IS世界を舞う剣刃 (イナビカリ)
しおりを挟む

設定
キャラクター設定


名前

 火ノ兄 永遠(ヒノエ トワ)

 

性別

 男

 

年齢

 15歳(本編開始時)

 転生前 20歳

 

趣味

 畑仕事

 寝る事

 

容姿

 【バトルスピリッツ ブレイヴ】の【馬神弾】の髪を少し長めにし、色は白地に先端が赤くなっている

 

制服

 額に無地の赤いバンダナを巻いている

 IS学園の制服風の丈の長い羽織を着ている

 羽織の下は上着を着ていない以外は織斑一夏と同じ服装

 腰に3機のISの待機状態の刀をそれぞれ差している

 左側に【戦国龍】の日本刀

 右側に【ラインバレル】の太刀

 後ろに【ドットブラスライザー】の軍刀

 

特典

 健康な体

 普通より少し良い頭(中の上か上の下辺り)

 ある程度自給自足のできる土地

 

追加特典

 3機のIS

 飛天御剣流の秘伝書(るろうに剣心)

 

専用機

 戦国龍(バトルスピリッツ烈火魂)

 ドットブラスライザー(ダンボール戦機ウォーズ)

 ラインバレル(鉄のラインバレル)

 

使用技

 原作の飛天御剣流の技全て(キネマ版も含めて全てになっている。但し、キネマ版では九頭龍閃

              が奥義になっているので天翔龍閃と合わせて奥義が二つという事に

              なっている)

 オリジナル技

  龍槌閃・鉄槌(上段から刀を相手に叩き付けて地面ごと相手を押し潰す技)

  龍翔閃・烈破(刀を逆手に持ち、下から振り上げる途中、地面に剣先を引っ掛けその反動を

         利用して相手を斬りつける技)

  龍巻閃・山嵐(相手を周囲もろとも上に巻き上げるように斬り上げる技)

  九頭龍閃(ここのつがしらのりゅうのひらめき)天突(あまつき)(九つの斬撃を一つに束ねることで9倍以上の威力と突進力を

                 持つ奥義)

 

情報

 神様が原因で死んだ人間

 死んだお詫びとして特典を貰って「IS」の世界に転生した

 生前から普段はのんびりした性格だが、同時に、相手が誰であろうと物怖じせず言いたい事はハッキリ言う性格でもある

 口調は老人の様な話し方をするがこれはワザとではなく生前からの喋り方の為、直すことが出来ない、と言うより直すつもりがない

 転生したからといって「IS」の世界で何かしようと言う気は一切なく、最初に貰った特典も生活に必要な物ばかりである為、日々を平穏に暮らせればいいとしか考えていない

 一人で暮らしているが生前の知識と家にあった大量の参考書を読んでいる為、人並の一般教養は身につけている

 特典で貰った島でヒッソリと暮らしていたが篠ノ之束と出会い、さらに織斑一夏がISを動かしてしまった為、強制的にIS学園に送り込まれてしまう(報復として織斑一夏にジャーマンスープレックスをかけた)

 上記の理由から織斑一夏に対してあまり良い印象は持っておらず、何の接点もない自分の生活を壊した奴と言う認識がある

 その為、自分から積極的に関わろうとは思っていない

 幼い頃から畑を耕したりしていたので身体能力は高く、追加特典で貰った『飛天御剣流』を日々の修行で修得しており、そこから独自の技もいくつか編み出している

 その為、戦闘能力は織斑千冬と同等かそれ以上の強さを持つ

 

 




機体設定の方も近い内に更新します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

機体設定①

専用機名

 戦国龍

 

世代

 第3世代(実際は第5世代)

 

操縦者

 火ノ兄永遠

 

武装

 日本刀

 槍

 

特殊能力

 剣刃作製能力

 ・【バトルスピリッツ】の系統:剣刃を造る能力

 

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)

 六道剣

 ・以下の6つの刀の内の一振りを召喚する。

 ・一度呼び出すと単一仕様(ワンオフ・アビリティー)を解除しない限り他の刀は召喚できない。

 ・機体の赤い部分が装備した刀の色に変わる(ただし【炎龍刀オニマル】の時は変わらない)

 ・能力と呼び出す際の台詞は以下の通り。

  ・炎龍刀オニマル:色:赤

          :属性:炎

          :特徴:攻撃

          :能力及び説明:刀身に炎のエネルギーを纏わせて斬る

                  六道剣最強の攻撃力を誇る

          :台詞:燃え上れ!猛き炎の剣【炎龍刀オニマル】!!

  ・風翼刀ドウジキリ:色:緑

           :属性:風

           :特徴:速度

           :能力及び説明:風を操り竜巻や鎌鼬を起こす事が可能

                   自分のスピードが4倍から5倍にまで上がる

           :台詞:風を纏いし神速の刃【風翼刀ドウジキリ】!!

  ・地神刀オオテンタ:色:白

           :属性:地&氷

           :特徴:防御

           :能力及び説明:刀身から氷を作り出せる

                   刀身を振動させ地震を起こしたり斬った物を分解できる

                   六道剣の中で最硬の防御力を持つ

           :台詞:大地を揺るがす凍える剣!【地神刀オオテンタ】!!

  ・雷命刀ミカヅキ:色:黄

          :属性:雷&光

          :特徴:回復

          ;能力及び説明:雷を発生させることが可能

                  一度だけ自分のSEを完全に回復できる

                  六道剣の中で一番の切れ味を誇る

          :台詞:雷光轟く金色の剣【雷命刀ミカヅキ】!!

  ・水覇刀ジュズマル:色:青

           :属性:水

           :特徴:耐久

           :能力及び説明:水の壁や弾丸を作り出せる

                   自分が受けるダメージを全て1/5にする。

           :台詞:荒ぶる海原を制する刃【水覇刀ジュズマル】!!

  ・妖刀ムラサメ:色:紫

         :属性:闇

         :特徴:吸収

         :能力及び説明:斬った相手のエネルギーを吸収出来る。

                 そのエネルギーで自分のSEを回復できる。

                 または攻撃エネルギーに変えて撃ち出せる。

         :台詞:闇より生まれし全てを喰らう刃【妖刀ムラサメ】!!

 

ISの深層意識

 バトスピの【剣聖姫ツル】の髪の色が赤になっている姿。

 ・ノリが軽い。

 

待機状態

 日本刀

 ・普通の刀としても使用できる。

  (見た目はバトスピの【姫鶴一文字】)

 

説明

 転生特典として貰ったISの一つ。

 【バトルスピリッツ】の【戦国龍ソウルドラゴン】をそのままISにした機体。

 ISを装着する際は待機状態の刀を頭上で円を描き身に纏う(元ネタは【牙狼】の鎧召喚)

 武装は槍と刀が1本ずつ。

 他のISと違い機体が人間と全く同じ動きが出来るので無駄な動きも無く、細かい動きが出来る。

 単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)は【バトルスピリッツ】の【天下五剣】と【妖刀】を呼び出す能力。

 ただし、一度に呼び出せるのは1本だけと制限が掛かっている。

 後に特殊能力が追加され【バトルスピリッツ】の【系統:剣刃】を造る事が出来る様になった。

 ただし、【六道剣】が既にあるので造った【剣刃】は誰かにあげている。

 自分の為と言うより他人の為の能力。

 特典だけあってチート級の能力を持つが邪念を持つ者が使おうとすると死なないレベルで燃やされる。

 

 

▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

専用機名

 ドットブラスライザー

 

世代

 第3世代(実際は第5世代)

 

操縦者

 火ノ兄永遠

 

武装

 マルチギミックサック×2

 ・片手銃:ブラストマグナム

      必殺ファンクション:クイックスナイプ

                ・両手銃による高速3連射

 ・片手剣:ブラストソード

      必殺ファンクション:コスモスラッシュ

                ・エネルギーを集中し巨大な剣を形作り、一気に振り下ろす

 ・双剣:デュアルブレード

     必殺ファンクション::ライトニングランス

               ・槍に電撃を纏わせて放つ突き

 ・楯:ブラストガーター

 

特殊機能

 ラグナロクフェイズ

 ・機体の各部装甲を変形・展開した高出力形態

  武装

  ・ヴァリアブルクロー

  必殺ファンクション:シャイニング・ラム

            ・全身が光り輝き一直線に貫く突進技

           :オーバー・カタストロフ

            ・9体に分身しての全方位からの連続攻撃

 

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)

 ドットフェニックス

 ・ドットブラスライザーの支援機

 ・ミサイル、レール砲、ビーム砲を装備しており、単体での戦闘も可能。

 ・ドットブラスライザーと合体しドットブラスライザー・ジーエクストにパワーアップする

 ドットブラスライザー・ジーエクスト

 ・合体後、SEを完全に回復させる

  必殺ファンクション:真刀・カムイ

            ・巨大なレーザーソードで相手を斬り裂く

 

ISの深層意識

 【戦国龍】のコアと同じ姿をしている

 ・3機のコアは深層意識でリンクしているのでどの機体も同じ姿になっている。

 

待機状態

 軍刀

 ・普通の軍刀としても使用できる

 

説明

 転生特典として貰ったISその2。

 【ダンボール戦機ウォーズ】の【ドットブラスライザー】をそのままISにした機体。

 こちらは二次移行(セカンドシフト)はしない。

 ISを装着する際は待機状態の軍刀で正面に円を描き身に纏う(【牙狼】の鎧召喚を元にしている)

 武装は原作と同じ【マルチギミックサック】

 高出力形態【ラグナロクフェイズ】に変形する事で機体の性能は数倍に上がる。

 単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)は支援機【ドットフェニックス】を呼び出す能力。

 原作と同じように【ドットブラスライザー】と合体する事で【ドットブラスライザー・ジーエクスト】になる。

 SEを消費することで必殺技【真刀・カムイ】を使える。

 こちらもチート級の能力を持つが同じように邪念を持つ者が使おうとすると触っただけで弾き飛ばされる。

 

 

▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

専用機名

 ラインバレル

 

世代

 第3世代(実際は第5世代)

 

操縦者

 火ノ兄永遠

 

武装

 太刀×2

 エグゼキューター

 圧縮転送フィールド

 

特殊機能

 自己再生能力

 ・機体の自己修復とSEの自動回復が出来る

転送

 ・任意の場所に転移出来る

 ・ただし、転移先に異物があると転移できない

 ・機体に触れていれば他の人間や物体も転移できる

 

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)

 時間停止

 ・一定範囲内の時間の流れを極端に遅く出来る

 ・完全に時間が止まっていないので攻撃を行えばダメージも通る

 ・能力を解除すればその間のダメージを一気に受ける

 ・これを使用している間は【ラインバレル】の特殊機能は発動しない

 

ISの深層意識

 【戦国龍】のコアと同じ姿をしている

 ・3機のコアは深層意識でリンクしているのでどの機体も同じ姿になっている。

 

待機状態

 太刀

 ・普通の太刀としても使用できる。

  (見た目はラインバレルの太刀と同じ物)

 

説明

 転生特典として貰ったISその3。

 【鉄のラインバレル】の【ラインバレル】をそのままISにした機体。

 こちらも二次移行(セカンドシフト)はしない。

 ISを装着する際は待機状態の太刀を地面に突き刺し1回転して円を描き身に纏う(こちらも【牙狼】の鎧召喚を元にしている)

 原作と同じように再生能力を持っているが、こちらは機体だけでなくSEも自動で回復し続ける能力が追加されている。

 単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)は【時間停止】と言う能力だが、完全に止める訳では無くSEを消費し続ける事で周囲の時間の流れを極端に遅く出来る能力。

 完全に時間が止まっていないので攻撃を行えばダメージも通る。

 能力を解除すればその間のダメージを一気に受ける(【ONE PIECE】の【ノロノロの実】みたいな物)

 これを使用している間は【ラインバレル】の特殊機能は発動しない。

 こちらもチート級の能力を持つが同じように邪念を持つ者が使おうとすると半径10K圏内のどこかに強制転送される。

 

 

▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

専用機名

 戦国龍皇

 

世代

 第5世代

 

操縦者

 火ノ兄永遠

 

武装

 槍

 十字槍

 六道剣(りくどうけん)

 ・炎龍刀オニマル⇒炎龍刀オニマル・真打

 ・風翼刀ドウジキリ

 ・地神刀オオテンタ

 ・雷命刀ミカヅキ

 ・水覇刀ジュズマル

 ・妖刀ムラサメ

 

待機状態

 日本刀

 ・普通の刀としても使用できる

  (見た目はバトスピの姫鶴一文字)

 

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)

 轟焔

 ・馬型の支援機

 ・蹄を鳴らすと自分の左右に炎の壁を作り出し、持っている六道剣を巨大化させる

 

説明

 【戦国龍】が二次移行(セカンドシフト)した姿

 【バトルスピリッツ】の【戦国龍皇バーニング・ソウルドラゴン】をそのままISにした機体

 武装は二本の槍と【戦国龍】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)の【六道剣(りくどうけん)】を装備している

 【六道剣(りくどうけん)】は左右の腰に1本ずつと鎧の羽にそれぞれ2本ずつ装備されている

 二次移行(セカンドシフト)した事によって【六道剣(りくどうけん)】の制約が無くなっているが、能力は刀を持たなければ発動出来ないので同時に使えるのは二つまで

 ただし、対象に刀を突き刺す等して手元に無い場合でも発動する能力もあるので、その場合は3本目の能力を使う事が出来る

 単一仕様(ワンオフ・アビリティー)は馬型支援メカ【轟焔】の召喚に代わっており、姿は【午の十二神皇エグゼシード】となっている(呼び出す際は刀で『午』の字を書いて呼ぶ。こちらの元ネタは牙狼の轟天)

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

機体設定⓶

専用機名

ワイバーン・ガイア

 

世代

第5世代

 

操縦者

布仏本音

 

武装

アーム・カノン×2

ウイング・ブレード×2

テール・ブレード

レーザー・ブレス

12連装背部ミサイル×2

剣刃(つるぎ):夢幻の天剣トワイライト・ファンタジア

 

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)

トライデント・スマッシャー

・頭部のレーザー・ブレスと両腕のアームカノンでそれぞれ高エネルギーをチャージし一点に収束して撃つ

 

待機状態

3つの勾玉がついた首飾り

 

説明

 元ネタは【ダンボール戦機ウォーズ】の【ワイバーン・ガイア】をそのままISにした機体

 篠ノ之束が【ドットブラスライザー】の中のデータを元に作り上げた第5世代型試作1号機

 束が永遠と仲のいい布仏本音を気に入ったのでデータ収集もかねて彼女にあげた

 布仏本音は本機を【ワイワイ】と呼んでいる

 最初に造った事と、原作の【ワイバーン・ガイア】を元にしているだけに従来のISよりも5倍近い大きさになっている

 もはやISと言うより怪獣型のロボットにしか見えない

 更に従来のISと違い本機を操縦する際はISスーツは手足のみ身に着けていれば動かせるので一々着替える必要が無い

 武装は全身に多数装備されている重火器

 近接武器として翼の【ウイング・ブレード】と尻尾の【テール・ブレード】が装備されている

 遠距離武器は口から放つ高出力レーザー【レーザー・ブレス】と両腕に装備された連射型レーザー砲【アーム・カノン】、背中には12連装のミサイル発射管が左右に搭載されている

 更に追加武装として永遠から剣刃(つるぎ)の一つ【夢幻の天剣トワイライト・ファンタジア】を渡されており、この剣は口にくわえて使用する

 その巨体のせいで半端じゃない威圧感があるのだが乗っているのが布仏本音の為、迫力は半減している

 機体内部はコックピット以外の空間もあり3、4人は軽く入れるので居住性まである初めてのISでもある

 機体の中に乗り込むという使用上、水中潜行も出来る上に【ウイング・ブレード】を高速回転させる事で地面を掘って地中潜行さえ可能となっている

 文字通り陸海空の全てを移動できる規格外の機体

 単一仕様(ワンオフ・アビリティー)は頭部と両腕のエネルギーを一つに纏めて放つ【トライデント・スマッシャー】

 ただし、機体がデカ過ぎる為、試合では使用が禁止されてしまった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

新しいISが出るたびに更新していきます。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

原作開始前
第000話:プロローグ


皆様はじめまして。

イナビカリです。

初めての投稿ですが読んでくれると幸いです。


 ~? Side~

 

?1

「………ここは、どこじゃ?」

 

 ワシは気づいたら辺り一面真っ白な場所にいた。確か家で寝ていた筈なんじゃが?

 

?2

「ようやく気付いたのね!」

 

?1

「へっ?」

 

 声のした方を向くとそこには長い黒髪の女性がこっちを見ていた。

 

?1

「お主、何もんじゃ!」

 

?2

「初対面の相手に失礼な言い方ね!」

 

?1

「ム!それは確かにすまぬ!申し訳ない!」

 

?2

「アラ、思ったより素直じゃないの。変わったしゃべり方だけどそのままでいいわよ。」

 

 それはありがたい、敬語で話すのはちと面倒じゃからな。

 

?1

「ありがとうございます!え~と、それでここはどこか教えて貰えんかの?それと、お主は誰かの?」

 

?2

「ここ?ここはあの世とこの世の狭間よ。私は【天照大神(あまてらすおおみかみ)】って言うのよ。ヨロシクね♪それで、貴方の名前は?」

 

?1

「これは失礼を、ワシの名は【火ノ兄永遠(ひのえとわ)】と言います。よろしゅう。」

 

 これがワシの名前なんじゃが女っぽい随分変わった名前だと自分でも思っとる。

 

永遠

「して【天照】じゃと?日本神話の最高神と言われる、あの【天照】かの?」

 

天照大神

「そうよ。私の事知ってるのね。」

 

永遠

「そんなに詳しくは知らんがの…ここが、あの世とこの世の狭間?…という事はワシは死んだという事ですかの?」

 

天照大神

「ぶっちゃけて言えばそうよ♪」

 

 そっか~~~、ワシ死んだのか~~~…

 

天照大神

「死んだと知った割には能天気な奴ね?」

 

永遠

「そりゃ、死んだのは残念じゃが何時かは死ぬわけじゃしな、それが今と言うだけじゃろ?」

 

天照大神

「まぁ確かにそうだけど…」

 

永遠

「それで、ワシはこれからどこに行くのかの?天国か?地獄か?」

 

天照大神

「残念だけどどちらでもないわ。」

 

永遠

「………はっ?」

 

 どっちでも無いとはどういう事じゃ?まさか生き返らせてくれるとでもいうんかのお?

 

天照大神

「半分正解よ。」

 

永遠

「半分?…ていうか、もしやワシの考えを読んどるのか?」

 

天照大神

「大正解♪」

 

永遠

「大正解ではないわ!神様でもプライバシーの侵害じゃぞ!で、半分とはどういう事じゃ?」

 

天照大神

「あ~~~それはね、貴方本当はここで死ぬ人間じゃなかったのよ。」

 

永遠

「へ?」

 

 どういう事じゃ?

 

天照大神

「実はね、私の弟の【須佐之男(すさのお)】が仕事中に~…お茶を溢しちゃってね~…貴方の人生が書かれた書類をね~…ティッシュの代わりにしちゃって~…お茶拭いてそのままゴミ箱に~…捨てちゃったんだ♪…テヘッ♪」

 

 テヘッ♪て…

 

永遠

「へ~~~そ~か~…ワシの人生がティッシュにか………神様、お願いがあるんじゃが?」

 

天照大神

「ナ、ナニカナ~…」

 

永遠

「その【須佐之男(すさのお)】と言う神様を殴りたいんじゃが構わんかのお?」

 

 ワシの残りの人生を雑巾の代わりにしおって、幾ら何でも許せん!

 

天照大神

「ま、待って!貴方の気持ちも分かるけど、あの子は私と姉の【月詠(つくよみ)】の二人で半殺しにしてシバイておいたから!ねっ!」

 

 むぅ、本当かのお?

 

天照大神

「本当よ!ならこれ見なさい!」

 

 む!何じゃこのモザイクだらけの肉塊は?これが【須佐之男(すさのお)】か?

 

永遠

「確かに言う通りの様じゃの…ちと、やりすぎな気もするが…自業自得じゃな。」

 

天照大神

「そういう事よ…で、話を戻すけど。悪いけど貴方は元の世界には戻せないのよ。」

 

永遠

「では、どうなるんじゃ?」

 

天照大神

「貴方には別の世界に転生してもらうわ!」

 

永遠

「………それはよく二次小説に出てくる漫画やアニメの世界に飛ばすというあれか?」

 

天照大神

「正解♪それで、貴方には【インフィニット・ストラトス】の世界に転生して貰おうと思うんだけど?この話って知ってる?」

 

永遠

「まあ、多少は…」

 

天照大神

「それじゃ今から貴方には特典をあげるわ。今回は特別に3つあげるわよ♪何がいい?」

 

永遠

「そうじゃのぉ~、まず一つ目は【健康な体】じゃ。病気とかにならん体が欲しい。二つ目は【普通より少し良い頭】にしてくれ。大体、中の上か上の下辺りがいいのお。三つ目は【ある程度自給自足のできる土地】が欲しい。島でも山でもどっちでもいいが近くに小さくてもいいから町があるとありがたいのお。この三つで頼む。」

 

天照大神

「え?そ、そんなのでいいの?ISの世界だから世界一の力や頭脳が欲しいとか言うと思ったのに。」

 

永遠

「そんなもんいらん!ワシはひっそりのんびり暮らせればそれでいい。原作になんぞ関わると面倒ごとに巻き込まれっぱなしでないか!」

 

天照大神

「え~そんな事言わないでさ~…もしかしたら貴方ハーレムを作れるかもしれないのよ!関わってみようよ~!」

 

永遠

「お主それでも神様か!嫌じゃと言っとる!」

 

天照大神

「そう言わず、今ならIS関連の特典を2つ追加してもいいから!何なら特典1つでISを2つ、いや、今なら3つあげるわよ!今がお買い得よお客さん!もってけドロボー!」

 

永遠

「何故、通販みたいになっとるんじゃ?…しつこいのお…言わんと転生させてくれんのか?」

 

天照大神

「ぶっちゃけその通り♪」

 

永遠

「仕方ない、ではさっき言った通りISは3機貰うぞ!」

 

天照大神

「うん!いいよ♪それでどんなのが欲しいの?」

 

永遠

「まずは【バトルスピリッツ】の【戦国龍ソウル・ドラゴン】で頼む。」

 

天照大神

「【バトルスピリッツ】!またマニアックなのを!カードゲームなら【遊戯王】とかかと思ったのに!」

 

永遠

「やかましい!全世界のバトスピファンの皆さんに謝れ!【遊戯王】も好きじゃがこっちも好きなんじゃから別にいいじゃろ!…2体目はそうじゃな…【ダンボール戦機】の【ドットブラスライザー】にしてくれ。」

 

天照大神

「これまた面白いチョイス♪」

 

永遠

「しつこいぞ!3体目は【鉄のラインバレル】の【ラインバレル】じゃ。」

 

天照大神

「あら?最後はてっきり王道の【ガンダム】かと思ったんだけど…意外だわ~。」

 

永遠

「喧嘩売っとんのか己は!」

 

天照大神

「そんなつもりはないわよ♪」

 

永遠

「確かに【ガンダム】は好きじゃが別にいいじゃろうが!」

 

天照大神

「ごめんごめん♪それで細かい設定とかある?あるなら今の内にしておくけど?」

 

永遠

「【ドットブラスライザー】は原作のままでいい。単一仕様(ワンオフ・アビリティー)で【ドットフェニックス】を呼べるようにして欲しい。【ラインバレル】の方は自己修復にエネルギーの自動回復を追加してくれ。」

 

天照大神

「フムフム、OK♪で【ソウル・ドラゴン】は?」

 

永遠

二次移行(セカンドシフト)に【戦国龍皇バーニング・ソウルドラゴン】三次移行(サードシフト)を【戦国龍神テンカフブ】になるように頼む。単一仕様(ワンオフ・アビリティー)一次移行(ファーストシフト)は天下五剣と妖刀を使えるようにしてくれ。二次移行(セカンドシフト)は【午の十二神皇エグゼシード】を呼ぶようにして欲しい。三次移行(サードシフト)は【戦国六武将】を呼べるように頼む。移行したら前の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)の武装を標準装備出来るように設定してくれ。後3機の中にそれぞれの機体のデータと原作のキャラクター以外の全データを入れてくれ。…以上じゃ!」

 

天照大神

「最後のは随分細かいわね。まあ大丈夫よ。………はい、全部終わったわよ。」

 

永遠

「で、特典はあと一つか?」

 

天照大神

「ええそうよ。でもISに何かしら関わる物だけどね。何がいい?」

 

永遠

「では【るろうに剣心】の【飛天御剣流】を覚えられる様にしてくれ。それは制限に引っかかるかのお?」

 

天照大神

「いいえ、戦う為に使えるから大丈夫よ。だけど覚えられるって?」

 

永遠

「初めから使える様にしないで欲しいという意味じゃ。秘伝書か何かを残すみたいにして欲しいんじゃよ。」

 

天照大神

「君ってホント変わってるわね!そういうのは大概努力も何もしないで使える様にして欲しいって頼むのに。」

 

永遠

「別に努力が好きという訳ではないがの。ただ、何もしないでそういった物は欲しくないというだけじゃよ。」

 

天照大神

「フ~ン、ま、分かったわ。…さて、これで準備は全部終わったわ。それとISは【白騎士事件】が起こったらあなたに届くようにしておくわね。」

 

永遠

「ああ、それで構わん。どうせ、使わんじゃろうしな。」

 

天照大神

「いやいや、せっかく用意したんだから使ってよ!」

 

永遠

「まあ置物ぐらいにはなるじゃろ。」

 

天照大神

「だ~か~ら~…」

 

永遠

「ほれ、準備が出来たんじゃろ。はよ、送ってくれ。」

 

天照大神

「あーーーもーーー分かったわよ!じゃいくわよ!ポチッとな。」

 

 随分古いネタじゃの~…ん?…ワシの足元の床が消えて大きな穴になりおった!…という事は…

 

永遠

「…ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁーーーーー……………!!」

 

 こうしてワシは【インフィニット・ストラトス】の世界に飛ばされてしまったんじゃ。

 

 ………

 ……

 …

 

天照大神

「…ハァ~ホント変な子。でも、面白い子ではあったわね。関わりたくないと言ったけどそうはいかないからね♪…それと、おまけを一つ追加しておくからね♪………さて彼がどんな物語を紡いでいくのか楽しみだわ!」

 

 ~永遠 Side out~

 

 




 次回『第001話:壊れ始める日常』




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第001話:壊れ始める日常

 ~永遠 Side~

 

 皆さんこんにちは!この度【インフィニット・ストラトス】の世界に転生した火ノ兄永遠じゃ。

 今、ワシは先祖代々受け継がれているという小さな小島【火紋島(かもんとう)】で一人で自給自足の生活をしておる。

 何でワシがそんな所で暮らしているかと言うとじゃな。

 転生したワシは赤ん坊から人生をやり直したんじゃがワシが5才の時に両親が事故で亡くなってしもうたんじゃ。

 ワシにはとても優しい良い両親だったんじゃが生憎とワシには父と母以外に身内と呼べる者がおらんくてな。

 そしたらうちの先祖が昔から管理しているという島があるということが分かって、そこで暮らすことにしたんじゃよ。

 まあ、この火紋島はあの神様がくれた特典の一つなんじゃが、この島、実は色々と便利な物が沢山あるんじゃよ。

 島の中央には温泉!そこそこ大きな家!自生している果物!川や海には簡単に捕れる沢山の魚!と、至れり尽くせりなんじゃよ。

 神様め!ある程度と言っておいたというのに、更に今住んどる家も中には野菜の種や米の苗、農業系やその他の大量の本がぎっしり置いてあったんじゃ。

 そしてワシがこの島に移り住んだ時には既に【白騎士事件】は起きた後だったから家の中に神様が用意した3体のISが置いてあったんじゃよ。

 まぁワシはこの世界のゴタゴタには関わるつもりが無いから、このIS達には悪いがひっそりと暮らさせてもらうつもりじゃが、自我があるというからたまの話し相手にでもなって貰っておる。

 ワシは火紋島で暮らし始めてまず行ったのは畑作りからじゃった。

 毎日鍬を振って小さな畑を作った後、家にあった野菜の種の中からまずはトマトの種を植えてみた。

 それから、参考書を見ながら毎日水を撒いて、雑草を抜き、畑を広げていく生活をしていた。

 時間が余った時は家の中で見つけたもう一つの特典「飛天御剣流」の秘伝書を読んで剣の鍛錬に勤しんでいたんじゃ。

 それから時が経ち、初めて植えたトマトを収穫し早速食べたがお世辞にも店に置いてある物に比べてうまいとは言えん物じゃったが、それでもとてもうまいものじゃった。

 その間に、他の野菜も植えて少しずつ畑を大きくしながら田んぼ作りにも挑戦したがこっちは畑以上に苦労した。

 田畑を耕して、釣りをして、島の動物達と遊び、剣の鍛錬をしながらの毎日はとても楽しい日々じゃった。

 ワシがこの火紋島で暮らし始めて9年の月日が流れたある日、ワシがいつもの様に畑を耕している時じゃった。

 

 ズドオオオオオォォォォォーーーーーン………!!

 

 ワシの日常が壊れる時が来てしまった。

 

 ~永遠 Side out~

 

 




 次回『第002話:兎襲来!』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第002話:兎襲来!

 ~束 Side~

 

 ハロハロ!私は天災科学者の篠ノ之束さんだよ~♪

 束さんは今、助手のクーちゃんとマイロケットで絶賛飛行中なんだ!…けどね…

 

「あ、あれ?」

 

クロエ

「束様!ロケットのコントロールが突然効かなく…」

 

「分かってるよ!一体なんで?」

 

 そう、いきなりロケットがコントロール不能の状態になっちゃったんだよ!

 束さんお手製のロケットに異常が起きるなんて信じられない!

 

クロエ

「た、束様!ダメです、墜落します!」

 

「クーちゃん!衝撃に備えて!」

 

 ズドオオオオオォォォォォーーーーーン………!!

 

束&クロエ

「キャアアアアアァァァァァーーーーー………!!!」

 

 ~束 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 ズドオオオオオォォォォォーーーーーン………!!

 

永遠

「な、何じゃあああぁぁぁーーーっ」

 

 島に何か落ちてきおったぞ!…向こうは西の海岸じゃな、とりあえず行ってみるか!

 

 ………

 ……

 …

 

永遠

「何じゃこれは?」

 

 墜落地点についたワシが最初に見たのは巨大な人参じゃった。

 

永遠

「人参?いや、人参型の乗り物かのぉ?…ん?」

 

 ワシが人参に近づくと中から二人の女性が出てきおった!

 二人とも気を失っておるが大きなケガはしておらんようで安心したが、それでも少なからずケガをしておった

 

永遠

「…このまま放っとく訳にもいかんか…」

 

 ワシは一先ず二人を自分の家に連れて行く事にした。

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~束 Side~

 

「う、う~~~ん…あれ?」

 

 目を覚ました私の目に映ったのは見た事もない天井だった。

 確か私は墜落するロケットの中にいたはずなのに。

 

「ハッ!クーちゃん!」

 

 そうだ!クーちゃんはどこ!どこにいるの!

 

「クー…あっ、クーちゃん…」

 

 クーちゃんは私の隣で眠っていた。

 私は安堵すると同時にクーちゃんが手当てされているのに気付いた。

 よく見ると私もそうだった。

 

「ここは、どこ?」

 

 ガラッ

 

「誰だ!」

 

 突然、扉が空いたからそっちを見るとお盆を持った男の子が入って来た。

 

永遠

「お!目を覚ましたようじゃの!…もう一人はまだみたいじゃな?」

 

「誰、お前?」

 

永遠

「お前とは失礼じゃな…お主達のケガの手当てをした者じゃよ。」

 

「………」グ~~~ッ「あっ!」///

 

永遠

「カカカッ!…ほれ、粥と茶じゃ。あまりうまくないかもしれんが腹に何か入れておくとよいぞ。」

 

「あ、ありがとう…」

 

 差し出されたお粥を食べながら私は目の前の子供の事を考えていた。

 

「…ごちそう様…」 

 

永遠

「ウム!お粗末様じゃ。」

 

 変わった子だな?しゃべり方も何かジジ臭いし、一体何者なんだろ?

 

永遠

「ワシの名前は火ノ兄永遠という、お主の名は?」

 

「?…ねぇ、私の事知らないの?自分で言うのもなんだけど世界でもかなりの有名人なんだけどさ?」

 

 幾ら子供とはいえ私の事を知らない人間がいるなんて…

 

永遠

「そうなのか?すまんがワシはこの島で9年間一人で暮らしておってな。テレビもラジオも無いからそういった事には疎いんじゃよ。」

 

「え?」

 

 今この子は何て言った?

 ここで9年間一人で暮らしている?

 

「ねえ、今一人で暮らしてるって君、家族は?…それに、ここはどこなの?」

 

永遠

「ここか?ここは火紋島と言ってな、ワシの先祖が代々所有しておる島じゃよ。ワシの家族は5つの時に事故で亡くなってしまってな、他に親戚もおらんからそれ以来ここで暮らしとるんじゃよ。」

 

「5つって!5才で島で一人で生きてきたの!」

 

永遠

「そうじゃよ。それでスマンが名を教えてくれんかのぉ?」

 

「えっ!あ、そうだったね。私は篠ノ之束!天災科学者の篠ノ之束さんだよ~!ブイブイ!」

 

永遠

「篠ノ之束?…もしやISを作ったというあの篠ノ之束博士かのぉ?」

 

「およ!束さんの名前は知ってたんだね!」

 

 なんだ、知らなかったのは顔だけなんだ…

 

永遠

「まぁ名前くらいしか知らんがな…それで、なんでその天災が人参に乗って島の海岸に突き刺さっとったんじゃ?」

 

「…それが良く分からないんだよ。いきなりロケットのコントロールが効かなくなって、そのままこの島に墜落したみたいなんだ。」

 

 ほんと、訳が分からないよ!

 あ、そうだ!

 

「ところでさ、君は私達をどうするの?」

 

永遠

「?…どうとは?」

 

「警察にでも突き出すのかって聞いてるんだよ?」

 

永遠

「………は?なんで?」

 

「なんでって束さんの名前を知ってるなら私達が世界中から追われてるのは知ってるでしょ!」

 

永遠

「…ああ、そういうことか!」

 

 もしかして気づいてなかった?だとしたらミスったかも…

 

永遠

「心配せんでもそげな事はせんぞい。そのつもりならわざわざ家まで運んで手当なんぞせんわい!違うかのぉ?」

 

 言われてみればそうだ…でも…

 

「じゃあ何が目的なの?」

 

 他に理由がある筈だと思っていたのに…

 

永遠

「目的なんぞ無いわい!ただ目の前でケガをしていたから助けた。それだけじゃよ!」

 

「え!?それだけ?」

 

永遠

「それだけじゃよ。…いや、他にあるとしたら…」

 

 やっぱり!何か目的があるんだ!

 

永遠

「少し話し相手になって欲しかったくらいかのぉ。」

 

「ハァ?話って…」

 

 この子何言ってんの?

 

永遠

「さっきも言うたがワシはここで一人で暮らしとる。まぁ偶に近くの港町に行く時はそこの人達とよく話をするんじゃがな。この島で気軽に話をしたことは無いんじゃよ。」

 

「そうなんだ。」

 

永遠

「まぁすぐに出て行くというなら止めはせんが、お主らのロケットは動くのかのぉ?」

 

「………あ!」

 

 そうだった!急いで修理しないと!

 

「忘れてた!ねぇ、束さんのロケットはどこにあるの?」

 

永遠

「墜落した海岸にそのままじゃ。…動けるなら案内するが?」

 

「このくらいどうって事ないよ!案内して!」

 

永遠

「分かった。ついてきんさい。」

 

 私はそのまま彼について行った。

 けど、残したクーちゃんがこの家で見つけたトンでもない物と、彼の正体を聞いた時は本当に驚いた!

 そして、彼が私の夢を一気に近づけてくれるなんて思いもよらなかった。

 

 ~束 Side out~

 

 




 次回『第003話:兎悩む』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第003話:兎悩む

 ~永遠 Side~

 

 ワシは今、博士とロケットのある海岸に向かっておるんじゃが、今までの話からロケットに異常が起きたのは、もしやあの神様の仕業ではないかと考えているところじゃ

 ワシはこの世界の出来事に関わりたくないとはっきり言うたからな、無理矢理関わらせる為に博士のロケットを落としたのかもしれんのぉ

 ま、大丈夫じゃろ!確かこの博士、妹と友人の姉弟以外の人間は道端の石ころ程度にしか考えんらしいからな、ロケットを直したらさっさと出て行くじゃろ

 この島にはあの博士が興味を持つような物は無いしの

 ワシも久しぶりに人と話が出来たしな

 

永遠

「お!見えてきたぞ!」

 

 しかし…何か忘れてる気がするのぉ?

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~束 Side~

 

 私は前を歩く少年についていきながら彼、永遠と名乗った子の事を考えていた

 たった一人で5歳の頃から自給自足でこの島で暮らしていると言われた時は、さすがに信じられなかった

 でも、家の周りにあった畑や田んぼを見ると彼が言ってることは嘘ではないというのが分かった

 だからこそ彼の事が気になった!私が箒ちゃん達以外に興味を持つ人間がいるなんて思わなかったよ

 そんな事を考えていると

 

永遠「お!見えてきたぞ!」

 

 目的の場所にいつの間にか着いていた

 

 ………

 ……

 …

 

 私は早速ロケットの機体とシステムの確認を始めた

 機体の方は墜落による破損が運よく少なかったお陰で飛ぼうと思えばすぐに飛べる状態だった

 でも、システムの方は酷い状態だった

 墜落による影響かロケットのプログラムの殆どが壊れてしまっていた

 これじゃ幾ら天災の私でも一からプログラムを作り直さないとこのロケットは使うことが出来ない

 

永遠

「どんな感じじゃ?」

 

「うん、機体は損傷が少ないからすぐに直せるよ。…でも、システムが殆ど壊れちゃってる…」

 

永遠

「そうか…して、システムの復旧にはどのくらいかかりそうかの?」

 

「ここまで壊れてると一から作り直した方が早いね。…作るにしても1週間はかかるかな?」

 

永遠

「フム、1週間か…その間どうするんじゃ?」

 

「ハァ~どうしよ?」

 

 ホントにどうしよ…一番いいのはこの子の家に泊めて貰うのがいいかもしれないけど自分から頼むのは束さんのプライドが………

 

永遠

「ならその間うちに泊まるか?」

 

「え!?…いいの?」

 

 向こうから提案してくれた

 

永遠

「別に構わんぞ。さっきも言ったが話し相手が欲しかったからの。飯と寝床位なら用意するぞ。」

 

「………ホントにいいの?」

 

永遠

「いいぞ。」

 

「……ホントのホントに?」

 

永遠

「いいと言っとる。」

 

「…ホントのホントのホント~に?」

 

永遠

「お主しつこいぞ!嫌ならその辺で野宿しとれ!」

 

「ごめんなさいごめんなさい!泊めてください!お願いします!」

 

 いくら何でも野宿は嫌だ!

 

永遠

「全く素直にそう言えばよかろう…」

 

「あう、ごめんなさい…」

 

永遠

「じゃがこの人参はどうするんじゃ?」

 

「あ、それは大丈夫!粒子変換して拡張領域(バススロット)にしまえるから君の家まで持っていけるよ!」

 

永遠

「それは良かった!さすがに地元の漁師さんに見つかると面倒じゃからな。」

 

「アハハハッそうだね…」

 

 私は笑いながらロケットを拡張領域(バススロット)にしまった

 

永遠

「さて、ここにはもう用がないなら帰るかのぉ。もう一人もそろそろ目を覚ましておる頃じゃろうしな。」

 

「うん、そうだね。」

 

 私は彼の家に戻った

 そして家が見えてくると家の前にクーちゃんが立っていた

 私達に気づいたクーちゃんは、酷く狼狽えた表情をしながら近づいてきた

 

クロエ

「た、束様!?ご無事ですか!?」

 

「大丈夫だよ~。クーちゃんも大丈夫だった?」

 

 クーちゃんが目を覚ましてるのに安堵していると次の彼女の言葉で私の思考は停止してしまった

 

クロエ

「私のことより束様!ここはどこですか?あの家に見た事もないISが3機あるんですよ!」

 

「………え?」

 

永遠

「………あ!」

 

 ISが3機ある?どういうこと?

 

 ~束 Side out~

 

 




 次回『第004話:発覚』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第004話:発覚

 ~クロエ Side~

 

 皆さんこんばんは!私は篠ノ之束様の助手を勤めるクロエ・クロニクルといいます。

 束様と乗ったロケットが突然墜落し、目を覚ますと見知らぬ部屋に寝かされていました。

 私の体に包帯等が巻いてあることから誰かが助けて手当してくれたみたいです。

 隣にもう一つ布団があることからこっちに束様が寝ていたのでしょう。

 しかし、肝心の束様がいませんね?他の部屋にいるんでしょうか?それに助けてくれた人にお礼も言わないといけませんね。

 私は起き上がって家中の部屋を探し回りました。

 

クロエ

「後はこの部屋くらいでしょうか?………こ、これは!?」

 

 そして一番奥の部屋の戸を開けるとそこには信じられないものがありました。

 

クロエ

「ア、IS?…何でここに?…しかも3機も?」

 

 そう、その部屋にあったのは3機のISでした!

 私は今まで束様の研究のお手伝いをしてきたので色々なISを見てきました。

 ですが、こんな機体は見たことがありませんでした。

 

クロエ

「これは一体?………ハッ!束様!」

 

 そうです!今は束様の安否を確認しなければ!

 あんな物がある家に長居をするのは危険過ぎます。

 しかし、家中を探しましたが誰もいないということは束様は外にいるということですね。

 私はすぐに家を出て周囲を探していると、束様がこちらに歩いて来ているのを見つけました。

 ただ、束様の隣に見知らぬ少年がいました。

 私は彼の姿を見た途端先程のIS達が頭に浮かび束様の元に駆け出していました!

 

クロエ

「た、束様!?ご無事ですか!?」

 

「大丈夫だよ~。クーちゃんも大丈夫だった?」

 

 束様が無事でよかった!…ですが…

 

クロエ

「私のことより束様!ここはどこですか?あの家に見た事もないISが3機あるんですよ!」

 

「………え?」

 

永遠

「………あ!」

 

 束様と少年が揃って驚いていた。

 束様はただ知らなかった見たいな表情ですが、少年のこの表情は何でしょうか?

 まるで忘れていた物を思い出したかのような、そんな表情をしていますね。

 

 ~クロエ Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 いかん!すっかり忘れとった!そういえばうちにはこの博士が興味を持つ物があったんじゃったーーー!!

 まずい、あれの事を聞かれたらどうしたらいいんじゃ!と言うか、絶対聞いてくる!なんて説明すればいいんじゃ!

 

「…ねえ?」

 

永遠

「!?…ナ、何カノォ?」

 

「詳しく聞かせてくれるよね?(ニコッ)」

 

永遠

「…ハイッ………」

 

 腹を括るしかないのぉ…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~束 Side~

 

「まずは、クーちゃんが見つけたって言うISを見せて。」

 

 私はとにかくその3機のISが気になった。

 

永遠

「…分かった…こっちじゃ…」

 

 ISのある場所に向かっている途中クーちゃんが話しかけてきた。

 

クロエ

「あの、束様、この人は一体?」

 

「束さん達を助けてくれた子だよ。変わってるけど悪い子じゃない…と、思うんだけどね~…」

 

 さっきまではそう思ってたんだけどISを持ってるなんて知ったらな~…

 

クロエ

「そうだったんですか!あ、あの…」

 

永遠

「ん?」

 

クロエ

「お礼を言うのが遅くなってしまいました!私はクロエ・クロニクルと言います。先程は助けて頂いてありがとうございます!」

 

永遠

「これはご親切に、ワシは火ノ兄永遠と言う。以後お見知りおきを。」

 

クロエ

「よろしくお願いします。」

 

永遠

「よろしゅうな………ほれ、ココじゃ…」

 

 二人が話してる間に目的の部屋についていた。

 

「………な、何これ!?」

 

 部屋に入った私の第一声がそれだった。

 中にあったのは3機のIS、全てが全身装甲(フルスキン)、しかも軽く見ただけでも私より遥かに高度な技術で造られてるのが分かる機体達だった。

 フフッこの束さんが思わず嫉妬してしまう程の完成度だよ。

 3機のISの中でも特に目を引いたのは中央にあるIS、戦国武将のような赤い鎧を着た龍のIS、その存在感は動かしてもいないのに私でさえ怯んでしまう程の威圧感を醸し出していた。

 

クロエ

「…あの、束様、このISは何なんでしょう?」

 

「…クーちゃん、詳しくは調べてみないと分からないけど、これだけは言えるよ。…束さんでもこのISを造る事は出来ない!」

 

クロエ

「た、束様でも!?」

 

 本当に何なのさ!このIS!?

 

「聞かせて貰うよ?このISの事!そして君自身の事!」

 

永遠

「………ハァ~分かった…」

 

 フフッさっきまでとは違う意味で今はこの子に興味津々だよ♪

 

 ~束 Side out~

 

 




 次回『第005話:暴露』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第005話:暴露

 ~束 Side~

 

 あれから私達はISのあった部屋から居間に移動していた

 彼は私とクーちゃんにお茶を出して、自分の分のお茶を一気に飲み干すと大きな溜息をついた

 

永遠

「ハァ~、さてどこから話したらいいかのぉ~…」

 

「ISも気になるけど、とりあえず君の正体から頼むよ。」

 

永遠

「分かった…まず先に言うとくがワシが今から言う事は本当じゃ。信じるかどうかはお主らに任せる。良いかの?」

 

「うん!分かった。」

 

クロエ

「はい!」

 

永遠

「…実はな、ワシは元はこの世界の人間では無いんじゃよ………」

 

 そして彼は自分の事を話し始めた

 彼がこの世界に来た理由は【第00話:プロローグ】を読んでね♪

 …とまあメタ発言は置いておいて彼の事を聞いてまず私は笑いが込み上げてきた

 

「プッ…アハハハハハハハハハハハハハハハハハ………♪ぞ、雑巾変わりって…アハハハハハハハハハ………♪お、お腹痛い♪」

 

クロエ

「…た、束様…フフッ…し、失礼…プッ…です…よ…フフフッ………」

 

 大笑いする私をクーちゃんが咎めるけどクーちゃんも笑いを堪えてるよ

 

永遠

「…そこまで笑う事なかろぉ…ワシだって気にしとるんじゃぞ…」

 

 そう言われても可笑しいものは可笑しいんだから

 

「アハハハハッ…ごめんごめん…あ~久しぶりに思いっきり笑った。」

 

 腹筋割れるかと思ったよ

 

永遠

「ムゥ…話を続けてよいかの?」

 

「ああ、うん大丈夫。でもそれならあのISの事も納得できるね。というかこの世界で束さん以上のISを造るなんて神様にしか出来ないからね。」

 

クロエ

「確かにそうですね。」

 

永遠

「ワシが言うのもなんじゃが信じてくれるのか?こんな突拍子もない話を?」

 

「うん!信じるよ!あのISが何よりの証拠になるしね!」

 

クロエ

「その通りです。」

 

永遠

「そ、そうか…まさか信じるとは思わんかったのぉ。」

 

「それでさ、それでさ~、束さんはとーくんにお願いがあるんだけど~?」

 

永遠

「と、とーくん!?」

 

「そ!永遠だからとーくん!これから束さんは君の事をそう呼ぶよ!」

 

 とーくんの話を聞いてすっかり彼の事を気に入っちゃったよ

 

永遠

「まぁ、そう呼びたいなら別に構わんが、お願いとは何じゃ?」

 

「それはモチロン!あの3機のISを詳しく調べさせて欲しいんだよ!」

 

 グフフッ神様の造ったISなんて興味がそそられる代物だよ(ジュルリ)

 

クロエ

「束様!ヨダレ、ヨダレ。」

 

「おっと、失礼。それでいいかな?」

 

永遠

「ダメと言ってもコッソリやりそうじゃしな、まぁ壊さんかったら構わんぞ。」

 

「壊さないよ!」

 

永遠

「スマン、念の為じゃ。あれらは使わんとは言ってもたまの話し相手の一つじゃったからな。少し心配になったんじゃ。」

 

 え!話ってもしかして!

 

クロエ

「話し相手ですか?」

 

永遠

「ISのコアには人格があると聞いたのでな、会話は出来んが暇潰しにはなってたんじゃよ。」

 

 やっぱり知ってたんだ!

 

「………とーくんって、ホントに変わってるね。コアに人格がある事は結構知れ渡ってるけど、そんな風に話しかけてる人間なんて聞いた事無いよ。」

 

永遠

「そうかの?…まぁずっと一人じゃったからな…それが理由かの?」

 

 それでも嬉しいな♪

 

「…とーくん、ありがとう!」

 

永遠

「何じゃ、突然?」

 

「あの子達の話し相手になってくれて。皆の母親としてホントにありがとう!」

 

永遠

「カカッ、気にせんでいい。それよりISを調べるんじゃなかったか?」

 

「あっ!そうだった、クーちゃん手伝って!」

 

クロエ

「はい!」

 

 私は早速クーちゃんとISの調査を始めた

 

 ~束 Side out~

 

 




 次回『第006話:調査報告』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第006話:調査報告

お気に入り50件超えました!

ありがとうございます!

これからも頑張っていきます!


 ~束 Side~

 

 私は今とーくんの許可を貰ってこの3つのISを調べてるんだ

 その結果、この3機のISについて幾つか分かった事がある

 まずは名前、赤い龍のISは【戦国龍】、白いISは【ドットブラスライザー】、白い鬼のISは【ラインバレル】って言うんだって

 次に、3機とも、一次移行(ファーストシフト)の状態で既に単一仕様(ワンオフ・アビリティー)が使えると言う事が分かった

 さらに【ドットブラスライザー】と【ラインバレル】は二次移行が出来ないけど単一仕様(ワンオフ・アビリティー)とは違う特殊機能が搭載されていたんだ!

 【ドットブラスライザー】は『ラグナロクフェイズ』っていう強化形態、機体性能を何倍にも跳ね上げるんだ!

 しかも単一仕様(ワンオフ・アビリティー)は『ドットフェニックス』っていう支援メカなんだけど、単体でも高い戦闘力を持ってるのに合体して更にパワーアップさせる事ができるんだよ!

 【ラインバレル】は本当に驚いた!

 ISには自己修復能力があるけど、破損が酷いと治るのに何日もかかる!

 でも、この機体の修復速度は通常のISとは比べ物にならない!

 これは修復じゃなくて再生だよ! 

 だからこのISは戦闘中でもどれだけ酷い状態でもアッと言う間に元に戻っちゃうんだよ!

 しかも、同時にSEまで自動で回復し続けるトンでもない代物だったんだよ!

 その上【ラインバレル】にはもう一つ能力があるんだよ!

 【転送】って言う能力…いわゆるワープが出来るんだよ!

 しかも【圧縮転送フィールド】って言うのを作り出して任意の空間を別の場所に転送できるんだよ!

 こんなの喰らったら絶対防御なんて何の役にも立たないよ!

 最後に【戦国龍】このISが一番凄いよ!

 他の2機とは違って特殊機能は無いけど性能は一番高い上に単一仕様(ワンオフ・アビリティー)が凄すぎる!

 【六道剣】っていう6本の刀を呼び出すんだけど、それぞれが異なる能力を持つ強力な刀なんだよ!

 唯一の欠点として一度に使えるのは1本だけって制限が掛かってるんだけどね!

 色々と調べた私とクーちゃんの出した結論は

 

クロエ

「…何というか…凄い…としか言いようが無いですね。」

 

「ホントだよ。しかも、凄いの意味が3機とも違うんだもん。」

 

クロエ

「全くです!」

 

 と、まぁ、凄い!の一言しか出なかったんだよ

 

「フゥ~、一度とーくんの所に戻ろっか?」

 

クロエ

「はい。」

 

 一通り調べ終えた私とクーちゃんはとーくんのいる居間に戻る事にした

 

 ~束 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

「ただいま~!」

 

永遠

「お!戻ったか。ちょうど晩飯の用意が出来たとこじゃ。」

 

「ホント!わ~いお腹ペコペコだよ~!」

 

クロエ

「本当ですね!」

 

 本当に腹がへっとる様じゃな

 

永遠

「ほれ、魚の煮付けと刺身、野菜のサラダじゃ。…大した物では無いが食ってくれ。」

 

「ううん、十分美味しそうだよ!ね、クーちゃん?」

 

クロエ

「はい、美味しそうです!」

 

 そう言ってくれるとありがたいのぉ

 

永遠

「では、いただきます!」

 

束&クロエ

「いただきま~す!」

 

 ……

 …

 

 一応、調査内容を聞いてみるかの

 

永遠

「のぉ博士、調査の方はどんな感じじゃ?」

 

「うん、一通りは終わったよ。あれってホントに凄いね!その言葉しか出てこないよ。」

 

永遠

「博士にそこまで言わせるとは、それ程の物じゃったか…」

 

「そうだよ!後、とーくん!」

 

永遠

「何かの、博士?」

 

「私の事は束って呼んで♪」

 

永遠

「え!いや、しかし…」

 

「束さんはそう呼んで欲しいんだ♪」

 

 名前で呼べ、か、じゃがその前にあの事を話しておくべきじゃの

 ワシは持っていた茶碗を置くと姿勢を正した

 

「どしたのとーくん?」

 

永遠

「篠ノ之博士、クロエさん、名前を呼ぶ前にどうしても言っておかねばならん事がある。」

 

束&クロエ

「?」

 

永遠

「二人の乗ったロケットが墜落した原因はワシかもしれん!」

 

クロエ

「!?…ど、どうしてですか?」

 

永遠

「…ワシは転生する時、この世界ではひっそり暮らしたいと神様に言ったんじゃ。…じゃが神様はワシにこの世界で起こる出来事に関わって欲しそうにしておった。…そこで神様はワシに関わるつもりがないなら無理矢理関わらせようと考え、二人のロケットをこの島に落としたのかもしれんのじゃ。」

 

クロエ

「………」

 

永遠

「もし、そうだとしたら、二人には本当に申し訳ない事をした。じゃからワシには博士の名を呼ぶ資格は…」

 

「…とーくん…そんな事気にしなくていいよ♪」

 

永遠

「しかし…」

 

「ていうか、そんな事分かってたよ。」

 

永遠&クロエ

「え!?」

 

「確かに最初は分からなかったよ。でも、とーくんの正体を聞いた時、ロケット落としたのその神様なんじゃないかなぁって思ったんだよ。」

 

永遠

「分かった上で名を呼べと?」

 

 まさか気づいておったとは

 

「そうだよ。そもそもロケットを落としたのはとーくんじゃないでしょ。それに、そのお陰でとーくんに会えたし、あのIS達を知る事が出来たんだもん。束さん的には感謝感激なんだよ!だからとーくんが責任を感じる必要なんて無いんだよ。」

 

永遠

「篠ノ之博士…」

 

「束だよ♪」

 

永遠

「…わかった、束さん!これで良いかの?」

 

「うん♪よろしい。」

 

クロエ

「では私の事もクロエと呼んでください。」

 

永遠

「?…クロエさんは名前で呼んどるが?」

 

クロエ

「さん付けを止めてください。」

 

永遠

「そう言う事か。…じゃあ、これからはクロエで。」

 

クロエ

「はい♪」

 

永遠

「改めて、束さん、クロエ、ありがとう!」

 

「うん♪」

 

クロエ

「はい♪」

 

 この二人には敵わんのぉ…

 

 ~永遠 Side out~

 

 




 次回『第007話:温泉兎』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第007話:温泉兎

 ~束 Side~

 

 とーくんと一悶着起きたけど無事に落ち着いて良かった

 そういえば束さん達食事中だったね!残りを食べちゃおう

 

 ………

 ……

 …

 

永遠&束&クロエ

「ごちそう様。」

 

「あ~美味しかった!」

 

永遠

「それはありがたいのぉ…時に二人とも、着替えを持っとるか?」

 

「え?…うん、あるけど?」

 

 とーくん、束さん達に何を?…もしかして食後のデザートに束さん達を…///

 

永遠

「何か変な妄想しとらんか?温泉に案内しようと思ったんじゃが…」

 

「エッ!ア、アハハハハッ!ナ、何ノ事カナ?」

 

 やばい、バレてる………ん、今何て言ったの?

 

「…とーくん、今温泉って…」

 

クロエ

「あるんですか?」

 

永遠

「あるぞ。この島の中心にの。」

 

「ホントに!温泉何て久しぶりだよ!」

 

クロエ

「本当ですね。」

 

永遠

「で、入るのか?入らんのか?」

 

束&クロエ

「入ります!」

 

 うわ~楽しみ~

 

永遠

「んじゃ、着替えを持ってついてき。」

 

束&クロエ

「は~い!」

 

 ………

 ……

 …

 

 とーくんに案内されて森の中を抜けると、その先には大きな温泉が湧いてたんだよ

 

「うわ~温泉だ!温泉!」

 

クロエ

「束様!落ち着いて下さい!」

 

「あ!ごめん、ついハシャいじゃって。」

 

永遠

「ワシは戻っとるから二人はゆっくり浸かっときんさい。…ただし一つ注意しとくぞ。」

 

「ん?な~に?」

 

 この温泉何か曰くがあるのかな?

 

永遠

「この温泉は島の動物達も入りに来るから間違っても動物達に攻撃なんぞせんでくれよ!」

 

クロエ

「動物も来るんですか!?」

 

永遠

「来るぞ。猿や狐、狸に狼や熊がな。」

 

 え?猿や狐はともかく熊や狼!

 

「ちょ、ちょっととーくん!、幾らなんでも熊や狼って!」

 

永遠

「心配せんでもこの島の動物達はみんな大人しゅうてな。特にこの温泉ではみんな借りてきた猫のように大人しくなるんじゃ。…ほれ、そこ見てみ。」

 

束&クロエ

「え?」

 

 とーくんの言った方を見るとそこには大きな熊と狸が仲良く温泉に浸かっている所だったんだよ

 

クロエ

「…本当に大人しいですね。」

 

永遠

「まぁ、見ての通りじゃ。あやつらも此処では間違っても暴れんから安心して入りんさい。」

 

「う、うん。」

 

 とーくんはそう言って家に戻っていった

 私とクーちゃんは怖いけどとりあえず温泉に入ることにした

 

 ………

 ……

 …

 

「あ~~~、極楽♪極楽♪」

 

クロエ

「束様、親父臭いですよ?」

 

 温泉に入って数分、最初の恐怖心はアッと言う間に消えうせて温泉を堪能していたんだ!

 

クロエ

「………束様…これからどうするんですか?」

 

 温泉を満喫しているとクーちゃんが今後の事を聞いてきた

 

「…さっきも言ったけどロケットのプログラムは今壊れてる。だから、新しく作り直さないと使えないんだよ。」

 

クロエ

「それは分かってます。私が聞きたいのはその後です。」

 

 その後か~、どうしよっかな~?

 

「分かってるよ。束さんもね、最初はロケット直したらさっさとこの島から出ようって考えてたんだ…でも、とーくんやあのISと出会ったせいで今、凄く迷ってるんだよ…」

 

 とーくんのISは凄く気になるしもっと詳しく調べたい!

 

「でもあれは束さんでも作り出せないオーバーテクノロジーの塊。出来る事なら、あんなISを作ってみたいけどね。」

 

クロエ

「もっと細かい調査は出来ないんですか?」

 

「無理だね!これ以上となるとそれこそ細かくバラさないといけない。バラしたけど元に戻せないなんて事になったらさすがにシャレにならないからね。」

 

クロエ

「そうですね…」

 

「せめて、あの3機の設計図かなにかがあればいいんだけどね…そんな物さっき調べた時には見つからなかったからな~。」

 

クロエ

「………そういえば束様、永遠さんにはそのこと聞いたんですか?」

 

「ううん。聞いてないよ。」

 

 とーくん、ISを使えるみたいだけどあんまり興味がなさそうだもんね~

 

クロエ

「一応、聞いてみたらどうですか?もしかしたら何か知ってるかもしれませんし。」

 

 う~ん、何も知らないと思うけど…一応ね

 

「そうだね!この後聞いてみよっか!」

 

クロエ

「はい!」

 

 それからしばらく私達は温泉でゆっくりした後、着替えてとーくんの家に帰ったんだ

 

 

 ~束 Side out~

 

 




 次回『第008話:兎のお願い』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第008話:兎のお願い

 ~束 Side~

 

「ただいま~!いいお湯だったよ!」

 

永遠

「おかえり。それは良かったのぉ。」

 

 じゃ、早速聞いてみますか!

 

「ね~ね~とーくん?」

 

永遠

「ん?何じゃ?」

 

「あのISの設計図みたいな物って持ってる?」

 

永遠

「持っとらんぞ。」

 

 あ、やっぱり

 そう思ったら…

 

永遠

「…と言うか束さん達、さっきISを調べとったんじゃろ?気づかんかったんか?」

 

束&クロエ

「え?」

 

 何のこと?

 

永遠

「昼間説明したがあの3機はワシが生前おった世界のアニメやゲームに出てくるロボットを元にしとる。まぁ【戦国龍】はロボットではないが、それは置いとくとして…ワシが神様からあの3機を貰う時に、機体の設計データと元になった作品の全データを入れておく様に頼んだんじゃが…気づかんかったか?」

 

束&クロエ

「えええええぇぇぇぇぇーーーーー………っ!!」

 

 え!何それ?そんなデータあったの?

 この束さんが見落としたっていうの!?

 

「と、とーくん!そのデータ見せて貰っていい!」

 

クロエ

「お願いします!土下座でも何でもしますから見せて下さい!」

 

「そ、そうだね!まずは誠意を見せないと!」

 

 よし!早速☆DO☆GE☆ZA☆ダゼ!

 

永遠

「落ち着かんかいアホ共!?」

 

 ゴンッゴンッ

 

「アウチッ!」

 

 いったぁぁーー!箒ちゃんとちーちゃんにしか殴られたこと無いのに!

 

クロエ

「ううっ痛いです…」

 

永遠

「トチ狂ったお主らが悪い!土下座なんぞせんでも見たかったら見ればよかろぉ。」

 

「ホント!」

 

永遠

「ただ…何処にあるかまではワシも知らんぞ。」

 

「それでもある事は確かなんだよね!」

 

永遠

「あの神様がワシの注文通りにデータを入れておればな。」

 

「それだけ分かれば十分だよ!後は自分で探すから!ね!クーちゃん!」

 

クロエ

「はい!」

 

 それでは早速………

 

永遠

「ちょい待ち!今日はもう遅い、データ探しは明日からにしんしゃい。」

 

「え~~~!でも、束さんは早く探したいんだよ!」

 

永遠

「お主ら朝から色々あって疲れたじゃろ。気持ちは分かるが今日は一晩グッスリ寝て疲れを取ってからやりんさい。」

 

クロエ

「…確かに永遠さんの言う通りですね。束様、今夜はゆっくり休みましょう。」

 

「う~~~!分かったよぉ…」

 

永遠

「よろしい!部屋と布団は昼にお主らが使っとったのを使うといい。」

 

クロエ

「はい。…あの永遠さんは?」

 

永遠

「ワシは座布団の枕とドテラの掛布団で十分じゃ。」

 

「え!でもそれじゃ…」

 

永遠

「カカカッ!女子を床で寝かすわけにはいかんからな。」

 

クロエ

「ですが…」

 

永遠

「ワシはもう寝かせて貰うぞ。明日も朝から畑の手入れをせねばならんからな。おやすみ。」

 

束&クロエ

「あ…」

 

 とーくん、私達が何か言う前にさっさと寝ちゃった

 

クロエ

「…束様、せっかくのご厚意ですから使わせてもらいましょう。」

 

「…うん…」

 

 私とクーちゃんも寝る事にした

 

 ~束 Side out~

 

 

 

 ~クロエ Side~

 

 私は布団に入って今日起きた事を思い返していました

 密度の濃い驚きの連続でした

 

クロエ

「………束様…」

 

「何、クーちゃん?」

 

 私は隣の束様に話しかけていました

 

クロエ

「…永遠さん…なんであんなに優しいんでしょう?」

 

「そうだね~…いきなりやってきた見ず知らずの私達を、手当してくれた…ご飯を食べさせてくれた…温泉に入れてくれた…布団を貸してくれた。正直、こんなにゆっくり寝るのも何時以来かな~…」

 

クロエ

「…そうですね…永遠さんこの世界では、もう身内はいないんですよね?」

 

「うん…だからこの島で暮らしてるんだよね~」

 

クロエ

「…私と同じか…」

 

 事情は違うけど、私と同じ天涯孤独の身…

 

「どしたのクーちゃん?さっきから少し変だよ?」

 

クロエ

「あ、すいません!…ただ…」

 

「ただ、何?」

 

クロエ

「…お兄ちゃんって…ああいう人の事なのかなって…思って…」

 

「え!?」

 

クロエ

「わ、忘れてください!ちょっとした気の迷いってやつです!年も私の方が上ですし!」

 

 わ、私は何を言って!?

 

「………いいんじゃないかな…」

 

クロエ

「え!」

 

「とーくんにお兄ちゃんになってもらおうよ!」

 

 え!えええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーー………!!!

 

 束様!何を!?

 

 ~クロエ Side out~

 

 




 次回『第009話:宝探し』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第009話:宝探し

 ~束 Side~

 

「ふわ~~~よく寝た~~~。」

 

クロエ

「おはようございます。」

 

「クーちゃん、おはよ~。今何時?」

 

 う~ん、久しぶりにグッスリ眠れたな~

 

クロエ

「9時少し前です。」

 

「とーくんは?」

 

クロエ

「書き置きによると、永遠さんは、もう畑に向かわれたみたいですよ。後、朝ご飯を用意してあるとも。」

 

「そうなんだ。束さんにも見せて。」

 

 ええっと『二人ともおはよう、畑仕事に行くので11時頃には戻ってきます。朝ご飯を用意しておいたから食べてください。追伸、作業はご飯を食べてからするように!』か…

 

「…ご飯食べよっか…」

 

クロエ

「はい。」

 

 束さんの行動が読まれてる

 

 ~束 Side out~

 

 

 

 ~クロエ Side~

 

 さて朝ご飯も食べ終わりましたから、宝探しを始めましょう!

 宝物とは勿論、昨日教えてもらった3機のISの設計データの事です♪

 ですが…

 

「う~~~ん?一体どこにあるんだよ~~~!」

 

クロエ

「見つかりませんね~~~…」

 

 いくら探しても見つからないんですよ~…

 

「何処かにあるはずなんだけどな~…」

 

 永遠さんが嘘をつくとも思えないですし………ん?

 

クロエ

「………あれ?」

 

「どしたのクーちゃん?」

 

クロエ

「束様、此処にロックの掛かったデータがあります。」

 

「え!ホント!?」

 

 もしかしてこれでしょうか?

 

「確かにロックが掛けられてるね!でもこんなもの束さんにかかればお茶の子………あれ?」

 

 …束様?

 

「………開かない…」

 

クロエ

「ええっ!?」

 

 そんな!束様でも開くことが出来ないなんて!

 

「あーもー!ムカつくーーー!これどうやって開けるのさ!」

 

クロエ

「お、落ち着いてください!必ず開く方法があります!」

 

 そうです!必ず開け方があるはずです!

 きっと………あ!

 

 ~クロエ Side out~

 

 

 

 ~束 Side~

 

 私は今必死にこの宝箱の鍵を開ける方法を考えてるんだ!

 すると…

 

クロエ

「………もしかして…」

 

「クーちゃん何か思いついたの?」

 

クロエ

「このロック、永遠さんじゃないと開かないんじゃないんですか?生体ロックみたいになってるのかもしれません。」

 

「え?」

 

 ………とーくんが?

 ……宝箱の?

 …鍵?

 

「それだよ!このデータ、とーくんじゃないと開けないんだ!」

 

 それなら束さん達が見つけられなかった理由も分かる

 

「考えてみたらこのISは神様がとーくん用に造った機体。中のデータもとーくんが頼んだ物、だとしたら、とーくん以外が勝手に調べられないようにしていてもおかしく無い!」

 

 きっとそうだ!お宝を手に入れるための鍵はとーくんだよ!

 

「ならやる事は一つ!とーくんを「ワシがどうかしたか?」…って、とーくん!?」

 

永遠

「何をそんなに驚いとるんじゃ?データは見つかったのか?」

 

 とーくんグッドタイミング!

 

「とーくん!丁度いい時に戻って来たね!手伝って!?」

 

永遠

「は?手伝うって、ワシはお主らほど電子機器に強くは無いぞ。」

 

「そんな事は分かってるよ!いいからこっち来て!」

 

永遠

「落ち着かんか!クロエ、どういう事じゃ?」

 

クロエ

「実は先程から探してるんですがそれらしい物はまだ見つかってないんです。ですが、ISの中に鍵の掛かったデータを見つけたんです。」

 

永遠

「ならその中に入っとるのか?」

 

クロエ

「私達もそう思って、鍵を開けようとしたんですが全く開かないんです。」

 

永遠

「束さんでもダメなんか?」

 

クロエ

「はい、それで色々考えた結果、永遠さんが鍵になっているという結論に辿り着いたんです。」

 

永遠

「ワシが鍵!?」

 

クロエ

「はい。」

 

「という訳でとーくん!この鍵開けて!」

 

永遠

「いや開けろと言われてもどうやれば…」

 

クロエ

「とりあえず、ISに触れて『開け!』って念じてみたらどうです?」

 

「そうだね、まずはそれでいこう!」

 

永遠

「いやいや、そんなおとぎ話みたいな事…」

 

「物は試しって言うでしょ!」

 

永遠

「はいはい…(開け~開け~)………やっぱり開かん…」ガチャ「あれぇ!?」

 

「開いたーーーーー!」

 

 ホントに開いた!クーちゃん天才だよーーー!

 

クロエ

「冗談だったのに………」

 

永遠

「冗談じゃったんかい!?」

 

「とにかく開いたんだからいいじゃん!…さて、まずは【ドットブラスライザー】からっと………!?」

 

 これは!?

 

クロエ

「束様?」

 

「フッ…フフフフフッ…アハハハハハハハハハッ!!!」

 

永遠&クロエ

「どうしたんじゃ(ですか)!?」

 

「凄い!…凄すぎるよ!クーちゃんも見てごらんよ!…これはお宝だよ!宝の山だよ!アハハハハハハッ!!!」

 

永遠

「落ちつかんかーーー!?」

 

 ドゴンッ!

 

「アイターーーーー!!!」

 

 グオオォォーッ!き、昨日より強い一撃!

 

永遠

「一体何を興奮しとるんじゃ?」

 

「興奮するよ!するに決まってんじゃん!これ見てしない方がおかしいよ!」

 

 とーくん分からないの!

 

永遠

「そ、そうなのか…」

 

クロエ

「………フ、フフフ…」

 

永遠

「…ク、クロエ?」

 

クロエ

「…束様の言う通りですよ…この【ドットブラスライザー】の設計データ、そしてLBXと言う手の平サイズのロボット達のデータ…凄すぎますよ!」

 

 さすがクーちゃん分かってる~

 

永遠

「…そう言われてもワシはお主らの様な科学者では無いからのお…」

 

クロエ

「そうですけど…凄く興奮するんですよ~!」

 

「分かる!すっごく分かるよクーちゃん!」

 

永遠

「とにかく一度落ち着け!…それで中のデータが目的の物だったんじゃな?」

 

「うん、そうだよ!」

 

永遠

「まあ、お主らの反応からそうだとは思ったが…で、これはお主らの役に立つのかのお?」

 

「モチロンだよ!…それにしても…【ドットブラスライザー】って元は手の平サイズのロボットだったんだね。」

 

クロエ

「驚きましたね~。」

 

「それを人間サイズか~…」

 

永遠

「造れそうか?」

 

「ううん、ISとして造るにはすぐには無理だよ。中に入る人の事も考えないといけないからね。…それでもこのデータは凄く役に立つよ!これだけでも束さんの夢に1歩どころか100歩は近づくよ!」

 

永遠

「束さんの夢か…確かISで宇宙に行く事、じゃったか?」

 

「そうだよ!それが束さんの夢なんだ!それを世界中の馬鹿共が勝手に兵器にしちゃったんだよ!ホント腹立つ!」

 

永遠

「確かにのぉ…じゃがな束さん、ワシは造ったお主にも少しは問題があると思うぞ。」

 

「え!」

 

 とーくんなんでそんなこと言うの?

 

 ~束 Side out~

 

 




 次回『第010話:説教』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第010話:説教

お気に入り100件超えました!

皆さんありがとうございます!

これからも頑張っていきます!


 ~束 Side~

 

永遠

「確かに束さんの夢は素晴らしい!じゃが、ISには女しか使えんという欠点がある。それが今の世界を作った原因じゃ。束さんがその問題を直す前に世に出てしまったとしても解決策も残さず、世間から雲隠れした束さんにも責任の一端はあるとワシは思うんじゃ。」

 

「それは…」

 

永遠

「束さん、一つ聞く…【白騎士事件】…あれは束さんの仕業か?」

 

「!?…うん…私がやった…ISを認めて欲しくて…幼馴染のちーちゃんに手伝って貰って…」

 

永遠

「束さん、ワシも偉そうな事を言うつもりは無いが、言わせて貰うぞ。」

 

 とーくん?

 

永遠

「このバッカモオオオォォォーーーン!認めて欲しくて事件を起こすじゃと!アホかお前は!【白騎士事件】を起こして証明したのはISの有用性では無いじゃろ!兵器としての有用性じゃろうが!しかも女しか使えん欠陥を残して事件を起こしおって!そんなに認めて欲しかったらISで宇宙に上がって地球や月の写真なり動画なり撮影してくるとか他にも方法はあったじゃろうが!短気を起こして安易な方法をとりおって!結局造ったお主自身が自分の夢をぶち壊したんじゃろが!違うか!?」

 

「う、うう………その通り、です………」

 

 …とーくんの言う通りだ…

 …私が【白騎士事件】を起こして証明したのは兵器としての価値だけ…

 …認めさせるなら他にも方法はいくらでもあった…

 …それこそとーくんの言ったように地球や月の写真を撮ってきたりすればよかった…

 …でも、あの時の私はそんな簡単なことすら思いつかなかった…

 …私がしたことは一番やってはいけない事だったんだ…

 …自分で自分の夢を壊した、その通りだ…

 …箒ちゃん達とも離れ離れにならなくて済んだんだ…

 …私は自分の夢だけでなく家族や生活まで自分の手で壊してしまった…

 …そして今の世界を作ったのは私だ…

 …あの時の私がもっとよく考えていれば世界はこんなに酷い事にはならなかったんだ…

 …とーくんにハッキリ言われて私は改めて自覚した…

 …ISが原因で起きた事件の全ては私が原因だ…

 …世界中の人達を不幸にしたのは…

 …私なんだ…  

 

「…う…うう、うわああああああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーん!!!!」

 

クロエ

「束様!?」

 

「ううっ…ヒック…う、グスッ………ど……れば…いの…………どう…すれば…いいの?」

 

クロエ

「束様………」

 

永遠

「………ワシには答えられんよ…それは自分で見つけねばならん…」

 

「そんなぁ…」

 

クロエ

「………」

 

永遠

「…じゃが、それを見つけられたら、その時は、ワシでよければ力になろう…」

 

クロエ

「永遠さん!」

 

「…とーくん…ホント…?」

 

永遠

「ワシ何ぞでよければな。」

 

「ホントのホントに?」

 

永遠

「無論じゃ。」

 

「ホントのホントのホント~に?」

 

永遠

「…しつこいぞ…やめてもいいんじゃぞ?」

 

「ごめんなさいごめんなさい協力してください!」

 

永遠

「ホントに疑り深い人じゃの~。昨日と同じくだりじゃぞ。」

 

「え!?…あ、そうだったね。アハハハハハハ………」

 

永遠

「ようやっと笑ったか。」

 

束&クロエ

「え?」

 

 あれ、そういえばいつの間にか笑ってる…

 

永遠

「カカカッ、泣かせて凹ませたワシが言うのも変じゃがな…束さんには一度、自分を見つめ直す事が必要じゃと思ってな。ああ言ったんじゃよ。すまんかったな。」

 

「う~~~!とーくん酷いよ!」

 

永遠

「じゃが、これで少しは分かったじゃろ?」

 

「…う、うん…でもすぐには答えが出ないよ…」

 

永遠

「カカカッそれでいいんじゃよ。時間をかけて探せばいいんじゃ。」

 

「…うん、そうするよ…」

 

永遠

「じゃが、答えはちゃんと出さねばならんぞ。」

 

「わ、分かってるよ!天災の束さんに出せない答えなんて無いんだよ!」

 

永遠

「カカカッならその時を楽しみにしておるよ。」

 

「…ありがと、とーくん…」ボソッ

 

永遠

「何か言ったか?」

 

「ううん、何でもないよ!」

 

永遠

「そうか?」

 

クロエ

「フフッ…」

 

永遠

「クロエもどうしたんじゃ?」

 

クロエ

「何でもありませんよ~♪」

 

永遠

「変な娘じゃの?…さて、説教はここまでにして昼飯にするかの。」

 

「ホント!お腹ペコペコだよ~♪」

 

 とーくん、必ず答えを見つけるからね!

 

 ~束 Side out~

 

 




 次回『第011話:年上の妹』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第011話:年上の妹

 ~クロエ Side~

 

 お説教が終わったのでお昼を食べる為、私と束様は居間にいます

 永遠さんはお昼の準備をしてくれています

 食事を待っていると束様が私に話しかけてきました

 

「クーちゃん、今こそ昨日言ってた事を実行する時だよ!」

 

クロエ

「ええぇっ!ホ、ホントに言うんですか?」

 

「当然だよ!」

 

クロエ

「うぅっ恥ずかしいです~…」

 

 何でこんな事に…

 

永遠

「真っ赤な顔して何しとるんじゃ?」

 

クロエ

「うぇ!と、永遠さん!な、何でもありましぇん!」

 

 あう…噛んじゃった…

 

永遠

「?」

 

「プッ、まあまあ、早くご飯にしよ♪」

 

永遠

「…そうじゃな。ほい、ラーメン。」

 

「ワ~イ!いただきま~す♪」

 

永遠&クロエ

「いただきます。」

 

 私はお昼を食べながらいつ言おうかタイミングを見計らっていました

 そして!

 

永遠

「…クロエ、お茶取ってくれんか?」

 

 今が好機!

 

クロエ

「は、はい!ど、どうぞ…『お兄ちゃん』…」

 

 い、言ってしまった~~~

 

永遠

「すまんな…」

 

 ………あれ?

 

永遠

「す~~…」

 

 反応が無い?

 束様も無反応に驚いてます

 

永遠

「す~…!?ぶふうううぅぅぅぅーーー………!?」

 

 噴いたあああぁぁぁーーーーー!

 

永遠

「ゲホッゲホッ、お兄ちゃんじゃと!」

 

「アハハハハハハハハハッ!とーくん反応遅いよ!」

 

 束様…笑いすぎです

 

永遠

「クロエ!どういうことじゃ!」

 

クロエ

「は、はい…実は、昨日の夜………」

 

 私は昨夜の事を話しました…

 詳しくは【第08話:兎のお願い】に書かれてます

 

 ………

 ……

 …

 

クロエ

「………という訳です…」

 

 事情を話し終えた後の永遠さんの顔は、何というか微妙な表情をしていました

 

クロエ

「…あの…永遠さん?」

 

「クーちゃん違うでしょ!そこはお兄ちゃんだよ!」

 

クロエ

「うう~~~…」

 

永遠

「…一つ、いや二つ聞きたい。」

 

クロエ

「は、はい!」

 

永遠

「まず一つ。今の話から束さんが提案したようじゃが、それは冗談から言ったのか?本気で言っとるのかどっちなんじゃ?」

 

「もちろん束さんは本気と書いてマジだよ!それにクーちゃんは束さんの義理とはいえ娘だからね、子供のお願いは叶えてあげるのが親の勤めでしょ♪」

 

永遠

「なるほどのぉ…二つ目じゃが…クロエ、お主はワシを兄と呼んだが年はそっちが上じゃ、それでも兄と呼びたいのか?」

 

 永遠さんの質問はどちらも当然の内容だった

 疑問を持たれても仕方の無い事です

 でも、私は…

 

クロエ

「確かに年は私が上です…それでも、私は…永遠さんを兄と呼びたいんです!」

 

永遠

「…そうか…」

 

「で、で、とーくん!クーちゃんのお兄ちゃんになってくれる?くれないの?どっち?」

 

永遠

「………」

 

 やっぱり駄目なんでしょうか…

 

永遠

「まあ、構わんぞ。」

 

クロエ

「え!?…今、何て?」

 

永遠

「構わんと言ったんじゃが。」

 

クロエ

「本当ですかああぁぁ!!」

 

「やったね!クーちゃん!」

 

永遠

「…ただ、『お兄ちゃん』はやめてほしいのぉ…くすぐったくてな…すまんが他の呼び方にしてくれんか?」

 

クロエ

「は、はい!…え~と、なら他にはどんなのが…兄さん?兄貴?兄上?兄者?兄様?」

 

 どれがいいんでしょう?

 

永遠

「…今のじゃと…兄貴と兄者はお主には合わん呼び方な気がするのお…」

 

「そうだね~…束さん的には兄上か兄様がクーちゃんに合うと思うけどな~。」

 

クロエ

「う~ん、永遠兄上?言いにくいですね。永遠兄様?こっちの方が言いやすいですね!兄様でどうですか?」

 

永遠

「そうじゃな。それでいいじゃろ。」

 

クロエ

「はい!これからよろしくお願いしますね♪永遠兄様♪」

 

永遠

「よろしゅう頼むぞ、クロエ。」

 

 エヘヘッ兄様♪兄様♪私の永遠兄様♪

 

「それじゃあこれからとーくんも束さんの子供だね!」

 

永遠

「それは違うじゃろ!」

 

「ガーーーン!!即答!?」

 

クロエ

「フフフッ♪」

 

 永遠兄様~~~♪

 

 ~クロエ Side out~

 

 




 次回『第012話:起動』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第012話:起動

 ~永遠 Side~

 

 クロエがワシの妹になるというサプライズ付きの昼飯が終わると束さんが頼みごとをしてきた

 

「とーくん、お願いがあるんだけど。」

 

永遠

「今度は何じゃ?まさか、あの3機のISを動かせとか言うんじゃなかろうな?」

 

「ピンポ~~~ン!大正解♪座布団10枚追加♪」

 

永遠

「大喜利?つうか、何故に動かす必要があるんじゃ?」

 

「それはね~、確認だよ!」

 

永遠

「確認?」

 

「そ、とーくんあのISを神様に貰ってから一度も動かしてないんでしょ?男のとーくんがホントに動かせるのかを確認したいんだよ。他にも動作テストをしたいんだ。」

 

永遠

「確かにそうじゃが…ワシは別に動かさなくても困らんしのぉ…」

 

 ワシにとってあの3機はただの話し相手代わりの置物なんじゃがな~

 

クロエ

「兄様!そんなこと言わずにお願いしますよ!」

 

「ほらほら、可愛い妹の頼みを断るのかな~?」

 

永遠

「ぬう!それを言われると…」

 

「(クーちゃんもうひと押し!)」

 

クロエ

「(はい!)お願いします!永遠兄様!」ウルウル

 

 ぬう~上目遣いにお願いされては断りづらいではないか!

 

永遠

「ええーい!分かった、動かせばいいんじゃろ!」

 

クロエ

「ありがとうございます♪兄様♪」

 

「それじゃ~早速いってみよ~♪」

 

 ハァ~面倒じゃな~…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~束 Side~

 

 とーくんの説得に成功した私達は早速ISの実働テストを始める事にしたんだ!

 

永遠

「それでまずどれからいくんじゃ?」

 

「う~ん、そうだね~?…よし!まずは【ドットブラスライザー】で行こう!」

 

永遠

「あいよ………あれ?」

 

「どしたのとーくん?」

 

永遠

「ISってどうやって装着するんじゃ?」

 

 ズコッ!?

 クーちゃんと一緒にコケた

 

「とーくん!知らないの?」

 

永遠

「知らんぞ!!」

 

クロエ

「兄様、機体に触れて展開しろと念じて下さい。」

 

永遠

「分かった。(展開しろ…)」

 

 カッ!

 

永遠

「ヌッ!」

 

 【ドットブラスライザー】が光り出したと思ったら気づいた時には目の前に【ドットブラスライザー】を纏ったとーくんがいたんだ

 …と言うよりどちらかと言うと中に乗り込んだ感じだね

 

「とーくんどんな感じ?」

 

永遠

「頭の中にこいつの使い方が送られてきおった。」

 

「なら最初の段階はクリアだね!それじゃ次は歩いてみて。」

 

 そう言うととーくんは歩き始めたんだけど、やっぱり初めてだから歩き方が少しぎこちないけどちゃんと動かせてるね

 それからしばらくは歩行を初めとした機体の動作練習をしてたんだけど、始めてから2時間位でISで走れるほどになってたよ

 

「凄いよ、とーくん!こんなに早く動かせるなんて!」

 

永遠

「う~む、普段から畑仕事で鍛えとるからかのぉ?」

 

クロエ

「そうかもしれませんね。」

 

「よし!それじゃあ次は武器のテストだよ!…確か【マルチギミックサック】だったっけ?それを出して!」

 

永遠

「分かった。」

 

 <セットアップ ブラストソード>

 

「な、何?」

 

 いきなり電子音声が聞こえたと思ったら【ドットブラスライザー】のバックパックの一部が二つ外れてそれが変形したんだ!

 そのままとーくんがそれを掴むとエネルギーの刀身を持つ二本の片手剣になったんだよ!

 

クロエ

「これが…【マルチギミックサック】!?」

 

永遠

「これはその一つの形態じゃよ。」

 

 とーくんがそう言って【マルチギミックサック】を上に放り投げたら

 

 <セットアップ ブラストマグナム>

 

 また電子音が聞こえて今度は二丁拳銃に変形したんだ!

 

「今度は銃に!?」

 

 <セットアップ デュアルブレード ブラストガーター>

 

 次は片方は片手剣と同じ刃が左右両方ついた双剣に、もう片方は大型の盾になったんだよ!

 

クロエ

「今度は双剣と盾!」

 

永遠

「これで全部じゃ。」

 

「なるほどね~、状況に合わせて形状を切り替えるんだね~。拡張領域(バススロット)の武器を入れ換えるのとはまた違うね。」

 

クロエ

「はい、通常のISは武器を切り替える場合、拡張領域(バススロット)にある武器と使用中の武器を取り替えます。その間に隙が生まれます。ですが【マルチギミックサック】はその場で変形させるだけなので時間のロスも少なく対応も早くなります。」

 

「ホントにこれだけでも十分凄いね~。」

 

永遠

「そうなのか?」

 

 そうなんだよ!とーくんいまいち分かってないみたいなんだよね~

 

「次はいよいよこの機体の目玉!【ラグナロクフェイズ】に行ってみようかー!」

 

永遠

「行くぞ!」

 

 <ラグナロクフェイズ>

 

 電子音が聞こえると【ドットブラスライザー】の機体各所が展開・変形し始めたんだ

 変形が終わるとそこには今までとは全く違う【ドットブラスライザー】がいたんだよ!

 

「…これが…【ドットブラスライザー ラグナロクフェイズ】!?」

 

クロエ

「す、凄い!何て迫力!?」

 

永遠

「これで良いかの?」

 

「う、うん…大丈夫だよ!」

 

 この後も私達は【ドットブラスライザー】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)と残る2機の確認もしていったんだ

 

 ………

 ……

 …

 

 全部のテストが終わって改めてとーくんのISのデータを見るとホントに化け物としか言いようがない性能だったよ!

 

クロエ

「束様、この3機は世代で言うならどれに当てはまりますか?」

 

「そうだね~…今の世の中は第3世代の開発に取り掛かった頃だけど…束さんなら第4世代を造る事が出来る。…でも、この3機はそのさらに上いわば第5世代にあたるね。」

 

クロエ

「第5世代ですか!?」

 

「うん、ホントなら第6や第7でもいいんだけどね。便宜上は第5世代がいいと思うよ。」

 

クロエ

「そこまでですか!?」

 

「うん、化け物だよこのIS!特に【戦国龍】は化け物を通り越してるよ!」

 

永遠

「化け物は酷いのお。」

 

「だってそうとしか言いようがないんだもん!」

 

永遠

「さいですか…所で【戦国龍】が化け物を通り越してるとはどういう事じゃ?」

 

「それはね、まず【戦国龍】の動き方なんだよ。」

 

永遠

「動き方?」

 

「そ!ISは機械だから手足の動かし方がどうしても機械的になっちゃうんだよ。でも【戦国龍】は殆ど人間と変わらない動き方が出来るんだよ。」

 

永遠

「それがそんなに凄い事なのかのぉ?」

 

クロエ

「凄いんですよ!人間と変わらないという事はそれだけムダの無い動きが出来るという事なんですよ!」

 

永遠

「なるほど、確かにそれは凄いな。特に戦いにおいてはその差はかなり大きいの。」

 

「お!分かってくれたんだ~。良かった良かった。で、次はやっぱり…単一仕様だね。」

 

永遠

「何か馬鹿にされた気がするが…まあいいか。あの6本の刀の事か?」

 

「そうだよ!一本一本が無茶苦茶な能力持ってるし!あれ一本で一つの単一仕様(ワンオフ・アビリティー)だよ!何なのあの刀!それが6本もあるなんて滅茶苦茶だよ!卑怯だよ!一本欲しいよ!つうか寄越せ!」

 

永遠

「何か最後願望が入っとるな。確かにそうかもしれんが、一度に使えるのは一本だけと制約が掛かっとるからそれ程騒ぐ事はなかろお。後、やらんぞ。」

 

クロエ

「確かにそうですけど、それでも切り替えて使う事は出来ますから十分に脅威になるんですよ。後、束様は落ち着いて下さい。」

 

「ハァハァ、そういう事だよ。しかも他の2機と違って【戦国龍】は二次移行(セカンドシフト)も出来るからね。進化したらどうなるのか束さんでも見当つかないよ。」

 

 ホントどんなISになるんだろ?

 

永遠

「それで【戦国龍】を化け物を通り越してると言っとったのか。」

 

「そういう事!…とりあえず実働テストはこれで終わりだね。とーくんのおかげで貴重なデータが沢山取れたよ。ありがとね♪」

 

クロエ

「兄様、お疲れ様です♪」

 

永遠

「それは良かった。じゃあワシは畑を見てくるかの。」

 

「うん、いってらっしゃ~い。」

 

 さてと、今日取ったデータを纏めようかな

 このあと私は【戦国龍】と【ラインバレル】の中のデータを確認するとまた大笑いを始めて、戻ってきたとーくんにまた拳骨を食らう羽目になっちゃったんだ

 

 ~束 Side out~

 

 




 次回『第013話:新しい日常』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第013話:新しい日常

 ~永遠 Side~

 

 …オカシイ…

 束さん達がこの島に墜落してすでに2週間、確かロケットの修理には1週間必要だと言っていた筈じゃが…

 

「とーくん、今日の夕飯は~?」

 

クロエ

「兄様、今日は私が作りましょうか?」

 

 何故まだいるんじゃ?

 

 ………

 ……

 …

 

 仕方ない、一度聞いてみるかの

 

永遠

「束さん、ちと聞きたい事があるんじゃが。」

 

「ん~、な~に~?」

 

永遠

「もう2週間たつがロケットの修理は終わっとるのか?」

 

「え?………あっ!…忘れてた…」

 

クロエ

「束様!?」

 

永遠

「つまり…まだ何もしとらんという事かのお?」

 

「ア、アハハハハッ…そういう事………だって、だって!とーくんが悪いんだよ!あんな凄いIS持ってるんだもん!ずっと中のデータを調べるのに夢中になってたんだもん!」

 

永遠

「人のせいにするでない!…まさか、何もしとらんとは思わんかった…」

 

「…ごめんなさい…」

 

クロエ

「?…ですが、急にどうしたんですか?そんな事を聞いて?」

 

永遠

「ん?…いや、束さんがロケットの修理に1週間かかると言っておったのに、2週間もここにおるからな…どうなっとるのか気になったんじゃよ。」

 

「ガーーーン!?とーくんは束さんたちの事が邪魔なの?」

 

クロエ

「そ、そんな!嘘ですよね?」

 

永遠

「いやいや、何故にそうなる!てっきり修理が終わったらすぐに出て行くと思っとったから聞いただけじゃぞ。」

 

「ああ、そういう事。…確かに最初はそのつもりだったんだけどね~…この島って結構居心地が良くてついつい長居しちゃってるんだよ。…それに、せっかくクーちゃんに兄妹が出来たのにすぐに離れ離れにするのはね~…」

 

 確かにそうじゃな~…

 

クロエ

「束様~…」

 

永遠

「確かに束さんの言う通りじゃな。ワシもせっかく出来た妹と離れるのは忍びないしの。」

 

クロエ

「兄様~…ううっ、私などの為に…お二人共…ありがとうございます…」

 

永遠

「泣くでない。ワシも考え無しに聞いてしもうた。二人共、申し訳ない!」

 

「いいよ別に。とーくんが聞いて来たのは当たり前の事だし。」

 

クロエ

「その通りです!…それで束様、実際どうするんですか?」

 

「う~~~ん?束さんとしてはまだあの3機のデータを全部見てないし、とーくんが良ければまだしばらくはお世話になりたいんだ。」

 

 なるほど、ワシ次第という訳か…って考える必要もないのぉ

 

永遠

「ワシは構わんぞ。好きなだけ居てくれても。」

 

「ワ~~~イ!やった~~~♪」

 

クロエ

「兄様、ありがとうございます♪」

 

永遠

「じゃ、晩飯にするかの。」

 

束&クロエ

「は~~~い♪」

 

 今の生活も悪くはないのお♪

 

 ………

 ……

 …

 

 その日、ワシは変な夢を見た…

 

『お~い!』

 

永遠

『んがっ?誰じゃ!』

 

『私よ私!』

 

永遠

『…げ!お主は天照!』

 

天照大神

『げ!とは何よ!神様に向かって失礼しちゃうわ!』

 

永遠

『何の用じゃ?わざわざ人の夢にまで出てきおって!』

 

天照大神

『スルーしないでよ!…まあいいわ。あの3機を起動させたわね?』

 

永遠

『したが…それがどうしたんじゃ?』

 

天照大神

『実はね、あの3機には仕掛けをしておいたのよ。』

 

永遠

『何じゃと!』

 

天照大神

『言っておくけど危険な物じゃないわよ♪貴方を転生させた時に私がつけておいたおまけデータよ♪』

 

永遠

『おまけデータ?』

 

天照大神

『そ♪それを出す為の条件があの3機を全て貴方が起動させる事♪そっちのデータも好きに使っていいからね♪』

 

永遠

『一体何のデータじゃ!』

 

天照大神

『それは見てのお楽しみ♪じゃあね~♪』

 

永遠

『………(碌なデータじゃなさそうじゃし束さん達には黙っとくかの。)』

 

天照大神

『ちなみに一緒に住んでる二人にもこの事は伝えてあるからね~♪』

 

永遠

『へ?………ちょっと待てーーーっ!!」

 

 ワシは叫びながら目を覚ました…

 

永遠

「…何じゃ今の夢は…まさか本当に…」

 

 ドタドタ…

 

永遠

「ん?」

 

「とーくーーーん!!」

 

クロエ

「兄様ーーーっ!!」

 

 束さんとクロエが慌てながらワシの部屋に入って来た…まさか…

 

永遠

「…な、何じゃ?」

 

「とーくん!今変な夢見たんだけど!」

 

クロエ

「私もです!」

 

永遠

「…本当に伝えおったのか!あの神は…」

 

「どういう事?」

 

永遠

「実は………」

 

 ワシはさっきの夢の内容を話した…

 二人は当然驚いとったが、追加データの事を聞いた途端に目の色を変えおった

 

「…追加データ…面白そうだね…よし!早速確認するよ!!」

 

クロエ

「はい!!」

 

永遠

「…はぁ~~~…」

 

 ワシ等はそのまま3機が置いてある部屋に行ってISにアクセスすると…

 

「おお!確かにデータが追加されてるね~!え~っと…このデータ群は何て読むのかな?…【G・U・N・D・A・M】?」

 

永遠

「【ガ、ガンダム】じゃと!?」

 

「【ガンダム】?…これそう読むんだね!…さて中身は~っと………」

 

永遠

「よりにもよってこれか…」

 

「凄いよとーくん!!この多種多様の機体のデータはこの3機のデータ量を上回っているよ!」

 

クロエ

「本当に凄いですね!」

 

「…ね~とーく~ん♪」

 

永遠

「…ハァ…好きにせい…」

 

「やった~~~っ!!」

 

 あのボケ神めえええぇぇぇーーーっ!!

 

 ~永遠 Side out~

 

 




 次回『第014話:発見』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第014話:発見

 ~永遠 Side~

 

 束さん達がワシの島に墜落してから1年たった

 この1年、束さんとクロエはワシのISにあったデータと追加のデータを解析して、それを元に束さん製の第5世代機の開発に取り掛かっておる

 出会った頃の束さんなら第4世代を造るのも結構な時間が掛かったそうじゃがワシのおかげで束さんの技術力は飛躍的にアップしたらしい…実感はないがな

 そのおかげで、最近になって新型はようやっと形になって来たらしいがさすがにワシのISと比べると性能は劣るそうじゃ

 ちなみにこの島は束さんが一部改造してテレビやネットが使える様にしてくれたんじゃ

 そんなある日、3人でテレビを見ながらくつろいでると…

 

TV

『先程、藍越学園とIS学園の合同入学試験会場にて男性がISを起動したとの事です!』

 

 ん?…今、なんつった?

 

TV

『ISを動かした男性の名前は【織斑一夏】さん、15歳。織斑さんは藍越学園の試験を受ける為に会場に来たのですが、道に迷ってしまい間違ってIS学園の入試会場に迷い込み、そこで試験の為に用意してあったISに不意に触ってしまったところ、起動したとの事です。』

 

「いっくーーーーーーーん!?」

 

永遠

「ほ~男の操縦者か~…」

 

クロエ

「兄様以外にもいたんですね~…」

 

 束さんは驚いとるがワシとクロエは気にならんかったな

 

永遠

「ん?…確か織斑一夏というと束さんがよく話していた者と同じ名前じゃな。…偶然とは恐ろしいのお~…」

 

「違うよ!本人だよ!何してんのあの子はーーーーーーーー!?」

 

クロエ

「こんなに取り乱す束様も久しぶりですね~…」

 

永遠

「うちで暮らすようになって免疫出来てたようじゃからな~…」

 

 初めは毎日のように驚いとったからな最近はそんなに驚くことは無くなったようじゃが

 

TV

『織斑さんは第一回モンドグロッソで優勝した織斑千冬さんの実の弟であるとの事です。』

 

「一体何でこんな事に!とりあえずちーちゃんに詳しく聞かないと!」

 

 ちーちゃん?ああ、織斑千冬の事か

 

TV

『なお、織斑一夏さんは話し合いの結果、IS学園に入学する事になったそうです。』

 

永遠

「IS学園?」

 

クロエ

「その名の通りISを学ぶ為の学校です。この学園はどの国にも属していません。そして、あらゆる国家、組織はIS学園に一切干渉できないという国際条約があるんです。」

 

永遠

「ほ~~~、しかしその織斑という奴は大丈夫かのぉ?その学校は女しかおらんのじゃろ?ストレス溜まって死なんといいがな~。」

 

クロエ

「ありえそうで怖いですね~。…兄様はIS学園に行きたいですか?」

 

永遠

「興味ないのぉ~…」

 

 ワシにはどうでもいい事じゃからな~

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~束 SIde~

 

 私は今、急いでちーちゃんに連絡を取ってるんだ

 Prrrrrr

 

千冬

『もしもし。』

 

「ちーちゃん!さっきのニュース何なの!」

 

千冬

『束か!丁度良かった私もお前に聞きたい事があった!』

 

「聞きたい事って?」

 

千冬

『この件はお前が関係しているのか?』

 

「そんな事してないよ!してたら慌てて電話なんかしないよ!」

 

千冬

『そう言われてみるとそうだな。』

 

「それで何でいっくんがISを動かしちゃったの?」

 

千冬

『ああ、テレビで言ってた通りなんだが、あの馬鹿は藍越の入学試験を受けに行ってどういう訳かIS学園の用意していた【打鉄】の置いてある部屋に迷い込んでな。』

 

「それを触って起動させちゃったんだね…」

 

千冬

『…そうだ…ハァ~…お陰で今朝からその対応に追われている始末だ。』

 

 声だけでもちーちゃんが疲れてるのが分かるね

 

永遠

「しかしその織斑という奴は大丈夫かのぉ?その学校は女しかおらんのじゃろ?ストレス溜まって死なんといいがな~。」

 

クロエ

「ありえそうで怖いですね~。」

 

 とーくんとクーちゃんは相変わらずのんびり話してるし

 

千冬

『所で束、お前の他にも声が聞こえるんだが誰かいるのか?』

 

「うん、二人いるよ。今一緒に暮らしてるんだ。」

 

千冬

『一緒にって、お前がか!』

 

「それどういう事かな?束さんだっていつまでも昔と同じじゃないんだよ。少しずつ他の人にも興味を持つようにしてるんだよ。」

 

千冬

『なんだと!?』

 

「まあそれは別にいいけどさ。けどそっちは大変だね~。まさかいっくんもISを動かすなんてね~。」

 

千冬

『まったくだ。………束…今何て言った?』

 

「へ?」

 

千冬

『今、一夏『も』と言ったな?』

 

「あ!?」

 

 やばい!口が滑った!?どうしよ~!?

 

 ~束 Side out~

 

 




 次回『第015話:二人目』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第015話:二人目

 ~千冬 Side~

 

 私の名前は織斑千冬、IS学園で教師をしている

 私は今、弟の一夏がISを動かしたため学園の他の教師たちと一緒に対応に追われている

 全く、あいつは何をやっとるんだ!受験会場を間違えるとは後で思いっきり説教してやる!

 そんな忙しい中、私に電話がかかってきた

 

千冬

「もしもし。」

 

『ちーちゃん!さっきのニュース何なの!』

 

 幼馴染の篠ノ之束だ

 だがこちらも聞きたい事があったから丁度良い

 

千冬

「束か!丁度良かった私もお前に聞きたい事があった!」

 

『聞きたい事って?』

 

千冬

「この件はお前が関係しているのか?」

 

『そんな事してないよ!してたら慌てて電話なんかしないよ!』

 

千冬

「そう言われてみるとそうだな。」

 

 束は関わっていないと言った、確かにアイツの言う通り関わっているなら電話なんかかけてこないな

 私は束に事情を話しながらある事に気づいた

 電話の向こうから束以外の男女の声が聞こえる

 

永遠

『しかしその織斑という奴は大丈夫かのぉ?その学校は女しかおらんのじゃろ?ストレス溜まって死なんといいがな~。』

 

クロエ

『ありえそうで怖いですね~。』

 

 聞こえてきた会話を聞いて私はその通りになりそうだと思った

 一夏の奴、本当に死ななければいいが

 それにしても、あの束が妹と私、一夏以外の人間に興味を持つようになるとはな

 そのまま束と話しているとアイツは気になる事を口にした

 

『まさかいっくんもISを動かすなんてね~。』

 

千冬

「まったくだ。」

 

 ん?いっくんも?も、とはどういう意味だ

 

千冬

「束…今何て言った?」

 

『へ?』

 

千冬

「今、一夏『も』と言ったな?」

 

『あ!?』

 

 まさか!他にもいるのか!?

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~束 Side~

 

 やばい!何とか誤魔化さないと!

 

千冬

『答えろ束!今の言葉はどういうことだ!?』

 

「ナ、何ノ事カナ~…」

 

千冬

『誤魔化すな!お前まさか一夏以外の男の操縦者を見つけていたのか!?』

 

「ギクッ!?」

 

千冬

『やはりそうなんだな!』

 

「ア、アハハハ…何ヲ言ッテルノカナチーチャン…イックン以外ニISヲ動カセル男ガイル訳無イジャン…」

 

千冬

『なるほど、今お前と一緒にいる奴がそうなんだな?』

 

「ソ、ソレハ~…」

 

 どうしよ~!もう誤魔化しきれないよ~!

 

千冬

『後でそいつの詳しい情報を送れ!分かったな!』

 

「………」

 

千冬

『分かったな!?』

 

「…ハイ…」ガチャ

 

 電話を切った私は恐る恐る後ろを振り向いた

 

永遠&クロエ

「………」

 

 二人は冷めた目でこっちを見ていた

 今の私にできる事はただ一つ!それは

 

「ごめんなさ~~~い!」

 

 DO☆GE☆ZAをする事だよ

 

 ~束 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 束からの電話を切った私は今日一番の深い溜め息をついた

 

千冬

「は~~~~~…」

 

「あ、あの…織斑先生…」

 

 私を呼んだのは同僚の女性教師、山田真耶だった

 

真耶

「さっきの電話の内容って…」

 

 よく見るとさっきまで対応に追われていた他の教師達も全員が手を止めて私の方を見ていた

 

千冬

「はい…二人目が見つかったみたいです…」

 

教師達

「そんな~~~~~~~!?」

 

 この日一番の絶叫が響き渡った

 ああ、これで仕事がまた増えるな~…

 

千冬

「…すみませんがそういう事です。…私は理事長にこの事を報告してきます…」

 

教師達

「悪夢だ~~~~~~~!?」

 

 本当にその通りだ!今日は確実に徹夜の残業決定だな…

 こんな事になるなら束に余計なことを聞かなければよかった…

 ハァ~…

 

 ~千冬 Side out~

 

 




 次回『第016話:入学前のお願い』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第016話:入学前のお願い

 ~永遠 Side~

 

 今ワシは束さんのロケットを使ってIS学園の校門前に来とる

 事の発端は束さんが織斑千冬にワシの事をバラしてしもうたのが原因じゃ

 まあ。土下座して謝ってきたから軽く説教して束さんは許したんじゃが、問題はその後じゃった

 束さんは仕方なくワシの情報を学園に送ったんじゃが、それからすぐにワシにもIS学園に入学しろと言う連絡が来たんじゃよ

 建前はワシの身を守るためとか言うとったが裏で何を考えているのやら

 そんな事を考えていると…

 

「すまない、待たせてしまったか?君が火ノ兄永遠君で間違いないか?」

 

永遠

「ん?そうじゃが。」

 

 スーツを着た二人の女性がやってきた

 

千冬

「私は織斑千冬。こちらは山田真耶。この学園で教師をしている。」

 

永遠

「ああ、おんしがちーちゃんか?」

 

千冬

「渾名で呼ぶな!織斑先生と呼べ!」

 

永遠

「入学もしとらんのに先生をつける必要はなかろお。」

 

千冬

「…確かにそうだが入学したら先生をつけろ…それとちーちゃんは止めろ!」

 

永遠

「承知した。して今日は何の用じゃ?」

 

千冬

「…ああ、簡単な筆記試験と面接、ISによる模擬戦をして貰う。」

 

真耶

「後、火ノ兄君の制服を作るので採寸をとらせて貰います。」

 

永遠

「さよか…面倒じゃな~…」

 

 さっさと帰って畑の手入れをしたいのお…

 

千冬

「面倒でも何でもこれからお前はここに通うんだやる気を出せ!」

 

永遠

「はいよ。…まったく織斑一夏とか言う奴のせいでとんだ迷惑じゃ!」

 

千冬

「………弟がすまん…」

 

永遠

「織斑さんが悪い訳では無かろぉ。」

 

 奴に会ったら一発ぶん殴ってくれる!

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 私は今、目の前にいる二人目の男性操縦者の事を考えていた

 元からなのか老人のような変な話し方をするがブリュンヒルデと言われた私を相手にしても全くひるまず話してくる

 その上私たち教師がいるにも拘らず面倒だ何だと言う始末だった

 束といたからなのか元からなのか分からんが変わった奴だな

 とりあえず今日の予定を教えとくか

 

千冬

「今日の予定だが初めに筆記試験を行う。それが終わったら昼食を挟んでまずは服の採寸、面接、最後に模擬戦となっている。何か質問はあるか?」

 

永遠

「特に無いのぉ。ただ入学する代わりに2つ頼みがあるんじゃがいいかの?」

 

千冬

「内容にもよるが…」

 

永遠

「まず一つは入学したら織斑一夏に一撃入れさせて欲しい!あやつのせいでワシの生活は壊されたんじゃからな!」

 

真耶

「ちょ、ちょっと待ってください!入学早々暴力事件を起こす気ですか!」

 

永遠

「じゃからこうやって前もって頼んどるんじゃろ。」

 

真耶

「それなら織斑君も同じじゃないですか!」

 

永遠

「ワシと奴が同じなわけなかろぉ!」

 

 まさか一夏を殴らせろと言うとはな、さてどうするかな?コイツの言う事も一応分かる

 …待てよ…これはもしかしたら丁度いいかもしれんな

 

千冬

「…ちなみに何をするつもりだ?」

 

永遠

「そうじゃな普段なら拳骨じゃが…奴にはパイルドライバーを食らわせてやるかの。」

 

千冬

「………ジャーマンスープレックスにしてくれ…」

 

真耶

「織斑先生!何言ってるんですか!自分の弟にプロレス技かける許可を出すなんて!?」

 

千冬

「…いや、火ノ兄の言う事も分かる。それに、いい機会なんですよ。」

 

真耶

「いい機会って何がですか?」

 

千冬

「…実は、一夏の奴、男の自分がISを動かした事で、一種の被害妄想の様なものを持ち始めてるみたいなんですよ。」

 

真耶

「…被害妄想ですか?」

 

千冬

「ええ、アイツはこの火ノ兄と同じでこの学園に強制入学する事になってます。そのせいか、自分が望んでココに来た訳じゃないと、自分は被害者だと考えているようなんです。」

 

真耶

「そんなまさか…」

 

千冬

「私にはそう見えるんです。だからアイツの腐った根性を叩き直すにはいい機会だと思ったんですよ。一夏によって被害を受けた火ノ兄ならアイツも文句は言えないでしょうから。」

 

永遠

「ほ~…なら()ってもいいんじゃな?」

 

真耶

「…字が違いませんでしたか?」

 

永遠

「気のせいじゃよ。」

 

 いや、明らかに殺すと書いて()ると言ったなコイツ

 

千冬

「叩き直すとは言ったが、後に響かない程度で頼む。それと、弟との確執はそれを最初で最後にしてくれ。」

 

永遠

「初めからそのつもりじゃ。ただし、奴が気に入らん事をするようなら容赦はせんがな!」

 

千冬

「ああ、それで構わん。私の場合は教師と身内の間に挟まれて動けない時もあるからな。…それで二つ目は何だ?」

 

永遠

「この学園は全寮制と聞いた。放課後になったら家に帰りたいんじゃよ。」

 

千冬

「なんだと!?…お前の住んでる島からこの学園までバスや電車を乗り継いでも数時間かかる筈だぞ!」

 

 コイツ本当に何考えてるんだ!?

 

永遠

「片道8時間はかかるの。じゃがISなら1時間程度で行く事が出来るじゃろ。」

 

千冬

「ISで学園に登下校させて欲しいというのか?…理由は?…ただ家で寝泊まりしたいだけというならこの場で却下するぞ!」

 

永遠

「一応それもあるんじゃが、一番の理由は畑と田んぼじゃ。」

 

千冬

「畑と田んぼ?」

 

永遠

「そうじゃ、ワシの住んどる島には幼い頃から作り育てた大事な田畑があるんじゃ。こんな所に監禁されとったら10年かけて作った大切な畑も田んぼもダメになってしまうからの。」

 

真耶

「何も自分でやらなくてもご両親に頼むとか…」

 

永遠

「ワシに家族はおらんぞ。5歳の頃から今の島で一人で暮らしとるからな。」

 

真耶

「す、すみません!?失礼な事を言って!」

 

永遠

「気にせんでいいぞい。まあそういう訳じゃ。政府がやってくれるなら別じゃがまずやらんじゃろ。じゃから夕方になったら家に帰りたいんじゃよ。無論、朝になったら学園には戻ってくるからの。」

 

千冬

「………それは私には答えられんな。理事長に話を通しておくから少し待っていてくれ。」

 

永遠

「よろしく頼む…それと山田さん、さっきワシと織斑は同じじゃと言うとったが今もそう思うんか?」

 

 山田先生は横目に私を見ながら答えた

 

真耶

「…違いますね。…織斑先生には悪いですが火ノ兄君と織斑君では暮らし方が違いすぎます。火ノ兄君はここに入ったら帰る場所が無くなるかもしれませんから…」

 

千冬

「…山田先生の言う通りですよ。火ノ兄の事情に比べたらうちの弟は恵まれていますよ。生活出来る家があるんですから。」

 

 …火ノ兄が一夏に一撃入れたいと言った気持ちも分かるな…

 

千冬

「火ノ兄、とりあえず弟に一撃入れる話は許可する。アイツが何か言っても私が黙らす。二つ目のISの登下校は理事長の判断を待つことになる。」

 

永遠

「承知した。出来れば二つ目も早めにお願いする。」

 

千冬

「分かっている。」

 

 こいつは私達と違ってたった一人で生きてきたのか…

 

 ~千冬 Side out~

 

 




 次回『第017話:セシリア・オルコット』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第017話:セシリア・オルコット

サブタイトルの通り一人目のヒロインの登場です。


 ~セシリア Side~

 

 わたくしはイギリスの代表候補生セシリア・オルコットと申します

 本日はここIS学園でわたくしは入学試験を受けに来た次第ですわ

 しかし、なんだか少し騒がしいですわね?入学試験とはこんなに騒がしいものだったのかしら?

 

セシリア

「さて、後は模擬戦だけですわね。…まだ時間はありますわね。」

 

 少しその辺りを散歩でもしてきましょうか

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

永遠

「あ~やっと面接まで終わったのぉ…」

 

 ワシは今廊下を歩いとる

 筆記試験も終わり、昼飯を食った後、服の採寸と面接まで何とか無事に終わって後は最後の模擬戦だけじゃから、それまで暇つぶしに散歩しとるんじゃよ

 ワシがボ~っと歩いとると…

 

「きゃっ!」

 

永遠

「おっと、すまん、こちらの不注意じゃった、大丈夫かの?」

 

「は、はい!こちらこそすみません。」

 

永遠

「む!」

 

「え?…お、男?」

 

 ワシがぶつかったのは金髪ロールの女子だったんじゃが、この娘、ワシを見た途端に目を丸くしおった

 

「な、何故ここに男性がいるのですか!?」

 

永遠

「ヌオ!お、落ち着かんか!ワシは試験を受けに来ただけじゃ!」

 

「試験ですって!…はっ!あなたが今噂になっている世界で初めての男性操縦者ですわね?」

 

永遠

「ん?違うぞ。ワシは二人目じゃよ。」

 

「え!?ふ、二人目!他にもいたんですの!」

 

永遠

「そうみたいじゃな~…一人目のせいでいい迷惑じゃ…おっと、これは失礼をワシは火ノ兄永遠と言う者じゃ。そちらの名を教えて貰えんかのぉ?」

 

 う~~~む、この娘のリアクション、さっきからオーバーすぎる気がするのぉ

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

 わたくしとぶつかったのは今話題の男性操縦者でした

 ですが、ブリュンヒルデの弟ではなく、二人目との事でした

 まさかもう一人いたなんて思ってもみませんでしたわ

 

永遠

「ワシは火ノ兄永遠と言う者じゃ。そちらの名を教えて貰えんかのぉ?」

 

 それにしても変な喋り方ですわね?しかし、向こうが名乗ったのならこちらも名乗らないといけませんわね!

 

セシリア

「これはご丁寧に、わたくしはセシリア・オルコット。イギリスの代表候補生ですわ。」

 

永遠

「オルコットさんじゃな。お主もワシと同じように試験を受けに来たのかのぉ?」

 

セシリア

「ええ、後は模擬戦だけですわ。まあわたくしの実力なら合格間違いなしですが!」

 

永遠

「ワシも後は模擬戦だけでの、試合までまだ時間があったんでブラついとったんじゃよ。」

 

 わたくしと同じ理由ですわね

 

セシリア

「…そうですか…あの一つ聞いてもよろしいですか?」

 

永遠

「何じゃ?」

 

セシリア

「あなたのその話し方は何ですの?」

 

永遠

「ん?…何と言われても…昔からこの喋り方じゃからな~…ずっと一人じゃったから気に留めた事が無いのぉ…」

 

セシリア

「え?…あのずっと一人…というのは…」

 

 一人ってどういう…

 

永遠

「まあ、大した事では無いんじゃが、ワシは5才の時から島で一人で暮らしとるんじゃよ。」

 

セシリア

「な、なんで…」

 

 ホントは聞いてはいけない事…でも聞きたいと考えてしまった

 

永遠

「5才の時に両親が事故で死んでの、親戚もおらんからどうしようかと考えとったら、ワシの家には先祖代々所有しとる小さな島があると知ったんじゃよ。」

 

セシリア

「…その島で今まで一人で…」

 

永遠

「そうじゃよ…まあ1年前から二人ほど同居人が増えたがな。」

 

セシリア

「あの…年はいくつですか?」

 

永遠

「?…15じゃが?」

 

セシリア

「15歳…では14歳までの9年間は一人で暮らしておられたんですのよね?…その間どのように暮らしてたんですか?」

 

永遠

「どのようにって…最初の頃は島に生っとる果物や魚を釣ったりしとったな。それから畑と田んぼを耕して少しずつ大きくしたんじゃ。今は野菜や米を作って暮らしとるんじゃよ。」

 

 なんですのこの人!わたくしも両親は既にいませんが彼の人生はわたくしとは比べられないほど凄まじい人生ですわ!

 なのに…なんでこの方は自分の過去を話してもこんな風に笑っていられるんですの?

 

 ~セシリア Side out~

 

 




 次回『第018話:父と母の謎』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第018話:父と母の謎

お気に入りが150を超えました♪

皆さんありがとうございます!

これからも頑張っていきます♪


 ~セシリア Side~

 

 わたくしは彼の過去を聞いてもう一つ聞きたい事がありました…

 

セシリア

「もう一つ聞いてもよろしいですか?」

 

永遠

「何じゃ?」

 

セシリア

「…ご両親の事を…どう思ってますか?」

 

永遠

「ワシの両親?…あまり覚えておらんが…じゃが…優しい父と母じゃったよ。…いつもワシに笑いかけてくれとった。…二人の仲もとてもよかった。…ワシの記憶にはいつも笑顔の両親の姿しかないのぉ。」

 

 両親の事を話す彼の顔はとても優しい表情をしていました

 わたくしはあんな表情で自分の両親の事を話す事はできませんわね

 

セシリア

「…羨ましいですわね…」

 

永遠

「何が羨ましいんじゃ?」

 

 彼は自分の両親に誇りを持ってる…ですが、わたくしは彼の様に自分の両親に誇りを持つことが出来ない…それが、凄く羨ましい

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 この娘さっきからワシの過去の事を聞いてくるが一体何を知りたいんじゃ?

 考えるのも面倒じゃし直接聞くかの

 

永遠

「のう、オルコットさん。お主ワシの何が知りたいんじゃ?言っとくがワシの昔話なんぞ何の面白味も無いぞい。」

 

セシリア

「!?…は、はい…少し思う所がありまして………ヒノエさんの過去を聞いたのですからわたくしも話しますわね。」

 

永遠

「いや、ワシは別に…」

 

セシリア

「いえ!聞いて下さい!?…聞いて欲しいんです…」

 

永遠

「そうか…ならその前に場所を変えんか?いつまでも立ちっぱなしでは疲れるじゃろ?」

 

セシリア

「そうですわね。」

 

 ワシ等はとりあえず休憩室に移動して自販機で飲み物を買うと、備え付けの椅子に座るとオルコットさんが自分の両親の事を話し始めた

 家を守り大きくするために尽力した母とその母に対して卑屈な父を見て育ったこと、その為、母は尊敬しているが父に対しては憤りを感じていた

 しかし、ある時、両親を列車の事故で亡くしてしまい、それ以来勉強を重ねて周囲の大人たちから両親の遺産を守る為に頑張っていたことを話してくれたんじゃ

 

セシリア

「…わたくしは母はともかく父には誇りが持てません。…ですから、母だけでなく父にも誇りを持っているヒノエさんが羨ましいんです。」

 

永遠

「…誇りって程でもないがのぉ…」

 

セシリア

「ヒノエさんがそうは思わなくてもわたくしにはそう思えます!…わたくしもヒノエさんの様に胸を張って父と母の話をしてみたいですわ。」

 

永遠

「そうか…」

 

 しかし、彼女の両親…もしや?

 

永遠

「…のう、オルコットさん。いくつか聞いても構わんか?」

 

セシリア

「はい、いいですけど。」

 

永遠

「話を聞く限りお主の両親は仲が悪かったんじゃよな?」

 

セシリア

「ええ、母は父を見下し、父は母に屈服してましたわ…」

 

永遠

「それは、何時からじゃ?」

 

セシリア

「何時からと申されても…わたくしが物心つく頃にはそうなってましたわ。」

 

永遠

「つまり何年もの間、仲が悪いにも拘らず離婚もせずに一緒にいたと言うわけじゃな?」

 

セシリア

「?…そうですわね…」

 

 間違いないかも知れんな…後で束さんに調べてもらうかの

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

 ヒノエさんがしてくる先程からの質問、一体どういう事なんでしょうか?

 ですが、今までの質問から彼が導き出した答えにわたくしは耳を疑いました

 

永遠

「フムッ………オルコットさん。…これはワシの予想なんじゃが、お主の両親は仲が悪いフリをしていたのではないか?むしろ夫婦仲は良かったんじゃないかのぉ?」

 

セシリア

「えっ!?…で、でしたら何故、仲の悪いフリなど…」

 

永遠

「…おそらく…お主を守る為か…お主の家に擦り寄る輩を排除する為、ではないかの?」

 

セシリア

「わ、わたくしを!?」

 

永遠

「そう考えると辻褄が合うんじゃよ。お主の両親が仲が悪いにも拘らず一緒に居続けた理由にも説明がつくんじゃ。」

 

セシリア

「!?」

 

永遠

「多分じゃが…お主の父は、自ら道化や餌になっておったんじゃろ。…不甲斐ない父親を演じる事でお主の家に群がる連中の目を自分に向けさせる事で、そやつらをお主から遠ざけたんじゃろ。…そして父親に近寄ってきた所を母親が駆除しておった…そんな所だと思うんじゃが?」

 

 そ、そんな………だとしたら…わたくしは…お父様になんて事を…

 

永遠

「最初にも言うたがあくまで予想じゃ。…じゃが、ワシの予想が当たっていたとしたら………オルコットさん、お主は両親に愛されておったと言う事じゃよ。」

 

セシリア

「!?…お父様…お母様…」

 

永遠

「お主はさっき父を誇りに思えないと言うとったが…もし予想通りなら、自慢の父親ではないかの?…家族を守る為に自分を犠牲にし続けた…立派な父親ではないのかのぉ。」

 

セシリア

「あ…ああっ…うあああああぁぁぁぁっ………お父様ああぁぁーーっ!………お母様ああぁぁーーっ!…」

 

 ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!お父様、お母様、ごめんなさい!

 わたくしがバカでした!ごめんなさい!?

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 弱ったのぉ…

 

セシリア

「うえええええぇぇぇぇぇーーーーん!!」

 

 泣かすつもりは無かったんじゃがな…

 とはいえ、今は好きなだけ泣かせておくかの…

 

永遠

「…好きなだけ泣きんさい…溜めこんどったモンも全部出しんさい…」

 

セシリア

「!?…う、うわあああああぁぁぁぁぁーーーーんっ!!」

 

永遠

「うおっと!…よしよし…」

 

 抱き着いて来るとは思わんかったが…まあ、よいか…

 とりあえず背中をさすっとくかの…

 この娘も苦労しとったんじゃな…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「………」

 

セシリア

「うわああああああぁぁぁぁぁぁーーーーんっ!!」

 

 火ノ兄に模擬戦の説明をしようと探していたんだが…今は出て行かない方がいいか…

 それにしてもセシリア・オルコットか…火ノ兄の推測通りだとしたら、彼女にとっては自慢の両親だな…私達の親とは比べ物にならん

 しばらくこのままにしておいてやるか…

 

真耶

「あっ!織斑先「シッ!」っ!?」

 

千冬

「(静かにしてください!)」

 

真耶

「(すみません…一体どうしたんですか?)」

 

千冬

「(あれを…)」

 

 私はやってきた山田先生に泣いているオルコットとそれをあやす火ノ兄を見るように施した

 

真耶

「(!?…何かあったんですか?)」

 

千冬

「(色々あったんですよ。…今はそっとしておきましょう。)」

 

真耶

「(…そうですね。でも、この後あの二人は試合なんですけどどうします?)」

 

千冬

「(試合の順番を最後にしてください。理由は火ノ兄は試合内容の説明の為、オルコットはISの調整の為という事にしておいてください。)」

 

真耶

「(フフッ、分かりました。任せてください!)」

 

 私と山田先生が休憩室を後にする時、火ノ兄がこちらに向かって僅かだが頭を下げていた…気づいていたのか

 フッ…さて、他の連中を説得してくるとするかな

 

 ~千冬 Side out~

 

 




 次回『第019話:父と母の真実』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第019話:父と母の真実

 ~セシリア Side~

 

 わたくしは数年ぶりに声を上げて沢山泣きました…

 ヒノエさんはわたくしの父が家族を思いやる優しい人だと言ってくださった…

 母と一緒にわたくしをずっと守ってくれていたのだとおっしゃって下さいました…

 真実は分かりません…それでも、嬉しかった!父と母の二人の娘としての誇りをわたくしに与えてくださいました

 

セシリア

「…ヒック…グスッ……ハァ…ありがとう…ございます…」

 

永遠

「…礼を言われることはしとらんよ。…むしろ、ワシの勝手な解釈でお主を泣かせるような事を言ってしまいすまなかった。」

 

セシリア

「…いいえ!…ヒノエさんのお陰でわたくしは父と母に誇りを持てるようになりました。」

 

永遠

「…じゃが…真実は分かっとらんのだぞ?違っとったらお主の心は深く傷ついてしまうじゃろう。…そうなった場合はワシはどう償えば…」

 

セシリア

「…ですから国に戻り次第、父と母の事を調べてみようと思います。…例え、ヒノエさんの予想と違っても今日のこの時、この想いは絶対に忘れません。そして、ヒノエさんの事をわたくしは絶対に恨みません。」

 

永遠

「…強いのぉ、お主は…」

 

セシリア

「そんなこと…あ、あの、ヒノエさん!…わたくしの事はセシリアとお呼びください。さんもいりません。…後、ヒノエさんの事を…と、永遠さんと、呼んでもいいですか?」

 

永遠

「ん?…ああ、構わんよ。セシリア…」

 

セシリア

「…ありがとうございます、永遠さん♪」///

 

 よかったですわ~…

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 セシリアを元気づけたのはいいんじゃが真実はどうなっとるんじゃろうかのぉ…

 ワシを恨まんと言うとるが…違った場合、心が傷ついてしまうのは確実じゃしな…

 どうするかのぉ…

 

 Prrrrrr

 

永遠

「ん?すまんセシリアちょっと待ってくれ。…はい、もしもし。」

 

 一体誰が…って、この携帯をくれたのは束さんじゃし、番号を知っとるのも束さんとクロエだけじゃったな

 

『ハロハロ~、とーくん?束さんだよ~♪』

 

永遠

「ああ、束さん、丁度良い時に、すみませんがちと調べて欲しい事が…」

 

セシリア

「え!?…束?」

 

『フフン♪分かってるよ。オルコット夫妻の事だね?』

 

永遠

「何故そのことを?…まさか、この携帯…」

 

『そういうこと~♪ま、その話は後でするとして、とーくん、携帯をスピーカーに切り替えて。』

 

永遠

「分かった…」

 

 ワシは携帯をスピーカーに切り替えてセシリアにも聞こえるようにした

 

『さて、話は聞いていたよ。セシリア・オルコットちゃん。私は篠ノ之束だよ♪』

 

セシリア

「し、篠ノ之博士!は、初めまして、イギリスの代表候補生をしております、セシリア・オルコットと申します!」

 

『うん!よろしくね~♪早速だけどね、君の両親の事、束さんがもう調べちゃったよ。』

 

セシリア

「ええぇっ!?」

 

『もし君が聞きたいならこの場で教えてあげるよ。どうする?』

 

セシリア

「………お願いします!わたくしは1秒でも早く両親の事を知りたいんです!」

 

『分かったよ。…というか、とーくんってさ…探偵になれるんじゃない?』

 

 ん?それはどういう…そうか!

 

セシリア

「そ、それは…つまり…」

 

 セシリアも気づいたか!

 

『とーくんの推理は殆んど正解だよ♪君の両親は君を守る為に周りの馬鹿共を騙して排除してきたんだよ。』

 

セシリア

「ほ、本当ですか?」

 

『フフッ嘘じゃないよ。何なら後で自分でも調べるといいよ。セシリアちゃんは両親に愛されていたんだよ♪』

 

セシリア

「あ、ああ…ああ、あり…が…とう…ござい…ます!…ありがとうございます!」

 

永遠

「良かったのぉセシリア。」

 

セシリア

「うえええぇぇぇーーーーんっ!!…ヒック…ありがとう…グスッ…ございます…うえええぇぇぇぇーーーんっ!!」

 

 また泣いてしまったか…じゃが今度は嬉し涙じゃ…また好きなだけ泣かせとくかの

 

「………ゴホンッ!」

 

永遠

「誰じゃ?」

 

 咳払いが聞こえた方を見ると複雑な表情をしとる織斑さんと山田さんが立っとった

 

千冬

「あ~~~お前達…模擬戦の時間だ…すまんがこれ以上は待ってやれん…」

 

永遠

「なぬっ?…ゲ!開始時間を過ぎとる!?」

 

セシリア

「グスッ…あぁ!わたくしもですわ!?」

 

 いつの間にかこんなに時間がたっとったのか!

 

セシリア

「ど、どうしましょう!このままでは試合放棄で不合格ですわ!」

 

永遠

「落ち着かんか、セシリア!恐らく大丈夫じゃ!」

 

セシリア

「え?何故ですの?」

 

永遠

「織斑さんが今頃呼びに来たからじゃ。」

 

千冬

「まあ、そういう事だ。お前たち二人の試合は今日の最後に変えておいた。」

 

真耶

「さすがにこれ以上は待てないので急いで準備をお願いします。オルコットさんはこれからすぐですから早くして下さいね。その次が火ノ兄君です。」

 

セシリア

「はい、すぐに!」

 

永遠

「頑張るんじゃぞ!セシリア。」

 

セシリア

「任せて下さい!今のわたくしに不可能はありませんわ!」

 

 そう言うとセシリアは山田さんと試合の準備に向かって行った

 

千冬

「…あの様子なら試合の方は大丈夫だな。…さて火ノ兄、お前はその間に試合のルールを説明しておくぞ。」

 

永遠

「はいよ。っとその前に…束さん、セシリアの両親の件、ありがとうございます。」

 

千冬

「何!?」

 

『いいよ気にしなくて♪束さんとしてもあの子の両親は久しぶりに好感が持てる人達だったからね♪』

 

千冬

「…束…お前ホントに変わったな。」

 

『おや、ちーちゃん、久しぶり~♪まあ、それはとーくんにお世話になったからだね~♪』

 

千冬

「聞きたかったんだがお前と火ノ兄はどういう関係なんだ?」

 

『ん~、束さんの乗ったロケットがとーくんの島に墜落してそのまま居ついたんだよ。』

 

千冬

「…それだけか?…それだけでお前がここまで変わるとは思えんのだが?」

 

『まあその時に色々あったんだよ。とーくんに思いっきり説教されたからね~。』

 

千冬

「説教って!…内容は分からんがお前がその説教を真面目に聞いたのか?」

 

『失礼だな~…そりゃそうだよ…とーくんの説教は10年前の事なんだから…』

 

千冬

「な!?…火ノ兄!お前知ってるのか!?」

 

永遠

「束さんを問い詰めたんじゃよ。ここではあまり言えんがお主にも少し言っとくぞ。」

 

千冬

「な、何だと!」

 

永遠

「あの事件が引き金になってこの世界は狂っていったんじゃ!そして、その元凶は束さんとお主じゃ!例え束さんに誘われたからと言ってもお主も同罪じゃ!束さんにはその罪を認識させる為に説教をした!織斑千冬!お前はこの世界を壊した責任をどう取るつもりじゃ!」

 

千冬

「………それは…」

 

永遠

「束さんはその答えを今も探しておる。お主はどうじゃ?束さんに全ての責任を押し付けるか?無関係と言って好き放題に生きるか?束さんと同じように償う方法を探すか?」

 

千冬

「………」

 

永遠

「まあどうしようとお主の勝手じゃ。じゃが、償うというなら、その時はワシはお主らを手伝うつもりじゃよ。」

 

千冬

「…わ、私は…」

 

永遠

「一つ言っとくがワシはお主の正体を誰にも言わん!ワシが言っても意味が無いからのぉ。…さて、説教はこの位にしとくかの。束さん、ワシも試合があるんでもう切るぞ。」

 

『うん、終わったら連絡してね♪迎えのロケットを送るから。』

 

永遠

「あいよ!それじゃ、また後で。」

 

 携帯の事は帰ってからでいいか

 

永遠

「さて織斑さん模擬戦のルールを教えてくれんかのぉ。」

 

千冬

「あ、ああ…」

 

永遠

「はあ…今はワシの言った事を覚えておればいい。すぐに答えろなどとは言わんよ。…ほれ、いい加減頭を切り替えんか!」

 

千冬

「…分かった…まずは………」

 

 さて、この人は答えを出せるかのぉ?

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 




 次回『第020話:模擬戦【ドットブラスライザーVS霧纏の淑女】』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第020話:模擬戦【ドットブラスライザーVS霧纏の淑女】

初のバトルです


 ~永遠 Side~

 

 織斑さんから試合の説明を聞き終わったワシが試合会場に向かっとると試合を終えたセシリアと会った

 

永遠

「おお、セシリア!試合には勝ったのか?」

 

セシリア

「はい、わたくしと【ブルー・ティアーズ】なら余裕でしたわ♪…これも永遠さんのおかげですわ!」

 

永遠

「ワシは何もしとらんよ。お主の両親の事を調べてくれたんも束さんじゃしな。礼なら束さんに言うてくれ。」

 

セシリア

「いいえ!永遠さんのおかげです!…本当に感謝しております。…あの、一つお願いが…」

 

永遠

「何じゃ?」

 

セシリア

「篠ノ之博士にお礼を伝えておいて下さいませんか?…わたくしには連絡する方法が無いもので。」

 

永遠

「そういえばそうじゃったな…分かった伝えておくぞい。」

 

セシリア

「ありがとうございます!」

 

永遠

「…所で【ブルー・ティアーズ】とは…お主の専用機かの?」

 

セシリア

「はい、その通りですわ。」

 

永遠

「専用機を持つとは、やはりお主は凄いのぉ。」

 

セシリア

「そ、そんなこと…」///

 

永遠

「時に今からワシの試合なんじゃが見ていくか?」

 

セシリア

「よろしいのですか!?」

 

永遠

「ああ、専用機を持つお主に意見を聞いてみたいんでの。」

 

セシリア

「わたくしでよろしいのでしたら…」///

 

永遠

「ありがたい…では行くかの。」

 

セシリア

「はい♪」

 

 という訳でセシリアと一緒に会場に向かったんじゃ…

 織斑さんにセシリアも試合を見れるように頼んだんじゃが、条件として入学するまで今日の試合の事は誰にも口外しない様に言われたんじゃ

 無論、イギリス政府への報告も禁止されたが、セシリアはその条件を承諾して、織斑さんと管制室でワシの試合を見ることになった

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 これから火ノ兄の試合だが、事前の情報によるとアイツは既に専用機を持っているとの事だった

 機体のスペックデータも見せて貰ったが全身装甲(フルスキン)の第3世代型の機体か…何か違和感を感じるな

 それもこれからの試合を見れば分かるかもしれないな…

 そんな事を考えていると、アリーナに火ノ兄が出てきたが…ISを纏っていないだと!何を考えてるんだ?

 

セシリア

「永遠さん、ISはどうしたんでしょうか?」

 

真耶

「分かりません。」

 

 すると、火ノ兄は腰の後ろに差していた刀を抜くと切っ先を正面に向けた…

 アレは…軍刀か?

 

千冬

「何をするつもりだ?」

 

 そのまま、正面に刀で円を描くとその軌跡は光の円になって、そこから火ノ兄を光が包み込んだ

 光が消えると私達の前には白い全身装甲(フルスキン)のISを纏った火ノ兄がいた

 

真耶

「な、なんですか!?あのISは!?」

 

千冬

「あれが火ノ兄のIS【ドットブラスライザー】か!?」

 

セシリア

「【ドットブラスライザー】…全身装甲(フルスキン)のISなんて初めて見ましたわ!?」

 

 【ドットブラスライザー】には驚いたがとりあえず試合を始めなければな

 

千冬

「山田先生!試合を始めてください!」

 

真耶

「は、はい!?」

 

セシリア

「あの、織斑先生…永遠さんの対戦相手は誰なんですか?」

 

千冬

「ん?…ああ、あいつはもう一人と同じで勝敗に関係なく入学が決まっている。だが、実力を図る意味も含めてこの学園の生徒会長に相手を頼んだ。」

 

セシリア

「生徒会長、ですか?」

 

千冬

「お前はまだ知らなかったか?IS学園の生徒会長は学園最強の人間がなる事になっている。」

 

セシリア

「学園最強!?そんな人をぶつけたんですか!?」

 

千冬

「そうだ。…さあ、始まるぞ。」

 

 さて、アイツの実力を見せて貰おうか

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 【ドットブラスライザー】を纏ったワシの前に髪の色と同じ水色のISを纏った女子(おなご)が現れた

 

永遠

「お主がワシの相手か?」

 

「ええ、そうよ。私は更識楯無、IS学園では生徒会長を務めているけどロシアの国家代表でもあるわ。そしてこれが私のIS【ミステリアス・レイディ(霧纏の淑女)】よ。よろしくね、火ノ兄君♪」

 

永遠

「これはご丁寧に。ワシは火ノ兄永遠、一応二人目の男の操縦者となっとる。こやつの名は【ドットブラスライザー】じゃ。…しかし、国家代表が相手とは驚いたのぉ~…」

 

楯無

「とてもそんな風には見えないわよ。それに私も驚いたわ。あなたのそのISには!」

 

永遠

「そうなんか?」

 

楯無

「そうよ!全身装甲(フルスキン)なんて私も初めて見たんだもの。…その力、見せて貰うわ!」

 

 そう言うと生徒会長は持っていた槍を構えた

 

永遠

「承知した!」

 

 <セットアップ ブラストソード>

 

 それに合わせて、ワシは【マルチギミックサック】を片手剣にして構えた

 

楯無

「何よその武器?」

 

永遠

「【マルチギミックサック】っちゅう物じゃ。」

 

真耶

『それではこれより、火ノ兄永遠VS更識楯無の模擬戦を始めます!』

 

 山田さんのアナウンスが始まる

 

真耶

『それでは、試合開始!』

 

 ワシは生徒会長に正面から斬りかかった

 じゃが、さすがは国家代表、簡単に受け止められてしもうた

 

楯無

「甘いわね!その程度では私に一撃当てられないわよ。」

 

永遠

「じゃろうな!」

 

 ワシは距離を取ると【マルチギミックサック】を放り投げた

 

楯無

「?」

 

 <セットアップ ブラストマグナム>

 

楯無

「二丁拳銃!?」

 

 片手銃に切り替えて射撃攻撃を始めると【マルチギミックサック】の変形に驚いたのか回避が遅れたせいで2発ほど命中しおった

 

楯無

「ぐっ!…銃にもなるなんてね。…ならこっちも射撃よ!」

 

 生徒会長は槍に装備された4門のガトリングで攻撃してきたが、ワシは【マルチギミックサック】を再び変形させた

 

 <セットアップ デュアルブレード ブラストガーター>

 

 双剣を回転させ攻撃を防ぐとそのまま生徒会長に向かって突っ込んでいった

 

楯無

「クッ…まだ変形するなんて…一体いくつの形態があるのよ!」

 

 ワシに射撃が効かないと分かると生徒会長は槍を構えなおし接近してきたワシの双剣を受け止めるとそのまま鍔迫り合いになった

 

永遠

「…これで全部じゃよ…」

 

楯無

「え?」

 

永遠

「変形はこれで全部じゃと言ったんじゃ!」

 

 ドガッ

 

 ワシはそう言って生徒会長に回し蹴りを喰らわせた

 

楯無

「ぐぅっ!」

 

 生徒会長が怯んだ隙にワシは左手の【マルチギミックサック】を盾から片手銃に変形させ至近距離で撃った

 

楯無

「きゃあああぁぁぁーーーっ!!」

 

 フム、今度は結構当たったの、じゃが一端距離を取るかの

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~楯無 Side~

 

 みんな~私は更識楯無♪IS学園の生徒会長で~ロシアの国家代表よん♪

 ってそんなこと言ってる場合じゃないわね!私は今、織斑先生に頼まれて二人目の男性操縦者の模擬試合の相手をしてるんだけど…

 何なのよこの子!国家代表の私と互角の実力を持ってるなんて聞いてないわよ!?

 しかも、何このIS!全身装甲(フルスキン)だし、武器は変形しまくるし、今までのISの常識が通用しないわよ!

 

楯無

「…ぐうぅ!」

 

 さっきの至近距離からの射撃は効いたわね…まさか、左手の盾だけ銃に変形させるなんて…考えてみたらそのぐらい出来て当然か!

 今は様子見の為か距離を取ってるけど…それが命取りよ!

 

楯無

「…ね~ぇ?今日はやけに蒸し暑いとは思わない?」

 

 見せてあげるわ!【ミステリアス・レイディ】の真の力を!

 

永遠

「ん?…悪いんじゃが全身装甲(フルスキン)のせいでそういうのは分からんのじゃよ。」

 

 ガクッ…私のいつものネタが通じない…まあいいわ!

 

楯無

「そ、そう…なら仕方ないわね…」

 

永遠

「お主さっきから何を言っとるんじゃ?やる気あるんか?」

 

楯無

「あるに決まってるでしょ!私にこれを使わせるとは思わなかったけどね!」

 

永遠

「?」

 

楯無

「恨まないでね~♪…喰らいなさい【清き熱情(クリア・パッション)】!」

 

永遠

「!?」

 

 カッ!ドッカアアアアアァァァァァァーーーーンッ!!!

 

 フフッ、さすがに水蒸気爆発は効いたでしょ

 【清き熱情(クリア・パッション)】…【ミステリアス・レイディ】のナノマシンを犠牲にすることで使える1発限定の秘密兵器

 今までこれを受けてまともに立っていられたISはいないわ!

 私は勝利を確信した…そう思っていたのに

 

永遠

「…今のは驚いたぞい!」

 

 <ラグナロクフェイズ>

 

楯無

「え?」

 

 火ノ兄君の声と電子音が聞こえてきた

 

楯無

「…まさか…【清き熱情(クリア・パッション)】を受けて今まで無事だった相手はいないのよ!」

 

 煙が晴れた場所にいたのは機体の各所の形状を変えた【ドットブラスライザー】がそこに立っていた

 

楯無

「な、何なの、その姿!?それに、なんでダメージを受けてないの!?」

 

永遠

「【ラグナロクフェイズ】…お主がさっき使った爆発と同じような位置付けでな、【ドットブラスライザー】の高出力形態じゃよ!」

 

 高出力形態!?何よそれ!?IS自身も変形するなんて聞いてないわよ!?

 

楯無

「だ、だとしても【清き熱情(クリア・パッション)】を受けたのに何で無傷なのよ?」

 

永遠

「簡単じゃよ。お主が爆発を起こすのと同時にこちらも【ラグナロクフェイズ】を発動させたんじゃよ。」

 

楯無

「え?」

 

永遠

「爆発の衝撃を【ラグナロクフェイズ】に変形する時に起きる余剰エネルギーで相殺しただけじゃよ。」

 

楯無

「そ、そんな!?…【清き熱情(クリア・パッション)】が…効かないなんて…」

 

 私の一撃必殺の技を余剰エネルギーだけで防ぐなんて

 どうする!もうナノマシンも残ってない!【ミストルテインの槍】も【沈む床(セックヴァベック)】も使えない…後は【蒼流旋】しか使える武器が無い

 こちらは殆どの武装を失ったっていうのに向こうは殆どノーダメージ…

 でも、ここで引くわけには…負けるわけには…いかない!!

 

永遠

「どうしたんじゃ?もう手品は終わりかのぉ?」

 

楯無

「クッ…ええ、ここからは…正面からのガチンコ勝負よ!」

 

永遠

「よかろう!…いくぞおぉぉーーっ!」

 

 火ノ兄君が向かって来た…でも!

 

楯無

「は、速い!?」

 

 バキッ

 

楯無

「グッ!」

 

 両腕に展開された爪で攻撃してるけど…パワーもスピードもさっきまでとは違いすぎる!

 何なのよ…このIS!

 

永遠

「うおりぃやああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!」

 

 ドガッ…バキッ…ベキッ…

 

楯無

「ガッ!…グッ!…ガハッ!」

 

 くううっ、動きが早すぎて追いつけない…

 

永遠

「…止めじゃああぁぁーーっ!」

 

楯無

「え!?」

 

 気付いた時には火ノ兄君は私の真上にいた…

 

永遠

「必殺ファンクション!」

 

 <アタックファンクション シャイニング・ラム>

 

 彼がそう叫ぶと電子音が技名らしきものを言った…

 すると、ISの全身が光り輝き私に向かって一直線に突っ込んできた

 私には、もう避ける力も残っていなかった…

 

 ドゴオオオオォォォォォーーーーンッ

 

真耶

『ミ、ミステリアス・レイディ、シールド・エネルギー0、勝者、火ノ兄永遠!』

 

 あ~~~あ、負けちゃったか~…

 

 ~楯無 Side out~

 

 

 




 次回『第021話:試合後』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第021話:試合後

 ~千冬 Side~

 

 今の私はただ驚く事としかできなかった

 

真耶

「な、何ですかあの性能!」

 

セシリア

「永遠さん…凄すぎますわ…」///

 

 オルコットが頬を赤らめているがそれは置いておこう

 しかし、何だあのISは?束から貰ったスペックデータとは明らかに違いすぎるぞ!

 …【マルチギミックサック】と呼ばれる変形武器

 …機体の能力を向上させる高出力形態【ラグナロクフェイズ】

 …本当に第3世代なのか?…下手をすると第4世代を超えているぞ

 一度火ノ兄と束に問いただしておくか

 

千冬

「山田先生、火ノ兄をココに呼んで下さい。」

 

真耶

「はい、分かりました。」

 

千冬

「オルコット、お前はどうする?」

 

セシリア

「わたくしもこちらにいて宜しいでしょうか?」

 

千冬

「ああ、構わんぞ。」

 

セシリア

「ありがとうございます♪」///

 

 こいつ火ノ兄に惚れてるな…まあ分からなくはないが

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

永遠

「あ~やっと終わったの~…」

 

楯無

「お疲れ様~。火ノ兄君強いわね~お姉さん驚いちゃった~。」

 

永遠

「そうかの…よう分からんな~…」

 

楯無

「…ねえ…君ってさっき私と試合した子よね?」

 

永遠

「そうじゃよ?」

 

楯無

「…さっきと雰囲気が違うんだけど?」

 

永遠

「はぁ?」

 

 そう言われてもな~…

 

真耶

「火ノ兄君!織斑先生が管制室の方に来て欲しいそうです!」

 

永遠

「あいよ…」

 

 管制室か…セシリアもまだおるかの?

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~楯無 Side~

 

 織斑先生が呼んでるっていうから私も付いて来たんだけど…

 

セシリア

「永遠さん!国家代表を相手に勝ってしまわれるなんて流石ですわ!」

 

永遠

「カカカッ、大した事無いぞい。」

 

セシリア

「フフッ、ご謙遜を…」///

 

永遠

「いやホントの事じゃが。」

 

 …この子、誰? 

 

楯無

「ね~貴方、ココは関係者以外は立ち入り禁止なんだけど~。」

 

セシリア

「はい?…許可なら貰ってますわよ。」

 

楯無

「え!…ホントに?…所で貴方は?」

 

セシリア

「あ!これは失礼いたしました。わたくしはセシリア・オルコット。イギリスの代表候補生です。」

 

楯無

「何でそんな子がココに?」

 

 理由を聞こうとしたら織斑先生がやって来た

 

千冬

「来たか火ノ兄!…早速だがいくつか聞きたい事がある。」

 

永遠

「…ワシのISの事かの?」

 

千冬

「そうだ。…事前に束から提出された【ドットブラスライザー】のスペックデータと今日のお前の試合を見ると明らかに性能が違いすぎる。」

 

 え!?今、束って!まさか篠ノ之束博士!?

 それに性能が違うってどういうこと?

 

楯無

「ちょっと待って下さい!今のはどういう意味ですか?」

 

千冬

「言った通りの意味だ。資料と実物の性能が違いすぎる。」

 

楯無

「そんな事…」

 

千冬

「説明してもらうぞ!あのISの事を!」

 

永遠

「そう言われてもワシが造ったもんでは無いからな~…説明なんぞ出来んぞい。」

 

 確かにその通りよね…実際に戦った私だから分かるけど、あんなIS篠ノ之博士にしか造れないわよね

 

千冬

「………そうか…なら、お前のISをこちらで調べたい。暫くの間預けてくれないか?」

 

永遠

「別に構わんが…壊さんでくれよ。」

 

真耶

「壊しませんよ!!」

 

千冬

「私達が壊すとでも思ったのか?」

 

永遠

「まあ束さんにも言った事じゃから念の為と言う奴じゃよ。」

 

千冬

「束にも言ったのか………ん?…オイ!それはどういう意味だ!?」

 

永遠

「は?何がじゃ?」

 

千冬

「今お前は『束にも言った』と言った。それはつまり【ドットブラスライザー】を造ったのは束では無いという事だな?」

 

真耶

「ええっ!?」

 

楯無

「篠ノ之博士以外にあんなISを造れる人がいるっていうの!」

 

セシリア

「永遠さん!どういう事ですの?」

 

永遠

「ナンノコトカノ~…」

 

 露骨に目線を反らしたわね

 この子、嘘をつくのは苦手みたいね

 

「とーくんって時々おっちょこちょいになるんだよね~♪」

 

楯無

「誰!?」

 

千冬

「その声は…束!?」

 

セシリア&真耶

「ええっ!?」

 

永遠

「束さん!」

 

「ハロハロ~、久しぶり&初めまして♪私が天災の束さんだよ~♪」

 

 何でここにISの生みの親が来てるのよーーー!?

 

 ~楯無 Side out~

 

 




 次回『第022話:暴露②』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第022話:暴露②

お気に入り数が200行きました♪

これからも頑張ります!!


 ~千冬 Side~

 

「やっほ~♪ちーちゃん、さっきぶり~♪」

 

千冬

「電話ではな。…実際に会うのは随分と久しぶりだな。」

 

「ニャハハッ♪そうだね~。」

 

 まさか束が来るとはな…

 

セシリア

「あ、あの…篠ノ之博士!わ、わたくしセシリア・オルコットと申します!」

 

「ん?君がセーちゃんか♪君もさっきぶりだね~♪」

 

セシリア

「セ、セーちゃんですか!…はっ!あの篠ノ之博士、父と母の事、ありがとうございます!改めてお礼を言わせて下さい。」

 

 オルコットをあだ名で呼ぶだと!…ホントに変わったなコイツ

 

「気にする事ないよ♪それにね、さっきとーくん達にも言ったけど、君の両親は束さんが好感が持てる人達だったからね。久しぶりに気分が良くなる人を知る事が出来たよ。」

 

セシリア

「あ、ありがとうございます!…そう言って…いただける…グスッ…父と母も…喜んでいると…ウウッ…思います。…」

 

永遠

「良かったの~セシリア。」

 

セシリア

「グスッ…永遠さんのおかげです…ありがとうございます!」

 

 オルコットの両親は…本当に娘の事を大切に想っていたんだな………羨ましいな…なあ一夏…

 

真耶

「ううっ…良かったですね~…」

 

楯無

「………あの~…話が見えないんですけど~…」

 

「誰?この巨乳メガネと水色?」

 

真耶

「巨乳メガネ!?」

 

楯無

「水色って!髪の色ですか?私達の扱い雑すぎませんか?」

 

 確かに変わったが…やっぱり束は束だったか…なぜか安心したな

 

千冬

「もう少し言い方を考えろ!…巨乳メガネは私の同僚で、水色はこの学園の生徒会長だ。」

 

真耶&楯無

「織斑先生もヒドイ!」

 

千冬

「冗談だ。」

 

永遠&束

「アハハハハハハッ!!!」

 

セシリア

「フフフッ!」

 

 しかし、ここに束が現れたのはちょうど良かった

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~楯無 Side~

 

 まさかこの私が山田先生と一緒に織斑先生に弄られるなんて

 

千冬

「さて、弄るのはこの位にして、束…火ノ兄のISの事、何か知っているなら教えて貰うぞ。」

 

 やっと本題に入ったわね…

 

「う~ん、それは束さんじゃなくてとーくんに聞いたほうが良いよ。」

 

千冬

「何?…火ノ兄、どういうことだ?」

 

永遠

「…仕方ないのぉ…ISの事を話すんじゃったらワシの事も話さねばならんな~…」

 

千冬

「ならそれも話せ!心配しなくても聞いた事は誰にも話さん!山田先生、更識、オルコット、お前達もだ!」

 

真耶

「分かりました!」

 

セシリア

「絶対に言いません!」

 

楯無

「…分かりました。」

 

千冬

「更識、今の間は何だ?」

 

楯無

「え!?いえ、何でもありません!」

 

 やばい!?

 

千冬

「更識…お前は出て行け。即答出来なかった時点でお前は危険だ。」

 

楯無

「そんな!」

 

「そうだね。悪いけど君にはまだ聞かせない方がいいね。日本の対暗部用組織『更識家』17代目現当主・更識楯無。」

 

楯無

「!?…知ってたんですか?」

 

 さすがは篠ノ之博士って所ね…

 

「この束さんに知らない事なんてないよ。悪いけど君が日本政府にとーくんのことを報告する可能性がある限り聞かせられないね。」

 

 …これ以上ココにいるのは無理ね…でも

 

楯無

「………ハァ、分かりました。…ですが、火ノ兄君に一つだけ質問させて下さい。」

 

千冬

「…いいだろう。」

 

永遠

「何じゃ?」

 

楯無

「…あなたはIS学園の生徒達に危害を加える様な事を考えてる?」

 

 今年は妹の簪ちゃんも入る!これだけは聞いておかないと!

 

セシリア

「永遠さんはそんな事をする人ではありません!」

 

楯無

「オルコットさんは黙ってて!これはIS学園生徒会長として聞いているの!」

 

セシリア

「!?」

 

永遠

「…ワシの望みはな、気のおける者と静かにのんびり暮らすことだけじゃ。それ以外に興味は無い。」

 

楯無

「………分かったわ。今はその言葉を信じさせて貰うわ。」

 

永遠

「本当の事なんじゃが…」

 

 その言葉が本心か見極めさせてもらうわよ!それに…

 

楯無

「では、私はこれで………いつか、お姉さんにも教えてね♪」

 

 私も彼の事が知りたいしね♪

 

 ~楯無 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

 更識会長が出て行かれたのでやっと永遠さんのお話を聞けますわね

 それにしてもあの方、永遠さんが学園に危害を加えるかを聞くなんて、失礼千万ですわ!

 永遠さんが…わたくしの両親の事を考え励まして下さった永遠さんが…そのような事をする筈ありませんわ!

 

千冬

「それでは火ノ兄、改めて聞かせてもらおうか?」

 

永遠

「うむ、実はワシはな……………」

 

 そして永遠さんはご自分の事を話してくださいました

 お話の内容は【第00話:プロローグ】を読んで下さいまし♪

 全てを語り終えた時、わたくし達は…

 

千冬

「…プッ…ハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

 

真耶

「織斑先生…プッ…篠ノ之博士も…フッフフッ…」

 

セシリア

「…フフッ…フフフッ…」

 

 笑っていました

 

真耶

「クフフッ…ふ、二人とも…クフッ…笑いすぎですよ…」

 

千冬

「アハハハハッ…な、何を言ってる…クククッ…山田…先生も…クハハッ…笑ってるだろ…ア~ッハハハハハハハッ…」

 

「アハハハハハハハッ…あ~久しぶりに聞いたけど…やっぱり面白いね~…ヒ~ッヒ~ッ…お腹痛い…」

 

永遠

「………」プルプル

 

 あら?気のせいか永遠さんの肩が震えているような?

 

永遠

「………いい加減にせんかあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

 ガンッ!

 

セシリア

「アタッ!」

 

 バゴンッ!

 

千冬

「オゴッ!」

 

 ゴンッ!

 

真耶

「アウッ!」

 

 ドゴンッ!

 

「アイターッ!」

 

 永遠さんわたくし達全員に拳骨するなんて~

 

セシリア

「い、痛いです~…」

 

永遠

「何時までも笑っとるお前らが悪い!特にそこの二人!?」

 

 織斑先生と篠ノ之博士は特に大声で笑ってましたものね~…

 

千冬

「ツ~ッ!火ノ兄!私と束だけ音が大きかったぞ!」

 

「ホントだよ~何で束さんとちーちゃんだけ…」

 

永遠

「お主ら二人が馬鹿笑いしとるからじゃ!」

 

千冬

「オイ!馬鹿笑いは無いだろ!」

 

永遠

「そうとしか見えんわい!…いい加減話を続けるぞ!」

 

 そ、そうですわね!

 

 ~セシリア Side out~

 

 




 次回『第023話:向かうべき場所』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第023話:向かうべき場所

 ~千冬 Side~

 

 信じられんな…別の世界から転生してきたなど…だが、それなら火ノ兄の機体も分かるな

 

千冬

「…しかし、お前の前世は何というか…運が無かったというか…どう言えばいいのか…」

 

真耶

「すみません…私には何も言えません…」

 

永遠

「言わんでいいわいっ!?」

 

真耶

「すみませ~~~んっ!」

 

 こいつ本気で怒ってるな…

 

セシリア

「…ですが…わたくしは感謝しております。」

 

千冬

「何をだ?」

 

セシリア

「…永遠さんが前世で亡くなった原因は…確かにその、酷い理由ですけど…そのお陰でわたくしは、永遠さんに出会う事が出来ましたから…」///

 

「なるほど~そういう考え方もあるね~♪」

 

永遠

「…そうじゃな…確かにセシリアの言う通りじゃな。あの阿保神のお陰でセシリアや束さん、クロエに出会えたんじゃからな。」

 

セシリア

「永遠さん♪」///

 

「その通りだよ♪」

 

永遠

「二人とも、ありがとな!」

 

 火ノ兄を死なせた神に、少なくとも束やオルコットは感謝してるみたいだな

 

永遠

「話が逸れてしもうたな。問題はワシの前世では無く、ワシのISの出所じゃろう。」

 

千冬

「ウ、ウムッ…そうだったな。…だが、これで違和感の正体が分かったな。」

 

セシリア

「織斑先生、違和感とは何のことでしょうか?」

 

千冬

「ああ、事前に提出された資料を見ていて何か違和感を感じていたんだ。しかも、試合が進むにつれてその違和感は膨れ上がっていった。」

 

「へ~、さすがちーちゃん。【ドットブラスライザー】の異質さに気付いてたんだ。」

 

千冬

「まさか神が造ったISだとは思わなかったがな。」

 

真耶

「あの、篠ノ之博士…博士はあの機体を調べられたんですよね?」

 

「ん?したけど…」

 

真耶

「では、博士は【ドットブラスライザー】の解析が出来たんですか?」

 

「………」

 

千冬

「…束?」

 

 どうしたんだ?…まさか!?

 

千冬

「………お前でも無理だったのか?」

 

セシリア&真耶

「ええっ!?」

 

「…ウガーーーッ!そうだよ!半分も出来なかったよ!仕方ないでしょ!束さん以上の技術で造られてるんだから!完全にオーバーテクノロジーの塊だよ!束さんでも造れないよ!造れるなら造ってみたいよ!文句あるかあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

セシリア

「ヒーーーーーッ!!」

 

真耶

「す、すみませーーーーーんっ!!」

 

千冬

「た、束がキレた!それ程の物なのか!」

 

「ハァハァ、そういう事だよ。まあ、とーくんが協力してくれたおかげで何とか出来たけどね。一人じゃ無理だったよ。」

 

千冬

「協力とはどういう事だ?」

 

永遠

「鍵を開けただけじゃよ。」

 

セシリア

「鍵、ですか?」

 

「そ!束さんだけじゃ全部調べられなくてね、とーくんに聞いてみたら神様にISの設計データや元になったデータがISの中にあるって教えてくれたんだ。」

 

千冬

「なんだと!」

 

永遠

「じゃが肝心のデータにロックが掛かっとってな。束さんでも開けられんかったんじゃよ。」

 

真耶

「篠ノ之博士でもですか!?」

 

「そうだよ!それで色々考えた結果、とーくんが鍵になってるって分かったんだよ。で、とーくんに鍵を外してもらって、無事にデータも手に入れて解析も済んだんだよ。」

 

千冬

「束、そのデータは今ここにあるか?」

 

「悪いけどデータはあげないよ。」

 

千冬

「何故だ!?」

 

 どういうつもりだ?

 

「ちーちゃんに渡すってことは、この学園で管理するってことだよ。もしデータの一部でも奪われたら世界は今以上に酷くなる。そう断言出来るほどなんだよ!」

 

千冬

「………だが、お前が持っていても…」

 

「ちーちゃん、束さんはね…これ以上世界を混乱させたくないんだよ…ISによって誰かを苦しめる原因を増やしたくないんだよ。」

 

千冬

「束…」

 

 あの束がこんなことを言うなんて…

 

「だからデータは渡せない。このデータはISを本来あるべき姿、あるべき場所に還す為に使いたいんだよ。勿論とーくんの許可も貰ってるよ。」

 

セシリア

「あるべき姿?」

 

真耶

「あるべき場所?」

 

「君たちも知ってるでしょ。ISは本来、宇宙で活動する為のマルチパワードスーツなんだよ。それが今じゃただの兵器、女尊男卑なんてくだらない思想の象徴に成り下がってる。」

 

真耶

「…は、はい…」

 

「だから束さんはISを宇宙に還してあげたいんだ!そして、いつかはとーくんといっくん以外の男も使える様にして男女平等の世界に戻したいんだよ。」

 

千冬

「…束…」

 

 それがお前の出した答えなのか?ISを本来の場所に還し、世界をあるべき姿に戻す

 それが今の世界を作ってしまったお前の答えなのか…

 それに引き換え、私は…

 お前と同じ罪を持つ私はその罪の償い方が分からない…見つからない…

 仮に私が正体を明かしたとしても、死んだ者は帰ってこない…傷が癒える訳でもない…

 世界中の憎しみが私一人に向くならまだいい、だが、確実に一夏も巻き込んでしまう…

 関係のない一夏を巻き込む可能性がある以上正体を明かす事も出来ない…

 結局、私には何も出来る事が無いという事しか分からない…

 だが、それでも答えを探さなければならないんだな…

 

千冬

「…そうか…私に出来る事があったら言ってくれ…力になる…」

 

 今の私に出来る事と言ったらそのぐらいしかないか…

 

「お願いね~♪」

 

セシリア

「篠ノ之博士!わたくしにもお手伝いさせてください!」

 

真耶

「わ、私もです!」

 

 この二人は私の様に後ろめたさもなく、純粋に力になりたいんだろうな…

 

「セーちゃんもメガネっ子もありがとね~♪」

 

真耶

「うう~…メガネっ子ですか~?巨乳メガネよりはマシですけど~…」

 

「それからセーちゃん、束さんの事は名前でいいよ♪」

 

セシリア

「は、はい!…えっと、では…束さん…でよろしいでしょうか…」

 

「うん♪それでよし♪」

 

永遠

「して束さん、これからどうするんじゃ?」

 

「とーくんは知ってるけど、今、第5世代の試作機を開発してるんだ~♪」

 

千冬

「第5世代だと!?」

 

真耶

「各国でも第3世代の開発に取り掛かったばかりなのに…」

 

セシリア

「既にそこまで…」

 

「そうでもないよ。とーくんに出会って無かったらまだ第4世代を造るのが精々だからね。」

 

真耶

「それでも第4世代は造れるんですね…」

 

千冬

「…世代………そういえば束【ドットブラスライザー】はどの世代に入る?資料には第3世代と書かれているが実際は違うんだろ?」

 

「一応は第5世代に入るよ。…と言いたいけど、束さんが今造ってる第5世代機もとーくんのISと比べるとどうしても性能が劣ってるんだよね~…だから本当なら第6か第7辺りの世代なんだよ。」

 

真耶

「だ、第6世代…第7世代…」

 

千冬

「それ程なのか…」

 

永遠

「ワシにはその辺がよう分からんがな…」

 

「ちなみに第5世代はIS本来の目的である宇宙で活動する為の試験用の機体だからね。」

 

千冬

「宇宙か…」

 

「詳細は言えないけど真空の宇宙空間で活動するから全身装甲(フルスキン)の機体になってるよ。」

 

セシリア

「永遠さんの機体と同じですのね。」

 

「とーくんのお陰で宇宙に行くなら全身装甲(フルスキン)が一番いいって分かったんだ!」

 

永遠

「フム…ならワシのISは宇宙で活動できるという事かのぉ?」

 

「確証はないけど多分できるよ。まあすぐに調べる方法もあるけどね。」

 

セシリア

「どうやるんですの?」

 

「簡単だよ!水に沈めればいいんだよ♪」

 

真耶

「な、何でですか!?」

 

「宇宙空間も水中も呼吸が出来ないのは同じだからね。潜って普通に呼吸が出来て動ければ宇宙でも最低限の行動は出来るんだよ。ちなみに、宇宙飛行士も宇宙空間での活動訓練は水の中でやってるんだよ。」

 

真耶

「そ、そうだったんですか!?」

 

「勉強不足だよメガネっ子!仮にもIS学園の教師なんだからさ!」

 

真耶

「すみません…」

 

「ついでだからとーくん。帰ったら試してみる?」

 

永遠

「やってみるかの。新型の開発にも役立つじゃろ。」

 

「そうだね♪やろ~やろ~♪」

 

千冬

「………」

 

 今の束は凄く楽しそうだな…

 当然か…贖罪の方法も見つかった上に、自分の夢に向かって正しい道を突き進んでいるんだからな…

 

「およ?どしたのちーちゃん?」

 

真耶

「織斑先生?」

 

永遠

「ん?」

 

セシリア

「どうなさったんですか?」

 

千冬

「…いや、何でもない…そんなに楽しそうなお前を見たのは久しぶりだと思っただけだ…」

 

「う~ん?そっかな~?」

 

千冬

「そうだ…」

 

 私も…見つけなければな…

 私の贖罪の方法を…

 

 ~千冬 Side out~

 

 




 次回【第024話:約束】



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第024話:約束

 ~セシリア Side~

 

 わたくしは今、永遠さんと先ほどの試合の事を話し合っています

 試合前の約束ですから…ですが

 

永遠

「セシリア、お主から見てワシの戦い方はどう見えたかの?」

 

セシリア

「…はい…正直に申せば…言う事がありません…」

 

永遠

「へ?」

 

セシリア

「永遠さんの実力はわたくしよりも遥かに上です…むしろわたくしの方が勉強になりました。」

 

永遠

「何が?」

 

セシリア

「武器を切り替える際の判断の速さ、そして、更識会長の使った爆発にも瞬時に対応されていました。…今のわたくしでは永遠さんと戦っても勝てる見込みはありません…」

 

永遠

「勝てんか…なら、お主はどうする?」

 

セシリア

「え?」

 

永遠

「勝てぬ相手だからといって初めから諦めるか?それとも、たとえ勝てずとも意地を見せて食らいつくか?」

 

 そんな事…決まってます!

 

セシリア

「永遠さん………わたくしは…戦いもせずに負けを認めたくありませんわ!父と母はわたくしを守る為にずっと戦ってきました!そんな二人に守られてきたわたくしが、自分より強いからと言って逃げる訳には参りません!もし逃げたら父と母に顔向けができません!」

 

永遠

「そうか…ならココに入ったら勝負してみんか?正々堂々と互いに全力を出し合ってな…」

 

セシリア

「はいっ!その時はわたくしの全身全霊をかけてお相手させていただきます!」

 

永遠

「それは、楽しみじゃのぉ♪…ココに入る楽しみが一つ増えたわい。」

 

セシリア

「フフッ♪それはわたくしもですわ♪」

 

 わたくしも今からすごく楽しみですわ♪

 

永遠

「ではセシリア、次に会うのは入学の時じゃ。それまでワシも腕を磨いておくぞい!」

 

セシリア

「あら…それは困りますわね…さらに差がついてしまいますわ!」

 

永遠

「カカカッ♪そんなに困った顔しとらんぞ?」

 

セシリア

「フフッ♪そうですわね…わたくしは帰国したらすぐに訓練に入りますわ!少しでも永遠さんに追いつくために、今まで以上に自分を鍛え上げますわ!」

 

永遠

「そうか、頑張るんじゃぞ!じゃが、無理をしすぎて体を壊さんようにな。適度に休む事も大事じゃぞ。」

 

セシリア

「はい♪ご忠告ありがとうございます♪」

 

永遠

「約束じゃぞ!」

 

セシリア

「約束ですわ♪」

 

 次にお会いした時、永遠さんとの約束を破らない為にも頑張りますわ!

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「ハァ~~~~~…」

 

「どしたのちーちゃん?そんな深い溜め息ついて?」

 

千冬

「ん?…いや、なんでも無い…」

 

「なんでも無い訳ないでしょ。悩み事でもあるの?」

 

 こいつ…分かって言ってるのか?

 

千冬

「………お前が羨ましくてな…」

 

「何が?」

 

千冬

「私たちは、火ノ兄に説教をされる事でかつての自分達の過ちを再認識した…」

 

「…うん…」

 

千冬

「そして、お前はその贖罪の方法を見つけた。…それは同時にお前の夢を目指す行為だ。…しかも、今度は間違わずに正しい道をお前は歩いている。」

 

「…そうだね…」

 

千冬

「…私には…それが羨ましくてな…火ノ兄に言われて改めて気づかされた。…いくらお前の口車に乗せられたからと言っても、あの事件はお前と私の二人で起こしたものだ。…今の女尊男卑なんて世界を作った原因は私達だ。…全ての始まりは私なんだ!!」

 

 …今も男と言う理由だけで傷ついている人達が大勢いる…

 …その人たちが傷つくそもそもの元凶は…私なんだ!

 

「ちーちゃん…」

 

千冬

「…何が…何がブリュンヒルデだ!?…何が世界最強だ!?…私はそんなに褒められる様な人間じゃない!世界中の人達を不幸にした犯罪者だ!テロリストだ!そんな私が何故のうのうと生きているんだ!」

 

「…じゃあどうするの?ちーちゃんはどうしたいの?」

 

千冬

「それが分からないんだ!?…自分でも何をすれば良いのか分からないんだ………火ノ兄の言ったように…お前に責任を押し付ける事も考えた…無関係を決め込む事も考えた………だが…出来ないんだ…それを選ぶ事が…出来ないんだ…」

 

 いつの間にか私は涙を流していた

 

千冬

「…だから…すべき事を見つけたお前が…私は羨ましいんだ!」

 

「………ちーちゃん…それは私も通った道だよ…とーくんに言われて…一年近く一人で考えた…悩んで、苦しんで、考えた末の答えが今の私なんだよ…だから私は何も言えない…何も言わない…これはちーちゃんが自分自身で考えないといけない事だから…」

 

千冬

「束…」

 

「…でもね…一つだけ約束するよ!」

 

千冬

「え!?」

 

「…私はちーちゃんがどんな答えを出そうと…それを受け入れるよ!」

 

千冬

「…本当か?」

 

「本当だよ♪この約束だけは絶対に破らないよ♪ただし!」

 

千冬

「な、何だ!」

 

「死ぬって言うのだけは絶対に許さないからね!」

 

千冬

「な!ば、馬鹿か貴様は!いくらなんでも死ぬなんて方法、選ぶわけ無いだろうが!」

 

「本当に~?」

 

千冬

「本当だ!?いくら私でも死んで楽になりたいとは思わん!」

 

「どうかな~?」

 

千冬

「束…貴様…いい加減にしろよ!」

 

 こいつは…そんなに私を怒らせたいのか!?

 

「…プッ…アハハハハハハハッ…」

 

千冬

「な、何を笑う!?」

 

「あ~ごめんごめん…いや~やっと怒ったと思ってね~。」

 

千冬

「は?」

 

「とーくんに説教された時のマネだよ。」

 

千冬

「マネ?」

 

「そ♪まあ束さんの時は笑わせたんだけどね~…一年前、とーくんに叱られた時、私も今のちーちゃんみたいに泣いて凹んじゃったんだ…でも、とーくんがその後すぐに笑わせる方に話を持っていったんだよ♪」

 

千冬

「火ノ兄は何でそんな事を…?」

 

「とーくんはね、徹底的に凹ませる事で自分のやった事を見つめ直させるんだよ!それを分からせると、怒らせるなり、笑わせるなりして元の状態に戻すんだよ。」

 

千冬

「無茶苦茶だな…」

 

「ま~ね~…でも、そのお陰で前向きに考えられる様になったんだよ!」

 

千冬

「そんな馬鹿な…」

 

「じゃあ今のちーちゃんはどうなのさ?さっきまであれだけ凹んでたけど今はどうなの?」

 

千冬

「何?…あれ?そういえば…」

 

「つまりそういう事だよ。…無理矢理戻す事で悪い考えを出来なくしてるんだよ。」

 

千冬

「…確かに…今は意地でも死んでたまるかって気持ちだな。」

 

「なら、もう大丈夫だね♪でも、ちゃんと自分で考えてね!」

 

千冬

「分かってる!」

 

 束も答えを出したんだ!私も見つけ出してみせる!

 

 ~千冬 Side out~

 

 




 次回『第025話:入学準備』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第025話:入学準備

 ~永遠 Side~

 

 試験を終えて数日、ワシは入学の為の準備をしておった

 と言っても準備なんぞ着替えを用意する程度じゃから前日にやればいいんで、今は日課の畑仕事と鍛錬の合間に束さん達からISの勉強をして貰っとる

 時々、束さんの研究を手伝ったりもしとるがの

 新型のデータ取りの為とはいえIS纏って海にダイブしたのは流石に少し怖かったがの

 

「とーくん、ど~したの?ぼ~っとして?」

 

クロエ

「兄様?」

 

永遠

「いや、この間の海に潜った時の事を思い出してな…」

 

「あ~、あれね~…」

 

永遠

「てっきり海岸から海に入って行くものと思っとったのに…まさか、空中から海のど真ん中に落っことされるとはのぉ…」

 

「ニャハハッ…でもそのお陰でとーくんの機体、全身装甲(フルスキン)のISなら真空の宇宙でも呼吸が出来る事が分かったんだからさ♪」

 

永遠

「別にそれだけならまだいい!じゃが、海の底まで潜らせる事はなかろぉ…」

 

「…いや~、つい勢いで…」

 

永遠

「何じゃと?」

 

クロエ

「お、落ち着いて下さい!その時、取れたデータはしっかり役に立ってますから!兄様の苦労は無駄じゃありません!」

 

「そそそ、そうだよ!とーくんの犠牲は無駄じゃないよ!」

 

永遠

「まだ死んどらんわ!?」

 

 勝手に殺すな!?

 

「ごめんなさ~い!」

 

永遠

「全く!」

 

 こんな感じで日々を過ごしていったんじゃ!

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~束 Side~

 

「ところでとーくん?」

 

永遠

「ん?」

 

「学園には3機全部持ってくの?」

 

永遠

「そのつもりじゃが。」

 

 それは困るな~…

 

「出来れば【ラインバレル】は置いてってくれないかな?」

 

永遠

「【ラインバレル】をか?」

 

「うん!あの子の再生能力を新型に使えないか調べたいんだ!」

 

永遠

「なるほどの…」

 

「宇宙で活動する時、とーくんの機体の中で一番役に立つのは【ラインバレル】だからね!」

 

永遠

「?」

 

 とーくん分かってないみたいだね

 

クロエ

「いいですか、宇宙では何が起こるか分かりません!」

 

「漂流物に当たって損傷する事だってあるかもしれないんだよ。それが原因で命を落とすことだってあるかもしれないんだ。」

 

クロエ

「そういった時【ラインバレル】なら壊れてもすぐに直りますしエネルギーも自動で回復します。」

 

「だから【ラインバレル】は一番生存率が高い機体なんだよ!」

 

永遠

「なるほどな!そういう事じゃったらいいぞ。」

 

「やった~♪とーくんありがとう♪あ、心配しなくてもずっとじゃないから後で届けるよ♪」

 

永遠

「別に急ぐ必要は無いからの。それに【戦国龍】と【ドットブラスライザー】の2体があれば十分過ぎる程じゃからな!」

 

「確かにそうだね~♪」

 

永遠

「じゃから、納得行くまでやればよい。」

 

「うん♪そのつもりだよ~♪」

 

 よ~しっ!やったるぞ~!

 

 ~束 Side out~

 

 




次回から原作本編に入ります。

投稿の間隔は週一になります。

 次回『第026話:IS学園』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1学期
第026話:IS学園


お待たせしました。

今回から本編に入ります。


 ~一夏 Side~

 

真耶

「このクラスの副担任になった山田真耶と言います。よろしくお願いします」

 

一夏

「………(き、気まずい…)」

 

 俺は織斑一夏、世界で初めての男のIS操縦者としてここIS学園に強制入学されてしまった

 俺は1年1組に編入されたんだけど、現在、クラス中の生徒の視線が俺に集まっている

 その理由は簡単!俺以外は全員女子だからだ!クラスどころか学園でただ一人の男だから皆珍しいんだろう…

 だからってそんなにガン見しなくていいだろうと思う…そんな事を考えていると…

 

真耶

「…くん?…斑くん?織斑一夏くん!?」

 

一夏

「え?は、はい!俺!?」

 

真耶

「大声出してごめんなさい!で、でもね、今自己紹介で『あ』から始まって次は『お』で始まる織斑くんなの。嫌かも知れないけどやってくれないかな?」

 

一夏

「い、嫌とかじゃないですから!そんなに謝らなくてもやりますから!」

 

真耶

「本当ですか?本当にやってくれますか?」

 

一夏

「やります!やりますから…えー…織斑一夏です、よろしくお願いします。」

 

女生徒達

「………」

 

 何だ、この視線!他にも何か言わないといけない空気になってる…えーと…

 

一夏

「…い、以上です!」

 

女生徒達

「………」

 

 ズンガラガッシャーン!!

 みんなコケた…

 

一夏

「あれ?ダメ?」

 

 あ、よく見たらコケてない子もいる…

 

「駄目に決まってるだろ馬鹿者!?」

 

 スパァーン!

 

一夏

「ってぇ!げ!呂布!?」

 

 じゃない、千冬姉!?

 

千冬

「誰が天下の飛将軍だ馬鹿者!?」

 

 ズドーン!!

 

一夏

「うごっ!!ち、千冬姉!」

 

千冬

「織斑先生と呼べ馬鹿者!?」

 

 ガンッ!

 

一夏

「ぐおお!!」

 

 さ、三回も殴らなくても…

 

真耶

「織斑先生。もう会議は終わったんですか?」

 

千冬

「ええ、山田先生、クラスへの挨拶を押し付けてしまい申し訳ない。」

 

真耶

「いいえ。副担任ですからこれくらいはしないと…」

 

千冬

「さて、私がこのクラスの担任の織斑千冬だ。私の仕事はこれから一年でお前達を使い物になる操縦者に鍛えぬくことだ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導する。そして「IS」を使う事の意味も伝えていくつもりだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな。」

 

 我が姉ながらどこの軍隊だよ…

 

生徒達

「キャーーーーーーッ!!!」

 

一夏

「ぐああぁぁーーっ!耳がぁー!!」

 

 何だいきなり!

 

生徒1

「キャー!千冬様、本物の千冬様よ!」

 

生徒2

「ずっとファンでした!」

 

生徒3

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」

 

生徒4

「私、お姉様の為なら死ねます!」

 

 最後の人何言ってんの!

 

千冬

「毎年毎年…なぜこれだけお調子者ばかりが集まるんだ…この反応が来るたびに嫌でも新年度が来たことを体感させられる…」

 

 毎年こうなのか!

 

生徒5

「キャーーーーー!お姉様!もっと叱って!罵って!」

 

生徒6

「でも時には優しくして!」

 

生徒7

「そして、つけあがらないように躾をして~!」

 

 どんどん酷くなってる…

 

千冬

「で…?挨拶も満足にできんのか、お前は…」

 

一夏

「千冬姉、俺は…」

 

 スパァーン!

 

千冬

「織斑先生と呼べ!」

 

一夏

「……はい、織斑先生…」

 

 何も殴らなくても…

 

生徒8

「え…?織斑くんって、あの千冬様の弟?」

 

生徒9

「それじゃあ、世界で唯一男でISを使えるっていうのもそれが関係して…」

 

生徒10

「いいなあっ…代わって欲しいな…」

 

 やばい!もうバレた!

 

千冬

「さて、まずは全員に一つ伝えておく。このクラスだが実はまだ全員揃ってはいない。一人遅れている。2時間目には来ると先程連絡があったので、その時、紹介をしてもらう。以上だ!」

 

 一人いないのか…けど女子なんだよな~…どうせなら男が来てくれないかな~…

 

真耶

「ではHRを終わります。…それからオルコットさんは少しお話があるので来てください。」

 

セシリア

「はい。」

 

 あれ、この子さっきコケなかった子だ…あの子だけ呼んでどうするんだろ?

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

 わたくしは今、山田先生に呼ばれた理由を聞いています

 

セシリア

「先生方、何か御用でしょうか?」

 

千冬

「ああ、さっき言った遅れている奴と言うのが火ノ兄でな…」

 

セシリア

「永遠さん!?永遠さんもこのクラスなんですか!?」

 

真耶

「え、ええ…それで、火ノ兄君にとっては始めての学園生活ですからオルコットさんには学園内でのお世話をお願いしたいんです。」

 

セシリア

「喜んでやらせていただきますわ!」

 

 永遠さんと同じクラスなんてもはや運命ですわ!

 

千冬

「…それから、お前には先に言っておく…」

 

セシリア

「はい?」

 

千冬

「…実はな、火ノ兄が来たら私の弟の一夏にジャーマンスープレックスをかける事になっている。」

 

セシリア

「ジャーマ、何ですの、それ?」

 

真耶

「プロレス技です。」

 

セシリア

「何故永遠さんがそんな事を?」

 

真耶

「それはですね………」

 

 詳しくは【第16話:入学前のお願い】を読んで下さい♪

 

真耶

「………という訳です。」

 

セシリア

「確かに永遠さんの言う通りですわね。永遠さんの生活を壊したんですものその位されて当然ですわ!…ですけど…織斑先生は本当によろしいのですか?」

 

千冬

「構わん!…アイツは今、自分がただの被害者だと思ってココにいる。あいつの軟弱な精神を叩き直すには、織斑によって被害を受けた火ノ兄が丁度良い。」

 

セシリア

「そうですか。後、永遠さんの登下校はどうなっておりますか?」

 

千冬

「それは火ノ兄が来てから言う。」

 

セシリア

「分かりました。」

 

 もうすぐ永遠さんに会えるのですね♪楽しみですわ~///

 

 ~セシリア Side out~

 

 




 次回『第027話:再会』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第027話:再会

お気に入り登録が250を超えました♪

皆さんありがとうございます♪

これからも頑張ります!!


 ~一夏 Side~

 

 HRが終わって休憩に入ると俺に向けられる視線は更に増えていた

 このクラス以外の生徒もやってきて俺を見ているからだ

 これじゃあ動物園のパンダと同じじゃないか…

 

「ちょっといいか?」

 

 見覚えのある黒髪ポニーテールの子だな…って!

 

一夏

「お前…箒か!」

 

「ああ…一夏、少し話がある…ついて来い…」

 

一夏

「ああ、分かった。」

 

 俺は箒について行ったけど、教室を出る時…

 

セシリア

「ルン♪ルン♪ルン♪…」

 

 さっき先生に呼ばれた子が上機嫌で戻ってきた

 

一夏

「………」

 

「おい!早く来い!」

 

一夏

「あ、ああ、すぐ行く!」

 

 で、俺達は学園の屋上にやってきたんだ

 

一夏

「久しぶりだな箒!」

 

「ああ、久しぶりだな…」

 

 …何で不機嫌なんだ?

 

一夏

「…どうかしたのか?機嫌が悪そうだが?」

 

「悪くなど無い!!…ところで一夏!さっきの女は何だ!!」

 

一夏

「さっきの?」

 

「お前とすれ違った金髪の女だ!ずっとあいつを見ていただろ!!」

 

 …ああ、さっきの子か

 

一夏

「いや、さっきHRが終わる時、あの子だけ先生に呼び出されただろ。戻ってきたら機嫌が良くなってたからどうしたのかなって思っただけだぞ。それに、俺の自己紹介の時、あの子だけコケてなかったからな。それで少し気になっただけだ。」

 

「…本当か?」

 

一夏

「本当だって。」

 

「………まあ信じてやろう…」

 

 絶対信じてないな…

 

「何だ!?」

 

一夏

「い、いや、何でもない!?」

 

「そうか…」

 

 ハア…相変わらず短気だな…

 

一夏

「じゃあ、改めて、久しぶりだな箒。」

 

「…ああ。」

 

一夏

「そう言えば、去年の剣道の全国大会で優勝したんだよな。おめでとう。」

 

「な、何で知ってるんだ!?」

 

一夏

「いや新聞で見たんだけど…そう言えば、引っ越してから会って無かったけど、親父さんや束さんは元気か?」

 

「!?………あの人は…姉さんは…私とは関係ない!」

 

一夏

「え?…それってどういう…」

 

 それからチャイムが鳴って教室に戻った俺達は千冬姉の出席簿を喰らう羽目になった…

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

 わたくしは今、心が張り裂けそうなほど昂ぶってますわ!

 もうすぐ永遠さんに会える♪待ち遠しいですわ~♪

 

千冬

「授業を始める前に先程言った遅れている生徒の事だが、まだ学園に到着していない。」

 

セシリア

「…え?」

 

 織斑先生は今何と?

 

千冬

「どうも思ったより遅れているようで、とりあえず着いたらすぐこの教室に来るように伝えておいた。だから、授業中に来るかも知れんのでそのつもりでいるように。」

 

 ガンッ!

 

真耶

「オルコットさん!?」

 

 ザワザワ…

 

真耶

「オルコットさん!しっかりして下さい!」

 

セシリア

「…何で…何で永遠さん来てないんですか~…先程来るっておっしゃったじゃないですか~…」

 

真耶

「そ、それは~…」

 

千冬

「…すまん…」

 

 ガンッ!!

 

千冬

「オルコット!?」

 

セシリア

「シクシクシクシク………」

 

千冬

「文句は遅れているアイツに言ってくれ…」

 

セシリア

「シクシクシクシク………」

 

 永遠さ~~~ん………

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

生徒達

「………」

 

 今、この教室の中は何とも言えない空気になっていた…

 

セシリア

「シクシクシクシク………」

 

 その理由は他でもないこの子、セシリア・オルコットだ…前の授業が終わる時に呼び出されて、上機嫌になって戻って来たんだけど…遅れて来る生徒がまだ来てないと知った瞬間…

 

セシリア

「シクシクシクシク………」

 

 …こうなってしまった…

 彼女、そんなに会うのが楽しみだったのか…

 とはいえ、それでも授業は進んで行ってる訳なんだけど…俺にとってはそっちのほうが大問題だった!

 …なぜなら!

 

真耶

「織斑君…今までで分からない所はありますか?」

 

一夏

「…すみません…全部分かりません…」

 

 授業の内容が全く分からないからだ!

 

真耶

「…ぜ、全部ですか?」

 

一夏

「全部です…」

 

真耶

「ホントに全部分からないんですか?」

 

一夏

「全く分かりません…」

 

真耶

「え、ええ!?」

 

千冬

「…織斑、入学前の参考書は読んだか?」

 

 参考書?…えーと、確か…あ!

 

一夏

「古い電話帳と間違えて捨てました。」

 

 ドゴンッ!

 

一夏

「グボッ!」

 

千冬

「必読と書いてあっただろうが馬鹿者!!」

 

 そ、そう言えば…確かに…

 コンコン

 

千冬

「ん?…山田先生、少し頼みます。」

 

真耶

「あ、はい!」

 

 千冬姉が廊下に出て行った…た、助かった!

 

千冬

「遅いぞ!一体今まで何をしていた!」

 

 なんだ!千冬姉の怒鳴り声が聞こえてきた…って事は…遅れた子が来たのか?

 

千冬

「(まあ、言い訳は後で聞くがその前に一つ頼まれてくれ。)」

 

 よく聞こえないけど千冬姉が何か頼んでるみたいだな…

 教室に戻ってきた千冬姉は一人の生徒を連れてきた

 けど、その生徒は!

 

一夏

「…えっ?…お、男!?」

 

 俺と同じ男だったからだ!俺以外に男の操縦者がいたのか!

 ザワザワ…

 クラスの生徒全員が驚いていた

 

千冬

「(すまんが頼む…)」

 

 千冬姉が小声で何かを言うとその男は小さく頷いて、いまだに泣いてるオルコットの所に向かった

 

セシリア

「シクシクシクシク………」

 

「ハァ~…いい加減正気に戻らんかああぁぁーーっ!!!」

 

 ドゴーンッ!

 

セシリア

「アガッ!」

 

生徒達

「えええええぇぇぇぇぇーーーーーっ!!!」

 

 な、何だ!コイツ!いきなり殴った!

 

セシリア

「うう~…痛いです~…ハッ、この拳骨は!」

 

「ようやっと正気に戻ったか!…久しぶりじゃな…セシリア…」

 

セシリア

「………と、永遠さん…永遠さ~んっ!」

 

生徒達

「えええええぇぇぇぇぇーーーーーっ!!!」

 

 殴った相手にいきなり抱きついた!?

 

セシリア

「永遠さ~ん…会いたかったです~…遅れるなんて酷いですわ~…」

 

 トワ?それがこの男の名前か?

 

 ~一夏 Side out~

 

 




 次回『第028話:再会後』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第028話:再会後

お気に入り登録が300行きました!

皆さんありがとうございます♪

これからも頑張ります!


 ~千冬 Side~

 

 やれやれ、やっと元に戻ったか…

 

千冬

「すまんな火ノ兄。私達ではどうしようもなかった。」

 

永遠

「ワシは別に構わんが一体何があったんじゃ?セシリアがこんな状態になる程の事があったんか?」

 

千冬

「お前が遅れて来たからこうなったんだ!?」

 

永遠

「む!それはすまんかったの。」

 

千冬

「それで、何故遅れた?」

 

永遠

「実は慣れない土地じゃから道に迷おてしもうてな。さっきようやく着いたんじゃよ。」

 

千冬

「?…お前、試験の日は時間前に来ていただろ?」

 

永遠

「あん時はロケットを使ったからの。今回は普通の乗り物で来たんじゃよ。」

 

千冬

「何故ロケットで来なかった?」

 

永遠

「一昨日からメンテ中で使えんかったんじゃよ。」

 

千冬

「そういう事か…分かった…なら早速だが、火ノ兄、自己紹介をしろ。」

 

永遠

「あいよ~…え~、ワシは火ノ兄永遠と言う。『永遠』と書いて『とわ』と読むんじゃ。こげな喋り方じゃがよろしゅう頼む。好きな事は寝る事と畑仕事じゃ。嫌いなもんは女だからというて威張りくさっとる女尊男卑の雌豚共じゃ。」

 

 ザワ…

 

 ハァ…雌豚か…ここまでハッキリ言うとはな…

 

永遠

「後は…もう一つあるが言わんとこう。以上じゃ!」

 

千冬

「よろしい、織斑よりはマシな紹介だな。火ノ兄、お前の席はオルコットの隣だ。」

 

永遠

「はいよ。」

 

生徒1

「ちょっと待って下さい!」

 

千冬

「何だ?」

 

生徒1

「何でその男を咎めないんですか!そいつは私達を雌豚と言って罵ったんですよ!」

 

 なるほど、こいつは女尊男卑の信者か…

 

千冬

「…自己紹介で何を言おうと自由だ。それに、火ノ兄は女尊男卑の女とは言ったが、全ての女とは言っていない。」

 

生徒1

「そ、それは…」

 

千冬

「火ノ兄の言葉に反応するという事は、お前は女尊男卑主義者か?」

 

生徒1

「そ、それがいけないっていうんですか!」

 

千冬

「いや…誰がどんな考えを持とうとそれは個人の自由だ。だが、私は女尊男卑を認めていなくてな。嫌悪していると言ってもいいな。」

 

生徒1

「そんな!?何故ですか!ブリュンヒルデと呼ばれるあなたが、私達女性を導いていく方が私達を否定するんですか!?」

 

 コイツ…そんな事を考えていたのか…

 

千冬

「私をブリュンヒルデと呼ぶな!私にお前達の勝手な理想を押し付けるな!私はどこにでもいる普通の人間だ!苦手な事もあれば嫌いな物もある只の人間だ!二度と私にそんなふざけた事を言うな!分かったか!」

 

生徒1

「グッ…分かり…ました…」

 

一夏

「…千冬姉…」

 

千冬

「織斑先生だ!何度言えばわかる!」

 

 さて、さっきの続きをするか

 

千冬

「それと織斑…火ノ兄が来た事で有耶無耶になって助かったと思っているようだが、さっきの参考書の件、まだ終わってはいないぞ!」

 

一夏

「ゲッ!」

 

千冬

「やはりそう考えていたな!後で再発行してやるから一週間以内に覚えろ。いいな!」

 

一夏

「い、いや…一週間であの分厚さはちょっと…」

 

 往生際の悪い奴め!

 

千冬

「やれと言っている!」

 

一夏

「…はい…」

 

永遠

「…参考書?セシリア、ワシが来る前になんかあったのか?」

 

セシリア

「さあ?わたくしも永遠さんに拳骨される前の記憶が曖昧で…」

 

永遠

「さよか…山田先生、何があったんじゃ?」

 

真耶

「あ、はい、実はですね………」

 

 山田先生は火ノ兄とオルコットに先程の一夏の事を話すと…

 

永遠

「馬鹿かコイツは?」

 

一夏

「グッ!」

 

セシリア

「阿呆ですのこの方?」

 

一夏

「グハッ!」

 

 まあ当然の反応だな…

 

真耶

「ふ、二人ともいくら本当の事でも言い過ぎですよ。」

 

一夏

「ゲハァッ!」

 

千冬

「山田先生も言い過ぎです。その通りですから否定はしませんが。」

 

一夏

「ゴパアァッ!?」

 

 パタッ…

 

 ん?何をしてるんだこいつは?

 

千冬

「起きんか馬鹿者!!」

 

 ドゴンッ!

 

千冬

「織斑…貴様、授業中に寝るとはいい度胸だな!」

 

一夏

「い、いや、千冬姉…俺はそんなつもり…」

 

千冬

「織斑先生だ!」

 

 ガンッ!

 

 チーーーン…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 千冬姉の一撃を喰らい意識を失った俺が何とか復活すると、授業が再開されていた

 

千冬

「色々ありましたが、山田先生、授業の続きをお願いします。」

 

真耶

「はい…あ!…火ノ兄君、授業の内容は分かりますか?一応ココまで進めたんですけど?」

 

 そうだ!俺は全く分からないんだ!アイツだって分からない筈だ!俺は一人じゃない!一緒に叱られようぜ!

 俺は心の中でサムズアップをしたけど…

 

永遠

「…その辺りなら分かるぞい。」

 

 …俺は一人だった…

 

真耶

「良かったです!ちゃんと予習をしてきたんですね♪」

 

永遠

「他にする事も無かったしのぉ…参考書は暇潰しにずっと読んどったんよ。」

 

千冬

「理由はともかくやっているなら問題ない。このクラスには参考書を捨てた上に何一つ勉強しなかった馬鹿が一人いるからな。」

 

一夏

「ううっ…」

 

千冬

「…ハァ…火ノ兄…すまんが、その馬鹿に勉強を教えてやってくれ。」

 

 ち、千冬姉!俺の為に!

 

永遠

「断る!」

 

一夏

「…え?…な、何で…」

 

千冬

「何故断る?」

 

永遠

「決まっとる!何故ワシがソイツの尻拭いをせんといかん!勉強しなかったのは他でもないソイツ自身じゃ!ワシには関係ない!」

 

 確かにそうだけど…

 

一夏

「そんな事言わずに、なあ、頼むよ。」

 

永遠

「嫌じゃと言うとる。第一、ワシに頼まずとも教わるなら他にもおるじゃろうが!」

 

一夏

「そ、そうかもしれないけど…どうせなら男同士で教えて欲しいんだよ。」

永遠

「やめんか気色悪い!ホモか貴様!ワシにそっちの趣味は無いわい!ワシの好みはれっきとした女子じゃ!男に欲情しとるホモは近寄るな!」

 

生徒2

「そ、そんな~織斑君がホモだったなんて~!」

 

生徒3

「せっかくのイケメンなのにーーー!!」

 

生徒4

「…一×永…いや…ここは永×一がベストかしら?ジュルリ…」

 

一夏

「あんたら何言ってんだ!?…俺はホモじゃねええぇぇーーっ!?」

 

 ヒソヒソ…

 

 なんかクラスの子が小声で話し始めたぞ!

 

千冬

「静まれ貴様ら!!今は授業中だというのを忘れたか!それから織斑!放課後になったら家族会議だ!何時から男に走ったか問いただすからな!」

 

一夏

「だから俺はホモじゃなあああぁぁぁーーーいっ!!!」

 

永遠

「変態は黙っとれ!…織斑先生。騒がして申し訳ない!」

 

千冬

「ああ………分かってはいたが…やはり断るか…」

 

永遠

「分かっとって聞いたんか?」

 

 え?…どういうことだ?

 

永遠

「そもそも、織斑先生は知っとるじゃろ………」

 

 知ってるって…何をだ?

 

永遠

「…ワシが…織斑一夏を嫌っとるのを…」

 

 ………俺が………嫌い!?

 

 ~一夏 Side out~

 

 




 次回『第029話:ジャーマンスープレックス』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第029話:ジャーマンスープレックス

 ~千冬 Side~

 

一夏

「俺が嫌いって…どういうことだ!何で今日会った奴に嫌われなきゃならないんだ!」

 

永遠

「…さっきワシは、嫌いなものがもう一つあると言ったじゃろ。」

 

一夏

「………まさか!」

 

永遠

「そうじゃ!ワシのもう一つの嫌いなモンはな…ワシの生活をぶち壊した織斑一夏!お前じゃ!」

 

一夏

「お、俺が?どうしてだよ!俺が何したって言うんだよ!?」

 

 仕方ない…教えてやるか…

 

千冬

「…織斑…お前がISを動かした事で、火ノ兄は帰る家が無くなるからだ。」

 

一夏

「…え?」

 

 ザワザワ…

 

一夏

「…帰る家が…無い…」

 

千冬

「火ノ兄はな、物心ついた頃からコイツの家が代々所有している小さな島でたった一人で生きて来た。」

 

一夏

「…一人で?」

 

千冬

「そうだ!その島に住む人間は火ノ兄一人だ!コイツは趣味が畑仕事だと言ったが、あれは自分で作った畑や田んぼを毎日手入れしていると言う意味だ!」

 

 ザワザワ…

 

千冬

「そんな暮らしをしている人間を全寮制のこの学園に入れればどうなる?手入れが出来ない田畑は荒れる。植えていた野菜は収穫できずに腐る。帰った時には畑も田んぼも荒れ放題だ。元の状態に戻すだけでも数か月はかかるだろうな。」

 

一夏

「………」

 

千冬

「織斑…お前は家に帰った時、何か失っている物はあるか?」

 

一夏

「………ない………」

 

千冬

「だろうな…だから火ノ兄はこの学園に入る原因を作ったお前が嫌いなんだ。」

 

一夏

「…俺だって…好きで動かした訳じゃ…」

 

千冬

「それは火ノ兄も分かっている。だから火ノ兄は入学前に私達とある約束をしている。」

 

一夏

「約束?」

 

千冬

「お前にジャーマンスープレックスをかける事だ。」

 

一夏

「ハアアァァーー?」

 

生徒達

「えええええぇぇぇぇぇーーーーーっ!!!」

 

永遠

「そういう事じゃ!覚悟せい!」

 

セシリア

「永遠さん!頑張ってくださいまし!」

 

一夏

「いやちょっと待ってくれ!何でジャーマンスープレックス?お前も何で応援してんの?」

 

永遠

「織斑先生に感謝せえよ!本当ならパイルドライバーを喰らわせてやろうと思っとったのをジャーマンスープレックスに変えてくれたんじゃからな!」

 

セシリア

「織斑先生が言ってましたわ。あなたは一度痛い目に合わせて貰った方がいいと。」

 

一夏

「ち、千冬姉!な、何でそんな事を…」

 

千冬

「織斑先生だ!?…お前、自分が望んでココに来た訳じゃないと思っているな?」

 

一夏

「うっ!?」

 

千冬

「やはりそうか!いいか!人は望む望まざるに関わらず集団の中で生きていくものだ。火ノ兄の様に始めから一人で生きていたならともかく、集団で生きてきた上でそれを放棄するなら、人であることをやめろ!」

 

一夏

「………」

 

千冬

「そして火ノ兄に一撃入れさせるのは、お前のその軟弱な根性をお前によって被害を受けた火ノ兄の手で叩き直す為だ!」

 

一夏

「そ、そんな!?」

 

千冬

「安心しろ…火ノ兄にはお前に対する確執はこの一発が最初で最後にするように言ってある。何より火ノ兄自身がそう言ってたからな。これが終わればただのクラスメイトとして接するそうだ。」

 

永遠

「そういう事じゃ!さて、いい加減やるとするかの!」

 

一夏

「ヒッ!…ま、待ってくれ!」

 

 ここまで言ってまだ逃げようとするか…

 

永遠

「断る!くたばれやあああぁぁぁーーーっ!!」

 

一夏

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーっ…」

 

 ドゴオオォォーーン!

 

「い、一夏ああああぁぁぁぁーーーーっ!」

 

千冬

「綺麗に決まったな…練習でもしてたのか?…見事なブリッジだ!」

 

セシリア

「あれがジャーマンスープレックスですか!始めてみましたわ。」

 

一夏

「…ブクブク…」ピクピク

 

 う~む、泡拭いて痙攣してるな…

 

「一夏!しっかりしろ一夏!」

 

千冬

「火ノ兄、起こせ!」

 

永遠

「へ~い…よっと!」

 

 ほぉ、気付けが出来るのか…

 

永遠

「ふんっ!」

 

一夏

「はっ!…ぐ、いっつ~~~っ!」

 

永遠

「さてこれでワシの気は済んだ。これからよろしくの、織斑。」

 

一夏

「え!?」

 

「き、貴様!一夏にあんな事をしてよくそんな事を言えるな!?」

 

永遠

「誰じゃおんしは?」

 

千冬

「…篠ノ之箒、束の妹だ…」

 

生徒達

「ええええぇぇぇぇーーーー!!」

 

生徒1

「篠ノ之さんって、あの篠ノ之博士の妹!?」

 

生徒2

「織斑先生が担任で男性操縦者が二人いて篠ノ之博士の妹もいるクラス!」

 

生徒3

「今年はなんてラッキーなの!」

 

「私はあの人と関係ない!!」

 

生徒達

「!?」

 

「………すまない…だが、私は確かに妹だが、あの人とは関係ない、何処にいるのかも知らないんだ…」

 

生徒達

「………」

 

 …まさか、火ノ兄の家にいるなんて思わないだろうな…

 

永遠

「…篠ノ之と言うたか、さっき織斑先生が言うとったじゃろ。コイツへの確執はこれっきりじゃと。」

 

「そんなこと信じられるか!」

 

永遠

「別におんしに信じて貰う必要は無いのぉ。決めるのは織斑じゃ、おんしでは無い。まあワシの方から積極的に関わるつもりは無いから安心せい。ホモになんぞ近寄りたくもないしの。」

 

一夏

「まだ言うのかよ!?」

 

「………」

 

一夏

「箒!その沈黙はやめてくれ!」

 

「………」

 

一夏

「何か言ってくれよおおぉぉーーっ!!」

 

永遠

「変態は放っといて…時に織斑先生、頼んどいたもう一つの件はどうなったんじゃ?」

 

一夏

「おぉぉいっ!?」

 

 ここでそれを聞いてくるか…

 

千冬

「ああ、理事長からの許可を貰うことが出来た。今日から大丈夫だそうだ。」

 

永遠

「それは良かった…織斑先生、後で理事長先生にお礼を伝えて貰ってもよろしいかの?」

 

千冬

「ああ、分かった。」

 

セシリア

「永遠さん良かったですわね♪」

 

永遠

「何じゃ知っとったのか?」

 

セシリア

「はい♪織斑先生から教えていただきましたの♪」

 

永遠

「そうじゃったか。…織斑、勉強は自分で頑張るんじゃな。ワシは放課後から朝まで学園におらんからな。」

 

一夏

「は?」

 

生徒1

「え!居ないってどういう事?」

 

千冬

「…火ノ兄は学園に入学する際、条件を2つ出した。1つはさっきの織斑に一撃入れる事。2つ目が、このIS学園から自宅までの登下校をさせて欲しいと言うものだ。」

 

生徒2

「いいんですか!?そんなこと許可して?」

 

千冬

「火ノ兄は特例だ。さっき言ったコイツの家の事情の為だ。」

 

生徒3

「あ…」

 

千冬

「そういう事だ。織斑、火ノ兄がお前の勉強を断ったのはこれが理由でもある。」

 

一夏

「…少しでも早く…畑の手入れをする…」

 

千冬

「そうだ。」

 

 キーン!コーン!カーン!コーン!

 

千冬

「時間か…授業を終わる前に伝えておく。次の時間は最初にクラス対抗戦の代表を決める。推薦したい者がいたら考えておけ。それから火ノ兄は入学手続きの書類を渡すからついて来い。以上だ!」

 

 …まあ、誰が推薦されるかは予想がつくけどな…

 

 ~千冬 Side out~

 

 




 次回『第030話:クラス代表』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第030話:クラス代表

 ~セシリア Side~

 

 クラス代表ですか…わたくしは誰にしましょうか?

 やっぱり、永遠さん!…ではダメですわね…永遠さんでは強すぎて意味がありませんもの…織斑先生もそう考えているでしょうね

 まあ、誰でもいいですわね…推薦された方を適当に選びましょうか…

 

セシリア

「さて、予習でもしましょうか…」

 

一夏

「…ちょっといいか?」

 

セシリア

「はい?」

 

一夏

「セシリア…オルコット、だったよな?」

 

セシリア

「そうですけど、名前位ちゃんと覚えたらどうですの。」

 

一夏

「す、すまない…まだ全員を覚えきらなくて…」

 

セシリア

「…まあいいですわ。それで、織斑さん、わたくしに何か御用ですか?」

 

一夏

「ああ、アンタ、火ノ兄と仲がいいだろ?」

 

セシリア

「モチロンですわ♪…と言うより、女性をアンタ呼ばわりするなんて本当に失礼な方ですわね!」

 

一夏

「わ、悪い…って、それなら火ノ兄はどうなんだ?人の事をホモだ変態だ言うアイツは!」

 

セシリア

「永遠さん?…永遠さんは話し方そのものがアレですもの。それに、アレでも最低限の礼節を弁えた話し方はしますのよ。男女関係なくアノ話し方ですから分かりづらいでしょうけど。あなたの呼び方は永遠さんへの話し方が原因でしょう。」

 

一夏

「そういえば…千冬姉にもあの話し方だった………でも、俺ってそんなに変な話し方だったのか?」

 

セシリア

「そうですわ!あれではあの様に言われて当然ですわ!…それで用件は何ですの?」

 

一夏

「そうだった。君は火ノ兄の事を知ってたみたいだけど、いつ知ったんだ?俺は二人目がいるなんて初めて知ったぞ。」

 

 ザワ…

 

 織斑さんの言葉にクラスの方たち全員が反応しましたわね…当然ですか

 

セシリア

「永遠さんが入学試験を受けに来た時ですわ。わたくしもその日は試験を受けに来ていましたので、そこで永遠さんとお会いしましたの。その時に永遠さんには色々とお世話になって親しくなったのですわ。」

 

一夏

「そうなのか…あれ?でも俺も試験は受けたけど他の受験者には会わなかったぞ?」

 

セシリア

「さあ?もしかしたら男性という事で一般の方とは別の場所で受けたのでは?わたくしと永遠さんはお互いに散歩をしていた時に偶然お会いしましたもの。」

 

一夏

「…それなら君しか知らなかった理由になるか…試験と言えば模擬戦には勝ったのか?」

 

セシリア

「モチロン勝ちましたわ!女生徒ではわたくしだけと聞きましたわ。」

 

一夏

「あ、いや、君じゃなくて火ノ兄の方だけど…流石に、そこまでは知らないか…」

 

セシリア

「紛らわしい聞き方しないでください!」

 

一夏

「わ、悪い!」

 

セシリア

「ハァ…勝ちましたわよ。」

 

一夏

「え?」

 

セシリア

「ですから、永遠さんは勝ちました!わたくしも織斑先生から許可を貰って試合を見ていたので間違いありません!」

 

一夏

「そ、そうか…」

 

セシリア

「?…何故そんなにガッカリしているんですか?」

 

一夏

「え!?い、いや、そんな事無いぞ!気のせいだよ!気のせい!」

 

セシリア

「?…おかしな方ですわね?」

 

 キーン!コーン!カーン!コーン!

 

セシリア

「織斑さん、早く席に戻ったほうが良いですわよ。」

 

一夏

「…ああ…」

 

セシリア

「?」

 

 一体何がしたかったんでしょう?

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 火ノ兄永遠か…俺がISを動かしたせいで被害を受けた人間…

 そして…俺の事をホモだの変態だの言った野郎!!

 ………俺そんなに変な言い方したのかな~…

 オルコットから詳しい事を聞こうとしたけど、結局大した事は分からなかった…

 千冬姉は、俺が被害妄想を持っていると言った…

 だから、火ノ兄にジャーマンスープレックスをかけさせたと言った…

 俺の根性を叩き直すと言った…

 俺はいつの間にか…千冬姉に…そんな風に思われる人間になっていたのか…

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「それでは、前の時間に言ったようにまずは再来週行われるクラス対抗戦に出場する代表を決める。これはそのままクラスの代表にもなるからそのつもりでいるように。それでは、自薦、他薦は問わない!誰かいないか!ちなみに選ばれた者に拒否権は無い。」

 

生徒1

「はい!織斑君を推薦します!」

 

一夏

「お、俺~!」

 

生徒2

「私は火ノ兄君がいいです!」

 

永遠

「む!ワシか?」

 

生徒3

「私もそれがいいと思います!」

 

生徒4

「私は織斑君で!」

 

 案の定一夏と火ノ兄の二人を推薦してきたか…だがな~

 

一夏

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!千冬姉!」バキッ!「織斑先生…」

 

千冬

「自薦、他薦は問わないと言った!拒否権は無い。それから一つ言い忘れたが…火ノ兄は代表には出来んからな。」

 

一夏

「な、何でだよ!」

 

 やはりそう思うか…オルコットは分かっていたみたいだな

 

千冬

「さっきも言った火ノ兄の家の事情だ。代表になれば帰る時間が遅くなるからだ。」

 

 本当はもう一つ理由があるがまだ言わない方がいいだろう…

 

一夏

「待ってくれよ!俺は納得いかねえ!」

 

千冬

「ほぉ、私の決定に納得がいかないか?」

 

一夏

「ああ、いかないね!確かに火ノ兄の事情も分かる!俺の勉強を見るとかそういうのなら文句はねえ!」

 

永遠

「元から見るつもりは無いぞ!」

 

一夏

「ウグッ…とにかく、そういう個人的な理由なら構わない!けど、それで全ての事が許されるなんて納得いかねえ!織斑先生!教師が生徒一人に贔屓していいのかよ!」

 

 他の連中も同じみたいだな…

 

千冬

「………仕方ない。言うしかないか…」

 

真耶

「そうですね…多分言わないとみんな納得しませんよ…」

 

千冬

「お前達、さっき織斑が火ノ兄一人を贔屓していると言ったがそれは違うぞ。」

 

一夏

「え?」

 

千冬

「私はクラス代表に火ノ兄を選べないと言っただけだ!他の事に関しては全てお前達と同じ扱いだ。」

 

生徒1

「なんで、クラス代表だけダメなんですか?」

 

千冬

「火ノ兄が強すぎるからだ。コイツが代表になると完全な出来レースになるからな。」

 

生徒達

「えええええぇぇぇぇぇーーーーーっ!!!」

 

生徒2

「出来レースって、そんなに強いんですか?」

 

千冬

「そうだ!正直に言って火ノ兄に勝てる奴は教師も含めてこの学園には一人もいないだろう。この私も含めてな!」

 

生徒達

「えええええぇぇぇぇぇーーーーーっ!!!」

 

生徒3

「お、織斑先生より強いって…」

 

生徒4

「そんな人がいるの…」

 

永遠

「それはさすがに言いすぎじゃぞ。」

 

千冬

「事実だろ。そういう訳で「ふざけんなっ!!」っ!?」

 

一夏

「コイツが…こんな奴が…千冬姉より強いだと!ふざけんな!俺は絶対に認めねえぞ!」

 

 全くコイツは…ん?…まずいな…何とか収めなければ!

 

千冬

「お前に認めて貰う必要は無い。私自身が認めている事だからな。誰が何と言おうとそれは変わらん。」

 

一夏

「俺は納得できねえ!こんなよく分かんねえ奴が千冬姉以上だなんて信じられるか!」

 

 いかん!このままでは!

 

 ドガンッ!

 

生徒達

「!?」

 

 …止められなかったか

 セシリア・オルコットを…

 

 ~千冬 Side out~

 

 




 次回『第031話:決闘』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第031話:決闘

お気に入りが400を超えました♪

皆さんありがとうございます!!

これからも頑張っていきます!!


 ~千冬 Side~

 

 さて、どうやって収拾をつけるかな…

 今のオルコットは簡単には止まりそうにないな…

 

セシリア

「………随分勝手な事を言いますわね…貴方…」

 

一夏

「オ、オルコット!」

 

セシリア

「…織斑先生…一つお聞きしてよろしいですか…」

 

千冬

「な、何だ!」

 

セシリア

「候補が二人以上いる場合はどうやって決めますか…」

 

千冬

「あ、ああ、試合を行って決めようと思っていたが…」

 

セシリア

「…では、わたくしは自薦いたします…」

 

永遠

「落ち着かんかセシリア!?ワシは気にしとらんから!」

 

セシリア

「永遠さんがよくてもわたくしが許せません!…決闘です…」

 

永遠

「セシリア!?」

 

セシリア

「決闘ですわ!?あなたのその性根、今度はわたくしが叩き直しますわ!」

 

一夏

「何だと!」

 

セシリア

「逃げますの?」

 

一夏

「!?…おう、いいぜ。四の五の言うよりも分かり易い!」

 

セシリア

「いいでしょう!では、わたくしが勝ったら永遠さんに今までの非礼を詫びて土下座しなさい!」

 

一夏

「へっ!いいぜ、土下座でも何でもやってやるよ!」

 

セシリア

「その言葉、もはや取り消せませんわよ!」

 

一夏

「取り消す気なんてねえよ!」

 

セシリア

「わかりました!ではこの場にいる人たち全員が証人です!」

 

一夏

「分かった。」

 

 コイツ…自分が誰に喧嘩を売ってるのか分かってるのか?

 

一夏

「オイ!ハンデはどの位欲しい?」

 

 …分かってなかったか…

 

セシリア

「あら?早速お願いですか?あれほど大口を叩いた割に情けないですわね?」

 

一夏

「いや、俺がどのくらいハンデをつけたらいいのかな~と?」

 

 自分が何を言ってるのかも分かっていないのか…

 念の為、山田先生に聞いておくか…

 

千冬

「(山田先生…試験の時、確かコイツは…)」

 

真耶

「(はい…私が自爆してしまったので不戦勝で勝ったみたいなものです…)」

 

千冬

「(それでハンデをやると言ってるのかコイツは…)」

 

真耶

「(そうみたいです。…どこからこんな自信が出てくるんですか?)」

 

千冬

「(私にもわからん…まさかここまで馬鹿だったとは…)」

 

生徒達

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

 

 何だ!?

 

生徒1

「織斑くん、それ本気で言っているの?」

 

生徒2

「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」

 

生徒3

「織斑君と火ノ兄君は確かにISを使えるかもしれないけど、それは言い過ぎよ!」

 

生徒4

「しかも、オルコットさんは専用機を持ってる代表候補生よ。勝てるわけないよ!」

 

 この小娘ども…

 

セシリア

「お黙りなさい!!永遠さんとついでに織斑さんという例外がある以上、条件は同じです!後は互いの実力が物を言うのです!わたくしは今、織斑さんと話してるんです!横からくだらない事を言わないで下さい!」

 

生徒達

「………」

 

 一夏はついで扱いか…まあいいか…

 しかし、実力が物を言う、か…オルコットの奴…分かってるじゃないか…これも火ノ兄のお陰か…

 …それに引き換えついで扱いされたうちの弟は…

 

一夏

「…じゃあ、ハンデはいい。」

 

千冬

「!?」

 

 コイツは………情けない…今の私にはその言葉しか出てこない…

 

永遠

「………情けないのぉ…」

 

千冬

「火ノ兄!?」

 

セシリア

「永遠さん?いきなり何を?」

 

永遠

「織斑一夏…お主はほんに…情けないのぉ…」

 

一夏

「俺が…情けないだと!?」

 

永遠

「そうじゃ…情けないが駄目じゃったら失望したと言うべきかの…」

 

一夏

「失望だとぉぉ!?」

 

永遠

「お主、自分が今まで何を言ったのか分かっとるのか?…まあ、分かってはおらんじゃろうな…そうでなければあんな台詞は出てこんか…」

 

一夏

「な、何言ってんだ!」

 

 やはり分かっていなかったか…

 

永遠

「織斑…お主さっきセシリアにハンデをやると言ったな。何故そんな事を言った?」

 

一夏

「何でって…」

 

永遠

「セシリアが弱いと思うて言ったんじゃろ。セシリアを女と見下して出た言葉じゃろ!」

 

一夏

「うっ…」

 

永遠

「その後、他の生徒達からセシリアの事を聞いた途端にお主はハンデを撤回した。何故取り消した?」

 

一夏

「それはっ…」

 

永遠

「セシリアが自分より強いと分かったから撤回したんじゃろ!自分より強い相手じゃからアッサリと手の平を返したんじゃろ!」

 

一夏

「ぐっ…」

 

 火ノ兄の奴、相当怒ってるな…

 一夏の胸ぐらに掴み掛るとはな…

 

永遠

「織斑!貴様は自分より弱い相手は見下し、強い相手には媚び諂うのか!勝てんと分かればやる前から怖気づくか!貴様には例え負けると分かっていても意地を見せようという気持ちさえないんか!」

 

一夏

「うっううっ…」

 

永遠

「お前の様な奴を何というか知っとるか!腰抜け(●●●)と言うんじゃ!!そんな奴を情けないと、失望したと言って、何が悪い!!」

 

一夏

「こっ腰抜け!」

 

永遠

「違うか!違うなら否定してみせい!言い返してみんか!!」

 

一夏

「…ぐっううっ…」

 

 …火ノ兄に突き飛ばされても立ち上がる事も出来ないか…

 ん?こっちを見た?

 

永遠

「言い返せんなら姉に助けを求めるか?」

 

一夏

「!?」

 

永遠

「ほんに情けない男じゃ…相手をするのも馬鹿らしい…」

 

一夏

「くっ…ううっ…ううぅっ…」

 

 ハァ…もはや言葉も出ないか…火ノ兄の言う通り本当に情けない…

 火ノ兄も一夏に興味を無くしたように無表情になってるな…

 

永遠

「…織斑先生…ワシは代表にはなれんが、代表決定の試合には出してくれんかの?」

 

千冬

「…別に構わないが…いきなりどうした?…」

 

永遠

「なに、セシリアと戦いたいと思ったんじゃよ!」

 

セシリア

「永遠さん…あっ!…フフッフフフッ♪」

 

永遠

「あの日の約束を果たそうと思うてな!」

 

 約束だと?

 

 ~千冬 Side out~

 

 




 次回『第032話:意気込み』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第032話:意気込み

 ~一夏 Side~

 

 俺は今、悔しさと後悔の気持ちで一杯だった…

 火ノ兄は俺を情けないと、失望したと、そして、腰抜けと言った…

 初めは、そんな風に言われて悔しかった!けど…俺はそう言われても否定できなかった…少し冷静になって考えるとその通りだったからだ…

 俺はオルコットを女だからと見下してしまった…強いと分かると手の平を返してしまった…

 そんな俺に火ノ兄は意地を見せる気持ちすら無いのかと言った…

 何一つ言い返す言葉が出てこなかった…

 俺は今になって後悔していた…何でオルコットにあんな事を言っちまったんだ…

 そして今、火ノ兄とオルコットは…互いに睨み合っていた

 

永遠

「あの日の約束を果たそうと思うてな!」

 

セシリア

「フフッ♪それはわたくしも言おうと思いましたわ!」

 

 約束?この二人、何を約束してたんだ!

 

永遠

「それは良かった!ならばワシも全身全霊をかけてお主と一戦交える事にしよう!」

 

セシリア

「わたくしもこの勝負を楽しみにしておりました。正々堂々とお互いの全力を出し尽くしましょう!」

 

 この二人、試合をする約束をしていたのか!

 

千冬

「お前達、盛り上がるのも結構だが試合は一週間後だぞ!」

 

永遠

「一週間後か…クカカッ!今から待ち遠しいのぉ!」

 

セシリア

「本当ですわ!ですが、待つのもまた楽しいですわよ!」

 

永遠

「カカカッ!違いない!」

 

セシリア

「フフフッ♪そうでしょう♪」

 

 バチバチ…

 

 二人の間で火花が散ってる…

 でも…なんだ!この胸を締め付ける感覚は!

 一週間後の試合は俺も出るのに…

 火ノ兄もオルコットもお互いの事しか見ていない…

 二人の眼には…もう俺が映っていない…

 俺自身の自業自得とはいえ…

 この二人にとって俺は、すでに戦う価値すら無いってのかよ…

 

「おい!その試合には一夏も出るんだぞ!貴様ら一夏の事を忘れるな!」

 

一夏

「ほ、箒!」

 

永遠

「そう言えばそうじゃったな。すっかり忘れておったな…」

 

セシリア

「永遠さんとの試合の事しか考えていませんでしたわ…」

 

一夏

「!?」

 

 やっぱり…そうなのかよ…

 

「貴様らあぁーっ!!」

 

千冬

「黙れ篠ノ之!試合に関係ない奴は黙っていろ!!」

 

「グッ…」

 

セシリア

「そうですわ織斑さん。先程の土下座の件はもういいですわ。」

 

一夏

「え?」

 

セシリア

「あなたの土下座なんて見る価値ありませんもの。試合も勝ち負けにも興味が無くなりましたわ。」

 

 興味が無くなっただと!

 何だよそれ…

 

一夏

「………」

 

 何なんだよ…

 この悔しさは………

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「………」

 

 一夏の奴、悔しさが顔に滲み出ているな

 それも仕方がない、オルコットを女だからと見下し、自分より強いと分かると手の平を返す…そんな奴は情けない!腰抜け!と火ノ兄に言われたんだからな

 まあ、私もその意見には同意できるからな…全く我が弟ながら情けない

 しかも…火ノ兄には腰抜け呼ばわりされ、オルコットには興味が無いと言われた

 そして今、火ノ兄とオルコットは一夏を全く見ていない

 一夏もそれが分かっているからこそ、ああやって表情に出ているんだろう

 その上、たった一週間で一夏がこの二人に特に火ノ兄に追いつける訳もない…となると…

 後は一夏がどれだけ喰いついていけるかだな…

 もしくは、喰いつく事すら出来ないのかもな…

 まあその時はその時だ…キツイ説教をしてやるか…

 

千冬

「お前達、そのくらいにしておけ!」

 

永遠

「あいよ!」

 

セシリア

「はい♪」

 

一夏

「………」

 

千冬

「試合は一週間後だ!それまでに全員ベストコンディションにしておくように!」

 

永遠

「分かっとるぞい!」

 

セシリア

「当然ですわ!」

 

一夏

「………はい…」

 

千冬

「織斑…さっきまでの威勢はどうした?」

 

一夏

「………」

 

千冬

「…私は何も言わんぞ。お前の自業自得だからな。」

 

一夏

「!?………はい…」

 

 火ノ兄とオルコットはともかく問題は一夏だが…このまま放っとくか

 

千冬

「山田先生、授業を始めましょう。」

 

真耶

「はい。」

 

 とりあえず、授業をするか…

 

 ~千冬 Side out~

 

 




 次回『第033話:布仏本音』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第033話:布仏本音

 ~永遠 Side~

 

 あの後、試合を行う事が正式に決まったんで授業を始めたんじゃ…

 で、今は昼休憩じゃ!ワシも腹が減ったし飯にするかの

 

セシリア

「永遠さん♪お昼をご一緒しませんか?」

 

永遠

「ん?別に構わんが…食堂で食うんか?」

 

セシリア

「そうですが?どうかなさいましたの?」

 

永遠

「いや、一応弁当を持ってきたからここで食おうと思ったんじゃが…まあ食堂で食えばよいか。ワシもご相伴に預からせて貰おうかの。」

 

セシリア

「フフッ♪それでは参りましょう♪」

 

 という訳でワシはセシリアと食堂に向かったんじゃ

 

 ………

 ……

 …

 

 食堂に着くと中にいた生徒たちの視線が一気にワシに向けられてきたが気にせん事にした

 料理を持ってきたセシリアと開いていた席に座ると、持ってきた弁当を出した

 

セシリア

「…あの永遠さん…何ですの、それ?」

 

永遠

「弁当じゃが?」

 

セシリア

「お弁当って…どう見ても竹にしか見えませんけど…」

 

永遠

「ああ、この中に「ね~ね~…」ん?」

 

 トレイを持った3人の女子が話しかけてきた…

 

?1

「な~に~それ~?」

 

?2

「あ、あの相席良いですか?」

 

永遠

「ワシは構わんぞ。セシリアは?」

 

セシリア

「わたくしも構いませんわよ。」

 

?3

「よし!」

 

 3人は空いていた席に座ると自己紹介を始めたんじゃ

 

静寐

「あの、私、鷹月静寐って言います!よろしくお願いします!」

 

清香

「私は相川清香。清香でいいよ。」

 

本音

「私は布仏本音~♪本音でものほほんでも好きに呼んでね~。ひののん、セッシー、よろしくね~♪」

 

セシリア

「セッシーって、わたくしの事ですか?」

 

永遠

「ひののん?」

 

本音

「そ~だよ~♪」

 

永遠

「ひののん…っと、こっちも名乗らんとな。ワシは火ノ兄永遠じゃ。よろしゅうな。」

 

セシリア

「セシリア・オルコットですわ♪」

 

本音

「それでひののん、これな~に~?」

 

セシリア

「…お弁当らしいですわ…」

 

清香

「え!これが?」

 

静寐

「竹にしか見えないけど…」

 

永遠

「見た目はそうじゃがこれを開くと…」

 

本音

「うわ~♪おむすびだ~!」

 

 中には笹で包んだ塩むすびが4つと沢庵が入っているんじゃ

 

清香

「本当にお弁当箱だったんだ…」

 

永遠

「何じゃ知らんのか?昔の人は竹を弁当箱や水筒にしておったんじゃぞ。」

 

静寐

「そう言えば、時代劇のドラマでも時々出てたね…」

 

セシリア

「そうなんですの?」

 

永遠

「そうじゃ。それにこうすると竹の風味が付いて旨味も増すんじゃよ♪」

 

本音

「へ~~~…」ジーーー

 

永遠

「ん?」

 

 本音の視線がワシのおむすびにくぎ付けになっとるな…

 

永遠

「………塩むすびじゃが、食うか?」

 

本音

「食べる~~~!いただきま~す♪あむっ…」

 

 ワシが1個本音に渡すと…旨そうに食べ始めた

 

静寐

「ど、どう?」

 

本音

「んっくん!…おいし~~~♪」

 

清香

「ほ、ホント!」

 

セシリア

「…あの…永遠さん…」

 

永遠

「…お主もか?」

 

セシリア

「…は、はい…」///

 

静寐&清香

「…あの~~~…」

 

永遠

「だと思ったわい…」

 

静寐&清香

「…」///

 

永遠

「………食いんさい。」

 

セシリア&静寐&清香

「いただきま~す♪」

 

セシリア

「…本当においしいですわ♪」

 

静寐

「うん♪丁度いい塩加減だわ♪」

 

清香

「笹って味がするのね~♪」

 

本音

「でしょ~♪」

 

永遠

「………」

 

 喜んでくれるのは嬉しいんじゃが…ワシの昼飯…沢庵しか残っとらんのぉ…

 

セシリア

「おいしかったですわ♪…あ!」

 

本音

「セッシー…ど~したの~?」

 

セシリア

「永遠さんのお昼…」

 

静寐&清香

「ああっ!?」

 

永遠

「…ああ、気にせんでいい…ハァ…」

 

 そういうとワシ残った沢庵を口に放り込んだんじゃ

 仕方がない、沢庵と水で腹を満たすか…

 

セシリア

「…え~と…と、永遠さん、わたくしのをお食べ下さい!」

 

静寐

「…わ、私のもいいよ!」

 

清香

「私も!」

 

本音

「分けてあげる~♪」

 

永遠

「…すまん…」

 

 ワシはありがたく4人の料理から少しずつ貰っていただいた…お陰で腹も十分満たされたわい

 

本音

「ところでひののん?」

 

永遠

「何じゃ?」

 

本音

「変な喋り方だね~?」

 

永遠

「…そうかの?」

 

本音

「そだよ~。」

 

永遠

「昔からこれじゃからの…直せと言われても直せんわい。直す気も無いがの。」

 

本音

「そっか~♪」

 

永遠

「話し方じゃったらワシほどではないがお主も変わっとるぞ?随分間延びした話し方じゃと思うたが。」

 

本音

「う~ん?私も昔からだからね~…直せないんだ~♪」

 

永遠

「カカカッ、そうじゃな。直せんのぉ。」

 

本音

「カカカ~♪そうなのだ~♪」

 

永遠

「マネするでない!」

 

本音

「カカカ~♪ごめ~ん♪」

 

永遠

「全く…変わった娘じゃ…」

 

セシリア

「ム~~~!」

 

 ん?セシリアの奴、頬を膨らませてどうしたんじゃ?

 

永遠

「どうかしたんか?」

 

セシリア

「何でもありません!?」

 

永遠

「そ、そうか…」

 

本音

「アハハ~♪セッシー面白~い♪」

 

セシリア

「本音さん!!」

 

永遠

「カカカッ♪お主も十分面白いぞ♪」

 

本音

「ム~ッ!ひののんヒド~イ!」

 

永遠

「カカカカッ♪」

 

静寐&清香

「アハハハッ♪」

 

 布仏本音か…ほんに面白い娘じゃ…

 その後もワシ等は他愛のない話をしてから教室に戻ったんじゃ

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

一夏

「………」

 

 楽しそうだな~…火ノ兄やオルコット達の笑い声がこっちまで聞こえてくる…

 …それに引き換えこっちは…

 

「一夏!今日の放課後から私がお前を鍛えてやる!お前を腰抜け等と言った奴等に目にもの見せてやれ!」

 

 …火ノ兄とオルコットがいる方を睨みながら箒がキレてるんだよな~…

 ていうかここって食堂なんだけどな…

 

一夏

「箒…少しは場所を考えろよ…」

 

「え?………はっ!す、すまん!」

 

 俺に言われて箒も周りの視線に気づいたみたいだな

 俺が腰抜けって言われた事が他のクラスにも知られたか…

 

一夏

「もう遅いよ…」

 

「本当にすまん!…それもこれも全部あいつ等が…」

 

一夏

「いや、俺が言うのもおかしいけど、今のは全部お前が悪いだろ!責任逃れするなよ!」

 

「ううっ…すまない…」

 

 俺…これからどうなるんだろ…

 

 ~一夏 Side out~

 

 




 次回『第034話:帰宅』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第034話:帰宅

お気に入りが遂に500を超えました♪

これも皆さんのお陰です♪

これからも頑張っていきます!!


 ~永遠 Side~

 

 昼飯を食った後、午後の授業も終わったんで今は放課後じゃ!

 初日だけに色々あったがさっさと帰るとするかの

 早う畑を見にいかんとな!

 …そう思っとったんじゃが…

 

真耶

「織斑君、火ノ兄君、まだ教室にいてくれましたか。」

 

永遠

「ん?どうかしたんかの?」

 

真耶

「はい。実は寮の鍵を渡し忘れてしまいまして。」

 

一夏

「あれ?確か一週間ぐらいは家から通う事になってたと思うけど?」

 

永遠

「山田先生、ワシは家から通えるように許可は貰っとるが?」

 

真耶

「ええ、火ノ兄君はそうです。ただ、織斑君なんですが…事情が事情なので今日から入寮して貰う事になりました。急に決まった事なので今は空き部屋が無いんです。ですから、すみませんが相部屋になります。」

 

一夏

「え?そうなんですか…まあいいですよ。相部屋って火ノ兄なんでしょ?なら一人部屋と変わらないじゃ「馬鹿者!」…え?」

 

千冬

「火ノ兄は元から自宅通学だ!初めから寮に部屋は無い!」

 

一夏

「えっ!?」

 

真耶

「そういう事なので、織斑君は女子との相部屋になります。」

 

一夏

「ええぇぇーーっ!!」

 

真耶

「本当にごめんなさい!」

 

一夏

「いやそんなに謝らなくても…」

 

真耶

「………」ウルウル

 

一夏

「そんな顔しないでください!怒ってないですから!」

 

真耶

「本当ですか~…」

 

一夏

「本当ですから落ち着いて下さい!」

 

真耶

「ありがとうございます~…ではこれが鍵です。1025号室が織斑君の部屋です。」

 

一夏

「どうも…あ、俺の荷物!」

 

千冬

「私が手配しておいてやった。ありがたく思え。着替えと携帯の充電器があれば十分だろ。残りは休みの日にでも取りに行け。」

 

一夏

「…はい、ありがとうございます…」

 

真耶

「後、夕食は6時から7時に寮の一年生用食堂で取って下さい。ちなみに各部屋にはシャワーがありますけど、大浴場もあります。学年ごとに使える時間が違いますけど…織斑君は今のところ使えません。」

 

一夏

「何でですか?」

 

千冬

「馬鹿かお前は!同年代の女子と一緒に風呂に入りたいのか?」

 

一夏

「え!」

 

真耶

「お、織斑君!女子とお風呂に入りたいんですか!?」

 

一夏

「い、いや、入りたくないです!」

 

真耶

「えっ?女の子に興味が無いんですか!?」

 

千冬

「やはりお前…」

 

 さっきは冗談のつもりじゃったが、まさかコイツ、本物じゃったとは…

 

一夏

「え?…な、何?」

 

永遠

「…織斑…ワシの半径1m以内に入ってくるでないぞ!」

 

一夏

「おい!それどういう意味だ!」

 

千冬

「やはり家族会議を開くしかないか…」

 

一夏

「そういう事かよ!だから俺はホモじゃねええぇぇーーっ!!」

 

永遠

「ワシ等は誰もお主がホモとは言っとらんぞ。」

 

一夏

「えっ!」

 

千冬

「…自分で認めたか…」

 

一夏

「違うっつってんだろうがーーっ!!俺は普通に女の子が好きだーーー!!」

 

千冬

「言い訳は後でじっくり聞かせて貰うとして、火ノ兄、寮にお前の部屋は無いが、食堂で食事をする事は出来る。食事の時間は覚えておけ。」

 

永遠

「承知した。わざわざ申し訳ない。」

 

真耶

「いいえ、では私達は会議があるのでこれで失礼しますね。織斑君、道草しないで寮に帰るんですよ。火ノ兄君は気をつけて帰って下さいね。」

 

永遠

「ワシは大丈夫じゃよ!」

 

千冬

「そうか…ではまた明日な!…織斑…夕食が終わったら私の部屋に来い!家族会議だ!!」

 

一夏

「ちょ!ホントにやるのかよ!?」

 

千冬

「当たり前だ!」

 

真耶

「あははは……」

 

 山田先生…笑い声が渇いとるぞ…

 

永遠

「ではワシはこれで…また明日!」

 

真耶

「あ、はい、さようなら!」

 

一夏

「千冬姉ええぇぇーーっ!!」

 

 馬鹿の声が木霊しとるが無視じゃな

 

 ………

 ……

 …

 

 さて、ようやく帰れるが、セシリアに一言挨拶しとくかの…

 

永遠

「え~~~っと…おお!いたいた。お~い、セシリア!」

 

セシリア

「永遠さん♪今からお帰りですか?」

 

永遠

「うむ!じゃが帰る前にお主に挨拶しとこうと思うての。」

 

セシリア

「まあ♪わざわざ、ありがとうございます♪」///

 

永遠

「気にせんでいい。」

 

セシリア

「はい♪ですが、永遠さんともっとお話ししたかったですわ…」

 

永遠

「すまんの…今日はもう戻らんといかんから勘弁してくれ。明日の放課後でいいなら少し話さんかの?」

 

セシリア

「よろしいんですの?」

 

永遠

「1時間程度でいいなら構わんよ。」

 

セシリア

「十分ですわ♪」///

 

永遠

「それは良かった!では、また明日な!」

 

セシリア

「はい♪また明日お会いしましょう♪」

 

 ワシはセシリアと別れた後、校門前で【ドットブラスライザー】を展開して、家に帰ったんじゃが、この時、ワシのISを見ていた者がおる事に気づかんかったんじゃ…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~? Side~

 

「な、何アレ!アレもISなの!?」

 

 私は偶然、学園から飛び立ったISを見てしまった…

 その姿に私は驚いたままISが飛び去った方角をずっと見続けていた…

 一瞬だけ見えた白い機体を思い出して私は…

 

「…カッコいい………」

 

 そう呟いていた…

 

 ~? Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 今私の前には夕食を終えた一夏が正座している

 

千冬

「さて、家族会議を始めようか…」

 

一夏

「………」

 

千冬

「一夏………」

 

一夏

「………はい…」

 

千冬

「何時から男に走ったあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

一夏

「誤解だああああぁぁぁぁーーーーっ!」

 

 私達の家族会議は朝まで続いた…

 

 ~千冬 Side out~

 

 




 次回『第035話:代表決定戦』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第035話:代表決定戦

 ~永遠 Side~

 

 あれからアッと言う間に一週間が過ぎ今日は試合当日じゃ!

 初日に家に帰った後、束さんに織斑との一件を話そうとしたんじゃが既に知っていたんじゃ

 謝ろうと思うたら束さんも織斑の言った事には呆れ果てていたようで気にせんでいいと言うてくれたんじゃ

 むしろよう言うてくれたと感謝されたぞい!

 後、織斑には国から専用機が用意される事になったそうじゃ

 まあ、ワシやセシリアには関係ない事じゃが、その方が手加減せんで済むから丁度良かったわい

 で、今ワシは織斑と同じピットにいるんじゃが…織斑の機体がまだ届いとらんらしい

 

一夏

「…なあ、箒?」

 

「………」

 

一夏

「気のせいかもしれないんだが…」

 

「気のせいだ!」

 

一夏

「この一週間、剣道しかしてこなかったんだが…」

 

「………」

 

一夏

「肝心のISの事、何も教えて貰ってないんだが?」

 

 何じゃと!?

 

「仕方ないだろ!お前のISが来てないんだから!」

 

一夏

「そうだけど…知識とか基本的な事とかあっただろ。」

 

「………」

 

 つまりコイツはこの一週間何もしとらんのか?

 まさか全部篠ノ之任せにしとったとは…やはりコイツは馬鹿じゃな!

 後、何故にその篠ノ之がおるんじゃ?

 

千冬

「火ノ兄、織斑の機体がまだ届いていないから初戦はお前とオルコットで試合をして貰う。」

 

永遠

「あいよ!…時に織斑先生?」

 

千冬

「何だ?」

 

永遠

「何故に篠ノ之がおるんじゃ?ココは関係者以外は立ち入り禁止の筈じゃが?」

 

千冬

「ああ、それはな…」

 

「私は一夏の幼馴染だ!いて何が悪い!」

 

千冬

「…こう言って勝手に居座っているんだ…」

 

永遠

「さよか…篠ノ之…お主の言い分じゃったら友達でもクラスメイトでもココにいていい事になるぞ。」

 

「何だと!?」

 

永遠

「それにお主、何かと幼馴染と言う言葉を使っとるが幼馴染ゆうんは何の力もないただの呼び方(●●●●●●●●●●●●)の一つじゃ。幼馴染じゃからといって織斑のおる所に来ていい理由にはならんぞ。一度辞書で調べてみい。『幼馴染の居る所には何処だろうと来てもいい』なんて載っとらん筈じゃ。」

 

「き、貴様!?」

 

永遠

「ワシ…何か間違ったこと言うたかの?」

 

千冬

「いいや、お前は何一つ間違った事は言ってないぞ!」

 

「千冬さんまで!」

 

一夏

「ま、待ってくれよ千冬姉!…俺は箒がいても…」

 

千冬

「織斑先生だ!お前の意見は聞いていない!この場所は火ノ兄が言ったように関係者以外立ち入り禁止の機密区画だ!そこに勝手な理由で入り込んでる時点で篠ノ之は幾つもの規則を犯しているんだ!」

 

「!?…私が…規則違反!?」

 

千冬

「当たり前だ!私達教師が許可したならともかく、お前は勝手に入ってきたんだからな!」

 

「な、なら今すぐ許可を下さい!」

 

千冬

「馬鹿かお前は!既に入り込んでおいて今更許可をよこせとは何様のつもりだ!」

 

「そ、それは…」

 

真耶

「お待たせしましたーっ!!織斑君の専用機が届きましたよ!…って何ですかこの空気?」

 

千冬

「何でもありません!少し馬鹿に説教をしていただけです。」

 

「うっ!」

 

真耶

「はぁ…何かあったんですか?」

 

千冬

「気にする必要はありません。それで例の物は?」

 

真耶

「あ、はい、織斑君はこちらに来て下さい。」

 

 そこには一つの白いISがあったんじゃ

 ワシの【ドットブラスライザー】と色が被っとるな…

 

一夏

「これが俺の…」

 

真耶

「はい!織斑君の専用機【白式】です!」

 

一夏

「【白式】…」

 

千冬

「織斑、すぐに初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)を済ませるぞ!さっさと【白式】に乗れ!」

 

一夏

「は、はい!」

 

千冬

「その間に火ノ兄とオルコットの試合を行う。火ノ兄、準備は?」

 

永遠

「出来とるぞ。………あっちはいいんかの?」

 

 篠ノ之の方を指さすと…

 

千冬

「ほっとけ!オルコットの方も終わっているな?」

 

真耶

「はい!いつでも出られるそうです!」

 

「………」

 

 ほっとけと言うならほっとくかの…

 ワシには関係ないしの…

 逆恨みされそうじゃが…

 そん時は無視すりゃいいか…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

千冬

「火ノ兄!オルコットが待っている!早く行って来い!」

 

永遠

「了解…んじゃ、ちょっくら行って来るかいのぉ…」

 

 あれ?…そう言えばアイツISスーツ着てないぞ?

 しかも、ISじゃなくて刀を持ってカタパルトから歩いてアリーナに出て行ったけど…

 

一夏

「あの…ちふ、織斑先生…火ノ兄の奴、ISスーツに着替えていないけど?それに、ISじゃなくて刀を持って行ったんだけど?ていうか何でアイツ刀なんか持ってんだ?」

 

千冬

「ん?ああ、それはな…火ノ兄のISは少し特殊でな…あの刀がISの待機状態だ…ちなみにアレは軍刀と呼ばれる刀だ…その上、アイツはISスーツがいらんのだ…まあ、見てれば分かる。」

 

一夏

「ISスーツ着なくていいのか…いいなぁ、面倒臭くなくて…」

 

千冬

「それに関しては私も同意見だ。一々着替えるのが面倒な上にあの格好だからな…」

 

真耶

「そうですね~…面倒ですし、あの格好ですからね~……」

 

 みんなそう思ってたんだ…確かにISスーツって傍目にはスク水だもんな~…

 

 ザワザワ…

 

一夏

「なんか騒がしいな?」

 

千冬

「大方、火ノ兄がIS無しで出て来たからだろ。小娘共これからタップリと驚くといい!」

 

真耶

「そうですね~…アレは驚きましたもんね~…」

 

一夏

「…どういう事だよ?」

 

千冬

「見てれば分かると言ったぞ。モニターを見ていろ。そろそろ始まる。」

 

一夏

「え?」

 

 そう言われて視線をモニターに戻すと、火ノ兄が軍刀を抜いて正面に向けていた 

 

一夏

「何してんだアイツ?」

 

 そのまま、軍刀で正面に円を描くと刀の切っ先が通った後が光の円になった

 その円から光が出ると正面にいた火ノ兄を包み込んだ

 

一夏

「何だ!?」

 

 光が消えるとそこにいたのは火ノ兄じゃなくて白い全身装甲(フルスキン)のISが立っていた

 

一夏

「な、何だよアレ!?…アレが火ノ兄の…」

 

千冬

「そうだ!アレが火ノ兄のIS【ドットブラスライザー】だ!!」

 

一夏

「【ドットブラスライザー】…か、かっけええ!」

 

 ISっていうかロボットじゃねーか!?

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

 フフッ♪永遠さんと出会ってから今日まで、積み重ねてきたわたくしの力を遂に見せる時が来ましたわ!

 

永遠

「すまん!待たせたかの?」

 

セシリア

「いいえ、大丈夫ですわ♪」

 

永遠

「そうか!」

 

セシリア

「この日を楽しみにしておりました!…永遠さん!!わたくしと【ブルー・ティアーズ】の力を見せて差し上げますわ!!」

 

永遠

「望むところじゃ!ワシと【ドットブラスライザー】が受けて立つわい!!」

 

 <セットアップ ブラストソード>

 

 【マルチギミックサック】を出しましたわね!

 

セシリア

「…最初は片手剣ですか。」

 

永遠

「コイツが一番使いやすい形態じゃからな。」

 

 まずは様子見、という事ですわね…

 

アナウンス

『それではこれより、火ノ兄永遠VSセシリア・オルコットの試合を始めます。………試合開始!』

 

セシリア

「行きますわよおおおぉぉぉーーーっ!!!」

 

永遠

「来いやあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

 ~セシリア Side out~

 

 




 次回『第036話:第1試合【ドットブラスライザーVS蒼い雫】』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第036話:第1試合【ドットブラスライザーVS蒼い雫】

 ~簪 Side~

 

 …私は更識簪

 …一応日本の代表候補生をしている

 …でもある理由でまだ専用機は持っていない

 …今私は1組のクラス代表を決める試合を見に来ている

 …試合には二人しかいない男性操縦者も出ると言うからどの程度の物か少し気になった

 …そして、私は驚きと感動に体が震えていた!

 …何故なら、私の目の前に以前見かけたあの白いISが現れたからだ!

 

「…やっぱりカッコいい…【ドットブラスライザー】って言うんだ……」

 

 …今、試合をしている【ドットブラスライザー】は私の好みのど真ん中だった!まさか、男性操縦者のISとは思わなかったけど…

 

本音

「かんちゃんの趣味にピッタリのISだね~♪」

 

「そうだね!…って、ほ、本音!」

 

 この子は布仏本音、一応私の専属メイドをやっている

 

「…ねえ、本音はあの機体の事は知ってた?」

 

本音

「ん~?私は何も知らないよ~♪ひののん、ISを一度も使わなかったもん♪」

 

「…そうなんだ…」

 

 …それにしても火ノ兄さんだっけ、変なこと言ってたな、形態ってどういう事かな?

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~三人称 Side~

 

 ≪アリーナ≫

 

 試合開始と同時に最初に仕掛けたのはセシリアだった

 

セシリア

「先手必勝!」

 

 セシリアは大型ライフル【スターライトmkⅢ】で攻撃したが、永遠も向かって来るレーザーを躱し、或いは剣で弾きながら接近しようとしていた

 だが、セシリアの射撃によって中々近づけずにいた

 

永遠

「チッ!…(…この形態では不利か!…ならば!)」

 

 <セットアップ ブラストマグナム>

 

 永遠は片手剣では不利と判断し【マルチギミックサック】を片手銃に変形させた

 

永遠

「射撃には射撃じゃ!」

 

セシリア

「わたくしに射撃で勝てるとでも!」

 

 二人はそのまま射撃戦を開始した

 永遠は連射性で、セシリアは精密性で勝負していたが、射撃ではやはりセシリアの方が一枚上手であった

 

セシリア

「やはり、永遠さんは、射撃が得意では無いようですわね!」

 

永遠

「バレとったか!やはり接近戦で行くしかないのぉ!」

 

 <セットアップ デュアルブレード ブラストガーター>

 

 永遠は【マルチギミックサック】を双剣と盾に変形させると、向かって来るレーザーを回転させた双剣で防ぎながらセシリアへと突っ込んでいった

 

セシリア

「クッ!…(やはり、あの形態が一番厄介ですわね!)」

 

 今度はセシリアが苦い表情をしながらレーザーを撃っていたが、全て防がれてしまい、ついに接近を許してしまった

 永遠はそのまま双剣でセシリアに斬りかかったが…

 

永遠

「はああぁぁーーっ!」

 

セシリア

「まだですわ!」 

 

 ガキィィン!

 

 セシリアは左手に接近武装【インターセプター】を展開して防いだ

 

永遠

「…接近戦も出来たんか!」

 

セシリア

「…得意ではありませんが…出来ないわけではありませんわ!」

 

 そのまま力勝負の鍔迫り合いになったがパワーは【ドットブラスライザー】が上の為セシリアは押され始めた

 

セシリア

「くぅぅっ!(力は向こうが上…でしたら!)」

 

 セシリアは右手に持っていた【スターライトmkⅢ】を放り投げ砲身の方を掴み直すと、なんとライフルでそのまま永遠を殴りつけた

 

 ボカァァッ!

 

永遠

「何いぃぃ!?」

 

観客

「ええええぇぇぇぇーーーーっ!!」

 

 永遠を殴りつけた隙に再びセシリアは距離を取った

 

セシリア

「ハァハァ…ど、どうです永遠さん!」

 

永遠

「ググッ!…頭に響くのぉ…ライフルで殴るとは…じゃがそげな使い方をしとるといずれ使い物にならなくなるぞ!」

 

セシリア

「…ご安心ください!このライフルは今の様な事を想定して強度を上げております!」

 

観客

「ええええぇぇぇぇーーーーっ!!」

 

 観客も驚いていた…それもその筈、何処の世の中にライフルで殴る事を考えている人間がいると思うのだろうか

 

セシリア

「…永遠さん相手に接近戦が短剣1本では不安しかありませんもの。ですから、ライフルの強度を上げて鈍器として使用出来る様にしましたわ。」

 

永遠

「…ワシと戦う為にライフルをハンマー代わりに出来るようにしたんか!…面白い!!」

 

観客

「………」

 

 二人の会話を聞いて観客たちも気づいた

 セシリアは永遠との戦いの為だけにライフルを改造したのだと

 

永遠

「じゃが、そんな奇襲は二度は通じんぞ!…行くぞぉぉーーっ!!」

 

セシリア

「今度はそう簡単に近づけさせません!踊りなさい!【ブルーティアーズ】の奏でる円舞曲(ワルツ)を!」

 

 セシリアはそう言うと機体から2つのパーツを切り離した

 

永遠

「何じゃこれは!?」

 

セシリア

「これがわたくしのIS【ブルー・ティアーズ】の奥の手、自立機動兵器【ブルー・ティアーズ】ですわ!」

 

永遠

「…機体と同じ名前の装備じゃと?」

 

 これがイギリスが開発した第3世代兵器、通称【BT兵器】である

 セシリアのISはこの武装のサンプリングを兼ねている為、機体と武装の名前が同じなのである

 

セシリア

「それでは、今度は3方向からの攻撃をお見舞いいたしますわ。」

 

永遠

「ククッ…そうこなくてはなぁぁ!」

 

 

 

 ≪管制室≫

 

千冬

「…オルコットの奴、模擬試験の時より遥かに強くなってるな。」

 

真耶

「そうですね。多分、火ノ兄君と戦う為にあの日から今日まで血の滲む様な努力をしてきたんでしょうね。」

 

千冬

「そうだな。だから、火ノ兄もそれに全力で答えているんだろ。」

 

 教師二人はセシリアの成長を素直に褒めていた

 

 

 

 ≪ピット≫

 

一夏

「す、すげえ…」

 

 一夏は自分の予想以上の二人の戦いに驚いていた

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

 永遠とセシリアの戦いはさらに苛烈さを増していった

 だが、セシリアはまだ永遠が本当の力を使ってこない事に僅かながらイラついていた

 

セシリア

「永遠さん…いい加減本気になったらどうです?」

 

 ザワ…

 

 セシリアの言葉に会場の生徒達は動揺した

 それもそうだろう、あれだけの戦いをしてまだ本気を出していないと言ったのだ、それも本人ではなく対戦相手が言っているのだから

 

永遠

「そうじゃな…ワシもそろそろ使おうと思うてたんじゃ。」

 

 <ラグナロクフェイズ>

 

永遠

「行くぞ!!」

 

 電子音声が出ると【ドットブラスライザー】の各所が展開・変形し始めた

 変形が終わると最初とは全く違う姿の【ドットブラスライザー】がそこにはいた

 

観客

「ええええぇぇぇぇーーーーっ!!」

 

 

 

 ≪管制室≫

 

千冬

「遂に本領発揮か!」

 

真耶

「オルコットさん、大丈夫でしょうか?」

 

千冬

「さあな、だがアイツはあの形態を知っている。何かしらの対策はあるだろ。」

 

真耶

「そうだといいですね。」

 

 教師二人はセシリアの対応策に期待していた

 

 

 

 ≪ピット≫

 

一夏

「へ、変形した!」

 

「何なんだあのふざけたISは!?」

 

一夏

「…カッケえぇぇ…」

 

 

 

 ≪観客席≫

 

 簪は目を見開いて驚いていた

 

「な、何あの姿!武器だけじゃなくて…ISまで変形するの!?」

 

本音

「凄いね~♪」

 

「…カッコいいぃぃーー……」

 

 【ドットブラスライザー】の変形に簪は感動すら覚える程興奮していた

 同じ頃、観客席の別の場所にいた楯無は自分が負けた時の事を思い出していた

 

楯無

「…遂に出したわね!…セシリアちゃん、あの姿の火ノ兄君に勝てるのかしら?」

 

 扇子に『本領発揮』と書かれた通りの姿になった相手に、セシリアがどれだけ喰いついていけるのか見守っていた

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

永遠

「行くぞセシリア!」

 

 両腕に展開した爪【ヴァリアブルクロー】で斬りかかった

 生徒達はその速さに目を見開いて驚いていた

 何故なら先程までとは比べ物にならない速さだったからだ

 

セシリア

「くっ!」

 

 セシリアは躱したが、永遠は続けて攻撃を仕掛けた…しかし…

 

永遠

「…この速度に追いつくか…」

 

 永遠の連続攻撃をセシリアは紙一重とはいえ全て避けて見せたのだ

 

セシリア

「…はい…あの日の試合の事は一度も忘れた事はありません…わたくしは今日までずっと頭の中でシミュレーションしてきました…お陰でわたくしの思考は【ラグナロクフェイズ】の速度にギリギリですが追いつけるようになりました…」

 

永遠

「………」

 

セシリア

「…思考が追いつけるようになれば後は体を追いつけるように鍛えるだけですわ!」

 

生徒達

「………」

 

 セシリアは簡単に言っているが、彼女の話を聞いて生徒達は言葉を失ってしまっていた

 セシリアの強さは試合を見ていれば十分に伝わっていた

 そして、その強さを手にする為にどれだけ努力したのか、想像が出来ないほどだった

 しかも、それは全て、セシリアの目の前にいる男と戦う為だけに手にしたのだ

 

永遠

「…お主は…ほんに強い女子じゃのぉ…」

 

セシリア

「永遠さん…」

 

永遠

「お主の様な強い者と戦える事を、ワシは嬉しく思うぞ!」

 

セシリア

「ありがとうございます!永遠さんにそう言って頂けて光栄ですわ!」

 

 観客席にいる生徒達は、この時分かったのだ…この二人は互いに認め合っているのだと…

 認め合っているからこそ、互いに高め合い全力を出して戦えるのだと…

 生徒の何人かはそんな二人を羨望の眼差しで見ていた

 

永遠

「ならば、改めて第2ラウンドといこうかの?」

 

セシリア

「望むところですわ!」

 

永遠

「行くぞおおぉぉーーーッ!」

 

 永遠はセシリアへと向かっていった

 

セシリア

「こちらも出し惜しみは無しですわ!」

 

 セシリアはビットを4基(●●)射出し全方位から攻撃を仕掛けた

 

永遠

「クッ!4基じゃと!?2基ではなかったんか!」

 

セシリア

「当然です!永遠さん相手に初めから切り札を全て使うほど馬鹿ではありませんわ!」

 

永遠

「カカッ…なるほどなあああぁぁぁーーーっ!!」

 

 

 

 ≪管制室≫

 

真耶

「凄いですね!オルコットさん!」

 

千冬

「ええ、まさか【ラグナロクフェイズ】の速度に追いつけるまでになっているとは…今のオルコットなら国家代表にも匹敵するかもしれません。」

 

真耶

「それも全ては火ノ兄君との出会いのお陰ですね。」

 

千冬

「そうですね。…今頃、アイツはどうしているかな?」

 

真耶

「織斑君ですか?」

 

千冬

「ええ、…まあ自分との実力差を見てビビッてるでしょうね。」

 

真耶

「はぁ…」

 

 

 

 ≪ピット≫

 

一夏

「アイツ等…こんなに強いのか…」

 

 千冬の予想通りビビッていた

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

 現在、永遠はセシリアの他方向から攻撃に苦戦を強いられていた

 永遠と出会う前のセシリアはビットを動かす際にそちらに意識を集中しなければならない為、本人は攻撃できず動く事さえ出来なかった

 しかし、今のセシリアは永遠との戦いを目標として努力を重ねた結果、ビットを操作する時も移動と攻撃が可能となっており、更に、ビットも以前よりも速く細かい動きが出来る様になっていた

 

永遠

「チィッ…(セシリアを直接狙うのは無理そうじゃな…狙うならまずはビットか!)」

 

セシリア

(永遠さんが狙うとしたらまずはビットの筈…ならば!)

 

 永遠は自分に一番近いビットに向かって行きそれを破壊した

 しかし、それがセシリアの狙いでもあった

 

永遠

「…よし!次…ガッ!」

 

 永遠がビットを破壊する時に隙が出来ると考えたセシリアは、ビットの1基を囮にして残りの3基で一斉攻撃を仕掛けたのだ

 

永遠

「グウッ!…まだじゃい!」

 

 攻撃を受けながらも永遠は3基の内の1基をさらに破壊した

 さすがにビットの数が半分となったのでセシリアも一端ビットを下げた

 

永遠

「流石じゃなセシリア!」

 

セシリア

「それ程でもありませんわ!」

 

永遠

「ククッ、謙遜するでない!【ラグナロクフェイズ】の動きについていけとる時点で、お主は強い!さっきからそう言うとるじゃろ。…セシリア…ワシは今とても楽しいぞ…お主との勝負は、ほんに楽しいなぁ!」

 

セシリア

「永遠さん…フフッ♪…はい!わたくしも楽しいですわ♪」

 

 笑顔で笑い合う二人を見て生徒達も二人が心から楽しんで戦っている事が伝わっていた

 

永遠

「…故にワシは、お主に敬意を表し【ドットブラスライザー】の真の力を見せよう!」

 

セシリア

「真の力?【ラグナロクフェイズ】ではありませんの?」

 

永遠

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)起動!」

 

セシリア

「え?」

 

永遠

「来い!【ドットフェニックス】!!」

 

 永遠がそう叫ぶと青い戦闘機が現れた

 

セシリア

「あれは…戦闘機!?」

 

 この戦闘機こそ【ドットブラスライザー】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)【ドットフェニックス】だった

 

セシリア

「永遠さん!単一仕様(ワンオフ・アビリティー)を使えましたの!?」

 

永遠

「使えるぞ。一応紹介しておくかの。コイツが【ドットブラスライザー】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)【ドットフェニックス】じゃ。」

 

セシリア

「【ドットフェニックス】…」

 

永遠

「コイツはワシの支援機でな。ワシとの連携も出来るんじゃが今回はそれは使わん。本命のもう一つの機能を使う。」

 

セシリア

「もう一つ?」

 

永遠

「【ドットフェニックス】!」

 

 <ドットブラスライザー ドッキング・シークエンス>

 

 永遠の呼びかけに答える様に【ドットフェニックス】から電子音声が聞こえると次の瞬間【ドットフェニックス】は5つに分離した

 それと同時に【ドットブラスライザー】も機体の装甲が白から赤へと変わっていった

 

セシリア

「【ドットブラスライザー】が、赤く!?」

 

 <ドッキング・スタート>

 

 機体が赤く染まった【ドットブラスライザー】に5つに分離した【ドットフェニックス】のパーツが合体していった

 最初は両足にパーツが接続され、次に背中のバックパックが外れ、【ドットフェニックス】本体部分が接続された

 最後に右腕に巨大な槍、左腕に大型のシールドが装備された

 

 <ドットブラスライザー・ジーエクスト>

 

 そこには【ドットフェニックス】と合体した【ドットブラスライザー】の新たな姿があった

 

セシリア

「がっ合体しましたの!?」

 

永遠

「さよう!これが【ドットブラスライザー】の最終形態【ドットブラスライザー・ジーエクスト】じゃ!!」

 

セシリア

「【ドットブラスライザー・ジーエクスト】!?」

 

 

 

 ≪管制室≫

 

千冬

「【ドットブラスライザー・ジーエクスト】だと!?」

 

真耶

「何ですかあれーーー!!」

 

千冬

「落ち着け!…何なんだあのISは!変形機能の他にも合体機能まで搭載していたのか!どこまで規格外の機体なんだ!あれでは完全にどこぞの合体ロボットそのものだぞ!」

 

真耶

「ホントですよ~…」

 

 教師二人は案の定、合体に驚いていた

 

 

 

 ≪ピット≫

 

 一方こちらは…

 

一夏

「何だよアレ!」

 

「一夏?」

 

一夏

「無茶苦茶カッコいいじゃねえかーーー!!」

 

 一夏は【ドットブラスライザー】の合体に男のロマンを感じていた

 

 

 

 ≪観客席≫

 

 そしてこちらも…

 

「カカカ、カッコいいいいいぃぃぃぃぃーーーーーー!!!」

 

本音

「か、かんちゃん…」

 

「見て見て本音!合体だよ合体!合体ロボットキターーー!!!」

 

本音

「かんちゃん…」

 

 目をキラキラさせる簪は興奮のあまりキャラが崩壊していた

 一方、楯無は…

 

楯無

「まさか変形だけじゃなくて合体まで出来るなんて…私の時は使わなかったのに!」

 

 自分と戦った時に使わなかった事に不満を漏らしていた

 ちなみに扇子には『不満』と書かれていた

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

永遠

「まずは周りのビットが邪魔じゃな!」

 

セシリア

「え?」

 

 永遠はそう言った瞬間残る二つのビットの内の一つの前に移動し槍で斬り裂いていた

 

セシリア

「は、速い!」

 

 セシリアはすぐに最後のビットを動かそうとしたが、既に永遠は最後のビットの前に来ていた

 

永遠

「これで全部じゃ!」

 

 そして最後の一基を破壊した

 

セシリア

「…そ、そんな…」

 

 セシリアが驚くのも無理は無かった

 【ラグナロクフェイズ】でも永遠は2基破壊するのにも手こずっていたのだ

 それが、合体した途端、残りの2基を一瞬で破壊してしまった

 

セシリア

「…これが…【ドットブラスライザー】の真の力…」

 

永遠

「はああああぁぁぁぁーーーっ!!」

 

セシリア

「はっ!?」

 

 ガキィン!

 

 永遠は槍で斬りかかったが、セシリアはそれをライフルで受け止めた

 

セシリア

「グウウ!…まだ…です…」

 

 セシリアも懸命に耐えているがパワーは向こうが完全に上の為、押し込まれていったが、セシリアはまだ諦めていなかった

 

セシリア

「(まだです…まだ………!)今です!!」

 

 そう言った瞬間、セシリアは【ブルー・ティアーズ】の腰に装備されていた2基のミサイルを発射した

 

永遠

「何!?」

 

 ドガアアァァン!

 

セシリア

「ハァハァ…油断しましたわね!生憎と【ブルー・ティアーズ】は全部で6基ありますのよ。」

 

 ワアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!!

 

 観客席にいる生徒達は今の攻撃で永遠を倒したと思ったのか歓声を上げていた

 しかし、セシリアは今の攻撃で永遠を倒せたとは思ってはおらず、目の前のミサイルが爆発した煙をジッと見つめていた

 だが、至近距離で命中したので少なからずダメージは受けているだろうと考えていた

 

永遠

「今のは効いたぞ!」

 

セシリア

「!?」

 

 セシリアの予想通り煙の中から声が聞こえてきた

 槍を横薙ぎに振り煙を吹き飛ばすとそこから【ドットブラスライザー・ジーエクスト】が出てきた

 

セシリア

「…少しはダメージを与えたと思ったのですが…あまり効いていないみたいですわね…」

 

 ザワザワ…

 

 生徒達も至近距離でミサイルの直撃を食らって破損が小さいとは思わなかったようで動揺していた

 

永遠

「…確かに機体の損傷は軽微じゃが、SEはそれなりに減ったぞ。」

 

セシリア

「フフッ…それは良かったです♪…ですが、わたくしはまだ負けていません!」

 

 セシリアは【スターライトmkⅢ】を永遠へと向けた

 しかし【ブルー・ティアーズ】は既に限界が近くなっており、これ以上の長期戦は不可能な状態だった

 そして、セシリア自身もその事に気づいていた

 

セシリア

(【ブルー・ティアーズ】…もう少しだけ…付き合ってください!)

 

永遠

「…それでこそセシリアじゃ!なればこそ、ワシも最後まで全力を尽くす!!」

 

 永遠はそう言うと背中のレール砲を展開し、セシリアに照準を合わせた

 

永遠

「行くぞ!!」

 

 そのままレール砲と翼に装備された8発のミサイルを一斉に発射した

 

セシリア

「くっ!」

 

 レール砲は躱す事が出来たが残りのミサイルがセシリアを追いかけてきた

 ミサイルの幾つかは撃ち落せたが残りが【スターライトmkⅢ】に命中し破壊されてしまった

 

セシリア

「しまっ!?………!?」

 

 そして、目の前に槍を向けた永遠がいた

 

永遠

「………」

 

セシリア

「永遠さん…ここでその槍を引いたら、わたくし一生恨みますわよ…」

 

永遠

「分かっておる!それはお主を冒涜する行為じゃからな!」

 

 セシリアに答えると槍を振り上げ…

 

永遠

「いくぞセシリアアアアァァァーーーッ!!!」

 

セシリア

「望む所ですわあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

永遠

「必殺ファンクション!!」

 

 <アタックファンクション 真刀・カムイ>

 

 【ドットブラスライザー・ジーエクスト】最強の技を発動させた

 槍に大量のエネルギーが集まり巨大なレーザーソードへと変わっていった

 

永遠

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!!」

 

 そのままセシリアに向かって右腕を振り下ろした

 

セシリア

「…フフッ♪」

 

 攻撃が直撃する瞬間セシリアは微笑んでいた

 

 ドガアアアアアアアァァァァァァーーーーーンッ!!!!

 

アナウンス

『【ブルー・ティアーズ】シールド・エネルギー0、勝者、火ノ兄永遠!』

 

 爆発と同時にアナウンスが試合の決着がついた事を宣言した

 

永遠

「セシリアァァーーッ!!」

 

 爆煙から落下していくセシリアを見つけると永遠は急いで彼女の元に向かい、地面に激突する寸前に抱きとめる事が出来た

 

永遠

「無事かセシリア!」

 

セシリア

「…うっ…永遠…さん?…やっぱり…永遠さんは強いですわね…」

 

永遠

「何を言う!お主も強かったではないか!」

 

セシリア

「…でも負けてしまいましたわ…やっぱり負けるのは悔しいですわね…」

 

永遠

「すまんな、少々やり過ぎた。」

 

セシリア

「フフッ♪構いませんわ♪」

 

 永遠はそのままセシリアが出てきたピットの方に戻っていった

 

 

 

 ≪ピット≫

 

 一方、一夏は二人の実力を見て驚愕していた

 

一夏

「何だよあの強さ!?…俺は今から…アイツと戦うのか!?」

 

 一夏は一週間前の姉の言葉を思い出していた

 

千冬

『火ノ兄に勝てる奴は教師も含めてこの学園には一人もいないだろう。この私も含めてな!』

 

一夏

「アレは冗談じゃなかったのかよ!」

 

 これから自分が戦う相手の実力に恐怖していた

 

 ~三人称 Side out~

 

 




 次回『第037話:出陣!戦国龍!!(前編)』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第037話:出陣!戦国龍!!(前編)

お気に入りが600を越えました♪

これからも頑張っていきます!!


 ~永遠 Side~

 

 ワシはセシリアを抱き上げたままピットに戻ってきた

 セシリアを下ろすとワシ等はISを解除したんじゃ

 

永遠

「セシリア、大丈夫か?」

 

セシリア

「はい、この位何ともありませんわ。」

 

永遠

「…そうか、次の試合は出られるかの?」

 

セシリア

「…無理ですわね…機体のダメージが大きすぎますわ…」

 

永遠

「…そうか…なら織斑先生にお主が棄権する事を伝えておくぞ。」

 

セシリア

「お手数お掛けします。」

 

永遠

「気にせんでいい…そもそも、ワシが…」

 

セシリア

「永遠さんのせいではありません!それにこれは、それだけ永遠さんが本気で戦ってくれたという証明ですもの!」

 

永遠

「…ありがとう…セシリア…」

 

セシリア

「感謝するのはこちらの方ですわ♪約束を守っていただきありがとうございます♪」

 

永遠

「カカッ、お主はほんに良き娘じゃのぉ…」

 

セシリア

「と、永遠さん///」

 

 この後ワシは向かいのピットにおる織斑先生にセシリアが棄権すると伝えたんじゃ

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

千冬

「織斑…さっき火ノ兄から連絡が来た。オルコットは機体のダメージが大きいから棄権するそうだ。」

 

一夏

「棄権…」

 

千冬

「まあ、あれ程の攻撃を受けたんだ、当然といえば当然だな。」

 

 そんな奴とこれから戦うのかよ…

 

一夏

「なあ…千冬姉…俺、勝てるかな…」

 

 あんな…あんな化け物みたいな奴に

 

千冬

「…織斑先生だ…まあ今はいいか…お前は何を言ってる…」

 

一夏

「千冬姉!」

 

 もしかして千冬姉は俺が勝てることを信じてくれてるのか!

 そうだよな!俺には千冬姉と同じこの【雪片弐型】があるんだ!

 千冬姉と同じ武器を使って負ける訳がない!

 そう思っていたら…

 

千冬

「…お前が勝てる訳ないだろ?」

 

一夏

「ち、千冬姉…」

 

「千冬さん!?」

 

 何で…何でそんな事…

 

千冬

「…何故そんな事を言うんだ…と言いたい顔だな。理由は簡単だ。この一週間のお前を見てれば期待出来る訳無いだろ。」

 

一夏

「え!?」

 

千冬

「…どうやらお前には、一週間前の火ノ兄とオルコットのメッセージが届かなかったようだな…」

 

一夏

「メッセージってなんだよ!あいつらは俺を…」

 

千冬

「俺をさんざん馬鹿にして無視しただけ…か?」

 

一夏

「うぐ!…そ、そうだよ!違うのかよ!」

 

「千冬さん!どういう事ですか!?」

 

千冬

「…お前まだいたのか…自分で出て行くと思ったんだがな…」

 

「あ…」

 

千冬

「フンッ!…一夏、お前気付いてないのか…ならさっさと出ろ!試合をしながら火ノ兄が教えてくれる筈だ。」

 

一夏

「何で今教えてくれないんだ!」

 

千冬

「それでは意味が無い!…だが二つ程教えてやる。一つ目はあの二人がお前を無視したのはワザとだ。」

 

一夏

「え?…ど、どういう事だよ?」

 

千冬

「その通りの意味だ。二つ目は火ノ兄がお前を無視する前に言った言葉はワザとじゃない。後は自分で考えろ!」

 

一夏

「俺を無視したのがワザとで…その前がワザとじゃないって…」

 

千冬

「あの時は私もお前の言った事に呆れ果てていたからな…」

 

一夏

「!?…それじゃあ、千冬姉も俺を腰抜けって言うのかよ…」

 

千冬

「言われる様な事をお前は口にしたんだ!もっと考えてから物を言え!」

 

一夏

「うっ!」

 

千冬

「言われたくなかったら、そうではないと周りに認めさせるんだな!分かったらさっさと()ってこい!」

 

一夏

「…字が違わなかったか?」

 

千冬

「…気のせいだ!」

 

 深く聞かない方がいいな…

 

一夏

「…じゃあ、行ってくる…織斑一夏、【白式】行くぜ!!」

 

 1週間前の事、力づくでも聞き出してやる!

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 さて、次の試合じゃな…こいつを使うかの…相手は役者不足じゃが…

 

永遠

「セシリア、すまんがこれを預かって貰っていいかの?」

 

 そう言ってワシは腰に差しとった軍刀をセシリアに渡した

 

セシリア

「永遠さん…これって【ドットブラスライザー】ですわよ!」

 

永遠

「そうじゃ、次の試合、ワシは別のISを使おうと思うてな。」

 

セシリア

「別のって…他にもありましたの!?」

 

永遠

「ああ、じゃが相手が役者不足かもしれんな。」

 

セシリア

「かも、ではありませんわ!完全な役者不足です!…今の織斑さんでは永遠さんに勝つのは不可能ですもの。一撃当てられれば十分だと思いますわ。」

 

永遠

「やはりそんなとこか…」

 

セシリア

「ええ、この一週間は篠ノ之さんに剣道を教わっていたそうですが、殆どサンドバッグになっていただけらしいですわ。」

 

永遠

「それは本人がさっき言うておった…篠ノ之もそれしかしとらんらしい…と言うかサンドバッグになっとったんか…他に何かしていたとか聞かんかったか?」

 

セシリア

「わたくしはそれしか知りません。恐らく何もしていないと思いますわ。」

 

永遠

「やはりそうか…馬鹿かアイツは?って馬鹿じゃったな。奴には危機感ゆうもんが無いんじゃろうか?」

 

セシリア

「無いと思いますわ。馬鹿ですから。」

 

永遠

「ハァ…一週間前にあれだけ危機感を与えたというに…」

 

セシリア

「わたくし達がワザと無視して煽った意味がありませんでしたわね。」

 

永遠

「恐らく、と言うか絶対に気付いとらんな…少しでもやる気にさせようと思ったんじゃが無駄じゃったか…ハァ、こいつを使うのが可哀想になって来たのぉ…」

 

 ワシは一振りの日本刀をセシリアに見せた

 

セシリア

「それがISですの?と言うかまた刀ですわね。」

 

永遠

「そうなんじゃよ…次の試合はコイツの初陣じゃ。出来ればお主の様な実力者が初戦の相手がよかったんじゃが…相手があんなしょぼい相手とはな~…」

 

セシリア

「でしたら何故わたくしとの試合で使わなかったのですか?」

 

永遠

「それでは不公平じゃろ!お主の機体や戦闘映像は調べれば出てきおったからな。逆にワシのデータはあの模擬戦しかないからの。あの時と同じISを使わんとお主が情報面で不利じゃろ!」

 

セシリア

「永遠さん…そこまで考えて下さったのですね…」///

 

永遠

「うむ。じゃから織斑との試合で使うしかないんじゃよ。どうせ人前に出すんじゃったら試合の時の方がよいからのぉ。」

 

セシリア

「その考えはわたくしにも分かります。どうせなら大勢の前で見せたいですから。」

 

永遠

「そういう事じゃよ。…さて、そろそろ行くかの。」

 

 いつの間にか織斑がアリーナで待っとるからな

 

永遠

「どうやら、一次移行(ファーストシフト)は済んだようじゃな。」

 

セシリア

「その様ですわね。それでは大丈夫だと分かっていますが頑張ってください♪」

 

永遠

「おうよ!」

 

 ワシは前の試合と同じように歩いてピットからアリーナに出て行くと、織斑がワシを睨んできおった

 ワシは無視してISを呼ぶ準備を始めた

 

永遠

「さあ、ゆくぞ…今日がお前の初陣じゃ!出陣するぞ!【戦国龍】!!!」

 

 ワシはそう言うと、刀を抜き頭上で大きな円を描いたんじゃ!

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 火ノ兄は前の試合と同じようにISを纏わず歩いて出てきた

 俺は上から睨みつけたけど、アイツはまるで気にしていなかった…

 そして、火ノ兄がISを展開しようとした時、俺は違和感を感じた…その理由はすぐに分かった

 前の試合、火ノ兄のIS…【ドットブラスライザー】は待機状態が軍刀って言う刀だったけど…でも今は、違う刀を持っていた

 …どういうことだ?そう思った時!

 

永遠

「さあ、ゆくぞ…今日がお前の初陣じゃ!出陣するぞ!【戦国龍】!!!」

 

 火ノ兄がそう叫んで刀を抜くと、さっきと違って頭上で円を描いた

 そして、さっきは円から光が出たのに今回は炎が出てきた

 炎が火ノ兄を包むとその炎は丸い球体になって俺のいる高さまで上ってきた

 そして、炎が弾けるとそこには!!

 

<オオオォォォーーーンッ!!!>

 

一夏

「な、何だコイツ!?…赤い龍だと!?」

 

 俺の目の前に炎のような赤い戦国武将の鎧を纏った龍のISが現れたんだ!?

 な、何だ!このとてつもない威圧感は!

 会場の生徒達もその姿に驚きを隠せないみたいだった

 そして、龍は声を上げて吠えた…

 

<オオオオオオオォォォォォォォーーーーーーンッ!!!>

 

 アリーナ中に龍の咆哮が響き渡っていた!!

 

 ~一夏 Side out~

 

 




 次回『第038話:出陣!戦国龍!!(後編)』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第038話:出陣!戦国龍!!(後編)

更新する曜日を変更しました。

これからは水曜0時に更新します。



 ~千冬 Side~

 

千冬

「【戦国龍】だと!?何だあれは!?あれもISなのか!?」

 

 火ノ兄の奴、他にもISを持っていたのか!?

 だが、何だあの機体は!管制室のココからでも感じる圧倒的な存在感!そして威圧感!

 これほどの威圧感を出すISなんて私は知らんぞ!

 それ以前に下手をしたら一夏の奴は立つ事すら出来ないぞ?

 

真耶

「おおお織斑先生!ななな何ですかアノISは!?」

 

千冬

「そんな事は私が聞きたい位です!?」

 

真耶

「す、すみませ~ん!」

 

千冬

「いえ、こちらもすみませんでした…火ノ兄の奴…とんでもない物を出してきたな!」

 

真耶

「ホントですよ~…」

 

 あれも神とやらが造ったISなのか…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~箒 Side~

 

「【戦国龍】…」

 

 私は一夏と対峙しているそのISに目を奪われていた…

 いや、心を奪われてしまっていた…

 何て美しく雄々しい姿なんだ…

 私の中の武士の血が沸き立っている…

 

「素晴らしい…」

 

 私にはそれだけしか考えられなかった…

 あのISこそ私に相応しい!

 あんな田舎者には宝の持ち腐れだ!

 私は必ずあのISを私だけの物にして見せる!そう心に誓った!

 

千冬

「………」

 

 ~箒 Side out~

 

 

 

 ~楯無 Side~

 

楯無

「まさか他にもISを持っていたなんて…でも何なのアノIS?」

 

 会場にいる殆どの子達があの機体の威圧感に飲み込まれている!

 もっと詳しく調べないといけないみたいね!

 

 ~楯無 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

本音

「かんちゃん大丈夫?」

 

「…なんとか…危うく飲まれるところだった…本音は?」

 

本音

「正直かなりきついよ~。ひののん、凄いの出してきたね~。」

 

「…そうだね…でも何なんだろあの機体?もう一つあるなんて思ってもみなかった…」

 

 ただ、そこにいるだけであれだけの存在感を出すなんて…

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

セシリア

「あれが、永遠さんのもう一つのIS【戦国龍】…」

 

 なんという機体なんでしょう…威風堂々としたその姿は王の風格を漂わせていました

 

セシリア

「本当に悔しいですわね…出来ればわたくしが最初に戦いたかったですわ…」

 

 わたくしはいつの間にか織斑さんに嫉妬していましたわ

 まだ戦っていないとはいえ【戦国龍】は【ドットブラスライザー】を超えるISだと分かりましたわ

 その最初の相手に選ばれるなんて…羨ましいですわ

 ですが今は【戦国龍】の力をこの目に焼き付けさせていただきますわ!

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~束 Side~

 

クロエ

「束様!兄様が【戦国龍】を起動させました!」

 

「とうとう使ったんだね!で、相手は?」

 

クロエ

「織斑一夏様です!」

 

「いっくんか~…いっくんじゃ相手にならないだろうね…」

 

クロエ

「そうですね。むしろ立っていられるかも怪しいですよ?」

 

「そうだね~…まあ死にはしないから大丈夫だよ!それじゃクーちゃん!【戦国龍】の実戦データを取るよ!」

 

クロエ

「分かりました!」

 

 さて、とーくんの最強のIS【戦国龍】の力を見せて貰うよ!

 

 ~束 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

一夏

「ゴクッ………」

 

 なんだこのIS!目の前にいるだけなのに心臓を鷲掴みにされたような感覚だ!

 

一夏

「ハァ、ハァ…」

 

 何もしてないのに体力が削られていくみたいだ!

 

永遠

「どうしたんじゃ?まだ試合も始まっとらんのに、そげに息を切らしおって。」

 

一夏

「な、何でもない!!」

 

永遠

「さよか。」

 

一夏

「試合の前に聞きたい事がある。一週間前、俺を無視していたのはワザとなのか?」

 

永遠

「む?…何故そう思うた?」

 

一夏

「千冬姉が教えてくれた!それ以外はお前が教えてくれるって!」

 

永遠

「ハァ…なんじゃ…結局自分じゃ気付かんかったか…」

 

一夏

「何だよその溜息は!?」

 

永遠

「…いや、お主がここまで馬鹿とは思わんかっただけじゃ。」

 

一夏

「ば、馬鹿だと!?」

 

永遠

「まあいい、答えは戦いながら教えてやるわい。」

 

アナウンス

『それではこれより、織斑一夏VS火ノ兄永遠の試合を始めます。』

 

永遠

「とっととかかってこい。」

 

アナウンス

『試合開始!』

 

一夏

「クッ!舐めるなああああぁぁぁぁーーーーっ!!」

 

 俺は試合開始と同時に火ノ兄に突っ込んだ!

 

 ~一夏 Side out~

 

 




 次回『第039話:第2試合【戦国龍VS白式】』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第039話:第2試合【戦国龍VS白式】

 ~三人称 Side~

 

 ≪管制室≫

 

千冬

「始まったか…」

 

真耶

「織斑先生…織斑君が勝てる見込みはどの位あるんですか?」

 

千冬

「織斑にもさっき聞かれたがアイツが勝てる見込みは0だ。」

 

真耶

「0…ですか?」

 

千冬

「ええ、この一週間のアイツを知れば勝てる訳が無い。火ノ兄に一太刀当てられれば上出来と言うレベルだ。」

 

真耶

「そうなんですか?」

 

千冬

「ああ、恐らく火ノ兄とオルコットも私と同じ考えだろう。何しろアイツは一週間もの間、殆ど何もしてないんだからな。まあ教えていた方にも問題はあるみたいだが。」

 

 千冬はそう言いながら自分の後ろにいる、ピットから勝手について来た箒に聞こえる様に答えた

 

「………」

 

千冬

「…まあ、そういう訳でアイツはこの試合は絶対に勝てない。火ノ兄に説教されながら叩きのめされて終わりだ。」

 

真耶

「そうですか…」

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

一夏

「うおおおおぉぉぉぉぉーーーーーっ!!」

 

 一夏は永遠に正面から斬りかかったが…

 

 ガキイィィン!

 

一夏

「何ぃぃ!」

 

 永遠は左手に持った槍で片手で受け止めていた

 

永遠

「…軽い剣じゃな…」

 

一夏

「何だと!」

 

永遠

「軽いと言ったんじゃ…」

 

 そのまま一夏の剣を弾き槍の柄で一夏の横腹を殴った

 

一夏

「ガッ!…ク、クソッ!うおおおおぉぉぉぉぉーーーーーっ!!」

 

永遠

「また突っ込んできおったか…」

 

 永遠は今度は受ける事はせず一夏の攻撃を全て軽々と避けてみせた

 

一夏

「クソッ!何で当たらないんだ!」

 

永遠

「…攻撃が単純だからじゃ…この程度なら目を閉じてても避けられるわい…」

 

一夏

「クッ!馬鹿にするなああぁぁーーッ!」

 

永遠

「…お主は正面から突っ込む事しか知らんのか?」

 

 永遠は再び避けるが、今度はただ避けるだけではなかった

 

永遠

「ワシの手足にばかり気をとられん方が良いぞ。」

 

一夏

「え?…ガッ!」

 

 突然、一夏は殴られたような衝撃が来たのでそちらの方を見ると…

 

一夏

「し、尻尾だと!」

 

 そう、永遠は避けると同時に【戦国龍】の尻尾を一夏に叩きつけたのだ

 

永遠

「この尻尾がただの飾りかと思ったんか?ちゃんとワシの意思で動かせるぞい。」

 

一夏

「なっ!」

 

永遠

「まあ尻尾の事は別にいい…所でお主、さっきから何をやっとるんだ?」

 

一夏

「何だと!」

 

永遠

「先程から猪の様に突っ込んでくる事しかしとらんではないか。」

 

一夏

「猪だと!?」

 

永遠

「違うんか?」

 

一夏

「違うに…決まってんだろおぉぉぉーーーっ!」

 

 一夏は否定しながらまたも突っ込んだ

 

永遠

「…どこが違うんじゃ?」

 

 永遠は懲りずに突っ込んできた一夏を槍で地面に叩き落とした

 

一夏

「がああぁぁーーっ!」

 

 永遠も一夏を追って地面に降りて行った

 

一夏

「ぐっ…くそおぉ…」

 

永遠

「どうした?この程度で終わりかの?」

 

一夏

「…これならどうだ!【零落白夜】発動!!」

 

 一夏は【白式】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)【零落白夜】を発動させた

 

永遠

「【零落白夜】?」

 

一夏

「そうだ!【零落白夜】は千冬姉が世界を制した時と同じ単一仕様(ワンオフ・アビリティー)だ!俺はこの剣で、大切な人を守れる男になるんだ!!」

 

永遠

「…で?」

 

一夏

「な、何…」

 

永遠

「じゃから、それがどうしたんじゃ?姉と同じ?それが何じゃ?大切な人を守る?お主に守れるだけの力があるんか?」

 

一夏

「クッ!…なら、その力を思い知らせてやる!いくぞおおぉぉぉーーーっ!」

 

 一夏は【零落白夜】を発動させて斬りかかったが…

 

永遠

「さっきと何も変わっとらんな…」

 

 攻撃パターンが変わっていない為、簡単に避けられた

 

一夏

「くそぉぉーーっ!何で、何で当たらないんだ!?」

 

永遠

「…ハァ~…お主、この一週間何をしとった?」

 

一夏

「何!?」

 

永遠

「ワシとセシリアは今日の為に普段以上の鍛錬に励んでおった。…クラスの代表を決めるだけとはいえ、真剣勝負をするんじゃからな、当然の事じゃ。」

 

一夏

「そ、それは…」

 

 永遠の突然の問いに一夏は答える事が出来なかった

 それもその筈、彼はこの一週間、箒に剣道の稽古を付けて貰った事以外は何一つしていないのだから

 

永遠

「何もしとらんのじゃろ?」

 

一夏

「!?…そ、そんな事ない!」

 

永遠

「…織斑…ワシもそろそろ堪忍袋の緒が切れそうなんじゃが…」

 

一夏

「それが何だ!俺は、俺は皆を守るんだああぁぁーーッ!」

 

 ブチッ!!

 

永遠

「…この…馬鹿もんがああああぁぁぁぁーーーーっ!!!」

 

一夏

「ぐああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!」

 

 遂に永遠の堪忍袋が切れてしまい、一夏は槍の突きを喰らい後方に吹き飛ばされてしまった

 永遠はそのままゆっくりと一夏の方に歩きだした

 

永遠

「…貴様、いい加減にせえよ…『大切な人を守れる男になる』じゃと…どの口が言っとるんじゃ…」

 

一夏

「な、何…」

 

永遠

「…もう一度聞くぞ…この一週間何しとった…」

 

一夏

「………」

 

永遠

「放課後何しとった…篠ノ之に剣道を教わった…シバかれてサンドバッグになっとっただけじゃろ…」

 

一夏

「うっ…」

 

永遠

「授業中何しとった…ノートすら取らんかったじゃろ…」

 

一夏

「ううっ…」

 

永遠

「休憩中何しとった…教師二人に質問すらせんかったじゃろ…」

 

一夏

「あ…ああ…」

 

永遠

「入学するまで何しとった…参考書を間違えて捨てた…何故すぐに新しいのを発行して貰わんかった…」

 

一夏

「そ、それは…」

 

永遠

「姉に叱られるのが嫌だったか…覚える必要が無いと思ったか…」

 

一夏

「ち、ちが…」

 

永遠

「違うならそん時何しとった…強制入学じゃからずっと遊んどったか…」

 

一夏

「べ、勉強だ!」

 

永遠

「一般教養だけか…IS学園に入ると決まっとったのにそっちには手を付けんかったか…」

 

一夏

「………」

 

永遠

「今迄何しとった…ISの勉強をしたんか…対戦相手のワシ等の事を調べたんか…自分が今使っとる機体の事を調べたんか………答えんかい!!」

 

一夏

「ううっ…」

 

永遠

「貴様!それでよく『大切な人を守る』等と言えたな!それとも何か!姉と同じようにISに乗れて、姉と同じ武器を使えれば、姉と同じ事が出来ると思ったか!」

 

一夏

「!?」

 

永遠

「図星か?…愚かもんが!世界を制したのは織斑千冬であって貴様では無い!貴様は織斑一夏であって織斑千冬では無い!姉が出来れば弟も出来る訳でも無い!」

 

一夏

「ぐううっ…」

 

永遠

「織斑…貴様は…実力も無い…経験も無い…知識も無い…覚悟すら無い…今の貴様にあるのは無駄にデカいだけのつまらんプライドだけじゃ!そんな貴様が何を守ると言うんじゃ!」

 

一夏

「………いけないのかよ…」

 

永遠

「ん?」

 

一夏

「…いけないってのかよ!…大切な人を…家族や友達を守りたいって思うのが…いけない事なのかよ!?」

 

永遠

「…口だけは達者じゃな…」

 

一夏

「何だと!」

 

永遠

「口は達者と言ったんじゃ!なら何故今まで何もせんかった!何もせんかったから今こうしてワシに追い詰められとるんじゃろ!今の貴様がそんな事を言っても説得力なんぞ微塵も無いわ!」

 

一夏

「…だ、黙れ…黙れええええぇぇぇぇーーーーっ!!」

 

 永遠の言葉に我慢出来なくなった一夏は永遠に突っ込んでいった

 

永遠

「…ハァ…」

 

 溜め息を一つつくと永遠は持っていた槍を地面に突き刺し、腰の刀を抜いた

 

 

 

 ≪ピット≫

 

セシリア

「…ハァ…ホントに情けない方ですわね…」

 

 永遠に言い返す事も出来ない一夏を見てセシリアも溜め息をついていた

 

セシリア

「永遠さんのお説教は厳しいと束さんから聞いていましたが…ここまでとは思いませんでしたわね。」

 

 実はセシリアは以前、束から怒った時の永遠の説教がキツイと愚痴を聞かされた事があったのだ

 

セシリア

「…永遠さんを怒らせない様にしませんと…流石にあれはわたくしでもキツイですわ…」

 

 セシリアは永遠を本気で怒らせる様な事をしないと誓った

 

 

 

 ≪管制室≫

 

 管制室では永遠に説教をされている一夏の姿に千冬は呆れ果てていた

 

真耶

「火ノ兄君のお説教…容赦ないですね…」

 

千冬

「ああ。」

 

真耶

「…織斑先生は火ノ兄君が言った事をどう思いますか?…否定…しますか?」

 

千冬

「する必要は無い。全て事実だからな。」

 

「!?」

 

千冬

「火ノ兄が言ってる事は何一つ間違ってはいない。今の織斑は口先だけの男だからな。訓練も勉強もせず、私と同じ武器を使うというだけで強くなったと思い込んでいるだけだ。そんな奴が今日の為に努力してきたあの二人に勝てる訳がないだろ?」

 

真耶

「………」

 

千冬

「アイツは一度、徹底的に潰された方がいいと私は思っている。その方がアイツも成長するだろうからな。」

 

真耶

「織斑先生がそう言うなら…そうかもしれませんね…」

 

「………」

 

 箒は否定しない千冬を睨みつけるが千冬から来る無言の圧力で何も言えなかった

 

 

 

 ≪観客席≫

 

 同じ様に観客席の簪も…

 

「………」

 

本音

「どしたのかんちゃん?」

 

「…情けなくてね…」

 

本音

「何が~?」

 

「…私よりもあんな男の機体の方が優先されたんだと思うとね…」

 

本音

「かんちゃん…」

 

 …説教されている一夏の姿を見て落ち込んでいた

 

 

 

 ≪火紋島≫

 

 一方、永遠と一夏の試合をモニターしていた束達も…

 

クロエ

「兄様のお説教は相変わらず厳しいですね…」

 

「ホントにね~…ガクガクブルブル………」

 

 以前説教された時の事を思い出したのか束は震えていた

 

「それにしても、今のいっくんは束さんでも呆れるくらい情けないね~。」

 

クロエ

「そうなんですか?」

 

「うん。ホントはね、とーくんが帰ってきたら文句の一つも言おうと思ってたけど…これを見たらそんな事言えないよ。」

 

 身内にはとことん甘い束でさえ呆れていた

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

一夏

「うおおおおぉぉぉぉーーーーっ!!」

 

 向かってくる一夏を永遠は躱すが今回はさっきまでと違っていた

 

永遠

「【飛天御剣流 龍巻閃】!」

 

 一夏の突撃を回転しながら躱すとそのまま一夏の背中に回り込み回転の勢いのまま彼を斬ったのだ

 

一夏

「ぐわああああぁぁぁぁぁーーーー………っ」

 

 そのまま地面に倒れたが、すぐに起き上がった…だが…

 

一夏

「ぐうっ!…何だ…今の技は?…はっ!」

 

 すでに目の前に永遠が来ていた

 

永遠

「【飛天御剣流 龍翔閃】!」

 

 一夏の懐に潜り込み、下から飛び上がり、刀の腹で斬り上げ、一夏を上空へと押し上げた

 

一夏

「がはあああぁぁぁーーーー………っ」

 

 永遠もそのまま上空へと飛び上がり一夏を追い抜いた

 

永遠

「【飛天御剣流 龍槌閃】!」

 

 一夏よりも高い位置に来ると、そのまま刀を振り下ろし、今度は地面に叩きつけた

 

一夏

「ぐあああああぁぁぁぁぁーーーー………っ」

 

 ドゴオオオオォォォォォーーーーン!!

 

 永遠はゆっくりと地面に降り立つと一夏の倒れている場所を静かに見つめていた

 

生徒達

「………」

 

 会場にいる生徒達も声を出さなかった…いや…出せなかった

 余りにも一方的な技の応酬、そしてそれを全て受け地面に倒れている一夏の姿に、生徒達は言葉を失ってしまっていた

 

 

 

 ≪管制室≫

 

「い、一夏…」

 

 倒れた一夏を見て箒は茫然としていた

 

千冬

「…【飛天御剣流】…聞いた事の無い流派だな…」

 

真耶

「織斑先生も知らないんですか?」

 

千冬

「私もそんなに他流派に詳しい訳じゃないからな。ただ【飛天御剣流】と言うのは初めて聞いた。」

 

真耶

「そうですか…」

 

「何故一夏の心配をしないんですか!自分の弟が一方的に倒されたと言うのに何でそんなに無関心なんですか!」

 

 一夏をまるで心配していない千冬にとうとう箒がキレた

 

千冬

「…今は試合中だ。ましてや教師の私が弟だからと言って公私混同が出来るか。」

 

「な!?」

 

千冬

「そもそも、何故お前がココにいる?私はお前がココに来る事を許可していない。ピットからここまで勝手について来た上に騒ぐとは何様のつもりだ。」

 

「そ、それは…」

 

千冬

「フン!」

 

 それから千冬が箒の方を見ることは無かった

 これは箒に早く出て行けと言う意味だったが、箒はそれに気付かずそのまま居座り続けた

 千冬が視線をモニターに戻すと一夏が立ち上がろうとしていた

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

一夏

「う、ぐうう…」

 

永遠

「…ほう、立つか…」

 

一夏

「…あ、当たり前だ…この位で…やられてたまるか…」

 

永遠

「さよか…ならさっさとかかってこい。」

 

 永遠はそう言って刀を鞘に納めると、前屈みになり、刀を抜く態勢となった

 

一夏

(アレは確か…居合いの構え!?アイツ、居合いも出来るのか!)

 

 一夏は永遠の体制が居合い斬り、抜刀術の態勢である事に気付いた

 

一夏

「(でも確か…居合いは最初の一撃を防げばいい技だったはず…なら一撃目さえ防げば俺にもチャンスはある!)…行くぞ!」

 

 一夏は永遠へと向かって行った

 そして、一夏が間合いに入った瞬間、永遠は刀を抜き放った

 

 ガキィン!

 

 一夏は永遠の居合い斬りをギリギリの所で防ぐ事が出来たが…

 

一夏

「…ぐっ!どうだ、防いだ…」バキィッ!「がはあああぁぁぁーーーっ!」

 

 永遠の剣を止めた瞬間、体に強い衝撃が走りそのままアリーナの壁に叩きつけられた

 

一夏

「…今のは…一体…」

 

永遠

「【飛天御剣流 二段抜刀術 双龍閃】!」

 

 それは、永遠が左手に持った鞘で放った二撃目の抜刀術によるものだった

 

一夏

「に、二段…抜刀術!?」

 

永遠

「【飛天御剣流】…」

 

一夏

「ま、待っ…」

 

永遠

「【土龍閃】!」

 

 永遠は間髪入れず、刀を地面に叩き付け、その衝撃で土石を一夏にぶつけた

 

一夏

「がああああぁぁぁぁぁーーーーー………」

 

 全身にくまなく石をぶつけられた一夏はもはや限界だった

 【白式】の装甲は所々が凹み、白かった機体もボロボロになっていた

 

永遠

「…どうした織斑…もう終わりか?」

 

一夏

「ううっ…何で…お前はこんなに…強いんだよ…」

 

永遠

「…ワシが強い訳ではない…貴様が弱すぎるんじゃ…」

 

一夏

「…俺が…弱い…」

 

永遠

「そうじゃ。試合前の答えを教えてやる…織斑…貴様は一週間前…ワシとセシリアがあれだけあからさまに煽ったと言うにそれに気付かんかった。」

 

一夏

「…煽った?」

 

永遠

「さっきも言うたが貴様はワシやセシリア、他の生徒と比べれば知識も実力も経験も無い。…じゃから、ワシ等はあの時、貴様を無視する事で危機感を与えた。それと同時にやる気を起こさせようとしたんじゃ!まあ、本音でもあったがな…」

 

一夏

「…そ、そんな…(あれは…俺の為に…)」

 

永遠

「じゃが貴様はそれに気付かず、今日まで、何もしとらんかった。」

 

一夏

「…それは…」

 

永遠

「あの時、貴様が気付いて今日まで自分を高めておれば、そこまでボロボロにならずに済んだじゃろうな。」

 

一夏

「…ぐ、うっ…」

 

永遠

「ワシとセシリアは己を高める為に常に努力してきた。それに引き換え、貴様は自分の危機感にすら気付かず何もせんかった。そんなワシ等と貴様との間にどれだけ実力に差があると思うとるんじゃ。」

 

一夏

「………だったら…何で直接言わなかったんだ!…言ってくれれば…」

 

永遠

「言えば真面目に訓練した、か?…甘ったれるな!!」

 

一夏

「!?」

 

永遠

「織斑…貴様、どれだけ他人に甘えれば気が済むんじゃ!本来はワシ等が言わずとも貴様が自分で気付いてすべき事じゃ!」

 

一夏

「あ…」

 

永遠

「それをワシ等はああいった方法でヒントを与えたんじゃ!じゃが、貴様はそれに気付かず無駄に時を過ごしただけじゃった!」

 

一夏

「………」

 

永遠

「仮に言ったとして貴様は真面目に強くなろうと努力したんか!今の貴様を見ればそうは思えんな!」

 

一夏

「………」

 

永遠

「貴様の様な奴は一度、心身共に徹底的に叩き潰してくれる!」

 

一夏

「え?…うわっ!」

 

 永遠は一夏を掴むとアリーナの中央に投げ飛ばした

 

永遠

「織斑…覚悟はいいか!…この一撃で完璧に沈めてくれるわい!!」

 

 そう言うと永遠は上段の構えを取った

 

一夏

「ま、待ってくれ!」

 

永遠

「…貴様は最後まで情けない男じゃな!」

 

一夏

「え?」

 

永遠

「…ワシにここまで言われて…せめて一太刀浴びせようと言う気概さえ無いとはな…」

 

一夏

「!?」

 

永遠

「やはり貴様は腰抜けじゃ!くたばれ!!」

 

一夏

「!?…俺は…俺は腰抜けじゃねええぇぇーーっ!!」

 

 『腰抜け』という言葉に一夏は反応し永遠に斬りかかった

 

永遠

「フッ…【龍槌閃・鉄槌】!!」

 

 ズドオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーン!!!!

 

一夏

「ぎゃああああぁぁぁぁぁーーーーーー………」

 

 永遠が刀を振り下ろすと、強い衝撃と共に周囲の地面が一夏諸共押し潰されていった

 永遠が技を放った場所には、地面に大きく円柱の形をした大穴が開いており、その中心に叩き潰された一夏が地面にめり込んで気絶していた

 

アナウンス

『【白式】シールド・エネルギー0、勝者、火ノ兄永遠!』

 

生徒達

「………」

 

 試合終了のアナウンスが鳴っても観客席の生徒達は声を上げる事は無かった

 永遠が放った技に全員が言葉を失っているのだ 

 永遠が刀を鞘に納めようとすると…

 

永遠

「最後の最後で意地を見せたか………ん?」

 

 ピシッ!…バキイィィーーンッ!

 

 刀が砕けてしまった

 

永遠

「折れたか…【鉄槌】の威力に耐えられんかったか…」

 

 永遠は折れた刀を見ながら自分の技の威力に驚いていた

 

永遠

「仕方ない…(…次に【鉄槌】を使う時は…アレでやるしかないのぉ…)」

 

 そんな事を考えながら折れた刀を鞘に納めた

 

 ~三人称 Side out~

 

 




 次回『第040話:代表決定戦後』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第040話:代表決定戦後

 ~千冬 Side~

 

 私は今日何度驚いたのか分からないがまた驚いている

 その理由はアリーナの惨状が原因だ

 火ノ兄が最後に放った技…その技でアリーナに円柱の形に大穴が開いてしまっているからだ

 一体どうやったらあんな形に穴が開くんだ…

 だが、とりあえず今は…

 

千冬

「…山田先生、火ノ兄に織斑を回収してピットに戻るように伝えて下さい。その後こちらに来るようにと。それと、オルコットも呼んで下さい。」

 

真耶

「分かりました!」

 

 さて、火ノ兄達が来る前にコイツを片付けておくか…

 

千冬

「篠ノ之…お前何時までココにいるつもりだ?」

 

「え?」

 

千冬

「試合も終わった。お前がココに居座る理由もない。私は今から火ノ兄のISについて話を聞かなければならない。部外者のお前が何時までいるつもりだと言ってるんだ。」

 

「ま、待って下さい!なら、オルコットは何故呼んだんですか?オルコットが居てもいいなら私がいてもいいじゃないですか!私もあの機体の事が知りたいんです!」

 

千冬

「馬鹿かお前は?オルコットは火ノ兄のISに関して知っているから呼んだんだ。お前は火ノ兄とは何の接点もないだろうが。分かったらいい加減出て行け!」

 

「ち、千冬さん…」

 

千冬

「篠ノ之!お前には後でココに入り込んだ事によるペナルティを与える!束の妹だからと言って軽くするつもりは無い!政府や委員会の横槍があってもだ!」

 

「そんな…」

 

千冬

「愚か者め!…最初の試合前に出て行っていれば、処罰する気は無かったと言うのに!私の忠告を無視して居座り続けた上に、火ノ兄のISの事を教えろだと!どこまで身勝手なんだ貴様は!!」

 

「そ、それは…」

 

千冬

「もう一度言うぞ!とっとと出て行け!!」

 

「…はい…」

 

千冬

「………全く!やっと出て行ったか!」

 

真耶

「あのまま居座られたら細かい話が出来ませんでしたからね~。」

 

千冬

「そうだな。君たちも今日はもういいぞ。後は、私と山田先生でやっておく。」

 

上級生達

「お疲れ様でした!」

 

 私は管制室にいた上級生達も帰し、ここには私と山田先生しかいない状態にした

 それから少ししてオルコットがやって来た

 

セシリア

「失礼します!お呼びですか?」

 

真耶

「あ、待ってましたよ。後は火ノ兄君だけですね。」

 

セシリア

「そうですか。…あの、先ほど篠ノ之さんとすれ違ったのですが凄い顔で睨まれたんですけど…」

 

千冬

「あの馬鹿め!…オルコット、篠ノ之が何か言ってきても無視しておけ!」

 

セシリア

「?…はぁ~そう言うのでしたら…」

 

 全く、何処まで他人に迷惑をかければ気が済むんだ!

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 ワシはとりあえず織斑を回収してピットに戻ると近くにいた人に後を頼み、織斑先生のおるところに向かったんじゃ

 

永遠

「何か用かの?って用件は【戦国龍】の事じゃろ?」

 

千冬

「そうだ!簡単に聞くぞ。アレも神が造った機体なのか?」

 

真耶

「ええ!そうなんですか?」

 

永遠&セシリア&千冬

「………」

 

 ワシの事を知っとれば、普通は気付くと思うがのぉ?

 

永遠

「…そうじゃ。アレもその一つじゃよ。」

 

千冬

「やはりそうか。…ん?『アレもその一つ』だと?まさか、あの2機以外にもISを持っているのか?」

 

永遠

「後1機あるぞい。」

 

真耶

「えええぇぇぇーーーーっ!!」

 

セシリア

「では永遠さんは全部で3機のISを持っているのですか?」

 

永遠

「そうなるの。じゃが残りの1機は手元には無いぞ。」

 

千冬

「…何故持ってないんだ?」

 

永遠

「今は束さんに預けとる。新型の開発の為に研究したい言うてな。」

 

真耶

「研究、ですか?」

 

千冬

「その3体目は何か特別な機能があるのか?神が造ったとはいえあの束がわざわざお前から借りてまで調べる程の機体なのか?」

 

永遠

「うむ、3体目の名前は【ラインバレル】と言うんじゃが、この機体の特徴が………」

 

 ワシは【ラインバレル】の再生能力と空間転移について説明した

 

千冬

「…な、何だその化け物みたいな機体は!?」

 

永遠

「化け物は無いじゃろ。ただダメージを負ってもその場ですぐに再生して、SEが勝手に回復して、ワープが出来るだけじゃぞ。」

 

千冬

「それを化け物と言うんだ!!」

 

真耶

「そうですよ!機体だけじゃなくてSEまで何のリスクも無しに自動で回復し続けるなんて!その上、空間転移ですよ!無茶苦茶過ぎますよ!!」

 

セシリア

「【ラインバレル】…高い再生能力と空間を操る事の出来る機体…正しく不死身の機体ですわね。」

 

千冬

「全くだ!しかし、束はその機体で何を研究してるんだ?」

 

永遠

「ああ、それはな………」

 

 詳しくは【第25話:入学準備】を読んでくれい!

 

永遠

「………という訳じゃ!」

 

千冬

「なるほどな…確かにその研究が上手くいけば操縦者の生存率は飛躍的に上がる。その鍵となっているのがお前の【ラインバレル】か。」

 

永遠

「そういう事じゃよ。そんな訳じゃからワシもすぐに返せとは言うとらんし、好きなだけ調べろと言ってある。じゃからいつワシの手元に戻るかは分からんのじゃ。」

 

千冬

「そうか、なら【ラインバレル】はお前の所に戻って来た時に聞くとしよう。私もそういう理由なら何も言うつもりは無い。山田先生は?」

 

真耶

「私もいいですよ。」

 

千冬

「なら話を戻して、【戦国龍】について聞くぞ?」

 

永遠

「構わんよ。ワシに答えられる範囲でいいなら。」

 

千冬

「それで構わん。まず私の予想だが【戦国龍】、あの機体は【ドットブラスライザー】を上回る機体ではないのか?」

 

永遠

「そうじゃよ…ちなみに性能は【戦国龍】が一番で【ラインバレル】、【ドットブラスライザー】の順になっとる。」

 

セシリア

「【ドットブラスライザー】が一番弱い機体なんですか!」

 

永遠

「通常形態で比べればな。【ラグナロクフェイズ】や【ジーエクスト】になれば【ラインバレル】や【戦国龍】にも負けとらんよ。」

 

セシリア

「そうなんですか。」

 

千冬

「確かに【ドットブラスライザー】の強みは機体の能力を変形と合体で上げていくことだからな。」

 

永遠

「ただ、束さんは【戦国龍】は化け物を通り越した機体と言うとったがな。」

 

千冬

「化け物を通り越しただと?どういう事だ?」

 

永遠

「束さんが言うには【戦国龍】は他のISと違って人間と殆ど変わらん動きが出来るらしい。」

 

千冬

「何だと!?」

 

永遠

「それと、単一仕様(ワンオフ・アビリティー)が強力過ぎると言うとった。」

 

セシリア

「【戦国龍】も使えますの?もしかして【ラインバレル】もですか?」

 

永遠

「モチロン使えるぞ。後は二次移行(セカンドシフト)出来る所かの。【ドットブラスライザー】と【ラインバレル】は出来んのじゃよ。」

 

真耶

「それって、あれ以上に強くなるって事ですか!?」

 

永遠

「そうなると思うぞ。これで全部じゃよ。」

 

千冬

「…確かに化け物を超えているかもな…単一仕様(ワンオフ・アビリティー)はどんなものか分からんが、二次移行(セカンドシフト)すればどうなるのか見当もつかん!」

 

セシリア

「あの、織斑先生、先ほど【戦国龍】が人と同じ動きが出来ると聞いた時、凄く驚いてましたが何故ですか?」

 

真耶

「そう言えばそうでしたね。」

 

千冬

「簡単だ。分かりきった事だがISは機械だ。特に手足は機械的な動きしか出来ない。だが【戦国龍】は人と同じ動きが出来る。つまりそれだけ無駄な動きが無いという事だ。」

 

永遠

「束さんもそう言っとったぞい。ちなみにワシがさっき使っとった【飛天御剣流】も【戦国龍】でなければ使えんのじゃよ。」

 

千冬

「そういえばそれも聞きたかった。あれはどこの流派だ?」

 

永遠

「アレも特典じゃよ。ただ、ワシは初めから使える様にはしてもらっとらん。」

 

セシリア

「どういう意味ですの?」

 

永遠

「ワシが望んだのは【飛天御剣流】を初めから使える体ではなく、【飛天御剣流】の習得できる方法なんじゃよ。」

 

千冬

「ちょっと待て!ならお前は自分の力だけであれらの技を使えるようになったのか!」

 

永遠

「そうじゃ。」

 

千冬

「…あれ程の技を自分一人でか…」

 

永遠

「…【飛天御剣流】の書物には最初に流派の理が書かれておった。『御剣の剣、即ち、時代時代の苦難から弱き人々を守ること』…とな。」

 

セシリア

「『苦難から弱き人々を守ること』…ですか…」

 

永遠

「ワシはこの理の様に偉そうに振舞うつもりは無い。じゃが、それでもワシの手の届く所にある者、大切な者を守る為にこの剣を使おうと決めとる。」

 

千冬

「守る為の剣か…」

 

永遠

「左様。じゃからワシは剣の鍛練に励み、数年かけて【飛天御剣流】を習得したんじゃよ。」

 

千冬

「火ノ兄…もし他の生徒達から【飛天御剣流】について聞かれたらどうする?」

 

永遠

「…そうじゃな…なら【飛天御剣流】はワシの家にあった秘伝書から習得した古流剣術と説明しておくかの。何故家にあったかは昔の事だから知らんと答えとけばよかろう。」

 

千冬

「それでいいだろ。」

 

永遠

「ちなみにじゃが、最後に使った技はワシが自分で編み出した技じゃ。」

 

千冬

「あれか…いくらなんでもあれはやり過ぎだ!下手したら織斑が死ぬところだぞ!」

 

永遠

「ISを纏ってたんじゃ。あの程度の威力では死なんよ。」

 

千冬

「オイ、どういう意味だ!まさか、あれで手加減したのか!?」

 

真耶

「ええぇぇーーっ!!」

 

永遠

「あれで3割程度の威力じゃよ。生身で使った時と比べれば全力より少し強い程度じゃ。」

 

セシリア

「あ、あれで3割ですの…」

 

千冬

「そうか…お前自身も規格外の存在だったのか…」

 

永遠

「どういう意味じゃい!」

 

千冬

「その通りの意味だ!」

 

永遠

「納得いかんぞ!」

 

千冬

「納得しろ!………そういえば忘れていた…火ノ兄、後でアリーナの穴を埋めておけよ!」

 

永遠

「無理矢理話を変えおって!」

 

千冬

「やっておけよ!」

 

永遠

「ぬぅ…穴を埋めればいいんか?………なら丁度いいかもしれんな。」

 

セシリア

「何がですか?」

 

永遠

「【戦国龍】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)じゃよ。それを使って埋めようと思うてな。」

 

千冬

「あの穴を埋められる能力なのか?」

 

永遠

「そうじゃ。何なら今からやってもいいぞい。」

 

千冬

「…なら頼む。ここでの話も粗方終わったからな。」

 

永遠

「んじゃ、アリーナに戻るかの。」

 

千冬

「そうだな………それと火ノ兄、もう一つ言っておく事があった。」

 

永遠

「何かの?」

 

千冬

「篠ノ之に気を付けろ。」

 

 …どういう事じゃ?

 

千冬

「アイツはお前の【戦国龍】を狙っているようだ。私も気を付けておくが、何を仕出かすか分からんから注意しておけ。」

 

永遠

「…あの娘は何を考えとるんじゃ?」

 

千冬

「自分こそが【戦国龍】に相応しい使い手だと思ってるんだろ。もしかしたら盗む位はやるかもしれない。」

 

永遠

「…ハァ…承知した。じゃが大丈夫じゃろ。そげな邪な考えを持っとるなら【戦国龍】の防衛機能が働くじゃろ。」

 

真耶

「何ですそれ?」

 

永遠

「ワシのISには防衛機能がついとってな。悪どい事を考えたもんが使おうとすると発動するん

じゃ。【戦国龍】の場合は死なんレベルで燃やされるんじゃよ。」

 

千冬

「随分物騒な機能だな。だが、燃やされた奴がいれば盗んだという証拠にもなるな。それに篠ノ之なら確実に燃やされるな。」

 

永遠

「そういう事じゃから、あまり気にせんでもいい。」

 

セシリア

「ですが、それでも危ないですわ。」

 

永遠

「大丈夫じゃよ。ワシも奪われるつもりは無いが、何なら一度燃やして、自分は使えないと分からせるのもいいかもしれん。」

 

千冬

「確かにそれはいい手だな。なら多少気に掛ける程度にするか。山田先生もそんな感じで頼みます。」

 

真耶

「いいんでしょうか?」

 

千冬

「私達がワザと盗ませる訳でもないですし、仮に篠ノ之が火ノ兄を襲ったとしてもコイツなら返り討ちに出来ます。」

 

真耶

「………ハァ、そうですね。分かりました。」

 

セシリア

「………」

 

永遠

「セシリア、さっき織斑先生が言うとったじゃろ。ワシなら返り討ちに出来るんじゃ。じゃから安心せい。」

 

セシリア

「…永遠さん…」

 

永遠

「大丈夫じゃ!!」

 

セシリア

「…はい♪」

 

永遠

「よし!…じゃあ、穴を塞ぎに行くかの。」

 

千冬

「フッ、そうだな。」

 

 何を笑っとるんじゃろこの人?

 

 ~永遠 Side out~

 

 




 次回『第041話:地神刀オオテンタ』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第041話:地神刀オオテンタ

 ~千冬 Side~

 

 私達は火ノ兄が【戦国龍】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)で大穴を塞ぐと言うからアリーナに来ていた

 既に観客席は殆どの生徒が帰っていた

 

永遠

「ではやるかの。」

 

 火ノ兄はそう言って刀を抜き【戦国龍】を展開した

 僅かに残っていた生徒達は現れた【戦国龍】に驚いているようで、全員の視線が集まっていた

 

千冬

「火ノ兄、頼む。」

 

永遠

「おうよ!単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)起動!」

 

 火ノ兄がそう言うと、【戦国龍】の周りに6つの色の異なる光の柱が現れた

 それぞれ、赤・白・緑・黄・青・紫の色だった

 

永遠

「来たれ!【六道剣(りくどうけん)】!!」

 

 光が弱まると光の柱の中にそれぞれ光の色と同じ色の鎖で縛られた剣が現れた

 

千冬

「何だあれは!?6つの剣?」

 

 ザワザワ…

 

 他の生徒達も騒ぎ出したな、早めに片付けた方がいいかもしれん

 

永遠

「ここはお前の出番じゃな!」

 

 火ノ兄はそう言って、6本の柱の一つ、白い柱を見つめると…

 

永遠

「大地を揺るがす凍える剣!【地神刀オオテンタ】!!」

 

 火ノ兄が剣の名前らしきものを呼ぶと、白い柱の中にあった剣を縛る鎖が砕け、それと同時に柱も消え去り中にあった剣が地面に突き刺さった

 

 ズズーーーンッ

 

 残りの5つの柱は白い柱が消えると同時に中の剣ごと消えていた

 それにしても地面に刺さっただけでこの揺れとは、どれだけ重いんだ?

 

セシリア

「【地神刀オオテンタ】…」

 

真耶

「この剣で穴を塞ぐんですか?」

 

永遠

「そうじゃ。」

 

千冬

「一体どうやるんだ?」

 

永遠

「まあ見とれ。」

 

 火ノ兄はそう言って【オオテンタ】という巨大剣を掴んだ

 すると【戦国龍】の装甲、赤い部分が白く変色していった

 

セシリア

「!?…な、何ですの!?」

 

千冬

「白くなった!」

 

真耶

「でも、白い龍もカッコいいですよ!」

 

千冬

「そういう事では無い!?」

 

真耶

「すみません…」

 

 ザワザワ…

 

 さらに喧しくなってきたな…

 

千冬

「火ノ兄!早く終わらせろ!周りが騒ぎ出した!」

 

永遠

「あいよ!………ほい!」

 

 返事をすると刀を振り上げ気の無い掛け声とともに振り下ろし地面に突き刺した

 

千冬

(やる気あるのか?)

 

 そう思った瞬間…

 

 ズズズズズズズッ…

 

千冬

「な、何だ!?………こ、これは!?」

 

 私達の目の前で凹んでいた地面が盛り上がって来た

 

 ズーーーーーンッ!!

 

 次の瞬間にはあれほどの大きな穴が無くなりアリーナの地面はまっ平らになっていた!

 

永遠

「終わったぞい。」

 

千冬

「これは…」

 

セシリア&真耶

「………」

 

 山田先生もオルコットも呆然としてるな…

 

 ザワザワザワザワ…

 

千冬

「火ノ兄!何をしたんだ!」

 

永遠

「これが【戦国龍】の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)六道剣(りくどうけん)】の一振り【地神刀オオテンタ】の能力の一つじゃよ。」

 

 火ノ兄はそう言って持っている大剣を見せた

 

千冬

「…その刀の能力!…いや、一つだと!?その刀にはまだ何かあるのか!?」

 

永遠

「さよう、【地神刀オオテンタ】は大地と氷を操る刀!この刀を使えば軽い地震を起こす事もこの学園程度なら氷漬けにする事も出来るんじゃよ!」

 

千冬

「何だと!?」

 

真耶

「じ、地震に…氷漬け…」

 

永遠

「さらにこの刀を使用している間は【戦国龍】の防御力も上昇しての【地神刀オオテンタ】は【六道剣(りくどうけん)】随一の防御力を持つ刀なんじゃよ!」

 

生徒達

「………」

 

 生徒も今の説明を聞いていたのか、さっきまでの騒がしさが鳴りを潜めているな…まあ、分からなくはないな…

 …しかし、何か忘れているような…

 

セシリア

「…あの、永遠さん…確かその刀を出す時…6つの光の柱が出てきましたけど…もしかして、その刀の様な物が…後、5本あるという事ですか…」

 

 そ、それだ!?

 

千冬

「ひ、火ノ兄!どうなんだ!オルコットの言う通りなのか!?あんな天変地異を起こすような刀が後5本あるのか!?」

 

永遠

「そうじゃ。」

 

千冬

「な!」

 

全員

「何だってえええぇぇぇぇぇーーーーーっ!!!!」

 

永遠

「うるさいのぉ…」

 

 1本の刀でこれだけの力だぞ!…それが全部で6本だと!?

 …確かにこんなものを6本も持っていれば束も化け物を超えていると言いたくもなる…

 

真耶

「ここここんなのが後5本!…ぜぜぜ全部出したらどうなるんですか…」

 

 そうだ!こんな物を同時に使用されたら下手をしたら学園どころか島そのものが沈むぞ!

 

永遠

「安心せい!」

 

真耶

「え?」

 

セシリア

「永遠さん?」

 

 いつの間にかISを解除していた火ノ兄が笑いながら言った

 

永遠

「この単一仕様(ワンオフ・アビリティー)には一つ制限が掛かっておってな。一度に使えるのは1本だけと決められとるんじゃよ。」

 

千冬

「そ、そうなのか…」

 

永遠

「そうじゃよ。」

 

真耶

「よ、よかったです~…」

 

千冬

「だが、例え1本でも強力なのは確かだ。使用する時はくれぐれも注意しろ。」

 

永遠

「分かっとるぞい!」

 

千冬

「よし、穴も塞がったから、今日はもういいぞ!」

 

永遠

「ん!じゃあ帰るかの。」

 

セシリア

「そうですわね。わたくしも部屋に戻りますわ。…それから織斑先生。」

 

千冬

「ん?」

 

セシリア

「代表の件ですが、わたくしは辞退いたします。」

 

千冬

「ああ、分かってる。お前の場合は織斑と試合をする為だからな。」

 

セシリア

「結局出来ませんでしたけど。」

 

千冬

「今回は仕方ない。…代表の件は分かった。後はゆっくり休め。」

 

永遠

「なら今日はこれで。」

 

セシリア

「また明日ですわ。」

 

千冬

「ああ、またな。」

 

 さて、二人は帰したし残りの仕事をサッサと終わらせるか

 後で一夏の見舞いにも行かないとな

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~楯無 Side~

 

 私は今、驚きを通り越して驚愕していた!

 管制室からアリーナに戻る彼らを見かけたから気になって後をつけて来たけど、まさかこんな物を見る事になるなんて!

 火ノ兄君が試合で開けた穴を自分で塞ぐのは分かるけど、問題はその方法よ!

 【戦国龍】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)で塞ぐなんて、何なのよあの刀!

 

楯無

「…【六道剣(りくどうけん)】…なんて代物なの!?」

 

 あれ1本でこの力…しかも、あれで能力の全てじゃない…

 そして、同じ物が後5本もある…

 

楯無

「…もし、あの模擬戦の時に【戦国龍】を使ってきていたら…」

 

 考えただけで震えが来るわ…

 

楯無

「…織斑一夏より彼の方が要注意人物ね!…彼に後ろ盾が無いのは不味いわね…どっかの馬鹿が手を出して彼が【戦国龍】を使ったら周囲が廃墟になりかねないわ。」

 

 愛用の扇子にいつの間にか『危険人物』と出ていた…

 何とかしないと…下手をすると日本が壊滅するかもしれないわね…

 

楯無

「…今度、織斑先生に相談しておこう…」

 

 簪ちゃんを守る為にも!

 でもまさか、その簪ちゃんがあんな行動を取るなんて、この時の私は思っても見なかったのよ!

 

 ~楯無 Side out~

 

 




 次回『第042話:一夏の反省会(+モッピーの野望)』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第042話:一夏の反省会(+モッピーの野望)

お気に入り数が800越えました!!

皆さんのお陰です♪

これからも頑張ります!!


 ~一夏 Side~

 

一夏

「…うっ…うぅぅ…」

 

 目を覚ました俺の目の前には白い天井が広がっていた

 

保険医

「あら、気づいたのね?」

 

一夏

「ここは…」

 

保険医

「保健室よ。貴方は試合の後ここに運ばれたのよ。」

 

一夏

「…試合…そうか…俺…負けたんだ…」

 

保険医

「織斑先生に連絡しておくから、今はゆっくりしておきなさい。」

 

一夏

「千冬姉に…分かりました…」

 

 俺が返事をすると保険医の先生は出て行った…多分、千冬姉を呼びに行ったんだと思う

 

一夏

「…負けたか…当然だよな…」

 

 俺は試合前に千冬姉に言われた事、試合中に火ノ兄に言われた事、そして今までの俺がしていた事を思い返していた

 

一夏

「…俺は今まで何していたんだろうな…火ノ兄の言う通りじゃねえか…」

 

 自分がどれだけいい加減な事ばかりしていたのか

 

一夏

「…今の俺に誰かを守るなんて…出来る訳無いじゃねえか…」

 

千冬

「…ようやく気付いたか…」

 

一夏

「千冬姉!?」

 

 いつの間にか千冬姉がやって来ていた

 

千冬

「どうだ…今の気分は?」

 

一夏

「…最悪だよ…」

 

千冬

「…ほぉ…」

 

一夏

「…さっきまで…千冬姉と火ノ兄に言われた事を思い出していた…この一週間と入学前の自分を思い出していた…」

 

千冬

「………」

 

一夏

「…そしたらさ…俺がどれだけ口先だけの人間なのかって分かったんだ…自分自身に嫌気が差したよ…これじゃあ、火ノ兄にボコられても仕方ねえよ…」

 

千冬

「なら…試合の時、火ノ兄に言われた事をお前はどう思う…否定するのか?…しないのか?」

 

一夏

「否定したいよ…でも…出来ない…全部本当の事だよ…俺は火ノ兄の言う通りの馬鹿で情けない腰抜けだよ…」

 

千冬

「そうだ!」

 

一夏

「千冬姉…」

 

千冬

「今のお前は、馬鹿で、情けなくて、腰抜けで、いい加減で、口先だけのただの甘ったれた人間だ!」

 

一夏

「グッ!…そこまで言わなくても…」

 

千冬

「全て本当の事だ!」

 

一夏

「…はい…その通りです…」

 

千冬

「もう分かっているようだな。お前が勝てなかった訳が…」

 

一夏

「ああ…勝てる訳ねえよ………千冬姉と同じ武器を持ってるからって同じ事が出来る訳無いのになぁ…ずっと努力していた奴に…勉強も訓練も何一つしなかった俺が勝てる筈ねえよ…思い上がってたんだなぁ俺…」

 

千冬

「その通りだ。」

 

一夏

「…そんな奴が誰かを守るなんて言えば、そりゃ怒るよな…なあ千冬姉…」

 

千冬

「なんだ?」

 

一夏

「…どうすればさ…大切な人を守れる男になれるのかな…」

 

千冬

「…お前は自分で考える事を知らんのか!」

 

一夏

「うぐっ!…すみません…」

 

千冬

「ハァ…全く………まずは強くなれ!」

 

一夏

「え?」

 

千冬

「自分で自分を守れるくらいに強くなれ!」

 

一夏

「自分で…自分を…」

 

千冬

「そうだ!自分も守れない奴が他の誰かを守ることなど出来ん!まず自分を守る!それが出来るようになって初めて誰かを守る事が出来るんだ!」

 

一夏

「………」

 

 まずは自分を守れるようになる、か…難しいな…

 

千冬

「それが出来ない奴が誰かを守るとしたら、それは自分の命を捨てる覚悟のある奴だけだ!お前にその覚悟があるか!」

 

一夏

「…無い…」

 

千冬

「ならば強くなれ!体を鍛えろ!知識を蓄えろ!経験を詰め!」

 

一夏

「………」

 

千冬

「私が言えるのはここまでだ!どうするかはお前が決めろ!それから方法は自分で考えろ!私もそこまで面倒は見んぞ!」

 

一夏

「…分かった…」

 

千冬

「…なら私はもう行く。まだ仕事が残っているからな。」

 

一夏

「あ!千冬姉…もう一つ聞きたい事が…」

 

千冬

「ん?」

 

一夏

「火ノ兄の使っていた剣術って知ってるか?」

 

 【飛天御剣流】…あんな剣術、俺は聞いた事無いんだよな

 

千冬

「ああ、アレか…アレは私も初めて聞いた流派だ。火ノ兄に聞いたらアイツの家にあった秘伝書の様な物に記されていた流派だそうだ。だから、誰が編み出したのかは火ノ兄も知らないらしい。だが、かなり古い流派の様だと言っていたな。」

 

一夏

「そっか…【飛天御剣流】か…」

 

 火ノ兄も詳しくは知らないのか…

 

千冬

「じゃあな、今日はココでゆっくり休め。…ちゃんと反省しろよ。」

 

一夏

「うっ!…はい…」

 

 最後に余計な事言わないでくれよ…

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~箒 Side~

 

「………」

 

 私は今、千冬さんから管制室に勝手に入った事に対するペナルティとして反省文20枚を書くよう言われ、それを書いている

 

「………【戦国龍】…」

 

 だが、私は今日の一夏の試合の時、対戦相手が使ったIS【戦国龍】の事しか頭に無かった

 

「フ…フフフ…【戦国龍】…アレは私にこそ相応しい………必ず手に入れる…フフフフッ…ハハハハハハハハハハハハハハッ………」

 

 私は【戦国龍】を自分が纏う姿を想像していると笑いが込み上げて来た

 

千冬

「五月蠅いぞ篠ノ之!!笑ってないでさっさと書け!!明日の朝までに提出しなければ10枚追加するからな!!」

 

「は、はい!?」

 

 千冬さんが部屋の外にいたのか…気を付けなければ…

 

千冬

「………(分かり易い奴だ…やはり狙っていたか…)」

 

 ~箒 Side out~

 

 




 次回『第043話:クラス代表、織斑一夏』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第043話:クラス代表、織斑一夏

 ~一夏 Side~

 

 俺は今、自分の耳が信じられなかった!

 

真耶

「それでは、1年1組のクラス代表は織斑一夏君に決定しました!あ、1繋がりでゴロもいいですね!それでは皆さん拍手!」

 

 パチパチパチパチ…

 

 火ノ兄にボコボコにされた試合から、一晩明けた朝のHRで俺がクラスの代表に決定した

 

一夏

「ちょ、ちょっと待ってください!なんで俺なんですか!俺は火ノ兄にズタボロに負けたんですよ!オルコットにも勝った火ノ兄がなるんじゃないんですか!」

 

千冬

「お前は一週間前の事も覚えとらんのか…」

 

一夏

「え?」

 

 一週間前?…何かあったっけ?

 

千冬

「私は言った筈だぞ。火ノ兄はクラス代表に出来ないと!お前が真っ先に突っかかってきた筈だが?」

 

一夏

「あぁっ!?」

 

 そうだ!思い出した!千冬姉の言う通りだ!

 

千冬

「火ノ兄の力は昨日の試合で全員分かった筈だ!まだ何か異議のある奴はいるか?」

 

生徒達

「………」

 

 誰も何も言わない…そうだよな…あれだけの強さを見せられたらな…でも、それなら…

 

一夏

「な、なら、オルコットは!」

 

セシリア

「わたくしは辞退しました。昨日の試合が終わった後に織斑先生に伝えてあります。」

 

一夏

「な、何で…」

 

千冬

「お前には記憶力が無いのか?オルコットが立候補したのはお前の言動にキレて叩きのめす為だぞ。」

 

一夏

「あ…」

 

 そう言えばそうだ…俺、あの時、火ノ兄やオルコットにキレられても仕方のない事を言ったんだ…

 

千冬

「まあ結局出来なかったが、あの場合は仕方がないからな…そういう訳でオルコットも除外される。残ったのは推薦されていたお前だけだ。いい加減諦めて現実を受け入れろ!」

 

一夏

「…はい…」

 

真耶

「それでは織斑君。無事に代表に就任したのでクラスの皆に一言お願いします。」

 

一夏

「ええぇっ!」

 

 何て言えばいいんだ…

 

一夏

「え、ええっと…が、頑張ります………」

 

 ズコッ!

 

 また皆コケた…

 

 ガンッ!

 

千冬

「お前はもう少し気の利いた事が言えんのか!」

 

一夏

「…す、すみません…」

 

千冬

「それからお前、火ノ兄とオルコットに言う事があるだろ。」

 

一夏

「え?………あ!」

 

 …そうだ、一週間前、俺は火ノ兄を馬鹿にしてオルコットを侮辱したんだ…

 …その後、火ノ兄に滅茶苦茶に言われて、オルコットと一緒に無視されたけど

 …それも元は俺の言った事が原因だ

 …俺があんなこと言わなかったら二人とも何も言わなかったんだ

 

一夏

「…火ノ兄…オルコット…その…すまなかった!!」

 

永遠

「ワシは別に気にしとらん。ワシよりもセシリアに謝れ!それと、これからは考えて物を言え!お主、このままじゃと無自覚に周りを傷付けて終いには後ろから刺されるぞ!」

 

一夏

「…ああ…気を付ける…」

 

永遠

「(…もう手遅れかもしれんが…)」

 

 ん?最後の方は声が小さくて聞こえなかったな…何て言ったんだ?

 

永遠

「後、お主を腰抜けと言った言葉は取り消さんし謝らんぞ。取り消して欲しいんじゃったら違うと証明するんじゃな。」

 

一夏

「…分かってる…ちふ、織斑先生にも昨日言われた…」

 

永遠

「さよか、まあ頑張るんじゃな。」

 

一夏

「…ああ…」

 

 後は、オルコットにも謝らないと…

 

一夏

「オルコット…本当にすまなかった!」

 

セシリア

「もういいですわ。それから、わたくしも永遠さんと言いたい事は同じです。後ろから刺されて死ぬなんて惨めな死に方ですわよ。」

 

一夏

「…はい…」

 

 …本当にそうなりそうで怖い…

 

セシリア

「それから織斑さん。クラス代表は他の生徒よりもISの戦いを多く経験できます。知識も経験も実力も何もかも不足している貴方には丁度いい機会ですわよ。」

 

一夏

「え!そうなのか?」

 

セシリア

「ええ、あなたは嫌がってますけど、代表にはこういうメリットもあります。」

 

千冬

「オルコットの言う通りだ。織斑、お前はただでさえ他の奴らより遥かに遅れてるんだ。その位しないと追いつけんぞ。」

 

一夏

「…分かった!…やってやるよ!いつか火ノ兄やオルコットを越えてやる!!」

 

 パチパチパチパチ…

 

 皆が応援してくれてる!…俺、頑張るぞ!!

 

永遠

「そう言う事はワシに一太刀入れてから言うんじゃな。ま、頑張れ。」

 

セシリア

「そうですわね。いつになるか分かりませんけど♪」

 

 う!…いきなり心が折れそう…でも、頑張る!!

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~箒 Side~

 

 クラス代表が決定しHRが終わると一夏は、何故かあの火ノ兄の所に向かった

 

一夏

「頼む火ノ兄!俺を鍛えてくれ!!」

 

 何だと!一夏、お前には私が教えているじゃないか!

 

永遠

「断る!」

 

一夏

「何で!?」

 

永遠

「…初日に織斑先生が言ったじゃろ。ワシは放課後になったら家に帰って畑仕事をするんじゃ。お主を鍛える時間なんぞありゃせん。」

 

一夏

「で、でも、お前、時々オルコットと放課後に話してるだろ!だったら俺にも…」

 

永遠

「阿呆!セシリアとは一時間程度しか話しとらんわ!その程度の時間で鍛えるのはそもそも無理じゃ!」

 

一夏

「そ、そんなぁぁ~~…だったら、オルコット!」

 

 貴様は私と言うものがありながら…

 

セシリア

「別に教えて差し上げても良いのですが…」

 

一夏

「だったら頼むよ!」

 

セシリア

「…わたくしもお断りしますわ。」

 

一夏

「どうして断るんだよ!」

 

セシリア

「でしたら、まずは後ろの方を説得して下さい。」

 

一夏

「え?」

 

 一夏が後ろを振り向いてこっちを見た

 

一夏

「…箒?」

 

「一夏!お前には私が教えているだろ!他の奴の手を借りるとはどういうことだ!」

 

一夏

「そ、それは…」

 

セシリア

「説得出来たらまた来て下さい。その時は教えてあげますわ。」

 

一夏

「…はい…」

 

 説得だと!フン!私がそんな事を許すわけないだろ!

 

千冬

「………」

 

 この後、この時の会話を聞いていた千冬さんが一夏にオルコットから教わるように言って来た

 私は反論したが一週間ISの事を何も教えていなかった奴は黙っていろと言われ、何も言い返せなかった

 ただ、オルコットも忙しいらしく週に2,3日しか教えられないと言っていた…その時は邪魔してやろうと思ったが…千冬さんから邪魔すれば補習を増やすと脅された

 

 ~箒 Side out~

 

 




 次回『第044話:実習授業』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第044話:実習授業

お気に入りが900を超えました♪

皆さんのお陰です♪

お気に入り1000を目指してこれからも頑張ります♪


 ~永遠 Side~

 

 クラス代表も決まり今は午前中最後の授業じゃ

 今日からISの実技に入るらしくての、全員今はISスーツに着替えてアリーナに集まっとる

 もっとも、ワシはスーツが要らんからいつもの制服じゃが

 しかし、うら若い娘子達がこげな格好しとると目のやり場に困るのぉ…はよ慣れんと…

 

本音

「ね~ね~ひののん♪」

 

永遠

「本音か、何かの?」

 

本音

「何でひののんは制服なの~?」

 

永遠

「ワシのISはスーツがいらんからな。いつもの格好で十分なんじゃよ。」

 

本音

「へ~いいな~♪」

 

永遠

「そうかの?」

 

本音

「うん♪だってこれ着替えるの面倒だもん♪」

 

永遠

「さようか。」

 

千冬

「お前達、お喋りはそこまでだ!授業を始めるぞ!」

 

 織斑先生が来たんでワシ等はクラスの列に並んだんじゃ

 

千冬

「それではこれよりISの基本的な飛行操縦をしてもらう。火ノ兄、織斑、オルコット。試しに飛んで見せろ。」

 

 織斑先生に呼ばれたワシ等はクラスの者達の前に移動したんじゃが…

 

永遠

「織斑先生…ワシはどっちの機体を使えばいいんかの?」

 

千冬

「そうだったな…なら、【ドットブラスライザー】を使え。それと、後で【戦国龍】も出してもらう。」

 

「!?」

 

永遠&千冬

「………」

 

 織斑先生の言葉に篠ノ之が反応しおったな…まあ今はほっとくか…

 

永遠

「…あいよ。」

 

 ワシは返事をすると、軍刀を抜き正面に円を描いて【ドットブラスライザー】を展開した

 

千冬

「…火ノ兄…お前のISはそうしないと展開出来ないのか?」

 

永遠

「…どうもそうらしいんじゃよ。」

 

千冬

「それなら仕方ないか…しかし…」

 

 織斑先生がワシの隣を見ると未だに展開できずに苦戦中の織斑がおった…ちなみにセシリアはとっくに展開しとる

 

千冬

「早くしろ!」

 

一夏

「は、はい!」

 

 織斑先生に睨まれた織斑は腕を突きだしガントレットに手を添えて集中してやっと展開しおった

 

千冬

「遅い!熟練したIS操縦者は展開まで1秒とかからないぞ。以後精進しろ!」

 

一夏

「…はい…」

 

 織斑がやっと展開したから織斑先生は授業を進めた

 

千冬

「…よし、飛べ!」

 

 織斑先生の指示と同時にワシとセシリアは急上昇した

 織斑は反応に遅れたんかワシらより下を飛んどる

 

一夏

「お~~~い!待ってくれ~~~!」

 

千冬

『何をやっている!【ドットブラスライザー】はともかく、スペック上の出力は【白式】は【ブルー・ティアーズ】より上の筈だぞ。』

 

 飛んでいきなり説教とはのぉ…

 

一夏

「自分の前方に角錐を展開するイメージって何だよ?感覚が掴めないんだよな。」

 

セシリア

「織斑さん、教科書はあくまでも参考ですわ。自分に合った方法を見つけるのがよろしいですわよ。」

 

一夏

「そう言われても…大体、空を飛ぶ感覚自体あやふやなんだよ。なんで浮いてんだ?これ?」

 

セシリア

「説明しても構いませんが長くなりますわよ?反重力力翼と流動波干渉の話になりますわよ?」

 

一夏

「わかった。説明はしなくていいです。」

 

永遠

「お主じゃ半分も理解出来まい。」

 

セシリア

「そうですわね。」

 

一夏

「ぐっ!本当の事だから言い返せない!」

 

永遠

「ようは慣れじゃよ慣れ。飛ぶのに慣れるしかないんじゃよ。」

 

一夏

「…慣れ…か…」

 

永遠

「そうじゃ。何事も慣れる事から始まるんじゃ。」

 

『一夏っ!いつまでそんな所にいる!早く降りてこい!』

 

永遠

「何じゃ五月蝿いのぉ!今の声は篠ノ之か?」

 

 いきなり怒鳴り声が聞こえおったな

 篠ノ之の奴、山田先生のインカム奪って喋っとるな

 お!織斑先生に殴られて踞っとる

 

一夏

「…ここからでも地上の様子がよく分かるな。全員の顔がしっかりと見分けられる。」

 

セシリア

「これでも機能制限がかかっているんですよ。本当なら広大な宇宙空間での自分の位置を把握する為の物ですから。」

 

永遠

「しかし、何がしたいんじゃあの娘は?あげな事すれば殴られるのは分かりきっておったじゃろうに?」

 

セシリア

「本当ですわ。」

 

一夏

「………その…すみません…」

 

永遠

「別にお主が謝らんでも…」

 

セシリア

「…いいですわよ。」

 

一夏

「…はい…」

 

 こやつも苦労しとるのぉ…

 篠ノ之なら背中から刺しそうじゃしな…

 

千冬

『お前達、急降下と完全停止をやってみろ。目標は地上から10㎝だ。』

 

セシリア

「了解です。では永遠さん、織斑さん、お先に。」

 

 織斑先生の指示が来て最初に動いたのはセシリアじゃった

 さすがは代表候補生じゃ、簡単に合格した様じゃな

 

永遠

「なら、次はワシが行こう。」

 

 そう言って地上に向けて加速していったんじゃ

 地上に近づくと態勢を変えて減速を掛けていくと、何とか地上ギリギリで止まる事が出来たんじゃ

 

千冬

「12㎝か…惜しかったな。次は上手くやるように。」

 

永遠

「…無念。」

 

セシリア

「惜しかったですわね。」

 

永遠

「そうじゃな。まあ、そのうち慣れるじゃろ。」

 

セシリア

「フフッ♪そうですわね♪」

 

 ドガアアアァァァーーーンッ!!

 

永遠

「何事じゃ!?」

 

セシリア

「何がありましたの!?」

 

 突然、アリーナ中に衝撃が走ったんじゃ

 ワシとセシリアは音のした方を見ると、そこには砂埃が舞っておってデカい穴が開いておった!

 

永遠

「…のうセシリア、この穴もしや?」

 

セシリア

「多分そうでしょう…」

 

千冬

「馬鹿者!!誰が地面に大穴開けろと言った!!」

 

 やはりアイツか…

 

永遠

「織斑の奴、地面に突っ込んだようじゃな…」

 

セシリア

「その様ですわね…」

 

千冬

「全く呆れてものも言えん…」

 

永遠

「まあ奴にはいい経験じゃろ。」

 

セシリア

「それもそうですわね。」

 

千冬

「………そうだな。」

 

 織斑先生も交えてそんな話をしとると…

 

「一夏!昨日あれほど私が教えただろうが!」

 

永遠

「…セシリア、ああ言っとるがどうなんじゃ?」

 

セシリア

「アレを教えていると言っていいのか…擬音だらけで何を言ってるのか分かりませんでしたわ。」

 

永遠

「何じゃそれは?そげな教え方あるんか?」

 

セシリア

「本人は教えているつもりなんでしょう…」

 

永遠

「そうか…まあ、篠ノ之に頼んだあやつが悪い。」

 

セシリア

「そうですわね。」

 

千冬

「………」

 

 さて、一応声を掛けとくか…

 

永遠

「織斑~、生きとるか~?」

 

一夏

「あぁ、大丈夫だ。」

 

 やっと這い出て来たか…

 

「ISを付けていて怪我をするわけないだろ。」

 

永遠

「お主は何を言っとるんじゃ?」

 

セシリア

「篠ノ之さん、あくまで殆ど怪我をしないだけですわ。内部に衝撃が入る事で、打撲のような痕が残る事もありますわよ。」

 

永遠

「そんな考えしとるといずれ大怪我するぞ。」

 

「何だと!?」

 

千冬

「黙れ篠ノ之!二人の言う通りだ!ISがあるからと言って怪我をしない訳ではない!過信は大怪我の元だ!他の者も覚えておけ!」

 

生徒達

「はい!!」

 

「クッ………」

 

千冬

「授業を続けるぞ!織斑、武装を展開しろ。その位は出来るな?」

 

一夏

「は、はい。」

 

千冬

「よし、始めろ!」

 

 集中する為に剣を構えるような姿勢になりおったな…これがこやつのやりやすい姿勢かの?

 暫くして、両手に光が集まりその光が収まるとその手には【雪片弐型】が握られておった

 

千冬

「遅い!0.5秒で出せるようになれ!」

 

 厳しいのぉ…展開が1秒、武器が0.5秒か…

 

千冬

「次はオルコット!」

 

セシリア

「かしこまりました。」

 

 今度はセシリアが指名された

 左手を肩の高さまで上げて、一瞬光るとそこには専用ライフル【スターライトmkⅢ】が握られておった

 そして、それを構え、セーフティを解除した

 

千冬

「1秒か…中々の速さだ。展開時の姿勢も問題ない。」

 

セシリア

「ありがとうございます。」

 

 さて次はワシか…ってワシの武装は…

 

千冬

「最後に火ノ兄…と言いたいが【ドットブラスライザー】には拡張領域(バススロット)に武器はあるのか?」

 

永遠

「無いのぉ…ちなみに【戦国龍】もじゃ。」

 

千冬

「やはりそうか。ならお前はやらなくてもいい。その代わり最初に言ったように【戦国龍】に機体を替えろ。」

 

永遠

「あいよ!」

 

 しかし、何故【戦国龍】に替えるんじゃろうか?

 

 ~永遠 Side out~

 

 




 次回『第045話:名刀・六道剣!』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第045話:名刀・六道剣!

 ~永遠 Side~

 

 織斑先生に言われて【ドットブラスライザー】を解除し【戦国龍】を展開したんじゃが…

 

永遠

「何をするんじゃ?【戦国龍】の武器は刀と槍だけじゃぞ?」

 

千冬

「…確かに普通の武器はな…だが【戦国龍】には他にもあるだろ。」

 

永遠

「…まさか…」

 

千冬

「アレを出せ!」

 

永遠

「何じゃと!?」

 

セシリア

「待って下さい!アレを出すんですか!」

 

真耶

「アレは危険すぎますよ!」

 

一夏

「アレ?…アレってなんだ?」

 

 アレが何か分かっとるセシリアと山田先生は狼狽えておるの、何も知らん織斑や他の生徒達は分かっとらんな

 

千冬

「二人とも落ち着け!?アレが危険なのは私も分かっている!だからこそ一度全てを見ておきたいんだ!」

 

真耶

「え?」

 

千冬

「火ノ兄がアレを使用した時、どれがどういった能力を持っているかを知らないと私達も対応が遅れてしまう!だからこそ一度確認しなければならないんだ!」

 

セシリア

「そういう事ですの…」

 

真耶

「確かにそうですね。アレは危険ですから対処法をキチンと用意しないといけませんね。」

 

千冬

「そういう事だ!火ノ兄も分かったか!」

 

永遠

「んむ。分かったぞい!」

 

一夏

「オイ!そっちだけで納得するな!いい加減説明してくれ!」

 

 そう言えばコイツの事を忘れとったな…

 

千冬

「ああ、すまんな…忘れていた。」

 

一夏

「オオォォーーイッ!!」

 

永遠

「喧しいぞ!今から説明してやるから静かにせんか!」

 

一夏

「…じゃあ何なんだよアレって!」

 

永遠

「せっかちじゃな。アレ言うんは【戦国龍】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)の事じゃ。」

 

 ザワザワ…

 

一夏

単一仕様(ワンオフ・アビリティー)!そのISも使えるのか!」

 

永遠

「使えるぞ。【戦国龍】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)は【六道剣(りくどうけん)】と言う6本の刀を呼び出す能力じゃ。」

 

一夏

「刀?…刀を呼ぶだけで何でそんなに慌てるんだ?」

 

千冬

「阿呆!ただの刀では無いから慌ててるんだ!」

 

一夏

「ただの刀じゃないって…どういう事だ?」

 

千冬

「…織斑…昨日の試合でお前が最後に喰らった技があったな?…アレでアリーナがどうなったか知ってるか?」

 

一夏

「ア、アレか!…た、確かデカい大穴が開いたって…聞いたけど…」

 

千冬

「そうだ。お前がさっき開けたのより大きい穴だ。だがその穴はもう塞がっている。火ノ兄が試合の後に塞いだからな。」

 

一夏

「そうなのか?…でもそれが一体?」

 

千冬

「まだ分からんのか?…その大穴を【六道剣(りくどうけん)】の1本で塞いだんだ。しかも一瞬でな。」

 

生徒達

「ええええぇぇぇぇーーーーっ!!」

 

一夏

「あの穴よりデカい穴を一瞬で塞いだ!」

 

真耶

「そうです!しかも穴を塞いだのは、その刀の能力のほんの一部でしかないそうです!」

 

生徒達

「ええええぇぇぇぇーーーーっ!!」

 

千冬

「これで分かったか!私達はそんな物騒な物を今の内に確認しておきたんだ!」

 

生徒達

「は、はい!」

 

「………」

 

 篠ノ之の奴…口元がゆるんどるな…分かり易い奴じゃ…

 

セシリア

「(永遠さん…アレ…)」

 

永遠

「(分かっとる…じゃが今は無視せい…)」

 

セシリア

「(…分かりました…)」

 

千冬&真耶

「………」

 

 織斑先生と山田先生も気づいとるな…

 

千冬

「…火ノ兄!早速始めるぞ!全員火ノ兄から離れろ!巻き込まれても責任は取らんぞ!」

 

 蜘蛛の子を散らすように離れおったな…

 

永遠

「さて、始めるかの…単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)起動!」

 

 ワシが単一仕様(ワンオフ・アビリティー)を発動させると周りに6色の光の柱が現れた

 

永遠

「来たれ!【六道剣(りくどうけん)】!!」

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 ≪1本目【炎龍刀オニマル】≫

 

 火ノ兄が単一仕様(ワンオフ・アビリティー)を発動させると【戦国龍】を取り囲むように6本の柱が現れた

 よく見ると中に鎖で縛られた剣が1本ずつ入っていた

 

一夏

「…アレが【六道剣(りくどうけん)】?」

 

千冬

「そうだ。」

 

永遠

「それで、まずはどれからじゃ?」

 

千冬

「順番はお前に任せる。全部見せてくれればいいからな。」

 

永遠

「ん!…なら、やはりコイツからかの!」

 

 そう言うと火ノ兄は赤い柱の方を向いた

 

永遠

「燃え上れ!猛き炎の剣【炎龍刀オニマル】!!」

 

 火ノ兄が剣の名前を呼ぶと赤い柱の中にある剣を縛る鎖が砕けた

 赤い柱が消えると中から鍔が龍の頭でその口から炎の様な刀身を持つ剣が出て来た

 

一夏

「な、何だよコレ!?」

 

永遠

「これが【六道剣(りくどうけん)】の一振り、【炎龍刀オニマル】じゃ!」

 

一夏

「【炎龍刀オニマル】…カ、カッケエエ!」

 

千冬

「火ノ兄…この剣の能力は何だ?」

 

永遠

「うむ!【炎龍刀オニマル】の属性は炎じゃ。コイツは見た通り炎を操る事が出来るんじゃが…刀身に炎のエネルギーを纏わせることが出来る…後はそうじゃな…例えばじゃが、休火山とかにコイツを刺せば簡単に噴火させる事も出来るの。」

 

生徒達

「ええええぇぇぇぇーーーーっ!!」

 

千冬

「ふ、噴火だと!?」

 

 え!?何だよそれ…

 

永遠

「【炎龍刀オニマル】は【六道剣(りくどうけん)】の中でも最強の攻撃力を持つ刀。ワシはコイツが一番使い慣れとるんじゃよ。」

 

千冬

「そ、そうか…」

 

永遠

「【オニマル】の説明はこんなとこかの。」

 

千冬

「分かった。…なら、次を頼む。」

 

永遠

「あいよ。単一仕様(ワンオフ・アビリティー)解除!………再起動!」

 

 火ノ兄は何故か単一仕様(ワンオフ・アビリティー)を解除して【炎龍刀オニマル】を消して、再び発動させた

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 ≪2本目【地神刀オオテンタ】≫

 

一夏

「何で単一仕様(ワンオフ・アビリティー)を解除したんだ?次の刀を出すならそのまま出せばいいんじゃないのか?」

 

千冬

「【戦国龍】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)には一度に出せるのは1本だけと制限が掛かっている。他の刀を出すには一端解除しないといけないんだ。」

 

一夏

「そうなんだ…」

 

永遠

「大地を揺るがす凍える剣!【地神刀オオテンタ】!!」

 

 次に出したのは昨日見せて貰ったあの大剣だった

 

真耶

「ヒエエェェーーッ!?オ、【オオテンタ】!?ガクガクブルブル…」

 

一夏

「や、山田先生!?」

 

 山田先生が急に震えだしたか…分からなくはないが…

 

セシリア

「…仕方ありませんわね…あの剣ですから…」

 

一夏

「え?どういう事?あの剣を知ってるのか?」

 

セシリア

「ええ、先ほど織斑先生が言ってましたでしょう。あの【地神刀オオテンタ】が穴を塞いだ剣ですわ。」

 

一夏

「え!?アレで!?…え?」

 

 私達が火ノ兄の方を見ると【戦国龍】が【オオテンタ】を握る所だった

 すると、鎧の赤い部分が白く変色していった

 

一夏

「し、白くなった?」

 

永遠

「この【戦国龍】はな…【六道剣(りくどうけん)】を発動させてその刀を握ると、機体の色がその刀と同じ色になるんじゃよ。」

 

一夏

「え?でも、さっきは変わらなかったぞ?」

 

永遠

「【オニマル】の色は赤じゃ。【戦国龍】は元々赤じゃから変わる訳なかろう。」

 

一夏

「あ、そっか!」

 

本音

「それで、この剣ってどんな力があるの~?」

 

千冬

「私が教えてやろう。この剣は大地と氷を操れるそうだ。【オオテンタ】の力を使えば地震を起こす事もこの学園を氷漬けにする事も出来るらしい。昨日の穴を塞いだのもその力の応用らしい。」

 

一夏

「地震に氷漬け!?」

 

生徒達

「ええええぇぇぇぇーーーーっ!!」

 

真耶

「ガクガクブルブル………」

 

 だから、山田先生はこんな風になったんだが…

 

千冬

「さらに【オオテンタ】を使用している間は【戦国龍】の防御力も上がるらしい。火ノ兄が言うには【六道剣(りくどうけん)】最強の防御力を持つそうだ。」

 

 最強の防御力を持つ刀…【オニマル】と逆だな…

 

永遠

「そういう事じゃ。さて、次じゃな。解除………起動。」

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~真耶 Side~

 

 ≪3本目【風翼刀ドウジキリ】≫

 

千冬

「次は何だ?」

 

永遠

「風を纏いし神速の刃【風翼刀ドウジキリ】!!」

 

真耶

「【風翼刀ドウジキリ】ですか…」

 

 これが3本目の刀…羽の様な装飾がされた剣ですね…

 

一夏

「あれ?山田先生復活したんですか?」

 

真耶

「あ、はい、何とか…」

 

永遠

「この【ドウジキリ】は風を司る刀で色は緑じゃ。まあ、要するにじゃ…竜巻や台風を作る事が出来るんじゃよ。」

 

生徒達

「ええええぇぇぇぇーーーーっ!!」

 

永遠

「いい加減飽きてきたぞ、そのリアクション…」

 

一夏

「いや、これしか取り様が無いと思うんだけど…て言うか今度は竜巻と台風!?」

 

 織斑君の言う通りですよ~…

 

永遠

「さよう。後はコイツを使うと【戦国龍】のスピードが上がる位かの。」

 

真耶

「どの位上がるんですか?」

 

永遠

「およそ…4倍から5倍じゃな。」

 

真耶

「そ、そんなに…」

 

永遠

「そうじゃ。…やっと半分か…解除………起動。」

 

 ~真耶 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

 ≪4本目【雷命刀ミカヅキ】≫

 

セシリア

「4本目ですわね…」

 

永遠

「雷光轟く金色の剣【雷命刀ミカヅキ】!!」

 

 これが4本目の刀…鍔がその名の通り三日月の形をしたとても綺麗な刀でした…

 

セシリア

「【雷命刀ミカヅキ】…とても美しい刀ですわね…」

 

永遠

「そうじゃろうな。【ミカヅキ】は【六道剣(りくどうけん)】で最も美しい刀じゃからな。」

 

セシリア

「確かに納得できる美しさですわ。」

 

永遠

「じゃが、ただ綺麗なだけの刀でもないぞ。【ミカヅキ】は六道剣(りくどうけん)随一の切れ味を誇り、光と雷を操れる。その気になれば雷を雨の様に落とす事が可能じゃ。ちなみに色は黄色じゃ。」

 

生徒達

「ええええぇぇぇぇーーーーっ!!」

 

一夏

「そんな事したら死んじまうぞ!?」

 

永遠

「する訳なかろぉ…出来る言うだけじゃ。」

 

 それでも十分恐ろしいですわよ!…まだ4本目だと言うのに…もう何でもありですわね…

 

永遠

「後は【ミカヅキ】の能力じゃが…フム、丁度いい具合にSEが減っとるの。」

 

セシリア

「SEが?何故ですか?」

 

永遠

「ん?言っとらんかったか?【六道剣(りくどうけん)】を出すには一定量のSEが必要なんじゃよ。」

 

千冬

「聞いてないぞ!」

 

永遠

「それはすまんかった。」

 

千冬

「全く!SEが無いならすぐに補給して来い!」

 

永遠

「その必要は無い。この【ミカヅキ】はその為の刀じゃからな。」

 

千冬

「何だと?」

 

永遠

「【雷命刀ミカヅキ】は一度だけじゃが【戦国龍】のSEを完全回復出来る刀なんじゃよ。」

 

セシリア

「え!それでは…」

 

永遠

「今からコイツで回復する。」

 

 永遠さんが【ミカヅキ】を構えると刀が光り出しました

 

真耶

「お、織斑先生!本当に【戦国龍】のSEが回復してます!」

 

 山田先生がディスプレイで確認したのか驚いていました…

 それにしてもこの刀も凄いですわね…まだ、あと2本もあるのですか…

 

永遠

「以上が【ミカヅキ】の能力じゃ。…さて次じゃ。」

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 ≪5本目【水覇刀ジュズマル】≫

 

 火ノ兄はそう言って5本目を出し始めた

 

永遠

「荒ぶる海原を制する刃【水覇刀ジュズマル】!!」

 

 5本目は鍔に数珠が巻かれた青い剣だった

 

千冬

「【水覇刀ジュズマル】か…今迄のパターンで言えば…色は青、属性は水、出来る事は…津波か洪水を起こすと言ったところか。」

 

一夏

「え?」

 

永遠

「ほぼ正解じゃな。生憎と洪水は無理じゃ。渦なら作れるがな。」

 

生徒達

「ええええぇぇぇぇーーーーっ!!」

 

千冬

「そうか…惜しかったな。だが、津波は合っていたか………その刀…水害そのものだな…」

 

永遠

「…そうじゃな…さて、【ジュズマル】の能力じゃが…ダメージを5分の1にする。」

 

千冬

「………は?」

 

真耶

「…5分の1…」

 

永遠

「そうじゃ。」

 

千冬

「な、なんだその能力は!つまり何か!そいつを使っている時はお前に5倍の攻撃をしなければならないという事か!」

 

永遠

「そうなるの。」

 

 え!…マジで!?…何その力!?

 

生徒達

「ええええぇぇぇぇーーーーっ!!」

 

千冬

「…5本目も無茶苦茶な刀だな!?」

 

真耶

「………あれ?…火ノ兄君、少し聞いていいですか?」

 

永遠

「何じゃ?」

 

真耶

「えっと、【ジュズマル】はダメージを5分の1にする能力ですよね?そして【オオテンタ】は防御力を上げる能力。この2本って同じ能力なんじゃ?」

 

千冬

「…言われてみれば…どうなんだ?」

 

永遠

「確かに【ジュズマル】と【オオテンタ】は似てはいるが別の能力じゃよ。簡単に言えば【オオテンタ】は機体その物を頑丈にするんじゃ。それに対して【ジュズマル】はSEのダメージを5分の1にするんじゃよ。」

 

千冬

「…なるほど、そう言われると別物だな…」

 

真耶

「そうですね。良く分かりました!」

 

永遠

「分かってくれたようじゃな…ようやく最後の1本じゃな…長かった…」

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 ≪6本目【妖刀ムラサメ】≫

 

 本当に長かったな…しかし、これが最後の剣か…一体どんなものだ?

 

永遠

「闇より生まれし全てを喰らう刃【妖刀ムラサメ】!!」

 

全員

「!?」

 

 …何だこの剣は…今迄の5本とはまるで違う…何という禍々しさだ…

 

セシリア

「と、永遠さん…何ですの…この剣…」

 

千冬

「…妖刀だと…」

 

永遠

「【妖刀ムラサメ】…闇を司る紫の刀じゃ…」

 

真耶

「ややや闇ですか~~~…」

 

永遠

「そげにビビらんでもいいぞ…【ムラサメ】は他の5本に比べれば周りへの被害が一番少ない刀じゃぞ。」

 

セシリア

「そうなんですか!」

 

永遠

「そうじゃ【ムラサメ】の能力は吸収じゃ。」

 

真耶

「吸収?」

 

永遠

「さよう!【ムラサメ】に触れたり斬られたりすると相手のSEを吸収するんじゃよ。そして吸収したエネルギーを自分のSEに変えたり攻撃用に変えて撃ち出したり出来るんじゃ。」

 

 …この刀は本当にそれだけのなのか?

 

千冬

「………火ノ兄…それは本当か…」

 

永遠

「どういう事かの?」

 

千冬

「その通りの意味だ!…確かにその刀の能力は脅威だ!だが、他の5本に比べると明らかに地味すぎる!」

 

永遠

「………やはり気付くか…」

 

千冬

「やはりその刀にはまだ何かあるんだな!」

 

永遠

「いや、今言った通りじゃ。…【ムラサメ】には吸収能力しかない。」

 

千冬

「何?」

 

永遠

「じゃがな、その吸収の規模が普通では無いんじゃよ。」

 

セシリア

「普通では無いとは?」

 

永遠

「【ムラサメ】はな、エネルギーと呼べるもんなら何でも吸収するんじゃ。ISのSEだけではない。電気や熱と言った物もじゃ。それも無尽蔵にな。」

 

千冬

「何だと!なんだその剣は!?」

 

真耶

「被害が一番少ないって、ある意味一番危険じゃないですか!?」

 

一夏

「…そうかな?」

 

千冬

「…織斑…今何て言った…」

 

一夏

「え?」

 

千冬

「…どうやらお前は【ムラサメ】の恐ろしさが分かって無いようだな…」

 

一夏

「そ、そんなに恐ろしいんですか…」

 

千冬

「馬鹿者!少し考えれば分かる事だろ!【ムラサメ】はあらゆるエネルギーを吸収する!つまり発電施設の電力を根こそぎ吸収する事も出来るという事だ!病院の様な重要施設の電気が無くなったらどうなるかお前にも分かるだろ!」

 

一夏

「あ!………何だよその剣!?無茶苦茶じゃねえか!」

 

千冬

「今更遅いわ!?」

 

 バゴンッ!

 

一夏

「ウゴッ!…ググッ…すみません…」

 

永遠

「心配せんでもそげな事せんよ。まあ、その気になれば人間の体力や精神力と言った物も吸収出来る代物なんじゃが…」

 

千冬

「そんな物まで!?本当に妖刀だな!?…頼むからそんな事しないでくれよ!…しかし、これで6本全部か…全くどれもこれも自然災害その物だな!」

 

 …噴火・地震・氷漬け・竜巻・台風・落雷・津波・渦・吸収…これをコイツは一人で起こせるんだからな…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 キーン!コーン!カーン!コーン!

 

千冬

「時間か…火ノ兄、お前の【六道剣】の対策はこちらでしておく。使うのはいいが、試合で通用するレベルに下げて使えよ。」

 

永遠

「あいよ!」

 

千冬

「よろしい!では、今日はこれで終わりだ!」

 

生徒達

「ありがとうございました!」

 

 疲れた~…早く着替えて飯にしよ…

 

千冬

「待て織斑、どこへ行く?」

 

一夏

「…え?」

 

千冬

「お前には仕事があるだろ?」

 

一夏

「し、仕事?」

 

千冬

「お前が空けたアリーナの穴、どうするつもりだ?」

 

一夏

「……あ!」

 

 そうだ!俺が地面に激突した時に出来た穴の事、すっかり忘れてた!

 

千冬

「あのままでは邪魔だ!ちゃんと埋めておけよ!」

 

一夏

「ええっ!………あ!そうだ火ノ兄!【オオテンタ】で塞いでくれ…っていない!」

 

 俺は火ノ兄に手伝って(塞いで)貰おうと思ったけど…いつの間にかいなくなっていた…

 

一夏

「そ、そんな………」

 

 俺はこの後、結局一人で穴を埋める事になった

 火ノ兄なら一瞬で終わるのに…

 

一夏

「手伝ってくれたっていいじゃねえかよおおぉぉぉーーーっ!!!」

 

 俺の叫びはアリーナに虚しく響いていた…

 

 ………

 ……

 …

 

永遠

「ん?」

 

セシリア

「永遠さん、どうかなさいましたか?」

 

永遠

「いや、今何か聞こえた気が…」

 

セシリア

「わたくしには聞こえませんでしたわ。」

 

永遠

「…空耳かの?…すまん気のせいの様じゃ。飯にしようかの。」

 

セシリア

「はい♪」

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~箒 Side~

 

 素晴らしい…

 私にはその言葉しか出てこなかった…

 機体も素晴らしかったがその力も一級品だった…

 【戦国龍】と【六道剣(りくどうけん)】…この二つがあれば私は無敵だ…

 一夏に近づく奴らを薙ぎ払う事も出来る…

 待っていろ【戦国龍】…

 お前の真の主が迎えに行くからな…

 フフフフッ…ハハハハハハハハハハハハハハッ……… 

 

 ~箒 Side out~

 

 




 次回『第046話:更識簪』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第046話:更識簪

 ~永遠 Side~

 

 ただ今ワシはセシリアと食堂で食事中じゃ

 今回は弁当ではなく食堂の料理を食っとるぞい

 セシリアと雑談しながら食べていると…

 

本音

「ひののん、セッシー~一緒に食べてい~い?」

 

永遠

「ん?本音か、構わんぞ。…と、誰じゃ?」

 

 本音が初めて見た女子とやって来た

 

本音

「この子はかんちゃんって言うの~♪」

 

「本音!渾名で呼ばないで!…えっと、更識簪です。1年4組の生徒です。一応日本の代表候補生もしてる。」

 

永遠

「これはご丁寧に。ワシは火ノ兄永遠じゃ。一応二人目の男の操縦者じゃ。」

 

セシリア

「セシリア・オルコットですわ。イギリスの代表候補生です。お見知り置きを。」

 

永遠

「…セシリアと同じ代表候補生か…う~む?」

 

 メガネをかけた赤い眼と水色の髪の娘か…なんかどっかで見たような気が…?

 

「…な、何?」

 

セシリア

「永遠さん…更識さんの顔を見て何を唸ってるんですか!」

 

永遠

「ああ、すまん!…いや更識さんの顔、どこかで見た気がしてのぉ…」

 

セシリア

「…そう言われると、どこかで…」

 

 どこじゃったかな~…

 

「…多分それは私のお姉ちゃん…私は更識楯無の妹…」

 

永遠

「更識楯無…ああ思い出した!ワシが試験の時に戦った相手じゃ!」

 

セシリア

「そうですわ!忘れてましたわ!」

 

 ガシャン!

 

永遠

「ん?」

 

 何か倒れた音がしたのぉ?

 音のした方を見たが誰もおらんな…なんじゃったんかのぉ?

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~楯無 Side~

 

楯無

(あ、危なかった~…もう少しで見つかる所だったわ!…でもあの二人…)

 

 火ノ兄君とオルコットちゃんを睨みながら…

 

楯無

(私の事忘れてたなんて酷いわよ!…それにしても…)

 

 私は一緒にいる簪ちゃんに視線を向けた…

 

楯無

(何で簪ちゃんが一緒にいるのよ!私だって一緒にご飯食べたいのに!)

 

 私は二人に嫉妬の念を送りながら監視をしていた

 

 ~楯無 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

永遠&セシリア

「!?」

 

本音

「どったの二人共~?」

 

永遠

「いや…何か妙な視線が…」

 

セシリア

「…何でしょうか、これは?」

 

 二人は視線が気になるのか周りをきょろきょろしている…

 

本音

「私は分からないけどな~?かんちゃんは~?」

 

「…私も分からない…気のせいじゃないの?」

 

永遠

「気のせいではないのぉ…殺気の類では無いんじゃが…」

 

セシリア

「そうですわね…」

 

 …まさか!

 

「…ごめん…」

 

永遠

「何じゃいきなり?」

 

「…多分それ、私のお姉ちゃん…」

 

永遠&セシリア

「は?」

 

「…お姉ちゃんが監視してるんだと思う…」

 

永遠

「何じゃと!」

 

「………」

 

 お姉ちゃん…何してるの…

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~楯無 Side~

 

楯無

(やばいバレた!?)

 

 私は簪ちゃんが教えるとは思わず動揺していた

 だけどそれ以上に…

 

楯無

(でも何で!気配は消してる筈なのに!いきなり視線で気づくってどういう事!いつもと変わらないのに!?)

 

 私の視線だけで気づいたあの二人に警戒を強めていた

 

楯無

(…今日はもう無理ね…引き上げるしかないか…)

 

 私はそう判断し、食堂を後にした

 後日、二人が私の視線に気づいた理由を聞いた時、私は自分で自分を殴りたくなるほど恥ずかしかった

 

 ~楯無 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

永遠

「む!視線が消えた…」

 

セシリア

「…そうですわね。」

 

 …そんな事まで分かるの!この二人?

 

「…本当にごめん…」

 

 …なんでお姉ちゃんは私の邪魔ばかりするの…

 

永遠

「更識、お主が謝らずともよい。」

 

セシリア

「そうですわ。更識さんが悪い訳ではありませんもの。」

 

「…ありがと二人とも…」

 

永遠

「カカカッ、気にせんでいい。」

 

「あの!…名字で呼ばれるの嫌いだから名前でいい…さんもいらないから…」

 

永遠

「む!そうか、なら簪で。それからワシも永遠でいいぞい。」

 

セシリア

「では、わたくしは簪さんで。わたくしも名前でいいですわ。さんも必要ありません。」

 

「…うん…改めてヨロシク…永遠、セシリア…」

 

永遠

「それにしてもあの生徒会長は何考えとるんじゃ?人の食事を覗くとはストーカーか?織斑と言いこの学園には犯罪者みたいな変態がおるな?」

 

セシリア

「本当ですわね!迷惑な方です!」

 

「………」

 

セシリア

「…簪さん…言っておきますけど、わたくし達は貴方を責めてる訳ではありませんよ。」

 

「え?」

 

永遠

「ワシ等は生徒会長の更識楯無に迷惑しとるんじゃ!お主は更識簪じゃろ?姉が迷惑かけたからと言って妹のお主が気にせずともよい。関係無いお主には何とも思っとらんよ。」

 

 …更識簪…この二人は私を一人の人間として見てくれるの…

 

永遠

「じゃからお主が気にする必要は無い。そうじゃな、今度会ったらワシ等を覗いとった理由を問い詰めてやるかの!」

 

セシリア

「そうですわね。内容によっては永遠さん、お説教をお願いしますわ。」

 

永遠

「カカカッ任せとけい!思いっきり凹ませちゃる!」

 

 …永遠とセシリア…優しいな~…でも私の事を知ったらなんて思うかな…

 

本音

「ひののんもセッシーもありがとね~♪」

 

永遠

「何故お主が礼を言うんじゃ?」

 

本音

「私はこれでもかんちゃん専属のメイドだからね~♪だからお礼を言ったんだ~♪」

 

永遠

「メイド!お主が?」

 

「…気持ちは分かる…でも本当の事。」

 

セシリア

「意外でしたわね~!」

 

本音

「む~みんな酷いよ~!」

 

永遠

「カカカッ、すまんすまん!…そう言えば本音、何か用でもあったんか?」

 

本音

「ほえ?」

 

永遠

「お主は初日しか来なかったからな、ワシ等に何か用でもあるのかと思うたんじゃが?」

 

本音

「あ~そうだった~!用があったのは私じゃなくてかんちゃんだよ~♪」

 

「ほ、本音!?」

 

永遠

「フム、簪の方じゃったか。用件は何じゃ?」

 

 どどどどうしよ!…何て言えばいいんだろ!?

 

「あ、あの…と、永遠のIS…」

 

永遠

「ワシのIS?【戦国龍】と【ドットブラスライザー】の事か?」

 

「う、うん…」

 

永遠

「アレに興味あるんか?お主が興味を引く様な物かのぉ?」

 

セシリア

「…永遠さん…本気で仰ってます?」

 

永遠

「無論じゃ!」

 

セシリア

「ハァ~…いいですか永遠さん!あなたの機体はどちらも全身装甲のISです!それだけでも珍しいんですのよ!しかも【戦国龍】はあの外見です!そして【ドットブラスライザー】は変形と合体まで出来る機体です!そのような機体に興味を持たない人などいません!」

 

「そうだよ!!」

 

永遠&セシリア

「!?」

 

「永遠の【ドットブラスライザー】は凄いよ!武器が変形してカッコ良かった!機体も変形してパワーアップした時は吃驚した!単一仕様(ワンオフ・アビリティー)で合体までした時は驚きを通り越して感動したよ!その上、必殺技まであるなんて最高だよ!!」

 

永遠

「か、簪?」

 

「…はっ!…ごごごごめん…」///

 

永遠

「………【ドットブラスライザー】が気に入ったんか?」

 

「………うん…」///

 

本音

「かんちゃんはね~、ロボットアニメとか特撮ヒーローとかが大好きなんだよ♪」

 

永遠&セシリア

「は?」

 

「本音!」

 

永遠

「…ロボット…確かに【ドットブラスライザー】は見た目は完全にロボットじゃからな…」

 

「う、うん…それで…つい興奮しちゃって…」///

 

セシリア

「なるほど…」

 

「…それに…」

 

永遠

「ん?」

 

「…永遠とセシリアの試合…凄く感動した…【ドットブラスライザー】には確かに興奮したんだけど…でも、二人の試合そのものにも感動したの…」

 

永遠&セシリア

「………」

 

「…セシリアは永遠と戦う為に自分を鍛え続けたんだよね?…同じ代表候補として見てもセシリアの実力は本物だった…たった一人と戦う為にそこまでしたなんて信じられなかったけど…でも、永遠はそれが分かったからセシリアと本気で戦ったんだよね?」

 

セシリア

「…そうですわね。…永遠さんと正々堂々と本気で戦う…それがわたくしと永遠さんの約束であり目標でしたから…」

 

永遠

「…ワシもじゃよ。セシリアとISを纏って向かい合った時、約束を果たせる事が嬉しかったんじゃ…そしてセシリアはその約束の為に強くなっとった…じゃから、ワシはワシ自身とISの全ての力をもって答えたんじゃよ…」

 

セシリア

「永遠さん♪」///

 

「…いいなぁ…そんな風に認め合えるなんて…」

 

永遠

「…どういう意味じゃ?お主の言い方じゃと、まるで認めてもらった事が無いみたいな言い方じゃぞ?」

 

「………」

 

セシリア

「簪さん…言いたくないならそれでも構いません。ですが、言わなければ誰にも伝わりませんよ。態度だけで分かるほどわたくし達は器用ではありません。」

 

「…うん………少し…考えさせて…」

 

永遠

「構わんぞ…ワシ等はお主が自分から言ってくれるのを待つだけじゃよ…」

 

セシリア

「そうですわね。」

 

「…ありがとう…」

 

永遠

「…簪…一つ言っとくぞ。お主が何を抱えとるのかは知らんが、ワシ等で良ければ力になる。それだけは覚えておくんじゃぞ。」

 

セシリア

「ええ♪いつでも相談して下さい。」

 

「…うん………」

 

 …なんで…この二人は…会ったばかりの私にこんなに優しいんだろう…

 …一番優しくして欲しかった人は…私を『無能』と切り捨てたのに…

 …この二人といるほうが…凄く落ち着くな…

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 ん?…簪のこの表情…もしや…

 

永遠

「………簪…」

 

「…な、何?」

 

永遠

「…間違っておったら謝るが…お主…勘違いしかけとらんか?」

 

「え?」

 

永遠

「ワシ等は確かに力になるとは言った。じゃが、お主が依存する存在になる気は無いぞ!」

 

セシリア

「永遠さん?」

 

永遠

「力を貸すがそれはお主の悩みを解決する手伝いをする為じゃ!お主の逃げ込み先になるつもりは無い!」

 

「!?」

 

 当たっとったか…危なかったな…

 

永遠

「やはりそう考え始めておったな!もしそのつもりなら今言った事は無しじゃ!今後ワシ等に話しかけるな!!」

 

「そんな!?」

 

永遠

「…お主が抱えとるもんと向き合う気になったら話しかけて来い!それ以外はワシは関わらんぞ!セシリア!お主も分かったな!」

 

セシリア

「…分かりましたわ…」

 

「………」

 

本音

「…かんちゃん…」

 

「…くっ………」

 

本音

「かんちゃん!?」

 

 …行ってしもうたか…

 

本音

「ひののん!何であんな事言ったの!」

 

永遠

「言った通りの意味じゃ。下手すると簪は織斑の様な甘ったれになってしまうぞ!」

 

本音

「え?」

 

セシリア

「…あんな風になるのはさすがに不味いですわね…」

 

永遠

「じゃからああ言った。後は簪次第じゃ。本音、お主も簪を思うなら相談に乗る程度にしておくんじゃ。」

 

本音

「…何で?」

 

永遠

「一週間前と昨日の織斑を思い出してみい。奴は自分で言った事を理解せず、困った事があればすぐに周りに頼る。まず自分で考えて行動するという事をしとらんかった。…下手をすると簪も周りの人間…ワシやセシリアに頼りっぱなしの人間になりかねん。…そうなったら戻すのは大変じゃぞ!」

 

本音

「………」

 

永遠

「織斑は昨日ワシがシバいて説教してトドメに半殺しにしてようやっと分からせたんじゃぞ。奴はそこまでせんと分からん程に手遅れじゃった。じゃが、簪は口で分からせる事が出来る位置にまだおる。」

 

本音

「…おりむー…手遅れだったんだ…」

 

永遠

「周りの環境も原因かもしれんが、アイツは色んな意味で馬鹿じゃからな…口で言って分かるんじゃったらあの時に気付いておる!」

 

セシリア

「…そうでしたわね…」

 

本音

「…おりむー…」

 

永遠

「…環境と言う意味では簪も同じかもしれんが、織斑よりはまだマシじゃろう。」

 

セシリア

「…恐らくそれが簪さんの悩みなんでしょうね…」

 

永遠

「うむ!じゃから簪はまだマシなんじゃよ。」

 

本音

「何で?」

 

永遠

「簪と織斑の一番の違いはな、さっき言った環境を本人が受け入れているかどうかの違いなんじゃよ。」

 

本音

「?」

 

永遠

「いいか?織斑は自分の環境を完全に受け入れそれが当たり前だと思っとる。自分が困った事があれば周りが助けてくれる。特に重要な事、大事な事は自分は考える必要なない。周りが考えてくれる。そげな考えを持っとるからあんな風になったんじゃ。」

 

本音

「………」

 

永遠

「じゃが、簪は自分を取り巻く環境に疑問を持っとる。もし、簪が依存出来る存在に出おうたら織斑の様になるじゃろう。」

 

本音

「…かんちゃん…」

 

永遠

「分かったか本音?それとも、簪もあんな風になって欲しいんか?」

 

本音

「………」フルフル

 

永遠

「よろしい。」

 

 さて、今のを聞いて柱の陰で立ち聞きしとる奴はどう考えるかの…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

一夏

「………俺…そこまで酷い状態だったんだ…」

 

 穴を塞いで急いで昼食を取りに来たら、火ノ兄達とのほほんさんの会話が聞こえて来た

 言われてみると思い当たる節はある…自分で考えて行動した事なんて…中学の頃、生活費を稼ぐ為にバイトした位だ…

 

一夏

「………あ!?」

 

 そういえば…昨日…

 

一夏

『…どうすればさ…大切な人を守れる男になれるのかな…』

 

千冬

『…お前は自分で考える事を知らんのか!』

 

 試合の後…千冬姉に聞いた事…十分大事な事じゃねえか…それを…

 自分で考えず千冬姉にすぐに頼ってしまった…火ノ兄の言う通りだ…

 

一夏

「………本当に手遅れじゃねえか…」

 

 ………俺自身で何とかしないと…

 

 ~一夏 Side out~

 

 




 次回『第047話:歓迎会と来訪者』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第047話:歓迎会と来訪者

 ~永遠 Side~

 

 簪と出会って色々あってから2日が経ち、今日の授業も無事に終わったのでワシは家に帰ろうとしたら、清香と静寐が話しかけてきた

 

清香

「火ノ兄君!もう帰っちゃうの?」

 

永遠

「ん?そうじゃが。」

 

静寐

「…もし良ければだけど…今日は暫く残ってくれないかな?」

 

永遠

「理由は?」

 

清香

「うん!実はこの後織斑君の代表就任の歓迎会をしようと思ってるんだ!」

 

静寐

「それで、出来ればクラス全員でやりたいんだよ!だから…」

 

永遠

「何時頃始めるんじゃ?」

 

清香

「え!いいの!」

 

永遠

「時間によるの。あまり遅いと無理なんじゃが…」

 

静寐

「えっとね!今夜の6時から始めようと思ってるんだけど…どうかな?」

 

永遠

「ちと待ってくれ…ええ~~~っと…」

 

 ワシは参加した場合の予定を計算した…

 

永遠

(終わりを7時にして…向こうに着くのに1時間かかるから…こっちで晩飯を食って…束さん達には先に食べといて貰って………畑を………風呂が………寝るのは……………)

 

清香

「…ひ、火ノ兄君…無理ならいいんだよ…」

 

永遠

「…いや、大丈夫じゃ!」

 

静寐

「…ホントにいいの?」

 

永遠

「構わんよ。折角、クラスメイトが開いてくれたイベントじゃからな。参加せんと罰が当たるわい。」

 

清香

「ありがとう♪」

 

永遠

「…じゃが7時になったら途中でも抜けさせてもらうぞ。…構わんかの?」

 

静寐

「うん♪それでいいよ♪」

 

永遠

「で、場所は?」

 

清香

「1年の食堂だよ!」

 

永遠

「分かった、時間になったら行く。」

 

静寐

「うん♪待ってるね~♪」

 

永遠

「…さて、束さんに連絡しとくかの…」

 

 ワシは束さんに連絡した後、始まるまでセシリアと話したりしながら時間を潰したんじゃ

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

清香

「それでは、織斑くんのクラス代表就任を祝して!」

 

全員(一夏以外)

「カンパーーーイ!!」

 

一夏

「…えっと…ありがとう………」

 

 俺は今、困惑していた

 

一夏

(…何故こんな事に?…確か、6時になったら1年の食堂に来いって言われて来たんだよな~…それで、来たらいきなりこうなったんだよな…)

 

永遠

「何じゃ、織斑…折角皆が祝ってくれとると言うのに…もっと喜んだらどうじゃ?」

 

一夏

「い、いや…俺、この事知らなかったんだけど?」

 

永遠

「サプライズと言う奴じゃ。お主を驚かそうと思うたんじゃろ。それとも折角の皆の好意を邪険に思うとるんか己は?」

 

一夏

「そんな事あるかよ!?」

 

永遠

「なら楽しめ!楽しまんと損じゃぞ!」

 

一夏

「あ、ああ…」

 

 火ノ兄はそう言って自分の席に座った

 よく見ると他の子達の席はお菓子やジュースだけなのに、アイツの席だけ普通の食事が用意されていた

 どうやらアイツは今日はココで夕食を取るつもりらしい

 でも、火ノ兄の言う通り折角皆が用意してくれたパーティーだから楽しむことにした

 火ノ兄も食事を取りながらオルコットや他の生徒達と話していた

 それから時間が7時になると…

 

永遠

「む!時間じゃな。…皆!すまんがワシはここまでじゃ!この後も皆で楽しんでくれ!ではな!おやすみ~!」

 

全員

「おやすみなさ~い♪」

 

一夏

「オ、オイ!本当に帰っちまうのか!」

 

永遠

「初めからそういう約束で参加したんじゃよ。ではな。」

 

「はいは~い♪新聞部で~す。話題の新入生の男子2人に質問しに来ました~♪ってアレ?ちょっと貴方!?」

 

 火ノ兄が帰ろうとしたら新聞部を名乗る人がやって来た

 

永遠

「すまんがワシはもう帰るんでなインタビューはあやつ一人にしてくれ。」

 

新聞部

「あ!ちょっと待って!?」

 

 火ノ兄は新聞部の人が止めるのも聞かず外に出て行ってしまった

 

新聞部

「…行っちゃった………あ、皆、私は二年の黛薫子。よろしく。」

 

 黛先輩はそう言うと名刺を俺に渡してきた

 

「本当は火ノ兄君にも色々聞きたかったけど帰っちゃたから仕方ないわね。」

 

 ………いいタイミングで帰りやがったなあの野郎!…狙ってたのか?…そんな訳ないか…

 

「…さて気を取り直して!織斑君、クラス代表になってどう言う気持ちか教えてくれる?」

 

一夏

「えーと、これから頑張っていきます?」

 

「どうして疑問系?後もう少しいいコメントを頂戴。例えば、俺に触ったら火傷するぜ!とかさ~♪」

 

一夏

「むしろそのセリフは火ノ兄の方が合う気が…」

 

「え!?そうなの………よし彼のコメントはこれで行こう!」

 

一夏

「アイツなら物理的に燃やせるからな…」

 

「…マジで?」

 

一夏

「マジですよ!…勝手にそんな事書いたら先輩も説教されながら燃やされますよ…」

 

「………私は何も聞かなかったわ…」

 

一夏

「…そうした方が身の為ですよ…」

 

「なら織斑君!いいコメントお願い!」

 

 しまった!火ノ兄が駄目なら俺に来るんじゃねえか!…仕方ない!

 

一夏

「自分、不器用ですから…」

 

「うわっ、前時代的なコメント………まぁいいや、捏造しておくから。」

 

一夏

「なら聞く必要ないだろ!捏造するなら俺だけじゃなくて火ノ兄のも捏造しろよ!」

 

「ハッハッハッ…何ヲ言ッテルノカナ…取材ヲシテナイ人ノ事ヲ書クナンテ出来ル訳無イジャナイカ…ハッハッハッ…」

 

一夏

「物凄い棒読みじゃねえか!そんなに説教されるの嫌なのかよ!」

 

「嫌に決まってるでしょ!彼の説教って一切の容赦が無いから恐れられてるのよ!もう学園中に広まってるんだから!噂じゃ織斑先生まで説教されて凹みまくったらしいのよ!」

 

一夏

「千冬姉まで!?」

 

 先輩の情報に他の子達まで驚いている

 それはそうだ!あの千冬姉に…世界最強と言われた俺の姉を凹ませるまで説教が出来る人間がいるなんて信じられる訳なかった

 

「あくまで噂よ?でも、火の無い所に煙は立たないっていうし…もしかしたらって事もあり得るのよ。」

 

一夏

「………」

 

 まさか!…本当に?

 

「…ねえ織斑君!もしよければこの事を聞いて来てもらって良いかな?報酬は弾むからさ!」

 

一夏

「んな事出来るか!!」

 

「え~~~いいじゃな~い減るもんじゃないし~!」

 

一夏

「俺の寿命が減るんだよ!俺はまだ死にたくない!」

 

「ケチ~!ぶ~ぶ~!」

 

一夏

「よし分かった!後で千冬姉に黛先輩が聞きたい事があるって伝えておくよ!」

 

「ごめんなさい私が悪かったです…だから…それだけはやめてーーー!?」

 

一夏

「全く!」

 

「…なら…オルコットさん!何か知らない?」

 

 今度はオルコットに振ったか…懲りない人だな…

 

セシリア

「…そうですわね…織斑先生ではありませんがわたくしの知り合いの方が一人…永遠さんのお説教を受けたそうですわ。」

 

「え!?織斑くんじゃなくて?」

 

セシリア

「違いますわ。その方のプライバシーの為、名前は言いませんが入学する前に一度ですが、永遠さんのお説教はキツイと愚痴を聞かされましたわ。」

 

「そ、そこまでなの…」

 

セシリア

「ええ、わたくしが知っているのはそのくらいです(流石に束さんの名前は出せませんもの)…先輩、これ以上の深入りは地獄に片足を入れている様なものですわよ。」

 

「………はい…諦めます…」

 

セシリア

「賢明な判断ですわ。」

 

「………よし!今までの事は綺麗サッパリ忘れてインタビューの続きよ!」

 

一夏

「忘れるのかよ…」

 

 と言うか他に何を聞くっていうんだよ…

 

「織斑君…ホモってホント?」

 

一夏

「ブウウウウウゥゥゥゥゥーーーーーッ!!」

 

「ウワッ!?汚いな~!いきなりどうしたの?」

 

一夏

「ゲホッゲホッ!どうしたもこうしたもあるか!今何て言った!!」

 

「え?ホモって聞いたんだけど?」

 

一夏

「誰から聞いたそんなホラ話!?」

 

「誰からって…学園中の噂よ?知らない人なんていないんじゃないかな?」

 

 そ、そんな…

 

「それでどんな男が好みなの?…もしかして火ノ兄君みたいなのがタイプだったりするの?」

 

生徒達

「キャアアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!!!」

 

生徒1

「やっぱりそうなんだ!」

 

生徒2

「今迄の事を考えると織斑君は受けよね!」

 

生徒3

「でも火ノ兄君はノーマルだから織斑君の想いが届くことは無いんだね…」

 

生徒4

「ううっ…可哀想な織斑君…」

 

一夏

「あんた等何言ってんだ!!誰だそんな事言い触らしたのはあああぁぁぁーーーっ!!!俺はホモじゃねええええぇぇぇぇーーーーーっ!!!」

 

セシリア

「…織斑さん…」

 

一夏

「!?」

 

 突然後ろからとてつもない殺気が…この声は…

 

一夏

「…オ…オルコット…さん…」

 

 振り向いた俺が見たのは笑顔のオルコットだった…

 でもその笑顔が怖い…

 目が全く笑ってねえよ…

 

セシリア

「男性の永遠さんがタイプと言うのは本当でしょうか?」

 

一夏

「めめめ滅相もないです!おおお俺が好きなのはれっきとした女の子です!男には興味ありません!!」

 

 俺は全身から冷や汗を流しながら身の潔白を証明しようとした!

 

セシリア

「…本当ですか?」

 

一夏

「神に誓って嘘ではありません!」

 

セシリア

「…神に誓って…ですか?………まあいいでしょう…ですが…もし不純な理由で永遠さんに近づけば…どうなるか分かりますわね…」

 

一夏

「ははははい!!(確実にライフルの的にされる!)」

 

セシリア

「…ライフルの的になる程度ですむと思っているのですか?」

 

一夏

「!?(バ、バレてる!てか違うのかよ!)」

 

セシリア

「ビットも合わせて砲身を直接貴方の体に当てて零距離で蜂の巣にしますわ…文字通り穴があくまで…」

 

一夏

「ヒイイイィィィーーーッ!!」

 

 そんな事されたら本当に死んじまう!

 周りを見たら他の子達もオルコットの殺気に当てられて、中には気絶しかけている子までいる

 

セシリア

「分かりましたね…」

 

一夏

「はい!!」

 

セシリア

「…黛先輩…」

 

「は、はい!!」

 

セシリア

「貴方も下らない事ばかり聞いていないで新聞部らしい仕事をしたらどうですか?」

 

「ででででもね!織斑君のホモ疑惑は皆が知りたがってる事で…」

 

セシリア

「人の噂も七十五日と日本では言うそうですわよ。そのような噂放っておけばよろしいのでは?」

 

「そ、それは…」

 

セシリア

「わたくしは織斑さんがホモでも同性愛者でも変態でも興味はありません…」

 

一夏

「…そこまで言わなくても…」

 

セシリア

「何か?」

 

一夏

「何でもありません!」

 

セシリア

「………ですが…貴方のせいで噂が長続きすると関係の無い永遠さんにも迷惑がかかるんですよ?それとも永遠さんのお説教が聞きたいんですか?」

 

「!?………ごめんなさいもう聞きません真面目に記事を書きます!?」

 

セシリア

「よろしいですわ。」

 

一夏

「………」

 

 それから、黛先輩は借りてきた猫のように大人しくなって、俺やオルコットに取材をしていった

 最後に、専用機を持つ俺とオルコットの写真を撮りたいと言って来たけどオルコットが火ノ兄がいないから嫌だと断った

 確かに火ノ兄も専用機を持っているんだから3人で撮るべきだよな

 黛先輩もその理由に納得したのかあっさりと引き下がって今日のパーティーはお開きとなった

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~? Side~

 

「此処がIS学園ね!…待ってなさいよ!一夏!!」

 

 私は数年ぶりの幼馴染との再会を楽しみにしていた!

 

 ~? Side out~

 

 




 次回『第048話:中国の代表候補生』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第048話:中国の代表候補生

 ~一夏 Side~

 

生徒1

「織斑君、おはよ~♪ねえ、転校生の話って聞いた?」

 

 朝、教室に入るなりクラスメイトの一人が話しかけてきた

 

一夏

「転校生?この時期に?」

 

 入学してまだ1ヶ月も経ってないのにか?

 

生徒2

「うん、なんでも中国の代表候補生だってさ。」

 

一夏

「…中国か…」

 

 中国と聞いて…俺は中国に帰ったもう一人の幼馴染の少女のことを思い出していた

 

セシリア

「あら皆さん。朝から賑やかですが、どうかなさいましたの?」

 

生徒1

「あ!セシリア!」

 

生徒2

「隣の2組に転校生が来たらしいんだよ!しかも、中国の代表候補生なんだって。」

 

セシリア

「代表候補生ですか?」

 

生徒1

「セシリアはどう思う?」

 

セシリア

「…そうですわね…やはり実力が気になりますわね。」

 

生徒2

「やっぱりそこが気になるんだ。」

 

「このクラスに転入してくる訳ではないのだろう?騒ぐ程の事でもあるまい。」

 

 まあ確かにそうなんだけど…しかし…

 

一夏

「…どんな奴なんだろうな?」

 

「…気になるのか?」

 

一夏

「ああ、少しな。」

 

「フンッ…」

 

 何でいきなり不機嫌になるんだ?俺何か怒らせる様な事言ったかな?

 

「お前にそんな事を気にする余裕はあるのか?もう少しでクラス対抗戦だろう?」

 

一夏

「うっ!そうだった…」

 

 そうだ、俺それに出るんだよな…

 俺なんかより遥かに強い奴が二人もいるのになぁ…

 

セシリア

「それでは、対抗戦に向けてより実戦的な訓練をいたしましょう。織斑さんの機体は燃費が悪いですから、エネルギー切れの自滅をしない様にしませんと。」

 

一夏

「じ、自滅!?」

 

セシリア

「その様な負け方はしたくないでしょう?」

 

一夏

「はい!お願いします!」

 

「………チッ!」

 

 何で舌打ちするんだ?

 所でこの対抗戦、実は優勝したクラスの全員には学食デザートフリーパス半年分が配られるらしく、その為代表の俺に掛かる期待は結構大きい

 

一夏

「まぁ、やれるだけやってみるか。」

 

本音

「やれるだけじゃダメだよ~。」

 

生徒1

「織斑くん、勝ってね!」

 

生徒2

「フリーパスの為にもね!」

 

生徒3

「クラスみんなの幸せは織斑くんに託された!」

 

 みんなが俺の勝利を願ってる

 甘いの好きな人にはたまらない景品だもんね。

 

生徒1

「まぁ、専用機持ちって1組と4組しか居ないから楽勝だよ!」

 

 へぇ~、4組にもいるのか…

 

「その情報…古いわよ…。」

 

 突然聞こえてきた聞き覚えの無い声

 いや聞いた事のある声がした

 俺は声がした方を向くと…

 

「2組も専用機持ちが代表になったから。そう簡単には勝てないわよ!」

 

 そこにいたのは俺のもう一人の幼馴染

 

一夏

「鈴…お前、鈴か!?」

 

「そうよ!中国の代表候補生【凰鈴音】!今日は宣戦布告に来たわ!」

 

 鈴はそう言って小さく笑った…でも…

 

一夏

「何やってんだ、すげぇ似合わないぞ。」

 

「んなっ…何て事言うのよあんたは!?」

 

 鈴の雰囲気が元に戻ったら、ちょうど火ノ兄がやって来た

 

永遠

「はよ~っす!」

 

「ん!」

 

永遠

「ん?」

 

「お、男!?」

 

永遠

「誰じゃお主?」

 

「な、何で一夏以外に男がいるのよ!?」

 

永遠

「何でと言われてものぉ………む!」

 

 火ノ兄は急いで自分の席に座った…どうしたんだ急に?

 

「ちょっと!こっちの質問に答えなさいよ!」

 

「おい。」

 

「何よ!」

 

 スパン

 

千冬

「凰、クラスへ戻れ!それと入口に立つな、邪魔だ。」

 

 鈴がいきなり現れた千冬姉に出席簿でシバかれた

 アイツ、千冬姉が来たのを察して席に座ったな

 

「千冬さん…」

 

千冬

「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ。それとも…」

 

 千冬姉は再び出席簿を構えた

 それを見た鈴は素直に引き下がった

 

「わ、分かりました!じゃあ一夏、後でね。逃げないでよ!?それからアンタの事も聞かせて貰うからね!?」

 

 そう言い残すと2組へ戻って行った

 

永遠

「………だから誰なんじゃ?」

 

千冬

「では、SHRを始める。織斑、号令!!」

 

 こうして今日も授業が始まった

 けど、何故か箒が授業に集中できなかった為、千冬姉達に何度も注意を受けていた

 

 ~一夏Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

 私は凰鈴音!中国の代表候補生で織斑一夏の幼馴染よ!

 この学園に来たのは私が好意を寄せている一夏が初の男性操縦者として入学したのを知って追いかけて来たからよ!

 けど、驚いたわ!2組に戻って聞いたら一夏以外にも男の操縦者がいるんだって!

 しかも、そいつはあのブリュンヒルデと言われた千冬さんより強いらしく、千冬さん自身も認めているらしい

 とにかく一夏の事も合わせて詳しく聞いた方がいいかもしれないわね

 それで今は休み時間の食堂よ!

 

「待ってたわよ!一夏!」

 

 食券販売機前で仁王立ちして待ってたのよ!(ラーメン装備)

 

一夏

「何が待ってただよ。そこに居ると食券出せないだろ。」

 

「わかってるわよ。あんたが来ないのがいけないのよ。」

 

 私がどいたら食券を買って料理を持って一夏と一緒のテーブルに座ったわ

 

一夏

「久し振りだなぁ。お前、いつの間に日本に帰ってきたんだ?おばさん元気?いつ代表候補生になったんだ?」

 

 一夏が矢継ぎ早に質問してきた

 

「質問ばっかしないでよ!あんたこそなんでIS使ってるのよ?ニュース見て吃驚したわよ。」

 

 一夏と会話していると一緒に着いて来た黒髪ポニーテールの生徒が説明を求めて来た

 

「一夏、そろそろどういう関係か説明をしろ!」

 

「関係って…///」

 

「まさか付き合ってるのか!?」

 

 突然付き合ってるなんて言われて顔を真っ赤にしてしまった

 

「べべべ別に付き合ってる訳じゃあ。」

 

一夏

「そうだぞ。ただの幼馴染みだよ。」

 

 コイツは!1年ぶりに会っても変わってないわね!

 

一夏

「なんだよ?なんで睨むんだよ。」

 

「ふん、なんでも無いわよ。」

 

「幼馴染だと?お前の幼馴染は私だけの筈だろ!?」

 

一夏

「えーと、箒が引っ越したのが、小4だろ?鈴はその後に来たんだ、で中2の頃に中国に帰ったから大体1年ぶりだな。」

 

 この子も一夏の幼馴染?…そう言えば昔言ってたわね

 

一夏

「で、こっちが箒、前に言ったろ?俺の通ってた道場の娘だよ。」

 

「そう言えばそんな事言ってたわね。」

 

 一目見て分かったわ!この子は私と同類、ライバルだわ!

 

「初めまして、よろしく。」

 

「あぁ、よろしく。」

 

 互いに握手をしたけどその瞬間、私達の間で戦いのゴングが鳴ったのが確かに聞こえた

 でも今はやりあう時じゃないわ…それにもう一人の事も聞かないと

 

「所で一夏!もう一人の事を教えてよ。ココに来るまでに二人目がいるなんて聞いた事無いんだけど?」

 

一夏

「火ノ兄の事か?…アイツは何というか…一言でいうなら…千冬姉以上の化け物だよ…」

 

「化け物って…クラスの子達も言ってたけど千冬さんより強いってホントなの?」

 

一夏

「…ああ…千冬姉本人がそう言ってた…俺も最初は信じられなくて千冬姉の言葉に反論したんだ…けどな…」

 

「けど…どうしたのよ?」

 

一夏

「その後そいつと試合したら…俺、一発も当てる所か掠らせる事も出来ずに…」

 

「一夏?」

 

一夏

「…ボコボコにされて説教されてトドメに半殺しにされた…」

 

「半殺し!…マジで?ISを纏ってたんでしょ!」

 

一夏

「…ああ…でもさ、アイツの攻撃、殆どが絶対防御を突き破って来てさ…俺の専用機も新品だったのがアッと言う間にスクラップ寸前にされたんだよ。」

 

「絶対防御を突き破ってスクラップ寸前!どうやったらそんな事出来るのよ!」

 

一夏

「分からねえ…ただ最後に喰らった技…馬鹿デカいクレーターが出来たらしくてな…俺も地面にめり込む程潰されたんだよ…」

 

「…アンタよく生きてたわね…」

 

一夏

「ホントにな…後から千冬姉に聞いたら、実力の3割も出してなかったんだってよ…」

 

「3割!?たったそれだけの力しか出してない相手に負けたの!」

 

一夏

「ああ…心も体もボロボロにされたよ…」

 

「心もって…そう言えば説教されたって言ってたわね。どういう事?」

 

一夏

「…すまん、それは聞かないでくれ…アイツの説教、ホントに堪えてるんだ…」

 

「一体何を言われたのよ?」

 

一夏

「…今迄の俺がどれだけ酷かったのかを言われたんだよ…アイツの言った事…何一つ否定出来なかったんだ…悪い…これ以上は言いたくないんだ…」

 

「一夏………ねえ!アンタクラス代表なんでしょ?なら今度の対抗戦に出るんだよね!私がISの操縦を教えてあげようか!」

 

一夏

「え?」

 

 バンッ!

 

「必要ない!一夏に教えるのは私の役目だ!頼まれたのは私だ!そうだな一夏!」

 

「外野は黙ってなさいよ!私は一夏に聞いてるのよ!」

 

「何だと!」

 

一夏

「…あ~悪いけど鈴…間に合ってるんだわ。」

 

「え!?コイツで十分だっていうの!」

 

「フフン♪」

 

 この勝ち誇った顔ムカつくわね!

 

一夏

「いや、箒じゃないんだ。」

 

「え?」

 

一夏

「コーチはオルコットに頼んでるんだよ。千冬姉からもそうしろって言われてるし。」

 

「…い、一夏…」

 

「オルコット?」

 

一夏

「セシリア・オルコット…イギリスの代表候補生だよ。俺達のクラスメイトなんだ。」

 

「イギリスの代表候補生!だったら同じ候補生の私でもいいじゃない!」

 

一夏

「…それがな、オルコットは火ノ兄と互角に戦えるぐらいに強いんだよ。うちのクラスで一番強いのが火ノ兄で次がオルコットなんだよ。」

 

「納得出来ないわよ!そいつがどれだけ強いか知らないけど私より強い訳ないじゃない!」

 

一夏

「いや~多分お前でも勝てないと…」

 

「何ですって!!!」

 

永遠

「お主ら五月蠅いぞ!場所を弁えんか!」

 

一夏

「ひ、火ノ兄!?それに、オルコット!?」

 

「アンタは二人目!」

 

永遠

「何じゃその呼び方?ワシの名は火ノ兄永遠じゃ!お主の名は?」

 

「…凰鈴音よ!鈴でいいわ!」

 

永遠

「ならワシも永遠で良い。それからお主らさっきから声が大きいぞ!周りの者達に迷惑じゃ。少しは声を小さくして喋らんか!」

 

一夏

「…ご、ごめん…」

 

「…悪かったわよ…」

 

「フンッ!」

 

永遠

「ハァ…ではな…」

 

一夏

「ちょっと待ってくれ!鈴、この子が俺のコーチをしてくれているセシリア・オルコットだよ。」

 

セシリア

「?」

 

「アンタがセシリア・オルコットね!」

 

セシリア

「はい、わたくしがセシリア・オルコットですわ。よろしくお願いしますね。凰さん。」

 

「鈴でいい………アンタ!私と戦いなさい!」

 

セシリア

「はい?」

 

永遠

「何じゃいきなり?」

 

セシリア

「理由を聞いても宜しいですか?」

 

「アンタが一夏にコーチしてるって聞いたからよ!一夏は私よりアンタの方が強いって言って私のコーチを断ったのよ!だから私の方が強いって証明するのよ!」

 

セシリア

「なるほど…織斑さん…」

 

一夏

「は、はい!」

 

セシリア

「わたくしと永遠さん、そして織斑先生は言いましたよね…考えてから物を言う様にと…何故わたくしが今日会ったばかりの人に喧嘩を売られなければならないんでしょうか?貴方はわたくしの事をどう説明したのですか?」

 

一夏

「そ、それは…」

 

「アンタ、3人に同じ事を言われたの!?」

 

永遠

「織斑…貴様はまだ分かっとらんかったか…もう一度潰されてみるか?」

 

一夏

「そ、それだけは!?」

 

永遠

「…お主が馬鹿をやるのは勝手じゃ!じゃがワシ等を巻き込むな!やるなら一人でやれ!」

 

一夏

「…はい…」

 

 これが一夏が言ってた説教か…確かに厳しいみたいね…

 

永遠

「それから鈴!」

 

「な、何!」

 

永遠

「お主の善意はありがたいんじゃが、こやつにものを教えるのは対抗戦が終わってからにしてくれんか?」

 

「え?」

 

永遠

「この馬鹿は1組の代表じゃ。お主は2組の代表じゃろ?試合前にそんな事すると互いの手の内を明かす事になりかねんぞ。」

 

「あ!」

 

永遠

「分かったか?すまんがそういう訳じゃから大会が終わるまでは我慢してくれ。」

 

セシリア

「その後でしたら変わりますわ。わたくしも色々と忙しいですし、鈴さんが代わりに指導してくれるならありがたいですわ。」

 

「え、いいの?」

 

 この二人が言ってる事は至極真っ当な事だ…さっきは頭に血が上ってたけど落ち着いて考えてみるとその通りだった

 

セシリア

「…鈴さん…ちょっとこちらに…」

 

「な、何よ!?」

 

 セシリアに呼ばれて私達は部屋の隅に移動した

 

セシリア

「鈴さん…心配しなくてもわたくしは織斑さんに興味はありませんわ。」

 

「え?」

 

セシリア

「織斑さんが好きなんでしょう?だからわたくしに怒ったんですよね?」

 

「セ、セシリア!」///

 

セシリア

「フフッ♪大丈夫です。わたくしが織斑さんになびく事はありません。断言してもいいですわ!」

 

「…アンタ…もしかして永遠が?」

 

セシリア

「はい♪ですがこれは内緒でお願いしますね♪わたくしも言いませんから♪」

 

「…うん♪分かったわ♪」

 

セシリア

「お願いしますね♪」 

 

「…でも、今度私と勝負して!どっちが強いのか知りたいのは本当だから!」

 

セシリア

「フフッ♪分かりましたわ。その時はお相手いたしますわ!」

 

「約束よ!」

 

セシリア

「約束ですわ!」

 

「………でも良かった…アンタが一夏を好きじゃなくて…」

 

セシリア

「はい?」

 

「セシリアが相手じゃ勝てるかどうか分からないんだもん!」

 

セシリア

「では、篠ノ之さんなら勝てると?」

 

「少なくともアンタよりかは勝てる確率は高いわよ!」

 

セシリア

「篠ノ之さんが聞いたら怒りますわよ。」

 

「聞かれなかったら平気よ。だから言わないでね!」

 

セシリア

「フフッ分かりましたわ♪」

 

 私たちは笑い合うと一夏達のいる席に戻っていった

 

セシリア

「永遠さん、お待たせして申し訳ありません。」

 

永遠

「気にせんでいい。織斑、ワシ等はもう行くぞ。久しぶりに会って嬉しいとはいえ、声はもう少し下げて話すんじゃぞ。」

 

一夏

「…はい…気をつけます…」

 

セシリア

「それでは鈴さん、また♪」

 

「うん!またねセシリア!永遠!」

 

永遠

「ああ、ではな。」

 

セシリア

「失礼します。」

 

 二人は食事を取る為、違う席に向かった…

 

一夏

「…オルコットと何話してたんだ?随分仲良くなってたよな?」

 

「大した事は話してないわよ。今後勝負しようって約束したくらいよ。」

 

一夏

「そ、そうか…」

 

「一夏…良い奴等ね…あの二人…」

 

一夏

「え?」

 

「何処がだ!あいつ等は一夏を散々馬鹿にした挙句に火ノ兄は半殺しにしたんだぞ!」

 

一夏

「いや、それは…」

 

「…何か理由があったんでしょ?」

 

一夏

「あ、ああ…その、訳は言いたくないんだけど…」

 

「ならそれでいいわよ。軽く話しただけでもあの二人、相手を陥れる様な事しそうに無いし。」

 

一夏

「それは確かにな。」

 

「………」

 

 箒は永遠とセシリアが嫌いみたいね

 あの二人そんなに嫌われる事したのかな?

 そんな事する様な奴には見えなかったんだけどな?

 …そう言えば試合をしたって言ってたわね

 千冬さんに頼んでその時の映像を見せて貰えないか頼んでみるか

 そして次の日、クラスに来ると私が一夏の幼馴染と知ったクラスメイトから一夏の噂を聞いて自分の耳を疑った!

 

「…そ、そんな…アイツが…一夏が…ホモオオオオォォォォォーーーーーッ!!!」

 

 ~鈴Side out~

 

 




 次回『第049話:簪の闇』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第049話:簪の闇

遂にお気に入りが1000件を突破しました!!!

まさか4桁まで行くとは思っても見ませんでした!!

これも皆さんのお陰です♪

これからも頑張っていきます!!


 ~簪 Side~

 

 私はあれからずっと考えていた…

 セシリアは言わなければ分からないと言った…だから、何時でも相談して良いと言ってくれた…

 永遠は私が言うまで待ってくれると言った…その時は、何時でも力になると言ってくれた…

 二人は本当に優しかった…家にいるより二人の傍にいる方が安心できると思った…

 でも…永遠はそんな私の考えに気付いて突き放した…

 その通りだ…二人は私の悩みを解決する手伝いをするとは言ったけど…私の居場所に…逃げ場所になるとは言っていなかった…

 

「…逃げ場所か………私は永遠とセシリアと出会って二人の所に逃げようとしていたのかな…」

 

本音

「…かんちゃん…」

 

「…本音…私…どうしたらいいのかな?」

 

本音

「私には分かんない…かんちゃんはどうしたいの?」

 

「………」

 

 どうしたいか?

 

本音

「ホントは分かってるんだよね?」

 

「!?………うん…二人に全部話せばいいんだ…」

 

本音

「なら、言お!言って楽になっちゃお!」

 

「…でも、話して二人に呆れられたら…下らないって言われたら…」

 

本音

「かんちゃん!!」

 

「!?」

 

本音

「かんちゃん!ひののんもセッシーもそんな事言う人じゃないよ!」

 

「ほ、本音!?」

 

本音

「二人ならかんちゃんの話を真面目に聞いてくれるし、下らないなんて言わないよ!かんちゃんと一緒に悩んでくれる!二人はそんな人だよ!!なのに何でそんな事言うの!!」

 

 本音がこんなに声を荒げて私を叱るなんて初めてだった…

 私を叱る本音の眼にはうっすらと涙が浮かんでいた…

 本音はそれだけ二人を信頼していたんだ…だから私の言った事に怒ったんだ…

 

「…ごめん…本音…私が馬鹿だった…」

 

本音

「かんちゃん…」

 

「………決めたよ!…本音、明日の放課後二人に会いたいって伝えてくれる?」

 

本音

「じゃあ!」

 

「うん!全部話す!だから…」

 

本音

「分かったよ♪任せておいて♪」

 

「…ありがとう…本音…」

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 朝、教室に来ると本音が話しかけてきた…

 

本音

「ひののん、セッシー、今日の放課後だけど少しいいかな?」

 

永遠

「ワシは構わんぞ。」

 

セシリア

「わたくしも大丈夫ですわ。」

 

本音

「ホント!よかった~♪」

 

永遠

「………簪か?」

 

本音

「!?…うん…かんちゃんが全部話すって…」

 

永遠

「分かった。どこに行けばいい?」

 

本音

「整備室…そこで話すって。」

 

セシリア

「分かりましたわ。」

 

「一夏ああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!」

 

永遠

「な、何じゃ!?」

 

 本音と話しとるといきなり鈴が怒鳴り声を上げて入ってきた

 

一夏

「な、何だよ鈴!昨日の続きか!」

 

「アレとは別よ!それと、昨日の事はまだ許してないからね!」

 

 昨日の事…ワシが帰った後に何かあったんか?

 

永遠

「セシリア、本音…アイツまた何かしたんか?」

 

セシリア

「さあ…そういえば昨日の夜、織斑さんの部屋の方が騒がしかった気が…いつもの事ですので気にもしませんでしたが…」

 

本音

「そういえばそうだったね~。」

 

永遠

「…そん時に何かあったな………じゃが、鈴の用件は違うようじゃの?」

 

 一体何しに来たんじゃ?

 

一夏

「じゃあ何だよ…こんな朝っぱらから!」

 

「アンタがホモって聞いたからよ!!」

 

一夏

「違あああああぁぁぁぁぁーーーーーうっ!!!」

 

 何じゃその事か…

 

セシリア

「そういえば、鈴さんは昨日学園に来られたんですよね。でしたら知らないのも無理ありませんわね。」

 

本音

「そう言えばそうだね~♪」

 

永遠

「ワシ等にとっては今更じゃからな~。」

 

セシリア&本音

「はい(うん)。」

 

永遠

「あっちは放っとけばいい…本音、今日の放課後に整備室に行くと簪に伝えておいてくれ。」

 

本音

「うん!分かった~♪」

 

 で、あちらはと言うと…

 

「いつから男に走ったのよ!!」

 

一夏

「だから俺はホモじゃ無いんだって!!」

 

 …まだやっとった

 この後、織斑先生が来て二人を出席簿でシバくまで続けておった…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

「そろそろ来る頃かな…」

 

 私は整備室で永遠とセシリアが来るのを待っていた

 本音から二人が来てくれると連絡があったときは嬉しいと思ったけど同時に怖かった

 私の過去と、今していることを話してもそれでも手を貸してくれるのか不安で仕方なかった

 

「…【打鉄弐式】…」

 

 それは、私の目の前にある造りかけのISが原因でもあった…

 

「………」

 

永遠

「待たせたかの?」

 

「!?…永遠!セシリア!」

 

永遠

「何を驚いとるんじゃ?ワシらを呼んだのはお主じゃろ?」

 

「う、うん…ごめん…ちょっとボーっとしてたから…」

 

セシリア

「大丈夫ですの?」

 

永遠

「日を改めてもいいんじゃぞ?」

 

 …本当に優しいな………でも、それに甘えちゃ…いけないんだよね!

 

「…大丈夫!来てくれてありがとう…」

 

永遠

「気にせんでいい…さて、早速聞かせてもらうかの…お主の悩みを?」

 

「…う、うん…実はね………」

 

 そして私は自分の事を話し始めた………

 幼い頃から家の者達から優秀で明朗な姉と内気で臆病な自分を比較され続けて心が塞ぎ込んでしまった事…

 姉に対して強いコンプレックスを抱いており、自分を卑下していた事…

 それを払拭しようと勉学に励んでいたが、姉が家を継ぐと『無能のままでいろ』と言われた事…

 代表候補生である、自分の専用機を倉持技研が開発を進めていたけど、織斑一夏の登場によって彼のデータ収集・解析を行う為に開発された【白式】に全ての技術者を取られてしまった事…

 姉が自分の専用機を一人で作った事を知って、倉持から未完成で放置されていた【打鉄弐式】を譲り受け自分一人で現在制作していて行き詰っている事…

 話せる事は全て話した…

 

「…私の事情はこんな所………」

 

 私が話している間、二人は真剣な表情を崩さずにずっと聞いていてくれた…

 それだけで…とても嬉しかった…

 

永遠

「なるほどのぉ…簪、幾つか聞いてもいいかの?」

 

「…うん…」

 

永遠

「まず、お主は織斑をどう思っとる?」

 

「…織斑一夏を?」

 

永遠

「そうじゃ。政府の命令とはいえ、あやつの【白式】が原因でお主の【打鉄弐式】は放り出されたからの。織斑自身は関係無いとはいえ何か思う所はあるのかと思うてな。」

 

「………少し前まではね、恨んでたんだ…でも、今は何とも思ってないよ。」

 

セシリア

「何故ですか?」

 

「…この間の永遠の試合を見たから…あの時、永遠に手も足も出せずに追い詰められて…お説教をされても何一つ言い返せない…そんな彼の姿が凄く小さく見えたの…そう思ったら、彼に対して色々考えていた自分が酷く馬鹿馬鹿しく思えたの…そんな人の専用機が私のより優先されたと思うと、自分が情けなく感じたんだ…だから、彼に対して私はもう何も感じてないんだよ。」

 

永遠

「…そうか…あの時の試合がな~…何と言えば良いのか…」

 

「…私は感謝してるよ。お陰でつまらない拘りが無くなったから。…だから…ありがとう。」

 

永遠

「素直に受けていいのか微妙じゃな…」

 

本音

「いいんじゃないかな~♪素直に受け取れば~♪」

 

永遠

「あのな~…」

 

「…他に聞きたい事は?」

 

永遠

「そうじゃな………」

 

 永遠はそう言って私の後ろにある【打鉄弐式】を見ていた

 

永遠

「簪…お主はこの機体を何故一人で造っておるんじゃ?」

 

「え?」

 

永遠

「聞けば、本音や整備課の者が手伝おうとしても全て断っとるそうじゃな。何故そうまでして一人に拘るんじゃ?一人でいることが好きなんか?」

 

「…ち、違う!?」

 

永遠

「では何故じゃ?…姉が一人で造ったからか?」

 

「………うん…」

 

永遠

「じゃがな…お主が周りの協力を断り続けた結果、コイツは未だに完成しとらんのだぞ。」

 

「うっ!?」

 

永遠

「簪…何故周りを頼らん?本音達を頼ろうとせんのじゃ?」

 

本音

「ひののん…」

 

永遠

「本音達はお主のやっとる事を邪魔しておるんか?嘲笑っておるんか?」

 

「違う!本音も皆もそんな事する人達じゃない!!」

 

本音

「かんちゃん…」

 

永遠

「なら何故頼ろうとせん!頼る事がそんなに恥ずかしい事か!カッコ悪い事か!」

 

「…それは…で、でも…お姉ちゃんが…」

 

永遠

「それがどうした!お主の姉は一人で造った!ただそれだけの事じゃろ!妹のお主まで同じ事をする必要がどこにある!!」

 

「と、永遠…」

 

永遠

「…簪…お主はお主のやり方でやればいいんじゃ。姉が一人で造ったなら、お主は皆で造れば良いんじゃ。それは決して恥ずかしい事では無い。皆の力で最高の機体を造ればいいんじゃよ。」

 

「…皆で…最高の…」

 

 …永遠は私の頭を優しく撫でながら、さっきまでの力強い口調から優しい声音に変えながら、話し始めた…

 

永遠

「そうじゃ。いいか、簪…例え無能と言われようがそんなもん放っておけ。言いたい奴には言わせておけばいい。簪には簪の良い所が沢山ある。そうじゃろ、本音?」

 

本音

「うん♪かんちゃんには良い所がた~くさんあるよ♪」

 

セシリア

「そうですわ!むしろそれに気づかない方がおかしいのですわ!」

 

「…永遠…本音…セシリア…う、ううっ…」

 

永遠

「簪?」

 

「うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー………んっ!!!!」

 

 永遠達の言葉が嬉しかった…

 嬉しくて…とうとう私は我慢出来ずに泣き出してしまった

 永遠の胸に飛び込んで今まで我慢していた物を全て吐き出すように…そのまま泣き続けた…

 

永遠

「簪………もう我慢せんでいい。好きなだけ泣くといい。」

 

「うえええええぇぇぇぇぇーーーーん!!」

 

 泣き続ける私を永遠は背中を摩りながらあやしてくれた…

 セシリアも本音も何も言わずに見守ってくれていた…

 

 ~簪 Side out~

 

 




 次回『第050話:家にご招待』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第050話:家にご招待

 ~永遠 Side~

 

「…ヒック…グスッ………ゴメン…永遠…」

 

 アレから暫くして漸く簪は泣き止んだんじゃ

 

永遠

「…もういいんか?」

 

「…うん…思いっきり泣いてスッキリした!」

 

永遠

「そうか、それは良かったの。」

 

本音

「エヘヘ~♪こんなかんちゃん初めて見たよ~♪」

 

「ほ、本音…」///

 

セシリア

「フフッ♪それで簪さんこれからどうなさるのですか?」

 

「…うん…皆に協力して貰う!…まずは、今まで断ってきた事を謝って、改めて私の方から頼んでみる!」

 

永遠

「それでいい!ならワシも協力しよう!…と言ってもワシに手伝える事は………」

 

 考えてみるとワシは専門的な事は分からんな…

 

永遠

「…スマン…力仕事位しか出来ん…」

 

「い、いいよそんなに気にしなくて!手伝ってくれるだけで凄く嬉しい…」///

 

 ん?…簪の顔が赤いような?…気のせいかの?

 

永遠

「しかし何か出来る事が………」

 

セシリア

「わたくしもお手伝いしますわ!【ブルー・ティアーズ】のデータが役に立つかもしれませんし。」

 

「…いいの?」

 

セシリア

「構いませんわ♪」

 

「…ありがとう…セシリア!」

 

本音

「良かったね~かんちゃん♪」

 

永遠

「…う~~~むっ………あ!?」

 

 そうじゃ!あの人に協力して貰おう!

 

本音

「ひののん、どしたの?」

 

永遠

「スマンが少し外すぞ…」

 

 ワシは整備室を出て目的の人物に電話をかけると、事情を説明したんじゃ

 協力して貰うのは難かしいと思ったんじゃが簡単にOKしてくれた

 

永遠

「…待たせたの!」

 

セシリア

「永遠さん、何をしてらしたんですか?」

 

永遠

「知り合いに電話しておったんじゃよ。…簪、土日と言うか今から空いとるか?」

 

「え?…うん、空いてるよ。」

 

永遠

「よし!…簪、今から織斑先生の所に行くぞ!」

 

「な、何で?」

 

永遠

「外出許可…では無いな…外泊許可を貰いに行くんじゃよ!」

 

「外泊って…何処に行くの?」

 

永遠

「ワシの家じゃ!」

 

セシリア&簪

「えええええぇぇぇぇぇーーーーーっ!!!」

 

「ななな何で!?」///

 

セシリア

「永遠さんどういう事ですか!!」

 

永遠

「ワシの知り合いにISに詳しい人がおってな、その人に助言を頼もうと思ったんじゃよ。」

 

本音

「それで何で家に行くの~?」

 

永遠

「その人がワシの家にいるからじゃ。」

 

セシリア

「え!…永遠さん…もしかしてその人…」

 

永遠

「うむ、あの人じゃよ!」

 

「セシリアは知ってるの?」

 

セシリア

「は、はい…ですがあの人が手を貸してくれるんですか?」

 

永遠

「ワシも難しいと思ったんじゃがアッサリと了承してくれたぞい。」

 

セシリア

「確かにあの人でしたら簪さんの機体を完成させる位は簡単に出来ますが…」

 

「え!…簡単に!」

 

永遠

「あくまで相談するだけじゃ。【打鉄二式】を完成させる為のヒントを貰うだけじゃよ。向こうにもそう言ってある。」

 

セシリア

「そういう事ですか。」

 

「ね、ねえ!誰なのその人!そんなに凄い人なの!」

 

セシリア

「ええ、会えば驚きますわ。」

 

本音

「そんなに凄い人なんだ~?」

 

永遠

「うむ!ほれ早く許可を貰いに行くぞ!」

 

「あ、うん…」

 

セシリア

「ま、待って下さい!…わたくしもお供させて下さい!」

 

永遠

「ん?なら一緒に行くかの。」

 

セシリア

「ありがとうございます♪」///

 

永遠

「本音、お主は?」

 

本音

「私もいいの~?」

 

永遠

「構わんぞ。」

 

本音

「じゃあ行く~♪」

 

 まあ、連れて行く為には、まずあの先生の許可を取らんとな…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

 永遠の家に行く為に私達は織斑先生を探していた

 その途中で…

 

永遠

「ん…鈴?」

 

セシリア

「鈴さん?」

 

 ベンチで泣いている生徒がいた

 永遠とセシリアの知り合いみたいだけど…

 

セシリア

「鈴さん、どうされたんですか?」

 

「あっ永遠、セシリア…何でもないよ…」

 

セシリア

「どう見ても何かあったのでしょう?」

 

永遠

「もしかせんでも、また織斑か?」

 

「…うん…アイツね…覚えてなかったんだ…」

 

永遠

「覚えてない?」

 

 何の事だろう?

 

「…うん…私ね1年前に中国に帰ったのよ。その時なんだけど………」

 

 それから、鈴っていう人は恥ずかしがりながら話し始めた

 なんでも、引っ越す時に織斑一夏に『毎日お味噌汁作ってあげる』のお味噌汁を酢豚に変えて告白したらしい

 だけど、再会してその事を聞いたら『毎日奢ってくれる』と言って来たそうだ

 しかもそれで怒った彼女に対して謝る気が無いらしい

 話が終わると永遠とセシリアは頭を抱えていた

 

永遠

「…あの男は…よもやそこまで馬鹿じゃったとは…」

 

セシリア

「…あれほど言葉には気を付ける様に言いましたのに…」

 

「…幾ら何でも酷すぎる!まだ覚えてないって言った方がマシ!」

 

本音

「そうだね~…これは酷いよ!」

 

「…アイツ…私がどれだけ真剣に想いを伝えたと思ってんのよ!」

 

永遠

「ハァ~…これは救い様が無いなあの馬鹿は…一度死なんと分からんかもしれんな…」

 

「多分無理よ…アイツの鈍感さは死んでも治らないわよ…」

 

セシリア

「そうですわね~…」

 

「そうよ!………所でアンタ達は?」

 

 私と本音を見ながら聞いて来た

 そう言えば初対面だった

 

「私は4組の更識簪。日本の代表候補生。」

 

本音

「1組の布仏本音だよ~。」

 

「簪に本音ね。…私は凰鈴音。中国の代表候補生よ。鈴って呼んで。」

 

「よろしく。」

 

永遠

「しかし、あの馬鹿どうしてくれようかの?」

 

「どうしようもないと思う。多分、どう言っても変な解釈をする。」

 

永遠

「そうじゃな…恐らく、付き合ってくれと言っても買い物に付き合うとか言うじゃろうな…」

 

「間違いなくそう言うだろうな!」

 

永遠

「織斑先生!」

 

 何時からいたのか私達が探していた織斑先生が話に加わって来た

 

セシリア

「何時からいたんですの?」

 

千冬

「鈴が昔の話をし始めたあたりからだ。」

 

 …殆ど最初からいたんだ…

 

永遠

「なら話が早い。あの馬鹿何とかならんかの?」

 

千冬

「…お前達も言っていただろ。無理だ!アイツの鈍感さはもはや病気だ。それも不治の病レベルのな。それこそ、結婚を前提にとか付け加えなければ分からんだろう。」

 

セシリア

「そこまで言わなければ無理ですの!」

 

千冬

「正直それでも分かるか怪しい所だ…」

 

永遠

「それともやはりホモなのか?」

 

千冬

「…否定出来なくなっているな…今夜あたりもう一度問いただすか…」

 

「以前も聞いたんですか?」

 

千冬

「ああ、一晩中否定していたがな…正直、かなり怪しい…」

 

永遠

「アイツの耳と脳味噌はどういう作りをしとるんじゃ?」

 

千冬

「私にも分からん。だが普通の人間と違うのは確かだな。もしかしたら味噌は味噌でもカニ味噌が詰まっているのかもな。」

 

 …実の弟に言う事かな?

 

「…私はどうすれば…」

 

永遠

「フム…なら今度の対抗戦でその怒りをぶつけい!あの馬鹿には勝ったら土下座をしろとか言ってみたらどうじゃ?」

 

セシリア

「それはいい方法ですわね!」

 

「…そうね…その手があったわね!グウの音も出ない位ボコボコにしてやるんだから!!」

 

「…頑張ってね!」

 

「…けど、アンタ達、私を応援していいの?簪以外はアイツと同じクラスでしょ?」

 

永遠

「別に構わんよ。ワシは何処が勝とうと興味無いしの。」

 

セシリア

「わたくしも気にしていませんわ。それに、勝てるかどうかは織斑さん次第ですから。」

 

本音

「景品は欲しいけど…リンリンを応援する~♪」

 

「リンリンって私の事!パンダみたいなんだけど…まあいいわ。ありがとう皆!」

 

千冬

「教師としては自分のクラスに勝って欲しいが、私個人としてはお前を応援しているぞ!」

 

「千冬さん!」

 

千冬

「頑張れよ!じゃあな…」

 

 アレ?何か忘れてるような…

 

永遠

「ああ!待ってくれんか!織斑先生に用があるんじゃ!」

 

千冬

「ん?用件は?」

 

永遠

「セシリアと簪、本音の外泊許可を欲しいんじゃよ。」

 

千冬

「外泊?何処に行く気だ?」

 

永遠

「ワシの家じゃ。」

 

千冬

「お前の家だと!何を考えてるんだ!」

 

「あの!それは私が説明します…」

 

 私は織斑先生に私の専用機の事を話した…

 

千冬

「なるほど、アイツに助言を求めるのか…確かにいい方法だな。アイツならヒントだけでも的確なアドバイスが出来るしな。」

 

「先生も誰か知ってるんですか?」

 

千冬

「ああ、会えば確実に驚くぞ。」

 

永遠

「それで許可を貰えんかの?」

 

千冬

「…そうだな…まあ、そういう理由ならいいだろ。許可する。火ノ兄の島に行く事限定でISの使用も許可する。ただし、来週の月曜の朝には戻ってくるんだぞ。」

 

永遠&セシリア&簪&本音

「ありがとうございます!」

 

セシリア

「では急いで身支度をしませんと!」

 

「そうだね!」

 

永遠

「…鈴…お主も来るか?」

 

「え!」

 

永遠

「向こうでワシが鍛えてやる。」

 

「鍛えるってアンタが?」

 

千冬

「鈴。火ノ兄の実力は本物だ。鍛えて貰え。お前の外泊も許可してやる。」

 

「千冬さん…分かりました!」

 

永遠

「ならワシは校門前で待っとるから準備してくるといい。」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「はい!」

 

 …何を持っていけばいいのかな♪…

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~楯無 Side~

 

楯無

「………外泊…」

 

 私は自分の耳を疑った…簪ちゃんが男の家に外泊すると言うのだ…

 けど、そんな事より…

 

楯無

「ううっ!私だって…私だって簪ちゃんとお泊りしたいのに!」

 

 …羨ましい!

 

楯無

「…でも…あんなに楽しそうな簪ちゃんを見たのは久しぶりだな…」

 

 私じゃ簪ちゃんを笑顔に出来ないのかなぁ…

 

 ~楯無 Side out~

 

 




 次回『第051話:驚愕の出会い』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第051話:驚愕の出会い

 ~永遠 Side~

 

 ワシはセシリア達が来るのを校門の前で待っていると…

 

一夏

「火ノ兄?」

 

 馬鹿(織斑)が話しかけて来た

 

永遠

「ん?…何じゃ馬鹿(おりむら)か…」

 

一夏

「おい!今何て書いて織斑って言った!」

 

永遠

「織斑と書いてオリムラと言ったんじゃが。」

 

一夏

「嘘つけえぇ!」

 

永遠

「五月蝿いのぉ…一体何のようじゃ?」

 

一夏

「…こんな時間まで学園にいるから気になったんだよ…」

 

永遠

「知り合いの相談に乗っとっただけじゃ。もう帰る。」

 

一夏

「なら何ですぐ帰らないんだ?」

 

永遠

「しつこいのぉ…人を待っとるだけじゃ!」

 

セシリア

「永遠さ~~~んっ♪」

 

永遠

「来たか…」

 

 織斑の相手をしとるうちにセシリア達がやってきた…

 

「げ!馬鹿(いちか)!」

 

一夏

「お前も何て書いて一夏って言った!」

 

「馬鹿って書いて一夏って言ったのよ!」

 

一夏

「ハッキリ言うな!」

 

「アンタが聞いて来たんでしょ!て言うかなんでアンタがいるのよ!」

 

永遠

「ワシがココにおったらやってきたんじゃよ。」

 

「なんだ…じゃあ用は無いんだ。あ、そうだ一夏!今度の対抗戦で勝ったらさっきの事、土下座して謝って貰うわよ!」

 

一夏

「いいぜ!なら俺が勝ったら説明して貰うからな!」

 

「えっ説明は…その…」

 

セシリア

「鈴さん!」

 

「ええ、いいわよ!私が勝つからね!」

 

一夏

「今度の対抗戦、絶対負けないからな!」

 

「アンタが勝てる訳ないでしょ!私はこれから永遠に訓練して貰うんだから!」

 

一夏

「な!どういう事だよ!何で2組の鈴の訓練をするんだよ!普通は同じクラスの俺をするもんだろ!」

 

 ワシに問いただしてきたが…さてどうするかな…軽く説教してやるか…

 

永遠

「織斑…貴様、さっき鈴を泣かせたそうじゃな?」

 

一夏

「うぐっ!」

 

永遠

「鈴から事情は聞いた…ハッキリ言って貴様は男として最低じゃ!それが分からん限り貴様の肩を持つ様な奴は誰もおらん!無論ワシもじゃ!」

 

一夏

「そ、そんな!俺が何したっていうんだよ!鈴との約束だってちゃんと覚えてたぞ!」

 

永遠

「…織斑先生も言っとったが貴様は本当に記憶力が無いようじゃな…」

 

一夏

「え?」

 

永遠

「間違っとるから鈴は怒ったんじゃ!!鈴が貴様との別れ際にどれ程の覚悟を持って言った言葉じゃと思っとるんじゃ!それを貴様は理解しようとすらせずに間違えて記憶しおって!まだ忘れたと言った方が遥かにマシじゃ!!貴様は鈴の覚悟を踏み躙ったんじゃぞ!それすら貴様には分からんのか!この大馬鹿もんが!!」

 

一夏

「うっ…」

 

セシリア

「織斑さん…貴方は何度言えば理解するんですか?考えてから物を言う様にと!それとも理解する頭を持っていないんですか?」

 

一夏

「ううっ…」

 

永遠

「今の貴様に手を貸す気なんぞワシには無い!貴様が出来る事は鈴との約束を思い出すか、土下座の練習をする事だけじゃ!どれだけ鈍いんじゃ貴様は!」

 

一夏

「………分かった…鈴…俺もう一度思い出してみる…」

 

 織斑はそう言って校舎に戻って行った

 

「…一夏…」

 

永遠

「あやつもああ言っておる。少しは期待したらどうじゃ?」

 

「…うん♪」

 

 鈴はワシの言葉に笑顔で頷いた

 

永遠

「全くあの馬鹿には勿体ないくらいの娘じゃな。お主なら良い嫁になれるじゃろ。」

 

「よよよ嫁!」///

 

永遠

「告白したんじゃからいずれはそうなりたいんじゃろ?」

 

「そ、そうだけど…改めて言われると…その………」///

 

永遠

「カカカッ♪愛い奴じゃな!…じゃがな鈴…あの馬鹿が思い出す事が出来たら、お主も今度こそちゃんとその想いを伝えるんじゃぞ。恐らくあの馬鹿は思い出すだけで、意味なんぞ考えてはおらんじゃろ。奴にはそこまでの期待は出来ん。お主の方からいかんと全てが無駄になってしまうじゃろう。」

 

「…うん…分かったわ!」

 

セシリア

「ですがその前に恋敵に勝たないといけませんわよ?」

 

永遠

「…篠ノ之か…」

 

「大丈夫よ!私は負けないから!」

 

永遠

「カカカッ!頑張るんじゃぞ!」

 

セシリア&簪&本音

「フフフッ♪」

 

 ほんにあの馬鹿には勿体ない娘じゃ…

 この娘の想いが届けばよいのぉ…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

「それでどうやって行くの?」

 

永遠

「さっき織斑先生が言うとったじゃろ。ISで行くんじゃよ。」

 

「ISでって…いいの?」

 

永遠

「ワシは許可を貰っとるからな。毎日ISで登下校しとる。」

 

「よく許可が下りたわね…」

 

セシリア

「鈴さん…その理由は行けば分かりますわ。」

 

「そうなの?」

 

永遠

「まぁな…」

 

「…あの…」

 

永遠

「ん?どうしたんじゃ?」

 

「ISで行くんだよね?私の機体はまだ出来てないし、本音はそもそも持ってないよ。」

 

永遠

「そうじゃったな。なら簪はこれを使え。」

 

 永遠はそう言って腰につけていた刀を簪に渡した

 

「刀?」

 

「コレ…【ドットブラスライザー】!?」

 

永遠

「そうじゃ。それを装着せい。生体ロックは外してあるから簪にも使える筈じゃ。」

 

「コレってISの待機状態なの?って言うか何で刀?」

 

「さぁ?」

 

本音

「ね~私は~?」

 

永遠

「スマンが本音はそのままで連れて行く。」

 

「ちょっと何考えてるのよ!ISの速度に生身の体が耐えられる訳ないわよ!」

 

永遠

「【ドウジキリ】を使う。」

 

セシリア

「【ドウジキリ】ですか?」

 

永遠

「【ドウジキリ】で本音の周りに風のバリアを張る。その中ならISの速度にも耐えられる筈じゃからな。」

 

「…何なの【ドウジキリ】って?」

 

永遠

「見れば分かる。簪!機体を展開するぞ!」

 

「は、はい!」

 

 永遠は刀を頭上に掲げて簪は刀を正面に向けて一緒に円を描くと、永遠は炎に包まれて、簪は光に包まれた

 炎と光が消えると二人の立っていた場所に、赤い龍と白いロボットの様なISが立っていた

 

「な、何よこの機体!全身装甲(フルスキン)!こんなIS見た事無いわよ!」

 

セシリア

「これが永遠さんのIS【戦国龍】と【ドットブラスライザー】ですわ。」

 

「…【戦国龍】…【ドットブラスライザー】………アンタISを二つも持ってるの!?」

 

永遠

「そうじゃ。」

 

「…何なのよコレ…」

 

永遠

「そんな事より…簪、大丈夫か?」

 

「………」

 

永遠

「簪?」

 

「キャッホオオオオォォォォォーーーーーイッ!!!」

 

永遠&セシリア&鈴&本音

「!?」

 

「カッコイイーーーッ!!私今【ドットブラスライザー】になってるんだ!!」

 

 思いっきりはしゃいでる…簪ってこんな子だっけ…さっきまでとキャラが違いすぎるんだけど…

 

永遠

「落ち着かんか!!」

 

 ガンッ!

 

「アタッ!」

 

 永遠が持っていた槍で簪の頭を殴った

 

「…ゴメン…興奮しちゃって…」///

 

「アンタどうしたのよ?」

 

永遠

「簪はロボットアニメや特撮ヒーロー物が好きらしいんじゃ。」

 

「………そういう事…」

 

「…///」

 

 全身装甲(フルスキン)だから簪の顔が見えないわね…どんな顔してるんだろ?

 あ!そういえば…

 

「ねえ?さっき言ってた【ドウジキリ】って?」

 

永遠

「そうじゃったな…【ドウジキリ】はこの【戦国龍】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)【六道剣】の一つじゃよ。」

 

単一仕様(ワンオフ・アビリティー)!?その機体は使えるの!もしかして二次移行(セカンドシフト)した機体なの!」

 

永遠

「いやしとらんぞ。ワシのISは一次の状態で単一仕様(ワンオフ・アビリティー)を使えるんじゃよ。」

 

「…もしかして【ドットブラスライザー】も?」

 

「出来るよ!!【ドットブラスライザー】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)は本当にカッコよかったんだよ!!」

 

 また興奮し始めたわね…

 

永遠

「簪…」

 

「はい…ごめんなさい…」

 

永遠

「何時までもこうしとる訳にもいかん。単一仕様(ワンオフ・アビリティー)起動!」

 

 永遠が単一仕様(ワンオフ・アビリティー)を発動させると6本の色の違う光の柱が現れた

 その内の一つ、緑の柱を向いた

 

永遠

「風を纏いし神速の刃【風翼刀ドウジキリ】!!」

 

 柱の中から現れたのは羽根の装飾が施された一本の剣だった

 

「…これが…」

 

セシリア

「【風翼刀ドウジキリ】…風を司る刀ですわ。」

 

「【風翼刀ドウジキリ】…」

 

「凄い…」

 

「アンタも見た事無かったの?」

 

「うん…」

 

セシリア

「【六道剣】を全て見た事があるのは1組の方達だけですわ。」

 

本音

「そ~だよ~♪」

 

永遠

「さて本音、こっちに来い。」

 

本音

「は~い♪」

 

 永遠は本音を呼ぶと【ドウジキリ】を本音に翳した

 

本音

「わっ!」

 

 本音を風が包み込んだ

 

本音

「うわ~~~何これ~!」

 

永遠

「これで大丈夫じゃ。よし準備も出来たそろそろ行くぞい。」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「はい!」

 

 こうして私達は永遠の住む家に向かった

 

 ~鈴 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

「~~~♪~~~♪」

 

本音

「かんちゃんご機嫌だね~♪」

 

「…うん…あの【ドットブラスライザー】を使ってるんだもん………」

 

本音

「?」

 

 確かに私は機嫌が良い、いや、良かった…さっきまでは…

 その理由は本音の今の態勢が原因!

 本音は今、永遠にお姫様抱っこされているのだ!

 それを見た瞬間途端に機嫌が悪くなってしまった…何でだろう?

 ちなみにセシリアは最初から不機嫌だった…

 

セシリア

「む~~~…」

 

「あははは…」

 

永遠

「…もうすぐ着くぞ!」 

 

「あ!着いたんだ!」

 

 私達は永遠を先頭に島に降りて行った

 

セシリア

「ココが永遠さんの暮らしている島。」

 

永遠

「そうじゃ。名を火紋島と言うんじゃ。」

 

「火紋島…」

 

 地上に降りると永遠は本音を下ろして私達はISを解除した

 

本音

「ひののん、ありがと~♪」

 

永遠

「スマンなこげな移動法で…」

 

本音

「そ、そんな事無いよ~♪(嬉しかったな~♪)」///

 

「本音?」

 

セシリア

「本音さん?」

 

本音

「な、何でもないよ~!」

 

 本音…まさか…この子…

 

永遠

「さてまずは夕飯にするかの。家にいる二人も腹をすかしとるじゃろうし。」

 

「二人?…その人たちが【打鉄二式】を見てくれる人?」

 

永遠

「そうじゃ。」

 

セシリア

「お会いするのが随分久しぶりに感じますわ♪」

 

 そんな話をしながら私達は永遠について行った

 しばらく歩くと一軒の家が見えて来た

 

「アレがアンタの家?」

 

永遠

「そうじゃ。」

 

 永遠はそう言って玄関の扉を開けた

 

永遠

「遅くなってスマン!今帰ったぞい!」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「おじゃましま~す!」

 

?1

「おかえり~!もうお腹ペコペコだよ~!」

 

?2

「おかえりなさいませ。」

 

簪&本音&鈴

「え!?」

 

 私達を出迎えたのは機械のウサ耳を付けた女性と銀髪の少女だった

 このウサ耳を付けた人…どこかで見た事が…

 

永遠

「スマナイ!すぐに準備するからの!」

 

 永遠はそう言って急いで家の奥に行ってしまった

 

セシリア

「お久しぶりです。…束さん♪」

 

 …え?…セシリアは今何て…

 

「やぁ~セーちゃん♪久しぶりだね~♪」

 

クロエ

「皆様いらっしゃいませ♪」

 

「え?…え?」

 

「やぁ君たちいらっしゃい!私が天災科学者の篠ノ之束だよ~♪」

 

簪&本音&鈴

「えええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!」

 

 な、何でココにISの生みの親がいるの!?

 

 ~簪 Side out~

 

 




 次回『第052話:兎との一夜』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第052話:兎との一夜

 ~簪 Side~

 

 私は、いえ、私達は今ガチガチに緊張している!

 その理由は私達の目の前にISの生みの親・篠ノ之束博士がいるからだ

 何でそんな凄い人が永遠の家にいるの!!

 

「それにしても久しぶりだね~♪セーちゃんととーくんの試合は見せて貰ったよ♪束さんの予想以上に強くなってたね♪いい試合だったよ♪」

 

セシリア

「ありがとうございます♪束さんにそう言って頂けるなんて光栄ですわ♪」

 

 何でセシリアは普通に話せてるの?

 しかも、顔見知りみたいだし…

 

「(ちょ、ちょっとセシリア!アンタ篠ノ之博士と知り合いだったの!)」

 

セシリア

「ええ、わたくしが入学試験を受けに来た時にお会いしましたの。」

 

「(声が大きいわよ!)」

 

「ニャハハハッ♪そんなに緊張しなくていいよ♪そうだね…とーくんの料理が出来るまで自己紹介でもしようか?」

 

クロエ

「それがいいですね♪」

 

「じゃあまずは束さんからね♪君達も知ってると思うけどISの生みの親、篠ノ之束だよ♪ブイブイ~♪」

 

クロエ

「束様の助手を務めております、クロエ・クロニクルと言います。」

 

「クーちゃん、そこは束さんの娘って言って欲しいな~♪」

 

「む、娘!?結婚されてるんですか!?」

 

「違うよ。クーちゃんは養子なんだよ。後、とーくんの義理の妹でもあるんだよ。」

 

「そ、そうなんですか…」

 

「それで君たちは?」

 

「あ、はい!…えっと…誰から行く…」

 

「…なら私から。…初めまして、私は更識簪と言います。日本の代表候補生です。」

 

「君か~、一人でISを造ってるっていう子は?」

 

「は、はい!」

 

「とーくんから話は聞いているよ♪後で君の機体を見せて貰うよ。そこから束さんなりのヒントを君に教える。あくまで教えるのはヒントだけだから、それを元に君は機体を完成させられるように頑張るんだよ。」

 

「はい!!よろしくお願いします!!」

 

 …あの篠ノ之博士に私の機体を見て貰えるなんて!

 嬉しいけど緊張するなぁ…

 

「では次は私が、凰鈴音です。中国の代表候補生をしてます。後、一夏とは幼馴染です。」

 

「へ~♪いっくんに箒ちゃん以外の女の子の幼馴染がいるなんて知らなかったよ。…君もいっくんの事が好きなの?」

 

「は、はい…今は喧嘩中なんですけど…」///

 

「喧嘩中?…またいっくんが何かしたの?」

 

「…はい…実は………」

 

 鈴はさっきの事を簡単に説明すると博士は呆れた顔をしていた

 

「…いっくん…相変わらず鈍感だね~…」

 

「そうなんですよ!ホント腹立つ!」

 

「そういう事なら束さんも君を応援するよ♪この休みの間にとーくんにタップリ鍛えて貰うといいよ♪」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

本音

「最後は私だね♪初めまして~♪布仏本音です♪本音でものほほんでも好きに呼んで下さい♪かんちゃん…じゃなくて、簪ちゃんのメイドをやってま~す♪」

 

「アンタメイドだったの!?…とてもそうは見えないんだけど…」

 

「ホントだね~…」

 

「全然それっぽく見えないけど…本当なんです…」

 

本音

「皆酷いよ~!」

 

「アハハハッ♪君面白いね♪気に入ったよ♪」

 

本音

「何か納得いかないよ~!」

 

全員

「アハハハハ………ッ♪」

 

 それから私達は雑談をしながら時間を過ごした

 

永遠

「楽しそうじゃな?」

 

「あ!とーくん、待ってたよ~♪」

 

永遠

「スマンかったの、いつもの倍作らんといかんかったんでな。」

 

セシリア

「すみませんいきなり押しかけて…」

 

永遠

「連れて来たのはワシじゃ。お主らは気にせんでいい。」

 

「そ~そ~♪気にしなくていいよ♪さ、早く食べよ♪」

 

「はい♪」

 

永遠

「では、いただきます。」

 

全員

「いただきま~す♪」

 

 私達は永遠が用意してくれた夕飯を食べた

 食事をしながらもいろんな話をしながら楽しんでいた

 …こんなに楽しいご飯を食べたの何時以来だろ…

 まあ、そんな事はどうでもいっか!…これからもこんな食事がしたいな~…

 

全員

「ごちそうさまでした♪」

 

永遠

「さて、ワシは洗いもんをしとるから皆は風呂に入ってきんさい。束さん、クロエ、案内を頼んでもいいかの?」

 

「いいよ~♪皆、着替えを持ってついてきて♪」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「は、はい。」

 

 私達は着替えを持って博士に着いて行ったんだけど…

 

「あ、あの…篠ノ之博士…なんで森の中を歩いてるんですか?」

 

 そう、今私達は永遠の家を出て森の中を歩いている

 

「すぐに分かるよ♪…あ、ついたよ!」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「え?」

 

 森を抜けると私達が見た物は…

 

「…これ…温泉!!」

 

クロエ

「そうです。この温泉は美肌効果もあるんですよ。」

 

セシリア

「本当ですか!!」

 

本音

「早速入ろ~♪」

 

「その前に一つ注意事項があるから聞いて。」

 

「は、はい!」

 

「この温泉には島の動物達も入りに来るから間違えて攻撃しないようにね!」

 

「動物ですか?どんなのがいるんですか?」

 

クロエ

「狸や狐、熊に狼です。」

 

 へ?…熊…狼…

 

「くくく熊ーーーっ!!」

 

セシリア

「狼ですか!?」

 

「大丈夫だよ♪この島の動物達はみんな仲がよくて、大人しいんだよ。特にこの温泉では借りてきた猫みたいに大人しいんだよ♪」

 

クロエ

「事実、私達はこの島で1年以上暮らしてますが熊や狼に襲われた事は1度もありません。束様に至っては熊と一緒に酒盛りまでしてます。」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「ええええぇぇぇぇーーーーっ!!」

 

「あの子と飲むお酒は美味しいんだよね~♪」

 

クロエ

「そういう訳ですから安心して入ってください。」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「は、はい…」

 

 少し怖かったけど私達は温泉に入ったんだ…

 確かにすごく気持ちいいんだけど…

 

「………」

 

本音

「気持ちい~ね~♪…かんちゃんどったの?」

 

「…別に…」

 

 ううっ…篠ノ之博士…大きすぎる…本音が大きいのは知ってたけど…セシリアも負けてない…

 

「………」

 

 …鈴は自分のと比べて落ち込んでる…

 

クロエ

「…鈴様…」

 

「…クロエ…」

 

鈴&クロエ

「………」

 

 ガシッ!

 

 二人は何も言わずただ頷くとガシリと手を組んだ…なんとなく分かる気がする…

 

セシリア

「何をしてるんでしょう?」

 

束&本音

「さぁ~?」

 

 この3人には分からない悩みでしょうね…

 

「………鈴、クロエさん…」

 

「…アンタはある方よ!」

 

クロエ

「…そうです!」

 

「ううっ…私はどっちにも入れないの…」

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

セシリア

「いいお湯でしたわね~♪」

 

本音

「そ~だね~♪」

 

「フフン♪この島自慢の温泉だからね!」

 

簪&鈴&クロエ

「………」

 

セシリア

「どうしましたの?」

 

「何でも無いよ…気持ちよかったね…」

 

「そうね…」

 

クロエ

「はい…」

 

 …何故あんなに落ち込んでるんでしょうか?

 わたくし達はそんな会話をしながら永遠さんの自宅に戻りました

 

全員

「ただいま~♪」

 

 あら?…返事がありませんわね?

 

セシリア

「…永遠さん?」

 

「とーくん、今は畑に行ってるみたいだね。」

 

「畑ですか?」

 

セシリア

「そう言えば鈴さんは、永遠さんがISで登下校をしている理由を知りませんでしたね。」

 

「うん…何でそんな事してるのアイツ?」

 

「私も詳しくは知らないけど…」

 

セシリア

「それはですね………」

 

 わたくしは鈴さんと簪さんに永遠さんの事情を説明しました…

 

セシリア

「………という訳なんです。」

 

「そっか…アイツ…一人で生きて来たんだ…」

 

「…だから毎日こんな風に移動してるんだ。」

 

「…そういう事だよ。…アレが使えればとーくんの移動時間も一気に短縮出来るんだけど、今は束さんが借りてるからね。」

 

本音

「アレって何ですか~?」

 

セシリア

「…もしかして【ラインバレル】の事ですか?」

 

簪&本音&鈴

「【ラインバレル】?」

 

「セシリア…何なのそれ?」

 

セシリア

「永遠さんの3体目のISですわ。」

 

「3体目!?まだ持ってたの!」

 

セシリア

「はい。永遠さんは全部で3機のISを所持しています。その最後の1機を束さんに貸しているんです。」

 

「貸すって…何でそんな事を…」

 

「…悪いけどそれは君達には言えないんだよ。とーくんの許可が必要だからね。」

 

「そうですか…」

 

「…セシリアは知ってるの?」

 

セシリア

「はい、他には織斑先生と山田先生も知っていますわ。」

 

「あの人達も知ってるんだ…」

 

セシリア

「束さん【ラインバレル】を見せて貰ってもよろしいですか?」

 

簪&本音&鈴

「え!?」

 

「いいよ♪君達も見る?」

 

簪&本音&鈴

「はい!」

 

 わたくし達は束さんに奥の部屋に案内されました…そこにあったのは…

 

「これが【ラインバレル】だよ!」

 

セシリア

「…これが…」

 

「【ラインバレル】…」

 

本音

「…白い鬼さんだ~…」

 

 そう、白い鬼の様なISでした…

 

「…【ラインバレル】…カッコイイーーーッ!!」

 

「また始まった…簪!」

 

「…ゴメン…」

 

「どったの?」

 

「簪はロボットやヒーロー物が趣味らしいんです。」

 

「…//////」

 

「そう言う事か~、まあ、とーくんの機体は見た目が完全にロボットだからね~♪」

 

永遠

「お主らこんな所で何しとる?」

 

セシリア

「永遠さん!」

 

「おかえり~♪畑の方は終わったの?」

 

永遠

「うむ、一通りな。」

 

セシリア

「あ!永遠さん、その【ラインバレル】を勝手に………」

 

永遠

「見た事なら気にせんでいいぞ。そうじゃ束さん、明日から鈴を鍛えるんじゃが【ラインバレル】を使ってもいいかの?」

 

「え!?」

 

「それはいい考えだね♪他の2機と違って【ラインバレル】の戦闘データはまだ無いからね。むしろ束さんにとってもありがたいよ♪」

 

「…明日…これと戦うの?…ってISで訓練するの!?生身でやると思ってたんだけど!」

 

永遠

「ISの試合なんじゃからISでやった方がいいじゃろ。」

 

「確かにそうだけど…でも、何の許可も無しにこんな所で展開なんかしたら…」

 

「それなら大丈夫だよ♪この島の周囲は束さんの特製シールドが張ってあるからね。その中ならどれだけ暴れても外にはバレないんだよ。」

 

「そ、そうなんですか…」

 

永遠

「という訳じゃ。遠慮なくかかって来るといい。」

 

「もし壊れても束さんが直してあげるから大丈夫だよ。」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「君の機体も明日見せて貰うけどいいかな?」

 

「はい!!」

 

永遠

「なら、明日に備えて今日はもう休むかの。」

 

セシリア

「そうですわね♪」

 

永遠

「………あ!?」

 

「…どうしたの?」

 

永遠

「…布団が足りん…」

 

「別にいいわよ。アンタの家に押し掛けたんだからその位。」

 

本音

「そ~だよ~♪」

 

永遠

「そういう訳にいくか!女子を床で寝かせられるか!」

 

セシリア

「と、永遠さん…」///

 

簪&本音

「………」///

 

 やっぱり永遠さんは優しいですわね…

 

永遠

「どうするかの…クロエ、予備はあるか?」

 

クロエ

「ハイ、あるにはあるんですが…二つしかありません。」

 

永遠

「…二つか…ワシの使っとるのも合わせて三つ…スマンがセシリア達は布団三つ繋げてそこで寝て貰ってもいいかの?」

 

「でもそれじゃ永遠の布団が!」

 

永遠

「ワシは座布団と褞袍で十分じゃ!」

 

セシリア

「ですが!」

 

「皆…折角の好意なんだから受け取るといいよ。とーくんがこう言ったら何を言っても聞かないしね。」

 

永遠

「そういう事じゃよ。ならスマンがクロエ、予備の布団を客間に運んどいてくれんか?ワシも部屋にあるのを持ってくるからの。」

 

クロエ

「分かりました。」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「………」

 

「ほら、君たちも明日から大変なんだからしっかり休むんだよ。」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「…はい…」

 

 …この後、わたくし達は客間に案内されそこで一夜を明かしました

 

 ~セシリア Side out~

 

 




 次回『第053話:簪の勉強・鈴の訓練』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第053話:簪の勉強・鈴の訓練

 ~簪 Side~

 

「ふわ~…よく寝た…アレ…ココは?………」

 

 …何処だっけ?

 

本音

「かんちゃん寝ぼけてるの~?ひののんの家だよ♪」

 

「あ!そうだった!昨日、泊まりに来たんだ!」

 

本音

「他の皆はもう起きてるよ~♪」

 

「…私が一番寝てたのか…」

 

本音

「私もさっき起きたばかりだから変わらないよ~♪」

 

「…うん。」

 

 …こんなに清々しい朝も久しぶりだな~…それによく寝たのも…

 

セシリア

「二人とも起きましたか?朝食が出来てますわよ。」

 

「…分かった…」

 

本音

「は~い♪」

 

 私と本音は着替えて居間に向かった

 そこには永遠以外の皆が揃っていた

 

「…アレ?…永遠は?」

 

「畑仕事に行ったよ。とーくんの朝は早いからね~。束さん達が起きる前にご飯の用意をして出かけちゃうんだよ。」

 

「そうなんですか。」

 

「そういう訳だから朝ご飯を食べよう♪」

 

全員

「いただきま~す♪」

 

 私達は朝食を食べながら今日の予定を話し合った

 

「永遠は今は畑か…」

 

クロエ

「はい、ですから鈴様の訓練は兄様が帰ってからになります。よろしいですか?」

 

「私はいいわよ。」

 

セシリア

「ではそれまではわたくしとやりますか?」

 

「それいいわね!この間の約束、ココでやりましょうか!」

 

「約束って?」

 

セシリア

「はい、以前鈴さんと勝負をしようと約束をしまして…」

 

「そういう事か~。ならシールドを張っとくから思いっきりやっていいよ♪そのかわり海辺でやってね。森の動物達に迷惑を掛けちゃうからね!」

 

「はい!分かりました!」

 

セシリア

「ありがとうございます♪」

 

「気にしなくていいよ。代わりにこっちもセーちゃんとリーちゃんのデータを取らせてもらうからさ♪」

 

「その位でしたらいくらでも…って、リーちゃん!?」

 

「そ♪君の事だよ♪それから、簪ちゃんはかんちゃんで、のほほんちゃんはのんちゃんって呼ぶからね♪」

 

本音

「のんちゃんか~♪」

 

「私は本音と同じですね。」

 

「それと束さんの事は名前でいいからね♪」

 

「は、はい!」

 

「何か…緊張するな~…」

 

本音

「束さん、分かりました~♪」

 

「うん♪それでいいよ♪」

 

「凄いわねこの子…」

 

「こういう時、本音の性格は羨ましい…」

 

本音

「エヘヘ~♪」

 

「フフッ♪それじゃあこの後、かんちゃんのISを見せて貰うよ♪」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

クロエ

「束様、私は町で布団と生活用品の買い出しに行って来ます。」

 

「お願いね~♪」

 

セシリア

「お手数をおかけします…」

 

クロエ

「気にしないで下さい♪」

 

「………いよいよか!」

 

 どんな評価を貰うのかな…

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

「早速始めるわよ!セシリア!!」

 

セシリア

「望むところですわ!」

 

 私達は島の海岸に来てISを展開していた

 

「一夏が言ってたアンタの実力、見させて貰うわよ!」

 

セシリア

「参ります!」

 

「負けないわよーーーっ!」

 

 セシリアとの模擬戦を始めた!

 

 ~鈴 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

 私と本音は昨日案内された【ラインバレル】の置いてある部屋に来ていた

 

「それじゃあ、ココに出して。」

 

「はい!」

 

 私は言われた場所に【打鉄二式】を展開した

 篠ノ之博士はすぐに機体にアクセスして現状の確認を始めた

 

「…どうでしょうか?」

 

「う~ん…ハッキリ言っていい?」

 

「お願いします!!」

 

「よろしい!なら、これじゃダメだね!」

 

「…ダメ…ですか…」

 

「うん。ありとあらゆる面で中途半端に造ってあるね。彼方此方に落ちがあるし、本来の出力にも全然届いていないよ。」

 

「…やっぱり…」

 

 分かってはいたけど…改めて言われると落ち込むなぁ…

 

「でも、誰の助けも借りずにここまで出来た事は十分に凄い事だよ♪」

 

「…え!?」

 

「正直に言うと昨日とーくんから話を聞いた時は碌に出来てない状態だと思ってたんだよ。でもここまで出来てるとは思ってもみなかったからね。だから胸を張るといいよ♪」

 

「…あ、ありがとう…ございます…」

 

本音

「良かったねかんちゃん♪束さんに褒められたよ♪」

 

「うん…うん…」

 

「フフッ♪さて、ここまで出来てるなら束さんなら明日中には完成させられるけど、それは駄目なんだよね?」

 

「…は、はい…た、束博士には申し訳ないんですが…本音や学園の皆と完成させたいんです!」

 

「そんなに畏まらなくていいよ♪かんちゃんの言いたい事も分かるからね♪…う~ん…となると…データの粗や手直しが必要な所をピックアップしておくよ。後、この【山嵐】って言う武装に関しては、今日明日の間、束さんが教えてあげるよ♪それでいいかな?」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

「よろしい!それじゃあとーくんが帰ってくるまで勉強しようか?【ラインバレル】の実戦データも取らないといけないからずっとって訳にはいかないからね。」

 

「はい!…あの、束博士…一つ聞いてもいいですか?」

 

「…何でかんちゃんにここまでするのか、かな?」

 

「!?…はい…」

 

「実はね…この【打鉄二式】が完成しなかったのは束さんのせいでもあるんだよ。」

 

「え!?」

 

「いっくんの【白式】はね、倉持の所にあった開発凍結されていた機体を束さんが引き取って完成させた物なんだよ。【白式】が完成したから送り返したんだけど…まさか、技術者全員が【白式】にかかりっきりになるとは思ってもみなかったよ。」

 

「…そうだったんですか…」

 

「だから今回のコレはそのお詫びも兼ねてるんだよ。ホントにごめんね…」

 

「…いえ…束博士は気にしないで下さい。確かに驚きはしましてけど、そのお陰で私は永遠やセシリアと出会えました。」

 

「そう言って貰えると束さんも気が楽になるよ。」

 

「はい♪」

 

「よし!それじゃあ他にも色々と教えてあげよう!のんちゃんはどうする?」

 

本音

「私もいいですか~?これでも整備科志望なんです♪」

 

「いいよ♪」

 

 それから私と本音は束博士にISに関する事を徹底的に教え込まれた

 学園では学べない様な事まで教えてくれて凄く勉強になった

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

「ハァハァ………」

 

セシリア

「少し休みますか?」

 

 私はセシリアと模擬戦をしていたけど…この子、本当に強い…

 私の攻撃が殆ど当たらない上に…【龍咆】を初弾以外全部躱すなんて思わなかった…

 

「…そうさせて…本当に強いのね…一夏の言ってた事って本当だったんだ…」

 

セシリア

「まだまだですわ。永遠さんはわたくしの何倍も強いですから。」

 

「アンタの何倍ってどんだけ強いのよアイツ!」

 

セシリア

「生徒で勝てる方はいませんわね。織斑先生でも勝てるかどうか分かりませんわ。」

 

「一夏も言ってたけど、そこまでなの?」

 

セシリア

「ええ♪それから鈴さん、先程から気になっていたのですが、衝撃砲を撃つ時に、視線が狙う所を向いていますわよ。」

 

「え!?そうだったの!?」

 

セシリア

「気付いていませんでしたの?」

 

「…全然…」

 

セシリア

「では、視線に気を付ける様にしましょうか。衝撃砲は不可視の砲弾です。それを利用して鈴さんの視線を囮にする事も出来ますわ。」

 

「それいいわね!」

 

セシリア

「ですがその為には、狙いを見ないで撃つようにしないといけませんわね。」

 

「ううっ…難しいわね…」

 

セシリア

「確かにそうですが出来る様になれば強力な武器になりますわ。本当の意味で見えない砲弾になりますから。」

 

「そうね!やってやるわよ!!」

 

セシリア

「フフッ♪その意気ですわ♪」

 

永遠

「やっとるのぉ。」

 

セシリア&鈴

「永遠(さん)!」

 

 休憩していた私達の所にいつの間にか永遠や束さん達がやって来ていた

 

セシリア

「朝のお仕事は終わりましたの?」

 

永遠

「うむ、これで夕方まではする事が無いからの。鈴の訓練に来たんじゃ。」

 

「なら早速やろう!」

 

永遠

「慌てるでない。その前に補給をしてからじゃ。」

 

「そうだった!」

 

 セシリアとの模擬戦でSEが殆ど残ってなかったんだ

 

「リーちゃんこっちに来て~♪」

 

「はい!」

 

 束さんに呼ばれて私は【甲龍】のSEを補給した

 

「ありがとうございます!…よし!永遠勝負よ!」

 

永遠

「承知した。では行くぞ…【ラインバレル】!!」

 

 永遠はそう言って腰に下げていた刀を抜いて地面に突き刺した

 すると地面から光の柱が現れて永遠を包み込んだ

 光が消えると昨日見せて貰ったIS【ラインバレル】が私の目の前に立っていた

 

「【ラインバレル】…アンタが纏うと迫力が違うわね!」

 

永遠

「カカカッ、そうかの?」

 

「そうよ!…でも私は負けないわよ!」

 

永遠

「この模擬戦が【ラインバレル】の初陣じゃ。ワシも負けるつもりは毛頭ないわ!かかって来いやあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

「いくわよおおおぉぉぉーーーっ!!!」

 

 ~鈴 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

セシリア

「始まりましたわね…」

 

「そうだね~…」

 

セシリア

「…永遠さんはアレを使うんでしょうか?」

 

「う~ん…分からないけど、使ったらアッと言う間に終わるだろうね~。」

 

「あの…アレって何ですか?」

 

「【ラインバレル】の特殊能力だよ。」

 

「特殊能力ですか?どんなもの何です?」

 

「【転送】だよ。」

 

「【転送】?」

 

「簡単に言えばワープだよ。瞬間移動、空間転移とも言うかな。」

 

簪&本音

「ええええぇぇぇぇーーーーっ!!」

 

 まあ当然の反応ですわね…

 

「ワ、ワープ!そんな事出来るんですか!?」

 

「うん♪」

 

 わたくしも見た事ありませんからこの訓練の間に見て見たいものですわね

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

「ハアアアアァァァァァーーーーーッ!!!」

 

 私は近接武器の【双天牙月】で斬りかかった…

 

永遠

「ヌンッ!」

 

 ガキンっ!

 

 永遠は両腕に装備されている刀を抜いて軽々と受け止めた

 

「…くっ…私の一撃を止めるなんてね!」

 

永遠

「まだまだ!もっとかかって来い!でなければ訓練にならんぞ!」

 

「言われなくてもおおおぉぉぉーーーっ!!!」

 

 私は永遠に何度となく斬りかかった…でも、永遠はその全てを受け止め躱して見せた

 それからしばらくして永遠は私の攻撃を見ながら色々と指摘してきた

 

永遠

「鈴!大振りのしすぎじゃ!それでは振り終わった後の隙が大きいぞ!」

 

「う、うん!」

 

永遠

「もっと相手をよく見るんじゃ!相手の次の行動を予測しながら動け!」

 

「分かってるわよ!」

 

永遠

「二刀に拘るな!1本で打ち込んでこい!」

 

「そっか!」

 

 永遠に指摘されながら接近戦では勝てないと判断した私は【甲龍】の奥の手【龍咆】を使った

 

「接近戦はこちらが不利ね!ならこれはどう!」

 

永遠

「ムッ!」

 

 私が永遠に【龍咆】を撃ち込んだ瞬間、目の前にいた【ラインバレル】が突然消えた!

 

「消えた!?何処行ったの!」

 

永遠

「…見えない大砲とは驚いたのぉ…」

 

「あ!いた!」

 

 いつの間にか私の左後ろに移動していた

 

「アンタ…何したの!?」

 

永遠

「【ラインバレル】の特殊能力【転送】を使ったんじゃよ。」

 

「【転送】?…何よそれ!?」

 

永遠

「簡単に言えばワープじゃよ。」

 

「なんだワープか………ワープウウウゥゥゥーーーッ!!!」

 

永遠

「そうじゃよ。こんな風にな…」

 

 そう言って永遠は今度は私の目の前に一瞬で現れると、刀を私の首元に当てた

 

「!?…いきなり…現れた…ほ、本当にワープしたの!?」

 

永遠

「そうじゃ。」

 

「…無茶苦茶な能力ね!…これじゃあ、間合いの意味が無いじゃない!」

 

永遠

「確かにそうじゃな。まあこれが【ラインバレル】の能力の一つじゃよ。」

 

「…一つって…まだあるの?」

 

永遠

「もう一つある。…鈴、避けんからワシに斬りかかって来い。」

 

「え?…うん分かった…ハッ!」

 

 私は言われた通り斬りかかった…永遠は本当に避けず、【ラインバレル】の装甲には傷が出来ていた

 

「…こんな事して何を…」

 

永遠

「傷を見ておれ。」

 

「は?………なっ!?」

 

 今私がつけた傷がアッと言う間に直っていった

 

「…傷が…一瞬で直った!?…何よコレ!?…ISには自己修復能力があるけど…幾らなんでも早すぎる!?」

 

永遠

「これが【ラインバレル】のもう一つの能力。自己修復を超えた自己再生能力。コイツの再生速度は通常のISの数十倍から数百倍でな。どれだけバラバラにされようと半日もあれば元通りになるんじゃよ。」

 

「再生!?…しかも数百倍の速さって…」

 

永遠

「ついでに、SEも自動で回復し続けるオマケつきじゃ。」

 

「ハアアァーッ!!何よそれ!化け物じゃない!じゃあどうやってアンタを倒すのよ!!」

 

永遠

「簡単じゃ。【ラインバレル】のSEの回復速度を上回る連続攻撃をすればいいんじゃ。後は織斑の【零落白夜】じゃな。まあこれも何発も当てんといかんが、ワシがあやつの攻撃を何度も受けると思うか?」

 

「思わないわね。アンタの実力は今までの打ち合いで少しは分かった。私じゃ勝てないわ。」

 

永遠

「さよか。…さて続きを始めるとするかの。さっきはお主の砲撃に驚いて使ってしもうたが、今度は【転送】は使わんから遠慮なくかかって来い。」

 

「余裕ぶっていられるのも今の内よ!!」

 

 私は再び永遠に向かって行った

 

 ~鈴 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

「………」

 

 私は言葉が出なかった

 【ラインバレル】の圧倒的な力に…

 束さんから聞いていたけど…実際にワープを目の前で見た時は驚いた!

 そしてもう一つの再生能力…鈴がつけた傷が一瞬で直った時は自分の目を疑った

 あんな能力を持つISなんて聞いた事無かった

 

セシリア

「…実際に見ると凄い能力ですわね…」

 

「ホントだね~。」

 

本音

「あの機体はメンテとかいらないんですか~?」

 

「うん、いらないんだよこれが。何しろ分子レベルで修復しちゃうからね。」

 

本音

「ほえ~!凄いな~!」

 

「…本当に凄い!」

 

 …でも、何で永遠は【ラインバレル】を束さんに預けてるんだろう?

 …束さんは【ラインバレル】で何をしてるんだろう?

 …そして、永遠は他の2機も含めて何処でこんな機体を手に入れたんだろう?

 …永遠は…一体何者なんだろう?

 …そんな考えが私の中で生まれて来た

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

 私は永遠との模擬戦を繰り返していた

 【ラインバレル】は能力も凄いけど性能も私の【甲龍】を遥かに上回っている

 そして、これだけの機体を使いこなすには相当な技術が必要な筈、それを永遠は完全に使いこなしている

 恐らく生身でも同じ機体を使っても私は勝てないわね…

 …一体コイツは何者なの?

 

「ゼェゼェ………」

 

永遠

「…ふむ、日も落ちてきたようじゃし、今日はここまでにするかの?」

 

「…え?…あ!ホントだ!…そうね、今日はここまでにしましょ。」

 

 時間は既に夕方になっていた…昼からずっとやってたから時間なんて分からなかったわね

 

永遠

「…どうじゃ、訓練にはなったかの?」

 

「うん♪実戦に勝るものは無いっていうし、いい経験になったわ♪」

 

永遠

「それは良かった。」

 

「ハァ~~~疲れた~…」

 

セシリア

「お疲れ様ですわ♪…どうぞ。」

 

「あ!ありがとう♪喉カラカラよ…」

 

 セシリアから渡された水を飲んで一息ついていた…

 束さん達は先に家に帰っていた

 

永遠

「さて、ワシは畑を見て来るかの…セシリアと鈴は家に帰ってゆっくり休みんさい。」

 

「今から!アンタだって疲れてるんじゃ…」

 

永遠

「カカカッ!この程度で根を上げる程やわでは無いわい!」

 

「どういう体力してるのよ…」

 

セシリア

「…永遠さん…わたくしもご一緒していいですか?お手伝いしたいのですが?」

 

永遠

「それはありがたいのぉ!その方が早く済むじゃろうし、頼んでもいいかの?」

 

セシリア

「はい♪」

 

「じゃあ私は先に戻ってるわよ。束さん達にも伝えとくから。」

 

永遠

「頼むぞい。」

 

セシリア

「お願いしますわ。」

 

 二人に頼まれて私は家に戻った

 ただ、戻った私からセシリアが永遠に着いて行ったと聞いた簪と本音が不機嫌になってしまった

 私も束さんとクロエも苦笑いしか出来なかった

 

 ~鈴 Side out~

 

 




 次回『第054話:簪のお願い』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第054話:簪のお願い

 ~簪 Side~

 

 あれからアッと言う間に時間が過ぎ、月曜の朝になった

 土日はとても有意義な時間を過ごすことが出来た

 今は永遠も一緒に朝ご飯を食べてる

 

「…永遠…何時頃ココを出るの?」

 

永遠

「ん?…片道1時間かかるから、7時半には出とるんじゃが…お主らは向こうに着いたら準備をせんといかんじゃろうから少し早めに出るかの。」

 

セシリア

「そうですわね…制服に着替えないといけませんし…」

 

本音

「そうだね~…」

 

「ってそれなら急いで食べないと!遅刻しちゃうわよ!」

 

「う、うん!」

 

 私達は急いでご飯を食べ終わると、帰る準備を済ませた

 

永遠

「全員忘れ物は無いな?」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「は~い♪」

 

「かんちゃん♪これが、束さんがチェックしたデータだよ。これを見ながらやるといいよ♪」

 

「何から何までありがとうございます!必ず最高の機体を完成させてみせます!!」

 

「うん♪楽しみにしてるよ♪完成したら一度束さんにも見せてね♪」

 

「はい♪」

 

 そして私達は学園に飛び立っていった

 本音は来る時と同じで永遠に抱き上げられたまま移動していた

 それを見て私とセシリアは一気に不機嫌になった

 

本音

「エヘヘ~♪」///

 

セシリア&簪

「ム~~~…!」

 

 その後、無事に遅刻する事無く学園に到着できた

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

セシリア

「…簪さん…大丈夫でしょうか?」

 

 放課後になりワシとセシリアは簪が気になったから整備室に向かっとった

 

永遠

「…本音もおるし…大丈夫だとは思うんじゃが…」

 

セシリア

「…ですが…」

 

永遠

「うむ…今迄散々断ってきとるからなぁ…いきなり手伝ってくれと言われて整備課の者達がどう思うかじゃよなぁ…」

 

セシリア

「…そうですわね…」

 

 そんな話をしとるうちに整備室に着いた…

 

「お願いします!!私のISを造るのに協力してください!!」

 

 中では簪が整備課の生徒達に専用機の制作に手を貸して欲しいと頼んでおるところじゃった

 ワシ等はとりあえず物陰から見ることにした

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

「身勝手なのは分かってます!!ですが、どうか力を貸してください!!お願いします!!」

 

本音

「私からもお願いします!」

 

 本音も一緒に頭を下げて頼んでくれた

 しばらくして今まで黙っていた整備課の先輩が口を開いた

 

先輩1

「…二人とも顔を上げて。」

 

 先輩に言われて私達は顔を上げた…

 それを確認すると先輩は優しく微笑みながら言った

 

先輩1

「…やっと私達を頼ってくれたわね。」

 

「え?」

 

先輩1

「更識さんが一人で造ってる理由は何となくだけど分かっていたわ。だから、必要以上に手を出さない様にしていたの。」

 

先輩2

「でもね、もし貴方が協力を頼んで来たらその時は皆で力を貸そうって決めてたのよ。」

 

「ええっ!?」

 

先輩1

「だからそんなに畏まらなくていいのよ♪」

 

先輩2

「貴方は私達を頼ってくれた…それだけで私達は嬉しいのよ♪」

 

「せ、先輩…」

 

先輩1

「ほら、泣かないの!」

 

 私はいつの間にか涙を流していた…

 

「…ウウッ…グスッ…ありがとう…ございます…」

 

先輩2

「うん♪…さあ皆!やるわよおおぉぉーーっ!!」

 

生徒達

「オオオオオォォォォォーーーーーッ!!!」

 

「…皆…」

 

本音

「かんちゃん良かったね♪」

 

「うん♪」

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

セシリア

「良かったですわね♪」

 

永遠

「ああ!」

 

千冬

「こっちは何とかなったようだな。」

 

セシリア

「織斑先生!」

 

 織斑先生がいつの間にかワシ等の後ろに来ておった

 

永遠

「………簪の事…以前から知っておったのか?」

 

千冬

「ああ、一夏の【白式】が関係しているからな…話だけは聞いていた。…政府の命令とはいえ倉持の連中には私も腹が立っていたんだ。まさか、全員が更識の機体を放り出すとは思ってもみなかった。」

 

 やはりそうか…あの時、簪は機体を造るヒントを貰いに行くとは言ったが…未完成の理由は言うとらんからな

 

永遠

「じゃからワシの家に行く事を許可したんじゃな?」

 

千冬

「そうだ…それで束は何と?」

 

永遠

「【打鉄二式】のデータを洗い直して直す所をピックアップしたそうじゃ。後、この二日の間は束さんからISについて直々に指導されとったよ。」

 

千冬

「あの束がそこまでするとはな…何か理由があるのか?」

 

永遠

「うむ…【白式】は確かに倉持が開発した機体じゃが、実際に完成させたのは束さんなんじゃよ。」

 

千冬

「何!?」

 

永遠

「それを倉持に送り返したらああなったらしい。じゃから今回の事はそのお詫びと言うとったよ。」

 

セシリア

「…束さんも政府と倉持の人達があのような行動をとるとは思わなかったそうです。」

 

千冬

「…そうだったのか…なら束を責める事は出来んな…」

 

永遠

「そうじゃな…「あっ!ひののん!」ムッ!」

 

 織斑先生との話に夢中になっていたせいか本音に見つかってしもうた

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

「永遠!セシリア!それに織斑先生まで!?」

 

 本音が隠れていた永遠を見つけたと思ったらセシリアと織斑先生も出て来た

 

永遠

「…スマン…気になって見に来たんじゃが…」

 

セシリア

「…入っていいのか微妙な雰囲気でしたので…」

 

先輩1

「アハハッ…確かにそうだね♪」

 

先輩2

「織斑先生は?」

 

千冬

「ん?…私はこいつ等が覗いていたから声をかけただけだ。…それに、私も更識の機体の事は気になっていたからな。」

 

「え?…もしかして…」

 

永遠

「…全部知っとるらしい…じゃから外泊許可を出したそうじゃよ。」

 

本音

「そうだったんだ~!」

 

先輩1

「…外泊って?」

 

「はい…実は………」

 

 私は整備課の皆に土日の間の事を話した…もちろん、束博士の事は言わなかったけど…

 

先輩2

「なるほど…それなら、まずはその手直しが必要なデータを確認しようか。それから、それぞれが得意な分野に分かれて作業を始めましょう。」

 

「お願いします!」

 

セシリア

「わたくしもお手伝いしますわ♪【ブルー・ティアーズ】のデータも使ってください。」

 

永遠

「ワシも出来る事があれば手伝うぞ。…と言ってもそんなに長くは手伝えんのじゃが…」

 

「二人とも…ありが「一夏の馬鹿あああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!」な、何っ!?」

 

永遠

「今の声は…鈴か!?」

 

千冬

「織斑の奴…また何かやらかしたな!」

 

セシリア

「三日前に永遠さんにお説教されたばかりですのに…」

 

千冬

「何!?どういう事だ!」

 

永遠

「…あの後、ワシがセシリア達を待っとったらあの馬鹿が来おってな…全く反省しとらんから軽く説教したんじゃよ。その時、鈴との約束を思い出せと言うといたんじゃが…」

 

千冬

「…さては変な方向に思い出したな…あの馬鹿は…」

 

セシリア

「…どうします?」

 

永遠

「放っておくわけにもいかんじゃろ。…簪、ワシは鈴の様子を見てくる。スマンが今日は手伝えそうにない。」

 

「分かった!」

 

セシリア

「わたくしも行きますわ!」

 

千冬

「私も行こう。理由によってはあの馬鹿を成敗せねばならん!」

 

 そう言って永遠たち3人は鈴を探しに行った

 本当は私も行きたかったけど、機体を完成させないといけないから我慢した

 

 ~簪 Side out~

 

 




 次回『第055話:織斑一夏…黄昏に死す(笑)』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第055話:織斑一夏…黄昏に死す(笑)

 ~鈴 Side~

 

「ぐすっ…ひっく…」

 

 私は蹲りながら泣いていた…

 

「…馬鹿…一夏の大馬鹿………何で…何で分かんないのよ…」

 

 一夏は私の約束を思い出した…それは嬉しかった…

 でも、アイツはその意味が全く分かって無かった…

 私はもうどうすればいいのか分からなくなっていた…

 

永遠

「鈴!」

 

「…永遠~…」

 

 私が泣いていると永遠とセシリア、千冬さんがやって来た

 

「…何でココに…」

 

セシリア

「鈴さんの声が聞こえたからですわ。何かあったと思って探しに来たんです。」

 

「…私の声…聞こえたの…」

 

千冬

「あんな大声を出せば誰だって気付く。」

 

「…そっか…」

 

永遠

「で、何があったんじゃ?また織斑じゃろ?」

 

「…うん………アイツ…思い出したの…だから告白しようとしたら…アイツ…言葉通りの意味で受け取って…私に…プロポーズみたいって…私がそんな事言う筈無いって…」

 

永遠

「何じゃと!!」

 

セシリア

「最っ低ですわね!!」

 

千冬

「い~ち~かああぁぁーーっ!!」

 

「…うっ…ううっ…」

 

セシリア

「…鈴さん…」

 

「!?…セ、セシリア?」

 

 セシリアは私を優しく抱きしめてくれた

 

セシリア

「…鈴さん…今迄良く頑張りましたね…もう我慢しなくていいんですよ…」

 

千冬

「…そうだぞ…泣きたかったら思いっきり泣けばいい…」

 

永遠

「…ココにはワシ等しかおらん…気兼ねせず泣いていいんじゃよ…」

 

「うっ…うううっ…うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーんっ!!!!」

 

 私は永遠達の優しさで泣いた…一夏への悔しさで泣いた…セシリアは泣き続ける私をあやす様に優しく撫でてくれていた

 

「うえええええぇぇぇぇぇーーーーーん!!!」

 

永遠

(織斑一夏…殺す!!)

 

セシリア

(鈴さんを泣かせた罪…思い知らせて差し上げますわ!!)

 

千冬

(弟とは言え容赦はせん…地獄に叩き落としてやる!!)

 

 私が泣き止むまで3人はずっと傍に居続けてくれた

 この3人が何を考えているのかも知らずに…

 暫くして泣き止んだ私に永遠達は聞いて来た

 

永遠

「…鈴…お主はこれからどうしたいんじゃ?」

 

「…私は………一夏を叩きのめしたい!それに…アイツは私以外にも沢山の女の子達を泣かせてきた!その子達の分もアイツを殴り飛ばしたい!!」

 

永遠

「どういう事じゃ?」

 

 私は永遠とセシリアに小中学校時代の一夏に無自覚にフラれた女の子達の事を話した

 

「………こういう訳よ。」

 

永遠

「…織斑先生…鈴の言っとる事は本当か?」

 

 永遠は私が言った事が信じられないのか、千冬さんに確認した…

 

千冬

「本当だ…アイツの鈍さのせいでどれだけ多くの子達が泣いて来た事か…」

 

セシリア

「本当に最低な人ですわね!!」

 

千冬

「…私も恋愛は個人の自由という事で今迄は黙認してきたが…いい加減止めなければならんな…」

 

永遠

「そうじゃな…これ以上あの馬鹿の被害者を出す訳にはいかん!鈴には悪いが、泣くのは鈴で最後にせねばならん!」

 

セシリア

「永遠さんの言う通りです!…それでどうしますか?」

 

永遠

「…まずは協力者を増やす!」

 

千冬

「協力者だと?一体誰を………まさか!?」

 

永遠

「そのまさかじゃ!」

 

千冬

「しかし、いいのか?」

 

永遠

「構わん!…それにそろそろ…」Prrrrr「来たか…」

 

 永遠が電話をスピーカーに変えて出ると…

 

永遠

「はい!」

 

『話は聞いてたよ!束さんもリーちゃんに協力するよ!』

 

「た、束さん!?」

 

千冬

「相変わらずの地獄耳だな。だが、お前が手を貸してくれるのはありがたい!」

 

『フフン♪任せてよ!束さんもクーちゃんもさすがに腹が立ったからね!それでとーくん、どうするの?』

 

永遠

「まずは鈴を徹底的に鍛え上げる!そっちで鈴の訓練用の設備を用意する事は?」

 

『出来るよ~♪準備に1日ほどかかるけど。』

 

永遠

「なら頼みます!次に織斑先生に二つ頼みがある!」

 

千冬

「聞こう!」

 

永遠

「一つは鈴を対抗戦まで学園を休ませて欲しい事、二つ目は対抗戦の初戦を鈴とあの馬鹿で組んで欲しい事、この二つじゃ!」

 

千冬

「フム…どちらも難しいが何とかしよう!まずは学園長に掛け合って鈴の長期外泊許可を貰うとするか…組み合わせの方は後で何とでもなる…だが、何故初戦なんだ?」

 

永遠

「鈴はともかく、あの馬鹿が鈴とぶつかるまで勝ち進めるとはワシには思えん!それなら初戦でぶつけた方が確実じゃ!」

 

千冬

「…確かにそうだな…分かった…そっちもやっておこう!」

 

「いいんですか!?」

 

千冬

「任せておけ!束、そっちの準備に1日かかると言っていたな。明日のこの時間までには間に合うか?」

 

『大丈夫だよ♪』

 

千冬

「頼むぞ!鈴、お前は数日泊まれる為の準備を明日までにしておけ!向こうに着いたら訓練の事だけ考えておけばいい!こっちは私や火ノ兄、オルコットで対処しておく!」

 

「は、はい!」

 

『それじゃあ、束さんは今から準備に取り掛かるよ!リーちゃん明日来るの待ってるよ!』

 

「はい!お願いします!」

 

 永遠が電話を切るとセシリアが思い出したように聞いてきた

 

セシリア

「そう言えば永遠さん…簪さんと本音さんには伝えないんですか?」

 

永遠

「簪達には伝えん。事情を話せば手を貸してくれるじゃろうが、簪には専用機の完成に集中して欲しいからの!」

 

セシリア

「そうですわね。」

 

千冬

「確かに更識達にはそっちの方が大事だからな。」

 

「うん!私の我侭に簪達まで巻き込む事は出来ないわよ。」

 

永遠

「その事じゃが…鈴よ、ワシは簪の機体開発の手伝いもするから向こうでお主との訓練は余り出来んかも知れん。構わんかの?」

 

「それでいいわよ!簪の力になってあげて!」

 

永遠

「スマンな…と言っても帰りがいつもより少し遅くなるだけじゃから軽い模擬戦くらいなら出来る筈じゃ。」

 

「そこまでしてくれなくていいわよ。アンタには畑仕事とかもあるんだし。何なら私が手伝ってもいいよ。」

 

永遠

「それはいかん!お主は訓練の事だけ考えておればいいんじゃ!」

 

「う、うん…分かった。」

 

千冬

「学園長には何とか許可を貰っておくから、お前は今から準備だけでもしておけ。」

 

「はい!」

 

 私は準備の為にすぐに自分の部屋に戻って行った

 

 ~鈴 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「さて、私は学園長の所に行ってくるかな。」

 

永遠

「スマンが織斑先生…実は後一つ頼みが…鈴の前では言えんかったんじゃが…」

 

千冬

「ん?何だ?」

 

永遠

「織斑をアリーナに呼んで欲しい。説教を兼ねてボコる!」

 

 確かに鈴の前では言えないな…

 

千冬

「…そうだな…鈴との試合の前に少し痛い目にあって貰うか…」

 

セシリア

「その方がいいですわね!自分が何をしたのか少しは分からせないといけませんわ!」

 

 今の内に私達の怒りを一夏に叩きつけてやるか…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

一夏

「………何で鈴の奴怒ったんだろ?」

 

 俺は言われた通り鈴との約束を思い出しただけなのに…何で怒鳴られないといけないんだ?

 

一夏

「…何か変な事言ったかな?」

 

 あれから言葉には気を付けてるつもりなんだけど…

 

一夏

「…ん?…メール?千冬姉か…えっと…『一夏…ISスーツに着替えて第2アリーナに来い。火ノ兄が模擬戦をしてやるそうだ。』か…丁度いいや。火ノ兄に聞いてみるか。」

 

 この後、俺は自分の身に何が起きるのかも知らずに呑気にそんな事を考えていた…

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 私達は第2アリーナで一夏が来るのを待っている

 火ノ兄はすでに【戦国龍】を展開してアリーナの中央にいる

 暫くして着替えた一夏がピットにやって来た

 

千冬

「………来たか…」

 

一夏

「待たせたかな?」

 

千冬

「…火ノ兄がアリーナで待っている。とっとと逝ってこい!」

 

一夏

「千冬姉?」

 

 呑気に話しかけて来るな…コイツ自分が何をしたのかやはり分かって無いな!

 火ノ兄もアリーナからこっちを睨んでいるしな

 一夏はそんな事にも気づかず【白式】を展開して飛んで行った

 

永遠

「………」

 

一夏

「丁度よかった!まだ学園にいたんだな。話を聞いてほしいんだ。」

 

永遠

「………」

 

一夏

「…オイ!聞いてるのか!」

 

永遠

「…貴様が言う事なんぞ分かっとるわ!」

 

一夏

「え?」

 

千冬

『それではこれより火ノ兄と織斑の死合(●●)を始める…死合開死(●●●●)!』

 

一夏

「…字が違ってないか?」

 

永遠

「余所見とはいい度胸じゃな!!」

 

一夏

「え?…ゲホッ!」

 

 火ノ兄の拳が一夏の鳩尾に入って吹き飛ばされた

 

一夏

「ゴホッゴホッ…グウゥッ…」

 

永遠

「ウオオオオオォォォォォーーーーーッ!!!」

 

一夏

「ガハッゴハッグフッ…や、やめ…グエッゲハッンガッ…」

 

 分かってはいたが初めから一方的な展開だった…火ノ兄の拳と蹴りを一夏は全て喰らい続けていた

 

永遠

「………」

 

一夏

「…な、何で…こんな事………俺が…何したってんだ…よ…」

 

永遠

「…分からんのか!!…貴様、また鈴を泣かせたな!!言葉に気を付けろと何度言えばわかるんじゃ!!」

 

一夏

「うっ!?…そ、それは…で、でも俺はちゃんと約束を…」

 

永遠

「黙れ!貴様、大切な人を守るとかぬかしておいて、貴様がやった事は何じゃ!!」

 

 火ノ兄は一夏の言葉を遮ると腰の刀を抜いて構えた

 

一夏

「な、何言ってんだよ…」

 

 コイツは本当に分かって無いのか…

 

永遠

「貴様の様な無自覚に人の心を傷つける奴の言う事なんぞ聞く耳持たん!何を言っても言い訳にしか聞こえんわ!!」

 

一夏

「そ、そんな!無自覚ってなんだよ!俺が誰を傷付けたってんだよ!」

 

永遠

「…貴様と言う奴は…ここまで言っても分からんのかあああぁぁぁーーーっ!!」

 

一夏

「ひっ!…うっ…うわああぁぁーーっ!!」

 

 一夏は叫びながら火ノ兄に斬りかかった…

 火ノ兄の気迫に押されてやけくそになったか…

 

永遠

「【龍巻閃・山嵐】!!」

 

 火ノ兄は一夏の剣を回転しながら避けるとそのまま回転し続け、まるで竜巻の様に一夏と周囲を巻き込みながら切り裂いていった

 

一夏

「ぐあああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!」

 

 上空に打ち上げられた一夏の両足を掴むと火ノ兄は一夏の頭を下に向けるようにした

 

セシリア

「何をする気でしょう?」

 

千冬

「分からん!」

 

 私達の疑問をよそに火ノ兄はさらに自分の両足を一夏のわきに入れ両腕を広げた状態にした

 更に尻尾で体を締め上げて動けない状態にした

 と言うかあの態勢は…

 

千冬

「…まさか!」

 

 私の予想通り火ノ兄はそのまま地面に向かって一夏を頭から落としていった

 

千冬

「パイルドライバーか!!」

 

セシリア

「アレが!?」

 

永遠

「死いいぃぃねええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!!」

 

一夏

「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!」

 

 ドゴオオオォォォーーーンッ!!

 

 火ノ兄の物騒な雄叫びと一夏の悲鳴が上がると同時に凄まじい衝撃音と砂煙が上がっていた…

 

永遠

「トウッ!」

 

 中から火ノ兄が出て来ると、しばらくして砂煙が晴れたが、そこには、火ノ兄のパイルドライバーを受けて頭を地面に突き刺した一夏の姿があった

 

永遠

「馬鹿は滅びた!」

 

千冬

「自業自得だな!」

 

セシリア

「いい気味ですわ!」

 

 ちなみにこの後、そのままにする訳にもいかないので一夏を掘り起こして、保健室に放り込んでおいた…後から保険医に聞いたら暫くの間、脈が無かったらしい

 この時の一夏の姿を偶々来ていた新聞部が写真に撮っていたらしく、後日、校内新聞に『織斑一夏の八○墓村(笑)』と言う見出しで掲載された

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

一夏

『…あれ?ココ何処だ?』

 

 目を覚ました俺がいたのはどこかの河原みたいな場所だった

 

『おお~~~い!一夏~…』

 

一夏

『ん?………じ、じいちゃん!ばあちゃん!』

 

 俺を呼ぶ声がしたからそっちを見ると、川を挟んだ向こう岸に昔死んだじいちゃんとばあちゃんが手を振っていた

 向こう岸はこっちと違って綺麗な花畑が広がっていた

 

一夏

『…じいちゃん…ばあちゃん…会いたかったよ~~~!』

 

 俺は嬉しさのあまり川に飛び込もうとしたら…

 

じいちゃん

『一夏~まだこっちに来るんじゃないぞ~…』

 

一夏

『何でだよ!折角会えたのに!』

 

ばあちゃん

『ココはまだお前が来るところじゃないんだよ…さ、早くお帰り…』

 

一夏

『ま、待ってくれよ!もっと話したい事が沢山あるんだよ!じいちゃん!ばあちゃん!』

 

ばあちゃん

『一夏…アンタのその鈍感な性格を早く治すんだよ…』

 

 ばあちゃんのその言葉を最後に、俺は再び意識を失った…

 

 ~一夏 Side out~

 

 




 次回『第056話:完成!打鉄弐式』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第056話:完成!打鉄弐式

 ~永遠 Side~

 

 織斑はワシがパイルドライバーをかけた次の日には復活したそうじゃ

 じゃが、織斑先生から聞いた話によると、目を覚ました時に昔死んだ祖父母に会ったと言って来たそうじゃ

 織斑先生がソコはどんな場所かと聞いたら大きな川を挟んだ綺麗な花畑の対岸にいたらしい

 どうやらあの馬鹿は三途の川に行って来たようじゃ…まさか本当に死にかけるとは…

 ついでに祖父母に出会ったと言う事以外は何を話したのかも、ワシが技をかけた前後の記憶も全て忘れたらしい

 まあ、奴が記憶を無くそうが三途の川に行こうがどうでもいいんじゃが…

 織斑先生は何とか理事長から許可を貰えたんじゃ…あの人には苦労をかけてしもうたな

 放課後になり、前日に言っていた通りワシは鈴を島で訓練させる為に連れて行く為、待っておった

 

「永遠~~~っ!」

 

永遠

「ム!来たか!」

 

「お待たせ!早く行こう!」

 

永遠

「そうじゃな。」

 

「…所でアンタ一夏に何かしたの?今日のアイツ、目に光が無かったんだけど?」

 

永遠

「大した事はしとらんぞ。…ただ織斑先生から聞いたんじゃが…死んだ祖父母に会ったと言うとったらしい。」

 

「え!?」

 

永遠

「大方、三途の川にでも行って来たんじゃろ。気にする事でもない。」

 

「…三途の川って…アンタそれ死にかけたって事でしょ!!」

 

永遠

「心配せんでもあの馬鹿は生きとるじゃろ。一発殴れば元に戻るわい。と言うか織斑先生がさっき殴って元に戻しとったぞ。」

 

「殴って戻すって…そんな壊れかけのテレビじゃ無いのよ?」

 

永遠

「そうは言うが、実際()っとったぞ。随分単純な作りをした奴じゃな。」

 

「…ホントに治ったんだ………ねえ、字が違わなかった?」

 

永遠

「違わんぞ。ほれいい加減行くぞ。」

 

「あ、うん。」

 

 ワシと鈴はISを展開して火紋島に向かって飛んで行った

 到着すると、訓練は明日から始めると言う事にして、束さんが用意してくれた訓練用の設備の確認をして今日は早めに休む事にしたんじゃ

 次の日から鈴の訓練が始まった…主に束さんが用意した無人ISによる模擬戦をしとる

 ワシはいつも通りに学園に登校した…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

 私が整備課の皆に協力を頼んでから数日が立った…

 あの日、鈴に何かあったのは分かっていたけど、永遠達は心配するなと言うだけで詳しい事は教えてくれなかった

 本人に聞こうにも次の日から学園を休んでいるせいで聞く事が出来なくなっていた

 どうやら私には専用機を完成させる事に集中させたいようだった

 できれば私も鈴に協力したかったけど、確かにこっちを優先しないといけないのは事実だから永遠達の配慮に甘える事にした

 ………それに、1時間程度でも永遠と一緒に作業が出来るのは嬉しいし…///

 

先輩1

「火ノ兄君!そっちのケーブル持ってきて!」

 

永遠

「あいよ!」

 

先輩2

「誰か!このテーブル邪魔だから退けといて!」

 

永遠

「ワシがやっとく!」

 

 永遠は主に機材を運んだりする力仕事をしてくれている

 束さんがくれたデータのお陰で本音達と作業を分担して効率よく作業が進んでいた

 先輩達も最初にこのデータを見た時は驚いていた…どんな小さく些細な問題点も調べ上げられていたからだ

 お陰で先輩達も予定よりも早く完成させられそうだと言っていた

 

「…永遠、帰らなくていいの?」

 

 いつもならもう帰っている時間なのに今日はいつもより長く手伝ってくれていた

 

永遠

「今日は週末じゃからな。最後まで手伝うぞい。向こうにも連絡済みじゃよ。(それに晩飯は鈴に頼んでおいたからの。)」

 

「…ありがとう…///」

 

永遠

「うむ!…時に簪、このペースじゃと後どの位で完成しそうじゃ?」

 

「あ!…うん、そうだね…多分、来週の今頃には出来ると思うよ。」

 

永遠

「そうか…完成したらワシと手合わせせんか?」

 

「え!いいの!?」

 

永遠

「うむ!…何なら調整の為の模擬戦もするが…ワシが相手をするのが嫌なら諦めるが…」

 

「そんな事無い!永遠に相手して貰えるなんて凄く嬉しい!!」

 

永遠

「そ、そうか…それは良かった。」

 

「うん…///」

 

セシリア&本音

「ム~~~!!」

 

 セシリアと本音が睨んで来たけど見て見ぬフリをした

 

整備課

「あははは…」

 

 他の人達からは乾いた笑い声が聞こえた…

 

 ………

 ……

 …

 

 それからさらに一週間たった…金曜日の放課後…

 

「…出来た…」

 

セシリア

「…完成しましたわね…」

 

本音

「うん♪」

 

永遠

「長いようで短い日々じゃったな…」

 

 遂に私の専用機【打鉄弐式】が完成した!

 束さんから貰った見直しデータ…

 セシリアの【ブルー・ティアーズ】の稼働データ…

 永遠の【ドットブラスライザー】との模擬戦をしながらの調整…

 そして、整備課の先輩達の協力…

 そのお陰で、今日、やっと完成させることが出来た!

 

「…皆…ありがとう…ございます………皆のお陰で…完成させる事が出来ました…」

 

 私は涙ながらに皆にお礼を言った

 

先輩1

「気にしなくていいわよ♪私達もいい経験になったし♪」

 

先輩2

「専用機をいじれる機会なんてそうそう無いからね♪」

 

 先輩達も笑顔で答えてくれた

 

「完成祝いに記念撮影しよ!専用機を並べてさ!」

 

 いつの間にかいた黛先輩がカメラを構えながら提案してきた

 

永遠

「そうじゃな。なら簪の【打鉄弐式】を中心にせんとな!」

 

セシリア

「そうですわね♪」

 

「うん♪」

 

 私が【打鉄弐式】を纏うと、皆が集まってくれた

 永遠とセシリアは私の左右に【ドットブラスライザー】と【ブルー・ティアーズ】を展開して並んでくれた

 

「タイマーをセットしてっと!」

 

 カシャッ

 

 黛先輩も急いで並ぶと、カメラからシャッター音が聞こえた

 

「………うん♪いい写真が撮れたわ♪じゃあ現像出来たら焼き増しして配るからね♪」

 

全員

「は~~~い♪」

 

 …写真、楽しみだな~♪

 

 ~簪 Side out~

 

 




 次回『第057話:ドッキリと説教』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第057話:ドッキリと説教

お気に入り1200突破♪

皆さんありがとうございます♪


 ~永遠 Side~

 

 写真撮影も終わり、皆が解散し、整備室にはワシとセシリア、簪に本音の4人が残ったんじゃ

 ワシ等だけになったから簪に今まで気になっていた事を聞く事にした

 

永遠

「…簪…聞きたい事があるんじゃが?」

 

「何?」

 

永遠

「…お主の姉の事なんじゃが…本当にお主が言うように優秀なんか?ワシにはただの阿呆にしか思えんのじゃが…」

 

「…へ?…どうしたの急に?」

 

永遠

「実の妹を無能呼ばわりして突き放しておきながら、その妹にストーカーなんぞしとるもんが優秀なのかと思ってな?」

 

「ス、ストーカー!?」

 

本音

「何の事~?」

 

永遠

「…こういう…事じゃ!!」

 

 ワシはそう言うと床に落ちていたスパナを天井に投げつけた

 

 ガンッ!

 

「キャッ!」

 

 すると天井から落ちて来たのは簪の姉、更識楯無じゃった…

 

「…何してるの…」

 

楯無

「あ、あのね!…えっと…」

 

永遠

「これが優秀な姉か?」

 

セシリア

「わたくしにはただの変態ストーカーにしか見えませんが?」

 

本音

「ただのおマヌケさんだね~♪」

 

楯無

「あ、あなた達…言いたい放題言って…私はただ簪ちゃんが…」

 

永遠

「簪が何じゃ?」

 

楯無

「え、えっと…」

 

永遠

「簪が心配じゃから見守っていたとか言うつもりか?…無能と言って切り捨てておいて…」

 

楯無

「ギクッ!」

 

永遠

「…なるほど…以前ワシとセシリアに向けられた視線が何か分かったわい。」

 

「え?」

 

永遠

「アレは嫉妬じゃ。」

 

楯無

「ギクギクッ!!」

 

「…嫉妬?」

 

永遠

「要するにじゃ!簪と仲良く食事をしておったワシ等に嫉妬しておったんじゃよ!この生徒会長は!それでワシとセシリアを睨んでたんじゃよ!」

 

楯無

「ギクギクギクッ!!!」

 

セシリア

「なるほど嫉妬ですか。言われてみるとその様な感じでしたわね。」

 

楯無

「あ、あああ…」//////

 

永遠

「で!お主は結局何がしたいんじゃ?やっとる事と言っとる事が矛盾しとるぞ!」

 

楯無

「そ、それは…」

 

 狼狽えまくっとるな…

 

永遠

「…簪…これがお主の姉の正体じゃよ。」

 

「………私…こんな人を目標にしてたの…自分が凄く情けなく感じるんだけど…」

 

楯無

「ま、待って簪ちゃん!そんな呆れた目で見るのだけはやめて!そんな目で見られたら私死んじゃう!」

 

永遠

「阿呆か!」

 

セシリア

「自業自得ですわ!」

 

本音

「後でお姉ちゃんに見せよう!」

 

楯無

「待って本音ちゃん!それもやめて!虚ちゃんに知られたら説教フルコースになるから!」

 

 本音が携帯で動画を撮影しようとしたら会長に止められてしまったが…

 

永遠

「それはいい事を聞いた…本音、姉を呼べ!」

 

楯無

「今の聞いてた!私やめてって言ったのよ!」

 

永遠

「やめて欲しかったら簪をストーキングしとった訳を言え。ダメ無生徒会長。」

 

楯無

「今、ダメ無って言った!ダメ無って言ったよね!私は楯無よ!」

 

永遠

「いいからとっとと言え!楯無ストー会長。」

 

楯無

「ストー会長って何よ!」

 

永遠

「ストーカーの生徒会長、略してストー会長じゃ。」

 

楯無

「略さないでよ!て言うかいい加減普通に呼んでよ!」

 

永遠

「呼んで欲しかったらはよ言え。それとも本音の姉を呼ぶか?今なら姉繋がりで織斑先生も追加で呼んでもいいんじゃぞ?」

 

楯無

「もっとやめてええええぇぇぇぇーーーーっ!!!」

 

永遠

「やめて欲しかったらさっさと訳を言え!」

 

楯無

「…はい…」

 

 それからストー会長から簪に言った事の理由を聞きだした

 何でも簪とこのストー会長の家は日本政府直属の対暗部組織と呼ばれる裏の家業を生業としとる家らしい

 そしてこの会長はその家の17代目の当主らしく、【楯無】と言う名前は代々当主が名乗る名前との事じゃった

 つまり本名は別にあるという事か…まあ今は別にいいか…

 そして、当主となる時、妹の簪を裏の世界には関わらせないと決めたらしく…その為、簪に『無能でいろ』と言ったらしい

 今までの話を聞いてワシには一つの結論が出た…それは…

 

永遠

「…要するにお主が重度のシスコンだと言う事がようく分かった。更シスコン生徒会長。」

 

楯無

「更シスコンって何よ!私は真面目な話をしたのよ!いい加減普通に名前を呼んでよ!!」

 

永遠

「更シスコンダメ無ストー会長。」

 

楯無

「全部繋げて呼ぶなあああぁぁぁーーーっ!」

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~楯無 Side~

 

 私の事を未だにちゃんと呼ぼうとしない彼にムキになっていると、今まで黙って話を聞いていた簪ちゃんが…

 

「………何で…」

 

楯無

「…簪ちゃん?」

 

「…何でそんな事勝手に決めるの?何で私の未来を勝手に決めるの?」

 

楯無

「ま、待って簪ちゃん!違うのよ…」

 

「何が違うの!じゃあ私に家の事に関わらせないようにしたのは何でよ!」

 

楯無

「それは!………簪ちゃんには闇の世界で生きて欲しくなかった…光の世界を生きて欲しかったのよ…」

 

「…それが…それが勝手だって言ってるのよ!私が何時そんな事を頼んだの!私の未来は私が決めるものなのに何でお姉ちゃんが決めるの!何の資格があってそんな事するの!!」

 

楯無

「…か、簪ちゃん…私はただ…簪ちゃんの事を思って…」

 

「何が私の事を思ってよ!それならそうとハッキリ言ってくれればいいじゃない!あんな言い方して、私を縛り付けて、私を自分の手元に置いておきたいだけじゃない!私はお姉ちゃんの玩具じゃない!人形じゃない!!一人の人間よ!!!」

 

楯無

「!?」

 

「そんなに自由に生きて欲しいなら…私は家を出る!お姉ちゃんとも家族の縁を切る!!」

 

楯無

「え?」

 

 今…何て言ったの?…縁を切る?…簪ちゃんが妹じゃなくなる?………ただの他人になる?

 

楯無

「…い、いやあああぁぁぁーーーっ!!!やめて!それだけはやめて!!!」

 

「…今更何言ってるの!自由に生きろと言ったのは貴方でしょ!だから望み通り、貴方と縁を切って一人で生きていくって言ってるのよ!」

 

楯無

「あ…ああ…で、でも…一人だなんて…」

 

「…確かにいきなり一人で暮らすのは無理なのは分かってる!」

 

楯無

「な、ならやめよ!縁を切るなんてやめよ!」

 

「…永遠…独り立ち出来るまで永遠の家においてくれない?」

 

楯無

「え!?」

 

永遠

「ん?…ワシの家?」

 

 やめて!答えないで!頷かないで!

 

永遠

「…ん~~~?…まあ元は一人暮らしじゃし…構わんぞ。部屋も余っとるし。」

 

楯無

「ーーーーっ!」

 

 私はその瞬間、声にならない叫びをあげた

 

「ありがとう…じゃあこれからお世話になるね。」

 

永遠

「構わんが何時頃からじゃ?」」

 

「この後、絶縁状書いて家に送るから2、3日してからかな?」

 

 ぜ、絶縁状…絶縁………縁を…絶つ…

 

楯無

「…あ…ああ…あああぁぁぁーーーっ!!!」

 

 そんな!やだやだやだ!いやだ!!!

 

楯無

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!」

 

「………」

 

楯無

「私が悪かったから!私が間違ってたから!お願いだからやめてよおおおぉぉぉーーーっ!!!」

 

「………プッ♪」

 

楯無

「…え?」

 

永遠&セシリア&本音

「………フフッ♪」

 

楯無

「…何?」

 

永遠&セシリア&簪&本音

「アハハハハハハハハハハッ♪」

 

楯無

「…え?…な、何?」

 

永遠

「見事に引っかかったのぉ♪」

 

楯無

「…引っかかった…?」

 

本音

「ドッキリ大成功~~~♪」

 

楯無

「ド、ドッキリイイイイィィィィーーーーッ!!!」

 

永遠

「そうじゃ。お主が覗いとるのは気付いとったからな。ドッキリ仕掛けてからかってやろうと思ったんじゃよ。」

 

楯無

「…何でそんな事…」

 

永遠

「お主に反省させる為じゃ!」

 

楯無

「反省…」

 

永遠

「先に言っておくが簪が言っていたことは縁を切ると言う所までは全て簪の本心じゃ!」

 

楯無

「!?」

 

永遠

「簪も言うとったじゃろ。簪は人間じゃ!お主の人形では無い!いつかはお主や家から離れなければならんのじゃ!」

 

楯無

「あ!?」

 

永遠

「じゃが!お主は遠回しに簪に自由に生きろと言っておいてその言葉で、簪の心を縛り、自由を奪い、手元に置こうとしおった!結局お主は簪の事なんぞ考えておらん!自分の事しか考えておらんのじゃ!!」

 

楯無

「そ、そんな事…」

 

永遠

「なら何故『自由に生きろ』と言わんかった!遠回しに言うより簡単じゃろ!」

 

楯無

「それは…」

 

永遠

「ああ言えば簪がお主に対抗心を燃やして傍にいると思ったんじゃろ!例えお主にそのつもりが無くとも無意識の内にそう思った筈じゃ!でなければあんな言い方普通はせんわい!!」

 

楯無

「あ…ああ…」

 

永遠

「どうなんじゃ!答えんかい!!」

 

楯無

「………その…通り…です…」

 

 …何も言い返せない…彼に言われて改めて気づかされた…私は…

 

永遠

「…何故ワシ等がドッキリを仕掛けたと思う?」

 

楯無

「…理由があるの?」

 

永遠

「簪がいなくなると思った時どう思った?」

 

楯無

「…凄く嫌だった…家族がいなくなると思うと凄く寂しかった…」

 

永遠

「それは簪が抱えておった思いと似た物じゃ!」

 

楯無

「え?」

 

永遠

「お主も知っとるとは思うが、簪は幼い頃から常に家の連中から姉のお主と比較されて生きて来た。」

 

楯無

「え!?」

 

永遠

「んっ?………気づいとらんかったのか!?…いいか!簪は常にお主と比較され続けて家に居場所が無かったんじゃぞ!!ワシは別にそいつらの事をどうこう言うつもりは無い!そいつらが勝手にやった事じゃからな!!じゃがな!!そいつらのせいで常に陰口を言われ辛い思いをしとったんじゃぞ!!!」

 

楯無

「そ、そんな!?」

 

 家の者達が簪ちゃんにそんな事を…

 

永遠

「更識楯無!!何故お前が知らんのじゃ!!お前は簪の姉じゃろ!!何故気付かんかった!!簪の一番近くにいたのはお前じゃろうが!!何故お前が簪の居場所になってやらんかった!!!たった一人の妹を守ろうとせんかった!!!」

 

楯無

「ぁ…ぁぁ…」

 

永遠

「簪はずっと溜め込んでおったぞ!ワシとセシリアに会うまで弱音すら言う事が出来ずに耐えてたんじゃぞ!簪をストーキングしておきながら肝心な所を何一つ見取らんかったんか!簪が泣いた事さえ知らんかったのか!!」

 

楯無

「な、泣いた!?」

 

永遠

「そうじゃ!今まで我慢しとったもんを全部吐き出す為に泣いたんじゃ!!本来ならワシ等では無くお前がすべきことじゃぞ!!」

 

楯無

「ううっ…」

 

永遠

「お前は自分にとって都合の良い所だけ見て、それ以外は何一つ見ようとせんのか!お前にとって簪はその程度の存在なのか!!それでよく汚れ仕事は自分がやるなどと言えたな!!今まで放ったらかしにしておいて当主になった途端に姉気取りか!!ふざけるな!!お前に簪の姉を名乗る資格なんぞ無い!!!」

 

楯無

「………」

 

 ………言い返せない…何一つ…言い返す事が…出来ない…

 

「…永遠…もういいよ…」

 

永遠

「簪…」

 

「…ありがとう…永遠…私の為に怒ってくれて…でも…ココからは私がやらないといけない事だよ…だから…」

 

永遠

「…分かった…セシリア、本音…」

 

セシリア

「はい。」

 

本音

「…うん…」

 

 …火ノ兄君はオルコットちゃんと本音ちゃんを連れて整備室を出て行ってしまった

 残ったのは私と簪ちゃんの二人だけになった…

 

 ~楯無 Side out~

 

 




 次回『第058話:姉妹喧嘩の行く末』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第058話:姉妹喧嘩の行く末

 ~楯無 Side~

 

「………」

 

楯無

「………」

 

「…お姉ちゃん…」

 

楯無

「!?」ビクッ

 

 …簪ちゃんに呼ばれて体が過敏に反応した…

 

「…永遠はもういないよ…何か言いたい事はある?」

 

楯無

「………」

 

「…何も言わないって事は永遠の言った事を全部認めるって事だよ?」

 

楯無

「…ぅぅっ…」

 

「…お姉ちゃん…これだけは答えて………お姉ちゃんにとって私って何なの?」

 

楯無

「………大切な…妹よ…」

 

「…大切な…ね…なら今までの行動は何?」

 

楯無

「うっ!?」

 

「…家にいてもお姉ちゃんは私の事を見ようとはしなかったよね…私が苦しんでる事に気付きもしなかったよ…当主になったらあんな分かりにくい言い方をして『自由に生きろ』と言って突き放すし…この学園に入れば今度はストーカーをしてる…」

 

楯無

「ううっ…」

 

「…本当に大切ならそんな事はしないよ?」

 

楯無

「………」

 

「…ねえ…何とか言ってよ?」

 

楯無

「………」

 

「…答えてよ!!更識刀奈!!!」

 

楯無

「!?…か、簪…」

 

「貴方は何時だってそうよ!…他人の気持ちを分かろうとしないで…自分勝手に好き放題やってばかり!…自分に都合が悪くなれば耳を塞いで黙り込んで何も見ようとはしない!…それが…それが更識刀奈って言う人間よ!!それが貴方の本性よ!!!」

 

楯無

「あっ…ああっ…」

 

「何が大切な妹よ!何が私を守りたかったよ!結局貴方は自分が大事なだけじゃない!私の事何かなんとも思ってない!貴方の傍に置いてある置物程度にしか思ってないのよ!!」

 

楯無

「ち、違う!?そんなこと思ってない!!」

 

「なら今迄の貴方の行動は何なの!私はずっと一人だった…気の許せる相手何て本音くらいしかいなかった…実の姉の貴方から心配された事なんて一度も無かった!!貴方は私の悩みを聞こうとした事があるの!!私にそんな記憶は無い!!」

 

楯無

「!?」

 

 …そうだ…私は…一度だって簪ちゃんにそんな事をした事が無かった…

 

「………私が永遠やセシリアといる時…どんな気持ちだったと思う?」

 

楯無

「………」

 

「…凄く楽しかった………二人といると…笑顔でいられた…」

 

楯無

「………」

 

「…本当は…お姉ちゃんとも…あんな風にしたかった…」

 

楯無

「…え?」

 

 簪ちゃんの言葉に驚いて顔を上げるとその眼には大粒の涙を流していた

 

楯無

「…簪…ちゃん…」

 

「…お姉ちゃんと普通に話して…笑い合って…喧嘩して…そんな当たり前の事がしたかった…」

 

楯無

「!?」

 

「…でも…そんな事すら…してくれなかった…」

 

楯無

「…あ!」

 

 その言葉に私は鈍器で殴られたような衝撃が走った

 簪ちゃんが言ったのは何処にでもいる普通の姉妹の日常だったからだ

 妹はそんな当たり前な事を望んでいた…なのに姉である私は…それに気付かず…傷つける事しかしてこなかった…

 火ノ兄君の言う通り…こんな私に…姉を名乗る資格なんて………ある訳無いじゃない…

 

「…永遠とセシリアは…私がお姉ちゃんにして欲しかった事を全部してくれた…本当に嬉しかった…楽しかった…」

 

楯無

「…ぁ…ぅ…」

 

「…一度だけでいいから…普通の姉妹として…接してほしかった…」

 

楯無

「簪ちゃん!!」

 

 私は簪ちゃんを抱きしめていた

 

楯無

「…ごめんなさい………貴方にそんな事を言わせて…私が…間違ってた…ごめん…なさい………」

 

「…お姉ちゃん…」

 

楯無

「…私は怖かった…簪ちゃんが私から離れていくのが…火ノ兄君の言う通りよ…私は簪ちゃんを手元に置いておきたかっただけ…」

 

「………」

 

楯無

「…全部…私の自己満足…簪ちゃんの事なんて何も考えてなかった…」

 

「………」

 

楯無

「…ごめんね…こんな…最低な姉で…」

 

「………」

 

楯無

「…簪ちゃん…改めて言うわ…自由に生きて…」

 

「………うん…」

 

楯無

「…それに…もう決めてるんでしょ?…どうしたいか?」

 

「!?」///

 

楯無

「火ノ兄君…好きなんでしょ?」

 

「………うん♪」///

 

楯無

「でもライバルは手強いわよ?オルコットちゃん…火ノ兄君とは一番付き合いが長いし。」

 

「そんな事は分かってる!でも、だからと言って身を引くつもりは無い!相手がセシリアでも本音でも負けるつもりは無い!!」

 

楯無

「そ、そう………え?…本音ちゃん?」

 

 今この子は何て言ったの?…まさか本音ちゃんまで!?

 

「そうだよ。本音も永遠が好きなんだけど…気付いてなかったの?」

 

楯無

「あの本音ちゃんよ!!気付く訳ないでしょ!!」

 

「確かにそうだけど…普通は分かると思うけどな…お姉ちゃん…好きな人とかいないの?」

 

楯無

「な!ななな何言ってるの!?…え、えっと…そ、そのくらいいるわよ…」

 

「…いないんだね…」

 

楯無

「ギクッ!!そそそそんな事無いわよ!」

 

「見栄を張ってないでお姉ちゃんも早く見つけた方がいいよ?」

 

楯無

「グヌヌッ!好きな人がいるからってこの余裕!まだ恋人にもなってないのに!」

 

「余裕だよ?だって永遠は私が貰うんだもん!!」

 

楯無

「簪ちゃん…いつの間にそんなに強くなったの…」

 

「恋する女の子はアッと言う間に強くなるんだよ!」

 

楯無

「そ、そうなんだ…」

 

 私は予想以上に心身共に強くなっていた妹に驚き、そう答えるしかなかった

 

「お姉ちゃんも妹のストーカーなんかする暇があるなら彼氏の一人くらい見つけた方がいいよ?…行き遅れって言われても知らないからね?」

 

楯無

「うぎっ!?」

 

 簪ちゃんのその言葉が心にグサリと突き刺さった

 

 ~楯無 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

永遠

「………そろそろ終わる頃かの?」

 

本音

「何が~?」

 

 ワシ等は整備室から出ると近くに合った休憩室で二人の決着がつくのを待っておった

 

永遠

「あの二人の姉妹喧嘩じゃよ。」

 

セシリア

「ですが大丈夫でしょうか?」

 

永遠

「何とも言えんな。…ワシ等に出来るのは待つ事だけじゃよ。」

 

セシリア

「…そうですわね…」

 

本音

「…うん…」

 

「本音?」

 

本音

「あ!?」

 

 ん?この人は…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

 お姉ちゃんと何とか和解も出来たからとりあえず外に行った永遠の所に行く事にした

 

「…どこにいるのかな?」

 

楯無

「…ねえ簪ちゃん?」

 

「何?」

 

楯無

「火ノ兄君…私が貰っても「お姉ちゃん!!!」ハイッ!?」

 

「冗談でも言っていい事と悪い事があるよ!」

 

 行き遅れになりたくないからって永遠に手を出すのは許さない!!

 

楯無

「ごめんなさい…」

 

「永遠は駄目!…織斑一夏にして…」

 

楯無

「…いや、彼はちょっと…幾ら私でもホモは…」

 

「本人は違うって言ってるよ。顔はいいから丁度いいんじゃないの?」

 

楯無

「あ、そう…なら悪くないかも………ねえ簪ちゃん…一つ聞いていい?」

 

「ん?」

 

楯無

「…織斑君の事どう思ってるの?」

 

「何とも思ってないよ。永遠との試合を見てからどうでもよくなったから。」

 

楯無

「…そう…(本当に興味が無いみたいね…)」

 

「いた!」

 

 休憩室に3人が揃っていた…アレ?一緒にいるのは…

 

「虚さん?」

 

楯無

「う、虚ちゃん!何でココにいるの!?」

 

「貴方を探していたんですよ。その途中で本音達と会って事情を聞いたので、此方で待たせて貰っていました。」

 

永遠

「虚さんから聞いたぞい。お主、生徒会の仕事をサボって簪をストーキングしとったらしいな。」

 

楯無

「ギクッ!!」

 

永遠

「さっきはああ言ったが結局は説教される事になるの。」

 

「…それでお嬢様?簪様とはもういいのですか?」

 

楯無

「うん…もう大丈夫よ!…ごめんね…虚ちゃんにも本音ちゃんにも迷惑をかけて…」

 

「はぁっ…やっと分かりましたか…」

 

楯無

「…うん…私がどれだけ自分勝手な人間か分かった…」

 

「でしたら私が言う事はありません。」

 

楯無

「ホント♪」

 

 お姉ちゃん…虚さんはそんなに甘い人じゃないのは分かってるでしょ…まあいっか…

 

「ですが!仕事をサボっていた事は別です!今からタップリとお説教をしますので覚悟してください!」

 

楯無

「そんな~~~…」

 

「その後は溜まった仕事を片付けてください!終わるまで寝る事は出来ませんよ!」

 

楯無

「ガーーーン!!」

 

永遠&セシリア&簪&本音

「アハハハハハハッ♪」

 

楯無

「笑い事じゃないわよ!」

 

永遠

「ワシ等にとっては笑い事じゃよ!更シスコンダメ無ストー会長。」

 

楯無

「その呼び方はやめてーーーーーっ!!」

 

「…更シスコンダメ無ストー会長ですか…今のお嬢様にピッタリの呼び方じゃないですか。」

 

楯無

「虚ちゃんまで!」

 

「何を今更…貴方は簪お嬢様に対してストーカーをしていた重度のシスコンでは無いですか。それに今迄のお嬢様を見ていればダメ人間にしか見えませんが?」

 

楯無

「そこまで言わなくても…」

 

「事実です!しかし長い呼び方ですね…」

 

永遠

「ふむ…なら、まるでダメなお嬢様…略してマダオでどうじゃ?」

 

「いいですね。ではこれからマダオ嬢様と呼びましょう!」

 

楯無

「良くないわよ!マダオ嬢様って何よ!」

 

「貴方の事ですが何か?」

 

楯無

「そんな呼び方しないでーーーっ!!」

 

「呼ばれたくなければ仕事をして下さい!マダオ嬢様!」

 

楯無

「する!するから普通に呼んで!お願いよ~~~…」

 

「全部終われば普通に呼びますよマダオ嬢様。さあ行きますよ!まずはお説教からです!!」

 

楯無

「い~~~や~~~~!!簪ちゃ~ん!!た~す~け~て~!!」

 

「自業自得…」

 

 それしか言いようがない…

 

楯無

「薄情者~~~っ!!」

 

 お姉ちゃんはそのまま虚さんに引きずられて行った…

 

セシリア

「…あの人大丈夫でしょうか?」

 

「大丈夫…お姉ちゃんはいつも虚さんからお説教を受けてるから…」

 

本音

「だから放っといてもいいよ♪」

 

永遠

「何気に酷いのお主等…」

 

セシリア

「そうですわね…」

 

永遠

「まあいいか………向こうはもう置いといてよかろう。簪…お主はもういいんか?」

 

「うん♪もう大丈夫!お姉ちゃんとも仲直り出来た!」

 

セシリア

「それは良かったですわね♪」

 

本音

「うん♪」

 

永遠

「これで簪の問題は終わったのぉ…後は…」

 

セシリア

「…鈴さん…ですね…」

 

永遠

「うむ…」

 

 鈴?…あ!そう言えば…

 

「…ねえ、鈴に何かあったの?あの日から学校も休んでるし、鈴に何があったのか教えて?」

 

永遠

「………」

 

セシリア

「…分かりましたわ。」

 

永遠

「いいのかセシリア?」

 

セシリア

「…はい…機体も無事完成しましたし対抗戦は休日を挟んで三日後です。お二人にはそろそろ話してもいいと思いますわ。」

 

永遠

「そうじゃな。…簪、本音、今から話す事は誰にも言うてはならんぞ!他の連中に知られると面倒じゃからな!」

 

簪&本音

「うん!」

 

永遠

「よし!実はな、あの日………」

 

 そして私と本音はあの日に何があったのかを聞いた…

 ハッキリ言って腹が立った…

 鈴の覚悟を踏み躙ったあの男の事が…

 しかも鈴以外にも大勢の女の子達を無自覚に泣かせてきたと聞いた時は自分の耳を疑った…

 それを聞いた永遠達は、今度の対抗戦で織斑一夏を鈴が叩きのめす為に動いていたらしい…

 そして今、鈴は永遠の島で束さんの用意した訓練施設で特訓をしているらしい…

 こんな話を聞いたら…

 

「私も鈴の応援をする!!」

 

本音

「私も!リンリンが可哀想だよ!」

 

セシリア

「そう言って頂けると思ってましたわ!」

 

永遠

「繰り返し言うが誰にも言うでないぞ!鈴だけ休んで特訓しとるなんて知れたら大事じゃ!他に知っとるのは織斑先生だけじゃからな。」

 

「分かった!」

 

本音

「は~い♪」

 

 まさか鈴がそんな事をしていたなんて…私も何か協力できないかな………そうだ!

 

「永遠!…これから織斑先生に許可を貰って来るから火紋島に行っていいかな?」

 

永遠

「は?」

 

「私も鈴の為に何かしたいの!…だから、私が鈴の訓練相手になる!」

 

セシリア

「それはいい考えですわね♪わたくしも協力しますわ!」

 

本音

「私も行く~♪」

 

「…それに完成した【打鉄二式】を束博士に見せる約束をしてたから。早く見て貰いたい。」

 

永遠

「…分かった。」

 

 それから私達は織斑先生に許可を貰うと、火紋島に向かった

 ちなみに私の機体が完成したから、本音は【ドットブラスライザー】で向かってる

 【ドットブラスライザー】を受け取った時の本音は凄く落ち込んでいた

 

 ~簪 Side out~

 




 次回『第059話:クラス代表対抗戦【甲龍VS白式】』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第059話:クラス代表対抗戦【甲龍VS白式】

 ~簪 Side~

 

 あれから私達は火紋島に到着すると永遠とセシリアは鈴の所に、私と本音は束さんの所に向かった

 

「束博士!」

 

「おや?かんちゃんにのんちゃん!よく来たね♪」

 

「はい!お久しぶりです!今日【打鉄二式】が完成したので、博士に見て貰いたくて…それと鈴の模擬戦の相手に来ました。」

 

「そっか~♪完成したんだね♪」

 

「はい♪」

 

 私は早速【打鉄二式】を展開して博士に見て貰った

 

「…フム………かんちゃん達頑張ったね!束さんの想像以上の出来だよ♪」

 

「ホ、ホントですか!」

 

「こんな事で嘘なんか言わないよ♪のんちゃんもご苦労様♪」

 

本音

「はい♪」

 

「けど、リーちゃんの手伝いに来たって事はとーくん達から聞いたんだね?」

 

「はい!…同じ女として…鈴があまりにも可哀想です!私も協力しに来ました!」

 

本音

「私もです!」

 

「フフッ♪リーちゃんも喜ぶよ♪」

 

「はい♪」

 

 この後私と本音は鈴が訓練していると言う場所に向かった

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

「…フ~~~ッ!…もうすぐね…」

 

 私は数日後に迫った対抗戦に思いをはせていた…

 

永遠

「鈴!」

 

「永遠…今日は随分遅かっ………セシリア!?」

 

セシリア

「お久しぶりですね♪鈴さん♪」

 

「ホントにね♪…でもどうしてココに?」

 

セシリア

「対抗戦は休み明けですから、鈴さんの最後の調整として模擬戦の相手に来ましたの。」

 

「それはありがたいわね!助かるわ!」

 

セシリア

「後、簪さんと本音さんも来ていますよ。」

 

「え!?あの二人も?…でもいないけど?」

 

永遠

「二人は先に束さんの所に行っとる。簪の機体が完成したから、見せに行っとるんじゃよ。」

 

「ホント!!遂に完成したのね!!良かった~~~♪」

 

セシリア

「ですから模擬戦の相手は簪さんもお相手しますわ。」

 

「フフッ♪簪の専用機がどんなものか楽しみだわ!!」

 

 それから暫く話していると簪と本音がやって来た

 私が専用機の完成をおめでとうと言ったら簪も喜んでくれた

 その日はもう遅くなっていたから模擬戦は次の日にする事にして私達は永遠の家に戻って行った

 次の日からセシリアと簪も交えての訓練を開始した

 簪には勝てるけど、やっぱりセシリアは強くて殆ど負けっぱなしだった…何気に凹むわね…

 そして対抗戦当日の朝、私達はいつもより早く島を出て学園に戻った

 学園の校門前には千冬さんが待っていて、対戦の組み合わせは私と一夏で組んでくれたそうだ

 それから一夏は私がいなくなったのを気にしているらしく、それならと試合の時まで会わずに焦らそうという事になった

 

 ~鈴 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 遂にクラス対抗戦の日が来た…

 俺の初戦の相手は2組の鈴だったんだけど…

 火ノ兄に臨死体験させられた次の日から何故か学園を休んでいた…

 一度部屋を尋ねてみたら部屋にもいないらしく学園の外にずっと出ているらしい…

 そして俺は今ピットで試合の準備をしている…

 

「一夏!試合がいきなり不戦勝とはラッキーだったな!」

 

 箒は学園にいない鈴が相手と知って不戦勝になると言って喜んでいた…と言うか…

 

一夏

「…いや、まだ鈴が出ないって決まった訳じゃないんだけど…所で箒?」

 

「何だ?」

 

一夏

「…千冬姉から許可貰ってるのか?勝手に入ってくるとまた反省文書かされるぞ?」

 

「え!?…だ、大丈夫だ!今回は許可を貰ってから来ている…」

 

一夏

「…それならいいけど…」

 

「あ、ああ…(まずい!忘れていた!)」

 

一夏

「そう言えば千冬姉は何処だ?」

 

「さ、さあな…(いないのは丁度いいな…このまま試合が終わるまで姿を現さないで欲しいんだが…)」

 

 よく考えてみれば鈴がいなくなってから千冬姉の態度が変わった気がするんだよな…

 俺に冷たくなったような…

 火ノ兄やオルコットも俺を見る目が冷めた感じだし…

 

アナウンス

『織斑選手。アリーナに出てください。』

 

一夏

「あ!…じゃあ箒、行って来る!」

 

「ああ!行ってこい!どうせすぐに戻ってくるんだしな!」

 

一夏

「だからまだ不戦勝って決まった訳じゃないだろ!…織斑一夏!【白式】出るぜ!!」

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

「…出て来たわね…」

 

 私は向かいのピットで【甲龍(シェンロン)】を展開していつでも出られる用意をしていた

 そして私の周りには…

 

永遠

「遂にこの日が来おったな!」

 

セシリア

「待ちわびましたわ!」

 

千冬

「愚か者に制裁を加える時がな!」

 

「うん!」

 

本音

「頑張ってね!リンリン!」

 

 永遠、セシリア、簪、本音、千冬さんの5人がいた

 

「…皆…改めて御礼を言うわ!私の為に今までありがとう!!」

 

永遠

「カカカッ!何を言うとる礼を言うにはまだ早いぞ!」

 

セシリア

「その通りです!その台詞はあの男に勝ってから改めて聞かせて下さい!」

 

「でも…千冬さんには特に苦労をかけたし…」

 

 私の外泊や今日の試合の組み合わせとか…

 

千冬

「私の事は気にするな!そう思うなら今日の試合で一夏に勝て!私はそれだけで十分だ!」

 

「千冬さん………はい!!」

 

アナウンス

『凰選手。アリーナに出てください。』

 

「…行ってくる!」

 

永遠

「あの馬鹿にお主の想いをぶつけて来い!」

 

セシリア

「他の女性の分もお願いします!」

 

千冬

「軽く捻って来い!」

 

「鈴!ファイトだよ!」

 

本音

「ガンバレ~~~!」

 

「任せておいて!!凰鈴音!【甲龍(シェンロン)】行くわよ!!」

 

 ~鈴 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「さて、私は管制室に行くが…お前達はどうする?なんならココで観戦してもいいぞ?」

 

永遠

「いや、ワシは客席で見るつもりじゃ。」

 

セシリア

「わたくしもですわ。」

 

「私も。」

 

本音

「同じく~♪」

 

千冬

「そうか…なら急いだ方がいい。もうすぐ試合開始の合図が鳴るぞ。」

 

永遠

「ム!それはいかんな!急ごう!」

 

セシリア&簪&本音

「はい(うん)!」

 

 4人は急いで観客席に向かって行ったが…

 

千冬

「…火ノ兄の奴…気付いているのか?アイツらの想いに…」

 

 うちの弟みたいにならなければいいんだがな…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 アナウンスで呼ばれたけど…鈴の奴出てくるのかな?

 …そう考えていたら…

 

「待たせたわね一夏!!」

 

一夏

「り、鈴!?お前今迄どこにいたんだ!?」

 

「…私が何処にいようと勝手でしょ…それより一夏…アンタ私が怒った理由…分かった?」

 

一夏

「え?」

 

 俺が火ノ兄に殺されかけた日の事か…

 

一夏

「…いや、俺はお前との約束もちゃんと思い出したんだし…お前に怒鳴られる事なんて無い筈なんだけど…むしろあれは勝手にキレたお前の方が悪いんじゃないのか?」

 

 ブチッ!!

 

 俺がそう言った瞬間何かがキレる音がした

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「アイツ…救い様が無いな…」

 

真耶

「…あの~どういう事でしょうか?」

 

千冬

「………アイツが底抜けの馬鹿だという事ですよ。」

 

真耶

「…幾ら何でも自分の弟にそれは言い過ぎでは…」

 

千冬

「言い過ぎではありませんよ!」

 

 鈴もキレたようだな…

 私はアリーナにいる二人にそれぞれ通信をする事にした

 

千冬

「鈴…聞こえるか?………遠慮はいらん!()っていいぞ!」

 

真耶

「え!?」

 

『ワカリマシタ!!』

 

千冬

「一夏…聞こえるな?………三途の川に行っても改心しないとはな!墓は建ててやるから安心して()ってこい!」

 

真耶

「ええっ!?」

 

一夏

『え!ちょっ、何言ってんだよ!墓って何?俺死ぬの!?』

 

真耶

「織斑先生何言ってるんですか!?教師の言う事じゃありませんよ!!」

 

千冬

「いいんですよ。事情は後で教えてあげますから。」

 

真耶

「…はぁ…分かりました…」

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 今千冬姉は何て言ったんだ…墓を建てる?…三途の川?…改心?

 どういう事だよ…

 

「………」

 

一夏

「り、鈴!?千冬姉がおかしいぞ!まるで俺に死ねって言ってるみたいなんだけど!!」

 

「………」

 

一夏

「鈴?」

 

「…千冬さんはおかしくないわよ…」

 

一夏

「え?いやだって…どう見てもおかしいだろ!」

 

「…おかしいのは………アンタよおおおぉぉぉーーーっ!!!」

 

一夏

「ええっ!?」

 

アナウンス

『試合開始』

 

「くたばれ一夏あああぁぁぁーーーっ!!!」

 

 鈴は叫びながら両手に持った二振りの青龍刀で斬りかかって来た!

 

一夏

「うおっ!?」

 

 ガキイィィンッ!

 

 俺は何とか【雪片弐型】で受け止めた

 

一夏

「あ、あぶねえぇぇ…!」

 

 何なんだこの凄まじい殺気と言うか気迫は!…一体俺が何したってんだよ!

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

「今度は私がアンタを三途の川に送ってやるわ!!」

 

一夏

「え?………ごふっ!」

 

 私は鍔迫り合いをしながら一夏の腹に蹴りを入れた

 一夏はその衝撃で後ろに飛ばされた

 

「…アンタの辞世の句は聞く気はない…三途の川で反省しろ!!」

 

一夏

「ちくしょおおぉぉっ!死んでたまるかあああぁぁぁーーーっ!!」

 

 一夏は死ぬのが嫌なのか叫びながら私に斬りかかって来た

 

「遅い!」

 

一夏

「くっ!」

 

 私は剣を躱すと…

 

「…何よその遅い剣は!アンタ今日まで何してたのよ!」 

 

一夏

「ぐっ!ならこれでどうだああぁぁーーっ!!」

 

 一夏は【瞬時加速(イグニッション・ブースト)】を使って私に接近して大振りで斬りかかって来た

 アイツ【瞬時加速(イグニッション・ブースト)】は使えるのね…けど…

 

「遅いって…言ってんでしょ!!」

 

一夏

「なっ!…くそっ!!」

 

 全力の一撃を躱されて動揺したみたいだけど、すぐに連続で仕掛けて来たわね…でもね…

 

一夏

「何で当たらないんだ!?」

 

「当り前よ!アンタの攻撃なんて永遠の攻撃と比べたら止まって見えるのよ!何より、アンタみたいなISに触って一カ月程度のド素人がそれよりも前から必死に訓練してきた専用機持ちに敵う訳ないでしょ!」

 

一夏

「うっ…」

 

「一夏…アンタ、専用機の意味を知ってるの?」

 

一夏

「え?」

 

「専用機って言うのはね…それぞれの国や企業から自分の実力を認めて貰った者だけが持つ事を許された物なのよ!…専用機を託された者はその国や企業の誇りや未来なんかも一緒に託される…その背負った物の為に日々鍛錬しているのよ!それが専用機を持つって言う意味よ!!」

 

一夏

「…専用機の…意味…」

 

「アンタが専用機を持っているのは男だからと言う理由だけ!何も背負って無いアンタが私に勝てるの?アンタがもし女だったら専用機何て貰えないわよ!」

 

一夏

「ぐっ!」

 

「そして専用機を持つって事は専用機を守る事も義務付けられてるのよ!」

 

一夏

「…専用機を…守る?」

 

「専用機は国や企業の機密の塊…それを奪われることは自分の所属の秘密を奪われる事と同じ意味を持っているのよ!専用機を持つ者は機体を奪われない様にする為にも自分を鍛えている。アンタはそれを理解しているの?」

 

一夏

「………」

 

「…先に言っておくけど…永遠はアンタとは違うわよ!」

 

一夏

「え!?」

 

「永遠は専用機の意味を正しく理解しているし、守るだけの実力もある。でも、永遠自身にはアンタと同じで背負う物は無いわ!けどね、アイツは自分の手の届くところにあるものは守りたいって言ってた!専用機はその為に使っているのよ!その為に鍛錬に励んでいる!背負う物も守る者も無いアンタとは違う!!」

 

一夏

「…お、俺にだって…守りたい者くらい…」

 

「あるって言うの?今まで無自覚に人の想いを踏み躙って来たアンタが!他人の想いを知ろうともしない奴が!私にはそんな奴に守る者があるなんて思わないけどね!!」

 

一夏

「!?(それは…火ノ兄に言われた…)」

 

「アンタが今まで何をしていたかは知らないけど…こっちはアンタを叩き潰す為に血の滲む様な訓練を重ねて来たのよ!!」

 

一夏

「お、俺を!?」

 

「そうよ!私はアンタを倒せればそれでいい!それ以外はどうでもいい!アンタのその鈍感な性格のせいで泣いてきた子達の悲しみと苦しみの為にも…私はアンタを倒す!!」

 

一夏

「り、鈴…」

 

「…お喋りは終わりよ………一夏…私がアンタと同じで近接武器しか持ってないと思った?」

 

一夏

「え?」

 

 私は左右の浮遊ユニットに搭載されている【甲龍(シェンロン)】奥の手【龍咆】を撃った

 

「喰らいなさい!!」

 

一夏

「え?…がっ!?」

 

 見事にど真ん中に命中したわね…ま、初見で躱すのは普通無理だもの…永遠は【ラインバレル】でいきなり躱したけど…

 

一夏

「…な、何だ!今の衝撃は!?」

 

「どうかしら?見えない砲弾【龍咆】の味は?」

 

一夏

「!?…見えない砲弾だと!」

 

「そうよ!これが私の第三世代兵装。空間に圧力を掛けて撃ち出す衝撃砲【龍咆】よ!」

 

一夏

「しょ、衝撃砲!?…それに第三世代兵装って…オルコットの【ブルー・ティアーズ】と同じ!」

 

「その通りよ。そして私の【龍咆】の特徴は砲身も弾丸も見えないという事。」

 

一夏

「み、見えない攻撃…」

 

「躱せるものなら躱してみろおおおぉぉぉーーーっ!!!」

 

 私は再び【龍咆】による砲撃を始めた

 

 ~鈴 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

一夏

「く、くっそおおおぉぉぉーーーっ!!!」

 

 俺は鈴の撃ってくる衝撃砲を躱すので精一杯だった

 砲弾が見えないってのが厄介だ…ハイパーセンサーで何とか捉えられるけど…撃った後に反応してるから完全に躱す事が出来ない…

 このままじゃSEが削られていくだけだ!

 …何とか鈴の攻撃を躱して懐に潜らないと!

 

「………」

 

一夏

「ん!?」

 

 …もしかして…

 

「………」

 

 …やっぱり!…アイツは砲撃する時、狙う場所を見ている!

 ならその隙をついて…

 

「………(気付いたみたいね。フフッ!)」

 

一夏

「………」

 

 …よし、鈴の目線にだけ集中するんだ!

 

一夏

「…(今だ!)」

 

 俺は鈴が攻撃した瞬間【瞬間加速(イグニッション・ブースト)】を使って鈴の後ろに回り込むと【零落白夜】を発動させてそのまま斬りかかった…

 

一夏

「貰ったあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

「………バ~カ!」

 

一夏

「え?…ガハッ!」

 

 体にまた衝撃砲で撃たれた衝撃が走った

 

一夏

「グッ…ウウッ…な、何で…」

 

「…言い忘れてたけど【龍咆】は全方位に撃てるのよ。」

 

一夏

「何!?…で、でも…お前の視線は………まさか!」

 

「そうよ!…私は狙う場所を見ないで撃てる。アンタは私の視線って言う囮にまんまと引っかかったのよ。」

 

一夏

「そ、そんな!?」

 

 今までの俺の行動は鈴に誘導されていたってのかよ

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

「…さて…そろそろ私も本気で行かせて貰うわよ!」

 

一夏

「え!?」

 

 どうやら私が初めから全力を出していると思っていたみたいね…まあ別にいいけど

 

「…いくわよ…」

 

 私は【双天牙月】を連結させると一夏に接近して斬りかかった

 

一夏

「ぐっ!」

 

 ガキィン!

 

 一夏は私の剣を受け止めたけど…

 

「隙だらけよ!」

 

 ドゴッ!

 

一夏

「ぐふっ!」

 

 私は一夏の腹に拳を叩きこむと…

 

 ドドドドドドドドッ!

 

 至近距離で【龍咆】の連射を叩きこんだ

 

一夏

「ぐあああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!」

 

 …大分痛めつけたわね…

 …永遠がやったほどではないけど…

 …そろそろ終わらせるか…

 

「とどめだあああぁぁぁーーーっ!!」

 

 私が一夏にとどめを刺そうとした瞬間…

 

 ドガアアアアアァァァァァーーーーーンッ!!!

 

「何!?」

 

一夏

「え!?」

 

 大きな爆発音と衝撃と共にアリーナに何かが入って来た!

 

 ~鈴 Side out~

 

 




 次回『第060話:乱入者【ドットブラスライザーVSゴーレムⅠ】』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第060話:乱入者【ドットブラスライザーVSゴーレムⅠ】

 ~鈴 Side~

 

 私が一夏にとどめを刺そうとした瞬間、突然何かが乱入してきた…って言うかアレは!?

 

一夏

「何だ…アイツは…」

 

「………【ゴーレム】…」

 

 そう私が昨日まで模擬戦の相手をして貰っていた束さんが造った無人IS【ゴーレムⅡ】だった

 何でアレがココに?まさか束さんが?

 そんな事を考えていると【ゴーレム】が攻撃を仕掛けて来た

 

一夏

「うおっ!?いきなり何すんだ!誰だよお前!!」

 

 そう言えばコイツはアレが無人だって知らなかったわね

 

「無駄よ!アイツは無人機だから何を言っても返事は来ないわ!」

 

一夏

「え!?そうなのか?…てか何でそんな事知ってんだよ!?」

 

「今はそんな事どうでもいいでしょ!」

 

一夏

「お、おう…」

 

「全く!………あれ?」

 

 よく見ると私の知っている【ゴーレムⅡ】とは細部が違っている

 でも、あれが無人機なのは同じみたいね

 

「さて、どうしようかな…」

 

 アイツを倒すか、一度ピットに戻るか…まずは千冬さんに意見を聞こうかな…そう考えていたら

 

一夏

「鈴…お前は逃げろ!俺が守ってやる!」

 

「………は?…アンタ…自分が何言ってるか分かってんの?」

 

一夏

「ああ!お前を守るって言ったんだ!」

 

 …私の耳がおかしくなった訳じゃ無いみたいね

 

「アンタが?私を?さっきまで私に手も足も出せずにとどめをさされかけてたアンタが?」

 

一夏

「ぐっ!」

 

「あのさ?一体どの口が言ってるのよ?ハッキリ言ってアンタにそんな事言われても全然信用できないんだけど?下らない事言っていい状況じゃないのよ?」

 

一夏

「なっ!下らないって!?」

 

「はぁ…とりあえず千冬さんに指示を仰ぐか…」

 

一夏

「り、鈴!何で…」

 

 私は隣で狼狽えている一夏を無視して千冬さんに通信を入れた

 

 ~鈴 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「何だアレは!?」

 

 全身装甲(フルスキン)のISだと!火ノ兄以外にそんな機体があったのか!

 

真耶

「織斑先生!!」

 

千冬

「どうした!」

 

真耶

「学園のシステムがハッキングされてシステムダウンを起こしています!その上、観客席の扉も全てロックされていて生徒達が避難する事が出来なくなっています!!」

 

千冬

「何だと!?」

 

 一体何者の仕業だ!…こんな事が出来るのは…まさか束か!

 いや、今のアイツがこんな事するはずが…

 

真耶

「どうしますか!?」

 

千冬

「すぐに教員部隊に出動の用意を!それからアリーナにいる二人に通信を繋いで下さい!」

 

真耶

「は、はい!」

 

 今、一番の問題は観客席の扉だな…どうするか…

 

 Prrrrrr

 

千冬

「ん?…電話?こんな時に誰だ!?………火ノ兄!?」

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

永遠

「どういう事じゃ!?」

 

セシリア

「永遠さん!アレは確か!」

 

「【ゴーレム】!?」

 

本音

「でも何でココに?」

 

永遠

「…分からん!…とにかく束さんに確認をせんと!」

 

 ワシはすぐに携帯で束さんに連絡を取った

 

『もしも~し束さんだよ~♪とーくんど~したの?リーちゃんの試合は終わったの?』

 

永遠

「それどころではないんじゃ!その試合に【ゴーレム】が乱入してきたんじゃ!」

 

『へ?…【ゴーレム】が!?』

 

永遠

「束さん!そっちにある【ゴーレム】は全部揃っておるんか?」

 

『勿論全部あるよ!………あ!そういえば!』

 

永遠

「心当たりがあるんか?」

 

『実はとーくんに会う少し前に開発した【ゴーレムⅠ】が盗まれた事があったんだよ!』

 

永遠

「【ゴーレムⅠ】じゃと!なら今アリーナにおるのは!」

 

『多分その盗まれた機体だよ!』

 

永遠

「そういう事か!束さん!ワシ等の知っとる【ゴーレムⅡ】とアリーナにおる【ゴーレムⅠ】の性能差はどうなっとる!」

 

『【ゴーレムⅡ】とほぼ同じだよ!だからリーちゃん一人でも倒せるだろうけど…あれから1年以上経ってるから…』

 

永遠

「盗んだ連中が1年間そのままで保管しとる訳もないか!」

 

 何かしらの強化措置をしとるじゃろうな…

 

『そういう事だね…とーくん、可能なら【ゴーレムⅠ】を捕獲してくれないかな?最悪コアさえ無事ならいいんだけど?』

 

永遠

「…分かった…織斑先生に話してそうするように頼んでおく!いざとなったら手足をぶった斬るだけじゃい!」

 

『それでいいよ!こっちでもできるだけ調べておくよ!』

 

永遠

「頼むぞい!」

 

 ワシが携帯を切ると…

 

生徒1

「なんで開かないのよ!?」

 

生徒2

「じゃああいつが撃ってきたらどうなるのよ!!」

 

生徒3

「やだぁ!?死にたくなーい!? 」

 

 扉が開かず避難出来ない生徒達がパニックを起こしておった

 

セシリア

「永遠さん!…これは…」

 

永遠

「これもアイツの仕業か?」

 

 ワシ等はアリーナにおる【ゴーレムⅠ】に視線を向けた

 

「永遠どうするの?」

 

永遠

「…避難を優先せねばならん!じゃが扉が開かんとなると…破壊して開けるしか…」

 

本音

「でもそんな事したら!」

 

永遠

「くっ!…織斑先生に連絡をする!扉を破壊する事を伝えたらすぐに始める!お主等は避難誘導を頼む!」

 

セシリア

「待って下さい!それでは永遠さんだけが!」

 

永遠

「今はそんな事を言うとる場合ではない!」

 

 ワシは今度は織斑先生に電話をかけた…繋がってくれるといいが…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「私だ!」

 

永遠

『織斑先生!観客席の扉が全て開かなくなっとる!そっちで開けられんのか!?』

 

千冬

「スマン!ハッキングを受けてシステムダウンしている。こちらから開ける事が出来ない。山田先生達が復旧に当たっているがまだ時間が掛かりそうだ!」

 

永遠

『くっ!…織斑先生…今は避難を優先すべきじゃろ?じゃから扉を破壊するぞ!』

 

千冬

「何っ!…いや…それしか手は無いか…分かった!緊急の処置として許可する!」

 

永遠

『構わんのか?勝手にやるつもりじゃったが?』

 

千冬

「私でもそうする!…所であの乱入者の事を知っているか?」

 

永遠

『さっき束さんから確認を取った。アレは束さんが造った無人IS【ゴーレムⅠ】じゃ!』

 

千冬

「やはりアイツの………」

 

永遠

『違う!【ゴーレムⅠ】は1年以上前に束さんの所から盗まれた物らしい。この件に束さんは無関係じゃ。今束さんにも調べて貰っとる。』

 

千冬

「そうか!…アイツじゃなかったのか…よかった…」

 

 束が犯人ではないと知って私は心から安堵した…

 

永遠

『それと束さんからあの機体を捕獲して欲しいとの事じゃ。いざとなったらコアだけでもいいそうじゃ!』

 

千冬

「分かった!出来るだけそうするように伝えておく!お前はオルコット達と協力して避難活動を頼む!避難が終わるまでは凰に足止めをさせる!」

 

永遠

『じゃったら鈴に【ゴーレムⅠ】の事を伝えて欲しい!性能は鈴の訓練相手と同じ程度らしいが、あの機体は強化されておる可能性がある!』

 

千冬

「盗んでそのままの状態で送り込む訳もない、という事か…分かった!」

 

永遠

『ではワシ等は避難活動を始める!』

 

千冬

「頼むぞ!何かあれば連絡しろ!」

 

 とりあえず、観客席の方はアイツらに任せるしかないか…

 

真耶

「織斑先生!二人に繋がりました!」

 

千冬

「よし!」

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

千冬

『聞こえるか?織斑、凰?』

 

「はい聞こえます!」

 

一夏

「ああ!」

 

千冬

『簡潔に言うぞ!学園は現在ハッキングを受けてシステムが落ちている。その上観客席の扉が全てロックされて生徒達が避難出来ない状態だ。』

 

一夏

「ええ!」

 

千冬

『今火ノ兄達が扉を破壊して避難させる為に動いている。凰!お前は避難が終わるまで奴が観客席に攻撃しない様に注意を引き付けておいてくれ。』

 

「分かりました!」

 

一夏

「千冬姉、俺は!」

 

千冬

『織斑先生だ!お前はピットに戻れ!』

 

一夏

「…え?」

 

千冬

『凰との試合でSEも余り残っていないだろ。足手まといになる前に戻れ。』

 

一夏

「そんな!鈴を置いて俺だけ逃げるなんて嫌だ!俺も残って戦うぞ!俺が鈴を守るんだ!」

 

 ………以前の私なら胸がときめいたでしょうね…

 

千冬

『…お前本気で言ってるのか?…織斑、いや一夏…あれだけ鈴に一方的にやられていたお前が鈴を守れるのか?今は緊急事態だ!寝言は寝てから言え!』

 

一夏

「そんな!?…何でだよ…何で俺を信じてくれないんだよ!」

 

千冬

『それ以前の問題だ!エネルギー切れ寸前の奴がいても邪魔なだけだと言ってるんだ!』

 

一夏

「ぐっ!…で、でも!」

 

「…はぁ~っ…千冬さん、もういいですよ。コイツの面倒は私が見ますから。これ以上は時間の無駄です。」

 

千冬

『…そうだな…織斑…残ると言うなら鈴の指示に従え!それ以外の行動はするな!』

 

一夏

「そんな!」

 

千冬

『嫌なら戻れ!私はそう言ってるが?』

 

一夏

「うっ!…分かっ…た…」

 

千冬

『それから可能なら奴を捕獲したい。最悪コアだけでも構わん。』

 

「分かりました!」

 

一夏

「…はい…」

 

 …自分では何もするななんて言われて落ち込んでるわね…まあこっちとしては勝手に動かれると邪魔だからその方がいいんだけど………ん?

 

千冬

『鈴。プライベートチャンネルで今話している。火ノ兄達からの情報だ。』

 

「(はい!永遠達は何て?)」

 

千冬

『あの機体は1年以上前に束の所から盗まれた【ゴーレムⅠ】と言う機体らしい。性能はお前の訓練相手にしていた機体と同じらしいが、強化された可能性が高い。同じと思って油断するな!』

 

「(分かりました!)」

 

 千冬さんからの通信を終わると一夏に指示を出した

 

「一夏!今から言う事をよく聞いて。アンタはアイツの周りを飛び回ってなさい。攻撃はせずに回避に専念するのよ。」

 

一夏

「な!何でだよ!アイツを倒すんじゃなかったのか!?」

 

「…アンタ話聞いてた?今永遠達が避難活動してるのよ?」

 

一夏

「そんな事分かってる!」

 

「千冬さんも言ってたでしょ。避難が終わるまで注意を引いていろって。アイツの攻撃はアリーナのシールドを突き破れるのよ!私達がアイツと戦ってその攻撃が観客席に当たったらどうするのよ!そんな事も分からないの!?」

 

一夏

「あ!?………スマン…」

 

「分かったら言った通りにしなさい!いい?付かず離れずに動いてアイツをアリーナの中心から動かさない様にするのよ!もう一度言うけど攻撃するんじゃないわよ!アンタはただでさえガス欠寸前なんだからね!【零落白夜】なんか使ったら一瞬で終わるわよ!」

 

一夏

「…分かった…」

 

「あれだけ我儘言って残ったんだからしっかりやりなさい!今私達がやる事は皆の避難が終わるまでの時間稼ぎをする事よ!」

 

一夏

「!?…ああ…」

 

 …はぁ…分かり易いほど落ち込んでるわね…まあ今はコイツのプライド何て二の次だわ

 

 ~鈴 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 ワシ等は早速扉を破壊する為に動き出した

 

永遠

「セシリアと簪、本音は右回りで扉を開けて行ってくれ!ワシは左回りで行く!」

 

セシリア

「分かりましたわ!」

 

「それなら時間も半分で済むね!」

 

永遠

「そういう事じゃよ!では行くぞ!」

 

セシリア&簪&本音

「はい!」

 

 ワシは【ドットブラスライザー】を展開して手近な扉に向かった

 扉の前はパニック状態の生徒達が押し寄せておった

 

永遠

「邪魔じゃな…仕方ない、荒療治で行くか!」

 

 <セットアップ ブラストマグナム>

 

 ワシは【マルチギミックサック】を片手銃にして真上に1発撃った

 

生徒達

「!?」

 

永遠

「今から扉を破壊する!どいてくれ!」

 

 ワシがそう言うと扉の周りにおった生徒達は扉から離れてくれた

 

 <セットアップ ブラストソード>

 

永遠

「ハァッ!」

 

 ワシは片手剣に変形させると扉を×の字に切り裂いた

 

永遠

「…よし!…早く行くんじゃ!慌てず騒がずに避難するんじゃぞ!」

 

生徒1

「うん!」

 

生徒2

「ありがとう!」

 

 避難が無事に行われているのを確認すると次の扉に向かった

 その途中でアリーナを見ると鈴と織斑が【ゴーレム】に自分達に注意を向けさせる為に動いておった

 ワシはその後も扉を破壊しながら進み反対側から同じようにしておったセシリア達と合流した

 

セシリア

「永遠さん!」

 

永遠

「セシリア、簪、本音…そっちも終わったようじゃな。」

 

「うん!後は皆が避難し終わるのを待つだけ。」

 

本音

「疲れたよ~…」

 

永遠

「そうじゃな~…」

 

 避難が無事に行われておるから安心しておると…

 

「一夏あああぁぁぁーーーっ!!!」

 

永遠&セシリア&簪&本音

「!?」

 

 ワシ等の真上からデカい声が聞こえた…ってこの声は!

 

永遠

「篠ノ之!?」

 

「男なら…男なら、そのくらいの敵に勝てなくてどうする!!」

 

 篠ノ之の奴がアリーナの放送室から叫んどるんか

 

永遠

「何をしとるんじゃアイツは!?」

 

「永遠!?【ゴーレム】が!?」

 

永遠

「何っ!?」

 

 簪に言われて【ゴーレム】を見るとワシ等の方向、正確にはワシ等の真上、放送室に腕を向けておった

 

永遠

「いかん!!」

 

 ワシが咄嗟に飛び上がると同時に【ゴーレム】も放送室に向けて砲撃した

 

「!?」

 

 ドガアアアァァァーーーンッ!!

 

セシリア&簪&本音

「永遠あああぁぁぁーーーっ!!!」

 

一夏

「箒いいいぃぃぃーーーっ!!」

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

「…今の…永遠…」

 

 箒が放送室で叫んだせいで私達に注意を向けていたのが台無しにされた

 【ゴーレム】は箒のいる放送室に攻撃をしようとしたけど、私と一夏のいる位置じゃ止める事が出来なかった

 砲撃が命中する瞬間、私が見たのは【ゴーレム】と放送室の間に割り込んだ永遠の【ドットブラスライザー】の姿だった

 

「…永遠………!?」

 

 煙が晴れるとそこには両手に楯を展開した【ドットブラスライザー】がいた

 後ろにある放送室も無事だった

 

「よかった…」

 

 ~鈴 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 何とか間に合った…しかしこの女…

 

「ひ、火ノ兄…助かったぞ!」

 

 コイツ!これだけの事をしておいて…

 

永遠

「黙れ!!」

 

「!?」

 

永遠

「セシリア、簪、本音…このバカ女を拘束しておいてくれ!後で織斑先生に引き渡す!ワシは今からあの無人機を始末する!」

 

セシリア

「分かりました!」

 

「ま、待て火ノ兄!私は…」

 

永遠

「黙れと言うとる!!いいか!!セシリア達が来るまでそこを一歩も動くな!!動けば貴様の罪が増えるからな!!」

 

 ワシは篠ノ之の言い訳を聞かずアリーナに向かった

 

「永遠!大丈夫なの?」

 

永遠

「危ないところじゃったがな…」

 

一夏

「…火ノ兄…箒を守ってくれて…ありがとう…」

 

永遠

「………篠ノ之はセシリア達に拘束するように頼んだ。後の事は織斑先生に任せればいい。織斑…文句あるか!」

 

一夏

「…いや…」

 

永遠

「さよか…避難もほぼ終わったようじゃからコイツを始末するぞい!」

 

「ええ!それでどうするの?」

 

永遠

「奴を動けんようにすればいいからの!手足を破壊すればいいんじゃ!後はワシがやるからお主等は下がっておれ!」

 

一夏

「ま、待てよ!いくらお前でも一人で何て!?」

 

永遠

「…織斑…スマンがワシは今、篠ノ之の馬鹿のせいで気が立っておる!巻き込まれたくなかったら鈴と一緒に離れておれ!」

 

一夏

「!?」

 

「まあそうよね…アイツのせいで永遠達だけじゃなくて私達の苦労も無駄にされたし…」

 

一夏

「鈴!」

 

「違うって言うの?」

 

一夏

「………それは…」

 

「ほら!さっさと下がるわよ!」

 

 鈴は織斑をピットまで引っ張っていった

 

永遠

「スマンな…鈴………さて…やるか!」

 

 今【ゴーレム】は攻撃目標をワシに変えて攻撃態勢に入っておった

 

永遠

「一気に片を付けてくれる!!」

 

 <セットアップ ブラストソード>

 

永遠

「必殺ファンクション!」

 

 <アタックファンクション コスモスラッシュ>

 

 【マルチギミックサック】を片手剣に変形させると剣にエネルギーを集中させ、巨大化させるとそのまま振り下ろし【ゴーレム】両腕を切り落とした

 ワシはすぐさま次の形態に変形させた

 

 <セットアップ ブラストマグナム>

 

永遠

「必殺ファンクション!」

 

 <アタックファンクション クイックスナイプ>

 

 ワシは片手銃にすると2丁の銃からそれぞれ3発、計6発の弾丸を【ゴーレム】の両足に向かって撃った

 

 ドガガガガガガアアアァァァーーーン!!

 

 全弾命中し両足を破壊された【ゴーレム】は倒れ伏した

 両腕と両足を破壊された【ゴーレム】はそれでも動こうとしたが暫くするとダメージの影響か機能を停止した

 

永遠

「…止まったようじゃな………織斑先生、終わったぞい!」

 

 ワシが連絡をするとすぐに織斑先生が出たんじゃが…

 

千冬

『火ノ兄…ご苦労だった…その機体はこちらで回収しておくからお前は休め。と言いたいが…スマンが取調室に来てくれ!』

 

 明らかに声がイラついとるな…理由はやはりアイツじゃろうな

 

永遠

「…セシリア達は?」

 

千冬

『オルコット達もソコにいる!それと篠ノ之の馬鹿も渡されたから安心しろ!アイツの処分は後で決める!』

 

永遠

「さよか…」

 

 とりあえず戻るかの…

 

 ~永遠 Side out~

 

 




 次回『第061話:報告と制裁』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第061話:報告と制裁

 ~千冬 Side~

 

千冬

「………」

 

 今、取調室には私と山田先生、オルコット、更識、布仏、凰、一夏の他にオルコット達に拘束された篠ノ之がいる

 火ノ兄はまだ来てはいないが始めるか…

 

千冬

「火ノ兄はまだだが取り調べを始める!まず全員に確認するが、織斑と凰の試合中にアリーナのシールドを破壊し謎のISが乱入。避難勧告を出した直後、学園のシステムがハッキングを受けシステムダウンを起こし、客席の扉がロックされ生徒達が避難出来ないと言う状態になった。…これに間違いはないな?」

 

 私が聞くと篠ノ之以外は頷いた

 

千冬

「では、生徒達の避難を行っていたオルコット、更識、布仏の報告を聞こう。」

 

セシリア

「はい。わたくし達は織斑先生の許可を貰い、永遠さんと一緒に開かなくなった扉を破壊する事で生徒の方達の避難経路を確保しておりました。」

 

「その際、私達3人と永遠で左右に二手に分かれました。そうする事で時間を短縮して避難を早める為です。」

 

本音

「全部の扉を壊してひの、火ノ兄君と合流したのは放送室の真下辺りでした。」

 

セシリア

「以上がわたくし達の行った避難活動の内容です。」

 

千冬

「よろしい!次にアリーナの乱入者と戦闘を行っていた凰、報告を頼む。」

 

一夏

「え?俺は?」

 

「アンタがちゃんとした報告出来るの?」

 

一夏

「…出来ません…」

 

「なら黙ってなさい!…私は乱入者が現れた時、まず織斑先生に指示を仰ぎました。セシリア達が避難活動をしているという事で、一夏と共に時間を稼ぐ為に私達に注意を向けさせ、乱入者が観客席に攻撃を行わない様にしていました。なお一夏のISはエネルギー切れ寸前という事もあって攻撃はさせず、回避に専念させていました。以上です。」

 

千冬

「分かった…織斑、今の凰の報告に間違いはあるか?」

 

一夏

「ありません…」

 

千冬

「よろしい…最後に私からの報告だが…まあ分かっていると思うがあの乱入者は火ノ兄が手足を破壊して機能を停止させた。」

 

 私の報告を聞いてオルコット達は安心していると…

 

 コンコン…

 

千冬

「入れ!」

 

永遠

「失礼するぞい。」

 

 遅れていた火ノ兄が入って来た 

 

千冬

「火ノ兄、ご苦労だった。」

 

永遠

「気にせんでいい。それで、どの程度終わったんじゃ?」

 

千冬

「全員の報告が終わった所だ。後は軽く注意をして解散と行くところなんだが…お前達が報告にはあえて出さなかった奴の話を聞く所だ。」

 

 私がそう言うと全員の視線が拘束されたそいつに向けられた

 

「………」

 

千冬

「…篠ノ之…避難指示はお前も聞いていた筈だ…何故あんな事をした…」

 

「………」

 

千冬

「お前には自殺願望でもあるのか?」

 

「…いえ…」

 

千冬

「ならあの行動の理由は何だ?」

 

「…わ、私はただ…一夏に喝を入れようと…しただけで…」

 

一夏

「え?」

 

千冬

「…喝を入れる…か…馬鹿かお前は!」

 

「!?」

 

千冬

「それに何の意味がある?そんな事をして力が出るのは空想の世界だけだ!お前は現実と空想の区別もつかんのか!」

 

「い、いえ…」

 

千冬

「あの時お前がした事がどれだけ多くの者達を危険に晒したと思ってるんだ!」

 

「…え?」

 

千冬

「…分かってないのか!!なら聞かせてやる!まずは火ノ兄、避難活動をしていたお前が代表して言え!!」

 

永遠

「ん!…ワシ等は扉を破壊し終わると生徒達が無事に避難しとるかを遠目で確認しとってな、順調に進んどるようなんで安心したんじゃが…ワシ等のいた場所の真上から馬鹿デカい声が聞こえたんじゃよ。篠ノ之…お前じゃ!」

 

「ぐっ!」

 

永遠

「ワシ等がおった場所は放送室の真下、つまり一番避難の済んどらん場所じゃ!そんな所であんな大声出しおって!乱入者に攻撃して下さいと言っとるようなもんじゃ!」

 

「…ぐうぅっ!」

 

千冬

「次にオルコット!篠ノ之を拘束しに行った時の事を頼む!」

 

セシリア

「はい。…わたくし達3人は篠ノ之さんを拘束しに放送室に向かいました。ですが放送室への通路と室内には気を失った数人の生徒が倒れていました。あの状況から考えて篠ノ之さんが放送室に向かうのを止めようとして気絶させられたと思われます。」

 

千冬

「…どうなんだ篠ノ之?」

 

「ち、違います!私はそんな事…」

 

千冬

「していないか…言っておくがその気絶した生徒達から事情を聞けば誰にやられたかすぐに分かる事だぞ。」

 

「!?」

 

千冬

「最後に凰!」

 

「分かりました!さっきも言ったように私と一夏は避難が終わるまでの時間を稼ぐ為、乱入者の眼を私達に向けさせていました。ですが、箒が放送室で叫んだせいで放送室に向けて攻撃される事になり、私達の苦労が水の泡にされました!」

 

「なっ!」

 

千冬

「これで分かったか!お前一人の勝手な行動のせいで多くの生徒達が危険に晒されたんだ!」

 

「………」

 

一夏

「ま、待ってくれよ!確かに攻撃はされたけど火ノ兄が防いでくれたお陰でケガ人も出なかったんだから…」

 

永遠

「馬鹿か貴様は!!」

 

一夏

「!?」

 

永遠

「貴様が言うとるんは結果論にすぎん!あの時は偶然ワシがおって、奴の砲撃にワシがギリギリ間に合って防げただけじゃ!そもそもこの馬鹿女があんな事せんかったら攻撃自体されんかったわ!それは奴を引き付けておった貴様が良く分かっとるじゃろうが!!」

 

一夏

「うっ…」

 

永遠

「織斑!ワシも貴様も一人の被害者も出さん様にする為に動いておったんじゃぞ!それをコイツは邪魔した上に自分勝手な事をして他の生徒達を危険に晒したんじゃ!セシリアが言うておった気絶させられた生徒達がそうじゃ!!」

 

一夏

「………」

 

永遠

「いいか!今回ケガ人が出んかったのは本当に運がよかっただけじゃ!!今回無事だからと言って次も上手くいくとは限らんのじゃぞ!!それとも何か!!貴様は自分がおれば誰もケガ人を出さんのか!!その根拠は一体何処にある!!あるなら教えんか!!」

 

一夏

「そ、そんな物…ある訳…」

 

永遠

「じゃったら黙っとれ!!そもそもコイツを庇う必要がどこにある!!コイツは処罰されても褒められる事は何一つしとらんのじゃぞ!!」

 

「…き、貴様!?」

 

一夏

「オイ!それは言い過ぎだぞ!箒は俺を応援する為に…」

 

永遠

「時と場所を考えろと言うとるんじゃ!あの時コイツがすべき事は他の生徒達と一緒に避難する事じゃ!応援する事では無いわ!!」

 

一夏

「そ、それは…」

 

 バンッ!!

 

千冬

「全員落ち着け!!」

 

全員

「………」

 

 私が机を殴って怒鳴ると部屋の中が静かになった

 

千冬

「…織斑…お前が篠ノ之を庇うのは勝手だ。だがなコイツのした事は決して許される事では無い。既に篠ノ之を処罰する事は学園の方で決定している。」

 

「うっ…」

 

千冬

「今から篠ノ之の処罰の内容を言う所だが…その前にお前に一つ確認したい事がある。」

 

「え?」

 

千冬

「…お前…試合前何処にいた?」

 

「!?」

 

千冬

「織斑のピットにいたな?誰が許可したんだ?」

 

一夏

「え?ちふ「織斑先生だ!」…織斑先生から許可は貰ってるって言ってたけど…」

 

「い、一夏!?」

 

千冬

「私はそんな許可を出していない!」

 

一夏

「え!それじゃあ…」

 

千冬

「お前また勝手に入って来たな…前回の事で懲りてないのか?それとも忘れていたのか?」

 

「………」

 

 コイツの事だから恐らく後者、忘れていたんだろうな…

 

千冬

「お前にはそれも加えた処分を下す!懲罰房に謹慎1週間、その後自室謹慎1週間、その間に反省文250枚の提出だ!前回と同じ様に軽くするつもりは無い!」

 

「………はい…」

 

千冬

「さて、お前達はもういいぞ、対抗戦は中止になったから今日はもう帰って休め。篠ノ之、お前は今から私が懲罰房に連れて行く!」

 

「…はい…」

 

一夏

「…箒…」

 

「一夏。」

 

一夏

「何だ?」

 

「話があるから少し付き合って。」

 

一夏

「え?…ああ、分かった…」

 

永遠&セシリア&簪&本音&千冬

「………」

 

 …一夏とケリを付けるみたいだな…

 

 ~千冬 Side out~

 

 




 次回『第062話:鈴の決意』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第062話:鈴の決意

 ~一夏 Side~

 

 俺は話があると言う鈴の後を着いて歩いていた

 一体俺に何の用だろう?

 そう言えば、鈴も千冬姉達みたいに俺に冷たくなった気がするな…

 鈴の話が終わったら聞いてみるか…

 

「………ココでいいか…」

 

一夏

「え?」

 

 俺が考え事をしながら歩いていると、気付いたら俺達は学園の屋上に来ていた

 

一夏

「なあ鈴、話ってなんだ?」

 

「………」

 

 鈴は俺に背中を向けたまま何も言わなかった

 鈴が話さないなら俺の聞きたい事を先に聞こうと思った時…

 

「…一夏…」

 

 鈴が口を開いた

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 ワシ等は鈴の事が気になり後をつけておった

 二人は屋上に上って行ったところでワシ等は後をつけるのはやめる事にしたんじゃ

 

セシリア

「鈴さん…」

 

本音

「リンリン…大丈夫かな…」

 

永遠

「…さてな…鈴が何を考えておるのかは大体分かるが…」

 

「あの最低男にそれが伝わるかだよね?」

 

永遠

「確かにそうじゃが…最低男は言い過ぎな気が…」

 

「どこが?」

 

セシリア

「彼は最低ですわよ?」

 

本音

「うんうん!」

 

永遠

「………そうじゃな…」

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

「…一夏…」

 

一夏

「何だ?」

 

「…アンタさ…なんで私が怒ったのか…ホントに分からないの?」

 

一夏

「え?………ああ、俺、あれから言葉には気を付けているつもりなんだけど、お前を怒らせる様な事を言った覚えが無いんだけど…」

 

 鈴の話ってその事だったのか?

 

「…そっか…分からないんだ…」

 

一夏

「鈴?」

 

「なら教えてあげるよ。…あの時、アンタ約束を思い出したからって私に確認しに来たよね?もう一度その約束言ってくれない?」

 

一夏

「え?…ああ…『料理が上達したら毎日私の酢豚を食べてくれる?』…だよな?」

 

 これで間違い無い筈だけど…

 

「それで合ってるよ。」

 

 良かった!間違ってなかった!…でもそれなら何を怒ってるんだ?

 

「あれね…私の告白だったんだよ。」

 

一夏

「………え?」

 

 …今なんて言った…告白?

 

「日本にはさ…『毎日お味噌汁を食べて欲しい』って言うプロポーズがあるんだよね?私、中国生まれだからそれを中国風にしてあの日アンタに伝えたんだよ。」

 

一夏

「…え…え?」

 

 …ちょっと待て!…なら俺があの時、鈴に言った事って…

 俺は火ノ兄に臨死体験させられた日に鈴に言った言葉を思い出した

 

一夏

『それにしても、まるでプロポーズ『()()()』な約束だけど…まあ、鈴が『()()()()』を言うわけないか♪』

 

 だ、だから火ノ兄は…

 あんなに怒って…俺を半殺しにしたのか…

 

一夏

「あ…ああ…お、俺…」

 

「あの時は私なりに勇気を振り絞って言った言葉なんだけど…アンタには告白として聞いても貰えなかったのね…」

 

一夏

「!?…俺………鈴に…」

 

 …なんて事を…言ったんだ…

 

「…一夏…私ね…アンタが好きだったんだよ…でも………もう無理…」

 

一夏

「え!?」

 

「…アンタには愛想が尽きた…」

 

一夏

「!?………り、鈴?」

 

「…だから、アンタはもうただの幼馴染…ただの友達でしかない………そう言う訳だからこれからは友達としてよろしくね。」

 

一夏

「ぅ…ぁぁ…スマナイ鈴!!」

 

 俺は地面に頭を擦りつけて土下座をした…頭より先に体が反応していた…

 

一夏

「…俺が…俺が悪かった!!」

 

「………」

 

一夏

「お前の言う通りだ!…悪いのは全部俺の方だった!…火ノ兄達に言われた事を俺は何一つ分かって無かった!」

 

 今の俺には謝る事しか出来なかった…

 

「私の事はもういいわよ………でもね…試合の時にも言ったけど、アンタは私以外にも無自覚に沢山の女の子達の想いを踏み躙って来たのよ…」

 

一夏

「そ、そんな!?」

 

「…ホントに鈍感ね…言っとくけどアンタは小中学校の頃から、沢山の子達に好意を寄せられてたのよ。」

 

一夏

「え?」

 

「…でもアンタはその異常なまでの鈍さのせいで、誰の想いもアンタには届かなかった…私みたいに告白しても気付かなかった…アンタは無自覚にみんなを泣かせてきたのよ。」

 

一夏

「…ぁ…ぁ…ぁぁっ…」

 

 …信じられなかった…鈴の言った事が俺には最初理解出来なかった…でも…だとしたら俺は…

 

「今更過ぎた事をとやかく言うつもりは無いわ…でもね、アンタは自分に想いを寄せていた子達を悲しませてきた…傷付けてきた…それだけは…絶対に忘れないで!!」

 

一夏

「………」

 

「私の話は終わりよ…じゃあね…」

 

 鈴はそう言って俺の方に歩いてきた

 そして、未だに土下座をしている俺の横を通り過ぎる時…

 

「…サヨナラ…一夏…」

 

一夏

「!?」

 

 その一言に振り向いた時には鈴は屋上を後にしていた…

 この時、俺は気づいた…鈴は、一度も俺と顔を合わせようとはしていなかった…

 俺はそのまま力なく項垂れて…

 

一夏

「………俺は…最低だ…」

 

 込み上げてくる罪悪感に苛まれて、その場を動く事が出来なかった…

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

「………」

 

 屋上から降りてきた鈴は近くにおるワシ等にも気づかずに下に降りて行った

 ワシはセシリア達に目配せすると全員分かっとったのか頷くと鈴を追いかけて行った

 残ったワシはどうしようか考えとると…

 

千冬

「…終わったのか?」

 

 織斑先生がやって来た

 

永遠

「そのようじゃ…篠ノ之は懲罰房に放り込んだんか?」

 

千冬

「ああ、反省するかは微妙だがな…」

 

永遠

「じゃろうな…あやつは謝るという事を知らんようじゃしな…」

 

千冬

「確かにな………オルコット達は?」

 

永遠

「鈴を追いかけて貰った…今は一人にした方がいいかもしれんが…」

 

千冬

「そうだな…アイツらにも世話をかけるな………それにお前にも…」

 

永遠

「ワシが勝手にやっただけじゃよ。」

 

千冬

「本当にスマンな…お前達には弟の事でも迷惑をかける…」

 

永遠

「じゃな…まあ、鈴との一件であの馬鹿も少しは分かったじゃろ…」

 

千冬

「だといいがな…」

 

永遠

「そう言われると不安じゃな…織斑先生…奴はまだ上におるから…少し覗いてみんか?」

 

千冬

「ふむ…そうだな…一度見ておくか。」

 

 ワシの提案に織斑先生も乗ってくれた

 そのままワシ等は屋上への階段を昇って行った

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

 一夏と別れて私はいつの間にか学園の海岸に来ていた…

 

セシリア

「…鈴さん…」

 

「セシリア、簪、それに本音も………聞いてたの?」

 

「…ううん…聞いてないよ…でも何を話してたのかは分かる。」

 

本音

「…リンリン…その…」

 

セシリア

「…もういいのですか?」

 

「…うん…言いたい事は全部言って来た…」

 

セシリア

「…そうですか…」

 

「あ!?」

 

 セシリアはあの時と同じように優しく抱きしめてくれた

 

「セシリア………!?」

 

 すると簪と本音も私を抱きしめた

 

セシリア

「いいんですよ…泣いても…」

 

「見られたくないなら私達が隠すから…」

 

本音

「だから…ね…リンリン…」

 

「…セシリア…簪…本音………うっ…うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーん!!!!」

 

 …私の恋は終わった…

 …でも、私には大切に思ってくれる人達がこんなにいてくれる…

 …私にはそれだけで十分だった…

 …ありがとう…皆…

 

 ~鈴 Side out~

 

 




 次回『第063話:MA・DA・O』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第063話:MA・DA・O

お気に入り1300突破!!

これからも頑張ります!!


 ~一夏 Side~

 

一夏

「………鈴………何で…俺は…鈴の気持ちに…気付かなかったんだ…」

 

 今の俺には後悔と罪悪感しかなかった…

 俺が今まで鈴に対して口にしてきた言葉が走馬燈の様に蘇って来た…

 そして鈴が教えてくれた俺が今まで傷付けて来た子達の事…

 正直その子と会っても俺はその子が俺に好意を持っていたかすら分からない…

 でも鈴があそこまで言ったって事は全部本当なんだ…

 俺は一体どれだけの子達の想いを踏み躙って来たんだ…

 

一夏

「…ううぅぅっ…ああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!」

 

 何で…何で俺はこんな事にも気づかなかったんだ!

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

一夏

「ああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!」

 

 どうやら鈴に思いっきりフラれたようだな…

 これでアイツも自分の鈍感さでどれだけの人達を傷つけて来たか分かるだろう…

 鈴には本当に悪い事をしてしまったな…私の方からも謝っておくか…

 

永遠

「………」クイッ

 

 火ノ兄が指で下を指した…戻ろうという事か…

 

 ガタッ

 

 だが私が頷いた時、物音を立ててしまった

 

千冬

(しまった!?)

 

一夏

「鈴か?鈴なのか?」

 

 アイツ…鈴が戻って来たと思ったのか?

 仕方ない気付かれた以上出て行くか…

 私が火ノ兄に目配せをすると火ノ兄も頷いた…どうやら同じ事を考えたらしい

 私達は屋上に出て行った

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 俺は屋上の扉から物音がしたのに気付いた…

 もしかしたら鈴が戻って来たのかもしれない…

 そんな考えをしていると…出て来たのは…

 

一夏

「りっ…千冬姉…火ノ兄………鈴じゃ…ない…」

 

 千冬姉と火ノ兄の二人だった

 

千冬

「残念だったな鈴じゃなくて…しかし、随分と女々しい奴だな?」

 

一夏

「…どういう事だよ?」

 

千冬

「鈴が戻って来るとでも思っていたのか?」

 

一夏

「!?…な、何の事だよ!」

 

千冬

「鈴にフラれたか?」

 

一夏

「何でそれを!…まさか覗いてやがったのか!?」

 

永遠

「んな事しとらんわ!じゃがな、今の貴様を見れば鈴が何を言ったのかは分かるわい!」

 

一夏

「ぐっ!?」

 

千冬

「大方、鈴に『これからはただの友達』とでも言われたんだろ?」

 

一夏

「うぐっ!?」

 

永遠

「どうじゃ織斑?一方的にフラれた気分は?」

 

一夏

「何だと!?」

 

永遠

「貴様が今までやって来た事じゃ!」

 

一夏

「うっ!?」

 

 それを言われたら何も言えなかった…けど…

 

一夏

「…お前は…鈴の気持ちを知ってたのか?」

 

永遠

「当り前じゃ。あんなに分かり易いんじゃからな。気付かんかったのは貴様だけじゃ。」

 

一夏

「そんな!」

 

永遠

「それだけ貴様が鈍いという事じゃ!ワシはな…鈴の応援をしとった。」

 

一夏

「え?」

 

永遠

「鈴は貴様の事が本当に好きだったんじゃな…わざわざこの学園に転入までしてきたんじゃからな…」

 

一夏

「…え?…そ、それって…」

 

永遠

「馬鹿の貴様でも分かったか!鈴はな、貴様に会う為にこの学園に来たんじゃ!」

 

一夏

「お、俺に…会う為…」

 

永遠

「じゃからワシは鈴の応援をしようと思った。じゃが、この学園に来た鈴に対して貴様がした事は何じゃ?言った言葉は何じゃ?」

 

一夏

「………」

 

永遠

「また忘れたか?それとも自分の都合のいいように脳内変換したんか?」

 

一夏

「…ちゃんと…覚えてる…」

 

永遠

「ほぉ~…驚いたのぉ…鈴の告白も間違えて覚えておる様な奴が覚えておったのか?」

 

一夏

「ぐっ!」

 

永遠

「約束を思い出してもそんな訳無いと本人の前で笑いながら否定しておった奴がのぉ…」

 

一夏

「ぐぐっ!」

 

永遠

「まあ、ワシは別に貴様の事なんぞどうでもいい…それに、鈴には悪いが貴様の事を諦めたのは良かったと思っとるからな。」

 

一夏

「な、何だと!?」

 

永遠

「何故貴様が怒る?鈴の事を何とも思っとらんのじゃろ?じゃからあげな事を平然と口に出来たんじゃろ?」

 

一夏

「ぐっうっ…」

 

永遠

「この際じゃ、ハッキリ言ってやる!貴様に鈴は相応しくない!!」

 

一夏

「なっ!?」

 

永遠

「鈴にはもっと相応しい者がおる!貴様の様な最低なクズには勿体なさ過ぎる娘じゃ!!」

 

一夏

「ク、クズ…」

 

永遠

「そうじゃ!貴様はクズじゃ!男としても人としても最低なクズじゃ!」

 

一夏

「あ…ああ…」

 

永遠

「自分に向けられる好意にも気づかず、平然とその想いを踏み躙る様な奴が、クズ以外の何だと言うんじゃ!!貴様は『大切な人を守る』とほざいておきながらやっとる事は何じゃ!!貴様は自分の言動と行動が矛盾しとる事に気づかんのか!!!」

 

一夏

「うっ………そ、れは…」

 

 ………火ノ兄の…言う通りだ…

 

千冬

「一夏…お前が誰を好きになろうと勝手だ。だがな…相手の想いをまた踏み躙る様な事をした時は…その時は、例え実の弟だろうと私は許さんからな!!」

 

一夏

「………はい…」

 

永遠

「本当に分かっとるのか?」

 

一夏

「…いくら俺でも…もう分かってる…」

 

永遠

「…まあ、また懲りずにやればその時はまた臨死体験をさせるだけじゃ。」

 

千冬

「そうだな…その時は頼むぞ。」

 

永遠

「任せときんしゃい!!次はパワーボムで行こうかの?」

 

一夏

「…やる事が決まってるのかよ…」

 

永遠

「貴様ならまた鈴の様な者を出しかねん!信用出来る分けなかろぉ!」

 

千冬

「確かに信用出来んな!」

 

一夏

「…そこまで信用無いのかよ…」

 

永遠

「当り前じゃ!むしろ何処を信用しろと言うんじゃ!!ワシのパワーボムを喰らいたくなかったらその鈍感でお気楽な性格を直すんじゃな!分かったか『マダオ』!!」

 

一夏

「マ、マダオ?何だよそれ!」

 

永遠

「『まるでダメな織斑一夏』…略してマダオじゃ!」

 

一夏

「そんな呼び方するな!!」

 

千冬

「今のお前にはピッタリの呼び方だが?」

 

一夏

「ち、千冬姉まで…」

 

永遠

「それとも『クズでダメな織斑千冬の弟』…『クダオ』と呼んだ方がいいかの?」

 

一夏

「止めてくれ!?」

 

 俺の名前すら入って無いあだ名じゃないかよ!

 

千冬

「呼ばれたくなければ二度とこんな事を起こすな!!お前が今までしてきたことはクダオと呼ばれても仕方のない事なんだからな!!」

 

一夏

「うっ………はい…」

 

永遠

「今日一日は鈴に言われた事を反省しとれ!…反省した所で鈴はもう貴様に振り向く事は無いがな…鈴なら貴様の良い嫁になれたじゃろうに、見限られるとはとんだ大馬鹿もんじゃ!」

 

一夏

「!?…うっ…ううっ…」

 

千冬

「火ノ兄の言う通り今日は反省していろ!」

 

永遠

「ではな…マダオ。」

 

一夏

「…マダオって言うなよ…」

 

 二人はそう言い残して屋上から出て行った…

 俺は弱々しくそう言い返す事しか出来なかった…

 

一夏

「………マダオ、か………鈴………」

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 屋上を後にした私は火ノ兄に一夏の今後を聞いてみた…

 

千冬

「火ノ兄…」

 

永遠

「ん?何じゃ?」

 

千冬

「…一夏は大丈夫だと思うか?」

 

永遠

「さあのぉ…奴は前科がありまくるから何とも言えんよ。」

 

千冬

「はぁ…そうだな…」

 

 その通りだから何も言えんな…

 

永遠

「…それに、奴にはああ言ったがワシも最低な男じゃからな…」

 

千冬

「何?」

 

 …そうか…コイツ…

 

千冬

「………気付いていたのか…」

 

永遠

「セシリア、簪、本音…自分に向けられとる好意くらいは分かるわい。」

 

千冬

「分かっているなら何故お前が最低何だ?」

 

永遠

「ワシはあの3人に甘えとるんじゃよ。…今はまだ、クラスメイト、友人として接していたいんじゃ…」

 

千冬

「…火ノ兄…」

 

永遠

「無論、ワシもいつかは答えを出さねばならん…その時、あの3人の誰かを選ぶのか、それとも他の誰かを選ぶのか…それはまだ分からん…じゃが今は…」

 

千冬

「フッ…いや、お前は最低な人間では無いぞ。アイツらの事をちゃんと考えているだろ?あのマダオとは違うよ。」

 

永遠

「…そう言って貰うと気が楽になるのぉ…」

 

千冬

「全くお前の爪の垢をあの馬鹿に飲ませてやりたいな。」

 

永遠

「飲んでも奴には効かんじゃろ?」

 

千冬

「…そうだな…」

 

 そんなものであの馬鹿の鈍さが治るなら苦労はしないか…

 

永遠

「織斑先生…話は変わるがワシの事を簪と本音、鈴に話そうと思うんじゃが…」

 

千冬

「あの3人にか?…まあお前がいいなら私は構わんぞ。アイツ等はお前の家にも行った事があるから束とも面識があるしな。」

 

永遠

「スマンな…」

 

千冬

「それにアイツ等なら誰かに話すなんて事はしないだろうしな。」

 

永遠

「そうじゃな。」

 

千冬

「それで何時頃話すんだ?」

 

永遠

「今度の週末にワシの家に呼んで話そうと思っとる。学園の中じゃと誰が聞いとるか分からんからな。」

 

千冬

「分かった。アイツ等とオルコットの外泊許可は取っておいてやる。」

 

永遠

「何から何までスマンな…」

 

千冬

「気にするな。お前には一夏の件で迷惑をかけているからな。これでお相子だ。」

 

永遠

「ならそれに甘えさせてもらうかの。」

 

千冬

「それでいい!」

 

 全く一夏もこのくらい気配りが出来ればいいんだがな…

 

 ~千冬 Side out~

 

 




 次回『第064話:暴露③』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第064話:暴露③

 

 ~簪 Side~

 

 対抗戦の次の日、私と本音、セシリアに鈴の4人は永遠に屋上に呼び出された

 

「永遠、何の用なの?」

 

永遠

「ウム、実はな今度の週末じゃがワシの島に来てほしいんじゃ。」

 

「え?何で?」

 

永遠

「セシリアが知っとる事をお主等にも話そうと思うてな。」

 

セシリア

「よろしいのですか!?」

 

永遠

「ウム、束さんと織斑先生にも相談してある。二人は構わんそうじゃ。」

 

セシリア

「そうですか。」

 

永遠

「それに簪達なら誰かに話したりせんじゃろうしな。」

 

セシリア

「そうですわね。」

 

「ねえ!アンタ達だけで納得しないでよ!セシリアが知ってる事って何?」

 

セシリア

「…ココでは詳しく言えませんが永遠さんの秘密です。」

 

簪&本音&鈴

「えっ!?」

 

「永遠の秘密って!」

 

セシリア

「皆さんも気にはなっていたのでしょう?」

 

「それは…確かにそうね…アンタのISの事とか気になってたし…」

 

本音

「うんうん!」

 

永遠

「それも含めて話すんじゃよ。」

 

「でも、何で私達に?」

 

永遠

「お主ら3人はワシの島にも来た事があるし、束さんの事も3体目の事も知っとるからな。何よりお主等を信用しとるからじゃよ。」

 

簪&本音

「…//////」

 

「クサい台詞ね~♪」

 

永遠

「カカカッ♪そうじゃな!自分で言ってて恥ずかしいわい!じゃがお主等を信用しとるのは本当じゃよ。」

 

セシリア

「フフッ♪それでどうします?話を聞きたいですか?」

 

 そんな事決まってる!

 

「私は聞きたい!」

 

 セシリアだけが知ってる秘密何て…知っておかないと差がつけられちゃう!

 

本音

「私も~♪」

 

「私もよ。ずっと気になってたし。」

 

永遠

「ならスマンが週末は予定を開けといてくれ。織斑先生にはすでに許可を貰っとる。」

 

簪&本音&鈴

「はい!」

 

 永遠の秘密か…一体なんだろ…

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~楯無 Side~

 

楯無

「…いいなぁ~…」

 

 火ノ兄君の家にお泊り…しかも今回は火ノ兄君の秘密を教えて貰う為に行くのか…

 彼に何かあるのは知ってるけど私には教えてくれないんだよな~…調べても何も出ないし…

 

楯無

「…いっその事、後をつけようかな「そんな事を許すとでも?」え?」

 

 私の言葉を遮って来た声を聞いて私は壊れたロボットみたいにギギギッと音を立てる様に後ろを向いた…そこにいたのは…

 

楯無

「…う、虚ちゃん…何でココに…」

 

「貴方が仕事を放ったらかしにしていなくなったからです!仕事も終わってないのに何してるんですか?」

 

楯無

「…あ、あのね…これは、その…」

 

「言い訳は後で聞きます!行きますよマダオ嬢様!」

 

楯無

「ま、待って虚ちゃん!その呼び方はやめて!!」

 

「仕事が終わるまではこの呼び方をすると言った筈ですよ。マダオ嬢様。」

 

楯無

「うわ~~~~~ん!!」

 

 ~楯無 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

一夏

「………」

 

 鈴にフラれた日から俺の周りは変わった…

 その理由はその鈴だ…

 鈴の俺に対する態度は今までとまるで変わって無かった…

 今だって一緒に昼食を食べてるし、最初はそう思っていた…

 でも2,3日するとその変化に気付いた…鈴は俺に対して深く関わらなくなっていた…

 今までの鈴なら俺が何かすると必ず反応していたのに今はそれが無くなっていた…

 この時になって俺はようやく火ノ兄が言っていた言葉を理解した…

 

永遠

『鈴はもう貴様に振り向く事は無い』

 

 あれは…こういう事だったんだ…

 

「一夏、どうしたの?早く食べないと時間が無くなるわよ?」

 

一夏

「え!?…あ、そうだな…スマナイ…」

 

「変なの?」

 

一夏

「………な、なあ鈴?今度の休みに家に帰ろうと思うんだけど…」

 

「ふ~ん…で?」

 

一夏

「…え、ああ…それで久しぶりに弾達に会いに行こうと思ってるんだ。だからお前も一緒にどうかなって…」

 

「弾達か~…久しぶりに会いたいわね~…」

 

一夏

「な、なら行かないか?」

 

「悪いけど私はパス。その日は予定が入ってるのよ。だからアンタ一人で行ってきて。今度別の日に誘ってよ。」

 

一夏

「そ、そうか…それじゃあ仕方ないか…」

 

 鈴のこんな態度も最初は冷たくなったんだと思った…でも違った…

 本当に俺の事をただの友達にしか思っていないんだ…

 それ以上の人間として見てないんだ… 

 これが、俺が今まで無自覚に人を傷つけて来た事への代償か…

 

一夏

「…本当に馬鹿だな…俺…」

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

 永遠が秘密を話してくれると言ってから数日、待ちに待った週末になった

 私達はいつも通りISで火紋島に向かった

 

「いらっしゃ~い♪みんなよく来たね♪」

 

クロエ

「お待ちしておりました♪」

 

 到着した私達を束さん達が出迎えてくれた

 

セシリア

「よろしくお願いします♪」

 

 私達は居間に来ると永遠が話を切り出した

 

永遠

「…さて、早速話すとしようかの。お主等も早く知りたいじゃろ?」

 

「うん!」

 

永遠

「話す前に言っておくがワシが今から言う事は本当じゃ。信じるかどうかはお主等に任せるが、誰にも言うてはならん。よいかの?」

 

「うん!」

 

「分かったわ。」

 

本音

「は~い♪」

 

永遠

「よろしい…実はな………」

 

 そして永遠は自分の正体を話してくれた

 詳しい内容は【第00話:プロローグ】を呼んで

 全てを話し終わった永遠に、私達は…

 

本音&鈴

「アハハハハハハハハハーーーーー………っ♪」

 

「プッ…クフッ…ククククッ…!」

 

 本音と鈴はお腹を抱えて大笑いしていた

 私も必死に笑いを堪えていた

 

永遠

「笑いすぎじゃい!!」

 

 ガンッ!ゴンッ!ガンッ!

 

「アタッ!」

 

本音

「アウッ!」

 

「イダッ!」

 

 永遠の拳骨が私達に振り下ろされた

 

「やっぱりこうなったね…」

 

セシリア

「はい…」

 

クロエ

「皆さん必ず最初に笑いますからね…」

 

 ちなみにセシリアと束さん、クロエさんの3人は永遠が話を始めると耳栓をしていた

 最初は何でそんな事をしたのか分からなかったけど、話を聞いて笑わない為だったんだ…

 

「ううっ…知ってたなら教えてくれても…」

 

 私は涙目になって頭をさすっていた

 

セシリア

「ですが耳栓をしたら話が聞けませんわよ?」

 

「確かにそうだけど~…」

 

本音

「酷いよ~…」

 

「ごめんね~♪流石に束さんもとーくんの拳骨はまた喰らいたくないんだよ~♪」

 

クロエ

「兄様の拳骨って効くんですよね~…」

 

 それから暫くして頭の痛みがやっと引いて来た…

 

「痛かった…でも永遠が別の世界からの生まれ変わりなんて…」

 

「流石にいきなりは…」

 

本音

「うん…信じられないね~…」

 

永遠

「まあそれが普通の反応じゃよ。いきなり信じろと言う方が無理があるからの。」

 

「…でもセシリアや束さん達は信じてるんですよね?」

 

セシリア

「はい♪」

 

「モチロンだよ♪それにとーくんのISがその証拠だからね。」

 

「…神様が造ったISか…だからあんな無茶苦茶な能力を持ってたのね…」

 

本音

「【ラインバレル】がそうだもんね~。」

 

クロエ

「その通りです。」

 

永遠

「さて、ワシとワシの機体の事は話した。もう一度言うが誰にも話すでないぞ?」

 

「うん、分かってる!」

 

「大丈夫よ!」

 

本音

「誰にも言わないよ♪」

 

永遠

「よろしい!ならこれから改めてよろしゅう頼むぞ。」

 

「うん♪」

 

 これでセシリアに少しは追いつけたかな…

 

永遠

「それで、何か聞きたい事はあるかの?」

 

「あ!それなら…どうして【ラインバレル】だけ束さんに預けてるの?ずっと気になってたんだけど…」

 

「それ私も気になってた!」

 

本音

「私も~♪」

 

永遠

「ソレか…束さん、言ってもいいかの?」

 

「いいよ♪それは束さんが教えてあげる。新型開発の為に使わせて貰ってるんだよ♪」

 

「新型ですか?」

 

 それから私達は束さんから【ラインバレル】を預かっている理由を聞いた

 ISを宇宙に還す…ISで宇宙に行く…その為に搭乗者の生存率を上げる為に【ラインバレル】を研究していた

 束さんの目的を聞いて私はとても感動した…だから…

 

「束さん!私にも手伝わせて下さい!」

 

「私もです!協力させて下さい」

 

本音

「お手伝いしま~す♪」

 

「ありがとう♪じゃあこれからよろしくね♪」

 

簪&本音&鈴

「はい♪」

 

セシリア

「よかったですわね~♪」

 

永遠

「そうじゃな。」

 

クロエ

「はい♪」

 

 その後も永遠と束さんに色々な事を聞いた

 束さんが開発している第5世代の事…

 永遠のISが実は第6や第7世代だった事…

 今日は本当に驚きの連続だった…

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

?1

「馬っ鹿野郎おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 バキッ!

 

一夏

「ぐっ!!」

 

 俺を殴ったのは昔馴染みの親友・五反田弾…

 俺は休みを利用して弾の祖父が経営している五反田食堂に来ていた

 俺は鈴にフラれた事、それまで自分が鈴にしてきた事を弾に話すと力一杯殴り飛ばされた

 

?2

「ちょっとお兄!?何してんの!一夏さんを殴るなんて、いくらお兄でも許さないわよ!?」

 

 騒ぎを聞きつけてやって来たのは弾の妹・五反田蘭だった…

 

「どけ蘭!!コイツはやっちゃならねえ事をやったんだ!!今のコイツはお前が庇う様な奴じゃねえっ!!」

 

「何言ってんのよ!」

 

一夏

「…いいんだ蘭…弾の言う通りだ…」

 

「え?」

 

「…いいか蘭…コイツはな…コイツは…鈴にフラれたんだよ!!!」

 

「フ、フラれたって!…一夏さんが!?鈴さんに!?」

 

「その理由も全部コイツが原因だ!鈴を傷つけて、泣かせ続けて、愛想をつかされたんだ!!」

 

「そんな!?…嘘ですよね?」

 

一夏

「………」

 

「本当…何ですか?」

 

一夏

「…ああ…」

 

「そんな!?」

 

「………それで、お前これから鈴とどう付き合っていくんだ?」

 

 蘭が仲裁に入った事で落ち着いたのか弾は聞いて来た

 

一夏

「…分からない…鈴は…俺の事をただの友達、ただの幼馴染だって…言ってる…」

 

「…鈴さんがそんな事を言うなんて…」

 

「そうか………鈴に感謝しろよ!本当だったらお前は赤の他人だって言われてもおかしくないんだからな!まだ友達扱いしてくれるだけありがたいと思え!!」

 

一夏

「………ああ…」

 

 赤の他人…そうだな…そう呼ばれても仕方のない事をしてきたんだもんな…

 

一夏

「…俺…本当に馬鹿だよな…鈴みたいな子をどれだけ…泣かせてきたんだろうな…」

 

「両手の指じゃ数えられねえよ!」

 

一夏

「…そんなにいるのか…俺…どれだけ鈍いんだよ…」

 

「お前の鈍さは病気レベルだ!それも一生治らない程のな!!」

 

一夏

「…そこまでか………千冬姉に言われたよ…また鈴みたいに泣かせる様な事をしたら弟だろうと許さないって…火ノ兄は俺にパワーボムを喰らわせるって言ってたよ…」

 

弾&蘭

「火ノ兄?」

 

一夏

「…火ノ兄永遠…俺と同じ男のIS操縦者だ…」

 

「もう一人いたんですか!?」

 

一夏

「…ああ…アイツさ…鈴の恋を応援してたんだ…でも、俺が鈴を傷つけるとその度に説教と制裁を喰らわせてさ…一度パイルドライバーをかけられて三途の川に送られたよ…」

 

「三途の川って…お前死にかけたのかよ?…それでもその鈍さが治らなかったのか…」

 

一夏

「…ああ…」

 

「…はぁ…一夏…一つ答えろ。お前反省してるのか?」

 

一夏

「も、勿論だ!…でも鈴は…もう…」

 

「当り前だ!反省した所で鈴はもうお前を見る事はねえよ!!」

 

一夏

「…火ノ兄も同じ事を言ってたよ…鈴はもう俺に振り向く事は無いって…」

 

「俺の言いたい事は全部そいつが言ってるのか。なら俺が言う事はねえよ。………蘭、昼飯の用意をしてくれ。」

 

「え?」

 

「一夏…今日はうちで食ってけ。」

 

一夏

「弾…」

 

「お前が鈴にした事は俺も許せねえ!本当なら家から追い出してやるところだが、これ以上追い打ちをかける様な事は俺もしたくねえんだ。千冬さんやその火ノ兄って奴にタップリ説教されたみたいだしな。」

 

一夏

「………」

 

「お前も反省してるみたいだから、飯食って元気出せって言ってんだよ。」

 

一夏

「…弾…スマナイ…」

 

 弾の気遣いで俺はそれから食堂で昼食をとった…

 

 ~一夏 Side out~

 




 次回『第065話:フランスの金、ドイツの銀』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第065話:フランスの金、ドイツの銀

 ~永遠 Side~

 

 ワシが自分の素性を簪・本音・鈴の3人にバラしてからさらに1週間が経った

 あの試合から2週間たったので謹慎しておった篠ノ之も登校してきおった

 2週間ぶりに会っていきなりワシを睨んできおったが無視した

 関わると碌な事になりそうに無いからのぉ

 ちなみに篠ノ之は謹慎が解けると同時に部屋の移動が通達されたらしい

 何でも篠ノ之が移動できる部屋の準備が終わったそうじゃ

 まあ元々男の織斑と一緒に住んどる事の方がおかしい訳じゃから当然の事なんじゃがな

 さらに学園ではもうじき学年別個人トーナメントとか言う催しがあるそうじゃ

 面倒じゃから出たくなかったんじゃが全員強制参加の行事らしいから早々に諦めた

 ついでにワシの方でも問題と言うほどでも無いんじゃが…数日前からクロエがおらんくなった

 何でも束さんが以前使っておったラボで独自に研究をしとるらしい

 内容は分からんが毎日定期的に連絡をくれておるから安心しておる

 そして今日のワシはハッキリ言って焦っておる!

 理由は簡単、寝坊したんじゃ!

 どういう訳か今日はいつもの時間に起きる事が出来んかった!

 ワシは大急ぎで束さんの朝食を用意して畑仕事を済ませるとISを展開して学園に飛んで行った

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 あれから俺はどうしようかずっと悩んでいた…

 この学園に来てからの俺は何もかもが空回りばかりしていた…

 しかもその全てが俺自身の言葉と行動が原因で失敗している…

 だから誰かを責めるという事も出来なかった…

 火ノ兄とオルコットに喧嘩を売った時も俺自身の傲慢さが原因だった…

 クラス代表を決める試合に向けて勉強も訓練も何もしていなかった…

 鈴の気持ちに気付かず傷付ける事しかしなかったのも俺だ…

 今迄の自分を思い起こすと本当にどうしようもない奴だと思った…

 これじゃあ火ノ兄の言う通りクズって言われても仕方ないと思った…

 何とかして今の自分を変えないといけない…

 そう思ってもどうすればいいのか分からなかった…

 そんなある日の朝…

 

生徒1

「やっぱりハヅキ社製がいいなぁ。」

 

生徒2

「ハヅキってデザインだけじゃないの?」

 

生徒1

「そのデザインがいいのよ!」

 

生徒3

「性能的にミューレイのがいいなぁ、スムーズモデル。」

 

生徒2

「物は良いけどさぁ、高いじゃん。」

 

 俺が教室に来るとクラスメイトの何人かがカタログを見ながら話し合っていた

 どうもISスーツのカタログ雑誌みたいだ

 その中の一人が俺に気付くと聞いて来た

 

生徒3

「織斑君のISスーツってどこのなの?見た事の無い型だけど。」

 

一夏

「あ~何でも特注品らしい。どっかのラボで作ったそうなんだ。イングリッド社のストレートアームモデルって聞いたな。」

 

生徒1

「へ~そうなんだ~。」

 

真耶

「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知して操縦者の動きを各部位に伝達、それを受けてISは必要な動きを行います。」

 

 スーツの解説をしながら山田先生が教室に入って来た

 

真耶

「また、スーツは耐久性にも優れているので小口径拳銃の銃弾なら完全に受け止めます。ちなみに衝撃は消せませんのであしからず。」

 

生徒2

「山ちゃん詳しい!」

 

真耶

「先生ですから…って山ちゃん?」

 

生徒3

「山ピー見直した。」

 

真耶

「今日がスーツの申し込み開始日ですからね。予習してあります。…って山ピー?」

 

 山田先生って色んなあだ名がつけられてるんだよな…俺が知るだけでも8つはあるぞ

 

真耶

「あの~教師をあだ名で呼ぶのはちょっと…」

 

生徒1

「あ!そう言えばまーやん!火ノ兄君はスーツがいらないけど何でなの?」

 

真耶

「まーやんって…はぁ~…ええっと火ノ兄君ですね?彼の場合はあの2機のISにスーツと同じ機能が組み込まれているので必要無いんですよ。」

 

生徒2

「そうだったんだ。」

 

生徒3

「少し羨ましいな~…着替える必要ないんだもんね~…」

 

真耶

「それは私も同意見です。正直私も着替えるのが面倒ですからね。織斑先生も同じ事を言ってましたよ。」

 

生徒1

「そうなんですか!?」

 

 そう言えば代表を決める試合の時そんな事言ってたな…

 

千冬

「諸君おはよう。」

 

生徒達

「おはようございます!」

 

 千冬姉が来ると一瞬で空気が変わった

 

千冬

「さて、今日から本格的な実戦訓練を開始する。訓練機だがISを使用するから気を引き締めて行うように。各自のスーツが届くまでは学校指定の物を使って貰うが、それを忘れたら水着で受けて貰う。それも無いようなら下着でも構わんだろう。」

 

 千冬姉…このクラスには男が二人いるんだぞ

 

千冬

「HRを始める前に火ノ兄なんだがアイツは寝坊して遅刻だ!来たら注意しておく!では山田先生始めて下さい。」

 

真耶

「は、はい!」

 

 火ノ兄が寝坊なんて珍しいな…アイツの場合そうなると完全な遅刻になるんだよな…

 

真耶

「今日はまず転校生を紹介します!しかも2人ですよ!」

 

生徒達

「ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」

 

 また転校生!少し前に鈴が来たばかりだぞ?

 

真耶

「入っていいですよ。」

 

?1

「失礼します。」

 

?2

「………」

 

 教室のドアを開けて入って来た二人の生徒を見て俺を含めたクラスの全員が固まった

 

真耶

「転校生のシャルル・デュノア君とラウラ・ボーデヴィッヒさんです。」

 

一夏

「え?」

 

 何故なら挨拶をしながら入って来た生徒の服装は…俺と同じ男物の制服だったからだ

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 今このクラスは全員が固まっている…その理由は…

 

真耶

「それではお二人とも。自己紹介をお願いします。」

 

シャルル

「はい。シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不馴れな事も多いのですが皆さんよろしくお願いします。」

 

 二人の転校生の内の一人が男だからだ

 あのオルコットでさえ驚いて固まっている

 

生徒1

「お、男…」

 

シャルル

「はい、この学園には僕と同じ境遇の人がいると聞き、本国から転入して………」

 

千冬

「………」

 

 シャルル・デュノアか…礼儀正しい立ち居振る舞い、整った顔立ち、髪は金髪で背中まで伸び、後ろで束ねている

 一夏や火ノ兄と比べたら細い手足、全体の印象は貴公子と言ったところか

 だが、何だこの違和感は?

 まさかコイツ…

 

生徒達

「き…」

 

シャルル

「はい?」

 

千冬

「まずい!」

 

 私は急いで耳を塞いだ

 

生徒達

「きゃああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!!」

 

 ええい!相変わらずだなコイツら!

 

生徒1

「男子!新しい男子!」

 

生徒2

「しかもうちのクラス!」

 

生徒3

「さらに美形!織斑君達と違った守ってあげたくなる系!」

 

生徒4

「地球に生まれて良かった~!!」

 

千冬

「騒ぐな貴様等!静かにしろ!?」

 

真耶

「み、皆さん!まだもう1人の自己紹介が終わってませんよ!」

 

 私と山田先生が注意するとやっと静かになった

 だが…もう一人の転校生がまさかコイツだったとは…

 

ラウラ

「………」

 

 視線を正面から私に変えたか…私が言うのを待ってるのか?

 

千冬

「…挨拶をしろ…ラウラ。」

 

ラウラ

「はい、教官。」

 

千冬

「ココでは先生と呼べ。今の私はお前の教官じゃない、この学園の教師だ。」

 

ラウラ

「了解!」

 

 …絶対分かってないな…

 

ラウラ

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。」

 

生徒達

「………」

 

真耶

「あ、あの…以上ですか?」

 

ラウラ

「以上だ。」

 

 …はぁ…コイツにデュノアみたいな挨拶を求めるのはやはり無理か…

 私はため息をついたせいでラウラの行動に気付くのに遅れてしまった…

 ラウラはいつの間にか一夏の前に移動していた

 

ラウラ

「貴様が!!」

 

 バチィン!!

 

 私が気付いた時にはラウラは一夏を殴っていた…

 

一夏

「いきなり何しやがる!?」

 

ラウラ

「私は認めない!!貴様があの人の弟など!!認めてたまるか!!!」

 

一夏

「…え?」

 

 ザワザワ…

 

 …本当に変わってないなコイツ…

 

永遠

「何じゃ?やけに騒がしいのぉ?」

 

千冬

「ん?遅刻だぞ!」

 

 ガンッ!

 

 とりあえず遅刻した事に対して一発殴っておいた

 

永遠

「グッ!スマン!寝坊してしもうた…申し訳ない!」

 

シャルル

「え!?」

 

ラウラ

「何!?」

 

 遅れて来た火ノ兄を見て驚いているな…どうやらコイツ等の所にもまだ火ノ兄の事は伝わって無い様だ…大方、束が情報操作でもしたんだろうな…鈴も知らなかったからな…

 

シャルル

「な、何で!?男の操縦者は織斑一夏一人の筈じゃ!?二人目がいるなんて…」

 

ラウラ

「どういう事だ?こんな奴の情報は聞いてないぞ!?」

 

永遠

「誰じゃお主等?」

 

千冬

「このクラスに転入してきた二人だ。金髪がシャルル・デュノア、銀髪がラウラ・ボーデヴィッヒだ。」

 

永遠

「さよか、ワシは火ノ兄永遠じゃ。一応二人目の操縦者となっとる。よろしゅうな。」

 

シャルル

「あ、はい…シャルル・デュノアです。こちらこそよろしく…」

 

ラウラ

「…フンッ!」

 

永遠

「ん?お主は…」

 

ラウラ

「何だ?」

 

 ラウラを見て何を唸ってるんだ?

 

永遠

「いや、知り合いに似とると思っただけじゃよ。スマンかったな。」

 

ラウラ

「そうか…」

 

 知り合いだと?この学園以外で火ノ兄の知り合いと言ったら束ぐらいしかいない筈だが…

 …まあいいか…その辺はプライバシーに引っかかるしな

 

千冬

「そろそろHRを終わる。各自はすぐに着替えて第二グランウンドに集合するように!今日は2組と合同でISの模擬戦を行う。以上解散!」

 

 私は手を叩きながらHRを終わらせた…

 

千冬

「織斑、デュノアの面倒を見てやれ。同じ男だろ。」

 

シャルル

「よろしくね織斑君。僕の事はシャルルでいいよ。」

 

一夏

「ああ、俺も一夏でいい。…て言うか何で俺だけ?火ノ兄は?」

 

千冬

「アイツの場合は1日の半分は学園にいないからな。いつもいるお前が面倒を見ろ。」

 

一夏

「あ…そういう事…分かった…」

 

シャルル

「あの~…どういう事ですか?」

 

一夏

「その話は後にしてくれ!今は移動が先だ!男子は空いているアリーナの更衣室を使う。実習ごとに結構の移動があるから早めに慣れてくれよ!」

 

シャルル

「そ、そうなんだ!?…あれ?火ノ兄君は?」

 

千冬

「アイツならさっきそこの窓から出て行ったぞ。」

 

シャルル

「窓からって…ここ3階ですよ!?」

 

千冬

「あの程度の高さはアイツには無い様なものだ。」

 

 アイツは色々と規格外の存在だからな…

 

シャルル

「は、はぁ~…」

 

一夏

「ほら急ぐぞ!今日は第二アリーナの更衣室だ!」

 

シャルル

「あ、うん…」

 

 …しかし、アイツら遅刻せずにアリーナに来れればいいんだが…

 

生徒5

「ああっ!転校生発見!」

 

生徒6

「織斑くんと手を繋いでる!」

 

生徒7

「織斑くんと転校生くんの薄い本……ぐふふふ。」

 

生徒8

「いた!こっちよ!」

 

生徒9

「者共~!出会え~い!出会え~い!」

 

 私は廊下で騒いでるやつらの事を無視してアリーナに向かった…

 聞こえてくる会話の幾つかがかなり危ない気がしたが無視した…

 

 ………

 ……

 …

 

千冬

「………」

 

一夏

「遅くなりました!」

 

シャルル

「すみません!」

 

千冬

「遅い!!」

 

 ガンッ!

 

 案の定遅刻しおって…

 

一夏

「な、何で俺だけ…」

 

千冬

「デュノアは転校初日だから大目に見ただけだ…次からは容赦はせん!」

 

シャルル

「は、はい!気を付けます!!」

 

 ちなみに火ノ兄は私よりも先にアリーナに来ていた

 

 ~千冬 Side out~

 

 




 次回『第066話:妹襲来!』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第066話:妹襲来!

 ~シャルル Side~

 

 皆さん初めまして

 僕の名前はシャルル・デュノア、今日この学園に転入してきたフランスの代表候補生です

 ちなみに僕は…その、男です…

 それで色々あってこの学園に来たんだけど…

 まさか男性操縦者に二人目がいたなんて思わなかった

 事前に貰った情報では織斑一夏君一人しかいないって聞いていたんだけど…

 二人目に関する情報は何一つ無いからどうしよう…

 とりあえず今は彼に対しては暫く様子を見よう…

 彼に接触するのはどういう人間か調べてからでも遅くないわけだし…

 そんな事を考えながら今は2組との合同授業でアリーナにいます

 

千冬

「本日から格闘及び射撃を含む実践訓練を開始する!」

 

シャルル

「………ねえ一夏、何で火ノ兄君は制服のままなの?」

 

 一夏や他の皆はISスーツに着替えてるのに彼だけ着替えてないんだよね…

 

一夏

「アイツの機体はISスーツが必要無いんだよ。」

 

シャルル

「え!そんな機体があるの!?」

 

一夏

「ああ、と言うかアイツの機体は見た目から普通じゃないからな…」

 

シャルル

「え?それってどういう…」

 

千冬

「お前達…無駄話とはいい度胸だな!」

 

一夏

「げっ!!」

 

 ガンッガンッ!!

 

シャルル

「うぅ…痛い…」

 

 こ、今度は僕にも出席簿が…

 

千冬

「今日はまず専用機持ちによる模範演技をして貰う。…オルコット、凰、織斑、前に出ろ!」

 

セシリア&鈴

「はい。」

 

一夏

「…はい…」

 

 専用機持ちが3人…どんな対戦形式なんだろ?

 

「…私達3人で模範演技って…バトルロイヤルみたいにやるんですか?それなら結果が見えてますよ?」

 

千冬

「ほぉ?…凰、どのような結果になるんだ?」

 

「セシリア、私、一夏の順で決まりですよ。」

 

千冬

「確かにお前の言う通りになるだろうな。お前はオルコットに必ず勝てるという訳ではないし、織斑はまだ雑魚だからな。」

 

一夏

「ぐはっ!」

 

 一夏…雑魚呼ばわりされてダメージを受けてる…

 

千冬

「だが、生憎とバトルロイヤルでは無い。」

 

「ならどうやるんですか?」

 

千冬

「慌てるな。まだ役者は揃って「どいてくださ~~~~~い!!」むっ!」

 

 上空から叫び声が聞こえて来たけど…アレって!

 

一夏

「山田先生!?」

 

 【ラファール】を纏った山田先生が落ちて来た!

 

 ドゴオオオォォォーーーンッ!!

 

シャルル

「一夏!?」

 

 山田先生…一夏に突っ込んで行っちゃった…

 

一夏

「…【白式】の展開が間に合ったな…一体何が…」

 

真耶

「あ…あのぅ織斑君…その…困ります…こんな場所で…その…」

 

 ムニュッ

 

 あ!…山田先生の胸を…

 

一夏

「え?………あっ!」

 

 一夏って…ラッキースケベなんだね…

 

「アンタいつまで乗っかってんのよ?」

 

一夏

「ちちち違う!俺はそんなつもり…」

 

「何焦ってんの?授業が進められないから早くどきなさいって言ってんのよ。」

 

一夏

「!?…そっか。………すみません、山田先生…」

 

真耶

「いえ、私も悪かったですから。」

 

 …何だろ?

 …一夏の様子が少しおかしかったような………気のせいかな?

 

千冬

「………。まず先に言っておくが山田先生はこれでも元代表候補生だ。実力も一部の者を除いてお前達より遥かに上だ。」

 

真耶

「昔の事です。それに候補生止まりでしたし…」

 

千冬

「模範演技には山田先生も加わって貰う。」

 

 …一部って誰だろ?

 

セシリア

「これで4人…では2対2のタッグ戦ですか?」

 

千冬

「それも違う。火ノ兄!!」

 

セシリア&鈴&一夏

「え?」

 

永遠

「ワシもか?」

 

千冬

「お前達3人は山田先生と組んで火ノ兄一人と戦って貰う。」

 

シャルル

「え?」

 

生徒達

「ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」

 

生徒1

「織斑先生!いくら何でも無茶ですよ!!」

 

生徒2

「そうです!いくら火ノ兄君が強いからって!!」

 

生徒3

「専用機持ち3人と元代表候補生1人を同時に相手にするなんて!!」

 

一夏

「そ、そうだよ千冬姉!流石にそれは…」

 

千冬

「織斑先生だ!…オルコット、凰、お前達もそう思うのか?」

 

セシリア

「いいえ…永遠さんが使うのが【ドットブラスライザー】でしたら、ほんの僅かですがわたくし達が勝てる見込みがある程度ですわね…」

 

「私も同意見です。【戦国龍】が相手なら100%勝てません。」

 

真耶

「私もそうです。火ノ兄君がどちらの機体を使っても勝てる自信はありません。」

 

 現役の代表候補生二人と今は教師をしているとはいえ代表候補生だった人が揃って勝てないなんて言うなんて

 織斑先生が言っていた一部の人って火ノ兄君の事なんだ

 

「て言うか一夏、アンタまでそんな事言うなんて思わなかったけど?」

 

一夏

「え?」

 

「永遠の強さはアンタも知ってるでしょ?コイツが4人がかりだからって後れを取るような奴だと思ってんの?」

 

一夏

「…それは…そうだけど………けど…お前とオルコットの二人が組めば…」

 

「あのね、私達が組んだぐらいで勝てるなら苦労しないわよ。そうでしょセシリア?」

 

セシリア

「はい!…織斑さん…忘れてませんか?永遠さんに勝てるなら織斑先生にも勝てると言う事を?」

 

一夏

「あ!そうだった!」

 

 え?…今何て言ったの…

 

ラウラ

「オイ!貴様今何て言った!?」

 

セシリア

「はい?永遠さんに勝てるなら織斑先生にも勝てると言ったのですが?」

 

 やっぱり聞き間違いじゃ無かった…

 

ラウラ

「何だと!?そんな事があって堪るか!コイツが教官より強いなど!!」

 

 ボーデヴィッヒさん凄い顔で火ノ兄君を睨んでるな…

 ココは本人に聞くのが一番早いかな…

 

シャルル

「あの~…織斑先生…オルコットさんが言った事って…」

 

千冬

「そう言えばお前とボーデヴィッヒはまだ知らなかったな。火ノ兄に勝てれば私に勝つ事も出来るぞ。コイツはそれだけ強いからな。」

 

ラウラ

「きょ、教官!?………そんな…そんな事があって堪るか!私は認めないぞ!!」

 

一夏

「………」

 

「どうしたの?」

 

一夏

「いや、俺も入学した日に千冬姉から火ノ兄の方が強いって聞かされた時、アイツみたいに反論して最後は喧嘩を売ったんだ。」

 

「それでどうなったの?…って聞くまでも無いか…」

 

一夏

「ああ、説教されて半殺しにされた…」

 

「でしょうね。」

 

 …半殺しって…一体何があったの…

 

千冬

「さて、そろそろ始めるぞ。」

 

永遠

「織斑先生…ワシはどっちを使えば………ん?」

 

千冬

「どうした?」

 

永遠

「…何か来る!」

 

千冬

「何!?」

 

 火ノ兄君はそう言って上空を見上げた…

 僕も織斑先生達も釣られる様に上を見上げると…

 

 ゴオオオオオオォォォォォォーーーーーー………………

 

 何かがこっちに向かって来る音がドンドン大きくなっていた

 

千冬

「!?…全員伏せろ!!」

 

 ドガアアアアアァァァァァーーーーーンッ!!!

 

 何かが空から落ちて来た!

 

 ~シャルル Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「何だ一体!?………ん?…アレは…人参!?」

 

 落ちて来たのは人参型の物体…

 いや、これはロケットか…

 こんな物持っているのは…束か!?

 そう思った時、ハッチが開くと…

 

「に~い~さ~ま~~~~~♪」

 

 中から出て来たのは束じゃ無く、銀髪の少女だった…

 

 ~千冬 Side out~

 

 




 次回『第067話:第3の鬼』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第067話:第3の鬼

 ~千冬 Side~

 

 束の物らしき人参ロケットから出て来た少女はいきなり火ノ兄に抱き着いた

 それにしてもこの娘…ラウラにそっくりじゃないか!

 

永遠

「クロエ!?」

 

千冬

「お前の知り合いか?」

 

永遠

「うむ…この娘はクロエ・クロニクル。…ワシの義理の妹じゃよ。」

 

クロエ

「はい♪クロエ・クロニクルです。いつも兄様がお世話になっています♪」

 

生徒達

「ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」

 

千冬

「義妹だと!?」

 

永遠

「そうじゃ…(この娘は束さんの助手じゃ。)」

 

千冬

「(何!?…だから束のロケットを使えたのか!…しかしこの娘…ボーデヴィッヒにそっくりだな………さっきお前が言っていた知り合いと言うのはコイツの事か?)」

 

永遠

「(そういう事じゃ。)…で、何故にお主がココに?」

 

クロエ

「はい!兄様にプレゼントとお届け物を持ってきました♪」

 

永遠

「プレゼント?届け物?」

 

クロエ

「はい♪まずはコレをお渡ししますね。」

 

 そう言って火ノ兄に一振りの刀を渡した

 

永遠

「ぬ!【ラインバレル】!もういいんか?」

 

クロエ

「はい♪もう十分なデータが取れましたのでお返ししますね♪」

 

千冬

「…それが【ラインバレル】の待機状態か…しかしお前のISは何故揃いも揃って待機状態が刀なんだ?」

 

永遠

「知らん!!」

 

一夏

「あ、あの千冬姉…その【ライン】何とかって一体?」

 

千冬

「織斑先生だ!…【ラインバレル】は火ノ兄の3体目のISの事だ。」

 

生徒達

「ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」

 

一夏

「さ、3体目!?まだ持ってたのか!?」

 

シャルル

「ちょ、ちょっと持ってよ!それってどういう事ですか!一人の人間がISを3機も持ってるって言うの!?」

 

セシリア

「そうですわ。永遠さんは全部で3機のISを所有してますの。」

 

ラウラ

「一人で…3機だと!?」

 

「その最後の機体が【ラインバレル】よ。」

 

一夏

「お前達知ってたのか!?」

 

セシリア

「ええ。他には本音さんと4組の更識簪さんも知ってますわ。」

 

「つまり学園にいる人間で3体目の事を知ってたのは私達6人だけよ。と言っても、私と本音と簪が【ラインバレル】の事を知ったのは1カ月ほど前だけどね。それ以前に生徒で知ってたのはセシリアだけよ。」

 

一夏

「そ、そうなんだ…」

 

 まあ普通は驚くだろうな…ISを2機持っているだけでも驚く事なのにそれが3機となればな…

 その上、ISは467個のコアの数までしか無い…コイツ等はその内の3つを所持していると思っているだろうからな…

 だが、実際は火ノ兄の機体のコアは神が造った物だからその中には入らないんだが…

 私や束、オルコット達、一部の火ノ兄の正体を知る者達しか知らない事だからな…

 何も知らんコイツ等からすれば信じられない事なんだろう…言うつもりは無いが…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

 遂に【ラインバレル】が永遠さんの手に戻ってきましたか…

 しかし、クロエさんのプレゼントと言うのは何でしょうか?

 

永遠

「それでプレゼントとは何じゃ?」

 

クロエ

「はい♪こちらが私の本命!永遠兄様の為に作り上げた【戦国龍】専用の射撃武器!その名も【種子島】で~す!!!」

 

 クロエさんがそう言うとロケットのハッチが開いて中から1丁の銃、いえ、ライフルが出てきました

 

永遠

「…【種子島】…確かに火縄銃みたいな銃じゃな…」

 

セシリア

「…これは…両手銃ですわね?」

 

クロエ

「はい♪」

 

「ふざけるな!!」

 

永遠

「ん?」

 

 突然篠ノ之さんが怒鳴り声を上げましたが…ふざけるなって、クロエさんはふざける様な事は何もしていませんが…

 

「射撃武器だと!【戦国龍】にそんなもの必要無い!!今すぐ持って帰れ!!」

 

「アンタ何言ってんの?」

 

千冬

「篠ノ之…何故お前がそんな事を言う?【戦国龍】は火ノ兄の専用機だ。どんな武装を積もうと火ノ兄の自由だ。」

 

「そ、それは…」

 

千冬

「何故お前の許可を貰う必要がある?お前が何を考えてるのかは知らんが【種子島】はクロニクルがわざわざ火ノ兄の為に造った物だ。それをお前の訳の分からない妄言で貶すな!お前は黙っていろ!また懲罰房に行きたいのか?」

 

「ぐぐっ…」

 

千冬

「スマンなクロニクル…そこの馬鹿は無視してくれ。」

 

クロエ

「いえ気にしてません。」

 

セシリア

「(永遠さん…織斑先生…)」

 

永遠

「(大方【戦国龍】に銃は相応しくないとでも思っとるんじゃろ。)」

 

千冬

「(ああ、自分の物と決めつけているなアイツ。)」

 

永遠

「(…傍迷惑な奴じゃ…)」

 

セシリア&千冬

「(本当ですわ(だな)…)」

 

クロエ

「兄様どうかなさいましたか?」

 

永遠

「いや、何でもない…クロエ、これはどういった武器何じゃ?」

 

クロエ

「はい♪この【種子島】はビームと実弾の2種類の射撃が出来ます。実弾の方は6連装のシリンダーになっています。弾丸は通常のISと同じ物を使えますが、私特製の徹甲弾も装填出来ますよ♪」

 

シャルル

「ビーム!!」

 

「徹甲弾ですって!!」

 

一夏

「ど、どうしたんだよ!?」

 

真耶

「いいですか?…今、世界のどの国でもレーザーやレールガンの開発が精一杯なんです。ビーム兵器はその上を行く武装ですが、未だに開発の目途すら立っていないんです。そして、徹甲弾は戦艦の装甲すら貫通する危険な弾丸です。それを搭載しているんですから驚いて当然です。」

 

一夏

「な!?そんなもん使っていいのか!?」

 

千冬

「…確かにそうだな…ビームはともかく徹甲弾はマズイな………クロニクル、スマンが弾丸の方は持って帰って貰えるか?流石に危険すぎる。」

 

クロエ

「…そうですか…分かりました…」

 

永遠

「………織斑先生、この徹甲弾、1発だけ持っといてもいいかの?折角作ってくれたもんじゃからな、1発でも持っときたいんじゃよ。」

 

クロエ

「に、兄様!」

 

千冬

「…そうだな…1発位ならいいだろう。…ついでに火ノ兄、【戦国龍】を展開しろ。【種子島】の試し撃ちと徹甲弾の威力を見ておきたい。」

 

永遠

「分かった。」

 

 返事をすると永遠さんは【戦国龍】を展開しました

 

<オオオォォォーーーンッ!!!>

 

 その姿を見てデュノアさんとボーデヴィッヒさんの二人はまた驚いていますわね

 

シャルル

「な、何この機体!?」

 

ラウラ

全身装甲(フルスキン)のドラッヘだと!?」

 

真耶

「これが火ノ兄君のISの一つ【戦国龍】です。」

 

シャルル

「【戦国龍】…」

 

真耶

「ちなみに火ノ兄君のISは全て全身装甲(フルスキン)ですよ。」

 

シャルル

「全てって…3機全部ですか!?」

 

千冬

「そうだ。…火ノ兄、まずはビームの方を撃ってみろ。」

 

永遠

「あいよ!」

 

 永遠さんは【種子島】を構えると上空に向けて撃ちました

 

 ドギュゥーーンッ!! 

 

セシリア

「…これがビーム兵器ですか。わたくしの【スターライト】のレーザーより遥かに高い威力ですわね。」

 

永遠

「…これでも威力を7割に抑えたんじゃぞ。」

 

シャルル

「これで7割!!」

 

ラウラ

「チッ!!」

 

千冬

「次は徹甲弾だ。」

 

永遠

「うむ!」

 

 ドンッ!!

 

 永遠さんは先程と同じように上空に向けて撃ったのですが…

 

 バリイィィンッ!!

 

永遠

「あ!?」

 

千冬

「アリーナのバリアを…」

 

真耶

「…貫通した!」

 

生徒達

「ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」

 

 まさか貫通するなんて…

 

永遠

「…クロエ………やり過ぎじゃ…」

 

千冬

「これは試合では使えん!相手を殺してしまうぞ!」

 

クロエ

「そんな~…」

 

永遠

「やはり弾丸は1発で十分じゃ。残りは持って帰ってくれ。」

 

クロエ

「…はい…」

 

永遠

「スマンな…じゃが、この銃は気に入ったぞ。大事に使わせて貰うぞい!」

 

 永遠さんはそう言うと【種子島】を腰に固定して【戦国龍】を解除しました

 

クロエ

「本当ですか♪」

 

永遠

「うむ!感謝しとるよ。」

 

 嬉しそうに笑うクロエさんの頭を永遠さんは優しく撫でていました

 

千冬

「ああして見ると本当の兄妹みたいだな。」

 

セシリア

「…織斑先生、クロエさんの方が年が一つ上ですわよ。」

 

千冬

「………は?年上だと?」

 

生徒達

「ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」

 

千冬

「年上なのに何で妹と名乗ってるんだ!?」

 

セシリア

「…何でもその方がいいらしいですわ。永遠さんもそれでいいそうですからわたくし達も気にしないようにしてますの。」

 

「はい。」

 

本音

「そうで~す♪」

 

千冬

「何を考えてるんだコイツ等は…」

 

 まあ永遠さん達ですからね…

 

永遠

「………ところでクロエ…さっきから気になっとる事があるんじゃが?」

 

クロエ

「何ですか?」

 

永遠

「お主…何日寝とらん?…眼の下のクマが凄い事になっとるぞ…」

 

 そう言えばわたくしも気になってましたわね…

 

千冬

「…てっきりこんな顔だと思ったが?」

 

セシリア

「そんな訳無いでしょう!?」

 

クロエ

「大体一週間くらいですね。でもこの程度平気ですよ♪」

 

「アンタどう見ても平気じゃないでしょ!?」

 

本音

「性格変わってるよ~…」

 

千冬

「そうなのか?」

 

セシリア

「はい…ココに来てからのクロエさん…テンションが異常に高いんです…」

 

永遠

「普段のこやつはもっと大人しいからの…」

 

千冬

「………なるほど…七徹もすると、こんな風になるのか…」

 

永遠

「全く、あれだけ睡眠は取れと言うといたのに…説教と言いたいが今は寝かせる方が先じゃな…クロエ、お主もう帰って寝とれ!!」

 

クロエ

「え~~~!い~や~で~す~!久しぶりに会えたのに~~~!?」

 

 やっぱり性格変わってますわね…

 

永遠

「いいから寝とれ!!」

 

 ゴンッ!

 

クロエ

「アタッ…きゅ~~~…」

 

一夏

「お、おい…いくら何でも殴って気絶させる事無いだろ!」

 

千冬

「いや、こうでもしないとコイツは帰らないし眠りもしないだろうからな。」

 

永遠

「そういう事じゃ。セシリア、鈴、本音、スマンがクロエを見といてくれ。目を覚ましたらもう1発殴っても構わん!」

 

セシリア&本音&鈴

「は~い!」

 

 永遠さんはわたくし達にクロエさんを預けるとロケットの中に入っていきました

 暫くすると出て来たのですが…

 気絶したクロエさんを連れて中に戻って行きました

 再び出てくると、ハッチを閉めました

 するとロケットは動き出してそのまま飛んで行ってしまいました

 

永遠

「これで良し!!」

 

セシリア

「何処に飛んで行ったんですか?」

 

永遠

「ワシの島に飛んで行くように設定しといたわい!」

 

千冬

「そうか…(束には連絡したのか?)」

 

永遠

「(うむ、ロケットの中でな…着いたらクロエを寝かせておく様に頼んである。)」

 

セシリア

「(よかったですわ。)」

 

「(あのままじゃマジでやばそうだったしね…)」

 

本音

「(うんうん!)」

 

一夏

「何ヒソヒソ話してるんだ?」

 

千冬

「何でも無い!」

 

 他の人達に聞かれると面倒ですからね…

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 火ノ兄の妹がやって来るっていうハプニングがあったけど…

 

千冬

「さて、授業の続きを始めるか。え~と…火ノ兄と山田先生達による模範演技だったな。」

 

 …千冬姉が授業を再開した

 

永遠

「…ワシはどれを使えばいいんじゃ?」

 

千冬

「そうだな………なら【ラインバレル】を使え!」

 

永遠

「コイツをか?」

 

千冬

「ああ、ついでにデータを取る。」

 

セシリア&鈴

「ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」

 

一夏

「うおっ!?ど、どうしたんだよ二人とも?」

 

「織斑先生それだけはやめて下さい!【ラインバレル】が相手だと心が折れます!!」

 

セシリア

「そうです!絶対勝てません!!」

 

真耶

「あの~私も【ラインバレル】が相手と言うのは~…」

 

 山田先生までそんな事言うなんて…

 

一夏

「な、何なんだよ!オルコットや山田先生まで…【ラインバレル】って何なんだよ!?」

 

千冬

「お前達の気持ちも分かるが【ラインバレル】のデータを取る為だ。悪いが犠牲になってくれ。」

 

セシリア&鈴&真耶

「いやああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!!」

 

「生贄なら一夏だけにして下さい!」

 

一夏

「オイこらどういう意味だ!」

 

永遠

「生贄ってなんじゃ!いくらなんでも印象が悪すぎるぞい!!」

 

セシリア

「いえ…あながち間違って無い気が…」

 

「あの見た目ならね~…」

 

真耶

「そんなに怖い姿なんですか?」

 

セシリア

「そこまで怖いという訳ではないんですが…」

 

「見た目の印象に生贄って言葉がピッタリなんですよ…」

 

永遠

「やめんかお主等!大体織斑なんぞが生贄になる訳無かろう!」

 

一夏

「お前もどういう意味だ!!」

 

永遠

「生贄には若い女子と相場が決まっとろうが。マダオなんぞ要らんと言うとるんじゃ!のし付けて返すわい!」

 

一夏

「マダオって呼ぶなあああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」

 

シャルル

「何なのマダオって?」

 

一夏

「知らなくていいから!聞かないでくれ!」

 

シャルル

「う、うん…分かったよ…」

 

千冬

「お前達、コントもそのくらいにしておけ。」

 

 千冬姉…いくら何でもコントは無いだろ…

 

千冬

「さて火ノ兄、【ラインバレル】を展開して貰おうか!」

 

永遠

「あいよ~…」

 

 火ノ兄は刀を地面に突き刺すとその場で1回転して他の2機の様に地面に円を描いた

 そして、今迄と同じように光が火ノ兄を包み込んだ

 光の中から現れたのは【ドットブラスライザー】と同じ白い全身装甲(フルスキン)のISだった

 けど、この見た目って…

 

 ザワザワ…

 

一夏

「お、鬼!?」

 

千冬

「…これが【ラインバレル】か………二本の角、牙の様な口に、左三つ巴…なるほど鬼の様な姿だな…」

 

セシリア

「はい…」

 

シャルル

「…白い…鬼…」

 

真耶

「確かに鬼と生贄って合いますね…」

 

「でしょ…」

 

永遠

「確かに【ラインバレル】は見た目は鬼じゃが…生贄は酷いぞい!」

 

千冬

「その話はもういい!いい加減模範演技を始めるぞ!」

 

セシリア&鈴&一夏&山田

「はい!」

 

永遠

「織斑先生、始める前に他の者達と観客席に移動してくれんか?」

 

千冬

「…分かった。ついでにバリアの強度も上げておく。」

 

 そう言えばバリアって強化したんだっけ…今迄は強化前の状態だったのか

 千冬姉は火ノ兄の頼みを聞いて皆と観客席に移動していった

 全員の移動が終わると…

 

千冬

「よし!………それでは…始め!!」

 

 ドンッ!!!!

 

 千冬姉が試合開始の合図を上げると同時に全員が飛び上がった

 

一夏

「…え?」

 

 俺以外…

 

千冬

「何をボケッとしている!初めろと言ったぞ!!」

 

一夏

「あ!…ま、待ってくれ!」

 

 俺は急いで上空に飛び上がった…

 鈴達は遅れた俺を呆れた顔をして待っていた…

 ………恥ずかしい…///

 

 ~一夏 Side out~

 

 




 次回『第068話:模範演技【ラインバレルVS蒼い雫&甲龍&白式&疾風の再誕】』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第068話:模範演技【ラインバレルVS蒼い雫&甲龍&白式&疾風の再誕】

お気に入りが1400行きました!

これからも完結目指して頑張ります!!



 ~ラウラ Side~

 

 私はラウラ・ボーデヴィッヒ…ドイツの代表候補生だ

 ドイツのIS特殊部隊【シュヴァルツェ・ハーゼ】の隊長で階級は少佐だ

 私は軍の命令でこの学園に転入してきたのだが、その命令は私にとっては渡りに船だった

 この学園には私が尊敬する織斑教官がいる

 教官に再び我がドイツ軍に来て頂けるように説得する事が出来る

 そしてもう一つ…教官の輝かしい功績に泥を塗った男…織斑一夏…奴をこの手で潰す事が出来る

 だが、学園に来てみれば驚きの連続だった…

 織斑一夏以外のもう一人の男の操縦者…火ノ兄永遠…

 こんな奴の情報は私は聞いていない…我がドイツ軍の情報網にもかからないコイツは一体何者なんだ?

 そしてそいつはあろう事かISを3機も所有しているとの事だった

 その上、教官はそいつの方が自分よりも強いと仰った

 私は認めない!織斑一夏と共に私の手で叩き潰し必ずや教官の目を覚まさせてやる!!

 

 ~ラウラ Side out~

 

 

 

 ~三人称 Side~

 

 ≪アリーナ≫

 

真耶

「…オルコットさん、凰さん…【ラインバレル】の武装は何ですか?」

 

 真耶はまずセシリアと鈴に【ラインバレル】の武装について聞いてきた

 

セシリア

「…両腕に装備された2本の刀だけですわ。」

 

一夏

「何だそれだけか!」

 

「私達が知ってるのはね。」

 

一夏

「…え?」

 

セシリア

「永遠さんはわたくし達との訓練ではその2本の刀しか使った事がありません。他の武装に関してはあるのかさえ分かりません。」

 

「けど、最低でも後一つはあるわね!それも強力なのが!」

 

セシリア

「わたくしも同意見です。」

 

 セシリアと鈴は【ラインバレル】に隠された武装があると読んでいた

 

一夏

「な、ならどうするんだ?」

 

真耶

「【ラインバレル】と戦った事があるお二人はどんな作戦を考えていますか?」

 

「…作戦って言うほどじゃないけど…二つだけ分かってる事があるわ!」

 

セシリア

「一つは…【ラインバレル】相手に長期戦はこちらが不利!!」

 

「二つ目は…アイツにアレを使われたら間合いは意味が無い事よ!!」

 

一夏

「どういう意味だよ?アレってなんだよ!」

 

「言った通りの意味よ!」

 

セシリア

「わたくし達の作戦はただ一つ!!」

 

「一斉攻撃による速攻よ!!」

 

 そう叫ぶとセシリアと鈴は永遠に向かって突っ込んでいった

 真耶も少し遅れて二人の後に続いた

 

一夏

「お、おい!それが作戦?そんなんでいいのか!?」

 

 置いて行かれた一夏もとりあえず永遠に向かって行った

 

 

 

 ≪観客席≫

 

千冬

「仕掛けたか…。さてどんな戦いを見せてくれるのかな…」

 

ラウラ

「教官?」

 

 千冬は【ラインバレル】とセシリア達4人がどのような戦いをするのか気になっていた

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

「はあああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!」

 

 まずは最初に鈴が【双天牙月】を連結させ斬りかかった

 

永遠

「むん!」

 

 永遠は両腕の太刀を抜くと左の太刀で鈴の攻撃を受け止めると同時に、右の太刀で鈴に向けて突きを放った

 

「わっ!?」

 

 鈴は突きを紙一重で躱すと、彼女の後ろからセシリアが【スターライトmkIII】を撃ってきた

 

永遠

「くっ!」

 

 永遠はその射撃をバック転の要領で躱すとそのまま回転し二本の太刀で鈴を下から斬り裂いた

 

「かはっ!!」

 

セシリア

「鈴さん!?…くっ!」

 

 セシリアは追撃でレーザーを撃つが永遠は距離を取りながら躱していった

 

真耶

「!?」

 

 永遠の移動した先に先回りした真耶はアサルトカノン【ガルム】アサルトライフル【ヴェント】をそれぞれ展開し攻撃を仕掛けた

 

永遠

「はっ!」

 

 永遠は真耶の攻撃に対し、左の太刀を高速で回転させ弾丸の全てを弾き飛ばした

 

真耶

「そんなのありですか~~~!?」

 

 真耶が驚きながら攻撃をし続けている時、セシリアは斬られた鈴の所に向かった

 

セシリア

「鈴さん大丈夫ですか?」

 

「このくらい平気よ!」

 

セシリア

「そうですか…しかし、流石は永遠さんですわね。…わたくしの射撃を躱すと同時に鈴さんに攻撃までするなんて…」

 

「ホントよ…一夏!ボケっとしてないでアンタも仕掛けなさい!!」

 

一夏

「お、おう!?」

 

 永遠達の戦闘に入り込めず手をこまねいていた一夏に鈴が怒鳴りつけた

 セシリアは【スターライトmkIII】を砲身側に持ち直すと…

 

セシリア

「行きますわよ!」

 

「ええ!」

 

一夏

「お、おう!」

 

 真耶の攻撃を防いでいる永遠に今度は3人で仕掛けた

 

永遠

「むっ!」

 

 永遠は3人が接近してくるのに気が付くと、攻撃を防ぎながら真耶に一気に接近して右の太刀で彼女が持っていた武器を切り裂いた

 

真耶

「しまった!?…がはっ!」

 

 永遠はそのまま真耶の脇腹に蹴りを放った

 真耶を蹴り飛ばすと永遠はすぐにセシリア達に向かって行った

 

セシリア&鈴

「はあああぁぁぁーーーっ!!」

 

 永遠が向かって来るとセシリアはライフルで殴りかかり、鈴は青龍刀で斬りかかったが…

 

 ガキンッガキンッ!!

 

セシリア&鈴

「くっ!?」

 

 永遠は右の太刀でセシリア、左の太刀で鈴の攻撃をそれぞれ受け止めていた

 

一夏

「貰ったあああぁぁぁーーーっ!!」

 

 そこに、両腕が塞がった永遠に一夏が後ろから斬りかかった

 

永遠

「………ふんっ!」

 

 ガンッ!

 

一夏

「何っ!?」

 

 永遠は一夏の剣を右足で受け止めていた

 

永遠

「…とりゃあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

 永遠はそのままの態勢で回転しセシリア達を弾き飛ばした

 全員が離れると永遠は再び距離を取った 

 セシリア達も一度全員が合流した

 

「ホントに強いわねアイツ!」

 

真耶

「これが火ノ兄君の実力と【ラインバレル】の性能ですか!」

 

一夏

「…性能か…」

 

「一夏…言っとくけど永遠の強さは機体の性能だけじゃないわよ。」

 

一夏

「え?」

 

「確かに【ラインバレル】の性能は無茶苦茶高いわよ。でもね、性能が高いって事はそれだけ扱うのに高い技術と実力が必要って事なのよ。だけど永遠は【ラインバレル】の性能を完全に引き出してるわ。つまりアイツは十分な技術と実力を持ってるって事なのよ。」

 

一夏

「………そんな奴に勝てるのかよ…」

 

「…さあね…ただ【ラインバレル】の倒し方は以前永遠から聞いた事があるわ。」

 

一夏

「え!?ほ、本当か?」

 

 一夏はまさか自分の機体の倒し方を本人が教えているとは思わなかった

 

セシリア

「はい。…と言ってもやる事は先程までと同じですが…」

 

一夏

「へ?」

 

「【ラインバレル】の倒し方は反撃の隙も与えないくらいの連続攻撃よ!…後はアンタよ!」

 

一夏

「…俺?」

 

「アンタの【零落白夜】でSEを一気に削りきるしかないのよ。それでも1撃では無理よ。何発も当てないといけないけど…」

 

一夏

「なら俺に…」

 

「…アンタが永遠に連続で攻撃を当てられる訳無いし、結局は【零落白夜】も加えた全員の連続攻撃しかないのよ!」

 

一夏

「!?…そう…か…」

 

 一夏は任せろと言おうとしたが、鈴から勝てないとハッキリ言われて落ち込んでいた

 

セシリア

「…わたくし達の作戦は短期決戦!これだけですわ!」

 

真耶

「分かりました!」

 

 

 

 ≪観客席≫

 

千冬

「…短期決戦か…」

 

ラウラ

「教官。アイツ等は何を考えてるんですか?数の上では圧倒的に有利にも拘らず、突貫をするとは愚か者の考えとしか思えませんが?」

 

 ラウラはセシリア達の作戦が理解出来ずにいた

 

千冬

「本当にそう思うのか?」

 

ラウラ

「違うのですか?」

 

千冬

「少なくとも織斑以外の3人が何も考えないと言う事は無い。特にオルコットと山田先生はな。」

 

 何気に姉からの評価が低い一夏…

 

ラウラ

「ですが実際…」

 

千冬

「お前はさっき数の上では有利と言ったが、あの程度の数は火ノ兄には無意味だ。アイツは1対1の戦いは元より1体多の戦いも得意だ。数で潰すならこの学園の教師と生徒が全員でかからなければいけないだろうな。」

 

ラウラ

「な!?」

 

千冬

「それに私でもオルコットと凰の二人と同じ事をするだろう。火ノ兄の【ラインバレル】に勝つとしたらそれしか方法が無いからな。」

 

シャルル

「それはどういう意味ですか?」

 

千冬

「オルコットと凰が言っていた通りだ。理由は戦いを見ていれば分かる。だが、お前達が理解出来るかどうかは別だ。」

 

シャルル

「は?」

 

千冬

「先に一つ教えておいてやる。火ノ兄のISは3機全てが今迄の常識が通用しない機体ばかりだ。その中でも【ラインバレル】が持つ能力は正真正銘の化け物とも言うべきものだ。」

 

シャルル

「ば、化け物って…そんな大げさな…」

 

本音

「ホントの事だよ~♪」

 

シャルル

「え?」

 

千冬

「布仏か、そう言えばお前は【ラインバレル】の能力を知っていたな。お前から見てあの機体はどう思う?」

 

本音

「整備課泣かせの機体で~す♪」

 

千冬

「フッ、整備課志望のお前らしい感想だな。だが私は話だけしか聞いていないのだが本当の事なのか?」

 

本音

「はい♪多分ひののんもこの試合で使うと思いますけど、ビックリしますよ♪」

 

千冬

「なら私も楽しみにさせて貰うか。」

 

ラウラ&シャルル&生徒達

「………」

 

 楽しそうに話す本音と千冬の会話の意味を誰も理解する事は出来なかった

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

 セシリア達が【ラインバレル】攻略について話し合っている時…

 

永遠

「…さて…そろそろコイツのお披露目と行くかの………のう…【ラインバレル】…」

 

 永遠は【ラインバレル】の持つもう一つの武装を使用する事を決めた

 

 ………

 ……

 …

 

セシリア

「行きますわよ!!」

 

真耶

「!?…待って下さい!…アレは…」

 

 セシリア達が一斉攻撃を仕掛けようとした時、永遠は両手に持った太刀を腕の鞘に納めていた

 

「刀を仕舞った?何のつもり?」

 

一夏

「降参!…何てこと無いよな…」

 

セシリア

「当り前です!…でも、永遠さんは一体何を…」

 

 永遠の行動の理由が分からずにいるセシリア達は次の瞬間驚きの表情に変わった

 

セシリア&鈴&一夏&真耶

「!?」

 

 【ラインバレル】の腰の【テールスタビライザー】が開くと中からアームが飛び出し、その先端には武器と思われる装備が取り付けられていた

 これこそが【ラインバレル】のもう一つの武器【エグゼキューター】だった

 永遠はアームから【エグゼキューター】を取り外すと右手で構えた

 

一夏

「な、何だアレ?」

 

「…多分アレが…」

 

セシリア

「【ラインバレル】の…隠された武装…」

 

真耶

「お二人の予想通りでしたね!…本当にあったなんて!」

 

「でも…アレって一体何なの?」

 

セシリア

「あの形では近接武器か遠距離武器かの区別も難しいですわね!」

 

 セシリア達が【エグゼキューター】の使用法について考えていると…

 

 ジャキン!

 

セシリア&鈴&一夏&真耶

「!?」

 

 右手に持っていた【エグゼキューター】の先端部が開き、そこから高出力のエネルギーが溢れ出した

 永遠はそのまま両手で持つと大きく振りかぶった

 

永遠

「うおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーっ!!!」

 

セシリア

「これはまさか!?」

 

 そのまま振り下ろすと、そのエネルギーは大出力の斬撃となってセシリア達に向かって来た

 

セシリア&鈴&一夏&真耶

「!!」

 

 4人は斬撃をギリギリ躱す事が出来たが…

 

「くっ!…何よ今の!………!?…SEが!?」

 

 その余波で4人のSEはかなり削られていた

 

真耶

「攻撃の余波だけでこれだけ削られるなんて!?それにアリーナのバリアまで!?」

 

 真耶の言う通り永遠の放った斬撃はセシリア達を通り過ぎそのままアリーナのバリアを消滅寸前の状態にまで斬り裂いていた

 

一夏

「何だよ今の攻撃!!」

 

セシリア

「アレは…ビーム兵器ですわ!!」

 

一夏

「ビーム兵器って!?火ノ兄の妹が持ってきたライフルと同じ!」

 

「そうよ!でもまさか…【ラインバレル】に既に搭載されていたなんて…」

 

真耶

「しかも、あの【種子島】と言うライフルよりも遥かに強力ですね…強化されたバリアがあそこまで破壊されるなんて…」

 

 真耶の言葉に全員が【エグゼキューター】で斬り裂かれたバリアの場所を見つめていた

 アリーナのバリアは前回のクラス対抗戦から強化されており強度は倍近くになっていた

 当然その事は学生全員にも伝えられている

 

永遠

「どうじゃ?【エグゼキューター】の威力は?一応威力は半分以下に抑えたんじゃがな。」

 

一夏

「あれで半分以下かよ!?」

 

セシリア

「【エグゼキューター】…それがその武器の名前ですか!」

 

真耶

「…【執行者】…ですか…」

 

一夏

「執行者って?」

 

真耶

「【エグゼキューター】の意味です。法律・命令・裁判・処分と言った事を実行する人の事です。…この場合は死刑執行人と言った所でしょうか…」

 

「…随分物騒な意味ね…ホントに出来そうだから余計に怖いわ…」

 

セシリア

「…はい…」

 

一夏

「つまり俺達は今から処刑されるって事かよ!?」

 

「…アンタならされてもおかしくないけどね…」

 

一夏

「どういう意味だよ!?」

 

セシリア

「ご自分の胸に手を当てて考えてみればいいですわ。」

 

一夏

「うぐっ…はい…」

 

 自分が今まで無自覚にしてきた事を突かれて言い返せない一夏だった

 

 

 

 ≪観客席≫

 

千冬

「…【エグゼキューター】…あんな物を隠し持っていたのか!?」

 

ラウラ

「…半分以下の威力でアリーナのバリアを消滅寸前にするだと………馬鹿な!?」

 

千冬

「…布仏、お前は知っていたか?」

 

本音

「私も知りませんでした!」

 

千冬

「…そうか…しかし、このバリアは対火ノ兄用に強化したんだが…」

 

生徒達

「ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」

 

本音

「そうだったんですか!?」

 

 バリアを強化した事は知っていたが、それがまさか永遠の為に強化したとは全員知らなかった

 

千冬

「そうだ!アイツが本気を出したらこの学園が消滅しかねんからな…可能な限り強化したんだが…一応は織斑の【零落白夜】なら完璧に防げる強度があるが…これでもまだ足りんのか?」

 

シャルル

「ちょっと待って下さい!いくらなんでもそれはやり過ぎですよ!?」

 

千冬

「やり過ぎなものか!強度を2倍に上げてこの有様だぞ!」

 

本音

「そうそう♪」

 

千冬

「(こうなったら束に強化して貰うしかないかもしれんな…今度相談してみるか…)」

 

ラウラ

「教官?」

 

千冬

「何でも無い!………だが、アレを使う前にビーム兵器を出してくるとは…アレと同時に使用したら本当に手が付けられんぞ!」

 

本音

「ホントですよ~…」

 

シャルル

「…あの…さっきから言っているアレって何ですか?」

 

千冬

「【ラインバレル】の持つ特殊能力の事だ。口で説明するのは簡単だが実際に見た方がいいだろうな。」

 

本音

「それに~言っても信じられないだろうからね~♪」

 

千冬

「そうだな。」

 

シャルル

「は、はぁ~…」

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

セシリア&鈴&一夏&真耶

「………」

 

 4人は永遠の【エグゼキューター】を見て次にどう動くのか考えていた

 その間に永遠は【エグゼキューター】を左手に持ち替え、左腕の太刀を抜いた

 

「…実体剣とビーム兵器の二刀流!」

 

 永遠の構えを見て鈴は二刀流と考えたが…

 

永遠

「………」

 

 永遠は左手の【エグゼキューター】の先端をセシリア達に向けると射撃攻撃を始めた

 

セシリア&鈴&一夏&真耶

「!?」

 

 4人は突然の永遠からの意外な攻撃に驚きながら躱していた

 

セシリア

「…くっ!…【エグゼキューター】は射撃も出来るのですか!?」

 

永遠

「それは違うのぉ。」

 

セシリア&鈴&一夏&山田

「えっ!?」

 

 4人は永遠の言った言葉が理解出来なかった

 何が違うのか分からないからだ

 

「何が違うって言うのよ!」

 

永遠

「【エグゼキューター】は射撃武器じゃ!これが本来の使い方なんじゃよ!!」

 

真耶

「それ射撃武器なんですか!?」

 

セシリア

「違うってそういう事ですの…」

 

 セシリア達は【エグゼキューター】は射撃も出来る近接武器と思っていたが、実際は近接戦が出来る射撃武器だったのだ

 

永遠

「さて、【エグゼキューター】のお披露目はこのくらいでいいかの。」

 

 そう言うと【テールスタビライザー】からアームを出し【エグゼキューター】を収納すると、右腕の太刀を抜いた

 

セシリア

「…【エグゼキューター】を収納した?…でしたら永遠さんの次の行動は………」

 

 セシリアが永遠の行動を考えようとした瞬間…

 …目の前にいた【ラインバレル】が消えた…

 ………そして次の瞬間

 

一夏

「ぐあああぁぁぁっ!!」

 

 セシリア達は突然聞こえた悲鳴の方を向くと…

 …後ろから【ラインバレル】に斬られた一夏がいた

 

「一夏!?アイツ!アレを使ったわね!?」

 

 鈴は即座に【龍咆】で永遠のいる場所に砲撃を行ったが【ラインバレル】は命中する前に再び消えてしまった

 

「くっ!…何処にいるの!?」

 

永遠

「ここじゃよ。」

 

「え?」

 

 今度は鈴の目の前に現れ両手の太刀で×の字に斬り裂いた

 

「きゃあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

セシリア

「鈴さん!?…【ティアーズ】!!」

 

 セシリアは【ブルー・ティアーズ】を四方に飛ばし永遠の動きに対応しようとしたが…

 

 ザンッザンッザンッザンッ

 

セシリア

「え?」

 

 ドドドドオオォォーーンッ

 

 4基の【ブルー・ティアーズ】は一瞬の内に斬り裂かれ破壊されてしまった

 

セシリア

「そんな!?…はっ!?」

 

 永遠は【ブルー・ティアーズ】を破壊され動揺した隙を突き、今度はセシリアの前に現れ横一文字に斬り裂いた

 

セシリア

「きゃあああぁぁぁーーーっ!!」

 

真耶

「オルコットさん!」

 

 永遠は最後に真耶の右隣に移動すると二本の太刀による連続突きを与えた

 

真耶

「うあああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」

 

 全員に一通り攻撃を加えると永遠は一端距離を取った

 

 

 

 ≪観客席≫

 

生徒達

「………」

 

 一方、観客席の千冬達も本音以外は【ラインバレル】の動きを理解出来ずいた

 

千冬

「…これが【ラインバレル】の能力………まさかこれ程とは…」

 

シャルル

「あの~…織斑先生…僕の気のせいならいいんですけど…さっきから【ラインバレル】がまるで瞬間移動してるみたいに動いてるんですけど…」

 

生徒達

「………」コクコク

 

 シャルルの言葉に全員が頷いていた

 

千冬

「まるでも何もその通りだが?」

 

シャルル

「へ?」

 

千冬

「私も見るのは初めてだが、アレが【ラインバレル】の特殊能力の一つ【転送】だ。その力はお前の言った通り瞬間移動だ。他にもワープ、空間転移とも呼ぶな。」

 

生徒達

「ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」

 

シャルル

「ワープって!本当なんですか!?」

 

千冬

「実際に目の前でやっているだろ。」

 

シャルル

「そ、そうですけど…でもワープ何て…」

 

千冬

「だから言っただろ?お前達が理解出来るかどうかは別だと。」

 

シャルル

「………」

 

ラウラ

「教官…先ほど教官は【ラインバレル】の能力の一つと仰りましたが…まさかあの機体には他にも何かあるんですか?」

 

千冬

「そうだ、【ラインバレル】には二つの特殊能力がある。さっき布仏が言った整備課泣かせと言う意味はもう一つの能力から来た言葉だ。」

 

ラウラ

「!?…まだあるのか…」

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

一夏

「ぐっ…ううっ…一体何が起きたんだ…いきなり後ろから斬られたぞ…」

 

「っ…。アレが【ラインバレル】の能力の一つ【転送】よ。瞬間移動って言えばアンタでも分かるでしょ。」

 

一夏

「しゅ、瞬間移動!?そんな馬鹿な!?」

 

「なら今の私達の状態はどういう訳?」

 

一夏

「そ、それは…」

 

 一夏は否定したかったが、自分達の今の状況が全てを物語っていた

 

真耶

「話には聞いていましたが、これ程厄介な能力なんて思いませんでしたよ…」

 

セシリア

「そして【ラインバレル】にはもう一つ能力がありますからね。」

 

一夏

「まだあるのかよ!?」

 

セシリア

「そうですわ。…こちらも直接見た方が早いですわね。永遠さん!!構いませんか?」

 

永遠

「構わんぞ!来い!!」

 

セシリア

「それでは鈴さんお願いします。」

 

「うおりゃあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

 鈴は連結させた【双天牙月】を投げつけた

 

 ガキンッ!

 

一夏

「え!?」

 

 永遠は避けずにその攻撃を受けた

 

一夏

「な、何で避けなかったんだ?」

 

「今の攻撃で出来た傷を見ていなさい!」

 

一夏

「え?………何!?」

 

 一夏は言われた通り、鈴が付けた傷を見ていると、一夏達の目の前で【ラインバレル】の傷があっと言う間に修復されていったのだ

 

一夏

「き、傷が治った!?何で!?」

 

セシリア

「アレが【ラインバレル】のもう一つの特殊能力【自己再生能力】ですわ。」

 

一夏

「【自己再生】!?」

 

真耶

「そうです!全てのISには元から自己修復能力が備わっているんですが…」

 

「【ラインバレル】の修復速度は通常のISの数百倍。永遠が言うには例えバラバラに破壊されても半日もあれば完全に修復されるらしいわ。」

 

一夏

「そ、そんな!?」

 

セシリア

「更にあの能力にはSEの自動回復能力も備わってます。先程の鈴さんの攻撃で受けたダメージもすでに回復していますわ。」

 

一夏

「な!?SEまで!!」

 

真耶

「そうです!しかも【ラインバレル】のあの能力はダメージを受けると同時に瞬時に発動します!その上、織斑君の【零落白夜】のようなデメリットが一切無いんです!」

 

一夏

「そんな奴どうやって倒すんだよ!?」

 

「だから最初に言ったでしょ!【ラインバレル】に勝つには速攻で仕留めるしかないって!」

 

一夏

「だ、だから長期戦は不利って言ったのか!?」

 

 一夏はこの時になってようやくセシリアと鈴が最初に行っていた言葉の意味を理解した

 【ラインバレル】を相手に間合いは意味をなさず、戦闘時間が長くなるほど自分達が不利になっていくのだ

 

 

 

 ≪観客席≫

 

生徒達

「………」

 

 此方も再び言葉を失っていた

 

ラウラ

「…な、何だあの能力は…何なんだあの機体は!?」

 

シャルル

「ビーム兵器にワープ機能、さらに自己再生!?…整備課泣かせってこういう意味だったの!?」

 

千冬

「そういう事だ。」

 

本音

「うん♪【ラインバレル】にはメンテが必要ないんだよ~♪分子レベルで修復しちゃうらしいからね~♪」

 

シャルル

「分子レベル!?」

 

千冬

「しかも、まだ単一仕様(ワンオフ・アビリティー)が残っているからな。」

 

ラウラ

単一仕様(ワンオフ・アビリティー)!?アレは二次移行(セカンドシフト)した機体だったのですか!!」

 

千冬

「違う。火ノ兄のISは全て一次の状態で単一仕様(ワンオフ・アビリティー)を使用出来る。【ラインバレル】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)に関しては私も聞いてはいないがな。布仏、お前は聞いているか?」

 

本音

「私もそれは聞いてないですよ~?」

 

千冬

「なら後で聞いておくか…【戦国龍】みたいな能力だったら対策を用意せんといかんからな。」

 

本音

「そうした方がいいですね~♪」

 

千冬

「さて、もう十分なデータも取れた事だし終わらせるか。それに…これ以上はあの4人の精神がもたん。」

 

 千冬はこれ以上続けるとセシリア達4人がただでは済まないだろうと判断し模擬戦の終了を決めた

 

千冬

「そこまでだ!!これ以上続けると後の授業に響く!!降りて来い!!」

 

 千冬の終了宣言と共に5人は地上に降りて来た

 

千冬

「全員アリーナに戻るぞ。」

 

生徒達

「はい!」

 

 千冬達はアリーナへ移動して言った

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

一夏

「つ、疲れた~~~…」

 

「結局一発も当てられなかった…」

 

セシリア

「ホントですわ…って鈴さんは一度当てたではないですか!」

 

「アレは永遠がワザと当たったからノーカンよ!!」

 

永遠

「皆大丈夫かの?」

 

真耶

「大丈夫じゃないですよ~…」

 

 それから千冬達が来るまでの間、4人は疲れを取る為休んでいた

 

 ~三人称 Side out~

 

 




 次回『第069話:剣刃』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第069話:剣刃(つるぎ)

 ~ラウラ Side~

 

 アリーナに着いた私はすでにISを解除していた二人目の男を見ていた

 

ラウラ

「…【ライン…バレル】…」

 

 私はさっきまで目の前で行われていた模擬戦が信じられなかった

 私の【シュヴァルツェア・レーゲン】はドイツの技術の粋を集めて開発された機体だ

 だが、あの【ラインバレル】とか言う全身装甲(フルスキン)のISは明らかに私の機体を遥かに上回る性能を持っていた

 あれほど高出力のビーム兵器を搭載している上に、あの二つの特殊能力…ワープと自己再生だと…そんな事が可能なISが存在していたなんて…

 

ラウラ

「くっ…何なんだアレは!?」

 

 ~ラウラ Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「………」

 

 一夏達にISのエネルギー補給をさせている間私はかつての教え子の事を考えていた

 ラウラの奴…【ラインバレル】の力に動揺していたが…

 問題を起こさなければいいんだが………多分無理だな…

 火ノ兄の奴、ラウラに完全に目をつけられたみたいだからな…

 とりあえず授業の続きをするか…

 アイツが火ノ兄に何かしても返り討ちに会うのが目に見えてるしな…

 

千冬

「【ラインバレル】の能力も大体分かったな…さて次は専用機持ちをリーダーにしたグループで実習を行う。全員別れろ。」

 

 私がそう言った途端、一夏、火ノ兄、デュノアの所に人だかりが出来た

 

生徒達

「第一印象から決めてました!よろしくお願いしまーす!」

 

千冬

「この馬鹿共が!出席番号順に別れろ!!」

 

 私が怒鳴りつけるとそれぞれの前に移動し始めた

 

千冬

「全く、最初からそうし「ひののーーーん!?」…ん?」

 

 ひののん?…確か布仏が火ノ兄を呼ぶ時のあだ名だったな…何かあったのか?

 よく見ると火ノ兄の班だけ整列せずにいるな

 

セシリア

「どいて下さい!!本音さんどうしたんですか!?」

 

本音

「セッシー…ひののんが…ひののんがいきなり倒れた…」

 

 何だと!?

 

セシリア

「そんな!?永遠さん?…永遠さんしっかりしてください!?」

 

本音

「ひのの~ん…起きてよ~…」

 

千冬

「落ち着け!!布仏、火ノ兄が倒れる時どんな状態だった!」

 

本音

「え?…えっと………あ!そう言えば欠伸してた…」

 

千冬

「欠伸だと?…まさか?」

 

 私は火ノ兄の口元に耳を近づけると…小さいが寝息が聞こえて来た

 

千冬

「これは…寝てるのかコイツ!?」

 

セシリア&本音

「え?」

 

「寝てるんですか?」

 

一夏

「何だ脅かしやがって!」

 

シャルル

「そんなに眠かったのかな?」

 

ラウラ

「フン!」

 

真耶

「何言ってるんですか!明らかにおかしいですよ!何の前触れも無く寝るなんて!!」

 

 その通りだ…もしかして…

 

千冬

「オルコット、凰、確かお前達は【ラインバレル】を使った火ノ兄と訓練をしたと言っていたな?その時もコイツはこんな風になったのか?」

 

セシリア

「いえ、このような状態になった事はありません!」

 

「はい!何時間も【ラインバレル】で訓練した後、そのまま畑に向かったくらいです!」

 

シャルル

「…畑?」

 

千冬

「【ラインバレル】が原因で無いなら何が原因なんだ?」

 

セシリア

「…そう言えば永遠さん…今日は遅刻しましたわね。」

 

「え!?そうなの?」

 

千冬

「そう言えばそうだったな…確か寝坊したと…寝坊?…そして今のコイツは眠っている?…共通するのは寝るという事………夢でも見てるのか?」

 

セシリア

「夢………!?」

 

「セシリア?どうしたの?」

 

セシリア

「あ、いえ………鈴さん、本音さん、織斑先生、後、山田先生もちょっと…」

 

 オルコットが呼んだメンバー…火ノ兄の事を知っている者達だな…

 

千冬

「(何だ?)」

 

セシリア

「(多分ですけど…暫くすれば目を覚ますと思います。)」

 

本音

「ホント!?」

 

「(本音!シッ!)」

 

千冬

「(どういう事だ?)」

 

セシリア

「(実は、以前永遠さんをこの世界に送った神様が夢に出て来たっていう話を聞いた事があるんです。)」

 

千冬

「(何?)」

 

真耶

「(本当ですか!)」

 

セシリア

「(はい。その時は追加データを貰ったと言っていたので…)」

 

「(今回もそうだって言いたいの?)」

 

セシリア

「(…はい…)」

 

千冬

「(なるほど…その話が本当ならコイツがいきなり眠った理由も分かるな。)」

 

真耶

「(ですね…)」

 

千冬

「(なら暫く様子を見るか。)」

 

セシリア&鈴&本音&真耶

「(はい!)」

 

一夏

「な、なあ…何ヒソヒソ話してるんだ?」

 

千冬

「何でも無い。暫く様子を見て目を覚まさないようなら病院に連れて行くと話していただけだ。」

 

一夏

「あ…そう…」

 

 出来れば早めに目を覚まして欲しいが…このままでは本当に病院に送る事になるな…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

永遠

『ん?…ここは…またか………とっとと出てこんか!』

 

天照大神

『あら分かってたの?』

 

永遠

『分からいでか!!前回と全く同じじゃろ!!』

 

天照大神

『あはは…そうね~今度は趣向を変えるわ♪』

 

永遠

『やめんか!と言うか人の夢にもう出てくるでないわ!!』

 

天照大神

『あら酷い!折角あなたに新しい力を与えようと思ったのに!』

 

永遠

『んなもんいらん!!』

 

天照大神

『そんな事言わずに♪』

 

永遠

『いらんっちゅうとろうが!!』

 

天照大神

『残念だけどここに私が来た時点で追加されてま~す♪』

 

永遠

『ふざけんなーーーーーっ!!!』

 

 前回はガンダムのデータじゃったが…今度は何をしたんじゃ!

 

天照大神

『それじゃあ貴方の新しい力、存分に使ってね~♪』

 

永遠

『誰が使うかーーーっ!!!』

 

天照大神

『そうそう追加されたのは【戦国龍】だからね♪』

 

永遠

『人の話を聞けーーーーーっ!!』

 

天照大神

『それとこの能力は少し扱いが難しいから一度レクチャーするわね♪目を覚ましたら実行する様にしてあるからね~♪じゃ!まったね~♪』

 

永遠

『二度と来るなーーーっ!!!』

 

 ワシは叫ぶと同時に意識を失った…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

セシリア

「…永遠さん…」

 

 わたくしは目の前で眠り続ける永遠さんを心配していました…

 恐らく永遠さんが眠っているのは以前教えて頂いた神様が永遠さんに会いに来ていると考えました…

 以前それでデータが追加されたと聞かされましたから…

 だから目を覚ますと思うのですが………!?

 

セシリア

「と、永遠さん?」

 

 永遠さんが薄っすらとですが目をあけましたわ!

 

千冬

「火ノ兄!目を覚ましたか!」

 

本音

「ひののん…よかった~…」

 

「ホントよ!」

 

セシリア

「…永遠さん?」

 

 何かおかしいですわね?

 目を覚ましたかと思ったらゆっくりと立ち上がって…

 もしかして寝ぼけてるのでしょうか?

 

千冬

「お、おい!ホントに大丈夫か?」

 

 織斑先生も心配してますが………!?

 

「ちょ、ちょっと永遠!アンタ何する気!?」

 

 永遠さんは腰の刀を抜いて【戦国龍】を展開しました

 

セシリア

「【戦国龍】!?永遠さん!いきなりどうされたんですか?」

 

永遠

「………」

 

 永遠さんは【戦国龍】の腰の刀を抜いてそれを左手に持ち帰ると【戦国龍】の周囲が光り出しました

 

千冬

「今度は何だ!?………何っ!」

 

 光が収まるとそこには水の入った石の水槽、金属の台、そして右手にはハンマーを握っていました

 

セシリア

「何ですのこれは?」

 

千冬

「これは…まさか!?」

 

セシリア

「織斑先生!アレが何か知ってるんですか?」

 

千冬

「…あ、ああ…コレと似た物を見た事が…だが…」

 

セシリア

「それは一体…」

 

 ゴオオオオオオォォォォォォーーーーーーッ!!!!

 

全員

「!?」

 

 永遠さんは突然【戦国龍】の口から炎を吐いて左手に持った刀に浴びせ始めました

 

シャルル

「な、何してるの…」

 

 カンッ!

 

 炎を浴びた刀が真っ赤に染まると、今度は目の前の金属の台において右手のハンマーで叩き始めました

 

 カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…

 

 ゴオオオオオオォォォォォォーーーーーーッ

 

 カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…

 

 永遠さんはハンマーで暫く刀を叩くと再び炎を浴びせまた叩くという事を繰り返していました

 

一夏

「ち、千冬姉…コレってまさか…」

 

千冬

「ああ、間違いない…コイツは刀を造ってるんだ!」

 

全員

「ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」

 

セシリア

「刀って!永遠さん初めから刀を持っていたじゃないですか!」

 

千冬

「その通りだが、今アイツがしている事は刀を造る鍛造と呼ばれる作業だ!」

 

セシリア

「…鍛造…」

 

 カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…

 

 ゴオオオオオオォォォォォォーーーーーーッ

 

 カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…

 

 その後も永遠さんは刀を打ち続けていました

 ですが突然刀を打つ手が止まりました

 

全員

「?」

 

 すると今度は横に置いてあった石の水槽の中に刀を入れました

 

 ジュオオオオオオォォォォォォーーーーーーーッ!!!!

 

 アレだけ炎を浴びていたので水につけた途端凄い勢いで中の水が蒸発していきました…ですが

 

 カッ!!!

 

 暫くすると、水槽の中が光り出しました

 

セシリア

「今度は何ですの?………あれは!」

 

 光が消えると刀を持っていた左手には見た事も無い剣が握られていました…すると…

 

永遠

「…はっ!?………ふざけんなああああぁぁぁぁーーーーーっ!!!」

 

全員

「ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」

 

 永遠さんが意識を取り戻したような反応をするといきなり怒鳴り声を上げたんですわ…

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「………」

 

 今日のコイツは本当にどうしたんだ?

 いきなり倒れて眠ったかと思ったら、目を覚ませば唐突に刀を打ち始めるし、刀が出来れば今度は怒鳴り声をあげる

 

千冬

「…火ノ兄…本当に大丈夫か?」

 

永遠

「ん?…ああ大丈夫じゃ!…やっと体の自由が戻ったわい!!」

 

千冬

「は?…体の自由って…お前意識があったのか?」

 

永遠

「うむ、意識はハッキリしとったんじゃが、目を覚ましてから体が勝手に動いとったんじゃよ。」

 

千冬

「何だそれは?もしかしてさっきまでお前がやっていた作業が原因か?」

 

永遠

「恐らくそうじゃろ。全く、妙な能力が追加されたもんじゃ!まあお陰でどんなものかは良く分かったわい…まさか【剣刃】を造る能力とは…」

 

 火ノ兄はそう愚痴りながら出来たばかりの剣を地面に突き刺すと【戦国龍】を解除した

 

セシリア&本音

「永遠さ~~~ん(ひのの~~~ん)!!」

 

永遠

「ぬお!?」

 

 オルコットと布仏が火ノ兄に抱き着いたか…それも仕方ないか…ここに更識がいても同じことをしただろうしな

 

千冬

「お前が倒れてからずっと心配していたんだ。そのくらいは許してやれ。」

 

永遠

「…そうじゃな…心配をかけたようじゃな…セシリア、本音…ワシは大丈夫じゃよ!」

 

セシリア

「本当ですか?何処も悪い所は無いですか?」

 

本音

「う~~~心配したんだよ~!!」

 

永遠

「…ほんにスマンかったの…」

 

「オホン!アンタたち何時までやってんのよ!」

 

セシリア

「あ!ススススミマセン!」///

 

本音

「えへへ~…つい…」///

 

「まあ分からなくはないから仕方ないけど…所で永遠?この刀って結局何なの?」

 

 鈴がそう言いながら火ノ兄が造った刀を指さした

 全体的に青みがかった刀身と蒼い柄、そして刀身に巻き付くように複数の龍の装飾が施されている

 一目でかなりの業物だと分かる出来だな…

 

永遠

「【大倶梨伽羅(おおくりから)】…」

 

「え?」

 

永遠

「この刀の名前じゃよ。【大倶梨伽羅(おおくりから)】と言うんじゃ。」

 

「【大倶梨伽羅(おおくりから)】…(これを造るのが神様から貰った力なの?)」

 

永遠

「ん?…(気付いとったか。)」

 

 どうやらオルコットの予想は的中したようだな

 

千冬

「(火ノ兄…実際はどうなんだ?やはり神とやらの仕業か?)」

 

永遠

「(うむ…【戦国龍】に刀を造る能力を追加したそうじゃ。しかも、コイツの造り方を体に覚えさせる為にワシの体を勝手に動かしたんじゃ!)」

 

セシリア

「(そんな事が出来るんですか!?)」

 

永遠

「(そうらしい!いい迷惑じゃ!!)」

 

セシリア&千冬

「(本当ですね(だな)…)」

 

 詳しい話は後で聞くとして今はこの刀を調べるか

 

千冬

「…織斑…倉庫に行って【打鉄】の近接ブレードを2,3本持って来い。」

 

一夏

「え?何で?」

 

千冬

「この【大倶梨伽羅(おおくりから)】と言う刀の切れ味を試す。」

 

一夏

「何で俺が行くの?」

 

千冬

「お前が目に入ったからだ!いいからさっさと持って来い!」

 

一夏

「理不尽だーーーーーっ!!」

 

 一夏は叫びながらも倉庫に向かって行った

 

 




 次回『第070話:二振りの青の剣刃』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第070話:二振りの青の剣刃(つるぎ)

 ~千冬 Side~

 

一夏

「も、持ってきました…」

 

千冬

「ご苦労!」

 

 一夏は私の指示した通り、ブレードを数本持ってきた

 私は地面に突き刺してある【大倶梨伽羅(おおくりから)】とブレードを交互に見てどうするか考えていた

 

千冬

「………山田先生、ブレードでこの刀を斬り付けてください。」

 

真耶

「え!いいんですか!?」

 

千冬

「一番手っ取り早い方法です。火ノ兄構わんよな?」

 

永遠

「構わんぞ。」

 

真耶

「でも何で私がやるんですか?造った火ノ兄君がやれば…」

 

千冬

「火ノ兄では力が強すぎて破壊する可能性がある。それに専用機より量産型の【ラファール】の方が分かり易いからな。」

 

真耶

「な、なるほど…分かりました。………では、行きます!!」

 

 山田先生はブレードを構えると、横薙ぎに斬りかかった

 

 ガキイィィン!…ピシッ!

 

真耶

「え?」

 

 バキイィン!

 

千冬&真耶

「あ!?」

 

 ブレードが…折れた!?

 

生徒達

「ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」

 

一夏

「お、折れた!?どういう事だよ!?」

 

千冬

「…【ラファール】で斬り付けて逆に折るとは…まさかここまでの切れ味と頑丈さとはな…」

 

永遠

「…で?この刀どうするんじゃ?」

 

千冬

「どうするもこうするもこれはお前が造った物だ。お前の好きにすればいい。」

 

永遠

「さよか。…どうするかの~?…正直これ以上持っとってもな~…」

 

 まあ、コイツは刀だったら【六道剣(りくどうけん)】があるから今更必要も無いか…

 

真耶

「恐らく、これを持っていれば専用機を持つ事と同じ意味になりますよ。」

 

 専用機と同じ意味…あ!そうだ!

 

千冬

「火ノ兄、スマンがもう1本造ってくれないか?出来ればこれとは違う奴をな。」

 

永遠

「なぬ?何故じゃ?」

 

千冬

「お前も知っているだろうがもうすぐ学年別個人トーナメントが開かれる。その時の優勝賞品にしようかと思ってな。」

 

生徒達

「ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」

 

真耶

「なるほど!これなら賞品として申し分ないですね!」

 

永遠

「じゃがいいんか?勝手にそげな事決めて?」

 

千冬

「だからもう1本造ってほしいんだ!学園長や他の教師達にも見せて決めようと思う。」

 

永遠

「………よかろ!ただし条件がある!」

 

千冬

「聞こう。」

 

永遠

「今からもう1本造るがそれは後で返してほしい。賞品用の刀は許可が下りた時に改めて造る。どうじゃ?」

 

千冬

「…いいだろう!お前の言う事ももっともだ。その条件を飲もう。」

 

真耶

「ところで今から造るのとあの刀、結局どうするんですか?」

 

永遠

「そうじゃな~…ワシには必要無いから誰かにやるかの。」

 

千冬

「やるって…まあお前が造った物だから好きにすればいいが…。誰にやるつもりだ?」

 

永遠

「う~ん…そうさの~………織斑!!」

 

一夏

「え?………俺?」

 

 一夏だと!?

 

永遠

「お主以外に織斑何ちゅう名字の生徒がおるんか?」

 

一夏

「いえ、いません…」

 

永遠

「この【大倶梨伽羅(おおくりから)】はお前にやる。」

 

一夏

「お、俺に!?いいのか!?」

 

永遠

「勘違いするでない!善意でやる訳ではない!貴様のその根性と性格を叩き直す為にコイツをやるんじゃ!」

 

一夏

「…え?」

 

永遠

「先に言うておくが、今のお主にはこの刀は使いこなせん!せいぜい5割程度じゃろう。」

 

一夏

「ご、5割!?」

 

永遠

「織斑先生もこれを賞品に考えておるなら覚えとくんじゃぞ。ワシが造る刀は【六道剣(りくどうけん)】の様な能力付きの剣じゃ。故に完全に使いこなすのは難しいぞい。」

 

千冬

「【六道剣(りくどうけん)】って…あんな物を造れる様になったのか…」

 

永遠

「まあ、あの6本に比べると能力は劣ってしまうようじゃが。」

 

千冬

「当り前だ!あんな自然災害を起こすような刀、そう何本も造られて堪るか!!」

 

生徒達

「ウンウン!!」

 

 【六道剣(りくどうけん)】を知っている1組の連中は私の言葉に激しく同意してるな

 物凄い勢いで首を縦に振っている

 と言っても今日転校してきたデュノアとボーデヴィッヒの二人は分かって無い顔をしているが

 

セシリア

「ですが永遠さんはその【六道剣(りくどうけん)】を全て使いこなしておりますわよ?」

 

 そう言えばコイツはあの6本の刀の力を全て使えていたな

 

永遠

「ワシが使いこなせるんはここに来る前から【戦国龍】で鍛練に励んどったからじゃ。」

 

「そういう事か…」

 

永遠

「話が逸れたの。つまりじゃ織斑、コイツを使いこなせる様になればその鈍感で無神経な性格も多少はマシになるじゃろうと言うとるんじゃ!」

 

一夏

「うぐっ…な、何で…」

 

永遠

「ワシの刀を使いこなすには体だけでは無い。心と技も鍛えんといかん。それが出来ん限りコイツは只のナマクラにしかすぎん!」

 

千冬

「そういう事か。確かに今の織斑には使いこなせんな。そして使える様になれば心身共に鍛え上げられコイツの性根もマシになっているという事だな。」

 

永遠

「さよう。…で、どうする織斑?この【大倶梨伽羅(おおくりから)】…受け取るんか?いらんのなら別の者に渡すが?」

 

一夏

「………それを使いこなせれば…守れる男になれるのか?」

 

永遠

「知らん。それはお主次第じゃ。何でも人に聞くな!自分の事じゃろうが!」

 

一夏

「!?…そう、だな…」

 

 …鈴の事をまだ引き摺ってるのかコイツは?

 

一夏

「俺次第か…分かった!その刀…【大倶梨伽羅(おおくりから)】を俺に譲ってくれ!頼む!」

 

永遠

「よかろう。今からコイツはお主の刀じゃ。それと、最後に言うておくぞ。コイツを名刀にするかナマクラにするか…それは今後の貴様の成長次第じゃ。それを肝に銘じておけ!!」

 

一夏

「はい!!」

 

 名刀になるかナマクラになるかは自分次第か…その通りだな…

 

「…アレ?そう言えば【白式】って拡張領域(バススロット)に空きが無いんじゃなかった?」

 

一夏

「あ!」

 

永遠

「んなもん倉庫に置いとけばよかろう。」

 

一夏

「でももし盗まれたりしたら…」

 

永遠

「【白式】の武装として登録しとれば他のISでは使えん。登録するだけなら問題なかろう。」

 

千冬

「そうだな。織斑、その刀は後で登録しておけよ。その後はキチンと管理しておけ。」

 

一夏

「は、はい!」

 

永遠

「では早速もう1本造るかの。…時に授業はどうすればいいかの?」

 

 そう言えばそうだったな…

 

千冬

「お前はやらなくていい。今からするのはISの歩行練習だ。グループリーダーが一人減った所で問題ない。」

 

永遠

「分かった…後、材料として織斑の持ってきたブレードを1本使わせて貰うぞい。」

 

千冬

「ああ、好きに使え。」

 

永遠

「んむ!さて…行くぞ【戦国龍】!」

 

 火ノ兄は【戦国龍】を展開してさっきと同じ道具を出して作業を始めた

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…

 

一夏

「………え~っと…それじゃあ次の子…」

 

生徒

「………」

 

 今俺達はISの乗り降りと歩行訓練をしてるんだけど…

 

 カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…

 

一夏

「あの~…」

 

生徒

「…あっ!ご、ごめん私の番だね!?」

 

一夏

「あ、うん…気になるのは分かるけど………」

 

 火ノ兄の作業が気になってみんな集中できてないんだよな~…

 他の班も同じ感じだし…

 かく言う俺も火ノ兄が次はどんな物を造るのかが気になってるんだよな~…

 

千冬

「お前達!!授業に集中しろ!!全員補習にするぞ!!!」

 

生徒達

「は、はい!!!」

 

 とうとう千冬姉がキレたか…

 けど、そう言われてもな~…

 

 カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…

 

 この音がどうしても気になるんだよな~…

 

 カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…

 

一夏

「…はぁ…次の人………って箒か。」

 

「………」

 

一夏

「箒…オイ箒!!」

 

「!?」

 

一夏

「次はお前だぞ。早くしろ。」

 

「あ、ああ…すまない………ん?」

 

一夏

「どうし…あっ!」

 

 【打鉄】が立ったままになってる…

 前の子が立ったまま解除したのか…

 

「どうするんだ?」

 

一夏

「…仕方ない………捕まってろ。」

 

「え?きゃっ!!」

 

 俺は箒を抱きかかえて【打鉄】まで運ぶ事にした

 

「………」///

 

一夏

「着いたぞ。乗り移って起動。次に歩行だ。」

 

「あ、ああ…分かった。………なあ一夏、今日の昼食…一緒に取らないか?」

 

一夏

「おお、いいぞ。」

 

「なら屋上で食べよう!いいな!後購買で何も買って来るんじゃないぞ!」

 

一夏

「あ、ああ分かった。」

 

 何をそんなに必死になってるんだ?

 

千冬

「お前達…授業中に昼食の話か?随分と余裕だな?」

 

一夏

「あ!?す、すみません!!」

 

「あ、あの…これは…」

 

千冬

「真面目にやれ!!!」

 

 カンッ…ガンッ…ガンッ…カンッ…カンッ…

 

一夏&箒

「ぐうぅぅ~~…」

 

真耶

「今、音が少しおかしかったような…」

 

 俺達を殴った音が混ざったんだよ…痛い…

 

 ジュオオオオオオォォォォォォーーーーーーーッ!!!!

 

一夏

「この音は!!」

 

千冬

「出来たか!!」

 

 ザワザワ…

 

 皆この音に反応していた…今度はどんな刀が出来たんだろ?

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

永遠

「ふぅ~~~…出来たぞい!」

 

 そう言う永遠さん右手には先程と同じ様に一振りの刀が握られていました

 

セシリア

「あら?…あの形は…」

 

「刀と言うより剣ね?」

 

千冬

「そうだな。」

 

 他の方達も同じ意見の様ですわね

 

千冬

「火ノ兄、それが新しい刀?…か…」

 

 疑問形になってますわね…まああの形ですから仕方ないですわね…

 

永遠

「うむ!…それと、ワシの造った物はこれから【剣刃(つるぎ)】と呼んでくれ。」

 

セシリア

「【剣刃(つるぎ)】ですか?」

 

千冬

「呼び方を統一する訳か。分かった。これからはそう呼ぼう。…それで、それが新しく出来た【剣刃(つるぎ)】か?」

 

永遠

「そうじゃ!名を【蒼海の大剣メイルシュトロム】じゃ!!」

 

 永遠さんは名前を言うと剣を地面に刺して【戦国龍】を解除しました

 わたくし達は永遠さんが造った剣【蒼海の大剣メイルシュトロム】を見つめていました

 【大倶梨伽羅(おおくりから)】と同じ、青を基調としたその剣の刀身には渦巻きの様な螺旋の模様があり、柄の先には黒い鎖が繋がれており、その鎖の先には銀色の錨の様な物がついていました

 

セシリア

「【蒼海の大剣メイルシュトロム】…」

 

「【大倶梨伽羅(おおくりから)】より大きいわね。」

 

シャルル

「大剣って名前の通りだね。」

 

セシリア

「そうですわね。」

 

永遠

「コイツは【大倶梨伽羅(おおくりから)】と同じ青の【剣刃(つるぎ)】じゃ!」

 

千冬

「青?…もしかして、お前が造った【剣刃(つるぎ)】は【六道剣(りくどうけん)】と同じ属性を持っているのか?」

 

永遠

「そうじゃ。」

 

セシリア

「青と言う事は…【水覇刀ジュズマル】ですわね。」

 

一夏

「あの水害を起こす奴か…」

 

シャルル

「あの…さっきから言ってる【六道剣(りくどうけん)】って何なの?それに自然災害とか水害とかどういう事なの?」

 

一夏

「ああ、それはな…あの【戦国龍】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)が【六道剣(りくどうけん)】って言う6本の刀を呼ぶ能力何だけど…それ全部が自然災害を起こせるんだよ。」

 

シャルル

「え?」

 

真耶

「その中の1本【水覇刀ジュズマル】は水を操れるんですけど…火ノ兄君が言うには津波や渦を作り出せるんですよ。」

 

シャルル

「…津波?…渦?…えええぇぇぇーーーっ!!!」

 

 やはり驚きますわよね…

 

シャルル

「じゃ、じゃあコレもそんな事が出来るの!?」

 

永遠

「出来んぞ。」

 

全員

「え?」

 

永遠

「さっきも言うたじゃろ?ワシが造った【剣刃(つるぎ)】は【六道剣(りくどうけん)】より劣ると。【メイルシュトロム】も【大倶梨伽羅(おおくりから)】もそこまでの力は無いわい。」

 

シャルル

「そ、そっか…よかった…」

 

永遠

「さて織斑先生、注文通り1本造ったぞい。後で返すんじゃぞ。」

 

千冬

「ああ、分かっている。…所でコレは誰に渡すつもりだ?」

 

全員

「………」

 

 皆さんそれが気なっていますわね…

 専用機が手に入る様なものですからね…

 

永遠

「セシリア。」

 

 一体誰に渡すんでしょう?

 

永遠

「セシリア!」

 

セシリア

「ひゃい!?…え?…わたくし?」

 

永遠

「そうじゃ!さっきから呼んどるじゃろ?」

 

セシリア

「すみません…」

 

永遠

「この【蒼海の大剣メイルシュトロム】はお主に託す!」

 

セシリア

「わ、わたくしに…」

 

永遠

「うむ!お主の近接武器は短剣1本だけじゃからな、ライフルで殴るよりこっちの方がやり易かろう。それに【メイルシュトロム】ならお主の【ブルー・ティアーズ】とも色が合うからピッタリじゃよ。」

 

セシリア

「永遠さん………ありがとうございます!大切に使わせていただきますわ!」

 

永遠

「ああ、お主なら織斑と違ってすぐに使いこなせるじゃろ。」

 

「いいな~…セシリア…」

 

永遠

「ん?何ならお主のも造ろうか?」

 

「ホント!?」

 

永遠

「うむ、簪の分と一緒に造ろうと考えておったからな。」

 

「サンキュー♪」

 

永遠

「ただ、造るのは今度にして貰うぞ。さすがに今日はもう疲れたんでな。」

 

「造ってくれるなら私はいつでもいいわよ♪」

 

千冬

「火ノ兄、そう簡単に安請け合いで造っていいのか?」

 

永遠

「心配せんでも造るんは鈴と簪の二人の分だけじゃよ。それが出来れば当分は賞品用の分以外は頼まれても造らんわい。」

 

「!?」

 

千冬

「ならいい。」

 

 キーン!コーン!カーン!コーン!

 

千冬

「ちょうど終わったか。全員使用したISを片付けてから休憩に入る様に!以上!!」

 

全員

「ありがとうございました!!」

 

千冬

「それからオルコット、【メイルシュトロム】を登録したらスマンが整備室に運んでおいてくれ。教師達の確認が終わったら返す。」

 

セシリア

「分かりました。」

 

 【蒼海の大剣メイルシュトロム】…永遠さんがわたくしの為に造って下さった【剣刃(つるぎ)】…

 永遠さんの期待に応える為にも必ず使いこなして見せますわ!

 

「………」

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~箒 Side~

 

「………クソ!!」

 

 何故オルコットなんかに造ったんだ!

 剣なら私にこそ相応しいと言うのに、なぜ私の分を造らないんだ!

 しかも、鈴と4組の奴の分を造ったら当分造らないだと!

 

「…こうなれば、今度のトーナメント…是が非でも優勝しなければ!!」

 

 いざとなったら無理矢理造らせてやる!

 

 ~箒 Side out~

 

 




 次回『第071話:第二回織斑家家族会議』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第071話:第二回織斑家家族会議

 ~一夏 Side~

 

 …う~ん…オカシイ…

 シャルルは何であんなに一緒に着替えるのを嫌がるんだ?

 

一夏

「分からん………よし!後で火ノ兄に相談しよう!」

 

 これならアイツも怒らないだろ

 とりあえず箒に誘われているから屋上に行くか

 

一夏

「あ!そうだシャルルも誘って行くか。」

 

 俺は着替えの終わったシャルルを連れて屋上に向かった

 けど…後から来た箒はシャルルといる俺を見て露骨に嫌な顔をしていた

 もしかして箒の奴…

 …だとしたら俺…やっちまったのか!?

 

「…どうした!急に顔が青くなっているぞ!」

 

 箒の声…明らかに不機嫌になってる…こんな所をアイツ等に見られたら

 マ、マズイ…パワーボムが来る…

 

一夏

「い、いや…な、何でもない…」

 

シャルル&箒

「?」

 

 俺は屋上を見渡したけどアイツ等はいなかった

 た、助かった…

 けど俺は恐怖心からその時の箒の気持ちについてすっかり忘れてしまっていた

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

 私は昼食を永遠達と食べようと思って食堂で待っていた

 

本音

「かんちゃ~ん♪」

 

「本音、皆も♪」

 

 本音を先頭に永遠とセシリア、鈴がやって来た

 

本音

「アレ?まだ食べてないの?」

 

「うん!みんなと一緒に食べたかったから♪」

 

永遠

「そうじゃったか。スマンな待たせてしもうて。」

 

「ううん♪気にしないで。」

 

 それから私達は昼食を取り始めたんだけど、鈴が午前中の合同授業で起きた事を話し始めた

 

「【戦国龍】の新しい能力?」

 

「そうよ!【剣刃(つるぎ)】って言うのを造る事が出来るのよ。」

 

「【剣刃(つるぎ)】?」

 

セシリア

「【六道剣(りくどうけん)】の様な物です。あの刀の様な属性を持つ剣と思ってください。」

 

本音

「でも~、【六道剣(りくどうけん)】よりは能力が落ちてるんだよね~♪」

 

「それでも十分強力な武器よ。山田先生は専用機を持つ事と同じだって言ってたわ。」

 

「そんなに!?」

 

永遠

「うむ!とりあえずレクチャー用に最初に造らされた奴は織斑にやった。」

 

「あげちゃったの!?」

 

永遠

「ワシには必要無いからのぉ。」

 

セシリア

「ただ、それを知った織斑先生が今度のトーナメントの賞品にしようと考えて、永遠さんにもう一振り造る様に言ったんですわ。」

 

「賞品って…そんな事していいの?」

 

「その話は永遠の造った【剣刃(つるぎ)】を他の先生達や学園長に見せて話し合うそうよ。許可が下りれば賞品用の分を造るんですって。」

 

「そうなんだ…それで、もう一つの【剣刃(つるぎ)】はどうなるの?」

 

本音

「セッシーにあげたよ♪」

 

「え!?」

 

セシリア

「頂きはしましたが先生方の話し合いが終わるまでは手元にありませんわ。」

 

 永遠の造った武器…

 

「…いいなあ~…」

 

「フフン♪安心しなさい!永遠が私とアンタの分も造ってくれるそうよ♪」

 

「ホント!?」

 

永遠

「ああ、ただし、今日はもう疲れたんで後日になるがの。」

 

「それでいいよ!」

 

 私にも造ってくれるんだ~…よかった~…

 

永遠

「二人の分はトーナメントまでには造っておくからの。」

 

「楽しみにしてるわよ♪」

 

「一体どんなのだろ~♪」

 

 凄い楽しみだな~♪

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 昼食、午後の授業が終わり、放課後になったからセシリア達に挨拶して帰ろうとしたら…

 

一夏

「火ノ兄ーっ!」

 

永遠

「ん?」

 

 織斑がやって来た

 

永遠

「何じゃ?ワシはもう帰るんじゃが?」

 

一夏

「悪い!ちょっと相談に乗って欲しいんだ。」

 

永遠

「相談?…また誰か泣かしたんか!」

 

一夏

「ち、違う!?何でいきなりそうなるんだよ!」

 

永遠

「自分の胸に手を当ててみい!!」

 

一夏

「…すみません…」

 

永遠

「で?相談とは何じゃ?」

 

一夏

「あ、ああ…シャルルの事なんだ。」

 

永遠

「デュノア?何があったんじゃ?」

 

一夏

「実はさ………」

 

 そしてコイツはデュノアの事を話し始めた…

 何でもコイツはデュノアに裸の付き合いをしようと着替えに誘ったらしい

 それを断られて理由が分からずワシに相談したそうじゃ

 それを聞いてワシは…

 

永遠

「………」

 

 ザッ!

 

 ワシとセシリア達は一瞬で織斑から距離を取った

 

一夏

「お、おい…どうしたんだよ?」

 

永遠

「織斑…ワシの半径3m以内に入って来るな!」

 

一夏

「どういう意味だ!!」

 

セシリア

「貴方やはりそっちの方でしたのね!」

 

「噂は本当だったわけね!」

 

「永遠に近づかないで!」

 

本音

「ひののんはノーマルなんだから!」

 

一夏

「またそのネタかよ!!だから俺はホモじゃねえええぇぇぇぇーーーーーっ!!!」

 

永遠

「喧しい!明らかにそっちの奴がする行動じゃろうが!!」

 

一夏

「え?」

 

 コイツ分かっとらんのか!

 

永遠

「いいか!男同士の裸の付き合いとか言う言葉はな、銭湯や温泉で使うもんじゃ!何処の世の中に更衣室で言う奴がおるんじゃ!そう言うんは同性愛者しかせんわい!!」

 

一夏

「ええぇっ!?」

 

永遠

「しかも貴様には気遣いゆうもんが無いんか!男同士でも肌を見られたくない者もおるんじゃ!体に付いた傷や痣を見られたく無い者もおる!」

 

一夏

「そ、そうか!!」

 

永遠

「んな事も分からんのか貴様は!!」

 

一夏

「す、すみません…」

 

永遠

「男同士で一緒に着替えようなんて言う奴はホモ以外いる訳無いじゃろうが!!!」

 

一夏

「そ、そんな…」

 

永遠

「分かったらワシに近づくな!!ホモ斑!!」

 

一夏

「ホ、ホモ斑!?何だよそれ!!」

 

永遠

「お前の事じゃ!!」

 

一夏

「俺はホモじゃなあああああぁぁぁぁぁーーーーーいっ!!!!」

 

「ほぉ~…その話、私も詳しく聞かせて貰いたいな…」

 

一夏

「!?………ち、千冬姉…」

 

 いつの間にか織斑の後ろに姉が来ておった…

 

一夏

「い、何時からそこに…」

 

千冬

「お前がデュノアの事で相談した辺りからだ。」

 

 殆ど最初からじゃな…

 

千冬

「織斑…」

 

一夏

「は、はい!!」

 

千冬

「今夜9時に私の部屋に来い…家族会議だ!!」

 

一夏

「いやだああああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!」

 

永遠

「自業自得じゃな。」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「ウンウン!」

 

永遠

「さて、ホモは放っておいてそろそろ「あの!」ん?」

 

 今度は何じゃ?

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~シャルル Side~

 

永遠

「デュノアか…何用じゃ?」

 

シャルル

「う、うん…火ノ兄君、これから空いてるなら一緒に訓練をと思ったんだけど…」

 

 彼については何の情報も無い…

 だから、少しでも一緒に行動して彼の事を知らないと…

 そう考えて訓練に誘ったんだけど…

 

永遠

「スマンがワシはもう帰るんでな。訓練は出来んのじゃ。」

 

シャルル

「帰るって…寮の部屋に?」

 

永遠

「いや、家にじゃ。」

 

シャルル

「え!?な、なんで…この学園は全寮制の筈だよ!」

 

永遠

「ワシは事情があって許可を貰って自宅通学をしとる。放課後になれば家に帰るんじゃよ。」

 

シャルル

「自宅通学って…あ!今朝、織斑先生が言ってた1日の半分はいないっていうのは…」

 

永遠

「夕方から朝まで学園におらんという事じゃよ。」

 

シャルル

「そ、そうだったんだ…」

 

 まずいな…学園にいないんじゃ一緒に行動する事も出来ない…

 つまり彼の事を知るには授業の間か、人伝に聞くしかないのか…

 いきなり出ばなをくじかれちゃったな…どうしよ…

 

永遠

「まあそう言う訳でワシは訓練は出来ん。じゃが週末じゃったら多少は出来る。その時にでもまた誘ってくれ。」

 

シャルル

「う、うん!その時はお願いするよ。」

 

永遠

「ん!では、ワシはもう帰る。皆、また明日な。」

 

セシリア

「はい♪また明日♪」

 

「さよなら♪」

 

本音

「バイバ~イ♪」

 

「じゃあね~。」

 

 火ノ兄君はオルコットさん達に挨拶をすると帰って行った

 

一夏

「千冬姉ええぇぇぇーーーっ!!」

 

セシリア

「まだやってますわね。」

 

シャルル

「…何があったの?」

 

「アンタは知らなくていい事よ…」

 

シャルル

「そ、そう…」

 

 深く聞かない方がいいみたいだな…

 

 ~シャルル Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 今は夜9時…私の前には前回と同じ様に一夏が正座している

 

千冬

「さて、第二回家族会議を始めよう…」

 

一夏

「………」

 

千冬

「一夏………」

 

一夏

「………はい…」

 

千冬

「やはりホモだったのかあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

一夏

「違あああああぁぁぁぁぁーーーーーうっ!!!」

 

 私達の家族会議は今回も朝まで続いた…

 

 ~千冬 Side out~

 

 




 次回『第072話:放課後の訓練』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第072話:放課後の訓練

 ~永遠 Side~

 

 ワシが家に帰ると束さんが出迎えてくれたんじゃが、クロエの事を聞いたらやはり無理をしとったらしくずっと眠っとるらしい

 流石の束さんも起きたら注意しとくと言うとった

 後、【剣刃(つるぎ)】の事を話したら驚かれた…試しに1本造ってほしいと言われたんじゃが、今日は疲れとるから明日にして欲しいと頼んで我慢して貰った…

 約束通り、次の日学園から戻ると一振り造った

 今回は【深淵の巨剣アビス・アポカリプス】を造ったんじゃが、それを見た束さんは興奮し【剣刃(つるぎ)】を研究したいと言うたから【アビス・アポカリプス】は束さんに渡した

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~シャルル Side~

 

 転校してからの数日、その間に彼の戦闘記録を見せて貰った

 彼の使う3機のうち残り2機のデータを見たけど、どちらも僕の想像以上の性能だった

 ハッキリ言って僕なんかより彼は遥かに強い…そう思った

 そして、今日は週末、以前言っていたように火ノ兄君を訓練に誘ってみた

 彼もその時の事を覚えてくれていたからすんなり了承してくれた

 他にはセシリア、鈴、簪、箒に一夏も一緒に訓練している

 最初に彼に軽い手合わせをお願いしたけど一撃も当てられず負けちゃった…

 それで今は一夏の訓練をしている

 ちなみに、凰さんと更識さんは互いの意見を出し合いながら話し合っていた

 火ノ兄君とオルコットさんは少し前に織斑先生に呼ばれて今はいない

 

シャルル

「ええとね…一夏がオルコットさんや凰さんに勝てない…と言うか一撃も当てられないのは、単純に射撃武器の特性を把握してないからだよ。」

 

一夏

「うぐっ…そう、なのか?一応分かってるつもりなんだけど…」

 

シャルル

「一応知識としては知ってるって感じだね。僕と戦っても全然距離を詰められなかったでしょ?」

 

一夏

「…確かに、瞬時加速(イグニッション・ブースト)も読まれてたしな。」

 

シャルル

「一夏は接近戦だけだからより深く武器の特性を把握しないと行けないんだよ。瞬時加速(イグニッション・ブースト)も直線的で軌道予測はしやすいんだよ。」

 

一夏

「直線的…か…」

 

シャルル

「だからって瞬時加速(イグニッション・ブースト)中に軌道を変えようなんて考えない方がいいよ。体に無理な負荷が掛かるからね。」

 

 ちなみに一夏は今は【雪片弐型】じゃなくて火ノ兄君から貰った【大倶梨伽羅(おおくりから)】を使っている

 

一夏

「なるほど…にしても、シャルルの説明は分かり易いな…今迄はな~…」

 

「今迄が何だ?一夏?」

 

一夏

「何でもないです!」

 

 確か篠ノ之さんに訓練して貰っていたんだよね…時々オルコットさんや凰さんもしてたらしいけど…一体どんな訓練してたんだろ?

 いくら何でも彼…弱すぎる気がするんだよね…まあいいや…

 

シャルル

「凰さんが言ってたけど…一夏の機体は後付武装(イコライザ)が無いんだよね?」

 

一夏

「ああ…拡張領域(パススロット)に空きが無いらしい。だから【大倶梨伽羅(おおくりから)】を量子変換出来ないんだ。」

 

シャルル

「きっと単一仕様(ワンオフ・アビリティー)の方に容量を使ってるからだよ。…普通は二次移行(セカンドシフト)した後に発現するものなんだけど…一次移行(ファーストシフト)から使えて、織斑先生の使ってたISと同じ能力なのも異常なんだよね。」

 

一夏

「姉弟だからとかじゃないのか?」

 

シャルル

「血縁者でも同じ能力が出る理由にはならないよ。操縦者と機体の相性が重要だからね。再現しようとしても出来ないんだ。」

 

一夏

「そうなのか…」

 

シャルル

「異常って言えば火ノ兄君の機体もそうなんだけどね。」

 

 【白式】と違って拡張領域(パススロット)も空いてるみたいだし、特殊能力も単一仕様(ワンオフ・アビリティー)も凄すぎるし…

 

一夏

「アイツのはああいう物だって思うしかないんじゃないか?」

 

シャルル

「そ、そうだね………次は射撃の練習をしてみようか。」

 

 一夏は開き直ってるね…多分他の皆もそうなんだろうな~…

 気を取り直して僕は一夏にアサルトアイフルを貸して射撃の体感を覚えさせる事にした

 暫く一夏に撃たせていると…

 

永遠

「どうじゃ?そっちの方は?」

 

 火ノ兄君とオルコットさんが戻って来た

 

「永遠、セシリア!」

 

 更識さんと凰さんが話を中断してこっちに向かって来た

 

「千冬さん何だって?」

 

セシリア

「【メイルシュトロム】を返す為に呼ばれましたわ。」

 

「じゃあ、話し合いは終わったの?」

 

永遠

「ああ、じゃからワシも呼ばれた。」

 

シャルル

「それでどうなったの?」

 

永遠

「織斑先生の話は通った。賞品用の【剣刃(つるぎ)】を造る事になったわい。」

 

「へぇ~、それでどんなのを造るの?」

 

永遠

「暫く考える。先にお主等のを造ってからじゃ。」

 

「よかった♪」

 

永遠

「休みの間に二人の分を造っておく。週明けには渡せるじゃろ。」

 

「楽しみにしてるわよ。」

 

 二人はトーナメントに関係無く手に入れられるんだ…少し羨ましいな…

 

セシリア

「それではわたくしも訓練に入りますわね。【メイルシュトロム】を早く使いこなせる様にならなくては!」

 

 オルコットさんはそう言って専用機を展開し拡張領域(パススロット)から【メイルシュトロム】を出した

 

「これが【蒼海の大剣メイルシュトロム】…本当に大きな剣だね。」

 

「簪は見た事無かったわね。一夏に渡した【大倶梨伽羅(おおくりから)】より一回り大きいもんね。」

 

「うん。」

 

 それからオルコットさんは火ノ兄君や凰さんに指導されながら練習を始めた

 僕が彼等の練習を見ていると…

 

一夏

「シャルル…撃ち終ったぞ。」

 

 射撃訓練をさせていた一夏が弾倉を空にしてやってきた

 

シャルル

「あ!うん、どうだった?」

 

一夏

「やっぱり刀とは感覚が違ってたな…」

 

シャルル

「そこは練習あるのみだよ。」

 

一夏

「…そうだな…また練習を頼めるか?」

 

シャルル

「僕でいいならね。」

 

「………」

 

 …何だろ?…妙な視線を感じたけど…気のせいかな?

 

一夏

「そう言えば気になってたんだけど…シャルルのISって【ラファール・リヴァイヴ】だよな?山田先生が使っていたのと随分違う気が…」

 

シャルル

「僕のは専用機だからかなりいじってあって、正式名は【ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ】だよ。基本装備をいくらか外して拡張領域(パススロット)を倍にしてあるんだ。量子変換してある装備だけでも20はあるよ。」

 

一夏

「倍!?しかも20って…まるで武器庫だな。」

 

シャルル

「そうだね。」

 

 ザワザワ…

 

一夏

「ん?なんだ?」

 

 何か騒がしいな…

 

 ~シャルル Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

生徒1

「ねぇ、あれって…」

 

生徒2

「うそ、ドイツの新型?」

 

生徒3

「まだトライアル段階だって…」

 

 騒がしいと思ったら黒いISを纏ったボーデヴィッヒがやって来たのか

 

ラウラ

「織斑一夏、私と戦え!!」

 

 いきなり何言ってんだ?

 

一夏

「嫌だ、理由が無い。」

 

ラウラ

「貴様に無くても私にある!貴様がいなければ…教官が大会二連覇の偉業をなし遂げていたのは明白だ!だから、私は貴様を認めない!!」

 

 …コイツ…やっぱり…

 だからって俺がコイツと戦う理由にはならない…

 

一夏

「…また今度な。トーナメントの時にでもしてくれ。」

 

ラウラ

「ならば戦わざるを得ないようにしてやる!!」

 

 言うと同時に左肩の大砲を俺に向けて撃とうとした…けど…

 

 ガキィィン!

 

ラウラ

「何!?」

 

 砲身に何かが当たって別の場所に砲弾が飛んで行った

 

ラウラ

「何者だ!?」

 

永遠

「こげな所で、んなもんぶっ放したら他の者も危険じゃろうが!少しは考えんか!」

 

一夏

「ひ、火ノ兄!?」

 

 砲身の向きを変えたのは火の兄だったのか!

 上から鞘が落ちてきたって事は、アイツ、刀の鞘を投げつけて向きを変えたのか?

 

ラウラ

「貴様!何のつもりだ!?」 

 

永遠

「言った通りの意味じゃ。訓練の邪魔じゃからドンパチはするなと言うとるんじゃ!」

 

ラウラ

「フンッ!丁度いい!貴様にも用があったんだ!」

 

永遠

「ワシには無いが?」

 

 火ノ兄の言う通りだ…ボーデヴィッヒには火ノ兄との接点は無い筈だが…

 

ラウラ

「教官は貴様の方が御自分より強いと言った!私は認めない!あの方より強い者がいるなど…認めてたまるか!!!」

 

永遠

「いやちょっと待て!言っとくかそれはワシが言った訳ではないぞ!向こうが勝手にそう言っとるだけじゃ!ワシは一度だって自分の方が強いなどと言った事は無いぞ!」

 

ラウラ

「黙れ!!言い訳など見苦しいぞ!!」

 

永遠

「本当の事なんじゃが…」

 

ラウラ

「貴様は私が倒す!そして、教官の目を覚まさせてやる!!」

 

永遠

「…こやつ…人の話を聞いとらん…」

 

 今にも火ノ兄に襲いかかろうとした時…

 

先生

『そこの生徒!何をしている!学年とクラス、名前を言いなさい!』

 

 いいタイミングで先生からの放送が入ってくれたな…

 

ラウラ

「ちっ!…邪魔が入ったか…」

 

 踵を返すとボーデヴィッヒはアリーナから出て行った

 

セシリア

「永遠さん大丈夫でしたか!?」

 

「怪我とか無い!?」

 

永遠

「平気じゃよ♪」

 

「ところでアンタ、鞘をぶつけるなんて無茶するわね?」

 

永遠

「ん?そうかの。じゃが、ワシの場合これくらい出来んといかんからな。」

 

セシリア&簪&鈴&一夏&シャルル

「え?」

 

永遠

「ワシは織斑と違って後ろ盾が無いからの。自分の身は自分で守らねばならんのじゃ。これはその自衛手段の一つじゃよ。」

 

 何言ってんだ?

 

一夏

「後ろ盾って…俺にそんなもの無いぞ!?」

 

セシリア

「…本気で仰ってますの?」

 

一夏

「え?」

 

「一夏…アンタの姉は誰?」

 

一夏

「誰って千冬姉だけど?」

 

「そう、貴方は世界最強の弟。それだけで大概の人は手を出さない。」

 

一夏

「あ!?」

 

永遠

「そして、その世界最強の友人は誰じゃ?」

 

一夏

「…た、束さん…」

 

永遠

「左様。これで分かったか?お主の後ろには世界最強の姉とISの生みの親がおる。その二人を敵に回してまでちょっかいをかける物好きはそうはおらん。」

 

セシリア

「それに対して永遠さんにはそういった人がいません。」

 

(実際はその束さんが後ろにいるけど…)

 

(知ってるのは私達だけだもんね…)

 

一夏

「………」

 

永遠

「その上、ワシは他の生徒と違い、自宅通学しとる。お主よりも狙われる可能性が高い。一応ISの使用は許可されとるが四六時中展開しっぱなしという訳にもいかん。」

 

シャルル

「だから、自衛の為にああいう事を出来る様になったの?」

 

永遠

「そう言う事じゃ。まあ、此処に来る前から鍛練はしとったから、急いで出来る様になったという訳では無いがの。」

 

 …皆の言う通りだ…俺には千冬姉と束さんがついてる…けど火ノ兄には…

 

一夏

「…その、俺…」

 

永遠

「別にお主が悪いと言う訳では無い。周り環境が違ったというだけじゃ。」

 

一夏

「…環境…」

 

 その言葉は以前のほほんさんに言っていた言葉だったよな…

 あの時とは意味が違うと思うけどやっぱりいろいろと考えちまうな…

 

永遠

「しかしあのチビッ子は何故にあそこまでワシや織斑に敵意を剥き出しにしとるんじゃ?」

 

 ボーデヴィッヒの事に話を変えたか…

 アイツが俺に敵意を向けてるのは…

 

一夏

「………それは…スマン…俺に関しては…その、聞かないでくれ…」

 

永遠

「さよか。じゃがワシに対しては何故じゃ?織斑先生より強いと言われただけで何故あそこまで睨まれんといかんのかのぉ?」

 

一夏

「…多分アイツは、千冬姉がドイツで教官をしていた時の教え子だ。」

 

永遠

「そう言えば織斑先生を教官と呼んでおったな。」

 

一夏

「…千冬姉はある理由で1年程、ドイツでISの訓練教官をしていたんだ。」

 

永遠

「あのチビッ子はその時の生徒の一人じゃと?」

 

一夏

「ああ、だからアイツは千冬姉を慕ってるんだ…それで、千冬姉が自分より強いと言ったお前に対して敵意を持ってるんだと思う。」

 

永遠

「何じゃそれは?面倒臭い奴じゃのぉ~…お主と同じではないか。」

 

一夏

「うぐっ………あの時は…その、すまなかった…千冬姉の言う事が信じられなくて…」

 

永遠

「全く!チビッ子と言い、お主と言い、何故、本人が言う事を信じんで織斑先生の言う事の方を信じるんじゃ。」

 

一夏

「…確かにそうだけど…でも実際お前の方が千冬姉より強いじゃないか!」

 

永遠

「勝手に決めるな!!言っとくがワシは織斑先生とやり合った事は一度も無いぞ!どっちが強いかなんぞ分かってはおらんのじゃ!!」

 

セシリア&簪&鈴&一夏&シャルル

「え?」

 

「そうだったの!?」

 

「てっきり負けたからそう言ってるのかと…」

 

セシリア

「思ってましたわ…」

 

永遠

「じゃから向こうが勝手にそう言っとるだけじゃと言うとるじゃろ!!」

 

セシリア&簪&鈴&一夏&シャルル

「すみません…」

 

シャルル

「けど、そういう事なら本当に一度戦ったらどうかな?このままじゃ噂が一人歩きし続けるよ?」

 

永遠

「それも面倒なんじゃよな~…」

 

「何で?」

 

永遠

「この話は結構伝わっとるからな…どっちが勝っても面倒事が起きそうでな~…」

 

セシリア

「そうですわね…永遠さんが勝てば、敵討ちとでも言って襲われそうですし…」

 

「織斑先生が勝てば、永遠は色々言われそう…」

 

シャルル

「…どっちが勝っても火ノ兄君に被害が来そうだね…」

 

 皆の言う通りになりそうだな…

 

「確かに面倒ね…どうするの?」

 

永遠

「………ほとぼりが冷めるまで待つしかあるまい。…織斑先生には後でもう言うなと注意しておくわい。」

 

セシリア

「今はそれくらいしか出来ませんわね…」

 

 …けど、このままじゃ、俺やボーデヴィッヒみたいなのが今後も現れるかもしれないんだよな

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

永遠

「…まあこの話はもういいわい!ワシもそろそろ帰らんといかんが…お主等はどうする?」

 

セシリア

「わたくしはもう暫く続けますわ。【メイルシュトロム】を早く使える様になりたいですから。」

 

永遠

「うむ!お主なら使いこなせる!頑張るんじゃぞ!」

 

セシリア

「ありがとうございます♪」///

 

永遠

「さて、ワシはもう行くぞ。また来週会おう。簪、鈴、お主等の【剣刃(つるぎ)】も持ってくるからの。」

 

セシリア

「はい♪」

 

「待ってる♪」

 

「楽しみにしてるからね~♪」

 

 ワシはそう言うと【ラインバレル】の【転送】を使って島に帰った

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 




 次回『第073話:剣刃の意思、白の光剣と紫の霊剣』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第073話:剣刃(つるぎ)の意思、白の光剣と紫の霊剣

 ~永遠 Side~

 

 ワシは休みの間に簪と鈴の【剣刃(つるぎ)】をそれぞれ造ったんじゃ

 で、授業も全部終わったんで二人に渡そうと思うたら…

 

千冬

「火ノ兄、すまないが職員室に来てくれ。話がある。」

 

 織斑先生に呼ばれた

 

永遠

「ぬ!…分かったが、ちと待ってくれ。…セシリア、本音、スマンが簪と鈴に渡すのが少し遅れると伝えといてくれんか?」

 

セシリア

「分かりましたわ。では、わたくしは鈴さんに伝えておきます。」

 

本音

「私はかんちゃんに言っておくね~♪」

 

永遠

「スマンが頼む。…待たせたの。」

 

千冬

「いや、あの二人の分が出来たのか。どんな物だ?」

 

永遠

「それは言えんの。初めに見せるのは簪と鈴じゃからな。」

 

千冬

「フッ、そうだな。」

 

永遠

「それで用件は?」

 

千冬

「今度のトーナメントの事だ。詳しくは職員室で話す。」

 

 ワシはその言葉に頷くと織斑先生について行った

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

 わたくしは永遠さんからの伝言を伝える為に2組を訪ねたのですが、鈴さんは既にアリーナに行ってしまったそうなのでそちらに向かいました

 アリーナに着くとISを展開した鈴さんがいました

 

セシリア

「鈴さん!」

 

「ん?…セシリア、どうしたの?」

 

セシリア

「永遠さんから言伝を預かってきました。鈴さんの【剣刃(つるぎ)】は持ってきているそうですが、織斑先生に呼ばれたので渡すのが少し遅れると。」

 

「そっか…早く見たかったけど千冬さんに呼ばれたんじゃしょうがないわね~…」

 

セシリア

「そうですわね。鈴さん、これから訓練をされるならわたくしと模擬戦をして下さいませんか?」

 

「いいけど…どうしたの急に?」

 

セシリア

「…実は最近【ブルー・ティアーズ】に違和感を感じる様になっていまして…」

 

「違和感?」

 

セシリア

「はい…それが何かを確かめたいんです。」

 

「ふ~ん…そういう事ならいいわよ。」

 

セシリア

「ありがとうございます!ではすぐに準備してきますので!」

 

 わたくしは急いで着替えるとアリーナに戻り、【ブルー・ティアーズ】を展開しました

 

セシリア

「お待たせしました。」

 

「そんなに待ってないわよ。…そういえばさ、セシリアはあの噂って聞いてる?」

 

セシリア

「噂ですか?…もしかして今度のトーナメントで優勝すれば織斑さんと付き合えるという話ですか?」

 

「そうよ。」

 

 実は数日前からトーナメントに優勝すれば織斑さんと付き合えると言う噂が広まっているのです

 

セシリア

「鈴さんはどうされるんですか?もし優勝出来たら?」

 

「私?私は付き合わないわよ。アイツにはもう恋愛感情何て無いんだもん。」

 

セシリア

「…そうですか…」

 

 …本気で言ってますわね…鈴さん程の女性に愛想をつかされるなんて…馬鹿な方ですわね

 

セシリア

「ですが、何故その話をわたくしに?」

 

 わたくしが織斑さんに興味が無いのは鈴さんは知っていますし…

 

「別に大した理由じゃないわよ。誰が噂の出所になったのかなって思っただけよ。」

 

セシリア

「そういう事ですか。それなら…恐らく篠ノ之さんではないですか?」

 

「箒か…確かにそうかもね。」

 

セシリア

「織斑さんに優勝したら付き合って欲しいと言った所を他の生徒の方達が聞いていて、今の様な噂になったと思いますわ。」

 

「多分そうでしょうね。………さて、無駄話をしたわね。始めましょうか!」

 

セシリア

「はい!」

 

 鈴さんとの試合を始めようとした瞬間…

 

 ドウゥゥンッ

 

セシリア&鈴

「!?」

 

 わたくし達の間を砲弾が通り過ぎました

 

「な、なに!?」

 

セシリア

「誰ですの!いきなり攻撃するなんて!」

 

 わたくし達が砲撃してきた方向を向くと、そこにいたのは…

 

「アンタ…」

 

セシリア&鈴

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!!」

 

「いきなり何のつもり!」

 

ラウラ

「…4人がかりで一人に負ける人間が代表候補生か…余程人材不足の様だな。数と古いだけの国は。」

 

セシリア

「何を言ってますの?永遠さん相手に4人で勝てる方がおかしいのですわ!」

 

「そうよ!アンタこそ代表候補生のくせして相手の実力も分からないの?」

 

セシリア

「織斑先生が言っていると思ったのですが?」

 

ラウラ

「!?…ああ、確かに教官は言っていた!…だが!奴が強いのは機体のせいだ!奴自身が強い訳では無い!!」

 

セシリア

「…今の言葉は聞き捨てなりませんわね…永遠さんの強さが機体のお陰ですって!」

 

「アイツがどれだけ自分を鍛えて手にした力かも知らないで…よくそんな事言えるわね!」

 

ラウラ

「なら、二人がかりでかかって来い。貴様達の言う事が本当の事か証明してみせろ。」

 

セシリア&鈴

「!?」

 

「上等っ!!」

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 織斑先生の話が終わって職員室を出ると簪と本音がおった

 

永遠

「二人ともどうしたんじゃ?」

 

「本音から話を聞いて早く私の【剣刃(つるぎ)】を見たくてここで待ってた。」

 

永遠

「さよか。じゃったらアリーナに行くかの。鈴もそこにおるじゃろ。」

 

簪&本音

「うん♪」

 

 ワシ等は鈴を探しにアリーナに向かおうとした時…

 

生徒

「ねえ聞いた?今、第3アリーナで代表候補生3人が模擬戦してるんだって!」

 

 模擬戦の話が聞こえてきた

 

永遠

「3人?」

 

「セシリアと鈴かな?」

 

本音

「でも後一人は誰だろ?」

 

永遠

「嫌な予感がするのぉ…行くぞ!」

 

簪&本音

「うん!」

 

 何事も無ければいいんじゃが…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

 第3アリーナに着いた私達が見た物は…

 

永遠

「セシリア!鈴!」

 

 ボーデヴィッヒさんに倒されている二人だった…でも、あのセシリアが負けるなんて…

 

一夏

「止めろラウラ!止めるんだ!」

 

 織斑一夏達も来てたんだ…

 

永遠

「アイツ…ワザと痛めつけとるな!」

 

簪&本音

「え!?」

 

 そんな!…だとしたらヒドイ!

 

一夏

「来い!【白式】!!」

 

 【白式】を展開した!まさか!

 

一夏

「【零落白夜】!!」ガキンッ「何っ!!」

 

 バリアに弾かれた!?

 まさか、今のアリーナのバリアは強化された状態になってるの!

 これじゃあ中に入れない!

 

「永遠どうするの!?このままじゃ二人が!」

 

永遠

「分かっとる!【ラインバレル】!!」

 

 永遠は【ラインバレル】を展開した

 

「そうか!【ラインバレル】なら中に入れる!」

 

永遠

「簪、本音、掴まれ!」

 

 永遠にそう言われ私と本音は【ラインバレル】の腕を掴んだ

 

永遠

「しっかり掴まっておれ!行くぞ!」

 

一夏

「!?…待ってくれ俺も…」

 

 織斑一夏が何か言おうとしたけど永遠は【転送】を使って私達ごとバリアの中に転移した

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

ラウラ

「やはりこの程度か。」

 

 私はともかく、セシリアがやられるなんて…

 機体の相性のせいかもしれないけど…

 セシリアの動き…まさか!?

 

ラウラ

「止めだ!」

 

セシリア&鈴

「クッ!」

 

永遠

「そこまでじゃ!」

 

ラウラ

「!?」

 

セシリア&鈴

「永遠(さん)!?」

 

 現れたのは【ラインバレル】を纏った永遠だった

 一緒に簪と本音もいた

 

ラウラ

「どうやって入って来た!…そうか【ラインバレル】の能力か!?」

 

「セシリア!鈴!」

 

本音

「大丈夫~…」

 

 二人が声をかけてくれたけど…正直ISの破損もヒドくて、無事じゃあ無いのよね…

 

「…簪…本音…」

 

セシリア

「無様な所を…お見せしましたわね…」

 

 私達のISが強制解除されたか…当然と言えば当然よね…

 

ラウラ

「貴様が来たのは驚いたが、ここで貴様も始末してやる!」

 

永遠

「………」

 

 永遠はラウラの言葉を完全に無視して、私達の方に歩いて来た

 

ラウラ

「!?…何とか言ったらどうなんだ!!」

 

 無視されたのが気に食わなかったのか永遠の後ろから右手首の手刀で斬りかかった

 

セシリア&簪&本音&鈴

「永遠(さん)!!」

 

 ガキイィィン!

 

ラウラ

「何っ!?」

 

 永遠は後ろ手でいつの間にか持っていた2本の剣でラウラの攻撃を防いでいた…

 でも、この剣って…まさか!?

 

ラウラ

「何だそれは!?」

 

「…永遠…それってもしかして!?」

 

永遠

「左様!これが簪と鈴の【剣刃(つるぎ)】じゃ。」

 

 やっぱり!私と簪の【剣刃(つるぎ)】!

 

永遠

「簪の【天空の光剣クラウン・ソーラー】と、鈴には【紫電の霊剣ライトニング・シオン】じゃ!」

 

「…【紫電の霊剣ライトニング・シオン】…」

 

 私の【剣刃(つるぎ)】は金色の柄と二匹の蛇がとぐろを巻いた刀身に綺麗な刃が両側に付けられた剣だった

 

「…【天空の光剣クラウン・ソーラー】…」

 

 そして簪の【剣刃(つるぎ)】は白い刀身に、白い光を放つ剣だった

 

ラウラ

「それがそいつらの【剣刃(つるぎ)】か!丁度いい、そいつを寄越せ!そんな雑魚なんかより私の方が使いこなせるぞ!」

 

永遠

「…断る…」

 

ラウラ

「何!!」

 

永遠

「断ると言ったんじゃ。この二本は簪と鈴の為に造った物、この二人でしか使えん様になっとる。無論、セシリアに渡した【メイルシュトロム】もそうじゃ。」

 

セシリア&簪&鈴

「え!?」

 

 永遠は二本の【剣刃(つるぎ)】を地面に刺すと【ラインバレル】を解除した

 

永遠

「例え力づくで奪っても【剣刃(つるぎ)】は貴様を主とは認めん!諦めるんじゃな。」

 

ラウラ

「主と認めないだと!たかが武器の分際で偉そうに!武器は武器だ!より優れた人間が使ってこそ価値があるんだ!」

 

永遠

「なら試してみるか?」

 

ラウラ

「何?」

 

永遠

「今この二本は地面に突き刺さっとる。これを抜いてみろ。抜ければ貴様にくれてやる。」

 

簪&鈴

「永遠!?」

 

ラウラ

「いいだろう!その言葉、後悔するなよ!」

 

永遠

「やるなら早よせい!」

 

ラウラ

「!?…よく見ていろ!」

 

 まずは私の【ライトニング・シオン】に手をかけた…

 

 ガシッ!…バリッ!バリリリリリリリリリッ!!

 

ラウラ

「ぐあああああああっ!!」

 

 【ライトニング・シオン】が突然放電し始めた…まるで、ラウラを拒んでるみたいに…

 

「【ライトニング・シオン】…」

 

ラウラ

「くっ!ならこっちだ!」

 

 今度は【クラウン・ソーラー】を掴んだけど…

 

 ガシッ!…バシュウウウウウゥゥゥゥーーーーンッ!!!

 

 【クラウン・ソーラー】から衝撃波が発生して吹き飛ばされてしまった

 

ラウラ

「うわあああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」

 

「【クラウン・ソーラー】…」

 

 永遠の言う通り…この【剣刃(つるぎ)】はラウラを認めていないんだ…

 

ラウラ

「…ふざけるな…ふざけるなあああぁぁぁーーーっ!!…!?」

 

 【クラウン・ソーラー】に吹き飛ばされたラウラの隣にセシリアの【メイルシュトロム】が落ちていた

 【メイルシュトロム】を手に取ろうとした瞬間…

 

 ドボオオオオオオオオオオンッ!!

 

 【メイルシュトロム】から水柱が立ち上り水圧でラウラを再び吹き飛ばした

 

ラウラ

「うわあああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」

 

セシリア

「【メイルシュトロム】…貴方まで…」

 

ラウラ

「グッ!…バカな…こんな事が…」

 

永遠

「これで分かったか?【メイルシュトロム】も含めてこの3本は貴様を拒絶した。貴様にはこの【剣刃(つるぎ)】達の主になる資格は無いという事じゃ。」

 

 パチンッ!

 

 永遠は突然指を鳴らすと…

 

 カッ!

 

 【メイルシュトロム】【クラウン・ソーラー】【ライトニング・シオン】の3本が光り始めた

 

永遠

「行け!お前達の主の手に…」

 

 3本の【剣刃(つるぎ)】は手の平サイズの光になると私とセシリア、簪の前に飛んできた

 

セシリア&簪&鈴

「!?」

 

 私達が手を出すと手の平の上に乗り、光が消えるとそこにはあの3本の【剣刃(つるぎ)】を小さくしたような短剣があった

 

セシリア

「これは!?」

 

永遠

「【剣刃(つるぎ)】の待機状態の様なもんじゃ。その方が持ち運びもしやすいじゃろ。」

 

「こんな事も出来たんだ…」

 

永遠

「さて【剣刃(つるぎ)】も渡した事じゃし、簪、本音、二人を医務室に連れて行くぞい。」

 

「あ…うん!」

 

本音

「分かった~!」

 

 簪はセシリアに、本音は私に肩を貸してくれた… 

 

ラウラ

「許さん…許さんぞ貴様!!よくも恥をかかせてくれたな!!」

 

永遠

「…何を言うとる?ワシは無理じゃと言うたのに【剣刃(つるぎ)】に手を出して拒絶されたのはそっちじゃろ?自分で恥をかいといて人のせいにするでない。」

 

 永遠の言う通りよ…永遠は使えないって言ったのに私達の【剣刃(つるぎ)】に拒まれて吹っ飛ばされたのは自分のせいじゃない…これじゃ完全に逆恨みよ…

 

ラウラ

「黙れ!…火ノ兄永遠!私と戦え!」

 

永遠

「………よかろう。」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「永遠(さん)!!」

 

永遠

「…ワシも貴様がセシリアと鈴にやった事は許せん!叩き潰してくれる!!」

 

ラウラ

「それはこちらの台詞だ!貴様の化けの皮を剝がしてやる!!」

 

 永遠はそのままラウラに向かって歩いていくと【戦国龍】の刀を抜いて構えた

 

ラウラ

「…何のつもりだ?…その刀は確か【戦国龍】の待機状態だったな?何故展開しない?」

 

永遠

「必要無い。」

 

ラウラ

「何だと!?」

 

永遠

「お前如きにISは必要無い。このまま相手をしてやる。」

 

セシリア

「と、永遠さん!いくら何でもそれは無茶です!!」

 

「いくら永遠でも生身で何て!?」

 

 私達が心配すると…

 

永遠

「安心せい。ワシは負けんよ。」

 

 私達に笑って答えてくれた

 

永遠

「ほれ、チビッ子…かかって来い。」

 

ラウラ

「貴様!…ならば死ねえええぇぇぇーーーっ!!!」

 

 そして生身の永遠とISを纏ったラウラの戦いが始まってしまった

 

 ~鈴 Side out~

 

 




 次回『第074話:怒りの奥義!九頭龍閃!!』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第074話:怒りの奥義!九頭龍閃(ここのつがしらのりゅうのひらめき)

 ~箒 Side~

 

一夏

「アイツ…何考えてんだ…」

 

 一夏の言う通りだ…生身でISと戦うとは正気か?

 

シャルル

「い、一夏!火ノ兄君って生身でISに勝てるの?」

 

一夏

「アイツは確かに強いけど…いくら何でも無茶だ…」

 

シャルル

「なら急いで止めないと!」

 

一夏

「分かってる!でもここからじゃ中に入れない!」

 

シャルル

「そうなると管制室でバリアを解除するか、下から回り込むしかないね!バリアを解除すると観客席の皆が危険だから…」

 

一夏

「下から行くしかない!急ごう!」

 

「一夏!」

 

一夏

「箒!お前はここにいろ!専用機を持たないお前じゃ危険だ!」

 

「!?…専用機…」

 

シャルル

「一夏、早く!!」

 

一夏

「ああ!」

 

 一夏はデュノアと行ってしまった…

 

「………」

 

 …私はまた見ているしか出来ないのか

 私にも専用機があれば…

 

 ~箒 Side out~

 

 

 

 ~三人称 Side~

 

 ≪アリーナ≫

 

 アリーナで相対する永遠とラウラ…だが、その表情は互いに違っていた

 ラウラを睨みつける永遠に対して、ラウラは余裕の笑みを浮かべていた

 

ラウラ

「貴様など…この一発で終わらせてやる!!」

 

 ラウラは肩の大型レールカノンを永遠に向けた

 

「アンタ!生身の人間を本気で撃つ気!?」

 

ラウラ

「当然だ!」

 

 鈴の非難の声もラウラには届かなかった

 

ラウラ

「くたばれえぇぇーーっ!!」

 

 ラウラがレールカノンを撃とうとした時…

 

永遠

「【飛天御剣流 飛龍閃】!!」

 

 永遠は右腰の【ラインバレル】の太刀に手を置くと、体を大きくひねりながら、鞘に納めた太刀の鍔を親指で弾いて飛ばした

 

ラウラ

「何っ!?」

 

 飛ばした太刀はレールカノンの砲身の中に入ると…

 

 ドガアアァァーーンッ!!

 

 誘爆を起こし爆発した

 

ラウラ

「何だと!?」

 

 爆煙の中から【ラインバレル】の太刀が飛び出てくると永遠はそれを手に取り鞘に納めた

 

ラウラ

「ば、馬鹿な!?」

 

 永遠がレールカノンを破壊した事にラウラはもとより、後ろにいたセシリア達も信じられなかった

 

「…う、嘘…」

 

「レール砲を…破壊した…」

 

セシリア

「何ですの…今の技は…」

 

本音

「…刀を飛ばしたよ…」

 

 ラウラはレールカノンを破壊された事で先程までの余裕の表情が一変、険しい顔をしていた

 

ラウラ

「貴様!…よくもやってくれたな!!」

 

永遠

「どうしたんじゃ?一発で終わらせるのではなかったんか?」

 

ラウラ

「!?…ならばこれでどうだ!!」

 

 両肩とリアアーマーに装備された6機のワイヤーブレードを全て打ち出した

 自分に向かって来るワイヤーブレードに対して永遠は…

 

永遠

「【飛天御剣流 龍巣閃】!」

 

 ドドドドドドオオォォーーンッ

 

 高速乱撃によってワイヤーの先端のブレードを全て叩き落し、破壊してしまった

 

ラウラ

「なっ!?」

 

 レールカノンに続いてワイヤーブレードまで全て破壊されてしまい、ラウラには遠距離から仕掛ける武器が無くなってしまった

 

永遠

「さて、次は何じゃ?」

 

ラウラ

「くっ…くそっ!?」

 

永遠

「お主…レール砲にワイヤー…さっきから相手から距離を取って使う武器ばかりを使っとるな…あれだけ偉そうな事を言っておいて、生身の人間に近づく事も出来ん腰抜けか?」

 

ラウラ

「何だとぉぉーーっ!?」

 

 永遠の挑発に乗せられたラウラは両腕のプラズマ手刀で接近戦を仕掛けてた

 

 

 

 ≪観客席≫

 

「…ば、馬鹿な…」

 

 箒は今アリーナで行われている戦いの光景が信じられなかった

 それは彼女以外の生徒達も同じだった

 生身の人間が刀だけで第三世代の新型を圧倒しているからだ

 

楯無&虚

「………」

 

 別の場所で二人の戦いを見ていた楯無と虚もまた言葉を失っていたが…

 

楯無

「………何て子なの…生身でISと戦えるなんて…」

 

「…何ですか…あの技は…」

 

楯無

「…簪ちゃん…本音ちゃん…貴方達…何て男に惚れたのよ…」

 

「お嬢様、それは今関係無いと思いますけど?」

 

楯無

「え、でも…虚ちゃんも自分の妹が…」

 

「私は別に気にしてませんよ。本音はアレでも人を見る目はあります。あの子が選んだ相手なら認めるつもりです。簪お嬢様と同じ人を好きになるとは思いませんでしたけど…」

 

楯無

「そ、そう…」

 

 話がドンドン脱線していっている二人だった…

 

 

 

 ≪通路≫

 

一夏&シャルル

「ハァハァ…」

 

 一方、アリーナに向かっていた一夏とシャルルは、アリーナの出口まで来ていたが、そこにいたのは…

 

一夏

「千冬姉!?」

 

シャルル

「何でココに!?」

 

 出口にはISの近接ブレードを持った千冬がいた

 

千冬

「…お前達こそ何しに来たんだ?」

 

一夏

「何しにって…ラウラを止める為だ!このままじゃ火ノ兄がアイツに殺されちまうぞ!」

 

シャルル

「そうです!織斑先生こそ僕達より先に来ていたなら何で止めに入らないんですか!ブレードまで持ってきているのに!」

 

千冬

「ああ、それはな…私も最初はお前達の言う通り止めようと思ったんだが………」

 

一夏&シャルル

「?」

 

 言葉を濁す千冬に二人は首を傾げた

 

千冬

「…説明するより実際に見た方が早い。アリーナを覗いてみろ。」

 

一夏&シャルル

「え?」

 

 千冬に言われた通り二人はアリーナの中を見ると…

 

一夏&シャルル

「な!?」

 

 二人が見た物は肩に装備されたレールカノンが破壊され、6本のワイヤーを引き摺っているラウラの姿だった

 

一夏

「な、何があったんだ!?」

 

千冬

「見ての通りだ。ボーデヴィッヒは火ノ兄によってレール砲とワイヤーを破壊されている。」

 

一夏

「う、嘘だろ…」

 

シャルル

「そんな事…出来る訳が…」

 

千冬

「ならアレはどう説明する?」

 

シャルル

「そ、それは…」

 

千冬

「あの通り、今は火ノ兄が優勢だ。止めに入ろうにも入りづらくてな…もう暫く様子を見ようと思ってここにいた。」

 

一夏&シャルル

「………」

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

ラウラ

「死ねえええぇぇぇーーーっ!」

 

 永遠はラウラの手刀を全て受け止めず受け流す様に捌いていた

 

ラウラ

「くそっ!!」

 

永遠

「何じゃ?この雑な攻撃は?これが代表候補生の実力か?」

 

ラウラ

「き、貴様!?」

 

 永遠に攻撃を捌かれた瞬間、ラウラの両腕が広げた状態となり、それを永遠が見逃す筈も無く、一瞬で懐に潜り込んだ

 

ラウラ

「!?」

 

永遠

「【龍巣閃】!!」

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!

 

 今度は本来の【龍巣閃】の使い方による高速乱撃をラウラにみまった

 

ラウラ

「ぐあああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」

 

 【龍巣閃】を受けラウラは一端距離を取ると…乱れた呼吸を落ち着かせた

 

ラウラ

「ハァ~ッ…ハァ~ッ…(落ち着け!…落ち着くんだ…奴は生身…一撃当たれば終わりだ………ならば!)」

 

 ラウラは残った武装で永遠を倒す方法を考えた結果【シュヴァルツェア・レーゲン】に搭載されている特殊機能を使う事にした

 

ラウラ

「調子に乗るのはここまでだ!」

 

 ラウラは永遠に向けて手を翳した

 それを見た瞬間セシリアと鈴はラウラが何をしようとしているのかに気付いた

 

セシリア

「永遠さん!AICです!」

 

「それを受けると動けなくなるわ!」

 

 二人が叫ぶと同時に…

 

永遠

「!?…【土龍閃】!!

 

 永遠は刀を地面に叩きつけ土石をラウラに向かって放った

 

ラウラ

「何!?」

 

 そして、永遠を止めようとしたAICは向かって来た土石を止めてしまっていた

 

永遠

「ほぉ…これがAICか?本当に止めとるのぉ…じゃが、一方向にしか使えんようじゃの…」

 

ラウラ

「し、しまった!?」

 

 永遠の放った【土龍閃】の土石によってラウラのAICの効果範囲が浮き彫りになっていた

 

永遠

「しかも、手を翳さんと使えんようじゃし、かなりの集中力がいる様じゃの。お主の手にさえ気を付けとけばいい訳じゃな。」

 

ラウラ

「!?」

 

 永遠の言う通りだった…AICは発動するには相当な集中力が必要であり、一方向にしか発生させる事が出来ないのだ

 それを見抜かれてしまった以上永遠にはもうAICが通用しない事になる

 永遠の動きならばラウラの手の動きで即座に範囲外に出る事もでき、また、先ほどと同じように【土龍閃】で止めると言う方法があるからだ

 しかも今のラウラには遠距離武器が無い為、AICを囮にして攻撃する事も出来なくなっていた

 

ラウラ

「くっ…くそっ!」

 

 ラウラには武装はプラズマ手刀しか残っておらず、それはつまり格闘戦しか戦う方法が無いという事になっていた

 

 

 

 ≪通路≫

 

シャルル

「ほ、本当に押してる…」

 

一夏

「…【飛天御剣流】…俺が喰らった技の他にもあんな技があったのか…」

 

千冬

「まさかここまでの強さとはな…」

 

 千冬でさえ永遠の圧倒的な強さに恐れを抱いていた

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

永遠

「さて、そろそろ終わらせようかの?」

 

 刀を逆手に持つとラウラに向かってそう言い放った

 

ラウラ

「終わらせるだと…終わるのは…貴様だぁぁーーっ!!」

 

 永遠にプラズマ手刀で斬りかかると、永遠もまたラウラに向かって行った

 

永遠

「【飛天御剣流 龍鳴閃】!!」

 

 永遠はラウラの頭上をすれ違う様にジャンプすると、ラウラと交錯する瞬間、刀を鞘に納刀した

 

ラウラ

「フンッ!何だそれは?ただ刀を鞘にしまっただけではな…!?」

 

 ガシャンッ!!

 

 ラウラは言いながら振り向くと突然倒れてしまった

 

全員

「!?」

 

 そして、何故倒れたのか?それはラウラ自身にもアリーナにいる者の誰にも分からなかった

 

ラウラ

「き、貴様…何をした!」

 

 立ち上がろうとしたが上手くバランスが取れずラウラは中々立てなかった

 

永遠

「【飛天御剣流 納刀術 龍鳴閃】…ISを纏った相手に効くかどうかは分からんかったが、どうやら効果は十分だったようじゃな。」

 

ラウラ

「納刀術…だと!」

 

永遠

「納刀言うんは刀を鞘に納める事じゃ。【龍鳴閃】は高速で刀を鞘に納める事で鞘と鍔のぶつかり合いで発生する高周波を相手の鼓膜に叩き込む技じゃ。コイツを喰らったもんは一時的に聴覚は破壊され、三半規管もマヒ状態に出来るんじゃよ。」

 

ラウラ

「ば、馬鹿な…そんな事が!?」

 

永遠

「ワシの声が聞こえるという事は、どうやら、聴覚より三半規管の方がダメージが大きいようじゃな。ほれ、待っといてやるから早よ立て。」

 

ラウラ

「ぐっ…くそっ!」

 

 永遠に施されラウラは何とか立ち上がったが、まだ完全には回復していなかった

 

永遠

「立ったか…ではこの一撃で…終わりじゃ!!」

 

 永遠は正眼の構えを取ると全身から凄まじい気迫を発した

 

ラウラ

「!?」

 

永遠

「【飛天御剣流 奥義】!!」

 

全員

「!?」

 

 奥義と言う言葉にその場にいた全員が反応した

 

永遠

「【九頭龍閃(ここのつがしらのりゅうのひらめき)】!!!」

 

 ドウゥゥンッ!!!

 

ラウラ

「ぐあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

 目にも止まらぬ速さでラウラに向かって突進し、次の瞬間にはISを纏っているラウラが後方に吹き飛ばされ壁に叩き付けられた

 そして【九頭龍閃(ここのつがしらのりゅうのひらめき)】を受けたラウラのISは強制解除されてしまった

 

ラウラ

「…ぐ…ううっ…」

 

 永遠は倒れているラウラの元に向かうと…ラウラの首元に刀を当てた…

 

ラウラ

「ヒッ!」

 

永遠

「………」

 

 首元に刀を当てられ無言で睨みつける永遠にラウラは恐怖し、遂に意識を失ってしまった

 

ラウラ

「………」

 

 永遠は白目を剝いて気絶しているラウラを一瞥するとアリーナの入り口の一つに視線を移し…

 

永遠

「チビッ子はそっちで頼む。」

 

 刀を鞘に納めながらそう言うと、永遠はセシリア達の方に歩いて行った

 

永遠

「待たせたの。医務室に行くぞ。」

 

「あ、うん…」

 

永遠

「どうしたんじゃ?」

 

「…あの…永遠が強いのは知ってたけど…」

 

セシリア

「…ここまで強いなんて…」

 

本音

「…思わなかったよ~…」

 

永遠

「カカカッ♪何の事は無い、修行の賜物じゃよ!修行すれば誰でも出来るわい。」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「出来るか!!!」

 

「………アンタ、ホントにさっきラウラをぶっ飛ばした永遠なの?…さっきと雰囲気がまるで違うんだけど…」

 

永遠

「そうかの?自分では分からんのぉ?」

 

「…どっちが本当のアンタなのよ?」

 

永遠

「ワシはワシじゃよ。お主等が知る永遠じゃよ。」

 

セシリア

「フフッ♪そうですわね。永遠さんは永遠さんですわね♪」

 

「そうだね♪」

 

本音

「うん♪」

 

「………まあ、アンタ達がそう言うならいいけど…」

 

永遠

「さ!いい加減行くぞ!」

 

 永遠はそう言うと【ラインバレル】を再び展開した

 

セシリア&鈴

「【ラインバレル】!?」

 

「大丈夫!【ラインバレル】の【転送】で行くだけだから。」

 

永遠

「そういう事じゃ。飛ぶぞ。」

 

 永遠はセシリア達4人と【転送】を使い、医務室へと転移した

 アリーナには気絶したラウラ一人が残された

 永遠達が消えると入り口から千冬と一夏、シャルルの3人がアリーナに入って来た

 

千冬

「………」

 

一夏

「…【飛天御剣流】…何て剣術だよ…」

 

シャルル

「…ISに勝てる剣術があるなんて…」

 

千冬

「…お前達…ボーデヴィッヒを医務室に連れて行くぞ。」

 

一夏&シャルル

「は、はい!」

 

千冬

「それと…今後、学年別トーナメントまで、一切の私闘を禁止とする!!!」

 

 千冬はアリーナにいた全生徒に聞こえる様に宣言すると、3人は気絶したラウラを連れてアリーナを出て行った

 観客席にはまだ二人の戦いに驚き動けない者が大勢残っていた

 

 ~三人称 Side out~

 

 




 次回『第075話:御剣の理と二大奥義』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第075話:御剣の理と二大奥義

遂にお気に入りが1500を突破しました!

これからも頑張ります!

応援よろしくお願いします!!



 ~永遠 Side~

 

 ワシはセシリア達と医務室の前に転移すると【ラインバレル】を解除した

 

永遠

「ワシはココで待っとるから、スマンが治療が終わったら呼んでくれ。」

 

「分かった。」

 

 4人が医務室に入って暫くすると…

 

一夏

「火ノ兄!」

 

永遠

「ん?」

 

 織斑姉弟とデュノア、それに織斑に背負われたチビッ子がやって来た

 

一夏

「何してんだこんな所で?」

 

永遠

「治療待ちじゃ。」

 

一夏

「そうか。」

 

 織斑の奴、医務室の扉に手をかけよった

 

永遠

「オイ!何処行く気じゃ?」

 

一夏

「何処ってラウラを医務室に…」

 

千冬

「織斑、何故火ノ兄が廊下にいると思ってるんだ…」

 

一夏

「え?」

 

永遠

「中でセシリアと鈴の治療をしとるんじゃぞ!男のお前が入っていいと思っとるんか!」

 

一夏

「…あ!?」

 

永遠

「貴様と言う奴は…気遣い所かデリカシーすら無いんか…」

 

一夏

「…すみません………じゃあ、シャルル頼む。」

 

シャルル

「あ、うん。」

 

 ホントに何考えとるんじゃ?

 デュノアもチビッ子を受け取ろうとしとるし…

 

永遠

「オイコラ!お前も男じゃろ!」

 

シャルル

「え?あ!そ、そうだったね!?(一夏の馬鹿!!)」

 

一夏

「(わ、悪い!)ち、千冬姉頼む。」

 

千冬

「ああ…全く、まさかデリカシーすら無い奴だったとはな…」

 

一夏

「…本当にすみません…」

 

 そう言って織斑先生はチビッ子を背負って中に入って行った

 残ったのはワシら男3人だけになった訳じゃが…

 

一夏

「はぁ~~~…またやっちまった…」

 

永遠

「…織斑…何故デュノアにチビッ子を渡そうとした?」

 

シャルル

「うっ!?」

 

一夏

「い、いやちょっと間違えて…」

 

永遠

「ワシが男は入るなと言った直後にか?女の織斑先生がおったのに、男のデュノアに間違えたのか?」

 

一夏

「あ、ああ…その、つい勢いで…」

 

永遠

「デュノアも疑問も持たずにチビッ子を受け取ろうとしたが?」

 

シャルル

「ぼ、僕もその場の勢いで…」

 

一夏

「そ、それよりさっきの戦いで使った【飛天御剣流】の奥義の事を教えてくれよ!」

 

永遠

「露骨に話題を反らしたの。まあいいじゃろ。じゃが、織斑先生には通じんぞ。今の内に言い訳を考えておくんじゃな。」

 

一夏&シャルル

「う!?」

 

永遠

「それからデュノア…お主の目的は知らんがワシの大事なもんを傷つけるようならチビッ子の様に潰すからな!」

 

シャルル

「は、はい!!」

 

 まあ、軽く殺気交じりに脅しといたから下手な事はせんじゃろ

 

永遠

「…さて、奥義の事じゃったな。【飛天御剣流】には二つの奥義がある。その一つがさっき使った【九頭龍閃(ここのつがしらのりゅうのひらめき)】じゃ。」

 

シャルル

「随分長い名前だね?」

 

永遠

「フム、なら【九頭龍閃(くずりゅうせん)】と呼べばいい。」

 

一夏

「あ、そっちの方が言い易いな。…って!二つの奥義って…もう一つあるのかよ!?」

 

永遠

「もう一つの奥義の名は【天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)】…こっちは【天翔龍閃(てんしょうりゅうせん)】とでも呼べ。これは超神速の抜刀術じゃよ。」

 

一夏

「抜刀術って…居合の事だよな?超神速って何だ?」

 

永遠

「神速を超えた神速…肉眼では捉える事が出来んスピードと覚えておけばいい。まあISを使えば見えるかもしれんがな。って聞きたいのは【九頭龍閃(ここのつがしらのりゅうのひらめき)】の方じゃったな。アレは説明が面倒じゃからな~…」

 

一夏

「そうなのか?」

 

永遠

「【天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)】は簡単に言えばただの抜刀術じゃからな…【九頭龍閃(ここのつがしらのりゅうのひらめき)】は簡単に言えば突き技じゃ。」

 

一夏

「突きって…物凄い速さだったぞ!?全く見えなかったし、しかも絶対防御を超えてISを吹っ飛ばすほどの威力だったぞ!?」

 

永遠

「同時に9か所も突けば吹き飛びもするわい。」

 

一夏

「へ?…きゅ、9か所!?同時に!?」

 

永遠

「そうじゃ。【九頭龍閃(ここのつがしらのりゅうのひらめき)】は神速の速さで9方向の斬撃を同時に繰り出す乱撃と突進を組み合わせた複合奥義じゃ。」

 

一夏

「乱撃って…【龍巣閃】って技と同じじゃ…」

 

永遠

「【龍巣閃】は急所を滅多打ちにする技じゃ。じゃが【九頭龍閃(ここのつがしらのりゅうのひらめき)】は人体の9つの急所に一撃必殺の斬撃を同時に打ち込む奥義。いわば必殺技を9発同時に打ち込む様なもんじゃ。」

 

一夏

「ひ、必殺技を9発…」

 

永遠

「そうじゃ。これが【飛天御剣流】の奥義じゃ。」

 

一夏&シャルル

「………」

 

 織斑と隣で黙って聞いとったデュノアの二人は言葉を失っとるようじゃの

 

千冬

「お前達、二人の治療が終わったぞ。」

 

 医務室から出て来た織斑先生が治療が終わったのを教えに来てくれた

 

永遠

「もう入っても構わんのか?」

 

千冬

「ああ、いいぞ。」

 

永遠

「では失礼するぞい。」

 

 一応確認を取ってからワシも中に入った

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 火ノ兄が中に入るとシャルルも続いて入って行った

 俺も入ろうとしたら…

 

千冬

「待て一夏。少し話がある。」

 

 千冬姉に呼び止められた

 

一夏

「話って?」

 

千冬

「奥義の話はドア越しに私も聞いていた。…お前…火ノ兄に【飛天御剣流】を教えて貰おうなんて考えてないだろうな。」

 

一夏

「え!?ダ、ダメなのか?」

 

千冬

「やはりそう考えていたか…言っておくがあれは殺人剣術だ。生兵法で覚えれば取り返しがつかなくなるぞ。」

 

一夏

「さ、殺人剣!?【飛天御剣流】が!?」

 

千冬

「そうだ。お前も知ってると思うが、剣術と言うのは今は形骸化し道場剣法、つまり剣道になっている。私やお前が習っていた【篠ノ之流剣術】も実戦を想定したと言われているがそれでも剣道の領域内での話だ。それは分かるな?」

 

一夏

「う、うん…」

 

千冬

「だが、火ノ兄の【飛天御剣流】は形骸化する前の完全な実戦剣術、人を斬る為の剣だ。それも1対1ではなく1体多を念頭に置いているものだ。」

 

一夏

「…実戦剣術………だ、だったら火ノ兄は!?」

 

千冬

「アイツがそんな事をする奴だと思ってるのか?」

 

一夏

「い、いや…」

 

 【飛天御剣流】が…人を斬る為の剣…アイツ…そんな技を使ってたのか…

 

千冬

「………『御剣の剣、即ち、時代時代の苦難から弱き人々を守ること』…」

 

一夏

「え?」

 

千冬

「【飛天御剣流】の理だ。以前火ノ兄に教えて貰ったんだが、この意味が分かるか?」

 

一夏

「い、いや…」

 

千冬

「なら、先にそっちを考えろ。火ノ兄は自分なりの答えを出して剣を振るっている。理の意味を正しく理解しなければお前は人の道を踏み外す事になるぞ。」

 

一夏

「………」

 

千冬

「私の話は以上だ。」

 

 千冬姉はそう言って行ってしまった

 

一夏

「…理か…」

 

 …難しいな…

 俺は千冬姉に言われた【飛天御剣流】の理を思い返しながら医務室に入って行った…

 

 ~一夏 Side out~

 

 




 次回【第076話:トーナメントの内容】



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第076話:トーナメントの内容

 ~永遠 Side~

 

 ワシが医務室に入ると、ベットの上には包帯を巻いたセシリアと鈴がおった

 別のベットにはチビッ子がまだ気絶したまま寝かされとった

 

永遠

「二人共、怪我は大丈夫かの?」

 

セシリア

「はい、何とか…」

 

「平気よ。」

 

 う~む…痩せ我慢しとるのか微妙じゃな…

 

「…けど、二人がこんなにやられるなんて…」

 

「言い訳のしようもない…って言いたいけど…私はともかくセシリアは違うわ。」

 

永遠&セシリア&簪&本音

「え?」

 

セシリア

「どういう事ですか?」

 

「アンタさっき【ブルー・ティアーズ】に違和感を感じるって言ったわよね。」

 

セシリア

「え?はい…言いましたけど…」

 

「ラウラと戦っている時にその理由が分かったわ。…私も信じられないけど間違いないわ…セシリアの動きに【ブルー・ティアーズ】が着いて行けなくなってるのよ。…そうじゃなきゃいくら機体の相性が悪くてもアンタがラウラに負ける訳無いわ。」

 

セシリア

「そんな!?…【ブルー・ティアーズ】が…」

 

シャルル

「ちょっと待ってよ!いくら何でもISが人間の動きに着いて行けなくなるなんて…」

 

「別におかしな事じゃない。」

 

シャルル

「え?」

 

本音

「ひののんでも他の機体を使えばそうなるよ~…」

 

シャルル

「そ、そんな…」

 

「本当よ。永遠があの3機以外を使えばセシリア以上に機体が着いて行かないわ。アンタもさっきの永遠の戦い見てたんでしょ?生身であんな動きが出来る奴に量産機が着いて行けると思ってるの?」

 

シャルル

「…た、確かに…」

 

「でも、セシリアまでそうなるなんて思わなかった…」

 

「ええ、それも量産機じゃない第3世代の専用機でよ。」

 

セシリア

「………わたくしはどうすれば…」

 

永遠&簪&本音&鈴&シャルル

「………」

 

 確かに機体が着いて行けないなんて状態、普通は無いからのぉ…

 

一夏

「どうかしたのか?」

 

 織斑が遅れてやってきおったか…

 今迄何しとったんじゃ?

 まあいいか…仕方ない説明しとくか…

 

一夏

「………え?…ISが着いて行かなくなった?」

 

永遠

「そうじゃ。」

 

一夏

「そんな馬鹿な…」

 

「それだけセシリアは努力してきたって事よ。アンタもそのくらい頑張って貰いたいわね。」

 

一夏

「うっ!…はい…」

 

永遠

「セシリア、今は鈴と一緒に怪我を治す事に専念するんじゃ。【ブルー・ティアーズ】に関しては今は何とも言えん。機体の方も損傷が激しいんじゃ。修理が終わってから考えればよい。」

 

セシリア

「…はい…」

 

 …帰ったら束さんに一度相談してみるかの?

 ワシがそんな事を考えておると…

 

 ドドドドドドドドドッ!!!!

 

永遠

「ん?」

 

「何だろこの音?」

 

 まるで地鳴りみたいな音が聞こえてきた

 

 バンッ!!!

 

 派手に扉が開かれると、大勢の生徒達が医務室の中に雪崩れ込んできおった

 

生徒1

「織斑君!!」

 

生徒2

「デュノア君!!」

 

生徒3

「火ノ兄君!!」

 

生徒達

「私とペアを組んでください!!!」

 

一夏&シャルル

「へ?」

 

 …あ!そういう事か!

 

一夏

「ペア?何の事だ?」

 

永遠

「今度のトーナメントは、二人一組のタッグ戦に変更されたんじゃよ。」

 

一夏

「お前知ってたのか?」

 

永遠

「うむ、さっき織斑先生に呼ばれたのはそれが理由じゃ。タッグ戦じゃから賞品の【剣刃】を二つ造ってくれと頼まれたんじゃよ。」

 

一夏

「そうなんだ…」

 

生徒1

「私と組もう!織斑君!」

 

生徒2

「私と組んで!デュノア君!」

 

生徒3

「火ノ兄君!私と組んで!」

 

 う~~~む…どうするかのぉ…

 

一夏

「悪い!俺はシャルルと組むから諦めてくれ!」

 

シャルル

「一夏…」

 

生徒1

「まぁ、そう言う事なら…」

 

生徒2

「他の娘と組まれるよりはいいか…」

 

生徒3

「男同士も絵になるし…」

 

 ふむ、織斑はデュノアと組むか………ん?て事は…

 

生徒1

「じゃあ、火ノ兄君!私と組んでください!」

 

生徒2

「火ノ兄君となら優勝間違いなし!」

 

生徒3

「二人で賞品ゲットだよ!」

 

セシリア&簪&本音

「な!?」

 

 まあ、そうなるわな………仕方ない…

 

永遠

「…ワシは誰とも組まんよ。確かペアがおらん場合、当日に抽選で決める筈じゃ。ワシはそうするわい。」

 

生徒1

「…まあそれなら…」

 

生徒2

「…運に任せるか…」

 

生徒3

「…他の子と組まれるよりは…」

 

 ワシの答えに納得したのか全員医務室から出て行ってくれたか…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~シャルル Side~

 

「永遠…ホントに誰とも組まないの?」

 

永遠

「そうせんと五月蠅いからのぉ…」

 

セシリア

「出来ればわたくしが組みたかったのですが…」

 

本音

「でも仕方ないよ~…」

 

「そうだね…」

 

 本当はこの3人が一番組みたかったんだろうな~…

 

真耶

「どちらにしてもオルコットさんは無理ですよ。」

 

一夏

「山田先生!」

 

 今度は入れ違いで山田先生がやって来た

 

真耶

「お二人のISはダメージレベルがCを超えかけています。まずは修復に専念させないと、重大な欠陥が生まれますよ。ISの為にも参加の許可は出せません。」

 

「やっぱり…」

 

セシリア

「あそこまでやられては仕方ありませんわね…」

 

一夏

「?…随分あっさりしてるな?」

 

シャルル

「一夏、ISは起動している時間に比例して強くなるんだよ。」

 

一夏

「え?」

 

シャルル

「…ISは戦闘経験をを含むすべての経験を蓄積する事で、より進化した状態へと自らを移行させるんだ。その蓄積経験には損傷時も含まれてるんだよ。損傷が大きい時に無理に起動させると、不完全な状態を補う為に特殊なエネルギーバイパスを構築するんだ。それが今度は平常時に悪影響を及ぼすことがあるんだよ。」

 

一夏

「そうか…人間も怪我した状態で無理すると体に変な癖がつくっていうしな…」

 

真耶

「そういう事です。肝心な所でチャンスを失うのは残念な事です。貴方達にはそうなってほしくありません。」

 

「分かってます。」

 

セシリア

「はい。」

 

真耶

「分かってくれていてよかったです♪では私はこれで。」

 

 山田先生は二人の機体の状態を教えると出て行ってしまった

 

シャルル

「…一夏…さっきはありがとう。」

 

一夏

「何がだ?」

 

シャルル

「ペアを組んでくれた事だよ。」

 

一夏

「ま、まあ同じ男同士で組んだ方がやりやすいだろ…」

 

シャルル

「それでもありがとう。僕も一夏との方が気が楽だから…」

 

一夏

「シャルル…」

 

永遠&セシリア&簪&本音&鈴

「………」

 

 …やっぱり一夏は優しいな…

 

永遠

「…やはり織斑はホモじゃったか…」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「ウンウン!」

 

 いきなり何言いだすのこの人!!

 

一夏

「オイ!!何で俺がホモなんだよ!!」

 

永遠

「男同士で見つめ合っといて何言うとる!」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「ウンウン!」

 

 そうだ!僕は男だった!?

 

一夏

「俺はホモじゃなあああああぁぁぁぁぁーーーーーいっ!!!!」

 

永遠

「デュノアも満更では無さそうじゃし…」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「ウンウン!」

 

 …マズイ僕まで!?

 

シャルル

「ちちち違うよ!?僕はそんなのじゃないよ!!」

 

「あのさ、アンタ等がどんな関係かは知らないけどそう言うのは人前ではやらないでくれる?そんな事を平気でやるからアンタはホモって言われてるのよ?」

 

一夏

「り、鈴!?………スマナイ…」

 

シャルル

「?」

 

 …何だろ?…また一夏の表情が暗くなったな…

 …凰さんと何かあったのかな? 

 

永遠

「………。ワシはそろそろ帰る。セシリア、鈴、二人は養生するんじゃぞ。」

 

セシリア

「はい♪ありがとうございます♪」

 

「また明日♪」

 

本音

「サヨナラ~♪」

 

「ええ!」

 

永遠

「簪と本音もな。織斑、デュノア、そう言う事は部屋でするんじゃぞ。」

 

一夏

「だから違ああああぁぁぁぁぁーーーーーうっ!!!」

 

永遠

「ではな。」

 

一夏

「人の話を聞けーーーーーっ!!!」

 

 あぅ~…火ノ兄君の中で僕までホモって認識されちゃった…どうしよぉ~…

 

 ~シャルル Side out~

 

 




 次回『第077話:蒼い雫の行く末』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第077話:蒼い雫の行く末

 ~束 Side~

 

 家に帰ってきたとーくんが相談したい事があるって言われたんだけど…

 正直束さんでも信じられない話だった

 

「…ISがセーちゃんに着いて行けなくなるなんてね~…」

 

クロエ

「兄様以外にそんな状態になる人がいるなんて思いませんでしたね…」

 

「ちーちゃんならとーくんと同じ人外だからそうなってもおかしくは無いんだけど…まさかセーちゃんまで…」

 

永遠

「本人に言うぞ!」

 

「ごめんなさいそれだけは勘弁して下さい!」

 

 ちーちゃんの耳に入ったら絶対アイアンクローだよ!

 

永遠

「冗談じゃ。…それでどうすればいいかの?」

 

「う~ん…とりあえず、セーちゃんの機体を一度見てみない事には何とも言えないね。とーくん、明日セーちゃんを連れて来て貰っていいかな?」

 

永遠

「分かった。それから束さんに一つ調べて欲しい事があるんじゃ。」

 

「何かな?」

 

永遠

「シャルル・デュノアについてじゃ。」

 

クロエ

「確かフランスから来た3人目の男性操縦者でしたよね?3人目がいるなんて私達も知りませんでしたけど…」

 

永遠

「そりゃそうじゃろ。あやつは女じゃからな。」

 

「女?…なるほど、その目的を知りたいんだね。」

 

永遠

「うむ、まあ、ある程度予想は付くんじゃが…」

 

「予想って?」

 

永遠

「わざわざ性別を偽ってまで学園に来たという事は目的は織斑に接触する事じゃろ。ワシの事は知らんかったからターゲットにはなってはおらんみたいじゃが。」

 

「なるほどね…いっくんのデータ…つまり【白式】のデータを盗むのが目的って事だね。」

 

永遠

「うむ…じゃが予想通りだとして、何故そんな事をするのかが分からん。」

 

「その裏付けが欲しい訳だね。分かったよ。」

 

永遠

「面倒ごとを増やしてしもうてスマン!」

 

「気にしなくていいよ♪いっくんを狙ってるなら束さんも黙ってはおけないからね!」

 

永遠

「頼む!」

 

クロエ

「兄様、申し訳ありませんが、私は明日から家を空けますね。」

 

永遠

「どうしたんじゃ?」

 

クロエ

「【ラインバレル】の研究成果がもうじき完成しそうなんです。」

 

永遠

「【ラインバレル】の?と言う事は再生能力の事か?」

 

クロエ

「はい。その仕上げをしてきます。」

 

永遠

「………」

 

クロエ

「どうされました?」

 

永遠

「………ちゃんと睡眠は取るんじゃぞ。」

 

クロエ

「分かってますよ!!」

 

「あははは…」

 

 あの後、目を覚ましたクーちゃんを束さんととーくんの二人でタップリ説教したからね~…

 

 ~束 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 学園に来るとワシは朝一でセシリアに…

 

永遠

「セシリア、スマンが今日はワシの家に来てくれんか?」

 

セシリア

「え!?どうされたんですか?」

 

永遠

「実は昨日お主の機体の事をあの人に相談したら一度見て見たいと言われてな。それでお主を連れて来て欲しいと頼まれたんじゃよ。」

 

セシリア

「そういう事ですか。…分かりましたわ。」

 

永遠

「…という訳で織斑先生、外泊許可を貰えんかの?」

 

千冬

「………」

 

 丁度、織斑先生が教室に来たからそのまま頼むことにした

 

千冬

「まあいいだろ。オルコットの機体の事は聞いていたからな。アイツに一度見て貰った方がいいだろう。ついでに、後二人も一緒に許可しておいてやる。」

 

セシリア

「…分かります?」

 

千冬

「分からいでか!お前達はいつも一緒にいるからな。お前だけ行かせたら絶対にごねるだろ!」

 

本音

「えへへ~…」///

 

千冬

「褒めてないぞ!」

 

 …まあ、後二人と言えば本音と簪の事じゃよな…

 

千冬

「その代わり後で報告しろよ。」

 

永遠

「あいよ。」

 

千冬

「よし!それではHRを始める!織斑、号令!!」

 

 後で簪にも話をしとかんとな…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

 わたくしは簪さんと本音さんと一緒に、いつも集合場所にしている校門前に向かっていました

 簪さんを誘うと二つ返事で行くと答えてくれました

 

セシリア

「永遠さ~~~ん♪」

 

永遠

「ん?来たか。」

 

「お待たせ♪」

 

永遠

「そんなに待っとらんよ。では行くかの。」

 

 永遠さんはそう言いながら【ラインバレル】を展開しましたわ

 

永遠

「さて、今回は【転送】を使って一気に行くぞ。」

 

セシリア

「わたくし達も連れてあの距離を飛べるのですか?」

 

永遠

「問題ない。」

 

「よかった♪」

 

本音

「じゃあ早速行こ~う♪」

 

永遠

「行くぞ!」

 

 永遠さんはわたくし達を掴むと転移しました

 

 ………

 ……

 …

 

永遠

「着いたぞ。」

 

本音

「あっと言う間だね~♪」

 

永遠

「そうじゃな。…さて、家に入るぞ。束さんも待っとるからな。」

 

セシリア&簪&本音

「は~い♪」

 

「いらっしゃ~い♪待ってたよ~♪」

 

セシリア&簪&本音

「お邪魔しま~す♪」

 

 家に入ってきたわたくし達を束さんが出迎えて下さいました

 

「早速だけどセーちゃんのISを見せて~♪」

 

セシリア

「はい!」

 

 わたくしは家の奥にある永遠さんの機体が保管してある部屋に行くと【ブルー・ティアーズ】を展開しました

 

「うわ~…話には聞いてたけど随分派手に壊されたね~…」

 

 【ブルー・ティアーズ】の損傷具合を見て、束さんは驚いていました

 

セシリア

「申し訳ありません…わたくしが未熟なばかりに…」

 

「セーちゃんのせいじゃないよ♪…さて、早速調べてみるかな。」

 

 束さんは【ブルー・ティアーズ】にアクセスして調べて下さいました

 それから暫くすると…

 

「…リーちゃんの言う通りだね。この子の性能じゃセーちゃんに追いつけなくなってるよ。」

 

永遠

「やはりそうじゃったか…」

 

本音

「そんな~…」

 

「じゃあ、このまま【ブルー・ティアーズ】を修理しても…」

 

「うん。セーちゃんにとっては足枷にしかならないね。」

 

セシリア

「………【ブルー・ティアーズ】…」

 

 …わたくしはどうすればいいのでしょう…

 

「………セーちゃん…この子を預けて貰っていいかな?」

 

セシリア

「え?」

 

「このまま直してもまた同じような事になる。だから、束さんがこの子を強化するよ。」

 

セシリア

「よろしいのですか!?」

 

「いいよ~♪」

 

「待って下さい!?」

 

永遠

「どした簪?」

 

「セシリア忘れたの?代表候補生の機体を勝手に改造する事は出来ないんだよ!」

 

セシリア

「そうでしたわ!?」

 

「え?何それ?そんな決まりがあるの?面倒臭いな~…」

 

セシリア

「すみません…」

 

 束さんからすれば確かにそのような決まりは面倒な事ですわね…

 

永遠

「ふむ…セシリア、簪…それはつまり許可があれば改造しても構わんという事かの?」

 

「え?うん、そうだけど…」

 

永遠

「じゃったら許可を貰えばいいじゃろ。」

 

セシリア

「ですがどうやって許可を貰うんですか?」

 

永遠

「んなもん束さんが改造すると言えばくれるじゃろ?」

 

セシリア&簪&本音

「え?」

 

「なるほど~♪それはいい方法だね♪」

 

「で、でも!そんな事したら束さんがココにいる事がバレちゃう!?」

 

永遠

「別に何処にいるかは言う必要無かろう。イギリスの開発した専用機をISの生みの親、篠ノ之束が直々に改造する。それだけでもイギリス政府の連中は納得するはずじゃ。向こうが信じんようなら直接束さんが話せばいいだけじゃし。」

 

「そ~そ~♪と言う訳でセーちゃん連絡してみて♪」

 

セシリア

「は、はい!!」

 

 わたくしは言われた通りイギリスで訓練をしていた時の教官に連絡しました

 

教官

『…はい。』

 

セシリア

「お久しぶりです。セシリア・オルコットです。」

 

教官

『オルコットか!久しぶりね。どうしたのこんな時間に?』

 

セシリア

「実は【ブルー・ティアーズ】の改造許可を頂きたいのです。」

 

教官

『え!改造?いきなりどうしたの?【ブルー・ティアーズ】に何かあったの?』

 

セシリア

「はい、実は………」

 

 わたくしは機体が着いて行かなくなった事を話すと、教官は驚いていました…

 

教官

『…確かにあなたの成長速度はココにいた時から凄まじかったけど…まさか着いて行かなくなるなんて…』

 

セシリア

「…それで許可を頂けませんか?」

 

教官

『ん~…改造するって貴方がするの?整備関係に関しては一般程度の知識だったわよね?』

 

セシリア

「その通りです。ですから改造するのはわたくしではありません。」

 

教官

『じゃあ誰がするの?イギリスの機密の塊でもある貴方の機体を改造するって事はその相手にバラすって事になるのよ?そんな事も分からない貴方じゃ無いでしょ?』

 

セシリア

「改造するのは篠ノ之束博士です。」

 

教官

『………今なんて言ったの?』

 

セシリア

「【ブルー・ティアーズ】を篠ノ之博士が強化・改造してくれると言ったのです。」

 

教官

『し、篠ノ之博士が!?貴方博士と接点があったの?』

 

セシリア

「はい、色々ありまして…それでどうでしょう?許可を頂けませんか?」

 

教官

『ちょ、ちょっと待ってて!?今政府に確認するから!?』

 

 教官は大慌てで政府に連絡に行ったみたいです

 暫く待っていると、電話の向こうから数人の声がしてきました

 

教官

『待たせたわね!政府の方に連絡したら直接確認したいって言って来たのよ!』

 

セシリア

「いえ、大丈夫です。」

 

 教官に変わって政府の役人らしい男性が話してきました

 

役人

『話は聞いた。本当に篠ノ之博士が君の機体を手がけてくれるのか?噂ではあの博士は大の人間嫌いで有名だが?』

 

セシリア

「わたくしが試験を受けに行った時にお会いしました。それ以上はプライバシーに関わるので申せませんが。」

 

役人

『何故会った事だけでも報告しなかった?』

 

セシリア

「織斑千冬先生に口止めされていましたので報告する事が出来ませんでした。その件に関しては申し訳ありません。」

 

役人

『むぅ…ブリュンヒルデにか…それなら仕方ないか…』

 

セシリア

「納得していただけて良かったのですが、こちらの申請はどうなるのでしょうか?」

 

役人

『…本当に篠ノ之博士なのか?』

 

セシリア

「信じられないのでしたら代わりましょうか?」

 

役人

『そこにいるのか!?』

 

セシリア

「いますけど、少々お待ちを…束さんお願いします。」

 

「はいは~い♪もすもすひねもす~♪皆のアイドル♪篠ノ之束だよ~♪」

 

役人

『ほ、本当に篠ノ之博士だったんですか!?』

 

「そだよ~♪それでどうするの?束さんとしては君達の許可が無いといじれないなんて決まりは迷惑でしかないんだけどさ。」

 

役人

『は、はい!その件に関してはIS委員会の方で決まった事なので私達にはどうしようもないのですが…』

 

「別にそんな事どうでもいいよ。束さんが聞きたいのはセーちゃんの機体をいじっていいのか、いけないのかだけだよ。」

 

役人

『も、申し訳ありません!勿論許可は出します!博士に手を加えて頂けるとは光栄です!』

 

「最初からそう言えばいいんだよ!それからセーちゃんの機体を改造する条件をいくつか出すからね。」

 

役人

『はい!何でしょうか?』

 

「まず、セーちゃんから束さんの事を尋問しない事。もしすればイギリスのコアを全て使用不能にするからね。」

 

役人

『わ、分かりました!』

 

「次に、改造した機体はコアも含めてセーちゃんの所有物にする事。代わりに新しく造ったコアを1個あげるよ。」

 

役人

『は、はい!!すぐに【ブルー・ティアーズ】と使用されているコアをセシリア・オルコット個人に譲渡するように手配します。後日、彼女にその書類を送ります。』

 

「それでいいよ。じゃあ新しいコアはそうだね…セーちゃんがそっちに戻る時にでも持たせておくよ。」

 

役人

『はい!よろしくお願いします!』

 

「最後に、もしセーちゃんから機体を奪おうとしたり、許可無く調べようとしたら…どうなるか分かってるよね?」

 

役員

『も、勿論です!!』

 

「よろしい、じゃあね!」

 

役員

『はい!失礼します!』

 

 束さんが出ると本当にアッサリ話が済みましたわね…ですが…

 

セシリア

「束さん…よろしかったのですか?その、新しいコアの事…」

 

「別にいいよ。一つ増えた所で大して変わらないしね。【ゴーレム】用に造った予備の分を一つ渡すだけだよ。」

 

セシリア

「何から何までありがとうございます!」

 

「うん♪」

 

永遠

「良かったのぉセシリア。」

 

セシリア

「はい♪」

 

 これも永遠さんや束さん、皆さんのお陰ですわ♪

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

永遠

「さて【ブルー・ティアーズ】の対処も決まった事じゃし、夕食にするかの?」

 

「そうだね♪」

 

セシリア&簪&本音

「はい♪」

 

 永遠はそう言って夕食の準備に向かった

 そう言えば今になって気づいた事があった…

 

「あの、クロエさんがいませんけど、どうしたんですか?」

 

 そう、クロエさんがいなかったんだ

 

「クーちゃんは今、束さんが以前使ってたラボの一つに行ってるんだよ。【ラインバレル】の再生能力の研究がもうすぐ完成しそうだからその仕上げに行ってるんだよ。」

 

セシリア

「それは良かったですわ!束さんの夢に一歩近づいたと言う事ですわね!」

 

「フフッ♪そうだね♪ありがとう♪」

 

永遠

「出来たぞい!」

 

本音

「わ~い♪待ってました~♪」

 

永遠

「では、いただきます。」

 

セシリア&簪&本音&束

「いただきま~す♪」

 

 それから私達は他愛無い話をしていたんだけど…

 

「そうそうとーくん!調査が済んだよ!」

 

永遠

「一晩で終わるとは流石は束さんじゃな!」

 

「フフン♪当然だよ♪」

 

 …調査って何の事だろ?

 

セシリア

「あの…何の事ですか?」

 

永遠

「デュノアの事を調べて貰ったんじゃよ。」

 

「デュノアって…シャルル・デュノアの事?何かあったの?」

 

永遠

「デュノアは女じゃ。」

 

セシリア&簪&本音

「ええっ!?」

 

「本当だよ。本名はシャルロット・デュノア。デュノア社の現社長の娘だよ。」

 

「何でそんな子が男のフリをしてIS学園に?」

 

永遠

「その理由を調べて貰ったんじゃ。あの娘が学園に来た目的はおおよそ分かるが理由が分からんかったんじゃ。」

 

本音

「目的って?」

 

永遠

「恐らく織斑に接触して【白式】のデータを手に入れるつもりなんじゃろう。」

 

「それってデータを盗むって事!?」

 

「そうだよ。そしてその行動の理由はデュノア社の経済状況が原因だね。今あの会社は経済危機に陥ってるからね。そこからのし上がる為に世界で唯一の男の操縦者のいっくんのデータを手に入れようとしたんだね。後は広告塔として使う為だね。」

 

セシリア

「その為に自分の娘を男装させて送り込んだんですか!?」

 

 それはいくら何でも酷すぎる…

 

「あの子は愛人の子だよ。」

 

永遠&セシリア&簪&本音

「え?」

 

「シャルロット・デュノアの母親は父親の妾なんだよ。それにすでに死んでるね。母親の死後、父親が引き取ったけど、今のデュノア社を取り仕切っているのは社長の妻、つまり本妻の方なんだよ。彼女を送り込んだのはその本妻の方だよ。」

 

永遠

「デュノアはその事を知っとるんか?」

 

「多分知らないね。自分を送り込んだのは父親だと思ってるよ。」

 

永遠&セシリア&簪&本音

「………」

 

「…永遠…どうするの?」

 

永遠

「…一つ分かっとるのは、織斑はデュノアの正体に気付いとる。…いや、アイツは知っとるんじゃろう。」

 

セシリア&簪&本音&束

「え!?」

 

永遠

「実は昨日の事じゃが………」

 

 永遠は昨日の医務室前の事を話してくれた…

 詳しくは【第075話:御剣の理と二大奥義】を読んで!

 

永遠

「………という事じゃ。」

 

「確かにいっくんは知ってるね。いくらいっくんでもとーくんに注意された直後に男女の区別がつかないなんて事は無いだろうからね。」

 

「…でも何を考えてるんだろう?自分を騙して近づいてきた相手を庇う様な事をしてるみたいだけど…」

 

永遠

「これ以上は明日にでも本人に問い質すしかないのぉ。」

 

セシリア

「本人と言うのは織斑さんですか?デュノアさんですか?」

 

永遠

「どちらもじゃ。織斑が何を考えておるのかも、デュノアがどうしたいのかも本人に答えさせる。いざとなったら織斑先生にも協力を頼む。そうすればあやつらも喋るじゃろう!」

 

「そうだね♪こういう時のちーちゃんはホントに役に立つからね♪」

 

永遠

「何か言い方がおかしい気がするが…まあいいか。」

 

 デュノアさんの話を終わらせると夕食を食べ始めた

 その後、温泉に入ると突然束さんが…

 

「所で皆!実は見て欲しい物があるんだ!」

 

永遠

「見て欲しい物?」

 

「うん!実はね、遂に今日、第5世代型の1号機が完成したんだよ!!」

 

セシリア

「本当ですか!?」

 

「遂に完成したんですね!?」

 

本音

「おめでとうございます♪」

 

永遠

「良かったのぉ~!」

 

「皆ありがとう♪」

 

永遠

「………あれ?…ところでその機体…何処にあるんじゃ?…家の中にそれらしい物は無いんじゃが?」

 

セシリア&簪&本音

「え?」

 

永遠

「よくよく考えてみると、ワシは第5世代を造ってるところ見た事無いんじゃよな?」

 

セシリア&簪&本音

「ええ!?」

 

「あ~…それはね~…」

 

 束さんはバツが悪そうにしながら下を指さした

 

永遠

「下?………まさか…穴掘ってその中に研究施設造ってたんか!?」

 

「…テヘッ♪」

 

 テヘッて…

 

永遠

「…はぁ~…何時の間にそんなもん造ってたんじゃ…」

 

「実は~…とーくんからデータを貰ってすぐに…畑仕事に行ってる間に…パパッと…」

 

永遠

「そんな前から………地面を掘るなら一言言ってからしてくれんか?」

 

「…ごめんなさい…」

 

永遠

「まあ、もう造ってしまったもんを今更どうこう言うつもりは無いが、なら新型はそこにある訳じゃな?」

 

「うん♪皆庭に出て♪」

 

 私達は言われた通り庭に出ると…

 

「さあご覧あれ!!」

 

 束さんがそう言うと地面が音を立てながら開いて行った

 そして下からせり上がって出てきた物は…

 

永遠&セシリア&簪&本音

「!?」

 

 それは、巨大な白いドラゴンの様な機体だった

 

「これが束さん作、第5世代1号機!その名も【ワイバーン・ガイア】だよ♪」

 

 な、何コレ…!?

 

 ~簪 Side out~

 

 




 次回『第078話:起動!ワイバーン・ガイア!!』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第078話:起動!ワイバーン・ガイア!!

 ~永遠 Side~

 

 ワシ等は今、驚きのあまり固まってしまっておる

 

「…お~い皆~いい加減こっちの世界に戻って来てよ~!」

 

永遠

「はっ!?…アンタ何ちゅうもん造ったんじゃ!?」

 

 いち早く正気に戻ったワシは目の前のバカデカい機体を見て思わずツッコんでしまった

 

「エッヘン♪」

 

「…あの博士…コレ本当にIS何ですか?」

 

「モチロン♪」

 

セシリア

「幾ら何でも大きすぎる気が…」

 

「いや~自分でも大きすぎたな~って思ったんだけどね~。」

 

永遠

「そもそも何で最初にコレを選んだんじゃ!」

 

「それはさ、まず造るなら【ドットブラスライザー】のデータから選ぼうって決めたんだよ。次にどれを造るかで悩んでたら【ワイバーン・ガイア】が目についたんだ。機体も大きかったから、まずは大きいのから造って後から小さくしていこうって事にしたんだよ。」

 

永遠

「それで出来上がったんがコレか…」

 

「そゆ事~♪」

 

永遠

「…まさかコレを最初に選ぶとは思わんかったのぉ…」

 

本音

「でもコレカッコいいね~♪」

 

「お!のんちゃん分かってるね~♪………よし!のんちゃんにコレあげるよ!」

 

本音

「ほへ?」

 

永遠&セシリア&簪

「ええええぇぇぇぇーーーーっ!!」

 

 いきなり何言っとるんじゃこの人?

 

永遠

「束さんちょっと待ちんさい!出来たばっかの第5世代機をやるって!そもそも本音は候補生とかでは無いんじゃぞ!」

 

「そうです!教師や他の生徒が何て言うか!」

 

「まあそうだね~…なら束さんからこの【ワイバーン・ガイア】の実働データを取る為に貰ったって説明しといてよ。ちーちゃんなら事情も知ってるから何とかしてくれるよ。」

 

セシリア

「…それで皆さん納得するでしょうか?」

 

「別に嘘じゃないよ。データが欲しいのは本当だし。のんちゃんなら第5世代だからって悪用とかしないだろうからね。」

 

永遠

「それは確かに…」

 

「うん…本音だから…」

 

セシリア

「それで納得してしまうんですよね…わたくし達…」

 

永遠

「うむ…」

 

「で、のんちゃんはどうする?コレ欲しい?」

 

本音

「欲しいで~す♪」

 

「一応理由を聞いていい?」

 

本音

「うん♪私がコレを動かせば博士の夢に近づくんだよね~♪なら私は喜んでコレに乗るよ~♪モチロン悪い奴からコレを守るよ♪」

 

「…のんちゃん…気に入った!今からこの【ワイバーン・ガイア】は君のだよ!」

 

本音

「ありがとうございま~す♪」

 

「それじゃあ早速、この子をのんちゃん用に設定するね。その後は操作法を教えるよ。」

 

本音

「わっかりました~♪」

 

 本音は返事をすると早速【ワイバーン・ガイア】の中に入って初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)を始めた

 その後、束さんから機体の動かし方や、装備されとる武装の事など徹底的に教えられたのじゃが、なんとこの機体、ISスーツは手足のみで動かせるらしい

 ワシの機体の様に全く着替える必要が無いという訳では無いが一々着替える必要が無いので本音は喜んでおった

 話を聞き終えた後、ワシはその間に【ワイバーン・ガイア】用の【剣刃(つるぎ)】を造っておった

 そして気付いた時には夜が明けとった

 

永遠

「む!いつの間にかもう朝じゃな…束さん、後どの位かかりそうじゃ?」

 

「う~ん…のんちゃん物覚えがいいから順調なんだけど…それでも後2,3時間はかかるね。」

 

永遠

「なら織斑先生に今日は遅れると連絡しとくぞ。理由は戻った時に説明すると言えばいいじゃろ。」

 

「お願いね~♪」

 

 ワシはそう言って織斑先生に連絡した

 案の定遅れる理由を聞かれたが戻った時に説明すると言って何とか納得して貰ったんじゃ

 で、連絡も済んだワシは朝飯の用意を始めたんじゃ

 セシリアと簪も手伝ったお陰で思ったより早く作業が終わり、ワシ等は朝食を食べ女性陣はそのあと軽くひとっ風呂浴びる為に温泉に行ったんじゃ

 それからしばらくして皆が帰って来たから学園に戻ろうとしたら束さんが全員【ワイバーン・ガイア】に乗って行けと言って来たんじゃ

 どういう事か分からんかったが、何でもこの機体はデカ過ぎる為、中に何もないスペースがあるらしく、大人4,5人は入れるらしい

 そこで束さんはそこを所謂居住スペースにして、外から入れるハッチも取り付けて他の人間も入れるようにしたらしいんじゃ

 しかも、この機体を自動操縦にして操縦者の本音もすぐに来れる様にしてあるらしい

 もはや完全に巨大ロボットになっとるなコレ…

 

「それじゃあ皆またね~♪」

 

永遠

「と言ってもワシは夕方帰ってくるがな♪」

 

「ニャハハッ♪そうだったね♪のんちゃん、この子をよろしくね♪」

 

本音

「は~い♪」

 

セシリア

「束さん…【ブルー・ティアーズ】の事…よろしくお願いします。」

 

「まっかせなさい!セーちゃん用にパワーアップしておくから楽しみにしてるといいよ♪」

 

セシリア

「はい♪」

 

「では博士また…」

 

「うんじゃあね~♪」

 

 そしてワシ等は本音が操縦する【ワイバーン・ガイア】に乗って学園に戻って行ったんじゃ

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~束 Side~

 

「…さて、それじゃあクーちゃんが戻ってきたらセーちゃんの機体に取り掛かるかな。」

 

 私はそう言って次に造ろうと思っていた機体の設計データを開いた

 

「…でも丁度よかったな。セーちゃんならこの機体を使いこなせるだろうし、何より今のこの子じゃセーちゃんに着いて行けないからね♪」

 

 私は待機状態の【ブルー・ティアーズ】と【ハルファス・ベーゼ】と書かれた機体のデータを交互に見ながら微笑んでいた

 

 ~束 Side out~

 

 




 次回『第079話:翼竜強襲?』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第079話:翼竜強襲?

 ~千冬 Side~

 

千冬

「授業を始めるぞ!」

 

一夏

「…あの…織斑先生…」

 

 私が授業を始めようとしたら一夏が質問してきた…予想はつくが…

 

千冬

「ん?…火ノ兄達の事か?」

 

一夏

「え!…あ、はい…まだ来てないんですけど?」

 

千冬

「アイツ等なら今朝火ノ兄から連絡が来た。4組の更識と一緒に今日は遅れるそうだ。理由を聞いたが戻った時に分かると言われた。」

 

一夏

「…はぁ…」

 

千冬

「そういう訳であの4人はまだ学園にいない。理由によっては説教しておくから安心しろ。」

 

一夏

「…はい…」

 

 それからしばらく授業をしていたんだが…

 

 ヴィーーーーーッ!ヴィーーーーーッ!ヴィーーーーーッ!

 

千冬

「警報!?」

 

 Prrrrrr

 

千冬

「織斑です!何事ですか!?」

 

教員

『先ほど学園のレーダーに反応があり未確認機がこちらに向かっています!』

 

千冬

「未確認機!?火ノ兄達では無いんですか?」

 

教員

『違います!方角は同じですが数は1機です!それに機体がISにしては大きすぎるんです!』

 

千冬

「…大型の未確認機…分かりました!教員部隊の準備を、それと専用機持ちと代表候補達にも召集をお願いします!」

 

教員

『分かりました!』

 

 ガチャ!

 

真耶

「…織斑先生…」

 

千冬

「…授業は中止だ!山田先生は管制室へ!それから、織斑、デュノア、ボーデヴィッヒは着いて来い!他の者はココで待機だ!」

 

生徒達

「は、はい!」

 

真耶

「わ、分かりました!」

 

ラウラ

「教官!未確認機とは一体?」

 

千冬

「説明は後だ!行くぞ!」

 

一夏&シャルル&ラウラ

「はい!!」

 

「………」

 

 私は廊下を歩きながら現状で一番必要な奴の顔が思い浮かんでいたが…

 

千冬

「………火ノ兄がいないのは痛いな…」

 

ラウラ

「!?」

 

 何で肝心な時にいないんだアイツは!

 

「一夏!」

 

一夏

「鈴!お前も呼ばれたのか?」

 

「当たり前よ!私も代表候補なんだから!」

 

シャルル

「でも君の機体は…」

 

「誰かさんのせいで使えないわ!けど訓練機は使えるからね。」

 

ラウラ

「………チッ!」

 

千冬

「貴様ら、無駄話してないで早くいくぞ!」

 

一夏&鈴&シャルル

「は、はい!」

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

永遠

「意外に乗り心地がいいのぉ。」

 

セシリア

「本当ですわね♪」

 

「これからはこれで行き来できる。」

 

本音

「そ~だね~♪」

 

 ワシ等は雑談しながら学園に向かっとる

 機体は自動操縦にしとるから本音もこっちにいても大丈夫になっとる

 

「次に私達が向こうに行く時、必要な物をこれに積み込める。」

 

セシリア

「何を持っていきましょうか?」

 

本音

「う~~~ん?」

 

「…後でゆっくり考えればいいよ…」

 

セシリア

「そうですわね。」

 

永遠

「…あそこはワシの家なんじゃが…まあいいか…」

 

 そんな話をしとるとアラームが鳴った

 

永遠

「もうすぐの様じゃな…本音、コックピットに戻りんさい。」

 

本音

「は~い♪」

 

「所でコレの事どう説明するの?」

 

セシリア

「そう言えばそうですわね?」

 

永遠

「どうするも正直に束さんが造ったと言うしかあるまい。」

 

セシリア

「よろしいのでしょうか?」

 

「でも、それしか言いようがない…」

 

永遠

「まあ、織斑先生と山田先生、それに鈴も事情を知っとるからあの3人にも弁護して貰えばいいじゃろ。束さんもこれを学園に持っていけばワシ等との関係がバレる事くらいは分かっとる筈じゃよ。」

 

セシリア&簪

「そうですわね(だね)。」

 

本音

『みんな~到着するよ~!』

 

 さて、どうなるかのぉ…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 私は教員部隊、専用機持ち、代表候補生たち全員を校庭に集め事情を説明した

 私も【打鉄】を纏い、他の者達もそれぞれがISを装着している

 

千冬

「現在この学園に未確認機が接近しているとの事だ!レーダーで確認した所かなりの大型との事らしい!」

 

 ザワザワ…

 

楯無

「…織斑先生、未確認機に通信はしたんですか?」

 

千冬

「ああ、だが応答は無かった!」

 

ラウラ

「教官!ではその未確認機は攻撃してもいいんですね?」

 

千冬

「落ち着け!まだ相手の目的も分からないんだ!向こうが攻撃してこない限りこちらから手を出すな!勝手に攻撃した場合は処罰するぞ!」

 

ラウラ

「…分かりました…」

 

楯無

「織斑先生…火ノ兄君はどこにいるんですか?彼がいないのは戦力的にかなりの痛手になるんですけど。」

 

千冬

「アイツはまだ学園に来ていない。オルコット、布仏、お前の妹と一緒に遅れると今朝連絡があった。」

 

ラウラ

「あんな奴の手を借りる必要はありません!未確認機は私一人で倒して見せます!」

 

楯無

「そうは言ってもね~…彼は間違いなくこの学園最強よ?現に貴方は生身の彼に刀1本で負けたじゃない。一昨日の事もう忘れたの?」

 

ラウラ

「!?…あれは少し油断しただけだ!」

 

楯無

「確か貴方の機体はドイツの最新鋭機よね?隙をついただけで貴方のISの武器を破壊して、強制解除するまでのダメージを与えるなんて事が生身の人間に出来るのかしら?」

 

ラウラ

「グッ!」

 

楯無

「そう言えば貴方軍人だったわね。その事は本国に報告したのかしら?まあ、出来る訳無いわよね。生身の人間に負けたなんて恥以外の何者でも無いものね~。」

 

ラウラ

「き、貴様!」

 

楯無

「何かしら?全部ホントの事でしょ?自分が国を馬鹿にされる様な事をしておいてよく他の国を馬鹿に出来たわね~。感心するわ~。」

 

ラウラ

「…死にたい様だな貴様!!」

 

楯無

「アハッ♪相手が火ノ兄君なら殺されるでしょうけど、貴方程度の相手に殺されるほど私は弱くないわよ。」

 

ラウラ

「…なら貴様を殺して証明してやる!」

 

千冬

「貴様らいい加減にしろ!今は緊急事態だ!そんな事も分からんのか!!」

 

楯無

「…すみません…調子に乗って言い過ぎました…ごめんねボーデヴィッヒさん…私が言い過ぎたわ…」

 

ラウラ

「………」

 

千冬

「ボーデヴィッヒ!!」

 

ラウラ

「…申し訳…ありません…」

 

千冬

「喧嘩だったら後で好きなだけさせてやる!それとも殺し合いがしたいのか!なら今すぐ学園から出て行け!今は『織斑先生!?』ムッ!」

 

 管制室にいる山田先生から連絡が来た

 

真耶

『未確認機がもうすぐココに来ます!そちらでも視認できる頃です!』

 

千冬

「了解した!全員注目!もうじき未確認機が視認できる距離まで来る!今一度通信を試みる!返答が無かった場合、もしくは返答の内容によっては攻撃を許可する!」

 

全員

「了解!」

 

一夏

「…ん?………な、何だあれ!?」

 

 一夏が空を指さして叫んだ…奴が見える位置まで来たのか…一体どんな奴…

 

千冬

「何!?」

 

 ザワザワ…

 

 全員が動揺している…それもそうだ…未確認機の姿は…

 

「人じゃ…無い?」

 

シャルル

「アレは…ドラゴン!!」

 

ラウラ

「何だあの大きさは!?」

 

楯無

「【戦国龍】とは違う…」

 

 そう、所謂ドラゴンの姿をしているのだ!しかも同じドラゴンでも火ノ兄の【戦国龍】を遥かに上回る巨体!あれでは完全に怪獣ロボットだ!

 

千冬

「あれが…未確認機…」

 

楯無

「…先生!通信を!」

 

千冬

「!?…そこの大型機!こちらはIS学園教師、織斑千冬だ!何が目的でココに来た!返答しだいではこちらには迎撃の用意がある!」

 

 返信は来ない…聞こえてないのか?…それとも無視しているのか?

 

ラウラ

「教官!攻撃許可を!」

 

 ………くっ、やむをえん!

 

千冬

「………仕方がない!こっ『もしも~し♪』ん?」

 

 な、何だ今の間の抜けた声は?と言うかこの声はどこかで?

 

『やっと通じた~♪織斑先生~攻撃しないでね~♪』

 

楯無

「この声!?…まさか貴方…本音ちゃん!?」

 

本音

『あっ!たっちゃんさん♪そだよ~布仏本音だよ~♪』

 

全員

「えええええぇぇぇぇぇーーーーーっ!!」

 

千冬

「本当に布仏なのか?…なら火ノ兄達は!?」

 

本音

『みんなココにいるよ~♪』

 

楯無

「ココにって…そのドラゴンの中に全員いるってこと!?」

 

本音

『そだよ~♪それで着陸したいんだけど何処に降りればいいのかな~?』

 

千冬

「あ、ああ…なら私達のいる校庭に降りてくれ…」

 

本音

『は~い!』

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

 しばらくすると私達の前に巨大なドラゴン型のロボットが降りてきた

 

 ズシイイイイイィィィィィーーーーーン!!

 

全員

「………」

 

<ギャオオオオオオォォォォォォーーーーーーン!!>

 

全員

「!?」

 

 目の前のドラゴンが突然吼えたせいで、隣にいた一夏を含めた何人かが腰を抜かしてしまっていた

 私達は全員そのまま目の前のドラゴンを見つめていた…いや、見上げていた

 それ程までこの機体は大きい…

 

一夏

「デッケエエェェーー………」

 

「あんた何時まで腰抜かしてんのよ?」

 

一夏

「あ///」

 

 何やってるんだか………ん?

 

 ガシャッ…ズウウウゥゥゥーーーンッ!

 

千冬

「何だ!?」

 

 突然、背中の翼を片方、地面に水平に突き刺した

 

 バシュッ!

 

 背中のハッチの様な所が開くと、そこから…

 

永遠

「やっと着いたのぉ…」

 

セシリア

「そうですわね~…」

 

「いい旅立った…」

 

 永遠達3人が出てきた

 

千冬

「お前達!」

 

 3人はそのまま地面に刺さっている翼を通って降りてきた…あの翼は橋代わりだったわけね…

 …ってあれ?

 

「ねえ本音は?」

 

永遠

「まだあの中じゃ。」

 

千冬

「…何故アイツだけ残って…ちょっと待て!」

 

一夏

「千冬姉?」

 

千冬

「織斑先生だ!…そう言えばさっきの通信…布仏しか話してこなかったな…」

 

楯無

「言われてみれば…」

 

 もしかして!?

 

千冬

「火ノ兄!アレを動かしていたのは布仏なのか!?」

 

永遠

「そうじゃよ。」

 

全員

「ええええぇぇぇぇーーーーっ!!」

 

 やっぱり本音が操縦してたんだ!でも、何で本音が?

 

 カッ!

 

 目の前の巨大ドラゴンが突然光り出し、光が消えるとそこにはドラゴンがいなくなる代わりに本音が立っていた

 これってまるで………まさかこの機体!?

 

楯無

「本音ちゃん!?」

 

本音

「ただいま~♪」

 

千冬

「お前達!聞きたい事は山ほどあるが、まず1つ聞きたい…あのドラゴンの様な機体は束が造ったISなのか?」

 

全員

「え?」

 

 千冬さんも気づいてたんだ!

 

一夏

「束って…アレを束さんが!?千冬姉どういう事だよ!何で火ノ兄達が束さんの造った機体に乗って来るんだよ!?」

 

千冬

「織斑先生だ!…まあもう言ってもいいか?アイツは今火ノ兄の家で暮らしている。」

 

一夏

「え?」

 

全員

「えええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!!!」

 

一夏

「ど、どういう事だよ!?俺と千冬姉と箒以外は石ころ程度にしか思わないあの束さんが、何で火ノ兄の家に住んでるんだよ!!」

 

千冬

「そのままの意味だ。私も最初は驚いたが、アイツも変わって来てるという事だ。」

 

一夏

「あの束さんが…」

 

千冬

「聞いた話だが、アイツもお前同様火ノ兄に説教されたらしくてな、徹底的に凹まされてそれから考えを改めたらしい。」

 

一夏

「束さんにまで説教したのかよアイツ…」

 

シャルル

「篠ノ之博士が…火ノ兄君の家に…」

 

千冬

「…言っておくが火ノ兄の住んでいる島はコイツ個人の所有地だ。法律上、所有者の許可なく勝手に入れば不法侵入として捕まるからな。例え外国国籍の者でも例外ではない。」

 

全員

「………」

 

 何人かが悔しそうな顔してるわね…大方、永遠の家に乗り込もうって考えてたんでしょうね…

 

千冬

「捕まってもいいなら好きにしろ。まあ、そんな事をすれば火ノ兄に半殺しにされるのがオチだがな。」

 

全員

「………」

 

 確かにそうなる姿が目に浮かぶわね…

 

永遠

「ワシって織斑先生にはどんな風に映っとるんじゃ?」

 

セシリア&簪&本音

「さあ~…」

 

一夏

「火ノ兄!」

 

永遠

「ん?何じゃ?」

 

一夏

「何で束さんがお前の家に住んでる事を言わなかったんだよ!」

 

永遠

「聞かれんかったからな。それに言わんかったのは束さんを守る為じゃ。そんな事も分からんのか?」

 

一夏

「え?」

 

「アンタ本当に分からないの?束さんは世界中から狙われてるの忘れたの?」

 

一夏

「あ!?」

 

「実際、この場にいる何人かは今すぐにでも永遠の家に乗り込んで束さんを確保しようと考えてる筈よ。」

 

全員

「!?」

 

 私の言葉に反応したって事は図星だったわけね…

 

「だから永遠は極一部の人間にしか言わなかったのよ。」

 

一夏

「…その極一部の中にお前も入ってるのか?」

 

「ええ、後は山田先生もよ。」

 

一夏

「山田先生も…」

 

千冬

「束の所在を知っていたのは私と山田先生、オルコット、更識、布仏、凰の6人だけだ。」

 

一夏

「…何で…何で千冬姉には教えて俺には教えなかったんだ!それに箒にも!」

 

永遠

「単純に信用出来んからじゃ。」

 

一夏

「な!?信用…出来ないだと!?」

 

永遠

「言い方が悪かったな。信用出来ん言うのはお主も篠ノ之も口が軽そうと言う意味じゃ。」

 

一夏

「ぐっ!…で、でも俺は束さんの…」

 

永遠

「束さんとお主の関係なんぞワシは知らんし関係ない。それに会ってどうするんじゃ?世間話でもする気か?それなら電話で十分じゃろ?」

 

一夏

「…それは…」

 

永遠

「篠ノ之にも言わんかったのはあの娘が束さんを毛嫌いしとるからじゃ。居場所を教えても意味は無かろう。」

 

一夏

「ううっ…」

 

永遠

「逆にセシリアや織斑先生達は口も堅く信用出来た。じゃから教えたんじゃ。それ以外に理由は無い。」

 

 本当は永遠の家に行った時に、一緒に住んでる事を知っただけなんだけど…

 

一夏

「………」

 

千冬

「束の事はもういい。それにアイツは火ノ兄の家にはもういないだろう。所在がバレた時点でまた雲隠れするだろうからな。」

 

永遠

「そうじゃな。…寂しくなるのぉ…」

 

全員

「………」

 

千冬

「お前達、改めて聞くがあの馬鹿デカイ機体は束が造った物で間違いないな?」

 

永遠

「そうじゃ!」

 

セシリア

「アレこそ束さんが開発した新型!」

 

「第5世代型試作1号機!」

 

本音

「【ワイワイ】だよ~♪」

 

 ズコッ!

 

 何よその名前…

 

永遠

「違うじゃろ!」

 

 あ!やっぱり違うんだ…

 

「第5世代型IS【ワイバーン・ガイア】…それがあの機体の名前!」

 

全員

「ええええぇぇぇぇーーーーっ!!」

 

ラウラ

「だ、第5世代だと!?」

 

シャルル

「あのドラゴンが!?」

 

千冬

「【ワイバーン・ガイア】…見た目通りの名前だな。」

 

「確かにそうですね。」

 

楯無

「まず名前ですか!第5世代って所は気にならないんですか!?って言うか何で織斑先生と凰さんはそんなに冷静なのよ!?」

 

千冬

「ん?…私と凰、山田先生は束が第5世代を造っているのは聞いていたからな…それが完成したと言うだけだ。」

 

「まさかあんなドデカい機体だなんて思わなかったけどね。」

 

シャルル

「それでも第5世代ですよ!何で驚かないんですか!」

 

ラウラ

「教官も知ってる筈です!今は第3世代の開発に取り掛かった所なんですよ!」

 

楯無

「それを、第4を飛ばして第5を造るなんてありえません!」

 

千冬

「束ならそのくらい出来るだろ。」

 

ラウラ&シャルル&楯無

「………」

 

 その一言で納得出来るのが束さんの凄い所よね…

 と言っても実際は永遠の機体のデータを使ったんだろうけど…それでも造れたのは束さんだからとしか言えないわね…

 

一夏

「………そんなに凄い事なのか?」

 

「アンタちゃんと勉強してんの?誰だって驚く事よ?私達だって最初に聞いた時は驚いたんだから。」

 

一夏

「え!あ、いや…」

 

千冬

「…織斑………」

 

一夏

「は、はい!?」

 

千冬

「…後で詳しく聞かせて貰うぞ…」

 

一夏

「…はい…」

 

 コイツもしかして勉強してないんじゃないの?

 

 ~鈴 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

ラウラ

「オイ!」

 

本音

「な~に~?」

 

ラウラ

「何故お前ごときが第5世代の機体を手に入れたんだ!答えろ!」

 

本音

「束さんがくれたんだよ~♪」

 

ラウラ

「くれた、だと!」

 

セシリア

「そうですわ。束さんが完成した第5世代の実働データを取るのを条件に本音さんに差しあげましたの。」

 

「束さんが本音を気に入ったのも理由だけど…」

 

ラウラ

「………」

 

永遠

「何じゃチビッ子?羨ましいんか?」

 

ラウラ

「そんな訳あるか!?」

 

永遠

「それはすまんな。そう見えたんじゃよ。」

 

ラウラ

「ぐぬぬ………フンッ!」

 

シャルル

「怒らせたら駄目だよ…」

 

「ほっときなさいよ!………アレ?セシリア…アンタ【ブルー・ティアーズ】は?」

 

 そう言えば、オルコットの耳についている待機状態のISが無いな

 

セシリア

「【ブルー・ティアーズ】は博士に預けてきましたわ。束さんに相談したら強化と改造をしてくれると仰ってくれましたので。」

 

「何よそれー!?いいな~!」

 

シャルル

「そうじゃないでしょ!いいのセシリア!勝手に改造なんかして!」

 

一夏

「え?どういう事だ?」

 

シャルル

「国家に属しているISは国の許可無しに勝手に改造とかをしてはいけない事になってるんだよ。修理するのはいいんだけど。」

 

「そう言えばそうだった!」

 

セシリア

「許可なら貰ってますわよ。束さんが改造をしてくれるなら好きな様に弄ってくれて構わないと二つ返事で許可してくれましたわ。」

 

シャルル

「あ…そうなんだ…」

 

「い~い~な~~~!!」

 

セシリア

「…ですが…戻ってくる時は、元の原形は留めていないでしょうね…」

 

千冬

「それは間違いないな…あの束が改造するんだ…改造では無く魔改造されて戻ってくるぞ!」

 

セシリア

「織斑先生もそう思いますか?」

 

千冬

「賭けてもいいぞ?」

 

セシリア

「あははは…やっぱりですか?」

 

千冬

「…さて、いつまでもココで話している訳にもいかんな。火ノ兄、お前達が今日遅れたのは布仏の機体が理由か?」

 

永遠

「そうじゃよ。昨日の夜から徹夜で作業しておってな、終わったのが朝の9時頃何じゃよ。」

 

千冬

「それならそうと連絡した時に説明しろ。」

 

永遠

「驚かそうと思うてな!」

 

千冬

「やり過ぎだ!お陰で授業を中止する羽目になったんだぞ!」

 

永遠

「あ~それは~…」

 

永遠&セシリア&簪&本音

「ごめんなさい!」

 

千冬

「全く!…布仏、お前の機体を調査したい。すまんがこちらに預けてくれ。」

 

本音

「は~い♪」

 

千冬

「すまんな。」

 

 3つの勾玉がついた首飾り、これが【ワイバーン・ガイア】の待機状態か…

 

永遠

「織斑先生、一応言っとくが【ワイバーン・ガイア】は本音しか使えんように調整されとる。束さんか本音自身でなければ機体にアクセスする事も出来んからな。」

 

 これは私に対して言ったものでは無いな…他の奴…別の国の連中に対して言ったな…

 

千冬

「…分かった。」

 

 火ノ兄の言葉に何人か反応したな…まあいい…今は泳がせておくか…

 

千冬

「火ノ兄、オルコット、更識、布仏はこの後、詳しい話を聞くから私について来い。他の者は其々の教室に戻って授業を再開するように!以上解散!」

 

全員

「はい!」

 

 第5世代機…束め、遂に完成させたか…

 しかし…何か忘れてる気がするな…

 

永遠

「どうかしたんか?」

 

千冬

「いや、何か忘れてる気がしてな………まあ思い出せないなら大した事では無いのだろう…」

 

永遠

「さよか…」

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~箒 Side~

 

箒「………」

 

 第5世代…何故姉さんはあんな奴に新型を与えたんだ?

 まあいい…姉さんに造って貰わなくても私には相応しい機体がある…

 あんな図体だけのデカ物は私には必要ないからな…

 私には…【戦国龍】があるのだからな!?

 

 ~箒 Side out~

 

 




 次回『第080話:制限時間』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第080話:制限時間

 ~千冬 Side~

 

 火ノ兄達と【ワイバーン・ガイア】を調べる為に整備室に向かっていると…

 

永遠

「織斑先生…ちといいかの?」

 

千冬

「何だ?」

 

永遠

「デュノアの事じゃ。」

 

 火ノ兄が話しかけてきたが、内容はデュノアの事か…という事は

 

千冬

「…奴が女だという事か?」

 

永遠

「気付いとったか。流石じゃな。」

 

千冬

「当然だ!それに一夏もその事を知っているな?」

 

永遠

「うむ。一昨日の件で確信したわい。」

 

千冬

「私もだ。」

 

 アイツが馬鹿なお陰ですぐに分かった

 

永遠

「それで束さんに調べて貰ったんじゃが、あの娘の本当の名はシャルロット・デュノア。デュノア社の現社長と愛人の娘じゃ。」

 

千冬

「愛人?…余り気持ちのいい言葉ではないな。」

 

永遠

「あやつの目的は織斑の【白式】のデータじゃ。」

 

千冬

「そういう事か…その為にわざわざ男装してくるとはご苦労な事だな。…だが、何故そんな事をした?」

 

永遠

「デュノア社は今経営危機に陥っとる。そこからの巻き返しの為じゃろう。」

 

千冬

「その為に自分の娘にあんな事をさせているのか!」

 

 チッ!胸糞悪い話だ!

 

永遠

「いや、デュノアをココに送り込んだのは社長の本妻の方らしい。」

 

千冬

「何!?」

 

永遠

「あの会社は今、本妻が取り仕切っとる。父親である社長は飾り物扱いじゃ。」

 

千冬

「…娘はその事を知っているのか?」

 

永遠

「恐らく知らん。自分を送り出したのは父親じゃと思うとる筈じゃ。」

 

千冬

「そうか…どうするつもりだ?」

 

永遠

「デュノアが今後何をしたいのか、織斑が何を考えておるのかを問い質すつもりじゃ。」

 

千冬

「…確かにそうした方がいいな。」

 

永遠

「恐らく今日にでもデュノアはワシに接触する筈じゃ。束さんとの関係がバレたからな。その時に織斑と一緒に放課後の屋上に呼び出すつもりじゃ。それで織斑先生にもその場に来てほしいんじゃよ。」

 

千冬

「私もか?」

 

永遠

「織斑先生がおればあの二人も誤魔化そうとはせん筈じゃ。」

 

千冬

「私は自白剤か?…だがいいだろう。それで会うのはお前一人か?」

 

永遠

「そのつもりじゃ。わざわざセシリア達を連れて行く必要は無いからのぉ。」

 

千冬

「そうだな。」

 

 それから私達は整備室で山田先生と合流し布仏に【ワイバーン・ガイア】にアクセスして貰った

 だが…

 

真耶

「な、何ですかこのスペックは!?」

 

 【ワイバーン・ガイア】は第5世代と言うだけあって機体性能が現在のどのISをも遥かに上回っていた

 武装だけでも、両腕に装備された連射型のレーザー砲【アーム・カノン】

 口にも高出力レーザー砲【レーザー・ブレス】

 近接武装として翼そのものがブレードになっている【ウイング・ブレード】

 尻尾の先端にも大型ブレード【テール・ブレード】

 背中には12連装のミサイル発射管が左右に取り付けられている

 その上火ノ兄の造った【剣刃(つるぎ)】を既に装備している…

 【夢幻の天剣トワイライト・ファンタジア】…全体が金色で鍔の部分が赤い宝玉とその周りを小さな青い宝玉が回っている様な形をした【剣刃(つるぎ)】か…

 しかもこの機体は水中潜行が出来る上に、【ウイング・ブレード】を回転させる事でドリルの様にして地面に潜る事まで可能にしている

 

千冬

「束の奴…とんでもない物を造ったな!」

 

真耶

「本当ですよ~~~…」

 

千冬

「見た目から頑丈そうだとは思ったんだが…いくら第5世代とはいえ、この巨体で第3世代以上の機動性を持っているとはな…その上火ノ兄の機体と同じとまでは行かないがISスーツは手足だけでいいとは…」

 

真耶

「着替えが楽ですね~…」

 

千冬

「全くだ…」

 

真耶

「………でも、これが篠ノ之博士の夢の第一歩なんですね…」

 

千冬

「………そうだな…少々やり過ぎな気がするが…」

 

真耶

「あはは…」

 

永遠

「まあ心配せんでも次に造る奴はもっと小さくなっとるはずじゃ。本人も最初にデカいのを造ってそれから小さくしていくと言うとったしな。」

 

千冬

「そうあって欲しいな…こんなサイズの機体はコイツだけで十分だ。………次?」

 

本音

「どうしたんですか~?」

 

 次の機体…アイツまさか!?

 私はある考えが浮かびオルコットを見た

 

セシリア

「?…わたくしに何か?」

 

「織斑先生?」

 

千冬

「…オルコット…確かお前の機体は今は束が持ってるんだよな?」

 

セシリア

「え?…はい、そうですけど…それが何か?」

 

永遠

「あ~~~…そういう事か…」

 

 火ノ兄も気づいたな…

 

「永遠もどうしたの?」

 

永遠

「さっき魔改造すると言うたじゃろ?束さん…【ブルー・ティアーズ】を第5世代に魔改造する気じゃ。」

 

セシリア&簪&本音&真耶

「ええっ!?」

 

千冬

「【ブルー・ティアーズ】はオルコットに着いて行かなくなっている。生半可な強化ではオルコットはすぐに追いついてしまう。そうならない様にするには第5世代にするのが一番手っ取り早いからな。」

 

セシリア

「そんなまさか…」

 

千冬

「束がお前の機体を持ってくれば分かる事だ…」

 

セシリア&簪&本音&真耶

「………」

 

 取り合えず【ワイバーン・ガイア】の調査を続けた…

 アイツ今度はどんな物を造る気だ…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~シャルル Side~

 

 …第五世代型【ワイバーン・ガイア】………あの機体のデータが手に入れば…

 でも、火ノ兄君はあの機体にアクセス出来るのは篠ノ之博士か布仏さんしか出来無いって言ってた…

 …ここは火ノ兄君に篠ノ之博士の事を聞こう

 多分僕以外にも聞かれてるだろうから怪しまれないだろうし…

 

シャルル

「…ひ、火ノ兄君…ちょっといいかな?」

 

 …そう思っていたら…

 

永遠

「…何用じゃ?………()()()()()()()()()()()()

 

シャルル

「!?」

 

 な、何で…僕の名前を!?

 

永遠

「こっちもお主に用があった。放課後に織斑と屋上に来い。そこで話を聞いてやるわい。」

 

シャルル

「わ、分かった…」

 

永遠

「ではな。」

 

シャルル

「………」

 

 …火ノ兄君にバレた…しかも一夏も連れて来いって事は、一夏が僕の正体を知っている事にも気づいてる…どうしよう…

 

 ………

 ……

 …

 

 放課後になると僕は一夏と屋上に向かっていた…

 その途中で僕の事がバレた事も一夏が知っている事も話した…

 

一夏

「…火ノ兄の奴、いつ気付いたんだ?」

 

シャルル

「…分からない…でも僕の本当の名前を知ってる時点で僕にはこの呼び出しを拒否する事は出来ないよ…」

 

一夏

「シャルル…だ、大丈夫だ!アイツが何かしてきたら俺が守ってやるから!」

 

シャルル

「…一夏…その言葉は嬉しいけど彼に勝てるの?」

 

一夏

「うぐっ!?」

 

 火ノ兄君は生身でISに勝てる人間…しかも彼自身もISを持ってる…たった二人じゃ勝てる訳ないよ…

 そんな話をしているうちに屋上に着いた

 屋上にはすでに火ノ兄君が来ていた

 

千冬

「これで全員だな。」

 

一夏&シャルル

「!?」

 

 後ろを振り向くと屋上の入り口に織斑先生がいた

 

一夏

「ち、千冬姉!何でココに!?」

 

千冬

「織斑先生だ!と言いたいが今はいい。お前達の事を火ノ兄から聞いてな、私がいれば正直に話すだろうという事で呼ばれた。」

 

シャルル

「………」

 

 織斑先生まで呼んでいたなんて…これじゃあ誤魔化す事も出来ない…

 

千冬

「やはり女だったか。」

 

一夏

「………いつ…気付いたんだよ…シャルルが女だって…」

 

千冬

「初めて会った時から違和感を感じていた。確証を持ったのは一昨日の医務室の前での一件だ。」

 

シャルル

「あ、あの時!?」

 

千冬

「そうだ。一夏、お前は私がいたのにデュノアにボーデヴィッヒを渡そうとした。火ノ兄から男は入るなと言われた直後にだ!」

 

一夏

「うっ!」

 

永遠

「あの状況で間違えたとすればお主は男女の区別も出来ん程の大馬鹿という事になる。じゃが、デュノアが女だと知っていたなら話は別じゃ。」

 

千冬

「そしてデュノアも疑問も持たずにボーデヴィッヒを受け取ろうとした。それでお前が女だと確信出来た。」

 

 最初から警戒されてたんだ…それをあの時の一件で完全にバレてしまったんだ…

 

永遠

「さて、シャルロット・デュノア…お主が男装してまでココに来た目的は織斑の…【白式】のデータを盗む為じゃな?」

 

シャルル

「…そこまで分かってるんだ…」

 

永遠

「男装してまで織斑と接触しようとするなら理由はそんな所じゃろ。もっともお主の本名は束さんに調べて貰ったがな。」

 

 篠ノ之博士か…確かにあの人ならその位調べるなんて簡単だろうね…

 

シャルル

「…そうだよ。僕の目的は一夏のデータを盗む事、そうするように父から命令されたんだよ。」

 

千冬

「父から…か…」

 

一夏

「待ってくれ!!シャルルは父親に命令されて嫌々ここに来たんだ!それにここにいれば3年は手出し出来ないんだ!その間に解決策を考えれば…」

 

千冬

「驚いたな!お前がそれに気付いていたとは…どうやら少しは勉強しているようだな。」

 

一夏

「俺ってどんな風に見られてるんだよ…」

 

千冬

「頭で考えるより先に無責任な事を口走る鈍感男だが。」

 

一夏

「………すみません…」

 

 一夏って織斑先生からそんな風に見られてたんだ…しかも否定しないって事は自覚があるんだ…

 

永遠

「デュノア…お主が今言った言葉には一つ間違いがあるぞ。」

 

シャルル

「?」

 

永遠

「お主を送り込んだのは父ではない。本妻の方じゃ。」

 

シャルル

「………え?」

 

 僕を送り込んだのが…本妻の方?

 

シャルル

「そんな!僕は確かに父からIS学園に入って一夏のデータを盗む様に言われたんだよ!」

 

永遠

「束さんの調査によるとデュノア社を実際取り仕切っとるのはその本妻の方じゃ。お主の父はただの飾り物になっとるらしい。」

 

シャルル

「父が…飾り物!?」

 

永遠

「そんな人間に発言権があると思うとるんか?」

 

シャルル

「じゃ、じゃあ…あの時、僕に出した命令は…」

 

永遠

「父親の口を通して本妻から出された命令という事じゃ。」

 

シャルル

「そんな…」

 

永遠

「まあ、お主の父親が何を考えておるかは分からんがな。もしかしたら別の思惑があるかもしれんし、本妻と同じ考えかもしれん。それは本人に聞くしかないのぉ。」

 

シャルル

「………」

 

一夏

「シャルル…」

 

永遠

「お主の間違いを一つ正した訳じゃが、デュノア、これからお主はどうしたいんじゃ?」

 

シャルル

「ぼ、僕は…僕はここにいたい!…でも…どうすればいいのか…」

 

永遠

「さよか。それが聞ければワシは何も言わん。まあ織斑が言った通り3年以内に何とかするんじゃな。今のままじゃと国に戻ればお主は任務失敗で消されるじゃろうからな。」

 

シャルル

「!?…消される…」

 

永遠

「まあ、方法が無い訳では無いがな…余りお勧めは出来んが…」

 

一夏

「本当か!?どんな方法だよ!?」

 

永遠

「国を捨てればいい。」

 

シャルル

「く、国を…捨てる!?」

 

千冬

「つまりどこかの国に亡命しろと言う事か。確かにそうすれば狙われる事は無くなるな。」

 

シャルル

「でも…その方法は…」

 

永遠

「二度と故郷の土は踏めんじゃろうな。お主の母の墓参りも出来んから事前に墓を移さねばならんのぉ。じゃからお勧めはせんと言うたじゃろ?…それは最後の手段と言ってもいいからのぉ。」

 

シャルル

「最後の…」

 

永遠

「まあ、亡命するのか、それとも別の方法を取るのかはお主の自由じゃ。じゃが、一度は父親と話す事を勧めるぞ。本妻のおらん所でな。」

 

シャルル

「…父さんと…」

 

永遠

「後は織斑と相談するんじゃな。それからデュノア、お主の用件とは束さんの事じゃろ?悪いがワシは何も言わんぞ。」

 

シャルル

「!?…う、うん…分かった…」

 

 …それも分かってるんだ…

 …僕が…これからどうしたいか…か…

 

 ~シャルル Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

永遠

「次に織斑、お主は何を考えとるんじゃ?」

 

一夏

「お、俺!?」

 

永遠

「そうじゃ。デュノアの正体も目的も知ってなお庇う様な事をしとるのは何故じゃ?…また考え無しに俺に任せろとでも言ったんか?」

 

一夏

「そ、そんな事無い!さっきも言っただろ3年もあるんだ!その間に解決策を考えればいいんだって!」

 

永遠

「結局は後回しにしただけじゃろ?それを考え無しと言うんじゃ。」

 

一夏

「ぐっ…」

 

永遠

「それにさっきから3年3年と言うが本当にデュノアを3年間も今の状態にしとくつもりか?」

 

一夏

「え?」

 

永遠

「本当にデュノアの事を思うなら一日でも早く解決策を考えてやるもんじゃろ?お前の言っとる事はデュノアを無駄に長く悩ませとるだけじゃぞ。」

 

一夏

「うっ!?」

 

永遠

「それにその規則には大きな穴があるんじゃぞ。」

 

一夏&シャルル

「穴?」

 

永遠

「確かにその規則通りならデュノアに手出しは出来ん。じゃが、それはあくまで別の国や組織に対してだけじゃ。」

 

一夏&シャルル

「え?」

 

永遠

「デュノア…お主はフランス国籍の人間じゃ。故に国からの帰還命令の類が出れば拒否する事は出来ん。ましてや代表候補生の立場ともなれば余計にな。そう言った物に対してその規則は何の役にも立たん。」

 

シャルル

「あ!?」

 

永遠

「織斑…どうする気じゃ?」

 

一夏

「どうするって…どうすればいいんだよ!?」

 

永遠

「知らん!デュノアを助けると言ったのはお前じゃろ?お前が何とかしろ!!」

 

一夏

「そんな言い方しなくていいだろ!」

 

千冬

「一夏…お前は何時もそうだったな?…誰か困っている人がいれば俺に任せろ、俺が何とかする…そう言っていたな?」

 

一夏

「千冬姉…それがいけないのかよ!」

 

千冬

「別に悪いとは言わん。だが、今までお前はそう言って自分で解決した事があったのか?」

 

一夏

「!?」

 

千冬

「お前の困っている人を助けたいと言う気持ちは分かる。だがな、そうやってお前は相手に無駄な期待をさせては碌に何もしていないだろ。何時も見かねた私や束が解決していたんだぞ。」

 

一夏

「………」

 

千冬

「今回のデュノアの件もそうだな?お前は任せろと言いながら時間が3年あるからと言って何も解決策を考えていない。デュノアの事情を昨日知ったばかりの火ノ兄でさえ最終手段とは言え亡命と言う方法を考えたぞ。だが、それ以前から知っていたお前は何か考えていたのか?」

 

一夏

「………」

 

千冬

「いいか一夏!!自分で対処出来ないなら初めから任せろ等と口にするな!!相手にも周りにも迷惑だ!!!」

 

一夏

「!?………ううっ…」

 

 …千冬姉の言う通りだ…俺は任せろって言って…何もしてない…何も考えてない

 今まで解決してきたのは千冬姉と束さんの二人だ…それを俺は…自分が解決したみたいに…

 

永遠

「…織斑…一つ聞く…何故他の者に頼まんかった?」

 

一夏

「え?」

 

永遠

「出来もせんのに相手を助けようとしとるなら、何故出来る者に事情を話し協力を頼まんかったと聞いとるんじゃ。お前の周りなら織斑先生じゃな。」

 

一夏

「そ、それは…」

 

永遠

「答えられんか?それならそれで構わん。大よその見当は付くから答えんでいいわい。」

 

一夏

「え?」

 

 見当が付くってどういう事だよ…

 

永遠

「まあ、それはいい…それからお前、時間は3年『も』あると言うておるが、実際は3年『しか』ないんじゃぞ。」

 

一夏

「え?…3年しか…」

 

永遠

「はぁ…まさかとは思うが気づいとらんのか?そもそも、デュノアの事だけを考えれば3年は十分な時間じゃ。だけならな。じゃがそれ以外にもやらねばならん事が沢山あるじゃろ!お前が日々しなければならん事の中でデュノアに割ける時間がどの程度あると思うとるんじゃ!」

 

一夏

「あ!?」

 

 そうだ…火ノ兄の言う通りだ…シャルルの事だけなら時間は十分ある…

 でも、他にもする事は沢山あるんだ…全部やれば3年なんてすぐに…

 

永遠

「それに…3年言うんはデュノアだけの制限時間ではないんじゃぞ?」

 

一夏

「シャルルだけじゃないって…他に誰がいるんだよ!」

 

千冬

「…お前の事だ!」

 

一夏

「お、俺?」

 

永遠

「お主がこの学園に入れられたのはココが治外法権だからじゃ。ココにおればテロリスト以外はおいそれと手出しは出来ん。お主は日本人じゃが、男の操縦者という事もあるからデュノアと違って日本政府ですらココにおれば手が出せん。じゃがココから出ればお主をモルモットにしようと世界中の国や組織から狙われる事になる。」

 

一夏

「そ、そんな…」

 

永遠

「はぁ…呆れたのぉ…織斑先生がこの学園に入れたのはお主を3年とはいえ守る為じゃ。少し考えれば分かる事じゃろうに、んな事も気づいとらんかったんか?」

 

一夏

「俺の…為に………そんな…」

 

千冬

「2年前の事件の事を忘れたのか?あんな事が起きた時の為に、この3年の間にお前には自衛手段を身に着けて貰おうと思っていたんだがな…」

 

一夏

「あの時の!?」

 

千冬

「お前…あの時みたいに私が必ず助けに来てくれると思ってるのか?」

 

一夏

「!?…それは…」

 

千冬

「お前は私に死ぬまで守って貰うつもりか?そんな事が出来るとでも思ってるのか?だとしたらお前はとんだ甘えん坊だな。」

 

一夏

「………」

 

 千冬姉の言う通りだ…

 俺は…知らずに千冬姉に甘えてたんだ…

 あの時みたいに千冬姉が助けてくれる…守ってくれるって…思い込んでたんだ…

 それは俺が自立も出来ない甘ったれって事じゃないかよ…

 実際はそんな事…出来る筈ないのに…

 

千冬

「私は言った筈だぞ?自分で自分を守れるくらいに強くなれと?お前は私の言った事の意味を理解していなかったのか?」

 

一夏

「………」

 

 あの時言った言葉はこういう意味でもあったんだ…

 

千冬

「デュノアの事を気にかけるのは別に構わん。だが、お前自身にも時間が無いという事を理解しておけ。3年と言う限られた時間の中でお前が何をすべきかを考えろ。」

 

一夏

「………はい…」

 

 3年…それが俺に残された時間………って!?

 

一夏

「ちょっと待ってくれ!?なら火ノ兄は!アイツだって俺と同じじゃないか!?」

 

永遠

「ワシを自分と重ねるな。お主と違ってそんな連中は全員返り討ちにしてやるわい。」

 

千冬

「そうだな。火ノ兄にはそれだけの力がある。だが一夏、お前にはそれが出来るのか?」

 

一夏

「うっ………出来ない…」

 

 そうだ…火ノ兄は生身でISに勝てるくらい強いんだ…その為の努力をずっと続けてきたんだ…しかもアイツの専用機はどれも化け物じみた物ばかりで、それを完全に使いこなしてる…俺とは違って狙われても返り討ちに出来る…

 それに引き換え俺は…俺には襲ってきた奴を返り討ちにする力はない…する為の努力もしてない…【白式】も全く使いこなせてない…俺は何処まで馬鹿なんだ…そんな事も分からないなんて…

 

一夏

「………」

 

永遠

「どうするかは自分で決めるんじゃな。まあ、まずはデュノアの件を片付ける事じゃ。自分で手を貸すと言ったんじゃ。最後まで責任を取るんじゃな。」

 

千冬

「デュノアに任せろと言ったのはお前だ。相談や調べもの程度なら手を貸してやるが、今回は最後までお前が自分で片付けろ!私も束もお前の尻拭いはせんぞ!!」

 

一夏

「!?………分かった…」

 

永遠

「それから最後に言うておくがデュノアに残されとる時間は実際には3年も無い。よくて2カ月と言った所じゃ。」

 

一夏

「な、何でだよ!?」

 

永遠

「お前…ワシと違って学校行っとったんじゃろ?」

 

一夏

「当り前だろ!!」

 

永遠

「なら7月になったら何がある?」

 

一夏

「え?…7月?………夏休み…か?」

 

永遠

「そうじゃ。デュノア…お主、夏休みの間この学園にずっとおるつもりか?代表候補生が長期の休みに国に帰らんでいいのか?」

 

シャルル

「………帰らないなんて…出来ないよ…」

 

一夏

「そんな!?」

 

永遠

「そう言う事じゃ。…さて、ワシの用件は終わりじゃ。わざわざ呼びつけてスマンかったな。織斑先生も申し訳なかった。」

 

千冬

「何、気にするな。」

 

 火ノ兄はそう言って屋上を後にしていった

 千冬姉も続いて屋上から出ようとした時…

 

千冬

「一夏…いい加減姉離れしろ!」

 

一夏

「!?」

 

シャルル

「…一夏…」

 

 本当のタイムリミットは2カ月…その間に何とかしないといけないのかよ…

 それに…姉離れか…その通りじゃねえか…

 どうすればいいんだ…

 

シャルル

「………」

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「…火ノ兄…さっき一夏が私に相談しなかった理由に見当がつくと言っていたがそれは何だ?」

 

 私はさっき火ノ兄が言っていた事が気になっていた

 一夏が私に相談しない理由を聞かれた時アイツは答えなかった…

 火ノ兄はそれだけで分かったみたいだが、私には分からなかった…

 だから聞いてみたんだが…

 

永遠

「………大方、自分で言った手前お主に頼るのはカッコ悪い、迷惑をかけたくないとか、そんな理由じゃろ?」

 

 それは予想以上に情けない理由だった…

 

千冬

「何だそれは?つまりアイツは自分のプライドを優先させたと言うのか?」

 

永遠

「恐らく無意識の内にその考えが浮かんだんじゃろ。じゃからお主に相談せんかった。それしかワシには思い当たる節が無いんじゃよ。奴の本心かは分からんがな。」

 

千冬

「いや、お前の予想は当たっているだろう。アイツは変な所で無駄にプライドが高いからな。」

 

永遠

「まあ、流石にデュノアの前では言わんほうがいいと思うて黙っといたんじゃが…」

 

千冬

「確かにな…自分のプライドを優先させていたなんて知ればデュノアはさらに追い込まれる…全くアイツにもお前ぐらいの気遣いが出来ればいいんだが…」

 

 アイツは…気遣いは出来ない…考えるより先に口が出る…無責任な事は言う…その上、鈍感…

 この3年の間にどれか一つでも治ればいいんだが…

 

永遠

「そうじゃな…まあ、ワシはこれ以上デュノアの件に関わらんよ。あの娘がココにいたいと言うなら何も言わん。どうやって残るかは織斑の脳味噌、もとい頑張り次第じゃがな。」

 

千冬

「そうだな…デュノアには悪いが…あれだけ追い詰めればアイツも現実の厳しさが分かるだろ…」

 

 念の為、束に調査だけでもやっておいてもらうか…

 その後、私達は別れたんだが…そう言えばアイツに言っておく事があったな

 

 ~千冬 Side out~

 




 次回『第081話:未練』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第081話:未練

 

 

 ~永遠 Side~

 

永遠

「…さて帰るかの。」

 

 ワシは織斑とデュノアを問い質した後、セシリア達に挨拶を済ませ、帰ろうと校門前に来ると…

 

「待ちなさい!」

 

永遠

「ん?」

 

 数人の生徒に呼び止められた

 

永遠

「何用じゃ?」

 

生徒1

「アンタの家に連れて行きなさい!!」

 

永遠

「は?何で?」

 

生徒2

「篠ノ之博士がアンタの家にいる話は聞いたわ!」

 

永遠

「もうおらんぞ。」

 

生徒1

「いなくても博士の研究資料とかがあるはずよ!それを私達に寄越しなさい!」

 

永遠

「何でそんな事をせんといかんのじゃ?」

 

生徒2

「口答えするんじゃないわよ!これは命令よ!!」

 

 コイツ等、女尊男卑主義か………あ!

 

永遠

「…こう言っとるぞ?」

 

生徒1&2

「え?」

 

 ワシがそう言うと女尊男卑の連中は後ろを振り向いた…

 そこにいたのは…さっき別れた織斑先生じゃった

 

生徒1

「お、織斑先生!?」

 

生徒2

「な、何でココに!?」

 

千冬

「火ノ兄に用があってな…お前達こそココで何をしている?」

 

生徒1

「い、いえ…わ、私達は…」

 

千冬

「随分偉そうに命令していたが…お前達はそんなに偉い立場の人間だったか?」

 

生徒2

「そ、それは…」

 

千冬

「そもそもお前達は外泊許可を貰ってるのか?」

 

生徒1

「うっ!」

 

千冬

「…今回は見逃してやる…次に見かけたらそれ相応の処罰をする!とっとと失せろ!!!」

 

生徒1&2

「は、はいいいいぃぃぃぃーーーーっ!!!」

 

 …逃げる様に行ってしもうたの…

 

永遠

「助かったぞい…」

 

千冬

「お前なら力づくで黙らせる事も出来るだろ?」

 

永遠

「…余り力づくと言うのは好きではないんじゃよ………まあ、あのままじゃったら睨んで黙らすつもりじゃったよ。」

 

千冬

「フッ…お前ならそれで十分だな。」

 

永遠

「それで何か用かの?」

 

千冬

「ああ、まあ分かってるとは思うが念の為に言っておこうと思ってな。…暫くは帰る時は【ラインバレル】の【転送】を使え。今の奴等みたいなのが後をつけるかもしれんからな。」

 

永遠

「分かっとるよ。わざわざスマンな。」

 

千冬

「気にするな。気を付けて帰れよ。」

 

 織斑先生はそう言って校舎に戻って行った

 それからワシは【ラインバレル】を展開して帰った

 誰もいなくなった家に入ると…

 

「おかえり~♪」

 

 何故か束さんがまだおった…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

一夏

「…はぁ…どうすればいいんだ………」

 

 俺は部屋に戻ると今日言われた事を思い返していた…

 シャルルの事を考えるなら一日でも早く対策を考えろと言われた…

 その通りじゃねえか…

 俺の考えた時間稼ぎも実際は2カ月しかなかった…

 しかも学園の規則も実際は殆ど役に立たなかった…

 シャルルは何時呼び戻されてもおかしくない状況だったんだ…

 俺はどれだけ甘い考えをしていたんだ…

 

シャルル

「どうしたの一夏?」

 

一夏

「…俺…本当に馬鹿だなって思ってさ………どれだけ甘い考えをしていたのかが思い知らされたんだ…」

 

シャルル

「それは僕も同じだよ…」

 

一夏

「どうすれば…どうすればいいんだよ………」

 

 あれからずっと考えてるけどいい方法なんて思いつかない…

 火ノ兄の言った亡命くらいしか出てこない…

 

シャルル

「………一夏…」

 

 千冬姉と火ノ兄にあそこまで言われた以上途中で投げ出す事も出来ないし…

 

シャルル

「…ねえ一夏…僕は火ノ兄君が言ってたように、まず父さんと話をしようと思うんだ…」

 

一夏

「え?」

 

シャルル

「まずは父さんの本心が知りたい…考えるのはそれからでもいいんじゃないかな?」

 

一夏

「そ、そうか…」

 

 確かにシャルルの言う通り、まずはそれを知ってから考えるべきか…

 俺…何の役にも立ってないな…父親と話すって言うのも火ノ兄の意見だし…

 

シャルル

「…でも、本妻に知られずに父さんと話すにはどうすればいいのか…」

 

一夏

「シャルル…」

 

 確かにそうだな…せめて父親と本妻の行動が分かれば…

 そうだ!…そう言えばさっき千冬姉が!?

 

千冬

『…相談や調べもの程度なら手を貸してやる…』

 

 千冬姉なら…束さんに頼んで調べて貰えるかも…

 ………けど…千冬姉達に頼るのは…

 

シャルル

「一夏?」

 

 いや!今はシャルルの方が大事だ!

 

一夏

「…少し待っててくれないか?あてがあるんだ。」

 

シャルル

「え?うん、分かった…」

 

 とりあえず明日の放課後にでも千冬姉に頼んで調べて貰おう…

 それにしても俺って本当にどうしようもない奴だな…

 

一夏

「…シャルル…俺ってさ、どれだけ世間を知らなかったんだろうな…千冬姉達に守られてきたんだろうな…」

 

シャルル

「………」

 

一夏

「火ノ兄の言う通りこのままじゃ、ココを卒業しても捕まってモルモットになるか…暗殺されるか…そんな未来しかないんだろうな…」

 

シャルル

「そ、そんな事…」

 

一夏

「シャルルだって似たような意味でココに来ただろ?」

 

シャルル

「ご、ごめん…」

 

一夏

「ち、違う!違うんだ!?責めるつもりは無いんだ!…スマナイ…言い方が悪かった…」

 

シャルル

「そんなに謝る事無いよ。本当の事だし…」

 

一夏

「本当にスマナイ!!」

 

 …どうして俺はこんな風に人を傷付ける事を平然と言えるんだ…

 ………鈴の事だって…俺が気付いていれば…アイツをあんなに傷付ける事もなかったのに…

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~シャルル Side~

 

シャルル

「………ねえ一夏…一つ聞いていい?」

 

一夏

「何だ?」

 

シャルル

「…鈴と…何かあったの?鈴と話すと雰囲気が変わってたから気になったんだけど…」

 

一夏

「!?」

 

シャルル

「あ!…聞かない方が良かった?」

 

一夏

「………俺、鈴にフラれたんだ…」

 

シャルル

「え…」

 

一夏

「…鈴は、俺の事が好きだったらしいんだ…」

 

シャルル

「え?ちょ、ちょっと待ってよ!鈴が一夏を好きだったのに、鈴が一夏をフッたの?それどういう事?じゃあ一夏は鈴の事をどう思ってたの?」

 

一夏

「…分からない…分からないんだ…俺…」

 

シャルル

「一夏…」

 

一夏

「俺、ココで再会した鈴をずっと傷付けてきたんだ………」

 

 それから一夏は鈴との間に起きた事を話してくれた…

 事の発端は一夏が鈴との約束を間違えて覚えていた事から始まった

 話の中で一夏が鈴に対して言った言葉の中には同じ女としても許せるような言葉じゃなかった

 けど、その度に火ノ兄君に説教と制裁を受けていたらしいけど…

 しかも一度、三途の川に送られて死にかけたなんて…

 それから鈴はクラス代表戦に向けて火ノ兄君の島で特訓していたらしい…

 恐らく篠ノ之博士も鈴に協力していたんだと思う…

 そしてクラス代表戦の戦いが終わると…

 

一夏

「………それから俺は鈴に屋上に呼び出されて…約束の意味を教えられて…フラれたんだ…愛想が尽きたって言われたよ…当然だよな…そう言われても仕方のない事ばかりしてきたんだ…」

 

シャルル

「…一夏…」

 

一夏

「鈴にフラれてから…俺はアイツをどう思ってたのか分からなくなったんだ。好きだったのか…ただの友達としか思ってなかったのか…」

 

シャルル

「…ねえ、本当に鈴は一夏に未練が無いの?」

 

一夏

「………分からない…でも、今迄の鈴の言葉から俺に対して何とも思って無い感じだった…」

 

 …言われてみれば鈴の一夏に対する言葉は淡々としてたな…

 

一夏

「…むしろ未練を持ってるのは俺の方だよ…鈴が好きなのかも分からないのに…鈴にフラれた事を未だに引きずってるんだからな…」

 

シャルル

「…一夏…」

 

 …鈴は今、一夏の事をどう思ってるのかな…

 ………よしっ!!

 

 ~シャルル Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

「………はぁ~…」

 

 一晩明けて学園の中は永遠と本音の話題で持ちきりだった

 束さんが永遠の家にいた事…

 その束さんから本音が第5世代の機体を貰った事…

 その事ばかりで、学園中が五月蝿いったらありゃしない…

 訓練しようにも【甲龍】は修理中で使えないから、部屋で寝ようかと思ったら…

 

シャルル

「…鈴!」

 

「ん?…何か用?」

 

シャルル

「うん、ちょっといいかな?」

 

「暇だから別にいいけど。」

 

 シャルルに呼ばれて、屋上にやって来たんだけど…

 私に何の用だろ?

 

シャルル

「…あのさ鈴…実は一夏から君達の間で起きた事を聞いたんだ…」

 

「なんだその事か…それで?」

 

シャルル

「………鈴は一夏の事を今はどう思ってるの?…まだ…好きなの?」

 

「は?…アンタ一夏から話を聞いたんでしょ?だったら分かるでしょ。私はアイツに恋愛感情なんてもう無いわよ。」

 

シャルル

「ほ、本当に…」

 

「しつこいわね~…本当よ!今のアイツはただの友達で、ただの幼馴染!それ以上でもそれ以下でもないの!」

 

シャルル

「…そこまで言わなくても…」

 

「アンタが聞いてきたんでしょ。一夏をどう思ってるかって。私はそれに答えただけよ。」

 

シャルル

「確かにそうだけど…」

 

「私からも聞くけど、アンタ…一夏に言われてここに来たの?自分の意思で来たの?」

 

シャルル

「え?…僕の意思だよ。僕が鈴に話を聞きに行ってる事を一夏は知らないよ。」

 

「それならいいわ。」

 

シャルル

「…どういう事…」

 

「アイツ…私に未練があるんじゃない?」

 

シャルル

「!?」

 

「一々私の言う事に反応しては、落ち込みまくってたからね。アンタに話したのは私がアイツをどう思ってるのかを聞きに行かせる為かもと思ったんだけど違うようね。」

 

シャルル

「………鈴…」

 

「自分で聞く勇気が無いからって、他の人に聞いて貰う様な奴なら、私はアイツの事を軽蔑するところだったわ。」

 

シャルル

「………」

 

「シャルル…悪いけどアイツに言っといてくれない?いつまでも女々しく私の事を引き摺るな。今のままじゃアンタは前に進めないわよって。」

 

シャルル

「…分かったよ………鈴は…前に進んでるの?」

 

「さあね?けどアイツへの想いは私にとってもう過去の事よ。忘れはしないけど、それに縛られて前に進めないなんて事は無いわね。」

 

 …そう…一夏はもうただの友達…大切な人じゃないのよ…

 …私にとってアイツヘの想いはもうただの思い出…それだけなのよ…

 

 ~鈴 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 俺は放課後になると千冬姉を探していた

 

一夏

「いた!ちふ、じゃなくて織斑先生!!」

 

千冬

「ん?何だ?」

 

一夏

「………あの、ちょっと頼みが…」

 

千冬

「用件は?」

 

一夏

「………それは…その…」

 

千冬

「…はぁ…デュノアの父と本妻の行動スケジュールか?」

 

一夏

「え!?な、何で…」

 

 何で俺の用件が分かったんだ!

 

千冬

「お前の用件などそのくらいだろ?………だが、火ノ兄の言う通りだったようだな。」

 

一夏

「な、何の事だよ!?」

 

千冬

「昨日お前は火ノ兄の問いに答えなかっただろ?」

 

一夏

「あの時の質問…」

 

 俺が答えなかったら、それだけで見当が付くって言ってたけど…

 

千冬

「実は私も分からなくてな、あの後、火ノ兄から理由を聞いたんだが、今のお前の態度でそれが正解だと分かった。」

 

一夏

「え?」

 

千冬

「私に頼るのがそんなにカッコ悪い事か?」

 

一夏

「!?」

 

千冬

「お前…デュノアの事より自分のプライドを優先させたな?だから誰にも相談しなかった。デュノアや相談した相手にカッコ悪いと思われたくなかったからだな?」

 

一夏

「それは…」

 

千冬

「違うのか?」

 

一夏

「………」

 

 …言い返せない…言い返すことが出来ない…

 

千冬

「お前は私の前まで来ておいて用件を言い淀んでいた。つまりお前は最後までプライドに拘っていたという事だ。………まあいい、束には連絡しておく。数日中には調べがつくだろう。調査が終わったら知らせに行くと、デュノアにもそう伝えておけ。お前がどんな風に伝えるのかは知らんがな。」

 

一夏

「…ううっ…」

 

千冬

「ここまで来てプライド優先か。デュノアを助けたいと言う気持ちも所詮その程度のものか。」

 

一夏

「!?」

 

 千冬姉はそう言って行ってしまった

 あの時、火ノ兄が言ってたのはこういう事だったのか…

 俺は…プライド何てものの為に…

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

永遠

「織斑先生。」

 

 一夏と別れた後、今度は火ノ兄に話しかけられた

 

千冬

「何だ?」

 

永遠

「(束さんの事じゃが…)」

 

千冬

「(アイツがどうかしたのか?)」

 

永遠

「(…まだワシの家におる。)」

 

千冬

「………は?」

 

 …まだ…いるだと?

 

千冬

「(何を考えてるんだアイツは!!自分の居場所がバレてるんだぞ!!)」

 

永遠

「(ワシもそう思って聞いたら………)」

 

『逆転の発想だよ♪まさか居場所のバレた場所にそのままいるとは思わないでしょ♪』

 

永遠

「(…と言うてなぁ~…しかも…)」

 

『それに~…この島住み心地がいいし~…離れずらかったんだ~♪』

 

永遠

「(…とか言う始末じゃ…)」

 

千冬

「(…あの馬鹿…確かに逆転の発想だが…住み心地がいいって…それだけの理由で…)」

 

永遠

「(とりあえず束さんがまだおるという事だけ伝えとくぞ。セシリア達にも後で言うとくが他の連中に気付かれんように頼む。)」

 

千冬

「(分かった。それとデュノアの父と本妻のスケジュールを調べて貰う様に頼んでおいてくれ。一夏がさっき頼んで来た。)」

 

永遠

「(ん?あやつが頼みに来たんか?)」

 

千冬

「(ああ、と言っても、自分の口では言わなかった。私が言ったら頷いただけだ。)」

 

永遠

「(ここまで来てか?どれだけ自尊心が高いんじゃ?まあ分かったわい。)」

 

千冬

「(スマンな…)」

 

永遠&千冬

「…はぁぁぁぁぁ~~~~~………」

 

 火ノ兄にはまた苦労を掛けるな………

 今度何か奢ってやるか…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~シャルル Side~

 

一夏

「…シャルル…」

 

シャルル

「!?…な、何!?」

 

 僕が一夏に今日鈴が言った事を言うべきか悩んでいると一夏が話しかけてきた

 

一夏

「…昨日言ってた事だけど、千冬姉と束さんに頼んでスケジュールを今調べて貰ってる。」

 

シャルル

「篠ノ之博士に!?」

 

 一夏…そこまでしてくれたんだ…

 

一夏

「数日の内に連絡してくれるって………その、スマナイ…」

 

シャルル

「ど、どうしたの急に?」

 

一夏

「…あれだけ偉そうな事を言っておいて…俺は…何の役にも立ってない…父親と話すって言うのは火ノ兄の考えだし、調べてくれてるのは束さんだ。俺はただの役立たずだ…」

 

シャルル

「そんな事…」

 

一夏

「…それに、俺はシャルルの事より…自分のプライドを…優先させた…」

 

シャルル

「…プライド?」

 

一夏

「…俺は自分じゃ何も出来ない…でも、誰かに頼るって言うのがカッコ悪いって思って…誰にも相談しなかったんだ!!…あれだけ偉そうな事を言っておいて何も出来ない役立たずなんだ!!…さっき千冬姉に頼む時も、プライドに拘って用件を言う事が出来なかった!!…俺の言いたい事を察した千冬姉が代わりに言ったんだ!!…俺はそれにただ頷いただけなんだ!!」

 

シャルル

「…一夏…そんなに自分を追い詰めなくていいよ。プライドに拘るのは別に悪い事じゃないよ。」

 

一夏

「けど俺は…そのせいで何も出来ない…」

 

 今の一夏…まるで止まってるみたいだ…

 止まる………よし!

 

シャルル

「………一夏…実は今日…鈴に会って来たんだよ…」

 

 言うかどうか迷ったけど鈴からの伝言もある…

 それを伝えないと…多分一夏はこのままだ…

 

一夏

「………え?」

 

シャルル

「…鈴が今…一夏をどう思ってるのかを聞いて来たんだ…」

 

一夏

「………」

 

シャルル

「ゴメン!!勝手な事して…」

 

一夏

「…鈴は…何て?」

 

シャルル

「…言ってもいいの?」

 

一夏

「頼む…」

 

シャルル

「…分かった………鈴は…一夏にはもう恋愛感情は無いって…言ってた…」

 

一夏

「…そっか…そうだよな…」

 

シャルル

「…後…鈴からの伝言………『いつまでも女々しく私の事を引き摺るな。今のままじゃアンタは前に進めない』って…」

 

一夏

「…バレてたのか………鈴の言う通り…女々しい奴だな…俺…」

 

シャルル

「…一夏…」

 

一夏

「前に進めない…か…そうだよな…俺、全く進んでないな…このままじゃ3年なんてあっという間に過ぎちまうな…」

 

シャルル

「………」

 

一夏

「…ありがとな…シャルル…」

 

シャルル

「…ううん…」

 

 一夏はお礼を言ったけど…僕は感謝される様な事をしたのかな…

 かえって一夏の心に傷をつけてしまったのかもしれない…

 でも、これで一夏が少しでも前に進めれば…

 

 ~シャルル Side out~

 

 





 次回『第082話:タッグトーナメント開催』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第082話:タッグトーナメント開催

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 トーナメントの始まる数日前、ワシと本音は織斑先生に呼び出された

 

永遠

「織斑先生…ワシ等に何か用かの?」

 

千冬

「実は今度のトーナメントでお前達二人にハンデをつける事が決定したんだ。」

 

本音

「ハンデですか~?」

 

千冬

「うむ。まず布仏は【ワイバーン・ガイア】の使用が禁止された。性能差もそうだがあのデカさだからな…」

 

本音

「あらら~…」

 

 まあ、確かにあれはデカいからな…踏み潰すだけで試合が終わるからのぉ…

 

千冬

「次に火ノ兄だが…お前の機体は正体がバレてないから使える。ただし、あの3機のどれを使ってもいいんだが、単一仕様の使用は禁止された。それと【ラインバレル】は特殊能力も使うなとの事だ。」

 

永遠

「それは構わんが…【ラインバレル】に関しては【転送】はともかく【再生能力】の方は自動で機能するから止められんぞ?」

 

千冬

「何!…そうだったのか………仕方ない。火ノ兄、悪いんだが…」

 

永遠

「【ラインバレル】は使わんよ。」

 

千冬

「スマンな…お前の【ラインバレル】は実戦ならともかく試合では反則と言われてもおかしく無い厄介な能力だからな。」

 

永遠

「別に反則しとる訳では無いんじゃが…」

 

千冬

「物の例えだ!本気にするな!…それからお前達が対戦する場合は制限無しでいいぞ。」

 

本音

「は~い♪」

 

 本音と戦う時だけか…

 

千冬

「後、賞品の方はどうなっている?」

 

永遠

「それなんじゃが…初めから賞品を造っておくのと…優勝者に合わせた【剣刃(つるぎ)】を造るのと…どちらがいいかのぉ?」

 

千冬

「む!…それは悩むな…」

 

永遠

「先に造っておく場合は幾つか候補を挙げとるんじゃが…」

 

本音

「どんな物なの~?」

 

永遠

「これじゃ。【大旋斧ゲイル・アックス】【星銃フォーマルハウト】【星王剣アルフェッカ】【天聖弓セイクリッド・ボウ】…この4つの内の2つにしようと思うとる。」

 

 ワシはそう言いながら端末を取り出すと本音と織斑先生に4つの【剣刃(つるぎ)】のデータを見せた

 

千冬

「…オイ!この【アルフェッカ 】と言う【剣刃(つるぎ)】以外は形状が刀剣じゃないぞ!?」

 

本音

「ホントですね~?斧に弓、銃の形をしてる~?」

 

永遠

「これでも【剣刃(つるぎ)】何じゃよ。…まあ【剣刃(つるぎ)】の大半は刀剣類なんじゃが…他にも槍や杖、それ以外も少しあるんじゃよ。」

 

千冬

「他の種類の武器もあるのか!?」

 

永遠

「うむ。どうせなら、近接と射撃の二つがいいかと思ったんじゃが…」

 

千冬

「それはありがたいな…となると………よしっ!近接武器は【アルフェッカ 】…射撃武器は…【フォーマルハウト】にしよう。」

 

本音

「何でですか~?」

 

千冬

「弓や斧よりココは基本装備でもある剣と銃がいいだろう。」

 

永遠

「分かった…が、先に造る方でいいんか?」

 

千冬

「ああ、構わん。お前も相手の注文を一々聞くのは面倒だろ?」

 

永遠

「…まあ確かに…」

 

千冬

「では頼むぞ。…それから布仏、賞品の内容は誰にも言うなよ!」

 

本音

「は~い♪」

 

 【星銃フォーマルハウト】と【星王剣アルフェッカ】に決まったか…帰ったら早速造るかの…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~シャルル Side~

 

一夏

「………嘘だろ…」

 

シャルル

「…そんな~~~…」

 

 僕達は今日から始まる学年別トーナメントの対戦表を見た瞬間そう溢していた

 何故ならその対戦相手というのが…

 

『1回戦 第1試合 織斑一夏&シャルル・デュノアVS火ノ兄永遠&ラウラ・ボーデヴィッヒ』

 

 あの火ノ兄君とボーデヴィッヒさんの二人だからだ…

 確か、火ノ兄君はペアを組まずに当日の抽選任せにするって言ってたけど…

 まさかこの二人の組み合わせになるなんて…

 

シャルル

「…一夏…どうしよ~…」

 

一夏

「よりにもよって火ノ兄とラウラが相手かよ………やる前から詰んでないか?」

 

シャルル

「言わないでよ………でも…あの二人って連携とか出来るのかな?」

 

一夏

「…あの二人じゃ絶対無理だろ?特にラウラは…アイツは生身の火ノ兄にボコボコにされてるんだぜ?そんな奴と連携なんて出来る訳無いだろ?」

 

シャルル

「だよね。…でも、そこをつく事が出来れば…」

 

一夏

「ああ、ラウラは倒せるかもしれない!…けど火ノ兄は…」

 

 そう、ボーデヴィッヒさんに対してはこの間、火ノ兄君と戦った時に色々分かった事があるから対処出来る…

 ハッキリ言って彼女は二人がかりで挑めば倒せるんだ

 けど、火ノ兄君の場合は…

 

シャルル

「彼がどの機体を使うかも問題だよね…」

 

一夏

「…そうだな…」

 

 とは言っても…【戦国龍】【ドットブラスライザー】そして【ラインバレル】…どれが相手でも勝てる気がしない

 以前、オルコットさんとの試合映像を見たけど、よく彼女は【ドットブラスライザー】を相手にあそこまで戦えたと思った…

 今まで火ノ兄君が戦った映像は全部見たけど彼が単一仕様まで使って本気で戦ったのは、後にも先にもオルコットさんとの試合だけだ…

 勝てないまでも僕達に火ノ兄君を本気を出させる事なんて出来るのかな…

 

 ~シャルル Side out~

 

 

 

 ~ラウラ Side~

 

 まさかこのような組み合わせになるとは…

 だが、これはいい…手間が省けた…

 

ラウラ

「織斑一夏…奴を始末するいい機会だ………だが!!」

 

 よりにもよって私と組む相手が奴になるとは…

 

ラウラ

「…火ノ兄…永遠!!」

 

 私はあの日の事を思い出した…

 私は教官の目を覚まさせようと奴に戦いを挑んだ

 だが、あの男は私を相手にISを使わず生身で相手をしてきた

 そんな奴は、すぐにケリが着くと思っていたのに…

 結果は私の負け…奴に掠り傷一つつける事が出来なかった…

 報復しようにも奴との実力差を見せつけられた今となっては…

 

ラウラ

「いや!そんな事関係ない!どんな手を使ってでも奴を倒す!!」

 

 まずは織斑一夏だ!!

 奴を始末し教官の汚点を消す!!

 次に火ノ兄だ!!

 私自身の汚点を消し去ってやる!!

 

 ~ラウラ Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

一夏

「…はぁ…負けるの確定の試合か~…」

 

シャルル

「一夏…初めから諦めたらダメだよ!さっき説明されたでしょ。火ノ兄君と布仏さんはハンデが与えられるって。」

 

 そう、さっき全員にトーナメントのルールと一緒に千冬姉から説明されたんだよな…

 その内容が火ノ兄とのほほんさんはハンデを付けられた事だった

 

一夏

「…ああ…のほほんさんは【ワイバーン・ガイア】が使えないんだよな…しかも理由がデカ過ぎるからだもんな…」

 

シャルル

「うん!それに火ノ兄君は単一仕様と【ラインバレル】が使えない様になってるんだよ!【ラインバレル】が相手にならないだけでもありがたい事だよ!」

 

一夏

「そうだな…」

 

シャルル

「一夏…ほらやる気出して!このトーナメントは学園の生徒以外の人も見に来てるんだよ!その人達の前で恥をかきたいの?」

 

一夏

「え!?そうなのか…でもどんな人が来てるんだ?」

 

シャルル

「知らないの?各国の企業や偉い人とかが来るんだよ。自分たちの国の生徒の成長を確認したり、3年の人達を見極めてスカウトしたりするんだ。」

 

一夏

「そんな人たちが来るのか!!…でも1年の俺達には余り関係無いんじゃ…」

 

シャルル

「一夏!君は世界で二人しかいない男性操縦者だよ!例え1年でも注目されてるんだよ!!」

 

一夏

「そ、そうか!?…て事は火ノ兄もか…」

 

シャルル

「…そうだけど…彼の場合は注目する以前に驚くだろうね…」

 

一夏

「何でだ?」

 

シャルル

「彼については何の情報も無いからだよ。僕はここに来るまで二人目がいる事なんて知らなかったんだ。ボーデヴィッヒさんも初日に火ノ兄君を見て驚いてたしね。多分、この学園の外には火ノ兄君の情報が流れてないんじゃないかな?」

 

一夏

「そう言えば中国から来た鈴も火ノ兄の事を知らなかった…」

 

 それに弾と蘭もだ…

 二人目の事を知らなかった…

 

シャルル

「僕も最初は彼の情報が一つも無いのはおかしいと思ったんだけど、多分篠ノ之博士が情報操作をしてたんじゃないかな?」

 

一夏

「束さんが!?」

 

 確かに束さんならそのくらい簡単に出来る筈だ…

 束さんは火ノ兄の家で暮らしてたんだからそのくらいやってもおかしくない…

 

シャルル

「だから僕達の試合は特に注目されてると思うよ。男性操縦者二人に代表候補生二人。しかも全員専用機持ちだからね。」

 

一夏

「なるほど…でも専用機って事なら火ノ兄の機体が一番目立つよな…」

 

シャルル

「そうだね。全身装甲の機体なんてどこの国も使って無いだろうからね。しかも彼の機体は凄く目立つ姿だからね。」

 

一夏

「ああ、【戦国龍】は目立つよな~…でも、そうか…そんなに偉い人達が見てるのか…なら無様な姿だけはしない様にしないとな!」

 

シャルル

「その意気だよ一夏!!」

 

一夏

「せめてラウラだけでも倒して派手に散ってやるぜ!!」

 

シャルル

「派手にって…負けるの決まってるんだね…」

 

一夏

「オウ!!」

 

 単一仕様が使えない事なんてアイツにはハンデにもならないだろうからな…

 でもアイツ…【戦国龍】と【ドットブラスライザー】…どっちを使うんだろ?

 【戦国龍】は嫌だな~…軽くトラウマが…

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 さて、いよいよ試合じゃな…

 ワシは今チビッ子とカタパルトの前におる

 

永遠

「お!織斑とデュノアが出て来たの。では、ワシ等も行くかの?」

 

ラウラ

「………」

 

 返事ぐらいしてくれてもいいと思うのじゃが…まあいいか…

 チビッ子も出た事じゃしワシも行くか

 今回は…【戦国龍】で行くかの

 

永遠

「出陣するぞ…【戦国龍】!!」

 

 ワシは【戦国龍】を展開するとカタパルトからアリーナに出た

 そのまま、チビッ子の隣に降りると対戦相手の織斑はワシを見てこの世の終わりみたいな顔をしておった

 

一夏

「…よりにもよって【戦国龍】が相手かよ…」

 

 どういう意味じゃい!

 …脅しがてら一吠えしてやるか!

 

<オオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーンッ!!!!!>

 

一夏&シャルル&ラウラ

「!?」

 

 ザワザワ…ザワザワ…

 

 ん?何かいつもより周りが騒がしい気が…

 【戦国龍】の事は学園の連中は全員知っとるはずじゃが………

 あ!そう言えば国の企業や偉いもんが来とるんじゃったか…そ奴等か…まあいいわい

 

永遠

「さてチビッ子?どう戦うんじゃ?」

 

ラウラ

「黙れ!私は私の好きな様にやる!!」

 

永遠

「さよか。ならワシも勝手にやるかの。」

 

 まずはこの二人がどう動くかじゃよな…

 

アナウンス

『それではこれより、1回戦 第1試合 織斑一夏&シャルル・デュノアVS火ノ兄永遠&ラウラ・ボーデヴィッヒの試合を始めます。』

 

ラウラ

「1戦目で当たるとは待つ手間が省けた…」

 

一夏

「そうかよ…」

 

アナウンス

『試合開始!』

 

一夏&ラウラ

「いくぞ!!!」

 

 ワシはどう動くかの…

 

 ~永遠 Side out~

 

 





 次回『第083話:三つ巴のタッグバトル【戦国龍VS黒い雨VS白式&疾風の再誕改弐】』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第083話:三つ巴のタッグバトル【戦国龍VS黒い雨VS白式&疾風の再誕改弐】

お気に入りが1600行きました!

これからも頑張ります!!


 

 ~三人称 Side~

 

 ≪観客席≫

 

 ココには機体が無い為、試合に出れないセシリアと鈴、自分達の試合が後日になっているペアを組んだ簪と本音の4人が一緒に観戦していた

 

セシリア

「始まりましたわね。」

 

「結果は見えてるけどね。」

 

本音

「そ~だね~♪」

 

「でも、油断は出来ないと思う…ラウラ・ボーデヴィッヒが何をするか分からない…」

 

セシリア&本音&鈴

「………」

 

「…そうね…アイツ…もしかしたら…」

 

セシリア

「流石にそれはしないのでは?この大会は各国の来賓も見ているんですよ?そんな事をすれば自分だけでなく祖国も辱めますのよ?」

 

「…でも…今のアイツにそんな事を考える事が出来るのかな?」

 

セシリア&簪&本音

「………」

 

「…何事も無ければいいんだけど…」

 

 4人は試合が無事に終わる事を願っていた…

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

一夏

「うおおおおぉぉぉぉぉーーーーーっ!!!」

 

 一夏はラウラに斬りかかったが…

 

 ガキンッ!

 

一夏&ラウラ

「何っ!?」

 

 横から永遠が槍の石突の部分を持った状態で槍の穂先で一夏の剣を受け止めていた

 

ラウラ

「貴様何のつもりだ!!」

 

永遠

「試合をしとるんじゃが?言ったじゃろ?こっちも勝手にやらせてもらうと?」

 

ラウラ

「くっ!」

 

シャルル

(やっぱり、あの二人で連携は無理だ。)

 

 シャルルは後ろから対戦相手の二人には連携と言う物が無いと改めて認識した

 

永遠

「ぬん!」

 

 永遠はそのまま槍で一夏をシャルルのいる方まで押し返すと、刀を抜いて二人に向かって行った

 

シャルル

「一夏!!(…一夏の剣を片手で、しかもあんな槍の持ち方で受け止めた上に、そのまま押し返すなんて…)」

 

一夏

「来るぞ!!」

 

永遠

「はっ!!」

 

 ガキィンッ!

 

 永遠の剣を一夏は受け止めるが…

 

一夏

「ぐううぅぅっ!!」

 

永遠

「懐がガラ空きじゃ。」

 

 永遠は左手に持っていた槍で一夏の腹部に突きを放った

 

一夏

「ぐああああぁぁぁぁーーーーっ!!」

 

シャルル

「一夏!!(くっ!計算が狂った!火ノ兄君が先に仕掛けて来るなんて!)」

 

 シャルルは今迄の会話や行動からラウラが一夏に仕掛けて、永遠は暫くは傍観すると考えていた

 先にラウラを倒そうと考えていた二人にとって永遠のこの行動は予想外の事だった

 

シャルル

「一夏大丈夫?」

 

一夏

「…何とかな………シャルル、どうする?火ノ兄が前に出てるんじゃラウラを倒せないぞ?」

 

シャルル

「うん…こうなったら何とか火ノ兄君を抜かないと…」

 

永遠

「お喋りをしとる場合か!!」

 

一夏&シャルル

「!?」

 

 永遠は持っていた槍を二人の間に投げつけてきた

 槍を躱した事で二人は左右に分断されてしまい、永遠はシャルルに向かって斬りかかった

 

シャルル

「ええっ!!」

 

 ガキンッ!

 

 シャルルは近接ブレード【ブレッド・スライサー】を展開し、永遠の攻撃を受け止めた

 

シャルル

「ぐぐっ…(何てパワー…これが【戦国龍】!?)」

 

一夏

「シャルル!!」

 

 一夏はシャルルの救援に向かう為、永遠の右側から斬りかかったが…

 

永遠

「そっちは外れじゃ…」

 

シャルル

「え?」

 

 永遠は左手で腰に装備されているクロエから貰ったライフル【種子島】を固定されたまま引き金を引いた

 

 ドギュンッ!

 

一夏

「ぐあああぁぁぁーーーっ!!」

 

 永遠に向かって突っ込んできていた一夏は躱すことが出来ず直撃した

 

シャルル

「一夏!?…はっ!」

 

 永遠は一夏を撃つと【種子島】を外して銃口をシャルルに向けて至近距離で再び引き金を引いた

 

 ドギュンッ!

 

シャルル

「うわあああぁぁぁーーーっ!!」

 

 【種子島】の直撃を受けた二人は後ろに吹き飛ばされていた

 倒れている二人に対して永遠は何もせず二人が立ち上がるのを待っていた

 そして、そんな永遠を後ろからラウラが見つめていた

 

ラウラ

(…くっ!…このままでは試合が終わってしまう!…織斑一夏は私が始末しなければならないんだ!!)

 

 このまま試合が進めば一夏は永遠に倒されてしまう

 そうなってしまっては自分の手で一夏を倒し、千冬の汚名を消し去ろうと考えているラウラの目的は達成できなくなってしまう

 その焦りから、ラウラは本来はあってはならない考えに至っていた

 

ラウラ

(………そうだ…今のアイツは私に背を向けている………この場で奴もまとめて始末すればいいんだ!!)

 

 その考えに至ると同時にラウラは肩のレールカノンの照準を永遠に合わせた

 

ラウラ

「喰らえ!!!」

 

 ドンッ!

 

永遠

「!?」

 

 永遠は咄嗟に【戦国龍】の鎧の羽で砲弾を防いだ

 

 ザワザワ…

 

 ラウラの突然の行動に観客席にも動揺が走っていた

 

永遠

「…何のつもりじゃチビッ子…今のは織斑達を狙ったんか?…それとも…ワシを狙ったんか?」

 

ラウラ

「…決まっている…狙ったのは貴様だ!!!」

 

 そう叫ぶと【プラズマ手刀】を展開し永遠に襲い掛かった

 

 

 

 ≪観客席≫

 

「アイツやっぱり!?」

 

セシリア

「…もはや冷静な判断が出来なくなってますわね…」

 

「仮にも味方に攻撃するなんて…あんな事してたら自分がどうなるか分かってるのかな?」

 

本音

「分かって無いと思うよ~?」

 

 セシリア達は自分達の予想通りの行動に出てしまったラウラに呆れ果てていた

 

 

 

 ≪管制室≫

 

千冬

「何をしてるんだアイツは!味方を後ろから撃つとは!」

 

真耶

「どうします?」

 

千冬

「…普通なら試合を止める所だが…今のアイツが言う事を聞くとも思えんし………仕方ない…」

 

 千冬はやむを得ず永遠に通信を送った…

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

ラウラ

「くたばれえええぇぇぇーーーっ!!」

 

 永遠はラウラの【プラズマ手刀】を受け止め、どうするか悩んでいると…

 千冬から通信が入った

 

千冬

『火ノ兄…聞こえるか?…単刀直入に言うぞ。試合を中止したいからボーデヴィッヒを倒せ。今のアイツは私の言う事も聞かん。』

 

永遠

「…いや、このまま続ける。」

 

千冬

『何?』

 

永遠

「対戦相手二人を倒せば試合は終わりじゃ。それまではこのチビッ子は軽く流しとくわい。」

 

千冬

『………はぁ…普通なら馬鹿な事をと言う所だが、お前ならそれが出来るだろうな…分かった、好きにしろ。ボーデヴィッヒは倒しても咎めはせん。』

 

永遠

「スマンな…」

 

 千冬との通信が終わるのとほぼ同時に倒れていた一夏とシャルルが起き上がった

 

一夏

「どうなってるんだこの状況は!?」

 

シャルル

「何でボーデヴィッヒさんと火ノ兄君が戦ってるの!?」

 

 永遠はラウラの攻撃を捌きながら起き上がった二人に視線を向けた

 

永遠

「ん?やっと起きたか…さて、続きを始めるかの。」

 

一夏

「何言ってんだよ!こんな状況で試合を続ける気かよ!?」

 

永遠

「そのつもりじゃ。織斑先生からも好きにせいと許可を貰っとるぞ。」

 

一夏

「千冬姉が!?」

 

永遠

「じゃからほれ、構わんからかかってこんかい。」

 

 永遠はそう言うと同時に目の前のラウラを蹴り飛ばした

 

ラウラ

「ぐっ!」

 

 永遠はそのまま後方に下がると、一夏とシャルルを分断する際に投げた槍を拾った

 

永遠

「…さて…改めて試合を始めようかのぉ…」

 

 永遠は刀と槍を構えて3人に挑発をした

 

ラウラ

「舐めるなあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

 冷静な判断が出来なくなり始めているラウラが真っ先に突っ込んでいった

 そして、対戦相手の二人は…

 

シャルル

「どうするの一夏?」

 

一夏

「…分からない…けど、今ならラウラを倒す事も出来るはずだ。」

 

シャルル

「じゃあ…」

 

一夏

「最初の予定通りラウラを倒す!!そして…派手に負けてやるぜ!!」

 

 ラウラを倒す為二人も永遠のいる場所に向かっていった

 

 

 

 ≪管制室≫

 

真耶

「…何ですかコレ?」

 

千冬

「見ての通りだが?」

 

真耶

「確か今、タッグ戦をしてるんですよね?」

 

 真耶の言う通りこの試合は本来は2対2のタッグ戦…だが…

 現在アリーナで行われている試合は1対1対2の三つ巴のバトルロイヤルと化していた

 

千冬

「こうなっては戦いが終わるまでどうしようもない。試合が終わった後、ボーデヴィッヒにはキツイ説教をしてやる。」

 

真耶

「そうですか…」

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

 アリーナはすでにタッグバトルではなく三つ巴の混戦となっていた

 

ラウラ

「うおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーっ!!!」

 

 ラウラは永遠を中心に攻撃を仕掛け…

 

一夏&シャルル

「はあああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!」

 

 一夏とシャルルの二人はラウラに攻撃を集中し…

 

永遠

「………」

 

 永遠はラウラの攻撃を捌きながら一夏とシャルルを攻撃している

 

 ガキイィィンッ!!

 

 4人が同時に衝突し、その反動で一端距離を取った

 

一夏&シャルル

「はぁ~はぁ~…」

 

ラウラ

「ふぅ~…ふぅ~…」

 

永遠

「………」

 

 一夏とシャルル、ラウラは肩で息をしていたが、永遠は息一つ乱してはいなかった

 

ラウラ

(クソッ!あれだけ攻めてもまるで効いていない!………SEも半分を切ったか…)

 

シャルル

「(…一夏…SEの残りは?)」

 

一夏

「(…残り3分の1だ…【零落白夜】も使えて後1回だ!シャルルは?)」

 

シャルル

「(僕も半分を切ったよ………でも【戦国龍】は…)」

 

一夏

「(ああ、全くダメージを受けてない!)」

 

シャルル

「(うん!躱すかあの鎧の羽で全部防いでる!あの羽、盾の役割も持ってたんだ。)」

 

 一方永遠はラウラが邪魔で二人を倒せずにいる事に僅かではあるが苛立ちを覚えていたが…

 

永遠

(う~む…ああは言ったがあのチビッ子…いい加減邪魔になって来たのぉ…まあいいか…)

 

 すぐに気にするのを止めた

 

永遠

「…さて、少し本気を出すかの。この試合もいい加減終わらせんといかんしな…」

 

一夏&シャルル&ラウラ

「!?」

 

 永遠がそう言った瞬間、先程までとは比べ物にならないスピードで動き出し、一瞬の内に一夏の目の前に来ていた

 

一夏

「え!?」

 

永遠

「【龍巣閃】!」

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!

 

一夏

「ぐわあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!」

 

 永遠の【龍巣閃】で全身を滅多切りにされた一夏の【白式】は一瞬でSEが0になってしまった

 

シャルル

「一夏!!…クッ!!」

 

 シャルルは【ヴェント】と【ガルム】で永遠を狙おうとしたが…

 

永遠

「【土龍閃】!」

 

 それよりも先に永遠がシャルルに向かって【土龍閃】を放った

 

シャルル

「つぶてが多すぎる!」

 

 シャルルは【土龍閃】の土石の迎撃を諦め右に躱したが…

 

シャルル

「はっ!?」

 

 そこにはすでに永遠が先回りしていた

 永遠はシャルルが右に避ける様にする為、左側に向けて【土龍閃】を放っていた

 

永遠

「【龍巻閃】!」

 

シャルル

「うわあああぁぁぁーーーっ!!」

 

 【龍巻閃】で斬りつられたシャルルは吹き飛ばされた

 永遠はそのまま刀を鞘に納めると…

 

永遠

「【飛龍閃】!」

 

 腰を捻り、刀の鍔を指で弾いて鞘から撃ち出した

 

 ドゴンッ!

 

シャルル

「うあああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!」

 

 【飛龍閃】で撃ち出された刀はシャルルの腹部に命中し、そのまま壁に叩きつけられた

 そして、今の一撃でシャルルの【ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ】のSEも0になってしまった

 対戦相手二人のSEが0になったので試合終了のブザーが鳴り響いた

 

アナウンス

『【白式】【ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ】シールド・エネルギー0、勝者、火ノ兄永遠&ラウラ・ボーデヴィッヒ!』

 

永遠

「さて終わったのぉ…」

 

 永遠は試合が終わったのでピットに戻ろうとしたが…

 

永遠

「…聞こえんかったか?試合は終わりじゃ。」

 

 ラウラが永遠に対して敵意を剥き出しにしていた

 

ラウラ

「まだだ…まだ終わってはいない!!」

 

永遠

「………さっきまでは試合という事で主の攻撃も軽く流しておったが…これ以上やるならワシも主を潰さねばならんぞ?」

 

ラウラ

「望む所だあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

永遠

(ほんに面倒な奴じゃなぁ………が、丁度いい…このチビッ子で試すか…)

 

 自分に向かって来るラウラに対し永遠は持っていた槍を地面に突き刺した

 そして両腕を前に突き出すと…

 

永遠

「来い…【星銃フォーマルハウト】!!【星王剣アルフェッカ】!!」

 

ラウラ

「何っ!!」

 

 永遠は拡張領域から2つの武器を取り出した

 左手には銃口が魚の様になっている青と白の銃

 右手には刀身と柄が金色で柄の先端に王冠の様な飾りがついた大剣が握られていた

 

ラウラ

「何だそれは!?」

 

永遠

「主も知っとるじゃろ?この大会の優勝賞品を?」

 

ラウラ

「まさかそれが!?」

 

永遠

「左様。…このタッグトーナメントの優勝ペアに送られる2つの【剣刃(つるぎ)】…【星銃フォーマルハウト】と【星王剣アルフェッカ】じゃ。」

 

 ザワザワ…

 

 会場中も永遠が持つ二つの【剣刃(つるぎ)】に騒めいていた

 本音以外は賞品の話は聞いていたが、それがどのようなものかは知らなかったからだ

 しかもその1つは【剣刃(つるぎ)】と言いながら剣では無いからだ

 

ラウラ

「その銃が【剣刃(つるぎ)】だと!?」

 

永遠

「そうじゃ。【剣刃(つるぎ)】は確かに刀剣が一番多いがそれ以外の武器もあるんじゃよ。」

 

ラウラ

「くっ…屁理屈を!!」

 

永遠

「チビッ子!お前にはこの2つの【剣刃(つるぎ)】のテストの相手になって貰う!試合中は流石に使えんかったんでな…お前で試させて貰うぞ!!」

 

ラウラ

「ならば貴様を倒しその2つを手に入れてやる!!」

 

永遠

「カカカッ!笑わせてくれる!出来る物ならやってみるんじゃな?」

 

ラウラ

「!?…くたばれえええぇぇぇーーーっ!!!」

 

 永遠の挑発を受け、ラウラは再び永遠に向かって行った

 

 

 

 ≪観客席≫

 

 一方観客席では、ラウラの奇行にセシリア達はさらに呆れ果てていた

 

「アイツ…本気で永遠に勝てると思ってるのかしら?」

 

「思ってるからあんな行動してるんだと思う。」

 

本音

「そうかもね~…」

 

セシリア

「生身の永遠さんにも勝てなかったのにですか?しかも今の永遠さんはISを、それも【戦国龍】を纏っているのですよ?」

 

「それが分かってないんだと思う。」

 

「アイツ…まさかココまで馬鹿だったなんて…一夏といい勝負かも…」

 

セシリア

「そうですわね~…彼も相当ですからね~…」

 

簪&本音

「うんうん!」

 

 一夏の考え無しの行動と今のラウラの行動が被って見えた4人だった

 そして、4人は永遠が持つ2つの【剣刃(つるぎ)】に話題を変えた

 

セシリア

「それにしても…あれが優勝商品の【剣刃(つるぎ)】ですか…」

 

「【剣刃(つるぎ)】って刀剣以外の武器もあったんだ…」

 

本音

「そうだよ~♪」

 

「本音知ってたの!?」

 

本音

「うん♪織斑先生からひののんと一緒にハンデの事を言われた時に候補を見せて貰ったんだ~♪」

 

「候補って?」

 

本音

「ひののんは賞品用に造る【剣刃(つるぎ)】を4つまで絞ってたんだよ~♪」

 

セシリア

「その4つの中から選ばれたのがあの2つの【剣刃(つるぎ)】…【フォーマルハウト】と【アルフェッカ】…」

 

「じゃあ、外されたのはどんな【剣刃(つるぎ)】だったの?」

 

本音

「斧と弓だったよ♪」

 

「斧と弓ですって!そんな物まであるの!?」

 

本音

「他にも槍や杖、色々あるって言ってたよ~♪」

 

「………今度永遠に頼んで【剣刃(つるぎ)】のリスト見せて貰おうかな…」

 

「それ私も見たい!!他にどんな物があるのか興味がある!」

 

本音

「私も~♪」

 

セシリア

「わたくしもですわ。…ですが、今はあの2つの力を見ておきましょう!」

 

 セシリアの言葉に簪達は頷くと、アリーナに視線を戻した

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

 向かって来るラウラに対して永遠は【フォーマルハウト】を構え引き金を引いた

 

 ドギュゥン!

 

ラウラ

「くっ!?」

 

 【フォーマルハウト】から放たれた光弾をラウラは躱すが、その威力に驚いていた

 

ラウラ

「…対した威力だな…だが!当たらなければどうという事はない!!」

 

永遠

「確かにな…なら、これはどうじゃ?」

 

 ドギュゥン!

 

 永遠はそう言って【フォーマルハウト】を真上に向かって撃った

 

ラウラ

「フンッ!どこに向かって撃っている!!………ん?」

 

 真上に撃たれた【フォーマルハウト】の光弾は上空で弾けると無数の光弾となってラウラに向かって降り注いだ

 

ラウラ

「何っ!!…くっ!?…ぐああああぁぁぁぁーーーーっ!!」

 

 ラウラは上空から降り注ぐ光弾を躱そうとするが全て躱す事が出来ず、半分近く命中した

 

ラウラ

「な、何だあの銃は…これが【剣刃(つるぎ)】の力………!?」

 

 ドギュゥン!

 

 永遠は再びラウラに向かって【フォーマルハウト】を撃った

 真横に向かって撃たれた光弾は先程と同じように無数に分裂し、ラウラに向かって行った

 

ラウラ

「!?…うわあああぁぁぁーーーっ!!」

 

永遠

「…ふむ…【フォーマルハウト】の試し撃ちはこんなもんか…」

 

 【フォーマルハウト】の拡散弾を受けたラウラは肩のレールカノンが破壊されていた

 ラウラに無数の弾丸を撃ち込んだ後、永遠は【フォーマルハウト】の能力を確認すると拡張領域に格納した

 そして今度は右手に持っていた【アルフェッカ】を構えた

 

ラウラ

「ぐっ…ぐうう…」

 

永遠

「ほれ早よ立て。でなければ試し斬りが出来んではないか?」

 

ラウラ

「試し斬りだと…貴様…戦う気があるのか!!」

 

永遠

「ある訳無かろう?戦うかどうかを決めるのはワシの勝手じゃ。そもそもこれは試合でもない…お前が勝手に襲い掛かって来たんじゃからな…じゃからワシも勝手にしとるんじゃ。」

 

ラウラ

「き、き、貴様あああぁぁぁーーーっ!!!」

 

 永遠の言葉にラウラは完全にキレてしまった

 自分は戦う気でいるのに肝心の永遠はまるで戦う気が無いのだ

 しかも自分への攻撃は、全て今使っている【剣刃(つるぎ)】のテストだと言ったからだ

 

ラウラ

「死ねえええええぇぇぇぇぇーーーーーっ!!!!!」

 

 ラウラは永遠に向かって【プラズマ手刀】で突撃した

 対する永遠もラウラに向かって行った

 

 キキィィーーンッ!

 

 二人が交錯すると…

 

ラウラ

「う…ぐああああぁぁぁぁーーーーっ!!」

 

 ラウラの【シュヴァルツェア・レーゲン】は全身が斬り刻まれていた

 【シュヴァルツェア・レーゲン】は機体の各所から放電し、傍目にも戦闘不能の状態にされていた

 

永遠

「…中々の切れ味じゃな…まあこんなもんでいいか…さて帰るか。」

 

 永遠はそう言って【アルフェッカ】も拡張領域にしまった

 そして、そのままラウラに振り替える事もせずピットに向かって歩き出した

 ラウラは歩いて行く永遠の背中を薄れゆく意識の中、見つめていると…

 

『力が欲しいか?』

 

 謎の声がラウラに囁きかけて来た

 

ラウラ

「ああ…寄越せ!!」

 

 ラウラはその声に応えた

 

『何者にも負けない力を求めるか?』

 

ラウラ

「比類無き最強の力を…奴を倒す力を…寄越せえええぇぇぇーーーっ!!!」

 

『ならば受け取れ…絶対なる力を!!』

 

ラウラ

「うっ…ぐっうっ…うああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!!!!」

 

永遠

「ん?…何じゃいきなり?」

 

 ラウラの突然の絶叫に永遠は振り返ると【シュヴァルツェア・レーゲン】が放電し泥状に溶け始めた所だった

 そして、そのままラウラを包み込み、形状を変えた

 その姿は嘗て【モンド・グロッソ】で優勝した織斑千冬の愛機…

 【暮桜】だった…

 

 ~三人称 Side out~

 

 




 次回『第084話:戦国龍、墜つ【戦国龍VS偽暮桜】』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第084話:戦国龍、墜つ【戦国龍VS偽暮桜】

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「【暮桜】だと!?」

 

真耶

「織斑先生!ボーデヴィッヒさんのあの変化ってまさか!?」

 

千冬

「【ヴァルキリー・トレース・システム】だ!!」

 

 ドイツ軍め…あのシステムをボーデヴィッヒの機体に組み込んでいたのか!

 

真耶

「やっぱり!?ですがアレは危険過ぎるシステムの為、どの国も企業も使用する事は禁止されている筈です!」

 

千冬

「その通りだ!!」

 

 【Valkyrie Trace System】…通称【VTシステム】…

 過去の【モンド・グロッソ】優勝者…つまり私の戦闘パターンをデータ化し、そのまま使用者に再現・実行させるシステム

 だが、搭乗者に『能力以上のスペック』を要求する為、肉体に莫大な負荷が掛かり、場合によっては生命の危険すらある

 現在は山田先生の言う通り条約によって使用はおろか研究すら禁止されている代物だ

 それをドイツの研究者どもめ!

 

千冬

「アイツ等!?私の教え子になんて物を!!」

 

 私が怒りに震えていると…

 

セシリア

「織斑先生!!」

 

 オルコット達4人が管制室に入って来た

 

千冬

「お前達!勝手に入って来るな!今は緊急事態だぞ!!」

 

セシリア

「処罰は後で受けます!ですが今は…」

 

 コイツ等、それを覚悟で来たのか…

 どっかの馬鹿に聞かせてやりたい台詞だな…

 って今はそんな事はどうでもいいな

 

「織斑先生…アレはもしかして【VTシステム】じゃ?」

 

千冬

「…そうだ…しかも使われているのは【モンド・グロッソ】で優勝した時の私のデータだ!」

 

「【モンド・グロッソ】の時の千冬さんって…【ブリュンヒルデ】になった時のですか!?」

 

千冬

「ああ…」

 

本音

「どうするんですか~?」

 

千冬

「幸いと言っていいのかは分からんが、奴の目の前には火ノ兄がいる。アイツならあんな紛い物には負けはしないだろう。」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「はい♪」

 

真耶

「織斑先生!その火ノ兄君から通信です!アレは何だと聞いてきてます!」

 

千冬

「分かった!私が説明する!」

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

永遠

「何じゃこれは?」

 

 ワシは今、目の前におる異形の物体となったチビッ子を見とる

 これが何か全く分からんから先生方に連絡して教えて貰おうと思うたんじゃが…

 

千冬

『火ノ兄!私だ!』

 

 織斑先生が通信に出て来た

 

千冬

『簡単に言うぞ。ボーデヴィッヒの機体には【VTシステム】と呼ばれるものが搭載されている。このシステムは過去の実力者、今回は私のデータを使って私自身の力を再現している。』

 

永遠

「お主の再現?…何となく分かったがそげなシステムを使ってチビッ子の体は大丈夫なんか?」

 

千冬

『大丈夫な訳がない!【VTシステム】は使用者の能力以上のスペックを要求するシステムだ!使えば体に膨大な負担がかかる上に最悪使用者が死んでしまうものだ!』

 

永遠

「何でそげな物騒なもんをチビッ子が?」

 

千冬

『あのシステムは条約で使用、開発、研究の全てが禁止されている!それをドイツの研究者の馬鹿共が取り付けていたんだろう!』

 

永遠

「そいつ等にとってチビッ子は実験動物とでも言うつもりか?胸糞悪いシステムじゃ!!」

 

千冬

『全くだ!そう言う訳で火ノ兄!悪いが…』

 

永遠

「分かっとる!チビッ子を一刻も早く救い出すんじゃろ?」

 

千冬

『頼む!』

 

永遠

「【六道剣(りくどうけん)】を使っても構わんか?」

 

千冬

『ああ、これは試合では無いからな!』

 

永遠

「承知した!!」

 

 織斑先生との通信を終えると【六道剣(りくどうけん)】を出そうとしたら…

 

一夏

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!!!!」

 

 ワシの後ろから織斑が生身で突っ込んできた

 

永遠

「何しとるんじゃお前は?」

 

 流石に生身ではヤバそうじゃから、織斑の首根っ子を掴み上げて問い質したんじゃが…

 

一夏

「離せ火ノ兄!!アイツは…アイツは千冬姉の!!」

 

永遠

「姿と動きを真似とるのぉ…」

 

一夏

「そうだ!!アレは千冬姉の剣だ!!それを…」

 

永遠

「…許せんのは分かるが、生身で挑むつもりか?」

 

一夏

「ぐっ!…な、ならすぐに【白式】の補給をしてくるから、それまで…」

 

永遠

「馬鹿か貴様?」

 

一夏

「!?」

 

永遠

「自分が倒すからそれまで待ってろとでも言うつもりか?ふざけとんのか貴様?」

 

一夏

「で、でもアイツは…」

 

永遠

「貴様を待っとる間にチビッ子が死んでもいいのか?」

 

一夏

「…え?」

 

永遠

「あのままの状態では中のチビッ子は死ぬと言うとるんじゃ!!じゃから一刻も早くあの中から引きずり出さんといかん…それを貴様は何て言おうとした!!」

 

一夏

「………そ、それは…」

 

永遠

「貴様の我儘と人一人の命…どちらが大切だと思うとるんじゃ!!」

 

一夏

「!?」

 

永遠

「分かったら引っ込んどれ!!」

 

 ワシはそう言うと織斑をデュノアの方に放り投げた

 

一夏

「グッ!」

 

シャルル

「一夏、大丈夫!?」

 

一夏

「…ひ、火ノ兄…」

 

永遠

「…単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)起動!!」

 

一夏&シャルル

「!?」

 

永遠

「来たれ!【六道剣(りくどうけん)】!!」

 

 ワシの周りに現れた6色の光の柱、その内の一つ、赤い柱に向かって手を差し伸べると、中に封印されておる剣の名を呼んだ

 

永遠

「燃え上れ!猛き炎の剣【炎龍刀オニマル】!!」

 

 ワシの声に反応する様に赤い柱から一振りの剣が出てくるとワシはそれを掴み構えた

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

シャルル

「い、一夏…何なのあの剣!?」

 

 そう言えばシャルルはまだ見た事無かったな…

 

一夏

「…アレが【戦国龍】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)…【六道剣(りくどうけん)】だ…」

 

シャルル

「【六道剣(りくどうけん)】!?…アレが!?」

 

一夏

「…【六道剣(りくどうけん)】はその名前の通り全部で6本ある刀の総称なんだ…その内の一本があの【炎龍刀オニマル】だ…」

 

シャルル

「…【炎龍刀オニマル】…」

 

 …シャルルは【オニマル】に驚いてるけど…俺はそれどころじゃなかった…

 さっき火ノ兄が言った言葉が頭にこびり付いていた…

 

永遠

『貴様の我儘と人一人の命…どちらが大切だと思うとるんじゃ!!』

 

 そんなの決まってる…ラウラの命の方が大事だ…

 俺は…いくら知らなかったからって…何て事を言おうとしたんだ…

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~三人称 Side~

 

 ≪管制室≫

 

セシリア

「【炎龍刀オニマル】…赤の剣ですか…」

 

「…そう言えば…【戦国龍】の【六道剣(りくどうけん)】も【剣刃(つるぎ)】に入るのかな?」

 

「…多分入るんじゃない。…あの6本は永遠が今まで造った【剣刃(つるぎ)】を遥かに上回るって言ってたし…」

 

千冬

「そうだな…恐らくあの6本が【剣刃(つるぎ)】の頂点に立つんだろう。」

 

本音

「ならアレを使えばひののんは負けないね~♪」

 

セシリア

「そうですわね♪」

 

「本音の言う通り♪」

 

 セシリア達は【オニマル】を使う永遠が負ける筈無いと確信していた

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

 アリーナでは【オニマル】を構えた永遠が【偽暮桜】と向かい合っていた

 

永遠

「(チビッ子の体がどこまで持つか分からん…速攻で片づけんといかんな!)ならば!!…【戦国龍】!!全能力開放!!」

 

 ラウラを早く助け出す為【戦国龍】の力を解放した

 

一夏

「ぜ、全能力開放だって!?」

 

 永遠がそう叫ぶと、【戦国龍】の鎧の羽に更に大型の翼が追加され、左手に持っていた槍も穂先が変化し、頭部や胸当ての鎧の形状も変化した

 

<オオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーンッ!!!!!>

 

 ザワザワ…

 

シャルル

「これが【戦国龍】の…」

 

一夏

「全ての力を解放した姿!?」

 

 姿の変わった【戦国龍】の姿に一夏とシャルル、そして観客席にいた人たちもその姿に驚きを隠せずに騒めいていた

 

永遠

「一瞬で終わらせる!!」

 

 永遠はそんな周りの騒ぎを気にもせず、【オニマル】と槍を構え【偽暮桜】に向かって行った

 

永遠

「はあぁぁっ!!」

 

 ガキィィンッ!

 

 永遠の【オニマル】と【偽暮桜】の刀がぶつかった

 そのまま鍔迫り合いになるが、力は【戦国龍】の方が上だった

 

永遠

「ぬんっ!」

 

 そのまま【偽暮桜】の刀を払いあげ、刀を持っている右手を槍で突き刺した

 

永遠

「今じゃい!!」

 

 永遠はガラ空きになった懐に【オニマル】で表面を斬り裂いた

 斬り込みの入った胴体に槍を手放し、左手を突っ込むと…

 

永遠

「出て…こーーーい!!」

 

 中のラウラを力づくで引きずり出した

 ラウラを助け出した永遠はラウラを抱え直すと【偽暮桜】から離れた

 永遠はすぐにラウラの安否を確認すると…

 

ラウラ

「ぅ…ぅぅ…」

 

 無事だったので、永遠は肩から力を抜いたのだが…

 

 ドシュッ!

 

 何かを突き刺す音が永遠の耳に聞こえてきた

 永遠が自分の胸元を見ると自分の体を貫いた血に濡れた剣が目に映った

 

永遠

「…な…に…」

 

 しかも体を貫いている剣が淡く光っていた

 

永遠

「コレは…まさか【零落白夜】…」

 

 それは一夏の【白式】と同じ【零落白夜】の光だった

 そのまま後ろを振り向くと、搭乗者のラウラがいない筈の【偽暮桜】が永遠を後ろから突き刺していた

 

永遠

「ぐっ!…織斑ーーーっ!デュノアーーーッ!」

 

一夏&シャルル

「!?」

 

永遠

「受け取れえええぇぇぇーーーっ!!」

 

 永遠は苦痛な声を上げながらラウラを二人の方に投げ飛ばした

 二人は慌ててラウラを受け取った

 

一夏

「ひ、火ノ兄!?」

 

永遠

「…早く…逃げろ…」

 

シャルル

「で、でも…」

 

永遠

「行けえええええぇぇぇぇぇーーーーーっ!!!」

 

 ズシュッ!

 

永遠

「ぐはっ!」

 

 永遠の叫び声と共に二人はラウラを連れて避難した

 それとほぼ同時に【偽暮桜】は永遠の体から刀を抜いた

 

永遠

「ぐううっ!…はああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!」

 

 永遠は痛みに耐えながら【オニマル】で斬りかかったが…

 

 ガキィン!

 

永遠

「何っ!?」

 

 【偽暮桜】はいつの間にか持っていたもう1本の刀で永遠の攻撃を受け止めていた

 

 ザシュゥッ!!

 

 そして【偽暮桜】は空いていた刀で永遠を斬り裂いた

 

永遠

「!?…ぁ…ぁぁ…」

 

 斬り裂かれた【戦国龍】の斬り口から鮮血が飛び散った

 永遠はそのまま仰向けに倒れ…【戦国龍】の目から光が消えた…

 

 ~三人称 Side out~

 

 




 次回『第085話:進化の時!我が名は戦国龍皇!!』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第085話:進化の時!我が名は戦国龍皇!!

 

 ~永遠 Side~

 

永遠

「…此処は?」

 

 気付いたらワシは周囲が真っ赤な空間におった

 確かワシは、チビッ子を助け出したらいきなり後ろから刺されて…振り向いたらあのモドキがまだ動いとったんじゃよな…でそのまま…斬られたの…

 

永遠

「ん?…という事はワシは死んだんか?…また死んでしもうたか…弱ったのぉ、セシリア達にお別れが言えんかったな…」

 

「相変わらず呑気な人ね~。」

 

永遠

「誰じゃ?」

 

「フフッ♪初めまして…かしらね?」

 

 ワシの目の前に長い赤い髪に白い翼と鎧を身に着けた少女が現れおった

 

永遠

「何じゃお迎えか?…あれ?なんかどっかで見た事が…」

 

 この娘、どこかで見た記憶があるんじゃよな…どこじゃったかな?

 

永遠

「う~んっ………ああぁーっ!?思い出した!髪の色が違うが、お主は【剣聖姫ツル】!?」

 

 そうじゃ!こやつは【バトスピ】の【剣聖姫ツル】と瓜二つなんじゃ!

 

剣聖姫ツル?

「フフッ♪そうね。この姿はそれを元にしているからね♪」

 

永遠

「?…お主何もんじゃ?」

 

剣聖姫ツル?

「何もんとは失礼ね!いつも一緒にいたでしょ!」

 

永遠

「ん?いつも一緒?………まさか…お前【戦国龍】か!?」

 

戦国龍

「ピンポ~~~ン♪大正解♪私はあなたのIS【戦国龍】の深層意識よ♪」

 

永遠

「マジか!」

 

戦国龍

「マジよ♪…でも~私は【戦国龍】だけど、【ドットブラスライザー】と【ラインバレル】でもあるのよ。」

 

 戦国龍がそう言うと後ろにIS状態の【戦国龍】【ドットブラスライザー】【ラインバレル】が現れた

 

永遠

「…どういう事じゃ?」

 

戦国龍

「私はね、他のISの子達と少し違うのよ。他の子はコア一つに人格が一人いるんだけど、私は3機のそれぞれのコアを一括りにした人格なのよ。」

 

永遠

「何じゃと!ならお主は!」

 

戦国龍

「そ♪【戦国龍】でもあり【ドットブラスライザー】でもあり【ラインバレル】でもあるのよ♪」

 

永遠

「…なら何と呼べばいいんじゃ?」

 

戦国龍

「そうね~…ならこの姿からとって【ツル】と呼んで頂戴♪」

 

永遠

「分かった。しかしノリの軽い奴じゃのぉ…」

 

ツル

「まあね♪…で、話を戻すけど…ぶっちゃけあなた死にかけてるわ!」

 

永遠

「ん?死んどらんのか?」

 

ツル

「このままだと死ぬわ!…でも私の力で留めているの…すぐに治療すれば助かるわ。」

 

永遠

「…そうか…じゃがそう簡単にはいかんのじゃろ?」

 

ツル

「…ええ、あなたの意識が戻っても目の前にあのモドキがいるわ。」

 

永遠

「やはりそうか…なら奴を始末せん事にはワシは手当ても出来んのか…」

 

ツル

「そうね。そして奴を倒せるのは貴方だけよ。貴方が下がったらあのモドキは学園の人達を殺し始めるでしょうね。」

 

永遠

「ならどうすればいい?」

 

ツル

「…貴方が奴を倒すしかない…でも今のままじゃ負けるわ。」

 

永遠

「【戦国龍】でも勝てんのか?」

 

ツル

「いいえ、貴方が万全の状態なら楽に勝てるわ。でも今の貴方は瀕死の状態、その上【戦国龍】も大破している。他の2機じゃ貴方の体がもたない。」

 

永遠

「ちょっと待て!それでは手詰まりではないか!」

 

ツル

「…一つだけ方法があるわ…」

 

永遠

「その方法は?」

 

ツル

「…私を…【戦国龍】を二次移行(セカンドシフト)させるのよ。」

 

永遠

「何じゃと!?」

 

ツル

二次移行(セカンドシフト)した【戦国龍】の力なら短時間で勝てるわ!あなたの体は【ドットブラスライザー】と【ラインバレル】の力で一時的に動かせる様に出来る。ただし3分間が限界よ。」

 

永遠

「つまりワシは二次移行(セカンドシフト)した【戦国龍】で3分以内にモドキを始末せにゃならんという事か?」

 

ツル

「そういう事!それでやる?このままモドキがどこかに行くのを待つ事も出来るけど?」

 

永遠

「何を言うとる!それではセシリア達に危険が及ぶではないか!!」

 

ツル

「なら?」

 

永遠

「やるぞツル!力を貸してくれ!」

 

ツル

「フフッ♪それでこそ私の主様♪…私の力、存分にお使いください!」

 

永遠

「ああ、頼む!」

 

ツル

「…では…呼んで下さい!…私の名を…新しい名を…」

 

永遠

「………お主の名は!!」

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 今アリーナでは信じられない光景が広がっていた

 火ノ兄が…あの火ノ兄が…後ろから刺されて…斬られただと…

 はっ!いかん!!

 

セシリア

「…許しません…絶対に許しません!!」

 

「よくも永遠を!!」

 

本音

「ひののんの仇だああぁぁーーっ!!」

 

 オルコット、更識、布仏の3人が暴れ始めた!

 

「アンタ達落ち着きなさい!!」

 

千冬

「待てお前達!今出て行くのは危険だ!オルコット!お前のISは今手元に無いだろ!」

 

 鈴と一緒に抑えているが…

 こいつら…特にオルコットは戦えないと言うのに!

 

セシリア

「離してください!」

 

「早く永遠の所に行かないと!」

 

本音

「仇を取るんだーーっ!」

 

 涙を流しながら火ノ兄の所に行こうとするとは…こいつら、そんなにアイツの事を…

 

セシリア

「このままでは永遠さんが!永遠さんがああぁぁーーっ!!」

 

「永遠ああああぁぁぁぁーーーーっ!!」

 

本音

「ひのの…ううっ…永遠ああぁぁーーっ!!」

 

「ア、アンタ達…」

 

 カッ!!

 

千冬

「何だ!?」

 

 突然アリーナから強い光が起きた

 

セシリア&簪&本音

「…永遠(さん)!?」

 

千冬

「何だと!?」

 

 私達はアリーナを見ると光は【戦国龍】が倒れている場所から出ていた

 

千冬

「…何が起きている!?」

 

 光が収まると、次の瞬間【戦国龍】を炎が包み込み、炎の龍となって上空に昇っていった

 炎の龍はそのまま炎の球体になった…いや、あれはまるで…

 

「…太陽?」

 

 鈴の言う通り、太陽の様な球体は巨大化していくと中に【戦国龍】がいた!

 そして最後は内側から炎を弾き飛ばして【戦国龍】が出て来た

 …いや違う!…あれは…【戦国龍】じゃない!?

 

<オオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーンンンッ!!!!>

 

 出て来たのは【戦国龍】に似た機体…

 2本の槍を携え【戦国龍】よりも鎧や羽が大型化した上に装飾も派手になっている

 そして鎧の上から白い陣羽織を着た赤い龍がそこに現れた!

 

千冬

「何だコイツは…まさか!?」

 

セシリア

「あれは!!」

 

「うん!!」

 

本音

「間違いないよ!!」

 

セシリア&簪&本音

「永遠(さん)だああぁぁーーっ!!」

 

「アレが永遠!?」

 

千冬

「だが、あの姿………まさか!進化したのか!!」

 

 私がそう言った瞬間…

 

<オオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーンンンッ!!!!>

 

 龍が再び吠えると…

 自らの名を名乗った

 

永遠

「我が名は…【戦国龍皇】!!」

 

 ~千冬 Side out~

 

 





 次回『第086話:戦場を駆ける駿馬!その名は轟焔!!【戦国龍皇VS偽暮桜】』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第086話:戦場を駆ける駿馬!その名は轟焔!!【戦国龍皇VS偽暮桜】

 ~千冬 Side~

 

千冬

「【戦国…龍皇】だと…」

 

 私の目の前で再び信じられない事が起こった

 あのモドキに【戦国龍】が倒されたと思ったら、進化して復活するとは…

 

セシリア

「アレが永遠さんの…」

 

「【戦国龍】が二次移行(セカンドシフト)した姿…」

 

「…凄い…」

 

本音

「カッコいいぃぃ~~…」

 

千冬

「真耶!!すぐに【戦国龍皇】のデータを取る準備を!!」

 

真耶

「は、はい!?」

 

 だが…火ノ兄の奴大丈夫なのか?

 あのモドキに刺された上に斬られている…

 普通なら生きているだけでも不思議なんだが…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~束 Side~

 

クロエ

「束様!?」

 

「…分かってるよ…あんな不細工なシステムまで使って、とーくんを傷付けたドイツの馬鹿共には後で報復してやるよ!!…でも、今はそれよりも…」

 

クロエ

「はい!遂に【戦国龍】が進化したんですね!」

 

「そうだね!………でもとーくん大丈夫なのかな?あの偽物に思いっきり刺されて斬られていたけど…」

 

クロエ

「そうですね………兄様…」

 

「…クーちゃん…心配なら今からとーくんの所に行っていいよ。【戦国龍皇】のデータは束さんが取っておくから。」

 

クロエ

「…いえ…私は束様の助手です。…それに…兄様があんな偽物に負ける筈ありませんから!!」

 

「うん…そうだね♪」

 

 とーくん…無事でいてね…

 

 ~束 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 俺達はラウラを連れて避難したけど、火ノ兄が斬られて倒されたのを知った俺は【白式】の補給をして奴と戦おうとした

 だけど…

 

一夏

「…何だよアレ…」

 

シャルル

「…二次移行(セカンドシフト)…」

 

一夏

二次移行(セカンドシフト)!?…アレが…」

 

シャルル

「うん!【戦国龍】の…第二形態だよ!」

 

一夏

「…第二形態…【戦国龍皇】…」

 

 アイツはあんな状態でも戦うって言うのかよ…

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~三人称 Side~

 

 ≪アリーナ≫

 

 アリーナでは二次移行(セカンドシフト)した【戦国龍皇】を纏った永遠が【偽暮桜】に対して二本の槍を構えていた

 

永遠

「…体は問題なく動く…これならイケるのぉ!」

 

 永遠は二本の槍を連結させ1本の槍にすると【偽暮桜】に向かって行った

 向かって来る永遠に対して【偽暮桜】はその姿をさらに変化させた

 体から更に刀を持った腕が二本生えてきた

 その姿は原形を留めておらず、もはや異形と言ってもいい姿だった

 

永遠

「化けもんめ!!」

 

 槍で攻撃する永遠に対して、【偽暮桜】は4本の刀で全て受け止め、永遠を押し返していた

 その理由は永遠は元々槍ではなく刀を用いた戦いの方が得意だからだった

 

永遠

「チィ!…槍では戦いづらいのぉ………ならば!!」

 

 永遠は槍を【偽暮桜】に槍を投げつけると…

 

永遠

「…来たれ…【六道剣(りくどうけん)】!!」

 

 【六道剣(りくどうけん)】を呼び出した

 永遠の周りに現れる6色の光の柱

 しかし、呼び出された【六道剣(りくどうけん)】は今迄とは違っていた

 

永遠

「…全ての封印を解き放て!!【六道剣(りくどうけん)】!!!」

 

 永遠のその言葉と同時に6本の光の柱の中から全ての【六道剣(りくどうけん)】が出て来た

 今迄の【六道剣(りくどうけん)】は6本の刀の内の1本しか呼び出せ無い制限がかかっていた

 だが、進化した【戦国龍皇】によってその制限が無くなっていた

 

永遠

「来い!【炎龍刀オニマル】【妖刀ムラサメ】!!」

 

 永遠の呼びかけに応える様に二本の刀…【炎龍刀オニマル】と【妖刀ムラサメ】が永遠の元に飛んできた

 永遠は右手に【炎龍刀オニマル】を、左手に【妖刀ムラサメ】を手に取り構えた

 そして残りの4本の刀は【戦国龍皇】の鎧の羽にそれぞれ二本ずつ格納された

 

永遠

「行くぞ!!!」

 

 

 

 ≪管制室≫

 

全員

「………」

 

 管制室にいたセシリア達は【六道剣(りくどうけん)】を全て呼び出した永遠の姿に言葉を失っていた

 

セシリア

「…これは一体…」

 

 最初に声を出したのはセシリアだった

 

千冬

「…まさか、進化した事で【六道剣(りくどうけん)】の制限が解除されたのか!?」

 

「制限の解除って…あの天変地異を起こす刀を全て同時に使える様になったって事!?」

 

「…コレが【戦国龍皇】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)…」

 

真耶

「………ち、違います!?」

 

 簪の言葉を真耶が慌てて否定した

 

千冬

「何が違うんだ!?」

 

真耶

「アレは単一仕様(ワンオフ・アビリティー)ではありません!!ただ刀を呼び出しただけです!!」

 

千冬

「何だと!?」

 

セシリア

「では今の【六道剣(りくどうけん)】はただの武器になっていると言うんですか!?」

 

真耶

「そうなります…」

 

「嘘でしょ…」

 

「あれだけ強力な武器が…単一仕様(ワンオフ・アビリティー)ですら無くなったの…」

 

千冬

「…使用本数の制限だけでなく…単一仕様(ワンオフ・アビリティー)としての制約まで無くなったと言うのか………なら【戦国龍皇】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)は一体何なんだ!!!」

 

真耶

「…分かりません…火ノ兄君が使ってくれれば分かるんですけど…」

 

千冬

「…そうか…【戦国龍皇】…一体どんな力を秘めているんだ…」

 

 

 

 ≪観客席≫

 

 一方観客席では、生徒たち全員が【戦国龍皇】の姿に驚き言葉を無くしていた

 観客席から見ていた楯無もまた、同じ状態だった

 

楯無

「………【戦国龍皇】…まさか【戦国龍】が進化するなんて…それに…あの【六道剣(りくどうけん)】の制限まで無くなってる…」

 

 【六道剣(りくどうけん)】の力を知る楯無は【戦国龍皇】に恐れを抱いていた

 

楯無

「…これはいよいよヤバいわね…世界中の国から完全に目を付けられる…」

 

 楯無はこの一件から世界の国や企業は永遠に目を付けてしまったと考えていた

 実際それは正解だった…

 貴賓室にいる賓客達は永遠と永遠のISである【戦国龍皇】を手に入れようと色々と画策し始めていた

 ただし、彼らには知らない事があった…

 それは永遠の後ろにあの篠ノ之束がいるという事…

 何より、仮に力づくで手に入れようとしても、ISを生身で倒せる永遠自身に返り討ちに会うのが目に見えていた…

 

「フッ…フフフッ…」

 

 一方、楯無とは別の場所でアリーナを見ていた箒は二次移行(セカンドシフト)した【戦国龍皇】の姿に笑いが込み上げていた

 

「…感謝するぞ火ノ兄…私の為に進化させてくれて…」

 

 箒は【戦国龍皇】を完全に自分の物と決め込んでいた

 さらに、今まで我慢していた【戦国龍】を手に入れようと言う欲求を押さえきれなくなっていた

 …その結果自分がどんな目に合うのかも知らずに…

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

永遠

「(時間も無い…はよせんと…)はああぁぁーーっ!!」

 

 【オニマル】と【ムラサメ】を手に【偽暮桜】に斬りかかって行く永遠…

 対する【偽暮桜】も四本の刀で迎え撃つ…

 

 ガキガキガキィン!

 

 二本と四本の刀のぶつかり合い…

 その戦いは常人では追いつけない速度だった

 そんな剣戟を繰り返す中、永遠は【偽暮桜】の隙を伺っていた…

 ………そして…

 

永遠

「そこじゃ!!」

 

 【偽暮桜】に出来た僅かな隙をついて、そこに【ムラサメ】を突き刺した

 

永遠

「よしっ!!」

 

 【ムラサメ】を刺すと同時に永遠は後ろに飛びのき距離を取った

 飛びのくと同時に永遠は【ムラサメ】の能力を発動させた

 

永遠

「奴の力を食い尽くせ!!【ムラサメ】!!!」

 

 永遠の声に呼応するように【ムラサメ】は紫の光を放つと【偽暮桜】のエネルギーを吸収し始めた

 【ムラサメ】によってエネルギーを奪われた【偽暮桜】は次第に形を保てなくなったのか4本の腕の内の二本の腕が崩れ落ちた

 その姿に観客席が再び騒めきだした

 【妖刀ムラサメ】が持つ能力…無尽蔵のエネルギー吸収能力に恐れおののいていたのだ

 

永遠

「流石は【ムラサメ】…こげな僅かな時間でココまで弱体化するとはのぉ…」

 

 永遠がそう言った瞬間、頭の中にツルの声が響いて来た

 

ツル

『主…残り1分を切りました!早く!!』

 

 ツルからの警告を聞くと永遠は決着をつける為…

 

永遠

「分かった…一気に終わらせる!!単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)…起動!!!」

 

 【戦国龍皇】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)を発動させた

 永遠は【オニマル】で右上から右斜め下に【オニマル】を振るとその軌跡は炎の線となった

 そのまま左に水平に刀を振り…今度は下にずらし、左から右に同じ様に水平に振った

 そして中心を縦に刀を振ると、それは正面から見ると『午』と言う文字になった

 最後に円で囲み、その文字を力一杯切り裂いた

 切り裂かれた文字は爆発し、【戦国龍皇】を炎が包み込んだ

 

 カツン…カツン…

 

 そして炎の中から【戦国龍皇】とは違う足音が聞こえてきた

 炎の中から出て来たのは白い鎧を纏った馬…

 その背に乗った【戦国龍皇】だった

 

<ヒヒィィィィィーーーーーンッ!!!>

 

 この馬こそ【戦国龍皇】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)…名を【轟焔】…【戦国龍皇】と共に戦場を駆ける駿馬の姿だった

 

観客

「えええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!!!」

 

 【轟焔】の姿に観客席にいた生徒達は驚きの叫び声を上げた

 

 

 

 ≪管制室≫

 

 管制室でも【轟焔】の姿に戦慄が走っていた

 ただし…

 

千冬

「馬だと!?」

 

真耶

「織斑先生!!あれが【戦国龍皇】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)です!!」

 

千冬

「あれが単一仕様(ワンオフ・アビリティー)!?…馬型の支援機だと言うのか!?」

 

 それはあくまで教師二人だけ…

 セシリア、簪、本音の3人は…

 

セシリア

「炎の鬣の白馬…」///

 

「綺麗…」///

 

本音

「ふわぁぁ~~…」///

 

「あ~…駄目だこりゃ…コイツ等…完全にのぼせてるわ…」

 

 【轟焔】に跨る永遠の姿が3人には『白馬の王子』の様に見えていた

 鈴はそんな3人を呆れ気味に見ていた

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

 【轟焔】に跨り【偽暮桜】に駆けて行く永遠…

 その姿は正に戦場を駆ける戦国武将そのものだった

 

永遠

「はっ!!」

 

 再び【偽暮桜】を剣を交える永遠…

 だが、先ほどと違い【ムラサメ】によって弱体化し、【轟焔】が永遠の動きをサポートしているので永遠が有利に立っていた

 数度の打ち合いの後【轟焔】の後ろ蹴りを喰らい、【偽暮桜】は後方に吹き飛ばされた

 体勢を立て直した永遠に再びツルの声が響いて来た

 

ツル

『主!残り20秒です!!』

 

永遠

「承知!!」

 

<ヒヒィィィィィーーーーーンッ!!!>

 

 カキキィィーン!!

 

 永遠がそう答えると、【轟焔】は嘶くと同時に前足を持ち上げた

 そのまま蹄を鳴らすと、左右に炎の壁が生まれ永遠と【偽暮桜】を結ぶ一直線の道が出来た

 それと同時に、永遠の持つ【オニマル】の刀身が2倍近い大きさになった

 

永遠

「【轟焔】!!」

 

 永遠の呼び声と共に【轟焔】は腰に装備されているブースターを点火して【偽暮桜】に走って行った

 一瞬で【偽暮桜】の懐まで来ると永遠は【オニマル】を振り下ろし【偽暮桜】を両断し、そのまま駆け抜けて行った

 真っ二つにされた【偽暮桜】は爆発四散し、粉々に破壊された

 

<ヒヒィィィィィーーーーーンッ!!!>

 

 【轟焔】が立ち止まり声高らかに嘶き、戦いの終わりを告げた

 ………

 ……

 …

 それと同時に永遠のタイムリミットも0になった…

 ………

 ……

 …

 【戦国龍皇】が強制的に解除され永遠はその場で力なく倒れた

 

セシリア&簪&本音

「永遠ーーーーーーーーっ!!!!」

 

 セシリアと簪、本音の悲痛な叫びがアリーナに木霊した………

 

 ~三人称 Side out~

 

 




 次回『第087話:自分のルール』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第087話:自分のルール

 ~千冬 Side~

 

千冬

「真耶!!すぐに医療班を向かわせろ!!!」

 

真耶

「は、はい!!」

 

 アイツ…やはり無理をしていたのか…

 一体どうやってあの傷であんな動きが出来ていたんだ…

 

「…あの…千冬さん…」

 

千冬

「何だ?」

 

「セシリア達がアリーナに行っちゃったんですけど…」

 

千冬

「………放っておけ…」

 

「いいんですか?」

 

千冬

「構わん。戦いも終わった事だし、こんな状況では次の試合なんか出来はしない。………ああ、それから鈴。」

 

「何ですか?」

 

千冬

「悪いがオルコット達に伝言を頼む。」

 

「伝言?」

 

千冬

「火ノ兄の持つISを誰にも渡すな!とな。」

 

「え?」

 

千冬

「この戦いで火ノ兄は世界中から目を付けられただろう。…そしてアイツのIS…特に【戦国龍皇】は狙われる可能性が高い。私はこの後色々と対応をしないといけないから、それが終わるまでアイツ等が持っていた方が安全だ。後で受け取りに行くと伝えてくれ。」

 

「そう言う事ですか…分かりました!!」

 

 …アイツ等の事は鈴に任せるとして…問題は…

 

真耶

「織斑先生!賓客の方達が火ノ兄君の情報を求めてきてます!!」

 

 やはりそうなるか…

 束が今まで火ノ兄の情報を遮断してきたからな…

 

千冬

「火ノ兄に関しては必要最低限の情報だけでいい!【ドットブラスライザー】と【ラインバレル】それに束との関係は絶対に言うな!!【戦国龍皇】に関してはまだ何も分かっていないと伝えておけ!!」

 

真耶

「わ、分かりました!!」

 

 …これで大人しくなればいいが…無理だろうな…

 …ドイツの馬鹿共があんな物使わなければここまでの騒ぎにはならなかったと言うのに

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

セシリア

「ハァ…ハァ………永遠さん!!」

 

 アリーナに着いたわたくし達が見たものは血塗れで倒れた永遠さんでした

 

セシリア

「永遠さん!永遠さん!!」

 

「永遠!!」

 

本音

「永遠~!!」

 

 わたくし達の呼びかけにも反応しません…

 

医療班

「皆さんどいてください!!」

 

 担架を持った医療班の方達がやって来ると、永遠さんを担架に乗せて移動している途中で…

 

「…よかった間に合った!!」

 

 鈴さんがやってきました

 

「どうしたの鈴?」

 

「ちょっと待ってください!」

 

 鈴さんは医療班の方達を引き留めると担架に乗せてあった永遠さんの待機状態の3本の刀をとりました

 

医療班

「君!何のつもりだ!」

 

「織斑先生からの指示です。永遠のISを確保しておけと。後で確認しても構いません。」

 

医療班

「織斑先生が?…分かった…」

 

 医療班の方達はそう言って永遠さんを連れていきました

 

セシリア

「鈴さん…どういう事ですか?」

 

「そのままの意味よ。永遠の機体…特に【戦国龍皇】を狙う奴がいるだろうから私達で確保しておけですって。」

 

「永遠の機体を!?」

 

「そ!だからこれはあんた達が持ってて。」

 

 鈴さんはそう言うと…

 わたくしに【戦国龍皇】を…

 簪さんに【ラインバレル】…

 本音さんに【ドットブラスライザー】を渡してくれました

 

「多分永遠は暫く動けないわ…だからその間はこの3機はあんた達が守るのよ!…特にセシリア…あんたに渡した【戦国龍皇】が一番狙われるわよ!」

 

セシリア

「分かってます!!これはわたくしの命にかけて守って見せます!!」

 

「その意気込みなら大丈夫ね♪…まあ、暫くすれば千冬さんが受け取りに来る筈だからそれまでの間よ。」

 

セシリア&簪&本音

「はい(うん)!!」

 

 それでも…その時までこれは誰にも渡しません!

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~箒 Side~

 

「チッ…鈴に先を越されたか…」

 

 火ノ兄が動けなくなった今の内に【戦国龍皇】を手に入れようと思ったんだが…鈴の奴…余計な事を!!

 問題の【戦国龍皇】はオルコットが持っているのか…

 今のアイツはISを持っていないから力づくで奪う事も出来るが…アイツはいつも更識と布仏の二人と一緒だからな…いくら私でも専用機持ち二人を生身で相手にする事は出来ない…

 まあ焦る必要はない…鈴が言っていた通り、今のアイツは当分動けないだろうからな…機会はいくらでもある…

 

「クククッ…待っていろ…【戦国龍】…いや…【戦国龍皇】!!」

 

 ~箒 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 さて…こいつ等をどう捌くかな…

 

賓客1

「織斑女史!彼は何者ですか!?」

 

賓客2

「男性操縦者がもう一人いるなど聞いた事が無いぞ!!」

 

賓客3

「あの二次移行(セカンドシフト)した全身装甲(フルスキン)のISは何なんだね!?」

 

 喧しい連中だ…

 

千冬

「彼に関しては先程の説明以上の事は申せません。あの機体に関しては私達もまだ調査をしていませんのでココでは何も言う事は出来ません。」

 

賓客1

「あんな説明で納得出来る訳無いだろ!!」

 

賓客2

「分からないと言うなら我が国で調査する!彼とあの機体を預けてくれ!!」

 

賓客3

「貴様何を言っている!!それなら我が国でやった方がより詳しく分かる!!」

 

 チッ!…こいつ等遂に本性を現したか…火ノ兄と【戦国龍皇】を自分達の国の戦力にしようという本音がダダ漏れだ…

 しかも、私の前と言う事を忘れて言い合いを始めるとは…

 このまま放っておいてもいいが、それはそれで問題だからな…

 

千冬

「申し訳ありませんがそう言った話は学園の外でやって下さい!!」

 

賓客達

「!?」

 

 私が殺気交じりにそう言うと一気に静まり返った

 

千冬

「二人目の事ですが彼はどこかの国が使った違法システムのせいで重傷です!!そう言った話は彼が話せるようになってから言って下さい!!!」

 

賓客達

「………」

 

 賓客達の視線がドイツのお偉方に向いたか…

 これでこいつ等の標的がドイツの馬鹿共に切り替わるだろ…

 念の為、もう一押ししておくか

 

千冬

「それから、あの違法システムを積んだ機体はこちらで調査をした後、IS委員会と各国に報告します。操縦者は別としてあのシステムを積んだ連中にはそれ相応の責任を取って貰うのでそのつもりでいるように!!」

 

 恐らくアイツ等はラウラに全ての責任を押し付けるつもりだろうがそうはさせん!

 アイツがあんな物を望んで積んだとも思えんから、勝手に取り付けていたんだろう…そいつ等に報いを受けさせてやる!

 それに今頃は束が動いている筈…逃げる事も出来ない筈だ

 

千冬

「話は以上です!後は外でやって下さい!それでは、まだ仕事が残っていますので失礼します。」

 

 言いたい事も言った事だし、とりあえずラウラの様子を見てくるか…

 そろそろ目を覚ましているだろうしな…

 火ノ兄はまだ手術中だろうから後でいいか…

 その前にラウラの機体の調査結果を聞いてから行くか…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~ラウラ Side~

 

ラウラ

「…ううっ…」

 

 …白い…天井…

 

ラウラ

「…ココは…何処だ?」

 

千冬

「目を覚ましたか?」

 

ラウラ

「きょ、教官…一体…何が?…ぐっ!?」

 

 何だ?…体が…

 

千冬

「お前の体は全身に無理な負荷がかかった事で筋肉疲労と打撲がある。暫くはじっとしていろ。」

 

ラウラ

「何が…起きたのですか?」

 

 私は激痛の走る体を無視して無理矢理上半身を起こした

 

千冬

「…一応…重要案件で機密事項何だが…お前は知ってもいいだろう…」

 

 教官はゆっくりと話し始めた

 

千冬

「【VTシステム】は知ってるな?」

 

ラウラ

「はい、【ヴァルキリー・トレース・システム】…過去のIS操縦者の動きをトレースするシステムですよね?」

 

千冬

「そうだ、IS条約で研究、開発、使用の全てが禁止されているシステムだ。それがお前のISに積まれていた。」

 

ラウラ

「!?」

 

 …私は言葉が出なかった…

 そんな違法システムが私の機体に積まれていたなんて…

 

千冬

「調べたら巧妙に隠されていてな。機体のダメージ、操縦者の精神状態、願望等の条件が揃うと発動するようになっていた。」

 

 それはつまり…

 

ラウラ

「あの時…私が望んだから…発動したんですね…」

 

千冬

「そう言う事だ…ただお前の機体の【VTシステム】は通常の物とは違っていたようだがな…」

 

ラウラ

「え?…どういう事ですか?」

 

千冬

「お前を助け出す事は火ノ兄がやってくれた…だが問題はその後だ…」

 

 火ノ兄!…アイツが私を助けてくれたのか!?

 だが、その後と言うのは?

 

千冬

「お前を引きずり出した後、抜け殻になったお前の機体が勝手に動き出してな…」

 

ラウラ

「え………」

 

 教官はその後の事も話してくれた…

 暴走を始めた私の機体が火ノ兄を後ろから突き刺し切り裂いた事…

 倒されたと思った火ノ兄が復活し、二次移行(セカンドシフト)した【戦国龍】で今度こそ私の機体を倒した事…

 

千冬

「………と言う事だ…その後火ノ兄は力尽きて倒れてな、今は手術中だ。」

 

ラウラ

「…何故…アイツはそこまでしてくれたんだ…私はアイツを後ろから撃ちまでしたのに…そんな私を何故助けてくれたんだ…」

 

 思い返してみれば、試合の間の火ノ兄は私に対して攻撃はしてこなかった…全て受け流すか防ぐだけだった…精々蹴り飛ばす程度しかしていない…

 

千冬

「………『御剣の剣、即ち、時代時代の苦難から弱き人々を守ること』…」

 

ラウラ

「え?」

 

千冬

「ラウラ…お前がこの間、火ノ兄に負けた時にアイツが使った剣技…【飛天御剣流】の理だ。」

 

ラウラ

「理…」

 

千冬

「火ノ兄はその理から自分なりの答えを出し、それを自分の理…自分のルールにしている。それは自分の手の届く所にある者、大切な者を守る為に剣を振るうと言っていた。」

 

ラウラ

「…自分の…ルール…」

 

千冬

「あの時、お前は火ノ兄の手の届く場所にいた。だからアイツは自分のルールに従ってお前を命がけで助けたんだ。」

 

ラウラ

「………」

 

千冬

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!!!」

 

ラウラ

「はっはい!」

 

千冬

「お前は誰だ?」

 

ラウラ

「わ、私…私は…」

 

千冬

「誰でもないのなら、お前はこれからラウラ・ボーデヴィッヒになれ!」

 

 …私になれ…教官はそう言っておられるのか…

 

千冬

「それから、お前は私にはなれないぞ。」

 

 最後にそう言って教官は去って行った…

 残された私は…

 

ラウラ

「…私は教官になれないか…そうだな…その通りだ…」

 

 そんな当たり前の事に今更気づくなんてな…

 

ラウラ

「…誰かになろうとしていた私が…自分自身であり続けたアイツに勝てる訳ないか…」

 

 完敗だな…

 だが…私は憑き物が落ちた様に清々しい気分だった

 

ラウラ

「…力も…心も…私の負けだ…フフッ…アハハハハハハッ!!」

 

 …私もアイツみたいに自分のルールを見つけられるだろうか…だが…

 

ラウラ

「…まずは…アイツに謝罪と感謝を伝えるか!!」

 

 それが私が最初にする事だな!!

 

ラウラ

「………だが…あの3人が何と言うかだよな…」

 

 私は火ノ兄といつも一緒にいる3人の顔を思い浮かべていた…

 

ラウラ

「…覚悟して行くか…」

 

 ~ラウラ Side out~

 

 




 次回『第088話:廃棄品と完成品』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第088話:廃棄品と完成品

 ~シャルル Side~

 

一夏

「トーナメント…中止になっちまったな…」

 

シャルル

「そうだね…でも、生徒のデータを取りたいから1回戦は全部やるらしいよ。」

 

 僕は今、一夏と一緒に食堂で休憩している

 あの後、トーナメントは中止になってしまった…

 理由は勿論、第一試合の戦いが原因だった…

 あの戦いで火ノ兄君は瀕死の重傷を負って今は手術中…

 先生達はその対応と後始末に追われている…

 

シャルル

「…それにしても…」

 

一夏

「ん?どうかしたのか?」

 

シャルル

「…うん…火ノ兄君…大丈夫かなって…」

 

一夏

「…相当な深手だからな…あんな傷でどうやって戦えたんだろうな…」

 

シャルル

「本当にね…アレ…普通は死んでる傷だよ…」

 

一夏

「そうだな…まあ、今はオルコット達がついているから…何かあればアイツ等が騒ぐだろ?」

 

シャルル

「確かにね。…ところで一夏…」

 

一夏

「何だ?」

 

シャルル

「…今夜…父に連絡を取ろうと思うんだ…その時、一緒にいてくれないかな?」

 

 トーナメントが始まる数日前、織斑先生が父と本妻のスケジュールを教えてくれた…

 それを確認したら、今夜は本妻の方は国外に出ていて、父は一人で本社にいる事が分かった…

 今日を逃すと父と二人で連絡を取る時間は他に無かったんだ…

 

一夏

「分かった!」

 

シャルル

「…ありがとう…」

 

 …父の本心を知る事が出来る最初で最後の機会…

 …必ず、聞き出してみせる!!

 僕がそう意気込んでいると…

 

真耶

「織斑君、デュノア君、朗報ですよ~♪」

 

 山田先生がやって来た…

 

シャルル

「あれ?今忙しいんじゃないんですか?」

 

真耶

「少し落ち着いてきたんですよ。」

 

シャルル

「そうなんですか…それで何が朗報なんですか?」

 

真耶

「あ、はい…実はですね、男子の大浴場の使用が今日から解禁になりましたよ♪」

 

一夏

「なっ何だってーーーーーっ!?」

 

 大浴場が使えるって…僕は女だよ!?

 って山田先生は知らなかったんだ!

 とりあえずココは誤魔化しておこう!

 

シャルル

「あ、ありがとうございます。後で使わせて貰いますね。」

 

真耶

「はい♪では私はこれで…まだ仕事が残ってますので。」

 

一夏

「…あの!山田先生!」

 

真耶

「はい?」

 

一夏

「…火ノ兄の容体は…」

 

 ザワ…

 

 一夏の質問に周りにいた他の生徒達も反応した…

 皆も気になってたんだ…

 

真耶

「…手術は終わりました…ですが…まだ目を覚ましてはいません…執刀医の先生は生きているのがおかしいと言ってました…今はオルコットさん達が看てくれています…」

 

一夏

「…そう…ですか…」

 

真耶

「…ではこれで…」

 

 山田先生が去った後の食堂は静まり返っていた…

 

一夏

「…やっぱりアイツの傷は深かったんだな…」

 

シャルル

「…うん…先生まであんな事言う程の傷だったんだね…」

 

 本当にあの時どうやって動いてたんだろ…

 …でも、僕には今は父との連絡の方が大事だな…

 

 ~シャルル Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

セシリア

「………永遠さん…」

 

 わたくしは簪さんと本音さんと一緒に永遠さんの病室にいました…

 永遠さんの手術は終わったのですが…その傷は深く…まだ目を覚ましません…

 

「………」

 

本音

「このまま目を覚まさなかったら…」

 

セシリア&簪

「本音(さん)!!」

 

本音

「ご、ごめん!?」

 

セシリア

「いえ…わたくしもいきなり怒鳴ってすみませんでした…」

 

「…私もごめん…でも本音…」

 

本音

「…うん…それは言ったらダメだよね…」

 

 それから、わたくし達は永遠さんの看病を…と言っても、ただ横にいる事しか出来ないのですが…続けていました…

 暫く時間が経ちますと…

 

 コンコン…

 

 扉を叩くが聞こえてきました

 

セシリア

「…どうぞ。」

 

千冬

「失礼するぞ。」

 

 入ってきたのは織斑先生でした…ですがその後ろには…

 

ラウラ

「…失礼する…」

 

セシリア&簪&本音

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!!」

 

ラウラ

「………」

 

 永遠さんをこの様な状態にしたそもそもの原因…ラウラ・ボーデヴィッヒがいました!

 

セシリア

「…何しに来ましたの?」

 

「…永遠への仕返し?」

 

本音

「…それなら私が相手になるよ!」

 

 わたくしと簪さんは預かっていた永遠さんの刀に手をかけました

 そして、本音さんも刀に手をかけたのですが、空いている手で首にかけてある待機状態の【ワイバーン・ガイア】に触れていました

 

ラウラ

「ま、待ってくれ!!」

 

千冬

「…落ち着けお前達…こいつがそのつもりなら私が連れてきたりはしない…それに布仏、お前が機体を展開したら病室が潰れるだろ。」

 

セシリア&簪&本音

「………」

 

セシリア

「…分かりました…」

 

 わたくしはそう言うと刀から手を放しました…

 簪さんと本音さんも同じ様にしていました

 

「…それで何の用?」

 

ラウラ

「…火ノ兄に…その…今迄のしゃ、謝罪と…助けてくれた事への感謝を…伝えに…」

 

セシリア

「…何ですって?」

 

「貴方…自分が今まで何をしてきたと思ってるの!!」

 

ラウラ

「!?」

 

セシリア

「…いくら織斑先生の言葉が原因とは言え…無関係の永遠さんに勝手に因縁をつけて目の敵にして襲い掛かって…その結果、永遠さんをこのような状態にした貴方が…今さら謝罪ですって!!」

 

「貴方があんなシステムを動かさなければ永遠はこんな事にはならなかった!」

 

ラウラ

「…その…通りだ…だから…謝りに来た………すまなかった!!」

 

セシリア&簪&本音

「………」

 

千冬

「…こいつはお前達に非難されるのも覚悟でココに来たんだ…それだけは分かってやってくれ………それから…確かにこいつの行動は私のせいでもあった…スマン…まさかこんな事になるとは思わなかったんだ…」

 

セシリア&簪&本音

「………」

 

千冬

「…本当にスマン…」

 

本音

「………分かった…」

 

セシリア&簪

「本音(さん)!?」

 

本音

「…でも、謝るのは永遠が目を覚ました時に言って…それで永遠が許したら私も許す…だから…永遠が許すまで私は貴方を許さない!!」

 

ラウラ

「………」

 

千冬

「…そうか…オルコット…更識…お前達は?」

 

セシリア

「…わたくしもそれでいいですわ…」

 

「…私もです…」

 

ラウラ

「…すまない…」

 

 わたくし達の間での話は一先ず落ち着いたのですが…

 

 ドドドドドド…

 

セシリア&簪&本音&千冬&ラウラ

「ん?」

 

 何かがこちらに向かって来る様な音が聞こえてきました

 

 バタンッ!!

 

クロエ

「兄様あああぁぁぁーーーっ!!!」

 

セシリア&簪&本音

「クロエさん!?」

 

 何でココに!?

 

クロエ

「【戦国龍皇】のデータ収集が一段落したので急いで飛んできました!!」

 

千冬

「…やはり束も知っていたか…」

 

クロエ

「はい!それで千冬様!兄様の容体は!?」

 

千冬

「…見ての通りだ…傷の治療は終わったがまだ目を覚まさない…」

 

クロエ

「…そうですか………ではこれを使ってください!!」

 

 クロエさんは懐から一粒のカプセルを出しました

 

千冬

「何だこれは?」

 

クロエ

「これは束様が造った医療用ナノマシン入りのカプセルです!コレを兄様に飲ませればこんな傷すぐに直ります!」

 

千冬

「…それはありがたいが…どうやって飲ませる気だ?」

 

クロエ

「………え?」

 

セシリア

「クロエさん…今の永遠さん…カプセルなんか飲めませんわよ…」

 

クロエ

「あ………ちょ、ちょっと待って下さいね!?」

 

 クロエさんはそう言って近くにあった注射器を使って何かをし始めました

 

クロエ

「…出来ました!注射器にナノマシンを入れたので兄様の体に直接注入出来ます!!」

 

千冬

「…本当に大丈夫なのか?」

 

クロエ

「大丈夫です!!」

 

千冬

「…まあお前がそう言うなら…やってみるか…」

 

 織斑先生はナノマシン入り注射器を受け取ると永遠さんに注射しました

 

千冬

「終わったぞ。」

 

クロエ

「これで兄様は大丈夫です!!」

 

千冬

「そうか…所で束の奴はいつの間にこんな物を造ったんだ?【ラインバレル】の研究の成果か?」

 

クロエ

「いえ違います。これは【ラインバレル】の研究を始める前に造った物です。【ラインバレル】とこの医療ナノマシンは似ているようで全く違いますから。」

 

千冬

「…そうなのか…」

 

クロエ

「はい…それで…兄様をこんな姿にしたのは誰ですか…」

 

 やっぱり聞きますわよね…

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 …う~む…何と言うべきか…

 とりあえず、探してる奴はココにいるんだが…

 

ラウラ

「…私だ…」

 

クロエ

「貴方ですか!?…って貴方は!?」

 

ラウラ

「?」

 

クロエ

「よりにもよって貴方が兄様を…」

 

千冬

「クロニクル…お前コイツを知ってるのか?」

 

クロエ

「…貴方の名前は?」

 

ラウラ

「ラ、ラウラ・ボーデヴィッヒだ…」

 

クロエ

「やはりそうでしたか………私は貴方です。」

 

ラウラ

「えっ!?」

 

 クロニクルがラウラだと?

 

千冬

「どういう事だ?お前がコイツと言うのは?」

 

ラウラ

「ま、まさか…お前は!?」

 

 ん?ラウラはコイツの言う事が分かるのか?

 

クロエ

「…そう、私は貴方の失敗作…ラウラ・ボーデヴィッヒになれなかった『廃棄品』です…」

 

セシリア&簪&本音&千冬

「!?」

 

千冬

「ラウラの…廃棄品だと!?」

 

クロエ

「…私達の生まれからすれば貴方は私の妹という事になりますね…」

 

千冬

「い、妹!?」

 

クロエ

「千冬様は彼女の出生をご存知ですか?」

 

千冬

「い、いや…そこまでは知らないが…」

 

クロエ

「ではお教えしましょう。私と彼女はドイツで生み出された遺伝子強化試験体…簡単に言えば試験管ベビーです。」

 

セシリア&簪&本音&千冬

「なっ!?」

 

千冬

「ラウラ!本当なのか!?」

 

ラウラ

「…はい…」

 

 アイツ等!【VTシステム】だけでなく、そんな事にまで手を付けていたのか!?

 

クロエ

「ですが、その過程で必要最低限の能力を持たなかった者、体に何かしらの異常があった者は失敗作として廃棄されていたのです。私もその廃棄品の一人として処分されたのですが、そんな私を束様が拾ってくださり、『クロエ・クロニクル』と言う名をつけてくださいました。」

 

セシリア

「そ、そんな!?」

 

「酷い!?」

 

本音

「でも何で姉妹なの?」

 

クロエ

「私と彼女は同じ遺伝子情報を元に生み出されたからです。そして私の方が早く作り出されたので私が姉という事になるんです。」

 

 …そうか…だからこの二人はこんなに似ていたのか…

 

ラウラ

「ね、姉さん?」

 

クロエ

「先程は貴方を妹と言いましたが、それは皆様に説明する為…私は貴方と姉妹だなんて認めていません。」

 

ラウラ

「な、何で!?」

 

クロエ

「貴方は私の成れなかった完成形…貴方と姉妹と認めてしまえば私は『クロエ・クロニクル』では無く、『ラウラ・ボーデヴィッヒの失敗作』になってしまうからですよ。」

 

ラウラ

「!?」

 

クロエ

「束様に拾われ名前を付けて貰った事も…永遠兄様が妹にしてくれた事も…全て『クロエ・クロニクル』と言う一人の人間です。私はもう昔の自分に戻りたくないんですよ。貴方の廃棄品と言う負の産物には…貴方の影になるのは…嫌なんですよ!!」

 

ラウラ

「!?………貴方が…私の影…」

 

クロエ

「分かったら二度と私を姉などと呼ばないでください!」

 

ラウラ

「………」

 

「………クロエ…そう嫌うでない…」

 

全員

「!?」

 

セシリア

「永遠さん!?」

 

「目を覚ましたの!?」

 

本音

「良かったよ~♪」

 

永遠

「何とかな…」

 

 …明らかに無理をしているな…いくら束のナノマシンでもあれだけの傷がこんな短時間で塞がるとも思えん…

 …クロニクルの為か…

 

クロエ

「兄様…」

 

永遠

「…クロエ…そうチビッ子を拒絶するな…お主を捨てたのはドイツの馬鹿共であってチビッ子では無かろう?」

 

クロエ

「で、ですが!?」

 

永遠

「折角会えた妹じゃろう?」

 

クロエ

「違います!私の家族は束様と兄様だけです!私は二人がいてくれればそれでいいんです!!私に妹なんかいりません!!」

 

永遠

「クロエ!!!!」

 

クロエ

「!?…に、兄様…」

 

千冬

「そんな大声を出すな!まだ傷は塞がってないんだぞ…」

 

永遠

「っはぁ…はぁ…いいかクロエ…チビッ子はお前の妹じゃ。たった一人の…血の繋がった姉妹…家族なんじゃ…」

 

ラウラ

「!?」

 

クロエ

「で、でも…認めてしまったら私は…今まで犠牲になった姉妹達は…」

 

永遠

「…お前達が仲違いして…犠牲になった姉妹達が喜ぶと思うのか…」

 

クロエ

「!?」

 

永遠

「…それにな…ワシにとってクロエはクロエじゃ…チビッ子の失敗作だの影だの知った事では無いわい…お主はワシの妹…クロエ・クロニクルじゃ…それ以外の何者でも無い!!」

 

クロエ

「…にい…さま………兄様あああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!」

 

千冬

「あ!」

 

 今の火ノ兄に抱き着いたりしたら…

 

永遠

「ぎゃあああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!」

 

 やっぱりこうなるか…

 

クロエ

「す、すみません!!」

 

永遠

「…ぐぎぎっ…わ、分かったら…チビッ子と…話…せ…ガクッ!!」

 

クロエ

「兄様!?」

 

セシリア&簪&本音

「永遠(さん)!?」

 

千冬

「…気絶している…タダでさえ無理をしていた所にお前が抱き着いたりしたからな…」

 

クロエ

「…しゅみましぇん…」

 

千冬

「…これは当分目を覚まさんな………とりあえず…ラウラ、クロニクル…火ノ兄の言ったように屋上にでも行って話して来い。」

 

クロエ&ラウラ

「…はい…」

 

千冬

「それからクロニクル…悪いが帰る時に私の所に来てくれ。預かって欲しい物がある。」

 

クロエ

「…分かりました。」

 

 二人は揃って病室から出て行ったか…

 …あの二人…本当の姉妹になれればいいんだが…

 後は当人達に任せるしかないな…

 さて、色々あったが私がココに来た目的をやるとするか

 

セシリア

「織斑先生…クロエさんに預ける物と言うのは…」

 

千冬

「ああ、それは更識と布仏が持つ火ノ兄のISだ。」

 

「【ラインバレル】と…」

 

本音

「【ドットブラスライザー】ですか~?」

 

千冬

「そうだ。鈴から聞いていると思うがコイツは今回の件で世界中から目を付けられた。今迄は束が情報操作していたお陰でコイツの事は外に漏れてはいなかったが、それも完全にバレてしまった。だからお前達にその3機を事前に確保させておいた。」

 

セシリア

「はい…」

 

千冬

「あの後、案の定私達の所に火ノ兄の情報を教えろと各国のお偉方がやってきてな。とりあえず必要最低限の事しか教えてはいない。そして秘匿した情報の中にはその2機も含まれている。」

 

「…何となく分かりました…各国に【ラインバレル】と【ドットブラスライザー】の存在がバレる前に束さんの所に隠そうと言う事ですね?」

 

千冬

「そうだ、連中が生徒達から話を聞けばこの2機の存在はすぐにバレる。だからその前にアイツに預けておくのが一番安全と判断した。それに束ならこの2機を悪用する事も無いだろう。」

 

 するつもりならとっくの昔にやっているからな…

 

セシリア

「確かにそうですわね…特に【ラインバレル】の能力はある意味【戦国龍皇】以上に危険ですわ…その気になればこの機体だけで世界中の重要施設を破壊する事も可能ですもの…」

 

「それに【ドットブラスライザー】もだよ。変形や合体は色々と応用も効く機能だし!」

 

千冬

「そう言う事だ…まあ【転送】に関しては束でさえ解析出来ないみたいだから量産される事は無いだろうが…」

 

「どちらも奪われたら危険という事ですね?」

 

千冬

「その通りだ。そう言う訳で私はその3機を受け取りに来たんだ。クロニクルが来たのは丁度良かったからアイツに預ければいいだろ。」

 

本音

「あの~それで【戦国龍皇】はどうするんですか~?」

 

千冬

「今からこっちで解析作業を始める。それが終わったら【戦国龍皇】も束に預けるつもりだ。それに、アイツも実物を解析したいだろうしな。」

 

セシリア&簪&本音

「あははは…」

 

 3人揃って乾いた笑いをしおって…【戦国龍皇】を解析したくてうずうずしている束の姿が目に浮かんだんだろうな…私もそうだが…

 出来るだけ早く解析を済ませておきたいな…

 『あの馬鹿』が何を仕出かすか分からんからな…

 とりあえず、私はオルコット達から3本の刀を預かって病室を後にした

 

 ~千冬 Side out~

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第089話:クロエとラウラ

 ~ラウラ Side~

 

 私は今、自分の姉と呼べる人と共に屋上に来ている…

 教官と火ノ兄に言われたように二人だけで話す為だ………だが…

 

ラウラ

「………」

 

 …一体何を話せばいいんだ…

 私が話のキッカケに悩んでいると…

 

クロエ

「…ラウラ様…」

 

ラウラ

「!?…は、はい!」

 

 向こうから話しかけてくれた…だが…

 『ラウラ様』…か…

 

クロエ

「まず先に言っておきます。私は貴方が嫌いです。私の存在理由もそうですが、永遠兄様をあのような目に合わせた貴方を私は許す事が出来ません。」

 

ラウラ

「………そう…ですね…」

 

 この人の言う通りだ…

 オルコット達でさえ私を許さないと言ってるんだ…

 火ノ兄の妹でもあるこの人が許すわけが無い…

 

クロエ

「兄様は私に始めて家族と言うものを教えてくれた方です。」

 

ラウラ

「…家族…」

 

クロエ

「そうです。その兄様を…よりにもよってもう一人の私とも言える存在の貴方が殺そうとするなんて思っても見ませんでした。」

 

ラウラ

「そ、それは!?」

 

クロエ

「最終的には貴方の機体の暴走で兄様は傷付きました。ですが、それ以前から貴方は兄様に敵意を剥き出しにしていましたよね?」

 

ラウラ

「うっ…その…通りです…」

 

 やっぱり知っていたのか…

 

クロエ

「兄様が貴方に何かしたんですか?貴方に敵意を向けられる様な事をされたんですか?」

 

ラウラ

「…それは………何も…していません…」

 

 …そうだ…アイツは私に何もしていない…

 …私が火ノ兄に敵意を持っていたのは教官が自分より火ノ兄が強いと言っていたからだ…

 …私はそれが認められずにアイツに一方的に因縁をつけていたんだ…

 

クロエ

「でしょうね。兄様は人の恨みを買う様な事もしますが意味も無く売る人ではありませんからね。…それにしても…随分迷惑な人ですね…貴方…」

 

ラウラ

「ううっ…」

 

クロエ

「まあ、貴方の行動のいくらかは千冬様が原因ですから、貴方だけを責めると言う事は私はしませんよ。」

 

ラウラ

「………」

 

クロエ

「そう言えば…何故貴方は兄様の病室にいたんですか?寝込みを襲って仕返しをしようとしたのですか?」

 

ラウラ

「ち、違います!?」

 

クロエ

「え?違うんですか?貴方ならそのくらい平気でやると思いましたが?」

 

 …否定出来ない…

 

ラウラ

「…ただ私は…アイツに謝ろうと…」

 

クロエ

「謝る?」

 

ラウラ

「…はい…後…助けてくれたお礼も…」

 

クロエ

「お礼ですか?」

 

ラウラ

「は、はい…」

 

クロエ

「そうですか…セシリア様達は何と?」

 

ラウラ

「…火ノ兄が許すまで許さないと…火ノ兄が許せば自分達も許すと言いました…」

 

クロエ

「フフッ♪あの方達らしいですね♪…では私もそうしましょう。」

 

ラウラ

「え?」

 

クロエ

「兄様が貴方を許せば私も今回の件は許しましょう。あくまで今回の事ですが。」

 

 それはつまり…私達の関係に関しては別という事か…

 だが…それでも…

 

ラウラ

「…ありがとうございます…」

 

クロエ

「お礼を言うなら兄様に先に言ってください。もっとも私のせいで何時目を覚ますかまた分からなくなりましたが。」

 

ラウラ

「………はい…」

 

クロエ

「…まあ兄様なら貴方が反省しさえすれば笑って許すとは思いますが…(あの人は基本、超が付くほどお人好しで能天気な人ですからね)…では、兄様の事はこれでいいです。………後は…」

 

ラウラ

「………」

 

クロエ

「…私たち自身の事ですね…」

 

 いよいよか…だが…

 ………私は…この人とどうなりたいんだ?

 

 ~ラウラ Side out~

 

 

 

 ~クロエ Side~

 

 さて…どうしましょうか…

 兄様はあの時…

 

クロエ

「…犠牲になった姉妹は喜ばない…ですか…」

 

ラウラ

「…え?」

 

クロエ

「そうですね…確かに貴方を拒んだところで皆が帰って来る訳でも無いですし…ドイツの馬鹿共が捕まる訳でもありませんからね…それにあの国に対してはもうどうでもいいですし…」

 

 アレ?…そう考えるとなんだか…

 

クロエ

「………貴方を恨んでた自分が阿呆らしくなってきましたね…」

 

ラウラ

「へ?」

 

クロエ

「まさか兄様はそれに気付かせる為に?…いえ、アレはただのお説教ですね!うん!そうに違いありません!」

 

 取り合えず自己完結をする事にして…

 

ラウラ

「………」

 

 彼女との関係はどうしましょうか?

 

ラウラ

「………あ、あの…」

 

クロエ

「はい?」

 

ラウラ

「い、今仰った事は…その、本当なのですか?」

 

クロエ

「今、と言うのは?」

 

ラウラ

「だから…私を恨むのが阿呆らしいと言うのは…」

 

クロエ

「ええ、本当ですよ。何だかどうでもよくなってきました。ああでも貴方が兄様を傷付けた事に関しては許してませんよ。それとこれとは別問題ですから。」

 

ラウラ

「は、はい…」

 

クロエ

「ではどうでもよくなったので聞きますが…貴方は私をどうしたいんですか?」

 

ラウラ

「どうしたいか…」

 

クロエ

「私と家族になりたいですか?それとも自分の廃棄品を始末しますか?」

 

ラウラ

「し、始末なんて考えていません!!」

 

クロエ

「そうですか。」

 

 まあ仮にそのつもりだとしても彼女の実力では私は殺せませんけどね

 私も伊達に束様の助手と兄様の妹をやってはいません

 この1年の間に兄様に稽古をつけて貰っていますから下手な軍人には負けませんし、束様から頂いたISもあります…

 そう考えると………

 私は…家族に思われているんですね~…

 束様はISを…兄様は戦う術を…私に与えてくれた…

 私を…守る為に…

 私は…愛されているんですね~…

 

クロエ

「フフッ♪」

 

 そう思うと嬉しくなりますね♪

 

ラウラ

「?…あ、あの…」

 

クロエ

「ああすみません…思考がズレました…」

 

 さて、始末する気は無いと言いますが…

 

クロエ

「では家族になりたいんですか?」

 

ラウラ

「…それは…分かりません…ですが貴方に危害を加えるつもりはありません!それだけは断言出来ます!」

 

 フム…この眼は本気で言ってますね…

 

クロエ

「では暫くは現状維持にしましょうか?私もああは言いましたけど行き成り妹が出来たなんて言われてもすぐには受け入れられませんからね。」

 

 兄様はアッサリ受け入れてくれましたけど…

 私にはすぐには答えられませんよ…

 

クロエ

「それに私は貴方の存在自体は知っていましたが貴方がどういう人間かと言われたら…貴方は私の家族を逆恨みで傷つけた傍迷惑な人と認識してます…私達の出生は別にしてもそう簡単に受け入れられませんよ…」

 

ラウラ

「!?…そう、ですね…私は…そう思われる事をしてきたんですよね…」

 

クロエ

「はい、それに貴方は私の事を何も知らないでしょう?」

 

ラウラ

「…はい…」

 

クロエ

「ですからまずは少しずつお互いを知る事にしましょう。それに家族になるにしても兄様が貴方を許さなければそれも出来ませんからね。貴方にそのつもりがあればの話ですけど、それは別にしてもそのくらいしか今は出来ません。」

 

ラウラ

「…そうですね…」

 

クロエ

「では今日はこのくらいにしましょう。」

 

 まあこれが仲直りと言うのかは分かりませんが、蟠りが一つ消えたのは本当ですし、今はこれで良しとしましょう

 

クロエ

「それでは私はこれで失礼しますね。」

 

 …あ!そう言えば千冬様が預かって欲しい物があると言ってましたね

 帰る前に千冬様の所に行かないといけませんね

 

 ~クロエ Side out~

 

 

 

 ~ラウラ Side~

 

ラウラ

「………はぁ~…」

 

 あの人が帰って一人屋上に残った私は深い溜息を吐いた

 それがあの人との蟠りが一つ消えた事への喜びなのか…和解への先が長い事への不安から来たものなのか…私には分からなかった

 だが…

 

ラウラ

「…家族か…羨ましいな…」

 

 あの人と話しをして、そして先程の火ノ兄とあの人のやり取りを見てそう思った…

 同じ『ラウラ・ボーデヴィッヒ』として生まれながら完成品の私には家族はいない…

 だが失敗作として廃棄されたあの人には家族がいる…

 私の廃棄品として捨てられ篠ノ之の博士が拾ったのは偶然なんだろう

 でもあの人はそんな篠ノ之博士から名前を貰って育てて貰った

 そして火ノ兄と出会い兄妹になる事で家族を手に入れたんだ

 あの人は…人間だ…

 私の失敗作なんかじゃない…あの人は…人間なんだ!!

 だが…私は…違う!!

 今なら分かる…私は…ISを効率よく動かす為のパーツだったんだ!

 だから私のISに【VTシステム】が積まれていた

 私は所詮…使い捨ての部品だったんだ…

 

ラウラ

「…教官の言う通りだ…私はISに選ばれたと思って気取っていただけだ…」

 

 私はいつの間にか自己嫌悪に陥ってしまっていた

 私がそのまま悩んでいると教官に言われた事を思い出した

 

ラウラ

「…私になれ、か…もしかして教官は人間になれと言う意味も込めてああ言ってくれたんだろうか?」

 

 もしそうだとしたら…

 

ラウラ

「私も…なれるだろうか…部品ではない…ただの人間に…」

 

 私はいつの間にか教官に言われた言葉を勝手にそう解釈していた

 そしてこれからどうするか、どうなりたいかを考えた結果…

 

ラウラ

「私は…あの人の…クロエさんの妹になりたい!!」

 

 そう決めた!

 その為にもクロエさんにとっての良い妹にならねば!!

 

ラウラ

「…ん?」

 

 あ、そう言えば…

 

ラウラ

「そうだ!クロエさんの妹になるという事は火ノ兄の妹にもなる訳だ!!」

 

 そうか!私がクロエさんと姉妹になれば火ノ兄との3兄妹になるんだ!

 

ラウラ

「よし!!これからは心を入れ替えてあの2人の妹に相応しい人間になろう!!」

 

 …だがそうなると…

 

ラウラ

「あの2人を何と呼べばいいんだ?クロエさんは火ノ兄を兄様と呼んでいたが同じ呼び方は悪い気がするし…う~ん…」

 

 私は2人の呼び方を考えたがいい呼び方が思いつかなかった

 なので…

 

ラウラ

「…仕方無い…アイツに頼るか!」

 

 とりあえず部下の1人に相談する事にした

 

 ~ラウラ Side out~

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第090話:父の願い・娘の決意

 

 ~シャルル Side~

 

シャルル

「………時間だ…」

 

 僕は時計を見ながらそう呟いた…

 隣にいる一夏も頷いた

 僕はこれから父に連絡しようとしていた

 火ノ兄君から父の本心を確かめろと言われてどうすればいいか考えていたら一夏が織斑先生を経由して篠ノ之博士に父のスケジュールを調べてくれた

 そして今が父が一人でいる時間だった

 それを狙って父と話そうとしたんだ…

 でも…

 

シャルル

「………」

 

一夏

「…シャルル…」

 

 僕は中々電話を掛けられなかった

 父と話して、父も本妻と同じ考えかもしれないと思うと怖くて携帯のボタンを中々押せなかった

 

シャルル

「ううっ…」

 

 僕は震える指で番号を押していった

 そしてあと一つと言う所まで来たけど最後のボタンが押せなかった

 その時…

 

一夏

「大丈夫だ!!」

 

 一夏が僕の肩を叩いて励ましてくれた

 

一夏

「シャルル…俺は…火ノ兄の言う通り口先だけの男かもしれない…でも…今だけはお前を支える!どんな答えが来ても俺も一緒に受け止めてやる!!」

 

シャルル

「一夏…」

 

 一夏の励ましを聞いているといつの間にか体の震えが止まっていた

 

シャルル

「…ありがとう!!」

 

 そして僕は…最後のボタンを押した!

 それから少しすると…

 

 ガチャ!

 

「誰だね?」

 

 父に繋がった…

 

 ~シャルル Side out~

 

 

 

 ~デュノア社長 Side~

 

デュノア社長

「………」

 

 久しぶりだな…こんなに落ち着いた時間は…

 いつもアイツか、アイツの息のかかった奴の目があったからな…

 いや、今も目はあるか…

 この社長室には無数の監視カメラと盗聴器が仕掛けられているからな…監視されている事に変わりはないか…

 だが…それでも今は周りに誰もいない…

 一人でいる事がこんなにも心の休まる瞬間とは皮肉なものだな…

 

デュノア社長

「…上手くいっているだろうか…」

 

 そして私はIS学園にスパイとして送り込んだ娘の事を考えていた

 本当はあの子にこんな事をさせたくなかったがアイツに逆らえない私にはどうしようもなかった

 だが、同時にこれはチャンスでもあった

 あの子だけでも解放させる僅かなチャンスが…しかし、その為にはシャルロット自身にも動いて貰わなければならない…

 何とかそれを伝える事が出来れば…

 クソッ!!既に下準備は出来ていると言うのに最後の一手が打てないとは…

 これほど歯がゆいとは…

 そんな事を考えていると…

 

 Prrrrr

 

デュノア社長

「ん?」

 

 突然私の携帯が鳴った

 私はどうせアイツからだろうと思い、うんざりしながら携帯の画面を見た

 

デュノア社長

「!?」

 

 だが相手はアイツじゃなかった…

 私は必死に声を抑えた

 何故なら相手は私が思い続けていた娘…シャルロットからだった

 私はすぐにでも出ようとしたがそれを抑えた

 色々と疑問が出て来たからだ…

 何故この時間にかけて来た…

 定期報告の時間では無い…

 しかもアイツがいない一人の時にかけて来た…

 まさか…狙って掛けて来たのか?

 そんな疑問が頭の中を駆け巡った

 だが、私はそんな考えをすぐに捨て去った

 何故ならこれは絶好の機会だ!!

 だが、この電話もあいつ等に盗聴されている筈…下手な事は言えない…

 ならば私に出来るのは上手くあの子をあそこに連絡するように誘導する事のみ!

 その為なら…あの子が解放される為なら…私は娘に軽蔑されても構わん!!

 意を決した私は電話に出た…

 

デュノア社長

「誰だね?」

 

 スマナイ…シャルロット…

 

 ~デュノア社長 Side out~

 

 

 

 ~シャルル Side~

 

デュノア社長

『誰だね?』

 

 …久しぶりに聞いた父の声はとても冷たかった…

 

シャルル

「シ、シャルロットです…」

 

デュノア社長

『ああ、『シャルル』か…』

 

 …シャルル…か…

 

デュノア社長

『こんな時間に何の用だ?定期報告の時間では無いぞ?』

 

シャルル

「お、お父さんと…少し話したくて…」

 

デュノア社長

『!?』

 

 ?…何だろ、今の反応?

 

デュノア社長

『…こちらには無い。それに私は忙しい。下らない事で連絡などしてくるな。私が聞きたいのは【白式】のデータを手に入れたと言う報告だけだ。』

 

 …やっぱり…駄目みたいだな…

 

シャルル

「…そう…ですか…失礼しました…」

 

 僕はそう言って電話を切ろうとした

 でもその時…

 

デュノア社長

『ああ少し待て。』

 

 あの人が止めた

 何だろう?もう僕には用なんか無い筈だけど…

 

デュノア社長

『私に話があると言ったな?』

 

シャルル

「え?あ、はい…」

 

 もしかして話をする気になったのかな?

 

デュノア社長

『私は今言ったように忙しい。お前の任務について何か分からない事が出来たのなら丁度そっちに私の部下がいるから彼女に聞いて貰え。連絡先は後で送る。彼女が聞いても対処出来ない様なら改めて私に連絡しろ。』

 

シャルル

「…はい…」

 

 違った…

 

デュノア社長

『…ではこの後すぐに送る。』

 

 Pi!

 

 最後にそう言って電話を切られた…

 そしてすぐにさっき言ってた連絡先のメールが送られてきた

 僕は送られてきたメールをぼんやり見ていると…

 

一夏

「シャルル…大丈夫か?」

 

シャルル

「大丈夫…とは言えないね…」

 

一夏

「…だよな…」

 

 僕がこれからどうしようか考え始めると…

 

一夏

「なぁシャルル…今送られてきた連絡先に一度連絡してみないか?」

 

シャルル

「え?」

 

 一夏があの人から言われた人に連絡しようと言い出した

 

シャルル

「何で?」

 

一夏

「ああ、俺の気のせいかもしれないけどお前の親父さん…シャルルをそこに連絡させようとした感じに聞こえたんだよ…」

 

シャルル

「え…」

 

 そう言われると…そう思えるな…

 でも何故?

 僕は改めて送られたメールを見て…

 

シャルル

「…そうだね…一度連絡してみようか?」

 

 連絡する事にした

 僕は早速そこに電話をかけてみた

 

 ~シャルル Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 シャルルは俺の提案の乗って親父さんから送られた場所に電話をかけた

 そして…

 

シャルル

「もしもし…」

 

『はい…どちら様ですか?』

 

 繋がるとシャルルはスピーカーに変えて俺にも聞こえる様にしてくれた

 そして聞こえて来たのは女性の声だった

 

シャルル

「あ、あの…僕…シャ、シャルロット・デュノアと言います…」

 

女性

『デュノア様ですか!?』

 

シャルル

「は、はい…そうです…」

 

 何だ?

 シャルルが連絡した事に凄く驚いてるみたいだけど…

 

女性

『行き成りで失礼ですが何故私に連絡を?』

 

シャルル

「父から…社長から…相談があるならココに連絡しろと言われて…」

 

女性

『…社長からココに連絡される様に言われたんですね?』

 

シャルル

「は、はい!そうです…」

 

女性

『少々お待ちください。』

 

 ?…妙に社長からってところを強調してる様な…気のせいかな?

 それから暫く待っていると…

 

女性

『お待たせしました!…お待ちしておりました…『シャルロットお嬢様』!!』

 

一夏&シャルル

「…え?」

 

 シャルロット…お嬢様!?

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~シャルル Side~

 

シャルル

「あ、あの…今なんて…」

 

女性

『はい、お嬢様と呼びました。』

 

 お嬢様!?

 何で僕をそんな風に呼ぶの?

 

シャルル

「どうして僕を…」

 

女性

『貴方は社長のたった一人のご息女…それならばお嬢様と呼ぶのは当然ではありませんか。』

 

シャルル

「で、でもあの人は僕を…僕を…娘だなんて思ってない…」

 

女性

『…やはりそう思われておられたんですね…』

 

シャルル

「え?」

 

女性

『お嬢様…社長は貴方の事を一人の娘として愛しておられます。』

 

シャルル

「………え?」

 

 僕を…愛してる?

 

シャルル

「な、何を言ってるんですか!?」

 

女性

『そう思われるのは仕方がありません…ですが社長は常に貴方の事を想っています…』

 

シャルル

「で、でも…」

 

女性

『社長の貴方への態度の事を言いたいのでしょうがアレはワザとです。』

 

シャルル

「え?」

 

女性

『落ち着いて聞いて下さい…社長は………』

 

 そして女性は話してくれた…

 あの人の…父の本心を…

 父は火ノ兄君の言う通りやはり飾り物になっていた

 常に監視され、一人でいても監視カメラや盗聴器で行動を監視されていた

 つまり僕がさっき電話をした時も本妻達の耳があったという事…

 そんな父も僕と死んだお母さんにだけは本妻達が手を出さないようにしてくれていたそうなんだけど、母が死んだことをきっかけに僕を連れて来てしまった

 父は僕と親子として接すれば本妻が僕に何をするか分からないと考え、他人の様に接する事を決めたそうだ

 そして僕がIS学園にスパイとして送り込まれる事が決まった際、父は僕だけでも解放しようと考え、それを利用して僕を日本に『亡命』させようとした

 父は…火ノ兄君と同じ事を考えていたんだ…

 この女性はそんな父の命を受け、日本に転勤と言う形でやって来て、僕の亡命の為の手続きをしてくれていた

 しかも父は秘密裏に母のお墓も日本に移していたそうだ

 

シャルル

「…お、父…さん…」

 

女性

『お嬢様…社長を父と呼んで下さり…ありがとうございます…』

 

 僕が父と呼んだことを感謝した

 そうか…さっき電話した時に僕が『お父さん』と言った時の反応はこういう事だったんだ

 

女性

『………ではお嬢様…次の休みの日にこちらにお越しください。後はお嬢様のサインを頂ければ全て終わります。』

 

シャルル

「…はい…分かりました…」

 

女性

『では、お待ちしております。』

 

 Pi!

 

 電話を切ると…

 

シャルル

「うっ…ううっ…うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」

 

 僕は隣にいた一夏の胸に飛び込んで大声で泣いた…

 僕を…お母さんを…愛してくれていた事が嬉しくて泣いた

 泣き続ける僕を一夏は何も言わずに背中を擦ってくれた

 

 ~シャルル Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

シャルル

「ヒック…グスンッ…」

 

一夏

「もういいのか?」

 

シャルル

「グスッ…うん…ありがとう一夏…」

 

一夏

「気にすんな。」

 

 俺に出来る事って言ったらこれくらいだからな…

 それから暫くしてシャルルが落ち着くと…

 

シャルル

「…ねえ一夏?」

 

一夏

「ん?」

 

シャルル

「今日って大浴場使えたよね?」

 

一夏

「ああ、山田先生がそう言ってたな…」

 

 いきなりそんな事を言って来た

 気分を変える為に風呂に入りたいのか?

 それなら俺に聞く必要は無い筈だが…

 

シャルル

「じゃあ入ろ♪」

 

一夏

「ああ…え?」

 

 今なんて言った?

 今の言い方だと…

 

一夏

「なあシャルル?気のせいなら謝るけど、俺の耳には『一緒に入ろう』って聞こえたんだが?」

 

シャルル

「そう言ったんだよ♪」///

 

一夏

「いやいやいやいや!同年代の女子と風呂に入れる訳無いだろ!!」

 

 いきなり何言いだすんだ!

 千冬姉からも入学初日に注意されたんだぞ!

 バレたらどうなるか…

 

シャルル

「お礼に背中を流してあげるよ♪」///

 

一夏

「人の話を聞けぇぇぇっ!!」

 

 結局俺はそのままシャルルに大浴場まで引きずられて背中を流して貰ったのだった…

 

 ~一夏 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第091話:生まれ変わった淑女と暴走気味の黒兎

お気に入りが1700を超えました!!

応援ありがとうございます♪



 ~一夏 Side~

 

 シャルル…いや、シャルロットが親父さんの真意を知った翌日…

 シャルロットは俺よりも先に部屋を出て行ったけど何故か教室には来ていなかった

 どうしたのかと思っていると千冬姉と山田先生が来てしまった

 けど…

 

一夏

「…え?」

 

 2人の後ろに続いて教室に入って来たのは…

 

千冬

「挨拶しろ。」

 

シャルロット

「シャルロット・デュノアです♪」

 

全員

「…え?」

 

 女子の制服を着たシャルロットだった

 クラスの全員(オルコットとのほほんさん以外)がシャルロットの姿に驚いていた

 そりゃそうだよな…

 今迄男と思っていた奴が女の恰好で現れたらな…

 けど…やっぱりオルコットとのほほんさんはシャルロットの正体を知ってたんだな…

 あの2人は4組の更識さんと一緒に火ノ兄の家によく行ってるからな…束さんから聞かされていてもおかしくないか…

 俺がそんな事を考えている間…

 

真耶

「え~…という訳で、デュノア『君』は実はデュノア『さん』でした…」

 

 山田先生の紹介が続いていた

 すると…

 

生徒1

「デュノア君って女だったの!?」

 

生徒2

「美少年じゃなくて美少女だったなんて…」

 

生徒3

「これじゃ折角考えていた『一×シャル』本が描けないよ~…」

 

生徒4

「やっぱり()()()()()()の『永×一』本しかないのね!!」

 

 ………なんか一部寒気を感じる台詞が…

 俺が悪寒に震えていると…

 

生徒2

「アレ?そう言えば昨日って大浴場は男子が使ってたよね?」

 

一夏

「!?」

 

 マズイ!!!

 

生徒3

「うん、火ノ兄君は大怪我をしたから入れない筈だけど…」

 

 ヤバイヤバイヤバイ!!!

 このままじゃ俺が昨日シャルロットと風呂に入ったのがバレちまう!!

 ってシャルロット!?

 そんな風に顔を赤くしてモジモジしたら…

 

「一夏ぁぁぁぁぁっ!!!どういう事だぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 完全にバレるじゃねぇぇぇぇぇかぁぁぁぁぁっ!!!

 キレた箒が木刀で殴りかかって来た

 でも…

 

 ガシッ!

 

一夏

「…え?………ボーデヴィッヒ?」

 

 木刀はISを纏ったボーデヴィッヒが受け止めていた

 

一夏

「あ、ありがとう…ってアレ?」

 

 確かコイツのISって…

 

一夏

「そのIS…火ノ兄が破壊したんじゃ…」

 

 あの事件で暴走したボーデヴィッヒのISは進化した火ノ兄の【戦国龍皇】に破壊されたはずだけど…

 

ラウラ

「コアが無事だったからな…予備パーツで組み直した。」

 

一夏

「そ、そうなんだ…え?」

 

 何かコイツ変だぞ?

 こんなに素直だったか?

 

 ザワザワ…

 

 他の皆も俺と同じ事を思ったのかざわめきが起きていた

 

「貴様!何故私の邪魔をした!!」

 

 そんな中、俺を木刀で殴ろうとしていた箒がボーデヴィッヒを睨んでいた

 邪魔って…アレが当たってたら俺怪我してたんだけどな…

 

ラウラ

「クラスメイトが暴力を振るわれそうになれば助けるのが当然では無いのか?」

 

全員

「へ…」

 

 今…何て言った?

 クラスメイト?

 助ける?

 あのボーデヴィッヒが? 

 

全員

「ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――――――っ!!!!!!」

 

 余りにも様変わりしたボーデヴィッヒに一呼吸おいて全員が驚きの声をあげた

 キレていた箒ですらボーデヴィッヒの発言に度肝を抜かれたのか呆然としていた

 周りがざわめいている中、ボーデヴィッヒはISを解除すると…

 

ラウラ

「教官、発言の許可を頂きたいのですが?」

 

千冬

「あ、ああ…構わんぞ…」

 

 千冬姉まで動揺してる…珍しいものを見たな…

 

ラウラ

「皆…」

 

 ボーデヴィッヒが教壇の前に立つと…

 

ラウラ

「すまなかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

 皆の前で『土下座』をした

 

全員

「ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――――――っ!!!!!!」

 

千冬

「ど、土下座!?」

 

 ボーデヴィッヒの立て続けに起こす行動に千冬姉ですら対処が追いつかずに狼狽えていた

 

ラウラ

「私が悪かった!!これからは心を入れ替えて皆と良き関係を築いて行きたい!!」

 

 しかも今までの事を謝って来た!?

 本当にどうしたんだよコイツ!?

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 一体何があったんだ!?

 昨日クロニクルと二人で話させたが…いくらなんでも変わり過ぎだぞ!?

 アイツ一体何を話したんだ!?

 

千冬

「オ、オイ、ラ、じゃなくてボーデヴィッヒ!!お前悪い物でも食ったのか?」

 

 マズイマズイ!危うく公私混同しかけた

 

ラウラ

「いえ、食べてませんが?」

 

 殆ど勢いとはいえかなり失礼な事を聞いたが…普通に答えて来るとは…

 

千冬

「では何があった?言い方はアレだが今までのお前と変わり過ぎだぞ!?」

 

ラウラ

「ハッ!実は先日の事で色々と思う所がありまして、これからは『兄上』と『姉上』に相応しい『妹』になろうと思いました!!」

 

全員

「へ!?」

 

千冬

「兄に姉だと?」

 

 姉と言うのはクロニクルの事だが…兄だと?…ってまさか!?

 

千冬

「おいボーデヴィッヒ!まさかとは思うが兄と言うのは…」

 

ラウラ

「ハッ!()()()()()の事であります!!!」

 

全員

「ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――――――っ!!!!!!」

 

 今日何度目か分からない絶叫がまたもや響いたか…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

千冬

「やはり火ノ兄の事だったか…確かに…お前ならアイツを『兄』と呼べるかもしれんが…」

 

全員

「え?」

 

 どう言う事だよそれ!?

 火ノ兄が兄!?

 アイツは天涯孤独の筈だぞ!?

 

一夏

「ちふ、織斑先生!!どういう意味ですか!?何で火ノ兄が兄になるんですか!?」

 

 俺は遂口出ししてしまった

 でも俺の質問に皆も頷いていた

 

千冬

「それはな…以前火ノ兄の妹を名乗る奴がISを持ってきただろ?」

 

 それって【ラインバレル】の時の事だよな?

 たしか…

 

一夏

「えっと…クロエ・クロニクルさん…だっけ?」

 

千冬

「そいつだ。私も先日知ったんだが実はアイツとボーデヴィッヒは血の繋がった正真正銘の姉妹だったそうだ。」

 

全員

「ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――――――っ!!!!!!」

 

 あの人、ボーデヴィッヒの姉さんだったのか!?

 言われてみるとクロニクルさんとボーデヴィッヒはそっくりだった!?

 

生徒1

「でも織斑先生、2人が姉妹なら何であの時何も無かったんですか?」

 

 そうだな…

 ボーデヴィッヒはお姉さんを見ても何も反応してなかったし、クロニクルさんも相手にしてなかった…

 

千冬

「あ~、それはな…コイツ等には複雑な事情があってな…ボーデヴィッヒは自分に姉がいる事を知らなかったらしい…」

 

生徒3

「え?知らなかった?」

 

ラウラ

「…そうだ…私は自分に姉がいた事を知らなかった…先日、兄上の見舞いに来た姉上と会って初めてその事を聞かされたんだ…」

 

生徒2

「それなら何で最初に来た時に名乗らなかったの?」

 

ラウラ

「それは…」

 

 何だ?答えづらそうな顔になったな?

 でもクロニクルさん…何でボーデヴィッヒに姉って名乗らなかったんだろ?

 って…よく思い出してみたら…

 

一夏

「そう言えばあの人…確かあの時『七徹』してたよな?」

 

全員

「あ!?」

 

千冬

「(でかした一夏!)織斑の言う通りだ…あの時のアイツは徹夜が祟って異常なまでにテンションが上がってたからな…火ノ兄と私くらいしか見えていなかったんだろう…(コレで誤魔化せる筈だ!)」

 

 それなら仕方ないよな…

 千冬姉の説明に皆が納得したみたいに頷いた

 何だかボーデヴィッヒがホッとしてるけど…

 

生徒4

「じゃあ火ノ兄君を兄って呼ぶのは…」

 

千冬

「義理とは言え火ノ兄とクロニクルは兄妹だからな…クロニクルの妹のボーデヴィッヒなら火ノ兄を兄と呼んでもおかしくは無い…だがなボーデヴィッヒ?」

 

ラウラ

「は、はい!」

 

千冬

「お前とクロニクルは血の繋がった姉妹だ。だが火ノ兄とクロニクルは『義理』の兄妹でしかない。あいつ等は血の繋がりや義理なんて物は気にしていないが、だからと言ってあの2人の間にお前も入れる訳では無いぞ?」

 

ラウラ

「!?」

 

千冬

「アイツが拒絶してもお前は文句を言えない…それを分かってるのか?」

 

ラウラ

「…はい…分かってます…兄上と言うのも私が一方的に言ってるだけと言うのは自覚してます…」

 

千冬

「そうか…なら私からは何も言う事は無い…(だがあの火ノ兄が拒絶するとは思えん…普段のアイツは恐ろしい程能天気な奴だからな…私の杞憂で済むだろうが一応は忠告してやらんとな…)」

 

一夏

「………」

 

 多分、これは千冬姉なりの優しさなんだろうな…火ノ兄はまだ療養中だからここで起きてる事を知らない…

 だから、この事を知った時の火ノ兄がボーデヴィッヒを拒絶した時の事も覚悟していろって言ってるんだろうな…

 

全員

「………」

 

 クラスの皆もそれが分かってるのか何も言わずに静かにしている…

 

千冬

「さて!少し暗い話になってしまったが…ところでボーデヴィッヒ?さっきの土下座と兄上、姉上と言う呼び方は何だ?」

 

 今の空気を変えようと千冬姉が話題を変えた

 でもそうだよな?

 ドイツ人のボーデヴィッヒが土下座やあんな古い呼び方をするのは確かに変だよな?

 

ラウラ

「ハッ!実はみんなへの謝罪とお二人の呼び方を部下に相談しました!」

 

千冬

「部下?…あぁ、そう言えばお前はドイツではISの部隊を率いる隊長だったな?」

 

全員

「ええっ!?」

 

 ISの部隊の隊長!?

 ボーデヴィッヒが!?

 

ラウラ

「その通りです!私の部隊【シュヴァルツェ・ハーゼ】の副隊長『クラリッサ』に相談した所、謝るなら『土下座が一番』!呼び方は『兄上』『姉上』と呼ぶのが相応しいと教えられました!!」

 

全員

「………」

 

 自信満々に言うけど…コレって明らかに偏ってるよな?

 

千冬

「そ、そうか…ところでボーデヴィッヒ…コレは私からの忠告だ…その副隊長にプライベートな事を相談するのは止めておけ…」

 

ラウラ

「何故ですか?」

 

千冬

「お前に変な知識を与えそうで怖いからだ…」

 

 あ~、千冬姉も同じ事考えてたんだな…

 何て言うかそのクラリッサって人…聞く限りオタクっぽい感じだもんな~…

 

ラウラ

「わ、分かりました…」

 

千冬

「まあ、土下座はこの際置いておくとして…要するにお前はこれまでの事を反省しているから皆に謝りたいという事でいいんだな?」

 

ラウラ

「はい!!」

 

千冬

「では土下座では無くお前の言葉でもう一度伝えろ。」

 

ラウラ

「ハッ!」

 

 千冬姉がそう言うとボーデヴィッヒは姿勢を正して…

 

ラウラ

「今まで本当にすまなかった!これからは良き学友として接して行きたい!よろしく頼む!!」

 

 そう言って今度は土下座では無く頭を下げて謝った

 ボーデヴィッヒの謝罪に…

 

生徒1

「こちらこそよろしくね♪」

 

生徒2

「仲良くしようね♪」

 

 クラスの皆は受け入れていた

 

ラウラ

「あ、ありがとう!…それから…織斑一夏…」

 

一夏

「え?俺?」

 

ラウラ

「お前にも本当に迷惑をかけた!今迄すまなかった…」

 

 更に俺個人に謝って来た

 

一夏

「い、いや、俺も皆と同じだ…もう気にしてないから…」

 

ラウラ

「そうか…じゃあこれからよろしくな!」

 

一夏

「あ、ああ…それから俺は一夏でいい。」

 

ラウラ

「なら私も名前でいい。改めてよろしくな一夏♪」

 

 そう言いながらラウラは笑みを浮かべた

 コイツ…こんなに可愛く笑えるんだな…

 

「………」

 

一夏

「?」

 

 今、変な視線を感じた気が…気のせいかな?

 

千冬

「では授業を始めるぞ!」

 

 千冬姉が授業を始めた

 

「………」

 

 ~一夏 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第092話:盗難事件発生!盗まれた戦国龍皇!?

 

 ~真耶 Side~

 

 私はあの事件の日からずっと先輩から預かった【戦国龍皇】の解析作業を続けていました

 ですが…

 

真耶

「…はぁ…【戦国龍皇】…私なんかじゃ解析出来ないですよ…」

 

 解析が一向に進まないんですよ~…

 

「そう弱音を吐くな。」

 

真耶

「先輩!」

 

 振り向くとそこには織斑先生がいました

 

千冬

「…余り進んでないようだな?」

 

真耶

「すみません…私なんかじゃ分からない事だらけですよ~…」

 

千冬

「まあ、あの束ですら火ノ兄からデータを貰っていなければ【戦国龍】の解析が出来なかったそうだからな。その進化した【戦国龍皇】の解析ともなればやはり無理があったか…」

 

真耶

「…すみません…」

 

千冬

「別に責めてる訳じゃ無い。」

 

真耶

「はい…先輩…やっぱり篠ノ之博士に任せた方がいいですよ。ココではこの機体の解析はこれ以上は無理です。」

 

千冬

「…そうだな…束に連絡して明日にでもクロニクルに取りに来てもらうか…」

 

真耶

「そうした方がいいですよ!」

 

千冬

「ならそうするか…真耶、スマンが今の時点での解析データを纏めておいてくれないか?」

 

真耶

「博士に渡す為ですね。」

 

千冬

「そうだ。束には私から連絡しておくからスマナイがそっちを頼む。」

 

真耶

「分かりました!」

 

 では早速…

 

千冬

「待て真耶。少し休んでからでいいだろ?」

 

真耶

「え?ですが…」

 

千冬

「コーヒーくらいなら私が奢ってやる。少し付き合え。」

 

真耶

「………はい♪」

 

 私は先輩の気遣いに感謝し、解析室から出ました

 

 ~真耶 Side out~

 

 

 

 ~? Side~

 

 ガチャ…

 

 むっ!…やっと出て行ったか…千冬さんも一緒とは都合がいい…

 あのタッグ戦からあの解析室が無人になるのを毎日見計らっていたが漸くか…

 私は解析室に入ると目的の物の前に来た…

 

「………」

 

 私はすぐにでもそれを手に取りたかった…

 だが、すぐに山田先生が戻って来ると考えその気持ちを我慢し物陰に隠れ息を潜めた

 それから数分すると山田先生が戻って来た

 山田先生は1時間程度作業をすると再び解析室を出て行った

 今度は室内の電源を落としたりして出て行った事から今日の作業はこれで終わったのだろう

 

「…やっと出て行ったか…さてと…」

 

 私は解析室に誰もいなくなるのを確認すると隠れていた場所から出て来た

 そして待機状態の目的の物を手に取った

 

「フフフッ…待たせたな…お前の本当の主が迎えに来たぞ!!…【戦国龍皇】!!!」

 

 遂に【戦国龍皇】を手に入れた!

 私は込み上げてくる笑いを堪え、すぐに解析室を出て部屋へと戻った

 

 ~? Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「ふわ~…」

 

 朝一番で私が欠伸をしていると…

 

真耶

「先輩大変ですっ!!!!」

 

 血相を変えた真耶が慌ててやって来た

 

千冬

「ん?どうした真耶?」

 

真耶

「せ、【戦国龍皇】が!!!」

 

 私はそれだけで真耶が慌てていた理由を察した

 

千冬

「…盗まれたか?」

 

真耶

「はい…すみません!!私の管理不足です!!」

 

千冬

「…そうか…誰かはやると思っていたが…まあ気にするな。」

 

真耶

「気にするなって…早く取り返さないと火ノ兄君に何て言えば…」

 

千冬

「アイツはそんな事を一々気にする奴では無いだろ?それに心配しなくても犯人はすぐにボロを出す。お前忘れたのか?」

 

真耶

「え?」

 

千冬

「アイツのISに組み込まれている防衛機能の事だ。」

 

真耶

「………あ!?そう言えばそうでした!」

 

千冬

「そう言う事だ。今日明日中には犯人の方から名乗り出てくる。」

 

真耶

「ですが…篠ノ之博士には…」

 

千冬

「アイツには私から理由を話して受け渡しを遅らせる。」

 

真耶

「…はい…」

 

千冬

「それに誰がやったのかは想像出来る。お前も本当は分かってるんだろ?」

 

真耶

「…やっぱり…あの子なんでしょうか?」

 

 やはり真耶もアイツの顔が浮かんでいたか

 

千冬

「ああ、アイツが一番【戦国龍】に執着していたからな。むしろアイツしか思い浮かばん。恐らく二次移行(セカンドシフト)したのを見て歯止めが効かなくなったんだろ。」

 

真耶

「…そうですね…」

 

千冬

「…真耶…今日のHRで【戦国龍皇】が盗まれた事をクラスの連中に伝えるぞ。そう言えばアイツもすぐに動くだろ。」

 

真耶

「…分かりました!」 

 

 私達はそう言うと教室に向かった

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 う~ん?どうしたんだろ?

 

「~♪~♪~♪」

 

 朝から箒がやたら上機嫌なんだよな?

 何かあったのかな?

 

千冬

「諸君おはよう。」

 

 そんな事を考えてると千冬姉と山田先生がやって来た

 

千冬

「HRの前に全員に伝えておく事がある。実は昨夜、解析作業中だった火ノ兄の【戦国龍皇】が何者かに盗まれた。」

 

全員

「!?」

 

 【戦国龍皇】が…盗まれただって!?

 クラスの皆もそれを聞いて騒めいていた

 

ラウラ

「それはどう言う事ですか!!」

 

千冬

「そのままの意味だ。今朝、山田先生が解析室に行ったら待機状態の【戦国龍皇】が無くなっていたそうだ。」

 

ラウラ

「そ、そんな…兄上の…【戦国龍皇】が…」

 

シャルロット

「犯人が誰か分かってるんですか!!」

 

真耶

「まだ何も分かってません…」

 

ラウラ

「クソッ!!盗んだ奴を見つけ出して叩きのめしてやる!!!」

 

一夏

「………アレ?」

 

 クラスの皆が騒いでる中、一番大騒ぎしそうな子たちが静かだな?

 

一夏

「…オルコット…のほほんさん…何で黙ってるんだ?」

 

 そう、この二人がとても静かだったんだよな…

 

セシリア

「何も心配してないからですわ。」

 

一夏

「へ?」

 

 どう言う事だ?

 

セシリア

「盗んだところで使える訳無いからですわ。【戦国龍皇】は()()()()()()()ですもの♪」

 

本音

「そだよ~♪()()()()()は泥棒なんかに使えるような機体じゃないよ~♪」

 

「!?」

 

千冬

「それに関しては私達も同意見だ。盗むなんて事をする奴に火ノ兄の機体は使いこなせん。そいつが持っていても宝の持ち腐れだ。」

 

 オルコットとのほほんさんだけじゃなくよく見たら千冬姉達も慌てて無い…

 何でそんなに冷静でいられるんだ?

 

千冬

「とりあえずは【戦国龍皇】が盗まれた事だけは伝えておく。授業を始めるぞ。」

 

 千冬姉はそう言って授業を始めてしまった

 一体どう言う事なんだ?

 

「………」

 

 ~一夏 Side out~

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第093話:龍皇の逆鱗

 ~箒 Side~

 

「………」

 

 今日の授業を全て終えた私は学園近くの砂浜に来ていた

 そしてその手には私のIS…【戦国龍皇】があった

 

「あいつ等…」

 

 私は今朝のHRでオルコットと布仏が言っていた事を思い出していた

 

セシリア

『盗んだところで使える訳無いからですわ。【戦国龍皇】は永遠さんのISですもの♪』

 

本音

『そだよ~♪永遠のISは泥棒なんかに使えるような機体じゃないよ~♪』

 

「私には使えないだと!!盗んだだと!!コレは私のISだ!!私は自分のISを取り返しただけだ!!【戦国龍皇】は私にこそ相応しいISなんだ!!」

 

 私は鞘から刀を抜くと頭上に掲げた

 

「今それを証明してやる!!」

 

 私は自分が【戦国龍皇】を纏った姿を想像しながら頭上で円を描いた

 そして円から現れた炎が私を包み込んだ

 

 ゴオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ――――――――――――ッ!!!!!!

 

 ~箒 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

 【戦国龍皇】が盗まれた話はアッと言う間に学園中に知れ渡りました

 ですが、わたくしや本音さんと同じ様に簪さんと鈴さんも全く慌ててはいませんでした

 

「【戦国龍皇】を盗むね~…馬鹿な事をしたわねそいつ…龍の『逆鱗』に触れるような物よ?」

 

セシリア&ラウラ&シャルロット

「逆鱗?」

 

 逆鱗とは何でしょうか?

 

「ああ、あんた達は知らなかった?『逆鱗』って言うのは龍の急所の事よ。」

 

シャルロット

「龍に急所なんてあるの!?」

 

「あるわよ。」

 

「確か…龍の鱗の中に1枚だけ逆向きの鱗があるんだったよね?」

 

「そうよ。主に首元にあるって言われてるわ。…逆鱗は龍の急所だから龍は触られるのも嫌がるのよ。だから触るだけで龍は怒り狂うって言われてるのよ。」

 

ラウラ

「怒り…」

 

「だから逆鱗は『人を激しく怒らせる』って言う意味でも使われる言葉なのよ。でさ?【戦国龍皇】が永遠以外の奴に使われたらどうなると思う?」

 

本音

「確実に怒り狂うね~♪」

 

セシリア

「そうですわね。それに、そろそろお馬鹿な盗人が龍の逆鱗に触れる頃でしょうね?」

 

「うん!【戦国龍皇】が怒り出す頃!!」

 

一夏&ラウラ&シャルロット

「【戦国龍皇】が?」

 

 そう言えばこの方たちは知りませんでしたわね

 

一夏

「【戦国龍皇】が怒り出すってどういう事だ?」

 

セシリア

「実は永遠さんのISには『防衛機能』と呼ばれる物が付いてるんですよ。」

 

一夏&ラウラ&シャルロット

「『防衛機能』?」

 

ラウラ

「防衛機能とは何の事だ?」

 

「永遠以外で邪念を持つ人が使ったら発動するシステムの事。」

 

一夏

「邪念?」

 

セシリア

「そのままの意味ですわ。邪な考えを持つ人の事です。」

 

シャルロット

「じゃあ、【戦国龍皇】を盗んだ人は…」

 

「間違いなくシステムに…逆鱗に触れるわ。だからそろそろ火災報知器が鳴る頃なんだけど?」

 

ラウラ

「火災報知器だと?…まさか防衛機能と言うのは!?」

 

セシリア

「【戦国龍皇】の防衛機能は相手を死なないレベルで燃やすそうです。」

 

シャルロット

「燃やすって…じゃあ他の2体は?」

 

セシリア

「【ドットブラスライザー】は以前ラウラさんが【クラウンソーラー】を持とうとした時と同じように弾かれます。【ラインバレル】の場合は半径10k圏内のどこかに強制転送されますわ。」

 

一夏&ラウラ&シャルロット

「………」

 

 わたくしの話した防衛機能の内容に言葉を失ってますわね

 それにしても…

 

セシリア

「警報が鳴りませんわね?」

 

本音

「もしかして犯人は外にいるのかな~?」

 

 確かにそれなら警報はなりませんわね…

 

「本音の言う通りかも………あ!?」

 

「どうしたの?」

 

「あれ!」

 

 簪さんが窓の外を指さしました

 そこに見えたのは…

 

ラウラ

「アレは…煙?」

 

セシリア

「あそこにいますわね。…では行きますか。」

 

 わたくしがそう言うと皆さん頷きました

 煙の見えた場所にその場にいた全員で向かう事になりましたわ

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~箒 Side~

 

「ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――っ!!!!!」

 

 私は【戦国龍皇】を展開しようとしてその炎に包まれ燃やされた

 

「熱い熱い熱いいいいいぃぃぃぃぃっ!!!!」

 

 私はすぐに海の中に飛び込んで炎を消した

 

「な、何だこれは!?何故私がこんな事に…」

 

 海から出て来た私は炎に包まれた時に手放した【戦国龍皇】を再び手に取って睨みつけた

 だが、その時…

 

セシリア

「やはり貴方でしたか?…篠ノ之箒さん?」

 

「!?」

 

 声のした方を向くとそこにはオルコット達がいた

 その中には一夏も…

 

 ~箒 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

「何の事だオルコット!?」

 

セシリア

「【戦国龍皇】を盗んだ犯人が貴方だと言ったのですわ。」

 

「予想通りだったね。」

 

「何だと!?」

 

シャルロット

「え!もしかして犯人が箒だって分かってたの?」

 

「【戦国龍皇】を盗んでまで手に入れようとする奴なんてコイツしか思い浮かばないわよ。」

 

一夏

「………」

 

 俺は目の前の光景が信じられなかった

 【戦国龍皇】を盗んだのが箒!?

 けど、信じたくない俺の想いとは裏腹に今の箒は手に待機状態の【戦国龍皇】を持っている

 そして、さっきまで話していた防衛機能によって燃やされたような姿になっていた

 物的証拠が全て揃っていた

 これが龍の逆鱗に触れた奴の姿って事かよ

 しかもオルコット達は犯人が箒だって気付いていただって

 

一夏

「ほ、箒…お前が…盗んだのか…」

 

「違う!!コレは…コレは私のISだ!!」

 

 お前…何言ってるんだよ?

 

ラウラ

「お前のISだと!それは兄上のISだ!!お前の物では無い!!!」

 

「その通りよ。妄想もそこまで行くと滑稽に見えて来るわね。」

 

「妄想だと!!」

 

「【戦国龍皇】がアンタのISですって?なら何でアンタはそんな姿になってるのよ?」

 

「コレは…」

 

「【戦国龍皇】を纏おうとしてその炎に燃やされたんでしょ?」

 

「!?…お前達…こうなった理由を知っているのか!?」

 

「おかしいわね~?何でアンタがそれを知らないの?【戦国龍皇】がアンタのISなら知ってる筈よね~?」

 

「ぐっ!」

 

「まあ教えてあげるわよ。【戦国龍皇】はね、邪念を持つ奴が使おうとするとそいつを死なないレベルで燃やすのよ。」

 

「邪念だと!?ふざけるな!!私にそんなものがあるものか!!」

 

セシリア

「ですが実際に燃やされているではないですか?貴方が否定するのは勝手ですが少なくとも【戦国龍皇】自身は貴方に邪念があると判断して拒絶していますわ。」

 

「!?…私が…拒まれただと!?」

 

セシリア

「そうですわ。そもそも他人のISを盗むなんて事をする人に邪念が無いと言うのですか?今の貴方の姿が邪念があると言う何よりの証拠ですわ。」

 

「ついでにもう一つ教えてあげるわ。永遠の残りの2機にも同じ機能が組み込まれてる。そしてそのうちの一つ【ドットブラスライザー】を簪と本音は使った事があるのよ。」

 

「何!?」

 

「それがどう言う意味か分かるわよね?簪と本音は防衛機能に引っかからなかったって事よ。それは【戦国龍皇】もこの二人は展開出来るって事よ。」

 

「!?」

 

 この二人は【ドットブラスライザー】を纏った事があるのか!?

 確かにこの二人には邪念って言うものがなさそうだけど…

 

「う、嘘だ…」

 

 箒は鈴の言ってる事を信じようとはしなかった

 そうだよな…自分は拒絶されて更識さんとのほほんさんは受け入れられたって事だもんな…

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

 コイツ…私の言った事全然信じてないわね

 実際に証明したいところだけど【ドットブラスライザー】も【ラインバレル】も束さんの所だからそれが出来ないのよね…

 ホントどうしよ…

 

「…そいつらが受け入れられただと…そんな事…あって堪るかあああぁぁぁ―――っ!!!」

 

 コイツ、刀で斬りかかって来た!?

 

 ガキンッ!

 

全員

「!?」

 

千冬

「貴様何をしている!!」

 

一夏

「ち、千冬姉!?」

 

 箒の剣を近接ブレードを持った千冬さんが受け止めていた

 

「ち、千冬さん…」

 

千冬

「【戦国龍皇】か…やはり犯人はお前か!」

 

 千冬さんは自分が受け止めている箒の持っている刀を見てそう言った

 

一夏

「!?…千冬姉も分かってたのか!?」

 

千冬

「ああ!最初からな!!いや、火ノ兄が【戦国龍】を出したあの日からコイツはやるだろうと思っていた!!」

 

一夏&箒

「!?」

 

 初めから目を付けられていたなんて知って驚いてるわね

 

千冬

「そして今日その予感が的中した!!出来れば外れて欲しかったが今までのお前の態度と言動からそれは諦めていた!!」

 

 そうよね…コイツ…クロエさんの持ってきたライフルの時も怒鳴ってたし…私でも分かるくらい【戦国龍】を見る眼が露骨だもんね…

 

千冬

「篠ノ之…今すぐにそれを返せば少しは大目に見てやる!」

 

「コ、コレは…コレは私のISだ!!私の専用機だ!!」

 

 これだけ言っても分からないのコイツ!?

 

千冬

「…いいだろう…」

 

 え?千冬さん?

 

「千冬さんも分かって…」

 

千冬

「それがお前の物だと言うならこの場で展開しろ!」

 

「!?」

 

千冬

「【戦国龍皇】をお前が纏う事が出来ればそれの所有者をお前と認めてやる。」

 

「え?」

 

千冬

「どうした早くしろ!」

 

「ほ、本当なんですか?私がコレを使えれば私の物と認めてくれるんですか?」

 

千冬

「何度も言わせるな!」

 

 千冬さんも無茶言うわね…コイツに纏えないの分かってて言うんだもん

 

「で、では見ていて下さい!」

 

 そう言って箒は刀を頭上に掲げた

 私にはそれがとても馬鹿馬鹿しく見えていた

 多分千冬さんも同じ事考えているでしょうね…

 そして…

 

「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――っ!!!!!」

 

 案の定また逆鱗に触れて火達磨にされていた…

 

 ~鈴 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――っ!!!!!」

 

 …はぁ…コレで5回目ですわね…その諦めの悪さは少しは見直しますけど…いい加減諦めて欲しいものです…

 

「ま、まだ…だ…」

 

 海で鎮火してまだやるつもりですか…

 そう思ったのですが…

 

 ブオオオオオォォォォォッ!!!

 

全員

「!?」

 

 篠ノ之さんが待機状態の【戦国龍皇】を持とうとした瞬間、刀が燃え上がりましたわ

 

「な、何だ…コレは!?」

 

『いい加減にしてくれない?』

 

全員

「!?」

 

 何ですのこの声!?

 突然聞こえた声は燃え上がった炎の中から聞こえてきました

 

『私は貴方なんかに使って欲しくないのよ!』

 

 そう言うと炎は人の姿に変わっていきました

 そして現れたのは赤い髪と白い翼をはやし鎧を身に着けた少女でした

 彼女の腕には待機状態の刀が握られてましたわ

 

「お、お前は一体…」

 

『私はこの【戦国龍皇】のコア人格よ。』

 

全員

「何っ!?」

 

 【戦国龍皇】の…コア人格ですって!?

 

『私の事は『ツル』と呼べばいいわ。』

 

千冬

「『ツル』だと?何故機体と違う名前を名乗るんだ?」

 

ツル

『織斑千冬さんですね?理由は簡単、私は【戦国龍皇】であると同時に【ドットブラスライザー】と【ラインバレル】でもあるからです。』

 

セシリア

「それはどう言う事ですか?」

 

ツル

『私は他のISと違い【戦国龍皇】【ドットブラスライザー】【ラインバレル】の3つのコアを一括りにした人格なんですよ。』

 

「一括りって…だからその名前を?」

 

ツル

『そう言う事です。…さて、私がココに出て来たのは貴方にいい加減諦めて欲しいからよ!』

 

 篠ノ之さんに向かってハッキリ言いましたわね…しかもわたくし達に対しては敬語でしたのに篠ノ之さんにはしてませんわね…

 

「な、何だと!?」

 

ツル

『私が貴方の物ですって!私の主は火ノ兄永遠ただ一人よ!!私を盗んでおいてよくそんな事が言えるわね!!』

 

「ち、違う!!お前の主はこの私だ!!篠ノ之箒だ!!」

 

ツル

『あのね?ISの人格である私自身がアンタじゃないって言ってるのよ!!いい加減諦めろ!!』

 

「!?」

 

 完全な拒絶ですわね…IS自身の口から拒絶されるなんて普通はありませんわよ…

 

ツル

『すぐに諦めると思っていたけど全く諦めないから私が直接出て来て言う事にしたのよ!!』

 

「………何で…何で私じゃないんだ!?あんな田舎者よりもお前の事を使いこなせる筈だ!!」

 

セシリア&簪&本音

「!?」

 

 永遠さんが…田舎者ですって!?

 

ツル

『………そんな事を言う奴に私が心を開くとでも思ってるの!!』

 

「!?」

 

ツル

『主と私はずっと一緒だった!!主はISの私にも話しかけてくれる人…私にはそれがとても嬉しかった!!そんな主を侮辱したお前になんか使われてたまるか!!!』

 

「ち、違う…私はそんなつもり…」

 

 また逆鱗に触れましたね…

 

ツル

『黙れ!今更言い訳なんて見苦しいわよ!!』

 

千冬

「ツル!もういい!コイツの処分はこっちでやっておく!」

 

ツル

『分かりました。ですが最後にアンタにいいものを見せてあげるわ!』

 

「…え?」

 

ツル

『セシリアさん。』

 

セシリア

「は、はい?」

 

 ツルさんはいきなりわたくしの名前を呼ぶと炎に姿を変えてわたくしを包み込みました

 

セシリア

「え?」

 

 そして炎が消えると…

 

セシリア

「コレは!?」

 

「オルコットが…【戦国龍皇】を…」

 

 そう、わたくしは【戦国龍皇】を纏っていました

 

「コレが見せたかったもの…確かに箒にとってはこの上ない屈辱ね?」

 

ラウラ

「ああ、自分があれだけやって纏う事を許されなかった【戦国龍皇】が自分の意思でセシリアに纏わせたんだからな。」

 

「あ…あ…あ…」

 

 わたくしの姿を見て篠ノ之さんは言葉を失ってしまいましたわね

 ですが、今はそんな事よりも…

 

セシリア

「ツルさん…ありがとうございます…わたくしを信じてくれて…」

 

 わたくしは自分を信じてくれたツルさんにお礼を言いました

 すると【戦国龍皇】が赤く輝き、再び炎となりました

 炎が消えるとわたくしの手には待機状態の【戦国龍皇】が握られていました

 

千冬

「オルコット…悪いんだが…」

 

セシリア

「はい、お願いしますね。」

 

 わたくしは【戦国龍皇】を織斑先生に渡しました

 【戦国龍皇】を織斑先生が受け取る時、何も起きませんでした

 恐らくツルさんも織斑先生なら大丈夫と判断されたのですね

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 さて、【戦国龍皇】も無事取り返した事だし…

 

「………」

 

 この馬鹿をどうするかだな…

 本来ならこのまま懲罰房に放り込む所だがいくら死なないレベルとは言え【戦国龍皇】に散々燃やされたからな…

 全身黒焦げの上に少なからず火傷もおっているだろうから治療せんといかんな…

 

千冬

「篠ノ之…お前はまず医務室で治療を受けろ!」

 

 私がそう言うと…

 

ラウラ

「教官!コイツにそんな事する必要ありません!!すぐにでも懲罰房に放り込むべきです!!」

 

 ラウラが文句を言って来たか…

 

千冬

「お前に言われなくても治療が終わればコイツは懲罰房行きだ。だが、こんな姿で放り込めば後から問題になる可能性もある。それを起こさない為だ。」

 

ラウラ

「………分かりました…」

 

 私が説明するとラウラも他の者達も納得した

 それから私は篠ノ之を医務室に連れて行き、治療が終わると懲罰房に放り込んだ

 その間、篠ノ之には反省文500枚の提出を言い渡し、全てを書き終わるまで外には出られないと言っておいた

 尚、【戦国龍皇】はすぐにクロニクルに連絡し取りに来たアイツに渡しておいた

 そして【戦国龍皇】を取り返した事を学園の連中に伝えると騒ぎも落ち着いたが犯人の事は伝えなかった

 まぁそれでも私の受け持つ1組の連中は犯人が誰か見当が付いているようだった

 それも当然か…【戦国龍皇】を取り返したと同時に篠ノ之がいなくなったのだから余程の馬鹿でもない限りすぐに分かるか…

 私は念の為、1組の奴等に口止めをしておいた

 

 ~千冬 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第094話:復活の永遠

遅くなりましたが『機体設定①』に【戦国龍皇】を追加しました



 ~セシリア Side~

 

 【戦国龍皇】の盗難事件から数日が経過しました

 犯人の篠ノ之さんは未だに懲罰房から出て来ていません

 まあ当然ですわね…永遠さんのISを盗むんですもの!

 反省文500枚でも少ないくらいですわ!

 …それにしても永遠さん…何時になれば戻って来るんでしょうか…永遠さんが戻って来る間はわたくしと簪さん、本音さんの3人で永遠さんの畑と田んぼの手入れをしているのでこちらは大丈夫ですけど…早くお話ししたいですわ…

 わたくしがそんな事を考えていると…

 

千冬

「おはよう!」

 

 織斑先生と山田先生が来ました

 

セシリア&本音

「!?」

 

 そして、その後ろにいたのは…

 

永遠

「久しいのぉ♪」

 

 そこにいたのは…永遠さんでした!!

 

セシリア

「永遠…さん…永遠さ~~~ん!!!」

 

本音

「永遠~~~!!!」

 

 わたくしと本音さんは嬉しさのあまり永遠さんに抱き着いていました

 ですが…

 

永遠

「グッ…ギャアアアアアアアアァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

セシリア&本音

「永遠(さん)!?」

 

 いきなり悲鳴を上げてしまいました

 一体何が…

 

千冬

「落ち着かんかアホ共!!!」

 

 ガン!ゴン!

 

セシリア&本音

「うぐぅ~~~…」

 

 織斑先生の拳骨が…

 

千冬

「火ノ兄はまだ万全ではない!動けるようになっただけだ!!」

 

セシリア

「そ、それを早く言ってください~~~…」

 

千冬

「言う前にお前等が飛びついたんだろうが!!!」

 

 仰る通りです…

 

千冬

「全く!どうしてくれるんだ!!また気絶したじゃないか!!」

 

セシリア&本音

「あ!?」

 

 そこには白目を剥いた永遠さんが倒れていました

 

セシリア&本音

「…すみません…」

 

 わたくし達には謝る事しか出来ませんでした…

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 オルコットとのほほんさんの暴走で久しぶりに来た火ノ兄は挨拶を一言言っただけで意識を失った…

 千冬姉は倒れた火ノ兄を席に運ぶと今の状態を話してくれた

 

千冬

「火ノ兄の傷だがまだ完全には塞がってはいない。」

 

 そりゃそうだよな…何しろ刀が体を貫通したんだから…普通なら死んでる傷だぞ…

 そんな傷が1,2週間で治る筈は無いよな…

 て言うか治るのが早すぎる気がするんだけどな…

 

千冬

「その為、復帰はしたが激しい動きは出来ん。当然ISも使えん。分かったな?」

 

全員

「はい!!!」

 

 アレ?って事は…

 

一夏

「織斑先生…」

 

千冬

「何だ?」

 

一夏

「そんな状態でどうやって家に帰るんですか?」

 

全員

「あ!?」

 

 俺の疑問に全員が気付いた

 火ノ兄は家から学園までISを使って登下校している

 ISを使えない体でどうやって行き来するのか分からなかった

 

千冬

「それか…本当ならISが使えるようになるまでは学園で療養して貰うのだが…これ以上日を開けると畑や田んぼがどうなるか分からんと言ってな…」

 

セシリア

「それでしたらわたくし達がしています!ですから永遠さんにはまだ療養を続けて貰ってください!!」

 

 え?そんな事してたのか?

 

千冬

「私もさっきそう言ったんだが…これ以上お前達に世話になるのは悪いと言ってな…ISは無理だが鍬を振るくらいなら平気だと言って聞かんのだ…仕方無いから暫く様子を見る事にした…」

 

 アイツもかなり頑固だな…

 

千冬

「それでさっきの織斑の質問の答えだが…今朝クロニクルに連絡を取っておいた。」

 

ラウラ

「え!?」

 

 クロニクルさんに?

 

千冬

「【ラインバレル】を持って来るように頼んだ。」

 

一夏

「【ラインバレル】を!?」

 

千冬

「ああ、アレの【転送】能力なら体への負担も少なくて済むと思ってな?」

 

 そうか!火ノ兄にはワープが出来る【ラインバレル】があったんだ!

 

千冬

「分かったか?」

 

全員

「はい!!!」

 

 俺達が返事をすると…

 

永遠

「むっ!」

 

 火ノ兄が目を覚ました

 

セシリア&本音

「永遠(さん)!!!」

 

 そんな火ノ兄に2人がまた飛びつこうとしたけど…

 

千冬

「お前等っ!!!」

 

セシリア&本音

「はっ!?」

 

 千冬姉が一喝して止めた

 

千冬

「また同じ事を繰り返す気か!!!」

 

セシリア&本音

「しゅみましぇん…」

 

 2人ともすっかり縮こまってるな…

 

永遠

「何かあったんか?」

 

 火ノ兄の奴…自分に何が起きたのか覚えてないみたいだな…

 

千冬

「何でもない!それより火ノ兄、折角だから何か言え!」

 

永遠

「あいよ~…」

 

 コイツのこのおかしな喋り方も久しぶりな気がするな…

 

永遠

「え~、取り合えず皆の衆…心配かけてスマンかった!まだ本調子では無いが動けるようにはなったぞい!」

 

 パチパチパチパチ

 

 火ノ兄の挨拶を聞いて俺も含めて皆が苦笑いしながら拍手していた

 皆は火ノ兄が無事だった事を喜んでいた

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~ラウラ Side~

 

 兄上が戻って来た…

 だが何と言って話しかければいいんだ…

 兄上と言うのも私が勝手にそう呼んでいるだけで姉上と違って私はこの人の妹になってない…

 私がどう話しかけようか悩んでいると…

 

永遠

「むっ?チビッ子、無事じゃったか?」

 

ラウラ

「え?」

 

 兄上の方から話しかけてくれた

 

ラウラ

「は、はい!!お陰様で…」

 

永遠

「それは良か♪怪我した甲斐があったわい。」

 

 アレは怪我なんてレベルでは無いと思うのだが…

 いや、そんな事より…

 

ラウラ

「あ、あの…」

 

永遠

「ん?何じゃ?」

 

ラウラ

「た、助けてくれて…ありがとうございます!!!」

 

 まずは感謝を伝えなくては!

 

永遠

「気にせんでええわい。…ん?」

 

 よし!次は謝罪だ!

 

ラウラ

「それから………すみませんでした!!!」

 

永遠

「…は?」

 

ラウラ

「貴方を勝手に敵視し、試合の時にはあの様な事までしてしまいました…」

 

永遠

「………」

 

ラウラ

「これまで私が貴方にした事…本当にすみませんでした!!!」

 

永遠

「いや、反省しとるならワシはそれでいいんじゃが…」

 

 よかった…兄上は私の謝罪を受け入れてくれた…

 

永遠

「…チビッ子…どうしたんじゃお主?随分しおらしゅうなっとるが…」

 

 兄上まで教官みたいな事を言うな…

 私はそんなに変わったのか?

 

ラウラ

「それは…反省した結果と思ってください!」

 

永遠

「ああそう言う事か…しかし何と言うか…今までのピリピリした感じより今の雰囲気の方がワシはいいと思うぞい。」

 

ラウラ

「!?」

 

 今の方が…いい…

 兄上は笑いながらそう言ってくれた…

 

ラウラ

「あ、兄上…」

 

永遠

「兄上!?」

 

 しまった!?

 勢いで言ってしまった!?

 

永遠

「何故に兄上?…ってクロエか?」

 

ラウラ

「は、はい…」

 

 兄上は察してくれた…

 だが…

 

ラウラ

「その…私は…貴方を…あ、兄と呼んでも…いいでしょうか!」

 

 この人が私を妹と認めてくれるかは別だ…

 

全員

「………」

 

永遠

「………まあ…構わんぞ?」

 

ラウラ

「!?…ほ、本当ですか!?」

 

永遠

「うむ…クロエの妹ならワシの妹のようなもんじゃからのぉ…それに家族が増えるのはいい事じゃよ♪」

 

ラウラ

「家族…」

 

 この人は…こんな私を…家族と言ってくれるのか…

 

永遠

「ではこれからよろしゅう頼むぞ…ラウラ!」

 

 そう言って兄上は私の名前を呼んでくれた

 

ラウラ

「!?…はい!!兄上!!」

 

 私は…兄上の妹になれたんだ!!

 

 パチパチパチパチ

 

 すると私達のやり取りを見守っていたクラスの皆が拍手をしてくれた

 教官もだ…教官も喜んでくれたんだ

 ………そう言えば…兄上は教官達の様なツッコミを入れなかったな?

 まぁ姉上も兄上を『兄様』って呼んでるから似たような物だからか…

 

 ………

 ……

 …

 

 その後、授業が終わった後、兄上が復帰した事を知った4組の簪がやって来たのだが…

 

「永遠あああああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

永遠

「ギャアアアアアアアアァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

 セシリアと本音と同じ事をして兄上はまたもや気絶してしまい、後からやって来た教官に拳骨を喰らっていた…

 そして私はセシリア、簪、本音の3人から兄上が許したから自分達も許すと言われ仲直りが出来た♪

 

 ~ラウラ Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第095話:炎龍刀・真打!!

 ~千冬 Side~

 

 火ノ兄が復帰してからさらに数日が経過した

 現在、私達1年の教師達は来週行われる臨海学校の準備に追われていた

 そんなある日、私と真耶はいつもの様に【ラインバレル】で登校して来た火ノ兄と出会った

 だが火ノ兄をよく見ると…

 

千冬

「ん?…それは【戦国龍皇】!?」

 

 火ノ兄の腰に待機状態の【戦国龍皇】があった

 アレを持っていると言う事は…

 

千冬

「束の調査が終わったのか?」

 

永遠

「うむ、昨日終わったと言うてクロエが持ってきた。」

 

千冬

「そうか。」

 

 一応、束は火ノ兄の家から出て行った事にしている以上、誰が聞いてるか分からないからな…下手な事を言ってまだいる事がバレると拙い

 

千冬

「それで調査結果は?」

 

永遠

「詳しくは聞いとらん。じゃが性能だけでも恐ろしいほど上がっとるらしい。」

 

千冬

「恐ろしい程、か…」

 

 あの束がそこまで言うか…

 【戦国龍】でも手が付けられなかったと言うのにな…

 …龍…龍か…人間如きの力で龍を御する事は出来ないという事なんだろうか…

 龍の力を扱えるのは龍が認めた主のみ…それ以外の奴が手を出せば龍の逆鱗に触れる…あの馬鹿の様にな…

 もしどこかの国が手を出す事があったらあの時の事を教えてやるか…

 

永遠

「それと束さんが山田先生に礼を言っとったぞ。」

 

真耶

「…え?」

 

永遠

「山田先生の解析したデータのお陰でいくらか飛ばして出来たそうじゃ。」

 

真耶

「は、博士が…私に!?」

 

 あの束が人を褒めるとはな…本当に変わったなアイツ…

 しかし【戦国龍皇】が戻って来たのは丁度いい

 

千冬

「火ノ兄、一つ頼みがある。」

 

永遠

「ん?」

 

千冬

「今日の実習で【戦国龍皇】を展開してくれないか?」

 

真耶

「ええっ!?」

 

永遠

「構わんぞ。」

 

 火ノ兄は私の頼みを聞いてくれたが、真耶が慌て始めたな…

 

真耶

「先輩何言ってるんですか!?火ノ兄君もです!!」

 

永遠&千冬

「何が(じゃ)(だ)?」

 

 何をそんなに慌ててるんだ?

 

真耶

「何がって…火ノ兄君の怪我はまだ殆ど治って無いんですよ!!」

 

 ああそう言う事か…

 

千冬

「お前は知らなかったか…」

 

真耶

「え?」

 

千冬

「火ノ兄の怪我は大分治ってるぞ?」

 

真耶

「大分って…どう言う事ですか!?」

 

千冬

「あの事件の後クロニクルが来たと言っただろ?その時にアイツが火ノ兄に束の造った治療用ナノマシンを投与して行ったんだ。」

 

真耶

「ナノマシン!?博士はそんな物まで持ってたんですか!?」

 

千冬

「そうだ、それで火ノ兄はココまで回復している。」

 

真耶

「…だからこんなに早く…あの怪我でこんなに早く動けるのはおかしいと思ってましたが…こういう事だったんですね…」

 

千冬

「そう言う事だ。無論あの怪我だ…束のナノマシンでもまだ完治はしていない。だがISを展開して歩くくらいなら回復していると見たんだが…どうだ?」

 

永遠

「そのくらいなら出来るぞい。」

 

 私の質問に火ノ兄も大丈夫だと答えた

 それを見て真耶も納得した

 そして私達は教室に向かった…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

 今日のISの実習は1年の全クラスの合同授業

 4組の私は合同授業をしても普段は3組とやっている

 だから今日の実習は楽しみだった♪

 1組の永遠と授業が受けられる♪

 と言っても永遠はまだ本調子じゃ無いから見学になるのが少し不満だけど…

 そして全員が集まると織斑先生が授業を始めた

 全員が並ぶ中、やっぱり永遠は見学に回るから列から離れていた

 

千冬

「それでは授業を始める!今日は始めに専用機による模擬戦を行って貰い、その後は各班に分かれて実働練習を行う。」

 

 まずは模擬戦か…誰がやるんだろ?

 永遠はまだ怪我が治って無いから無理だし、束さんにISを預けてるセシリアも無理、本音は機体がアレだから微妙だよね…

 となると残ってるは私を含めて5人って事になるな…

 私がそんな事を考えている間に…

 

千冬

「凰、更識、お前達だ!」

 

 私と鈴が指名された

 

簪&鈴

「はい!!!」

 

 指名された私達は早速模擬戦を始めたけど…

 

 ………

 ……

 …

 

「貰ったぁぁっ!!」

 

「キャアァァァッ!!」

 

 鈴の青龍刀に斬られて負けちゃった…

 もう少し粘れると思ったんだけどな~…

 模擬戦を終えた私と鈴がISを解除して列に戻ると…

 

千冬

「では次は実動訓練に入る。だがその前に…火ノ兄!」

 

 織斑先生が永遠を呼んだ

 何をする気だろ?

 

千冬

「事前に頼んだように【戦国龍皇】を展開してくれ。」

 

全員

「…え?」

 

 今…何て?

 

永遠

「あいよ~…」

 

 私達が織斑先生の言葉の意味を理解するよりも先に永遠は腰にさしてある刀を抜いた

 

全員

「え?」

 

 永遠はそのまま頭上に円を描いて炎に包まれた

 そして現れたのは…

 

<オオオオオォォォォォォ――――――ンッ!!!!>

 

 進化した【戦国龍】…【戦国龍皇】だった…

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

 【戦国龍皇】…以前わたくしもツルさんが纏わせてくださいましたが、やはり本来の使い手が纏うと迫力が違いますわね…

 ですが、何故織斑先生は【戦国龍皇】を?

 

 ザワザワ…

 

 1年の皆さんも【戦国龍皇】を見てざわめいていますわね…

 

永遠

「コレでいいんか?」

 

千冬

「ああ…【戦国龍皇】…間近で見ると凄まじい迫力だな…」

 

 織斑先生の感想に皆さん頷いています

 わたくしも同じ意見ですわ

 

一夏

「あの、ち、織斑先生…何で【戦国龍皇】を?それに火ノ兄の体はISを展開する事は…」

 

 永遠さんの体?

 …そう言えば皆さん知りませんでしたね

 

セシリア

「永遠さんの体なら大分回復してますわよ?」

 

全員

「え?」

 

 わたくしがそう言うと皆さんこちらを向きました

 

シャルロット

「どういう事!?あの怪我はそう簡単には…」

 

ラウラ

「あ!そう言う事か!?」

 

シャルロット

「え?」

 

 ラウラさんも気づきましたか

 

ラウラ

「前に姉上が見舞いに来た時に兄上に治療用ナノマシンを投与して行ったんだ。」

 

「クロエさんが!?…そうか…だからこんなに早く回復してるのね?」

 

千冬

「そう言う事だ…それで火ノ兄に【戦国龍皇】を展開させた理由だが…一度間近で見たくてな…」

 

全員

「へ?」

 

 …それが理由ですか?

 

千冬

「あの一件で火ノ兄はあんな状態になったからな…ISを展開する程度には回復したから頼んでみたんだ。」

 

全員

「………」

 

 そう言われると…分からなくは無いですが…

 

永遠

「それでもういいんか?」

 

千冬

「そうだな…【六道剣(りくどうけん)】は出せるか?」

 

永遠

「可能じゃ…来い!!」

 

 織斑先生の追加のリクエストに応えて永遠さんは【六道剣(りくどうけん)】を呼び出しました

 

 ザザザザザザンッ!!!

 

 そして現れたのはあの6本の名刀…【六道剣(りくどうけん)】…しかし…

 

「本当に制約が無くなってるんだね…」

 

 簪さんの言う通りですね…

 あの【六道剣(りくどうけん)】がこんなに簡単に呼び出せるなんて…本当にただの武器になってしまったんですね…

 そう思うと改めて【戦国龍皇】の規格外さを思い知りましたわ…

 そして、新しい単一仕様(ワンオフ・アビリティー)…あの美しい白馬…

 いつか永遠さんと一緒にあの白馬で駆けて見たいですわ~…///

 わたくしがそんな妄想をしていると…

 

永遠

「…グッ!」

 

セシリア&簪&本音

「永遠(さん)!!!」

 

 永遠さんが胸を抑え始めました!?

 もしかして永遠さん!?

 

千冬

「スマン火ノ兄!!調子に乗って無理をさせ過ぎた!!すぐにISを解除するんだ!!」

 

 やはり無理をしていましたのね!?

 

永遠

「分かっ…ん?」

 

 …永遠さん?

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 ググッ…【六道剣(りくどうけん)】を呼び出す程には回復しとらんかったか…

 

千冬

「すぐにISを解除しろ!!」

 

 織斑先生もああ言っとるしそうするか…【戦国龍皇】のお披露目も十分じゃろうしな…

 ワシはそう思って解除しようとしたが…

 

 ドクンッ!

 

永遠

「ん?」

 

 何か…聞こえたような…

 

 ドクンッ!

 

 また聞こえたのぉ…空耳ではなかったか…

 じゃが何の音じゃ?

 何かが脈打つ様な音じゃが…

 

 ドクンッ!

 

 ワシはISを解除せず、音の出所を探そうと辺りを見渡した

 

千冬

「どうしたんだ!早く解除しろ!!お前の体がもたんぞ!!」

 

セシリア

「永遠さん!!!」

 

「聞いてるの!!!」

 

本音

「早くしてよ~!!!」

 

 セシリア達もワシを心配しておるが今はこの音じゃ…

 どうやらワシにしか聞こえておらんようじゃしな…

 

 ドクンッ!

 

 ワシは眼を閉じ、意識を耳に集中させると…

 

 ドクンッ!

 

永遠

「!?」

 

 聞こえた方を向いた

 じゃが、そこにあったのは…

 

永遠

「………【オニマル】?」

 

 【六道剣(りくどうけん)】の一振り…【炎龍刀オニマル】じゃった…

 

永遠

「…あの音はお前が出しとったのか?」

 

 ワシはそう言いながら【オニマル】に近づいた

 

一夏

「音?音なんて聞こえたか?」

 

 じゃが周りの物はワシの行動や言っとる事が分からず困惑しておった

 そしてワシが【オニマル】の前に立つと…

 

 ボオオオオオォォォォォッ!!!

 

全員

「!?」

 

 【オニマル】が突然燃え出しおった

 

千冬

「な、何事だ!?」

 

セシリア

「【オニマル】が!?」

 

 【オニマル】が突然燃え出した事で全員が異変に気付いた

 

 ザワザワ…

 

 周りが慌てる中、ワシは燃え続ける【オニマル】を見て理解した…あの音を出しておったのは間違いなく【オニマル】じゃ

 あの音はワシを呼ぶ為に【オニマル】が出しておったのじゃ…

 ワシはそう結論付けると燃え続ける炎の中に腕を突っ込んだ

 

セシリア&簪&本音

「永遠(さん)!!!」

 

 ガシッ!

 

 ワシは【オニマル】の柄を掴むと…

 

永遠

「ワシを呼んどった理由、教えて貰うぞ!!!」

 

 そう言ってワシは地面に刺さっておる【オニマル】を引き抜いた

 

永遠

「!?」

 

 引き抜くと同時に炎も消え去った…

 じゃが、炎の中から現れた【オニマル】は…

 

全員

「!?」

 

一夏

「姿が…変わった!?」

 

 織斑の言う通り【オニマル】は姿を変えておった…

 赤い炎の刀身は更に燃え盛る炎のように巨大な刃へと変わっておった…

 その姿を見てワシは理解した…

 【オニマル】も【戦国龍】同様、進化しようとしておったのじゃ…

 

永遠

「コレが生まれ変わったお前の姿か…【炎龍刀オニマル・真打】!!!

 

全員

「『真打』!?」

 

 ワシは新しくなった【オニマル】を見つめていたが…

 

永遠

「グッ!」

 

 限界が来おったか…仕方無い…

 ワシは【戦国龍皇】を解除した

 それと同時に【オニマル】と他の【六道剣(りくどうけん)】も消えた

 

永遠

「ぐっ…ハァ~ハァ~…」

 

 ISを解除したワシはその場で膝をついた

 完全回復にはまだ遠いようじゃな…

 

セシリア&簪&本音

「永遠(さん)!!!」

 

 ワシを心配して3人が駆け寄って来た

 

セシリア

「大丈夫ですか!?」

 

「苦しくない!?」

 

本音

「痛いところない~!?」

 

永遠

「ああ、もう平気じゃ…心配をかけてスマン…」

 

 ワシは笑いながらそう言った

 これ以上無理をすると3人を泣かせてしまいそうじゃからな…それは流石に嫌じゃからな…

 

千冬

「いや、謝るのは私の方だ…無理をさせてすまなかった!!」

 

永遠

「気にせんでいいわい…それに多少無理をしたお陰で収穫もあったしのぉ…」

 

千冬

「…【オニマル】の事か…『真打』と言っていたが…だとすれば以前の【オニマル】を超えたものになっているだろうな…」

 

永遠

「じゃろうな…」

 

 織斑先生も気づいとったか…

 

セシリア

「あの、真打とは何ですか?」

 

永遠

「ああ、真打言うんは簡単に言えば一番優れた刀の事じゃ。」

 

セシリア

「一番優れた?」

 

千冬

「そうだ、日本刀を造る際、必ず複数造るそうだ。」

 

シャルロット

「何故そんな事をするんですか?」

 

千冬

「複数造る事でその中から最も優れた刀を選ぶ為だ。その選ばれた刀を『真打』と呼ぶんだ。」

 

永遠

「それに対して選ばれなかった劣る刀を『影打』と言うて自分の手元に残したり、誰かに譲ったりするそうじゃよ。」

 

ラウラ

「『真打』と『影打』…」

 

千冬

「だからと言って刀を造る際は必ずそうする訳では無いぞ。」

 

セシリア

「ではどういった時にするんですか?」

 

千冬

「主に誰かに依頼された場合、後は神社に奉納する刀を造る際とかだな。そういった時に複数造るのが通例になっている。」

 

一夏

「じゃあ【オニマル】の場合は?」

 

千冬

「本来の意味とは少し違うが進化と言う形で『真打』になったんだろう。」

 

永遠

「うむ、恐らく【戦国龍】の進化が【オニマル】にも影響を与えたんじゃろう。」

 

一夏

「でも何で【オニマル】だけなんだ?」

 

ラウラ

「そうだな…他の5本に変化はなかった…」

 

永遠

「その辺の理由は【戦国龍】と【オニマル】が同じ炎を司っておるからじゃろうな…」

 

千冬

「成程…同じ属性だから影響を受けたと?確かにそれなら辻褄は合うな…」

 

 ワシの考えに織斑先生も同意し、他の者達も頷いておった

 

永遠

「まぁ、ワシが全快せん事には当分使う事はあるまいて…」

 

千冬

「それもそうだな………さて、色々とトラブルもあったが授業を続けるぞ!」

 

全員

「はい!!!」

 

 その後、授業は再開されたが、ワシは先程の無理がたたって完全な見学側になってしもうた…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~箒 Side~

 

「………」

 

 私はあの日から反省文500枚を書き続けていた…

 本当はこんなもの500枚も書きたくは無いのだが全て書くまで出られないと言われているので仕方なかった…

 しかも今度の臨海学校までに書き終わらなければ参加出来ないとまで言われた…

 ふざけるな!!臨海学校のある日は私の誕生日だ!!

 それをこんな所で過ごしてたまるか!!

 だから私は寝る間も惜しんで書いていた

 【戦国龍皇】が手に入らなかった以上、気は進まないがもはや姉さんに頼むしかない

 幸い携帯は取り上げられなかったから姉さんにはすでに連絡済みだ

 恐らく姉さんは私の誕生日に持って来る筈…その為にもここから出なければ!!

 そして今日も朝から反省文を書いていた

 そんなある時…

 

警備1

『交代よ。』

 

警備2

『分かったわ。』

 

 この懲罰房の監視をしている警備員が交代に来た

 本来は必要無いのだが、私が逃げ出すかもしれないと危惧した千冬さんが態々呼びつけたらしい

 クソッ!そこまで私を信用してないのか!!

 だが、もはや扉の外の事などいつもの事だから気にもしなかったが…

 

警備1

『そう言えばさっき聞いたんだけど【戦国龍皇】って言うISの武器が進化したって大騒ぎになってるわよ?』

 

「!?」

 

 今…何て言った…

 

警備2

『進化?ISじゃなくて武器が?何それ?』

 

警備1

『私も詳しくは知らないけど…何でも【六道剣(りくどうけん)】って言う刀の一つがパワーアップしたんですって。』

 

 【六道剣(りくどうけん)】だと!?

 

警備2

『それってあの事件の時に出て来た6本の刀の事よね?アレが全部進化したの?』

 

警備1

『いいえ、赤い剣だけだそうよ。』

 

 赤…と言う事は…【オニマル】か!!

 

警備2

『へ~…一度見て見たいわね…』

 

警備1

『暫くは無理みたいよ?火ノ兄君の体がまだ治って無いから。』

 

警備2

『それじゃあしょうがないか…じゃあ後よろしくね。』

 

警備1

『ええ、お疲れ様。』

 

 私が聞いている事にも気づかずそいつ等は話を終えて交代して行った

 

「………クソッ!!」

 

 【戦国龍皇】め!!!私の物にならなかった事を後悔させてやるからな!!!

 

 ~箒 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第096話:恋の作戦会議

 

 ~セシリア Side~

 

「セシリア、今夜私と本音の部屋に来てくれない?」

 

セシリア

「はい?」

 

 放課後になると簪さんが突然そんな事を言ってきました

 

「それとも何か予定がある?」

 

セシリア

「いえ、ありませんけど…」

 

「じゃあ来て!どうしても話したい事があるの!」

 

セシリア

「分かりました…話と言うのはわたくしだけですか?」

 

「本音も一緒、もう話してある。」

 

 本音さんもですか…と言う事は…十中八九永遠さん絡みですわね…多分…

 

セシリア

「では夕食を終えたら伺いますわね。」

 

「うん!待ってる!」

 

 さて…簪さんは一体何を話す気なのでしょうね…

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

「………」

 

セシリア

「………」

 

本音

「………」

 

 夕食が終わるとセシリアが訪ねて来た

 そして今、私は本音も交えて3人で向かい合っていた

 私達が暫く無言でいると…

 

セシリア

「…それで簪さん?わたくしに何の話でしょうか?」

 

 セシリアが行き成り本題を聞いて来た

 私は1回深呼吸をすると…

 

「永遠の事…」

 

 内容が永遠の事だと言った

 でも…

 

本音

「やっぱり~。」

 

セシリア

「だと思いました。」

 

 2人とも私の用件に気付いていた

 それならこっちも遠慮せずに言わせて貰う

 

「2人に聞くけど…永遠をどう想ってる?」

 

 私の直球の質問に対して2人は…

 

セシリア

「一人の男性としてお慕いしております!!!」

 

本音

「大好きだよ~♪」

 

 迷いなく答えた

 

セシリア

「簪さんは?」

 

 すると同じ事をセシリアが聞き返してきた

 私の答えも決まってる!

 

「私も永遠が好き!!この気持ちは2人に負けてないつもり!!」

 

 そうはっきり答えた

 

セシリア

「………」

 

「………」

 

本音

「………」

 

 そして私達は再び無言になったけど…

 

セシリア&簪&本音

「…プッ!」

 

セシリア

「フフフフフ♪」

 

「アハハハハ♪」

 

本音

「ニャハハハ♪」

 

 揃って笑いだした

 

セシリア

「やはり…同じですわね♪」

 

簪&本音

「うん♪」

 

 私達は同じ人を好きになった…

 でも、だからって相手が憎い訳じゃ無い!

 それはセシリアと本音も同じだった

 良かった…2人も同じ気持ちでいてくれて…

 

本音

「でもかんちゃん?本当にどうしたの~?行き成りこんな事聞くなんてさ~?」

 

 本音の疑問も尤もだね…よし!!

 

「うん…じ、実はね?…その…前から考えてたんだけど…永遠に…その…こ、『告白』…しようかなって…」///

 

セシリア&本音

「え?」

 

「2人の気持ちも勿論知ってた!そんな2人に抜け駆けするのは気が引けて…」

 

セシリア

「それでわたくしを呼んだんですね?」

 

「…うん…」

 

 何て…思うかな?

 馬鹿正直すぎるって…笑うかな…

 

セシリア

「それでこそわたくしの恋のライバルですわ!!」

 

「え?」

 

 セシリア?

 

本音

「かんちゃ~ん?もしかして私達が『馬鹿正直すぎる』って笑うと思った~?」

 

 ギクッ!?

 バレてる!?

 

セシリア

「簪さん?わたくし達を舐めないで下さい!そんな事で笑うような心の狭い人間ではありませんわ!!」

 

本音

「そうだよ~!!」

 

 うっ…2人とも少し怒ってる…

 

「ゴメン…」

 

 私が馬鹿だった…本音は勿論、セシリアがそんなに心の小さい人間じゃ無いって事はとっくに知ってたのに…

 

セシリア

「まぁわたくしもしようかと考えていましたからね…」

 

「え?」

 

本音

「実は私も~♪」

 

「ええっ!?」

 

 2人も同じ事を!?

 

セシリア

「………あのような事が…ありましたからね…」

 

簪&本音

「………」

 

 そう、私が告白しようとした理由もそれが原因…

 永遠が…死にかけたから…

 ううん、ツルさんが助けなかったら本当に死んでた…

 永遠が復帰した後、何で戦えたのかを聞いたらツルさんが【ドットブラスライザー】と【ラインバレル】の力で動けるようにしていたらしい…

 そして、永遠が死なないように押さえていたとも聞かされた…

 それは逆に言えばツルさんが動かなかったら永遠は死んでいたという事に他ならない…

 自分の気持ちも伝えられずに永遠を失ったらと思うだけで今でも震えがくる…

 だから永遠が無事に戻って来てからこの想いを伝えようって言う気持ちが強くなっていた…

 どうやらそれは2人も同じだったらしい…

 

本音

「それでどうしよっか?」

 

「え?」

 

本音

「私達って~、同じ人を好きなんだよ~?告白するとしてどうやってするの~?」

 

セシリア&簪

「あ!?」

 

 本音の言う通りだ…抜け駆けしないならどうすればいいんだろ…

 

本音

「いっその事3人同時にする?」

 

セシリア&簪

「えっ!?」

 

 3人…同時!?

 

セシリア

「本気ですか!」

 

本音

「うん!私は本気だよ~!それなら抜け駆けにならないし~、永遠が誰を選んでも恨みっこ無しって事ならアリだと思うけどな~?」

 

セシリア&簪

「うっ!」

 

 確かに…それなら一気に解決出来る…

 

セシリア

「悪くは…無いですね…」

 

「う、うん…」

 

 私もセシリアも本音の提案に乗り始めた

 でも…

 

「もし…永遠が『選べない』って言ったらどうする?」

 

セシリア&本音

「あ…」

 

 他に好きな人がいるなら悔しいけど諦める…

 私達の中で選んだなら…選ばれなかった時は素直に祝福する…

 でも、永遠が選べないって言う可能性もある…

 ううん、多分それが一番可能性が高い…

 永遠は織斑一夏と違って朴念仁じゃ無いから私達の気持ちに気付いてるかもしれない…

 だから選べないって言う答えが来るかもしれない…

 

セシリア

「ふむ…それでしたら………」

 

 するとセシリアが私達にある提案を出した

 それを聞いて…

 

「…悪くないね?」

 

本音

「うん!それならみんな幸せになれるよ~♪」

 

 私と本音も乗り気になった

 世間体に反するかもしれないけど…私達はこれがいいと思った!

 

セシリア

「ではそれで行きましょう!」

 

簪&本音

「うん!」

 

 そして永遠が選べなかった時の対応を決めた

 

「じゃあ…何時告白しようか?」

 

 次に私達が何時、何処で告白するか話し始めた

 

本音

「う~ん…学園の中でする?」

 

「それだと誰かに見られそうで少し嫌だな…」

 

 特にお姉ちゃん辺りに見つかると絶対面倒が起きる…

 

本音

「そだね~…」

 

セシリア

「それでしたら今度の休みに臨海学校で着る水着を買いに行こうと思ってましたの。それに永遠さんも誘って4人で行きませんか?その時にでも…」

 

 どうするか悩んでるとセシリアがそんな提案をしてきた

 確かに私も水着を買いに行こうと思ってたし、街中なら人の少ない場所もある筈…

 

「それいいかも!」

 

本音

「うん!4人でデートしよ~♪」

 

セシリア

「ではそれで行きましょう♪それに、永遠さんに水着を選んで貰いたいですし♪」

 

簪&本音

「うん!!」

 

 後は…永遠がどう答えるかだけだね…

 

 ~簪 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第097話:休日デート♪(トラブル編)

 ~永遠 Side~

 

セシリア

「永遠さん♪」

 

永遠

「ん?」

 

 金曜の放課後、ワシは帰ろうとしたらセシリアに呼び止められた

 

永遠

「何じゃ~?」

 

セシリア

「明日は予定がありますか?」

 

永遠

「明日か?ん~…コレと言って無いのぉ?」

 

 やる事と言ったら畑仕事をして軽く体を動かすくらいじゃからな…

 まだ完治しとらんから剣の鍛錬は出来んしな~…

 

セシリア

「でしたら明日付き合って下さいませんか?簪さんと本音さんと一緒に買い物に行くのですがよければ永遠さんもご一緒しませんか?」

 

永遠

「買い物か…」

 

 とは言うてもワシは基本は自給自足何じゃよな~…

 まぁたまにはいいか…

 

永遠

「構わんぞ。」

 

セシリア

「ありがとうございます♪」

 

本音

「わ~い♪」

 

 ぬお!?本音、居ったのか…相手が本音とは言え気付かんとはだいぶ鈍っとるな…

 クロエが言うには夏休みが始まる頃に完治すると言うとるし、休みを利用して厳しめに鍛え直すとするかの…

 まぁ今はそれは置いといて…

 

永遠

「では待ち合わせはどうする?」

 

セシリア

「そうですわね…町中にISで来るのもマズいですので学園にしましょう。朝の…9時頃に校門前に来て下さい。」

 

永遠

「うむ、分かった。」

 

 折角のお誘いじゃ…ワシも楽しむとするかのぉ…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~本音 Side~

 

 えへへ~♪やっとこの日が来たよ~♪

 一晩しか経ってないけど時間が長く感じたな~…

 それだけ楽しみって事なんだけどね~♪

 一緒にいるかんちゃんとセッシーも同じみたいだもんな~♪

 んで、今私達は校門の前で永遠が来るのを待ってるんだ~♪

 かんちゃんもセッシーも気合を入れておめかししてるんだよね~♪私もしてるんだけどね~♪

 そんな訳で暫く待ってると…

 

 ブンッ!

 

セシリア&簪&本音

「!?」

 

 私達の前に【ラインバレル】が現れた

 

セシリア&簪&本音

「永遠(さん)♪」

 

永遠

「待たせてスマン。」

 

 私達に謝ると永遠はISを解除した

 

永遠

「今日は誘ってくれてありがとな。」

 

セシリア

「いえ、永遠さんもわたくし達のお誘いを受けて下さりありがとうございます♪」

 

「うんうん♪」

 

本音

「ね~ね~早く行こうよ~♪」

 

永遠

「そうじゃな、では行くかの?」

 

セシリア&簪&本音

「はい♪」

 

 私達は学園から繋がってるモノレールに乗って町へと向かった

 

 ~本音 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

 町に到着した私達は折角だから永遠と街を少し散策した

 その後、ショッピングモールの【レゾナンス】に向かったんだけど…

 

永遠

「…何しとるんじゃアイツ?」

 

セシリア&簪&本音

「さぁ?」

 

 水着売り場にやって来ると、そこには織斑一夏とシャルロットが先に来ていたんだけど何か揉めてるみたいだった

 少し離れた場所から様子を窺っていたけど、どうやら織斑一夏は揉めてる女性の物まで一緒に買わされそうになっているみたいだった

 

永遠

「白昼堂々恐喝紛いな事を平然とやるとは世も末じゃの~…」

 

セシリア

「同じ女性として恥ずかしい限りですわ…」

 

「右に同じ…」

 

本音

「以下同文…」

 

 あんなのと同じだなんて思われたくない!

 

セシリア

「それでどうします?」

 

永遠

「ワシ等の目的もあそこじゃからな…流石に顔見知りが絡まれとるのを無視して買い物なんぞ出来んからのぉ…」

 

本音

「じゃあオリムー達を助けるんだね~…でもどうやって?」

 

永遠

「そうさの~…」

 

 永遠は少し考えた後…

 

永遠

「よし、本音、その辺に警備員がいる筈じゃから呼んでくるんじゃ。」

 

本音

「ほえ?」

 

永遠

「あの様子ではあの女、今みたいな事を何度もやっとるじゃろうし、デパート側も気づいておろう。恐らく事情を話せばすぐに捕まえに動いてくれるじゃろう。ワシ等はそれまで奴が逃げんように足止めしとくわい。」

 

本音

「分かった~!」

 

 本音は頷くと警備員を探しに走って行った

 残った私達は…

 

永遠

「では行くかの?」

 

セシリア&簪

「はい(うん)!!」

 

 自然を装ってあの騒動に関わりに向かった

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

「早く買えって言ってんのよ!!」

 

一夏

「くっ…」

 

 何なんだよこの女!行き成りやって来て自分の分も俺が払うって何だよ!!

 しかもこの女、俺が断ったら大声で騒ぐって言いやがるし、完全に恐喝じゃねえか!!

 その上、店員の人が連絡しないように睨んでやがる…これじゃ警備の人を呼べもしねえ…

 俺がどうするか悩んでいると…

 

永遠

「何を騒いどるんじゃ?」

 

一夏

「え?…ひ、火ノ兄!?」

 

シャルロット

「火ノ兄君!?」

 

 火ノ兄が現れた…オルコットと更識さんも一緒にいるけど…アレ?のほほんさんがいない?何でだ?

 ってそんな場合じゃねえ…今はコイツをどうにかしねえと

 

永遠

「他の客に迷惑じゃろ。何をレジの前で騒いどるんじゃ。揉め事なら他所でやらんかい。」

 

一夏

「い、いや、それは分かってるんだけど…」

 

 …コイツに目を付けられて動けねえんだよ…

 

「何よアンタ!」

 

永遠

「そいつのクラスメイトじゃがお主こそ誰じゃ?織斑の知り合いか?」

 

一夏

「ち、ちが…!?」

 

 コイツ、息を吸い込んだ…俺が否定したら騒ぐつもりかよ!

 クソッ!何とか火ノ兄達にコイツは赤の他人だって分かって貰わねえと…こんな女と知り合いだなんて思われたら今度はどんな説教されるか…

 

永遠

「…で?そやつは誰なんじゃ?」

 

一夏

「それは…」

 

 ココで俺が理由を言えばこの女は本当に騒ぎを起こして俺と、火ノ兄まで巻き込んで無実の罪を着せちまう

 

「フッ♪」

 

 くっ…この女、俺が何も言えないの分かってやがる

 ムカつく顔しやがって…

 

一夏

「ぐぐっ…」

 

 俺が何も言えずにいると…

 

永遠

「ハァ~…」

 

 火ノ兄が行き成り溜息を吐いた

 

永遠

「…織斑…もう少しシャキッとしたらどうなんじゃ…」

 

一夏

「え?」

 

「ん?」

 

永遠

「普段からもっとしっかりしとれば『こんな奴』に目を付けられんわい。」

 

「こんな奴ですって!?」

 

シャルロット

「火ノ兄君…もしかして君…」

 

 初めから分かってたのか…いや、火ノ兄ならそのくらい分かるかも…

 

「アンタ!男の癖にこの私をこんな奴呼ばわりするなんていい度胸じゃない!私が誰だか分かってるの!」

 

永遠

「知らんのぉ?簪、『日本の代表候補生』のお主はこやつを見知っておるか?」

 

「!?…に、日本の代表候補生ですって!?」

 

「ううん、競い合った人達の顔は全員覚えてるけどこんな人見た事が無い。」

 

永遠

「と、言うとるが…お主は何処の誰じゃ?偉そうに命令できるような立場の人間なんか?まさかとは思うが自分が『女』だから偉いとか言う気かのぉ?何時から『性別の違い』が『身分の違い』になったのかのぉ?」

 

「ぐっ…ぐぅっ…」

 

 あ、言い返さないって事は図星だな

 

永遠

「まあこげな所で集りなんぞやっとる奴に身分や立場なんて高尚な物がある筈も無いからのぉ?」

 

「た、集り!?お、男の分際で…」

 

 !?…コイツまさか!?

 

「誰かあああああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 この野郎!?火ノ兄に口じゃ勝てないからって騒ぎを起こして有耶無耶にする気かよ!?

 …アレ?何で騒がれてるのに火ノ兄達は落ち着いてんだ?

 

永遠

「…うるさい女じゃの~…騒がんでももう来とるわい。」

 

一夏&女

「…え?」

 

 来てるって…何が…

 

本音

「永遠~♪連れて来たよ~♪」

 

 え!のほほんさん!?

 何で警備員といるんだよ!?

 

永遠

「ご苦労さん。」

 

本音

「えへへ~♪」

 

 そうか、のほほんさんだけ居なかったのは警備員を呼びに行ってたからなのか…

 

警備員

「それで、これは何の騒ぎですか?」

 

「コ、コイツ等が私にセクハラしてきたのよ!!」

 

 言うに事欠いてセクハラだと!?

 

警備員

「セクハラ?…どうなの君達?本当にそんな事をしたんですか?」

 

「ちょっと!何でそいつ等にも聞くのよ!私の証言だけでいいじゃない!!」

 

 何だコイツ?急に慌てだしたぞ?

 

永遠

「する訳無かろう?誰が好き好んでこんな『年増』にセクハラなんぞするか!そこまで『悪趣味』では無いわい!」

 

「と、年増!?悪趣味ですって!?」

 

 うわ~、いつもの事だけどハッキリ言うな~…

 

永遠

「大体ワシもこやつも女連れじゃぞ?何でこやつ等の前でこんな厚化粧の年増に態々セクハラなんぞせにゃならんのじゃ?セクハラして捕まるならこやつらにするわい!」

 

セシリア&簪&本音

「………」///

 

 何であの3人顔を赤くしてるんだ?

 

「コ、コイツ!!」

 

 更に厚化粧まで追加されて散々年増呼ばわりされた女が火ノ兄に襲い掛かろうとした…

 でも…

 

警備員

「ハイそこまで!」

 

 その前に警備員が女を捕まえた

 

「何のつもりよ!!」

 

警備員

「何のつもり?お前こそ『今まで』ココで何をしてきた?」

 

「!?…な、何の事よ!?」

 

警備員

「今回の彼の様な事をお前はこのデパート内で何度も繰り返していたな?」

 

「!?」

 

 この女、俺以外にも同じ事を何度もしていたのか!?

 

警備員

「今迄は我々が駆けつける前にお前の脅しに屈したり、逃げられていたが、お前はこのデパートの『ブラックリスト』に登録された要注意危険人物になってるんだよ!」

 

「な、何ですって!?」

 

 ブラックリストに載るってこの女どれだけココで悪さしてきたんだよ…

 

警備員

「フンッ!あれだけの事をしておいて目を付けられない訳無いだろ?そう言う訳で現行犯でお前はこのまま警察に突き出す。向こうからもお前を捕まえたらすぐにしょっ引いて来いと言われてるんでね。」

 

「そ、そんな…い、嫌よ!何で私が!?」

 

 女は抵抗するけど後からやって来た他の警備員に連行されて行った…あの様子じゃ本当に警察行きだな…

 

警備員

「ありがとうございます。お陰で奴を捕まえる事が出来ました。あんなのが出没しているとこのデパートの信用にも関わりますから困っていたんですよ。」

 

本音

「いえいえ~。」

 

警備員

「では私はこれで。」

 

 のほほんさんにお礼を言うと警備員は行ってしまった

 

一夏

「…はぁ~…」

 

 どっと疲れたな~…

 

 ~一夏 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第098話:休日デート♪(買い物編)

 ~一夏 Side~

 

 あ~…やっと解放された…

 

一夏

「のほほんさん…ありがとう。」

 

シャルロット

「助かったよ…」

 

本音

「私は永遠に言われて呼びに行っただけだよ~、お礼なら永遠に言って~♪」

 

 やっぱり火ノ兄の仕業だったか…

 

一夏

「火ノ兄、助かった…」

 

永遠

「気にせんでいい、ワシ等としてもあんなのがおると落ち着いて買い物が出来んからな。」

 

一夏

「だよな~…」

 

永遠

「じゃがな…」

 

一夏

「え?」

 

 火ノ兄のこの雰囲気…ま、まさか…

 

永遠

「さっきも言うたが…もっとシャキッとせんか!!」

 

一夏

「!?」

 

 や、やっぱり説教が始まった!?

 

永遠

「今回はあの年増をとっ捕まえるのにお前のその態度が役に立ったが、ああいった奴に目を付けられる様なお前にも問題はあるんじゃぞ!!」

一夏

「うぐっ…」

 

 言われてみると…そうだ…

 

永遠

「今のままじゃとまた今回の様に絡まれるぞ!!もちっと堂々とせい!!」

 

一夏

「…はい…」

 

永遠

「店ん中でこれ以上騒ぐ訳にもいかんからこのくらいで済ませるがワシの言った事を少しは考えとけ!!」

 

一夏

「そうします…」

 

全員

「………」

 

 火ノ兄の説教で周りがすっかり静まり返ってしまったな…

 はぁ…

 

永遠

「店内で騒いで申し訳ない。」

 

店員

「い、いえ…お気になさらず…」

 

 火ノ兄は店員に謝るとオルコット達を買い物を始めた

 俺も店員に謝るとシャルロットと店を後にした

 けど、店を出るとそこには…

 

千冬

「………」

 

一夏

「ちふ、織斑先生!?」

 

 千冬姉と山田先生が立っていた

 

一夏

「な、何でココに居るんだ!?」

 

千冬

「私達は見回りだ。羽目を外して騒ぎを起こすバカがいるかもしれないからな。」

 

 騒ぎ…もしかして…

 

シャルロット

「あ、あの…もしかしてさっきの事…」

 

真耶

「あはは…はい…見てました…」

 

 や、やっぱり…って事は…

 

千冬

「………」

 

 む、無言の千冬姉…恐ろしい迫力だ…

 

千冬

「…私も説教と言いたいが…まあ、いいだろう…」

 

一夏

「へ?」

 

 千冬姉も説教するのかと身構えていたんだけど…

 

千冬

「火ノ兄にあれだけ言われれば十分だろ?」

 

一夏

「うっ…」

 

千冬

「私は山田先生と見回りを続ける。今回の事は巻き込まれた側だから目をつぶってやるが次に何か起こせば分かってるな?」

 

一夏&シャルロット

「はい!!!」

 

 千冬姉はそう言って山田先生を見回りに戻って行った

 

 ………

 ……

 …

 

一夏&シャルロット

「はぁ~…」

 

 デパートから外に出ると俺達は揃って息を吐いた

 

一夏

「つ、疲れた…」

 

シャルロット

「ホントだね…」

 

一夏

「…ああ…それでシャル、このまま『あそこ』に行くのか?」

 

 『あそこ』に行く前にシャルをリラックスさせようと思ってここに来たけどまさかあんな事になるなんてな…

 

シャルロット

「あ、うん!僕は行くよ!疲れたなら一夏は先に帰っていていいよ?」

 

一夏

「馬鹿言うな…ココまで来て帰れるかよ…出来る事は無くても付き合うよ…」

 

シャルロット

「一夏…ありがとう♪…じゃあ行こっか?」

 

一夏

「ああ。」

 

 そして俺達はある場所に向かって行った… 

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 騒ぎも収まったからワシ等は水着を物色しておった

 そして現在、セシリア達3人は自分の選んだ水着を試着する為に試着室に入っておった…

 

セシリア

「永遠さん!これどうですか?」

 

 そう言って試着室から出てきたセシリアは青いビキニを着ておった…う~む…

 

永遠

「そうじゃの~…やはりセシリアには蒼が一番似合うと思うからいいと思うぞい。」

 

セシリア

「そ、そうですか♪ウフフッ♥」///

 

 喜んでくれるのはいいんじゃが…

 

「と、永遠…私は…どうかな?」

 

 次は簪が出て来たが…黒のビキニか…

 

永遠

「似合うと思うぞ?」

 

「ホ、ホント!!…エヘヘ♪」///

 

 目のやり場に少々困るんじゃがな~…

 

本音

「ね~ね~私は~?」

 

永遠

「ん?…へ?」

 

 キ、キツネの着ぐるみ…何故に水着売り場にこんなもんが置いてあるんじゃ?だがまぁ…

 

永遠

「本音らしいと思うぞ?」

 

本音

「ワ~イ♪(フッフッフ~♪中にはビキニを着てるのだ~♪コレで永遠をメロメロにしてやるのだ~♪)」

 

 ワシが3人の選んだ水着の感想を言うと納得したのかその水着を買って行った

 本音のは果たして水着と呼べるのか怪しいがな…

 まあいいか…目的の物も買った事じゃしワシは店を出ようとしたのじゃが…

 

「アレ?永遠は水着買わないの?」

 

 簪はワシが水着を買わんかった事に首を傾げておった

 セシリアと本音も同様じゃった…

 

永遠

「いや…それは…」

 

 それを聞かれるとな…

 

本音

「それは~?」

 

 …はぁ…仕方無い…こういう時はハッキリ言うに限るな…

 

永遠

「金が…無くてな…」

 

セシリア&簪&本音

「へ?」

 

永遠

「ワシは基本、自給自足じゃからな…水着のような遊びに使う様な余分な金は無いんじゃよ…」

 

セシリア&簪&本音

「あ!?」

 

永遠

「そう言う訳じゃからワシは買わんでいいんじゃよ。」

 

 ワシはそう言って店を出ようとしたんじゃがセシリア達は何かを相談し始めた

 すると…

 

セシリア

「でしたらわたくし達が永遠さんの水着の代金を出しますわ!」

 

永遠

「へ?」

 

 いきなり何を…

 

「永遠には色々とお世話になってるし、そのお礼も兼ねて私達が買ってあげる!」

 

永遠

「いや、それならワシが伏せっておった時に畑の手入れをしてくれただけで十分じゃ!むしろワシの方がお主等に世話になっとるんじゃぞ?」

 

本音

「いいからいいから♪」

 

永遠

「じゃが…」

 

本音

「それに~、永遠が水着持ってないと遊べないもん!だからその為にも買ってあげる~♪」

 

セシリア&簪

「うんうん!!」

 

 本音がそう言うと2人も頷いた

 そりゃ折角の臨海学校じゃからセシリア達と海で遊びたいとは思うが…

 

セシリア

「それに永遠さん?人の好意を無碍にするのは失礼ですわよ?」

 

永遠

「うっ…」

 

 そう言われると…

 

永遠

「はぁ…分かった…」

 

 結局ワシの方が折れてしもうた…

 

セシリア&簪&本音

「ワ~イ♪」

 

 それからワシは自分のを探したがいくら3人が払うとは言っても高いのが欲しい訳でも無いからのぉ…

 一番安いのでいいわい

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

 永遠の分の水着も買い終ると私達は昼食を済ませてそのままモール内を散策していた

 

 ………

 ……

 …

 

 それから時間も経って日が沈み始めた夕暮れ時…

 

永遠

「そろそろ帰るかの?」

 

 永遠が帰ろうと言って来た

 確かにもう夕方…そろそろ帰った方がいい…

 でも、まだ帰る訳にはいかない…

 永遠を誘った本来の目的が残ってるから!

 

セシリア

「…永遠さん…最後に行きたい場所があるのですが宜しいですか?」

 

永遠

「ん?構わんぞ?」

 

「よし!!」

 

本音

「じゃあ行こ~!」

 

 永遠の了承を得ると私達は事前に調べておいた場所に向かった…

 いよいよだ!!

 

 ~簪 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第099話:休日デート♪(告白編)

 

 ~永遠 Side~

 

 セシリア達の案内で付いた場所は海の見える小さな公園じゃった…

 しかしこの公園、人気が殆ど無いのぉ?

 居るのもワシら4人だけじゃし、こげな所で何する気じゃ?

 ワシがそんな事を考えておると…

 

セシリア&簪&本音

「永遠(さん)…」

 

永遠

「ん?」

 

 3人が神妙な顔もちでこっちを見とった…

 この表情…それに人気の無いこの場所………あぁ…そう言う事か…

 出来れば…もう暫くは今のままが良かったんじゃがのぉ…それももう終わりか…

 

セシリア

「永遠さん…あの…わたくし達…そ、その…」

 

永遠

「…慌てずともよい…」

 

セシリア&簪&本音

「…え?」

 

永遠

「…『覚悟』を決めてココに来たんじゃろ?慌てずともワシは逃げん、落ち着いてしっかりと伝えい…」

 

「永遠…気付いてたの?」

 

永遠

「今しがた…お主等を見てな…」

 

 ワシはそう言って一度深呼吸をした…

 

永遠

「…ワシもお主等の言葉を受け止める『覚悟』を決めた…」

 

セシリア&簪&本音

「!?」

 

 すると3人もワシと同じように深呼吸をした

 そして…

 

セシリア

「永遠さん!」

 

「永遠!」

 

本音

「永遠~!」

 

永遠

「………」

 

セシリア&簪&本音

「好きです!!!」

 

 3人は…ワシへの気持ちを伝えた

 

セシリア

「永遠さん…わたくしは貴方を一人の男性としてお慕いしています…わたくしと…お付き合いして下さい!!!」

 

「私は…永遠が好き!この気持ちは誰にも負けてない!だから…私を、彼女にして下さい!!!」

 

本音

「永遠~♪私ね~、永遠が大好きなんだ~♪一緒にいると凄く楽しいんだ~♪だから、これからも一緒にいて下さい!!!」

 

永遠

「………」

 

 3人はそれぞれの言葉でワシへの想いを伝えてくれた…よもや3人の女子に同時に告白されるとは思ってもみんかった…

 しかし、告白されたからには返事をせんといかんのじゃが…

 

セシリア&簪&本音

「………」

 

 ワシは…誰を選べばいいんじゃろうか…

 3人はワシから目を逸らさずに返事を待っとる…

 セシリアも…簪も…本音も…皆とても魅力的な女性じゃ…そんな娘達に思われてワシは男冥利に尽きるわい…ワシなんぞにはもったいない娘達じゃよ…

 じゃが、それはそれとして…どう答えるか…

 

永遠

「………」

 

 …自分が情けないのぉ…覚悟を決めたと言うたのに…織斑にもああ言っておいて…この体たらくとは…

 仕方ない…ココは素直に今の気持ちを伝えるしかないか…

 

永遠

「セシリア、簪、本音…お主等の気持ちは本当に嬉しい…ワシなんぞにはもったいないくらいじゃ…」

 

セシリア&簪&本音

「………」

 

永遠

「じゃが…スマン!!!今のワシにはお主等の誰か一人を選ぶ事が出来ん!!覚悟を決めたと言うて優柔不断で申し訳ないがワシにはこれしか答えられん!!!」

 

 ワシはそう言って頭を下げた

 

セシリア&簪&本音

「………」

 

 3人は何も答えんかった

 ワシがそのまま頭を下げたままでいると…

 

セシリア&簪&本音

「永遠(さん)…」

 

 3人に呼ばれたワシが顔をあげると…

 

永遠

「…え?」

 

 3人は…笑っておった…何故に笑っとるんじゃ?

 

セシリア

「やはりそう答えましたか…」

 

永遠

「へ?」

 

「今の永遠ならそう言うかもって思ってた…」

 

永遠

「なぬ?」

 

 ワシが『選べない』と答えるのが分かっとったのか?

 だが、それならそれで何故に笑顔でいるんじゃ?

 

本音

「じゃあかんちゃん、セッシー、打ち合わせ通りでいいね?」

 

セシリア&簪

「はい(うん)!」

 

 打ち合わせ?…打ち合わせとは何ぞ?

 

セシリア

「それでは永遠さん!」

 

永遠

「は、はい!!」

 

 何じゃろ…どえらい事になりそうな予感が…

 

セシリア&簪&本音

「私達3人を彼女にして下さい♥」

 

永遠

「…はい?」

 

 今何と言った?

 彼女?

 3人を?

 全員?

 ワシの彼女に?

 

永遠

「え~…スマンが皆さんや…それはどう言う事かの?」

 

「だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()って言ったの!」

 

 聞き間違いではなかったか…じゃが…3人纏めてじゃと?

 

永遠

「…どう言う事かの?」

 

セシリア

「実は今日の為に3人で話し合ったのですがその時、永遠さんが答えられないと言う可能性がある事に気付いたんです。」

 

永遠

「ぐっ…」

 

 その通りじゃから何も言えん…

 

「それでいっその事、永遠が『選べない』って答えたら3人全員が恋人になろうって結論が出たんだよ。」

 

永遠

「いやいや、何故にそういう結論になる?そもそも3人一緒ってお主等本当にそれでいいのか?」

 

 ワシの問いに3人は…

 

セシリア

「いいですわ♪」

 

「問題無いよ♪」

 

本音

「大丈夫だよ~♪」

 

 事も無げに答えよった…

 

永遠

「さ、さよか…」

 

 まさかここまで迷いなく答えるとは…

 世間体や道徳的に色々ヤバいと思うのじゃが…この様子ではその辺も気にしとらんな…

 

本音

「それで~…永遠の答えは?」

 

 ぬっ!?…そうじゃったな………選べぬなら3人一緒に彼女にしてくれ、か…

 

永遠

「…そうさの…では、ワシもお主等の輪の中に入れて貰えるかの?」

 

セシリア&簪&本音

「!?」

 

 態々こんな提案までしてくれたんじゃ…なら、それに応えねば男が廃ると言うもんじゃな!

 

「じゃ、じゃあ…」

 

永遠

「改めてよろしく頼む!」

 

 ワシがそう答えると…

 

セシリア&簪&本音

「永遠~~~♪」

 

永遠

「ぬおっ!?」

 

 3人はワシに抱き着いて来た

 驚きはしたがワシは3人をしっかりと受け止めた

 

セシリア&簪&本音

「これからもよろしくお願いします♪」///

 

永遠

「ワシの方こそな♪」

 

 こうしてわしは一度に3人の恋人が出来てしもうた…

 じゃが、ワシ等の誰もこの選択に後悔は微塵も無い!!

 

 ~永遠 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第100話:淑女の最後の我儘

 

 ~一夏 Side~

 

一夏

「…ココか?」

 

シャルロット

「…うん…」

 

 デパートから出た俺達は今、あるビルの前に立っていた

 そこはデュノア社の日本支部だった

 あの日、シャルの親父さんの事を教えてくれた女性はココに居るらしい

 俺達はシャルの亡命の為の書類を書く為にココに来ていた

 俺達が意を決して中に入ると…

 

女性

「お待ちしておりました。」

 

 一人の女性が待っていた

 声からしてこの人があの時電話で話した人みたいだった

 

女性

「改めまして私は『イリス』と言います。以前から社長にはお世話になっていました。」

 

シャルロット

「よ、よろしくお願いします!」

 

イリス

「はい…ところで…そちらは織斑一夏さんですよね?何故お嬢様と一緒に?」

 

 2人が挨拶をするとイリスさんが俺が同行している事に首を傾げた

 

一夏

「あの…俺はただの同行者です。シャルの事情を知っているので一人だと何かと不便かと思って…」

 

イリス

「成程…そう言う事でしたか…お嬢様の為にありがとうございます。」

 

一夏

「い、いえ…」

 

 俺が同行している理由を話すとイリスさんも納得してくれた

 

イリス

「立ち話もなんですから事務所にご案内します。そこでお嬢様にはサインを書いて頂きます。」

 

シャルロット

「は、はい!」

 

 そして俺達はイリスさんの案内で事務所に来たんだけど…

 

一夏

「………」

 

 デュノア社の支部にしては…小さいな?事務所って言ってもビルの一部屋を借りただけみたいだし…

 

イリス

「事務所が小さくて驚きましたか?」

 

一夏

「え!?あ…いや…」

 

 俺の思ってる事を当てられた

 

イリス

「フフッ…本当の事ですからね。ココは日本支部と言ってもその更に下にある部署の一つです。」

 

一夏

「あ、なるほど…」

 

 それなら納得

 そんな話をしているとイリスさんが書類の束を持ってきてくれた

 

イリス

「…ではこちらが礼の書類になります。電話でも説明しましたが手配は既に終わっております。後はこちらの書類にお嬢様がサインをして頂ければ全ての手続きが終わる事になりますが、お嬢様も一度目を通してください。」

 

シャルロット

「分かりました。」

 

 それからシャルは書類を1枚1枚読んでいった

 

 ………

 ……

 …

 

シャルロット

「………はい、問題無いです。」

 

 それから暫くして書類を全て読み終わると問題無いと答えた

 

イリス

「ありがとうございます。それではこちらにサインをお願いします。」

 

 これでサインをすればシャルは日本に亡命した事になるんだな

 なのに…

 

シャルロット

「………」

 

イリス

「お嬢様?」

 

一夏

「ん?」

 

 何で…手が止まってるんだ?

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~シャルロット Side~

 

イリス

「お嬢様?どうかされましたか?」

 

シャルロット

「い、いえ…」

 

 僕は目の前の書類にサインを書く事が出来なかった

 だって…

 

一夏

「どうしたんだよ?後はサインを書くだけなんだぞ?」

 

シャルロット

「…分かってる…でも…これに名前を書いたら…僕は…もう…お父さんに会えない…」

 

一夏&イリス

「!?」

 

 だから…書けない…

 お父さんの気持ちを知ってしまったら…余計に…

 

一夏

「シャル…」

 

 僕は…どうしたらいいんだ…

 

イリス

「お嬢様…お気持ちは分かりますがこれは社長の願いでもあるのです…どうか分かって下さい…」

 

 お父さんの…願い…

 僕の…自由…

 

シャルロット

「…お父さん…」

 

 僕は悩んだ…

 お父さんは僕の為にこの日本に逃がそうとしている…

 でも僕はそんなお父さんとの繋がりを失うのが怖い…

 どうすればいいのか悩んでいると…

 

イリス

「………それではお嬢様…後一度だけ社長に会われますか?」

 

シャルロット

「え?」

 

 イリスさんがお父さんに会ったらどうかと提案してくれた

 

イリス

「何度も言いますが後はサインさえ頂ければ全ての手続きが終わります。ですからその前にもう一度だけお会いに行かれてはどうですか?」

 

一夏

「そんな事出来るんですか?」

 

イリス

「ええ、ただ…」

 

シャルロット

「ただ…何ですか?」

 

イリス

「会いに行かれても…社長はお嬢様の事を娘としては見ません。『シャルル・デュノア』としてしか接しないと思います。」

 

シャルロット

「!?」

 

 『シャルロット』じゃなくて…『シャルル』として…

 確かにそうだ…お父さんの状況を考えればそういう態度を取るしかない…

 下手に僕を娘として接すればお父さんがココまで用意した計画が瓦解するかもしれない…

 

イリス

「それでもいいですか?」

 

シャルロット

「………」

 

一夏

「シャル…」

 

シャルロット

「………はい!!たとえ娘として会ってくれなくても…僕は…もう一だけ、お父さんと会いたいです!!」

 

イリス

「承知しました。」

 

シャルロット

「…すみません…我儘を言って…」

 

イリス

「いえ、お嬢様のお気持ちも分かりますので…それではいつ頃社長の下に向かわれますか?」

 

シャルロット

「そう、ですね………でしたら夏休みの時に…その時なら一度報告に戻る必要があるので…」

 

 その時なら会いに行っても本妻達に疑われない筈…

 

イリス

「分かりました。ではその後に…」

 

シャルロット

「はい!!」

 

 …こうして僕は最後にもう一度だけお父さんに会いに行く事にした…

 

 ………

 ……

 …

 

 その後、僕達はイリスさんに挨拶をして事務所を後にした…

 

シャルロット

「………」

 

一夏

「…シャル…」

 

 一夏が僕を心配して声を掛けた

 

一夏

「その…大丈夫か?」

 

シャルロット

「うん…何とかね…」

 

 今の僕にはそれくらいしか答えられなかった

 

一夏

「そうか…」

 

 そんな僕の返事に一夏はそう言うとそれから何も言わなかった

 僕も今はそっとしておいて欲しかったから気を使ってくれて助かった…

 

シャルロット

「………」

 

 僕は…夏休みに入ったらお父さんに会いに行く…

 それが…

 僕の…

 最後の我儘…

 

 ~シャルロット Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第101話:これまでとこれから

 

 ~束 Side~

 

「う~~~ん…」

 

 私は今、この間のタッグトーナメントで起きた事件…

 その原因になったドイツのISを調べていた

 とーくんがあの不細工な偽物をぶっ壊したけど、ちーちゃんからコアが無事だったって聞いてクーちゃんに【ドットブラスライザー】と【ラインバレル】を持って来る時に一緒にコアも持って来て貰った

 でもコアはすぐに返さないといけないらしいからデータだけ写しを取って次の日にはちーちゃんに送り返しておいたよ

 まあ【VTシステム】に関するデータは消去しておいたけどね

 それで今はその写したデータを見てるんだけど…

 

「…やっぱり弄られてる…」

 

 【VTシステム】のデータが基本の物より性能が上がっていた

 コレのせいで乗り手がいないのに勝手に動き出した訳だ…

 けど…

 

「誰がこんなプログラム組んだんだろ?ドイツの馬鹿共の中にこんな事が出来る奴がいないのは調べが済んでるし…」

 

 そう…あの後、ドイツの連中に責任を取らせようと思ってあの国の不正の証拠を集めてた

 それに合わせて誰がコレを積んだのか調べる為に【VTシステム】の研究をしていた連中も全員調べてあげた

 でもその中にはこんな強化プログラムを組めるような奴は一人も見当たらなかった

 もしかしたら他の部署かもと思って探したけどそれらしい人間は見つからなかった…

 

「それに【ゴーレムⅠ】…アレも不明な事がある…」

 

 いっくんとリーちゃんの試合に乱入した【ゴーレムⅠ】…あっちもあの後、とーくんに運び込んで貰って調べた

 その結果、やっぱりあれは束さんの所から盗まれた【ゴーレムⅠ】に間違いなかった…

 それも予想通り僅かだけど性能が上がっていた

 つまり盗まれた後誰かが手を加えたって事か…

 

「【ゴーレム】を盗んで送り込んだ奴…【VTシステム】の強化………まさか…裏にいるのは同一の存在?」

 

 だとしたら…

 そんな事が出来るのは…

 

「やっぱり…アイツ等なのかな…」

 

 実はこんな事が出来そうな奴等に私は心当たりがあった…

 そいつ等の名は…

 

「…【亡国機業(ファントム・タスク)】…」

 

 あの国際テロ組織が動いた?

 でも何の為に?

 

「…これ以上は情報が足りないか…」

 

 直接動いて調べるにも今は忙しいし【亡国機業(ファントム・タスク)】については後回しにするしかないか…

 

「取り合えず【VTシステム】の証拠をちーちゃんに送っとこ…委員会を通じて糾弾すればあの国も少しは反省するでしょ。」

 

 それでもしないなら束さんが直接引導を渡してやる!

 

「取り合えずこっちはこれで良し!!後は………」

 

 私は後ろに視線を向けた

 そこにあったのは完成した2機のIS

 『青い全身装甲(フルスキン)のIS』と『赤い普通のIS』…

 その内の一つ…

 『赤いIS』に目を向けると…

 

「…あの子に使いこなせるかな~…」

 

 この機体を渡そうと思っている子が使えるか不安で仕方無かった…

 ちーちゃんに無理言って資料を送って貰ったけど『アレ』じゃ不安しかないんだよね~…

 

「それに引き換えこっちは大丈夫なんだけどな~…」

 

 そしてもう一方の『青い全身装甲(フルスキン)のIS』の機体に視線を移してそう呟いた

 この機体の持ち主には束さんは何の不安も感じないんだよね~…あの子はそれだけの努力を重ねたんだもんね~…

 

「はぁ…まあいいや…あの子に関しては考えてる事もあるし渡した時に言えばいっか…」

 

 赤い機体には色々と細工をしてあるからね…

 ま、あの子の性格なら教えたら間違いなく文句を言うけど、これが束さんに出来る最大の譲歩だから諦めても~らおっと!

 そう結論付けると束さんは次の研究に取り掛かった…

 

「さ~て!次はどんなの造ろっかな~♪」

 

 とーくんから貰った大量のデータの中から次はどんなISを造ろうか探し始めた♪

 

 ~束 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第102話:海の一幕

 

 ~永遠 Side~

 

全員

「海だ~~~~~~~♪」

 

 ワシ等は臨海学校で海に来とる

 一応これもISの実習の一環なんじゃが2泊3日の行程という事で初日は自由時間になっておる

 その為、学園からバスで到着すると今回お世話になる【花月荘】に荷物を置くと皆、水着に着替えて早速海に遊びに行ってしもうた

 ちなみにワシの場合は家からココに来る事も出来たんじゃが織斑先生から…

 

千冬

『団体行動をしろ!!』

 

 と言われたんで他の者達と一緒にバスに乗って来た

 そして現在…ワシもこの間買った(買って貰った)水着に着替えて海に来ると…

 

セシリア&簪&本音

「永遠(さん)♪」

 

 セシリア、簪、本音が駆け寄って来た

 3人はあの時に買った水着を着ておった

 

永遠

「お~3人とも似合っとるぞ。」

 

セシリア

「本当ですか~♪」

 

「えへへ♪」

 

本音

「むふふ~♪」

 

 ワシがそう言うと皆笑顔で喜んでおった

 にしても以前より綺麗に見える様になった気がするんじゃよな~…恋人になったから見方が変わってしもうたのかもしれんな

 まあ、それはいい事じゃし良しとしておこう!

 

「あ、あの…」

 

永遠

「ん?」

 

 セシリア達と話しとると呼ばれたんで振り返ったがそこにおったのは…

 

永遠&セシリア&簪&本音

「…タオルのミイラ?」

 

 全身をタオルでぐるぐる巻きにした物体が立っておった

 と言うかよく見ると頭らしき場所から銀色の髪が左右に出とるし、顔の部分には眼帯が付いとるのぉ…と言う事はこのミイラは…もしや…

 

永遠

「お主ラウラか?」

 

ラウラ

「は、はい…」

 

 やはりラウラじゃったか…しかし何故にミイラ?

 

「何でミイラになってるの?」

 

ラウラ

「それは…その…わ、私は今迄こういう格好をした事が無くて…」

 

セシリア

「あ~、恥ずかしいんですね?」

 

ラウラ

「うっ…そ、そう言う事だ…」

 

 まあ確かに話に聞いたこやつの今迄を考えれば当然かのぉ?

 ワシがそんな事を考えておると…

 

本音

「恥ずかしいのは分かるけどさ~?いつまでもその恰好って訳にもいかないよ~?という訳で~…」

 

ラウラ

「へ?」

 

本音

「御開帳~!!」

 

ラウラ

「わああぁぁぁ~~~っ!!!」

 

 本音がラウラが巻いとるタオルを全部はぎ取ってしもうた

 んで、出て来たラウラじゃが…

 

ラウラ

「ううっ…あ、兄上…ど、どうでしょうか?」

 

 恥ずかしそうにワシに聞いて来た

 

永遠

「フム、似合っとると思うぞ?」

 

ラウラ

「ほ、本当ですか!!」

 

永遠

「うむ。」

 

ラウラ

「えへ、えへへ…兄上に褒められた♪」

 

 こやつ本当に変わったの~…いい事だと思うのじゃが変化が激しすぎて着いて行くのが厳しくなっとるのぉ…

 その後、ワシ等は鈴やシャルロット、織斑姉弟達がビーチボールを始めたんでそこに混ざって思う存分遊び倒したわい!

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 私は生徒達と一頻り遊んだ後、ある人物を探していた

 そいつは海水浴場にはいなかったのでこうして探しに出向いていた

 別に必ずあそこにいろと言う訳では無かったがそいつは目を放すと何をするか分からないからな

 そして、浜辺から少し離れた岩場にそいつはいた

 

「………」

 

 そう、先日火ノ兄の【戦国龍皇】を盗んだ事で懲罰房に放り込んで反省文500枚を書かせた篠ノ之箒だ…

 反省文を全部書くまで外に出られないと言っていたが、この臨海学校の前日にギリギリだが提出して来た

 間に合わなかったらそのまま置いて行くつもりだったんだがな…

 

「………明日か…」

 

 …やはりそう言う事だったか…

 明日はアイツの誕生日…そして、先日の束からの連絡…

 妹から連絡が来たと聞いた時、アイツが束に何を要求したのか大よそ見当が付いた…

 だが、その時に束から要求された『物』…あんな物何に使うつもりだ?と言うか下手をすると個人情報の流出で私が罰せられかねんからさっさと返して欲しいんだがな…

 まあ、アイツが管理するなら漏れる事の方があり得んか…どうせ明日になったら現れるだろうからその時に返すように言っておくか…

 と、そんな事よりも今考えないといけないのはだ…今のアイツなら妹からの頼みとは言え二つ返事で何でもかんでも了承するとも思えんが一応気を付けておくか…

 私はそう考えながらその場を後にした…

 あの様子では明日までは大人しくしているだろう…それに懲罰房から出て来た時にまた何かやらかしたらその時は『()()()()()』から授業を受けて貰うと脅しといたから下手な事はせんだろう…

 だがそれでも、この臨海学校が無事に終わる事を願わずにはいられなかった…

 

 ~千冬 Side out~

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第103話:剣刃(つるぎ)~その弐~

 ~鈴 Side~

 

 夕食の時間になったから私達は全員で旅館の大広間で食事を取っていた

 永遠の両隣はセシリアと本音が座っていて、簪は正面に座っている

 私はその簪の隣に座っていた

 

「そう言えば永遠?」

 

 その時、私は前から聞きたかった事を聞こうと思って永遠に話しかけた

 

永遠

「ん~?」

 

「あのタッグ戦の時から聞きたい事があったんだけど?いいかな?」

 

永遠

「何じゃ~?」

 

「アンタが造る【剣刃(つるぎ)】だけどさ、他にどんなのがあるの?」

 

永遠

「…他の【剣刃(つるぎ)】じゃと?」

 

 ザワ!

 

 私の一言に周り…と言うか全員が反応した

 全員が箸を止め、話を中断して私達の会話に耳を傾けていた

 私は周りを気にせず質問を続けた

 

「本音から聞いたけど他にも槍や斧、弓とかもあるんでしょ?どんなものがあるのかな~って?」

 

セシリア

「永遠さん!わたくしも知りたいですわ!!」

 

「私も!!」

 

本音

「教えてよ~♪」

 

千冬

「私も聞きたいな。よければ教えてくれないか?」

 

 セシリア達だけじゃなく千冬さんまでこっちに来て聞いて来た

 

永遠

「………まあ構わんぞ?」

 

「ホント!!」

 

永遠

「しかし【剣刃(つるぎ)】か…そう言えば説明らしい事をな~んもしとらんかったな…」

 

千冬

「言われてみるとそうだな…」

 

 …確かに…永遠の造った【剣刃(つるぎ)】のインパクトが強すぎて細かい説明を聞くの忘れてたわ…

 

セシリア

「そう言えば【剣刃(つるぎ)】の事でこれも聞きたかったのですが…【六道剣(りくどうけん)】も【剣刃(つるぎ)】何ですか?」

 

永遠

「あぁ、アレも【剣刃(つるぎ)】じゃよ。」

 

「やっぱりそうだったんだ!」

 

永遠

「さて【剣刃(つるぎ)】の事じゃな…1組のもんには【六道剣(りくどうけん)】の時に軽く話したがまずアレは赤・白・緑・紫・黄・青の6つの色を属性として分けられとる。コレは分かるな?」

 

全員

「ウンウン!」

 

永遠

「そして各色はそれぞれ赤が炎、白が氷、緑が風、紫が闇、黄が光、青が水を司っとる。」

 

「って事は私の【ライトニング・シオン】は紫だから闇を操れるのね?…あれ?でもあの剣…雷を扱えたけど?」

 

永遠

「中にはそう言うのもある。実際ワシの【六道剣(りくどうけん)】も【オオテンタ】は大地、【ミカヅキ】は【ライトニング・シオン】同様雷を操れるからな。」

 

セシリア

「そう言えばそうでしたわね…」

 

永遠

「次に【剣刃(つるぎ)】は必ずどれかの色を持っとる、中には2色以上の色を持っとるのもあるがな。」

 

ラウラ

「そんな物まであるのですか!?」

 

永遠

「片手で数えられる程度じゃがな。」

 

シャルロット

「それでも複数の色って事はそれだけ使える力が多彩って事でしょ?」

 

永遠

「その分使いこなすのはより難しくなるぞい。」

 

千冬

「まあそうなるか。」

 

 うん、普通に考えて単色と同じレベルで使える訳無いわよね

 

永遠

「【剣刃(つるぎ)】の説明はこんな所じゃ。分かったかの?」

 

全員

「はい!」

 

 説明って言っても属性くらいしか言って無いけどね…

 私がそんなツッコミを内心していると…

 

永遠

「それとな?セシリア、簪、本音、鈴に渡した【剣刃(つるぎ)】は上位の物にあたる。」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「え!?」

 

 永遠が行き成り聞き捨てならない事を口にした

 上位?私達の【剣刃(つるぎ)】が?

 

千冬

「上位とはどういう事だ?」

 

永遠

「うむ、セシリア達に渡した【剣刃(つるぎ)】はあるカテゴリに含まれる物なんじゃよ。」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「カテゴリ?」

 

永遠

「あの4本の【剣刃(つるぎ)】はな?『光の剣』と『闇の剣』と言われる12本の剣の内の4つ何じゃよ。」

 

千冬

「光と闇?黄色と紫の事じゃないのか?」

 

永遠

「色とは違う。その12本はそれぞれ『光の6色の剣』と『闇の6色の剣』に分類されとるんじゃ。」

 

 あ、違うんだ…私も千冬さんと同じこと思ったんだけどな…

 

「じゃあ私達の【剣刃(つるぎ)】は…」

 

永遠

「セシリアと簪、鈴は光の剣、本音は闇の剣なんじゃよ。」

 

本音

「何で私だけ闇なの~!!」

 

 そうよね、何で本音だけ闇の剣にしたんだろ?

 

永遠

「いや、お主の【ワイバーン・ガイア】に合わせたんじゃが…」

 

本音

「ほえ?…【ワイワイ】に?」

 

永遠

「そうじゃ。【トワイライト・ファンタジア】は闇の黄色何じゃが、光の黄色の剣じゃと合いそうになくてな…」

 

「どういう事?」

 

永遠

「あの【ワイバーン・ガイア】にサーベルみたいな剣では合わんじゃろ?」

 

本音

「サーベル?」

 

永遠

「…口で説明するより実際に見せた方が早いか…」

 

 永遠はそう言うと端末を出してあるデータを出した

 そこには私達が其々持っている4本の【剣刃(つるぎ)】を含めた12本の剣のデータが表示された

 

セシリア

「コレが光の剣と闇の剣…」

 

永遠

「セシリアの【メイルシュトロム】は光の青、簪の【クラウン・ソーラー】は光の白、鈴の【ライトニング・シオン】が光の紫、そして本音の【トワイライト・ファンタジア】は闇の黄色じゃ。」

 

 話を聞きながらデータを見てると本音の【トワイライト・ファンタジア】の隣に黄色いサーベルみたいな剣があった

 多分これが光の黄色…でもこの形状って…

 

「…【光翼の神剣エンジェリックフェザー】…確かにこの光の黄色の剣じゃ本音の【ワイバーン・ガイア】には合わないね…刀身が細すぎるよ…」

 

 簪の言う通りこれをあの【ワイバーン・ガイア】が咥えた所を想像してみたけど…うん!全く合わない!

 確かにこれなら闇の方の【トワイライト・ファンタジア】を選んだ理由も納得出来るわ

 

永遠

「分かってくれたか?」

 

全員

「うん!」

 

千冬

「…布仏だけが闇の剣なのは分かったが…となると残りは8本か…」

 

永遠

「いや、7本じゃ。闇の青…【深淵の巨剣アビス・アポカリプス】は束さんが持っとる。」

 

千冬

「束だと!?」

 

 え!?束さんも持ってんの!?

 って、あの人が【剣刃(つるぎ)】の事を知って大人しくしてる筈無いか…

 

永遠

「ワシが【剣刃(つるぎ)】を造れると知って1本欲しいとせがまれてな。それで造ったんが…」

 

千冬

「闇の青と言う事か…では残りは…赤と緑は両方、白と紫は闇、黄色は光がまだ造っていないという事か?」

 

永遠

「そうなるの。まあ渡してもいい相手がおらんから造っとらんと言うのも理由なんじゃが…」

 

全員

「………」

 

 永遠の一言に全員が黙り込んだわね

 中には悔しそうな顔した子もいるけど…

 

永遠

「まあ織斑先生なら造っても構わんのじゃが………こんなのはどうじゃ?」

 

 永遠はそう言って一振りの【剣刃(つるぎ)】のデータを出した

 それは唾の部分が獅子の顔になった日本刀のような【剣刃(つるぎ)】だった

 

千冬

「どれ?………名前は【獅子王】…色は赤か…フム…悪くないな。」

 

 【獅子王】を見て千冬さんも一目で気に入ったみたいだった

 

千冬

「欲しいところだが私の機体は凍結封印してるからコイツを手に入れても使えんな。」

 

永遠

「さよか。」

 

 そう言えば千冬さんの【暮桜】って封印してるんだったわね

 ってそうだ!忘れてた!

 

「ねえ!他の【剣刃(つるぎ)】も見せてよ!」

 

永遠

「そう言えばそうじゃったな…ちと待て…」

 

 永遠はそう言うと端末を操作し始めた

 暫くして【剣刃(つるぎ)】のデータが表示され、それが広間全体に広がった

 

永遠

「一部を除いてこれで全部じゃ。皆好きな様に見るといい。」

 

 永遠がそう言うと私達だけじゃなくその場にいた全員が食事を止めて立ち上がって思い思いの【剣刃(つるぎ)】のデータを見始めた

 

生徒1

「ハンマーまであるよ!」

 

生徒2

「鞭!?…コレで叩かれたらどうなるんだろ…」///

 

生徒3

「うわ~…綺麗な扇…これも【剣刃(つるぎ)】なんだ…」

 

生徒4

「このハサミ…剣より怖いよ~…」

 

 皆が思い思いの事を言ってるわね…

 一部変な事を言ってる人がいるけど…

 …一部って言えば何で見せてくれないのがあるんだろ?

 

千冬

「火ノ兄、私達に見せられないのもあるのか?」

 

 千冬さんも私と同じ事を思ったんだ

 

永遠

「別に見せたら危険と言う訳では無いんじゃが…強力過ぎるんじゃよ…」

 

セシリア

「強力過ぎると言うのは?」

 

永遠

「さっき説明の時に言うた複数の色を持つ【剣刃(つるぎ)】の事じゃ。ああは言ったが実際複数と言っても2色と全色の2本しかないんじゃよ。」

 

「え!全色!?」

 

永遠

「そうじゃ。正直に言うと全色の方はワシでも使いこなせるか分からん代物じゃからな…」

 

本音

「永遠でも!?」

 

 コイツでも使えない【剣刃(つるぎ)】があるって言うの!?

 

ラウラ

「一体どんな【剣刃(つるぎ)】何ですか!!」

 

永遠

「言っとくが全色の【剣刃(つるぎ)】はワシは絶対に造らんぞ?」

 

「それでも名前くらい教えてよ!」

 

 私がそう言うと周りの皆も盛大に頷いた

 

永遠

「…仕方無いのぉ…」

 

 そう言って永遠は再び端末を操作しだした

 そして出て来たのは1本の剣と槍だった

 

千冬

「コレが…」

 

永遠

「まず2色の【剣刃(つるぎ)】の方は【星海槍アスピディスケ】…青と緑の【剣刃(つるぎ)】じゃ。」

 

 それはエメラルドの様な綺麗な槍だった…

 そしてもう一つは…

 

永遠

「次に【光導星剣ゾディアックソード】…全6色を宿す唯一の【剣刃(つるぎ)】じゃ。」

 

 【ゾディアックソード】…黄道十二星座の名前の通り唾の装飾に黄道十二星座のマークが描かれた白い剣だった

 映像からはマークは6つしか見えないけど多分裏側が残りの星座のマークが掛かれてるんでしょうね…

 

 ~鈴 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 【剣刃(つるぎ)】か…まさかこんなにいろんな種類があったなんてな…俺の【大倶梨伽羅(おおくりから)】はその一つでしかなかったのか…

 

永遠

「ちなみにこれ以上に物騒な【剣刃(つるぎ)】が1本あるがそれはそもそも造れんからな。」

 

全員

「へ?」

 

 俺がそんな事を考えていると火ノ兄がおかしな事を言い出した

 何言ってんだコイツ?

 【剣刃(つるぎ)】を造れるただ一人の人間が造れない【剣刃(つるぎ)】があるってどう言う事だ?

 それに6色全てを持つ【ゾディアックソード】以上の【剣刃(つるぎ)】があるって言うのか?

 

千冬

「それはどう言う事だ?」

 

永遠

「…その【剣刃(つるぎ)】は『造る』のではなく『呼び出す』んじゃよ。」

 

セシリア

「呼び出す、ですか?」

 

永遠

「そうじゃ。そしてそれが可能なのは今の所セシリア、簪、本音、鈴、そして束さんじゃ。」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「え?」

 

シャルロット

「待ってよ!今の名前って!?」

 

 今あげた名前に共通するものって言ったら…まさか!?

 

「私達の【剣刃(つるぎ)】…光と闇の12本の【剣刃(つるぎ)】の事なの!?」

 

永遠

「左様…12の【剣刃(つるぎ)】が揃う事で初めて使う事が出来る【剣刃(つるぎ)】…それが【裁きの神剣リ・ジェネシス】じゃ。」

 

セシリア

「【裁きの神剣リ・ジェネシス】…」

 

「名前だけでも凄く強そう…」

 

永遠

「じゃろうな、【リ・ジェネシス】自身は赤の属性じゃがアレは12の【剣刃(つるぎ)】の集合体…単純に12本を纏めた時よりも遥かに強い。」

 

全員

「ええっ!?」

 

「何よそれ!?私の【ライトニング・シオン】もかなり強力な武器よ!!」

 

シャルロット

「と言うより既存のISの武器よりも永遠の造る【剣刃(つるぎ)】は強力なんだよ!」

 

セシリア

「それをたった1本で12本全て揃った時よりも強いなんて!?」

 

 オイオイ…だとしたらその【裁きの神剣リ・ジェネシス】って一体どれだけの力があるんだよ!?

 

永遠

「…その程度で何を驚いとる?」

 

全員

「その程度!?」

 

永遠

「【裁きの神剣】には一つ上の段階が存在しとるんじゃよ。」

 

全員

「え!?」

 

永遠

「…【真・裁きの神剣トゥルース・エデン】…【リ・ジェネシス】の力を完全に開放した姿じゃよ。」

 

全員

「………」

 

 もう言葉が出ねえよ…

 これ以上【裁きの神剣】の事を聞くと気が変になりそうだ…

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 【裁きの神剣リ・ジェネシス】か…話を聞くだけで頭が痛くなる【剣刃(つるぎ)】だ…

 デュノアの言う通りコイツが造った【剣刃(つるぎ)】はどれもISの通常武器を超える

 それどころか第3世代兵装よりも強力だ

 各国が新型の武器を造るだけでもどんなに早くて数か月はかかる

 だが、コイツの場合は1日どころか1時間程度でそんな物騒な物をポンポン造る事が出来る

 その中でも上位に位置するのがオルコット達が持つ光と闇の剣…

 その集合体ともなれば一体どんな力を持つと言うんだ…

 私ならそんなとんでもない【剣刃(つるぎ)】…頼まれても使いたくないぞ!!

 

永遠

「カテゴリで言えば…後は【惑星神剣】かの?」

 

全員

「【惑星神剣】?」

 

千冬

「何だそれは?」

 

 光と闇の剣の他にも上位に位置する【剣刃(つるぎ)】がまだあるのか?

 

永遠

「この地球を含めた太陽系の星の名を持つ8本の【剣刃(つるぎ)】の事じゃ。水星…金星…地球…火星…木星…土星…太陽…月の【剣刃(つるぎ)】の事じゃ。」

 

 周りが驚く中、火ノ兄は端末を操作し8本の【剣刃(つるぎ)】のデータを表示した

 

千冬

「…コレが【惑星神剣】…確かに太陽系の星の名前が付けられてるな…」

 

真耶

「でも太陽は『恒星』で月は『衛星』ですよ?」

 

千冬

「真耶…そこはツッコまない方がいいぞ?」

 

 こう言う事はスルーするのが正解だ

 

真耶

「………すみません…」

 

セシリア

「そう言えば永遠さん…太陽系の星と言いますけど天王星と海王星、後は冥王星がありませんけど?」

 

 ああそうか…太陽系にはまだ三つの惑星があったな

 まあ冥王星は準惑星だがな

 

永遠

「それはワシにも分からん。データが無いようじゃから三王星の【剣刃(つるぎ)】は存在せんようじゃ。」

 

 火ノ兄がそう言うなら本当に存在しないのだろうな…

 それにしても【惑星神剣】か…話を聞く限り【六道剣(りくどうけん)】や光と闇の剣よりワンランク下みたいだがそれでも他の【剣刃(つるぎ)】よりかは上みたいだな…

 【剣刃(つるぎ)】…まさかココまでの物だったとはな…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

 【惑星神剣】で周りが騒ぐ中、私は心を落ち着かせると光と闇の剣のデータに視線を移した

 私はまだ見た事が無い残りの剣を見ているとある【剣刃(つるぎ)】に目が止まった

 

「ん?」

 

 それを見て…

 

「ねえ一夏。」

 

 近くにいた一夏にコッソリ話しかけた

 

一夏

「何だ?」

 

「この闇の緑の剣はアンタに合いそうよね?」

 

一夏

「闇の緑?え~っと…【黒蟲の妖刀ウスバカゲロウ】?」

 

 そう、それが私の目に止まった剣だった

 だってこれ…

 

一夏

「コレが?」

 

「そうよ!【ウスバカゲロウ】…アンタにピッタリじゃない♪」

 

 コイツを現すのにピッタリの『名前』だもん!

 

一夏

「…何処がだよ?」

 

「【ウスバカゲロウ】の『名前』を切る場所を変えて読めば分かるわよ。」

 

一夏

「名前?切る場所?」

 

 私がそう言うと一夏は考え始めた

 すると…

 

千冬

「フム…なるほど、そう言う事か。確かにこいつにピッタリだな。」

 

 私の話を聞いていた千冬さんがいち早くその理由に気付いた

 そして私の言う事に同意した

 

一夏

「え?…ウスバ…ウス…バカ…ん!?」

 

 あ!気付いたわね!

 

一夏

「…ウス()バカ(馬鹿)ゲロウ(下郎)…」

 

「はい正解♪正にアンタそのものでしょ♪」

 

一夏

「うぐぐっ…」

 

「反論出来る?」

 

一夏

「…出来ません…」

 

 今迄コイツがしてきた事を考えればこの剣の名前の通りだものね

 ま、こんな言い方するのは今回だけにしとこ!

 永遠が【ウスバカゲロウ】を造った時、持ち主が馬鹿にされるかもしれないからね!

 

 ~鈴 Side out~

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第104話:女同士の座談会

 

 ~千冬 Side~

 

 夕食も終わり、私は自分に用意された部屋で寛いでいた

 

千冬

「あ~…そこそこ…そこがいい~…」

 

 それで今は一夏にマッサージをして貰っている

 コイツは昔からこう言う事は本当に得意だからな~…

 ちなみに何故一夏が私の部屋でマッサージなんかしてるかと言うとコイツは私と同じ部屋だからだ

 去年までの臨海学校と違い今回は男の一夏と火ノ兄がいるからいつも通りの部屋割りが出来なかった

 他の生徒達と同じ部屋にすると何が起きるか分からんからな…下手するとひと夏の間違いみたいな事が起きるかもしれん…

 かといって男2人を同じ部屋にするのも問題があった…ガキ共が乱入するかもしれんからな…中には一夏か火ノ兄のどちらかを追い出して乗り込んでくる奴がいるかもしれん…と言うか本当にやりそうな奴に心当たりがあるんだよな…

 それに火ノ兄の貞操も危険だ…

 あの馬鹿…最近は姉の私ですら本当に『ホモ』なのではないかと思う時があるからな…

 2人っきりにして間違い起きたら本気でシャレにならん…そんな事になったらオルコット達がマジギレして一夏を殺しかねん…しかも火ノ兄の怪我はまだ完治してないから一夏に襲われても撃退出来るか不安だしな…

 まあそんな訳で一夏は私と同室になっている

 そして火ノ兄は真耶の部屋にいる

 っと…そんな事よりそろそろ来る頃だな…

 

千冬

「一夏~…もういいぞ~…」

 

一夏

「ん?もういいのか?」

 

千冬

「ああ…あ~スッキリした………一夏、ホレ!」

 

一夏

「え?」

 

 私はマッサージを終えた一夏に少し多めに駄賃を渡した

 

千冬

「マッサージの駄賃だ…それと悪いが少し部屋を出ていてくれ。」

 

一夏

「え?何で?」

 

千冬

「これから少し女同士で話をしようと思ってな…その駄賃で好きなもの買っていいから時間を潰していてくれ。」

 

一夏

「え、う~ん…そう言う事なら仕方ないけど…何時頃戻ってきていいんだ?」

 

千冬

「そうだな…大体1時間は空けてくれるとありがたいな。」

 

一夏

「1時間か…分かったよ…」

 

 一夏はそう言って了承すると部屋を出て行った

 …しかしアイツ…時間を潰せとは言ったがどうやって潰す気だ?

 まさか火ノ兄の所に行く気じゃないよな?………ま、まあ大丈夫か…仮に行っても真耶もいるしな…間違いは起きまい…

 起きないよな?

 信じてるからな…一夏…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~シャルロット Side~

 

シャルロット

「織斑先生何の用だろ?」

 

ラウラ

「さあな?」

 

 今、僕はラウラと一緒に織斑先生のいる部屋に向かっていた

 食事の後に織斑先生から少し話したいから部屋に来てくれって言われたんだけど、その途中でラウラと会って同じ理由だったから一緒に向かっていた

 そして…

 

シャルロット&ラウラ

「あっ!」

 

セシリア

「あら?」

 

「2人も呼ばれたの?」

 

シャルロット

「うん。」

 

 織斑先生の部屋の前でセシリア、簪、本音、鈴の4人と会った

 セシリア達も呼ばれてたんだ…そう思っていたら…

 

「むっ!?」

 

全員

「あっ!?」

 

 今度は箒もやって来た

 

「…お前達も千冬さんに呼ばれたのか?」

 

「ええ、そう言うって事はアンタもみたいね?」

 

「………」

 

 【戦国龍皇】を盗んだ一件から皆の箒に対する態度は冷たくなったからな~…

 まあ、僕も彼女に対して良い印象は無いんだけど…と言うか今迄彼女の良いところなんて見た事無いんだよな~…

 けどいつまでもココに居る訳にもいかないし…

 

シャルロット

「ねえ皆?早く入ろうよ?」

 

本音

「そ~だね~♪」

 

 僕がそう言うと皆が織斑先生の待つ部屋に入って行った…

 

 ~シャルロット Side out~

 

 

 

 ~箒 Side~

 

 まさかコイツ等も呼ばれていたとは…

 チッ…コイツ等の私を軽蔑する目…実に不愉快だ!!一体私が何をしたと言うのだ!!たかだかIS一つに拒否されただけでこんな態度を取るとは…コイツ等の器が知れると言うものだ!!

 だが、今は気にしても仕方ないか…

 一先ず私はコイツ等と一緒に千冬さんの部屋に入る事にした

 

全員

「失礼します。」

 

千冬

「入れ!」

 

 挨拶をしてはいるとそこには缶ビールを飲んでいる千冬さんがいた

 だが…一夏がいない?

 

「あの…一夏は?」

 

千冬

「ああ、アイツならマッサージの駄賃をやって追い出した。暫くは戻って来るなと言ってあるから気にしなくていいぞ。」

 

「は、はぁ…」

 

千冬

「ほら!何時までも入り口で突っ立ってないで中に入れ!」

 

全員

「はい!」

 

 私達が中に入って思い思いの場所に座ると千冬さんは冷蔵庫からビニール袋を取り出して私達に渡した

 中に入っていたのはジュースだった

 

千冬

「好きなのを取れ。私のおごりだ。」

 

全員

「ありがとうございます!」

 

 私達は自分の好きなのを取るとジュースを口にした

 すると…

 

シャルロット

「あの~織斑先生…さっきマッサージって言ってましたけど一夏ってそんな事するんですか?」

 

千冬

「ん?ああ、アイツはアレでも家事全般が得意でな、料理、掃除、洗濯、大概の事は出来る。マッサージも中々のものでな、体の疲れがすっかり無くなった。」

 

シャルロット

「へ~…」

 

千冬

「気になるなら後でやって貰え。」

 

シャルロット

「はい!」

 

「………」

 

 コイツ…鈴と同じでやはり一夏を狙っていたか…

 私は新しい『敵』が現れたと認識した

 そしてデュノアに対して警戒を強めていると…

 

千冬

「さて、そろそろ本題に入るか…」

 

 千冬さんが私達を集めた理由を話し始めた

 

千冬

「単刀直入に聞く…お前達の中で一夏に気があるのは誰だ?」

 

箒&シャルロット

「!?」

 

千冬

「ふむ、箒とシャルロットか…」

 

 え?私とデュノアの『2人』だと?

 

「鈴!お前は…」

 

「私はもうアイツに興味なんて無いわよ。アイツにはその事はもう伝えてあるし、アンタ達がアイツと付き合いたいって言うんなら好きにすればって言うだけよ。」

 

「なっ!?」

 

 いつの間に一夏を諦めたんだ!?

 だが、これはいい事を聞いた…私にとっての一番の障害が一夏のセカンド幼馴染と言う鈴だったからな…鈴に比べればデュノアなど私の相手ではない!!

 

千冬

「(コイツ…鈴が一夏を諦めたと思ってるな?実際は諦めたのではなく愛想が尽きたからなんだが…コイツにはそんな事関係無いのだろう…)まぁ、確かに一夏は私に出来ない事が出来る男だ。家事も料理も中々だしマッサージも上手い。付き合える女は得だな。但し、超が付くほどの鈍感の大馬鹿だがな。」

 

箒&シャルロット

「そ、それは…」

 

 否定出来ない…千冬さんの言う通りアイツは底抜けの朴念仁だからな…

 

千冬

「それでも欲しいか?」

 

箒&シャルロット

「くれるんですか!?」

 

 勿論欲しいに決まってる!!

 一夏をくれると言うなら私が喜んで貰う!

 

千冬

「欲しければ勝手に持っていけ!ただし、あの馬鹿を惚れさせる事が出来たらな。」

 

 ならば問題無い!

 一夏の相手に相応しいのはこの私以外ありえんからな!

 そう思っていたら…

 

千冬

「それから箒…お前は駄目だ!」

 

「!?…な、何でですか!?」

 

 どう言うつもりだ!?

 何故私が駄目なんだ!!

 

千冬

「何でだと?人様の物を自分の物だと言って平然と盗む様な奴に弟をやる姉が何処にいる?泥棒と知っているのに弟の彼女として認める馬鹿がいるのか?」

 

「!?」

 

 ど、泥棒!?

 私が…泥棒だと!?

 

千冬

「シャルロット…あの馬鹿には根気よく伝えるしかないからまあ頑張れ。」

 

シャルロット

「は、はい!」

 

「アイツの鈍さは病気レベルだから本気で落としたいなら遠慮なんかせずにガンガン押した方がいいわよ。実体験した私が言うんだから間違いないわよ。」

 

シャルロット

「う、うん…(鈴が言うと説得力あるな…)」

 

千冬

「…それから箒…さっきはああ言ったが今後のお前の態度次第では私も考えが変わるだろう。だが『今』のお前では私は絶対に一夏との交際を認めん。そこの所をよく考えておけ。」

 

「ぐっ…」

 

 今の私だと!?

 一体私に何の問題があると言うんだ!?

 

 ~箒 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 コイツ…私の言った事絶対分かって無いな…

 自分勝手な我儘を治せと言う意味で言ったんだが…この様子では意味を理解すらしてないか…

 はぁ…まあいいか…治さないならそれはそれで放っておけばいい…

 一夏との交際を認めないだけだからな…

 さて、一夏の方はこの位でいいか…

 

千冬

「…次に火ノ兄に気があるのは…ってお前達3人しかいないか…」

 

セシリア&簪&本音

「はい♪」

 

「もう分かりきってるわよ…でも、アンタ等の誰と付き合うのかしらねアイツ?」

 

 確かに、アイツどうするつもりなんだろうな…

 

セシリア

「それならもう決まってますわ♪」

 

「え?」

 

「永遠は…」

 

本音

「私達3人と付き合ってるんだよ~♪」

 

全員

「え?…えええええぇぇぇぇぇ―――――っ!!!」

 

 コイツ等、いつの間にそんな関係になったんだ!?

 

シャルロット

「3人ってどういう事!?」

 

セシリア

「…あのタッグ戦の後…わたくし達3人は話し合ったのです。」

 

「私達は永遠が好き!その想いは一緒だった!」

 

本音

「でも、だからって他の二人を蹴落としてまで永遠の隣にいたいとは思わなかったんだ~♪」

 

セシリア

「そんな事をすれば永遠さんの方から離れて行くでしょうし…何よりわたくし達自身もお互いの事が嫌いではありませんでした!」

 

 まあそうだな…コイツ等恋敵ではあったが箒の様に相手を敵視してなかったし、互いの仲が悪い訳では無かったからな

 

「だから話し合って決めたの!」

 

本音

「私達3人で告白して、3人揃って恋人にして貰おうって♪」

 

「お前達それでいいのか!?」

 

セシリア

「いいですわ!それがわたくし達の誰もが幸せになれる一番の方法ですもの♪」

 

「そう♪永遠にそう言ったら最初は驚いて混乱してたけど…」

 

本音

「最後は私達の提案を飲んで~…私達3人を受け入れてくれたんだ~♪」

 

 そうか…アイツも腹を決めたのか…

 

「そうなんだ…おめでとう♪」

 

セシリア&簪&本音

「ありがとうございます♪」

 

「私もアンタ達に負けないくらいのいい男を見つけないとね♪」

 

セシリア

「鈴さんでしたら素敵な殿方を見つけられますわ♪」

 

「そうね!『()()()()』よりいい男なんてそこら中にいるわよね♪今度こそ男に失敗しないように頑張るわよ!!!」

 

「あ、あんなのだと!!」

 

千冬

「………」

 

 あんなのか…そうだな…そうとしか言いようがないか…

 自業自得とは言え…自分に好意を持っていた子にココまで言われるとは憐れな弟だ…

 

ラウラ

「では私はこれからお前達の事を『姉上』と呼べばいいんだな!!」

 

セシリア&簪&本音

「結構です!!」

 

ラウラ

「む!何故だ?兄の恋人なら私にとっては姉に当たるではないか!」

 

 ラウラの奴…コイツ等に対しても妹キャラで通すつもりなのか…

 コイツに関しては恋愛よりも妹ポジションの方が重要みたいだな…

 まあそれは置いておいて…

 私は時計を見てそのまま視線をそっと廊下への扉へと向けた…

 既に1時間経過したからな…

 

 ………

 ……

 …

 

一夏

「…あんなの………鈴…俺の事をあんなのって…ハハハ…あんなのか………そうだよな…鈴にとって俺はもうその程度の相手なんだよな…」

 

 …一夏…コレがお前の今までやって来た事の結果だ…

 私は戻って来ていた弟に心の中でそう呟いていた…

 

 ~千冬 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第105話:蒼炎の不死鳥!ハルファス・ベーゼ!!

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「さて…集まったな?」

 

 一夜明け、臨海学校2日目…今日から本格的な実習になる

 まずは各グループに分かれてISの新装備のテストから始める

 そして私の受け持つ班は専用機持ちのみのグループとなっている

 代表候補生5人に一夏と火ノ兄、布仏もいるんだが…

 

「…あの…織斑先生?」

 

 やはり来たか…

 

千冬

「…何だ?」

 

「何で箒がいるんですか?ココには『専用機を持ってる人』が集まるんじゃないんですか?」

 

「………」

 

 そう…ココには何故か専用機を持たない箒がいる

 勿論私は呼んでない

 班分けの時もコイツは専用機を持たない一般生徒達の班にしていたし、真耶や他の教師達からも箒の班を変更する様な話は聞いていない

 つまりコイツは『また』勝手にここに来たという事だ

 だから私は…

 

千冬

「知らん。コイツが勝手に混じっているだけだ。」

 

「!?」

 

 こう言うしかないんだがな

 すると…

 

セシリア&簪&本音&鈴

「またですか?」

 

ラウラ&シャルロット

「また?」

 

 同じような事をした事を知っている4人が声を揃えてそう言った…まあ言いたくもなるか…コイツが勝手な事をしている場所だと大抵面倒な事になるからな…

 

シャルロット

「またって…以前も同じような事があったの?」

 

「ええ、先生の許可も取らずに試合前の一夏のピットに入り込んでたらしいわ。」

 

シャルロット

「え!?それってマズいでしょ?」

 

「マズいに決まってる。」

 

 その通りなんだがコイツはそれが分かって無いんだよな…はぁ~…

 私が内心溜息を吐いていると…

 

「私の班はココだ!!」

 

 とか言う始末だ…本当にどうしようもないなコイツ…

 こんな風に自分勝手な事ばかりしているから昨日も弟を任せるとは言えなかったんだ…

 

全員(一夏以外)

「はぁ~…」

 

 しかも一夏以外は揃って深い溜息を吐いている…私だって本当は溜め息を吐きたい

 だがコイツには何を言っても無駄だろうし、追い出すだけでも一苦労だ…

 だからココは…

 

千冬

「もうコイツの事は放っておけ…相手にするだけ時間の無駄だ…」

 

「なっ!?千冬さん!?」

 

千冬

「織斑先生だ!篠ノ之…この班にいたいなら好きにしろ!だが今日の実習の単位…お前は無いからな?」

 

「な、何でですか!?」

 

千冬

「当り前だろ?お前のやってる事はサボりと同じだ。全員の前で堂々とサボる奴に単位をやる教師が何処にいる?単位が欲しいなら『元』の班に戻るんだな。」

 

 コレで戻ればいいんだが…

 

「私はサボってません!!ココが私の班です!!!」

 

 こんな事で聞き分けるような殊勝な奴なら苦労は無いか…もういい…無視だ無視!!!

 

千冬

「はぁ…もういい…そんなにこの班がいいなら好きにしろ…だが、さっきも言ったがお前の今日の単位は無しだ。それからお前達もコイツの相手はする必要無いからな。何か言ってきても無視して構わん。…では始めるぞ!!」

 

 結局私も溜め息を吐いてしまい、そのままテストを始める事にした

 私が言わなくても全員が箒を相手にするつもりが無かったようだな…いや、一夏だけは気にしているようだが何も言わんか…流石のアイツも箒の身勝手さには口を出せんか…

 

「ぐっ…くぅぅ…」

 

 唸り声をあげる位なら元の班に戻ればいいものを…本当に馬鹿だなコイツ…

 

千冬

「さて…先ずは…」

 

 箒を無視して始めようとした時…

 

永遠

「ムッ!!」

 

 火ノ兄が何かに反応した

 

「どうしたの?」

 

永遠

「何か来るぞ?」

 

全員

「え!?」

 

 何かって…まさか!?

 

 ズドオオオオオォォォォォンッ!!!

 

 私達の近くに何かが落ちて来た

 煙が晴れるとそこには…

 

千冬

「…やっぱりアイツか…」

 

 案の定デカいニンジンが突き刺さっていた

 やはり今日現れたか…

 

「姉さん!!!」

 

 箒の奴…束が現れて喜んでるな…

 アイツ本当にコイツのISを用意したのか?

 だとしたらこの馬鹿もこの班になるんだがなぁ…

 

「束さん参上!!!」

 

 そんな事を考えている間に束が出て来た…クロニクルかもと思ったんだが駄目だったか…

 

千冬

「久しぶりだな…束…」

 

 とりあえず挨拶くらいするか…

 

「そうだね~♪とーくんとセーちゃんが試験を受けに行った日ぶりだね~♪」

 

千冬

「そうだな…あれから数カ月しか経っていないと言うのに随分会って無い気がするな…」

 

「ニャハハッ♪そっちじゃトラブルばかりだったもんね~?」

 

千冬

「全くだ…軽く2,3年は経過した感じがする…」

 

「あ~…ご愁傷様…」

 

千冬

「お前が相手でもそう言われると気が楽になるな…」

 

「なんか棘のある言い方だな~!」

 

千冬

「感謝してると言ってるんだ。」

 

 本心で言ってるぞ?

 

千冬

「さて…それで今回は何の用だ?」

 

 気を取り直して用件を聞くか…大体分かってるが…実際、箒の奴は後ろでニヤニヤ笑ってるしな

 そう思ってたんだが…

 

「うん!『()()()()()()()()』が完成したから持ってきたんだよ!!」

 

「なっ!?」

 

千冬

「何?」

 

セシリア

「はい?」

 

 オルコットの機体だと?

 そっちを持って来たのか?

 

「という訳で全員頭上に注目!!」

 

 束がそう言って言うを指差すと釣られて私達は上を見上げた

 そして…

 

 ズドオオオオオォォォォォンッ!!!

 

 コンテナが落ちて来た

 

「これがセーちゃんの新しいIS!のんちゃんの【ワイバーン・ガイア】のデータのお陰で完成した第5世代型2号機!!その名も【ハルファス・ベーゼ】だよ!!!」

 

 束が名前を言った瞬間コンテナが開いた

 中から出て来たのは全身装甲(フルスキン)のISだった

 元になったのが【ブルー・ティアーズ】の為か全体的に青地に白の装飾のされた機体だった

 中でも目が向いたのは両肩にある巨大な4枚の翼だった

 

セシリア

「【ハルファス…ベーゼ】…」

 

千冬

「お前やっぱり第5世代に改造したな!!」

 

 予想通りと言うか何と言うか…

 

「だって~そうでもしないと今のセーちゃんに着いて行ける機体にならないんだもん!!それにイギリスから許可は貰ってるから第5世代にしても無問題(モウマンタイ)だよ!!」

 

千冬

「何で最後だけ中国語だ!!だが…それを言われたら何も言えんのも事実だしな…」

 

 仕方ないとしか言えんか…

 

「でしょ?それじゃセーちゃん!この子の説明するね♪」

 

 そしてオルコットを呼ぶと束は説明を始めた

 ちなみに箒だが…自分のISが無いショックから放心している…静かでいいな…暫くこのままでいて貰おう

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 【ハルファス・ベーゼ】…よもや【ワイバーン・ガイア】に次いで造ったのがコレとは…

 この機体…確か生半可な物では無かった筈じゃ…

 あの束さんの事じゃからデータ通りのISに仕上げたじゃろうな~…

 いや、下手したら更に手を加え取る可能性もあるのぉ…

 ワシがそげな事を考えとる間に束さんの機体説明が始まった

 

「先ずはスペックだけど…第5世代だから元になった【ブルー・ティアーズ】の何倍も高いよ。中でも機動性が一番高くしてあるよ。」

 

千冬

「それは見れば分かるな…こんなデカい翼が4枚もあればな…」

 

 織斑先生の言葉に全員が頷いとる

 じゃがな先生よ…恐らくこの機体はスペックだけのISでは無いぞ…元になった【ハルファス・ベーゼ】の事を考えるとなぁ…

 

「まあね♪そして次に武装だね。この子の能力を十分に発揮出来る物を積んでるからね♪まず近接武器はビームサーベルとビームサイスが2つずつ装備してあるよ。」

 

千冬

「サーベルは分かるが…『サイス』とは何だ?」

 

「鎌の事だよ。」

 

セシリア

「鎌ですか!?何だか怖いですね…」

 

「まあそんなに大きくないよ。片手で使える程度の大きさだからね。でも連結して使う事も出来るからそうすれば両手用の大鎌になるよ。次はセーちゃんの得意な射撃武器だけどこっちは4枚の翼に大型ビーム砲【クロス・メガビームキャノン】を積んであるよ!!」

 

 束さんがそう説明すると全員の視線が【ハルファス・ベーゼ】の最大の特徴とも言うべき巨大な翼に向けられた

 

「そんでもってこの翼にはもう一つ、【ブルー・ティアーズ】のビットと同じ遠隔操作武器…【フェザースクゥィーズ】が翼1枚につき4基ずつ装備されてるよ。」

 

セシリア

「…では全部で16基あるという事ですか?」

 

「ピンポ~ン♪大正解♪更に【ブルー・ティアーズ】のビットは射撃しか出来なかったでしょ?でもこの【フェザースクゥイーズ】はそのまま相手に斬り付けたりも出来る遠近両方に対応した装備なんだよ♪」

 

セシリア

「…それ程の物を16基…全て操れるか難しいですわね…」

 

 セシリアは全ての【フェザースクゥィーズ】を同時操作出来るか自信が無いようじゃのぉ…セシリアじゃったら大丈夫だと思うんじゃが…今まで使って来た数が4倍…それも操作方法も増えたともなれば不安になるのも仕方ないかのぉ…

 

「だ~いじょ~ブイ!!そう思って【BTシステム】のデータを改良しておいたから今までよりも楽に操作出来る筈だよ♪」

 

 と思ったら束さんが対処しとったか

 流石じゃな!

 

セシリア

「そうなのですか!?ありがとうございます!」

 

「うんうん、基本装備はこんなとこだよ。後はセーちゃんの持ってる【メイルシュトロム】だね…それと…」

 

セシリア

「?」

 

 束さんは行き成り懐から1本の短剣を取り出した

 つうかアレは…げっ!?

 

「コレをセーちゃんに渡すよ♪」

 

セシリア

「え?」

 

永遠

「待ちんさい!!それは【()()()()()()()()()()】ではないか!?」

 

全員

「【アビス・アポカリプス】!?」

 

 そう、束さんがセシリアに渡そうとしたのはワシが造った【剣刃(つるぎ)】の一つ【深淵の巨剣アビス・アポカリプス】じゃった

 

「それって確か!?」

 

「束さんが持ってる『闇の青の剣』!?」

 

千冬

「束!!お前何考えてるんだ!!いくら何でも【剣刃(つるぎ)】まで渡すのはやり過ぎだぞ!!」

 

 全員パニックを起こしてしもうたか…

 まあ普通なら【剣刃(つるぎ)】を渡そうなんて考えんわな…

 

「だって折角の【剣刃(つるぎ)】何だよ?とーくんに態々造って貰って悪いけど、束さんが持ってても当分の間は研究室で埃を被るだけだと思ったんだよ。それならセーちゃんに持たせた方がこの剣も喜ぶと思ったんだよ…」

 

千冬

「ぬっ…」

 

 ふむ…それも正論じゃな…

 

本音

「でも~確か【剣刃(つるぎ)】って持ち主以外は使えないんじゃ無かった~?」

 

全員

「あ!?」

 

 ん?ああ、それじゃったら…

 

永遠

「大丈夫じゃぞ。」

 

全員

「へ!?」

 

 ワシがそう言った瞬間全員目が点になってしもうた

 

ラウラ

「兄上!!大丈夫とはどういう事ですか!?【剣刃(つるぎ)】は持ち主以外認めないと言ったのは【剣刃(つるぎ)】を造った兄上自身では無いですか!!」

 

 あ~確かにそげな事言ったの~…

 ラウラはその事を身をもって知っとるからの~…

 

永遠

「確かにそう言ったが…そもそもの話…【剣刃(つるぎ)】が所有者のみしか使えんと言うのは光と闇の12本の剣だけの話なんじゃよ。」

 

全員

「えっ!?」

 

永遠

「昨日言ったじゃろ?あの12本は【剣刃(つるぎ)】の上位に存在すると?じゃから所有者機能があるんじゃ。」

 

一夏

「え?って事は俺の【大倶梨伽羅(おおくりから)】は誰でも使えるって事なのか?」

 

永遠

「そうなるの。じゃから渡した時にすぐにISに登録する様に言ったんじゃろうが。そもそも全部の【剣刃(つるぎ)】に所有者機能があればタッグトーナメントで賞品になんぞ出来んじゃろ?あん時ワシが用意した【剣刃(つるぎ)】をワシ自身が使っておったじゃろうが?」

 

全員

「あ!?」

 

 ワシがあの試合の時、乱心したラウラを相手に【フォーマルハウト】と【アルフェッカ】を使った時の事を思い出したか…

 

一夏

「言われてみるとそうだ…じゃあアレはそう言う意味で言ったのか…ちょっと待て!なら【アビス・アポカリプス】はどうなるんだ!?アレは闇の青の剣なんだろ!!束さんが所有者ならオルコットに渡しても使えないぞ!!」

 

永遠

「いや、実はな…【アビス・アポカリプス】の所有者をセシリアに変える方法はあるんじゃよ。」

 

全員

「ええっ!?」

 

 ワシがぶっちゃけて言うと全員が驚きの声をあげてしもうた…もっと早めに言っとくべきじゃったかな…まあいいか…

 

「一体どうやるの!?」

 

永遠

「簡単じゃ、渡す側が本心から相手に譲りたいと思って【剣刃(つるぎ)】自身がそれを認めれば所有者は変わるんじゃよ。」

 

「本当に簡単じゃない…それじゃあ今回で言えば…」

 

永遠

「束さんがセシリアに託そうとしておるからの…後は【アビス・アポカリプス】がセシリアを認めれば…」

 

千冬

「【アビス・アポカリプス】はオルコットの【剣刃(つるぎ)】になると言う事か…」

 

永遠

「そうなるの…ただし…」

 

一夏

「ただし…何だよ?」

 

永遠

「【剣刃(つるぎ)】が認めなかった時は以前のラウラみたいな事になるぞい。」

 

全員

「!?」

 

 全員がビクリとしおったな…

 あの時の事…ラウラが【メイルシュトロム】の水圧で吹き飛ばされた姿を思い出しおったか…

 じゃがまあ…

 

永遠

「今回は大丈夫じゃろぉ…セシリアじゃったら【アビス・アポカリプス】も拒絶はせん筈じゃ。持ち主の束さんも認めとるしな。」

 

 篠ノ之じゃったら束さんが譲ると言っても【剣刃(つるぎ)】の方が拒んだじゃろうな…

 ワシは隅でこっちを睨んどる当人を横目に見ながらそげな事を考えとった

 

「確かにセーちゃんなら大丈夫だね♪それじゃあ改めて…セーちゃん…【アビス・アポカリプス】…受けとってよ♪」

 

セシリア

「はい!!!」

 

 セシリアは力強く返事をすると束さんの差し出した【アビス・アポカリプス】を受け取った

 その瞬間…

 

 パァ~…

 

全員

「!?」

 

 【アビス・アポカリプス】が青色の淡い光を放った

 ワシはそれを見て…

 

永遠

「うむ!【アビス・アポカリプス】も認めてくれたぞ!セシリア、今からその【深淵の巨剣アビス・アポカリプス】はお主の物じゃ!!」

 

セシリア

「【アビス・アポカリプス】…今日からよろしくお願いしますね♪」

 

 セシリアがそう言うと【アビス・アポカリプス】が再び光った

 どうやらセシリアを気に入ったようじゃな

 周りの者達もその光景を見て微笑んでおった

 

「………」

 

 一人を除いての…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

「さてと…【アビス・アポカリプス】の受け渡しも無事終わったし【ハルファス・ベーゼ】の説明を続けるよ?」

 

セシリア

「あ!はい!」

 

 束は【アビス・アポカリプス】の事で中断していた機体の説明を再開した

 

「武装に関してはアレで全部だね。次は特殊能力に関してだけど…実はこのISにはとーくんの【ラインバレル】と同じ【自己再生能力】を持たせてあるんだ♪」

 

全員

「【自己再生】!?」

 

 何だと!?

 まさかあの【ラインバレル】の厄介極まりないあの能力を再現したのか!?

 だがそうなると少し気になる事があるな…

 

千冬

「だが束…お前どうやってその能力を付けたんだ?【ラインバレル】の解析が終わった事は聞いているが…それにしては実用化するには早すぎると思うんだが?」

 

 これが私の疑問だった

 いくら束が天災でも【ラインバレル】と同じ能力を可能とする機体をこんなに短期間で造り上げる事は不可能な筈だ

 私のこの疑問は火ノ兄を始めとした全員が同意した

 すると束は…

 

「エヘヘ~…実はそれに関してはちょっと『インチキ』したんだよ♪」

 

全員

「インチキ?」

 

「うん!実は【ハルファス・ベーゼ】を造る時に【ラインバレル】を『材料』にしたんだよ!」

 

全員

「は?」

 

 【ラインバレル】が材料?どう言う意味だ?

 私が束の言ってる事の意味を考えていると…

 

永遠

「束さん…【ラインバレル】の装甲を剥がして構成しとるナノマシンを弄りおったな?」

 

全員

「え?」

 

「正解!!!」

 

全員

「ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

「【ハルファス・ベーゼ】はとーくんの【ラインバレル】を構成するナノマシンを流用して造った物なんだよ。【ラインバレル】はどんなに壊れてもすぐに再生するでしょ?それも欠損した部分もナノマシンが増殖して補填するから装甲の一部をこっちで保管しても【ラインバレル】自体には何の影響も無いと思ったんだよ。」

 

 コイツ…信じられん事をするな…

 言われてみればそうかもしれんが実際にそれを実行するとは…

 

永遠

「また無茶な事をしおったのぉ…確かにその方法ならすぐに実用化出来るかもしれんが…本当に大丈夫なんか?元は【ラインバレル】の物なんじゃろ?」

 

「それは大丈夫!!一度【ラインバレル】に近づけて見たけど束さんが弄ったお陰で反応しなくなってたよ。多分【ラインバレル】は別物と判断したんじゃないかな?」

 

永遠

「それならいいんじゃが…」

 

「ただ…やっぱり手を加えたせいで再生速度が【ラインバレル】の半分くらいにまで落ちちゃったんだよね~…」

 

千冬

「半分でも十分だろ?」

 

全員

「うんうん!」

 

 私の一言に全員が頷いていた

 いや、火ノ兄は頷いてないな…アイツの場合は【ラインバレル】の持ち主だからな…

 

「それは束さんも同意見…って言いたいけどこの能力の事を考えると不満だね。」

 

一夏&ラウラ&シャルロット

「え?」

 

 そうだった…【ラインバレル】が持つ【自己再生能力】…束はこの能力をISが宇宙で活動する際の生存率上昇に使おうと考えているからな…それを考えると半分の再生速度では満足出来んか…

 尤もそれを知らない一夏達は首を傾げているな…コイツ等からすれば十分過ぎる能力だからな

 

「まあそれは今後の課題だけど今はいいよ。それで後はこのISにはもう一つ『変形機能』も付いてるよ♪」

 

全員

「変形!?」

 

 まだあったのか…束の奴…一体オルコットの機体にどれだけの技術を詰め込んだんだ!?

 

「【ハルファス・ベーゼ】は鳥型に変形出来るんだよ。そしてその形態でしか使えないのが…蒼い炎で突撃する必殺技…《バーニングフレア》だよ!!」

 

セシリア

「蒼い…炎…」

 

「うん!【ハルファス・ベーゼ】…二つ名を付けるなら【蒼炎の不死鳥】ってところかな?」

 

永遠

「不死鳥か…【再生能力】に火の鳥…正にその通りじゃな…」

 

セシリア

「【蒼炎の不死鳥…ハルファス・ベーゼ】…」

 

 うむ…確かにその名が一番相応しいな…

 

「後は単一仕様(ワンオフ・アビリティー)だけど…そっちは最適化(フィッティング)が終わってから話すよ。」

 

全員

単一仕様(ワンオフ・アビリティー)!?」

 

セシリア

「使えるんですか!?」

 

「勿論使えるよ♪のんちゃんの【ワイバーン・ガイア】も使えたでしょ?」

 

鈴&ラウラ&シャルロット&一夏

「え!?」

 

永遠&セシリア&簪&本音&千冬

「あ!?」

 

 そう言えばそうだったな…【ワイバーン・ガイア】を調べた時に使えると布仏から聞かされていたのを忘れていた

 その事を一夏達には教えてなかったな…まあ他人のISの機密をそう簡単に教える事は出来んから仕方ないか…

 

本音

「そうでした~!使う機会が無かったんで忘れてましたよ~…」

 

千冬

「まあアレは余程の事が無い限り使う必要の無い物だからな…」

 

ラウラ

「それ程の物なんですか?」

 

千冬

「ああ、その内見る機会もあるだろう。」

 

ラウラ

「はい…」

 

 何しろアレは【ワイバーン・ガイア】()()()()()()()だからな…

 しかしそうなるとオルコットの【ハルファス・ベーゼ】は一体どんな能力を持っているんだ?

 

「それじゃあセーちゃん、説明もこんな所だし、そろそろ最適化(フィッティング)を始めるよ。【ブルー・ティアーズ】の時のデータがあるから初期化(フォーマット)はしなくてもいいね。」

 

セシリア 

「はい!!」

 

 説明を終えた束が【ハルファス・ベーゼ】の最適化(フィッティング)を始める為にオルコットを呼んだのだが…

 

「姉さん!!!」

 

 今迄蚊帳の外になっていた箒が口を開いたか…

 はぁ…このまま静かにしてくれていて欲しかったんだがなぁ…

 

 ~千冬 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第106話:第4世代(?)紅椿

 ~永遠 Side~

 

 う~む…今まで静かにしとったから放っておいたがどうやら我慢の限界に来てしまったようじゃのぉ…

 まあ篠ノ之にしてはもった方か…この娘…恐ろしい程短気じゃからなぁ…

 

「何箒ちゃん?」

 

「私のISは!!」

 

 やはり束さんに頼んでおったか…

 

「あ~それね?『一応』造ったけどさ~…」

 

「い、一応!?私のISが一応だと!?」

 

「まぁいいや、それじゃあおいで~…」

 

 束さんが頭上を見上げてそう言うと…

 

 ズドォォォンッ!!

 

 コンテナがもう一つ落ちて来た

 じゃが【ハルファス・ベーゼ】のコンテナより一回り小さいのぉ…

 

「コレが…」

 

「そうだよ、コレが箒ちゃんの専用機…『()()()()()』の【紅椿】だよ。」

 

 コンテナから出て来たのは赤いISじゃった

 じゃがこのIS…【ハルファス・ベーゼ】と違って全身装甲(フルスキン)では無い『普通のIS』じゃな…

 それに第4世代と言うとったのぉ…

 

「だ、第4世代だと!?」

 

「そだよ?それがどうかした?」

 

「何故第5世代じゃないんですか!!」

 

 こやつ…束さんが用意するISを第5世代と思っておったか…

 じゃがなぁ…

 

「何故って…箒ちゃんが()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なっ!?」

 

 束さんも分かっておったか…どう考えてもこやつには第5世代を使いこなせるだけの技量があるとは思えんのじゃよな~…

 

「実はね?箒ちゃんが専用機を造ってくれって連絡が来た後にちーちゃんに頼んである物を送って貰ったんだよ。」

 

「…ある物?」

 

「IS学園での箒ちゃんの成績だよ。」

 

全員(千冬以外)

「え?」

 

 篠ノ之の成績って…それは個人情報の漏洩になるのではないのか?

 

「それを見る限り成績はすこぶる悪いね?特にIS関係の成績は学業も実技も下の下…クラスどころか学年全体で見ても同じだね。」

 

「うぐっ…」

 

 下の下って…つまり最下位って言っとるようなものではないか

 今迄のこやつを見る限り成績はかなり下じゃろうとは思っておったがまさかそこまでとは思わんかったのぉ…

 

「そんな成績しか出せない子に最新鋭にして超高性能な第5世代を任せられる訳無いでしょ?相手が妹だからってそこまでの贔屓は束さんも流石にしないよ。」

 

「ぐっ…」

 

「だから箒ちゃん、束さんが箒ちゃんの頼みを聞くのはこれが『最後』だからね。」

 

「…え?さ、最後!?」

 

「束さんはね?箒ちゃんの何でも屋じゃないんだよ?箒ちゃんの言う事なら何でも聞くイエスマンじゃないんだよ?箒ちゃんの只の姉でしかないんだよ?」

 

「!?」

 

 確かにそうじゃな…じゃが篠ノ之のあの顔は納得しとらん顔じゃな…束さんは何も間違った事は言っとらんのじゃが…コイツ相手に正論を言っても無駄か…

 

「それにね?本当ならこの【紅椿】だって本当は造ろうかずっと悩んだものなんだよ。箒ちゃんには()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「資格が…無い!?」

 

「そうだよ。いっくんは理由が分かるよね?」

 

一夏

「………前に…鈴に言われましたから…」

 

 ほぉ、覚えておったか…コイツなら忘れているかもと思ったんじゃが…

 

「うん♪ちゃんと覚えてたね♪それで合ってるよ♪」

 

「………」

 

「箒ちゃん…箒ちゃんはさ、セーちゃんやかんちゃん、リーちゃんの様な代表候補生じゃないでしょ?リーちゃんがいっくんに言った事聞いてなかったの?専用機って言うのはね?それぞれの国や企業で自分の実力が認められた人にだけ与えられる物…いわば努力の結晶なんだよ。箒ちゃんは束さんに頼む以前に自分で手に入れるだけの努力をしたの?」

 

「………」

 

「してる訳無いよね?そうじゃなきゃあんな成績な訳無いもんね?」

 

「ぐっ!」

 

 その通りじゃ…コイツのやっとる事はいわばセシリア達代表候補生の努力を侮辱する行為…ワシや織斑の様な特殊な場合とも違うし、本音とも違う…

 束さんとの血縁関係を利用したいわゆる裏技とも言うべき方法じゃ…じゃがこの方法は専用機を持つ者、専用機を与えられなかった者達にとっては許せん方法じゃろうな…

 現に…

 

生徒1

『篠ノ之博士の言う通りよね!』

 

生徒2

『何の努力もしないで専用機を手に入れるなんて最低!』

 

生徒3

『それに篠ノ之さんって博士とは何も関係無いっていつも言ってたわよね?』

 

生徒4

『それをこんな時だけ頼るなんてそんな事して恥ずかしく無いのかしら?』

 

 こっちのやり取りを見とる他の生徒達の篠ノ之に対する反応は明らかに悪いのぉ…

 まあその通りじゃから弁護のしようが無いのじゃが…

 

「ぐぅっ…(あいつ等!!)」

 

 今の声が聞こえておったようで篠ノ之は更に苦い顔をしとるのぉ…

 ワシがそう思っとったら…

 

「…なら…なら布仏はどうなんですか!?アイツは候補生じゃないでしょう!!」

 

本音

「ほえ?」

 

 本音に眼を付けおったか…確かに本音は束さんから直々にISを貰ったからな…

 

「のんちゃん?確かにのんちゃんは代表でも候補生でも無いね。でものんちゃんの【ワイバーン・ガイア】は第5世代の1号機、そのデータ収集を依頼すると言う事であげたんだよ。つまりのんちゃんは専用機を持つ代わりに束さんの依頼を受けると言う『等価交換』がされてるんだよ。」

 

「くっ!」

 

「それに対して箒ちゃんは違うよね?ただ束さんの妹だからって言う理由だけで専用機を手に入れようとしたでしょ?束さんの妹だから専用機を貰えるのは当たり前とでも思ったの?」

 

「ぐぅっ…」

 

 ぐうの音も出ないとはこう言う事を言うんじゃろうなぁ…

 

「…でしたら…布仏の【ワイバーン・ガイア】を私に下さい!私がデータ収集をします!!」

 

「ハァ~…それは無理だよ…」

 

 コイツそこまでして第5世代が欲しいんか?

 束さんまで呆れ始めとるぞ…

 

「な、何でですか!?」

 

「何でって箒ちゃんとのんちゃんじゃISの知識も技術も違い過ぎるもん。2人を比べたらどっちを【ワイバーン・ガイア】に乗せるか一目瞭然だよ。それにさっきも言ったでしょ?箒ちゃんじゃ第5世代を使えないって。乗っても【ワイバーン・ガイア】を歩かせる事も出来ないよ。」

 

「!?」

 

「第一【ワイバーン・ガイア】はのんちゃん用に調整されてるんだよ?もし箒ちゃんに合わせて調整をやり直したら今迄のデータも全部消さないといけないんだよ?そんな事する訳無いじゃん。」

 

「うぅぅぅっ…」

 

 まあ普通はデータを消してまでそんな事せんわな…

 しかし…

 

生徒1

『今度は布仏さんの機体を寄越せって言ってるわよ!?』

 

生徒3

『そうまでして第5世代が欲しいのかしら?』

 

生徒2

『第4世代が手に入るだけでも凄い事なのにね。』

 

 今ので周りからの心象が更に悪くなったのぉ…コイツわざとやっとるんと違うか?

 

「いい箒ちゃん?何度も言うようだけど箒ちゃんには第5世代を使うだけの技術は無い。それに専用機を持つ資格も無い。代表でも候補生でも無い箒ちゃんに専用機を渡すのはその人達の努力を侮辱する行為になるけど、それでも箒ちゃんは束さんの大事な妹だからね、最新技術を込めた第5世代と各国で開発中の第3世代の中間にあたる第4世代を用意する事にしたんだよ。そしてこれを最後に束さんは箒ちゃんの我儘を聞くのを止める事にしたんだよ。分かった?」

 

「ぐっ、くぅぅっ…分かり…ました…」

 

 ここまで言われてようやっと大人しくなり始めたか…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 ハァ~…まさか布仏の【ワイバーン・ガイア】を寄越せとまで言うとは思わなかった…

 昔から短気でよく我儘を言っていたが、あの頃はまだ子供の我儘と言えばまかり通るレベルではあった

 だが今のコイツはその時より明らかに酷くなっている…まるで中身はそのままで体だけデカくなったような状態…いや、子供の持つ幼さや子供心が無くなった事と自分の立場…『束の妹』という立場が加わって酷さが増している

 その束も昔から我儘だったがアイツの場合はもっと根本的に違っていたからそう言う物だと私も周囲も割り切れていた…それに火ノ兄のお陰で今は随分と改竄されているし私から注意する事も無くなってきているから束に関しては問題無いと見てもいいだろう

 だが箒の場合はそうはいかない…コイツの我儘は他の人間と同じタイプの物だが、その中でもかなり酷い部類に入るものだ…いや、私の知る限り一番酷いと言ってもいいかもしれない…

 何でもかんでも自分の思い通りにしないと気がすまない人間になっている…しかも自分のやってる事が全て正しいと思い込んでいるから余計に性質が悪い…こっちが何を言っても口では分かったと言っても心の底から理解していない…

 このままコイツを放置するとそれこそ取り返しのつかない事になりかねんぞ?…ってそう思ったらコイツはすでに火ノ兄の【戦国龍皇】を盗むと言う犯罪を犯していた…既にコイツは危険な状態にまで行っていたんだ

 コレは後で束と本気で相談する必要があるな…

 私がそんな事を考えていると…

 

「それからこの【紅椿】は第4世代ではあるけどリミッターを掛けてあるから今の性能は第2世代後半ぐらいまでしか出ないからね。」

 

 束は【紅椿】の説明を始める前にそんな事を言って来た

 アイツそんな仕掛けをしていたのか…だがこれでは第4世代と言うのは名ばかりの第2世代のISになってしまうな…まあコイツには丁度いいか…コイツ自身は納得していないようだがな…

 

「な、何でそんな事までするんですか!?」

 

 案の定反発したか…分かり易い奴だ…

 

「当たり前でしょ?今の箒ちゃんじゃ第5世代どころか第4世代に乗っても機体に振り回されるだけだよ。だから今の箒ちゃんの実力から少し上のレベルに設定したんだよ。」

 

「…それが…第2世代後半だって言うんですか!!」

 

「そうだよ。」

 

 私もそのくらいでいいと思うな…

 一番いいのはコイツに専用機を与えない事だと思うのだが…多分【紅椿】を用意していなかったら今度はオルコットの【ハルファス・ベーゼ】を盗み出しかねんからな…その辺りも考えて束はコレを用意する事にしたんだろうな…

 

「それからちーちゃんにはコレを渡しておくね。」

 

 すると束はポケットから取り出した物を渡してきた

 それは手の平サイズのスイッチだった

 

千冬

「…何だこれ?」

 

「【紅椿】の『()()()()()()()()』だよ。」

 

 何?【紅椿】の?

 

「!?…どう言うつもりですか!!リミッターだけでなくそんな物まで用意するなんて!!」

 

 私の手にあるスイッチを見ながら箒が再び怒鳴り声をあげた

 

「…箒ちゃん…とーくんの【戦国龍皇】を盗んだよね?」

 

「!?」

 

「その【戦国龍皇】…じゃなくて『ツルちゃん』だったね。あの子に拒絶されたから束さんに専用機を造れって言って来たんでしょ?【戦国龍皇】が手に入らなかったから?」

 

「ぐっ!」

 

 やはり束も何故コイツがこのタイミングで専用機を要求したのか分かっていたか

 コイツは【戦国龍皇】…いや、ツルに完全に拒絶されたからな…

 

「そんな事する子だから幾つもの予防策をかけておくんだよ。このスイッチとリミッターはその為だよ。」

 

「………」

 

 正論だな…コイツに何の制限もなくISを持たせても碌な事にはならん

 正直、リミッターよりもこの停止スイッチの方が私としてはありがたいな…

 

「という訳だからそれはちーちゃんが持っててね。そのスイッチを押すと【紅椿】は自動で近くの地上に移動して待機状態に戻る様になってるから。その後は機体が展開出来ないように機能を停止するからね。」

 

千冬

「分かった。…ところでこのスイッチの効力はどのくらい続くんだ?」

 

「もう一度押さない限りそのままだよ。ただ、機能を止めてすぐに押しても戻らないからね。最低でも1時間は空けないと復旧しないよ。」

 

千冬

「ああ、分かった。」

 

「それから箒ちゃん?このスイッチは箒ちゃんが押しても機能しないからね。それにスイッチを壊したら【紅椿】は強制停止状態になるからね。壊したら最後、束さんが再起動するまで【紅椿】が動く事は無いからそのつもりでいてね。」

 

「ぐっ!」

 

 コイツ考えていたな?

 しかし束の奴、そこまで手を回していたか…確かにコイツなら私の隙を狙って停止スイッチを盗むなり壊すなりするだろうからな…そんな事させるつもりも無いがな…

 

「じゃあセーちゃんの【ハルファス・ベーゼ】と一緒に調整を…って行きたいけど先に【紅椿】の方をしておこっか。」

 

千冬

「ん?何故一緒にやらない?お前なら同時に作業が出来るだろ?」

 

「そりゃやろうと思えば出来るけど作業内容が違い過ぎるからね。【紅椿】なら10分もかからずに終わるけど【ハルファス・ベーゼ】は軽く見ても1,2時間はかかるよ。」

 

「!?」

 

千冬

「そんなに差があるのか?」

 

「そりゃそうだよ。のんちゃんの【ワイバーン・ガイア】だって初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)を徹夜でやったんだよ?今回の【ハルファス・ベーゼ】に関しては【ブルー・ティアーズ】のデータがあるから最適化(フィッティング)だけでいいけどそれでもそのくらいの時間は軽くかかるよ。」

 

 なるほど、言われてみると納得出来るな…

 

千冬

「確かにそれなら別々にやった方が効率がいいか…【紅椿】は初期化(フォーマット)もやる必要があるしな…」

 

「そう言う事!じゃあ箒ちゃん、【紅椿】に乗って。」

 

「…分かりました…」

 

 箒は渋々と言った様子で【紅椿】に乗り込んだ

 だがあの顔…文句を言いたい顔だな…大方、オルコットのISの方が手間がかかる事に不満と言った所か…まあ言った所で意味は無いか…

 事実だからな…

 

 ………

 ……

 …

 

「終わったよ~♪」

 

 その後…と言うか本当に10分と掛からず束は【紅椿】の調整を終わらせた

 

「じゃあ箒ちゃん、試しに飛んでみて。」

 

「………はい…」

 

 それから箒は言われた通り飛び上がり、【紅椿】の武装である二本の刀…【空裂(からわれ)】と【雨月(あまつき)】と言う刀を振り回していた

 何でもあの武装は刀の形状をしているが中距離武器らしくそれぞれ刀身からエネルギー状の刃やレーザーを撃てるらしい…【ハルファス・ベーゼ】と違いビーム兵器では無いとの事…まあオルコットならともかくコイツにビーム兵器なんて持たせるのは危険極まりないからな…

 それからこれは束がコッソリ教えてくれたのだが【紅椿】には【展開装甲】と言う武装も内蔵されているらしい…その名の通り装甲を展開させ攻撃、防御、スラスターとして使う事の出来る万能兵装なのだそうだが…【ワイバーン・ガイア】や【ハルファス・ベーゼ】と比べると霞んで見えるのは私の気のせいか?

 私がそう言うと束は露骨に目を逸らした

 コイツ…自分で造っておきながら同じ事を考えていたな…

 それでその【展開装甲】だが、この事は箒には教えないとの事だ

 私が理由を聞くと箒にはあの二本の刀だけで十分だし使いこなせないだろうとの事だ…その為【紅椿】のリミッターと連動して封印してあるとの事だ

 そしてもう一つ…単一仕様(ワンオフ・アビリティー)も一緒に封印してあるそうだ

 【紅椿】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)…【絢爛舞踏】と言うそうだがこの能力は簡単に言えばエネルギーの増幅能力だそうだ…さらに増幅したエネルギーを他のISに供給する事も出来るらしい…機体の色といい一夏の【白式】と対になっているような機体だな

 それも【絢爛舞踏】を使いこなせればほぼ無尽蔵にエネルギー供給が可能と言うとんでもない能力だ

 だがこちらも箒では荷が重いとの事で封印したとの事だ

 

 …封印するくらいなら初めから付けなければいいと思うのだが…

 

 私がそう思っていると箒が地上に降りて来た

 それとコレは束が後で話してくれたのだが、この【展開装甲】と単一仕様(ワンオフ・アビリティー)の2つを取り外さなかったのは箒が良い方向に変わってくれる事を願ってのものだったらしい…だから今は封印してあるそうだ

 だがその話を聞かされた時、私はその封印が解かれる事は無いだろうと感じていた…恐らく束自身も…

 

 ~千冬 Side out~

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第107話:事件発生!?

 ~束 Side~

 

「オルコット!!【アビス・アポカリプス】を渡せ!!!」

 

セシリア

「………はい?」

 

 地上に降りて来た箒ちゃんはISを解除するといきなりそんな事を言いだした

 自分の妹だけどこの子何言ってんの?

 

「その剣は姉さんの物だ!!ならそれを託されるのは妹の私が当然だろうが!!」

 

 え?何その理屈?

 

セシリア

「…あの~…永遠さん…束さん…こう言ってますけどわたくしはどうすれば…」

 

 流石のセーちゃんでもコレは対処出来ないみたいだから造ったとーくんと前の持ち主だった束さんに聞くしかないよね…

 

永遠

「無視しとれ。」

 

 それに対してとーくんは一言で答えた

 うん!普通なら束さんもそう答えるよ!でも相手が妹だから流石にその答え方は束さんは出来ないんだよね~…どうしよ?

 束さんがどう答えるか悩んでいると…

 

千冬

「いい加減にしろっ!!!」

 

 ガンッ!!

 

「ガッ!?」

 

 ちーちゃんが箒ちゃんの頭をぶん殴った

 うわ~痛そ~…比べたくは無いけど、とーくんの拳骨とどっちが痛いんだろうな~…

 

「な、何するんですか!!!」

 

千冬

「お前こそ何をトチ狂った事を言っている!!あの剣は束が自分の意思でオルコットに譲渡した物だ!!それを横取りしようとするとは何事だ!!!」

 

「横取りではありません!!あの剣は元々姉さんの物なんですよ!!それを何故他人のオルコットに渡すんですか!!妹の私が受け取るのが普通では無いんですか!!」

 

千冬

「…お前頭大丈夫か?本当に何を言っている?」

 

「え?」

 

千冬

「そもそも【アビス・アポカリプス】は火ノ兄が造った【剣刃(つるぎ)】だ。それを『束個人』に渡した物なんだぞ。」

 

「そんな事分かってますよ!だから「だがアレは『篠ノ之家の物』と言う訳では無い。」…え?」

 

千冬

「【アビス・アポカリプス】がお前と束の家に『代々伝わる剣』だと言うならお前に継承権のようなものがあるかもしれん。だがアレは此処にいる火ノ兄が造った物だ。つまり造った剣を誰に渡すかは火ノ兄が決める事だ。そして受け取った者が別の者に渡す場合、その決定権は火ノ兄から剣を受け取った本人が決める事になる。そこに血縁関係は意味をなさない!!」

 

「ぐっ…………」

 

 あ~あ…黙り込んじゃった…

 まあちーちゃんの言う通りだから束さんは何も言う気は無いけど…まさかのんちゃんの【ワイバーン・ガイア】だけじゃなくセーちゃんに渡した【剣刃(つるぎ)】まで寄越せなんて言うなんて…

 どうしてこんな子になったんだろ?

 やっぱり束さんがISを造ったからかな~…

 今度ちーちゃんに愚痴を聞いてもらおっかな~…

 

 ~束 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 箒…本当にどうしたんだよお前…

 火ノ兄の【戦国龍皇】を盗んだ時もだけど、何でそんな事するんだよ…

 今度はのほほんさんの【ワイバーン・ガイア】やオルコットの【剣刃(つるぎ)】を寄越せって…

 それじゃあまるで『周りの子供が持っている玩具を欲しがる子供』と同じじゃねえか…何でそんな子供の様な駄々を捏ねてんだよ…

 お前そんな奴だったのか…

 

千冬

「束!!オルコットの機体の調整に入れ!!この馬鹿の事はもう無視しろ!!」

 

「なっ!?」

 

「いやちーちゃん…無視しろって言われても実の妹を無視するのは流石の束さんでも出来ないんだけど…」

 

千冬

「いいから無視しろ!これ以上コイツを相手に時間を無駄には出来ん!無理にでも無視しろ!!」

 

 千冬姉…いくら何でも無茶苦茶だろ?

 無理にでも無視しろって…

 

「…でも…」

 

千冬

「いいから作業を始めてくれ!頼むから!」

 

「分かったよ…ゴメンね箒ちゃん…」

 

「ぐっ…」

 

 束さんも観念して作業をする事にしたみたいだ…

 でも箒はそんな束さんを睨んでる…コレは箒の方が問題だと思うんだけどな…

 けどオルコットが【ハルファス・ベーゼ】に乗り込もうとした時…

 

真耶

「た、大変で~~~す!!!」

 

全員

「!?」

 

 山田先生が旅館から慌ててやって来た

 先生はそのまま千冬姉に事情を説明し始めたみたいだ

 そして…

 

千冬

「テストを中止する!!!専用機持ちは全員集合!!それ以外の者はISを片付けた後は旅館の自室で待機!!許可なく外に出た者は問答無用で拘束する!!以上!!!」

 

 いきなり今日の実習が中止になった

 何が起きたのか俺には分からなかった…でもこれだけは分かる…

 また何かが起きたんだ…

 

 ~一夏 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第108話:緊急作戦会議

 

 ~永遠 Side~

 

 今度は何が起きたんじゃ?

 学園から離れてまで面倒事に巻き込まれたくはないぞい…

 

千冬

「それでは状況を説明する!」

 

 そう思ってもワシ等は無情にも巻き込まれてしもうた…

 ワシ等は現在、旅館の奥にある一室に集まっておる

 この部屋は色々な機材を持ち込んで作った即席の指令室となっとる

 そんな部屋に織斑先生の指示されたワシ等専用機持ちがいる訳じゃ…じゃがこの中には篠ノ之もおるんじゃよな~…『専用機持ち』と言った以上篠ノ之もその中に入ってしもうたんじゃよな~…

 また頓珍漢な事口走らなければいいんじゃが…不安しか無いの~…

 っと、それより話を聞かんと…

 

千冬

「現在、アメリカとイスラエルが共同で開発した軍用IS【銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)】…取り合えず【福音】と呼ぶが、それが稼働実験中に制御不能となり暴走飛行を始めたとの事だ。」

 

セシリア

「織斑先生…何故それをわたくし達に話すのですか?それではまるでわたくし達が【福音】の暴走を止める事になるように聞こえるのですが?」

 

千冬

「まるでも何もその通りだ…さっき学園からお前達で止めるように指示が来た…」

 

全員

「はぁ?」

 

 何じゃそりゃ?

 

永遠

「何故にワシ等がそげな事をせにゃならんのじゃ?」

 

千冬

「それがな…【福音】の進行方向を計算したところこのまま進むと此処から2Km離れた海上を通過する事が分かった。」

 

ラウラ

「それで我々に指示が来たと?」

 

千冬

「そう言う事だ。」

 

永遠

「んなもん無視すればよかろう?真上を通ると言うなら話は別じゃが、そんだけ離れとるなら通過するのを持っとればいいじゃろ?大体こう言うのは【福音】とやらを造ったアメリカとイスラエルが責任を持って止めるのが筋じゃろうが?それが何故に只の学生のワシ等が連中の失敗の尻拭いをせにゃならんのじゃ?アメリカとイスラエルは子供に尻拭いさせる恥知らずの国なんか?」

 

専用機持ち達(箒以外)

「うんうん!!」

 

 他の者達も同じ気持ちの様じゃのぉ

 まあそりゃそうか…好き好んでトラブルに首突っ込む物好きはそうはおらん…ましてやそれが国家間の問題ともなれば余計になぁ…

 

千冬

「言うな!私だって同じ気持ちだ!!だがその2国が委員会を通じてIS学園に依頼してきたんだ…こうなってしまっては私達がやるしかない…」

 

永遠

「チッ!ほんに面倒な事を…じゃが織斑先生、ワシ等はあくまで学生じゃ。失敗したからと言ってワシ等に責任取れとか言わんよな?」

 

千冬

「無論だ!私も指令を受けた時に生徒の安全を第一に考えると言ってある。学園の方も当然として了承した。後でその事を委員会を通じてアメリカとイスラエルに伝えるそうだ。失敗しようが成功しようが連中が何か言って来ても感謝以外の言葉は全部突っぱねてやるから安心しろ!!」

 

真耶

「そもそも火ノ兄君の言う通り学生の皆さんに暴走した軍用ISを止めろと言う向こうの方が無茶を言ってるんです。失敗したからと言って文句を言ったら恥の上塗りでしかありませんよ。」

 

永遠

「ほぉ…セシリア、簪、山田先生の言っとる通りか?」

 

 ワシは隣におるセシリアと簪に聞いた

 2人はそれぞれイギリスと日本の代表候補生じゃからな

 

セシリア

「ええ、そうなると思いますわ。」

 

「学生の私達にこんな事させてる時点で既に問題…各国に知られたら今の時点でも後ろ指差されると思う…」

 

永遠

「さよか。」

 

 鈴やラウラ、シャルロットも同意するように頷いておるし、その辺は大丈夫そうじゃな…

 

永遠

「じゃったら死なん程度にやるしかないのぉ…メンドイ…」

 

全員(箒以外)

「はぁ~…」

 

 ワシ等は揃って溜め息をついた…あ~本当に面倒臭い…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 火ノ兄の言う通り本当に面倒臭い…何で私達がこんな事しないといけないんだ!

 アメリカとイスラエルの連中、実験するならもっと考えてからしろよな!

 だがそうは言ってもやるしかないか…取り合えず【福音】を止める作戦を考えるとするか…

 

千冬

「それで【福音】についてだが先ずあの機体にはアメリカのテストパイロット…『ナターシャ・ファイルス』が搭乗している。だが向こうが通信を送っても連絡が付かないらしく現在は意識を失っていると思われる。」

 

 先ずは搭乗者の現状を伝えておくか…

 それにしても【福音】のパイロットがアイツとはな…

 アイツは…今どんな気持ちなんだろうな…アイツは私と話す時もISで空を飛ぶ事は楽しいと笑顔で語っていたからな…

 だからナターシャは自分を空に連れて行ってくれるISを兵器として見てはいなかった…ISは空を飛ぶ為の翼だと私に言っていた…アイツなら今の束と気が合うかもな…無事に救出されたら束も誘って一杯ひっかけるのも悪くないかもな…

 

永遠

「意識不明か…そうなると無理な止め方は出来んのぉ…」

 

「うん…無茶な止め方をして体に変な負担がかかるかもしれない…」

 

セシリア

「安全に救出する為にもまずは相手の事をよく知る必要がありますわね…織斑先生、機体のスペックを教えて頂けるのですか?」

 

 おっと、私がナターシャの事を考えている間にコイツ等の方で話が進んでいたか

 

千冬

「可能だ。だが、仮にも国家機密に相当するから情報が漏洩した場合、全員に査問委員会による裁判と2年以上の監視が付くからな。それを覚えておけ。」

 

永遠

「自分達のやらかしたヘマを押し付けといて機密も何も無いと思うがのぉ?」

 

全員

「うんうん!!」

 

千冬

「………」

 

 私も火ノ兄の言う通りにしか思えん…

 取り合えず私は提供された【福音】のデータをモニターに表示した

 

セシリア

「広域殲滅型の機体ですか?」

 

「セシリアの【ブルー・ティアーズ】が一番近い感じかな?」

 

シャルロット

「うん、後気になるのはこの特殊武装だね?どんな物か分からないけど曲者っぽいよ?」

 

ラウラ

「ああ、それにこのデータには【福音】の近接性能が載っていない。接近戦は賭けになるかもしれないな…教官!偵察は可能ですか?」

 

千冬

「偵察は無理だな…目標は今も超音速飛行を続けている…接触できるのは1回だけだろうな。」

 

「1回だけか…なら誰が行くかですね…一番いいのは…」

 

 鈴のその言葉に全員の視線が火ノ兄に集まった

 だが…

 

千冬

「残念だが火ノ兄は無理だ。まだ怪我が治りきっていない。」

 

「ですよね…なら…やっぱりセシリアかな?」

 

セシリア

「ですがわたくしの機体は…」

 

シャルロット

「あ!そうだった、まだ最適化(フィッティング)が終わってなかったね?確か1,2時間かかるって話だけど…」

 

ラウラ

「教官、【福音】が最接近する場所まで後どのくらいの時間が掛かりますか?」

 

千冬

「およそ50分後だ。」

 

「それじゃあセシリアも無理…」

 

 そう、この作戦には最も成功率が高い火ノ兄とオルコットが参加する事が出来ないんだ

 火ノ兄は怪我の為に戦闘は無理…オルコットは機体の調整がまだ済んでいない…クソッ!!こんな事になるなら先に【ハルファス・ベーゼ】の調整をするように束に言えばよかった…

 

セシリア

「そうなると後は…本音さん?」

 

本音

「私?」

 

千冬

「【ワイバーン・ガイア】か…恐らくだが布仏では無理だ。」

 

全員

「え!?」

 

千冬

「【ワイバーン・ガイア】は確かに第5世代だがあの巨体のせいか機動性が一番低い…お前達の機体よりかは上なのだが、【福音】の速度は恐らく第3世代最速…【ワイバーン・ガイア】では一歩遅れていると思う…」

 

 データを見る限り【ワイバーン・ガイア】でも追い付く事は無理だろうな…【ハルファス・ベーゼ】なら問題は無いのだが…

 くそっ…折角の第5世代が現状では使えないという事か…アメリカとイスラエルめ…面倒な物を造りおって…

 

永遠

「う~む…そうなると残る手段は織斑に任せるしかないのぉ…」

 

 やはりその手段しかないか…だが…

 

一夏

「え!俺!?」

 

「そうよ、アンタの【零落白夜】で【福音】のSEを一気に0にするのよ。」

 

一夏

「一気に?」

 

「そう、一気によ。【白式】のSEを可能な限り【零落白夜】に回して一撃で終わらせるの。でもそうなると…」

 

ラウラ

「可能な限りエネルギーを温存する必要があるから誰かが一夏を目標地点に運ぶ必要があるな…」

 

シャルロット

「それを誰がするかだね…」

 

 コイツ等もそこに気付いていたか…

 そうだ、一夏に任せる場合、【零落白夜】に出来る限りエネルギーを回した一撃を入れる必要がある…だがその為には一夏を輸送する人員が必要だ…だがそれが可能なのは…

 

千冬

「………」

 

 私は周囲にいる専用機持ち達を見渡してその人物を探した

 まず火ノ兄とオルコットは作戦に参加出来ないから無理だ…

 次に鈴とラウラ、デュノア、更識の4人のISではスピードが足りん…

 後は布仏だが…【福音】の速度を考えると少し厳しいか?

 それと…

 

「………」

 

 私はこれまで一切会話に入っていない奴に視線だけ向けた

 コイツの【紅椿】は第4世代だが束がリミッターをかけているから性能がかなり下げられている…リミッターを外せばいけるか?…いや駄目だ!そんな事をすれば暴走するのが目に見えている…

 しかしどうすれば…最悪の場合、火ノ兄の【ラインバレル】で一夏を【福音】の前にピンポイントで転移させるしかないな…

 私が誰に任せるか考えていると…

 

「私がやる!!!」

 

全員

「は?」

 

 あろう事かその箒が名乗りを上げた

 

「私の【紅椿】なら一夏を目的の場所まで運べる!私のISは第4世代だ!図体だけの第5世代とは違う!!」

 

全員

「………」

 

 コイツ、さっきまで自分が何を言っていたのか忘れたのか?

 その図体だけの機体を寄越せと騒いでいたのは何処のどいつだ…この変わりよう…いっそ清々しくさえ感じるな…

 だが…

 

千冬

「お前のISはリミッターがかけられているだろ?無理だ。」

 

 コイツに任せると更に面倒が起きそうだからな…

 

「今は緊急事態何でしょう!!でしたらリミッターを外して下さい!!」

 

千冬

「ぬぅ…」

 

 悔しいがコイツの言う事にも一理ある…こうなれば仕方無い…

 

千冬

「…束!!出て来い!!」

 

 私は声を少し大きめにそう言った

 すると…

 

「ニャハハハ…やっぱり分かってた?」

 

 天井から束が出て来た

 やはりいたか…

 

千冬

「核心は無かったがな…お前なら聞き耳くらい立てていると思っていた。それで話は聞いていたな?」

 

「聞いてたけど…リミッターを外すの?」

 

千冬

「今考えているがその前に一つ聞きたい。リミッターを外せば【紅椿】は【白式】の輸送が可能なのか?」

 

「…出来るよ。リミッターを外した【紅椿】はスピード()()は【ワイバーン・ガイア】を超えるからね。尤も【ハルファス・ベーゼ】には全ての面で遥かに劣るよ。」

 

「チッ!」

 

 露骨に舌打ちしたな…そんなに自分の機体がオルコットの機体に劣っている事が気に入らないのか…まあ今はいいか…

 さて…どうするか…

 

「リミッターを外すだけならすぐに出来るよ。掛け直す事も同様だよ。それからリミッターを外してもちーちゃんに渡した停止スイッチは問題無く動くよ。」

 

「チッ!」

 

 また舌打ちか…リミッターと一緒に停止スイッチも機能が停止すると思っていたのか?

 全く…コイツがそんな事する訳無いだろうに…

 

「それでどうする?リミッターを外せって言うなら()()()()特別に外してあげるよ。その辺の判断はちーちゃんに任せるよ。」

 

 後は私に任せるか…

 ええい、やむをえん!!

 

千冬

「【紅椿】リミッターを外してくれ!織斑の運搬は篠ノ之に任せる!」

 

「千冬さん!!」

 

千冬

「織斑先生だ!!!」

 

 ガンッ!

 

「ぐほっ!?」

 

 取り合えず名前で呼んできたコイツを1発ぶん殴っておいて…

 後は…

 

千冬

「聞いての通りだ!作戦は織斑と篠ノ之の2人で行う!他の者はバックアップに回れ!!」

 

全員

「了解!!!」

 

千冬

「………」

 

 全員が返事をしたが…やはり篠ノ之に任せるという事に不安があるようだな…

 私も同様だから何とも言えん…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 箒に運んでもらう事になった俺は束さんに【白式】を再調整して貰った

 それと同時に箒の【紅椿】のリミッターも解除された…リミッターの外された瞬間、箒は笑みを浮かべていた…でも、何だろ…不安しか感じないんだよな…

 そして俺と箒は今は浜辺で出撃準備をしている

 その時…

 

千冬

『一夏、聞こえるか?』

 

一夏

「え?千冬姉?」

 

 指令室の千冬姉から通信が入った

 

千冬

『そのまま聞け。これはプライベートチャンネルで話しているから箒には聞こえん。いいか、簡単に言うぞ?()()()()()()()()()。』

 

 千冬姉は態々プライベートチャンネルを使って俺だけに話しかけて来た

 内容は箒の事だった…それを聞いて…

 

一夏

「…千冬姉もそう思うか?」

 

 千冬姉も俺と同じ事を思っていたようだった

 

千冬

『ああ、正直アイツには不安要素しかない。だから作戦続行が無理と思ったらすぐに引き返してこい。こちらは火ノ兄を待機させておく。』

 

一夏

「火ノ兄を?でもあいつはまだ…」

 

千冬

『戦闘は無理だ。だが【ラインバレル】の【転送】なら使える。退却が無理と判断したらすぐに連絡を寄越せ。火ノ兄を回収に向かわせる。』

 

一夏

「分かった。」

 

 そうか…アイツの【ラインバレル】ならいざと言う時にも離脱出来るな…

 そう思うと少し気が楽になった

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「それでは作戦を決行する!!」

 

一夏&箒

『了解!!!』

 

 私の合図と共に一夏は篠ノ之の背に乗って飛び出していった…私は飛び去ったその姿に不安しか感じなかった…

 

「ちーちゃん…」

 

千冬

「束…すぐに【ハルファス・ベーゼ】の最適化(フィッティング)に取り掛かってくれ。」

 

 この作戦が失敗した場合、【福音】を止められるのはオルコットの【ハルファス・ベーゼ】だけだからな…保険は掛けておかんとな…

 

「分かったよ…セーちゃん行くよ!」

 

セシリア

「はい!!」

 

 出来れば…オルコットの出番が無い事を祈るが…

 

 ~千冬 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第109話:白と紅の敗北【白式&紅椿VS銀の福音】

 

 ~真耶 Side~

 

 現在、私達は指令室で【福音】の迎撃に向かった織斑君と篠ノ之さんをモニターしています

 してるんですけど…失礼ながら凄く不安です…不安しかありません…

 それは一緒にいる先輩や他の専用機持ちの皆さんも同じ気持ちの様です…

 でもそう感じても仕方ないんです…何しろこの作戦は織斑君と篠ノ之さんの2人だけで行ってるんです…しかも篠ノ之さんが参加していると言うだけで不安が大きくなってしまうんです…

 彼女のIS適正は『B』です…しかも学園での成績はお世辞にも良いとは言えません…下から数えた方が圧倒的に早いんです…

 そんな彼女が専用機を手に入れたからってすぐに乗りこなせる筈ありません…

 それが分かっているからこそ篠ノ之博士は第5世代ではなく第4世代を用意して、尚且つリミッターをかけたんでしょう…

 そうでなければ彼女はすぐに暴走する事が目に見えています…

 それにあの子は火ノ兄君の【戦国龍皇】を盗みました…そんな事をする人に本当なら専用機を持つ資格すらありません…

 それなのに彼女が専用機を手に出来たのは篠ノ之博士の妹と言うレッテルのお陰です…そんな事で手に入れるなんて必死に努力した人達を馬鹿にする行為ですよ…

 っと、話が逸れましたね…まあそんな子にこんな難しい作戦を任せてしまって大丈夫なのかという訳です…やる事は織斑君を現地まで運ぶだけなんですけど…不安で仕方無いんですよ…

 あ!そんな事を考えている内に…

 

真耶

「先輩!2人が目標ポイントに到着しました!」

 

千冬

「よし…」

 

真耶

「あの…大丈夫なんでしょうか?」

 

千冬

「…大丈夫とは言えんな…何しろあそこには『爆弾』の様な不安要素の塊がいるからな…」

 

 爆弾って…そこまで言いますか…

 

千冬

「織斑を運び終わったら戻れと言ってあるが…」

 

真耶

「そのまま参加すると思いますよ?」

 

千冬

「私もそう思う…実際に出撃前にそう言ったら『エネルギー切れになった一夏を誰が連れて帰るんだ!』とか言っていた…火ノ兄がいるから迎えの心配は無いんだがな…」

 

 【ラインバレル】がありますもんね…連れて戻るくらいなら今の火ノ兄君でも出来るでしょうから…

 それなのにモニターに映っている篠ノ之さんは戻る素振りを見せていません…どう見てもそのまま参加する気満々ですね…

 

千冬

「それにアイツが参加する魂胆も容易に想像出来る。」

 

真耶

「え?」

 

千冬

「成功したらあいつの事だ…束にその事を理由に『第5世代を寄越せ』とか『リミッターを外したままにしろ』とか言うに決まってる。」

 

真耶

「あ~…言いそうですね…それ…」

 

 その時の姿が簡単に想像出来てしまいます…

 

千冬

「かといって失敗したら『ISが悪い』とか言って『第5世代にしろ』とか訳の分からん事を言うだろう。」

 

真耶

「………」

 

 そっちも容易に想像出来てしまいます…

 

千冬

「まあ本当にそんな事言って来たらぶん殴ってやるがな。これ以上アイツの我儘なんぞ聞くに堪えん戯言だ。耳障り以外の何者でも無い。」

 

真耶

「…ですね…」

 

 私も聞きたくないです…

 …あ!?

 

真耶

「先輩!!【福音】がもうじき2人と接触します!!」

 

千冬

「いよいよか…」

 

 無事に成功してくれる事を祈る事しか私には出来ません…

 

 ~真耶 Side out~

 

 

 

 ~三人称 Side~

 

「準備はいいな!!」

 

一夏

「オ、オウ!!」

 

 現在、【福音】との接触ポイントに到着した一夏は何時【福音】と接触してもいい様に戦闘態勢を取っていた

 だが…

 

一夏

(何で戻らないんだ?)

 

 指令室の千冬達の予想通り箒はこの場に留まっていた

 一夏が聞かされた作戦では箒の役目はここまで運ぶだけだった

 帰りに関しては永遠の【ラインバレル】を迎えに行かせるからエネルギー切れになっても大丈夫だと説明されていた

 にも拘らず何故か箒はこの場に居座っていた

 その事を一夏が言っても…

 

「お前一人では心配だ!!だから私も残る!!大船に乗った気持ちでいろ!!」

 

 とか言う始末だった

 ハッキリ言って箒の力を頼るなど大船どころか泥船に乗る様な物でしかなかった

 一夏もそこまでは思っていなくても不安でしかなかった

 その為…

 

一夏

(千冬姉にも言われているし、最初の一撃が躱されたら火ノ兄に撤収を頼むか…)

 

 一夏は作戦通り、最初の一太刀で決めようと気を引き締めた

 

一夏

(…となると…やっぱり瞬時加速(イグニッション・ブースト)で接近するしか無いな!!)

 

 そして、その為に自分がどう動けばいいかも決めると…

 

「来たぞ!!」

 

 遂に【福音】が現れた

 

一夏

「よし!!行くぞぉぉぉっ!!!」

 

 迫りくる【福音】に対して一夏も【雪片】を構え直すと飛び出した

 それに続く形で箒も飛び出した

 

(コイツを倒して…私の力を認めさせてやる!!そして姉さんに私に相応しい第5世代を用意させる!!火ノ兄も剣刃(つるぎ)を造らせてやる!!!)

 

 そんな箒の考えている事はココでも千冬達の予想通りの事だった

 一方…

 

一夏

「…ココだ!!」

 

 一夏はハイパーセンサーで【福音】との距離を計り、瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使うタイミングを狙って使用した

 そして…

 

一夏

「よし!!」

 

 多少のズレは起きたが一夏は【福音】に急接近する事に成功した

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

『La?』

 

一夏

「貰ったあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 一夏はそのままの勢いで【零落白夜】を発動すると【福音】に向かって全力で斬りかかった

 だが…

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

『La~♪』

 

 ドガガガガガガガガガガガガガッ!!!

 

一夏

「グアッ!?」

 

 【福音】の背中に装備されている大型のスラスターから無数のエネルギー弾が撃ち出された

 これこそが【銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)】に装備された広域殲滅兵装…【銀の鐘(シルバー・ベル)】だった

 【銀の鐘(シルバー・ベル)】によって一夏の機先は削がれてしまった

 

一夏

(くっ!コレが特殊武装かよ!?この弾幕を躱すのはいくら何でも厳しいぞ!!SEの残りは…まだ行けるか…けど最初の一撃を防がれたしな…ココは最初の予定通り撤退した方がいいのか?)

 

 一夏が撤退を考え始めた時…

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!」

 

一夏

「ま、待て箒!?」

 

 横から箒が【福音】に斬りかかった

 慌てて一夏が止めようとしたが箒は止まらなかった

 だが…

 

 ドガガガガガガガガガガガガガッ!!!

 

「ぐああああぁぁぁぁぁっ!!」

 

 突っ込んで来た箒は【銀の鐘(シルバー・ベル)】でアッサリ撃ち落とされた

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

『La~♪』

 

一夏

「箒!!くっ!!」

 

 箒が仕掛けた為、【福音】は更なる追撃を放ってきた

 その為、やむを得ず一夏も戦闘を継続する事になってしまった

 

 ………

 ……

 …

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

『La~♪』

 

 それから2人は【福音】に挑むが決定打を与えられずにいた

 

「おのれえええぇぇぇっ!!!」

 

 さらに箒は【福音】に手も足も出ない事から苛立ち、動きが雑になって行った

 

一夏

「待てよ箒!!!」

 

 そんな箒を一夏は落ち着かせようとするが箒は耳を貸そうとはしなかった

 箒は完全に頭に血が上ってしまい【福音】を倒す事しか考えられなくなっていた

 

一夏

(くっ!!どうすればいいんだ…もう【白式】のSEも残り少ない…【零落白夜】も使えて後数秒しかない…)

 

 一方で一夏は今の状況を冷静に考えていた

 

一夏

「(これ以上の戦闘はもう無理だ!!千冬姉に連絡を取って…)ん?」

 

 そして一夏は撤退を決め、指令室の千冬に連絡を取り永遠を迎えに来てもらおうとした

 だが、その時一夏は何かに気付いた

 

一夏

「何だ今の?…え?」

 

 それが何か分かると目を見開いた

 何故ならそれは現在この海域にはあってはならない物だったからだ

 その為…

 

一夏

「箒!!!『船』だ!!!」

 

「船だと!?」

 

 箒に叫んだ

 一夏が見つけた物…それは『船』だったのだ

 海域封鎖をしているにも拘らず船がいると言う一夏の行き成りの言葉に流石の箒も突撃を止めた

 

一夏

「そうだ!恐らく密漁船だ!だから…」

 

 一夏は船を逃がす為に移動しようと言おうとした

 だが…

 

「そんな奴等放っておけ!!」

 

一夏

「…え?箒?」

 

 何と箒は船の乗員を見捨てると言い出した

 

「奴等は犯罪者だぞ!!そんな奴等に構うことは無い!!」

 

一夏

「………お前…何でそんな事言えるんだよ…」

 

「え?」

 

一夏

「…犯罪者だからって…見捨てるなんて…何で…そんな寂しい事言うんだよ…」

 

「い、一夏?」

 

一夏

「…お前…『そんな奴』だったのか?」

 

「!?」

 

 一夏の言葉に箒は動揺し刀を落とした

 

「ち、違う…わ、私は…ただ…ただ…」

 

 箒は言い訳を言おうとした

 だが、その後の言葉が出てこなかった

 それもその筈…箒がココに居るのは自分の欲望を満たす為のただの我儘でしかないからだ

 密漁船はその自分の目的を邪魔した存在だった

 その為、箒は続きの言葉が出てこなかった

 続く言葉は自分の欲望を口にする事になるからだった

 だが、今は戦闘中…

 つまり…

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

『La~♪』

 

 ドガガガガガガガガガガガガガッ!!

 

一夏&箒

「!?」

 

 動きを止めた2人は【福音】の格好の的になっているという事になる

 

一夏

「箒ぃぃぃぃぃぃっ!!!」

 

 無防備になっている箒の前に一夏が立ち塞がった

 

「え?」

 

 ドガアアアァァァンッ!!!

 

 そして【福音】の放った【銀の鐘(シルバー・ベル)】は全弾一夏に直撃し巨大な爆発が起きた

 

「い、一夏あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 そんな一夏の姿に箒は叫ぶ事しか出来なかった…

 

 ~三人称 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第110話:第2陣出撃!!

 ~三人称 Side~

 

「い、一夏あああああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 【福音】の攻撃から箒と船を守って【銀の鐘(シルバー・ベル)】を全て受けた一夏は爆発に飲み込まれた

 

「そ、そんな…」

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

『La~♪』

 

「!?」

 

 そして一夏を倒した【福音】は次の狙いを箒に定めた

 だが…

 

 ブンッ!

 

「!?…ひ、火ノ兄!?」

 

 その時、箒の目の前に【ラインバレル】を纏った永遠が現れた

 

永遠

「………」

 

 ブンッ!

 

 だが、永遠は何も言わず箒を掴むと【転送】を使い再び転移した

 次に現れたのは一夏が守った船の上だった

 そして…

 

 ブンッ!

 

 今度は船ごと転移した

 その結果…

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

『………La?』

 

 戦闘海域には【福音】だけが残された…

 

 ~三人称 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「…篠ノ之…何か言う事はあるか?」

 

「………」

 

 私は今、一夏と箒が出撃した海岸に来ている

 そしてそこでは火ノ兄によって戻って来た箒と対面している訳だ

 何故私がそんな事をしていると言うと…簡単に言えばこの馬鹿の尋問だ!

 事前の作戦ではコイツは一夏を目的地に運ぶ事だけが役割だった…だがコイツは一夏を送り届けても戻ろうとはせず勝手に作戦に参加した

 一応様子を見ようという事で放置していたが一夏が船を発見した事で状況は一変した

 あろう事かこの馬鹿は船が密漁船と言う理由で見捨てたのだ

 その結果、船とこの馬鹿を庇って一夏は【福音】の攻撃を纏めて受けてしまった

 幸い準備させていた火ノ兄が被弾直後の一夏を助け出してくれたお陰で九死に一生を得たがそれでも重傷なのに変わりはなく、馬鹿と船も連れて戻って来た火ノ兄はすぐに待機させていた医療班に一夏を預けた

 もし火ノ兄が来るのが僅かでも遅れていたら一夏は更に酷い事になっていたかもしれんな…

 それから密漁船の方は地元の警察に連絡して既に引き渡してあるから大丈夫だ

 つまり残る問題がこの馬鹿!!篠ノ之箒だ!!

 コイツは私がココに来てから一言も喋っていない…言い訳を言えと言っても何も言わない

 私が来る前はギャーギャー騒いでいたのにな?

 

千冬

「…事前に立てた作戦ではお前の役割は織斑を目的の場所まで送り届ける事だけ…それが終わり次第戻る手筈だったな?違うか?」

 

「………」

 

千冬

「迎えに関しては火ノ兄に任せると言った筈だが?お前はこっちの立てた作戦を聞く気が初めから無かったのか?」

 

「………」

 

千冬

「もう一度聞く…誰が参戦していいと言った?誰の許可を経てあんな事をした?」

 

「………」

 

 返答無し、か…当然だな

 コイツのやった事は明らかな命令違反…しかもコイツが勝手に参戦したせいで結果として一夏は重傷を負ったんだからな

 全く!本当に碌な事せんなコイツ!!

 だが、これ以上コイツの相手をする時間も無い…ココは…

 

千冬

「ハァ…まさか行き成り使う事になるとはな…」

 

「…え?」

 

 『アレ』を使うしかないか…

 私はそう言ってポケットから『ソレ』を取り出した

 

「そ、それは!?」

 

 それを見て箒は慌てだした

 それはそうだろう…何しろコレは…『【紅椿】の強制停止スイッチ』だからな!!

 

「ま、待って下さい!!!」

 

 箒は止めようとしたが私は構わず…

 

 カチッ!

 

 スイッチを押した

 その瞬間、箒の手首に巻かれていた待機状態の【紅椿】が色を失った

 金と銀の鈴が付いた赤い紐だったが今は全て灰色になってしまっている

 なるほど…止めるとああなるのか…分かり易いな

 

「【あ、紅椿】?…オイ!!【紅椿】!?応えろ!!」

 

 箒は【紅椿】を展開しようとするがどれだけ呼び掛けても【紅椿】は何に反応もしなかった

 よし!確かに止まってるな!

 さて、後は…

 

千冬

「篠ノ之!!お前は部屋で謹慎だ!!処罰の内容はこの一件が終わり次第通達する!!それまで大人しくしていろ!!!」

 

「!?」

 

 この馬鹿を隔離しておく

 そうでもしておかんとコイツの事だ、【紅椿】が使えないならと今度は量産機を勝手に持ち出して【福音】に再戦を挑みかねんからな

 そう言う訳で私はコイツを引き摺って旅館に戻ると空き部屋を一つ用意して貰い、そこに放り込んでおいた

 勿論教師の1人を見張りに付けた

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~束 Side~

 

 ハァ~…まさかこんな事になるなんて…

 ゴメンねいっくん…束さんもこんな結果になるなんて思わなかったよ…

 まさか箒ちゃんがここまで酷かったなんて…本当…何であんな子に育ったんだろ?

 束さんはそんな事を考えながらメガネっ子と一緒に【福音】の現状を監視していた

 すると…

 

千冬

「束!真耶!【福音】が何処にいるか分かったか!!」

 

 指令室にしている部屋にちーちゃんが戻って来た

 でも、戻って来たって事は…

 

「その事より箒ちゃんは?」

 

千冬

「空き部屋に閉じ込めて見張りを置いて来た!!」

 

 まあそう言う事だよね…

 

「やっぱりそうなった?…って事は…」

 

千冬

「ああ、使わせて貰った!!」

 

「アハハ…やっぱり…」

 

 使ったんだね…スイッチ…

 でも仕方ないか…あんな結果じゃ束さんも弁護できないし使うしかないよね…

 

千冬

「それで【福音】は?」

 

「あ、うん、居場所の特定は済んでるよ。って言うかあれから動いてないよ?」

 

千冬

「は?動いてない?一夏と戦ったあの場所にまだいると言うのか?」

 

真耶

「はい。」

 

千冬

「…何故動かないんだ?」

 

「それだけど…少し調べて見たら今は休眠状態になってるみたいだよ?」

 

千冬

「休眠?一夏と箒の2人と戦ったくらいでそうなるとは思えんが?」

 

 まあそうだよね~…相手がとーくんやセーちゃんならともかくいっくんと箒ちゃんと戦ったくらいで休むとは思えないし…となると…

 

「…移動の疲れ、ってところかな?」

 

千冬

「そんな所か…」

 

 なんだかんだで【福音】は太平洋を横断してこっちに来たもんな~…

 

千冬

「まあそれはいいとして動いてないなら丁度いい…束、【ハルファス】は?」

 

 お!遂に出番が来たんだね!!

 

「うん!!準備OK♪いつでも行けるよ!!」

 

千冬

「よし!!ではオルコットに出撃命令を出せ!!」

 

真耶

「ハイ!!」

 

千冬

「それと布仏も出撃させろ!!」

 

真耶

「え?布仏さんもですか?」

 

 のんちゃんも出すの!?

 

千冬

「ああ、奴が動いていないなら2人に任せた方が確実だろ?」

 

「ふ~む…確かにそうだね…」

 

真耶

「分かりました!では2人に連絡しますね!!」

 

 メガネっ子も返事をするとセーちゃんとのんちゃんに連絡を入れた…

 でも…【ワイバーン・ガイア】と【ハルファス・ベーゼ】のタッグか~…

 うわ~…自分で造っておいて何だけど…完全にオーバーキルだね…ご愁傷様…

 私はこの後の展開を予想して【福音】に内心合掌した…

 そして…

 

真耶

「【ハルファス・ベーゼ】!!【ワイバーン・ガイア】!!発進しました!!!」

 

 2人が出撃した…

 【福音】…南~無~…

 

 ~束 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第111話:蒼と白の勝利【蒼炎の不死鳥&白き翼竜VS銀の福音】

 

 ~三人称 Side~

 

 旅館から飛び立ったセシリアと本音は現在、【福音】のいる海域へと向かっていた

 とは言っても2人のISは移動速度が違い過ぎるのでセシリアは【ワイバーン・ガイア】の背に乗る形で移動していた

 

本音

「セッシー、ぶっつけ本番になったけど大丈夫~?」

 

セシリア

「そうですわね…不安が無いとは言えませんが…ですが大丈夫ですわ。」

 

 その道中で本音はいきなり実戦投入する事になった【ハルファス・ベーゼ】で大丈夫なのかを聞いて来た

 セシリアと違い本音は【ワイバーン・ガイア】を受け取ってから永遠や簪、鈴達と訓練を行っていたので機体の扱いにも既に慣れていた

 だが、セシリアの場合はISの技量は本音よりも遥かに上ではあるのだが、まだ新型に慣れていない為に不安が残っているのだ

 尤も、それは第1陣で出撃した箒にも言えた事なのだが、箒の場合は本人の実力不足とその辺の事を何も考えず自分勝手に突っ走った結果ああなった

 

 ………

 ……

 …

 

 それから暫くして…

 

セシリア

「見つけましたわ!!」

 

本音

「こっちでも捉えたよ~!!」

 

 【福音】が2人のレーダーの索敵範囲内に入った

 

本音

「それじゃあセッシー!!」

 

セシリア

「ハイ!先手必勝ですわ!!」

 

 ガキョンッ!!

 

 そう言ってセシリアは両肩の4枚の翼に装備されている大型砲【クロス・メガビームキャノン】を展開した

 

セシリア

「…発射!!!」

 

 ドギュゥゥゥゥゥンッ!!!

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

『…La?』

 

 ドガァァァァァァンッ!!!

 

 セシリアの砲撃は【福音】が気付いた時には既に遅く、躱す事も出来ずに直撃を喰らった

 セシリアと本音からは【福音】の位置を正確に捉えていたが、【福音】の方は2人の存在に気付いていなかった

 それは【福音】の索敵範囲よりも2人の索敵範囲の方が遥かに広い為、セシリアはまず長距離からの砲撃による先制攻撃を仕掛けたのだった

 そして…

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

『La~!!』

 

 敵が来た事に漸く気付いた【福音】はすぐに砲撃のあった方角に向かって飛び出した

 向かって来る【福音】に対して…

 

セシリア

「本音さん!!」

 

本音

「ん!全弾発射!!!」

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!

 

 【ワイバーン・ガイア】の全火力兵装による一斉砲火を浴びせた

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

『La!?La~!!!』

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!

 

 それに対し、【福音】も【銀の鐘(シルバー・ベル)】で応戦した

 

 ドゴゴゴゴゴォォォォォンッ!!!

 

 本音と【福音】の攻撃がぶつかり合い、巨大な爆発が起こった

 そこに…

 

セシリア

「ハァァァァァッ!!!」

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

『La!?』

 

 爆煙の中から2本のビームサーベルを抜いたセシリアが飛び出してきた

 【福音】はすぐに迎撃しようとしたが…

 

セシリア

「遅いですわ!!」

 

 ザシュザシュッ!!

 

 一瞬で背後に回り込んだセシリアは【福音】の背中にある大型スラスターを根元から斬り落とした

 そして…

 

セシリア

「これで!!!」

 

本音

「終わりだよ!!!」

 

 セシリアは【クロス・メガビームキャノン】…本音は【アーム・カノン】と【レーザー・ブレス】をそれぞれ撃った

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

『La…』

 

 ドガアアアアアァァァァァンッ!!!!!

 

 スラスターを斬り落とされた【福音】は躱す事が出来ず2人の攻撃をもろに受けた

 そして、そのまま力を失い落下して行った

 その途中で本音が【福音】を受け止めると…

 

セシリア

「…生体反応は…ありますわね…機体の方は…」

 

本音

「止まってるよ~。」

 

セシリア

「ですわね。」

 

 2人は【福音】をセンサーでスキャンし、ナターシャの無事とISの機能停止を確認した

 

本音

「それじゃあセッシー、これで任務完了だね~♪」

 

セシリア

「ええ、戻りましょう♪」

 

 そう言って2人はナターシャを連れて旅館に戻って行った

 アメリカとイスラエルが合同で開発した最新鋭の軍事ISと言えども、ISの生みの親、篠ノ之束の造った第5世代の前では何の抵抗も出来ずに敗れ去ったのだった

 後日、IS学園からこの結果を聞かされた両国は暴走を止めたセシリアと本音に感謝すると同時に2人の機体の凄まじさに恐れおののくのだった

 尚、【福音】を開発した研究者達は自分達が苦労して開発した【福音】が2人にアッサリ倒されたと知り、そのショックで暫くの間立ち直れなかったとか…

 

 ~三人称 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第112話:歪んだ結論

 

 ~千冬 Side~

 

千冬&真耶

「………」

 

 私と真耶はオルコットと布仏の戦いを見て言葉を失っていた

 

「いや~流石は束さんの最新型♪あの程度のIS何て目じゃなかったね♪それにセーちゃんも【ハルファス・ベーゼ】を完全では無いけど使えていたし、今の所は及第点だね♪」

 

 一方で束は大喜びしていた

 それもそうか…自分の造った機体の活躍を見ればそう言いたくもなるか…

 だがな~…

 それにしても幾ら2対1とは言えまさかここまで一方的に勝つとは…乗り手の技量も合わせるとこの結果は当然と言えるのだろうが…私達の作戦会議って一体何だったんだって言いたくなるんだが…まあいいか…

 しかし、【ワイバーン・ガイア】も【ハルファス・ベーゼ】もその能力の半分も出していないな…あの2人…消化不良を起こさなければいいんだが…

 まあ、そうなったら仕方無い…悪いが火ノ兄を『生贄』にしよう!!うん!!

 

千冬

「さて、これで【福音】の件も片付いたな…後はナターシャの事だが…真耶?」

 

真耶

「ハイ!すでに医療班には連絡済みです。2人が戻り次第治療に当たります。」

 

千冬

「ならば良し!ではナターシャの事は任せるぞ。」

 

真耶

「任せて下さい!…それで先輩は?」

 

千冬

「ああ、私は…」

 

 私はさっき空き部屋に放り込んだ馬鹿の顔を浮かべた…

 

千冬

「理事長とあの馬鹿の処分内容を話し合う!!!」

 

束&真耶

「………」

 

千冬

「束、悪いがアイツは学園の生徒としてこちらでキッチリ処罰を下す!!口出しするなよ!!」

 

「…分かったよ…確かに今回の事は束さんも見過ごせないからね…何も言うつもりは無いよ…」

 

 ホゥ…流石の束も文句は言わんか…

 束も成長したな…幼馴染としては嬉しい限りだ…以前のままならどんな状況でもあの馬鹿の肩を持っていただろうからな…

 それに引き換え、アイツは何も成長していないな…

 さて、前回が懲罰房で反省文500枚だったが…今度はどんな処分を下す事になるのかな…あ~面倒臭い…後で頭痛薬を買っておこう…確実にこれから頭が痛くなるだろうからな…

 

千冬

「ハァ~…」

 

 …一度、一夏の様子を見てから行くか…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 ワシは簪や鈴達と海岸に来とる

 何でワシ等がこげな所におるかと言うとセシリアと本音の出迎えじゃ

 そんで暫く待っとると…

 

 ズシィィィィィィィンッ!!!

 

 ワシ等の前に【ワイバーン・ガイア】が降りて来た

 その背には【福音】を抱えたセシリアが立っておった

 セシリアはワシ等と一緒に待機しておった教師に【福音】の操縦者を渡すと本音と一緒にISを解除した

 

セシリア

「ただいま戻りました♪」

 

本音

「たっだいま~♪」

 

全員

「お帰り♪」

 

 

 笑顔で挨拶して来たからワシ等も同じように笑って返した

 

「それでどうだったセシリア?【ハルファス・ベーゼ】の使い心地は?」

 

セシリア

「ハイ♪今迄の違和感が嘘のように無くなって動きやすかったですわ♪ですが…」

 

シャルロット

「ですが、何?」

 

セシリア

「いえ、手持ちのライフルが無いと少し落ち着かなくって…その内慣れると思うのですが…」

 

全員

「あ~…」

 

 そう言えば【ハルファス・ベーゼ】には大型砲は付いとるがアレは固定武器じゃからな…【ブルー・ティアーズ】の頃の癖と言う奴があるんじゃな…

 後で束さんに相談しとくか…

 

「本音の方は?」

 

本音

「初めての実戦で緊張したけど何とか上手くいったよ~♪」

 

永遠

「それは良かった♪2人共よう頑張ったのぉ♪」

 

 ワシは2人を褒めながら頭を撫でてやった

 すると…

 

セシリア&本音

「エへへ~♪」///

 

 2人は嬉しそうに笑っておった

 じゃが…

 

「ム~…」

 

 簪が不機嫌になってしもうた…

 マズいのぉ…え~、この場合はどうすればいいんじゃ?

 ワシは鈴達に助言を貰おうと思ったが…

 

永遠

「………アレ?」

 

 既にワシら4人以外誰もおらんかった…

 あいつら逃げおったなあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!

 

セシリア&本音

「エヘヘ~♪」///

 

「ム~…」

 

永遠

「………」

 

 その後、ワシは簪の機嫌を直すのに四苦八苦するのじゃった…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~箒 Side~

 

教師1

『お疲れ様、交代よ。』

 

教師2

『分かったわ。…所で今どんな状況?』

 

教師1

『それならもう大丈夫よ。作戦は無事終了したわ。』

 

「!?」

 

 終わった、だと!?では…【福音】は…

 私は部屋の外から聞こえてきた会話に耳を傾けていた

 

教師2

『随分早いわね?』

 

教師1

『それはそうよ、だって篠ノ之博士の造った2機の第5世代が行ったんだから当然でしょ?』

 

 2機の第5世代!?

 オルコットと布仏か!?

 

教師2

『それもそうね…それで…彼女はどうなるの?』

 

 話題が私の事に変わったか…

 

教師1

『織斑先生が理事長と話し合ってるわ。彼女の処遇に関しては後で織斑先生が直接言いに来るそうだからそれまではこのままだそうよ。』

 

教師2

『そう、じゃあ後はよろしく。』

 

教師1

『ええ。』

 

「………」

 

 ………

 ……

 …

 

 私は今の状況に歯噛みしていた!!

 あの時、密漁船なんか来なければ【福音】を倒して私の力を姉さんや千冬さんに知らしめる事が出来たと言うのに!!!

 クソッ!!やはりあんな奴等放っておけばよかったんだ!!!

 それなのに何故私がこんな事になるんだ!!

 

「………いや…違う!!!」

 

 私は千冬さんによって機能を止められた【紅椿】を見た

 そうだ…コイツのせいだ!!

 第4世代如きのISに私の力を引き出せる筈がない!!

 やはり私の力を発揮する為には第5世代が必要だ!!

 こんなポンコツ…私に相応しくない!!

 そうと分かればこんなポンコツは姉さんに突き返して私に相応しいISを用意させよう!!

 私はそう結論付けると千冬さんが来るのを待つ事にした

 

 ~箒 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第113話:姉の心、妹知らず

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「アイツは反省してるんだろうか…」

 

「…ゴメン…束さんでも分かんない…」

 

千冬

「………」

 

 私は束と話しながら空き部屋に放り込んだ箒のいる部屋に向かっていた

 何故束もいるのかと言うと【紅椿】のリミッターをかけ直して貰う為だ

 それで会話の内容はその箒の事なんだが、見張りの教師から連絡が今の所無いから大人しくしているみたいだが逆にそれが不安だ…普通なら大人しくしているから反省していると取れるんだがアイツの場合は当て嵌まらんからな…

 そもそもあの箒が大人しくしていると言うのが私には信じられないからだ…アイツの事だから部屋の中で暴れる位は平気ですると思っていたんだがそれも無い様だ…ハッキリ言って気味が悪い程に不気味だ…

 そんな事を考えていると目的の部屋に着いた

 

千冬

「ご苦労、篠ノ之は?」

 

 私は見張りをしている教師に確認を取ったが…

 

教師

「今の所は静かにしてますね。」

 

千冬

「そうか…」

 

 静かにしてるのか…本当に不気味だ…

 

千冬

「それなら後は私に任せておけ。何かあればまた連絡するがそれまではゆっくりしておいてくれ。」

 

教師

「分かりました。それでは後は頼みます。」

 

千冬

「入るぞ篠ノ之。」

 

 一言声をかけてから私と束は部屋の中に入って行った

 

「………」

 

 中に入ると正座した箒がこちらを見ていたが…この顔、明らかに不満しかないって言う顔だな…

 ハァ…大人しくしているからほんの僅かでも反省しているかもと思ったりもしない訳では無かったがやはり無理だったか…この顔は絶対反省してない顔だ…

 まあいい、さっさと用件をすませよう…私も束も暇では無いからな

 

千冬

「さて篠ノ之…今回のお前の無断行動の件によるお前の処罰内容が決まった。」

 

「………」

 

千冬

「ハァ…全く…お前は一体何回処罰を受ければ気が済むんだ…毎回毎回こんな事で頭を悩ませるこっちの身にもなれ…」

 

「くっ…」

 

 こんな事本当なら生徒相手に言うべきでは無いがコイツの場合は別だ!

 本当にいい加減にして欲しい!

 

千冬

「お前は学園に戻り次第懲罰房で反省文200枚の提出と夏休みの前半は学園での奉仕活動だ!」

 

「奉仕…活動…」

 

千冬

「それで少しは他人を思いやる心を学べ!!」

 

「!?…わ、私が他人を思いやらない人間だって言うんですか!!」

 

 何を今更…

 

千冬

「これまでの自分を振り返ってみろ!今までお前が学園でやって来た事は全て自分本位の身勝手なものばかりだろうが!!それの何処に他人を思いやる行動があったと言うんだ!!」

 

 そう…コイツは今まで自分以外の誰かの為に行動した事は一度も無い

 全て自分の欲望のままに行動し、他人の事など一切考えてはいない

 

「うっ…ぐっ…」

 

 まあ、奉仕活動をさせたからと言ってコイツのこの捻じれに捻じ曲がった性格が治るとも思えんがな…何もしないよりかはいいだろう

 それに、もしかしたらという事もあるからな…期待しないで経過を見る事にするか

 さて、コイツの処罰も下したし、束の方の作業をして貰うとするか

 

千冬

「それと篠ノ之、【紅椿】を出せ。リミッターをかけ直す。」

 

「!?」

 

 私がそう言うと箒は待機状態の【紅椿】に触れた

 

「………再起動も…してくれるんですか?」

 

千冬

「そっちはしない。そもそもお前はこの後謹慎だろうが。再起動する必要が何処にある?」

 

 話を聞いてなかったのか?

 

「………そうですか…なら…」

 

千冬

「ん?」

 

 箒はおもむろに立ち上がると【紅椿】を外した

 私はこちらに渡すものかと思ったが…

 

 バシッ!

 

「こんなポンコツいりません!!!」

 

千冬

「!?」

 

 【紅椿】を束に投げつけた!?

 ぶつけられたのが待機状態だったから束は怪我なんてしなかったが、箒の突然の行動に私も束も動揺していた

 コイツ行き成り何のつもりだ!?

 

「こんなポンコツISを渡されたせいで作戦は失敗したんだ!!一夏が怪我を負ったのもコイツのせいだ!!!」

 

 鼻息を荒くしながらコイツは訳の分からない事を言いだした

 コイツ…言うに事欠いてISのせいにしてきた!?

 

「…第5世代だ…姉さん!!私の我儘を聞くのが最後だと言うなら第5世代を用意しろ!!!第4世代なんてガラクタでは私には相応しくない!!!私に相応しい第5世代をください!!!」

 

「………」

 

 相応しいISを寄越せだと!?

 コイツ、あの作戦の失敗をISのせいにしたのか!?

 

千冬

「…篠ノ之…いや、箒…お前…そこまで『落ちぶれた』のか…」

 

 私は目の前にいる知り合いの余りにも酷く情けない姿に心底落胆した

 

「私は落ちぶれてなどいません!!ただ本当の事を言っているだけです!!!」

 

 何を馬鹿な事を…

 自分に相応しいのは第5世代?

 作戦に失敗したのはISのせい?

 コイツには『自分が悪い』と言う考えが完全に抜け落ちている…全て他の人間やISのせいにしている…

 こんな奴に奉仕活動なんてさせても効果は見込めんな…

 まあ、それはもうどうでもいいとして…今のコイツの行動は流石に見過ごせん!!1発ぶん殴ってやるか!!

 私はそう思って拳を振り上げた

 だが…

 

「…いいよちーちゃん…」

 

千冬

「!?…だが束!!コイツのした事は!?」

 

 束本人に止められた

 

「いいよ別に…箒ちゃん…【紅椿】がいらないって言うなら持って帰るよ。じゃあね。」

 

 束は落ちている【紅椿】を拾うとさっさと部屋から出て行った

 

千冬

「オ、オイ束!?」

 

「姉さん!!今度こそ第5世代を持って来て下さいよ!!!」

 

 そんな束にコイツは未だに自分の欲求を口走っていた

 コイツ気付いてないのか?

 束は一度も頷いていないんだぞ?

 だが、コイツは…

 

「フフフ…コレで今度こそ第5世代が私の物に…」

 

 第5世代が用意される物だともう思い込んでいる…まさかココまで馬鹿…いや、『愚者』だったのか…

 私はもう今のコイツとはもう関わり合いになりたくなかった…

 だから束には止められたが力一杯1発ぶん殴った後、コイツの処分内容を改めて通達した後部屋を出て行った

 その後、待機していた教師に再び見張りを頼んだ後、束を急いで追いかけた

 

 ………

 ……

 …

 

千冬

「束!!!」

 

「………」

 

 良かった!まだいた!

 怒ってさっさと帰るかと思ったからな…

 

千冬

「束…箒の事だが…」

 

「………箒ちゃんの気持ちは分かったよ…」

 

千冬

「…え?」

 

 た、束?

 

「もう怒った!!!だれが第5世代なんか造ってやるかあああああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 あ、やっぱり怒ってた…

 箒に対して激甘のコイツも流石にキレたか…

 おかしい…姉妹仲が悪くなった事は確実なのに…私は今の束を見て安心している…何故だ?

 

「電話もメールも着拒にしてやる!!!」

 

千冬

「いや待て待て!流石にそれはやり過ぎだろ!?」

 

「いいんだよ!!あの子は一度突き放さないと分からないよ!!!」

 

千冬

「ぬっ…」

 

 そう言われると…確かにそうだが…まさかあの束がそんな事を言うとは…

 私が驚いていると…

 

「…ハァ…ゴメンね【紅椿】…」

 

 束は箒が投げつけてきた【紅椿】に謝っていた

 

「…あの子の成長を期待して用意したんだけど…アレじゃ無理だね…」

 

千冬

「…そうだな…」

 

 アイツにISは危険すぎる…赤ん坊に銃を持たせる様な物だ…

 しかし、束の奴…そんな箒が少しでもまともになる様に思って【紅椿】を造ったのか…

 だが、あの馬鹿にはそんな姉の想いは届かなかったか…

 さっきまでの怒りが鳴りを潜めてすっかりしおらしくなってしまったな…

 …よし!丁度日も沈んだ頃だしいい時間だ!

 

千冬

「束!!今夜は飲もう!!!私の奢りだ!!!今日は一晩お前の愚痴に付き合ってやる!!!」

 

「…ちーちゃん………うん♪」

 

 私が飲みに誘うと束は笑顔で頷いた

 私と束はそのまま夜の居酒屋に直行した!

 旅館での後始末は真耶に任せる事になってしまったが、仕事が終わればこっちに来るように伝えてあるし、真耶の方も私が奢ってやることで帳消しにして貰おう!!!

 

 ~千冬 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第114話:臨海学校終了


遂にお気に入りが2000を超えました!!

皆さん応援ありがとうございます!!

これからも完結目指して頑張ります!!!



 ~千冬 Side~

 

千冬

「うあ~…飲み過ぎた…」

 

 昨日の夜に束と飲みに行ったが…流石に3件ハシゴしたのはやり過ぎたな…

 二日酔いで頭が痛い…

 

千冬

「こっちは気分が悪いと言うのに束の奴!いつの間に帰ったんだ!!」

 

 そう、今朝目を覚ますと一緒に飲んでいた筈の束がいなくなっていた

 傍に置かれていた封筒を見ると中に手紙が入っていた

 手紙には『先に帰る』と書いてあった…後、『飲みに誘ってくれてありがとう』ともな…

 

千冬

「フッ…まあ、いいか…」

 

 アイツもいい気分転換になったみたいだしな…

 しかし、それは別にしてもこの頭痛はどうにかならないものか…

 いや、飲み過ぎた私が悪いから文句を言えんのだが…

 私が頭痛に悩まされながら歩いていると…

 

真耶

「センパ~~~イ!!」

 

千冬

「ん~?」

 

 真耶がやって来た…大きな声を出さないでくれ…頭に響く…って、アレ?

 

真耶

「先輩大丈夫ですか?」

 

 心配してくれるのは嬉しいが…何か変だぞコイツ?

 確か…真耶も昨日は私や束と一緒に浴びるほど飲んでたよな?

 真耶の奴…そんなに酒に強かったか?

 

真耶

「先輩?」

 

千冬

「真耶…お前何とも無いのか?昨日あれだけ飲んだだろ?」

 

 私がそう聞くと…

 

真耶

「え?…先輩…もしかして()んでないんですか?」

 

千冬

「飲む?」

 

 飲むって何をだ?酒か?今はもう飲みたくないぞ?

 

真耶

「博士の『酔い覚まし』ですよ。手紙と一緒に入っていた筈ですけど?」

 

千冬

「何っ!?」

 

 そんな物があったのか!?

 私は急いで束の手紙が入っていた封筒を見た

 すると…

 

千冬

「…あ!あった…」

 

 本当に薬が入ってた…

 私は急いでその薬を呑むと…

 

千冬

「…あ、頭痛が治まって来た…」

 

真耶

「凄い効き目ですよね~?」

 

千冬

「そうだな…」

 

 いくら何でも効き過ぎだろこの薬…だが、まあ…助かったな…

 

千冬

「さて…気分もよくなった事だし…真耶、帰りの準備は?」

 

真耶

「はい、皆さんちゃんとやってますよ。…ただ、篠ノ之さんですが…」

 

 あ~、そうだった…アイツがいたの忘れてた…

 と言うか昨日の飲み会はアイツが原因でもあるんだよな…

 はぁ…このまま忘れてしまいたいな…だが、そうもいかんか…

 

千冬

「奴には私が付き添おう。私以外ではアイツは言う事を聞かんだろ…」

 

真耶

「ですね~…あ、後、織斑君の方ですけど…」

 

千冬

「アイツは後で病院に搬送する手筈になっていたな…先方に連絡は?」

 

真耶

「大丈夫です!織斑君の受け入れは極秘に行ってくれるそうです。」

 

千冬

「よし!」

 

 一夏と火ノ兄は世界でも2人しかいない男のIS操縦者だからな…入院するだけでも極秘に行う必要がある…

 

千冬

「なら、一度様子を見ておくか…」

 

真耶

「そうですね。」

 

 そして私は真耶と一緒に一夏の寝ている部屋に向かったんだが…

 

 ………

 ……

 …

 

 これは…どう言う事だ?

 

一夏

「あ、千冬姉に山田先生。」

 

真耶

「お、織斑君!?」

 

 病院に入院させるほどの重傷を負っていた一夏が目を覚ましていた

 しかも、まるで初めから怪我なんてしていなかったみたいにピンピンしている

 どう言う事だ?

 束の仕業か?

 いや、それなら私に言う筈…一体…一夏に何があった?

 

千冬

「一夏…お前大丈夫なのか?」

 

一夏

「あ、うん、何とも無い…」

 

 確かに見る限り問題なさそうだな…

 それから私達は一夏から事情を聞いた

 だが、やはり一夏自身も何故自分の怪我が治ったのか分からなかった

 しかし、一つ気になる事を言っていたな…

 

一夏

「…そう言えば…夢を見た気がする…」

 

 夢か…普通なら気に止めないところだが…

 何だ?妙に気になるな…夢の内容を聞いても一夏は覚えていなかったし、気にはなるが夢なんて不確かなもの調べ様も無いからな…せいぜい、後で束に相談するくらいしか出来ないか…

 しかしまあ、今は一夏が回復した事を喜ぼう!

 あ!後、病院にキャンセルの連絡と謝罪を伝えないとな…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 さて、色々あったが今日で臨海学校も終わったの~…

 じゃが、この後は期末テストがあるんじゃよな~…

 生まれ変わってもテストは嫌じゃな~…まあええわい!なるようになるだけじゃい!!

 で…ワシはどう帰ればいいのかのぅ?

 ココで皆と分かれて家に直接帰るか…バスで一度学園に戻ってから帰るか…まあ来る時の事を考えればバスの方じゃろうな…別にどっちでも構わんし、【ラインバレル】で先に帰ると言ったら織斑先生にまた怒鳴られるじゃろうからな…

 そう言えば…織斑と篠ノ之はどうすんじゃろ?

 織斑は大怪我しとるし、篠ノ之は大ポカかましおったからな…

 

永遠

「…ん?」

 

 ワシがそげな事考えとると…

 

一夏

「よ!」

 

 廊下の向こうから織斑が手を挙げて歩いて来た…

 アレ?こやつ重傷者ではなかったか?

 

シャルロット

「い、一夏!?け、怪我は!?」

 

 こやつが大怪我しとる事を知っとるもんは全員驚いとるな…

 足は…有るの…

 幽霊ではないか…だとしたら…何故にこやつは昨日の今日でピンピンしとるんじゃ?

 

永遠

「織斑…お主、何故に動ける?」

 

一夏

「それが俺にもよく分からねえんだ…目を覚ましたら怪我が治ってたんだよ…」

 

全員

「はぁ?」

 

 何じゃそりゃ?

 目を覚ましたら全快しとった?んなアホな…

 

永遠

「お主…ホントに人間か?」

 

一夏

「俺は人間だ!!!」

 

永遠

「う~む…」

 

 考えても分からん…束さんに相談するしかないか…

 

一夏

「て言うか()()()()()は人間かどうかなんて言われたくない!!!」

 

永遠

「なぬ?ワシはれっきとした人間じゃぞ?」

 

一夏

「あのな…何処の世の中に生身でIS倒す奴がいるんだよ!!!」

 

永遠

「ココにおるが?」

 

一夏

「普通はそんな事出来る人間いるか!!!」

 

永遠

「修行すれば誰でも出来ると思うがの?」

 

全員

「出来るかあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 むぅ…織斑だけでなく他のもんまで…

 

永遠

「そうかの~?」

 

一夏

「そうだ!!!」

 

 じゃが、ワシはちゃんとした人間じゃぞ?

 ワシ等がそんな問答しとると…

 

千冬

「何を騒いでいる?」

 

 織斑先生がやって来おった…じゃが、その隣には…

 

全員(一夏以外)

「ゲッ!?」

 

 篠ノ之がおった…じゃがその篠ノ之は拘束服の様な物を着せられ両腕が使えんようになっとった…あんな服どっから持ってきたんじゃ?

 

「…い、一夏…」

 

一夏

「箒…」

 

 織斑はそんな恰好の篠ノ之を見るとすぐに目を逸らしてどっかに行ってしもうた

 まあ、あやつが大怪我した原因はコイツじゃからな…思う所も色々とあるんじゃろう…

 

「待ってくれ一夏!?」

 

千冬

「五月蠅いぞ!!!」

 

 追いかけようとしたみたいじゃがこん人がさせる訳無いか

 織斑先生はそのまま篠ノ之を連れて外に出て行ってしもうた

 荷物も持っとったし先に篠ノ之をバスに放り込んどくようじゃの

 

 ………

 ……

 …

 

 その後、ワシ等は一度全員で集まり、宿の女将に挨拶をするとそれぞれのバスに乗り込んだ

 そしてワシら1組のバスには案の定、篠ノ之が先に乗っておった

 クラスの皆も拘束服を着た篠ノ之には驚いとったが何も言わんかった…何を言ってもあの篠ノ之の事じゃからすぐにキレそうじゃからな~…

 まあ色々あったがこうして臨海学校は終わったんじゃ…

 なんか余計に疲れた気がするの~…

 

 ~永遠 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第115話:白式・雪羅

 

 ~千冬 Side~

 

 臨海学校から戻って数日が経過した

 その間に起きた事だが…

 

 まず、学園に戻ると私はそのまま箒を懲罰房にぶち込んだ

 臨海学校前までコイツが入っていた時と同じ部屋だ…どうせコイツの事だからまた戻って来るだろうと思って室内の掃除も簡単に済ませる程度にしていたんだが、まさか本当にすぐに戻る事になるとはな…

 

 次にオルコットの【ハルファス・ベーゼ】に学園に残っていた生徒と教師が驚きまくっていた

 巨大ロボの布仏の【ワイバーン・ガイア】と違って【ハルファス・ベーゼ】は通常のISと同サイズの第5世代だからな…驚くのも無理ないか…

 

 最後に一夏だが…たった一晩で怪我が完治するなんて非常識な事が起きたから学園に戻るとすぐに精密検査を行った

 検査の結果、体に異常は無く、後遺症も無いとの事だ

 それは正直良かったと私は安心した…

 だが…

 今度は別の問題が浮上した…

 それは一夏の【白式】が二次移行(セカンドシフト)していた事だ!!

 一夏が検査を受けている間に【白式】の調査も行ったがまさかISまでこんな事になっていたとは…

 

 本当に…一体一夏に何が起こったんだあああああぁぁぁぁぁっ!!!

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

一夏

「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 俺は今、放課後の訓練でオルコットと模擬戦をしている

 精密検査の結果問題無しと言われたから、鈴やオルコット達の訓練に混ぜて貰ったんだけど…

 何で【白式】がパワーアップしてるんだ?

 て言うかいつの間に二次移行(セカンドシフト)なんてしたんだ?

 名前も【白式・雪羅】になってるし、性能も上がってた…

 鈴達も新しい【白式】に驚いてたし何でこうなってんだ?一体何が起きたんだよ?

 でも…

 

 ドガアアアァァァンッ!!

 

一夏

「ぐわあああああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 俺はオルコットにアッサリ負けた…

 【白式】がパワーアップしたから今度こそ勝てるかもと少しでも思っては見たけど…やっぱり無理だった…

 そりゃそうだ…オルコットの方も【ブルー・ティアーズ】が第5世代の【ハルファス・ベーゼ】になったんだもんな…

 それに新しい【白式】に着いて行けず使いこなせていない俺…【ブルー・ティアーズ】の方が着いて行けなくなったオルコット…お互いの実力差があり過ぎるもんな…

 

一夏

「も、もう一回!!」

 

セシリア

「いえ、織斑さん、貴方はまずその新しいISを知る事から始めた方がよろしいですわ。」

 

一夏

「え?」

 

セシリア

「今の戦いを見ると…その機体は性能が上がった分、燃費が更に悪くなっていますわね?その左腕の装備、【零落白夜】と同じでシールドを張るだけでもSEを消費し続けている様に見えましたがどうですか?」

 

一夏

「うっ…分かるのか?」

 

 一回戦っただけで見抜かれたのか…

 

セシリア

「ええ、SEが0になって自滅する時間が今まで以上に早かったですからね。【零落白夜】以外でSEを使いそうな装備と言えばそれくらいでしょう?」

 

一夏

「…仰る通りです…」

 

 オルコットの言う通り、この【白式・雪羅】はどうも【雪片弐型】の【零落白夜】の他に左腕の新装備【雪羅】を使う場合でもSEを消費するみたいだった…

 その事がまだ分かっていなかった俺は【雪羅】のシールドの強度に調子に乗ってコイツを使いまくって一気にSEを減らしてしまった

 そしてSEが残り僅かになったせいで【雪羅】のシールドが張れなくなった所をオルコットにトドメの一撃を喰らって負けたんだよな

 …カッコ悪い…

 

セシリア

「今のままでは戦う以前の問題です。貴方の場合は先ず『自滅』をしない事から始めた方がいいですわ。」

 

 自滅って…その通りだから何も言えないけど改めて言われるとキツイな…

 でも、そうか…だからオルコットは先に機体を知る事から始めろって言ったのか…

 

一夏

「分かったよ。」

 

 そうと分かれば、まずは【白式・雪羅】の事をよく知る事から始めよう!!

 あ!でももうすぐ期末テストもあるんだよな…

 そっちもあるから大変だなぁ~…

 

 ~一夏 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第116話:一学期の終わり

 ~永遠 Side~

 

 臨海学校から戻った後も色々あったがそれもアッと言う間に時間が過ぎたのぉ…

 期末テストも終わって今日は一学期の最終日じゃ

 ちなみにテストで赤点取った奴は夏休みの半分は補習で消えるのじゃがワシを始めセシリアや本音、クラスのもん達は1人を除いて全員が赤点を回避した

 織斑はかなり危なかったそうじゃがな…

 それで1組で赤点を取ったただ1人の生徒と言うのは…まあ言わんでも分かると思うが篠ノ之じゃ…

 と言うかあやつ以外取る奴はおらん…織斑は怪しいところじゃったがな…

 それから織斑先生から聞いたところあの女、臨海学校の事件の後に束さんに【紅椿】を叩き返したそうじゃ

 束さんが何も言わんかったから全く気付かんかった…

 にしても、あの女、あげな結果を出したんはどう考えてもあの女の自業自得じゃろうにまさかそれをISのせいにするとは…どんだけ馬鹿なんじゃ?

 束さんの方は織斑先生と一晩中飲みまくってスッキリしたそうじゃが、やはり心配じゃのぉ~…

 取り合えず暫くは様子を見るしかワシには出来んな…

 

セシリア

「永遠さん。」

 

永遠

「ん?」

 

 ワシがそんな事を考えておるとセシリアが話しかけて来た

 

セシリア

「永遠さんは夏休みのご予定はありますか?」

 

永遠

「ワシか?まあ島で畑仕事しながらのんびり過ごすつもりじゃよ。」

 

本音

「永遠らしいね~♪」

 

永遠

「…後は…」

 

「後は?」

 

永遠

「ちと鍛え直そうと思うとる。怪我が治るまで鍛練が出来んかったせいで大分なまっとるようでなぁ…」

 

一夏

「………」

 

 ん?今、織斑から妙な視線が…気のせいかの?

 気のせいじゃよな?

 

永遠

「と、ところでお主等はどうするんじゃ?」

 

 ワシは嫌な予感を振り払うように話題を変えた

 

セシリア

「…わたくしは…国に帰ります。【イグニッションプラン】や他にもやる事がありますから…」

 

永遠

「【イグニッションプラン】?何じゃそれ?」

 

ラウラ

「欧州の次期主力機を決める計画です。ドイツとイギリスは既に参加が決まっているので代表候補生の私達も行かないといけません。」

 

永遠

「ヨーロッパの主力機か…一番の候補は…」

 

シャルロット

「イギリス…って言いたいけど【ハルファス・ベーゼ】は流石に【イグニッションプラン】には出せないよね?」

 

セシリア

「当然です、それに【ハルファス・ベーゼ】はコアも含めてわたくし個人の物となっています。国のISとしてはそもそも出せません。」

 

「え!?よくそんな話が通ったわね?」

 

セシリア

「束さんが直談判して下さいました!」

 

「そう言えばそうだったね。」

 

 あ~、確かに束さんが新しいコアをやるからって事で話を通したんじゃよな…あ!?

 

永遠

「セシリア、帰る前にワシの家に一度来てくれ、渡す物があるんじゃ。」

 

 イカンイカン!忘れるところじゃった!

 

セシリア

「渡す物………あ!?はい!分かりました!!」

 

 …セシリアも忘れとったな?まあ思い出したからいいか…

 

永遠

「簪と本音はどうするんじゃ?」

 

「私は…一度は家に帰るつもりだけど…あの家って余り居心地がよく無いから…多分すぐに学園に戻って来ると思う…」

 

全員

「………」

 

 確かに…家の連中から邪険に扱われておったと言うなら帰りたくないじゃろうな…まあ、その辺はあの『更シスコンダメ無ストー会長』がどうにかするべき問題じゃな…仮にも当主何じゃからな

 それは別にしても休みの間も学園におると言うのはな…

 仕方ない…

 

永遠

「それなら簪、休みの間はワシの島におるか?」

 

全員

「え!?」

 

「い、いいの?」

 

永遠

「何を驚いとる?今までも何度か泊まっとるじゃろ?」

 

「そ、それはそうだけど…一カ月以上も一緒って言うのは…初めてだし…」

 

 あ!そう言う事か!

 付き合っとるから大丈夫と思うたが…流石に一カ月以上となるとマズイか…

 

永遠

「スマン!気が利かんかった…今言った事は無かった事に…」

 

「え!?ままま待って!!!」

 

永遠

「ん?」

 

 何じゃ?

 

「よ、よろしくお願いします…」///

 

永遠

「へ?」

 

「さ、さっきは驚いたけど…確かに永遠の家は居心地がいいし…も、もし永遠がいいなら…お世話になりたい…」

 

本音

「私も私も~!!」

 

 本音まで…まあ最初に言ったのはワシじゃし…

 

永遠

「構わんぞ。」

 

簪&本音

「ヤッタアアアアアァァァァァッ!!!」

 

永遠

「………」

 

 う~む…喜んでくれるのは嬉しいんじゃが…ちと参ったのぉ…

 

セシリア

「ムムムッ…」

 

 一人だけ国に帰るセシリアが不機嫌になってしもうた

 どうすればいいのかと他のもんに視線を向けたが…

 

 サッ!

 

 揃って目を逸らしおって…クッ!薄情者共め!!

 

永遠

「あ~…セシリアさんや、そっちの用事が済んだらいつでも来んさい。待っとるから。」

 

セシリア

「…本当ですか…」

 

永遠

「お主に嘘は言わん!!」

 

セシリア

「…分かりました!向こうの用事が終わりましたらすぐにそちらに向かいます!!」

 

永遠

「ああ、待っとるよ。」

 

セシリア

「ハイ♪」

 

 ふ~…何とか機嫌を直してくれたか…

 

 ………

 ……

 …

 

 それから鈴やシャルロットの予定も聞いてこの話は終わりとなった…

 じゃが…

 

一夏

「………」

 

 やはり…織斑から妙な視線を感じる…

 ワシ…大丈夫かのぉ…

 そんな感じで一学期が終わったんじゃ…

 

 ~永遠 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

夏休み
第117話:夏休み突入!一夏の弟子入り志願!?


何時も「IS世界を舞う剣刃」を呼んで下さってありがとうございます。

行き成りで申し訳ありませんが話のストックが無くなりかけているので次回から更新の時期を1週間から2週間ごとに伸ばします。

更新の時期は伸びても完結までは必ず連載します。

ストックが溜まったら元に戻します。

大変申し訳ありません!!!


 ~永遠 Side~

 

 夏休みに入るとワシは早速なまった体を叩き直す為に鍛練を始めた

 それと帰国前にセシリアが立ち寄ったんじゃ

 セシリアが今回来た理由は束さんからISのコアを1つ受け取る為じゃ

 セシリアのIS【ブルー・ティアーズ】を束さんが改造する為に束さんはイギリス政府に対して幾つかの条件を出した…

 その1つが使用されているコアも含めた【ブルー・ティアーズ】の全てをセシリア個人に移譲する代わりに新しいコアを1つ渡すと言うものじゃった

 束さんとの約束通り、あの後イギリス政府からその書類が届き、束さんも交えて精査したが問題は無かった

 まあ、束さん相手に後で難癖付けるような内容の書類は用意せんじゃろうし、書類そのものにも小細工はせんじゃろう…一応調べたしの…

 そう言う訳でセシリアは新しいコアを受け取って帰国したんじゃ…本人は用事が済んだらすぐ戻ると言うておったな…

 次に簪と本音じゃが…2人は一度それぞれの家に帰ると3日もせんうちにワシんところに来おった

 気持ちは分かるがもう少し居てやってもいいと思うんじゃが…あのシスコンの姉…泣いとらんといいんじゃが…

 まあええわい…

 それよりもワシは今、少し…いや、かなり困る事態に巻き込まれとる…

 それは…

 

一夏

「頼む火ノ兄!!!俺を…俺を『弟子』にしてくれ!!!」

 

 何をトチ狂ったのか織斑が弟子にしてくれと言って押し掛けて来おった…

 これには一緒におる簪と本音も驚いておるが、恐らく束さんも驚いておるんじゃろうな…

 と、イカン…逃避しておった…

 

永遠

「織斑…お主、自分が何を言っとるか分かっとるんか?」

 

一夏

「ああ!!弟子になりたいって言ったんだ!!」

 

 う~む…聞き間違いではないか…

 この眼、本気で言っとるな…

 最近感じ取ったこやつの視線はこう言う事じゃったか…

 

永遠

「…何故にワシじゃ?教えを乞うなら姉に頼めば良かろう?」

 

一夏

「千冬姉は仕事が忙しくて無理って断られたんだ…」

 

 ムゥ~…そうか…社会人に頼むのは難しいか…

 

一夏

「それに…」

 

永遠

「ん?」

 

一夏

「俺なりに色々考えた結果なんだ…お前に教わりたいって言うのは…だから頼む!!!」

 

 織斑は頭を下げて頼んで来た

 

永遠

「………駄目じゃ…」

 

 それに対するワシの答えは拒否じゃ

 こちらにも色々と理由があるからのぉ…

 

一夏

「!?」

 

永遠

「ワシの使う剣術…【飛天御剣流】は殺人剣術じゃ…おいそれと人に教えるような技ではない…」

 

一夏

「それは…千冬姉が教えてくれた…」

 

永遠

「ホォ…」

 

 確かにあん人なら【飛天御剣流】が元はどう言う剣か気付いてもおかしくは無いか…

 

永遠

「じゃったら分かるじゃろ?好き好んで人殺しの技を教える奴はおらん…それにな…」

 

一夏

「え?」

 

永遠

「ワシの方も忙しいんじゃよ…休み前にも言うたが普段の畑仕事の他にも今は体を鍛え直しとる最中なんじゃ…」

 

一夏

「それなら俺も一緒に…」

 

永遠

「止めとけ…自分では良く分からんが恐らくワシのやっとるのは生半可なもんでは無いと思うぞ?ISを生身でも倒せるくらいになる修行を急ピッチでやっとるようなもんじゃ。正直、お主に構っとる余裕が無いんじゃよ…」

 

一夏

「………」

 

永遠

「分かったら諦めて帰るんじゃ…いいな?」

 

一夏

「………」

 

永遠

「それから1つ言っておくが…」

 

一夏

「え?」

 

永遠

「そこから先、一歩でもこちらに来れば不法侵入として見るからな?ワシの住んどるこの島がどういう場所かは織斑先生から聞いとるじゃろ?」

 

一夏

「!?」

 

 そう、この島はワシ個人の私有地…ワシの許可の無いもんが入ればそれは不法侵入となるんじゃ

 ワシはそう釘を刺すと簪と本音を連れて家に戻った…

 

一夏

「………」

 

 さて、少し言い過ぎたかもしれんが…コレで織斑がどうするかじゃな…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

「…ねえ永遠?何であんな言い方したの?」

 

本音

「ほえ?どしたのかんちゃん?」

 

 私はさっきのやり取りを見て少し疑問を持っていた

 畑仕事や鍛練が忙しい…だから相手が出来ない…言ってる事は納得出来る…

 でも、それなら…

 

「何であれ以上入るなって言ったの?訓練をする気が無いなら島から追い出せばいいでしょ?」

 

本音

「あっ!?」

 

 コレが私の抱いた疑問…

 この島は永遠の私有地…不法侵入と言うなら織斑一夏はこの島に上陸した時点でそうなってる

 だから永遠が出て行けと言えば彼は出て行くしかない…でも、永遠は『帰れ』とは言ったけど、その後に『これ以上島に入るな』と付け足した…それはつまり、あの場所なら居てもいいって聞いて取れる…

 織斑一夏がその事に気付くかは分からないけど何で永遠があんな言い方をしたのか分からないから聞いたんだけど…

 

永遠

「…のう2人共…確か今日は夕方から『雨』じゃったよな?」

 

簪&本音

「え!?」

 

 すると永遠はいきなり天気の事を言いだした

 確かに予報ではこの後、雨が降る筈だけど…

 

永遠

「あやつは…雨の中でもあの場に留まり続けられるかの?」

 

簪&本音

「!?」

 

 ま、まさか永遠は!?

 

「織斑一夏の…『覚悟』を試す為に!?」

 

永遠

「………さあのぉ?」

 

 永遠はとぼけているけど私は分かった…

 私の言った通りの答えなんだ…

 永遠は織斑一夏の『強くなりたい』って言う気持ちがどれだけのものか試そうとしてるんだ…だからあんな言い方を…

 確かに、『帰れ』と言われて素直に帰る様なら永遠に鍛えて欲しいって言う気持ちもその程度って事になる…

 

永遠

「…ワシも…意地が悪いのぉ…」

 

簪&本音

「…永遠…」

 

 そっか…永遠は本当は訓練を付けてあげようと思ってたんだ

 でも、その前に彼のやる気を試そうとしたんだ…彼に恨まれるのも覚悟の上で…

 

永遠

「…幻滅したか?」

 

 永遠はそう聞くけど…

 

「そんな事無い!!!」///

 

本音

「惚れ直したよ♪」///

 

永遠

「そ、そうかの?」

 

 私は…ううん、私達はそんな事で永遠を嫌いになったりしないよ♪

 セシリアだってきっとそう言う!

 だから織斑一夏…私達の大好きな永遠の気持ち…裏切らないで頑張ってね!

 

 ~簪 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第118話:弟子入り成功!

 ~永遠 Side~

 

 織斑の弟子入りを断ったワシは家に帰ると少し身構えた…

 

「………」

 

 うちには束さんがおるからのぉ…織斑を追い返したと知って色々と言われると思うたんじゃが…

 

「いっくん…明日もいるといいね?」

 

 簪と本音同様、束さんもワシの意図に気づいとった

 ワシが驚いたのを見て小さく笑った

 

「なんだかんだでとーくんとは一緒に暮らしてきたんだもん!何を考えてあんな事言ったのかは大体察しがつくよ♪」

 

永遠

「スマンな…」

 

 やはり…こん人には敵わんのぉ…

 それから日が沈み始めた頃…

 

「降って来たね?」

 

 予報通り雨が降って来た…と言ってもどしゃ降りではなく少し強めの小雨と言った所じゃな…

 

永遠

「織斑…お主の覚悟…見せてみい!!!」

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

一夏

「ブエックションッ!!!」

 

 う~!さみい!!

 真夏とは言え一晩中雨の中にいるのは堪えるな…

 でも、俺は諦めねえぞ!!

 絶対にアイツの弟子にして貰うんだ!!

 雨になんか負けて堪るかよ!!!

 さて、朝飯にするか…こんな事もあろうかと思って数日分の食料は持って来てあるからな!

 俺が荷物から食い物を出そうとした時…

 

永遠

「まだおったか?」

 

一夏

「!?」

 

 火ノ兄がやって来た

 

永遠

「中々頑張るのぉ?」

 

一夏

「当り前だ!!俺だって軽い気持ちでココに来たんじゃない!!!」

 

 俺が自分の覚悟を言うと…

 

永遠

「さよか…」

 

 パサッ…

 

一夏

「…え?」

 

 火ノ兄が俺にタオルをかぶせてくれた…

 

永遠

「合格じゃ…主の覚悟、確かに見せて貰ったぞい。」

 

一夏

「え?」

 

 今、何て言ったんだ?

 合格?

 それって…つまり…

 

永遠

「先ずは風呂に入れ、その後は飯じゃな…訓練をするのはそれからじゃ。」

 

一夏

「ヤ、ヤッタアアアアアアアァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

 俺の弟子入りを許してくれたんだ!!

 

一夏

「よろしくお願いします『師匠』!!!」

 

永遠

「ドアホ!!師匠と呼ぶ出ない!!」

 

一夏

「え?でも…」

 

 修行を付けて貰うんだから師匠だろ?

 

永遠

「同い年の奴にそげな呼ばれ方されとう無いわい!!ほれ!早よ行くぞ!!」

 

 師匠はそう言って歩き出した

 

一夏

「ああ、待ってくれ!!!」

 

 俺は慌てて荷物を背負うと後を追いかけて行った

 

 ………

 ……

 …

 

 師匠の家にやってきた俺はいきなり驚いた

 何故なら…

 

「いらっしゃ~い♪」

 

 束さんがいたからだ

 確かに束さんがココに住んでたって千冬姉から聞いたけど居場所がバレたから出て行ったみたいな事を言ってたのに…本当はまだいたんだ!?

 その後、この島に温泉があるからそこに入って来いって言われた時は驚いた…まさか温泉があるなんて思わなかったからな…

 それで俺は師匠に案内されてワクワクしながら温泉に向かったんだけど…

 何とその途中で熊と出くわした!!!

 何で熊まで居るんだよこの島!?

 そう思いつつも俺は咄嗟に『死んだ振り』をしてやる過ごそうとした…でも熊はそんな俺に目もくれず温泉に入って行った

 え?熊も温泉に入るの?

 それを見て呆然とする俺に師匠が島の動物達は大人しいから大丈夫と言われた

 だから攻撃するなと注意をされて俺も温泉に入ったんだ

 一緒に入ってる熊は怖いけど…温泉…凄い気持ちよかった…

 ただ…

 

 ………

 ……

 …

 

全員

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

 

 温泉から戻ると師匠達が俺の『死んだ振り』をした映像を見て大笑いしていた

 

一夏

「だあああああぁぁぁぁぁっ!!いつの間に撮ったんだあああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 ~一夏 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第119話:幸先の悪い始まり!?

 

 ~永遠 Side~

 

 あ~、面白かった…

 こやつが行き成り死んだフリなんぞした時は必死に笑いを堪えて撮影した甲斐があったわい!

 まあ当の本人は…

 

一夏

「うあ~…」///

 

 恥ずかしさから顔を真っ赤にして悶えとるがな…

 後でセシリアや織斑先生、鈴にも見せてやらねば!!

 さて、織斑をからかうのもこんくらいにして…

 

永遠

「何時までやっとるんじゃ!飯にすっぞ!!」

 

 ガン!

 

一夏

「イテッ!?」

 

 軽く小突いて正気に戻した

 その後、織斑も加えて朝食を始めた

 その最中…

 

「そう言えばいっくん?ちーちゃんにココに行くって言ってあるの?」

 

一夏

「え?」

 

 確かにそうじゃな…

 織斑先生が保護者役らしいし、長期の外泊ともなれば言っておく必要があるのぉ…

 

一夏

「え~っと…一応特訓して来るって『書置き』を残して出て来たんだけど…」

 

全員

「は?」

 

 今、なんつった?

 

「…それだけ?」

 

クロエ

「何処に行くとか書いてないんですか?」

 

一夏

「…え~っと…書いて…無いな…」

 

本音

「どのくらい家を空けるとかは?」

 

一夏

「…それも…書いてない…」

 

全員

「………」

 

 ワシ等は全員言葉を失った

 そして…

 

永遠

「こ、この大馬鹿もんがあああああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

一夏

「ヒィィィィィッ!!」

 

 ワシは怒鳴り声をあげた

 

永遠

「このドアホ!!それでは『家出』の書置きと同じではないか!!!」

 

一夏

「い、家出!?俺はそんなつもり…」

 

永遠

「黙れボケナス!!あんな書置き残しといて何ぬかしとんじゃ!!今頃織斑先生が…」

 

 プルルルルル…

 

全員

「!?」

 

 『心配しとる』…そう言おうとした時、束さんの携帯が鳴りおった

 あ~…コレはまず間違いなく…

 

「も、もしもし?」

 

 全員の視線が集まる中、束さんが電話に出た…

 すると…

 

千冬

『束!!一夏が何処に行ったか調べてくれ!!!』

 

 スピーカーにもしとらんのに織斑先生の叫び声が聞こえた

 

「あ、あ~…ちーちゃん落ち着いて…いっくんなら…その…ココに居るよ?」

 

 それから束さんはこのアホが家にいる理由を説明した

 そして…

 

「とーくん…ちーちゃんが変わってって…」

 

 織斑ではなくワシに携帯を渡してきた

 

永遠

「…はい…」

 

千冬

『スマン火ノ兄!!愚弟が迷惑をかけてしまった!!』

 

 愚弟って…まあ言いたくもなるか…

 それから少し話した後、ワシは携帯を切った

 そして織斑を見ると…

 

一夏

「………」

 

 ウム!青い顔して固まっとるな!

 

永遠

「織斑、主の姉からの伝言じゃ。『時間が出来たらココに来るから覚悟していろ!!』…だそうじゃ。」

 

一夏

「………」

 

 顔色が青を通り越して真っ白になったのぉ…

 

永遠

「それからココで特訓するのはいいと…って…」

 

一夏

「………」

 

 もはや聞こえとらんな…

 魂が抜けて灰になっとる…

 ほんにこいつは抜けとるのぉ…

 自業自得じゃ…

 

 ~永遠 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第120話:修行開始!永遠の薪割り特訓!!

 ~簪 Side~

 

永遠

「では始めるかのぉ…」

 

一夏

「………はい…」

 

 朝食を済ませた私達は早速訓練を始める事にした

 でも、魂の戻った織斑一夏の顔色は優れない…それも当然!あんな書置き残して織斑先生を心配させたんだからこうなったは必然と言ってもいい!

 今迄の彼を見ているとなんだか、将来は『天然ボケの芸人』か何かになりそうな気がして来た

 まあ、それはいいとして今は織斑先生が来るまで頑張って特訓する事だね…特訓の成果が認められればお説教の時間が少しは減るかもしれないからね?

 

永遠

「もう一度言うとくがワシは畑仕事と自分の修行がある。ゆえにお主に付きっきりで訓練は出来ん。それは分かるな?」

 

一夏

「…はい…分かってます…」

 

 …いい加減立ち直った方がいいよ?

 でないと…

 

永遠

「…シャキッとせんか!!それ以上腑抜けた面しとるなら追い出すぞ!!!」

 

一夏

「ス、スイマセン!!!」

 

 永遠がキレるんだよね…

 

永遠

「全く!!姉が来るまでに腕を磨いて驚かせてやろうとは思わんのか己は!!!」

 

 永遠も同じ事考えてたんだ…嬉しいな…以心伝心みたいで…///

 

一夏

「そ、そうか!?確かにその通りだな!!お願いします師匠!!!」

 

永遠

「師匠呼びは止めい!!それで特訓の内容じゃが…先ずは『薪割り』をせい!!」

 

一夏

「…え?…薪…割り?…薪割りってあの斧で木を割る…アレの事か?」

 

永遠

「そうじゃ。薪割り用の木と斧はそこに用意してあるからアレを使え。」

 

 永遠がそう言って指差した所には山積みにされた丸太が置いてあった

 でも、薪割りか~…

 

一夏

「確かに薪割りって言ったら修行の定番だよな!!分かったぜ!!」

 

 訓練内容を聞いて頷いてるけど…フフッ…あの永遠がそんな定番なだけの訓練をさせる訳無いよ!

 

永遠

「但し!()()()()()()()()!!」

 

一夏

「…え?…【白式】で?」

 

永遠

「うむ!まあ物は試しじゃ。まずはワシが実演するとしよう。」

 

 そう言うと永遠は【ドットブラスライザー】を展開すると薪用に切り出しておいた木を1本、台の上に垂直に立てた

 次に斧を持つと軽く振って斧の刃を木に少し食い込ませた

 そして、最後に斧を振り上げると食い込んだ木ごと持ち上げてそのまま振り下ろした

 

 カンッ!

 

 すると、木は綺麗に真っ二つに割れた

 

永遠

「今の手順をISでやってみい。念を押すが木は2回目に切るんじゃぞ。それとISは部分展開ではなく全展開でやるんじゃ。…ではやってみい!」

 

一夏

「オ、オス!!」

 

 織斑一夏は早速【白式】を展開すると永遠から斧を受け取った

 そして、永遠は畑仕事に行くと言ってISを解除して行ってしまった

 私も彼の邪魔をしない様に本音と一緒にこの場を離れた…私達も自分達の訓練があるからね…

 それから織斑一夏…言っておくけどこの薪割り特訓…私もやった事があるんだけど、これって簡単そうに見えて…すっごく…難しいんだよ?

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 薪割りか…修行の定番の一つだな!!

 まっ!薪割りくらいすぐに終わらせて次の修行に移ろう!!

 

一夏

「え~っと…先ずは木を立ててっと…」

 

 俺は余裕の気持ちで木を立てようとした

 でも…

 

 コト…

 

一夏

「アレ?」

 

 コト…

 

一夏

「グッ…」

 

 コト…

 

一夏

「グヌヌッ…」

 

 コト…

 

一夏

「ダァァァッ!!」

 

 コト…

 

 ぜ、全然立たない!!

 何でだぁぁぁぁぁっ!!!

 

 コト…

 

 あ!また!?

 

一夏

「こ、今度こそ~…」

 

 そ~っと…そ~っと…

 

 ピタッ!

 

一夏

「…やっ…やった…立ったぞ!!」

 

 ISで木を立てるだけなのに、それがこんなに難しいなんて…

 それで次は…え~っと…斧を木に食い込ませるんだよな…

 木を立てさえすれば後は簡単簡単♪

 

一夏

「よっ!」

 

 カンッ!

 

一夏

「………アレ?」

 

 斧を食い込ませるだけの筈なのに…何で真っ二つに…そんなに力を入れて無いんだけど…

 と、とにかくもう一度だ!!

 2回目に割れって言われたからこれは失敗だ!

 あ!また木を立てる所からか…

 

 ………

 ……

 …

 

永遠

「織斑~…昼飯じゃぞ~?」

 

一夏

「え!?」

 

 もうそんな時間!?

 

永遠

「どうじゃ~?何本切れた~?」

 

一夏

「そ、それがその…0…です…」

 

 始めてからもう2、3時間は経った…でも俺は師匠に言われた手順で1本も切れていなかった…

 

永遠

「さよか…どうじゃ?難しいじゃろ?」

 

一夏

「ハ、ハイ!…難しいです…」

 

 本当に難しい…師匠は簡単にやってたから楽勝だと思ってたけど全然違った

 ISを使った薪割りがこんなに難易度が高いなんて思ってもみなかった…

 でも、この修行って…

 

一夏

「あの師匠…薪割りが難しいのは分かったんですけど…コレってどんな意味があるんですか?」

 

永遠

「師匠は止めいと…まあ今はいいか…薪割りの意味じゃったな?簡単に言えば『精密操作』と『力加減』の訓練じゃよ。」

 

一夏

「精密操作と力加減…」

 

永遠

「そうじゃ、まず精密操作言うんは指先の細かな動きの事を言う。コレを鍛えるのが木を立てる作業に繋がる。当然の事じゃが薪用に切り出した木は全て形が違うから一つ一つ立てる度に置き方が変わる。つまりは毎回指先の操作が変わるんじゃ。」

 

一夏

「な、なるほど!?」

 

永遠

「次に斧で木を切る作業が力加減の訓練になる。2回に分ける訳じゃから力の入れ具合を変えねばならんじゃろ?それに何でもかんでも毎回全力を出せばいい訳ではなかろぉ?そげな事しとったら無駄に体力を使うだけじゃい。」

 

一夏

「………」

 

 …その通りだ…

 この薪割り…ちゃんと精密操作と力加減の訓練になってる…

 

永遠

「それにの…この薪割りじゃが…ワシが思うにお主に一番必要な訓練じゃと考えとる。」

 

一夏

「え?俺に?」

 

永遠

「うむ…その【白式】の【零落白夜】の事を考えてみい、そいつは加減を間違えると本当に人を斬ってしまう代物じゃ。それを考えるとお主には刀を振る力加減と刀をより細かく使う為の精密操作が必要となろう。そう考えるとこの修行はお主に丁度いいんじゃよ。」

 

一夏

「………確…かに…」

 

 加減を間違えると本当に斬る…言われてみるとその通りだ…

 この修行は…俺にこそ必要な修行だ!!!

 

永遠

「どうやら分かったようじゃな?」

 

一夏

「ハイ!!!」

 

永遠

「よか!じゃがまだ初日じゃ、行き成り出来るようになれとは言わん。無理せず少しずつ体に覚えさせていきんさい。」

 

一夏

「師匠…ハイ!!!」

 

永遠

「じゃから師匠は止めいと言うとるじゃろうが!!全く…ホレ!飯じゃ!皆も待っとるし早よ戻るぞ!!」

 

一夏

「あ、ハイ!!」

 

 よし!!飯を食ったら早速続きだ!!

 休みが終わるまでに薪割りを完璧に出来るようになるぞ!!!

 

 ~一夏 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第121話:永遠の危機!?忍び寄る(ホモ)の手!?

 ~永遠 Side~

 

永遠

「んじゃ、皆は風呂に入ってきんさい。ワシは晩飯作っとくからの。」

 

女性陣

「ハ~イ♪」

 

 昼飯からあっと言う間に夜になり、夕食前に家におる女性陣は温泉に入りに行った

 その間にワシは夕食の用意を済ませた後、家にある風呂を沸かした

 うちの風呂は薪で沸かす奴じゃから手間がかかるんじゃよな…

 まあワシは薪で沸かした風呂が好きじゃから気にせんし…今は修行がてら織斑に薪割りさせ取るから少し楽になっとるからの…

 その織斑じゃが慣れん薪割りで戻ってすぐにくたばってしまっておる…ちなみにノルマは結局0だそうじゃ

 そげな事を考えながら準備を済ませたんじゃ…

 

 ………

 ……

 …

 

 その後、夕食を済ませるとワシは先に沸かしておいた風呂にゆっくり浸かっておった…

 じゃが…

 

一夏

「師匠!!お背中流します!!」

 

永遠

「ンゲッ!?」

 

 狭い風呂場に織斑の馬鹿が入ってきおった!?

 コイツは…

 

永遠

「出て行け!!!」

 

 ガンッ!

 

一夏

「アダッ!?」

 

 ワシは咄嗟に風呂桶を馬鹿に投げつけた

 風呂桶が頭に命中した馬鹿は目を回して気絶しておった

 すると…

 

「永遠!?どうしたの!!…キャッ!!」///

 

 騒ぎを聞きつけて簪達がやって来た

 ワシは咄嗟に風呂釜に入ったが気絶しとる馬鹿の姿を見て全員顔を背けた

 そりゃそうじゃろ…何せこの馬鹿…素っ裸じゃからな…

 こやつ、ワシの恋人に汚いもん見せおって!!後でぶん殴っちゃるわい!!

 一先ず、簪達には風呂場から出て貰ってワシは風呂から上がると未だに伸びとる馬鹿を取り合えず簀巻きにしておいた

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

永遠

「………という訳でコイツが行き成り入って来たんじゃよ…」

 

 お風呂から上がった永遠に事情を聞いた私達はそのまま簀巻きにされて転がされている織斑一夏を見た

 まさか永遠と一緒にお風呂に入ろうとしたなんて…

 なんて羨ましい!!私だってそこまでしてないのに!!!

 って違う違う!いや、違わないけど…いつか私も永遠と…

 

本音

「かんちゃん?」

 

「はっ!?」

 

 いけない!現実に戻らないと!!

 

本音

「かんちゃ~ん…何考えてたの~?」

 

「ギクッ!な、何も考えて無いよ!?」

 

本音

「ホントに~?」

 

「うぐぐっ…」

 

 ま、まさか…

 

本音

「かんちゃんの…ス・ケ・ベ~♪」

 

「なぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 やっぱりバレてたぁぁぁぁぁっ!!!

 

永遠

「…何を騒いどんのじゃ?」

 

束&クロエ

「さぁ~?」

 

 あ!いけない!!

 

「本音!その話はまた後にして!!」

 

本音

「ホイホ~イ♪誤魔化したね~?」

 

「誤魔化してない!!!」

 

 この事は後でじっくり話すとして…今はこの『変態男』の事!!!

 取り合えず、この後目を覚ました織斑一夏に皆でお説教しておいた

 一応初犯だし、未遂って事でこの程度に済ませただけど…

 

 ………

 ……

 …

 

一夏

「師匠!お背中流します!!」

 

永遠

「いらん!!!」

 

 次の日、また同じ事をしていた…

 その次の日も…

 

一夏

「師匠!お背中…」

 

永遠

「失せい!!!」

 

 そのまた次の日も…

 

一夏

「師匠!」

 

永遠

「寄るな変態!!!」

 

 私達がいくら注意してもやめなかった

 だから私達は永遠がお風呂に入る前に織斑一夏を気絶させて簀巻きにして外の木に吊るす事にした

 でも、このままじゃ何も解決しない…

 何とかしないと…

 取り合えずイギリスに帰ったセシリアも交えて一度相談しよう!!!

 

 ~簪 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第122話:永遠を守れ!織斑一夏(ホモ)対策会議!?

 

 ~束 Side~

 

 いっくんを簀巻きにするようにしてから更に何日か経った…

 その間もいっくんは…

 

一夏

「俺はただ師匠の背中を流したいだけだ!!!」

 

 …と言ってとーくんのお風呂に乱入するのを止めようとしないんだよ…あれだけ嫌がってるのに…

 こりゃ、とーくんの言う通りいっくんって本当にホモかも知れないね…束さんでもそう思えて来たよ…

 いっくんの趣味をとやかく言う気は無いけど流石にホモって言うのはね…しかも相手がとーくんともなると束さんも黙って見ている訳には…

 と言うか…

 

クロエ

「…簪様や本音様ならともかく…これ以上兄様を不快にさせると言うなら…ケケケッ!!」

 

 クーちゃんがヤバい事になりそうなんだよ…

 

クロエ

「…こうなったら…『アレ』で…」

 

「えっ!?ちょっと待ってクーちゃん!!『アレ』は駄目!!使ったらいっくん死んじゃう!!完全にオーバーキルだから!!!」

 

クロエ

「ケケケケケケケッ!!!」

 

 『アレ』使ったら下手したら骨一つ残らないよ!?

 て言うかクーちゃん何であんな物造ったの!?

 好きなの造っていいって言ったけどアレはやり過ぎだよ!?

 

クロエ

「ゲッゲッゲッゲッゲッ!!!」

 

 マズイ!?本気でヤバくなってきた!?

 笑い方が更に怖くなってる!?

 このままじゃ本気でいっくんを消しかねない!?

 こうなったら!!

 

「ゴメンクーちゃん!!」

 

 コキッ!

 

クロエ

「うっ!?」

 

 ふ~…締め落として意識を飛ばしたけど…ホントどうしよ~…

 

「一番いい方法は…やっぱりちーちゃんを呼ぶしか無いのかな~…」

 

 時間が出来たら来るって言ってたけどそんな時間も無さそうだな…

 このままじゃとーくんの貞操が本気で危ないよ…

 

「よし!!ちーちゃんに事情を話しとこう!!」

 

 そうと決まったら早速連絡だよ!!

 

 ~束 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

「………って事が起きてる…」

 

セシリア

『………』

 

 私と本音は織斑一夏の事をセシリアに話した

 すると…

 

セシリア

『…イギリスから日本まで【ハルファス】のスピードなら…』

 

 なんか小声で呟きだした…

 って!?もしかしてこっちに来る気!?

 

「落ち着いてセシリア!!」

 

本音

「そうだよ!!そっちだって忙しいのに!?」

 

 セシリアは今、【ハルファス・ベーゼ】や新しいコア、『イグニッションプラン』の事で大変な状況になってる

 そんな時にこっちに戻って来たら下手をすれば外交問題になりかねない!?

 

セシリア

『こちらの事より永遠さんです!!わたくし達の恋人の危機に大人しくしていられる訳無いでしょう!!!』

 

簪&本音

「うっ!?」

 

 確かにその通り…だから連絡したんだけど…今の状況でセシリアが国を抜けるのはマズい!!

 

セシリア

『そう言う訳ですので今からそちらに向かいます!!織斑一夏を蜂の巣にして鮫の餌にしてやりますわ!!!』

 

 あ、これ本気だ…本気で殺る気だ…

 

「待ってセシリア!!気持ちは良く分かるけど落ち着いて!!」

 

セシリア

『………では何か手立てがあるのですか?』

 

「う、うん…一応考えてる事はあるよ。今回連絡したのもそれをやっていいのか聞くためだから…」

 

 よかった…何とか話を聞く気になってくれた…

 後は本音と考えたあの方法をセシリアが許してくれるかだけ…

 

セシリア

『それでその方法とは?』

 

本音

「うん!それはね~………」

 

 私達は考えた作戦をセシリアに話した

 

「………って言う方法なんだけど…」

 

セシリア

『………』

 

 私達の作戦を聞いてセシリアは黙ったままだった

 暫くすると…

 

セシリア

『…確かにそれならあのホモも手出しが出来ませんわね…分かりました…それでお願いします。』

 

 良かった…セシリアは許可をくれた…

 って言うか織斑一夏の呼び方が『ホモ』になってる…

 まあ、それは本当の事だから別にいいとして…

 

「…本当にいいの?」

 

セシリア

『よくないですわ!ですがわたくしは同じ殿方を愛する者としてお二人を信じています。ですからお二人が抜け駆けするつもりが無いと信じております!!』

 

「セシリア…」

 

本音

「セッシー…」

 

 そこまで言われたら抜け駆けなんて出来ないよ…

 

セシリア

『永遠さんの事…守って下さいね?』

 

簪&本音

「うん!!!」

 

 大丈夫!!永遠は私達が守る!!!

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「………」

 

『…って事だからちーちゃん!そっちも忙しいだろうけど早く来て!!本気でシャレにならなくなるんだよ!!!』

 

千冬

「…分かった…任せろ…」

 

 ピッ!

 

 私はそう答えて電話を切った…

 

千冬

「い~ち~か~~~~~!!!!!」

 

 待っていろ!!!

 その性癖!私が叩き直してやるからな!!!

 

 ~千冬 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第123話:第3回織斑家家族会議

 ~永遠 Side~

 

 あ~…日が沈む~…

 晩飯の用意をせんといかんな~…

 風呂にも入らにゃならんの~…

 

 ………

 ……

 …

 

 また懲りずに来るんじゃろうな~…

 

永遠

「はぁ~…」

 

 ワシは最近この時間になるととても憂鬱になる…

 その理由はあの『ホモ』じゃ…

 本人は違うと言うとるがあやつは絶対ホモじゃ!!

 なんせあのホモ、ワシ等がいくら注意しても風呂場に乱入しようとしよる!!

 このままじゃとワシの貞操も何時まで守れるか不安じゃな~…

 

永遠

「はぁ~…」

 

 溜め息が何度も出るの~…

 

 ………

 ……

 …

 

 そして今日も晩飯を食い終ると…

 

一夏

「師匠!!今日こそお背中を流させてください!!」

 

 懲りずにホモが同じ事を言ってきおった

 

永遠

「じゃからいらんと………あ!?」

 

 ワシは振り返りながら拒絶したんじゃが振り返るとホモの後ろに見知った人間がおった

 

一夏

「え?」

 

 織斑もワシの反応に気付いて後ろを振り返ったが、その瞬間固まりおった

 何せそこにおったのは…

 

一夏

「ち、千冬姉!?」

 

千冬

「………」

 

 ホモの姉…織斑先生じゃった!!

 腕を組んで仁王立ちしながら織斑を睨みつける織斑先生の姿がワシには女神の様に見えてしもうた…傍から見れば女神ではなく鬼に見えるじゃろうがの…

 

千冬

「…一夏…貴様…今、何をしようとした?」

 

一夏

「い、いや、俺はただ師匠の背中を流そうと…」

 

千冬

「ほぉ?火ノ兄は嫌がっているようだが?」

 

一夏

「そ、それは…その…」

 

千冬

「以前、デュノアの事で火ノ兄に説教されたのをもう忘れたのか?肌を見られたくない奴もいると言われたよな?」

 

一夏

「あ…うっ…」

 

 う~む…正論じゃからホモは何も言い返せんのぉ…頑張ってくれ…

 

千冬

「火ノ兄、この馬鹿は私が見ておくから風呂に入って来い。」

 

永遠

「スマンのぉ…」

 

 ワシは織斑先生に礼を言うと風呂場に向かおうとした

 じゃが…

 

 ガシガシッ!!

 

永遠

「…へ?」

 

 ワシの両腕を簪と本音がガッシリと掴んでおった

 

永遠

「…お二方…どうかなさいましたかのぉ?」

 

 何か知らんが嫌な予感がする…

 なんせこの二人…さっきからずっとニコニコしとって逆に怖い…

 

「ンフフ~♪大丈夫だよ♪今日から永遠は…」

 

本音

「私達が背中を流してあげるから~♪」

 

全員

「………へ?」

 

 何を言うとんのじゃ?

 

千冬

「オイ!更識!布仏!いくら何でもそれは教師として見過ごせんぞ!!」

 

 ウム!そうじゃよな!!

 

本音

「大丈夫です!!一緒に入ると言っても『水着着用』です!!」

 

「ですからやましい事は起きません!!!」

 

永遠

「いや、ちょい待ち…」

 

 水着着ればいいという訳では…

 

千冬

「ふむ…他人の家で口煩くする訳にもいかんし…それなら…」

 

永遠

「オイコラ!!!」

 

千冬

「そうだな…ならお前達の着る水着は『IS学園の指定水着』でやれ!!それが私の出来る最大限の譲歩だ!!」

 

「分かりました!!」

 

永遠

「え!?まさか…持って来とるんか!?」

 

本音

「そだよ~♪」

 

永遠

「ちょっと待てい!!IS学園の指定水着って言ったら…」

 

本音

「これだよ~♪」

 

 やっぱり『旧スク水』じゃった!!!

 何でそんなもん持って来とるんじゃ!!!

 

千冬

「随分用意がいいな…それなら問題無い。」

 

永遠

「待たんかい!!!」

 

 納得するな!!もちっと粘らんかい!!!

 

「さぁ永遠♪」

 

本音

「行こ~♪」

 

永遠

「待たんかお主等!!そげな事セシリアに知られたら…」

 

 何が起こるか分からん!!

 そう思っておったのに…

 

「大丈夫!!!」

 

本音

「セッシーには話を通してあるよ~♪」

 

永遠

「何ですと!?」

 

 既にそこまで手を回しておったのか!?

 しかし、これでは…

 

「という訳でお風呂入ろ♪」///

 

本音

「3人だから温泉の方だよ~♪」///

 

 逃げ道を塞がれたワシはそのまま2人に引きずられて行ってしもうた…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「…さて一夏…コレで火ノ兄の背を流す必要は無くなったな?」

 

一夏

「…はい…」

 

 取り合えずコレで火ノ兄は大丈夫だ…

 まさかアイツ等がこんな手を撃って来るとは思わなかったが考えてもみれば恋人同志なら問題は無いな

 となると、後はこの『ホモの弟』だな…

 

千冬

「束…コイツと二人で話せる場所はあるか?」

 

「それなら離れの部屋があるよ。いっくんはそこで寝泊まりしてるからそこを使うといいよ。」

 

千冬

「分かった…一夏、そこに案内しろ!!!」

 

一夏

「…はい…」

 

 私は一夏に案内され、その離れの部屋に向かった

 

 ………

 ……

 …

 

千冬

「まさか3回もする事になるとはな…『第三回家族会議』を始めるぞ!!!」

 

一夏

「………」

 

 離れに着いた私は早速家族会議を始めた

 一夏は正座して私の前にいる…

 

千冬

「一夏………」

 

一夏

「………はい…」

 

千冬

「いい加減認めろおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」

 

一夏

「認めてたまるかああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

 私達の家族会議は休みを挟んで丸一日続いた………眠い…

 

 ~千冬 Side out~

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第124話:一夏の今後

 ~千冬 Side~

 

 私は丸一日かけてホモとなっていた一夏にタップリ説教した後、コイツがココでどんな訓練をしているのかを見せて貰っていた

 

一夏

「そ~っと…そ~っと………あっ!?」

 

 私の前にはISを纏った一夏が斧を片手に薪を立てようと悪戦苦闘していた

 ISを使った薪割りか…火ノ兄も面白い事を考えるな

 確かにこの訓練は色々と理に適っているように見える

 後で私もやってみるか…束なら予備のISの1つや2つ持ってるだろうからそれを貸して貰えばいいな

 

一夏

「…良し!!立ったぞ…今度こそ………ああっ!?」

 

 むっ!また1回目で割ったか

 まだまだ力の入れ過ぎだな…う~む…ココはアドバイスする方がいいのかもしれんが自分で一度やった後の方がいいか………アドバイスをして失敗したらいくら私でも恥ずかしいからな…

 まあ、それはそれとしてコイツが修行して来ると書置きを残して姿をくらませた時は焦ったが真面目にやっているようで何よりだ

 本物のホモになっていたのはシャレにならんがな…こっちは本気で恥ずかしい…

 姉として何とかしなければ…

 

 ………

 ……

 …

 

千冬

「束、少しいいか?」

 

「およ?どったのちーちゃん?」

 

 私は一通り一夏の訓練を見た後、束が勝手に造ったと言う地下の研究室に来ていた

 そこには開発中らしきISが幾つか並んでいた

 

千冬

「ああ、お前に聞きたい事があってな。」

 

「聞きたい事?ちーちゃんの質問ならなんでも答えてあげるよ♪って言いたいけど内容にもよるね。」

 

 コイツ本当に変わったな…

 以前のコイツなら私の言う事ならどんな内容でも聞いてくれていたんだが…それがココまで変わるとはな…

 フッ…幼馴染として嬉しい限りだよ

 

千冬

「それでいい、聞きたい事と言うのは一夏についてだ。」

 

「いっくん?」

 

千冬

「ああ、お前から見て今のアイツはどう見える?」

 

「そうだね~…『性癖』に関してはかなりヤバいとしか言えないけどそれ以外は頑張ってるね。」

 

千冬

「そ、そうか…そうだよな~…」

 

 やはり束もあれは危険と見ていたか…

 

「申し訳ないけどアレでホモじゃないって言われても信じられないよ…百人に聞いたら百人とも彼はホモだって答える位だよ。」

 

千冬

「だよな…百人どころか千人に聞いても同じだろうな…」

 

 下手したら一万人に聞いても同じかも…

 

「それでそんなホモないっくんがどうかしたの?もしかしてホモを治す方法を聞きに来たの?」

 

千冬

「あるのか?」

 

「あるって言えばあるけど…おすすめは出来ないよ?」

 

千冬

「お前がそう言うって事は相当危ないな…ちなみにどんな方法だ?」

 

「薬で人格を書き換え「出来るかあああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」…だからおすすめしないって言ったじゃん…」

 

 薬物投与なんて方法出来るか!?

 いくら何でも人道に反するだろうが!!

 

「まあ、あれ以上酷くなるようなら本気で薬物投与も考えてたんだけどね…いっくんがアレなせいで最近はクーちゃんの方もヤバくなってたんだよ…あのまま放置するといっくんが『消されかねないから』…」

 

千冬

「………」

 

 け、消す!?クロニクルの奴そこまで危険な状態になっていたのか!?

 束に言われて急いで来て良かった………ん?

 

千冬

「って違う違う!!ホモを治す事じゃない!!!」

 

 イカンイカン!!脱線していた!!

 いや、そっちも問題だが今回は違う!!

 

「それじゃあ何を聞きたいの?」

 

千冬

「うむ、単刀直入に聞くぞ。一夏の第五世代を造る事を考えているか?」

 

 コレが本題だ

 束の事だから第五世代を用意しかねないからな…

 今のコイツなら無条件で用意するなんて事はしないだろうがアイツの成長次第では可能性があるから一度確認しておこうと思った

 

「…考えてはいるよ。…って言うか設計自体はもう出来てるよ。」

 

千冬

「何だと!?」

 

 既にそこまで進めていたのか!?

 

「こんな感じの機体を考えてるんだ。」

 

 そう言って束はモニターに新型のISの設計データを表示した

 それを見て…

 

千冬

「…凄まじいな…二次移行(セカンドシフト)した今の【白式・雪羅】の何倍も高い性能だ…」

 

 その性能の高さに目を見開いた

 

「でも今の時点ではいっくんにコレを扱う事は出来ないね。渡すにしても今後の成長次第になるよ。」

 

千冬

「そうだな。」

 

 これほどのISだ…オルコットの様にISの方が使い手に着いて行かなくなるなんて事にでもならない限り簡単には渡せんな…

 まあオルコットほどとは言わんがせめて鈴や更識妹くらいの実力をつけて貰わないと無理だろうな…

 

「セーちゃんほどとは言わないけど、かんちゃんやリーちゃんくらいの実力は必要だね。」

 

 束も同じ考えか…

 

「それととーくんもいっくんの今後の成長次第なら第五世代にした方がいいかもしれないって言ってたから束さんもいっくんには期待してるんだよ。」

 

 火ノ兄がそんな事を…

 あの馬鹿にいつ襲われるか分からない中、気にかけてくれていたのか…アイツには本当に苦労と迷惑をかけるな…

 今度何か埋め合わせをしよう!!

 

千冬

「ならその辺りの判断はお前に任せる。」

 

「OK♪任せといて♪」

 

 取り合えずISに関しては束の判断に任せればいいな

 だが、性癖に関しては私が何とかせねばならんな…

 そう思った時…

 

 Prrrrrrr…

 

 携帯の着信音が鳴った

 私のではない…と言う事は束のか…って…

 

「………」

 

 いつの間にか束の表情が消えていた

 そのまま携帯の着信画面を一瞥すると部屋の隅に放り投げてしまった

 

千冬

「オ、オイ!?」

 

 束が何故そんな事をしたのか分からずにいると携帯が留守電に切り替わった

 そこから聞こえたのは…

 

『姉さん!!!早く私のISを造って下さい!!!分かりましたね!!!』

 

 Pi!

 

 学園で奉仕活動をしている箒だった

 箒は言いたい事だけ言うとすぐに電話を切った

 だが、この時間はまだ活動時間の筈…電話をかける様な時間は無い筈だ…アイツまさかサボってるのか!?

 後で問い質す必要があるな…

 だが、今はそれよりも…

 

「………」

 

 束の表情が消えたのはコレのせいだったか

 そう言えば着拒するとか言ってたがまさか本当に拒否していたとは…

 だが、束のこの行動に私も納得した

 今のアイツは自分の願望しか口にしない…こっちの言葉を聞かない…聞いても自分の望んだ言葉しか聞かない…そんな奴は相手にするだけ時間の無駄にしかならない

 それにして箒の奴…まだ分かって無いのか…自分にISを持つ資格が無い事に…

 

「さ~て…新しいISの研究を続けよ~っと♪」

 

千冬

「………」

 

 暫くして束は何事もなかったように動き出した

 箒からの連絡など始めからなかったかのように…

 そんな束に私は何も言う気にならなかった…

 だが、戻ったらあの馬鹿は説教確定だ!!!

 

 ~千冬 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第125話:紅椿の利用方法

 

 ~束 Side~

 

「う~ん…」

 

 私はある事に悩んでいた

 それは目の前にあるIS…【紅椿】についてだ…

 箒ちゃんにいらないって言われて突き返されたコレをどうしようか悩んでいた

 解体ならすぐに出来る…コアは既に取り外してあるし第5世代の開発をしている束さんにはこれを残しておく理由が無い…

 それでもこの子は束さんが造ったISには違いは無い

 だから簡単には廃棄する事が出来なくて困ってるんだよね~…

 

「せめてこの子が派手にぶっ壊れてたり、ボロボロになるまで使われてたら気兼ねせずに済むんだけど…」

 

 生憎とこの子はまだ一度しか出撃してない…それも大した戦闘をしてないから新品そのものなんだよね…

 

「何かいい使い道ないかな~…」

 

 このままじゃ研究室を圧迫するだけの粗大ゴミになっちゃうよ…

 【紅椿】の利用方法を考えていると…

 

「失礼します。束さん、少し見て貰いたい物があるんですが…」

 

 かんちゃんがやって来た

 

「あ、お取込み中でしたか?」

 

「ううん、気にしないで♪」

 

 これ以上考えてもいい案は思い付かないだろうし、丁度いいから気分転換しよ~っと!

 それでかんちゃんが独自に組んだOSを見ながらアドバイスをしていった

 そんな時にふと思った…

 

「かんちゃん…」

 

「はい?」

 

「第5世代…欲しい?」

 

「え…」

 

 束さんの行き成りの質問に目を見開いた

 すると…

 

「…手に入るなら…欲しいです…でも…私には第5世代を手にする理由がありません…」

 

「あ…」

 

 かんちゃんは正直に答えてくれた

 でも、そっか…かんちゃんはセーちゃんの様にISが着いて行かなくなった訳じゃない…かと言ってのんちゃんみたいに1号機のデータ取りの為って理由も無いんだ…

 何の理由も無く、ただかんちゃんを気に入ったから上げるなんて、箒ちゃんに言った事を自分で否定する事になっちゃう…

 それにかんちゃんは仮に今の理由で渡そうとしても絶対に受け取らない…

 ISを皆と協力して作り上げたかんちゃんだからこそ受け取らないんだ…

 

「…そうだね…ゴメン…変な事聞いて…」

 

「いえ、気にしてません。」

 

 でも束さんから見てかんちゃんと…後はリーちゃんもだね…2人なら第5世代を渡しても問題無いと思うんだよね…

 何か渡してもいいような理由があればな~…

 う~ん…理由が無いなら作ればいいんだけど…かんちゃんが納得しないといけないしな~…はぁ~…そんな都合よく理由になりそうなネタは…

 

「ん?」

 

 諦めようとした時、私はかんちゃんの持ってきたデータの一つに目が止まった

 それは拡張領域(バススロット)を使った新しい戦術だった

 【ブルー・ティアーズ】や【ハルファス・ベーゼ】の様な遠隔操作武器から拡張領域(バススロット)に格納した武器を取り出して使用する…

 普通ならそんな事をしてもあまり役に立たない…ビットから剣を出してもビットは剣を持てない…銃を出してもビットは基本射撃武器だからこっちも意味が無い…

 それでも例外はある…例えばかんちゃんの【打鉄弐式】に装備されている【山嵐】だ…

 本体から離れたビットからあの大型ポッドを出せば攻撃範囲が一気に広がるし、意表を突ける…

 多分かんちゃんはそこからコレを考えたんだろう…

 

「どうかしました?」

 

「うん、この拡張領域(バススロット)のデータ、面白いと思ってね。」

 

「これですか?思い付きで考えたんですけど私には無理な方法なんですよね…」

 

「何で?」

 

「私はセシリアと違って『BT適正』がありませんから…」

 

「あ!?」

 

 そうだった…アレってISの適正とは違う適性が必要だった…

 でもな~…このビットと拡張領域(バススロット)の組み合わせって凄く面白そうなんだよな~…

 何て言うか…新しいアイディアが生まれそうで…

 

 生まれ…

 

 生まれ…

 

 ハッ!?

 

「生まれたああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「ひゃっ!?」

 

 天啓が下りて来た!!!

 

「ど、どうしたんですか!?」

 

「良い事思い付いた!!!」

 

「え?」

 

 私は思い付いたアイディアを早速かんちゃんに説明した

 すると…

 

「確かに…それは凄くいいアイディアです!!実現できれば同時に複数の救援を行う事も出来ます!!!」

 

「そうそう!!」

 

 束さんの説明を聞いてかんちゃんはすぐに理解してくれた

 それにこの方法は他にも応用が利くかもしれない

 こりゃ早速作ってみるべきだね!!

 

「ですが…そうなると()()()()()()()が必要ですね…」

 

「あ!?」

 

 そうだった!?

 このシステムは『BT適正』は必要不可欠だった!?

 でも特定の人間しか使えないってのもな~…よしっ!!

 

「それなら()()()()()()()使()()()()にしよう!!!」

 

「え?」

 

 適性が無くても訓練次第で使えるプログラムを組めばいい!!

 それにセーちゃんだって初めからBTシステムを使いこなせた訳じゃないもんね!!

 

「そんな事できるんですか?アレってかなり特殊なシステムですよ?」

 

「だから挑戦するんでしょ!!それにこれが完成すれば束さんの夢にまた一歩近づくんだよ!!」

 

「束さん…そうですね!!私も協力します!!!」

 

「モチのロンだよ!!て言うかこのアイディアはかんちゃんが考えたんだからしっかり手伝って貰うよ!!!」

 

「ア、アハハハ…そうでした…」

 

「てな訳で理論が出来たらかんちゃんにテストして貰うからね?」

 

「…え?…それってつまり…」

 

「【打鉄弐式】…第5世代に改造させて貰うよ!!!」

 

「な、何言ってるんですか!?さっき第5世代を手にする理由は無いって…」

 

 確かにそうだけどね~…

 

「それはさっきまでの話でしょ?でも今は違うよね?新型システムのテスターになって欲しいんだよ。」

 

「そ、それならBT適正の高いセシリアに…」

 

 かなりテンパってるね…

 そもそもの理由を忘れちゃってる…

 

「適性の無い人が使える様にするんだから元々適性のあるセーちゃんじゃ意味無いでしょ?それにこれの発案はかんちゃんなんだからかんちゃんがやるべきなんだよ!!!」

 

「うっ…」

 

 フフフ…ぐうの音も出なくなったね!!

 コレでかんちゃんの第5世代を用意する大義名分が出来上がったよ!!!

 

 ハァ~ッハッハッハッ!!!

 

 ハッ!?

 

「そうだ!!!」

 

 更にいい事思い付いた!!

 

「こ、今度は何ですか!?」

 

「かんちゃんの新型を造る前にプロトタイプを造ろう!!」

 

「プロトタイプ?…試作機ですか?それなら別に私のISでも…」

 

「違う違う!そう言う意味の試作機じゃ無くて別のISを実験用の使い捨てに使おうって話。」

 

 フフフ…丁度いい物があったんだ~♪

 

「使い捨てするようなIS何てありましたっけ?」

 

「あるよ~♪ア・レ・♪」

 

 私がそう言って指差したのは…

 

「アレって…【紅椿】!?」

 

「その通り!!アレなら丁度いいでしょ?」

 

「いいんですか?アレって妹さんの…」

 

「いいのいいの♪突き返されて処分に困ってたから丁度いいんだよ♪」

 

「ハ、ハァ…(本当にいいのかな?)」

 

「じゃあ早速始めるよ!!!」

 

「あっ!ハイ!!!」

 

 コレで【紅椿】の処理出来たし一石二鳥だよ!!

 でも…

 

 ………

 ……

 …

 

 その翌日、皆で朝食を取りながらテレビを見ていると…

 

TV

『本日、ヨーロッパ各国の合同で行われていた【イグニッションプラン】が何者かに襲撃されると言う事件が発生しました。怪我人、死傷者の数は現在は不明ですがイギリスで開発された最新鋭機【サイレント・ゼフィルス】が奪われたとの事です。』

 

全員

「何ぃっ!?」

 

 イギリスのISが盗まれた!?

 

 セーちゃん!?

 

 ~束 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第126話:不死鳥の帰国

 

 ~三人称 Side~

 

 【イグニッションプラン】の事件発生から時間を遡って夏休みに入ってから数日後…

 束から新しいコアを受け取ったセシリアは飛行機でイギリスへと帰国していた…

 

 ~三人称 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

 フ~…やっと着きましたか…

 【ハルファス】で飛べばもっと早く着いていたのですが仕方ありませんわね…

 さて、空港に迎えが来ている筈ですが…

 

「お嬢様~!!」

 

 そう思って周りを見渡していると見覚えのあるメイドがやって来ました

 

セシリア

「『チェルシー』♪お久しぶりですわね♪」

 

チェルシー

「ハイ!お嬢様もお変わりの無い様で安心いたしました♪」

 

 彼女は『チェルシー』…わたくしが幼い頃からオルコット家に仕えてくれていたメイドでわたくしの良き理解者でもあります

 ですが…フフフ…確かに見た目は変わっていないのかもしれませんが色々と変わりましたのよ?

 何しろ恋人が出来たのです!!!

 後でその事を教えたらどんな顔をするのか今から楽しみですわ♪

 

チェルシー

「お嬢様、それではお屋敷へ戻りましょう。」

 

セシリア

「そうですわね。」

 

 わたくしはチェルシーの用意していた車に乗って懐かしの我が家への帰路につきました…

 

 ………

 ……

 …

 

 それからわたくしは屋敷へ到着したのですが…

 

黒服

「………」

 

 屋敷の前に怪しげな黒服の集団が待ち構えていました

 わたくしが車から降りると…

 

黒服

「セシリア・オルコットさんですね?」

 

セシリア

「そうですが…」

 

 黒服の一人が話しかけてきました

 どうやらわたくしを待っていたようですね

 という事はこの人達は…

 

黒服

「お帰りをお待ちしておりました。私達はイギリス政府からの使いの者です。貴方を政府へ案内するよう指示を受けました。いきなりで申し訳ありませんがご足労をお願いします。」

 

 やはり政府の人達でしたか…

 しかし本当にいきなりですわね…

 理由も分かりますが帰って来た日くらいゆっくりさせて欲しいですわね…

 ですが仕方ありませんわね…束さんが手がけたわたくしの新型【ハルファス・ベーゼ】…それに新しく提供されたISコア…

 それらが早く見たいのでしょう…尤も【ハルファス】はわたくし個人の物となっていますから取り上げる事は出来ませんけどね…

 それに、【ハルファス】をわたくしに譲渡する代わりに新しいコアが用意されたのですから文句の言いようがありませんけどね…

 ですが、それはそれとして…

 

セシリア

「すみませんが少しお時間を頂けませんか?荷物も置きたいですし、父と母に挨拶をしたいんです。」

 

 政府の気持ちも分かりますがせめてそのくらいはさせて貰いませんと…

 

黒服

「あ…そ、そうですね…こちらの都合ばかり言ってすみません…勿論構いません。準備が終わるまで私共は待たせて貰いますので。」

 

セシリア

「ありがとうございます。」

 

 彼等の許可を貰うとわたくしはチェルシーと屋敷に戻りました

 そして、荷物を置くと両親が眠る墓所へと向かいました

 ちなみに黒服の方達も着いて来ています…逃げたりしませんのに…

 

 ………

 ……

 …

 

セシリア

「お父様…お母様…セシリアは無事帰ってきました。」

 

 わたくしは父と母のお墓の前で帰って来た事を報告しています

 

セシリア

「向こうでは色々な事があったのですがまず一つご報告します。」

 

 わたくしは一息つくと…

 

セシリア

「恋人が出来ました!!!」

 

 永遠さんの事を話しました

 すると…

 

チェルシー

「………え?」

 

 フフ…案の定チェルシーも驚いてますわね♪

 

チェルシー

「お、お嬢様?恋人と言うのはもしかして…」

 

セシリア

「もちろん、以前お話しした永遠さんの事ですわ♪告白したら受けて下さいましたの♪」

 

 3人一緒でしたが…今はコレは言わなくてもいいですわね…

 

チェルシー

「そ、そうですか…それは良かったですね♪」

 

セシリア

「はい♪」

 

 チェルシーも喜んでくれてよかったですわ

 きっと…お父様とお母様も…喜んで下さいますよね?

 

 ………

 ……

 …

 

セシリア

「それではお父様、お母様、今日はこのくらいで失礼します。…それから…何時か永遠さんも連れていますね。」

 

 永遠さんだけでなく簪さんと本音さんにも会って下さいね…

 

セシリア

「それではまた来ますね。」

 

 わたくしはそう言ってチェルシーと墓所を後にしました

 そして、墓所を出ると…

 

セシリア

「お待たせして申し訳ありません。」

 

黒服

「いえ、お気になさらず。」

 

 墓所の前で待機していた使いの人達と合流しました

 両親に会いに来たわたくしに気を使ってここで待ってくれていました

 そして、わたくしはチェルシーを先に帰すと彼等の車に乗って政府へと赴きました…

 

 ~セシリア Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第127話:不死鳥の力

 

 ~セシリア Side~

 

教官

「久しぶりねオルコット!」

 

セシリア

「ハイ♪教官もお元気そうで安心しましたわ♪」

 

 わたくしが連れて来られたのは政府棟の方ではなく何故かわたくしが代表候補生になる為に訓練に明け暮れた演習場でした

 てっきり政府棟の方に行くと思っていたのですが…そこにはわたくしがお世話になった教官や、他の教員達、そしてスーツ姿の役人らしき方が何人かいました

 それはさておき、わたくしが教官と挨拶を済ませると…

 

役人

「よろしいですかな?」

 

セシリア

「あ、ハイ!」

 

 役人の一人が話しかけてきました

 

役人

「早速で申し訳ないのですが篠ノ之博士から預かった物を見せて貰ってもよろしいですかな?」

 

セシリア

「ハイ…コレです。」

 

 わたくしは束さんから預かったコアを取り出し皆さんに見せました

 

役人

「コレは確かにISコア…半信半疑でしたが本当に用意してくれたのか…」

 

 …疑ってたんですね…

 

役人

「オルコット嬢…このコアは本当に我がイギリスが所有してもいいんですね?」

 

セシリア

「ハイ、それが条件ですから…その代わり、そちらも束さんの出した条件を守って下さるんですよね?」

 

役人

「無論です!!既にその為の書類は君に送ってあります!!あの書類の通り君のISはコアを含めて未来永劫セシリア・オルコット個人の物となっています!!もし、これを破れば政府の方で厳重に処罰する事が決定しています!!!それに私達は篠ノ之博士を敵に回す事を望んではいません!!!」

 

 フム…どうやら大丈夫みたいですわね…

 束さんを敵に回せばラウラさんのISに【VTシステム】を積んでいた事を暴露されたドイツの様にどんな秘密をばらされるか分かったものではありませんからね

 そのせいでドイツは各国から非難を浴びて研究所を自分達で潰して関係者を一人残らず捕まえる事でなんとか治めたそうです…アレもあって余計な事を考える輩はそう簡単には現れないでしょう…

 それにこう言っては何ですが束さんの出した3つの条件…実はイギリスにはこれと言ったデメリットが無いんですよね…

 【ハルファス】その物とコアはわたくし個人の物になってはいますがわたくし自身はイギリスの人間ですから普通に大会などに【ハルファス】を使って出ても問題は無いんです…

 しいて言うなら…今度行われる【イグニッションプラン】に【ハルファス】をイギリスのISとして出せないくらいでしょうが…それは些細な事ですわね…

 それに聞いた話では【ブルー・ティアーズ】の後継機が完成しているそうですからそちらを出せば済む話ですもの…

 という訳で問題も無い様ですし…

 

セシリア

「それではこれをどうぞ。」

 

 わたくしはコアを差し出すと役人の方がシッカリと受け取りました

 

役人

「確かに!!感謝します!!!」

 

 受け取ると役人の方が他の方達と一緒に一誠に頭を下げてきました

 少し驚きましたわ

 

役人

「それで…」

 

セシリア

「ハイ?」

 

 顔を上げると皆さん何か言いたそうな表情をしていました

 一体どうしたんでしょうか?

 わたくしが首を傾げていると…

 

教官

「オルコット…皆さんお前の『新型』が見たいんだ。」

 

セシリア

「【ハルファス】を?」

 

 教官が答えてくれました

 

教官

「【ハルファス】と言うのか…確か『悪魔』の名前にあったな…後は『鳥』の名前だったか?」

 

セシリア

「どちらも当て嵌まりますわ。正式名称は【ハルファス・ベーゼ】と言います。わたくしは縮めて【ハルファス】と呼んでいます。後、束さんから【蒼炎の不死鳥】の二つ名を頂いております。」

 

教官

「【蒼炎の不死鳥…ハルファス・ベーゼ】か…それを見せてくれないか?」

 

 …何故【ハルファス】を見るだけでこんなに畏まっているのでしょうか?…ってそう言えば束さんの条件の一つに【ハルファス】に手を出さないようにとありましたわね

 ですからこんなに言いづらそうな顔をされてましたのね…束さんとの約束を破るかもしれないから…ですが…

 

セシリア

「そのくらいでしたらいいですよ?」

 

全員

「本当か!?」

 

 見せたくらいで減る様なものでもありませんもの…

 

セシリア

「ハイ、ですが束さんとの約束通り【ハルファス】は渡せませんし、解析も出来ません。よろしいでしょうか?」

 

役人

「もちろんです!!!では早速お願いします!!!」

 

セシリア

「ハイ…」

 

 あ!だからここに来たんですね…【ハルファス】を出してもいい様にする為だったんですね

 

セシリア

「それでは…」

 

教官

「ん?オルコット…ISスーツに着替えないのか?」

 

 教官は慌ててますが…そう言えばわたくしは私服ですし下にISスーツを着ていませんからね…この服なら上からでも着ているかどうか分かりますから

 ですが…

 

セシリア

「必要ありません。このISはスーツは手足のみで稼働させる事が出来ます。」

 

教官

「て、手足だけでいいだと!?」

 

 もうあのスーツに着替える必要は無いんです…

 さて…

 

セシリア

「お出でなさい!!【ハルファス・ベーゼ】!!!」

 

 カッ!!

 

 わたくしは【ハルファス】を展開しました

 

全員

「!?」

 

 【ハルファス】の姿に皆さん言葉を失っていました

 

教官

「…コレが…噂の第5世代…【蒼炎の不死鳥ハルファス・ベーゼ】!?」

 

 ザワザワ…

 

 …段々と騒がしくなってきましたわね…

 

役人

「オルコット嬢…その…よければ模擬戦をお願いできませんか?」

 

 すると次の要求が来ました

 まあ、模擬戦くらいなら…

 

セシリア

「構いませんが…相手はどなたですか?」

 

 わたくしが対戦相手を聞くと…

 

教官

「私が相手だ!!!」

 

 教官が名乗りを上げました…

 確か教官は国家代表でこそありませんがイギリスの代表と最後まで争った人…ですから今はこうして教官職についているのですが…その教官が相手ですか…

 

セシリア

「分かりました!それではよろしくお願いします!!」

 

教官

「ウム!!」

 

 わたくしは一端ISを解除すると訓練用のアリーナに移動しました…

 

 ………

 ……

 …

 

 それで教官の準備が終わったそうなのでアリーナに出たのですが…

 

セシリア

「え~っと…コレはどう言う事でしょうか?」

 

 私の目の前には【ラファール】を纏った教官がいます

 それはいいのです…

 ですが…

 

教官

「相手は第5世代が!!()()()では勝負にならんだろ?」

 

 そう、わたくしの前には教官以外にもISを纏った人達がいました…

 全員で10人はいます…

 コレはつまり…

 

セシリア

「だからと言って1対10はやり過ぎな気が…」

 

 この人数を1人で相手にしろという事ですわよね…

 

教官

「今のお前なら大丈夫だ!!!」

 

 何を言っても無駄ですわね…

 

セシリア

「ハァ~…分かりました…」

 

 仕方なくわたくしは【ハルファス】を展開しました

 そして…

 

セシリア

「セシリア・オルコット!!【ハルファス・ベーゼ】!!参ります!!!」

 

 【ハルファス】と共に飛び立ちました…

 

 ………

 ……

 …

 

アナウンス

『し、試合終了…勝者…セシリア・オルコット…』

 

 10人相手に勝ってしまいました

 それどころか…

 

教官

「クッ…まさか1発も掠らせる事も出来んとは…」

 

 教官の言う通りわたくしは1撃も貰わずに勝ってしまったのです

 まさかここまで圧勝するなんて…自分でも驚いてます…

 そして改めて第5世代としての【ハルファス・ベーゼ】の力を思い知りました…

 

 ………

 ……

 …

 

 その後、【ハルファス】の力を目の当たりにした他の方達も驚きのあまり固まっていましたが今は正気に戻っています

 ですが…ISの研究者の方達の目が少し怖かったのですがまあ大丈夫でしょう

 【ハルファス】に手を出せば束さんを敵に回す事になりますし政府の目もありますからね…

 わたくしはそう結論付けると用件も全て終わりましたから挨拶をして帰りました…

 

 ~セシリア Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第128話:イグニッションプラン開幕

 

 ~ラウラ Side~

 

ラウラ

「遂にこの日が来たか…」

 

 今日は欧州の次期主力機を決める一大イベント…【イグニッションプラン】開幕の日だ

 私は自分の部隊【黒兎隊】の者達と参加していた

 参加と言っても半分は警護も兼ねているがな…

 

「隊長、全員配置に着きました!」

 

ラウラ

「ご苦労!」

 

 私にそう報告して来たのは【黒兎隊】の副隊長の『クラリッサ』だ

 この【イグニッションプラン】は次期主力機を選定する発表会…我がドイツが出すISは私の【シュヴァルツェア・レーゲン】だ

 だから私達は警護と同時に参加者でもあった

 

クラリッサ

「ところで隊長、今回一番の注目されているのは何処の国だと思われますか?」

 

ラウラ

「ん?」

 

 クラリッサの問いに私は…

 

ラウラ

「我がドイツだ!!!」

 

クラリッサ

「あの隊長…気を使われるのは分かりますが、私は隊長の正直な意見が聞きたいのですが…」

 

 う~む…バレたか…

 まあ、冗談半分に答えてやったから分かるか…

 しかし、正直な意見か…

 それはやはり…

 

ラウラ

「イギリスだろうな…」

 

 兄上の恋人の一人でもあるセシリアのいる国だ

 流石に第5世代の【ハルファス・ベーゼ】は出せないがそれでも注目を集める事は出来る

 それに聞いた話ではイギリスの出すISは改造前のセシリアの【ブルー・ティアーズ】の2号機だそうだ

 恐らく性能も【ブルー・ティアーズ】以上だろう…

 尤も、乗り手がセシリアでなければ私の敵では無いだろう…

 私が正直に答えると…

 

クラリッサ

「私も同意見です。噂ではイギリスが一番人気だとか。」

 

ラウラ

「だろうな…」

 

 我がドイツも少し前は1,2を争う人気を誇っていたが研究所の馬鹿共が私のISに【VTシステム】を組み込んでいた事が篠ノ之博士の手で暴露されたせいで各国から非難を浴びまくったからな…

 まあ、私としてはあんなシステムを積んだ連中が捕まって清々してるからいい気味だとしか思わないけどな

 

クラリッサ

「それに噂の第5世代を見に来た者もかなりの数いるそうですよ?」

 

ラウラ

「セシリアが来るとは限らんぞ?」

 

クラリッサ

「それでも気にはなりますよ。」

 

 確かにそうだな…

 

クラリッサ

「それで隊長はIS学園で第5世代を目にしているんですよね?どんなISでしたか?」

 

ラウラ

「ん?【ハルファス・ベーゼ】の事か?それとも本音の【ワイバーン・ガイア】の方か?」

 

クラリッサ

「どちらもです。隊長のISと比べてどう感じましたか?」

 

 クラリッサのその質問に周りにいた他の隊員達やスタッフたちも興味津々な様で聞き耳を立てているな…

 だが、そうだな…

 

ラウラ

「…【シュヴァルツェア・レーゲン】が『玩具』にしか見えなかったよ…」

 

全員

「玩具!?」

 

 私の答えにクラリッサだけでなく全員が驚きの声を上げた

 それもそうか…自分達の技術の粋を込めて開発したISを私が玩具呼ばわりしたんだからな…

 だがな…

 

ラウラ

「驚くのも無理ないが…それしか言いようが無くてな…」

 

クラリッサ

「た、隊長がそこまで言うなんて…」

 

ラウラ

「こんな事で嘘は言わん…」

 

全員

「………」

 

 そう、嘘を言う必要が無い…

 いや、言う気になれない…

 あの力を目の当たりにすれば誰だって本当の事を言うしか無いからな…

 

 ………

 ……

 …

 

 それから暫くして【イグニッションプラン】が開幕した

 我がドイツは【VTシステム】の件で人気が下がったが、それでもイギリス程では無いが注目されているようで見学者はそれなりの数が来ていた

 私は隊員達とローテーションを回しながら警備とプレゼンを行っていた

 そして…

 

クラリッサ

「隊長、交代です。暫くは私達で回しておきますので休憩がてら他の国を見て回ってはどうですか?」

 

ラウラ

「そうだな…ではお言葉に甘えさせて貰うとするか…」

 

 クラリッサの言う通り時間が出来た事だし他の国のブースを覗いてみるか…

 もしかしたらセシリアや顔見知りがいるかもしれないしな…

 顔見知りと言えばシャルロットのいるフランスは結局【イグニッションプラン】に参加出来なかったようだな…

 まあ、スパイとして送り込んだシャルロットの正体が全員にバレてしまったから当然の結果だな…いや、それ以前にアイツがデータを手に入れる事に成功してもほんの数十日で新型を開発する事なんて出来る筈無いか…

 フランスに篠ノ之博士のような人がいると言うなら話は別だが、そもそもそんな人がいればフランスは【イグニッションプラン】への参加が許されてるよな…

 

ラウラ

「では後を頼む。」

 

クラリッサ

「ハッ!!!」

 

 私は後を任せると各国の見学に出向いた

 暫く見て回っていると…

 

 ドゴオオオオオオオォォォォォォォォンッ!!!

 

ラウラ

「!?」

 

 突然会場内を爆発音が鳴り響いた…

 

 ~ラウラ Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第129話:奪われたサイレント・ゼフィルス

 

 ~ラウラ Side~

 

ラウラ

「今の爆発は何だ!?」

 

 私は突然の爆発音に周囲を見渡すと周りにいる人々もいきなりの事で混乱していた

 だが、私はすぐに気を取り直すと自分の国のブースへと走り出した

 爆発の方角は違っていたがアレが囮の可能性もあるからだ

 そして、私が到着すると…

 

クラリッサ

「隊長!!!」

 

ラウラ

「クラリッサ!!全員無事か!!」

 

 隊員達やスタッフの安否を確認した

 

クラリッサ

「ハッ!!全員無事です!!休んでいた者も含め全員集まっています!!」

 

 よし!なら…

 

ラウラ

「…何が起きたか分かるか?」

 

クラリッサ

「いえ、私達もいきなりの事で…ですが爆発が起きたのはどうやら『イギリス』のブース近くの様です!!」

 

ラウラ

「イギリスだと!?」

 

 まさか…【ハルファス・ベーゼ】を狙って起きたテロか!?

 いや、仮にテロリストが相手だとしてもあのセシリアから簡単に奪えるとは思えん…それに聞いた話だとセシリアはココにはまだ来ていないと客の誰かが言っていた…

 セシリアがいない事を知らずにテロを起こしたのか…それとも別の狙いが…

 ええい!ココで考えていても仕方ない!!

 

ラウラ

「クラリッサ!!ココでの指揮はお前に任せる!!スタッフとIS、機材の防衛と退避を頼む!!!」

 

クラリッサ

「了解しました!!それで隊長は?」

 

ラウラ

「私は爆発の起きた場所を調べてくる!!何が起きたのか確認する必要がある!!」

 

クラリッサ

「承知しました!!」

 

ラウラ

「何か分かればすぐに連絡しろ!!」

 

 私はクラリッサに後を任せるとISを展開して飛び出した

 

 ………

 ……

 …

 

 それから私は爆発の起きた場所に到着したが、そこはやはりイギリスの出展エリアだった

 私は辺りを見渡していると…

 

ラウラ

「!?…オイ!!しっかりしろ!!」

 

 爆発跡の近くに倒れていた人を1人発見した

 服装からしてイギリスのスタッフの1人の様だ…

 

スタッフ

「うっ…ううっ…」

 

 私がスタッフを抱き起こすと呻き声を上げた

 どうやら怪我は負っているようだが命に別状は無い様だな…良かった…

 だが…

 

スタッフ

「…【サ、サイレント…ゼフィルス】が…」

 

ラウラ

「何っ!?」

 

 【サイレント・ゼフィルス】と言えばイギリスが【イグニッションプラン】に出展したと言う【ブルー・ティアーズ】の2号機…

 まさか…本当の狙いは!?

 私はすぐに周囲をもう一度見渡したが【サイレント・ゼフィルス】らしきISは見当たらなかった

 その時…

 

ラウラ

「!?」

 

 私は咄嗟に倒れているスタッフを抱えてその場を飛び退いた

 すると…

 

 ドンッ!!

 

 そこに攻撃が撃ち込まれた

 

ラウラ

「何者だ!!!」

 

 私はすぐに攻撃の来た方角を見た

 するとそこには…

 

ラウラ

「!?…そのISは!?」

 

 蝶の様な羽を持つ青いISが私にライフルを向けていた

 あのISは…

 

スタッフ

「【サイレント…ゼフィルス】…」

 

 スタッフがISの名を口にした…

 やはりアレが【サイレント・ゼフィルス】か!?

 乗り手は…クソッ!!バイザーで隠れていて顔が見えない!!

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ…ドイツの代表候補生か…お前がココにいたのは調べがついていたがまさかこんなに早く現れるとは思わなかったな…」

 

ラウラ

「私の事を知っているようだな…」

 

「ああ、曲がりなりにも専用機を持っているからな…本当はセシリア・オルコットが来る前に任務を終えたかったがやはりすんなりとはいかないか…」

 

ラウラ

「セシリアだと!?貴様!アイツがいないタイミングを狙ったのか!?」

 

 という事は狙いはセシリアの【ハルファス・ベーゼ】ではなく始めから【サイレント・ゼフィルス】の方だったのか!!

 

「ああ、こちらも出来る事なら噂の第5世代を手に入れたかったが流石に相手が悪すぎる…だからこちらを狙ったんだよ。」

 

 確かにな…セシリアは私の知る限り兄上が唯一本気で戦った相手だ…

 そのセシリアから【ハルファス・ベーゼ】を奪い取るには【ハルファス・ベーゼ】を操るセシリアを倒さなければならない…そんな事は第3世代のISでは束になってもほぼ不可能だろう…

 だからこっちと言う訳か!!

 

「まあ、目的の物も手に入れた訳だし追手が第5世代の使い手じゃないだけマシだな…」

 

 マシ…だと…

 コイツ…私の事を舐めているな…

 だが、相手の力は未知数…私1人で勝てるかは分からない…

 それなら…

 

ラウラ

「(オイ…セシリアは今どこにいる?)」

 

 確実に勝利する為の方法を取るだけだ!!

 だから、私は倒れているスタッフにセシリアの所在を聞いたんだが…

 

スタッフ

「(オ、オルコットさんは…明日来る予定です…今日は政府と打ち合わせをしている筈です…)」

 

ラウラ

「(そうか…)」

 

 セシリアが来るのは明日だったか…連絡が行けばすぐに飛んでくるだろうが、この状況ではまともな連絡が出来るようになるのに少し時間が掛かりそうだな…

 そこまで計算してこのタイミングを狙った訳か…正体は分からないがコイツは【ハルファス・ベーゼ】を相当警戒しているようだな…

 

「さて、何時までもお喋りをしている暇も無いんでな…奴が来る前に離脱させて貰おう。。」

 

ラウラ

「行かせると思うか?」

 

「………」

 

 コイツは【イグニッションプラン】を潰した!!

 各国が威信をかけた一世一代の舞台を汚したんだ!!

 

ラウラ

「他国で起きた事とは言えこんな事をされて見逃すと思うな!!!」

 

 そうだ!!

 決して…許せるものか!!!

 

 ~ラウラ Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第130話:襲撃者の実力【黒い雨VS無音の蝶】

 

 ~三人称 Side~

 

ラウラ

「オオオオオオオォォォォォッ!!!」

 

 ラウラはプラズマ手刀を構え襲撃者に仕掛けた

 しかし…

 

襲撃者

「フン!」

 

 ドン!ドン!ドン!

 

 襲撃者は【サイレント・ゼフィルス】の大型ライフル【星を砕く物(スターブレイカー)】で迎え撃ってきた

 

ラウラ

「チッ!」

 

 ラウラはAICで防ぐが…

 

襲撃者

「フッ…」

 

 バシュッ!

 

 襲撃者は今度は【サイレント・ゼフィルス】から小型の物体を射出した

 それは…

 

ラウラ

「『BT兵器』だと!?」

 

 【ブルー・ティアーズ】と同じBT兵器だった

 コレが使えるという事は…

 

ラウラ

(奴はBT適正があるという事か!?)

 

 ラウラの考えの通り目の前の襲撃者はBT適正が高い事を意味していた

 しかも、襲撃者が【サイレント・ゼフィルス】から射出したビットの数は全部で『6基』

 それはつまり…

 

襲撃者

「ほぉ?流石は最新型…1号機の欠陥が直されているな?」

 

 1号機【ブルー・ティアーズ】の欠点…それはビットを使用している間は他の動作が出来ないと言う欠点が修正された事を意味していた

 尤も、セシリアはこの欠点を特訓で克服していたのだが、【サイレント・ゼフィルス】はBT適正がある者ならビットとの同時行動が誰でも出来る機体に仕上がっていた

 

襲撃者

「行けっ!!!」

 

ラウラ

「クッ!?」

 

 ラウラは舌打ちをしながら向かって来るビットに悪戦苦闘していた

 【シュヴァルツェア・レーゲン】に搭載されているAICは一方向にしか展開出来ない為、多方向からの攻撃に対しては相性が悪かった

 

ラウラ

(【ハルファス・ベーゼ】と比べれば性能もビットの数も向こうが圧倒的に下だが、それでもキツイ!!クソッ!?あの時、私がセシリアに勝てたのはやはり偶然だったか!!)

 

 ラウラはビットを躱しながら以前セシリアと鈴に喧嘩を売った時の事を思い出していた

 あの時、ラウラがビットを使うセシリアに鈴共々勝利出来たのはセシリアの動きに機体が追いついて行かなくなった為、偶然勝てただけでしかなかった

 改めてBT兵器の厄介さを思い知ったラウラは防戦一方となっていた

 

襲撃者

「どうした?代表候補生の実力とはこの程度か?折角の専用機が泣いているぞ?」

 

ラウラ

「だ、黙れ!!!」

 

 襲撃者の言葉を否定するラウラだが…

 

ラウラ

(悔しいがコイツの実力は私以上だ…どうする!?)

 

 自分との実力差をハッキリと感じていた

 このままでは自分に勝ち目は薄い事を痛感していた

 

ラウラ

(…せめてクラリッサ達が来てくれれば…)

 

 自分1人では捕縛は無理と判断していた

 その為、ラウラはラウラは戦いながらクラリッサ達【黒兎隊】に避難が終わり次第援護に来るように要請を出していた

 

ラウラ

(後は援軍が来るまで奴を押さえておけば…)

 

 ラウラは援軍が到着次第一気に勝負を決めようとしていた

 だが、ラウラはある事を失念していた

 それは…

 

 ドガァァァァァンッ!!!

 

ラウラ

「グアアアアアァァァァァッ!!」

 

 ラウラは突然、ビットとは違う別方向から攻撃を受けた

 

ラウラ

「な、なんだ…一体…」

 

 攻撃の来た方を向くと…

 

ラウラ

「!?…もう1人だと!?」

 

 そこにはもう1体のISがいた

 黄色と紫のカラーリングをされた8本の足を持つ異形のISだった

 ラウラはそのISを見て…

 

ラウラ

「そのISは…アメリカから強奪された【アラクネ】!?」

 

 目の前のISに見覚えがあった

 それはアメリカから盗まれ、行方不明となっていた第2世代型の【アラクネ】だった

 そして、これこそがラウラの失念していた事だった

 ラウラは襲撃者が目の前の1人だけしかいないとは考えていなかったが他にもISがいる事を考えていなかったのだ

 

「何手間取ってんだ?目的のブツを手に入れたんならとっとと行くぞ!」

 

襲撃者

「分かってる。」

 

ラウラ

「ま、待て!!」

 

 2人に増えた襲撃者を相手にラウラは援軍が到着するまで足止めしようとしたが…

 

「あん?うぜえんだよ!!」

 

 ドガァァァンッ!!

 

ラウラ

「グアアアアアァァァァァッ!!」

 

襲撃者

「フンッ!!」

 

 ドン!ドン!ドン!

 

 ズガガガァァァァァァンッ!!

 

ラウラ

「ウアアアアアァァァァァッ!!」

 

 【サイレント・ゼフィルス】と【アラクネ】…2体の同時攻撃に成す術がなかった

 

ラウラ

「グッ…ウウッ…」

 

襲撃者

「…トドメだ…」

 

 ドンッ!!!

 

ラウラ

「!?」

 

 ドゴォォォォォォォンッ!!!

 

 【サイレント・ゼフィルス】のトドメの【スターブレイカー】が直撃し大爆発が起きた

 そして…

 

ラウラ

「うっ…ぐっ…」

 

 【シュヴァルツェア・レーゲン】はSEが尽きており、ラウラも意識を失っていた

 ラウラが倒れたのを確認すると…

 

「さて、邪魔者は片づけた事だし…行くぞ…『エム』…」

 

エム

「分かった…『オータム』…」

 

 襲撃犯の2人は互いの名前を呼び合うと会場を後にした

 その数分後、避難活動を終えたクラリッサ達【黒兎隊】が倒れているラウラを発見するのだった…

 

 ~三人称 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第131話:失意のラウラ

 

 ~セシリア Side~

 

 キィィィィィィィィィィィィィィィィィ………

 

セシリア

「早く…もっと早く!!!」

 

 わたくしは現在、鳥型に変形させた【ハルファス】である場所に向かって全速力で飛行中です!

 その胸中は焦りで一杯です!!

 何故わたくしがこんなに焦っているのかと言うと先程イギリス政府に【イグニッションプラン】が行われている会場が襲撃されたと連絡が来たからです

 それだけでも十分驚くべき事なのですが、あろう事かその襲撃犯の狙いはイギリスが出展していた【ブルー・ティアーズ】の2号機【サイレント・ゼフィルス】だったのです!?

 【サイレント・ゼフィルス】は奪われてしまい現場に居合わせたラウラさんが犯人を取り押さえようとしたのが返り討ちに会ってしまったそうです

 その為、わたくしは許可を貰うとすぐにラウラさんの安否の確認に向かって急いでいるのです!

 ですが…

 

セシリア

「もどかしいですわね!!」

 

 この姿の【ハルファス】のスピードでも目的の場所まではまだ少し掛かりますわね…

 普通のISと比べれば何倍も速いのですがすぐに行けない事がこれほどもどかしいなんて…

 永遠さんの【ラインバレル】なら文字通り一瞬で行けますのに…ええい!!無い物をねだっても仕方ありませんわ!!

 

セシリア

「とにかく1秒でも早く向かわなければ!!!」

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~ラウラ Side~

 

ラウラ

「うっ…」

 

 …白い天井…何処だココは…

 何故私はこんな所にいる…

 たしか…

 

ラウラ

「!?」

 

 そうだ…思い出した!?

 私は直前の記憶を思い出すと飛び起きた

 

クラリッサ

「隊長!?目を覚ましたんですね!!」

 

 すると、副隊長のクラリッサが慌てて駆け寄って来た

 

ラウラ

「クラリッサ!!【イグニッションプラン】はどうなった!?襲撃犯は何処だ!?【サイレント・ゼフィルス】は!?」

 

 私はクラリッサにあの後どうなったのかを聞いた…

 だが…

 

クラリッサ

「隊長…残念ながら【イグニッションプラン】は中止になりました…襲撃犯については捜索隊が出されたそうですが犯人も【サイレント・ゼフィルス】も見つからなかったそうです…」

 

ラウラ

「そんな…」

 

 クラリッサから返ってきた答えは最悪なものだった

 私が…犯人を取り押さえていれば…こんな事には…

 

ラウラ

「クッ…ウウッ…」

 

クラリッサ

「隊長…ご自分を責めないで下さい!隊長は自分に出来る事をしただけです!!誰も隊長を責めたりなどしません!!イギリスも隊長に感謝しています!!」

 

 クラリッサはそう言うが…

 私は…自分の不甲斐無さが情けない!!

 最初は乗り手がセシリアでなければ【サイレント・ゼフィルス】に負ける事は無いと自負していた…だが、現実は違った…コレは、私が思い上がった結果だ…

 クソッ!!

 結局私は何も反省していなかったのではないか!!

 私が自分の不甲斐無さに悔しがっていると…

 

 バンッ!!

 

セシリア

「ラウラさん!!!」

 

ラウラ

「え?…セ、セシリア!?」

 

 部屋にセシリアが駆け込んで来た

 何故ココにセシリアがいるんだ!?

 

セシリア

「お怪我の調子はどうですか!?何処か気分が悪くはないですか!?」

 

 やってきたセシリアは真っ先に私の心配をしてくれた…

 だが…

 

ラウラ

「…スマナイ…」

 

セシリア

「はい?」

 

 【サイレント・ゼフィルス】を目の前で奪われ、返り討ちに合った私には心配される筋合いはない…

 それなのに…

 

セシリア

「何故ラウラさんが謝るのですか?ラウラさんはイギリスの為に戦って下さったんですよ?」

 

ラウラ

「だが私は結局何も出来なかった…【サイレント・ゼフィルス】を奪われ…犯人を取り逃してしまった…感謝の言葉も心配される資格も無い…」

 

セシリア

「何を仰ってるのですか!!ラウラさんはイギリスの恩人です!!わたくしは恩人を心配しない恥知らずではありませんわ!!!」

 

ラウラ

「恩人?…私が?」

 

セシリア

「ハイ♪」

 

 セシリアは私を責めるような事は一切しなかった

 逆に感謝の言葉しか口にしなかった

 だが、それでも…

 

ラウラ

「………」

 

 私は…力の無い自分が許せない!!!

 以前、兄上に倒された時とは違う…ただ強いだけの力を求めた時とは違う…力の無い自分が…情けない…

 もっと…もっと…強くなりたい…

 

セシリア

「………」

 

 ~ラウラ Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第132話:最期の会話

 

 ~三人称 Side~

 

 【イグニッションプラン】の事件が起こる数日前…

 セシリアがイギリスに帰国した時と同じ頃…

 

シャルロット

「…着いた…か…」

 

 シャルロットもフランスへと帰国していた

 だが、シャルロットの場合はセシリアと違い誰かが迎えに来ている訳では無かった

 更に言えば、セシリアと違いテンションまで低かった

 

シャルロット

「…コレが…最後になるのか…」

 

 その理由はこれがシャルロットにとって『最後の帰郷』になるからだった

 

シャルロット

「…しっかりとこの景色を目に焼き付けよう…」

 

 そう呟くとシャルロットはゆっくりと歩きだした…

 

 ~三人称 Side out~

 

 

 

 ~シャルロット Side~

 

シャルロット

「…あっと言う間に着いちゃったな…」

 

 僕はデュノア社の前に来ていた…

 これから報告と言う名の最期のお別れを言う…

 いや、もしかしたら父さんとは会えずに終わるかもしれない…

 それでも…僕は最期にお父さんに会いたい!!

 僕は意を決して会社へと入って行った

 

 ………

 ……

 …

 

デュノア社長

「報告を聞こう。」

 

シャルロット

「………」

 

 意気込んで来た割りにアッサリとお父さんの前に通されちゃった…

 とは言っても二人きりじゃない…お父さんの隣には本妻もいるし、その取り巻きもいる…

 それでもこんなに簡単に会えるなんて…

 僕が今の状況に追い付いていないと…

 

デュノア社長

「聞こえてるのか!!」

 

シャルロット

「!?」

 

 お父さんが怒鳴った

 いけない…コレは僕が悪い…ちゃんと報告はしないと

 

シャルロット

「す、すみません!!では報告します!!」

 

デュノア社長

「うむ…」

 

 それから僕は学園での活動を報告して行った

 一夏に正体がバレている事とかは流石に言えないから嘘を混ぜて報告していった

 

シャルロット

「………以上で終わります。」

 

デュノア社長

「ふ~む…織斑一夏…思ったよりガードが堅い様だな…」

 

シャルロット

「ハ、ハイ…」

 

 どうやらお父さんは僕の報告を信じてくれたみたいだ

 すると…

 

デュノア社長

「ではもう1人については?」

 

 火ノ兄君の事を聞いて来た

 でも…

 

シャルロット

「すみません…彼に関しては織斑一夏以上に何も分かっていません…接触の機会が極端に少ないので…」

 

デュノア社長

「…どう言う意味だ?」

 

 彼についてはデータを盗む以前の問題なんだよね…

 

シャルロット

「実は…彼は他の生徒と違い自宅通学をしています。その為、放課後から翌朝までは学園にいないんです。」

 

デュノア社長

「何?あそこは全寮制の筈だぞ?」

 

シャルロット

「家庭の事情らしく、理事長に特別に許可を貰っているそうです。」

 

デュノア社長

「…では何故彼の家の調査に行かなかった?」

 

シャルロット

「無理言わないで下さい…彼の住んでいる場所はISを使う程離れてるんです。ですから彼はISを使って登下校をしてるんです。後を付けるにはこっちもISを使わないといけません。許可なくISで外に出る事なんて出来ません。」

 

デュノア社長

「そ、そうか…確かにそれでは無理か…」

 

シャルロット

「それに彼が住んでいる場所は私有地だそうです。勝手に入り込んだら捕まってしまいます。」

 

デュノア社長

「ぬ~…」

 

 僕から火ノ兄君について聞いたお父さんは顔を顰めていた

 それは傍にいる本妻や取り巻き達も一緒だった

 捕まるのを覚悟で行って本当に捕まったら国際問題になりかねないからね…

 流石にそこまでのリスクは負う事は出来ないか…

 

デュノア社長

「分かった…報告ご苦労…」

 

シャルロット

「ハ、ハイ…あの…それで【イグニッションプラン】への参加は…」

 

デュノア社長

「無理だな…データが足りん…今回は諦めるしかないな…」

 

シャルロット

「…そうですか…」

 

 そうだよね…そもそも僕がデータを持ってきたとしても数日で新型を造るなんて出来ないよね…

 お父さん達もそれは分かっていたみたいで悔しそうにはしてるけど割と簡単に受け入れているみたいだ…

 

デュノア社長

「…もう下がっていいぞ。」

 

シャルロット

「ハイ…あ、あの…」

 

デュノア社長

「何だ?」

 

シャルロット

「い、いえ…失礼…します…」

 

 駄目だ…本妻達の前で迂闊な事は言えない…

 でも…一目でももう一度会えた…言葉を交わす事が出来た…それで良しとしよう…

 僕が自分でそう結論付けて部屋を出ようとした時…

 

デュノア社長

「少し待て。」

 

シャルロット

「ハイ?」

 

 お父さんに呼び止められた

 何だろ?何か問題があったのかな?

 

デュノア社長

「社を出る前に『開発部』に寄って行け。」

 

シャルロット

「開発部ですか?」

 

デュノア社長

「そこにお前のISを預けてから帰れ。」

 

シャルロット

「ハイ…分かりました…いつ取りに来れば?」

 

デュノア社長

「一度、データの洗い直しとばらして総メンテを行う予定だから1週間以上はかかる。後で学園に送っておくからこのまま日本に戻れ。」

 

シャルロット

「………」

 

 ISを置いて日本に行け?

 それって…

 

デュノア社長

…頑張るんだぞ…シャルロット…

 

シャルロット

「!?」

 

 小さな声で…でもハッキリ聞こえた…

 だから僕はそれ以上何も言えなかった

 

シャルロット

「…失礼します…」

 

デュノア社長

「………」

 

 僕は込み上げて来る物を必死に我慢して部屋を出た

 そして、急いで【ラファール】を開発部に預けるとそのまま会社を飛び出した

 

 ………

 ……

 …

 

 それから僕は走り続けて会社から十分に離れると…

 

シャルロット

「うっ…ううっ…お父…さん…お父さ~~~ん!!!」

 

 僕は泣いた

 お父さんの気持ちが伝わったから…

 ISを預けさせたのは僕が日本に亡命した時に余計な問題を起こさせない為だ…【ラファール】が原因で国際問題を起こさない単にお父さんはISを置いて行くように言った…

 何よりも…あの最後の言葉…

 

 …頑張るんだぞ…シャルロット…

 

 本妻達に聞かれるかもしれないのに…

 僕に…頑張れって…シャルロットって…言ってくれた…

 

シャルロット

「ううっ…うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!」

 

 だから僕は泣き続けた…

 

 涙が枯れるまで…

 

 人目も気にせず…

 

 泣き続けた

 

 ~シャルロット Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第133話:クロエの決意

 

 ~永遠 Side~

 

 【イグニッションプラン】の事件をニュースで知ったワシ等は参加しているであろうセシリアとラウラの心配をしとった

 事件の事を知ってすぐに連絡をしたんじゃが向こうも混乱しておる様子で連絡が付かんかった

 仕方なく今は束さんが情報を集め終わるのを待っとる状態じゃが全員が気が気でなかった…

 織斑も訓練に集中出来とらん…かく言うワシもじゃ…畑はともかく鍛練に身が入らん…

 他のもんも同様じゃ…

 織斑先生も学園には戻らず束さんの調査を待っとる…学園よりも束さんの方が速くて正確な情報が手に入るからのぉ…

 皆が心配しとる中…

 

クロエ

「………」

 

 一番心配しとるのはクロエの様じゃの?

 心ここにあらずと言った所かの?

 ワシがそう思うとると…

 

「皆!!向こうの様子が分かったよ!!!」

 

全員

「!?」

 

 束さんが居間に駆け込んで来た

 

千冬

「それで状況は!?」

 

「うん…簡単に言うと…最悪と言っていい状況だね…」

 

千冬

「最悪だと!?」

 

 どうやら向こうはこちらの想像以上に酷い有様の様じゃの…

 

「イギリスの【サイレント・ゼフィルス】が奪われたのは皆ニュースで知ってるよね?その【サイレント・ゼフィルス】の追跡部隊が出されたそうだけどまだ見つかってないらしいよ。」

 

千冬

「そうか…だが…犯人はどうやってISを盗んだんだ?よりにもよってオルコットのいるイギリスを狙うとは…」

 

 確かにの…セシリアじゃったら襲撃犯なんぞ返り討ちに出来る筈じゃ…にも拘らずISを奪えたとなると…

 

永遠

「…犯人はセシリアがおらんタイミングを狙ったと言う事じゃな?」

 

千冬

「何!?」

 

「うん…事件が起きた時、セーちゃんはイギリス政府で打ち合わせをしてたらしいよ。」

 

千冬

「それではどうしようもないか…」

 

 現場におらんのではさしものセシリアでも何も出来んか…

 しかし…

 

永遠

「…そうなると犯人はセシリアの行動を知っておった可能性があるのぉ…」

 

全員

「!?」

 

「どう言う事!?」

 

永遠

「犯人にとって一番の障害は第5世代を持つセシリアじゃ…【サイレント・ゼフィルス】に限らず【イグニッションプラン】に出されておるISを狙うのならセシリアの行動を把握する必要がある筈じゃ…」

 

千冬

「言われてみるとそうだが………まさか!?」

 

「セーちゃんの行動をリークした奴がいるかもしれないって事?」

 

永遠

「あくまで可能性の話じゃ…じゃがそうでも考えねばあそこ迄手際よく行くとも思えん…」

 

千冬

「確かに火ノ兄の言う事にも一理あるな…束、そいつが居たと仮定して探す事は出来るか?」

 

「難しいね…電話やメールならともかく手紙や口頭で連絡を取り合ってたら流石の束さんでもお手上げだよ…」

 

千冬

「そうか…」

 

 そうじゃよな…手紙の内容なんぞ開ける時まで分からんし、イギリスにいる人間全ての会話を調べる事なんぞ誰にも出来ん…

 

「一応後でとーくんが言った事をセーちゃんには伝えておくよ。そうすれば向こうの方で怪しい動きをしていた奴を見つけられるかもしれないからね。」

 

永遠

「既に手遅れかもしれんがな…」

 

全員

「………」

 

 【サイレント・ゼフィルス】を奪う事に成功した以上リークした奴が何時までもおるとは限らん…いや、下手をすれば口を封じられておる可能性もあるのぉ…

 

「それとね皆…その…」

 

 ん?他にも話す事があるみたいじゃが…随分言いにくそうな顔をしとるの?

 束さんにしては珍しい…何かクロエをちらちら見とるが…

 ん?クロエ?

 という事は…

 

永遠

「…ラウラに何かあったのか?」

 

クロエ

「!?」

 

「…うん…その子、【イグニッションプラン】に参加しててね…襲撃犯を捕まえようとして返り討ちにあったそうなんだよ…」

 

千冬

「何だと!?」

 

 やはりラウラの事じゃったか…

 クロエとラウラの関係は束さんも知っとるからな…

 

クロエ

「………」

 

 じゃが肝心のクロエは複雑な表情をしとるの…

 吹っ切れたとはいえクロエ自身もラウラとどう接すればいいのかまだ決めかね取るからのぉ…

 

「怪我はしたけどラウラって子は無事だよ…」

 

千冬

「そうか…良かった…」

 

 織斑先生は安心しとるの…

 さて…

 

クロエ

「………」

 

 問題はクロエじゃな…

 仕方が無い…いい機会じゃ…クロエがラウラとどうなりたいか聞くとするか…

 ラウラの方は既に決めとるしな…と言うか外堀から埋めに来とるし…

 

永遠

「クロエよ…主もいい加減決めたらどうなんじゃ?」

 

クロエ

「に、兄様!?」

 

永遠

「正直に言って今の主は見てられんぞい?」

 

 今迄は当人達の問題じゃからと思うて口出しせんかったが…ココまで悶々としとると流石に放っておけんわい…

 

永遠

「ラウラが心配なら会ってきんさい…どうでもいいならそげな顔するでない…」

 

クロエ

「うっ…」

 

 ワシがそう言うと黙り込んでしもうた

 じゃが…

 

一夏

「なぁ?今のどういう事だ?ラウラとクロニクルさんって仲悪かったのか?」

 

 この中で二人の関係を知らん織斑が口を挟んできおった

 

千冬

「そう言えばお前は知らなかったか…」

 

一夏

「え?何が?」

 

千冬

「う~む…クロニクル…コイツに教えてもいいか?」

 

クロエ

「…はい…」

 

 織斑先生がクロエに許可をとったか…

 じゃが、ワシの言った事を考えておるのかから返事じゃな…

 その間に織斑は姉からクロエとラウラの素性を説明されとった

 

千冬

「………という訳だ。」

 

一夏

「…ラウラとクロニクルさんにそんな事情が…」

 

千冬

「分かってると思うが言いふらすなよ?」

 

一夏

「分かってる!!誰にも言わねえよ!!!」

 

 ふむ…あの様子では大丈夫じゃろう…

 さて…となると…

 

クロエ

「………」

 

 いよいよクロエの事なんじゃよな…

 未だにワシの言った事を考えとるみたいじゃし…

 どうするべきかな…

 と思っとると…

 

クロエ

「束様…兄様…」

 

 クロエが顔を上げてワシと束さんの名を呼んだ

 

永遠

「何じゃ?」

 

「な~に?」

 

クロエ

「…私は…今でもあのドイツと言う国が許せません…吹っ切れた今でもそれは変わりません…」

 

全員

「………」

 

 まあ、そうじゃよな…

 【VTシステム】の事と言い…クロエやラウラの生まれの事と言い…あの国はほんに碌な事をせんのぉ…

 

クロエ

「ですが…あの子自身には…もう何も蟠りはありません…」

 

永遠

「ではどうしたい?」

 

クロエ

「まだ分かりません…ですが…今はあの子に会って…安否を直接確認したいです!!!」

 

永遠

「よく言った!!!」

 

「行ってきなよ!!!」

 

クロエ

「ハイ!!!」

 

 ワシと束さんが最後の一押しをするとクロエは力強く頷いた

 そんなクロエを簪や本音、織斑姉弟も微笑んでおった

 そして…

 

クロエ

「では行きますよ!!【裂空丸】!!!

 

 クロエは自分の専用機の名を呼んだ

 

 ~永遠 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第134話:風の翼!裂空丸飛翔!!

 

 ~束 Side~

 

クロエ

「では行きますよ!!【裂空丸】!!!

 

 ドイツに行く事にしたクーちゃんは自分の専用機の名前を呼んだ

 すると…

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

 

 庭のハッチが開いた

 そして、そこから出て来たのは…

 

全員

「え!?」

 

 《キュアアアアアアアァァァァァァァァァッ!!!》

 

 それは巨大な鳥…

 緑を基調とした白の装飾がされた鳥だった…

 のんちゃんの【ワイバーン・ガイア】程じゃないけど従来のISのおよそ3倍はある大きさがあった…

 コレがクーちゃんが自分の専用機として作り上げたIS…【裂空丸】

 

一夏

「な、な、な、何だコレはあああああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

千冬

「巨大な…鳥だと!?」

 

「綺麗…」

 

 あらら~…ちーちゃん達驚いてる…

 やっぱ驚くか~…束さんでさえ完成したこれを見た時は驚いたもんな~…

 

「コレがクーちゃんの第5世代【裂空丸】だよ。」

 

千冬

「【裂空丸】…」

 

本音

「【ワイワイ】程じゃないけどこれもおっきいね~…」

 

 そうなんだよね~…しかもコレって【ワイバーン・ガイア】と同じで中に乗り込んで操縦する仕様になってるんだよね…

 

千冬

「束…お前デカ物は布仏の【ワイバーン・ガイア】だけじゃなかったのか?」

 

「そうだよ?」

 

千冬

「ならこれは何だ?」

 

「【裂空丸】はクーちゃんが自分用に作ったISだから束さんは何も知らないよ。」

 

千冬

「クロニクルが?」

 

「うん!!」

 

 でもほんと驚いたよ…

 【黒鍵】をこんな姿に変えちゃうなんてさ…

 けど…クーちゃんの『アレ』の事を考えるとこっちの方がいいのかもしれないんだよね…

 

 ………

 ……

 …

 

クロエ

「これで良し!!!」

 

 束さん達が【裂空丸】について話している間にクーちゃんはコンテナを用意していた

 アレって確か…

 

クロエ

「では皆さん!!行って参ります!!!」

 

 そんな事を考えてる間に準備を終えたクーちゃんは【裂空丸】に乗り込んだ

 

永遠

「気ぃつけるんじゃぞ!」

 

一夏

「ラウラに元気出せって言っておいて下さい!」

 

千冬

「先に言われたか…ゴホン!なら…クロニクル、向こうに着いても油断するなよ!!ラウラのいる場所は条約違反を平然とやる連中のたまり場だからな!!!」

 

 まあ、確かにそうだけど…クーちゃんがあんな連中に後れを取ることは無いよ

 

クロエ

「ハイ!!忠告ありがとうございます!!では…【裂空丸】発進!!!」

 

 《キュアアアアアアアァァァァァァァァァッ!!!》

 

 皆からの激励と忠告を受けてクーちゃんは島を飛び立った…

 

 ~束 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

永遠

「フ~…やっと行きおったか…」

 

「だね~…」

 

 ん?何だコイツ等?

 まるでクロニクルが始めから行くつもりだったように言うな?

 

千冬

「束、火ノ兄、どう言う事だ?」

 

永遠

「そのままの意味じゃよ…クロエは初めからラウラに会うつもりでいたんじゃよ。」

 

一夏

「え?」

 

「そそ!でなきゃ束さん達に隠れて『あんな物』用意しないよ。」

 

全員

「あんな物?」

 

 更識と布仏も知らないみたいだな…

 

「…あ!?もしかして一緒に持ってったコンテナの事?」

 

 そう言えばそんな物があったな…【裂空丸】の足で掴んで持って行ったが…

 

千冬

「お前達アレの中身を知ってるのか?」

 

永遠

「うむ…アレは『ラウラの第5世代』じゃよ。」

 

全員

「へ?………何いいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

 

 ラウラの…第5世代だと!?

 

千冬

「一体いつから…」

 

 あの二人の間には大きな溝がある…ちょっとやそっとじゃ埋まる様な溝じゃない…

 それほどまでにあの二人の関係は複雑だ…

 現にラウラは火ノ兄とは何とか良好な関係を築けてはいたが肝心のクロニクルとは何も進展してはいなかった

 それを…まさかクロニクルの方から…

 

「クーちゃんはね…本当はとっくにラウラって子を許してたんだよ…でも…その事に対して中々素直になれずにいたんだよね~…」

 

永遠

「ウム!じゃから隠れて『アレ』を作っておった。いつか腹を割って話す時が来た時に渡そうとしておったんじゃろうな…ま!ワシと束さんにはバレバレじゃったがな!!カカカカッ!!」

 

「ニャハハハハッ!!その通り!こちとら伊達にクーちゃんの家族をやってな~いよ♪」

 

全員

「………」

 

 全くこの二人は…

 クロニクル…いい家族を持ったな…

 

 ~千冬 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第135話:巨鳥襲来!?

 

 ~ラウラ Side~

 

ラウラ

「ハァ…ハァ…次だ!!」

 

クラリッサ

「隊長!!いい加減休んでください!!」

 

 そう言って私を窘めるのは副隊長のクラリッサだ

 私はあの【イグニッションプラン】の事件の後、本国に戻るとすぐに訓練を始めた

 あの時…私がもっと強ければ犯人を逃がすような事は無かった…

 そう思うと自分の不甲斐無さに腹が立つ!!

 だから私は毎日訓練に明け暮れていたのだが、クラリッサや他の隊員達はそんな私に休む様に言って来ていた

 

クラリッサ

「このままでは本当に倒れてしまいますよ!?少しは休む事も必要です!!」

 

ラウラ

「だが私は…少しでも強くなりたいんだ!!」

 

クラリッサ

「それは分かりますがやり過ぎです!!ものには限度があります!!」

 

ラウラ

「ぐっ…しかし…」

 

クラリッサ

「………」

 

 クラリッサの無言の圧力に気圧された

 今日はクラリッサも引くつもりが無い様だな…

 

ラウラ

「…分かった…今日はもう休む…」

 

クラリッサ

「ホッ…」

 

 ココまで心配されては折れる他無い…

 私は訓練を終わらせて部屋に戻ろうとしたのだが…

 

 ヴィ―――ッ!!ヴィ―――ッ!!ヴィ―――ッ!!

 

ラウラ&クラリッサ

「警報!?」

 

 基地内に緊急警報が鳴り響いた

 

ラウラ

「何事だ!?」

 

通信兵

『当基地に接近中の未確認機の存在を確認!!総員警戒態勢に入れ!!繰り返す総員…』

 

ラウラ

「未確認機だと!?」

 

クラリッサ

「隊長!?」

 

ラウラ

「休もうと思ったが仕方ない!!クラリッサ!指令室に行くぞ!!」

 

クラリッサ

「了解!!!」

 

 私は現状確認の為、クラリッサと指令室に向かった…

 

 ………

 ……

 …

 

ラウラ

「司令!!!」

 

司令官

「ボーデヴィッヒか!?」

 

 私達が指令室に到着すると室内は慌ただしく動く隊員達がいた

 どうやら未確認機とやらはかなり面倒な相手の様だな…

 

ラウラ

「ココに接近している者がいるとの事ですが?」

 

司令官

「その通りだ。監視衛星で偶然発見出来たものでな…下手をすれば気付かない可能性があった…」

 

ラウラ

「それはどう言う事ですか?向かって来ているのはISなのでしょう?」

 

司令官

「ISかどうか判断がつかんのだ…口で説明するよりもお前達も見て見ろ…監視衛星から送られた映像がコイツだ!」

 

 そう言って司令はモニターの1つに監視衛星からの映像を映した

 そこに映っていたのは…

 

クラリッサ

「コレは…」

 

ラウラ

「…鳥?」

 

 緑色の鳥だった…

 目標の速度が速いせいか画像はかなりぼやけているが全体の形状は把握出来た…

 コレは鳥だ…

 だが、この鳥は衛星から確認出来るほどのサイズの上に鳥の速度にしては速すぎる…だから監視の目に止まったんだろう

 

司令官

「こんな巨大な鳥など見た事も聞いた事も無い…しかも、この鳥は真っ直ぐこの基地に向かって来ている。故に警戒態勢を取ったという訳だ。」

 

ラウラ

「成程…それで私達はどうしましょう?迎撃に出ますか?」

 

司令官

「うむ、【黒兎隊】は直ちに出撃してくれ。目標が敵対行動を取った場合は即座に排除しろ!!」

 

ラウラ&クラリッサ

「了解!!!」

 

 私は司令に敬礼をするとクラリッサと共に指令室を後にしようとした

 だが…

 

クラリッサ

「お待ちください隊長!!」

 

ラウラ

「ん?」

 

 クラリッサが呼び止めた

 何だ?

 

クラリッサ

「隊は私が率います。隊長は先にISの整備を行って下さい!」

 

ラウラ

「…え?」

 

 何を言ってるんだ?

 

クラリッサ

「連日の訓練でISがボロボロじゃないですか!!補給もしなければなりませんし隊長は先に整備室に向かって下さい!!」

 

ラウラ

「あ…」

 

 そうだった…

 ここ最近は訓練漬けでISの整備も必要最低限のものしかしてなかった…

 それにさっきまで訓練をしてたからSEも空だ…

 

クラリッサ

「分かりましたね?」

 

ラウラ

「…はい…」

 

クラリッサ

「司令、そう言う訳ですので隊は私が率いて出撃します。」

 

司令官

「そう言う事なら仕方が無いか…ボーデヴィッヒの訓練については私もやり過ぎだと思っていたが暫くは大丈夫だと思って好きにさせていたがこのタイミングで緊急出撃になるとは…」

 

ラウラ

「申し訳ありません…」

 

司令官

「タイミングが悪かっただけだ。気にするな。それよりも早く整備に向かえ。」

 

ラウラ

「…は…」

 

 私は隊の事をクラリッサに任せ整備室へと向かった…

 

 ………

 ……

 …

 

ラウラ

「クソッ…まさか訓練が原因で出撃出来ないとは…クラリッサ達の言う通り適度に休んでおけばよかった!!」

 

 私は整備室に向かいながら自分自身に悪態を吐いていた

 今の自分が本当に情けない…部下だけを戦わせて何も出来ない自分が本当に腹が立つ!!

 だが、今はそんな事を愚痴っている暇はない!!

 急いで【レーゲン】の整備をして貰わなければ…

 

ラウラ

「…終わるまで何事も無ければいいが…」

 

 私は謎の鳥の迎撃に出向いたクラリッサ達を心配していた

 だが、その時…

 

「…ラウラ…」

 

ラウラ

「!?」

 

 私の名を呼ばれた

 顔を上げた私の前に一つの人影が立っていた

 

ラウラ

「何者だ!!!」

 

 コイツが私を呼んだのか…しかし…今の声…どこかで聞いた事が…

 私が声の主が誰かを思い出しながら目の前の影を警戒していると影はこちらに近づいて来た

 

ラウラ

「………」

 

 私は警戒を強めていった

 だが、影が近づくとその顔が見えて来た…

 それは…

 

ラウラ

「!?…あ、貴方は!?」

 

 そう、そこにいたのは…

 

ラウラ

「『姉上』!?」

 

 ~ラウラ Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第136話:再会する姉妹

 

 ~ラウラ Side~

 

ラウラ

「…あ、姉上…何故貴方がココに…」

 

 私は混乱していた…

 謎の巨大な鳥が接近しているという事で基地内は混乱にみまわれていた

 そんな中、すぐに出撃出来ない私はISを急いで整備しようと整備室に向かっていたのだが、まさか姉上が現れるなんて…いや、それ以前に姉上はどうやってココに来たんだ?

 この基地はドイツでもトップクラスのセキュリティーを誇っているのに…

 

クロエ

「…『姉上』…ですか?」

 

ラウラ

「!?」

 

 そ、そうだった!?

 姉上と言う呼び方は私が勝手にそう呼んでいるだけだった

 兄上と違って姉上には許しを貰っていなかった

 

ラウラ

「す、すみません!!クロニクルさん、でしたね…」

 

クロエ

「………」

 

ラウラ

「………」

 

クロエ

「………まあいいですよ?」

 

ラウラ

「…え?」

 

クロエ

「私をそう呼びたいなら構いませんよ?」

 

 今…この人はなんて言ったんだ?

 私が…この人を『姉』と呼んでいいと言ったのか?

 

ラウラ

「ほ、本当に…いいんですか?私が貴方にそう呼べば…貴方は…」

 

 この人は私の『影』に戻ってしまう

 そうだ…初めから分かっていた事だった…私のこの想いは矛盾していた…

 この人は『クロエ・クロニクル』と言う人間…

 私の姉になれば私の『失敗作』と言うレッテルを再び張る事になってしまう…この人に…そんな思いをもう一度させる訳にはいかないのに…

 私はこの人の妹になりたいと…我儘を言ってしまったんだ

 

クロエ

「貴方の失敗作になるって言いたいんですか?それがどうかしたんですか?」

 

ラウラ

「…え?」

 

クロエ

「確かに私は貴方の失敗作です。ですがそれは私が気にしていた事です。気にしなくなればどうでもいい事なんですよ。」

 

ラウラ

「………」

 

クロエ

「私はもう吹っ切れました。貴方を私の『妹』として認める事にしたんです。」

 

ラウラ

「!?…い、妹?私が…貴方の妹…」

 

クロエ

「ハイ♪ですから貴方のお姉ちゃんとして来ました♪【イグニッションプラン】での事は聞き及んでいます。怪我はもういいんですか?」

 

ラウラ

「ぁ…ぁ…ハイ!!!」

 

 私を妹と認めてくれただけでなく…心配まで…

 私は込み上げてくるものを必死に我慢した

 

クロエ

「…さて、行き成りですみませんが少し付き合って下さい。」

 

ラウラ

「…え?あ、ハイ…」

 

 私が落ち着くと姉上は歩き出した

 一緒に来るように言われた私はそのまま着いて行った…

 

 ………

 ……

 …

 

ラウラ

「ココは…」

 

 姉上に連れられた場所は私達がISの訓練を行っている訓練場の1つだった

 部下達が出撃している時に本当はこんな所に来ている暇は無いんだが…姉上に言われては断れなかった

 だが…

 

ラウラ

「あの…姉上…折角会いに来てくれたのは本当に嬉しいのですが、実は現在緊急警戒態勢に入ってます…この基地に向かっている謎の未確認物体の迎撃に私も出向かなければならないんです…」

 

クロエ

「…謎の未確認物体ですか?それはもしかして『コレ』の事では無いですか?」

 

ラウラ

「え?」

 

 パチンッ!

 

 姉上が指を鳴らすと…

 

 ブゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

ラウラ

「!?…コ、コイツは!?」

 

 目の前に突然現れたのは…『あの鳥』だった!?

 

 ~ラウラ Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第137話:兄からの贈り物 緑の双刃と妖刀

 

 ~ラウラ Side~

 

 光学迷彩でも使っていたのか目の前に現れたのはこの基地に接近中のあの巨大な鳥だった…

 

クロエ

「この子は【裂空丸】…私の第5世代ISですよ。」

 

 【裂空丸】…まさか…姉上のISだったなんて…

 考えてもみれば第5世代と言うならあの外見とサイズも納得出来る…本音の【ワイバーン・ガイア】だってこの鳥以上のサイズだった

 でも、あれ?

 

ラウラ

「それなら…基地に向かって来ているあの鳥は!?」

 

クロエ

「アレはこの子の『分身』ですよ。」

 

ラウラ

「え?ぶ、分身!?」

 

 パチンッ!

 

 姉上が再び指を鳴らすと空中にモニターが映し出された

 そこに映っていたのは…

 

ラウラ

「クラリッサ…皆…」

 

 巨大な鳥…いや、【裂空丸】に挑む【黒兎隊】の皆だった

 

クロエ

「いい部下を持ってますね?」

 

ラウラ

「え?」

 

クロエ

「自動操縦でオリジナルの5分の1の力しか持たない分身とはいえ【裂空丸】を追い詰めているんですからね。」

 

ラウラ

「ア、アレで5分の1!?」

 

 私は姉上の言葉が信じられなかった

 【黒兎隊】が全員でかかって何とか優勢だと言うのに…あの分身は本体の5分の1の力しか持たないだと!?

 それなら、私の目の前にあるオリジナルの【裂空丸】は一体どれだけの力を持ってるんだ!?

 

クロエ

「この【裂空丸】の特殊能力は周囲のエネルギーを用いて『分身体』を作り出す能力です。分身体は集めたエネルギーを固定化してますので実体がありますし、特殊なシステムを使っているのでレーダーの類も本物と認識します。」

 

ラウラ

「………」

 

 信じられない事だが姉上の言う通りなら納得出来る…

 実体を持つ分身…だからこちらの監視レーダーに引っかかったのか…

 そして本体は姿を隠してこの基地に侵入した…そう言う事だったのか…

 まるで日本の『忍者』のようなISだ…

 だが、そうなると…

 

ラウラ

「姉上…何故そこまでしてこの基地に?私に会いに来るだけならココまでする必要が無いと思うのですが…」

 

 そう、姉上の行動が今一分からないんだ

 現にこの基地の戦力は私の【黒兎隊】だけでなく他の兵士達も【裂空丸】の分身の迎撃に出動している

 分身を囮にしてまで基地をここまで手薄にしたのは何故だ?

 

クロエ

「会いに来るだけならここまではしませんよ。この基地の兵士達に出払って貰ったのには訳があるんですよ。」

 

ラウラ

「訳?」

 

クロエ

「ええ、まず私はこの国が心底嫌いです。こんな国滅んでしまえばいいとさえ思っています。」

 

ラウラ

「………」

 

クロエ

「別に何も関係の無い一般人まで死んでほしいなんて思ってはいませんよ?私が嫌いなのは『ドイツ』と言う国と私みたいな人間を作った上層部のゴミ共だけです。だから私は貴方以外のドイツの人間とは会いたくないんですよ。例えそれが…同じ『鉄の子宮』から生まれた人であっても…このドイツと言う国では会いたくないんです。他の国でしたら別にいいんですけどね。」

 

ラウラ

「………」

 

 姉上はそこまでこの国を嫌っているのか…

 いや、もしかしたら私も同じ考えを持つ事になっていたかもしれないんだ…

 そう思うと何も言えなかった…

 

クロエ

「次の理由ですが…事前に調べたところ、貴方はここ最近訓練漬けでISの整備も必要最低限しかしてないそうですね?」

 

ラウラ

「うっ…ハ、ハイ…」

 

 姉上は知ってるのか…

 

クロエ

「だからあのタイミングで分身をこの基地に近づければ貴方以外の隊員は分身の迎撃に出向き、貴方は整備の為に残ると思ったんですよ。」

 

 この状況は全て計算の上だったのか

 

クロエ

「お陰で今この基地には私の邪魔が出来そうな人は一握りしかいません。ですが分身もあの様子ではいつまで持つか分かりませんね…用件をさっさと済ませましょう。」

 

ラウラ

「………」

 

 一体…用件とは何なんだ…

 私がその事を考えていると…

 

 ドンッ!

 

ラウラ

「!?」

 

 【裂空丸】が足に掴んでいたコンテナを私の前に置いた

 

ラウラ

「あの…コレは?」

 

クロエ

「貴方の『第5世代』です。」

 

ラウラ

「なっ!?」

 

 第5世代!?

 私の!?

 

クロエ

「今の貴方には必要だと思います。束様が造った物では無いので恐縮ですが受け取って下さい。」

 

ラウラ

「え…博士じゃ無いって…ではこれは…姉上が!?」

 

クロエ

「そうです。ではご覧下さい。」

 

 そう言うとコンテナが開いた

 すると…

 

クロエ&ラウラ

「え!?」

 

 私だけでなく姉上も驚いていた

 何故ならコンテナから出て来たのは…

 

ラウラ

「これは…」

 

 一方は長い柄とその両端に緑色の羽根の様な刃が取り付けられた双剣…

 もう一方は刀身が昆虫の羽のような透き通った模様が刻まれた異質な刀…

 この二本は以前どこかで…

 

クロエ

「【疾風の双刃カムイ・ハヤテ】と【黒蟲の妖刀ウスバカゲロウ】!?」

 

 そうだ!?思い出した!?コレは臨海学校の時に兄上に教えて貰った【剣刃(つるぎ)】の二つ…それも上位に位置する光と闇の緑の【剣刃(つるぎ)】だ!?

 

クロエ

「な、何故コレが入ってるんですか!?」

 

 どう言う事だ?姉上が入れてたんじゃないのか?

 私達が驚いていると…

 

永遠

『あ~…クロエや?聞こえるかの?』

 

クロエ

「兄様!?」

 

 兄上の声が流れ始めた

 まさかコンテナの中に【剣刃(つるぎ)】を仕込んだのは兄上の仕業なのか?

 いや、兄上しかいないか…【剣刃(つるぎ)】は兄上にしか作れないんだからな…

 

永遠

『クロエよ、これを聞いとると言う事は恐らく隣にラウラがおるじゃろ?』

 

クロエ&ラウラ

「!?」

 

永遠

『お主がこのISをラウラに渡すという事は主等の仲違いも終わったという事じゃろう。この二本の【剣刃(つるぎ)】はそんなお主等へのワシからの餞別じゃ。』

 

クロエ&ラウラ

「………」

 

 兄上は…姉上の気持ちに既に気付いておられたのか…

 

クロエ

「…兄…様………束…様…」

 

 姉上…泣いておられる…

 そうか…兄上一人でこんな手の込んだ仕掛けが出来る筈が無い…篠ノ之博士も協力しているのか…

 だから姉上はお二人の気持ちが嬉しくて…

 

永遠

『さて、お主等にも余り時間は無いじゃろうから手短に済ませるぞい。』

 

 少しして兄上の声が再び流れ始めた 

 確かに時間は余りない…姉上の侵入が何時までもバレない訳では無い…もし他の連中に見つかったら私は姉上を最悪拘束しなければならないからな…

 それでも兄上はこれを聞いて姉上が泣かれる事も考えて少し間を開けておいてくれたんだろうな…

 

永遠

『お主ら二人に用意した【剣刃(つるぎ)】は【疾風の双刃カムイ・ハヤテ】と【黒蟲の妖刀ウスバカゲロウ】の二振りじゃ。以前話したと思うがこの二本は緑属性の光と闇の【剣刃(つるぎ)】じゃ。所有者に関してじゃが、それはお主ら二人で話し合って決めんさい。どっちがどの【剣刃(つるぎ)】を選ぶのかは自由じゃ。選んだ方を持てばそのままその【剣刃(つるぎ)】は所有者として登録する様にしてある。一応忠告しておくが一人一本じゃぞ。欲張って二本とも取ろうとせん事を望むぞい。ではこれにてワシからのメッセージは終わりじゃ。クロエよ、土産話を楽しみにしとるぞ♪』

 

 最後にそう締めくくって兄上からのメッセージは終わった…

 

クロエ

「…兄様…楽しみにしててくださいね♪」

 

ラウラ

「姉上…」

 

 姉上は笑っていた…

 兄上の想いが本当に嬉しいんだろう…私も嬉しい…兄上は私達の仲が良くなる事を望んでいてくれたのだから…

 

クロエ

「ラウラ…」

 

ラウラ

「ハイ!!!」

 

クロエ

「貴方は【カムイ・ハヤテ】でいいですか?」

 

ラウラ

「…え?」

 

 姉上はいきなり何を…

 【カムイ・ハヤテ】は…『光』の【剣刃(つるぎ)】!?

 

クロエ

「私には『闇』が合っています。貴方はそちらを使って下さい。」

 

ラウラ

「!?」

 

 姉上はそう言って【ウスバカゲロウ】に手を伸ばした

 だ、だが…

 

ラウラ

「だ…駄目です!!!」

 

クロエ

「え!?」

 

 私は姉上を押しのけるとそのまま【ウスバカゲロウ】を掴んだ

 

クロエ

「何をしてるんですか!?」

 

 私の突然の行動に姉上は驚いていた…

 だが…姉上に【ウスバカゲロウ】を持たせる訳にはいかないんだ!!

 

ラウラ

「姉上は『闇』ではありません!!」

 

クロエ

「!?」

 

ラウラ

「姉上はこれまで私の影として苦しんできました…ですが、姉上も仰ったでは無いですか!!私の影である事などもう気にしないと!!」

 

クロエ

「確かにそう言いましたが…」

 

ラウラ

「姉上はもう『影』でも『闇』でも無いんです!! これからは『光』の中を生きて下さい!!」

 

クロエ

「…だからと言って貴方が【ウスバカゲロウ】を選ばなくても…」

 

ラウラ

「いいえ!!姉上には『光』の【剣刃(つるぎ)】を持っていて欲しいんです!!」

 

 そうだ…姉上はこれまで十分苦しんだ…犠牲になった姉妹達の分も一緒になって…

 そんな姉上がやっと光のある場所を歩いて行けるんだ…例え【剣刃(つるぎ)】の事でもこれ以上姉上に『闇』を近づけさせてはいけないんだ!!

 

クロエ

「…ラウラ…」

 

ラウラ

「それに私はもう【ウスバカゲロウ】を手にしました!もう所有者を変える事も出来ませんよ?」

 

 本当はあるんだが姉上が知っているとも限らないし…それに知っていても私は絶対に渡すつもりは無いからな!!

 

クロエ

「………ハァ…分かりました…」

 

 姉上も観念してくれたようだな!!

 

クロエ

「では【カムイ・ハヤテ】は私が使わせて貰います。本当に良いんですね?」

 

ラウラ

「ハイ!!!」

 

 そう言って姉上は残った【カムイ・ハヤテ】を手に取った

 すると…

 

 パァ~…

 

クロエ&ラウラ

「!?」

 

 【カムイ・ハヤテ】と【ウスバカゲロウ】が緑色の光を放った

 次の瞬間には2本ともナイフ位のサイズに縮んでいた

 コレは以前見たな…セシリア達の【剣刃(つるぎ)】も同じように小さくなって待機状態になったがアレと同じか…

 兄上…【黒蟲の妖刀ウスバカゲロウ】…大切に使わせていただきます!!!

 

 ~ラウラ Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第138話:姉妹の絆!ファントム・グルゼオン!!

 

 ~クロエ Side~

 

 兄様からの突然のサプライズには本当に驚きました

 ですが、私がココに来た本来の目的をまだ果たしてませんからそろそろ本題に入りましょう

 

クロエ

「では気を取り直して…貴方のISを見せましょう。」

 

ラウラ

「ハ、ハイ!!」

 

 私がそう言うと視線をコンテナに向けました

 そこには翼をマントの様にして覆っている漆黒のISがありました

 

クロエ

「コレが貴方の第5世代…【ファントム・グルゼオン】です。」

 

ラウラ

「【ファントム…グルゼオン】…」

 

 このISは兄様から提供して貰った【ドットブラスライザー】の中にあった【グルゼオン】と【ファントム】と言うLBXを元に開発しました

 ぶっちゃけて言えば【グルゼオン】に【ファントム】の翼を取り付けて名前も繋げただけなんですけど…これが中々様になってるんですよね…

 それに【グルゼオン】の頭って『黒い兎』に見えるんですよね…

 

ラウラ

「…これ程の性能とは…」

 

 渡した【ファントム・グルゼオン】のデータを見てその性能に驚いてますね…

 自分で造っておいて何ですが…私自身も出来上がったこの機体の性能に驚いてるんですからね…この2体のLBX…相性が良すぎますよ…

 

クロエ

「このISに貴方のISのコアを移植します。よろしいですか?」

 

ラウラ

「…それはありがたいのですが…本当によろしいのですか?私はドイツの軍人です。この機体の事を隠しておく事は出来ませんよ?」

 

クロエ

「構いません。教えた所でこの国に出来る事など何もありませんからね。」

 

ラウラ

「え?」

 

 ラウラの疑問も尤もですけど…そんな事初めから想定内なのですよ!!

 

クロエ

「この子にはセシリア様の【ハルファス・ベーゼ】と同じ【自己再生能力】を持たせています。」

 

ラウラ

「【ハルファス・ベーゼ】と同じ!?」

 

クロエ

「と言っても他の機能を優先させた為に再生速度は【ハルファス・ベーゼ】の更に半分しか持ちません。それでもこの機体は【ラインバレル】や【ハルファス・ベーゼ】と同じく『メンテを必要としない』機体に仕上がっています。」

 

ラウラ

「…メンテを…必要としない?」

 

 コレが私の対策!!メンテが必要無いなら整備マニュアルも必要無いんですよ!!

 

クロエ

「そうです。それにこの機体は本音様の【ワイバーン・ガイア】と違って私と束様しかアクセス出来ないように厳重にロックがかけられてます。無理にこじ開けようとすればデータは全部消えて、機体もコア諸共自壊するようにしてあります。勿論そうなっても束様から新しいコアが用意される事はありません。その事を伝えておけば彼らも下手な事はしないでしょう。」

 

ラウラ

「確かに…」

 

クロエ

「それに機体の解析が出来なければ整備と称してバラす事なんて出来ないでしょう?もし力づくでバラそうとしてもこの子は自身の能力で瞬時に再生します。つまり分解自体出来ないんですよ。」

 

 私が笑顔でそう言うとラウラは目が点になっていました

 コレでドイツは【ファントム・グルゼオン】に手出しが出来なくなります

 私と束様しかアクセス出来ず、無理に調べようとすればコア諸共消滅、更に構造を調べようとばらしても即座に再生…

 そんなリスクと無駄な事をこの国がする筈ありません…

 現状ではイギリスしか持っていない第5世代を世界でも一二を争う強欲で傲慢な国であるドイツがやる筈ありませんよ…

 

クロエ

「以上の事からこの国は第5世代を『ただ持っているだけ』になります。イギリスと違って束様が交渉した訳でもありませんし予備のコアを渡してもいませんから優遇される訳でも無いんですよ。あくまでラウラ・ボーデヴィッヒがいたのがたまたまこの国だったと言うだけなんです。もし、【ファントム・グルゼオン】で各国に圧力をかけたら今言った事を教えてあげますよ。そうすればこの国は恥をかくだけですからね。」

 

ラウラ

「………」

 

 それに束様が簪様の【打鉄弐式】を第5世代に改造する研究を行っていますし、他にも目をかけている方はいます

 ドイツが偉そうに出来る時間は僅かしかないんですよ…

 まぁ、イギリスの手前そんなに大っぴらには出来ないでしょうけどね…

 イギリスが【ハルファス・ベーゼ】で各国に圧力をかけたりすればドイツも同じ事が出来るでしょうけど生憎とイギリスはドイツと違って恥知らずではありませんし、そう言った事は絶対にしない誇り高い国です

 結果的にセシリア様のいるイギリスが最初に第5世代を持った国で安心しましたよ…本音様は日本人ですが国家代表でも候補生でも無いので関係無いですからね

 

クロエ

「では作業を始めたいと思います。貴方のISを貸して貰えますか?」

 

ラウラ

「あ、ハイ!!」

 

 私がそう言うとラウラは慌てて自分のIS【シュヴァルツェア・レーゲン】を展開しました

 私はすぐに【シュヴァルツェア・レーゲン】にアクセスするとコアの切り離しに取り掛かりました

 

クロエ

「…一応ロックは掛けてあるみたいですね?」

 

 まあ、この程度のセキュリティなど私や束様にとっては子供だましですね

 そんな事を考えている間にロックはアッサリ解除出来ました

 

ラウラ

「…こんなに早く…流石姉上です!!」

 

 妹に褒められるのは思いのほか嬉しいですね…

 もしかしたら兄様も同じ気持ちを味わっていたのかもしれません…帰ったらその辺りも聞いてみましょう

 

クロエ

「よしっと…後はこれを【グルゼオン】に移すだけですね。」

 

 私は取り外したコアをそのまま【ファントム・グルゼオン】に移植しました

 

クロエ

「ラウラ…【グルゼオン】に乗って下さい。初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)を行います。」

 

ラウラ

「分かりました!!」

 

 私の指示に従いラウラが【グルゼオン】に触れると【グルゼオン】は輝き、ラウラの身体に纏わりました

 そして、私は初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)の作業を始めました

 【ハルファス・ベーゼ】の時は【ブルー・ティアーズ】を直接改造した物でしたから初期化(フォーマット)は必要無かったのですが【グルゼオン】の場合はコアを移し替えましたから最適化(フィッティング)だけでなく初期化(フォーマット)も行う必要があるんですよね…

 まあ、そうなるだろうと思って特性のソフトを用意してますから予定より早く終わるんですけどね…

 

 ~クロエ Side out~

 

 

 

 ~ラウラ Side~

 

 姉上は私の第5世代の調整をあっと言う間に終わらせてしまった…正直、横で見ていた私は姉上が何をしていたのか全く分からなかった

 

クロエ

「後はコアが馴染むのを待つだけですね。」

 

ラウラ

「どの程度で終わりますか?」

 

クロエ

「そうですね~…今日中には終わると思いますよ?」

 

 私の質問に姉上は少し考えた後、答えてくれた

 今日1日…たった1日で終わるのか…

 

ラウラ

「姉上…私のISの事…本当にありがとうございます!!大切に使わせて貰います!!」

 

クロエ

「そう言って貰えると造った甲斐がありましたよ。ただ申し訳ないんですが…」

 

ラウラ

「はい?」

 

クロエ

「実はコレ…まだ『未完成』なんですよ…」

 

ラウラ

「………え?」

 

 今、姉上は何て言った?

 

ラウラ

「コ、コレが…未完成!?」

 

クロエ

「未完成と言っても機体本体は完成してます。」

 

ラウラ

「へ?」

 

 あ~良かった…機体の方は出来上がっていたのか…

 これ以上性能が上がるようなら私では使いこなせるか分からなかったからな…

 しかし…

 

ラウラ

「では未完成と言うのは?」

 

クロエ

「武装です。これに搭載する装備の1つがある理由で完成してないんです。今は束様がそれの研究をしていますから完成次第【グルゼオン】にも搭載する予定なんですよ。」

 

 そう言う事か…

 本体は完成していても武装が全て揃っていない…だから未完成と言ったのか…

 私からすればすでに完成された物にしか見えないんだがな…

 

クロエ

「未完成の物を持って来て申し訳ないのですが急いで渡した方がいいと思い持ってきました。本当にすみません…」

 

ラウラ

「あ、謝らないで下さい!!これ程の物を頂かる私の方が謝らないといけない程です!!」

 

クロエ

「そう言って貰えると気が楽になりますね…さて、これで私が出来る事は終わりました。私はそろそろ戻ります。」

 

ラウラ

「…そうですか…」

 

 折角和解出来たのだからもっと話をしたかったのだが仕方ないか…

 姉上は今、この基地に不法侵入している形になっている…これ以上長居していては見つかる可能性があるか…

 

クロエ

「時々IS学園に行きます。あそこなら気兼ねせず会えますよ。」

 

ラウラ

「!?…ハ、ハイ!!!」

 

 そうだ!IS学園なら何のしがらみも無く姉上と話せるんだ!!

 学生になってこんなに嬉しいと思ったのは初めてだ!!!

 

クロエ

「では私はこれで………おや?分身が敗れたようですね…丁度いいタイミングですね…」

 

ラウラ

「え!?」

 

 【裂空丸】の分身が倒された?つまりクラリッサ達が勝ったのか…

 姉上はクラリッサ達の戦況を言うとそのまま【裂空丸】に乗り込んだ

 

クロエ

「ラウラ…無理はしないで下さいね?」

 

ラウラ

「うっ…き、気を付けます…」

 

 姉上は最後に私に忠告をすると…

 

クロエ

「では…」

 

 ブゥゥゥゥゥゥゥン…

 

ラウラ

「!?」

 

 【裂空丸】の姿が消えた

 そして、一度だけ風が巻き起こったがアレは【裂空丸】が飛び立った時のものだったのだろう…

 

ラウラ

「………」

 

 私は暫くその場に立ち尽くしていた

 アレはもしかしたら幻だったのかと思ったが私の横には姉上が託してくれた【ファントム・グルゼオン】が確かにある

 だからあれは…夢でも幻でも無いんだ!!!

 

 ~ラウラ Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第139話:騒動後の大混乱

 

 ~ラウラ Side~

 

クラリッサ

「隊長!?」

 

ラウラ

「ん?」

 

 姉上が帰って暫くするとクラリッサ達【黒兎隊】が帰投した

 

ラウラ

「戻ったか…鳥は撃退したそうだな?」

 

クラリッサ

「あ、はい…それは倒せたんですが…その、妙な相手でして…」

 

 それからクラリッサは戦いの顛末を説明してくれた

 【裂空丸】の分身には手こずったそうだが全員で連携して倒す事には成功したそうだが、何故か墜落せずに霧散してしまったらしい

 そう言えば分身体はエネルギーを固定して作り出したものだそうだから倒されればそうなるか…

 

クラリッサ

「それで隊長?何故隊長はこんな所にいるんですか?」

 

ラウラ

「え?」

 

クラリッサ

「隊長はISの整備の為に残ったんですよね?それが何故アリーナにいるんですか?」

 

 あ…そうだった…

 何も知らないクラリッサ達からすれば私がココにいるのは不自然だった

 

クラリッサ

「それに【レーゲン】を出しっぱなしにしてますけど…見た所整備が済んでいるようには見えませんが?」

 

 う~む…クラリッサ達からの疑いの目が更に強くなってきたな…

 まあ、初めから隠しておける事でも無いし先に話してしまうか…

 

ラウラ

「クラリッサ…以前私の姉が見つかった事を話したのを覚えているか?」

 

クラリッサ

「…え?…はい…覚えてます…私達が生まれるより前に軍が廃棄処分したと言う方の事ですよね?腹の立つ話です!!!」

 

 クラリッサのその言葉に他の隊員達も頷いていた

 そうだよな…もしかしたら自分達もそうなっていたかもしれないんだからな…そう思うと他人事には感じられないよな…

 

ラウラ

「実はな…その姉上が今さっきまでココにいたんだ。」

 

黒兎隊

「………はい?」

 

ラウラ

「それとお前達が迎撃したあの鳥も私1人がこの基地に残る為に姉上が仕向けた物だ。」

 

黒兎隊

「………は?」

 

 私から聞かされた話に全員の目が点になっていた

 恐らく私が何を言ってるのか理解が追いつかないんだろうな

 

クラリッサ

「ちょ、ちょっと待って下さい!?隊長の話が本当なのだとしたら何故その人はそんな事をしたんですか!?隊長に会いに来るだけなら何故私達を遠ざけたんですか!?」

 

ラウラ

「理由は二つある…一つは姉上はこの国を心底嫌っている…だから私以外の人間には会いたくなかったそうだ…例え相手が同じ生まれをしたお前達でもだ…」

 

黒兎隊

「………」

 

 姉上の身の上を知ればクラリッサ達も何も言えない…篠ノ之博士が拾わなければ姉上も他の姉妹同様死んでいたんだから…

 

ラウラ

「もう一つの理由だが………コイツを私に渡す為だ!!!」

 

黒兎隊

「え?」

 

 カッ!!

 

黒兎隊

「!?」

 

 私は姉上から託された第5世代…【ファントム・グルゼオン】を展開した 

 

クラリッサ

「コ、コレは…まさか!?」

 

ラウラ

「コイツの名は【ファントム・グルゼオン】…姉上が私用に開発した『第5世代』だ!!」

 

黒兎隊

「第5世代!?」

 

ラウラ

「【イグニッションプラン】での顛末を知って私を心配した姉上が届けてくれたんだ。コイツを渡す為の時間を稼ぐ意味もあって囮を仕向けたんだ。」

 

黒兎隊

「………」

 

 姉上が来た事以上に驚いてるな…

 まあ、仕方ないか…現状では第5世代は2体しか確認されていないんだ…

 それも国家が所有しているのはイギリスの【ハルファス・ベーゼ】の1体だけ…

 その第5世代が自分達の目の前に現れたんだからな…

 さて、この機体の事を司令達にどう説明するかな…やはり正直に話すしかないか…

 

 ………

 ……

 …

 

司令官

「ではこれよりボーデヴィッヒと【黒兎隊】の模擬戦を始める!!」

 

ラウラ

「………」

 

 どうしてこうなった…

 いや、こうなるかもとは思ってはいたんだが…

 えっと確か…あの後指令室に戻って…鳥の正体が姉上のISだった事と姉上から託された第5世代の事を話したんだよな…

 私の話が終わると司令はすぐに政府や軍上層部にこの事を報告すると上の連中が飛んできたんだよな…

 それで詰め寄られたから姉上に言われた事を全部話したんだが…姉上の言った通り【ファントム・グルゼオン】の解析は出来なかったんだよな…オマケにばらそうとしたらすぐに修復されるんだからな…まさか姉上の言った通りの行動を取るとは思わなかったが技術者連中は相当悔しがってたな…

 念の為、姉上から忠告された【ファントム・グルゼオン】を使っての国際外交は止めておくように話しておいたが、それを聞いた途端役人連中が苦い顔をしてたな…多分やる気だったんだろうな…

 それで解析も分解も外交も出来ないと知ってせめて性能を知りたいと言って来たんだが、コアが馴染むまで動かせないと説明したら………次の日にこうなった訳だ…

 うん…こうなるのは当然だな…

 ハァ…

 

クラリッサ

「隊長!!手加減は無用です!!!」

 

ラウラ

「私を誰だと思っている!!お前達【黒兎隊】の隊長だ!!!」

 

 バサッ!!

 

 そう言って私は【ファントム・グルゼオン】の翼を広げた

 その姿を見て…

 

クラリッサ

「………死神…」

 

 クラリッサはそう呟いた

 確かにこの機体…外見が死神みたいに見えるからな…おまけに獲物も【ヘルサイス】と言う大鎌だしな

 

ラウラ

「さあ…行くぞ!!!」

 

 私は【ヘルサイス】を構え、クラリッサ達に向かって行った…

 

 ~ Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第140話:死神の猛威【ファントム・グルゼオンVS黒兎隊】

 ~三人称 Side~

 

 ガキィィィンッ!!

 

クラリッサ

「グゥッ!?」

 

 試合が始まると同時にラウラは先頭にいるクラリッサに向かって【ヘルサイス】で斬りかかった

 クラリッサの方もブレードで受け止めたのだが…

 

クラリッサ

(何てパワーだ!?受け止めただけでココまでの衝撃が来るなんて!?コレが噂の第5世代の力なのか!?)

 

 たった一撃で【ファントム・グルゼオン】が従来のISとは一線を画す機体であると理解した

 一方のラウラは…

 

ラウラ

(凄い!?これが【ファントム・グルゼオン】の力なのか!?コレで未完成の武装も実装したらどうなるんだ!?)

 

 ラウラ自身も【ファントム・グルゼオン】のその圧倒的な性能に驚いていた

 

ラウラ

(これ程の強さ…セシリアや本音を見て分かっていたつもりだったが認識が甘かった…コレは今までのISとは次元が違う…だが、姉上が託してくれたこの力…使いこなしてみせる!!!)

 

 気合を入れ直すと【ファントム・グルゼオン】を使いこなす為の戦いを再開した

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

 ドガァン!ドガァン!ドガァン!

 

黒兎隊

「ハァ…ハァ…」

 

 模擬戦が始まってからまだ10分ほどしか経過していないが【黒兎隊】はすでに半数がリタイアしており、残ったメンバーもクラリッサを始めとして肩で息をするほど疲弊していた

 一方…

 

ラウラ

「………」

 

 ラウラの方はまるで疲れておらずISも全くの無傷だった

 何故なら…

 

クラリッサ

「クッ!!撃てえええええぇぇぇぇぇっ!!」

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

 

 キキキキキキキキキキキキキキンッ!!

 

クラリッサ

「クソッ!!何て頑丈な『翼』なんだ!?」

 

 クラリッサ達の攻撃は【ファントム・グルゼオン】の閉じた翼によって全て弾かれているからだ

 【ファントム・グルゼオン】の翼はマントの様に閉じる事で全身を守る楯にもなっていた

 更に…

 

ラウラ

「…発射!!」

 

 ドギュゥンッ!ドギュゥンッ!ドギュゥンッ!

 

クラリッサ

「クッ!?」

 

 この状態の時は翼に内蔵されている6門のビーム砲による砲撃も可能となっていた

 つまり、【ファントム・グルゼオン】には未だどこの国も開発に成功していない『ビーム兵器』も搭載されていたのだ

 尤も同じビーム兵器ならセシリアの【ハルファス・ベーゼ】にもあるので造った束やクロエからすればさほど珍しい物でも無かったりする

 それはさておき…

 

ラウラ

「そろそろ終わらせるぞ!!」

 

黒兎隊

「!?」

 

 ラウラはこの模擬戦を終わらせる事にした

 ラウラがそう言った瞬間…

 

 ブゥン…

 

黒兎隊

「消えた!?」

 

 目の前にいた筈の【ファントム・グルゼオン】が忽然と姿を消した

 しかも…

 

クラリッサ

「ど、何処だ!?隊長は何処に消えた!?」

 

隊員

「だ、駄目です!?レーダーにもセンサーにも何の反応もありません!?」

 

クラリッサ

「何だと!?まさか『ステルス機能』まであるのか!?」

 

 肉眼で見つける事はおろかISのあらゆるセンサー類でも感知する事が出来なかった

 これこそが【ファントム(幻影)】の名を持つ由来…超高性能のステルス機能であった…

 そして、ラウラが姿を消すと…

 

 ズシャッ!!

 

隊員

「ガハッ!?」

 

クラリッサ

「!?」

 

 自分達の後ろから聞こえた声に全員が振り返った

 するとそこには一番後ろにいた隊員を【ヘルサイス】で斬り裂いたラウラがいた

 当然の事だが斬られた隊員はSEが0になってリタイアとなった

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

 その後…

 

アナウンス

『し、試合終了…勝者…ラウラ・ボーデヴィッヒ…』

 

 クラリッサ達はラウラを捉える事が出来ずあっと言う間に全滅させられてしまった

 この日からラウラは与えられた【ファントム・グルゼオン】を使いこなす為の訓練を始めるのだった

 一方でドイツ上層部は第5世代の【ファントム・グルゼオン】の性能に歓喜するがラウラに言われた事を思い出すと仕方なく自重する事にしたのだった

 尚、ラウラが以前使っていた【シュヴァルツェア・レーゲン】はそのままにするのももったいないので新しいコアを搭載し、副隊長のクラリッサの乗機となったのだった

 

 ~三人称 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第141話:淑女の亡命

 

 ~一夏 Side~

 

 クロエさんがラウラに新型を届けに行ってから10日が経った

 ドイツから戻ったクロエさんから師匠の用意していたサプライズプレゼントの事を聞いた時は本当に驚いた…まさかラウラのと合わせて【剣刃(つるぎ)】を仕込んでいたなんてな…

 でも師匠とクロエさんのお陰でラウラは無事に持ち直したらしいから本当に良かった

 千冬姉もそれを聞いて安心してIS学園に戻って行ったんだけど…

 

千冬

『…あの馬鹿…人が目を放した隙にサボりおって…説教フルコースの刑だ…』

 

 なんか物騒な事を呟いてたんだよな…箒の奴…大丈夫かな…

 で、俺はと言うと修行を中断してある場所に来ていた

 そこである人物と待ち合わせをしているんだ

 その相手は…

 

シャルロット

「一夏~♪」

 

「あ!いたいた!」

 

 鈴とシャルの二人だ

 

シャルロット

「待たせたかな?」

 

一夏

「そんなに待ってねえよ。」

 

「それならいいわ。じゃあ早速行きましょ。」

 

一夏

「そうだな…でもその前に…シャル…本当にいいんだな?」

 

 俺がそう聞くと…

 

シャルロット

「うん!!お父さんとは…お別れをしてきたよ!!頑張れって…言ってくれた!!」

 

 ハッキリとそう言った

 

一夏

「そうか…なら何も言う事は無いよ…行こうぜ。」

 

 そして俺達は集合場所にしていたビルへと入って行った

 そう、ココは以前シャルの亡命の手続きをしてくれたイリスさんのいる事務所のビルだった

 親父さんとの最期の会話をしたシャルが日本に戻って来ると連絡を受けた俺は師匠に事情を話して修行をいったん中断させて貰った

 これまで付き合ったから最後まで付き合いたいと頼んだら師匠の方もそれならいいと言ってくれたから俺はココに来ていた

 それから何故鈴もいるのかと言うと偶然シャルと空港で会って一緒に来たらしい

 まあ、鈴もシャルの事情はある程度知ってるみたいだからいいだろう

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

イリス

「お久しぶりですお嬢様。」

 

シャルロット

「あ、ハイ!!」

 

 事務所に入った私達を出迎えてくれたこの人がシャルロットの亡命の手続きをしてくれていたイリスさんか…

 

イリス

「それと…織斑一夏さんに…貴方は?」

 

「凰鈴音と言います。中国の代表候補生ですが今回はシャルロットの友人として付き添いで来ました。」

 

イリス

「そうですか…織斑さんと同じくお嬢様を心配して下さりありがとうございます!」

 

「ハイ♪」

 

 この人…普通に良い人みたいね…

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

 それからイリスさんはシャルロットの亡命の為の書類を持って来てくれた

 渡された書類をシャルロットは全部確認し始めた

 夏休みの前に一度目を通したそうだけどこう言うのは時間を開けたらもう一度見ておく方がいいのよね

 

シャルロット

「ハイ…全て大丈夫です。」

 

イリス

「ではサインをお願いします。」

 

シャルロット

「…ハイ…」

 

 確認を終えたシャルロットは書類にサインをした

 これで…

 

イリス

「ありがとうございます。コレで全ての手続きが終了しました。」

 

 シャルロットの亡命は成立した

 もうデュノア社も手が出せなくなった訳だけど…

 

シャルロット

「………」

 

 やっぱり複雑な気持ちみたいね…

 

イリス

「…では、こちらが用意したお嬢様の新しい戸籍になります。ココに書かれた住所が今後のお住まいになります。奥様のお墓もこの町に移してあります。」

 

シャルロット

「…分かりました…」

 

 新しい住所か…一体何処だろ?

 って…

 

「コ、ココは!?」

 

シャルロット&イリス

「?」

 

 よりにもよってこの町だなんて…

 

一夏

「どうしたんだよ鈴?」

 

「見れば分かるわ!アンタだってよく知る場所よ!!」

 

一夏

「え?…ゲッ!?」

 

 住所を見た瞬間、一夏も私と同じ反応をした

 

シャルロット

「どうしたの2人とも?ココって知ってる町なの?」

 

一夏

「知ってるも何も…」

 

「ココは永遠の住んでる町よ!!!」

 

シャルロット

「え?…えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 そう、シャルロットの新しい住まいは火紋島がある町なのよ!?

 

イリス

「あの…永遠と言うのはもしかしてもう1人の男性操縦者の…」

 

「そうです…火ノ兄永遠の事です!!」

 

イリス

「彼はこの町に住んでたんですか!?」

 

 この反応…どうやら知らなかったみたいね…

 考えても見れば亡命の手続きなんてすぐには出来ない…それこそ何か月も前から準備をしないといけない…

 永遠が世間に出て来たのはあのタッグ戦の時…それより前の情報は束さんが規制していたからこの人が知る筈無い…

 という事は…

 

「ただの偶然?」

 

一夏

「そうなんですか!?」

 

イリス

「ハ、ハイ!!勿論です!!彼の居場所を私達が知る筈ありません!!この町を選んだのは本当に偶然なんです!!」

 

 イリスさんは必死に弁明していた…本当に偶然が重なった結果みたいね…

 でも…

 

「イリスさん…永遠の居場所を本社に伝えるんですか?」

 

一夏&シャルロット

「!?」

 

 私の言葉に一夏とシャルロットが目を見開いた

 そう、コレで永遠の住んでる場所がデュノア社に知られた事になるからだ

 そう思ったんだけど…

 

イリス

「ご安心下さい。本社にこの事を報告するつもりはありません。」

 

一夏&鈴&シャルロット

「え?」

 

 断言した…何で?

 

イリス

「お嬢様の手続きが終了すると同時にこの支部を活動を停止します。私達もデュノア社を退職する手筈となっています。」

 

一夏&鈴&シャルロット

「なっ!?」

 

 とんでもない事を言って来た!?

 

 ~鈴 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第142話:父の真実

 

 ~シャルロット Side~

 

シャルロット

「会社を辞めるって…もしかして僕のせいですか!?」

 

 僕の亡命と同時に会社を辞めるというイリスさんに原因は僕自身にあると思った

 けど…

 

イリス

「それは違います。」

 

シャルロット

「え?」

 

イリス

「元々私を含めたこの支部の社員は今の会社に不満を持っているんです。」

 

シャルロット

「不満?」

 

 イリスさんはハッキリと否定すると理由を話し始めた

 

イリス

「社長が会社を率いていた頃は不満も無くとてもやりがいがあったんです…ですが…」

 

 そこまで言えば次に何を言おうとしているのか想像出来てしまった

 

イリス

「あの女が現れたせいでデュノア社は変わってしまいました…奴に反抗した者は全員クビにされ、真面な職に就く事すら出来なくされてしまいました…」

 

シャルロット

「………」

 

イリス

「そんな社員を1人でも救おうと社長は不満を持つ者を『左遷』と言う形で逃がしてくれていたんです。クビにされて路頭に迷うよりは最低限の収入が得られる分マシだと言って…確かにその通りでした…」

 

シャルロット

「お父さん…」

 

 そんな事までしてたんだ…

 子供の僕だけでなく…社員の皆も…守って来たんだ…

 

イリス

「その左遷先の1つがこの支部です。ココに集まった我々は社長に多大な恩義を感じています。そんな社長から秘密裏に連絡を受けた私達はお嬢様を逃がす為の準備を進めていました。」

 

シャルロット

「………」

 

イリス

「それが終わると同時に私達は証拠隠滅も兼ねて退社する事になっています。退社後の再就職先は既に社長が手配してくれているので何も問題はありません。」

 

シャルロット

「…イリスさん…」

 

イリス

「社長の下で働けなくなるのは残念ですが私達が恩を感じているのは社長個人であって会社ではありません。ですから今の会社を辞められて清々しています。ですからお嬢様が気に病む必要は無いのです。私達は自分の意思で辞めるんです。」

 

シャルロット

「そう…ですか…」

 

 イリスさん達が今日までデュノア社に残っていてくれたのは全部お父さんのお陰だったんだ

 でも、それも限界が来てしまったのか…

 

シャルロット

「イリスさん…今までお父さんの為…会社の為に頑張ってくれて…本当に…ありがとうございます!!!」

 

 僕にはこんな事しか出来ない…

 お礼を言うしか出来なかった…

 

イリス

「…そのお言葉だけでこれまでの苦労が報われます…」

 

シャルロット

「………」

 

イリス

「お嬢様…これから一人で生きて行くのは大変でしょうが負けないで下さい。社長は…お父上は何時でも貴方の事を想っている事を忘れないで下さい。」

 

シャルロット

「ハイ!!!」

 

 イリスさんからの激励に僕はいつの間にか涙を流していた…

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

シャルロット

「それじゃあイリスさん…」

 

イリス

「ハイ…お元気で…」

 

シャルロット

「お世話になりました。」

 

 僕達はイリスさんに見送られて事務所を後にした…

 その途中で…

 

「それでどうするの?」

 

シャルロット

「え?」

 

 鈴が話しかけて来た

 

「今からアンタの新しい家に行くのかって事。」

 

シャルロット

「あ…」

 

 そうだった…そこが僕の新しい家になるんだよね…

 まだ実感が沸いてないから思い付かなかった…

 

シャルロット

「うん…このまま行くよ…」

 

一夏

「じゃあ俺も一緒に行くぜ。師匠の所に戻るから目的地は一緒だからな。」

 

「私も永遠に挨拶するつもりだから一緒に行くわ。」

 

シャルロット

「うん、ありがとう。」

 

 こうして僕の第2の人生が始まった…

 お父さん…僕は頑張ります!!!

 

 ~シャルロット Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第143話:引っ越し挨拶

 ~シャルロット Side~

 

一夏

「師匠!!ただいま戻りました!!!」

 

永遠

「いい加減その呼び方は止めいと言うとろうが!!ったく…鈴、デュノア、久しいのぉ。」

 

「ええ、久しぶり♪」

 

シャルロット

「う、うん…」

 

 僕は今、一夏と鈴の案内で火ノ兄君の暮らしている島に来ている

 僕の新しい住まいとお母さんのお墓に行った後、一夏がどうせならって事で僕をこの島に連れて来てくれた

 一夏は夏休みの間は火ノ兄君の家に住み込みで弟子入りしているらしく、折角だからと連れて来てくれたんだ

 この島は織斑先生が言うには火ノ兄君の所有地だから本人の許可が無いと入れないんだけどそこは一夏と鈴が事情を説明してくれたお陰で火ノ兄君もアッサリ許可してくれた

 でも…

 

本音

「シャルルン元気してた~♪」

 

シャルロット

「う、うん…元気だよ…」

 

 まさか簪と本音もいたなんて…

 しかも…

 

「リーちゃん久しぶりだね~♪」

 

「お久しぶりです♪」

 

 まさか篠ノ之博士もいるだなんて…

 確かに博士が火ノ兄君の家にいた事は聞いていたけど【ワイバーン・ガイア】の一件で出て行ったって織斑先生は言ってたのに…本当は残ってたんだ…

 

「それと…君がシャルロット・デュノアだね?」

 

シャルロット

「ハ、ハイ!!こ、この度、この町で暮らす事になりました!!よろしくお願いします!!!」

 

「その挨拶は束さんじゃなくてとーくんに言うべきでしょ?」

 

シャルロット

「そ、そうでした!?」

 

 博士の言う通りだった…

 では改めて…

 

シャルロット

「火ノ兄君、ご近所…て距離じゃないけどこの町で暮らす事になったんだ。よろしくお願いします。」

 

永遠

「ウム、よろしゅうな。」

 

 よかった…火ノ兄君も受け入れてくれた…

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

「…でも驚いた…まさかシャルロットの引っ越し先がこの町だったなんて…」

 

シャルロット

「驚いたのは僕も同じだよ。ココが火ノ兄君の住んでる場所だったなんて思ってもみなかったよ。」

 

「そうよね~…偶然ってホント怖いわよね~…」

 

 それから僕達は他愛無い話を始めた

 とは言っても大半が僕の引っ越し先に関する事だけど…

 ちなみにココにいるのは女性陣だけで火ノ兄君は畑仕事、一夏は修行に向かった

 後で一夏がどんな修行をしているのか見せて貰おう

 火ノ兄君考案らしいからどんなものか気になるんだよね

 僕がそんな事を考えながら話していると…

 

「そう言えばリーちゃんは何時までココにいるの?」

 

「私ですか?ん~…」

 

 博士が鈴の今後を聞いて来た

 確かにこの中で鈴だけが予定が決まって無いんだよね

 

「国にはもう報告に戻ったし…(ヤバ!戻って来るのが早すぎたわ!考えて見るとこっちに戻っても行く場所ってココか学園、後は弾達の店くらいしか無かったわね…でも学園にはまだ箒がいるだろうし…正直アイツとはあんまり関わりたくないのよね…かと言って弾の店に入り浸る訳にもいかないし…となると…)」

 

 なんか凄い悩んでる

 鈴が悩んでいると…

 

「それなら夏休みの残りはココにいない?」

 

全員

「え?」

 

 博士がそんな事を提案して来た

 でも…

 

「リーちゃんはココに泊った事もあるし、いっくんやかんちゃん達もいるから退屈しないでしょ?」

 

「それはそうですけど…」

 

 家主の火ノ兄君の許可も取らずに決めちゃっていいのかな?

 

「それにさ~…」

 

「ハイ?」

 

「リーちゃんも箒ちゃんとは会うの嫌でしょ?」

 

「いいっ!?」

 

 博士の一言に鈴は目を見開いた

 もしかして図星なの?

 

「別に隠さなくてもいいよ。今の箒ちゃんは束さんも会うのが抵抗があるくらいだからね。何であんなに歪んじゃったのかな~…」

 

 後半は愚痴になってる…

 

「実のお姉さんの束さんがそこまで言う程ですか…」

 

「うん…少し前までちーちゃんがいたんだけど…そのちーちゃんもあれは矯正させるのは無理だって言ってたからね…」

 

「千冬さんまで…」

 

 篠ノ之さん…実のお姉さんや織斑先生からもサジを投げられたんだ…

 でも、確かに【戦国龍皇】を盗んだ件とか臨海学校の時とか誰がどう見ても酷いとしか言いようがなかったもんな…

 

「それでどうする?学園に行くって言うなら無理に引き留めないけど?」

 

「いえ、ココでお世話になります。」

 

 鈴はアッサリとココで過ごす事を決めてしまった

 確かに今学園に戻ってもストレスが溜まるだけだろうからな~…

 

「じゃあ後でとーくんに言っとくね。」

 

「ハイ!!!」

 

 鈴も夏休みの間はココにいるのか…

 

「いや~…丁度良かったよ♪」

 

「へ?」

 

「コレで()()()()()()()が2人になった!!!」

 

鈴&シャルロット

「…ハイ?」

 

…テスターって…何?

 

 ~シャルロット Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第144話:兎に睨まれた龍

 

 ~鈴 Side~

 

「テスター?何のですか?」

 

 私が夏休みの残りをココで過ごす事に決めると束さんは大喜びしながらそんな事を言って来た

 

「実はね?今かんちゃんのISを第5世代に改造してる真っ最中なんだよ。」

 

鈴&シャルロット

「へ?」

 

 すると束さんは更にとんでもない事を口にした

 1カ月前にセシリアの【ブルー・ティアーズ】を【ハルファス・ベーゼ】に改造したばかりなのに今度は簪の【打鉄弐式】に取り掛かってるの!?

 いくらなんでも開発スピードが早すぎるでしょ!?

 

シャルロット

「いいんですかそんな事して!?」

 

「だ~いじょ~V!!日本政府にも連絡済みだよ♪イギリスと同じ条件でいいってさ♪」

 

 そりゃいいでしょうよ…だって国にはメリットしかない条件なんだから

 …あれ?

 

「あの…さっき言ってた『テスター』って…」

 

 嫌な予感がしてきた

 

「いや~…実はね?これまでのデータから第5世代って誰でも扱える機体じゃ無いって分かったんだよ。」

 

鈴&シャルロット

「………」

 

「最低でも()()()()()()()()()()()()()()()()()が必要なんだ~…それも()()()()()()()()()くらいのさ~…」

 

鈴&シャルロット

「………」

 

「1号機の【ワイバーン・ガイア】を使ってるのんちゃんは候補生じゃないけど候補生並みの実力が元からあったから問題無いんだよね~…」

 

 本音は例外として…専用機が与えられた代表候補生…

 それってつまり…

 

「それでさ~…丁度束さんの()()()に条件を全部満たしてる子がいるんだよね~♪」

 

 私かあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!

 

「リーちゃん!君の【甲龍(シェンロン)】を束さんに預けてくれない?」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!!いきなりそんな事言われても!?」

 

シャルロット

「アレ?セシリアのISが改造されてるって知った時『羨ましい』って言ってなかった?」

 

「あ!?」

 

 そう言えば…確かにそんな事言ってたわ!?

 

「そっか~…ならいいよね?」

 

「うぐっ!?」

 

 これは…もう断れない…

 

「…ハイ…ですが先に政府に確認を取らせて下さい…」

 

 大人しく観念するしかない…

 

「それは当然だよ!まぁ今までと同じで二つ返事でOKするだろうけどね♪」

 

「ですよね…」

 

 その時の返事が手に取る様に分かる…

 

「んじゃ!早速連絡しよっか!!」

 

「…ハイ…」

 

 観念した私は中国政府に連絡を入れた

 向こうは案の定大喜びしながら二つ返事で了承してくれた

 こうして私の【甲龍(シェンロン)】も第5世代に改造…いや、魔改造される事になった

 ちなみに亡命したとはいえ元は私と同じ専用機を与えられた代表候補生のシャルロットも束さんのテスターになってしまった

 一体…私のISはどんな姿になるんだろうか…

 

 ~鈴 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第145話:暴露④

 

 ~永遠 Side~

 

 夏休みの間、鈴が家に滞在する事になって数日が経過した

 束さんが鈴とデュノアを新型のテスターに引き込んだのは驚いたが、あの人ならやりそうじゃからな…

 ちなみにデュノア改めシャルロットもテスターと言う事でよく家に来とる

 その鈴とシャルロットは簪と一緒に【打鉄弐式】の魔改造機の開発を手伝っておる

 簪のが完成すれば次は鈴の【甲龍(シェンロン)】に取り掛かるそうじゃ

 その後でシャルロットのを造るらしい

 ただ、シャルロットの場合は専用機を国に返して来たそうじゃから【ワイバーン・ガイア】と同じで一から造る事になるがの

 そんなある日…【打鉄弐式】の新型完成まであと少しと言う時に…

 

「ね~ね~とーくん。」

 

永遠

「ん~?」

 

 束さんが話しかけて来た

 

永遠

「何かの?」

 

()()()()()()()…いっくんとシャーちゃんに言っちゃダメ?」

 

永遠

「は?」

 

全員

「…え?」

 

 行き成りとんでもない事を言いだしおった

 

「た、たたた、束さん!?」

 

「行き成り何言いだすんですか!?」

 

一夏

「…師匠の秘密?」

 

シャルロット

「やっぱりあるんだ?」

 

本音

「シャルルン気付いてたの~?」

 

シャルロット

「いや、気づいたって言うか普通はそう考えるでしょ?【戦国龍皇】…【ドットブラスライザー】…【ラインバレル】…あんなとんでもない性能のISを3機も持ってる上に生身でISを倒すような人だよ?何か秘密があるって思うけど?」

 

全員

「あ~…」

 

 ぬ~…言われてみるとそうじゃな…

 入学の時に【ドットブラスライザー】だけを持ってっておればよかった…そうすりゃあの篠ノ之にも目を付けられんかったろうしなぁ…

 ミスってしもうたか…

 まぁ、今更後悔しても遅い事じゃし…

 さて…

 

一夏&シャルロット

「………」

 

 果たしてこやつらに話していいのか…

 何か織斑は期待しとるみたいじゃが…口が軽そうで不安なんじゃよな~…

 

「束さん…シャルロットはともかく一夏は止めた方がいいと思います…」

 

一夏

「何で!?」

 

「アンタ口軽そうだから。」

 

簪&本音&クロエ

「うんうん!!」

 

一夏

「ガァァァァァァァンッ!!!」

 

 他のもんも同じ考えじゃったか…

 こやつの場合、うっかり口を滑らせそうで怖いんじゃよな~…

 

「う~ん…そう言われるとそんな気もするな~…」

 

一夏

「そんな~…師匠~…」

 

永遠

「気色悪い声を出すな!!仕方が無い…話すか…」

 

全員

「ええっ!?」

 

「いいの本当に!?」

 

永遠

「言わんとしつこそうじゃからな…織斑、シャルロット、主等を信じてワシの秘密を話してやるが誰にも他言してはならんぞ!!!」

 

一夏

「ハイ!!!」

 

シャルロット

「も、勿論だよ!!!」

 

 不安は尽きんがこやつらにワシの事を話す事にした

 その結果…

 

一夏

「プッ…ダァァァッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!」

 

シャルロット

「クッ…クククッ…」

 

 お約束のように笑いおってコイツ等…

 ならばこちらも…

 

永遠

「笑いすぎじゃい!!!」

 

 ズガン!!ゴン!!

 

 お約束の拳骨を落としてやった!!

 こうしてワシの秘密を知るもんがまた増えてしもうた…まだ増えるのかのぉ?

 

 ~永遠 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第146話:規格外

 

 ~鈴 Side~

 

一夏

「ぐおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

シャルロット

「い、痛い…」

 

 永遠の正体を知った二人は今までの私達を同じで大笑いしたせいで永遠から特大の拳骨を喰らった

 特に爆笑していた一夏はシャルロット以上に強烈なのを喰らったせいでのたうち回ってた…音からして違ってたもんね…

 もはやお約束の光景になってるわ…

 ちなみに私達はこうなるのが分かっていたから予め耳栓をして話を聞かなかった…あの時、束さん達が耳栓をしていた気持ちが良く分かったわ…

 一度喰らったから分かるけど永遠の拳骨って体の芯にまで響くから本当に痛いのよね…流石にアレをもう一発喰らう気にはなれないわ…

 それから暫くして一夏とシャルロットは頭の痛みが引いたのか復活した

 

一夏

「ぐぅぅぅっ…マジで痛い…」

 

シャルロット

「まだ痛むよ~…」

 

「永遠の話を聞いた人の通例みたいなものだから我慢するのね。」

 

全員

「うんうん!!」

 

 皆頷いてる…

 確か…クロエさん以外は全員喰らったのよね?

 

永遠

「儂の拳骨喰らいとう無かったら笑うのを我慢すればよかろう?」

 

 いや、それはそうだけど…

 

一夏

「あんな話聞いて笑うなって言う方が無理だろ!!」

 

全員

「うんうん!!」

 

 一夏の言う通りこの話ってツボに入るのよ…

 

永遠

「む~…」

 

シャルロット

「でも…コレで納得出来たね?」

 

一夏

「だな…そりゃ神様が造ったISならあの馬鹿気た性能も当然だな。」

 

永遠

「…幻滅したか?」

 

一夏

「いや、スッキリしただけっすよ!」

 

シャルロット

「うん、それにこう言ったら何だけど…火ノ兄君が最初に要求した特典ってどれも大したものじゃないと思うし…」

 

 それは私も思ったわね…

 永遠の貰った特典は『健康な身体』『少しいい頭』『自活出来る土地』の3つ…

 生活する上で必要なものばかりだもん…

 IS関連で役に立つものを1つも要求してなかったからね…

 

永遠

「まあのぉ…じゃからあのボケ神は追加特典を出すとかな言い出しおったからな…」

 

一夏

「それで師匠が頼んだのがあの3機と【飛天御剣流】か…まさか全部アニメやゲームに出てくるキャラや技だったなんてな…」

 

シャルロット

「そうだね~…」

 

一夏

「…けどさ?」

 

全員

「ん?」

 

一夏

「ISや【飛天御剣流】の正体には驚いたけど…改めて師匠が『規格外』って分かったよ。」

 

永遠

「なぬ?」

 

 どう言う事?

 確かにコイツは規格外だけどさ

 

一夏

「ほら…師匠の特典って別に身体能力が上がるとかそう言ったのって無いだろ?」

 

「そうだね。」

 

一夏

「て事はさ?師匠は『自力』で【飛天御剣流】を覚えたって事だろ?」

 

全員(永遠以外)

「…あ!?」

 

一夏

「いくら秘伝書みたいな物があっても普通は漫画の技を実際にマスターするなんて出来ないだろ?」

 

全員(永遠以外)

「確かに!!!」

 

 一夏の言う通りだわ

 あんなとんでもない剣術を覚えろって言う方が無茶なのよ

 そう考えるとそれを習得した永遠は一夏の言う通り『規格外』な奴って事になるわね

 

永遠

「ぬ~…何かワシを人外みたいに言うとらんか?」

 

全員

「今更?」

 

永遠

「オイ!!!」

 

 アンタが人外じゃ無かったら何だって言うのよ!!!

 

 ~鈴 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第147話:降臨!打鉄天魔!!

 

 ~簪 Side~

 

 永遠が自分の正体を話したお陰なのかあの日から私達の親密度は上がったと思う

 その証拠に私や永遠は織斑一夏とは互いに名前で呼ぶようになった

 それから数日後…

 

「それじゃあかんちゃん!準備はい~い?」

 

「ハイ!!!」

 

 遂に私の新型が完成した

 後は実際に稼働させて動作テストを行うだけ

 

「…行くよ…【打鉄天魔】!!!」

 

 カッ!!!

 

 私は待機状態の新しい【打鉄】の名前を呼んだ

 それは白い戦国武将の鎧の様な姿のIS…

 背中には三日月の様な曲刀を2本、光輪のようにして装備されている…

 コレが完成した私の第5世代…【打鉄天魔】!!!

 

本音

「ふわ~…コレがかんちゃんの新型か~…」

 

シャルロット

「強そうだね~…」

 

 皆も【天魔】に驚いている

 コレを完成させるまでにプロトタイプとして酷使した【紅椿】はボロボロになっちゃったけど…ありがとう【紅椿】…貴方のお陰で【天魔】は無事に完成したよ

 

永遠

「では早速模擬戦で実戦テストと行こうかの?」

 

「うん!!!」

 

 私も【天魔】の力を早く試してみたい!!

 

「それで誰が相手するの?」

 

永遠

「フム…じゃったら一夏、頼めるかの?」

 

一夏

「俺!?」

 

 永遠が指名したのは一夏か…

 

一夏

「イヤイヤ!!俺はまだ修行中でとても第5世代の相手なんて出来ねえよ!?」

 

永遠

「んな事は分かっとるわい。その途中経過を見る意味も込めて簪の相手をせいと言うとるんじゃ。」

 

一夏

「…え?」

 

永遠

「お主が簪に勝てん事くらい誰もが分かっとる。じゃが、薪割りばかりしとると戦いの勘が鈍る可能性がある。じゃから時々はこう言った事をした方がいいと言うとるんじゃ。」

 

一夏

「な、なるほど!?」

 

 それで一夏に相手をしろって言ったのか…

 

永遠

「それにお主に相手をさせるのにはもう一つ理由がある。」

 

一夏

「もう一つ?」

 

永遠

「強くなる為の一番良い経験はな?自分よりも強い相手と戦う事じゃよ。」

 

一夏

「!?」

 

永遠

「例え負けても格上と1回戦うだけで十分な経験を与えてくれる。逆に格下とは100回連勝しても得るものなんぞ殆ど無い。あるとすれば精々優越感位なもんじゃ。」

 

一夏

「………」

 

永遠

「尤もコレは一面でしかない。負けるのがどうしても嫌だと言われればワシも何も言えんが…「そんなの決まってるぜ!!」む?」

 

一夏

「師匠!!俺は自分より弱い奴に勝って威張る位なら負けた方がマシだ!!負けてそこから立ち上がる!!それが俺を更に強くしてくれる筈だ!!!」

 

 永遠の言葉を遮って一夏は迷いなくそう答えた

 

永遠

「ウム!!よう言うた!!!」

 

 こうして私の相手は一夏に決まった

 

 ~簪 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第148話:武器封じ!六天連鎖(ラッシュ)!!【打鉄天魔VS白式・雪羅】

 

 ~三人称 Side~

 

 完成した簪の【打鉄天魔】の実戦テストの為。一夏を相手に模擬戦をする事になった一同は研究室を出て島の海岸に来ていた

 

「2人とも準備はOK?」

 

一夏

「オウ!!!」

 

「ハイ!!!」

 

 2人はISを展開すると一夏は【雪片】を構え、簪は背中にある巨大な曲刀を抜いた

 そして…

 

「それじゃあ…始め!!!」

 

 ガキィィィィィンッ!!!

 

 束の合図と共に二人は飛び出し互いの剣がぶつかり合った

 だが…

 

一夏

「グッ…クゥッ…」

 

「………」

 

 鍔迫り合いをする二人だが開始早々一夏は冷や汗を流していた

 

一夏

(クソッ!!分かっちゃいたがとんでもないパワーだ!?進化した【白式】の力を軽く超えてやがる!?)

 

 剣を合わせた瞬間、一夏は自分との力量差を痛感していた

 現に一夏は今も全力で押しているが簪の方は全身装甲の為、表情は分からないがまだまだ余裕のある雰囲気だった

 

「ハァッ!!」

 

 ガキィンッ!!

 

一夏

「クッ!?」

 

 簪が力を入れて剣を弾くと一夏は後方に弾き飛ばされた

 

一夏

「なら!!」

 

 ドン!ドン!ドン!

 

 距離が開いた事で一夏は左腕の【雪羅】で荷電粒子砲を撃って来た

 だが…

 

「………」

 

 簪は曲刀を手放すと2本の曲刀はビットのように独立して動き出し簪の目の前で円の形になるように並んだ

 

 バシィンッ!!

 

一夏

「何っ!?」

 

 一夏の撃った砲撃は2本の曲刀の前で弾き飛ばされた

 この曲刀は円の形に並ぶ事によって前面にシールドを張っていたのだ

 一夏の攻撃はこのシールドで防がれてしまった

 更に…

 

「ハァッ!!」

 

 曲刀の円の中心に向かって簪は拳を突き出した

 すると…

 

 ドギュゥゥゥゥゥンッ!!!

 

 中心から巨大なビームが放たれた

 

一夏

「!?…【雪羅】!!シールドモード!!」

 

 一夏も【雪羅】のシールドで防ごうとしたが…

 

 バリィンッ!!

 

一夏

「何っ!?」

 

 バゴォォォォォォォォンッ!!!

 

一夏

「グアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 簪の砲撃は【雪羅】では防ぐ事が出来ずシールドを貫通して一夏は直撃を喰らって再び吹っ飛ばされた

 

一夏

「グッ…何て威力だ…だったら!!」

 

 体勢を立て直した一夏は【大倶梨伽羅(おおくりから)】を取り出し、【雪片】と二刀流で構えると…

 

一夏

「一気に勝負を決める!!!」

 

 【零落白夜】を発動させ瞬時加速(イグニッション・ブースト)で急接近した

 だが…

 

 ガキィィィィィンッ!!!

 

 簪は曲刀を手に取ると一夏の剣を受け止めた

 

「…使ったね?」

 

一夏

「…え?」

 

 簪の呟きに一夏は反応した

 しかし…

 

「ハッ!!」

 

 キィンッ!!

 

 簪は何事もなかったかのように一夏を再び弾き飛ばした

 

一夏

「チィッ!?…ん?」

 

 弾き飛ばされた一夏が簪を見ると…

 

一夏

「何だ?剣を…仕舞った?」

 

 簪は2本の曲刀を何故か背中に戻していた

 その行動の理由が分からず訝しげに見ていた一夏だったが…

 

「…単一仕様(ワンオフ・アビリティー)…起動!!!」

 

一夏

単一仕様(ワンオフ・アビリティー)だと!?そうか…第5世代は始めから使えるんだった!?」

 

 簪の言葉に目を見開いた

 まさか簪まで単一仕様(ワンオフ・アビリティー)を使えるとは思ってもみなかったのだが、束の開発した第5世代は元から初期段階で単一仕様(ワンオフ・アビリティー)を使えるという事を一夏は思い出した

 現に本音の【ワイバーン・ガイア】とセシリアの【ハルファス・ベーゼ】も使えるのだから簪の【打鉄天魔】が使えない道理は無かった

 

「【六天連鎖(ラッシュ)】…発動!!!」

 

 ジャララララララララッ!!!

 

 【天魔】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)が発動すると同時に背中の曲刀から光の鎖が何本も飛び出し、一夏に向かって行った

 

一夏

「何だよこりゃ!?」

 

 一夏は向かって来る鎖を避けるがどれだけ避けても鎖は一夏を追いかけて行った

 そして…

 

 ジャリン!!

 

一夏

「しまった!?」

 

 3本の鎖が【雪片】【大倶梨伽羅(おおくりから)】【雪羅】にそれぞれ絡みついた

 だが…

 

一夏

「………あれ?」

 

 鎖は巻き付くとそのまま消えてしまった

 

一夏

「消えた?何なんだアレ?」

 

 何も起こらず消えてしまった鎖に一夏は首を傾げた

 

一夏

「まあいいや!もう一度行くぞ!!【零落白夜】発動!!!」

 

 気を取り直すと一夏は再び【零落白夜】を発動させた

 しかし…

 

 ・・・・・・・

 

一夏

「………あれ?」

 

 何故か【零落白夜】が発動しなかった

 

一夏

「………コホン!…【零落白夜】発動!!!」

 

 咳払いして改めて【零落白夜】を発動させる一夏…

 だが…

 

 ・・・・・・・

 

 【零落白夜】は発動せず【雪片】も何も反応しなかった

 

一夏

「どうなってんだ!?仕方ない!!使えないならこのまま…」

 

 何故か使えなくなってしまった【零落白夜】を使うのを諦め【雪片】と【大倶梨伽羅(おおくりから)】で斬りかかろうとした

 その時…

 

 ビィィィッ!ビィィィッ!ビィィィッ!

 

一夏

「え!?な、何だ!?」

 

 突然ISから警告音が鳴り響いた

 それと同時に一夏の目の前にウインドウが表示された

 それを見て…

 

一夏

「…『使用…不能』…だと!?」

 

 【雪片】と【大倶梨伽羅(おおくりから)】が使えないと言うものだった

 一夏が手にする2本の刀はその表示が出ると同時に量子変換され消えてしまった

 

一夏

「何でいきなり…まさか…【雪羅】も!?」

 

 消えてしまった2本の刀を見て一夏は嫌な予感がすると自分の左腕を見た

 すると再びウインドウが現れそこには…

 

一夏

「…『使用不能』…」

 

 【雪羅】までも使用が出来なくなっていた

 

一夏

「簪!!お前何しやがった!!!」

 

 自分の武装が全て使用出来なくなった一夏はこの一連の出来事が簪の放った光の鎖が原因だと察し問い詰めた

 

「…コレが【天魔】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)…【六天連鎖(ラッシュ)】の力!!!」

 

一夏

「【六天…連鎖(ラッシュ)】?」

 

「【六天連鎖(ラッシュ)】は【天魔】のSEと引き換えに相手が一度でも使用した装備や能力を一時的に『封印』する事が出来る。」

 

一夏

「封印だと!?」

 

 【打鉄天魔】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)…【六天連鎖(ラッシュ)

 その恐るべき力に一夏は戦慄した

 つまり簪を相手にする場合、どんな武器も能力も1回しか使えない事を意味していた

 1度使えば【六天連鎖(ラッシュ)】によって封印され最後には今の一夏の様に丸腰にされてしまうからだ

 

一夏

「…ハ…ハハ…コレが4体目の第5世代かよ…シャレになんねえや…」

 

 丸腰になった一夏はもはや笑うしかなかった

 

「私もそう思うよ…じゃあ、これで終わりにする。」

 

 ジャキン!!!

 

一夏

「!?」

 

 一夏の言葉に賛同すると【天魔】の背後に6枚の浮遊ユニットが羽根を広げたように展開された

 

「…行け…」

 

 簪の合図と同時に6枚の羽根は一夏に向かって飛んで行った

 それを見て…

 

一夏

「コイツは…オルコットのビットと同じ【BT兵器】か!?でもアレを使うのには特別な適性が必要な筈じゃ…」

 

 セシリアの姿が浮かんだ

 一夏の言う通り【BT兵器】はセシリアのような『BT適正』と呼ばれる特別な適性が高くなければ扱う事が出来ない特殊な装備であった

 そんな極端に使い手を選ぶものを簪が使った事に驚いているが元々【打鉄天魔】は『BT適性の無い人間でもビットが扱える』事をコンセプトにして開発された機体であった

 その為、セシリアほどの操作性はまだ出来ないが簪でも【BT兵器】を扱う事が出来る様になっていた

 

一夏

「!?」

 

 驚いている間に【天魔】の羽根は一夏を取り囲んでいた

 武装が封じられ何も出来ない一夏は…

 

「攻撃!!」

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!

 

一夏

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」

 

 ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!

 

 展開された羽根からの一斉砲火を受けて吹っ飛ばされた…

 

 ~三人称 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第149話:次の題材

 

 ~束 Side~

 

一夏

「イテテテ…」

 

 【打鉄天魔】の相手をしてくれたいっくんはかんちゃんの全方位砲火で吹っ飛ばされて暫くして起き上がった

 流石にあの集中攻撃には成す術がなかったようだね…と言うか装備が全部使えなくされたら誰だってこうなるか…

 

「いっくん大丈夫~?」

 

一夏

「な、なんとか…つうか束さん…何ですかあの能力?いくら何でも反則過ぎるでしょ?」

 

「ニャハハハ♪でしょ?いや~…造った束さん自身もそう思っちゃったよ~♪」

 

一夏

「笑い事じゃないと思いますよ?」

 

 …誤魔化せないか…

 

シャルロット

「僕もそう思います。簪のあの機体は試合では確実に制限がかけられてしまいますよ。」

 

 別に違反してる訳じゃ無いんだけどな…

 それに私の作る第5世代は試合とかゲームの為じゃなくて宇宙で活動する事を目的にしたものなんだからそっちはどうでもいいんだよね

 

「まあ、その時はその時だよ。向こうが何か言って来たらその時に対処すればいいだけだよ。」

 

 尤も…この束さんに面と向かって物申せるか甚だ疑問だけどね?

 と、そんな事よりも…

 

「どうだったかんちゃん?【天魔】を使って何か問題があった?」

 

「いえ、何も問題はありません。今まで以上に動きやすかったです。」

 

「それは良かったよ♪新型のビットも大丈夫だった?」

 

「はい、まだ慣れてないせいで操作は難しいですけど動かす事に問題はありません。」

 

「そっか、なら操作に関してはセーちゃんに教えて貰った方がいいね。」

 

「そうですね!!」

 

 ビットの扱いにかけてはセーちゃんが一番だからね!

 さ~て…それじゃ【天魔】の試運転は一先ずOKって事で…

 そ、れ、じゃ~…

 

「リーちゃん!!早速【甲龍(シェンロン)】の改造に取り掛かるよ!!!」

 

「ハ、ハイ!!!」

 

 次の題材に取り掛かるぜぇ~!!!

 

 ~束 Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

 ハァ~…遂にこの時が来てしまった…

 私の【甲龍(シェンロン)】…一体どんな姿になるんだろ…

 セシリアの【ハルファス・ベーゼ】と簪の【打鉄天魔】…どっちも見る限り原形を留めないのは確実よね…

 どんな機体が出来上がるのか楽しみ半分怖さ半分って心境ね…

 でもここまで来た以上は…

 

「腹を括るしかないわね!!!」

 

 私が気合を入れ直すと…

 

「いや、別に乗ったら即自爆する様な物にはしないけど?」

 

「………すみません…」

 

 口に出してしまった…

 でもね束さん…私の気持ちも少しは分かって欲しいんですよ…

 

 ~鈴 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第150話:闇夜を照らす月!月光龍(ユェガンロン)咆哮!!

更新が遅くなって申し訳ありません!!

ストックが切れた上に中々ネタが思い浮かばずこんなに遅くなってしまいました

完結するまでは頑張りますので今後もよろしくお願いします




 

 ~鈴 Side~

 

「出来た~~~!!!」

 

 声を張り上げる束さん…

 その前には完成した私の新型があった…

 でも…

 

全員

「………」

 

 私を含めた全員が言葉を失ってる

 だってこれ…

 

「コレがリーちゃんの新型!!その名も【月光龍(ユェガンロン)】だよ!!!」

 

 私の新型はクロエさんの【裂空丸】クラスのサイズがある真っ白なドラゴンだったからだ

 一目でこのISは【ワイバーン・ガイア】や【裂空丸】と同じ中に乗り込んで操縦するタイプだと分かるわ…

 

「あの~…束さん…大型はもう作らないんじゃなかったんですか?」

 

 私がそう聞くと…

 

「そのつもりだったんだけどね~…次の機体を考えてる内に通常サイズのISじゃ無理って気付いてさ?」

 

「それでこのサイズになったと?」

 

「そゆ事~♪」

 

 束さんがそう言うならそうなんでしょうけど…

 一体どんな作り方したら通常サイズを上回るISが出来上がるんだろ?

 私の機体だから知る必要はあるんだけど…何か知るのが怖いわね…

 そんな私の心情などお構いなく束さんは説明を始めた

 

「まずこのISの基本装備は頭部と右腕にある3門のレールガンと口にあるプラズマレールキャノンの計4門だね。」

 

「え!?それだけなんですか?」

 

 どう言う事?

 【甲龍(シェンロン)】は元々近接格闘型のIS…

 それを遠距離型に変えたの?

 

「フフフ♪大丈夫だよリーちゃん♪言ったでしょ?『基本装備』だって。」

 

「へ?」

 

 確かにそう言ってたけど…

 

「この子の本領は『コレ』と一緒にする事で発揮するのだよ!!!」

 

 束さんがそう言うと隣の部屋の扉が開いた

 そこには【月光龍(ユェガンロン)】とは違う3機のマシンがあった

 

「…何ですかコレ?」

 

「これこそ【月光龍(ユェガンロン)】の武器にして、手足となる『支援機』だよ!!」

 

「支援機?」

 

 支援機と言う3機のメカ…

 1体目は巨大な鎌を持った黒い死神…

 2体目はデカい槍とこれまたデカいブースターを8基積んだ戦闘機…

 3体目が白いエイ…

 コレが【月光龍(ユェガンロン)】の支援機?

 

「先ずは簡単な説明をするよ。まず1体目の黒い死神みたいなのは【デスヘイズ】…見ての通り鎌を使った近接型だよ。」

 

 コイツは近接型か…

 

「次にデカい槍を積んでるのが【アーケランサー】…大型ブースターによる加速でヒットアンドアウェイの突撃が得意だね。」

 

 突撃型…とでも言えばいいのかな?

 私的には近接型は【デスヘイズ】より【アーケランサー】の方がやり易い気がする…

 

「最後の白いエイが【ジェットレイ】…ミサイルによる爆撃が主な使い方だね。」

 

 最後のは完全に遠距離型ね…

 3機の説明が終わると私は改めて3機の支援機を見た…近接型の【デスヘイズ】…突撃型の【アーケランサー】…爆撃型の【ジェットレイ】…戦法が全く違うわね…

 でも…

 

「あの束さん…これどうやって使うんですか?」

 

 そもそも使い方が分からない…

 

「あ~それね?この3機はセーちゃんやかんちゃんの使う『ビット』と同じだよ。」

 

全員

「………へ?」

 

 同じ?

 コレが?

 【ハルファス】や【天魔】と同じ…

 

全員

「ビットオオオオオオォォォォォォッ!!!」

 

 ビットって言ったらあれよね?

 【ブルー・ティアーズ】や【ハルファス】みたいに小さい物よ!?

 そりゃ【天魔】のビットはセシリアのに比べて大分大きかったけどさらに大型化したの!?

 

一夏

「束さん…コレは流石にデカくし過ぎじゃないですか?」

 

全員

「うんうん!!」

 

 皆同じ考えでよかった…

 でも…一夏の言う通り束さん…何でこんなにデカいビットを造ったんだろ?

 それも3機とも全く違う設計だし…

 私がそう思ってると…

 

「ニャハハハ…心配しなくても束さんだって意味もなくこんなに大きくしないよ。」

 

 あ、ちゃんとした理由があるんだ…

 

「この3機は【天魔】のビットの延長線上の物なんだよ。」

 

「【天魔】の延長?」

 

シャルロット

「確か…【天魔】のビットは…『離れた場所にいる相手に拡張領域(バススロット)から救援物資を送る事』が開発コンセプト…でしたよね?」

 

「そうだよ!!で!【月光龍(ユェガンロン)】はその更に先を進んだ機体!!この3機は『救助者が何処に居て、どんな状況でも救助が出来る事』をコンセプトにしたものなんだよ!!」

 

全員

「!?」

 

 なるほど!?

 確かに簪の【天魔】のビットは拡張領域(バススロット)を使った物資の支援は出来るけど救助は出来ない

 でもこの3機ならそれが出来る!?

 そこまで考えた物だったんだ!?

 

全員

「………」

 

 束さんの説明に全員が黙り込んでいると…

 

永遠

「じゃが…こやつらの使用法は『もう一つ』あるんじゃろ?」

 

全員

「え?」

 

 永遠が口を開いたけど…もう一つの使用法?

 【月光龍(ユェガンロン)】の支援と人命救助以外にどんな使い方が…

 

本音

「もう一つって何なの~?」

 

永遠

「戦闘面じゃ。この3機の真骨頂は【月光龍(ユェガンロン)】の支援ではない。そうじゃろ?」

 

 永遠がそう聞くと…

 

「ピンポ~ン♪大正解!!!」

 

全員(永遠以外)

「え!?」

 

 当たりなんだ…

 でもコイツ等…戦闘支援以外に何が出来るんだろ?

 【ハルファス】や【天魔】だってビットは支援しか出来ないのに…

 

「実はね?この3機は【月光龍(ユェガンロン)】と『合体』出来るのだよ!!!」

 

全員(永遠以外)

「………え?」

 

 束さんが何を言ったのかすぐには分からなかった…

 でも暫くして…

 

全員(永遠以外)

「合体いいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

 

 意味を理解した瞬間永遠以外の全員が叫び声を上げた

 そりゃそうよ!?

 まさか【月光龍(ユェガンロン)】も【ドットブラスライザー】と同じ合体機能が備わっていたなんて…

 

「【デスヘイズ】と合体すると遠近両方に対応した機体。【アーケランサー】だと近接型、【ジェットレイ】は高速遠距離型に変わるよ。」

 

 驚く私達に束さんは合体した時の【月光龍(ユェガンロン)】の説明を簡単にしてくれた

 合体する前は完全に砲撃型の機体…でも合体する事でどんな相手にも対応出来る機体に変化する…これが【月光龍(ユェガンロン)】の本当の力だったんだ…

 

「ま!!ココで説明するより実際に動かした方が早いね!!てな訳でリーちゃん!早速で悪いんだけど模擬戦してくれない?」

 

「いいですけど…相手は誰にします?また一夏にやって貰いますか?」

 

一夏

「俺はいいですよ。」

 

 一夏はOKか…

 簪の時と同じで一夏が相手になるかなって思ったけど…

 

「いっくんには悪いけど今回はかんちゃんにお願いしてもいいかな?」

 

「私ですか!?」

 

 簪が指名された

 でも何で簪?

 

「新型同士の実戦データが欲しいんだよ。頼めるかな?」

 

 そう言う事か…

 

「ハイ!!任せて下さい!!」

 

「手加減しないわよ!!!」

 

「望む所!!!」

 

 こうして【月光龍(ユェガンロン)】の最初の相手は簪になった

 

 ~鈴 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第151話:第5世代の対決【打鉄天魔VS月光龍】


遅くなって大変申し訳ありません

何とか一話できました




 

 ~一夏 Side~

 

「………」

 

「………」

 

 俺達の目の前に完成した2体の第5世代が向かい合っていた

 鈴の新型【月光龍(ユェガンロン)】と簪の新型【打鉄天魔】…

 【天魔】の方は俺自身が相手をしたからその強さは良く分かってるつもりだ…単一仕様(ワンオフ・アビリティー)が発動したら最後、鈴は迂闊な攻撃が出来なくなる…

 普通に考えれば簪が圧倒的に有利の筈…筈なんだけど鈴の新型は一番新しい第5世代だ…【天魔】の【六天連鎖(ラッシュ)】にも対抗できそうな気がするんだよな~…

 俺がそんな事を考えている間に…

 

「二人とも~準備はい~い?」

 

簪&鈴

「ハイ!!!」

 

「それじゃあ…始め!!!」

 

 ガキィィィンッ!!!

 

 簪と鈴がぶつかった

 鎧武者とドラゴンの対決…どっちが勝つんだ!?

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~三人称 Side~

 

「はあああああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「りゃああああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 ズガァァァンッ!!

 

 開始と同時にぶつかり合った2人は一端互いに距離を取る為に離れた

 簪はビットである武装翼を展開し拡張領域(バススロット)から2丁の銃を出すと6基の武装翼も合わせて展開した

 対する鈴も頭部と右腕のレールガンと口のレールキャノンを簪に狙いを合わせた

 そのまま二人の砲撃戦が始まった

 

 ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!

 

 だが…

 

「チィッ!!(手数が足りない!!それに攻撃範囲が違い過ぎる!?)」

 

 鈴は今の砲撃では自分が不利だとすぐに悟った

 その為…

 

「早速行くわよ!!来い!!【ジェットレイ】!!!」

 

「!?」

 

 鈴は【月光龍(ユェガンロン)】の支援機の一機【ジェットレイ】を呼び出した

 

 ズドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!

 

 【ジェットレイ】は現れると同時に下部を開き、そこから大量の爆雷をバラまいた

 

「クッ!?」

 

 上空から絶え間なく降り注ぐ爆雷によって今度は簪が不利となった

 その隙を鈴が見逃す筈も無く…

 

「よしっ!!【ジェットレイ】!!【月光龍(ユェガンロン)】と合体!!!」

 

 ガキョンッ!!!

 

「しまった!?」

 

 【月光龍(ユェガンロン)】と【ジェットレイ】を合体させた

 合体した【月光龍(ユェガンロン)】は戦闘機のような形状に変化しており3門のレールガンも1門増え4門となっていた

 

「カ、カッコいい…」

 

 そんな【月光龍(ユェガンロン)】の姿に大のヒーローロボット好きの簪が反応しない訳も無く、顔は見えないが目をキラキラと輝かせていた

 しかし…

 

「行くわよ!!!」

 

 ギュオンッ!!!

 

「速い!?」

 

 【ジェットレイ】と合体した【月光龍(ユェガンロン)】はその戦闘機の様な見た目の通り凄まじいスピードで飛び始めた

 その余りの速さに簪は反応出来なかった

 

「何て速さ!?狙いが付けられない!?」

 

 縦横無尽に飛び回る【月光龍(ユェガンロン)】に簪は狙いを付けられず立ち往生となってしまった

 だが…

 

「こんのぉぉぉぉっ!!言う事を聞けえええええぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 実は操縦している鈴自身が【月光龍(ユェガンロン)】のスピードを制御できず振り回されていた

 元々近接格闘戦を得意としている鈴には高速戦闘は不得手であった為、今の【月光龍(ユェガンロン)】のスピードにそもそも慣れていなかった

 しかも【月光龍(ユェガンロン)】は従来のISとは操作の仕方も全く違う事も鈴が振り回される原因となっていた

 しかし…

 

「ぐぬぬぬぬぬっ!!コンニャロオオオオオォォォォォッ!!!」

 

 鈴も伊達に国の代表候補生になってないので次第に操作が安定し始めていた

 そして、暫くして制御がある程度できるようになると…

 

「よし!!何とか行ける!!行くわよおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 簪に向かって行った

 

 ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!

 

 鈴は4門のレールガンを撃ちながら簪に向かって行った

 

「クッ!?」

 

 突っ込んできた鈴を簪は体を捻って躱した

 

 ガキョンッ!!!

 

「!?」

 

 簪が躱すと同時に鈴は【ジェットレイ】を分離させた

 分離した事で【月光龍(ユェガンロン)】に急ブレーキがかかり簪の目の前で止まってしまった

 しかも簪は鈴を躱した態勢の為、鈴に背中を向けた状態となっていた

 

「しまった!?」

 

「そこっ!!!」

 

 ドギュウウウンッ!!

 

 ドガァァァァァンッ!!

 

「ガハッ!?」

 

 そこに鈴はレールキャノンを撃ち込んだ

 当然簪は躱す事が出来ず直撃を受け吹き飛ばされた

 

「クゥッ!?(まさか躱した直後に分離するなんて!?なんて無茶やるのよ!?)」

 

「次行くわよ!!【デスヘイズ】!!!」

 

「2体目!?」

 

 簪が態勢を立て直している間に鈴は第2の支援機【デスヘイズ】を呼び出した

 そして…

 

「そのまま合体!!!」

 

 ガキョンッ!!!

 

 今度は【デスヘイズ】を【月光龍(ユェガンロン)】に合体させた

 【デスヘイズ】の大鎌を受け取ると本体は形状を変え【月光龍(ユェガンロン)】の背中に接続された

 さらに…

 

「黒くなった!?」

 

 【月光龍(ユェガンロン)】の純白のボディが【デスヘイズ】と同じ黒一色へと変わってしまった

 永遠の【戦国龍】が使用する【六道剣】によって色が変わる様に【月光龍(ユェガンロン)】も合体する支援機によって色が変わる仕様になっていた

 

「行くわよ!!!」

 

 鈴は大鎌で斬りかかった

 

 ガキィンッ!!

 

 だが、簪も曲刀を抜いて受け止めた

 

「グググググッ!!!」

 

「ヌウウウウッ!!!」

 

 そのまま鍔迫り合いを続ける中…

 

「…行け!!!」

 

 簪は武装翼で鈴を攻撃しようとした

 しかし…

 

「【ジェットレイ】!!撃ち落とせ!!!」

 

 それは鈴も同じだった

 分離させた【ジェットレイ】が武装翼に向かってミサイルを撃ち始めた

 

「チィッ!!」

 

 その為、簪は武装翼の攻撃目標を【ジェットレイ】に変更した

 

 ドガガガガガガガガガガガガガアアアアアアアアアンッ!!!

 

 武装翼から放たれるビームと【ジェットレイ】のミサイル…

 簪と鈴の周囲では激しい爆発が起こっていた

 こうして二人の模擬戦は苛烈さが増していくのだった…

 

 ~三人称 Side out~

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。