東方開扉録 (メトル)
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第一話 幸運

その場所には不思議な扉があった

 

不思議な扉は色々な世界に通じていた

 

だがその扉を通って帰ってきたものはいない

 

いつしかその扉は封印され、人々は扉の存在を忘れていった

 

そしてその扉は伝説となり、人々はまた夢と好奇心で扉を探し始めた

 

だが見つけられたものは一人もいない

 

そうして月日が経ち、扉は完全に人々から忘れられていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「さて、ゲームでもしましょうかね」

 

誰がいる訳でもないが少し大き目の声でそう言った少年。

それが俺、葉隠 誠(ハガクレ マコト)、自他共に認めるオタクである。

歳?体系?まあそんな事を置いておこう、うん。

小さく溜め息をし、PCを立ち上げる。

マウスを動かしてデスクトップのアイコンをダブルクリック、今クリアを目指しているシューティングゲームを起動する。

 

誠「今日こそ・・・今日こそクリアを目指すぜええええ!!

  待ってろエンディングッ!!」

 

隣に誰かいたら頭を殴られそうになる位の声で気合いを入れてゲームを始め・・・

ようとしたがポケットの中でケータイが振動を繰り返している事に気付いた。

ったく、人がやる気を出した時に誰だよ・・・

 

誠「・・・なんぞこれ?」

 

メールだ、全く知らないメールアドレスからメールが来た。

件名は何もなし、本文を除くと少ない文字の羅列とどこかのサイトへのリンクが書かれている。

・・・チェーンメールじゃなさそうだな。

 

誠「ゲームの世界に行ってみませんか?

  行きたい人はここへ飛んで抽選に応募してね☆」

 

・・・胡散臭い。

普通の人ならこんなメール直ぐ削除だろうな、でも俺は違う。

はっきり言おう、俺はこう言う系のメールを直ぐに開いてブラクラ踏んだり、非通知の電話が掛かって来ても普通に「もしもし~!」とか言っちゃうタイプだ。

すぐさまサイトへ飛び、抽選に応募するとケータイをポケットへと仕舞い、ゲームへと戻る。

 

・・・変な請求が来ませんように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日

今は夏休み真っ盛りと言う事で宿題をさっさとゴミ箱へポイしてPCの前に着く。

 

誠「きょ、今日こそ見るぜエンディング!」

 

・・・未だにクリア出来ないのである。

難しい・・・正に地獄への道だ・・・これを最高難易度でクリア出来る人達の顔でも拝めばクリア出来るようになるだろうか・・・

っと。

ケータイが鳴ったのでゲームを一時中断してケータイを手に取った。

メールか、俺のケータイにメールするとはなかなかいい度胸をしている。

メールを開くと知らぬアドレス、件名無し、本文はリンクだけと来ている。

・・・あれか?これはあれか?下手な本文で怪しませるよりリンクだけの方が好奇心で飛んでくるかもしれないという作戦か?

いいだろう!お望み通り飛んでやろうではないか!

 

誠「・・・!?」

 

飛んだ先のサイトには大きく「当選しました☆」の文字、そして下には個人情報入力してくださいと言わなくても分かる程の項目欄・・・

 

誠「・・・あ、あれか!ゲームの世界がって奴か!」

 

ちょっと停止しかけていた脳みそを回転させて記憶を辿って見たがそれ以外に心当たりがない。

ほうほう、って事は俺はゲームの世界へと行けちゃったり!?マジで!?

現実と絶望のお勉強人生、夢と希望のゲーム世界、俺は間違いなく後者を取るねッ!

飛び付くように入力を済ませて記入ミスとか色々の確認、送信。

フゥーハハハ!もしこれが詐欺でも別にいいわ面白そうだし!あ、やっぱ詐欺はキツイ!来月欲しいゲーム発売日だから金が無くなったら買えないッス!ヤバイっス!

 

頭の中で色々考えていたらケータイが大音量で鳴り響いた。

ケータイへと視線を落とすと非通知だった。

出る以外に選択肢はないので出る事にしますか。

 

誠「もっしもーしこんにちは!どなたッスか?」

 

?『え!あ、え!?こ、こちらは先程メールで抽選結果の報告をした者ですけど・・・』

 

流石に非通知からの電話だから相手も警戒して出ないか「もしもし」位で済ませると思ったのだろう、予想の上を行く慣れ慣れしい態度で相手がビビってる。

さてと、相手の声は女性っぽいな。これで詐欺っぽかったらセクハラ発言しながら切るのを待つと言う常套手段で逃げるか。

 

誠「あ~あれッスか?当選したからなんか貰えるんスか?」

 

?『ハイ!明日の朝6時にそちらのお宅へ車が行きますので、その車に乗ってください!』

 

誘拐ですね分かります。

 

誠「どんな車ですか?」

 

?『バスです、ごく普通のバスですのでそれに乗ってください!』

 

どんだけ俺を乗せたいのこの人。

 

誠「分かりました!朝6時に家の前ですね!」

 

?『ハイ!それでは明日お願いしますね!では!』ガシャン

 

・・・一応行くか、身代金とか言っても俺親が今居ないからな。

まあ殺される事はない!なんと言っても俺ってば当選しちゃった程の幸運だし!

いざとなったら友人直伝の合気道でカカッと逃げる、これで問題ない。

 

・・・って待てよ、今何時だ?

起きたのが14時、飯家事その他etcやってゲームしようとしたのが18時。

さっきの会話が終わって、今は・・・

20時・・・だと・・・!?

オイオイ、俺ってば目覚ましとか付けても早起き出来ない得意体質なんですぞ・・・

こっから風呂とかその他やって22時位に寝るとかちょとsYレにならんしょこれは・・・?

まあそんな事は・・・目覚ましを10程置けばいいだけだ。

 

・・・起きれるかなマジで・・・




どうもメトルです、にじファンから移転で来させて頂きました。
にじファンでは「扉~繋がる世界~」で連載しましたが、今回移転にあたってタイトルを変更しました。
その名も「東方開扉録(かいひろく)」!もっと簡単なタイトルを考えたのですが私のボキャブラリーではこれが限界でした。






次回予告
これは・・・夢?真っ白い世界で起き上がる誠は宙に浮く謎の幼女と遭遇する!しかもその幼女は神様!?神様のミスで転生ですね分かります!と浮かれている誠に衝撃の一言が下される!「転生?んなもの在る訳無いジャン!残念だったね!」嘘だ・・・夢だろ・・・これ・・・夢に決まっている・・・!!「ところがどっこい・・・・・・夢じゃありません・・・・・・!現実です・・・・・・!これが現実・・・!」落胆し悲しむ誠は神と人生を賭けた勝負にでる!そう、麻雀で!次回『俺の勝ち?構わない、倍プッシュだ』ざわつきは止まらない!


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第二話 起床

俺が思うに朝ってさ、凄く眠くなる魔性の時間帯だよな。

たとえば目覚まし時計で目覚めたとしよう、鳴り響く目覚まし時計に手を伸ばし少し乱暴に手を振り下ろす。

目覚まし時計が止まり一瞬の静寂の後、目を閉じる。

そして「今日も学校か、とりあえず顔を洗って・・・」と今日やる事を考え、一通り考え終わった時には浅い眠りについているのだ。

この二度寝が最高だと俺は思う。何と言うか二度寝と言うのは一種の麻薬なのではないかと思う程だ。

もちろんその後予めセットしてある第二の目覚ましが鳴り響くので遅刻はしない、筈だ。

・・・多分。

 

さて、今は目覚まし時計が鳴っているので午前5時の筈だ。

何故こんな時間に俺と言う超が付く程の睡眠愛好家が起きなければならないのか本当に疑問に思うがそれも昨日の電話を思い出し脳内で自己解決させる。

俺の足元では未だ目覚まし時計がその小さな体を揺らし轟音を周囲に響かせている、むくりと起き上がりその目覚まし時計に右手を伸ばす。目覚まし時計の上部にある円柱のスイッチを押すと轟音は途切れ、周囲には静けさが戻る。

そして俺は目覚まし時計を枕元に置き、また夢へと意識を沈める。

 

ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリッ!!

 

夢についた矢先、先程とは違う目覚まし時計達が一斉に鳴り響く。

ここで問題なのは九つと言う目覚まし時計が鳴っている事ではない、これをどうするかが問題なのだ。

俺の安眠を阻害するこの物体をどうするか、それはもう止めるしかない。

すぐさま起き上がり布団の隣にある勉強机へとジャンプ、それ程距離は無い為に机まですぐに近寄れた。

上から二番目の引き出しを開けて中にある物を取り出し、部屋の至る所に配置した目覚まし時計共に投げつける。

直線状に飛んでった文房具類はそのまま目覚まし時計に当たり目覚まし時計は後ろに倒れる、その衝撃で予め取れやすくしておいた背面の電池が抜けて忌々しい轟音が鳴り止む。

そのまま他の目覚まし時計にも投げつけて轟音を次々に沈める、机から死角になっている目覚まし時計は俺自らが行って手に取りそのまま鳴り響く目覚まし時計に向かって投げつける。

そして全ての時計が止まり部屋が静寂に包まれる。

この間、僅か15秒の出来事。

 

誠「・・・またやっちまった」

 

そう、こんな事やっておいてなんだがここまで完全に無意識なのだ。

昔友人にこの事を言った事がありその時は信じなかったが友人が俺の家に泊まった時にこれを目撃。

その後友人曰く「誠の寝起きの悪さは世界一ィィィィッ!!」とか言われた。

 

誠「今回の被害数は・・・一つしか壊れていない!何と言う奇跡!」

 

因みにこの目覚まし時計で総数20から30位壊している。

このまま行くとこれがどんどん増えそうで怖い。

 

誠「おっと、さっさと支度しないと・・・」

 

後一時間でバスが来るんだから早めに支度しないといけないんだった。

俺は小さく伸びをして自分の部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、ありのままに今起こった事を話すぜ!

『俺は家を出てバスに乗ったと思ったらそこは山の中だった』

な、何を言っているのかわからねーと思うが俺も何をされたのか分からなかった・・・

頭がどうにかなりそうだった、催眠術だとか超スピードそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。

もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ・・・(AA略

 

これが世界(ザ・ワールド)の力か・・・

ってここはそんな世界じゃないし!何時からこの世界はジョジョの奇妙な冒険になったんだよ!

時止めっていうレベルじゃねーぞ!

しかもバスどこに行った!?え!?え!?どこにもいねぇ!

ちょ、待て俺、落ち着け・・・冷静になれ・・・

そ、そうだ素数を数えよう・・・2.3.5.7.11.13.17.19・・・

やべえ19の後忘れたわ。

よし、状況を整理しよう。目の前には古い屋敷に看板が掛かっている、そこに『当選者は中へどうぞ』と書いてある。

周りは森だけどどう見ても後ろが急斜面だから山だと思う、そして俺以外に数人の当選者らしき人がいる、中学生から高校生しかいないな。

・・・うわ、あいつ俺の親友に似てるなぁ、服装から髪型とか色々そっくりだな。

しかも俺みたいに「あ、ありのままに(ry」とかやってるし。

うわ、あいつこっちに気付いた。

うわ、近づいてきた、とりあえず。

 

誠「渾身の右ストレートッ!!」

 

?「甘い!しゃがんでからのアッパーッ!!」

 

誠「なんの!カカッとバックステッポしてからのハイキックッ!!」

 

?「残念!それをガードしてのコブラツイストッ!!」

 

誠「痛いっ!痛いってこれ!じゃれ合いでコブラツイストとか反則だろそれ痛いっ!!」

 

?「おっとスマン、つい癖で」

 

やっと離してくれた、他の当選者らしき奴らもドン引きだよ。

 

誠「んで、お前なんでここにいるわけ?」

 

?「おいおい、それはこっちのセリフだろ。くじ運ない奴がここにこれるか普通」

 

誠「当選しましたけど何か?」

 

?「な!?今日は雪が降るのか」

 

とかほざくコイツは俺の親友の山田 雅人(ヤマダ マサト)よく名字と名前がマッチしてないとか先生に言われるらしい。

それお前のせいじゃなくて先生がうざいだけだろ。

 

誠「降らないから、代わりにワープなら起こったな」

 

雅「あーやっぱあれワープ?超スピードとか催眠術じゃないよな?」

 

誠「これはもう俺のスタンド能力が発動したかもわからんな!」

 

雅「それは無い」

 

全く、冗談が通じん奴だなもう。

 

雅「まあ知り合いがいるなんてラッキーだ、しかも親友と来てる。

  まあ楽しく行こうぜ?」

 

誠「バトルマスターがいるとは凄く楽だな、心強い」

 

そう、こいつの母親はあらゆる格闘技をマスターしたどう見ても神です本当にありがとうございました、な人なのだ。

その息子の雅人も血を引き継いでいる為異様に強い、カツアゲして来た不良組をブン投げて全治二カ月、どう見てもヤクザな人達もブン投げて全治三カ月、中学生と高校生での練習ラグビーで一人圧倒的な力を見せつけて勝利し高校生の心に傷を負わせたなどなど。

・・・お前本当に中学生かよ。

 

雅「中学生ですけど何か?学生証いりますか?」

 

誠「いらん。さ、中入ろうぜ」

 

雅「おう!」

 

楽しくなりそうだな。




私も幻想入りしたいです。






次回予告
中は結構綺麗だな。館の中へと入った誠達はその外観とは裏腹に手入れされた屋敷の内部に違和感を感じる。その時!パリンッ!!何かが割れる音を聞き向かった先はキッチン、皿の破片を手に入れて戻る誠だったがなんと入り口が塞がっていた!脱出を試みる誠達だがその背後にブルーベリーみたいな色をした全裸の巨人が忍び寄るッ!!次回「2012年青鬼ンピック開催!」目指せ金メダルッ!


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第三話 幻想

雅「中は結構キレイだな」

 

誠「それはやめろトラウマだから」

 

館の中は結構広い、そして綺麗だ、まるで誰かが住んでいるように。

俺達がいるのは大広間、真っ直ぐ進むと扉があるだけで他に出入り口などは見当たらない。

 

雅「これは進めばいいのか?」

 

誠「多分そうだろう」

 

奥へと進む、屋敷の中はやけに静かで俺達の足音以外何も聞こえない。

もちろん外の風でなびく草木の音もセミ達の音も全く聞こえない。

それ程距離もなく扉の前に着く、結構扉は大きくこれなら3m位の物も中に運べそうな大きさだ。

扉の手を付ける少しひんやりしていて気持ちがいい。

 

誠「開けるぞ?」

 

徐々に力を入れ扉を押す、ギィィ・・・と音を立てながらゆっくりと扉が開いて行く。

その時だった。

急に何者かに右手を掴まれ強い力で引っ張られる、バランスを崩した俺は床に手を付こうと前に左手を出すと床のある筈の場所に床がなかった。

・・・は?

思考が停止されパニックへと変わる、後ろから雅人の声が聞こえる。

これは夢か、そうか夢だ。

そのまま俺はなすすべなく深い闇に落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「――――――ですか?」

 

・・・声が聞こえた。

ここは・・・どこだ?

朝?変な夢を見ていた気がする。

ああ、兄貴が起こしに来たのか、今日は休日だしな、それでも10時まで寝てたら起こしにくるわな。

分かってる、そんな心配そうな声で起こさなくても起きるって。

・・・心配そうな声?

霞んでいる視界が徐々に鮮明な光を映す、俺の傍らにいるのは・・・誰だ?

ゆっくり起き上がる、体の節々が痛い。

そして目を擦り再度傍らにいる人を見る。

・・・女?

いや待て、俺には妹だとか幼馴染だとか女友達だとかはいない筈。

まして姉もいないしこんな顔の親戚もいない。

紅色の髪のをしたその女性は俺が気が付いた事に気付き、安堵表情を浮かべた。

 

?「良かった、気が付いたんですね!」

 

周りを見渡すと門と湖しか見えず、俺の自宅は欠片もない。

!?

事の重大さに気付いた俺はすぐさま立ちあがる。

隣の女性は驚いているがそんな事は関係ない。

ポケットに手を突っ込んでケータイを取り出し位置情報の検索を始めようとした。

が、圏外。

待て、って事はここは山奥?でも湖もあるしそこまで樹が生い茂っているわけでもない。

・・・どこだここは。

 

?「あ、あの?」

 

後ろから声が上がり、振り返ると先程の女性が心配そうに見つめていた。

そういえば介抱してくれたっぽい、お礼言ってないな。

 

誠「あ、介抱してくださりどうもありがとうございます」

 

何時もの癖で一礼する。

 

?「あ、いえ!好きでした事ですので!」

 

今時こんな優しい人いるのね、ちょっと感動した。

 

誠「良ければお名前を伺っても?」

 

せっかくなので聞いてみる、どうみても年上だがまあ気にしない。

 

?「ハイ!私はメイリンと言います!」

 

誠「へぇ!メイリンさんですか、良い名前ですね!」

 

とテンプレを返す、メイリンって外人ですか。

ん?メイリン・・・そういや東方に居ましたねハイハイ。

後はメタルギアにもいたな、いやあれはメイ・リンだけど。

 

誠「所で、ここはどこでしょう?私にはここに来た経緯やら何やらを

  覚えていないものでして・・・」

 

今はとりあえず情報が欲しい、ここはどこなのだろうか。

メイリンさんが日本語を話している以上日本ではあると思うのだが。

 

?「ここは紅魔館の前です、私は門番をしているんです」

 

へー紅魔館?いやいや全く知らないねマジ。

・・・ん?紅魔館?え?

 

誠「えっと・・・紅魔館ですか?幻想卿にあると言うあの紅魔館ですか?」

 

?「ハイ!」

 

ニコっと笑ったメイリンさん、俺ははっきり言って笑えない。

待て待て、って事はこの人は・・・

 

誠「もしかしてあなたのフルネームは紅 美鈴(ホン メイリン)さん?」

 

紅「ハイ!フルネームは紅 美鈴です!」

 

・・・ま、まさかここって・・・

 

誠「げ、幻想卿にいるのか俺・・・?」

 

頭の中で幻想卿に来られた嬉しさが飛び交う中、帰れないかもしれないと言う焦りが渦巻いている。

とりあえず素数でも数えれば、いやそんな事は後だ。

まず幻想卿だと言う事は受け入れよう、帰れないのも受け入れよう。

では、帰れないなら寝る所と飯を食う所がないと言う事も受け入れなくてはならない。

となれば働く以外無い!

 

誠「す、すいません!ここで働かせて貰いませんか!?」

 

紅「ふぇ!?え、ええ!?」

 

いきなり過ぎた俺の発言に戸惑ってるっぽい美鈴。

・・・かわいい。

 

紅「え、えと・・・お嬢様に聞かないと流石に決定は・・・

  と、とりあえずお嬢様の所へ案内しましょう!」

 

誠「ありがとうございます!」

 

すんなり入れるとは思っていなかった、戦闘は無理だけど壁でもよじ登ってとか本気で考えていたのに。

 

誠「でも門番はどうするんですか?メイド長に見つかったら・・・」

 

紅「その時は甘んじて罰を受けますので大丈夫です!」

 

何これ美鈴マジ天使、いやもう女神だわマジで。

非想天則で全く使わないでいてスイマセンでした。

 

門が少しだけ開きそこから中へと入る、見た感じ庭も綺麗に手入れされている。

紅魔館の入り口を開き奥へと進む、中まで紅いんだな紅魔館って。

周りを見ながら歩いていると人形みたいなのが横を通った、あれが妖精メイドって奴か?

中が完全に紅く同じような所をグルグルと回っているようにしか見えないが一応進んでいるんだろう、ちょっと目が痛くなりそうだ。

何度曲がったか分からなくなってきた時に美鈴が足を止めた、前には今まで通ってきた扉とは違う扉。

・・・ここか。いよいよだな、面接には礼儀正しくしろとか先生に言われたのを思い出し、身だしなみを整えて深呼吸をする。

・・・よし、準備完了だ。

 

美鈴が扉に手をかけて開き中へと入る、俺も中へと入る。

まず目に入ったのはテーブル、染み一つ見当たらない真っ白いテーブルクロスがかけられており、テーブルの上には燭台が置かれている。

テーブル自体は縦長であり、四つの足じゃ支えられない程の大きさだ。

そしてその奥で頬杖を突き目を瞑っている少女・・・

 

紅「お嬢様、お話したい事が・・・」

 

お嬢様と呼ばれた少女は顔を上げ片目を開きこちらを見る。

 

?「んぅ・・・あら美鈴、どうしたの?」

 

・・・

 

紅「・・・えっと、お嬢様・・・非常に申し上げ難いのですが・・・

  ・・・よだれがついています」

 

?「え!?」

 

少女は慌てて口元に手を触れ、口元を拭い取った。

写真撮っておきたかった・・・

 

?「・・・で、どうしたの美鈴?あなたから来るなんて珍しいじゃない」

 

紅「実はこの者がここで働きたいと」

 

そう言うと美鈴はアイコンタクトを送ってきた。

自己紹介しろってことだろう多分。

美鈴の後ろから前に歩み出る、ちょっと緊張するな。

 

誠「葉隠 誠と言います」

 

?「私はレミリア・スカーレット、この館の主であり吸血鬼よ」

 

知ってますハイ。

 

レ「貴方は外の世界から来た外来人ね?」

 

誠「ハイ、気が付いたら紅魔館の前で気絶していたらしいです」

 

紅「え!?外来人だったのですか!?」

 

誠「そうです、変な扉を通ったらいつの間にか幻想卿ってわけで」

 

やっぱりあれは夢じゃなさそうだしこう説明しておこう。

てかアレ以外は考えられない。

 

レ「変な扉?」

 

誠「ええ、心当たりありませんか?」

 

レ「ん~・・・パチェなら何か知っていそうね」

 

パチェと言ったらパチュリー・ノーレッジの事だろう。

動かない大図書館・・・だっけ?うろ覚え感が否めないな。

 

誠「出来れば聞いて頂けると助かります」

 

レ「分かったわ、とりあえずここで働いてもいいけど咲夜が家事とかその他

  全てやっているから別に事足りているから何もしなくていいわ・

  ・・・今はね」

 

おお受かった!軽く受かった!

 

誠「ありがとうございます!今はってどういう事ですか?」

 

レ「もう少ししたら働いて貰う事があるのよ

  それまでは何もしなくていいわ」

 

やる事・・・?やる事ねぇ・・・何するんだろ。

まあ戦闘はどう見ても人間ですな俺には向いてないんだろうしちょっとした手伝いとかだろう多分。

 

レ「ところで・・・あなた、能力持ちでしょう?どんな能力を持っているの?」

 

え、え?いやいや。

 

誠「あの・・・私は能力を持っていませんけど」

 

レ「え?あなた自分の能力に気付いていないの?」

 

お嬢様が目を丸くして驚いている、そこまで驚く事ないでしょうに。

まあ俺が能力持ってても大した能力でもないだろう多分。

 

レ「・・・能力を確かめる良い方法があるわ。

  美鈴!テーブルを片付けて出入り口を塞ぎなさい」

 

紅「え?わ、わかりました!」

 

一体何が始まるんです?

出来ればあまり痛い事はしたくないんですけども。

 

レ「今から私が貴方を半殺しにするわ。

  私に少しでもダメージを与えたら貴方の勝ち、但し物を投げるのはダメ」

 

誠「・・・え、え?」

 

い、今なんと!?は、半殺し!?吸血鬼の半殺しは全殺しだってばっちゃが言ってたぞオイ!勝てる気がしないとかそういうレベルじゃないから!次元が違うから!野球VSサッカーで勝負するとかそういうレベルだからこれ!

 

レ「さ、行くわよ。能力を解放するまでね!!」

 

誠「どうしてこうなった・・・」




どうしてこうなった(AA略

この頃バイトが忙しくてダメだ、更新が出来ぬゥ。
とりあえず最低条件とされる週一更新だけは守り抜く所存ですサーイエッサー。

にじファンの時は最初にルーミアだったのが美鈴になったのは導入変更から色々やってこうなった。
どうしてこ(ry














次回予告
レミリアとの戦いが幕を開ける!レミリアの攻撃になすすべ無くただひたすら逃げ惑う誠、そこで誠はある作戦を思い付く!「お嬢様!れみ☆りあ?」「う~!」ここでレミリアのカリスマがブレイクした!その隙を突き懐へ潜り込む!「しまった!ついうっかりカリスマをブレイクしちゃった!」時既に遅し、懐から繰り出されたアッパーがレミリアにヒット!誠は半殺しを免れる!しかしレミリアのカリスマをブレイクさせた事によりレミリアの怒りが爆発!紅魔館から追い出された誠は人間の里へと歩み始めたのである。次回「そういえば課題終わらせてねぇ!だが更新はやめられねぇ!!」課題は投げ捨てる物・・・


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第四話 能力

よし、整理してみよう。

今俺は何故か知らんが幻想卿に幻想入りしてしまった。

そして紅魔館に住む事になった、だが館の主であるレミリアは俺が自分の能力に気付いていないと言って半殺し宣言。部屋の中でリアル鬼ごっこなう。

 

誠「パスってないんですか・・・ッ!ちょッ危なッ!」

 

ちょ!人間相手に弾幕放つっておまっ!ピチューンで済むレベルじゃねっぞっ!

こんな所で死ぬわけにはいかない、俺には自宅に残した詰みゲーが待ってるんで死ぬわけにはいかないんだよ!

ぼっちでやり込んだGODEATERとかタクティクスオウガとか借りたまんまでやってないワンダと巨像とか・・・まだやり込み足らないゲーム達が残っているんだよ!

回避だ、まずは回避に専念する。そして隙を突きながら能力を探しだして当てる。

これ以外に策はないだろう、小細工を使おうとすれば逆に死ぬよコレ。

さっきの弾幕を見る限り避け切れない程の数や配置ではない、東方の難易度的に考えればEASY、簡単ではある。しかも最初のボス級に弱い。

完全に手加減してくれているようだがやはり弾幕には当たれない、痛いのは嫌いだしピチュるとか怖すぎる。原子レベルで体内から破裂とか想像すると怖過ぎだろ、実際破裂はしてないだろうけどそれでも何が起きるか分からないし怖い。

 

飛んでくる弾幕、体を横にステップしそのまま勢いに身を任せ前転、弾幕を辛うじて回避する。

完全に俺が弾幕を回避し切った事を確認したレミリアは自身の前に弾幕を配置、そしてまた弾幕をこちらへ飛ばしてくる。

弾幕の弾道を読む、俺の頭と右ステップ左ステップ時に当たる様に飛ばされた弾幕をしゃがみ込んで避けそのままレミリアに突進する。

能力ってのは才能からくる事が多いだろう、能力は使えるけど才能が追いついていないなんて事はまず無い、あったら能力の前提が崩れるしな。

例えば美鈴の能力・・・『気を使う程度の能力』だったな、それも美鈴という人間・・・あ、妖怪か。まあそれはいい、美鈴に合っている能力と言える。

美鈴は中華風の妖怪であり中国の武術とかで気やオーラのような物を扱う武術があるらしい、そしてそれが反映されたような能力を美鈴も持っている。

ならば俺も自分の才能に関係すると思う。あるいは強い思いや夢憧れとかに関係する事であろう。

あるいは・・・好きな物。

・・・ゲーム?いやいや戦闘全く関係ないし。

・・・そうだ、ゲーマーの夢であるゲームの主人公になるとかどうだ?ありえそうで怖い。

それならばやはり俺の大好きなゲーム、ドラゴンクエストとかモンスターハンターとかにな~れとか想像すれば出来るかもしれないわけだ。

よしやってみよう。

 

目を閉じる。思う、想像、妄想、出来るという思いで考える。

ドラゴンクエストといえばひのきの棒だろう、最初だし複雑なのは考えない。

俺は今、木の棒を持っている。長さは1mくらい、棒の端を持っている。

 

紅「えっ!」

 

美鈴が驚きの声を上げるが気にも留めない。

意識を集中させる、木の棒を頭上へ振り被る。木の棒の重さで後ろへ腕を持って行かれそうになる、そのまま力強く・・・振り下ろすッ!

 

バシ!っと乾いた音が響く、目をゆっくり開けるとお嬢様が木の棒を片手で抑えている。

まさか・・・成功した?

手を見ると乾いた木の棒がしっかりと握られている、部屋の中にこんな棒は無かった筈だ。

となると・・・俺の能力で創った(・・・)のか?

え?ちょ、え?マジで?やっておいてなんだが信じられない。

いやいや、能力は出来て当たり前と思う精神が重要だってばっちゃが言ってたし。

 

レ「・・・成程ね、でも・・・不合格」

 

誠「へ?ぐほァッ!?」

 

素っ頓狂な声を出して吹き飛び、壁に背中を打ちつけられた。

はっきり言おう、クソ痛い。息が詰まって激痛で涙が出てくる、それでも何とか立ちあがると目の前にレミリア立っていた。

すぐさま逃げようとしたが首を掴まれて持ち上げられた、レミリアも宙に浮き俺の足が浮き上がる。首の圧迫感で呼吸がし辛い、必死に抵抗を試みるが全くもって効果はないようだ、手の力は緩む事なく俺を掴み上げている。

こんな時に頭が回る事などないようで能力を試そうにも何も頭に浮かばない、そうこうしているうちに意識が朦朧としてきた。

ヤバい、気を抜いたら直ぐに意識が飛びそうだ。

いやこれもレミリアが俺を試そうとしているのかもしれない、ここから抜け出して見せろと。

全身の力を抜き意識を集中させる、ここで抜け出す方法は複数ある。

①レミリアの手を弾く、一番簡単に思い付くが一番難しい。

②他の事に意識を逸らせてその隙を突く、これもやはり難しい。

③レミリアに痛手を負わせる、吸血鬼の弱点を付いてやる手があるがこれは後が怖いしやりたくない。

・・・ここは①か②の策を考えるしかない、といっても時間はない。

何か、何か策はないか・・・

手を開かせる・・・そうだ、効くかは分からんがこの手がある!

 

上を向いたまま手を前へと伸ばす、そしてレミリアの脇腹へと掴み掛かる。

そのまま一気に・・・擽る(くすぐる)!!

 

レ「ちょ!あははははははははは!!!や!やめ!!」

 

レミリアは笑いを堪える事が出来ずに手の力を緩める、レミリアの手から逃れた俺はそのまま着地しレミリアから距離を取る。

何も創らないで出来るレミリアの身長だからこそ出来るこの芸当。

大の大人では手が届かない、レミリアの幼い体だからこそ出来たのだ。

しかもこれなら能力を使わなくても出来る、非力な人間でも出来るから我ながらいい策だと思う。

しかしこれ吸血鬼じゃなかったら俺変態だろHENTAI、待てよ?相手が吸血鬼でもこれは流石にHENTAIではないか?

いや不可抗力だ、正当防衛だ、うん。

さて、距離を取ったし武器でも何でも創らなくてはヤバい。飛び道具は禁止らしいから剣、槍、なんでもいいから近接武器を創らなくては。

一応武器の扱いは分かる、ゲームの動きに剣道をやった時に学んだ事を生かして我流の戦い方は出来ている。

・・・不良に絡まれた時の為に護身用として覚えた奴がこんな所で活かされようとは。

 

レ「くっ、やるじゃない」

 

と言いながらカリスマ全開で立ち直るレミリア、さっきはカリスマブレイクさせてサーセンフヒヒ。

今にもパンチが飛んできそうだからとりあえず片手用の盾、次に片手で扱える剣を創り構える。

今度は目を閉じなくても創る事が出来た、光の粒子みたいなのが集まり剣の形を創りだす。

成程綺麗だなこれ、面白い。

にしても剣がやけに軽い、軽い鉄で出来た剣と想像したら物凄い軽い剣が出来た。想像で重量や質量、威力、素材も操れるようだな、万能で助かる。

逆に盾の方は盾としか思ってないから皮で出来た盾が出来た、成程無意識だと一番盾だと思うのが出来るわけか、って事は俺の記憶にない物は創れないようだな。

やはり知識と理解無しでは何も生まれないわけか、まあ使い道もわからん変な異物が創られても困るし好都合だろう。

あれ、そういやさっき創った棒はどこへいった?さっき吹き飛ばされた時にどっかに飛んで行ったと思うんだけど・・・

 

レ「余所見する暇があるなんていい度胸してるじゃない」

 

勿論余所見はしていたが気は張っている、来る事は分かっていたしその為にトラップも張っておいた。

サッと後ろにステップ、そして盾を外して右手を前へ突き出す。

そして人差し指を上に向けてクイっと曲げる。

 

誠「どうぞお嬢様?」

 

一応挑発したつもりだけどなんか挑発とは違う気がしないでもない。

挑発を受けたレミリアは俺を見て笑いそのまま飛行して突っ込んできた、その姿はまるで弾丸だが俺はよける事なくそのままの体勢でレミリアを向かい撃つ。

 

ニヤリ、笑う俺をレミリアは見逃すわけがなかった。多分レミリアはこう思っている筈だ、「攻撃を避けようともせずに不敵に笑ったという事は罠か」と。

その通り罠、ただちょっと工夫した罠だ。

レミリアは突っ込むのをやめて小さく後ろへと飛んだ。そう、そこがベストの位置。

瞬時に俺は右手を上に振り上げた、レミリアが立っていた場所に透明な格子状の壁・・・結界と言えばいいのかな?それがレミリアの周囲に張られた。

勿論透明で俺でも張られたか分かり辛い為レミリアが気付く事などない。

レミリアの方へ歩き出す、レミリアはもう一歩下がろうとしたが結界に当たり下がる事は出来ない。

 

誠「ではお嬢様、失礼」

 

無数の切れ味がないナイフを創りだす、そして格子の隙間を狙って投げまくる。

と言っても素人が投げているので真っ直ぐに飛ぶ事はなく回転しながらレミリア目掛けて飛んで行くナイフ。

その内の一本がレミリアの額にコツンと当たり地面へと落ちた。

 

誠「さて、これで合格ですよね?」

 

レ「まだね、私はダメージと言った筈よ。

  こんなおもちゃ如きじゃダメージはないわ」

 

誠「確かに肉体的なダメージはないでしょう。

  ですが精神的なダメージはあるのではないでしょうか?

  そんなおもちゃ如きを投げられてポコポコと当たってしまったら、ね?」

 

やっぱりプライドに傷がついたようでレミリアは顔を歪めた。

 

レ「・・・いいわ、合格」

 

誠「ありがとうございます」

 

結界を外す。結界は無いと思う、それだけで結界は消え失せる。

レミリアに一礼しナイフを消していく。

 

レ「それにしても凄いわね、能力をここまで操るなんて」

 

誠「知識と理解さえすれば簡単でした、まさか一発で

  成功するとは思いませんでしたがね」

 

リアルに木の棒が出た時はビビったよマジで。

 

レ「これなら十分戦力になりそうね、それじゃ改めて・・・」

 

レミリアは美鈴によって片付けられた部屋のイスに座った、これが大人だったら様になっていたが残念な事に幼い体からカリスマが出るわけがない。

いや待て、これは逆に人気が出る意味がわかる。この幼い体でカリスマを出そうと頑張ってるレミリアかわいいよレミリア、だが俺は別にロリコンなどと言う忌まわしき特性は持っていないのであるそう断じて持っていない、ちょっと可愛いなとは思うが別にただ可愛いと思うだけであって・・・

 

レ「ようこそ、紅魔館へ。

  特にして貰う事はないけれど、これからよろしく」

 

誠「え?あ、ハイ。よろしくお願いします!」

 

危ない、ちょっと考え込んでしまった。

まあこれで衣食住の心配はなくなったわけだ、これで幻想卿にいても安心だ。

 

レ「さ、紅魔館に住むわけだし皆に挨拶しに行くのよ」

 

誠「え?お嬢様が案内するとかそんな親切心は・・・」

 

レ「無い、私はお昼寝の邪魔されたわけだし。

  用も済んだから寝るわ、さあ行ってらっしゃい」

 

誠「えぇ・・・分かりました、美鈴さんにお願いして・・・」

 

振り返ったが美鈴の姿がない、あるぇさっきまで後ろにいた気が・・・

 

レ「美鈴ならもう門の前よ」

 

速い!門の前で昼寝する為に戻るのだけは速い!流石だ美鈴(だめいりん)

嘘ですすいません全世界66億人の美鈴ファンさんすみませんでした。

美鈴がいないと言う事はあれか、やっぱり一人で探すのかこの館を・・・

だるい、妖精メイド捕まえて案内させようにも難しいしな。

仕方ない、自力で周るか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レ「面白い事になって来た、これならアレも成功するかもしれないわ」

 

?「お嬢様、先程部屋を出たあの方は?」

 

音も無く現れたメイド姿の彼女を見る、その手には侵入者を始末する為のナイフが光っている。

 

レ「新たに加わったこの館の住人よ、良い戦力になるわ」

 

そう言うとナイフを懐へと仕舞った、その手捌きは手慣れている。

 

?「ですがあの方は見たところ人間

  あの方が戦力になるとは到底思えません」

 

フフ、と小さく笑いメイドを見る。

 

レ「あいつは見た感じあれだけどいい人材よ、私の見立てに狂いは無いわ。

  それに、あなただって人間でしょう?」

 

?「・・・そうですね、私はお嬢様を信じます」

 

メイドは目を閉じ一礼をする。

 

レ「分かればいいのよ」

 

そう言うとテーブルにいつの間にか現れた紅茶のティーカップを持ち上げ口へと運ぶ。

香り、味共に一流の紅茶であり淹れた者の腕の良さが分かる。

 

レ「さ、私はお昼寝にするわ。挨拶くらいしてあげなさいよ?」

 

?「はい、お嬢様」

 

そしてまた音もなく消える、何も最初から居なかった様に。

残されたのは先程の紅茶の香りだけ、それだけ確認するとレミリアは自分の部屋へと足を運んだ。




先週
週一更新だけは守り抜く(キリッ

現在
バイトと勉強には勝てなかったよ・・・(アへ顔ダブルピース










次回予告
レミリアとの戦闘を終えて紅魔館の住人達の挨拶へと急ぐ誠、そこに立ちはだかる難題!「紅魔館の中が広すぎて迷ったやべぇ」どこを開けてもいるのは妖精メイドだけ!?とりあえず誰か一人でも見つけて道を案内して貰わないとっ!そこに通りかかる小さな紅い影、レミリアかと思ったらその人は・・・?次回「きゅっとして」誠の寿命がキュッとしてボンなんだが?


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第五話 迷走

さて、とりあえず言わせて貰おうか。

 

ここどこですか!!

 

かれこれ歩き回りながら部屋を開けて周る事十五分、日没が来たのかも分からないこの紅い廊下をトボトボと歩いている。

途中妖精メイドにすれ違ったが他には誰にも会えない、妖精メイドに道を聞いたが何言ってるのかわからず会話終了。そして扉を開けて周っているがいかんせん広すぎる為どれもこれもハズレばかり、未だに階段すら見ていない始末。

ちょっとここに住むのが不安になって来た、とりあえず今はわからない部屋から拝借した紙とペンとインクで地図を描きながら歩いているのだが、描いた地図を見るとどう見ても直線しかありません本当にありがとうございました。

あぁ、せめて屋敷の見取り図でも貰うべきだった。失敗したなぁ・・・

また一つ扉を開ける、綺麗に手入れされた部屋の様だな。これで何回見たかも分からない部屋である。

ハァ、と溜め息をし扉を閉める。

おかしい、流石にこれはおかしいだろ・・・もうずっとこの部屋しか見てない気がする。

地図も途中からずっと真っ直ぐ、さっきから真っ直ぐしか進んでない。

こんな時にケータイとかあれば地図情報が・・・いやケータイあるけど圏外だったんだ。

もうだめぽ。

 

誠「誰かいないんですかああああああ!」

 

悲鳴を上げるように叫ぶと声が壁を反射しやまびこの様に響き渡った、やまびこはどんどん音量を下げて行きまた先程のように静寂が俺に襲いかかる。

孤独だ、寂しいな・・・

 

もうこうなったら全力でこの館を出てやろう、最終手段として壁を壊すとかもやってやる・・・

そうとなれば簡単だ、能力でなんか創ればいい。まあ問題があると言ったら何を創ればいいのか全く分からんと言う事だが。

まあとりあえず最初は部屋を回るより外に出る事を考えよう、そうすれば大体の見取り図は分かるし美鈴にでも聞く事が出来る。

とりあえず「行き止まりまで道を進みまくる戦法」と「大きな扉を見つけるまで進みまくる戦法」を使うしかない、ネーミングセンスについてはご了承ください。

さて、創り方はさっきので分かったから何を創ろうか。やはりここは乗り物だろうか?

バイク?車?免許がないからパス、やはり自転車か・・・

深呼吸をする、手を前にかざし念じる。するとなんかわからん光が集まりハイ完成。

ね?簡単でしょう?

 

ゲーセンへ行く時に愛用している自転車にそっくりの自転車に乗りペダルを力強く踏み込む、前へと走りだした。

風を切って走るのって気持ちいいよね!そんな事はない、俺はただの移動手段として使っているのでサイクリングとか絶対にしない。足が疲れるし、何よりつまらん。

さて、さっきからずっと真っ直ぐに走っているが前はずっと先まであるようだ、曲がり角一つ見えない。

・・・もしかして、あれか?いやもうあれしかない。

異変に気付き自転車のブレーキを握りしめて強引に止める、自転車を消してすぐさま近くの部屋へと入る。

綺麗に掃除されたこの部屋、実は地図として使っている紙とペンとインクがあった部屋にそっくりなのだ。

部屋に入るとすぐさま紙があった机へと急ぐ、机の上にあったのは・・・

 

誠「・・・やっぱり」

 

あったのは普通の紙束、メモ帳のような物だ。そして上には乱暴に千切られた紙が跡として残っている。

実を言うと俺はこう言うのが苦手であり雑誌の閉じ込みも途中からビリッ!とやってしまうタイプなのだ、不器用すぎだろ俺・・・

そんな事はさておき紙束と俺の持っている紙とを合わせる、案の定跡は完全に一致した。

と言う事は、もう分かったぞ・・・この迷路事件の犯人が・・・!!

 

誠「さて、推理ショーの幕開けですね」

 

キリッ!とキメてみたが俺がやるとなんのカリスマもかっこよさも無いな・・・

 

誠「不可解だった点は三つ、第一に途中から廊下が直線だけであった

  所、第二に入る部屋が全て同じである所、第三に歩いても歩いても

  他の所へ辿りつけない所・・・

  いくら紅魔館が広くてもここまで広かったらまず美鈴が

  お嬢様の所へ行く事が不可能。では道を間違えたかと言うと

  それもない、ここまで一本道だからですよ。

  ならば館自体が変わった?それもないですね、そんな大事直ぐには

  出来るわけがないのですから・・・

  ならば答えは一つ、私が同じ場所をループさせられていたのです。

  ・・・時を止められている間に移動させられてね。

  それ以外にこんな事が出来る人はいません、つまり犯人は・・・」

 

後ろからの気配を感じて横へ跳び、振り返り様おもちゃのナイフを投げる。

・・・どうやら俺の推理は正解だったようだ。

 

誠「貴女しかいないんですよ、メイド長である・・・」

 

俺の投げたおもちゃのナイフが銀色に輝く金属に弾かれた、それは俺の足元に着弾し、床に深々と突き刺さった。

 

誠「十六夜 咲夜(イザヨイ サクヤ)さん、貴女しかね!」

 

咲「・・・」

 

十六夜 咲夜、紅魔館のメイド長をしておりその働きは「完全で瀟洒な従者」と言う二つ名に恥じぬ働きをしている。銀髪、銀髪、銀髪。大事な事なので三回言いました。

えぇ、只今テンションがウナギ登り中であります!かわいい!かわいいよ咲夜様!

笑みが表情に出ないように隠しているけどこれちょっとした事で崩れるよ!ポーカーフェイスとかそんなもん関係無いね!

 

さて、時を止めてから殺さないって事は殺すのが目的ではないらしい。

・・・ちょっと前まで普通の人間だったのに数時間で殺される殺されない言っちゃう能力持ち人間になってしまったんだな俺・・・

っと、気を抜いたら事故で死ぬ世界だったな幻想卿。気を抜かないようにしないと・・・

殺すのが目的ではない、となるとやっぱり試す為であるのだろうか。

戦闘も知恵も経験も平々凡々な俺だから試されても困るんだけども、まあいいだろそんな事は。それよりこれで試し終わったのか、だな。

 

誠「さて、私の実力はどうでしたか?

  期待には遠く及ばないでしょうがね」

 

レミリアとの戦闘が終わって気が抜けていたのもあったからこれは赤点付けられるな、お説教位は覚悟した方がいいかもしれない。

 

咲「・・・合格、お嬢様が採用した意味が良く分かったわ」

 

・・・へ?

え?え?合格?一発合格?お説教無し?

 

誠「そ、それは一体どういう事なのでしょうか?私はてっきり

  不合格かと・・・」

 

咲「第一に私が背後に立った直後の反射神経の良さと気配察知能力の

  良さ。第二に私が投げたナイフの弾道を見切った力。貴方、私の

  ナイフが足元に刺さると見切って避けもしなかったでしょう?

  見切っていなかったら足に刺さるかもしれないナイフの前で

  突っ立ってたりしないわ。第三に・・・」

 

ふぅ、と溜め息を付く咲夜さん、かわいい。

 

咲「時を止めたと言う事が分かった点ね、お嬢様も美鈴も私の能力に

  ついては一切口にしていない筈。前から知ってるのなら話は別

  だけど外来人じゃ知っている訳がない、それを貴方は見破った。」

 

・・・これは本当の事言ったら減点されるパターンですねわかります。

 

咲「どうしてわかったのかしら?ばれる要素は無かったと言っても

  過言ではないのに」

 

ど、どう言えばいいだろうか・・・

 

誠「た、ただの直感ですよ!閃きって奴です!」

 

う、嘘ではないぞ!ちょっと廊下ループで本当に時を止められて階段を上る事が出来ないジョジョの奇妙な冒険で有名なアイツみたいだと思ったのは本当であって・・・

 

咲「それならばその閃きも凄いわ。時を止めるなんて発想は

  普通の人間には出来ない発想よ」

 

あ~・・・それもそうだった。

 

誠「たまたま偶然ですよ、そこまで私は勘が鋭い訳でもありません

  それよりお嬢様から聞いていると思いますが・・・」

 

咲「えぇ聞いているわ、これからよろしく。

  それで貴方の名前は?」

 

レミリアから聞いていないのか。

 

誠「私の名は誠、葉隠 誠と言います。

  これからよろしくお願いしますね咲夜さん。

  ・・・あ、様の方が良いでしょうか?咲夜様?」

 

咲「『さん』で良いわ『さん』で」

 

大事な事らしいので二回も言ってくださりました。俺的には是非とも『様』で呼びたいのだが咲夜様がそう言うなら仕方がない・・・

今の内に心の中で『様』呼びしておこう。咲夜様咲夜様咲夜様咲夜様咲夜様・・・

 

咲「・・・聞いてるの?」

 

誠「うわっと!すみませんつい考え事を・・・」

 

咲「まあいいわ。さ、美鈴やパチュリー様に挨拶して来なさい。」

 

と言って手渡してくれたのは一枚の紙。

こ、これは!!

 

咲「これが紅魔館の地図、パチュリー様は大図書館にいるわ」

 

ねんがんの こうまかんのちずをてにいれたぞ!

 

 殺してでも(ry

 

誠「ありがとうございます!」

 

方向音痴だったりする俺に地図は必要不可欠である。

 

咲「さ、行って来なさい。私は今晩の夕食の準備をしないと」

 

誠「私の分もお願いしますね!」

 

咲「分かってるわ、それじゃあね」

 

と言った瞬間に消えた・・・だと・・・!?

あぁ時を止めて移動したのか何だビックリした。

 

さて、早速美鈴とパチュリーの所へ行ってきますかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

門の前に行ったら居眠りしている美鈴が居たので起こそうとしたらナイフが飛んできて美鈴が「ピチューン」と言う音を立てて消えてしまった、合掌。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで美鈴を後回しにして大図書館へとやって来ました。

こ、ここが大図書館・・・どこを見ても本棚と埃しかない!後は巨大な机!

と、とりあえず読書用の本を数冊持ってい・・・借りて行こう!

本の整理をしていたらしい女性が俺に気付いた、手を振っておく。

あれは・・・小悪魔さんか、ゲームクリアする途中散々ピチュった小悪魔さんか。

・・・なんか悪い事した気がしてとりあえず深々と頭を下げておいた。

おっと、一応紅魔館の住人なんだから挨拶して置くべきか?やっぱりするべきか。

小悪魔さんの近くまで歩き、小悪魔さんの肩をトントンと・・・

 

小「ひゃぅっ!!」

 

かわいい、このリアクションが取れるとはやはり天才か。

持っていた本を床に下ろしながら振り返った小悪魔さんは安心したような顔をし。

 

小「び、ビックリしました・・・」

 

どこに驚く要素があったのか。

 

誠「驚かせてしまってすみません、この度紅魔館に住む事となった

  葉隠 誠と言います」

 

小「えぇ!?紅魔館に住むんですか!?だだ、大丈夫なんですか!?」

 

そこまで紅魔館はヤバイのかと疑いたくなるぞこれ。

 

誠「ええ、お嬢様に許可は貰いましたから。

  ところでパチュリーさんはどちらにいるのでしょうか?」

 

小「パチュリー様ならあそこにいますよ!」

 

誠「ありがとうございます」

 

一礼してパチュリーの方に歩き始める、周りの本棚を見ると綺麗に整頓されており様々な種類の本が集まっている様だ。

・・・読みたい。

先程の巨大な机の前に立つと目的の人物であるパチュリーを探す、角の方で本を読んでいる様だ。

分かる、分かるよそれ。部屋のどっか座れと言われたらついつい角の方とか狭いとこに座っちゃうんだよねうん。

パチュリーに近付くと影で気付いたのか俺へと振り返る。ふむ、肌が白いな。日光を浴びないと骨粗しょう症になりやすくなって骨を折るぞ、割と真面目に。

 

パ「・・・あなたは?」

 

誰ですかあんたと言いたげな瞳で見つめられ、ちょっと言葉が詰まりそうになるが自己紹介を始める。

 

誠「私はこの度新たに紅魔館の住人となりました葉隠 誠といいます。

  と言っても決まったのはつい先程ですがね」

 

パ「そう、レミィが決めたなら何も言わないわ

  ようこそ紅魔館へ」

 

誠「よろしくお願いします。所でパチュリーさんにお聞きしたい

  のですが、世界を移動出来る扉について知りませんか?」

 

パ「・・・?」

 

この反応だと知らないみたいだな・・・うむむ困った。

まあ帰れなくてもいいけど行き来出来ればそれはもう助かるのだが、まあそんな都合のいい話がある訳がないか。

 

誠「いえ、ご存じ無ければいいんです」

 

情報は追々調べていけばいいか、さあ次は美鈴だな。

今の時間は・・・げっ!もうこんな時間かぁ・・・うわぁ食事までに間に合うよな・・・

 

誠「それでは私は美鈴に挨拶して来なければいけませんのでこれで!」

 

速足で大図書館から出ると廊下を一気に走りぬけて門の前へと急ぐ。

幸い運動神経は良い方なのですぐに門の前に辿りつき美鈴を探した、が。

 

いない。ピチュったらそんなに回復しないもんなの?いやいや普通に回復するでしょう幻想卿ならば尚更。

って事は・・・

館の庭を見渡すと見えたのはあの緑色をした帽子と紅い髪。

なんだ庭の手入れか、美鈴が庭の手入れをしているのってあんまり想像出来なかったけどこれはこれで絵になるな。

庭を荒らさないように気を付けながら美鈴の近くへと行くと美鈴がこちらに気付いたようだ。

 

誠「どうも、美鈴さん」

 

紅「葉隠さん良かったですね!

  お嬢様に合格点を貰うなんて凄い事ですよ!」

 

誠「あれは能力が万能でしたので出来たんですよ、そこまで私は

  凄くありません。それよりも食事って大体いつ頃ですか?」

 

紅「食事は・・・」

 

時計へと目線をずらした美鈴は途端に表情が硬くなった。

え、まさか?

 

紅「も、もうすぐ始まっちゃいます・・・」

 

なん・・・だと・・・!?

 

誠「で、ですが少し位なら遅れても・・・」

 

紅「咲夜さんは時間に遅れると大体ご飯は無しにしてるんです・・・」

 

・・・沈黙、嵐の前の静けさとはこう言う時に使う言葉だったんだな。

すぐに俺と美鈴は紅魔館の中へと駆け込んだ、勿論花壇が荒れない様に細心の注意を払いながら駆けだした。妖精メイドが何事かと見ているがそんな事は関係ない、飯が無くなるかもしれない絶体絶命のピンチなのだ。

廊下の角を曲がり全速力で目的の部屋へと駆け込んだ、扉が勢いよく開き俺と美鈴が部屋へと滑り込む。

 

その時。

 

パーンと何かが破裂する音がした、その音は幾度も鳴り響き光る紙やカラフルに色が付いた紙片をばら撒いた。

何事かと顔を上げればクラッカーを持ったレミリア達が立っていた。

 

レ「さあ主役が来たわ!始めるわよ!!」

 

一際大きな声で言うレミリアは俺を立たせて席へと迎え、グラスを持たせられた。

未だに何が起きているのか混乱状態である俺としては何が何だかと言う感じであり、多分鳩が豆鉄砲食らったような顔をしているんと思う。

 

レ「さ、乾杯は誠がやんのよ!」

 

ようやく状況が理解出来てきた、成程歓迎パーティですね俺の。

ほんの数時間前にやって来た俺の為にパーティを催してくれるなんてお嬢様マジかっけーッス!

 

誠「乾杯の前にお嬢様、これはお酒ではありませんよね?」

 

レ「ただのジュースよ、さあ速く速く!」

 

嬉しいわ、純粋に嬉しい。

 

誠「私の為にこんな素敵なパーティを開いて下さり

  どうもありがとうございます!それでは皆さん乾杯といきます!」

 

美鈴も席に着きグラスを持った、良く見ればパチュリーや小悪魔や妖精メイド達もいる。

 

誠「それでは・・・乾杯!!」

 

全員「かんぱーい!!」

 




この後実はジュースはぶどう酒でみんな酔い潰れました。
















次回予告
新たに紅魔館組に入った誠、パーティのお陰で紅魔館の住民達と打ち解けてすっかり仲良しに!そんなある日レミリアに勝負を挑まれる誠、勝負の種目は・・・麻雀!?レミリアと咲夜による一方的な役満あがりによってフルボッコにされた誠は肌を白くしながら静かにブチ切れる!「初めてですよ・・・ここまで私をコケにしたおバカさん達は・・・」誠の怒りが頂点に達する時!誠は第二形態へと変身を始める!次回「ところでフランちゃんがいないのはストーリー的にまだ出せないからですすみません」フランちゃんの戦闘力でスカウターがッ!!


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第六話 弾幕

おはようございます、誠です。

そうなのです、幻想入りは夢だったのです。

さて、今日も今日とて学校へと足を運びますかね。

・・・おっと、今日までの課題まだじゃんか、仕方ない帰って寝よう。

 

誠「と言う夢を見たんだ」

 

朝起きて紅魔館のベットの上だったから頬を抓って伸ばしてみたら夢じゃない事が判明した。

つまり今紅魔館に居るのは夢ではなかったらしい。

これは困った、学校に行く必要が無くなったのはいいが家族が心配して・・・

俺の家族に俺の事心配するような奴いなかったわ、あー悲しいわー辛いわー。

ん?廊下からコツ、コツ、と音がする。妖精はまず歩かないし美鈴は門番、レミリアとパチュリーはいつもの場所にいるだろうからこの足音は・・・咲夜さんか。

待てよ、もしかして咲夜様ではなくレミリアが直々に起こしに来てくれて暇だから付き合え的なノリでどこかへと連れて行かれる・・・的なシチュエーションを妄想する俺はやはり心が醜いのだろうかいや醜いのであろう、だから俺は友達と言える奴も少なく彼女なんて夢のまた夢なんだろうなうん。

 

レ「誠ー!起きたー?」

 

勢いよく開かれた扉の方を見ると、先程の妄想が見せている幻覚なのではないかと思える程に妄想と同じくレミリアが立っていた。

こ、これはアレですねギガロマニアックス的なアレですねふひひ!

いやいやそこまで俺は二次元大好きなオタクじゃな・・・いと思う。

 

レ「起きてたの?じゃあ顔洗って食事よ!先に行って待ってるから!」

 

じゃ、あとでね!っと小さく手を振り部屋を出て行ったレミリア。

・・・ですよね!食事ですよね!そんな朝っぱらから何を考えているんだ俺は!

さてと、とりあえず屋敷の見取り図と時計にしか使えないケータイ、後は何もいらんか。

よし行くとしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

顔を洗っている間に気付いた、俺は中学生なのに昨日酒を飲んだらしいが二日酔いってのにはなってないんだな。

確かに両親は酒が強かったらしいから不思議ではないのか?いや中学生なのに酒が強いとかあるのか?うむむ・・・

まあこの際そんな事は良しとしよう、考えるのも面倒になってきた。

身支度を済ませてダイニングルームへと向かう、途中忙しそうに働いている妖精メイド達とすれ違ったが特に何も話す事がないので、と言うよりも話せないのでそのまま見送った。

妖精メイドに働き方を教えた咲夜さん凄いなと思うよ、身振り手振りとか見本を見せて教えたのだろうか?ちょっと想像したら可愛かった、萌えた。

そうこう考えていたら到着しましたダイニングルーム、扉を開くと昨日のパーティなど無かったように片付けられている、どこまで完璧なんだメイド長・・・

昨日と同じ席に腰を下ろす、それと食事が目の前に現れた、いきなり現れると流石にビックリする。

 

誠「頂きます」

 

手を合わせていつものように頂きますをしてから食事に手を付ける、今日の朝食のメニューは・・・

・・・な、納豆・・・だと・・・!?

幻想卿に来て納豆が食えるとは思わなんだ、納豆は好きな方なのでありがたく食させて貰います。

 

レ「・・・そういえば」

 

食事を始めて数分くらい経った時に突然レミリアが思い付いたように話しかけてきた。

 

レ「誠は弾幕ごっこのルール知ってる?」

 

弾幕ごっこ、もといスペルカードを使用した弾幕決闘ルールとは、簡単に言うとシューティングバトルである。ゲームでは自分の使用するキャラクターに相手が放った弾幕を当てないようにしながら相手の体力を削る勝負、ここまではただのシューティングゲームだがここにスペルカードと言うお札を使用したルールが追加された勝負が弾幕ごっこである。

スペルカードは自分の得意技を書き記したお札であり、自分の得意技を放つ時に相手へカードを使うと宣言、そして自分の得意技を放っていいと言うルールだ。

ざっくりと説明をするとこんな感じだが実際はもう少し細かい取り決めがあるらしい、まあそこまで守る奴も少ないのでルールを完全に把握する必要はない。

 

誠「ええ、大体は把握しています」

 

そう答えるとレミリアは自分の懐から白紙のお札を取り出した。

 

レ「これがスペルカード、後で使い方も教えるから」

 

誠「ありがとうございます」

 

スペルカード、通称スペカを10枚貰った、はっきり言って見た感じただの紙だな。

 

レ「ところで誠、納豆は好き?」

 

誠「好きな方ですね、一週間に一回くらいは食べたいです」

 

普通の納豆もいいけどネギとかオクラ入りの納豆も美味しいよね!異論は認める。

 

レ「納豆は美味しいわよね!私の朝食は週に三回確実に納豆なの!」

 

誠「週三回とはお嬢様は納豆が大好きなんですねぇ・・・」

 

レ「美味しいじゃない納豆!」

 

誠「まあ美味しいのは認めますけど流石に週三回はちょっと・・・」

 

レ「え~いいじゃない納豆」

 

そこまで納豆好きなのかレミリア・・・

 

誠「そういえばパチュリーさんや美鈴さんはいらしてませんね」

 

レ「パチュリーは昨日のアレでダウンしてるわ。

  美鈴は朝早くから門番の仕事をしているのよ。」

 

誠「仕事してますね美鈴さん、居眠りはどうかと思いますが」

 

レ「居眠りさえなければ完璧なのよねぇ・・・」

 

誠「私もそう思いますね」

 

 

 

 

 

紅魔館前、門。

 

紅「くしゅんっ!・・・うぅ・・・

  誰かが私の噂でもしているんでしょうか・・・うぅ・・・」

 

 

 

 

食事が終わり、レミリアに紅魔館の中心部にあるホールへと連れて行かれた。多分スペカの使い方の説明とかその他についてだろう。

 

レ「スペルカードの書き方は簡単、覚えさせたい技をカード宣言した後にやれば

  勝手に覚えてくれるの。さあやってみなさい」

 

いきなりそんな事言われても困るのですがねぇ、と顔で訴えたら少し時間をあげるからその間に考えておきなさい!との申し上げでした。

どうするか、相手が被弾しそうで尚且つ美しさを持たせるのが良いスペカを作るコツらしい。

そう言われてもねぇ・・・

とりあえずお試しとして数枚使ってみたが全然ダメなスペカになったので作り直す事にするか・・・

 

レ「まーだー?」

 

カリスマのオンオフが激しいですねレミリアお嬢様。

・・・!そうだ。

 

誠「お嬢様のスペルカードを手本として見せて下さいませんか?」

 

レ「いいわよ!」

 

やる気満々でキリっとした顔になり立ちあがったレミリアは懐から高々とスペルカードを宣言した。

 

レ「冥符『紅色の冥界』!!」

 

わざわざご丁寧にスペカ名まで叫んでくれました。

 

レ「どう?これが私のスペルカード!」

 

ゲームだと米が飛び交ってる感じだったのに実際目の当たりにすると結構避けにくそうな弾幕でした。

因みにこのスペカは最初に二発セットの弾とそれに合わせて飛ぶ装飾弾、それを撃ち尽くすと交差しながら飛んでくる弾幕を放つと言うなんとも避けるのが面倒な弾幕である。

 

レ「そして次はこれ!天罰『スターオブダビデ』!」

 

またもスペカを宣言したレミリアはレーザーのような弾で相手の逃げ場を無くしつつ、レーザーを曲げるために使う大弾から大き目の弾を撃つと言うスペカを放った、これは避けるのが簡単だったりする。

ゲーム画面は2Dだが、実際の戦闘は3Dで行われる。つまりこう言う結界系の弾幕は余程弾を張らないと無理なのだ、幾ら張っても間を潜られたら意味がない。

 

レ「さあ最後はこれよ!呪詛『ブラド・ツェペシュの呪い』!」

 

大盤振る舞いですねレミリアお嬢様、そんなお嬢様かわいいです。

このスペカはナイフを放ちナイフが通った道に弾幕がセットされ、時間が経つと弾幕が動き出すと言うスペカ。問題なのはナイフが一本では泣く複数であり、しかも投げる方向を毎度変える所であろう。ナイフからセットされる弾幕に翻弄されて被弾した人は多いだろう、俺もその一人だ。

 

レ「こんなところね、どう?参考になったかしら?」

 

渾身のドヤ顔を見せるお嬢様、すみませんでしたゲーム中にお嬢様の弾幕をぬるぬると避けてすみませんでした。

 

誠「参考になりました、ありがとうございます」

 

てな訳で考えていきますか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり弾幕は数だな、偉い人だってこう言ったしさ。

 

『数撃ちゃ当たる』・・・てな。

 

そんなこんなでスペカが出来ました、その中の一枚がこれ。

 

誤射『射線上に入るなって以下略』

このスペカはまず相手に向かって直線に進む弾とそれ以外に俺の四方八方に大き目の弾を放つ、その弾は当然相手が回避してくるだろうから回避を始めた時に放った弾を爆発させる。すると中で圧縮されていた弾がばら撒かれて被弾すると言う弾幕である、こんな感じの弾幕あるかもしれないけど俺の発想じゃこんな感じのしか出ない罠。

どう見ても初見殺しの弾幕だな・・・

 

因みに元ネタはPSPで好評発売中のGOD EATER BURSTに登場するキャラクターのセリフ。

 

さて、とりあえずスペカが8枚出来た、これを使ってレミリアとでも練習試合をするべきか否か・・・

やはり試しておくべきだろうけど俺はこれ考えるので疲れたから後日に回すか、俺なまけもの乙。

 

レ「何枚出来たの?」

 

レミリアが後ろからひょっこりと顔を出してきた、近いですお嬢さま顔が近いです。

この仕草を見ると本気で年齢を疑いたくなる。

 

誠「一応八枚できました、内容はネタとしか見えないスペカから

  戦闘向けのスペカまで様々なスペカを作成しました」

 

レ「ネタとしか見えないスペカってのが気になるわね」

 

誠「明日見れますよ、今日は疲れたので終わりにします」

 

レ「そうね、今日はこのくらいにしておこうかしら」

 

手を上に振り上げたレミリアは大きく伸びをし、ふわりと地から足を浮かせた。

 

レ「いい時間ね、私は夕食には少し早いけどダイニングルームに行くわ」

 

誠「私はもう少ししてから行きます、能力で気になった事が出来たので」

 

レ「わかったわ、倒れない程度にしなさいよ~」

 

そう言うとレミリアはホールを出てダイニングルームへと向かって行った。

さて、能力について気になった事は二つ。

一つは食事も出せるのか、二つ目は架空の物も出せるのか。

ここをはっきりさせておこう、それによって戦闘が楽になったりするだろうからな。

 

意識を集中させ想像する、とりあえずラーメンが食べたいのでラーメンを想像していく。

光る粒子が俺の目の前に集まり始め、光が消えた場所には暖かいラーメンが姿を現す。

こ、これは・・・!俺の大好きな醤油ラーメン!しかもネギ大盛りに大き目のチャーシューとメンマがトッピングされている!そして箸で麺を触ると少し固めの麺である事もわかる・・・!

これは俺が理想として願っていたラーメンではないか・・・この能力の便利さがまたもや証明されてしまった。

ただ気になる点は・・・香りがないのだ、完全に無臭である。

麺を箸で器用に挟むと、そのまま口へと麺を運ぶ。

歯ごたえは良し、だが味がしない。

・・・食べ物は味がなくなってしまうのか、この俺の能力は料理には向かないようだな。

料理の腕を鍛えれば成長したりするのだろうか?今度咲夜さんに料理を教えて貰おうか。

 

さて第二の課題、とりあえず簡単な物を出してみよう。

・・・そうだな、タケコプタ―とかどうだろう。シンプルで簡単だし確認もボタン一つで分かるからな。

タケコプタ―を創り出し、それを頭にセットして起動スイッチを押す。

すると。

キュイーンと言う歯医者などでよく聞くあの音が聞こえ始め、プロペラが高速で回転を始めた。

体にかかっていた重力が取れていくのが感じ取れる、足は地上から離れ空へと舞い上がる。

まさかの実験大成功、この能力は架空の物でも理解さえあれば出来てしまうらしい、便利な能力で凄く助かるな。

さてと、実験は終わったしそろそろ時間もいい頃合いだ、ダイニングで飯食うか~・

 

俺は足早にダイニングルームへと歩を進めた。




書いている間にPCが謎のクラッシュを起こし、書いた3000文字近くが消えた。
鬱だもうだめぽ・・・

と意気消沈して次の日書きなおそうとしたらなんと残っていました。
ブラウザのおかげかハーメルン様のおかげかとにかく一から書き直しせずに済みました。
さっすがハーメルン様!俺達に出来ない事を平然と(ry

では恒例のアレです。





次回予告
またも新しい朝を幻想卿で迎えた誠は顔を洗いに洗面所へと向かう、そこで落ちていた石鹸に足を滑らせて後頭部を強打、意識が薄れていき気が付くとそこには見知らぬ天井があった。こ、これはあれですねプラグスーツ着てエヴァ初号機とかに乗れるんですね分かります!一人で舞いあがる誠は起き上がって部屋を出ようとした、が扉が開かない!窓一つ無いこの部屋に閉じ込められたようだ。人の主人公フラグを邪魔する奴は誰であろうと許さない!さあこの部屋からの脱出ゲームの幕開けだっ!!次回「脱出ゲームの主人公がなぜに変な道具の扱いをするのだろうか、青鬼とか暖炉の火で館を燃やせば・・・」謎は深まるばかり!


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第七話 娯楽

今回短めです。


やあこんにちわ、俺は今紅魔館の空き部屋であった自分の部屋の模様替えをしている。

何と言ってもこの部屋、壁は全面が紅で目が痛くなるし、部屋は広いけど家具が全然無いし、挙句の果てに幻想卿なのでゲームもない。こんな部屋でこれからずっと住むのは俺にとっては拷問にしかならないので咲夜さんから許可を貰い部屋の模様替えをしていると言うわけだ。

 

とりあえず壁紙から始めよう、まずは普通の白っぽい壁紙を創って上から張り直す。

床は・・・フローリングにしておくか、畳は創るのが面倒だし。

・・・よし終わった、簡単に終わったとか言ってるけど実際これ終わるのに三時間近くかかっている。

まあ素人だから仕方ない、て言ってもレミリアや咲夜さんにも手伝って貰ったのが。

そんなこんなで壁紙と床は終わった、部屋の隅に設置されていたランプみたいなのはそのままにしておいた。

で、ここからが本題なのだが追加する家具についてだ。

タンスとか机は元々あったのを使用するからいいとして、足りない物は山ほどある。

この部屋に足りない物、それは!

PC、テレビ、ゲーム、クーラー、ヒーター、本棚、収納スペース!

そして何よりもォォォオオオオッ!!

電気が足りないッ!

とりあえず発電機を創る、なんで創れるのかって?そりゃあ自宅に発電機があった環境で育った俺ですから。そのあと自宅にあったテレビと同じ42インチのテレビとテレビ台を創って部屋の角に設置、机の上には俺の使用していたPCと同じPCを創って設置しておく。

クーラーは・・・無理だな、諦めよう。

ヒーターはまだ暖かい季節だし創らないでいいか。本棚は・・・まだいらないか。

あとは収納スペースとして押入れが欲しい所だが壁に穴は開けられないし床は地下室があるため掘る事が出来ない。

・・・隣の部屋も借りるか、幸い空き部屋だし。

 

誠「・・・さてっと」

 

ここからが本番だ、ここまでは生活出来るように模様替えをしただけだがここからは違う。

これから創るのはそう、俺が愛用していたゲーム機達だ!

PS3、3DS、VITAなどの最新機種からファミコン、ドリキャス、メガドライブなどの昔懐かしのゲーム達!これらを創って最高のゲーム部屋にしてやる!イヤッホォォォォォゥッ!!

さあ作業を始めようか!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付いたら俺は夕食も取らずに自分の部屋のベッドで寝ていたようだ、ちなみに今は朝食の時間である。

レミリアに文字通り引きずられてダイニングルームで食事を取った俺は昨日の夕食時に何していたかをレミリアに聞いてみた。

大体こんな感じだったらしい。

 

 

レ「誠ー!夕食の時間ってうわ、何この部屋!」

 

誠「・・・」

 

レ「ありのままに今起こった事を話すわ、私は誠を夕食の時間だから呼びに

  来たら部屋が変になっていて、その部屋で誠が床に顔を突っ伏した状態で

  気絶していた。

  な、何を言っているのか以下略」

 

誠「うぅ・・・」

 

レ「だ、大丈夫なの誠!?」

 

誠「お、お嬢様・・・

  ・・・あ、明日の朝食は大盛りでお願いしま・・・」

 

レ「ま、誠!?」

 

誠「・・・すー・・・すー・・・」

 

レ「寝た!?」

 

 

・・・全く覚えていない。

能力を何回も連続で使い続けると、疲れが溜まってぶっ倒れるようである。

これから気をつけねば、戦闘中倒れて頭打って死亡とかシャレにならん。

 

レ「以後気をつけなさいよ?」

 

誠「申し訳ございませんハイ・・・」

 

その後朝食を済ませてレミリアを部屋に呼んでみたら用事があるから午後に来るらしい。

んじゃそれまでに準備だ。ふふふ・・・

 

 

 

 

 

 

コンコン、扉を叩く音がした。

 

レ「誠ー!入るわよー!」

 

扉が開かれるとレミリアが部屋へ入って来た。

 

誠「ようこそ、私の部屋へ!」

 

俺はイスから立ち上がると一礼し、レミリアを部屋の中へ誘導した。

 

レ「昨日見ても思ったけど、随分と変な物が置いてあるわね」

 

誠「これがあるとないでは全然違うんですよ、さてお嬢様。

  ・・・ゲームをしましょう」

 

レ「ゲーム?」

 

誠「えぇ、私が勝ったらお嬢様に一つ私の命令を聞いて貰います。

  逆にお嬢様が勝ったら、わかりますね?」

 

レ「へぇ・・・誠が賭けをするなんて意外ね」

 

誠「私は結構賭けごと好きなんですよ、楽しいじゃありませんか」

 

レ「いいわ、それで勝負の種目は?」

 

誠「ズバリ、ぷよぷよなんてどうでしょう?」

 

レ「ぷよぷよ?」

 

ぷよぷよとは、株式会社コンパイル(2003年以降はSEGA)が発売しているパズルゲームの事である。

ルールは簡単、4つの同じ色をしたスライム型のブロック「ぷよ」を繋げて消していく。

パズルゲームの中でも定番な落ち物パズルゲームであるぷよぷよはゲーム内に重力の概念があり、上から落ちてくる2つ1組のぷよを上手く並べて消す事がハイスコアのカギである。

 

誠「このゲームで勝負しましょう、簡単なのでお嬢様なら

  すぐにルールを理解するでしょう」

 

因みに使用するソフトはぷよぷよ7である。

 

レ「・・・この小さな箱みたいな物で勝負するの?」

 

誠「・・・忘れてた」

 

 

 

少年説明中・・・

 

 

 

レ「こんなので出来るのね・・・」

 

誠「科学は日々進歩していますからね」

 

レ「いいわ、ルールは大体把握したしそろそろ勝負といきましょう!」

 

誠「盛り上がって来ましたね!それではレッツ!」

 

誠・レ「ぷよ勝負っ!」

 

 

 

 

 

咲「お嬢様、お食事の準備が出来まし・・・」

 

レ「勝ったー!これで30勝ね!」

 

誠「26勝30敗・・・まだ撒き返せますよ!」

 

レ「何度やっても同じ事よ!私の勝利は揺るがないわ!」

 

誠「その勝利を揺るがせてあげましょう!レッツ!」

 

誠・レ「ぷよ勝「今日の夕食は抜きですね」すいませんでしたーッ!」

 

あやうく夕食が抜かれそうになったので夕食の後、またぷよぷよをしたが結果は42勝60敗となり俺の敗北となった。無念なり。

 

その後もレミリアはよく俺の部屋に顔を出すようになり、ゲームをして行くようになった。

大体俺の負けで決着が付くのは仕方がない事なのだ、レミリアの頭の回転が速すぎて凡人の俺では追いつけないのである。無念なり。




筋肉痛と疲労で死にそうです。
ぷよぷよは通が発売された頃から愛しています。

ちなみにレッツ!ぷよ勝負っ!は友人とやる時絶対に言っています。





次回予告
レミリアとのぷよ勝負に負けた誠はリベンジマッチとして新たなゲームでレミリアに挑戦状を叩きつけた!そのゲームとは人生ゲーム!好調に進んでいくレミリアに対し誠は全然進めずに借金地獄!「なぜ10しか出ないんですかお嬢様!」「私の能力を知らないのかしら?」こ、これがチート能力と解釈された運命を操る程度の能力なのか!?次回「そろそろ秋になっていきますね」一年で十月が一番好きです!


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第八話 異変

神様、私に書く時間を下さい。


誠「異変…ですか?」

 

レ「ええ、そうよ」

 

朝起きて顔洗って食事した後にレミリアから部屋に来いと言われたので行ってみた。

そしたらレミリアが異変を起こすと仰りましたですハイ。

 

誠「また急にですね…」

 

レ「そうでもないわ、前々から計画していたのよ」

 

誠「私が紅魔館に来る前からですか?」

 

レ「そうよ、計画を練っていた間に貴方が来たの」

 

誠「タイミングが良すぎですね私…」

 

レ「咲夜と話していたわ、計画が旨く事を運びそうね…と」

 

誠「それは私の力を期待しての事ですか?」

 

レ「勿論よ、期待しているわ」

 

正直に言えばこんなオタクの学生に何を期待しているんだと。

確かに能力は立派だがそれでもねぇ…

 

誠「ところで、どのような異変を起こすおつもりで?」

 

レ「説明が遅れたわね、まず吸血鬼の弱点と言えば何か分かるかしら?」

 

吸血鬼の弱点と言えば、銀製の杭と十字架と…

 

誠「太陽…ですか」

 

レ「そう、吸血鬼は太陽光に長時間晒されると灰になってしまうの」

 

レミリアも吸血鬼だからやっぱり灰になるわけか。

吸血鬼と言う人間を食す絶対の力を持つ者でも日光に触れたらジュワッ!となって終わり、力を持つ代わりのそれ相応のデメリットを背負っているんだな…

 

レ「私は吸血鬼だから外に出る事が出来ない、でも食物連鎖の下にいる

  人間は日光に怯えず平和な生活を送っている」

 

誠「力を持つ者の定めですね」

 

レ「そう、人間より遥かに上の力を持つ吸血鬼が日光に怯えて暮らす…

  これでは力なんて無いも同然よ」

 

確かに、宝の持ち腐れって言うレベルじゃねーぞ!

 

レ「そこで、私の力で日光を遮断し吸血鬼の“力”を幻想卿に

  見せつけてあげましょうと言うわけよ」

 

なるほど、力の有効活用ですか。

確かにそれなら弱点の大半は補ったも同然、吸血鬼大勝利だ。

 

レ「幻想卿の空を紅い霧で埋め尽くし、太陽光を遮る。

  名付けるなら“紅霧異変”ってところね」

 

紅霧異変…どっかで聞いた事が、って思い出したぞ。これ東方紅魔卿じゃないか。

え、って事は…俺って敵サイドにいるわけ!?

うわぁ…正義の腋巫女さん倒すのか…なんかやりづらいな…

 

誠「ち、ちなみに私の仕事はやっぱり…」

 

レ「ええ、霧が幻想卿を埋め尽くすまでの時間稼ぎと、向かってくる者の排除」

 

誠「そうですよね~」

 

よりにもよって戦闘要員じゃないですかーやだー!

戦闘は専門外なのですがねぇ、とか言って見物していたいです。

 

レ「ダメよ、しっかり働いて貰うわ」

 

ですよねー…

 

誠「それでは、私の持ち場はどこになるのでしょうか…」

 

レ「それなんだけど、場所はいい感じに埋まってるから貴方は遊撃手ね。

  館の中でもどこでもいいわ、パトロールしながら邪魔者は排除するの」

 

館の外に出てどっか隠れていようかな…

 

レ「そうそう、貴方の事だから絶対に無いとは思うけど…

  もしも、サボっていたりしたら…」

 

俺はごくっと唾を飲んだ。

 

誠「…し、したら?」

 

レ「…これから一生の食事抜きと即座に四方八方からナイフが飛んでくるわ」

 

誠「喜んで務めさせて頂きます!!」

 

レ「良かった、それじゃあ今夜から霧を出し始めるわ

  そうね…あの巫女なら二週間位したら動き始めそうだからそれまでは待機

  ゆっくり休んでおきなさいよ?」

 

あー…確かにすぐには動かないよな…あの巫女さん。

 

誠「分かりました、それまでお嬢様が進めていたゲームを進めておきますね」

 

レ「やめてっ!ストーリーが分からなくなっちゃうからっ!!」

 

誠「残念です」

 

レ「…さ、今日の夜から始めるのだからまだ時間はあるわ。

  一勝負いくわよっ!」

 

誠「返り討ちにして差し上げましょうっ!」

 

懐からゲーム機を取り出し電源を入れる、通信モードを選択しレミリアとの対戦の準備を整える。

 

誠「見せてあげましょう!夜な夜な特訓を繰り返した成果を!!」

 

レ「掛かって来なさい!私の連鎖の前では全てが無力であると言う事を

  思い知らせてあげるわ!!」

 

誠・レ「レッツ!ぷよ勝負っ!!」

 

その後俺はレミリアの圧倒的な連鎖の前に手も足も出ずに完敗した、悔しい。

…な、泣いてないですよお嬢様!

 

 

 

 

 

 

いつものように目を覚ますと顔を洗いダイニングルームへと向かう、昨日は久しぶりに夜更かしもせず普通に寝たので今日は気分が良い。

ダイニングに着くとレミリアがいない事に気が付いた、やっぱり霧出すのが大変なので疲れてまだ寝てるのか、それとも未だに霧を出し続けているのだろうか。

まあ食事を済ませてから部屋でも見に行って見れば分かる事だ。

席に座るといつものように食事が現れなかった、いつもなら咲夜さんが朝食を出してくれる筈なのだが…

ふと隣を見るといつの間に現れたのか、咲夜さんが立っていた。

 

咲「珍しい事もあるものね、こんな時間に貴方が起きるなんて」

 

こんな時間?時計も見ないでここまで来たから今の時間が分からない。

 

誠「もしかして、起きるのが早すぎました?」

 

咲「そうね、普通は八時に朝食を取るのに今日は五時に起きるなんてね。

  貴方らしくないわ、いつもならこの時間は夢の中でしょう?」

 

誠「恥ずかしながらそうですね、久しぶりです」

 

咲「折角早起きしたんだから紅茶でも飲んでランニングでもしてきたら?」

 

誠「遠慮しておきます、朝から運動はやる気が起きませんよ」

 

咲「そう、残念」

 

何が残念なのかを聞こうと口を開いたが咲夜さんはその時もうこの場にいなかった。

代わりに現れたのは少し甘い香りの紅茶だけだった。

 

…あとで美鈴に稽古でもつけて貰おうかな。




今回も短めですみません、しかも一週間ギリっギリで本当に申し訳ありません。







次回予告
霧を出し始めてから一カ月が経過した、幻想卿は霧で覆われてレミリアも満足の天気になった幻想卿に救世主が現れる。ついに来たな巫女と白黒…ってアレ?そこに現れたのは白き侍、自分の体ほどの刀を携え現れた侍は言った、悪を滅しに来たと。紅魔館組総動員で戦うが白き侍は底が知れない強さで紅魔館組を圧倒、紅魔館組は絶体絶命の危機に直面する。「む、無理だわ…こんな変な仮面を被った得体の知れない奴がここまで強いなんて…」「時を止めても時を斬られるなんて」「こ、この人の“気”はどこまであるのですか…」怯えきったレミリア達を斬り捨てようとしたその時、閃光が走るッ!「先に言っておくが、俺はパーフェクトだぜ?」斬撃が飛び鍔迫り合う二人、この戦いはKOするまで終わらない。次回「UNDER NIGHT IN-BIRTHが稼働したよ!ゲーセンへダッシュだッ!!」戦いは始まったばかり。


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第九話 始動

月曜更新が多くなってきましたね…


誠「こちらスネーク、博麗神社に潜入した」

 

あれから半月が経過したので、そろそろ動く頃だと思うので先手を打つ事にしたのだ。

どうも異変解決のために働く巫女さんは面倒くさがりだそうですぐには動かないのだそうだ。

…まあ知ってるけど。

 

博麗神社の鳥居を通らずに周りの森林から神社を伺う、縁側に誰かいるのが見える。

あれが博麗 霊夢(ハクレイ レイム)、幻想卿博麗神社の巫女にして異変解決のスペシャリスト。

生で見ると綺麗に紅白な服を着ているのな、腋丸出しとか…良い。

ここで麻酔銃でも撃てば済むか、流石にそれはあっけなさすぎるか。

いや待て、獅子は兎を狩るにも全力を尽くすと言うしな、全力前回フルパワーで潰すか?

あ、全力で潰しちゃダメなんだっけ?あくまで弾幕で勝たないとババ…大賢者とかお偉いさんにぶっ潰されるとか言ってたっけ。

 

おっと、巫女さんは賽銭を確認しに動いたようだな、場所を変えよう。

巫女さんは賽銭箱を覗き込むとがっくりとうなだれ、肩を落とした。

…まあね、賽銭なんて一円もあるわけないよね。この霧のせいで普通の人間は長時間外にいれないらしいし。

巫女さんは空を見上げて霧を睨むとそのまま高速で紅魔館の方へと飛んでいく…って速ッ!

人間が出して言いスピードじゃないぞそれッ!!

あ~あ~…一瞬で米粒みたいに小さくなっちゃったよ。

 

…俺なんも出来てないじゃん!急いで追わないとっ!

 

 

 

 

 

 

誠「こちらスネーク、霧の湖へと潜入した」

 

霧の湖、紅魔館の前に広がるでかい湖である、とにかくでかい。

ここには妖精が住んでおり、通りかかる者にいたずらをするとか。

そして今、俺の目の前では弾幕ごっこが行われようとしております!

東に立つは妖精代表、頭はダメでも強さは本物! 氷の妖精、チルノ!

西に立つは魔法使い代表、霊夢に並ぶ異変解決のスペシャリストにして隠れた努力家! 白黒魔法使い、霧雨魔理沙(キリサメ マリサ)!

ここで選手の紹介です、東のチルノ選手は霧の湖にに住まう妖精であり、冷気を操る程度の能力を妖精であるのにも関わらず所持していると言う天才っぷり! ですが妖精なので記憶力、学力、思考回路などがちょっとダメなのが玉に瑕(たまにきず)。今日も近くを通りかかった魔理沙にいたずらをふっかけているようです!

次に西の魔理沙選手は魔法の森にお住まいの魔法使い、立ちはだかる敵は自慢のマスタースパークでピチュらせる! 魔法を使う程度の能力を持った人間でありながらの魔法使いであり、派手な魔法のためならどんな努力も惜しまない隠れた努力家! 霊夢が動きだしたため異変解決に乗り出したようです!

 

両者短い会話を済ませて…今! 弾幕ごっこが行われました!

 

って…俺実況している場合じゃなかった、霊夢のあとを追わないと…。

 

 

 

 

 

 

誠「こちらスネーク、紅魔館門へ潜入した」

 

さて、ここでは安心と信頼のサボリ魔である美鈴が門を守っている筈…。

…おおっと、こんな所に弾幕の跡が…美鈴が速くも突破されたようだな。

 

誠「美鈴がやられたようだな…」

 

誠「だが美鈴は紅魔館組の中で最弱…」

 

誠「巫女如きにやられるとは妖怪の面汚しよ…」

 

自演乙。

 

さってと、もう中に侵入されたようだからそろそろ戦闘しておかないとな。

 

 

 

 

 

 

 

誠「…お、いたいた」

 

どうやら咲夜さんが極限まで広くした紅魔館の中で迷っていたようだな。

さ~て御対面。

 

誠「すみません! た、助けてください!」

 

博「ん? 貴方…人間?」

 

誠「いやいや! どこからどう見ても人間じゃないですか!」

 

博「人間ならこんな所にはいないわよ」

 

誠「実は森で迷っていたら館を見つけたので入って見たら想像以上に広く…

  簡単に言えば迷ってしまったんです!」

 

博「嘘おっしゃい、どう見ても迷ってましたって姿してないでしょう」

 

誠「ですよね~、もう少しボロボロの服で話しかければ良かったのですかね」

 

博「ボロボロの服でも変質者だけどね」

 

誠「手厳しいですね、次は里の人みたいな恰好しないといけませんね」

 

博「次があったらそうしなさい、次があったら」

 

誠「大事な事なので二回言いました的な」

 

博「ええ、大事よ。異変を起こしてただで済むわけないでしょう」

 

誠「お嬢様に伝えておきます」

 

博「そのお嬢様に用があるんだけど?」

 

誠「お嬢様は今忙しいのでまた来月に…」

 

博「無理」

 

誠「分かりましたよ、それでは来年に…」

 

博「伸ばしてんじゃないわよ!」

 

誠「いいじゃないですか、時間稼ぎが命令なので」

 

博「こっちは時間がないの、さっさと吐いて貰うわよ!」

 

誠「私が吐く時は異物を食した時と気持ちが悪い時だけです!」

 

博「それじゃあこの弾幕でも食らいなさい!」

 

霊夢から距離を取るために後ろへ飛ぶ、さっきまで立っていた所にいくつもの弾幕が降り注ぎ床を抉った。

霊夢がふわりと浮きあがるとそのまま弾幕をこちらへと飛ばしてくる、幸いにもこの場所は高さから横幅まで申し分ない広さなため、横へと飛びそのまま空へと舞い上がる。

霊夢達が来ないのでその間に飛ぶ練習をしたのが功を奏したのか、俺の体は地面を離れて自由に飛べるようになった。

弾幕を避けながら霊夢へ弾幕を放ち、牽制を繰り返す。

 

博「さっさとスペカ使いなさいよ!」

 

誠「時間稼ぎですのでお構いなく!」

 

霊夢の怒号が飛んでくるが軽く受け流すと痺れを切らしたのか一枚目のスペルカードを掲げた。

 

博「夢符『二重結界』!」

 

霊夢の周りを二重に張った立方体の結界が包み込む、霊夢が内側の結界に弾幕を放つと二枚目の結界から内側へと放たれ、一枚目の結界に当たってからようやく俺の方へ飛んできた。

なんとも面倒な結界、色んな意味で面倒な結界だ。

でも俺からの弾幕は普通に通るようだ、これで拡散されて弾幕消えたら洒落にならん。

 

誠「そんな結界じゃ俺を惑わせらんないぜ!」

 

四方八方にお札や勾玉のような弾幕が飛び交う。

弾幕自体は全然大した事ないがこの結界の面倒な所は霊夢が見え辛い所だ。

結界の中を飛び交う弾幕のせいで霊夢が見え辛く、狙いが定まらない。

まあ狙いが定まらなくても…数撃ちゃ当たる作戦でいけば問題ない。

 

スペカの時間が切れて結界が消えた、すかさず俺はスペカを宣言する。

 

誠「創符『お髭と地球と核と』」

 

一発の弾を放りこむ、俺と霊夢の丁度真ん中あたりで破裂した弾は細かいレーザーとなって霊夢へ襲いかかる。

ちなみにこのスペカ、破裂する時に一瞬フラッシュするため、非常に目に優しくない。

 

博「くっ!」

 

フラッシュで目を閉じながらもレーザーを回避し、そのまま弾幕をこちらへと放つ。

弾幕を避けてまた弾を放り込む。

フラッシュで一瞬真昼のように明るくなる、放たれたレーザーを回避し、また弾幕を放ってくる。

…どうやら気付いたようだ、このスペカの弱点に。

実はこのスペカは安置がある、安置とはある場所にいれば絶対に被弾しないと言うシューティングゲームでは夢のような場所である。

さてこのスペカ、実はレーザーがホーミング、もとい追尾をしないので相手が移動しない、または移動中での被弾を想定している。

放りこむ場所はいつも同じ場所なのでレーザーが通らない場所で陣取れば被弾しないのだ。

 

だが、甘い。

 

それはあくまでも最初の話しだ、このスペカは放り込まれる毎にレーザーの数が増えるようにしてある、つまり安置だと思って陣取ってたらハートを撃ち抜かれたでござるの巻ってのもあり得る。

霊夢もそれに気付いたのかまた新たな安置を探しているようだった。

 

誠「さあ、どこまで持つかな?」

 

時間切れまであと二回弾を放りこめる、その間にレーザーに触れたら即アウト。

これは流石の霊夢であっても苦戦して…。

 

…は?れ、霊夢が目を閉じたまんまだ。

目を閉じたまんま回避とかちょっと洒落にならんしょこれは…。

しかも全てのレーザーを見切っているようで、レーザーは掠りもしない。

 

全ての弾を放り込み終えて時間切れとなった、レーザーは一発も当たらず、まして掠りもしないと言う化け物っぷり。

 

博麗の巫女…恐ろしい子…!

 

誠「な、なかなかやるねぇ…」

 

博「それはどうも」

 

誠「だが、まだ時間稼ぎは終わってないんでね。

  幻想卿を霧で埋め尽くすには時間が足りなさすぎる」

 

博「ならいっそ止めちゃいなさいな」

 

誠「だが断る」

 

スペルカードを右手に持ち、高々とスペカを宣言する。

 

誠「創符『感動のばよえ~ん』!」

 

霊夢や周りの壁に向けてサッカーボールくらいの弾幕を飛ばす、速さは少し遅めなので簡単に回避されてしまうが、この弾幕の真髄はそこではない。

放たれた弾幕が壁を反射する、同じように反射した弾幕がぶつかり合った。

そして破裂して消えていく、霊夢は消えた弾幕を見るが分裂したわけでもない事を確認し、他の弾幕の回避に徹しようとした。

その時、霊夢の横を高速で何かが落ちてきた。

それは地面に着弾するとそのまま反射せずに残っていた、また先程のように弾幕が衝突し合い、消えていくとまた頭上から弾幕が落ちてくる。

仕組みが分からないとこの弾幕は回避し難い、だからこそこのスペカを創ったのだ。

この弾幕は始めに放った弾幕が弾幕同士でぶつかり合うと消滅し、天井からランダムで弾幕が降り注ぐのだ。

 

誠「さあ! 俺の大連鎖に対抗出来るかな!?」

 

弾幕をバラ撒きながら相手の動きを封じ、頭上から落ちてくる弾幕で勝負を決める。

壁の反射などを計算しないといけないのが辛い所だが、練習はかなりしているので問題ない。

 

誠「まだまだ! 俺のフィーバーは終わらないッ!」

 

このスペカは時間が経つにつれて落ちてくる弾幕が増えるようになっている。

つまり時間切れを狙うのは得策ではない。

だが下手に狙うために動くと頭上からくる弾幕に当たる。

そうでなくても俺が放つ弾幕がそこらじゅうを飛び回っているので下手に動くとアウト。

この弾幕を抜け出す術は俺をその場から狙い撃つしかない。

が、俺もそんな簡単に被弾はしないので最終的には意味がない。

この勝負は貰ったッ!

 

博「霊符『夢想封印』!」

 

しまったその考えはなかった!

霊夢が宣言したスペカによって俺の弾幕は次々に消されていった。

ボムスペカは相手の弾幕を一時的に打ち消すスペカであり、しかも本体も狙うと言うお手軽仕様。

だが制限時間が非常に短いというデメリットもある。

ボムスペカを想定していなかった俺は回避へと移り、俺のスペカは時間切れとなった。

これは酷い…。

夢想封印によって放たれた弾幕は全て消え去り、先程まで飛び交っていた弾幕は全て消えてしまっていた。

避けながらも牽制の弾幕を放つが夢想封印に掻き消される、時間切れまで回避に徹するしかないな。

ん? 霊夢の姿が見当たらないな。

 

博「そこよっ!」

 

弾幕の影から飛び出した霊夢が夢想封印を大量に放ってきた。

夢想封印の間を通るように避ける、霊夢は「かかった」とばかりに間を詰めるように夢想封印を放つ。

 

誠「創符「スター状態」!」

 

星型の弾幕を放ち、俺の体が七色に光りだした。

うん、いつ見てもキモい。

このスペカは無敵状態になり、壁を反射して跳ねまわる星形の弾幕を放つ技だ。

一応ボムとして創ったので、時間は非常に短いのが欠点である。

 

霊夢の夢想封印が全て消えた、同時に夢想封印は時間切れとなった。

 

博「くっ!」

 

霊夢は回避に移るが俺のスペカも時間切れとなり、この場が一瞬静まりかえる。

…そろそろ時間稼ぎもいい頃合いだろう、一旦引き揚げるかな。

 

博「あんた、なかなかやるじゃない」

 

誠「お褒めに与り光栄です。

  それでは私はそろそろ引き上げますね!」

 

笑顔で言うとその場に結界を張る、後戻りをさせないためと追ってこないようにだ。

「それでは!」と言うと手を振りその場から離れる。

 

博「ちょ、ちょっと! まだ聞きたい事が山ほどあるのよ!?」

 

誠「メイド長に聞いて下さい、この先少し行った所にいますので!」

 

そう言い残すと全速力でその場から飛んで行った。

 

博「…な、なんなのよアイツ…

  まあいいわ、メイド長倒せばわかる事ね」

 

踵を返し、紅魔館の奥へと進む霊夢。

…さて、霊夢の時間稼ぎは終わった事だし魔理沙の所へでも行くかな。

魔理沙は今どこにいるのか…。

今の時間から考えて図書館でパチュリーとでも弾幕やってかな?

さ、行くか。




書き始め→18:00
書き終わり→06:00

書き途中で寝てしまったのは確定的に明らか。







次回予告
紅魔館の図書館へと向かう途中、謎の生き物を発見する。ピンク色のボールのような姿をしたその生き物は、通りかかった紅魔館の妖精メイドを捕食、姿を妖精へと変化させる。そ、そんな…この生き物はまさかニンテ○ドーの…! 食事を終えたそいつは次の獲物へと狙いを定める…って俺!? いやいや俺食っても美味しくないし! ちょ、ちょ! や、やめっ!アッー!!次回「星のカービィは64が一番好きです」人のコピーは蜜の味。


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第十話 力

突然だが、俺の得意な授業科目はない。

いや、全てが下手糞なのび太君体質なわけではない。

際立って成績のいい科目がないのだ。

つまり、勉強も出来て運動も出来ちゃう人間なのだ。

…嘘、ちょっと理数関係が危うい。

 

さて、そんな俺は今どこで何をしているかと言うと…。

 

 

未だ廊下を疾走していますハイ。

 

だって廊下がクソ長いんだもん! 仕方ないでしょっ!

咲夜さんが本気だしたから大図書館までの道のりが五倍以上になってしまったのだ。

これはもう無理、疲れるったらありゃしな…大図書館着いたわ。

ま、まあ俺の脚の速さを舐めて貰っちゃ困るね!

アレだ、本当に強い奴は強さを口で説明しないって言うしな。

口で説明するくらいなら俺は牙を剥くな。

俺100mで6秒とか普通に出すし。

 

さて、中の様子を見よう。

俺は扉に手をかけて大図書館の扉を静かに開いた。

その時。

星の形をした弾幕が流星のように降り注いだ。

扉を閉じ、カカッとバックステッポして距離を取る。

流星が扉に衝突し、大きな震動と音を立てた。

扉は壊れもせずに佇むが、黒い影が扉を勢いよく開き、星型の弾幕を放った。

弾幕をよけながら隙を見て弾幕を放つ、黒い影の弾幕と俺の弾幕が激突し、爆発した。

黒煙が辺りを包み込む、視界が黒煙によって断たれてしまった。

だが影はそんな事はお構い無しとばかりに辺りに弾幕を放っていく。

弾幕を回避していると黒煙が晴れ、影は姿を現した。

その姿は、まさに魔女のようだった。

 

?「誰だあんた?」

 

箒に跨り、空を飛んでいる魔女が問う。

やっぱりもう来ていたか…。

 

誠「人間ですが?」

 

そう返すと魔女は箒の上で立ち上がった。

くいっ、と帽子を上げた魔女…魔理沙は箒に乗ったまま地面へと降りてきた。

箒を手で持ち、訝しげにこちらを見る。

 

魔「人間には見えないな」

 

お前も言うか…。

てかお前が言うな。

 

誠「そう言う貴方は魔女ですか?人間には見えませんし」

 

魔「そうだな、人間と言う名の魔法使いだぜ」

 

誠「それは人間に見えるが実は魔法使いと言う意味では?」

 

魔「じゃあ魔法使いと言う名の人間か?」

 

誠「そうですね、まあ本当に人間であればの話しですが」

 

魔「私は人間よ、オホホ」

 

誠「………」

 

魔「急に黙るなって、そんなに人間には見えないか?」

 

誠「ええ、見えません」

 

魔「まあ見えなくてもいいか、それよりあんたは敵か?」

 

誠「人間です」

 

魔「人間は争い合うものだから敵か」

 

誠「では魔女は人間に害を及ぼす裁きの対象であるため、敵ですね」

 

魔「ここには法律も拷問具もないぜ?」

 

誠「いいえ、ルール(弾幕ごっこ)ならあるでしょう?」

 

魔「そうだな、いくぜ!」

 

颯爽と箒に跨り、宙へと飛んだ魔理沙を追い掛けるように飛び上がる。

飛び交う弾幕をよけながら魔理沙へと弾幕を飛ばしていく。

だが魔理沙も素早く箒で旋回し、弾幕をかわしていく。

素早い動きで弾幕をかわし、敵を翻弄するタイプの戦闘方法か、それなら。

 

誠「創符『吸引力が増加するただ一つの掃除機』」

 

変な名前のスペカだがそこらへんは御了承ください。

闇のように暗い弾幕を五つ程魔理沙の方へ飛ばす、だが途中で弾幕は静止する。

ここからが本番、全ての弾幕がその五つの弾幕へと吸い寄せられる。

簡単に言うとこの弾幕は凄く小さなブラックホール、しかも弾幕以外は吸わない。

となれば魔理沙の弾幕も全て吸い寄せられ、こちらに届く事はない。

ならばとばかりに高密度の弾幕を放ったが、それら全てがブラックホールに吸い込まれてしまった。

ある程度弾幕を吸うと弾幕が小さく爆ぜた、そこにまた新しいブラックホールを設置する。

 

魔「それで私の弾幕が通らないと思ったか?」

 

ニヤっと笑った魔理沙は懐から八角形の物を取りだした。

 

魔「弾幕は密度がどうとか速さがどうとかじゃないぜ。

  恋符『マスタースパーク』」

 

スペルカードを宣言し、八角形の物…ミニ八卦炉を右手に持つ。

魔理沙は虹色に輝き始めた八卦炉をこちらへ向け、箒の上に立ち上がった。

 

魔「弾幕はパワーだぜ!」

 

刹那、八卦炉から放たれた巨大なレ―ザ―が俺を襲った。

咄嗟に回避をしたが間に合わなかったらしく、レーザーが俺の服を掠める。

レーザーを吸収したブラックホール達は全て爆ぜ、後にはレーザーの光だけが残った。

 

誠「…無茶苦茶ですね、そのパワー」

 

魔「無茶苦茶ぐらいが丁度いいのさ」

 

誠「ではそのパワー、私のパワーとどちらが上でしょうかね?」

 

魔「分かり切ってるだろ?」

 

誠「ええ、俺が上だって事がな!

  創符『はどうほう』!!」

 

両手を前へ突き出し、精神を集中させる。

漆黒の球体を創り、パワーを集める。

 

誠「来い、お前のパワーを闇に沈めてやろう!」

 

魔「面白いぜ! 魔砲『ファイナルスパーク』!!」

 

八卦炉が眩しい程の輝き始めた、八卦炉を俺の方へと構えた魔理沙に向き合うようにして立つ。

こちらのエネルギーが溜まったところで、あちらも準備が整ったようだ。

 

誠「さあ、沈めッ!!」

 

魔「いっけぇぇぇぇぇ!!」

 

眩き光を放つレーザーと、全てを飲み込む闇のレーザーが衝突した。

自身の力を極限まで引き出し、全身全霊の攻撃を撃ち合う。

レーザーはまるで絵具のように白と黒が、光と闇が溶け合い混ざり合うようにして色を変えた。

そして一瞬の静寂の後、凄まじい音を立てて爆発した。

鼓膜が破れるかと思う程の爆発音が辺りに轟き、衝撃が俺を襲った。

壁に背中から叩きつけられて息が詰まる、呼吸が出来なくなり心臓が止まったような錯覚を覚える。

目が眩む、視界がチカチカして前が見えない。

激痛が体を電流のように走り抜ける、骨は折れてないだろうけどこんなに痛いのは久しぶりだ。

視界が晴れてきた、前を見ると魔理沙がゆっくり起き上がろうとしていたが、足を怪我したのか立ち上がれないようだった。

足に力を入れ、壁に手をかけながらゆっくりと起き上がる。

 

魔「・・・やるな」

 

こちらを見ながら魔理沙が呟く。

 

誠「・・・貴女こそ」

 

賛辞の言葉を送り、深呼吸をする。

呼吸を整えるといくらか痛みが引いてきた、まだ痛みはあるが歩けない程ではない。

しっかりとした歩みで魔理沙の許へと歩み寄り、握手を求めるように手を差し伸べる。

 

誠「流石ですね、今更ですが私の名は葉隠 誠といいます。

  種族は人間、以後お見知り置きを」

 

魔理沙は一度俺の手と顔を往復するように見た。

俺の手を掴み立ちあがる。

 

魔「・・・霧雨 魔理沙、人間の魔法使いだぜ」

 

そう言うと魔理沙は俺の肩を借りながら箒に跨った。

箒が宙に浮き始める、魔理沙は大図書館の中へと入るとしばらくして大きい袋を背中に担いで出てきた。

ちょっと袋が破れていて、中に入っている物が本であると分かる。

・・・パチュリーさん、あれ程セキュリティは万全にしましょうと言っておいたのに。

まあ俺は止める程の余力などないので咎めはしないが。

 

魔「今回は足をやっちまったから帰る事にするぜ。

  あとは霊夢一人でも解決できそうだしな」

 

誠「お嬢様が倒せればですけどね」

 

魔「霊夢なら大丈夫だぜ、じゃあな!」

 

そう言うと魔理沙は袋を背負い直し、箒で飛んで行った。

・・・速いなぁ、霊夢に遅れを取らない程の速さはある。

と言うか霊夢より速いんじゃないかアレ・・・。

 

・・・さてと、魔理沙はリタイアして霊夢は時間稼ぎをしたし、これで仕事はこなしたな。

あとは、この異変の結末を見るだけだな。

 

俺はふわりと体を浮かし、レミリアのところへと向かう。

 

・・・お嬢様フルボッコにされていませんように。




実はテストが先週の金曜日にありましてですね。
それはもう・・・散々な結果でした。
・・・日本なんだから日本語だけ学べばいいじゃないですか。






次回予告
誠との弾幕ごっこにより足を怪我した魔理沙は、帰る途中に不思議なキノコを見つける。なんなんだこの赤と白い水玉模様をした目のあるキノコは・・・。とりあえず食してみようとキノコを口にした魔理沙の体が突然大きく!? こ、これはまさか伝説の配管工が食したらでかくなったり強くなったりするあの・・・!! かくしてスーパー魔理沙の起こした突風(呼吸)によって紅い霧が晴れて幻想卿は平和になったのであった! 次回「PS3がぶっ壊れたので正月に新型を買うが金がないのでバイト三昧なのはどこのどいつだぁ~い?・・・あたしだよ!」エンタの神様が大好きです!


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第十一話 終幕

私は気付いてしまいました、タイトルが漢字だけだと厨二臭い・・・。

そう言えば今月の十日が私の誕生日でしたが、誰一人祝って貰えず悲しいです。


幻想卿の空を覆う紅い霧は晴れることなく空を覆い続けている。

そんな空を見上げながら俺はレミリアの所へと向かっていた。

とっくに時刻は夜、いや深夜を迎えようとしている。

紅魔館の上空を覆う紅い霧も、夜の暗闇によって暗雲へ変わっていた。

 

誠「・・・この上か」

 

紅魔館の真上、この時間にも関わらず霧の合間から煌めく光が見えた。

月のような明るい光ではない、まして流れ星のような一瞬の光でもない。

光は霧が漂うに連れて、点滅を繰り返す。

俺は意を決し、紅魔館の上空へと飛び込んだ。

 

紅き霧を突き抜け、霧の上に全身を見せる。

最初に目に入ったのは、月。

ただの月ではない。

幻想卿を埋め尽くした霧よりも禍々しい、あるいは神々しくも見える・・・。

それは、深い紅を見に纏う月。

今まで見たどの月よりも美しく、どの月よりも優雅であり、どの月よりも狂気に満ちていた。

 

そこに影が映った。

 

誠「・・・いた」

 

大きさは人間の子供程度、背中には小さな羽があり、その姿は人間のものではない。

紅魔館の主であり、吸血鬼であるレミリア・スカーレット。

紅魔館で遊んだ時の容姿相応の可愛さは無く、その眼は獲物を狙う狼の様に鋭く輝いている。

そしてレミリアの視線の先に、人影が現れた。

赤と白で構成され、一目見ただけで印象に残るその服を身に纏っている。

博麗の巫女、博麗 霊夢だ。

 

誠「まだ始まっていなかったようだな」

 

霊夢はレミリアの姿を認識すると、口元を吊り上げた。

 

レ「来たわね」

 

レミリアが呟く。

 

博「あんたがお嬢様ね?」

 

ふぅ、と小さく溜め息をつくレミリア。

 

レ「やっぱり、人間って使えないわね」

 

博「あぁ、あの時間稼ぎ?」

 

レ「それと、メイド長も」

 

博「あの二人は人間だったのか・・・」

 

レ「あなた、殺人犯ね」

 

博「実質倒したのは一人。

  一人までなら大量殺人犯じゃないから大丈夫よ」

 

レ「・・・で?」

 

レミリアの後ろで輝く月のような深紅の瞳が霊夢を睨む。

 

博「そうそう、迷惑なの。あんたが」

 

普通の人間なら竦み上がる程の威圧感を纏う瞳に睨まれても、霊夢は特に怯える様子もない。

 

レ「短絡ね。しかも意味が分からない」

 

レミリアは肩を竦め、呆れた顔をした。

 

博「とにかく、ここから出ていってくれる?」

 

霊夢はレミリアを睨むが、レミリアも怯える事なく口を開く。

 

レ「ここは、私の城よ?」

 

小さな指で霊夢を指差した。

 

レ「出ていくのは貴女だわ」

 

博「この世から出てってほしいのよ」

 

胸の前で腕を組んだ霊夢は強い口調で言い放つ。

お互い静かに睨み合い、緊迫した空気のまま時間が流れる。

 

レ「・・・しょうがないわね」

 

静寂は唐突に破られた。

レミリアが弾幕を生成し、霊夢へと向ける。

 

レ「今、お腹いっぱいだけど・・・」

 

弾幕は霊夢へと放たれた。

だが霊夢は弾幕をするりとかわし、自分も弾幕を構えた。

 

博「護衛にあのメイドを雇っていたんでしょ?」

 

レミリアへと弾幕を連続で放つ。

次々に飛ぶ弾幕を前に、レミリアは冷静に弾幕を避ける。

 

博「そんな箱入りお嬢様なんて一撃よ!」

 

薄い正方形の形をした大きな弾幕をレミリアへと放つ。

レミリアはそれをすれ違うように回避、だがそれはレミリアの背後で旋回し、レミリアへと襲いかかった。

 

レ「・・・咲夜は優秀な掃除係」

 

そう呟いたレミリアは、まるで背後に目があるかのように弾幕を回避し、自分の弾幕を衝突させて撃墜した。

 

レ「おかげで首一つ落ちていないわ」

 

口元を小さく吊り上げると、また弾幕を放つ。

 

博「・・・あなたは強いの?」

 

そう言うと霊夢はその弾幕をいとも簡単に回避する。

 

レ「さあね。あんまり外に出して貰えないの」

 

少し目を閉じ、レミリアは深紅に輝く月を見た。

 

レ「私が日光に弱いから」

 

博「・・・なかなか出来るわね」

 

霊夢は弾幕を先程よりも多く生成し、レミリアを睨んだ。

月を見ていたレミリアは、まるで食べ物を見るように霊夢を見る。

 

レ「こんなにも月が紅いから

  本気で殺すわよ」

 

霊夢の手から弾幕が放たれる、レミリアは最小限の動きで全ての弾幕をかわす。

月を背にしたレミリアの目が、輝きを増した。

その姿は全ての生き物の上に君臨する帝王のように神々しく、全てを喰らい尽くす強大な化け物を連想させる。

 

博「こんなに月が紅いのに」

 

気だるそうに言うと弾幕を生成し、構える。

 

レ「楽しい夜になりそうね」

博「永い夜になりそうね」

 

二人が同時に言い放つと、空気が一変した。

静かに漂う紅い霧が、風に流され空を漂う雲が、深紅の輝きで幻想卿を魅せる月が、まるで圧倒的な恐怖に飲み込まれるように空気を変える。

 

気が付くと、自分の足が震えていた。

この戦いを観戦出来る喜びと、ここ一帯の空気から感じ取れる恐怖によって足が竦んで動かない。

視線は二人の戦いに釘付けにされ、口内は唾液をも出さず、耳は何一つ聞き逃すまいとしていた。

例えるならば、壮大な化け物同士の対決を観る蟻のような気持ちだ。

次元が違う。

飛び交う弾幕を観ながら、脳がそう確信した。

 

博「まだまだっ!」

 

レ「それはどうかしらっ!!」

 

弾と弾のほんの僅かな、か細い隙間を潜るようにしながらも攻撃の手は止めない。

二人の戦いは、戦争のように血に塗れた戦いでもなく、スポーツのように汗を出しながら楽しむものでもない。

言うならば芸術だ。

夏祭りの時に空を彩る花火のように、観る物を魅了する不思議な魅力がある。

 

博「そこよ!!」

 

弾幕の間を滑らせるように死角から五発の弾幕を放つ、レミリアは放たれた弾幕が見えていないにも関わらず、それら全てを撃墜、回避した。

 

レ「甘いわ!!」

 

今度はこちらの番、とばかりに死角を突いた弾幕を霊夢の数倍放ったレミリア。

霊夢はそれら全てを回避し、薄い正方形の大きな弾幕を放った。

 

博「やるわね、でもこれならどう!!」

 

少し前に撃墜されたように単発でではない、連続でそれらを一瞬で生成し放ったのだ。

だがレミリアはそれをも予想していたかのように全てを撃墜して見せた。

 

花火が消え去る様に空は静寂を取り戻し、深紅の月は自分の役割を思い出したかのように二人を照らす。

 

博「・・・・・・」

 

レ「・・・・・・」

 

互いに睨み合う二人。

 

レ「・・・そろそろいいかしら」

 

博「ええ、準備体操は終わりよ」

 

二人は睨みあいながらも不敵に笑う、それと同時に二人は懐からスペルカードを取り出した。

スペルカードを掲げ、宣言する。

 

レ「神罰『幼きデーモンロード』」

 

博「夢境『二重大結界』」

 

先に発動したのはレミリアだった。

自分を中心にレーザー型の弾幕を結界のように放射し続け、霊夢を捕える。

霊夢は逃げ道を封じられたかに見えた。

だがそれは違う、レミリアも同じく霊夢に捕えられたのだ。

俺との弾幕戦の時に使った二重結界を上回る大きさの結界を放った霊夢は、そこに弾幕を拡散して放ち続けている。

レミリアは膨大な数の弾幕を回避しながらも、霊夢に弾幕を放ち続ける。

それを回避しながら霊夢は弾幕を放つ。

二人は平行線のまま撃ち続け、やがて時間切れとなった。

 

スペルカードの効果が消え、自由になったと同時に二人は牽制の弾幕を放つ。

そしてまた同時にスペルカードを宣言した。

 

レ「獄符『千本の針の山』」

 

博「散霊『夢想封印 寂』」

 

今度は完全に同時に発動した、レミリアは一直線や、交差状に飛ぶ弾幕を同時に放ち、相手を撹乱するスペルカード。

霊夢は自分を中心に、まるで花火のように三種類の弾幕を拡散させるスペルカードだ。

弾幕自体結構なスピードを持つため、回避は困難の筈だ。

だが二人は人目見ただけで弾道を完全に見切り、弾幕を放っている。

凄いを超えて恐ろしいとまで感じる。

もし俺がこの戦いに乱入しても勝つ事は難しい、いや無理だろう。

経験から才能まで全てが違い過ぎる。

能力はチートも良い所だが、扱えなければ宝の持ち腐れだ。

だが人は成長する、観るだけでもほんの少し成長するのだ。

この戦いを今後の参考にしなくては・・・。

 

博「くっ!」

 

同時にスペルが時間切れとなった。

レミリア、霊夢、共に無傷であり、勝負は未だ平行線をなぞるばかりだ。

 

レ「博麗の巫女はこれが本気かしら?」

 

レミリアが挑発をした。

 

博「そうかもしれないし、違うかもしれないわね」

 

余裕の態度を見せる霊夢、霊夢相手に挑発は無意味だ。

 

レ「それじゃあ続けましょう」

 

また二人同時にスペルカードを取りだした。

 

レ「神術『吸血鬼幻想』」

 

博「神技『八方龍殺陣』」

 

またもや完全に同時、レミリアは弾幕で相手を囲い、動きに制限を掛けながら徐々に潰すスペルカード。

対して霊夢も同じく弾幕で相手を囲み、制限を掛けながら潰すスペルカードのようだ。

完全に互角、レミリアの制限型スペルを読んでいたかのように霊夢も制限型のスペルを使い、互角の勝負を繰り広げる。

思うように動けないレミリアは、さらに制限を掛けるように行動制限を掛ける弾幕を増やしていく。

霊夢もまけじとレミリアの行動を制限するように弾幕を放っていく。

 

・・・また時間切れとなった。

完全に平行線だ、埒が明かない。

スペルカードルールによってレミリアの援護は出来ない、このままでは引き分けとなる。

 

レ「やるわね、ここまで互角に戦えたのは貴女が始めてよ」

 

弾幕を止めてレミリアが口を開いた。

 

博「・・・井の中の蛙ってわけじゃないわね」

 

そう言ってレミリアを睨んだ霊夢は弾幕生成する。

 

レ「さあ、夜明けまで時間はたっぷりあるわ。

  存分に楽しみましょう?」

 

言い終わる前に霊夢は弾幕を放つが、ひらりと避けられてしまった。

 

博「永い夜は嫌いよ、お賽銭が入らないじゃない」

 

霊夢は強い口調で断言する。

 

レ「そう、なら速く終わらせてみなさい」

 

博「言われなくても」

 

またしてもスペルカードを二人同時に宣言した。

 

レ「紅符『スカーレットマイスタ』」

 

博「回霊『夢想封印 侘』」

 

ほぼ同時に宣言されたが、霊夢の方が一瞬速い。

霊夢のスペカが発動され、自分を中心に波紋が広がるように中弾幕を飛ばす。

そしてその弾幕の間を潰していくように弾幕を相手へと飛ばすスペルカード。

一瞬遅れてレミリアもスペカを発動した。

規則性のある大弾幕を霊夢に向けて飛ばす、その後ろから小の弾幕が追従し、ばら撒かれた。

レミリアはそのまま体を回転させ、大、小の弾幕を自分の周りにばら撒く。

霊夢は不規則に飛んでくる弾幕を避けながらも、自分のスペカによってレミリアの動きを制限させている。

霊夢のこのスペカは全体的に弾速が遅い、レミリアはバラバラに飛ばすだけなのでスピードを乗せられるが、霊夢は精密に弾幕を飛ばしているため、どうしても弾幕が少し遅くなってしまう。

だが、一瞬とは言えレミリアより速くスペカが発動した事が功を奏した。

これによってレミリアの動きを制限出来なければ、霊夢は弾幕を飛ばすなど出来ない状態になっただろう。

またも互角、いやレミリアが優勢だろう、今のスペカを霊夢と同時に発動するだけで目に見えて優勢になれたのだから。

 

時間切れ、これで両者4枚のスペカを使ってしまった。

しかも完全に互角、これで次のスペルで勝負が決まらない場合、引き分けとなるだろう。

 

レ「・・・次が最後のスペルカードになるわね」

 

博「上等よ、永い夜に夜明けが来るわね」

 

レ「そうね、永い夜から永遠の夜になるわ」

 

ニヤリと笑った、二人共だ。

一人はまるで戦いを楽しむように、一人は勝利を確信したかのように。

 

レ「紅色の幻想卿!!」

 

博「大結界『博麗弾幕結界』!!」

 

宣言は同時、発動も完全に同時だった、1秒の、0.1秒の、0.01秒の狂いもない。

霊夢のスペルによって大きな立方体の結界が霊夢とレミリアを覆った、その中にまた立方体の結界が表れ、霊夢を覆う。

二重結界の強化がまだあったのか?

対するレミリアは先程のスペカを強化したかのような弾幕を放つ。

その弾幕は、まるで「支配」をそのままスペルカードにしたようだった。

放たれた弾幕は放物線を描くように飛び、小さな弾幕が規則正しく並べられていく。

鎖のように、檻の中の獣を更に追い込むように、弾幕はじわりと霊夢に襲いかかる。

霊夢は結界に小さな弾幕を直線状に、それも鞭のように繋げた弾幕を自分の周りの結界へと飛ばしていく。

それは結界に当たると消えていき、レミリアの背後の結界から姿を現す。

レミリアはその弾幕を一度チラっと見たが、直ぐに弾道を読んで回避し、攻撃の手は休めない。

 

俺は固唾を飲んで見守った。

二人のスペルカードは最後のスペルカードに相応しい美しさを持っている。

レミリアは幻想卿を「支配」せんとする帝王のように。

霊夢はレミリアの「支配」から幻想卿を守りながらも戦う、騎士のように。

そんな姿を感じられる。

 

霊夢は正面だけに飛ばしていた弾幕を一度止め、両手を広げて回転するように飛ばしていく。

・・・成程、正面に弾幕を飛ばすとレミリアの丁度背後へ飛び、自分の右側へと飛ばすと、レミリアの右側から出てくるのか。

確かに弾道を読めればどうと言う事はないな。

 

レ「さあ、終わりよ!」

 

レミリアの弾幕が急激に増えていく、それを避けながらも弾幕を放つ霊夢。

霊夢を良く見ると回転しながらのため、後ろに飛ばされた弾幕は無駄になるように見える。

だがそれは弾幕戦を彩る装飾としてよく働いている、流石は博麗の巫女。

 

博「っ!!」

 

霊夢の右腕の服をレミリアの弾幕が掠める、その弾幕によって霊夢の体制が崩れた。

天と地を逆転させながらも霊夢は弾幕を放ち続ける。

 

レミリアの優勢に見えた、このまま押し切れば霊夢に勝てると思えた。

 

が、その時だった。

 

レ「ぐっ!!」

 

レミリアの背後から規則的に飛ばされていた弾幕がレミリアの肩を掠めた。

何故だ? レミリアは弾道を完全に読んでいた筈・・・。

レミリアも何が起きたのか分からず、一度背後の結界へと振り返った。

やはり規則正しく弾幕は飛ばされている。

レミリアは正面を見ると、正面から飛ばされた弾幕を読んでいたかのように回避。

そしてスペカの弾幕を増やし、短期決戦へと持ちこもうとしている様子だ。

霊夢は変わらずに弾幕を撃ち続けて・・・。

 

・・・!?

霊夢が弾幕を放つのを止めた?

これはどう言う事だ?諦めたのか?

 

レ「な!?」

 

レミリアも驚いている、何か仕掛けてくるのかと身構えているようだ。

 

レ「どう言うつもり?」

 

レミリアは霊夢に問う。

 

博「どう言うつもりか聞きたい?」

 

霊夢は胸の前で手を組んだ。

 

博「それはね」

 

・・・!!そうか!!

 

誠「お嬢様危ないッ!!」

 

レ「!?」

 

突如弾幕が結界から現れた、その数は先程の比ではない。

レミリアは咄嗟に弾幕を周囲に放った、弾幕は小さな爆弾のように衝突と破裂を繰り返し、全ての弾幕を撃墜した。

 

博「もう勝負がついていたからよ」

 

霊夢は片目を閉じてウインクをした。

ウインクした霊夢は可愛かったが言わせて貰う、悪魔か貴女は。

弾幕止めて油断した所をとか、悪魔だ。

確かに油断した方も悪いが、それでも言わせて貰いたい、悪魔か貴女は。

 

博「でも、時間稼ぎ君のお陰で助かったみたいね。残念。

  それでどうすんのよ?続けるかしら?」

 

気だるそうに言う霊夢、その視線の先に立つレミリアは首を横に振った。

 

レ「誠のお陰で食らわなかったけど、誠がいなかったら今頃負けてたわ」

 

博「潔いわね、楽で助かるわ」

 

レ「ええ、油断した私が悪かったもの」

 

レミリアが天使に見えてきた。

 

博「そう、てっきり勝負はこれからとか言ってくるかと思ったわ」

 

レ「それこそ私のプライドが許さないわ」

 

レミリアがカッコいいんだが。

 

博「じゃあ私は帰るわ、後片付けよろしくね」

 

そう言うと霊夢は返事も聞かずに飛び去って行った。

速い、あれは速いって、電車並だって。

 

・・・そう言えばこの紅霧異変、レミリアが計画立てたんだっけ・・・。

これは落ち込むだろう・・・励ましておくか。

 

レ「さあ片付けましょうか!」

 

・・・ず、随分と元気ですねお嬢様。

 

誠「悔しくないんですか? 折角の計画がパーになったのですよ?」

 

レ「何言ってるのよ、計画は大成功よ」

 

誠「・・・・・・はい?」

 

敗北=大成功?え、お嬢様まさかM・・・。

 

レ「あ、そう言えば誠に言わなくちゃいけないわね。

  実はこの計画はね、暇潰し(お遊び)よ」

 

誠「・・・えぇぇ・・・」

 

レ「私はこの幻想卿に来てから他の場所に挨拶したりもしてなかったのよ。

  この異変は挨拶代わりよ」

 

誠「あ、挨拶でこんな事を?」

 

レ「ええ、幻想卿の主である大賢者に言ってみたらOKだったし」

 

誠「・・・えぇぇ」

 

軽いなオイ、そんなので半月も人間の里の人達は外に出れなかったのか。

・・・人間の里の皆様、御苦労お掛けしました。

 

レ「あわよくば太陽も隠せればよかったけど、流石に無理だったわね」

 

えっと、異変起きた時点で計画は大成功であり、太陽はオマケですかそうですか。

 

レ「これで異変解決の宴に参加できるわ、楽しみね」

 

咲「お嬢様」

 

レミリアの前に咲夜さんがいきなり現れた。

 

咲「夕食の準備が出来ました」

 

レ「分かったわ、咲夜」

 

咲「それでは、失礼致します」

 

音もなく消えた咲夜さん。そう言えば俺朝飯しか食べてないな・・・。

 

レ「さ、帰って食事にしましょう」

 

誠「今から夕食は遅過ぎではありませんか?」

 

レ「何言ってるのよ、吸血鬼は普通これから昼食の時間よ」

 

誠「・・・睡眠時間が多くていいですね」

 

レ「誠もなる? 吸血鬼」

 

誠「日光浴出来ないのは勘弁してください」

 

レ「あら、残念」

 

吸血鬼はちょっと行動に制限が多くて無理です、自由がいいです。

・・・あ、大事な質問忘れてた。

 

誠「ところで、お嬢様」

 

レ「なにかしら?」

 

誠「・・・わ、私の夕食はあるのでしょうか」

 

こ、今回の働きからして食事はあるよね!? ね!?

霊夢の時間稼ぎ、魔理沙のリタイアをさせた俺に食事はありますよね!!

 

レ「・・・あ~」

 

誠「『・・・あ~』って何ですかお嬢様! これ結構重大ですよ!?」

 

レ「私は無いに賭けるわ」

 

誠「えぇぇぇええええええ!!」

 

レ「咲夜は私しか呼んでなかったもの」

 

誠「・・・あ~」

 

咲夜さんは食事があるなら声掛けるからな。

あ~これは無いわ、仕方ないから作るか。

・・・あ、キッチンは咲夜さん以外入室禁止だった。

 

誠「帰って咲夜さんに土下座して頼むしか・・・」

 

レ「帰ってからのお楽しみね」

 

誠「・・・お説教ありますかね」

 

レ「お楽しみよ」

 

誠「・・・うぅ」

 

こんなにも帰るのが憂鬱なのは小学生の時に門限破った時以来だ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

その後、帰ってからの事をまとめるとこんな感じだった。

 

誠「飯あるんですか!ダイニングに置いてあるんですか!」

 

誠「やったーーー!」

 

誠「飯ないじゃないですか!」

 

誠「やだーーー!」




終わりがなんとかならないのか!
すいません!「コノネタツカイタイ症候群」に駆られてしまい・・・。







次回予告
昨日の敵は今日の友、異変解決を祝い博麗神社で大宴会が開かれた。飲めや歌えやバカ騒ぎだ! なに!? 酒が足りないだって!? いや俺は未成年ですし、酒は飲みませんし。いや、ちょ! 確かに前にぶどう酒飲みましたけどあれは事故であって飲みたかったわけではな・・・って、お嬢様?その瓶はなんですか!? なんと言われても酒は飲みまイタタタタタッ! ぎ、ギブ!ギブ!関節が増えますやめてくださ・・・ぎゃあああああああああああああ!!次回「魔法少女まどかマギカの映画を前後編観れました、お財布が凍死しました」残金62円は辛い。


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第十二話 宴会

博「・・・で?」

 

誠「・・・ハイ」

 

博「ハイじゃないわよ、これはどういう事なの?」

 

誠「・・・これと言いますと?」

 

博「こ・れ・よ!」

 

霊夢が力強く指差した先を見ると紅魔館組が宴会を楽しんでいる。

・・・あーお嬢様日傘が倒れそうですよ! って、咲夜さん修正速いですね。

 

博「なんで異変を起こした張本人が異変解決の祝いであるこの宴会に参加してんのよ!」

 

誠「いいではありませんか、宴会は楽しむためにあるのですし。

  それに大勢いる方が楽しいですよ?」

 

レ「そーよそーよ!」

 

博「あんたは黙りなさい!」

 

誠「喧嘩は良くないですよ、ほらほら咲夜さんが作った料理でも食べてくださいよ」

 

博「あら美味しい」

 

紅「速っ! 箸の動きが速すぎて見えませんっ!!」

 

博「よし、あんた達宴会参加していいわよ」

 

紅「了承早っ!!」

 

レ「酒が足りないわよ咲夜!」

 

咲「既にこちらに御用意しております」

 

レ「じゃんじゃん飲むわよー!」

 

・・・さて、俺は今見ての通りに博麗神社主催の宴会に参加している。

見た感じ結構人がいる、と言っても妖怪が大多数を占めているが。

 

レ「誠! キョロキョロしてないであんたも飲みなさい!」

 

誠「嫌ですよ! またあの頭痛と吐き気に襲われるのは絶対に嫌です!」

 

レ「大丈夫よ! これぶどうジュースだから」

 

誠「それ前回と全く一緒の手口じゃありませんか!!」

 

美味しいのに、と呟きながら酒を空けたレミリア。

・・・見てるだけで頭痛が・・・。

 

・・・さ、そろそろ大体の妖怪と人間が集まっただろう。

とりあえず挨拶にでも周りますかな。

 

 

 

魔「お?誠も宴会に来てたのか」

 

誠「魔理沙さんじゃありませんか!!」

 

魔「そんなに驚かれても困るぜ」

 

来るとは思っていたけど遅刻するタイプかと・・・。

 

誠「足の方は大丈夫ですか?」

 

魔「帰っている間に直ったからな、全然平気」

 

誠「なら安心ですね、いや直るのが速いと驚くべきでしょうかね」

 

魔「こんなもんだろ足ぐらい」

 

誠「・・・魔法ってすげー」

 

こんなに速く直るなんて凄いなー憧れるなー。

・・・俺も魔法を習ってみるべきだろうか。

 

魔「あー魔法を習いたいとか考えてるなら止めた方がいいぞ。

  扱いが難しいし、努力しないと火花すら出ないぜ」

 

誠「・・・止めておきます」

 

魔「賢明だな、誠が魔法使うと自爆しそうだしな」

 

なんでそうなるのですかね、そんなに俺って才能が無いのだろうか。

まあ才能があっても努力が嫌いな俺は最低限の魔法を覚えて終了ってのが目に見えてるし、やめておこう。

 

誠「そうですか、助言ありがとうございます」

 

魔「・・・お前さ、弾幕ごっこ中にいきなり口調変わったよな?

  あれは癖か? それともそっちが普通なのか?」

 

誠「どっちかと言うとこれが普通だな、口調は人によって変えてるぞ。

  初対面の場合は敬語、ハイテンションならヒャッハーしたりとか」

 

魔「ヒャッハーってお前・・・」

 

誠「友人にはこの口調を使ってるけど親しんだらの話。

  まだ幻想卿に来てそんなに経ってないから全員敬語で話してるわ」

 

魔「それじゃあ私にはその友人口調で頼むぜ、敬語は嫌いだしな」

 

誠「わかりました、これからよろしくお願いしますね魔理沙さん」

 

魔「・・・今のは絶対わざとだろ?」

 

誠「んな事ねーよ、口調なんてどーでもいいじゃんか」

 

魔「・・・変な奴だなお前は」

 

誠「よく言われる、それじゃこれからよろしく。

  呼び方は魔理沙でいいか?」

 

魔「いいぜ、改めてよろしくな、誠」

 

誠「そいじゃあ俺は他に挨拶巡りするんでここらで」

 

魔「おう、酔ってる奴らに気を付けろよ?」

 

誠「だいじょぶ、全力で逃げるから」

 

魔「なら大丈夫だ」

 

誠「おっと、忘れるところだったわ」

 

そう言うと綺麗に包装された箱を魔理沙に渡した。

 

誠「俺の能力で創った逸品だ、部屋に飾るなりしてくれ」

 

魔「お! 開けていいか?」

 

誠「帰ってからのお楽しみだぜ」

 

魔「私の口調を真似したなー!」

 

誠「サーセン! それでは!」

 

魔「あっ! こら待てっ! ・・・ったく」

 

俺は逃げるように・・・いやそのまんま逃げた。

次会った時になんて言うかな・・・笑いがこみあげてきたわ。

 

さて、次は誰に挨拶するか。

 

 

 

おや?

あいつは確か・・・。

 

誠「こんにちは、料理は美味しいですか?」

 

?「ん?ああははえー?(あなただれー?)

 

誠「少し前にここに来た誠と言う者です、私も一つ貰いますね」

 

?「はへー!(ダメー!) こえああはひお!(これは私の!)

 

誠「・・・とりあえず口に含んでいる物を胃に納めましょうか」

 

ゴクンと大きな音を立てて食べ物を飲み込んだ少女――名前はルーミアだったな、はこちらを観察するように見始めた。

・・・品定め?

 

ル「私の」

 

誠「・・・食べませんよ」

 

ル「・・・私のー!」

 

誠「だから食べませんってば!」

 

ル「・・・左手が伸びてる」

 

誠「気のせいです」

 

ル「・・・お肉掴んだ」

 

誠「気のせいです」

 

ル「・・・食べた」

 

誠「きおへいれふ(気のせいです)

 

ル「わーたーしーのー!!」

 

誠「まあまあ、これあげますから許してくださいよ」

 

さっき咲夜さんから貰ってきたたまご焼きを口に頬り込む。

 

ル「・・・お肉がいい」

 

誠「仕方ありませんね、私の手作りですよ」

 

宴会に来る前に作っておいた唐揚げを口の中に頬り込む、少女の食事風景とは思えない音が出てるよコレ。

 

ル「おいしいー!」

 

誠「それはよかった」

 

自分が作った料理を食べて、美味しいと言って貰えるとやっぱり嬉しいわ。

 

ル「もっとー!」

 

誠「どうぞ、残さず食べてくださいね?」

 

俺の言葉が聞こえたのか聞こえなかったのか分からないが、皿いっぱいの唐揚げを前に目をキラキラさせたかと思ったら一気に唐揚げを掴み、口の中へと放り込む。

豪快だなー。

 

さ、次行くか。

 

 

 

お、あれは魔理沙と激闘を繰り広げた・・・と思うチルノではないか。

早速声をかけよう・・・と思ったら隣に誰かいるな。

あれは・・・大妖精か?仲がいい事で。

 

チ「これ美味しい! 大ちゃんも食べてみれば?」

 

大「ありがとうチルノちゃん! 美味しいねこれ!」

 

チ「へっへー! まあね!」

 

お前が作った料理じゃないだろっ!

 

チ「ん?あんた誰?」

 

視線に気付いたのかチルノが振り返ってこちらを見る。

 

大「チルノちゃん、初対面の人にあんたは失礼だよ・・・」

 

大妖精が口を挟む、本当に妖精かと疑ってしまう程良い子だな・・・。

礼儀正しい、かわいい、性格が良いの三拍子が揃ってる、これはもう天使だろ。

 

とりあえずさらっと自己紹介をする。

 

大「誠さんですね、私は大妖精です。大ちゃんと呼ばれたりしますね。

  隣にいるのがチルノちゃんです、よろしくお願いします」

 

チ「それじゃ早速だけど誠! あたいと勝負よ!」

 

大「ちょ、ちょっとチルノちゃん!」

 

誠「いいぞー!」

 

大「えぇぇ!? い、いいんですか!?」

 

困惑している大ちゃんが可愛い、死ねる。

 

チ「そこの皿に盛ってある食べ物を先に食べ切った方の勝ちよ!」

 

誠「早食いか、負ける気がしないな」

 

チ「そんな大口叩けるのも今の内よ! よーいドン!」

 

大「チルノちゃん! それじゃあチルノちゃんが先に食べ始めて有利になっちゃう!」

 

誠「問題ない! 頂きます!」

 

チ「あうあえ!(やるわね!) へほわはわは!(でもまだまだ!)

 

誠「おえろいふくろほはへふあほ!(俺の胃袋を舐めるなよ!)

 

大「み、みるみる食べ物がなくなっていってる!?」

 

誠「きゅっぷい、ごちそうさまでした」

 

チ「ほろあはひはらへうらんへ(このあたいが負けるなんて)・・・」

 

誠「いい勝負だったぜ! とりあえず食べ物を胃に入れろって」

 

口いっぱいに頬張っていた食べ物を胃に納めたチルノはビシっとこちらを指差した。

 

チ「次は勝つ!」

 

誠「臨む所だ、首を長くして待ってるぞ」

 

よっこらしょ、と無意識に声を出しながら立ち上がる。

・・・待て、俺中学生だってのに・・・これは酷い。

 

大「私達は普段霧の湖にいますので、良かったら立ち寄ってください」

 

誠「おう、そんじゃあな~」

 

・・・チルノが相手だからと言うのもあり、結構フレンドリーな口調だったな俺。

 

それじゃ、次行ってみよー。




ギャグ回?いいえ会話回。






次回予告
誠は宴会を最中、静かに考える。なぜ、幻想卿には炭酸飲料がないのだと、なぜ麺類の食べ物がないのかと、なぜ・・・何故・・・ナゼ・・・。自分の好きな物が食せない幻想卿に嫌気が差し、幻想卿から外の世界へと帰る事を決意した誠。だが帰る準備をしていた誠にレミリアが言った。「外の世界に戻ったら、能力使えなくなるわよ」と、こうして幻想卿に永住する事を決意した誠は今日もスペカ制作と友人作りに励む! 次回「そういえば俺紅魔卿と緋想天しかクリアしてないんだがこれからどうしよう」葉隠 誠先生の次回作にご期待ください。


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第十三話 続宴会

今回長めですね。


宴会とは良いものだ、人々が集まって酒や食事をしながらバカ騒ぎして。

 

だが、幻想卿の宴会は違う。

ただ酒を飲んで祝って、誰かが芸をして盛り上げて・・・そんなものではない。

酒を飲んでしまったら避けられない事。

 

そう、喧嘩だ。

一度喧嘩が始まると妖怪の中でも血の気が多い連中が揃って参加し、宴会はさながら闘技場のように大乱闘が始まる。

それを監視、抑制をするのも強き者の務めである。

 

 

誠「・・・やっぱり来てるわけか」

 

?「もちろん、私がいなくちゃ宴会が始まらないでしょう?」

 

そう言いながら酒を呑むこの人は、幻想卿の賢者と呼ばれる力を持つ妖怪。

名は八雲 紫(ヤクモ ユカリ)、スキマ妖怪とも言われており、文字通りスキマを操る事が出来る能力の持ち主だ。

スキマと言っても溝や穴などを操るわけではない、スキマ・・・すなわち「境界」を操る能力である。

境界を操る程度の能力、それが幻想卿の賢者である八雲 紫が所有している能力。

「境界」とつくもの全てを支配下に置く事が出来ると言う、応用を利かせれば最強にもなれる能力だろう。

 

・・・チートですねわかります。

 

紫「・・・どうかしたのかしら?私の顔をそんなに見て」

 

誠「・・・バ――」

 

俺の言葉が空気を震わすよりも速く賢者は空間の境界を操り、道路標識のような物を俺の首に向けた。

 

紫「・・・何か、言ったかしら」

 

ニコっと笑う賢者は表面上笑っているが、そこには怒りと言う感情があった。

俺はあまりの速さと威圧感に呼吸すらできず、その場に正座する。

 

誠「なんでもありませんすみません許してください」

 

紫「・・・解ればいいわ」

 

スっと空間を裂いていたスキマが消え、標識はスキマの中へと沈んで行った。

 

誠「さすが幻想卿の賢者様ですね。

  霊夢もそうですが幻想卿防衛隊は強過ぎやしませんかね」

 

紫「当然よ、簡単に負けては困るもの」

 

賢者はどこからか取り出した扇子で口元を覆い、ふふっと笑って見せた。

 

紫「そう言えば貴方の能力は便利でいいわね」

 

誠「私の知恵が浅い事が欠点ですがね」

 

俺の能力は自分の頭で理解しなければ発動出来ない。

それさえなければ何でも創れる便利な能力だと言うのに。

 

誠「ところで、何をお食べになっているのですか?」

 

紫「見たまんまよ、焼き鳥」

 

幻想卿に焼き鳥屋なんて・・・いや、確か一人やっていると自称していた人がいたな。

という事は出店しに来ているのかな?

 

紫「残念だけど焼き鳥は売り切れよ」

 

・・・残念だ。

 

紫「そこに買い占めておいたから食べてもいいわ」

 

誠「買い占めたの貴方かよっ!!」

 

紫「いいえ、買い占めたのは別、私はその半分を貰っただけよ」

 

半分で重箱に埋まる程あるって事は、買い占めたのは店の焼き鳥が売り始める前に買ったって事だな。

・・・その買い占めた奴は、はたして食い切る事ができるのだろうか。

 

紫「それで、食べるのかしら?」

 

誠「ねぎま頂きますね」

 

重箱へと手を伸ばし、ネギと肉が刺さった焼き鳥を掴む。

季節が夏ということもあってか、焼き鳥はまだ温かかった。

 

誠「季節は夏ですが今日は涼しいですね」

 

紫「誰かさんの霧のせいでね、まあ暑いよりはいいわね」

 

焼き鳥を口にしながら返答してくれた賢者。

隣に座って焼き鳥を食べながら話をした、幻想卿のルールなどの細かな事も聞かせて貰う。

それと、アレについてもだ。

 

紫「扉?」

 

誠「ええ、幻想卿に繋がっていたあの扉はなんだったのか。

  そして扉は今どこにあるのか、調べてはいるのですが・・・」

 

賢者は少し考えるそぶりをしたが、思い当たる物はないようだ。

・・・仕方がない、またコツコツ調べてみるか。

三本目の焼き鳥を食べ終え、ふと空を見ると太陽が結構傾いていた。

もう少しで夕方になるのか、それなら挨拶巡りを済ませないとな。

 

誠「それでは用事があるので失礼します」

 

紫「・・・敬語で話さなくても最初の口調でいいわよ」

 

誠「そこに自分より上、まして幻想卿の賢者様となっては敬語が普通です。

  最初は力が見たいと言う好奇心で茶目っ気を出しましたがね」

 

紫「勇気と無謀は違うわよ」

 

誠「慎重と臆病もまた違います、試さなければ何も見えませんから」

 

紫「それを見抜くのも力よ」

 

誠「・・・さすがですね」

 

俺は賢者に背を向け小さく手を振り歩き出した。

歩きながら周りを見てみると微妙に人数が増えている、夜に近付いたからだろうか。

 

 

 

ん?

博麗神社の賽銭箱の前に屋台のようなのが出ている、屋台からは煙がモクモクと上がっている。

この匂い・・・焼き鳥か?満腹ではないがとりあえず寄ってみよう。

 

誠「すいません冷やかしです」

 

?「いらっしゃ――冷やかしは帰って貰うよ」

 

顔を上げた少女の白い髪がなびいた、が、冷やかしと解るとすぐに焼き鳥を焼く作業に戻ってしまった。

この少女の名は藤原 妹紅(フジワラノモコウ)、確か不老不死の人間だ。

 

誠「嘘です、ねぎまください」

 

妹「あいよ、料金はそこね」

 

あ、俺お金持ってないんだった。

・・・仕方がない創ろう、これは非常事態だからな、うん。

 

誠「おっと、財布を置いてきてしまいました。

  直ぐ戻りますのでねぎま売らないでくださいね」

 

妹「いいけど速く取ってこないと売り切れるぞ?」

 

誠「売る気満々ですか、それでは行ってきます!」

 

全速力で走り、レミリアの所へ行って一円札を見せて貰った。

とりあえず十枚程度創り、ガマ口財布を創って突っ込む。

途中酔った妖怪に絡まれそうになったが、スキマから小さなお墓が妖怪の頭に落ちて気絶した。

賢者がこちらを見てウインク、歳を考――背筋に突如悪寒が走ったので考えるのを止める。

屋台に到着し、一円札をカウンターに叩きつける。

 

誠「お金、持って、きまし、た・・・ゼェ、ゼェ・・・」

 

妹「お疲れさん。ねぎま五本ね、これお釣り」

 

坦々と会計を済まし、ねぎまとお釣りを渡される。

お釣りをガマ口に突っ込みねぎまを食べながら屋台の隣に座り込む。

 

妹「・・・」

 

誠「・・・」

 

会話が全くない、妹紅は黙々と焼き鳥を焼く。

周りの妖怪達のバカ騒ぎと焼き鳥を焼く音、焼き鳥の匂いが辺りを漂う。

ねぎまを一本食べ終わり、串を地面に刺して二本目を食べ始める。

 

妹「・・・何でお前はずっとそこにいるんだ」

 

ようやく妹紅が口を開いた、商売の邪魔と思われてるのだろうか。

まあ人間が屋台の横で焼き鳥食うだけでは商売の邪魔にはならないだろう。

 

誠「いや貴女が声をかけてくるのを待ってたので」

 

妹「・・・そう言えばお前、里の人間じゃないだろ」

 

誠「この頃幻想卿にオープンザドアして来た者なので」

 

妹「・・・意味がわからん」

 

ですよね~。

二本目を食べ終え、串を地面に刺して立ち上がる。

サラっと自己紹介、ついでにねぎまを追加注文しておく。

 

妹「って事は紅魔館に住んでいるのか?」

 

誠「ハイ、お部屋を一つお借りして住まわせて貰っておりますです」

 

妹「人間があの館にねぇ・・・」

 

呟いた妹紅は焼き鳥を連続でひっくり返した。

 

誠「手慣れてますね、焼き鳥屋始めて五年以内と見ましたが?」

 

妹「よ、よくわかったな・・・。

  友人に『人付き合いが苦手ならお店でも開いてみたら?』って言われて

  焼き鳥屋を始めてみたんだが、売れ行きが結構良くてな」

 

誠「焼き鳥屋は火の妖術が得意な貴女向きですからね」

 

妹「・・・そこまで知っているのか、お前何者?」

 

妹紅から鋭い視線を向けられた、と同時に三本目のねぎまを食べ終える。

串を地面に刺し、四本目を食べながら答えた。

 

誠「幻想卿の主要人物は全て把握しています、能力で」

 

妹「能力?」

 

焼き鳥を一通り焼き終わり、ひと段落した妹紅が体をこちらへと向けた。

 

誠「私は二つの能力を持ってます、『幻想卿の主要人物を把握する程度の能力』

  それと『想像を具現化する程度の能力』です」

 

嘘です、一つ目はオタク知識を生かしているだけです。

二つ目はどうなんだろうか、『想像を創造する』だと「物」しか創造出来ないのだろうけど、俺の場合火も水も光も闇も創れる。

となると「具現化」が一番しっくりくるんだよな・・・。

 

妹「・・・人の頭の中を見られた感じだな」

 

誠「大丈夫です、今何処で何をして何を考えてとかそんなのは解りませんし

  過去未来全てを把握したわけではありませんよ。

  あくまで現状を把握しただけです」

 

妹「お前本当に人間か? 妖怪なんじゃないかと思えてきたぞ」

 

誠「人間を妖怪と呼ぶなら妖怪ですよ!」

 

妹「それじゃ、お前は妖怪だな」

 

誠「えぇっ!? イヤイヤイヤイヤそれは酷くないですか!?」

 

普通にビックリして四本目のネギがぽろっと落ちた。

も、もったいない・・・。

 

誠「てかそれじゃ里の人達も妖怪になっちゃいますよ!?」

 

妹「『里の人間』と言う種族以外はもう妖怪だろ?」

 

誠「な・・・た、確かに! い、いや咲夜さんは人間・・・ま、待てよ! 吸血鬼に

  仕えている時点で人間辞めていると考えるのが普通なんだろうかイヤ

  イヤあの姿は完全に人間・・・だ、だが霊夢は強さとか考えるともう妖

  怪の域を完全に超えているなアレは・・・い、いやそれでも魔理沙はま

  だ人間だろうただ魔法が使える魔法使いっぽいだけだから魔理沙は人

  間・・・いやそういえば魔理沙はもう回復力が人間を超えて―――――」

 

妹「いらっしゃい、もも と かわ十本ずつね。料金はそこだよ」

 

誠「つ、つまり俺は誰を信じればいいんだ人間なんて幻想卿の主要人物に

  一握りしかいないわけでその中で最も人間らしいと思っていた咲夜さ

  んも吸血鬼に仕えて飯作ってるわけだからもう人間とは言えな、いや

  待てよ? 家事をするのは人間だってするわけだ、そして家事をしてい

  る場所が紅魔館だと言うだけなのだから人間だろう、別に人間食べて

  最高にハイッ!!って奴になってるわけではないのだから大丈夫―――」

 

妹「あ~誠、商売の邪魔だからどけ」

 

誠「そうだ霊夢だって強さやらそこらへんを覗けば立派な人間の女の子で

  はないか、性格とかそこらへんもちょっとツンツンしているだけだし

  全然問題ない人間であるだろう。魔理沙も多分魔力で自然回復力を高

  めているだけであり、魔法を使わなければ普通の人間ではないかそう

  だそうだ何も問題はないのだ。あれ、待てよ妹紅は不老不死になって

  しまった人間だがこれは完全に妖怪じゃないのか妖術使って焼き鳥―」

 

妹「商売の邪魔だぁぁッ!!」

 

誠「あべしっ!!」

 

綺麗な弧を描いて放たれた上段回し蹴りによって俺は頭から地面へと落ちた。

・・・まさかファーストキス相手が地面とは恐れ入る、いや流石にノーカウントでしょうこれは。

 

妹「ハイこれね、ありがとうございました~」

 

こんな暴力的な事をしておいて接客は優しいとは妹紅・・・おそろしい子!

 

誠「・・・そ、それではそろそろ日も暮れてきたので帰りますね」

 

妹「日も暮れてきたってとっくに日は暮れたぞ?」

 

誠「・・・もう八時くらいですかね、それでは失礼します!」

 

妹「ありがとうございました~」

 

 

 

 

 

レミリアのところに行くといまだにぶどうジュース(笑)を呑んでいた。

 

レ「誠お帰り、結構時間かけて――どうしたのそのコブ」

 

誠「回し蹴りの時に舞い上がる白髪に美しさを感じました」

 

レ「・・・?」

 

誠「そうそう、これどうぞ霊夢さん」

 

魔理沙に渡した物と同じように包装された箱を霊夢に渡した。

 

博「何よコレ? プレゼント?」

 

誠「宴会の片づけに疲れたら開けてみてください、きっと癒されますよ」

 

グッ! と親指を上げて腕を突きだす。

 

博「? まあ貰える物は貰っておくわ」

 

誠「ところで宴会終了の時間はいつになりますかね?」

 

咲「まだ時間はあるわ。

  これから博麗神社の中で宴会をして明日の朝までね」

 

誠「そうですか、それならまだ ねぎま 食べれますね」

 

博「さあ移動よ、あ、誠は地面に刺した焼き鳥の串持ってきなさいよ?

  自分で刺したんだから当たり前よ」

 

み、見られていただと・・・? やはり博麗の巫女は人間ではなかった。

 

博「誰が人間じゃないですって?」

 

誠「ど、読心術ですと!?」

 

博「あんたの考えがダダ漏れなのよ!!」

 

誠「し、しまった! 串拾ってきますっ!!」

 

博「ちょっと待ちなさいこらっ!」

 

全速力で逃げるように焼き鳥屋の前まで走る、屋台の前で振り返ると霊夢はついてきていないようで安心した。

 

 

 

 

串を拾って博麗神社の中に入る、神社の中が広いと思ったら咲夜さんが広くしているのか。

 

博「それじゃあ始めるわよ、朝まで呑むのも勝手だけど羽目を外したら

  追い出すからそのつもりでよろしくね」

 

・・・そういえば酒好きとして有名な鬼が一人もいないんだな。

まあ鬼がいたらそれこそ大乱闘だろうが。

 

レ「誠ー!さあ今日こそ呑みなさい!」

 

誠「午前中も言いましたが酒は呑みませんよ!」

 

レ「咲夜ー!誠にお酒の素晴らしさを教えてあげなさい!」

 

咲「残念ですが私はそこまでお酒が好きではありませんので」

 

誠「咲夜さんマジ天使、そこに痺れる憧れるぅ!」

 

咲「勘違いしないで、私は正直に言っただけよ」

 

ツンデレ発言とは萌えポイントを抑えていますね流石です咲夜さん!

きゃー咲夜さん可愛い!赤い顔して可愛い!よく見たらどこも赤くなかった悲しい!

 

レ「かくなるうえは!八雲!出番よ!」

 

紫「何かしら?」

 

スキマからヌゥっと出てきた賢者、いきなりだとビックリするから止めて欲しいです。

 

レ「誠にお酒を呑めるようにして!」

 

紫「いいわよ」

 

誠「承諾速すぎるっ! もう少し躊躇ってっ!!」

 

紫「お酒は呑まなきゃダメよ、とりあえず成人男性くらい呑めるようにしたわ」

 

レ「速い!仕事が速くて助かるわ!」

 

紫「いいのよ、宴会ができたのも異変のお陰だから。

  ただし人間の血は吸っちゃダメよ?」

 

レ「私は血を吸わないから大丈夫よ!さあ誠!呑みなさい!」

 

ダメだこの人達・・・早くなんとかしないと・・・。

 

レ「イッキ!イッキ!」

 

イッキコールはいつの間に幻想入りしたんだろうか。

とりあえずせっかくなので呑んでみる。

 

誠「・・・美味しい・・・だと・・・!?」

 

レ「でしょー!? さあジャンジャン呑みなさい!!」

 

こ、これはその後の頭痛なんて気にしない程美味しい・・・

 

誠「う、美味い! 美味すぎる!!酒うめえ! 賢者様の能力すげぇ!!」

 

レ「さあ今夜は呑み明かすわよー!!」

 




その後、誠はやっぱり二日酔いを起こしました。

が、そこまで酷くなかったそうです。







次回予告
おはようございます、葉隠 誠です。今回は宴会後の寝起きドッキリとしてレミリアお嬢様の寝顔を撮影したいと思います! それではお邪魔させて貰いま――え? ちょちょちょ、なぜに咲夜さんが中で待ち構えているのでしょうか!? す、ストップ! ストップ! ナイフはしまってくださいお願いしま――ってあっぶないッ!! いやいやこれ本物のナイフだから! 死んじゃうから! 俺人間ですから! ちょっ! ぎゃああああああああああっつつつつ!! 次回「Wiiを久しぶりに遊ぶとリモコンの電池が真っ赤」で、電池のストックがねぇッ!!


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第十四話 稗田家

俺は今人間の里に来ているのである、何故か話すと十秒と掛からないので素直に言うがただの暇潰しである。

宴会が終わり、異変があったとは思えない程平和な幻想卿を見てまわるかと思ったのである。

というわけである。

 

あるあるうるさい?うるさいある。

 

さて、そんなこんなで人間の里を歩き回っているのだが問題が一つあった。

俺の恰好だと人間にも妖怪にも見えず、なんか距離を置かれている気がしてならないのだ。

なので人間の里にある服をとりあえず創ったんだが、はっきり言ってあんまり好みではないのでいつもの服を着る事にした。

ちなみに俺はいつもジャージのような服を着ている、いや「ような」ではないな。そのまんまジャージを着ている。

いや動きやすいから着ているんだけどね、別にそれ以外に着る服がないわけじゃないんだ。

 

…後で服屋でも覗いてみるか。

 

そういえば俺の服は霊夢の巫女服や魔理沙の魔法使いっぽい服よりも距離を置かれる服なのか?

否、断じて否。ありえないのだそんな事は。

どこが悪い、この服はなぁ…学校まで自転車で走った汗が詰まったジャージだぞ!

え? ちょっちがっ、ちゃんと洗ってあるから! キレイだから!

 

ん?あれはなんだろうか、学校に似ているような気がしないでもない。

幻想卿に学校はなかったはず、となるとあれは寺子屋か?

とりあえず中に入ってみよう。暇だから授業妨害しない程度に見学して行くか。

 

廊下を忍び足で歩きながら教室と思われる部屋に移動、授業の真っ最中のようだ。

中をこっそりと覗く、先生と思われる女性が巻物のような物を読みあげている。

奥を見ると生徒達がいた。生徒達はは凄く真剣に聞いている奴もいるが、うとうとしている奴もいる。

お、先生がうとうとしている生徒の前に立った。

生徒は急いで目を擦り、「寝てませんよ!」とアピールをするがダメだったようだ。

生徒を立ちあがらせた先生はお説教を始めた、生徒の顔が真っ青になっていく。

意外にもお説教はすぐに終わった、先生は授業を再開すると思いきや突然生徒の顔を掴み自身の顔を思いっきり仰け反らせて渾身の頭突きをってわあああああ! マジか!?

ゴチンと鈍い音が教室中に響き、生徒は額を抑えてうずくまった。

先生は平然と授業へ戻ったが、俺は見えてしまった、頭突きをされた生徒の額が赤を通り越して紫に腫れ上がっていたのを。

 

…生徒達、強く育て。

 

もし覗き見をしていたのがバレて頭突きを食らうなんて洒落にもならないので退散するとしよう…。

 

 

 

 

蕎麦屋の前に団子屋が建っていたので休憩がてら団子を食べる事にした。

久しぶりの団子は凄く美味しい、三色団子は久しぶりに食べたがやはり美味しい。

なんでこんなに美味しいのに繁盛していないのだろうか、疑問に思ったが口に出すと店員が深い悲しみに襲われてしまうので止めておいた。

 

目の前の蕎麦屋は結構繁盛しているらしい、団子屋の店員が言うには副の神が訪れたとかなんとか。

蕎麦は嫌いではないが団子の方が好きなので団子を食べながら里を歩く、やはり三色が一番美味しい。

 

 

 

 

さて、本日のメインイベントである稗田家屋敷前に到着した。

この稗田家は千年以上続く由緒正しい人間の家系だとか、通常は中に入ることも許されないお家らしい。

だがラッキーなことに鍵が掛かっていないなー、これはラッキーだなー。

さて、しっかり鍵をかけて…と、さあ探索を始めよう。

 

まずは中庭を拝見させて貰うかな。

おお、やはりちゃんとした庭師がいるのだろうな。庭は美しい緑に覆われいた。

花の匂いは嫌いではないが今は匂いを嗅いでいる時間もないので探索を続けるとする。

次は玄関だがそのまま開けると使用人とかに見つかりそうなので他の入口から入るとしよう。

裏口と思われる扉を見つけたのでとりあえず聞き耳、中には誰もいないようなのでちゃちゃっと潜入。

 

?「だ、誰d――」

 

誠「必殺睡眠薬」

 

?「むぐっ!?うぅ…」

 

ハンカチに染み込ませた睡眠作用がある薬品で使用人を眠らせておく。

あー危ない危ない、こいつに「であえー!であえー!」とかやられたら探索どころじゃないよホント。

 

?「な、何も――むぐっ!?」

 

…まさかこの屋敷使用人結構雇ってるのか? いやいや里で聞いた話だとそんなに雇ってないって聞いたんだけど?

 

?「動くn――うぐっ!?」

 

…早いところ用事を済ませて帰ろう。

 

今回の俺の目的はこの家の九代目当主にして初代から代々当主をしている稗田 阿求(ヒエダノアキュウ)だ。

九代目なのに初代当主? 何言ってんの? そう思うのが普通だがこれにはワケがある。

実は稗田家初代当主、名を稗田阿礼(ヒエダノアレ)と言うのだがこの初代当主が転生を繰り返し現在の九代目になったらしい。

にわかには信じがたいが常識に囚われては幻想郷で生きていけない(八雲 紫様談)らしいので考えないことにする。

さて、その九代目当主もとい稗田阿求に訪ねたいことがあるのでこうやって潜入したのだが使用人が多いなこの屋敷は…。

先ほどから部屋を覗いて移動して使用人眠らせての繰り返しなため時間がかかるったらありゃしない。

また次もハズレだろうと部屋を覗き落胆して隣の部屋を覗…く…。

…こ、これは…!!ま、まさか…!!そんな…!!

やはりそうだ、このすらっとしたラインに布が擦れる音…き、着替え中のようだ。

部屋が暗いため中に誰がいるのかわからないがシルエットからして女性であろうとわかる。

 

?「誰――」

 

誠「静かにしろ、そして落ち着いてこの部屋を覗いてみろ」

 

?「な、何を――」

 

誠「いいから見てみろ」

 

使用人は部屋をチラっと覗くと目を見開いた。

 

誠「どう思うあんた」

 

?「き、貴様まさかこれを覗くために…!」

 

誠「今大事なのは俺のことではない、この光景についてだ」

 

?「だ、だが私には仕事が――」

 

誠「仕事は急げばいつでも終わらせることができる、だがこれは急いでも焦っても慌てても落ち着

  いても今だけだ」

 

?「た、確かに…」

 

目の前にあるこの光景を目に焼き付けていく。

やがて中の女性が着替えを終えてこちらへと向かってきた。

 

誠「や、やっべ! 隠れるぞ!」

 

急いで隣の部屋に飛び込んで難を逃れる、部屋を出た女性は俺達の事に気づいていなかったようだ。

足音が遠ざかる、思わず溜め息が出てしまった。

 

誠「…ふぅ、行ったか?」

 

?「…そのようだな」

 

部屋から顔を出して廊下を覗く、人一人歩いていない。

 

誠「…さて、そろそろ行くか」

 

?「ああ…って待て、貴様は何者なんだ」

 

誠「阿求のお友達(仮)」

 

?「か、かっこかり?」

 

誠「そんなわけでさよならさん」

 

?「ま、待て待て! どっから入ってきたんだ貴様は!

  この屋敷は部外者が入ることはできないはず!」

 

俺の肩を後ろから掴み早口で言う使用人、そんなに俺は怪しいのだろうか。

 

誠「そっちが自己紹介したら全て言いま――」

 

ぎょっとした、なぜって使用人の顔を見たら俺の友人にそっくりだったからだ。

と言っても口調も全然違うし他人の空似って奴だろう。

 

?「俺か? 俺はこの屋敷の使用人として働いている山田 雅人(ヤマダ マサト)だ」

 

本当に自己紹介しちゃったよこの使用人…って…は?

 

誠「ちょっと待て、あんた雅人って言うのか!?」

 

雅「ああ、それがどうかしたか?」

 

…ちょ、ちょっと待て、待て待て!

山田 雅人、そんな友達がいたよ俺? 結構付き合いの長い友達で俺と同じであの『扉』の所でも会って…。

 

雅「どうした貴様、何を考え込んでいる」

 

俺が外の世界で友人だった雅人とは似ても似つかない口調、だがこの顔、声は確かに雅人に似ている。

いや似ているなんてもんじゃない、そっくりだ。本人ではないかと思えるほどに。

 

誠「あんたは外来人か?」

 

雅「そうだ、と言っても確証は持てないがな。一ヶ月くらい前に俺は記憶を無く

  して倒れていたんでな」

 

記憶が…ない…?

 

雅「そこをこの屋敷の当主様に拾ってもらったわけだ、さあ次は貴様の番だ」

 

…まさかこいつ本当に俺の友人でバトルマスターの雅人…なのか?

 

誠「…」

 

雅「どうした、早く答えろ」

 

もし、もしこいつが俺の友人の雅人ならば、記憶がなくても体が覚えているはずだ。

あの合言葉を!!

 

誠「おい雅人」

 

雅「貴様に名を呼ばれる筋合いは――」

 

誠「ぬるぽ」

 

雅「ガッ」

 

間髪を容れずに雅人の口が動いた。

 

雅「なっ!? く、口が勝手に…!」

 

誠「…やっぱりお前は俺の友人だった雅人のようだな」

 

雅「はぁ!?」

 

?「あの…」

 

誠「お前なんで記憶なくしているんだよ! アホか!? アホなのか!?」

 

雅「アホとはなんだアホとは!!」

 

誠「お前をそんな風に育てた覚えはありません! お母さん悲しいわ!」

 

雅「お前俺の母親じゃねぇだろうがッ!!」

 

誠「おま! あんまり大声出すなよ!」

 

?「えと、あの…」

 

雅「出させているのは貴様だッ!!」

 

誠「俺が見つかったらどうするんだ!」

 

雅「もう私に見つかっているだろうが!」

 

誠「お前はいいんだよ前は友達だったんだからな!」

 

雅「誰が貴様と友人関係なぞ持つかッ!!」

 

?「あ、あのぉ…」

 

誠「うるさいこっちは取り込み中なんだよ!」

 

俺は怒鳴りながら振り返った。

 

?「あの…あの…」

 

着物が似合う少女が目に涙を浮かべながら立っていた。

 

阿「け、喧嘩はやめてくださいぃ…」

 

稗田家九代目当主、稗田阿求その人だった。




涙目の阿求を想像したらかわいすぎて死にそうなんですが。






次回予告
阿求の屋敷にて阿求を発見することに成功した誠は友人を無視し用事を済ませて帰ろうとする、だがそこに八雲 紫が現れて…「話は聞かせてもらったわ! 人類は滅亡する!」「「な、なんだってー!!」」次回「じ、次回予告を書き忘れて気づいたのが木曜であったのは言うまでもない」過ちは繰り返させません!


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第十五話 続稗田家

続・ と書かれていたらボクらの太陽を思い出します。


稗田家には幻想郷の歴史が記された貴重な資料が多々あるらしい、だがそんなものはどうでもいい。

歴史に興味などない、過去を勉強することも大切だがそれより大切なのは未来なのだ。

今について嘆き悲しみ落ち込むことなど無駄なのだ、大切なのはこの先を考える事だ。

そう、過ぎ去った過去になど意味はない。それによって起きた『今』が大事なのだ。

さて、俺が何を言いたいか…わかってくれただろうか。

つまり…だ。

 

誠「申し訳ありませんでしたー!!」

 

土下座をしながら言う俺を涙目で見るのはこの稗田家九代目当主の稗田 阿求である。

当主に「やかましい! うっおとしいぞ!」的な感じで怒鳴ったのだ、当たり前だろう。

 

阿「い、いえ! 私が話しかけるタイミングを見誤ったのが原因ですから!」

 

そもそも喧嘩してなかったら話しかけないだろうからやはり俺が原因なのだ。

 

誠「誠に申し訳ありません! 誠心誠意きっちりと謝らせていただきます!」

 

そういえば俺の名前、葉隠 誠だがこの由来を親に聞いたところ。

「誠心誠意謝ることができる子になって欲しいから」と言われたのを思い出した、いや謝ること前提で名前つけられても…。

 

雅「おい貴様、私への謝罪を忘れるなよ」

 

誠「(チッ、うっせーよ)反省してま~す」

 

雅「キサマァッ!!」

 

誠「ヒャッハーッ!!」

 

蛇を模した鎖を阿求の後ろへ放ち空中へ固定させる。

そのまま鎖を収縮させて後方へと飛んだ。

 

誠「捕まるわきゃねーだろテメェはアホか!?」

 

雅「テルミィィィィ!!」

 

誠「ラグナ=ザ=ブラッドエッジィィィィ!!」

 

雅「…ハッ!? また口が勝手に!!」

 

誠「そのノリだけは記憶なくしても消えないのな」

 

なんでこんなところで、しかも阿求が見ている前でブレイブルーしなきゃなんないのさと。

…まあネタをふったのは俺なんだけども。

 

阿「えっと…とりあえずあなたは一体…?」

 

っと、自己紹介をしていませんでしたねぇ。

私は世界虚空情報統制機構諜報部のハザ…いやこれ違うよブレイブルーじゃん。

 

コホン。

 

誠「私は紅魔館から来ました、葉隠 誠といいます。少しお伺いしたいことが

  ございまして屋敷に侵入させてもらいました」

 

阿「聞きたいこととはなんでしょう?」

 

侵入に関してはスルーなのね、普通は怒ると思うぞ。

 

誠「私は外来人であり、ある『扉』を通ってこの幻想郷に来ました。

  その『扉』を探しているのです」

 

阿「『扉』…ですか?」

 

誠「ええ、幻想郷に通じていた『扉』です。ご存知ありませんか?」

 

阿求は少し考え込む素振りを見せたが、すぐに首を横に振った。

 

誠「そうですか、残念です」

 

阿「お役に立てなくてすみません…」

 

誠「いえいえ、ありがとうございます」

 

ダメか、こんなに探して未だに手当たり無しとは心が折れるな…。

仕方ないな、また大図書館で手がかり集めの作業でもしますかな。

 

誠「それでは、用は済みましたので帰るとしましょうかね」

 

部屋の奥から中庭に出れるようなので、そこから帰ろうか。

 

阿「待ってください、せっかくですし一緒にお茶でもいかがですか?」

 

誠「よろこんで」

 

ぐるりと体を捻って即答、甘いものには目がないから仕方ないね。

羊羹ですか? お団子ですか? お饅頭ですか?

 

阿「羊羹ですよ」

 

これには思わずガッツポーズせざるを得ない。

侵入者とお茶するんだから使用人である雅人が何かいうと思ったが何も言わないようだ。

 

雅「使用人は当主の命令を第一に考えて行動する。当主がお茶をすると

  言った、ならばその相手は客だ。それが少し前までは侵入者だった

  としてもだ」

 

なるほど、てかお前がそういうこと言うと違和感通り越して恐怖を感じざるを得ないな。

マジで震えてきやがったぜ…。

 

阿「それではお茶の用意をおねがいします」

 

雅「はい、ただ今」

 

雅人が足早に部屋から出て行った。

今俺と阿求がいる部屋はだいたい10畳くらいの大きさで、部屋の中心に机――ちゃぶ台が置かれており、客間や応接間と言った印象を受けた。

 

…なぜに阿求はこの部屋にいたのだろうか。

疑問に思ったので聞いてみると。

 

阿「部屋の前を通りかかった時に、知らない声が聞こえましたから」

 

…そりゃ侵入者の俺の声を知っているわけないからな。

 

そうこうしてる内に雅人がお茶とお菓子を持ってきた。

こ、これは間違いなく羊羹…久しぶりすぎて口元がゆるんでよだれがでそうだ。

 

阿「どうぞ」

 

誠「いただきます」

 

羊羹を一口で口の中に放り込む、口の中に羊羹の甘味が広がって舌を潤す。

糖分が脳を駆け巡る感じと共に歯から食感が伝わってくる、幸せだ…。

 

阿「丁寧な口調をしていますのに食べ方は結構野性的ですね」

 

誠「この頃糖分が足りない食事ばかりでしたので」

 

一欠片目を食べ終え、二欠片目に手を伸ばす。

 

阿「誠さんは外来人ですよね? 少し質問させてもらってもいいですか?」

 

誠「いいですよ、スリーサイズ以外ならば」

 

阿「そうですか残念です」

 

誠「え、スリーサイズ必要だったの!?」

 

阿「いえ、全くいらないですね」

 

誠「そ、そうですか」

 

びっくりして一瞬普通の口調に戻っちゃったよ…。

 

阿「ずばり、能力はなんですか?」

 

誠「対象に接触すると対象は転生ができなくなる程度の能力」

 

阿「ええっ!? そ、それはこまっ、こまりますっ!!」

 

誠「失礼ですが握手してくださいませんか?」

 

阿「い、嫌です! お断りします!!」

 

誠「…実はさっき背中をちょっと触っておきました」

 

阿「ええええっ!? ななな、なんということをするんですか!!」

 

誠「…ま、もちろん嘘ですが」

 

阿「…どこまでが嘘なのですか?」

 

誠「能力からです」

 

阿「…ひどいです、嘘はいけませんよ…」

 

さっきびっくりさせてもらったからそのお礼? 結構信じやすいタイプなんだな。

 

誠「実際は『想像を具現化する』以下略、それと『幻想郷の主要人物を把握する』

  以下略です、多分ですけど」

 

阿「多分、とは?」

 

誠「想像を具現化だと例えば本を具現化するとき本の内容を一字一句間違えず正確

  に暗記しなくちゃ具現化は無理なはず、だが実験したらある程度知っていれば

  正確な物が創れる。

  なぜなのかは未だに不明です」

 

阿「なるほど…」

 

ここで二人共お茶をすする、会話というものは情報の伝達はできるが喉が渇くのだ。

まあ当たり前だが。

 

阿「それでは次に―――」

 

 

 

 

 

 

 

阿「使用人の雅人さんですか?」

 

誠「ええ、あいつは記憶を無くしているようですが間違いありません。

  あいつは俺の友人です、外の世界からの大切な友人です」

 

一通りの質問を終え、話は雅人のことに移った。

あいつがなぜに記憶をなくしているのか、それによってこれからどうするべきか。

それを決めるのは雅人だ、だが友人として助けになれるなら助けになりたい。

 

阿「…雅人さんは屋敷の前で倒れていたんです、後頭部にコブがあったようですが

  それ以外に怪我や病気はなかったそうです」

 

後頭部をを殴られて記憶を失った? 確かに頭を殴られたら脳になんらかの異常が出てもおかしくはない。

だが雅人が殴られただけで記憶を失うだろうか…。

 

仮にもアイツはバトルマスター、異常な運動神経と体力、更に筋力もあるという人間辞めた代表だぞ?

そんな奴が不意打ち食らって記憶喪失はないだろう。

 

誠「他になにかありませんか?」

 

阿「そうですね…他は特にありません」

 

誠「そうですか…」

 

まあそんなに簡単にわかるわけがないか。

仕方ない、これも聞き込みとかして調べておかないと…。

 

誠「ありがとうございました、それではそろそろ」

 

阿「そうですね、もう夕日が輝いていますし」

 

つまりもう五時、あるいは六時くらいというわけか。

晩御飯は七時だから…間に合うな。

 

誠「貴重なお話をどうもありがとうございました」

 

阿「いえ、こちらも貴重なお話が聞けましたし」

 

誠「光栄です、それでは!」

 

中庭へ出て鎖を出す、紅魔館の方角に定めながら鎖を伸ばし空中に固定させた。

鎖を収縮させてその勢いで体は空へと舞い上がる、普通に飛べばいいじゃないかと言うだろうがこっちの方が楽なのだからこっちを使う。

思わず「ヒャッハー」と叫びたくなる衝動を抑えながら紅魔館へと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝、朝食を取ろうと部屋を出たらレミリアが何かを持って立っていた。

 

レ「誠、今朝美鈴がこれを持ってきたわ」

 

それは新聞のようだった、幻想郷の新聞は外の世界の新聞と変わらない感じだな。

…へぇ、妹紅の焼き鳥屋が繁盛しているようで良かった。

 

レ「見るべき場所はそこじゃないわ、ここよ」

 

そう言って指を差したレミリアは呆れた顔で息を吐く。

そこにはこう書いてあった。

 

空に人の影? 光線を発射しながら進む影を激写!!

 

昨日夕方、霧の湖上空で夕日に照らされながら空を飛ぶ人影が目撃された。

目撃者の情報によりますと人影は時々宙で静止しては光り輝く光線を放ち、空を駆けていったとの事。

人間の里では動きが奇妙な事から宇宙人や特殊な妖怪なのではないか、などと囁かれている模様。

(写真=博麗神社にて激写された人影)

 

誠「…」

 

レ「…誠、これはどういうこと?」

 

…うん、どうしてこうなった。

訂正箇所が多々あるけどこれはひどい。

まず第一に俺は宇宙人でも妖怪でもないから!

次に光線は鎖が夕日を反射して光ってるだけだから!

最後に宙で止まったのは方向を微調整してただけだから!!

 

…どうしてこうなった。




レミリアは誠が光線を放っていた事に興味津々だったようです。





次回予告
平穏な弾幕生活をしていた誠に一通の手紙が届く、それは幻想郷一の弾幕を決める戦いである通称D-1が行われるとの通知だった! 最初は渋る誠も参加を表明! 順調に勝ち進む誠に敵の魔の手が忍び寄る! 「永遠亭代表として勝たせてもらうわ!!」こ、この弾幕はまさか世界中の弾幕カメラマンが撮影を断念したあのトラウマ弾幕!? 次回「そろそろガチバトル回が迫ってきた」そのレーヴァテインは何を壊すのか


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第十六話 妹様

誠「つまり、俺はお前の友達ってわけだ」

 

雅「……」

 

誠「Do you understand?」

 

雅「ジョジョネタは昨日聞いたっての」

 

誠「ジョジョネタとわかってるのに記憶はないんだよなぁ」

 

雅「…帰れ」

 

誠「もう、つれないなあ雅人。はいはいいいですよ俺は帰りますよ」

 

俺の体が地面を離れて飛び上がる、飛行も随分うまくなったものだ。

 

季節は夏、いまだ暑さが幻想郷を包み込むこの季節は外に出るのも嫌になる。

だが大切な友人のためなら毎日からか――お話をしに行けるというものだ。

あれからほぼ毎日ネタを振っては帰ってを繰り返している、正直そろそろ記憶戻って欲しい。

 

まあそこらへんはあいつの頑張りしだいだな、俺は帰って積みゲー消化でもしよう。

 

 

 

 

 

紅魔館の自室には山のようにゲームが積んであり、一生かかってクリアできるかもわからない量だ。

PS3の棚からランダムで一本取り出す、ちょうど昨日ゲームを一本クリアしたので新しいゲームの消化をするためだ。

 

誠「…げ、スカイリムか。これクリアって概念あるのか?」

 

自由度の高さが売りのゲームと聞いたけどやるならPC版がいいなあ。

他のゲームをプレイしようと棚に手を伸ばす、その指先にあったゲームはオブリビオン。

 

…PS3って自由度の高いプレイが売りのゲーム多くないか? 自由度が高いゲームは廃人になるから好まないんだよな。

だって自由度が高いんだぞ? これはもう片っ端からクリアするしかないでしょ?

そんなことしてたら時間がなくなる、他のゲームにしておこう。

 

誠「お! ソウルキャリバーⅤか、クリエイトって単語には胸が熱くなる」

 

パッケージからディスクを取り出しPS3に挿入。

コントローラーを両手に構え、ゲームをプレイし始めた。

 

その時だった。

部屋の扉が大きな音を立てて開いた、驚きながらも扉を見るとパチュリーが部屋に入ってきた。

その表情からは切羽詰った様子が見て取れる、なにがあったかを聞く前にパチュリーの口が開いた。

 

パ「緊急事態よ! 妹様が部屋から出たわ!」

 

…お、おう。

うん、とにかく落ち着きましょう、ね? お茶でも飲みますか? 能力で創るので味は保証しかね――

 

パ「不味いお茶なんか飲んでる場合じゃないわ!! すぐに館から逃げなさい!!」

 

誠「なっ!? 不味いとはなんですか不味いとは!!

  確かに私の能力の場合味はないといっても過言では――」

 

その時だった、遠くで爆発音が響き渡り一瞬身がすくんだ。

なんの爆発だと疑問を思う前にパチュリーに胸倉を掴まれた。

 

パ「死ぬわよ!? 人間が妹様と戦ったりなんかしたら!!」

 

怒鳴るパチュリーは疲れたのか肩を上下に揺らして手を放した。

 

パ「いい? 一目散に館から出ること、いいわね?」

 

鋭い眼差しを向けられて一瞬恐怖を感じた、パチュリーは踵を返し部屋の外へ歩く。

 

誠「待ってください」

 

パチュリーを呼び止める、だいたい状況は把握したが聞きたいことはある。

 

誠「妹様とはどんな人ですか、私の能力では情報がないのですが」

 

パ「…あなたの能力は幻想郷の主要人物の把握だったわよね、妹様の情報がないのは…。

  まあありえないことじゃないわね」

 

パチュリーはこちらに向き直り扉に魔法をかけた、結界の類だろうか。

 

パ「妹様は読んで字のごとくレミィの妹よ、ただちょっと精神に異常があってね。

  普段は地下の自分の部屋で過ごしているのよ」

 

パチュリーは「お世話は咲夜が担当してるわ」と言うと溜め息をついた。

 

パ「名前は――」

 

誠「フランドール・スカーレット」

 

驚くようにこちらを見るパチュリーを尻目に話を始める。

 

誠「情報が来ました、495年も地下にいたのですか…」

 

パ「…仕方がなかったの、レミィも苦渋の決断で地下に幽閉したのよ」

 

フランドール・スカーレット、レミリアの妹で姉と同様の吸血鬼。

495年は地下に幽閉されていたらしい、食料として人間を食べる。

最初からそのことは知っていた、だがいくら能力として公言しているこの知識でもフランは表に顔を出すことなどなかったので知らないことにしていた。

 

誠「わかりました、すぐに避難します」

 

人間である俺が戦闘をして勝てないと思っている中の一人、いやその中でもぶっちぎりで一位に君臨しているのがフランドールだ。

命は大切にしたい、こんなところで死ぬのはごめんだね。

 

パ「わかったわ、外は雨が降っているから風邪をひかないように」

 

誠「魔法で降らしたのですか」

 

パ「そう、吸血鬼は流れる水に弱いのよ」

 

パチュリーはそれじゃあねと小さく手を振り、紅魔館の廊下を飛行していった。

俺もフランに見つかる前に逃げなくてはと外に出ようとした。だが置いていってはならないものがこの部屋にはたくさんある、もしもだが紅魔館が半壊したなどとなったらこのゲーム達のデータは抹消される。

つまり最初からだ。

 

誠「…『ゲームを守る』『命も守る』、両方やらなくちゃいけないってのがゲーマーの

  辛いところだな」

 

部屋に結界でも張るか? いや逆に目立ちそうだな…。

それならいっそ何もしないでおいてゲームは布とかで隠しておく? 部屋に入られたら絶対布めくるよなぁ。興味本位で破壊されたらたまったもんじゃないわ。

いっそ扉を隠すか? 部屋の扉に壁紙貼って隠す、これは…だめだな。

 

?「なにしてるの?」

 

誠「大切なものをどう守るか考えてるんだよ」

 

?「大切なものって?」

 

誠「もちろん俺の部屋にある貴重な品々さ、これは守り抜か――」

 

言葉が止まった。

考えることに夢中で反射的に受け答えしていた。

…いや、応えたことはどうでもいい。

 

この声は誰だ。

 

俺はこの声を知らない。

 

声色は少女のようだがこの声は知らない。

 

…少女?

 

確かフランドールは吸血鬼。

 

吸血鬼は百年くらいでは体は成長しない。

 

姉のレミリアがあの体だ、つまり妹のフランドールも。

 

 

部屋の扉を勢いよく閉めた、体が無意識にやっていた。

それは人間の生きるという生存本能が体を動かしたようだった。

部屋の奥へと移動して扉に結界を張る、何重にも何重にも。

フランドールは吸血鬼であるために怪力の持ち主だったはず、それでも本気で創った結界なら破れないはず。

 

このまま、部屋でじっとしていれば…。

 

希望を持ったその刹那、扉が爆発した。

轟音が俺の耳に突き刺さる、慌てて耳を抑えたがキーンと言う音が脳内でやまびこのように響いた。

扉の木片は床に散乱し、結界はガラスが割れたように床に散らばって光の粒となり消えていった。

…ああ、そうだったな。

平和ボケしてたよ、ここは幻想郷だったな、忘れていたよ。

フランドール・スカーレット、この少女の能力は―――。

 

フ「…みーつけた」

 

―――ありとあらゆるものを破壊する程度の能力。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 博麗神社

 

レ「あれ、私んちの周りだけ雨が降ってるみたい」

 

幻想郷の空は黒い雲に覆われており、いつ雨が降ってもおかしくない。

だが神社には雨粒一つ降ってこない、雨は紅魔館にだけ降っているようだった。

 

博「ほんとだ、何か呪われた?」

 

魔「もともと呪われてるぜ」

 

冗談めいた口調で言う二人はレミリアに少しだけ恨みでもあるように言った。

 

レ「…困ったわ、あれじゃ帰れないわ」

 

博「あんたを帰さないようにしたんじゃない?」

 

魔「いよいよ追い出されたな」

 

友人とじゃれあうように言う二人を尻目にレミリアは額に手をおいた。

 

レ「あれは、私を帰さないようにしたというより…」

 

魔「実は、中から出れないようにした?」

 

博「やっぱり追い出されたのよ」

 

ニヤニヤと笑いながらレミリアを見る霊夢。

 

レ「…まあ、どっちみち帰れないわ。食事どうしようかしら」

 

「げっ!」「おっ!」と声があがる、霊夢と魔理沙はレミリアが言いたいことを読み取ったようだ。

 

博「仕方ないなぁ、様子を見に行くわよ」

 

魔「楽しそうだぜ」

 

レミリアに神社の留守を頼み、巫女と魔法使いは紅魔館へと飛んだ。

その影を見送りながらレミリアは一人の少女を思い浮かべた。

 

レ「ああ、そうか、あいつのこと忘れてたわ」

 

思わずレミリアの口から溜め息が溢れた。

 

レ「きっと、外に出ようとしてパチェが止めたのね」

 

流れる水、吸血鬼の弱点である雨が紅魔館の周りだけ降っているのはこのためだ。

 

レ「困るわー、私も、あいつも、雨は動けないわ…」

 

ごろんと神社の中で横になり、面倒臭そうに呟く。

仰向けになり天井を見上げる。

 

レ「…パチェは大丈夫ね、問題は誠だわ。下手に戦闘すると誠の場合…」

 

レミリアはそっと目を閉じた。

 

レ「…死ぬわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普段の俺は軽く飄々としたイメージでネタを第一に考えそうなタイプに見えるだろう。

やっべー死ぬわー、とか口で言っておきながら危機感は感じないタイプに見えるだろう。

確かに俺はネタを第一に考えるタイプだ、笑うのが好きだからな。

でもな、俺は臆病なんだよ。

実はゴキブリが苦手だったり幽霊信じてたりする。

命の危険に晒されたら逃げ惑うだろうと思う。

 

当たり前だ、人間の生存本能は強いんだよ。

 

さて、その臆病な俺は今守るものを二つ抱えて強大な敵の前にいる。

逃げるに逃げられない、この部屋唯一の出入り口をフランが陣取っているために逃げれないのだ。

いやどこでもドアとか創ればいけるだろうか? 創ってる間に死ぬな。

 

フ「ねぇ、あなた誠って言うんでしょ?話は聞いてたわ」

 

楽しそうに話し始めた、それは容姿相応の少女の話し方だった。

 

フ「あなた人間なんでしょ? 人間は飲み物の形でしか見たことないの」

 

誠「…人間は飲み物じゃないぞ、どちらかというと人形だ」

 

フ「人形はかんたんにこわれるけど、人間もそうなの?」

 

誠「そうだな、人間は脆い。心があるから人形より脆いかもしれない」

 

フ「そうね、私がぎゅってすればこわれちゃうもの」

 

…怖い、今は普通に話しているけど気が変わって能力で粉みじんにされたらと思うと…。

 

フ「それがゲームね、私もやりたいと思ってたの」

 

フランは俺の足元にあるゲーム機を指差した、その指をゲーム機に向けたままフランは手のひらを広げ、握った。

途端俺の足音にあったゲーム機は小さな爆発を起こして崩壊した。

それと共に、俺の中で何かが弾けた。

 

誠「…ならゲームをしよう、この幻想郷を代表するあのゲームを」

 

体は震え、歯からガタガタと音がする。

 

フ「遊んでくれるの?」

 

誠「ああ、だがこれは遊びじゃない。俺は命がかかってるっぽいからな」

 

フ「そうね、コンティニューはないわ。負ければバッドエンド」

 

誠「…覚悟はいいか? 俺はできてる」

 

弾幕を自身の周囲に創造していく、それを身に纏い突進した。

 

フ「いいわ、このゲーム(破壊)を楽しみましょう?

  アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!」

 

紅魔館に甲高い声が響く――。




殺意の波動に目覚めたフラン。






次回予告
戦いを始める二人。戦いは激しさを増し、館の中を壊しながらも戦いは終わらない。妹様を止めるために戦いに参加する咲夜さんは時を止めて捕獲しようと動く、だがフランは止まった時までも破壊して戦いを続ける。誠は恐怖を乗り越えてフランを止める事ができるのか? 次回「破壊と創造」…フランドールって聞いたらターンエーガンダムのあいつしか出てこないんですが。


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第十七話 破壊

待て、しからば時は訪れよう(待てばいつかその時が来るよ)。

昔私の友人が言った迷言です。


今回長めです、空白があまりないのでより長く感じます。


二つの風が舞った。

風は紅魔館の廊下へと吹きすさび、弾幕と共に踊っている。

 

誠「テメェは許さねぇ……絶対にだッ!!」

 

俺の叫びは爆風と共に相手に伝わる、フランはいまだ軽い笑みを浮かべている。

紅魔館の廊下を飛びながら繰り広がる弾幕勝負。

爆風を巻き起こしながら嵐のように飛び交う弾幕、その姿には奇妙な美しさがあった。

だがその内は違う、遊びなどではないのだ、これは殺し合いだ。

この弾幕の一つ一つが相手の首をもぎ取るための攻撃なのだ、一瞬の油断でその先に待つものが一つになる。

それは言わずもがな、死だ。

 

フ「そうこなくっちゃ!」

 

通常の弾幕はあくまでも遊び、相手が死なないように配慮されて弾幕を撃ち合う。

だがこれは弾幕ごっこではない、本当の戦いであり殺し合い。

互いのリミッターを外しているので弾幕一つ喰らえばアウトだ。

 

誠「これで……どうだッ!!」

 

露骨にフランへと弾幕を放つ、フランはそれを難なく避けた。

 

フ「っ、追尾弾幕(ホーミング)ね」

 

フランは直撃する寸でのところでそれに気づく。

上半身を捻って回避し弾幕を生成、相殺させて弾幕をやり過ごす。

 

誠「不意打ちというのは敵に気づかれては意味がない」

 

弾幕を四方八方に放ちながら呟く。

フランは俺を一瞬見たが問題はないと見たのか周りの弾幕を相殺していく。

 

誠「……だが」

 

空気が一変した。

弾幕は壁を反射するのを止めてその場に留まった。

丸い形をしていた弾幕はその形を豹変させ槍のように鋭くなりフランへと向く。

その数は約二百程だ。

 

フ「…へぇ」

 

弾幕が一斉にフラン目掛けて飛んだ。

フランは余裕の表情を浮かべて自身の周りに弾幕を生成した。

 

フ「吹き飛んじゃえ!!」

 

弾幕はフランの体を包み込み、轟音と共に破裂した。

強烈な風が辺りに吹き荒れ、弾幕は次々と弾き飛ばされる。

 

フ「楽勝ね」

 

弾幕は地面や壁に突き刺さり、光となって消えていく。

それを見届けるとフランは俺の方へと向き直ろうとした。

 

フ「え?」

 

辺りを見回す、だがそこに俺の姿はない。

 

フ「まさか!?」

 

咄嗟に上を見たフランの瞳に映ったのは右手を引き構えを取る俺の姿だった。

 

誠「おせぇんだよッ!!」

 

俺の拳が頭にクリーンヒットした。

頭から鈍い音が鳴り、フランは床に体を打ち付ける。

体制を整えようとフランが立ち上がる、だがその前に襟首を掴むと空中へと放り投げた。

 

誠「まだ終わりじゃねぇぞッ!!」

 

フランを追うように空中へと飛び上がり、横っ腹に蹴りを入れて壁に叩きつけた。

フランは苦しそうに小さな悲鳴を上げて地面に落下した。

 

誠「不意打ちってのはな、敵に気づかせてからするもんだ。

  ただし相手の動きを読めなきゃ意味ないけどな」

 

フランが頭を抑えながら体を起こした、眩暈でもしているのだろうか足取りがふらついている。

だが、それは違ったようだ。

フランはしっかりした足取りで数歩こちらに歩き、ふわりと宙に舞い上がる。

 

フ「驚いた、どこにそんな力があるのかしら」

 

笑みを浮かべてはいるがその目には怒りを孕んでいるように見える。

 

誠「手の内を明かすつもりはないね」

 

実際俺の力ではさっきのような真似はできない。

だが俺の能力は想像を具現化する程度の能力、それなら『俺は怪力』とでも想像すればいいわけだ。

ぶっつけ本番だが成功したのだ、結果的に良いことにする。

 

フ「それならこれでどうかしら?」

 

フランの右手が上がった、その手には一枚のカードが輝いている。

 

フ「禁忌『クランベリートラップ』」

 

スペルカードの宣言、つまりこれからが弾幕勝負の本番ということだ。

 

誠「…………」

 

宣言などなかったかのように周囲には弾一つ飛んでいない、静寂が辺りを包み込んでいる。

何も起きない……いやもう仕掛けているのか?

クソ、幻想入りする前に動画の一つでも見れば良かった…。

 

誠「…なッ!?」

 

変化は一瞬、俺の視界は紫色をした弾幕で埋め尽くされた。

だがそれは俺の周りを囲むばかりで攻撃の気配はない。

その瞬間、俺の頬を掠めるように赤い閃光が走った。

いや実際にはただの弾幕だろう、だがそれは予想以上に速く鋭い。

 

誠「くっ!!」

 

地上に立つ俺を囲むドームのような弾幕には隙間らしい隙間はない。

逃げ道がない、それならば――。

 

誠「禁忌『OFF波動』」

 

突如俺の背中に一対の翼が現れた。

それは天使や悪魔のような翼ではなく、例えるならば紫の光を翼に変えた物だ。

翼は俺の体をまるごと包み込み、旋風を巻き起こしながら羽ばたく。

 

誠「吹き飛べ!!」

 

旋風は俺を囲んでいたドームを崩していく、そしてその奥に待ち構えていた想像を遥かに超える量の弾幕をも埃のように吹き飛ばしていった。

荒れ狂う旋風の中、悠然と佇む少女は笑みを浮かべてこちらを見る。

 

フ「少しはやるのね、人間の癖に」

 

誠「あまり舐めてるとお前、怪我じゃすまねぇぞ…?」

 

威圧するように言葉を吐く、だが少女の瞳には少しの恐怖も孕んでいるようには見えない。

 

フ「いいわ、ならこれでおしまいにしましょう?」

 

右手を掲げてスペルカードを宣言する。

 

フ「禁忌『レーヴァテイン』」

 

レーヴァテイン、北欧神話に登場した破滅をもたらす枝であり杖であり剣でもある武具。

そのレーヴァテインを模したスペルカードならば…。

フランは両手を胸の前へと構えた、危険を察知し横へ飛ぶ。

その刹那、眩しいほどの光が廊下を照らした。

振り向くとフランの身長を優に超える大きさのレーザー型弾幕が放たれていた。

見ると床が少し焼けている、咲夜さんの力で広く固くなった紅魔館の床を焼く程の威力だと?

 

フ「強大なる炎に焼かれて肉片残らず燃え尽きなさい!!」

 

フランはそれを軽々と操り俺の方へと振るう。

間一髪背面から飛ぶようにジャンプして回避をする、がそこには炎を纏ったように輝いた弾幕が散らばっていた。

 

誠「チッ、クソが」

 

体制を立て直して宙を舞った、フランを見ると剣を振るうように構えていた。

 

誠「舐めんなよ、剣で俺に勝てると思ってんのか?」

 

右手から長剣を創造する、それは俺の身長を越えて巨大な剣となった。

刃に弾幕用のコーティングをする、これをすることによって弾幕に攻撃が通るようになる。

 

誠「北欧神話にな、グラムと言う剣がある。

  それは古ノルド語で『怒り』と言う意味だそうだ、今の俺にはピッタリだな」

 

フ「剣なんか出してどうするの? まさか斬り合いでもするつもり?」

 

フランは嘲笑いながら挑発してくる。

 

誠「そのまさかだが? お前力で勝てると思ってんのか?」

 

フ「ッ!!」

 

吸血鬼は人間が遥かに及ばない程の力を持っている、それを侮辱されたのだから怒るのは当然だろう。

 

フ「上等よ……斬り殺してあげるわ」

 

誠「来いよ、遊んでやる」

 

フランが怒り狂ったように剣を振り抜いた。

それを右手だけで持った剣で受け止める。

 

フ「なっ!?」

 

フランは驚きの表情を見せたがすぐにその顔は怒りの顔へと変化し、剣に力を込める。

俺はその剣を受け流すように剣を振るう、フランは体制を崩して地面に突っ伏した。

 

フ「きゃっ!」

 

誠「素人が振るう最強の剣を達人が流すのは簡単な事だ。

  それに、この剣は持つ者に栄光を約束する剣だ。降参するか?」

 

フ「ッ!!ふざけないで!!」

 

フランは両手に一枚ずつカードを掲げた、スペルカードを二つ同時に使うつもりのようだ。

 

フ「禁忌『フォーオブアカインド』禁忌『カゴメカゴメ』」

 

スペルカードが宣言されてフランの体がブレた、ブレはだんだんと大きくなりやがて四人に分かれた。

それと同時に紅魔館の壁や床から鎖を引くように弾幕が現れた。

…なるほど、カゴメカゴメで行動を制限させてフォーオブアカインドで潰すつもりか。

 

フ「さあどれが本物か分かるかしら」

 

一人が嘲笑いながら言う。

 

フ「最も、全員本物かもしれないし」

 

一人が楽しそうに言う。

 

フ「全員偽物かもしれないわね」

 

一人が笑みを浮かべる。

 

フ「さあ、遊びましょう?」

 

四人が宙に舞い上がり、弾幕を張り巡らせた。

一人は小さな弾幕を部屋中に、一人は大きな弾幕を部屋中に、一人はレーザー型弾幕を俺に目掛けて、一人は燃えるように熱い弾幕を部屋中に撒き散らす。

 

誠「俺は神経衰弱もかくれんぼも嫌いだっつーの!」

 

周りの弾幕を相殺し、相殺しきれない弾幕を回避しながら呟いた。

だが限界はある、俺の脇腹を弾幕が掠めた。

服は脇腹の部分だけ焼け焦げ、他にも右足や左腕、肩も服が破れていた。

 

誠「…ぐっ!」

 

一つの弾幕が右肩に当たった、幸いにも小さな弾幕が当たったようで血が少し出ただけで済む。

もしも威力のある弾幕やレーザーで肩を貫かれていたら…いや考えるのはよそう。

体制を立て直し、弾幕の相殺に取り掛かる。

 

フ「どうしたの? スペルカードでの宣言しなさいよ」

 

フ「そんな暇は与えないけどね」

 

フ「もうおしまいかしら?」

 

フ「もう少し楽しませなさいよ!」

 

一斉にフラン達が笑う、悔しいがフランの言う通りだ。

クソ、スペルカードを宣言しようにもカードを出す隙がない。

一か八かスペルカードに手を伸ばすか? いや、そんな素振りを見せたらそこで死ぬだろう。

なら本体を攻撃? そんな隙もないな…。

こう考えている間にも俺の体は傷付いていく、右肩の傷が悪化していくのも分かる。

 

誠「………クソッ!!」

 

……万事休すか?

 

その時だった。

 

?「夢符『封魔陣』!!」

 

?「恋符『マスタースパーク』」

 

カゴメカゴメが何者かの結界によって消し去る、続いて俺の周りに漂っていた弾幕も虹色に輝くレーザーによって相殺された。

驚いて振り返ると霊夢と魔理沙がこちらに向かってきていた。

俺は「ありがとう」と小さく呟き、スペルカードを宣言する。

 

誠「太陽『ライジングサン』」

 

手に歪な形をした銃を構え、天井に向けて発射する。

それは花火のように空へと昇り、眩い光と共に破裂した。

 

フ「なによこの光!?」

 

フ「熱い!」

 

フ「まさか太陽!?」

 

フ「くっ!!」

 

悲鳴を上げるように言ったフランは四人の体を寄せていく。

ブレは重なり合い、元の一つの体へと戻った

 

誠「そこだァッ!!」

 

右手を引き、フランの目の前へと跳躍し構える。

 

フ「同じ手は食わないわ!!」

 

フランは俺に両手の鋭い爪を振り抜く。

だが俺の体はそこになく、あるのは犬耳をした少女のぬいぐるみだけだった。

 

フ「えっ!?」

 

誠「このは『変わり身の術C』」

 

フランの背後に姿を現し、その隙だらけな背中に渾身の一撃をぶつける。

 

フ「うあっ!!」

 

小さく悲鳴をあげて少女の小さな体が吹き飛んでいく。

 

誠「まだだッ!!」

 

瞬時に移動しフランの体を蹴り上げる。

 

誠「これでッ!!」

 

また瞬時に移動し、極限まで力を溜めた蹴りを食らわせる。

 

誠「狩符『捕獲トラップ』」

 

地面に巨大な魔法陣が出現し、その中心にフランが落ちていく。

フランが地面に触れた瞬間に魔法陣が発光を始める、フラン体を縛るように粘着質な網が体中に巻き付いた。

 

誠「終わりだ」

 

地面に降りて魔法陣の中心へと歩く。

 

誠「無駄ですよ、それは力では千切れず炎では燃やす事もできないようにしてあります」

 

網を引き千切ろうと暴れるフランを見下ろしながら言う。

 

誠「まあまあ落ち着きましょうよ、ほらお茶をあげますから」

 

フランを起き上がらせて能力で出したお茶を口の中に放り込む。

 

フ「止めて! 不味っ!!」

 

誠「ダメですよ、出された物はしっかり飲むものです」

 

ふふふと笑いながら口にお茶を流し込む。

すると後ろに霊夢と魔理沙が降り立った。

 

博「誠ってうわ、すごい傷ねあんた」

 

魔「なにしてるんだ誠?」

 

誠「仲良くなるためにお茶を飲ませてるんだぜ、決して仕返しなんかじゃないんだぜ」

 

魔「…お前そこまでドSな性格だったのか」

 

魔理沙は溜め息をして俺とフランを引き剥がした。

…もう少ししかえ――仲良しになりたかったなー。

 

フ「…ずるい、最後あんなにスペルカードを使って」

 

誠「数は同じですよ、4枚ずつ二人共使ったじゃありませんか」

 

フ「そこの二人を入れて6枚じゃない」

 

そう言ってフランは霊夢と魔理沙を睨む。

…確かに6枚だ、まあそれはそれで置いておこう。

 

誠「なんでこんな事したのかなー? 場合によってはキミが壊した

  ゲームボーイと同じ末路を辿らせちゃうよー?」

 

魔「それはやりすぎだぜ」

 

博「誠のゲームボーイってのはどうなったの?」

 

誠「ゲームボーイは粉微塵になって死んだ」

 

博「あちゃー…」

 

霊夢が額に手を当てている。

フランを見ると頬を膨らませて怒っていた。

 

フ「だって地下から出てもお姉さまがいつもいないし、誠って奴が新しく来たから

  挨拶しにくると思って待ってたら全然来ないし」

 

…レミリア、博麗神社行き過ぎだよ。

あと挨拶しに行って来いとか言われてないんだから行けるわけないじゃんか。

まず存在を知らなかったわけだし、いや知ってたけど知ってたら不自然すぎるだろう。

 

フ「だから博麗神社に行こうとしたら…」

 

博「するな」

 

フ「止められた、お外は豪雨で歩けない」

 

誠「それは残念なことで」

 

フ「仕方ないから誠って奴の部屋に行ってみたら」

 

誠「行くな」

 

フ「誰もいない、外は豪雨で探しにもいけない」

 

誠「えっと、ありがとうございます?」

 

魔「そこは残念でいいと思うぜ」

 

フ「…とにかく、だから怒ったのよ」

 

いやいや子供かよ。って子供だったわ、いや見た目だけだったわ。

 

誠「それならパチュリーさんにでも言えば良かったのでは?

  誠って言う使用人(笑)に会いたいと」

 

博「(笑)ってまさにそうね、あんた家事してなさそうだし」

 

誠「生まれてこの方何度も家事はしました」

 

博「生まれてこの方の使い方違うわよ」

 

誠「ハイハイどーもさーせんしたー(すみませんでした)

 

博「…ねぇ魔理沙、こいつぶん殴っていいかしら」

 

魔「ああぶん殴ってもいいんじゃないか、あのプレゼントの件もあるし」

 

…プレゼント? あー。

 

魔「誠から渡されたプレゼントのぬいぐるみ、あれはなんなんだぜ」

 

誠「あれはゆっくり人形と言ってですね、魔理沙さんをモチーフにしてあります」

 

魔「私をモチーフにしてなんで首だけの顔がウザい饅頭ができるんだ!」

 

誠「しかも殴ると喋ります」

 

魔「何が「人のこと殴るなんてバカなの? アホなの? 死ぬの?」だよ!

  声もウザい事この上なかったぜ!!」

 

博「あら、私も人形貰ったけど可愛かったわよ。

  撫でたら「ファー・・・ブルスコ」とか言ってたけど」

 

誠「それはファービー人形と言ってですね、チョップすると

  「モルスァ」と言って吹っ飛んでいきますよ」

 

博「そうなの? 帰ったらやってみるわ」

 

魔「待て待て、なんで私にはそれくれなかったんだ?」

 

誠「欲しいならあげますよ、ホイ」

 

能力でファービー人形を創造し、魔理沙へと手渡す。

魔理沙は人形の顔を見ると口をへの字に曲げた。

 

魔「マジかよ、こんなのが可愛いって霊夢の感覚はどうかしてるぜ」

 

博「失礼ね、それ放っておくと「ナデナデシテー」って言って可愛いのよ?」

 

魔「なんだそれキモイ…そうだ誠、霊夢をモチーフにして

  ゆっくり人形を創ってみろよ」

 

誠「了解しましたよん」

 

能力で饅頭のような形をした人形を創造する。

それは霊夢の顔にどことなく似てはいるが見ている人を不快にさせる何かがあった。

 

誠「どうぞ」

 

博「あら可愛いじゃない」

 

霊夢の手にゆっくり人形が乗せられた、その衝撃でゆっくり人形が「ゆっくりしていってね!」としゃべりだした。

 

博「なによ可愛いじゃない」

 

魔「ど こ が だ !! ウザすぎてゴミ箱に投げるくらいだぜ!!」

 

誠「ボッシュートになります!」

 

魔「誠は黙ってるんだぜ!!」

 

魔理沙が霊夢とゆっくり人形について議論を始めた。

魔理沙が「ウザい」と言えば霊夢が「可愛い」と言う、堂々巡りになりそうだ。

 

誠「…すみません妹様、挨拶が遅れたりグーで殴ったり縛り付けたりしてしまい…」

 

フランの耳元に小声で囁く。

 

フ「…許すわ、ただし」

 

網が粉微塵になり崩れた、そういえばフランは能力で破壊できるんだった。

 

フ「これからは私と遊んでね?」

 

誠「もちろんです、昨日の敵は今日の友と言いますから」

 

フ「弾幕ごっこもしてくれるの?」

 

誠「得意分野じゃないのでご勘弁願うのですが」

 

フ「…じゃあ許さなーい」

 

誠「そんなぁ…」

 

フ「…ふふふ」

 

誠「…ふふ」

 

互いに顔を見ながら笑みをこぼす。

その場でフランは立ち上がり手を二回叩いた。

 

咲「お呼びでしょうか、妹様」

 

博「ひゃ!」

 

魔「うわ!」

 

いつの間にか現れた咲夜さんに驚く二人、これは結構見ないと慣れないからな。

 

フ「後片付けよろしくね、誠と一緒に」

 

咲「かしこまりました」

 

誠「マジですか!? 咲夜さんと共同作業とか何それ燃えるいや萌える」

 

咲「ほら速く壁紙と絨毯創りなさい、それと床板に工具も」

 

誠「ですよね~」

 

がっくしと肩を落とす、咲夜さんとランデブーできる展開はないんですか…。

 

博「…それじゃあ私は帰るわ、行くわよ」

 

霊夢はフランの方に視線をやった。

 

フ「え?」

 

博「神社に悪い子を置いて来ちゃったのよ」

 

フ「悪い子って、誰のこと?」

 

博「あんたの姉さんよ!!」

 

魔「んじゃ、私も帰るぜ。誠は後で俺の家からゆっくり人形持って帰るんだぜ?」

 

誠「今日はつかれたなー、あーつかれたなー」

 

魔「聞こえないフリしても無駄だぜ、じゃあな」

 

霊夢はフランを連れて、魔理沙は箒に乗って廊下を飛んでいく。

 

咲「壁紙が足らないわ、速く創って」

 

誠「わっかりましたー!!」

 

体を休められるのはもう少し後になりそうだな…。

 

 

 

 

 

 

咲「そういえば貴方、なんでスペルカード宣言していたの?」

 

誠「え? いや当たり前じゃないですか。それが弾幕勝負のル―――」

 

待てよ、今回の戦いは弾幕ごっこじゃなく完全な殺し合い。

つまりスペルカードルールは関係なかったのか。

 

…俺の苦労は一体。




レミリアはその頃ファービー人形が「ナデナデシテー」とうるさかったので蹴り飛ばしていたそうな。








次回予告
フランとの殺し合いを勝利に収めた誠はフランからリベンジマッチを申し込まれた。その種目はなんと弾幕ごっこではなくストリートファイターⅡ!! ザンギエフ使いの俺が素人に負けるわけない! スーパーウリアッ上もといハイスピードダブルラリアットで倒してやるわ! フランはガイルを選択し、決戦の火蓋が切って落とされた! ハッハッハ!!見るがいい! これが格ゲーだ!! 「ソニックブーム」ちょ、「ソニックブーム」おま、「ソニックブーム」くっ! ならば飛び込んで投げてやる! うわサマーソルトだと!? 「ソニックブーム」起き攻めソニックブーム…!? 貴様! このゲームをやり込んでいるな!? 次回「クロノファンタズマ稼働したよ! ツバキかわいいよツバキ!」胸に手を当ててお前の罪を数えろ


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第十八話 仮想現実

時が流れた。

幻想郷を襲っていた暑さは影も残さずに消え、幻想郷は冬に入ろうとしていた。

 

いや実際にはもう入っているんだが。

 

そして俺は今日も今日とて雅人に挨拶をしてから積みゲーの消化へ移る日々を繰り返していた。

そうそう、最近フランがレミリアとゲームをするようになった。

だいたいレミリアが勝つようだがフランも結構うまいらしい、対戦とかはしていないからわからんが。

 

誠「へ、へっくしっ!」

 

うぅ、冬は嫌いだ。手が動きづらくなってミス起こすし、風邪をひきやすいし、なにより布団から出たくなくなるからな。

 

誠「…んでだ、どうしてあなたが俺の布団に入っているんですかね」

 

フ「だって寒いんだもの」

 

そう言って俺の布団(電気毛布完備)の中でぬくぬくとしてるのは紅魔館の主レミリアの妹であるフランドールだ。

少し前は地下で過ごしていたのだがこの頃俺の隣の部屋を使っているのだ。

理由は「ゲームを取りに行くのがめんどうだから」らしい、お前そんなキャラだったか?

 

誠「子供は風の子と言う名台詞がありましてね」

 

フ「私は子供じゃないもーん」

 

と言ってフランは布団を頭からかぶった。

「もーん」で不覚にも可愛いと思ってしまったが俺はまだロリコンではないそうだ断じて俺はロリコンなどという変態ではない強いて言うならば変態と言う名の紳士なのだ自分の布団に可愛い少女が寝ていて野蛮にも襲いかかるような変態ではないのでイエスロリータノータッチと言う有名な言葉も―――

 

フ「それよりなにかしましょ? この部屋にあるのでいいから」

 

っと、少々考え込んでいたようだ。いつの間にかフランは布団から頭だけ出してこちらを覗いていた。

 

誠「なにをしますか? チェスやバックギャモンなどのボードゲームから麻雀やトランプまで

  数多くのゲームを取り揃えておりますが」

 

フ「おすすめは?」

 

誠「麻雀が好きなのですがルールを覚えるとなると少し大変なのでこちらで」

 

そう言って俺はテレビの隣にある棚から一つのゲームを取り出す。

 

誠「ただしこれをやるのならば人数が足りませんね、お嬢様と咲夜さんと美鈴はどうだろうか…

  パチュリーさんも図書館に篭っているのもよくないので連れ出すとして…」

 

フ「私、誠、お姉さま、咲夜、美鈴、パチュリー。これで十分じゃないの?」

 

誠「いや、まだ足りませんね。これは俺が腕によりをかけて創ったゲームですので…

  そうですね、最低8人は欲しいですね」

 

フ「じゃああと二人は霊夢と魔理沙?」

 

誠「美鈴は門番なのでできないかもしれませんね、とりあえず人を集めましょうか」

 

フ「そうね、私はお姉さまと咲夜を呼んでくるね」

 

誠「メインホールにお願いします」

 

フ「おーけー!」

 

そう言うとフランは布団から飛び起きて部屋から出て行った。

 

…扉を壊して。

 

誠「そんなに慌てなくても……まあいいか」

 

何個目かわからない俺の部屋の扉を創造して扉を修理しながら呟く。

そろそろ俺の部屋だけ扉を壊す癖を治してもらいたい。

 

誠「さて、メインホールに暖房と機材のセットをしなくちゃな。

  …ついでだ、あいつ(雅人)にも声かけてみるか」

 

これは面白くなってきた。そう思いながらニヤけ顔で部屋をあとにした。

 

 

 

 

 

 

メインホールには9人の人影があった、そこに俺の姿はない。

代わりにあるのはところどころボロボロなセットとステージ。

何が始まるんだとハテナマークを頭に浮かべている9人をよそに、メインホールの明かりが突然消えた。

ステージから安っぽいドラムロールが流れ始め、終わったと同時にステージの照明が輝きだした。

そこで俺が裏方から飛び出す。

 

誠「さあ本日お集まりの皆様! この寒い冬空の中紅魔館にお越し頂きありがとうございます!

  早速ですが本日のグランドフィナーレ! メギドラオンでござ――」

 

レ「そのネタは多分幻想郷じゃ私以外に通用しないから!」

 

メインホールに集まった全員が一瞬何を言っているんだと俺の方を見た。

やめてください、ちょっと茶目っ気を出しただけなんです。その冷ややかな視線は痛すぎます。

…コホン。

 

誠「本日のメインイベントであるホログラムマシーンの登場です!」

 

ヒューヒュー! 待ってました! 歓声がラジカセから流れ、俺が創ったマシーンが運び込まれ―――。

…………………。

 

誠「…あ、ちょっと待っててくださいね!」

 

急いで裏方へと降りた。

「妖精メイドさん達! 打ち合わせの通りにやってください!!」

「え、忘れてた? …次はお願いしますね」

 

フ「まことー! 聞こえてるよー!」

 

誠「気のせいです!!」

 

再びステージに上がり、マイクを持つ。

 

誠「…んんっ! それでは本日のメインイデ――」

 

……………………。

やめてください大事なところで噛むのは人の運命(さだめ)なんですその冷ややかな視線は…。

…だー! もうっ!!

 

魔「グダグダだぞー!」

 

誠「はい、ギャラリーはお静かに! ホログラムマシーンの登場です!」

 

早口で言うとステージ右側のカーテンが上がった。妖精メイド達が持ってきたのは地球儀のような形をした一つのマシーン。

 

誠「あ、そこに置いてね」

 

博「…置き場所くらい打ち合わせしときなさいよ」

 

聞こえなかった、何も聞こえなかった。

耳を塞ぎながら心の中で呟く。

 

誠「さて、このマシーンの仕組みは! かくかくしかじか」

 

レ「これこれうまうま」

 

フ「なにを言ってるのお姉さま」

 

レ「はっ! しまったわつい癖で!」

 

誠「ノリがいい人は大好きです。ではこのマシーンの使い方をさらっと紹介しましょう!」

 

ステージから降りてマシーンを手に持つ、重さは1キロあるかないかってところだ。

 

誠「まずこのマシーンはホログラムマシーンと言います。

  この上にある穴にディスクを入れることで機械が作動、そのディスクに応じた風景が

  周囲に映し出されます」

 

これだけならただの観賞するだけのマシーン、だが本題はここからだ。

 

誠「そして! 入れたディスクがゲームディスクだった場合、そのゲームがプレイできる!

  これが俺が設計、開発したマシーンなっのっだ!!」

 

レ「わかりやすく説明するなら、仮想現実世界を作り出せるのね」

 

誠「その通り!excellent(エクセレント)っ!!」

 

「ふふん! 簡単よ!」と胸を張るレミリア、可愛いなぁ。

 

魔「おもしろそうだぜ!」

 

魔理沙が肩を慣らすように腕を回した。

 

博「もちろんクリアでご褒美よね?」

 

霊夢が胸の前で腕を組みながらこちらに問いかける。

 

誠「もちろんです!」

 

グッ、と腕を前に突き出して親指を立てる。

 

誠「他の皆さんもよろしいですね?」

 

レミリアがもちろんと言う眼差しでこちらを見る、その後ろにはフランが同じようにして立っていた。

その傍らに咲夜さんが立っている、視線を向けると「大丈夫よ」と返事をしてくれた。

左には本を脇に携えたパチュリーがムスっとした顔でこちらを見る。

大丈夫そうだな、そのまた左に立つ少女へと視線をずらす。

緑色の帽子に水のように綺麗な青い髪をした少女が立っていた。

背中にはリュックを背負っており、水色を基調とした服を身にまとっている。

この少女は俺の友人であり、幻想郷探索中に知り合った。

名前は河城 にとり(カワシロ ニトリ)、種族は河童らしいが皿も甲羅も見たことがない。

 

河「もちろん、私はちゃんと完成したか見ないといけないからね」

 

幻想郷には妖怪の山という場所があり、そこに探索しようとして知り合ったのだがその時持っていたゲーム機について知りたいと言われたのがきっかけだった。

興味深々で俺のゲームを見るにとりの目は子供に新しいおもちゃを与えた時のそれだった。

っと、話がそれてしまった。

 

誠「大丈夫ですね、それでは起動しましょう!」

 

マシーンを足元におろしてから視線を全員に送る。

 

誠「栄えある第一回目のディスクは―――」

 

その時だった。

ガタン、と言う音と一緒に照明が全て消え、メインホールが暗闇に飲み込まれる。

 

誠「あれ、電気が切れたかな?」

 

発電器と懐中電灯を創り、部屋の照明をつけた。

電気が消えてから付くまで、約2分。

 

たったそれだけの間だった。

 

誠「大丈夫ですかみなさ―――」

 

後ろを見ようとした、だがその前にある異変に気づいた。

ここは紅魔館、だが俺の目には自然豊かな丘の上に見えた。

それだけではない、他のみんなの姿がない。

視線を後ろに移すとそこには誰もおらず、代わりに――。

 

誠「…り、リオレウスっ!?」

 

赤い甲殻を身に纏い、空を駆ける王者がいた。




最新ではなく3rdでもない、2ndGです。








次回予告
どこで設定をミスしてしまったのかモンハンの世界で離れ離れになってしまった誠達、このままでは誰かがやられてしまうかもしれない。焦る誠をよそに他のメンツはちゃんと村からスタートし、意気揚々と狩りに出かけるのであった。次回「狩りに出るなら二度荷物確認だ!」あれ、クーラードリンクが…。


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第十九話 疾走

ホログラムマシーン、風景を映し出すための機械として作られたのだがどう転んだのか仮想現実世界を創りだすことができるマシーンになった。

この発見に俺とにとりは椅子からガタッと立ち上がり「イヤッッホォォォオオォオウ!」と言うくらい喜んだ。

 

ちなみに発音の仕方はホログラム(→)マ(↓)スィーン(↑)だ。

 

さて、俺は今空にいる。

実はホログラ…ああもう言いづらい、マシンは能力や空中浮遊などのアクションはできないように設定してあり、自身の力では飛べないようにしてある。

 

誠「どうしてこうなった」

 

ではなんで俺が空にいるのか、それはこう言うことだ。

 

 

 

 

 

 

誠「…り、リオレウスっ!?」

 

俺の驚く声に反応したのか、どっしりと佇むリオレウスはこちらに巨大な首を向ける。

 

ガアアァァアアァァァァアアアッ!!

俺の鼓膜どころか体事態を破壊できるのではないかと思えるほどの咆哮が辺りの空気を震わした。

武器も防具も持っていない弱者を逃すほど、王者は大きな器を持っていないようだ。

 

誠「クッ…ソ!!」

 

に、逃げなくちゃ、死ぬ。

自分の創ったマシンで死ぬとかちょとsYレならんしょこれは…。

俺は踵を返して後ろへと飛んだ、リオレウスは確か突進や飛びつき、ブレスなどは全部直線的だったはずだ。大丈夫プレイ時間カンストしてる俺なら全て避けられるはず。

 

誠「…?」

 

飛んだ途端の落下感。一瞬気のせいかと思ったほどの小さな感覚だったがそれは気のせいなどではない。

体が落下を開始する、足元を見ればそこに地面はない。

あまりの高さに顔が青ざめる、高所恐怖症ではない俺でも見た途端に危険だと分かる高さ。

それは奇妙にも自分の足よりも下に雲があるという光景、それはこの状況でなければ美しく感じただろう。

 

誠「ああああああああああああああ!?」

 

あまりの出来事に叫ばずにはいられなかった、フランとガチでやった時に肩を負傷したがその時の痛みでもこんな叫びしなかったのにだ。

寒い、血が全てなくなったように体が冷えた。

 

俺はここで死ぬのか、そう思った時だった。

 

ガッと全身に衝撃が走った、なにか硬い物の上に落ちた感じだ。

地面? いやそれはない、あの高さだ、体が痛い程度で済むはずがない。

つまり…どういうことだってばよ?

 

ガバっと体を起こして周りの見渡す、風は自転車に乗っている時のように強風を俺の体に叩きつけていた。

前だけを見ているのに右へと景色が移動していて、たまに視界に緑色の何かが入る。

 

まさかと思いその場から立ち上がる。

 

誠「…マジですか」

 

そこは赤い王者と対を成す緑の女王、地の女王リオレイアの背中だったのだ。

 

 

 

 

 

 

助かったには助かったけど…これは巣に持ってかれるフラグだ、早々にここから脱出しなくては…。

リオレイアは俺が背中に乗っていることに気づいていないようだ、それなら尚更早く逃げねば。

気づかれないように慎重に緑色の巨大な背中を這い歩いて地面を覗く。

ちょうど真下が砂漠、しかも砂が柔らかそうだしリオレイアも低空飛行気味。

運がいいけどある意味怖いくらい万全のタイミングだ。

 

ふっ! と足に力を入れて地面へと飛び降りる、リオレイアが羽ばたく旅に舞い上がる砂のお陰もあり気づかれずに降りることができたようだ。

シュタっ! とかっこよく地面に…着地!

 

ぶにっと足の裏から砂ではありえない感触が伝わった、それはまるで大きな魚のような…。

 

ギャアアァァァアアッ!! と人間では出せない鳴き声が足元から聞こえた。

…ま、まさか――。

 

突然俺の体が宙に舞った、下から強烈な勢いで押し上げられたかのように俺の体が空を飛ぶ。

それだけではない、ついでに何か砂と同じ色をした2メートルくらいの生き物が俺の隣に浮いていた。

よく見るとそれの頭頂部には俺の靴の痕がくっきり残っていた。

 

地球の重力は偉大だ、どんなに人間が飛び上がっても地面から足を離すことを許さないからな。

いやはや、いい仕事ぶりである。

だが今回は言わせてもらおう、仕事しすぎですよ重力さん。

 

飛び上がっていた俺は空中で停止し、青ざめた顔をしながら地面に落下していく。

下を見ると鋭い牙と硬い背ビレをした生き物であり、俺の隣で落下しているのと同じ奴――ガレオスが三匹群れを成して俺の着地地点に留まっていた。

 

誠「…死ぬなこれ、あー嫌な人生でした――って死んでたまるかよおおお!!」

 

こんな時に一人漫才なんかしている場合ではないのは分かっていたがこうする事によって良い案が閃く事が多いのだ。

 

…よし。

 

口を開けていたガレオスAの上顎に着地、そのまま急所…だと思う小さな目を蹴りつける。

言葉に出来ないような小さな悲鳴があがり、首を振るったガレオスAの頭を蹴ってその隣にいたガレオスBを踏みつける。

ガレオスCが耐え切れず飛びかかってきたが、それは予想の範囲内だ。

飛びかかってくるガレオスCを背に走り出す、ガレオスCは俺の背中を噛み付こうとスピードを上げたが、もう少しというところで空から落ちてきたガレオスと激突、そのまま地面に崩れ落ちる。

 

…おし、逃げよう。

 

 

 

 

 

 

誠「確かここら辺にベースキャンプがあったはずなんだけど…」

 

この世界、モンスターハンターは人間とモンスターが共に生きる世界であり、それと同時に弱肉強食の世界でもある。

共に生きる=共存ではない、それは狩る者と狩られる者がいる世界だ。

貧弱な人間は強大なモンスターに狩られる、だが狩られる者は狩られっぱなしではない。

人間は知恵を出して武器を手に取り、強大なモンスター達を狩るのだ。

もちろん全員が武器を持つわけではない、狩る者はハンターと呼ばれており、強靭な武器と堅固な防具を身にまとい戦うのだ。

 

…なんて恐ろしい、勇気ある奴だよねハンターは。

 

さて、話しを戻すがベースキャンプとはそのハンター達がモンスターを狩るために使う拠点であり、この世界唯一の交通機関がある場所である。

普段は大型モンスターも入れない場所に立ててあるため、破壊される心配はない。

 

誠「おかしいな…プレイ時間カンストした俺が道を間違えるなんて…」

 

いつの間に俺は方向音痴になったんだ? そんなわけないんだけど…。

困った、これじゃどうすることも出来ないな…。

 

…っと? あれはなんだろうか。

砂漠を歩き回って一時間、岩と岩の間に小さな亀裂があるのを発見した。

その下を見ると大人一人が通れる程の穴がポッカリあいている。

 

誠「………」

 

さすがに俺もバカでない、この中には大型モンスターはいないだろう。

慎重なくらいが丁度いいこの世界だ、モンスターに襲われたこともあるので用心してしまう。

 

…ここで立っていてもしょうがない。

スイッチがあって、押すなと言われたら押すタイプの俺は中に入ることにした。

 

誠「せっかくだから俺はこの赤い亀裂を選ぶぜ!」

 

欠片も赤くない亀裂に向かって身を低くし、中に進む。

距離は10メートルくらいだろうか、そのくらいの距離を歩くと岩に囲まれたドームのような空間に出た。

ドームといっても天井は開いており、一応ベッドらしきものとテントが貼られていた。

 

誠「…そう簡単に見つかったらこんなところすぐ壊されるからな、そりゃ隠れてるわな」

 

うはーやっと休むことができ――。

 

?「…誠? …誠なのか?」

 

いきなり聞こえた声でビクっ! となりながらも声をした方に振り返った。

声の主は俺が通ってきた亀裂から顔を出し、全身を亀裂から出す。

 

誠「ま…魔理沙!? ちょ、お前左腕は…」

 

魔理沙は右手で左肩を抑えながら苦しそうに呻いた、右手の指の間からはとめどなく赤い色をした液体が流れ出ている。

左肩には噛みちぎられた痕が出来ており、そこにあるはずの左腕は――。

 

…そこになかった。

 

魔「…ここに来る途中…化け物共に襲われてな…スペルカードも使えないし…

  飛べないから逃げるのも苦労したぜ…」

 

誠「ま、まさか…ガレオスにやられて…」

 

魔「へへ…大変だったぜ…」

 

誠「ほ、他の皆は!?」

 

魔「…パチュリーが足元から…不意を突かれて…そこから一人ずつ…」

 

そんな―――。

 

魔「…残ったのは私一人だぜ…グッ!!…」

 

誠「…すまない、本当にすまない…俺が選択ゲームをミスったばかりに…」

 

謝って許してもらえるわけがない、でも口が勝手に動いていた。

 

魔「…いい、私がヘマしただけだぜ…」

 

涙が出そうになる、俺がもっとちゃんと設定していれば…。

悔しさとやり切れなさで胸が押しつぶされそうだった。

 

魔「…ぷっ…くくく…」

 

下を向いて涙を必死に堪えていると笑い声が聞こえた。

咄嗟に顔を上げると魔理沙が必死に笑いをこらえているのが見えた。

 

魔「くっ…くく…ふふふ…あははははははは!!」

 

ついに堪えきれなくなったのか、魔理沙が血まみれで大笑いし始めてた。

ま、魔理沙…腕食われてSAN値(正気度)が0になったのか…?

 

ぷっふふふふ…。

こ、こら! 聞こえちゃうでしょうが!

だ、だって…! わ、笑いが堪えきれな…あはははは!!

盟友が泣きそうじゃないか、さすがにこれはやりすぎ…。

いいじゃないの、テトリスでフルボッコにしてくれたお返しよ!

テトリスってなによレミィ。

ブロックを一列並べて消していくゲームだそうです。

へぇ、帰ったらやってみようかしら。

あはははははは…お、お腹いたい…!

あんたは笑いすぎよ。

 

誠「…魔理沙…? これは一体どういうことだね?」

 

魔「え…っとだな! 違うぞ! 私は霊夢達に言われた通りに…ぷっふあははは!!」

 

………。

 

誠「…さて、どう料理しようかね」

 

げ! 魔理沙が白状したわ!

逃げるわよ!!

ま、待ってお姉さまー!!

 

誠「…霊夢、お嬢様、妹様の三人、おまけに魔理沙だな…。

  にとりと咲夜さんにパチュリーさんは違うだろうし」

 

魔「に、逃げるぜ!!」

 

魔理沙が右手に持っていた血袋を投げ捨てて左手を服の中から出した、そして一目散に亀裂の中へと走っていく。

 

誠「お前らッ!!死ぬより恐ろしい物を見せてやろうかゴラァッ!!」

 

キャンプから頑丈そうな縄を持って魔理沙達を追いかける。

 

魔「誠が来たぞ!!」

 

レ「バカ! こっちくるんじゃないわよ!!」

 

博「げっ! 今まで見たこともない顔してるじゃない!!」

 

フ「きゃーこわーい!」

 

誠「激マズ茶飲ませるぞテメェら!!」

 

 

 

 

 

 

誠「(…全員けがしてなくて本当に良かった…)」




霊夢以外の三人は縄で縛られてありがたいお説教を誠に延々と聞かされたと言う。






次回予告
全員無事に集まった誠達は船に乗り込んで雪国のポッケ村へとたどり着く。一面に広がる銀世界を堪能した誠達は、ある家のボックスから武器防具を整えてることができた。あとは道具だ、村にいる行商婆さんに意気揚々と話しかける。「すいません、商品を見せてもらってもいいですか?」「ヘェ~イ、アラブゥ」「え、あの」「アンガラ、アンガラ」「ちょ」「フングァ」意味不明な言葉で受け答えする行商婆さんを見て誠は一つの間違いに気付く。「…言語変更ボタン押し忘れてた」次回!『偉い人は言った、ブーメランでも大型モンスターは狩れると!!』あの動画の更新を何年も待ち続ける。


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第二十話 狩猟準備

ちょっと長めです。


空を見上げれば煌々と輝く太陽が目に入る。

周囲を見渡せば切り立った山々が目に映る。

砂埃を舞い上がらせて進むのは俺たちの世界でいう馬車のような乗り物。

二匹の獣が力強く引き、前に進む。引いている荷車はテントのように布が張られており太陽の光や砂埃をカバーしていた。

 

誠「涼しいなぁ」

 

魔「顔出してると危ないぜ、誠」

 

誠「へいへい」

 

その荷車の中に俺たち八人はいた、荷車と言っても結構大きいので荷物は大量に積み込めるようだ。

あまりの荷物にこの荷車を引いている獣、あいつらが疲れて倒れないかが心配になってきた。

なぜここにいるかと言うと二日前に砂漠を通りかかった商隊(いわゆる商人たちの集まり)に拾ってもらったのだ。

親切な人たちで助かる。

 

誠「…あぁ眠くなってきた」

 

博「なに? 寝てなかったの?」

 

魔「いや誠はさっき起きたばかりだぜ」

 

誠「それでも眠いんだよ、暇な時は眠るに限る」

 

荷車が走るごとに起きる小さな揺れが俺の睡眠欲を掻き立てる。

この世界は交通機関があると言っても一日で目的地に着くような簡単な物ではない、大体二日から三日かけて目的地に着くぐらいの速さだ。

道路が整備されてないのが一番の問題のため実際はそこまで遠くない場所でも回り込んで走る事なんて日常茶飯事、安全第一で結構なことだが。

 

フ「う~…」

 

レ「ふふふ…」

 

フ「…こっち!」

 

レ「残念ね、それはジョーカーよ!」

 

フ「う~…」

 

レ「ふふん、さあ私の番ね」

 

フ「…はい!」

 

レ「……こっちよ!」

 

フ「あー!!」

 

レ「ふふっ、当然の結果ね」

 

昨日から飽きもせずトランプをしている紅魔館組筆頭のレミリアとその妹フラン。

今はババ抜きを四人(・ ・)でしていたようだ。

もう一度言っておこう、四人(・ ・)だ。

つまりレミリアは「勝って当然、フランに負けるなんてことはありえないわ!」的な余裕を見せているが実はもう咲夜さんとパチュリーに負けた後である。

お嬢様、返って滑稽に見えますよ。

 

レ「あら誠、今何か不快な事を思わなかったかしら?」

 

誠「そそ、そんなことありませんよお嬢様」

 

レ「…まあいいわ」

 

吸血鬼だからかそれとも元からか、勘がいいのは時に困りものだ。

あまり勘が鋭いと下手な事に気付いてSAN値(正気度)が急低下して発狂しちゃうぞ?

…ん? そうだ八人もいるんだからTRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)できるんじゃないか?

 

TRPGはゲームがない時代に作られた夢と冒険とファンタジーな世界を体験できるRPGの先駆けとなった物だ。

PL(プレイヤー)はルールブックを読んで自分のキャラクターを作成し、GM(ゲームマスター)という進行役を通じてゲームをする。

行動は全て口で言い、成功したかなどはダイスで決めるのだ。

実は俺の友人たちはバリバリの現代っ子なので「口で言うって演技するってことだろ? いや恥ずいしめんどくさそうだからパス」などと言うのでやったことはない。

俺はインターネットで見知らぬ人と遊ぶことしかしたことないがまあ大丈夫だろう。

 

初心者ばかりだがまあそれも返って面白いだろう、もちろんGMは俺でストーリーは前に暇だから書いたアレを…。

必要な物は紙と筆記具…それとルールブック。

…あールールブックないわ、創ろうにも能力できない世界だったわ。

ちぇ、残念。

 

魔「…なんだか急に冷えてきたな」

 

誠「ああ、そろそろ雪山にさしかかるところだな」

 

河「雪山?」

 

誠「そう、雪山。ちょっと予想外の事が多かったけどここまでは一応予定通り」

 

咲「予定通り、つまり目的地も知ってるってことね」

 

誠「Exactly(その通りでございます)、そろそろこのゲームのクリア条件とかも話しておくべきだな」

 

座り込んでいたその場から立ち上がってゆっくりと伸びをする、こんな狭いところに二日もいれば体が、主に骨が悲鳴を上げるというものだ。

 

博「クリア条件? 前から気になってたけどこれ好きに現実に帰れるわけじゃないのよね?

  と言うことはクリア条件を満たせば帰れるってわけ?」

 

誠「そうそう、それを満たさなくちゃ帰れないんだこれが」

 

ポキポキと骨を鳴らしながら体操をする、いや何故って寒いから体を動かしてるんだよ。

 

パ「で、そのクリア条件はなによ」

 

パチュリーはレミリアからカードを引きながら横目でこちらを見る。

 

誠「はい。このゲームはモンスターハンターというゲームであり、その名の通りモンスターを

  狩るゲームです。クリア条件は一つ、あるモンスターをこの世界の物で狩って貰います。」

 

魔「あの魚みたいな気持ち悪い奴か?」

 

誠「あれはいわば雑魚。ボスとしては力不足だぜ」

 

魔「じゃあ何を狩るってんだぜ」

 

誠「まあ慌てなさんな、私は小三の頃から豆すら…ってこれ違うわ。

  …んんっ!!今回のターゲットはずばり王道、イャンクックです…って名前じゃわからんか」

 

まあ伝わらなくてもいいだろう、多分後で分かるだろうし。

 

誠「そしてこの荷車が向かっている場所こそがハンターの拠点、一年中雪で覆われた村。

  名前はポッケ村です、それほど大きい村ではありませんが設備は大体整ってます」

 

河「温泉とかはあるのかい?」

 

誠「温泉はあるけど入ってる暇はないぞ、次回作に期待しとけ」

 

残念そうな顔でこちらを見るにとり、まあ落ち込むなって。

 

誠「さて、そろそろかな」

 

俺がそう言い終えた瞬間荷車がガタンと大きく揺れた、バランスを崩しそうになるがなんとか持ちこたえる。

ここで倒れたら周りの七人のどれかにダイブすることになるのだ、ラッキーイベントの前に好感度下がるだろ。

いや俺がヘタレだとかそんなことはない、やる時はやるから…って何考えてんだ俺。

 

誠「さあ出ましょうか、そしてようこそポッケ村に」

 

荷車の布を捲るとそこには雪、銀色に輝く雪が一面覆いながら八人を歓迎していた。

 

 

 

 

 

 

誠「次にお前は『寒い!』と言う」

 

レ「寒い!…ハッ!!」

 

誠「半袖じゃ寒いですよね~」

 

俺はちゃっかり防寒着を荷車から拝借していたため寒くないのだ! フゥハッハー!!

 

レ「そう言う誠は震えてるじゃない」

 

誠「そ゛う゛て゛す゛、さ゛む゛い゛て゛す゛」

 

鼻水をすすりながら答える、ああそうさ極度の寒がりだよ私は!

こたつでぬっくぬくしたいよ! 足がしもやけで痛いのは毎年だよ!

 

さて、今俺たちはポッケ村に建つ一つの家にお邪魔させてもらっている。

ここは本来ゲームでプレイヤーが一人で使う家であり、非常に狭い。

八人なので非常に狭いのだ、人口密度が高いってレベルじゃねっぞ!

 

博「それで? これからどうするのよ」

 

誠「ま、待ってください。囲炉裏に火を付けるので…へっくし!!」

 

囲炉裏に赤い草を入れて木の棒で擦る、すると火花と共に火が出始めた。

 

河「その草は?」

 

誠「火薬草と言って爆弾にも使われるこの世界に自生する植物だぜ、強く擦ると爆発するぜ」

 

魔「人の口調を盗むなと何度言ったら分かるんだぜ」

 

誠「そんなことより火がついたぜ、あったまるぜ」

 

魔「…もういいぜ」

 

もういいも何も人の喋り方は個人の勝手だぜ!

嘘だぜゴメンだぜ!! だからその木の棒を下ろすんだぜ!!

 

誠「…はい、それではこれからの事を話しますよ」

 

全員の視線がこちらを向く、改めて見たら霊夢の腋が寒々しい。

ああ、見てたらこっちも寒くなってきた。

 

誠「まずそこにあるボックス、そこには狩りに使うアイテムがあります。

  そして隣の部屋には武器防具や大きいアイテムが保管してある部屋、奥の部屋はキッチンです。

  まずは武器防具の選択ですがまあ細かいことはおいといて好きなのを選んでください」

 

パ「質問いい?」

 

誠「どうぞ」

 

パ「武器の種類はどうするのかしら?」

 

ってパチュリーさん、その手に持つ本は『月刊・狩りに生きる』!? 棚にあったものを目ざとく見つけて読んだのか。

 

フ「武器の種類?」

 

誠「そう、武器には種類があって大きく分けると剣、槍、ハンマー、ボウガンって感じ。

  それに関しては自分で扱ってみて自分に合った物を選ぶべきですね、もし決められないの

  ならば私がオススメを選びますよ」

 

モンスターハンターの武器はシリーズを重ねるごとに多くなるが今回使用できる武器は11種類だ。

重い斬撃を敵に食らわせる大剣。

華麗なコンボと美しい刀身で魅了する太刀。

小回りがきくサポーターの片手剣。

身軽な動きと高いダメージを狙える双剣。

抜群の破壊力で敵を叩き潰すハンマー。

笛の音色で味方を援護しそのまま殴れる狩猟笛

高い防御力を持つが使う人の技量を問われるランス。

防御力に加え高い火力を持ち合わせるガンランス。

身軽な動きで後方から敵を狙い撃つライトボウガン。

重い銃撃で敵を圧倒するヘビィボウガン。

矢の弾幕を張りながら敵を翻弄する弓。

この11種類だ、これらを使って狩りをする。

 

俺の案内で全員は隣の部屋に移動、飾られた武器から自分が使う武器を選択してもらう。

今回の狩りはそこまで強力な装備でなくても勝てるので初心者が扱う武具がおかれている。

 

パ「私は弓でいいわ、軽くて私にも扱えそう」

 

パチュリーは遠距離武器だろうと思ったけど弓か、パチュリーなら扱えるだろう。

 

魔「私は一番破壊力のありそうなハンマーを選ぶぜ」

 

誠「絶対選ぶと思ったわ、殴った時の爽快感とか派手なところとか。

  あ、ちなみに重さは考えなくていいですよ、この世界のハンター並の筋力は勝手に

  ついているように設定してありますので」

 

そうしなくちゃ魔理沙がハンマー持てないだろうし。

 

咲「私はランスにするわ」

 

誠「あらら? 咲夜さんなら片手剣を選ぶと思ってたんだけどな」

 

咲「お嬢様を護る盾になるためよ」

 

なるほど、納得の答えだわ。

 

河「私はヘビィボウガンにしよっと、なにより仕組みが気になる!」

 

うん大体予想できてた、ガンナー二人目と。

 

博「私は双剣を使おうかしら」

 

双剣か、霊夢は何使うか予想できなかったんだけど双剣を使うのか。

そういえば双剣には鬼神化と言うパワーアップ状態になれる行動があって…。

ん? 鬼神化?

…そういうことか、流石は鬼巫女と言われるだけある。

 

フ「私は大剣がいい! 楽しそう!」

 

小さな少女が大剣背負って狩りに出る…ありだな。

 

レ「最後は私ね、ランスが良かったのだけれど咲夜がやるなら違うのにしようかしら…。

  誠、オススメは?」

 

誠「片手剣はいかがでしょうか? 剣で切りつけ盾でガードできる万能な武器です」

 

レ「それでいいわ」

 

誠「これで全員が決め終わったか、次は人数分けだな。

  この世界は大体4人パーティで狩りに出かける、てなわけでこれからチーム分けをするぞ」

 

なぜ4人パーティなのかは詳しいことは知らない、だがハンターの中で5人以上で狩りに出るのは不吉だという迷信があるらしい。

では人数分けもといパーティ決めだ。

 

誠「そうだな、綺麗に武器が分かれてるしチームワークも取れるようにしたい。

  お嬢様、フラン、咲夜さん、パチュリーさんでパーティ組んで貰うかな。

  霊夢、魔理沙、にとり、そして俺でパーティ組むことにしよう」

 

前衛後衛キチンと分かれてるしいいんじゃないかな?

 

誠「そして先に獲物を仕留めたパーティがご褒美を貰える、OK?」

 

レ「誠がいるならどう見てもそっちの方が有利じゃない!」

 

誠「そんな事はないですよ、俺の武器を考えればむしろそちらの方が有利です」

 

魔「ところで誠はどの武器にするんだ?」

 

誠「ふっふっふ! よくぞ聞いてくれた」

 

すぐさま俺はふところからあるアイテムを取り出す、その数は五つ。

 

博「うわ、どっから出したのよソレ」

 

誠「気にするな俺は気にしない。これはただの板切れに見えるでしょうが違います!

  これはブーメランと言って技量がある人が投げたら帰ってくるアイテムです。

  ちなみにダメージはごく微量であり、壊れることもあるアイテムです」

 

ブーメランを両手の指に挟んでナイフを投げるように構える、どや!!

 

魔「…そんなのじゃこっちが負けるぜ」

 

誠「ところがどっこい! なんとこれを使って狩りをする人もいるのです!」

 

ごく少数だが、本当にごく少数だがいるんだよ、そういうもの好きが。

 

誠「さて、今日は飯食って寝ましょう。長旅の疲れをあるでしょうし」

 

パ「賛成ね、ちょうどお腹が空いてきたところよ」

 

窓から外を見ると夕焼けが目に入った、結構長話をしていたようだ。

 

誠「では、料理を頼んでくるので少し待っていてください」

 

レ「頼むって誰に?」

 

誠「それは後のお楽しみです」

 

キッチンに入ろうと一歩目を踏み出して振り返る。

 

誠「絶対に覗かないでくださいね…絶対にですよ…特に魔理沙とお嬢様とフラン…

  絶対に覗かないでくださいね…」

 

魔「え!? わ、わかったぜ」

 

レ「も、もちろんよ」

 

フ「う、うんわかったわ」

 

誠「テーブルを用意しておいてくださいね…ふふふ…」

 

そう不敵に笑いながら俺はキッチンに入っていった。

 

 

 

 

 

誠「お待たせしました、それでは料理を運んできて貰いましょうか」

 

一時間経ったかそこらでキッチンから出ると全員がお腹が空いていると顔で分かった。

いや咲夜さんは普通だわうん、パーフェクトメイドは伊達じゃなかった!

 

博「運んでもらうってこの家には使用人でも雇ってるの?」

 

誠「そうそう、立派な使用人を雇ってるぜ。それじゃあお願いしまーす」

 

後ろを振り返り声をかけると二足歩行をする猫のような生き物が料理を頭の上に乗せて運んできた。

まるで板前のような服をした猫やコックの服装をした猫が重そうに料理を持ちながらテーブルに料理を並べていく。

 

河「おーかわいいねぇ! 二足歩行する猫がいるんだ~この世界」

 

フ「かっわい~!!」

 

魔「まさかこの猫たちが料理したのか?」

 

誠「そうです、この猫たちが料理したのです。味はばっちりです」

 

博「料理に猫の毛がごっそり入ってたら食欲が失せるわね」

 

誠「衛生上の管理は問題ありません」

 

レ「それなら安心ね! もう食べてもいいのかしら?」

 

誠「料理は全部並んだようですね、それでは皆さんご一緒に!」

 

「いただきます!」




ここだけの話しスラッシュアックスがない2ndGにしたのはスラッシュアックスの模写が難しそうだなぁとか思ってゲフンゲフン。







次回予告
その手に「く」の字に曲がった板を持ち、防具も付けずに狩りに出るそのハンターを皆は尊敬の念を込めてブーメランハンターと呼んだ。そして今このポッケ村に新たなるブーメランハンターが誕生しようとしていた! 「全てのモンスターをこのブーメランで…狩る!!」少年はその手にブーメランを構え、大自然へと足を踏み出す。その先に待つのは栄光か!? 名声か!? それとも絶望か!? 次回『クリスマスですね。…クリスマスですね…』孤独な少年に幸あれ!


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第二十一話 狩猟

夜。村は静まりかえっており騒がしいのは酒場だけとなった。

俺たち幻想郷御一行はテーブルを囲むようにして座っている、もちろん座布団の上でだ。

 

誠「つまり!」

 

バンッ、とテーブルを叩いた。半分眠りかけていたフランが何事かと飛び起きる。

フランを見ると俺の視線に気づいたようで照れたように頭をかいて座布団に座り直した。

コホン、と咳払いをして話しを進める。

 

誠「このゲームに死亡するような模写はない、だがまだマシンは完成していないから何が起きるか

  わからないんだ。モンスターが異様な行動をしたり、いきなり地面がなくなったり、背中から

  火が上がる可能性もある。一応強制終了できるがこれも危険性があるので使いたくはない。

  十分に用心して狩りに望んで欲しい」

 

全員がこちらを見てからコク、と首を縦に振った。

物分りがいい奴らが多くて助かる、てか天才集団だったわこの少女たち。

 

誠「それじゃあ明日出発だ、それじゃあおやすみなさ――

  おはようございます! 今日も清々しい朝ですね!」

 

俺がおはようございます! というとさっきまでの暗さは嘘だったように外は明るくなった。

窓から小鳥が朝を告げるように入ってきてチュンチュン鳴いている。

 

魔「うぇえ!? い、いきなり空が明るくなった!?」

 

レ「朝日があぁ!! 私の肌がああぁ!!」

 

誠「ちょっと強制的に朝にしました、ちなみにこの日光で体は焼けません」

 

博「なんで日光なのに焼けないのよ」

 

誠「この世には突っ込んだら負けなものが多数あるのです」

 

たとえば…ゲームやアニメとか…ね?

…さて、今日も良い一日が始まるな。

 

誠「さあ疲れは取れているはずですよ、パパっと狩りに行きましょう」

 

博「確かに眠気がなくなってるわね」

 

霊夢が肩を回しながら言った、その服でやると異様に可愛いと思うのは俺だけでいいはず。

 

フ「く…ーク……リ……」

 

レ「ほらフラン、朝よ朝」

 

フ「クリーク…戦争(クリーク)…」

 

誠「よろしい ならば戦争だ」

 

博「どうしてそうなるのよ!!」

 

魔「霊夢、こういうのがツッコミしちゃいけないやつだぜ」

 

魔理沙もやっと俺のネタを理解してくれたようだ、実に嬉しいことだがツッコミがなくなるのは嫌だな。

まあ多分耐え切れなくなったら霊夢かパチュリーあたりがツッコミしてくれるはずだ、問題ない。

 

誠「さあ全員ポーチを腰に付けろ! 武器を背負え! さあ! 狩りの時間だ!」

 

河「張り切ってるねぇ誠」

 

咲「リーダーできるのが嬉しいんでしょ」

 

リーダーできて嬉しい? ちゃうねん! 狩りの前は士気を上げるのだよ! やる気出るでしょ!

やる気がないと狩りはできないのだ!

そんなことを考えながら俺は自室をから出て集会場へと歩き出した。

 

 

 

 

 

誠「ここが集会場だ、ここで依頼を受けてハンターは狩りに出かける」

 

集会場にはカウンターとテーブル、依頼を貼って人を募集するクエストボードなどがある。

奥には依頼を受けて目的地へと行くハンターのために移動用の乗り物を貸し出ししている、

カウンターでは依頼を受けることができ、テーブルでは飲食店と同じように料理を頼んで食事をすることができる。

まあ全員腹減ってないからな、多分。

 

誠「依頼は1パーティの内一人が代表して依頼を受ける、俺のパーティは俺が代表だ。

  てなわけで依頼を受けるぞ、紅魔館パーティは咲夜さんよろしくお願いしますね」

 

咲「分かったわ」

 

カウンターで依頼を受ける、人数は四人と書いて依頼を受けた。

よく言われるんだけどボードを使うのは知らない人をパーティに入れる時の場合だ。

つまり知人と狩りに出る場合依頼受注時に人数書いて終わりだ。

 

誠「さあこれからはパーティで分かれてやる。

  昨日教えた狩りの基本を思いだしながら頑張ってくれ」

 

全員が返事をし、村を出発する。

そういえば伝えていない事があったけどまあいいだろ、すぐ分かることだし。

 

集会場の奥にある出口へと歩を進めた、外は太陽の光が眩しくてよく見えない。

その光の中に一歩踏み出した。

 

その時だ、周りの景色が一瞬のうちに変わった。

先程までの雪景色ではなくそこには青々とした自然が広がっていた。

この場所は『森丘』、読みは『もりおか』でも『しんきゅう』でもいいらしいが俺は『もりおか』で読んでいる。

 

河「お~! 転送装置かな!?」

 

誠「残念だけどこれは移動時間をカットしただけだと思うぞ、三日は長いからな」

 

博「武器の試し振りをしてもよさそうね」

 

魔「私のハンマーが唸るぜ!」

 

誠「マジでブオンブオンと唸ってるから怖いわ」

 

まあ今回の狩りはイャンクック、そこまで頑張る必要はないだろう。

久しぶりのモンハン、いやリアルモンハンだ。存分に楽しませてもらおう。

 

誠「さあアイテム持って行くぞ、にとりは弾を忘れるなよ」

 

河「おっけ~」

 

さあ出発するか。

 

 

 

 

 

 

誠「いたぞ、あれがイャンクックだ」

 

小声で後ろをついてきていた三人に注意を促した。

イャンクックと呼ばれるモンスターはこちらに背中を向けている、いや背中ではなく()だ。

イャンクック、2メートル大の鶏を想像して貰うと分かりやすいがその体は人型ではなく鳥の姿だ、朱い甲殻と鱗を全身に纏い、顔には大きな(クチバシ)と耳を持っている。

鶏でいう尾羽の部分にも同じく朱い鱗を纏った尻尾があり、これはハンターの中で伸びると噂になっている。

鶏に腕がないようにイャンクックにも腕と言われる部分はない。だが鶏と同じように翼を持ち、鶏とは違って空中を自在に飛ぶことができる。

 

霊夢と魔理沙は背中に背負っていた武器に手をかけ、にとりは武器を背中から下ろして構えた。

ヘビィボウガンはその名の如く非常に重い、構えたら自由に動くことができなくなるがその代わりに抜群の威力で敵を打ち抜く弾丸を発射できる。

 

河「ペイント弾やるかい?」

 

ペイント弾はモンスターが傷を負った時などに逃げられた場合、モンスターの位置を特定するために使う弾丸だ。

モンスターに予め弾丸を当てておき、モンスターが逃げたときに弾丸が放つ強烈な匂いを追ってモンスターの位置を特定するのだ。

 

誠「まだいい、ゆっくり近づいて魔理沙が初撃を入れる」

 

魔「不意を突くのか?」

 

誠「そうそう、ダメージが高くなるだろうしな、そして霊夢は俺と同じように遊撃にまわる」

 

博「了解よ、切ってかわせばいいんでしょ?」

 

誠「よく動きを見ろよ? 思わぬ動きをすることがあるから」

 

博「大丈夫よ」

 

本当に大丈夫なんだろうか、でも霊夢が言うと大丈夫そうだから怖い。

 

誠「さあ行くぞ、気づかれないようにな」

 

静かに、足音を殺してイャンクックに近づく。

にとりはボウガンの重さがあるため非常に遅いのだが俺含めその他三人は足早に近づいていく。

だがあと5メートルくらいまで近づいた時にイャンクックが動いた。

イャンクックは耳が異様に大きく、耳がとても良い。遠くで枯れ枝を踏んだ音も聞こえるらしい。

気づかれたか? ならば先手を打つまでだ。

 

誠「魔理沙、振り向かれる前に足に叩き込め」

 

魔「了解!」

 

小声で短く会話をし、魔理沙が走り出した。

イャンクックは高さとして2メートル少しあるのが普通だ、このイャンクックも例に応じて2メートル少しの大きさだ。

その巨体を振り向かせるには少々時間がかかる、人間と数秒の違いだがその数秒が狙い目だ。

魔理沙が走りながらハンマーを背中から下ろして両手で構えた、それを後方に大きく振りかぶりながら力の限りイャンクックの右足を叩く。

ギョアゥ、と人では理解出来ない鳴き声でイャンクックが小さく悲鳴をあげた。

不意を突かれたのもあってかイャンクックが怯んだ隙に全員に指示をしていく。

 

誠「にとりはペイント弾! 魔理沙は追撃を入れて一旦引け! 敵をよく見て攻撃しろ!

  霊夢は俺と逆側に回って攻撃だ!」

 

河「了解!」

魔「了解だぜ!」

博「了解よ!」

 

俺はブーメランを一本構えて投げるその一本はイャンクックの頭上を通り抜けていった。

 

博「なに一発目を外してんのよ!」

 

誠「外してなんかねぇって、ほら」

 

霊夢が投げたブーメランを見るとそれは空中で急に旋回、イャンクックの耳にヒットする。

 

誠「あそこが弱点だ! よく狙えよにとり!」

 

河「任せなって!」

 

博「…キャリアが違うわねホント」

 

褒め言葉をどうもありがとう、だがこれ現実だと「ただのゲーマーかよwwwゲーム以外やることねぇのかよwwwww」とか言われるな絶対。

俺はそう言う奴ら全員に言ってやりたい。

www()生やしてんじゃねぇよ!」と。

 

河「誠!」

 

誠「げ、やっべ!!」

 

イャンクックが尻尾を振って攻撃してきたがそれを後ろに飛んで回避する。

まああの長さなら当たらないはずだ、そこからブーメランを耳に投げて耐久を…。

 

誠「ウボァッ!!」

 

イャンクックの尻尾が俺の左肩に当たった、体のバランスを崩して地面を転がる。

追撃されたらまずいな、急いで体を起こしイャンクックの方を見る。

イャンクックは魔理沙に攻撃をしているようだった、魔理沙は危うく嘴で(ついば)まれそうになるがそれをイャンクックの股を通る要領で前転する。

すれ違うように啄みを回避し、魔理沙は距離を取った。

 

誠「魔理沙! 今ので正解だぞ!」

 

魔「大体動きは分かってきたぜ!」

 

魔理沙がイャンクックの後方からハンマーを振り上げて近づき、足を狙って叩き込む。

初撃のダメージが思ったより大きかったのかイャンクックはバランスを崩して転倒、地面に倒れ込んだ。

 

誠「チャンスだ! 一番威力の高い攻撃を叩き込め!」

 

全員が武器をイャンクックへ構える。霊夢は双剣を頭上に掲げて気を高めた、すると霊夢を赤いオーラのようなものが纏い始めた。双剣固有の強化技である鬼神化だ。

そしてイャンクックの頭に陣取り、乱舞を繰り出した。

鬼神化中は乱舞と言う攻撃を使用することができ、この技は双剣の技の中でも最大の威力を誇る。

…なんで霊夢教えてもないのにその攻撃を知っている。

これが鬼巫女の力かと思いながらブーメランを二つ構えてイャンクックに投げる、ブーメランが戻ってくる前に二本のブーメランを両手に構えて尻尾の場所を陣取った。

にとりが背中と翼、魔理沙が足、霊夢が頭、じゃあ俺は尻尾だろう。

俺は尻尾の前に立つとブーメランを頭上に掲げた、すると霊夢と同じように俺の体を赤いオーラが纏い始めた。

思った通りだな、これはリアルが混ざっているようなものだから出来ると思ってた。

ブーメラン二つを双剣代わりにしてイャンクックの尻尾に乱舞をお見舞いする、ブーメランはそれほど切れ味はないが乱舞おかげか尻尾を纏っていた鱗が徐々に剥がれ始めた。

一回乱舞を終え、帰ってきたブーメランをキャッチしてまた投げる。

またブーメランを持ち直して乱舞をお見舞いする。

…辛い、スタミナゲージがブーメランでマッハなんだが?

 

魔「楽勝だぜ!」

 

魔理沙が勝ち誇ったように言いながらハンマーを振るった、イャンクックの足を纏う鱗が何枚か剥がれ飛んで俺の足元に落ちた。

 

河「全員無傷で済ませられそうだ!」

 

にとりのボウガンから放たれた弾丸はイャンクックの甲殻に傷を付けていき、とうとう頑丈な甲殻が一枚剥がれた。

それはにとりの足元へと飛んでいき、途中で地面に落ちて転がりながらにとりの靴に当たる。

 

河「お? これ貰っていいんだよね!」

 

にとりがキラキラとした目で攻撃を止めてイャンクックの甲殻を拾い上げる、それと同時にイャンクックが起き上がった。

そしてイャンクックはにとりの方へと向き直り、にとり目掛けて嘴から燃え盛る火球を吐き出した。

 

誠「にとり!」

 

叫ぶように言うとにとりは飛び起きるようにイャンクックの方を向く、だが火球は赤く輝きながらにとりの眼前に迫っていた。

 

 

 

 

 

 

煙が上がった、黒煙だ。

何かが燃えるような匂いが辺りに漂う。

 

誠「にとり!! 二人共イャンクックの注意を引いてくれ!」

 

ブーメランを懐にしまいながら黒煙に駆け寄る。

 

誠「にとり!! 大丈夫…か?」

 

森丘はいつもそよ風が吹いているため煙は風に乗って霧散した。

そこにあったのは壁、コンクリートか何かで出来た壁が立っていた。

中央には黒い焦げ跡があり、コンクリート事態が燃えたような跡だった。

なんだこれは、死んだらこの世界では瞬時に墓石が建つのか、それなんてメイプルストーリー?

俺が考えていると突如ガシャン、ウィーンとメカメカしい音を出しながら壁は空中に浮き上がった。

よく見たらそれは鉄パイプのようなものに繋がっており、それを目で追うとそこには頭を庇うようにうずくまったにとりがいた。

 

誠「だ、大丈夫か?」

 

河「だ、大丈夫。メカが勝手に起動してくれて助かったよ」

 

自動防衛システム、起動。とかメカっぽいボイスが流れながらコンクリの壁をが現れるのか、なにそれロマン溢れてる。

というかそんなの持ち込み禁止だろ、世界観がブッ壊れて…。まあ助かったんだし多めに見よう。

 

誠「さあ戦うぞ、次は油断するなよ?」

 

河「分かってるよ誠!」

 

にとりが元気よく言い放ちヘビィボウガンを構えなおす。

元気みたいだしトラウマにもなってないだろう、それなら大丈夫だな。

俺もブーメランを構えて投げる、それは今までと同じように耳を切るように動くがよく見るとイャンクックの耳が切れていた。霊夢さんいい仕事しますね。

 

誠「イャンクックの全身の傷を見る限りもう少しだな、ならそろそろ逃げるはず…。

  …その前に倒す」

 

懐から閃光玉を取り出して強く握った。

 

誠「全員目をとじろ!!」

 

閃光玉をイャンクックの眼前に投げつけて咄嗟に目を庇った、すると目を閉じていても分かる程の強烈な光が輝いた。

この光を普通に見たら目が眩むだろう、人間なら失明してもおかしくない。

キョアアァァァァアアアアッ!!とイャンクックの叫び声が聞こえた、光が収まり目を開ける。

イャンクックは前が見えないようで大人しく突っ立っていた、他三人は全員無事のようで魔理沙、霊夢、にとりの順に攻撃を再開した。

 

博「誠も早く攻撃しなさいよ!」

 

誠「俺は…これを仕掛けなきゃいけないんで!」

 

懐から直径30センチくらいの円盤状の物を取り出した、どこにしまってたか? 禁則事項です。

これをイャンクックの少し前に設置、すると円盤がはビリビリと音を発し始めた。

俺が円盤を仕掛け終わった直後イャンクックの目が回復したようだ、俺の姿を見るなり啄み攻撃をしてきたが股を通り抜けて回避。

啄みをしたことで勢い余って一歩前に踏み出したイャンクックの足は円盤の上に乗り、円盤の効力が発揮される。

あの円盤はシビレ罠と言って踏んだ相手を痺れさせるのだ。

ここで間違ってはいけないのが痺れるの意味だ、物理的なビリビリ感の意味で言っているが感動的な意味のシビレるではない。断じて憧れたりはしない。

 

誠「完・璧・です!(かん・ぺき・です!)

 

できればりんごを右手に持って宙に投げながら言いたかったが創れないので仕方ない。

 

誠「総員、上に気をつけながら畳み掛けたまえ!」

 

全員が武器を構えなおた、魔理沙が痺れたまま動けないイャンクックの頭をハンマーで殴り、霊夢が右足に乱舞を食らわし、にとりが左翼に弾丸を撃ちまくる。

罠の効果が切れてイャンクックが飛び上がろうとするが霊夢の乱舞によって転倒、傷のせいで起き上がれないようだった。

イャンクックの頭へと近づいてブーメランを構える。

 

誠「小便はすませたか? 神様にお祈りは?

  部屋のスミでガタガタふるえて命ごいをする心の準備はOK?」

 

ブーメランを逆手に持ち替えてイャンクックに聞く、人の言葉を理解できないイャンクックも俺の気迫で意味がわかったようだ。嘴がカタカタと震えている。

 

誠「OKさよなら、Amen(エイメン)

 

硬いはずの嘴を貫通してブーメランが刺さった、それと同時にイャンクックは全身が痙攣したように動いたがすぐに力なく死んでいった。

 

誠「討伐完了」

 

魔「誠、最後の最後にエグいなぁ」

 

博「嘴割れちゃってるじゃない」

 

河「楽しかったね誠、次は私の好きなゲームにさせておくれよ!」

 

誠「いいぞ、帰ったらゲーム選びだな」

 

河「やっほぉ!」

 

三人を見るが全員傷はないようだ、何事もなく終わって良かった良かった。

 

魔「見ろよ霊夢! この傷私がつけたんだぜ!」

 

博「なによ、そんな傷より私の傷の方が凄いじゃない」

 

魔「それ一箇所じゃ活躍したとは言えないぜ」

 

博「小さな傷が三箇所と大きな傷一箇所じゃあ結果は明白よ」

 

魔「私の勝ちだぜ!」

 

博「違うでしょ!」

 

全員楽しめたようだ、これなら司祭者とも言える俺も嬉しい限りだ。

 

誠「さて、お嬢様はどうなってるかな~」




私は悪くないんです、全部ガキ使が悪いんです。
正月になってしまうとは…。





次回予告
誠がイャンクックを倒している間、レミリアは考えていた。「誠よりも早く倒すにはどうすれば…、そうよ私は吸血鬼! モンスターなんて私の両手で一捻りだわ!」 天才的な閃きだと自画自賛し意気揚々と狩りに出かけたレミリアはモンスターを前にして気付く、「そういえば能力封印状態だったわ!」慌てふためくレミリアの隣を颯爽と駆ける白い影、それはピンチの時にだけ現れるパーフェクトメイド咲夜様だった! 次回『我々は正月に頭を抱え 今まさに使い道を考える学生だ だが この暗い闇の底で 一年もの間 堪え続けて来た我々に ただのお年玉ではもはや足りない!! 大年玉を!!空前絶後の大年玉を!!』学生とはいえこの年になるとお年玉が貰えないのです。


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第二十二話 誤情報

言い忘れてたのですが全員一応防具を着ています、デザインは自身の服装と同じなため見た目は変わりませんが。


集会場の裏口を出て「いざ!」と気を引き締めた瞬間、眩い光によって視界が潰れるような感覚が私――レミリアの目を通り抜けた。

光が収まり、私はゆっくりと目を開く。

そこには先程までいた雪景色の村など欠片もない、ごく普通の森にテントを張ったような場所だった。

周囲を見ると咲夜がいつものように付き添っていた、パチェとフランは周りの景色を見ているようだった。

 

レ「…移動時間は誠が短縮したのかしら」

 

咲「そのようですね、お嬢様」

 

…この頃誠とばかり喋っていたからなんだか咲夜の「お嬢様」を久しぶりに聞いた気がするわ。

気のせいかしら? まあいいわ。

 

パ「フラン、武器の素振りをしておくといいわ」

 

フ「そうなの? よっと!」

 

フランが背中に背負っていた自分の体よりも大きい剣を地面におろした、剣の柄を両手でしっかり持ちゆっくりと持ち上げる。

 

フ「思ってたより重いわ…、太刀にすればよかったかなぁ」

 

レ「後悔先に立たずよ」

 

フ「むぅ、次があったら太刀を使ってみよっと」

 

フランは大剣を数回振るったあと背中に背負った、本当に疑問に思うのだけどこれどうやって背中にくっついてるのかしら…。

多分誠なら「ツッコんではいけないことです」とか言うわね。

さ、私も武器を軽く振っておかないと。

 

背中に背負っていた私の武器――片手剣を両手に持つ、誠が言うには盾は右手で剣は左手に持つのが普通らしい。

誠が言ったその通りに構えて数回振るう、剣は軽く扱いやすいし塚には滑り止めのために麻縄? が巻いてあるから振るってる途中で飛んでいく心配もなさそうね。

そういえば誠が言ってたわね、「盾でガードしながらアイテムを取り出せることも魅力の一つだ」とか。

試しに盾を構えながら左手で腰に巻いたポーチから回復薬を取り出す、剣を持っていても回復薬は簡単に取り出せた、さすがに飲む動作までやるのはちょっと恥ずかしいのでそのままポーチにしまい込む。

 

パ「(ビン)は全部あるわね、こっちは準備OKよ」

 

見るとパチェとフランは武器の練習なども済ませたらしい、私は準備OKだけど咲夜はここに来てから一度も武器を触っていない。

 

咲「私は大丈夫です、さあ行きましょうお嬢様」

 

…咲夜がそう言うなら大丈夫ね、本かなにかでも読んできたのかしら?

まあ咲夜はなんでもこなせる私の従者、心配はいらないわね。

 

レ「それじゃあ出発よ!」

 

私の掛け声と共に私を含めた四人が歩きだす、ご褒美が欲しいわけじゃないけど勝負には勝つわ。

ふふ、武器ももたずに狩りに出たことを後悔する程のタイムを叩き出してやるわ!

 

 

 

 

 

 

拠点を出発してから程なくしてターゲットは見つかった、赤い鱗と赤い甲殻を纏っていて大きな翼があるモンスター、あれがイャンクックに間違いないわね。

武器を抜いて両手に持ち構える、確か資料には口から火を出して攻撃することもあるらしい、十分に気を付けないといけないわね。

 

レ「パチェ、ペイントは狙えそう?」

 

パ「大丈夫、この距離なら当たるわ」

 

弓には瓶と言う特殊なアイテムがあって、弓にこの瓶を装填して使うらしい。

ペイント瓶と言う瓶を使うことによってボウガンが撃てるペイント弾と同じ効果があり、それによってターゲットの位置が分かる…らしいわ。

パチェがピンク色の瓶をポーチから取り出して弓に装填した、ペイント瓶は強烈な匂いでターゲットの場所を知らせるらしいけど…これは確かに強烈ね、瓶をポーチから出しただけでこの匂い…。

 

咲「お嬢様、ターゲットがこちらに背を向けました」

 

イャンクックを見ると確かにこちらに背を向けていた、これは不意を突けるチャンスよね。

 

レ「パチェ、私が合図したら射って。フラン、咲夜、行くわよ!」

 

咲「かしこまりました、お嬢様」

 

フ「とっとと片付けてご褒美をゲットしましょ!」

 

足音を立てないように走りだす。私は武器を両手に持ちながら走り、咲夜は武器を構えずに走る。

フランも武器を構えずに走り出した、全速力で。

 

レ「…ちょ、ちょっとフラン!」

 

全速力で走り出したフランはイャンクックの尻尾を目で捉えると背中の大剣を抜き、最大限の力を込めて振るった。

イャンクックはゴァゥッ!? と何が起きているのかわからないと言った声をあげて振り返る。

…確かに不意を突いたわね、私にもイャンクックにも。

…まあ結果的に不意を突けたからいいわ。

パチェに手で合図を送ってから片手剣を振るう、狙うのは右足。

どんなモンスターだって足を攻撃されれば転倒して隙が生まれる、そこが一番の狙い目と誠も言ってたし。

 

レ「咲夜はコイツの注意を惹いて! フランは隙を見つけて攻撃! パチェは翼を狙って!」

 

全員に指示をしてから右足を斬りつける、イャンクックは尻尾を振るう攻撃をしてきたけどそれは盾でガード。

衝撃で少し後ろに下がったけどダメージはない、また右足を狙って攻撃を始めた。

 

攻撃の合間に咲夜を見るとランスを構えてイャンクックの目の前で応戦していた、たまに口から放たれる火球や噛み付くような攻撃も全て盾でガードしてランスで頭を攻撃する。

そういえば資料にはイャンクックには大きな耳があるって聞いたけどコイツにはないわね、怪我した状態でハンターと戦うこともあるって書いてあったけどそれは極希な状態らしいし…。

つまりラッキーかしら、それなら初心者の集まりでもタイムは結構縮まるわね。

それとも咲夜が破壊したのかしら? いやさすがの咲夜でもそれはありえないわ。

 

フ「そーれぇ!!」

 

フランが掛け声と共に大剣を振り下ろした、大剣は弧を描くようにイャンクックの尻尾を斬りながら地面に突き刺さる。

すぐさま大剣を引き抜いてから大剣を持ち直した、両手を右脇腹へと持っていき大剣を構えた。

そのまま尻尾に狙いを定めて大剣を上方に斬り上げる、僅かだがイャンクックの尻尾に切れ目が入ったように見えた。

 

レ「…案外早く終わりそうね」

 

そんなことを呟いた時だった。

 

ゴォオオアアアァァァアアアアアッッ!!と辺り一帯、いいえこの森丘全体を震わすかのような咆哮が私の耳に突き刺さった。

意識もせず完全な反射行動で耳に両手をやって鼓膜を守る。

体が動かない、全身が恐怖ですくみあがっている、単純な恐怖が全身を支配していくのを感じた。

咆哮をした主であるイャンクックは未だに首を上げて辺りの空気を轟音と共に震わせている。

 

…おかしい、確か資料にはここまで大きな咆哮をするなんて書いてなかったはず。

パチェに視線を向けるとパチェも両手で耳を抑えて体をすくませていた、私の視線に気づいきアイコンタクトを取るがこんな行動は確かにしないと書いてあったらしい。

 

咲「お嬢様!!」

 

体まで震えるほどの威圧感がこの場を支配している、でも咲夜はその中を走っていた。

ランスを背中に背負って私のもとに駆け寄り、私を抱えるようにしてイャンクックから離れる。

イャンクックはそれを見てから尻尾を使って私たちを薙ぎ払うように回転した。

間一髪のところでそれを回避し、咲夜と共に十分な距離を取る。

イャンクックを見ると口から炎が溢れるかのように出ており、それは怒りの証であることは初心者の私でもすぐわかった。

 

レ「フラン! パチェ! 一旦引くわよ!!」

 

何か違う、資料で見たイャンクックとは違う気がする。

慎重なくらいが丁度いい、初心者の鉄則はまず死なない事だって誠も言ってたし。

 

レ「咲夜!」

 

咲「はいお嬢様!」

 

私の合図と共に咲夜はポーチから閃光玉を取り出してイャンクックに投げつける、それはイャンクックの眼前で眩い光を放ちイャンクックの視界をブラックアウトさせた。

その隙に私たちは隣のエリアへと逃げだした。

 

 

 

 

 

 

 

レ「あれはイャンクックじゃない?」

 

それは隣のエリアで休憩を挟んで作戦会議を始めた矢先、咲夜が言った言葉だった。

 

パ「私もそう思うわねレミィ、あまりに資料と違う箇所が多すぎるわ」

 

そこにパチェも意見し、いつの間にか作戦会議はターゲットが違うのではないかと言う議論に変わっていた。

 

レ「咲夜、イャンクックじゃないと思う根拠は?」

 

咲「はい、資料にはイャンクックは大きな嘴、そして耳をした鶏風のモンスターです。

  ですがあれは鶏ではなく飛竜(ワイバーン)、恐らくイャンクックよりも上のモンスターです。

  そして何よりの違いは…あの威圧感」

 

レ「…確かに、あれは死の恐怖を感じる威圧感だったわ。

  でも咲夜、確かに耳はなかったけど私の見た資料には赤い鱗と赤い甲殻と纏うモンスターって

  書いてあったわ。しかも二本の足で立ち、腕はないかわりに大きな翼を持っている。

  それならあのモンスターはイャンクックじゃないのかしら?」

 

パ「いいえ、私が見た資料にはイャンクックにあんな音を出す器官はないらしいわ。

  誠が言っていた『バグ』で強化されたわけでもなさそう、それにイャンクックの鱗や甲殻は

  少しピンク色をした朱い色のはず…、でもあのモンスターは真紅の鱗を纏っていたわ」

 

レ「…つまりあれはイャンクックではない全く別のモンスターってわけね?」

 

パ「ええ、しかも咲夜が言うようにイャンクックよりも強いモンスターよ。

  資料には写真が一枚も貼られてなかったから確証はないけどあのモンスターは…」

 

フ「あのモンスターは?」

 

パ「…空の王者、リオレウスだと思うわ。イャンクックよりも遥か上のモンスター。

  初心者はまず戦っても命を落とすだけ、上級者も油断したら大怪我を負う程のモンスター」

 

…空の王者リオレウス、資料を眺めている時にチラっと読んだわね。

強靭な爪と牙を持ち、爪には猛毒、人間の大人くらいの火球を吐き、その姿はまさに王。

 

咲「…お嬢様、一旦引くのも手です。ですがその判断はこのパーティのリーダーである

  お嬢様が決断することです」

 

………。

 

フ「お姉さま?」

 

………ふふ…!

 

レ「空の王者、リオレウス…ね。上等じゃない!! その玉座から力ずくで引きずり下ろして

  王冠を粉々に砕き、その首を叩き斬ってやるわ!!」

 

空の王者? たかが王者如きが私に恐怖を味あわせたことを後悔させてやるわ!!

 

フ「そうこなくっちゃ! さあ行こっ!」

 

咲「お嬢様のご要望通りに」

 

パ「そう言うと思ってたわ、さあ行きましょ?」

 

レ「ええ! 行くわよ!!」

 

そして私たちはペイントの匂いを頼りに走り出した。

待ってなさいリオレウス! すぐ私にひれ伏させてあげるわ!!




レミリアの勇気が世界を救うと信じて。

…いや打ち切りませんよもちろん。




次回予告
レミリアがリオレウスとの死闘を繰り広げている最中、誠はブーメランを投げながら考えていた。 「そういや俺の部屋にあるヒーターの電源切ったっけ…?」 気になりすぎて戦いに集中できなくなった誠は突然拠点へと走り出し、ゲームを強制終了させる! 誠以外の全員が戸惑う中、誠は自室へと走り出した。 自室の扉を開く、そこに待っていたのは燃え盛る炎と炭になったゲーム達だった…。次回『RPGを始めると大体20~30レベルに達したところで面倒になる』ラスボス前で止まる派と中盤で止まる派でいうと私は中盤派です。


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第二十三話 連携

モンハン回はこれにて終了でございます。


匂いをたどってエリアを移動、二分ほどしてリオレウスのいるエリアに到着。

ペイントの効果は結構長持ちするから追跡は楽なんだけど…この匂いを森丘にいる間ずっと嗅がなくちゃいけないのは嫌になるわ。

リオレウスを見ると森林や高い丘…いえ、高い崖を背にずっしりと佇んでいた。

 

レ「さっき言った通りに行くわよ。 フラン、まかせたわよ」

 

フ「大丈夫よ、まかせて!」

 

私がエリア移動中に言ったことはリオレウスを倒すための作戦、リオレウスを倒すためにやらなくちゃいけないこと。

昨日、全員が武器を選んだりアイテムについて聞いてる間に私はこの世界のルールについて調べてみたの。

この世界はどんなに高いところから降りても足から降りれば無傷だったり、モンスターによって変わるけど特定の場所に一定量ダメージを与えると部位破壊という現象が起きてモンスターを弱らせることが出来る事とかを本から調べておいた。

上級モンスターにはこの部位破壊が特に有効な手段らしいわ、中には部位破壊をしなくちゃ倒せないモンスターもいるとか。

今回のターゲットであるイャンクック改めリオレウスには部位破壊できる箇所が四つあることもパチェから聞いておいた、その部位は頭、右翼、左翼、そして尻尾。

尻尾を切ると攻撃範囲が狭くなってこっちが有利になる、しかも私の予想では普通に立つこともしづらくなるんじゃないかと思ってるわ。

あの尻尾がなければ体重を二本の足だけで支えるのは難しいはず、飛んで逃げようにもバランスを崩して落ちたりするかもしれないわ。

尻尾の切断、そしてそのためにはフランの大剣が不可欠。

尻尾を切るには切断系統の武器――私、フラン、咲夜の武器でしかできないわ。

それに加え私と咲夜の武器は攻撃力が足りない、つまり最後はフランに頑張ってもらうしかないのよね…大丈夫よね? 私の妹だもの。

 

レ「さっ、行くわよ!」

 

まず私と咲夜が前に出る、リオレウスは足音で私たちに気づいたようで私たちを見ると首を上げて咆哮をする構えを取った。

 

咲「お嬢様!」

 

レ「わかってるわ咲夜!」

 

咄嗟に武器を取り出して盾を手に構えて前に出す、王者の威圧を持った咆哮が森丘に響き渡った。

パチェは咄嗟に耳を庇う、だが私たちはその咆哮の中リオレウス目掛けて走っている。

咲夜が発見したことだけどリオレウスの咆哮は盾で振動を一度防げば大丈夫らしい、半信半疑だったけど本当だったのね。

 

レ「王者の威圧もこの程度のようね!」

 

咲夜がリオレウスの前を陣取った、私は懐に潜り込み剣を持ち直して右足を斬りつける。

剣で斬った傷はほんの少し、微々たるもの。でもそれは積み重ねれば強くなる。

 

フランが動き出した、咲夜の横を走り抜けてリオレウスの尻尾をその目で捉えた。

地面に足でブレーキをかけながら流れるような動作で武器を構え、一気に振り下ろす。

フランの渾身の一撃が尻尾に当たったがそれでも傷は小さい、リオレウスからすれば掠り傷同等でしょうね。

 

…全員配置についたわね。

 

ポーチから閃光玉を取り出して咲夜に向かって投げる、咲夜は目を瞑りながら盾を構えた。

閃光が炸裂してリオレウスの目が眩み、十数秒動きが止まる。

 

レ「咲夜! フラン!」

 

私の合図と共に咲夜とフランは武器を背中にしまってリオレウスから距離をとった。

それを確認すると私もリオレウスの股下から脱出、そのまま三人でパチェのもとへと走る。

リオレウスは私が離れたことを気配で感じ取ったのか鎌首を持ち上げて目の前をがむしゃらに食らいつこうとしている。

でも私はとっくにパチェのところにいるからそれは無駄なのよね。

 

レ「ちゃんと仕掛けた?」

 

パ「ええ、もちろんよ」

 

レ「…いい位置ね、さあパチェ最大の見せ場よ」

 

パ「………」

 

パチェは弓を構えてリオレウスの頭に狙いを定める、ギリギリと弓の弦が悲鳴をあげるように音を出す。

それは力を込めて振りおろそうとしている握り拳のように、静かに力を溜めて矢を支えていた。

リオレウスが首を二度振ってからこちらを睨む、その睨みはこの場を静ませるには十分の威圧…いえそれ以上の威圧を内に秘めていた。

リオレウスは鎌首を持ち上げて森丘全体に轟く咆哮の構えを取る。

 

パ「…そこよっ!!」

 

パチェの凛とした声と共に放たれた矢は吸い込まれるようにリオレウスへと飛ぶ、それは寸分の狂いもなくリオレウスの小さな右目に突き刺さった。

ギャアウゥッ!! 王者の声とは思えない弱々しい悲鳴が聞こえた、それは紛れもなくリオレウスから発された音であり、リオレウスの威圧を崩すには十分だった。

 

レ「さすがねパチェ、よくやったわ」

 

パ「自分でもよくやったと思うわ、あれ5cmあるかないかってとこじゃない」

 

レ「帰ったら大図書館の本でも増やしてあげるわよ」

 

パ「期待してるわ」

 

ポーチの道具を確認して次の行動の順序を確認、周囲を見るとフランが近くにいない事に気付く。

もう尻尾を切りに行ったのかしら?

 

パ「レミィっ!!」

 

はっとなってリオレウスの方見た、いつの間にかリオレウスが体制を立て直してこちらに向き直っていた、右目にはパチェが放った矢が痛々しく突き刺さっている。

リオレウスはその矢を抜こうともせず口に火炎を溜めた、無傷の左目でこちらを威圧しながら超高熱の火炎を巨大な口から放つ。

それは火球となって空気を燃やし、通った場所は草の欠片一つ残さず全てを燃やし尽くしながら私に向かって飛んできた。

 

あまりの速さに私は避けることができなかったわ。

いいえ、私には避ける必要がなかったわね。

だって私には。

 

 

 

 

 

 

 

誠「もしも~し? 生きてますか~?」

 

魔理沙の帽子を頭に被りながらにとりに声をかける、いやだってうつ伏せで倒れてたから苦しそうだなーとか思ったんだよ。

俺の声が聞こえたのかいきなりガバッと起き上がるにとり。

なんだろう…ガバッとにエロスを感じてしまった俺はさすがにもう末期だわうん。

 

河「こ、ここは…紅魔館みたいだね、ってなんで誠は魔理沙の帽子を被ってるんだい?」

 

誠「クリアしたから帰ってきたようだぞ、その質問にはノーコメントだ」

 

にとりが起きたら他の二人も起きたようだ、魔理沙は自分の頭に帽子がないことを確認してから周囲を見回した。

俺の頭の上に帽子があるだろ? これを見てどう思う?

すごく…大きいだろ?

こんなの被っていつも過ごしているとかちょっとありえないかな、いや幻想郷では常識は投げ捨てるものだって紫様が言ってたしなぁ。

 

博「誠、その帽子すごく似合ってるわよ」

 

誠「そうだろ? さっき落ちてたのを偶然拾っちゃってさぁ~!」

 

おうおう魔理沙さん、肩が小刻みに震えてますよ? 笑いでもこらえているんですかね?

 

魔「それは私のだ!」

 

颯爽と箒に跨った魔理沙は俺の帽子を頭から掻っ攫うと自分の頭にそれを被せた。

なんという箒の無駄遣い、いや有効活用?

 

誠「さて、咲夜さんがいないから紅魔館組はまだクエスト中だな」

 

博「じゃあ私たちの勝ちね!」

 

誠「残念、これはモンスターを倒すまでの総合時間じゃないんだこれが。

  競うのはモンスターと交戦した時間だけだ」

 

博「そうなの? じゃあまだ分からないってわけね」

 

誠「そういうこと」

 

問題はいかに作戦を立てて早く狩るかだ、つまり撤退や作戦会議などじゃんじゃんしてくれていいんだよね。

でもこれを俺のチームだけ明かしたり、全員に明かしたりするとどうしても知恵という面で俺が有利になる。

俺が何も言わない場合人数的に紅魔館チーム有利だしさ、つまりこれは伏せといたほうがいいと思ったわけだ。

 

さて、俺たちは先にクリアできたけどそれはイャンクックとずっと戦ってたわけだからな。

あっちはどう戦っているのかは知らんが、見学くらい良いじゃない?

てなわけでマシーンにモニターを接続、これで中がどうなってるか分かる。

どれどれ…。

 

…ん? クエスト終わって疲れたのかな俺? イャンクックが別のモンスターに見えるぞ~?

 

…はぁ!? これどう見てもリオレウスじゃん!! 二回目をゴシゴシしたけどリオレウスだこれ!!

 

待て待て…よく見たら武器が俺たちのより強いやつじゃないか…、出発の時とは微妙に違う武器を持ってるぞ咲夜さんたち…。

リオレウスのクエストになったバグと一緒に武器も強くなるバグでも発生したのか? うわぁ…、まあ倒せなくもない装備だからいけるだろ。

危なくなったら俺が行って倒せば良いわけだ、何も心配することはないな。

 

…お、おいレミリア。ターゲットから視線を外しちゃ…。

な…火球の予備動作(モーション)!? まずい、あれはリオレウスの攻撃でもダメージが高い部類…、しかもレミリアの防具は火に弱いかわりに打撃に強いタイプだったはず…。

クソッ!!! 間に合うか!? 待ってろお嬢様!!

 

 

 

 

 

 

焦げるような匂いが私の鼻腔をくすぐった、それは私の服が燃えた匂いではない。

それは、鉄が溶けたような匂いと草木が燃えた匂いが混ざった匂い。

 

レ「…さすが私の従者ね、見事な動きだったわ…咲夜」

 

咲「お褒めの言葉、ありがとうございます。ですがお嬢様、敵から視線を外してはいけません」

 

レ「次は気をつけるわ」

 

咲夜は盾になると言っておいて出来ないような無能じゃないものね、有能な従者よ。

…? 視界の端で何かが動いた気がしたのだけど…。

いえ、それよりも今はリオレウスね。咲夜がリオレウスの前で注意を惹きながら戦ってくれてる。

私のやることは…。

 

レ「咲夜は一旦引いて! パチェはリオレウスの注意を引いて突進攻撃の誘発!」

 

剣と盾を両手に構える、私がやることは…全員のサポートと指揮。

ポーチから小さなビンを取り出して空に放り投げる、それは白い粉を撒きながら宙に舞ってから地面に落ちると跡形もなく砕け散った。

 

ゴワアアアアアァァァァァァァァァッ!! 一際大きな咆哮と共にリオレウスは私たち目掛けて突進してきた。

 

レ「…よし!」

 

リオレウスは私の頭を喰らおうと鎌首を振るうがそれは私に届くことはなかった。

電流が走ったように体を痙攣させて私の顔を喰らう寸でのところで止まったリオレウスの足には黒っぽい色をした円盤が電流をながし続けていた。

 

レ「今よフランッ!!!!」

 

空に向かって私ができる最大の音量で叫ぶ。

 

私の遥か頭上で何かが風を切って落下を始める、それは、その影は大きな剣を両手で持っていた。

 

その影は―――フランは叫びながら大剣を振りかぶる。

 

フ「そおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっれぇッ!!」

 

重力が乗ったその一撃はリオレウスの脳天に激突し、リオレウスを地に伏せた。

いや、それだけじゃ済まない。

大剣はリオレウスの頭と共に地面にメリ込み、リオレウスの頭が地面に埋まるという半ばギャグのような光景へと変貌していた。

リオレウスは体を一度大きく痙攣させると、そのままの格好で動かなくなってしまった。

 

レ「………えっと…終わりよね?」

 

咲「そのようですね、完全に倒したようです」

 

パ「…フラン、尻尾を狙った攻撃じゃなかったの?」

 

フ「…ちょっとだけ飛ぶ方向間違えちゃったみたい、まあ結果オーライだよ!」

 

フランがにっこりと子供っぽい笑みを浮かべた、あの高さから落ちたにもかかわらず傷一つないようね…、本当に変な世界。

 

レ「…まあいいわ、さっさと剥ぎ取って終わりにしましょ?」

 

こうして私たちの初めてのクエストが終わったわ、予定外なことが多かったけど…。

…まあ、フランの言う通り結果オーライ…ね。

 

 

 

 

 

 

誠「………」

 

河「…誠、モニターに顔突っ込んでも入れないのはちょっと前に実験したってば」

 

誠「………咲夜さんナイス…」

 

いや危なかったな、咲夜さんがいなかったらどうなってたことか…。

パーフェクトだ、咲夜。…さん。

 

博「誠~、レミリアたちが起きたって何してるのあんた」

 

誠「二次元と三次元の境界がなくなればいいのにと思いました」

 

博「紫に頼みなさい」

 

今度本気で頼んでみよう、うん。

 

俺がモニターを置いて振り返ると全員が立ち上がっていた、紅魔館組は周囲を見たりして帰ってきたと把握したようだ。

 

誠「うぇ~いみなさんおまちかね…、けっかはぴょーう」

 

パ「もうちょっとやる気出しなさい、誠」

 

誠「お腹が減ったんですよ、やる気が出ないわ」

 

咲「終わったら夕飯にするから速くしなさい、誠」

 

誠「さ~あみんな盛り上がって行きましょー!! 第一回モンハンタイムアタック!!

  優勝は…あ、妖精メイドの皆さんドラムロールお願いしま~す」

 

妖精メイドたちが一斉に小さなドラムを抱えて一生懸命ドラムロールを始めた、だがドゥルルルルルと言うドラムロールにはなっておらず、どぅるるどぅるどぅるるる…と変な音になっているが妖精メイドさんたちは一生懸命やっているんだ。察してあげてください。

 

十秒くらい流れていたドラムロールはピタっと止み、最後のドンを俺が予め用意しておいたドラムで合わせる。

 

誠「優勝は07分49秒の紅魔館チーム、おめでとうございまーす!!」

 

レ「当然ね!!」

 

いや当然ってお嬢様? 死にかけたでしょうあなた…ってそういやこの人吸血鬼だったわ、死なないわ。

 

誠「ち、ちなみに私率いる異変解決チームは09分16秒です、さすがにブーメランじゃきついわな」

 

魔「あいつ一番ダメージ与えてたよな?」

 

博「そうね、ブーメランで乱舞とかやってたし」

 

誠「はいはいお静かに、紅魔館チームには私が創ったものを得る権利が与えられます。

  ただし今から創るやつね、さあなに創る?」

 

レ「…パチェ」

 

パ「いいの? …わかったわ」

 

レミリアとパチュリーが少し言葉を交わした、なんだいなんだい約束でもあったような感じですの。

 

パ「大図書館に置く本を創って頂戴、ついでに本棚もあれば尚良いわ」

 

ほう、そう来たか。

 

誠「願いを叶えよう、本棚も創るよ! あとで大図書館に創っておくから」

 

パ「ありがとう、誠。できれば面白い本より魔導書のほうがいいわ」

 

誠「了解であります」

 

ふと後ろを見ると霊夢が魔理沙と話しているのが見えた。

何話してんだ?

 

博「誠に厄払いの御札でも創ってもらおうと思ってたのに…」

 

魔「私は本を借りるのが楽になるアイテムを創ってもらうつもりだったぜ」

 

あ~あるね、どこ○もドアとか。

残念! 次の機会に頑張れ!

 

誠「さあ咲夜さん! 夕飯お願いします! もちろんこの全員でパーティですよね?」

 

咲「最初からそのつもりよ、どうせ誠がいるとパーティになると思って下ごしらえは済ませてあるわ」

 

誠「さすが咲夜さん! おっし腹いっぱい食うぞ!!」

 

今の時間は7時、大体5時間はあのゲームやってたのか。

いやはや5日くらいいた気がするな、まああながち間違ってもないんだけど。

さあ5日ぶりの咲夜さんの飯だ! 美味し料理が俺を待ってる!

 

俺はダイニングルームへと全速力で走り出したのだった。




次回予告
冬、それは誠が一番嫌いとする季節。
春、それは誠が一番昼寝をする季節。
新年を迎えて季節は冬から春に変わる時が来る、それまでコタツの中で待とう…。
2月、3月、4月…だが一向に訪れない春を待ち続けてついに5月。
いつまでコタツに入って鼻水をかむ日々を続ければいいんだ、いい加減春は来ないのか…。
誠の脳裏を電流のように駆け巡ったのは一つの閃きだった。

こないなら よべばいいよね ホトトギス

次回『いつも嘘予告してるのに今回普通の予告みたいだね? どうせやらないんでしょ?「やります」…え?』やります。


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第二十四話 調査

こたつ、コタツ、炬燵…。

冬という季節は実に厄介だ、手がかじかんでゲームもしづらいし外に出たくなくなる。

家に篭っているのも大変だ、電気代がバカにならんし灯油を買うにも金がかかる。

…まあ幻想郷には灯油を売る施設なんてないだろうから自分で創るんだけどな。

 

さて、今現在外は雪だ。 里の人たちも寒さに震えながら今日と言う日を過ごしていることだろう。

そんな中、一部の俺みたいな人や病人怪我人以外はみんな外に出てるだろう。

子供たちは雪に興奮して雪合戦を始めとした遊びでキャッキャやってる中、大人は屋根から雪をおろしたりする苦労をしなくてはならない。

…え? 紅魔館は大丈夫ですよ。 なんてったって門番さんがいるので。

こんな寒い中に運動したほうが体が暖まるという理由で雪かきをしている美鈴に感謝の言葉を、いや本当にありがとうございます。

 

っと、話が逸れてしまった。 そんなこんなで冬は実に厄介な季節であり、俺の好きな四季ベスト4でぶっちぎりのワースト1位を維持し続けている。

ではここで本題に入ろう、俺の大嫌いな冬は大体11月から始まり3月くらいに終わると俺は思っている。

まあ4月でも少し寒いが、まあ桜を見て春が来たなぁと思うし俺の中では春という認識だ。

では今日の日付を見てみよう。

…おわかりいただけただろうか、今日の日付は5月になっていることに…。

ではもう一度見ていただこう、何度見ても5月だ。

つまり幻想郷の冬は長いのだ、うん。 と決め付けて待つことにしたが待ってみたらもう5月。 もちろん今年になって桜など見たことがない。

はい、ではこれはどういうことか。 紫様が寝ぼけて四季の境界を曖昧にしてしまったのだろうか、それはない。 紫様なら多分すぐに直してから寝るだろう。

それではどういうことなのか、こう言う時に幻想郷ではこう言うのが普通だろう。

 

これは異変だと言うことだ!!

 

このままでは日光に当たりながらぽかぽかの小春日和に昼寝もできない、霊夢たちが解決するのを待つという選択肢はこの拷問を長引かせるだけ。

なら答えは簡単だ、異変を解決してやろうじゃないか。

 

ところでオイラ、東方はお恥ずかしながら紅魔郷しか買ってないのよね。 咲夜さんが見たかっただけだもん。

だから今回は完全にボスが誰だかわからんのだ! まあよいではないか、異変解決するにも答えがわかっていたら話にならんし。

さあそうと決めたら有言実行、すぐに動いてパパっと解決してさっさと宴会にしようではないか!!

 

 

 

 

 

 

一時間後、そこには防寒具を大量に着込んで飛ぶ誠くんの姿が!!

…いや実際その通りだし、雪が積もっている時に外に出るとか普通の俺ではありえない。

遊んで欲しいのか知らんが飛び回る妖怪と妖精を弾幕で倒しながら進む、妖精はチルノにでも遊んでもらえ、氷漬けのカエルが増えるだけだろうし。

 

誠「あぁ寒い、寒すぎて眠気が…」

 

?「春眠には速いんじゃない?」

 

背後から聞こえたその言葉に反応して鼻水をすすりながら振り返る、そこには薄い紫色をしてウェーブのかかった髪をした女性が俺と同じように飛んでいた。

頭に帽子をかぶっているがすごく形状を表しにくい形だった、強いて言うなら白くて大きな饅頭を頭に乗っけてる感じだろうか。

ロシアでよく見られる帽子のようにも見えたがまず材質から違うなありゃ。

服装はこの冬にも関わらず薄着にしか見えない、背中にはマントっぽい物が見え隠れしている。

この季節に長袖とスカートの下に見せドロワーズ、つまり生足露出とはなんとも…いやなんとも。

なんとも寒々しい。

 

誠「とっくに春眠の季節ですよ、そちらこそ春眠がしたいんじゃありません?

  レティ・ホワイトロックさん」

 

俺の目の前を飛ぶ女性――レティ・ホワイトロックは名前を当てられたにも関わらず特に驚く素振りもない。

 

レティ「そうねぇ、いつまで経っても暖かくならないわ。 これじゃ春眠もできないわねぇ」

 

誠「では冬眠でも始めてみたらどうでしょう、少しは気温も上がるでしょうし」

 

そうだ、レティには能力がある。 確か、寒気を操る程度の能力だったな。

…これは当たりか?

 

レティ「それじゃあ私はいつ起きればいいのかしら?」

 

そういえばレティは冬に現れて春に消える妖怪と言われている。 実際はどっか涼しいところで春眠、夏眠、秋眠してるらしい。

 

誠「起きなければいいじゃないですか、面倒な奴に絡まれませんし」

 

レティ「例えば…あなたとか?」

 

誠「絡んできたのは貴女でしょう」

 

レティ「こんなところで迷ったダメな人を助けるのは良いことじゃない?」

 

誠「そうですね、貴女が眠れば助かるので今ここで速やかに眠れ!」

 

弾幕を形成し、全力を持ってレティへと発射する。レティはそれを間一髪で避けると弾幕を形成、戦闘準備に入った。

 

誠「あなたが寝れば春が来るかもしれん、なら試すしかないよなぁ!!

  寒いのは嫌いだ!! 今! ここで!! 速やかに!! 眠れオラァ!!」

 

レティ「くっ! 寒符『リンガリングコールド』」

 

レティがスペカを宣言した。 何が来るか分からないな、一旦距離をとるか。

一旦距離をとってから弾幕を形成、レティに向けて放つとレティは両手を前に付き出して俺の頭くらいの弾を1つだけ放った。

それは俺の方に少し進むとまるで花火のように、魚を捕る網のように広がり俺に襲いかかる。

だが俺は冷静に弾幕を見た、よく見ると弾幕は進めば進むほど網目が大きくなるようだ。

距離をとって正解だったな、あの網目を抜ければ回避はできるだろう。

だが俺には時間がない、この冬という拷問を一秒でも速く終わらせたいのだ。

 

誠「創符『滅びのバーストストリーム』!!」

 

俺はスペカを掲げてからそのまま上空に投げる、するとスペカが大きく輝きだし、その姿をカードから銀色に輝く巨大な龍へと変貌させた。

 

レティ「なっ!? そんなのあり!?」

 

誠「ふはははー! スゴイぞーカッコいいぞー!!

  さあ青き眼を持つ白龍よ! 滅びのバーストストリーム!!」

 

俺の言葉に答えるように龍は眩しいほどに輝く光をその巨大な口に溜め、全てを薙ぎ払うような一撃をレティへと放った。

レティは必死に避けようとしたようだが無駄だ、白龍はレティをまるで弓矢で射抜くように的確に攻撃する。

 

白龍の攻撃が止んだ、地面を見ると雪が溶けるどころか所々焼けている場所もあった。

…さすがにやりすぎたか、しかも倒したのに気温は上がっていない。 むしろ下がってないかこれ。

 

誠「…う、疑いが晴れてよかったですね! それでは!!」

 

俺は逃げるようにこの場をあとにした…。

 

 

 

 

 

 

 

誠「ここは確か…マヨヒガ(まよいが)だっけか」

 

レティから逃げるようにして飛んでいると小さな小屋があった。

一応幻想郷を一回りしたから大体の場所を見たからここに来るのは二度目だ。

 

誠「確かマヨヒガって迷ったやつが辿り着く場所だよな?」

 

少し大きめの声で喋る、だが俺の質問に返答はない。

 

誠「そうだよなー!! そこで『めんどくさいのが来たよ』って顔してる猫!!」

 

?「…誠じゃあイタズラもできないわ」

 

気怠そうに小屋から出てきたのは猫耳の少女、一部の大きなお友達に人気がありそうだな。

まあ実際人気だったりするんだけど、狐とか。

橙とは前にここに来たときに知り合った、その時はいきなり俺の荷物を盗んで鬼ごっこが始まったが迷い家を罠満載のトラップハウスにしたらすぐに捕まった。

それ以来橙は俺にイタズラをしなくなった。

 

誠「おっす(チェン)、吹雪の中ご苦労だな」

 

小屋の前に降りると橙が小屋の前に座った、それにしても寒そうだな妖怪の服装は。

 

橙「あのね、コタツで丸くなるのは迷信よ。猫だって吹雪の日に外で遊ぶものよ」

 

迷信だったのか…。

 

誠「ところでさ、時間がないから単刀直入で聞くぞ? この寒さは誰のせいだ?」

 

橙「さあね、迷い家の中は暖かいから私には関係ないわね」

 

誠「残念。情報が少ないなぁ」

 

特に情報がないなら他を当たるしかないな、仕方ない。

 

誠「それじゃあな、橙。イタズラは程々にするか徹底的にしろよ?」

 

橙「それはもうイタズラじゃないでしょ!」

 

あぁ、この頃俺のボケにツッコミ入れてくれる人が少なくて悲しい。

久しぶりのツッコミで心が洗われるような気持ちだわ。

ストレスが流れ落ちてくような感じ。

 

さて、マヨヒガの次はどこに行くか…。

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館を昼に出発、持ってたおにぎりを食べながら情報を探しているといつの間にか夜になっていた。

昼よりも一段と寒い、今すぐにでも返ってコタツに飛び込みたい衝動に駆られたがなんとか抑えて情報を探す。

てなわけで、魔法の森に到着。

いつ見てもここは不思議な所だなぁ、魔法素人の俺でも不思議な場所だと感じるわ。

…まあこんなこと思っといてアレだが…。

 

誠「寒い! いっそ森を焼けば暖かくなって春が来るんじゃないか?」

 

?「寒さで頭がお花畑になったようね」

 

むっ、この声は…。

 

誠「アリス・マーガリンさん!」

 

ア「マーガトロイドよ!! 何度間違える気よあんたは!!」

 

怒りながら現れたのはアリス・インワンダーランドさん…じゃないわ。 アリス・マーガトロイドさん、よく名前を間違うんだよねこの人。

俺の本能が正解の名前を出してはいけないと言っている、ただツッコミを待ってるだけにも見えるが別にそんなことはない。

 

ア「あまりふざけると魔法で殺すわよ!」

 

誠「なんだと…? 貴様それでも人間か!

  貴様は次に『いいえ、私は純粋な魔法使いよ』と言う」

 

ア「いいえ、私は純粋な魔法使いよ…えっ!?」

 

誠「んでその純粋で単純な魔法使いさんは俺様にどんな御用で?」

 

アリスが『ぐぬぬ』と呻いた、そうですよねぇただの人間にバカにされたらそりゃ怒りますよねぇ!

 

ア「…いいわ、そっちがその気なら私が持ってる情報を教えてあげない」

 

誠「あ~、いいですよ別に。他を探すんで」

 

ア「なっ!! 変なとこでアッサリしてるわね…」

 

誠「人生ワンパターンじゃつまらないんですよ」

 

ア「それなら力ずくで教えるまでよ!!」

 

誠「普通逆でしょうが!!」

 

なぜ俺がツッコミをしなくてはならんのだあああ!!




東方ってキャラが多いですよね、誰が今喋ってるのかを会話の後に付け足すのはさすがにくどいなぁと。
じゃあどうする? 頭文字でいいじゃない!

レティ、レミリア…。







次回予告
魔法の森で始まった弾幕決闘、アリスとの戦いを難なく勝利する誠だったが、倒れる間際にアリスが呟いた、「…天…界」 かくして誠は天界へと飛び、異変の解決方法を探すが天界にいるのは異様に肌が黒い人や神様と名乗る緑色の肌をした人だけ。 ここにはなにもないと判断した誠は肩を落としながら紅魔館へと帰るのであった。次回『青鬼の小説が発売される…だと…!? 俺のトラウマを掘り返すんじゃない!!』amazonさん、一冊お願いします。


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第二十五話 人形乱舞

もしも人形が目の前で突然動き出したら、どうするか。

しかもその人形には首がない、だが笑い声も聞こえる。

そして人形の右手には鉄の槍、左手には盾を構えてる。

この場合は普通どうするか?

逃げる? 戦う? 人に任せる?

俺? 俺は迷わず逃げるね。

 

なんでこんなことを聞くのかって?

ちょっと大げさに言ってるけど今その状況だからだ。

 

誠「ひぇぇーお助けー」

 

緊張感も必死感も全く伝わらない口調で助けを求める、もちろん俺の声に反応するやつはいない。

ただ一人を除いて。

 

ア「こ…っの!! 余裕綽々な態度してんじゃないわよ!!」

 

アリスの周りに現れた人形たちが一斉に俺へと襲いかかる、だがその手に持つ槍は空を突くのみだ。

 

誠「あー死ぬかと思ったー」

 

人形の攻撃を全て避けてアリスの背中をとる、魔法使いと言えど少女の姿をしているアリスの背中をポンと叩いて距離を取る。

 

誠「槍はダメですよ槍は、刺さったら痛いでしょう。 ねえアリス・マーガレットさん」

 

ア「だからマーガトロイドよっ!!」

 

アリスの周囲を人形たちが飛び回る、よく見たら槍ではなく剣を持った人形までいる。

危ないなぁもう。

 

誠「そろそろ先を急ぎたいのですが、アリス・マッガーレさん」

 

視界を埋めるように迫る人形を弾幕で撃墜、そのまま後ろに飛んでアリスを集中的に攻撃していく。

アリスは俺の弾幕攻撃を2体の人形を操って迎撃すると俺から距離をとった。

 

ア「ようやく戦う気になったようね」

 

誠「おっとと? 私は自身の命を守り、虫を駆除しようとしたのですが…もしかしてあれで

  戦闘だと思ったのですかね? 戦闘というのは弾幕ごっこではなく殺す気でいかなくては」

 

俺の挑発にぷるぷると肩を震わせるアリス、あ、こりゃ本気で怒ったな。

いやでも魔法使いさんならもうちょっと寛大な心を持ち合わせているはず!

 

ア「…そう、本気で殺されたいみたいね」

 

あー、こりゃ怒ったな。

 

ア「それなら今から全力で殺してあげるわよ!!」

 

誠「俺が勝ったら情報よこせよ? んじゃ,遊んでやっから来な」

 

アリスの目に殺意が宿ったように見えた。数はさっきの倍以上に増えており、動きは人形とは思えない程に素早く自由に動いている。

アリスの右手が上がった、人形は合図を聞いたとばかりに散開し、四方八方を俺中心に取り囲む、それはさながら虫籠(むしかご)のように俺を拘束する。

俺は一瞬の動きに身動きも取れず、人形たちで作られた虫籠の中でアリスを睨む。

 

誠「………」

 

ア「あまりの動きに身動きがとれないようね、人間じゃ魔法使いに勝てないのよ」

 

アリスは勝利の笑みを浮かべながら俺を見つめていた、その眼には蔑みと怒りが(こも)っているようにも見える。

アリスから視線を外し、周囲を飛ぶ人形を見る。人形は俺を逃がすまいと動きまわり、隙を出せば即座に刺し殺せるようにと目を光らせていた。

 

ア「さあ、今謝れば許してあげなくもないわ」

 

あ~、俺は速くこの寒い季節を終わらせたいだけなのになぁ。

…ここはあれだな。

 

誠「ん? あぁゴメン、『あま』までしか聞いてなかったわ」

 

ア「……死になさい」

 

アリスの右手が振り下ろされた。

周りの人形が一斉に俺を殺さんと襲いかかった。

鉄の槍は俺の心臓を突き刺し、剣は俺の体を切り刻もうと迫る。

その動きは素早く、常人なら反応できない速さだった。

 

誠「はやっ…!?」

 

キィンと甲高い音が空気を震わせた。

それはいくつもの鉄の塊によって反響し、機械のように幾度もリピートしながら冬空の下で響き渡った。

アリスの目の前に浮かんでいた人形たちで出来た虫籠は一瞬のうちに1メートルほどの球体となっていた。

響いていた音は勢いを増してきた吹雪によってかき消され、人形でできた球体は雪を浴びながら静かに佇んでいる。

 

ア「………ふん、所詮人間ね。 口が達者でも力がない」

 

誠「そうだねぇ、人間は力がないから仕方ないわ」

 

ア「そうよ、さえずるだけじゃな…い……?」

 

アリスが俺のほうに振り返った、信じられないだとか化けものだとかそんな感じの眼をこちらへと向けている。

 

誠「そうそう、でも人間にも知恵があるんだよねぇ」

 

ア「な……なな…なんで生きてるのよ!?」

 

そんなに信じられないか? いやいやあんなので死んだら幻想郷じゃ生きれないから。

 

誠「仕方ないなぁ、確認をしないで勝手に殺したと思ってたアリス・マージャンに種明かしだ。

  襲ってきた瞬間隙間が見えたんでそこから出ました、OK?」

 

ちなみに『はやっ…!?』とか言ったのは油断させるためな。

 

誠「人間の動きじゃ逃げれない速さでも逃げることはできる、俺はもう半分人間じゃないし」

 

未成年なのに酒飲めるし、常人より遥かに運動能力高いし、能力でパワーアップできるし。

…うん、我ながらもう人間辞めかけてるな。

 

誠「それじゃあ改めてやるか? いや殺るか? 半殺しにするけどな!」

 

冗談めいた口調で言う、アリスは怒ったような眼をこちらに向けたがすぐに肩を落として踵を返した。

 

ア「…もういいわ、今回は私の負けよ! 春を取り戻したいなら冥界よ」

 

誠「冥界? そういや冥界は行ってなかったな。 ありがとさんアリス・マスカット!」

 

ア「………ハァ…」

 

アリスが深い溜め息を吐くがそんなことに構ってる暇はないのだ、今は速くこの冬を! この冬を終わらせるために急がねばならないのだ!

…決して名前を間違えることが楽しくなってきたわけではないのだ。

 

 

 

 

 

 

冥界。幻想郷で言う冥界は…そのまんま冥界である。

紫様に聞いたがそこは普通に桜も咲くし紅葉もあるらしい、ただ死んだやつしかいないってだけだそうだ。

そんなところに行こうとしてるのか俺…、まあ霊は信じるタイプだし別にいいんじゃないかな。

呪われたりとかはしないだろう、多分。

 

冥界に行くには面倒なことに雲の上まで飛ばなくてはならない、しかも結界があるので冥界に入ることは普通できないようになってる。

え? 立ち往生じゃないかって?

ところがどっこい、この結界は解かなくても入れる(・・・・・・・・・)

紅魔館の大図書館には数多くの種類の本があり、その本の中に結界の仕組みが載っている本があった。 暇だからと読んでみたら結構面白かったので全部読んだよ。

1週間くらいかかったが、まあこういう時のために読んでおいてよかったわ。

ずばり、こう言う結界はどこか弱いところがあるからそこから入れる!

…と、本に書いてあった。

冥界の入口である門が見えてきた。 アレを抜けるのか、見た感じ脆そうなところはないんだが…。

 

誠「さて、どこが壊れるのかな。 …雲の上で桜吹雪とはおもしろい」

 

?「そうね、下は猛吹雪だっていうのに」

 

誠「…ん? 雲の上には美少女3人組までいるのですか」

 

振り返るとそこには少女が3人、全員が楽器を持って俺と同じように飛んでいた。

妖精のようにも見えたが妖精にしては体も大きく、見た感じ頭も良さそうだ。

待てよ? こいつら見たことあるな。 確か…プラズムドバー…あれ違う。

 

誠「そうだ、プリズムリバー楽団だ。 これから冥界で演奏ですか?」

 

リ「そういうこと~」

 

三姉妹の三女であるリリカ・プリズムリバーが答える。 おへその前にはキーボードが浮いており、リリカが動くにつれてキーボードも動いた。

手を使わずに演奏できる…だっけ? 便利だな。

 

メ「それで、あんたは誰?」

 

一番最初に声をかけてきた次女、メルラン・プリズムリバーが言った。

…ふむ、いい髪をしている。 少し青みがかかっているが、それも合わせて美しい髪の色をしている。

その青みかかった銀髪の上には中央がトンガった帽子を三姉妹全員が被っていた、だが見る限り雪は積もっていない。

 

誠「人間であり、探検家であり、冬が大嫌いな葉隠 誠と言います。 以後お見知りおきを」

 

リ「よろしく~」

 

リリカがにこやかな笑顔で挨拶を返してくれた、美少女には笑顔が似合うなぁ。

 

誠「そうだ、冥界へ行くならついでに私も連れて行ってはくれませんか?」

 

旅は道連れと言うしな。

俺の言葉に三人は難しそうな顔をした、やっぱり生きた人間はダメかな?

 

ル「…いいわ、連れて行ってあげる。 少しお花見には早いけど」

 

長女のルナサ・プリズムリバーが答えた、いやぁ話はしてみるもんだ。

 

誠「それは助かります! では行きましょう!」

 

ル「そのまえに」

 

俺が門へと急ごうとしたがルナサの言葉がブレーキをかけた、俺には一瞬の時間も惜しいのだが。

 

ル「生きた人間は入れない、だから加工する」

 

誠「加工ですか、まさか挽き肉とか勘弁してくださいね!」

 

ル「大丈夫、ただのお肉だから」

 

誠「どっちにしろ死ぬとはこれいかに」

 

メ「演奏の練習もしないと」

 

リ「練習、練習~」

 

誠「せめて本番で殺して!」




更新が遅いくせにちょっと短い、もうちょっとゆとりある生活がしたいです。


…え? 弾幕ごっこをやれ?
じ、次回は弾幕ごっこやります(震え声)






次回予告
プリズムリバー三姉妹との弾幕決闘を見事勝利し冥界へと侵入した誠。 だがそこには大量の霊がうじゃうじゃふよふよ…。 正気を失いそうになるも冬を終わらせるために無我夢中で進む誠だがその行く手に一人の少女が立ちはだかる! 「…誠、こんなところで何してるのよ。 前に貸したお金を三倍で返すんじゃなかったのかしら?」紫様に金銭の創造は禁止され、今は無一文の誠に紅白の巫女少女は容赦なく襲いかかる! 果たして誠の運命はいかに!!次回『今年は2月、3月に欲しいゲームが出過ぎだと思うの』ドラクエシリーズは10以外クリアしました。


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第二十六話 格闘

久々の金曜更新です。


冥界前、門。

結界が張られ、生きし者の侵入を拒んできた門は今日もしっかりと仕事している。

飛び交う弾幕は結界によってかき消され、損傷どころか傷一つついていない。

さすが冥界の門だ、何ともないぜ!

 

ル「よそ見をするな」

 

ルナサから放たれた弾幕は四方八方に散らばり、まるで小さな花火のように空中で弾幕の花を咲かせた。

 

誠「広範囲に弾幕を散らして戦うスタイルですか」

 

体を捻ってきりもみ回転、弾幕の隙間を貫くように回避していく。

このくらいの弾幕なら余裕で回避できる、所詮は道中ボスってところかな。

…俺に弾幕がまったく当たらないことで業を煮やしたのか、弾幕の数が徐々に増えだしているようだ。

 

誠「ただの人間にこんなことをしたらダメですよ」

 

ル「どこの世界にこの弾幕を避けるただの人間がいる!」

 

誠「ここにいますよ~」

 

ル「こんのぉ…」

 

俺の挑発で明らかにムカついているようだ、ストレスはお肌の天敵ですよ?

 

メ「姉さん、手助けします」

 

リ「私も~」

 

二人の声によって後ろで様子を伺っていたはずの次女と三女がいつの間にか長女の近くにいることに気付いた。 ルナサは二人が近くにいることを確認するとスペルカードを宣言した。

 

ル「騒符『ライブポルターガイスト』」

 

スペルカードの宣言と同時にルナサのヴァイオリンから音符型の弾幕が形成された、弾幕の形成と同時に発されている音は聞いていると気分が下がっていく感じがする。

…そういや『手を使わずに楽器を演奏する程度の能力』は三人の共通能力、それとは別に1人1人が能力を持っているんだったな。

長女ルナサの能力は『欝の音を演奏する程度の能力』…、厄介極まりない。

こんなので俺一番のいいところ、ポジティブスキルが無効化されるのは嫌だ。 ついでに欝も嫌だ。

耳栓は……したら普通に危ないから止めとこう。

 

メ「早く調理してお屋敷に行くわよリリカ」

 

リ「手助け~」

 

メルランのトランペット、リリカのキーボードからも弾幕が形成された。 それはさきほどのルナサの弾幕と同じように周囲に拡散し、空中で花を咲かせる。

この2人の能力は確か……、なんだっけ。

 

ル「くらえっ!!」

 

ルナサの音符型弾幕が俺へと襲いかかった。 それはムチのように一本の長い弾幕となり俺を潰そう迫る。

なるほど、二人で隙間を潰してからトドメをさすと。 さすが三姉妹、いいチームワークだ。

だが、遅い。

すぐに右に飛んで弾幕を回避し、ルナサに弾幕を放つ構えをとった。

 

リ「かかった!」

 

飛んだ先に音符の弾幕、それは俺が接近したと同時に拡散した。

至近距離でのこの攻撃なら回避し難いわな、しかも空中戦じゃ飛んだ勢いは簡単には殺せない。

でも残念、それじゃ40点だ。

弾幕を放つ構えを維持しながら足元に小さな結界を創造し空間に固定、それを足場に上へと飛んだ。

 

三姉妹「上!?」

 

三姉妹全員が俺の行動に驚き一瞬だが楽器の演奏が止まった。 その一瞬で音符は風船が破裂したかのように割れてなくなり無防備となる。

 

誠「…ルナサまでの距離、30メートル。 視界良好、創造完了。

  スペルカード!! 盗符『マスタースバーク』!!」

 

スペルカードを宣言し両手を前に突き出した。 一瞬の煌めきの後極太のレーザー型弾幕が放たれ、三姉妹を狙い撃つ。

虹色に輝くレーザーは冥界の門を照らし、空気をビリビリと震わせながら轟音と共に突き進む。

足元に浮かぶ雲が千切れ、桜吹雪は燃え尽き、頭上に浮かぶ太陽をも霞ませるほどの攻撃が視界を埋め尽くす。

それは五秒、いやそれよりも長かったかもしれないがそれくらいの時間を幻想郷の空に響かせた。

やがてそれは急激に細くなり、か細い光となって消えていった。

 

誠「…やりすぎたか?」

 

こりゃやりすぎたな、うわぁ怖い。 三姉妹のついでに全力で結界ぶっ壊そうとしてみたけど本当に結界割れちゃったよ…。

紫様に殺されないかな? 大丈夫だよね? 異変解決のためだから大丈夫だよね?

 

…あとで三姉妹と紫様には謝っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

三姉妹との弾幕決闘に勝利し、罪悪感に苛まれながら冥界に足を踏み入れる。 門の先には長い階段が続いていた。

三姉妹はごく普通に弾幕に被弾しただけだろう、亡霊だし消し炭になったりはしないだろう。

…多分。

今更だが原子レベルだか分子レベルだかまで分解されるってどんな気分だろうか。 考えるのも恐ろしいので考えないこととする。

 

誠「…にしても綺麗だな、桜は咲いてるし暖かいし。 防寒着もいらないな」

 

気持ちを紛らわすために独り言を呟く、冥界と言えどここはそこまで寒くないようだ。

階段を上りながら防寒着を脱ぎ捨てて普段の姿に戻った、その姿はジャージ。 男なら誰しもが着る魅惑のオシャレアイテムである。

やっぱりこの服装が一番だわ~、春よ早く戻ってこい。

 

階段を足早に上るといきなり周囲が明るくなった、まるで夜から夕方に戻ったような明るさに驚きながら階段を上っていく。

 

誠「…………?」

 

背後から気配を感じ、振り向くがそこには誰もいない。

おかしいな、と頭を掻くとまた背後から気配を感じた、さきほどよりも強い気配だ。

すぐさまその場から飛び上がる、すると俺が立っていた場所に弾幕が飛び交った。

 

誠「……招かれざる客ってわけか」

 

見渡すとふよふよと浮かんだ玉…いや(たま)が周囲に浮かんでいるのが感じ取れた。

それは漠然としたイメージでしかなく、事実俺の視界には何も写っていない。

また弾幕が放たれた。 足に力を入れてその場で上昇し弾幕を放つ、確かに弾幕が当たっている感じはするが目には見えない。

 

めんどくせぇ…。

 

幻想郷には野良妖精が存在し、人間を見かけたら挨拶なしに弾幕を放つ妖精がそこらにいるわけだがそれはまだいい。 敵が見えるから攻撃される前に潰せるからな。

だが霊はダメだ、見えないんじゃ放たれてからでしか対応できん。 場所は大体わかるが本当に大体だ、正確には方角くらいしかわからん。

弾幕は回避できるが不意打ちはキツイ。 不本意だが今は回避して弾幕を放った奴を仕留めるを繰り返すしかあるまい。

そうこう考えてる間に弾幕が放たれた。

 

誠「7時の方向、下に20度」

 

一瞬で状況を把握し的確に霊を撃ち抜く、スナイパーにでもなった気持ちだが残念なことに気分は最悪だ。 めんどくさいことこの上ない。

 

誠「4時の方向、上に60度」

 

全神経を五感に委ねて敵を撃ち抜いた、気配からして数は少し減ったがまだまだいるようだ。

クソ、雑魚を相手に使うのは(しゃく)だが拡散系のスペルカードで攻撃した方が早いんじゃねぇのこれ。

 

ストレスを感じながら霊を撃ち抜いていると視界に何か小さな人形のような影が見えた、もちろん冥界といえど人形が勝手に動くわけがないしアリス・マスタードもこんな所にいるはずがない。

つまりだ、影の正体は。

 

誠「野良妖精かよ!」

 

ただでさえ面倒なのに妖精まで加わったら更に面倒だ、そして俺の我慢も限界に近い。

もう使う、俺はこれを雑魚相手に使うぞ…。

 

誠「創符『真空切りの巻物』」

 

スペルカードの宣言と同時に巻物が現れた。 巻物を開き念ずるように読むと俺の周囲をかまいたちのように弾幕が吹き荒れる。

弾幕は俺の周囲にいた妖精や霊を次々に切り刻むように被弾し、一瞬にして周囲は冥界らしい静けさを取り戻す。

 

誠「……たく、一日中飛んでるから疲れてるんだよこっちは」

 

敵の気配がしないことを確認すると地上に降りて階段に腰を下ろした、腰が痛いわマジ。

 

……ん? 俺すげぇジジイみたいなこと言ってる。

ん~…まあいいわ、人間は歳をとって成長するわけだし。

 

?「あなた、人間ね」

 

誠「お! そうですよそうですよこの頃人間と言われることがなかったからなんか嬉しい!」

 

突然頭上から褒め言葉が聞こえた、笑顔で上を向くと見えたのは白。

 

?「…っ!! どこを見てるッ!!」

 

誠「おわっと!!」

 

俺の視線の先になにがあったか気づいたようでいきなり斬りかかってきた、間一髪で良けれたが階段の一部は無残にも粉々に砕かれている。

 

誠「危ないじゃないか、もうちっと遅かったら死んでるぞ」

 

これ絶対殺す気だよね? つまり正当防衛という名目でセクハ―――んんっ!! いたぶってもいいよね?

 

誠「そうですよねぇ? 魂魄 妖夢(コンパク ヨウム)さん?」

 

魂魄 妖夢たしか半人半霊というみょんな体質を持った人だったな。 武器は今手に持っている刀、二刀流もできるっけ。

白い髪に黒いリボン、青緑のベストとスカートを着ていて腰には刀を入れる鞘も身につけており、その隣でふよふよと白い魂が浮いている。

その魂切り捨てたらどうなるの? わたし、気になります!

 

妖「あなたが変なところを見てたからでしょうが!!」

 

ありゃりゃ、これみよがしにと空飛んでたんだから見るに決まってるでしょ。

ちなみに見えたのは真っ白なドロワーズだから、パンツじゃないから恥ずかしくないでしょ? と思って妖夢の顔を見ると赤くなってて明らかに恥ずかしそうな顔してます本当にありがとうございました。

ふむ、美少女が恥じらう姿………良い!

おっと、これ以上暴走したらポーカーフェイスが崩れちゃうわ。

 

誠「名前が当てられたことに驚かないんですね」

 

妖「名前くらいでは私は動じない」

 

いい精神をお持ちで。

 

妖「ふん、でも人間ね。ちょうどいい」

 

妖夢は俺に刀――楼観剣(ろうかんけん)(きっさき)を向けた、その眼は恥じらいを持った少女ではなく決意を持った眼だ。 確か咲夜さんもこんな眼をしたことがあったな。

 

妖「あなたの持ってるなけなしの春を…すべて頂くわ!」

 

血を払うように刀を払い、俺に向かって突進してきた。 地上戦、しかも肉弾戦とは心が踊る!

能力で俺の体以上の大きさを誇る大斧を創造し妖夢の一撃を受け止めた。

金属がぶつかり合う音が響き、自身の武器からギリギリと音を立てながら鍔迫り合う。

 

誠「その細い刀で大丈夫かァ? 今からそれを折ってやるよ」

 

妖「威勢は良くても足が震えているのね」

 

誠「武者震いかもしれないぜ?」

 

妖「それでも結構よ、どっちにしろここであなたは地獄に行くから」

 

誠「んじゃ罪を軽くしてもらうためにこれからやるのは正当防衛ってことにしないとな」

 

妖「それは無理ね、この楼観剣にあなたは勝てない」

 

誠「ハッ!! んじゃテメェは俺に切り傷は付けられねぇよ、ここで俺に負けるからなァ!!」

 

俺と妖夢がほぼ同時に距離をとるために後ろへ飛んだ。 妖夢は階段の上段に着地し俺は下段に着地、次は二人同時に走り出し自身の武器を振るう。

 

誠「ブッつぶれなァッ!!」

 

渾身の力を込めて上段から振り下ろされた斧は妖夢の刀によって受け流され、階段に大きなクレーターを作り上げる。

 

妖「そんなおお振りな攻撃は当たりません」

 

斧が地面に刺さったその隙を狙って妖夢は楼観剣を俺の頭に振るった、それを首をずらしてかわし、斧を引き抜いて間合いをとる。

 

階段の上、同じ段に足をかけて睨みあう。 ほんの少しの間同じ目線の高さで睨みあい、二人同時に弾かれたように階段の上へと走り出す。

疾風のような速さで階段を駆け上がる二人、そこに2匹の野良妖精が弾幕を飛ばしてきたが1匹を妖夢が一瞬で妖精を切り裂き、1匹を俺が斧をブン投げて片付ける。

斧を新しく創造し、妖夢へと向き直る。 妖夢も妖精を片付け終え、さきほどの状態に戻った。

先手をしかけたのは妖夢だった。 妖夢は俺に向かって右足で踏み込み、ジェット機のような速さで俺に接近した。

タイミングを合わせて斧を横に振るう、妖夢は俺が振るった斧を地面を蹴って頭上に飛び上がり回避、そのまま重力を利用し空中から斬りかかる。

斧は振るった勢いが残っているため腕で戻すことはできない、だが問題はない。 勢いがあるならそれに乗せればいい。

斧を振るった方向に体をくるっとターン。斧を背負うように構え、三日月を描くように下段から切り上げる。

妖夢は空中で斧の打撃を刀で受け止めたがバランスを崩すことなく地面に着地、あの体のどこにそんな力があるのだろうか。

 

誠「なかなかですね」

 

妖「ただの人間と少し侮っていたようね」

 

二人同時に武器を構え直した、睨み合いから先に動いたのは俺だった。

助走から地面を蹴ってジャンプ、斧を構え直して刃部分を妖夢に向けて斧にしがみついた。

 

妖「それは当たらないと言った!!」

 

妖夢の楼観剣にまたも受け流されて斧が階段に真っ直ぐ突き刺さった。 石でできた階段にまたもクレーターを作り上げる、それは俺の全体重をかけたためか最初にできたものよりも一回り以上大きい。

そして地面に刺さった隙を突くように妖夢が楼観剣を振るう。

 

誠「俺が同じ手を何度も使うとでも?」

 

真っ直ぐ突き刺さった斧を軸にした逆立ちで妖夢の攻撃を回避した後、斧をクレーターから引っこ抜き全力で回転斬りを放つ。

 

妖「なっ! クッ!!」

 

楼観剣で受け止めるが全力をこめたおかげで妖夢は数メートル後ろに吹き飛んだ。

 

誠「…ま、これで倒れるやつじゃないわな」

 

妖「…当たり前よ」

 

短く言葉を交わし、また武器を構える。

 

妖「あなたをたかが人間と侮っていたようね、謝るわ」

 

誠「俺も傷一つ付けられないは言いすぎたな、謝らせてもらう」

 

ツー…と俺の頬に血が垂れた、どうやら回避した時に軽く斬られたようだ。

 

妖「ようこそ白玉楼へ、幻想郷全ての春が集まったここに来た理由は?」

 

誠「冬が嫌いだから」

 

妖「死ぬかもしれないのに理由はそれだけ?」

 

誠「生き地獄は御免だからな、冬を終わらせられればいい」

 

妖「人間の常識が通用しない人ね」

 

誠「半霊の常識も通用しないがな」

 

妖夢の傍らでふよふよと浮いている魂を見る。

 

妖「ともかく、あと少しの春が集まればあの西行妖(さいぎょうあやかし)が満開になるのよ」

 

誠「それまで待てと?」

 

妖「いいえ、待たなくていいわ。 あなたの頭の中に広がるお花畑から春を取れば」

 

誠「普通に失礼だぞそれ」

 

妖「今から葬る相手に失礼も何もないわ」

 

誠「負ける気はサラサラないがなァッ!!」

 

頬から唇近くまで垂れてきた血を舐め、狂気を孕んだ笑みで斧を振り上げた。

 

妖「…妖怪が鍛えたこの楼観剣に」

 

妖夢が楼観剣の鋒をこちらに向けた。 その眼光は鋭く視線だけで人が殺せるのではないかというほどの威圧と敵意を醸し出す。

 

妖「斬れぬものなど、そんなに無い!!」

 

………ククク、クハハハハ。

 

誠「そうだそうだその意気だ!! 戦いはまだ始まったばかり、存分に楽しもうぜェッ!!」

 

そうだ、まだ戦いは始まったばかりなのだ。

どちらかが倒れるまで、死力の限りを尽くして楽しませてもらおうかッ!!




戦闘狂? はい、そうです。

ちなみにマスタースバークは誤字ではありません、仕様です。




次回予告
血湧き踊る戦闘を楽しむ誠、妖夢との戦いは長期戦となり次第に誠が妖夢を押し始める。 大斧の攻撃で手が震え、誠の気迫で足が震え、それでも戦う妖夢がついにあの刀を開放する! 「白楼剣もあればこの世界に斬れぬものなど、一つも無い!!」「そうだもっとだ!! もっと俺を楽しませろォ!!」ついに覚醒した妖夢との戦い、勝利を得るのはどちらなのか!? そして妖夢の影に潜む黒幕とは!? 次回『誠が弾幕決闘だとオーバーキルしてしまうのですがどうすればいいのでしょうか?』きっと幻想郷の大賢者さんがなんとかしてくれるはず…。


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第二十七話 桜

ちょっと怪我で入院していました。


いつもは静かな冥界に響く轟音。 何かが壊れ、砕けるような音や何かがぶつかり合う音。

木が倒され、墓石が砕かれ、地面にクレーターが作られていく中を動く二つの影。

一つは妖夢だ、白い髪を揺らしながら楼観剣(ろうかんけん)を振るうその姿は少女としての美しさではない美しさを持っていた。

そしてもう一つの影、金属特有の湿ったような輝きを放つ大斧を両手で、時に片手で振るっている。 だが大斧を持つ腕は細く、どこにそんな力があるのかと問われそうなほど弱々しい。

そう、俺だ。

能力で力を創造しなくてはこんな重いものは持てないだろう、本当に俺の能力は万能で助かる。

大斧の重さは大体140キロ程度だろうか、普通に投げただけでも十分に殺傷力がある代物を軽々と振るえる力を創っているのか俺は。

そんなことを思っていると喉を狙うように楼観剣が突き出された、それを斧の柄で払い、体制が崩れた妖夢に斬りかかる。

妖夢は斧の動きを一瞬のうちに読み、その場で小さく跳躍し宙を斬った斧の刃に乗った。

 

誠「へぇ!」

 

驚きの声を上げながらも斧から素早く手を離してから後ろに飛ぶ、支えを失った斧は自身の重さで急速に地面へと落下を始めるがそれよりも一瞬早く妖夢が飛んだ。

楼観剣を構え飛んだ方向に待つ獲物は、俺だ。

斜めに振るわれた剣閃は俺の肩を斬って赤黒い液体を出す寸でのところで盾を創造し難を逃れる。

小さく舌打ちをした妖夢は剣を弾くようにして後方に飛び体制を立て直す。

 

誠「毎回驚くような行動をするねぇ、斧の上に乗られちゃ攻撃できないわ」

 

妖「………」

 

誠「あ~、万策尽きたってやつ? あ、万策尽きたは行き詰まった時に使うんだったわ。

  んまあ斧は動きを覚えられてダメっぽいから違う武器でいけば問題ないね」

 

やれやれといったポーズをとってから盾を妖夢の方に投げ捨てた。 綺麗な円形をした盾は地面に落下すると転がり、近くの墓石にぶつかると倒れて動かなくなった。

 

誠「俺の得意な武器はそうだな、刃物だな。 剣でも槍でも斧でもいけるぞ。

  …まあまあその変な奴を見る目で俺を見るなって、照れるだろ」

 

刀を創造し、右手で持って構える。 左手は刀を振るう時のバランスを取るために空けておく。

 

妖「…あなたと話してると調子が狂うわ!」

 

痺れを切らしたように妖夢が走り出した。

バカ正直に振られた一太刀目を鋒でそらし、返し刃を刃で受け止めて競り合う。額に汗を浮かべる妖夢の剣を押し返して一気に詰め寄る。

 

妖「なっ!?」

 

妖夢は吹き飛びながらも俺の右肩を狙った突きを繰り出す。軽やかにステップするように地面を蹴ってかわし、右手の刀に渾身の力を込めて楼観剣を切り上げた。

 

数キロの鉄がぶつかった衝撃ではなくまるでトラックがぶつかったような衝撃で楼観剣が切り上げられ、妖夢の手から楼観剣が宙を舞い空を斬った。

 

妖夢の手から離れた楼観剣はまるで満月を描くように宙で回転し、俺の背後に突き刺さった。

ちらりと楼観剣をみるが刃こぼれ一つ無く地面に突き刺さっている、さすが楼観剣と言ったところか。

一瞬の出来事になにが起きたかわからない様子の妖夢に歩み寄り、鋒を妖夢の喉に向けた。

 

誠「…ンだよ、あれくらいで剣を手放すとは期待外れもいいとこだ。 降参するか?」

 

妖「………その答えを言う前にこの白楼剣(はくろうけん)であなたを斬れますよ」

 

妖夢が腰に下げているもう一本の刀、白楼剣に手をかけながら言った。

ふむ、『斬りますよ』じゃなく『斬れますよ』か。 確かに妖夢の速さは人間では勝てない域だ。

―――それじゃ俺ならどうか。

 

誠「宣言する暇が―――」

 

言い終える前に妖夢が動いた、それは一瞬で白楼剣を構えて俺の心臓に狙いを定め、横一文字に一閃した。

だがそれは俺の心臓どころか服すら掠らない。

 

誠「チェックメイト」

 

妖夢の首に刀を当て、そう呟く。

妖夢は背後に立つ俺を睨んだ後、数秒時をおいて振るった白楼剣を静かに腰にしまいこんだ。

 

誠「降参ね、なかなかいい試合だったよ。 おつかれさん」

 

刀を消し、楼観剣を地面から抜いて妖夢に手渡す。妖夢にとっては意外な行動だったのか目を丸くしていた。

いや、俺の性格は優しいのが素だから。 決してヒャッハーして残虐非道なことを日常茶飯事としているようなモヒカン野郎とは違うから。

 

妖「……ありがとう」

 

楼観剣を受け取って鞘にしまい、そっぽ向きながら答える妖夢。

 

誠「お、いいねぇその顔! 恥じらいながらもちゃんとお礼を言うところがグッとくるわ」

 

妖「………本当に変な人、まるで掴み所がないわ」

 

他人に行動を読まれるとムカつくよね。

 

誠「さて、勝ったから情報をくれ。 西行妖(さいぎょうあやかし)ってのが春を集めているんだっけ?」

 

妖「…いいえ、春を集めているのはお嬢様よ。 西行妖を満開にするために」

 

誠「お嬢様ねぇ、西行妖は満開になったらなんかあるのか?」

 

妖「お嬢様が言うには『何か』が封印されているらしいわ」

 

誠「ふむ、そのお嬢様は奥に見えるあの西行妖のとこか」

 

妖「そうよ、そしていくらあなたが強くてもお嬢様は殺せないわ」

 

誠「…あのー、人を殺人鬼みたいに言わないでくれないかな?」

 

 

 

 

 

 

満開の桜を尻目に冥界の奥へと進んでいく。 桜の木は進むごとにその美しさを増していき、紅魔館を覆っていた雪など昔の話しに思えるほど春を感じられた。

桜の花びらが視界を埋め、美しさに足が止まりそうになる。 こんな場所で花見でもできれば最高の思い出になるだろう。

近くに生えている桜の木の下で昼寝できたらなんて心地よいだろうか、そう思うと速く幻想郷の春を取り戻したくなった。

そういえば今回は魔理沙も霊夢も異変調査に出ていないのかな? まあ今回は俺一人で十分だろう。

たまには異変を解決するのを見る側になってみるのもいいんじゃないかな、霊夢なら楽で助かるわ! とか言うだろうし。

…さて、到着だ。

 

…天高くそびえ立つ西行妖を目の前にし、言葉を失った。 見た目はただの大きな木だ、だがその木が纏う雰囲気は神聖を通り越して恐怖すら覚える。

日本に数多くある御神木なんて目じゃない程の威圧感、この木に何が封印されているのだろうか。

 

誠「…怖いほど美しいってのは実在するんだな」

 

花が咲きつつある西行妖を見て呟いた。 …美しい。

魅力があるという言葉だけではすまない、いやすませられない妖しくも美しい桜がもう少しで満開となりそうなのだ。 きっとここのお嬢様は何かの封印を解くことが目的ではなくこの美しい桜が満開になるのを見たいのではないだろうか。

見たい、少なくとも俺は見たい。 だが見たいという欲と同時に満開にしてはいけないという危機意識もある。

不思議な桜だ、こんな桜は二つとないだろう。

 

誠「………美しい、ずっと見ていたくもあるが見てはいけないとも感じる」

 

それは一種の麻薬のようだった。

 

?「満開になればもっと美しくなるはずよ」

 

誠「っ!」

 

突然聞こえた声にハッとなり周囲を見渡す。 宙を舞う桜の花びらが強風によって荒れ狂うように舞いあがった、それは西行妖の前で球体を作るように密集し、花びらが弾けるとその人影は姿を現した。

それは人だった、見た目は女の人、顔も体も手も足も人間そのもの。

 

?「そう、西行妖が満開になれば」

 

違うのは彼女が―――。

 

幽「さぞ美しい光景になるのかしらね」

 

西行寺 幽々子(サイギョウジ ユユコ)が亡霊だということだけ。

彼女の周りには小さな幽霊が浮遊しており、まるで飼い犬のように幽々子の周りを浮遊している。

 

誠「美しいものは好きだが冬は嫌いだ、寒くてたまったもんじゃない」

 

幽「冬は嫌いなのね、ここでお花見でもどうかしら?」

 

幽々子が扇子を広げて口を隠すようにして微笑んだ、その顔は亡霊というイメージがある青白い顔ではなく生き生きとした肌色をしている。

 

誠「花見は好きだけどね、冥界でする花見なぞ楽しくもない。

  それに騒ぐのは死んだ奴ばっかだろ、死人に口無しって言葉を知らんのか」

 

西行妖の周囲を浮かぶ霊達を見ながら幽々子に言い放つ。

 

幽「冥界は言わば死者の国、ここにいれば死んだも同然よ。

  そしてこの冥界にそんな言葉はないわ」

 

冥界にいたら死んでいるのか、それは良いことを聞いた。

 

誠「え、ないのか? それは残念・無念・また来年」

 

………一瞬この場の空気が凍った気がした、時間が止まったような感覚の中で思ったことは一つだ。

やばい、スベった。

 

幽「…冥界では死語がウケると思ったら大間違いよ」

 

渾身のネタがスベったことに心が傷ついたことは言うまでもない。

 

誠「このネタ知ってる人がいたなんて…」

 

幽「本当に久しぶりに聞いたわよ」

 

誠「え、幻想郷でも死語だったんですか!!」

 

幽「会話がずれてるずれてる」

 

苦笑いを浮かべながらツッコミをいれてくれた、ボケの方が多そうだがツッコミも期待できるなこの人。 いや、この霊?

 

誠「それで、御宅のご自慢の桜はこちらでございますか」

 

『突撃! 隣の化けざくら』と書いてある大きなしゃもじを抱えながらカメラ目線で言うが多分このネタは幽々子には伝わらないだろう。

 

幽「そうよ、もう少しでこの西行妖が満開になるの」

 

案の定伝わってなさそうだ。

 

誠「あら美しい、この桜切り倒していいかしら?」

 

妖夢戦で使った大斧を構えながら聞くが周りの霊達が西行妖を守るように俺の前を浮遊し始めた。

 

幽「ダメよ、それに切り倒したら何者かが復活するらしいわ」

 

どっちにしろ復活するんじゃないですかー! ヤダー!

 

誠「満開になっても復活するんでしょ? ヤーネー、そっとしておきましょお嬢さん!」

 

近所のおばちゃんが噂話でもするかのように幽々子に注意を促す、もちろん頭にパーマのかかったカツラを装着することを忘れない。

 

幽「……コロコロと口調が変わって面白い人ね、道化師としてここに仕えない?」

 

誠「丁重にお断りするぜ。 月給安そうだし、なによりここ暇だからな」

 

ぴしゃりと言い放ち、カツラを投げ捨てた。 こんなところで働くくらいなら紅魔館でゲームしてたほうが断然いいじゃないですか!

てかここ肌寒いし! 花見にも向かないわ。

 

幽「吸血鬼に血を吸われるよりはいいと思わない?」

 

誠「お嬢様は血を吸わないよ、なにより優しいわよ。

  そんなお嬢様とお花見がしたいので春を返せコノヤロー」

 

ふーむ、俺のめまぐるしく変わる口調に戸惑いを感じていると見える。

幽々子は背後の西行妖を見たあと扇子を畳んでからこちらに向き直った。

…目がキリッとしたな。

 

幽「…もう少しなのよ。 西行妖が満開になるまでもう少し」

 

邪魔をするなら容赦はしない、とばかりに幽々子が敵意を感じさせる視線をこちらに向けた。

そこまでその西行妖の満開が見たいのか、それとも復活する奴に興味があるのか…。

張り詰めた緊張感のある空気の中、俺はやれやれとばかりに両手を顔の横で仰いだ。

 

誠「そうかよ。 だから、どうした」

 

幽「っ!?」

 

空気が変わった、それは先ほどの警戒で一触即発の張り詰めた空気ではない。

殺気だ、邪魔だてするなら一瞬で殺すとばかりにこの場を支配した殺気は近くを浮遊していた霊を消滅させ広がった。

それは圧倒的なまでに残虐でドス黒い覇気ともとれるだろう。 並の霊なら至近距離で消滅、幽々子でも至近距離なら気絶する可能性もある。

 

誠「今、俺は怒ってるんだよ。 貴様が春を奪わなければ俺は今頃花見をしているお嬢様や

  咲夜さんを見て昼寝ができたものをよ。 しかも途中で疲れて眠るお嬢様の寝顔は最高

  に可愛いというのにその時間を奪い、しかも化け桜の封印を解き何者かを復活させる?

  ふざけるなよ貴様? そんな子供の思いつきはチラシの裏にでも書いて捨てろってんだ」

 

力の差は歴然、人間が蟻を潰すかのように一瞬で殺されると思うだろう。

―――だが幽々子は違った。

 

幽「亡霊の行動基準なんて思いつきでいいのよ、そしてそれは人間も同じ」

 

飄々とした態度で囁いた幽々子を意外と思いながら見つめた、さすがだ。

この殺気は俺が創造した物だ、実際は俺にそこまでの力はない。

それを一瞬で見抜くか、いやさすがだ。

 

誠「俺の自由な幻想郷ライフを邪魔する奴は誰であろうと許さない事にしている。

  人間 妖怪 河童 天狗 亡霊 天人 地底人 鬼 仙人、果ては龍 神までブッ倒す」

 

決意を表明するかのように言い放ち、武器を構える。

その手に構えるは弾幕だ、妖夢は武器での戦いを挑んだから受けただけだからな。

 

幽「その心意気や良し。 でも残念だけど春は渡せないわ、どうしても見たいのよ」

 

幽々子の周囲を飛び回るように浮遊していた霊は離れ、幽々子の周りには虹色に輝く羽をした蝶が無数に舞っていた。

美しい。 鱗粉はまるで伝説に登場する光景のように虹色に輝き、微かな風によって景色を虹色に塗り替えていく。

 

誠「桜の美しさは儚いが故に際立つ、さあ儚い思いつきを美しくする準備は出来たか?」

 

幽「桜の下には死体が埋まってると言うわ、だから」

 

誠「桜とともに儚くも健気に散れ、冥府の死屍!」

幽「桜のように美しく死になさい、自由の道化!」

 

美しくも狂おしい弾幕決闘の火ぶたが切られた。




来週からもちゃんと更新していきますよ。





次回予告
西行寺 幽々子との弾幕決闘がここに勃発した。 幽々子の弾幕の美しさに圧倒されながらも必死で戦う誠だったが徐々に押され始め、ついに弾幕を創る力も出なくなる大ピンチに。 「残念ね、これで西行妖が満開になるわ」「くっ! なす術はないのか!?」必死に策を練る誠だが逆転の策が閃かない、万事休すとなったその時、虹色に輝く極太レーザーが幽々子を襲った! 「くっ! あなたは!?」「…へっ、来るのが遅いぜ…」次回!『友情、努力、勝利』勝利の方程式は揃った…。


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第二十八話 狂人

更新がすごく遅れてしまいました、すみません。


誠「一気に決めさせて貰う!!」

 

弾幕を螺旋状にばら撒く幽々子に牽制を仕掛ける、幽々子を遠目から見ると余裕ありげな顔でこちらを見ている。

その顔から余裕を消してやる。

俺の周囲に無数の魔法陣を創造、弾幕をレーザーのように飛ばして牽制し幽々子の弾幕を潰しにかかる。

俺の弾幕は見事命中、的確に幽々子の弾幕を相殺し黒煙を上げ消えていく。

ディ・モールト(非常に)良い! そしてこの黒煙の中から狙い打ってトドメだッ!!

暗視ゴーグルを頭にかけて黒煙を覗くと幽々子の輪郭がはっきりと見え、俺はニヤリと口元を釣り上げた。

両手を前に突き出して力を溜め、一気に放出。 幽々子の頭を狙い撃った。

 

幽「…単純な攻撃」

 

そう呟いた声が聞こえた瞬間に幽々子が僅かに首をずらして俺の弾丸を軽々と避けて見せた、弾丸は黒煙を突き抜け幽々子の背後にそびえ立つ西行妖に着弾する。

それと同時に幽々子の弾幕が勢いを増し始めた。

螺旋を描いていた弾幕は二重になり、それを装飾するかのように周囲を飛ぶ弾幕がまるで檻のように俺を捕らえ逃がさない。

…なんだこの弾幕は。 隙間らしい隙間が見当たらない。

落ち着け、冷静に対処して確実に倒さねばいけない。 …ならば。

 

誠「創符『いてつくはどう』!」

 

スペルカードの宣言と共に両手を突き出し、指先からほとばしった凍てつく波動によって幽々子の弾幕はかき消された。

それと同時に動きだした俺は幽々子に接近し弾幕を構える。

 

幽「まだまだ」

 

だがすぐさま体勢を立て直した幽々子が弾幕を放つ、弾幕を相殺しながら接近を試みるが右肩を弾幕が掠めたために一旦距離をとった。

深入りは禁物、下手に突っ込んで被弾して終了なんてシャレにもならん。

 

幽「ふふふ…」

 

距離をとった俺に弾幕が勢いを増して襲いかかってくる。 遠距離では分が悪すぎる、どうにか近づかねば。

体を回転させながら弾幕を弾幕で相殺し、空中を蹴って空高く飛び上がる。

弾幕のないここからなら…。

飛び上がった勢いをそのままに急降下、凄まじい速度で幽々子に突進し距離を詰める。

幽々子は少し驚いた顔をしたが扇子を閉じて口元に当てると弾幕で俺の迎撃を開始した。

だが遅い、俺の速さは例えるなら霊夢並の速さ、自分自身目が開けられるのも不思議なくらいのスピードだ。

……このスピードならいける。

 

誠「創符『ポイズンクッキング』」

 

弾幕を右手に集中し一発の弾を構えた、それは高密度のエネルギーをその内に秘めながら毒々しい紫色の光と異臭を放っている。

幽々子はもう目前のところまで来ている、右ストレートも簡単に入る距離だ。

 

誠「食らいやがれえええええッ!!」

 

右手の弾幕を幽々子の顔面にへと突き出した、毒々しく光る弾幕は異臭を放ち幽々子の白い肌を汚さんと迫る。

勝利への確信、この距離ならば咄嗟に身をよじることもできない。 勝ったと、これで終わりだとほくそ笑んだ。

勝ったぜ、この勝負は速くも終了ですねぇ!

最後に敵の敗北の顔をこの目に焼き付けるために幽々子を見た。

そして幽々子の顔を見た瞬間、脳が危険信号を発した。

 

―――幽々子の顔には焦りなど欠片もなかったからだ。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

正午を過ぎ、外を見ればそこかしこに雪、雪、雪。

うんざりするほどの大雪を見ている私――霧雨 魔理沙は頬杖をつきながら外を見て溜め息を吐いた。

霊夢のところに遊びに来たはいいが、春が来ない。

春が訪れないんだ。 もう5月なのに雪は止まず桜も咲かない。

博麗神社には桜の木があってここで毎年春にやる宴会を楽しみにしている妖怪も少なくないと言うのに肝心の桜がこれじゃ祝うものも祝えないぜ。

 

魔「なあ霊夢、このまま春が来なかったら宴会は…」

 

博「もちろんナシ、速くそこ閉じてよ寒いから」

 

魔「そうだよなぁ…」

 

深い溜め息と共に障子を閉じてコタツの中に体ごと入る、宴会ができないなんて酷い春だぜ今年は。

コタツの上に手を伸ばしてみかんを1つ取り、皮を向いて口に頬張った、みかんの甘酸っぱい味が口の中に広がってなんとも言えない幸福感に支配されそうになる。

…支配?

 

魔「そうだ! これは異変だぜ霊夢!」

 

コタツから勢い良く飛び出した私は右腕を振り上げて高らかに宣言した、だが霊夢は私になど目もくれずみかんを頬張っている。

 

魔「霊夢! みかん食べてる場合じゃないぜ! こんなに冬が長引くなんて異変に違いないぜ!」

 

霊夢は興奮気味に言う私を気だるそうな顔で見てから「ん~…」と顎に手をやって少し考えてから口を開いた。

 

博「あー大変、もう異変だって気づいた誰かが動いてるかもしれないわねー。

  速く行かないと先を越されちゃうかもしれないわー」

 

魔「そうだぜ! こんなところでみかん食べてる場合じゃない!

  誰かに解決される前に私は調査にでかけるぜ!」

 

颯爽と箒にまたがって冷え切った冬空の中を飛び出した。

異変のせいで宴会中止だなんて御免だからな、パパッと異変を解決して楽しい楽しい宴会にしてやるぜ!

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

やばいと俺の脳が信号を発する前に幽々子の体が視界から消え、それと同時に背中に強い衝撃と激痛が全身を駆け走った。

体勢は崩れ勢いをそのままに西行妖に激突しまたもや全身に衝撃が響き渡った、激痛で受身も取れず重力に誘われるままに地面へと叩きつけられる。

背中の痛みで息ができない、全身の痛みで涙が溢れそうになる、ミシミシと軋む四肢に鞭を打つようにしてなんとか起き上がると西行妖の根元に座り込んだ。

 

……あの瞬間、幽々子は体を背中から倒れるようにして回避し、背中に弾幕までやられたわけか。

………は? 弾幕?

一瞬自分で考えたことを疑った、弾幕はありえない。 弾幕決闘の弾幕は被弾と共に体を原子レベルくらいまで分解させてお終い、一定時間経ったら元通りになる弾のはずだ。

…まさかと思い右肩を見ると弾幕が掠めた箇所が焦げて無くなっている、よく見るとジャージの所々に焦げ跡が見える。

……おいおいマジかよ――。

 

幽「あら? 私との弾幕決闘が一発当てて終わりのお遊びだと思っていたのかしら?」

 

ゆっくりと降りてきた幽々子が俺の青ざめた顔でも見てまた俺を青ざめさせる言葉を口にする。

 

誠「し、試合じゃなく死合ですかそうですかってやかましいわ!」

 

幽「顔が引きつってるわよ?」

 

誠「そそそ、そんなばな、バカな、こんな、こんなのって……」

 

気持ちが抑えきれず呂律が回らない、これは夢か現実か?

 

幽「恐怖で戦闘する気もなくなったかしら?」

 

首をかしげてそう言う幽々子の声も耳に入ってこなかった。 涙が堪えきれず頬を伝った、水が湧き出るようにとめどなく流れる感情を抑えきれない。

 

幽「命は取らないわ、速く逃げ帰って博麗の巫女にでも知らせなさい」

 

幽々子は吐き捨てるように言うと踵を返した、まるで壊れたおもちゃでも見るような目で俺を一瞥し、ゆっくりと飛び始めた。

 

誠「………ふっふふ」

 

突然笑いがこみ上げてきた、幽々子が振り返ると笑い声はどんどん大きくなっていく。

 

誠「ふ、ふふ…フヒヒヒ…ヒィイヤッハハハハハハハハ!!」

 

上を向いて絶叫を空に響かせるように笑った。 当然だろう、俺が今抱いている感情は恐怖でも悲嘆でもでもないのだから。

 

誠「最高だねぇ! こんなに充実した毎日は外の世界では味わえない!!」

 

痛みをこらえてスッと立ち上がると涙を流しながら両腕を大きく広げた、感情の昂ぶりが抑えきれないのだ。

 

誠「勉強? 恋愛? 部活? そんなものいらない。 みんな楽しくガヤガヤと過ごす毎日は確かに

  楽しい、だがスリルがない世界なんてつまんねぇんだよッ!! 生きながら死んでいることと

  変わらないからなァ…。 だが死の恐怖が背中に張り付き、最高のスリルと隣り合わせで

  生きることで生きていることを実感できる!! こんなに充実した世界はない!!

  自殺志願者なんていなくなるほど充実している世界だよ幻想郷はなァ!!」

 

大きく広げた両腕を全身を抱きしめるように閉じて肩を掴むと笑いながら語り続ける。

 

誠「そして今ここに俺は死の恐怖に晒されている、ここで逃げる? 背を向け巫女に頼む?

  冗談はチラシの裏にでも書いていろってんだよ! 今から始まる最高のゲームに参加しない

  わけがないだろうが!! フッフフハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」

 

トチ狂ったかのように笑う俺に幽々子は恐怖を感じているだろう、だがこれはこれくらいで恐怖とは言えんよ。 死の恐怖より恐ろしい物なんてたくさんあるしな。

でなきゃ自殺で現実から逃げるって発想自体生まれないもんな。

 

誠「んで、あんたのとこの剣士様は弱かったが、あんたは強いんだよな?」

 

幽「…それはさっきの遊び(・ ・)でわかってることでしょう?」

 

ごもっとも、俺は一撃も攻撃を当てられずに負けたようなものだからな。

だがそれはハンデありの戦いでの話し、本気でなら俺に敗北はない。

 

誠「さっきのお遊び(・ ・ ・)で貴様の弾幕決闘での強さはわかったよ。

  ではここで問題だ、霊夢の強さを5000と数値化した場合の俺の数値は?」

 

足が地面を離れて徐々に浮かび始め、俺の背後には無数の武具が俺を追従して浮遊している。

刀、剣、槍、斧などの一般的な武具からメイス、七支刀、蛇腹剣、モーニングスターなどの一風変わった武器まで種類は様々だ。

 

誠「答えは1、普通の人間の中では強いが霊夢の足元にも及ばないね。

  もちろんそれは生身の状態でのお話、俺の能力を考慮しない場合ってわけだ。

  さてさて~では次の問題! 総合的に見て俺の数値はいくつでしょ~か!?」

 

おどけた顔で言うと幽々子の眉間に若干しわが寄った、だが幽々子は無言のままに俺を見つめて口を開かない。

 

誠「はい時間切れ! ヒトシ君人形はボッシュートとなります。

  ちなみに答えは俺自身分かってないんだよね、核兵器でも出せば幻想郷ブッ壊せるかな?

  強さの定義を戦闘に勝つための力とすれば俺は強い部類に入るんかもね」

 

幽「…私はあなたを最初『自由の道化』と言ったけど訂正するわ。

  あなたは道化のふりをした『狂人』、命を軽く見すぎているわ」

 

誠「それは違うね。 偉い人は言いました、『命はもっと粗末に扱うべきなのだ』と、だが俺は

  命を大切にしている。 命がなくちゃ楽しいことも悲しいことも感じられないからな。

  そして命はつまり人生だ、俺は人生を楽しむためにこんな性格になったんだよ」

 

幽霊になっちゃ人生も糞もないからな。

 

誠「人生ってのは、大切にしなくちゃいけないんだ。 平和に生きることが好きなやつは平和に生き

  ればいい。 俺みたいに死の恐怖を味わうのが好きな奴はスリル溢れる人生を楽しめばいい、

  俺は自分の好きなことをして死ぬなら人生を満喫したってことで本望だしな。

  …理解できないって顔してますね? 別にいいですよ。 価値観の違いなんて人間ですから

  ごく普通の事でしょう? あなたは命の危険に自ら飛び込む俺を理解できない、ただそれだけの

  ことです。

  それじゃあ痛みも引いてきたので始めましょうか、もたもたしてると西行妖が満開になって

  しまいますし」

 

西行妖を見ると先程から咲いていた桜は数を増やして美しさと妖しさが増している。

大体六分咲きってところか、満開になっては手遅れだがギリギリまで戦いを楽しみたい。

 

幽「…あなた、悪役の方が向いているわよ」

 

誠「褒め言葉をありがとう。 そうだな…、貴様は西行妖を守ろうとする正義の味方。

  俺様は西行妖を枯らさんと迫る宿敵…ってか? いいぜ、正義が勝つ法則をぶっ壊してやる」

 

幽「勝ち誇っているところ悪いけど、あなたは今、私が殺すわ」

 

…幽々子の言葉には気迫がこもっている。 口先だけではない、その言葉を裏付ける実力を伴っているからだ。

いいねぇ、恐怖を感じたわ。

 

誠「あぁぁ殺されるかもしれないわ俺、いいねぇ最高!

  なら死なないようにひと暴れしなくちゃなァ!!

  さあッ! 死ぬほど寒く冷たい冬で凍え切った体を温めるとしようか!!」




骨折は5度目ですが足は初めてです。
バイトにも出れません。



次回予告
紅魔館の門番である紅 美鈴は考えていた、なぜ誠が冬の日に外に出てこんな夜遅くになっても帰ってこないのか。 まさか幻想郷に春が来ないことと関係しているのか、異変解決のために動き出したはいいが寒さで凍えて倒れていると推測した美鈴はこうしてはいられないと紅魔館を飛び出した。 だがいくら良心から出た行動でも持ち場を離れた美鈴に許された道はメイド長のナイフを受けることだけだった。 次回『キングダムハーツがリメイク…!? 買うっきゃねぇ!!』夏休みは終わらせない。


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第二十九話 満足

7000文字超えました。いつもの1.5倍くらいですね。

活動記録書くより更新が先ですよね、遅れてすみません。


誠「喰らえええぇぇぇぇッ!!」

 

妖しくも美しく輝く西行妖の前で閃光が迸った。

いくつもの銀色の輝きと弾幕が幽々子の視界を埋め、月明かりのようにか細い光をも通さぬ程の量に幽々子が笑う。

弾幕が流星のように降り注ぎ、銀色の輝きは地面へと吸い込まれるかのように落下し、深々とその刃を冥界に突き立てた。

 

地面に突き立つそれは西洋の騎士が愛用するようなロングソードだ、魔力で力を増していたりなどはしていない。

 

幽「数を撃っても疲れるだけよ」

 

流星の弾道を見極めるように、空を睨む幽々子へと地面に突き立った一本のロングソードを投げつける。

狙いは正確、だがもちろん当たらない。

 

幽「囮なんてバレバレよ」

 

流星を避けながらも涼しい顔でいう幽々子に少し腹が立つがこれも俺の戦闘の仕方が悪いのだ、反省しなければ。

…そう、短調ならば少し工夫することから始めよう。

 

歯車の形を模したヨーヨーを創造し両手で操る、右手に赤いヨーヨー、左手に青いヨーヨーだ。

 

誠「…行くぜッ!!」

 

ヨーヨーを持ったまま弾幕を形成、幽々子の動きを封じながら左手のヨーヨーを投げつける。

 

誠「そらそらそら!!」

 

投げたヨーヨーを器用に自身の手へと引き戻しながら右手のヨーヨーを間髪いれずに投げつける。

一瞬の隙をも潰す勢いでラッシュをしかけるが幽々子は先ほどと同じ涼しい顔だ。

右手で操る赤いヨーヨーが幽々子の頬をかするが、それだけだ。

当たり方が悪かったのか、傷という傷などは一つも見えやしない。

 

幽「…遊ぶなら紅魔館にでも帰りなさいな」

 

角度が甘かったか、それともやっぱり投げて当てるのはダメージとして弱いのだろうか。

力はあった、だが何かが足りない。

…そうか、回転だ。

チッチッと舌打ちをしてヨーヨーを自身の手へと引き戻した。幽々子はただ冷たい目をしている。

 

誠「…これが遊んで見えるなら、そりゃいい目をしているな」

 

両手のヨーヨーを幽々子の方へ紐ごと投げ捨てて新しくヨーヨーを創りなおし、勢いをつけてヨーヨーを地面に放る。

紐のついたヨーヨーなので当然だがそれは地面にぶつからず空中で静止…いや、放った勢いを持続しながら地面スレスレで回転を続けている。

すぐさま紐を左手で手繰り、あやとりのように指を素早く、だが精確に交差させていく。

わずか1秒、それはまるで蜘蛛の巣から糸でぶら下がる子蜘蛛のように交差する紐から黒いヨーヨーが垂れている。

 

誠「これがストリングス プレイ スパイダー ベイビー!!

  まるで獲物を待つ蜘蛛のように荒々しく回転するこの姿に感動すら覚えるだろう…!」

 

………静寂。冥界に響く音はひたすらに回転するヨーヨーの音、ただそれだけになった。

 

幽「…遊んでいるようにしか見えないわね」

 

静寂を破ったその声には苛立ちが見え隠れしている。

 

誠「…そりゃそうだ、遊んでいるんだし。

  殺されそうな時にこんなのやる奴なんざ俺だけで十分だと思うよ」

 

幽「…死にたいの?」

 

殺気の混じった声が俺に突き刺さる。 ぞくり、と背筋を何かが通った。

 

誠「いいや、全然」

 

表情を変えず…むしろニヤリと笑って見せた。

いや、これでは少々語弊があるな。

本当はこっちだ、俺は笑みをこらえきれなかった(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

誠「逆に聞くがお前は、死にたいのか(・ ・ ・ ・ ・ ・)?」

 

幽「……まさか!?」

 

気づいたようだが遅いな。 振り返る幽々子よりも速く俺の攻撃が幽々子の肩に直撃する。

ギャルルッ!! とすさまじい音を立てて回転しながら肉を抉る青いヨーヨーを引き戻し、左手に収める。

 

誠「ただ投げ捨てただけかと思いましたか? これはよく見なかった貴女が悪いですね。

  …透明のミシン糸ですよ。 使い古した手ではありますが、だからこそ使えます」

 

投げ捨てたヨーヨーにあらかじめ透明なミシン糸を付けておく、あとはタイミングを見てちょいと引っ張ればヨーヨーの性質上俺の手に帰ってくる。

ここで問題なのは糸のたるみだ、が。糸はたるまないように少し加工してあるものを使っている。

 

誠「もちろん私は気づかれないよう努力しましたが、

  貴女ならばこの程度簡単に見極められたのでは?

  春を集めすぎて頭の中にお花でも咲いてしまいましたか?」

 

幽「くっ…」

 

いくら糸と言えど目を凝らせば簡単に見えるはずだからな。 油断と怒りで見極めることができなかったのが致命的だったな。

左手に収まった青いヨーヨーを後方に投げ捨て、また新しく白いヨーヨーを創りなおす。

両手に持つ白と黒のヨーヨー構えてから弾幕を形成、辺り一帯を弾幕で埋め尽くす。

 

誠「…さあ、後半戦と行こう」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

アリスからの情報では異変の種は冥界にあるらしい。 颯爽と箒に跨り、冥界へと飛ぶ私をアリスが見送る。

風を切り、雲を払って幻想郷の遥か上空…、冥界の門へとたどりついたはいいがここは結界が張ってあって通れないと記憶している。

…って、あれ?

 

魔「結界が割れている…、まさか先に誰かが冥界に入ったのか!?」

 

くっ! 一足遅かったか? でも幻想郷を見た感じ異変は解決したように見えない。

…紫か誰かが決壊を壊しておいたのか? それともまだ異変を起こした張本人が倒されてないのか?

それなら簡単だぜ、私が先に異変を起こした張本人を倒して異変解決すればいい。

 

魔「それじゃ、お邪魔しま~す」

 

強固な結界の割れたところから難なく冥界へと侵入できた、が。

『ぼすっ』という音と共に後頭部や背中から軽い衝撃を感じた、視界が逆転し目の前に見える石階段が逆さになっている。

しかも後頭部、背中から冷たく固い感触。

 

魔「……………」

 

…重力が逆転したのか。

ぐるりと体を回転させて起き上がる。

石階段はちゃんと上へと伸びている、足の裏で地面を踏みしめて重力を確認してみると重力を感じられた。

 

魔「…さすが冥界、飽きなさそうだぜ」

 

服をぱんぱん、と叩きながら土埃を落として帽子をかぶりなおす、箒は手で持っていくか。

冥界に入ったは初めてだったがそこまで変な所じゃないな、博麗神社の前の階段と大差ないぜ。

…階段が異様なまでに長いところと階段の両脇に墓と桜の木が乱立しているところ以外は。

そういえば幻想郷よりも暖かいなここは、桜も満開だから墓さえなければいい宴会ができそうだぜ。

 

魔「…よし」

 

呼吸を整えて階段を上り始める、階段はなんの仕掛けもないただの階段で桜の花びらが散りばめられていることもあり美しさを感じられる。

階段の上を見るとなにかピンクに光るものが見えるな、桜か? いや、あんなに大きな桜の木はまずないだろう。

それじゃあれは―――。

 

?「あなた、人間ね」

 

どこからともなく声が響いた、辺りを見回すが声の主の姿は見えない。

 

魔「誰だ!」

 

声を張り上げるがその声に反応する影はいない。

 

?「ちょうどいい」

 

私から見て10段くらいだろうか、石階段の上で旋風(つむじかぜ)が巻き起こり桜の花びらを階段から舞いあげた。

 

?「あなたの持っているなけなしの春を」

 

旋風は次第に大きくなり、竜巻のような強風が辺りを包み込む。

 

?「すべて頂くわ!」

 

刹那、竜巻が宙を舞う桜の花びらもろとも斬られた、竜巻によって舞っていた桜は地面に舞い落ちる。

その中に一人の少女と霊が見えた、一振りの刀を携えてこちらを睨んでいる。

…中々派手な登場をしてくれるぜ。

 

魔「お前は異変を起こした奴の仲間か? いいややっぱり答えなくていい!

  沈黙は肯定の意だからな」

 

愛用のミニ八卦炉を構えて目の前の少女に向き直る。

 

魔「お前がピンピンしているってことは一番乗りは私のようだな。

  今回の異変は私の活躍で完全解決、明日の新聞の一面は頂きっと!?」

 

咄嗟に後ろへ飛ぶと刀が剣閃を光らせ振るわれた、あと少し反応が遅れていたら当たっていたかもしれない。

少女は初撃を外したことに動じずそのまま斬りかかってきた。 箒に魔力を送って浮き上がり、刀の攻撃を回避する。

 

魔「いいぜ! そっちがその気じゃなくてもやるつもりだったからな!」

 

刀を構えてこちらを見る少女に弾幕を放つ、煌びやかに輝く弾幕が少女を襲うが少女は弾幕全てを刀で斬り、相殺してみせた。

 

魔「ヒュ~! そうこなくちゃな!」

 

箒の上に立つとミニ八卦炉を構えて弾幕をばら撒く、規則正しいように放たれた弾幕は星の形を型どりながら少女に襲いかかる。

そこに上乗せするように弾幕を放ち続ける、時折相殺できないレーザー弾幕を放って少女を翻弄していく。

それをも少女はレーザーは当たるギリギリで回避し、弾幕は全て斬り落として見せた。

…これは中々楽しめそうな相手だぜ。

 

数分程の撃ち消し合い、私が放った弾幕のほぼ全てを斬り落とした少女は血を払うように刀を払った。

 

魔「大分温まってきたな」

 

箒に乗ったまま少女へ言うと少女は刀を構え直した。

 

?「みんなが騒がしいと思ったら生きた人間だったのね」

 

少女が睨みながら言う。

 

魔「私が死体なら騒がないのか?」

 

?「騒がない、人間がここ白玉楼に来ることはそれ自体が死のはずなのよ」

 

魔「私はきっと生きてるぜ」

 

そう言って胸を叩く私を訝しげに見つめる。

 

?「あなたといいあいつといい、結界をどうやって越えてきたのよ」

 

魔「あいつ? 誰だ?」

 

まさか先客はいたのか? まあ結界が壊れていることから先客がいたことは確実なんだろうが、だとしたらその先客はどこにいったんだ?

 

?「さあ、もう死んだかもわからないわ」

 

魔「…ところでお前は誰だ?」

 

?「私は魂魄 妖夢、白玉楼の庭師よ」

 

魔「庭師にしては危ない物をお持ちで」

 

妖「仕事でたまに使うわ」

 

香霖(こうりん)のところで見かけた"高枝切りばさみ"とか言うやつを教えてやりたいところだな。

 

妖「とにかく、西行妖が満開になるまでここを通すことはできないわ」

 

魔「さいぎょうあやかし?」

 

妖「うち自慢の妖怪桜よ」

 

魔「もしかして上に見えるあれか? 結構咲いているように見えるが」

 

石階段の上を見ると見事な色と大きさの桜の木が見えるな、あれの下で宴会ってのも面白そう。

 

妖「それでも満開には足りない。 でもあとほんの僅か春が集まれば

  西行妖も満開になる。 あなたが持ってきた春が満開まで一押しするってものよ」

 

魔「しかし、折角集めた春を渡すつもりなどあるわけもないぜ」

 

妖「満開まであと一押し!」

 

魔「いっそのこと、私がお前の集めた春を全て奪ってその妖怪桜を咲かせてやるぜ」

 

妖「私の集めた春は渡しやしない」

 

魔「私もな」

 

…数秒の睨み合い、風も吹かないこの場所では完全な静寂となり空気を痺れさせた。

だが妖夢が静寂を振り払うように刀を構え直した。

 

妖「………妖怪が鍛えたこの楼観剣に」

 

地面に落ちていた桜の花びらが一斉に舞い上がった、まるでこの妖夢とかいう少女が刀に眠る力を解き放ったかのように。

重力によって落ちる花びら一枚を砂粒のように斬り刻んで見せた。 その刀捌きはこの少女が、私が今までみた人間や妖怪よりも刀の扱いに長けている事を照明している。

 

妖「斬れぬものなど、殆ど無い!!」

 

魔「いいぜ! 剣と魔法、どちらが強いか見せてやるぜ!!」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

あの一撃が効いたのか、戦いは俺の優勢になっていた。

だがあくまでも優勢だ、一瞬の油断で死ねる。

それほどの力を持っている相手なのだ、"慢心"は絶対にしてはいけない。

 

弾幕が冥界の闇の中で煌めいた。

それがどちらの弾幕かなどわからない、見分けている時間などない。

それは幽々子も同じだろう。

弾幕と弾幕の衝突で巻き起こる微弱な衝撃が周囲の弾幕の軌道を少しだけ変えていく、軌道が変わった弾幕がまた衝突し合い衝撃が発生する、こんな状況で自分の弾幕と相手の弾幕を見極める必要など感じもしない。

 

また軌道が変わった、上に避けながら空いてしまった弾幕の穴を埋めるように弾幕を放つ。

幽々子が左に避けた、次に埋められるであろう弾幕の穴を予想、回避し攻撃へ転ずる。

 

一手一手、将棋やチェスで(キング)を追い詰めるように一手一手、王手(チェック)へと追い込む。

何百、何千、何万。次の攻撃に対して優位に駒を進めるパターンを模索し、慎重に、精確に、速く、早く。

タイミングを見逃すな、一瞬を逃すな、このゲームを勝利へと確実に、着実に進めろ。

 

衝撃、軌道の変化、穴、弾幕。

回避、攻撃、予想、進め。

 

…今だ。

 

左からくる弾幕を急降下して避ける。 俺の上を通過した弾幕が誰のものかもわからない弾幕に衝突する。

相殺、衝撃、軌道が変わった。 前方やや右下にヨーヨーを投げ捨て、弾幕が衝突によって消えた所を通る。

俺の位置が変わったことによって幽々子が手薄な弾幕の穴を埋めて牽制の弾幕をばら撒く、下へ急旋回し回避、攻撃へと転ずる。

 

下から襲う弾幕を右に小さく移動して回避、回避した弾幕の衝突、そこにヨーヨーを投げ込み、放たれた追撃の弾幕を潰す。

一度見ただけで通ろうとすることを予想して追撃の弾幕を放つか、やはり一度見たことは即座に対応できるようだな。

ならば発想の上の上を行くまでよ。

 

ヨーヨーを創りなおして手に収める、弾幕を上に旋回して回避し、急降下しながら攻撃。

地面に降り立つと幽々子顔に向けて右手に持った緑のヨーヨーを投げつける。

 

誠「そのキレイな顔をフッ飛ばしてやる!!」

 

幽々子は俺が投げたヨーヨーを最小限の動きで回避、右手に持った扇子でヨーヨーの糸を斬って見せた。

 

幽「同じ手を二度したところで通用しないことくらい学習したらどう?」

 

扇子を広げ、口元を隠すようにして笑う幽々子。

笑ってくれてた方がとても都合がいい。 が、俺はこういう時にポーカーフェイスはできないようだ。

にやける俺の顔を睨む幽々子。 『学習したらどう?』だと? それはこちらのセリフだな。

 

誠「…『一手』、私の方が上をいっていましたね」

 

幽「あら、その『一手』というのは――」

 

誠「ッ!!」

 

突然幽々子が西行妖の方へと振り返り扇子を振った、バシッ! という乾いた音と共に緑のヨーヨーが地面へと落ちていく。

 

幽「回転したヨーヨーを西行妖に当て、跳ね返ったヨーヨーを跳弾の要領で当てる。

  …なんて言わないわよね?」

 

誠「………」

 

ゆっくりと振り返る幽々子を睨み、両手を強く握りしめた。

 

幽「回転の音を気にしていて良かったわ。

  …もし当たっていたら負けていたかもしれないわね」

 

弾幕が展開された。 それと同時に幽々子の背後で大きな扇子のような幻像(ビジョン)が広がる。

美しい、だがその弾幕は残酷にも見える。

 

幽「…万策尽きたようね、なら死になさい。 これで西行妖も満開になるわ」

 

誠「いやだね」

 

絶望的な量の弾幕が展開される中、キッと幽々子を睨み言い放つ。 先ほどまで微笑を浮かべていた幽々子の口元から笑みが消えた。

 

誠「俺はここで死にたくはないね」

 

幽「あら、さっきあなたは『好きなことをして死ねたら本望』とか言わなかったかしら?」

 

今更何を言っているのよ、大口抜かして命乞いなんて無様すぎるわ。

こんな感じのことを思っているだろうな。 いやここまで口悪くないか。

 

誠「何を勘違いしている? 俺はこう言ったんだよ。『人生を楽しめたら死んでもいい』ってな。

  ところで人間は死ぬとき走馬灯が見えるらしいな、俺は見たことないがな」

 

幽「…何がいいたいのかしら?」

 

幽霊だからこそ、命を落とした幽霊だからこそ命を大切にしないやつが気に入らないのだろう。

俺の命の価値観は到底理解できないだろう。

 

誠「走馬灯は人生を振り返る最後のチャンスだ。

  走馬灯によって自分は生きてて良かったか、つまり人生を楽しんだかがわかる。

  たとえるならアルバムに俺の人生が写真となって貼られている。それを俺が見て、

  俺は人生を楽しめたか振り返るわけだ」

 

幽「………」

 

誠「それを今俺が見て、満足してアルバムを閉じることができるだろうか。

  少なくとも俺は、俺はまだ『満足』していないな」

 

幽「…それは命乞いよ。 つまり楽しめていないから殺さないでください、ただそれだけよ」

 

誠「何を言っているんだ貴女は。俺は命乞いなどしていないし死ぬ気もない」

 

幽「…何を…?」

 

ビッ、と右手で幽々子を指さした。

 

誠「貴女は大前提として自分の立場というものを理解していない。

  俺は今殺されそうになっていないし、ただ自分の哲学を語っただけだ。

  戦闘は続行されていて、俺と貴女は膠着状態(こうちゃくじょうたい)にある」

 

幽「あなたは何を言って―――」

 

誠「思い出せ、考えろ、見落としたものは? 脳をフル回転させろ。

  分からないならヒントをやる、ヒントは跳弾の精確さ、そしてヨーヨーの配置。

  …まだ分からないか? 高速で回転するものに衝突すると弾かれるんだ」

 

左手を上に振り上げた、そのまま天を指さし、親指を乾いた地面に向け、左手を振り下ろした。

口角を釣り上げ、宣言する。

 

誠「…王手(チェック)だ」

 

幽「!? 左手に持っていたはずのヨーヨーが!!」

 

音が聞こえた、風を切る音が。何かが高速で回転を続けているような。

 

幽「っ!!避け―――」

 

誠「もう遅いよ、詰み(チェックメイト)だ」

 

俺の言葉が言い終わるよりも早く、西行妖の花びらに紛れて落ちてきたヨーヨーが幽々子の背中に直撃する、その色は黄色。

 

誠「左手を振り上げた時に気づくのでは遅いぜ。

  そして変な方向にヨーヨーを投げた時にはなにかあると探るべきだった」

 

ヨーヨーを手に引き戻し、落下する幽々子を受け止めて西行妖の根本に寝かせる。

西行妖を見上げると花びらが散り、儚い花の美しさを魅せている。

立ち上がると風を切る回転音が聞こえてきた。

幽々子から少し離れた場所に突き刺さる一本のロングソードを見る、柄からは紐が垂れている。

白いヨーヨーが地面スレスレでぶら下がっており、いまだに回転を続けていた。

 

誠「…我ながらちょっと無茶だったな」

 

今度はもっと確実な作戦を実行しないと、失敗なんて格好悪いしな。

 

 

 

 

 

 

最後のロングソードを抜き、地面を足で埋める。 やっと後片付けが済んだというところで西行妖の花びらが全て舞い落ちた。

根本で気絶している幽々子の防止に花びらが積もっている、少し払ってやると幽々子の帽子に(アットマーク)のようなマークがあることに気づいた。

…幻想郷にドリームキャストのファンがいたとは…。

 

さて、幽々子の治療も済ませたし、帰ろう。

この時間じゃ夕飯どころか夜食ももらえないかなぁ。

 

 

 

 

 

 

魔「あいつと戦ってたら異変が解決されていた…。

  明日の新聞の一面は私がもらうつもりだったのに…」




まんまんまんぞく!一本満足!







次回予告
冬があけた、それどころか春を終えて夏も終わりそうな気がするがそんなことはなく幻想郷は春真っ盛り。 花見をしながら今回の異変について思いをはせていた誠は、黒ずくめの女の怪しげな取り引き現場を目撃した。 取り引きを見るのに夢中になっていた俺は、背後から近付いて来るもう一人の仲間に気付かなかった。 オレは、その女に毒薬を飲まされ、目が覚めたら、体が縮んでしまっていた!! 葉隠 誠が生きていると奴らにバレたら、また命を狙われ、まわりの人間にも危害が及ぶ。にとり博士の助言で正体を隠すことにした俺は、咲夜さんに名前を聞かれて、とっさに「苗木 康比呂」と名乗り、奴らの情報をつかむために咲夜さんが仕えている紅魔館に転がりこんだ。
難解なミステリーとピアノ線が多く使われるトリックを解き明かす先には何が待っているのか! そして忍び寄る魔の手、黒ずくめの組織の正体とは!? 次回『睡眠時間9時間ください』見た目は子供、能力万能、迷宮なしのチビ執事! 週休は、いつも一つ!!


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