図書室の天使さん (史上最強のラーメン)
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図書室の天使さんに出会った

小説投稿は初めてです。暖かい目で見守って頂けたら嬉しいです。


青春ってなんだろう?

 

 

 

 中三の春、俺はそんなことを考えていた。小学生の頃は、中学に入ったら友達とバカやって、部活やって、女子と付き合ってイチャイチャする、そんな漫画みたいな青春を送れると思い込んでいた。

 

 

しかし、そんなのは幻想だった...

 

 

 待っていたのはボッチな青春。友達は一人もできず、ラノベのように美少女との出会いも無かった。まさに灰色の学校生活である。

いや、諦めるな俺。もしかしたらこれから某目が腐った男が主人公のラノベのように美少女との出会いがあるかもしれないじゃないか!まぁ、こうなったのも全部俺の...いや、過去の俺のせいなんだけどな。

 

 

あれは入学式早々に行った実力テストの結果が帰ってきたときのことだった...

 

 

 

 

 

 

 

---黒歴史その1---

 

 

「クックック ...」

 

「ねぇ君!テストどうだった?」

 

「貴様は誰だ?」

 

「え、あ、ごめん。自己紹介してなかったな。俺は山田太郎。よろしく!!」

 

「山田太郎か...貴様のテストの結果はどうだったのだ?」

 

「あぁ、全教科平均点ギリギリあったよ。そういう君は?」

 

「ククク...山田太郎とやら。貴様、名前と同様に平凡過ぎるぞ。だが、私は貴様とは違う...これを見よぉ!!」

 

「な、ナンダッテェーー!!全教科百点だとぉーー!!」

 

「ククク...この程度私にとっては牛乳を一気飲みするよりも簡単なことだ」

 

「いや、なんで牛乳の一気飲みを例えにしたんだよ...」

 

「ふ...平凡な人間は細かいことばかり考えるな...だか、私は違う!なぜなら私は知識の神、オーディーンの化身だからだ!さぁ皆のもの!闇に飲まれよ!!」

 

 

 

 

 

---黒歴史その1終了---

 

 

 

 

 

 

 

ぐわぁぁぁぁぁぁ!!いっそ死なせろぉぉぉ!!

 

 

 

 

 

 

 

※少々お待ちください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ...はぁ...やっと落ち着いたぜ...

 

 そう、俺は中学入学時、思春期の夢見がちな少年少女なら誰でも発病してしまうあの病気を患っていたのだ。

 あのようなオープニングバグをかましてしまったせいで、当然の如く友達はできず、女子にモテることもなく...ゔゎぁぁぁ(持病の痙攣発症)。落ち着け落ち着け。素数を数えて餅つけ(激寒ギャグ)。3、5、7、11、13......落ち着いた。幸いなことにからかってくる奴らがいなかったのは良かった。それは俺が勉強運動共にスペック強強だったからだと考えられる。顔面以外はハイスペックな元厨二病患者。属性過多ですねぇ!!

 

 

「ほんと、これまでの二年間はろくなものじゃなかったな。でもせめて、せめて最後の一年は友達が...いや、美少女な友達が欲しい!!」

 

 

 1人、放課後の人気の無い廊下で叫ぶ。恥ずかしくないのかって?俺が恥ずかしいのなんて今更だ舐めんな。

 とはいえ、話を戻すと、そんなラノベみたいなことこのリアルで起こるわけないけどな......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、この本の返却は来週の金曜日までにお願いします。あと組と番号と名前を教えて欲しいずら...です」

 

 

あ...ありのまま今起こった事を話すぜ!『暇だからこれまで殆ど行ったことのない図書室で本を借りようと思ったらな目の前に超絶美少女がいた』

 

な...何を言っているのかわからねーと思うがおれも(ry

 

 

「は、はわわわわ......」

 

「あ、あのぉ?だ、大丈夫ずら?...ですか?」

 

 

「は、ははははい!だ、だだ大丈夫でしゅ!!」

 

「いや、全く大丈夫じゃないと思うずら」

 

 

大丈夫だって言ってるのに、しかも見た目もこんなにクールでイケメンなのにこの美少女は...

 

 

すいません、すごく調子に乗りました。

 

それにしても、なんだこの違和感は。なにか大事なことを見落としているような......そうだ。

 

 

「ずら?」

 

「はっ!?い、いいい今のは、ち、違くて、えーと、その...あ、あなたの聞き間違えだとおもうずら!」

 

「いや、それはない」

 

 

この子、もしかして...いや、もしかしなくとも語尾にずらをつけちゃう子なのか?

 

 

 

あ、ありのまま今起こったことを(ry

 

 

 

美少女、巨にゅ....豊満なお胸、ずらっ子=方言系女子

 

 

 

 

......キタコレ。

 

 

 

 

「と、ととと、友達になってくくく、ください!!」

 

「いや、その...い、今のは違くてぇ...え?」

 

 

こ、これは友達になってもらうしかない!だって美少女なんだぞ!?しかもずら!桂じゃない方のずら!方言系ロリきょにゅー美少女とか絶滅危惧種だろマジでよぉ!!希少種すぎてテンションおかしくなっちゃってるわぁ!!

 

 

「お願いします!命令されたら必ず一分以内にパンを買ってきますから!他にも言うこと何でも聞きますから友達になってください!」

 

「それは友達じゃなくて下僕だと思うずら...」

 

 

なんか言ってるようだが知らん!このチャンスを逃したら、タイトルが『俺の青春ラブコメは間違っている(確信)』になってしまう!今不思議な電波を受信した。オフレコでよろしく。

 

 

「え、えっと...まずは名前を教えて欲しいずら」

 

「は、はい!3年1組、出席番号1番!天城未来です!!よろしくお願いします!!」

 

「そ、そんなに大きい声で言わなくてもいいずら....」

 

 

ふっ、これぞ我が秘作、その名も......勢い任せ大作戦だっ!

 

 はい、適当です。とはいえ、世に生まれた過去の天才と呼ばれる偉人達もテキトーな発想から歴史的発明があるというし、あながち適当な考えも馬鹿にはできないのだ。知らんけどぉ〜〜〜

 

 

さて、無駄な思考はこの辺りで切り上げねば。そう思い、目の前の人物に再び意識を向ける。さぁ、どうなる...

 

 

「えっと、その...いいよ」

 

 

無理ですよね!!!適当だもん!

 

 

「はい!僕は今までテストで学年一位を取り続けて来ました!貴方の参謀としてどうで......え?」

 

 

ワッツ?

 

 

「その、マルがずらって言うこと、みんなに黙っててくれたら、いいよ...」

 

 

な、なんだこの可愛い生き物...いや、そうじゃなくて...

 

これはイケる!!!

 

 

「い、言うわけないだろ!言っても俺に得なんてなんにもないし、そ、それに俺、口は結構かたいんだぞ!それに言う友達もいないし!いないし...はぁ...」

 

「なんかごめんなさいずら...」

 

 

は、はぁ?か、悲しくなんてないし?な、なぁに言ってんだか!

 

しかし、特に最後の友達いない発言で少しは信頼を得られたかもしれない。死中に活を見出す。やはり知将が俺は...

 

 

「えっと、その...友達に...なってくれるの?」

 

「言わないって約束してくれるのなら...」

 

「あ、あぁ!約束するよ!約束するから友達に...」

 

 

目の前の美少女は、俺の慌てた様子を見て、穏やかに微笑んでいた。

 

 

「ふふっ、わかったずら。でも、マルはまだあなたのことは名前しか知らないから、マルも名前だけ教えるね」

 

 

 

 

 

俺は、中学校生活最後の年に出会う。

 

 

 

 

「国木田花丸です。よろしくお願いします」

 

 

 

まるで、天使のような女の子に。

 

 

 

 

 青春とは、学生として過ごす全ての者に与えられる尊く、儚く、まるで夢のような時間である。辛いことも楽しいこともあり、何が起こるか予測不可能だけれど、きっと最後には...

 

 

 

 

俺の青春が、今動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




プロフィール

天城未来

成績優秀、運動神経抜群。もと中二患者。


好きな物

ポカリ
辞書

嫌いな物

過去の俺
知識の神、オーディンの化身


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図書室天使さんはやはり天使さんだった

小説書くのって難しい........


 

 

「......」

 

「......」

 

 

 今の状況を説明しよう。コラさんの悪魔の実の能力が発動している。うそ。端的に言うと、気不味い。現在、放課後の図書室で本を読んでいる。国木田さんも図書委員の仕事があるので、図書室にいた。他に人もいないため、何か話そうと思ったが、何も話題が思いつかないでいた。まさか二年の間、殆ど同年代の子と会話をしなかっただけで、ここまでコミュ障に拍車が掛かるとは思わなかった。

 

 というよりも、元から女子と会話なんて上手く出来なかったしな。どんな話題を振ればいいのかわからん。いや、落ち着け。俺は定期テスト学年一の天才。話題くらい本気で考えればすぐ出てくるさ。

 

 

例えば...

 

 

「国木田さん!」

 

「は、はい!」

 

「えっと...ご、ご趣味はなんでしゅか?」

 

 

 はい、噛みましたー。おわりでーす。コミュ障おつでーす。たとえ勉強や運動が出来てもコミュ力なきゃ世間の荒波は容赦なく襲ってきます。社会に出てボコされる覚悟の準備をしておいてください!いいですね!

 

 そして話題もお見合いか!!って突っ込みたいくらいだ。本気で俺のコミュ力は某腐った目が特徴の主人公並みに落ちてしまったようだな...

 

 

「えっと、マルは本を読むことが好きかな。

天城君は普段本を読んだりするずら?」

 

「あ、あぁ。俺も結構本は読むよ。辞書とか漫画とか読むかな」

 

 

 辞書って良いよね。基本的に何でも載ってるし。いい暇つぶしになる。あと、ラノベも読んでるけど言うのはやめておこう。多分引かれるだろうし。

 

 

「へぇ~!日頃から辞書を読むなんて凄いずら!マルは勉強するとき以外は辞書なんて読まないのに」

 

 

か、可愛い...じゃなくて、食いついてきたぞ。

 

 この調子でたくさんお話して、親密度を深めて、ついには下の名前で呼び会う仲に発展する...グヘヘ...何処の恋愛漫画だよこの野郎!!

 

 

「いやいや、それが普通だよ。辞書なんて好き好んで読む方がおかしいんだから」

 

「マルも、普段から辞書を読んでいれば頭が良くなるのかな?」

 

「辞書なんか読まなくても、国木田さんは普段から文学を嗜んでるし、きっと大丈夫だよ。国語力はどの科目にも必須だからね。ところで、国木田さんは普段どんな本を読むの?」

 

 

 俺のコミュ障もう治ったのか?ここまでスラスラと会話出来てるし。ご都合主義で草。いや、違うな。これは単に国木田さんが話しやすい人なだけだな。だってクラスの人気者とかと話すと確実に噛みまくる自信があるし。考えるだけで鳥肌がたつ。権力を前にした俺はチワワ並みに弱くなるだろうし。チキンスキンチキンハート!

 

 

「マルは、色々な種類の本をよむんだぁ。日本文学とか、伝記とか」

 

「へぇ。じゃあさ、国木田さんが読んだ本の中で、一番面白かった本ってなに?」

 

「一番面白かった本かぁ~。う~ん、たくさん読んだからなぁ。『星の王子さま」も面白かったし、『斜陽』も......でも

『しろばんば』も捨てがたいずら...」

 

「国木田さんは、本当に本が好きなんだね」

 

 

一生懸命考えてる国木田さんも可愛いなぁ~。

 

 

 そう思っていると、元気なカラスの鳴き声が耳に入ってきた。ふと、外に目をやると空色は鮮やかなオレンジに変わっていた。

 

 

 

......ん?

 

 

 

「ねぇ国木田さん、悩んでいるところに悪いんだけど、この図書室の閉館時間って何時なの?」

 

「え?五時だけど...ってもう五時なの!?早く出ないと先生に怒られちゃうずら!!」

 

 

 時間を忘れるくらいにこの美少女は俺との会話に夢中になってたのか...これはもしかして国木田さん攻略ルートが存在する!?

 

 

「じゃあマルは帰るね。またね、天城君」

 

「あぁ、またね」

 

「あっ」

 

「ん?どうしたの国木田さん?」

 

「もしよかったら明日、天城君のオススメの本を教えて貰ってもいいかな?」

 

「え、あ、あぁ。是非!ついでに持ってくるね!」

 

「やったぁ!じゃあまた明日ずら!またね!」

 

 

これなんてギャルゲーですか?買います。いや、マジで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

国木田さんと別れた俺は、1人で沼津の書店に来ていた。俺の恋愛の教科書ともいえる、あのラノベの最新刊を買いに来たのである。

 

 

「お、あった。残り一冊だったか、危なかった」

 

 

さて、目的の商品もゲットした訳だし、早く会計済ませてとっとと帰るか。あまり暗くなると中坊なので補導されかねない。

 

レジに向かって歩いていると、新作の本が置いてあるコーナーに気になる本を見つけた。

 

 

「ん?あの本は...」

 

 

『μ’sの軌跡』?あぁ、μ’sって確か3年か4年前に流行ったアイドルグループだったか?

正確にはスクールアイドルグループで、その名の通り学生で構成されたアイドルだったっはず。

 

何回か曲も聞いたことあるが、凄かったんだよな。元気がもらえるっていうか、とにかく聞いてて楽しい曲ばかりだったな。

 

 

「...買ってみようかな」

 

 

俺はその本を取ろうと手を伸ばす。そして、違う方向からほぼ同時に伸びてきたであろう、その手とほぼ同時に本を掴んだ。

 

 

「「あっ........」」

 

 

 分かるぞ、これはよく恋愛漫画によくある展開だ。ここで本の譲り合い、からの美少女との出会い。か~ら~の~ラブコメの始まり。これが決められた公式だ。テストに絶対出るぞ。と、恋愛知識ZEROの男が申しております。笑止千万。

 

 

「どうぞ、僕はこの本をそこまで欲しいとは思っていなかったので。お譲りします」

 

 

完璧な対応、完璧な笑顔。これで新たなる美少女のルートが始まるは...ず.....あるぇ?

 

 

「うぅ、お姉ちゃん助けてぇ...」

 

 

そこには美少女...いや、正確には今にも泣き出しそうで、チワワのように震える美少女がいた。

 

 

「えっ、えっと...どうぞ、欲しいんだよねこの本?」

 

 

俺は出来るだけ優しい笑顔で本を渡そうとした。

 

いや、なんで防犯ブザーの紐をひっぱろうとぉ!?!?

 

 

「ちょ!?ストップ!ストーップ!!なんで防犯ブザーの紐を引こうとしてるんだよ!?」

 

 

「お、おおお、お姉ちゃんが怪しい男の人に話しかけられたら直ぐにこれを使えって!」

 

 

 顔も名前も知らないお姉さん、なんてこと教えてるんですか!!いや、まぁ正しいとは思うけど!とはいえ見境なさすぎだろこの子!!!

 

 

「きゅ、急に笑顔で近づいてくる男の人は悪い人だってお、お姉ちゃんが言ってた

から...」

 

Exactly!それな!!

 

って納得してる場合じゃなーーーい!!

 

だ、駄目だ...このままだと権力を行使する青い服の人たちがやって来る...さっきも言ったけど俺、権力の前ではチワワのように弱くなるから。

 

 

こうなったら最後の作だ...

 

 

「この本、ここに置いていくね」

 

「えっ?」

 

 

 

 

その名も...

 

 

「脱兎!!」

 

 

 

逃げる!!!

 

 

これぞ我が最終奥義だ。

 

 

...はい、よくあるやつですね。本当にコイツは学年一位かと疑うレベルです。

 

 

 俺は会計を速攻で済ませた後、全力ダッシュで店から出た。これからは知らない人には安易に話しかけないでおこう...

 そうして俺は、逃げるように故郷内浦へ帰還したのだった。

 

 

 

今日はとっても刺激的だったね。明日はもっと楽しくなるよね、ハム太郎!ピッピカチュウ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




マルちゃんの口調が難しい........

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二人目の図書室の天使さんに出会った

 

 

  昨日は色々あったな。黒歴史を思い出したり、美少女と仲良くなったり、美少女に警察呼ばれそうになったり...いや、最後のは俺が悪いことしたんじゃなくて、その子のお姉さんが要らんこと教え込んでたせいだけど。

 

 

「まぁ、昨日の本屋での一件はもう忘れよう。なぜなら今日は...」

 

 

 

そう!今日は国木田さんに俺のオススメの本を貸してあげる日なのだ!

 

ん?やはり素人にはわからんようだな、この最高の展開が。分かりやすく説明しよう。

 

 

美少女に本を貸す→いつも貸してもらってばかりで悪いずら~(本を薦めてくる)→仲良くなる→片想い中→まさかの両思いだった!やったね!

 

 そう、この通りに行けば俺はリア充ロードまっしぐらなのだ!これは俺がプレイした沢山の恋愛シュミレーションゲーム達で実証済みである。

 

 

「でも、こんな量しか持って来てないけど大丈夫か?」

 

 

一番好きな本を聞くとあそこまで悩む位だし、相当本を読んでいるんだろう。

 

 

「でもやっぱりラノベを持って来なかったのは正解だろうな...」

 

 

図書室の前に着き、扉を開けよう手をドアノブに伸ばす。すると...

 

不意に、正体不明の悪寒が俺を襲った。何が原因かわからないが、首筋にねっとりとまとわりつく嫌な予感。脳が警鐘を鳴らす。今すぐ退避しろと。生存のために。

 

 

 

 

「な、なんか知らんが、と、とにかく入ろう」

 

 

しかし、すぐに俺は、その嫌な予感の正体を知る。

 

 

 

「ルビィちゃん、今日はね、マルの新しいお友達が来るずら」

 

「そ、そうなんだ...ル、ルビィもその子と仲良く出来ると良いな...」

 

 

ざわ...ざわ...

 

あるかっ!!そんな偶然!!

何故昨日俺を通報しかけた女の子と再会しなければいけないんだっ!!

 

このっ、悪魔がっ!!

 

 

ニゲナケレバ

 

 

「あっ!天城君!お~い!こっちずら!」

 

 

ミッ、ミツカッチャッタ。ド、ドウシヨウ!焦りすぎて片言になってしまった。

でもし、仕方ない。ここはこのまま...

 

 

「あ、あぁわかった...アイエエエ!?ナンデ!?モウヒトリナンデ!?オ、オレカエル!」

 

 

やはり逃げの一手である。だって仕方ないじゃん!このままだと絶対不味いことになるし!

 

 

「待って!なんで帰ろうとするずら!?」

 

 

「ホワット!?」

 

 

な、なんという偶然!落ちてた紙で滑ってころぶだとぉ!

 

...なるぼど、神よ。今日、あの子と再会したのは運命だと言いたいのですね。俺どちらかというと仏教徒だけどね〜。でも正月は神社へ行き、クリスマスもしっかり祝う。宗教観グッチャグチャな典型的な日本人である。

 

 

 

 

 

そして最終に一言...オワタ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

「マルの新しい友達の、天城君ずら」

 

「天城未来です...よろしくお願いします...」

 

「う、うぅ...ま、また男の人だぁ...」

 

 

はい、わかってましたよこの展開。

 

 

「ルビィちゃんは人見知りなんだ。だから怖がらせないように自己紹介してね」

 

「はい。僕の特技は命令されれば必ず一分以内にパンを買ってこれることです」

 

「そんなこと本当にできるの?」

 

「うん。近くにコンビニがある場合は必ず一分以内だよ。一応短距離走はかなり速いからね。あと、必ず一個パンを常備してるしね。ほら」

 

「わぁ、本当ずら。天城君、マルお腹がすいたな。そのパンくれたりしない?」

 

「いいよ。どうぞ」

 

国木田さんって以外と食いしん坊?なんだこの属性モリモリ系女子は。

 

そう考えながら、国木田さんにパンをあげようとすると、横から視線を感じた。

 

 

「うわぁ...美味しそうだなぁ!」

 

 

そこにはさっきまでの泣きそうな表情とは一変して、目を輝かせながら俺のパンを見ているルビィさんがいた。おま、そんな目を向けられてしまったら......興奮しちゃうじゃないか(変態のはじまり)。

 

 

「国木田さんこのパンね、沼津駅前で一日百個限定で販売されてるパンなんだ」

 

 

「え!?そ、それって、この前テレビで特集されてたパンじゃ...」

 

 

 やっぱりな。食いついて来やがった!この食いしん坊がっ!そんなに目を輝かせやがって!だが見つけたっ!ルビィさんとの心の距離をグッと詰める攻略方を!

 

「ちょっと待って、国木田さん」

 

「どうしたの?」

 

「ねぇ、ルビィさん、このパン食べたい?」

 

「え、えぇ!?そ、そそそ、そんなことは...!」

 

「でも、凄く目を輝かせながらこのパンを見てたから。でも、俺の勘違いだったみたいだね。じゃあ国木田さんに...」

 

「ピ、ピギィ!」

 

「ど、どうしたの?」

 

「うぅ...その...しいです」

 

「ん?なんだって?」

 

「ほ、欲しいです...そのパン...」

 

「ゴファッ!!」

 

「あ、天城君どうしたずら!?」

 

 あ、あぶなかったぜ。あまりの破壊力に意識が飛ぶところだったぜ...

 ルビィさんのモジモジとしながらコチラを上目遣い気味に見つめる仕草に、俺の中で新たに何か、恐ろしい何かが目覚めそうになる。ヤバい。この子、ドストレートだ。

 

「えっと、国木田さんこのパン、ルビィさんにあげてもいい?」

 

「別にいいけど。女の子をいきなり下の名前で呼ぶのはあんまり良くないずら」

 

「いや、だってまだ自己紹介してもらってないから苗字知らないし」

 

「あ、そうだったね。じゃあルビィちゃんが自己紹介したら、そのパンをルビィちゃんにあげて欲しいずら」

 

「え、えぇ!?」

 

な、ナイス!!国木田さんがルビィさんとの関係構築に協力してくれるみたいだ。

 

 

「うぅ...」

 

 か、かわええ...でもそんな潤んだ目で見られても俺は助けてあげられないんだ。

 

 

「ルビィちゃんが人見知りなのは知ってるけど、この前言ってたよね?人見知りを克服したいって。だから勇気を出すずら!」

 

 

国木田さんのその言葉が響いたのかルビィちゃんは、震えながらも前を向き...

 

 

「く、黒澤ルビィです。よ、よろしくお願いします!」

 

 

俺の目を見ながら自己紹介をしてくれた。

 

 

「ルビィちゃん!凄いずら!」

 

「は、花丸ちゃん!」

 

美少女どうしが抱き合う姿。うん、百合百合しいね。

 

 

「黒澤さん、お近づきの印として、これをどうぞ」

 

 

そう言って、俺はパンを差し出した。

これは、感動のシーンだよね。人見知りな子が友達の応援のおかげで他人に打ち解けるとか。うぅ...この歳になると涙腺が緩くなってくるのぉ。ワシの人生に一片の悔いも無しじゃ。ワシは今から屋上に行ってワンチャンダイブして、来世は個性が宿ることに賭けてくるかのぅ...

 

 

「ピッ!!」

 

 ルビィちゃんは危険な物に触るかのように、一歩ずつ近づき、パンを取ってから高速で国木田さんの元へ戻っていった。

 

 

「花丸ちゃん...」

 

「どうしたの?」

 

 

ルビィちゃんは国木田さんに何か耳打ちしていた。

 

 

「天城君、ルビィちゃんが人見知りを克服したいからこれからも仲良くしてくださいって言ってるよ」

 

 

国木田さんは通訳なんすか。お疲れ様です。

 

 

 

ふっ、そんなの決まってるじゃないか。

 

 

 

「俺で良ければこれからも仲良くしてください!」

 

 

 

 

俺はこの日、再び天使のような女の子に出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




サンシャインの推しメンが未だに決まらない。1stライブまでには決めねば。

感想待ってます!


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図書室にはいない堕天使さん

中二病難しい........


 

 

「そういえば天城君はどこの高校を受験するの?」

 

二人の女の子と友達になってから少しだけ月日は流れ、今日は一学期の終業式の日である。

 

そんな日も俺は二人のいる図書室に来ていた。

 

 

「俺は、天流川高校を受けるよ」

 

「天城君って急に片言になったり、落ちてた紙に滑って転んだりするのに頭は良いんだよね」

 

「中々言うね、君」

 

 

 この国木田花丸という美少女、大人しそうな外見をしているのに、意外と物をハッキリと言うんだよね。そこがまたそそりますねーーーーーーもといギャップがあって素晴らしいですね。

 

 

「そういう国木田さんはどこの高校を受けるの?」

 

「オラは、ルビィちゃんと一緒に浦の星女学院を受けるつもりずら」

 

「浦の星ね。俺も受けたいな~」

 

「う、浦の星は女子高だよ」

 

「いや、知ってるよ。ジョークだよ」

 

 

ルビィちゃんとは、あの日からパンで餌付け....じゃなくて、パンをあげて徐々に好感度を上げていっている。そして今ではこうやって会話も出来る仲である。

 

 

「本棚に隠れてないでルビィちゃんもこっちに来るずら」

 

 

 本当に。そんな遠くから話さないでこっちに来て話せば良いのに。でも、立派な進歩だよね。男性恐怖症の女の子が一応男と話せてるんだから。

 

 

「なんかさ、こうして三人で話してると、良いなぁ~って思うんだよね」

 

「どうしてずら?」

 

「いやさ、一応俺って中二まで友達がいなかった訳だし、本当に今の時間が楽しいなって思うんだ」

 

 二人と友達になるまでに何度リア充爆発しろって唱えたことか。ほんと、毎日毎日クラスのとある男子に手作り弁当渡しにくる女子め。山田太郎許すまじ。結局人間は性格と能力よ。容姿なんて年をとるにつれて劣化して行く者だ。と、負け犬が申しております。そしてあいつ、性格も良いんだよな。ハハッ!(某ネズミ並感)

 

 

「だからさ、高校生になっても...友達でいて欲しいんだ」

 

なんか、凄く恥ずかしいこと言ってるな、俺。だって僕は友達が少ない、だから。

 

 

「ふふっ、天城君に真面目なのは似合わないずら。じゃあ、高校の勉強でわからないところがあったら天城君に聞きにいくね」

 

「ル、ルビィも...たまには一緒にスクールアイドルのお話をしたいな...」

 

「ふ、二人とも....」

 

 

本当になんだこの二人は。マジで良い子すぎるだろ。普段邪な考えを持っている俺の心が浄化されてしまう。とはいえ、俺は邪悪すぎて浄化してもキリないけどね!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

 あれからしばらくして、二人と別れた俺は沼津に来ていた。目的は新しく発売されたスクールアイドルの雑誌である。最初はルビィちゃんと話せるようにとネットなどで調べていたが、段々とハマってしまい雑誌を買うまでになってしまった。

 そしてもうひとつの目的はパンの入手である。パシリ用のストック補充である。

 

 

「さて、一応雑誌は買えたし、あとはあのパンを買うだけだな。でも売ってるかなぁ」

 

 1日数量限定販売のあのパンはやはり中々手に入らないからな。

 

「ふふふ...」

 

「最近どんどん財布が薄くなっていくけど気にしたら駄目だ。ルビィちゃんと仲良くなるためだからな!」

 

「ふふふ...」

 

「よし!そうと決まればパン屋までダッシュだ!」

 

 

俺はパン屋に走りろうとする。いや、あの夕日に向かって走ろうじゃないか!

青春ドラマのエンディング的な雰囲気が流れる。

 

 

「ちょっと!待ちなさいよ!!堕天使奥義堕天流拘縛!」

 

「ちょ!?首ぃ!首決まってますって!」

 

 

しかし、謎の堕天使に絡まれ、更には首をきめられてしまい、その雰囲気は台無しになってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

「はぁ...はぁ...なんの用だよ、津島」

 

「津島なんて知らないわ。私はヨハネよ」

 

 

 この女の子は津島善子。前に通っていた塾で知り合った。知り合い以上友達未満といった関係である。ここら辺は、津島の活動領域なため、いつか会うかもとは思っていたが、まさかこんな感じに再開することになるとは思ってもいなかった。

 

 そして俺は今すぐにでも逃げ出したい。

何故なら...

 

 

「ふふふ...強い魔力を感じて来てみれば、やはり貴方だったのね、オーディーン」

 

「そ、その名前で呼ぶなぁぁぁ!!」

 

 

津島善子は中二病であり、俺の知られたくない過去を知る人物だからだ。

 

 

 

 

 

 

 

---黒歴史その2---

 

「この塾に新しい生徒が入りました。津島さん、自己紹介してください」

 

 

「津島?違うわ。ふふふ、私はヨハネ、堕天使ヨハネよ。私と契約して、あなたも私のリトルデーモンに...なってみない?」

 

「あ、あの津島さん?」

 

「ククク、そううまくはいかんぞ、堕天使ヨハネよ...」

 

「あ、貴方は一体!?」

 

「ややこしくしないで天城くん!」

 

「私の名はオーディーン。知識の神なり。他の凡人どもは知らん。だが、この私を配下に置こうと思うのなら、私の頭脳を越えてみよっ!!」

 

「くっ!知識の神オーディーン。確かに凄まじい魔力を放っているわ。でも、ヨハネの麗しい姿ですぐにでもリトルデーモンにしてあげるわ!」

 

「......」←他の塾生達

 

 

 

---黒歴史その2終了---

 

 

 

 

 

思い出すだけで、羞恥心で死ねそうである。羞恥死。はずか死。新しい死因出来たわ。

 

あの日から、俺が塾をやめるまでの間、津島との奇妙な関係が続いた。そして同時に他の生徒達は引いていた。先生にはとても迷惑をかけてしまった。でも謝罪には行かない。恥ずいから。

 

 

「ふふ、どうかしたの?急に大きな声を出して...まさかあの時から更に強くなったヨハネの魔力に当てられたのかしら?」

 

「違うし、それに俺はもう中二病は卒業したんだよ。だからお前が期待してるような演技も出来ないし、する気もないからな」

 

「私は演技なんて求めてはいないわ。本気の貴方をリトルデーモンにしたいのよ」

 

こいつもいつかは中二病を卒業するだろう。そして悶絶するだろう。この病気は長引けば長引くほど悪化していく物だからな。自分が思い出さないようにしていても他人が覚えていてその傷に触れてくるし。だから今のうちにハッキリと言っておいた方がいいかもな。これは、中二病卒業者からの温情である。

 

 

「津島、中二病は今のうちに卒業しておけ。長引けば長引くほど後悔するぞ。そして、堕天使なんて存在しないんだよ。あと、リトルデーモンなんてものもな」

 

「何を言っているの?ヨハネは病気なんて患ってないわ」

 

 まぁ、こう言われるのはなんとなく分かっていたけどな。俺も昔、山田太郎君に言われてこんな感じに言い返したしね。なんつー間違いをした俺。まぁ、山田に忠告された時点で治したとして、既に俺の学校生活はオワオワリだったし、早い遅いに意味はそうなかったけれどもね。

 

「まぁ別にお前が卒業しないで後悔しようが俺の知った事じゃないけどな。あと、用が無いのなら俺はもう行くぞ」

 

「よ、用ならあるわ!えっと、その...」

 

「無いんだな」

 

そう言って俺はその場から立ち去ろうとすると...

 

「ちょっと!まだ話は...あうっ!!」

 

 

 津島は転んでしまった。それもかなり勢いよく。そういえば前に言ってたな。かなりの不幸体質だって。

 

「御愁傷様です。俺は急いでるのでもう行かせてもらいます」

 

「うぅ、痛い...」

 

「...」

 

 

...確か、カバンの中に入ってたな。

 

 

「はぁ...津島、傷見せてみろ」

 

「えっ?」

 

「全く、お前は自分がかなり不幸だって自覚してるんだからもっと慎重に行動しろよ。ほら、絆創膏貼ってやるから」

 

「い、いらないわよ!だいたいこんなかすり傷くらいヨハネの治癒魔術で!」

 

「馬鹿。お前は女だろうが。無いとは思うけど、傷とか残ったら嫌だろ?」

 

「そ、そんなの別に嫌じゃ...」

 

「いいから黙って俺の言うこと聞いてろ。すぐに終わるから」

 

「わ、わかったわよ...」

 

そう言って俺は津島の膝に絆創膏を貼った。

なんか...綺麗な脚してるね。調子に乗るから本人には口が裂けても言わないけど。それに言う度胸もないし。

 

「よしっ!貼れた」

 

「ふんっ!貴方にしては上出来よ!」

 

「はいはい。それはそれは、ありがとうございます」

 

 

手当が終わったため、俺と津島は立ちあがる。

 

 

本当...やさしいんだから...

 

 

何故か顔を赤くしながら何かを言っていたが、声が小さくて俺は聞き取れなかった。

 

 

「ん?なんか言った?」

 

 

「っ!なっ、何でもないわよ!!」

 

「そっか。じゃあ俺は行くな。お前も気を付けて帰れよ。それと、また転ぶなよ」

 

「二度も転ぶわけないでしょ!」

 

元気そうで何より。

そして、やっとパン屋に行ける。多分もう売り切れただろうけど。

 

 

「ねぇ!」

 

「どうした?」

 

「また...会ってくれたりしないかしら?」

 

こんな真面目そうな顔の津島は初めて見たな...

 

 

「俺は沼津にはよく来るし、まぁその時に少し話して行くくらいなら...嫌ってこともないけど...」

 

「ほっ、本当!?じゃあ連絡先交換しましょ!流石に中3だし、携帯も買ってもらったでしょう!?」

 

そして、こんな元気そうな津島も初めて見た。一つ、気になることができた。俺と津島は、不思議な関係だ。俺たちの関係を表すならば、中二仲間が相応しいと思う。

 

「なぁ、俺と津島ってさ、友達なの?」

 

俺自身は知り合い以上友達未満と思っているが、津島はどうなのだろうか。

 

 

「え?当たり前じゃない。なに言ってるのよ」

 

どうやら、津島は俺のことを友達だと思って

くれていたらしい。そのことを少しだけうれしいとおもっている俺がいた。

 

「ふっ、友達というのは仮の関係よ。いずれはヨハネの...」

 

「あ、そういうの要らないんで」

 

「ツッコミ早!!」

 

 

真面目な津島もいいと思うが、やっぱりこいつは、こっちの元気で無邪気な姿の方が似合うかもしれないな。

 

そしてこの日、俺と津島は友達になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




プロフィール

山田太郎

イケメン、運動神経抜群。俺ガイルの葉山のような存在。だが名前は平凡。




なんだこのイケメンな主人公は!そしてなんだこのシリアスの多さは!

感想、評価待ってます!


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図書室の天使さんのお姉さんに会った

お嬢様の口調難しい....


 

 

 

 

 今日は日曜日。日曜日は全ての学生に平等に与えられる休息の時だ。この日は、社会生活で発生する人間関係から来る全てのストレスから一時的に解放される最高の日だ。そして天気は晴天!絶好のお出かけ日和である。

 

 内浦は遊ぶところも殆どなくてあまり楽しくない町だけど、晴れると海が綺麗に見えるっていう所だけは良いと思う。

 

「こんなに天気の良い日は出掛けたくなったりしても仕方ないよね!一応受験も終わったし!」

 

今は3月下旬。俺は2月に第一志望の私立高校を受け見事受かったので受験も終わり、既に自由の身なのだ。

 

 

そして現在俺は町を散策中である。

 

 

「むむ!?12時の方向に見覚えのある赤髪の美少女を発見!接触して参ります!」

 

自分でも思う。受験から解放されておかしく

なってやがるな、俺。しかし、ルビィちゃんの姿を認識してしまったのだ。ここでテンションを上げないというのは...無作法というもの...

 

 

「黒澤さーん!!」

 

「ピ、ピギィ!あ、天城君!」

 

「久しぶり!春休みになってからは一度も会えてなかったからね!」

 

 ルビィちゃんも国木田さんも無事第一志望の浦の星に合格したらしい。良いなぁ女子高。俺も入って漫画みてぇなハイスクールライフを送りてぇ...

 

 

「黒澤さんこんなところでなにやってるの?」

 

誰かを待ってる感じだけど......はっ!まさか男!?ゆ、許さん!俺は絶対に許さんぞ!だって、だってルビィちゃんは俺の天使であり俺の女神であり俺の(ry

 

 

「え、えっとね、今ね、お姉ちゃんを待ってるんだ」

 

「へぇ~。お姉さんを......え、お姉さん?」

 

 

 ハッキリ言ってルビィちゃんのお姉さんには嫌な思い出しかない。会ったことも無いけど。お姉さんがルビィちゃんに変なこと教えてたせいで警察呼ばれかけるし。ルビィちゃんには異常なほど怯えられるし。

 

...ここはとっとと退散した方が良いかもな。なんか嫌な予感もするし。

 

 

「そっか。じゃあ俺はもう行くね。またね!ばいばい!」

 

 

俺は逃げるようにこの場から立ち去ろうと

すると...

 

 

「ルビィ、今終わりました...わ...」

 

 

タイミング悪く来てしまったようだ。

 

 何故かルビィちゃんのお姉さんは鳩が豆鉄砲喰らったような顔をしていた。そして冷静になったのか、ルビィちゃんのお姉さんは携帯を取り出し...

 

 

「もしもし!警察ですか!?妹が怪しい男性に!」

 

 

「ちょっ!?ストップ!ストーップ!!

誤解ですって!誤解ですってば!!」

 

どうして...どうしてこうなった?しかも誤解されるようなこと何にもしてないのに...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

「先程は、大変申し訳ありませんでした」

 

場所は移り、現在俺とルビィちゃんとお姉さんは近くにあった喫茶店にいた。

 

「まさか、本当にルビィが男性と話せるようになっているなんて思いもよらなかったので...」

 

 

あのあとルビィちゃんの説得もあってなんとか警察は呼ばれないですんだ。

 

 

ルビィちゃん...やはり貴女は天使か...

 

 

「いいんですよ。もう済んだことですし」

 

 

そして俺の完璧な対応。綺麗さっぱり水に流したと思わせる台詞。俺イケメソかよ。ちなみにここで言うイケメソとは、顔面は普通だが性格がイケてるmanのことを指す。

 

 

「そう言って頂けると、ありがたいですわ」

 

 

 やはりお姉さんもめっちゃ美人だな。さすがはルビィちゃんのお姉さんってところか。

性格とかはあんまり似てなさそうだけど。

 

「私は黒澤ダイヤと申します。浦の星女学院に通っていて4月から三年生になりますわ」

 

「そうですか。では僕も。僕は天城未来と言います。4月から天流川高校の一年生になります」

 

 なんか真面目な自己紹介だね。国木田さんとルビィちゃんにはあんな変な自己紹介したのに。

 

「天流川高校ですか。天城さんはやはり頭がよろしいのですね」

 

「いえいえ!僕なんてまだまだです!」

 

「ふふ、ルビィから時々天城さんの話を聞いて存じていましたわ」

 

ん?なんだ、俺のこと知ってる感じか。

え?あとルビィちゃん家で俺のこと話してくれてるの!?え?え!?ど、どんなこと話してるの!?もしかして頭が良くて運動もできてイケメンな子がいるとか!?ふぅ、やはり俺には春が来ているようだ。今3月だし。

 

 

「え?どんなこと聞いてるんですか?」

 

 

 内心凄く興奮しているがそれを抑えて平然を装う俺。若干にやけていることは秘密。

 

 

「そうですわね。頭が良いとか...」

 

 

ふっ

 

 

「美味しいパンをくれる優しい人とか...」

 

 

ふふっ

 

 

「ちょっとドジだけど面白い人、等ですわね」

 

え?ちょっと、最後どういうことですか?

ドジな人...だと?

 

いや、ポジティブに考えろ。面白い人というのは、ご都合主義的に訳すと一緒にいて楽しい人という意味になるんだからな。

 

 

「貴方と花丸さんには感謝していますわ」

 

「どうしてですか?」

 

「貴方と花丸さんのお陰でルビィは毎日楽しそうで、人見知りも少しだけ克服できたと思うのですわ」

 

 まぁ、確かに今では普通に会話する事も可能になった。けどまだ俺に対しては少しだけ怯えてるところもあると思う。だがそれでも立派な進歩だろう。

 

 

「別に僕と国木田さんのお陰ってわけではないと思います」

 

「どうしてですか?」

 

「いや、確かに僕と国木田さんはルビィさんが人見知りを克服するきっかけになったとは思うんです。けど、それは結局きっかけにしか過ぎないんです。本当に克服しようと思うなら、自分が頑張るしかない。心の問題っていうのはそういうものだと思います。だから、ルビィさんは自分の力で人見知りを克服したんだと考えてます」

 

 

 ルビィちゃんは優しくて、真面目で、本当は芯の強い人だって俺は分かっているから。

友達になったあの日から何度も俺に話しかけに来ようとしてくれたしね。

 

「そう...ですか」

 

 

ダイヤさんは納得したように頷いた。そして、横に座っているルビィちゃんに目を向けた。

 

 

「ルビィ、友達は大切にするのですよ」

 

「えっ?う、うん」

 

 

...何故だろう、俺の勘違いかもしれないが、今一瞬、ほんの一瞬だけど...ダイヤさんが凄く寂しそうな表情をした...

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

あれから三人で少し話をしてから別れ、今俺は家に帰る途中である。

 

 

「~♪~♪」

 

 俺は気付いた。友達と遊んだの何年ぶりだろうって。国木田さんとルビィちゃんとは今まで学校での付き合いしかなかったからな。一緒に帰ったりもしたこと無いし、外で遊ぶなんてことも無かった。

 

 

「むふふ、これってデートっていうんじゃないのか?」

 

いや、だってさ!お姉さんがいたけど一応知り合いの女子と一緒にお茶した訳じゃん?お母さん、今日息子が初めてデートをしましたよ!産んでくれてありがとうございました!!

 

 

「もうすぐ俺も高校生なんだよなぁ」

 

 

今思うと本当にあっという間だったな。この前までランドセル背負ってたのにな...時が進むのって本当に早いね。

 

 

「高校生活、うまくいくと良いな...」

 

 

リア充になりたいなぁ...漫画みたいな凄い青春を送りたいなぁ...

 

 

そう思っていながら、自転車を漕ぐ。内浦は港町のため、潮の香りが鼻をくすぐる。自転車で徐行しながら夕日に照らされた海を見ていると、すぐ近くの砂浜から声が聞こえてきた。

 

 

「曜ちゃん!私ね!スクールアイドル始めようと思うの!!」

 

 

あれは...浦の星の生徒か?

 

 

「へぇ。この町にもスクールアイドルができるんだな」

 

 

あの人も、青春しようとしてるんだな。

 

 

せっかくの高校生活。俺も...俺も何かやりたいことを見つけないとな...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




私立天流川高校

浦の星の結構近くにある高校。偏差値高め。



次回から本編始まります!

感想、評価待ってます!



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高校編
天使さんと堕天使とwithB


この小説を楽しみにしてくれてる人はいないと思いますが、約二年間放置してすいませんでした。


高校に入学して少し経った頃、俺は国木田さんとルビィちゃんと一緒に沼津に来ていた。

 

「二人とも、学校はどう?もう慣れた?」

 

駅近くの本屋で買い物をした帰りに、ルビィちゃんが行ってみたいケーキ屋があるということで、俺達はその店に向かっていた。

国木田さんは本屋で何十冊か本を買っていたため、ジェントルな俺は「お持ちしましょうか?お嬢さん?」と言うと丁重にお断りされた挙げ句「それ似合わないずら」とか言われたため虎になって逃げ出そうと思った。(わかる人にはわかるネタ)

 

「うん、クラスの子達も優しいし、ルビィちゃんとも同じクラスになれたずら」

 

「花丸ちゃんはまた図書委員になったんだよね」

 

「やっぱりマルは本に囲まれてる時が一番幸せずら~」

 

かくいう俺は、入学初日に中学の時のようにあの病気を発症することもなく、ユーモアあふるる自己紹介をし、無事高校デビューに成功した。

 

 

「うーん....」

 

「どうしたの?国木田さん」

 

「えっ?あぁ....ちょっと善子ちゃ....じゃなかった、気になる子がいて....」

 

「花丸ちゃん、それって津島さんのこと?」

 

「....は?え?津島?」

 

「えっとね、入学式の自己紹介の途中に急に帰っちゃった子がいてね」

 

「ずら、でもどうして急に帰っちゃったんだろう?」

 

うーん....いやいや、まさかそんなことないよな....あいつな訳がない。

でも...津島という名字と急に帰るという奇行....

 

「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど、その子って頭にお団子ついてる?」

 

「ずら?なんで知ってるずら?」

あ ・ い ・ つ ・ か ・ よ!!

 

そういえばあいつにどの高校行くのか聞いてなかったな。まさか浦の星だったとは。

 

「堕天使とか、ヨハネとか、契約が~とか言った後に急にいなくなったずら」

 

あー、そういうことですね。自爆系自己紹介をしてしまった訳ですね。

この前、黒澤姉妹とエンカウントしてから数日後に、なんか恋人とか友達つくってリア充になりたいから『堕天使封印する!』とか宣言されたけどやっちまったんだな(笑)

まぁ、その少し後に名前を呼んだら『ヨハネ!』とか訂正してきたからその時に色々と察しちゃったけどね。

その時に何故か顔を少し赤くしながら『あんたは....恋人とか作らないの?』とか言って来たけど、欲しくても出来ねーんだよ!フツメンの俺は女の子を落とすなんてゲームの中でしかしたことねーしできねーんだよ!俺だって可愛い子と夏のビーチで追いかけっこしたいよ!!

 

「もしかして、天城くんは津島さんと知り合いなの?」

 

「まぁ....そうだね」

 

 

「じゃあ善子ちゃんが急にいなくなった訳とか心当たりあるずら?」

 

「えー、そうだなぁ....」

 

ここは一から十まで説明すべきなのか否か。ただの中二病ですって言ってもいいんだけど........流石にちょっとかわいそうだし、津島の名誉を守ってやるか......そう考え、俺は不適な笑みを浮かべると..

 

 

「人間誰しも、急に走り出したくなるときがあるんだ....あいつはその自己紹介の時がそうだった....それだけの話だよ」

 

 

うん、我ながらいい感じに説明出来たと思う。ちゃんと人生の先達感も出しながら言ったしね。

 

........二人の頭に?が浮かんでるように見えるけど、知らん知らん

 

 

 

~~~

 

「ライブやりま~す!よかったら見に来てください!」

 

なんだ?駅前でなにかやってるぞ?

あれは....浦の星の制服だな。と、考えていると、浦の星JKは俺たちの方を向き、何故かこっちに向かって走ってきた。

 

「あっ!花丸ちゃん!ルビィちゃん!」

 

「あっ、こんにちは」

 

「ぴっ、ぴぎぃ!」

 

うーん、ルビィちゃんの人見知りは相変わらずみたいだな。とはいえ、もう俺とも殆ど自然に話せるし、克服しつつはあるんだと思うけど。

 

「?そっちの男の子は...........まさか!花丸ちゃんかルビィちゃんの彼――」

 

「違うずら」

 

「ち、違います」

 

即答!いや、事実だけど!でもこう、心に来るものがあるよね!

 

「なーんだ、違うんだぁ........まぁ、それは置いといて、はい!花丸ちゃん!」

 

「これは何ですか?」

 

「ライブのお知らせだよ」

 

「ライブ...ですか?」

 

「うん!花丸ちゃんも見に来てね!」

 

ふむ、制服でライブのチラシ配りってことはスクールアイドルか?

 

「ライブ...やるんですか!?」

 

「えっ?あっ、ルビィちゃん!」

 

「あっ...うゅ....」

 

うん、やっぱりルビィちゃん可愛い!!

もしルビィちゃんに本気でおねだりされたら破産してでも貢いじゃう!(俺の中では、ルビィちゃんのおねだり>ポリスメンを呼び寄せる魔法の薬、位の中毒性だから!)

 

「私たちのライブ、学校の体育館でやるんだ」

 

「えっ?」

 

 

「それで、体育館を満員にしないと私たち...スクールアイドル出来なくなっちゃうんだ....」

 

なるほど。浦の星って確かかなり生徒少なかったからな。わざわざ駅前まで来てチラシ配りしないと体育館を満員になんて出来ないわな。

 

「えっ!?本当なんですか!?」

 

 

「うん、そうなんだ....」

 

浦の星JKの言ったことが衝撃的だったのかルビィちゃんは悲しそうな表情を浮かべている。ルビィちゃんは本当にスクールアイドルが好きだからな。

浦の星JKは覚悟を決めたような真っ直ぐな目をしていた。

 

 

「だから....絶対に、体育館を満員にしたいんだ!!だから来てね、ルビィちゃん!」

 

「はいっ!絶対見に行きますっ!」

 

配られたチラシを見ると三人の女の子の絵が書かれていた。なんかいいよね、こういう女子特有の手書き感溢れるイラスト。

てか、過去に浦の星のスクールアイドルは解散したって聞いたけどまた出来たんだなぁ。

 

 

「じゃあ私、まだ配らないといけないから!」

 

てか、このチラシ....

  

 

「あ...あぁ、あのっ....!」

 

「んっ?どうしたの?」

 

それにしても、ルビィちゃんはスクールアイドルが絡むと本当に積極的になるよなぁ。

成長しすぎて積極的を通り越してSになったルビィちゃんを想像すると色々とはかどるぜよ!(鞭とかロウソクとかをトゥギャザーしてね!)

『うゆゆ?天城君?ルビィ焼きそばパンが欲しいって言ったよね?なんでコロッケパン買ってきたの?』

『さっせん!焼きそばパン売り切れてたんす....』

『だからってコロッケパンなの?女の子に買ってくるものじゃないよね?』

『いや、焼きそばパンも似たようなもの.......』

『口答えしないの!おしおきだよぉ!』

 

............ベネ(いいね)

 

「グループ名は、なんて言うんですか?」

 

「えっ?グループ名....?」

 

「あっ!忘れてたぁ〜〜!!」

 

なんか.....色々と大丈夫なのかな?

 

関係無いけど、最近巷では女子高生をJK1とか2とかLJKって省略するらしい。国木田さんとルビィちゃんはJK1ってことで、じゃああのチラシ配ってた人は?2?L?分からないからJKXってことにしておこう。

と、下らないことを考えていると俺の周りから人はいなくなっていた。

置いてこうって言ったのは国木田さんだな!仲良くなって行くにつれて国木田さんは毒を結構はくようになったと思う。その証拠に過去に何回かゴミを見るような冷めた目で見られた事があったけど、

 

我々の業界でそれはご褒―――

 

 

 

~~~

 

 

『浦の星女学院スクールアイドル、Aqoursです!』

 

『ちょっと待って。私たちって学校から正式な許可貰ってなかったよね』

 

『あ!』

 

『じゃあ、浦の星女学院非公認アイドル、Aqoursです!』

 

朝っぱらからずいぶん賑やかな放送が流れてきたけど、これって多分チラシ配ってた人だよな?

それにしても、アクアねぇ。中々洒落た名前をつけたんだなー。

 

ん?誰かからラインが....津島か。何々....

『助けて!リトルデーモン!』

 

ふむふむ....

『リトルデーモンになった覚えはない。あと早くそれ卒業しろ。ばいちゃ!』

 

これでよしと........

 

『放課後駅前に来て!』

 

................

 

『のー』

 

『お願い!』

 

懲りんなぁ....

 

『のー』

 

『来ないとスタ連するわよ?』

 

『ブロックするよ?』

 

『お願いします。お越しください』

 

『しゃ~ね~な~(笑)行ってやんよ~』

 

『調子のんなぁ~!』

 

『ん?』

 

『すいません』

 

 

なんか面倒ごとに巻き込まれそうな予感がするなぁ........




主人公はMの潜在能力を秘めています。←いや、どうでもいい


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輝きを見た天使とシリアスなwithB

ss投稿って時間かかるなぁ....筆者の都合でこのssは不定期での更新になります。すいません。

あと、読者のみなさんはわかってると思いますが、withB=主人公です。タイトルは.......まぁ適当です。二年前の筆者が何故か全タイトルに天使をいれてたために適当になりました。


人はその生涯で様々なことに挑戦する。陽キャ風に言うとネクストステップというやつだ。ネクストステップは人を多くの面で成長させることもあれば、ダメにしてしまう時もある。

俺は今、とてつもない壁に直面していた。

 

「う"ぁ"ぁ"ぁ" ........!足がっ!足が動かない゙ぃ"ぃ"ぃ"!」

 

 

 

俺は、浦の星女学院の....女子高の校門をくぐれないでいた....

 

 

 

 

 

~~~

 

なんとか浦の星の校門という強敵を打ち破った俺は、体育館に向かっていた。恐らく今ので俺はレベルが60を超えただろう。これでシロナとも戦えるっ!!

まぁ、欲を言えば俺が浦の星に入った瞬間、美少女真面目系生徒会長とかに見つかって、女子高に侵入した不審者だと勘違いされてそっから始まる微エロイチャラブコメディー!みたいな展開があれば良かったんだけどな....でもそういうのは薄い本の中だけなんだよな....

 

 

「それにしても、あのJKXもついてないよなぁ....」

 

何故俺が浦の星に来ているのかと言うと、お分かりの人も多いだろうが、今日はJKXのライブの日なのである。天気は最悪の雨。こんな日にわざわざここまで来る人もそういないだろう。

 

「天城く~ん!」

 

体育館の場所が分からず海賊狩りのゾロさんよろしく同じ場所を何度も行き来して探していると、国木田さんとルビィちゃんがいた(別に方向音痴とかじゃないんだからね!)

........男のツンデレに需要はねぇな。

 

「もうすぐ始まるよ!どこで道草食ってたずら?」

 

「ごめんごめん。かつてない程の強敵と戦ってて遅れてちゃった」

 

怒って頬を膨らませてる国木田さんもかわゆい!そんなんだと俺が『ハムスターみたいで可愛いよ!』って頬をつついて国木田さんが『もぉ~、やめるずらぁ~!』とか言ってイチャじゃれしてる拍子にたまたま本当に偶然その身長の割にご立派なものにソフトなタッチしちゃうぞっ!

と、下らないことを考えていると二人は何故か悍ましいものを見るような目でこちらを見ていた。

 

「え?どしたのん?」

 

「えっと、なんかニヤニヤしてて、その......ちょっと怖かったから....」

 

ルビィちゃんに引かれてる!?駄目だよルビィちゃん!ルビィちゃんにそんな風にされるとちょっといけない趣味に目覚めちゃいそうだから。

 

「国木田さんはそのゴミを見るような目をやめたげて!」

 

国木田さんはたまにこんな風な目で見てくる。

言っとくけど俺まだそういう趣味ないからね?(まだって所がミソ)

 

「ルビィちゃん、天城君は置いといて行くずら」

 

はぁ........国木田さんはそんなことするのね......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「放置プレイとか、俺は好きじゃないよ!」

 

 

二人の絶対零度の視線が俺を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

「お客さん少ないね...」

 

 

体育館に入ると、やはりというか当然というか客は10人位しかいなかった。

 

「うわっ」

 

「どうしたずら?」

 

金髪美女がおる....

 

「鼻の下伸びてるずらよ」

 

「うそっ!?」

 

不覚!確かにあの金髪美女、上から下まで色々凄すぎて、俺の象徴とも言えるジョンがbiggerになりそうだったけれども、まさか俺のパーフェクトポーカーフェイスを崩す程だったとは....

 

「うそずら」

 

「は?」

 

コイツ鎌をかけやがったな!そんなジト目で見るな!可愛くないぞ!←嘘です。百点!はなまるです!

 

「ん?」

 

「今度はなんずら?」

 

国木田さんが呆れた目で見てくるが、それどころではない。なんか見覚えのあるやつが....

 

「ど、どうしたの?」

 

ルビィちゃんが少し怯えた様な目でこちらを見てくる。いやだなぁルビィちゃん。ルビィちゃんにそんな目は似合わないよ?ルビィちゃんには鞭とかロウソクとか(ry が似合うって前に言ったじゃん!(言ってない)

 

おっと、いかんいかん。最近話が脱線し過ぎだ。あのサングラスとマスクの不審者........多分あいつだよな?

ラインしてみよっと(ゲス顔)

『おい不審者』

 

少しすると、不審者こと津島善子はラインに気付いたようだ。

 

『は?誰が不審者よ!』

『マスクにグラサン。はい、どうみても銀行にダイレクトアタックしそうな危ないお方ですね。警察に通報します』

『なっ!?あんたもしかして近くにいるわね!?』

 

津島は必死に俺を捜している。

........おっ、目があった。

 

『って隣にいるの花丸じゃない!』

『そだねー』

『なんでよ!』

『?いや、友達だし?前に言ったじゃん』

『それはそうだけど........ふんっ!両手に花で羨ましいわね!』

『そんな....両手に花なんて....照れるべさ、悟空さ.....』

『チチさんか!!』

 

おっ(笑)サングラス越しでも津島がこっちを睨んでるのが分かるね。津島はアニメ系のネタが通用する所がいいよな。流石中二!

 

『てかお前学校来てるやん。前色々相談してきたのに』

『それは......』

 

前に呼び出された時に学校どうしようとか、幼馴染がいた、とか色々相談された。結局何故か話がずれにずれていった結果、春アニメの話で時間は殆ど消えていき、ろくな解決策も思い付かなかった。アニメ勢の俺達はウォールマリアは奪還できるの?とか青ちゃんかわいい!とかで盛り上がっちゃってね。

 

 

 

そんな、過去の下らない記憶を振り返っていると、舞台の幕が上がり始めた。どうやら開始時間のようだ。俺も津島も舞台の方に視線を向ける。

あんなにチラシ配りを頑張ってたのにこれだけしか人が集まらなかったとわかったら、あの人たちはどう思うんだろう?やめたいとか....思っちゃうのかな....

 

舞台が全て上がり、JKX....ではなく、スクールアイドル達は目の前の光景がショックだったのか、顔を俯かせていた。

 

しかし、直ぐに中央のスクールアイドルは顔を上げ、覚悟を決めたような目をした。それに続き、左右のスクールアイドルも同じような目に変わった。

 

「皆さんこんにちは!私たちは、スクールアイドル、せーの!」

 

「 「 「Aqoursです!」 」 」

 

「私たちはその輝きと!」

 

「諦めない気持ちと!」

 

「信じる力に憧れ、スクールアイドルを始めました!目標は、スクールアイドル....μ'sです!」

 

「聞いてください!!」

 

 

 

~~~

 

 

『き〜ら〜り~と〜きめ〜きが〜』

 

無事、ライブは始まった。三人の女の子が舞台で踊っている。

 

俺は、ルビィちゃんに進められたりして、色んなスクールアイドルのライブを画面越しに見てきたが、生で見るとこんなに迫力があるんだな。

 

『知らないこ~とば~かり何もか~も~が~』

 

ふと、国木田さんとルビィちゃんを見ると、二人とも笑顔で楽しそうにライブを見ていた。

 

 

『温度差な~んて~いつ~か~消しちゃえって~ね』

 

『元気だよ~元気を出して〜い~くよ~』

 

 

ここまで、初めてのライブだとは思えない程堂々と歌とダンスを披露していたスクールアイドルだったが、サビに入ろうとした瞬間、予想外のアクシデントが起こった。

 

「うお!なんだ?雷か?」

 

落雷のせいで、音響、照明が消えてしまったのだ。舞台の三人も困惑しているようだ。

国木田さんとルビィちゃんも悲しそうな顔をしている。

 

 

これは......流石にキツいか?

良かったんだけどなぁ....

 

 

『気持ちが繋がりそうなんだ....』

 

............歌い始めたよ

 

「すごいな....!」

 

 

『温度差なんて....いつか消しちゃえってね....元気だよ....元気を出して行くよ....』

 

 

しかし、ダメージは大きいようで、段々と声が小さくなっている....

その時、体育館の扉が開き、光が舞台を照らした。

 

 

「バカ千歌〜!!」

 

「えっ!?」

 

「あんた開始時間、間違えたでしょ!」

 

それとともに、体育館は瞬く間に大勢の人で埋め尽くされていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱシリアス苦手だわ........

 

 

 

 

 

 

 

 

よしっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッハッハ!!人がゴミのよ―――

 

 

 

~~~

 

スクールアイドルのライブは色々とあったが、成功に終わった。が......

 

「あなたたち!」

 

「ダイヤさん!」

 

「いいですか?これは今までのスクールアイドルの努力と、街の人たちの善意があっての成功ですわ!決して....あなたたちの努力が実っての成功ではありません!勘違いしないように....!」

 

 

 

俺の隣には、二人の女の子が........

 

 

 

「分かってます!」

 

「....!」

 

「でも....でもただ見てるだけじゃ始まらないって!上手く言葉では言えないけど..今しかない...瞬間だから!だから....!」

 

「千歌ちゃん!」

 

「千歌ちゃんっ!」

 

「うん!」

 

「 「 「 輝きたい!!」 」 」

 

 

 

 

舞台上のスクールアイドル....Aqoursに対して羨望の眼差しを向けている二人の女の子がいた。




原作沿いにしていくと文字数が増えると思いきや、全然増えない....


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輝きを求める天使 part1

あー、神聖なアニメ4話に筆者ごときが手を加えてしまった。
今回はシリアヌ多めです。ギャグを求めてる人は覚悟して呼んでね!



おらの.......マルの名前は国木田花丸。

 

小さい頃から運動が苦手で、学芸会では木の役を演じるような、目立たない子だった。だから、だんだんマルは一人で遊ぶようになって.......本が大好きになった。

 

小学校、中学校はよく図書室で本を読んでいて....いつしかそこがマルの居場所になっていた。

 

本を読み終わった後は、ちょっと寂しい気持ちになったりするけど.......そんな所も含めて本が好きだった。

 

 

 

だから....マルは、このままずっと―――

 

「花丸ちゃ~ん!」

 

 

 

 

........話の途中だけど、紹介するね。

 

「おはよう、ルビィちゃん!」

 

「おはよう!」

 

 

この子は黒澤ルビィ。マルの....大切な友達。

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

俺の名前は天城未来!

 

浦の星からチャリで三十分くらいの所にある私立天流川高校の一年生!

 

突然だか、俺の好きなものを紹介しよう。え?野郎に興味はない?なに?最近暴走気味じゃないかって?高校デビューして陰キャ→陽キャになったの!だから聞け!

俺はポカリが好きだ。大○製薬を神と崇めているくらいだ。あと、アニメの鑑賞とかも好きかな!そっからゲームだったり薄い本にも手を出しちゃったりして....

 

あと、中三の時に二人の友達ができたんだ。それまではある病気を患っていて、友達一人もいなかったから、大切な友達だ。

 

............あともう一人いたような気もするけどそいつは知らねー。

 

 

「おっ!」

 

前方に茶髪と赤髪のJKがいる!いっちょモーニングアタックと行きますか!

この数年物の、ブレーキの音がイカレてるチャリで......

 

キキキィィ!!

 

「ワン!」

 

犬(ルビィちゃん曰くワンちゃんさん)の声真似(こういうシチュの為に練習した)で....

 

「ぴぎぃ!?」

 

「ずら!?」

 

お!国木田さんまで驚いてる。これは以外....

 

「おはよ!」

 

「な、なぁんだ、天城君かぁ。びっくりしたぁ!」

 

俺の心の中のルビィちゃんに怒られたい部分、通称ルビィちゃんに怒られ隊が覚醒しようとしたが、何とか阻止することができた。

まぁ実はこれ、もう既に何回か仕掛けてるんだけどね。いつも国木田さんは驚かせないんだけどな。

 

「ん?」

 

国木田さんが呆れたような目でこっちを見てくる。ま、よくあることだな。

 

「色々と台無しずら....」

 

珍しく国木田さんは溜め息をついていた。なんか調子が狂うねぇ....

 

 

 

 

~~~

 

 

本当に天城君には困ったものずら....最初の頃はあんな風じゃなかったのに。

 

天城未来君。マルが図書室で出会った男の子。中学三年生の時に、急にマルと友達になりたいって言ってきた不思議な子。天城君は賢くて、運動も出来て、そういう所は尊敬してるんだけど........

色々と残念な人ずら。

 

まさかマルに男の子の友達が出来るなんて、彼に出会う前は考えもしなかったずら。

 

「は、花丸ちゃん!部室出来てた!スクールアイドル部が承認されたんだよ!」

 

「わぁ!良かったね!」

 

天城君は、ルビィちゃんの男性恐怖症と人見知りを改善させた。前に天城君は、マルと協力したから出来たって言ってたけど、マルはそうは思っていない。確実にルビィちゃんは、天城君と仲良くなってからより一層明るくなった。そこに特別な感情とか、そういうのがあるわけではないと思う。よく一緒に楽しそうにスクールアイドルとか、スイーツの話をしてるだけで、友達の域を出ないはずだ。

 

「こんにちは~!」

 

「ぴぎぃ!!」

 

マルとルビィちゃんの二人だけしかいなかった図書室に、高海千歌先輩、渡辺曜先輩、桜内梨子先輩の三人がやって来た。

ルビィちゃんは三人が来たことに驚き、扇風機の後ろに隠れた。

 

 

............ルビィちゃん、それ、見え見え隠れ、見え見え、くらいの割合でまる見えずら。

 

 

....マルらしくないことを言ったずら。天城君が薦めてきた"だんがんろんぱ"とかいうアニメの影響ずら。全部天城君のせいずら。

 

「あっ、花丸ちゃん!....と、ルビィちゃん!」

 

「こんにちは!」

 

「ぴぎゃあ!」

 

千歌先輩に見つかったルビィちゃんは、扇風機の後ろから恐る恐る出てきた。

 

 

「こ....こんにちは....」

 

「かわいい〜!」

 

そう、ルビィちゃんは可愛いずら、本当に。

マルとは比べ物にならないくらいに........

 

と、思っていると、梨子先輩が持ってきた大量の本をカウンターの上に置いた。

 

 

「私たちの部室に置いてあったんだけど、これって図書室の本じゃないかしら?」

 

「図書室の....ですか?」

 

本の裏を確認すると、この図書館の貸出しカードがあった。

 

「あっ、確かにそうかもしれないです!返しにきてくれて、ありがとうございま―――」

 

「スクールアイドル部へようこそ!」

 

「ええっ!?」

 

「ぴぎゃあ!?」

 

千歌先輩が急にマルとルビィちゃんの手を握って、勧誘してきた。

 

「2人ともすごく可愛いし、歌ったら絶対キラキラする!間違いないっ!!」

 

マルは......

 

 

「マ、マルは、そういうの苦手っていうか....」

 

「ル、ルビィも....」

 

勧誘に対して、マルとルビィちゃんが困っているのが分かったのか、梨子先輩と曜先輩が助け船を出してくれた。

 

「千歌ちゃん、強引に誘ったら可哀想だよ」

 

「そうよ。まだ入学したばかりの1年生なんだし」

 

「う..ごめん。可愛いからつい....」

 

助かったずら........でも....

 

「じゃあ千歌ちゃん、そろそろ部室に戻ろう!部室の掃除の続きやらなきゃ!!」

 

「あっ、うん!そうだね!」

 

三人の先輩達は、まだやることがあるのか、図書室から出ていった。

 

 

「スクールアイドル....かぁ....」

 

やっぱり....ルビィちゃんは....

 

「やりたいんじゃ....ないの?」

 

「えっ?」

 

「スクールアイドル、やりたいんじゃないの?」

 

「え....えぇ!?」

 

ルビィちゃんはマルが言ったことに対して驚いているようだった。

 

「どうなの?ルビィちゃん?」

 

「花丸ちゃん……」

 

 

マルとルビィちゃんは暫く見つめあっていた。

すると、ルビィちゃんは....

 

 

「花丸ちゃん、あのね....」

 

「うん」

 

「放課後になったら、全部....話すから」

 

 

 

 

 

こういう時........天城君だったら.......天城君だったらどうしたんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、そういえば、天城君と言えば、この前またアニメを薦めてきたずら。確かタイトルは.........

 

 

 

 

 

 

 

 

スクールデ―――

 

~~~

 

 

最近色々と考えて事してて、ちょっと聞いて欲しいんだ。放課後だし、みんな時間あるだろ?

 

国木田さんについてなんだけど、最近国木田さんに色々とアニメを紹介してるんだ。で、次はどんなジャンルでいこうかなって考えてて、候補も考えてあるんだけど、一向に決まらないんだよね。

候補には、と○ぶる、○奈さん、いちご○%、あとこれは漫画だけど、終末○ーレムとかがあるんだけど、どうしたもんかねぇー。

 

あと、俺の高校男子校なんだけど、ちょっと怖いなって思ったことがあるんだよ。

えっと、入学してから結構経ったから、みんな学校に慣れ始めてきた訳なんだけど、何故か全然近所の浦の星についての話題が出ねーの。男子校だよ?普通この年頃の男は下ネタとか女の話が殆どのはずなのにだよ?

しかも何故かよく尻を触られるんだよね。その時に『ウホッ!』とか野太い声を出すやつがいるし。あと、たまたま二人の生徒が校舎裏に入って行くのを見かけて、その直後に『最高にハイっ!てやつだァァァー!!』とか聞こえてきたんだけど、何やってたんだろ?

 

 

 

 

で、もう一つ。これが今、一番考えている事なんだけど、それは―――

 

 

―――スクールアイドルのことだ。

 

 

 

俺は、Aqoursのライブを見た日のあの二人、ルビィちゃんと国木田さんの顔が忘れられない。舞台上の三人を羨ましそうに見ていたあの顔が。

 

 

なんであんな顔をしていたのか....答えは簡単だ。多分あの二人は........スクールアイドルになりたいんだろう。

 

あの二人がどう思っているかは知らないけど、俺はルビィちゃんと国木田さんのことを大切な友達だって思ってる。だから........

 

 

 

俺は、彼女達に何かしてあげられないのかな?

 

 

 

 

あっ........

 

 

「えっ?ダイヤさんが?」

 

「うん、そうなんだ」

 

 

バス停に、二人の女の子がいた。

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

二人は話に集中していたのか、俺の存在には気づいていなかった。だから、適当な所に隠れて、悪いとは思いつつも二人の話を盗み聞きした。

 

 

そのお陰で色々と分かったことがある。

 

まず、俺の考えていたことは正しかったということだ。

 

国木田さんはまだ確実な証拠はないが、ルビィちゃんはそうじゃない。ルビィちゃんは、スクールアイドルになりたい。でも、我慢している。ダイヤさんのことだけが理由なのか....それとも他にもあるのかはわからないけど。

 

でも、二人はお互いに気づいてないのかもしれないけど、あの日、ライブ中も、その後ライブの感想を言い合ってる時も、二人の目は―――

 

 

 

 

―――輝いてた。

 

 

 

その綺麗な輝きを、俺はもっと見たいから....

 

 

「いた!」

 

 

だから....俺は....

 

 

「あのっ!Aqoursの皆さんですよね!」

 

 

二人の大切な友達の為に....

 

「なんだよーそろー?」

 

「えっと、すいません、どちら様ですか?」

 

「あっ!君は!花丸ちゃんとルビィちゃんの彼氏さん!」

 

「 「 えっ!? 」 」

 

 

出来る限りのことをする

 

 

「あのっ!俺の話を聞いてください!」

 




主人公がカッコええ....別人かよ

そういえば、筆者はスマホ投稿です。他の人はどうなんだろ?


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輝きを求める天使 part2

すまんな、遅れた。活動報告を読んだ読者様はご存知かと思いますが、今回何と一万字オーバーしてしまって、それだと長すぎるので二つに分けることにしました。
もう既に次の話も半分以上出来てるので、今週中には更新出来ると思います。

あと、今回の話はちょっと....な感じなので違和感がする所があったら是非作者にご報告ください。微妙に原作が変わっています。本当に微妙に。オリジナル主人公がいるので変わらない方がおかしいんですがね。神聖なる四話を汚すな!という読者層様はバックすることをお勧めします。
普段三千字程度しか書かない筆者が急に一万字も書いてしまったせいで、頭の中が混乱して....見た感じ矛盾点とかはないんですが。今回思ったことが、キャラクターの挙動を表現するのが本当に難しい!国語力が欲しい!


「君は!花丸ちゃんとルビィちゃんの彼氏さん!」

 

「は?」

 

いや、この人何を言って―――

 

「へ?........それ本当!?千歌ちゃん!」

 

「ひっ....ケダモノっ!」

 

なんか盛大な誤解をされた。特にロングヘアーの人には犯罪者を見るような目で見られた。おいっ!俺をそんな目で見ていいのはルビィちゃんと国木田さんだけだぞ!

 

「えっ、ちょ!それ誤解ですってば!」

 

確かにルビィちゃんはちょっと....ほんのちょっとだけその....ロリっぽいけど!俺をそんな目で見るのは俺とともにルビィちゃんを馬鹿にしてることになるんだぞ!確かに色々小さいけど、そこがそそるんだろうが!

 

「でもこの前二人と沼津にいたじゃん!仲良さそうにして!」

 

「あの時否定してましたよね!?俺じゃなくて、あの二人が!」

 

あんなにハッキリと否定してたのに覚えてないとか、この人の頭でーじょーぶか?

 

「えっ?....あー、そういえばそうだったかも....」

 

「なんだぁ....びっくりさせないでよ、千歌ちゃん....」

 

「もう、千歌ちゃんったら........」

 

どうやら誤解は解けたようだ。もしこのままあらぬ誤解され続けて110されそうになったら、カーズ様を前にしたジョセフみたく逃げる予定だったけど。

 

「それで、どうしたの?私達に何か用?」

 

真ん中にいたオレンジ色の髪の人が俺に尋ねてきた。

 

「あっ、えっと、俺は、天城未来といいます。国木田さんと黒澤さんの友達です。

この前のライブ、見ました。凄くキラキラしていて、見てて楽しかったです」

 

「わぁ!ありがとう!見に来てくれたんだね!」

 

「あぁ、そういえば、確かに花丸ちゃんとルビィと一緒にもう一人いたわね」

 

なんと俺のことを覚えてくれていた。最初の客は俺含めて十人位しかいなかったし覚えていてもおかしくはないか。

 

なら早速本題に移ろう。

 

「突然なんですが、Aqoursの皆さんにお願いがあります」

 

「お願い?」

 

そう言ってオレンジ色の髪の人は首を傾げる。

 

「二人を、国木田さんと黒澤さんを、貴方達のグループに入れてもらえませんか?」

 

そう言うと目の前の三人は少し驚いているようだった。

 

「あの二人、口では言わないけど、絶対にスクールアイドルやりたいって思ってるんです!俺に出来る事があれば何でも協力します!だからお願いします!」

 

俺はそう言って頭を下げる。二人の為に。

 

「それなら大丈夫だよ!」

 

すると、オレンジ色の髪の人は元気な声で俺にそう言った。

 

「えっ?」

 

「私達も、あの二人を勧誘中だから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

「マジで疲れた........」

 

JKの集団ってとてつもねーな。少し話しただけなのに俺のMP(メンタルポイント)がガッツリ削られたんだけど。これは今夜はラビットハウスでこの傷を癒して貰うしかないな。(ちなチノちゃん推しな)

 

「高海先輩は大丈夫だったけど、隣の二人とか警戒心丸出しだったしなぁ....」

 

 

一人でマッ○入った時、隣の席にJKの集団が座った時の居づらさ、皆もわからん?特にギャルが来た時とか絶望し過ぎて、アポ?とか言ってド○エモンみたいな声の熊かパンダか分からない生物に大量の野球ボールぶつけられながら死にたくなるしね。それか隣の席のギャル集団の中にいる絶望がどうたらこうたら話してる姉妹の胸にダイブして終了(社会的に)するってのもありカナ!妹の方が大きいからそちらに行くと思いきや残念そうな姉の方に行って関節極められるのもまた一つのオプション(選択肢)だよ!あなたはどちらを選ぶ?

 

「なんとかなればいいけど....」

 

俺はあの二人に何をしてあげられるのか、それが未だに全然分からなかった。

 

「ん?あれは........」

 

砂浜に浦の星の制服を着ている赤髪の女の子がいた。あれ、多分ルビィちゃんだよな?

 

「お~い!黒澤さ~ん!」

 

「うゆ?天城君!」

 

まさか俺と会うとは思っていなかったのか、ルビィちゃんは驚きの表情でこちらを見ていた。

 

「こんな時間にこんな所でなにしてるの?」

 

「えっと......ちょっと考え事をしてて....」

 

そう言いルビィちゃんは「えへへ....」と頬を掻いた。かわゆい!

 

 

「へぇ........考え事、ねぇ....」

 

 

まぁ、多分あれのことだろう。

 

「....考え事って、スクールアイドルのことでしょ?」

 

「ぴぎ!?どうして........」

 

図星だったのか、ルビィちゃんは焦っているようだった。

 

「分かるよ。なりたいんでしょ?」

 

「!?そ、それは....」

 

ルビィちゃんは気不味そうに俺から目を反らした。

 

 

「ごめんね。さっき、国木田さんと話してるの聞いちゃったんだ」

 

「聞いてたんだ......」

 

 

俺がそう言うと、ルビィちゃんは俯いてしまった。

 

 

「俺は........黒澤さんにスクールアイドルになって欲しいって思ってる」

 

「え?」

 

ルビィちゃんは不思議そうに俺を見ていた。

 

「黒澤さん、スクールアイドルの話をしてるとき凄く楽しそうだから」

 

俺がルビィちゃんと仲良くなれたのもスクールアイドルのお陰でだしな。

 

「でも....ルビィは........」

 

 

「なんで?どうして我慢してるの?」

 

ルビィちゃんは言い淀んでいたが、それでも構わず俺は問い詰める

 

 

「ダイヤさんのせい?それとも....」

 

 

 

「お姉ちゃんのせいじゃないっ!」

 

ルビィちゃんは珍しく声を荒げ、俺の言葉を否定した。

 

「ルビィは......お姉ちゃんと違って、なんにも特技がなくて、ドジだから..........向いてないんだよ....」

 

「それ本当?じゃあ―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして辛そうな顔してるの?」

 

そう言うと、ルビィちゃんは口を閉じてしまった。

 

 

「........」

 

「........」

 

数秒間、お互い何も喋らない時間が続いた。

 

「............天城君」

 

最初に口を開けたのはルビィちゃんだった。

 

「ルビィね....」

 

ルビィちゃんは目に涙を溜め、

 

 

 

 

 

 

「Aqoursに入りたい!花丸ちゃんと一緒にスクールアイドルになりたい!!」

 

と、叫んだ。

 

 

「そっか.......」

 

これがルビィちゃんの本心............成る程。もう一つの理由は国木田さんだったのか....

 

「ルビィは........どうしたらいいの?」

 

ルビィちゃんは助けを求めているような、そんな目をしていた。

 

 

「黒澤さん....」

 

ここでなんて言うのがベストなのか、俺には分からない。

 

だから俺は....

 

「ねぇ、黒澤さん」

 

「うん....」

 

「もう一人で入っちゃいなよ」

 

ルビィちゃんは、俺の一見心無い言葉に唖然としていた。

 

「え?ど、どうしてそんな―――」

 

「国木田さんは俺が絶対入れてみせるから!!」

 

「!....そんな....どうやって....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ........何も考えてない」

 

「え........?」

 

俺の答えに、ルビィちゃんは困惑しているようだった。

 

「何も考えてないけど........俺を信じて欲しい」

 

俺はルビィちゃんの目を真っ直ぐに見つめる。

 

「でも....」

 

ルビィちゃんが当然ながら俺を信じてくれない為、俺は思いきった手段にでる。

 

「そんなに信用できないのならさ、指切りしよっか!」

 

「えっ?」

 

「手貸して」

 

俺はルビィちゃんの手を取り(うひょー!柔らけー!)自分の小指とルビィちゃんの小指を結んだ。

 

「えっ?えぇ!?」

 

ルビィちゃんの頬が赤くなっていたが、それでも構わず俺は指切りのあれを歌う。

 

「はいっ、出来た」

 

「あ、あわわわ....!」

 

 

ルビィちゃんは顔をゆでタコのように赤くし、混乱しているようだった。

 

「ごめんね。急に手を握っちゃって」

 

 

まるでプレイボーイが如くルビィちゃんの手を取った俺だったが、女の子の手を触ったのなんて小学生のとき(まだ邪な心を持っていなかった時代)以来だった為とても緊張していた。

 

「俺はね、黒澤さんの事信頼してるよ。君と友達になってからまだ一年しか経ってないけど」

 

俺はルビィちゃんに本音をぶつける。そうすれば、信じてもらえるかもしれないから。

 

 

「でもこれってさ、逆に一年も経ったって考えることも出来るよね。だから、横暴かもしれないけど、黒澤さんにも俺のことを信頼して欲しい。俺は、そんなに頼りなかったかな?そんなに信用されないような事をしてたかな?」

 

「っ!そんなことない!ルビィも天城君のこと、信頼してるよ!でも....でもね!」

 

俺の言葉をルビィちゃんは思いっきり否定してくれた。嬉しいねぇ。

 

「不安なんだよね?」

 

確かにルビィちゃんは俺のことを信頼してくれてるのだろう。

 

「........うん」

 

 

「そうだね。黒澤さんは俺の事を信頼してくれてた。さっき相談してくれたのがその証拠かな?でもさ、なにか勘違いさせちゃったようだから言うけど、黒澤さんもするんだよ?勧誘。俺一人でじゃなく、一緒にするんだよ」

 

ルビィちゃんは俺の言葉が理解出来ていないようだった。

まぁ確かにさっきのだと、俺一人で何とかする!って言う風に取れちゃうよな。

 

 

 

「国木田さんにスクールアイドル一緒にやろっ!ってハッキリと言った?さっきまでスクールアイドルやりたい!って気持ちを我慢してたんだから当然言ってないよね。でも今は違うじゃん。俺に思ってる事を吐き出してさ。だから、明日から....なんなら今からでも電話して勧誘しないと。国木田さんに思っていることを全部伝えるんだよ!で、もし何度も勧誘してダメだったとき、黒澤さんもスクールアイドルするの諦めるの?そんなの勿体ない!」

 

俺はルビィちゃんを見つながら言う。

 

 

「だから何度勧誘してもダメだった時、そこからは俺がやるよ。俺が何とかするから、黒澤さんには先にAqoursに入って欲しい。時間は有限なんだから」

 

「どうして........」

 

ルビィちゃんは、不思議そうな顔で俺を見つめ、

 

「どうして天城君は、ルビィの為にそこまでしようと思うの?」

 

と言った。

 

「それは.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなの.......君が大切だからに決まってるじゃん」

 

ルビィちゃんは俺の大切な友達だ。こんな変人(変態)な俺と仲良くしてくれてるんだから、恩返ししないとね。

 

 

「!?........そっか....」

 

ルビィちゃんは俺の言葉に僅に頬を赤くし、何故か微笑んでいた。

 

 

「そうだね!ルビィも頑張って勧誘しないと!」

 

ルビィちゃんは何か決心がついたのか、やる気に満ち溢れているようだった。

 

「おっ!元気出て来たね!その意気だよ!」

 

「うん!」

 

ルビィちゃんは明るい声で返事をしてくれた。

 

「あのね、天城君!」

 

「どしたの?」

 

 

そして....

 

 

「今日はありがとう!」

 

 

いつもの素敵な笑顔が俺に向けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱりルビィちゃんには元気な笑顔が似合うな!サディストな笑顔も勿論似合うけどね!!

 

 

 

 

 

~~~

 

『花丸ちゃんは、スクールアイドルに興味ないの?』

 

『マ、マル!?ないない!ほ、ほらっ!自分のことオラとか言っちゃう時あるし!』

 

『そっか....じゃあルビィも平気!』

 

 

 

マルは....どうしたらいいんだろう。どうやったらルビィちゃんの背中を押してあげられるんだろう。

 

昨日、ルビィちゃんと話してからその事ばかり考えていた。

 

「マル、スクールアイドル部に体験入部しようと思ってるんだけど、ルビィちゃんも来ない?」

 

「えっ、どうして!?」

 

ルビィちゃんはマルの提案に驚いているようだった。

 

「やってみたいからだけど、だめ?」

 

マルがそう言うと、ルビィちゃんは嬉しそうな顔をした。

 

「全然!ただ、花丸ちゃんスクールアイドルに興味なさそうだったから!」

 

「ルビィちゃんと一緒に見てる内に良いなぁって思って」

 

マルの言葉に、ルビィちゃんは「本当!?嬉しいなぁ!」と言って喜んでいるようだった。

 

「ルビィも今日花丸ちゃんを体験入部に誘おうと思ってたんだ!」

 

「へぇ!偶然だね!」

 

 

 

ルビィちゃんもマルのことを誘おうと思っていたなんて少し予想外だったけど、上手くいきそうで良かったずら........

 

 

 




十話到達です!応援してくれる読者層様には感謝しかありません!


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輝きを求める天使 part3

評価が赤くなっとる....
読者の皆様、本当にありがとうございます。

今回の話なんですが、原作と微妙に変えています。本当に微妙に。あと、これは一応創作小説であり、オリジナル主人公というイレギュラーがいるため、飛ばしたり変えたりしている部分も多々あり、読者様によっては不愉快に感じる点もあると思います。先に言っておきます。




「これ一気に登ってるんですか!?」

 

「もちろん!」

 

スクールアイドル部に体験入部をしたルビィと花丸ちゃんは、淡島神社の階段の前に来ていた。

 

「でもいつも途中で休憩しちゃうんだよねー」

 

「えへへ....」

 

ここに来るまでに、屋上でダンスの練習をした。ルビィは勿論のこと、花丸ちゃんも楽しそうに踊っていて、本当に体験入部をして良かったと思う。

 

 

「でもライブで何曲も踊るには、頂上まで駆け上がるスタミナが必要だし!」

 

階段ダッシュ。あの伝説のμ’sも行っていたと言われている練習。

 

 

「よーし!じゃあ、μ's目指して!よーい、ど~ん!」

 

 

千歌先輩の快活な声とともにルビィと花丸ちゃんは、先輩達の後に続いて走り出した。ルビィは先輩達ほど体力が無いけど、頑張ってついていかないと!  

 

 

「はぁ....はぁ....」

 

一段一段、転ばないように、且つ先輩達についていける速度で階段を上っていく。

 

「はぁ....はぁ....!」

 

 

しかし、横を見ると内浦の綺麗な海が一望できる位の高さまで登った頃、先輩達とルビィとの距離は遠くなっていた。特に曜先輩は他の二人の先輩より上にいて、これ以上ルビィがペースを遅くすると多分見えなくなってしまうだろう。

 

疲労で脚が上がりにくくなっているルビィは、自分にあと少しだけ頑張れ、と言い聞かせ、走る速度を上げようとした。

それと同時に、ふと横を見ると、さっきまで一緒に走っていたはずの花丸ちゃんが居なくなっていた。

 

 

「はぁ....はぁ....」

 

花丸ちゃんはルビィのずっと後ろを走っていた。

 

「花丸ちゃん……」

 

ルビィは花丸ちゃんを待つ為に走るのをやめた。花丸ちゃんは膝に手をつき、辛そうにしている。 

 

「どうしたの?」

 

すると、ルビィが立ち止まっていることに気づいた先輩達が上から声をかけてきた。

 

「ちょっと息が切れちゃって。先行っててくださ〜い!」 

 

「無理しないでね!体験入部なんだから!」

 

「はい!」

 

ルビィがそう言うと、先輩達は階段ダッシュを再開し出した為、ルビィは花丸ちゃんを励ますために下に向かった。

花丸ちゃん大丈夫かなぁ....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

星空凛さん。昨日本屋で買った雑誌に載っていた、スクールアイドルグループ『μ's』の一人。

 

 

「はぁ......はぁ....やっぱり、マルには....」

 

綺麗なウエディングドレスを着ているその姿は、とっても輝いていた。

 

 

 

「花丸ちゃん!」

 

 

マルはそんな凛さんの姿を見て、ほんの少しだけ―――

 

 

「はぁ......ルビィちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――マルでもこんな風に輝けるかも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

って思ってしまった。だからマルは、ルビィちゃんにAqoursに入って欲しいっていう考えもあって、一緒にスクールアイドル部に体験入部をした。

だけど.......マルには出来なかった。運動が苦手なマルは、皆についていけない....

 

「大丈夫?」

 

息を切らして止まってるマルの下に、ルビィちゃんが駆け寄って来た。

 

 

 

なんで.......

 

 

「一緒に行こう!」

 

 

なんでルビィちゃんはそんな所で立ち止まってるの?

 

 

「ダメだよ....」

 

「え?」

 

ルビィちゃんは........

 

 

 

 

 

 

「ルビィちゃんは....走らなきゃ....」

 

「花丸ちゃん?」

 

「ルビィちゃんは、もっと自分の気持ち、大切にしなきゃ」

 

ルビィちゃんはマルの言葉の意味が分からなかったのか、不思議そうな顔をしていた。

 

「自分に嘘をついて、無理に人に合わせても....辛いだけだよ!」

 

そう言うと、ルビィちゃんは気不味そうに顔を背けた。

 

 

「別に....合わせてるわけじゃ....」

 

 

「ルビィちゃんは、憧れだった....スクールアイドルになりたいんでしょ?」

 

「う、うん....」

 

「だったら、前に進まなきゃ!」

 

 

ルビィちゃんは困惑していた。 

 

「さぁ!行って!」

 

マルはそんなルビィちゃんの背中を押す。

 

 

「えっ、でも....!」

 

「さぁ!」

 

何度でも。

 

「.......うんっ!」

 

 

マルの思いが伝わったのか、ルビィちゃんは凛々しい顔つきに変わり、笑顔でうなずいてから、再び階段を上り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり......ダメだ......」

 

「え?」

 

しかし、ルビィちゃんはすぐに歩みを止め、マルの方を振り返った。

 

「花丸ちゃん!絶対来てね!!」

 

「!?」

 

「ゆっくりでいいから!ルビィ....花丸ちゃんとスクールアイドルになれるの、待ってるから!!」

 

「ルビィちゃん....」

 

 

ルビィちゃんはそう言うと、今度はマルの方を振り向くことなく階段を上り始め、やがてその後ろ姿は、マルの視界から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

俺は高海先輩から連絡を受け、淡島神社の階段の前にいた。どうやらあの二人はスクールアイドル部に体験入部をしたらしい。

 

「それにしても、よくこんな所を走ろうと思うな......」

 

この神社、階段の数がマジキチなんだよなぁ。こんな所を運動が得意じゃない二人に走らせるとか鬼か?

 

「今からこれを上ると思うとなぁ....」

 

スクールアイドルってそんなに強靭な足腰を必要とするの?もっと別の所走ればいいのに。

 

 

「てか、二人とも大丈夫かなぁ......」

 

そう言えば、『あの二人の事で進展があったら教えるね!』ってことでオレンジ色の髪の人、高海先輩とラインを交換した。そんなこんなで先程、『花丸ちゃんとルビィちゃんが体験入部に来たよ!今淡島神社で練習中!』っていうメッセージが送られて来た訳だけど、あの人無防備すぎん?普通出会って数分の男に連絡先教えるか?

 

 

「俺あの人の........あの幼い顔とは正反対に大きなものを見て......なんていうか、その....下品なんですが....フフ....ぼっ―――」

 

と、独り言をしていると、見覚えのある人が階段を下ってきた。

 

 

「国木田さん!」

 

国木田さんは俺に気づいたようで、少し驚いているようだった。

 

 

「天城くん?どうしてこんな所に?」

 

国木田さんはそう、俺に尋ねてきた。

 

「高海先輩から、二人が体験入部したって聞いて。あと、ここで練習してるとも聞いたから見に来たんだ。国木田さんこそ、こんな所でなにやってるの?練習は?」

 

俺がそう尋ね返すと、国木田さんは笑みを浮かべて言う。

 

 

「マル、ちょっと具合が悪いから帰ろうかなって....」

 

「そっか。なら俺が送って行くよ?」

 

「え?い、いや、いいよ....」

 

俺がそう言うと、国木田さんは困ったような顔をしていた。

 

「ふーん。まあ、無理強いはしないけどさ」

 

すると、国木田さんは、「ありがとう。気持ちだけ受け取っておくずら」と言って、俺の横を通りすぎようとした。

 

「最後に一つだけ」

 

そんな国木田さんを、俺は呼び止める。

 

「どうしたの?」

 

「ちょっと聞きたいんだけど」

 

不思議そうな顔をしている国木田さんに、俺は切り出す。

 

「国木田さん........スクールアイドルやらないの?」

 

「........え?」

 

国木田さんは、俺の言った事が想定外だったようで、

 

「体験入部したらしいけど、どうなの?」

 

「えっと....」

 

気不味そうに俺から目をそらした。

 

「マルには、こういうのは合わないかなって....」

 

「あはは....」と笑いながら、国木田さんはそう答える。

 

「なんで?俺は全然そんなことないと思ってるけど」

 

俺がそう言うと、何故か国木田さんは俯いてしまい、普段より小さな声で話し出した。

 

 

「マルは........運動が苦手で....地味で.......」

 

 

「........」

 

たまに思うけど...

 

「だから....向いてないんだよ....」

 

 

国木田さんはどうしてこんなに自己評価が低いんだろう?

 

 

 

「あのさ.......」

 

俺から見た国木田さんは....

 

 

 

 

 

 

 

「俺はね!」

 

優しくて、とっても素敵な子なのに。

 

「?」

 

突然大きな声を出した俺を、国木田さんは不思議そうな目で見つめてくる。

 

........今言うしかないかな

 

 

「国木田さんのこと........その........」

 

 

恥ずかしいけど!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄く.........綺麗だと思ってるから!!」

 

言ってしまった....

 

「........え?」

 

 

国木田さんは俺の言った事がすぐに理解出来なかったのか....

 

 

「えぇ~!!」

 

数秒後に顔を赤く染め、大きな戸惑いの声を上げた。

 

「マ、マルが綺麗だなんて.......そ、そんなこと........」

 

国木田さんは赤く染まっている顔を両手で隠してそう言った。

彼女いない歴=年齢の童○の俺にはレベルが高すぎたよ......

 

「そんなことある!」

 

「!?」

 

まさか大声で肯定されるとは思っていなかったのか、国木田さんは更に困惑したようだった。

 

もうここまで言っちまったんだ!思ってること全部言って、満足するしかねぇ!!

 

「国木田さんは確かに身長低いけど、スタイル良いし!」

 

「なっ!?」

 

「声綺麗だし!」

 

「な、何いって―――」

 

国木田さんが何か言おうとしてるが、それでも構わず俺は叫び続ける。

 

「笑顔が綺麗だし!スクールアイドルになったら絶対人気出る!」

 

「~~~っ!!」

 

国木田さんは更に顔を赤くする。

 

「俺は........」

 

そして俺は、自分の思いを全てぶつけるように言った。

 

「国木田さんに輝いて欲しい!!」

 

「!」

 

国木田さんはその言葉に思うところがあったのか、目を見開き、なにかを考えているようだった。

 

「マ、マルはっ........!」

 

「国木田さん、俺はね!」

 

すると、国木田さんは急に走り出した。

 

「え!?ちょっ!国木田さん!」

 

逃げるように走り出した国木田さんに聞こえるように、俺は最後に伝えたかった事を叫ぶ。

 

 

「俺も黒澤さんも、国木田さんが入るの待ってるからっ!!」

 

国木田さんは返事もせずに俺から離れていき、やがて姿が見えなくなった。

 

あぁ........やっちまった....

これ絶対次に会うとき気不味いよ....

 

 

そう思いつつ、国木田さんを説得出来なかった自分の無能を呪った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

現在ルビィは、スクールアイドル部の部室にいる。あれからルビィは、花丸ちゃんに背中を押してもらってなんとか階段を上りきることが出来た。

 

「よろしくお願いします!」

 

ルビィは正式な入部届けに記入し、千歌さんに渡す。千歌さんはとても満足そうな顔をしていた。

 

「よろしくね!」

 

千歌さんが元気な声で言う。

 

「はい!がんばります!」

 

お姉ちゃんにも許可を貰えたから、これから頑張って先輩達に追いつかないと!

 

「そういえば、国木田さんは?」

 

「........」

 

 

結局、花丸ちゃんは頂上まで上ってこなかった。

昨日花丸ちゃんは、屋上で楽しそうダンスを踊っていた。素敵な笑顔を浮かべながら。

確かに階段ダッシュでは、とても辛そうにしていた。あのスタミナではスクールアイドルとして活動していくのは厳しいと思う。

 

「花丸ちゃん........」

 

でも、厳しいからって、そんな理由で諦めるのって...........そんなの勿体なさ過ぎる!花丸ちゃんは絶対スクールアイドルが好きだから!!

 

だから........

 

 

「ルビィは....」

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

マルと一緒に図書室で過ごしてくれたその子は、とても優しくて、とても思いやりがあって......でも、気にし過ぎな子。

 

 

 

 

素晴らしい夢も、キラキラした憧れも、全部胸に閉じ込めてしまう子。

 

 

 

 

 

だからマルは、その胸の扉を思い切り開いてあげたいと、ずっと思っていた。

 

 

 

 

 

胸の中に詰まっているいっぱの光を........

 

 

 

 

 

世界の隅々まで照らせるようなその輝きを....この大空に、放ってあげたかった!

 

 

 

 

それが、マルの夢だった。

 

 

 

 

だから、これでマルの話はおしまい。

 

 

 

もう、夢は叶ったから。

 

 

 

マルは本の世界に戻るの。

 

 

 

「大丈夫、一人でも........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺......国木田さんのこと........凄く綺麗だと思ってるから!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ」

 

 

なんか、胸がポカポカするな........少しだけ....心地いいずら....

 

 

 

 

 

「ばいばい....」

 

 

 

『ラブライブ!五周年記念号』

 

 

 

マルは読んでいた雑誌を閉じようとする。

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間

 

 

 

 

 

 

 

「花丸ちゃんっ!!」

 

 

 

大きな音を立てて図書室の扉が開き―――

 

 

 

「え?ルビィ.......ちゃん?」

 

ルビィちゃんがそこに立っていた。

 

 

 

「あのね!ルビィ!ルビィね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

「一件落着っと」

 

今日の空は雲一つない快晴。大陽の光りが海に反射して眩しい。

 

あれから二人は....国木田さんとルビィちゃんは、無事スクールアイドル部に入部したらしい。さっき高海先輩から連絡がきた。

 

「まぁ、でもこれでまた....」

 

 

一人だなぁ.......一応今は、中二とかクラスメイト(俺のケツを狙ってくる)がいるから、正確には一人じゃないんだけれども。

 

............ろくなやつがいねぇ

 

 

「でも、楽しみだなぁ」

 

あの二人が可愛い衣装を着て歌って踊ってる所なんて見たら、お父さん嬉しくて泣いちゃう!!サイリウムを片手に四本ずつ、計八本持って応援しに行くぞ!タコ八刀流とか言ってな!

 

「いつか差し入れでも持ってくか」

 

差し入れにはやっぱりポカリとカロリーメイトかねー。アクエリは認めん。あいつは敵だ。

 

「おっ、そういえば....」

 

今日はご○うさの一番くじの発売日じゃん。そうだわ、昨日の夜ネットで知って、チノちゃんを当てなきゃっていう使命感に駆られてたのに忘れていたわ。よしっ!そうと決まればうさぎ飛びで沼津まで行きますかね!あっ!今のはうさぎ飛びとごち○さを(ry

 

「いや、うさぎ飛びで沼津まで行くとか、もしSNSにでも上げられたら炎上間違いなしだぞ。こう、松岡○造に激励された男、的なタイトルで」

 

世の中熱血なだけじゃ上手くいきませんよー、SNSは熱くなると大変な事になりたすからねー、的なことを考えながら、沼津に行くためにチャリに乗ろうした、との時、背後から俺を呼ぶ声がした。

 

 

 

 

「 「 天城君!! 」 」

 

 

えっ.......どうして?今頃練習中なはずじゃ....

 

 

「........国木田さん、黒澤さんどうしたの?」

 

 

想定外のことに少し取り乱していた俺だか、平静を装いながら二人の方を向いた。

 

 

「まさかっ....!今日は俺とデートでも―――」

 

 

 

 

 

 

「あのねっ!ルビィたち、Aqoursに入れたよ!」

 

ルビィちゃんは俺の言葉を遮り、大きな声でそういった。

 

「へぇ!そうなんだ!良かったね!」

 

俺は知らないふりをし、更にオーバーリアクションをとる。

 

「天城君、千歌さんたちから全部聞いたよ」

 

「!」

 

なんだ....言っちゃったのか....

 

「........そっか、聞いたんだ....」

 

「だから、お礼を言いたくて....!」

 

ルビィさんが俺にそう言ってくる。

 

「いいよ、お礼をなんて。俺はなんにもしてない。全部高海先輩達がやってくれたからさ」

 

「そんなこと―――」

 

ルビィちゃんが俺の言葉に思うところがあったのか、何か言おうとしたが、それを遮った人物がいた。

 

 

「そんなことない!!」

 

 

珍しく声を荒らげた国木田さんに、俺は目を見開いた。

 

「マルが......」

 

 

国木田さんは真っ直ぐな瞳で俺に訴えかけて来ると、

 

「マルが自分に少しだけ自信が持てるようになったのは....天城君のおかげだよ?」

 

「ちょっ、国木田さん!?」

 

更に俺の左手を握ってきた。

 

「天城君がいたから....マルはスクールアイドルになれたんだよ?」

 

俺は国木田さんに手を握られ、その衝撃と緊張で何も考えることが出来なかった。すると....

 

 

「ルビィも....」

 

 

 

「黒澤さんまでっ!?」

 

 

ルビィちゃんも俺の右手を握ってきた。緊張しているのか、手が少し震えている。かくいう俺の手も、緊張のせいか過去に無いほど手あせをかいていた。

 

 

「ルビィも....天城君がいてくれたから、男の人と話せるようになれたし、初めての人でも少しだけ人見知りもしなくなったんだよ」

 

「そうずら。普段は言わないけど、マルは感謝してるんだよ?」

 

「ルビィも!」

 

「二人とも....」

 

ルビィちゃん......昔は俺とろくに話すことも出来なかったのに、成長したんだなぁ。

 

 

「だから天城君........」

 

国木田さんとルビィちゃんは目を合わせて笑い合い、そして―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 「ありがとう!」 」

 

二人の花のような笑顔が俺に向けられた。

 

「国木田さん......黒澤さん.......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――綺麗だ。

 

 

 

 

 

 

 

俺が二人の笑顔に見とれていると、国木田さんは不満そうな顔をした。

 

 

「その国木田さんっていうのやめるずら」

 

「え?」

 

俺は国木田さんの言った事が理解出来なかった。

 

「友達なんだから........下の名前で呼んで欲しいずら」

 

国木田さんはそっぽを向いてそう言った。

 

「花丸ちゃん.......顔赤くなってるよ?」

 

「ずら!?ルビィちゃん!嘘ついたらダメずら!」

 

「ふふっ、花丸ちゃん、ルビィは嘘なんてついてないよ」

 

ルビィちゃんと国木田さんが何か話しているが、さっきの言葉の衝撃が強すぎて頭に入ってこない。

 

 

「あのね、天城君........ルビィも......名前で読んで欲しいなぁって....」

 

 

黒澤さんは頬を赤くしながらそう言った。

 

「えっ?....え?」

 

下の名前で呼ぶ......え?マ?

 

 

「早く呼ぶずら........未来君」

 

戸惑っている俺を国木田さんは急かしてきた。

 

「国木田さん........」

 

 

「未来君も赤くなってるよ?顔」

 

「うそ!?」

 

俺をいじって楽しいのか、国木田さんと黒澤さんはニヤニヤしていた。

これは......覚悟を決めるしか....ないのか?

 

 

「えーっと....」

 

 

俺には、二人にどんな意図があってそう呼ばせようとしたのかは分からなかった。

 

 

 

 

「その......」

 

 

 

なぜなら俺は....

 

 

 

「花丸........ルビィ........」

 

 

 

 

何も考えられないほどに....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ!」

 

「えへへっ!」

 

 

二人の笑顔を愛おしく感じてしまっていたからだ




キャラ崩壊はしていないはず。

もし矛盾点、不可解な点、キャラ崩壊があれば筆者に報告ください。


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堕天使とAqoursとwithB part1

タイトルは適当です。主人公末期すぎだよぉ....

今回の話しは色々はしょってるので、原作を知らない読者様は読みにくいかもしれません。そのような読者様はネタバレを見てから読むことをお薦めします。
この作品は一応原作沿いの、あくまで創作なので、あんまりアニメのセリフをそのまま使って文字数を稼ぐのが好きではないのではしょりました。ご了承ください。
日本語大丈夫かなぁ....


「感じます。精霊結界の損壊により、魔力構造が変化していくのが」

 

『カワエエ』『堕天使様ーー』『楽しかったよ~』『また会いに来ます』『ヨハネ最高ううううう』『あやしすぎる』『今日もよかった』『堕天使wwwww』

 

 

「世界の趨勢が、天界議決により決して行くのが」

 

 

「かの約束の地に降臨した、堕天使ヨハネの魔眼が、その全てを見通すのです!」

 

 

「全てのリトルデーモンに授ける....堕天の力を!」

 

 

『放送終了いたしました』

 

「フフッ........」

 

 

 

 

「やってしまったぁあぁぁー!!!」

 

「何よ堕天使って!ヨハネって何!!?」

 

「リトルデーモン!?サタン!?いるわけないでしょう!?そんなもーん!!」

 

「もう高校生でしょ!?津島善子!いい加減卒業するの!!」

 

「そう、この世界はもっとリアル。リアルこそが正義!」

 

「リア充にぃーーー、私はなる!!」

 

 

『堕天使ヨハネと契約して、あなたも私のリトルデーモンに....なってみない?』

 

 

「ぅはぁぁあ!なんであんなこと言ったのよぉ~~!学校行けないじゃな~い!」

 

ピロン

 

「ん?誰かしら?」

 

『今日も面白かったです(笑)』

 

「なっ!なぁー!?」

 

『次も楽しみしてるぞ、津島ヨハネ(笑)』

 

「どっ、どうして!?」

 

『あと、そろそろ学校行けよー。駄天使ヨハネ』

 

 

「駄天使って何よ!てか....なんであんたが見てんのよーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

マル達、Aqoursは今日も屋上に集まって練習をしていた。

 

「だからその名前は忘れてって言ってるでしょ!?」

 

ランキングでどうやったら上にいけるかを話し合っていた時に、名前をもっと奇抜にしたらいい、と提案した梨子さんが千歌さんによって弄られていた。

 

「悲しい話だよね~、人魚姫」

 

「はい....」

 

「....?」

 

あれ?あのお団子は....

 

「何を言ってるの!?だからそもそもあの名前はただの思いつきで....!」

 

「え、なんだっけ梨子ちゃん、な、スリー、スリーマーメイド....」

 

「なんでこんなところに先客が....!」

 

「....善子ちゃん?」

 

善子ちゃんずら。学校来たんだ!

 

「ずら丸!?....ささーっ....」

 

マルと目が合った善子ちゃんは物影に隠れてしまった。

 

「....」

 

『善子ちゃんがいたずらΣ(´□`;)』

 

ピロリン

 

「あっ、もう返信きたずら。さては暇人ずらね」

 

『うそぉ!?マ?』

 

「マ?ってなんだろう?」

 

『マ?ってなに?(´・ω・`)』

『あー、花丸なら知らんよなー』

『本当に?って意味だよ』

『へぇー。変な言い方するんだね(;´_ゝ`)』

『これはのう、ネットスラングというんじゃ』

『ね、ねっとすらんぐ?Σ(゜Д゜)』

『いつでもいいからさ、ルビィとかに、おまwクソワロタwwって送ってみて』

『おまwクソワロタww?色々よくわからないけど、特にwってどういう意味?』

『花丸は純粋なままでいてくれ....』

『うーん、まぁいいや。それよりも善子ちゃんがいたけど、どうしよう』

『捕獲』

『え?』

『捕まえよう。手段は選ばないで』

 

 

未来君に聞いたマルが馬鹿だったずら....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

最近花丸がスマホを買ったらしくて、俺とルビィちゃんで色々教えてるんだけど、何も知らない子にあんな事やこんな事を仕込むのが凄く楽しいんよ。

 

「クソワロタとか送られてきたらルビィちゃん驚くんだろうなぁ」

 

なんかルビィちゃんが顔文字の使い方を教えたらしくて、花丸がやけに顔文字を多用してくるんだよね。ま、ビギナー(無駄に良い発音)だから仕方ないか。

 

「あっ....」

 

やっべ。前にJKの集団がおる....

 

「いや、ちょっと待て。あれは....」

 

ルビィちゃんと花丸じゃん。てことは他の四人は......四人?Aqoursってあの二人を除くと三人だったよな?幼さない顔と脅威の胸囲(ウマイ!)を持った高海先輩と、いかにも陽キャっぽい渡辺先輩と、俺のことを犯罪者を見る目で見てきた桜内先輩。誰か新しく加わったのかな?

 

「あっ!未来く~ん!!」

 

俺に気がついた花丸が、手を振って呼んでくる。嫌だなぁ。桜内先輩と渡辺先輩目が怖いんだよなぁ。全部あの人、高海先輩のせいだわ。俺が花丸とルビィちゃんの彼氏とかいう意味不明な爆弾発言したお陰で俺のことを野獣と勘違いしだしたみたいだし。食っちまうぞぉ!!とか言って先輩方二人の心の臓目掛けてダイブしてやろうかぁ!?あっ、すいません刑事さん。未遂です。許してください。

 

見つかったものは仕方がないので、俺も手を振って花丸とルビィちゃんのいる地点に向かってチャリを漕ぐ。

 

「二人ともー!練習おつかれ!まだ明るいけどもう練習終わった...........ってなんでぇ!?」

 

 

 

 

 

あのダークブルーのロングヘアーに、よくわからないお団子、そしてその残念な性格の割には無駄に良いスタイル!あいつは――――

 

 

 

 

 

 

「なんでお前がここに!?引き込もってたはずじゃ!?まさか自力で脱出を?」

 

 

「からの無言の腹パン....って引きこもりゆーな!....ふふっ....悠久の時を経て....再び相見えん!知識の神、オーディーン!!」

 

 

「その名前で呼ぶなぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※少々お待ち下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ....はぁ....」

 

「ふふっ、この前の仕返しよ!」

 

MP(メンタルポイント)が限界を迎え、地面に手をつきながら息を切らしていた俺に、津島がマウントを取ったかのような口調で話し掛けてくる。

 

「学校にも来ずにあんな配信してるやつが悪いんだろ!!」

 

「定期的にあれをやらないと魔力を抑えきれなくなるのよ!」

 

「お前それ封印するとか言ってたよな?俺の前で宣言してたはずだよな?」

 

「し、仕方ないじゃない!意識しててもついつい癖でやっちゃうんだから!」

 

「ついついじゃねぇ!俺を巻き込むな!人の封印しておきたい記憶を蘇らせるな!」

 

「ふっ、あんただけ隠し通そうなんて、そんなの認めないわ」

 

「目と目があったらポケモンバトルと言われているが、俺達は今がその時のようだなぁ!」

 

「ククッ、望む所よ!」

 

 

 

津島のその言葉を皮切りに、俺は一ヶ月だけやっていた通信空手で覚えた構えをとる。対する津島は何処かで見覚えのある構えを取っていた。何それ?ハンター○ハンターのカ○トロさんか?

 

「このヨハネの魔力で今度こそあなたをリトルデーモンに―――」

 

「あのー!」

 

しかし、そこで横槍が入った。

 

「 「 はっ!?」 」

 

ハッとして周囲を見ると、苦笑いをしている者、引いている者、ジト目でこちらを見ている者、と様々な反応を取っているAqoursの皆さんがいた。

 

「お取り込み中みたいだったけど、私達置いてきぼりだったから....ごめんね?」

 

「いえ、全然大丈夫です!むしろありがとうございます!」

 

「またやってしまったーーー!」

 

あんな現場を見られた上に、謝られると逆に辛い。

 

「なにやってるずら....」

 

花丸が呆れたように溜め息をついている。

 

「お前のせいだぞ馬鹿堕天使!」

 

「馬鹿ゆーな!あんただってノリノリだった癖に!」

 

「俺はな!約一年間必死に隠して来たんだぞ!特に花丸とルビィには絶対にバレないようにしてたんだぞ!それなのに....!」

 

「!?....あ、あんた達....いつから下の名前で呼びあって―――」

 

「あのー!!」

 

「 「 はっ! ?」 」

 

くっ!何故か津島と一緒だと、何時ものクールな俺でいられなくなる。えっ?クールじゃない?勘違いすんな?

 

「二人とも、仲良いんだねー!」

 

「そんなことは絶対にありません!」

 

高海先輩がどっからどう見たらそう思うのか分からない様なことを言ってくる。

 

「ていうか二人とも、もう練習終わったの?」

 

「まだ終わってないずら」

 

「これから千歌さんの家に行くんだ」

 

高海先輩の家!ていうか女子の家!俺も行ってみたいな!行ってみたいんだけど.......

 

「....」

 

「....」

 

やっぱすごい警戒されてるなぁ....

 

「でもなんで津島がいるの?」

 

「えへへっ、気になるー?」

 

「えっ....あー、気になります」

 

今花丸とルビィちゃんに質問したんだけど。まぁいいや。

 

「私達も........堕天するの!」

 

「?えーと....どういうことですか?」

 

「えっとね、私達も善子ちゃんみたいな―――」

 

「千歌ちゃん!時間も押してるし、行こう!」

 

「えっ?....うん!そうだね!」

 

渡辺先輩が高海先輩の話を遮った。

うわぁ....怖いよぉ......警戒心丸だし過ぎて怖すぎだよぉ....

確かに俺はよくわからない男だけれども、女子校の生徒は男に対する警戒心が強いのかねぇ....

 

「近々新しい動画をあげるから楽しみにしててね!」

 

 

そう言ってAqours+中二の皆さんは去っていった。

あぁ......年上はあんまり好みじゃないけど、高海先輩は二年生のオアシスやわぁ....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

現在マル達は千歌さんの部屋に来ていた。

 

「梨子ちゃん!?」

 

「とおりゃあああーーー!!」

 

千歌さんの提案で善子ちゃんのゴスロリ?っていう服を着てみたけどスカートが短すぎてちょっと恥ずかしいずら。

 

 

「 「 「 「 「 おぉ、飛んだ…… 」 」 」 」 」

 

「わん!」

 

千歌さんの家の犬、しいたけちゃんに追いかけられた梨子さんがとんでもないジャンプを見せた。

 

「~っ!」

 

空中で一回転して、勢いの余りお尻から着地してしまったみたいでとても痛そうずら。

 

「 「 「 「 「 おぉ~! 」 」 」 」 」

 

この前未来君に薦められた黒○バスケっていうアニメに人間離れしたジャンプをするキャラがいたけど、梨子さんとどっちが凄いんだろう?確かそのキャラの名前は.........さ、さがみ?だったかな?

 

「うぅぅ....!」

 

「おかえり....」

 

「!....ただいま....」

 

梨子さんの母親らしき人がいた。梨子さんに似て、とっても綺麗ずら。

 

 

「梨子ちゃんすっごーい!!」

 

「今の跳躍力....世界を狙えるであります!」

 

「し、死ぬかと思ったわ....」

 

 

それから少しして、梨子さんが戻ってきた後、千歌さん達二年生はさっきの件で盛り上がっていた。

 

「ねぇずら丸....ルビィ....」

 

そしてマル達はその傍ら、机の上にあったお菓子をつまみながら談笑していた。

 

「どうしたの?善子ちゃん」

 

善子ちゃん少し改まった態度で話し始めた。

 

「その....あんたたち、未来と仲良いのね....」

 

「え?」

 

「名前で呼び合うなんて....」

 

善子ちゃんが未来君のことを聞いてきた。そういえば、この二人はどこで知り合ったんだろう?

 

「あぁ、名前で呼び合うになったのは最近ずら。それよりも、善子ちゃんも未来君と知合いだったんだね」

 

「どこで知り合ったの?」

 

ルビィちゃんがマルの聞きたかったことを聞いてくれた。

 

「あいつとは中学の頃一緒の塾で....色々あったのよ」

 

「へぇー。塾かぁ....」

 

なるほど。塾なら違う中学でも友達なことに説明がつくずら。

 

「あんたたち....未来のことどう思ってるの?」

 

「?」

 

「その.....もしかして....好きだったりするの?」

 

好き?好きって....善子ちゃんはどういう意味で聞いてるんだろう?

 

「え?それはどういう―――」

 

友達として.......それとも......

 

「ルビィは........好きだよ」

 

「!?」

 

「ルビィちゃん!?」

 

善子ちゃんの問に対してルビィちゃんが衝撃のカミングアウトをした。

 

「ちょっと恥ずかしいけど......」

 

ルビィちゃんは恥ずかしいのか、頬を赤くしている。

 

「ル、ルビィちゃん!それ本当ずらか!?」

 

「うん....」

 

マルは驚愕した。だって、今のルビィちゃんは....

 

「男性恐怖症だったルビィちゃんがまさか!恋―――」

 

 

 

完全に恋する乙女の表情で―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「未来君はルビィの大切な友達だよ!」

 

「 「 えっ? 」 」

 

「うゆ?どうしたの?」

 

ルビィちゃんの普段通りの元気一杯な声に、マル達は呆気に取られていた。これは....

 

「あー.......マルの勘違いだったみたいずら....だよね?善子ちゃん」

 

マルはとんでもない勘違いをしていたみたいずら。確かに二人は仲が良いけど、そういう風な関係になってる姿は想像も出来ないずら。

 

 

「え、えぇ。そうみたいね.......」

 

「?」

 

 

善子ちゃん.......どうしたんだろう?なんか、何時もと雰囲気が違うような....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

『ヨハネさまのリトルデーモン4号、く、黒澤ルビィです。一番小さい悪魔......かわいがってね!』

 

「........」

 

 

これは........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 

なにこれなにこれなにこれ!?リトルデーモン四号かわゆすぎる!!可愛がってくださいだって?Of course!もちろん!可愛がりますとも!!

 

あぁ....頭が高速回転しているのが分かる......久しぶりにいっちょぶちかましますかね!!

『くっ...!殺せっ...!』敵に捕まり椅子に括り付けられてる俺の前に現れたのは拷問道具(鞭やらなにやらえげつない物)を持ったリトルデーモン四号だった。『うゆ?何言ってるの?これからぜーんぶ情報吐いて貰うからね?』リトルデーモン四号は艶やかな笑みを浮かべている。『死んでも漏らすか!』その笑みで俺の俺が反応しそうになったが、既の所で耐え、抵抗する。『ふーん。普段なら抵抗してくれるのも面白いからいいけど、今回はヨハネ様が待ってるから直ぐに終わらせるよぉ!!』バシーン!『いっ!!』リトルデーモン四号が振った鞭が俺の身体に命中する。『ほらほらぁ!うゆゆゆゆ!!いくよぉ!!』バシーン!バシーン!バシーン!『がっ...!』休む暇もなく鞭で叩かれる俺。あの小さな身体から出たとは思えない程の威力で振り出される鞭に俺の身体は悲鳴をあげる。そして暫く拷問を受けていると、予想外の変化が俺の身体に訪れた。『もっと!もっとくださいぃぃぃ!!リトルデーモン四号さまぁぁぁ!!』そう、俺の身体は痛みを快楽に変え始めたのである。『ぴっ!変態がいるよぉ!』リトルデーモン四号はドン引きしていた。が、実はそれは演技で口元は笑っていた。それから俺は情報を吐き、リトルデーモン四号様の直属の部下になった。リトルデーモン四号様はパシリを、俺は快楽を得ることができるwin-winな関係が成立したのであった........

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぅ........やっぱりルビィちゃんは最高だぜ........お前がナンバーワンだ!

 

 

 

 




全然興味ないと思いますが、筆者名の史上最強のラーメンと言う名前は何処から来たのかについてです。
筆者は史上最強の弟子ケンイチという漫画が好きで、そこから取りました。偶々名前をつけるときにラーメンが浮かんだのでこうなりました。


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堕天使とAqoursとwithB part2

更新遅れました。凄く遅れました。すいませんでした。過去最高字数なので許してください。

そういえば、スクスタ出ましたね。筆者はスクスタのモチベ下がり気味です。面白いんだけどねぇ...やっぱり上級全部クリアすると目標が無くなるっていうか...あと推しのことりちゃんURもゲットしたし。
読者の皆様はどうでしょうか?皆様推しメンは確保できましたか?出来てない方は今すぐこの小説をブラウザバックしてプリペイドカードを買いに行く事をお勧めします(笑)


あの衝撃の映像を目にしてから俺はリトルデーモン4号様の下僕になって......いなかった。というよりもここ数日、花丸とルビィちゃんと会っていないどころか連絡すら取っていない。

 

「あっ!天城く〜ん!」

 

後ろから聞き覚えのある声で名前を呼ばれる。振り返ってみるとそこには浦の星のスクールアイドルグループ、Aqoursのリーダーである高海千歌先輩の姿があった。

 

「こんにちは、高海先輩」

 

「天城君も今帰り?部活?」

 

「部活じゃありませんよ。学校の図書館で少し勉強していました」

 

「へぇ〜!凄いね!学校に残って勉強なんて私したことないよ〜」

 

 

一応俺は進学校に通ってるからまめに勉強しなきゃいけないんだよね。家だとルビィちゃんや花丸で色々想像(妄想)しちゃって集中できないしね。いつもあの二人にはお世話になっております。健全な男子高校生が健全な目的の為に脳内で使用させて頂いております。

 

 

それから少し身近な話題で立ち話する。すると高海先輩はこれからが本題だと言わんばかりに話を切り出し、

 

 

「ちょっとお話しようよ!海でも見ながらね!」

 

俺の腕を掴んできた。

 

......は?

 

高海先輩と俺って別にボディタッチをするような仲ではないはず...高海先輩がピュアなんだな。今日から高海先輩のことを童◯キラーと呼ぼう。いつか男関係で痛い目にあうぜ?高海先輩よ。で、傷心の先輩を俺が優しくケアするところから始まる純愛ストーリー(エロシーン有もあるよ!)が希望ですね。

 

 

「わっ、わかりました...」

 

 

ていうか、相変わらずコミュ力高すぎん?コミュ力高すぎ高杉くんだわ......何言ってんだろ俺。

それにしても、恐らくダンスの練習の後だからか、ちょっと汗の匂いが......エッチぃね!あとみかんの香りもする。制汗剤かな?って匂いばっか嗅いでると俺が変態みたいじゃん!(すっとぼけ)

 

「あ、そういえば、新しい動画見ました」

 

「わぁ!ありがとう!どうだった?」

 

「凄かったです。皆さんゴスロリがよく似合っていて」

 

あなた方は素晴らしいおかずを提供してくれました!ありがとうございます!!というのが本音なんだけれどもね。それを言った瞬間上級な国民以外を容赦なく豚箱にぶち込んじゃう国家権力の犬(検閲されてないかな?)がやって来て連行されちゃうからね。

 

「誰が一番だと思ったの?」

 

「え?」

 

「花丸ちゃん?ルビィちゃん?それとも善子ちゃん?」

 

「....」

 

この人は何を言ってるんですかね?てか、なんでその三択なんですかね?他にもメンバーが三人ほどいるでしょうが。

 

「え〜と、その、僕は皆んな似合ってると思っていて、誰が一番とかは...」

 

「えぇ〜!嘘だ〜!!あんなに可愛い子達だよ!?美少女だよ!?」

 

高海先輩は目を輝かせながら俺の方に詰め寄ってきた。なんだこの人。距離近すぎだろ。そんなんだと俺がその幼い顔の割に豊満なお身体にミスタッチしちゃっても文句は言えねぇぞ?

 

「誰が好きなの?」

 

「ふぁ!?」

 

「お姉さん興味ありますな〜」

 

いや、質問変わってるし!

 

「僕は別にあの三人をそういう目では見ていないので...」

 

 

嘘です。本当は下心丸出しで見ています。いつも頭の中でチョメチョメしてます。

 

 

「おかしいよ!だって男一人に女三人、何も起きないはずが無く...っていう感じのやつをネットで見たもん!」

 

「アイドルがなんてもん見てるんですか」

 

いや、微妙に違うけどさ。最近話題のLGBT問題に高い関心を持っている意識高い系の俺だが、悪いけどレ◯はOKだけどホ◯はNGなんだ。

 

「実は昔四人は会ってて、その時にザクシャインラブとか言って結婚の約束をしたんだけど、何故か都合よくみんなその記憶を忘れてる、みたいなのはないの!?」

 

「ねーよ」

 

ついタメ口が出てしまった。やっぱり小野寺推しだった俺はキムチ事件のことを忘れられなかったよ......

 

しかし、どうやってこの状況を乗り切ろうか......女子は恋愛系の話を始めると面倒らしいし.........せや!

 

 

「高海先輩、以外と漫画とか読むんですね」

 

 

必殺、トークァウェイ!高海先輩は失礼だかその...パッと見賢そうに見えないので乗ってくれるかもしれない。

 

 

「むぅ...話変えようとしてるね。まぁいっか。読むよ」

 

「好きな漫画は何ですか?」

 

「色々あって悩むけど...君◯届けとかかな」

 

 

普通だ。

 

 

「少年漫画だとワ◯ピース!」

 

「普通だ」

 

「あ〜!普通って言ったなぁ〜!」

 

そう言って高海先輩は俺のことをポカポカと叩いてくる。そんなに叩くと俺もやり返しちゃうぞ!具体的にはその豊満なおっP(オッドアイズペンデュラムドラゴンの略ですがなにか?)をタッチするぞ!

 

 

 

 

●●●

 

 

「実はね、天城君にお願いがあるの」

 

「お願いですか?」

 

「うん。天城君明日予定は空いてる?」

 

お?おぉ!?まさかデ、デートのお誘い!?放課後デートとか俺の憧れのシチュ12選の内の1つなんだが!?

 

「空いてますよ。部活もやってませんし」

 

俺年上もOKだからバッチ来いですよ!

 

 

「明日みんなでPVを撮ろうと思ってるんだけど、手伝って貰いたくて。駄目かな?」

 

デスヨネー。わかってたよ。分かってましたよ......

 

 

「良いですよ。喜んでお受けしま....あっ」

 

「どうしたの?」

 

懐の深さをアピールする為に俺は快く承諾したかったんだが、一つの危惧事項が脳裏に浮かぶ。

 

「あー...僕としては手伝うのは全然良いんですが、高海先輩以外のAqoursの皆さんは大丈夫なんでしょうか?僕が手伝う事について」

 

花丸とルビィちゃんは良いんだよ。あの二人はマイフレだし。ただ二年生の二人がなぁ。ちょっと怖いんだだよね。警戒したくなるのも分かるけどさ。

 

「大丈夫だよ!皆んな天城君と顔見知りだしね!」

 

「でも、渡辺先輩と桜内先輩とはあまり面識がありませんし...」

 

「うーん、確かにそうだね。曜ちゃんと梨子ちゃんには私からちゃんと説明しておくから大丈夫だよ」

 

なら大丈夫かな?これは俺の推測だけど、この前二年生の先輩方を見たとき、特に渡辺先輩と桜内先輩から百合の波動を感じたんだ。オイラそういうの鋭くってさ!だから高海先輩のお願いなら聞いてくれると考えてる。

 

 

「そういう事なら承知しました」

 

 

「じゃあ明日、放課後に浦の星に来てね!」

 

 

また女子校チャレンジか。しかも今回は放課後だから絶対に下校する浦の星JKにジロジロ見られるし......いや!むしろ視姦....もといジロ見仕返してやるわ!しっかりと上から下までな!ヒャァッハー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

翌日、六限が終わった後俺はすぐに学校を出てチャリを漕いで浦の星を目指した。女の子と待ち合わせしてる時は15分前には集合場所に到着しておく、プレイボーイ(笑)の俺からしたら息を吸うように当たり前なことだ。

 

「天城君、今日はよろしくね!」

 

予定通り15分前に到着し、浦の星の校門前で待っていると高海先輩をはじめとしたAqours

の皆さんがやって来た。しかし...

 

「ってなんでまたお前がいるの?」

 

何故か津島も一緒だった。津島がAqoursに協力していたことは知ってたけど、なんでこう、さも当たり前のように一緒にいるんだ?

 

「私も入ったのよ、Aqoursに」

 

「うっそーん」

 

返ってきた言葉に俺は衝撃を受ける。まぁ確かに津島がスクールアイドルになるっていうのは納得出来なくもない。というか合ってると言ってもいいだろう。スタイル良いもんな、こいつ。あとキャラも濃いし人気出ると思う。非常に残念な性格してるけど。

 

「なんか失礼なこと考えてない?」

 

なんで、花丸もそうだけど考えていることを察せられるんだろうか?あれかな?漫画とかでよく見る「女の勘です♡」ってやつかな?俺もエッチぃ雰囲気出してる人妻に「女の勘です♡」とか言われてぇぇぇ!!

 

「いや、そんなこと全然ない。むしろ津島にはスクールアイドルピッタリだなって考えてた。ほら、お前スタイル良いし」

 

「なっ...なななっ!なに言って...!」

 

なんか顔赤くなってるし。夏風邪か?

 

「いや、ジョークだし」

 

「〜っ!あんたねぇ〜〜〜!!」

 

「相変わらず二人とも仲良いね!」

 

 

仲良くは無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....」

 

「ルビィちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

 

 

「内浦のいいところ?」

 

「そう!東京と違って、外の人はこの町のこと知らないでしょ?だからまずこの町のいいところを伝えなきゃって!」

 

「それでPVを?」

 

「うん!μ'sもやってたみたいだし、これをネットで公開して、みんなに知ってもらうって思って!」

 

「知識の海ずら~」

 

「というわけで!ひとつよろしく!」

 

高海先輩から合図があったので、俺は先輩が映るようにカメラを回す。先輩と一緒に映った花丸とルビィちゃんは急にカメラが自分達に回ってきたことに対して驚いているようだった。

視姦してやるぜぇ〜。こんな合法的に視姦し放題なチャンスそうそう訪れないからな!上から下までとことん見て家に帰ってやるぜぇ〜。特に花丸には普段毒を吐かれてる分念入りにウォッチしてやるぜぇ〜。ん?ちょっと待て......ウォッチ.....花丸.....ずら......この式から導かれるものは!ズバリ!妖◯ウォッ(下らないのでカット)

 

 

「わぁ!?いや、マ、マルには無理ず...いや、無理」

 

「ぴっ、ぴぎっ!」

 

 

あれ?ルビィちゃんが消えた。まだ視姦しきれてないのに......てか消えるとか念能力か?放出系か?いや、ルビィちゃんは短期で大雑把では無いし。むしろ繊細なおんにゃの子だし...

 

 

「見える!あそこーーーよっ!」

 

「違いますぅー!べーっ!」

 

「おおー、なんだかレベルアップしてる!」

 

 

ルビィちゃんが可愛い過ぎるんだが。ルビィちゃんに罵られながら「べーっ!」ってされたい人生だった......っていかんいかん。それじゃあ俺が末期みたいじゃないか。え?お前はもう末期だって?

 

 

「そんなこと言ってる場合!?」

 

 

 

桜内先輩の一喝により、PV撮影がスタートした。したんだが......

 

 

『どうですかー!?この雄大な富士山!!』

 

『それと、この綺麗な海!』

 

『さらに、みかんがどっさり!』

 

『そして町にはー!...えっと、町には......特に何もないです!』

 

「それ言っちゃダメ」

 

メインキャスト高海先輩で行ったプロモーションは何とも言えない微妙なものとなった。

 

「うぅーん、じゃあ...」

 

 

『バスでちょっと行くと、そこは大都会!』

 

『お店もたーくさんあるよー!』

 

『そしてー...!ちょっとぉー...!』

 

『自転車で...!坂を越えると...はぁ...!そこには、伊豆長岡の、商店街が...!』

 

「全然...ちょっとじゃない...」

 

「沼津に行くのだって...バスで500円以上かかるし...!」

 

息を切らしてる美少女たち.....それはもうエロかったです。カメラマンは役得過ぎました。仮になんか報酬があったとしたら、寧ろ俺が支払いたいくらいです。

 

「いい加減にしてよ...」

 

「うーん...じゃあ...」

 

『うふふ...ふふ...リトルデーモンのあなた、堕天使ヨハネです。今日は、このヨハネが堕ちてきた地上を紹介してあげましょう』

 

『まず、これが...土!!あーっはっはっは!!』

 

「やっぱり善子ちゃんはこうでないと」

 

「うぇぇ...」

 

「スクールアイドルになっても平常運転でなんか安心したぞ」

 

「うるさいわね!」

 

 

結構撮ったけど、全体的にネタ要素が強すぎるんだが。こんなんで大丈夫なんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

「はーい、おまちどおさま。こんなに大人数なんて珍しいわね。ごゆっくり」

 

あれから特に良い案なども浮かばなかった為、俺とAqoursの皆さんは休憩がてら内浦の学生御用達の喫茶店、『松月』にやって来ていた。

 

「どうして喫茶店なの?」

 

「もしかして、この前騒いで家族の人に怒られたり……」

 

「ううん、違うの。梨子ちゃんがしいたけいるなら来ないって」

 

しいたけ?

 

「行かないとは言ってないわ!ちゃんと繋いでおいてって言ってるだけ」

 

しいたけ...繋いでおく...あっ、犬のことね。

 

「いや、でも……」

 

「ここら辺じゃ、家の中だと放し飼いの人の方が多いかも」

 

「そんな……」

 

桜内先輩は犬が苦手のようだ。桜内梨子...しいたけ...しいりこ...うっ、頭が!

 

「ワンッ!」

 

おっ、わたあめだ。相変わらず愛くるしい姿だな。ちなみに俺は犬派な。

 

「またまた……」

 

まぁ、犬よりも女の子の方が好きなんだけどね(ゲス顔)

 

「ワンッ!」

 

「わぁ~!」

 

「.....!!!」

 

桜内先輩はわたあめに驚いたのか、勢い余って椅子ごと倒れてしまった。いや、驚き過ぎでしょ。小型犬だよ?

そんな事を思いながら、倒れている桜内先輩に目を向ける。そして俺は衝撃の光景を目にした。

 

「ーーー満開だ」

 

ピンクだった。何がピンクだったかは桜内先輩の名誉の為に言及はしない。が、その光景はまるで春という季節を象徴する満開の桜のように美しいものであった。流石苗字に桜という字がつくだけはありますなぁ。

 

この絶景を作り上げた最大の功労者(功労犬?)であるわたあめに目を向ける。わたあめも俺の方を尻尾を振りながら見つめていた。

 

「ワンッ!」

 

ナイスだワンころ。今度褒美にお前の大好きなビーフジャーキーを持ってきてやろう。

 

「未来君....」

 

そんなくだらないことを考えていると、隣に座っている花丸に名前を呼ばれた。嫌な予感がした為隣の席に目をやると、俺のことをジト目で見ている花丸の姿があった。

アカン。バレてますやんこれ。

このままだとこの情報が拡散され、この場にいる女性陣全員に変態のレッテルを貼られかねない為、俺は小声で口止め...しようとすると他の人に聞こえる可能性もあるので、ラインを用いて口止めを試みた。

 

『すいませんでした。本当にすいませんでした』

『サイッテーずら』

『事故なんです。僕のせいではありません』

『ガン見してたのに?目が血走ってたよ?』

『ごめんなさい』

 

交渉の末、帰りに高いアイスを奢る条件付きで口止めに成功した。

 

「こんなに小さいのに!?」

 

「大きさは関係ないの!そのキバ!そんなので噛まれたら...死!!!」

 

「噛まないよ...ねー、わたちゃん」

 

「あ、危ないわよ!そんな顔近づけたら...!」

 

ケモノはフレンズなんだぞ!だからキュルルはサイコ野郎(野郎?)でOK。

 

「そうだ!わたちゃんで少し慣れるといいよ!」

 

「は...!」

 

ペロリ

 

「あぁあぁ!!!」

 

「梨子ちゃーん!」

 

おいワンころ。なに美少女にペロペロしてんだ羨ましい。俺も犬に産まれてれば美少女を合法的にペロれたんだろうなぁ......

そうだ!犬の着ぐるみを作れば俺も合法的に美少女にーーーやーーーが出来るかも!オラそういう着ぐるみ着てチョメチョメやるようなやつを薄い本で見たことあっぞ!

 

「話は聞いてるから!早く進めて!」

 

「しょうがないなあ...できた?」

 

「簡単に編集しただけだけど...お世辞にも、魅力的とは言えないわね」

 

津島は動画編集とか出来るのな。まぁそりゃそうか。あんな配信(笑)やってるくらいだし出来て当然か。

 

「やっぱりここだけじゃ難しいんですかね...」

 

「うーん...」

 

確かに、この内浦には海の幸やみかんなどの自然の恵み位しかアピールポイントがないのかもしれない。みとしーとかあるけど、それ位じゃ今を生きるJK達はこんな遠くまで来ないだろうし。

 

 

「うわぁ!終バス来たよ!」

 

「うそーっ!」

 

ってもうそんな時間か。やはり美少女達と俺、6:1という比率の男のロマンな桃源郷にいると時間が早く過ぎるな。

 

「ふふふ、ではまた」

 

「ヨーシコー!」

 

「うっ」

 

ふふっ、津島善子よ、陽キャラの洗礼を受けるがいい。

 

「結局何も決まらなかったなぁ...」

 

「~~!!こんな時間!!失礼します!!ほら花丸ちゃん、口にあんこついてるよ!」

 

そう言ってルビィちゃんはお代を置いて店を出ていった。

 

「じゃあ僕もお暇しますね」

 

「今日はありがとう!天城君!」

 

俺も先輩方に一礼して、お代を置いてから店を出る。約束を忘れていなかった花丸が店を出て少しした所で仁王立ちしていた。ルビィちゃんが早く帰ろう!と言っているのを無視して。

花丸ェ......

 

 

 

結局花丸とルビィちゃんの二人分奢ることになりましたとさ!ちゃんちゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

今日は疲れたな。JK六人と一緒に行動できるというなんとも役得な展開だったが、常に気を張っておかなければならず、精神的疲労が溜まっているようだ。ま、大きな収穫があったから全然良いんだが。今日のベストシーン、通称「桜内ピンク」はしっかりと脳内フォルダにダウンロードされました。

 

そんな事を考えながらベットに横になって休んでいると、電話がバイブレイトする。ん?電話か?

 

「って津島からか」

 

実はこんは感じに津島から電話が掛かってくることはたまにある。受験期には電話で勉強を教えたりしてたし。今回はなんだ?学校の勉強についていけないとかか?あいつ休んでたし。

 

「どうした?」

 

『今日梨子さんの下着見てたでしょ?」

 

「ブフォーーー!!!」

 

な、なななんで......!

 

「見てたのかお前!!」

 

『あとPV撮ってる時に、あんたが偶にニヤニヤしてたところも見てたわ』

 

「よく見てんなチクショウ!」

 

『な!?べ、別によく見てなんか無いわよ!たまたまあんたを見たらそういう風だったってだけよ!』

 

不覚だ。まさか花丸以外に目撃者がいたとは......

 

「で?何が望みだ?どんな願いでも一つだけ叶えてやろう」

 

『私に永遠の命をくれーーー!!って違うわよ!』

 

 

やっぱり津島はノリが良いな。そういうところは結構好きかも。

 

 

『私の願い....』

 

 

さぁ、どんな願いだ?私の下僕になれとかだったら絶対に拒否するぞ。ただ、ルビィちゃんにそう言われたら、ルビィちゃんの永遠の下僕になりますって宣言して永久就職しちゃいます。

 

なんか末期な事考えてたけど、この情報を拡散されない為なら俺は、結構何でもやるつもりだ。

 

 

『それは...』

 

 

さぁ、何がくる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『わ、私と今週の土曜日にデートしなさい!』

 

 

 

はぁ?




感想、評価待ってます。



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堕天使とAqoursとwithB part3

づかれだぁぁぁ!土曜日の朝からずっと書いてました。なので疲労で文章おかしなところやキャラ崩壊が結構あるかもしれません。すいません。
なんとこの堕天使とAqoursとwithB、part3じゃ終わりませんでした。ほんとはここで終わらせるつもりだったんですが...

批判とか多かったら書き直すかもしれません。
ですが、とりあえず今はこの状態の作品をお楽しみください。


ーーー天城未来の朝は早い

 

まだ陽が昇っていない時間にけたたましいアラームの音と共に彼、天城未来は目を覚ます。まだ眠気が残っているが為か、ベッドの中でモゾモゾとしている。

 

「ん〜〜〜」

 

十分後、彼は起床しベッドに座り伸びをしていた。

 

ーーー十分も無駄にしてしまって大丈夫なんですか?

 

「えっ、あぁ、グッモーニン。大丈夫ですよ。十分位は布団から出られないとエクスペクトしてアラームをセットしたので」

 

ーーーグッモーニン

 

自分が朝は弱いという事を自覚し、前もってアラームをセットする......流石は匠である。

そして言葉の端々に見られる英単語、ここから匠の意識の高さがわかる。匠にとっては何気ない普段の会話も修練なのだろう。

 

ーーー美容には気を使っているんですね

 

自室を出た匠は洗面所で洗顔料を用いて顔を洗っていた。男性がここまで洗顔に力を入れるのは珍しい事例であると言える。

 

「そりゃそうですよ。だって、毎日彼女達の相手をしなくちゃいけませんから」

 

ーーー彼女達?

 

「そう。二人の、可愛い子猫ちゃんたちのね...」

 

笑みを浮かべながらそう言う匠。きっとこの顔で今までに何人もの女性を魅了してきたのだろう。そう感じさせる不思議な魅力が匠の笑顔にはあった。

 

一通りの身支度を終えた匠は朝食の準備に取り掛かり始める。台所に置かれている食材から西洋風のブレックファーストと察する事ができる。

 

「両親があまり家に居ませんからね。ほぼ毎朝こうやって自分で作ってます」

 

我々、取材陣と会話をしながらも匠は手を止める事は一切せず着々と朝食の準備を進めていく。

 

 

「よし、完成っと」

 

出来上がった朝食をテーブルの上に並べていく匠。メニューはパン、目玉焼き、ソーセージ、サラダ、etc...と一見平凡な朝食だが、匠はこの朝食が自身の一日を支える上で必要不可欠なものだと言う。

 

「ミソはこれ」

 

匠はテーブルの端の方に置かれたホットミルクを指さす。

 

「このホットミルクだけは毎朝欠かさないんですよ。これを飲むと頭が回りやすくなるんですよね。そう言う効果が科学的に実証されているかは知りませんが」

 

ーーー所謂ルーティーンというものですか?

 

「そうですね。イ◯ローや一日一万回感謝の正拳突きを行うあの人と同じ、ルーティーンです」

 

多忙な日々の暮らしにあえて効能が明確化されていない、一見意味があるか分からない行為を取り入れる。それが匠の溢れんばかりの才をより高めているのかもしれない。ホットミルクを啜る匠の姿には、我々にそう思わせる何かがあった。

 

「さて、今日も頑張りますかね」

 

食器を洗い、家を出る匠。匠によると放課後友人の国木田氏と黒澤氏とデートをする為、帰りが遅くなるとの事だ。流石匠、プレイボーイである。

 

今日も匠、こと天城未来の多忙なる一日が始まる...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

っていう夢を見た。ツッコミ所多すぎてどこ

からツッコんでいいのか分かんねぇ...

匠の喋り方うざすぎぃ.....あとなんだよ子猫ちゃん達って.....まぁ少しだけあの二人をそう呼んでみたい自分もいるけどね。俺が「hey子猫ちゃん、今日も俺と熱い夜を過ごさないかい?」と言うとルビィちゃんが頬を赤く染めながら上目遣いで「うゅ....もう、恥ずかしいよぉ...でも今日もルビィのこと....可愛がってね?」と言って俺の手を握ってきた為、興奮した俺はそのまま二人で夜の街へ繰り出そうする。しかし突然、後方から「待つずら!」という声が聞こえた為後ろを振り返ってみると、そこには息を切らし、片手に包丁を持った花丸(ヤンデレver.)がいて、「ルビィちゃんばっかりズルいずら!マルのことも...マルのことももっと愛してよ!」と言って俺を刺そうとしてきたので、俺はそれを見事な体捌きで制し、ソフトなキッスをしてから、「バーカ、俺が君を愛さない訳がないだろ?ほら、こんな物騒なものしまって俺とパッションな夜を過ごそうぜ」と耳元で囁く。こうして俺はヤンデレ美少女とロリッ娘美少女に死ぬほど愛されて眠れなくなったのでした。というハッピーエンドなストーリーをプリーズ。

 

「未来く〜ん!」

 

そんなことを頭の中で妄想していると、俺を呼ぶ可愛らしい声が聞こえた。

 

「おはよう!」

 

モーニングルビィちゃん入りました!この笑顔だけでご飯三杯はいけます。今日も良い日になりそうだ。72時間働けますか?って問われても自信を持ってイエスと答えられる自信がある。イエス!と答えるさ〜...おっ、なんか詩を作れそう。突然のインスピレーションが五臓六腑を駆け巡った。俺って作詞の才能あったりして。

 

「なにニヤニヤしてるずら...」

 

ルビィちゃんの国宝級と言っても過言ではない笑顔を脳内に保存し楽しんでいると、横からいつもの冷たい視線が刺さる。

 

「花丸...とついでに津島もおはよう」

 

「ついでって何よ!」

 

俺の言葉に対して津島がいつものように噛み付いてくる。毎度お疲れ様です。

 

「毎年思うけど、内浦ってこんなに人いたんだね」

 

「そうだね。ルビィも海開きの日は人が多くて驚いちゃうもん」

 

俺の言葉にルビィちゃんがそう返してくれた。ルビィちゃん....あぁ^〜心がぴょんぴょんするんじゃぁ^〜。

 

海開き。この日は毎年、朝早くから内浦や沼津の住民がボランティアで砂浜の清掃活動を行う。特に内浦在住者は、海水浴に来る客を相手にビジネスをしている人達も多い為、特に積極的に清掃を行う。

更に周囲を見渡してみると、浦女のジャージを身に纏ったJKが沢山いた。花丸とルビィちゃん、そして津島も同じジャージを着ている。浦女生は全員学校指定ののジャージを着て清掃活動に参加しろ、とでも言われてるのかね?

 

 

 

 

 

●●●

 

 

「あのー!みなさん!」

 

花丸、ルビィちゃん、津島の三人とお喋りしながら砂浜の清掃をしていると、高海先輩が砂浜全体を見渡せる場所に立ち、何かを言おうとしていた。

 

 

「私たち、浦の星女学院でスクールアイドルをやっている、Aqoursです!」

 

「私たちは、学校を残すために、ここに生徒をたくさん集めるために、みなさんに協力して欲しいことがあります!」

 

「ーーーみんなの気持ちを形にするために!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

海開きから数日後、俺は浦の星にやって来ていた。校門付近にいる警備員の目を掻い潜り、なんとか校舎の中に侵入する事が出来た俺は目的の教室を目指す。

 

「こんにちは〜」

 

「あっ!天城君!ごめんね〜、また来てもらっちゃって」

 

って言うのは嘘で、ちゃんと許可を貰って入校してます。女子高に不法侵入して捕まるくらいならもっと大きな事して捕まりたいしね。例えばルビィちゃんにーーーしたり花丸にーーーしたりしてね!あっ、そこの君、ポリスに連絡すんなよ?まだ心の中で考えてるだけだからテロ等準備罪の構成要件には該当しないはず...

 

「いや、いいんですよ。僕も皆さんのファンですから、喜んで協力します」

 

海開きの日から、Aqoursの皆さんは次のライブに向けての準備を進めていた。俺はお手伝いとして浦の星にお呼ばれしていた。

 

「進捗はどうですか?」

 

「順調ではあるんだけど......まだまだ時間が掛かりそうなんだよね...」

 

高海先輩は苦笑いしながらそう言う。ふと黒板を見てみると、そこには『スカイランタン めざせ1000個』と書いてあった。うわぁ...1000は流石にキツイでしょ...

 

 

 

 

 

 

●●●

 

教室の中央では花丸とルビィちゃんが向かい合って座り、お喋りしながら作業をすすめていた。

 

「二人ともお疲れ様!」

 

天井には完成品のランタンが吊るしてあり、机の上には作りかけのランタンが何個か置いてあった。俺は作業を頑張っている二人を激励し、差し入れのポカリを渡す。そして俺は、ルビィちゃんの横に席に座っている人物に目を向ける。

 

 

「ん〜...リトルデーモン達が...ヨハネの事...大好きなのは分かったけど...ムニャムニャ...」

 

 

何をやっとるんだこのアホは。

 

 

「起きろ!」

 

 

気持ち良さそうに昼寝を決め込んでいるアホ堕天使の頭に秘技、『天城流脳天かち割りチョップ』を食らわせる。俺の名字、天城だから〜流って付けるとそれっぽくなるんだよね。どうせなら、このイケメンな名字と共にイケメンフェイスに産んでくれたら良かったのに、とマイマザーに対して何度も思った事がある。

 

「うぅ...痛ったぁ〜!」

 

俺のチョップにより目覚めた津島はあまりの衝撃に頭を抑えていた。ふんっ、戦闘力たったの5のザコ堕天使め。

 

「誰よ!ヨハネの眠りを妨げたのは!」

 

「おはよしこ!」

 

俺はしたり顔で津島にそう言う。

 

「な!?どうしてあんたがここに!って善子ゆーな!」

 

「花丸とルビィに作業させて自分は寝てるだけとか、いい身分だなぁ?」

 

まったく、あんな可愛らしい子たちに労働をさせておいて自分だけサボりとか、けしからんぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

 

「ねぇ、千歌ちゃん」

 

「よーちゃん?どうしたの?」

 

私達は次のライブに向けてランタンを製作していた。衣装や歌詞、曲などは海開きの日以前から製作しており、既に殆ど完成状態にある為、ランタン1000個を完成させれば直ぐにライブを行えるようになっている。

 

「学校のみんなも手伝ってくれて、人手は充分なのになんで天城君にも声を掛けたの?」

 

天城未来君。浦女の近くにある男子校、天流川高校に通ってる男の子だ。天流川高校は偏差値は高いが変人、奇人の巣窟らしい。

 

「えへへ...実は私、ある作戦を練っておりまして」

 

そんな高校に通ってる事もあり、彼の事を警戒していた私だったが、最近の彼の花丸ちゃんやルビィちゃんに尽くす姿勢を見て、少し好印象を持ち始めていた。PV撮影も手伝って貰っちゃったしね。この前梨子ちゃんの下着ガン見してたけど。まぁそれは梨子ちゃんには悪いけどPV撮影を手伝ってくれたお礼だと考えたので特に何も....いや、思うところはあるけど何も思っていない。って矛盾してるね。

しかし、だからといって女子校にわざわざ男の子を呼ぶのは理解出来ない。人手が足りない時なら分かるけど、今はそうじゃない。浦女の殆どの生徒が手伝ってくれてる。

 

「作戦?」

 

が、千歌ちゃんには何やら考えがあるらしい。

 

「聞きたい?」

 

千歌ちゃんが私にそう尋ねてくる。今の千歌ちゃんの顔は凄い。すっごくニヤニヤしている。

 

「聞きたーーー」

 

「仕方ないなぁ〜!」

 

そんなに話したかったんだね、千歌ちゃん...

 

「そんなに聞きたいなら聞かせてあげるね!私が練っている作戦....その名も、『一年生ラブラブ大作戦』を!!」

 

ん?

 

「あの四人...特にルビィちゃんと善子ちゃんからは愛の波動を感じるの!だから私が、あの四人の恋のキューピットになろうと思ってるんだ!」

 

成る程....成る程?いや、言いたい事は分かるけどさ。

 

「天城君と花丸ちゃん達を出来るだけ一緒に居させたいんだけど、私達も色々やる事があるからこういう時を狙っていかないとって思ってね」

 

そういえば千歌ちゃん恋愛漫画好きだったなぁ...漫画の影響を受けちゃったのかも。

まぁでもーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーそんな千歌ちゃんも可愛いよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

「おぉう...!?」

 

「未来君?どうしたの?」

 

「いや、なんか寒気が...」

 

寒気と同時に百合の波動も感じた。何だ?どこから感じる?....む?高海先輩と渡辺先輩が何か話している....あそこか?俺はようちかを感知したのか?

 

......ん?

 

「ルビィ...?そ、その格好は?」

 

「次のライブの衣装だよ」

 

なんと俺の目の前には、ドレスのような衣装を身に纏っているルビィちゃんがいた。胸元には大きなリボンが仕立ててあり、髪もドレスと同じカラーであるブルーのリボンで結んである。アイドルの衣装という事でスカートの丈も短く、更に袖がない、所謂ノースリーブである為に肌の露出の多い仕様になっている。

ちょっと長ったらしく述べたが、結局何が言いたいのかと言うと...

 

 

「どう...かな?」

 

 

ルビィちゃん可愛い過ぎた。

 

 

「ルビィちゃん可愛いよ!お人形さんみたい!だよね?天城君!」

 

「ゔぇぇ!?」

 

急に現れて何言ってるんだこの人!同意を求めるな!いや、完全同意だけれども!!

 

「うゅ...」

 

ルビィちゃんが俺の方を何かを期待しているような目で見つめていた。いや、そんな目で見つめられたら......

 

 

「似合ってる.....すっごく可愛い」

 

言っちゃうしかないじゃん。もうどうなっても知んねーや!オラギブアップだぞ!

 

「!?...えへへ...嬉しいなぁ...ありがとう!」

 

こんなフツメン(変態)の言葉だが、ルビィちゃんは喜んでくれたようだ。良かった。もし、「うゆゆ?気持ち悪すぎてルビィ、鳥肌立っちゃった!」とか言われたら内浦の雄大な海に来世は個性が発現することを願いながらワンチャンダイブしてしまうところだった...

 

 

「あ!花丸ちゃんも着替え終わったんだね!」

 

その言葉に俺は、光並みの速さで首を回し後ろを見る。光の速度で首を回した事はあるか〜い?俺は無いね。変な音がしました。もうやりません。

 

「おぉ...」

 

俺の後方に立っていた花丸は、ルビィちゃんとは色違いの、緋色の衣装を身に纏っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ.....ほんと、二人のこんな綺麗な姿を見れて俺は幸せ者だ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ〜!花丸ちゃんすっごく似合ってるよ!可愛い!だよね!?天城君!」

 

「え、えぇ!?マ、マルは...」

 

 

またお前は!いい感じな心境だったのに!それに恥ずかしーんだよこっちは!年齢=彼女無しの童◯なんだよ!俺の◯貞戦闘力(53万)舐めんなよ!?

 

ふと、多方から視線を感じる。周りを見渡すと、浦の星JKの何かを期待するような視線が俺に向けられていた。

 

「えぇ...」

 

あぁ!もう!言えばいいんだろ!言えば!

 

「似合ってる....綺麗だよ、花丸」

 

「!?」

 

『ヒューヒュー!!』

 

「ず、ずらぁ...」

 

もう疲れたので帰ってもいいですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....」




感想、評価待ってます。特に感想励みになります!


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堕天使とAqoursとwithB part4

一ヶ月で続きを投稿すると言ったのに十日ほど遅れてしまいすいませんでした。今回は六ヶ月ぶりの本編の投稿です。お待たせしました。しかし、善子編はまだ終わりません。本当はこの投稿で終わらせる予定でしたが、一番重要な部分を書くのにまだ時間がかかりそうな為半分に区切って投稿することにしました。半分になったとは言え一万字はあるんですが...そんなわけで今回の話は少し中途半端に終わります。ですが続きも出来次第投稿するのでもう少しだけお待ちください。


いくよ!1個 2個 3個!1個 梨子 サンド!レンジでふわもち!サンドイッチ!1個 2個 サンド!1個 梨子 サンタ?レンジでふわもち!サンドイーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

という意味不明な夢を昨夜見た。

 

 

 

 

 

 

 

今日も俺はAqoursの皆さんのランタン製作を手伝う為浦の星に侵にゅ...合法的に入校し、JK達と共同作業(なんか意味深だね)をし、いつも通りモテまくったのだった(妄想)。夕方遅くまで作業を行い小腹が空いた為、学校の帰り道にあるセブン◯レブンによる事にする。サンドイッチでも食べようかな...頭の中で桜内先輩がサンドイッチの宣伝してたし。

 

 

「ん?あの赤髪は...」

 

 

コンビニに入店した俺は先ずドリンクコーナーに向かうと、そこで浦の星の制服を身に纏った赤髪の少女を発見する。

 

 

あの赤髪は、我らがアイドル黒澤ルビィちゃん!!

 

 

「ルビィちゃーーーん!!!」

 

 

「ぴっ!?」

 

 

「奇遇だね!!」

 

 

なんかルビィちゃんと外でエンカウントする確率高くないか!?やはり俺とルビィちゃんとの間には赤い糸があるのでは!?

 

 

「び、びっくりした〜」

 

 

やせいのくろさわルビィちゃんがあらわれた!

 

あまぎみらいはどうする?

 

→ 1. ハイエースする

 

  2. ハイエースする

 

  3.ハイエースする

 

  4.ハイエースする

 

 

やっぱハイエース一択だってはっきりわかんだね。

ルビィちゃんをハイエースしてぇ、それからそれからぁ、ポリスが突入してくるまでスモックやワンピースを着せて撮影会を開くの!!

 

 

「ルビィも買い物しに来たの?」

 

 

なんて事を考えながら笑顔でルビィちゃんに近づく俺マジ犯罪者。

 

 

「うん、アイスを買いにきたの!お姉ちゃんのアイスを食べたのがバレちゃって...」

 

 

「えへへ...」と恥ずかしそうに頬をかくルビィちゃん。ルビィぢゃんがわびぃぃぃ!!(思考停止)

 

 

「ルビィ、アイス奢るぜ」

 

 

ルビィちゃんの照れ顔を見て幸せの絶頂に至った俺は、ルビィちゃんからの好感度を上げるためにそう申し出る。こういう何気ないところにどう対処するかが対人関係における肝だと思うんだ。コツコツと好感度を上げてゆくゆくは.....ふひひ....

 

 

「うーん...この前も高いアイスを奢ってもらちゃったし、流石にまた奢って貰うっていうのはちょっと...」

 

 

「遠慮しないで!俺の物はルビィのもの。ルビィの物はルビィのもの。つまりこれはルビィの財布なんだよ!」

 

 

ルビィちゃんはガキ大将でした。それなんてプレイ?

 

 

謎理論を展開した俺に対してルビィちゃんは若干引いているようだったが、俺の熱意に根負けしたルビィちゃんは冷凍ショーケースから一つのアイスを取り出した。

 

 

「じゃあ、これにするね」

 

 

「パ◯コ?え?そんなのでいいの?せっかく俺の奢りなんだから、遠慮しなくてもいいんだよ?」

 

 

「ううん。これでいいの。これなら未来君も一緒に食べれるでしょ?」

 

 

「なん...だと...?」

 

 

ルビィちゃんの聖母のような優しさに全俺が泣いた。

ごめんなさいルビィちゃん...俺みたいな心の汚れた人間は、奢って貰えるとなれば躊躇なくハーゲンダッツを選んじゃいます...

 

自分の心の汚さに打ち拉がれながも、ルビィちゃんの財布になれという天命を全うする為レジに行きアイスを購入する。そしてコンビニのイートインスペースの椅子に腰をかけ、レジ袋からパピ◯を取り出し半分に割ってルビィちゃんに手渡す。

 

 

「ありがとう!頂くね!」

 

 

最近マジで思うんだが、ルビィちゃんの笑顔を世界中に見せれば戦争や紛争は無くなると思うんだ。

守りたい、この笑顔。守りたい、子供達の笑顔。俺がルビィちゃんの選挙ポスターを作るとするならこんなキャッチコピーにする。

 

そんな下らない事を考えながら目の前で◯ピコをチューチューしているルビィちゃんに目を遣る。嗚呼...産まれて初めてパピコになりたいと思ったよ...

 

 

「あのね、未来君」

 

 

「ん?」

 

 

どしたのルビィちゃん?あ、そうそう、食べ終わったアイスのゴミは僕が回収するからね?リユースリデュースリサイクルだよ!まぁ主に僕の担当はリサイクルだけどね!どうリサイクルするかは企業秘密だけど。

 

 

「この前インターネットで見たんだけど、三島駅の近くに有名なケーキ屋さんが出来たらしくてね」

 

 

「ふんふん」

 

 

有名なケーキ屋か...ルビィちゃんと二人きりでケーキ屋へ...なんか色々と妄想出来そうな気がする。

 

 

「本当は明日花丸ちゃんと一緒に行く予定だったんだけど、急に予定が入っちゃったみたいで...一人だとちょっと行きにくいから、もし未来君が暇だったら、明日一緒に来て欲しいなって思ってるんだけど...」

 

 

「ふんふん...ふんふん...ふん...ふ...ん......ふぁぁ!?」

 

 

☆◎△$♪×!?我地上最幸的男!!瑠美地上最可美女子!!我興奮故死行可能性有!!

 

 

「明日は久しぶりにAqoursの活動もお休みだから」

 

 

落ち着け落ち着け、自分よ。ボーナスステージが急に来たせいで言語が変わってしまったぞ。いや、でも取り乱してしまうのも仕方がないよなこれ。まさかルビィちゃんからお誘いを頂ける日が来るとは...長生きはするものだ...

 

 

「行く!行く行く!!行ぎたいっ!!!!」

 

 

はい名シーン出ました。もちろんコミックスは全巻揃えてます。

 

 

「本当!?良かったぁ!」

 

 

明日は待ち合わせの五時間前に起きて、シャワーは最低でも二回は入って、最強ワックスで髪型をキメて、服選びに二時間はかけて...あーもう!やる事がいっぱい!!やっぱリア充は忙しいわ!!タイムイズマネーだわ!!パリピーーー!!!(謎の叫び)

それと明日は土曜日だから三島駅周辺で何かイベントでもやってないかな?流石にケーキ食べてすぐ帰るってことはないだろうから色々と考えておかないと。

 

 

......ん?土曜?明日は土曜日...あれ?なんかあった気が......

 

 

 

「はっ!?」

 

「どうしたの?」

 

 

ヤバい、明日は津島と約束してるんだった。ど、どうしよう...あいつに、「明日はやっぱ行けなくなりました〜wwwごめんねごめんね〜wwwww」なんて言ったら例の件を拡散されて社会的に抹殺される事は確実だ。

 

 

 

「ごめん、ルビィ...本当に...本当に申し訳ないんだけど俺、明日は予定が入っててやっぱり行けない...ごめんっ!!」

 

 

 

ルビィちゃんのお誘いを断るなんてなんと恐れ多い事か...罰としてご褒美くださ...じゃなくてオシオキしてくだしゃい!!

 

 

「そっか...用事があるんだったら仕方ないよ。でもまたいつか行こうね!」

 

 

俺がそう告白するとルビィちゃんは一瞬だけ残念そうな表情したが、笑顔でそう言ってくれた。

うぅ...ごめんよルビィちゃん。俺、脅されてるんだ...極悪堕天使に弱みを握られてるんだ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

今日の天気は晴れ。上を向けば曇一つない綺麗な青空が広がっている事を確認することができる。流石土曜日なだけあって周囲にはスーツや制服姿の人は殆どおらず、カジュアルな服装をした人が多く見受けられた。

 

土曜日、そして天気は最高...つまり今日は絶好のお出かけ日和なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィちゃんとケーキ食べたかったなーーー!!!!!

 

 

 

 

 

この欲求不満な気持ちを解消するには妄想するしかない!!

 

 

 

「はい未来くん、あーん♡」ルビィちゃんは艶やかな声でそう言い、ケーキを掬ったスプーンを俺の口に近づけてくる。「あ、あのルビィちゃん?ど、どうしたの?今日はやけに積極的だね」流石の俺も他のお客さんに見られて恥ずかしいのでルビィちゃんにそう尋ねる。するとルビィちゃんは頬を赤くし幸せそうな表情で、「だって今日は二人きりだから...いつもは花丸ちゃんが一緒だから我慢してるけど、今日は沢山未来くんをルビィの力でドキドキさせたいなって思ったの♡だから未来くん、お口開けて...ね?」ルビィちゃんにそう言われた瞬間、カシャリと俺の心の中で何かが外れる音が聞こえた。それからの俺は不思議な事に恥ずかしさを一切感じなくなり、むしろ何故今まで自分はあのような無駄な感情を持っていたのだろうという問いを自問するようになったのだった。それにしてもルビィちゃん、食べさせてくれるのは嬉しいけど、そんなにくれたら自分の分無くなっちゃうよ?「あ、未来くん。ほっぺにクリームがついてるよ?ふふっ、ルビィが取ってあげるね?」あ、これって漫画とかでよく見るやつじゃーーー

 

 

 

 

 

 

 

「ママー!あの人何してるのー?」

 

 

「しっ!見ちゃいけません!!」

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

 

なんか移動中道行く人に変な目で見られてた気がするけど、普段から花丸の絶対零度の視線を受けている俺にはノーダメージなんだなこれが!

 

 

「やっと来たわね」

 

「やっとっておま ...まだ十分前なんだけど」

 

 

無事待ち合わせ時間に遅れずに集合場所に到着した俺だったが、津島はかなり時間に余裕を持って到着していたようだった。

 

 

「で、今日はどこ行くんだ?」

 

「どこに行こうかしらね」

 

「え?決めてないの?」

 

「決めてないわよ。今日はその.....デ、デートなんだから」

 

 

なるほどなるほど。意味がわからん。

 

 

「例えデートでも行く場所くらい決めてるもんだと思うけど?」

 

「うっ...確かにそうだけど...」

 

 

てかデートって恋人関係にある男女が一緒に出かけることを言うのでは...いや、詳しくは知らんけどさ。

もしデートって言葉が知人同士の男女が一緒に遊びに行くこと、という意味なら今まで花丸やルビィちゃんと遊んだのもデートに含まれるのでは!?そう考えるとなんか興奮してきたぞ!!「俺、あの可愛子ちゃん二人とデートしたことあんだよねぇ」ってプレイボーイ感を漂わせながら自慢してみてぇ!!

 

 

「エスコートしなさいよ」

 

「は?」

 

「だから、エスコートしてって言ってるの!」

 

 

津島が声のトーンを上げてそう言うと、暖かくて柔らかな感触が俺の手の神経を通じて伝わってきた。

 

その感触の正体に気づいた俺の脳内は物凄く混乱していたが、ここで取り乱した姿を見せるのは格好が悪いと判断した為平静を装う。

 

 

「いや、君は何をやっているのかね?」

 

 

俺がそう疑問を口にしても、津島はなぜか顔を下に向けて俺の手を握り続け、離そうとしなかった。

 

津島の手は手汗のせいか少し湿っていた。俺も今手汗やばい。

 

 

「デ、デートと言えば手を繋ぐものでしょ?」

 

「全く意味がわからんぞ」

 

 

こういう事するのはカップルだけなはず。てか最強のDT(童◯を英語にするとカッコ良く見える不思議...)を自称する俺に対していきなり手を握ってくるとか本当にキツいんでやめて欲しい...いや、確かにご褒美だけどやっぱり恥ずかしいし...

 

 

「だめ?」

 

「うぐっ...」

 

 

上目遣い...こいつ、本当に美人だな。まつ毛は長くて目も大きい。それに鼻筋が通っていて肌も凄く綺麗で...悔しいけど津島の上目遣い+おねだりとか最強すぎるわ。計算してやってるのか?

 

 

「わ、わかったよ.....じゃあ取り敢えず電車乗るか」

 

 

なんかドキドキしてきた......花丸とルビィもそうだったけど、女子の手って小さくて柔らかいんだな...全力で手に力を入れたら潰せてしまうのではないかと思うくらいに柔らかい。なんか発想が怖いな俺。

 

 

「!?......ふっ、ふふっ...期待してるわ、リトルデーモン」

 

 

事が思い通りに運んで調子に乗っているのが表情から分かる。

 

 

「調子のんな!」

 

「はぅ!」

 

 

イラッときたので俺は津島の頭に手刀をお見舞いしてやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

電車に揺られ数十分。俺と津島は某大型ショッピングセンターにやって来た。勿論手は繋いだままである。

 

 

「で、ワオンまで遥々来た訳だけど何する?」

 

しかし来たは良いものの、互いに何かしようというアイディアも無く、適当に店内をぶらぶらし時間を浪費していたのだった。

 

 

「そうね...」

 

正直、エスコートしろとか言われても何も事前に計画してなかったし無理だ。今日は津島の後をついて行って、小悪魔系衣装の売ってる店で津島を褒めちぎるだけの一日になるもんだと思ってたし。

 

 

そんなことを思いつつ、何か時間の潰せそうな店はないかと歩きながら周囲を見回していると、津島が繋いでいる手を引っ張ってきた。

 

 

「未来!あそこに行きましょ!」

 

津島の視線が向いている方を見てみると、そこにはゲームセンターがあった。一応デートという名目で来ているのにゲーセンとは如何なものかと思う。デートにゲーセンって...ありなのかなぁ?花丸やルビィちゃんと遊ぶ時にゲーセンに行こうなんて言える自信は無い。

 

 

「太鼓やりましょう太鼓!」

 

 

 

やっぱり人による、なのかな?頭の中でそう結論づけ、俺と津島はゲームセンターの中に入り、日頃のストレスを発散するように太鼓を叩いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

 

「随分遊んだわね〜」

 

「それな。なんかゲームしただけなのに結構疲れた」

 

ゲームセンターで遊び始め一時間程経過した頃、俺と津島はゲームセンター内のベンチに腰を掛け一休みしていた。長時間ゲームに熱中していた為か水分が欲しくなった俺は、ベンチのすぐ横に設置されている自動販売機でちょっと気分が良かったので自分の分と津島の分、計二本のポカリを購入する。

 

 

「次のゲームで負けた方がお昼を奢るっていうのはどう?」

 

 

プレイしたゲームの感想などを言い合っていると、津島がそう提案してきた。

 

 

「それいいね」

 

 

最近、漫画の最新巻買ったりアニメグッズ買ったり花丸達に差し入れしてるせいであんまりお金無いからな。

だから確実に勝てるゲームを選びまっせ(ゲス顔)

 

 

「これにしよう。このパンチングマシンで勝負だ」

 

「いやよ。そんなのアンフェア過ぎるわ」

 

予想していた事だが、俺の提案に対して津島は異議を申し立ててきた。ふふっ、そう言われるのは読めていたのだよ。

 

 

「え?堕天使ともあろう者がそんなこと言っちゃうの?お前、パンチングマシンすら碌に叩けない雑魚駄天使だったのか?あ、因みに堕天使の堕は無駄の駄ね」

 

「駄天使言うな!ふっ...分かってないわね。私は物理攻撃なんていう野蛮な戦闘法は基本的にしないの。スピードで敵を翻弄して闇エネルギーによるスペル攻撃で敵を滅ぼす...つまりヨハネは遠距離型スピードアタッカーなの!」

 

「よくもまぁそんな設定がスラスラと....」

 

 

流石元中二病...いや、今も中二病か?でも津島は自分が中二病って事を自覚してる訳で、これは只のキャラ作りなのでは?某アニメの魔法魔王少女的な感じなのか?

 

 

「じゃあどうすんの?」

 

もうこのゲーセンのゲームはだいぶやり尽くしたしな。UFOキャッチャーや太鼓◯達人、エアホッケーみたいな勝負出来そうなやつは大体やった。

 

そう考える俺とは違い、津島には考えがあるということで、目当てのゲーム機の場所まで津島の後をついていく。

 

 

「これで勝負よ!」

 

 

津島が選択したゲームはダンスゲームだった。

 

これは盲点だったな。一人でゲームセンターに来た時、プレイしてる人をよく見ていたが、一人でこれをやる勇気は無かった為縁遠いゲームだと思っていたのだ。

 

 

「スクールアイドルの実力、見せてあげるわ!」 

 

 

目の前で余裕そうな表情を浮かべる津島。全然フェアじゃないやん。いやよ。そんなのアンフェア過ぎるわ。さっきの言葉をそっくりそのまんま返します。

 

いや、でもこの勝負、一見スクールアイドルVS素人DK(素人男子高校生の略。なんか〇モビのタイトルに使われてそう)がダンスで勝負するというアンフェアな内容に見えるかもしれないが、実際そんな事はないのかもしれない。

 

 

「でもお前、スクールアイドルとはいってもまだ加入して一ヶ月も経ってないし、素人同然だろ?」

 

「ククッ、このヨハネを前にしてその余裕...後で吠え面かいても知らないわよ!」

 

スクールアイドル歴数週間で自分は素人とは違うとイキリ散らかしている滑稽な津島は俺に「財布をすっからかんにしてやるわ!」と言いお金投入口に百円を入れゲームをスタートする。

 

 

津島はアイドルソングを選曲したようだ。これって何年か前に流行った四十八人位のメンバーで構成されたアイドグループの曲だよな?確か曲名は...そうだ!上から恋する馬の尻尾のローテーションって名前だったはずだ!

 

 

 

 

ってなんか余計な事考えてたけどこいつ上手くね?ミス殆ど無いやん。やっべ、俺こんな上手く出来る自信無いぞ。こうなったらこのペットボトルを......

 

 

 

 

ん?これは.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

っ!?み、見えーーー

 

 

「なかったぁ...」

 

 

絶対領域ェ...

 

 

あっ、いや、なに津島のパンチラで一喜一憂してるんだ俺は...こんな残念女のパンチラなんて見たくな......見たいですねやっぱ、はい。あの絶対領域の向こう側にはどんな景色が広がっているのか、非常に興味関心をそそられますねぇ...チラリズムはやはり至高だったよ......せやっ!(キモ注意)私、天城未来の今年の抱負は!Aqoursの皆さんのパンチラを全員分、脳内フォルダーに保存することに決定致しました!この前一人はクリアしたから、あとは津島も含めて五人か。でもこんな事言っといてなんだけど俺、ルビィちゃんのパンツ...いや、おぱんちゅなんか見れた暁には鼻血の出し過ぎで失血死する気がす!?また見えーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

 

「ふぅ...どう?上手かったでしょう?」

 

「ええ、素晴らしかったです」

 

「ふふっ、珍しく素直じゃない。てかなんで敬語?」

 

「とても綺麗な白でしーーー」

 

「白?」

 

「あっ、やっべ」

 

うっかり口が滑ってしまった。これはバレたか?

 

 

「ま、まさかあんた!?」

 

 

津島は察したのか、慌ててスカートを抑えた。バレちゃったかぁ...

てかあれだね、女子がスカートを抑える仕草ってやっぱり素晴らしいね。これは新たなジャンルを開拓出来そうな予感。試しにルビィちゃんがスカートを抑えてる姿を想像してみよう。シチュエーションは風の強い良く晴れた日。俺とルビィちゃんは二人きりで沼津にお買い物をしに来ていた。楽しくお喋りをしながら歩いていると突然の強風(神風)がルビィちゃんの可愛らしいスカートをめくった。俺は唐突に訪れたラッキーチャンスに歓喜しながらもここでスカートの中身をガン見してしまえばルビィちゃんに嫌われてしまうかもしれないという考えが脳裏をよぎりこの最低で最高なシチュエーションに対してどのようなアクションをすべきか脳をフル回転させていると信じられない光景を目にした。ルビィちゃんは頬を赤らめスカートを抑えながら「うゅ...恥ずかしいからそんなに見ないで...未来君のえっち...」と言ったのだ。余りの衝撃に俺の鼻から際限なく血が噴射される。大量出血により意識を失いそうになる俺は最後の力を振り絞り「ルビィ...ちゃん...ありが...と...う」と伝え意識を失うのだった。次回 天城内 死す デュエルスタンバイ!

 

ってダメだダメだ!ルビィちゃんで想像した俺が馬鹿だった。刺激強すぎて身体が持たねぇ...

 

 

「サイッテーね」

 

 

ん?呑気に色々妄想してたけどこれは意外とピンチなのでは?もしコールポリスされたら豚箱にぶち込まれてしまうのでは?

 

 

「待て待て待て。ちょっと言い訳させて?」 

 

 

津島の冷たい視線が俺に向けられる。ふむ...全然興奮しないな。偶に花丸にもこんな感じの視線を向けられる事があるけどその時と違って不思議と何も感じない...やっぱり俺は救えないドMじゃなかったんだ!もうこれで誰も俺の事を末期とか呼べなくなったな!!

 

ってそんな余計な事考えてる暇はねぇ!なんとかしてこの状況を打破しなくては。うーん...適当に論理的っぽく言葉を並べれば騙されてくれるかも。だって津島、正負の計算も完璧に出来ないような奴だし(笑)

 

 

 

「津島、お前はもっとロジカルシンキングで論理的に考えるべきだよ。それにもっと思考にバッファを持つべきだ。今回の件、確かに俺は悪い。だがしかし、俺だけが悪いかと言われればそうではないと思うんだ。まず津島、お前のそのスカートの丈が問題だ。いくらなんでも脚を露出させ過ぎだろう?そんな格好でダンスゲームなんかプレイしたら下着が見えてしまうのは必然だ。しかし津島はそのリスクを予期せずダンスゲームをプレイしてしまった。よって幾らか津島にも責任があると俺は考えているのだがどうだろうか?」

 

 

よし完璧。これにろくろを手で回すような意識の高い感じの動きを付ける。すると一見頭良さそうだけど実際は中身のないスッカスカな文章の完成!(このパロディ分かる人いる?)

 

 

「梨子さんに例の件について言うわよ?」

 

「ぐぐっ...」

 

ちょっとそれを出すのは卑怯じゃありませんかね?もし桜内ピンク事件のこと、更に津島善子予想外の白だったよ事件についてもチクられたら社会的に死ぬ。当然花丸やルビィちゃんにも嫌われ、そして汚物を見る目で見られ......ア・リ・カ・モ・ナ。

 

 

「分かったよ!俺が悪かった!昼ご飯奢るから許して下さい!!いや、許せ!!」

 

「全然誠意が感じられないけど、まぁいいわ。本当はそんなに怒ってないし...」

 

「ん?なんか言った?」

 

「なんでもない!財布すっからかんにしてあげるから覚悟しておいてよね!!」

 

「もし俺の財布を空にするくらい食べたら、お前のあだ名明日からトリコさんにするからな」

 

「嘘よ嘘!絶対にそんなあだ名で呼ぶんじゃないわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

店内をぐるりと見回すと、女子が好みそうなカワイイ系の商品がたくさん陳列されており、JCやJKと思われる客が楽しそうに商品を選んでいる様子が見えた。

 

 

「雑貨屋なんて男一人で来る機会なんてないしな...」

 

 

見事なまでに女性しかおらん。雑貨屋なんて思い出せない程昔に母親の付き添いできたくらいだ。流石の俺もこの空間の男女比で、おっしゃーーー!!!ハーレムじゃーーー!!!なんて喜べる余裕は無い。すっげー心細い。津島もどっか行っちゃったし。あぁ津島や...早く戻ってきておくれ.....こんなにもあいつを求める日がやって来るなんて、人生ってどうなるか分からんもんだな。

 

あ、一人男いた....チッ、彼女持ちかよ。イチャイチャしやがって。甘い雰囲気がこっちまで伝わってきやがる。リア充は死ね!氏ねじゃなくて死ね!!

 

目の前でイチャコラしているカップルに向けて心の中で最強の呪いの呪文ラ◯ラ◯ルーを唱えていると、背後から奇妙な笑い声が聞こえた。

 

「くくっ....知の神オーディーンよ」

 

やはりというかなんというか、笑い声の正体は俺のよく知る中二であった。

 

「ん?どうした?...ってその名前で呼ぶな!!」

 

 

津島の手には紫色の角を二本生やした丸いキャラクターのキーホルダーが二つ握られていた。これ、なんのアニメのマスコットだったっけ?見覚えはあるんだけど...

 

「この装備、ゲマをヨハネと共に身に付けることで、ヨハネと通常のリトルデーモン契約より位の高い上級リトルデーモン契約を結ぶことが可能になるわ」

 

 

上級リトルデーモン契約....それを結ぶと具体的にどうなるの?もしかして毎日ヨハネ様が契約の特典として良い子には見せられないーーーやーーーをしてくれるの?それだったら例え年会費が掛かるとしても入っちゃおうかな!!

 

 

「キーホルダーを装備って...どんな例え方だよ。てか一緒のキーホルダーをつけろって言いたいんだよな?それってペアルックってやつだろ?」

 

「げ、下界ではそうとも言うらしいわね」

 

「恥ずかしいからやだ」

 

 

ペアルックなんてしてみろ。ルビィちゃんや花丸に勘違いされちゃうだろうが。でも勘違いしちゃって目のハイライトが消えた二人に背後からスタンガンで気絶されられる→気づけば密室→監禁生活スタート!みたいなルートもアリだと思いますねぇ!!

 

「ぐぬぬ...相変わらず強情ね。いい加減リトルデーモンになりなさいよ!!」

 

 

俺の返答に不服そうな顔をする津島。もし俺がリトルデーモンになったら美少年☆悪魔としてお前の人気を奪ってやるけどいいんかぁ〜?知性溢れるこの美貌でおんにゃの子達を虜にしちゃうけどいいんか〜?......サーセン。調子のりました。

 

 

「な〜ら〜な〜い。ほら、買わない商品を触るんじゃありません。これは俺が責任を持って棚に戻してきます」

 

 

津島からゲマと呼ばれているキーホルダーを取り上げる。買わないものは触らない。昔ママから習っただろう?ママを津島お得意の地獄弁で言うんなら魔魔(ママ)、だな。

 

 

「ちょ、ちょっと!買う!二つとも買うから!」

 

 

 

津島は俺の手中にあるゲマを取り返そうと奮闘していたが身長の利を活かした俺から奪い返すことは叶わず、俺は難なくゲマを元の場所に戻すことに成功する。

 

しかし、努力の甲斐虚しく、その後津島は俺の目を盗みゲマを購入していたらしく、何度も俺の隙を突いて鞄に付けてこようとした。

 

 

 

はん!フィジカル及び頭脳のステータスは俺の方が圧倒的に上だから無駄なんだよ!!無駄無駄ァ!!!.......ちょっと昔の血が騒いでしまったのは秘密。

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

現在の時刻は十五時。俺と津島はショッピングセンター内の飲食店で昼食を取っていた。ピーク時を過ぎたせいか店内に客は殆どいない。

 

「どれも美味しそうで決め難いわね」

 

 

雑貨屋で買い物した後、津島が服が見たいと言った為、俺たちはショッピングセンター内の

服屋を何軒か回った。津島も流石は女子と言うべきか、服選びにかなりの時間が掛かった為、このような遅い時間に昼食を取っていたのだった。

 

「あ、これ美味しいよ」

 

 

長いこと付き合わされたが結局津島が購入した服は全部で二枚だけであった。あんなに時間かけて試着したのに......

試着と言えば、素晴らしいことに津島は着た服全てがある程度似合っていたのだ。やっぱり美人は何を着ても映えるもんなんだな、なんか悔しいけど。

 

 

「あんた、こういったオシャレな店にも来るのね」

 

津島は、少し意外そうな目でこちらを見てくる。

 

「そりゃあ俺は、オシャレには気を使うイケイケ男子だから...な」

 

そんな津島に俺は、キメ顔でそう答える。イケメンフェイス来ました!みんな、シャッターチャンスは今だゼ?(イケボ)

 

 

「ふふっ、なにそれ」

 

 

俺の言ったことがウケたのか、津島は口を手で押さえて笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

可愛いなぁ....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ってなんだなんだ。どうしたんだ今日の俺は。津島にドキドキさせられてばっかりだ...いつもの自分に戻れ、天城未来よ。落ち着くんだ...素数を数えて落ち着くんだ...2、3、5、7...

 

 

「っていうのは嘘で、前に花丸とルビィと一緒に来たことがあるだけだよ」

 

ふふふ...結構前の話だけどあの二人と一緒に来たことがある店なんだな、ここは。この店は料理の味もビジュアルも良く、インスタ映えする店としてテレビで取り上げられられた事もある位の場所なのだ。

花丸が未来ずら〜!未来ずら〜!うるさかったけど、二人とも美味しい物を食べてめちゃくちゃ幸せそうな顔してたんだよな。それはもう眼福で眼福で...眼福過ぎて.....ガンダムになったわね (某大蛇丸の人並感)

 

 

「.....ふーん、そうなの。仲良いのね」

 

「仲良いって...!いや〜!そんなこと...あるかも!」

 

こいつめ!いい事言うじゃないか!俺とルビィちゃんと花丸が数十年連れ添った夫婦のように仲良く見えるって!えぇ、まぁ確かにあの二人とは仲良くさせて貰ってます。アレ取ってって言えば理解してくれる位にはお互いの事も知り尽くしてますしね、はい。

あぁ...妄想が膨らむ......俺と花丸とルビィちゃんは高校を卒業後、県外の同じ大学に進学した。当然高校のような仲も続きお互いの家にお邪魔する機会も少なくはなかった。このまま平和で何でもない日々が続くんだろうなぁ...と考えながらルビィちゃんの家で三人で宅飲みしていると、それは突然やってき(長そうなので割愛)

 

 

「それにしても、人のお金で食べるご飯は美味しいわね!未来もそう思うでしょう?ぷぷっ」

 

「あーはいはい。良かったですね」

 

 

くっ、こいつ!憎たらしい顔しやがって!お前に奢ったせいで来月に始まる艦◯れの一番くじが二回ほど引けなくなっただろうが!!

 

 

「さっ、ご飯も食べ終わったしそろそろ行きましょう!」

 

 

そう言って津島は再び俺の手を握る。だいぶ慣れたけどやっぱりおかしいよなこれ。

 

会計をしてくれた店員さんに微笑ましい物を見るような目で見られたしな。多分、いや確実に初々しいカップルとか思われてたな、あれは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

......まぁ、楽しんでくれてるみたいだし、悪い気はしないけどね...

 

 

 

 

 

 




次回はシリアスです。書くの難しいです。



感想、評価待ってるぜ!!


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堕天使とAqoursとwithB part5


お久しぶりです。一年以上ぶりに戻ってきました。そして、本編の更新は約2年ぶりくらいです。やはりシリアスを書くのは苦手みたいですごめんなさい。
ただ、もう1話、一万字くらいの続きが9割完成しているので、1週間以内にもう1話更新させていただきます。

思えばこの二次小説を書き始めたのが多分高校一年の時だったのですが、私は今年大学を卒業します。ラブライブサンシャイン最高!!


 

 

 

 映画館。それは比較的安価で且つ気軽に行くことが出来るため学生から社会人まで、幅広い年齢層のカップルから人気を誇っているデートスポットである。今日は休日ということもあり、周囲にはカップルと思わしき男女がチラホラと見受けられた。

 

 

「うぉ!?」

 

 

 チケット売り場へ向かおうと人混みをかき分けながら進んでいると、突如脛の辺りに衝撃が走った。原因を確かめるため、足元に目を向けると小さな女の子が尻餅をついていた。どうやら、周囲の人の多さに気を取られて、走っていた幼女に気がつけなかったようだ。

 しゃがんで幼女の手を取り立ち上がらせると、幼女は礼儀正しく頭を下げ、「おにーさん、ごめんなさい」と謝罪したのだった。

 

 

うむ!礼儀正しく素晴らしいロリだ!!!わっしょい!!!!!

 

 

「お兄ちゃんも前見てなくてごめんね。でも、映画館は人がいっぱいで危ないから走っちゃダメだよ」

 

 

 そうやって、できる限り優しく幼女に伝えると幼女は「はーい!わかりました!」と元気いっぱいに答えて去っていったのだった。素直ないい子だ。親の教育が良いのだろう。危うく頭をナデナデしてしまい、「YESロリータNOタッチ」の原則を破ってしまうところだった。いや、手に触ったから破ってしまったのでは?これはまずい。ロリリズム過激派(幼女の写真を主食とする変態共)に粛清されてしまうかもしれない。しかしな...

 

 

 

 

ロリノテ...スゴク...チッチャクテヤワラカカッタ...(犯罪者予備軍並感)

 

 

 

 

それにしても良いなぁ、幼女は。我々が年齢を重ね、社会の荒波に揉まれている内に忘れてしまったピュアな心を持っている。どうかあの純真無垢な女児の未来に幸あれ。

 

 

 

「子供、好きなのね」

 

 

 しゃがみながら、幼女が母親らしき人物に寄っていく姿を眺めていると後ろにいた善子が呟いた。

 

 

「あぁ。良いよなぁ、純粋で」

 

 

 将来ああいう可愛らしい子供がいれば幸せに暮らせるんだろうなぁ。そう、具体的には赤い髪の毛を両サイドで結んだちょっと気の弱そうな女児か綺麗な栗色の髪の大人しそうな女児に元気いっぱいに「パパー!だいしゅきー!」って言われたいなー!あり得ない未来なのになんかオラ、ワクワクしてきたぞ!イェイ!未来最高!未来最高!俺の名前も未来最高!!

 ってイカンイカン。素晴らしい未来を想像していると、ついつい頬が緩んでしまう。幸せな妄想もいいが、しかし、いつまでもこんな往来の激しい道でしゃがんでいては迷惑になるため、立ち上がる。

 

 

「ってどうしたの?」

 

 

チケットを買いに行こうと歩を進めようとしたが、何故か善子がモジモジとしているようで、気になったので声をかける。

 

 

「その...未来は、将来結婚して子供が欲しいとか考えたりしてるの?」

 

 

視線を逸らしながら善子はそう言った。心なしか、頬は少し赤みを帯びているようにも見える。

 

え?急になんだ?別に良いけれども。

 

 

「ん?そりゃ、出来れば結婚して子供とか欲しいなって考えてるよ。野球のチームが組めるくらいに自分の子供が居たら毎日楽しそうだし、幸せだろうな」

 

 

ちなみに男の子四人に女の子五人が理想である。

 

 そんなふうに考えながら、隣にいる津島に目を向けると、先程よりも顔を紅潮させ、唖然とした様子で口をあわあわと震わせていた。いや、そんなに驚かなくても。ジョークだし。そりゃできるならそれくらいは欲しいとは思うけれど今のご時世、子供を九人も養っていくとかめちゃくちゃキツイだろうから、せいぜい出来ても三人だろうなぁってちゃんと割り切ってるから。ツラいぜ、少子高齢化社会!物価高!走行距離税!インボイス制度!

 

 

「きゅ、きゅきゅ、九人って、そ、そんな!?」

 

「いや、ジョークだわ」

 

「じょ、ジョークって...!もっとたくさん欲しいってこと!?」

 

「いやちげーし。大丈夫かお前?」

 

 

 恐らく今、津島は俺のことを性欲旺盛なケダモノだと思っているのだろう。

 確かに俺は、年中エロい事考えてる変態という名の紳士を自称する者だが、子孫をより多く残す、ということは、我々人間にとって遺伝子レベルで刻まれた最重要タスクであり、例え心では望んでいなくとも身体は知らず知らずのうちに異性を求めてしまうものなのだ。つまり性欲とは原始的な欲求でありヒトがヒトとして生きる上で避けて通れず、そして当然持つものなのである。以上のことから私は、私たち人類は性的な欲求を包み隠すことのない開かれた社会を目指すと同時に、はるか昔の時のように、みな全裸で過ごすことの出来る社会を実現するべきだと考える。最近何かと話題のえすでぃーじぃーず?ってやつだよ。タブンネ。

 

 

「そもそも俺には将来結婚できるのか、という大きな問題があってだな」

 

 

 近年の若者の結婚離れもあって、あれ?これ結婚とか無理ゲーじゃね?と思っている。そして世の女性が結婚相手に求める条件、高身長高収入高学歴の所謂「3高」、これらを満たし、婚姻にまで辿り着くのは非常に困難だと考えている。世辞辛い世の中なんやで、全く。

 

 

「未来なら結婚できるわよ」

 

 

何を根拠にそんな事を言っているのだろうか、こいつは。

 

 

「いやいや、最近の女性は年収一千万でイケメンで高身長で高学歴な男を結婚相手にしたいってどっかのサイトで見たし。現実は無情だな...はぁ...」

 

 

 実際、勉強を頑張って三年後に良い大学に入学出来れていれば年収一千万高学歴の部分はクリア出来なくもないが、やっぱ結局は顔なんだよなぁ......俺とズッ友の諭吉(あだ名:キッチー)が「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず。人は生まれながらにして平等である」とか言ってたけど、そんなん戯言だから!

 

 

「そんなに理想の高い人なんて滅多にいないわよ。あんた頭良いのにどうしてそんな偏った情報ばかり信じるのよ.....それに...」

 

「それに?」

 

 

 いやまぁ、確かに改めて考えると間に受け過ぎてる気はしなくもないが。だって学校でたまに行われるインターネットリテラシーの講習、基本寝てるし。あるあるだよね、あるある。

 

 

「気がついていないだけであんたの良いところ全部、ちゃんと見ている人は存在してるわよ、きっと...」

 

「津島...お前...」

 

 

 

 

 

トクン...トクン...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 え?これなんてギャルゲー?いや、乙女ゲー?もし俺がチョロインだったら危うく攻略されてるところだったわ。チョロイン乙wwwとかいつもギャルゲーのキャラに思っていたが、確かにこれは乙るわ、恋に。

 正直今のはかなり効いた。なんか...すっげー嬉しかった...今も心臓がドキドキして止まないし。止まれ!心臓!...って心臓止まったら死んじゃうぢゃん!

 

 

 

「......え?どうしたのお前?熱でもあんの?」

 

 

 少し冷静になった俺は、謎に優しい津島に対し非常に困惑していた。普段だったら「あんたは一生独身の童貞よ〜wwwプププ〜www」とか言ってくるやつなのに。いや、流石に童貞とか口にするような下品な女ではなかったな。

 

 

「〜っ!せ、せっかくフォローしてあげたのに何よそれは〜!」

 

 

 津島の奇行は体調不良によるもの、と推測した俺はそう尋ねると、津島は怒ったのかその白い肌を赤くし、こちらに詰め寄ってくるのだった。

 

 

 

しかし、今日のコイツはやけに変だな。なんか調子狂うわ...

 

 

 

 

●●●

 

 

「なに見る?」

 

 

一悶着あったが、ついにここまで辿り着く。

 映画館のロビーの壁には上映中の映画のポスターが掲示されており、特に何を見るか決めていなかった俺たちは十分ほどあれこれ相談していた。

 

 

「そうね、未来はどれが見たいの?」

 

「最近の映画の情報とか調べてないから、面白いのとか分からないんでお任せするわ」

 

「わかったわ。ならこの闇の波動を感じるやつを見ましょう」

 

 

 そうして津島が指差したのは、謎のキノコの化物がデカデカと写っているポスターだった。隣のア○パンマンやカラスの戸締りとかいう映画のポスターと比較するとなんとも禍々しい雰囲気を感じる。

 

 

「『恐怖!キノコ男』?流行ってんの?これ」

 

「最近ネットでこの映画についてのスレをよく見かけるし、流行ってるんじゃないかしら?」

 

 

 ホラー映画か。俺、普段あんまり映画館に来ないし、来たとしてもアニメ系の映画しか見ないから、大きなスクリーンでホラー映画を見るのは初めてだな。女子と二人でホラー映画とか、漫画等でよく見かけるヒロインが怖がって主人公の腕に抱きつく展開を想像してしまうがあれは二次元の中だけなんだよなぁぁぁ(クソデカため息)。ほんと、三次元には希望を抱けねーわ。流石は子供の幸福度先進国中ワースト二位の国、ジャパン!

 

 

「ビビって映画館で大声出すなよ〜」

 

「それはこっちのセリフよ。怖いからって途中退場したいよ〜とか言い出さないでよね!」

 

 

そもそも、津島にそんなことを期待することがいけないんだな。津島は堕天使を自称する位だしホラー耐性はあるだろう。それに腕に抱きつかれるなら花丸みたいなサイズじゃないと夢がねーよな!!津島のその慎ましい胸部に挟まれても嬉しくな...まぁちょっとは嬉しいけど嬉しくないんだよな。あれ?なんか矛盾してる気がしねぇ?

 

 

「何か失礼なこと考えてない?」

 

「.....なわけ」

 

「今の間は何よ!」

 

 

また心を読んできたよこいつ。女の勘ヤベー。

 

 

「学割で1000円...あ、生徒手帳忘れた」

 

「私も忘れちゃったわ」

 

「ぐぬぬ...おっ、小学生なら1000円だってよ!よっしゃ!今日の俺たちは小学生だ!ほらヨハネ様!若返りの魔法とかないの?ぷりーず!」

 

「えぇ!?えっと...そうね...ヨハネの最終奥義の一つを使えば出来なくもないけど!?」

 

「いや出来ないだろアホか」

 

「意地悪!」

 

 

 券売機でチケットを発券し、売店でドリンクとポップコーンを購入する。ポップコーンは大きめのサイズのものを購入し二人でシェアすることにした。なんかちょっとカップルムーブっぽいが気にしてはいけない。学生の財布は常にひもじいのだ。こういった細かいところにも倹約の精神を向けることが頭の良い人間のすることであり、津島もそれを理解しているが故に俺の提案を了承してくれたのだろう。ここで節約した分を最近始めた『ルビたそ年貢貯金箱』に入れておこうと思う。そう、近年日本は増税ブームである。そのためいつこの世の至宝、もといワンピースであるルビィちゃんのキューティフェイスを拝見する度に税金が発生するシステムが確立されてもおかしくはない。そのために貯金箱にて備えているのである。それにこうして備えておけば、いつルビィちゃんに「うゆゆ?未来くん、今日の友達料金の支払いまだ?今までの滞納分とあわせて1000万ペリカね!あと延滞手数料と振込手数料と慰謝料と手間賃と迷惑料とーーーーーー」「あ、あのー?ルビィ?手間賃と振込手数料ってほぼ同じものなんじゃ...」「債務者が口答えしないの!地下行きだよぉ!」と言われても大丈夫だ。いやもしくは、払えないし、地下行きも嫌という事にして俺の身体で支払いたーーーーーー

 

 

 

「ん?どうしたんだよ、変な顔して」

 

「な、なんでもない!」

 

 

 ポップコーンを購入してからというもの、津島はなぜかソワソワしていた。きっと映画が楽しみなのだろう。

 シアターへの入場まで十五分ほど余裕があった為、ロビーで適当に駄弁りながら時間を潰していた。

 

 

「ん!?『恐怖!キノコ男』評価2.1?え?マジ?なんか地雷臭がしてきたんですが、津島さん」

 

「ヨハネ。そうね、流石にその評価は不安になってくるわね...もしかしてあの大量のスレは駄作すぎるのが原因で立てられたのかしら?」

 

「ま、まぁ、もうチケット買っちゃったから後には引けないし、それにネットの情報は鵜呑みにし過ぎるなって学校でも習ったから大丈夫だよな.....え?大丈夫だよね?約二時間も無駄にするとか嫌だぞ俺?」

 

 

せっかく千円払ったのに映画が終わった後の感想が「ポップコーン美味しかった!」だけになるのは流石に避けたい。

 

 映画の入場アナウンスがかかった為、俺と津島はスタッフにチケットを渡してシアターに入場する。

 俺たちの席はシアターの後ろの方と、人気な箇所であったにも関わらず、周囲には誰も座っていなかった。

 

 

「人、誰もいないわね」

 

「...そうスね」

 

 

 客の多い休日の昼にも関わらずこの人気の無さ。俺津島は地雷を踏んでしまった事を理解した。そも、先程チケットを渡したスタッフさんにも、コイツらこれ見んのか...みたいな目で見られてたし!納得の結果である。

 しかしながら、時間の無駄になるとはいえこのまま引き返すのも映画代が勿体無いため席に座り、ポップコーンをつまみながら後悔の念に浸る。しばらくすると灯りが消え、頭部がビデオカメラのスーツ姿の男がキレのあるダンスを踊る映像(小さい頃は結構怖かった)も終わり、本編が始まった。

 

 哀れにもわずがな望みを抱きながら映画に集中する。しかし、その望みはあっさりと裏切られることになった。

 

 

『グワァァァァ!!』

 

「ひっ...!」

 

ちょ、痛い痛い!怖いのは分かるけどそんなに強く俺の手を握るな!

 

 

「うぅ...」

 

 

 って直接伝えられたらいいんだけど映画館は私語厳禁だから無理なんだよね、他に客いないけど。俺、モラルや法律はしっかりと守る人間なんで。まぁ脳内は犯罪者予備軍的な考えで溢れてるんだけど(笑)

 

 

『食っちまうぞぉぉぉぉ!!』

 

 

 それにしても、なんだこの映画は。お粗末なセット並びに違和感ありまくりのCG。ホラー映画なのに全然怖くないし。それに尺稼ぎもワンピースのアニメみたいに酷ーーーーーーってイカンイカン。これを言ったらワンピースファン及び集◯社の関係者から批判が殺到してしまう。

 

 

 うん、でもとりあえずだ、この映画、ネットの評価2なのも納得だわ。

 

 

「きゃあああっ!」

 

 

 津島もよくこんなのでビビれるな。こんなのでビビられると、からかう気持ちも失せてむしろギャップ萌えするくらいだわ。

 

 

「ひゃぁ...!」

 

 

 おいおい津島よ、中々可愛い声出すじゃねぇか。しかもこんなに手を握ってきて...もしかしてコイツ、俺のこと好きなんじゃね?

 

 

 ...って無い無い。童貞あるあるな勘違いですね。そんな惚れられるようなことしてないしね。それにコイツ、性格は残念だけどめちゃくちゃ美人だからな。こんな平凡な容姿の男に惚れるなんてあり得ないだろ。こういう女はイケメンで高収入の男とゴールインするんだろうな。

 

 グワァァァァァ!花丸やルビィちゃんがイケメンと手を繋いでいる姿を想像したら、屋上から来世は性格・容姿共にイケメンになれる強個性が発現する事を願ってワンチャンダイブしたくなってきたぞ!!

 

 

「ちょっ、未来!手、強く握り過ぎ...!」

 

 

 横で津島が何か言っているようだったが、この世の不平等さを嘆き、途方に暮れていた俺の耳には一切の言葉が聞こえることはなかったとさ...

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

さっきからかう気が失せたとか言ったな。

 

 

「や〜い!ビビリの善子ちゃ〜ん!!」

 

「う、うぅ〜!って善子言うな〜!」

 

 

 嘘です、やっぱりからかいます。弄りまくります。小学生みたいにからかってやります。やーい!お前の母ちゃんでーべそ!マンモーニ!!ولد الأم!!!

 あと小学生あるあるといえばスカートめくりだな。ただそれを今やったら終わりだから、人生が(倒置的表現)。まったく、俺みたいな人間には生きにくい世の中だぜ......でもほんと、教室でスカートめくりし合ってる女子達はもっとやれ...自重してほしいものだ。

 

 

「いやぁ〜、まさか堕天使ともあろう者があの程度のホラー映画でビビるとは思わなかったわ!こんな事なら隣のシアターでやってたアンパ◯マンでも見た方が良かったなぁ〜!あっはっはっはっ!!」

 

「ち、違う!あれはただ...」

 

「何がどう違うの〜?」

 

「えっと...その...そ、そうだわ!あの映像からこのヨハネと同じ闇のエネルギーを感じ取って共鳴していただけよ...あの時のヨハネは確かに怖がっているように見えたかも知れないけど実は共鳴によって体内に過剰に蓄積された闇物質、所謂ダークマターに心を蝕まれないように体外に放出していただけで決して怖がっていた訳ではないの...そんな事も分からないなんて衰えーーーーーー」

 

「食っちまうぞぉぉぉ!!」

 

「きゃああああっ!」

 

「あっはっはっはっ!!」

 

「!?あんたねぇ〜!!」

 

 

 普段強がっている娘が実は怖がりだったとかめっちゃ萌えたけど、今日はコイツにやられっぱなしだから全力でやり返してやる。

 

 

「あ〜、笑った笑った」

 

「ぐぬぬ...怖がってなんか無いんだから!勘違いしないでよね!」

 

 

 ツンデレ構文キタコレ!勘違いしないでよね!って付けるだけで不思議なことにどんな文でもツンデレっぽくなるのだ。薄々感じていたが、やはり津島にはツンデレの才能があるな。死ぬ前に一度でいいから『か、勘違いしないでよね!べ、別にあんたの為にやったんじゃないんだから!』って台詞をリアルで聞いてみたいものだ。

 

 

「あーはいはい。わかりましたわかりました」

 

「信じてないわね〜!」

 

 

 でもあまりにもツンデレ好きをこじらせ過ぎると廃人のように目が虚ろになり、『マキチャン...マキチャン...』とか呟き始める奴もいるから気を付けろってどっかのサイトで見た覚えがある。で、その症状を治すためには東京にある西木野総合病院精神科ってところに行かなきゃいけないんだってさ。なんかコワイネー。

 

 

「んん〜、それにしても腰が...」

 

 

 ふと、映画館でずっと座っていたせいか背中から腰にかけてに違和感を覚えた為、腕を上げて身体を伸ばす。横で津島がギャーギャーとなにか言っているようだが知ったことでは無い。

 映画を見終えた俺と津島はショッピングセンターを後にし、最寄り駅の周辺を適当にぶらぶらしていた。

 時刻は十八時を過ぎ、あたりは暗くなり始めており、また、遊んだ帰りであろう子連れの家族の姿がチラホラと見受けられた。

 

 

「よし、もう暗くなりそうだしそろそろ帰るか」

 

 

 俺がそう言うと津島は、さっきまでの勢いは何処へ行ったのやら悲しさや寂しさの色を含んだ声を挙げ、こちらを見つめていた。

 

「えっ、もう帰っちゃうの...」

 

 

「明日からまたランタン製作とダンスの練習が再開するんだし、早く帰って明日に備えた方が良いだろ?」

 

 

 珍しい津島の様子に少し戸惑った俺は、諭すようにそう問いかける。それでも津島の表情からはまだ帰りたくないという意思が感じられた。

 

 うーん...昨日遅くまで遊んでたせいで練習に身が入らない、なんて事になったらAqoursの皆さんに申し訳ないんだよな。

 しかし、こうやって、俺とまだ一緒に遊んでいたいっていう気持ちが伝わってくるのはなんだろう......不思議な気持ちがする。承認欲求が充足されて脳汁が溢れてるのか、良い気分だ。

 

 

「まぁなんだ...津島の帰りたくないって気持ちも分からなくもない。俺も今日は楽しかったからな。だからさ、また練習が無い日にこうやって遊びにこれば良いだろ?」

 

 

 最初はなんのプランも無く先行きが不安で仕方なかったが、しかし、津島との時間は普段花丸やルビィちゃんと遊ぶ時とはまた違った楽しさがあり、終わってみればなかなかに充実した良い休日だったと言えた。だから少しだけコイツに感謝している俺がいた。

 

 

「そうね......えぇ、わかったわ。約束よ?もし約束を破ったらヨハネのきっつーーーいお仕置きが待ってるんだからね!」

 

 

 俺がそう言うと、津島は先程までの表情から一転し、心の底から嬉しそうな表情をしていた。

......本当にコロコロと表情が変わるな。やっぱりコイツ、色々残念な奴だけどめちゃくちゃ可愛いーーーーーー

 

 

 ってなんか今日はドキドキさせられてばっかでムカつく!恋する漢かよ俺は!!!こんな時は花丸とルビィの写真を見て落ち着くしかない!

 

 

「急にスマホなんか見つめてどうしたの?」

 

「ふーっ、ふーっ」

 

「あんた、それやめなさい。ちょっと気持ち悪いわよ...」

 

 

 何か言われているようだが知らん。ただ一点を、目の前の天使たちの写真に注目せよ。ルビィちゃんのキューティーフェイス...花丸の国木田山脈...ルビィちゃんのロリロリボディ...1、3、5、7、11、13......ふぅ、なんとか落ち着いた。

 

 

「ねぇねぇ未来、次はどこに行こうかしら!」

 

 

 津島は目を輝かせながら、嬉しそうに次の予定を考えていた。

 次が何週間後、いや、何ヶ月後になるかも不明なのにもう予定を練ってるよ...いや、全然いいんだけれども。

 

 

「今度は熱海の方に...いいえ、少し足を伸ばして神奈川っていうのもありね......そうだわ!アウトレットに行きましょう!」

 

「アウトレットっていうと、御殿場の?」

 

「えぇ!」

 

 

 アウトレットか。沼津からそこそこ近い場所にあるが、俺はそんな、ザ・オシャレみたいな場所には行ったことがないんだよな。

 せっかくの提案であるが、自身にとって全くと言っていいほど未知な場所のため、拒否すべく口を動かそうとした刹那、突然のインスピレーションが五臓六腑を駆け巡った。

 

 

 

待てよ...

 

 

 

「そうだ。アウトレットに行くなら、今度は花丸とルビィも誘うか」

 

 

 スーパー田舎もんの花丸にとって、アウトレットなんて場所は未知なはず。故にもしかしたら、「花丸ー!これこれ!これ似合いそうだよ!」俺が丹精込めて選んだクッソどエロい服を掲げるように見せつける。「え、えぇ!?そ、そんな服恥ずかしいから着たくないずらぁ!」当然花丸は真っ赤な顔で拒否するが、そんなことは想定済みの俺は、「わかってないな〜花丸は。この服は最近大流行してるんだぞ。そんなことも知らなかったなんて花丸には呆れたよ...ほんと、骨の髄まで田舎もんだね。でも今ならやり直せる!さぁ着るんだ!このビッグウェーブに乗らずしてどうするか!今ここでこれを着なければ、一生田舎もんのままだぞ!いいのか花丸!」当然この服は流行りなどではないが、生粋の田舎娘の花丸には現在の流行など分かるまい。「い、一生田舎もん......うぅ、わかったずら...着るずら...」「そう、それでいいんだ。これで花丸も立派なシティーガールになれるぞ」俺の巧みな誘導により、花丸は渋々といった様子で試着室に入っていく。数分後、カーテンが開き、新たな服に身を包んだ花丸が姿を現sえっろ.........えっろ。「ど、どうずらか?似合ってるずらーーーーーーずらぁ!?み、未来くん!?大丈夫!?」色んな部分が露出ヤバすぎてヤバい。太ももがヤバい。鎖骨がヤバい。くびれがヤバい。おっぱいがヤバい。ヤバいがヤバい。「あ、あぅぅ...は、花丸......ありが...と...う...」「未来くーーーん!!!」

 なんて展開が起こり得るかもしれん。テンション上がってきた!となると、問題はどうやって花丸と2人になるかだな。服に関してはきっとすぐ見つかるだろ。なんせアウトレットだしね!知らんけど!!!

 

 

「え?」

 

 

 一瞬、津島が発する声の雰囲気が変わったような気がしたが、気にせずに話を続ける。俺のIQ53万の脳内は現在、どの様にして花丸を先程考えたシチュエーションまで持っていくかについて、思考を巡らせていた。

 

 

「あの二人がいればきっと、もっと楽しくなるだろうな!」

 

 

更に天城未来は花丸とルビィちゃんがパーティーメンバーの場合、財力(財布のゆるさ)と腕力(荷物持ち力)が強化されるのだ!やったね!都合の良い男の完成だよ!!!

 

 

「ん?」

 

 

 くだらない思考を終え、そこで俺は、ようやく目の前の異変に気がつく。

 

 

「どうしたんだよ?急に静かになって」

 

 

 津島の表情が先程帰ろうと言った時と同じくらい、いや、その時以上に悲壮な面持ちをしていたのだ。

 そんな目の前の相手の様子に本日何度目か分からぬ戸惑いを感じた俺は、何と声を掛ければ良いのか分からずその場に立ち尽くしていた。

 

 

 

数秒間、互いに無言の時が流れる。

 

 

 

 そんな沈黙の時を打ち破る為に、はじめに言葉を紡いだのは津島であった。視線が交差する。

 

 

「ねぇ、未来」

 

 

 向けられた瞳からは、確かな焦燥が伝わってきた。

 

 

 

 

 

 

●●●

 

 私と未来は中学2年の春、駅近くにある集団塾で知り合った。当時は互いに色々患っていて、お互い他に気軽に連める友達なんていなかったため、自然と一緒にいる事が多くなっていった。

 未来は私の事をぞんざいに扱ってくるが意外と優しくて気が利いて、私が悩んでいる時は文句を言いながらも相談に乗ってくれる。それに普段ふざけてはいるが、実は器用だし勉強も出来て体力もあるしで、めちゃくちゃハイスペックだ。彼女とか今までいたことがなかったのか結構初心なところも可愛い。そのくせ時折急に見せる気遣いや男らしさのギャップがズルい。あと私と趣味も合うし、私のノリにも最近は悪くなったが合わせてくれる。一緒にいると楽しくて落ち着く、そんな存在が未来だった。

 そして、いつしか私の中で、未来と一緒に勉強をして、一緒に遊んで、一緒にご飯を食べて、一緒になんでもない話をする時間が日常になり、だんだんそんな日常がとても楽しくて...大切なものになっていった。

 

 

 

「ねぇ、未来」

 

 

 しかし、そんな日常は唐突に終わりを告げる。

 

 

 中学3年の春、いつものように塾へ行くと未来はおらず、待てども待てども未来が姿を現すことはなかった。当時は塾に行けば当然のように会えて、加えて未来は携帯を持っていなかったこともあり、私たちはお互いの連絡先を知らなかった。

 もう会う理由もチャンスもなくなり、故に、私が人生ではじめて経験したこの気持ちにも、区切りをつけなければならないのだと諦めていた。中学生の恋愛なんて所詮、些細なきっかけで終わってしまうものなんだ。きっと、一週間か一ヶ月もすれば忘れて、何事も無かったかのように生活しているだろう。人生出会いがあれば別れもあるんだって。そんな風に、諦めようとしたから...

 

 

 

 

 

 

 

 

だから......また会えたのはちょっと大袈裟かもしれないが、奇跡だと、運命だと思った。

 

 

「私と...」

 

 

 でも未来の隣にはズラ丸とルビィがいて、しかもその仲の良さは名前で呼び合う程のもので、それを知った時から私の中で焦りや不満、嫉妬、様々な醜い感情が生まれてしまった。

 

 

 

なんで、あの2人とは名前で呼び合うのに私のことはいつまでも名前で呼んでくれないの?

 

 

 

私の方が先に未来と出会ったのにどうして?

 

 

 

なんであの時、私も衣装を着てたのに褒めてくれなかったの?

 

 

 

 

なんで花丸とルビィだけ...

 

 

 

 

 私は幼い頃より不幸な体質で、どちらかといえばアンラッキーな目に合うことが多かったが、偶然が重なった結果、休日に2人きりで出かける機会が出来たことは珍しく幸運だったと喜んでいた。

 待ちに待った当日。私が持っている中で一番可愛い服を着て、濃すぎず薄すぎず、自分の魅力を最大限に活かしたメイクをする。すごく恥ずかしかったけど、頑張って手も繋いだ。頑張った甲斐もあってか、未来も今日は楽しかったって言ってくれて...凄く嬉しかった。だからいい雰囲気で終われたと、少しくらい私のことを意識してくれたんじゃないかと思っていたのに、結局未来はあの2人のことばかり考えている。その事実が、より一層私の中にある感情を爆発させてしまったのだ。

 

 

 

 

 

ズラ丸とルビィは大切な友達だ。でも...

 

 

 

 

 

「私と付き合わない?」

 

 

 

 

 

未来のことは渡さない。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

「私と付き合わない?」

 

 津島が発したその言葉に、一瞬俺の脳はフリーズした。付き合う?付き合うってなに?なにかの隠語?棒のような長い物で突っつき合うことのこと?つまり突き合う?フェンシングでもしようってこと?私と一緒にキ○キの世代を全員ぶっ倒してフェンシングで全国優勝しようって言いたいの?津島が影で俺が光なの?

 

 

「えっと......ごめん、付き合うってどういうこと?」

 

「...そのまんまの意味よ」

 

 

 え?コイツ俺のこと好きだったの?マ?俺今人生初の告白されてる感じなの?告白なうなの?

 待てよ。てことは、今日デートとか言って誘ってきたのも、手を繋いだのもそういうことだったのか......はへぇ、驚いたっぺさ。

 

 

「ほら、私たちももう高校生なんだし、一回くらい誰かと付き合うって経験をしておいた方が良いんじゃないかって思ったの。だから、試しに私と付き合ってみない?」

 

 

 試しに?......あー成る程ね。そういうことか。危なかった。危うく童貞あるある勘違いをしてしまう所だった。つまり津島は、別にアンタのこと異性として好きって訳ではないけど友達としてはまぁまぁ好きだし、それに周りの子は彼氏彼女がいて自分だけいないのはちょっとアレだから付き合いましょうって言いたいのか。

 

 

「成程...成程なぁ...」

 

 

 なんか凄く複雑な気分であるが、確かに津島の気持ちもわかる。内浦の方はそうでもないが、沼津の方に行けば同年代っぽい男女が仲良さそうに歩いてる所をよく見かける。そんな光景を見てたら誰でもいいから付き合いたいっていう気持ちになるのも理解出来る。加えて、お互い男子校と女子校に通っているせいで出会いも少ないしな。

 それに、この話は俺にとっても有益な話なのだ。今ここで津島と付き合えば、俺は多分世間一般で言うところの勝ち組になる事ができるだろう。それくらいにコイツは美人だ。浦の星は顔面偏差値お化けの学校だから例外として、もし普通の学校に通っていればクラス1、いや学校1の美人と呼ばれるであろうレベルで津島の容姿は整っている。津島と付き合うであろう男は周囲の同性から凄まじい嫉妬と羨望を向けられることになると自信を持って言える。故に、ここで津島の提案に同意をすればこの先の高校生活がさぞかし華やかなものになることは明らかである。クリぼっち回避。バレンタインチョコ獲得数ZERO。恋人と過ごすお正月。彼女のいる夏休み。カップルチャンネル。SNSにて色々とリア充達の自慢が流れてくるがそれに憎悪を募らすことも無くなる。少なくとも俺にデメリットはない。

 

 

 そう考えを纏めた俺は、返事を待っている津島に目を向け、同意の旨を告げる為に口を開こうと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『天城君、ありがとう!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーした瞬間、何故か花丸とルビィ、二人の笑顔が頭に浮かんだ。

 

 

 

 

 これは、あの二人がAqoursに入って直ぐのこと、名前で呼び合うようになった時に魅せてくれた笑顔だ。何故今思い出して......でも、可愛かったなぁ...

 

 

 

そうだ...俺はあの時...

 

 

 

「未来?」

 

 

津島が不安げな表情でこちらを見つめている。ごめん、もうちょっとだけ待ってくれ。

 

 

 

 

 

 

 

俺は、あの日の事を思い出すと、いつも思う。

 

 

 

 

「津島」

 

 

 

 

 

花丸とルビィと出会えて良かったって。

 

 

 

 俺には特になにも、高校に入ってから何がしたいとか、夢中になれるものとか、将来の夢とかも特になかった。だからいつか目標ができた時に、より優位に立ち回れるように勉強を頑張っていた。

 でも俺はあの日、あの清純無垢でどこまでも真っ直ぐな子たちが夢を叶える瞬間を見てみたいって思って......そのために彼女たちを出来る限りサポートし応援すること、それが高校生活における今の俺のやりたい事であり夢なのかもしれない。

 たまに放課後、松月とかで甘い物でも食べながら花丸とルビィから今日こんな練習をした、とか今度のライブの衣装が可愛い、とか今度のライブも絶対見に来てね!、とかそんな話を聞くのもすごく青春っぽくて、ものすごく幸せな時間かなって思う。そういう時間を夢想していると活力が湧いてきて、そしてなんだか胸がポカポカしてきて、心地良い感じになるから好きだ。

 

 そして、津島も今や立派なスクールアイドル。もし今俺が津島と付き合った場合、恐らくAqoursの活動に悪影響を及ぼしてしまうだろう。アイドルに恋愛関係の話はご法度で、勿論アマチュアとはいえスクールアイドルも例外ではない。

 そんなリスクを考えるならば、そもそも男である俺があの子たちと関わるなって話だが、それはちょっと許してほしい我儘である。

 

 

 

まぁ、色々と述べたが、つまり俺はーーーーーー

 

 

 

 

「そういうの...なんか違うと思う」

 

 

 

俺は、その魅力的な提案に同意する事は出来なかった。

 

 

「違うって...なにが違うのよ?」

 

 

俺のどこか曖昧だが、Noと取れる答えに津島は不愉快そうな面持ちを浮かべ、そう疑問を呈してくる。

 

 

「そりゃさ、俺もそういうことに興味が無い訳ではないんだけど......ただ、そういうノリで付き合うっていうのは...なんか嫌なんだ」

 

 

 先程の考えを少し訂正して、もし本気で津島が俺のことが好きで、俺が津島のことを本気で好きだった場合、しっかりと明確にYes or Noで返事をする。例えAqoursの活動に悪影響を与えてしまうとしてもだ。何故なら恋愛をする自由は憲法で保障されている自己決定権の一部であり、実際は、アイドルとはいえその自由を侵害することはできないからだ。そう俺は考えている。しかし、今回はそういうレベルの話ではないようので、津島には本当に申し訳なく思うが、この様な形で断らせて貰おうと思う。

 

 

「提案はありがたいけど、気持ちだけ受け取っとくな。ありがとう」

 

 

出来るだけ角が立たないよう、自身の考えを伝える。自分の考えと言える程、しっかりとした物ではないが。

 

 

 

「そう...よね...」

 

 

 だが、津島の表情は客観的に見ても、俺の考えに納得しているといえるものにはならなかった。もっと気の利いた言葉を使うべきだったか...

 

 

 

 

しかし、次の瞬間、津島の口より驚くべき言葉が発せられる。

 

 

 

「あんたはズラ丸かルビィと付き合いたいって考えてるものね」

 

 

「......ん!?」

 

 

 

 まさに茫然自失。津島から発せられた衝撃の言葉に一瞬頭が真っ白になる。

 

 

「い、いやいやいや!!お、俺があの二人と付き合いたいってそんな!?」

 

 

 

 え?まさか傍から見れば、俺ってそんな(花丸とルビィを恋愛的な意味で大好き)風に見える?

 

......冷静に今までの行動を振り返ると、確かに俺は異性の友人である2人のために色々やってたかもしれん。それは第三者からすればそういう感情の基の行動に見えなくもないか...恥ずかしくなってきた。いやまぁ、あの二人のどちらかと付き合えればとか考えた事もなくは無いが、そんな恐れ多い事、今では全然考えてないし、考えたとしても宝くじ当たらないかなー的な冗談レベルの話だし。あの二人は、いつか俺よりももっと優しくて頼り甲斐のある良い男と出会って幸せになるんだ。あんなにも優しい子達には、そんな素敵な未来があって然るべきなのだ。

 

 動揺しまくりだが、そう思いながら俺は再び津島に視線を向ける。津島は、そんな俺に対してムッとした表情を浮かべ、更に何か言葉を発しようとしていたのだった。

 

 

 

「だって私の事はいつまでも苗字で呼ぶくせに、あの二人のことは名前で呼ぶじゃない!!」

 

 

 

 津島による激しい心情の吐露に、現在進行形で感じていた羞恥心を全て消し去られる。

 

 

 

「お前...」

 

 

 

数瞬、先程のように思考を停止してしまったが、徐々に津島の発言に込められた意味を理解していく。理解した結果訪れたのは、再度の驚きだった。

 

 

「ふんっ、なによ。驚いた顔して...」

 

 

津島はそう言い捨てて、顔を背ける。

 

 

...もしかして、嫉妬してるのか?津島は俺と同じで友達少ないし、数少ない友人である俺があの二人と知らぬ間に親密になっていて嫉妬しているのでは?だからさっきルビィちゃん達の話を出した時、ちょっと不機嫌そうになってたのか...それなら全てが繋がる気がする。

 

 

「まさかお前、俺と花丸達の仲に嫉妬してるのか?」

 

 

「なっ!?そ、そんなわけないでしょ!私はただ、先に契約を結んだはずのあんたが契約に違反してあの2人と仲良くしてたからーーーーーーっ!」

 

 

 やはりこれが本音なのだろう。勢いでつい口を滑らせてしまった、そのような焦りが表情から読み取れる。

 

 

 

「そうよ...してたわよ。悪い?」

 

 

 

とはいえ、もう全てが遅いと悟ったのか、今度は口を尖らせて拗ねたようにそう口にした。

 

 

 まさか、津島がこんな事を思っていたなんてな。だけど、考えてみると津島の気持ちも理解出来る。花丸とルビィちゃんのことは名前で呼ぶのに自分だけ名前で呼ばれない、四人でいる時は特に疎外感を感じてしまうだろう。自分の友達が後から仲良くなった子と自分よりも仲良くなっていたら、少なくとも良い気分はしないだろうと思う。同じ立場になって考えてみると尚更共感できる。

 

 

「私の方が先にアンタと仲良くなったのに、ズルいわよ...」

 

 

 

そう呟く声は震えていた。

 

 

 俺と津島は知り合って既に2年半くらい経つ。今までの呼び方から急に変えるっていうのも少々恥ずかしく感じる。とはいえ、ここで思い切らなければ多分ズルズル行ってしまい、この先このような関係性を発展させる機会は限りなく少なくなる予感がする。津島の気持ちに共感できるだけに、それは俺も差し控えたい。まさか、俺が津島に対してこんな感情を抱くことになるとは思わなかったが、端的にいうと俺は、津島に対して心苦しく思っているのだ。

 

 

 それにまぁ、今日は津島のお陰で楽しめたし、なんやかんや知り合って長いし、今日は津島に絶対服従しなきゃいけないみたいな所あるし...だから、覚悟決めるしかないか。

 

 

「契約なんてした覚えないけど...でも、確かに友達契約?みたいなのがあるとすれば、俺は違反しちゃってるのかもな。だから契約違反の償いとして、仕方なく!特別に!今日からお前のこと名前で呼びます!」

 

 

俺の宣言に、逸らしていた顔をこちらに向け、こちらを見据える。

 

 

「え?本当?嘘じゃ...ないわよね?」

 

 

その瞳からは、驚愕や期待、羞恥など様々な感情が籠っていることが読み取れる。しかし、ここまで下の名前で呼ばれることに焦がれていたとは思わなかった。確かに、今日で所謂YUZYO度みたいなやつは結構上がったと思うが......でもまさか、こんなにも嬉しそうにするなんて...もしかして、こいつ......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、今考えるのはやめておこう。

 

 

「本当本当。俺が嘘つくわけないだろ」

 

「どの口が言ってるのよ」

 

「ベスフレである俺の言う事が信じられないないのか?」

 

「えぇ、もちろん」

 

「うわー、マジかー。今の言葉で俺の心は深く傷ついたので、やっぱり名前で呼ぶのは辞めときます」

 

「う、嘘よ嘘!信じてるわよ!ベスフレフォーエバーよ!」

 

 

 なんとなく、津島の調子がいつも通りに戻ってきた気がする。良かった。

 

 だが、いざ名前で呼ぶとなると急に恥ずかしくなってきた。やっぱ今のなし!とか言いたいけど、それは普通に最低な人間だし、例の件を拡散されるかもしれないからダメだ。選択肢は一つである。今日この時より、津島のことを名前で呼ぶようにする、それだけだ。

 

 

「じゃあいくぞ...」

 

「ば、バッチ来いよ」

 

 

心を決める。この感覚は、以前花丸やルビィ達をはじめて名前呼びした時と似ている。これはマズイ。

 

 

「よ、善子...」

 

 

やはりやってしまった。

 

 はじめて紡いだその言葉は、羞恥と共に発せられ、なんとも情けないものだった。そしてそれに目の前の人物が気が付かないわけもなく...

 

 

「あらぁ?もしかして未来、照れてる?」

 

 

 最悪のタイミングで、ポケモンのジムバッジ少ないのに手持ちのレベルが異様に高い時みたいに、自分の意に反して技名『DT』を発動してしまった。それを津島も感じ取ったのか、先程までのお返しをするように顔をニヤつかせていた。

 しょうがないだろ!花丸とルビィちゃんで少し慣れたとはいえ、やっぱり以前として女子を下の名前で呼ぶとかレベル高いんだよ!現状が奇跡みたいなもんなんだよ!!

 

 

「は、はぁ!?照れてないし!バーカ!善子バーカ!!」

 

「ぷぷぷっ、悪口にいつものキレがないわよ?それに顔も真っ赤よ?可愛いわね」

 

 

立場逆転。ついさっきまで俺が善子をイジる構図だったのに、今では俺が完全にイジられる側になっている。非常に屈辱的な事態である。

 

 

「ち、違う!これは別に恥ずかしいとかそう言うのじゃなくて、夕陽のせいだ。そう、夕陽のせい。よく文学でもこんな表現があるだろ?夕陽に照らされてるせいか、彼女の顔が普段よりも一層赤く見えた、みたいなやつ。それなんだよな!いやー、情緒あるな!やべーな!情緒!!!ジョウジジョウジ!それはテラフ○ーマーズだろ!」

 

 

今のお前は情緒不安定である。NICE1人ノリッコミ。

 とはいえ、焦っているせいで上手く頭が回らない。ここまで取り乱したのは久しぶりだ。また、このまま弄られ続けるのは、犬にでも食わせてきたちっぽけな俺のプライドが許容できない。そのため、別になにか新たな言葉を紡ごうと必死に脳を回転させる。その途中、やけに目の前の人物が静かなことに気がつく。普通ならここで追撃をかけて弄ってくるのがセオリーというものだろう。それに、さっき俺もめっちゃ弄ったしこんな絶好の機会は逃さないはずだ。きっと今も仕返ししようと顔をニヤつかせているはずだ。そう考え、少し冷静になった頭から出た疑問と共に、視線前に戻す。

 

 

「...えっ?」

 

 

 

しかし、俺の予想とは裏腹に、善子は穏やかに口元を緩め、そして、まるで愛おしいものを見つめるような表情を浮かべていた。

 

 

「ふふっ、ほんと、あんたと一緒にいると飽きないわね!」

 

 

「〜っ!」

 

 

 

 これは、これはズルいだろ。こんな顔されたら男なら誰でも、嫌でも意識してしまう。

 

 

 

「...そりゃどうも」

 

 

 

 

 

 

 

そう、俺は魅了されてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「未来!今日はすっごく楽しかったわ!また行きましょうね!約束よ?」

 

 

 

 それは多分、自分のことを堕天使なんて呼ぶくせに、無邪気に可愛らしく、まるで天使のように綺麗な笑顔を見せる善子の魔力に、少しだけ当てられてしまったからだろう。

 

 

 今も煩く止まない胸の鼓動が、嫌でもそれを認めさせてくるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ...帰るぞ、善子」

 

「ヨハネ!」

 

「いやお前が呼べって言ったんだろうがっ!!!」

 

 

 

前言撤回。やはり善子はアホ堕天使だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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天使と未来と青春の風

お待たせしました。続きをどうぞ


 

 

 先日、Aqoursの新PV『夢で夜空を照らしたい』が公開された。新たに花丸達三人のメンバーを加え、更に空に浮かぶ大量のランタンの美しさも相まってネット上で評判を呼び、PVは5万再生を突破した。

その結果、Aqoursの知名度は一気に上がり、東京で行われるスクールアイドルのイベントに招待され出演することになったらしい。

 

 

うぅ...花丸、ルビィちゃん...ついでに善子も。大きくなったなぁ...

 

 

3人の古参ファンである俺は、ビッグになった彼女達に思いを馳せていた。

 

 

 あと因みに最近知ったんだけど、浦の星統廃合になるらしい。浦の星は来年度より生徒の募集をやめ、生徒達は別の何処かの学校に移るという話だ。

 俺が通う高校男子校だからなぁ...もし共学だったら亡校の生徒が我が校に来るっていう展開もあったのだが、流石に男子校を統合先に選ぶ事はないだろう。くそッ!中学の時みたいに花丸とルビィちゃんとギャルゲーみてーなイチャイチャhigh school life(妄想乙www)を送りたかったのに!!!こうなったら転校してやる!野郎だらけで学校中シーブリーズ臭いしな!マジでなんで俺男子校入った!?くそっ、共学に行って彼女作ってやる!!そのためにまず浦の星の理事長に合併先の高校がどこかを聞きに行かねばならない。さて、どうやって理事長とアポ取るべきか....

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 

 本日は晴天なり。ルビィちゃん、花丸、善子の新たなる門出に相応しい日と言えよう。本日は3人が東京へ出発する日、当日である。そのため、俺は3人の見送りをしようと沼津へ来ていた。流石に休日なだけあって沼津駅周辺は人が多い。

 

 

「よっすよっす」

 

 

 駅前にて、多くの通行人から好奇の視線を集める見慣れた集団を発見したため、声をかける。

 

 

「あっ、未来くん!お見送りに来てくれたの?」

 

 

第一に反応してくれたのは可愛いの権化、ルビィちゃんだった。ルビィちゃんは俺に気がついた瞬間、花が咲いたような魅力的な笑顔を浮かべてくれた。こりゃ俺に惚れてるね!あははっ、勘違いワロス!

 

 

「もちろん!俺は君達のファン1号ですから!これ食べて頑張ってきてね」

 

 

そう言って俺は、手に持っていた袋をルビィちゃんに手渡す。

 

「わぁ!これは、三島駅の近くのパン屋で売ってる数量限定の!」

 

「ルビィもこれ知ってる!すごく美味しいって話題のパンだよね?」

 

「ふふふっ、早朝から並んできたゼ!」

 

 

 ルビィちゃんに手渡した袋の中身にいち早く反応を示したのは花丸だった。

 流石食いしん坊でお馴染みの花丸さん、やはりご存知でしたか。これは三島駅周囲にある有名パン屋でも特に人気の高い代物。これを手に入れるために、休日にも関わらず今日は朝6時に起きたのだ。いやー、俺頑張った。これで目の前の国木田山脈が更に大きくなれば大満足よ。どうやら花丸が摂取した栄養は全てお胸に行っているようですからね、ヌルフフフ......そういえば昔、パンを高速で買ってくるとかいうキャラを演じてたけど、あれは今では立派な黒歴史です。

 

 

「そして...」

 

 

 ふと、横から視線を感じる。視線の主が先程沢山の人から見られていた原因だと知っていたため、今まであまり見ないようにしていたが、仕方なく目を向ける。

 

 

「善子お前...」

 

 

やはりそこには変人がいた。

 

 

「なんだお前、ヒソカみたいなメイクして」

 

「ヒソカ言うな!これは地獄に伝わる神聖なものなの!」

 

 

 視線の主、津島...善子はバケモンみたいなメイクと付け爪をし、その異常さをこれでもかという程に醸し出していた。第一印象はハンターハンターのピエロみたいだな、である。明らかにヤバい。先日、コイツめっちゃ可愛いなと感じたことを後悔するレベルのヤバメイクだ。

 

 

「ククッ、貢ぎ物感謝する。我が眷属、リトルデーモン0号よ」

 

「誰が眷属だ!せっかく前に、普通の高校生になってリア充ライフ送りたいとか言ってたから色々相談乗ってあげたのに、自分から道それまくってんじゃねぇか!このアホ善子!」

 

「ヨハネ!堕天使も辞めない。リア充にもなる。両方やらなくっちゃあならないってのがヨハネの辛いところね。覚悟はいいか?私はできてる」

 

「カッケェェェ」

 

「ギラン!」

 

 

 今のセリフカッコ良すぎる。つい善子をアニキと呼ばさせていただきたい衝動に駆られてしまった。ブ、ブチャラティィィ!!!

 

 というか、相変わらず自分から下の名前で呼べと言ってきたくせに、いざ呼ぶと訂正してきやがる。善子と呼ぶと条件反射で訂正するようになってるな。無駄な能力磨いてて笑える。堕天使ヨハネ、不思議な生態すぎるだろ。今も、色んな決めポーズでギラン!ギラン!といっている。俺がついカッケェェェとなんて言ってしまったばっかりに......

 

 

 

あっ、良いこと考えた。

 

 

 

 

「ヨハネ様〜」

 

「き、急にどうしたのよアンタ?」

 

 

 善子は俺の急な態度の変容に目に見えて動揺していた。

 この失踪していた数年で俺は空気を読む力を身につけたのだ。空気を読むと言う行為には、他人から良い印象で見られ、その先にある目的を達成したり恩恵を受けようと言う魂胆があると考えている。その考えの基、俺は今回、自身の望みを達成するために善子、もといヨハネに合わせてやろうと考えた。

 

 

「いやいや、なに動揺してンスかヨハネ様〜。俺は以前からヨハネ様の従順な僕じゃないスカ〜」

 

「えぇ...」

 

 

俺の急な態度の変わりように善子は目に見えて動揺していた。この程度で動揺するとは堕天使が聞いて呆れるぜ!

 

 

「いえ、そうね...遂に未来もヨハネの魅力を理解する事が出来たのね。それに、ククッ、まさか過去の記憶まで捏造してしまえたなんて、流石に驚いたわ。他人の精神に干渉する力...いいじゃない。まさに地獄を統べるヨハネに相応しい能力と言えるわ」

 

「えぇ、えぇ。愚かなる私めは、遂にヨハネ様の魅力を理解する事が出来ました。ヨハネ様は狂人無敵最強です」

 

「もっと讃えなさい!」

 

「よっ!美人!スタイル抜群!善い子と書いて善子!」

 

「最後のは余計よ」

 

「地獄の女帝!古代兵器ブリオン!魔界合成獣!」

 

「凄く良い気分だわ。今まで頑なに堕ちるのを拒んできた未来がまさかね.......ふふっ、これでこれから一緒にリトルデーモンの集いを出来るわっ!画面の向こうのリトルデーモン達にも紹介しないといけないわね!もしかしたら、つ、付き合ってるとか勘違いされちゃうんじゃないかしら!?

 

何か小声で言っているが、そろそろ頃合いだろう。

 

「じゃあ東京行ったら東京バナナのプレーンとキャラメル味、あとバターフィナンシェ買ってきてねよろしく」

 

「え?」

 

 

ふぅ...演技でめっちゃ体力使ったな。これは秒給1000円くらいの価値はあるぞ。それならもっとお願いしても大丈夫だな。

 

 

「あ、あと東京駅の『ちいかわらんど』に売ってる限定のスマホリングよろしく。支払い方式は地獄式を適用で、分割100年払いでよろ。ちなみにお土産という名目の一応プレゼント扱いのものなので買掛金は実際に掛かった金額の半分ということで。あ〜疲れた」

 

「そ、それが狙いかーーー!!!」

 

いつにも増して噛み付くような勢いでキレてて草。

 

 

それから、また善子とアホみたいな会話をしたり、泣きながらルビィちゃんや花丸と離れ離れになる前最後の会話をした。ちなみに泣いたのは俺だけ。

 

 

「そろそろ電車くるから行くよー!」

 

 

幸せな時間はすぐに終わりを迎え、高海先輩の元気いっぱいな声と同時に出発の時間となった。

 

「じゃあ行ってくるね未来くん!パンありがとう!がんばルビィしてくるね!!」

 

「ゔゔぅ...がんばルビィィィ!!!」

 

「パン美味しいずら〜。あ、ついでに未来くんもバイバイずら〜」

 

「ぐすんっ...花丸ぅ、都会の荒波に負けるんじゃないぞぉ!」

 

「しばしの別れだ、リトルデーモン0号。ククッ、ヨハネが留守の間、沼津の平和の維持は任せたぞ」

 

「はいはい、ばいば〜い」

 

「私だけ露骨に態度変えるの辞めなさいよ!!!」

 

 

 それからすぐに、Aqoursの姿は改札の向こう側に消えていき、姿も見えなくなってしまった。

 

 

 

 

今日からボッチ辛すぎるッピ!!!

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 我らが天使(一人堕天使が混ざっている)が東京に行ってしまい失意のどん底にある俺は、少しでも寂しさを紛らわそうと、そのまま沼津の街で暴飲暴食爆買い爆走を繰り返していた。沼津に来たのは朝だったが、気がつけば丁度18時になっていた。冷静になる。これは学校通報案件では?と思ったが、大袈裟な表現をしているだけで大して悪いことは出来ていない良い子ちゃんな俺であった。

 

 そう安心しながら俺は、聖地ヌーマーヅに寄ろうと思い、歩を進める。

 

 

「ありがとうございましたーまたおこっしゃっしゃっせー」

 

 

 ヌーマーズにてショッピングを楽しみ、結局ぼっちちゃんのグッズを購入した俺は、めっちゃ砕けた挨拶をする店員に見送られながら店を後にする。

 時刻は進み、もうすぐ19時になろうという頃。いくら夏とはいえ、辺りは暗くなり始めていた。とはいえ、俺は深夜徘徊やチャリで街を爆走しちゃう卍リベンジャーズ系マイルドヤンキー(自称)なため、いつか花丸やルビィちゃんをエスコートする日に備えて新たなグルメを開拓しようと、夜の沼津の街を一人歩く。

 しかしながら、適当に歩きすぎたせいか、少し中心街から逸れすぎてしまったようだ。電灯が少なく周囲は暗い。

 

ちょっと怖いし、流石にそろそろ帰宅すべきかと思い、引き返そうとすると、俺の耳がなにか不穏な空気を察知する。

 

 

「やめて!警察呼ぶわよ!」

 

 

あ、あれはナンパ!?...

 

ガラの悪そうな男二人が観光にきたと思わしき、金髪の外人さんの腕を掴んでいた。いや、なんでこんな時間にこんな暗い道歩いてんねん。不用心かよ。それに男の方もよくまぁ外人さんをナンパするわ。

 

 

 

ってマジレスしてる場合じゃなーーーい!!

 

 

 

やばい!警察呼ばなきゃ!いや、もし勘違いだったら...でも見た感じ明らかに拒絶してるノリなんだよなぁ...これで助けなくて、外人さんがヤンキー共に連れ去られて良い子には見せられないよ!な展開(エロ同人みたいに!)になっちゃったら私の妄想が捗りますーーーーーーじゃなくて罪悪感から寝つきが悪くなってしまう。

 

あっ、目が合った。...むむむっ、無理です絶対!むむむむむむむむ!そんな助けを求めるような目で俺を見ないで......俺小さい頃から勉強しかしてこなかったヒョロガリだから!はじめ○一歩とテレビでやってるリアルボクシングを見比べて、コイツらのパンチ貧弱すぎwww俺でも勝てそうwwwとかイキってるだけの雑魚だから!学校を占拠したテロリストを颯爽と撃退して、「またオレ何かやっちゃいました?」って決めゼリフ吐く妄想を時々しているだけの極めて平凡な一般人だから!!

 

 

 こんなくだらないことを考えている間にも、更に状況は悪化している。ナンパ野郎の片方が外人さんの口を手で押さえ、この道の先に続く、暗い夜道に連行しようとしていたのだ。

 

 

あぁもう!警察が来るまで時間を稼ぐだけだ!なる様になれ!

 

 

 

〜〜〜

 

「はい、これで大丈夫よ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 ナンパ男とパツキンボインの外人さんの間に割り込んだ俺は、ナンパ男達と対話による平和的解決を試みたが、奴らは一切聞く耳を持たず、更に胸倉を掴まれ頬を殴られたのだった。頭脳明晰、運動神経抜群に定評のある俺だが喧嘩はからっきしな為、やり返しても返り討ちにあうだろうと考え、外人さんを庇いながら防御に徹していた。そして、時間を稼いでいると事前に連絡しておいたポリスメン達が到着した為、極悪ナンパ男達はついにお縄になったのだった。全く、なんてアウトローな奴らだ!!

 

で、それからなんだけど、ポリスから事情聴取を受けた後に、外人さんに我が故郷、内浦にある豪勢なホテルに招かれて怪我した箇所を治療してもらっていたのだった。なんか見覚えがあるとは思っていたが、まさか同じ町に住んでいたとは思わなかった。それに日本語ペラペラだし、外人さんとか呼んでめっちゃ失礼だったな。

 

 

「改めてお礼をさせて貰うわ、助けてくれてありがとう、天城未来くん」

 

 

この金髪ボインの女の人、名を小原鞠莉さんと言うらしい。ハーフかな?クオーターかな?ってあれ?

 

 

「え?どうして僕の名前を...」

 

 

あぁ、事情聴取のときに俺の名前を聞いてたのか。そうやって疑問を口にしたにも関わらず、内心で自己完結する。

 

 

「少し前に、毎日の様に入校許可書に名前を書いてたでしょう?それで覚えたの、あなたの名前」

 

 

違った。でも、入校許可書?んん?何言ってるんだこの人?確かに入校許可書といえば、前に浦の星にランタン作りに行った時に書いたけど、それで俺の名前を知ったとか意味不明だぞ。もしかしてこの人、俺が想像しているよりも年上で、浦の星の事務の仕事でもしてるのかな?だったら俺の入校許可書を見てる事にも納得がいく。てっきり俺、大学生くらいの年齢かと思ってたわ。

 

「小原さんは、浦の星の事務員さんだったんですね」

 

「ふふっ、違うわ。私は浦の星の理事長をやっているの」

 

ほう!理事長とな!そりゃすごい!

 

「あっ、理事長さんだったんですね」

 

「イェス!!!浦の星女学院のshiny president こと、小原鞠莉よ!!!」

 

「シャイニープレジデント...それなら納得......って理事長!?その若さで!?」

 

 

アポ取れちゃった!!!伏線回収乙!!流石にこれは大草原...いや、急展開すぎて草はえねぇ。

 

でも、公立とか国立とかのトップとなると、ある程度キャリアを積まなきゃなれないのは分かるけど、私立高校の理事長って、全然詳しくないけどこんなに若くてもなれるもんなのか?まさかこの人、アンチエイジングによって見た目と年齢にもの凄い差がある人なのかな?もしかして、この美しさで三十代後半かそれ以上だったりするのか?

 

 

「やー、びっくりしました。僕、小原さんのこと大学生くらいの方だと思ってました」

 

 

 小原さんは、若々しくとてつもなく美人だ。そしてスタイルもとても良い。少し下品な言い方だが、ボンキュッボンである。現在、そんな人とホテルで二人きりなのだ。健全な男子高校生ならヨォ!いやらしいこと、いっぱい考えちゃうっしょ!!

 

 と思っていたが、流石に三十代後半はまだ守備範囲外である。いくら小原さんが凄まじくセクシーな見た目をしていたとしてもな!

 

 おや?マイサンのようすが...!おめでとう!マイサンはsmall and big(小さく、それでいて大きな) マイサンにしんかした!

 

 めでたくねー。BANされる可能性あるからそういう表現使うの遠慮なされ。

 

 

「ノンノン。何か勘違いしてるようだから言うけれど私、華の女子高生よ」

 

「......ま、またまた〜、ご冗談を」

 

 

 女子高生が高校の理事長とかなれる訳ないじゃん。とはいえ、俺の太陽が小原さん女子高生疑惑が出てきて再びパワーを取り戻しはじめている。見た目は確かに高校生から大学生くらいに見えるから信憑性はある。

 

 

「ジョークではないのよね〜。私のホーム、小原家は浦の星へ多額の寄付をしているの。だからこう、ガーってして、パーっとして、シャイニー!!!な手続きを経て私は浦の星の理事長の座に就任しちゃいました、というわけなのです!あ、ちなみに私は浦の星の3年生でもあるわ!生徒兼理事長、カレーうどんみたいなものね!!」

 

「お、おぉ...なるほど...理事長であり先輩でもありましたか。例えはよく分かりませんでしたがなるほど...」

 

「わからないのぉ〜?」

 

「イ、イエ〜ス」 

 

 

 カ、カレーうどん?まぁ、とりあえず理解出来たのは、先代の浦の星女学院の理事長は金の力で追放されてしまったというわけか。マネーイズパワー。カネがカネを産み、カネこそが絶対的パワーを持つ資本主義の理不尽さを垣間見た気がした。てか、説明適当スギィ!!!

 

 俺は小原先輩の圧倒的破天荒さについていけず、絶賛混乱の渦の中にいた。

 

「そ・ん・な・ことより〜?」

 

「へっ?な、なんでしょう?」

 

 なんとか混乱した頭を元に戻し、小原先輩と向き合おうとしたが、しかし、追撃をかけるように、小原先輩はニヤニヤと少し悪戯な笑みを浮かべながら俺の顔を覗き込んできた。

 

 

「Aqoursの一年生の子達にお熱だって聞いてるけれど、そこのところどうなのかしら?」

 

 

 お熱ってなにそれ!?俺もはじめて聞いたわ!お熱ってスキャンダル的なお熱?それともAqours一年生トリオの人気のココがスゴイ!って意味のお熱?帝○平成大学のココがスゴイ!って違う違う。つい言いたくなってしまった。そしてこれ絶対前者の方だわ。

 

 

「い、いやぁ...お熱ってそんなことは...」

 

「ふふっ、いい機会だし色々聞かせてちょうだい?馴れはじめとか、誰が好きか、とかね?」

 

「聞きたいこと沢山あるように見せかけて、絶対最後のが聞きたいだけじゃないですか!!!」

 

 

 

この後めちゃくちゃ尋問された。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

天敵(小原先輩)に出会った翌日、俺はまた沼津に来ていた。今日は待ちに待ったAqours御一行が帰還する日である。この片田舎とは何もかもスケールが違う都に片道数時間かけて電車で行っていたのだ。きっと疲れているだろうし労ってやらねばならないだろう。彼女達が東京に行っていた間、悲しみに暮れていた俺だが、こうして、東京から帰還し更に魅力的になった美少女達と鈍感難聴系主人公である天城未来のイチャコラ生活が今、再び始まるのだった...

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーと、思っていた。

 

 

「お帰りなさい」

 

「お姉ちゃん...」

 

「よく頑張ったわね」

 

「うぅ...お姉ちゃんっ!」

 

 

 

ルビィちゃんが泣いていた。

 

 

 俺は激怒した。この世界に在る何者よりも尊ばれる存在、この世の至宝であるルビィちゃんを泣かせた輩がいるという事に。ルビィちゃんを不届にも泣かした輩に、この顔面偏差値以外はハイスペックな俺が然るべき裁きを下してやろう。

 そのために、まずは善子に事情聴取だ。花丸もルビィちゃんと同じく精神的にダメージを負ってるだろうからな、ここは善子だ。え?善子も花丸やルビィちゃんと同じだろって?いいんだよ、だって善子だし。あいつなんやかんや強メンタルしてるし。

 

「this way」

 

「えっ?なによ?てかなんで英語?」

 

「follow me 」

 

「ちょっ!や、やめっ!」

 

「first comes rock 」

 

「首根っこひっぱんなぁー!」

 

 

もうこれで終わってもいい。だからありったけを...

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

あの後善子を尋問し、俺は事情を把握した。

 

 

「これか。Saint Snow」

 

 

 善子に聞いた話によると、Aqoursは東京で行われたスクールアイドルイベントで最下位に、しかも得票数ゼロで最下位になってしまったらしい。そして、失意に暮れている最中、同じくイベントに出場していたSaint Snowというスクールアイドルに、「スクールアイドルは遊びじゃない。馬鹿にしないで」と言われてしまったらしいのだ。正直その話を聞いて俺もショックだった。応援してきた花丸やルビィちゃん、善子率いるAqoursならば全国のスクールアイドル達にも健闘できるのではないかと思っていた。それなのに結果はぶっちぎりの最下位。我々の認識の甘さと、全国の厳しさを嫌でも理解させられてしまう結果だったといえよう。

 ...あと、ルビィちゃんが泣くという緊急事態が発生し、冷静さを失っていたのもあるが、流石にちょっと尋問とかするのはダメだったかもしれない。何故なら、善子もあまり精神的に余裕があるように見えなかったからだ。今度謝罪にアイスでも奢ろう。

 

 

 とはいえ、善子の口を割らせたことで、ルビィちゃんを泣かした奴がSaint Snowというスクールアイドルである事が判明した。絶対許さん。

 ふむふむ...メンバーは鹿角聖良と鹿角理亞の二人ね。姉妹でスクールアイドルやってるのか!?いや、それにしてもこの鹿角理亞とかいう方ルビィちゃんにそっくりだな。ツインテールで妹枠でちっぱいで...いいですなぁ!...って違う違う。一瞬でもこんなキツそうな女を人類の宝であるルビィちゃんと似ていると思ってしまった過去の自分を恥じなければ。よく見たら全然ちがうし?ルビィちゃんこんなキツそうな目してないし?ルビィちゃんに比べて全然純粋そうじゃないし?あと太ももルビィちゃんの方がエロいし?全然違うな、比べるのも烏滸がましい。

 

 

「取り敢えず一番人気の曲聞いてみるか」

 

 

えーと、一番再生数が多い曲は...これか。『SELF CONTROL』。よっしゃ!アンチコメ書きまくったるで!ルビィちゃんの無念、いざ晴らさん!!

 

ダンスなうダサすぎワロス。鹿角理亞貧乳すぎて草。家では話し方めっちゃ訛ってそう笑笑笑。曲冒頭の振り付け太陽拳のパクリぢゃん!(鬼◯キッズ並感)。鹿角聖良は...鹿角聖良は...何も思いつかねぇ...美人で巨乳とか完璧かよ。ダンスなう...あ、あれ?俺は今何を口走って...ダンスなうダンスなう...あ、頭がなんかやばい!動画を止めなければダンスなうダンスなうダンスなうダンスなうーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だんす......なう...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なう...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

せいんとすのうさん、さいこう...

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 ルビィちゃんの仇を取るべく意気揚々とSaint Snowに報復しに行ったけど、メンタルポイントが足りずダンスなうに敗北し、骨抜きにされてしまったNTR的展開はーじまーるよー。

 「未来くん!イヤずら!戻ってくるずら!」「そうよ!私たちを一生支えてくれるんでしょ!?なんで函館なんかに行っちゃうのよ!」Saint Snowの沼にハマってしまった俺が、Saint Snowのホームである函館に引っ越す狂気の推し活をしようと、自宅にて引越しの荷造りをしていると、花丸と善子が俺にそう訴えかけてくる。「ごめん、花丸、善子、ルビィ。オレぇ...ホントは...実はホントはぁぁ...北海道にゴキブリを増殖させる方法を研究しに行くっていう引越しの理由は嘘で...!ホントは毎朝ぁぁ聖良さんのデカメロンを拝みながら生きていきたいだけなんですっ!だから俺...!函館に行きます!」客観的に見ても、俺の今の表情は非常に情けない事になっているだろう。支えようと、守りたいと本気で思っていた三人の子達を俺の心の弱さが招いてしまった身勝手な理由で悲しませてしまっているのだから。いや、もしかすると、心の奥底では申し訳ないという感情も無いのかもしれない。有るのは申し訳ないと思っていると思われたいという保身的感情だけなのかもしれない。何故なら俺の心は、既にSaint Snowの物になってしまったのだから。「デ、デカメロンって!?そんなしょうもない理由でアンタは...!ってルビィ!さっきから何黙ってるのよ!アンタも何か言ってやりなさい!」さっきから不自然なほどに無言なルビィちゃん。俺がいなくなる事を悲しんでくれているのか顔を俯かせており、そして少し身体も震えている。そんな様子に俺を含め、全員の心配そうな視線がルビィちゃんの方へ向く。しかしながら、ルビィちゃんが顔を上げた瞬間、ルビィちゃん以外の全員の感情は一瞬で困惑に変わる。そう、何故かルビィちゃんは今までに見た事がないほどのものすごく色気のある、そして少しの狂気が混ざった艶やかな表情をしていたのだから。その色気のある表情に俺のマイサンが立ち上がリーヨしかける。「はぁ...はぁ...!こ、これがあの有名な『信じて送り出した(略)』の展開なんだ...!うゅゅ...ダメなのに、こんな状況だからダメなのに...!興奮してきちゃった...!」「ル、ルビィちゃん?何言ってるずら?」脳が理解することを拒否するとはまさにこのことを言うのだろう。あの純真無垢なルビィちゃんがまさか...!まさか!NTRに興奮する性癖を持っていたなんて!それにしても、こんな事態に陥ってなお、動揺しているとはいえ聞き返せる花丸の精神力には天晴れである。「う、ううん。花丸ちゃん、何でもないよ、ご、ごめんね......ピッ!」俺は見逃さなかった。今少しルビィちゃんビクンとした。おい、これR18指定してねーぞ。とはいえ、俺もいつまでもルビィちゃんにNTR好きの豪の者疑惑を抱いて動揺している場合ではない。そうだ、やっぱりおかしいよ。あのルビィちゃんがそんなヤバ性癖持ってるはずがない!「あ、あのルビィ?俺行っちゃうよ?引っ越しーーー「うん、行ってらっしゃい」も、もう会えなーーー「行ってらっしゃい」...え?」俺の言葉を遮り、ルビィちゃんはアッサリとそう言った。口元を押さえ涙ぐんでいるが、しかし、俺には見えていた。ルビィちゃんが口を押さえる前、口角を上げて溢れんばかりの愉悦を感じていたことを。アレェ!?!?!?

 

 

「守衛さんお疲れ様です」

 

 

差し入れのスポドリ等が入ったコンビニ袋を片手に、浦の星の事務室で入校許可書をもらう。最初は女子高に入る事に緊張を覚えていたが、今ではそんなことはすっかり無く、以前のランタン作りで顔見知りになったJK達に挨拶をしながら、Aqoursの練習場所である屋上を目指して校内を進む。

 

「あら天城さん。ごきげんよう」

 

「あっ、ダイヤさん。こんにちは」

 

 

 屋上目指して校内を歩いていると、ダイヤさんと遭遇した。ダイヤさんとはランタン制作の時に会っており、お久しぶりの仲ではない。俺はしっかりと立ち止まってからペコリと頭を下げる。すると、ダイヤさんもとても綺麗なお辞儀を返してくれた。流石内浦の名家の長女。

 

「いつも妹がお世話になっております。本日はどのようなご用件でいらっしゃったのですか?」

 

「はい、今日はAqoursの皆さんに少しばかり差し入れをしようと思いまして。最近急に暑くなってきましたから体力も使うでしょうし、ファンとして少しでもサポートできたらなと」

 

 

「あら、そうでしたか。それでしたら、浦の星の生徒を代表する者として、お礼を申し上げなければいけませんわね。ありがとうございます」

 

 

 ダイヤさんは天使ルビエルのお姉様のため、お話するを時は最上級の敬意と誠意を込めている。それが功をなしたのか、自分で言うのも憚られるが割とダイヤさんには信用されており、良い関係を築けているのではないかと思う。

 俺とダイヤさんは廊下の脇に逸れて、少しばかり世間話に興じる。

 

 

「ふふっ、ルビィから特にお夕食の時などに、天城さんのことを色々と聞いておりますわ」

 

「え?本当ですか?」

 

「本当ですわよ。それはもう楽しそうに話しています」

 

「わー、マジですか。例えば、ルビィさんはどんなお話を?ちょっと気になっちゃいます」

 

「そうですわね、例えばーーーーーー」

 

 

ダイヤさんが言うには、どうやら変な事は聞いていないらしい。危ねぇぇぇ。そして具体的に何を聞いているかというと、例えば、この前アイスを一緒に食べた時のことや花丸たちと3人で沼津へ行った時のことなど、楽しかった思い出を話しているようだ。俺の脳内でウキウキ気分で話をするルビィちゃんの姿が再生される。カワエェェ...

 

 

「近頃のルビィは毎日が本当に楽しそうで...これも全て天城さんのご尽力のお蔭と聞いていますわ。本当にありがとうございました」

 

 

 ダイヤさんはきっとルビィちゃんがAqoursに入るか迷っていた時のことを言っているのだろう。しかしながら、あたかも俺が頑張ったからルビィちゃんはAqoursに入れたかのような言い方だが、それは違う。

 

 

「いえいえ!そんな事は...!ルビィさんは僕なんかがいなくても、絶対に大丈夫でしたよ」

 

「そうでしょうか?」

 

「はい、ルビィさんはすごい子ですから」

 

「すごい子...ですか。天城さんは、ルビィのどういった所を凄いと感じてらっしゃるんですの?」

 

 

そう言いながら、ダイヤさんはこちらに試すような視線を向けてくる。

 

 

「僕は、ルビィさんは普段はオドオドしていますが、実はかなり芯の強い子だと思っています。自分の中にしっかりと、自分にとって正しい事と正しくない事の指針があるんじゃないかなって考えています」

 

 

 ルビィちゃんは人の気持ちに寄り添うことの出来る良い子だ。それは自分の中に善悪の区別がしっかり出来ているからだと考えている。流石は名家の娘。教育がよろしかったのだろう。実際俺や花丸も、特に花丸なんかは何度もルビィちゃんに助けてもらった経験があるだろう。

 

 

「それに、ルビィさんには、人を笑顔にすることが出来る不思議な魅力があります。普通高校生にもなればちょっとくらい人として擦れてきても仕方がないのに、ルビィさんはこの歳では考えられないくらい純粋です。ルビィさんの魅力は、きっとそんなにも純粋だから発せられるんだろうなって考えています」

 

 

 実際、あそこまで純粋な同世代の子を俺は今まで見た事ない。あの子がそばで笑ってくれているだけで、自然と笑顔になってくる。これは、普段行動を共にしている花丸と善子も感じているのではないかと思っている。

 

 

「今は本人も、それに他の殆ど誰もがその魅力に気がついてないかもしれないですけど、このままスクールアイドルを続けていけば、いつかきっとルビィさんの魅力が全国に知れ渡る、そんな日が来ると俺は確信しています」

 

 

 そんな魅力的なルビィちゃんだ。きっと、俺がいなくてもルビィは、そしてルビィに導かれる形で花丸もAqoursに入っていたと思う。

 

 

「でも...ちょっとだけ俺の力があの子の役に立てたのなら、これ程までに嬉しい事はないです」

 

 

今楽しそうにスクールアイドルとして青春をしている彼女達をみていると、しみじみとそう思う。

 

 

「......そうですわね」

 

 

 

少しだけあの時のことを思い出し温かい気持ちになっていたが、直ぐに気を取り直しダイヤさんの目を見る。するとダイヤさんは穏やかに微笑み、こちらを見ていた。

 

 

「天城さんが、ルビィの友人になってくれて本当に良かった」

 

「え!?いやいや!そんな!」

 

「ルビィのことを、これからもよろしくお願いいたします」

 

 

 

ダ、ダイヤさんそれはルビィちゃんを一生よろしくと言う意味で(殴

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の一連の会話、どうだ見たかお前ら!普段俺はふざけてるけどな、本当は成績優秀運動神経抜群の文武両道を地でいく優等生なんだよ!!確かに普段変態キャラを演じてるけどな...ん?真正末期の変態が何を言ってやがるって?そ、そこまで言わんでも......

 

 

「たのもーーーう!!!」

 

 

ダイヤさんと別れた俺は、ついに目的の屋上に辿り着いた。ウチの高校の屋上は封鎖されており、屋上に入るのは少々緊張した。そのため、道場破りが如しメンタリティをもって精神の安定を保つ。一回やってみたかったんだ、このたのもーーーう!!!ってやつ!

 

「ピギィ!」

 

 

俺の威勢のいい声に元気なピギィ!が聞こえた。ピギィ一丁入りましたぁ!そぉれ!!はい!!!これよこれ。ピギラ、ピギリ、ピギル、ピギレ、ピギロ、ピギィ変格活用でございます。

 

「曜ちゃん!道場破りだよ!どうしよう!」

 

「千歌ちゃん、落ち着いて」

 

「びっくりするからその登場の仕方やめるずら」

 

「べ、別にヨハネはビックリしてないけど!?ヨハネの心臓は地獄に跋扈する魔界合成獣よりも強靭だって有名なんだから!」

 

「善子ちゃん、それは地獄なの?魔界なの?どっちなの?」

 

 

 なかなか面白い反応。特に高海先輩の反応ウケる。

 それから俺は、ビックリさせてしまった謝罪をした後、Aqoursの皆さんに袋を渡し、少しの間一緒に持ってきた箱アイスを食べながら過ごしたのだった。ちなみにアイスは少し溶けていた。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

メイド・イン・ヘブン!時は加速する!!

 

 

これ言ってみたかったんです。

 

 

「この近くでやる花火大会からおふぁーがきたずら〜!」

 

 

今日は珍しく練習がない日らしく、放課後花丸、善子、ルビィちゃんと共に沼津へ遊びに来ていた。一通り、買い物を終えた俺たちは、仲見世商店街にて営業するヤバい珈琲店でお喋りしながら青春を謳歌していた。

 

 

 ビッグニュース。なんか、小原先輩とダイヤさん、そして松浦先輩という3年生の人、計3人が新たにAqoursに加入したらしい。時加速しすぎだろ...

 とはいえ、Aqoursも遂に9人である。そう、伝説の9!あのμ’sと同じ9人である!これでAqoursも伝説の仲間入りだな。それによくよく考えれば、Aqoursってポテンシャル高すぎるし。ルビィちゃんを筆頭に可愛いさが爆発してるし、花丸をはじめとしたえっちぃ枠もあるし、善子だけの奇人枠もある。そこに大人の魅力を兼ね備えた3年生の方々が加われば鬼に金棒と言えよう。2年生の方々も一癖あるが、全員めっちゃ美人だし。

 

 

「今何か失礼なこと考えてなかった?」

 

「シーラネ」

 

「絶対考えてたでしょその反応!」

 

 

善子は相変わらずのエスパー発動している。こいつは奇人枠ではなく超人枠か?でも善子は超人枠だ、とか口に出したら絶対調子乗る。だから言わない。

 

 

と、こんなくだらん事は置いておいてだ。

 

 

「あの沼津の花火大会からライブのオファーがあったの!?凄いね!」

 

 

沼津の花火大会は、東海地方随一の規模を誇る花火大会であり、毎年非常に多くの人で賑わうビッグイベントだ。そんなイベントからオファーが掛かるなんて、Aqoursの良さが世に知られてきたという証だろう。

 

 

「ふふんっ!これがヨハネと眷属であるAqoursの本当の実力...花火大会を足掛かりにヨハネの悪魔的魅力を全国、いえ、全世界に轟かせてやるわ!」

 

 

 

俺の横で、善子が胸を張りながらそう高らかに宣言する。

 

 

「あぁ、お前は凄いよ、善子。それに花丸もルビィも。練習大変だっだろうによく頑張ったな」

 

「なっ、なによ、珍しく素直に褒めるじゃない...」

 

「俺は元々素直に人を褒める事の出来るナイスガイです!」

 

 

3人の今までの努力を賞賛したにも関わらず、善子は奇異の目を向けてきた。流石に失礼だと感じ、そう声を挙げる。

 

 

「俺は、特に君達が東京に行った後から日が暮れるまで練習を頑張っている事を知っている。辛いことも沢山あるだろうに、挫折を経験してそれでも諦めずに夢に向かって努力出来るって、それって本当に凄いことだと思う」

 

 

 実際東京から帰ってきたAqoursの雰囲気は明らかにヤバかった。話を聞いた感じ、はじめての大きな挫折っぽかったし、ここで上手く立ち直れるか否かがこの先Aqoursの活動の運命を決定づけるのではないか、と勝手な予想をしていたくらいだ。そして、見事Aqoursは立ち直った。そこからだろうか、Aqoursの皆さんの顔つきが若干以前より頼もしいものになったと感じている。それに練習にも以前より熱が入っているように感じる。

 この3人はあまり運動が得意な方ではないのに、挫けずに努力を続けることが出来るのは凄いことであり、そして尊ばれるべきことだと、そう俺は考えている。

 

 

「えへへ...未来くんがいつも応援してくれるからルビィ達も頑張れてるんだよ。ありがとう、未来くん!」

 

「ルビィちゃんの言う通りずら。未来くんがランタン作りのお手伝いとか差し入れとか色々してくれたお蔭ずら。ありがとう」

 

「まぁ、ヨハネのリトルデーモンとして当然と言えばそうだけど。でも、褒めて遣わすわ!」

 

「お前も俺や花丸達を見習ってもっと素直になりなさいっ」

 

「あたっ」

 

 

 相変わらずの堕天使節を発動している善子の頭に軽くチョップをくらわせる。一番素直じゃないのは善子、お前だろうが。

 

 

「あ、それでね、話は戻るんだけど」

 

 

俺とした事が、ルビィちゃんの話の邪魔をしてしまっていたようだ。不敬だえ!この変態不敬だえ〜!海軍大将を呼ぶえ〜!粛清だ。シベリア送りだ。

 

 

「ルビィ達がライブをするのはお祭りの二日目で、一日目は練習が終わった後にAqoursの皆んなでお祭りに行く事になってるんだけど、もし良かったら未来君も一緒にどうかな?あ、因みに千歌さん達も是非来て欲しいって言ってたよ」

 

 

 ルビィちゃんが口にしたのは、凄まじく魅力的な提案だった。それにルビィちゃん気が効く。俺が先輩達のことを気にして遠慮するかもしれないと予想して、先輩達に許可をとったことを一緒に言ってくれるとは。素晴らしい気遣いだ。やはりルビィちゃんはこの世で一番の価値のある存在。ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)だったか...

 

 

「行く!行く行く!行ぎたいっ!!!!私も一緒に連れてって!!!」

 

「ふふふっ、ここでそのネタはおハーブ生えるわね」

 

「おはーぶはえる?な、なんずら?流行の言葉ずら?」

 

「多分違うと思うから、覚えなくても大丈夫だよ、花丸ちゃん」

 

 

 お祭りってことはつまり、ルビィちゃん達の浴衣姿が見れるってことだろ!?そんなの行かない訳がないだろう!

 

 

「じゃあお祭り当日、沼津駅前に集合ね」

 

 

 

夏に友達と祭り!リア充してるぅー!これは祭りの日まで精神統一と称して感謝の正拳突きを1日1000回してみるかね!例のあの人みたいに!履歴書の特技の欄に音を置き去りに出来ますって書けるようになってやる!

 

 

「そういえばアンタ、怪我治ったみたいね」

 

「あぁ、おかげさまで完治しました」

 

「ビックリしたよ〜。東京から帰ってきたら、未来くんの頬に大きな絆創膏が貼ってあったから」

 

「なんでそんな怪我しちゃったずら?」

 

「これは名誉の負傷というやつです。どうぞお気になさらず」

 

「なんで話さないのよ?」

 

「名誉ですから」

 

「ふーん......そりゃっっっ!!!」

 

「あ!俺のイチゴを!」

 

「話さないとこのまま食べちゃうわよ」

 

「善子ちゃんナイスずら!」

 

「未来くん、話して楽になろう?ショートケーキの大事なイチゴのためにも、ね?」

 

 

 

 

 思えば、俺も善子も花丸もルビィも、高校に入学してからのこの短期間で本当に色々あった。悩んだり、悲しんだり、怒ったり、頑張ったり、恥ずかしかったり、憧れたり、羨んだり、喜んだり。その度に、俺と彼女達は力を合わせ、努力し、勇気を出し、友情を紡ぎながら成長し、今を楽しみながら幸せに過ごしている。これからも、特にスクールアイドルの彼女達は、きっと刺激的な毎日を送っていくのだろう。そんな彼女達を少しでも直ぐ近くでサポートしていきたいと、俺は改めて思うのだった。

 

 

 

 

「ぐぬぬ...名誉の傷って言ってみたかっただけでした!!すいませんでした!全部話まぁす!!」

 

 

 

 

  

 春の風はいつの間にか無くなっており、俺達の最初で最後の高校一年の青春は、様々なイベントが目白押しの夏に移行するのだった。

 

 

 

 

 





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天使とアイスと母性。そして夏の始まり


最近沼津に聖地巡礼しました。そしてヌーマーヅで「Find Our 沼津~Aqoursのいる風景~」買いました!やっぱラブライブサンシャインはいいなぁ

今回の話の途中、主人公マジで頭おかしいです。





 

 

 7月上旬のある平日、学校の図書室にてテスト勉強を終えた俺は今日の晩御飯を買うためコンビニに向かって自転車を走らせていると、バス停にて馴染み深い堕天使を発見した。

 

 

「おぉ、善子じゃん」

 

「ヨハネ。奇遇ね。こんな時間に会うなんて」

 

「だな。今日も練習か?」

 

「えぇ、そうよ」

 

 

 

ーーーーーーバス停に併設されている硬いベンチでウトウトしちゃうくらい疲れてるのか...

 

 

 

 狩野川花火大会でのライブが決まってからといもの、Aqoursは普段より一層練習に熱が入っているようだった。その事実に自然と頬が緩む。練習凄く頑張ってるんだなって。

 

 

「練習お疲れ様」

 

「ありがとっ」

 

 

 労いの言葉を贈ると、善子は手でピースをしてニカッと笑みを浮かべた。

 

 

「あんたも今帰り?」

 

「そうだね。コンビニ寄ってから帰ろう思ってるんだが、時間あるなら一緒に来るか?」

 

「行く!」

 

 

 先程まで眠そうにしていた善子だったが、俺のコンビニに誘うと、疲れを感じさせない元気な声でベンチから立ち上がり、俺のそばに寄ってきた。自転車を手で押し、善子と話しながら歩を進める。

 

数分後、目的地であるコンビニに到着した。

 

 

「あー、ヨハネ、練習で頑張ったせいでヘトヘトだわ〜」

 

「そうか。頑張ってるなぁ」

 

「それに頭も疲労で全然回らないし、足もガクガクしてて辛いわ〜」

 

「それはそれは...お疲れ様です」

 

「というわけで、アイス奢って?」

 

「だーめ」

 

「え〜、いいでしょ〜?」

 

「太っちゃうぞー」

 

「その分動いてるから大丈夫なの!ね?だからおねがい!」

 

「しょうがないなぁ、いいよ」

 

「さっすがリトルデーモン!太っ腹ぁ!」

 

「リトルデーモンちゃうわ」

 

 

 あー、なんか俺善子に甘くなってね?いやいや、善子に甘いんじゃない。頑張っている人に甘いんだ。頑張っている人は好きだ。だって眼が活き活きと輝いているから。

 

 俺は晩御飯を適当に選んだあと、善子と一緒にアイスコーナーへ向かう。そういえば、ちょっと前にここでルビィちゃんとパ○コを半分にして食べたなぁ。そしてその時に、いつか一緒に三島にあるケーキ屋に行こうって約束をしていたな。今思い出した。くわぁぁぁ!なんで忘れてた!めっちゃ楽しみなんだが!今度ルビィちゃんに連絡してみよう。

 

 

「おいこらぁ!ナチュラルにハ○ゲンダッツをカゴに入れるんじゃない!」

 

 

 その後、アイス諸々を購入した俺は、善子と共に店内のイートンインスペースに腰をかけ、アイスに舌鼓を打ちながら最近の出来事あった出来事で盛り上がる。

 

 

「大変だな、祭りも近くなってきたし練習もハードになってるだろ?」

 

「そうね。祭りのこともあるけど、果南さんが入ってからダンスのレッスンも凄く本格的になったわ」

 

「果南さん...あぁ、新しく入ったっていう三年の」

 

「そうよ、三年の松浦果南さん。ん〜、それにしても甘いものが脳に効く...」

 

 

 俺の横に座り、善子は幸せそうにアイスを口に運んでいる。練習後のアイスが相当美味なのか、食べるペースが早い。急に頭を押さえた。うんうん、あるあるだね。

 

 

「そりゃ良かった。ちなみに松浦先輩ってどんな人?」

 

 

 小原先輩とダイヤさんとは面識があるが、松浦先輩とは一切ない。今度の狩野川花火大会に当然松浦先輩も来るだろうし、出来れば事前にどんな人物か知っておきたい。

 

 

「普通に良い人よ。性格もおおらかで流石3年生って感じ」

 

「ほぅほぅ。他には?」

 

「他?そうね...ダンスが上手くて、体力も私達の中で一番あって、あとスタイルも良いわね」

 

「それは素晴らしいな」

 

 

 スタイルが良くて性格も大人のお姉さんみたいな感じの人ね。ナルホドナルホド。実にそそりますねぇ!

 今までのAqoursにはいなかったタイプの人材だな。善子たち1年トリオはやはり2年生の先輩方と比べると幼く感じるし、その2年生の先輩方も大人のお姉さんって感じではない。高海先輩はエッッッだがお姉さん属性とは程遠いし、渡辺先輩もそこまで大人びている感じはしない。桜内先輩は一見大人びているがピアノのヤバい人だしな。

 最後に小原先輩は超エッッッだが俺の天敵だし、ダイヤさんはルビィちゃんのお姉様であり俺の将来のお義姉様(妄想するだけなら自由なんやで)になるひとだからそんな不埒な考えをするのは許されない。

 これは松浦先輩にスタイル抜群エロい大人のお姉さん枠として期待せざるを得ませんなぁ!

 

「...ふんっ、鼻の下伸びてるわよ」

 

「マジか!?」

 

 

 俺は慌てて手で鼻を抑える。危ない危ない。近くに善子しか居なくてよかった。もし他に誰かいたら、ポリスを召喚されてたかもしれん。

 

 

「そういや、浦の星ってテストいつなの?」

 

 

 テストは全高校生共通。浦の星も我が校と同じようにテスト期間が近いだろう。

 

 

「来週の月曜から。練習で疲れて全然勉強出来てないわ」

 

 

 テストの話になって途端、明らかに善子の顔が歪んだ。これはもしや...

 

 

「ヤバい感じ?」

 

 

 練習もかなりハードな様子なので、もしかするとテスト勉強が順調に進んでない可能性があるのでは、という思考に俺は至る。

 

 

「正直ヤバいわね」

 

 

 善子は目線を逸らし、気不味そうな表情を浮かべていた。

 どうやら俺の予想は的中したようだ。考えてみれば当然だ。善子は家が遠い。毎日体力の限界まで練習した後バスに揺られながら帰宅し、休憩した後に勉強する。流石にキツいだろう。善子は体力がある方ではないし、それにそもそも机に向かう時間を確保するのも大変なはずだ。このままでは赤点補習の様な下らない催しにより善子たちの練習時間が無駄に削られてしまう恐れがある。それはAqours1年生トリオのファン1号である俺的に許容できない。

 

 

よしっ!

 

 

「良かったら手伝うぜ?勉強」

 

 

 ここは、性格は残念だけど頭は良いで定評のある俺が一肌脱いじゃいますかねっ!

 

 

「いいの?」

 

「もちっ。俺も次のライブ絶対成功して欲しいって思ってるし、テストなんかサッサと片付けないとな。協力させてくれ」

 

 

俺は、胸の前で親指を立てながらそう申し出る。

 

「本当に助かるわ。ありがとう」

 

「良いんだよ。だから練習頑張ってな」

 

「えぇ、もちろんよ!最高のライブを見せてあげるわ!期待して待ってなさい!」

 

 

すると善子は胸を張って、得意げな顔でそう言うのだった。

 最近の善子はいつも頑張っていて、それでいて毎日楽しそうにしている。そんな姿を間近で見ているから、ちょっとだけ甘やかしたくなってしまうのだ。チョロいな俺は。

 

 

「とはいえ、空いてる時間あるの?本番前だしめっちゃ気合い入れて練習してそうだが」

 

「あるわよ。オーバーワークを避けるっていう意味で、次の土曜日の練習が午前で終わるみたいだから、土曜日の午後からとかどうかしら?」

 

 

 本番前のため勉強に確保できる時間も無いと思っていたが、練習をしっかりと行いつつもしっかりと休みも入れているらしい。確かに練習の詰め込み過ぎは思わぬ怪我にもつながるし、適度に休むのは良い判断と言えるだろう。どうやら、3年生の先輩方が入ったことでリスクマネジメントがより強化されたようだ。

 

「おっけー、土曜日な。あ、花丸とルビィもヤバそうだったら声掛けといてくれ」

 

「ギランッ。承知した」

 

 

 その後、アイスを食べ終わった俺たちはコンビニを退店しそれぞれ帰路に着いた。

 

 テストもすぐそこに迫っており真面目に勉強しなければいけないとはいえ、善子やルビィちゃんたちと集まって勉強する日を俺は、今からとても楽しみに思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 時は進み今日は勉強会当日、土曜日である。俺は集合時間の時間の15分前に待ち合わせ場所に到着した。その10分後、練習終わりの花丸と善子が到着したので移動をはじめる。

 

「ルビィちゃんはどうしても外せない用事があるんだって」

 

「そっか〜。それは残念...」

 

 

 くっ、ルビィちゃんがいないとは...!近づく身体。ふと触れ合う手。育む愛。折角の機会だからルビィちゃんに手取り足取りマンツーマンで勉強を教えたかったなぁ!!それにルビィちゃんがいないとか、俺は今まで何のために真面目に勉強を頑張ってきたんだ...ピュアピュアなルビィちゃんに教えようと受験に必要の無い保健体育まで完璧に仕上げたっていうのにっ...!

「未来君、この問題なんだけどね...」ルビィちゃんに呼ばれた俺は、ルビィちゃんの隣に座る。「どれどれ?えっとね、これはこうしてこうで...」ふと、視線を横に向けると偶然ルビィちゃんと目が合った。ルビィちゃんの瞳、とっても綺麗だ......すると、異変に気がつく。なんとルビィちゃんの頬が徐々に赤みを帯びていくではないか。ルビィちゃんは恥ずかしそうに目を逸らす。なんだこれがわびぃぃぃぃぃ!!問題の説明も忘れて、俺は内心そう感じていた。心を落ち着かせるためにテーブルに置いてあるお菓子に手を伸ばすと、何かスベスベとした柔らかい物体と接触した。これは...「あっ、ご、ごめん!」「う、ううん!ルビィもごめんねっ!」なんと俺は、ルビィちゃんの小さな可愛らしい手に触ってしまったらしい。驚きと自身の手に残ったルビィちゃんの感触に胸の鼓動が止まらない。落ち着け、餅つけ俺......そして、冷静になりつつある俺の脳裏に愚かな考えが浮かぶ。ルビィちゃんも、俺と同じようにドキドキしているのだろうか?そんな僅かな淡い期待を持ちながら、俺は隣のルビィちゃんにチラリと視線を送った。あ......その瞬間、俺の心は...「うゆゅ...早く消毒しなくっちゃ」...俺の心は、ポッキリと折れてしまったのでした。

 

 

フォウ!ルビィちゃんは最高だぜ!!!

 

 

「それで、どこで勉強するの?」

 

 

 しかし、本日勉強会を行う場所は未だ決定していなかったため、結局移動することなく話し合いがはじまる。

 

「無難に松月とか?」

 

「喫茶店はあんま長居すると迷惑になっちゃうよな〜」

 

「じゃあ図書館にするずら!」

 

 

 花丸が目を輝かせながら勢いよく手を挙げてそう主張する。可愛い。可愛いが...

 

 

「遠いから却下よ」

 

「ずらぁ!?」

 

「それに図書館って喋りづらいしな」

 

 

 図書館は、ここから徒歩でもバスでも1時間以上かかる場所に位置している。基本的に花丸の言う事にはイエスマンな俺だが、流石に今回は花丸の意見に反対する。アンチ図書室の天使さん。

 だが、過半数で反対されたにも関わらず花丸はまだ諦めていないようだ。花丸の珍しい表情からそれが伝わってくる。

 

 

「2人とも良く考えて欲しいずら。図書館に行けば冷房も効いてるし、喫茶店に行くよりも安上がりずら」

 

 

 そうやって図書館に行く事のメリットを順に説明する花丸。でも残念。その程度では今の俺たちの心は動かないのだ。

 

「そうだけど今回は遠慮しときます」

 

「暑い〜。早く冷房の効いた部屋で涼みたいわ」

 

「うっ...が、学生といえば、図書館で勉強するものと相場で決まっているずら。それに長居もできる。今回の勉強会に打って付けだと、そう思わない?」

 

「そういう固定観念みたいなものはちょっと...」

 

「クククッ、そうよ。そのような普通な考え、破ってみせるが堕天使たるヨハネに相応しい」

 

「分かってるな、ヨハ子。固定観念って聞くと、ついつい反発したくなっちゃうよな!」

 

「ヨハネ。その通り!普通の枠に当てはまらないのがヨハネ!そしてその程度、造作も無いこと!」

 

 

 反骨精神養ってくぜYeah!レールな人生そりゃ無意味だぜYeah!磁石のような生き様でYeah!(葉っぱ系ラッパーベル並感)

 

 普通を嫌い異常を好む俺たちにとって、そういう常識みてーなのは最も忌み嫌うもの。それは悪手だぜ花丸っ!

 

 

「ず、ずらぁ...やっぱりマルだけじゃこの2人を説得するのは厳しいずら......ルビィちゃん、助けて!」

 

 

 残念ながら今回はルビィちゃんも俺たちと同意見だと思う。とはいえ、いつもルビィちゃんが良い感じに場を取り持ってくれているのは否定出来ない。その役割を花丸が担っても上手くいかないのは当然だ。俺たちには、それぞれの特性に応じた役割があり、得意不得意があるのは仕方のないこと。ボケの善子、ツッコミの花丸、チェイサーのルビィちゃん、後方彼氏面の天城未来、そして指揮者のシドニー・マンソン。これがそれぞれが最もパフォーマンスを発揮できる分野。そう、いつもの5人。俺はこの5人で過ごす時が1番楽しいんだ!今日はルビィちゃんが不在だが、俺たちの絆さえあればどんな事でも乗り越えられるって信じてる!俺たちの友情は何者にも引き裂かれることはない!いくぞ!花丸、ルビィちゃん、善子、マンソン!俺たちの戦いはこれからだ!

 

 

「じゃあどこにするずら?マルの案をボツにするなら、代わりに案を出して貰わないと筋が通らないずらよ」

 

 

 自身の提案を否定され続けた花丸は、少し拗ねたようにしてそう口にした。

 

 

「それはその通りだ。はい善子、よろしく」

 

 

「うぇ!?急に振らないでよ!てかヨハネ!」

 

 

 しかし、俺も思いつかないので真っ先に善子に振る。こういうのは最速で先手を取って受け流すのが最も良い方法なのだ。

 

「そうね......ずら丸の家は?」

 

 

善子は焦りながらも、数秒考え込んだ後そう提案した。

 

 

「マルの家も遠いから無理ずら」

 

 

 花丸の家...行ぎたいっ!というか女子の家行ってみたいっ!だが、ここで花丸の家行きたいですアピールをするのは気持ち悪がられる可能性が高杉なので辞めておこう。

 

 

「じゃあ...ファミレス!」

 

「田舎なので無いです...」

 

「マ○ク!」

 

「10キロ以上あるな。最寄りのマ○ドまで」

 

「ぐぬぬ...」

 

 

 俺は津島の案を冷静に切り捨てていった。ファミレスが近くにあったらそもそもこんな議論起こってないわ。ただ、やはりファミレスが理想なのは間違いない。ドリンクバーがあるため、長時間寄生できるし。ベストはガ○ト。コンセントがある点が最高だ。次点でサ○ゼ。しかしながら、両店ともに沼津の方に行かなければ無いのが現実である。

 

 

「未来はどうなのよ!さっきから私ばっかり!」

 

「ちっ」

 

 勘付きやがったか...上手く受け流したと思ったのだが、流石エスパー疑惑のある善子。

 

「今舌打ちした?」

 

「してましぇ〜ん」

 

「絶対してたでしょ!」

 

 

 堕天使だけに地獄耳か。まぁ、敢えてギリ聞こえるレベルの音量でしたので当然ではあるが。とはいえ、流石にもう受け流すのは無理そうだ。2人の視線が俺に集中している。そんなに見つめられたら興ふーーーもとい緊張しちゃいますねぇ!

 

「それで、未来君はなにかあるずら?」

 

「う〜ん、そうだなぁ...」

 

 

 どうしよう、全然思いつかない。このままでは、せっかくの勉強会の時間が短くなってしまう。早く案を出さなければ。

 

 

「なぁマンソン、お前はなにかないの?」

 

 

 そこで俺は、俺の横に突っ立っているだけでさっきから一切言葉を発しないマンソンに意見を求める。マンソン、年長者の底力を見せてくれ。

 

 

「へ?マンソンって誰のことずら?」

 

「ア、アンタまさか...」

 

 

 俺が性懲りも無く、マンソンに意見を求めると花丸は驚いたようにそう疑問を口にし、善子は爆笑していた。花丸、流石にそれは酷いぞ。俺たちずっと一緒に青春のメロディを奏でてきた仲じゃないか。

 

 っておいおいマンソン、そんな露骨に嫌そうな顔するなよ。助け合い、だろ?さっすがマソソソ!やっぱ頼りになるな!よっ!指揮者!さぁ、お前の意見を聞かせてくれ!...ほう、学校の図書館で勉強すればいいじゃないかって?いいアイディアだが、それは無茶だぜ。浦の星の図書館もそうだし、俺が現在通っていてマンソンの母校でもある天流川高校の図書館でも他校の生徒が入るのは許可取るのが難しいんだよ。いくらこの前ランタン制作の時に頻繁に出入りしたとはいえ......あれ?てかマンソン、ランタン制作の時一回も居なかったよな?俺の勘違いか?いやでも......分かった分かった!俺も考えるから!ちょっと時間くれ!

 

 条件は、近い、冷房がある、長居できる。この3つだ。沼津駅前なら当然あるが、この内浦にはそんな場所.........あったな。そういえば。

 

 

「あー...一応ある。近くて冷房効いてて長居できる場所。本当、一応だけどね」

 

 

 この場所は少し問題がある。いくら俺たちの仲とはいえ、花丸と善子は異性だ。ここに誘った場合、最悪嫌悪感を抱かれてしまう可能性がある。それは俺が傷つくからいやだ。もしそんな事態が起こってしまったら俺は、ソッコーで内浦の広大な海へダイブし、『海に還るもの』になってしまう。なんとも自己中心的な理由であるが、俺が傷つくとかいう理由を除いても、中々にセンシティブな問題目白押しなのでこの懸念は仕方のない事なのだ。

 

 

「そんな場所があるずらか〜」

 

「流石地元民ね。で、それはどこなの?」

 

 

 ハッキリとしない主張だったが、2人にとっては寝耳に水だったのか、期待の籠った眼差しで俺の返答を待っていた。

 非常に言いにくいが、流石にこの状況では言わざるを得ない。そもそも口に出さなければよかった話なんだけどね。俺は意を決して口を開く。

 

 

「俺の家」

 

「「え?」」

 

 

 4人の友情と信頼の力で絶体絶命の危機は脱した。しかし、ビックバンのダークビックプロジェクトは今まさに動き出そうとしている。いけ!未来、善子、花丸、ルビィ、そしてマンソン!その友情が続く限りっ!!フォーエバー!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で?マンソンって誰だよ。

 

 

 

〜〜〜

 

「「おじゃましま〜す」」

 

「どうぞどうぞ〜。それにしても、本当に俺の家でよかったの?」

 

 拒否されるものと思ったが、結局あの後、花丸善子俺の3人で行ったテスト前勉強会開催地議会は、俺の家という意見で満場一致で決した。

 本当に良かった。もし、「未来君のお家?変な事されそうだから絶対に嫌ずら〜」「そ、そんな事しないよ!大丈夫!」「例えそうだとしても、気持ち悪いから嫌ずら〜」とか言われたら、ラ○ナーみたいに銃を口の中に突っ込んで自害してしまうところだった。名誉マーレ人のアイツも未遂で終わっているが、アイツあんなにやらかしたのに腑抜けかよ。この薄氷の巨人が。逃げ足一等賞野郎が。マルセルごっこ野郎が。お前は死ぬな!もっと生きて苦しめ!

 

 

「他に選択肢もなかったし、全然いいわよ。ね、ずら丸?」

 

「ずら」

 

「え?それなんて返事?」

 

「ずら丸のそれは今更じゃない」

 

 

【悲報】花丸、遂に「ずら」だけで会話を完結する。

 

 花丸...いくら煩悩を捨て俗世との関わりを断って出家することを美徳とする?寺の娘、通称テラ娘とはいえ、その方向性のキャラで人気出すのは難しいと有識者の俺的には思いますよねぇ。でも安心しろ。俺はどんな花丸でも全力で愛すから。いくら花丸が「ずら」だけで会話し過ぎて他の言葉の喋り方を忘れてしまったとしても、その時は俺が絶対に高名な言語学者になって新たな言語、「ずらんぐりっぢ」を開発して世界中に広げることで花丸のその喋り方を一般的なものにするから。新世界で共に生きよう。ついでに新世界の神にもなろう。

 

ずら?ずらずら↑ずら〜↓ずらぁ!ず↑ら←ず☆ら♪ずず↓ら↑

 

 

くっそ喋りずらぁ!!!

 

 

「飲み物とか持ってくるから、どうぞごゆるりとお寛ぎくださいねー」

 

「ありがとう」

 

「サンガツ!」

 

 

 2人を大きな机があるリビングに案内し座らせた後、勉強会の準備に取り掛かる。

 

 まず俺は自室に向かう。俺の部屋には大量の聖典(同人誌やヱロ本)が保存されているため、今回は使わない。いや使えない。そしてお手洗いとかで迷い込んだ時対策に一応部屋の扉に、『触るな危険』と『立ち入り禁止』と『駐停車禁止』のステッカー、加えて『封印』のお札を貼り、最後に扉の前に特級呪物『獄門疆』を置いておく。この禍々しさがあれば流石に迷い込んでも入ろうとは思わないだろう。デ○ジ、開けちゃダメだ。

 

 そしてリビングに戻ってきた俺は冷蔵庫を物色する。

 お茶とコーラとポカリでいいか。そして、キッチン下の収納庫にある来客用の立派なお茶菓子とスナック菓子を取り出す。これ、マミーかパピーが買ってきたやつだけど、2人とももう1週間以上帰ってきてないし、それにこの僻地に両親の客が来ることとか殆どないし出しちゃっていいよな。食べてあげた方がお菓子のためだし、お菓子も、シテ...コロシテ...って言っている気がするしね!

 

 

「よいしょっと。じゃあ早速勉強始めますか」

 

「え〜、ちょっと休憩してからにしましょうよ〜」

 

 

 俺の言葉に善子はテーブルに突っ伏して意を唱える。その様子はまるで駄々っ子だ。

 

 

「いやテスト2日前。全然対策出来てない。赤点取ったら補習。勉強しなきゃヤバい。OK?」

 

「うっ、そ、それは確かにそうだけど...ほら、集中を維持するためにも休憩は大事でしょ?」

 

「まだ1分も勉強してないじゃん。50分勉強して10分休憩。このサイクルでいくぞ」

 

 

 俺は善子たちにスクールアイドルとして成功して欲しいと願い、そのために目前に迫った障壁であるテストを最小限の力で乗り越えてほしいと思っているため、今回協力を申し出たのだ。故に、一切の反論も許すつもりはない。

 ほっほっほっ、善子よ(仙人並感)、ワシに口で勝てるとは思わぬ事じゃ。ワシは暇な時に毎度論破王ひ○ゆきの動画を見て論破の方法を勉強をしているからのう。

 

「まぁまぁ。暑い中歩いてきたんだから、善子ちゃんの言うことも一理あるずら」

 

 

しかし、なんとここで花丸からの助太刀が入る。

 

「そうだそうだ!ずら丸の言う通りよ!」

 

 

 思わぬ援軍を得た善子は息を吹き返し、威勢よくそう言う。

 ぐぬぬ、花丸は真面目に勉強する側だと思っていたのに...まさか特級呪物が引き寄せてしまった呪霊に取り憑かれたずら?

 

 

「それにやる気の維持も大事だよ。やる気の有無で知識の吸収率も段違いずら」

 

「もっと言ってやりなさい!」

 

 

 おいこら善子。花丸の後ろに隠れてズルいぞ。もっと正々堂々と言ってこい、堕天使の名折れだぞ。

 とはいえ、花丸の言う事は正しい。やる気がなければ知識が脳にすんなりと入ってこないというのは事実である。そして、善子と花丸は練習を終えた後だったことを失念していた。

 

「...確かにそうだね。うん、花丸の言う通りだ」

 

「グッジョブずら丸!」

 

 

 それに、せっかく休日にこうやって集まれたのに勉強ばっかじゃつまらないよな。

 

 

「ふふっ、じゃあ30分休憩して、その後しっかり勉強しようね」

 

 

 花丸は手を合わせて、和やかな笑顔を見せながらまるで子供をあやす母親のようにそう言った。

 

 

「「はーい!」」

 

 

花丸の母性がヤバい。尊さと可愛らしさと大人っぽさとエロティズムが混ざり合った男心を確殺してくる魔性の魅力を感じる。やはり俺と善子は所詮ガキだった。この母性の前ではガキにならざるを得ない。そして花丸はママだった。花丸ママァ...

 

 

「じゃあゲームでもするか?」

 

「いいわねそれ!なにがあるの?」

 

「スマ○ラ、モン○ンなどなど、色々ありますぜぇ〜」

 

「あ、ス○ブラはマルも聞いたことがあるずら」

 

「なら○マブラで決定だな」

 

 

 俺は自室からゲーム機を持ってきてテレビに接続し、そして善子と共にゲーム初心者の花丸に基本的な操作の仕方を伝授する。

 

 

「簡単に、そしてアッサリと潰してやるよ、善子」

 

「ヨハネ。クククッ、遺言はそれで終いか?リトルデーモン。ヨハネとジョーカーのコンビは完全無敵。返り討ちにしてやるわっ!」

 

「マルはこの丸くて可愛いピンク色のキャラクターにするずら〜」

 

「ピンクの悪魔か」

 

「悪魔?悪魔ってなんずら?」

 

 

各々使用するキャラクターを選択し、遂に準備は全て完了する。

 

 

 

「おっしゃいくぞ善子ぉぉぉぉぉ!!!」

 

「だからヨハネって言ってるでしょぉぉぉぉぉ!!!」

 

「カービィちゃんがっ!マルのカービィちゃんが飛んでいっちゃったずらぁぁぁ!」

 

 

 

 結局、スマブラが予想以上に盛り上がってしまい、俺たちは1時間も休憩してしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 






続きも1週間から2週間くらいで投稿します。多分。


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努力未来天使 Beautiful Star


アンケート、曜ちゃんがトップだけどこのSSに全然登場しないんだよな...

おとやっぱり地の文、語彙力ないからムリ...

タイトルは適当です。今回は短めです。どうぞ。




 

 

「ひ、酷いずら酷いずら!2人して初心者のマルを狙うなんて...」

 

「恨むのは筋違いというものよ、ずら丸。スマブラ界隈は弱肉強食。弱い者は全てを奪われる厳しい世界なのだから」

 

「そう。そして花丸は星になったのだ...」

 

「ククッ、問題児2人。ただし最強」

 

「ふっ......いきなりオラァ!!!」

 

「ちょ!?卑怯よ不意打ちなんて!!」

 

「善子は雑魚!!善子は雑魚!!ワシが最初の大統領なんじゃぁぁぁぁぁぁ!!ってダニィ!?」

 

「あ、適当にボタン押してたらなんか当たったずら」

 

「これがビギナーズラックか...でもマグレはそう何度も続かなーーー」

 

「さっきのお返しよ喰らいなさいっ!!!」

 

「ちょっ善子おまっ!復活したばっかの所に攻撃はセコイぞ!」

 

「セコイ?なんの事を言ってるのか全く理解できないわねぇ」

 

「善子!てめーは俺を怒らせた!」

 

「先に不意打ち仕掛けたのはアンタでしょーがっ!来なさい!決着をつけるわよ!あとヨハネ!」

 

「ま、また飛ばされたずら...うぅ、容赦なさすぎずらー!」

 

 

 

 俺と善子のガチバトル。花丸が吹っ飛ぶ。更に復活した花丸を初心者狩りの俺と善子で吹っ飛ばす。そして油断した善子を俺が吹っ飛ばし花丸の仇を討つ。しかしダメージをくらいすぎた俺に花丸のラッキーパンチが命中し俺が吹っ飛ぶ。復活した直後にさっきのお返しとばかりに善子に吹っ飛ばされる。再び俺と善子のガチバトルが始まり、ついでに花丸が吹っ飛ぶ。

 

 

 

 

以下この流れの無限ループである。

 

 

 

 

「へへっ、花丸さんっ。このシュークリーム、昨日やってたジョブ○ューンで絶賛されてたやつなんすよ!」

 

「ずら丸、あんたいつも肩こりが酷いって言ってたわよね?マッサージしてあげるわっ!」

 

「ふーんだ。今更謝ろうとしてももう遅いずら。善子ちゃん、手が緩んでるよ?」

 

「こらぁ善子!舐めたマッサージしてんなよ!」

 

「ヨハネ!」

 

「未来くんも人のこと言えないよね?マル、冷たい紅茶が飲みたいな」

 

「うぃっす!さっせん!!すぐ淹れてきます!」

 

 最終的に、クソゲーマー達にいじめ抜かれた花丸は涙目になりながらコントローラーを握っていたため、その様子に流石に俺と善子はおふざけが過ぎたと反省し、善子は肩のマッサージを、俺は今日の食後のデザートにする筈だったシュークリームを献上することで花丸に許しを乞うのだった。

 

 

 

「未来、この問題なんだけど...」

 

 

 そして、遂に勉強をスタートする。テスト2日前ということもあり、花丸も善子も、ついでに俺も集中して勉強を進めていた。

 中学の頃より知っていたが、花丸も善子も特に勉強が苦手というわけではない。花丸は英語を除いた文系科目全般が得意で、善子も国語と世界史が得意科目だ。俺もどちらかといえば文系で、つまりここにいる全員バリバリの文系なのである。

 

 

「あぁ、二次関数ね」

 

 

 それ故に、善子も花丸も数学と英語の2教科を進めているときにペンがしばしば止まっている。

 

 

「二次関数はしっかりグラフを書くと解りやすい。移動させるにしても、最大最小求めるにしてもね。じゃあとりあえず、平方完成するか」

 

「平方完成ね......できたわ」

 

「オッケー。ちなみにこの問題、上に凸か下に凸、どっち?」

 

「えっと、下に凸?」

 

「そう、正解。じゃあ頂点の座標は?」

 

 

 文系とはいえ、数学が出来ないこともない俺は、2人からの質問に対処する。

 

 

「流石は知識の神ね。ヨハネの参謀として相応しい働きよ。これからもリトルデーモンとして日々精進なさい」

 

「などと、容疑者は意味不明な供述をしており...」

 

「意味不明いうな!」

 

 

 ときどき、善子の話を受け流しながらも順調に勉強会は進行していった。

 

 

「ん〜!このチョコレート美味しいずら〜!」

 

「本当ね。これもしかして結構良いチョコだったりする?」

 

「そう。両親。来客用。パクる」

 

「え、そんな事しちゃっていいの?」

 

「いいのいいの。実際君達は来客だし、食べてあげた方がチョコ冥利に尽きるというもの」

 

 

 休憩時間には酷使した脳の疲れを癒すために甘いお菓子を食べながら歓談を楽しんだ。いつものように沼津で色んな場所を周るのも楽しいが、こういう風に室内でのんびりお喋りするのも青春ぽくて良いものである。いつか、ルビィちゃんも含めた4人で再びこんな時間を過ごしたいと切に思うのだった。

 

 

「ってもうこんな時間!?終バス来ちゃう!」

 

 

 しかしながら、やはり時間というものは有限で、この楽しい時にも終わりがやって来た。

 

 

「ずら丸、未来、今日は勉強に付き合ってくれてありがとう。お先に失礼するわ」

 

 

 リビングにある窓に目を向けると、夕方になったことを告げるオレンジ色の光が部屋に差し込んでいた。

 もうこんな時間か。やはり楽しい時間というのはあっという間だな。沼津から内浦へのバスは比較的遅くまであるが、対して内浦から沼津へのバスは終わりの時間が早い。そのため、残念ながら善子はもう帰らなければ不味いようだ。

 

 

「お邪魔しました〜」

 

「おう、ばいば〜い」

 

「またね、善子ちゃん」

 

 

バタバタと急足で善子は帰っていった。

 

 

「花丸ももう帰る?」

 

「マルはもう少しだけ勉強していきたいと思ってるんだけど、いいかな?」

 

「もちの論です」

 

 

勉学する事に熱心な者の願いをどうして無下に出来ようか。しかし花丸、午前までとはいえ練習があったのに凄いタフネスだ。

 

「未来君、この英文の訳し方なんだけどね...」

 

「どれどれ...」

 

 それから小1時間程、俺と花丸はテストに向けて知識を蓄えていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 カリカリと、リビングにペンを走らせる音が響く。俺と花丸は現在、今までの勉強の疲労が溜まっていながらも、今日1番の集中力で学問と相対していた。

 ところが集中というのは長くは続かないもので、俺の脳はテキストをキリのいい所まで終わらせた事で気を緩めてしまい、雑念を産んでしまう。

 

 

ーーー今、花丸と2人っきりじゃね?

 

 

 衝撃の事実に気がついてしまった。今俺は密室で、しかも自宅で2人きりなのである。それを意識した途端、ペンを持つ手が僅かに震え、そして心臓の鼓動がいつもよりも煩く止まらなくなってしまっている。

 男女。2人きり。密室。何も起きないはずもなく...

 

 

「ーーーーーー君」

 

 

 いやいや落ち着け俺。こんなのまるで理性を持たない獣みたいじゃないか。そう、そんな事あり得ない。絶対にあり得ないのだ。

 

 

「ーーーーーーらい君」

 

 

 俺と花丸は友達。清い付き合いだ。確かに本音では、エロドスケベエロ展開を期待しないこともない事もなくはない事もない事もないが...

 

 

 

 

 

あれぇ?どっちだ?糖分が足りなくて脳が回らーーーーー

 

 

 

 

 

「未来君!!」

 

「はっ!」

 

 

 大きな声で花丸に呼ばれた事により正気を取り戻す。ビックリした。いきなり大声出してどうしたんだ?

 

 

「未来君どうしたの?さっきから手も止まってるし、何度呼びかけても気がつかないし...もしかしてどこか体調が悪いずらか?」

 

「あっ...ううん。大丈夫大丈夫!ちょっとボーっとしてただけ。勉強のしすぎかな?で、どうしたの?」

 

 

 まさか花丸の声も聞こえなくなるほど、思考に没頭してしまっていたとは。花丸と2人きりというまさかのエロ展開に俺は予想以上に緊張していたようだ。

 

「未来君のご両親もそろそろ帰って来ちゃうよね?マルもそろそろお暇するずら」

 

 流石花丸。俺たち一家のことを思ってお暇しようとするとは。やはり花丸は気遣いが出来る素晴らしい美少女だ。

 でもでぇじょーぶ!帰らなくていい!俺とサタデーナイトフィーバー(意味深)しよーゼ!

 

「あー、気にしなくていいよ。2人とも今日は帰ってこないから」

 

「そうなの?」

 

「うん。うちの両親結構忙しいみたいだから、基本的に月に3、4回くらいしか帰ってこない」

 

 そう話すと、花丸の俺を見る目が同情心を持ったようなものに変化する。やっぱり花丸は優しいな。きっと俺のことを心配してくれているのだろう。

 

「...そうだったんだ。それって寂しくないずらか?」

 

「いやあんまり。もう慣れたし。それに実は俺、父さんと母さんのこと結構尊敬してるんだ。だからもっと仕事頑張れーって感じかな」

 

 基本この地域に住んでいる人は、内浦付近で働くことが多い。また、沼津駅前や伊豆、下田、伊東あたりに働きに行く人もいる。しかし、ウチの両親は珍しいケースで、基本静岡駅の方や東京、名古屋などで働いているため内浦まで帰って来ることは少ないのだ。

 確かに、中学1年くらいの時は結構寂しく思う時期もあったが、流石に何年もこのような状態を継続していると慣れてくるのも普通だろう。

 それに、家族仲も悪いわけでもないし、駅前の塾に通うのも、近所の私立高校に通いたいという俺の願いも二つ返事で承諾してくれた。基本的に両親は俺の選択や、やりたい事を尊重しお金を出してくれるため、最近話題の親ガチャと言う言葉の観点から見ればうちの両親は当たりだと思うし、尊敬もしている。

 そんな忙しいんならもっと都会に引っ越せや、という意見もあると思う。まさにその通りです。ただ両親が頑なにこの街から出ない理由は一つ、この街が好きだからだ。海が綺麗でみかんが美味しくて、優しい人が多いこの街のことが大好きなのだ。

 

 ま、俺なんかの身の上話なんてどうでも良いのよ。花丸たちのエロエロ身の上話はお金払ってでも聞きたいけどね!

 

 

「じゃあ夜ご飯とかはどうしてるの?」

 

「お?気になる?」

 

 

 来てしまったか、今日のスペシャルディナーを紹介する瞬間が。

 

 

「え?」

 

 先程までとは打って変わって、ウキウキとした俺の態度に、花丸の発した声からは僅かな困惑が感じ取れた。

 

 いや、元々紹介する予定は無かったんだけどね。とはいえ、一度花丸に俺の今日の晩御飯を見せてしまえば、花丸は「未来ずら!未来ずら!」と興奮する事間違いなしだと考えている。そして「いいなぁ!マルも食べたいずら!」「勿論、一緒に食べようぜ!」いっぱい食べる君が好き〜ほっぺにケチャップ〜。「あっ、花丸、ほっぺにマヨネーズついてるぞ!可愛いやつめ!」「きゃっ、恥ずかしずら♡」みたいな展開がキボンヌですぞ!フォォォウ!!!

 

 

「なんか今猛烈に寒気がしたずら...」

 

「今夏だし勘違いだよ」

 

「そ、そうずら?」

 

 

 やはり花丸、鋭い。流石は仏の教えに準ずる者。南無阿弥陀仏。曼荼羅。カブト虫。密教。只管打坐。カブト虫。免罪符。啓示。極楽浄土。カブト虫。奥州藤原。天草四郎時貞。カブト虫。

 普段から某神父のように天国へ到達するための厳しい修行を受けているのだろう。

 

 

 

 話を戻そう。台所から、晩御飯の入ったコンビニ袋を持ってくる。

 

 

「俺の今日の晩御飯はね...こほんっ!俺の今日の晩飯たるっ、イカれたメンバーを紹介するぜぇ!!!」

 

「テンションばぐってるずら...」

 

 

 花丸の冷静なツッコミを受けながらも、俺は袋の中身を一つ一つ取り出して机に召喚する。

 

クックック、冷静でいられるのは今の内だぞ花丸や。いくぞ!

 

 

 

シンクロ召喚!出よ!

 

 

 

「そい!ごつもり!ゆでたまご!コーラ!以上!」

 

 

ジャンク・ウォーリアー!

 

 

「こ、これが今日の夜ご飯ずら?」

 

 

 花丸は、机に並べられた俺のフルコースを見て、衝撃に打ち震えている様子だった。これが俺だけのフルコースだ。あとは適当に家にある菓子をあの有名なスタージュンも認めたポータブルスパイス調理器でポン!クラッシュ!クラッシュ!すれば完璧ってね!

 

 ちなみにトリコは最終回で暴走したトリコを小松が泣きながら調理して連載終了。

 

 

「イエス」

 

「本当にこれだけずら?」

 

「YES I AM !」

 

 

 花丸はテラ娘。そして可愛らしい食いしん坊だ。普段家では精進料理のような栄養バランスが考えられた味薄めのものを食べることが多いだろう。いつも申し上げておりますが、栄養は全てそのご立派な胸部にいっているようだがね...レロレロレロ。

 故に花丸は、このような味濃いめでジャンクで始まりジャンクで完結したディナーセットを食する機会は無く、ジャンクに飢えているはず。

 

 

 そう考えながら、未だ衝撃に震えている花丸に目を向ける。

 

 

「ダ...」

 

「ダ?」

 

 

なんだろう?

 

 

 しっかーし、俺には数秒後、花丸が目を輝かせているビジョンが鮮明に見えている。

 ほら花丸!一緒にラブ&ラブしながらディナーを楽しもうぜ!それはお腹も心も満たされる最高の一時でーーーーーー

 

 

「ダメずらーーー!!!」

 

「ほぇ!?!?」

 

 

 普段滅多に耳にしない声量の花丸の声が油断していた俺の鼓膜を揺らす。

 

「未来君、座るずら」

 

「えっえっえっ?」

 

 言われるがまま、花丸から発せられるプレッシャーに怯えて自然と正座をしてしまった。

 

「未来君、いつもあんなご飯ばかり食べてるずら?」

 

「じ、時間の効率化、合理化です」

 

「面倒くさがってるだけだよね?」

 

「い、いやそんなことは...」

 

「そうだよね?」

 

「...はい」

 

 自宅の居間にて、仁王立ちした花丸により反論を許さぬ問答が行われる。

 このオーラ...花丸はやはりSだった?確かに花丸はよく俺の発言に対して冷たい視線を向けてくることがあって、花丸にはSの才能あるね...と有識者的分析をしていたがまさかここまでとは。

 

「しっかりしたご飯食べないと将来病気になっちゃうよ?」

 

「ごもっともです」

 

 

 花丸が俺の健康を心配してくれている。キュンときた。流石は花丸、飴と鞭の使い分けが上手い。やはり花丸はルビィちゃんにも劣らぬ逸材...!※そもそもルビィちゃんはSではない

 

 

「仕方ないから、今日の夜ご飯はマルが作ってあげるずら」

 

「うぉ!?本当!?」

 

 僥倖っ...!なんという僥倖...!これは僥倖がすぎるぞ。まさか女子の、しかも花丸の手料理が食べれる日が来るとは。うぅ、今まで真面目に生きてきてよかった...真面目?俺の脳裏で今までの変態染みた所業がフラッシュバックする。......うん!四捨五入すれば真面目だ!

 

 

「勉強を教えてくれたお礼だよ」

 

 

 本当は料理出来ないこともないけど、役得なのでOKです。ここは黙っておくのが得策だろう。

 

 

「あざっす!サンクス!サークル・K・シャンクス!」

 

 

 今は亡きサ○クルKと流行りのシャンクスを融合した。これは随分ハイレベルなネタですねぇ。

 

「やっぱり未来くんは頭良いけど頭悪いずら」

 

「やめてっ!」

 

 花丸ちゃんはこんなに毒舌じゃないっ!って苦情来ちゃうから!

 まぁ、仮に苦情言う奴がいたとして、ソイツは心底分かってねーなと思う。毒舌な花丸も魅力的なのさ。

 

「未来くんは頭も良くて運動も出来るんだから、普段からもう少し真面目にしていればもっとカッコいいのに」

 

「...え?」

 

 

カッコいい?俺が?

 

 

花丸の言葉が俺の頭の中をグルグルと巡る。カッコいいなんて全然言われたことない。いや、もっと真面目になればカッコいいってだけで勘違いすんな俺。でもなんかすっごいドキドキする...

 

 

「でもまぁ...」

 

 

 未だ脳の理解が追いつかない。そんな俺の様子を尻目に花丸は、しゃがんで今も尚正座をしている俺を見つめる。

 

 

「普段は戯けてるけど肝心な時に頼りになるから、今の未来くんもマルは好きずら。だから未来くんが真面目になっちゃうとちょっと寂しいと思うマルもいて...えへへ、なんだか難しいずらね」

 

 

 そして花丸は、見る者全ての心を解きほぐすような、そんな暖かい表情を見せた。

 

 

「いや、花丸、えっ?」

 

 

 別にそんな意味で言ったのではないと分かっている。分かってはいるが、しかし、自覚できるくらいに今、俺の顔は真っ赤に火照っていることだろう。

 

 

「さっ、遅くなる前に手早く作っちゃうずら。台所借りるね」

 

 

 そう言って台所に歩いて行く花丸の姿を、俺何も言えずにただ目で追うことしか出来なかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 花丸の作ってくれた料理は美味で、それでいて素朴で、心温まるものばかりでした。普段料理を面倒くさがって冷凍食品やインスタントで済ましている俺にとってはご馳走で、花丸の料理に完全に胃袋を掴まれてしまいました。将来花丸と結婚するであろうイケメンを恨まずにはいれませんでした。

 

「うんめぇなぁ〜〜〜!!!」

 

「もうちょっとゆっくり食べるずらよ」

 

 花丸が作ってくれた料理を猛スピードで腹に納める。みんなっ!今日から俺のことはトリコさんと呼べ!ポンクラッシュポンポン!Wow Wo 釘を食え!!

 

 

「花丸、俺のために一生味噌汁を作ってくださいっ」

 

「ダメずら〜」

 

「ですよね〜」

 

 

 知恵熱により焼き切れてしまった俺の脳は、花丸にプロポーズをすると言う平常時には考えられない愚行に及ぶ。

 

 さっきまで謎のラブコメっぽいのが繰り広げられていたが、そもそも俺と花丸がそんな関係になるなんてあり得ないし、あのまま考え続けていると思考の沼にハマりそうだったので終わりです!

 

 

あはは!思考停止最高!思考停止最高!

 

 

「だって未来くんには善子ちゃんとルビィちゃんがーーー」

 

「え?」

 

善子とルビィちゃんが何?

 

「ずらっ」

 

 花丸は、何故か途中で自らの口を手で塞ぎ話を中断した。

 

「どうしたの?」

 

「なんでもないずら」

 

「え〜、教えてよ〜」

 

 気になったのでしつこく聞いてみたが、一向に花丸が先ほどの話の続きをしてくれる事はなかった。

 

 

 残った肉じゃがを食べ進める。完食した頃には完全に日も暮れていた。

 

 

「じゃあ、そろそろマルもお暇させて貰うね」

 

「危ないから送って行くよ」

 

「ううん、大丈夫ずら。気を遣わないで」

 

「ダーメ。もうすぐライブ本番なんだから、もし何かあったらダメだ。送ってく」

 

「...そうだね。じゃあ、お願いするね」

 

 

 俺と花丸はダメな事と知りながらも2人で自転車に乗り、潮の香り漂う夜風の中、花丸の自宅を目指して駆け抜ける。

 

 

「どうですか〜?特急天城号の乗り心地は?」

 

「ふふっ、苦しゅうないっ!ずらっ」

 

 

 夜の内浦の街は、月の光がキラキラと海面に反射して輝き、幻想的な雰囲気を作り出していた。

 

 いつも見ているはずの光景なのに、今日は普段よりも綺麗だと、そう思いながら、俺は花丸と笑い合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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ルビィちゃんは天才であり天使!異論は認めない!!


ルビィちゃん可愛い。

最近、調子悪いです。主人公の狂人感があまり出せなくなってしまっている。




 

 

 

 花丸を送っていった帰り道、心地いい潮風が吹く海辺の道をゆっくりとペダルを回しながら進む。

 

 途中、見覚えのある人物とすれ違う。このままスルーすると後々面倒な事になりそうなため、ブレーキをかけて後ろを振り向く。向こうもこちらに気がついていたようで、目が合った。

 

 

「久しぶりね、未来!」

 

 

 自転車に跨りながらすれ違った人物、小原鞠莉先輩と一緒にいたもう1人の女性に会釈をする。

 

 

「お、お久しぶりです小原先輩」

 

 

 小原先輩のエロ...魔性な大人の魅力の前では、俺は一切の抵抗も出来ないちっぽけな存在に成り下がってしまう。イジられる未来しか見えないため、実の所、あまりこの人とは会いたくなかった。 

 

「こんな遅くにどこへ行っていたの?」

 

「今日は花丸と善子とテスト勉強をしていて、夜遅くなったので花丸を送っていった帰りです」

 

「相変わらず仲が良いのね〜」

 

「いやぁ、それほどでも...ありますね」

 

 確かに善子も花丸も、友達とはいえ異性である俺の家に遊びに来てくれる位には、2人からの信用を得ているだろう。加えて、花丸は俺に手料理をご馳走してくれるレベルで絆を深めている。ルビィちゃん?ルビィちゃんとは主従関係だ。勿論俺が従でルビィちゃんが主。ルビィちゃんの言うことは絶対であり正解であり真理である。天上天下唯我独尊。この世でルビィちゃんより尊い存在は無い。そして俺は、ルビィちゃんのためなら死ねる。

 

 

「小原先輩もこんな遅くにどうしたんですか?」

 

 

 そう尋ね返しながら、小原先輩の横に立つ女性を一瞥する。青い髪を1つに結んだ、小原先輩に勝るとも劣らないスタイルの女性が柔らかい笑みを浮かべながら俺と小原先輩の様子を眺めていた。

 

 

「私は果南と一緒に夜のウォーキング中よ!」

 

 

 やはりこの女性が松浦果南先輩だったか。スタイルが良くて余裕がありそうなお姉さんって感じの雰囲気を醸し出している。成程、善子から聞いている通りの人だ。

 

「あなたが松浦先輩でしたか。はじめまして、天城未来と申します。善子達から松浦先輩のお話は聞いております。よろしくお願いします」

 

「はじめまして、私は松浦果南。よろしくね。私も君の話は鞠莉から色々聞いてるよ」 

 

「イェス!未来の活躍をこれでもか!って言うほど果南に伝えてあるわ!」

 

小原先輩は、胸に手を当てて自信あり気にそう言った。

 

 

「へぇ、俺の活躍ですか。それは一体どんな?」

 

 

 悪い風には伝えられていないとは思うが、正直、小原先輩は破天荒な人というイメージが強いので少々不安に思う所もある。故に、一応どのように伝えたのか詳細を確認しておこうと考えた。

 

 

「そうね。まず、未来は沼津でバッドボーイ達にしつこく言い寄られていた時に、颯爽と現れて助けてくれて」

 

 

 初めて出会った時のことか。あの後、2人でホテルにGO!したのは良い思い出だ。ちなみにイヤラシイことは誠に残念だが一切無かった。

 

「それに、いつもAqoursを応援してくれているカッコイイ男の子って説明しておいたわ!」

 

「カッコいいってそんな〜。そんな大した事はしてませんし、照れちゃいますよ〜」

 

 小原先輩のお陰で、Aqoursのメンバー間で俺の評価が「カッコよく女の子を守るイケメン」になっている可能性が浮上する。それ故に、口では謙遜しつつも、舞い上がる気持ちを隠す事が出来ずにいた。

 そんな調子に乗っている俺の脳内で、「未来君ってすぐ調子乗っちゃうのね」「感動〜!未来君ち○ぽデカいのね〜!」と最近超話題の某バンドアニメの名セリフがリピートされる。後者は冤罪だけど。

 

 

ぼ喜多は神!ぼ喜多は神!

 

 

 

 

「あと花丸や善子たちに三股かけてるクソ野郎!!!」

 

「小原先輩!?!?」

 

 

 圧倒的風評被害なんですけど!?え?マジ?そんな風に伝わってんの?今の俺って、全ての善行を帳消しにする最低最悪のヤリ○ン野郎って認識になってんの?

 ハァ...ハァ...!取り消せよっ...!今の言葉!俺は未だDTだ!依然変わりなくっ!

 

「そんな事実ありませんし!なんてこと吹き込んでくれてるんですか!」

 

「えぇ〜?だって、さっきまで花丸と2人っきりだったんでしょう?今日は雲が1つもなくて、海が綺麗に見えるわねぇ。素敵なムードも作りやすいでしょうし、なにかあったんじゃないの?」

 

 た、確かに!言われてみればそうだ!それにさっきまでの雰囲気は、まさに青春!といった感じで最高だった。もうちょっとこう、上手いことやればもしかして、エロエロなシチュエーションに持っていけたのではないか!?「花丸、海が綺麗だしちょっとお話しして行こうか」「...うん、いいよ」帰るのが勿体なく感じた俺と花丸は、自転車を降りて砂浜に座る。「今日は海が綺麗に見えるずらね」「うん。凄く綺麗だ」紡がれる言葉は多くないが、確かに俺と花丸はこの一時の静かな青春を堪能していた。「でもね、海なんかよりも花丸の方がもっと綺麗だ」「ず、ずら!?未来君何言ってるずらか!?」だが、落ち着きがない俺は、刺激を求めて普段は決して言えないような歯の浮くようなセリフを口にしてしまう。一歩間違えればこの良い雰囲気を壊してしまう可能性がある、そんな言葉だったが、花丸の頬は夜の闇の中でも分かるほどに紅潮しており、俺も、そんな花丸を見て自然と胸の鼓動が早くなる。確かな変化を投じた言葉だった。「み、未来君も、凄くカッコいいずらよ...」花丸は、恥ずかしそうに言葉を絞り出した。互いに見つめ合う。「花丸...」「未来君...」 砂浜にうつる影はゆっくりと近づいていき、数秒後、ついに重なり合うのだった...

 

 

 

     〜tropicallove forever 〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「こら鞠莉、あんまり天城君をいじめないの」

 

 

 反論も忘れて妄想に耽っていると、松浦先輩が小原先輩の頭に軽くチョップを喰らわせ、制してくれた。そうだそうだ!俺をいじめて良いのはルビィちゃんだけなんだぞ!

 小原先輩にいじめられるのは!いじめられるの...は......良いかもしれない(末期)

 

 

「アウチッ!わかってるわかってる。この子、反応が面白いからついつい揶揄いたくなっちゃうのよね〜」

 

 

 松浦先輩からは俺を嫌悪しているような雰囲気は感じられず、口ぶりからも、特に悪い印象は抱かれていないようだ。

 

 

「もう、気をつけなよ。それに、あんまり夜に1人で出歩かない事。最初に話を聞いた時、本当に心配したんだからね」

 

 

 いつも誰かが助けてくれるわけではない。あの時は俺がたまたま通りかかったから良かったが、あの様な不良達の間に割って入るのはそれなりに度胸がいる。小原先輩は運が良かったのだ。

 

「えぇ、流石に今回は迂闊だったと反省しているわ。でもね...」

 

「?」

 

「今は果南がいてくれるから...私のこと、守ってくれるんでしょう?」

 

 

なんだこのラブコメっぽい空気感...

 

 

「うん、鞠莉は私が守るよ」

 

 

きゃ!ヤダ、ここにイケメンがいるわ!

 

 

「かな〜ん!」

 

「ちょっ、後輩君が見てるよ」

 

 

 小原先輩が松浦先輩に勢いよく抱きつく。松浦先輩は困ったような口ぶりだったが、腕の中にいる小原先輩に優しい表情を向けていた。盛り上がってきましたね〜!

 

 目の前で唐突に百合が展開される。迷惑?いえいえ、ご褒美です。

 

 

「お気になさらず。どうぞどうぞ、そのまま続けちゃってください」

 

 

 どーぞお気になさらず。メロンパン夏油がメカ丸に見せた様な爽やかな笑顔で続きを促す。

 それにしても、そうかそうか。お主らそういう関係か。小原先輩はいつも俺をイジってくるので、一見Sに思えるが、実は松浦先輩の前だけでは全く正反対の姿を見せるのか。ムホホッ!かなまり素晴らしいですなぁ!これは例のヤバいピアノの先輩も妄想が捗っているに違いない。

 

 先輩達は完全に2人の世界に入ってしまい、俺は蚊帳の外になってしまう。この美しい光景を邪魔してしまうのは憚られるため、ひと足先に離脱しようと思う。

 

 

「それじゃ、お先に失礼しますね〜」

 

 

 松浦先輩が暴走する小原先輩や高海先輩のストッパーになってくれるかもしれない。そんな可能性、大きな収穫を得た邂逅だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 帰宅後、少し休憩を取ってから再びテスト勉強をする。今日は色々とあったので、まだ21時になったばかりだというのに眠気を感じる。頭の回転が低下しているため、暗記の多い文系科目の復習を行う。

 1時間ほど勉学に励んで、一旦終了して部屋を出る。風呂場に向かい、蛇口を捻って桶に水を溜める。風呂が沸く間、勉強をしようと思ったが、疲れているので少しベッドに横になった。しばらくゴロゴロしながら休憩をしていると、突然枕元に置いていたスマホが鳴った。

 

「なんと!?」

 

 メッセージの差出人を見て、驚きの余り飛び起きてしまった。

 

『未来くん、夜遅くにごめんね。今時間大丈夫かな?』

 

 なんとルビィちゃんからメッセージが来ていたのだ。

 

『全然暇してるからいいよ!どうしたの?』

 

 急ぎの用事の可能性もあり、ルビィちゃんに余計な手間を与えないために速攻で返事をする。

 

『今テスト勉強してるんだけど、分からないところがあって』

 

『もしよかったら教えて欲しいなって思って』

 

『電話してもいい?』

 

 

すると、そんなメッセージが連続して送られてきた。

 

 

『いいよ!でもちょっとだけ待っててね』

 

 本当は今すぐに電話できないこともないが、途中で電話を中断させないためにお手洗いを済ましておく。更に、ルビィちゃんのお耳を不快にさせないようにうがい薬で喉の調子を整える。ガラガラガラ。

 

 発声練習ヨーイ。アメンボ赤いなあいうえお。感激しちゃうなかきくけこ。真姫ちゃんすごいなさしすせそ。真姫ちゃんとびきりたちつてと。

 

ヨシっ!発声練習終わりっ!

 

 

『準備できたよー』

 

 部屋に戻ってメッセージを送信する。すぐに既読がついた。

 

 

『じゃあかけるね』

 

 

ルビィちゃんとの通話、ドキドキしてきた。

 

 

『あっ、未来君こんばんは。ごめんね、いきなり』

 

「こんばんは。全然いいよ、暇してたから!」

 

 

 ルビィちゃんの声がこんなそばで...!俺は電話なんか廃止して、全てのやり取りをメールやLINEで済ませて仕舞えば良いと考えている人間だったが、これは一気にAll電話派に転向せざるを得ない。素晴らしい文明の利器だ、電話。

 

 

「それで、どこが分からないの?」

 

『えっとね、この問題なんだけど...写真送るね』

 

 

 電話をスピーカーにし、トーク画面に送られてきた写真を開く。数学の問題だった。これくらいの問題ならば解くのに時間は殆ど必要ない。

 すぐに、電話越しでも出来るだけ分かりやすいように説明を試みる。

 

「って感じなんだけど、大丈夫そう?」

 

『うん、理解出来たよ!ありがとう!』

 

 なんとか理解してもらえたようで、安心した。

 

「他にも何か分からない問題とかある?別の科目でもいいよ」

 

『えっと...無いかな。ありがとうね』

 

 

 思いのほか用件はすぐ終わってしまった。テストもすぐに迫っており、このまま電話も終わってしまうものかと思いきや、そうはならなかった。

 

 

『花丸ちゃんに聞いたんだけど、未来くんのお家で勉強会したんだよね?良いなぁ』

 

 俺とルビィちゃんは、テスト勉強そっちのけで雑談に花を咲かせてしまった。

 ルビィちゃん、明後日からテストなのに大丈夫なのかな?......いや、適度な休憩は脳の活性化を促進するから大丈夫だ。それに、ルビィちゃんも会話を楽しんでくれているようだし、幸せならOKです!

 

「じゃあ、またいつかみんなで勉強会しよっか」

 

『え、いいの!?本当に!?』

 

「あぁ。次は夏休みの課題とかかな。早めにみんなで終わらせちゃおう。そしたら後は遊び放題だしね!」

 

『そうだね!それに、1人で勉強するよりも集中できるもんね!』

 

「そうそう、その通り!」

 

『じゃあ約束だよ!楽しみにしてるね!』

 

 高校生活最初の夏休み。ルビィちゃん達は練習で忙しいと思うが、少しくらいは休日もあるはず。

 花丸や善子、ルビィちゃんたちと色々な場所に行って、沢山の想い出を作りたいなと思っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日勉強の休憩中に3人でスマブラをしたんだけどさ、俺と善子で花丸を集中狙いしたら花丸が涙目になって怒っちゃって」

 

 通話を始めてからある程度経ったが、それでもこの楽しい時間は終わらない。次から次へと湯水のように話したい事が湧いてきて、俺とルビィちゃんの間には、常に笑顔が溢れていた。

 

『それで、結局どうなっちゃったの?』

 

「俺は花丸の機嫌を取るためにお菓子を献上してな、あと善子はマッサージしてた。いやぁ、流石にヤンチャし過ぎちゃったって反省してます」

 

『なんかその時の光景が簡単に想像出来るなぁ』

 

「そうだ、今度勉強会する時、ルビィも一緒にスマブラしようよ」

 

『うん、するする!あ、でもルビィも上手くないから未来君達に狙われちゃうかな?』

 

「いやいや、俺は狙わないよ?...多分」

 

『え〜、多分って不安だな〜』

 

「大丈夫、ルビィのことは狙わない。代わりに花丸を狙う」

 

『未来君全然反省してないよね?』

 

「あ、バレちゃった?」

 

『ふふっ、バレバレだよぉ〜』

 

 通話を開始した時から既に1時間以上経過していた。俺が大きなあくびをしたことをきっかけに、互いに時計を見て、自分たちがどれ程長い時間電話をしていたかに気がついた。

 

『わっ、もうこんな時間!?ごめんね、こんなに長く付き合って貰っちゃって!』

 

「全然!俺も楽しかったから!」

 

 

 流石にこれ以上電話を続けてしまうと、ルビィちゃんの明日の練習に影響が出かねない。名残惜しいが、終了しなければならない。

 

「じゃあ切るね。勉強頑張ってね。おやすみ」

 

『うん、今日はありがとう!おやすみ〜』

 

 

 その言葉を最後に、電話は切れた。しばらくの間、横になりながら電話の余韻に浸っていた俺だったが、湯が沸いていた事に気がつき、風呂場へ向かうのだった。

 

 

 この日から俺は時々、ルビィちゃんと電話をするようになった。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 時は少し流れ、テストが終わった最初の休日。俺はルビィちゃんと以前約束した三島のケーキ屋を訪れていた。

 

 

「わぁ〜!このケーキ、すっごく可愛い!」

 

 

 ルビィちゃんは卓上に置かれたケーキを目を輝かせながら写真に収めていた。

 

 

「それね!可愛いのに美味しい」

 

 

 ケーキも可愛いけど、ルビィちゃんが1番可愛いよ!なんて言えたらいいがノミの心臓である俺は心の中で思ふ事しか出来ぬのだった。

 

「あ、ルビィちょっとこっち寄って?」

 

「うん、いいよ」

 

「はい、ちーず」

 

 俺もインスタはやっていないが、ルビィちゃんとのイチャラブデート記念に写真を撮る。パシャリと。

 うーん、ルビィちゃんの笑顔可愛すぎる。これ隣に写ってる奴いらなくね?

 

「未来君、その写真送って貰ってもいい?」

 

「もちろん。あ、加工して俺だけ切り抜いとくね」

 

「えぇ!?そのままでいいよ!?」

 

 隣に写っている変態を編集でカットした後送ろうと思ったが、ルビィちゃんが言うのであれば仕方ない。俺なんかが写ったままでもいいとは、やっぱりルビィちゃんはいい子だなぁ。

 

 

「それにしてもごめんね、せっかくの休日に誘っちゃって」

 

 

 祭りは来週に迫っている。そんな時に誘ったのかと言われれば反論の余地無しだが、しかし、俺はしっかりと「ライブが終わったら一緒に行かない?」と誘った。そう誘ったのだが、なんとルビィちゃんが今日を指定したのでこうやって来ているのだ。とはいえ、そもそもこんな時期に誘わなければと、申し訳なく思ってしまう。

 

「ううん、ルビィも前からここに来たかったから。ルビィの方こそ、今日は誘ってくれてありがとう」

 

「いやいや、最初に誘ってくれたのはルビィだし、前は俺の都合が合わなくて断っちゃったから、こっちから誘うのは当然のことだよ」

 

「都合が悪かったのなら仕方ないよ。ルビィも練習が忙しくて中々誘う事が出来なかったから...」

 

 

 互いに自分が悪いと主張する、応酬が始まってしまった。

 

「それを言ったら俺だって、誘う機会なら他にもあったのにこんな忙しい時期になっちゃって...」

 

「でも未来くんはルビィのしたい事に合わせてくれてるから...」

 

 

しかし、このままでは無意味に時間が過ぎでしまうだけだ。

 

 

「あー、ルビィ、ここは引き分けってことにしない?」

 

 

 せっかくの楽しい休日がこんな事で台無しになってしまうことは許容できないため、互いに落とし所を見つけられるよう、折衷案を出す。

 

 

「えへへ、ルビィもその方が良いと思った!」

 

 

 楽しそうに笑うルビィちゃんにつられて、俺も自然と笑顔になってしまう。明るくて純粋な笑顔で周りの人も幸せな気持ちにさせる、これがルビィちゃんの魅力なんだよな。

 

 それから俺たちはケーキを食べ終え、余ったコーヒーを飲みながら暫くの間お喋りを楽しむ。

 

「じゃあ、そろそろ出ようか!」

 

「うん!」

 

 会計を済ませて外に出る。カロリーの消費を兼ねて、駅に向かって歩く。この後の予定が決まっていないため、歩きながら次行く場所について話し合う。

 

「この後どうしよっか?」

 

「うーん、いろいろ買いたいものがあるから、沼津のらぽーとに行かない?」

 

「いいよ!ルビィもらぽーとの手芸屋さんに行きたい!」

 

 

 らぽーとは沼津駅から車で10分程の場所に位置する大型ショッピングセンターだ。オシャレな店やグルメが多く、この素晴らしい日に足を運ぶのにも丁度いい。

 

 

「おぉう、人いっぱいだな...」

 

「座れてよかったね」

 

 丁度三島駅に着いた頃に、らぽーと行きのバスが来たため乗車する。休日でそこそこ人は多かったが運良く2人掛けの席に座ることができた。

 

 

 数十分後、定刻通りバスはらぽーとに到着する。らぽーとに入店し、最初に向かったのは、ルビィちゃんが行きたがっていた手芸屋だった。

 

 

「わぁ、相変わらずこのお店は色々あるなぁ!」

 

  

 ルビィちゃんは目を輝かせながら、店内を物色していた。

 ルビィちゃんは裁縫が得意で、渡辺先輩の衣装制作をよく手伝っているらしい。可愛い上に女子力がある。これもう完璧だろ。はい決定決定、ルビィちゃんは人間国宝。異論は認めない。

 

「あっ、未来君これ見て!」

 

 ルビィちゃんは心なしか嬉しそうに、陳列されていた綺麗な赤色の布を手に取った。

 

「去年のクリスマスにね、お姉ちゃんにこの生地で編んだマフラーをプレゼントしたんだ」

 

 いいなぁ、ルビィちゃんから手編みのマフラーなんて貰えたら俺は、死んでもいないのに成仏してしまいそうだ。ダイヤさん、ルビィちゃんの実の姉とはいえこれには流石に嫉妬せざるを得ない。

 

「へぇ、凄いな。マフラー編めるなんて。それに、ダイヤさんは幸せ者だなぁ」

 

 

 

 

 それから暫く店内を回った後、手芸屋を出て次の店に行く。次は本屋だ。その後は雑貨屋。最後に服屋。お互いに用事を終える。

 

「未来君、ス○バに寄ってもいい?」

 

「いいよ〜。行こう」

 

 時間に余裕があったので店内をぶらついているとルビィちゃんがスタ○に寄りたいと言ったので、入店する。

 スタバは内浦の田舎もんの俺にはあまり縁のない場所だ。同じ田舎もんなのにルビィちゃんは慣れているようで、臆することなくレジに向かう。普段は小さな身体が、今はとても逞しく見えた。

 

「限定メニュー売り切れちゃったんだ。なら今日はキャラメルフラペチーノにしようかなぁ。未来くんは何にする?」

 

「うーん、ルビィと同じやつで」

 

「カスタマイズはする?」

 

「カ、カスタマイズ?ヤサイニンニクマシマシ的なやつズラ?」

 

「ふふっ、違うよ。あと花丸ちゃんの真似そっくり」

 

 

 渾身の花丸のモノマネがどうやら面白かったようで、ルビィちゃんは可愛らしく微笑んでくれた。

 

「フラペチーノのホイップクリームとかキャラメルソースを多くできるんだよ」

 

 ルビィちゃんからカスタマイズの説明を受ける。

 写真見る感じデフォルトでもだいぶホイップ掛かってるんだが、あれを更に増すことができるのか!?スターバックス、恐ろしい。

 

 

「じゃあせっかくだしカスタマイズしてみようかな」

 

 

 ルビィちゃんに勧められ、俺はホイップとキャラメルソースのトッピングを追加で注文する。ホイップソースマシマシアメリカンスタイル。

 それにしても、ショート、グランデ、ベンティってなんやねん。普通にSMLにしろや。後ろに人並んでるし、普段見ないサイズの刻み方してるしで焦ったわ。

 

 

「うぉ!?甘くて美味しい!凄まじいなこのカロリー爆弾」

 

 

 少しして、店員さんから注文の品を受け取った俺とルビィちゃんはテーブル席に座り、フラペチーノを味わう。

 

 

「美味しいけど、飲み過ぎると太っちゃうのだけが欠点だよね」

 

「フラペチーノとはいえ、所詮はカロリーの無い水に味をつけたものなので、カロリーは実質ゼロです」

 

「そ、そうだよね!こんなにスルスル飲める物にカロリーがあるなんてあり得ないよね!」

 

「そう!つまりカレーもラーメンもスルスル飲めるからカロリーはゼロ!」

 

「スイートポテトもオーブンで焼いてカロリーが燃えちゃうからカロリーはゼロ!」

 

「その通り!流石ルビィちゃん天才!」

 

「いやぁ、天才ってそんなぁ!未来君も大天才だよ!」

 

 ルビィちゃんと2人でカロリーゼロ理論を唱えて盛り上がった。

 しかし、盛り上がり過ぎてしまったため、バカな会話を聞かれてしまい、近くの席に座っている人達がニコニコとこちらを見ていた。その事に気が付いた俺とルビィちゃんは、恥ずかしくなって逃げる様に店を出るのだった。

 

 

 

「祭りの準備、だいぶ進んでるな」

 

「いつもより街が賑やかで楽しいね!」

 

 らぽーとから沼津駅前に戻ってきた俺とルビィちゃんは、内浦行きのバスが来るまで少々待ち時間があったため、暇を潰すために商店街の付近を歩いていた。

 

「あと1週間かー。沢山人が来るだろうし緊張するね」

 

「うん、緊張してる。緊張してるけど、今回はお姉ちゃんが一緒のステージにいてくれるから、いつもより平気なんだ」

 

 ルビィちゃんは頼もしさを感じさせる表情でそう言った。中学時代、俺と話すことにさえ、あんなにも怯えていたこの子がこんな顔をする様になるとは。それに今のセリフは、普段真剣に練習に取り組んでいるからこそ発する事が出来る物だと俺は思う。

 ルビィちゃんの確かな成長を実感し、万感の思いで胸が満たされていた。

 

「それに、未来君とお祭りを回るのもすっごく楽しなんだ!だから、今は緊張よりも楽しみの方が大きいの!」

 

「ルビィ...」

 

 

 

 

.........

 

 

 

 

 

 はっ!?ルビィちゃんが可愛過ぎて一瞬意識飛んでた。

 

 

「そっか、俺も楽しみ。ライブ当日は俺、ペンライト沢山買っていって応援するから!ピンク!黄色!白!3種類のペンライトをこうやって両手の指の間に挟んでね!」

 

 

 まるで鉤爪のように、ルビィちゃん、花丸、善子のイメージカラーのペンライトを装備する。そしてジャパニーズWota-geiを踊るSAMURAI、それがライブ中の俺だ!!!

 

 

「え〜、ピンクだけにして欲しいなぁ」

 

「え?」

 

 バカなことを考えて、勝手にテンションを上げていた俺だったが、ルビィちゃんが放った予想外の一言に、思考がフリーズする。

 

 

「ルビィのことだけ応援して?」

 

 

 ルビィちゃんは足を止めて、おねだりをする様に視線をこちらに送ってきている。

 それはとても庇護欲を掻き立てられる動作で、俺の脳を惑わしてくるのだった。

 

 

「い、いやそれは...ルビィの気持ちも分かるけど、それはちょっと...」

 

 

 罪悪感を抱きながらも、そう言葉にして伝える。それを聞いたルビィちゃんは、残念そうな表情していた。

 申し訳ない気持ちで胸が締め付けられる。

 

 

「えへへ、嘘だよ〜」

 

 

 しかし、ルビィちゃんは直ぐに顔を綻ばせ、いたずらっぽく笑いながらそう言った。

 

 

「!?も、も〜!ビックリしたよ〜!ルビィ、普段そんなこと言わないから!」

 

 

 俺は、ルビィちゃんにからかわれた事に気がつく。

 何度も頭の中で妄想していた状況ではあったが、現実でルビィちゃんにからかわれたのは初めての経験だった。

 

「ごめんね。未来君とお話しするの、すっごく楽しかったから、つい嘘ついちゃった」

 

 

 ニコニコと楽しそうな表情で、ルビィちゃんはそう口にする。

 そんな様子を見て俺は、もう既に、俺とルビィちゃんの間には壁のようなものは一切なく、気が置けない間柄になる事が出来たのだと、しみじみと実感していた。

 

 

「そっか。楽しなってついつい言っちゃったんなら仕方ない気もするけど...やっぱり嘘はいけないよ?だから、嘘ついたお詫びに今度のライブで沢山ファンサービスして貰わないと」

 

「え、ファンサービス?」

 

 俺の言葉に、ルビィちゃんは不思議そうに首を傾けていた。

 

「そうそう。俺だけに向けたファンサービスね」

 

「いいよ!どんなファンサービスがいい?」

 

「じゃあウィンクしてウィンク!俺に向けてライブ中にこんな感じで、ね!」

 

「ふふふっ、未来君、両目とも瞑っちゃってるよ?」

 

「わわ!まじで!?」

 

 

 和気藹々と話に花を咲かせながら、俺たちは祭り模様に変わっていく街を練り歩くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ルビィちゃん可愛い。

次回から祭り行きます。祭りから結構物語が劇的に進んで行く予定です。


感想評価、待ってます!


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天使とお祭り!頂き女子を添えて!!

タイトル終わっとる。ざけんなや 良いのが浮かばん ドブカスが

誤字脱字あったら報告していただけると助かります!


 

 

遂に祭り当日。

 

 

 俺は、Aqoursの皆さんとの待ち合わせ場所である沼津駅南口にいた。

 これから美少女集団と一緒に花火大会を巡ることになっているため、正直物凄く緊張している。

 顔面偏差値最強集団+モブ。悲しくなってくるね。

 

「こんちゃす!!先輩方!!!」

 

 集合場所に着くと俺は、直ぐに頭を下げ、大きな声で体育会系な挨拶をする。

 今の俺はライナーの様な爽やかナイスガイだ。ルビィちゃん 結婚しよ。

 

 花丸達ははまだ到着しておらず二年生と三年生の先輩しかいない。かなりのアウェーである。普段は花丸達のおかげで馴染む事が出来るが、3人が不在の間は無礼を働かない様にしなければならない。もし今この人達の機嫌を損ねてしまった場合、小原家のパワーにより日本で最も深い海である駿河湾に沈められてしまうことだろう。

 

早く来てくれ〜、3人とも〜。

 

「チャオ〜、いい挨拶するわね未来!」

 

「しゃす!あざす!小原先輩!!」

 

 活気よく挨拶しつつも自然と一歩、怖気付いて後退してしまう。

 初めて会った日から、小原先輩を前にするとついつい身構えてしまうのだ。

 

「久しぶりね、天城君」

 

「アス!お久しぶりっす!桜内先輩」

 

 俺は、最敬礼45度を超える勢いで深々と頭を下げ挨拶をする。

 すると、桜内先輩はこちらに近づき、何やら耳打ちをしてきた。

めっちゃ良い匂いするグヘヘ

 

「例の物の進捗はどうかしら?」

 

「順調です。テスト期間で少し遅れが生じていましたが、あと1週間以内には完成するかと」

 

「流石、仕事が早いわ」

 

 以前に名古屋のとら○あなで遭遇して以来、俺と桜内先輩は互いの同人趣味を共有する仲間になっていた。たまに桜内先輩に呼び出され、他の人とは絶対に出来ない同人誌談義に花を咲かせたりする...殆ど話すのは桜内先輩で、基本俺は相槌しながら聞いているだけだが。

 そして俺と桜内先輩は現在、かなまりの百合同人を秘密裏に共同執筆している。まず俺が豊富な語彙を生かして夢小説を執筆し、その後桜内先輩が絵を描いて漫画にする(このとき俺はまだ知らなかった。まさか桜内先輩の画力があんな...)。桜内先輩より松浦先輩が小原先輩に壁ドンと顎クイをするシーンの描写は特に力を入れろというオーダーがあった。

 勿論俺と桜内先輩のみで楽しむ物であり、他人、特にAqoursのメンバーの誰かにバレそうになった場合は、データの入っているパソコンごと破壊し、紙の場合は飲み込んででも証拠を闇に葬り去るという誓いを俺たちは立てている。また、流出やインターネットへの投稿、販売や譲渡などは厳禁だ。モデルになった人物の許可なしでそんなことやったら普通にシャレにならない犯罪だしね。

 もう完全に手遅れな気もするけど!

 

 

 コソコソと桜内先輩と進捗を報告し合っていると、背後から俺を呼ぶ声が聞こえた。

 

「お待たせ、未来」

 

 振り向くとそこには、色鮮やかな浴衣を身に纏った3人の美少女が立っていた。

 

「お、おぉ...!」

 

 素晴らしい!ビューティフォー!キュート!生きててよかった。こんな可愛い娘達とお祭りを回れるなんて...ものすごく嬉しすぎて叫びたい気分です!←叫んでいいよ?

 

ゔわぁぁぁ!!!(パルキア)

 

「ふふっ、どう未来〜?善子達の浴衣姿は〜?」

 

「お姉さん達感想が聞きたいな〜」

 

「ゔぇぇ!?」

 

 高海先輩と小原先輩が顔をニヤつかせながら、背後からそう尋ねてきた。この人たちはいつもそうだ。こういう事があるといつも楽しそうに余計な事をしてくる。

 とはいえ、俺だって成長している。最近、少し位歯の浮く様なセリフを言う事にも耐性がついてきた。だが、この人達の思惑通りになるのは悔しく感じてしまう。

 

「ほらほら、思い切って言っちゃいなさい。善子なんかあんなキュートな顔で未来の事見てるわよ〜?」

 

「そうそう!きっと期待してるんだよ!未来君に浴衣姿を褒めてもらうこと!」

 

 先輩方にそう言われ、善子に目線を向けると、確かに善子は俺の事をチラチラと恥ずかしそうに見ていたのだった。

 

「未来。どうかしら?」

 

 その仕草に不思議と胸が高鳴ってしまい、伝えようとしていたことを、言い淀んでしまった。

 

に、似合ってます

 

「聞こえないよ〜」

 

「もっと大きなボイスで言わないと!」

 

「くっ...似合ってるぞ善子ぉ!!」

 

俺はやけくそ気味にそう叫んだ。

 実際、善子の浴衣姿は可愛さと美しさが上手く混在しており、自身の美貌を存分に発揮した非常に魅力的な着付けとなっていた。

 

「...ありがと」

 

 そして、俺の言葉を聞いた善子は、嬉しそうに口元を緩めていたのだった。

 

「え〜、それだけ〜?もっとこう、他にないの?可愛いとか、美しいとか!」

 

「似合ってるぜベイべー...とか!」

 

「あんたらいい加減にしろよ?」

 

 こんにゃろっ!わからせを愛し、わからせを追求してきた俺がわからせっぞコラァ!!ついでに俺はルビィちゃんにわからせられたいぞコラァ!!

 

「ほらほら二人とも、それくらいにしときな」

 

 そんな犯罪一歩手前な思考に至っていた俺だったが、松浦先輩が助け船を出してくれたため事なきを得た。松浦先輩が高海先輩と小原先輩の首根っこを掴んで制止してくれたのだ。

 

「助けてくれてありがとうございます、松浦先輩...」

 

やはりこの人は救世主だ...!

 

 松浦先輩の有り難みを深く実感していると、突然、ツンツンと背中を突かれた。振り向くと、桜色の浴衣を身に纏い綺麗な紅い花飾りを付けたルビィちゃんがこちらを見ていた。

 

ーーーーーー突如脳内に溢れ出す存在しない記憶

 放課後、夕陽が差し込む教室。その窓際の席で俺はやる事もなくぼーっとしていた。時折爽やかな風が入り込み気分が良い。先程まで、屋上から元気な声が聞こえてきていたがそれも止んでしまっており、また1つ、有限な青春のページが捲られていく音が聞こえた気がした。ツンツン。ノスタルジックな気分に浸っていた俺だったが、急に頬を突かれた事で我に返り、突いてきた主を確認するため振り向く。「未来君、お待たせ」。そこには、俺の最愛の人がいた。どうやら少々息が乱れているようだ。「いつも言ってるけどさ、そんな急いで来てくれなくてもいいんだよ?」「だって、未来君と早く会いたかったから」そんなふうに言われてしまえば、俺はもう何も言うことはできない。本当に愛らしい彼女である。「じゃあ帰ろっか」「うん!」いつもの様に2人の手は繋がれる。隣り合って歩き、同じ景色を見て、互いの温もりを感じながら帰路に着く。いつもの帰り道。今日は特に夕陽が綺麗だったため、砂浜に寄り、海を眺めながら何でもない話に花を咲かせた。そして、暫くして夕焼けが沈もうとする寸前、2人の影は徐々に重なりーーーーーー

 

 

「未来君は浴衣じゃないんだね」

 

 そんなはじめからクライマックスな長編小説を脳内で書き始めた俺だったが、ルビィちゃんの声で現実に戻る。

 ちなみにこの作品は最終回で暴走し伊◯誠顔でキスしようとした俺をルビィちゃんが思いっきりひっぱたいて連載終了。

 

「家に浴衣が無くってさ。でも、代わりに張り切ってオシャレしてきたからダイジョーブ!」

 

「うん!カッコいいよ、未来君!」

 

「ゔぇぇ!?ゔぇへへ...ありがとう。ルビィもその桜色の浴衣、凄く似合ってるよ」

 

「そうかな?でも嬉しいなぁ、ありがとう!」

 

 ルビィちゃんが可愛過ぎるんだが?これが最近話題の可愛さの頂点に立つ女子、略して頂き女子か。

 

 

「じゃあ全員集まった事だし、行こっか」

 

 

 そんなこんなで、合流した俺とAqoursの皆さんは、3年生の先輩方を先頭に祭りへ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 2、3年生の方達の後ろをついて行く形で、で人混みの中を進む。流石は東海地方でも最大級の規模を誇る祭りだ。ここまでの人混みはこの祭り以外では片手で数えられる程にしか経験したことがないレベルである。

 沢山の屋台が並んでおり、楽しい気分になると同時に、美味しそうな香りが鼻孔をくすぐり空腹感を高めてくる。

 俺達は、偶に屋台に寄りながら、それぞれはぐれない様に祭りを楽しんでいるのだった。

 

「あれ?花丸ちゃんは?」

 

 ふと、ルビィちゃんはそう言って、キョロキョロと周囲を見渡していた。俺も確認してみたが、確かに花丸はいなくなっていた。

 食いしん坊の花丸のことだ。きっと美味しそうな匂いに足を止めてしまい、人混みに巻き込まれてしまったのだろう。

 

「人が多過ぎて全く気がつきませんでしたわね」

 

「うーん、この人混みだと簡単には見つからなさそうだし、どこか分かりやすい場所で待っとこうか」

 

 松浦先輩がそう提案し、他の方々も賛成だったようで合流場所に関して意見を出し合っていた。

 しかし、やはり1人くらいは探しに出たほうがいいかもしれない。田舎もんの花丸は、俺以上にこのレベルの人の多さを経験した事がないだろう。そんな中、急に1人になってしまい不安になっているはず。

 

 

「僕が探してきます!」

 

 

 俺以外は浴衣を着ており、普段は使用しない下駄を履いているため、花丸を探しに行くのは厳しいはずだ。ここは俺が行くべきだろう。

 

「ムフフ、この機に乗じて花丸と二人きりになろうなんて...策士ね!」

 

「そんなんじゃないですってば!!」

 

 力強く否定した俺だが、確かに小原先輩の言う通りだわ。皆さんからの信頼も得られ、加えて、浴衣姿の超絶可愛い花丸と2人きりになれるとかなんつー役得だよ。

 

なんか一気にやる気出てきたぜぇぇぇ!!

 

「ソーリソーリー。分かってるわ。花丸のことよろしくね」

 

「未来くんありがとう!気をつけてね!」

 

「ありがとうルビィ!頑張ルビィしてくりゅ!」

 

「生きて戻ってくるのよ!」

 

「先に行け善子!後で必ず合流する!」

 

「ヨハネ!フッ...フラグ立ちまくりね、リトルデーモン」

 

 ルビィちゃんと善子の声援を受けながら、俺はさっき歩いた道へ引き返す。

 そして、徐々に善子達の姿は人混みの中に消えてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 その後俺は、なんとか脇道にそれて人混みから脱出することに成功する。

 そしてポケットから携帯を取り出し通知画面を見ると、既に花丸から俺や花丸たちで組まれたLINEグループ、『いちねんず〜堕天使とリトルデーモンのサバト〜』にヘルプのメッセージが来ていた。恐らく花丸も同じように人が少ない所に避難して、携帯を握りしめているのだろう。因みにこのLINEグループに確定するまでには、紆余曲折あった。どうしてもこの名前にしたい善子と、部分的に反対派の俺。追放の応酬で地獄みたいな状態になり、相手を追放している間に勝手にグループ名を変更するという行為が横行し、なんか楽しくなってきた俺と善子は花丸とルビィもついでに追放し、グループへの再加入の方法が分からない花丸は長い事グループに復帰出来ない、なんて混沌とした事態も起こったりした。全く、なんて迷惑な奴なんだ善子。

 俺は素早く花丸の個人チャットにメッセージを送る。すぐに既読がついたが、中々返信は来なかった。花丸はド級のデジタル音痴のため、フリック入力が遅いのだ。そんなアナログな所も花丸の可愛さを構成する1つの要素だけどね!

 少し待つと、花丸から居場所を示すメッセージが帰ってきた。ここからそう遠くはない様だ。

 

「うわぁ、ほんと人多すぎ...」

 

 

 この人の多さでは、目的地に着いても簡単に見つけることは出来ないと懸念していたが、花丸の容姿はそこいらのモブ(俺を含め)とはレベルが違うため簡単に発見することが出来た。

 道の端で花丸が、不安そうな表情で携帯の画面を見つめていた。

 

「おーい、花丸ー!」

 

「あっ、未来君!」

 

 人混みに揉まれながらも声を上げて手を振ると、花丸は俺に気がつき、安堵の表情を浮かべながら、手を振り返してくれた。

 

「はぁ...はぁ...人混みヤバすぎ」

 

「ごめんなさい...」

 

 疲労により膝に手をつき息を切らしていた俺の姿を見てか、花丸は顔を俯かせ、申し訳なさそうにしていた。

 

「いや、いいのさ。色んな屋台があって楽しいし、ついつい目移りしちゃったって仕方ないよね」

 

「でも、未来君にも皆んなにも迷惑を掛けちゃったずら...」

 

「俺も皆さんもそんな事思うような人間じゃないよ。ただやっぱり心配はしてたから、戻ったら直ぐに心配かけちゃってごめんずら!って言うんだよ?きっと笑って許してくれるさ」

 

 こんなにも人が多いと迷子になる人くらい大勢いるだろうし、仕方のない事なのだ。   

 それにこんな楽しい日に、そんな顔はして欲しくない。ちょっとしたハプニングは起こってしまったが、それでも俺は花丸に、そして皆さんに精一杯楽しんで欲しいと思っている。

 あと俺は、花丸にはこの祭りでもっと色々なものを食べてもらってそのご立派な花丸マウンテンを成長させて欲しいと思ってるのでねぇ。

 

「そうだね...うん、分かったずら!」

 

 

 俺の言葉で花丸は気を持ち直し、いつもの様子に戻ってくれたようだ。

 

「よしっ!じゃあ早速皆さんと合流するぞ!」

 

 気を取り直して、合流に向けて意識を切り替える。

 最後に携帯を見てから少し時間が経っているため、もしかすると誰かから重要な連絡が来ているかもしれない。

 

「ルビィ達から連絡とかきてる?」

 

「うん。ルビィちゃん達は駅前にいるみたいずら。らいんできたずら」

 

 そう言って花丸は、携帯の画面を俺に見せてくれた。確かにルビィちゃんからメッセージと共にウサギの可愛らしいスタンプが送られてきている。成程、合流し易くするために駅前に戻ったのか。

 しっかし、ルビィちゃんはLINEしてるだけでも尊いなぁ。いや、ルビィちゃんはただ呼吸しているだけでも尊い。存在が尊いんだ。それに迷える子羊である俺達のために集合場所を教えてくれるなんて、なんて優しいんだ!

 

「駅前か...結構距離あるね」

 

 目の前には先程と変わらない人混み、いやもしかしてだけど人増えてないか? 

 とはいえ、この人波を進む他に駅前に辿り着く術はない。俺と花丸は、意を決して再び人混みの中に飛び込んだ。 

 

「あーもう、人多すぎ...花丸、大丈夫?」

 

「なんとか...でも少しでも気を抜いたらまたはぐれちゃいそうずら...」

 

 花丸と2人で人を掻き分けながら歩く。やはり更に多くなっている気がする。これはマズイ。幾ら花丸がそこいらの人間とは一線を画す容姿をしているとはいえ、この混雑では流石に見失ってしまう。何か確実に2人揃って駅前に辿り着く方法はないか。

 

そう思考していると、突如天啓が下る。

 

「そうだ!」

 

「どうしたの?」

 

「はぐれないように手でも繋ぐ?」

 

 うっそーん。天啓だなんてそんな大袈裟なものじゃありませーん。ただただ私利私欲にまみれたツイフェミの敵たるクソオスの性搾取的思考です。こんな考えしか出来ないなんて怒りで震えて涙が止まりません!ツイフェミ万歳!ツイフェミ万歳!表現の自由を制限しようとする〇〇なツイフェミ万歳!

 

「...え?」

 

意外そうに目を見開く花丸。ヤバい、流石にドン引かれたか?

 

そう思った俺は、慌てて発言を訂正する。

 

「冗談だよ冗談!確かに手を繋いだ方がはぐれる確率も下がるとは思うけど、流石にそんな恥ずかしいこと「いいよ」俺なんかと出来ないよ......え?」

 

「だから、いいよって言ったずら。マルが勝手な行動をしたせいで皆んなとはぐれて、未来君にも迷惑をかけちゃったずら」

 

冗談で言ったつもりだったが、まさか了承してもらえるとは。

 

 

これって...ああ、天城の勝ちだ(確定勝利フラグ)

 

 

 

「じゃ、じゃあ...よろしくオナシャッスッ!!」

 

 急いでポケットに入れているハンカチで手を拭い、花丸の前に手を差し出す。

 花丸は優しく微笑みながら、その手を握ってくれるのだった。

 

花丸と手を繋ぎながら人混みの中を進む。

 

「ふふっ、未来君手汗が凄いよ?」

 

「ご、ごめん!気持ち悪いよな...」

 

 俺は小さい頃から手汗が出やすい体質で、それをコンプレックスに感じている。そのため、花丸に嫌悪感を抱かれてしまったのではないかと不安を抱きながら、花丸に謝罪の言葉を述べる。

 

「別にそんな事思ってないよ。寧ろ未来君もマルと一緒で緊張してるんだなって分かってちょっと安心したずら」

 

「ふぅ...マジでスイートだぜ花丸!!」

 

 これデートやん。男女二人、お祭り、手を繋ぐ、これらから導かれるものとかデートしかないやん。インスタやってないけど、デートなうってインスタに投稿してもいい?

 そんな衝動に駆られ、周囲の人間なんざ関係ねぇ!と携帯を取り出し写真を撮ろうとすると、唐突に花丸が足を止めた。

 

「ねぇねぇ未来君!あの屋台に書いてあるチーズドッグってなんずら!?」

 

 花丸は目をアニメキャラのようにキラキラと輝かせながら屋台を指差す。人混みの中急に止まって大丈夫かと焦ったが、都合よく周囲の人が俺たちを避けるようにして歩いていたため、花丸が指差した方向に目をやる。

 

「おー、やっぱ売ってるか。詳しくは俺も知らないけど、韓国版のアメリカンドッグらしいね。ソーセージの代わりにチーズが入ってて食べるとチーズがびよ〜んって伸びるんだってさ」

 

 やはり花丸は流行に疎い。いや、これに関してはもう一昔前に流行は過ぎ去ったとは思うけど。

 しかしながら、これは以前計画した、『アウトレットで花丸にドスケベコスさせよう大作戦』が陽の目を浴びる日が来るのでは!?と期待せざるを得ない。

 

 

「話を聞いただけなのに涎が出そうずら...」

 

 

 美少女JKの涎...イイ!!っていかんいかん。流石に涎に興奮する男とかキモ過ぎワロエナイ。いやでも、センチュリースープはペンギンの涎で完成したし...

 人類の歴史は挑戦の歴史。未知のものに手を伸ばし、トライアンドエラーを繰り返す事で今の豊かな生活を作り上げたのだ。花丸の涎ペロペロ。ついでに本体にもペロペロ。流石にキモ過ぎて悪寒走ったわ。

 

しかし、花丸には悪いが辛い現実を告げなければならない。

 

「食べたそうな所悪いけど、ルビィ達と早く合流しなくちゃいけないからそんな暇無いよ」

 

このままでは、Aqoursの皆さんが祭りを楽しむ時間が減ってしまう。せっかく青春の時を謳歌しようと浴衣まで着て祭りに来たのだ。特に、3年生の先輩方はこれが高校生活最後の祭り。出来る限り早く合流してエンジョイしてもらいたい。

 

「ずら!?確かにそうずら...ね...」

 

 いや、たかがチーズドッグ食べられなかった位でそんな絶望顔すんなよ、興奮しちゃうじゃないか......って違う違う。

 

 まぁ、少しくらいならいいか。俺は、花丸の手を引いてチーズドッグの屋台の前まで行く。

 

「すいません、チーズドッグ4本ください」

 

 ラッキーなことに並んでいなかったので、店員さんに話しかけ、注文をする。

 

「えっ?なんで4本も...」

 

 先程の発言と矛盾した行動をとる俺に、花丸は怪訝な表情を浮かべていた。

 

「奢るよ。花丸は1本じゃ満足できないだろうから4本にした。俺1本に花丸3本ね?」

 

「えぇ!?そんなの悪いからいいずら!それにいくらマルでも三本も食べる程食い意地はってないずら!」

 

 花丸の食欲は凄い。流石育ち盛りの高校一年生なだけはある。とはいえ、その栄養は殆どは身長に行かず、OPIに行ってるようだがね...ヌルフフ...

 

「折角のお祭りなんだ。カッコつけさせてよ」

 

奢られる事に遠慮をする花丸に、俺はキメ顔をしてそう言う。

 

「その顔やめるずら」

 

 ジト目の花丸にそう言われてしまうが、これからチーズドッグを食べることが出来る期待からか、ソワソワしているのが伝わってきた。微笑ましい限りである。

 

可愛いやつめ!

 

「ん〜!美味しいずら〜!」

 

 食べれないと言っていたが、余裕な面持ちでしっかりと3本のチーズドッグを完食した花丸に戦慄しながらも、この小さな身体のどこに取り込まれたのか、人体の神秘を感じるのだった。

 

完食した俺達は、再び駅前を目指して歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

「わぁ!未来君、あれなんずら!?」

 

「おぉ!楽しそうだね!寄っていこう!」

 

 

 あれから俺達は、待っているルビィちゃん達に申し訳ないと思いながらも、ちょくちょく寄り道をしてしまっていた。

 

 

 

ーーーーーー射的

 

「へい兄ちゃん!美人な彼女さんに良いところ見せたげようぜ!」

 

「わかってんなぁおっちゃん!そう!こちらにおわすは俺のかのーーー」

 

「違うずら」

 

「ですよねぇ!」

 

 花丸に即答されてショックだが、射的は得意だ。花丸に俺のかっこいい姿を見せてやろう。

 

「ほい!ほい!ほい!」

 

「ナニィ!?」

 

「わっ、凄い!次々と景品を打ち抜いて行っているずら!」

 

フハハハハッ!内浦のレディ○ガンとは俺のことよっ!

 

「フハハハハッ!内浦の野○のび太とは俺のことよっ!」

 

 俺は、設置されている景品を片っ端から撃ち落としていく。しかし、ゲーム機などは今回は狙わない。高額景品を狙うのは技術よりも資本と時間の勝負になるからだ。射的屋台は資本主義の犬じゃけぇ。

 

「そうやって連れのお嬢ちゃんのハートも打ち抜いたってのか、兄ちゃん!」

 

「イグサクトリー!」

 

「「ハハハハハッ!」」

 

「なんか猛烈に帰りたくなってきたずら...」

 

 おっちゃんいい事言うな!明日1人で来た時には沢山金落としていってやるよ!ただしゲーム機は貰ってくけど!

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーミニカステラ

 

 

「ミニカステラを食べるといつも思い出す、懐かしい記憶。よく母さんの買い物に着いて行った帰りに買ってもらったなぁ......てっあれ!?もう無くなってる!?」

 

「ご、ごめんね!未来くん全然食べてなかったからお腹いっぱいなのかなって思って...」

 

「いやお前どんなけ食べんねん」

 

 俺が幼き日の思い出に浸っている間に、なんと全てのミニカステラを花丸に食べられてしまった。食うスピードと遠慮の無さが常軌を逸している。

 これが最近話題の、超スピードで食料をご馳走様する女子、略して頂き女子か...

 

 

 

 

 

ーーーーーータピオカミルクティー

 

 

「花丸、これが例のブツか」

 

「そ、そうずらね。これがクラスの子達がよく話しているたぴおか...」

 

「カエルの卵みたいだねぇ」

 

「ダメずら!マルも実はそう思ってたけどそれは多分言ったらダメなやつずら!それにこれから飲むんだよ?」

 

 確かに失言だった。花丸からデリカシーのない男だと思われてしまったかもしれない。

 

「ごめんごめん。じゃ、飲みますか」

 

「う、うん」

 

「あれ、飲まんの?」

 

「未来君こそ」

 

「いやいや、お先にどうぞ」

 

「マルは後でいいずらよ」

 

「レディーファーストでしょ」

 

「時代は男女平等ずら」

 

 譲り合い大国JAPAN。タピオカを購入したはいいが、未知の飲み物を前に俺と花丸は互いに二の足を踏み未だ飲めずにいた。

 

「しゃあなし!先に逝ってやんよ!」

 

 タピオカミルクティー、又の名を暴力団員タピ岡!そんな恐ろしい異名を持つ飲料を毒味もせず花丸に飲ませられん!

 恐る恐るストローに口をつけ、少しだけタピオカを口に含む。瞬間、口の中が甘さに支配された。俺が飲んだのを見て花丸も飲む気になった様だ。

 うーん、この飲み物、ミルクティーは美味いが、タピオカ本体は特に味がするわけでもない。普通にアリだとは思うが、値段的にこれはちょっと...

 

「「微妙(ずら)〜」」

 

思わずそんな言葉が漏れてしまったが、花丸も同じ気持ちだった様で声が重なった。

 

「ふふっ」

 

「あははっ!」

 

 

 それがなんだかとても可笑しくて、俺と花丸は声を上げて笑ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

「だいぶ遅くなっちゃったね」

 

「そうだな〜。寄り道し過ぎたね。急がないと」

 

 あれから大分時間が経過し、流石にそろそろ合流しないとマズイと考え、俺と花丸は急足で駅前へ向かっていた。

 

「もう。チーズドックを食べた後、マルはそのまま直ぐに合流しようって言ったのに、未来君が寄り道したいって言うからこんなにも遅くなっちゃったずら」

 

「何を言う。俺の分のベビーカステラを食べておいて。むっちゃノリノリだったじゃないか」

 

「あ、あれはあんな良い匂いを発していた屋台が悪いずら」

 

「ははっ、人のせいにするとは花丸も悪よの〜」

 

 そうやって、俺は花丸を少し弄るのだった。珍しく攻守が逆転している。いつもは俺がケチョンケチョンに言い負かされているからな。

 

「でも、色んな屋台巡れて楽しかったな」

 

 沢山遊んで、いっぱい美味しい物も食べた。思わぬハプニングから生じたイレギュラーな時間だったが、とても満たされた時間だったと俺は感じていた。

 

「そうだね。皆んなを待たせて迷惑かけちゃったけど、マルもすっごく楽しかったずら!」

 

 

 花丸は満面の笑みを浮かべながらそう言った。花丸も同じ気持ちを抱いてくれていた様で、嬉しい限りである。

 それに、合流した後は善子とルビィちゃんも一緒だ。もっと楽しくなることだろう。

 

「あ、そうだ」

 

 これからの事を妄想しつつ幸せに浸っていると、ふと、花丸に今日ずっと伝えたかった言葉を思い出した。

 

「そういえば言うの遅れちゃったんだけど、花丸」

 

「どうしたの?」

 

 それは善子とルビィには既に言ってあり、花丸にはまだ言っていなかったこと。

 俺は、花丸に目を合わせながら伝える。

 

「浴衣、凄く似合ってる。綺麗だ」

 

「ずら!?」

 

 今日の花丸は髪をアップにしており、それにより、普段は髪に隠れて見えないうなじが露出していた。女性らしさを際立たせ、思わず目を奪われてしまう程の色気を醸し出している。加えて、花丸のイメージカラーである黄色の浴衣も、花丸の魅力を存分に引き出していた。

 善子とルビィも浴衣もとても似合っていたが、しかし、今日1番浴衣を着こなしていたのは花丸だと、そう思わざるを得ない。

 

 

「そ、そういうことは、ルビィちゃんや善子ちゃんに言ってあげるべきずら」

 

 花丸は、急に褒められたことで照れているのから少し頬を紅潮させながらそう言った。

 

「なんで?まぁでも、俺もテンション上がってるのかついサラッと言っちゃったけど、思い返すとやっぱ恥ずかしくなってきたわ。だから善子達には言えたら言う!」

 

 そう決心しながら、引き続き、花丸と共に駅前を目指す。もうそろそろ着くはずだ。

 

「おーい!天城くーん!」

 

「先輩方!大変お待たせしましたー!!」

 

 駅前に辿り着き、ルビィちゃん達を探していると高海先輩の声が聞こえてきた。手を振って合流しようと、先程から何故か口数が少なくなってしまった花丸の手を引いて歩く。

 

「あっ、未来くん手...」

 

 花丸が何か言っていたが、駅前も賑わっており、それが原因で花丸の声は俺の耳に届く事は無かった。

 

「すいませんでした、遅くなってしまって。凄く混んでいたので」

 

 本当は花丸とラブラブお祭りデートわず、だったから遅くなったんだけどね。流石にそれは言えない。

 

「な、なにニヤニヤしてるんすかみなさん?」

 

 善子とルビィちゃん、そしてダイヤさんを除く先輩方全員が俺の方をみてニヤついていた。

 いや、正確には俺の手元を見て、だが。

 

 

......あっ、やっべ。

 

 

「随分遅かったけど、お楽しみだったみたいねぇ」

 

「離すの忘れてたぁ!!」

 

 小原先輩に指摘されてようやく未だ手を繋いでいる事に気がついた俺は、急いで手を離す。

 しかし、時は既に遅しだった。

 

「熱々だね〜」

 

「なんだかドキドキしてきたであります!」

 

 思いがけぬスキャンダルを目撃した皆さんは色めきだっており、ココぞとばかりに俺たちの事を弄り始めた。

 

「花丸ちゃん、お祭りデート楽しかった?」

 

「ずら!?手を繋いでいたのは、はぐれないようにするためで、デ、デートなんかではないずら!」

 

「またまた〜。仲が良くなきゃ手なんか繋がせないでしょ?」

 

そんな中善子は様子が違い、機嫌が悪い様子だった。

 

「あんた、私達のことほったらかしでズラ丸とイチャイチャしていただなんて最っ低ね」

 

「いやいや!イチャイチャなんてして...して......た...かもしれない」

 

「未来君何言ってるずら!?」

 

「ふーん!ズラ丸もズラ丸よ!もっと弄られちゃえばいいんだわ!」

 

 

 善子の言った通り、それからも暫く弄られ続け、満足した皆さんと共に俺と花丸は再び祭りへと繰り出した。

 その最中、弄られ続け精神的に疲労が溜まったのか、肩を落とし溜め息を吐いていた花丸と視線が合い、さっきは大変だったね、と笑い合うのだった。

 

 

 この日、色鮮やかな夏の思い出がまた1つ、俺の脳裏に刻まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのね、お姉ちゃん」

 

 

「なんですの、ルビィ?」

 

 

「ルビィ、おかしいの...」

 

 

「花丸ちゃんと未来君が無事に戻ってきてくれて嬉しいはずなのに」

 

 

「胸が苦しくて苦しくて、堪らないの...」

 







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天使は夕陽に想いを馳せる

今回はかなり短いです。

感想、評価誤字脱字報告など待ってます!


 

 夕飯を終え、珍しくする事も無かったため、私は自室でゆっくりと過ごしていた。後はお風呂に入り、この日のために取っておいた限定プリンを食べて寝るだけだ。楽しみで仕方ない。

 

 

ふふふっ、それは射的のおじさんが怒っちゃうのも仕方ないと思うな〜

 

 

 隣室からルビィの声が小さく聞こえてくる。

 ルビィはここ最近、この時間帯になるとよく天城さんと通話をしている。長い時は1時間以上通話し続けることもあるようだ。

 はじめはルビィの勉学に支障が出るのでは、と少し心配もしたが、通話の際に勉強を教えて貰ったりもしている様で、それ故か、前回行われたの期末試験は中間の頃よりも結果が良くなっていた。なので今は何も心配はしていない。

 

 私にも受験勉強などあり、集中を要しなければいけない時もあるが、そこまで頻繁にこちらの部屋に声が届くわけでも無いし、何よりルビィが楽しそうにしているため、迷惑には感じていなかった。

 

 

「ルビィ、楽しそうですわね...」

 

 

 ルビィと天城さん、この2人の名前が出ると思い出す。あの祭の日のこと。花丸さんと天城さんが手を繋ぎなら帰ってきた後のこと。

 あの後、ルビィは暫くの間、何か考え込んでいるかの様に一切口を開かず、ルビィの様子が普段と違うことに気がついた花丸さんが声を掛けるまで、私の後ろでボーッとしていた。

 

 

『ルビィ、おかしいの...花丸ちゃんと未来君が無事に戻ってきてくれて嬉しいはずなのに』

 

『胸が苦しくて苦しくて、堪らないの...』

 

 

 私は理解している。ルビィが誰に対して、何を想っているのか。

 

 

 

 

 私の可愛い妹、ルビィ。

 

 

 

 

 人生で初めて抱く感情を理解した時、ルビィはどうなってしまうのだろうか。

 

 どんな結末になろうと、ルビィの人生にとって掛け替えのない経験になる事は言うまでもない。

 しかしながら、姉として、やはりルビィに幸せになって欲しいと願うばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 祭り2日目、9人になったAqoursが披露した楽曲、『未熟dreamer』は今までのAqoursから進化した非常に素晴らしい出来栄えだった。

 その完成度は会場を大いに賑わせただけに止まらず、スクールアイドル界隈でもかなり話題になっていた。有名なスクールアイドル専門メディアでも期待のスクールアイドルとして取り上げられていた程だ。

 

「善子〜、ポケモンやろうぜ〜」

 

 今日は珍しくAqoursの練習が無いようで、放課後、俺は善子とヌーマーヅへ行き趣味に興じたのだった。

 そしてその後、俺たちは休憩ついでに駅前のファミレスに寄り、ドリンクバーでオリジナルドリンクを生み出したりしつつ、ダラダラと時間を潰していた。

 

「ヨハネ!あれ?アンタ、ポケモン持ってたの?てかこの組合せマズっ!」

 

 善子のコップには、なんかおどろおどろしい色をしたヤバそうなドリンクが入っていた。コイツ一体何と何をフュージョンしたらそんな色の飲み物が出来るんだよ...

 てか、おどろおどろしい、なんて表現産まれて初めて使ったわ。

 

「この前の祭りの射的でゲットした。ちゃんと飲み干せよー、炎上するからなー。ゔぇぇ...俺のもこの世の物とは思えない味してるわ」

 

「アンタもやってるわねぇ」

 

 俺も善子のことあまり言える立場では無かった。わざわざお金を払ってこんな苦行を行うとは、やはり俺はMだった?いや、その理論だと善子もMになってしまうが...うーん、えっちぃね!

 

「責任持って飲みます。あと、PS4とかSwitchとかも獲った」

 

「マジ!?凄いじゃない!」

 

「マジよマジ。でな、他にも乱獲しまくってたら射的のおっちゃんがこれ以上獲るのやめろっ!!ってキレてきてな」

 

「まぁ、商売上がったりになるし、それも仕方がないわね」

 

「気持ちは分かるが、こっちはちゃんと代金払ってるし。だから周りの見物人たちを利用しつつ屁理屈捏ねまくって、おっちゃんを論破して続行したら出禁喰らってな〜」

 

 

 最初は愛想のいい表情で歓迎してくれていたおっちゃんだったが、最後の方は鬼の形相をしていた。

 

「あっはっは!アンタ最高ね!!」

 

「でっしょ〜?てな訳で、ポケモンバトルだ!」

 

「ふっ、いいわよ。このヨハネがポケモンの何たるかを手解きしてあげる。負けた数が多かった方が今日奢りね!」

 

「いいだろう。受けて立つ!」

 

 

 この後、俺は善子に完膚なきまでにボコボコに負かされたのだった。

 

 悔しい!こうなったらワザップってサイトに載っていた方法で色違いボルケニオンをゲットするしかない!

 見ていろ善子!覚悟の準備をしておいてくださいッ!いいですねッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 祭りも終わり、あと数日で夏休みに突入しようとするこの頃。今日は珍しく練習がなく、皆んなも用事があるとのことでマルは1人、図書室で読書を楽しんでいた。

 近頃は練習が無い日は必ずルビィちゃんか善子ちゃん、そして未来君の内の誰かと一緒にいたからこんな静かな休日は久しぶりだ。

 校庭からソフトボール部の練習音が聞こえ、それが図書館の静寂と合わさることで学校の放課後特有の情緒を感じる。

 

 

いい雰囲気ずら。こういう感じ、久しぶりだなぁ...

 

 

 

 

ページをめくる。

 

 

 

 

 暫く読み進めていく内に、集中が切れてしまったのか、色々と最近起こった出来事を思い出してしまう。

 特に思い返すのは、Aqoursの皆んなと祭りを楽しんだ記憶。ルビィちゃんと一緒に金魚掬いをしたり、千歌さんから冷凍みかんを分けて貰ったり、善子ちゃんが何度くじ引きを引いても最下位賞しか出なかったりと、沢山美味しい物を食べて、沢山遊んだ賑やかでとても幸せな時間だったと、思い出すたびに頬が緩んでしまう。善子ちゃんは可哀想だったけど...

 そして、恥ずかしいからあまり思い出したくはないが、未来君と手を繋いで色んな屋台を回った記憶。正直、迷子になってしまって不安だったあの時に未来君がマルを迎えに来てくれて、とっても心強かったずら。あと、未来君の手、大きくてちょっとゴツゴツしててやっぱり男の子なんだなぁ...って、ちょっと女の子らしい感想が浮かんでしまった自分に少しこそばゆい気持ちになる。

 

 

 

 

ページをめくる。

 

 

 

 

 今マルが読んでいる本は、親友の初恋を応援する女の子が主人公のお話。主人公が親友と意中の男の子が恋仲になれる様に奔走する恋愛物語だ。

 物語に登場する親友の女の子は、素直で真っ直ぐな性格をしており、とても可愛い子だけれど不器用で、ついついあの2人のことを思い出してしまう。

 それ故に妙に親近感が湧き、マルは最近、この本のシリーズを1から読み返している途中だった。

 以前、2人にこの本を読んでみるよう薦めた事があったが、あの2人は積極的に読書をするタイプでも無いし、他にやりたい事がある様なので断られてしまった。

 

 

 

ページをめくる。

 

 

 

 最後のページを読み終え、本を閉じる。

本を読み終えた後は、何故か少し寂しい気持ちになってしまう。今日は珍しく静かな1日だったから、尚更そう感じた。

 名残惜しく感じつつ、本の表紙を一瞥する。以前、ぐーぐるにこの本のタイトルを入力し、検索した事があったが、続編が出ているとの情報は確認できなかった。

 

 

「続編が待ち遠しいずら」

 

 

 主人公の感情がどのように変化していくのか、先の展開を考えながら、本を鞄にしまう。そして、時計を見ると、良い時間になっていたので帰り支度を始める。図書室の扉を閉めてしっかりと施錠することを忘れない。

 

 

「今日も夕陽が綺麗ずらね」

 

 

 学校を出て1人歩く海岸沿い。海を見ながらマルは想いを馳せる。

 

 大好きな親友2人が織りなす青春の甘酸っぱい恋幕。

 これからマルは、一体どちらを応援すれば良いのだろうか。

 

 

 そして、心地よい潮風を感じながら先程まで読んでいた本を思い出し、マルは只々祈る。

 

 

「まぁ、なる様になれ!ずら」

 

 

 徐々に沈んでいく太陽を見ながら、そんな言葉を海に投げ捨てる様に呟やくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 マルが、どうかあの本の主人公の様になってしまいませんように...

 

 

 





続きを早く書けるよう邁進します。


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想いの発露 part1


タイトルの縛りが面倒くさい!もう辞めた!

長くなりそうだったので区切りました。中途半端に終わってるけどゴメンネ。


 

 いつもの教室。早めに学校に到着したマルは席に着いて読書を嗜んでいた。始業に近づくにつれクラス内は人で溢れ、ルビィちゃんも登校してきたため、マルはルビィちゃんと座りながらお喋りを楽しんでいた。

 昨日の練習の事や、最近行われたテストのこと。最近出来た美味しそうなケーキ屋さんの話など話題は尽きる事がない。

 

「おはよ〜」

 

 時刻も遅刻ギリギリという瀬戸際、ガラガラと戸が開く音がする。目に濃いクマを作った善子ちゃんが眠たそうにしながら登校してきた。

 

「おはよう善子ちゃん!」

 

「ヨハネ」

 

「おはよう善子ちゃん。寝不足みたいだけど、大丈夫?」

 

 凄く眠そうなのにも関わらず、相変わらず善子ちゃんはお約束の反応を忘れない。

 マルもルビィちゃんもこのお約束を楽しんでいる所があるけど、しかし、善子ちゃんも一々面倒と思わずよくやるずら。

 

「えぇ、大丈夫よ。あとヨハネ。昨夜はリトルデーモンの集いが長引いちゃって。あとソシャゲのイベント周回」

 

「あんまり夜更かししてると身体壊しちゃうよ?」

 

「あとちょっとで夏休みなんだから少しくらい無理しても余裕よ余裕」

 

 机に突っ伏しながら、善子ちゃんはそう答える。何かやんごとなき事情があるかとも考えたが、やはりマルの思い違いだったようだ。

 

「もうすぐ夏休みなんだね〜。ラブライブも近いから練習ばっかりだけど、花丸ちゃんと善子ちゃんは夏休みにどこか行ったりするの?」

 

 夏休み。その言葉を口にするとやはり気分が良くなる。

 ルビィちゃんの言う通り、ラブライブの地区予選も近いため練習が休みの予定の大半を占めているが、当然毎日練習がある訳では無いため、あれをしよう、これをしようと考え心が踊る。

 

「マルはお盆におばあちゃん家に行くずら〜」

 

「ルビィはお姉ちゃんとお買い物しに行くよ!善子ちゃんは?」

 

 マルは毎年8月のお盆の時期になると祖母の家に帰省するのが恒例で今年もそうだと決まっている。

 ルビィちゃんはダイヤさんと2人で服を買いに行くそうだ。本当に2人の姉妹仲は良好な様で、ウキウキとしているルビィちゃんを見ているとこちらまで楽しい気持ちになってくる。

 

「クククッ、2人とも平凡で平和なバケイションを過ごすのね」

 

「平凡って...そういう善子ちゃんは夏休みの予定どうなってるずら?」

 

 しかし、そんなマルとルビィちゃんを見て善子ちゃんは不敵に微笑んでいた。

 

「ヨハネ。よくぞ聞いてくれたわね、ずら丸。ヨハネのイカれた夏休みのスケジュールを紹介してあげるわ」

 

 なんだ。自分の予定を自慢したかっただけずらか!

 

「まずリトルデーモンの集い夏休み生配信でしょ〜。で、おばあちゃん(グランドマザー)の住処へ帰省するでしょ。ママ(仮の同居人)と買い物に行って...新作のゲームもやったりして。あと何と言っても夏コミね!」

 

「善子ちゃんらしいずら〜」

 

「善子ちゃんは相変わらずママっ子だね〜」

 

「どういう意味よ!あとママ(仮の同居人)には誘われたから仕方なく着いて行ってあげるだけなんだからね!それとヨハネ!」

 

 仕方なく、と言っているがマル達は知っている。善子ちゃんがお母さんの事が大好きで、所謂マザコンだという事を。

 別にマルもルビィちゃんも揶揄う意図もなく、お母さんが大好きなのは素敵な事だと思っているのだが、善子ちゃんはマザコンは恥ずかしい事だと認識している様で、今も必死に言い繕っている。

 

 そんな微笑ましい善子ちゃんをマル達はニコニコしながら眺めていると、ルビィちゃんがふと、疑問を口にした。

 

「夏コミってたまにニュースで報道されてるお祭りだよね?」

 

 あ〜。偶にテレビで見るずら。コスプレしてる人とか駅がすごく混んでいる様子とか。確か関東の方でやっているお祭りだったと思うけど、結構遠くまで行くずらね。

 

「そう。来たる8月12日、堕天使ヨハネは我が眷属、リトルデーモン0号を率いて魔の者が闊歩するサバト、夏コミに繰り出す予定よ」

 

「へぇ〜、未来君も行くずらか。まぁ、人も凄く多い催し物だって聞くし、1人で行くよりは安全そうずらね」

 

 確かにあの人混みは、誰かと一緒に行った方が安全だろう。未来君は善子ちゃんと趣味も合うだろうしおあつらえ向きだとマルも思う。

 

「え...も、もしかして未来君と2人で行くの?」

 

「えぇ、ヨハネと0号の2人だけの予定よ。ふふ...未来にはリトルデーモンとしてヨハネの事を身を粉にして守る使命を与えているわ。まぁでも、相変わらず素直じゃないから、誰がリトルデーモンだ!って口答えしてくるけど。困ったものね、リトルデーモンとしての自覚が足りないわね自覚が」

 

 素直じゃないのは善子ちゃんも同じ様な気が... 

 

「ル、ルビィも行きたい!」

 

 内心で善子ちゃんの普段のツンツンした様子を思い返していると、突然、ルビィちゃんが珍しく慌てたように声を大きくしてそう言った。

 ルビィちゃんの滅多に無い行動に、マルは目を丸くする。

 

「えぇ、なんでよ?アンタ、アニメとか興味なかったでしょ?来てもつまんないわよ多分」

 

 確かに、ルビィちゃんがアニメの話をすることはあまり無く、ルビィちゃんが行っても2人程は楽しめないだろう。今回は善子ちゃんの言う通りだとマルも思う。

 

「ルビィだってアニメ好きだよ!鬼滅の◯とかワン◯ースとかよく見るもん!」

 

 

 しかし、善子ちゃんに説き伏せられても、ルビィちゃんは引き下がることをしなかった。

 

「はぁ〜。待て待て、なーんにも分かってないわね。頼むわよルビィ。夏コミはねぇ、そんなビギナー向けアニメしか履修していないパンピーが行ける場所じゃ無いの。私と未来みたいにディープでダークなアニメ界の深淵を覗き見て、漸く降り立てる聖地がコミックマーケットなのよ」

 

 そんなルビィちゃんに対して、善子ちゃんは顔を両手で覆って呆れた様子をして言った。何かを意識した芝居がかった仕草だ。いつもお芝居みたいな話し方をしていると言われて仕舞えばそれまでだが。

 

「厄介オタクずらね」

 

「厄介じゃない。玄人と呼びなさい」

 

 場を和ませるために少し口を挟んだが、すぐに善子ちゃんからツッコミが入り、ルビィちゃんも全然和んでいる様子はない。

 

「うぅ、今から勉強するもん!花丸ちゃん前に未来君から色々とアニメ薦めて貰ってたよね?そのアニメルビィに教えて!」

 

 そして、ルビィちゃんはマルに向けてそうお願いしてきた。突然振られたマルは少し驚きつつも、思い出す。

 

「あぁ、そういえばそんな事もあったずらね。ただ、あのアニメはルビィちゃんにはお薦めしないずら」

 

 高校に入ったばかりの頃、未来君がいくつかお薦めのアニメをマルに紹介してくれたずら。結局薦めてくれた作品の殆どを見ることが出来なかったが。確かタイトルが、黒子野太助?見れなかったけど、と◯ぶるとい◯ご100%っていう作品。あとは...

 

「なになに?ズラ丸アンタ、未来からなんのアニメ薦められたのよ?」

 

「えっと、確かスクールデーーー」

 

「絶対ダメよルビィ。見たらダメだからね絶対。薬物濫用と同じくらいダメゼッタイだからね」

 

 善子ちゃんのいつになく真剣な雰囲気にルビィちゃんもついに固唾を飲んで黙ってしまう。

 確かにアレは教育上よろしくないずら。そんなものをルビィちゃんみたいなピュアな女の子に見せるなんてとてもとても。

 

「アイツ、なんてモンズラ丸に薦めてんのよ...」

 

 善子ちゃんもこう言っている。やはりマルの感性は正しかった様だ。

 というか、なんで未来君はマルにあんなアニメを薦めてきたずらか...

 

 

 長い事話をしていたマル達だったが、チャイムが鳴ったため話を中断し、口を閉じて背筋を整える。先生が教室に来たらホームルームが始まる。それまでマルは先程の会話を思い返す。

 

 予想はしていたけど、未来君のおかげで大変な事になりつつあるずら...

 

 マルは別の学校にいる男の子の友達の事を少しばかりの怨念を込めつつ思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 俺が乳飲み子の時からネット上にて脈々と受け継がれているゲーム情報サイト、ワザップ。ブランドを盲目に有り難がるパ◯活女子のような生態をしている俺は、愚かにもワザップの裏ワザを試してしまった!

 色違いボルケニオン。富、名声、力。この世の全てを手に入れた存在。俺はこのポケモンをゲットし圧倒的な力を持ってして善子へ雪辱を果たす。

 そう意気込み意気揚々とワザップに載っていた裏技を試すと、ゲームデータが消えてしまっていた!この裏ワザが世に広まれば皆んなのゲームデータが危険に晒されてしまう。Yahoo!知恵袋の助言(嘲笑)でSNS上にボケカスのガセを晒す事にした俺は、堕天使を自称する異常者に見つかり盛大に馬鹿にされてしまった。

 たった一つの真実も見抜けぬ見た目は大人、頭脳は子供。その名は、天城未来!

 

 語彙力ぅ...文章構成力ぅ...のあらゆる力量が不足しているぅ。

 はぁ...つらたん。現実がツラィ。もぅマヂ無理。リスカしょ...

 

 

 

アトマメチシキ

 

 

 

 沼津シの最低時キュウが約990円。大谷◯平は1ヂカンで約116万円稼いデルんだって...つまり1ビョウで約322円...1ビョウで牛丼1パイ...

 はぁ...コォレが資本主義...自由キョウソウ...そんな社会を嘆いたヴォレは革命を起こス。労働者よ武器を持ち立ち上がれ。革命の炎は今灯された。もぅマヂ無理。富の再分配しょ...

 

 

 

 

 

●●● 

 

 

 昔のネットミームを擦り続ける化石のような人類。どうも、一般天才系男子高校生です。

 だんだんと導入部分のネタが無くなってきたというか、俺も精神がアダルティなマンに近付いてきたというか、流行にもついて行けてないし、なんかもうあんまりふざけられません(賢者タイム)。オモロク無い俺とか、紅白でやるけん玉の謎企画くらいに不要で草。

 俺はこの先もこの変態お笑いキャラを続けなければいけないのか。それともシリアヌの似合うナイスガイになるのか!天城未来の明日はどっちだ!

 

 

どちらもありうる...そんだけだ

 

 

 とはいえ、俺のパロディだらけの脳コメを楽しみにしてくれているニッチな人類のためにも俺はこのキャラを演じ続けなければならない!...って何考えてるんだ俺は?ニッチな人類って誰のことだよ。俺の脳内を覗き見れる存在なんて俺以外にいるわけないだろ。

 

「あ、薬局寄ってくの忘れてた....」

 

 今朝、ホームルームが始まる前にくしゃみが出てしまったため、念のため薬局に薬を買いに行くつもりだったが忘れていた。それにしても、こんなクソ暑い時期にくしゃみとは...季節外れの風邪ってやつか?それとも誰かが俺の噂でもしてたのか?カーッ!これだから人気者は困るぜ!

 とはいえ、夏休みに入ると出費が多くなるためなるべく節約したいのだが、体調を崩してしまう方がマズい。なんたって今年の夏休みは予定でいっぱいだからなヒェア!!!

 善子と夏コミでしょー?善子とゲームするでしょー?ラブライブ予選の応援行くでしょー?多分ルビィちゃんと電話するでしょー?多分皆んなで勉強会するでしょー?多分誰かと遊ぶでしょー?多分...

 

 あ、あれ、多分ばっかじゃね?この中で確定してるの半分なんだが。ははは...結構暇だったわワロス。

 

「ん?あれは...」

 

 親方!砂浜に浦の星の制服を着た美少女が!それに赤髪!

 見間違えるはずも無い。あれは確実にキュートオブキュートな黒澤ルビィちゃんだ。

 

 なんか以前もこんな事があったような。そう、あれはルビィちゃん達がまだAqoursに加入していなかった時のこと。懐かしいなぁ。

 それにしても、ルビィちゃんは体育座りしながら夕陽を眺めるのが好きなのかな?いや、いい趣味だと思うけども。

 

 俺は自転車から降りて、邪魔にならない場所に停める。このシチュエーション、やる事は1つだ。

 

「さて、驚かせますか」

 

 ポツンと砂浜に座っている姿を見ると、悪戯心がついつい刺激されてしまう。前にデートした時、ルビィちゃんにからかわれたし、そのお返しという事で。

 

 昔と違って、今ルビィちゃんとの仲ええ感じやねん。ハッキリ言って良好。ラブラブ。出ろ!...じゃなくて、今の俺とルビィちゃんは少しくらいのおふざけは笑って済ませられる仲なのだ。

 ふふふ、考えるだけでニヤケが止まらない。まさか男性恐怖症及び人見知りのダブルコンボだったあの子とここまで仲良くなれるとは。

 最近、夜によくルビィちゃんと通話をしているが、結構な頻度でルビィちゃんの方から電話しよう!って誘ってくれるからな。割合的には7対3。ルビィが7で俺が3だ。一緒に話している時間はそれはそれは幸せで、夜更けまで話し込んでしまうこともしばしばある。夏は夜。紅の頃はさらなり。

 昔のルビィちゃんを知っている身としては、彼女の目覚ましい成長ぶりに感動するばかりである。

 アカン、なんか涙が出てきたずら(内浦の田舎もん並感)。

 

「そろーりそろーりと」

 

 俺は小声でそう呟きながら悪どく口角を上げゆっくりとルビィちゃんに迫るのだった。

 

 暗くなりつつあるこの時間に悪どい表情を浮かべながらJKに近づく男とか通報案件だろこれぇ!

 

 

 

 





次回シリアス。多分


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想いの発露 part2


投稿遅れてごめぇんねぇ(犬系並感)




 

 

『ルビィ、おかしいの...花丸ちゃんと未来君が無事に戻ってきてくれて嬉しいはずなのに』

 

『胸が苦しくて苦しくて、堪らないの...』

 

 Aqoursの皆んなと未来君、全員で楽しんだお祭り。色々な屋台を巡り歩き食べて遊んで花火を見て、とても充実した1日だった。

 そして祭り2日目に行ったライブも、お姉ちゃん達3年生を加えはじめて9人で臨んだライブだったが、見事大成功を納めることが出来た。Aqoursの知名度は更に上がり、ライブを通してメンバー間の仲を以前よりも深められたと思う。確実に今、夏休みに開催されるラブライブ予選に向けて追い風が吹いている。

 

 しかしながら、そんな順調な最中にルビィは心の隅に不思議な違和感を覚えていた。多分、原因は祭り1日目のこと。迷子になってしまった花丸ちゃんを未来君が連れて帰ってきてくれた時。

 花丸ちゃんと未来君が仲良さそうに手を繋いでいる所を見て、なんだかルビィはモヤっとして...嫌な気分になってしまった。

 ただ友達同士仲良くしているだけの何でもない光景に対して、何故そんな風に感じてしまったのだろうか。あの日、お姉ちゃんに尋ねてもはぐらかされてしまうし、何故か、花丸ちゃん達や未来君に尋ねてみる気にもなれなかった。

 

 そんな過去に経験したことのない思いを前に、ルビィはもう何が何だか分からず、あの日からずっとモヤモヤしたままだった。

 

(わからないよ...)

 

 放課後。1人辿る家路。けれど、なんだか帰宅する気も起きず、ブラブラと歩きながら物思いにふけっていた。

 

 ザァ...ザァ...と心地よい波の音が聞こえる。

 しばらく歩いていると、いつもの砂浜に到着した。足が疲れたため砂浜に座り、ボーッと海を眺める。内浦の海は今日も綺麗だ。

 ルビィは以前から、何か悩み事が出来る度にこの砂浜を訪れていた。目の前に広がる大きな海を見ていると、思考がクリアになり少しだけポジティブな気持ちになれるからだ。

 実際、人の脳は波の音のような規則性と不規則性が程よくミックスされた音を聞くとリラックスするらしい。

 

 いつまでも悩んでいても仕方がないと気分転換に、少しだけリラックスした脳でもう直ぐ始まる夏休みのことを考えてみる。

 今年は例年と比較して、特に充実した夏休みになりそうだ。基本的には毎日練習だけど、皆んなでワイワイしながら練習するのは楽しいし、それに休日もちゃんとある。お姉ちゃんとお買い物に行って、花丸ちゃん達と集まって一緒に課題をする等既に何日か予定が埋まっている日もある。

 ルビィは、もう直ぐ訪れる長い休暇にワクワクを抑えられずにいた。

 

(それにしても、善子ちゃんと未来君、2人でお出掛けするの羨ましいなぁ)

 

 ルビィももっとアニメを見ておけば良かった。そうすればもっと2人とお話し出来る事が増えるし、今回だって誘ってもらえたかもしれない。確か夏コミって冬も開催される筈だから、夏休みにアニメを沢山見て勉強して冬に連れて行って貰うっていうのはどうかな?あぁ、自分でもいい考えだと思う。

 今日も電話出来たりしないかな。その時にオススメのアニメを何作品か教えて貰えたら...ううん、ここ最近結構な頻度でしちゃってるから、迷惑になってるかも...

 電話もいいけどやっぱり直接会って話したいなぁ。浦の星が共学だったら未来君も一緒でもっと楽しいのに。毎日皆んなでお昼ご飯を食べて、帰りに寄り道もしやすくなるし、絶対凄く楽しくなる。

 とはいえ、そうすると他の男の人も一緒に来ちゃうから困る。やっぱりまだ他の男の人は怖い。それに未来君も以前、『浦の星が共学になったら入学希望者は増えると思うけどさ、俺は断固として反対だね。何故なら百合に挟まる男は死ーーーじゃなくて、駿河湾に沈まなければならないから。景観保護っていうの?話題のSDGsってやつだね』って言ってたし。言葉の意味は良く分からないけど、未来君的には浦の星が共学になるのはマズイことらーーーーーー

 

 ルビィは暫く、思考の海に沈んでいた。ふと、トントンと肩を叩かれる。考え事をしていたせいで全く気がつかなかったが、誰かが背後に立っているようだ。ルビィは驚きの余り、急いで後ろを振り向いた。

 

「未来くん!?」

 

「やっほ!」

 

「ビ、ビックリした〜」

 

「あはは、ドッキリ大成功〜」

 

 するとそこには、悪戯な笑みを浮かべた未来君が立っていた。

 

「いやさぁ、砂浜にちょこんと座ったまま微動だにしない友達がいるじゃん。これはもう驚かすしかないよね」

 

 確かにルビィも逆の立場だったら同じ事をしていたかもしれない。

 

「もう未来君ってば、本当に怖かったんだよ!」

 

「ごめんごめん、許して」

 

 未来君は俗に言うテヘペロのポーズをしながら謝罪の言葉を口にしたが、全然反省している様子では無かった。

 

「ふふふっ。もぉ〜。じゃあ今のポーズもう一回してくれたら許してあげるね」

 

「マジ?やるやる...どう?似合ってるっしょ、このポーズ」

 

「う〜ん、こんな事伝えるのは凄く申し訳ないんだけど、全然似合ってないかなぁ」

 

「マジかー。傷つくなぁ。でも、そこまで言われちゃうとお手本が見たくなっちゃうかな」

 

その言葉に、ルビィは首を傾げる。

 

「お手本?」

 

「うん。ルビィもやってみて」

 

「えぇ、恥ずかしいよ...でもそうだよね。未来君の事傷つけちゃったみたいだし、やってみるね」

 

 ルビィは記憶を辿り、同じ動作を繰り返す。それを見た未来君は、拳を強く握り締めて唸るように声を挙げた。

 

「ゔぉぉぉ!!!可愛いぃぃぃ!!!」

 

「そ、そうかな。えへへ、ありがとう!」

 

 こんなおふざけ的なノリでも、そこまでストレートに言われると少し嬉しく感じてしまう。

 

(可愛いかぁ...そっか、可愛かったんだ今のルビィ)

 

 内心でそう浮かれていると、不思議な視線を未来君の方から感じた。そして気がつく。未来君が最初に浮かべていた悪戯な笑みとは違った、ニコニコと嬉しそうな表情をこちらに向けている事に。

  

「いやぁ、良い笑顔になったね。良かった」

 

「え?」

 

「いつもより暗い表情してたから。大丈夫?」

 

 その言葉でルビィは察する。どうやら先の一連のやり取りは、こちらの事を慮ってくれた上でのものだった様だ。

 気を遣わせてしまい申し訳なく思うと同時に、その配慮が今はとても心に沁みる。

 

「そっか...ルビィ、そんな顔してたんだ」

 

「うん。どうしたの?」

 

 先程までとは打って変わって、真剣な瞳で未来君はルビィにそう尋ねてきた。

 後1時間もすれば暗くなるであろう夕刻。そんな時間に何をすることも無くただ海を眺めて座っている人を見れば、この様な疑問が浮かんでしまうのも無理はないだろう。

 未来君は話しやすくするためか、ルビィの隣に腰をおろした。

 

「えっと...ちょっと悩んでる事があって。えへへ...」

 

 しかし、自分でもハッキリと何に悩んでいるのか分かっていなかったため、誤魔化すようにそう答える。

 

 そんなルビィを見て未来君は何故か一瞬少しだけ目を見開く。そして口元を綻ばせて、とても優しい声色で呟いた。

 

「なんか、懐かしいね」

 

「...うん、そうだね」

 

未来君に言われて、ルビィも思い出す。

 

「ちょっと前にもここで、こんな風にルビィと話したよな。ルビィも覚えてくれてたんだ」

 

「勿論覚えてるよ」

 

 昔、ルビィがAqoursに入ろうと悩んでいた時のこと。あの日も今日みたいに夕焼けが綺麗だった。

 今でも鮮明に思い出せる、大切な記憶。

 

「あの時...未来くんのおかげでルビィね、凄く勇気が貰えたんだ。最近は毎日が充実してて、バチが当たるんじゃないかって思っちゃうくらい幸せなの」

 

 ずっと憧れていたスクールアイドルになれた。それも大好きな花丸ちゃんやお姉ちゃんと一緒に。Aqoursの皆んなと汗を流して、笑い合う。そんな毎日が楽しくて、愛おしくて、幸せで堪らないのだ。

 

「いやいや、俺のおかげだなんてそんな」

 

 そんな日々を作り出してくれた根源、それはあの日、花丸ちゃんと未来君から貰った勇気。

 

「ううん。これも全部未来君が背中を押してくれたからだよ。だからルビィ、未来君にはとっても感謝してるんだ」

 

 以前からあの日の記憶を辿る度に何だかノスタルジックな気分になっていたルビィだったが、今日はとりわけそれが強く、ルビィを饒舌にした。普段電話越しに取り留めのない話をする時でも、ここまで素直に感謝の念を押し出す事は出来ない。少し気恥ずかしく感じながらも、ずっと胸の内に秘めていた思いを曝け出す。

 

 

「そっか。そう言って貰えると嬉しいなぁ」

 

 そんなルビィの告白を受けて、未来君は照れているのか頬を掻きながらそう口にした。

 

「...でもね、ルビィ」

 

 一拍置いて未来君は動かしていた手を止める。そして、こちらを見つめながら諭すような口調で語り掛けた。

 

「俺も最近毎日が楽しいんだ。ルビィ達の応援をして、偶に一緒に遊ぶのも夜に電話するのも本当に楽しい。これもルビィが友達になってくれたお陰だ。だから俺も凄く感謝してるんだ。ありがとう」

 

 とても穏やかな声で、未来君は言葉を紡ぐ。その温和な雰囲気に、ルビィの心もどんどん温かくなっていく気がした。これだ。最近未来君と話しているとよくこんな風な気分になる事があるのだ。

 ただ、それだけじゃなくて、同じくらいの頻度で真逆の感情が一緒に襲い掛かってくる。今が正にそうで、徐々に不安が心に蓄積していく感覚。

 

「でも迷惑になってないかな?最近沢山話し相手になって貰っちゃってるし。それにルビィ、未来君にいつも何かしてもらってばかりで。まだ何も返せてないのに」

 

 安心と不安、対照的な感情が入り乱れる。その不安定さが今度はルビィにそんな言葉を発させた。

 

「ぜーんぜん。俺だってルビィから色々して貰ってるよ」

 

 しかし、その言葉はすぐにキッパリも否定されたのだった。

 

「そんなこと...」

 

「ううん、そんな事あるよ。俺も勉強前にAqoursの曲聴いてモチベ高めたりするし。めっちゃ助けて貰ってる」

 

 不安の籠った視線を向けるルビィに対し、未来君は言葉を続けた。

 

「...そうなの?」

 

「うん。それに俺、基本家に1人だから誰かと話してた方が安心するんだよね。だから、いつも話し相手になって貰って本当助かってる。

 ね?俺だってこんなにもルビィから色々貰ってる」

 

 確かに、以前話してくれた覚えがある。未来君のご両親は忙しくて殆ど家にいないって。つまり、普段家に1人な訳で、話す相手もいない事になる。

 

「ただ意外と分からないもんだよね、知らず知らずのうちに支え合ってるってこと。俺もルビィがそんな風に思ってたの知ってビックリしてるもん」

 

 もしルビィが同じ状況に立った時、気軽に電話で話せる相手がいれば凄く助かると思う。ルビィは自分で思っていたよりも、未来君に必要な存在になれていたのかもしれない。そう考え至った時、少しだけルビィの心はポジティブな方に傾き始めた気がした。

 そんな思考を巡らせている横で、話は続いていく。

 

「でもさ、お相子様って事で良くない?貰ったら返さなきゃいけないとか、そんなこと考えるの窮屈じゃん。何かして貰ったら、ありがとう!って伝える。それで充分なんだよ。だって」

 

 そこで一瞬言葉は区切られた。そして、ルビィと再び視線が重なったのを確認した後、未来君はニコリと微笑んで言い聞かせるように口を開いた。

 

 

「俺とルビィは親友なんだから」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、充足感で心は満たされ、そして視界がスッキリと広がる、そんな感覚がルビィを襲った。

 とても些細で簡単な話。簡単だけど常に感謝を忘れない素敵な関係。いつも両親やお姉ちゃん、Aqoursの皆んなとするのと同じようにするだけ。なんでルビィはこんなに思い悩んでいたんだろう。

 

 

(そうだよね...それで良いんだよ)

 

 

「...うん。分かった!未来君も寂しくなったらいつでもルビィのこと頼ってね!」

 

 ルビィは、出来得る限り元気いっぱいに笑顔を作り、そう言葉を返した。

 

(それにしても、親友。親友かぁ...)

 

 嬉しい筈のその単語を繰り返す度、何故か心のモヤモヤがどんどん顕在化してくる様な気がして、ルビィは一旦考えるのをやめた。

 

「フォォォウ」

 

「どうしたの?」

 

「い、いや。何でもないよ何でも。元気になってくれたみたいで良かった」

 

 

 話がひと段落ついた雰囲気故か、謎の奇声を発した後未来君はゴホンと咳払いをして、話題を変えた。

 

「そういやルビィ、プリンの件どうなったの?」

 

「えへへ、実はバレてないんだ」

 

 先日通話をした際に、お姉ちゃんが自身の好物であるプリンを常に何個か冷蔵庫にストックしている事を話した。それを聞いた未来君が、『一個くらい盗ってもバレないんじゃね?』と言って、そこから話が盛り上がった結果、ルビィはお姉ちゃんのプリンを秘密で一個拝借し、食べしまっているのだった。それがプリンの件の概要である。

 

「おぉ、そうなんだ。なんか面白いね、この危ない橋を渡る感じ」

 

「そうだね。誰にも見つからないように冷蔵庫から取るの、スパイドラマのマネしてるみたいで楽しかったよ」

 

「へぇ〜、ルビィもそういう系のドラマ見るんだ」

 

「うん。お父さんと偶に一緒に見るんだ」

 

「そうか、お義父さんと見てるのか。お義父さんと」

 

「なんでお父さんの部分をそんなに強調するの?」

 

 未来君は何故かお父さんの部分をを繰り返し口にしたため、気になって尋ねてみた。

 

「いや特に意味は無いから安心して」

 

「未来君って時々よく分からないこと言うよね」

 

 未来君は賢いから、ルビィに理解が出来ないだけで何かちゃんとした意味があるのではないかとも考えたりしたこともある。しかし、未来君の反応を見るにやはりその様な事は無いのかもしれない。

 

「ははは、自分でも自覚はあるよ。まぁそれは置いといて、バレたらどうするつもりなの?」

 

 あまり突っ込まれたくないことだったのか、未来君は明らかに話題をすり替えた。

 

「大丈夫だよ、お姉ちゃんなんだかんだ許してくれるもん」

 

「ルビィって意外とダイヤさんのこと舐めてるよね」

 

 未来君は口元を緩めてニヤニヤと笑いながらそう言った。

 

「お姉ちゃん優しいから。でも未来君のせいでルビィ、どんどん悪い子になっちゃうな〜」 

 

「う〜ん、今回俺が唆したっていう事実は消えないけどさ、でも過去にもダイヤさんのアイス勝手に拝借したことあったでしょ?なら俺が何もせずとも元々ルビィは悪い子だったってことになるね」

 

「確かに...そうだね!ルビィ、実は悪い子だったのかも。小悪魔系アイドルだね。善子ちゃんと被っちゃう」

 

「あいつは中二系、ゴスロリ系、配信者系、小悪魔系の属性過多だからな。改めて考えるとあいつのキャラやべーな」

 

「ふふふ、ほんと。善子ちゃんってすごいよねぇ」

 

 

 やっぱり楽しいな。未来君とお話しするの、本当に楽しい。

 こんな何でもない話をしているだけなのに、これ以上ない程にルビィの心は幸福感で満たされていた。しかしながら、幸せだからこそ、この幸せを噛み締める度にルビィの心の中に存在している悪い部分が段々と顔を出してしまうのだ。

 

 

「ねぇ未来くん。また指切りしよう?」

 

 

 ルビィは指切りをしやすくするために座ったまま身体を動かして、未来君のそばに近寄る。

 

 こんなに男の人の近くに来たの初めて...カッコいいなぁ。未来君、ちょっとお顔が赤くなってるけどドキドキしてくれてるのかな?だとしたら、ルビィと一緒で嬉しい。

 

「え?どうしたの急に。別にいいけど...特に約束することとか思いつかないよ?」

 

「うーん...じゃあまたここで、こうやって一緒にお話ししよう?」

 

 そう言って、ルビィは小指を突き出す。

 

 ルビィは我儘だからこの幸せな時間を今もっと長く、そしてこの先もずっと続けていきたいと欲張って、少し強引に迫ってしまった。

 でも未来君はきっと、こんな我儘なルビィのことも優しい顔をして受け入れてくれる。

 今まで一緒に過ごしてきた時間が、ルビィにそれを確信させた。

 

「いいよ、喜んで。まぁこんな約束じゃあ、針千本飲むことは無さそうだね」

 

 ルビィの予想した通り、未来君はクスッと笑って、それに応じてくれた。

 夕陽が影を作り、徐々に2つの影は近づいていく。影は重なり、小指は結ばれる。精一杯の祈りを込めながら暫くそのまま、互いに目を逸らすことなく見つめ合った。

 

 

(...良いなぁ。この時間がずっと続いたらいいのに)

 

 

 帰りたくないな。もっと色々な話をして、笑い合って、もっと未来君の事を知りたい。

ルビィの事ももっと知って貰いたい。未来君ともっと一緒にいたい。ルビィの事をもっと見て欲しい。

 

 

 

 ずっと、ルビィのことだけを...

 

 

 

 

 漸くルビィは理解する。ずっと悩んでいたこと、不思議なモヤモヤの正体を。安心と不安が絡み合う、初めて経験するこの感情の名前を。

 

 

 

 

(あぁ、ルビィ分かっちゃった。ルビィは多分、未来君のことが...)

 

 

 

 

「未来君、夏休みの中旬に善子ちゃんと夏コミに行くんだよね。いいなぁ」

 

「あぁ、善子から聞いたんだ。行くよ。ルビィと花丸も誘いたかったけど、多分誘っても興味無いかなって思って。ごめんね」

 

「ううん、いいの。ただ、ルビィも未来君と一緒に遊びに行きたいなって」

 

「そうだね。俺もルビィと遊びたかったから嬉しいな。どこ行こっか?」

 

「うーん...海とかカフェとか、プールとか、映画とか、ショッピングとか、旅行とかかな?」

 

「おぉ、めっちゃパッとアイデアが出てきたね。じゃあ、早速花丸や善子にも空いてる日聞いて予定立てていこっか」

 

「え〜、2人で行きたいなぁ」

 

「へ?」

 

「ルビィと2人だけで行こう?」

 

「ルビィ、それは...」

 

「お願い。ルビィ、未来君と2人きりがいいの」

 

「こ、これは夢か?」

 

「ううん、夢じゃないよ。善子ちゃんとも2人きりでお出かけするみたいだし、ルビィも未来君と2人でどこか行きたいな」

 

「は、はい。分かりました...うん。2人で出かけよっか」

 

「やったぁ!嬉しいなぁ!ね、もう一度指切りしよう?」

 

「ゔぇぇ!?ちょ、ルビィ!?」

 

 未来君の手を取って、もう一度指切りの催促をする。未来君は、ルビィの行動に困惑しつつも再び応じてくれたのだった。

 

 小指から感じられる感触の全てが、今は愛おしい。その温もりの中で、ルビィは恐らく今までの人生で1番の、とっておきの笑顔を浮かべる。

 これは、優しくてカッコよくて、いつもルビィのことを想ってくれて、支えてくれるあなたに贈る最大級の感謝。

 

 

「えへへ、未来君ありがとう!約束だよっ!」

 

 

 

ルビィは未来君のことが好き。

 

 

 

 

大好き

 

 

 

 

 





「大好きな相手にはちょっと大胆になっちゃうルビィちゃん」の解釈、アリだと思います。


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内浦の夏!それは至高!


やっぱサンシャインの一年生は最高だぜ。


 

「あっ、髪整えてるからちょっと待って、善子ちゃん!」

 

「ヨハネ!早くしなさい、ルビィ!」

 

「善子ちゃん、あんまり急かしちゃダメだよ」

 

「ヨハネ!」

 

 

 

 

「ズラ丸、ルビィ、いっくわよー!」

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

「はぁ...はぁ...」

 

朦朧とした意識で机に突っ伏す。

 

「もう!無理〜!!」

 

 側に置いてあったエナドリを勢いよくあおり、空になった缶をゴミ箱に勢いよく投げ捨てる。

 これで今日2本目。これ以上は致死量だろうがヨォ...

 

「飲まなきゃやってらんないのよ」

 

 サマーバケイション到来。セミのうるせー鳴き声。リア充共が一線を超える季節。夏休みとは地獄である。クソ暑いし、花丸達も練習ばっかでなんの予定も無く暇だし、補習地獄だし、課題地獄だし、鬼上司(桜内先輩)からの催促あるし。

 

『進捗はどうかしら?』

『すいません、ちょっと行き詰まっていて...』

 

『作業は順調?』

『さーせん、筆止まってるっす』

 

『今どんな感じ?』

『すいません寝てました』

 

『もうすぐできそう?』

『ごめんなさい』

 

 LINEのトーク履歴を遡って見返す。マジあの人ヤバいだろ。次から次へとかなまり同人誌の続きを催促してくるからな。睡眠も削って続き執筆してるわ。昨日も8時間しか寝てねぇ。普通に寝とるや内科医!

 それにしても、あの凄まじくツラの良い先輩め。あんな美人な先輩に、『天城君次もよろしくお願いね♡』『続きはまだかしら?大変だと思うけど頑張ってね♡』なんて言われたら直ぐに取り掛かる一択しかないだろうが!...ん?これって扱いやすい俺が愚かなだけなんじゃ...

 

「ん?なんだ?」

 

 そんな嫌な考えが脳裏をよりぎりかけたその瞬間、携帯の通知が鳴り意識は逸らされる。確認すると、LINEの1年生グループに新たなメッセージと1枚の写真が投稿されていた。

 今日からAqoursは合宿を行なっていると聞いている。午前は自治会からの要請で海の家の手伝いをし、その後午後からそのまま砂浜で練習。夜は高海先輩のご実家が経営する旅館に泊まるそうだ。

 なんの連絡だろう?そう考えながら、携帯のロックを解除しLINEを開く。そして、目の前の画像を認識した瞬間、雷に打たれた様な衝撃が走った。

 

『1人寂しい夏を過ごす未来にヨハネからプレゼントよ!』

 

 そこには、可愛らしいパジャマに身を包んだ美少女3人の自撮り写真が載っていたのだった。善子は携帯を持ちながら、どうだ!みんなでお泊まり羨ましいだろ!と言わんばかりに強気な笑みを浮かべている。対してルビィちゃんと花丸は控えめに、善子の後ろでニコリと可憐に微笑んでカメラを見つめていた。それに3人ともパジャマというリラックスした格好をしているせいか、普段よく見る制服姿と違い、少し無防備な感じがして胸が高鳴ってしまう。

 携帯を持つ手が震える。

 

「ゔぉぉぉ!!!ゔぉぉぉ!!!ゔぉぉぉ!!!」

 

【快報】語彙力崩壊のお知らせ。

 

 画面に映る写真に、俺の脳内は興奮を抑えることが出来なかった。ありがとございます!ありがとうございます!善子様!ヨハネ様!もうリトルデーモンになります!一生着いていきます!

 可愛すぎる。もうホント可愛すぎる。しかもこの子達、昼間は水着を着て海にいるんだろ?最高じゃねーか。マジ人類の宝。国宝。世界遺産。

 携帯を勉強机の上に立てて置く。

 

「ははぁ〜」

 

 俺は善子、花丸、ルビィの3人をこの世に産み落とし育んだ森羅万象全ての存在への感謝の念を込めて五体投地を行った。

 

『ありがとうございますヨハネ様!明日は絶対にお金落としにいきます!!』

『やったぁ!明日は来れるんだね!』

『良い心がけだわリトルデーモン。絶対来なさいよ!』

『それいいずら〜』

『マルたちの売上のために沢山貢ぐずらよ』

『任せろ花丸』

『ア◯ム行ってくる』

『それはダメだよ未来君!』

『草』

『そんなとこ行かなくても闇金黒澤組が貸してくれるわよ笑』

『闇金黒澤...ルビィの実家はヤ◯ザだった?』

『内浦の首領(ドン)

『内浦を裏から支配する者』

『ルビィさん弄ってごめんなさい』

『ルビィさん殺さないで』

『ルビィのお家はヤ◯ザじゃないよ!』

『その弄りはグレーゾーン通り越してダークずらね』

『闇金だけに』

『ワロタ』

『追撃してて草』

『笑えないよ!』

『確かに家の車は黒塗りのそれっぽい車だけどさ!』

『ルビィのツッコミキレッキレだな』

『才能あるわよアンタ!』

『マルは感動したずら。ルビィちゃん成長したね...』

『う〜ん、こんな才能嬉しくないなぁ』

 

 

 そんな風に、暫くLINE上でやり取りを行った。まだまだ話し足りないが、就寝時間が迫っているとの事でキリのいい所で会話は終了した。

 明日には会えると思いながらも、寂しさから携帯をベットに放り、寝転ぶ。

 

「あー、もう寝よ!締切なんてどうでもいい!明日に備えて寝よ!」

 

 明日は丸一日完全フリー。俺は全てのカルマから解放された男。呪力ゼロ、拳のみ、勝者あり。今日は学校で進◯模試があったから行けなかったからな。やっぱ自称進はクソ!!!

 明日こそは花丸達の水着姿を拝みに行くぞー!

 

 期待に胸を膨らませながら、俺は床につくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 夏の日差しが降り注ぐこの頃。全学生待望のサマーバケイション到来!その過ごし方は十人十色。全国の学生はそれぞれ自由な夏を謳歌することが出来る最高の時間だ。与えられた時間を活用して勉学に励むもよし!部活に励むもよし!恋愛に励むもよし!家に引き篭もるもよし!毎日エグいポルノ見てオ◯るのジョージするもよし!

 

「あっ、天城君だ!来てくれたんだね!」

 

「あら天城君。善子ちゃん達から話には聞いていたけれど、本当に来てくれたのね」

 

「チャス!お疲れ様です!高海先輩!桜内先輩!!」

 

「チャッス!」

 

 海水浴場付近の道で客引きをしていた高海先輩と桜内先輩。声を掛けて貰ったため、元気よく挨拶すると、高海先輩も同じ様に元気よく返してくれた。う〜ん、やっぱこの天真爛漫さ、いいですなぁ。

 そう感心していると、桜内先輩が俺の側に寄って、小さな声で耳打ちをして来た。

 ふむ、桜内先輩よ。お主そのピンク色の水着よく似合っておるな。嘗てこの目に焼き付けた桜内ピンクを思い出させるエロスと清楚さが混在した素晴らしき姿だ。故にそんなに近づかないでくれ、さもなくば獣になってしまう。

 

「その後進捗はどう?」

 

「...」

 

「天城君?」

 

「バッチグーです!」

 

「それは良かったわ!流石ね!!」

 

 うっそー。昨日はあれから善子達とLINEしてたから何にも進んでません。

 

「なんのお話してるの?」

 

「な、なんでもないわよ千歌ちゃん!」

 

 百合同人の進捗の話してたんだが、必死に誤魔化してて草。俺はこの美人な先輩の秘密を唯一握る男!ウェヘヘへ...その秘密を盾に俺の百八煩悩を...とはならんのよなぁ。桜内先輩も俺の秘密を握っているし、もし俺がチクったら俺の秘密もルビィちゃん達にチクられるから。

 

「え〜なんか怪しいなぁ。まぁいっか。花丸ちゃん達は海の家にいるからね!」

 

 先輩方はまだ客引きを続けるとの事だったので、お2人方とは別れて俺は1人でビーチに降り立つ。

 

「おぉ...!」

 

 目の前に広がる美しい海。そして水着を纏ったAqoursの皆さん!キモがられる恐れがあるため、あまりジロジロ見る事は憚られるが、これは見ずにはいられない。

 うーむ、これは気を抜くと直ぐにマイサンがウェイクアップチャレンジャーしてしまうな。海開きからあまり日が経ってないのもあって他にも水着のお姉さんが沢山いるし、公然猥褻罪で牢獄にブチ込まれる可能性も0から1へ、否、0から100位には上がっているだろう。あれ?それって確実に捕まって獄中で点呼!されちゃうってことだし、大人しく家に篭ってジョージしてた方がいいんじゃ...

 

「ふふっ、どうしたの〜?もしかして私達の水着姿に見惚れちゃったの〜?」

 

 ゔぉぉぉ!やはり俺の人生に引導を渡すのはAqours No. 1エッチィの小原先輩だったか!

 

「そ、そそそ、そんなことはないですよ!?」

 

「動揺しすぎよ〜?可愛いわね」

 

 小原先輩エッッッッッッッッッッッッッッド江戸(えど、旧字体:江戶) [1]は、現在の東京の前身・原型に当たる都市を指し、その旧称である。現在の東京都区部の中央部に位置した。平安時代後期に東京湾の日比谷入江に面する小地名として現れーーーーーーって長い長い長い長い!無駄な文字数稼ぎヤメロ!規約違反でBANされちゃうだろうが!それと急な賢者タイムもやめい。

 

「うそうそ、未来は花丸たち一筋だもんね」

 

「は、はて?なんのこと言ってるのやら」

 

「3人の水着姿を見に来たんでしょう?」

 

「その言い方はメチャクチャ語弊ありますね!僕はただ友達に会いに来ただけです!」

 

 実際その目的が90パーを占めているのは当たりだけどね!

 

「ノンノン、語弊じゃないはずよ。でも分かるわ、その気持ち。ルビィも花丸も善子も、3人の水着姿はほんっとうに超キュートでねぇ。まるで夏のビーチに舞い降りたエンジェルのようなの...!」

 

「マジすか...!」

 

 小原先輩の言葉に、想定していた以上の期待が膨らむ。まぁ分かってたよ。そりゃそうだ。3人とも天使の様に可愛いだなんて自明というか、1+1が2になるのと同じ様に当たり前のことなのだ。え?1+1は田んぼの田ですぅー!だって?黙れバカ。

 

「えぇえぇ!マジよ!あれはきっと意中の男の子を魅了したいと、一生懸命に選んだ水着じゃないかしら!健気ねぇ、可愛らしいわねぇ」

 

 意中の男の子...だと?そんな存在お父さん知らないぞ!そんな野郎がいるなら俺に少しくらい話してくれてもいいのに、友達なんだからさ。

 一生懸命選んだというその水着を纏った姿を見てみたいと思う反面、あの子達にその様なクソみたいな存在がいると考えるだけで複雑な気分になる。

 

「クゥ...あ、あの...その意中の男の子というのは一体?」

 

「教えて欲しい?」

 

「はい!教えてくださいお願いします!」

 

「えぇ〜、でもあの3人のプライバシーに関わる話だしな〜」

 

「なんでもします!だからお願いします先輩!!」

 

 確かにセンシティブな問題なため、聞き出すのは常識的に考えて良い行為ではないだろう。だがしかし、そんなモラルすらも置き去りにする程俺の好奇心は肥大化し、止められないんだ。笑っちゃうよね!たはー(メロンパン並感)

 知りたい。Siriたすぎる!けれどヘイSiri!してもSiri得ない。だから俺は全てを賭ける。体払い。俺の初めてを、Siriも賭けざるをえない(キモすぎ注意)。

 

「可愛い後輩にそこまで言われたら仕方ないわね。OK!分かったわ!!なんでもするという言葉に二言は無いわね?」

 

 俺の初めてがダメなら、後はもう花京院の魂位しか賭けるものがない。

 

「はい、ありません!」

 

「OK!じゃあ財布を出しなさい!そして店に行くわよ!オススメのメニューが沢山あるから紹介するわ!!沢山食べていってーーー」

 

「ていっ」

 

 小原先輩の後をついて行こうとすると、いつの間にか近くにいた松浦先輩が小原先輩の頭をチョップし制止した。

 

「アウチ!何するのよ果南!」

 

「こらこら、後輩君にタカらないの」

 

 はっ!正気になって考えてみれば、今俺は破産の危機を迎えてたのかもしれない。松浦先輩マジ感謝。

 あぶねー、やっぱこの先輩危険人物だわ。俺のこと掌でコロコロ転がしてくるもん。流石三年生。ボンキュッボン!エロい。最高。なんだろう...都合の良いようにコロコロされて快楽を覚えた自分に驚いたんだよね。

 それにしても、松浦先輩の水着姿凄まじいな。あまりの破壊力に理性のダムが決壊しそうだった。しかし、本命はここから。こんな所で終わる訳にはいかないのである。

 

 

 とはいえやっぱ、夏の海は最高だぜ!!!

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

「あっ、未来君。いらっしゃいずらー」

 

 海の家に入ると、花丸が出迎えてくれた。水着のまま接客してるのか。最高じゃないか。いや、例え水着じゃなかったとしても最高だ。花丸が出迎えてくれる、それだけでこの世の全てに勝る幸せを享受できる。ここは天国か?

 

「お疲れ花丸。約束通りコレ、落としに来たぜ」

 

 そう言って俺は悪い笑みを浮かべながら手でお金のマークを作る。マニーですの!守銭奴系スクールアイドル。語尾がですの系スクールアイドル。アリだと思いますの!

 

「あはは、沢山頼んでくれるのはありがたいけど、あんまり無理はしないでね」

 

「俺の財布の心配をしてくれるのか花丸。クゥ...花丸、一生俺の財布を握ってください!」

 

「1名様入りましたずらー」

 

 完全にシカトされてしまった。だがしかし、そんな所もまたイイ!本当に花丸、愛いやつ。

 花丸は片手で空いたお盆を胸に抱えながら、知り合い特典か、1番奥の良い席に案内してくれた。お盆になりたい。

 それにしても花丸の水着。肌の露出はそこまでだがムチムチしてて絶景だな。これは100万ドル通り越して100無量大数ドル位の価値があるぞ。

 

「注文が決まったら呼んでね」

 

「キミを注文したいんだが、そんなメニューはあるかな?」

 

「お客様お帰りでーす!ありがとうございましたずらー」

 

「待て待て、帰らん帰らん」

 

 辛辣な対応。ぴえん。

 

 店内にはまだ数人のお客さんがおり、そそくさと花丸は別のお客さんの方へ行ってしまった。花丸が頑張って働いている姿を眺めた後、卓上に置いてあるメニューを手に取る。  

 メニューと睨めっこしていると、天使が舞い降りた。

 

「未来君!来てくれたんだね!」

 

 あぁぁぁ〜可愛い〜。癒される〜。次から次へと幸せが押し寄せてくる。正のスパイラルだ。

 

「勿論!約束したからね!」

 

「嬉しいなぁ。ありがとう!」

 

 ルビィちゃんとの約束を破るとか、そんな世界終末時計を一周させるよりも大罪な事するわけねぇべ!!

 

「ねね、ルビィ今から休憩なんだけど、ここで一緒にお昼にしてもいいかな?」

 

「良いに決まってるじゃん!ほらほら、疲れてるでしょ?座って座って」

 

「うん!」

 

 ルビィちゃんは嬉しそうにしながらそう口にして、俺の横に腰をかけた。んん?

 

「えと...なんで隣?」

 

 4人掛けの席なのに何故向かい側じゃなくて隣に座るんだろう。

 

「この方が一緒にメニューも見れて良いかなって思って。ごめんね、迷惑だったかな?」

 

「め、迷惑だなんてそんな!そうだね!こっちの方が良いに決まってる。俺は何を馬鹿なこと言ってるんだ!」

 

 疑問は残ったままだが、ルビィちゃんが言うことなんだから正しいに決まってる。ルビィちゃんの言うことが真理でありルールであり法となるのだ。ルビィちゃんの行動に疑問を持つとはなんと烏滸がましいやつ、俺。

 考えを改めた俺は、ルビィちゃんとメニューをシェアして一緒に眺める。

 隣り合って一緒にメニューを見ていると、結構な頻度でルビィちゃんの肩が当たってドキッとしてしまう。

 それにしてもルビィちゃん、意外と肌の露出の多い水着を着ているな。気を抜くと直ぐに視線がその白く綺麗な肌に向かってしまいそうだ。

 

「うーん、メニューが沢山あって悩むね。何かオススメとかあったりする?」

 

「うん、あるよ!えっとね、1番人気のこのヨキソバっていうメニューだよ」

 

 そう言ってルビィちゃんは、メニューを指差しながら顔を上げてこちらを向く。視線が交差する。近い近い近い。この距離感だとかなりルビィちゃんの顔が近くに来てしまう。後もう少し近づけたら大変な事になってしまいそうだ。

 心臓の鼓動が激しく高鳴っているのを感じる。俺は、事故が起こってはいけまいと自然な感じに再びメニューに目を戻し、ほんの少しだけ距離を取る。

 

「へ、へぇ。ヨキソバね...ヨキソバって何?焼きそばみたいな名前してるけど」

 

「うん。見た目は普通の焼きそばだよ。曜ちゃんが作ってるから、ヨキソバって名前なんだって」

 

「成程。じゃあそれを1つと...シャイ煮と堕天使の涙?何これ」

 

 メニュー表の下の方に記載されていた謎の料理。名前を口にしてみたものの、この2つは絶対人気ない。これは確信だ。

 特にシャイ煮に関しては一杯10万円...が訂正されて500円となっている事から地雷臭がヤバい。何だよ10万って。売れるわけないだろ。例のインバウン丼もビックリの価格だわ。

 

「あはは...これはねーーー」

 

 苦笑いしながらルビィちゃんが料理の詳細を語ろうとすると、パタパタとこちらに向かってくる足音が聞こえた。

 

「来たわね未来!」

 

「おー、善子。お疲れ様」

 

 足音の正体は善子だった。善子が小走りして俺とルビィちゃんのいる席までやって来た。

 

「ヨハネ!まだ注文してないわよね?」

 

「あぁ、してないな」

 

 相変わらずの反応速度だ。流石善子のお家芸。

 

「なら、このヨハネの力作である堕天使の涙を注文しなさい!」

 

 色物トップ2の一角を担う料理はやはり善子のspécialitéだったか。

 

「おうおう、こっちはお客様だぞ?お客様に注文を強制してくるとか、この店は一体どんな教育してるんだ?はぁ〜、キレたわ。店長呼んでこい」

 

「カスハラで訴えるわよ?あと店長はダイヤだけど、本当に呼んできた方がいい?」

 

「すいません、大人しく頼みますんでやめて下さい」

 

 将来の義姉であり、内浦の首領(ドン)である黒澤家の長女であるダイヤさんが店主の店で粗相をするとか万死に値する行為なんやで。もしも、『うちのルビィには2度と近づかないでくださいまし』とか言われたら、雄大な駿河湾に生息する海洋生物のためのプランクトンとなる事を迷わず選択するくらいには人生オワオワリなんやで。

 

「堕天使一丁入りましたー!」

 

 そう言いながら、善子は厨房へと戻っていった。

 なんやねんその掛け声。ツッコミ待ちか?とはいえイイネ、その元気に溢れた声。こんな可愛い子がいる店とか破産してでも通うわ。

 

「あー、未来君。無理だけはしないでね?」

 

 想像はしていたが、今のルビィちゃんの言葉で全てを察してしまった。

 そして数分後、善子は料理の乗ったお皿を手に持って戻ってきた。

 

「召し上がりなさい、堕天使の涙!」

 

 黒色の球体が目の前に置かれる。その球体はマヨネーズや鰹節が上に掛けられており、色違いのタコ焼きの様な見た目をしていた。これがspécialitéは料理人への冒涜で草。

 

「お前これお客さんに出してんの?闇物質じゃん」

 

「ダークマターいうな!」

 

 恐る恐る、付属の爪楊枝でダークマターを突き刺す。すると、中から謎の赤い液体が溢れ出した。いや怖。食べたくねー。でも善子から向けられる期待の眼差し。裏切る訳にはいかん。

 

「いただきます」

 

 なんだこれ!?辛すぎんだろ!辛味以外何も感じないぞ!!

 でも辛いのに旨くない!遠月学園第8席の久我先輩の四川麻婆みたいに辛いけど食べる手が止まらないことはない!正直無理!

 だが男なら耐えろ。耐えなければならない。せっかく女子が、それも善子が作ってくれたものを吐き出すべからずだ。

 

「...オイシイ」

 

「ふっふーん。でしょー?この堕天使ヨハネに掛かれば料理の一つや二つ。ほら、遠慮せずにもっと食べなさい!」

 

 アカン、手が震えている。食べるのを体が拒否してるんだ。大丈夫大丈夫。俺は今カプサイシンにより大量の汗をかいてテストステロンを多量分泌している。そう、善子の激辛料理を食べる事で俺はより良い男に変貌していっているのだ。流石善子、善いこと考える。

 それより、自慢げに胸を張る善子可愛くね?あぁマジ可愛い。何が堕天使だよ、ただの天使じゃねぇか。てか俺、もう善子にベタ惚れしてんじゃん。いつからこうなった?最初はこんな風じゃなかったのに。いやいいんだ。善子頑張ってるしな。ほんと偉いなー。凄いよなー。あーもう、本当善い子!!

 

 そんな事を考えつつも、目の前には未だ山積みになった堕天使の涙が残っている。これを華奢なルビィちゃんに食べさせる訳にもいかないし、俺が全て平らげるしかない。心を無にして残りを食べ進める。そして遂にラスト1個まで到達する。俺は手を振るわせながら最後の1個を口の中に放り込んだ。

 

「ゴチソウサマデス」

 

 さっきから発する言葉の全てがカタコトになっとる。ミゲルかよ。

 

「ふふふっ、じゃあ私は仕事に戻るから。ゆっくりしていきなさいねー」

 

 俺が完食したのを見守った後、善子はヒラヒラと手を振って厨房へ戻っていった。

 それを確認し終えたのと同時に額から大量の汗が溢れ出す。

 

「み、未来君大丈夫?汗凄いよ?」

 

「アイムファイン」

 

 全然ファインじゃないです。水を飲んでも辛さが全然和らがないし。

 こんな時は何か楽しい事を考えろ。辛味は痛覚を刺激する。故に痛覚を遮断するくらいに何か良い事を。久しくやってなかったが、一丁かましますかね!

 「ただいまー」疲労困憊の体を無理やり動かしながら、なんとか帰宅した俺は玄関の戸を開けてそう告げる。すると、パタパタという足音と共に前方の扉が開き、善子がこちらに駆け寄って来た。「お帰りなさい、あなた!」元気一杯に発せられたその言葉に俺の頬は限界まで緩んでしまう。そう、俺と善子は結婚し生活を共にしていた。しかもまだ数ヶ月前に式を挙げたばかりの新婚ホヤホヤであり、毎日甘々で熱々の生活を送っていたのだった。「ご飯にする?お風呂にする?それとも...」恥ずかしそうに頬を紅潮させながら善子はそう口にする。その魅力的な言葉に、俺はゴクリと喉を鳴らし今直ぐにでも善子をこちらへ抱き寄せたい衝動に駆られるが、ここは我慢すべき時である。「じゃあご飯にしようかな」「...はぁい」残念そうに呟き、料理の支度をするために居間に戻っていく善子の後ろ姿を見つめながら、俺はニヤリと口元を緩める。いくら結婚したとはいえ、駆け引きは大事だ。やり過ぎは厳禁だが、こうやって焦らす事によっていつまでも求められる男でいられるのだ。それから、自室にて着替えを終えた俺は善子と夕食を摂る。善子、料理上手くなったなぁ。そんな事をしみじみと思いながら箸を進める。その後、飯と風呂を終えた俺と善子は2人、寝室のベッドの上に座る。もう我慢出来ぬ。善子もソワソワしてるし、時は来たれり。「ふ〜じこちゃぁ〜ん!!!」「ふんっ!」「へぶっ!?」お楽しみはこれからだぜ!と言わんばかりに意気揚々と善子に向かってダイブした俺だったが、顔面を引っ叩かれ、地面に叩き落とされる。ハエ叩きに仕留められたハエか俺は。唖然とした表情を浮かべる俺を善子は冷たい目で見下ろす。「自分が主導権を握っていると、その気になっていたアンタの姿はお笑いだったわ。もっと稼いでから出直してこい!」「ご、ごめんなしゃい...」善子はそう言い残し、部屋から出ていってしまった。それから暫く、俺は情けなくへたり込みながら、善子が勢いよく閉めていった扉の先を見つめる事しか出来ずにいたのだった。

 うーん、我ながら凄まじく気色の悪い。それにしても、ついに善子が妄想デビューを果たしてしまった。仕方ない仕方ない。善子の水着姿、めっちゃエッジなんだもん。特にSiri。花丸と同じく肌の露出控えめだが、その黒い水着と他人よりも一層白い肌が見事なコントラストを作り出している。よく似合ってるなー。けど、花丸と善子よりもルビィちゃんの方が大胆な水着を着てるっていうのが意外だな。

 

 それから暫く、ルビィちゃんと談笑しながら残りの昼食を食べ進める。お腹を満たした俺とルビィちゃんは、海の家を後にした。

 

「ねぇ未来くん、もし時間があったら今から一緒にお散歩したいな」

 

「うん、暇だよ。行こっか」

 

 ルビィの提案を受け入れ、歩き出そうとすると、俺の手が小さく柔らかい何かに包まれた。

 

「ちょ、ちょぉ!?ルビィ!?」

 

「ご、ごめんね。その...人が多いから迷子にならないようにって思ったんだけど、嫌...だったよね...」

 

 悲しそうに俯くルビィちゃんを見て、俺は罪悪感に苛まれる。俺が下らない動揺をしてしまったせいでルビィちゃんを悲しませてしまった。

 

「!?嫌じゃない、全然嫌じゃないよ!あー...ほら!手繋ごう!はぐれちゃダメだしね!うん!!」

 

 急いでフォローして、今度は俺の方からルビィの手を握りにいく。

 その行動に、先程の悲しそうな表情から一転し、ルビィはとても嬉しそうな表情を浮かべ、華の咲いたような笑顔を見せるのだった。

 

 はぁ〜、マジでビビったべさ〜。これ、側から見たらただのラブコメのワンシーンだし。海に遊びに来たカップルじゃんこれ。普段こんな幸せそうな奴らを目撃したら藁人形に五寸釘打ちつけて呪ってやるレベルだわ。

 

「未来くんの手、ゴツゴツしてて大きいんだね...凄い...」

 

「ご、ごめん、俺手汗多い方だから。気持ち悪くなったら気にせずいつでも離してくれ」

 

 ルビィちゃんの言葉にドギマギしながら、俺はそう告げる。

 

「ううん。全然気持ち悪く無いよ。寧ろ...こうしてると凄く心がポカポカして、気持ち良いな」

 

「...そっか」

 

 なんか最近のルビィちゃん変だ。明らかに以前までと比較して距離感近くなったし、ボディタッチ増えたし、めっちゃドキドキする。まるでこんなの、俺のことが好きみたいじゃないか。ヒャァッホー!!!遂に俺に春が!初彼女!しかもこんな美少女!これは歌わずにはいられない!この思いを!!初彼女が出来た記念にお祝いソング作りまーす!俺の歌を聞け!いくよ!テオ君頑張れ!テオ君頑張れ!不快ピースyeah!!......などと、勘違いする哀れなDTがここにいましたとさ。あのさぁ、ルビィちゃんと付き合うだなんて、そんな宝くじに当たるよりも価値のあることが現実に起こるわけがないだろ?変な勘違いせずにシ○ッて寝てろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

「ダ、ダイヤさん!一体ルビィちゃんどうしちゃったんですか!?」

 

 仲睦まじく手を繋ぎながら歩くルビィと天城さん達の姿を見た梨子さんが驚愕の声を挙げた。同じくその光景を目にしていた千歌さんや果南さん達も驚きに目を丸くしている。

 

「うふふ、まさか私もルビィがここまで積極的になるとは思いもしていませんでしたわ」

 

 先日、ルビィの帰りが少し遅かった日のこと。あの日のルビィは何か悟った様な表情で、とても幸せそうな雰囲気を醸し出していた。今までに見たことがないくらい妖艶で、大人っぽくて、女性の魅力に溢れた表情で...

 その姿を見て私は直ぐに理解した。ルビィは自身の気持ちを自覚し、天城さんに恋をしてしまったのだと。

 先の光景を見て私の考えは確信に変わるのだった。

 

「で、どうなのダイヤ?」

 

 海の家のチラシを片手に持ちながら、果南さんがそう尋ねてきた。

 

「どうなの...とはどういう意味でしょうか?」

 

「ルビィちゃんの姉として、もし天城くんと付き合う事になったら寂しくなったりしない?」

 

「そうですわね、確かに寂しくなると思いますが、ルビィが幸せならそれでいいですわ」

 

「そっか。ダイヤは良いお姉ちゃんだねぇ」

 

「それ程でも...ありますわね!」

 

「ダイヤ...」

 

「ごほんっ、冗談ですわ。まぁ、ルビィはまだまだ幼い部分が残っていますから、しっかり者の天城さんとなら良きパートナーになっていけるのではないでしょうか」

 

 私にとってルビィは、守るべき幼く可愛い妹、という存在だった。しかしながら、最近のルビィの成長は目まぐるしく、どんどん立派に成長していっている。故に、少しずつ大人になっていくルビィに一抹の寂しさを覚えつつも、その認識は改めなければならないと思い始めている。

 とはいえ、やはり心配な箇所がない訳ではないため、ルビィのことを支えてくれる存在は未だ必要であり、天城さんは打って付けだと考えている。

 聞くに天城さんは学業で優秀な成績を収めているらしく、将来は良い大学に入って安定した職に就ける可能性が高い。上背もあり、運動部に入っている訳でもないのに体格も中々にガッチリしている。所謂優良物件というものではないだろうか。そんな表面的な箇所以外にも、普段ルビィを見つめるあの優しげな表情。ルビィの事をとても大切に思ってくれているのだろう。その他にもルビィの男性恐怖症や人見知りを改善させたりと天城さんの影響は計り知れず、大事な妹のことを任せるに足りる方といえる。

 

「つまり、ダイヤはルビィちゃんが天城くんと付き合うのは全然問題なしってことなんだね。てっきり、『ウチの可愛いルビィは渡しませんわ!』とかなんとか言うかと思ったよ」

 

 まぁ、自分自身でもシスコンの自覚はあるため突っ込みはしませんが、果南さんの中では私がその様なことを口にする人間だと思われているのですね。

 

「良いわねぇ。青春してるわねぇ」

 

「ねー!天城君と1年生の子達が一緒にいるとこ見てるとドキドキしてくるよね!」

 

「そうね。でも、花丸ちゃんは分からないけれど、善子ちゃんは確実にそうだし...一体どうなっちゃうのかしら?」

 

「なんかドロドロしそうな雰囲気になってきたわね!!」

 

「鞠莉さん、あまり不吉な事を言わないで貰えます?」

 

 

 もしそんな事態に発展してしまえば胃が痛い所の騒ぎでは無くなってしまいますわ...

 

 そんな風に考えつつ、ルビィの想いが成就する事を願って、私は2人の歩いていった先を見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

やったね公認だよ!

 

 なんか急に不思議な電波を受信したから言ってみたけど、何の公認だよ。てかさぁ、最近の俺、公認って言葉あんま信用してないんだよね。トゥイッターでも公認マーク安売りされてて、そのせいでインプレゾンビ大量発生してるし。更に言えば、何ちゃら法人が主催したり公認してる資格とか国公認のキャリア◯ンサルタントの資格とかも割とそういう既得権益絡みの奴ばっかだから!!...あんまこういう事言ってるとダークサイドに消されそうだからここまでにしときます。

 そんな事より、今凄いハッピーハッピーハッピー(某ミーム並感)なんだよ。ようつべで猫ミームのshort見てるとき、ワロエナイレベルのエグい話とかクズエピソード出てくんのやめろ。それ可愛い猫達でも中和出来てねーから。

 

「どうしたのルビィ?」

 

 並んで歩くこの時間が愛おしい。少し前にもこんな風に互いの手を触れ合ったが、飽きることはない。お互いの手の感触が、体温が、緊張がダイレクトに伝わってくる。

 

「う、ううん!なんでもないよ!」

 

 先程から視線を感じることが多い。多分だが、その視線の正体はルビィちゃんだろう。こちらの方を頻繁にチラチラと見ている気がする。ルビィちゃんの方を向くと必ず一瞬目が合うためほぼ確定だ。しかし、目を合わせた途端、直ぐに逸らされてしまうため若干凹んでいる。一方で、2人きりで手を繋なぎながら海辺を散歩するという素晴らしすぎるシチュでもあるので今俺は、上げて落とされている!?やはりルビィちゃんは小悪魔。鞭で叩かれたい。いや、ヒール履いた状態で脛とかお腹とか顔を蹴られたい。いや、顔は踏んで欲しい、思いっきり。

 

 

 

 ふぅ...やっぱりルビィちゃんは最高だぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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番外編
Q.チョコの甘さは何で決まるの?


初、番外編です。この話は所謂ifストーリーというやつです。本編がシリアヌばっかりで書いていて楽しくなかったので息抜きで書きました。この話は、書いてて楽しかったです。やりたい放題やりました。
本編を楽しみにしていた人はすいません。でも........たまにはこういうのもいいよね?あと、バレンタインはとっくに終わったけどいいよね?
番外編なのでタイトルの縛りは無しです。



静岡県のとある中学校に、照れているのか頬を赤くしている一組の男女がいた....

 

「山田くん....その...これ、受け取って貰えないかな?」

 

「えっ?あ、ありがとう....」

 

「........」

 

2月14日、バレンタイン。それは、女性が気になる異性に自分の気持ちを込めて作ったチョコレートを渡す、それはそれは素敵なイベントである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

な訳ねーだろ!悪魔のイベントだよ!本命チョコ友チョコ義理チョコ偽チョコ罠チョコ(獲得数ゼロの男を地獄に叩きいれる為に渡される箱は立派で中身が入ってないもののこと)とかあるけどな!全てお菓子メーカーの策略なんだよ!

そして学校にチョコ持ってきてんじゃねーよ!ここ中学だぞ!

 

あと山田てめぇそんな初々しい感じで貰ってんじゃねぇ!今日二十個目だろーが!ふぁ○く!○ね!ぶっこ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

さっきは汚い言葉ばかり使ってしまい、誠にすいませんでした。

 

 

「長文が読めないよ~!どうしたらいいずら~!」

 

2月14日。世の中はバレンタインでざわ....ざわ....しているが、高校受験生にとっては丁度私立高校の受験シーズンに当たる。国木田さんとルビィちゃんは次の土曜に入試があり、今日は三人で図書室で勉強をしている。ちなみに俺は先週終わった。

 

「国木田さん、もう入試まで時間がないから音読をもっとしよう。あと、不定詞と関係代名詞を覚えるんじゃなくてしっかりと理解しよう。そうすれば長文も読みやすくなるよ。大丈夫、俺が教えるから」

 

「頼りになるずら~!......こういう時は」

 

「おい」

 

てめぇ、可愛いからって調子乗ってんじゃねーぞ!調子乗ってると1on1(良い子には見せられない紳士の為のレッスン)するぞ!

 

 

「天城君、ルビィにも教えて欲しいな」

 

「へいっ!喜んで!」

 

 

ひゃーーー!!我が天使ルビたそに勉強を教えられるなんて、やる気と共に俺の俺(通称ジョン)がもりもりになるぜ!もし俺が下手な教えかたしたら、ルビィちゃんに『うゆ?天城君、その説明じゃ全然分からないよぉ!』とか言われて『さっせん!えっと、これはこうで....』って頑張ったけど伝わらなくてルビィちゃんに『天城君教えるの下手!もういいよ、おねぃちゃに教わるから!天城君クビね、ばいばい』って言われて冷たい目で見られたり見られなかったりしてね!妄想が捗るでち!!

 

「ひっ!は、花丸ちゃん!」

 

「天城君....ニヤニヤしてて気持ち悪いずら」

 

 

国木田さんの言葉と冷たい視線が俺に突き刺さる。いいよ?そっちがその気なら俺にも考えがあるよ?国木田さんが読んでる本からブックカバーだけとってエッチな小説にすり替えとくよ?で、それ読んだ瞬間にタイミングよく参上した俺が『あー!国木田さんなに読んでるの?見せて!』って言って本を取り上げて悪い顔をしながら『国木田さんこんな趣味あったんだ~』的な風に迫って国木田さんに『お願い....ルビィちゃんにだけは秘密にして欲しいずら...』って涙目で言われた俺が野獣になった瞬間実は近くに隠れていたルビィちゃんが呼んだポリスに取り抑えられちゃうの!?(支離滅裂)国木田さんはポリスに連行されそうになっている俺に『待って!最後に言いたいことがあるずら!』と顔を赤く染めながら言ってきた為ドギマギしている俺の期待を裏切るように次の瞬間悪い顔を浮かべ『期待したずら?残念だったな変態!二度とシャバに出て来るなずら!』と言って何故か近くにあったバットで俺の尻にケツバットする........

 

 

ふーっ、今日も俺の脳の回転は最高だぜ!

 

 

「なにやりきった感だしてるずら」

 

「いや、今とても長い仕事を終えたからさ........」

 

二人は引いていた。俺が考えてることわかるのかな?

いつの間にやら~引かれていたんだ悔しいなぷんぷんっ(`Δ´)(リリホワ推しの人さーせん)

 

 

「急に棒立ちしてニヤニヤしてたら誰でも引くずら」

 

こいつ!やっぱり俺の考えていることを....!

 

「天城君は成績は良いけど頭悪いずら」

 

「やめてっ!」

 

国木田さん今日口悪すぎだよ!そんなんだと色んな人からキャラ崩壊とか言って苦情コメ来ちゃうから!キャラ崩壊タグつけてないしね!(応援コメは大募集中だよん!)

 

 

 

「はぁ.....天城君がそんな調子だと、あれを渡す気が無くなるずら........」

 

「ん?」

 

「しっ!花丸ちゃん!」

 

「しまったずら!」

 

あれ?あれ........とは?英語でよく省略されるthatのこと?それとも、和服のおねーさんがエッチな男の人達に帯を引っ張られる(通称帯回し)時にだすあの男のロマンな声のこと?

それとも....

 

「あれ!?あれって何!?もしかしてあれの事!?」

 

最初の文字がチで始まってトで終わるあれか!?

 

 

「うっ......無駄に察しがいいずら....」

 

「うーん......少し早いけど花丸ちゃん、もう渡しちゃおっか」

 

「ルビィちゃん.........そうずらね」

 

おいおいおい!まさか!

 

「じゃあ練習通りにやるよ!」

 

やっぱり思った通りあれって言うのは―――

 

「 「せーの!」 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 「 ハッピーバレンタイン!いつもありがとう! 天城君 ! 」 」

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

はぁ......ルビマル尊いわぁ....可愛い過ぎだわあの二人。邪な心を持つ俺は危うく天に召されそうになったよ。天に召されたら是非とも委員長系美少女天使さんに性格矯正の為に色々(ヌルフフフ...)なことしてもらいたいね!で、天使さんにセクハラし過ぎて地獄に落とされた俺は、鞭をもったムチムチ悪魔ちゃん(ウマイッ!)に調きょ........教育されたいよね!

で、ここまで長ったらしく書いたけど、つまり俺の言いたいことはな、セクハラはみんなで楽しくマナーを守ってやれってことだ!ク○ちゃん!!

 

 

 

あと、あれだわ.......

 

 

 

 

 

 

バレンタイン最高だな!

 

さっきは悪く言ってごめんなバレンタイン。お菓子メーカーも良いこと考えるな!これからはポカリ買う時についでになんか買ってやるよ!バレンタイン最高!アニメではタスクにオラオラされんなよ!(分かる人には分かるネタ)

 

まぁ、欲を言えばあそこで顔を赤くしながら『ちょっとだけ....特別な義理です』とか言って欲しかったよな!

貰えただけいいけどね!人生初チョコだし!ま、俺みたいなフツメンが本命なんか貰える訳ないけどね。

 

『次は~沼津駅~終点で~す』

 

あっ、下らないこと考えてたら着いた。

 

さっさと用事を済ませるかね.......

 

 

 

 

 

 

あっ....

 

 

 

 

 

「な、なんであんたがここに........!」

 

 

中二がいた。

 

 

 

 

~~~

 

「おい津島。なんでついて来んの?」

 

「なによっ!悪い!」

 

「俺今からゲーマーズ行くんだけど」

 

「ぷぷっ!バレンタインなのにゲーマーズ行くとか寂しいわね!」

 

「あぁん!?寂しくないし!それに今年チョコ貰ったからな!」

 

「なっ!?う、うう嘘つくんじゃないわよ!」

 

「嘘じゃないしー!見ろっ!これを!」

 

「ふ、二つも!」

 

「どうだ?お?悔しい?悔しいよね!」

 

「ムキーッ!あんただけは仲間だと思ってたのに!!」

 

「すいませんなー!俺だけリア充になっちゃってなー!」

 

「調子のんなぁ~!」

 

「おうおうおう!哀れな堕天使がいるな!一人で悲しいなぁおい!」

 

「で、でもそれ、どうせ本命じゃないんでしょ!」

 

「うぐっ!い、いやどこにそんな証拠が....」

 

「あんた、嘘つく時に頭掻く癖、まだ治ってないのね」

 

「うそっ!?」

 

「うそよ!騙されたわね!」

 

「津島!てめぇは俺を怒らせた!」

 

「所詮このヨハネの世界(ザ・ワールド)の前には全て無駄無駄ァ!なのよ!」

 

「........」

 

「な、なによ?」

 

「唐突に話変わるけどさ」

 

「ほんと唐突ね」

 

「お前、なんであんな時間にバス停にいたんだよ?」

 

「そ、それは........」

 

「まぁ、言いにくいんなら聞かないけど」

 

「ありがと....」

 

「........」

 

「........」

 

「そっ、そうだ!」

 

「どうした?」

 

「ククク....本命チョコに恵まれないあんたにヨハネからプレゼントをあげるわ!」

 

「は?プレゼント?」

 

「うぅ........う、受け取りなさい!」

 

「これは......チョコ?」

 

「そうよ!このヨハネの手づくりよ!」

 

「へぇー!ありがとう!」

 

「なっ!お、お礼なんていらないわ!別に感謝される為に作った訳じゃないし!」

 

「ふーん。てかお前、なんで手づくりチョコなんか持ち歩いてんの?」

 

「そっ、それは!」

 

「もしかしてお前、好きな人でもいるの?」

 

「こ、この堕天使ヨハネが人間風情を好きになるなんてあり得ないわよ! 」

 

「ほー、じゃあ友チョコとかそんな感じかー」

 

「....そうよ」

 

「成る程なー」

 

「......あんたは....」

 

「ん?」

 

「好きな人とか........いないの?」

 

「俺?どうしてそんなこと―――」

 

「いるの?」

 

「!............いや、い、いないよ....」

 

「そっか....」

 

「あぁ....」

 

「........」

 

「........」

 

「.......そ、そうだ!もうそろそろ暗くなるし、帰った方が―――」

 

「ねぇ........」

 

「ど、どうした?」

 

「ちょ!?な、なに抱きついて―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私........未来のことが.......好き...」

 

「........は?」

 

「前からずっと......ずっと好き」

 

「つ、津島!?お前、なに言って―――」

 

「好きな人........いないんでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私じゃ......ダメかしら?」

 

「津島............」

 

「答えて」

 

「........」

 

 

 

 

 

 

「俺は―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

今日は2月14日、バレンタイン。

 

「ただいまー」

 

「お帰りなさい善子。遅かったわね。丁度ご飯出来たところよ。早く着替えて食べなさい」

 

「うん」

 

地上の人間どもは、いつもこの日は浮かれていて、このヨハネには縁が無いものだと思ってた........

 

「それにしてもこんな時間に、内浦まで何をしに行ったの?」

 

だけどヨハネは........

 

「えっ......それは........」

 

今年のバレンタインの思い出を―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ、内緒!」

 

 

―――いつまでも忘れないだろう

 

 

 

 

 




最近ヨハネ様を書くのが一番楽しいです。


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古都に行こっと!

更新遅れ過ぎてすいません。失踪はしてませんし、するつもりもありません。本編の方が難産過ぎて、また、番外編を書こうにもネタが中々決まらず、次話を投稿出来ませんでした。
あと、執筆するのが久々過ぎて中々調子がでませんでした。後半くらいからエンジンが掛り始めたので主人公が末期になりました。

今回の投稿は失踪してない報告をするための物なので、出来が悪くても目をつぶってちょ!


とある休日、リア充の俺は花丸、津島、ルビィちゃま!とバスである場所に向かっていた。

 

「おう津島、なんでお前が隣なんじゃ」

 

「ヨハネ!...ずら丸とルビィが先にさっさと座ってたんだから仕方ないじゃない。文句なら二人に言いなさいよ」

 

何処に向かっていると思う?最初の文字は“き”な。ヒントどすえ~。

 

「花丸とルビィが?なら仕方ないな!」

 

「なんでそうなるのよ!」

 

あともう一つヒント。沼津から四時間以上かかる。みんなもう分かったよね?

 

「暇だからゲームでもやるわ」

 

俺の言葉に津島が「へぇ....」と反応する。

 

「モ○ハン?」

 

「Yes」

 

実際ひと狩いこうぜ!してると四時間なんてあっという間なんだよな。

と考えていると、津島が隣で不敵な笑みを浮かべている。

 

「ククッ....!知識の神、オーディーン!この堕天使ヨハネには汝の思考の全てが観えていたのです!」

 

津島はそう言うと、自慢気にゲーム機を見せつけてきた。

 

「おぉー!お前もモン○ンを!やっぱ長旅にはモンハ○は必須だよな!ってその名前で呼ぶなぁ!」

 

まったくこいつは。何度も言ってるのに。まぁ、今回はモンハンに免じて許してやろう。............あっ、隠すの忘れてた。

 

「集会所入ったわよ!なに狩るの?」

 

「ん?ならジョーさん行くか。罠肉持ってくわ」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

「二人とも楽しそうだね」

 

「バスの中なのに騒ぎ過ぎずら....」

 

「あれ?花丸ちゃん、もうじゃが○こ食べちゃったの!?ルビィも食べたかったのに....」

 

「!?ル、ルビィちゃんごめんね!気がついたら無くなってたずら!」

 

 

~~~

 

バスに揺られて約四時間、俺達は目的の地、京都に到着した。

 

「 「 「 おぉ~! 」 」 」

 

俺、花丸、ルビィは京都駅のデカさと、人の多さに声を上げる。

 

「京都駅ってこんな大きいんだな!」

 

「だね!京都なんて、小学校の修学旅行以来だなぁ」

 

「外人さんばっかりずら....」

 

確かに....韓国、とか中国人っぽい人達ばっかだ。下手したら日本人より多いかも。

 

「あれ?善子ちゃんは?」

 

花丸がそう言って周囲を探し始める。さっきまで一緒にいたはずなのに。

 

「あっ!あれ!」

 

ルビィちゃんが駅の方を指さしていた。見てみると、津島が駅の階段近くでいつものあれをしていた。

 

「ククッ!堕天使ヨハネ、古の都に.......降臨!」

 

場所的に当然人が多くいるわけで、とても目立っている。中には写真を撮っている人もいた。

 

「........」

 

「お腹すいたずらー、二人とも行くずら」

 

流石花丸さん。スルースキルはこの中ではピカイチだな。花丸によくスルーされるせいで、俺の中では花丸に放置され隊が勢力を大幅に拡大してるからな....

 

「京都って何が有名ずら?」

 

「八ツ橋」

 

「それ、ご飯じゃないずら」

 

「ちょっと待ってね、今調べるから!」

 

時間も時間だし、駅ナカとかで食べたほうがいいかな?

 

「えっ!ちょっ!置いてかないでよ!!」

 

置いていかれていることに気が付いた津島がこちらに向かってくる。こんな目立つやつの連れだと思われたくないんだけどなぁ。

 

 

 

 

 

~~~

 

京都駅からバスで約40分。俺達は、銀閣寺に来ていた。

 

「すごいね~!」

 

「やっぱり銀閣は渋くていいなぁ。俺、金閣より銀閣の方が好きかも」

 

俺は現在、ルビィちゃんと二人きり(これ重要)で見学していた。

寺の娘(聖歌隊)の花丸が、銀閣に興奮して津島を引っ張って先に行ってしまった為だ。

 

「そういえば、金閣寺は金が張られてるのに、銀閣には銀が貼られてないんだね」

 

「あー、そうだね」

 

ルビィちゃんが口にしたことは、確かに謎だよなぁ。俺も小学生のときに一緒のこと考えたしね。

 

「ルビィは、銀閣を建てたのは誰か知ってるよね?」

 

「うん、足利義政だよね?授業でやったよ!」

 

得意そうな顔をしながらルビィちゃんはそう答える。かわえぇ........

 

「この寺は、作られた当時は銀閣なんて名前じゃ無かったらしいよ。江戸時代につけられた名前なんだってさ」

 

「元々銀を貼る予定は無かったらしい。まぁ、銀閣を建てはじめた時期は応仁の乱と被ってて、銀を貼る金が無かったんじゃないか?って説があるらしいけどね」

 

「へぇ~。やっぱり物知りだね!未来君は!」

 

「いやぁ~それほどでも~!.....あるけど!」

 

それっぽく語ったけど、これ全部事前にネットサーフィンしてきたからなんだよね。ほら、やっぱり男なら格好良くうんちく語りたいじゃん?

 

 

 

 

 

 

 

 

---

 

「あっ、あれ花丸ちゃん達じゃない?」

 

「本当だ」

 

あの二人はどんなけ先まで進んでるんだよ。

ま、そのお蔭でルビィちゃんとのイチャコラデートを楽しめたんだけどね。

 

 

「二人とも大丈夫かな?凄く慌ててるみたいだけど....」

 

「えっ?」

 

再び二人を見れば、同じく二人組の外人グループに話しかけられていた。

ま、まさかナンパ!?外人もわかってるじゃないか........

それにあの外人、中々のガチムチじゃないか。これは薄い本が書けそうだ....俺じゃなきゃ見逃しちゃうね....

 

ってふざけてる場合じゃなぁい!(ハズキ○ーペのCM感)

 

二人とも、英語は苦手だからな。助けないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

「Excuse me」

 

「ずら!?な、なんずら!?」

 

「Could you take our photo with Ginkakuji in the background? 」

 

「な、なんて言ってるずら!?」

 

「し、知らないわよ!あんたがなんとかしなさいよ、ずら丸!」

 

「 マルは英語喋れないずら!中学の時も英語は3だったし!善子ちゃんがなんとかしてよ!」

 

「私だって喋れないわよ!」

 

「Is that okay?」

 

なんにもおーけーじゃないずら!

 

「ど、どうしよう......あ、I don't speak English....」

 

「Oh....」

 

私は英語を話せません、ということで対象を別の人に変える........流石善子ちゃん....!ナイスずら!

 

「二人ともー」

 

 

「未来!良いところに来たわね!通訳頼んだわよ!」

 

「えぇ~、テンション乗らないっす」

 

善子ちゃんの言葉に、未来君は面倒そうな態度をとる。また未来君は....本当はすっごく仲が良いのに、善子ちゃんの前ではいつもこういう態度をとる。

 

「未来君........助けて!」

 

「了解しましたー!!」

 

「なんでそうなるのよ!」

 

 

マルがお願いすると、未来君は、目の前で少し困ったような顔をしている外人さんに話しかける。

 

「How can I help you?」

 

すると外人さんは、ようやく意志の疎通ができた為喜んでいるようで、ネイティブな発音で話始める。

 

「Yes!We want you to take our photo with Ginkakuji in the background. Can I ask you that favor?」

 

「OK!Let's take a photo!」

 

未来君は、外人さんの写真を何枚か取ったようで、マル達の元へ戻ってくる。

 

「なんて言ってたの?」

 

「写真撮ってくれませんか?銀閣を背景にして、だってさ」

 

「怖かったずら.....」

 

「さ、流石は私のリトルデーモンね!」

 

マルと善子ちゃんは安堵したようにそう言う。

 

「授業は真面目に聞いてるからね。ケビン先生(アメリカ出身。ガタイが良い。ホ○疑惑あり)の授業のお蔭かな。でもなぁ....」

 

未来君少し呆れたような表情になり、

 

「私は英語を話せません、じゃないからな。もっと勉強しような....」

 

マル達にそう言った。

 

「 「はい......」 」

 

マ、マルは寺の娘だから、英語が出来なくてもしかたないずらぁ(震え声)

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

銀閣のあとは、祇園でグルメレース(ただの観光)をしたり、伏見稲荷大社の頂上まで登ったりした。頂上に向う途中、雨が降ってきて鳥居の中が薄暗くなって、マジで怖かったな。津島のビビり具合いが凄すぎて爆笑だったけど。

あと、急に雨が降ってきたわけで、もしかして服が濡れ透けってるじゃないカナー?と思ってルビィちゃん達にバレないようにチラ見したら、みんな折り畳み傘さしてたんだよ........うん、ちゃんと準備出来てておじさん嬉しいよ....

 

「まぁ、部屋が別々なのは仕方ないっていうより、当然だよなぁ....」

 

 

伏見稲荷の後は、予約したホテルにチェックインをして、各々明日の観光に備えて休んでいる。

ホテルのふかふかなベットに興奮した花丸(田舎っぺ)がベットダイブ(修学旅行とかで皆がよくやるあれ)をした拍子にイニシャルパで始まってティーで終わるもの(男の夢のあれ)が見えたり見えなかったりして!?みたいなのを期待してたんだけどなぁ。

まぁでもあれだよね。やっぱりチラリズムが至高だと思うんだよね。見えそうで、見えない.......あっ!見えた!ってのが最高じゃないか!?例え見えなくても想像力(紳士達の必須スキルだにゃ)で自分を慰めることが可能だしね。(どこを慰めるんだろうナー?)

 

てなわけで、私はチラリズム最強説を提唱します!

 

「おっ、ルビィちゃんからライン来てる」

 

『トランプするけど、未来君も一緒にやる?』

 

『やるやるー!』

 

返信するのと一緒にスタンプも送っておく。すると、すぐに既読がつき、ルビィちゃんから可愛らしいスタンプが送られてきた。

 

「女子部屋にお呼ばれするとか、俺もリア充になったもんだぜ......彼女いない歴=年齢だけど」

 

ルビィちゃん達の部屋は俺の部屋の隣である。みんなは分かるだろうか?これによるメリットが。分からないならR17.9の二次創作小説を読んでレポート(6000字以上)で提出してください。期限は明日な。ちゃんと引用も然るべき手順でしてくるように。それが嫌だったら、なんで分からなかったか明日までに考えといてください(ペプシを飲みながら)。そしたら何かが見えてくるはずです。

で、メリットの話だが、それはのう........ここでは言えないんじゃ。ここでそのメリットについて言及していまえばR18タグがつけられるのは待ったなしじゃからのう。ここで言えることは、可愛い女子は大概レ○ということくらいかのう。そしてその○ズが夜に数人集まってレ○セッ---の音---隣で---楽し---おっと、誰か来たようじゃな。それじゃあまたのう。お互い生きてたら....じゃがな。(放浪する百合研究者が残した日記より抜粋)

 

 

部屋に入れて貰う為にノックをする。

 

ノック無しで入ってラッキースケベを狙うって手もありだけどな!『やっはろー!みんな、お菓子とジュース持ってきたぜー!』と、ノック無しでいきなりドアをあけたらそこには着替え中の花丸達がいて、俺を見るや否や、恥ずかしさで顔を真っ赤にし、『きゃっ!未来君!どうして勝手に開けるずらぁ!』といって閉めるように促してきたが、目の前の桃源郷に夢中な俺には当然そんな言葉が届くわけもなく、花丸が『いつまで見てるずらぁ!』と言ったと同時に投擲してきた物が顔面に直撃し、やっと我に帰った俺が『ご、ごめん!その....君達の姿に....見とれてて....』と、恋愛漫画の男主人公風に言うと、照れたのか更に顔を真っ赤にした花丸が、『もう....本当に未来くんは....ズルいずら....』と呟いたが、キスをキムチと聞き違えるレベルの難聴鈍感系主人公(一条○、テメェのことだよ)の俺には当然聞こえず、ドアの前に佇んでいると、『っ!は、早く出ていくずらー!』と言われたため、俺はやってしまったー!と思いつつ、自分の部屋へ逃げる。隣の部屋では俺の見とれてた発言にドキドキした女の子達が俺への想いを再認識して、『負けないからね!未来の隣は....私なんだから!』と友であり恋敵である他二名に宣戦布告したのだった..........

 

ふぅ........疲れた。

 

「入っていいよー」

 

ま、現実はホテルのドアはカードキーで簡単に鍵が閉まる為、外から勝手に開けるなんて真似はそうそう出来ないんだけどね。そんなことを考えつつ、扉を開け、部屋に入る。

 

「うおぉぉぉ!」

 

俺は今日の光景を銀閣とかそんなものよりも大切に脳内にとどめておくだろう。

 

 

「どうしたのよ?変な声出して?」

 

ベットに横になっている津島が奇妙なものを見るかのような視線を向けてくる。

いや、今はそんなものどうでもいい。目の前の光景に集中しろ。

 

「ここが天国か....」

 

俺の目の前にはなんと、パジャマ姿の美少女達がいた。母様、産んでくれてありがとう....

 

ルビィちゃんはいつものように髪をツインテールにしており、薄いピンク色のスカートタイプのパジャマを着ている。

花丸もツインテールにしており、ルビィちゃんと同じく水色?っぽい色のパジャマを身に纏っている。

くっ....女性用の服の名称とか全然分からないからまともなレビューが出来ない。すまない我が同志(変態達)よ!

 

とりあえず二人とも可愛い。かわゆすぎる!特に花丸はツインテールとか珍し過ぎて普段以上に可愛く見える。

そして二人とも、なんかこう......人妻感が凄いよね....

 

あとは....

 

 

「なによ?」

 

あ、津島さんはお団子ないんですね。分かりました。

 

「なんでかしら?あんたを見てると凄くイライラしてくるわね....」

 

津島、お前はもっと人妻感を出すために出直してこい。

 

あと........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人妻って単語、やっぱりエロいよね!

 

 

 

 

 

~~~

 

 

「未来君はもうお風呂入ったの?」

 

「うん、入ったよ。三人は?」

 

「こっちもみんな入り終わったわよ」

 

「よっし!じゃあトランプパーティーだぁ!」

 

陽キャの俺は率先して場を盛り上げていく。最初の相手はババ抜きだぁ!と、無理してる感が半端ないテンションでトランプをシャッフルする。

すると、俺の鼻がなんらかの甘い香りをキャッチした。

 

「なんか、良い匂いがするな....花の匂い?みたいな」

 

「そ、そう?」

 

俺がそう言うと、何故か津島は顔を赤くしてこちらに目を向けた。

 

「?どうしたんだよ、ちょっと顔赤いぞ?お前」

 

「う、うるさい!」

 

すると今度はそっぽを向いてしまった。なんなん?

 

「シャンプーの匂いだと思うよ」

 

「なるほど....」

 

確かに他にも果物、それも柑橘系の匂いがするな。主に花丸とルビィちゃんの方から。てことは、この匂いは津島のか。

 

「良い匂いじゃん。俺結構好きかも、この香り」

 

「........あっそ」

 

「善子ちゃん....照れてるずらぁ~?」

 

「なっ!そ、そんなわけないてしょ!なんで私が照れなくちゃいけないのよ!」

 

「でも、顔真っ赤ずら~」

 

「~っ!ず、ずら丸~!」

 

そう、花丸が津島に言ったのを皮切りに、二人の闘いが始まった。この狭い部屋でよくやるなぁ....

 

「ねぇ、未来君」

 

「どうしたん?」

 

「ルビィもね、シャンプーには気をつかってるんだぁ」

 

「へぇ、そうなんだぁ」

 

「うん!」

 

「........」

 

「........」

 

 

え?なに?この間は.......

そう考えていると、いつの間にか俺の後ろに花丸と津島がいた。もう終わったん?

 

「ちょっ、未来!あんた、ルビィに何したのよ!」

 

「え?」

 

津島が何の為かは知らないが、ルビィちゃんに聞こえないように耳元でそう囁いた。

 

「ル、ルビィちゃんのあんな顔、マルも初めて見たずら!早く何とかするずら!」

 

花丸も同じように俺の耳元でそう言う。

え?ルビィちゃんの表情、そんなに変か?

 

「........」

 

............な、なんか心なしか、不機嫌そうに見えるんだけど?俺の勘違いじゃなくて?でも、なんかこうルビィちゃんの周りにゴゴゴッみたいな効果音が見える気が....

 

「あっ!あー!そ、そういえば、もう一つさっきのとは違う良い匂いがするナー!もしかしてルビィ?ルビィだよね!良い匂いだね!」

 

得体の知れない恐怖を感じたので、ルビィちゃんを取り合えずヨイショ!しておく。これが古来より続く社会で生き残る術よ....

 

「ふふっ、そうかなぁ?でも、ありがとう!凄く....嬉しいなぁ....」

 

俺のその言葉で、ルビィちゃんはいつものようなエンジェルフェイスに戻ったようだった。しかも、少し頬が赤い。色々どうしてぇ?

 

「未来君、早くトランプやろ!」

 

ルビィちゃんの表情の変化についてあれこれ考えていた俺だったが、その言葉で考えるのを止め、トランプを配っていく。

そうだな........生粋の陽キャの俺が盛り上げなきゃ、誰が盛り上げるんだよ....

 

 

「三人とも........今夜は寝かせないからな(トランプやりまくる的な意味で)」

 

「 「 「 え? 」 」 」

 

 

ボンッ!というまるで漫画のような効果音と共に、約三名の顔が真っ赤に染まっていた。

なぜぇ?

 




次もいつになるかは分かりませんが、出来次第投稿します。この小説を楽しみにしてくれている読者様(いないと思うけど....)へ、すいません。


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UA11111、お気に入り件数111突破記念。なんて可愛らしいルビィちゃん...俺でなきゃ見逃しちゃうね

番外編です。すいません。本編は書き進めてるからチョットマッテテ〜。まだ本編時間かかりそうです。いつ出来るかは未定です。

さて、今回の話ですがifです。前の番外編でヨハネ様といい感じになった我らが末期野郎ですが、今度はルビィちゃんと...
あと今回番外編って事で4000字くらいで終わらせようとしたんだ。そしたら何故か9000字オーバーで過去最長になっちゃったんだ。どうしてこうなった...
やっぱり長ければ長いほどミスが多発したり言葉のレパートリーが無くなり内容が薄くなってしまいます。日本語描写おかしな所があるかもしれません。すいません。あった場合はご報告ください。ただしアンチコメは出来るだけやめちくり〜



とある喫茶店の一席にて、一組の男女が向かい合い何かを話し合ってた。女性の方は綺麗な黒髪を腰の辺りまで伸ばした麗人。座る姿勢の良さやその他の所作から育ちの良さが伺える。男性の方は何処にでもいる量産型な顔立ちをしている。しかしその平凡な顔は酷く青ざめており、なにやら不穏な雰囲気を漂わせていた。

 

 

「僕、大学で特に専攻したい学問があった訳では無いんですが、兎に角良い大学に入れば将来お金を沢山稼げそうだと思った訳ですよ。それであの子に男らしくルイヴィ◯ンのバックなんかを送ったりして、幸せに暮らせればなーって思いながらルビィちゃんとパンフレットを見ながら全国の大学を吟味しました。でも結局ルビィちゃんは花丸と同じ大学に行っちゃって.....僕もルビィちゃんと同じ大学に通うっていう選択肢もあったのは分かります。ですが、やはり今僕が通っている大学の方が優良企業への就職実績が良いですし、ルビィちゃんに『寂しいけど、未来君は自分の道を行かなくちゃ!』って言われた瞬間ルビィちゃんの成長を感じると共に将来ルビィちゃんに楽をさせてあげるっていう自分の使命に気が付きました。そんなこんなで東京の大学に入学したんですが、入学式の時に気が付きました。ルビィちゃんがヤ◯サーに捕まったらどうしようって。僕は大事なことを見落としていました。ルビィちゃんは素直な子だから優男を偽ったヤリ◯ー野郎に着いて行ってしまうかも...まぁ、そんな素直な所もルビィちゃんの魅力の一つではあるんですが。ルビィちゃんは可愛いなぁ...でも、もしそんな事が起こっていたらと考えると夜も...夜も眠れなくて.....うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「あなた、そのような話をする為だけに私を呼び出したのですか?」

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

俺は高校卒業後、東京の大学に進学した。その関係で三月の終わり頃に東京のマンションに越してきた訳なんだけど、なんと隣の部屋の住人がダイヤさんだったのだ。これだけ聞くと変態な諸君は色々妄想しちゃうだろうが残念な事に何も無いんだ。『硬度10の隣人大和撫子と...』みたいなタイトルの薄い本を製作する事は許可しよう。いや、作って下さいお願いします。

話は逸れたが、そんな訳で俺はダイヤさんには何かとお世話になっていた。

 

 

「そもそも、そんなにルビィが危険な目に遭っていないか気になるのなら電話すれば良いだけの話でしょう?」

 

何だかんだで俺の相談に乗ってくれるダイヤさん。東京に引っ越してきてまだ日は浅いが、ダイヤさんには本当に助けて貰ってばかりいる。

 

「いや、ルビィちゃんも新生活が始まって忙しいかなと思ってまして...」

 

電話したいのは山々なんだけどね。ルビィちゃんも大学の授業形式に慣れたり、サークルとかも決めなきゃいけないと思うから電話しにくいんだよな。

でもそろそろ電話禁生活一ヶ月を超えそうで、この放置プレイにもそろそろ飽きてきたし今夜電話してみようかな。ルビィちゃんのボイスは電話越しでも、否、電話越しだからよりエッチく感じるんだよね。女子との通話、恐るべし!!

 

「はぁ...あなた達はどうしてこう...」

 

なんか意味深そうな事言われてから溜め息ついて呆れられたんだけど。

 

「なんですか?」

 

「いえ、なにも」

 

そう言ってダイヤさんは注文したホットコーヒーを口にする。ブラックだぁ...大人だなぁ...

 

 

「先日ルビィから相談されましたわ。未来さんから連絡が無くて寂しいと」

 

「それ本当ですか!?」

 

やっぱり俺とルビィちゃんの心は繋がっていた!?いや〜愛されてて嬉しいですな〜!!

 

でもっ!くっ...!

 

「そんなっ...!寂しいなら連絡してくれればいいのに...!ルビィちゃんの為ならどんな大事な予定もドタキャンして時間を作るのに!」

 

 

『一にルビィちゃん、二にルビィちゃま、三、四が無くて、五にりゅびぃちゅゎん』とかいう言葉を作るレベルでルビィちゃん優先だからな。

あとなんか最近レディファーストやら都民ファーストやらファストフードみたいな言葉が流行りだが俺は圧倒的なるルビィちゃんファーストなんでね。ルビィちゃんの為ならブラジルからでも駆けつけるし、ルビィちゃんに命令されればどんな要求だろうが迅速に対応する自信があります。信頼と実績のパシリ屋の天城でござんす!!

 

 

「そういえば未来さんは明日から、というよりゴールデンウィークは何かご予定はありますか?」

 

おや?まさかデートのお誘いですか?いや、でも俺にはルビィちゃんという心に決めた人がおりまして...

 

 

「ゴールデンウィークですか?何も無いですね。僕、サークルも部活も入っていませんので」

 

俺ってば、サークルも部活も入って無い大学生活非エンジョイ勢なんだ。部活なんて今まで碌に運動部に所属してなかった俺には無理な話だし、サークルはちょっと偏見持ってるから入りたく無いんだよね。サークルって失礼だけどお遊びっていうイメージがあるんだよ。中には真面目な集団もあるのは分かるんだけど、サークルと言えば「やっぱ飲みっしょwww」とか、「ウェーイwww」っていう感じなんだよなぁ...真面目に活動してる方には謝罪します。

 

「私、明日から実家に帰ろうと思っているのですが未来さんもご一緒にどうですか?」

 

 

「行きます!!」

 

 

ほんと、頼りになる義姉様で助かっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

約一ヶ月ぶりに故郷、内浦に帰還した俺は黒澤家に向かった。久し振りのルビィちゃんとの再会を喜びながらも、お義母さんとお義父さんへの挨拶と東京土産を献上することは忘れない俺。まぁ、お義父さんとお義母さんは二人ともとても親切な方なのでお土産を献上しなかった位で俺のイメージがダウンする事は無いと思うが。

 

一通りの(カルマ)(オシャレなワードを使っていくスタイル)を終えた俺は、黒澤家の茶室にてダイヤさんとルビィちゃんと談笑していた。

 

 

「東京ってば本当、人多すぎで外に出るだけで疲れるんだよね。やっぱり内浦の方が落ち着いてて俺は好きだなって思ったよ。そういうルビィは学校どう?その...嫌な事とか無い?」

 

ルビィちゃんが◯リサーに捕り、乱◯パーティーの映像が東京にいる俺の元に送りつけられ、俺はそれを見てルビィちゃんを守れなかった無力感に襲われながらもルビィちゃんの普段とは違う艶やかな姿に興奮してしまうのだった...みたいな流れは流石に御免だ。俺、NTR系はNGなんで。

 

 

「大丈夫だよ。ちゃんと友達も出来たし、なんと言っても花丸ちゃんが一緒だからね!」

 

笑顔を浮かべながらルビィちゃんはそう言う。あぁ...ルビィちゃんきゃわぅぃぃ...

そっか、花丸が一緒だもんな。要らない心配だったな。花丸なら得意の毒舌でナンパ野郎を粉砕!玉砕!大喝采!しそうだしな。俺も高校の時に何度も心を折られて花丸の僕になりたいとか思っちゃったしね...

 

 

「未来くんはもう一人暮らし慣れた?お料理とか大変だよね、一人だと」

 

一人暮らし...慣れない。だってルビィちゃんがいないから!!って言ってイチャラブしたいけど度胸がBUMP OF CHICKENの俺にはまだそんな事言えないんだ...

 

「ん〜、まだ慣れない所も沢山あるけど大丈夫だよ。食事に関してはたまにダイヤさんがご飯差し入れてくれてるから心配無いし、よく一緒にご飯食べてるから孤食でも無いしね」

 

「え?」

 

「あとこの前風邪引いちゃったんだけど、その時もダイヤさんが看病してくれて...」

 

「ちょっと、未来さん...」

 

ん?ダイヤさんどうしたんだろう?まぁいいや。

 

「この前なんか家の近所のお得なスーパーも教えてくれたし」

 

「そのついでに大学に着ていく用のオシャレな服も見繕ってくれたしね。いやー、都会の大学生のハイレベルさに驚いてたから助かったよ」

 

「あと、今日も新幹線満席で予約出来なかったから車出してくれたしね。本当、ダイヤさんにはお世話になってばかりでーーー」

 

「未来くん」

 

「......え?」

 

な、なんだ?なんか今まで聞いたこともない声のトーンなんだけど。え?ルビィちゃんこんな声出んの?

 

「未来君が元気そうでルビィとっても嬉しいよ」

 

ルビィちゃん威圧感やべぇ...!こ、これはまさか...怒ってらっしゃる?

 

「嬉しいけどね...おねぃちゃにあんまり迷惑かけたらダメだよ?おねぃちゃは忙しいんだから」

 

へぇ、ルビィちゃんって怒るとこんな風なんだぁ......って違う違う!怖すぎだろ!?

 

「は、はいぃ!すいませんでした!」

 

普段怒らない人を怒らせるとこんなに怖いんだな。

 

「ルビィに謝らないで。おねぃちゃに謝ってね」

 

「ダイヤさんすいませんでした!!」

 

怒らせた原因は正直分からなかったがここは頭を下げておく。え?鈍い?みんな分かんの?すっげーなー。みんな童◯だと思ってたけど案外女心分かるんだな!(すいませんでした。アンチコメは勘弁な)

 

「え?い、いや...そんな謝られるような事でもありませんし大丈ーーー」

 

「おねぃちゃも」

 

「ル、ルビィ?」

 

お怒りのルビィちゃんはダイヤさんに対しても何かお小言があるようだ。こ、怖えぇ...ダイヤさんも戸惑ってるよ...

 

「あんまり未来君を甘やかしたらダメだよ?」

 

「は、はい...以後気をつけますわ...」

 

ダイヤさんの態度を見て俺は理解した...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こりゃ将来尻に敷かれるな、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

俺とルビィちゃんは高二の冬から付き合い始めた。

高校生活二年目、一年生の時と変わらず、スクールアイドルとして頑張っている花丸、ルビィちゃん、善子とそれを微力ながらもサポートする俺。このままずっとこんな関係が続けば...と考えながらも思い悩んでいる自分がいた。

スクールアイドルとなり、多くの経験を積み成長していく彼女の存在はいつの間にか俺の中でとても大切なものになっていた。その感情を理解したのは彼女が冬の函館から帰ってきてからだったが。しかし、理解した所でどうにもならない。俺と彼女じゃ顔面偏差値が釣り合わない。もしこの感情を彼女に伝えてしまえばもうそれまでのような関係ではいられないだろう、等と思っていた。が、もしもを想像してしまう俺も存在しており、所謂ジレンマ的な状況に陥っていた。

しかし、人生とは分からないもので高二の冬、俺は彼女から告白された。正直俺のどこに魅力を感じたのか理解できなかった。俺なんてただ勉強が出来て運動が出来るだけのフツメンだ。そんな事でモテるのは小学生までなはず...と思っている事を全て伝えた俺だったが、彼女は俺の目を真っ直ぐに見つめながら、お前の全てが好きだ、とそんな男らしい言葉を送ってくれたが故、俺はルビィの姉御に一生ついて行く決心をしたのだった。

 

あ、あれれぇ?なんか長ったらしくて最後適当になったけど、99パーセントは本当だからね。

 

「ルビィちゃん怖かったなぁ...」

 

流石の俺もあの状態のルビィちゃんに怒られたいとか思ったりはしないからな?...ん?疑問形?まぁいいや。

ルビィちゃんに怒られてから数時間後、俺は実家に帰ってきていた。いつも通り父と母は仕事で家を留守にしているようだったので帰省した意味ェ...ってなったけどね。

 

「ん?誰だろ...こんな時間に」

 

自室のベッドに横になりながら、ルビィちゃんのキュートフェイスをおかずにグヘヘな妄想を楽しんでいるとインターホンが鳴った。

 

「はーい....ってルビィ!?こんな時間にどうしたの?」

 

なんと訪問者はルビィちゃんだった。もう夜も遅いのに一人で来たのか...

 

「突然ごめんね。ちょっと話したいことがあって...中、入ってもいいかな?」

 

「あぁいいよ!上がって上がって!」

 

断る理由も無いしな。むしろ来てくれて嬉しい。

 

「ありがとう」

 

どうしたんだろう?ルビィちゃん、いつもと雰囲気が違う...

 

 

 

 

 

 

●●●

 

 

俺はルビィちゃんを家内に招き入れ、居間に案内する。

居間に着くと、俺はルビィちゃんにソファに座るように勧める。

 

「待っててね、今お茶出すから」

 

 

キッチンの棚から飲み物とおそらく来客用であろう高級茶菓子を取り出す。ゴデ◯バのチョコレートだな。これいくらするんだろ?ちょっとググってみよ......ふぁ!?ゆ、諭吉を超えてくるだとぉ!?こ、これはマミーにキレられるな。いや、でもルビィちゃんは超超VIPだし...ついでに俺も食べたいしね!

 

「お待たせ」

 

チョコに良く合うコーヒーを淹れた俺は、それをお盆に乗せソファの前のテーブルに置く。そして俺はルビィちゃんが座っているソファからテーブルを挟んで対称の位置にあるソファにルビィちゃんと向き合うように座る。

 

「さぁ、遠慮せずにどうぞ」

 

「気を遣わせちゃってごめんね」

 

俺に勧められ、ルビィちゃんはチョコレートを一粒つまんだ。

 

「わぁ...!このチョコレート、すっごく美味しいね!」

 

そう言い幸せそうな笑みを浮かべるルビィちゃん。癒されるぅ!最高級だよこの笑顔は。ゴディ◯のチョコなんて比べ物にならない位にな!

 

 

「で、今日はどうしたの?」

 

「えっと...」

 

俺の言葉にチョコを食べて喜んでいた姿が一変し、今にも消えてしまいそうな、そんな表現を連想させるような雰囲気をルビィちゃんは纏い口を閉ざしてしまった。

 

「実は、未来くんに謝りたい事があって...」

 

それから少ししてから、ルビィちゃんは口を開きそう言った。

 

「謝りたい事?」

 

なんだろ、謝りたい事って?てか俺、ルビィちゃんに対して怒る事なんて鞭で叩かれようがロウソクで炙られようが絶対に無いし。寧ろご褒美でーーーゲフンゲフンッ!違うわ俺!ルビィちゃんは真面目に話そうとしてるのに何考えてんだ。

 

「うん...」

 

ルビィちゃん...すごく深刻な表情だ...本当、何があったんだ?

 

...ハッ!ま、まさか!実は昼の元気一杯時々おこりんぼ大会な姿は虚勢で、本当は毎日◯リサークズ野郎に酷いことされてて、その事を隠してたことに対する謝罪なのでは!?ルビィちゃん...いいんだよ。例え汚されちゃったとしても俺はルビィちゃんを愛すから...

 

「ルビィ...辛かったな...俺は気にしなーーー」

 

「昼間はごめんね...酷いこと言っちゃって...」

 

「え?」

 

「本当にごめんなさい...」

 

 

なんか...俺の勘違いみたいだったネ☆でも結果オーライよ、オーライ!

 

ただなぁ...そういう訳だったのか。

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃんは...ルビィと違って綺麗で、お料理も出来て...」

 

 

ルビィちゃんも綺麗だよ!料理は...まぁ...一緒に頑張ろう!

 

 

「ルビィよりお胸も大きくて...」

 

 

それは確かに...

 

 

「優しくて...」

 

 

そんな事ないよ!ルビィちゃんもとっても優しい子だよ!

 

 

「もし未来くんがお姉ちゃんのこと好きになっちゃったらって考えたら不安で...心が苦しくなって...」

 

 

!?...成る程なぁ

 

 

「それにここ最近、連絡もとれてなかったからルビィ、寂しくて .....だからあんな事言っちゃって...ごめんなさい」

 

 

やっとルビィちゃんを怒らせた原因が分かったよ。ほんと、俺ってばクソ◯貞だな。

 

 

でも、ルビィちゃんにこんなにも想って貰えて...世界一の幸せ者だよ、俺は。

 

「ルビィ...こっちおいで」

 

俺はルビィちゃんに、自分が座っているソファの空きスペースをポンポンと軽く叩きながら、隣に座るように呼び掛ける。

俺の呼び掛けに応じ隣に座ったルビィちゃんだったが、その表情は暗い。

ここはルビィちゃんの彼氏(カレシ...いい響きっ!)として一肌脱がなくては。

 

 

ふぅ......よし、いくぞ!

 

 

「ルビィちゃんだ〜いすき!」

 

 

覚悟を決めた俺は、ルビィちゃんを思い切り抱きしめた。

 

高一の頃、俺とポカリ大好き同盟を組んだある先輩からハグをすればどんな問題でも解決出来るって教えて貰ったからね。その先輩、よく金髪でナイスバディなあの人とハグして百合してたから俺も混ぜてー!!って何度も飛び込もうと心の中で思ってたんだけど、それをした瞬間黒服がやってきて豚箱にシュー!(バトル◯ーム並感)されるシーンが頭の中に浮かんだから出来なかったんだ...まぁ俺今はちっぱいの方が好きだからもうあの二人の大きくて柔らかそうで包容力ヤバそうで男のロマンなひとつなぎの大秘宝(ワンピース)には未練全く無いんだけどね。

 

っとと。てかなんで俺はこんな下らないことを考えて...今ルビィちゃんを抱きしめてるんだぞ。目の前のルビィちゃんにだけ集中しないと。

 

「え?.....えぇ!?な、なんで!」

 

まさかハグされるとは思っていなかったのか、ルビィちゃんは戸惑っているようだった。

あぁ、良い匂いだなぁルビィちゃん...ハグってやっぱり興奮するな...

 

「俺は全然怒ってないから大丈夫だよ、ルビィ」

 

ルビィちゃんの頭を撫でながらそう伝える。

 

「で、でも...」

 

「寧ろ俺の方こそごめんね。そりゃあ嫌だよな...実の姉とはいえ、自分の恋人から自分以外の女の人と仲良くしてる話を聞かされたら。俺も嫌だもん、ルビィの口から他の男の名前が出たりしたら」

 

少し考えれば分かる事なのに俺は...俺が馬鹿なせいでルビィちゃんを傷つけ、更に謝罪までさせてしまった。本当に申し訳ない気持ちで一杯だ。

そんな愚かな俺がルビィちゃんにしてあげられることは、罪悪感を抱き自分のことを責めるルビィちゃんの心の負担を軽くしてあげる事だと思う。

 

「嫉妬...してくれたんだよね?不謹慎だけど、嬉しいなぁ...ルビィにそんな風に想って貰えて。あのね、もう一度言うけど、俺は怒ってないから。だからいつものルビィに戻って欲しいな。久し振りに会えたのにそんなんじゃ俺、寂しいよ」

 

「うゆ...」

 

まだ申し訳なさそうな顔してるなぁ...

 

「せっかくの連休なんだしさ、俺はルビィとの時間を楽しみたいんだ。この一ヶ月碌に連絡取り合って無かった訳だしね。ルビィは良いの?このままギクシャクしたまま終わって。次に会えるのは夏休みだよ?」

 

「それは...いやだけど...」

 

嫌なんだな。良かった。相思相愛だね!

 

「ていうかさ、寂しかったのなら連絡してくれればよかったのに。俺はルビィの為ならいくらでも時間を空けるよ?」

 

それが謎なんだよな。聞いた話によると、ルビィちゃんもサークルとか入ってないらしいし、時間はあるはず...

 

 

「だって...未来君、東京に引っ越したばっかりで忙しいかなって思ってたから...」

 

「ん?」

 

あー、成る程ね。前ダイヤさんに相談ごとした時、なんか意味深な発言してたけど、こういう事だったのね。合点がいったぞ。

 

「面白いな」

 

「えっ...?」

 

「俺も同じ事考えてた。ルビィも大学入学して忙しいかなって。なぁ、ルビィ...」

 

その言葉にルビィちゃんは目を丸くして俺の顔を見る。

 

 

「俺、これからは週に最低一回は電話したいな」

 

ルビィちゃんの目を見つめ、微笑みながら俺はそんな提案をした。

 

「うん...うんっ!嬉しい!約束だよ?あっ、指切りするから手出して!」

 

 

ルビィちゃんに手を取られ、指切りを催促される。ルビィちゃん本当指切り好きだな。事あるごとに指切りを求めてくる。なんでだろ?今度ダイヤさんに聞いてみよ。

 

でもルビィちゃん...さっきまでの落ち込み様が嘘みたいに元気になって...

 

 

「ルビィ」

 

「?」

 

「これからいっぱい電話しような!」

 

「うん!」

 

 

やっぱりルビィちゃんには笑顔が似合うな...

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

 

「ところで、ルビィは今日どうするの?」

 

「どうするって?」

 

「今から帰るのは暗くて危ないし...」

 

時刻は既に深夜0時を回っており、流石にこんな時間にルビィちゃんを帰らせたくはない。

 

「だから、えっと...その...」

 

何かを言いあぐねている俺を、ルビィちゃんは不思議そうに見つめていた。

い、言わなきゃ!このチャンスを逃したら当分こんな絶好のシチュは訪れない気がする!

 

「もしルビィが良いなら...今夜泊まっていかないか?」

 

覚悟を決めた俺は、ルビィちゃんの両肩を掴みそう伝える。

 

「えぇ!?えっと...」

 

俺の言葉にルビィちゃんは顔を赤らめていた。純真無垢なイメージのあるルビィちゃんもこの言葉の意味が理解出来たらしい。やっぱりその...ね。俺たち付き合って一年超えたし、そういう時期というか...二人きりでお泊りとか健全な男女なら色々と想像しちゃうものかと思いますね、はい。

 

「いや、いいんだよ!?帰りたいなら送るし!」

 

緊張で焦りながらも俺は、決して強制ではないという意を示す為にそう口にする。ルビィちゃんは俺の言葉に直ぐに答えを出す事は無かった。

ルビィちゃんは現在の状況を整理しているのか、俯いて何かを思考しているようだった。

 

 

「その...未来君の気持ちは嬉しいんだけど...そういう事はお母さんに許可を貰わないといけないから...」

 

数秒後、モジモジしながらルビィちゃんはそう答えた。

 

「そ、そうだよな!いや〜、ごめんな!変な事言って!」

 

「う、ううん!大丈夫だよ!ルビィのことを想って言ってくれたんだよね?ありがとう!」

 

ルビィちゃんは親切にも、フォローまでしてくれた。やっぱり良い子だな...

 

それから、ちょっと微妙な雰囲気になった俺とルビィちゃんは互いの顔を直視する事が出来ず、無言の時間が続いた。ちょっと気まずいなー、なんて思っている俺だったが、ポケットに仕舞っていた携帯がバイブしていることに気が付き、そんな思考を止める。ダイヤさんから電話?なんだろ?

 

 

「ダイヤさんこんばんは。どうしたんですか?...え?あぁ、ルビィなら目の前にいますよ。はい、はい...ゔぇぇ!?それはその....はい、分かりました。いえ、迷惑だなんてそんなことは。寧ろ...いえ、何でもありません。はい、分かりました。では失礼します」

 

ふぅ...

 

「お姉ちゃんから?」

 

「うん。えっとね、ルビィに伝えて欲しいって言われたんだけど...」

 

ダイヤさん...

 

「今日俺の家に泊まらせて貰いなさい、だってさ」

 

「え、えぇ!?ほ、本当に!?」

 

ナイスタイミングです!一生ついてき行きます!お義姉さん!!

 

ルビィちゃんの驚愕の声に俺は「HAI!!」と元気一杯に答える。ルビィちゃんは混乱してしまったようで、まるで漫画のように目をグルグルさせながらあたふたしていた。

 

数秒後、なんとか平常心を取り戻したルビィちゃんは、頬を赤く染めながら...

 

「そ、その...今夜は...よ、よろしくお願いします」

 

 

おっふ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

「じゃあそろそろ寝ようか」

 

「そうだね!」

 

 

 

 

 

 

「ル、ルビィ..」

 

 

 

「未来君...」

 

 

 

「その...今夜は一緒に...」

 

 

 

「う、うゆゅ...」

 

 

 

「お、お泊り出来て嬉しいな!」

 

 

 

「う、うゆゅ?」

 

 

 

「じゃ、じゃあルビィ!おやすみ」

 

 

 

「......え?あれ?えっと...ルビィはどこで寝れば...」

 

 

 

「か、母さんの部屋のベッドが空いてるから!今日はそこで休むといいよ!」

 

 

 

なんで...」

 

 

「?」

 

 

み、未来くんの...」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

「未来くんのばかーーー!!」

 

 

 

「ルビィちゃん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

「お、おはようルビィ!朝ご飯出来てるから食べて!な!」

 

「ふーんだ!......朝ご飯ありがと」

 

「あ、やっ!そ、そうだっ!今日凄く天気良いしどっか遊びにーーー」

 

「行かないもん!」

 

「じゃ、じゃあおうちデートしよう!映画でも見る?それとも昨日のお喋りの続きをーーー」

 

「しないもん!」

 

「ル、ルビィちゃーーーん!!」

 

 

 

 

 




結局我らが未来くんはスーパー童貞でしたとさ。

感想、評価待ってます!


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年上清楚系ピアニスト女子がヤバイ!

更新遅れてすいませんでした。約四ヶ月ぶりの更新です。四ヶ月ぶりなのに本編じゃねーのかよ!と思う読者様もいると思います。すいません、もう少しお待ち下さい。今本編を1万2000文字程書き上げておりもうすぐ完成する予定です。

さて、今回の話ですが失踪してない報告をする為に書きました。ですので字数が約5000字と少々短くなっております。今回の話は同性愛に抵抗がある読者様には少々読み難い内容になっております。もし無理だと思ったのならブラウザバックする事をお勧めします。


今日は〜日曜日〜外は〜快晴だ〜何を〜しようか〜そうだ〜アニメショップ行こう〜。ブンブンハローYouTube!どうも、アマキンです。家でようつべを見て過ごすのもいいけどやっぱりこんな晴れた日は外に出たいよね。

 

 

「マジかあの車。赤になったのに進んだぞ。それにあの車もあんなに飛ばして...流石交通事故死者数ナンバーワンの県」

 

 

とある休日、俺は珍しく名古屋に来ていた。

普段は横浜のアニメショップに行く俺だか、時たま名古屋のアニメショップを見たくなるのだ。新幹線と電車で約二時間で行けるからそこそこ近いしね。

 

 

「名古屋の名物ってなんだっけ...オーケーグーグル」

 

 

ふむ...味噌カツ、ういろう、味噌煮込みうどん、名古屋コーチンか...

 

よっし!今日は先に名古屋駅周辺のアニメショップを制覇して、その後名古屋メシを食べて帰ろう。美味そうな名古屋メシの写真を添えて花丸に『今度一緒に名古屋に行って食べよう!......二人きりでな(イケボ)』っていうメッセージを送ってみるのもありかな!花丸は食べ物には目がないからな。てか花丸って、摂った栄養は全ておぱーい!!(おっぱいってストレートに言うのなんか恥ずかしいんだよ)に送られてるみたいなんだよね。デュフフ!ロリ巨乳は最高ずら!!!(帰ったら花丸に土下座するから許して)

 

花丸は以前、「背が伸びれば、もうちょっと見栄えが良くなりそうなんだけど...」って言ってたんだけど俺は声を大にして言いたい...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今のままで良いと!!!

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

流石とら◯あなは同人誌が沢山売ってるな。年齢確認されなくてラッキーだった...お蔭でノーマルなやつからR18のやつまで手広くゲットする事が出来た。これで暫くおかずに困る心配は無くなりましたなぁ!

 

そ・し・て!やって来ました!百合同人コーナー!!ここにやって来た理由は一つ...

『図書室の天使ちゃん』というタイトルの超人気作品を手に入れなければならないからだ。あれはいいゾォ...本ばかり読んでいる主人公(美少女)は図書室で小動物系美少女に出会う。二人はだんだんと仲を深めていき、恋人同士になる。幸せな日々を送っていた主人公だったがある日突然、自らのことを天使と呼ぶ謎の美少女が図書室に現れーーーっていうストーリーなんだけど、出てくるキャラがみんな個性的で可愛い過ぎなんだよね。

 

 

「あったあった。無事確保っと」

 

 

目当ての同人誌を見つけた俺は、購入するために手を伸ばす。しかし急に横から出てきた手が俺より先に同人誌に触れた。

同志だ...と思いチラッと横を向くとマスクをした髪の長い女性の姿が目に入った。

 

 

ん?この人なんか見覚えが...

 

 

「桜内先輩?」

 

 

俺がそう言うと、桜内先輩らしき人はビクリと肩を跳ね上げる。

 

 

「ひ、人違いです!」

 

「あー、人違いですか...」

 

桜内先輩らしき人の手には壁ドンや顎クイと書かれた同人誌が握られていた。なんか見てはいけないものを見てしまった気分。

 

 

「あっ、そ、その本差し上げますので!」

 

 

桜内先輩らしき人は早くこの場から去りたいのか、慌てた様子で俺に同人誌を渡してきた。

う〜ん、あれ絶対桜内先輩だよな。髪の色も声も似てるし、それにあの慌てよう......ちょっと鎌をかけてみるか。

 

 

ようちか

 

 

桜内先輩が持っていた同人誌の表紙には女性キャラクターのイラストが描かれていた。つまりこれは桜内先輩がジャンル百合の同人誌を買った又は買おうとしているということ。よって俺は桜内先輩の身近に存在する百合カプの名前を呟く。

 

 

「!?」

 

 

おっ、足を止めた。まさか本当に止まるとは...

 

 

よしまる

 

 

「!?!?」

 

 

めっちゃ反応してる笑。ちょっと面白。

 

しかしルビまるこそ至高...

 

 

「っ!?た、確かにルビまるも良いけどようちかこそ至高でーーーはっ!?」

 

 

「ちょっろ」

 

 

今日この日、俺の中の桜内先輩のイメージが崩れ去った。俺は、目の前で顔を恥ずかしそうに両手で覆っているチョロい先輩に生暖かい視線を送る。

 

うーん、どうすればいいの?この状況...

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

「まさか桜内先輩とアニメショップで...しかも同人誌コーナーで会う事になるとは思いもしませんでした...」

 

桜内先輩が何やら話したいことがあるらしいので、と◯のあなから場所を移し、俺と桜内先輩は名古屋発祥のとある喫茶店で話をする事になった。

 

 

「取り敢えず何か頼みましょうか」

 

「そ、そうね」

 

俺はベルでスタッフを呼び、コーヒーを二杯と名物らしいパンの上にアイスが乗ったシロノなんとかを頼んだ。

 

「シロノなんとかはシェアしましょう」

 

「えぇ」

 

「...」

 

「...」

 

 

 

う〜ん...気まずい。高海先輩みたいに積極的に話しかけてくれる訳でもないし、そもそも桜内は俺のことを警戒してるみたいだし...

 

 

「お待たせ致しましたー」

 

 

おぉ...写真でも美味しそうだったけど実物は更に美味しそうだ。シロノ...シロノワ...分からん。シロノなんとか。

 

これの写真を花丸に送ってみようかな、と考えスマホを取り出し写真を撮ろうとすると、桜内先輩が徐ろに話し始めた。

 

「あの...天城君」

 

「はい」

 

「この事はAqoursの皆んなには内緒にして欲しいの...お願い...」

 

 

うん。なんとなくそう言われると予想はしていた。俺に見つかった時のあの慌てよう、恐らく高海先輩達には教えてない趣味なんだろうな。

つまり俺は今、年上清楚系ピアニスト女子の弱みを握ったのだ。妄想が色々と捗るぜよ!いっちょブチかましますかね!

「桜内せ〜んぱい!今日この後...空いてますよね?」Aqoursの練習が終わり、一人帰路についていた桜内先輩に後ろから声をかける俺。急に声をかけられ驚いたのか、はたまた弱みを握られている相手に出会ったからか、桜内先輩の瞳は恐怖の色を浮かべていた。「っ!き、今日はちょっと...」そう言って桜内先輩は俺の誘いを拒否する。「え?拒否るんですか?拒否っちゃうんですか?そんな事していいと思ってんの?あの事バラすよ?」その為俺は少し口調を強くしてそう伝える。「う、うぅ...わ、分かったわよ...」すると桜内先輩は諦めたようにそう呟いたのだった。「そう、それでいいんです。何故ならあなたに拒否権なんていうものは存在しないのだから。さぁ、今日も俺と一緒に熱いメロディを奏でようぜ!!」

 

この後の展開はは同志の皆んなに任せた!

 

 

「えーっとっすね、バラすかバラさないかは桜内先輩次第でーーー」

 

「もし話したら...天城君がR18の同人誌を買ってたこともバラすから」

 

「み、見られてたぁ!!?」

 

冗談で桜内先輩を脅迫しようとしたら、まさかのガチの脅迫をされたんだが?

 

今日名古屋来るんじゃなかった...

 

 

「お互いこの秘密は墓場まで持っていくってことで...」

 

「それがいいわね...」

 

 

 

 

 

 

●●●

 

 

「それにしても以外です。桜内先輩のような人が同人誌を読んでいるなんて」

 

前にふざけてなんの根拠も無しに可愛い女の子は大概レ◯って言った事があったけど、案外違わないのかもしれない。花丸やルビィちゃんもその可能性があって......ってイカンイカン。これ以上想像したら顔に出てしまいそうだ。気味悪がった桜内先輩に通報されてお縄になってしまうかもしれない。

 

「昔、ピアノの調子が悪かった時にネットで偶々ある同人誌を見つけて、それからだんだんハマっちゃって...」

 

「あっ、僕もそんな感じです。ネットで色々見てたら買うまでになってしまいました」

 

「へぇ、そうなのね」

 

「はい」

 

「...」

 

「...」

 

 

やっぱり話が続かないな...何度かAqoursの活動のサポートをしに行ったことがあるけど、桜内先輩と話す機会は全く無かったからな。

 

 

「桜内先輩...」

 

 

ここは桜内先輩の好きな話をして、警戒を解いて貰うしかないな。警戒を解いて貰えば少しは話し安くなるかもしれない。

 

 

「確かにようちかも良いと思います。あのお二方からは百合スメルがプンプンします。特に渡辺先輩、あの人からは。しかし!俺はルビまるを推します!やはりあの二人の事を色々知っているからでしょうか...あの二人がキャッキャウフフしてる所を見るとルビまる尊いなぁ...なんて思ってしまいます!!」

 

 

そう熱弁すると桜内先輩は一瞬面食らったような顔をしたが、俺の話を面白いと思ったのか口角を上げ、話し始めた。

 

 

「天城君...分かってるわね。私はようちか推しだけれど別のカップリングを推したくなる気持ちも確かに理解できるわ...だってあんな美少女達だもの...色々と考えてしまうわよね」

 

 

「天城君が言った通り曜ちゃんは凄いわよ。中々尻尾を出さないけれどあの子の千歌ちゃんへの想いは相当なものだと私は分析しているわ。まぁ仕方ないわよね。あんな天真爛漫な美少女が幼馴染なんですもの...好きにならない方が難しいわよ。千歌ちゃんは自分のことを普通怪獣って言ってるけどどこが普通なんだろうって感じよね。そういえば昨日も千歌ちゃんとベランダで話をしてたんだけど私がこんな良いポジションに居座ってていいんだろうかって思ったの。そのうち私と千歌ちゃんの仲を勘違いした曜ちゃんが嫉妬しちゃって、でも素直に自分気持ちを千歌ちゃんに伝えられない曜ちゃん。普段と様子の違う曜ちゃんに千歌ちゃんは...っていう友情ヨーソローな展開も実現しそうよね。話は変わるけど、Aqoursのメンバーは今一年生の花丸ちゃんにルビィちゃん、善子ちゃんが増えて六人になったわね。私、最近何かが足りないなって思ったの。何が足りないか...それは姉属性よ。今のメンバーは妹属性ばかり。私が唯一の姉属性としての役割を果たしているけど...やはり姉属性は欲しいわね。三人は欲しいわ。もし三人もメンバーが増えればカップリングの数も大きく増えるわけで、三人増えれば九人...9C2で計三十六通りのカップリングが出来る事になるわね。Q.E.D.証明終了。数学って便利ね」

 

 

「お、おう...」

 

 

Q.E.D.って...しかもそんな用途に数学の便利さ見出してんじゃねーよ!

てか桜内先輩キャラ崩壊してね?こんなに間髪入れずに喋り続けるような人だったっけ?

いや、確かに思惑通り上手く壁を取っ払えたみたいだけどさ。

 

 

「た、確かに年上系はいいですよね〜」

 

 

「そうよね。年上系は素晴らしいわ。普段は頼りになるお姉さんだけど、偶に弱い部分を見せる...そんなギャップを持った年上系が理想よね」

 

また始まっちゃったよ!!!

 

 

「なんていうか...そう、親近感が湧くのよ。やっぱり全知全能じゃダメよね。どこか欠けてる部分がないと。人という字はヒトとヒトが支えてあって出来ているって言うでしょう?何事も支え合いなのよ。共依存なのよ。依存.....依存といえばやっぱりアレね、ヤンデレね。正直リアルにヤンデレがいたらちょっと引くけど、二次元のヤンデレは素晴らしいわよね。ヤンデレ=頭おかしいみたいに言う人もいるだろうけど、ヤンデレは一途なの。一途すぎた結果ああなってしまったのよ。ヤンデレを見ていると日本人の古き良き貞操観念を思い起こすことが出来ると思うの。だから決して褒めることは出来ないけれど貶すことは絶対にしてはいけないと私は考えているわ。やっぱり一途って良いわよね....私、曜ちゃんは一途なんだろうなって考えてるんだけど、天城君はどう思う?あぁ、ごめんなさい。天城君は曜ちゃんとあまり交流が無かったわね。私的には、早く千歌ちゃんと付き合っちゃえよ!って思ってるんだけど、曜ちゃん以外とヘタレそうだからまだまだ友達以上恋人未満のままでしょうね。ヨーソロー!なんて言ってないで口説き文句の一つでも考えたらどうかしら、曜ちゃんは。でも曜ちゃんも問題だけど、千歌ちゃんも千歌ちゃんよ。色んな女の子に笑顔を振りまいて...曜ちゃんが少し可哀想よ。まぁ、そんな所が千歌ちゃんの魅力なんだけどね。千歌ちゃんと曜ちゃんはーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

年下系も良いわよね.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィちゃんみたいな妹がいたら人生勝ち組よね...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようよしという新領域が....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜内先輩の話が終わったのは外が暗くなり始めた頃でした。桜内先輩は今まで一人で溜め込んでいた全ての考えを自分以外の人間に伝える事が出来てスッキリしたのか、以前よりも美しさが増した様に見えました。桜内先輩は話を聞いてくれたお礼ということで、お代を全て払ってくれました。代わりにまたこうやって話しましょうねって言われたけど....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二度と話すか!!!!!

 

 

 

 

 





ツイッター始めました!ユーザーページにリンクを貼っておきましたので是非!なんも投稿してないけどね!!

更新の催促なんかをしてくれたら助かります。

感想、評価待ってます!でもアンチはやめちくり〜


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超短編集。堕天使と神

私の二次小説を待ってくれている約151名の読者様へ。前回の更新の時にすぐ出来ます、とか言ったのに投稿止まって、しかも本編の更新じゃなくてすいませんでした!!
本編の執筆が非常に難航していて、まだかかりそうだなと思った為、生存報告と息抜きを兼ねて今回は更新しました。故に今回は非常に短いです。そして地の文も殆ど無しです。筆者的に、善子ちゃんと未来くんの会話は地の文を挟まないスピーディな感じで書くのが好きなので地の文を書くのはやめました。

今回ですが、善子ちゃんと未来くんの中学時代のお話です。筆者は中二病初心者なので中二病語変換がろくに出来ません。ご了承ください。


人間界に存在する日本という国の首都、東京...から見て西側に位置する港町、沼津。その中心地である駅の付近に、常人とは異なるオーラを放つ二名の男女がいた。

 

 

「くくっ、オーディーンよ、今からヨハネは先の闘いで失った我が源である闇物質(ダークマター)を補給しに行くわ。着いて来なさい」

 

「確かに今宵の国定言語の講義は眠気を誘い、且つ(ソウル)を擦り減らすものだったな。いいだろう、お供してやろう。いざ行かん!」

 

「「L◯キを食しに!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「授業の後の買い食いって犯罪的に美味しいのよね!しかもこれ、出来立てみたいよ!頂きまーす!」

 

 

「おい、そんな大きな口で齧り付くと...」

 

 

「熱っ!」

 

 

「あちゃー、だから言ったのに」

 

 

「うぅ、多分ちょっと火傷したわ」

 

 

「うーん...仕方ない。ほら、俺の飲みかけだけど飲め。冷たいぞ」

 

 

「あ、ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

「全く愛らしい見た目をしているわ、この李楽苦魔の縫い包みは。流石は私のリトルデーモン、良い腕をしているわね。まさか試行数五回で入手してしまうとは思わなかったわ」

 

「戯言を。我は貴様の配下に下った覚えなど無い。ふふっ、しかしその内容以外の言葉は素直に受け取ろう。...さて、そろそろ我は拠点に舞戻らねばならぬ。出るぞ、この機械仕掛けの迷宮から」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲームセンターから出た俺と、リラックマのぬいぐるみをゲットできてウキウキ気分の津島を待ち受けていたのは、先ほどゲームセンターに入る前には降っていなかった大雨だった。

 

 

「全く、今日の降水確率は四十パーだぞ。折り畳み傘くらい持ってこいよ」

 

 

「持ってきたわよ!でも何故か壊れてたの!」

 

 

「ふーん。相変わらずの不幸だな」

 

 

「ほんと、どうしていつもこうなのかしら......ってアンタ、肩濡れてるじゃない!」

 

 

「ん?そりゃ、折り畳み傘だからちっさいし仕方ないジャン?濡れるのは男の役目さ、アンラッキーガール」

 

 

「むむむっ...なに格好つけてるのよ!もっとこっちに寄れば解決する話でしょう!?」

 

 

「ちょっ、おまっ!こんなに密着したら誤解されちゃうだろうが!」

 

 

「う、ううっ、うるさいわね!アンタが意識し過ぎなのよ!」

 

 

「は、はぁ!?い、意識なんてしてねーし!!勘違いしないでよね!!」

 

 

「ぷぷっ、男のツンデレは似合わないわよ」

 

 

「うっせ!普段のお前の真似だ、バーカ!」

 

 

「なっ!?誰がツンデレよ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

「くくっ、相変わらず無知だな。闇の炎を操る修練も良いが、少しは未知を探求することもせねば一生かけても我には勝てんぞ、堕天使ヨハネよ」

 

「知識のステータスを高めることなど、ヨハネには不要よ。ヨハネは圧倒的な力で世界を統治するつもりだから。...それにしても、国定言語は我々が人間界で仮初めの生活を送る為に必要だということは理解出来るわ。でも、この大英帝国由来の言語については、学ぶ意味がさっぱり理解出来ないの。ぶっちゃけこれ、仮初めの生活を営む上で使用することないでしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「屁理屈はいーの!普段使うことは無くても英語出来なきゃ良い大学に進学出来ないの!そうなると将来大金を稼げる可能性が減っちゃうの!つまり俺たちが将来金を得る為には、こんな一見無駄な勉強を嫌でもしなくちゃいけないの!!お分り!?」

 

「仕方ないじゃない分かんないんだから〜!なによ時制って!!何種類あんのよこれ!!」

 

 

俺は、津島に頼まれ塾終わりにテスト勉強に付き合っていた。前回の英語のテストで酷い点数を取ってしまった津島は、次も似たような点数だった場合、仮の同居人であるママに小遣いを減らすと言われたらしいのだ。

 

 

「まぁ、確かにその気持ちは分からんでもない。でも、時制を征するものは英語を征するって言われるくらいだからそこは絶対に覚えろよ。ほら、次の文読んで」

 

 

「イ、イッツアdead or aliveプロブレム...」

 

「おい、なんでデッドオアアライブだけ無駄に流暢なんだ」

 

「ふっ...なんかカッコいいからよ!」

 

「ドヤ顔すんな!バカ堕天使!」

 

「バカ言うな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

「ふっはっはっはっは!!聞くに低俗な人間どもはこの聖夜にキリストの誕生を祝うのではなく、異なる性を持つ者と下劣で特殊な時を過ごすという。全く愚かなものだ!!爆発しろ!!」

 

「中指を立てるのはやめなさい、オーディーン。でも確かに私達のいる周りには不快な光景が広がっているわね。ここはヨハネの煉獄の炎で...ぐぬぬぬ...」

 

「助太刀するぞ、ヨハネよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでこんな日に塾あるんだよ。休みにしろよ。家に引きこもっていればこんな幸せそうな奴等を見ずに済んだのに。おめーもそう思うよな?津島」

 

 

「え?えっと...べ、別にいいんじゃない?今日は普通に平日なんだし。冬休みに入ったからって、家に引きこもってばかりじゃダメよ?ってかヨハネ!」

 

 

「おいおい、お前は俺と同じ意見だと思ってたのに。なんだよ善い子ちゃんかよ、堕天使自称してるくせに。うっわ、前歩いてる奴ら、女の方が男の腕に抱きついてやがるよ。あんな大胆なの漫画の中だけだと思ってた...死ねばいいのに」

 

 

「さっきから口悪すぎよ、未来。でもまぁ、あれは仕方ないんじゃない?だって今日はクリスマスイブなんだし」

 

 

「成る程。テンションが上がっているせいで、自分たちがいかに恥ずかしいことをしているのか、そしてそれによって周囲の人間を不快にさせている事に気がついていないのか、奴らは。かぁ〜〜〜!滅びろ!!」

 

 

「......」

 

 

「見せつけやがって。きっと奴らはこの街にあるホテルの位置も全て把握してるんだろう。全く気持ち悪いことこの上ない。俺はキリスト教徒って訳じゃぁないが、これだけは言える。奴らはキリスト教徒たちにとっての特別な日を侮辱していると....ってどうしたんだよ、急に黙りこくって。なんか反応しろよ」

 

 

「ね、ねぇ未来...」

 

 

「?」

 

 

「その...えっと...わ、私たちもあれ、やりましょう!」

 

 

「ちょ、おい!何やってんだお前!」

 

 

おっぱ...お胸が当たっていますよヨハネ様!慎ましいが確かな柔らかさを持つお胸が接触していますよヨハネ様!!この自称おっぱいソムリエ(キモすぎ注意)の俺から見ても良い形してそうなブツが当たってますよヨハネ様!!!ありがとうございます!!!!

 

 

「か、勘違いしないでよね!いずれこの世界を支配する者として、下等な人間どもの行動にはどんな意味や効果があるのか理解しておこうと思っただけよ!け、決してあんたに抱きつきたいとか、そんな理由でやってるんじゃないんだから!!」

 

 

「な、成る程、そんな理由が...で、でも流石にこれは...」

 

 

「ま、まさか照れてるの?あんた?」

 

 

「は、はぁ!?て、照れてねーし!バーカバーカ!」

 

 

「ふっ、ふふっ!ふふふっ!悪口にいつものキレが無いわよ、リトルデーモン?慌てちゃって...可愛いわね」

 

 

「くっ!お前っ!!」

 

 

「そこのカップルさーん!クリスマスケーキ、いかがですかー?安くしときますよー?」

 

 

「「!?」」

 

 

「え、えぇ!?や、やだ...カ、カップルだなんて、そんな...」

 

 

「ーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーなんだコイツ、可愛い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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温泉といえば...そう!NO☆ZO☆KI !!!

失踪してないよ。するつもりも無いよ。

もう少しで完成する、と何度も言っていたのに、完成しないどころか半年も音沙汰を無くしてしまい大変申し訳ございませんでした。本編の方難航しており完成は未定ですが、出来る限り早く投稿出来る様に邁進していく所存であります。
今後とも当作品を楽しく読んで頂ければ幸いです。

さて、今回の話ですが、本編が書けなさ過ぎて、しかし書くのは辞めたくないと思い、適当にセリフだけ書いていた話に地の文を足したものと話になっております。本当は投稿する予定の話ではなかったんですが、生存報告を兼ねて投稿させて頂きました。

お手柔らかによんでくだちぃ。アンチヘイトはマジでメンタルにくるんでやめてくりぃ。




「ふぃ〜極楽極楽...」

 

我が故郷、内浦の周辺には沢山の温泉がある。俺はたまの休日にこの様に温泉に来ては日常生活で蓄積されたストレスを発散していたのだった。

 こうやって俺以外誰もいない温泉でう○るちゃんみたいにぐで〜っとする事が最高に気持ちいいのだ。

 

「ふぅ...身体が温められて血行が良くなっているせいか少し眠くなってきたな」

 

眠気に誘われて目を閉じると、普段よりも周囲の様々な音がハッキリと聞こえる気がした。これも血行が良くなっているせいだろう...眠い...

 

 

 

 

ーーーーーーぱりーーーーーー温泉はーーーーーーーーーら

 

 

 

 

 

ん?なんか、隣の女湯から聞き覚えのある声が...

 

 

 

 

「あれ?もしかして花丸ちゃん、また胸が大きくなってる?」

 

「うん。そのせいで最近また肩凝りが酷くなって困ってるずら...」

 

「ぐぬぬ...なんでずら丸だけ...」

 

「ずら!?よ、善子ちゃん!?触っちゃダメずら!!」

 

「少しくらい私にも寄越しなさい!」

 

「うゅゅ...花丸ちゃんだけズルイ...」

 

「ル、ルビィちゃん...目が怖ーーーーーーずら!?」

 

「ルビィ!ずら丸は私が抑えておくから、やりなさい!」

 

「ごめんね、花丸ちゃん...」

 

「ひゃん!だ、だめずら...そ、そんなに触らないで...」

 

「わぁ...凄い...ルビィの方が背は大きいのにどうしてこんなにも差が...うゅ...」

 

 

 

 

 

ーーーここが極楽浄土か

 

 

 

 

ありがとうございます神様。貴方のお蔭で止まりません、鼻血が(倒置法)。

 

このままでは透明な温泉を赤色に染めてしまう可能性がある為、一旦ティッシュを取りに脱衣所に戻らない。戻らないよ。ここで引いたら男じゃねぇ!!!ここで温泉を赤色に変えるほど出血し、血が無くなったとしても...俺は俺の責務を全うする!!この塀の向こう側にある極楽浄土を両の目で拝むまで...心を燃やせ!!!(煉獄さんさーせん)

 

 

それにしても、いくら温泉に浸かってリラックス出来て浮かれているとはいえ、隣は男湯だぞ?もうちょい声のボリュームというものを考えられないかね。まったく、お茶目な子達だせ。まぁそんな所が可愛いんだけどな(キリッ

 

 

 

「なにか...なにかないか...」

 

 

 

幸運なことに、今この男湯には俺以外の人間はいない。故にチャンスは今!神も俺に女湯を覗けと言っているに違いない!

 

天城未来!やるんだな!?今、ここで覗きを!

あぁ!勝負は今!ここで決める!

 

などと某戦士達の名ゼリフが脳をよぎったが、非常に残念ながら覗けそうな穴は見当たらない。

となると、どうにかして塀の頂上まで登り、そこからバレないように顔を出す感じの方針にする......あん?なんだって?犯罪だからやめた方がいいって?うっせーな玉ついてんのかテメー。

 

男なら夢、追いかけようぜ?

 

 

 しかし、塀を登るのは音で気づかれるだろう。塀に穴を開けるのも音バレのリスクが限りなく高い。

 

 

いや待て...

 

 

「あ、あれは!」

 

 

 隊長!穴を発見しました!穴を!!!俺の目は節穴か!(穴だけに)。

 ここまで幸運だとマジで神様は俺に女湯を覗けと言っているのだと勘違いしてしまいそうだ。まぁでもあれだね、こんなに幸運が重なるのは、やっぱ普段の俺の行いがいいからカナ!これはきっと、花丸やルビィちゃんとチョメチョメしたい!という己の内に眠るエロスを日々無理矢理抑え込む理性の化物である俺に対するご褒美なのだ。

 

 その穴は俺の背丈では普通では届かない位置に出来ていたが、この風呂場に大量に常備してある木製の桶を積んで踏み台にすれば何とか届くかもしれない。

 しかしバランスを崩して落下する可能性も大きいと思われる為、少し萎縮しかけている自分もいるが......否!!!その程度で俺は止められねぇ!!!

 

俺は内なるエロスに従い、霹靂一閃五連を彷彿とさせるスピードで風呂場中の桶をかき集め、ピラミッド状に積む。これで準備は完成した。バランスを崩さないように一番上の桶に乗る。

 

 

「ひゃっほぉぉぉう!!!楽園へいざ行かん!」

 

 

 将来彼女達に出来るでろうイケメン彼氏(想像したら目から温泉が湧いてきた...)ではなく、花丸、ルビィちゃん、津島の裸を初めて見る男はこの天城未来だッ!!依然変わりなくっ!

 

 

「くっ!なんだとっ...!」

 

 

 ついに穴越しに女湯の内部を覗き見る事に成功した俺だったが、俺の期待に反し、風呂場には大量の湯煙が立ち込めており、それが原因で花丸達の姿を捉えられないでいた。

 しかしここまで来てこの程度の事で諦める俺ではない。

 うーん...花丸達はどこだ...湯けむりの所為で見にくいな。視界に入りさえすれば俺の、『淫の呼吸 壱の型 ヱロヱロ(まなこ)』で捉えて離さないんだけどね!

 

 

「神様は乗り越えられる試練しか与えないのだよ、天城未来」

 

 

しかし、ちょっと目が疲れてきたな。どうやら女湯にはルビィちゃん達以外の女性はいないようだ。きょにゅー女子大生とかいたらテンション爆上げだったんだが...

 

 

「!?!?」

 

 

苦節数分、たゆまぬ努力を続けてきた俺の願いが遂に成就する時がきた。

 

 

湯けむり越しに見えるあのシルエットはまさか!まさかー!?

 

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

俺の視線が捉えたのは、なんとシワシワヨボヨボのBBA...口にするも悍ましい恐怖映像だった。

これがゼツボウ。これがオワリノハジマリ。これがエンドオブザワールド。天城未来は目の前が真っ暗になった。

 

 

「あれ?この声って...」

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

今回の覗きで...我々は...今回も...っ!

 

なんの成果も!!得られませんでした!!

 

 

という事で、覗きに失敗した俺は生きる気力が萎え、温泉に入る気も萎え、ついでに俺の息子(通称ジョン)も萎えてしまったのだった。

 

失意のどん底にいた俺は現在、さっさと風呂上がりのコーヒー牛乳でも決め込んで、家に帰って布団で泣こうと思いながら体重計に乗っていた。

前回測定時からちっとも変わっていない体重を見ていると、刹那、おっぱいが大きくなると体重はやはり増加するのだろうか?という問が俺の脳内をよぎった。これは早急に解明しなければならない謎だ。そもそもおっぱいはどの様に大きくなるのだろうか?身体の成長に伴って自然と大きくなるもの、というアンサーが常識的に考えて妥当だが、もしかしたら身体の他の部位についている余分な脂肪が胸に転移する事でそれがおっぱいの源になっているのではないだろうか?もしおっぱいが身体の成長に伴って大きくなるものならば、身体のバランスを保つ為に身長も大きくなるものだろう。しかし、これには反例が存在する。そう、我らがロリきょにゅー花丸だ。以前から感じていた事だが、花丸は摂取した栄養が全て自身の持つ国木田山脈に奪い取られているようなのだ。

 

 

そういう訳だから、俺と一緒に体重とおっぱいのサイズを測らねぇか、花丸?

 

 

「うーん、やっぱり今日もガラガラだなこの休憩室は......おっ」

 

脱衣所から出てコーヒー牛乳を購入し、一服しようと休憩室を訪れると、俺は休憩室の一角に天国を発見した。そう、休憩室に花丸とルビィちゃん、ついでに津島がいたのだ。風呂上がりでルンルン気分の美少女達が楽しそうに談笑している光景を天国と言わずなんと申しましょうかぁぁぁ!!!に゛ゃんち゛ゅう!!!

 

しかしこう、彼女達のあの会話を聞いた後だからか、会うのが恥ずかしいな。特に花丸と。意識せずとも視線が更に成長したらしい国木田山脈にいってしまいそうだ。女性は視線に敏感だというし、絶対バレる。バレたら、変態男というレッテルを貼られ、三人に汚物を見る目で見られ...るのは良いとして、ポリ公を呼ばれる恐れがある。前科一犯。日本は前科者の社会復帰が難しい国で有名だしな。それに、捕まるくらいならもっと大きな事して捕まってやんよ。例えばーーーーーー

 

 

そう思考していると、ふと、三人がこちらを向いた。

 

 

見つかっちったぁ。

 

「あっ、未来くん!やっぱり来てたんだね!」

 

「お、おっすルビィ、偶然だね」

 

相変わらずルビィちゃんは可愛いんじゃあ〜〜〜。癒される〜。温泉に入るよりも癒される〜。だからルビィちゃん今から一緒お風呂入ろ?(唐突)

 

見つかったものは仕方がないので、俺は三人のいる机に向かい、津島の隣の座布団が空いていた為そこに座る。

 

「そういえば、やっぱり来てたんだって言ってたけど俺がいるって事知ってたの?」

 

「マルたちが温泉から上がろうとした時、未来くんに良く似た声が聞こえたから、もしかしたら来てるんじゃないかって話になったずら」

 

「なるほど」

 

あの絶叫を聞かれたのか。流石に絶叫した理由までは分からないだろうが、花丸の勘の良さは目を見張るものがある。ボロを出さない様に要注意だ。

 

「ふふっ、あんな情けない声を出しちゃって...このヨハネの強大な魔力が塀を越えていて、それに恐れをなしてしまったのかしら?すまなかったわね。ヨハネの魔力は強力過ぎてコントロールが中々効かないの。ふっ、難儀なものね、強すぎるというのも」

 

「いやちげーから。風呂でのぼせて頭イカれたんか?いや、元からイカれてたな、ははっ!」

 

「な、なんですってぇ!そういうあんたこそ、公共の場であんなに叫んで頭おかしいんじゃないの!?」

 

「いや、ちゃんとした理由があって叫んだから。叫ばないとやってられなかったんだって」

 

「ふん、ちゃんとした理由ねぇ...言ってみなさいよ?」

 

「ん?あぁ、そりゃのぞーーーーーーんぐっ!?」

 

「のぞ?」

 

っぶねーーー!つい言ってしまう所だった。俺ってば、数ヶ月見ない間にキャラ変した?口の非常に軽い、せーーーんせいに言ってやろう!系男子になっちゃってた?

 

「いやね、μ′sの東條希さんマヂ可愛すぎ!この可愛さを表現するにはどうすればいい!?なら叫ぶしかねぇ!!!ってなった」

 

「えぇ...」

 

俺の咄嗟の嘘に津島は引いている様子だった。確かに言った本人からしてもマジキチな見苦しい言い訳だが、なんか津島にドン引かれるのはマヂムカつく!!!

 

「釈然としないけど、まぁいいわ。それにしても、コーヒー牛乳美味しそうね。私も買って来ようかしら」

 

「あっ、それだったらルビィも一緒に行くね。喉渇いちゃった」

 

うんうん。よく分かるよルビィちゃんのその気持ち。渇くよなぁ。風呂上がりは滅茶苦茶喉渇くよなぁ。俺がお金出して上げるから何本でも買っておいで。十本でも百本でも買ってきていいから。その代わりルビィちゃん俺にーーーーーーしてあっ、ごめんなさい未遂です。心の中で思ってるだけです。

 

「ずら丸は行かないの?」

 

「マルはまだいいずら。もう少し休んでから行くね」

 

 

花丸がそう言うと、津島とルビィちゃんは牛乳を買いに行ってしまった為、現在休憩室には俺と花丸の二人きりで、向かい合う形で座っていた。

 

「未来くんはお風呂気持ちよかった?」

 

「うん、気持ちよかったよ。花丸は?」

 

「マルも凄く気持ちよかったずら。練習の疲れも殆ど取れて、明日からも頑張れそうずら」

 

「そっか、それは良かった」

 

この落ち着いた会話。大人だ。やはり津島みたいなガキとは違って花丸は大人だ。そして俺も普段は津島に合わせてアホを装ってやっているが、このような状況下ではしっかりとアダルトな雰囲気を纏わせる事が出来るイケメン(笑)なのである。

 

 

「お風呂空いてて良かったね」

 

 

「あぁ、ホントそれな」

 

 

「男湯の方も人は少なかったずら?」

 

 

「うん、俺以外誰もいなかった」

 

 

「コーヒー牛乳美味しい?」

 

 

「うん、最高」

 

 

「覗きは成功した?」

 

 

「いや、それは残念ながーーーーーーへぁ!?!?」

 

 

い、いいい、今なんと!?

 

 

「ふふっ、冗談ずらよ。そんなに慌ててると本当かと思っちゃうずら」

 

 

良かった冗談か...え?冗談だよね?

 

 

「じゃあ、マルも喉渇いたから行ってくるね」

 

 

「ちょ、花丸!」

 

 

慌てて呼び止めるが、花丸は俺の声に振り向くことはなく、ルビィちゃん達と同じように

休憩室から出て行ってしまった。

 

 

えーと...あれは、気が付いていたのか?しかし、証拠はないし推論の域を出ないはず......けどまぁなんにせよ...

 

 

 

「花丸には敵わないなぁ...」

 

 

一人きりの休憩室で、俺はそう呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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IF もしもAqours2年生組と同年代だったら


1週間ぶりです。最近投稿意欲マシマシなので投稿します。でも本編ではありません。もうちょっとだけ待っててください。

今回の話は、我らがど変態未来君がAqours2年生と同い年だったらというIFストーリーです。でも千歌ちゃんしか登場しません。最近私の中で千歌ちゃんブームが来ているので書いてしまいました...

あと、番外編なのでゆる〜く。地の文書くの面倒だったので途中から書きませんでした。地の文書かなければこんなに早く書ける物なのか!?と思いました。

では、どうぞ




 

 

 俺の中学生活は灰色である。友達ゼロ、彼女ゼロ、バレンタインのチョコ獲得数ゼロ、LINEの友達は両親と親戚と公式アカウントのみ。学校に来て授業を受けて1人でご飯を食べて帰宅する。ただ、それを繰り返す無味乾燥な毎日だ。客観的に見て非常に哀れな状態だが、これは身から出た錆、お前が始めた物語なのである。そう、キッカケは中学1年の頃、まだ大きめの制服に身を包んでいた今よりも若かりし頃、中学デビューをしてしまったせいで現在俺は、このような限界中学生活を営む状況に追い込まれている。若気の至りとはなんと残酷な。

 

 

 

 しかし最近、そんな俺の学校生活に劇的な変化が訪れた。

 

 

 

「天城くん、おはよう!!」

 

 

 

 何故か近頃、同じクラスの天真爛漫系美少女、高海千歌さんによく話しかけられるようになったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

「でね〜、美渡ねぇがまた勝手にプリンを食べちゃったんだよ。本当ひどいよね!」

 

 

 学生にとってのオアシス、昼休みが終わり現在、5限の数学の授業の最中である。そんな時間に俺と高海さんは席に座りながら駄弁っていた。

 この授業を担当する数学の先生は少し変わったやり方でカリキュラムを進めることで有名だ。単元の基礎的な説明を短時間で終わらせ、厳選した問題を生徒それぞれに相談させながら解かせるという極めて自由な形式をとっている。問題が解けていれば基本的に数学に関係のない話をしていても先生は怒らない。故にこのように、隣の席の高海さんと授業中でも話せるというわけだ。頭脳明晰な俺は速攻で問題を解き、それを高海さんに教える事でこの最高の時間を1秒でも長く確保していた。そのため俺は、この5限の数学が好きだった。

 

 

「本当ひどいです。プリンが可哀想すぎて涙が出てきます」

 

「私よりもプリンの同情してる!?もう!天城君は私よりもプリンの方が大事なの!?」

 

「いえ、高海さんの方が大事です」

 

「え?...ふふっ、そっか。私の方が大切なんだ」

 

 

 俺の返答に、高海さんは嬉しそうな笑顔を浮かべてた。ナンジャワレ可愛すぎるだろぉ!!!

 

 高海さんは、明るく可愛く、そして人懐っこい性格から友達が多く、当然異性からもそこそこ人気がある。俺も高海さんのことめっちゃ美少女だと思う。ちゅきちゅき。ヴォェェェ

 めっちゃ美少女なのにも関わらず、人気がそこそこで止まっている理由は、高海さんの幼馴染であり親友でもあるスーパーウーマンこと、渡辺曜さんが目立ちまくってるからである。渡辺さんは高海さんと同じくめっちゃ美少女であり、コミュ強、陽キャ、ヨーソロー!、水泳部エース、成績優秀、ヨーソロー!、運動神経抜群、スタイル抜群、才能マシマシ、ヨーソロー!な才媛だ。なんだこのスペックは。チートかよ。人は生まれながらにして平等ではないってはっきりわかんだね(文豪並感)。てかヨーソローってなに?そしてそんな目立つ渡辺さんがほぼ常に高海さんの側にいるため、ミスディレクション的な感じで高海さんの人気はそこそこで止まっているわけだ。

 しかし俺は断然高海さん推しである。渡辺さんも確かにレベルが高いが、高海さんはもっと素敵だと思う。なぜならーーーーーーん?

 

 

「むぅ〜」

 

 

 思考の海に浸っていた俺だったが、横から視線を感じ意識を現実に戻すと、高海さんがご立腹感を出しながら頬を膨らませていた。そんな表情も可愛いYO!

 

 

「な、なんですか、高海さん?」

 

「前から思ってたけど、天城君ってなんでそんな丁寧な話し方してるの?」

 

 

確かに、同級生なのにこのような丁寧語で会話をしているのは違和感があるだろう。どこかの名家の令嬢などなら分からなくもないが、俺はどっからどう見てもただのパンピーである。

 

 

「友達なんだから、敬語じゃなくて普通に話して欲しいな」

 

 

 高海さんは覗き込むような形で俺の顔を見つめ、加えておねだりする様にそう言った。

 

 ぐわぁ!こ、これは!破壊力ヤバすぎる!すごい興奮を我慢してた!!!俺は長男だから我慢できたけど次男だったら我慢できなかった。恐らく俺のマイソンには黄金の精神が宿っている。

 それにしても、やはり高海さん、エロい!末っ子なのに謎の包容力とエロスがある。俺が高海さん最推しの理由がこれだ。むっちゃエロいからである。最低な理由であると同時に、こんなこと渡辺さん推しに聞かれたら○されるがな!

 

 

 とはいえ、俺がこのような話し方をしているのはちゃんとした理由があるのだ。故にやめない、否、やめられない。

 

 

「いえ!俺、高海さんのこと尊敬しているので!尊敬している人に敬語を使うのは当然の事です!」

 

「えっ?尊敬してるの?私のことを?」

 

「はい!マジリスペクトしてます」

 

「へへ、私、尊敬されてるんだ。なんだか照れるなぁ!」

 

 

どうやら許しをいただけたようだ。チョッロ。

 

 俺は高海さんの対人能力に尊敬の念を抱いている。高海さんは、人との距離の詰め方がバグっているのだ。これは基本的に人間関係において受身な俺には真似できない事であり、俺に出来ないことをできる高海さんは敬意を向ける対象として相応しいと考えている。

 そして、いつもこの距離の詰め方に俺の心はドキドキさせられており、敬語を使う更なる要因の一つにもなっている。この距離の詰め方はちょっとねぇ、世間は許してクレアせんよぉ(憤怒)。彼女いない歴=年齢の俺にとって、高海さんのようなあざと可愛い女の子と素の自分で話すのは疲れ、そしてキョドってキモムーブをやらかしてしまう恐れがあるため、この様な仮初の敬語キャラを演じる事で高海さんの前で自分を保っているのだ。

 こっちが本当の理由であるのはナイショですっ♡

オレキメェェ。キャラ作りしすぎて脳内がヤバいことになっている。え?いつものこと?それな!!!

 

 

 

まぁ実際これらの理由は少々建前的なもので、

 

 

 

「ねぇねぇ天城君、今日の放課後って空いてる?」

 

「え?空いてますけど...」

 

「もし天城君が良かったらなんだけど、勉強を教えて欲しいなって思ってて」

 

 

 

俺は感謝しているのだ。

 

 

 

「はい!教えさせていただきます!」

 

「わぁ、ありがとう!じゃあ一度家に帰って、4時に松月の前に集合ね!」

 

 

 

俺の灰色の青春に彩りをもたらしてくれた彼女に。だから俺は高海さんを尊敬している。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

日本男児たる者、時間厳守は基本です!!!

 

ソイ!ソイ!正拳突きソイ!!!そい!そい!SOY JOYピーナッツ味Soy!!!ピーナッツsoy!ア○ニャ可愛すぎSoy!高海さんと勉強デートソイ!テンションブチ上がりソイ!!

 

 

 放課後、全力疾走で家に帰り、シャワーを浴びて身を清め、精神統一をし、正拳突きを行い更に精神の安定を図る。最後に最強ワックスで髪を整えてから集合時間の10分前になるように家を出て、予定通りの時間に松月に到着した。その5分後、高海さんも到着し、店の中に入り勉強会はスタートした......はずだった。

 

 

「熱海に新しいケーキ屋さんが出来たんだって」

 

 

「へぇ、それは気になりますね」

 

 

「だよねだよね!しかもすっごく美味しいって評判のお店なんだよ!」

 

 

「そうなんですか、良いですね。いつか行ってみたいです」

 

 

「本当!?なら次の土日のどっちか、一緒に行こっか!」

 

 

「ゔぇぇぇ!?ま、マジですか!?行かせていただきまぁす!」

 

 

「やったぁ!あ、ちなみに土曜日か日曜日、どっちがいいかな?」

 

 

「土曜日でお願いします!」

 

 

「土曜日ね。うん、わかった!土曜日のこと、またLINEで連絡するね」

 

 

 俺と高海さんは勉強など一切せず、頼んだケーキを食べながら談笑に興じていた。俺は今青春を謳歌している!

 

 

「あっ、俺高海さんのLINE持ってないです...」

 

 

「うん、だから交換しよっか!」

 

 

「ゔわぁぁぁぁ!」

 

 

「えっ?ちょ、なんで泣いてるの!?」

 

 

 自身のLINEにはじめて親や親戚、公式アカウント以外が登録された感動により、つい号泣してしまった。これには流石の高海さんもドン引きしているようだった。

 これはマズイと、直ぐに平静を取り戻した俺は、スマホを取り出し高海さんに導かれながらLINEを交換する。LINEだ。友達のLINEだ。しかも女子のLINEだっぺさ!

 その後も俺は、今年一といっても過言ではない幸せに包まれながら、一切勉強もせずに高海さんとお喋りを続ける。

 

 

「話は変わるんだけどね、私最近、『MIKANKIN TV』っていうYouTuberにハマってるんだ」

 

 

「それってどんな動画出してる人なんですか?」 

 

 

「えっとね、みかんを焼いたり蒸したり、煮たり燻製したりして、今まで見たことも聞いたこともないようなみかん料理を創造してる人でね、面白いんだよ〜」

 

 

「みかんを燻製...それはまた変わった人ですね。家に帰ったら見てみます」

 

 

「うん!今度感想教えてね!」

 

 

「はい!...じゃあ、そろそろ勉強しましょうか」

 

 

「え〜、もうちょっとだけ休憩してから勉強しよう?ね?おねがぁい!」 

 

 

「も、もぉ〜、わかりました。適度な休憩は集中を保つためにも大事ですからね。もう少しだけ休憩して、その後しっかりと勉強しましょうか」

 

 

「流石天城君!わかってるぅ〜!天城君のそういうところも大好きだよ!」

 

 

「えっえっえっえっえっ!?」

 

 

「あっ、天城君のケーキ美味しそうだね。良かったら私のと一口交換しない?」 

 

 

「えっえっえっえっ......はっ!?い、いいですよ。はい、どうぞ」

 

 

「ありがとう!じゃあ私のも...はい、あ〜ん」

 

 

「!?!?ちょ、ちょぉ!?た、高海さん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

「未来君またテスト1位だったんだね!」

 

 

「えぇ、なんとか今回も死守することが出来ました」

 

 

「凄いね〜、これで3回連続の1番だよね。やっぱり未来君頭いいね〜」

 

 

「こういうのは時の運です。次はどうなるか分かりませんよ......それで、高海さんはどうでしたか?」

 

 

「聞いちゃう?」

 

 

「はい、聞いちゃいます」

 

 

「聞いちゃいますか〜。じゃあ発表します。今回の私のテストの結果は...ドゥルルルルルルデデン!なんと...」

 

 

「ゴクリ」

 

 

「なんと!全教科目標の75点を超えてました!」

 

 

「おぉ〜!!凄いです凄いです!!」

 

 

「未来君が親身になって教えてくれたからだよ!ありがとう!」

 

 

「いえいえ、この結果は全部高海さんが沢山の努力を継続したから成し得たものですよ。本当によく頑張りましたね!」

 

 

「えへへ〜、そんなに褒められたら流石に照れちゃうなぁ」

 

 

「か、かわえぇ...」

 

 

「え?」

 

 

「い、いえっ!なんでもないです!」

 

 

「そっか。そういえば、もし今回のテストで目標の点数を超えたら、私のお願いなんでも聞いてくれるって約束してくれたよね?」

 

 

「はい、しました。法律に違反しない程度の願い事ならバッチこいです!」

 

 

「よしきた!なら早速、お願いさせて貰うね」

 

 

「はい!」

 

 

 

 

「私のお願いはーーーーーーーーーーーーーーーだよ!」

 

 

 

 

 

 

「え?ふ、2つですか?」

 

 

「ふふっ、お願いの数が1つだけとは決めてないもんね!」

 

 

「た、確かに...」

 

 

「じゃあ、クリスマスイブの日に一緒にお出かけしようね!」

 

 

「わ、わかりました...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

「お待たせ、未来君」

 

 

 

「い、いえいえ!俺も今着いたところなので全然大丈夫です、千歌さん!」

 

 

 

「そっかぁ、良かった。じゃあ行こっか」

 

 

 

「はい!」

 

 

 

「未来君の手、あったかいね」

 

 

 

「ち、千歌さんの手も、凄くポカポカしてます...」  

 

 

 

「ねぇ、未来君」

 

 

 

「な、なんでしょう?」

 

 

 

「周りの人たち、みんな手を繋いだり、腕を組んだりして幸せそうだね」

 

 

 

「まぁ、今日はクリスマスイブですし、そういう人達が多くても不思議ではないというかなんと言いますか...」

 

 

 

「みんな恋人同士なんだよね」

 

 

 

「そ、そうだと思います...」

 

 

 

「ねぇ、未来君」

 

 

 

「はいっ」

 

 

 

「私たちも...恋人同士になっちゃおっか」

 

 

 

「はいっ.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.....へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

「さっきからソワソワしてるけど、もしかしてバレンタインだから?」

 

 

 

「ふふっ、未来君のお望み通り、ちゃんと作ってきたよ!」

 

 

 

「まず曜ちゃんの分でしょ?あとむっちゃん達の分と、他の子達の分、最後に...」

 

 

 

「あー!未来君の分持ってくるの忘れちゃった!」

 

 

 

「えへっ、うそだよー。安心して、ちゃんと持ってきたからっ。だからそんな悲しそうな顔しないで」

 

 

 

「はいっ、チョコレート!しかもなんと、本命の本命なのです!」

 

 

 

「味は普通かもだけど、おいしくな〜れっ!っていう気持ちはいっぱい入れたからきっとだいじょーぶ!」

 

 

 

「ってそんな号泣しちゃうくらい嬉しかったの!?あはは、良かったぁ。これは頑張って作った甲斐があったね!」

 

 

 

「宇宙一美味しい?そっか、私のチョコレート、そんなに美味しかったんだぁ。これはホワイトデーのお返し、期待しちゃってもいいよね?ね?」

 

 

 

「え?千歌のためなら借金してもいいから欲しい物があったらなんでも言って欲しいって?...いやいやいや!流石に借金はダメだよ!!」

 

 

 

「じゃあ受験が終わったら、愛知県にある恋路ヶ浜っていうところにいきたいなぁ.........確かに、土肥にも同じようなところがあるけど...両方行こう!そしたら2回もデート出来てお得だよ!借金ゼロだね!」

 

 

 

 

「えへへっ、楽しみだなぁ。受験頑張らないとね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

「未来君!私、春からスクールアイドルはじめようと思うんだ!」

 

 

 

「スクールアイドル?急にまた、どうしたの?」

 

 

 

「この前、曜ちゃんと東京に行った時に出会ったの!みんなすっごくキラキラしてた!」

 

 

 

「でも、スクールアイドルって確か自分達で曲を作らなくちゃいけないし、ダンスとか衣装も自分で作り上げなきゃいけないんだよ?あてはあるの?」

 

 

 

「ううん、まだない...でも私、思ったの。私もあの人たちみたいに輝きたい!仲間と一緒に頑張って、あの人たちが目指した所を私も目指したいって!それがどんなに険しい道だとしても」

 

 

 

「...そっか。決意は固いみたいだね」

 

 

 

「うん...」

 

 

 

「よっしゃ!ならばこの天城未来、手伝っちゃうよ!俺、実は昔ピアノも習ってたから曲とかも作れますぜ?」

 

 

 

「本当!?ありがとう未来君!」

 

 

 

「うぉ!?ふへへっ、ふへへへへ...千歌、可愛い、いい匂い、ふへへへへ...」

 

 

 

「...未来君、その顔......ちょっと気持ち悪いからやめた方がいいよ?」

 

 

 

「ぐふぅ!?ご、ごめんなさい、千歌...」

 

 

 

「私以外の人の前ではしちゃダメだよ?」

 

 

 

「はい、わかりました...」

 

 

 

「でもね」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「そんなところも含めて私ね」

 

 

 

「?」

 

 

 

「未来君のことが大好きだよ!!!」

 

 

 

「ーーーーーーーーー」

 

 

 

「え、未来君?どうしたの、そんな菩薩みたいな顔して?あれっ?未来君?ちょっと......返事して、未来くーーーん!!!」

 

 

 

 

 

 





ちなみにこの先の話、イチャラブルートとドロドロルートの2つがあります。


感想、評価励みになるからよろしくに〜


〜設定〜
・天城未来
 この世界線でも相変わらず厨二病を患っていた天城未来。未来は、塾帰りに薄暗くなった内浦の街を歩いていると、明らかに悩みありますといった感じで砂浜に1人で座っている少女を発見する。自身も圧倒的な力から周囲の人間と波長が合わず、絶対なる孤独者となっていることに悩んでいたため、同じく悩み事をもっていた少女に少しシンパシーを感じる。未来は、オレンジ色の髪を潮風に靡かせている少女に話しかけ、その悩みを聞くのだった。「ふははははっ!キサマは既にその見た目に似つかわない、全く普通でない立派なものを持っているではないか!誇れ!そして自身と他者とを比べるなど愚の骨頂!そんなことをしている暇があるならば、自身を見つめ、秘められた才能を見つけることに時間を費やせ!もしそれでも、自分に自信がないのならば学べ!人は学ぶことで強くなるのだから!」

・高海千歌
 完全無欠の幼馴染と自分を比較して、自身の平凡さに悩んでいた千歌。悩みを少しでも解決しようと近所の砂浜で海を眺めていると、どこかで見たことのある変人に声をかけられる。最初は困惑し、何言ってるんだコイツと思うも、歯に着せぬ物言いで割と核心をついた言葉をかけてくるため、なんだかんだ悩みが解消される。お礼を言おうとするが、既にその変人は姿を消していた。
 数ヶ月後、中学3年の春。新しいクラスに入ると、あの日の変人の姿が教室にあった。以前とは全く様子が違い、更には自身のことを忘れていたようだったが、なんやかんや面白くていい人だったので、友達として天城未来君と仲良くなった。


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