幼馴染といちゃつくだけの短編集 (さんれお)
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幼馴染一周目
潤①


ボクっ娘ヤンデレ風幼馴染。(風なだけ)

黒髪ショート。貧乳。





 

潤と2人でスクールデイズを見た。俺の胡座の上に潤をのせながら。

 

「・・・どう?」

 

「うーん、全然ダメだね」

 

「よ、よかった・・・共感できるとか言われたらどう逃げようかと思ったよ・・・」

 

「酷いなぁ、ボクのことなんだと思ってるのさ」

 

「だってお前怖いじゃん」

 

「なにがさ」

 

「俺がクラスの友達と話してると能面みたいな顔するじゃん」

 

「別にただ真顔なだけだよ」

 

「いーや、アレは明らかにただの真顔じゃない」

 

「・・・まぁ君が言うならそうなのかもね」

 

「それとあとさ」

 

「なにさ」

 

「なんか手料理に入れたいとか言ってるじゃん」

 

「・・・それはしょうがないでしょ。好きな人とは誰だって少しでも深く繋がりたいんだよ。それこそ細胞レベルで」

 

「いやその発想はおかしいだろ」

 

「おかしくないもん」

 

「・・・例えば、さ」

 

「なにさ」

 

「俺が誰かと付き合うって言いだしたらどうする?」

 

「・・・・・・・・・好きな人、できたの?」

 

「いや例えば、の話」

 

「なぁんだ。そうだね、その子のことを根掘り葉掘り徹底的に調べる。君が幸せになれそうだったら応援するんじゃない?」

 

「いや怖えよ。なに根掘り葉掘りって」

 

「当たり前じゃないか。君悪い子にすぐ引っかかりそうだもんね。そこは幼馴染みとしてボクが責任持って判断してあげるよ」

 

「・・・いや、でも以外だな。普段のノリなら排除するとか言い出すかと思ってたわ。一応一考の余地はあるんだな」

 

「そりゃもちろん殺したいほど嫉妬するさ」

 

「やっぱ怖いじゃねぇか!」

 

「いやいや。君が見せてくれるヤンデレってやつとボクは、決定的に違ってるよ」

 

「・・・なにが?」

 

「いいかい?ボクは君が嫌なことはしたくないんだ。常日頃から細胞レベルで繋がりたいから手料理にはボクの体の一部を入れたいと思ってる。君が他の女の子と話してるのを見ると嫌な気持ちになるから引き離したくなるし、君がボクと離れてしまうのは嫌だから、いっそずっとどこかに閉じこもって2人きりでいたい。君を独り占めしたい、一緒になりたい、愛したい。けど、それを絶対に行動にうつしたりなんかしないさ」

 

「・・・お、おう。そりゃよかった」

 

「だって君が困ってしまう。嫌な気持ちになってしまう。それは避けたいんだ。ボクの汚い内面を見ても、君は変わらずボクと接してくれるでしょ?仲良しでいてくれるでしょ?君の幸せはボクの幸せでも、ボクの幸せが君の幸せとは限らないんだよ。・・・だからさ、本当に、好きな人が、出来たらさ・・・は、早めに言ってね・・・?ボク、頑張って応援、する、から・・・ね?」

 

「・・・」

 

「・・・あっ」

 

「ちょっと落ち着け、な?」

 

「・・・うん。君に撫でられると、安心するよ・・・もうちょっとお願いしても・・・いい?」

 

「・・・なぁ、俺さ、お前のこと超好きだぞ」

 

「んなっ!ふ、不意打ちは卑怯だよっ!」

 

「普段はお前がずっと言ってる事じゃん」

 

「い、言うのと言われるのは・・・違うんだよ・・・」

 

「・・・よし、付き合おう」

 

「・・・それは、だって・・・」

 

「重荷になる、だろ?いいよ別に。今も重荷だろ」

 

「うっ・・・で、でも、前にも言ったけど、つき合ったらもっと重くなるよ?ぺしゃんこになっちゃうかもよ?」

 

「いやだから表現いちいち怖いって。もういいよ、覚悟決めた。一生お前のウマい飯食えるならぺしゃんこになっても文句ない」

 

「いいい一生!?そ、それって!けっ、けっ、」

 

「まぁそれは、まだ学生だし、おいおいな?お前が嫌な気持ちになるのも、俺は嫌なんだよ。だから、ここらでちゃんと俺とお前の関係を確立しよう。いつまでも幼馴染みなんかに頼ってるから不安になるんだよ。いいか、これからどんなことがあっても、俺は絶対お前のとこに帰ってくるからな」

 

「・・・ばか。どうなっても知らないぞ。ぺしゃんこになっちゃえ、君なんかさ・・・」

 

「はいはい」

 

「・・・ふふっ、ボク、幸せだなぁ」

 

そのあとも、夜寝るまでナデナデを強要された。結局潤は泊まることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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香織①


ヤンキーデレ風世話焼き幼馴染。

金髪ロング、いつもアメの棒咥えてる。微乳。


 

 

 

「オイ、オイコラ起きろアホ助」

 

体が揺すられている。目を開けると、長い金髪が目に入った。

 

「ん、おはよう、香織」

 

「おう。朝飯出来てんぞ」

 

味噌汁のにおいがする。朝ご飯作ってくれたみたいだった。

 

「今日もありがとうね」

 

「けっ、律儀なやろーだ相変わらず。気にすんなっつってんだろ」

 

「あ、美味しい」

 

「そーかよ」

 

二人で味噌汁をすする。アサリの出汁がきいてておいしい。

 

「今日授業なんだったっけ」

 

「現文、古文、日本史、数学、体育、情報」

 

「体育あるんだっけ。じゃあ体操着持っていかないとだね」

 

「もう玄関置いといたぞ。数学と情報宿題出てんぞ」

 

「げ、数学はやったけど情報やってないや」

 

「ったくしょうがねーな、昼休み見してやっから写せ。どうせタメにもなんねーからマジメにやるだけ無駄だろ」

 

「そうなんだ。ありがとう」

 

「いいって。ほら、食い終わったんなら準備してこいよ。寝癖たってるぞ」

 

「香織も寝癖たってるよ?」

 

「あー、今日ちょっと寝坊したからな。まぁいいんだよ、アタシは」

 

「良くないよ。女の子なんだから、ちゃんとやってきなよ。俺はすぐ済むからさ、短いし。ほら、食器洗っとくから」

 

「・・・ちっ、わーったよ。頼んだ」

 

洗面所に向かう香織。そんなこんなで家出発。道中いろいろな子に声をかけられる。

 

「あ、おはようございます!香織さん!」

「ちわーーっす!姐さん!旦那さん!」

「姐さん今日もカッコイイっす!」

「香織さん!旦那さん!おはようございます!」

 

同じ高校の子だったり、他校の制服だったり。普通の子だったり、ヤンキーだったりギャルだったり。

 

「あいかわらず凄いね」

 

「朝からうるせー奴等だぜ全く」

 

「でも、旦那さんっていつから呼ばれ出したんだろう・・・」

 

「・・・嫌ならアタシからやめるよう言ってやろうか?」

 

「ううん、俺は全然嫌じゃないよ?嬉しいくらい」

 

「っ!そ、そうか、・・・そうか。」

 

えへへ、と笑う香織の手を握る。

 

「うぇっ、な、なんだよ急に!」

 

「いや、ちょっと寒かったからさ。嫌だった?」

 

「べつに・・・いいけどよ」

 

 

そのまま、二人で囃されながら学校に向かった。冬に入りたての寒さは気にならなかった。

 

 

昼休み。

 

 

「オイ、弁当だ」

 

「うん。ありがとうね」

 

「だからいーって」

 

「あとほれ、情報のプリント。ちょっちここの字がきたねーから気ぃつけろよ」

 

「あはは、香織器用なのに、字は汚いよね」

 

「うっせーハッ倒すぞ」

 

「!このだし巻きタマゴめちゃくちゃ美味しい!」

 

「・・・そーかよ、ほら、アタシのも一個食え」

 

「え?いいよ。わるいし」

 

「黙って食え」

 

ズボッとタマゴを口に突っ込まれる。うん。うまい。

 

「・・・今晩何食う?」

 

「うーん、カレー?」

 

「またかよ、好きだなお前も。他になんかねぇのか?」

 

「香織の食べたいもの、とか?」

 

「・・・気持ちわりーヤローだ」

 

「なんでさ、香織の食べたいものは?」

 

「お前が食いたいもの、かな」

 

「なんだ、香織も気持ちわりーヤローじゃん」

 

「うっせぇバカ!」

 

頭をパコンと叩かれた。晩御飯はカレーになった。

 

 

 

 



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麗①


敬語メイド幼馴染。

黒髪ボブの高身長。巨乳。


 

 

 

麗さんは、僕が物心ついた時から世話をしてくれている、三つ年上のメイドさん。あまり感情を表にださない人だけど、すごく優しくて、いつも助けてもらっている。今高校3年生で、卒業と同時に僕の家にそのまま就職するそうだ。

 

「旦那様。起きてください、旦那様」

 

「ん・・・麗さん、おはよう・・・」

 

「はい、おはようございます。昨夜は定期試験の為遅くまで勉強なさっていたのは知っていますが、遅れては詮無きことですよ」

 

「・・・麗さんも試験中じゃなかったっけ、凄いね、仕事もこなして・・・いつもありがとう」

 

「いえ、私は旦那様のメイドなのですから、当然です。礼などいりません」

 

そう言って、部屋を出ていく麗さん。背筋がピンと伸びていて、相変わらずの早足。学校があるのでメイド服ではなく、制服を来ていた。僕が今目指している高校の制服だ。

 

物心ついた時から世話をしてくれたし、物心ついた時にはもう麗さんに恋心を抱いていた僕。去年あたりから、いずれそうなるだろうから、今のうちに慣れる、と言って麗さんが僕を旦那様と呼び出したあたりで、完全に脈ナシと言われてるようなものだったけれど頑張って今もなんとかアプローチをしてる。

 

朝食は僕のお願いで、一緒にとることにしてもらっている。

 

「旦那様、睡眠不足の登校、お気をつけください」

 

「うん、大丈夫だよ。夜更かしには慣れてるからさ」

 

「・・・あまり頻繁にすると、発育にも弊害が生じますよ」

 

「そうかな。背は順調に伸びてると思うけど・・・」

 

「・・・そうですね。いつの間にか私を抜いてしまいましたし」

 

少々寂しいです、と小声で麗さんが言ったのを、僕は聞き逃さなかった。

 

「まぁ僕ももう15だからね。ここで伸びてくれなきゃ困っちゃうよ」

 

「・・・去年あたりはまだ私の方が高かったですからね。あっという間に抜かれてしまいました」

 

「僕は安心したよ、流石にいつまでも女性より小さいのは格好つかないからね。ところで、麗さん」

 

「はい?」

 

「今週末、予定が空いてたらデートでもしない?」

 

「・・・まぁ、予定は空いてますが。付き添いですか、わかりました」

 

「むぅ・・・連れないなぁ」

 

 

そして週末。

 

 

朝、麗さんがなぜか起きてこないので、起こしに行く。

 

ノック2回。

 

「れーいさーん」

 

・・・。数瞬の後、一瞬の悲鳴から、バサァ!ドタンバタンガタン!みたいな音がした。

 

「だ、旦那様、申し訳ありません。少々お待ちいただけますか?」

 

「うん。いいよ、ゆっくりで」

 

待つこと数分。ボブカットの黒髪を撫でつけながら、麗さんは出てきた。休日なのでメイド服だ。頬がすこし紅潮気味だ。

 

「申し訳ありません・・・」

 

「いやいや、本当に気にしないで。僕なんていつも起こしてもらってるんだからさ。でも、珍しいね?」

 

「いえ、その・・・昨晩少々遅くて」

 

「そっか。眠いんだったら無理しないで?午後からでもいいからさ」

 

「そ、それはダメです!」

 

おぉ!?麗さんのおっきな声珍しい!

 

「じゃあ、とりあえずご飯、食べよう?」

 

「は、はい・・・ごめんなさい・・・」

 

なんか、今日は麗さん謝ってばっかりだな。

 

「お、起きてきたわね、2人とも!」

 

ダイニングには、週末だけ帰ってくる母さんがいた。

 

「お母様、申し訳ありません」

「気にしないで!愛する息子と娘に、たまには手料理振る舞わせてちょうだいな」

 

麗さんは幼い頃両親を事故で亡くしてしまって、親戚だった僕の両親が引き取り、実の娘のようにそだてた。

僕にとっては、メイド兼お姉さん的な。

 

「今日デートしてくるね」

 

「付き添いです」

 

「知ってるわよ。麗ちゃん昨日遅くまで、服なに着ていくか迷ってたじゃない。3着しか私服ないのに」

 

「んなっ!み、見てらっしゃったんですか!」

 

「ふふふ、乙女ねぇ〜」

 

「れ、麗さん!僕とのデートのために!?」

 

「ち、ちがっ!」

 

「ウチの息子もやるわねぇ!ヒューヒュー!」

 

「いやぁ照れるなぁ〜」

 

「むぅ・・・!」

 

その後、拗ねた麗さんと母さんとご飯を食べた。頬を膨らませてて可愛かった。

 

 

「それじゃあ行こっか」

 

「・・・はい」

 

「もう、ごめんね?機嫌直してよ」

 

「・・・私だって、楽しみだったんですよ。悪いですか・・・」

 

子供みたいにそっぽをむく麗さん。普段クールなだけに、たまに見せるこういうところが途轍もない破壊力。僕は麗さんの頭を撫でながら、手を握った。

 

「あっ・・・」

 

「それじゃあ、今日は沢山楽しもうね」

 

「・・・はいっ!」

 

このあと、めちゃくちゃデートした。

 

 

 

 

 



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冬夏①


嫁毒舌幼馴染み。

黒髪ロング。有乳。


 

 

 

「起きなさい愚図」

 

「ブフォ!」

 

朝。ヒッププレスを鳩尾に叩き込まれて起こされる。

 

「ゲホッゲホッ」

 

「全く、17にもなってまだ一人で起きれないなんて、本当に愚図ね」

 

「エホッゲェホッ!」

 

「・・・はいはい、遠回しな批難はわかったからやめなさい。早く準備をして、ノロマ」

 

「ゲェッホ!ゲホッ!ゲホッ」

 

「・・・ね、ねぇ、大丈夫?そ、その、私・・・」

 

「なんつってね」

 

「ッ〜〜〜!!!」

 

バチィイイイイン!ビンタされた。目が覚めた。

 

そして登校。

 

「いてぇ・・・」

 

「自業自得じゃない。信じられないわ、毎日朝起こされて、朝食昼食も世話になっている恩人相手に悪質な悪戯をしかける神経が理解出来ないわ」

 

「はいはい悪かったよ」

 

「はいは1回よ、この愚図」

 

「・・・はい」

 

「それと貴方、今日の天気予報見てないでしょう?」

 

「おう・・・へ、まさか雨?」

 

「そうよ。午後から100%ね」

 

「マジかよ・・・」

 

「相変わらず愚図ね。自分で起きなければ食も用意してもらって、天気予報のひとつも見れないなんて貴方何して生きてるの?考えられないのだけど。愚図もそこまでいくといっそ清々しいわね」

 

「はいはいごめんね」

 

「はいは・・・」

 

「1回ね、はい」

 

「・・・この傘使いなさい。私は折りたたみ持って来てるから」

 

「お、マジか」

 

流石カンペキ女子。

 

「おーっす!元気かアホ面!冬夏ちゃんおはよ!今日も仲いいねぇ!」

 

女友達が後ろから肩組んできた。暑苦しい。

 

「・・・」

 

「暑苦しいから離れろって」

 

「お?なんだよー照れちゃってるのかなぁ?」

 

「お前のどこら辺に照れる要素があるのか教えてくれ」

 

「なにおー!?ボンキュッボンなおねえさんだろうが!」

 

「キュッキュッキュッだろうが、ジョイで洗った後の食器だろうが」

 

「キーーーッ!」

 

ボコボコ殴られる。普通に痛い。するの、冬夏に袖をつままれる。

 

「・・・ちょっと、遅刻するわよ、貴方達」

 

「お、マジか」

 

「わ、ホントだ!」

 

結局ギリ間に合わなかった。3人揃って注意を受けた。

 

 

昼休み。

 

「なんで貴方が愚図なせいで私まで注意を受けなければいけないのかしら」

 

「いや悪かったって」

 

「貴方も少しは自分で起きて、余裕を持って準備するくらいしなさい。はい、お茶」

 

「ん、さんきゅ。そうはいっても、どうにも朝はな」

 

「朝が強い人間なんてそういないのよ。それでも大多数遅刻せずに学校に来るし、会社となれば寝坊遅刻する人なんていないわ。やっぱり貴方が愚図であると言わざるを得ないわね」

 

「あーはいはいわかったよ。おぉ、塩唐揚げうめぇうめぇ」

 

「・・・当たり前でしょ。何回作ってると思ってるのよ」

 

「おう、ありがとな。しかしほんと、よく毎日俺の好みを捉えてくるな」

 

「・・・当たり前でしょ。そのうち夕飯も休日も私が作るようになるのよ。泣いて喜びなさい」

 

「・・・」

 

「ふん、せいぜい午後も足りない脳みそ絞って頑張りなさい」

 

「はいよ」

 

 

授業中。

 

 

(やべぇ眠い・・・)

 

古文の授業がお経に聞こえてきた。なんとか覚まそうとスマホをみる。休み時間まで寝っぱなしだったら冬夏になにされるかわかったもんじゃない。

ラインから丁度メッセージ通知。

 

『集中しなさい』

 

・・・。あいつ俺の2個前の席じゃねぇかよ。

 

 

下校。

 

 

「雨強いな」

 

「当たり前でしょ。周りを見て。傘を持ってきてない人なんかいないわよ。いかに自分が愚図が理解した?」

 

「・・・いや、置き傘してるやつとかさ」

 

「あら、貴方はいつ雨が降ってきてもいいように用意周到に学校に傘を置いている人間と、明らかに雨模様な空にも関わらず、私に傘を持ってきてもらわなければならない貴方を同等扱いするのね?随分図々しい愚図だわ」

 

「わかったわかった俺がわるかったよ。てか俺のために持ってきてくれたんかよ」

 

「当たり前でしょ」

 

「お、おぅ・・・」

 

方向上、先に冬夏の家、次が俺の家だ。いつも宿題を冬夏の家でやってから帰っているが、今日は一旦濡れたズボンを洗濯しようと自宅へ向かおうとした。

 

「・・・ちょっと、どこいくのよ」

 

ちょこんと、袖をつままれる。

 

「あ?いや、ズボン濡れたから洗濯だしてから行こうかなーと」

 

「・・・そう」

 

袖をはなされる。

 

「全く、違う家に住むのが面倒ね」

 

「・・・なんだそりゃ」

 

「・・・できるだけ早く来なさいよ、ばか」

 

「はいはい」

 

「はいは・・・」

 

「1回な」

 

 

 



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杏子①

犬系アホ幼馴染。

耳みたいな栗色アホ毛。貧乳。


 

 

 

 

通学路を歩く。待ち合わせの幼馴染は時間に来ないので、起こしに行くこともなくアッサリ見捨てる。すると、後ろから誰かが走ってくる音が。

 

「お、おはよ〜」

 

「おう、アホよう、わんこ」

 

「わんこじゃないよっ!アンコ!それとアホようってなんだよっ!」

 

そこまで言い切って、ゼハーと息を切らすわんこ。

 

「全く、ひどいよ!私を置いて先に行っちゃうし、犬扱いするし!」

 

「はいはい」

 

「はふぅ〜〜〜」

 

今日もわんこは面白い。頭を撫でるとこうなる。頭の上に音符がとんでいる。

 

「なんだよ、やっぱり犬じゃないか」

 

「犬じゃない!」

 

「お手」

 

「しないっ!」

 

パチーンと手を叩かれた。結局してる。

 

「バカにしてる!絶対バカにしてるでしょっ!」

 

「いやだってお前バカだろ」

 

「バカじゃない!バカって言った方がバカなんだよ!」

 

「カバって10回言って」

 

「かばかばか・・・言わない!ばか!」

 

「今日も愉快な犬だなぁ」

 

「うぅ〜〜〜犬じゃないって言ってるのにぃ・・・」

 

「はいはい。」

 

「ふへぇ〜〜〜」

 

だらしない顔になってる。わんこを撫でくりまわしながら登校した。

 

 

「ねぇねぇ、勉強教えてよ!」

 

「うるさいわんこは外でも走ってきなさい」

 

「犬じゃないっ!」

 

「名前がわんこなのに何を言ってるんだ」

 

「杏子!きょう二回目だよっ!」

 

「第1俺に勉強教わろうと思う方が悪い」

 

「でも私より頭いいじゃん」

 

「何言ってるんだ、人語を話せて学校に通える犬なんだぞ、世界1頭いいじゃん。自信持てよ」→世界一

 

「いつまでそれ引きずるのさ!飽きたよ!これ以後きんしだよっ!」

 

「残念でした、一生やります。禁止しません」

 

「いっ、いいい一生!?それって、ずっと一緒ってこと!?」

 

「はいはい尻尾をふるなわんこ」

 

「ねぇねぇ、どういう意味?どういう意味でいったのっ?」

 

「はしゃぐなはしゃぐな。お前の飼い主としてはやっぱり義務があるわけだからな」

 

「・・・やっぱり犬扱いなんだ」

 

耳みたいなアホ毛がシュンと垂れている。撫でる。

 

「落ち込むなよ、冗談だ」

 

「・・・ふん、こんなんじゃ、機嫌なおひてあげにゃいんだからね」

 

「だからふにゃふにゃになってるって」

 

「む、むー!撫でるのきんしっ!」

 

「はい」

 

言われたのでアッサリやめた。

 

「ぁ・・・、や、やっぱりきんしじゃない」

 

「いや、いいです」

 

「いいですってなに!?え、遠慮しなくていいんだよ、ほら、いつもみたいに撫でていいんだよ?」

 

「いいです」

 

「しつれいだよっ!失礼!」

 

「city rain?」

 

「意味わからないよっ!」

 

その後も1日、わんこをいじり続けた。

 

 

 



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鈴①

ギャップ系生徒会長幼馴染み。

黒髪ポニーテール。有乳。


 

 

 

「りーん、おい、鈴!起きろよ、時間だぞ」

 

「・・・ぅん、あと5分」

 

「それ5分前に聞いたよ。ほら、起きるの」

 

「・・・むぅ・・・起きたくないよぉ・・・」

 

「ダメだよ、体調悪くないんでしょ?頑張ろ?」

 

「や〜だ〜」

 

「生徒会、大変だろうけど僕も手伝うからさ。ね?」

 

「うぅ〜・・・」

 

のっそりと起き上がる鈴。髪はボサボサで、目がむくんでる。

 

「・・・洗面所まで連れてってぇ・・・」

 

「はいはい」

 

毎朝おんぶで洗面所連れていくまでが僕の仕事。シャワーを浴びるとアラ不思議。

 

「おはよう。今日もありがとう」

 

「ううん、学園祭も近いし、頑張ろうね」

 

「あぁ、そうだね」

 

キリっとした我らが生徒会長の誕生である。

 

 

登校。

 

背筋はピンとのび、半開きだった目はキリっと開かれ、歩く速度は男子よりも速い。

 

「あ、会長さんだぁ!おはようございまーす!」

 

「あぁ、おはよう」

 

「会長さぁーん!」

 

「おはよう、あぁおはよう」

 

容姿もあいまって、鈴は男子にも女子にも人気の生徒会長だ。登校時には常に声をかけられている。僕はその3歩前を毎日慎ましく歩く。

 

「あの、副会長さん、おはようございます」

 

誰にも声をかけられず密かに悲しんでいると、書記の後輩の佐藤さんが声をかけてくれた。

 

「おはよう、佐藤さん」

 

「相変わらず会長はすごいですね」

 

「そうだね」

 

「そういえば、今日の仕事のことなんですけど・・・」

 

そのまま、声をかけられ続ける鈴の後ろで、仕事の話をしながら登校した。

 

「さて、副会長。備品のチェックだけ朝してしまおう」

 

学校に到着するや否や、そう言う鈴。

 

「うん、わかった」

 

「あの!私もご一緒しましょうか?」

 

「いや、佐藤さんは大丈夫だ。そこまで量があるわけじゃないからな」

 

「そ、そうですか・・・」

 

シュンとして、佐藤さんは自分の教室に向かった。

 

「佐藤さん、真面目ないい子だよね。仕事もできるし」

 

「・・・そうだな」

 

2人で倉庫に向かう。すこしいつもより歩くのが早い。倉庫につくと、僕は昨夜渡されていた備品リストを鞄から出して、チェックを始める。すると、後ろから扉の鍵を閉める音が聞こえた。どうしたのかと振り向くと、突然鈴が抱きついてきた。

 

「・・・」

 

「・・・り、鈴?どうしたの?」

 

「・・・楽しそうだった」

 

「え、な、なにが?」

 

「さっき。登校してる時、佐藤さんと楽しそうにしてたもん」

 

「え?そ、そうかな?普通に生徒会の話してただけだよ」

 

「・・・私だって」

 

そこで、いっそう抱きつく腕の力が強くなった。

 

「・・・昔は、ずっとあなたとお話しながら登校できてたのに・・・」

 

「・・・鈴」

 

「・・・うぅん、ごめんなさい。その、今日も私頑張るから、もう少しこのままでいさせて?」

 

「・・・もちろんいいよ」

 

僕も鈴の背中に手を回して、背中を少しさすってあげる。

 

「・・・ふふっ、あなたにこうされると、安心するなぁ」

 

「昔から、泣いてる時とかはこうしたよね」

 

「も、もう、昔の話はやめてよ・・・恥ずかしいなぁ・・・」

 

「泣き虫だった鈴が、今はみんなのあこがれの生徒会長だもんね」

 

「・・・あなたが・・・かっこいい女の人が好きって・・・」

 

「え?なに?」

 

「・・・なんでもないもん!」

 

額を僕の胸に擦り付けてくる鈴。犬みたいで可愛い。

 

「鈴、そろそろ、ね?」

 

「・・・うん」

 

ちょっと名残惜しいけど、生徒会長と副会長が遅刻でもしたら流石にまずい。

 

「また、これやってね?」

 

「はいはい、お易い御用だよ」

 

結局、放課後にもしてあげた。

 

 

 

 

 



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優菜①

純真真面目年下幼馴染み。

黒髪三つ編みおさげめがね。隠れ巨乳。


 

 

 

「お兄ちゃん、起きて」

 

「・・・んがっ」

 

「・・・ふふ、可愛い寝顔・・・って、起きないと、遅刻しちゃうよ?」

 

「んむぅ・・・」

 

「もう、ほら、起きて。今日は私が朝ご飯作ったから、食べてくれないとやだよ・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・わたし、起きてくれないとお嫁に行っちゃうよ?」

 

「ダメだぁぁぁぁぁあ!!!!ハッ!?」

 

「おはよう、お兄ちゃん!」

 

「な、なんか嫌な夢を見た気がする」

 

「そう?朝ご飯作ったんだ。食べよ?」

 

「あ、おう。そりゃ楽しみだな」

 

寝ぼけた頭を洗顔で起こす。両親が出張でいないので、優菜が変わりにごはんを作ってくれることになっていたのを思い出した。

 

鮭の塩焼き。あおさの味噌汁にほうれん草のおひたし、納豆と白米。

 

「おぉう、まだ豪華だなぁ」

 

「豪華かなぁ?普通だと思うけど・・・」

 

「ウチは朝トースト1枚だからな。ありがたいぜ」

 

「もう・・・健康にわるいよ?」

 

「じゃあ優菜が結婚してくれたら健康になるな!わはははは!」

 

「結婚って・・・ば、ばか・・・」

 

頬を赤らめてる。いつもこのネタをいうのに、毎回恥ずかしがってる可愛いやつだ。

 

二人仲良く食事をして、学校へ向かう。

 

「おっ!今日もやってますねぇご夫妻!」

 

「おう、おっちゃん!」

 

「こりゃ子供の顔見るのも近そうだな!」

 

「任せとけよ!」

 

商店街のおっちゃんにはやされるのもいつものことだ。

 

「うぅ〜、セクハラだよ・・・」

 

「あはは、いいじゃねぇか、こういうとこから固めてお前に悪い虫がつかねぇようにしないとな!」

 

「悪い虫って・・・別に彼氏なんか作る気ないよ?」

 

「いやいや、お前みたいな純真無垢なやつは、その気がなくても騙されて襲われちゃったりするかもなんだぞ。男はみんな狼なんだ」

 

「こ、怖いこと言わないでよ・・・」

 

「・・・どこのウマの骨ともわからんやつにお前をやるくらいなら、いっそ俺が!!」

 

グワァ!と襲いかかるフリをする。

 

「・・・いや、だから、こういう時に拒絶しないとさ、な?」

 

「・・・べつに、兄さんなら・・・いいよ?」

 

ブフォ!!な、なんたる破壊力ッ・・・!鼻血が・・・

 

「な、なんちゃって!もう、馬鹿なことしてないで、早く行こっ!」

 

小走りでかけていってしまう。

 

「ちょい待てよー!」

 

「待たないよー!あうっ」

 

あ、コケた。運動神経は残念な優菜だった。

 

そんなこんなで、昇降口。

 

「・・・あ」

 

「ん?・・・ってそれはッ!」

 

優菜の下駄箱に、便箋が入っていた。

 

「す、捨てるんだ優菜!そいつを今すぐ!」

 

「え、えぇ・・・?それは流石に、失礼なんじゃないかな・・・」

 

「ちくしょうどこのどいつだ!ぶっ飛ばしてやる!」

 

「もう、ちょっと落ち着いて!兄さん」

 

「クッ・・・な、なんて書いてあるんだ?」

 

「えっと・・・昼休みに、校舎裏の花壇前に来てくださいって」

 

「よし、俺が行こう」

 

「もう、心配症すぎだよっ!ちゃんとお断りするから、ね?」

 

「でもだな、もしそれで逆上でもしてきようものなら・・・」

 

「だから怖いこと言わないでよ・・・」

 

「クッ・・・隠れてみてるからな」

 

「・・・もう。いざって時は、ちゃんと大声出すから大丈夫だよ」

 

「心配だ・・・」

 

そして問題の昼休み。

 

「ぐぬぬ・・・」

 

そこそこのイケメンがあらわれた。この時点で飛び出してぶん殴ろうと思ったが、なんとかこらえた。優菜が頭を下げている。男は多少言葉を交わしたあと、どこかへさって言った。

 

「優菜、大丈夫か?なにもなかったか?」

 

「わひゃあ!と、突然出てこないでよ・・・びっくりしたぁ」

 

「わ、悪い・・・」

 

「もう・・・大丈夫だよ。ちゃんと、好きな人がいるからって言ったらわかってくれたよ」

 

「え!?好きな人いるのか!?誰だ!?同じクラスのやつか!」

 

「・・・ばか」

 

「今日は俺がいたからいいものの・・・風邪で休んでる時とかこういうことがあったらどうしよう・・・」

 

「・・・てい!」

 

「あイタっ」

 

おなかをこずかれた。

 

「な、なんだ?」

 

「私、こんなに手のかかるお兄ちゃんがいるうちは彼氏なんか作る気ないの!わかった!?」

 

「は、はいっ!」

 

「心配してくれるのは嬉しいけど、程々にしてよね!あんまり鬱陶しいと口聞かないから!」

 

「そ、それは嫌だ・・・」

 

「・・・ふふっ、わかったら、ご飯食べに行こ?」

 

「はい・・・」

 

なんだかんだ、優菜には逆らえない。

 

 

 

 

 



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美陽①

コミュ障根暗幼馴染み。

黒髪セミロング、前髪で目が隠れている。巨乳。


 

 

バスケ部の朝練があるので、まだ空も少し暗いなか家を出る。すると、ちょうど隣からも出てくる女の子が。

 

「あぅ・・・お、おはよ・・・ございます・・・」

 

「おす、おはよ」

 

相変わらず長い前髪が目を隠してる。毎日ながら何をそんなに怖がってんだこいつは。歩き出すと、美陽は同じ距離でついてくる。そこそこ歩くスピードはやいのについてくる。

 

「・・・オイ」

 

「はいぃ・・・!な、なに・・・かな?でしょうか・・・」

 

「なんか尾行されてるみたいで嫌だから後ろを歩くな」

 

「・・・・・・はい」

 

「横、歩けよ」

 

「っ!は、はいっ!」

 

小走りで横まで来た。

 

「お前、毎朝このやりとりするの疲れるんだけど」

 

「あ・・・ごめんね?・・・なさい」

 

「まずそのナゾ敬語をやめろって。なんか虐めてるみたいだろ、俺」

 

「・・・ごめんなさい」

 

「謝るのも禁止」

 

「うぇっ・・・あう・・・」

 

「鳴き声禁止」

 

「・・・」

 

ご覧の通り、コミュニケーション能力に若干(多大)に問題がある美陽。幼馴染の俺ですらこれ、クラスのヤツらにはもっとひどい。ハイしか言えない。心配すぎる。

 

「お前、よくそれでマネージャーなんかやろうと思ったな」

 

「・・・」

 

「・・・いや、喋れよ」

 

「・・・だって、敬語と、謝るの、出ちゃう、ま、う」

 

うまう?何語?

 

「いつも言ってっけど、俺でちゃんと喋る練習しようぜ。思ってる事口に出す練習。別に何言っても怒んねぇからさ」

 

「ほ、ほんと?」

 

「ん・・・あーいや、怒る時は怒るかも」

 

「・・・うぅ・・・・・・」

 

「いやいや、俺お前に怒ったことないだろ?」

 

「・・・小学生、の、時とか・・・」

 

「小学生って。ありゃ好きな子にはちょっかいかけてぇってヤツだろ」

 

「そ、そうなんだ・・・・・・・・・え?」

 

「今はあまりに酷くなきゃ怒んねぇよ」

 

「え、え?す、す、え?」

 

「なに、暗号?啜え?なにを?」

 

「ち、ちがっ・・・さ、さっき・・・」

 

「あ、ついた。じゃあまた後でな」

 

男子更衣室に寄ってから体育館。マネは体育館直行。

 

「・・・ま、またね」

 

いつも顔赤くしてるやつだけど、今日はゆでダコみたいになってた。あとで保健室連れてこう。

 

朝練中もゆでダコのままあうあう言ってて、コーチも変なモノを見る目をしてた。許可とってお姫様抱っこで保健室まで運搬した。なかなか抱き心地がいいヤツなので抱っこはただしたかっただけ。

 

「・・・ふわぁ」

 

「ゆでダコ越えて逆に青くなってきてるぞ」

 

口がぱくぱくしている。

 

「あぁゆーのも嫌なら断らなきゃいけないんだぞ。俺相手なら練習だと思ってがんがん言いたいこと言えって」

 

「ば、ば、ば、」

 

「馬場婆?」

 

「ばかぁあぁ〜・・・」

 

ぽふぽふ胸を叩かれる。

 

「なに、嫌だったの?」

 

「嫌、じゃない、けどぉ・・・・・・」

 

シャイなやつだ。だがこうして他のヤツらに俺が保護者であることをみせとかんとな。こいつが変なヤツに目をつけられたら面倒だ。

 

「てか体超熱いじゃん、寝とけよ」

 

「・・・・・・だれの、せいよ」

 

頭を撫でてたら寝た。そのまま愛でて1限サボった。

 

 

 

 

 

 



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彼方①

変態王子幼馴染み。

茶髪のホストみたいな髪型。貧乳。


 

 

 

 

学校の昼休み。今日も今日とて僕は彼方に口説かれていた。屋上の扉横に壁ドンされている。男としてどうかと思われるかもしれない。でもしょうがない、女にして176cmの彼方、男にして166cmの僕で、既に男としてのプライドなんかあったものじゃない。

 

「あぁ、相変わらずキミは可愛いなぁ・・・」

 

「か、彼方・・・近いよ・・・」

 

「照れるなよ、私達の仲だろ・・・?」

 

「うあっ・・・くすぐっ、たいから、耳元で、言わないでよ・・・」

 

「あぁ・・・それだ、その反応、たまらないよ・・・」

 

彼方が僕の足の間に膝を入れてくる。さらに密着される。子供の頃のつきあいでも、女の子の香りややわらかさには慣れない。

 

「なぁ・・・いいだろ?」

 

「いいって・・・なにが・・・」

 

「キミを、私のものにさせてくれよ・・・」

 

「こんなことしといて、まだ足りないの・・・?」

 

「全然だよ、全然足りない。キミのすべてを知りたいし、私のすべてを知ってほしい」

 

「・・・もう、何年一緒にいると思ってるのさ・・・だいたい知ってるでしょ」

 

「それも全然だね。私は今日のキミの下着の色を知らない」

 

「そんなの知らなくていいよっ!」

 

彼方が1歩下がった。すると、突然スカートを捲りあげた。

 

「ちなみに私は見ての通り黒さ!」

 

「ち、痴女だッ!黒さ!じゃないよ!誰か見てたらどうするの!」

 

「大丈夫。屋上には誰もいないし、入ってこれないさ。職員室から鍵をくすねたからね」

 

「またそんなことして・・・」

 

「キミを陥落させる為ならなんでもするさ」

 

「・・・」

 

「さて、次は・・・そうだな、自慰頻度を教えてもらおう」

 

「変態だーッ!!」

 

「何を言う、パートナーならば当然のことだろう」

 

そこでまた、彼方が僕を逃がさないように、足と腕で壁ドンロックした。

 

「さぁ・・・教えて・・・?」

 

「ううっ・・・だから、耳はやめてってぇ・・・教えるわけないだろ・・・」

 

「なんでだい?あぁ、先にお前のを教えろ、ということか。私の自慰頻度は」

 

「わぁああ!!聞いてないから!聞いてない!」

 

「毎日だ」

 

「多いよッ!!なんで言ったんだよ!」

 

「生理周期は」

 

「言わなくていいッ!!!」

 

つ、ツッコミが追い付かない・・・!なんで速度でかましてくるんだ・・・!

 

「さ、キミも教えてくれ」

 

「言わないに決まってるだろ!」

 

「・・・まぁ毎日9時半から10時半、入浴前なのは知ってるけどね」

 

「なんで知ってんだよッ!正解ッ!!」

 

「LINEの既読がその時間帯つかないことが多い。あとキミの部屋のカーテン、影は見えるからね。それにお義母さんにお願いして部屋のぞかせてもらったりしたし」

 

「なんで現場抑えてんだよ!前半二つはまぁ僕の落ち度として、最後犯罪だろ!あと絶対お義母さんって漢字義母だろ!!」

 

「いやいや、遅かれ早かれ婿になるんだから、そこら辺の事情は知っといてあげないとね」

 

「普通逆だよっ!」

 

「だから教えるって。私の生理は」

 

「い・ら・な・い!!」

 

僕にプライバシーはないのだろうか。そのうち隠しカメラとか仕掛けられそう。

 

「くそ・・・今日部屋に鍵つけよ・・・」

 

「なッ!?それは困る!私のオカズはどうなるんだ!?自分ができればそれでいいのか!?」

 

「現場抑え常習犯なのかよ!!最悪だよ!なんで僕気付かないんだよっ!!」

 

てか母さん!?一体何をしてるの!?息子のプライバシー大崩壊してるよ!?

 

「クッ・・・かくなるうえは・・・買っておいた隠しカメラでッ・・・!」

 

「やっぱり持ってたーーー!!!」

 

 

 

 

 



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花火①

演技派不意打ち幼馴染み。

茶髪のボブで、前髪をあげている。巨乳。


 

 

 

「なぁ、頼むよ!」

 

「いや、土下座までせんでも・・・」

 

「友達だろ、俺たち!?」

 

「友達に頼むことにしては悲しすぎる案件だな」

 

先日バレンタインをむかえた俺は、親族含めチョコ0個という凄まじい記録をたたき出した。

 

曰く、母

 

「もうそんな年じゃないでしょ」

 

曰く、妹

 

「めんどい。10円あげる」

 

曰く、姉

 

「お前が私に寄越せ」

 

悲しすぎる1日だった。ということで、幼馴染で演劇部部長の花火に、恋人の演技でもしてもらって少しでも心の隙間を埋めようという魂胆。

 

「第一花火もくれるかもしれない候補だったのに!」

 

「チョコの話か?知ってるだろ、私の料理の腕前」

 

「どんな物体Xでももらえたら嬉しいんだよ!完成度より気持ちが重要なの!」

 

「必死すぎる・・・お前、渡されたもんはなんでも喜んで食うだろう。それで腹を壊されても敵わん」

 

「・・・それはそうだな。じゃあ、恋愛ごっこに付き合ってくれよ、な!頼む!俺にはおまえしかいないんだ!」

 

「ぐっ・・・その頼み方は卑怯だぞ・・・ていうかごっこという言葉を高校生が使うなよ・・・今どき小学生でも使わんぞ」

 

「たのむよったのむよっ」

 

「ええいやってやるから土下座しながら尻をふるな!気色悪い!」

 

「ホントにっ!?」

 

さすが花火様!!持つべきものは寛大な心を持つ幼馴染みだな!

 

「・・・それで、何を言えばいいんだ?」

 

「・・・そうだな、まずは新婚でいこう」

 

「新婚か、それなら練習したことがあるぞ」

 

「ほんとか!?さすが花火!」

 

「ああ、一旦部屋からでて、帰宅した体でまた入ってくれ」

 

「わ、わかった」

 

くっ・・・ワクワクが止まらねぇ!とりあえず部屋から出る。

 

「は、入るぞ?」

 

「あぁ」

 

ゆっくり扉を開けてみた。すると、正座で花火が三指をついていた。

 

「おかえりない、あなた。もうお風呂もごはんも出来てるけれど・・・我慢出来なかったら・・・私、いいよ・・・?」

 

「花火ィィイイイイイイイ」

 

「ぎゃあああああ!!」

 

刹那でパンツ1丁になりルパンダイブしたところ、アゴを蹴り飛ばされ後ろのドアに後頭部をぶつけた所で理性をとりもどした。

 

「はっ!?今俺は何を!?」

 

「服をきろバカ!変態!」

 

な、なぜ俺はパンツ1丁に!?無意識だったッ!

 

「お騒がせしました」

 

「まったく・・・」

 

アゴと後頭部に大ダメージを受けた。だがまだだ…まだ終わらんよ・・・!

 

「次はだな」

 

「ま、まだ続くのか!?今結構怖かったぞ!」

 

「あれは新婚妻とかいう破壊力抜群のチョイスをしてしまったのがマズかったんだ!次はもう少しソフトなやつにしよう」

 

「・・・まぁ、付き合ってやるか」

 

「さすが花火。そうだな・・・禁断の恋だとわかっているが、女子に告白されたと言う兄を前についに我慢が限界を向かえ、15年間の思いの丈をぶつけてしまう妹をやってくれ」

 

「・・・まぁ練習でやったことがあるがな。というかお前、自分に妹がいるくせにそれは些か倫理的にダメなんじゃないか?」

 

「うるせぇ!アイツは俺のことを奴隷とでも思ってんだから倫理もへったくれもねぇ!ていうか普段なんの練習してんだよ!さす花!」

 

「略すな・・・じゃあ、そうだな、お前から告白されたという旨を伝えてくれ」

 

「・・・よし、わかった。いくぞ」

 

「応」

 

な、なんか緊張するぞ・・・

 

「なあ、兄ちゃん今日告白されてさ。返事どうしようか迷ってるんだ」

 

「・・・え?」

 

「え?な、なんだよ」

 

「・・・お兄ちゃん、告白・・・されたの?」

 

「あ、あぁ」

 

「・・・」

 

無言で花火が抱き着いてきた。クッ・・・柔らかい感触と石鹸の匂いが・・・!

 

「お、おい?花火?」

 

「やだよ・・・お兄ちゃんは、花火のお兄ちゃんだよ・・・?ダメだもん・・・他の女の人なんか、ダメなんだもん」

 

「すごくやわらかいです」

 

「・・・当ててるんだよ?お兄ちゃんは、ずっと花火だけのお兄ちゃんで、花火はずっと、お兄ちゃんのだから・・・ね?・・・いいよ」

 

「ウォオオオオオ花火ィエエエエ!」

 

「どっせぇえええええい!」

 

今度は押し倒そうとしたところを巴投げされて脊椎を机に打ち付けた。

 

「ンゴホォっ!はっ!俺は何を!?」

 

「毎度毎度簡単に女に吹き飛ばされるお前もお前だな」

 

くそっ・・・文化部の貧弱さが露呈しているッ・・・!

 

「まだめげないぞ・・・!もう1回だ・・・!」

 

「・・・はぁ、しょうがないやつだ。じゃあ次は私が考えたシチュエーションでやろう」

 

「おっ意外に乗り気じゃん」

 

「まぁな。意外と楽しいぞ」

 

「さす花。さて、どう楽しませてくれるんだ?」

 

「なんか上からで腹立つな・・・これからやるのは、幼馴染みだ」

 

「ほう・・・あえてのチョイスだな」

 

「・・・あぁ。長年一緒にいるのに、全く気持ちに気付いてもらえない幼馴染みが、勇気を出して告白するんだ」

 

「おぉ!王道だ・・・んむっ」

 

「・・・んっ」

 

「・・・」

 

「・・・好きだ、阿呆」

 

 

 

 

 

 

 

 







これで考えてた全幼馴染が終わりました。これからは二周目に入ったり、思いついたら新幼馴染だしたりします。


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最新話 亜夜乃①

勘違いされ系お嬢様幼馴染み





 

 

亜夜乃は俗に言う超お嬢様である。正にマンガに出てくるような性悪お嬢様の外見といった感じで、つり上がった目にどうやって固定されてるかわからないドリルのようなおさげ(?)、校則で禁止されてる筈なのに、原材料のよくわからん高そうなイヤリング(本人はピアスと言い張っているが、本当は怖くて耳に穴が開けられなかった)。昔はもう少し地味だった印象があるけれど、どんどん派手に、だけど上品に綺麗に成長した。

 厄介なことになまじ顔面が良く、尚且つ運動もでき頭も良いとくれば、この女子率8割を誇るこの高校では高嶺の花、いやもはや神のように扱われていた。これは今に始まったわけではなく、小学生から持て囃されて順調に育った亜夜乃の天狗の鼻は知らず知らず伸びに伸び、現在もご覧のように・・・

 

「喉が渇きましたわ。ちょっとあなた・・・紅茶を入れてきてくださる?」

「は、はい!ありがとうございます亜夜乃様!」

「・・・礼を言うのはどちらかと言えばわたくしだと思うのですけど・・・ま、まぁお早めにお願いしますわ」

 

 このようにめちゃくちゃパシりまくりのお代官様みたいな立ち位置になってしまっている。亜夜乃自体はいい子なのだが、少し他人との付き合い方がおかしな子になってしまったのだ。

 さて、そんないつものお昼の情景はともかく、放課後。

 ホームルームが終わるや否や、僕はそそくさと自分の荷物を纏め、こっそりと教室を出ようとする。

 

「ちょっとアナタ、何帰ろうとしてるの待ちなさい」

 

亜夜乃ストップがかかってしまう。ここで強引に、やりたいゲームがあるからとダッシュで帰ろうとすれば、亜夜乃信者にあっという間に捕獲されるだけなのである。バレたら大人しく連行されるしかない。

 

 「今日もわたくしの家よ、会議があると昨日も言ったでしょう」

「・・・はぁ、僕ゲームしたいんだけどダメ?」

「ダメに決まってますわ!!幼馴染とゲームどちらが大事なんですの!」

「ゲーム」

「そ、即答しないで下さいます・・・?」

 

 これだけの冗談で涙目である。なんだそのメンタルは。世界一可愛い。とにかく取り巻きの目がやばいことになっているから、早く脱出しないと僕が異端審問されてしまう。

 

 「わかったわかった、行くよ」

「ほ、ホントでっ・・・さ、最初から素直にそう言えばいいんですわ!」

「あーはいはいごめんね、早く行こう」

 

 ドリル髪がぴょこぴょこ動いている。何故か昔から、亜夜乃は嬉しいことがあると髪がぴょこるのだ。世界一可愛い。

 所変わって馬鹿でかい亜夜乃家。リビングだけで僕の家の2倍はある。さて、会議の内容はどんなものかと言うと、

 

 「何故ですの・・・何故ですの・・・今日も友達出来ませんでしたわ・・・」

「そりゃできないでしょ、性格悪いお嬢様だよあのままじゃ」

「あ、アナタが昨日、クラスメイトに甘えてみればって言ったんじゃありませんの!?」

「いや、甘えるというか、親しみやすく接してみなよって話だよ」

「それが出来ていれば苦労していませんわ・・・」

 そう、亜夜乃の悩みは、下僕は出来ても友達ができないことにあった。

 

 「もうわたくしはまた中学校と同じ灰色の青春生活を過ごすのですわ・・・放課後にお友達とビーチにヘリで行く夢は叶わないのですわ・・・」

「なにそのブルジョワな青春」

 

 亜夜乃の滲み出る高貴お嬢様オーラは、下僕をうみだしこそすれ、友達としては付き合いづらいことこの上ないのだ。その上人見知りと来ているので、慣れている僕以外に亜夜乃がまともに会話できる相手はなかなかいない。

 

 「まぁでも僕は羨ましいけどね、みんな亜夜乃の手の下って感じじゃん、ある意味学内カーストは高いよ」

「カーストなんか高すぎてもなにもいい事なんかありませんわ!無駄に能力が高くても絶対に不幸せしか生まないですわ!」

「うわ、すっげぇ自信だ。まぁこの世で最も重要なコミュ力だけが絶望的にないもんね」

「うるさいですわぁーー!!!」

 

 ソファーにおいてあるクッションでぽふぽふと叩かれるけど、クッションが良質すぎてまったく痛くない。

 

「それに・・・」

「それに?」

「・・・1番欲しいものは手の下に入ってはくれませんもの」

「へぇ、亜夜乃でもゲット出来ないものがあるんだね、色違いポケモン?」

「違いますわよ!!あなたじゃあるまいし!!」

 

 こんな感じで、亜夜乃は遠まわしに何回もアピールしてくる。なぜだかわからないけど、ド庶民の僕に執着してくれているのだ。僕も亜夜乃は世界一可愛いし大好きだが、認めたら最後家ごと囲われて永遠と相手をさせられそうなので気が付かないふりをしている。まだ僕は悠々自適ゲームライフを楽しんでいたいのだ。

 

「それじゃ、友達作り計画の新案をだすよ」

「まだありますの?もうだいぶやり尽くした感が否めませんわ」

「敢えて、亜夜乃の配下に加わってない、亜夜乃アンチ派の男友達を作るってのはどう?意外と対等な立場で会話できるかもよ」

「それは無理ですわ、アナタ意外の殿方に微塵も興味ありませんの」

「・・・」

 

 ・・・こういう直球がほんとにずるい。狙ってアピールしてるというよりは反射で口にしてるのがずるすぎる。

 

「・・・まぁいいや、とりあえず映画でも観ようか」

 「そうですわね!今回は取っておきをお父様が用意してくださったのよ!」

 

 そんなこんなでバカでかい壁上スクリーンの映画を、ソファで隣合って観る。僕には少し古く感じる映画は、ゲームで寝不足の僕のまぶたには良い子守唄にしかならなかった。

 だから、亜夜乃の隣でついうたた寝してしまったのもしょうがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・つん、つんつん・・・おーい、寝てしまいましたの?」

 頬を軽くつつかれる感触で、微睡みながら聞こえてくる声に耳を傾けた。

「・・・ふふっ、寝顔も案外可愛いですわね。・・・・・・本当はわたくし、友達なんか要りませんの。下僕も要りませんの。大好きな、だいすきなアナタだけがわたくしのものになってくれれば、わたくしはこれ以上の幸せはないですわ。・・・いつか絶対に、わたくしに振り向かせて見せますわ。だから、もっと頑張りますの。もっと綺麗になって、もっと勉強も運動も頑張りますの。・・・それで、それでいつか・・・」

 

 

 

 

 「・・・アナタに胸を張って、もらって貰えるような女性になりますの。」

 

 ・・・だめだ、やっぱり僕の幼馴染は世界一可愛い。

 

 

 

 

 

 

 

 




お久し振りです、、、久々に浮かんだので書いてみました、、、またなにか投稿するかもです。


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幼馴染2周目
潤② ハグ解禁編


部活は幼馴染みと小学生の時に始めた卓球を続けている。結構強かったりする。


 

 

 

潤の頭を撫でること十数分。ふにゃふにゃした顔してぬいぐるみみたいなので抱きしめてやろうと思った。

 

「なぁ潤、抱いていい?」

 

「・・・ふぇ?なに?」

 

「抱いていいかって」

 

「・・・抱く!?」

 

シュビッと立ち上がる潤。

 

「だ、だだだ抱くって、その、そういう事だよね!?」

 

「どういう事だよ。そのままだよ」

 

「・・・いや、君が何かと誤解される体質だということはわかってるよ。抱きしめていいかってことでしょ」

 

「だからそう言ってるだろ」

 

「・・・うん、そうだね、知ってた。・・・よし、じゃあ・・・よろしくお願いします・・・」

 

両手を広げる潤。顔が真っ赤だ。普段好き好きアピールしてくる癖にこういうことには初心で可愛い。

 

「なんだ、普段さんざん人の足の上に座ってるくせこういうのは恥ずかしいんだな」

 

「それは・・・なんというか、気持ちの持ちようが違うじゃないか・・・」

 

「まあいいか。はいぎゅー」

 

「・・・ん」

 

俺がむぎゅっとすると、潤もおずおず手を回してきた。

 

「・・・」

 

「おー、なんか和むな、この抱き心地」

 

「・・・んぅ」

 

潤の遠慮気味だった腕の力が少しずつ強くなる。

 

「・・・ふぅ、ん、すんすん、はぁ、はぁ」

 

・・・あれ、強くなりすぎじゃない?ちょっと痛くなってきたよ?

 

「おい、潤?」

 

「んうぅ、くんくん、ふぅ、・・・ぷはぁっ、むぅ・・・!」

 

「いたいいたい痛いギブギブギブ!」

 

顔をぐりぐり押し付けつつ腕で思いっきり締めてきやがった。どこにこんな力があるんだコイツッ・・・!

 

「脳天チョップ!」

 

「アイタっ!」

 

叩けば治る理論。

 

「あ、あれ?なに?」

 

「いやなに?じゃなくて。力入れすぎだから。痛いから」

 

「あっ、・・・ごめんね、ボク、なんだか気持ちよくって・・・」

 

「・・・これは当分禁止にするか・・・?」

 

「えっ!?そ、それは・・・君が嫌ならしょうがないけど・・・」

 

そんだけで泣きそうになってる潤。なんというか、彼氏冥利に尽きるというか・・・

 

「・・・じゃあこうしよう」

 

ということであすなろ抱き。これならいいだろ。

 

「・・・うん、ボクもこっちは落ち着けるよ・・・正面からはちょっと、刺激が強すぎるね・・・」

 

「そしてナデナデのセット」

 

「んっ・・・君はひょっとして、ボクのして欲しいことが分かるのかい・・・?すっごく、幸せだよ」

 

「まぁお前を幸せにするために生きてるようなもんだからな」

 

「ッ〜〜〜!!好きっ!」

 

「うわぁ!」

 

くるりと反転して抱き着いてきた。またぐりぐりしてくる。

 

「好き、好き!」

 

「はいはい、よしよし」

 

「大好きだよ、もう、離さない・・・!」

 

「お、おい、また暴走か?」

 

「むぅ、一緒、好き、・・・はぁっ、きもちいっ、うぅ、すきぃ・・・」

 

ダメだ!また理性を失いつつある!!

 

「脳天チョップ!」

 

「アイタっ!」

 

以下ループ。

 

 

 

 



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香織②実は心配性編


運動神経抜群、ケンカは男女問わず無敗だが、噂によるとお付の男の方がヤバいらしい。


 

 

 

 

今日も今日とて香織に起こされて、香織のお味噌汁を飲む。

 

「ふはぁ〜、落ち着くな」

 

「ジジくせぇヤツだな・・・」

 

「いや、なんか凄いマイナスイオンというか、癒しが凄いよね」

 

「・・・15分で作ったテキトー朝飯にそうすげぇすげぇ言われてもなぁ」

 

「いやいや、毎日食べたいよ。超美味しい」

 

「んぐっふ、ゴホゴホっ、・・・・・・別に、今毎日食ってんだろ」

 

「あ、そうだね。ありがとうございます」

 

「いいっつーの、好きでやってんだからさ、こっちは」

 

ペコリとお辞儀。感謝を言葉にするのは大切なこと。それに対する返しもお決まり。

 

「おい、寝癖」

 

「は、香織から先にね。」

 

「・・・なんか作業的でムカツク」

 

「まぁ、毎日毎日お決まりだしね。むしろ俺はこのやりとりがないと1日が始まった気がしないんだ」

 

「ちっ、なんだそりゃ。お前もちゃんと直してけよ」

 

「はいはーい」

 

そうしてまたも二人仲良く登校。

 

「いやー、秋だねぇ〜」

 

「おう、金木犀の匂いっていいよな」

 

「金木犀の花言葉って、アナタの気を引くだっけ」

 

「・・・知らね」

 

「だろうね」

 

「だろうねってなんだよ!」

 

ゲシゲシとおしりを蹴られる。痛い。

 

さてさて、昇降口に到着。はてさて、下駄箱を空けると。

 

「おぉ・・・」

 

「マジか」

 

「・・・とりあえず読んでみろよっ」

 

「・・・なんで香織が緊張気味なんだよ」

 

人生初のラブレターを受け取った。どうやら後輩の子らしい。2人で読んでみると、どうやら昼に屋上とのこと。そしてお昼、香織が走りよってきて、なぜか身繕いをされはじめた。

 

「えぇ・・・なんで・・・?」

 

「そりゃお前・・・勇気出して告白してくるヤツんとこに寝癖のまんま行ってもしまらねぇだろ?」

 

「あぁ、まぁ・・・」

 

「ったく、朝直しとけっつったのによ」

 

「ごめんごめん」

 

「まぁ謝ることじゃねぇけどさ」

 

頭を整えた後は、ネクタイをしめなおされる。あ、これなんかグッとくるものがある。フワフワ揺れる金髪を梳いてみる。

 

「なんか、新婚さんみたいでドキドキするね!」

 

「・・・うっせー、シメんぞっ」

 

「アタっ」

 

デコピンされてしまった。

 

「ほい、終わり」

 

きゅっとタイを締めたら、ぽんっと胸を叩いてそういう。

 

「うん、ありがと、香織。じゃあとりあえず行ってくるね」

 

「おう、行ってらっしゃい」

 

・・・あれ、意外と普通に送りだされるんだ。ひょっとして、両想いだと思ってたのは自惚れ・・・?

 

「って」

 

「あ?どした?」

 

「・・・いや、どした?じゃなくてさ、手」

 

後ろから手を引っ張られた。

 

「ん・・・あれ、ちょっとまて」

 

「えと、どうかしたの?体調悪いとか?」

 

「い、いや、そうじゃなくて・・・あれ?」

 

「・・・ひょっとして、心配してくれてたり?」

 

「・・・・・・そうかも。なんか、勝手に動いちまった」

 

すると、うでを引張られてぎゅーっと抱き着いてきた。

 

「・・・早く帰ってきてくれよ・・・な?」

 

「うん、大丈夫大丈夫」

 

頭を撫でる。いつもは嫌がるのに、いまはされるがまま。

 

「香織、じゃあ行ってくるからね」

 

「ん、行ってらっしゃい・・・」

 

ちゃんと丁重にお断りをしてきました。好きな人がいるので。

 

 

 

 

 








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麗② 発覚編


この事件の後、中学の時の旦那様のあだ名が『変態紳士』だったと知り頭を抱えることになった。


 

 

 

「旦那様、時間ですよ」

 

「んぅ・・・」

 

「起きてください、旦那様」

 

「ダメですよぉ・・・麗さん・・・そこはぁ」

 

「・・・・・・」

 

「でへへ・・・凄い・・・です・・・」

 

「・・・」

 

「ここですかぁ・・・ここがいいんでゲボォア!!!!」

 

「おはようございます、旦那様」

 

なんだ!?腹に凄まじい激痛がッ!!

 

「れ、麗さん、おはよう・・・すんごくお腹が痛いんだけどなんでか知らない?」

 

「知りません」

 

「麗さ」

 

「知りません」

 

「・・・」

 

今日は高校の通常授業が始まる日で、なんとか第一志望に受かった僕は、1年間だけの麗さんと通える日々を大事にしようと思うわけだけど。なぜか麗さんが口を聞いてくれない。

 

「ねぇねぇ、麗さん」

 

「・・・なんでしょうか」

 

「あー、なんかしちゃったかな、僕」

 

「なにか、とは?」

 

「怒らせるようなこと」

 

「いえ、別に。特には」

 

「・・・麗さん、ヨーグルトあげるよ。好きでしょ?」

 

「いりません」

 

「・・・」

 

さて、麗さんは意外と怒りっぽかったりする。僕が連絡なしに遅く帰ったり、僕がエロ本を買ったり、僕が夜更かししたり、僕が麗さんのヨーグルトも食べちゃったりした時も怒ったりする。だけど今回は本当にわからない。昨日の夜までは普通だったから、あるとすれば夢に出てきたいかがわしい麗さんを見られたりすることくらい。ありえないんだけども。

 

「食べ終わったら支度を急いでください。遅刻は許しませんよ」

 

「はい・・・」

 

というわけで登校。さて、今日も今日とてなんとか麗さんを口説き落としたい。好かれてはいるんだろうけども、どうしても弟的な枠に入れられてるきがしてならない。やっぱり本当の意味での旦那様を目指さなければ。まずその第1歩・・・手を繋ぐッ!

 

・・・くっ、難しい、すぐさま手を取ればいいのか、声をかけるべきか・・・。

 

「いやー麗さん、いい陽気だね」

 

「そうですね」

 

「こんな日はピクニックでもしたくなるよね」

 

「そうですね」

 

「・・・麗さん、今日も綺麗だね」

 

「そうですね」

 

ダメだ!塩対応どころじゃない!無!無味乾燥しすぎているッ・・・!ええい攻めろ僕!手を繋ぐんだ!

 

「・・・えいっ」

 

「ひゃぁああ!」

 

「えっ」

 

すんごい逃げられた。顔真っ赤にしてる。ひょっとしてやってしまった?

 

「ん、んん!なんでしょうか」

 

「あー、いや、せっかくだし、手でも繋ぎたいなぁ、と」

 

「・・・子供じゃないんですから、やめましょう。これからの貴方の学校生活にも響くかもしれません」

 

「いやいや、僕に悪い虫がつかないのはいいことじゃない?」

 

「いえ、それは大丈夫です。多少の恋愛経験は必要だと思います」

 

「むぅ・・・、麗さんに悪い虫がつかないように!」

 

「私は生涯貴方に付き従う者です。他の男性に現を抜かすことなど絶対に有り得ません」

 

「はうっ!」

 

ズキューンと心臓を撃ち抜かれた。なんという圧倒的な正妻的メイド力・・・!わかっておられる、主人が欲する言葉をッ!

 

「・・・時に」

 

「はい?」

 

「時に、その・・・性欲発散の為の本などを買うことを禁じていますよね」

 

「え?そうだね、突然なに?」

 

「・・・その、やはりそういったものは溜まってしまいますか?」

 

「溜まるって・・・」

 

ゴクリ。なんだこの流れは・・・

 

「やはり、溜まっているから・・・いかがわしい夢を見てしまうんですよね」

 

「なんでバレてるんだッ!」

 

「いえ、その、寝言で・・・」

 

「なんてことだ・・・僕が麗さんを縄で縛ったり手錠をかけたり目隠ししたりしたいということがバレてるのか・・・」

 

「え」

 

「え?」

 

「・・・もう一度おねがいします。私に何をしたいと?」

 

「縄で縛って手錠をして目隠ししたりしたい」

 

「・・・」

 

「あれ?麗さん!待ってよ!ごめんって!」

 

超スピードで麗さんが歩いていってしまう。てか早すぎる!走ってんのに追いつかない!その後三日間ほど口を聞いてもらえなくなってしまった。

 

 

 

 

 








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冬夏② 逆襲編


短冊の願い事は12年連続、『お嫁さんになれますように』


 

 

 

 

現在ソファに座って月9ドラマを見てる。隣にはホットミルクを啜る冬夏。本来テレビはニュース、書物は小説しか嗜まないヤツだが、最近ドラマとマンガを見始めた。キッカケは先週あたりの放課後。

 

俺が体型がほぼ男な女友達と月9やマンガのことで話していると、ついつい盛り上がってしまい、話に入れず冬夏を1時間ほど蚊帳の外にしてしまったことがあった。それに気づいた時はどれだけ機嫌を損ねてしまったかと冷や汗を書いたが、意外に嵐のような罵詈雑言を飛ばしてくることはなく(いつも通りの罵詈雑言は飛んできた)、ただ旬のドラマやマンガを教えてほしいとのこと。

 

「で、どうだった?人生初のドラマは」

 

「どうだったと言われても、まだ物語がなんにも進んでないじゃない。起承転結の起だけ見て面白いと感じるのは、もはや思考停止の条件反射、すべてのドラマが面白く感じるドラマ狂いだわ」

 

「分かりづらい言葉を並べるなよ、俺頭悪いんだから」

 

「あら、自覚があるだけマシじゃない。自覚がないお馬鹿さん程救えない存在だったらどう養おうかと思っていたけれど、そんな心配はなかったわね」

 

「いや、そこは流石に男のプライド見せさせてくれよ・・・」

 

「あら、今のあなたを見ている限りだと到底私を養えるようになるとは思えないのだけれど。朝は起きない料理も洗濯もしない勉強も私に頼り切り。一体どこに隠している甲斐性を私に見せてくれるつもりなのかしら」

 

「・・・今日もよく舌が回るな・・・折角なんだからドラマの話しようぜ」

 

「・・・そうね。まぁ作品として出す以上一辺倒の純愛物語では視聴者も食傷気味、盛り上がりもかけて人気は出ないんでしょうけど・・・少し回りくどいわよね。消化不良を次話への餌とするんでしょうけど、分かっていてもなんだ煮えきらないわ」

 

「そのもどかしさこそドラマの醍醐味だろ。これを1週間溜めて見るからドラマはおもしれーんだよ」

 

「なるほどね。確かに上手い商売ではあるわ。ただどうにも、こういう恋愛ものの主人公とかを見てると苛苛するものがあるわ。どこかの誰かさんを見てるみたい」

 

「え?俺煮えきらない?結構お前好き好きオーラでてるとおもってるんだけど」

 

「んぐっ・・・・・・けほっ、ちょっと、貴方気が利かないくせに全然鈍感じゃないのはなんなの?不意打ちは止めなさい。気管に入ったじゃない。せめて5分くらいは気持ちの準備をさせて頂戴」

 

「普段から不意打ちしかしない人が何言ってるんですかねぇ・・・」

 

「全く・・・突然過ぎるわよ。こっちに攻めっけしかないのだから、突然の攻撃には無防備なのよ。今度からそういう嬉しくなること言う時には前置きしなさい。あと、周囲に人がいないか確認しなさい」

 

「よし、じゃあ言うわ」

 

「ふぇ?ちょ、ちょっと待っ」

 

「好きだ。愛してる。いつもありがとう」

 

「〜〜〜〜〜っっ!み、見ちゃダメっ!」

 

「ふげっ!」

 

顔をグイグイ押される。くっ、顔みたい!絶対可愛い!今が攻め時なんだ!!

 

「み、見たら怒るわよ!すっごく怒るわ!」

 

テンパりすぎて悪口すら出てきてない!攻めろ・・・!逆襲だ・・・!後ろから抱きつけ!

 

「よし、これなら顔見えないし、いいだろ?」

 

「あぅ!・・・い、ふ・・・きゅう」

 

カクン。気絶した。

 

 

 

 

 

 



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杏子② ショッピング編


実は男の方がでれでれ。ツンデレと見せかけたでれでれ。


 

 

 

駄犬に休日にショッピングに誘われた。

 

「全く、主人の休日を奪うとはなんて犬だ」

 

「にへへぇ~デートだデートだぁ~」

 

「・・・おい、わんこ?」

 

「うぇへへぇ~」

 

ダメだ、頭の中のお花畑が咲き誇っている。犬より知能指数が低下している。

 

「ねぇ、杏子?」

 

「ひゃわぁあ!?な、なにごとっ!?」

 

耳元で囁いてみた。人耳のほう。相変わらず弱いようだ。

 

「い、い、今、杏子って言ったの?」

 

「いいえ」

 

「・・・ウソだ、私聞こえたもん、あんこって」

 

「いいえ」

 

「絶対言った!」

 

「いいえ」

 

「・・・私のこと嫌い?」

 

「いいえ」

 

「・・・にへぇ」

 

相変わらず犬語はわけがわからない。

 

「わ、私って犬?」

 

「Exactly!!」

 

「なんでだよっ!!今のはいいえの流れだろっ!」

 

「ごめんな、生まれてこの方嘘ついたことないんだ」

 

「それがもう嘘だよ・・・嘘ばっかじゃん普段から」

 

「そんなことはない。お前と結婚したいとか普段から思ってるぜ」

 

「ふゆっ!?」

 

「冬?」

 

顔が一瞬で赤くなるわんこ。あ、なんか混乱しすぎて回り出した。

 

「落ち着け」

 

「ふにぃえ~~~」

 

頭を撫でるとあら不思議、こんな感じでもっとダメになる。

 

「い、今のも嘘じゃないってことだよね、あ、あなたは、わたしとけっこん・・・えへ、えへへ・・・」

 

「あれ、戻ってこない」

 

いつもより頭がおかしくなってる、なでたら大概治るのに。重症だな。

 

「まぁ思ってても犬とは法律上結婚出来ないんだよ。残念だな」

 

「い、犬じゃないよ!私ニンゲンだよっ!できるよ!けっけっけっこん!けっこん!」

 

耳も尻尾もぶんぶん動かしてる。尻尾ないけど。

 

「結婚願望強い系雌犬なんか今どき流行んないぞ、あれだ、化石発掘願望強い系雌犬とか目指せ」

 

「目指さないよっ!全ての事象で1、2を争う興味のなさだよっ!あ、それと犬じゃないよ!」

 

「・・・ほら、もう自分でも否定が難しくなってきただろ?認めちゃいなよ・・・」

 

「認めないもんっ!」

 

そんな感じでわんこに犬であることを気付かせようとしながらショッピングモールへ。

 

 

「どうかなっこれ!」

 

「似合わない。全裸に葉っぱ1枚のがまだマシ」

 

「ひどいっ!?」

 

わんこと服を買いに来るのはしょっちゅうだ。ていうか服買う時は一緒に行く。なにが悲しいって、このわんこ尋常じゃないくらいファッションセンスがない。民族衣装みたいなのを嬉嬉として選ぶのやめろ。

 

「じゃあこれは!?」

 

今度は幼稚園児の書く親の似顔絵みたいなのがどでかくプリントされてあるTシャツ。

 

「毎度毎度それを本気で言ってるのならお前は1度生まれ直したほうがいい」

 

「酷すぎるよっ!?そ、そんなにだめかな・・・カワイイのに・・・」

 

まずそもそもそれメンズだから。

 

「ん、これなんかいいんじゃねぇかな」

 

「あ、ありがとう!着てくるね!」

 

トテテテと試着室へ走っていくわんこ。

 

「じゃじゃーん!」

 

「いいじゃん、わんこの癖に似合ってるぞ」

 

「そ、そう?杏子だけどね・・・」

 

「お前素材はいいんだから、人外が着るようなの選ばなきゃなんでも似合うんだよ。いい加減1人で服くらい選べるようになれよ」

 

「・・・だって、私が変なの選んじゃううちは、あなたが付いてきてくれるでしょ?」

 

「・・・」

 

不覚にもちょっとときめいてしまった。

 

 

 

 

 

 

 






サボると復帰するのが辛いです。筋トレみたい。おまたせしました。


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鈴②急進展編


サバサバしてるように周りからは見られるが、実は本人は自分の気持ちを隠しがち。


 

 

 

「鈴、起きて」

 

僕の一日は今日も今日とて鈴を起こすことから。

 

「・・・うーん、あと・・・5光年・・・」

 

「それは距離だよ、ほら、起きないと」

 

「うぅ・・・ぎゅってしてぇ・・・」

 

「はいはい」

 

覆いかぶさるようにハグしてあげる。すると、布団に引きずり込まれた。

 

「うへへぇ~、もう一眠り・・・」

 

「ダーメ」

 

ぺちんとデコピンして、腕から抜け出ると、お姫様抱っこで洗面所に連れていった。水を顔にかければあら不思議。

 

「今日も今日とてすまないね」

 

「いいよ、僕もこれをしないと一日が始まらない気がしてさ」

 

「うん、ありがとう」

 

我らが生徒会長の誕生である。

 

「・・・朝ご飯食べる時間ないね」

 

「・・・すまないね」

 

 

そして、いつものように英雄凱旋のような登校。佐藤さんによると、高嶺の花を絵に書いたような女性、それが鈴らしい。子供の時から一緒の僕としては、違和感しかないんだけれども。

 

今日も今日とて。鈴の後ろを慎ましく歩く。慎ましくといいつつ、身長190弱の僕はどう頑張っても周りにはボディーガードに見られているらしい。これも佐藤さん情報。ちなみに鈴ちゃん171。こちらもなかなか立派な体格。

 

「生徒会長!」

 

と、1人の男子生徒が鈴の前に躍り出た。

 

「あ、あの!」

 

「ん?おはよう。どうかしたのか?」

 

「あ、おはようございます・・・そ、その・・・」

 

おいおい、それは勇気がありすぎるぞ・・・

 

「これ!受け取ってもらえますか!」

 

「ん、手紙?あぁ、受け取るが、口頭じゃダメなのか?」

 

「い、いえ、あの・・・失礼します!」

 

男子生徒はそう言うと、学校の方へ一目散に走っていった。案の定騒ぎ出す皆。校門前で学校1の人気者にラブレターを渡すとなれば、流石に広報部が黙ってないだろう。しかも学年章は1。

 

「うわ、あれ私のクラスの子ですよっ」

 

「あ、佐藤さんおはよう」

 

「おはようございます、副会長さん!」

 

「あれ、佐藤さんのクラスの人なんだ」

 

「はい、そうですよ。すごいですね、よりによってこんな所で渡すなんて・・・」

 

「副会長」

 

「あ、なに、鈴」

 

「なにやら要領を得ない報せだ、内容をあらためて会議の時に議題として提出してくれるか?」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

唖然呆然。完璧超人に見えて、こういう変なところで抜けている鈴だった。

 

「会長・・・」

 

「ん、ああ、佐藤さん、おはよう」

 

「あ、おはようございます」

 

「あのね、鈴。それ、ラブレターだよ。多分だけど」

 

「ラブレター!?」

 

「本当に分かってなかったんですね」

 

「・・・初めてだな、このてのものを貰うのは」

 

「ど、どうするんですか会長・・・」

 

「それは勿論、私は・・・い、いや、そうだな・・・」

 

・・・そこまで言って、鈴がチラチラと僕を見てくる。なんだこれは、なんのシグナルなんだ。

 

「ま、まぁ?生徒の代表として?見本になる?ような?例をすべく?そういう相手を作るのも?ナシじゃないの?では?」

 

「いや、喋り方おかしすぎますよ会長」

 

ナイスツッコミ、佐藤さん。

 

「まぁたしかに、鈴はちょっと世間知らずな感じはあるよね。1回彼氏とか作るのありかもね」

 

「・・・副会長は、いいの?」

 

「ん、僕?もちろんいいよ」

 

「っバカッ!」

 

ドン、と胸を突き飛ばされた。尻餅をつく。鈴は校舎へ走っていってしまった。

 

「いたっ!あ、鈴!待ってよ!」

 

「・・・あの、大丈夫ですか、副会長さん」

 

「いてて、うん。大丈夫だけど・・・やっぱり、僕が彼氏じゃあ駄目だったかなぁ・・・」

 

「・・・はぁ、副会長、目的語が足りてませんよ。多分会長、副会長は会長が誰と付き合ってもいいよって言ったと思ってますよ。やっとくっつくかなって思ったのに・・・」

 

「え、そんな訳ないじゃん・・・困ったな、誤解解かないと」

 

 

というわけで、ちょっとした騒ぎとなった朝から半日。鈴には一日避けられて、会長のバックれにより会議も無くなった。学校は騒然としていた。というわけで、佐藤さんからなんとかしてくださいと送り出されて、今に至る。

 

現在鈴の部屋の前。鈴のお母さんに聞いて既に部屋にいることはわかっている。

 

「ねぇ、鈴?」

 

「・・・」

 

ドア越しに話しかけるけど、返事はない。

 

「鈴、誤解、解いておきたくてさ」

 

「・・・誤解ってなに?」

 

「えっと・・・改めて言うの恥ずかしいな・・・あのさ、俺鈴のこと、好きだよ」

 

「・・・わかってるよ。あなたは、すっごく優しいもん。すっごく優しくしてくれるもん」

 

「・・・うん」

 

「でも、でも、それは・・・幼馴染みとして、でしょ?私、私ね・・・」

 

「違うよ」

 

「・・・へ?」

 

「いや、違くないか、勿論幼馴染み、家族みたいな意味でも好き。でも、僕は」

 

・・・そう、僕はもちろん、自信を持って言える。

 

「鈴のこと、恋愛の意味でも好きだよ。鈴より好きな人なんか、生涯できない。朝のも、僕は鈴と付き合えるのは勿論嬉しいよって意味」

 

ガタガタん!なんだか暴れている。

 

「・・・り、鈴?大丈夫?」

 

ガチャ!とドアが勢いよく開かれた。

 

「ほ、ほんとうに・・・?」

 

「へ、う、うんってうわぁ!?」

 

思いっきり腕を引かれて、部屋の中に引き込まれた。そして勢いそのまま、布団に押し倒された。

 

「り、鈴?」

 

「ごめんなさい・・・好きです、あなたの事、私も好きです、嬉しいっ、嬉しいっ」

 

「鈴、落ち着いて、ね?」

 

「嬉しいよっ、ずっと、ずっとこうなりたかった。あなたと一緒、一緒の気持ちなんだっ、嬉しい・・・!」

 

「・・・よしよし」

 

「・・・怖かったの、怖かったの!今日一日、あなたが私のこと、恋愛対象に見てくれなかったら、朝、あなたの顔を見て起きることが無くなったら、そんなことばかり考えちゃったの!」

 

「大丈夫、そんなことないよ、僕はずっと鈴のもの。ね?」

 

「うん、うん・・・!好き、だいすきっ!」

 

むぎゅー、すりすり、またむぎゅー。

 

そんなわけで、可愛い彼女が出来ました。

 

 

 

 

 

 

 

 






唐突のガチラブコメ。

どの子が可愛かったーとか言ってもらえると参考になるので感想お待ちしてますね。ちなみに作者は香織ちゃん推し。


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優菜② ケンゼン編


実はむっつり誘いMであることが判明した。大胆になった後は毎回死ぬほど後悔する。


 

 

 

期末試験が近いので、優菜と勉強をしている。俺の学年下から20番の成績がバレて以来、優菜に監視されながら勉強をすることになっている。そのおかげで地の底だった成績も真ん中ちょい下くらいになった。しかし。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「なぁなぁ、優菜?」

 

「・・・ん、どうしたの?わからない?」

 

ちなみに、優菜は超秀才。かつ努力家なので、数学とか聞くとその場で理解して教えてくれたりする。年上の尊厳は小3で捨てた。

 

「飽きた」

 

「・・・もう、ダメだよ、集中しないと。今回は全教科平均越えでしょ!」

 

「だって・・・数学疲れるよぉ・・・」

 

「ほら、キリがいいから9時までがんばろう。あと30分ちょっとだよ」

 

「いや、逆転の発想をしよう。9時まで休憩するんだ」

 

「意味わかんないよ・・・」

 

「頼むよぉ~優菜ちゃ~ん」

 

優菜に縋りつく。体裁なんか気にしてらんねぇ!!これ以上は死ぬ!!もう1時間半はぶっ続けだ!!

 

「まだ1時間半くらいなのに・・・」

 

脳味噌の作りが違うようです。

 

「頼む、死ぬんだ、俺のシナプスが穴という穴から飛び出しそうなほど熱暴走をしてるんだ」

 

「だから意味わかんないよ?」

 

「なんでもするからぁ~優菜様ァ~」

 

ピクっ。優菜が反応した。

 

「・・・しょ、しょうがないなぁお兄ちゃん。じゃあ、ババ抜きでもしようか」

 

「ほ、ほんとか!?やったぁ!」

 

「・・・その変わり、罰ゲーム有りにしよう?」

 

「おう!いいぞ!何する?裸でコンビニ行く?」

 

「それは犯罪っ!・・・勝った方が、一つだけなんでも命令していい、とか・・・」

 

「ッ!?」

 

な、なんでも・・・?優菜に合法的に・・・日頃心から出ることのないアレやコレをさせたいという欲望をぶつけられる!?

 

「・・・よし、やろう。すぐやろう」

 

「お、お兄ちゃん、ちょっと目が怖いけど・・・」

 

「何を言ってるんだい優菜。さぁ、トランプを貸したまえ。僕のシャッフル絶技をお見せしよう」

 

「一人称おかしくなっちゃった・・・変なとこで器用だもんね、お兄ちゃん。はい、どうぞ」

 

そうして高校1年の間で鍛えたトランプ捌きを見せたあと、ゲーム開始後、順調に捨てていき、残り優菜2枚、俺1枚。その時だった。

 

「・・・お兄ちゃん、こっちがジョーカーだよ」

 

「!?」

 

ざわ・・・ざわ・・・!

優菜は片方のカードを少し上にあげた。・・・これは、どういう意図・・・!?この状況、バカ正直に黒の居所を教えるわけが無い・・・!ならば今上げていない方のカード・・・それが黒・・・否!当然ここまでは考える!つまりその裏をかいて上げている方がジョーカー・・・!いや違う!優菜ならその裏の裏をかいて下げている方・・・いやさらに裏の裏の裏を・・・!?

 

「お兄ちゃん」

 

「っ!?」

 

「私、お兄ちゃんに、ウソなんかつかないよ・・・?」

 

なぜか、涙目の上目遣いでそう言ってきた。フッ・・・全く・・・

 

「いつの間に、お前は悪い子になっちまったんだ・・・」

 

そう言って、俺は上げられている方のカード。ジョーカーを取った。そう。ここで黒を引いた時点で勝負はついていた。次に優菜が引く必要なんてない。ゲーム外まで波及されたら、俺に勝ち目などないのだから・・・

 

 

「えへへ、ごめんね、お兄ちゃん」

 

「いいんだ優菜。さぁ、俺はお前の奴隷だ。なんなりとお申し付けください、お嬢様」

 

「ふぁ・・・お、お嬢様・・・」

 

クッ・・・!この程度で照れる天使なのに・・・!勝負事では小悪魔となる・・・!最強・・・!カワイイは正義・・・!

 

「・・・えっと、それじゃあ」

 

「おう」

 

「・・・あいをささやかれながら、みみを・・・せめられたいです・・・!」

 

「・・・」

 

・・・。

 

「・・・」

 

「・・・失礼しましたぁ!」

 

俺の部屋を飛び出していこうとする優菜。しかし逃がさない。そう、これはチャンス。腕を咄嗟に掴み取る。そして引っ張ると、軽い体の優菜を簡単に俺の足の間に収めることが出来た。

 

「・・・優菜」

 

「ひゃいぃ!」

 

そう!溢れてやまないこの愛を伝えるチャンス!あわよくばゴールイン!そしてハネムーーーン!!!

 

「しらなかった、優菜ってむっつりなんだな?」

 

指で耳を隠している髪を掬いかける。少し唇が触れるくらいの近さで囁く。いいにおいがして俺の方が先に死にそう。

 

「ふ、はぁ・・・お、お兄ちゃん、頭も・・・撫でて?」

 

「はいはい」

 

なでなで。さらさら、というか、ふわふわというか、とにかくずっと触ってたくなるような髪だ。

 

「大好きだぞ、優菜」

 

「ふっ、ふふ、・・・」

 

「ずっと面倒見てくれ・・・」

 

「んふふふ・・・」

 

・・・やばい、語彙が秒で尽きた。・・・いや!耳責めとは言葉だけではない!

 

「ん・・・れろ・・・」

 

「んぅ、はぁ・・・ぅあっ・・・お、お兄ちゃ・・・んん!」

 

「愛してるぞー」

 

「んうぅ・・・きもちぃ・・・」

 

ぺろぺろ、耳の穴を、溝を、耳朶を舐める。楽しい、心無しか美味しい。いやそんなわけないんだけど。

 

「優菜可愛い・・・ん・・・」

 

「ふぅ、あ、お兄ちゃん・・・、お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・」

 

うわ言のように俺を呼び出した。体も熱くて、小刻みに震えている。・・・なんだろう、凄くアブナイ感じが・・・でもやめない。ここで引くやつは男じゃねぇ!

 

「好きだぞ、大好きだぞ、んむ・・・」

 

「ふぅあぁ~、わ、わたし、幸せだよぉ・・・、きもちぃ・・・」

 

「・・・結婚しよう、一生一緒にいてくれ」

 

「~~~~~~っ!」

 

 

 

その後3日間は恥ずかしがって顔もみてくれなくなった。成績は落ちた。

 

 

 

 

 

 






ケンゼンダ。ヒワイガ、イッサイナイ。

三周目は新婚編で統一します。


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美陽②ヨイドレ編

 

 

 

 

 

水と間違えて酒を飲むなんてことは、絶対に有り得ない。間違いなくニオイでわかる。もし口に含んでしまっても、味の違いに驚いて吹き出すのが普通だろう。

 

「おい・・・美陽」

 

「ほへぇ~?な、なにぃ~?」

 

さて、なぜかここに出来上がった幼馴染が1人。

 

「いや、酔っ払いすぎだろ。ふにゃふにゃになってるぞ」

 

「酔っ払ってないですよ~・・・お水で酔っ払うわけないですよ~・・・」

 

美陽が飲んだ後のグラスを嗅ぐと、日本酒の匂いがした。酔っ払ったほうがちゃんと喋れるんだな・・・いや、喋れてないけども。

 

「はれ・・・?あなたが3人に見える・・・」

 

「酩酊じゃねぇか」

 

「・・・えへへぇ~、3人もいるなら、もっと構ってもらえるかなぁ・・・?」

 

「・・・いや、いつもお前にしか構ってないんだけど」

 

「たくさんなでなでとか、ぎゅーってしてくれるかなぁ・・・?」

 

「・・・」

 

こいついつもこんなこと思ってるのか・・・

 

「ほい、こっちこいよ」

 

「うん・・・ふぁ・・・」

 

千鳥足の美陽をハグする。

 

「はふぅ・・・あったかい・・・」

 

「そりゃ酔ってるからな」

 

「むぅ~・・・酔ってなんかないれふよぉ・・・」

 

ぐりぐり頭を擦り付けてくる。とりあえず頭を撫でてみた。

 

「えへへへぇ・・・だいすき・・・今日はいい夢だなぁ・・・こんなに嬉しいことしてもらえるなんて・・・」

 

「別に、こんくらいならいつでもやったるのに」

 

「うん・・・そうだよね・・・明日は、頑張って、甘えてみようかなぁ・・・」

 

「はいはい、いつでもいいから、今日はもう寝ろ」

 

「うん・・・そばにいてね・・・?」

 

コテンと美陽の頭が落ちた。そのまま抱っこしてベッドに運んだ。帰ろうと思ったけど、腕を離してくれなかったのでベッドにお邪魔して寝ることにした。

 

 

 

翌朝。

 

「ホワぁぁあァあああ!?!???」

 

「なんだ!?敵襲か!?」

 

あ、美陽の部屋に泊まったんだった。

 

「ちっちっ、ちかっちっ・・・!?」

 

「知佳っち?誰?」

 

「あ、え、な、なんで!?」

 

「落ち着け、お前が昨日ダウンしたから介抱してやったんだよ」

 

「だ、だうん・・・?」

 

「酒飲んでよっぱらってさんざ甘えてきたろうに」

 

あ、美陽の顔が青くなった。と思ったら赤くなった。信号かこいつは。

 

「あ、あの、あのっ、・・・昨日、私、何か言いました・・・でしょうかっ!?」

 

「いや特に・・・いっぱい構って~とか甘えたい~くらいしか」

 

「~~~~~っ!」

 

猛ダッシュでどっかに行ってしまった。1週間くらいまともに口を聞いてくれなかった。一生お酒は飲まないそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 







お久し振りです。未成年の飲酒は(ry


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彼方②反撃編

 

 

 

 

深夜。やたら暑くて目を覚ますと、小さく寝息を立てている彼方の顔が真横にあった。

 

「・・・彼方、ねぇ彼方」

 

体をゆする。

 

「ん・・・顔に似合わず・・・キミのはおっきぃな・・・」

 

「どんな夢見てんだよっ!起きろッ!」

 

がばっと布団を剥ぎ取った。

 

「あぁ、おはよう・・・もう朝かい・・・?」

 

「違うよ!って・・・」

 

ホットパンツとノースリーブという、防御力の低い彼方の装備に、僕はつい目をやってしまった。

 

「っ!!感じるッ!キミから欲情の香りがッ!これはチャンス!?」

 

「ちっ違うよ!?別に見てないよ!?」

 

「・・・見てない?何をだい?私は何も言ってないけれど、キミは私のどこを見てくれていたというんだ?」

 

「あっ、いや、違くて・・・」

 

「そう照れないでくれよ・・・キミにならいくら見られても見られたりないくらいさ・・・」

 

そう言って彼方は、左手で肩紐、右手でホットパンツの裾を引っ張った。

 

「ちょっ、ちょっと彼方!見えちゃうよ!」

 

「キミは本当に可愛いなぁ!何度も見せているのに未だにその反応・・・たまらないよ・・・!」

 

「もう何でもいいからそれやめて・・・」

 

ふむ、とつまらなそうに息を吐くと、彼方ははだけた服を直してくれた。

 

「さて、今日は子供ができる日なんだ。子作りしようか!」

 

「一息つく間もないよッ!品性はどこに置いてきたんだよ!」

 

「下らない品性にかまけて異性を逃がす臆病者にはなりたくないのさ、さぁおいで・・・たくさん可愛がってあげるよ・・・」

 

「おいでってそこ僕のベッドだから!帰れよッ!まず何でいるのか説明すらないよ!」

 

「いや、覗きにきたら気持ちよさそうに眠っていたから、ゼロ距離マスカキでもしてやろうかと思ってだね・・・そのまま勢いで寝てしまったんだ」

 

「表現はオッサンだしやってることは犯罪だし言ってることは最悪だしッ!なんだよコレは!なんなんだお前は!」

 

「オマエ・・・なんて・・・大学卒業までは結婚しないと言ったのはキミじゃないか・・・もう亭主気取りかい・・・全くもって悪くないっ!」

 

くっ!一切悪びれない・・・!なんでこんな真っ直ぐ歪んでいってしまったんだ・・・!かくなるうえはっ!

 

「・・・彼方」

 

「なんだい?あ、一応初めてなんだ。優しく頼むよ・・・」

 

「・・・あんまりなめない方がいいよ?」

 

「えっ」

 

彼方を押し倒す。そうだ、オトコの怖い所を見せてやれば彼方も反省するハズ・・・!

 

「僕だって男なんだし・・・それに、僕の部屋まで上がり込んできて挑発して、どうなっちゃっても知らないよ?」

 

「・・・か、カオがなかなかに近いな、ウン・・・」

 

・・・あれ、ひょっとして手応えアリ・・・?

 

「ねぇ彼方、いつも僕をからかってばっかだし・・・偶にはやられる側の気持ちにもなりなよ・・・」

 

そう耳元で言って、彼方の耳を丁寧に舐める。いつもの仕返しだ・・・!

 

「ん・・・き、キミからというのも、・・・んっ、新鮮で・・・悪く・・・ない・・・」

 

・・・あれ、なんか変な気分が・・・彼方をイジめたくなってきた・・・

 

「キミ・・・?今は僕がオシオキしてるんだよ・・・キミじゃなくて、ご主人様、ね?」

 

「~~ッ!ご、ご主人・・・様ぁ・・・」

 

「そう、よしよし、いい子だね・・・ほら、目隠ししてあげる・・・」

 

「う、うん・・・何をするんだい・・・?」

 

タオルで目を塞ぐ。彼方が赤い顔で僕の胸元にしがみついてきた・・・やばい、ドキドキする・・・!これはやばいぞ・・・!

 

「ほら、彼方・・・後ろを向いて、壁に手をついて・・・そう、お尻をつきだしてごらん・・・?」

 

「あぁっ・・・!はい、・・・ご主人様ぁ・・・!」

 

「うん、いい子だ・・・それじゃあ行くよ・・・!」

 

「はぁ、はぁ・・・はやくぅ・・・!お願いします・・・!」

 

その瞬間、ガチャン、とドアが開いた。

 

「彼方ちゃん来てるの~?明日学校だから早く寝な・・・さ・・・」

 

「「あ」」

 

 

この後めちゃくちゃ説教された。

 

 

 

 

 

 

 

 






終始服はちゃんと着ています。あぁKENZENだぁ・・・!


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花火②失敗編

 

 

 

遊園地に来ました。付き合って初めてのデートです。

 

「うむ・・・改めてデートとなると、どう過ごしていいかわからん・・・」

 

「そう?いつも通りでいいんじゃないの?」

 

「そ、そうは言ってもだな!今は私とお前は、か、彼女彼氏の関係なんだぞ・・・?いつも通りというのは、いささか色気が無さすぎるだろう・・・」

 

「花火の色気・・・ちょっとドキドキしてきた・・・!パンツ見せてもらって・・・いいかなっ!?」

 

「お前は平常運転だな」

 

いいわけないだろ、と思いっきりお尻を蹴られた。クソッ、色気は一体どこに・・・

 

「まぁまずは鉄板絶叫系でしょ!」

 

「ジェットコースターだな、久しぶりだなぁ・・・」

 

ガタンゴトン。隣に乗っている花火は涼しい顔をしていた。ノリノリで乗った俺は落ちる前から後悔していた。高所恐怖症なことを失念していたYO!!

 

「ヨォオオオオオオオオオオオ!!!」

 

「いやっふぅーーー!!!!」

 

五分後。

 

「ま、まぁ余裕かなっ!」

 

「私に全体重預けながら言うな。情けないヤツだな・・・」

 

「よ、よし!次はお化け屋敷やで!」

 

「・・・お前はホラーだめだろうに・・・」

 

いざゆかん戦〇迷宮!

 

『イヤダァァァァァアァァシニタクナイイイィィイイ!!!!!』

 

「イヤぁぁぁぁぁあ花火助けてええええええ!!!」

 

「ちょっ、うるさっ、ていうかどこ触ってるんだバカ!」

 

四十分後。

 

「まままままぁ余裕のよっちゃんですわわわわ」

 

「椅子から立ち上がることもできなくなってるぞ・・・」

 

クソっ!今日は華麗にエスコートをキメてやるつもりだったのにッ!今のとこ俺が介護されてるだけじゃないかッ!

 

その後もコーヒーカップでは酔って吐きそうになっては花火に背中をさすってもらい、空中ブランコではチビりそうになって半泣きでトイレに駆け込みと散々なデートとなってしまった。

 

かくなるうえはっ!観覧車で強引にムードを作るしかない!

 

そんなこんなで、向かい合って観覧車。太陽も沈みかけて正に黄金シチュ・・・!これは濃厚チッス不可避・・・!

 

「・・・花び」

 

「なぁ」

 

「は、ハイ!」

 

み、見透かされたか・・・!?

 

「その・・・すまん」

 

「え、なにが?」

 

「いや、・・・つまらなかっただろう?私なんか、今日だって女らしい反応の一つもできない、話が上手いわけでもない・・・お前はずっと、一緒にいてくれて、私を楽しませてくれるけれど・・・。私はお前に、何もしてやれてない気がするんだ・・・やっぱり、色恋沙汰には向いていないと思ってな・・・」

 

「俺は幸せだよ」

 

「・・・」

 

花火が、すこし涙の滲んだ目をこっちに向ける。

 

「別に女の子らしい反応も、面白い話が出来なかったとしても、一緒に居てくれるだけで大好きだって、幸せだって言えるくらいには俺はお前が銀河レベルで好きだからな!」

 

「・・・よくそんな、歯の浮くようなセリフがすらすらと言えるな・・・私より上手いんじゃないか?演技」

 

「演技なんかじゃないからな」

 

花火が隣に席を移してきた。

 

「とことん私を惚れさせて・・・にがさんからな・・・?釣った魚は重たいんだぞ・・・?」

 

「はいはい、一生飼わせてもらうよ」

 

「・・・なぁ、景色が綺麗だな」

 

「・・・あぁ、そう・・・だ・・・あっ、ちょっと待って、お腹キュってなってきた」

 

「なっ!お前、今はそういうんじゃなかっただろ!」

 

「ご、ごめんって!下見ないようにしてたけど花火がそんな事言うから!あっやばい冷や汗出てきた」

 

「ばか!阿呆!すかたん!背中さすってやるから!あと半周頑張れ!」

 

「・・・うごごごご・・・腹が・・・痛く・・・」

 

黄金シチュでも甘くならない、俺達の先が思いやられる初デートとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





本人達はイチャついてる気ないのに傍から見るとゲロ甘な幼馴染あるある


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幼馴染3周目
潤③ 幸せを日常の中で


特別なことなんて何もない。








 

 

 

最近やたらとつまらん。大学行くようになって環境が変わって、馬鹿騒ぎもしてる時は楽しい気がするけど、なーんかつまらんのよなぁ。

 

そんなこんなを考えながら大学の飲み会から終電で帰ったら、なんかベッドがもっこりしてた。

 

「・・・え?なに、不審者?」

 

「・・・おかえり」

 

にょきっと潤が布団から顔を出した。

 

「おう、ただいま。亀かお前は」

 

「亀じゃないもん、とりあえず入りなよ。ボクがあっためといたから」

 

「あー、いや、汗とタバコ臭いだろうしシャワー浴びてくるわ」

 

「ダメ。はいって。シーツと掛け布団明日洗濯したげるから。」

 

有無を言わさぬプレッシャーだった。潤が久々におこモードだった。すごすごとはいると、ぎゅっとひっついてくる潤。

 

「・・・くさい」

 

「だから言ったのに・・・」

 

「思った以上だった・・・」

 

「ばーか。・・・それで、どうしたんだよ潤。連絡もなしに」

 

「・・・とりあえず、頭なでてよ」

 

「・・・はいよ。とりあえずな」

 

とりあえず言われるがままに。

 

「なぁ、どうしたよ急に」

 

「・・・・・・」

 

「・・・黙ってちゃわかんねーぞ」

 

「・・・一週間、寂しかったんだ」

 

「一週間?」

 

「・・・キミがね、大学が始まって、サークルとかバイトとか、色々忙しいのは知ってるよ。だから、あんまりボクが邪魔をしちゃいけないと思ってたんだ」

 

やっと潤がしゃべりだした。目が赤くなってる。

 

「・・・お前、泣いてたのか?」

 

「・・・だって、だってね?ボク、ずっとキミと一緒にいたから・・・もうダメなんだ・・・寂しいよ、君と話せないと、苦しいよ、君と触れていられないと・・・ボク、もう我慢がヘタになっちゃったみたいなんだ・・・大好きって言わないと、不安になっちゃう、キミがボクを一番って言ってくれたことが全部夢になっちゃいそうで・・・そんなことばっかり、考えちゃって・・・」

 

「あー、いや、もう一週間会えてなかったっけ」

 

「・・・うん」

 

「なるほどなるほど、道理でな」

 

「やっぱり、ボクがいないと、自由な時間がたくさんあって楽しい・・・?ぼ、ボク・・・キミと、いないほうが、いい・・・?」

 

やだよぉ・・・、と、嗚咽混じりに潤がすがりついてくる。こりゃあ彼氏失格だな・・・。

 

「今日の帰りさ、漠然と思ったんだ」

 

「・・・な、なにを?」

 

「お前がいねぇとつまんねぇんだ、何してても」

 

「はぇ・・・?」

 

「一週間も放置しちゃったのは謝る。でも、ほんとにいろいろ重なって忙しかっただけだし、潤がいない方がいいなんて思ったことは1秒もない。むしろずっと、潤がいたらなぁって思ってた」

 

「・・・そ、そうなんだ」

 

「そうなんだよ。やっぱり再確認できたわ、俺はお前がいないとダメだ。今までどおり、お前が隣にいない人生なんて有り得なくなっちまった」

 

「う、うぅ・・・わかった、わかった・・・から、その・・・・・・嬉しすぎちゃうから、ね?」

 

「いやまだ言い足りねぇ。俺も一週間溜まってたみたいだ。潤、これから先、一生、出来る限り俺の傍に、近くにいてくれないか?美味いもん食った時も、綺麗なモンみたときも、お前と一緒じゃなかったらぜんぶ空っぽでしかないんだ。」

 

「そ、そのくらいでっ・・・」

 

「だから潤、お前の一生俺にくれ。さすがに早いかもしれねぇけど我慢出来ねぇ」

 

下を向いて、耳まで真っ赤にしている潤の顔を両手で挟んで、顔をあげさせる。潤んだ目が、あちこちに飛んで・・・それから、俺の目と合う。

 

「結婚しよう、潤」

 

「・・・・・・」

 

目を見開いて、ぱちぱちと瞬きをする。かわいい。

 

「け、けっこん・・・?」

 

「おう。第一俺も心配なんだよ、お前がどこぞの男に狙われないかとな」

 

「ぼ、ボク、キミと、けっこ・・・けっ、けっこん・・・」

 

「あれ、聞いてる?潤ちゃーん?」

 

「ぅぅ・・・うぇぇ・・・」

 

「ちょ、泣くなよ!」

 

「ら、らってぇ・・・ずっと、ずっと、キミと・・・夫婦になるの・・・夢だったの・・・うれしいよぉ・・・・・・」

 

「はいはい、撫でてやるからとりあえず泣きやめ、な!」

 

「うぇえぇ〜〜!だいすきぃぃ〜〜!!」

 

「わはは、きたねぇな、鼻水まみれでぶさいくになってるぞ」

 

「ぶさいくって言うな・・・・・・」

 

泣き止むまで、泣き止んでからも、ずっと傍にいてやった。

 

 

 

 

 

 

 

 





ロマンチックな演出とか、ライバル出現とか考えてたんですけど、やっぱりこの2人は日常の中でシンプルにがいいと思ったので。
投稿遅れてすいません;;今日の夜もう一本あげます。



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麗③ 陥落編


攻 略 完 了


 

 

 

 

「麗さんは僕と結婚するべきだと思います。」

「・・・」

 

 最近僕は夕飯の際に毎晩プロポーズしている。お相手はもちろん、小さい頃からずっと大好きな麗さん。

 

「麗さんと世界一付き合いが長いのは僕だし、1番理解しているつもりだし。それに、わりと趣味も合うじゃん?ジャズが好きとかさ」

「旦那様。食事の最中ですので、あまりお話しすぎるのは行儀が悪いですよ」

 「行儀なんかじゃ僕のプロポーズを止めることはできない!続けるよ、僕は麗さんのいいところを100個余裕で言える。可愛い所、家事全般完璧な所、頭がすごくいい所、意外とドジな所、あと可愛い所」

「わりと序盤でネタ切れしてます、旦那様」

 「クッ!まだだ!毎朝起こしてくれるところ!私服もメイド服も似合うところ!手料理がすごく美味しい!掃除が上手!部屋が綺麗!美人!かわいい!」

「後半は家事全般です。ネタ切れしてます。」

 

 くそぅ、徹夜で渾身のホメホメプロポーズを考えたのに、麗さんの食事のてを止めることすらできない・・・。あ、と思いきやフォークを置いた。

 

 「・・・私は旦那様の従者です。これから先の人生を、大恩を受けたお母様にお父様、何より旦那様に捧げていく所存です。旦那様は昔から、お世話係の私に好意を向けてくださっています。ですが、私はあなたにもっと広い視野をもって生きてほしい。小さい頃からあなたは、私に縛られているように見えるのです。・・・私は心配しなくてもずっとこの家の従者で・・・生涯旦那様のものですから、安心して、沢山の経験をして欲しいんです」

 

生涯旦那様のものですのあたりで鼻血を吹きかけたが、なんとか堪える。

でもそれじゃだめなんだ、僕は欲張りだから、従者なんかじゃ満足出来ない、捧げられるだけなんかまっぴらごめんだ。

 

「・・・あんまり僕を侮らないでほしいな。今年で僕もはたちになるけど、麗さんと出会って16年間にもなるし、あなたを好きになって随分経つのに、本当にあなた以外目に入らない。日を重ねれば重ねるほど、どんどん好きになるんだ。麗さんがずっと僕に仕えるって言うなら、僕はいつまでだってあなたに恋をし続ける。・・・だから、大好きです麗さん!!絶対将来本当の旦那様になるから!!ご馳走様!!」

 

  言ってる途中でめちゃくちゃ恥ずかしくなってきたので、それだけ言って食卓をたって去ろうとした。

 

去ろうとして、麗さんに袖を掴まれた。

 

 「・・・」

 「・・・あ、あの、麗さん?」

 ・・・めちゃくちゃ無言で睨まれてますけど、ていうか麗さんちょっと涙目だし頬も赤いしなんか色っぽ可愛い・・・。麗さんのこんな顔始めてみた・・・

 

「・・・あ、あの・・・?」

「せめて」

 

「せ、せめて・・・?」

「せめて、旦那様が大学を卒業されるまでは、私も耐えようと思っていました。日に日に募るあなたへの思いに蓋をして、自由な人生を生きていくあなたを見届けようと思っていました。・・・・・・ですが、いい加減限界です」

 

 どん、と胸を押され、そのまま柔らかい絨毯の上に押し倒される。倒れる際にしっかり頭をうたないよう、麗さんの手が優しく僕を包んでいた。つまり、ほぼ僕も麗さんの距離は倒れつつもゼロに近く、追い打つかのような麗さんの接近に、完全にゼロとなる。

 つまりちゅーだった。

 

 「・・・んっ」

 「・・・・・・んん!?んむむー!!」

 「ん・・・、好きです、旦那様、愛しています。あなたの愛らしい目が好きです、柔らかな香りが、クセのある髪が、寝顔が、笑顔が、優しさが、温もりが好きです。」

「れ、麗さん近い近い!」

 「あなたを思わない日などない、愛しく思わない日などない。いけないとはわかっていても、いつかあなたが、私のものとなる日を毎晩のように夢に見ていました。過ぎた幸せだとわかっていても、あなたは毎日、私に愛を囁いてくれる。もうとっくに溢れてます、心が切なくてしょうがないのです、好きです旦那様、愛しています・・・!」

 

 う、嬉しい!すんごい嬉しいけどもはや誰だこの可愛い生き物!目が潤んですごい匂い嗅いでくる!本当にこれがあの冷徹鉄血完全無欠の麗さんなのか!

 

「あ、あの麗さん」

「嫌です」

「まだ何も言ってな・・・」

「今日はもう絶対離しません」

「い、いやそれはすごく役得というか嬉しいんだけども・・・食器とか片付けなきゃだし、ね?」

「そんなもの明日でいいです」

「麗さんがグレたぁ!」

 

 なんだこの可愛い生き物本当に誰だ!?なんかもはやコアラみたいにしがみつかれてるし、すんごい首筋の匂いを嗅がれてるし、なんというか色々な意味でよろしく無い。

 

 「あの・・・このまま、旦那様の部屋へ行っては・・・ダメですか・・・?」

「・・・」

 

 このあとめちゃくちゃ旦那様になった。

 

 

 

 

 

 

 






糖分しかねぇ、、、
実は麗さんの話で一番最初に考えたのがこの話でした。
クーデレがデレデレになるの最&高


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幼馴染 蛇足編
潤 初詣編



小さい頃から毎年2人で来ているお馴染みの神社。ちょっとした有名カップルになっている。


 

 

 

潤と最寄りの神社に初詣に参りました。

 

「・・・寒すぎないか?賽銭ならぶのもめんどくさいし帰るか」

 

「・・・それ、毎年言ってない?こういうのは形だけでもやったほうがいいの。こんなに特別感あるお賽銭、元旦にしかできないよ?今日を逃すと364日お預けなんだよ?」

 

「別にお預けくらって困るもんでもあるまいに・・・」

 

「まぁまぁ、ここはあったかい甘酒も配ってくれるしいいんじゃない?」

 

「甘酒ってなんで未成年でも飲んでいいんだ?」

 

「えっと、確かアルコール度数1%未満ならセーフ、みたいな感じじゃなかったっけ?」

 

「え?そんなアバウトなの?」

 

「ごめん、ボクもよく知らない。適当に言っちゃった」

 

テヘヘ、とはにかむ潤。可愛いからハニー潤と名付けた。列に並ぶ前に甘酒を2人分受け取って、潤に渡す。

 

「はい、ハニー潤」

 

「・・・は、はにー?」

 

・・・こんなしょうもないことまで恥ずかしがるとは、ウブすぎないか・・・?

 

「お前の恥ずかしがるラインが未だによくわからんわ」

 

「い、いや、だって人前だし・・・あ、家で言われても多分照れちゃうかも・・・」

 

「かわいいハニーだなぁ」

 

「うぅ、うるさいよ・・・」

 

顔を隠すようにくぴくぴと甘酒を飲みはじめた。これだから潤をからかうのはやめられない。たまに暴走しだすけど。

 

その数分後のことだった。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

潤がコアラみたいに抱きついてはなしてくれない。

 

「いや、潤さん?人前ですよ?ね?」

 

「やだぁ!」

 

・・・幼児退行してらっしゃる。どういうことだ?まさか酒か?

 

「いや、これはさすがの俺も恥ずかしいと言うか、生暖かい視線が痛いというか、離していただきたいというか」

 

「やなのっ!」

 

もはや会話もできない。ていうかあれだけで酔うんですか潤さん・・・

 

「・・・実力行使ッ!」

 

「んぎぎぎぎ・・・!」

 

離れねぇッ!なんちゅう抱きつき力(?)だッ!!

 

「くそ!わかった、今離してくれたら、帰ったらずっとくっついててやるから!」

 

「・・・うそだもん、いっつも、なんだかんだボクから離れていっちゃうんだ・・・」

 

「いや・・・そんなことはない気がするけど・・・」

 

「・・・授業中とか」

 

「そりゃ仕方ねぇだろッ!今日はずっと、夜もお前ん家泊まるから!」

 

「・・・なら離す」

 

ぽてっとコアラ状態を解いて着地する潤。そんなことをやってる内に賽銭の順番が来てた。

 

「きみはなにを願うの?」

 

「そうだな・・・例年通り2人共健康で、にしようと思ってたけど」

 

「・・・けど?」

 

「今年は、お前が溜め込んでなんかの拍子に爆発しないように、甘え上手になってくれるよう祈るわ」

 

「・・・神様ってそんな細かいお願い聞き入れてくれるの?」

 

「細かいことはいいだろ・・・形が大事ってお前が言ってたじゃん。そういうお前はなんてお願いすんだよ」

 

「・・・ボクは例年通りだよ。君が、しあわせになれますように、って」

 

・・・こいつ、毎年そんなこと願ってたのかよ・・・なんかこう、知ってたけど重いわ・・・

 

「・・・じゃあ今年からそれ変更」

 

「・・・え?」

 

「君と、にしろ。俺もそれにするわ」

 

「・・・ッ」

 

また潤がコアラになった。

 

そして再び数分後。

 

「・・・ボクは人前でなんてことをしてるんだ」

 

「すこし冷静になったな」

 

「・・・だ、だいたい君も悪いんだからね!あんなに急に、ボクが嬉しくなっちゃうようなこと、いうんだもん・・・」

 

「恥ずかしがるお前可愛いからな、ついつい」

 

「ついじゃないよ・・・ばか・・・」

 

それはいいとして。

 

「・・・まぁ、せっかく付き合えるんだからお前も少しくらい、したいこととか言えよな。ちょっと無欲すぎるぞ」

 

「無欲・・・なのかなぁ。ほんとに、君と一緒にいられるだけで、しあわせなんだよ?」

 

「いや、それは嬉しいけど・・・なんかこう、あるだろ、な?」

 

「・・・まぁ、あるけど」

 

「だろ?ほれ、言ってみ」

 

「・・・いいの?」

 

「いいぞ、どんとこい。ドンコイ」

 

「なにそれ。・・・それじゃあ、ずっとボクの部屋で、ずっと、24時間、365日、いつまでも、2人だけでくっついていようよ」

 

「・・・忘れてたわ!最近お前ただの普通の子だったからちょっと怖いの忘れてたわ!」

 

「怖いってひどいなぁ・・・まぁ冗談だけどね。そんなの、君がちっともしあわせなんかじゃないし」

 

「・・・お前は幸せなんだな」

 

「そりゃあ・・・まぁ・・・」

 

「怖いわ!あとなんでそういう怖いこと言う時は終始真顔なんだよ!」

 

「笑いながら言った方がいいかな?」

 

「いや、絶対やめてください」

 

チビるかもしれない。

 

「なんかもっと小さいのないのかよ、軽めの甘えというかさ」

 

「・・・軽めの、じゃあさ、はい」

 

そう言って、潤はジャンパーのポッケに突っ込んでいた手を出した。

 

「手繋いでくれたら、嬉しいな」

 

「・・・これまた急に可愛らしいお願いになったな」

 

「・・・付き合ってるのに、外じゃぜんぜん繋いでくれないから、嫌なのかなって思ってたんだけど・・・」

 

「いや、恥ずいだろ、普通に」

 

「あはは、君も結構な恥ずかしがりさんだよね」

 

「うっせ!お前ほどじゃないわ!」

 

カイロを握ってたからか、握った潤の手はやわらかくて、あったかかった。

 

行きよりも、時間をかけて家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






本編もなにも無いような気がするけど、一応番外編です。

本編全然思いつかないんで、しばらく小ネタに逃げるかもしれないです。

あーあ!俺にもこんな幼馴染がいればなァ!って毎回書いてる時叫んでるので、あーあ!俺にもこんな幼馴染がいればなァ!って言いながら読んでもらえれば。


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香織 ごくごくありふれた幼馴染人生編

そんな、ありふれた2人の一生。



 

 

 

5。

「おまえは、いっしょう、アタシのものなんだぞ!」

 

「うん、わかった。ぼくは、いっしょう、かおりちゃんのもの」

 

 

8。

「ぼくは、かおりちゃんのものだよね?」

 

「は、はぁ?なにいってんだおまえ、き、きもちわりーな!」

 

「え・・・そ、そっか・・・ごめんね・・・?」

 

「あ・・・」

 

 

10。

「あはは、そうだよねぇ~、それでさ・・・」

 

「・・・オイ」

 

「ん?あぁ、香織ちゃん。どうしたの?」

 

「・・・お前はだれのもんだかわかってんのか?」

 

「え?・・・どういういみ?」

 

「・・・チッ」

 

 

13。

「今日から中学生だね!・・・きんちょうするなぁ」

 

「そうか・・・?・・・おい、寝ぐせたってるぞ」

 

「えっホント・・・?あ、あはは・・・実はさっき起きたばっかなんだよね」

 

「・・・飯食ってねぇのかよ」

 

「うん、だいたい毎日食べてないかな」

 

「・・・チッ」

 

「あ、女の子が舌打ちしちゃだめだよ?」

 

「うっせー。・・・アタシが、今日から毎日作る」

 

「・・・え?」

 

「だから、アタシが朝飯食わしてやるっつってんだ!」

 

 

15。

「・・・オカエリ」

 

「なんでカタコトなの・・・」

 

「・・・それで、なんつったんだよ」

 

「あぁ、断ったよ。タイプじゃないんです!なんちゃって」

 

「た、タイプだったら付き合ってたのか?」

 

「うーん、まぁそうかな」

 

「・・・チッ。メシ、作っといたから」

 

「あれ?一緒に食べないの?」

 

「食欲わかねー。それと・・・いや、なんでもない」

 

「なに?気になるなぁ」

 

「・・・・・・おまえは、あたしのものなんだぞ」

 

「おやすみー」

 

 

17。

「また喧嘩?スカートホコリまみれだよ」

 

「やりたくてやったわけじゃねーよ。自己防衛だ」

 

「もう、女の子なんだから、喧嘩なんかしちゃだめだよ!禁止!」

 

「うっせぇ!黙って殴られろってのか!」

 

「だから、そうならないように、今日からお買い物とかもついてくよ」

 

「チッ、タッパだけでかくなったからって調子のんなよ。喧嘩もしたことねぇなよなよのクセに・・・」

 

「うーん、確かに喧嘩はしたことはないけどね。でも、一生俺が守ってあげるから、だから、禁止ね?」

 

「い、いっしょ!?な、な、・・・」

 

 

18。

「オイ、なんでそんなボロボロなんだよ」

 

「・・・いやぁ、もう香織に手を出さないでーって、あの人たちにお願いしてきたんだ」

 

「・・・あいつら殺す」

 

「わわ!ちょっとまって!もう大丈夫だから、わかってもらえたから!」

 

「はぁ!?口だけでわかるヤツらなワケねぇだろ!」

 

「あ、うん。口だけじゃわかってもらえなかったけど、もう大丈夫になったから」

 

「は?」

 

「最後はわかってもらえたよ」

 

「・・・は?」

 

 

20。

「・・・ったく、飲み会までついてくんなっつの・・・過保護なんだよ」

 

「・・・だって、心配じゃないか!香織がお酒に飲まれちゃってよからぬことを・・・って考えたら夜も眠れないよ!」

 

「んなことねぇよ!アタシ酒強いの知ってんだろ!・・・てか、お前の方が心配だぞ。酒弱いから、イキオイで・・・とか・・・」

 

「あ、大丈夫。間違っても香織以外じゃたたない自信あるから」

 

「タっ!?へ、ヘンタイ!」

 

「ゲハァ!」

 

 

22。

「・・・ねぇ」

 

「あ?なんだよ」

 

「俺は香織のもの、なんだよね?」

 

「んなっ!て、テメェ覚えてやがったのか!」

 

「うん。当たり前でしょ」

 

「あんなガキん頃のこと・・・よく覚えてたな」

 

「だって香織、たまにちょくちょく言うじゃん」

 

「はぁ!?聞こえてッ・・・じゃねぇ、言ってねぇよ!」

 

「ほら、反応したら怒りそうだなーって思って」

 

「クソッ・・・お、おまえ・・・」

 

「それでさ」

 

 

「香織も、一生俺のものになってほしいんだ」

 

「・・・は?」

 

「・・・結婚しよう。俺は、一生あなたのものでありたい」

 

「・・・・・・・・・ち、ちょっとまて、きき、急すぎて、か、顔あっつ・・・て、てかなんかもっと前置きとか、クソ!あぁ、もう!にやけんなよあたしぃ・・・」

 

「今までもこれからも、1番、大好きだよ」

 

「・・・・・・そんなの、知ってたっつーの」

 

 

26。

「可愛いなぁ~赤ちゃん。目元は俺に似てるかな?」

 

「鼻の形とかはアタシだな」

 

「え、そう?くちもとと輪郭は香織かなぁって思ってたけど。鼻はそんなでもなくない?」

 

「は?いやよく見ろよ。可愛らしい感じみるからに私だろ」

 

「香織はどっちかっていうとシュっとしててカッコイイよね、外人さんみたいで!これは間違いなく俺の母さんの鼻だね。隔世遺伝。」

 

「そぉーかぁー?」

 

「・・・ね、香織。ありがとうね、子供」

 

「ん。アタシも欲しかったからな」

 

「・・・しあわせだぁ!大好きだよかおりー!」

 

「あーもう鬱陶しい!離れろ!」

 

 

30。

 

「オイ、なんだこの名刺は」

 

「違うんです!接待でしかたなく行ったんですけど!なんにもしてないです!ほんとに!ちょっと触られたくらいです!全部断って誓って何もしていないんです!」

 

「ほおォ~、そんなクッッッサイ香水のニオイぷんぷん撒き散らしやがって、信憑性もクソもないのはわかるよなぁ・・・?」

 

「で、ですよね・・・で、でも本当に、何もしてないよ?時間いっぱいお話で終わったよ?」

 

「・・・・・・チッ、信じてやる。でも」

 

「で、でも?」

 

「・・・そのニオイ上書きするまで、寝かさねぇから」

 

 

50。

「この家も静かになったねぇ」

 

「そうだね、居間かけまわってたのが懐かしいよ」

 

「・・・香織も丸くなったなぁ」

 

「はぁ?なに、急に」

 

「昔はなんというか、もっとオラついてた口調だったなぁって」

 

「お、オラついてたって・・・もう五十路なんだから、そりゃ大なり小なり変わってるでしょ」

 

「そう?大好きなのは、俺変わってないよ?」

 

「はいはい。アタシもよ」

 

「適当だなぁ・・・」

 

「本心だからいいでしょ」

 

「それもそうだねぇ」

 

 

 

65。

「香織、これ行こうよ」

 

「んー?」

 

「世界旅行!」

 

「・・・世界1周、半年ツアー?」

 

「うん、時間もできたことだし、行こうよ」

 

「そうねぇ・・・行きましょうか」

 

「うん!いろいろ準備して、忙しくなるね」

 

「まぁ、あなたも仕事が終わって、落ち着かなかったんでしょうね」

 

「そうなんだよね・・・ま、老い先も短いことだし、ハネムーン気分でいこう。人生最後まで、楽しまなくちゃな」

 

「はいはい・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇〇。

 

「・・・ねぇあなた」

 

「うん、なに?」

 

「・・・よかった、そこに居たのね」

 

「うん、いるよ」

 

「ねぇ、あたし、本当に幸せだった」

 

「うん」

 

「・・・ずっと、あたしを守ってくれて、ありがとうね」

 

「・・・うん」

 

「・・・・・・ずっと、愛してくれて、ありがとうね」

 

「・・・うん。今も、愛してるよ」

 

「・・・ふふ、私も・・・・・もう、あなたの顔をみられないのが、少し寂しいけれど」

 

「・・・・・・うん」

 

「・・・・・・あなたと出会えて、あなたと生きれて、あなたのことだけ考えていて。本当に・・・しあわせな一生だったわ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「俺は、君のものだから」

 

「少し待っててね」

 

「すぐ行くよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






先日、友人の結婚式ですごく感動したので、ちょっと趣向を変えて書いてみました。

結婚は人生の墓場、なんて言いますが、死後の世界があれば、それはきっと人生よりも何10倍も長いものなんだろうし、それを好きになれた人とずっと過ごせるんだと考えれば、案外墓場も悪くない、なんて思えます。

って友達の友達が言ってたような気がします


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麗 部活編

鉄の女、氷の女王、白雪女帝、正妻
※麗さんのあだ名シリーズ




 

 

 

「おーい、ダンナ、メイドさん、来てるぜ」

 

「ん?あ、ありがとう教えてくれて」

 

「ったく、羨ましいやつだぜほんと、あんな綺麗な人に尽くしてもらえるなんてなぁ」

 

昼休み。高校生になって半年、僕にも何人か友達ができた。困ったことに、麗さんが僕を旦那様って学校でも呼ぶから、あだ名がダンナになってしまった。

 

ただし女子がダンナって僕のことを呼ぶと、麗さんが凍てつくはどうを出すため、男子オンリー。

 

ところかわって、麗さんが部長を務める茶道部教室。3年生の楓さん、僕、麗さんしか部員がいない。麗さん目当てで入ってくる男子生徒も多かったらしいが、絶対零度の視線に耐えきれず1週間持たず辞めていくとは、楓さんの談。

 

「お、来たねぇダンナくん、元気?」

 

「どうも、楓さん」

 

「・・・楓」

 

「なによ麗、アダ名くらいでそんなに怒らないでよ・・・」

 

こんな感じで、麗さんはしょっちゅうガンをとばしている。噂では、鉄の女とか呼ばれているらしい。可愛らしいところいっぱいあるんだけどなぁ・・・

 

「旦那様、お弁当です」

 

「うん、いつもありがとう麗さん」

 

「メイドとして、当然のことですので」

 

「・・・毎日飽きないねぇ、そのやりとり」

 

「そ、そんなに毎日してますか?」

 

「私は礼など無くとも、と言うんだけれどね」

 

「毎日してるよ・・・一言一句違わず」

 

「・・・まぁでも、麗さんにはいくら感謝してもしたりないですから。本当に幸せなんです、毎日麗さんのご飯を食べられるの」

 

「・・・私の方ですよ。あなたに尽くせることが、私にとって何よりの幸せなんです」

 

「・・・・・・あれぇ?おかしいなぁ?私卵焼きは砂糖入れない派なんだけどなぁ?これカステラと間違えちゃったかなぁ!?」

 

 

そんなこんなで食事を開始。楓さんがおもむろに口を開いた。

 

「しかし、この部活も新入部員が来なくなったねぇ」

 

「そうね。まぁ、もともと私が、家事に支障が出ない部活がなかったから作っただけだし・・・」

 

「あぁ、この学校部活入るの義務付けられるもんね。へんな校則だよね」

 

「まぁ、麗のおかげで私もいい感じに楽に学校生活送れてるし、ラッキーだったわ」

 

部活なんかだるいだけだしねー、と楓さん。

 

「楓、あなたはだらしなさ過ぎるわよ。すこしは目標を持って・・・」

 

「建設的に日々を過ごしなさい、でしょ。麗の説教は聞きあきたよ~。ほれ、ダンナくん身代わりになって」

 

「えぇっ!?・・・あ、で、でも、2人が卒業しちゃったら、僕どうしようかな。流石に茶道部部長になるのに、お茶の一つもたてられないじゃなぁ・・・」

 

「ご心配なく、旦那様がもし続けられるというのであれば、今週末にでも、お茶のたて方をお教えします・・・・・・あ・・・」

 

「ん?麗、どした?」

 

「い、いや、なんでもないわ」

 

「気になるなぁ・・・いいなよ!ほら、ダンナくんも気になってる顔してるよ!」

 

「えぇっ?・・・いや、まぁ気になりますけど」

 

「・・・いえ、その、旦那様がお茶をご自分で入れられるようになったら・・・私が入れることも無くなってしまうと思うと、すこし寂しくて・・・」

 

「・・・なんだ、そんなことか」

 

「・・・旦那様?」

 

「もし僕が教わったとしても、麗さんより美味しくいれられるワケないよ。なにより、僕は麗さんが入れてくれたお茶ってだけで、世界一美味しく飲めるだろうから。教わっても、お茶をいれるのは麗さんに頼むよ」

 

「・・・っ!」

 

麗さんが顔を赤くして、膝元を握りしめている。かわいい。

 

「・・・・・・あれぇ?今日のご飯甘くない?やたら麦芽糖きいてない?ひょっとして水飴で炊いちゃったかなぁ!?」

 

 

そして、そんな昼休みを過ごして下校時刻。

 

「へーい、ダンナ、嫁さん来てるぜ」

 

「まだ嫁さんじゃないよ・・・」

 

「うっわまだとか言いやがってコイツ・・・」

 

「あはは、痛いって!」

 

ヘッドロックで頭をぐりぐりされる。じゃれているだけなのに、だんだん廊下にいる麗さんの冷気が膨れ上がってきてる気がするので、いいとこで抜け出した。

 

「旦那様。部活の話なんですが」

 

「うん?」

 

「・・・私に気を使わず、好きなことをなされてもいいんですよ?」

 

「・・・うーん、僕の好きなことは、麗さんと一緒にいることだからなぁ」

 

「あぅ・・・旦那様は、最近恥ずかしいことを言うのに躊躇いが無くなってきています・・・」

 

「あはは、成長したってことだよ。麗さんに飽きられちゃわないよう、ガンガン行かないとね」

 

「飽きるなんてありえません。貴方に仕えることこそ、私の生きる意味ですから」

 

「・・・それにね」

 

「はい?」

 

「麗さん、あの場所好きでしょ?昼休みに、楓さんとご飯を食べて、本を読んだり勉強したり、たまにお説教したりさ。僕が入った時も、2人ともすごく居心地が良さそうでさ。卒業してから学校に行った時、あの部室がなくなってたら、麗さんも楓さんも寂しいでしょ」

 

結構、寂しがり屋さんだもんね、と僕。

 

「・・・あ、ありがとうございます」

 

小さくお礼を言って、麗さんは僕の袖をきゅっと握った。その手をとって、僕は歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





しんみりだけじゃもの寂しいので連続投下。
やっぱギャグ路線は気楽でいいですね。

ちなみにニューダンv3ではキルミーのパンツを真っ先に狙うくらいにはメイド好きです。

感想は全部狂喜乱舞して見てます!どしどしお願いします。


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冬夏 甘えん坊編


夢の中では毒が抜けてしまうそうな。




 

 

 

 

「起きなさい、ねぇ、起きて」

 

「・・・んんぅ」

 

「・・・ねぇ、早く起きなさい。遅刻しちゃうわよ?」

 

「・・・あと5分」

 

「ねぇ、お願いよ・・・早くあなたの顔が見たいの・・・、起きて・・・?」

 

「・・・ん?冬夏・・・?」

 

「そうよ・・・あなたの、冬夏よ・・・。ねぇ、起きて?いつもみたいに、抱きしめて?」

 

「いやいや、抱き締めさせてくれたこと1、2回しかないんですけど・・・いや、ていうか、え?どうしたの?」

 

「あぁ、こっち見てくれたぁ・・・!おはよう、あなた。今日も愛してるわ・・・!」

 

冬夏が抱きついてきた。・・・いや、え?本当に冬夏さんですか?

 

「い、いやいや、え、なに?ドッキリ?寝起きドッキリなの?」

 

「おはよう、あなた。今日もいい天気よ・・・!ああ、朝からこんなにたくさん、あなたの匂いがして・・・幸せぇ・・・!」

 

「いや、誰?マジで誰?怖いんだけど、なにこれ?夢か、そうか夢だな!冬夏がこんなに可愛くなっちゃうわけないもんな!あはははは!あれ!?ほっぺ抓ったら痛い!」

 

「・・・むー、あなた、私の言うこと、聞いてないでしょ。ふん、もういいもん。拗ねてやるんだから・・・」

 

むぎゅーっとお腹に顔を埋めてくる冬夏。いや、嬉しいんだけどね?なんか見返りを求められそうで怖いんだけど?とんでもないしっぺ返しがきそうなんだけど?

 

「むぅ~、私が抱きしめてるんだから、あなたも抱きしめ返すのが普通でしょー!この愚図~!」

 

ち、違うッ!なんか違うッ!冬夏の毒舌はもっとこう、氷柱で頭をぶん殴るみたいなかんじなんだ!こんな、砂糖水をぶっかけられるみたいな、なんか、こう、違うんだッ!

 

「あっ、えへへ・・・あなたの体温を、感じるわ・・・ねぇ、お願い、頭も撫でてぇ・・・?」

 

「あ、はいはい撫でればいいのね」

 

「んぅ~~!好きぃ、大好きよ・・・!」

 

「と、冬夏。どうしたんだ、体調、悪い?なんか変なものとか食べちゃったか?」

 

「・・・もう、あなたは、いつもそうなんだから」

 

「い、いつもそう・・・?なにが?」

 

「いつもいつも、私の心配ばっかり!すこしは自分のこと、考えなさいよね!あなたが無防備だから、ほかの子に奪われちゃったらって、私、心配で・・・心配でぇ・・・!」

 

こんどは泣きだした・・・!?

 

「は、はいはい、冬夏。俺ちゃんと、冬夏のこと大好きだから、大丈夫・・・だよ?」

 

「・・・ほんと?・・・それなら、もっと、強く・・・抱きしめて?」

 

ッ!?やばい!上目遣いで、なんか体温高いし顔赤いしエロいし可愛いし、破壊力がッ!

 

「・・・って、おい、冬夏。お前熱ない?」

 

「ねつぅ?ないわよ~」

 

「・・・ちょっと失礼」

 

ぺた、と額に触れてみる。うーん、熱い!

 

 

それから10時間後。俺は冬夏を家まで送って寝かしつけてから、学校に行って、また冬夏の部屋に戻ってきた。

 

「冬夏、入るぞー」

 

「・・・」

 

寝てた。熱が気になるところだ。起こさないようにそっと近づいて、ほっぺたに手をつけてみた。

 

「・・・熱は、ちょっとは引いたのかな・・・?」

 

「・・・」

 

・・・あれ?なんかほっぺが赤くなってる?

 

「・・・冬夏、起きてる?」

 

「・・・すー、すー・・・」

 

「いや、取ってつけたような寝息すんなよ、絶対起きてんだろ」

 

「・・・すー、すー・・・」

 

ほ~う。あくまでシラを切るつもりか。いいだろう。

 

「さーて、冬夏のパンツ2枚くらい貰ってくか。たしかここの箪笥だったような・・・」

 

「やめなさい変態。通報するわよ」

 

あ、起きてた。

 

「なんだよ、やっぱ起きてるじゃねぇか」

 

「今起きたのよ。下着泥棒の気配を感じたわ。まったく、眠ってる女性の部屋に勝手に入るなんて、とんだ犯罪者ね。通報されてもおかしくない立場だと自覚しなさい、この変態」

 

そうそう、こんな感じ!小石を詰めた雪玉を急所に投げ込んでくる感じ!

 

「そんだけ毒吐けるなら、多少は良くなったんだな」

 

「・・・まぁ、多少は楽になったわ。ありがとう。でもそれとあなた・・・いえ、変態が下着を盗もうとした罪は関係ないわよ。しっかりと償ってもらうから」

 

・・・コイツ、これみよがしにぶち込んできやがるな・・・今日は俺が上だということを知らしめてやる・・・

 

「・・・『ねぇ、お願いよ・・・早くあなたの顔見せて・・・?』」

 

「ッ!?」

 

ビクッと冬夏の体が跳ねた。顔が赤みを増していく。

 

「『あなたも抱きしめ返してぇ~』とか言ってたの、誰だっけなぁ・・・?」

 

「・・・くっ」

 

「『他の子に奪われちゃったらって思うと・・・』とかご心配なさっていたのは、どこの冬夏さんだったけなぁ~!?」

 

「・・・・・・」

 

「頬赤らめて抱きついてきて可愛い~く甘えてきた冬夏ちゃんは素直で可愛かったのにな~、面倒見てあげた恩人に、こんなに毒吐くような悪い子じゃなかったのになぁ~!!」

 

あー!楽しい!ふふふ、冬夏のやつ黙りこくってやがる!完全に勝った!17年間で初勝利を飾ってやったぜ!

 

「・・・・・・う」

 

「はーっはっは!え?なんだって冬夏ちゃーん!?おっきい声でお願いします!」

 

「・・・・・・ぃじゃない・・・」

 

「はーっ・・・は、は・・・え?」

 

冬夏の顔を覗きこむと、まさかのガチ泣きだった。

 

「頭も体もふわふわしてたから、夢だと思ってたのよぉ!悪い!?私が素直に甘えたら、気持ち悪いとかどうせ思ってるんでしょ!このバカ!ばかばかばか、愚図!死んじゃえ!」

 

「ちょ、痛い痛い!」

 

冬夏がついにキレた!?初めて見るぞこんなになってるコイツ!?

 

「わ、わかったから、ごめんな冬夏!気持ち悪いとか思うわけないだろ!めちゃくちゃ可愛かったから!」

 

「うそうそうそ!あんな私・・・あ、ありえないの!忘れなさい!今すぐ!お願い忘れてぇ!」

 

「わ、わかったから、1回落ち着けって・・・!」

 

むぎゅーっと強く抱きしめる、抱きしめるというか拘束する。

 

「からかってわるかったって・・・でも、本当に可愛かったぞ?まぁ、ちょっと落ち着かねぇのは確かだけど・・・偶にはお前がしたいこと、全部言ってくれる方が俺は嬉しいから」

 

「・・・もう二度とあんなこと、しないわよ。・・・顔みたくないから、もっと強く抱きしめなさい、この愚図・・・」

 

絶賛今してるところの冬夏さんだった。意外と冬夏が打たれ弱いことが発覚した1日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






休日なので甘さマシマシでお送りしました。



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杏子 寂しがり編


魔王に杏子を犬扱いしているのを見られると処刑される。



 

 

部活の朝練して休み時間は委員会に出て放課後は野郎共とゲーセンで格ゲー大会をするというリア充DAYを過ごした。

 

楽しかったがバカ犬を一日かまってないから拗ねてしまってるんじゃないかと心配だ。

 

そんなこんなで帰宅。

 

ぶっすーと頬を膨らませた仏頂面わんこが玄関に仁王立ちしてた。

 

「・・・」

 

スルーした。

 

「えっ!?ちょ、ちょっと!不貞腐れてますよー!私不貞腐れてますよー!!」

 

「うるさい犬だな、不法侵入で訴えるぞ」

 

「え、今更!?何回も私入ってるじゃん!」

 

「は?じゃあその回数分訴えるわ。犬小屋で反省するんだな!」

 

「それを言うなら豚小屋だよ!もう!ほんとに怒ってるんだよ私は!」

 

「なんで?」

 

「なんでって・・・今日1日、あなたが私と会ってくれなくって・・・」

 

「お前子供じゃないんだから・・・いや子犬じゃないんだから・・・」

 

「わざわざ言い直すなよッ!子供じゃないもん!・・・だって、さみしかったんだもん・・・」

 

ぽふり、と体を預けてくるわんこ。可愛いヤツだなぁ!思わずナデナデしちゃう!

 

「・・・こ、これくらいで機嫌なおしたげないんだから・・・」

 

「尻尾振りながらそんなこと言われても・・・」

 

「へっ!?ほんとっ・・・て尻尾なんかないよ!」

 

「ノリツッコミもできるなんて凄い犬だ」

 

「むぅ~~~もっと優しくしてよ!あ、甘えさせてよぉ!」

 

「はいはい、はしゃぐなはしゃぐな」

 

ぐりぐり頭を擦り付けてくる。こいつほんとに動作が犬だな。

 

「・・・ねぇ、私ウザいかな?」

 

「激ウザ」

 

「ヒドいっ!?」

 

「もういい歳なんだし、あんまずっと一緒にってわけにもいかねー時もあるだろ」

 

「・・・そうだけど、さみしいんだもん」

 

なんだコイツは・・・幼稚園児か・・・?

 

「あ、あなたが悪いんだよ?私のこと犬扱いするクセに、毎日たくさん構ってくれてたから、あなたがいないと何しても・・・物足りないっていうか・・・」

 

「ウサギかお前は。キャラを守れよ。私は犬ですって3回言え」

 

「・・・・・・言ったら、ぎゅってしてくれる・・・?」

 

「・・・ツッコミすら放棄するのかよ」

 

「なんでもするから、お願い・・・私を1人にしないで・・・?」

 

「・・・しねぇよ。責任ってもんがあるからな、飼い主には」

 

「ん、えへへ、そうだよね、私はあなたの、アンコだもんね!」

 

「わんこな。雰囲気に流されて人間にランクアップできると思うなよ」

 

「くそっ!いい流れ出来てたのにッ!」

 

「くそとか言うなよ。ファン減るぞ」

 

「ファン!?私ファンいるの!?」

 

学校ではいつの間にか、わんこファンクラブが出来上がっていた。俺はいつの間にか、名誉会長に就任させられていた。

 

「・・・機嫌、なおったか?」

 

「・・・もうちょっと、撫でてくれたら?」

 

「はいはい」

 

「・・・んへへぇ・・・・・・あなたって、やっぱり優しいよね?」

 

「何を言ってるんだバカ犬」

 

「犬じゃないもーん!照れちゃって、可愛いんだから~」

 

肘でうりうりと胸をつついてくる。鬱陶しかったので4の字固めをしかけた。

 

「え!?ちょ、痛いたイタいたい!女の子に容赦なくプロレス技かけるの!?ちょ、ほんとに痛いよ!?」

 

「バカタレ、お前はジャングルでオスゴリラに襲われても同じことを言うのか?自然に雌雄の差などないんだよ」

 

「ここ自然じゃないよッ!ばりばり文明圏内だよッ!!ちょ、痛い!タップタップ!てんかうんとだよ!」

 

「ふはははは!わかったか馬鹿犬め!主人に逆らうとどうなるか・・・」

 

 

「おい杏子ちゃんに何してんだテメー」

 

気づいたら我が姉、通称魔王がご帰還されていた。その夜、俺は屋根の上に十字架磔されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






杏子ちゃんはギャグ要因だから甘さ休めになるよね!って思ってたら普通にゲロ甘になりそうだったので魔王降臨させて方向転換しました。

杏子ちゃんのゲロ甘は結婚シリーズの時って決めとるんじゃ・・・待ってた人いたらすまんな・・・




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