DOG DAYS ~矛盾の退魔師~ (抹茶屋)
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一章 勇者召喚
1話目 落ちた先には……『上』


 アニメの影響半端ない出始めた、ニワカの作品。

『無理って方は……ブラウザーバックを推奨します』


 春が告げる桜の木が花弁をちらつかせながら、校門から入ってくる生徒たちを歓迎している。

 

 生徒たちは、明日から春休みが待っていることに胸を弾ませ、親しい友人と今後の春休みの過ごし方について、話し合っていた。

 

 そんな生徒たちを、屋上から見下ろしながら、一人の少年《(ひいらぎ) 夜天(よぞら)》は、フェンスの外側の塀で寝転んでいた。

 

 

「朝からうるさい奴等だなぁ」

 

 

 天気が良く、雲ひとつない晴天な青空。こんな日は、屋上で寝るに限る。太陽の光を体全体に感じながらも、丁度いいタイミングで風が吹くため、程よい体温を保つことができた。

 

 そのまま瞼を閉じようとした矢先に、一際目立つ二人の生徒が、校門から入ってきた。

 

 一人はやや長めの髪型をした、金髪の男。名前は《シンク・イズミ》。もう一人は、金髪ツインテールをした女。名前は《レベッカ・アンダーソン》。

 

 二人はよく一緒に登校しており、金髪なためか、他の人よりもかなり目立つ。

 

 

「真ッ金々カップルか……眩しくて目がイテェ……寝よ」

 

 

 夜天は今度はしっかりと目を閉じた。案の定、すぐに眠りにつくことができた。

 

 

 

 朝のためか、思っていたよりも、早くに起きてしまった。夜天はコンクリの上で寝ていたため、背筋がジンジンと痛む。

 

 

「~~~ッン!」

 

 

 立ち上がり、両腕を上に目一杯に上げる。

 

 

 それと同時だった。

 

 

 強い風が吹いた。タイミングは最悪、夜天のバランスが崩れ、背筋を伸ばしたまま、塀から離れてしまった。

 

 

「やっべ、この高さは流石に死ぬな」

 

 

 しかし、夜天は諦めず、背筋を伸ばすのをやめ、懐を漁り何かを探し始めた。だが、落ちる速度はG(重力)の加算で早さが増している。

 

 

「あっ間に合わねぇ……」

 

 

 夜天が死を受け入れた時だった。二階の窓から、バク宙をして現れた、朝の金髪カップルの一人、《シンク・イズミ》が……。

 

 

「よっ!」

 

「えっ?」

 

 

 いきなり空から降ってきた夜天に挨拶されたシンクは、当たり前のように驚いた声を上げた。さらに、驚く展開が二人を襲った。

 

 いつからいたのか、二人が落ちる真下に、犬が立っている。別に犬がいるのに、驚いたのではなく、その犬の下に刺さっている短剣を中心として、魔方陣みたいなのが、展開されていたことに、夜天とシンクは驚いていた。

 

 

「えっ?!」

 

「へっ?!」

 

 

 二人とも間抜けな声を出しながら、その魔方陣の中心に吸い込まれるように落ちた。

 

 落ちた先はよくわからない空間だった。辺りを見渡しても、一緒に落ちたシンクと、これを起こした犯人かもしれない犬以外は、何も見えない。

 

 

「……取り敢えず自己紹介、柊 夜天と申します」

 

「あっこれは御丁寧に、僕はシンク・イズミです」

 

 

 呑気に二人は、自己紹介を済ませると、それを合図に、何もなかった空間から脱し、視界が開けた。




ブラックブレットも投稿しています。
よかったら見ていってください


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2話目 落ちた先にはビスコッティ?!(下) 

 三話まで続けます。そのあとはブラックブレットの方を進めたいと思います。

 誤字脱字がありましたらどうかお教えください。


「おぉ……」

 

 

 目の前の光景に夜天(よぞら)は、目を奪われた。

 

 そこは、今まで住んできた日本とはこと離れた世界。日本では『島』が浮かんでいるわけがないのだから、そう思うのも無理はない。

 

 一方、一緒に魔方陣に飛び込んでしまったシンクは……。

 

 

「おおぉぉおえええぇぇぇぇぇえええッ?!」

 

 

 驚きと絶叫が混ざったよくわからない感情を声にしていた。

 

 

「シンク、短い間だったけど楽しかったよ」

 

「いや、まだ諦めることはないよ!」

 

「いやいや、このスピードで落ちれば、確実に死ぬって」

 

「………だいじょーぶ」

 

 

 口ではそう言っているが、目がもう諦めているのが手に取るようにわかる。地面もすぐそこまで来ている。

 

 

「仕方ないなッと!」

 

 

 夜天は懐から、一枚の紙を取りだし、それを落ちる場所に投げた。……が、その紙は、風圧に押し負け、夜天たちの上を通り過ぎでしまった。

 

 

「所詮紙だしな、仕方ないか」

 

 

 夜天とシンクは、抗うことも叶わずに、墜落した。

 

 

「あれ? 死んでない」

 

「イテテェ……ん?」

 

 

 シンクは何かを見つけたのか、その方向を見詰めたまま動かない。それに気づいた夜天も、シンクの見つめる先に目を向けると、そこには、女の子が立っていた。

 

 

「何恋の花咲かせてんだよ?」

 

「べ、別にそういう訳じゃ」

 

「そ、そうです私は勇者様をお迎えに……」

 

「「勇者?」」

 

 

 目の前に立っていた少女が一歩前に出ると、満面な笑顔でシンクに手を差しのばしてきた。

 

 

「私、勇者様を召喚させていただきました。ここ、『ビスコッティ共和国』フィリアンノ領の領主を勤めさせていただいています。《ミルヒオーレ・フィリアンノ・ビスコティ》と申します。召喚に応じていただきありがとうございます」

 

「これはこれは、長い自己紹介をありがとうございます。姫様。俺はちょっとした事故で捲き込まれました。《柊 夜天》です」

 

「えっ? あ、僕は《シンク・イズミ》です」

 

「勇者シンク様ですね! 存じ上げています」

 

 

 今、姫様の目には勇者として召喚された、シンクしか目に入らないようだ。

 

 

「勇者シンク様、どうか私たちの話を聞いていただき、その上でお力を貸していただけないでしょうか?」

 

 

 シンクはこちらに目線を送ってくる。しかし、夜天も、今の状況が全く呑み込めていないためにアドバイスができない。

 

 

「取り敢えず、姫様の話を聞くだけ聞いてみないか? こっちのことはよくわからないから」

 

「そうだね、お願いできるかなぁ姫様?」

 

「はい」

 

 

 姫さんが説明を始めようとした時だった。

 

 バーンッという音とともにいくつもの花火が遠くから数発打ち上げられていた。

 

 

「いけない! もう始まっちゃってる!」

 

「始まってるって? 花火が上がってるし祭りが?」

 

「我がビスコティは今隣国ガレットと戦をしています」

 

(いくさ)?」

 

「戦で花火っておかしくねぇか? 姫さん説明を」

 

「今は時間がありません! 早くこちらに、理由は道中お話しますですから……」

 

 

 シンクと顔を見合わせてから、同時に頷いてから、姫さんと一緒に目的の場所に向かう。

 

 

 

「なあ、姫さん? これってチョ○ボですか?」

 

 

 夜天の目の前には白いダチョウのような生物がいた。その姿はF○に出てくるやつに似ていた。

 

 

「チョ○ボ? いえ、こちらはセルクルと言いまして……もしかしてセルクルをご覧になるのは初めてですか?」

 

「あははぁ、地元にはいませんので……」

 

 

 シンクも困ったような顔して取り敢えず笑顔で対応していた。

 

 姫さんがセルクルの名前を語っているときに、夜天はある問題に気がついてしまった。

 

 

「姫さん、チョ……セルクルってこれ一羽だけか?」

 

「そうです……あっ!」

 

 

 姫さんも気づいたようだ、シンクもそのあとに状況を理解したらしい。

 

 

「すみませんが柊さん、あとで迎えを出させますので、ここに残ってもらってもらえませんか?」

 

「俺が?」

 

「はい、申し訳ないのですが……」

 

「・・・分かった、でもその代わりに、俺のお願いを何でも聞いてもらえますか?」

 

「ちょ、柊くん、それは」

 

「構いません、今は時間がありません、すぐに勇者様を連れていかなければなりませんから」

 

「……交渉成立! じゃあ早速だけども、その犬を借りてもいいか?」

 

 

 夜天が姫さんの近くに座っている犬を指差した。それに目を見開いて驚く姫さん。

 

 

「え? タツマキをですか?」

 

「そっ、別に食う訳じゃないから安心しろ。こいつに案内させてもらうだけだから、俺はボチボチ向かいますので、迎えも必要ないです」

 

 

 姫さんは少し考えてから、小さく頷き、タツマキをこちらに寄越した。

 

 

「ご協力、痛み入ります。タツマキ、このかたをしっかり案内するのですよ?」

 

「シンクも、姫さんに怪我させないように、守るんだよ?」

 

「任せといて! 姫様には指一本触れさせないから!」

 

 

 二人がセルクル(ハーラン)に乗ると、颯爽と走り出した。

 

 残ったのは夜天とタツマキ、一人+一匹だけになった。夜天はタツマキに向き直るとその頭を撫でる。

 

 

「お前さんの姫さんは人を疑わないきれいな人だな、見ているだけでハラハラする……」

 

 タツマキも同意しているのか、頷くように吠えた。

 

 

「さてと、そろそろいくか、タツマキ案内よろしく、あのチョ○ボに追い付くぞ!」

 

「ワンッ!」

 

 

 夜天とタツマキは、疾風のごとく森のなかを、タツマキを先頭にし、そのあとを追う夜天がピッタリと張り付きながら、疾走していた。

 

 

「おっ? 出口か」

 

 

 森のなかを駆けてから、数分で目的の場所に着いた。森を抜けるとそこには、夜天が予想もしていなかった光景があった。




ヒロインを決めてなかった……《エクレール》がいいかな?

 考えときますか、読んでいただきありがとうございます。


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3話目 遅れて来るのは………(上)

 なんか、頭のなかがこんがらがって、自分でもなに書いてるかわからなくなってしまった。

駄作なのでお許しを……

 かなり長くなってしまいました。最後まで読んでいただけると幸いです。


 夜天とタツマキが森を抜けたその先で見たものは……。シンクと姫さんが手を取り合いながら、至近距離で見つめ合っている場面だった。

 

 

「流石に手を出すのが早すぎではありませんか、シンクさん?」

 

「柊くん!」「柊さん!」

 

 

 後ろの森から夜天が出てきたことに驚く姫様と、誤解を解こうと必死に弁解してくるシンク、どちらも慌てた様子を見せるので、つい弄りたくなってしまった夜天。

 

 

「これはあれだな、駆け落ちって言うやつか」

 

「違うよ!」「違います!」

 

「じゃああれか? キスでもするつもりだったのか?」

 

「き……キス」「キス……キスですか?」

 

 

 シンクと姫さんがまたしても見つめ合ったと思ったが、すぐに顔が真っ赤に変え、目線をそらす。

 

 

「初々しい奴等だなぁこれじゃあ先が思いやられるぜ」

 

「柊くんが変なことを言うからでしょ!」

 

「まんざらでもなかったくせに?」

 

 

 顔を真っ赤にしてまた黙り込む。少し弄りすぎたかと反省する夜天は、すぐに話の内容を変えた。

 

 

「それで、なんの話をしてたんだ?」

 

「えっ? あ、はい。えっとですね……」

 

 

 さっきのキスから離れず、真っ赤な顔を俯かせていた顔を、すぐにいつもの顔に戻り、こちらに向ける。

 

 

「勇者様が、この戦場に参戦してくれるとのことで、これより、早急に城に戻り、皆様にお伝えしたいと思います」

 

「なんだシンク、結局勇者をするんだ」

 

「うん、皆をションボリさせないために」

 

「ションボリ?」

 

「うんションボリしちゃうから、それに……。」

 

 

 シンクは目線を戦場の方に向けるその目は何故か、キラキラとしている気がする。

 

 夜天も戦場の方に目を向けた。

 

 そこで初めて目にしたものは、地獄のように禍々しい光景だと思ったのが、敵味方関係なく、楽しくアスレチックで遊んでいる光景が目に入った。

 

 一部では戦闘をしている者がちらほらいるが、どちらも攻撃が当たると、ぬいぐるみのような姿に変化していた。

 

 

「これって戦争だよな? 怪我人とか死者とかは出ないのか?」

 

「勇者様にも説明させてもらいました。戦は大陸全土にしかれたルールに従って、正々堂々と行うものですから、怪我や事故が無いように勤めるのは戦開催者の義務ですから。もちろん国と国との交渉手段の一つでもありますから熱くなってしまうことも、時にはあります。だけど、フロニャルドの戦は国民が健康的に運動や競争を楽しむための行事なんです」

 

「へーそうなんだ」

 

 

 もう一度、戦場に目を向ける、シンクは多分、楽しみたいのだろう、こんな楽しそうな場所はそうそうないのだから。

 

 もう一度目線を戻すと、今度は、姫様の手の甲に何やら紋章が浮かび上がっていた。

 

 

「なんだそれ……紋章?」

 

「はい、これは紋章術と言いまして、紋章術にも色々あるんですよ! それではハーランに乗ってお城まで飛んでいきましょう!」

 

 

 そう言うとハーランは鳥類特有の高い鳴き声を出すと思いきや、羽を上下に振り始めた。

 

 

「飛ぶって、もしかしてまた俺はハブられるのか?」

 

「あっ……度々申しわけありません! 勇者様がお力を貸していただくと思ったらつい嬉しくなってしまって…」

 

「……貸しだからな、早くその勇者を連れていけ、皆待ってんだろ? 俺はまたタツマキと一緒に向かうから」

 

「申しわけありません、城の者に、伝えときますので、城の方に来てください、説明はそこでさせていただきます」

 

「了解、そんじゃあいってらっしゃい、シンクも頑張れ!」

 

「うん、勇者シンク行ってきます!」

 

 

 シンクと姫さんがハーランに股がり、崖から飛び出すと一直線に城に飛び立った。

 

 

「またお前と一緒だなよろしく」

 

「ワンッ!」

 

 

 

 

『おぉーとここでビスコッティ側に新たな情報が入りましたぁ! なんとミルヒオーレ姫がこの戦に勇者召喚を使用したそうです! 私もいくさで勇者召喚を見るのは初めてだぁぁ!』

 

「司会者のテンション高いなぁ」

 

 

 夜天はビスコッティの城に走ってりながら、空中に浮かぶキューブ形のスクリーンを見つめていた。

 

 そこでは生放送で、各所を写し出している。

 

 

「ワンッ!」

 

「おっタツマキ、そろそろつくのか?」

 

 

 スクリーンから目をはなすと、目的地はすぐ目の前だった。

 

 城故にかなりの大きさがあり、夜天の視野だけでは全てが見渡せない。

 

 

「取り敢えず、中には入れるように手配してくれてるんだよな、シンクに構って忘れてなければいいんだけど」

 

 

 予想は的中、城の門をくぐった瞬間、光の玉が、夜天の前に飛んできた。

 

 飛んできた玉を、夜天は身を捻らせギリギリに回避したが、そのあとにも数発同じものが飛んできた。

 

 

「あの姫! 後で覚えとけよ!」

 

 

 足に力を入れ、速さがさらに上がった。その速さを維持したまま、タツマキを抱え込み、城内に滑り込む。

 

 さらにそこに待ち受けていたのは、数人のメイド服を纏った犬耳族。

 

 それぞれの手には、弓やら剣やらと、準備万端の様子だった。

 

 

「メイド一同、相手は一人のようです。三分で片付けてください。」

 

「「「はい」」」

 

 

 メイド長らしき人物が、他のメイドに指示をし、数人のメイドが一斉に夜天に襲いかかる。

 

 夜天は、ひょいひょいと避けるが、これが厄介なことに、その指揮は的確で、避ける場所にメイドが待ち受けて、攻撃をする間をくれない。

 

 

「ちょこまかと避けて、男なら正々堂々と戦いなさい」

 

「俺は戦闘とか無理なんで、遠慮しときます……でも、」

 

 

 一人のメイドが、夜天に向けて槍を突き出す。

 

 夜天はその槍を交わし、メイドの手首を握ると、その勢いが乗ったまま、夜天の前に出たメイドの足を蹴りあげる。

 

 すると、メイドは宙に浮かび半回転し、背中を地面に叩きつけられる、前に出る勢いが上乗せされているため、通常の二倍ほどのダメージが相手に与えられた。

 

 

「護身術くらいは出来るんだわ」

 

 

 そのメイドは、体から煙が出たと思うと、戦場で見た、ぬいぐるみのような姿に変身する。

 

 

「ここでもぬいぐるみみたいになるんだな」

 

「おのれ! よくも同胞を!」「赦しません!」

 

 

 今度は二人一斉に攻めてくるので、夜天はバックステップで距離を取りつつ、懐から、二枚の紙を取り出すと、それを前のメイド二人に向かって投げる。

 

 

「その紙切れに触れると爆発するから気を付けてね♪」

 

「「えっ?!」」

 

 

 メイド二人に紙切れが触れると、一瞬眩い光とともに、爆音が城内を響かせた。

 

 

「一枚で十分だったかな?」

 

「今の音は何事でありますか?!」

 

 

 声がする方に目を向けると、そこには小動物であろうこれまた獣族の少女が口を半開きにしたまま、固まっていた。

 

 

「主席様! なぜここにいらっしゃるのですか?!」

 

「えっとですね、姫様が、勇者様のご友人がくると言われたので、案内役としてきたのでありますが……あなたは《柊 夜天》様でありますか?」

 

「お? そうだけど?」

 

「そうでありますか! 自己紹介が遅れたであります。私はビスコッティ国立研究学院主席、《リコッタ・エルマール》であります! それではすぐに姫様の場所まで案内するであります」

 

「えっ? あ、ああ、よろしく頼む」

 

「はいであります!」

 

 

 夜天は、急な展開に頭がついてこれないまま、リコッタ・エルマールの後を追った。

 

 夜天と同じく、状況を把握できずに、フリーズしているメイドたちの横を通りすぎると、メイド長らしき人物が頭を深く下げていた。

 

 

「勇者様のご友人とは露知らず、ご無礼を働いたこと、お許しください」

 

「あー、別に気にしてないんで、久しぶりに動けて楽しかったんで、こちらがお礼したいくらいです」

 

「その優しさ、痛み入ります」

 

 

 そのあと、メイド長も夜天の後ろを歩いてついてきた。

 

 

「そう言えばシンクはどうしてるんだ?」

 

「勇者様ならすでに戦場に出場しているでありますよ! 今はエクレと一緒に敵軍を蹴散らしているであります!」

 

「ほー、それでどうなんだ? シンクがきて戦の状況は?」

 

「はいであります、勇者様がきてから、こちら側が有利になったであります。このままいけば、ビスコッティ側の勝利であります!」

 

 

 前を歩くリコッタの尻尾がふるふると振っているところを見ると、本当に、シンクの存在は大きいのであろう。

 

 それよりも、本当にでかい城である、姫様がいる場所に、まだつかない。

 

 

「なあ、リコッタちゃんや、姫様の場所はまだなのか?」

 

「すぐそこであります。あの扉の先にッ!」

 

 

 バンッというドアを強く開ける音とともにリコッタが指差す部屋から、姫様が慌てた様子で、出てきた。

 

 

「姫様! そんなに慌ててどうしたでありますか?!」

 

「あっリコ、勇者様がピンチなのです」

 

「勇者様が?!」「シンクが?」

 

「はい、今勇者様とエクレがレオ様と当たっているのです」

 

「レオ? 誰だそいつは?」

 

「私が説明するであります。ガレット獅子団領の領主《レオン・ミシェリ・ガレット・デ・ロア》閣下であります。」

 

「じゃあそいつが敵チームのリーダーか……強いのか?」

 

「勇者様が、どれ程の者かはわかりませんが、レオン・ミシェリ閣下を倒せるかどうか……」

 

「だから私も戦に参戦して……」

 

「無茶であります。相手はレオさまです。姫様が行ったところで何も変わらないでありますよ!」

 

「でも、勇者様が戦っているのに、私がなにもしないのは……」

 

「じゃあ代わりに俺がその戦に出るわ」

 

「「「え?」」」

 

 

 柊の言葉に、姫様やリコッタ、後ろに立っていたメイドまでもが驚きの声をあげた。

 

 本人は、眠そうな顔で、姫様の前に出ると、姫様の頭を撫でる。

 

 

「貸しをここで返して貰おうか、俺を戦に混ぜろ、有無は言わせねぇ、ただ単に俺が出たいだけだからな。それに、戦場は国民が楽しくするものなんだろ? なにそんなに深刻な顔をしてんだよ、それじゃあ楽しいものが楽しくならねえだろうが。」

 

「……そうですよね……すみません、少し取り乱してしまいました。もう大丈夫です。」

 

「そうそう、姫さんは笑顔が一番だ! じゃあ俺は戦に出るとしますか!」

 

「あっちょっと待ってください! 戦のルールや、皆様にお伝えしたいので……もう少し待ってください」

 

「急いでるんじゃねぇのかよ……」

 

 

 夜天は、呆れながらも小さく微笑み、姫様のお願いを承諾した。




ありがとうございました。
引続き、Dog Days~絶対防御~を応援してください。

~報告~
 このあとはブラックブレットの方を進める予定でしたが、Dog Daysの終わりかたが、中途半端だったため、キリの良いところまで、進めていきたいと思います。


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4話目 遅れて来るのは最強だ!(下)

タイトル変えました。
このあともちょくちょく変えるかもです


『白熱の戦いを繰り広げているところ、ビスコッティから再度中継が入りましたぁ! ビスコッティ側のミルヒオーレ姫様?』

 

「みなさーん、楽しんでますか?」

 

『オォォォォォオ!』

 

「度々申しわけありません、皆さんにお伝えしたいことがありまして、こちらにまた一人、救世主が来てくれました。勇者様のご友人が戦に参戦しまーす。それではご登場してもらいましょう! 《(ひいらぎ) 夜天(よぞら)》さんです」

 

 

 場が沈黙、それも当たり前だ、姫様が指した場所には誰もいないのだから。

 

 

『ミ、ミルヒオーレ姫様? そのかたはいったいどこにいるんでしょうか?』

 

「あ、あれぇ? おかしいですね、柊さん?」

 

「なんだよ、俺の名前連呼して?」

 

『「えっ?」』

 

 

 姫様や司会者も含め、モニターを見ていた全員が目を丸くした。

 

 一人は目を手で覆い隠す者や、頬を赤らめてモニターを凝視するものがいた。

 

 それも仕方ない、何故なら、姫様の後ろから、上半身裸で夜天が現れたからだ。

 

 

「ひ、柊さん、なぜそんなかっこをなさってるんですか?! 皆さんが観てますから、早く着替えてください!」

 

「姫さんが呼んだから着替え途中でもきたのに、それはひどくねえか?」

 

 

 顔を赤くしながら、姫様が夜天の背中をぐいぐい押して、部屋のなかに押し込み、短い溜め息を吐いた。

 

 

「申し訳ありません、まだ着替えて「着替え終わったぞ?」」

 

「『「『はやっ!』」』」

 

 

 意気投合、全員が全員同じ言葉、同じタイミングで、言葉を発した。

 

 

『な、何ていうはや着替え、いえ、そんなことよりも、新たなる救世主が登場! これをどう見ますかぁ? ビオレさん!』

 

『そーですねー、勇者様のご友人と言うことですので、どれ程の力か気になります。それに少し好みです』

 

『な、なーんと! ここにきてレオン・ミシェリ閣下のお側役のビオレさんから爆弾発言がぁぁ! パナード将軍は勇者のご友人をどう見ますか?』

 

『私が見るからに、彼が良ければ、ガレットに来ていただきたいですね』

 

『バ、バナード将軍のお目にもかかったご様子だぁぁ! これについて、勇者のご友人の柊さん! お答えしてもらえますか!』

 

 

 モニターに姫様の場面が写し出されたが、そのとなりにいるはずの夜天の姿は何処にもなかった。

 

 

『柊さんの姿が見当たりません! ミルヒオーレ姫様! 柊さんの姿が見当たりませんが、何処のにいるのですか?!』

 

「あははぁ……柊さんは、先ほど戦場に向かってしまいましたぁ」

 

『行動がはやーい! 戦場にいる柊さん! どこですか?!』

 

 

 モニターが次々と代わっていく、とピタッと一つの映像に止まった。

 

 

『見つけましたぁぁ! けど、なんとぉぉ! 柊さんをガレット兵が取り囲んでいます。絶体絶命のピーンチ! さあどうやって切り抜けるんでしょうかぁ!』

 

 

 先に動いたのは、夜天だった。だが、その動きは焦ることもなく、ただゆっくりと敵兵の間を進んで抜けた。

 

 敵兵はその間も、ピクリとも動こうとしない、その光景に、司会者は、実況をすることを忘れ、呆気にとられていたが、すぐに我に帰り実況を再開した。

 

 

『い、いったい何が起こってるんだぁぁぁ! この私にも全くわかりませーん! バナード将軍、これはいったい何が起こっているのでしょうか?!』

 

『私にもさっぱりわかりませんが、一つ言えることは、彼は敵にはしたくない存在です。一層彼にはこちらに来て貰いたいですね』

 

『だそうです! これについて、柊さん何か一言を!』

 

「俺争いことは好まないんで、お断りするわッ!」

 

 

 迫ってきたガレット兵の一人を、夜天は足を払いをし、バランスを崩れたところに、強烈な蹴りを喰らわせ、猫玉に変化させた。

 

 

『言ってることとやってることが矛盾しているぞぉ!』

 

「ちっせーことは気にすんな!」

 

 

 夜天は片っ端から向かってくるガレット兵を迎え撃っていく。

 

 姫様からルールは聞いた。取り敢えず、向かってくるやつはとんどん倒していけば良いと。

 

 それに、相手はどんな攻撃を受けてもここら周辺にいれば、獣玉に変化し(ガレット側は猫玉と言うらしい)、一定時間行動を不能にすることができる。

 

 

「一気に敵軍のリーダーまでいくか……」

 

 

 夜天は自分の足に懐から取り出した紙を当てる。

 

 すると、紙は、強い光を放つと、夜天の足に溶け込み、そこを中心に、黒い模様が直に浮かび上がった。

 

 

『夜天選手の足に何やら怪しげな紋章が表れたぞぉ?! あれも紋章術の一つなのですか?』

 

『いえー、あんな紋章術は見たことありません。皆さんご存じのように、紋章術はフロニャルドの空と大地に眠る《フロニャ力》を使う技術ですが……彼の場合は、そのフロニャ力を一切使っていないのですよ』

 

『それはつまりどういうことでしょうか?』

 

『彼は、フロニャ力がなくとも、強力な力を使えるということでしょう』

 

 

 モニター越しで、何か解説をしているが、夜天はそれを無視して、一気に足に力を込める。

 

 

「やられたくねぇやつは、道を空けろーーー!」

 

 

 一瞬だった、その場にいた夜天が、ガレット獅子団のレオン・ミシェリ閣下の前に現れるのが……。

 

 

 そして、そこまでの道のりにいた、ガレット兵の軍勢は、一瞬にして猫玉に変化する。

 

 その場にいた敵軍も、今まで、レオン・ミシェリと戦っていたシンクまでもが、口を空け、固まっていた。

 

 場所は更地から、何やら、蟻地獄のような場所まで、その中央でシンクとやり合っていたらしい。

 

 

「御目にかかれて光栄です。レオン・ミシェリ閣下、早速ですが、御相手願いたい」

 

「何者だ貴様! 何処から現れた! どうやってあの軍勢を一掃にしたんだ!」

 

「質問が多いわ! でもまあ、最初の質問は答えてやる、俺は《柊 夜天》。そして……《呪術師》だッ!」

 

 

 紋様が浮かんでいる足を、レオン閣下の顔目掛けて蹴り込むが……間一髪で手にもっていた剣を盾に防がれてしまった。

 

 しかし、防いだ剣は、夜天の攻撃に耐えられず、儚く四散した。

 

 

「貴様が勇者の友人か! なかなか楽しませてくれるではないか! じゃが……まだまだ甘いわ!」

 

「あんたがなッ!」

 

 

 夜天はシンクが停止している横にくると、襟元を掴むと、そのまま、レオン閣下の方向に力一杯に投げる。

 

 シンクは状況を把握し、我に還ったが、時はすでに遅し。目の前には斧を降り下ろしているレオン閣下の姿。

 

 

「あぶなぁぁぁああいいぃぃ!」

 

 

 咄嗟に繰り出すシンクの防御は、レオン閣下の攻撃をもろに受け、防御ごと、地面に叩き落とされた。

 

 しかし、その隙は見逃さない。つかさず夜天は、紋様が浮かんでいる足に力をいれて、地を蹴る。

 

 一秒もかからない早技、一瞬でレオン閣下の懐に入り込むと、手のひらをレオン閣下の腹に添え、その勢いのまま、押し込む。

 

 レオン閣下は、夜天の攻撃を受けると、そのまま壁に迫ったが、間一髪で空に跳んだ。

 

 

「惜しかったな、シンク! もう一発いくか!」

 

「やらないよ?!」

 

「貴様ら! なに遊んでいるんだ! 相手が仕掛けてきているぞ!」

 

「さっきからいる君は誰だね?」

 

「なっ………まあ今はいい! そんなことよりも今はレオ姫を……」

 

「いやいや、スキンシップは大事だぞ? 何事も相手を知らないと始まらない」

 

「だから今はいいと言っているではないか! ……エクレールだ」

 

「こんな時に自己紹介してるとか…少しは危機感を持つべきだぞ? 親衛隊長?」

 

「・・・貴様がしろと言ったんじゃないか!!」

 

 

 エクレールがくり出す攻撃を、夜天はたやすく避けた。

 

 

「避けるな!」

 

「いや、痛いの嫌いだし、普通避けるだろ」

 

「ちょっ二人とも、向こうの姫様がなんかやばいんだけど!」

 

 

 シンクの慌てた様子に二人は、シンクが指さした方向に視線を向けた。

 

 

「なんかめっちゃ怒ってらっしゃいませんか向こうの姫さんは?」

 

「あたりまえだろ、あんな場面を見た誰でも機嫌を損ねるは!」

 

「でも今は……」

 

『『とにかく逃げる』』

 

 

 シンクとエクレールはレオン姫から距離をとるためにお反対の方向に走っていく。

 

 しかし、一人だけ、そこから動かない、夜天に気付いたエクレールが足を止める。それにつられ、シンクも足を止めた。

 

 

「何をしているんだ、死にたいのか!」

 

「いやいや、死ぬのはごめんだぜ?」

 

「なら早くここから離れろ!」

 

「俺のこと心配してくれてんの? 案外優しいんだな」

 

「や…別にお前のためにいったんじゃない、姫様が悲しむ姿が見たくないためだ! か…勘違いするんじゃない!」

 

「はいはい、ご忠告感謝、俺は大丈夫だからお前らは先にいってろ」

 

「な、何を言ってんだ貴様、本当に死ぬぞ!」

 

「シンク、そいつ抱えて早くここから去れ!」

 

「えっ? あっうん」

 

「ちょっ勇者! 友人を見殺しにするつもりか!」

 

 

 後ろで怒鳴り合っているのを耳にしながら、目の前で律儀に待ってくれていたレオ姫に目線を向ける。

 

 

「待ってくれるとは、姫さんは優しいですなぁ」

 

「わしは姫ではない! 閣下と呼ばんか! まあ今はそんなことはどうでもいい、勇者もろとも、始末してくれるわ!」

 

 

 レオン閣下の後ろから、紋章が浮かびあがる。

 

 

「紋章術か……こっちもあれ使うしかないかな」

 

「覚悟しろ! 獅子王・炎陣!」

 

 

 すると、レオン閣下を囲むように火柱が上げ、空から火炎弾が敵味方関係なく降り注ぐ。

 

 降り注ぐ火炎弾を、紙一重でかわしていく夜天にレオン閣下は、大斧を力一杯に降り下ろした。

 

 

「大・爆・破ッ!」

 

「あっヤベッ……」

 

 

 大斧が地面に触れた瞬間、蟻地獄のステージ全体を爆発させる威力。

 

 その場にいた兵たちは、敵味方関係なく、吹き飛ばされ、獣玉に変化した。

 

 

『爆破ぁぁぁ! レオン・ミシェリ閣下の必殺の《獅子王炎陣大爆破》! 範囲内にいる限り、立っていられるものはいないという。超絶威力の紋章砲! 味方も巻き添えにしてしまうのが偶にキズですが……それにしてもすごい!』

 

「フランボワーズ、確認せい。勇者とタレ耳、そして勇者の友人はちゃんと死んだか?」

 

『あー、はい! えーとですねー』

 

「そう簡単にやられるかぁ!」

 

「にしてもこれ高すぎない!? ねえこれ高すぎない!?」

 

『そ、空!! 勇者と親衛隊長は無事です! しかし、勇者の友人が見当たりません! 死んでしまったかぁ?』

 

「おれはここだ、勝手に殺すな!」

 

『な、な、なんとぉぉ! レオン・ミシェリ閣下の紋章術を間近に喰らっていたのに、無傷だぁぁ! この男は不死身なのかぁ?』

 

「人をゾンビみたいに言うな!」

 

 

 夜天が司会者の発言に怒鳴っている間に、いつの間にかシンクとエクレールが空から舞い戻ってきており、レオン閣下の左右に立っていた。

 

 

「勇者の友人、お前も手を貸せ!」

 

「手を貸せって……二人でなんとかならないのか?」

 

「二人より三人の方が確実性が上がる、お前らと手柄を分けたくないが……今はそれしかレオ姫を倒せない!」

 

「なら一人でやれよ、俺はあの司会者をしばきに行きたいんだけど、まあいいや、おい司会者、こいつの次はお前だ……」

 

 

 司会者がひきつった顔をしたことを確認すると、レオン閣下に体を向ける。

 

 

「よーし、んじゃあ」

 

「「いきますか!」」「いくぞ!」

 

 

 最初にシンクとエクレールがレオン閣下に攻撃、しかし、エクレールの攻撃を斧で、シンクの攻撃を盾で防御した。

 

 だが、その両方とも四散、今のレオン閣下を守るすべはない。

 

 それを確認してから、夜天は、片手に赤く染まった札を手に、レオン閣下の懐に入り込むと、その手にもった紙を、レオン閣下の胸の辺りに投げた。

 

 

「その紙は、さっきあんたが放った攻撃を吸収した紙でね、俺が無傷だったのはその紙のおかげ、んでその紙は、吸収した攻撃を相手に返すことが出来るんですよ……」

 

「まさか!」

 

 

 夜天が後ろに飛ぶ姿を見て、レオン閣下も、その場から離れようと足に力をいれる。

 

 しかし、地面から足が離れないことに、不思議に思ったレオン閣下は自分の足下に貼られた札が目に入った。

 

 

「奇妙な術は使うやつだ……」

 

「そりゃどうも。んじゃあ自分の攻撃がどれくらいいたいか、その身で受けてねぇ」

 

 

 夜天が両手を勢いよく合わせ、音が響くと、赤い札が一瞬目映く光ると思いきや、その周辺にいた者を全て吹き飛ばす爆発が、起こった。




 そろそろもう一つの方に手を出します。
そちらを投稿しだい、Dog Days を進めていきたいと思います。


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5話目 勇者の返品はご利用できません

 情報が少ない、漫画と小説を買わねばな……

 ニワカ過ぎて困る。


 夜天が最後に放った攻撃によって、ステージは半壊。

 

 そんな威力の中心にいた《レオン・ミシェリ閣下》は、防具全破壊だけで、獣玉まで追い込むことはできなかった。

 

 

「チビと垂れ耳相手と思うて少々侮ったか。このまま続けてやっても良いが、それではちと両国民へのサービスが過ぎてしまうのお」

 

「いや、むしろ、裸になろうとしてる奴もいるんだし、このまま続けないか?」

 

「それもありじゃが、その役目は垂れ耳に任せて大丈夫だろう」

 

「まて、どう言うことだそれは!」

 

 

 夜天とレオン閣下は、エクレールを見ながら、ニヤニヤと笑うだけで、何も喋ろうとしなかった。

 

 

「それじゃあ、レオン閣下はここで退場と言うことでよろしいのかな?」

 

「うむ、わしはここで降参じゃ」

 

 

 降参宣告を言った瞬間に、空に数発の花火が上がった。

 

 

『まさか……まさかのレオ閣下敗北! 総隊長撃破ボーナス350点が加算されます!』

 

 

 ビスコッティ側に350点が加算され、点数は、ガレットを上回った。

 

 

『今回は拠点制圧ですので、戦終了とはなりませんが、このポイント差は致命的! ガレット側の勝利はほぼないでしょう!』

 

「勇者よ。親衛隊長の助けがあったとはいえ、わしに一撃を入れたことは褒めてやろう。だが、今後も同じ活躍ができるとは思うなよ。それと勇者の友人、お主には驚かされることばかりじゃった。お主とはもう一度、今度は一対一の真剣勝負をしてみたいものだ」

 

 

 レオン閣下は、撮影班に渡されたマイクを、今度はシンクに投げ渡した。

 

 シンクは、マイクをキャッチすると、そのまま演説を始める。

 

 

「ありがとうございます。レオひ『閣下っ!』……閣下」

 

「うむ!」

 

 

 嬉しそうに頷くレオ閣下を確認したシンクは、ホッと息を吐いてから、再度感想をのべる。

 

 

「閣下との戦い、怖かったけど、とても楽しかったです」

 

 

 シンクは、短かったが、自分が伝えたかったことを言い終わると、今度は夜天にマイクを投げた。

 

 夜天は、そのマイクを片手で取ったが、何を言えばいいのかわからなかったため、取り敢えず、言いたいことだけ、言うことにした。

 

 

「あー、レオひm『閣下っ!』……ひm『閣下ッ!』……閣下とのバトル、俺的には勝ったつもりないんで、だから、その挑戦状、受けてたちます」

 

 

 モニターを見ていた人たちは、一声に声をあげた。

 

 それだけ、レオ閣下は、強く、人々から人気があることがわかる。

 

 夜天とレオ閣下は互いに頷き合い、持っていたマイクを、エクレールに向かって投げる。

 

 

「よし、緑の垂れ耳! 口でくわえて取れ!」

 

「誰がするかッ!」

 

 

 マイクは少し高めに投げたせいで、エクレールは飛んでマイクを、キャッチ。

 

「撮影班、垂れ耳によれ」

 

「今日のメインディッシュだ! 全員その目に焼き付けろ!」

 

 

 訳がわからないまま、撮影班のカメラはエクレールを映す。

 

 それは一瞬の出来事だった。

 

 エクレールが、見事空中でマイクをキャッチをし、地面に足がつこうとした瞬間だった。

 

 場が一瞬で沈黙、夜天は腹を押さえながら大爆笑。

 

 その理由は……エクレールの身に付けていた服が、地面についた瞬間に、一瞬で【破け散った】からだった。

 

 何故、服が散ったかが心当たりがないエクレールに、空中に浮いているモニターが、それを解決させてくれた。

 

 それは、レオ閣下の武器破壊をした寸前の映像が流れていた。

 

 シンクとエクレールが放った攻撃は、見事にレオ閣下の武器の芯に当てていた……が、さらにシンクの攻撃した、棒の先端が、エクレールの服を掠めていた。

 

 これが答え、言い逃れができない動かぬ証拠。

 

 

『勇者、なんと自軍騎士に誤爆!! 防具破壊を超えて、服まで破壊してしまいました!』

 

「ナイスシンク! てか、服全部が弾け飛ぶって紙かよ、笑いすぎて腹いてぇ」

 

「ふっはははは、また来るぞ! 今度はきっちり侵略してやろう!」

 

 

 レオ閣下は颯爽と去っていった。

 

 

『ここでレオ閣下、堂々とご退場。これは次の侵略戦にも期待が高まりますね!』

 

『全くです。ですが、まだこの戦も終わったわけではありません』

 

『そうですよぉ。戦場の皆さん、最後まで気を抜かず、タイムアップまで頑張ってください!』

 

 

 全兵が気合の入った声を上げて、場はさらに盛り上がる。

 

 

 裸にされたエクレールは、救護班に渡されたタオルを巻きながら、シンクを追いかけていた。

 

 

「だからごめんって! わざとじゃないって!」

 

「知るか! 1回斬られて死ねぇ!!」

 

「やだよ! 柊くん助けて!」

 

「よしきた!」

 

 

 夜天は、エクレールのそばまで走ると、体に巻いていたタオルを奪い取った。

 

 2度目のサービスシーン到来。

 

 

「//////……、この変態!」

 

「おい待て、その状態で攻撃したらいろいろと見えちゃう、てか見えてるぞ!」

 

「知るかぁ!」

 

「そこは恥ずかしがれよ! こっちが恥ずかしくなってくるわ! しかも俺はシンクに頼まれただけだ、俺は悪くない、悪いのは全てシンクだ!」

 

「えぇっ?! 柊くんそれはひどいよ!」

 

「ゆーーしゃーー!」

 

 

 標的を変更し、またエクレールとシンクの、追いかけっこが始まる。

 

 ビスコッティ城で、その中継を視ていたミルヒオーレ姫と、学院首席のリコッタの二人は苦笑いをしていた。

 

 これを引き起こした夜天もまた、大笑い。

 

 

『それにしてもこの勇者、強いし凄いが、やはりアホか?』

 

「ほっといてよ!」

 

『そして騎士エクレール、美味しい映像を2回もありがとうございました!』

 

「やかましい!!」

 

『また、颯爽と現れた勇者のご友人、この者については、もっと知りたいです』

 

「あぁ忘れるとこだった。そこで待ってろ実況者、骨の髄まで俺のことで一杯にしてやるから……」

 

『え、遠慮させていただきます』

 

「拒否権はねぇよ?」

 

 

 実況のフランボワーズの顔が蒼白。

 

 だが、実況者魂で、なんとか話を切り替えて、今後のことについて話始めた。

 

 

「さ、さて、ガレット軍が勝利していれば、この後は会場でガレットの地酒祭りが行われる予定でしたが……」

 

『このままビスコッティ軍が勝利すれば、戦勝イベントの開催は、ビスコッティ側の権利になりますね』

 

『フィリアンノ城のミルヒオーレ姫、今回のイベントはやはり』

 

 

 スクリーンに満面な笑顔で、手を降っているミルヒオーレ姫が片手にマイクをもって映し出された。

 

 

「はい。フィリアンノ音楽ホールから音楽と歌の宴をお届けします」

 

「姫様のセットリストも、バッチリあります!」

 

 リコッタが映し出され、その手には、なにやら色々かかれている紙が持たれていた。

 

 しかし、夜空とシンクはそんな紙よりも、同じ疑問を口にした。

 

 

「へー、姫様って歌とか歌うんだ?」

 

「まあ、あぁいうノホホンとしたやつに限って、歌が上手かったりするからな……にしても姫さんが歌ねぇ……」

 

 

 夜天の右腹に急の痛み、近くで、拳を作った手を見せてくるエクレールがそこにいた。

 

 

「きさま! 姫様を侮辱しているのか! 姫様は世界的な歌い手であらせられるんだぞ!」

 

「誉め言葉として……受け取ってほしかった……まさか本気で殴ってくるとは……思わなかった……ぜ……」

 

 

 右腹を押さえながら、地面に踞る夜天を、シンクは苦笑いをしながらも、モニターに映る姫様に目を向ける。

 

 

「でも世界的歌い手って、姫様凄いなー!」

 

「そうだよ。お疲れ様、勇者殿とご友人。エクレールも」

 

「兄上」

 

 

 いつの間にか、夜天達の後ろに現れた、これまた金髪の垂れ耳をした男が、無言でエクレールに替えの服を渡した。

 

 

「姫様は他国との間や交流の際、楽団を連れて世界中で歌われているんだ」

 

「あ、なるほど。だから世界的なんですか」

 

「ただ、近頃は戦続きでツアーもめっきり滞ってしまってね。我々も久しぶりに姫様の歌を聞けるぐらいなんだが」

 

「貴様達も、姫様の歌を聴けば納得するだろうよ」

 

「活躍してくれた勇者殿には特等席で聞いて頂くとしよう。もちろん勇者殿のご友人も」

 

「あー、聴きたいのは山々なんだけど、俺は一旦家に帰ってもよろし?」

 

「僕も一旦家に帰らせてもらいたいです、それか向こうに連絡をさせてもらえませんか?」

 

「「え?」」

 

 

 何だろう、この二人の反応を見ると、とてつもなく嫌な予感がする。

 

 予感が外れるように、心の中で祈りながら、その反応がなんなのかを聞く夜天。

 

 

「その、何故二人ともそんな、驚いた顔をしてるんだ? 呼び出せるんだから、帰らせることもできるんじゃ……」

 

「何を言っているんだ、お前達は?」

 

「召喚された者は、帰ることも連絡を取る事も出来ない」

 

「それが召喚のルールだ」

 

 

 予想が的中したとはいえ、面と向かって言われると、かなりダメージがくるもんだ、夜天は絶賛交信中(フリーズ)だ。

 

 代わりにシンクが、受け答えをしてくれた。

 

「アハハ、ソンナマタマタ……」

 

「いや、本当のことなんだが……」

 

 

 早い、早すぎるよ……続いてシンクがフリーズ、そのタイミングで、夜天は我に還ってきた。

 

 

「いや、ほら、もしかしたら帰る方法が、何事の諦めるなって……」

 

「なんと言われようが、帰る方法なんて無いんだ!」

 

 

 夜天とシンクはひきつった顔でお互いの顔を見合わせてから、もう一度前を向く。

 

 それでは皆さん、一緒に大声で『さん、ハイ』

 

『『嘘だぁぁぁぁぁぁ!!』』




 次回はなんと姫様が……

 次回はかなり長くなると思いますので、投稿の方が遅くなります


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二章 プチ合戦が大合戦に!
6話目 美少女の裸を……(上)


高評価いただきました!
あざます!
これからも頑張っていきたいです!
応援よろしく!


 戦の終了を告げる花火が打ち上がり、勇者の活躍でビスコッティは勝利を勝ち取ることが出来た。

 

 が……そんな喜ばしい事態なのに、勇者シンクと(ひいらぎ) 夜天(よぞら)は、誰も目につかないところで小さく丸まっていた。

 

 理由は、この戦が終わり、一旦家に帰りたいと頼んだ二人に、エクレールとその兄が帰ることが不可能と突き付けられたことが原因だった。

 

 

「帰れない……帰れない……僕はここから帰れない……」

 

「シンク……見て……あの花火と一緒に打ち上げてもらえれば……帰れるんじゃない? ちょっとやってこいよシンク」

 

「そんなことしたら僕死んじゃうよ!」

 

「いい加減にしないか、アホ勇者と変態」

 

「変態って、俺が変態って言われるようなことしたか?!」

 

「自分の胸に聞いてみろ!」

 

「どれどれ?」

 

 

 夜天は立ち上がり、エクレールのそばで膝立ちすると、そのまま頭をエクレールの胸に押し当てる。

 

 当然エクレールの顔は一瞬で真っ赤に染まる。

 

 

「うむ、脈打っているな、それに程よい膨らみがまた癖になる」

 

「自分の胸だ! この変態が!」

 

 

 繰り出される突きや蹴りをひょいひょいと笑いながら避け続ける夜天だったが、内心少し不安で、このあとどうするかを考えていた。

 

 

「シンク、いい加減に立ち直れ、ここで落ち込んでも埒があかねぇ」

 

「そうだ勇者! いい加減にしろ、先ほど《リコ》から連絡があった。勇者を元に帰す方法を探してみるとな! そしてお前は早く殴られろ!」

 

「リコってあのちっこい小動物みたいなやつか? あいつあんななのにそんなに頭がいいのか……人は見かけによらないってこういう時に言うんだな。それとそろそろ攻撃をするのを止めてくれ、ちょっとした思春期のイタズラだろ?」

 

「ああそうだ! 《リコッタ・エルマール》は、ビスコッティ国立研究学院の首席研究士、そして私の友人で、皆からは《リコ》と呼ばれているッ! イタズラでももう少し程度をだな!」

 

「へーッ! じゃあ、俺もこれからッ《リコ》って呼ぶことにッするわッ! それと、手を繋ぎ会うならッもう少し優しく握ってほしいなッ!」

 

 

 夜天とエクレールは、互いに掴み合い、でこを擦り付けながら、一歩も譲らない勝負をしていた。

 

 が、それもそう長く続かず、数分の間、掴みあっていたが最後は夜天の体力が尽き、溝に強烈な右ストレートを叩き込まれ、夜天は力尽きた。

 

 殴って少しスッキリしたエクレールは、シンクに向き直ると、無理矢理立たせてから、その腕を引っ張り出した。

 

 ちなみに夜天は、襟首を掴まれると、そのまま引きずられていた。

 

 

「どこに……いくんだよ……てか……どこにそんな力が……」

 

「チッまだ意識があったか、まあいい、これから城下町にお前たちを連れていこうと思ってな」

 

「城下町?」

 

「ああ、それより、お前意識があるなら自分で歩け!」

 

 

 掴んでいた手をいきなり離したエクレール、当然、いきなり離された夜天は、反応も出来ず、顔面を地面に強打する。

 

 

「扱い酷くねぇか? いきなり離すことねぇだろ! お蔭で地面にファーストキスを取られただろ!」

 

「知るか! 自業自得だろ! さっさと着いてこい、置いていくぞ」

 

 

 後ろを振り向くことなく、ズカズカと先に進むエクレールを見て、夜天は慌てて立ち上がると、エクレールの後をすぐに追った。

 

 

 

~城下町~

 

 

 

 そこで、シンクと夜天、エクレールに何故かタツマキまでもがついてきていた。

 

 今はシンクが落ち着くまで、空いていたベンチに腰を下ろしている。

 

 そんなシンクが、何かを思い出したのか、急に顔をあげると自分のポケットのなかを漁り始めた。

 

 

「シンク? なにしてんだ」

 

「えっとねー、あったあった!」

 

 

 ポケットから引き出された手には、携帯電話が握りしめられていた。

 

 夜天には理解できたが、エクレールは、携帯電話を知らないらしく、首をかしげながら、シンクの持っている物を見つめている。

 

 シンクは期待を胸に抱きながら、いざ、ケータイのフタを開いた。

 

 

「どう?」

 

「……ダメみたい。圏外だよ。」

 

「まあ、ここ異世界だし、勇者召喚のルールに、向こうの世界と連絡は出来ないって言ってたしな…」

 

 

 夜天とシンクは、二人して長い溜め息を吐いた。

 

 

「全く、覚悟もないのに召喚に応じるからだ」

 

「覚悟!? 覚悟も何もこのわんこが!」

 

「俺はどちらかと言うと助かったほうかもな、あれがなかったら多分新聞の記事で、【中学生の男子生徒自殺? それとも他殺か!】って載ってたかもな」

 

「それは流石に……それでもこの犬が落とし穴を作って!」

 

「落とし穴? タツマキが?」

 

 

 全員でタツマキの方を向いたが、タツマキは首を横に振り、あのとき見た魔方陣よりも遥かに小さな魔方陣を出した。

 

 タツマキはその魔方陣の上に手を置いた。そのすぐそばに書いてある文字を読め、ということらしい。

 

 

「見たことねぇ文字だな、こっちの文字か?」

 

「エクレール、ちょっと読んでもらっていいかな?」

 

「任せろ。えっと何々? 『ようこそ、フロニャルド。おいでませビスコッティ』」

 

 

 読んでいるところは普通だったが、タツマキはさらにその端っこに書かれている文字の近くに手を動かした。

 

 

「『注意、これは勇者召喚です。召喚されると帰れません。召喚を拒否する場合はこの紋を踏まないでください』って書いてある」

 

「「んなもんわかるかぁ!!」」

 

「私に言うな!」

 

「チッエクレールがもっとしっかりしてればこんな魔方陣踏まずに済んだのに」

 

「だから何故私のせいにされるんだ!」

 

「自分の胸に聞いてみろ、あっ別に俺の胸に飛び込んでもいいんだぞ?」

 

「誰がするか!」

 

 

 クソッ飛んでくるものが違う、エクレールの放った右フックは夜天の横腹を的確に射ぬき、夜天は今日なん度目かの地面との対面となった。

 

 これでわかった。エクレールは右利きか……。

 

 

「まあ、元の世界に返す方法は、学院組が調査中だ。じきに分かるさ」

 

「だといいけど…」

 

「取り敢えずは…その、なんだ。お前たちは、一人はアホでどうしようもない変態だが、賓客扱いだ。ここでの暮らしに不自由はさせん。一先ず、これを受け取っておけ」

 

 

 シンクと夜天に袋を渡す。

 

 渡されたときにかなりの重さがあり、シンクは、取り敢えず振ってみると、中からジャラジャラと音を響かせる。どうやら硬貨のようだ。

 

 夜天も、頭に乗せられた袋を手に取ると、取り敢えず振っとく、中からは同じように音を響かせた。

 

 

「エクレ、これって?」

 

「戦での活躍した報酬金だ。ないとは思うが、受け取りを拒否すれば財務の担当者が青ざめる」

 

 

 青ざめるか、それは断ったら案外面白いか……

 

 

「貴様は断ったりするなら斬り殺す」

 

「ワーオ、ウッレシイナー!」

 

 

 あんな真顔で殺意なんかを出されれば、誰もが棒読みで嬉しがるだろう。

 

 エクレール……何て恐ろしい子!

 

 

「兵士達も楽しみたいから参加するものも多いだろうが、報酬金は自分がどれだけ戦に貢献できたかの目安だ。少なくとも、参加費を取り返したい、というのも本音だろうがな」

 

「え、参加費!?」

 

「…このことも知らないのか。これはかなり初歩的なことから教えてやらんとな」

 

「俺らいきなり呼び出されてきたんだぞ? こっちの常識はからっきしだ。それと向こうじゃ中継で裸になったりしたら、放送事故で処理されるのが常識だ!」

 

「何故今その話をもってきた!」

 

 

 見切った。お前は必ず右で攻撃する、それなら右にガードを集中すれば!

 

 右腕と足を上げ完全ガードと思いきや、エクレールの動きが変わる。

 

 右と思わしといてからの左ブローが、夜天の左腹に炸裂、またしても踞る夜天。

 

 

「右だと……思ったのに……左もいけたのかよ……」

 

「私を甘く見るな。勇者、そのバカはほっといていくぞ!」

 

「えっでも……」

 

「いくぞ!」

 

「シンクよ、あの子は遠回しにお前とデートがしたいといってるッ」

 

「違うわ!」

 

 

 顔面パンチ、夜天は身の危険を素早く察知し、顔面パンチを避けることに成功。

 

「お前は殴るのが趣味なのか?! 俺のことボコスカと殴りやがって!」

 

「貴様が一々癪に触ることを言うからだろ!」

 

「あぁ! 少しは我慢もできないのか? 敵陣に突っ込むことしか考えられないお子ちゃまな頭なのかお前は?」

 

「な、貴様ぁ! 喧嘩を売っているのか!? この変態ヤロォ!」

 

「お前こそ喧嘩を売っているのか? ならその喧嘩買ってやるよ暴力女!」

 

「まあまあ二人とも!」

 

「「勇者(「シンク」)は黙っとけ!」」

 

 

 夜天とエクレールが、大声で怒鳴りあっているのを耳にした国民立ちは、次々と足を止めていく。

 

 そして、いつの間にか夜天とエクレールを中心に、円上の小さいフィールドが出来た。

 

 

「今謝れば許してやるぞ?」

 

「それはこっちのセリフだ!」

 

 

 エクレールは背中から、2本の剣を引き抜くと、いつでも攻撃できるように構えた。

 

 夜天も懐から数枚の札を取り出すと、いつでも投げられるように準備をした。

 

 周りの野次馬立ちは、応援する者、賭け事をする者などが、二人を見守っていた。

 

 

「シンク、開始の合図よろしく」

 

「ねぇやめようよこんなこと……」

 

「早くしろ勇者、そいつを殺らないと気が済まない」

 

「エクレールまでも! もう仕方ないな~」

 

 

 シンクは、先ほど受け取った硬貨の入った袋から一枚取り出すとそれを、親指で高く弾いた。

 

 硬貨が落ちるまでの時間が長く感じる。

 

 その場にいたものが、みな固唾を呑み込んで始まるのを待つ。

 

 そして硬貨は地面にぶつかり、金属の特有な音が、シンッとした場に響いた瞬間に、二人の断末魔が、その金属音を掻き消した。

 

 

「「死ねぇぇぇ!!」」




 次回予告となんなんだ?


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7話目 美少女の裸を見られる前に獣玉へ!(下)

エ「説明を本文に書けない状態になってしまったから、ここで戦について説明してやる!」

夜「そんなもんどうでもいいってやつは、ここをすっ飛ばして本文までいってくれ! んじゃあ最初の質問、戦ってなんだ?」

エ「戦は国交手段でもあるが、同時に国や組織を挙げてのイベント興行でもある。今回はガレットと戦ったが、もっと規模の小さい、村同士や団体同士の内戦があるな」

シ「村対抗の競技大会兼…お祭りみたいなもの?」

エ「まぁ、そんな言い方も…出来るか」

夜「じゃあ次の質問、戦はどうやったら始められるんだ?」

エ「戦の興行を行う際には、興行主が参加費用を集めて、それを両国がそれぞれに献上する。そして、戦を行い戦勝国が約6割、敗戦国は残りの約4割を受け取る。これは大陸協定で決められた基本の割合だ。分配した費用の内最低でも半分は参加した兵士への報奨金へと当てられる。この割合も協定で決まっている。
 そして残り半分が戦興行にいる国益だ。病院を建てたり、砦を造ったり、ホームのために働くものを養ったりと国を守る為に使われている」

夜・シ「そうなんだ~」

エ「他に質問はあるか?」

夜「エクレって戦のときっていつも服破けんのか?」

エ「なんの質問してるんだ貴様は!」

シ「あはは………そ、それじゃあ質問がないようだからこのまま本編をどうぞ!」

夜・エ「何勝手に進めてる!」


「「死ねぇぇぇ!!」」

 

 

 エクレールが先手をとった。

 

 2本の剣をクロスさせて、夜天の体の中心に突進。刃は夜天の身体を斬りつけた……が。

 

 

「偽者?!」

 

 

 エクレールの刃は、夜天の身体を斬りつけていたが、その感触は全く感じさせなかった。

 

 斬りつけられた夜天は、その姿を無数の紙に変え、床に散らばり、その偽者の夜天の後ろで本物の夜天がエクレールに向かって、数枚の紙を投げつけた。

 

 

「そんな紙切れでなにができる」

 

「なにができるって、さっきの偽者を作れるけど?」

 

 

 夜天の答えを無視して、エクレールは飛んでくる紙を一枚一枚切り落としていく。

 

 切り落とされた紙は、力なく地面に落ちる。

 

 夜天も負けじとまた紙を数枚投げ飛ばした。

 

 今度は、斬られる寸前で、夜天は指パッチンをした。

 

 すると、斬られようとした紙は光を放つと、見えない壁を作り出し、エクレールの攻撃を弾いた。

 

 さらに斬りつけられ、床に散らばった紙も一斉に光始めると、金色の糸で紙から紙へと繋がっていく。

 

 そして、エクレールを囲って出来上がったそれは、鳥籠を連想させる形をしていた。

 

 

「な、なんだこれは」

 

「結界だよ、相手を捕まえるためのね」

 

 

 エクレールは、その場から脱出を試みたが、剣で斬りつけても、見えない壁のようなものがあり突破することができなかった。

 

 

「無駄だよ、その結界はどんな攻撃も吸収する。もちろん、外からの攻撃も受け付けない……が……その結界を作った術者は例外だ!」

 

「……まさか!?」

 

「そのまさかだよ! 一気に裸にされるか、ポロリで済ませるか、いや……選択の余地はねえ! その柔肌を俺に見せろや!」

 

 

 夜天が、投げた札は結界の中にすり抜けた瞬間に今までよりも強烈な光を放つと、大爆発を起こした。

 

 結界のなかで煙が渦を巻きながら、少しずつ晴れていく。

 

 男性の視線は結界の中に釘付け、シンクも顔を赤く染めているが、目は結界の中に向けていた。

 

 

「……って、あんなのくらってエクレールは大丈夫なの!」

 

「俺もそこまで鬼じゃない、ちゃんと手加減くらいしている、それにこの辺りは多分獣玉に変身できると思うしな」

 

 

 夜天の言葉はその通りのものだった。

 

 煙が晴れると、中から獣玉に変身しているエクレールの姿があった。

 

 男性諸君は裸になったエクレールが現れると期待していたのだろう、期待を裏切られ全員が冷めた目をしていた。

 

 

 

~エクレール通常形態~

 

 

「私が……私が……負けるなんて」

 

「まあまあ、そう落ち込むな」

 

「哀れむよな目で私を見るなぁ!」

 

 

 エクレールは、夜天に負けたことがどうしても許せないらしく、怒りの目線をこちらに向けてくる。

 

 

「……自信があるのはいいけどな、お前は相手を知らないのに突っ込みすぎなんだよ」

 

「貴様だって私のことを知らないだろ!」

 

「だから偽者を作って様子を見たんだろ? そこでお前はなんの躊躇なく斬ったところを見てだな、向かってくるものは全部斬ると思ったんだよ。そんであの策を思い付いた」

 

 

 エクレールは、何か気に入らない顔をしているが、真剣に夜天の話を聞いていた。

 

 そんな姿を見た夜天は、エクレールがどんな奴なのか少しわかった気がした。

 

 

「まあ、あれだな、お前はこれから伸びるタイプだ、今日のは喧嘩から始まったけど、今度は訓練でまた一緒にやろうぜ!」

 

 

 エクレールの方に向き直ると笑顔で手を差し伸ばした。

 

 エクレールは顔をうつ伏したまま、差し伸ばされた手を握り返した。

 

 夜天は、しっかりと手を握ったのを確認すると、座り込んでいるエクレールを立たせた。

 

 

「今日は負けたことは認めるが! 次は私が勝つ!」

 

「ああ! でもな、次も俺が勝つ」

 

 

 クスクス笑い合う二人。すると、エクレールは急にモジモジさせながら、チラチラとこっちを見てくる。

 

 

「どうした?」

 

「えっと……訓練の話しなんだが……約束だぞ!」

 

「俺は嘘や嫌がらせはするけど、約束は絶対護る男だ、だから安心しろ」

 

「ならいい! それと、特別に私のことは《エクレ》と呼んで構わないぞ!」

 

 

 そう言うと、夜天の反対側に向きを変えると、そのまま走っていった。

 

 振り向き様にみたエクレの顔は、何故かほんのりと赤く染まっていた気がした。

 

 

「柊くんも案外隅に置けないねぇ」

 

 

 さっきまでずっと夜天の後ろで、黙って立っていたシンクが、ニヤニヤした顔で夜天の顔を覗き込んできた。

 

 

「それはどう言うことだシンク?」

 

「先が長いみたいだ、頑張れエクレール」

 

「おいシンク! 俺の質問に答えろよ!」

 

 

 ケラケラと笑いながらエクレの後を追うシンクと、その後ろからシンクの言葉の意味を一生懸命知ろうと考えながら、シンクを追っかける夜空。

 

 

 

 

 そして着実に、姫様誘拐を目論む三つの影が、近づいていた……。




今日は一日中暇だったので、2話分書けました。
このままスムーズに進むように頑張っていきたいな!


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8話目 ターゲットは……(上)

~台詞を入れてみよう!~
 ここの主人公の夜天に「○○○」と書かれた台詞があります。そこで貴方が好きにセリフを入れてあげてね!
※行数は定められていません
※○ネタもオッケーだぜ!(作者は○ネタを考えました)
※※※遊びですこれ重要※※※


 ビスコッティ城の図書館的なところに夜天とシンク、エクレはきていた。

 

 

「申し負けないであります! このリコッタ・エルマール先進繊維勇者様と柊様がご帰還される方法を探していたでありますが、力及ばず未だなんとも、どうにもこうにも……」

 

 

 目の前に幼女枠を勝ち取ったリコッタ・エルマール又の名はリコが、あって開口早々に、頭を何度も繰り返し上下に振りながら謝ってきた。

 

「いや、リコ落ち着け。私も勇者達もそんなにすぐに見つかるとは思ってない」

 

「えっ!」

 

「すぐ見つかるようなら勇者召喚なんて、やり放題だしな、まあ急がず焦らずだぜ!」

 

 

 夜天はペコペコする頭に手をおき、撫でる。

 

「ですが……」

 

 

 慰めるつもりでやったのに、まだ落ち込むリコに苛立ちを覚える夜天は、リコの両頬を叩いてこちらに向かせた。

 

 

「落ち込んだら敗けだ、今は前を向いて探そうぜ? 俺も手伝うからよ」

 

「そ、そうだぞリコ。勇者! たしか期限について何か言ってたな。いつまでだ?」

 

「え、えーと、春休み終了の3日前の前日には家にいないと行けないから……」

 

「残り16日ってところか」

 

「16日!! それなら希望が湧いてきたであります!」

 

 

 尻尾がはち切れんばかりに振り、夜天の顔が当たる寸前まで顔を近づけるリコ。

 

 

「か、顔が近いぞリコ!」

 

「は、これは失礼しましたであります!」

 

「いや、別に構わないけど……そういえばリコって頭いいよな? もしかして電波を発生させる機械とかあったりしないかな?」

 

「電波……でありますか?」

 

 

 リコとエクレは首を傾げたが、シンクは、夜天の考えの意図を瞬時に察した。

 

 

 

 

 場所は変わって、俺とシンクが召喚された場所に今きていた。

 

 

「くっ……ぬううぅぅぅーー!!」

 

「無理そうだな、じゃあちょっと手伝うか」

 

 シンクが来た場所からなら帰れるんじゃないかと考えて、一生懸命召喚された穴の方に手を突っ込んでいるところに、夜空が近付くと、無防備の背中に思いっきり蹴り押す。

 

 

「イタッ! なにするの柊くん!」

 

「いや、押すのを手伝ってやろうと……」

 

「普通に押してよ!」

 

「別に構わないぞ? 運が悪いと中から破裂するけど……」

 

「普通じゃないよそれ!」

 

「結論、普通に押すことは俺には無理ってことで、それよりどうだった? いけそうか?」

 

「無理って……まあいいや、やっぱり通れないみたい」

 

「だから言っているだろうが!」

 

 

 黙ってシンクと夜天のアホトークを聞いていたエクレが、我慢の限界だったのか、叫んできた。

 

「いやいや、人は何事も諦めないことが大事だぞ」

 

「そうそう! ネバーギブアップ!」

 

 

 シンクはそう言うと、また穴に手を突っ込み、雄叫びをあげながらもう一度入り込もうと頑張り始める。

 

 エクレはその光景を見て、深く溜め息を吐くしかなかった。

 

 

「勇者様ー! 準備整ったであります!」

 

「おお! リコ、そのデカイのはなんだ?」

 

 

 後からきたリコの横には、セルクルが運んできた、箱形の大きな機械があった。

 

「これは、放送で使うフロニャ周波を強化、増幅する機械であります。自分が5歳の時に発明した品でありますが。今は世界中で使われているのでありますよ」

 

「5歳って……軽くノーベル賞ものだぞこれ?」

 

 

 リコの言葉に唖然とする夜天を横目に、リコは5歳で作った機械のレバーを引いて起動した。

 

 

「勇者様と柊様!」

 

 

 夜天とシンクは頷くと、夜天はポケットからケータイ(通信用霊札)を取り出した。

 

 

「って!? 柊くんケータイは?」

 

「ん? これだけど?」

 

「いやいやいやいやいやいや! それお札でしょ?!」

 

「そうだけど? えっ? これが普通じゃ?」

 

「そんな普通はないから!」

 

「そんなに驚くなよ、さてと……」

 

 

 夜天はもう片方のポケットからケータイ(携帯電話)を取り出した。

 

 

「もってんじゃん!」

 

「中学生の必須アイテムだぞ? 持ってるに決まってる」

 

「本当に御札で会話するのかと思ったよ」

 

「出来なくはないけど、それより早く開こうぜ!」

 

「えっ出来な……えっ!?」

 

 

 驚きを隠せないシンクを無視して、夜天はケータイの電源をオンにする。

 

 その後すぐに、シンクもケータイを開いた。

 

 互いに画面を覗き、その右上にあるアンテナを見つめると、圏外から一瞬で三本立った。

 

「うおお! 立った! すごい! リコッタすごい!」

 

「おお! スゲー! ○○○スゲー!」

 

「○○○とはなんだ! ○○○とは!」

 

「エクレは知らなくていいんだよ? 昔流行ったけど、今じゃガキしかやらない時代遅れのネタだから。それにしてもスゲーな、異世界で電話できるとか、リコお前スゲーな!」

 

「ありがとうであります! 感謝であります!」

 

「うん! じゃあ早速」

 

 

 シンクは電話帳を開いて、《ベッキー》と記入されたフォルダーを開くと、耳に当ててコール。

 

 

「彼女か?」

 

「違うよ! ベッキーは小さいときからの知り合いで、幼馴染みなんだよ、それより柊くんは電話しなっあ、もしもしベッキー?……」

 

 

 相手が出たらしく、シンクは電話越しの相手と話していた。

 

 

「夜天は連絡をしないのか?」

 

「うーん、する相手がいないんだよな、俺ちっさいときに父母を失って、祖父母に引き取られたけど、その祖父母も今じゃ他界してな……」

 

「そ、そうだったのか、すまない」

 

「アハハ、エクレが謝ることはないぜ! ……だから」

 

「なんかいったか?」

 

「えー、エクレはかわいいなって言っただけだ」

 

「な、な何をいってるんだお前は!」

 

 

 顔を、真っ赤にさせそっぽを向くエクレ、その表情は何処か嬉しそうな気がする。

 

 

「エクレ、なんか嬉しそうであります」

 

「リコ、何をいっているんだ! わ、私は別に嬉しくなんて……」

 

「そうでありますかー!」

 

「////……私も少し連絡をしてくる!」

 

 

 そう言うと、エクレはリコの作った電波発信器の後ろに回って姿が見えなくなった。

 

 

「エクレ、なんだか明るくなったであります! これも勇者様と柊様が来てくださったからであります」

 

「そうか? 俺達はなんもしてないけどな、エクレはいつもあんなじゃなかったのか……? リコ、俺の顔になんかついてるのか?」

 

「あ、いえ、ちょっと柊様に折り入ってお願いが……」

 

 

 モジモジしながら、チラチラと夜天のケータイを見ていた。

 

 試しにそのケータイを左右に大きく振ると、それにつられて、リコの顔も左右に振る。

 

 

「貸してほしいのか?」

 

「はい! そのケイタイデンワ? を貸していただきたいのです!」

 

「別に構わんが……何するんだ?」

 

「分解して調べたいのであります」

 

 

 そんな笑顔で言われたら一発KOだよリコ。

 

 

「うん! 断る!」

 

 

 ケータイを追っかけるリコと、それを護るために逃げる夜天。

 

 周りから見たら微笑ましい光景だろうが、こっちから見れば、獰猛な犬が、目の前の獲物を追っ掛けているようにしか見えないが、相手がリコなため、そこまで恐怖は感じない。

 

 

「なぜ逃げるんでありますか! 先ほど貸してくれるって言ったであります」

 

「言ってねえよ! しっかりと断るって言ったろ? つか、貸して分解するって言われて貸したがる奴がいるか!」

 

「大丈夫であります! ちゃんと元通りにするでありますから! だから貸してであります!」

 

「信用できるかぁ! いくら頭がよくても始めてみるものを直せるわけないだろ」

 

「捕まえたであります!」

 

 

 リコのダイビングキャッチで、見事夜天の腰に抱きつくことに成功。

 

 

「離せぇぇぇ!」

 

「嫌であります! ちょっと貸してもらうだけでありますから!」

 

 

 リコの手が、夜天のケータイに届きそうになったときだった。

 

 

「それは心強い!」

 

 

 電波発信器の横で尻尾を振るエクレが、こちらの視線に気がつくと、礼を言ってから通信を切ってこちらに向かって走ってくる。

 

 

「エクレ、何か朗報でありますか?」

 

「ああ! ダルキアン卿が、戻ってこられるそうだ!」

 

「ほ、本当でありますか!? なら、ユッキーも一緒でありますね!」

 

「あぁ!」

 

 

 話についてこれない夜天に気が付いたエクレは、夜天のために二人の説明をしてくれた。

 

 

「二人だけで盛り上がってすまない、説明をするとだな、ビスコッティ最強の騎手、ダルキアン卿と我らが友人、ユキカゼだ!」

 

「二人とも、とても頼りになるであります!」

 

 

 この二人の反応をみると、本当にすごい奴だと分かる。

 

 

「そんなに強いのか、あってみたいな……」

 

「お前のことだ、失礼の無いようにしろよ!」

 

「安心しろ、ちょっとおちょくるだけだ」

 

 

 エクレの無言の蹴りが飛んできた。

 

 来るのはよんでいたのだが、いざ避けようとするが、夜天の腰に引っ付いているリコが邪魔で、思うように動くことができずに、攻撃を受けてしまった。

 

 

「だ、大丈夫でありますか? エクレ、少しは手加減を……」

 

「「平気だ」」

 

「この男は、このくらいやらないと簡単に受け止めてしまうからな」

 

「まあ、あれでも受け止めることはできるがな、案外リコの存在が邪魔で軽く受けちまったけど」

 

 

 ケロッとした顔の夜天と呆れた顔をするエクレを、交互に見るリコであった。

 

 

「おっ待たせー!」

 

「おお! シンクもう終わったのか?」

 

「うん!」

 

 

 いつの間にか連絡を終わらさせたシンクが、手を振ってこちらに駆け寄ってきた。

 

 

「もういいのか?」

 

「うん! まあベッキーには心配されちゃったけど……」

 

「そうか、んじゃあそろそろいきますか」

 

「そうだな、ここに長居することもない。一端城に戻るとするか」

 

「「おー!」」

 

 

 シンク一行は、その場から出発すると、真っ直ぐ城に向かった。




次回、奴等が……ノワって可愛いよな!


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9話目 ターゲットは姫様でした(下)

すみません、かなり分かりにくくなってなってしまいました。

マジ駄文ですすみません


 陽が沈み、辺りはすでに真っ暗だった。

 

 只今シンクと夜天は、浴槽を探しに城の中を探索中。

 

 姫様LOVEのエクレールに「姫様のコンサートに、そんな汗臭い格好で来られても困る。だから、貴様らはコンサート前に風呂を使って来い」と言われたのだが、なにぶんこっちに来てまだ半日の二人だ、城の中で迷子になっています。

 

 誰かに聞こうと周りを見渡すが、コンサートの準備に、ほとんどが出払っているぽく、人の気配が全くしない。

 

 

「なあシンク、俺たちいつになったらオアシス(浴室)に辿り着けるんだ?」

 

「僕に聞かれても……」

 

「何で誰もいねえんだよ」

 

「みんな準備に忙しいだよ、姫様の歌を聞きたい人だってたくさんいるんだし。僕も姫様の歌を聴いてみたいしね」

 

「まあそうだろうけど、流石に不用心すぎないか? いくら平和な国だからってこれは……でも俺も少し聴いてみたいかな、姫さんの歌は」

 

「でしょ! みんな楽しみなんだよ!」

 

「全国の歌姫だしなぁ……ん? おいあれ?」

 

「どうしたの柊くん?」

 

 

 夜天が見つけた先には、中庭のような拓けた場所の奥にある、一つの部屋を指差した。

 

 その扉の隙間から、微かに湯煙のようなものが立ち上っているように見える。

 

 

「あ! あそこだよきっと!」

 

「やっと風呂に入れる……今日は疲れたぜ」

 

「そうだね! じゃあ早く入ろうか!」

 

 

 二人は駆け足で、その部屋に入り込んだ。

 

 なかは、ホテルで見かけるような、豪華な控え室、その奥にもう一つの部屋がある。そこは浴室であろうが、ドア越しでもその広さは十分に分かる。

 

 

「お先に失礼するよ!」

 

「ちょっ! シンク抜け駆けはズルいぞ!」

 

 

 いつに間にか、服を脱ぎ終わったシンクは桶を片手に、向こう側に消えてしまった。

 

 夜天も急いで脱ごうと、上着に手をかけた瞬間だった。

 

 

「うわああぁぁぁぁ!」

 

「シンク!? 大丈夫か!」

 

「だ、大丈夫、ちょっとはしゃぎすぎて、す、滑っただけだから」

 

「なんか怪しいな? 本当に大丈夫なんだよなぁ?」

 

 

 奥から、シンクの声がくぐもった声で、返事がきた。

 

 怪しく思った夜天は、札の入ったフォルダーの留め金を外すと、着物も一緒に(はだ)ける。

 

 

「シンクお待たせ!」

 

 

 扉を開けようと手をかけたが……開かない。

 

 シンクが向こう側で扉を開けられないように押さえているのだろう。

 

 

「おいシンク! なんのマネだ!」

 

「ゴメン柊くん! でも、いまはちょっと!」

 

「はあ? 風呂を独り占めはどうかと思うぞ?」

 

「いや、一人じゃ……なくわないんだけどね……何て言うか……」

 

 

 また口籠った。なんなんだよいったい。

 

 

「はっきりしろ、もう我慢の限界だ! ぶっ壊……」

 

「わーわー待って待って! いま開けるからちょっと待って!」

 

「開けてくれるならさっさと開けろよ」

 

 

 夜天は深い溜め息を吐くと、扉の向こう側からシンクが離れたことを確認してから、扉を開けた。

 

 白い湯煙が、夜天の体を包み込む。

 

 

「へー結構広いじゃん、流石城って感じだな」

 

 

 辺りを見渡しながら、シャワーが並べられている場所に向かう。シャワーは一応こちらの世界と同じものだったので、普通に使うことができた。

 

 一方シンクはというと、すでに風呂に入っており、こちらにぎこちない笑顔を向けていた。

 

 

「シンク! お前……」

 

「な、なに?!」

 

 

 方を震わすシンク、お湯のせいなのか額から汗が滲み出ていた。

 

 

「…………体洗ったか?」

 

「か、体?」

 

「そうだぞ? 後に入る人のことを考えたら当たり前だろ?」

 

「そ、そうだよね! あはは、心配要らないよ、しっかり体は流したから!」

 

「そう、まあそれなら別にいいけど」

 

 

 体の向きを反転して、蛇口を捻りお湯を出す。

 

 鏡の向こう側で、シンクが胸に手を当てていた。

 

 

『バレてないと思ってるのか? バレバレだ、シンクの頭から犬耳が生えてる次点で分かるって、相手は姫さんか? エクレは垂れ耳だし、リコは……ガキだし、隠しことだから女だろうからな……やっぱ姫さんかな』

 

「ね、ねえ柊くん」

 

「ん? どうしたシンク」

 

 

 湯船からゆっくり上がろうとするが、背中に隠れている姫様を庇いながらのために、下手に動けないようだ。

 

 

「ちょっとだけ目を積むってもらえるかな?」

 

「構わねぇけど、隠し事をするならもっと上手くしろよ、姫さんがいることバレバレだからな」

 

「「え?」」

 

 

 夜天は、シャンプーで頭を泡たたせながら、後ろで二人が驚いている顔をしているのが、見なくてもわかった。

 

 

「あと体流すだけだから、それまでゆっくりしてれば? その後すぐに姫さんとシンクの二人っきりにしてやるからよ」

 

「いえいえ、勇者様たちはゆっくりとお風呂に浸かってください。私は先ほど洗いましたので、ちょうどよかったですから」

 

 

 そう言うと姫さんは、出口の方に向かっていった。

 

 扉に手を掛けようとしたとき、こちらにもう一度振り替えってきた。

 

 

「あの召喚の事とか、これからの事とか…。お二人にお話ししたい事、いっぱいあるんです。ですから、コンサートが終わったら、少し…お時間頂けますか?」

 

「「全然構いませんよ」」

 

 

 二人が同じことを言ったことに、多少驚きもしただろうが、すぐに笑顔に戻し一礼してから扉の向こう側に消えていった。

 

 

「いい子だな。ところでシンク、姫さんの柔肌見た感想は?」

 

「思い出させないでよ!?」

 

「見たんだ! エクレに言ってやろ」

 

「ちょっ柊くん!」

 

 

 花が散り、男二人という色がない場所とかした浴室で、洗い終わった夜天は湯船に浸かろうと、向かったときだった。

 

 

『きゃー!』

 

 

 外から姫さんの叫び声が浴室の隅まで木霊する。

 

 

「今のは!」

 

「姫さんのこえだな……」

 

「って! なんで湯船に浸かろうとしてんの?! 早くいこう!」

 

「え、ちょ、おいシンク!」

 

 

 夜天の手首をがっちり掴み、そのまま引きずるかたちで、こんなときにでも、しっかり服を着るシンク。

 

 着替え終わると、またすぐに夜天の手首をつかみ、そのまま悲鳴が聞こえた外に飛び出した。

 

 そこで二人が見たのは……。

 

 屋根に立っている三つの影、その一人の影の脇に抱えられ、その口にはタオルで縛られた姫様がいた。

 

 

「我ら! ガレット獅子団領!」

 

「ガウ様直属秘密諜報部隊!」

 

「「「ジェノワーズ!」」」

 

 

 何処かのアイドルグループがしそうなポーズをとる三人組。

 

 その三人組の後ろから、花火が数発上がるとその光で三人の姿が見えた。

 

 一人は緑色の戦闘服をきたウサ耳の少女、さらにもう一人は、黄色の戦闘服をきた犬……うん犬耳の少女、そしてその二人に挟まれた全身黒ずくめの少女。

 

 

「ウサギ、ネコ、イヌだな……」

 

「ちょっと待てぇぇ! うちはイヌじゃなくってトラや!」

 

「どっちでもいいだろ! 関西弁女、俺は早く風呂入ってさっぱりしたいんだよ!」

 

「どっちでもよくないわ! ちょぉぉぉぉ大事なことや! それにうち等がようあるのはそこの勇者だけや!」

 

 

 関西弁(自称トラ)がシンクに向かって指を指した。

 

 

「ビスコッティの勇者。あんた等の大切な姫様は、うちらが攫わせていたで!」

 

「我々はミオン砦で待っています!」

 

「姫様がコンサートで歌われる時間まで、残り一刻半。…それまでに、無事助けに来られますか?」

 

 

 挑発的な口調で言ってくる黒ずくめの少女。

 

 

「つまり、大陸協定に基づいて、要人誘拐奪還戦を開催させて頂きたく思います。こちらの兵力は200。ガウ様直轄の精鋭部隊」

 

「で、ガウ様は勇者様との一騎打ち。さらにはそちらのご友人との戦いもご所望されております」

 

「ん? てことは別に……」

 

 

 大陸協定、言わば受けるか受けないかはこちらで決められる。

 

 もしここでシンクが受けなければ、この話はなかったことになり、姫さんも戻ってくるはず。

 

 

「シンク、この挑戦状うけなく……」

 

「あなた方が断ったら………姫様にあんな事やこんな事に……」

 

 

 シンクが悩んでいるところに、追い討ちをかける黒ずくめの少女。

 

 シンクはその言葉を聞いて顔を勢いよくあげ、そして夜天は次に何が起こるのかがわかったが、止めることができなかった。

 

 

「っ! 受けて立つに決まってる! 僕は姫様に呼んでもらった、勇者シンクだ! どこの誰とだって戦ってやる!」

 

「あーぁ……このバカ勇者」

 

 

 三人同時に口元がにやりっとつり上がったように見えた。

 

 

「了解。これで、戦成立とさせていただきます」

 

 

「では、私達は先程言った通り、ミオン砦でお待ちしてますね」

 

 

「じゃ、楽しみに待っとるで! それとそこの勇者の友人mって!?」

 

 

 トラ耳は、夜天を指差そうとしたときに、あることに気づいてしまった。

 

 その光景がなんなのかを理解したとき、トラ耳の顔をゆでダコのように真っ赤に染めた。

 

 

「なんであんたは裸なんやぁ!!」

 

 

 そう、夜天はいままでずっと裸でシンクの横に立っていたのだ……隠すこともせずに…。

 

 

「文句はシンクに言え! 着替える時間もくれないまま引き摺られてきたんだからな」

 

「だからって少しは隠そうとか思わんのか!」

 

「隠したら意味ないでしょ!」

 

「「「この……変態が!!」」」

 

 

 屋根の上からいろんなものが、夜天に投げ込んでくる。

 

 時々刃物やら弓やらと飛んできたりと、冷や汗を掻きながらも見事にかわしていく夜天。

 

 

「なんで当たらんのや!」

 

「見事にかわされますね!」

 

「勇者の友人、恐るべし」

 

 

 弾幕の嵐がやむと、屋根にいた三人はこのままでは埒があかないとふみ、仕方なく屋根から向こう側へと飛び降りていた。

 

 

「この続きはミオン砦で!」

 

「私たちはこれみて」

 

「さらば……」

 

 

 見えなくなる前に、捨て台詞を吐きながらその場を去った。

 

 嵐のような出来事のせいで、その場は沈黙が……「ハックショッ!!」、代わりに夜天の早大のくしゃみがその場だけを響かせた。

 

 

「大丈夫柊くん?」

 

「誰のせいだ誰の、中継で俺のあられもない姿を見しちまったろ! 明日飢えた獣が襲ってきたらどうしてくれるんだ! まあ俺的には大歓迎だがな、からだが冷えたのでもっかい風呂はいってくるわ」

 

「あ……えっ、あ了解! 行ってらっしゃい」

 

 

 何か言いたかったのかシンクはぎこちない返事を返してきた。

 

 そんなシンクを背に、せっせと浴室に向かう。

 

 扉を開けようと手を伸ばした時に、ひとついい忘れたこと思い出した夜天はシンクにもう一度振り替えった。

 

 

「シンクに忠告……ここ猛獣が出るから気を付けろよ。それだけだ、じゃ!」

 

「どういうこと! ねぇ柊くん! どういうこと!」

 

 

 夜天が浴室に入ったあと、外からシンクの短い悲鳴が聞こえたのは言うまでもない…………。




 疲れた……感想でヒロインは複数いるのか聞かれましたが、増やすかどうかは迷い中です。

 増やした方がいいのかな……。


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10話目 記憶の共有者……(上)

 うん、一気に話の流れが変わる、どうしたものか……。

 ヒロインは私の体力が持つまで増やす予定にしました。欲深い人で申し訳ない……。

 かなり分かりにくい文になっています。もしわからない、ここはこうした方がいいと言うアドバイスがあればとても助かります。


 セルクルの背中に揺られながら、シンクと夜天にエクレ、さらにリコまでもが姫様奪還戦争に参加した。

 

 というか、シンクがなんの考えもなしに突如表れた《ジェノワーズ》と言う三人組に、大陸協定に乗っ取った要人誘拐奪還戦を受けてしまったのが始まりだ。

 

 

「全く……。宣戦布告を受ければ公式の戦として認めたことになる! 普段の戦闘ならいざ知らず、寄りにもよって姫様をこんなタイミングで!」

 

「……ゴメン」

 

 

 こうして俺たちは姫様が囚われている場所、ミオン砦に向かっている道中で、シンクがエクレに説教されていた。

 

 

「エクレ、そこまでにしとけ怒りすぎると頭の血管が切れるぞ? こうプツンっと」

 

「柊さまの言う通りでありますぞ!」

 

 

 先ほどからずっと弱々しい返事しか返さないシンクに助け船を出す、夜天とリコに、シンクに呆れて溜め息をつくエクレ。

 

 

「だからってこんな大事な時に受けるやつがいるか」

 

「まあ仕方ないだろうな、誘拐ってこっちから聞いたらかなり大変なことなんだぜ。場合によっちゃあ殺されていてもおかしくない事件なんだよ」

 

「こ、殺されるって!」

 

「そんなことがあるのでありますか!?」

 

 

 驚くエクレとリコ、驚いても仕方がない、こっちの世界では俺たちの世界とは一回りも二回りも違うほど平和な世界だ。

 

 そんな世界で人殺しが起こることなんて滅多にないのだろう。

 

 

「そうなんだ、だから黙ってられなかった!」

 

 

 セルクルに乗りながら、右手に長い棒(パラディオン)を出すと、セルクルのスピードを一段階早く走らせた一行。

 

 

「でも大丈夫! 姫様も助けるし、コンサートだって間に合わせる!」

 

「……当たり前だ!」

 

「自分も微力ながら、頑張るでありますよ!」

 

「まあ暇潰しにはもってこいだしな、それにあの三人組にお仕置きをする必要があるし」

 

 

 全員が全員同じ理由で来たわけではないが、目的の場所も意思も同じ、ならば作戦に支障はない。

 

 援護のため、リコとはここで一旦別れることになった。

 

 

「勇者と夜天、聞け。ガウル殿下の兵は、悔しいが精鋭だ。そして、私達には本隊を待つ時間はなく、少数で攻め込むしかない」

 

 

 目の前に目的の砦が見えてきた。

 

 この話だけ聞けば、勝ち目など到底ないようにも聞こえるが、そんな事はない。

 

 むしろ夜天は、こんな絶体絶命的な状態での戦いを求めていた。

 

 

「だが、かつての大戦では、千を超える騎兵隊を切り抜け、一騎のみで敵将まで辿り着いた伝説の騎士だって存在した! 今は、決して一人じゃない。私に勇者、そして夜天。この三人がいる! さらにリコの援護だってある。やってやれない事はない!」

 

「おう!」

 

「こういう状態ってめっちゃワクワクするよな! んじゃあ最初の作戦はやっぱり……」

 

 

「「「最短距離を最高速で正面突破!!」」」

 

 

 

 各々武器を取り出す。

 

 夜天も懐から札を取り出そうと手を伸ばすが、あることに気がついた。

 

 

「あ………なあエクレ、紋章砲ってどうやるんだ?」

 

「な、なんだ急に……まあいい、知ってても損はないからな」

 

「ありがとよエクレ!」

 

 

 夜天はエクレに微笑み返すと、セルクルの背中の上に立つ。

 

 

「まずは自分の紋章を発動させる」

 

 

 出し方はわからないが、取り敢えず出たと思い込む。

 

 

「全身の力と気合を込めて、紋章を強化!」

 

 

 右手の甲に紋章が出てると思い込み、そこに力をいれる。

 

 すると、夜天は気づいていないが、夜天の後ろには大きな紋章が現れていた。

 

 

「フロニャ力を輝力に変えて、自分の武器から解き放つ!」

 

「こうでいいんだな!」

 

 

 自分の拳を前に勢いよく突きつけた。

 

 すると、夜天の拳から光輝くビーム基紋章砲が飛び出した。

 

 しかし、その光は数メートル進むと夜天たちの目の前で霧散した。

 

 

「……まあ紋章術には向き不向きがあるからな! 気にすることはない!」

 

「そ、そうだよ柊くん! 何事もチャレンジ、ネバーギブアップ!」

 

「シンク、その使い方違う気がするんだが」

 

 

 失敗した夜天を二人は一生懸命励ましてくれた。

 

 その心遣いは正直嬉しいが、失敗したことに夜天はどうとも思ってはいなかった。

 

 

「でも紋章術って結構面白いもんだなそれにどこかで使った気が……試す価値はあるな」

 

「試す? 柊くん何を試すの?」

 

「ちょっとな、まあ見とけって!」

 

 

 夜天はセルクルの背にもう一度乗り直すと、今度は指を銃の形にし、数十人の敵兵が見えるミオン砦の入り口に指先を向ける。

 

 

「夜天、貴様は何をするつもりだ」

 

「ちょっとした俺がアレンジした紋章術を試そうと思ってね」

 

 

 指先に集中する夜天の後ろには、先ほどと同じく紋章が浮かび上がっていた。

 

 紋章はどんどん光の強さが代わり、夜闇を照らし始めた。

 

 気づけば、光は夜天の指先に集まり、野球ボールほどの球体が出来上がっている。

 

 

「第一ステップ突破、第二ステップに移行っと! 蒸発は勘弁、発射!!」

 

 

 掛け声と共に球体は、夜天の指先からまるで弾かれたかのように飛んでいった。

 

 今度は途中で霧散することなく、真っ直ぐと敵陣に向かっていた。

 

 門の前に盾兵が構えていたが、その球体は盾に当たったが止まることなく盾兵を吹き飛ばし、後ろの門にめり込み止まった。

 

 

「なんていう威力だ……」

 

「すごい、すごいよ柊くん!」

 

「驚くのはここからだぜ! 第二ステップは成功、最終ステップだ、派手にぶちかますぜ!」

 

 

 両手を勢いよく合わせ、夜の道をに手のひらを叩いた音が、木霊する次の瞬間……。

 

 朝陽が昇ったかのような光と共に、爆音と爆風が夜天たちを襲った。

 

 前から勢いよく土煙が舞い上がり、夜天たちを覆い隠した。

 

 土煙で前が見えない状態でも、三人はセルクルのスピードを落とさない、やがて土煙が晴れていき、現状を把握するために周りを見渡す三人。

 

 そこで三人の目に留まったのは、想像を遥かに越えたものがそこには広がっていた。

 

 

 先程まで数十人と列になって、夜天たちを向かえ打つ準備をしていた兵たちは、全て《ケモノダマ》へと姿を変え東西南北とあっちこっちへと吹っ飛んでいた。

 

 そして門は、さっきの爆発で跡形もなく破壊され、中が剥き出しになっている、門の後ろで控えていた兵たちも、何が起こったのかわからずにただ呆然と立ち尽くしているだけだった。

 

 

「柊くん、流石にこれはやりすぎじゃない?」

 

「あー俺もそれは思った、ここまでとは思わなかった」

 

「しかし、これはチャンスだ! あそこから一気に攻める!」

 

 

 チャンスを逃すまいと、セルクルの足をさらに早めてミオン砦に入り込むシンクとエクレ。

 

 しかし夜天はセルクルの背でぐったりと倒れ込み、そのまま地面に滑り落ちるように墜落した。

 

 

「体に力入らねぇ……紋章術での疲労か、あとは任せたぜ……」

 

 

 セルクルが顔を擦り付けてくるのをお構いなしに、夜天は少しでも体力を回復させるためにその場で眠りに入ろうとしたのだが、その行動をひとつの影が止めた。

 

 

「もうここでダウンでござるか? 昔は何事も諦めない闘志が見えた気がしたでござるが」

 

 

 夜天の頭の上で、こちらの顔を覗き込む一人の長髪の女性いた。

 

 その頭には犬の耳がピコピコと動いているのが見え、仲間だと言うことがわかった……が、奇妙なことにその女性は、夜天のことを知っているかのような口振りで話しかけてきたことに、夜天はその女性に警戒心を剥き出しに睨む。

 

 

「あんた……なんで俺のことしってんだ……なに者だよ」

 

「忘れるのも無理ないでござるよ、拙者とあったときは、まだこんなに小さかったでござるからなぁ」

 

 

 そういうと、女性は腰辺りに手をかざすと、ケラケラと笑い始める。

 

 その高さだと、夜天がまだ小学生を上がったか上がらないか辺りの大きさだった。

 

 その時の記憶は夜天は事故で記憶がなくなった年だったはず。

 

 

「あのときは本当にすまなかったでござる」

 

 

 和みが長髪の女性から消え、頭を深く下げたまま動かない。

 

 現状が全く掴めない夜天は失った記憶を思い出そうと頭を抱えるが、やはり記憶は戻ることはなかった。

 

 

「ひとついいか……その時の記憶がなくてさ、できればあんたとの関係を含めて何があったのか教えてもらえると助かる」

 

「うむ、わかったでござる、ではまず拙者と初めてあった時のお話からでござる」




転生ものでもいい気がするな……タグに増やすか?


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11話目 記憶の罪悪感(下)

テストが終わった……。
結果は聞かんといて。

オリジナルで考えると難しいね、でもこの次は作品に沿った話になるから簡単なはず。


最後に一言、テスト前 研修旅行 きついです


「今は時間がないでござるから、短く話させてもらうでござる。あれは、拙者と兄《イスカ・マキシマ》と魔物退治の旅をしていた途中でござった」

 

 

 村が魔物に襲われ、《ヒナ・マキシマ》と《イスカ・マキシマ》だけが奇跡的に生き残り、そして村を襲った魔物を退治した。

 

 しかし、魔物はそれだけではないと知っていた二人は、その復讐心で魔物退治をすることを決め、今無き村を出て二人で魔物退治の旅に出た。

 

 

「村を出て数日の辺りでござる。魔物を探していたとき、森のなかで柊殿とそのご両親が魔物と交戦していたのを見かけたのは」

 

 

 《ヒナ・マキシマ》と《イスカ・マキシマ》の二人は、森の中を慎重に足を進めていたとき、森のなかでかなり大型の魔物が、何者かと戦闘をしていたのを見つけた。

 

 

「兄者! 人が襲われています! 助けにいきましょう!」

 

「ちょっと待てヒナ、あの魔物は俺たちが行ったところでどうにかできるやつじゃない」

 

「ですが! 襲われている人を見捨てることは出来ません! 兄者がいかないのでしたら私だけでもいきます!」

 

「待てヒナ!」

 

 

 ヒナは魔物がいるところまで走っていき、二人の男女の前に立って武器を構えた。

 

 

「そこの人たち、ここは私に任せて早く逃げてください!」

 

「あらかわいい子、ねえ君? ここがどこかわからないかしら? あたしたち迷子で」

 

「今はそんなことよりも早く逃げてください!」

 

「楽しいはずの家族旅行が森で遭難とはな、全くついてねえぜ」

 

「あなたが楽しようとして転送符を使ったのが間違いじゃない!」

 

「俺だけのせいかよ! お前だって賛成してたろ!」

 

「お二人とも今は喧嘩を「ヒナ! よそ見するな!」……えっ?」

 

 

 イスカの声に反応しても遅し、既に魔物のはヒナに向かって腕を振り下ろしているところであった。

 

 

「ヒナぁ!」

 

 

 間に合わない、ヒナとイスカはそう確信し目を瞑ったときだった。

 

 

「『玄武(げんぶ)絶界(ぜっかい)』彼女を守りたまへ」

 

 

 男の声が森の中を響かせたのと同時に、魔物の攻撃が何に弾かれた。

 

 ヒナは瞑っていた目をゆっくりと見開くと、そこには一枚の紙切れが魔物の攻撃を受け止めていた。

 

 

「ここの生物はこんなに凶暴なのか? 大丈夫かお嬢さん」

 

 

 ヒナは何が起こったのかを理解できず、呆然と立ち尽くしているだけで、気がついたときには、その魔物は複数枚の紙によって拘束されていた。

 

 

「これで安全だけど、《天乃(あまの)》こいつの始末任せたぜ」

 

「承った《夜神(やがみ)》さん! 『白虎(びゃっこ)断雷槍(だんらいそう)』、雷を、悪しき心を祓いたまへ!」

 

 

 女性が一枚の紙をポケットから取り出すと、その紙は光と共に形を変え、光の槍とかす。さらにそに光の槍は稲妻を帯び、触れるものを全て灰とかしていた。

 

 その槍を持った女性は、自分の数倍はある魔物を前に、一直線にかけて槍をひと突き。

 

 刺された箇所からは青い光がほとばしり、魔物は必死の抵抗を試みるが身動きがとれず悲鳴をあげて抵抗するしか方法はなかった。

 

 そしてその悲鳴も徐々に小さくなっていき、やがて声は聞こえなくなった。

 

 

「手応えなかったわね、まだ悪霊の方が強いんじゃなかった?」

 

「天乃が強すぎんだよ……あーあ、中が真っ黒だぜ、《夜天》に見せないようにしろよ」

 

「わかってるわよ、ちゃんとあたしの側に……あれ?」

 

 

 天乃は自分の周りを何度も見回したが、夜天の姿はどこにも見つからない。

 

 ハッと気がついたときには、既に遅い。夜天は黒焦げになった魔物の近くで無邪気にペタペタと触っていたどころだった。

 

 

「ちょっ夜天! そんなもんに触ったらダメよ!」

 

「夜天、こっちに面白いのあるからおいでー」

 

 

 一瞬そちらを向く夜天だったが、すぐに目線をそらすとまた魔物のほうに興味を戻す。

 

 

「ちょっと! 何で来ないの! あの子私の子よね!」

 

「俺たちの子だ! 間違いようがねぇ!」

 

 

 親がワギャー騒いでいる間に、ヒナは夜天に近づく。

 

 身長はヒナの方は若干高い、120㎝くらいだろうか、顔は丸っこく髪を切ったことがないのか、背中まで伸びきっていた。

 

 ヒナは夜天を観察している間に、夜天はヒナの存在に気づき、訝しげな目線を送る。

 

 

「何で犬の耳に尻尾生やしてるんだ……妖怪か?」

 

「私は《ヒナ・マキシマ》と申す」

 

「《柊夜天》七歳、今は森で遭難中」

 

「あなたたち……もしかして異世界から来たの?」

 

 

 夜天はキョトンとした目でヒナを見つめ、首をかしげていた。

 

 

「ヒナ! 怪我はないか!」

 

 

 ヒナの後ろから、同じく耳と尻尾がついた男が近づいてきた。

 

 流石の夜天も、少し怖かったのか、魔物から離れると小走りで親の元に向かった。

 

 ヒナは見て気づいた。さっきの戦いをみて、圧倒的な力で魔物を倒したことを、この人たちならあるいはと……。

 

 イスカもまた同じことを考えていたらしい、二人はお互いの意見が一致したことを確認してから夜天の親の元に歩いた。

 

 

「先程は妹のヒナを助けてもらいありがとうございます」

 

 

 イスカは妹の代わりに頭を深々と下げて感謝の意を示した。

 

 

「別に頭を下げるようなことじゃねぇよ、当たり前のことだぜ」

 

「そうよ? それにあたしたちを助けようとしたとこにあたしはときめいちゃったし!」

 

「おいおい、そんなこと言ったら俺嫉妬しちまうぜ」

 

 

 陽気に漫才をしている二人に、ヒナは真剣な顔で見つめているのを、夜天が気づいた。

 

 夜天は母の袖を引っ張って漫才を中断させると、夜天が指差す方向を向く。その方向にあったのは、何かを伝えたそうに見つめてくる少女の姿があったことに二人は夜天が何を言いたいのかを察した。

 

 

「えっと何かあたしたちに伝えたいことがあるのかな?」

 

「俺たちの話を聞いてくださるのですか?」

 

「そんな表情で見つめられたらな……話ぐらいは聞いてやる」

 

「それでは単刀直入で聞きます。私たちと共に『魔物退治』をして下されませんか!」

 

「「オッケー!!」」

 

 

 

「即答かよ!?」

 

「拙者も説得に時間をかかると思ったでござるが、即答で、しかも了承ときたでござった。拙者と兄者は腹を抱えて笑ったでござるよ」

 

 

 夜天とダルキアン卿はクスクスと笑いながら話していた。

 

 

「それでどうなったんだ?」

 

 

 子供が紙芝居を聴くような、はしゃいで目を輝かして見つめる夜天。

 

 しかし、ダルキアン卿の顔は少しくぐもった表情に戻っていた。

 

 夜天はその表情から瞬時に悟った。ここからが悲惨な結末を迎えるということに……。

 

 

「無理しなくていいよ、話はまた今度でも構わない」

 

「いや、大丈夫でござる。それに今言わないといけない気がするでござる」

 

「……それなら聞こうかな、話してくれるか?」

 

「承知したでござる。了承を受けてから、条件として三日間の間まででござった。その三日後に、柊殿のご家族は、霧型の魔物に身体を乗っ取られてしまったでござる……」

 

「乗っ取られた……?」

 

 

 ダルキアン卿の首が縦に振られた。

 

 

「一瞬の出来事でござった。最後に御二人は『愛してる』と言って夜天殿だけを現世に送り返したでござる。今の御二人の存命はわからないでござるが、きっと生きてると拙者は信じているでござるよ、だから夜天殿も信じて待ってくだされ……」

 

「……そうなんだ、記憶が曖昧でわかんないけど……俺の親はすごい人だったことだけはわかったよ。それに、俺の親はここにいる気がするんだ……だから信じる。話してくれてありがとう。それだけで心の靄が少し晴れたよ」

 

「そう言ってもらえるだけで拙者も安心するでござる。さてと、話もこのくらいにして、そろそろ先にいった二人の助太刀に行くでござるか、夜天殿はもう少し休んでいられるとよいでござるよ」

 

 

 こちらに微笑みを見せるダルキアン卿だったが、その顔は少しだけ晴れた顔をしているが、まだ罪悪感を持っている顔もしていた。

 

 その表情をしたまま立ち上がると、ミオン砦に向き直りゆっくりと進んでいった。

 

 その後ろ姿を夜天は見届けていると、ダルキアン卿が、何か思い出したのか、こちらに戻ってきた。

 

 

「大事なことを忘れていたでござる。夜天殿、この二枚をお渡しするでござるよ。あの御二人が使っていた札でござる。夜天殿がまたこの世界にきたとき、渡してくれと頼まれていたのでござるよ、御二人とも、夜天殿がくることがわかっていたみたいでござった」

 

 

 ダルキアン卿は二枚の札を夜天の手にのせると、直ぐにミオン砦に向かった。

 

 

「またきたら、か……父さんと母さん……会いたいな……」

 

 

 二枚の札を見つめていると、夜天の片目から一滴の水滴が流れ落ちた。




さて次回は脱がすか、それとも破くか……悩みますなぁ!


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12話目 招かれざる客は……(上)

 ポロリを俺にポロリを……ガクッ


 ミオン砦の中に入り込めたエクレとシンクだが、その先に待ち構えていた別兵がその先の行く手を阻んでいた。

 

 

「夜天はどうした! こんなときに役に立たないやつだな」

 

「まあまあ、僕たちだけで頑張ろう」

 

 

 向かいくる敵兵の大軍を相手するエクレとシンク、遠くからリコのサポートでギリギリの戦いを繰り広げていた。

 

 しかしそれも時間の問題、流石に二人で百騎の大軍を相手するのにも限界があった。

 

 気づけばリコからの砲撃の嵐も止み、徐々に押されていく。いつの間にか二人は壁際まで追いやられてしまっていた。

 

 

「これかなりピンチな状況じゃない? リコからの砲撃も止んじゃったし」

 

「無理もない。砲術師は歩兵に詰められば無力なんだ。むしろここまでよく持ってくれたと褒めてやりたい」

 

 

 ジリジリと近付いてくる敵兵の後ろから大柄の男がセルクルに跨がり、兵たちの間を縫うように近付いてくると、二人の前に止まった。

 

 

「フハハハハハ! 親衛隊長も勇者も恐るぅに足らんぞぉ。勇者の坊主は我らが主、ガウル殿下のご指名だ。広場まで来てもらおうぅ、それと小娘の親衛隊長は用はない。降参するなら許してやるぞぉ」

 

「断る!!」

 

「ん!?……そうか、なら……少々痛い目を見てもらおうかぁぁ!」

 

 

 大男の手に持たれていた、鉄球に楔で斧とくっついている武器を持ち上げた。

 

 

「エクレ!」「勇者!」

 

 

 同じタイミングで言葉が重なる。

 

 

「何だ」

 

「そっちこそ」

 

「いいか、よく聞け」

 

「エクレこそ」

 

「僕はここに残るからエクレは先に!」

「私はここに残るから貴様は先に!」

 

 

 またもや同じタイミングで言葉が重なる。

 

 

「だぁー、もう! なんで被んの!」

 

「それはこっちのセリフだ! スットコ勇者!」

 

「いいから行けって! ここは危ないんだし! エクレなら砦の中とか詳しいでしょ!」

 

「足止めなんて難しい戦場、貴様に務まるわけなかろうが! 貴様こそさっさと行け!」

 

「女の子を危険な目に合わせるわけには行かないの!」

 

 

 こんな現状のなかで喧嘩を始める二人に囲んでいた兵たちはただただその光景を見つめるだけだった。

 

 しかし、大男はその光景に呆れ、逆に苛立ちが沸き上がっていく。

 

 それも直ぐに我慢の限界がくると、持っていた武器を勢いよく振り回し始めた。

 

 

「ああぁぁー!! ガキども! この土壇場で楽しいやりとりしてんじゃねぇー!!」

 

 

 大男の鉄球が二人に投げ込まれた。

 

 咄嗟の出来事に、大男の攻撃がきていることに気が付いたのはエクレだけだった。

 

 

「勇者!」

 

 

 エクレがシンクの前に立ち、向かいくる鉄球を受け止める。

 

 が、想像以上の攻撃。エクレはそのまま押し込まれ、シンクを巻き込み後ろの壁に押し込まれた。

 

 直ぐに体勢を戻そうと立ち上がるエクレだったが、既に大男は第二発の鉄球を投げ込んでいるところだった。

 

 立ち上がって避ける暇もない、間に合わない、せめて勇者だけでも……そう思った瞬間だった。

 

 二人の前に大太刀を振り上げ、迫ってきていた鉄球を弾き返した。その人物は藁でできた笠を被り、片手に盃を握る姿をしていた。

 

 エクレはその後ろ姿を一目見ただけで、誰なのかすぐに分かった。

 

 

「ダルキアン卿!?」

 

「え?」

 

「久しぶりでござるな、エクレール。しばらく見ない内に、大きくなった」

 

 

 ダルキアン卿がエクレに微笑み返すと、ポカンッとしているシンクの方に目を向ける。

 

 

「そこにいる勇者殿はお初にお目にかかる。…ビスコッティ騎士団自由騎士!隠密部隊頭領、ブリオッシュ・ダルキアン!」

 

 

 シンクとエクレの視線が注がれる中、ダルキアンは自分が纏っていたマントと被っていた傘を脱ぎ捨て、どこからか取り出した巻物を開き、こちらに見せながら言い放った。

 

 

「騎士団長、ロラン殿から要請を受け、助太刀に参った!」

 

 

 エクレールの話を聞く限り、ダルキアン卿は大陸最強の剣士だという。

 

 そんな人が、この場にいてくれたら…もしかしたら。

 

 

「っ、危ない!後ろ!」

 

 

 そう思った即座の事だった。ダルキアン卿の背後から、見晴らし塔と思われるその場所から光る物が見えた。それが、弓の矢だという事を悟るまでには時間はかからなかった。

 

 一番最初にそれに気づいたのはシンクのようで、すぐにその事をダルキアンに知らせる。

 

 

「…紋章剣」

 

 

 が、どうやらダルキアンにはその忠告は特に必要なかったようで。

 

 

「裂空!一文字!」

 

 

 腰に差したもう一方の刀を抜き放ち、それによって放たれた光の軌跡がダルキアンを狙った兵士達が立つ見晴らし塔を斬り倒してしまった。…そう、斬って、建物を倒したのだ。

 

 

「…は?」

 

「おぉー!」

 

 

 シンクの目は丸くして呆然とし、エクレールは感激に目を輝かせている。

 

倒れた見晴らし塔は砦内へと落ち、俺達を囲んできた兵士たちをけものだまに帰るという二次災害まで起こす。

 

 

「さて、と。勇者殿とエクレールは、砦内に侵入して姫様を救出してくるでござるよ。拙者と、ここで殿を務めるでござる。…なぁに、もうすぐ援軍も到着するでござるよ」

 

「……わかりました。おい、勇者。行くぞ」

 

「え、でも……。わぁ!エクレール、引っ張らないでよ!」

 

 

 ダルキアン卿は、エクレに引き摺られていく後ろ姿を苦笑いで見送ったあとに、目の前の敵に意識を向けた。

 

 

「貴様一人でぇ、百騎を超える兵を相手できると思ってるのかぁ?」

 

「やってみないとわからないものでござるよ。それに主殿は既に負けでござる」

 

「なんだtッ……!?」

 

 

 大男は最後まで言葉を言う前に、その巨体が勢いよく宙に浮かび上がった。

 

 その巨体をあげたのは、いつの間にかそこで掌底を打ち込んでいた夜天の姿があった。

 

 

「夜天殿、もう大丈夫でござるか?」

 

「なめるなダルキアン、俺は元からピンピンだ」

 

「そうでござるか。それにしてもたった一撃で《ゴドウィン将軍》を倒されるとは、本当に強くなられたでござるよ」

 

「これでも手加減はした方だ。…それでもだ、エクレといいこいつといい、ここの仕立て屋は無能なのか? 服が破れるとか詐欺だよな……男のポロリとか吐き気がする」

 

 

 転がっている巨体、基ゴドウィン将軍は、さっきまで着ていたはずの衣服は全て破り去っていた。運良くうつ伏せだったため、口から滝を流すことはなかった。

 

 

「さてと……」

 

「行くのでござるか?」

 

「まあな、本命三人のヌードを、この目に焼き付けるためにこの戦に参戦したんだからな。ここは任せたよ」

 

「…承知したでござる」

 

 

 夜天はシンク達がいった方向に歩いていった。ダルキアン卿は、またしても苦笑いを浮かべながらその後ろ姿を見つめていた。

 

 

『見ないうちに皆成長しているでござるな……』




 違う、俺の求めるポロリじゃない!(血眼)


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13話目 招かれざる客は悪鬼の如く!(下)

レ「ワシはそんな鬼のような顔をしておったか?」

一同「・・・(目線を反らす)」

作『さて、ちょっと刺激が強いぜ!』

夜「やり過ぎたな!」


 夜天の先に、美少女四人が戦っている姿があった。一人は我らの親衛隊長《エクレール》、対する相手はガレット領の王子ガウ様直属秘密諜報部隊《ジェノワーズ》。一対三の対決が繰り広げられていた。

 

 シンクの姿が見当たらないのは、どうやら先にいっているらしい……女の子一人おいていくとかあいつ本当に男か?

 

 

「まああいつ結構女の子よりだよな……」

 

「「「「お前が言えたことか!」」」」

 

「おぉ、お前ら気付いてたのか」

 

「当たり前だ! 目の前でジロジロ見られたら誰でも気付く!」

 

「そうやそうや、始めようも始められんへんやろ」

 

「そうです。それにどこからどうみても女の子みたいですよ!」

 

「髪長いし……腕と脚もスラッとして、羨ましい」

 

「おぉ…ノワが羨ましがるなんて珍しいやん」

 

 

 女子軍から嫉妬の目線が注がれるなか、夜天は困った顔をする。

 

 

「髪はちっこいときから切ることは禁じられててな理由はしらんけど、腕と脚が細いのはただ単に運動をしないからでな、お前らだって割りと細い方だぞ?」

 

「でも背がある……」

 

「黒猫良く聞け、俺は男だ、女よりも身長があるのは当たり前だ」

 

「むぅ…不公平……」

 

「しゃあないだろ、それよりも早いとこ始めようか。こっちにもう時間がないからな」

 

「そうだ! 姫様のコンサートまであと少し、すぐに終わらせる」

 

 

 夜天とエクレは戦闘の体勢に入った。

 

 

「ノワ、この気持ちはこの勝負で晴らそうや」

 

「そうですね。女の敵とはこういうことです。」

 

「この屈辱……晴らさせてもらう!」

 

「……エクレ、俺あいつらに何かしたっけ?」

 

「私に聞かれても知らん!」

 

 

 両者各々の武器を持つと、ジリジリと近づいていく。そして上空に上がった花火を合図に、全員が動いた。

 

 

「小手調べといこうか!」

 

「一番手《ジョーヌ・クラフティ》が相手してやるでぇ!」

 

 

 最初に、前に出てきた虎耳の少女《ジョーヌ》が、大きな錨のような武器を振り下ろしてきた。

 

 

「ゲッそれは流石に受けきれませんわぁ」

 

 

 夜天の動きを急停止したあと、後ろに素早く跳んだ。…がその動きを読んでいたかのようにジョーヌの後ろから黒猫がとびだしてきた。その手には数本のクナイが握られている。

 

 

「二番手…《ノワール・ヴィノカカオ》お相手(つかまつ)る」

 

 

 持っていたクナイを全て夜天に向けて投げ放つ。

 

 

「おいおい、それは洒落にならねぇ! 刃物は人に向かって投げるなって親に教わらなかったか!」

 

「そんなこと……言われてない」

 

「間近よ、親のかおが見てみたいねッ!」

 

 

 空中にいたため避けることが困難だったが、夜天は飛んでくるクナイの一本を掴み取ると、他のクナイを全て打ち落とし、難なくと回避して見せた。っが、安堵をつくことを許されず、今度は緑色に光矢が夜天の前に飛んできていた。

 

 すぐに持っていたクナイを投げつけると、後ろに飛び退いた。

 

 刹那、クナイは光る矢に激突するのと同時に、砕き散り、さっきまで夜天がいた場所に矢は突き刺さった。

 

 

「三番手《ベール・ファーブルトン》遠距離から失礼します!」

 

「めんどくせぇやつらだな」

 

「当たり前だ。あれでもガウル殿下副審だ。基本的には3人とも【バカ】で間違いなのだが、戦いとなると話は別だ」

 

「……あれ? エクレいたんだ!?」

 

「バカにしてるのか貴様は!!」

 

「すまんすまん、冗談だ。それにしても厄介だ、近接からくる後の遠距離は、流石にキツいな……エクレ、ここは手を組もうぜ」

 

「当たり前だ、その方が早い。そんなことより夜天、いつものあの奇妙な技は使わないのか?」

 

「いつもの? ああ、あれか、実は札が入ったケースを風呂場に忘れてきてさ、札がないと使えないんだ」

 

「貴様本当に大事なときに役に立たないな!」

 

 

 エクレは大きなため息を吐き出すと、地面を蹴って三人に向かっていく。

 

 

「私が前衛に出る! 夜天は援護を頼む!」

 

「普通逆だろ……。しゃあないな!」

 

 

 夜天もエクレにあとに続いて走る。すると、すぐに相手側も攻撃に移った。パターンは一緒のようで、最初に虎耳(ジョーヌ)が攻撃、相手は避けるか受け止めるかの二択だがどちらにせよ黒猫(ノワール)のクナイが飛んできて、避けるの一択、そのあとは兎耳(ベール)の矢で追撃がくる完璧なフォーメーション。

 

 しかし、それは相手が一人のときに限る。なら、この場合はどう立ち回るか、決まったも同然。

 

 夜天は落ちているクナイの一本を掴み取ると、今エクレがジョーヌの攻撃を受け止めている瞬間だった。タイミングはバッチリ、足に力をいれて一気に跳んだ。

 

 それと同時にエクレの真横からクナイを投げようと構えたノワールのすぐ目の間に着地する。

 

 

「え?」

 

「驚くことじゃねえだろ……相手は二人いるんだからな」

 

 

 驚いて動くことすらできないノワールの腹部に手を添えると、自分の掌に輝力を集中させる。

 

 

「まずは黒猫ちゃんが脱落だな」

 

 

 掌に溜めた輝力を一気に発射。輝力の玉はノワールを乗せて遠くの壁まで吹き飛ばし、爆発を起こした。

 

 

「ノワ!」

 

「ノワさん!」

 

「…不覚……」

 

 

 服がボロボロに破けて立ち上がるノワだが、意識がそこで途切れ、その場に倒れ込んだ。

 

 手加減したものもあの勢いで吹き飛ばされればケモノダマになってもおかしくないが、ならない辺りをみると、この三人は本当に強いことがわかる。

 

 それにしても……

 

 

「隠すとこはしっかり隠しやがって……見えなかった」

 

 

 見えなかったことにがっかりと落ち込む夜天に、光の矢が飛んでくる。飛んでくるのを感じ取っていた夜天は、すぐさま対応、相手を兎耳に固定する。

 

 

「ノワさんの仇はこの私がとってみせます!」

 

「やってみろよウサミミ、その前にてめえの服を剥ぎ取ってやる」

 

「目的が変わってるぞ夜天!」

 

 

 夜天は、エクレの言葉を無視して、ベールに近付く。ベールも近付いてくる夜天に光の矢を放ち続けるが、夜天には掠りもしなかった。

 

 

「何で当たらないんですか!?」

 

「避けてるからな」

 

 

 足の裏に輝力を集中、ジャンプのタイミングでまた一気に放出、通常の二倍三倍の高さまで跳ぶことが出来た。

 

 

「もらいました。空の上なら避けれません!」

 

 

 ベールは空に跳んだ夜天に向かって矢を放った。矢は一直線に夜天に向かっていく。

 

 しかし、その行動があさはかなものだと気づいたのは早かった。相手は輝力を扱うのに長けている。ノワを倒すとき、空に跳んだ時のを見れば明白だ。ならば空に浮かんでいても、輝力を使えば自由に動けるのでは……。

 

 ベールの予想は的中した。夜天は両掌に輝力を集中してジグザグに移動してきた。もちろんベールが放った矢は夜天の横を通り抜け、夜天の後ろに飛んでいってしまった。

 

 

「もらった!」

 

 

 夜天はベールに向かって一直線に落ちていく。

 しかし、その表情は負けている顔をしていなかった。むしろ勝ったと誇った顔を浮かべている。

 

 

「かかりましたね!」

 

 

 後ろからの悪寒、後ろを振り向いた瞬間夜天の頬を何かが掠めていった。掠めていったそれは、さっきベールが放った矢だった。

 

 矢は右往左往と移動して、夜天に向かって飛んできている。

 

 

「輝力ってそんなことまでできるのかよ!」

 

 

 持っていたクナイを飛んでくる矢に向かって投げつけるが、矢は命を宿しているのか、迫ってくるクナイをかわして夜天に向かって再度突進してきた。

 

 

「輝力ってスゲー」

 

 

 感心しながらも、迫ってくる矢をかわし続ける夜天。

 

 

「さあ、もう一本追加しますよぉ! そーれ!」

 

 

 矢はさらに追加された。その矢も夜天に避けられれば方向転換、再度突進とそれが永遠に続く。

 

 

「勇者の友人さん、そろそろ限界じゃないのですか? 負けを認めれば「ありえねぇよ!」……えっ?」

 

「負けを認める分けねえだろ? たった2本に永遠に追っかけられてるだけ? なら……」

 

 

 夜天の下から夜天を中心に紋章が浮かび上がった。

 

 

「打ち落とせば言い話だろッ!」

 

 

 地面をおもいっきり踏みつけると、紋章は一層眩く光だした。

 

 その瞬間、夜天の回りを飛んでいた二本の矢は、夜天が放った衝撃波によって打ち落とされ、さらにその近くに落ちていた数本のクナイが独りでに浮かび上がった。

 

 

「えっと……まさか?」

 

「おう、そのまさかだ……いけ!」

 

 

 数本のクナイは一斉にベールに向かって突っ込む。

 

 

「えぇ! ……ちょっ、ちょっと待ってください!」

 

 

 慌てるベールだが、矢を放ち、クナイを一つずつ撃ち落としていく。……が、全てを打ち落とすことはできず、クナイの餌食となってしまった。……ベールの服が…。

 

 

「ちょっと何で服だけなんですか!?」

 

「向こうで男の裸を直視したからな、目の保養だ、それにしても、あの黒猫と違って、案外出るとこでてるのな? これは売れるぜ」

 

「恥ずかしいので感想言わないでください!」

 

 

 いやそれにしても、育ってるところは育って、胸部に実ってる果実はメロン級! 滅多に御目にかかれない程の激レアだ。さっきの黒猫も、胸はともかく他はスラッとし、さらに色白い肌をして綺麗だったな……。胸はエクレといいしょu『ゴスッ!』「ハゥスッ!」

 

 いつの間にか夜天の横に這い寄っていたエクレは、横腹に強烈な回し蹴りを喰らわせた。

 

 夜天はガードすることもできずに、もろに喰らう。そのまま勢いよく吹っ飛ばされ、ノワが転がっているところまで吹っ飛ばされた。

 

 壁に激突し、ノワの上に着地。それと同時に『ふにゃっ!』っと短く悲鳴が聞こえた。

 

 

「わっ! すまん大丈夫k『ムニ』……あーお約束かな?」

 

 

 退こうと動いた夜天だったが、手を置いたさきは、ノワの膨らみかけている胸があった場所だった。

 ノワも流石に目を覚ました。このあとの反応に備えて、夜天は覚悟した。

 

 

「……重い……」

 

 

 クールに返された。もっと怒って頬を張り倒す勢いで殴ってくると思ったんだがな……。

 

 

「あの……怒ってないんですか? 触ってるんだけど?」

 

 

 夜天は二、三度揉んで見せた。ノワの顔が赤くほんのりと染まったところを見ると、触られている自覚はあるらしい……なぜおこらn「いつまで触ってるんだけど貴様はッ!」……エクレは鬼の形相で、こちらに走ってくる。

 

 

「エクレ! これは不可抗力だ! 決して自分から揉みに行ったんじゃ!」

 

「問答無用! それに二回目はわざとだったろ!」

 

「よく見てるなぁオイッ!」

 

 

 エクレの足が光だした。輝力を足に集中させて蹴るつもりなのだろう……本気で怒ってらっしゃる。

 

 流石に輝力が乗ったエクレの蹴りを受けたら死ねる自信はある。なら一択、両腕を捨ててガードをする。

 

 善は急げ、夜天は腕をあげようと力を入れる……。が、一向に上がらない、むしろ逆に引っ張られている。

 

 不思議に思った夜天は、自分の腕を見ると、二つの手が夜天の手首をガッチリとロックして引っ張っていた。

 

 もちろん引っ張っているのは黒猫(ノワ)自信だった。その表情は赤くなりながらも、口元をつり上げている。

 

 

「まさかの伏兵が!」

 

「私の触った当然の報い」

 

「ナイスだノワ! そのまま離すなよ!」

 

「オーケー」

 

「ちょっと待てエクレ! 目的が変わってッ!」

 

「知ったことかぁ!」

 

 

 手加減なしのエクレの紋章蹴りは、見事に夜天の頬を射ぬき、真逆の方向に背中を地面に引き摺られながら吹っ飛ばされた。

 

 その勢いは止まることを知らないのか、頭に何かぶつかるまで夜天の動きは止まらなかった。

 

 

「エクレてめぇ! 何してくれんだ!」

 

「それはこっちの台詞じゃ!」

 

 

 エクレの声じゃない。最近何処かで聞いたような声が後ろから聞こえた。それもかなりお怒りな感じだ。

 

 そしてその声が聞こえたのとほぼ同時だった。

 

 夜天の頭に拳が落ちるのと、まだ服を着用している、エクレとジョーヌの服を上から落ちてきたクナイが丁度服を斬りつけた。

 

 

『あ……目の前に天国(エデン)が広がってる……眼福眼福』




夜「最後は女性人全員破かれたな……最後はやっぱりエクレのサービスで終わらすのが定番!」

エ「なぜそうなる! それよりも最後なぜ私を狙った!」

夜「輝力の集中が切れてな……ちょうどその下にエクレがいてスパンといったんだよ! それと安心しろ、黒猫ちゃんよりはあったから胸を張れるぞ!」

エ「うれしくないわ!」

ノ「……これから成長するんだもん…タブン」


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14話目 真実を...(上)

うp主の都合上により更新ペースが激減します。
何卒ご了承ください_(..)_。


 姫様奪還は、ガレット獅子団領の姫、《レオ閣下》の参戦により幕を閉じた。

 

 ミオン砦の外、レオ閣下は役目を果たして颯爽とセルクルに跨がって去ろうとしたとき、前に一人の人物が行く手を阻んでいた。

 

 

「貴様、なんの真似じゃ? 勇者の友人」

 

 

 夜天はレオ閣下の前で仁王立ちで睨む。

 

 

「いやぁ、ちょいっと気になったことがあってな。……正直に答えてくれよ? 何を隠してる?」

 

 

 レオ閣下の表情が歪んだ。しかしすぐに厳しい顔に戻し、そっぽを向く。

 

 

「わしはなんも隠しておらんし、隠していても貴様には喋らない! わしは急いでおるんだ!」

 

 

 そう言うとセルクルを急かすように走らせた。

 

 

「あの犬姫に何か悪いことでも起こるのか? 例えば……『死』とか?」

 

「口を慎まんかぁぁぁ!」

 

「そんな怖い顔するなよ猫。楽しいお祭りもお前のわがままで台無しになるんだぜ?」

 

 

 牙を剥けるレオ閣下に夜天は真剣な顔で睨む。

 

 

「……犬姫を手伝わなくていいのか? わしに構ってる時間など……」

 

「向こうにはシンクがいるからな。半日といったところだが、あいつは頼れるやつでな」

 

「……ついてこいッ!」

 

 

 セリクルを走らせるレオ閣下。夜天は先程から頬を擦ってきていたセルクルの背中に跨がりレオ閣下を追いかけた。

 

 ふと空を見上げると、シンクがミルフィオーレ姫を背負って物凄い速さで先に進んでいる姿が見えた。

 

【ちょっと人助けにいくわ。あとは頼んだぞ……シンク】

 

 

 

 ミオン砦からセルクルを飛ばして今はガレット領に足を踏み入れていた。

 因みにビスコッティの姫さんのコンサートは無事勇者シンクの活躍で間に合ったようだった。

 

 

「あーあ、俺も姫さんの歌聴いてみたかったなぁ!」

 

「なら今から行ってくればいいでわないか」

 

「間に合わねえッつうの。それに行って戻ってきてもあんた俺をガレットに入れる気なんてないだろ?」

 

 

 レオ閣下は、こちらをに向きもせずにズカズカと先に進んでいってしまった。夜天は、その後ろ姿を見失わないようについていくと、ある一室の部屋に入っていった。それに続いて夜天も中に入ると、その部屋は、真っ暗な部屋の中央に魔方陣らしきものが床に浮かび、その魔方陣の中央に、一つの鏡がポツンと置かれている。

 

 

「わしは少しばかり星詠みが出来てだな、それで未来を占っておたんじゃ」

 

「ほお、それはまた大層な便利能力だな、それで金儲けできるんじゃね?」

 

「そんなに大したことじゃない、わしよりももっと優れた人材だってたくさんおろう」

 

 

 ふーん、と夜天が適当に返事を返す。

 

 

「それで? その、星詠みで何を見たんだ?」

 

 

 レオ閣下は頑なに口を結び喋ろうとしない。

 

 

「おいおい、俺がここに来たのは真実を知るためだぞ? なぜそう隠そうとする?」

 

「………わしが視たのは、犬姫と勇者が……()ぬ未来じゃ」

 

 

 驚愕まではいかなかったが、改めて人の口から聞かされるとかなり衝撃的なことだと感じた。

 

 

「しかしシンクがな……。ビスコッティにはエクレやダルキアン卿っていうチーキャラがいるから平気じゃないのか?」

 

「わしもそう思っておったのじゃがな、何度星詠みをしても…」

 

 

 レオ閣下は鏡に向き手をかざしたその時だった。魔方陣が青く発光するかと思えば、光は鏡の中に吸収されていく。その鏡に写されたものを、夜天は目を見開いた。

 

 鏡の前にたっているレオ閣下の姿は映っておらず、変わりに二人の姿が映っていた。その二人は……。勇者シンクと姫ミルフィオーレだった。そして二人はうつ伏せになり、地面には(おびただ)しい血の池ができでいた。

 

 

「これが星詠み。そして同じものがこうやって映し出されるのじゃ」

 

「これを何度も見せられれば誰でも病むわなぁ。でも……そうだなぁ……ふむ………これだな」

 

 

 一人、頭のなかで考え、そして一人で納得している夜天。

 そして、フッと顔をあげるとビシッと指をレオ閣下の顔に向ける。

 

 

「その問題事、俺も手伝ってやるよ!」

 

「なんだと!? 貴様が手伝うと!」

 

「ああ、一時的なのものだが。俺がお前らのところの救世主になってやる」

 

 

 レオ閣下は顎に手を当て考える。

 

 

「確かにお主が来てくれれば戦にも勝てるやもしれん」

 

「なら」

 

「じゃがお主の助けなどいらん、これはわしの問題じゃからな!」

 

「そうか、じゃあ仕方ない、勝手に入らしてもらうは」

 

「なっ!? 貴様わしの言った言葉を理解してないのか!」

 

 ゲラゲラと夜天は笑いながら部屋を出ていく。その間も後ろでずっとキャンキャンと吠えている。

 

「さて、エクレに謝らねぇとな。何発殴られるかな...」

 

 

 そしてビスコッティの姫のコンサートも無事に終わることができた。

 しかしその数日後、直ぐにガレット領はビスコッティに宣戦。賭ける物はどうやら国にとって大切な物を両者は賭けた大戦へと発展した。



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15話目 真実を打ち明けましょう!(下)

何ヵ月ぶりだ?
まあそんなのどうでもいいや、ちょこちょこ書き留めていたDog Daysを久しぶりに更新!
楽しみにしていた人、お待たせしました!


 テレビ中継している液晶に勇者シンクとエクレにリコが率いるビスコティ軍が真っ直ぐと、ガレット領に進軍してきているのをぼけーっと眺めている夜天。

 そのとなりには仁王立ちでレオ閣下が夜天と同じく宙に浮く液晶画面を見つめる。

 

「シンクたち来てるけど、そこのところいいのかな? こう応戦とかさぁ?」

 

「なら貴様が行け、わしとはじめてあったときに使ったあれを使えば一瞬じゃろ?」

 

「まあそうなんだけどね、あれって結構体力持ってかれるから、多勢に無勢、ボッコボコのフルボッコにされちまう。主にエクレに…」

 

「ならよいもうそろそろこちらの勝利じゃからな」

 

「...姫さんの身柄を確保ってことか? それなら期待しない方がいいぞ」

 

 なんだと? と言いたげな顔でこちらを睨んでくるが、夜天の言葉の意味が、すぐに液晶に写し出されているシンクとエクレとリコ。その中の一人が姿を変えた。

 

「砲撃専門のリコが前線に出るなんてこと、悪手にも程がある。少し考えればわかることだ」

 

 リコの姿は煙を巻き上げ煙が晴れると、その姿はリコではなく、ビスコティの犬姫。ミルヒオーレ姫だった。

 

「まあ、そんなことはいいんだろうけど。本来の目的には支障はないだろし、シンクとエクレの足止めは任せとけぇ」

 

 そう言葉を残すと五階建てはある建物から夜天は身を投げた。一枚の紙を足に滑らせながら。

 

「我が足に強靭な力...」

 

 その瞬間、紙を滑らせた足に紋章が刻み込まれる。その足で地面から落ちると、地面は抉れ、小さなクレーターを作った。

 下で待機していたガレット領の猫兵は落ちてきた夜天を見て固まってしまった。

 

「夜天君が出てきたよエクレ!」

 

「見ればわかる! あの裏切り者は私が相手する。貴様は姫様と一緒に行け! 姫様に何かあったら...わかってるな勇者!」

 

「わかってるよ、でもその前に!」

 

『烈空十文字!』

 

 夜天の姿を確認したシンクとエクレは同時に紋章を出すと十字型の紋章砲を飛ばす。

 しかしその攻撃は、夜天の投げた一枚の紙によって煙幕となって簡単に防がれてしまった。

 だがそれも計算のうち、煙幕は夜天の視界を奪って、ミルヒオーレとシンクを行かせるための策だった。

 だがそれを見越してか、ミルヒオーレが通った場所はシンクたちだけを見えない壁によって妨げられてしまった。

 

「ひめさま!?」「シンク!?」

 

「まさか、夜天貴様!」

 

「おう俺だ! 猫姫は一対一を望んでたからな、それを邪魔をさせないためにここでお前たちを食い止めさせてもらう。ここを通りたければ俺を倒してから通るんだな! ……この台詞一回言ってみたかったんだよね」

 

 夜天が紋様がついた足で前に踏み込むと、一瞬でエクレの前に姿を現す。警戒をしていたエクレだったが、夜天の動きをとらえることができず懐に潜り込まれたことに気づいたのは、夜天に攻撃されたときだった。

 上手くエクレの懐に入り込むとシンクのところまで、夜天はエクレを蹴り押すよう、飛ばした。

 急にエクレが飛んできたため、シンクは交わすこともできず、エクレに巻き込まれ二人して結界の壁に激突した。

 

「エクレとシンク...マジで来ないと、ブッコロだぜ?」

 

「くっ勇者、早いところあいつを倒して姫様のもとに向かうぞ!」

 

「オーライ。今度は二人の共同作業だね」

 

「勇者様! 我らも微力ながらお手伝いします!」

 

「おうおう、一人相手に多勢はズルくないか?」

 

「問答無用!」「行くよ夜天くん!」

 

 ざっと見て20人弱はいる兵は槍やら剣やらを手に持って襲いかかってくる。

 シンクとエクレの姿は見つからない辺り、隙をついて一撃で決めに来ているのだろう。それならわざと隙をつくって誘きだしてやる。

 自然に隙を作りつつしかし確実に兵をさばいていく。だが兵は尽きることなく何度も突進を繰り返せば夜天に捌かれる。その繰り返しで、一行にシンクとエクレの姿が現れない。

 

『目的は体力を削ることか? いや、そんなことを考えるようなやつじゃない、なら...何か準備をしているってことか』

 

 夜天がそんな思考を巡らせていると、不意に背中に異様な感覚が、いや違う。後ろにシンクの持っているパラディオンが格子状になって突き刺さっておりこれ以上後ろに下がれなくなっていた。

 

「逃げ場が...これが狙いだったのか、にしてもパラディオンの性能半端ないな」

 

「烈空一文字!」

 

 いつの間にか目の前が開けその先で紋章砲を打ち出すエクレの姿があった。

 エクレの放った攻撃は真っ直ぐと夜天に向かってくる。しかし夜天は札を投げ相殺する。だが黒煙が結界内に満遍なく広がる。

 

「目眩ましか、俺相手に考えてるな」

 

「ハアァァァ!!」

 

 エクレが前からの奇襲、すぐに夜天は応戦を仕掛ける。互いに一歩も譲らない攻防の入れ替わりを繰り返す。しかし、エクレだけが夜天とやりあっておる、シンクやその他に兵たちは一行に向かってこない。

 

「そろそろ煙も晴れるころ...ああ、なるほどな。エクレ、お前、はなっから俺を倒すことが目的じゃなく結界の破壊が目的だったのか」

 

「気づいたところで遅い、外側は強くても中からなら壊せるはずだ!」

 

「内側も外側と同じ壊せると思ってるのか?」

 

「思ってなかったらこんなことしない、煙を晴らすのに密封では晴れないからな」

 

「......空気の出入り口(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)か」

 

 夜天の言葉にエクレが微笑で答える。煙で穴を探し、見つければシンクの紋章砲で壊す。全く、考えたな。

 でも残念。

 

「俺がそんなへまをすると思うか? 空気の出入り口は確かに存在する。けどな、結界事態は触れたものを無力化する作りになってるんだ。前に実戦してやったろ?」

 

 エクレの表情が歪む。考えて必勝法立ったのだろう、しかしそんな作戦も簡単に撃ち破られてしまった。

 

「烈空一文字!」

 

「あまいは小娘!」

 

 夜天は距離をとるエクレに疾風のごとく背後に回ると、一枚の札とともにエクレを押し込む。

 

「我が呼に答え砂土を奮え。豪石の仁、捕縛!」

 

 祝詞を唱えるとエクレにつけた札が神々しく輝くと、砂土がエクレの体を這うように拘束していく。

 

「お前は少しここで待ってろ」

 

「まっ待て! ひとつ聞かせろ! 何故裏切った」

 

「...裏切ってない。むしろお前らのためでもある」

 

 エクレは夜天の言葉を理解できずにいると、一人の少年が夜天に襲いかかる。

 

「エクレ大丈...夫でもなさそうだね、助けた方がいいかな」

 

「私に構うな! それよりも今は夜天を倒すことに専念しろ」

 

「今度はシンクが相手してくれるのか、少しは楽しませてくれると嬉しいな」

 

「勇者シンク、僭越ながらお相手つかまつります。僕も夜天君とは一度手合わせしたかったんだ」

 

 一瞬の沈黙が通りすぎると、夜天とシンクはその間を詰めてぶつかり合う。

 

「出し惜しみは無しだ“白虎・断雷槍”。こっちは本気だ、シンクも本気でこい!」

 

「言われなくても本気でいくよ! “烈空十文字”」

 

 雷を帯びた槍とシンクが放った紋章砲がぶつかる。しかし、琥珀の手にした槍はシンクの攻撃を意図も容易く切り落とす。

 

「流石夜天くん。でも僕も負けてられないよ!」

 

「いや、俺の敗けだわ。やっぱり使ったことのないものは無闇に使ったらダメだな力を全部吸い摂られた...」

 

 夜天はその場に倒れ込み、持っていた槍は四散一枚の紙に変わり、エクレを拘束していた土も小山をつくって力なく積もる。

 

「どういうことだ夜天。あのままいけばお前の勝ちだったろ」

 

「白虎・断雷槍。親が使ってたものだったらしくてな、ダルキアンに渡された霊符なんだ。けど使ったことがなくてさ、ちょうどいいから使ってみるか! って勢いで使いましたら、思いの外霊力の吸収が多く俺の力をすべて吸い尽くされてしまい、今指一本すら動かすことがままならない状態でござる」

 

「それだけ強力なものとも言えるのか、だが後味は悪いが私たちの勝ちであるのは間違いない。早いとこ姫様のところに向かうぞ!」

 

「なに言ってるんだ? 行かせるわけないだろ。現に結界は壊れてない、どうやって出るつもりだ? それにお前らが行ったところでどうこうできるものじゃない」

 

 エクレがムッと不機嫌な表情を浮かべる。

 

「...どうして裏切ったかって聞いたな。エクレなら知ってると思うが星詠み、って聞いたことがあるだろ?」

 

 エクレは首を縦に振る、しかしシンクは首をかしげておりなんなのかはいまいち理解していないようだ。

 

「まあその星詠みで猫姫がそっちの犬姫の未来を詠んだんだ。んでその結果が悲惨で、その未来を止めてやろうと猫姫のツンデレ作戦が行われたわけ」

 

「待って、その悲惨な未来っていったい何がわかったの?」

 

 シンクの問いかけに夜天は一瞬口をつぐみ明後日の方向に目をそらす。しかし、エクレが夜天の胸ぐらを掴み、無理矢理起こし上げると怒り任せに振り、夜天の頭の中をシェイクさせる。

 

「わかったわかった。言うから揺するのは止めろ! 吐く別なのを吐かせるつもりか...」

 

「いいからさっさと言え! 姫様に何が起こるんだ!」

 

「言ってもいいが、心身ともにしっかりともて。かなりショックなことだからな」

 

 夜天の真剣な表情に二人は息を呑み込む。長く感じる沈黙のなか夜天は口を開いた。

 

「......犬姫、ミルヒオーレとその勇者、シンクの死の姿だ...」

 

 驚きの声をあげる前に、レオ閣下とミルヒオーレ姫のいる塔の上から獣のような雄叫びが響いた。




また遠い旅に出ますゆえ、更新が遅くなるぞい。
最後に読んでくれた人に一筆。

「天使の3Pめちゃ面白い」

まあどちらかと言うとRWBYが今来てるかな!
それではまた長々とお持ちくださいな!


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16話目 魔物VS...(上)

結構はしょったぞ!

遂に夜天さんはこの領域まで踏み込んでしまった。
どこまで上がり続けるか見ものですな!


 塔の上で何か異常事態が起こったらしく、急遽結界を解除、その大部分の霊力を夜天は取り込むと、エクレとシンク、二人を抱え少しでも霊力の消費を押さえるため脚に輝力をためると一気に放射し上に飛び上がる。

 その時、輝力の集まりが悪い気がする、しかし今は気にしている暇がない、急いで向かわねばならない衝動で一端置いとく。

 

「そろそろ着く...なッ!?」

 

 もうすぐ塔の上に着くと知らせようとしたとき、夜天たち三人の頭上を大きな影が飛び込んだ。

 

「なんだあれ」

 

「しらないけど、でも一瞬姫様の姿を見た気がする」

 

「なにっ!? それは本当か!?」

 

「シンク、そっちの姫は任せる。あのデカ物を止めて姫を守ってこい」

 

「うんわかったよ。浮き岩が足場になってる。トルネイダーでいけばたぶん追い付くはず!」

 

「待て勇者、私もつれていけ!」

 

 エクレの言葉にシンクは言うと思ったといった顔でうなずきエクレを抱えてトルネイダーと言う乗り物を顕現させるとそれに乗って発進した。

 

「さて、猫姫の付き人の...ルージュさんだっけ? 取り合えず簡易だが癒しの符を渡しとく、それを猫姫の一番深手のところに当てろ」

 

 すぐ近くにいたメイドのルージュに一枚の紙を渡すとすぐにシンクの元に向かおうと振り返った。

 

「おい、勇者の友人、貴様は何度言えばわかる。ワシのことは閣下と呼ばんか...」

 

「指摘できる体力あるなら今はその怪我を直すのに集中しろ、そうだなこの件が片付くまでに起き上がれるようになったら考えなくもないぜ!」

 

「ふん、言われずともすぐに直して見せるわ。...それまで任せても構わんか?」

 

「......お前らしくもない、弱気になるな。それに俺はお前を手伝いに来てやってるんだぜ? 今さら任す任せるとか言わなくとも、答えは決まってんだろ」

 

 夜天の言葉を聞いたレオンは短く笑ったと「そうじゃな」っと短く返事を返しそれから何も言葉を発しなかった。きっと気絶をしたのだろう。

 夜天はルージュに見送られながら脚に札を当て紋章を浮かび上がらせてから一気に駆け出しシンクの元に向かう。

 

「のこり霊気を考えて大技を出せてもあと三回と言ったところか、それにしてもあの魔物までの距離じゃシンクたち届かないんじゃないのか?」

 

 夜天の予想は当たっていた。シンクとエクレが乗っているトルネイダーは浮き岩が見付からず下降していた。あのままでは二人とも地面に激突運が良ければ骨折、悪ければ死んでしまう。二人の危機と感じた瞬間、夜天はスピードを早める、それは幸か不幸か、エクレが身投げしていた。

 正確には自分を犠牲にしてトルネイダーにエクレの紋章砲を当て飛距離を稼いでいた。シンクの方はエクレのお陰で魔物にたどり着けるだろう、なら助けるならエクレの方だな。

 ありったけの力を脚に入れバネの要領でエクレに飛び込む。そのスピードは第三惑星に匹敵するスピード、地面に激突する前にエクレを腕に抱き寄せることに成功した。

 

「身投げとは恐れ入ったなエクレ。フロニャルドの加護が薄くなってるんだぞ? 死ぬ気か?」

 

「貴様が後ろから来ているのを見つけてな、何とかしてくれると思っていた。一か八かの賭けだったが、夜天、貴様は来てくれたじゃないか信じていたぞ」

 

「そんな信じられてもな、そんなことよりもエクレ、今から魔物の目の前まで進む、エクレはここで待っていろ」

 

「私も連れていけ! きっと役に立つ。それに姫様をお守りするのが親衛隊長の務めだ。イヤと言ってもお前の体に引っ付いてでもついていくぞ!」

 

「...そんなに俺のことが好きか?」

 

「な、なにを言ってるんだ貴様は!?」

 

「冗談だ。それにしてもあのデカ物、邪念が一部にしか感じないんだよ、先端部分だけにその邪念が集中している。多分だがあのデカ物は一部が本体でのこりは入れ物といったものだと推測してるんだが」

 

 エクレはキョトンとした表情をしていた。わからなくても仕方がない、邪念という念は、見るのではなく感じるものだ。元から霊力の高い夜天ですら邪念が強くなければ感じることが出来ないほど、凡人ならなおのこと。

 そうこうしているときに空から聞き覚えのある声が耳に届く。それはビスコッティの天才少女であられるリコッタことリコが、姫の乗り物であるハーランの上に乗って登場した。

 

「リコ、着たのか!」

 

「はい! 空から見ていたとき、エクレが落ちていく姿を目にして急いで飛んできたであります」

 

「リコナイスタイミングだ。エクレをのせてすぐに飛び立て。たぶんハーランが必要になるだろうからな」

 

「わかったであります! エクレ後ろに乗るでありますよ」

 

「しかし、夜天お前はどうするんだ?」

 

「あの怪物の動きを止める」

 

「待て、倒すんじゃなく、動きを止めるのか?」

 

 夜天はエクレの言葉を肯定する。

 

「さっきも言ったがあの怪物の本体は別のところか、もしくは別のなにかに取り付かれているかのどちらかだと思ってな。そのため手を出すにも出せない状況だから取り合えず動きを止めようと思ったんだよ」

 

「しかし、止めるだけでは解決はしないであります。やはりここは倒すしか...」

 

「そうだ夜天! リコの言う通り、ここで倒した方がいだろ!」

 

「はあ...。いいか犬とリス、あれが本体じゃなかった場合、もしかしたら倒した瞬間に国ひとつを破壊するほどの爆発が起こるかもしれない。または取り込まれているほうなら倒した瞬間にその取り込まれたやつが死ぬかもしれない。俺にとって誰か死ぬことは勝ちと思わねぇ。それが例え敵であろうともな! それを踏まえてだ、動きを止めて考える、もしくはシンクに全部任せる」

 

「最初の方はよくわからないのでありますが...」

 

「ああ...ただ...。確かに死者が出ることは許されない。仕方ないからお前の策に乗ってやる、感謝しろよ夜天!」

 

 なぜか偉そうにするエクレに夜天はヘラヘラとした表情で応答とは言いがたい返事を返す。

 そのあと作戦通り、エクレとリコはハーランの上に乗り天の上に舞っていった。

 その姿を見送ったあと、夜天は林のなかを走っていく、案外早く化け物の追い付くことが出来た。それにしても近くで見れば見るほどホントに図体がでかい。実際現状止められるのかと不安になっている夜天であった。

 化け物の背中の上では火柱を上げながらシンクが犬姫を助けているところだった。いや、犬姫はすでに救っていた。二人は化け物の頭部、夜天が行こうとしていた場所に向かっていた。

 夜天が止めるといったがあれは嘘だ...頭部に禍々しいオーラを感じていたのが気になり、それを確かめにいくための嘘だった。それに前は相手の攻撃が激しくなると思っての判断、わざわざ危険を冒す真似はしたくないからだ。

 

「やっぱり前の方に何かあるみたいだな...やっぱそう簡単にはいかせてくれないか、こっちまで警戒されてるとはな...」

 

 夜天の足がピタリと止まり、前の光景に舌を打つ。

半透明で無数に浮遊する、まるで狐の幽霊のようなやつがわんさかと行く手を阻む。

 

「今はお前らの相手してる暇はないんだが、まあいいや。相手してやるからかかってこいよ狐さん。この世界に来て久し振りの本気だ、光栄に思えよ?」

 

 夜天がクイクイっと挑発をすると、狐の幽霊は一斉に夜天に襲いかかる。

 夜天は懐から一枚の真っ黒の神を取りだしそれを前に突き出す。

 その瞬間、夜天以外のすべての時間がスローになる。夜天の周りに謎の発光体が地面から宙に舞う。

 

「愚弄、愚者の退魔師が願い経つ祀る。闇よりキタリ天の方舟、一筋の光を導き悪鬼を滅っせ。今宵は神月、君臨の供物はが我が身を捧げよう。今一度問う。我が身我が心を捧げ、その姿を顕し願う! 降臨せよ...」

 

『“天照大御神(アマテラス)”』




感想が来ていて嬉しい限りです。

そんなあなたにお知らせ!
近々特別編を予定!
急遽キャラ募集を行います。
名前、性格、主な武器、特徴など
書き込んでもらえれば出させてもらいます!
~注意~
・書き込みは活動報告ににてお願いします!
・多いときは選別!
・他二次作のキャラは場合によりますがほぼNG
                      以上


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17話目 魔物VS勇者一行と纏い神(下)

長い! そして分かりずらい!
ホントにスイマセンしたぁ!


 夜天を囲むように天から強い光が落ちる、それに触れた狐の幽霊は停止することができず突っ込み、その身を消滅させた。

 残り僅になってしまった狐の幽霊は、光の柱が無くなるのを待っている。だが、光線が上から降るだけでは済まなかった。

 閃光のごとく、光線の中から銀色に光る何かが飛び出し、残っていた狐の幽霊を全て真っ二つにしていった。

 

「他愛ないですね。霊体相手に格の違いもわからない不敬者。神格の前に蒸発しよった」

 

 光の柱が無くなっていくと、そこには夜天の姿がない。いや、夜天と瓜二つと似た、少女の姿があった。

 白装束に床まで付きそな髪を金色の鈴がついた簪で玉を止めてギリギリにつかない程度に済ませた髪型。

 そして一番目を奪うのは少女の後ろに浮かぶ大きな鏡。その鏡のなかには、後ろ姿の少女とその背中に取り憑くように夜天の姿があった。

 

「宿主に呼ばれるのはいつ頃だったか...すっかり体が生ってしまったわ。どう責任をとってくれるのかしら?」

 

『“八咫鏡”それを使う許可を出す。てか使えよ。ただしおれの霊力が残り少ないからそれ一発だけしか使えない』

 

「あら、そんなにヤバイ相手なのかしら? それは楽しみねぇ」

 

 少女は不適に笑みを漏らすと後ろに浮かぶ鏡を少女の前まで誘導させる。それに会わせて夜天の姿も移動し、少女と向き合う形になった。

 

「それじゃあちゃっちゃと済ませちゃいましょうか、霊力の供給お願いね、夜天ちゃん」

 

『相手はデカイ怪物だ、映せ』

 

「はいはい...あら、これは本当にデカイはね。それに対象が三つ...いえ四つあるわね。どれに入り込むの?」

 

 四つ? 夜天は疑問を浮かべながら、鏡の世界にもうひとつの鏡が出現。夜天はそれを覗き混むように見る。すると、二つは金色に光るものと一つは禍々しく光もの。そして、最後の一つは、その禍々しい光に取り込まれそうになっている、弱々しくしかしどの光よりも輝いている光が存在していた。

 

『どうやら俺と同じように依り代になってるものがあるらしいな...』

 

「ちょっと違うわね。これは無理矢理依り代とされているみたいよ? このままだと宿主が死んじゃうわね。それで、どれに入り込むの? ま、言わなくてもわかるけど一応聞いとくわ」

 

『わかってるなら聞くな、でもまいくならひとつだよな。依り代を助けにいくぞ!』

 

 了解と短く返事を返す少女は目の前の鏡に手を当てる。それに会わせて夜天もその手を当てている反対側に手を当てる。

 

「妾、神格、八咫鏡の所持者である天照大御神が命ず。依り代、宿主の夜天を対象に光をつくり導き、道を示せ。汝、光の導きに従い進め。妾、天照大御神が承諾する。神ノ恩恵“八咫鏡三鏡・心魂”」

 

 視界がグニャリと歪む、夜天は目眩を起こす。しかしその現象もすぐに治まる...が、先いた場所とは全くことなる場所に立っていた。

 

「まるで戦場だな。草木の緑が見当たらない...寂しい空間だ。さて、元凶を探すか...ッ?」

 

 夜天の前に数本の尻尾を持った狐の姿を目にした。この場所は、特定の人物の心のなかを映し出した世界であるため、生き物が存在することはあり得ないはずなのだ。しかし現に目の前にいるということはあり得ることは二つある。

 一つは心の持ち主である理想姿の分身。そしてもう一つは、その持ち主を守るために現世に止まった魂、守護霊のどちらかになる。

 夜天はその二つの中の後者と思った。いや、夜天にはその者が何か訴え、助けを求めている顔をしているため、守護霊だと決め付けた。

 

「長い間この子を守り続けていた...母狐だな」

 

 心の世界に無理矢理入り込んだため、こちらの声は聞こえるが、相手側の声は届かない。その事を察しているのか、狐は自分が母狐だということを固定した。

 

「そうか、大変だったろ。でももう大丈夫だ、お前の子もお前も俺が...いや、オレ等が助けてやる」

 

 夜天の言葉に母狐は何度もまるで感謝と謝罪をするように頭を下げる。

 

「さて、それじゃあ連れてって貰えるか? お前の子の場所まで...」

 

 短く頷くとくるりと半回転をするとそのままテコテコと進んでいく。夜天はその後ろ姿に付いていく。

 同じ光景が続く、そこはどこもが戦場の跡地のように荒野が続くばかり、こちらまでもが鬱になりかける。

 そんなことを思っているうちに目的の場所にたどり着いていた。

 

「...これはひどいな、まさか生き物すらないとは...」

 

 夜天は目の前の光景に目を反らす。このとき夜天は自分の無力差を悔いた。

 それが生物としてのものであったら夜天一人でなんとか引き剥がすことが出来るが、生物ではなくモノ、この場合は呪器の一種の場合は話が大きく変わってしまう。

 呪器はモノとして顕然し、心に突き刺さるもの、つまりは本体は心のなかではなく現世に存在する。

 目の前に子狐と思わしき生き物が地に横たわっている。その腹部には深々と赤黒い剣が突き刺さっている。

 その剣が子狐に取り憑いていると見て取れる、こちらから子狐から剣を抜き取ることは可能だが、その場合、心との繋ぎが千切れてしまう、つまりは子狐は死んでしまう。その逆もしかり、外の本体を引き抜いても心と体が分離され、生きる屍となってしまう。

 

「方法は一つだけか...」

 

 夜天は八咫鏡手にそのなかを覗き込む、その鏡にはシンクとミルヒーの姿が写っていた。二人は本体である呪器、魔物の本体に向かっていた。

 

「こいつを助けるには心の世界の魔物と外の世界の魔物を同時に抜くことが条件だ。あいつらには何かの加護が働いてるから抜くことには問題ないだろうけど...こっちに問題がある...オレ死ぬかもな」

 

 深いため息を吐く姿に母狐は心配そうに顔を覗かせる。

 

「安心しろ、三割は冗談だ。それにオレの勝利条件は誰も死なないことだ...お前はすでに死んでるからノーカンだからな、やる前から敗けはつまらん。許せ」

 

 夜天は最後にへらへらと笑ったあと真剣の表情で外にいる天照大御神と通信する。

 

「おい聞こえてるから今から“八咫鏡七鏡・一心”をやるぞ!」

 

『はあ!? ちょっ夜天それ本気でいってるの? あんた死ぬ気? 陽力も気力も陰力もカラッカラの状態で使ったらあんたの身が持たないわよ!?』

 

「わかってる。わかっての使用を許可してんだろ?」

 

『ハア...夜天のバカさ加減は昔から知ってるつもりだったけど、ここまでの大バカ者だとはおもわなかったわ...。夜天、それを使うのに一時的とはいえ何かを失うのよ、それがもし魂なんてことになればあなたは確実に死ぬのよ? それに保つための陽力や陰力がない状態で使用するなんてそれこそ自殺行為、それでも...使用するって言うの?』

 

 本当に心配しての言葉なのだろう。できれば夜天だってこんな自殺行為を行いたくない、むしろ今からでも遅くない、使用を取り下げれば戻せることができる、たった一言「取り下げる」と言えば後戻りができる。

 しかし、夜天はその言葉が出掛けることも、ましてや考え付くこともなかった。今目の前に救える魂があるならそれを救わずに見殺しなんてそんな残酷の選択は夜天の意に反する。

 

「オレは貪欲で強欲で...欲望に忠実な男だ。拾えるものは全て拾い上げる! オレの信念は曲がらない、やるぞ!」

 

 頭のなかにアマテラスのため息をする音が聞こえた気がする。夜天のことを思って止めに入ってくれたのだろう、だけど今の夜天を止めることが出来ないと、長年の付き合いであるアマテラスは察したのだ。

 

『妾、天照大御神の名で告ぐ。八咫鏡をしよう許可を確認。汝、貢ぎは汝の一部。汝に捧げるは妾の加護。その身その力を良き道に導きたまへ...“八咫鏡七鏡・一心”これより汝と妾は心の繋ぎが出来た。...死ぬんじゃないわよ』

 

 最後の言葉にアマテラスの声は届かなくなったそれと同時に夜天の体が淡い水色のオーラが包み込む。加護が働いている証拠のなる。今の状況はアマテラスの八咫鏡を自由に使うことができるが、それは夜天の霊力が残って入ればの話になるが、支援程度ならば使える。

 残り少ない時間のなかいち早くシンクたちを本体にたどり着かせなければならない。

 夜天は後ろに顕現した鏡を目の前にもってくるとその鏡にシンクたちを写し出す。

 

「手伝ってやるよ神力オンリで使った防護結界の力を...」

 

 そう言うと鏡の中に一枚の紙を押し当てると吸い込まれるようにその紙は鏡の中に取り込まれた。

 

「オレは準備できた。早く抜きに掛かるぞ。急げ...シンク」

 

 剣の柄に手を添えいつでも引き抜ける準備を完了した夜天、その瞳からは赤い液体が流れていた。

 

 

「数が多い、姫様! 大丈夫ですか?」

 

「はい、私は大丈夫です。シンクの方が怪我をなさっていますよ?」

 

「ボクは大丈夫! 早く行かないと、クッ...数が多すぎるって...ッ!?」

 

「シンク、危ない!」

 

 狐の幽霊の猛攻を避けている隙をついてか、背中から草に巻かれた剣がシンクの後ろから突き刺してきた。

 完璧なほどの不意討ち、避けることは不可能、受ける覚悟でいたシンクはその瞬間の光景に目を見開いた。

 シンクを守るように消えない壁が剣を受け止める。シンクの頭上には一枚の紙が淡い水色のオーラを発していた。

 

「これって、夜天君の技だ」

 

「凄いです。何だか疲れもなくなっていきます。今のうちに先頭まで向かいましょう!」

 

 ミルヒーの声に反応するパラディオンとエクセリードが強く光を発した。

 

「神剣パラディオンと聖剣エクセリードが...」

 

「力を貸してくれるの?」

 

 シンクの言葉に肯定と言わんばかりにさっきよりも強く光を発する。

 

「ありがとう! 姫様、一緒にいきましょう!」

 

「はい! シンク!」

 

 二人は互いの武器を重ね合う、するとさらに光が増っした。そして二人は一つの流星の如く、周りを吹き飛ばしながら目的の本体の前にすぐにたどり着いた。

 しかしそれでも追撃を仕掛ける狐に幽霊と草に巻かれた剣が襲いかかる。だが、そのどれもが夜天の放った防護決壊によって弾かれていく。

 

 

 

「ハア...ハア...。たどり着いたみたいだな、なんとか間に合ったみたいだ」

 

 息を荒げる夜天の口からは血が流れていた。それだけではない。シンクの到着するまでの間、夜天は何度も吐血を繰り返していた。そのためその夜天の周りは小さな血の池が出来上がっている。

 

「遅いんだよ...チッ。視界がぼやける、失敗は許されない、絶体絶命ってこう言う状態なんだろうな...笑えねぇ」

 

 そうこうしているときに鏡に写るシンクが剣に手をかけ引き抜こうと力を入れている。

 

「こっちもやるか...子狐、少し痛いだろうが我慢してくれ。...神格全開。捧げるは我が血と寿命...求めるは力。退魔師が告ぐ、汝との契約を再接続、力の根元、吸い尽くす暴食吸血の蟒蛇。我が血を無限の霊力に引き換えろ!」

 

 赤色の球体が夜天の体から次々と後ろに控える鏡に吸い込まれていく。吐血した小さな血の池からも同じ球体が出ては鏡に吸い込まれていく。その度に小さな血の池はその量を減らしていく。

 

「退魔師禁呪...“血命鬼華”」

 

 夜天の言葉に鏡から赤色の光線が空高くに撃ち放たれ、隕石の如く光は夜天の周りに打ち解ける。

 すると、その場所から真っ赤に咲く蓮が辺りを埋め尽くす。

 最後に一つの光線は夜天の心臓に目掛けて被弾した。その瞬間夜天の後ろの鏡から鬼の手が出現。それは夜天の行動と同じ動きをする。

 剣を掴み、砕かんとばかりに握り込む。案の定、剣からはピシリとヒビが入ったような音が聞こえた。

 

「鬼神の手、通常なら鬼の手なんだが、神格の力で鬼神を呼び出す。その力は通常の数十倍。体の負担も馬鹿にならないけどな...お前をすぐに解放してやるよ」

 

 夜天とシンク、二人は互いの行動を目にしていないが、そのときだけ僅かの誤差もなく、子狐を苦しませた剣を抜き取った。

 

 その直後、夜天は全ての力を出しきり糸の切れた人形のように体が崩れた。




ただいま活動報告にてキャラ募集をしております。
詳しくは活動報告をみてね!
そして参加して欲しいです!


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18話目 呪いが...(上)

最近書ける書ける。だけど...オリジナルの方が...ね。


 目を覚ましたとき。まだ森のなかにいた。空は黒い雲が覆っていたのが、今は嘘のように晴天だった。

 

「終わったみたいだな...ん?」

 

 聞き覚えのない声、しかし周りには誰もいない。そこで夜天は一つの可能性を思い付く。

 

「いやいやいや...そんなわけないよな...あるわけ...無いッ!」

 

 夜天は自分の体の下半身の一部に手を入れ確認、ないと断言。次に胸に手を当て軽く握る...。

 

「ヤバイ...エクレよりあるかもしれない...。ってそうじゃない、女体化の呪いかよ、しかも...。」

 

 夜天は自分の腰の付け根にもふもふとした銀色の毛の尻尾が伸びていた。かなりのモフリ度、自分から生えているがなかなかのものだと関心、狼の尻尾ににているが、一体何の尻尾なのだろうと疑問に思う夜天。

 

「まあなんの尻尾かは置いといて、禁術の反動は覚悟してたが...まさか女体化に獣化までプラスされてるなんて...おまけに神降ろしの影響もちゃっかりあるし、片目と血の代わりに髪の毛の色素、白髪獣美少女ここにアリってか? 流行るかあッ!」

 

 一人で行き場のない怒りを言葉で発散させる夜天。今の姿を見れば誰もが美少女と思っても仕方がない程の身なりだった。

 片目は一時的だが今は真っ赤に染まっており隻眼となっている。赤目になっているせいか、夜天の視界半分は真っ赤に染まってなにも見えない。

 

「一番困ったのは...霊力が使えないことか、神格の使用の影響か...。たく、今の姿は誰にも見られたくないな。包帯あったよな、それで怪我として隠せるよな」

 

 夜天は懐をまさぐると三つほど包帯を取り出す。その包帯を最初はケモ耳を隠し、次に片目、胸と次々に包帯を巻いていき、怪我人のようになっていく。

 幸いに体の動きは男の時とはあまり変わらない。唯一変わったのは胸が出てきたことによる若干のバランス感覚の調整だけだ。

 

「サラシをしても出るもんだな、三バカのウサギといい勝負かもしれない...。考えるのはやめとこ、そんなことよりもエクレたちは無事だといいが...」

 

 最後に尻尾を無理矢理衣服の中に押し込めて隠蔽は完成、しかし尻尾と耳は違和感が在りすぎて若干気持ち悪さがある。誰もいない間は定期的に外に出しとこうと考えていると、夜天の後ろの茂みからガサガサと揺れる音がする。

 

「誰かいるのか?」

 

「おお! これは勇者様のご友人。ここで一体何をしているんでござるか?」

 

 茂みの中から現れたのは金髪の忍者衣装をした狐の少女。ユキカゼとその後ろから数匹の犬が現れた。

 ちょっと待て、ユキカゼの胸とオレ今の胸がいい勝負をしていないか? うん。胸を考えることはやめよう、もう考えないぞ!

 

「いや、ちょっと迷ってな...てかオレだってことよくわかったな、髪とか包帯でわからないと思ったぞ?」

 

「隠密一同が夜天殿の匂いを感じ取ったのを知らせてくれたでござる。最初は見たときは拙者は夜天殿とは思わなかったでござるよ。いやぁしかし、人は見ないうちに変わるものでござるな」

 

「人がこんな変わり方されたら世界中混乱の嵐だぞ。まあそんなことよりもユキカゼはこんなところで何してるんだ?」

 

「拙者はこれから姫様のところに向かっているところでござる。ちょうどいいので拙者と一緒に行くでござるか?」

 

 夜天はその提案に悩む。今の姿に行っても大丈夫なのか、バレないだろうかと思うと足が思うように動かなくなるが、ユキカゼに案内されるのなら迷子もしないで済むだろうし、万が一にユキカゼが夜天だと説明してくれれば混乱せずに済む...。

 

「考えるより動けか...ユキカゼ、オレも連れていってくれ」

 

「了解でござる! それじゃあ少し失礼するでござるよ!」

 

「おお!? お姫様抱っこされるなんて初めてだ。フム、悪くない、悪くないのだが...目のやり場に困るし当たってる...」

 

「なにがでござるか?」

 

「……何でもないです」

 

 あまりにも無知と無防備差に若干呆れる夜天はされるがままにユキカゼに運ばれていく。

 

 ─────そして目的の場へ

 

「本当に夜天君なの?」

 

「今でも信じられないんだが...」

 

「ですがユッキーが言ってるでありますから夜天様だと思われるのであります」

 

「夜天様がご無事で何よりです。あのとき夜天様のサポートがなければ私たちはやられていたかもしれません」

 

 シンクにエクレ、リコとミルヒ姫の場所まで運ばれた夜天は案の定、疑いの目が向けられた。しかし、ユキカゼの説得と説明によりなんとか信じてもらえたところだった。

 

「しっかし夜天、お前その姿になると女差が増したのではないか? 何故かお前を見ると謎の敗北感が拭えないのだが?」

 

「あ...うん。たぶん間違った感情じゃなくはないんだが...気のせいだと思っとけ」

 

 夜天は若干エクレの顔から下に目を下ろしてからすぐに視線をミルヒ姫の方に向ける。

 エクレは意味がわからないと腕を組考えていた。

 

「それで犬姫よ。その抱えているのが魔物の正体か? 間近で見るとあの親狐にそっくりだな」

 

「えっ夜天様! この子の母狐様に在られたのですか!?」

 

「まあ、ちょっとした出来事でな。それより無事に解放できて良かったぜ...」

 

「ハイ! 本当によかったです。勇者様がいなかったら、きっとこの子は助からなかったと思います」

 

「...そうだな、お手柄だぜシンク」

 

「アハハ、照れるなぁ」

 

「いえ、確かにシンク殿はよくやってくれたでござるよ。魔物を倒すのではなく、逆に我同胞を救ってくださったのでござるから。あとで頭を撫でて上げるでござる」

 

 本当に嬉しそうに頭を深々と下げるユキカゼ。夜天も子狐が無事に解放されたのを確認することができてホットひと安心する。

 

「子狐の安否を確認したし、俺はもう一人の安否を確認してくる」

 

「どこにいくの?」

 

「そんなもん、猫のところに決まってるだろ?」

 

 

 シンクたちと別れてからレオ閣下の寝室の前に立っていた。

 

「おーい猫? 生きてるか? それと入っていいか?」

 

「勇者の友人か、入って構わないぞ」

 

 ドアの向こうにレオ閣下の返事が帰ってきたところを見ると生きていたようだ。レオ閣下に許可が下りたので遠慮なく中に入る。

 一瞬夜天は動きを止めた。包帯を巻かれベッドから降りようとするところを医者やルージュに安静にしろと叱られている。

 

「おお、重傷なのか?」

 

「ぬっワシは平気と言っておるんじゃが」

 

「ダメですよ、無理して動かれては傷が開いてしまいます」

 

「だそうだが、なんだやっぱり重傷なんだな」

 

「ワシは平気だ! それよりも貴様の方はどうなんだ、少し見ないうちにかなりの変わりようだが」

 

 レオ閣下は夜天の体を見定めるように見てくる。その行動に夜天は何故か体を隠すような態度を取ってしまう。

 

「気にするな、少し力を使いすぎただけだからな。いつもの力が出せなくなった程度だ、一日か二日もすれば元に戻るだろう」

 

「そうか、それならよいのじゃが...。お前さんも苦戦することもあるのだな」

 

「意外か? 俺だって苦手なことは一つや二つある」

 

 意外そうに見てくるレオ閣下に俺はヘラヘラとしながらドアに背を預けていた。

 

「さて、今の現状から見るにあのときの賭けはオレの勝ちみたいだな。姫さん」

 

「何を言っている! ワシはピンピンじゃ! むしろお主の方が敗けじゃろ!」

 

「ほお...ちょっと失礼」

 

 夜天はレオ閣下の掛け布団を剥ぎ取り、包帯が巻かれている脚に軽くデコピンを喰らわせる。

 

「………グッ...ヌヌゥ...」

 

「...痛いんだな?」

 

「い、痛くなどないわ戯け!」

 

「そうかじゃあ次はもう少し強めに打つか」

 

 ビクリと体を震わせ、閣下とは思えない潮らしく、涙目でこちらを睨む。

 

「...まっ冗談はここまででいいか、あんたの安否を確認しに来ただけだしな。それに、会見を行う前に怪我されてもあるし」

 

「...そうじゃな、お前さん、会見を開くとよくわかったな」

 

「ニュースの視すぎでな。大事になったんだ、民を思うのなら当然だろ?」

 

「流石じゃな。勇者の友人夜天よ! お前さん、このままワシの勇者にならんか?」

 

 突然の誘いに夜天は戻ろうとしていた足を止める。

 

「...魅力的な誘いだな。けど、オレの上に立つなら俺を負かせてから言いやがれ! レオ姫?」

 

「ふ...先ずはその口から閣下と言わせないとな」

 

「楽しみにしてるよ」

 

 夜天はひらひらと手を振ってレオ姫と別れた。

 

 それからレオ姫は会見を開き国民に謝罪をし、そのお詫びにと、ミルヒ姫のコンサートが開かれることになった。




さあさあ。宣伝しまくっちゃうよ!

活動報告にキャラ募集をかけております!
そろそろ一期分分が終了しそうなので、2期分に移行する前にオリジナル話を予定しております。
その話に皆様のオリキャラを使いたいと思う所存です。
詳しくは活動報告を見てください


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19話目 呪いがバレるととても恥ずかしい!(下)

ぞくぞくキャラが揃ってきたぞ!
まだまだキャラを募集しています。
どうぞ皆様ご参加ください!


 ビスコッティでミルオーレ姫のお詫びと兼ねたコンサートが開かれた。

 時間まで出店が開かれまるでお祭りみたいになっていた。夜天も人気のないところで、呪いのせいで気力を出せなくなったのを補うためこの世界の力の源であるフロニャ力の扱いの練習をしていた。

 

「今まで使っていたのと使い勝手が違うから難しいな。フロニャ力を体内に取り込むイメージをして、そのフロニャ力を輝力に変え、一点に集中。そして一気に身体から捻り出す!」

 

 夜天の掌から輝力の塊が吐き出される、しかしその輝力は少し進むと跡形もなく霧散する。

 

「あーまたダメだ! 何がダメなんだ...やっぱり扱う器がないとか...器か、もしかして溜める量が少なかったのか? だとすると...もっと体に溜め込むイメージをする。身体中に隙間なく詰め込んでいく...。そして次に輝力に変え、それを収縮。吐き出す!」

 

 さっきよりも飛距離を伸ばすことができたが、やはりすぐに霧散してしまう。

 

「うーん。あと一歩て言うところか。にしても輝力の使ったあとの脱力感半端ないな、疲れた」

 

 地面に大の字になって倒れる。動くのも怠いほど輝力を使用すると脱力感が襲ってくる。

 さらに消費するエネルギーもバカにはならないのか、夜天の腹の音が鳴りっぱなしであった。

 

「腹も空いたことだし、出店でも回ろうかな...動くの怠いけど...」

 

 重い腰を上げて立ち上がる、夜天はだらだらと足を動かして人気の多いところに向かっていった。

 

 ────ビッ!

 

「ん? なんの音だ?」

 

 辺りを見渡しても音の元凶はない。気のせいと思い込み、夜天は気にせずその場から離れて出店に向かった。

 しかし、あの音の正体を見付けていればあんなことにはならなかったと夜天はあとで後悔することになった。

 

 

 片手に串カツのような食べ物を頬張りながら夜天は歩いていた。甘辛いタレに分厚いハムのような肉の肉汁が絶妙にマッチして旨い。すっかりハマった夜天はその食べ物を10本ほどまとめ買いをしていた。

 

「なかなか旨い出店があるな、目移りして大変だぜ」

 

「そこの銀髪の嬢ちゃん。うちの買っていってくれよ! おまけするぜ?」

 

 声をかけられた。それも女に間違えられて、でも間違ってはいないんだよな...なんか複雑な気持ちになる夜天であった。

 しかし、おまけしてくれと言うのなら為りきるのも悪くない...。

 

「あらおじさま、一体何のお店かしら?」

 

「うちはグレルプを出してるぜ」

 

「へえ、どんなのか見せてくれる?」

 

 夜天は鉄板のようなモノに覗き込む。とそのときだった。

 

「お、おい嬢ちゃん! あんまり屈まないでくれるか!?」

 

「あら、もしかして覗いちゃいけなかったのかしら? それは悪いことはしたわね」

 

「だから嬢ちゃん屈まないでくれや!?」

 

 夜天が頭を下げると何故か顔を真っ赤にさせそっぽを向く犬のおじさん。しかしちらちらと目を泳がせてはこっちを見てくる。

 

「それじゃあグレルプを頂こうかしら」

 

「お、おう。これがグレルプだ、おまけで今日は代金入らない」

 

「あら、それは嬉しいですわ。ありがとうございますおじさま」

 

 軽く会釈をしてから夜天はその場からはなれた。そう言えば隣に並んでいた出店の店員も何故か赤い顔をして見てきていたな。一体なんだったんだ?

 疑問に思いながら夜天はグレルプを頬張る。見た目は完全にクレープだった。ちなみに味もホイップと中にブドウの実が入っていて、どこからどうみてもクレープであった。

 

 少しあるいていると少しいった先にエクレとシンクの姿を見つけた。それも二人きりで周りに人の気配は少ない。

 

「いい雰囲気出てるじゃん、エクレはシンクに興味があるようだな」

 

「エクレが男の子を誘えるまで成長するなんて、このリコ感激であります!」

 

 出店の脇に隠れて二人の様子を伺う夜天とリコにユキカゼ...お?

 

「お前らいつの間に居たんだ?」

 

「エクレ達を追い掛けていたらたまたま同じ場所に鉢合わせたのでござるよ」

 

「なるほどなそれにしても、あの二人があんな関係になってるとはな...」

 

「ハイであります」

 

「でござる」

 

「おお、いい雰囲気だ! そこでもっと攻めるんだエクレ」

 

「そうでござる! そこでもっと、ググッといくでござるよ!」

 

「ググッとであります!」

 

 三人でシンクとエクレのなかを見守っていると、後ろから誰かに肩を叩かれた。

 三人は同時に後ろを振り返ると、見知った三人の姿が目にはいった。

 

「はぁい!」

 

「お三方揃って何をしているんですか?」

 

「おお、これはガウル殿下の直属秘密諜報部隊のジェノワーズ殿でござるな」

 

 黒猫のノワ、寅のジョーヌにウサギのベールがいた。三人は見知っているリコとユキカゼよりも今は別人のような夜天に目を向けている。

 

「あの、そちらのかたは?」

 

「どこかで見たような気がするんだよ、あの男に似ているような...?」

 

「でも、勇者の友人は、髪は黒かった。別人?」

 

 三人が首をかしげている。別に教えなくとも構わないが、訝しげな目で見続けられるのは居心地が悪いの説明する。のだが、タイミングが悪かった。

 

「おお! シンクと親衛隊長じゃねえか!」

 

「ガウル殿下!」

 

 ガウルの登場により、雰囲気はぶち壊し。そこから近くでシートを引くと全員で食事を摂ることになった。

 

「夜天くんもいたのなら声をかけてくれればよかったのに」

 

「悪いなシンク。どうもいい雰囲気だったから、声をかけるもかけずらくて」

 

「せやけど、うちはあんたが夜天とは思わなかったわ」

 

「そうですね、私も思いませんでした」

 

「……同意」

 

「姉さんもなんか会見のあとスッキリした感じだったし、色々と目に見えるものが変わっていくな」

 

 ガウルたちが各々思ったことを口にしていく...それにしてもさっきから黒猫(ノワ)にみられているのが気になる。

 

「......やっぱり...」

 

「うん? どうした黒猫ッ!?」

 

「不自然に動いてたから不思議に思ってたけどやっぱり、ヨゾラにしっぽと耳がある」

 

「お、おい! 黒ンッ...猫! しっぽを触るにゃッ!」

 

「かわいい反応...今までの恨み」

 

「ギニャァァァアア!」

 

 ノワにしっぽを弄ばれ、いつもの立場が逆転していた。しっぽと耳が夜天に付いているのを目にした他の者。

 普段見せない夜天の反応に今まで屈辱を受けていた人物がなにか変わった感情が芽生えていた。

 

「今のうちに今まで受けてきた屈辱を晴らしてもいいよな?」

 

「せやな...いつもの状態やったら逆に返り討ちになってしまうんやけど」

 

「どうやら今は使いたくても使えない見たいですね...」

 

「えっ、あの。お三方? 顔が怖い、マジで怖いんだけど、てか近づいてこないで、え、えっ! ...シンクゥゥゥウ!」

 

「あはは...ガンバレ!」

 

「テメェらぁァァア! あとで覚えとキャッ!」

 

 その後、圭は野生本能を解放した四匹の獣に身体中をまさぐられたのはまた何処かで...。



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20話目 予想は...(上)

長らくお待たせしました。今度の話で終わらせる予定です。
その後、キャラ募集をした特別話を制作予定です。
まだキャラは募集してますのでこぞって参加してください!


「ハァ…ハァ…汚された。お前ら、覚えてろよ、この屈辱、万倍にして返してやる!」

 

「すまない夜天...その、あまりにもお前の反応が、可愛くてだな...」

 

「女の子っぽかたよ。今は女の子か」

 

「にっしても、ベールより大きいんちゃう? 見た目やったらレオ様といい勝負やで」

 

「もちスベ肌でしたね。毛並みも整ってよかったですよ!」

 

 包帯や服が少しはだけて床に伏している夜天に満足そうに各々感想をのべていた。

 

「大丈夫夜天君。これからはほどほどにした方がいいよ?」

 

「シンクよ、やめろ、ではなくほどほどにと言うことは...貴様も楽しんでいるのだな? このムッツリ勇者め!」

 

「ち、違うよ! もしボクが夜天君に止めろって言ったら止めるの?」

 

「お前にそんな権限があると?」

 

「ほらー、だからだよ...」

 

 シンクが項垂れる。夜天は服を着直してからシンクの隣に座る。ちなみに包帯は巻き直すのがめんどくさいのでそのまま解けた状態、つまり服の上からでもその胸の大きさが見えると言うことだ。

 

「男だから見ても気にしないぞ? 触ることも許可してやろうか、シンク?」

 

「え、遠慮するよ!」

 

「にゃはは、恥い奴めぇ」

 

 悪乗りする夜天の背筋がゾッとする三つの視線を感じ取った。

 

「そんなもの、姫様を助けるのに邪魔になるだけだ」

 

「育ち盛り...だもん」

 

「せやせや! ウチが揉みしだいてヤロかぁ!」

 

「ハッ! やれるもんならやってみロニャッ!?」

 

『もみもみもみ………「なっ...なっかなかの弾力、柔らかさ、癖になりそうや」もみもみもみ………』

 

「や、やめ...や...やめろォォォォ!」

 

 夜天はジョーヌの巧みの手つきから逃げ出すことに成功した。

 

「ハア…ここまでくれば安心だろ。さて......成仏したんじゃねぇのか?」

 

 夜天が目を向ける先には、真っ直ぐと見据えている母キツネの姿があった。

 相変わらず透けては声は聞こえない、だがその視線から夜天は母キツネの思いを汲み取ることが出来た。

 

『───恩返しがしたい。』

 

 夜天はそう言ってきているように感じた。

 

「子キツネを助けて心残りがなくなったと思えば、今度は犬姫の恩返しをするまで成仏はできないときたか……」

 

 母キツネは申し訳なさそうに頭を垂れ下げている。

 

「別に頭を下げることはない、恩を返すことは悪いことじゃない、むしろ参照する。……けどま、今の俺じゃあ出来ることが限られちまうが──ん?」

 

 ジッと見詰める母キツネ、しかし見ている先は夜天ではなく、まだ建設中のステージに目を向けていた。

 

「なるほど、姫様のステージを盛り上げたいと、随分とデカイ貢献を狙っているな。まあ今の俺ができるのはお前を少しの間だけ実体化させることぐらいだぞ」

 

 速答にコクンッと母キツネは首を縦に振る。その返答に夜天も頷き、胸元から一枚の金色の紙を掴み取った。

 

「5秒だ、お前を実体化させることのできるタイムリミット。本当は亡き者を現世に定着させることは大罪なんだからな! これ一枚しか無い貴重なもんなんだから、タイミングを逃すなよ、実体化をするときはこの紙に念じるだけで良い、すれば実感はわかないが実体化しているはずだから。あとは頑張れ、俺にできることはそれだけだから」

 

 夜天は金色の紙を母キツネの背中に貼り付けると背を向けてヒラヒラと手を振って別れる。母キツネは夜天の姿が消えるまで頭を下げ続けた。

 

 その後夜天は、シンクたちと再び再会しミルヒオーレ姫のコンサートを共にした。そして終わりが近づいてきたとき、最後の盛り上がりに母キツネが手の込んだ演出をしてから、本当に最後の別れとなった。

 そしてコンサート中、ずっと姿を現していなかったリコから勇者送還の方法が見つかったと報告があった。




姫様の歌も書こうと思ったんだけどね、表現ができなくてね……諦めました…。


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