。



ドクターヘリに乗り、数分が経過した頃、操縦士が声をあげる。

「あ、あれは何でしょうか?」

「あれはッ⁉︎」

そこには巣をパラシュート状に編んで空を飛ぶ、モデル・スパイダーのガストレアだ。その時、機体が揺れる。

「何事だッ!」

「貴方のイニシエーターらしき子が後ろのドアを開けましたッ」

蓮太郎は後ろへ顔を向けるが、そこには延珠の姿はなく、慌てる杏だけだった。

「蓮太郎さんッお姉ちゃんが」

「お前だけでも降りろッ」

「蓮太郎さんも来てくださいッ私の背中に乗った方が安全です」

蓮太郎は一瞬迷ったが、頼む事にした。
蓮太郎は杏におぶられる。

「しっかり掴まってください」

杏の瞳が赤く染まる。杏はドクターヘリから飛び降り、着地地点を定める。蓮太郎にはすさまじいGがかかるが、杏が安全だと思って行っている事だ。文句を言わずにしっかり掴まる。着地した瞬間、蓮太郎は放り出される。

「蓮太郎さんッ大丈夫ですか?」

杏が顔を覗き込む。

「あぁ。延珠は...」



沙耶が着いた場所は人よりも機械の数の方が多かった。
木更が自分を呼んでいる。彼女のいる方へ行き、椅子に座ると、目の前には蓮太郎達の様子が映っているモニターがあった。

「木更ちゃん。今の状況は?」

「延珠ちゃんが独断でガストレアと戦っているわ。それじゃあ、沙耶ちゃんお願い」

蓮太郎と無線を繋ぐ。

「蓮太郎君?」

『沙耶か。やばい状態だ』

「うん。蓮太郎君、このまま様子を見て。危なくなったら蓮太郎君達も動いて」

『あぁ』

今は延珠にやらせた方が良い。これが沙耶の考えた結果だ。モニターの様子を伺うと延珠が無事、ガストレアを倒した事がわかった。蓮太郎はすぐさま延珠の方へと行く。
無線が繋がっているのは蓮太郎だけで彼以外の声はあまり聞こえないが、かすかに話し声が聞こえた。

『蓮太郎…』



蓮太郎がそばに行く。後から杏が走ってくる。

「蓮太郎...妾が倒したぞ。どうだ。妾は戦っただろ?」

「あぁ」

延珠は蓮太郎の方を振り向き、涙を流す。

「学校のみんな...守ったぞ」

延珠は蓮太郎に抱きつく。

「蓮太郎ぉぉ」

「俺がいる。確かに今は戦うしかないかもしれねぇ。どこに行けばいいか不安に思う、気持ちも分かる」

蓮太郎は延珠の肩を掴む。

「だがな延珠ッ!お前には俺がいるッ!お前を大切に思う気持ちは誰にも負けねぇッ!
もしも世界がお前を受け入れなくても、俺はいつでもお前のそばにいるッ!」

杏は延珠に抱きつく。

「お姉ちゃん。私がいるから」

「うん。ありがとうッ蓮太郎、杏」

蓮太郎はケースの方へ向かう。

「何が入っているんだろうな」

蓮太郎がケースをとった瞬間、手が飛び出して来た。

「ご苦労だったね。里見君」

影胤だった。蓮太郎は思いっきり飛ばされる。

「蓮太郎ッ」

「蓮太郎さんッ」

延珠と杏の頰の近くに次は真っ黒の剣が飛び出して来た。
瞳を赤く染めて、彼女らは目線を後ろの方へ向ける。

「延珠と杏、みぃつけた」

小比奈が二人を切ろうとするが、ギリギリのところで避ける。杏はベレッタ92 を取り出す。

『蓮太郎君ッ逃げてッ』

無線から沙耶の声がするが、蓮太郎は無視をする。

「天童式戦闘術一の型八番ッ焰火扇(ほむらかせん)ッ」

渾身のストレートを繰り出す。 しかし、影胤のイマジナリー・ギミックで攻撃ができず、解いた瞬間、蓮太郎の右肩に二丁拳銃で発砲。蓮太郎はそのまま岩に当たる。

『蓮太郎君、逃げてッ』

無線の声が聞こえるが、動けない。

「一つ君に私の技を見せよう。
マキシマムペイン」

影胤が指を鳴らすと、青白いフィールドを扇状に放出。蓮太郎は壁に打ち付けられる。

「ゔわッ」

蓮太郎の背後の岩にヒビが入っていき、崩れる。蓮太郎は前かがみに倒れる。衝撃によって、司令室のモニターの映像が途切れる。

『蓮太郎君ッ』

「ふぅん。まだ生きているか....」

蓮太郎は右へ視線を向けると、杏と達が戦っている途中だった。

「延珠、杏。逃げろぉ」

延珠は蓮太郎の方を向く。まだ小比奈が斬りつけようとするが、気配で避ける。杏は蓮太郎の方を気にしながら、発砲。

「嫌だッ」

しかし、蓮太郎が彼女らの方へ発砲。彼女らは逃げる。
延珠と杏が振り向き、

「蓮太郎さんッ」

「待ってろ、蓮太郎ッ」

二人は駆け出す。小比奈が振り向く。

「パパッ延珠と杏、逃げた。斬りたいッ」

「ダメだよ、我が娘よ。他の民警と合流されたら困る」

蓮太郎は銃を向ける。

「仕事を済ませよう」

その瞬間、蓮太郎の腹に二本、剣が刺さっていた。
背後から小比奈の声がする。

「弱いくせに。弱いくせにッ」

剣を回しながら叫ぶ。蓮太郎は思いっきり小比奈を飛ばす。
蓮太郎はゆっくり後ろへとさがる。後ろは崖になっていて、もうさがれない。
影胤が銃を向ける。

「何か言い残すことはないかい?死にゆく友よ」

「地獄に....落ちろ」

おやすみ(Goodnight.)

影胤は蓮太郎の肩と腹に二発、発砲。
蓮太郎は崖から落ちる。

最後に見えたのは、微笑んだ影胤と小比奈の姿だった。

『蓮太郎君....生きて...』

沙耶の声が聞こえたような気がした。



司令室にいる沙耶と木更は焦っていた。

「蓮太郎君ッ」

「そんな...里見君....」

沙耶は思考を回転させる。
考えがまとまった所で、木更の方を向く。

「木更ちゃん。私の知り合いの民警に連絡いれる」

「でも、そう簡単に上手くいく訳ないでしょ。それにすぐじゃないと里見君は...」

沙耶はあるモニターを指差す。

「木更ちゃん。此処が蓮太郎君が流されるであろう場所。そして知り合いの民警は....此処よ」

木更は息を呑む。

「約二百メートル。近いわ。
でも、すぐに里見君の元へたどり着けるかは分からないわッ」

「大丈夫。彼は私と同じ、脳内に機械が埋め込まれているから」

沙耶は電話をかける。

「もしもし?蒼太(そうた)君?里見蓮太郎というプロモーターを助けてくれない?」

『里見...蓮太郎?
オッケー。情報と位置は掴めた』

「後何分で着く?」

『二分かかるかかからないか』

「蒼太君。お願いね。勾田大学附属大学病院で待ってる」

沙耶は電話を切る。沙耶は司令室を出て、勾田大学附属大学病院へ急ぐ。木更は沙耶の後ろについて行く。

「蒼太...?誰なの?」

沙耶は脳内の情報をスマホに転送し、木更に見せる。
プロモーターは沙耶と同じぐらいの年齢の少年。髪型は茶色で全体的髪を横に流している。服装は学校の制服で、シャツにベージュのブレザー、ネクタイは赤色。
イニシエーターは杏達と同じぐらいの年齢。髪型はシルバーで毛先をワンカールさせたセミロング。服装はグレーのTシャツに青色(袖はグレー)のスタジャン風パーカー。ズボンはギンガムチェックのフリルパンツ。頭にはカンガルーらしき耳がある。ガストレアウイルスの影響で頭にカンガルーの耳が生えている。(蒼太の写真は上半身だけ)

「プロモーター、滝沢蒼太(たきざわそうた)。十七歳。神代式抜刀術、免許皆伝。所属なし。
イニシエーター、流星茉里亜(りゅうせいまりあ)。十歳。モデル・カンガルー。
このペアの序列は、1789位」

木更はまたもや息を呑む。

「千番代.....」

その時、沙耶のスマホがなった。

「蒼太君?」

『里見蓮太郎君を見つけたよ。結構やばい状態。意識はないし、心肺停止。今から病院に連れて行く』

「ありがとう。また病院で」

スマホをきった後、杏にメールを送る。

「里見君は....」

「心肺停止。意識なし。結構やばい」

沙耶は無意識のうちに手を組み、呟いていた。

「蓮太郎君.....生きて.....お願い.....」



お久しぶりです!前回の投稿が9月22日なので、約一ヶ月ぶりです。今月はテスト期間で更新できず。ふと、
「書かなければ!」と思い、文化祭が来週末にあるにも関わらず、そしてやらなければならないことをそっちのけで更新しました(笑)
四話は新キャラの登場です。のちに蒼太君が重要(?)な役割を果たすことになります。また、補足ですが、蒼太君はハニーワークス(知ってますか?)の「もちた」こと、望月蒼太君をベースに考え(?)ました。蓮太郎とは声優繋がりです。知っている方は顔等はもちたを思い浮かべてくださって結構です。
それでは今後とも、宜しくお願い致します。誤字・脱字やおかしい所、内容が飛んでいて理解不能な場所は教えて下さい。又、こうすればもっと良いということがありましたら、是非お伝え下さい。今後の参考にします。
予告
影胤との最終決戦に突入!新たなキャラクター(原作を読んだ事がある人はご存知のあの子です)も登場します。


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第五話 決戦へ

自分は何故、民警をしているのか。

茉里亜におぶられた彼を見て思う。

いつ死ぬかも分からない。
失いたくない人が増えた。
それなら、何故。

蒼太はもう一度彼の方を見て答えを出す。

人を救いたい。
茉里亜の様な呪われた子供達が差別されない世界にしたい。

茉里亜に先に行くよう伝える。彼女はカンガルー因子を宿している為、ジャンプ力が半端じゃない。
蒼太は先に行った茉里亜を追いかけるように走る。

死ぬな。里見蓮太郎君。





蓮太郎が運ばれた先は、勾田大学附属大学病院。着くなり、すぐさま集中治療室へ運ばれる。
沙耶は、彼を連れてきた頭にカンガルーの耳がついた少女の方を向き、目線を同じ高さにする。

「貴女が流星茉里亜ちゃん?」

少女は少し不安そうにしていたが、コクリと頷く。

「私は、神代沙耶。蒼太君と同じ、プロモーターだよ。蓮太郎君を運んでくれて、ありがとう」

「カミヨサヤ.....蒼太がいつも話していたです」

沙耶は立つと、茉里亜の手を握る。

「行こうか」



茉里亜が来た数分後、蒼太と延珠、杏が沙耶達の元へ来た。
延珠は手術室の方へ行こうとしている。

「蓮太郎は...蓮太郎は、大丈夫なのかッ?」

沙耶と杏が延珠を押さえる。

「お姉ちゃん。蓮太郎さんは、死んだりしない」

延珠が顔を上げる。

「本当か?」

杏が頷く。沙耶も続く。

その後、長時間に及ぶ手術が終わった。最後の最後で蓮太郎の心臓が動き、成功という形になった。



蓮太郎が目を覚ましたのは、何処かの病院で、沙耶と杏が顔を覗いていた。

「沙耶.....俺はどれくらい寝ていた?」

沙耶は左腕に付けた腕時計を見た。

「えっと、丸一日と三時間ほど。
蓮太郎君。大変な手術だったらしいよ。医師が匙を投げる直前に心臓が動き出したの。生きる事を諦めなかったの」

「沙耶。俺が川に落ちる前に何か言ったか?」

沙耶は少し顔を赤くしながら

「うん。言ったよ」

「あの言葉がなければ、死んでたかもしれない」

「こっちは、死ぬんじゃないかって、ひやひやしてたんだよ?このお馬鹿」

「ごめん」

沙耶と杏はため息を吐く。

「蓮太郎さん。謝るのは私たちにじゃないです」

「え?」

沙耶と杏は顔を見合わせる。二人は一斉に立ち、掛け布団をめくる。
そこには、蓮太郎に寄り添って寝ている延珠が寝言を言っていた。

「蓮太郎の...あほぉ....」

「俺、駄目駄目だな。
ところで木更さんは?」

「あー会議に行ってる」

沙耶は椅子に座り、腕を組む。

「蓮太郎君、七星の遺産について知りたい?」

「あぁ」

「ケースの中身は、ステージVガストレア、ゾディアックを呼び寄せる触媒」

「ステージVって...」

「ガストレア大戦において猛威をふるい、世界を滅ぼした存在。
ゾディアックは通常のガストレアと違ってモノリスの磁場の影響を受けない。
モノリスを崩壊されてステージIからステージIVのガストレアがエリアにはいって来たという話があったわ。
そして、それらが引き起こすものが....」

「「大絶滅」」

そのとき、沙耶のスマホが震える。

「もしもし。はい。分かりました」

「蓮太郎君。聖天子様から」

沙耶と杏は退室する。



「ほうほう。それで、蓮太郎君は生きてたか」

沙耶は菫のいる、地下室へと来ていた。

「そうそう。じゃなくて、何で私を呼び出したの?」

菫は深刻な顔をする。

「君はこれから()()を使うと思うが、一つ忠告する。なるべく使うな」

沙耶は机を叩き、立ち上がる。

「何でッ?アレを使わないと東京エリアを救うことができるのにッ 私には戦わせてくれないのッ?」

「君は体内にガストレアウイルスを宿している。侵食率が上がるかもしれないんだ」

「侵食率が上がるのを恐れていたら何もできない。それに杏達、呪われた子供達は侵食率が上がることを承知で戦っている」

菫は黙り込む。

「あ。そうだった。室戸先生に話があったの」

「話?」

「室戸先生は、呪われた子供達の事、どう思ってる?」

「いきなり何かと思えば」

「この前、神のメッセンジャーって言ってたのに、君達は家族じゃないのか?って言ったりで分からなくなって」

「そうだね....
人類最後の希望だ」

「ふーん」

沙耶は左腕に付けた腕時計を見る。

「それじゃあ、もう時間が」

ドアの前で歩みを止める。

「室戸先生」

「まさか、君はッ」

「行ってきます!」

「君の命に関わるかもしれないんだぞッ」





蓮太郎は沙耶に絶対安静だと言われていたが、着替えることにした。先程、蓮太郎も蛭子影胤との決戦に参加して欲しい、と聖天子から電話があった。

病室のドアが開いたかと思うと、菫が入ってき、バックを置いた。

「君のパトロンからだよ」

中を開けると拳銃などいろいろ入っていた。

「完璧だ」

菫は赤い液体の入った注射器を渡す。

「そしてこれは私からの餞別だ。AGV試験薬。出来れば使うなよ」

「意識がないときに、先生に執刀される夢を見たんだ」

「私が君にやった事は決して許される事じゃない」

「俺は先生の事を恨んだりした事はない」



蓮太郎が病室を出るとそこには、木更がいた。

「社長命令よ。里見君、蛭子影胤・小比奈ペアを撃破し、ステージVガストレアの召喚を止めなさい。
君は今までの100倍働いて。私は君の1000倍働くから」

「やってみせます。貴女の為にも!」



延珠や沙耶ペアと合流し、四人はヘリコプターへ乗った。沙耶は腕時計を外し、ウエストバッグの中に入れ、髪をポニーテールに結ぶ。沙耶のウエストバッグには、小刀二本と、グロック26Gen4、スマホが入っている。双剣は見当たらない為、蓮太郎はどうするのか、疑問に思った。

ヘリコプターが降りた先は、森の中。辺りは闇に包まれている為、それぞれがペンライトを持っている。同じヘリコプターに乗っていたペアが散り散りに解散。蓮太郎達は四人で行動することにした。

「いいか?あまり大きな音を立てるなよ」

蓮太郎が立ち止まり、ひそひそ声で注意を促す。

「なんでだ?」

「今は夜型のガストレアが活動していて、昼型のガストレアは眠っているの」

「音を立てると、昼型のガストレアを起こしてしまう、であってる?」

「正解だ。杏すごいな」

「でしょー。いつも私が勉強教えているからね」

四人はゆっくり足音を立てないようにし、歩きはじめようとした。が、
ズドンッと地割れの様な大きな音がし、近くからモデル・アリゲーターのガストレアが姿を現した。四人はそっと息を潜め、岩場に隠れる。すると、気付かなかったのか、ガストレアが闇へ消える。四人は胸をさすり、顔を見合わせた。

「危...」

蓮太郎の言葉を消し、爆発音がした。

「やばいッ何処かのペアが爆発物を使ったッ」

「沙耶...あれは何?」

杏が何かを見つけ、指差す。

「ッあれは....」

「「ステージIV⁉︎」」

四人は走り出す。しかし、後ろからガストレアが追ってくる。
沙耶達が力を解放。瞳が赤く染まる。延珠は蓮太郎をおぶる。三人は跳びながら高速で逃げる。

このままだと上手くいく。

誰もが確信したその瞬間、目の前に崖が現れた。

「崖だッ」

三人は手前で一瞬止まり、足に力を入れ、空へ飛び出す。そのまま崖の下へと着地。
沙耶と杏は自分だけの体重しかかからないが、延珠には自分の体重プラス蓮太郎の体重がある。その為、着地に困難し、地面を滑り、なんとか止まった。蓮太郎は衝撃で、投げ出される。体を起こすと目の前で延珠が肩で息をしていた。

「延珠...」

呼ばれた少女は振り向き、ピースサインを作る。
崖の上を見るとガストレアが下を覗き、残念そうにしていた。

少し休憩を取った後、再び四人は歩き出した。すると木と木の間から光が差し込んでいた。灯の方へ歩みを進める。
灯の正体はトーチカだった。中で、焚き木をしているのだと思われる。沙耶達の胸は今にでも破裂するのかと思うほどドキドキしていた。

もしかしたら、影胤達かもしれない。

四人はトーチカの四方を囲む。延珠以外の三人は拳銃を構える。
アイコンタクトをし、一斉に中に入る。

「動くなッ」

そこには、影胤の姿はなく、蓮太郎の目の前にいるのは一人のイニシエーターだった。その少女も銃を構えている。人間の気配を感じたのだろう。

「お前は...」

延珠が少女の首に蹴りを入れようとする。

「待て延珠」

延珠は脚を止め、地面につける。

「この子は敵じゃないよ」

蓮太郎は少女と目線を合わせる。

「お前、俺のこと覚えてるか?」

「勿論です」

延珠と杏は息をのむ。

「待て待て。この女、妾は知らないぞッ」

「蓮太郎さん。どういうことか説明して下さいッ」

「こいつは三ヶ島ロイヤルガーター所属、伊熊将監のイニシエーターだ」

「モデル・ドルフィンの千寿夏世です。初めまして」

夏世の右腕からは、真っ赤な血が滴り落ちていた。




こんにちは。いや、こんばんは。クルミです!
ついに五話に突入!思うんですけど、話の進み具合が速すぎません?次は影胤との決戦、それから.....と多分八話で第一章は終わりです。内容が薄いんですよね。
それでは、感想、宜しくお願いします!他の人はどのように思うのか知りたいので感想が欲しいです。それでは今後とも宜しくお願いします。


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第六話 千寿夏世

「話は後にして治療してやる」

目の前にいる少女、夏世の腕を見ながら蓮太郎は言った。

「延珠と杏。ちょっと外で見張りしてくれないか?」

「むぅ〜知らぬ女と密会するつもりだなぁ!」

「蓮太郎さん、許せませんッ」

沙耶は二人をなぐさめながら

「二人っきりじゃないよ。私がいるから」

延珠はそっぽを向く。

「ふんッ妾はそんな女、認めんからなッ」

二人は怒りながらトーチカを出て行った。

「何であいつらあんなに怒ってるんだ?まさか、もう反抗期が...」

沙耶は面白すぎて思わず吹き出してしまった。

「何それ。二児のパパみたい」

その言葉に夏世も頷いた。

「ですね。理由は明白ですが」

蓮太郎は黙り込むが、沙耶は歌を歌う様に、

「そんなことより、治療♪治療♪」

と楽しそうにしている。蓮太郎は溜息をついて

「そんなに治療が楽しみなのかよ」

と呆れた。
沙耶は蓮太郎から包帯を取り上げ、夏世の傷の治療を始める。

「この傷、どうしたの?」

話すかどうか、少しためらっていたが、意を決して話すことにした。

「私と将監さんは森の中で光りを見つけたんです。仲間の民警ペアだと思い、近づいたんです」

夏世がうずくまり、

「よく考えれば、あんな事にならなかったのですが...」

と呟く。

「あんな事?」

「光を放っていたのはガストレアでした。花と融合しているガストレアで、匂いを放っていました」

沙耶は首をかしげる。

「融合...匂い...」

今まで黙り込んでいた蓮太郎が口を開いて、

「それはホタルのガストレアだ」

と言った。

「里見さん、凄いですね。見てもいないガストレアの因子を答えるなんて」

「ほんと。流石、虫マニア」

沙耶は拍手をしながら少しからかうように言った。
蓮太郎は顔を真っ赤にしだが、すぐに深刻そうな顔をした。

「さっきの爆発物お前のだろう」

「単刀直入だねぇ」

「咄嗟に使ってしまいました」

「じゃあ、その傷は...」

夏世は沙耶の視線の先、自分の右腕を見た。

「はい。榴弾で起きたガストレアに噛まれました。それから、将監さんとはぐれてしまいました。
安心して下さい。極微量でしたので、私がガストレア化する事はありませんよ」

沙耶と蓮太郎は心配そうな顔をしている。

「帰ったら、ちゃんと検査しておけ」

「ガストレア化する事はないと思うけど、一応ね」

夏世は少し視線を反らしながら

「心配、してくれるんですか」

と言った。

「してもいいじゃない。
ところで、夏世ちゃんはイルカの因子で、記憶力とかが良いけど、やっぱり後衛なの?」

「はい。通常より知能指数と記憶能力が高いだけですから。それに将監さんは頭まで筋肉で出来ている上、バックアップなんてこと、出来ませんから」

「将監さんらしいね」

「お前の銃を見せてくれ」

夏世は自分の銃を見た。

「嫌だと言ったら?」

「別にかまわねぇぜ。お前が助けられた事に何も感じてないならな」

「蓮太郎君、何もしてない癖に。ただガストレア当てただけじゃん」

夏世は、

「一つ学びました。見返りを求めた時点で、善行は堕落しますね」

と言いながら銃を蓮太郎に渡した。
沙耶も左から覗く。

「大宇AS12か...」

「私、少しだけ延珠さんや杏さんが羨ましいです。
おそらく、人を殺した事がありませんね。目を見れば分かります」

「夏世ちゃんはあるの?」

「ええ。ここに来る途中も出会った民警ペアを殺しました」

沙耶と蓮太郎の眉間に皺が寄る。

「どうしてそんなことをした」

「将監さんの命令です。『仮面野郎をぶち殺す手柄は誰にも渡さねえ』と。
怖かったです。手が震えました。でもそれだけです。じきに慣れると思います」

「「ふざけないでッ/ふざけんじゃねぇッ」」

二人は同時に怒り、蓮太郎は気付けば夏世を押し倒していた。

「殺人の怖い所は慣れることだッ
人を殺し、自分が罰せられないと知った時、人は罪の意識を忘れていくッ」

沙耶も付け足す。

「殺人だけでなく、人を傷つける事だって」

「それはあなた達が人を殺したり、傷つけたりしたことがあるから言えるんですか?里見さんも神代さんも不思議な瞳をしていますね。
二人共優しいのに、里見さんは怖い顔.....神代さんは辛い事を経験したような瞳.....
きっと複雑な過去をお持ちなのでしょう」

蓮太郎と沙耶はハッとする。

「俺、何えらそうなこと言ってんだろうな…」

「ごめんね。今の忘れて」

そう言って二人はトーチカを出ようとした。が、二人の裾が引っ張られた。
振り向くとそれは目に涙を浮かべた夏世だった。

「どうして謝るんですか?里見さんと神代さんの言っている事は正しいのに。貴方達は正しい。
私、今...変です....
里見さんと神代さんに対する反論なら即座に何十個も思いつくのに、里見さんと神代さんの言ってくれたこと、否定したくない」

夏世は涙を一筋、流しながら

「こんな気持ち.....初めてです......」

と言い、すぐに涙を拭った。

『......おいッ生きているんだったら返事しろッ』

沈黙を破ったのは夏世の無線機からの将監の声。夏世は急いで無線機の方へ行き、沙耶達の方を向くと右手の人差し指を口に当てた。将監に沙耶達と一緒にいる事がばれない為だ。

「ご無事で何よりです。将監さん」

『夏世、ビッグニュースだ。仮面野郎を見つけたぜ。夏世、お前も合流しろ』

夏世が返事をする前に切られてしまった。

「蛭子影胤....」

急に藍原姉妹が入ってきた。無線機の声が聞こえたのだろう。

「蓮太郎ッ」

「とうとう、始まったの?」

「うん。行こう」



「里見さん達も行くんですか?」

影胤がいるらしい教会へ行く途中、夏世が蓮太郎に聞いた。

「ああ。戦いの全貌だけでも見届けるよ」

沙耶の右側にいる杏が心配そうに沙耶の方を見た。

「沙耶。私達も戦うのかな」

「うーん。多分ね」

「沙耶、縁起の悪い事を言うのでない」

「そうじゃなくてね.....あ」

夏世と話していた蓮太郎は突然止まった沙耶の方を見た。

「どうした?」

「忘れてた....」

と言うと沙耶は後ろを見る。
背後から、青年と少女がやってきた。

「沙耶。忘れないで」

「沙耶さん。酷いです」

そこには蓮太郎の命の恩人である、プロモーターの蒼太とそのイニシエーター、茉里亜だった。

「お前ら....誰だ?」

「蓮太郎君ひっど。命の恩人に向かって」

蓮太郎は首を傾げる。

「命の恩人?」

「そ。影胤と交戦して、負けて、崖から落ちたどっかの誰かさんを見つけて病院に運んでくれた人」

「僕は滝沢蒼太。プロモーターだ。ちなみに沙耶と同じで脳内に機械が入ってる。君の一歳上で桜花学園高等部三年だ。よろしくね、蓮太郎」

「私は流星茉里亜です。モデル・カンガルーです。序列は1789位です。里見蓮太郎は初対面の人に対して敬語を使わないので、"むれいしゃ"ですッ」

「茉里亜さん。"むれいしゃ"では無く、無礼者(ぶれいもの)です」

茉里亜の顔が一気に赤く染まる。

「え?」

「ごめんね。茉里亜は父親がアメリカ人で、母親が日本人のハーフなんだ」

蓮太郎は蒼太が背中に背負っているものを見る。

「蒼太。お前は...」

「僕は抜刀術で戦うんだ。神代式抜刀術でね。まぁ、短刀術も使うけど」

「蒼太君は神代式抜刀術の免許皆伝で、短刀術は初段だっけ」

「蓮太郎、お喋りし過ぎだぞ。
気を取り直して早く行くのだ!」



森を抜けると目の前には、街が見える。十年前の関東会戦で廃墟と化した街だが。

「あそこに影胤が....」

「里見さん。私はここに残ります」

「夏世は将監が心配なんじゃねえのか?」

「蓮太郎。後ろを見て、分からない?」

「ガストレアが私達を狙っているです」

「勝っても負けても、絶滅しますよ」

沙耶は蓮太郎にアイコンタクトをする。

「頼んだぞ」

「将監さんをお願いします」



蓮太郎達がついた街には人間は一人もいなかった。見渡しても、薄暗さでよく分からない。

「なんだ?もう、終わったのか?」

「うわぁッ?」

延珠が何かを蹴ったらしく、驚いていた。延珠が蹴ったものを見ようと屈む。

「ヒッ」

延珠が蹴ったもの、それは拳銃を握ったままの人の腕。綺麗な切り方だ。

ガタッ

と音がし、四人は音の主を探す。

「俺の...俺の剣は...」

将監だった。目が見えてないらしく、おぼつかない足取りでこちらへ来る。

「伊熊...将監?」

どうやら自分の大剣を探しているようだ。

「あれがあれば........あれがあれば.....まだ戦え....」

ドサッ

将監が倒れた。背中には彼の探し物、大剣が刺さっていた。

『将監さんはパートナーですから』

ふと蓮太郎の脳裏に夏世の言葉が浮かぶ。たしか、お前も行くのか、と聞いた蓮太郎に夏世が答えた言葉だったか。

「パパぁ〜びっくり〜ほんとに生きてたよ〜」

怪しげな声。だが、まるで獲物を見つけた様な高ぶった声にも聞こえる。
四人は一斉に声の方へ顔を向ける。

「影胤.....小比奈ちゃん......」

そこには影胤とそのイニシエーターにして娘の小比奈がいた。

「幕が近い。決着を付けよう。里見君、神代さん」





お久しぶりです。クルミです!約一ヶ月ぶりの更新です。
色々訂正等があります。
・第五話後書きにて
沙耶についての話を、と書いていましたが、第五章「逃亡犯里見蓮太郎」と第六章「煉獄の彷徨者」で書くなら、書かなくて良いんじゃないかとなり、書くのをやめました。
・蒼太について
初めは短刀術でしたが、表現したりするのが大変だなと思い、抜刀術に変えました。後、歳は17歳です。
・第六話の茉里亜の言葉について
「ガストレアが私達を狙っているです」は間違えていません。
それでは今後とも「赤い瞳と黒の剣」を宜しくお願い致します。是非是非、感想お願いします。次は早く更新します。(早く「逃亡犯里見蓮太郎」を書きたい...)


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第七話 決戦の時

辺りは少し暗く、赤い瞳が一段とよく分かる。
見渡す限りの赤い光。その中央に蒼太達はいる。

「滝沢さん。やりましょう」

傍にいる少女、千寿夏世。伊熊将監のイニシエーターだ。

「蒼太。どれだけかかるのです?」

蒼太のイニシエーター、流星茉里亜。少しとは言えないほど間違っている日本語を訂正する気にもならない。

「うーん。わかんないなぁ」

「蒼太さん。来ます」

「よし。戦闘開始ッ」

夏世と茉里亜の瞳が赤く染まり、三人は一気に駆け出す。

「神代式抜刀術三の型十番直往邁進(ちょくおうまいしん)

一瞬にして剣閃を無数に走らせることによって、対象を無数に切り裂いていく。

「はぁぁぁぁぁッ」

茉里亜は靴底にバラニウムが付いているスニーカーでガストレアを蹴っていく。カンガルー因子の彼女は蹴り技が得意で、その破壊力は凄まじい。

夏世は大宇AS12を持ちバラニウムの銃弾でガストレアを撃っていく。
高序列の三人が集まれば、周りにいるガストレアを倒し終わるのは少し早い。
茉里亜は辺りを見渡した。

「蒼太。もういない?」

蒼太も見渡してみる。

「そうだなぁ。いないっぽいね」

夏世は茉里亜の頭に生えている耳をずっと見ている。

「せ、千寿さん。なにですか?」

「いえ。ただ耳が生えているのは珍しいなと」

蒼太がそっと茉里亜の頭に手を乗せる。

「ガストレア因子の影響なんだよ。カンガルーの耳だ」

夏世は右手を口元に当てると、

「噂には聞いていましたが、実物を見るのは初めでで...」

と、不思議そうに言った。

「さてと。ガストレアも片付いたし、沙耶の援助に行こうか」

二人の少女は頷くと、蒼太の後を追い、沙耶達のところへ向かった。



司令室にいる一同はモニターに釘付けになる。序列の低い二ペアが高序列の影胤と接触。このままでは絶対に負けてしまう。

「近くの民警ペアは何処にいますか」

「近くにいる滝沢ペア、イニシエーター千寿夏世が向かっています。しかし、到着には2.30分程かかります」

その時、司令室のドアが開き、黒セーラーの美少女、天童木更が入ってきた。

「木更」

聖天子様の傍にいる木更の祖父であり、聖天子補佐官、天童菊之丞だ。

「私がお呼びしました」

菊之丞の傍の聖天子が口を開く。流石に聖天子には口が出せず、菊之丞は黙り込む。

「天童社長。里見ペア、神代ペアの勝率はいかがでしょうか」

「私の期待を加えても良いのならば、
勝ちます。絶対に」

木更の言葉に司令室は静まり返る。

「自分の社員に勝って欲しいという気持ちがあるのも分かる。しかし、相手は新人類創造計画の生き残りだぞ」

「十年前、里見君が天童家に引き取られた頃、私の家に野良ガストレアが迷い込み、私の両親を喰い殺しました。私はその時のストレスで腎臓の機能がほぼ停止しています」

辺りはざわめき始める。木更の近くにいた一人が口を開く。

「それは不幸な話だが...」

「里見君はその時私を庇って、左眼と右手足をガストレアに喰われました」

「神代さんは天童家に野良ガストレアが迷い込んだ頃、ガストレアに襲われていた柊千代を庇い、右眼、左手足を喰われました」

「彼等が運び込まれたのはセクション22、執刀医は室戸菫」

「室戸...菫?まさか、彼等も...?」



「君達はケースを取り返せない。何故なら私達が立ちはだかっているからだッ」

月を背景に蛭子影胤は手をおもむろに広げる。

「そんなの分かるわけ無い。今まで負けてきたけど、今日は勝つからッ」

「延珠〜杏〜会いたかったぁ〜斬り合おう〜」

「小比奈さん、絶対に斬られませんッ」

「二度の敗北、味方の全滅.....願っても無い状況だクソ野郎ッ」

「影胤...貴方を排除するッ」

蓮太郎は右手、沙耶は左手を影胤に向かって突き出す。
それと同時に影胤も指を鳴らして、イマジナリー・ギミックを繰り出した。

「「天童式戦闘術一の型八番、焰火扇ッ」」

影胤に向かって二人は駆け出していく。が、低序列の二人がかなうわけがない。相手は新人類創造計画の生き残り、蛭子影胤。しかもイマジナリー・ギミックで守られている。

「「はぁぁぁぁぁッ」」

しかし二人はいつもの二人ではなかった。
イマジナリー・ギミックを破った手は、影胤の仮面に当たる。影胤はバランスを崩し、勢いよく後ろへ飛ばされる。
影胤は仮面を押さえている。衝撃を隠せない様子だ。

「イマジナリー・ギミックを破った…だと?」

蓮太郎の右手脚、沙耶の左手脚の皮膚がなくなり、超バラニウムの義肢に、蓮太郎の左眼、沙耶の右眼が義眼に替わる。

「まさか.....君達もッ」

「俺らも名乗るぜ、影胤。
元陸上自衛隊東部方面隊第七八七機械化特殊部隊、新人類創造計画、里見蓮太郎ッ」

「同じく、元陸上自衛隊東部方面隊第七八七機械化特殊部隊、新人類創造計画、神代沙耶」

ふと沙耶は菫の言葉を思い出す。

『君の命に関わるかもしれないんだぞッ』

あの時の室戸先生はやけに焦っていたな、と思う。

室戸先生、御免なさい。

「私は痛い。私は生きている。素晴らしきかな世界、hallelujah(ハレルーヤ)ッ」

影胤は手をおもむろに広げ、小比奈はこちらへ向かってくる。

「パパを虐めるなぁ」

小比奈の小太刀を蓮太郎と沙耶の義肢で止め、延珠と杏は影胤に蹴りを入れる。
六人は船の上に移動。

「新人類創造計画は殺す為に作られたッ!モノリスが崩壊し、ガストレア戦争が再開されれば、我々の存在意義は証明される。憎しみは消えない。戦争は終わらない。私たちは必要とされるッ!わからないのかい?里見君、神代さん。ガストレア戦争が継続している世界こそが、我々の勝利なんだよ」

「ふざけんなッまさかその為だけに七星の遺産を...」

「だとしたら何なのだよ。私と小比菜は選ばれた。もちろん君や延珠さん。神代さん、杏さんもだ。他の人間など取るに足りない。さあ、君達ッ私のところへ来いッ」

「貴様の語る未来、断じて所用できねぇッ」

「室戸先生から貰った私と蓮太郎君の手脚はそんな事の為に作られたんじゃない。誰かを繋ぐ為にある。貴方は間違ってるッ」

沙耶はウエストバッグから小刀二本を出し、それぞれ鞘を取る。そして二本の小刀の柄に付いている小さなボタンを押す。すると一瞬にして小太刀に変わった。

「神代式双剣術迅雷風烈(じんらいふうれつ)ッ」

素早い動きで相手の目を眩ませ、一気に相手へ詰め寄る。その間にも対象の人物———蛭子小比奈に向かって刀を振りかざす。
沙耶に目を取られているうちに杏は二丁拳銃を撃つ。

「神代式戦闘術天真爛漫(てんしんらんまん)ッ」

自分の思った通りに振りかざしていく。しかし小比奈も負けていない。沙耶の刀を全て受け止めている。
今のうちに蓮太郎と延珠は影胤に攻撃。

「はぁぁぁぁぁぁぁ」

延珠は影胤に蹴りを入れようとする。しかし影胤はイマジナリー・ギミックで守られている。

「あぁッ」

延珠の蹴りは跳ね返され、自分の脚へ衝撃が走り、空中へ投げ出される。その隙に影胤は延珠を撃とうとする。いくら彼女がイニシエーターであるとはいえ、バラニウムで攻撃されれば普通の人間と変わらない。

「延珠ッ」

蓮太郎は駆け出し、延珠を庇い、バラニウムの右腕で銃弾を跳ね返す。

「従わないなら、死ねぇッ」

手のひらから斥力フィールドを巨大な槍状に変化させる。

「エンドレススクリームッ」

「グァッ」

蓮太郎の腹が空き、大量の血が流れていく。

「蓮太郎君ッ」

今すぐ蓮太郎の所へ行きたい沙耶と杏だが、小比奈はそんな事、御構い無しに攻撃してくる。

「俺は....死ぬ...のか.......?」

延珠が蓮太郎の前で涙を流しながら何か言っている。しかし、何を言っているのかは分からない。
延珠と出会ってからの出来事がフラッシュバックする。

「......たろぉ」

「れんたろぉ」

「妾を....妾を一人にしないでくれ」

蓮太郎は制服の裏ポケットから菫に渡された注射器———AGV試験薬を取り出す。

『AGV試験薬はガストレアウイルスによって生成された。ガストレア並みの再生能力を与えるが20%もの確率でガストレア化させてしまう』

『出来れば使うなよ』

五本ある試験薬を一気に傷口へとさす。

「う......ぐぁッ」

蓮太郎の傷口からガストレア化の兆候が。

「れ、蓮太郎?」

「ぐ、ぐぁぁぁぁッ」

蓮太郎の傷口が再生していくが、一瞬、瞳が赤くなるが元に戻る。

「蓮太郎君......」

「賭けに.....勝ったぞ....」

「里見君....君は....ッ」

「天童式戦闘術一の型十五番雲嶺毘湖鯉鲋(うねびこりゅう)ッ」

下から突き上げるような鋭いアッパーカットを繰り出す。影胤はイマジナリー・ギミックを繰り出す。蓮太郎は右腕の義肢に内蔵されている カートリッジを炸裂させる。

「天童式戦闘術一の型三番轆轤鹿伏鬼(ろくろかぶと)ッ」

捻りを加え、カードリッチを炸裂した事により威力がました左拳を小比奈の小太刀に向かって繰り出す。小太刀は折れ、小比奈も威力が強すぎて壁に思いっきり当たり、戦闘不能になる。

「天童式戦闘術二の型十一番隠禅・哭汀・全弾撃発(アンリミテツド・バースト)ッ」

蓮太郎は空中に飛び上がってオーバーヘッドキックのような蹴りを繰り出す。カードリッチを炸裂させた右脚が影胤の仮面へと当たる。

「私は.....負けたのか......?」

影胤の身体は空へと舞い、そのまま海底へ沈んでいった。

「パパぁ。いやよ。いやよ、パパぁ」

正気に戻った小比奈は海に身を乗り出し、手を伸ばしている。

「小比奈ちゃんは、もう、敵じゃない」

その時、蓮太郎のスマートフォンがなる。

「もしもし....あッ、木更さん」

『見たわよ、里見君。でもね、伝えないといけないことがあるの』

「えッ?」

『ステージVガストレア、ゾディアックが、姿を現したわ』



お久しぶりです‼︎クルミです。「赤い瞳と黒の剣」を見て頂き、ありがとうございます^ ^
第六話から一ヶ月以上経っての更新です。お待ちしていた方、本当に申し訳ありません。
さて、第七話は蛭子影胤、小比奈ペアvs里見蓮太郎、藍原延珠ペア&神代沙耶、藍原杏ペアの決戦です。又、蒼太、茉里亜、夏世による、ガストレアの駆除もありましたね。私はアニメの此処の蓮太郎のシーンが特に好きです♡格好良いですよね〜
次回は迫り来るゾディアックから東京エリアを守ります‼︎あそこの延珠ちゃんも好きです。ラノベやアニメよりも少しばかり人が増えた状態で、どのように話が進んでいくのか、楽しみにしてて下さい‼︎
それでは、ご閲覧いただいた方、是非是非、感想を宜しくお願い致します。些細な気づきでも構いませんし、この文章や表現は分かりにくいなどのご意見でも構いません。では、また第八話でお会いしましょう‼︎(更新、頑張ります)


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第八話 神を目指した者たち

蒼太は自分のイニシエーター、茉里亜と伊熊将監のイニシエーター、夏世と影胤と蓮太郎達の闘いの援助をしに街まで出ていた。
夏世は闘いよりも自分のプロモーター、将監の安否の方が気になっていた。
少し進むと見慣れた大剣が地面に刺さっていた。
違う。大切な人———伊熊将監の身体に突き刺さっていた。

「将監さんッ」

夏世は直ぐに彼の元へ駆け寄る。蒼太達もついて行く。

「しょ、しょ.......将監.....さ.....ん.......」

夏世は膝から崩れ落ちた。目を手で押さえる。押さえても、押さえても涙は溢れ続けた。

「夏世......」

蒼太は自分の大切な人を失くすことの哀しさ、寂しさ、辛さを知っていた。

『お、おにいちゃぁんッ』

思い出したくないことが脳内にフラッシュバックする。
茉里亜は辛そうな夏世を見て、蒼太のブレザーの裾を掴む。

「里見さんの嘘つき.....任せろって言ったじゃないですか......」

蒼太は夏世を自分の方へ向かせ抱きつく。

「蓮太郎君のことを責めれば伊熊将監は生き返るの?違うよね。
蓮太郎君は今、影胤と闘っている。それなら、彼等に託すんだ。夏世が嘆いても、何をしても自分の辛さは無くなる訳じゃない」

「それなら、私は何をすれば良いんですかッ」

「僕たちにできるのは———ガストレアをこの地球上から消すことだ。彼が死んだ事はなかったんだ。今は蓮太郎君達を信じるんだ」

「........はい」

蒼太は立ち上がり、夏世を立たせる。

「さてと、今は夏世の方が大切だ。きっと勝ってくれる。僕達はちょっと向こうに行って休もう」

「蒼太、そんなことして、良いんですか?」

「さあね。ま、良いんじゃない?」

蒼太達三人は歩き始めた。

「何処か休めるところはないかなぁ〜」

「滝沢さんって良い人だと思ったんですが....今のでその気持ちは無くなりました。残念です」

「蒼太は不真面目です。いつもです」

「僕は不真面目......じゃないッ」



「そんな........もう、終わりなのか?」

蓮太郎の声を聞いた沙耶達も心配になる。

『いいえ、まだ終わってないわ。その答えは———天の梯子』

「木更さんッ?いいのか?」

『ええ。もう聖天子様には伝えたわ。滝沢蒼太、流星茉里亜、千寿夏世も向かっているわ。
でも里見君達も行って』

そこで木更からの電話は切れた。
沙耶達は不安そうに蓮太郎の近くに歩み寄る。

「蓮太郎......妾達はどうなるのだ?」

「天の梯子を使うそうだ」

「天の梯子?」

杏は首を傾げる。沙耶が説明する。

「天の梯子———ガストレアの脅威に対抗すべく作られた超巨大兵器。ガストレア大戦末期に完成を見たが、ガストレアの侵攻により施設か らの撤退を余儀なくされ、試運転すら行われることなく終戦を迎えた。1.5キロもの全長を誇る線形超電磁投射装置——レールガンモジュールで、直径800ミリ以下の金属飛翔体を亜光速まで加速して撃ち出すことが可能。バラニウム徹甲弾を飛翔体とすることで、『ゾディアック』ガストレアに対する有力な対抗手段となる」



「蒼太。私達は何をすれば良いんです?」

茉里亜は心配そうに蒼太を見上げる。それと同時に、夏世も見上げる。
先程、休んでいた三人に聖天子から連絡を貰ったのだ。

「滝沢さん。ゾディアックは姿を現したと聞いています。だとすれば、私達の出る幕はありません。何も——出来ません」

まだ将監の死を引きずっているのだろう。表情が暗い。

「蓮太郎君が天の梯子で倒すんだって。僕達はその邪魔をするガストレアの駆除をするんだ」

「滝沢さん、まさかその為に....?」

夏世は蒼太の方を見る。

「ん?そうだね。なんとなくその気はしてたからね」

「それでは、Let's go です‼︎」



沙耶達四人は天の梯子に着いた。

「沙耶、此処が......」

杏は天の梯子を見上げる。

「うん。天の梯子だね」

沙耶も同じように見上げる。

「私達で出来るのかなぁ」

杏はとても心配している様子だ。
そこへ延珠が杏の手を握って、

「杏、妾達には誰がついてると思っておるのだ?
妾達には、蓮太郎という、お方がいるではないか?」

「撃つのは木更さんがやるみたいだから、俺たちは何もしねぇよ」

沙耶達は天の梯子の内部へと足を運ばせた。



『里見君。大丈夫、問題はないわ。此方から撃つことが出来る』

木更からの連絡を受け、安心する四人。
天の梯子は起動を始めていく。

『まずいわ、里見君。チャンバー部に異常を伝える表示が出てるわ』

「どういう事だよッ」

「異常.......もしかしたらバラニウム徹甲弾が装填されてないのかも」

「嘘.....」

「蓮太郎君。行ってみ.....うッ」

沙耶が蓮太郎にもたれ掛かる。

「沙耶....?」

沙耶は脳裏で菫が言っていたことを思い出す。

『君の命に関わるかもしれないんだぞッ』

「体内侵食率が、上がったかもしれない。でも、蓮太郎君?私のことはいいから、早く行こう」

「ああ」

沙耶は蓮太郎に肩を借りながら進んで行った。



「くそッ弾がないッ」

「どうする、蓮太郎?」

『里見君。遠隔操作を受け付けないの』

「磁場の影響....」

『里見君......沙耶ちゃん』

「超バラニウムなら....いいんだよね?」

沙耶は自分の左腕の本来なら上腕二頭筋がある辺りを探る。
しかしその手を蓮太郎が止めた。

「駄目だ。沙耶の状態は悪い。バラニウムの義手を付け替えたら沙耶の状態は悪化する」

「でもッ」

「大丈夫なのだ、沙耶ッ蓮太郎が成し遂げてくれる」

「延珠ちゃん.....」

「お姉ちゃんの言う通り。沙耶は自分の方を大切にして?」

「杏....」

「沙耶は死なせねぇ。お前はやる事はまだ沢山あるんだ」

「やる事?」

「俺が撃つ。沙耶は指示を出してくれ」

「.......え?」

「この状態だったら撃つ事は出来ない。...........やってくれるか?」

「うん」

蓮太郎が自分の上腕二頭筋がある辺りを探り、義手を自分から外す。

「ぐあッ」

いくら義手で有ろうとも自身の一部。流石に痛い。

適合検査にかける。

「蓮太郎さん、適合です」

『艦船室から以外は受け付けませんッ』

『聞いた?里見君』

蓮太郎達は艦船室へ移動する。

『お願い。君がやって』

「蓮太郎さん....」

『おね...........みくん......世界.......救って....』

そこで通話が切れた。

「木更さんッ?おいッ木更さんッ」

延珠達が心配そうに蓮太郎を見つめる。

「蓮太郎......」

蓮太郎は操縦席に座る。
すると左手が固定された。

「利き手ではない手に極度の緊張.....
コンディションは最悪です....」

杏は心配そうだ。
沙耶は全神経を脳に集中させる。

「距離50キロ。 あっちは動いてる。つまり相手の動きを予測していけば.....」

スコーピオンは動き続けたままで、一向に止まる気がしない。

「無理だッ。俺には....俺には出来ないッ」

延珠が蓮太郎に歩み寄る。

「蓮太郎には出来る」

「もしも外したら大惨事になる.....」

延珠の手が蓮太郎の左手にのる。

「蓮太郎が世界を救える。
他の誰でもない。蓮太郎が」

杏の手も蓮太郎の腕に置かれる。

「蓮太郎さんなら、必ず出来ます」

沙耶は蓮太郎の肩にのせる。

「蓮太郎君。行くよ。
私が“今”って言った直後に撃って」

「ああ」

蓮太郎はそれぞれの顔を見る。

「俺は延珠を.....杏を、沙耶を失いたくない」

延珠がほっぺを膨らませる。

「むぅ〜 一つはっきりしようじゃないか。
ふぃあんせの妾はlove で、杏と沙耶はlike だよな?」

三人は微笑む。

「ばぁーか。10歳のガキが愛を語るんじゃねえよ」

「延珠ちゃんらしいね」

「ほんとです。お姉ちゃんらしくてほっとします」

もう一度それぞれの顔を見る。

「ありがとう。みんな」

沙耶はモニターのスコーピオンを見る。

この角度....この動き.....

「今ッ」

四人が引き金に手をかける。

「「「「行っけ—————」」」」

蓮太郎の義手、超バラニウムはスコーピオンに向かって物凄い勢いで一直線にレールガンモジュールから放たれる。

辺り一面が真っ白の光に覆われる。

威力も強く、その反動は大きい。

「うわッ」

眩しいが四人は弾の先———スコーピオンを見る。

超バラニウム弾は、スコーピオンに命中。



ステージVガストレア、“天蠍宮”(スコーピオン)は里見蓮太郎、藍原延珠ペアと神代沙耶、藍原杏ペアによって撃破された。



こんにちは。いや、こんばんは。ん?おはようございます。(笑)
お久しぶりです。クルミです。前回よりも少し早い更新だった気がします。
蛭子影胤vs天童民間警備会社、終わりました‼︎
スコーピオンまで撃破してもらい、上機嫌です^ ^
次回は第一章『神を目指した者』の最終話です。
それでは、今後ともご愛読、お願いします。
御意見、感想など待っています。
少しでも良いので是非是非お願いします。


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第九話 離れる者 近づく者

あの闘いから数日が経った日のこと。
沙耶と蓮太郎、木更は聖居に来ていた。

事の始まりは今朝だ。
顔ぐらいは出そうと思い、出勤すると、

『今から直ぐでいいから聖居に来て』

と木更に言われたのだ。片手に真っ白なフォーマルスーツを持って。
延珠と杏は菫の死体安置所(アジト)で侵食率検査を受けなければいけない為、行くことができないらしい。(個人的に騒がしくなるだろうと思ったが)

そして今、現在の状況。
沙耶と木更の目の前にはドレスや高級そうなスーツを着込んだ人達ばかりだ。
木更は豪華なドレス、沙耶はいつもの格好だ。
そして蓮太郎はというと.....

「来た」

今日の叙勲式の主役、蓮太郎は入り口の扉から出て来た。
嫌々だろうが、フォーマルスーツを着ている。

「似合ってない.....」

沙耶がポツリと呟く。
選んだ張本人の木更は

「そ、そんなことないわ」

と言いながらも笑いを堪えている。

「沙耶ちゃんも今日の主役なんだからね。ほらほら」

木更に押されながら蓮太郎の隣に行く。

「うん。社長として誇らしいわ」

木更が堂々と頷きながら前にいた場所へと歩いて行った。

沙耶は、前はボロクソ言ってたのにな、と思いながら蓮太郎を見る。
蓮太郎と一緒に玉座に座っている聖天子を見る。

「里見さん、神代さん、貴方方はこれからも東京エリア存続のため尽力してくださいますか?」

「「はい。必ず」」

今日の蓮太郎はやけに大人しい。
先程、木更に失礼な事がないように、と言われたからだ。

「貴方方の今回の功績、ゾディアック“天蠍宮(スコーピオン)”及び、元序列134位の蛭子影胤、蛭子小比奈の撃破。以上を称え私とIISOは協議の結果、この戦果を『特一級戦果』と判断しました。よって里見蓮太郎、藍原延珠ペアのIP序列を1000番まで、神代沙耶、藍原杏ペアを1100番まで昇格させることを決定しました」

会場は拍手と歓声に包まれる。
木更は頷きながら

「里見君、いい調子よ。あともう少しの辛抱よ」

と呟く。

「では最後に貴方方から質問はありませんか?」

沙耶は

「いえ、ありません」

と言い、蓮太郎の方を見る。
彼が同じことを言うのを待っていた。
しかし、彼は彼。
やはり彼はそのままだった。

「はい、あります」

会場が騒然となる。

「ちょ、蓮太郎君.....」

聖天子は彼の瞳を見て、

「聞きましょう」

と言った。

「俺達はケースの中身を見た」

その瞬間、彼女の形相が変わった。
沙耶はこのままではまずいと思い、蓮太郎を止めようとする。

「蓮太郎君.....」

「スコーピオンを倒したあと、教会でケースを取り返し、開けたんだ。中には────壊れた、三輪車が入っていた。
聖天子様、どういうことなんだ。なんであれがステージⅤを喚び出す触媒に成り得たんだッ?
そもそも、ガストレアって一体何なんだッ教えてくれ、聖天子様ッ」

それは沙耶も気にはなっていた。

「それは....お教えできません」

「出来ないって...」

「民警には序列が向上するごとに様々な特権が与えられます。擬似階級から機密情報アクセスキー。里見さんや神代さんのアクセスレベルは三です。IP序列十番以内に入れば最高のアクセスレベルが与えられます。里見さん、貴方がそれを知るのは今では有りません」

聖天子はもう一度、彼を見た。

「 強くなりなさい。
里見さんが里見貴春(さとみたかはる)里見舞風優(さとみまふゆ)の息子を......
神代さんが神代宅馬(かみよたくま)神代由美(かみよゆみ)の娘を名乗るのなら......
貴方方はそれを知る義務があります」

二人の表情が険しくなる。

「なんで..........?」

「どういう事だよッ‼︎どうして、どうして俺の両親の名前が此処で出てくんだッ」

蓮太郎は聖天子に掴みかからんばかりの勢いだ。
沙耶が蓮太郎の身体を掴む。

「蓮太郎君ッ 此処で聖天子様に掴みかかれば不敬罪で処刑されるッ」

蓮太郎の動きが止まる。
蓮太郎は踵を返し、聖居を後にする。
沙耶も彼に着いていく。

「え?ちょっと、里見君に沙耶ちゃん⁉︎」

木更は急いで跡を追う。



沙耶は気持ちを落ち着かせる為に午後からだが、学校に顔を出した。

いつもと同じ景色。だけど、いつもと違う。

それはきっと.....クラスメイトの此方を見る目だろう。
予想はしていたが、やはりこうなった。
今回の闘いで、自分がガストレアウイルス宿主だと周囲にバレたのだろう。

()()()()()?今からお昼なんだけど、屋上行かない?」

声のする方を見る。
すると一人の女子高生が立っていた。

「うわッ見ろよ彼奴。神代と話してるぜ」

「あんな近くにいたらウイルスが移っちゃう」

「ほんとほんと。同じクラスなだけでも嫌なのに」

クラスメイトが二人を遠ざけていく。
杏達もあの時、辛かったのだろう。

私は理解者がいるだけ、ましな方だ。

「ののちゃん.....」

彼女は藍南乃々葉(あいなののは)
沙耶の唯一の友達だ。
ガストレア因子を宿している自分の事を普通の人と変わりなく接してくれる。
彼女も家族をガストレアに奪われたのに......



頬に当たる風が気持ち良い。
屋上の柵に手をかけ、今日までの出来事を思い出す。

ふと、杏達、呪われた子供達について考えていた。

一体、彼女達は何なのだろう。


『お前、プロモーターなら道具はどうした。イニシエーターだよ』

伊熊将監。防衛省に行った時の出来事だ。

違う。彼女達は道具ではない。


『



盗みを犯した上に、声を掛けた警備員を半殺しにしたんだ!東京エリアのゴミめ!』

勾田小学校からの帰り道。盗みを犯したという少女を追いかけていた男性が言っていた。

東京エリアのゴミ?彼女達はちゃんと生きている。


『彼女達はホモサピエンスを超えた次世代の人類だ』

蛭子影胤。確かその後、杏と延珠ちゃんがガストレア因子を宿しているとバレてしまったのだ。

次世代の人類。これも違う。今を生きている。


『ガストレアと人類を繋ぐメッセンジャー。神の代理人』

これは私だ。何かを調べていたら出て来たのだ。


『延珠達は人間だッ!決してそれ以上でもそれ以下でもねぇッ』

私が神の代理人だと言った直後、蓮太郎君が言っていた。

確かにその通りだと思う。でも、本当にそうなのだろうか。私も同じ者として、そう思って欲しいだけではないのだろうか。


『違うッ!妾達はガストレアではない!』

『私達は人間ッ』

学校に来るなと言われた二人。あの光景はいつ思い出しても苦しくなる。

まだ十歳で、きっと辛かっただろう。


『妾達は...それでも戦わないといけないのか?』

昨日まで仲良くしていた人達が一斉に敵になった時、延珠ちゃんが蓮太郎君に聞いたのだ。

彼女達はイニシエーターとして戦う事が宿命なのだろうか。


『人類最後の希望だ』

闘いにいく前にどうしても気になって室戸先生に質問したのだった。

人類最強の希望。確かにその通りだ。彼女達がいなければ、今、この世界はなかった可能性が高い。



「さっちゃん?どうしたの?早くしないと昼休憩、終わっちゃうよ?」

ベンチに座っている乃々葉が首を傾げる。
沙耶も隣に座る。

「ごめん」

直ぐに弁当箱を開けようとする。

「ねぇ、さっちゃん」

「ん?」

乃々葉の方を見るが、本人は真っ直ぐ前を見据えて表情がよく分からない。

「気にしなくて良いんだよ」

「え......」

沙耶は乃々葉が見ている方を向く。

「さっちゃんは、人間なんだから。ちゃんとした」

何も答える事が出来ない。
付き合って10年位は経つだろう。
考えている事ぐらい相手に分かってしまうのだろうか。

「........ありがとう」

本当に良い友人を持ったと思う。
世界中の人が彼女と同じ考えだったらな、と思った。
そんな世界を作る為に、ガストレアの存在を無くし、杏達が差別無しで生きられる世界にしよう、と、再び誓った。



学校帰り。木更に呼び出された沙耶は天童民間警備会社に出勤した。

部屋の中を見ると、少ない社員が全員集まっていた。

「木更〜一体何の用なのだ?」

木更は誇らしそうな顔をしながら

「みんな聞いて」

と言いながら扉を開けた。
其処には、夏世と千代が少し恥ずかしそうに立っていた。

「え?千代ちゃん?」

二人は社内に入ってくる。

「今日から此処で働くことになりました、柊千代です」

「千代さんのイニシエーターの千寿夏世です。宜しくお願い致します」

二人は礼儀正しく礼をする。

「二人は五万位からのスタートよ。頑張って」

「頑張ろうね」

「はい」

「妾の後輩が、また増えたのだ〜」

「夏世ちゃん、此方こそよろしくね」

イニシエーター二人は夏世の入社を喜んでいる様子だ。

「千代ちゃん?」

「知らなかったんですか、先生。私、民警ライセンス、持ってるんですよ?」

沙耶は二人の入社に驚いていた。

「嘘だろ.....元々少ない給料が、もっと減る.....」

蓮太郎は悲しそうだ。

「あッ‼︎」

急に沙耶が大声を出したので、周囲は驚いた。

「沙耶、いきなり騒いで、どうしたのだ?」

沙耶は自分の椅子に座りながら、

「言わなきゃいけないこと、忘れてた......」

と言った。

「言わなきゃいけないこと?」

沙耶は蓮太郎を立たせ、自分は彼の目の前に姿勢良く立った。
全員が急な行動に唖然としている。

「里見蓮太郎。私の命、貴方にお預け致します」

「はぁ?」

「聖天子様から、プロモーターを続けるなら、誰かのイニシエーターにならないといけなくなって......」

「勝手すぎる」

沙耶はもう一度姿勢を正しくし、

「里見蓮太郎。私の命、貴方にお預け致します」

と再びお願いした。

「あぁ。分かったよ。分かった」

「改めてよろしくね。蓮太郎君」

「そうそう。滝沢君がね、私達に協力するって」

いきなり木更が話を変えた。

「蒼太君が?」

「まだ未所属のままってことだよね」

「でも良いじゃない。これで我が社も儲かるわ」

一段と嬉しそうな木更。
こんなに嬉しそうなのは久し振りに見た気がする。

「此れから賑やかになるなぁ〜」

「元々、お前のお陰で賑やかだけどな」

「おッ褒め言葉か?」

「ちげーよ。逆だ。騒がしいってことだ」

社員全員が笑っている状況を見て、此れから何も起こらない事を祈った沙耶だった。



木更に協力すると連絡した蒼太は一人、とあるファミレスに来ていた。

「あーあ。面倒な事になった」

ついつい、ポツリと呟いてしまった。

「ま、此れが上からの指令だし、いっか」

蒼太は何も注文しないまま、そのファミレスを後にした。





叙勲式の翌日。沙耶達は菫のアジトへ来ていた。イニシエーター達の侵食率検査の結果が出たからだ。
少し真面目な話なので、延珠と杏は公園で待たせている。

「先生?どうだったんだ?」

菫は二人にそれぞれのカルテを見せる。

「沙耶ちゃんは義手を使ったから少し上がってしまったよ」

元々8%だったが、12%に上がっていた。

「御免なさい....」

「やはり沙耶ちゃんだね。使うだろうとは思っていたよ」

「これからは気をつけます」

菫は頷きながら

「そうしてくれるとありがたい」

と言った。
沙耶と菫は真剣な顔でカルテを見ている蓮太郎の方を向く。
二人の視線に気付いたのか、彼は顔を上げた。

「先生。これって......」

「杏ちゃんの方はいつもと同じ位で特に変化はなかったよ」

沙耶は安心する。
杏の侵食率は24.9%で、以前よりあまり変わっていない。

「しかし、問題は延珠ちゃんだ」



「蓮太郎〜遅いぞ〜」

「沙耶、どうだった?」

沙耶は杏の頭に手を乗せ、

「24.9%で殆ど変わらないよ」

と言った。

「良かった〜」

「蓮太郎。妾はどうだったのだ?」

「杏と同じだ」

延珠は頬を膨らませ

「な〜んだ。殆ど変わってないのだな」

と言いながらボロアパートへと帰っていく。

「お姉ちゃん、待ってよ〜」

杏も姉の後を追う。

その時だった。

“カランッ”

何かが落ちる音がした。
沙耶と蓮太郎が音の主を探す。
それは.....

『妾達の間で流行中の天誅ガールズのブレスレットだ!仲間を欺いたり嘘をついたりするとヒビが入って割れるのだ!』

いつか貰ったピンクのブレスレット。
そのブレスレットが割れていたのだ。

二人は息を呑む。

そう。割れた、と言うことは.......





藍原延珠 診断カルテ
体内侵食率 42.1%
形状崩壊予測数 残7.2%
・本人には実際よりも低い値を伝える事にする
・医師としてではなく、友人として警告する。
蓮太郎君、これ以上彼女を戦わせるな。



こんばんは‼︎何と、前回の更新の次の日に更新という、過去最短記録です。
第一章の最終話です。私はアニメで“ブラックブレット”を知ったのですが、友人に本を借りて読んでみたら、最後のブレスレットの所、彼処が凄い印象的で。ついつい、書いてしまいました。診断カルテの菫の言葉。彼処も覚えていました。
登場人物紹介を新たに更新します。天童民間警備会社、人が増えていきますね。そして、蒼太です。あれ?なんか知らないけど、闇堕ち?今後の彼に期待です☆
それでは、此処までのご愛読、有難うございました。御意見、御感想など、どしどしお待ちしております。是非是非、宜しくお願い致します。
次章『vs神算鬼謀の狙撃兵』お楽しみに‼︎


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第二章 vs神算鬼謀の狙撃兵 第一話 宴のその後に

何でこうなったのだろう。
目の前を見て、ふと考えてしまう。
自分はつい最近倒したゾディアックガストレアについて調べようと思い、研究所に行きたかったのではなかったのか。

———目の前には、何やら楽しそうな人たち。

事の始まりは三十分前......

「沙耶ちゃん。ちょっといいかしら」

顔ぐらいは出しておこうと会社に出勤したら、木更に呼び止められたのだ。

「何?用事があるんだけど」

すると延珠がそばへ寄って来た。

「今から焼肉パーティーするのだっ」

「先日の闘いに勝利したお祝いと、新入社員歓迎のパーティーらしいです」

「焼肉♡焼肉♡」

はしゃいでいる社長とツインテールの少女とは裏腹に、落ち着いている新入社員の少女。
何方が先輩なのか分からなくなりそうだ。

「茉里亜ちゃんと蒼太さんも来るって」

「先生、絶対食べますよね?」

抜けれない状態になった、と思ってしまった。
ふと、一人足りない事に気がつく。

「あれ?蓮太郎君は?」

周囲を見渡してもいない。

「蓮太郎先輩は買い出しですよ」

買い物に駆り出された男子高校生。可哀想だ。

「ただいま......」

「えんじゅー。久しぶりです」

「今日は呼んでくれてありがとうね。木更」

蓮太郎だけだと思っていたが、茉里亜と蒼太もいた。

「あれ?駆り出されたのは蓮太郎君だけじゃないの?」

「僕達は、来る途中に合流したんだ」

何処からかホットプレートを出し、早速お肉を焼き始めている木更は何だか嬉しそうだ。

「お肉♡お肉♡久しぶりのお肉♡」

「妾もだぞ!まさかタダで焼肉パーティーが出来るとは思ってもみなかったぞ」

「タダ......?」

タダというのは可笑しすぎるのではないか。会社のお金なのだからタダにはならないだろう。

「そうなのよ!沙耶ちゃんってお金持ちね〜」

「.......は?」

蓮太郎は頭を抱えている。

「それ、言ったらいけないだろうが.....」

杏も頷きながら

「社長さんもお姉ちゃんも普通に言うんだ......」

「まさか......」

「はい。私が先生の食費とホットプレートを出し......凄い剣幕です......よ?」

「私の食費......」

いくら自分の従姉妹であり、助手であろうとも大切な食費を盗られて怒らないわけがない。

「神代さんは我が儘ですね。杏さんは快く許可してくれたのに」

「沙耶はお椀が狭いです」

日常茶飯事である茉里亜のあやふやな日本語も、今日は苛ついてしまう。

「茉里亜!其れを言うならお皿が狭い、なのだ!」

いつも明るい延珠の声も、今日はむかついてしまう。

「茉里亜も延珠も間違ってるよ。正解は器が狭い、だからね?」

溜息をつき、二人に呆れる蒼太。

「沙耶さんは器が狭いですね」

「ほんとほんと!器が狭いわ」

「俺たちよりお金があんだからちょっとぐらい良いだろ。器、狭いな」

此れだけ散々言われたら、沙耶も我慢の限界。

「器、器、うるさいわッお金がある訳でもないし。そもそも食費は民警での給料だし、蓮太郎君たちと変わんないし。
あーもう。好きにしてッ」

そこにいる全員が呆然としていた。みんな、情けなく口を開けている。

「さあ、お肉が焼けたわよ!食べないと焦げるわ」

木更の声に全員が我に返る。

「木更〜妾たちにも分けるのだ!其れに、木更はそのおっぱいで何日も生きられるであろう!」

「なッ......そんな訳、ないでしょ」

「お前ら、焦げるぞ」

「私はここのお肉が良いです。蓮太郎先輩、とって下さい」

「千代さん。自分で取った方が早いと思います」

「ん!このお肉、おいひいでしゅ」

「茉里亜、飲み込んでから喋ってね?行儀悪い」

人のお金で買ったお肉で騒いでいる人たちの輪から、杏がお皿を持って自分の席にいた沙耶のほうへやって来た。

「沙耶?食べないの?もしかして、まだ怒ってる?」

杏が心配そうに聞いてくる。沙耶はそんな彼女に申し訳ないと思いながら

「ううん。もう大丈夫だよ。それより、持って来てくれてありがとう」

「よかった〜まだ怒ってるんだと思った。
みんなと一緒に食べようよ」

杏は安心したのか、笑顔になっていた。

「私は此処が良いかな。杏は向こうに行ってて良いよ?」

「うん!分かった!」

杏は蓮太郎たちの輪に入っていく。

「杏!天誅ガールズについて話そうぞ!」

延珠の声に反応した夏世は首を傾げている。

「天誅ガールズは、どの様な話なのですか?」

「天誅ガールズはアニメです!」

元気よく答えた茉里亜にイニシエーターたちが顔を見合わせる。

「アニメだという事は分かっています」

「そうだ!今度、みんなで天誅ガールズの格好をしようではないか!」

「良いね!それ」

幼い子たちは天誅ガールズの話で盛り上がっている。
蓮太郎と木更と千代は時折、彼女たちの可愛らしい話を聞きながら、何か話している。
賑やかになったな、と沙耶は思った。



「どうしたの?何か考え事?」

振り返ると蒼太が立っていた。
沙耶の隣の席の椅子を引きながら聞いてきた。

「別に。なんか賑やかになったな、と思って」

「良いんじゃない?それもそれで」

うっすら口元に笑みを浮かばせながら言った。

「そうかなぁ」

「でもほら、むかついた時とか、苦しい時とか、不安な時とかはさ、笑顔になれるじゃん?」

確かに、さっきまではむかついて、笑える状態では無かったが、今は笑える。

「.......そうかも」

蒼太は満面の笑みで

「うん。素直でよろしい」

と言い、沙耶の頭を撫でた。

(そういうの弱いって知ってるじゃん)

「..........バカ」

「さ、食べよ。冷めちゃう」

「うん」





焼肉パーティーの後、沙耶は千代と一緒にホットプレートを置きに研究所へ行った。
外はすっかり暗くなっている。
じゃんけんの結果、負けた二人が片付けをする事になったのだ。

「先生」

「ん?どうしたの?」

「先生は10年前の事、憶えていますか?」

10年前。其れは二人にとって一生忘れることの出来ない、辛くて、でも大切な思い出だ。

その出来事が鮮明に蘇ってくる。




沙耶が家族を失ってから、父親の弟で、母親の実家、柊家に養子に入った宅造が引き取った。

『私は今まで沙耶に酷いことをした。研究者として、否、ヒトとして。
だから、私にその責任を負わして欲しい』

其処には宅造だけではなく、彼の愛娘の千代もいた。
まだ4歳だった。

『よろしくね。おねーちゃん』

第一次関東会戦によって、柊家の生存者は宅造と千代だけだった。
二人とも、地下にある研究所にいた為、被害に遭うこともなく、食料もそこそこあり、飢え死にする事も無かった。



沙耶が柊研究所で暮らし始めて数日後のことだった。
その日は良く晴れていた。
遊ぶには絶好のタイミングだった。

柊研究所は中心部に比較的近い位置の街にある。
街は壊滅的な状態だったが、ガストレアの姿を確認したのは2週間前程の事だったし、最近は数も減っていたので残った住人は安心して暮らしていた。
だからこそ、気を付けなくてはならなかった。
ガストレアに対しての対策がこの街には無かった。

『おねーちゃん。かくれんぼしよ!」

『うん。いいよ』

ガストレアに母親を殺された沙耶は兎も角、まだ幼い千代には、ガストレアの恐さなど分かっていなかった。

『じゃんけん、ポンッ』

沙耶はグー、千代はパーだった。

『おねーちゃんがおに!』

『いーち、にーい、さーん、しーい』

辺りは瓦礫か、家しかない。
非常に隠れやすかった。

ヒトも、ガストレアも。

『ろくじゅう!
もーいーかい?』

聞こえるように大きな声で言う。
しかし、返答が無かった。

『もーいーかい?』

10回言ったが、返答が返ってこない。
遠くには行かないと約束していた。
4歳ながら、約束は絶対守る子だった。

だから、余計心配になった。

わざと答えていないのかもしれない。
寝ているのかもしれない。
答え方を忘れたか、もしくは知らないのかもしれない。
遠くに行ったのかもしれない。


ガストレアに出会ったのかもしれない。

沙耶は走り出した。

『千代ちゃんッ』

走り続けた。

『千代ちゃんッ』

疲れた。

『千代ちゃんッ』

走らなきゃ。

『千代ちゃんッ』

瓦礫の裏も、家の裏も 、隠れれる場所は全て探した。

『千代ちゃんッ』

見つけた。

『ッ』

千代はいた。
でも……()()もいた。

『ガストレア......』

犬のようなガストレアだった。
そのガストレアは千代の片方の靴を咥えていた。

千代は、恐くて、動けないようだ。
腰を抜かしている。

ガストレアと千代の間は3メートル程。
ガストレアは千代の方へと、一歩ずつ、一歩ずつ進んでいる。

沙耶は無意識に走り出していた。

『危ないッ』

ガストレアが噛み付こうとするのと、沙耶が千代の前に立ったのは、同じタイミングだった。

『うッ』

『おねーちゃんッ』

何回も図突かれたり、噛まれたりされた。

初めは痛いと思っていた沙耶もどんどん感覚が無くなっていく。
視界がぼやける。

千代が泣いていた。





数日後、ガストレアに人間は敗北した。
豊富な知識も、ガストレアには通用しなかった。





目を覚ますと、真っ先に病院の天井が見えた。

(あれ......?)

左手脚と右眼がズキズキする。

(私、生きてるの?)

『やあ。室戸菫だよ。覚えているかい?』

沙耶は首を横に振った。

『覚えていないかい?そうか.....』

菫は急に黙り込んだ。
表情からして、何か考えているとだと思う。

『君は手術直前、一度だけ目を覚ました。
その時、私は君に聞いたんだ』

『君は助からない。ただ、生きる方法もある、とね』

『生きる....方法?』

『生きるのなら、君には命以外の全てを差し出して貰わなければならない』

『君は生きる方を選択した』

『君のご家族にも話したが、生きる方法、其れは、新人類創造計画だ』

『新人類創造計画?』

『ああ、そうだ。身体を起こせるかい?』

沙耶はコクリと小さく頷いた。

(何.....これ......)

自分の身体を見て目を見開いた。
沙耶の左手脚は黒色の義肢になっていた。
菫に鏡を貰い、自分の顔を見た。
右眼も黒い義眼になっていた。

『新人類創造計画の機械化兵士だ』

菫は部屋を出て行った。

『おねーちゃん』

か細い声がドアの向こうから聞こえる。

『千代ちゃん?入ってきていいよ』

涙で顔がくしゃくしゃになった千代が入ってきた。

『おねーちゃん。ごめんなさい。わたしのせい、わたしのせいで.....』

沙耶は痛い身体を無理矢理動かして千代の頭を撫でた。

『ううん。千代ちゃんのせいじゃないよ。私のせい』

俯いていた千代が顔を上げる。

『おねーちゃん......の.....?』

沙耶は可愛い妹ににっこり微笑みかけた。

『うん。私が弱いから。強かったら、ガストレアに勝てたんだよ。きっと。
だから私は、強くなる。誰にも、何にも負けない。強くなって、今度こそは、大切なものを守るんだ』

千代は泣くのをやめた。その代わりに、微笑み始めた。

『わたしもつよくなって、ガストレアにかつ。おねーちゃんといっしょに』

『二人で頑張ろう?ガストレアをこの世界から無くして、みんなが、安心して笑顔で暮らせるように』

『うん!』





其れから、沙耶は宅造の知り合いの天童家へ戦闘術を。
千代は宅造から神代式神槍術を学んだ。





「忘れてた」

「何を.....ですか?」

「私が民警を目指した理由」

「私もです」

千代は少し恥ずかしそうに言った。

「先生は、怒っていますか?恨んでいますか?」

「何を?」

沙耶は分かっていた。
誰のことかを。
でも、聞いた。
そうであって欲しくなかったからだ。

「私です」

やっぱりな、と沙耶は思った。
身体の傷は直ぐに消える。
しかし、何年経っても心の傷は消えたりしない。

「怒ってないし、恨んでもいない」

「え....」

「だって、他の人よりも強くなれるじゃない?夢に一歩、近くなる」

暗くてよく見えなかったが、千代は笑ったのだと思う。

「先生らしいです。その考え」

「そう?ありがと」

(あの頃の、自分に伝えたいな。私達には、沢山、仲間が出来るんだよって)





焼き肉パーティーの翌日。
その日は木更からの電話で目覚めた。

『起きてる?沙耶ちゃん』

電話の向こうの木更は少し焦っている。

「今起きたところ。其れより何?」

電話の着信音で起きてしまったのだろう。
杏が側へ寄ってきた。

『聖天子様が、里見君と沙耶ちゃんに話があるって』

「話?聖天子様が?」

杏は不安そうに沙耶のトレーナーの裾を掴んだ。

『ええ。だから、直ぐに行って欲しいの。出来れば、里見君と沙耶ちゃんだけで』

「分かった」


其れが再び始まる恐怖への始まりだとは、誰も思っていなかった。
勿論、聖天子様も。



こんにちは!こんばんは!クルミです。お久し振りでございます。
先ずは謝罪を。
この度、中々更新出来ず、誠に申し訳御座いません。最上級生、受験生となりました。忙しくて忙しくて筆が進みませんでした。この場合は手が進まない、ですかね?
謝罪はこの辺にして。
どうでしたか?二章に突入でございます。
でも今回は少しほのぼのとした、でもシリアスな話です。
沙耶が何故、機械化兵士になったのか、何故、民警を目指したのかが明らかになりました。
沙耶の過去についてはあと二つぐらい書かなければいけません。
宅造が何故出てこないのか、そして沙耶の父親は今何をしているのか、其れは楽しみにしていて下さい。
話の内容は大方決まっているんですけど、其れを形にするのが難しくて難しくて.....
自分なりに頑張っていきますので、御付き合い下さい。お願いします。
其れでは、後書きはこの辺で。後書きは、手が進むのになぁ。頑張ります。
感想、評価、どしどしお待ちしております。どんな些細なことでも、大きなことでも、教えて下さい。言われたことは其れなりにやっていこうと思っていますので。
では。また次話で会いましょう‼︎


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