ゼスティリア外伝「異界の導師」 (UDN)
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プロローグ:これが最後の光景
次話から舞台はゼスティリアに移ります
導師の伝承―――
遥かな神話時代、世界が闇に覆われると、いずこより現れ光を取り戻した―――
時代が移ろうとも世が乱れる度に人々は伝承を語り、救いを願う―――
その度に導師は姿を現わし、闇を振り払ったという―――
しかし、平和が訪れると再び導師は姿を消した…———
彼らはどこへ…その答えを知る者はいなかった―――
いつしか人々の記憶から、伝承の中へと消えていった―――
『まもなく、終点です。お忘れ物の無いよう、確認の上――――』
流れてくるアナウンスで目を覚ました。
電車の窓から外を見ると田畑に山々と、よく言えば自然豊か、悪く言えばド田舎な景色が見える。
季節は8月、都会の大学に通っていた青年、結城誠人はお盆期間ということで実家に帰る最中だった。新幹線に乗り、そこから3度ほど電車を乗り換えたため長旅の疲れが出たのだろう、気が付けば目的地寸前まで深く寝入ってしまっていた。
窓からの景色は別段珍しくはなく、久しぶりに見たという単純な感想。けれどそれは自分が故郷に帰ってきたということに他ならない。
電車は終点の駅に停まり、2泊3日ほどの着替えが入ったバッグを肩にかけ、外に出る。
「兄ちゃーん!」
駅を出たところには手を振っている少女が一人。誠人の妹だ。後ろの車には母親が乗っている。父親は今は仕事だろう、車には乗っていなかったが夜に仕事が終われば会えるので気にしなかった。
元気に自分を呼ぶ妹に手を振る。家族に会えるというのは少しの鬱陶しさがあるが、大きな懐かしさと安心感があった。
「ただいま。やっと帰ってこれたよ」
妹と母がお帰りと言ってくれる。都会に出て田舎は不便と思うがこういったものはとてもいいものだと思う。
――――――――――――――――――――
薄暗い部屋の中、6人の人間が椅子に座り円卓を囲う。
「やはり前の者はダメでしたな」
「200年もたせましたし、まあよいかと」
「今回はどのような者が来ることか」
「どのような者でも構わぬ。我らがするべきは1つだけ」
「左様。これも国のため、世界のためでございます」
「さあ、祭壇に参りましょうか――――
導師を迎えるために――――」
そして彼らは音もなく、そこに最初からいなかったように姿を消した
――――――――――――――――――――
雲一つ無い空、月の明かりだけが周りを照らし、星々が瞬き、涼しい風が吹く。虫たちのさざめきに耳を澄ましながら今日のことを思い出す。
帰ってきて早々、どこから聞いたのか自分が帰省することを知っていた旧友のみんなに囲まれ、いろんな場所を連れまわされた。川や森や神社や昔通い詰めていた駄菓子屋や。しばらく見ていなかったからだろう、懐かしさの反面、都会に慣れていたからだろう、新鮮さが心にあった。やはり、見ていないというだけで今まで見たことのある景色も違って見えた。
この夜も、都会ではあり得ないことで、昔何度も経験しているのに自分はまるで初めてここにきたような気持ちだった。
目の前には墓が建っている
祖父の墓は初めてとかは感じなかったが、久しぶり、と自然と声が出てしまった。明日家族みんなで来るのだが、その前に自分一人で来ておきたかった。大学に入って何をして、どんな友達ができて、といろいろと話したかったからだ。祖父と過ごした時間は少ないけど、いつも自分を気にかけてくれてて、いろんなことを教えてくれて、感謝しているから、ついつい話したくなるのだ。
午後11時、あたりは暗く、この時間は人はいないので心おきなく話しかけれる。
――――はずだったのだ
「————見つけた」
その声は女性のものだった。けれど、少し違う。声は認識できた。しかし、大きな違和感があった。今自分は女性の声を聴いたが、それは人間のものなのか疑わしいほどに澄んでいて、不気味なものだった。
後ろを振り向く、そこには女性が立っている。しかし、その顔は仮面を被っているため分からない。
年は?身長は?気になることはあるがその服装から言えることは、ここの人間ではないということだ。
そして気が付けば、すぐ目の前に、目と鼻の先にその女性の顔があった。仮面で隠れた素顔、しかし、その暗い瞳は自分を映している。
覚えているのはそこまで――――
――――そこで急に意識が途切れた
詰め込んだら意外と字数が多くなりましたが、毎パートこんなに多くは書けませんので字数は結構変わります
正直、レディレイクの地下の遺跡のことを聞いた時からこの話を考えてました
後、アニメのアリーシャの扱いに涙でますね
ゲームは分史世界でアニメが正史世界だったか
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第一話
ちょっとほかのことにやる気を吸われてまして…
ザザザザ、と水が絶え間なく、荒々しく流れる音が聞こえる。その音が反響してますます大きく聞こえる。
地面に倒れているのだろう、うつ伏せの体に冷たい感覚がある。感覚はあるのに、音が聞こえているのに、自分の思考はとてもはっきりしているのに、意識がないような感覚だった。
するといきなり声が聞こえてくる。数人が会話をしているのだろう。年を老いた声、若い声、女性の声。どれも威厳があるように感じる。
「おお…。この者が新しい導師か」
「このような者で大丈夫でしょうか…?」
「あの者、『渡り手』の選んだ人間だぞ」
「期待はできます」
「我々はただ成すべきことをするまでのこと。それは変わらんよ」
「まあ、こやつが導師になれるかどうかは分からんが、なれないなら次を待つまでよ。では目覚めてもらおうではないか」
会話が終わったようだ。そして次の瞬間にいきなり意識が戻った。目の前が明るくなり周りが見える。そこには―――
「なんだ…ここ…?」
それ以外に言葉が出なかった。多くの篝火で照らされたそこは、日本では見ることはない石造りの巨大な祭壇。滝のように落ち、川のように流れる水とそれに沿うようにある足場。一言でいうなら巨大な遺跡であった。
祭壇の元には6人のフードを被った人間が並んで立っている。先程話をしていたのはあの6人だろう。
「あ、あの…すいません。これは一体…」
彼らに近づいて話しかけてみる。落ち着いているように見えてもその心中は理解できないことが起こったことで冷静さなるものは一切なかった。墓参りしていたらいきなり巨大な遺跡にいたなどあり得ない。ここはどこか、あなたたちは誰なのか、それ以前にこれは現実なのか、それを知りたくて、口から『ここは』ではなく『あなた達は』ではなく、『これは』と口から出た。
「ふむ、目が覚めたか。新たなる導師になり得る者よ」
「…導師?」
言っている導師という言葉がわからないが自分がその彼らのいう導師なんだろう。
「後はその者が湖の乙女を目覚めさせることができれば新たなる導師の誕生だ」
「いや、あの、導師っていったい何ですか? ここは何処で、俺に何が起こったんですか!?」
話を聞いていないと受け取り自然と声が荒くなる。だが彼らの態度は変わらない。
「さあ、湖の乙女を起こすのだ。さすればお主の使命がわかる」
「あなたの運命は始まるのです」
「だから! 話を聞けよ!」
叫ぶ声を一切聞かず自分たちで話を進めていく6人。すると一人が後ろの祭壇を指さす。それにつられて自分も祭壇を見てみると、そこには
「さあ、湖の乙女を目覚めさせよ」
赤いドレスのような服を着たきれいな長い銀髪の女性が眠っていた。
原作天族がやっと
主人公しゃべらねえなーと思うけどこれも自分の文才の無さが招いた結果
なかなかに想像したことを書き起こすのは難しい
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第二話
PS4欲しい ベルセリアしたい
「あ、あの…大丈夫ですか?」
あやしい6人が消え去り、突然の事に頭が追い付かない。だが今は目の前で倒れている女性を起こして話を聞くしかない。女性に近づき様子をうかがう。
「うーん…むにゃ…」
どうやら女性は寝ているだけのようだ。こんなに固く冷たいところでよく寝れるなと思った。起こそうと手を伸ばそうとしたところで女性が寝返りをうつ。そしてその容姿に見とれてしまった。銀色の長い髪に人形のような整った顔。ドレスのような服装と相まって、眠り姫か、そのような印象を覚える。
寝ているが美人だと、わかるのだが、起こさないことには何も始まらない。気持ちよさそうに寝ている女性を起こすのは多少の罪悪感はあるが、肩に手を置き、できるだけ優しく揺する。
「お、起きてください。あなたに聞きたいことがあるんです」
「…うーん…ふわぁ~」
目を覚ました女性はあくびをすると、ぐっと背筋を伸ばす。目を擦りながら周りを見て、目が合った。エメラルドのような綺麗な目が自分を映す。先程人形のような、と言ったが、本当に人形なのではないのかと思った。
目が覚めた女性に声をかける。
「あの、あなたに聞きたいことが…」
「…あなた、私のことが見えているんですか!?」
「見えるもなにも、目の前にいるじゃないか」
いきなり女性がそのようなことを言い出す。まるで自分が幽霊だと、見えない存在のようなことを口にする。しかし、目の前に実際女性はいて、考えるような素振りをみせる。
「天族を見ることができる霊力…あなたが導師になろうとするお方なのですね」
『導師』
あの顔を隠した6人が言っていた言葉だ。おそらく今の自分に一番関係する言葉なのだろう。頭を抱えたくなった。この女性も何の説明もなくそう言うのだ。そろそろ我慢の限界である。
「いや、どういうことだよ。いきなりわけわからない所に連れてこられて、運命がどうとか導師がどうとか! わけがわからないんだよ! 頼むから説明してくれ!」
声が荒ぶる。初対面の相手には申し訳ないが相当まいっていたのだろう。いい加減、今の状況に関して何か言ってほしかった。
女性は質問に対して目を見開いた。
「え? 導師のことを知らない? ご存じないのですか?」
「知らねえよ! ここはどこだよ! 日本なのか? これは何かの番組なのか!?」
「日本? いえ、聞いたことありません。番組とは?」
女性に違和感を覚える。言葉は通じるのに日本という言葉を知らない。番組も普通なら幼稚園児でも知っている言葉だ。彼女は聞いたことがないと言った。言葉が通じているのに、おかしな話だ。
女性は少し考えて口を開く。
「…あなたは何も知らないのですね。わかりました。今から私が説明します」
「わかった。ただその前に…。ここは日本か?」
「…いいえ。日本という言葉は聞いたことがありません。もしかしたら、あなたはここではない所から来たのかもしれません」
ようやく、今の状況が理解できそうだが、すでにいろいろ理解できないところである。
結論、頭を抱えたのは言うまでもない。
ちょっと難しいよ…
説明を求めるけど無視され続けて流石にキレる主人公です
いきなりの事なのでしつこく説明と書いてるんですけど、人間自分の理解の追い付かないことが目の前で起こったら頭が真っ白になるか必死に理解しようとするんだと思うんですよね
実際はわかりません 想像です
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第三話
異世界に来た
それだけを聞けばどこの小説の主人公だよ、とかツッコミたくなるし、来たら来たで神様が云々チートで云々とかいろいろあるだろうが、あいにくとこちらはそんなものは無く、知らない内に異世界に丸腰で来ていた。
これが今の自分の現状である。ライラさんに言われて最初は信じられないとか思ったが正直もう頭を整理することがめんどくさいので大人しく現実と彼女の言葉を受け入れることにした。
自分は今、全く知らない世界に来ているという事で、いろんな事を知っているらしいライラさんにこの世界の事を教えてもらう事にした。
この世界の法律とかそんな難しい事は置いておく。(おき、この世界の文化や技術レベルなど、地球よりも発達した、所謂SFと呼ばれるような世界なのか、それとも魔法などがあるファンタジーの世界なのかをまずは知りたかった。この世界には天族と呼ばれる普通の人には見えない存在が居て、ライラさんはその一人らしい。)犯罪をすれば裁かれるのは当たり前だろうし、そんな事よりも知りたいことがあった。
「導師の事について、ですか?」
「ああ。そいつらは俺の事を導師だとか言って使命とかいろいろ言って来たんだ。けど、俺はそんな事知らないんだ。だから教えて欲しい」
導師
あの6人が言っていた言葉だ。
俺の事を導師と呼び、世界を救え、とも言った。その導師と呼ばれる存在がこの世界でどれ程のものなのか? もし、自分がその導師なら、その導師の意味を知らなければならない。
「わかりました。では、導師とはいったい何かを誠人さんにお話しましょう」
「ありがとう、助かる」
そして彼女は語り出す。
導師とは何なのか
それは共に、6人の言っていた自分の使命についてのものでもあるのだ。
ーーーーーー
導師とは、天族の力をまとい、世界を災厄から救ったと言われる存在である。
高い霊能力を持ち、天族と交信する事ができ、契約を交わしその器となった者で、器となった者は天族の力を自在に行使することができる。
今は伝承上の存在になるほど失われて久しく、災厄の時代には人々はその存在を待ちわびているという。
ーーーーーー
「つまりは、導師とは救世主的な存在で、世界を救う事が使命ということか?」
「そういうことですね」
ライラの説明を聞き、それを自分の言葉で理解する。つまりは世界が何かしらの危機を迎えているから、それを何とかする事が導師、つまりは俺がやるだろう事ということである。天族はその導師を助ける精霊的な存在ということ。
「異世界で勇者、救世主をしろとか・・・」
これが現実であると受け入れはする事ができる。が、本気で世界を救えとかスケールが大きすぎて反応に困るものだ。こんな一般人にそんなものを背をわせられても・・・
異世界人よりも普通にこの世界にいる人達ではダメなのか
「導師には、この世界の人間がなるのではダメなのか?」
「はい。導師になるにはまずは高い霊能力を持っている必要があります。それも私たちの姿を見る事が出来るほどの力です。ですが、そのような人間はとても稀なんです」
天族の声を聴くだけをできる人間はいるが、それ以上の霊能力を持つ者は本当に少ない、というか居ないらしい。導師の存在が失われたことはそういった要因もあるのだろう。
「あいつらは霊能力が高いから俺を連れて来たのか」
「誠人さんをこの世界に連れて来たという人達のことですね。私は彼等のことは存じませんが、異世界に行けるということは強い力を持った天族が居るのかもしれません」
強い力を持った天族、といえばおそらくはあの女性だろう。元の世界に戻るにはあの女性を見つけるか、別の方法を自力で見つけるかだが、
「・・・俺を元の世界に戻す方法はあるのか?」
「あるとすれば、世界に散らばる遺跡になにかあるかも知れません」
「・・・」
その遺跡に何かしらの方法、ヒントがあるが、自分はこの世界に来たばかりで右も左もわからない状態だし遺跡を探すにも一人では無理だ。
こうなってしまえば方法はほぼ一つ
「・・・はあ〜、わかった。なるよ、導師に」
「! 本当ですか!?」
「ああ。だが条件がある。元の世界に戻る方法を一緒に探して欲しい、これが条件だ」
これから始まるであろう異世界生活。
全く心が踊らなかったのは当たり前である。
ファンタジーって書くの難しい
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第四話
水が勢いよく流れる音を聞きながら、遺跡の中を歩いていく。前を歩くのは赤いドレスを纏い、自らを天族と言う精霊などと同じ存在と言った女性、ライラ。あの後、地上に早く出ましょう、とライラが急かすように言ってきたため少し早いペースでかれこれ10分ほど歩いている。そのためか、誠人の方は少々息が上がっていた。
「確かに地上に出たいけど、少し早くないか? もう少しゆっくりでもいいだろ?」
「ここが地下水道でなかったらもう少しゆっくりでもよかったんですけど、長年人が踏み入ってない場所です。町の下とはいえ魔物が出ないとも限りませんし、善は急げですよ、誠人さん!」
「魔物?」
その言葉は、よく聞いたようで聞いたことがない言葉。実際現実では聞かないし、聞くとしてもゲームや小説でしか聞かない言葉だ。彼女が急ぐということは実際にこの世界ではそういう存在は実在していて、人に害をなしているのだろう
「魔物か・・・。俺のいた場所ではそんなものはいなかったな」
「まあ! 魔物がいない世界なんて、とても平和な世界だったんですね!」
「そうだな。俺の住んでた国は平和だったよ。飯もうまいし人は優しいし、いい場所だ」
大学に行くために田舎から都会に出た時のこと。それはもう環境の変化がすごかった。田舎にはなかったものがあって、うまい食べ物がたくさんあって、いろんな県や国から来た人がいてその分いろんな文化などを教えてもらったりして、大学も都会という環境も面白く楽しかった
「地上にでたら教えるよ、俺のいたところの話」
「本当ですか!? 私、とても興味あるんです! 異世界なんて、聞いたことありませんから」
そういうライラは子供のように目をキラキラと輝かせていた。彼女といると、少し安らぐというか、何にせよ、さっきまで余裕がなかったが今は表情が和らぐぐらいには余裕が出てきたのだろう。何を彼女に話そうか、と考えようとした時———
―――キィキィキィキィ
と耳障りな音、いや、鳴き声が聞こえてきた。
それを聞いた途端、前を歩いていたライラが誠人のすぐ傍に急いで寄ってきた。その表情はさっきまでとは違いとても真剣で、周りを警戒している。
「い、今のは!?」
「おそらく、魔物の鳴き声です。誠人さんは私の傍から離れないでください」
そう言うと、ライラの右手に赤色の淡い光が集まり、形を成す。長方形のそれはお札だ。そこには何か字が書いているが読むことはできない。
鳴き声と共にバサバサと音が聞こえる。空間に響くそれらは2人に近づいてくるのがわかった。方向は、後ろ―――
「誠人さん、伏せて!」
そう言ってライラはその手にある札を近づいてくる魔物に投げる。するとその札が燃え上がり、魔物に命中した。札を出しては投げ、魔物を打ち落としていく。魔物の死骸と、肉の焼ける臭いに、息苦しさと吐き気を覚えた。
「今のが魔物か? 火で照らされたときに姿が見えたけど、なんかコウモリみたいな・・・」
「コウモリの形をした魔物です。一匹ではそこまで脅威ではありませんが、群れで行動するので油断はできません。魔物はそれぞれで姿形は変わりますが、そのほとんどは人や天族に対して敵意を持っていますから」
「人には見えない天族が魔物は見えるのか?」
「見えたり感じたりはできているらしいのです」
手に出した札がスッと光と一緒に消える。
「さっきの火ってやっぱりライラの?」
「そうです。私は火を司る天族ですので。あのお札は私の武器みたいなものですわ」
火を司る天族。実際にみるとファンタジーというか、けれどこの光景、臭い、息苦しさはどれもリアルである。
「やっぱり、異世界なんだなー」
そう口に出した時、
キィキィキィキィキィキィ
バサバサバサバサバサバサ―――
おびただしいほどの鳴き声と羽音が聞こえてきた。そして黒い群れがものすごい速さで迫る。
ライラはもう一度札を出し、迎撃しようとして、
「「え?」」
その群れは頭上を通り過ぎていった。拍子抜けである。だが
「今の魔物たち、敵意がなかった・・・? それにあれはまるで、逃げてきたみたい」
呟くライラを横目にコウモリの魔物が逃げてきた方を目を細めてみる。そこには赤く光る二つの眼。聞こえる唸り声。自分よりも大きなシルエット
「誠人さん!!」
「っ!?」
いきなりライラが腕をつかんできたと思ったら走り出した。その顔には焦りの表情が浮かんでいる。
余裕、そんなものは一片もない。
「あれを相手には今は無理です! 逃げましょう!」
「あれって魔物だろ!? ならさっきみたいに―――」
「ただの魔物ではありません! あれは憑魔です!」
―――憑魔
導師が倒すべき存在
けれど魔物と変わらないのではないか、と思っていたが、違った
明確に、存在が、全く別のものだと、感じてわかった
あれが向けてきているものは敵意ではない
心臓を鷲掴みにされたように息苦しく、頭を殴られたようにぐらつく感覚
おそらくこれは敵意ではなく、『殺意』と呼ぶものだろう
それが今自分たちに向けられている
「———」
気が付くと腕を引っ張られているから、ではなく自分の意志で走っていた。
あれから逃げるために、無意識に
―――グルルルルッ
唸り声が聞こえた
次に大地を蹴るような音が聞こえた
間違いなく、あれは自分たちを追ってきている
誠人は後ろを振り向いて、その距離がもう25mもないことに―――
「お、追い付かれるっ!」
「『炎よ!』」
ライラが後ろに向かって火を放つが、素早い動きでその炎を避けていく。このままでは追い付かれて、『死ぬのでは』ないか
「上に打て!」
「ッ!」
咄嗟に出たその言葉に反応して、ライラは上に、天井に向かって札を投げる。天井に張り付いた札は次の瞬間に爆発した。崩れた天井が瓦礫となって憑魔と自分たちの間の通路を塞いだ。瓦礫の向こう側では退かそうと瓦礫を殴る音が聞こえる。
「長くはもたないぞ! 今のうちに!」
ライラと2人、走り出した。その先に大きな扉がある。力任せにその扉を押すと、ゆっくりと扉が開いた。
そしてこの地が、誠人の運命の始まりの地である。
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第五話
いろいろと書くべき内容を忘れてましたが、それでも何とか...
矛盾とかあるかもしれませんが、見てやってください
扉を開けた先に広がっていたのは、静寂
空は暗闇に覆われ、月の明かりと、ともった街灯だけが周りを照らしている
「さあ、早く聖堂へ!」
ライラの声で止まっていた足を動かす
今はただひたすらに、聖堂へむかうしかないのだ
別段運動が得意なわけでもなく、すでに息も上がり、足ももつれそうになるが、それでも走り続ける
ライラは全く息が上がってないので少し情けなくも思ってしまうが、そこは心の隅に置いておくことにした
綺麗に舗装されているからか地下水道よりも幾分か走りやすいこともあり、スムーズに移動できることは疲れているこちらにはありがたかった
軽快な足音が響き渡るほどに寝静まった町中を走るとライラが指をさした
「あそこが聖堂です!」
その先に見えるのは石造りの大きな建物
そこに現状を打開する手段がある
聖堂の扉の前にたどり着き、開けようとするが、ガチャガチャと音がするだけである
カギが閉まっているみたいだ
「くそッ! こんな時に」
「任せてください!」
そう言うとライラは扉に歩いていく。すると、その体は吸い込まれるように扉をすり抜けた
これには驚きを隠せない
だがそんなことを他所に中から声が聞こえる
「内側からカギを開けました。さあ、早く中へ!」
改めて扉を開け、中へ入る
聖堂内は広く、ステンドグラスを通して月明りが聖堂内を照らしているからか、思った以上に暗くはない
そして聖堂の奥の中央の台座に突き刺さっているものがある
「・・・剣?」
「はい。あの剣は聖剣と呼ばれ、あれを抜くことができれば導師としての力を手にすることができます」
「つまり、俺があれを抜いてあいつを倒すってわけか」
自分の足はすでに聖剣に向かって走り出していた
階段を駆け上がり、静かに佇む聖剣の前に立つ
綺麗に装飾され、月明りに輝くそれは自分が抜かれることを待ち望んでいるようにも見える気がする
気がするだけかもしれないが、そんなことは関係ない
その聖剣に手を伸ばす
「誠人さん、その剣を抜けばあなたは導師の力を得ることができます。ですが、それと同時に、導師としての使命を背負うことにもなります」
いつの間にか後ろにいたライラが静かに語りかける
その声には、誠人に対しての心配の色がうかがえた
「導師としての使命は、辛く、苦しいものです。心無い言葉を投げつけられたり、人々の悪意の前に立たされることもあるでしょう」
「・・・そこまで嫌なものならやめたい」
と口に出したが、その手は止まることなく、剣の柄を取った
―――嫌なものならやりたくないし、そもそも異世界なんて勘弁願いたいものだ
「でも、俺は元の世界に帰りたいし、ここで死にたくもない。なら方法なんて決まってるだろ?」
誰かに任せることもできるだろう
しかし、その誰かはいつ来るのか
導師自体現れることがなくなった世界に、そんな奇跡を待つくらいなら
―――自分がなる方が早いよな・・・
手に力を入れ、剣を抜こうと手を持ち上げる
聖剣は少しずつ上がっていき―――
「人生、やっぱり楽できるわけじゃないってことだよな!」
彼は、その聖剣を引き抜いた
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第六話
---昔、1度だけ日本刀を持ったことがある。
じいさんの家に行った時、蔵の中に収められていた、家宝とは言わないものの、我が家の家系を目で見て手で触って感じることができるものだった。鞘に入ったまま刀身がさび付いてしまったらしく、抜刀はできなかった。
だからだろうか、じいさんはまるで玩具を渡すように俺にそれを渡してきた。
投げ捨てるように…
当時の俺は本当の子供で、小学生で、そんな存在に軽く渡してよかったものかと今になって思う。
そして、持った俺はもちろん日本刀に振り回されるように右へ左へと、踊りとも取れない変なステップを踏んだ後、ひっくり返ったのだった。
当時思ったことは、日本刀ってスゲーカッケーみたいな小学生並みの感想しかなかった。
今の感想としては、鉄の塊だ---
あんな重い物を振り回せるわけないし、昔の人はすごいなと思う。現代人の自分にはこんなに重い凶器を振り回して人を斬るなんて、ジムでも通ってマッチョにでもならないといけないなと…。
---そう思っていた
聖剣を引き抜いた。そして思った。
「…軽い?」
剣は、鉄の塊だ。そのことは経験で既に知っている。だからこそ驚いたのだ。
---俺は今、片手で剣を持っている
剣に重さはあることを感じるが、まったく気にならない。
まるで、羽をもっているように軽い。
「認めたのです」
ライラの声がする。振り向くと彼女が俺をまっすぐ見つめている。
「其は、天の都。遥か頂きの果ての、聖域なり。都の門は固く閉じ、人の世を統べし者にのみ開かれん。天族を連れたち、導師は地に降り立つ。天族の力纏いし導師、災禍の闇祓いて、この世を救いたり。」
彼女はゆったりとした歩みで近づいてくる。
さっきまであんなに走って、息も絶え絶えで、焦りと恐怖が心を支配していた。けれど今は違う。息は整った。心にもなぜか平穏が訪れた。今がどんな状況かわかっているのに、「安心」が根を下ろしている。
「それは?」
「導師の伝承です。最初、導師とは何者か説明したのを覚えていますか?」
「ああ。この世が滅ぶときに顕れて世界を救う救世主みたいな感じだったよな?」
「はい。あなたは導師のみが抜くことができるその剣を抜き放ちました。あなたが導師に選ばれた証です。」
ライラが自分の前で止まり、剣を握る俺の手を取った。
「だからこそ、あなたは世界を救わなければなりません。救った先に感謝もされず、謂れのない言葉を人々から受けることもあるでしょう。それは孤独、そして孤高の道です。それでもあなたは---」
「うるせえ!」
彼女の手が震えていた。
彼女は知っているのだろう。
「導師」がなんたるかを。
けれど、今はそんなこと知ったことではない。
道が一つなら進むしかないのだ。
「やるしかないんだろ!? やるんだよ俺が! だからライラ、力を貸してくれ!」
その瞬間、炎が溢れ出した---
1000字ってこんなにしんどかったんだなって
戦闘描写頑張ります
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