竜に転生!?二次lifeは幻想郷! (被食ちゃん)
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プロローグ
プロローグ~犬と猿~


皆さんこんにちは~(*`・ω・´*)ノ 被食ちゃんです!
今回が初めての投稿となりますので至らぬ部分が多かれあると思いますが、よろしくお願いします!


 

白い光の中、心地の良い気分の中で少女は目を覚ました。

 

(あれ?何だろうこの状況?私、どうなったんだっけ?)

 

少女は考えている。だが、そのうちに考えるを止めた。自分に関することが何も思い出せないのだ。自分が何者で、何がどうしてこうなっているのか全く思い出せない。

 

(わかんないや)

 

少女はそう呟いた。しかし声がでない。よく見ると体までがない。そこで少女は一つの事を思い出した。 自分は殺されてしまったということを。

死んだ経緯は分からない、ただ自分に向かってくる刃物のようなものをうっすら思い出しただけだ。

 

(私が死んだんだとすると…ここは死後の世界?死後の世界ってこんなんなんだ。…昔見た本の内容もこんなんだったっけ)

 

 

その話は、ある2人の兵士の話だった。彼らは赤軍、青軍の兵士で2人は相打ちで死んでしまった。そして2人は死後の世界で再開した。

まるで私が今いる様な世界で、記憶を無くした状態でだ。

2人は意気投合し会話していた。すると、その2人に声が聞こえてきた。

「2人は転生するが何か望みはあるか?」

その神様に2人は言った「ならば、2人が一緒の世界にしてくれ」と。

そして彼らの1人は猿に、また1人は犬になった。

彼らは幼い頃に出会い仲良くなった。彼らは歳を重ねるごとに強くなっていき猿は猿の群れのリーダーに、犬も犬の群れのリーダーになった。

彼らの群れは数が増えていきそれと同時に群れのすれ違いも多くなっていった。

そして遂に避けることの出来なかった縄張り争いが起きた。犬軍と猿軍は争い、それぞれの群れのリーダーも幼き頃の友と殺しあった。

またしても彼らは相打ちになり、2人は息絶えた。

 

 

そんな話だった。

 

(じゃあ、そろそろ私にも声が聞こえるかも…)

 

少女はそう思った。そして、タイミングを見計らったかのように少女の頭に声が響いてきた。

 

「誰だお前は?名前を教えろ」

 

少女は思った。なんてエラそうな神様なんだろう。まあ神様なんだから偉いのは当然か

 

(分かりません。記憶がないんです。)

 

と言うと、声の主は答えた。

 

「記憶がない?お前、もしかして人間か?」

 

(はい。そうですけど…そういう貴方はやっぱり神様なんですか?)

 

というと神は言った、

 

「神?違う違う。私は「リュウ」だ。」

 

(「リュウ」?もしかして、)

 

「ああ、お前の世界の物語に出てくる物を想像しているのなら間違いない。」

 

(じゃあ、…竜? ええぇぇ!?)

 

「何だいきなり!ビックリしたじゃないか、急に叫ぶな!」

 

と、竜は言ったが驚くなと言うほうが無理ではないか?竜が実在するなんて思ってもみなかった事なのだから。

まさか本物の竜だったとは…だが何故、竜が私に話かけてきたんだ?もしかして死人を案内する竜だったりするのだろうか?

 

「まあいい。その話は置いといて、だ。コレから先の話をしないか。」

 

やはり案内竜なのか?私を天国に案内してくれるのだろうか?それとも地獄か。

 

(コレからの話…ですか?やはり天国か地獄に連れて行かれるのですか?)

 

竜は答えた。

 

「お前が望むならな。」

 

…は?何の話だろう?天国や地獄以外に選択肢があるのか?

 

「私は竜だ。ただし死人を導く竜ではない。お前の住んでいる世界じゃない世界に居るだけのただの竜だ。」

 

ん?どういうことだろうか?ならば竜の方も天国か地獄に行くだけじゃないのか?

 

「お前は私の声が聞こえてた。今、私の声が聞こえるのは同じ竜種だけだ。」

 

(しかし、私には聞こえていますよ?)

 

「そうだ、それが不自然だ。だから…もしかすると、私はまだ生きているかもしれない。」

 

(はい?どういうことですか?)

 

「だから、私の声が聞こ(ry」

 

ちょっと説明が分かりにく過ぎるのでこちらで解説することにする。

 

とりあえず、簡単に説明するとこうだ。

 

死後の世界では、同じ種族としか会話が出来なくなるらしい。これは全種族の共通で人間は死ぬと人間としか会話出来ないし、竜は死ぬと竜としか会話が出来ない。

(これは知識の共有を防ぐためである。あらゆる生物は生まれてから数年間は死後の世界の記憶があるらしくテレビでやっている前世の記憶を持つ少年とやらは前世ではなく、死後の世界で会話した記憶が残っているだけだという。もし竜と会話をして異世界への行き方を教えてもらい。来世で広められたのではたまったものではない。という事で同種族としか会話が出来なくなったのだ。)

なのに人間である私に竜の声が聞こえた。という事はどういうことか。

竜が言うには、「私はまだ死んでないし、お前もまだ死んでいないのではないか。」ということだ。

 

君は今「はあ?」となったはずだ。まあ普通はそうなる。

そんな貴方のためにもっと分かりやすくまとめてみた!それがこちらだ!

 

 

会話できる=死んでない

 

はい!超分かりやすい!以上!

 

しかしこの竜…何が言いたいのかさっぱり分からない。私たちは死んでいない?死んだから此処にいるのではないのか?それともそろそろ死ぬのか?まあどちらでもかまわないのだが…

すると竜が衝撃の事を口にした。

 

 

「とりあえず私が言いたい事は1つ!、2人が力を合わせればまた生き返るかもしれないという事だ!」

 

何!?つまり私の人生をもう一度再開できるということか!?

 

その時私は思った。犬と猿の様にはならなかったな、と。

 

 




今回の内容はプロローグとなります。

最初はひとつにまとめる予定だったのですが、ひとつにまとめると文字数が多く読みにくいと思ったので2つに分けさせていただきます。
ということで、次回もプロローグとなり幻想郷キャラはまだ出てきません。
次回のその次くらいから本編に入っていくと思うので、しばいお付き合いください。


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プロローグ~竜と人~

お待たせしましたプロローグの第二話です。
思っていた以上に時間がかかってしまいました。すみません。


お気に入り登録してくださった方、ありがとうございます。
励みになります!


(もう一度…生きれる?)

 

「ああ、そうだ。お前が望むのならな。」

 

そんなの望むに決まっているだろう。まだ途中だった人生を無理やり断ち切られたのだ。未練たらたらだ。

 

(私は…まだ生きたい!)

 

「いい返事だ!その返事を待っていたぞ!」

 

と、竜は笑いながら言った。

 

「しかし、それには少しやらなければいけない事がある。」

 

(やらなければいけないこと、ですか?)

 

やはりそう簡単には生き返る事など出来ないのだろうか?

と、私が思っていると。

 

「ああ、そうだ。だが難しい事じゃない。お前は承諾だけすれば良い。」

 

私は了承した。すると、竜が険しい声で言った。

 

「…良いのか?簡単に信用して?」

 

(? 何の話ですか?仮に貴方が私を騙していたとしても、これ以上悪い方向へとは進まないでしょうし…)

 

私の中では死ぬ事が1番酷いことだ…そう私が思っていると竜が呆れた声で話し始めた。

 

 「お前なぁ…いいか教えてやるよ。この世にはなぁ死ぬよりも辛い事なんて山ほどあるんだぞ。人間のクソザコが私を執拗に攻撃してきたときとかな、私が寝ていてもお構いなしだぞ!あの時はもう…あの世界を本気でぶち壊してやろうかと思ったぐらいだ。」

 

(…それが貴方の一番辛い事ですか?)

 

「当たり前だろ!私の睡眠を邪魔してきたんだぞ!おちおち眠れもしないことがどんな辛いことかお前に分かるか!?強い奴なら百歩譲ってよしとしよう。しかし、クソ弱い人間共がクッソ弱い槍や剣で突いてくるんだぞ!鬱陶しくてしかたない!」

 

(…ブフゥッアハハハハハッ)

 

「何だお前!何を笑っているんだ?」

こんなの笑うじゃないか、だって死ぬことよりも辛いのが睡眠を妨害される事だって?人間だったら笑い話だ。

しかも、それを物凄く真剣な声で話しているのがまた面白かった。やはり人間と竜は少し違うな、と私は思った。

 

「…まあいい。とりあえず、私が言いたいことは簡単に誰かを信用するなということだ。」

 

と、竜は拗ねたような声で私に言った。

 

(でも、私は貴方を信用しますよ。本当に悪い竜なら自分を疑わせる様なこと言わないでしょうし。)

 

「そ、そうか?/////」と、竜は照れくさそかに言った。

この竜結構チョロイな、褒められ慣れてないのだろうか?別に褒めてもないのだが…

 

「ゴホン」と、竜はわざとらしく咳をして話を再開した。

 

「信じるというならそれでいい。それでは話の続きをしよう。」

 

(はい、わかりました。)

 

「じゃあ、まず第1に私達の身体についての説明だ。私達は今、魂の状態でいる。それは分かるな?」

 

(自分が魂なのは分かりますが…貴方も魂なんですか?)

 

「ああ、そうだ。死後の私が人間と違うところは転生する、記憶がある、力がある、ぐらいしか違わない。」

 

へぇなるほど。竜は記憶があったり転生したり…転生?どういうことだ?生まれ変わるということか?

まあ、''疑問に思った事はすぐに聞く!''これが1番手っ取り早い方法だろう。

 

(転生するって生まれ変わるとかと違うんですか?)

 

「まあ、ちょっと違う。竜の転生っていうのはなあ…不死鳥って知ってるか?あの火の鳥の」

 

不死鳥?多分、ハリー〇ッターで校長が飼っていた、あんなやつだろう。

 

「…で、不死鳥ってのは死ぬともう一回幼体の頃から始まる。記憶はそのままで同じ世界にな。だから退屈すぎて仕方ない。」

 

同じ世界を何度も…確かに退屈だな、と私が思っていると。竜が話を戻してもいいか?と訪ねてきた。

 

(ああ、すみません。話してください。)

 

「それで、魂の状態だからそれを覆う箱が必要になるというわけだ。で、その箱が身体っていう訳だ。」

 

(箱ですか?でもそんなの私達が作ろうと思って作れるものじゃないですよね?)

 

「いや、それがそうでもない。人間だって生まれる時に自分の身体を作るぞ。」

 

え?自分の身体を作ったって?そんな事出来るのか?…思えばここに来てから驚いてばっかりだ。

 

「人は生まれる時に自分のなりたい姿をイメージする。モテたい、強くなりたい、とかな。それと同じ様に私達も身体を作る。」

 

(それじゃあ、新しい世界に行く時に自分の望む姿を想像すれば良いのですか?)

 

「勿論それで良いのだが、さっきの様な例えの想像では少し弱いのだ、故に思った通りになる者は少ない。もっと強く想像する必要があるんだ。その強く想像する方法がある。」

 

(どんな方法ですか?)と私が聞くと竜は答えた。

 

「自分の知っているものをイメージする、コレが1番良い方法だ。」

 

(知っているものをイメージ…ですか?)

 

「そうだ。しかし、私達は2人いる、だから私達1頭と1人でそれぞれ行う。転生した世界でも二つの箱が必要になる訳だからな。」

 

(なるほど、それぞれ自分自身の知っている物をイメージすれば良いんですね?)

 

「ああ、だが私は人を想像する、お前は竜を頼む。」

 

(え?何故相手のをイメージするんですか?)と、私が聞くと竜は「だってその方が面白いじゃないか」と笑った。何とも適当な竜だ。

 

「次に新しい世界の説明をする。いいか、死後の世界ってのは全部繋がってるんだ。わかりやすくするために川で例えよう。」

 

「私達は川の中流に今いる。このまま流れていくと海にでる。海は生前の罪を裁く所だな。生前の世界は陸上、死ぬとその近くの川にでる。私達の世界は川の上流らへんだな。」

 

なるほど、陸で死んで川にでて海に流れて行くという感じか。

 

「そして私達はこの近くにある陸に上陸する。しかし、そう簡単じゃない。なんといっても蘇るってかんじだからな。例外的なやつもいることはいるが…」

 

まあ、当たり前だろう。そんな簡単にポンポン蘇れたらあの世の役人さんも大変だ。

 

「そんでもって私達は比較的入りやすい世界を見つけるんだ。そこの脆いところをぶち壊して新しい世界に入る。」

 

脆いところを見つける?ぶち壊す?そんなことどうやってするというんだ?竜に聞いてみると、

 

「ぶち壊すのなら私に任せろ、やり方は知っている。脆いところを見つけるのはなぁ…まあ見たら分かるだろう。」

 

(見たら分かる?そんなに分かりやすいんですか?)と言うと竜は「見てからのお楽しみだ。」と答えてくれなかった。

 

「そろそろ下流に入るぞ、つまり時間がない。それじゃあ次の説明だ。」

 

竜は少し焦った口調で言った。

 

「さっき言ったイメージの話があるだろう。あれは生まれる時にイメージすると言ったが、今回も同じ様にイメージする。新しい世界に入る直前にお前の竜のイメージを想像しろ。そしたらなる様になる。」

 

よほど時間がないのだろう、竜は早口で説明した。

 

「そろそろ見えて来たぞ。あれが脆いところだ。」

 

…確かに、見れば分かる。というよりまるで”見つけてくれ!”と言わんばかりに自己主張をしている。それは一面真っ白の世界にある濃い赤のバツ印だった。

 

「私はここをぶち壊してこの先の世界に行く。っていうかもうすぐで海につくぞ!早く行こう!」

 

(わかりました!準備OKです!)

 

「よし!それじゃあ、衝撃に備えろ!」

 

と、竜がいうと。赤いバツ印がバンッと音を立てて消え、その瞬間に私の魂はバツ印があった場所に吸い込まれていった。

 

 

 

(埃みたいだ)私は思った。まるで掃除機に吸われている埃みたいだ、と。

 

(そうだ!イメージしないと!)

 

危ない危ない忘れかけていた、と言っても何を想像すればいいのだ?竜なんか見たことないぞ!見たことあるとしてもゲームや中だけだ。

 

(どうしよう?でも竜なにも言わなかったし、ゲームの中でも良いかなぁ?)

 

それに早く考えないと時間がやばいんじゃないか!?

 

(とりあえずゲームだ!ゲームで見た事ある竜だ!何がある!?考えろ私!)

 

そんな事を考えていると急に目の前が眩しくなった。

 

(そろそろかな?イメージ!イメージ!黒くて大きくて禍々しくて…)

 

それから私は思い付いたことをすべて想像し、必死にイメージを作った。

 

 

やがて光は強くなり、目をつぶっていても眩しいほどになった。

そして、こんなに眩しいのに何故か急に眠気も襲ってきた。

 

(何かすごい眠たい。あと、なんだろうこの懐かしい感じ…)

 

今ならとても気持ち良く眠れそうだ。

 

(確かに…)竜が言っていた事も分からなくは無い。私もこんな睡眠を邪魔されれば苛立つだろう。と、私は思いながら深い意識に沈んでいった。

 

 

 

 




  

これでプロローグ編は終わりとなり次回からいよいよ幻想入りします。
チートになりそうな予感…




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第1章 ようこそ!幻想郷へ
第一話:紅く大きな館


今回からやっと本編に入っていきます。やっと幻想鏡キャラが書けるーー!と言うわけで私のテンションはガン上げです。

…ん?何々、幻想キャラが今回はちょっとしかでない?
orz...


音が聞こえる。木のざわめく音だ…

(いつまで寝てるんだ?)と、聞き覚えのある声も聞こえてきた。

 

(…成功したのかな?)私は静かに目を開ける。

眩しい、ずっと寝ていた為かあまりの明るさに目が慣れない。

だんだん明るさに慣れてくると私は空を見ていることに気付いた。私は仰向けで草むらに寝転がっていたらしい。空は真っ青で所々に小さい雲のある、まるで絵に書いたような空だ。

 

(ああ!成功だ。新しい世界にようこそ!)と、竜の声が聞こえた様な気がした…

 

 

 

 

…というより聞こえた。頭の中に直接、テレパシーみたいだ。

それに先程から竜の姿が見えない。

 

「さっきから見当たりませんが貴方は何処にいるんですか?」

 

(私か?私はここにいるぞ。)

 

また頭の中に響いてくる。何故直接話さないんだ?そう私が思っていると(だって私はお前の中にいるんだから仕方ないだろう。)と竜は言った。

 

(ん?私の中?)どういうことなの?

 

(私の魂は今お前の魂と同調しているんだ。要するに(ry)

 

分かりにくい内容だったの簡単にまとめることにする。

 

・私は死ぬ寸前だったので力が弱く1人だけでは自分を構成出来ないということ。竜の場合は出来るのたが、こちらも弱っていてかなり小さい個体になるらしい。手乗り竜みたいな…

 

・私は今2つの人格(竜と私)を持っており私の見ている物を竜は見ているし、私の聞こえた事を竜は聞こえている。入れ替えは可能とのことで入れ替わると目の色が赤色に変わるらしい。(生前の竜の目の色が赤いので)なお私の目の色は黒色とのこと。

 

・基本的に行動するのは私で、竜は戦闘の時、ピンチの時、呼ばれた時などに入れ替わりをしてやると言ってた。

 

・私も竜になれるらしい。その竜はこの世界に突入する際に私の考えた竜であり、部分的な変化も可能らしい。(人間の姿で背中に翼を生やしたり…角を生やしたり)

 

竜に(なってみるか?)と聞かれたので試しになってみる事にした。

最初は中々難しかったが、竜に(頭の中で自分を竜に変身させるイメージで、)と言われ1から想像してみると、ああ、こんな簡単なことだったのか。というくらい簡単に出来た。

 

翼が背中から生えてくる際に少し痛みを感じたが、竜によると最初だけらしい。

人間と変わったことといえば目の見え方か…人間のようにカラフルな世界ではない。暗視ゴーグルを付けているみたいな見え方だ。

 

もう少し遠くまで見てみたい…

私は翼脚の爪を地面にドンッと下ろした。この竜は腕力がかなり強いのか、少し地面がえぐれてしまったがさほど問題は無いだろう。

私は慣れない体に力を込め上体を起こした。

 

(コツがつかめたら簡単かな)

 

(私にも代わってくれ)と竜が言ってきたので私は交代することにした。

 

竜は自分じゃない竜の身体を簡単に扱っている。新しい感覚が楽しくて仕方ないらしい。私にとっては慣れるまでの辛抱だが…竜は十分楽しんだのか、代わろう。と言ってきた。

 

私はふと疑問を抱いた、

(これって部位変化で眼を見えるようにすることは出来ないのかな?)と。

やはり人間の目がいい、竜の目は少し使いにくい。

(ああ出来るぞ。)と竜は答えた。

 

竜の身体で目だけ人間のものにする。

(…出来た!)よし!上手くいった。

 

背が高いので、立つと遠くの方までよく見える、空だけでなく辺り一面かなりの絶景だ。緑の大きな山、霧で覆われた湖、その中の大きくて…赤い館?

何か趣味悪いぐらいにゴテゴテしい真っ赤な館がある。

 

(何だあの館?趣味悪いな…)

 

どうやら竜も同じ事を思ったらしい。とりあえず館があるって事は人がいるのだろうか?しかし今はそれよりも自分の事だ、訪ねるのは後でいいだろう。

 

私は竜になってから気になっている事があった。

 

(やっぱり竜ってことは魔法とか使えるんですか?)

 

やっぱり竜といえば魔法とかだもんね。

期待を込めて竜に聞いてみると…

 

(魔力はあるが…この竜は魔法を使えるのか?)

 

しまった、それは想像していない…

そんなことも想像で決まるのか…私は、(呪文の使える竜にしてれば良かった)と少し悔いた。

 

(…いや、まだ出来ないと決まった訳じゃないぞ。)

 

ん?…決まった訳じゃない?まだ魔法とか使える可能性もあるということか?

 

(ああ。そういうことだ、私達には魔力があるだろう。この竜が魔法を使えないのなら使えるようにすればいいだけだ。)

 

(使えるようになる可能性はあるんですか?)

 

(勿論だ。だが、ほぼ感覚でやるからなぁ。向き不向きがあるんだ、だからお前にセンスがあるかしだいだな。まあ、やってみれば分かるだろう。ちょっと人間に戻ってくれ。)

 

言われたとうり私は人間に戻ると、竜は私に指示を出してきた。

 

まず、片手を真っ直ぐ前に伸ばす。

その次に、その片手に力を込めて集中する。(力を一点に集中させるイメージで)

竜は(最後に、その力を全て解放させるイメージだ)と言った。

 

私はやってみた。あんな結果になるとも知らずに…

 

ッパアァァン!!!ピシューン!!ゴァァン!!

 

(……え?)

 

(……いや、まあ、何だ…その、、、力加減は後々やっていこうな。)

 

…威力やばくないか?よく分からないが、とても大きい光線なものがでてきた。湖の赤い館に擦れその後ろの山に当たったのだが山が半分くらいが融解している。

 

(ちょっと威力強すぎちゃった…テヘペロ♪)

 

館にも少し当たってしまった、後で謝りに行かないと…

 

 

✤ ✤ ✤

 

今日も良い天気です。

(やっぱりこんな天気の日は昼寝にかぎりますね。まあ、寝ていても咲夜さんにすぐに叩き起こされるんですが…)

 

彼女の名前は紅美鈴、紅い館《紅魔館》の門番だ。

 

「ふゎぁぁ」と彼女はあくびを1つした。

 

(今日も異変ナシっと…)

 

彼女が眠りかけようとした、その時!

彼女の耳に「ドンッ」と重く小さい音が聞こえた。

 

(何ですか…もう。)また妖精たちが弾幕ごっこでもしているんですかね、 と彼女が目を開けてみると、さっきまで何も無かったところに黒い物があるのを見つけた。

 

(何ですかね?アレ…)

 

アレがあるのは紅魔館から霧の湖を挟んだ向こう側の草原の森の中だ、湖には霧が立ち込めているので見にくい。

 

ただ、運よく私の能力は‘‘気を使う程度の能力‘‘だ。眼に気を集中させれば… 

 

これで遠くの方まで良く見える。

 

(さて、アレは何でしょうかね……竜?)

 

アレは竜か?一瞬新種の妖怪かと思ったが、見た目的に竜っぽい。

 

(竜なんて幻想郷にいましたっけ?)もしかしたら新しくこの世界に来た外来竜なのかもしれない。とりあえずこの館の主に報告しておこう。

 

(もしかすると幻想鏡に害をもたらすかもしれないですし…)

 

彼女はそう思いながら館の中へと入っていった。

 

 




というわけで幻想キャラ初登場は中国こと紅美鈴でした。
今回こそは幻想キャラをバンバン出すはずだったのにー!キィーー!


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第二話:紅へ変わる

「竜がいる?寝ぼけているの?美鈴。」

 

「いっつも寝ていますからね。夢だと思います。」

 

 目の前の椅子に座っている彼女の名前は‘‘レミリア・スカーレット‘‘紅魔館の主の吸血鬼だ。見た目は幼い少女だが、こう見えても年齢は500歳を超えている。

 

 その横に並ぶのが紅魔館のメイド‘‘十六夜咲夜‘‘この館のメイドをまとめるメイド長だ。

 

「いや、本当ですって!信じてくださいよ~」

 

 思ったとうり誰も信じてくれない…まあいきなり竜がいるなんていっても信じてくれない事ぐらい分かりきっているが。

 

「そんなこと言ったって、幻想郷に竜なんていないし…。分かったわ。嘘をついているようには見えないし。咲夜、その竜とやらを見てきなさい。もしかしたら外来竜かもしれないわ。」

 

「わかりました。お嬢様」とお辞儀をすると咲夜はパッと姿を消し、またすぐにパッと姿を現した。

 

「見に行ってきましたが、それらしきものは確認できませんでした。黒い服に身を包んだ少女ならいましたが」

 

「なんだ、やっぱりいなかったんじゃない。黒服の少女とやらは気になるけど」

 

「そんなはずは!本当に竜を見たんですって!」

 

 竜がいなかった?そんなはずは…もしかしたら本当に夢だったのかもしれない。私がそう思い始めたとき、その思いを一瞬で覆させる出来事が起こった。

 

 レミリアの後ろにある窓が青白く雷の様に一瞬だけ光り、その光とともに物凄い音と揺れが私達に襲ってきたのだ。

 

「な、何!?何が起きたの!?」

 

「お、お嬢様!美鈴!大丈夫ですか!お怪我はありませんか!?」

 

「は、はい!私は大丈夫です!」

 

 案の定、皆慌てふためいている。

 

 バンッ!!!

 

「「お姉様(レミィ)!また、何かやらかしたの!」」

 

 ドアを開けてレミリアの実妹の吸血鬼’’フランドール・スカーレット’’とレミリアの親友の魔女’’パチュリー・ノーレッジ’’が飛び込んで来た。

 

 「何で私なの!?別に私は何もしてないわよ!」

 

「はい。私が見ていましたから今回はお嬢様ではありません」

 

「ちょっと、今回はっ「じゃあ誰なの!裏の山を削るほどの威力の攻撃が出来るのは!」

 

「「……!や、山を削る?」」

 

「ええ、そうよ。さっきの攻撃で裏の山の半分が融解しているわ。あんな威力…魔理沙のマスタースパークより格段に強いわね。」

 

「「……!」」

 

(そ、そんな威力を出せる火力…いったい誰が)

 

「…竜よ。その竜がこの紅魔館を乗っ取ろうとしているに違いないわ!」

 

「「竜って何のこと?」」

 

「美鈴が向かいの草原で見たのよ!夢じゃなかったんだわ…」

 

「確かに…確かにそうですね。その可能性が高いと思われます。」

 

「図書館の本で読んだことはあるけど、実物は見たこと無いわ…それ本当に竜なの?」

 

「はい多分そうだと思います、真っ黒で所々紫が混じってあって、それに頭の角と大きい翼があったんで多分、竜です。」

 

「竜ってそんなに強いの?」

 

「ええ、本によると太古の昔か「ちょっと!竜の話は後で良いから、今は紅魔館を破壊しようとしてくれた竜とやらを退治しに行くわよ!」

 

 話を遮られちょっと不機嫌そうなパチュリーだったが、「確かにそうだ」と納得して小悪魔も連れて来ると言うと部屋から出て行った。

 

「それじゃあ私はこの前やったように幻想郷を紅い霧で覆うわ。昼間だから外には出られないし。その間、咲夜と美鈴は竜が紅魔館を破壊されないように戦ってて頂戴!」

 

「「かしこまりました!」」そういうと咲夜と美鈴は外へと出て行った。

 

 

 

 

 ✤ ✤ ✤

 

 

 まずい…この状況はまずいぞ。まあ結論から言えば私が悪いんだけれども…

 

今の状況?今はこの世界の、いや、あの館の住人二人と睨み合っているところだ。

 

「黒い服の少女というのは、あの方ですか?咲夜さん。」

 

 緑色のチャイナ服を着ている女性は青いメイド服の女性に話しかけた。

 

「ええ、そうよ。」とメイドは言葉を返した。

 

 黒い服?私は黒い服を着ているのか?自分の服を確認するのを忘れていた。確認したいところだが、今はそんな余裕は無い。

 

(絶対私を殺りにきてるよね、これ。)

 

(少なくとも私達を歓迎している空気ではないな…)

 

(ですよね…話せば許してもらえるかなぁ。)

 

(危ない!避けろ!)

 

「……!」

 

 いつのまに、目の前に無数のナイフがある。そのナイフは刃を私に向けて飛んできている。

 

「……くっ!」

 

 瞬時に翼脚を背中から出しナイフを叩き落とす。その瞬間、私の横腹に重い衝撃が走った。「うっ!」一瞬息が出来なくなるし衝撃も受け止めきれない。

 私はそのまま横に飛ばされてしまった。痛みを堪えながら立ち上がり、先ほどまで自分の居た所を見るとさっきのチャイナ服が立っている。どうやら私は後ろから蹴られたらしい。

 

「私が見た竜とおんなじ翼ですね。やっぱり貴方が竜ですか」

 

「だ、誰ですか?貴方たち?」

 

「私ですか私は紅美鈴で、メイド服の彼女は十六夜咲夜です。私達は紅魔館、あの真っ赤な館ですね。そこで働いていて、貴方に攻撃を受けたので飛んで来た訳です。」

 

そこまで話すと彼女は、「おっと、そろそろですかね」と言い空へ浮かび上がった。勿論私は驚いたが、竜に「ここはお前のいた世界ではないからな」と一掃されてしまった。

 

そんなやり取りをしていると急に青空が紅空に変わった。紅い雲?霧?で覆われてしまったのだ。薄いカーテンのように直射日光は防がれるが、完璧に防ぐというものではないため、そこまで暗くは無い。

 

「空が…紅くなった」

 

「ええ、そろそろ来ると思います。」と咲夜という人が答えた。

 

来る?何が来ると言うんだ。せっかく人生が再開できたのに、すぐ死んでしまっては命の無駄遣いだ。そう思い攻撃に警戒していると、館の方から誰かが飛んで来た。

 

「待たせたわね!咲夜、美鈴」

「お姉さまぁ~ちょっと待ってよ~」

「これが竜…でいいのかしら。竜は人間にもなれるのね」

「お待たせしました!彼女が標的ですね!久々に腕が鳴りますねぇ」

 

うわ~勝てる気がしない…理不尽すぎるまさかの1対6。これは酷い…

 

「貴方が竜ね、私はレミリア・スカーレット。あの館の主よ」

 

人は見かけでは判断してはいけないと言うが、これは疑うだろう。なんせ自分よりも幼い女の子が紅魔館の主だというのだから。

 

「…お嬢様は吸血鬼で年齢はすでに500を超えています。」とメイドの方が付け足した。

 

なるほど、彼女は人間ではないのか。吸血鬼って長生きなんだな。あんな見た目でも、もう500越えらしい。

 

「こんにちわ。私はフランドール・スカーレット。貴方が竜なの?人間にしか見えないよ?」

 

次は横の女の子が挨拶をした。髪は金髪で宝石の様な翼を持っている。吸血鬼には見えないが、「スカーレット」というレミリアと共通の苗字を持つこと、レミリアを追いかけるときに「お姉様」と言っていたことから。姉妹であり彼女も吸血鬼なのだろう。

 

「…私はパチュリー・ノーレッジ、同じく紅魔館に住んでいる魔法使いよ。」

 

いままで寝ていたのだろうか…パジャマの様な服装で来ている。

それにしても魔法使いか、見た目はそうでもないな。魔法使いといえば尖がり帽子と魔法のステッキなのに、いや私の考えが古いだけか…

 

「私は小悪魔です!よろしくお願いします!」

 

いや、こちらとしてはよろしくお願いされたくないのだが、だってあれでしょ、今から戦うんでしょ?にしても小悪魔?名前が小悪魔か?と聞いてみると「悪魔は本名を名乗らないのですよ!」っていっていた。

 

「改めて自己紹介しますが、私が紅美鈴。紅魔館の門番ですね。」

「私は十六夜咲夜。紅魔館のメイド長を務めています。」

 

見た目で雰囲気は漂ってくる。咲夜さんの方は如何にも瀟洒ってかんじでメイド服も着ているし何事にも動じない様な目をしている。美鈴さんの方は優しいお姉さんって感じだがいざとなると強そうな、何故かそんな感じがする。

 

「これから戦う相手に名前を名乗るのは何故ですか?どうせ殺すのであれば意味が無いような気がします。」

 

「…そんなのカッコイイからに決まってるじゃない。」とレミリアが答えた。

 

私の中で竜が「嘘だな」と言った。(本音は多分、時間稼ぎをするつもりだ。仲間が来るのを待っているんだろうな。数が多くなるとまずい、私に代われ。)

 

(戦うつもりですか?)

 

(ああ、そのつもりだ。)

 

(もう少し話し合ってみて良いですか?…出来れば争い事は避けたいので)

 

(……ああ、良いぞ。だが戦闘にもつれ込むのならば私に代われ。お前はまだ弱い。)

 

(分かりました。ありがとうございます。)

 

私はこのチャンスを無駄にはしまいとレミリアに話しかける。

 

「…すみませんが、私に名前はありません。それよりも、あなた方は私を…殺そうと思っていますか?」

 

この場のみんなが思った、こいつストレートすぎだろ…と。

 

「……なんでそう思うの?」

 

「それは、私のビームが紅魔館の横を擦れたからです。」

 

私は話を続けようとする、しかしソレは叶わなかった。少女から光の球体の様な物が飛んできて私の話を遮ったのだ。私は間一髪でそれを回避し話を続けようとした。

 

「ちょっと!待っ「皆、聞いたわねやっぱりコイツが犯人よ!皆で捕まえましょう!」

 

「かしこまりました!」

「ええ!」

「了解です!」

「おもしろそう!」

「…まだ何か言おうと「さあ!向かうわよ!」

 

美鈴さんが私が何か言おうとしてくれたことに気付いてくれたが皆の波に負けている。

 

(え?お前何がしたかったんだ?)

 

(いや、これから弁解するつもりだったんですよ!)

 

そう、予定では今頃は誤解が解けているはずだったのに…

 

(とりあえず戦いになったから私と交代してくれ!早く戦いたい。)

 

…分かりました。私は爆音が辺りに響く中、深く目を閉じた。

 

 

 




という訳で次から戦闘回です。
戦闘描写ってかけの難しいよねッ!


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第三話:紅い世界の記憶

ドドドドン!

多くの弾幕が竜に襲い掛かる。

 

「遅いなぁ。そんなんじゃ、かすり傷ひとつ付けられないぞ!」

 

「な!早い!私の弾幕をすべて避けるなんて…」

 

竜は先ほどまで気弱そうだったのに対し目の色が紅へと変わってから喋り方、性格までがまるで別人のように変わっている。

 

「お前、年齢500とかいったな。私はもう数え切れないくらいの年月生きてるんだ!これも経験の差ってやつかな?」

 

「…くっ!やはりがむしゃらに戦っても勝てそうにないわね…皆、前に話し合った作戦で行くわよ!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

(ほう、うまく使い分けてきたな。遠距離二人、中距離二人、近接二人か、これは面倒だ。)だが、私にはあんまり関係ないんだけどな。

 

竜はそのまま突っ込んでいき近距離二人に翼脚で大きく振りかぶる。ギリギリの所でかわされてしまったが相手のバランスを崩すことには成功した。(よし!成功!)まずは一人目、チャイナ服を狙って攻撃を放つ。

 

ドドドドッ

 

連続パンチは美鈴の腹部に辺りに当たり美鈴はその衝撃で少し後ろに飛んだ。普通の人間ならば骨折ぐらいにはなる威力で放ったはずだが、美鈴の場合は何事もなかったかの様にピンピンしている。

 

「何故だって顔してますね、私は気を操ることが出来る能力を持ってるんですよ。気をパンチが当たるところに集中すればダメージを多少は抑えられます。」

 

へぇ、能力か。面白いことを聞いた、ここの全員も能力とやらを持っている可能性が高いのだろう。

 

「美鈴、無駄話ばっかりしてないで早く退治するわよ。」

 

「ああ、すみませんお嬢様。」

 

ふう、やけに忙しくなってきたなあ。遠距離の攻撃が増えたこともそうだが、中距離も中々手ごわい攻撃をしかけてくるようになった。

 

(じゃあ、私もちょっと本気を出すか。)

 

そういうと竜は人間から竜に姿を変えた。

 

(やっぱりこっちの方が戦いに向いてるな、なんせ全てを感知できるんだから…)

 

「やっと正体を現したわね、竜!」

「へえアレが竜なのね!」

 

「正体を現した…か。ちょっと違うな、私はどっちも私だ正体なんてのは存在しない。いや。間違えた私達だったな。」

 

「私達とは?」と声が聞こえたその瞬間、目の前がナイフでいっぱいになった。

 

疑問を投げかけるのであれば、せめて答えるまで待っていてほしい。まるで答えを聞く気がないようだ。

しかも、このナイフかなり鬱陶しい。落としては目の前に現れ、落としては現れ。さらにドーム状に囲まれているので逃げ道がない。

そのドームの中にビームやらをバンバン打ち込まれる。このドームはダメージを加えるためのものではなく行動を制限する、言わば逃げ出さないように閉じ込める”鳥籠”のようだ。

 

さらには粉鱗の熱反応で遠距離2人に多くのエネルギーが集まり始めている事が分かった。

一撃必殺などをこの”鳥籠”全体に浴びせられたのであれば、逃げ場がなくあえなく撃沈だ。

 

「どうよ!これが紅魔館の力よ!」

 

上空でレミリアがそう言う。

 

「…ああ、楽しい。こんな感情…久しぶりだ!」

 

幾万年生きてきた私だが、ここまで窮地に追いやられることなんて久しぶりだ。やはり戦闘はヤバくなってきてからが本番だな。

おもしろい、楽しい、中には戦闘を好まない穏やかな竜もいるが竜は基本的に戦闘主義だ。自分より強い者を見つけては戦いをして楽しむ。「おめぇ~つえ~な~、おらわくわくしてきたぞ!」的なアレだ。

だが最近はそのようなことは滅多になくなっていた。…私は強くなりすぎた。

竜は戦闘を行うたびに強くなる、という理屈から長生きした竜が一番強い事になる。しかし私は転生する。つまり寿命がないのだ。私はその世界で一番になった。上の者がいないとつまらない。私はその世界に飽き飽きしていた。

だから上の者を求めて新しい世界に移ってきたのだ。

 

「楽しい…ですか。まだまだ余裕そうですね。何か切り札でも?」

 

「切り札ねぇ。使う予定はなかったんだがな…まさかここまで追い詰められるとは思わなかった。」

 

「褒めているのか、なめているのか分かりませんね。」

 

そういうと咲夜はナイフをセットしなおす。

 

「純粋に褒めてるよ、だって本気出すなんて久しぶりだからな。」

 

「……ッ!!」

 

風の音も聞こえない静かな世界に竜の声が響いた。

咲夜はこちらを向いて唖然としている。

 

「…嘘、でしょ。」

 

「それが嘘じゃないんだ。これが私の切り札だからな。」

 

2人の声だけしか聞こえてこない、とても静かな世界だ。

美鈴はさっきと同じ様に攻撃を仕掛けようとしているし。私の真上には弾がある。ただ違うのは竜と咲夜を除いて森羅万象の動きが止まっているということだ。

 

「なんで、なんで私の世界に…入ってこれるんですか。」

 

咲夜はあくまで冷静を保って質問を投げかけた。

 

「私も能力?っていうのを持っている。こういうことが出来る能力をな。」

 

(…正確には私のじゃないんだけど)と竜は心の中で付け足した。

 

「そうですか、貴方も能力を持っているのですね。それで、どうします?…私を殺しますか?」

 

咲夜は真剣な目つきで竜に問いかけた。

 

「確かに今お前はただの人間だからな、殺すなんて簡単だ。」

 

竜はしかし…と、話を続けた。

 

「しかし何故私がお前を殺す?私は戦いは好きだが理由もなく命を取ることは好きじゃないな。むしろ嫌いだ」

 

そう言うと咲夜は少し驚いた顔をし、すぐに真顔に戻った。

 

「信用でませんね、本に書いてあった竜は極悪非道で無慈悲な他の生物を常に見下し殺すことを何とも思わない生物と書いてありましたから。」

 

「偏見だ。」竜は少し苦笑した。

 

「他の竜のことなんて知らないな、竜の性格が皆一緒だったら気持ち悪いだろ。個性も、気持ちも、姿形も、考え方だって全部違う。お前らもそうだろ?その本の竜はその本の竜だし、私は私だ。」

 

「ですが現に貴方は私達の館を破壊しようとしていますが?」

 

「…それは…悪かった。」

 

竜の思ってもみない言葉に咲夜は少し驚いたのか眉が上がった。

 

「悪かった?故意にやったことではないと?」

 

「当たり前だ、何故私が破壊する必要があるんだ?破壊しても得がない。それにこの世界の実力も知らずに喧嘩をうるのは、ただの馬鹿かかなりの自信家だけだな。」

 

「…筋は通っていますが貴方が馬鹿か自信家の可能性もありますよね。」

 

「信じてもらうしかないな。」と竜は顔に笑みを浮かべた。

 

「にしても、いつまで話し続けるつもりだ?私はそろそろ戦いに戻りたい。」

 

そういうと竜は人間に姿を変え背中に翼を生やし上空へ羽ばたいた

咲夜に止めることは出来なかった。今までは能力によって竜と人間の実力差を埋めれていたのだが、その能力が消されたことによって今ではただの人間対竜だ、ナイフでどうにかなる話ではない。

 

「…お前は強かったよ。」

 

竜がそう咲夜に話しかける。

 

「強かった…ですか、貴方は甘いですね。私はまだまだ強くなって貴方を討てる程になります、その時に私を殺さなかった事を悔やむことですね。」

 

慰めのつもりで話しかけたのだが、その必要はあまりなかったようだ。

 

「フッ、ハハハハハッ!やっぱり人間はおもしろいな!じゃあ私を追い抜け!その時まで楽しみに待ってるよ!」

 

そう言うと竜は時間を解除した。

 

「お嬢様!上です!」

 

「へ?な、なんで!」

 

レミリアは竜に驚いているようだ。まあ無理もない、今まで地面にいたのにいきなり上空にいるのだから。

 

「ほらほら~まだまだ私は余裕だぞ!」

 

「ッ!!やはり一筋縄じゃいかないわね!だけど、まだ私は負けないわよ!」

 

竜の軽い挑発にレミリアは切り札を使うことにした。紅魔館の主ともあろう者がなめられたままでは終われない。

 

「目に物見せてくれるわ!天罰「スターオブダビデ」!」

 

レミリアはカードの様なものを取り出すと、そう叫んだ。するとレミリアの周りには先程と同じ様な弾が広がった。

 

(これは厄介だな。)

 

驚くべきはその数だ。かなりの密度で小さい弾が密集している。大きい弾からはレーザーのようなものが周りを飛び交っている。

 

(人間になっておいて良かった)竜はそう思った。

 

人間であるならばこんな弾幕はたいしたことはない。だが竜であったならば、体中穴だらけになっていただろう。

 

「だが私も負けてられないな!」

 

そう言うと竜は両手を大きく広げた。

 

怪恐「バミューダトライアングル」!」

 

自分を囲む360度に弾を展開し全方位に弾を分解させる、更にその弾は分裂を繰り返し続ける。

 

「な、なんて奴なの…そうな簡単に出来ることじゃないのに…」

 

皆が皆同じ顔をしていた。

 

「何回も見てれば慣れてくるさ。」

 

(もう打つ手は…)そうレミリアが思い始めてきたとき。

 

空中に大きな何かが開いた。

宙に浮かぶ大きなリボンが2つ、そのリボンとリボンの間の空間が大きく割れ中には大量の目がこちらを見つめている。

 

「もうちょっと早く来なさいよ。」

 

レミリアがそう言葉を発した。

 

「仕方ないじゃない、皆集めるのに大変だったんだから。」

 

その声の主は空間の中から出てきた。

その声に引き続き人間やら妖怪やら神様やらが大勢出てきた。

 

「面倒くさいわねぇ、こんなに大勢いるんなら私ぐらいいなくても何とかなるんじゃないの?」

「あいつが強い奴なのか?早く戦ってみたいぜ!」

「コイツを退治すればいいんですね?竜であろうと私の楼観剣で微塵切りです!」

「あやややや!人間の姿が出来る竜ですか…よし!今回の記事は「幻想郷に竜あらわる!」で決まりですね!」

etc.

 

みんな口々に喋るのでまるで声が聞こえないが、始めに出てきた金髪の女性が大きな声で話を始めた。

 

「皆!あいつが竜よ!皆で協力して退治して頂戴!かなりの強者よ!皆気を付けて…」

 

無茶苦茶だ。どう考えても私に勝ち目がないように思える。だが、今回の目的は勝つことではない。この世界で自分の力がどこまで通用するのか試すのが本来の目的だ。それならば良い機会じゃないか。

 

竜は恐れを忘れ多勢と戦うことを心の底から楽しんでいた。

 

 

 




今回はバリバリの戦闘回です!やっと書き終えたぁ~
どのような戦闘にするか結構悩んでいましたが、最終的にはこのような形に落ち着きました。

途中から美鈴、フラン、小悪魔、パチュリーが空気と化していますが、人数が多いんだもん仕方ないよね!…という言い訳をかましております。本当に出番がなかったのでまたいつか上記キャラがメインに活躍するような、場面が書ければなぁ~と思います。
上記キャラのファンの方、申し訳ありません。



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第四話:~Crimson rouse~

今回は前回の戦闘回の続きです!と、言っても戦う描写はあまりないんですけどね…




それからの展開は長かった。

 

戦いは一瞬でケリがつくかに思われたが、竜は驚くべき力で敵を迎え撃ち皆を驚愕させた。

しかし流石に竜とはいえ、数え切れない程の相手を前に勝利の可能性はかなり低かった…

 

 

 

「…まだ生きてる。私の夢想封印やら魔理沙のマスタースパークやらを受け止めて、よく生きてるわね。」

 

巫女服の女が言った。私がお礼を言うと

 

「…何か人が変わったみたいだな。あ!人じゃなかったぜ。」

 

と、いかにも魔法使いっぽい金髪の女性がそう言って笑った。

 

確かにその女性の言うとうりだ、私は今は竜ではない。

竜は先程の戦闘で力尽きてしまい、内側で寝ている。

 

(それにしても凄いキズ、体中がズキズキする。)

 

私は草原に仰向けで寝そべっていた。動くことがないので体中の傷の痛みが一身に襲い掛かってきて、とても痛い。だからといって立って動けるかと言うと、その力も残ってないのでどうしようもなかった。

 

(当たり前だろ、あんな激しい戦闘したらそうなる。それに、1つの体を2人で使ってるんだから、怪我も共通だな。)

 

(まだ、起きてたんですか、あんまり怪我しないで下さいよ、竜は痛みに慣れてるかも知れませんけど、私は人間だから痛いんですよ)

 

ははは、と竜は笑った。

 

(人間も竜も痛みの感じ方は変わらないさ。私だって痛みだけはどうしても慣れないからな。)

 

竜はそう言い、最後にまた眠るとだけ伝え黙った。

 

私はおやすみなさいと言った。ただ私も少し気を許すとすぐに眠ってしまいそうだ。こんな状況で眠くなるのはおかしいので、多分体の血液が出すぎたことが原因で脳が体を強制的に眠らせようとしているのだろう。

ただ私はまだ眠る訳にはいかない、眠ってる隙に殺されたりされかねないからだ。なので眠る前に私は弁解をしなくてはならない。

 

私は空を見上げた。いつの間にか紅い霧は消え去り空は薄暗くなっている。空には星が薄々と見え、西の空がほのかに明るいので今は明け方の時間帯なのだろう。

 

(もう1日も経った。)

 

彼女の思い描いていたビジョンとは少し違ったが、彼女はさほど悲しんでいる様には見えなかった。

 

 

「…貴方は竜でいいのかしら?」

 

私は竜ではないので、いいえと答えた。彼女は「そう…」と答えた。

金髪の女性は私にいくつか質問をした。なぜ山を壊したのか、どうやってここに来たのか、目的は何なのか、などの質問だった。

質問の合間に金髪の女性は別の誰かと会話しているようだったが、仰向けなので誰と会話しているのかは見えなかった。ただその会話相手は少女のような声だった。

 

「詳しく話が聞きたいのだけれど…聞けそうにないわね。出血も酷いし今は眠っていいわよ。」

 

私は殺される心配をしたが、それを察したかのように金髪の女性は言った。

 

「安心しなさい、殺したりはしないわよ。ただ今のままだと詳しく話が聞けないから治療するだけよ。それに貴方は嘘をついていない様だしね。」

 

その言葉に安心したが彼女が嘘をついている可能性や、目覚めた際に酷い拷問にあう可能性も否定しきれない為に少し不安が残った。

しかし私は、その時に考えればいいか、と考えて目を閉じた。

 

 

 

「それじゃあね~」

 

私は戦いに参加していた最後の一人をスキマで送りとどけると自分の家に戻ってきた。

 

眠りについた竜の彼女はこの世界の医者、永琳に治療を任せて私は藍という名前の式神と共に皆を各場所に送っていた。そして今終わったところだった。

今の時刻は午前の4時前ほどなので凄く眠い。ただ昨日は竜の対応に忙しく夕飯も食べれていないのでお腹も減っている。寝る前に少しだけご飯を食べよう。

 

「紫様、ご飯の準備が出来ましたよ~!」

 

タイミング良く藍がそう言った。

 

「お茶漬けでいいですか?」

 

「さすっが~!分かってるわね~!」

 

「私ももう眠いんで早く食べて寝ますよ。」

 

私たちは2人でご飯を食べた。

 

「2人だけでいるなんて久しぶりよね」

 

「ええ、いつもは橙がいますもんね」

 

そうだ、いつもは橙がいるのだが今日は1人で寝ている。

橙はまだ子供なので戦闘が長引くと思い、家においてきたのだ。

 

「それにしても…何年ぶりかしらね。まだ幻想郷を創ろうとする前だから…長いこと経つわね。」

 

「はい。あれから随分経ちましたね。」

 

私達は昔の思い出話に花を咲かせた。私達も妖怪なので数え切れないぐらいの年月生きている。藍や橙と出会う前も長いことあった。

妖怪達が暮らせるような理想郷を創ろうとして…すべてを受け入れられる世界を創ろうとして…

私は色々な経験をしてきたが今回のようなことは初めてだ。外の世界から来る人間は偶にあるのだが、自ら結界を壊して幻想郷に入ってくるのは今まで一度もなかった。

私の結界はかなり強固に作られているはずだった。並みの攻撃では破るなど不可能だ。

幻想郷では最近、不可解なことがたびたび起きている。そのことと何か関係があるのだろうか?

 

「ご馳走様でした。」

 

そうこう考えていると藍がそう言った。

 

「紫様、早く食べないと冷めてしまいますよ」

 

「ええ、そうね。ありがとう」

 

いつのまにか時計の針は4時半を示していた。

難しい事を考えるのは止めにして私は残っているお茶漬けを飲み干した。

 

 

 




ここまで読んでくださった方、ありがとうございます!

次回からは2章目に変えようと思います。少し早いと思いますが、ちょうどキリがいいので…

次回も心待ちにしてくれると嬉しいです!


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第2章 本格的な幻想郷生活!
第五話:天国と地獄


 

目を覚ますと辺りは薄暗かった。

夜といった青い感じではなく、今にも雨が降り出しそうなぐらいの薄暗い、灰色の暗さだった。

 

(ここは…何処だろう?)

 

辺りを見渡すが何も無い。

「何も無い」の文字通り本当に何も無い。

地面、地平線、あるのはそれだけ。植物も無ければ人もいない。

殺風景中の殺風景、キングオブ殺風景だ。

 

気にしてみると大怪我だった身体の傷が全くない。

あれだけの大怪我を全く傷跡も無く治す事など出来るのだろうか?

もしかすると、寝てしまった間に殺られたのかもしれない。

そして此処は死後の地獄なのかもしれない。もしくは夢の世界か…

 

もし地獄だとすると孤独地獄なのだろう。

そんなものあるかどうかも知らないが。

 

ずっと立ち止まっているわけにもいかないので、少し歩いてみることにした。何か見つかる可能性に賭けて果ての果てまで歩いた。

なのに、私は全く疲れなかった。そして、依然として何も無かった。

 

(なんにもない)

 

何処まで歩いたんだろうか、1年にも感じるし1時間ほどにも感じる。本当に何も無い。静か過ぎて耳が痛くなる。

 

(いつまで此処にいればいいんだろう)

 

出口が見つからない、もう諦めるしかない。

そう思い元来た道を戻ろうとし、振り返った時、私の2、3メートル先に黒髪の子供が体育座りで座っていた。

ビックリした。心臓が飛び出るかと思った。

 

「…どうしたの?大丈夫?」

 

私が声をかけるとその子供は顔を上げた。

…その子は少女だった。泣いていたのか少し目が赤い。

 

「……」

 

少女は何も話さずに私を見ていた。

いや、少女の目は私を少し逸れて私の後ろを見ていた。

少女の目に何が映っているのか…。少し怖かったが私も振り向くと。

 

「蜻ェ繧上l縺溷ュ」

「繧ウ繧、繝?r谿コ縺輔?縺ー」

 

ドコの言葉か分からなかったが、6人の男達が私達に向け口々に叫んでいる。気付くと四方八方を囲まれており、逃げ道はすでに残っていなかった。

6人の男は黒い頭巾を深く被り、薄暗いこともあってか、顔まではわからなかった。

ズボンや服は所々擦り切れているが、見た目は中肉中背。

貧困でも無ければ高貴でも無いといった所、もといただの村人のような感じだ。

皆、左手に松明を持っており赤く煌々と燃えていた。

右手には鍬や鎌、レーキといった道具を皆それぞれ持っていた。

見なくても分かる…彼らは私達を殺すつもりだ。こんな多人数で挑まれたら、戦うまでもなく一方的な死が待っている。

おっと、ここが地獄なら殺される事は無いのか。

 

「谿コ縺幢シ∵ョコ縺幢シ∵ョコ縺幢シ」

 

そして、悪しくも私の予想は的中し彼らは襲い掛かって来た。

鍬が私に振り下ろされる。私は震える少女を抱き、強く目を瞑った。

 

 

 

「…ッ!!」

 

私は仰向けの状態から上半身を一気に引き起こすと、先程の薄暗い色と打って変わり純白が眼前を覆った。自分を見てみると着ている服も白衣のようなもので、すぐにここは病院だと分かった。

 

(良かった…夢か)

 

「あ!やっと起きましたか!」

 

横から可愛らしい声が聞こえてきた。

声のほうに頭を向けると……可愛いらしいウサギがいた。

…訂正しよう、ウサギじゃない。いや、ウサギなのだがウサギじゃない。

白いブラウスに赤いネクタイ、その上に黒のブレザーを着て、下は膝上までのミニスカート、三つ折りソックスに茶色のローファーを履いている。

ここまでは只の女子高生だ。しかし一際私の目を引いたものがある。それは赤い目と薄紫色の髪、最後にウサギの耳だ。

 

「…可愛い」

 

…おっと思わず本音が出てしまった。

 

「え!そ、そうですか…/////」

 

ちょっと照れてる…可愛い

 

「何でウサギのコスプレなんですか?」

 

疑問に思ったので聞いてみると、

 

「違いますよ!本物のウサギですよ!」

 

ホラ、と言って彼女は後ろを向きふわふわの尻尾をみしてくれた。

 

確かに偽物には見えない。しかしこれは…確かめないわけにはいくまい!!

ガッと手を出し兎の尻尾に触れるとモフッ、フワッとした感触を得た。

 

「ひゃあ!触るのは駄目です!」

 

いちいち反応が可愛い。

 

「いやーごめんなさい。反射的につい…」

もちろん嘘だ。

 

彼女は名を”鈴仙・優曇華院・イナバ”と言った。

さっきの夢のせいで1人になるのがちょっと怖かったので兎の彼女に逃がす隙を与えず、マシンガントークを始めた。兎の彼女とは精神年齢が同じなのか、想像以上に気が合い、楽しい時間を過ごした。

しかし、時の流れは無情なもので、嫌な時は遅く、楽しい時は早く過ぎてしまう。

もちろん時間は私にだけ贔屓してくれるはずもなく、これまでと同じく楽しい時間だけを早めていった。

 

「…ウドンゲ、何してるのかしら。」

 

「…ひッ!!お、お師匠様?」

 

彼女の後ろのドアを開けて現れたのは、彼女が「お師匠」と呼ぶ人。

赤と青を強調した服装で、赤と青の帽子、白の長い髪を三つ編みにしている女性だ。彼女がお師匠と呼ぶので、多分、彼女の上司なのだろう。

 

「目が覚めたら伝えてと言ったはずなんだけど?」

 

はにかんで言うのがまた怖い。

 

「あ、これはですね、えっと…」

 

そのお師匠という方がそんなに怖いのか、彼女はかなり焦っている。

 

「…ごめんなさい!鈴仙さんは悪くないんです…」

 

悪いのは私なので、少しだけ恐かったが勇気を出して謝った。

頑なな人ではなく、理由を説明するとすぐに納得してくれた。

 

「すみません…」

 

「別にいいのよ、うどんげに危ない事が無いようにしたかっただけだからね」

 

…竜ってそんな怖がられてるのか…それとも自分が山を破壊したからだろうか?多分、どっちもだ。

 

「そういえば、申し遅れたわね。私はこの世界の医者、八意永琳よ。」

 

「私はただの人間の…名前はまだないです。」

 

「人間?貴女、竜じゃないの?」

 

うどんげさんも疑問そうな顔でこちらを見ている。

多分これから何回も説明しないといけない内容を永琳に話した。

 

「私って2人いるんです。一つの体に2つの魂が入ってるんです。」

 

「解離性同一性障害…かしら?」

 

「かいりせい…何ですかそれ?」

 

優曇華が、永琳に質問する。

 

たしかに、私の生きていた世界にもその精神病はあったが、なぜこの世界の者が知っているのか?とにかく、この状態は病ではない。

 

「いえ、そういうんじゃなくて、もっと何か……特殊なやつです。」

 

私自身も分からない。やっぱり竜に聞かなければ。

 

(身体の形貌融合化、魂の精神分離化だな。それを、転生中に行った。)

 

竜が私の中で喋った。

 

(うお!いつの間に起きてたんですか!?)

 

(…ずっと前だ)

 

竜の説明は自分でもよく分からなかったが…とりあえず永琳にそう説明した。

 

「へぇ…そんなことが出来るなんて、流石竜ね!」

 

私もそう思いますわ。ほんと。でも、それ以上に話を聞いて瞬時に理解した永琳も凄いと思う。

それから、永琳が興味深々に話を聞かれたが私は何も分からないので、竜の言葉を代わりに外に発した。

ある程度話をすると永琳は満足気な顔で質問を止めた。

 

「詳しい話はまたゆっくり聞かしてもらうわ。」

 

本当に凄い知識欲だ…感服する。

 

「で、今更なのだけど寝汗が凄いわね…」

 

「三日前からずっとうなされてましたから多分、悪夢でも見たんじゃないでしょうか?」

 

優曇華さんが代わりに答えてくれた、ずっと付き添ってくれたのだろう…ってちょっと待て!三日前!?

 

「え!?三日前!?三日前ってどうゆう…」

 

「あ、まだ教えてなかったわね。貴方は約三日と半日ほど眠っていたのよ。」

 

おうふ……せっかくの新しい世界を初日にして眠り続けるとは…

高校の修学旅行だったら何も観光せずに三日間バスの中で眠っていて、帰るときになって起きる感じの後悔的な気持ちだ。何たる無念……

しかしまあ多分まだこの世界にいられるわけだし、三日間ぐらいどうってことないか!

 

「で、さっきの話なんだけど、お風呂を使っていくといいわ。そのままだとべたべたして気持ち悪いと思うから。優曇華、用意をお願い。」

 

はいっと言って優曇華さんは部屋から出て行った。

 

「そうですか、それではお言葉に甘えて…」

 

私はベットから足を投げ出し、床に立った。

 

(あれ…痛みがない)

 

「フフ、驚いているようね。月の力を持ってすればあんな重傷でも、綺麗に治せるわ。」

 

それは凄い、もしかしたら私のいた世界よりも医学は発達しているのではないだろうか。

だが、少しだけ首に違和感を覚えた。首に触れると鉄の首輪のようなものが付けられていることに気付いた。

 

「ああ、それは首棘輪よ。貴方が逃げ出さないように、攻撃してこないようにするため。もしそうしようとしたならば首が体と離れるわ。」

 

永琳の眼つきが変わった。真剣な眼差し、または、威嚇する顔だ。

 

「私の可愛いうどんげを傷付けられるわけにはいけないからね。」

 

声のトーンを1つおとしている。ドラマで見た

 

「ええ、分かってます。私は戦うために来たんじゃないですから、そんなこと絶対しませんよ。まあ、信じてはもらえないと思いますが…」

 

つかの間の沈黙が漂い、永琳が口を開いた。

 

「なーんてね、分かってるわよ。貴方が危ない者じゃないくらい。」

 

(信じてもらってたんかーいッ!!)

シリアスな雰囲気に任せてちょっとキメたセリフを言ったのに、恥ずかしい…

 

「うどんげとの会話を聞いてたら分かるわ。あなたに害が無いことくらい。」

 

「いつから聞いていたんですか?分かってたならそんな凄まなくてもいいじゃないですか…」

 

「ちょっと反応が見てみたかったのよ。」

 

そう言って永琳は私の首の首輪に手をあてた。

 

ピコーン ガシャ

 

首輪は近未来的な音を鳴らして外れた。

 

「…いいんですか?私、もしかすると暴れだすかもしれませんよ。」

 

「もしそのときは…私が相手になるわ。それに本当に暴れるものは暴れるなんて言ったりしないわよ。」

 

この人には敵わない。多分、本当に私が暴れたとして負けるのは私だろう。

 

ガラリ

 

「お風呂の準備できましたよーあれ?取り込み中でしたか?」

 

「いや、何でもないわ。」

 

「はい。何でもないですよ。」

 

優曇華さんは頭に疑問符を浮かべているが、私は小さく笑みを浮かべた。

 

「あっ、あと着替え。あがったらこれ着てください。」

 

「はい。ありがとうございます。」

 

私はお風呂まで案内してもらった。大きなお屋敷だ。

脱衣所の鏡を見てふと疑問に思った。そういえば私はまだ自分の顔を知らない…

前世の私の顔は記憶から欠如しているし、竜が人間の私を創ったので、自分の顔を見るのはこれが初めてになる。ちょっとワクワクするが、正直ちょっと恐い。

目を瞑り鏡の前まで行きパッと目を開いた。

 

「え?これは…」

 

私は驚いた。私は自分の顔を見るのは初めてではなかったからだ。

鏡に映った自分は…夢で会った少女の顔とよく似ていた。

 

 

 

 



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第六話 : さよなら永遠亭

なぜ2000字を目安に書いているのに3500を超えた…!?
よって今回は少し長いです、読みにくかったらすみません…


「ふぅーさっぱりしたー」

 

あれから私はまるで高級旅館であるかのような、大きくて綺麗な木造りのお風呂で体の疲れと汗を流した。

自分の顔の事?それはもちろん気になったが、竜が「話す時が来たら話す」というのでそれ以上問いただすのをやめた。

 

脱衣場に綺麗に折り畳まれていた黒のフード付きコートを羽織った。この世界に来た時には、感動と期待で服になんて目もくれていなかったが、今自分を客観的に見ると不審者以外の何者でもないと思う。

スライド式のドアを開き、お風呂場から出ると長い廊下に出た。そして私は元来た道を戻り、永琳と鈴仙と再開する……はずだった。

 

(やばい…ココドコ…)

 

迷路のように入り組んだ長い廊下と大きな屋敷は方向音痴の自分を迷わすには十分だった。お風呂へ行く時に道をしっかり記憶したつもりだったのだが、どうやら汗と一緒にお湯に流れてしまったらしい。

 

(ん?どうした?ウサギとかの所に戻らないのか?)

 

竜が呑気に聞いてくる。私だって戻ることが可能ならこんな所で突っ立ったりしていない。

 

(道に…迷いました。)

 

(なるほど、それでこんな所に)

 

そうだ!道に迷ったら聞いてみるのが最善策!竜なら分かるかもしれない!という希望を抱いて竜に聞いてみることにした。

 

(道…分かりますか?)

 

(いや、全然覚えてない。)

 

やっぱりか…道を知っているなら間違った所で教えてくれるはずだ。

 

(だが、道がわかる方法なら知っているぞ。)

 

おっと、悲観するのはまだ早かった。

 

(私だって伊達に何千年も生きているわけじゃない。道に迷った時の対処法なら知っている。)

 

流石竜、ただの人間とは知識の量が違うようだ。

 

(その方法とは?)

 

(建物の中で迷ったときは…)

 

(ときは…?)

 

ゴクリ…

 

(左手を壁に付けてそのまま壁に沿って進む!)

 

(なっ!そんな単純な方法で?)

 

(ああ、これが私の人生の中で見つけた完璧な方法だ。)

 

そんな方法が…、さっそく試してみることにしよう。

 

(……ッ!!)

 

(何だ?どうした?)

 

(左に…左に壁がありませんッ!!)

 

(な、何だと…そんな、どうすれば…)

 

左手を壁に付けようと左を見ると、壁の代わりに綺麗な中庭が見えた。京都の龍安寺の石庭を彷彿とさせる美しい庭がそこにはあったが今は迷子、ゆっくり見ている時間などない。

何か次の策はないか?そう2人で考えていると…

 

「見ない顔ね…貴方は誰?」

 

急に声をかけられビクッとした。声をかけられた方を振り向くと黒髪ロングの美しい着物を着た女性が立っていた。

 

「ああ、この前の戦いの竜じゃない。怪我は回復したようね。」

 

いかにも大和撫子という風貌で喋り方まで上品だ。

 

「自己紹介が遅れたわね。私は蓬莱山輝夜、月のお姫様よ。」

 

月?輝夜?もしかして、あのかぐや姫か?

 

「貴方は…そういえば名前はなかったわね。こんな所で何をしているの?」

 

ああ、そういえば、私は迷子だ。道を聞かなければ…

 

「もしかして迷子かしら?建物の中で…プッ」

 

カチン

私の中で何か音がした気がした。

 

「さて、それはどうだろうか?」

 

「…どういうことかしら?」

 

(…どうするつもりですか、竜さん?)

 

カチンと頭の中で音がしたのは、どうやら竜がキレた音らしい。

 

(そんなに心配するな。なめられたままでは終われないだけだ。)

 

(あまり無茶なことしないでくださいね…)

私は心配そうに言った。

 

「私に首輪が着いていたのは知っているか?」

 

「ええ、あの首輪は永琳しか外せないわ。あなたに着いていないということは、永琳があなたを信用して外したということになるのかしら?」

 

「確かにそうだ、あの首輪はそいつしか外せない。ただ、信用して外したのかどうかは分からないがな。」

 

「どうして?」

 

「こうは考えられないか?私があのウサギや永琳を殺し、その永琳の手を使い首輪を外したと。」

 

竜は気味悪く笑みを浮かべた。

 

「なるほど、そう考えるとすると…あなたは私と戦わないといけないのかしら?」

 

2人の間にピリピリとした空気が流れる。

 

(ちょっとちょっと、いいんですかこんなことしちゃって…)

 

(全然大丈夫だ、私が勝てばいいだけなんだからな。)

 

もしかして最初っから戦いたかっただけじゃあ…私はそんな疑問が湧いてきた。

 

「戦うか?外で」

 

「そうね、戦いたくなくはないんだけど…また今度にするわ。」

 

絶対戦う流れだと思っていた私は予想外の返答に驚いた。

 

「…は?なぜだ?」

 

どうやら竜も同じらしい。

 

「そろそろお迎えが来るだもの、待たせちゃ可哀想じゃない?」

 

何を言っているのか分からない。私はそう思っていると、ドタバタという音が聞こえてきた。

 

「あ!竜さんいた!どこ行ってるんですかー、もー!」

 

さっきのウサギの鈴仙が来た。息が上がっているので私たちをずっと探していらしい。悪いことをした。

 

「ウサギを殺した…だったかしら?」

 

お姫様はやっぱり小馬鹿にしたような感じでニヤついている。

 

「…ただの例え話だ、本当の話じゃない」

 

そう言った後で私にも話しかけた。

 

(…というわけだ、代わってくれ。)

 

竜は少しガッカリしているようだが、私は内心ホットしている。

 

「それじゃあ、戦うのはまたの機会にしましょう。」

 

「何の話ですか?もしかしてお取り込み中でしたか?」

 

「いえ、何でも無いわ。じゃあまたね竜の人」

 

「あ、はい!失礼します。」

 

おっと、やはり敬語になってしまう。やはり相手がお姫様だからだろうか。輝夜はクスクスと笑った。

 

「いつの間にか姫様と知り合いになってたんですね…」

 

知り合いというかなんというか、敵友になりそうだったよ。鈴仙がタイミングよく来てくれたおかげで戦いは免れた。ナイス鈴仙!

 

「あ!」

 

どうかしたのだろうか?輝夜が私に向き直った。

 

「あなたさっき、死んだ永琳の手を借りてとか言ったでしょう?」

 

「ああ、言ってましたね」

 

「あの首輪血脈の流れと指紋とかで読み取るから死んだ人の手じゃきかないの」

 

「へーそうなんですか、でもそれで?」

 

「つまり、あなたの嘘は最初からお見通しだったっていうことよ。」

 

輝夜はまたバカにした顔をして去って行った。

 

(カチン)…また頭の中で音が聞こえた。

 

 

 

あの後竜を説得し、鈴仙に案内してもらいやっと元の所に戻ってきて最後にちょっとした検査を行った。

 

「よし、以上で検査終わりよ。特に問題は無いわね。」

 

「ありがとうございました。問題無いってことは、いつでも退院出来るってことですか?」

 

「ええ、そうよ。ただし貴方を解放するわけにはいかないわ。あなたに行ってもらわないといけない場所があるの」

 

「行かないといけない場所ですか?」

 

「そうよ、あの赤い館あったでしょ?」

 

赤い館といえばあれだな、あんな奇抜な建物忘れられない。

 

「あそこからお呼びがかかってるのよ。」

 

お呼びかー絶対あの山のことだ。そうに違いない。

 

「でも、私道がわかりません。」

 

「そういうと思って、道案内役を付けているわよ。」

 

やっぱり永琳抜かりがない。

 

「何から何までありがとうございます。」

 

私は永琳に挨拶をすると部屋の外に出た。そこからは、鈴仙に出口まで案内してもらい、外に出た。

 

「うわーすごい竹林ですね!」

 

外に出ると目の前すべてが竹で覆われた。

 

「ここは迷いの竹林って呼ばれてて、この竹林に入ったら迷って出られないらしいですよ。」

 

「え?じゃあどうやってここから出るんですか?」

 

「大丈夫です、妹紅さんっていう人が案内してくれるので」

 

聞くところによると、その人はこの竹林の案内人をしているのだそう。こんな林の中を迷わず進めるようになるなんてどれ位の年月歩いたらそんな事ができるようになるのだろうか。

 

「そろそろ来るはずなんですけど…どこにいるんでしょう?」

 

予定ではもう来ているらしい、まだ来ないようなので私達が少し雑談をしながら待っていると…

 

「悪い悪い、少し遅れた。」

 

そう言って1人の女性が出てきた、彼女が妹紅って人らしい。まさかの女性だとは、こんな山の中を歩いて大丈夫なのだろうか。

 

「あんたが竜か、私は藤原妹紅。よろしく」

 

私もよろしくお願いしますと言うと、そんな固くなくていいと言われた。そういうのが苦手なんだそう。

 

「それじゃあ行こうか」

 

「はい。あ!そうだ鈴仙さん!」

 

そうだ最後に言い忘れていたことがあった。

 

「え?はい」

 

「色々ありがとうございました!あと…その…」

 

やっぱり直前で恥ずかしくなってきた。

 

「…どうしました?」

 

「えっと…友達になってくれませんか!」

 

恥ずかしい…やっぱり言わなければ良かった…

 

「はい、もちろん!じゃあ敬語で話すのやめましょう。」

 

やっぱり言って良かった…

 

「うん、ありがとう!」

 

私はもう1度お礼と別れの挨拶をした。

これから赤い館に向かう。私の始めての友達…それは可愛らしい兎だった。

 

 




という訳で、今回で永遠亭とはサヨナラになります。次作は紅魔館がメインになると思います。東方キャラと少し絡みが薄い気がする…次作はもっと絡みが増えるといいな…(他人事)


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第七話 : 新たなる1歩

今回で主人公の名前が決まります。
名前って意外に決めるの難しい…だってセンスがないんだもん(/・ω・)/


 

 

 

目の前の紅い館…やはり何回見てもこのセンスは理解できない。

 

私は今、紅魔館の前に立っていた。

 

(ここまで来たけど…やっぱり行きにくい)

 

嘘でも、紅魔館を破壊しようとした私だ。とんでもなく気まずい。

門番の女性に案内してもらおうかと思ったが、門の前でグースカ眠っていて、何をしても起きない。

 

(自分で門を叩くしかないのか…)

 

仕方ない…私は勇気を出して紅魔館の門を開けた。

 

(気をつけろ、トラップとかあるかもしれないぞ。)

 

竜が心の中で言った。

まるで他人事だ。私が死ねば自分も死ぬというのに。

 

(死ぬぐらい強いトラップなんて置いてないだろ。仮に致命傷でも、永遠亭に行けば1日で治るから大丈夫だ。)

 

(1日?私の怪我は3日ほど掛かりましたが?)

 

(あの怪我も1日で治ったぞ、あの後2日間疲れて眠っていただけだ。)

 

なんだ、私は眠ってただけだったのか、永遠亭の医療技術恐るべし。

竜と会話しながら歩を進めるとすぐに館の扉前までやって来た。

 

(お説教だけで済むといいな…)

 

私はそう思いながら扉を叩いた。

 

コンコン……

 

コンコン………

 

返事がない、こんなに大きな館なのだから奥にいれば聞こえないのも無理はないのだが、どうしたものか。

勝手に入るのも気が引ける。私がそう思っていると、1人の少女が出てきた。少女よりも幼女といった方がいいか、それに羽もついている…幼女というより妖精か。

 

「どちら様ですか〜?」

 

「えっと、この館に来るようにって言われたんですけど…」

 

「分かりました!お客様ですね?私について来てください」

 

本当に分かっているのだろうか?ちょっと不安だが、ここに残るわけにも行かないので付いていくことにした。

中を案内してもらったが、すごく奇妙だ。この館は外観に比べ建物内がとても広い。まるで、赤い館はハリボテで扉の中は別の空間が広がっているかのようだ。

 

「あっいたいた!咲夜さ〜ん!」

 

「あら?あなた自分の持ち場は?って…あ!」

 

「どうも、お久しぶりです…」

 

「お客様かと思って連れてきたんです!」

 

「お客様…?美鈴に来たら伝えるよう頼んでおいたはずなんだけれど?」

 

「門番の方なら寝ていましたが?」

 

私がそう答えると、咲夜は「またか」と肩を落とした。

 

「いいわ、とりあえず私について来て。」

 

小さい妖精にサヨナラを言うと、私は咲夜さんの後について行った。

 

歩けど歩けど一向に目的の場所につかない、やっぱり外から見るよりも中の方が広い。どうゆう原理なのだろうか?

 

「すごく広い館ですね…」

 

「ああ、それね。ちょっと空間をいじっているの。」

 

どうりで、やっぱり広そうだと思ったのは間違ってなかったのか。

そして、その長い道のりを歩いていくと周りと比べひときわ大きい扉の前についた。

 

「お嬢様、入りますよ。」

 

咲夜がそう言うと、中から「はーい」という声が聞こえてきた。

彼女が中に入るのに連れて、私も中に入ると目の前にあの吸血鬼が座っていた。

 

「久しぶりね、元気にしていたかしら。」

 

吸血鬼のレミリアは細く微笑んだ。

 

「今日に目が覚めたばっかりですけどね、元気といえば元気ですが。」

 

「そう、なら良かったわ。」

 

後ろで扉の閉まる音がした。逃がさないようにするつもりか?

…考えすぎだろう。

 

「それで、用件はなんですか?」

 

まあ、だいたい分かってるが…

 

「用件ね、だいたい分かってると思うけどあの山のことよ。」

 

やっぱりか…どんな罰が下ることやら、痛いものはできるだけ勘弁したい。

 

「あの山はこの紅魔館のすぐ裏にあるの、つまり私の所有物ってことよ。そして、あなたは山を破壊したわね?それは、私の所有物を破壊したことと同じこと。」

 

「…故意では無いにしろ破壊したことに変わりはないです。罰は受けます。」

 

(そんな事言って大丈夫なのか?)

 

竜は不安気に聞いてきたが、多分大丈夫だ。この発言で誠実さが見えたはず、罰を与えるにしても最低限のものにしてくれる……と思いたい。

 

「そうね、あなたが故意にしたんじゃ無いのは私も分かってるわ。しかし、私の所有物を破壊したことに変わりはない。悪いけど罰を与えざるをえないわ。」

 

「どんな罰ですか?痛いのは嫌ですけど…」

 

「痛いのなんてしないわ、ただあなたにはこの紅魔館で働いてもらう。」

 

「え?働く?」

 

「ええ、そうよ。あの山を弁償できる代金になるまで働いてもらうわ。それにあなたも住むところがないでしょう?咲夜も楽になるし、これで両方得よね。」

 

少女は胸を張ってそう言った。

あれ?何か急にバカっぽく見えてきたぞ?

 

「働くのはいいんですが、何をすれば?料理なんて器用なこと出来ませんし…掃除くらいしか出来ることないですよ?」

 

「大丈夫よ!咲夜、説明してやって頂戴。」

 

「ええっとですね。まずあなたの仕事は紅茶を入れたり、簡単なことから始めてください。後々仕事は増やしていきますが…」

 

まあ、別に働くのは全然いい。住むところができるのもありがたい。むしろ断る理由が思い浮かばない。竜も大丈夫のことらしいのでとりあえず受け入れよう。

 

「そうと決まれば早速宴ね!咲夜、新人のために最高の料理を頼むわ。それと紅魔館の皆にも紹介してあげて。」

 

「かしこまりました、お嬢様」

 

最初から宴がしたかっただけではないのか?まあでも私もそういうのは嫌いじゃないし、歓迎してくれているようで嬉しい。

 

「紹介するって言っても…そういえばあなた名前が無いのかしら?」

 

「ああ、はい。そういえばそうでした。」

 

「そうね…じゃあ私が決めてあげるわ!心配しなくても大丈夫よ!咲夜の名前も私が考えたんだから。十六夜咲夜、素敵な名前だと思わない?」

 

確かに、素敵な名前だと思う。断わる理由もないしここで決めてもらった方がいいかもしれない。私はレミリアに名付けをお願いした。

 

「そうね……じゃあ、紅月楓《あかつき ふう》…でどうかしら?」

 

紅月楓…良い名前だ。

 

「はい!ありがとうございます!」

 

皆に紹介する名前が出来た。働く場所も住むところもある。

結構良いスタートを切ったんじゃないか?と、私は思った。

 

「それじゃあ、最初の仕事として宴の準備を手伝ってちょうだい。」

 

「はい、頑張ります!」

 

私は宴の準備に、彼女のあとを着いて行った。

 

 

 



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第八話 : 眠らない大図書館


最近竜の方に手を出してないので、今日は竜がメインの回です。



 

 

「失礼するぞ」

 

図書館の扉の開く音がする。

 

「…あなた毎晩来るわね、」

 

パチュリーが本から目を離さず無愛想に言った。

 

「本を読むのは好きなんだ。」

 

私は昨日の読みかけの本を手に取った。

私の名前が決まった日…あれから数日ほど経った。もう一人の自分もここの生活に慣れてきたようだ。

私は夜の間だけ活動している。もちろん昼も起きてはいるが前面に出ることはない。夜になればここに来る、そして朝まで本を読む。彼女が起きると交代だ。

 

「おすすめの本はあるか?」

 

読み終わった本を棚に戻してパチュリーに問いかけた。

かれこれこのやり取りも十数回だ。

 

「最近は『鬼の作り方』っていう本を読んだわ。」

 

「鬼なんか作っても邪魔なだけだ。」

 

「…じゃあこんな本は?『夜型のデメリット、朝型のメリット』」

 

「自分こそ読んだ方がいいんじゃないか?」

 

「読んだけど私には関係ない本だったわね。」

 

「じゃあ多分、私にも関係ないな。」

 

結局今日は『孤高の英雄』という本を読むことにした。

 

「…あなたもここの生活に慣れてきたわね。」

 

「ああ、確かに慣れたな。」

 

簡単な内容の本だった。

ある所に変わり者の勇者がいた。

彼はとても強く、あらゆる街や村を救っていたが人間嫌いや一匹狼の性格からか皆にはあまり歓迎されなかった。

 

「紅月も紅月よね、最初は紅茶すら入れるのすらままならなかったけど今ではまともになってきてるじゃない。」

 

「最初の紅茶か。あれは傑作だった。」

 

紅月の作った紅茶が不味すぎてレミリアが盛大に吹き出した事件…

私は思い出して少し笑った。

 

「…少し気になっていた事があるんだが、いいか?」

 

「何かしら?」

 

「なぜ…私を雇ったんだ?」

 

「レミリアが言わなかったかしら?咲夜が楽になるからって。」

 

「私が聞いているのは本当の理由だ」

 

少しの沈黙にパチュリーは口を開いた。

 

「あなたは勘がいいのね……あの子は何も気付かなかったのに」

 

「あいつも気付かなかったわけじゃない、ただ聞く勇気が無かっただけだ。」

 

また少し沈黙が続いた、今度は自分から口を開いた。

 

「私を雇った理由を教えてくれないか?場合によってはここを去らなければならない」

 

「あなたの考えていることはだいたい分かるわ…私達があなたを殺そうとしようと計画していると考えてる。違う?」

 

私は無言でうなづいた。

 

「残念だけど……それは違うわね。」

 

パチュリーはやっと私を見て答えた。

 

「まず私達があなたを殺すメリットがない、それに簡単に殺せるとも思わないわ。あの数で挑んで手こずったのだからね。」

 

彼女の目は嘘をついていない、私の勘がそう感じた。

 

「じゃあなぜ私を雇った?そっちに得は少ないはずだが…?」

 

「それは……」

 

「それは、あなたの見張りのためよ…楓」

 

言葉を淀ませたパチュリーに代わり、棚の奥から別の声が聞こえてきた。

 

「…その名前で呼ぶな、私の名前じゃない。それにいつからいたんだ?」

 

彼女は奥の棚からヒョイと出てきた。この館の主、レミリアだ。

 

「最初からよ。…紅茶の話しの時からね。」

 

レミリアはパチュリーを睨んだが、パチュリーは本にスッと目を移した。

 

「で、話を戻すけどあなたを雇ったのはあなたを監視するためよ。」

 

レミリアはこちらを見て言った。

 

「まだ疑っているのか…そろそろ信用してくれないか。」

 

故意では無くても紅魔館を破壊しようとしたことは分かっている。それで信用してくれと言っても、ただのワガママかもしれない。でも、そろそろ信用してほしい。ずっと監視されたままでは居心地が悪い。

 

「大丈夫よ、少なくとも私はあなたのことを信用しているわ。咲夜も少なくとも悪い竜じゃないって言ってるし、今までを見ても悪さの欠片も見つけられないしね。」

 

「じゃあなぜ私をここに置く?メリットは少ないだろう?」

 

「あなた……この世界に異変っていうのがあるのは知ってる?」

 

異変…この世界で起きる大規模な事件のようなものだと聞いたことがある。私がこの世界に来たときもちょっとした異変騒ぎだったらしい。

 

「ああ、それが?」

 

「異変を解決することは私たちにとって英雄になることよ。夜の宴で主役……憧れるわよね…」

 

あ、何が言いたいのかだいたい分かってきた…

 

「つまり、あなたが異変を解決して紅魔館の手柄になる。私は鼻が高いし、皆にも自慢できる。ワクワクするわ!」

 

「何だ、やっぱり子供か。」

 

おっと、心の声が口に出てしまった…

 

「子供ってなによ!?もう500年も生きてるのよ。」

 

「500歳児か…」

 

おっと、また口に出してしまった…

 

と、そんなこんななやり取りをしていると図書館の扉が開いた。

 

「お待たせしました、パチュリー様。必要なもの用意できましたよ!」

 

小悪魔が大量の荷物を持って図書館に入ってきた、どうやらこれから何かするらしい。

 

「そこに置いておいてちょうだい」

 

パチュリーはそう言うと読んでいた本を閉じて席を立った。

 

「邪魔になるか?」

 

私がそう聞くと、「儀式に巻き込まれたいなら居ていいわよ」とパチュリーが言った。もちろん巻き込まれたくなどないので、私は読み終わった『孤高の英雄』を棚に戻し新しい本を取り扉に向かった。

 

「そういえば、その本どうだった?」

 

人間嫌いの勇者はある時とても凶悪な竜に出会う。勇者は竜から村を守るために立ち向かうが、竜の強さは凄まじく勇者は膝を着いてしまう。竜の爪が勇者を捉えたそのとき、1人の女性が勇者を庇い大怪我をおおう。勇者は女性を抱いて走り、その修羅場から逃げ延びた。

勇者は持ち前の魔法で女性を治し、勇者は人間の優しさを知った。そして勇者は仲間をつくり竜と再戦し勇者達は勝った。

そして勇者は仲間を大切に思い、人々にも優しく接するようになる。

人々は勇者のことを『英雄』と呼ぶようになり、英雄は皆を愛し皆に愛された。

という形で物語が終わる。

 

「……何か自分勝手な作品だったな、」

 

「竜が悪者だったから?」

 

「まさか」

 

私は首を横に振った。

 

「勇者の人間嫌いが1度助けられただけで治る、たったそれだけのものだったのか、それに村人達だって勇者が人間好きになっただけで手のひらを返し皆が好きになる。現実はそんなに甘くないだろう?」

 

「現実と物語を比べちゃ駄目よ、そんなことしたら浦島は龍宮城に行けないわ。」

 

「その話をしたらダメだ、そんなことしたら桃から人なんて生まれない」

 

パチュリーがクスリと笑った。

 

「物語と並べては駄目だけど、あなたはまだ英雄じゃなくて勇者ね。」

 

「凶悪な竜じゃないだけマシだ。」

 

私は扉に手をかけ図書館を出ようとした。

 

「あ!そうだ!待ちなさい紅月!」

 

レミリアが思い出したように私を呼び止めた。

 

「何だ?」

 

「あなたに来客よ」

 

こんな夜遅くに?誰だろう?

 

「昼間は恐いメイドがいるから入れないらしいわ…、あなたの部屋にいるわよ。」

 

「わかった、すぐ向かう。」

 

 

私は廊下を歩きながらさっきパチュリーが言ったことについて考えていた。

私は勇者…たぶん紅月のほうは英雄だろう

私は昔、自分が英雄だった頃のことを思い出していた…



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