IS〜神速の貴公子〜 (ネオバレットファイア)
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プロローグ
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「まってよ!お母さん!置いてかないで!」
思い出すのはもうかれこれ10年ほど前の記憶、それは、あまりに見すぎた為に磨耗してしまった記憶、今思い出せるのはあの日去っていった産みの母の金糸の様なサラサラとした髪だけ。
そう、これは、夢、目が覚めたとしても母がいる事はない。あのとき自分がもう少し足が早く、もう少し強い子供だったのなら…いや、それは言うのも野暮な事だろう。
「また、あの夢か…」
当然夢から覚めたのなら自分のベッドの上だ、そして、側にある時計を見ると起床予定時間の1時間前の5時を指していた。
だが、まぁ、あの人が来る時間だから丁度いいのかもしれない。
そう思い、着替えていると階段をうるさく駆け上がる音が聞こえてくる。
そして、ドアが勢いよく開け放たれる。
「丈二!朝です!起きてくだ…あれ?珍しい事もあるもんですね?いつも「うーんあと5時間」なんて言って起きてこない丈二が起きているなんて」
「おはよう、総司さん。俺だって早く起きる事ぐらいありますよ。なんてたって今日はあのIS学園の入学式ですしね。」
そう、俺、黄金丈二はなんの因果か女性のみにしか扱えない
そもそも、事の発端は先週の高校受験の際に男の身でありながらISを動かした同年代の織斑一夏から始まった。
織斑一夏がISを動かすとその日のニュースは織斑一夏がISを動かした事一色となった。そこから一週間後、公立高校の男子学生の入試は一旦中止となり近くの小中学校にて全国一斉ISの適正検査となった。適正検査は順調に『適性ナシ』を出し特例を織斑一夏のみとし進んでいった。
そう、順調だった。俺の番が来るまでは。
「次、黄金丈二君こちらに来てISに触れてちょうだい」
その日は検査の最終日となり検査官の女性の表情にも疲労が伺えた。
俺は言われた通り国産の第二世代型ISの
触れると同時に膨大な量の情報が頭の中に入ってきて酷い頭痛がした。
「嘘…」
この言葉を漏らしたのは検査官の女性だったか、他の検査待ちの野郎共だったかそんな事はどうだっていい、重要な事じゃあない。いう事があるとするなら、「それは、俺の台詞だ…」という事だろうか
当然、最終日という事もあり、誰もがあれが特例で自分には関係無いものと感じていたし、俺もそうだった。むしろ、そう考えていた俺は悪く無いと思う。強いて、何が悪いかを上げるとしたらそのタイミングといるとするなら神が悪いのだろう。
「か、確保!」
余りの予想外の出来事に検査官の女性は周りの警備員に声をかける。が、 けいびいん は こんらん している !!
「まて、おちつけ!」
じょうじ の こえがけ !!
けいびいん は こんらん している !!
けいびいん の とつげき !!
足元に突撃してきた警備員を避ける事は叶わず、勢いに負けて警備員に押し倒されてしまう。
こうして俺はIS学園のパンダ第2号となったのであった。その日、無事家に帰る事ができ、その事を義兄の黄金征人に伝えると
「フ、ハハハハ!ククク、いやはや、面白い!
義兄は夕食を作りに来てくれている秘書の白虎さんに笑いすぎて涙を浮かべながら話しかける。
「はいはい、征人様聞いております。これで6度目です。丈二様も可哀想ですのでこれぐらいにしてあげてください」
大天使シロトラエルの言葉からも察して欲しいのだが兄は2日置きに家でご飯を食べる為に帰ってくる今日は幸か不幸かその日だった。多分、人の不幸を愉悦とするいい性格の兄の事だろうから今日がその日じゃなくても間違いなく帰ってきたであろう事をここに記しておく。
で、兄は帰宅と同時にいい顔をして
「さぁ、弟よ、今日あった事を包み隠さず話すのだ。よい、今日の我は特に気分がいい。多少不遜な態度をとっても許す。特に許す。」
などと抜かしてくれたのであった事を包み隠さず話すと爆笑し始めた。ひとしきり笑い終えると
「ククク、面白い、もう一度話してみろ」
と無限ループの様に続き、もはや聞かれすぎて気にならないレベルに達した。大丈夫、混乱したのはみんなだけじゃない俺も混乱したみんなは悪くない。
▼▼▼
さて、冒頭の会話に戻るわけだが、総司さん、
それはともかく、総司さんは昔から早朝から鍛錬と言ってランニングと兄の会社特製動体視力強化装置でのトレーニングをしてから近くの道場での剣道に付き合わされている。今日もそれを行うのかと思いきや
「ふむ、女性の前に出るのですからシャワーを浴びるとはいえ本気で汗をかかせるわけには行きませんね。どうせ、自己紹介で周りの視線で冷や汗をかくのですから問題ないでしょう。では、私は征人を起こしに行ってきます。事前の資料などのチェックは怠らない事、いいですね!」
多分確かにその通りなんだろうが余計というかなんというか、返事を返す前に総司さんは部屋から出て行き、おそらく兄の元へ向かったのだろう。もはや姿はなかった。
何時もの鍛錬の為にジャージに着替えていたのだが意味がなかったので新品のIS学園の制服に袖を通す。ブカブカしていて着られている感は否めないもののそれは時が解決してくれるだろう。
「さて、ご飯を食べて向かいますか」
余談だが、その後ぐったりした兄とイキイキした総司さんが帰ってきたとかなんとか
あとがき解説
丈二:主人公、クールだが、少し抜けてる
征人:黄金コーポレーション『KC』の社長。海馬コーポレーションかな?
総司:脳筋
大天使シロトラエル:征人の秘書ナイスバデーなおねーさん
警備員:けいびいん は こんらん している !!
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パンダ滑りの1号、唐突の2号
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視線、視線、視線感じるのはそればかり、そう、俺は当然の権利のようにこの女の園にいる。いや、当然の権利というよりそれ以外の選択肢はDieなので確定事項なんだが…
これも全て織斑一夏ってやつが悪いんだ!やつが動かさなければ俺は間違いなく穴の開く様な視線を浴びる事はなかった筈なので
それにしても、一つの教室に2人のパンダを纏めると人がごった返すという理由で織斑一夏と別の教室の2組にされたが、刺さる視線を分散する為に是非とも織斑一夏と同じクラスにして欲しかった。
さて、視線を下ろしてハイテクな机に向けると一冊の文庫本が置いてある、著者は黄金征人、そのタイトルは…
『正しいパンダの見られ方』
そう、朝家を出る前にぐったりした兄から渡された本だったのだが総司さんに急かされ今の今まで確認できていなかったのだが、これは、確認すべきではなかった。しかも所々に付箋が貼られている。
ごくり、覚悟と同時に喉がなる。表紙から比較的近い付箋のページを開く。
『人に見られるという事はよくも悪くも目立っているという事。それは、貴様がこれからパンダから果ては有名人になるか、晒し者になるかという些細な問題である。……』
などとつらつらと書かれている。要は目立った事をして、失敗するか成功するかという事を一例として有名動画投稿サイトで失敗したオフ会0人の投稿者を失敗例として、一部では音の出るゴミと揶揄されているが一度世界的に有名なロックバンドとコラボした事のあるボイスパーカッションが本業のゲーム実況者を成功例にあげてわかりやすく解説されている。
「なんだ、いい事書いてあるじゃん」
そうつぶやいて次の付箋のページを開くと
『この度、私事ではありますが我が家の弟がIS学園でパンダになる事が決まりました。是非とも道化になっていただきたい』
そっと本を閉じた。今までの良いながれを返せと言いたい。
いや、まだ、まだこっからワンチャンあるから!
パラパラと付箋が貼ってあるページをめくって行くとただひたすらに俺がdisられてるだけだった。そりゃ、もう面白、おかしくと。ワンチャンなんてなかったんだ。奇跡も魔法も無いんだよ…
ふと、あとがきのページに目がいった。あとがきのページには本人が書いたとは思えないほどの美辞麗句が並んでおり、自分の直感が警報を鳴らし、自然と席から立ち上がり本を振り上げた。
「うまくまとめてんじゃねーよッッ!」
多分一生のうちで1番床に本を叩きつけた時の音が良かったと思う。どうでもいいけど。
ここに女子9男子1の比率の教室があるじゃろ?
そこでな?急に立ち上がり本を床に叩きつけるじゃろ?
そうするとな?こうじゃ
そう、元からチラチラと感じてた視線が一気に集まりそりゃあもう、ひどく痛いぐらい刺さるわけでして。
「…」
沈黙は視線と合わさりすごく痛かった。
「おーっす、新入生諸君HRはじめん…お?流石男子朝から元気だな」
「その誤解を招く言い方はやめていただきたい!」
多分このクラスの担任であろう女性が入ってきた。ジャージで入ってきた。
「ん、元気だな。そうさな、まずは自己紹介から始めようか。アタシの名前は
へっ、知ってたさ。こうなる定めだったんだよ。
うだうだと愚痴を心の中で言ってると時間が過ぎるのは早いもので気がつけば最後の自分の番になっていた。
「黄金丈二だ。趣味は、読書と筋トレ、苦手なものはカタツムリ、好きな食べ物はピザとパスタ。休日はピザを焼いたりして過ごしてる。以上!」
無難な自己紹介だったと思う。可もなく不可もなくといったところか。
ふっ、どうだ。
千鶴先生を見ると、どこかで見た事があるようないい顔をしていた。いや、この流れは間違いない。
「諸君、丈二に質問があるだろう?好きなだけ質問したまえ」
そう、質問攻めだ。もちろんこの後チャイムが鳴るまでめちゃくちゃ質問された。
全然すすまねぇなこれ。
三上千鶴:ジャージ、アッサリしてる、姉御肌
正しいパンダの見られ方:定価750円
ジェノベーゼのパスタとジェノベーゼのピザが好きです
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