大森林〜くさタイプヘイトの俺がくさタイプ一筋になった訳〜 (ディア)
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第1草

今回はプロローグです!しかしまた新規の小説を投稿してしまいました…反省はしているが自重はしない。


 某所にてポケットモンスター略してポケモンをやっている1人の若者がいた。

 

「ヒャッハーっ! 草タイプアンチ最高ーっ!!」

 

 前言撤回、ハッチャケている若者だった。小学生染みたことをするこの若者の名前は木村拓森。何ともくさタイプを使いそうな名前だが実際はくさタイプアンチのプレイヤーだ。ちなみに彼の名前は今後出ることはない為覚えなくてもいい。

 

 そんな彼が今やっているのはくさタイプを限定してアンチ出来るDPのバトルステージの対戦だ。そこで彼はこおりタイプの技やほのおタイプの技が使えるギャラドスでくさタイプをボコボコにしていた。

 

「レベル100とはいえ仮にもみずタイプのギャラドスも倒せないのか? ん?」

 

 ちなみにギャラドスはみず・ひこうタイプなのでくさタイプとは等倍になりでんきタイプは4倍のダメージになる。つまりギャラドスでは制限もクソもありゃしない。くさタイプ4倍ダメージを受けるラグラージ等でくさタイプを相手にしないあたりまさしく外道。

 

「それにしても何時になったんだ……うっ!?」

 

 そんな外道な彼が時計を見ると深夜三時を過ぎており思わず呻き声を上げてしまう。

 

「もうこんな時間かよ……今日の授業も辛いし寝るか」

 

 彼は性格は小学生そのものだが一応実年齢は20を超える大学生であり、今日の授業に備えてひとまずDSの電源を切り、眠りについた。しかし彼はそれが最後のポケモンをやった日だと思いもしなかった。

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 zzz……

 

「おい、起きろ!」

 

 うっせぇな……人が寝ている時に起こすんじゃねえよ! 

 

「べふっ!?」

 

 ん? 目覚まし時計を止めたはずなのに何で人の声がするんだ? 

 

「ようやく起きたか……このアホタレめ」

 

 人の家に上がりこんで何してやがる!? ジジイのくせに泥棒か!? 

 

「周りを見ろ。ここはお前の家じゃない」

 

 そういえば周り全体が暗いな……だったら何で俺がここにいるんだよ!? ジジイてめえが誘拐したのか!? 

 

「半分あっていて間違っている」

 

 今すぐ俺の家に帰せ! さもなくばぶん殴る! 

 

「まあ落ち着け小僧。どうせここは夢の中だ。私はお前の夢を弄って干渉しているにしか過ぎない」

 

 じゃあ干渉を止めろよ! 

 

「やなこった。どうせお前はこれからもくさタイプアンチを続けるのだろう」

 

 くさタイプアンチ……もしかしてポケモン知っているのか? というか何で俺の趣味を知ってんだよ!? 

 

「全知全能の神に不可能という言葉はない」

 

 ぶん殴られた癖に全知全能の神とかないわー、マジで痛いわー。

 

 

 

「ふふふ……どうやら私を怒らせてしまったようだな! そんなお前にはチートの代わりに天罰をくれてやる!」

 

 チートとか天罰とか何の話だよ? 

 

「話してなかったか?」

 

 知らんがな! お前が原因だろうが! 

 

「まあいい。くさタイプアンチが趣味と言う愚か者に説明しよう」

 

 随分偉そうだな。

 

「だって偉いし」

 

 偉いってどのくらいだよ……誘拐犯の中では偉いんだろうが所詮その程度だろ? 

 

「私のことについて話すと長〜くなるから省略させてもらう。それよりもこれから起こるお前のことについてだ」

 

 ほほう? 聞こうではないか。

 

 

 

「ここがどこだかわかるな?」

 

 無視された……まあ俺の夢の中だろ? 

 

「そうだ。だがお前はダークライによって殺されかけたのだ」

 

 ……はい? ダークライってポケモンのダークライだよな? 

 

「そうだ。時空を司るディアルガとパルキアが大喧嘩し、お前の世界の空間とポケモンの世界の空間が歪んで一時的に世界が繋がってしまったのだ」

 

 いやいやそんな非現実的なことがあんの? それにダークライに殺されかけたことと何の関係があるんだ? 

 

「事実だ。それにダークライがお前を殺されかけたのはバカ2人……もとい二匹が大喧嘩したことによってダークライがお前の世界に留まり、熟睡して間もないお前を殺そうとしたというわけだ」

 

 でも何で無事だったんだ? 

 

「それは私がお前の夢に干渉してダークライから救ったからだ。感謝しろよ?」

 

 恩着せがましい奴……でもそうしたらダークライは他の奴を標的にするんじゃね? 

 

「ダークライの何を潰してやったからしばらくは動けん。その隙に元のポケモンの世界に返したから安心しろ」

 

 えげつねえ……というか空間の歪みも解決したのか? 

 

「あのくらいの歪みなら数分で直る」

 

 数分で直るのにダークライに逃げられたのかよ……有能なのか無能なのかはっきりしねえ奴だな。少なくとも全知全能の神ってのは嘘だな。

 

「ふんっ!」

 

 いってえ!? 何しやがる!? 

 

「自業自得だ」

 

 訳のわからねえクソジジイが! 

 

 

 

「さてとお前はダークライに殺されかけた訳だがこのままあの世界に居てもつまらないだろう?」

 

 ポケモンは楽しいが? 

 

「ならそのポケモンの世界で暮らしてみないか?」

 

 どういう意味だ? 

 

「そのままの意味だ。ポケモンがいる世界に転生してみないかと聞いているんだ」

 

 転生ってことは一度俺は死ぬのか? 

 

「その通りだ」

 

 何故だ? 態々転生させる必要はあるのか? 

 

「お前をこのままポケモンの世界に行かせても構わないがゲームのようにはうまくいかんぞ? それどころか身分証もないからホームレス生活待ったなしだ」

 

 ……マジで? 

 

「そうだ。そこで転生することによって身分証を確保することが出来るし、お前に才能をある程度与えてやれる」

 

 じゃあチートってのはその才能か? 

 

「一般にそうだな。チートはこのダーツで決まる」

 

 ジジイありがとよ。よし、決めた。ポケモンの世界に転生する。

 

「その心意気や良し! さあ投げろ!」

 

 …………………………………………………………………………………………………………

 

「どうした……いらないのか?」

 

 ……ふ、ふざけんなてめぇーっ!! 

 

 何だよこのダーツは!? 全ての面が『所有しているくさタイプのポケモン(複合も含む)の各ステータス50ずつアップ&所有しているくさタイプを複合していないポケモン各ステータス20ずつダウン』って明らかにやらせだろうが!? くさタイプが大嫌いな俺に対して嫌がらせか!? 

 

「稀によくある」

 

 嘘くせえし、稀によくあるってなんだよ。死ねよ。

 

「死ぬということはやるんだな?! ダーツ! ダーツ!」

 

 いい年したジジイが腕を上げ下げして興奮するな! 外したら特典はなしでいいんだな!? 

 

「ちなみに外した場合は一生チコリータとして過ごすことになるがそれでもいいのか?」

 

 ふざけんなどちくしょう! 一生チコリータってことはベイリーフにも進化出来ないってことか?! てか当てたらちゃんと人間に転生するんだろうな!? 

 

「それは全知全能の神である私が保証する。れっきとした人間、それもポケモントレーナーとして転生させてやるから安心してダーツをしろ」

 

 よくよく考えてみればわざわざポケモンの世界に行かなくともいいんじゃねえか? と思ったが……どうせジジイのことだ。何か企んでいるに決まっているんだろ? 

 

「良くぞ見切った。そこまでわかっているならさっさとやれ」

 

 そうだよな……向こうの世界でやってやるよ! 

 

 

 

 俺のダーツはまっすぐに的に突き刺さり、チート特典が決まった。

 

 

 

「おめでとう! 約束通りチートをやろう」

 

 チートが貰えるのに嬉しくない……

 

「チートを貰ったんだぞ。喜べよ」

 

 お前の胸に聞いてみろよ。そうすればわかるから。

 

「それはともかく準備はいいか?」

 

 非常に行きたくねえがもう覚悟は決まっている。やるんならさっさとやれ。

 

「ではいざ鎌倉!」

 

 いざ鎌倉の意味違ぇぇえ! 

 

 

 

 俺は自称神が作った穴に落とされ、ポケモンの世界に転生した。それもオリジナルの地方じゃなくカントー地方のジムリーダー、エリカの弟として。

 

 

 

 ★★★★

 

 

 

「行ったか」

 

 コミカルな雰囲気から厳格な雰囲気を醸し出した自称神がそう呟くとノートを見る。

 

「流石にチートをつけ過ぎたが何も困るわけではないし、シナリオ通りに上手く行ったし良かろう」

 

 自称神が手に持つノートにはこう書かれていた。

 

【〜誰でもわかる! アンチ・ヘイトの修正法〜】

 

「アンチ・ヘイトをなくすには対象がいかに魅力的かを知るかということだ。私が無能と呼ばれようがクズと呼ばれようが関係ない。少しでもアンチを減らせるのであれば私が犠牲になろう。その為にあやつがダークライに殺されかけたという嘘までついたのだからな」

 

 自称神はそう呟きその場から消えた。




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第2草

お気に入り登録ありがとうございます!

今回はチートの説明回です。
あまりにも強すぎる為、萎えるかもしれない上に場合によってはチートの変更もあり得るくらいですので注意してください!


 カントー地方。ポケモンの世界じゃリメイク含め赤緑、それに青やピカチュウ版の舞台になっている地方の名前だ。他にも金銀のクリア要素の舞台にも使われた地方だ。

 

 

 

 10年前にそんなカントー地方のタマムシシティに俺は生まれた。

 

 

 

「コスモ、起きていますか?」

 

 

 

 コスモと名付けられた俺の顔を覗き込む少女兼姉はエリカ。今のタマムシジムのジムリーダーだ。俺がその姉をエリカだと知ったのはオムツを替える時だ。あの時は辛かった。

 

 精神年齢20歳の成人男子が3歳の幼女にオムツ替えられるんだぞ!? しかも「エリカお姉様がオムツ替えてあけまちゅからね〜」なんて言われて恥ずかしい思いをしない方がおかしい! さらに……いやこれ以上は止めておこう。男として何か大切なものを失いそうだ。

 

 とにかくそんな訳で俺の姉がエリカだと知れ、一緒に育ってきた。

 

 

 

「何? お姉様」

 

 実家はかなり名家だから厳しく躾けられ、乱暴な言葉使い……特に俺などという一人称を使おうものならモンジャラのつるのムチが飛んでくる。だがそれも終わりだ! 

 

「誕生日おめでとう、コスモ。これで貴方もポケモンを持てますわね」

 

 そう、今日が10度目となる俺の誕生日、つまりポケモン所持が認められる年齢になったからだ! 

 

 ……それにしても笑顔で誕生日を祝って貰えるなんて前世じゃなかったよな。

 

「ありがとうお姉様」

 

「どういたしまして。それよりも欲しいポケモンはどのようなポケモンですの?」

 

 マサラタウンの住民はオーキド博士に直接貰いに行くが他の住民はそうもいかない。ジムがある街ならジムリーダーから(ほぼ形式的にだが)貰うことになる。実際には親が用意したポケモンを渡すだけの仕事なんだがな。

 

 まあ例外と言えばトキワジムのサカキくらいのもんだろ。ロケット団リーダーなだけあってあいつはジムにほとんどいない。だからトキワシティの場合ジムリーダーじゃなく直接親から渡される場合が多い。

 

 

 

 それはともかく、身内がジムリーダーである場合は貰う前に要望を聞けるんだよ。それはどの家庭でも同じか? まあどっちにしろ良いポケモンが手に入りやすいのは確実だ。ジムリーダーはポケモンを見る目があるからな。

 

「フシギダネ。僕はフシギダネが欲しい!」

 

「あらあら、男の子ならヒトカゲとか欲しがるはずでしたのに」

 

 

 

 この世界でヒトカゲと言えば人気の高いポケモンだ。その理由は最終進化系のリザードンにある。

 

 リザードンは見た目がドラゴンらしくカッコ良い……というのが子供達の見方だ。だが大人達はそんな理由よりも実用性の高さに注目しているからだ。ドラゴンタイプの技を覚えドラゴンタイプ対策が出来る上に、ほのおタイプなのでドラゴンタイプ対策のこおりタイプにも強い。しかも育て方も簡単で初心者から上級者まで誰でも育成出来る。……ようするにヒトカゲを最後まで育てると見た目も良くなり実用性もあるから人気があるんだよ。

 

 

 

「お姉様と同じくさタイプのポケモンが欲しかったから……」

 

 それは建前で実際にはくさタイプのポケモンしか使えねえからなんだけどな。それ以外のポケモンを使おうものなら連戦連敗、将来も暗い毎日だ。流石に将来をふいにするほどアンチしている訳ではない。というか金銀でチコリータを、ルビサファでキモリを選んで詰んだからくさタイプをアンチするようになっただけだし、くさタイプアンチを続けた理由はくさタイプが弱かったからってのもある。

 

「ふふ、わかりましたわ。それではとっておきのフシギダネを用意するからタマムシジムに来なさいね。コスモ」

 

 とっておきのフシギダネって何がとっておきなんだ? もしかしてチート補正って奴? それとも6Vか? 

 

「お姉様、それじゃ支度が終わったらすぐにでも行くよ」

 

「楽しみに待っているわ」

 

 エリカが外に出ると俺はのんびりと朝飯を取ってからタマムシジムへと向かった。

 

 もっともタマムシジムと実家は目と鼻の先なんだがな。タマムシデパートにでも寄ろうか? と考えたが今はやめておこう。エリカを待たせると悪いし、タマムシシティにロケット団が一般人に紛れてうろちょろしていて危ない。俺はこの街のジムリーダーの弟で十分に人質の価値はある。しかもその弟はポケモンを持っていないから絶好のカモ。誘拐される前にとっとと行った方が良い。

 

 

 

「失礼します。お姉様」

 

 タマムシジムにお辞儀をして入るとエリカは苦笑いしていた。

 

「そんな畏まらなくても良いのに……」

 

「実家の躾の賜物ですよ」

 

「コスモは実家の後継者ですからね。その分躾も厳しくなりますわ」

 

「それよりもお姉様、早くフシギダネを!」

 

 エリカ、というよりもああいった言い回しは聞いていて嫌になる。だから少しでもそれを表情に出さない為に肉体年齢相当らしくキラキラとエリカを見つめながら、フシギダネを渡すように要求した。

 

「あら、コスモも子供らしい一面がありますのね?」

 

「だって自分のポケモンですよ! 興奮しない方がおかしいですよ!」

 

 くさタイプアンチをしていた俺としては複雑だが、前世を含めポケモンを持つのはこれが初めてだ。しかもこれからチートの内容もしっかりと実感出来ると思うと興奮しざるを得ない。

 

「それではコスモ、このフシギダネを大切にするんですよ」

 

 エリカは俺の眼差しに答え、笑顔でモンスターボールを渡した。

 

「ありがとう、エリカお姉様!」

 

 どんなフシギダネなんだろうな……性格がひかえめかおだやかなら良いんだがな。

 

「どういたしまして。そう喜ばれると私も嬉しいですわ」

 

「お姉様、早速フシギダネをボールから出していいですか!?」

 

「もちろん、構いませんわ」

 

 エリカの言葉を聞き終わると早速フシギダネをボールから開放した。

 

 出てきたフシギダネは模様が少し変わっていた。具体的にはフシギダネは通常、薄緑の肌に濃い緑の模様が不規則に加わるがこいつの場合は顔の左全面に★の模様が加わっている。マリ○に出てくる敵キャラのモ○トンみたいな感じだ。

 

 

 

 進化後の名前の通り不思議そうに俺を見つめていた。

 

「フシギダネ、これからよろしくね」

 

「ダネッ!」

 

 つるのムチを取り出し、俺の手を握るあたりひかえめな性格か? でもそれにしてはちょっとなつき過ぎているような気もする……

 

「あらあら、早速仲良くなれたようですわね」

 

「それじゃフシギダネを強くしたいから出かけてくるね!」

 

 俺はフシギダネを手に入れたことによって興奮し、フシギダネをボールの中にしまい外に出ようとした。

 

「その前にこの紙にサインしてくれますか?」

 

 しかしエリカに止められ、なんでサインを? と思ったが一刻も早くチートの内容を把握したくてその中身を確認しないままサインし、外に出る。

 

「それではお姉様、行ってきます!」

 

 何にしてもチート内容把握楽しみだぜ! 前世で言う個体値の確認みたいな感じだ。逆5Vだったときの絶望感は半端じゃないが5Vだったときの嬉しさは悲鳴を上げてしまうほどだ。その喜びを味わう為にも俺はタマムシ大学へと向かった。

 

 

 

 この世界では図鑑で能力値を測る為、図鑑を持っていないと能力値は測れないがポケモン図鑑を持っている奴はそうはいない。それこそ身分証明書になるくらいだ。俺は図鑑を持っていない為、能力値を測るにはタマムシ大学にあるポケモン図鑑を借りる申請して、通ったらようやく測れるというわけだ。

 

 しかしその申請も既に終わっており、予約している……後は図鑑を借りるだけだ。

 

 

 

 ★★★★

 

 

 

 コスモはタマムシ大学の図鑑を持ち出し、モンスターボールのスイッチを入れた。

 

「フシギダネ、出てこい!」

 

「ダネッ!」

 

 鳴き声とともに出てくるフシギダネをコスモはじっと見つめた。

 

「フシギダネ、ちょっとじっとしててくれない?」

 

「フシャッ!」

 

 フシギダネがじっと待つとコスモはフシギダネにポケモン図鑑を向け、能力値の数値を測る。

 

 

 

「な、なんだこりゃ……チートってレベルじゃない!?」

 

 コスモはその数値を見て思わず図鑑を落としそうになる。しかし実家にいるモンジャラのつるのムチで鍛えられた反射神経のおかげでそれは防がれた。

 

「ダネ?」

 

 フシギダネはコスモの様子を見て首を傾げた。

 

「(確かに俺はチート貰ったけど、まさかここまで上がるとは思いもしなかった)」

 

 コスモは図鑑を再び見る。そこにはこう書かれていた。

 

 

 

 フシギダネ

 

 レベル 1(MAX100)

 

 性格 ひかえめ

 

 最大HP 255

 

 こうげき 138

 

 ぼうぎょ 203

 

 とくこう 236

 

 とくぼう 219

 

 すばやさ 199

 

 

 

 そう、コスモが驚いたのはレベル1のフシギダネであるにもかかわらず既にHPを除いてフシギバナのレベル100以上の能力値だったからだ。

 

 

 

「ま、まさか!?」

 

 そしてコスモは自称神から貰ったチートの内容、『所有しているくさタイプのポケモン(複合も含む)の各ステータス50ずつアップ』の意味がわかってしまった。

 

「紙、紙はどこ!?」

 

 それを確認するためにコスモは紙を探す。

 

「フシッ!」

 

「サンキュ! フシギダネ!」

 

 フシギダネがコスモに紙を渡すとコスモはペンと電卓を取り出し、そこに式を書き始めた。

 

 

 

【HPだけ

 

 能力値=(種族値×2+個体値+努力値÷4)×レベル÷100+レベル+10

 

 HP以外

 

 能力値={(種族値×2+個体値+努力値÷4)×レベル÷100+5}×0.9〜1.1

 

 レベル1、性格ひかえめ、種族値45、49、49、65、65、45、努力値0、個体値6Vと仮定し、三値とレベルの値に50ずつプラスし、最後に50足す。

 

 

 

 HP=(190+81+50÷4)×51÷100++50+61=2.835×51+111=144.585+111=255.585=255

 

 

 

 こうげき={(198+81+50÷4)×51÷100+5×0.9}+50=(2.915×51+5)×0.9+50=(1453.665×0.9=138.29……=138

 

 

 

 ぼうぎょ=(198+81+50÷4)×51÷100+55=2.915×51+55=148.665+55=203.665=203

 

 

 

 とくこう={(230+81+50÷4)×51÷100+5×1.1}+50=(3.235×51+5)×1.1+50=169.985×1.1+50=236.98……=236

 

 

 

 とくぼう=(230+81+50÷4)×51÷100+55=3.235×51+55=164.985+55=219.985=219

 

 

 

 すばやさ=(190+81+50÷4)×51÷100+55=2.835×51+55=144.585+55=199.585=199】

 

 

 

「やっぱりだ……!」

 

 そしてコスモは自称神から与えられたチートが超絶チートだと改めて理解してしまった。

 

「(これはいくらなんでもチートすぎるだろ)」

 

 

 

 コスモが貰えたチートは『各能力値に50ずつプラス』だと勘違いしていたが実際には『能力値、種族値、個体値、努力値等多数の値にそれぞれ各50ずつプラス』だった。

 

 

 

 勘違いした理由としては至って単純で能力値にそれぞれ50ずつプラスするだけでも努力値を合計して1200振るのと同じことであり、既に逝かれている。しかもその上にさらに努力値を振れるのだから対戦相手からしてみれば悪夢としかいいようがないからだ。まさか能力値換算をする際に三値全て50ずつ足してしまうどころかレベルまでも足してしまうとは思いもしなかったのだ。

 

 ちなみに何故コスモがフシギダネの種族値や、能力値の計算を知っているかについてはくさタイプアンチの廃人だったからとしかいいようがない。コスモはそれだけ打倒くさタイプに燃えていたのだ。

 

 

 

「生まれ変わって初めてあの神に畏怖したよ……」

 

「?」

 

 フシギダネはコスモの言っている意味がわからず、首を傾げながらじっとコスモを見つめていた。




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それにしても自称神、チート与えすぎ…


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第3草

読者の皆さんお待たせいたしました!ようやく投稿です!


 とんでもチートが発覚し、俺はタマムシ大学を出てデパートの屋上でフシギダネとともにジュースを飲んでいた。このままレベル上げをしてもいいんだが努力値が面倒なんだよな。出来ることならとくこうに出来る限り振って、余りはすばやさに振る。

 

 

 

 要するに超特殊型に成長させる。くさタイプはとにかく体力を回復して粘るみたいな感じだが俺の座右は攻撃こそが最大の防御。能力の差でごり押ししてしまえばいい。何せフシギダネの時点でチートだからな。それで負けたらもはやただのバカでしかない。負けるとしてもヌケニンくらいだな。なやみの種で対策すれば何とでもなる。

 

 

 

 ……あっ!? 能力値がチートすぎるあまり図鑑でフシギダネの技を確認するのを忘れてた!! もう図鑑は返してしまったし、今度図鑑を借りられるのは一ヶ月以上も後になる……くそっ失敗した! 手元に図鑑がない為、フシギダネに頼むしかねえっ! 

 

 

 

「そういえばフシギダネ。どんな技が使えるか見せてよ!」

 

 フシギダネに頼むとフシギダネはそれに頷いた。口調がやたら子供っぽくてキモいとか言うな! 仕方ないだろ!? 少しでも口調が乱れればつるのムチが飛んでくるんだぞ! そのおかげで日常生活でもこんな口調になっちゃったんだよ! せめて心の中で一人称を俺にして抵抗してるんだよ! 

 

 

 

「ダネーッ!」

 

 フシギダネが走り出し、ベンチに突進するとベンチにぶつかりそれが壊れ、フシギダネは少しドヤ顔で帰ってきた。

 

「えっと、今のたいあたり?」

 

「ダネッ!」

 

 いやいやいや、今の絶対突進だろ!? と突っ込みたかったが能力値が能力値だからな。こうげきが130以上もあるし、一応理屈的には出来るのか? しかし一番能力値が低い物理攻撃、それも威力が低い、たいあたりでこのザマか……はっぱカッターとかやらせたらとんでもないことになるな。一応被害が出ないようにやらせるけどな。

 

 ……いやレベル1だからタマゴから生まれた可能性がある。そう考えると遺伝技とか使える可能性もあるし、さっきのたいあたりもロケットずつきじゃないのか? しかしそれだとこいつのロケットずつきはタメなしで出来ることになる。さっきのはただのたいあたりだよな。

 

「他にはどんなのが出来るの?」

 

 俺はその後フシギダネを使い、どんな技を使えるのかを確認した。

 

 

 

 ・たいあたり

 

 ・ねをはる

 

 ・リーフストーム

 

 ・つるのムチ

 

 

 

 とりあえずこのフシギダネはこの4つの技を使えるようでそのうち二つは強力な遺伝技だ。ねをはるは耐久型としては申し分ないし、リーフストームは御三家くさタイプの特性、しんりょくを生かせばそれこそ通常時に出したハードプランドと渡り合えるどころか上回る強い技だ。ハードプランドは反動がある上に命中率が低いからリーフストームの方が使える。……レベル1のくせしてつるのムチをなんで覚えているかなんて知らん! こっちが聞きたいくらいだ! 

 

 

 

「それじゃ帰ろうか。フシギダネ」

 

「ダネフシっ!」

 

 俺がボールに手をかけるとフシギダネはつるのムチで何かを指差した。

 

「あれは……イーブイ?」

 

 DVは家庭内暴力だが、イーブイは進化ポケモンだ。DVのある家庭に近づきたくなくともイーブイには近づき、俺が腰を下ろすとイーブイは首を傾げた。

 

「ブイ?」

 

 か、かわええ……イーブイの首を傾げる姿はこいぬこを思い出させる。パソコンのある皆はぬこって調べてみな。癒されるから。

 

「イーブイ、どうしたの? 迷子になったのかい?」

 

「ブイ……」

 

 あれ? 首を横に振ったってことは違うのか? それにしては随分悲しげだな。

 

「もしかして捨てられたのかい?」

 

「……」

 

 イーブイは無言で頷き、俺にすり寄った。

 

「ブイー……」

 

 どうやら寂しがっているようだな。でもまあ何でこのデパートにいるんだ? ここならイーブイを引き取ってくれるトレーナーがいると思ったのか? ここよりもマンションの方が人に拾われやすいはずだ。

 

 

 

 出来れば引き取ってやりたいがノーマルタイプのイーブイを手にしてもくさタイプじゃない以上、俺のチートの条件上弱体化する。

 

 まず全体の種族値だけでも120減るし、そのあと個体値や努力値も20ずつダウン、さらにレベルも20下がり、最後に能力値に20減らすとオール能力値1(実際にはレベルの関係で、もっと違うだろうがこの付近にいるポケモンはどんなに高くともレベルは30くらいなのでそのくらいになる)の出来上がりだ。壁役くらいにしか役に立たなくなる。

 

 しかもリーフィアに進化させようともどこで進化させられるかなんてものはカントーでは実証例がない。おそらくトキワの森でレベルアップさせればいいんだろうが、それだと確信ないしな。一番いいのは実証例があるシンオウとかに行くべきだよな。あそこにはナエトルやユキカブリ、ロトム──フォルムチェンジすればくさタイプになる──もいるし、行ってみるか。そうとなれば決まりだ! 

 

 

 

「一緒に来るか?」

 

「ブイ!」

 

 イーブイは俺の取り出したモンスターボールの中へ入り、ゲットされた。しばらくの間、弱いままだけど我慢してくれよ。リーフィアになったら即戦力だからな。

 

「フシギダネも戻れ!」

 

 フシギダネも戻し、俺はタマムシデパートでこれから使う技マシンなどを購入して、タマムシから旅立つ為一度ジムに帰った。

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 タマムシジムに帰り、俺はエリカの元へ駆け寄った。

 

「あら、コスモおかえりな……zzz」

 

 ポケモンバトルをして疲れたのかそれとも単なる趣味-エリカは昼寝が趣味-なのかわからないがどちらにせよ口を開いた瞬間、寝てしまった。

 

「お姉様、起きてください。大事な話がありますから!」

 

 ゆさゆさと揺らし、エリカの首が揺れるとエリカも目を少し開く。

 

「ん〜……おはようございます、コスモ」

 

「おはようお姉様。とっとと起きやがってください」

 

 イカンイカン、少しイラついてエリカに当たってしまった。だがこの程度で怒るようなエリカじゃないだろ。

 

「チューしてくれたら起きます……」

 

「何故ですか? 何故僕がお姉様に接吻しなければならないんですか?」

 

 いくらなんでもブラコンすぎないか? 

 

「ほらよく言うでしょう、眠りについた姫を起こすには王子様のチューが一番だと」

 

「お姉様、それ違いますよ。それは……」

 

「zzz」

 

 おおぃっ、寝るなっ! いやわざとか? わざとだな! でなきゃこんなタイミングで寝られるか!! 

 

「……」

 

 エリカの唇が「さあ、早くキスをしやがれ!」と言わんばかりにピクピクと動く。うん、絶対起きている。起きてなきゃそんなに動かねえって。

 

 

 

 さてどうするべきか、と考えていると一つ名案が浮かんだ。コンテストに使うカメラを取り出し、寝てるエリカにそれを向けた。

 

「お姉様、笑って笑って! ハイチーズ!」

 

 パシャリ! 

 

 写真を撮った瞬間、エリカはすぐに目を開け、背筋を伸ばし笑顔で写真に写る。

 

「あ……」

 

 エリカがそれに気づいて顔を赤くする。こればかりは仕方ない。実家の習慣みたいなものだからな。

 

 実家では写真を良く撮る為に昼間であろうとも真夜中であろうとも関係なしに写真を撮る直前に起こされる。しかも出来が悪ければ写真に写らない背中につるのムチが飛んでくるからタチが悪い。こんなスパルタ教育が良く名家として知られているよな……いやマジで。

 

 

 

「目が覚めましたか? お姉様?」

 

「ふぅ、仕方ありませんわね。それでどういった用件なのですか?」

 

「お姉様、僕は旅に出てみたい。フシギダネや先ほど捕まえたイーブイを育て、そしてまだ見ぬ仲間達と会いに行きたいんだ!」

 

 俺は本心から言っている。何せくさタイプポケモンは他の地方に多くいるからな。それにフシギダネやイーブイを育てて強くするのも間違いじゃない。

 

「わかりましたわ。ただし一週間以内にレインボーバッチを獲得しなければ学校に行き、ここで4年間働いてもらいますわ。いいですわね?」

 

 一週間か……赤緑青黄のようにレベルが低ければ問題ないがもしガチパで来たら負ける可能性は高い。何せエリカはくさタイプのエキスパートだ。元くさタイプアンチの俺としてはカモかもしれないが同じくさタイプで戦うとなれば相手が悪い。

 

 

 

 一週間の間にレベルや努力値を上げられるか? かなりきついだろうな。

 

 レベリングは作業だから簡単だが努力値は考えてやらなきゃいけない。場合によっては努力値を下げる木の実とかも必要になる。レベルを上げてから努力値を調整するかその逆の方がいいのか。どっちにしてもやるしかないんだよな。

 

 

 

 ちなみにどうでもいいがエリカの言う4年間というのは中学の4年間と言う意味だ。ここの世界は日本とは違い、小中高大全てが4年ずつ行われるようになっているんだよ。何故そうなったのかはポケモンを育てる事情とかが関係しているらしいが詳しいことは割愛させてもらう。

 

 

 

「お姉様、それは構いませんがここで働くと言ってもどうやって働くんですか? タマムシジムは男子禁制のジムでしょう?」

 

「もちろん女の子(おとこのこ)として働いてもらいますよ」

 

 エリカソレルビチガーウ! 女装だけならまだしも、最悪去勢とか性転換されそうなんだが。

 

「とはいえ私も鬼ではありませんからちゃんとジムバッチ0個のコスモに合わせますから安心してくださいね」

 

 そういえばジムバッチの個数に合わせてジムトレーナーのレベルが変わるって設定あったなー。

 

 ……ん? でも待てよ? それじゃ金銀の五つ目のバッチをヤナギだったのに、6つ目以降はパワーアップされておらず弱かったのは何でだ? シナリオか? シナリオの所為なのか!?

 

 バッチ0個なんて言っているがシナリオ補正とかでガチパで来そうだ。絶対に油断しねえで勝ってやる! 

 

「ではお姉様、6日後に会いましょう」

 

「楽しみにお待ちしますよ」

 

 エリカの微笑みがかなり腹黒く見えたのはおそらく気のせいだろう。うん。とりあえずレベリングだ!




よろしければ感想や評価、お気に入り登録お願いします。

…そういえば最強の複合タイプってノーマル・ゴーストじゃありません?ノーマルタイプもゴーストタイプもかくとうタイプもどくタイプも効かないでかつ効果抜群があくタイプ(2倍)だけというチートですが未だに出ていないのが悔やまれます。


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第4草

色々とツッコミ要素がありますがとりあえず…

夜も寝ず昼寝してから感想を

何故か上の文が575になって『夜も寝ず昼寝してから○○○○○』は俳句とかに使えそうな予感がする作者でした。

ちなみに先週3DSとオメガルビー買いました。ミズゴロウを乱数調整して♀にして量産したり交換したりしてたら投稿忘れてました。そんな作者ですがよろしくお願いします。


「フシギダネ! そこでナゾノクサにたいあたり!」

 

「ダネーッ!」

 

 よしっ! これでナゾノクサ四匹倒したな。とくこう努力値+4とメモしておこう。

 

 しかし能力値的に考えてみるとほとんどの能力値がレベル100以上だもんな。ここらにいる野生のポケモンがレベル50だったとしても無双できるのは当たり前だ。これで出来なきゃ泣けてくるぜ。

 

「ツボーッ!」

 

 今度はマダツボミか。ウツボットの系統はこうげきの努力値を上げる。しかし俺としてはこうげきの努力値はあんまり上げたくねえ。だが最後に見たエリカの腹黒く見えた笑顔はエリカに何か秘策でもあるんじゃないのか? と思ってしまう。可能性としてはねむりごなやしびれごなを使って動きを制限するパターンだ。少なくとも力押しでやれるほど甘くはない。

 

「フシギダネ! つるのムチで薙ぎ払え!」

 

 だからその秘策を破る為にもレベリングだ。とにかくレベル上げて上げて上げまくってどんなポケモンが来てもこのフシギダネ一体で勝てるようにしなきゃいけない。イーブイは現状では役に立たないからな。後回しにしざるを得ない。他の地方に行ったら必ずリーフィアに進化させてやるから待ってろ! 

 

 

 

「フシャッ!」

 

「ツボーっ!?」

 

 マダツボミにつるのムチが当たった瞬間、バチーン! と音が鳴り響いてマダツボミが木にぶつかって倒れる。

 

 ヒュー……凄え。物理攻撃のつるのムチでもあんなに威力あるんだな。いくら実際のレベルの値が低くとも能力値はレベル100超えだからな。とくこうの能力値で影響されるリーフストームをやるのが怖くなってきた。ギャラドスが暴れるだけで街一つ壊せるんだからこのフシギダネにリーフストームをやらせたらとんでもないことになる。リーフストームは最後の切り札として使うしかないな。

 

 

 

「こんなものでしょ? じゃあ帰ろうか」

 

 ポケモンが出なくなると俺達は休憩を取るために草むらから出る。

 

『待って!』

 

 今日のところはこれでおしまいにしてジュースでも買ってフシギダネとイーブイに飲ませよう。

 

『待ってよ!』

 

 フシギダネも疲れただろう? トレーナーたる俺が幻聴まで聞こえるくらい疲れているんだ。戦ったお前はもっと疲れているはずだ。念の為ポケモンセンターで休ませて俺も寝よう。

 

『話を聞いてよ! このバカー!!』

 

 いだっ!? 腰打った! 腰打った! 一体何なんだ!? 

 

『やっと話を聞く気になったね』

 

 話を聞くもくそもねぇ! 今の俺の体勢は尻を空に向けて腰をさすっている体勢だ。10人にこんな体勢が話を聞く体勢と言えるのだろうか? と聞かれたら10人が言えないと答えるだろう。つまりこいつは目が腐っているか非常識な奴かのどちらかだ。あるいは両方だな。

 

 

 

『なんかとても失礼なことを言われた気がする』

 

「何を言っているんだ?」

 

 俺は顔を横向け、ちらりとそいつをみる。そいつはここカントーでは見られないポケモンでジョウト地方でも幻のポケモン扱いされているセレビィだ。あたりに岩があることから俺の腰をやったのはこいつのげんしのちからっぽいな。

 

『それよりも君の名前は?』

 

 話を聞かねえのはどっちだよ……このタマネギポケモンが。

 

「コスモ。タマムシシティのコスモ」

 

『コスモ。それよりさっきポケモンを虐めてたでしょ?』

 

「虐め?」

 

『ここにいたナゾノクサやマダツボミなんかはみんな君にゲットされに来たんだよ? それなのに君はフシギダネを使って追っ払った。酷すぎない?』

 

 ゲットされに来たって分かるのか? 

 

「一々捕まえていたらモンスターボールがすぐになくなって金もなくなるし、今回はフシギダネを鍛えにやってきたんだよ」

 

『じゃあさ、フシギダネを鍛えてあげるからこんなことは二度とやらないでね?』

 

「こんなことってのは?」

 

『この付近の野生のポケモンがいなくなるまで倒すことだよ。これやったら絶対許さないんだから!』

 

 いやいや時渡りのポケモンがそんなことを言うなよ。それとも生態系に影響を与えるほどだったのか? 可能性はなくない。

 

「なるほど、つまりレベルアップはタマネギに任せるしかないってことだね」

 

 俺はセレビィに向かって指差した。

 

『た、タマネギ!? 僕のことをそんな風に言ったのはコスモが初めてだよ!?』

 

「じゃあ他の連中に合わせてセレビィって呼んでみる? セレビィの価値に気づいた悪い奴らが拉致監禁するかもね」

 

 というか何でカントーにいるんだよ? セレビィはジョウトのポケモンだろ? それも幻のポケモンなのになんでこんなところにいるんだよ? 

 

『………………………………………………タマネギでよろしくお願いします』

 

 ものすごく嫌な名前の方を選んだか。悪党に囚われるよりかはマシだと判断したのは賢いことだ。

 

 

 

「フシギダネ、こいつが今日の最後の相手だ」

 

 何故セレビィがここにいるのかは放っておこう。とにかくセレビィが相手になると言った以上やるしかない。

 

「ダネフシっ!」

 

 フシギダネは疲れているにもかかわらず元気よく飛び出し、やる気を見せていた。どこが性格ひかえめなんだ? というツッコミはしない。おそらく相手に疲労とか不利な状況を見せるのがひかえめなんだろう。

 

『それじゃ……行くよ!』

 

 

 

 さてと、どうするか。相手はくさ・エスパーのポケモンだ。効果抜群なのはほのお、むし、あく、ひこう、こおり、ゴースト。その中で4倍ダメージはむしタイプの技だがフシギダネはむしタイプの技を覚えていないどころかその中で効果抜群のタイプの技を覚えていない。

 

 

 

 フシギダネが覚えているのはノーマル技のたいあたり、くさ技のつるのムチ、リーフストーム、ねをはるの合わせて四つだ。レベルが上がったからそれ以外にも使えるだろうがとりあえずこの4つの中でセレビィを倒さなきゃいけない。

 

 まずねをはるは論外だ。確かにねをはるは便利だがたいあたりが出来なくなる上に「避けろ!」が出来なくなる。ポケモンバトルの中で「避けろ!」と指示するのは当たり前の話らしく、あのお姉様ですら「避けなさい!」と言い方を変えて使うくらいだ。そんな無茶振りに応えられるポケモンってすげー! 

 

 俺はエリカのジム戦に備えたいということもあり「避けろ!」を使ってみたいのでねをはるは論外と言える。もしかしたら、ねをはるを使ったまま避けられるのかもしれないがそれはまだフシギダネには早い。

 

 

 

 そうなると一番ダメージ影響が少ないたいあたりだな。無難かつ一番安全な技だ。

 

「フシギダネ、タマネギに向かってたいあたりだ!」

 

「フシッ!」

 

 フシギダネは宙に浮いているセレビィに向かって駆けていき、跳ぶ。その速度はまるでプロ野球選手の豪速球だ。

 

『速っ! この子フシギダネだよね!?』

 

 セレビィはそんなことを言いながらもしっかり避けている。セレビィは宙に浮いているだけあってかどこへ避けるも自在って訳か。

 

「フシギダネ、つるのムチを使ってタマネギを捕まえろ!」

 

 だがこれも計算済みだ。普通つるのムチは引っ叩く為に使われるが縄のように使うやり方もある。更にそこから追加攻撃を加えるとエリカのモンジャラがよく使う攻撃パターンになる。

 

「ダネッ!」

 

『うわっ!』

 

「よし、そのまま地面に叩きつけろ!」

 

「ダーネーッ!!」

 

 フシギダネはセレビィをバックドロップをするかの如く、叩きつける。

 

 このフシギダネが物理攻撃が苦手とは言え、レベル1の時点で能力値は130オーバー。レベル20〜30くらいのナゾノクサ達を何匹も倒してきたからレベルはもっと上がっている為、能力値が180くらいは行っているんじゃないか? とにかくそんなぶっ飛んだ数値に加え頭を揺らしたんだ。ボクサーでも脳を揺らせば倒れるようにセレビィも目を回して倒れた。

 

「ビィ〜……」

 

 ……流石にやりすぎたな。セレビィの頭がクルクルパーになったらどうなる? 伝説のポケモンを傷つけた男として指名手配犯になるのか? そうなったらロケット団に入団して、ありとあらゆる責任をサカキやロケット団幹部達に擦りつけて脱退する。

 

 そんな素敵過ぎる妄想が現実になればいいのにと思いながら俺はフシギダネのモンスターボールを取り出した。

 

「戻れフシギダネ!」

 

 フシギダネを元に戻し、「お疲れフシギダネ」と声をかけセレビィをお姫様だっこで抱えてポケモンセンターに運ぶ。そりゃ悪事を働いたらロケット団に責任を押し付けるが、出来る限りのことは尽くす。

 

 

 

 ──ポケモンセンター移動中……Nowloading──

 

 

 

「こちらポケモンセンターで……ってそのポケモンどうしたの!?」

 

 ジョーイさんは気絶しているセレビィを見て目を開いた。そりゃそうだよな。今のセレビィはアニメのようにデカイたんこぶが頭についている。現実にそんなことがあれば動揺するのは無理ない。

 

「ポケモンバトルをしていたらタマネギ、このポケモンが頭を打ってしまったんです!」

 

 できるだけ俺が原因でそうなったことを説明せずに説明するとジョーイさんは頷いてくれた。

 

「わかったわ。すぐに治療します!」

 

 ジョーイさんはセレビィを持ち出し、すぐに去る……って俺のフシギダネも回復させてくれよ!? 

 

「行っちゃった」

 

 仕方ない。セレビィが来るまでの間、フシギダネに予備のジュースでも飲ませて回復させよう。




よろしければお気に入り登録・高評価、感想もよろしくお願いします

追記
マダツボミがマタツボミになっていた報告を受け訂正しました。お騒がせしました


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第5草

投稿が遅れた上にかなり短めです!仕方ないやん…モンハンとポケモンのクロスオーバーの作品を考えていたら予想以上に嵌ってしまいましたから…


「お待たせしました。頭を強く打っただけで他は異常はありませんわ」

 

 ああマジでよかった。これで死んでいたらポケモン殺しの罪に問われて大変なことになっていた。

 

「他に異常はありませんでしたか?」

 

「彼次第と言うべきでしょう。頭を強く打ちましたから脳に障害が出る可能性もゼロではありません。その時は私達に相談してください」

 

 確かにな……あれだけ頭を強く打ったんだ。脳に障害が出てもおかしくない。そもそもセレビィに脳があるのかどうか自体が怪しいが生き物である以上はあるんだろう。

 

「わかりました。では失礼します」

 

 それにしても参ったな。これでセレビィに支障が出たら色々とマズイ。セレビィは時渡りの術? だったけ? とにかく悪用されることくらいはわかる。その時に頭がおかしくなったセレビィがディアルガを誤って呼び出したらど偉いことになる。少なくとも悪人達から目をつけられることは間違いない。どうしたものか。

 

 

 

「きゃっ!?」

 

「うわっ!?」

 

 危な!! セレビィは無事か!? ……よかった無事だ。それにしても一体何だってんだ? 上をチラリと見るとそこには白いワンピースを着た清楚なお姉さんがいた。

 

「だ、大丈夫?」

 

 お姉さんが尻もちをついた俺に声をかけると俺は慌てて立ち上がった。

 

「な、なんでもありません!」

 

 ブンブンッ! と言わんばかりに首を横に振って否定する。

 

「無自覚のまま放っておくと後悔しますから手当てしないと……」

 

「結構です!」

 

 邪な感情が俺を支配しようとするが俺は力強く否定し、抵抗する。

 

「そっか、君がそういうなら仕方ないけどそのポケモンはどうなの?」

 

 やっばっ!? こんな光景エリカに見られたら何言われるか分かったもんじゃない! 下手したらモンジャラのつるのむちの刑だ! 

 

「いえ、少し安静にしていれば治りますから大丈夫ですよ」

 

「ごめんなさい、私のせいで……!」

 

 げっ!? お姉さんが傷つけたって誤解してやがる! 早く解かないとエリカに見られる。

 

「いやいや、さっきのバトルの時に頭をぶつけただけでお姉さんに非はありませんよ!」

 

「でも……」

 

「このままじゃキリがないですし、何かお互いに要望を出し合いません?」

 

 妥協して俺はそう提案するとお姉さんは首を傾げた。

 

「要望?」

 

「お互いにお詫びに何かするってことですよ」

 

「ダメよ! 私が全面的に悪かったんだし」

 

 それでもダメか……

 

「お姉さん、さっきこのポケモンは手当し終えたばかりなんです。だから今お詫びされても困ります!」

 

 ならセレビィを理由にするまでだな。理由と書いて利用と読む。まさしく外道だな……思っていて涙出てくる。前世のくさポケモンアンチに関しては文句を言われても仕方ないがそれ以外は綺麗なままでいたいんだよ! 

 

「そう言われちゃ仕方ないわ。これを受け取って」

 

 そう言って俺の涙を見たお姉さんは電話番号の書かれた紙を渡してきた。

 

「これは?」

 

「私の電話番号よ。明日お詫びに何か奢ってあげますよ」

 

「は、はぁ……」

 

「それと私の名前も教えておくね。私はミカンよ」

 

 ミカン、まさかな? こんなところにジョウトのジムリーダーがいる訳がない。

 

「コスモです」

 

「それじゃコスモ君、明日絶対に電話してよ!」

 

 そう言ってミカンさんはダッシュでその場からいなくなった。

 

 

 

「一体なんだったんだ?」

 

 ミカンさんは優しいけどちょっと謎が多いミステリアスなお姉さん。俺の頭の中でそう認識するとセレビィが目を開けた。

 

『う、ここは?』

 

「起きたタマネギ?」

 

『そうだ、思い出した! 君のフシギダネにボロクソにやられたんだ!』

 

 ボロクソって言えるほど攻めていたか? 話を合わせておくか。

 

「ごめんごめん。そうでもしなきゃ勝てなかったし」

 

『だからってバックドロップはないでしょ……』

 

 セレビィじゃなく他のポケモントレーナーが相手だったら間違いなくトレーナーが泣いていたな。

 

 

 

 そんな話はともかく俺は真顔になり、モンスターボールを取り出した。

 

「それよりタマネギ、僕のポケモンにならない?」

 

『何で?』

 

 セレビィが首を傾げる姿はかなり可愛らしい。だけどタマネギとあだ名をつけているから少し細めのタマネギにしか見えない。

 

「野生の状態よりも僕の保護下にいた方がいいと思うよ? 少なくともモンスターボールで捕まることはなくなるだろうし」

 

 ID登録のあるモンスターボールにセレビィが入れば少なくとも他のポケモントレーナーから正規にゲットされることはない。非合法な手段でやられたら流石にどうしようもないがその時は手配書を作らせるだけだ。

 

『うーん。確かに』

 

「それじゃ……!」

 

『でもまだ判断材料が足りないな』

 

 何だって?! 好感度が足りないのか? それともなつき度? 何にしても聞かなきゃわからねえな。

 

 

 

「具体的には?」

 

『僕を倒したのはすごいと思うよ。だけどコスモの言うことを聞きたくないんだよね』

 

 なるほど性格はなまいきか。いや違うな。単純にバッチをゲットしていないからか? どっちにしてもトレーナーとして認めたくないようだ。これはポケモンの本能なんだろうな。俺のチートは確かにくさポケモンに関してはチートだ。しかし言うことを聞く聞かないはまた別の話。となればトレーナーとしての力量を見せるしかないな。

 

「それじゃ明後日。明後日にジム戦をやるからそれを見て判断してよ」

 

『あんまり人前には出たくないから姿を消して見させて貰うよ』

 

「それで構わない。ただそれまでの間おとなしくしてなよ? 頭を打ったんだから」

 

『そうだね。おとなしくコスモに引っ付いておくよ』

 

 そう言ってセレビィことタマネギは眠りにつく。……何にしても明後日だな。フシギダネもいつ進化してもおかしくないほどにレベルが上がった。これなら1つ目のバッチ程度なら楽勝だ。とりあえず今日はタマムシジムに帰ろう! 

 

 

 

 〜おまけ〜

 

 

 

 コスモがセレビィことタマネギと話しかけている最中、タマムシジムに一人の女性が中へと入っていった。

 

「あらミカンさん。ご久しぶりですわね」

 

「本当に久しぶりね。エリカさん」

 

 その女性の名前はミカン。話から察するにエリカと知り合いであることがわかる。

 

 

 

「それにしても何故タマムシに? アサギジムの仕事はどうされたのですか?」

 

「今改築工事中で、中に入れないの。だからそれまでの間エリカさんのいるタマムシに行こうかな〜って」

 

「しかしあのデンリュウ、アカリちゃんは?」

 

「アカリちゃんは灯台の明かりを点ける役目がなければ一緒に連れてってあげたかったんだけど……仕方なく私一人でここに来たのよ」

 

「そう言うことなら仕方ありませんわね。今度は私がアサギジムの方へ旅行に行きましょうか?」

 

「アカリちゃんも喜ぶから是非お願いするわ。それとアサギに住んでいるセンリさんって言う方が他の地方のジムリーダーになるみたいですよ。エリカさんも是非会ったらどうでしょうか?」

 

「センリさんですか……どんな方なんですか?」

 

「エキスパートタイプはアカネさんと同じくノーマル。切り札はケッキングと呼ばれる他の地方のポケモンを使うらしいですよ」

 

「ケッキング、ホウエン地方のポケモンでしたわね」

 

「ええ。とくせいこそなまけだけど力を発揮した時のケッキングはカイリュー、バンギラスすらも凌ぐとも言われています。私も一度そのケッキングと戦ってみましたけど手も足も出なかった」

 

「相性では有利なはずのいわタイプ使いのミカンさんが手も足も出ないなんてセンリさんはお強いのですね」

 

「間違いなくリーグトップクラスでしょうね。それとエリカさん、私のエキスパートタイプをいわタイプからはがねタイプに変えましたのでよろしくお願いしますね」

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

 こうして二人はコスモが帰ってくるまで世間話をしていた。




ちなみに作者はポケモンザコです。どのくらいザコかというとリザードンY、ドサイドン、サザンドラのパーティでバトルハウスでは19連勝、シングルバトル検定5400Pが限界という有様です。そんな作者のあとがきでした


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第6草

おまたせ致しました!今回はgdgdになった上にタマムシデパートに行きませんでした…次回こそはそうしたいと思います。


「ただいま〜」

 

 俺はタマムシジムに帰るとそこにはミカンさんがいた。ちなみにタマムシジムに居候している状態なので「ただいま」であっている。

 

「あらコスモ君……さっきぶりね」

 

「ミカンさん、どうしてここに? ジムに挑戦しに来たんですか?」

 

「違うわ。私の友達がここのジムリーダーをしていてその関係でここに来たのよ」

 

「ここのジムリーダーは僕の姉ですよ」

 

「え? え!? ええぇぇぇ〜っ!?」

 

 ミカンさん、そんなに驚くことはないでしょう。確かにエリカと俺は似てないとかよく言われるけどよくよく見ればそっくりなんだよな。

 

「そんなに驚きますか?」

 

「でも、確かに言われてみれば顔はエリカさんそっくり……」

 

 そこは雰囲気って言って欲しかった。顔はエリカそっくりってことは俺は女顔ってことを遠回しに言っているのと同じだ。

 

 しかしそんな顔の造形を否定しても俺の顔が変わる訳がないので話題を変えた。

 

「お姉様は僕のことを話していないんですか?」

 

「一度も話してないわ。そういえばカントー・ジョウトのジムリーダーの女子会で弟とか妹とかの話題になっても自分から口を開くことはなかったわ」

 

 カントーとジョウトのジムリーダーの女子会ってどんなメンバーだよ? とりあえずわかるのはエリカがその中に入っていることと、ナツメがそのメンバーに入っていないことだけだ。

 

 この世界のカントーで女性がジムリーダーを務めているのはこのタマムシジムだけだ。ヤマブキジムは今の時点ではナツメではなく他の野郎が務めている。だからナツメが女子会のメンバーに入らないことくらいはわかる。

 

 

 

「ミカンさんはジョウトのジムリーダーなんですか?」

 

 しかしこの若さでジムリーダーを務めるなんて意外にも早いんだな。アニポケのミカンは年上好みのタケシ(15歳)が言い寄って来たことから16〜18くらいだとわかる。現時点じゃエリカの同い年の13歳っぽい雰囲気があるな。

 

「言ってなかったけ? アサギジムのジムリーダー。それが私の肩書きよ」

 

 よし、これでミカンさんがジムリーダーだということが確定した。

 

「アサギジムではどんなタイプを使うんですか?」

 

 ……俺はミカンさんがはがねタイプのエキスパートだと言うことを知っている。だがそれでも聞いたのはボロが出るかもしれないからだ。その為に嘘を吐いてより大きな嘘を吐きたくない。特に俺が転生者だと知れたら面倒だ。

 

 その理由は後々話すとして何故タイプを聞く時「ミカンさんは」ではなく「アサギジムでは」と聞いたのかいうとジム以外、要するに旅をする時等はどうしても別のタイプが必要だ。あのエリカですらくさタイプでないピジョットやラプラスを使うくらいだ。

 

 しかしジムではどんなタイプを使うのかはジムによって異なるが1種類だ。例外と言えばグリーンの時のトキワジムだ。

 

「はがねタイプよ。聞いたことある?」

 

「もちろん……はがねタイプの弱点はほのお、かくとう、じめん。逆にはがねタイプに効きにくいのはそれらとみず、でんき、ゴースト、あくを除いた全てのタイプでしたよね。特にどくタイプは無効化されてしまう。はがねタイプ全体の特徴としては素早さが低い変わりにぼうぎょに優れたタイプですね」

 

「コスモ君は博識なのね。私よりもはがねタイプについて詳しいんじゃない?」

 

「ポケモントレーナーならこれくらいは常識ですよ。何せはがねタイプはドラゴンタイプの天敵のタイプ三つを半減しますからね」

 

 天敵のタイプとはドラゴン、フェアリー、こおりの三つのタイプだ。600族のドラゴンタイプを所持しているならはがねタイプを所持しておけばパーティバランスが良くなるし、俺もくさタイプアンチをする為に育てたこともある。ただちらほら対戦で見えるゴウカザルや夢特性持ちのバシャーモは天敵と言えるのではがねタイプを使うよりも他のタイプを育てた。仕方ないじゃん、くさタイプアンチパーティでも対戦で勝ちたいし。

 

「……ねえ、コスモ君。良かったらアサギジムトレーナーにならない?」

 

 へっ? この程度の知識でスカウトされたのか? う〜ん、まだまだ知識が広まっていないのか? 何にせよ返事はしておこう。

 

 

 

「お断りさせて貰います」

 

 俺の返事はNoだった。

 

「あらどうして?」

 

 なんて答えたらいい? 俺のチートの内容を答えたら納得するか? ……あり得ないな。くさタイプのポケモンが強化される代わりに他のタイプのポケモンが弱体化されるなんて誰が信じるんだ? となれば自分がくさタイプ一筋である事を告げればいいか。

 

「僕はくさタイプ一筋ですからそれ以外のポケモン一切使いません」

 

「くさ・はがねタイプのナットレイを使えば問題ないわ」

 

 そういえばBWでいたなそんな奴。ほのおタイプにめちゃくちゃ弱いから元くさ・アンチの俺としては絶好のカモだったよな。

 

「今、ナットレイは持っていませんし持っていたとしてもナットレイだけ負担をかけるわけにもいきませんよ。それに明後日のジム戦で勝たなきゃここのジムトレーナーとして働かせるんですよ?」

 

「……ふぅん。その件についてはエリカさんに事情を聞かないとね。でもこんな女の子だらけのジム嫌でしょう? アサギジムなら私だけだから健全なお付き合いだけでなく夜の指導もできるわ」

 

 子供にそんなことを教えるなよ……というか13歳なのにそんなことを知っているなんてミカンさんはオマセさんだな! 

 

 

 

「私の弟に変なことを吹き込まないでくれますか? ミカンさん」

 

 おっとエリカが帰ってきたか。

 

「変なことも何もこのくらいのことは小学校の保健体育で習うわよ? それにエリカさん、何故コスモ君がエリカさんに負けたらジムトレーナーとなるように強制したの? 彼も立派な大人よ」

 

 いや保健体育でそんなこと習わねえよ。保健体育で習うのは精々男性器と女性器の仕組みだけだからな? それも小学生からしてみれば遠い次元の話だ。俺なんか女性器の仕組みを知っていても実感湧かなすぎて子供がどうやったら生まれるのかエロ本解禁の18歳になるまで知らなかったんだぞ? 

 

「1個目のバッチで負けるようであればトレーナーとして暮らしていけませんわ。それも旅をするようなトレーナーにはね」

 

「だからと言ってコスモ君を女の子だらけのジムに居させるの? それにここは男性禁制のジムじゃなかったの?」

 

「コスモが変装すれば全て解決しますわ」

 

「いや、解決してないわよ。少なくともコスモ君は自分の周りが女の子だらけで居心地は悪く感じると思うわ。しかも女装するなら尚更よ」

 

 ミカンさん凄え説得力があるぅっ! 流石年上のお姉さんだ! 

 

「何も女装させるだけが変装の手段とは限りませんわ」

 

 そう言ってエリカは俺達の前にウツボットっぽい何かを取り出した。

 

「これぞ我がタマムシジムのマスコットキャラ、ボットちゃん(♀)の着ぐるみですわ!」

 

「そんなものいらないでしょ!?」

 

 エリカのあんまりな行動に思わず俺は突っ込んだ。何だよボットちゃんって。確かにビジュアル的にはリアルティは低めだから子供達が寄りそうな感じだけどこんな相手に負けたら死にたくなるわ! 

 

「コスモ、そんなものとは失礼ですわね。これでもまだマシな方ですわよ?」

 

 なんか嫌な予感がする。仮にあのボットちゃんを燃やしたとしても別の奴とか出てきそうだ。

 

「エリカさんいい加減にして! もし貴女が女人禁制のジムで働くことになったらどんな気持ちになるのか考えてよ!」

 

「ケダモノだらけのジムなんて私が入ると思いますか? それに比べタマムシジムのトレーナーの皆さんはお淑やかですわ」

 

 ヒートアップし過ぎて凄えめんどくせえ、一応止めるか。

 

 

 

「ミカンさん、お姉様。僕が負けた時の話をあーだこーだと騒いでもキリがないから止めましょう」

 

「う……そう言われちゃ仕方ないわね。だけど大丈夫なの? 相手はくさタイプのエキスパートよ?」

 

「現時点で戦っても全く問題ありません。例えトレーナーやポケモンがいくら優秀でも圧倒的なレベル差には敵いませんからね」

 

 能力値換算で一番影響を受けるのはレベルが一番大きい。その次に種族値、個体値、努力値だ。その差が大きく開いている以上エリカに負けることはない。

 

 

 

「確かに、コスモ君がそれだけ自信があるなら明日タマムシデパートに一緒に行っても大丈夫そうね」

 

「ええ、明後日決着をつける予定ですから元々予定は空いてますよ」

 

「コスモ、ミカンさん……タマムシデパートに行くとは一体どういうことでしょうか?」

 

 ひいっ!? 何か般若がいる! エリカの衣装を着た般若がいる! 

 

「コスモ君のポケモンを傷つけてしまったからそのお詫びよ。コスモ君自身はいらないっていうからお互いにお詫びの品を渡す為にデパートで何か買おうって訳」

 

「私も行きますわ」

 

「「えっ?」」

 

 俺とミカンさんはそんな声を出し、二人してエリカをまじまじと見つめた。

 

「お姉様、生花教室はどうするんですか?」

 

「そんなものよりもコスモが悪影響を受けないか心配ですわ。何せミカンさんはデコッパチ貧乳のオマセさんですから」

 

「お姉様、さらっとミカンさんに喧嘩売らないで下さい……ミカンさん、明日はこんなブラコンは無視しましょう」

 

「そうね。コスモ君苦労するわね、こんな姉を持って」

 

「いえ普段は優しいお姉様なんですよ? とっておきのフシギダネを僕にくれたくらいですから」

 

 ただ少し暴走するだけで根は優しいんだよな。

 

「なるほどね。でもそれ以上にコスモ君も優しいわ」

 

 俺が優しい? 

 

「それはそうでしょう。何て言ったって私の弟ですから!」

 

 エリカ……自分のことじゃないのに胸を張るなよ。

 

「と、とにかくコスモ君。明日10時にタマムシデパートに行きましょう」

 

「わかりました」

 

 う〜ん……それにしても俺が優しいか。エリカに影響されたのか? 何にせよ明日はミカンさんとタマムシデパートで買い物だな。




今回の話で二つほどフラグが立ちましたね。何のフラグかは読者の皆様が考えてください。

ちなみに私の活動報告でこの小説とは関係ありませんがアンケートを行っています。よろしければそちらにもお答えください。


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第7草

疲れた、憑かれた、突かれた…同じ読み方でここまでマイナスなイメージしかしないのは多分これくらいでしょう…では本編です!


 タマムシデパートに着くとセレビィが口を開いた。

 

『昨日の夜、イーブイから聞いたんだけどここにイーブイがいたらしいけど本当?』

 

「ん? 本当だよ。何でイーブイがここにいたのかはわからないし、聞かないけどね」

 

『それじゃあフシギダネはどこにいたの?』

 

「それは……」

 

「コスモ!」

 

 俺がそれに答えようとすると着物ではなく洋服を着たエリカが後から声をかけて来たので中断し、セレビィをモンスターボールの中に入れる。

 

「お姉様珍しいですね。いつもだったら着物なのに」

 

 エリカの顔に影が出来ると、無言で俺の頭を……!? 

 

「あらあら、コスモ。私が着物しか持っていない言い方ですわね。私だって女の子ですもの。このくらいのお洋服なら持っていますわ」

 

「痛い痛い痛い!」

 

 マジで痛え! 何で俺を片手で持ち上げられるんだよ!? これでお淑やかなんて絶対嘘だ! カイリキー女って称号隠し持ってい──

 

「ぎゃーっ!?」

 

 なんか力増した!? これ以上力が上がるなんて予想外!! 

 

「コスモ、何か失礼なことを考えませんでした?」

 

「考えません! 僕は着物だけでなく洋服の姿も似合うなって思っただけです!」

 

 痛みから逃れようと俺はそう言ってエリカの機嫌をとる。

 

「あら……ごめんなさいねコスモ。でも今度から誤解されるような言葉は慎みなさいね」

 

 あ〜死ぬかと思った。何なんだよこのゴリラ女は

 

「返事!」

 

「は、はいぃっ!」

 

 やべっ! つるのムチは飛んできてないよな? 流石に飛んでこないか。何にしてもエリカの目の前でも変なことは考えないようにしよう。それが安全だ。

 

「コスモ君相手に何やっているのよエリカさん」

 

「些細な姉弟の戯れですわ、ミカンさん」

 

「その割にはコスモ君の悲鳴が聞こえたんだけど?」

 

「気のせいでしょう。ね? コスモ」

 

 うわっ!? エリカの目が笑ってねえ! 賛同しなきゃエリカからの罰が待っているし、賛同しよう。

 

「気のせいですよ、ミカンさん」

 

「それなら良いけど……」

 

 ミカンさんがそう言ってショボンとした顔になる。選択肢ミスったな。とっととデパートに入って気分でも変えよう! 

 

「それじゃあミカンさん、お姉様デパートに入りましょう!」

 

「そうね。エリカさんもジムの仕事で忙しいのに態々来てくれたんだから、早めにお買い物を終わらせましょう」

 

「ミカンさん、その心配はありませんわ。何故なら──」

 

 話が長くなりそうだからその場に置いてきた。エリカは俺が関わらければ結構マイペースかつおっちょこちょいだ。

 

 この前の挑戦者をタマムシジムに案内する時も間違って他所の家に案内したり、ジムの扉にぶつかったりとドジっ子だが人に迷惑をかけるようなことはほとんどしていない。

 

 要するにエリカは放っておいても問題ないということだ。むしろ放っておいたほうが良いくらいだ。ミカンさんもエリカを放っておくあたり同じことを考えている証拠だな。

 

 

 

 ○○○○○

 

 

 

「さてコスモ君、何が欲しいの?」

 

「ソーラービームの技マシンですね。あれが有れば僕のパーティの戦力アップになりますから」

 

 特にくさタイプは晴れパと呼ばれるタイプが数多く、ソーラービームとの相性がいい。これからイーブイの進化形、リーフィアもその恩恵を受ける。

 

「ソーラービーム……あれ確かに強いわね。私のイワークがエリカさんのラフレシアのソーラービームをやられたことを思い出すわ」

 

 戦ったことあんのかよ? イワーク? ミカンさんの切り札ってハガネールだよな? 

 

「イワークっていわタイプのポケモンじゃありませんでした? ミカンさんははがねタイプのポケモンを使うんじゃないんですか?」

 

「つい最近までエキスパートタイプはいわタイプだったんだけどイワークがハガネールに進化したのをキッカケにエキスパートタイプをはがねタイプに切り替えたの。それでジムも改築することになって時間が出来たからこうして親友の住むタマムシシティまで来たのよ」

 

 いわタイプか。まさしく砂パで大活躍するタイプの一つだ。ただくさタイプアンチとしてはあまり好きにはなれないタイプの一つだ。まず攻撃するタイプとしては優秀なんだが弱点が多い上にいわタイプのほとんどが遅いから耐久向きのいわタイプはBD種族値二冠のツボツボや弱点が少ないユレイドルくらいのもんだろ。どっちにせよいわタイプのほとんどがくさタイプを弱点にしている為、使うことはなかった。

 

 

 

「親友ってお姉様?」

 

「そうよ。エリカさんと初めて会ったのは3年前のカントーリーグの大会予選ね。その大会をキッカケにエリカさんと意気投合して親友と呼べるまで仲良くなったわ」

 

 その時にソーラービームを喰らったのか。

 

「親友か……僕にも作れるかな?」

 

 思わず俺はそう呟いた。こっちの世界で過ごしてから友と呼べる奴はいない。精々そんなやつらはポケモンだけだ。

 

「じゃあコスモ、私と友達になろっか」

 

 ミカンさんがあまりにも意外過ぎる言葉を出して俺は唖然としてしまった。

 

「嫌なの?」

 

「いえ! よろしくお願いします! ミカンさん」

 

「そう、ならよかった。それと私のことはミカンでいいわよ。もう私達は友達同士なんだし、敬語も使わない方が良いと思うわ」

 

「それもそうだねミカン」

 

「……っ! ごめんトイレ行ってくるわね!」

 

 あっ!? おい!! 仕方ない。ミカンさん、いやミカン。……そんなにションベン漏れそうだったのか? 女って変なところで意地っ張りだし無理もないよな。アニポケに出てくるサトシのベイリーフしかり、カスミしかり、なんでなんだろうな? 

 

 

 

「お待たせコスモ」

 

 ミカンがスッキリした顔で戻ってくるとエリカも後ろについていた。

 

「お姉様、影からこっそり見守るんじゃなかったんですか?」

 

「止めました♡ よくよく考えてみればお二人に助言するという立場なら何一つも問題ありませんわ」

 

 何故だろう。エリカの体温は高いくせに声が冷たい。

 

「う〜んエリカさん。もうお腹もすいたし、あそこでお昼にしようかと考えていたんだけど」

 

 レストランを指差したミカンがアイコンタクトをとって「話に合わせろ!」と間接的に言ってきたのでフォローすることにした。

 

「そうですよお姉様。腹が減っては戦は出来ぬというじゃないですか。僕もお腹空きましたし、あそこで食べます」

 

「それでは参りましょうか」

 

 エリカの言葉に俺を含め全員、レストランへと歩み寄る。しかし妙なことにそのレストランは空いていた。

 

 

 

「おかしいですわね。タマムシデパートのレストランならもっと混雑してもおかしくないのですが」

 

 エリカの言う通り、タマムシデパートのレストランとなればめちゃくちゃ混雑しているんだが……何か理由でもあるのか? 

 

「エリカさん、コスモ、この看板を見て」

 

 俺は言われるがままにミカンが手を指した先にある看板を見るとその疑問が解けた。

 

【ここタマムシ・バトル・キッチンは普通のレストランとは違い格安で召し上がれます。ただし星のバッチを付けた店員に(星の数×1000)円支払いポケモンバトルをし、勝利した後その店員の星の数の食事を召し上がることが出来ます。ただし星の数が多い店員ほど強くなる傾向がありますので注意してください】

 

 要はバトルフードの相手が店員一人になったってことだな。余程のことがない限り今持っているポケモンで戦えるのはフシギダネだけだ。無難に星二つ程度の店員でいいだろ。

 

 

 

「つまり、店員さん達と勝負して勝てばよろしいのですね?」

 

 エリカの言葉にミカンが頷く。

 

「ええ。ただ難易度の高さの基準がわからないのはちょっと問題よね」

 

「それがこの店が繁盛しない原因だと思いますよ」

 

 確かにシステム自体は凄えもんだ。こんなのがゲームにあったら是非とも使いたいくらいだな。だけど現実はそうは甘くない。難易度の基準がわからない以上挑戦したくないんだろうな。無駄に金を取られるだけだし。

 

「それにしたってポケモンバトルに自信のある方はいてもおかしくないんじゃ……」

 

「確かにそれは言えている」

 

 とはいえ繁盛しない理由はそれだけじゃないだろ。ポケモンバトルに自信がある奴ならどこにでもいる。そういう客達を呼び寄せるにはうってつけの店なんだがな。

 

「タマムシ食堂にお客を取られてしまったのではないでしょうか? それに立地場所も悪いですわ」

 

「「あ〜……」」

 

 言われてみれば納得出来る。タマムシ食堂は安い・美味い・早い・多いの4コンボに加え、誰でも気軽に利用出来る。その上時々大食い大会などのイベントやテレビの取材もある。他のタマムシデパートのレストランが何故繁盛出来るのかが不思議なくらいタマムシ食堂は客を取っていっている。むしろここの店が繁盛しないのは当たり前なんだろうな。

 

「と、とりあえず入るだけ入ってみましょう。ね? コスモ、エリカさん」

 

 そ、そうだよな? 何か周りの視線も痛いし、そろそろ入らないと気まずい。

 

「あ!」

 

「どうしましたお姉様?」

 

「モンスターボール持ってくるのを忘れました!」

 

 やっぱりおっちょこちょいなんだな。エリカは。というかモンジャラのつるのムチが飛ばなかったのもその理由なんじゃないのか? 十分にあり得りそうで嫌だ。

 

「エリカさん、いくら何でもそれは……」

 

 ミカン、よくわかるぞ。何せポケモントレーナーがモンスターボールを忘れるなんてことはしちゃいけないはずだ。なのにジムリーダーがそれをするのは片足サンダルを履いているのにもう片方の足に革靴を履いているくらい滑稽すぎる。

 

「申し訳ござりませんが私はモンスターボールを取ってくるのでお二人で食事して待ってて下さいませ」

 

 エリカがその場を立ち去り、俺たちはその店の中へ入った。




まさかタマムシデパートで食事をする前に3000文字オーバーしてしまうとは…

ということで次回は初めてのポケモンバトル回(トレーナー)です。


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第8草

ようやく書けた…

経済的に厳しくサンムーンが買えない…レーティングバトルがしてぇぇぇっ!!

ここしばらくORASでオンライン対戦をしていた作者の愚痴でした。


 広っ!? これタマムシジムよりも広いんじゃないのか? いや食事をするスペースそのものは他のレストランと同じくらいだ。しかしここには5つのバトルフィールドがあるからそう見えるのか? 

 

「いらっしゃいませ。2名様ですか?」

 

 どう答えるかな。ここで2名だと言ってもいいけども、それだとエリカとの約束を反故にすることになる……うん、流石に可哀想だ。

 

「いえ、後一人来ます」

 

 そんな俺の気持ちが伝わったのかミカンがそう答えてくれた。

 

「かしこまりました。お客様の名前は?」

 

「コスモです」

 

「ミカンです」

 

「コスモ様とミカン様ですね。かしこまりました。ではご案内させていただきます」

 

 しかし何で俺達の名前を聞いたんだろうな? ああ、エリカがここに来た時の対処か。中々考えているじゃん。ここの店内も中々良いところだな。客が全くいないのが不思議なくらいだ。

 

 

 

「ではこちらのメニューを見て決まりましたらそこのスイッチを押してください」

 

 そこは普通のレストランと変わらねえんだな……どれどれ? 

 

「さてどんなメニューがあるのかな?」

 

 俺はそう呟き、メニューの中を視界に入れる。

 

 サンドイッチセット、カレーライス、チーズカルビ牛丼……確かに悪くねえよな。……うわっ!? これで星一つかよ!! 千円でこんな美味そうなもんを食えるのか。確かに貧乏学生にはキツイ値段だが、偶に贅沢する時にはこれだけのもんを食えるなら文句は言えねえな……しかし星の数が最大だったらどうなるんだ? 超一流シェフが作る最高級の料理でも出てくるのか? いや星の数は最大10個、つまり一万円で食える料理はそんなにある訳がない。銀座の寿司屋なんかは平気で10万円を超えるから、せいぜいあって最高級の寿司は3貫くらいだろう。などと思ってコップの中の麦茶の飲みながら星10個のところを見た。

 

「……っ!?」

 

 危うく吹きかけたが何とか堪え、その麦茶を飲み込む。喉が冷てえ……

 

「どうしたのコスモ?」

 

 うげっ!? 咽せる、咽せるって!? とにかく飲み込んで答えねえと……

 

「な゛っんでもない……」

 

 俺は咽せるのを防ごうとして、麦茶を飲み込んで答えるとな行濁点使いになってしまった。やはりと言うかミカンは俺の様子を見て不安な顔になっていた。

 

「メニューの安さに驚いただけだよ」

 

「ああそういうこと」

 

 ミカンはそれで納得してくれて、頷いていた。

 

 

 

「ところでもう決まった?」

 

 何が決まったかは敢えて口にしない。ミカンも俺もわかりきっているからだ。

 

「大丈夫よ。コスモも決まったの?」

 

「まあね、それじゃあ注文しようか」

 

 俺がそう言ってスイッチを押すとすぐに店員がやって来てメニューを尋ねてきた。

 

「お待たせ致しました。ご注文は何でしょうか?」

 

「チーズカルビ牛丼一つ」

 

 俺は簡潔にそう答える。確かに他の奴も美味そうなんだが、やっぱり元庶民には庶民なりのメニューが一番いい。例えどんなに高い飯でも安物の好物には勝てねえってことだ。

 

「私は納豆セットを一つ」

 

 納豆セット? どこにあったんだそれ。後で調べてみるか。

 

「以上で」

 

 ミカンが注文を終えると店員が再び尋ね、それを聞いた俺達はそれを了承した。

 

「ではチーズカルビ牛丼の方は1番フィールド、納豆セットの方は2番フィールドでお待ちください」

 

 店員が1番フィールドと2番フィールドの方向を教え、俺達は移動した。

 

「それじゃミカン。また後でな」

 

「お互いに食べられるようにしようね」

 

 俺達はフィールドが違うので別れるが……どうせすぐに会える。

 

 

 

 ○○○○○

 

 

 

「それではよろしくお願い致します」

 

 目の前に出てきて、俺に金を貰った店員はウェイトレスのトレーナー。俺の相手はこいつだ。

 

「お互いベストを尽くしましょう。いけっ! フシギダネ!」

 

「ダネフシッ!」

 

 フシギダネをモンスターボールから出すと気合満々、意気揚々、元気はつらつと言った感じだ。

 

 

 

「いけっ、マグマッグ!」

 

 よりによってほのおタイプのポケモンかよ。これで普通の子供なら「そんなのずるい!」などといって駄々をこねる。というか普通にむかつく。ただでさえくさタイプのポケモンしか使えないのにほのおタイプのポケモンを使われると改めてむかつく。どのくらいむかつくかというと俺が伝説集めていないのにフリーバトルで伝説ばかり入れて対戦するような伝説厨くらいむかつくぅぅぅっ! そんなものに頼っているんじゃねえ! 

 

 だが今の俺はこのフシギダネを信じている上に超絶チートがある。相性なんて関係なしにパワーでごり押ししてやんよ! 

 

「フシギダネ、たいあたり!」

 

 フシギダネにたいあたりを指示すると2m、いやそれ以上か? とにかく高い所から重い物が落ちてきたような鈍い音が響く。ウェイトレスが「え? 速……!?」などと言っている間にマグマッグは目を回し戦闘不能になっていた。まあそうだろうな。相手が一回指示した瞬間に終わるポケモンバトルなんて唖然とするしかないよな。やっぱチートだわ。くさタイプポケモンの能力値換算変更チート万歳! 

 

「ウェイトレスのお姉さん、それで終わり?」

 

 多分ドヤ顔になっているだろう顔を元に戻し、首をかしげる。……実に爽快だ。自分が伝説を使わずにフリーバトルで伝説オンリーの伝説厨に勝つくらい爽快な気分だ。だから顔が緩んでしまうのを堪えるしかなかった。

 

「はっ!? はい、私のマグマッグが倒された以上終わりです。ありがとうござい……!?」

 

 な、なんだ? まさか、進化か? そういえばエリカに勝つために狩りまくっていたからもう進化してもおかしくねえんだよな。

 

「ソウ……!」

 

 おめでとう! フシギダネはフシギソウに進化した! ……ってか? それにしてもまさかこんなに早く進化するとは思いもしなかった。

 

「フシギソウ、おめでとう」

 

 フシギソウを褒め、頭を撫でる。出来ればそのつぼみにも触りたかったがポケパルレでフシギソウが嫌がる様子があった為、そう触るものではないと判断した。

 

「フシッ!」

 

「それじゃフシギソウ戻って」

 

 ん? なんか口調がさらに変わってる!? いつもの俺なら「戻れ」という筈なのに何故だぁぁっ!? というか前世の俺なら「雑魚〜!」などとほざきながら、ウェイトレスにからかうような下衆野郎だったというのに今じゃこの有様か……上流社会の教育は恐ろしい。

 

「ではコスモ様。ご食事をお取りください」

 

 おっと、俺の口調云々よりもやるべきことをやらねば。チーズカルビ牛丼を乗せたお盆を取って元の席に戻ろう。ミカンと一緒に食べられるかな? なんて想像も楽しいもんだ。でもミカンのエキスパートタイプは耐久のポケモンが多いはがねタイプ。だが同時にじしんとかに弱いタイプなんだよな……これが。

 

 

 

 ○○○○○

 

 

 

「おかえりなさいコスモ」

 

「お姉様」

 

 席に戻るとそこにいたのはミカンではなくエリカだった。つうか早いな。

 

「コスモそれは何ですの?」

 

 俺のチーズカルビ牛丼を見て、不思議そうに見つめる。

 

「チーズカルビ牛丼。美味しそうに見えたから頼んだんだ」

 

「確かに良い匂いですわ。それは星いくつでしたの?」

 

「1つです。それで楽勝でしたから3つでも勝てたと思います」

 

 というかフシギソウに進化したからほとんどのポケモンに勝てるだろ。

 

「なるほど……手持ちのポケモンをそこまで育てたのですか?」

 

「そのバトル後、フシギダネがフシギソウに進化するくらいには育てました」

 

「まあ……それはおめでとうございます」

 

「ありがとうございますお姉様。ところでお姉様はご注文しないのですか?」

 

「そうですわね、ミカンさんが帰ってきていませんが、私も注文いたしましょう」

 

 そう言ってエリカはメニューを開いてじっとそれを見る。うーむ、しかし慣れないな。エリカの洋服姿ってのは。エリカの洋服姿が見られるのはアニポケくらいだからな。しかも初期の頃以来出番がないから尚更か。エリカとミカンに変態だの露出狂だのとか言われたイブキはBWの頃になっても出番あるというのに。

 

「決まりました」

 

 早いな!? などと思っているとエリカはスイッチを押して店員を呼ぶ。

 

「お待たせいたしました。ご注文は何にしますか?」

 

「特上うな丼を一つ。以上ですわ」

 

 特上うな丼か……星いくつだ? うおっ!? 9個!? そんなにやって大丈夫かよ? 

 

「かしこまりました。それでは1番のフィールドでお待ちください」

 

「それでは行ってきますわ。コスモ」

 

 不安だ。何が不安かというとわざと負けて俺にねだる様子を想像してしまったからだ。その時までに速く食い終わらないといけない……いけないのに、食事のマナーが邪魔して食えない。この時ばかりはエリカの実家に生まれたことを後悔した。ああ、旨えっ!




いくつか今回の話は実話が混じっています。
・な行濁点使い
咽せると何故かそうなる
・俺が伝説が集めていない
何故かいつもボールがなくなるまで逃げ続ける上にリア友がいない、3DSを二つ持っていないので伝説を集めることは実質不可能
・自分が伝説を使わずにフリーバトルで伝説オンリーの伝説厨に勝つ
詳しくは作者のスペックにて


☆因みに作者のスペック
・ORASのバトル検定ダブルで6500点
・トリプルバトルでキュレム、アルセウス、ボルケニオンの他伝説3体の伝説厨に全て非伝説ポケモンで勝利。
・トリプルバトルでメガボーマンダ、マンムー、ヌメルゴンを使う厨ポケ使い

基準がわからないのでとりあえず載せました。作者のスペックなどこの小説に関係ないことについて質問などがあればメッセージボックスへどうぞ。アンケートについては活動報告にて。この小説についての感想は感想にてお待ちしています。


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第9草

投稿遅れたくせして中身スッカスカです!

仕方ないやん…サンを購入したらハマってしまったのと、アシマリを選んだせいでソーラービームで何度やられて心が折れかけました。あれはミルタンクやケッキングよりもえげつない。

ちなみにORASのフリートリプルバトルでガブリアスがダークライのダークホールを二回も避けてくれて好きになりました。以降ガブリアスを育てようと決意しました。





「お待たせ、コスモ」

 

 ミカンがお盆を両手に微笑むとそのお盆には料理が乗せられていた。

 

「ミカンおかえり」

 

「ふふ。そう言えば、エリカさんはまだ来てないの?」

 

「お姉様なら僕がここに来た後、留守番を任せるようにポケモンバトルしに行ったよ」

 

「ちなみに星いくつの注文を?」

 

「9個。あんな難易度で大丈夫かな?」

 

「大丈夫よ。エリカさんはカントーのジムリーダーの中でもかなりの実力者よ。エリカさんが負ける相手と言ったらくさタイプに相性の悪いジムのジムリーダーか、四天王、チャンピオンクラスの人間よ」

 

 エリカの持つポケモンは俺と同様にくさタイプポケモンだが同時にカントー地方のポケモンだ。それで相性が悪いというとほのお、こおり、ひこう、エスパーだ。エスパーはくさタイプの弱点をつけるという訳ではないがカントー地方で生息するくさタイプでどくタイプを含んでいないのはモジャンボやナッシーの系統だけで後は皆含んでいる。つまりカントー地方においてはエスパータイプは実質くさタイプの弱点とも言えるタイプなんだよ。

 

 

 

 ……もっともどくタイプがあるおかげでむしタイプは弱点じゃなく等倍になっているからいいけれども初代、というよりもテッカニン&ヌケニンが出るまでのむしタイプのポケモンの不遇さは酷いものだ。その二頭ですら能力をただ上げるだけの存在だったり、ネタ当然の扱いだったりする。ウルガモスの登場でようやくむしタイプのポケモンが優遇されたと実感したものだ。何が言いたいのかというとむしタイプが不遇になるとどくタイプが不遇になるのは当然のことだということだ。

 

 

 

「……その四天王クラスの相手に当たったようだね」

 

 エリカが半泣きになっている姿が見えたので俺がそう呟くとミカンがエリカの方へ振り向き、目を丸くしていた。

 

「嘘でしょ?」

 

 どうやら本当に信じられないみたいで唖然としてしまうミカン。……あれだけ自信満々にしかも誇らしげに言っていたら誰でもそうなる。

 

「コスモぉ〜!」

 

 かつてのおしとやかな姿はどこにもなく、俺に抱きつき、さりげなく箸を使って俺の料理を食べようとした。

 

「お姉様、そんな食べ方ははしたないですよ?」

 

 俺はエリカの手を抓り、更に涙目にさせるが仕方ない。これも躾の為だ。

 

「コスモ、流石にエリカさんが可哀想だから止めてあげて……ね?」

 

「可哀想だからと言って甘やかすのは人として間違っています。それがウチの教育方針です」

 

「でも!」

 

「デモもストライキもないよ。これで癖になったらお姉様の渾名が【とっても意地汚いお嬢様】になるかもしれないんだよ? ミカンはそんな渾名の人と友達の関係を築けると思う?」

 

「……うん、無理ね」

 

「ミカンさん!」

 

「エリカさん、ごめんなさい。今の貴女を救うのはイブキさんの格好でこの街を徘徊するのと同じくらい無理」

 

「そこまで仰います!?」

 

「何にせよ、今のお姉様はみっともないですからここで待つか外で待っていて下さい」

 

「仕方ありませんね。そうさせて貰いますわ」

 

 エリカが諦めた表情でそう告げるとレストランから出る

 

「あいたっ」

 

 レストランのドアに顔をぶつけてしまい尻餅をついてしまい涙目になるがそれでもなんとか根性でレストランから外へ出た。

 

 

 

「……」

 

 俺は黙ってそれを見届けるとミカンにお金を渡した。

 

「このお金は?」

 

「このお金でお姉様に何か奢ってくれない? 僕が奢るとお姉様の為にならないから」

 

「なんだかんだ言ってもコスモってエリカさんのことを慕っているのね」

 

「あれでも姉だから」

 

「それじゃお義姉さんにいいものを買わないとね」

 

 ん? 何か漢字が違ったような気がしたんだが気のせいだよな? 

 

「よろしく頼むよ、ミカン」

 

 俺はその後、目の前にある料理を食べるとミカンが食べ終わるまで待った。

 

 

 

 ○○○○○

 

 

 

「あー美味しかった」

 

 俺はエリカの目の前でそう言うとミカンが小さな声で耳打ちした。

 

「ちょっとコスモ、お義姉さんの前でそんなことは……」

 

「あれはわざとだよ。そうでもしないと疑っちゃうでしょ?」

 

「でもわざわざする必要なんて……」

 

「あるよ。お姉様との仲が悪いってことをアピールすれば、旅に出る理由にもなるしね」

 

「う〜ん……そう言うことにしておくわ。でもエリカさんに後でお仕置きを受けても私は助けられないから自己責任でね」

 

「そこはわかっているよ。僕だってそこまで馬鹿じゃない」

 

 これはある一種の覚悟みたいなものだ。

 

 

 

「何をコソコソしているのですか?」

 

「何でもありませんよ、それよりもお姉様はどんな相手にやられたんですか?」

 

「確かエスパータイプの使い手でしたわ」

 

「やっぱり、お姉様。カントーのポケモンに囚われずに他の地方のポケモンを使ったらどうですか? カントーのくさタイプのポケモンって毒タイプ混同のポケモンが多いんですからエスパータイプと戦ったら普通に負けますよ」

 

「それはそうなのですが。他の地方のポケモンを輸入するとなるとやはり抵抗というものがあるのですわ」

 

 うん? もしかして地方のポケモントレーナーの多くって結構保守的なのか? だとしたら結構マズイよな……そういう人間が多いとどうしても他の地方との交流が生まれずに交換も出来なくなる。

 

「エリカさん、コスモの言う通りよ。いくらどくタイプを含んでいてどくの状態を気にしなくてもいいとは言え、とくこうの高いエスパータイプの他にほのお、ひこう、こおりタイプを持っているポケモンだって天敵でしょう? ジム戦ならともかく、本気を出すときなら一貫性がない方が良いんじゃないの?」

 

 そう考えるとこおりとひこうを等倍に抑え、どくタイプを無効化するくさ・はがねタイプのナットレイって耐久ポケモンとしてはかなり優秀だよな。あいつがいたおかげでめざ炎が流行ったって話も聞いたことあるし。

 

「お姉様、生花も他国の花を使えば美しさのレパートリーが増えるんですよ。ポケモンだって同じです。ポケモンも多くいればいるほど戦略の幅も広くなるんです。挑戦者が特定のタイプだけで固めてジムバッチを取っても挑戦者は実感が湧かず作業している感覚にとらわれます。そういった挑戦者と会ったことありませんか?」

 

「……確かにそのような挑戦者もいることは否定しませんわ」

 

「でしょう? そういった挑戦者をなくす為にもお姉様が一肌脱いで、他の地方のポケモンを導入してください」

 

「そこまで仰るのであれば仕方ありませんわね。わかりましたわ。前向きに検討いたします」

 

 それは半分否定しているんじゃないか? などと言えない俺はヘタレだった。

 

「私も他の地方のポケモンを導入しようかな」

 

 ナイスフォロー、ミカン! 

 

「それが良いよ、ミカン。ジムリーダーならそういうことを考えないとダメだよ」

 

 俺はミカンの導入発言に同調し、エリカの他地方ポケモン導入を促した。

 

「ミカンさん、コスモ。それよりもお買い物はどうなされたのですか?」

 

「あ」

 

 俺とミカンの声がハモり、顔を合わせた。

 

「それじゃ行こうか、ミカン」

 

「そうね。ここにいても始まらないわ」

 

 そそくさと俺とミカンはその場を去った。

 

 

 

 結局、ミカンはソーラービームの技マシンを購入し、俺はメタルコートを購入しお互いにそれらを交換して買い物は終わった。

 

 

 

 〜おまけ〜

 

 

 

 昼食を食べ、買い物が終わりコスモと別れたミカンとエリカは喫茶店に寄っていた。

 

「エリカさん、何か一品奢るわよ?」

 

「遠慮しておきますわ、先ほどミカンさん達がお買い物をしている間にこっそりと昼食を済ませておきましたからお腹が一杯で食べられません」

 

 その瞬間、エリカの腹の音が鳴り、空腹であることを伝えるとエリカが顔を真っ赤に染めた。

 

「食べていないなら食べていないと言えば良いのよ? どうして遠慮をするの? 親友だと思ったのは私だけなの?」

 

「ミカンさん、私も貴女のことを親友だと思っていますわ。だからこそ金銭関係には厳しくしなければなりません」

 

「……」

 

「例えそれが弟からお金を渡されて奢るように指示されたとしてもです」

 

 きっぱりと断言するとミカンは目を丸くし、そのことについて尋ねた。

 

「気づいていたの?」

 

「ただのカマかけですわ。でもコスモがこれで私の見込んだとおり、厳しくありながら優しい弟だと確信出来ました」

 

 エリカが微笑み、ミカンは微妙な顔つきになる。

 

「だからと言ってこのままエリカさんに何も奢らないのは私の立場がないわ」

 

「それならこうしましょう。耳を貸して下さいませ、ミカンさん」

 

 そしてエリカはミカンの耳元で提案するとミカンが微妙な顔つきから笑顔になり、満足げに微笑んだ。

 

「確かにそれなら問題ないわ」

 

「でしょう? それでは宜しくお願い致しますわね、ミカンさん」

 

 エリカがそう言って緑茶を注文し、ミカンもそれに続くようにミックスオレを注文した。




次回ようやくジム戦です。それにしてもタマネギの出番が全くない…

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第10草

ようやく更新できた…読者の皆様お待たせしました。それにしても評価低すぎてモチベーションがガリガリと削られていく…

第8草でフシギソウに進化していたのを完全に忘れてましたので編集しました。


 ミカンとの買い物が終わり、翌日。外はポケモンバトルをするのに絶好ともいえる晴天。特に晴れパなんかは喜ぶ天気だ。それ以外のパーティは知らん。

 

「コスモ、ジムバッチの確認致しますわ。何個所持していますか?」

 

「どこのジムバッチも持っていません」

 

「ジムバッチ0個によりルールはジムリーダー、つまり私が使えるポケモンは2体となります。また戦闘時におけるポケモンの交換は私は不可。存分にその力を発揮してくださ……zzz」

 

「寝るなよ!!」

 

 しかも立ったまま寝るなんて器用なことをするなよ! 

 

「はっ!? いけませんわね。今日はとても気持ち良い日ですから、眠くなりますわね」

 

「お姉様、早く始めましょうよ」

 

「そう焦らないでくださいませ、コスモ。審判!」

 

「ではこれより、挑戦者コスモ対ジムリーダーエリカの試合を行います!」

 

「いけっ! フシギソウ!」

 

「行きなさい! ナゾノクサ!」

 

 俺はフシギソウ、エリカはナゾノクサをフィールドに出し、互いに様子を見る。

 

「フシギソウ、つるのムチだ!」

 

「フシッ!」

 

 フシギソウがつるのムチをだし、ナゾノクサを引っ叩く。今回はそれだけで十分だ。

 

「ナジョッ!?」

 

 ナゾノクサはフシギソウのつるのムチで吹き飛ばされ、壁に張り付く。それはまるで押し花のようだった。

 

「ナゾノクサ!」

 

「ナゾ〜?」

 

 エリカがナゾノクサを呼びかけるが本人ならぬ本ポケモンが目を回し、呼びかけてもそれに答えられない。この時点で勝者は決まった。

 

「ナゾノクサ戦闘不能!」

 

 さて、次はどんな奴が? などと思いエリカを見てみるとエリカがナゾノクサをしまい、モンスターボールを出さなかった。

 

「お姉様?」

 

「審判、この勝負棄権致しますわ。そういうわけでコスモ。これを受け取りなさい」

 

 はぁぁぁぁぁっ!? まさかフシギソウのあまりの強さに怖気ついたとでもいうのか!? そんなはずはねえだろ!? 一応レインボーバッチは取っておくが。

 

「私がこれから出すモンジャラは問題がありまして。レベルでいえばバッチ2個分の強さを持っているのですが──」

 

「ですが?」

 

「臆病すぎて格下の相手しかやらないのですわ」

 

「……はあ?」

 

 

 

「せめて一度だけポケモンバトルの楽しさを感じさせる為にもこのモンジャラをバッチ1個の試合で使いましたが、どうやらそれで味を占め格下の相手しかやらなくなってしまったのです。それでお仕置きという意味でもコスモとのポケモンバトルをやらせたかったのですがコスモの余りの強さにモンジャラが心を折って2度と戦わなくなると思うといっその事棄権したほうが良いと判断を下したのですわ」

 

 格下の相手しか戦わないか。まあ悪くねえとは思うぜ。格上の相手にはくさタイプが得意とする搦め手で封じればいいだけの話だし、そもそもポケモンによって戦い方の個性が出るのは仕方ないことなんだよな。

 

「お姉様、こんな言葉を知っていますか?」

 

「なんでしょう?」

 

「強いポケモン、弱いポケモン。そんなの人の勝手。本当に強いトレーナーなら好きなポケモンで勝てるよう頑張るべき……ようするにお姉様は努力が足りないんだよ」

 

 エリカがそれを聞いてムッとしたような表情に変わった。

 

「私は私なりに努力していますわ」

 

「そのモンジャラはおくびょうなんでしょう? 物理攻撃が下がる代わりに素早さが上がるんです。つまり同じモンジャラでもおくびょうなモンジャラは最速でソーラービームやはっぱカッターなどの遠距離の特殊攻撃が強めの威力で出せるということになります」

 

 それだけじゃなくモンジャラのぼうぎょやとくこうって進化前のポケモンにしてはかなり高いんだよな。しんかのきせきを持たせたら物理受けもいけるほどだ。

 

「コスモ、何故そんなことを知っているのですか?」

 

「勉強したんですよ。その一言に尽きます」

 

 まさかこの世界が前世でゲームになっていたなんて言えないしな。そんなことを言えばどんなに良くても生暖かい目で見られ、狂人扱いは避けられない。それだけならまだ良いが精神年齢30歳だということがエリカやミカンにバレてしまう。

 

 

 

「ところでお姉様、なつきやすくなる代わりにポケモンが弱くなってしまうようなきのみってありますよね。いつも売れ残っている奴」

 

 エリカは副業に花屋を経営しているのだがきのみも売っている。その中で必ずと言っていいほど極稀にしか売れないきのみがある。

 

「ええ、ザロク、ネコブ、タポル、ロメ、ウブ、マトマの6種類のきのみは直接ポケモンに食べさせるとポケモンが人になつきやすくなる代わりにポケモンバトルが弱くなるというジンクスがあって、ポケモンバトルで生活している方々からは忌み嫌われるきのみですわ。極稀になつき進化で進化するポケモンにしか食べさせたということくらいしか聞いたことがありませんわ」

 

 まさかそれほどまでに酷いとは……確かに弱くなるようなきのみはいらねえよな。だけど使い方さえマスターしてしまえばこれらは生活必需品となり得るきのみだ。

 

「お姉様、そのきのみのジンクスを僕が無くしましょう」

 

「出来るのですか?」

 

「簡単ですよ。お姉様、ザロク、ネコブ、タポル、ウブの4種類のきのみをください」

 

「ロメとマトマは?」

 

「流石にいりませんよ。4種類だけで十分です」

 

「ではこれを」

 

 そう言ってエリカが俺の掌に4種類のきのみを渡すとフシギソウにそれを食べさせるとエリカやミカン、その他多くのジムトレーナー達がメモを取る準備をし始めた。

 

 

 

「ポケモンバトルはHP、つまりタフさ、物理攻撃、物理防御、特殊攻撃、特殊防御、素早さの6つのステータスと技で勝敗が決まります。6つのステータスはポケモンの種族による能力、それに性格、素質、そしてもう一つ重要なものがあります。それがオーキド博士達ポケモン研究者達がきそポイントと呼ぶものです」

 

 きそポイント。要するに努力値のことだな。

 

「きそポイント……たしかに聞いたことくらいはありますが、そのきそポイントと6種類のきのみが何の関係があるのですか?」

 

「そうです。ザロクはタフさ、ネコブは物理攻撃、タポルは物理防御、ロメは特殊攻撃、ウブは特殊防御、マトマは素早さのきそポイントを下げるきのみなんです」

 

「でしたら何故それらをフシギソウに食べさせるのですか?」

 

「その前にワンクッションおきましょう。ポケモンバトルをしてそのポケモンが勝つとそれぞれ決まった量のきそポイントが一部例外を除いて蓄積されます。もちろんタウリンなど薬によるものでもきそポイントは蓄積されます。きそポイントをポケモンに蓄積させることをきそポイントを振ると僕は呼んでいます」

 

 努力値と言ってやりたい。しかしそれをすると「何故努力値とコスモは呼ぶのですか?」などと言われかねない。

 

「しかしどんなポケモンでもきそポイントを蓄積する量というのは限りがあります。6つのステータス全ての合計で510、一つのステータスに252のきそポイントしか振れません。それを最大限に振ることを極振りと呼んでいます」

 

「コスモ、510とか252とかの数値って何なの?」

 

「きそポイントの量だよ。それ以外に何があると?」

 

「そういう意味じゃなくて、ポケモンバトルでそのポケモンが勝つとそれぞれ決まった量のきそポイントが蓄積するとかいってたじゃない。その基準ときそポイントの量は何か関係でもあるの?」

 

「ああ……そういう意味かミカン。勝ったポケモンよりも打ち負かしたポケモンによってきそポイントの量と振られるステータスが決まります。例えばさっきの試合でしたらナゾノクサを打ち負かしたフシギソウの特殊攻撃のきそポイントが1ポイント振られます。さらにあそこで僕の持っているイーブイが一度でも出ていた場合は同じように1ポイント振られます」

 

「極振りのメリットとデメリットはどのようなものでしょうか?」

 

「極振りのメリットはポケモンの特徴を活かした戦法を最大限に発揮させることが可能になります。例えばタフさで言えば最強級のハピナス。そのハピネスにHPのきそポイントを極振りをするとただでさえタフなハピネスがさらにタフになって並の攻撃では手も足も出ない状況になり得ます。つまり極振りは長所を最大限に生かせるということですね。極振りのデメリットは6つのうち2つのステータスしか極振りが出来ないので慎重に考えなければいけませんね」

 

 流石、ピンクの悪魔と呼ばれるだけのことはあるよな。ノーマルタイプだけど。

 

「それで僕がこれらのきのみを使う理由についてですがポケモンバトルをして勝ち続けると自然ときそポイントが振られ、いつしか限界値である510まで到達します。そこで不必要に振られたステータスを下げるきのみを食べさせると他のステータスの上昇が見込めます」

 

「なるほど……革命的ね」

 

「まさか売れないきのみがここまで凄いものだとは予想もしませんでしたわ」

 

 頭の回転が早いジムリーダー二人は理解したようだがジムトレーナー達は理解していないみたいだな。

 

「先ほどのハピナスで例えると、ハピナスは物理攻撃や特殊攻撃が他のポケモンよりも低く、とてもではありませんが物理攻撃や特殊攻撃にきそポイントを振るのはきそポイントの無駄です。そこでネコブとロメのみを食べさせ物理攻撃と特殊攻撃のきそポイントを0にして他のステータスに減らした分だけきそポイントを振れることが出来ます」

 

「あ……!」

 

 これでほとんどのジムトレーナーが歯車が噛み合うように理解したのか、すっきりとした顔つきになった。

 

「これできそポイントと売れない6種類のきのみの活用性の講座について終わります。ご静聴ありがとうございました」

 

 ふう、長かった……これでエリカも少しは見直すだろ。

 

 

 

「ますます、アサギジムトレーナーとして欲しくなったわ」

 

 あれぇ? ミカンが獲物を見つけた野獣のような顔をしているぞ! 

 

「ミカンさん、コスモは渡しませんわよ?」

 

 ちょっと!? 

 

「そうよ! コスモ君は私達のアイドルよ!」

 

 ダメだこりゃ……タマネギェ〜助けてくれプリーズ。

 

 

 

 しかしコスモの願いは届かなかった! そう脳内に響くと俺はこっそりと外へ出た。




ORASでフリー対戦して思ったことは「僅差こそ美学なり」ということですね。トリプルバトルをやっていたら非伝説だけで構成された相手と出会い、ギリギリで勝って「どうだ見たか!バトル検定6500点の貫禄! どこまでいっても勝ってやる!」などとほざく作者。落ち着き始めると「僅差勝利だったのに貫禄もクソもないだろ」と悟ってしまう有様。楽しかったのは事実なので「僅差こそ美学なり」という結論を出しました。


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第11草

投稿遅かった癖に短め(しかも妥協した)です。


「コスモ。おはようございます」

 

 それから翌日。我が姉エリカの声を目覚ましにして目を覚ますと視界に着物を着たエリカが映った。

 

「おはようございます。お姉様」

 

「コスモ。ミカンさんが後でお話しがあるようですのでミカンさんのところに行くように」

 

「わかりました」

 

 そう言われ、朝食を取ったらすぐさまミカンが泊まっている場所に行く。そこには白いワンピースを着たミカンが待っていた。

 

 

 

「おはようコスモ」

 

 にっこりと笑顔を浮かべ、挨拶して近づくミカンはどこか可愛らしくそして美しかった。

 

「おはようミカン」

 

「ところでコスモ。これからどこを旅するの?」

 

「シンオウ地方かな。あそこには色々なくさタイプのポケモンがいるだけじゃなくイーブイをリーフィアにする為の条件も揃うしね」

 

「コスモ。私もその旅に着いていってもいい?」

 

「僕は構わないけれど、お姉様が何て言うかわかりませんよ」

 

「大丈夫よ。昨日ちゃんとエリカさんの許可を貰ったから」

 

【(`・∀・´)】と絵文字で表現できるほどどや顔でミカンが胸を張る。

 

「そう言うことならいいけど……」

 

「それじゃ記念にこれあげるね」

 

 何の記念だよ? と心の中で突っ込みながらそれを受けとる。それは腕時計とカードだった。

 

「これは僕のトレーナーカード……?」

 

 そのカードは俺ことコスモの情報が詰め込まれたカードだ。それをエリカの情報にした者を何度か見たことがあり、そう呟いた。てか一人称が僕ってかなり歯痒いィィィっ! 

 

「エリカさんからジムリーダーの仕事が忙しくて忘れそうだからって私に預けていたのよ」

 

 ……納得。エリカのおっちょこちょいは酷いからな。

 

「こっちの機械は?」

 

「これはポケモンの能力を測ったり、技を確認させる機械ね。本当ならポケモン図鑑やポケギアにしたかったけれど、取り寄せることが出来なかったの」

 

 別の世界はどうかは知らんがこの世界のポケモン図鑑はかなりの貴重品だから取り寄せられるのは極僅かに限られている。その為ポケモン図鑑を所持しているほとんどは大学や研究所などの団体だったりする。俺の知る限り個人で持っているのはオーキド博士くらいしか知らん。会ったことないけど。

 

「それはポケギアはともかく図鑑は無理だよ。ポケモン図鑑はジムリーダーの権力でどうにかなるものじゃないよ。でもありがとう。僕の為にこんなに行動してくれて」

 

「……っ! ど、どういたしまして」

 

 ミカンが顔を赤くし、モンスターボールをアンダースローで投げる。何故赤くなったのかは詳しい理由はわからないが繰り返し言われて恥ずかしいんだろうな。この事は言わずに静かに見守っておかないと面倒だ。

 

 

 

 閑話休題(それはともかく)、ミカンがモンスターボールから取り出したのはエアームド。はがね・ひこうタイプのレート戦での座をテッカグヤに奪われた悲しきポケモンだ。弱点が2つ、それも2倍ダメージしかない上に種族値も優秀。こいつを使った受けループなんてものが流行ったくらいだ。くさタイプアンチには持ってこいのタイプをしている為に俺も採用したが俺に受けループ……ようするに耐久に特化したポケモンを作ったりそれを生かしたりする才能は全くなかったようで、そいつはボックスの奥深くで眠っている。とにかく攻めるのが俺の主義だ。

 

「エアームドでどこにいくの?」

 

「シンオウ地方に行くための港……クチバに行こうかと。シンオウ地方へ行くのは初めてだから」

 

 クチバ……ああ、あそこか。クチバは別の地方に行来する船がある。だからエアームドでそこに行こうとしているのか。シンオウに行こうにも行ったことがないからそらをとぶで直接行けないから一度クチバの船に乗らなきゃいけない。そしてどこかでそらをとぶの目的地に登録してしまえばシンオウ地方に行けるようになる。

 

 

 

「それじゃエアームドに乗って」

 

「待ちなさぁぁぁいっ!!」

 

 ミカンがエアームドに乗るように促すと叫ぶように俺達を止める声が響き、そっちに振り向くとエリカがダッシュでこちらに向かって来た。

 

「早く!」

 

 ミカンがそう言って俺の腕を引っ張り、無理やりエアームドに乗せるとエアームドが離陸し、風の中を突っ切る。

 

「逃がしませんわ!」

 

 だがエリカはピジョットを出し、俺達の乗るエアームドを追いかける。

 

「エアームド! かげぶんしんでピジョットを惑わせて!」

 

 しかしミカンはエアームドにかげぶんしんをさせピジョットを拡散させるがそんなことはどうでもよかった。

 

「ミカン、何でお姉様から逃げるんだい!?」

 

「いや、ああいう時のエリカさんって何も聞かないし怖いからつい……」

 

 わかる。物凄くわかる。我が姉が怖くてこんな行動を取ってしまうのは俺だけかと思ったら、身近にもいたんだな……エリカよ。理不尽過ぎて納得させられてしまうような行動は慎め。

 

「嘘をおっしゃい! 私が渡すはずでしたトレーナーカードを盗みましたでしょう!」

 

 おいおい……ミカン。何やってんの? 

 

「な、何のことでしょうか、エリカさん? 私、コスモのトレーナーカードを盗んでないですよ」

 

 盗んだのかよ!? というかエリカも盗まれたことに気づくのに時間かかりすぎだろ!? 

 

「ミカンさん。誰もコスモのトレーナーカードが盗まれたとは一言もいってませんわ」

 

 汚ねえ! 忍者でもないのに汚ねえ! 誘導尋問をするあたりエリカにどくタイプの適性でもあるんじゃないだろうか? 

 

「ミカンさん、後でじっくりとお話しを聞かせて頂きますわ」

 

 エリカの目からハイライトが消え、ピジョットのスピードを上げさせるその姿は機械のようだった。

 

「エアームド、もっとスピードを上げて!」

 

 それは無理だって。ただでさえスピードで勝てないというのに背中に乗せているのが俺達二人。向こうはエリカ一人だけだ。このままスピードを上げてもピジョットに追い付かれるだけだぞ。どうするんだ? というか抵抗するってことは認めた……っ!! 

 

「ぐぇっ!」

 

 蛙、いやニョロトノが潰れるような声を出しミカンにしがみつく力が増した。

 

「コスモ、しっかりしがみついてて!」

 

 その言葉を聴くと、俺の意識がなくなり目の前が白く染まった。ただ覚えているのはミカンの身体は最高だったということだ。




作者の今回の言い訳。

・サンのレート楽しかった。
・フロンティアクオリティェ……
・実家の手伝い

以上です。

しかしあれですね。レートの環境を見ている限り第7世代は準伝説ゲームとなっていますね。ある意味ポケモンの世界観にあった環境ですがもう少し普通のポケモンが活躍しても良いんじゃないんでしょうか。

まあ個人の意見なのであまり気にしないでください。


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第12草

次々と新しい小説のネタが思い浮かぶけど続きのネタが思い浮かばない……


 さて、ここで問題だ。乗り心地が悪く、しかも高速で移動するようなジェット機になったら大半の人間はどうなる?! 

 

 

 

「気持ちばるい……」

 

 正解は酔う。つまり今の俺の状態のことを言うんだよぉぉっ!! 

 

「無理させてごめんね。コスモ」

 

「うぇぇ……」

 

 ミカンが頭を下げるのを見て、ベッドの上で返事をしようとすると呻き声が上がった。

 

「ごめん……」

 

 そう思うならあんなテクニック二度と使わないでくれ。俺は嗜み程度で弓道をしているが、お前らみたいにオリンピック選手顔負けの超人じみたフィジカルはないんだぞ。

 

 

 

「コスモ、酔い止め薬買ってきたから飲んで」

 

 そんなことを考えているとミカンが酔い止め薬を俺の手に渡す。

 

「……ん、水は必要ないの?」

 

 酔い止めは薬であり、飲むには水が必要だ。だがその為の水がない。いやおいしい水とか買えばあるけどな。

 

「この酔い止めは水がなくとも平気だから直接飲んでも良いようになっているわ」

 

「ありがと。ミカン」

 

「いいえ。元々は私が引き起こしたことだから……」

 

 そう言えばそうだな。そんなこんなで酔い止めを飲むとスッキリと酔いが覚め、立ち上がれるまでに回復した。

 

 

 

「ところでここは?」

 

 酔っていたから気づかなかったが、ここはポケモンセンターだ。ただし近くのポケモンセンターと言うわけでもない。そう思って尋ねてみると予想通りの答えが返ってきた。

 

「ここはポケモンセンターよ」

 

「どこのポケモンセンター?」

 

「カントーの港クチバシティ。これからクチバの港を使ってシンオウに行こうと思っていたんだけど、コスモがあの状態から回復するまで待機していたわ」

 

「確かにあの状態で船や飛行機に乗ったらグロッキーになっていたよ」

 

 ナイス判断ミカン。密閉した空間でゲロの臭いがしたら全員が貰いゲロして吐くことになっていた。

 

「大丈夫そうなら、エリカさんに見つかる前に行きましょう」

 

「そうだね」

 

 一応、ミカンが泥棒したことには違いないし、何よりも今のエリカは不機嫌だ。そんな状態で近づく方が命取りだと言える。泥棒させた原因もエリカが不機嫌なのも俺が原因だと考えると嫌だな。そんなことを考えながら荷物をまとめ、港へ向かうと何やら騒ついており、人だかりが出来ていた。

 

 

 

「すみません、これは何の騒ぎですか?」

 

 ミカンが近くにいた金髪の軍人らしき男にどんなことが起きた、あるいは起きるのかを尋ねる。

 

「ユーたちは観光客だってのに知らないのか? キャプテンが居合い切りのパフォーマンスと新しくマスターした技を披露するんだぜ。俺達はそれを見に来たのさ」

 

 いあいぎりってことはあいつか。いあいぎりを教えてくれる船長か。

 

「ということは皆さんはその船長のいあいぎりを見にここに?」

 

That right(その通りだ)! 船長のいあいぎりはいつ見ても惚れ惚れするぜ。無料だからぜひ見に行くといい」

 

 そこまでいうか。まあそうでなきゃこんなに騒ぐ訳ないよな。

 

「ミカン、どうする? これを見るかい?」

 

「エリカさんが来るのは怖いけど、あの人がお勧めするんだから見ましょう!」

 

「よし、それなら二人とも俺の肩に乗せてやる!」

 

「きゃっ」

 

「うわっ」

 

 先ほどの金髪の男が俺達を左右の肩に乗せ、視点が高くなる。しかしあれだよな。この世界の住民はなぜか力持ちばかりだ。俺達の周りには体重70kgもあるヨーギラスを抱えながらそれを見ようとする客もいるくらいだ。お前ら人間じゃねえ! 

 

「ここならキャプテンのいあいぎりが見えるだろ?」

 

「そうですね。ありがとうございます、え~と」

 

「My name is Lt. Surge. ……失礼、マチスって呼んでくれ」

 

「マチスって、クチバジムリーダーのマチスさん?」

 

 金髪の男がマチスだとわかり、俺はそう尋ねた。

 

 

 

「ボーイはチャレンジャーか?」

 

「そうです。コスモっていいます」

 

「コスモボーイ、それじゃこいつを見終わったらジムにカモン。ジム戦をしてやる」

 

「わかりました」

 

「えっ、ちょっと……」

 

「おっとスタートだ」

 

 ミカンが反論しようとするがマチスが指を口に添え静かにするよう指示する。他人に迷惑をかけたくないと考えるミカンはすんなりそれを受け入れた。

 

 

 

 そして視線の先は鉄板の前に手刀を構えたいあいぎり船長に注がれる。……えっ? 手刀であの鉄板を切るつもりなのか? 無理がありすぎる。いくらなんでも……

 

「でぁぁぁぁっ!!」

 

 鉄板がまるで紙のように切れた切り口を見て俺とミカンは唖然としてしまった。

 

 

 

 あ り え ん

 

 

 

 ここってポケモンの世界だよな? 世紀末覇王とか、サイヤ人とか、念能力者、チャクラ使いの忍者とかがいる世界じゃないよな? そうだとしたら絶対生まれる世界間違えただろ。

 

 

 

「さて、お次は私の新技を披露したいと思います。その名も燕返し!」

 

 燕返し? などと口に出そうとすると船長がピジョットをボールから取り出し、観客に見せる。

 

「ピジョット。音速を超える速さで移動すると言われています。そのピジョットが空を移動している状態で咥えたきのみだけを切ってみせましょう! ご覧あれ!」

 

 またピジョットかよ。エリカもピジョットを使って俺を追いかけたのでどれだけピジョットが便利なポケモンがよくわかってしまう。とにかくピジョットが船長の持っていたきのみを咥え、宙を滑る。そしてピジョットの残像を追うように羽音が耳に残る。そして、船長の腕が一瞬だけ消えると構えた場所とは別の位置にそれがあった。

 

「ピジョット、戻ってこい」

 

 残像から実体になったピジョットが船長の元へ戻り、きのみを見せるときのみが真っ二つに切れ、観客達は船長に大歓声を浴びせた。

 

 

 

「どうだ? いいもん見れただろ?」

 

「……」

 

 ミカンは目を丸くし口を開けながら唖然としている! あんな芸当はこの世界でも珍しいのか。まあ刀持っている状態ならともかく、手刀でそんな芸当出来るのはありえんからな。どのくらいあり得ないかというと固定していないペットボトルの口の根元を手刀で切るのと同じくらいだ。何、それがどういうことなのかわからん? だったら実際にペットボトルの口の根元を目掛けて手刀でそこを切ってみろよ。無理だから。

 

「あんなの人間技じゃない……」

 

 俺の呟きにミカンが頷いた。

 

 

 

「本日の燕返しをご覧頂きありがとうございます。そこでお礼に私の持っている技マシンつばめがえしと秘伝マシンいあいぎりを配布したいと思います」

 

 おおっ、太っ腹! 

 

「いあいぎりは持っているけどつばめがえしは持っていないからもらっておこうかな」

 

「そうしておけミカンガール。つばめがえしは必中の技。なくて損するってことはnothing」

 

「僕はいあいぎりもないから二つとも貰ってくるね」

 

「おう、貰ったらクチバジムにカモンだ。いつでもウェルカムだ」

 

 マチスがそう言って俺達を下ろしクチバジムを向かうのを見ると船長からいあいぎりの秘伝マシンとつばめがえしの技マシンを手に入れた。




感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。また高評価やお気に入り登録、感想を送ったりすると作者のモチベーションが上がります


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第13草

感想、高評価、お気に入り登録よろしくお願いします!なお誤字脱字は誤字に、個人的に聞きたいことや要望(こんな小説を書いて欲しい等)はメッセージボックスにて受け付けます


「コスモボーイ。流石ミーが見込んだだけのことはあるぜ」

 

 クチバジムの奥で待機しているマチスに話しかけると笑みを浮かべモンスターボールを構えた。……え? 道中どうしたかだと? イーブイがいあいぎりを覚えたおかげで楽に終わったよ。

 

「マチスさん。ジムバッチの確認は?」

 

「Oh! すっかり忘れてたぜ。How many gymbatchs do you have? 《お前はどれほどの数のジムバッチを持っているんだ》」

 

「え? な、何て言ったの?」

 

 ミカンがマチスの流暢な英語についていけず、ただ一人だけ狼狽えた。なるほど、流暢な英語を話すことによって動揺させる作戦か。結構精神的にダメージを与えるだろうが、何一つ問題なし。

 

「I have one gymbatch.《僕は一つだけジムバッチを持っています》マチスさん見てみますか?」

 

 何故ならば俺は英語を話せるからだ。これは前世の影響というよりも実家の教育による賜物だ。グローバルな社会に出ても平気でいられるようにそう教育されたんだよ。ちなみに影が薄くなり始めたタマネギも喋られるぞ。

 

「いや、コスモボーイ。その必要はナッシング。ミーの母国語をアンダスタンドだけでなくスピーチなんて驚きネー。ポケモンリーグの規定通りバッチ一個持っているチャレンジャーの相手に対してミーは特定のレベルのポケモン二体を使う。アンド交換なしの道具持たせない。アンダスタンド?」

 

「OK.やりましょう」

 

 

 

「それでは挑戦者コスモVSジムリーダーマチスのジムバトルをスタートします」

 

 審判が合図し、俺とマチスがモンスターボールからポケモンを取り出した。

 

「ビリリダマ、GO!」

 

「行けっフシギソウ!」

 

 マチスが出したのはマルマインの進化前のビリリダマ。カントー図鑑のNo.100で有名なあいつだ。

 

「フシギソウ、つるのムチ!」

 

「フシッ!」

 

 フシギソウのつるのムチがビリリダマに炸裂し、ビリリダマが戦車から放たれた弾丸の如く場外に吹き飛んだ。

 

 

 

「……ホワッツ?」

 

 一撃必殺が決まったかのように空気が静まり返り、唖然とする。そりゃそうだろうな。俺も同じ立場だったらそうするしかない。

 

「審判さん?」

 

「あ、ビビリダマ戦闘不能! ジムリーダーマチスは至急交換してください」

 

「No,It isn't.Because there is no chance of winning in this battle.《それはできない。何故ならこの戦いで勝てる見込みがないからだ》」

 

 マチスがビリリダマをしまい、そう告げ降参した。またかよ……気持ちはわからないでもない。あれだけ力量の差があると唖然とするしかねえもんな。ミカンだって目を丸くしているし。いやミカンはマチスの英語に混乱しているだけか。

 

 

 

「つまり、降参だと?」

 

「イエス。と言うわけだコスモボーイ。オレンジバッチとこの技マシンをプレゼントだ」

 

 マチスがそう言ってオレンジバッチと技マシンを俺に渡した。

 

「ありがとうございます」

 

「ところでコスモボーイ、エキシビションマッチを申し込む」

 

「エキシビションマッチ……?」

 

 そんなものがあるのか? ミカンに目で解説を求めようとすると今までマチスの英語を翻訳しなかったせいか拗ねてしまい、横を向いて無視した。

 

「イエス。ユーのフシギソウ、ベリーストロング。ミーのハートがファイヤーした。このまま終わるなんてミーには出来ない。ジムリーダーとしてではなく1トレーナーとしてミーの本当の本気をそのフシギソウにファイトしたい」

 

 そういうことか。わかる。ものすごくわかる。男に限ったことじゃないが、目の前に困難があるとそれに挑みたくなるその気持ちはポケモントレーナーならあることだ。前世でもくさタイプが絡まなければそうしていたしな。

 

「わかりました。その申し込み承ります」

 

「Good! それじゃルールをチェンジするぜ。ルールはミーのポケモン、コスモボーイのポケモン共に一体。道具の使用はポケモンに持たせるのはあり。降参するかポケモンがひんしになるかのどちらかで敗北。アンダスタンド?」

 

 対戦でやったような形式か。

 

「OK.それじゃフシギソウ、頑張って!」

 

「Go,VOLTY!」

 

 マチスが取り出したポケモン。それは前世の世界で二番目に有名なネズミ。え? それだけじゃわからない? 仕方ねえな。マチスが出したのはピカチュウだ。アニポケのサトシの相棒と同じ種族のあいつだ。

 

 

 

「それではタマムシシティのコスモVSクチバシティのマチスのエキシビションマッチをスタートします」

 

 妙な違和感がある。そう思ったのも束の間。マチスのピカチュウことVOLTYが持っているのはでんきだま。でんきだまをピカチュウに持たせる──ここ大切。ピチューやライチュウ等他のポケモンに持たせても意味ない──とこうげきととくこうのステータスが二倍になる恐ろしいアイテムだ。種族値だけでなく努力値や個体値も含めたステータスが二倍だぞ。つまり努力値や個体値も倍で換算されるってことだ。これを持たせたピカチュウが伝説相手に三タテしたこともあるくらい重要なアイテムだ。そんなアイテムを持たせたピカチュウを相手にするということは流石のフシギソウも危うい。そう思い、フシギソウに指示を出した。

 

「フシギソウ、リーフストーム!」

 

「VOLTY! Avoid, Voltecker.《VOLTY! 避けてボルテッカーだ》」

 

 や、やべえっ! 焦りすぎて大技のリーフストームを指示しちまった。

 

「フシギソウ、ねむりごな!」

 

 俺が思い付いた指示はねむりごなでVOLTYを眠らせる。そしてその眠っている隙をついてフシギソウに次の指示を出した。

 

「What!?」

 

「フシギソウ、リーフストーム!」

 

 今度は落ち着いて指示……いや眠らせたからかフシギソウのリーフストームがVOLTYに直撃し凄まじいまでの威力の攻撃によってVOLTYが倒れた。

 

「VOLTY!」

 

「ピカチュウ戦闘不能、よってウィナー、タマムシジムのコスモ」

 

 ようやく終わったか。しかし運がよかった。もしもVOLTYのボルテッカーがねむりごなを吹き飛ばし、効かなかったらボルテッカーが直撃しフシギソウとも言えども危なかった。相当体力が抉られていたのは違いない。

 

 

 

「流石だコスモボーイ。咄嗟にねむりごなをオーダーするなんてな」

 

「いえ、僕のフシギソウはまもるを覚えていませんでしたからああして眠らせて対処するしかありませんでした」

 

 本当これにつきるよな。もしフシギソウがまもるを覚えていたらまもるを指示していた。しかしフシギバナ系列にまもるを覚えさせるには技マシンでしか覚えさせるしかない。当然そんなものを持っていない為に自力で覚えるねむりごなを指示したと言うわけだ。

 

 

 

「I see.ところでコスモボーイ、これからカントー地方のジム巡りしてポケモンリーグにチャレンジ?」

 

「いいえ、僕はシンオウ地方に行ってみたいと思います」

 

「シンオウ? あのコールドなエリアか?」

 

「はい。あそこには僕の望むポケモンがいますから」

 

「例えば?」

 

「そうですね……ロトムとかですね」

 

 ナエトルとかでもいいんだが、話を合わせる為にでんきタイプのロトムを例に挙げた。通常のフォルムでこそ、くさタイプが混合していないがカットフォルムにフォルムチェンジするとゴーストの代わりにくさタイプが混合する。

 

「ロトム! それだったらミーが持っているぜ!」

 

「本当ですか!?」

 

「ただ気性にプロブレムがあってな……ミーでも制御出来ないんだ」

 

「どんな問題ですか?」

 

「接触技が出来ないくらい臆病なんだ」

 

 それはなんとまあ……致命的だな。

 

「コスモボーイ、ユーの素質を見込んで頼む。このロトムを一丁前に鍛えてくれないか?」

 

 一丁前の使い方間違っているぜ……マチス。だがそれは言わないでおこう。言ってもKYな奴だと思われるしな。

 

「OK.マチスさん。そのロトム、強く逞しくしてあげます」

 

 ただしフォルムチェンジするけどなぁぁぁっ! 

 

「Thank You.じゃあこのモンスターボールに入っているから頼んだ」

 

 いや、よかった。ロトム捕まえる為にもりのようかんに行かなきゃいけなかったのがこんなところで手に入るとは思いもしなかった。もりのようかんってポケモンシリーズで個人的に怖かったランキング三位に入るホラー施設だから近づきたくないんだよ。ちなみに一位はシオンタウン、二位はメガやす跡地だ。この一位と二位の二つだけは絶対に避けたい場所でどんなポケモンがいようが俺はいかねえっ! 例えエリカに女装されることになろうが、ミカンに○○○なことをさせてもらおうが絶対だ。転生した俺の存在そのものがホラーとか言ってはいわれても同じだ。

 

「ありがとうございます。マチスさん」

 

 何にしても、ロトムゲットだぜ!




とあるレート戦での出来事。
「凍れ凍れ凍れ凍れぇええっ!」
ポリゴン2でれいとうビームを使い切るまで放つも(相手はくさ・どくなので凍るはずが)凍らず、クソゲー認定しながら絶望感漂う雰囲気の中トライアタックを選択すると凍った。
「コオリキタ! やった、やったぜ!うぉーっ、見たか俺の実力を!アホみたいに眠らせやがって、喰らえーっ! 日本人の力思い知れ、飛鳥トライアタック!」
そして相手が回線を切ってしまい記録出来なかったので何日も愚痴るようになってしまった。

※実話です。


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第14草

ついにUSUM発売しましたね。作者は経済的な意味でも多忙と言う意味でも余裕がなく未だに購入してしません。年内には購入しますが。……出来ると良いよな。


 マチスとのジム戦が終わり、クチバシティ。本来ならマチスに勝ったところを喜ぶところなんだが、素直に喜べない。その理由が俺のとなりで不機嫌になっているミカンだ。アルミカンじゃないぞ。

 

 

 

「……」

 

「み、ミカン……」

 

「ふんっ」

 

 

 

 取りつく間もない。まるで冷凍ミカンのようだ。……なんてネタをかましている場合じゃない! このまま俺はミカンとの仲を悪くしたまま、シンオウに一緒にいきたくない。脳内シュミレーションをすると選択肢が現れた。

 

 

 

 A.強引にキスして誤魔化す

 

 B.ポケモンバトルをして友情を深める

 

 C.誠心誠意込めて謝る

 

 

 

 おい、A……何をどう考えたらそんな選択肢が現れるんだ? Aは言わずとも論外だ。こんなことをすれば真っ先に殺されるわ! それ以前に強引にキスしようにもこの世界でフィジカル最弱のスペックの俺がミカンにキス出来る訳がない。当然ながら却下DA! 

 

 だからと言ってBもない。強引にキスするのとほぼ変わらない。ミカンと俺の力の関係を逆転させたにしか過ぎない。渋々貰ったとはいえこんな事の為に俺のチートはあるわけではない。

 

 ここは普通に考えてCだ。Cの誠心誠意込めて謝って機嫌を直して貰おう。

 

 

 

「ミカン、ごめんなさい! レディーファーストと言うくらいの用語があるのにほったらかしてごめんなさい!」

 

「ち、ちょっと!」

 

 俺が土下座までするとミカンが慌てて、オロオロと周囲を見ながら顔を紅潮させる。土下座は嫌だがそれ以上にミカンとともに楽しく一緒に行けないのは嫌だ。だから誠心誠意、謝る。

 

「わ、わかったから頭を上げて……」

 

 耳元で囁くミカンは先ほどの冷凍ミカンからゆでミカンに変わっていた。……かわいい。

 

「許してくれるのかい?」

 

「い、今はこの場を離れて後で話そう」

 

「うん……」

 

 うん、なんて言っちまったよ。礼儀正しい少年から普通の少年まで成り下がったような気がする。情けねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 そしてシンオウ行きの船に乗り、部屋を取った。

 

「ミカンごめんなさい!」

 

「だから、それはもういいわ」

 

「え……?」

 

「許すってことよコスモ」

 

「あ、ありがとう」

 

「その代わりマチスさんに貰ったロトム少し見せて貰えなかな? それが無理ならちょっと、その……」

 

 ロトムね。そう言えばまだ見ていないな。臆病だっていっていたけど顔合わせの為にも皆出すか。

 

「ロトムだね。だけど皆を自己紹介させたいからちょっと待って」

 

「え、あ……うん」

 

 何故かしょんぼりとするミカンが、視界の隅に入るがそれを無視してロトム以外のポケモンをボールから出した。

 

「フシッ」

 

「ブィ!」

 

「ビィ……」

 

 順にフシギソウ、イーブイ、そしてタマネギの三匹が外に出た。

 

 

 

「これがコスモのポケモン達?」

 

「そうだよ。フシギソウ以外は見せていなかったから知らないのも当然だよ」

 

「でもこのタマネギみたいなポケモン見たことないわ……コスモ、このポケモンって一体?」

 

『話すな! 誤魔化せ!』

 

 テレパシーでタマネギが俺だけに伝える。ミカンを信頼しているし、話すデメリットはほとんどないんだよな。

 

「このポケモンはセレビィ。ジョウト地方に住むミカンなら聞いたことあるでしょ?」

 

「この子が時渡りの?」

 

『ちょっ!?』

 

「そう。フシギソウがフシギダネの時に遭遇して捕まえたんだ。本来ならこういう風に見せびらかしたりせず、しまっておくべきなんだけれどもミカンなら信用出来るから……」

 

「……それじゃ早くボールにしまって。それがその子の為よ」

 

 ミカンは一瞬、笑みを見せるとすぐに緊迫した顔つきになりそう指示する。

 

「それじゃタマネギ戻れ」

 

『後でどういうことか説明してもらうからね』

 

 タマネギが怨念の声をテレパシーで伝え、ボールの中に入る姿はまるでヒロインのようだった。

 

 

 

「ミカン。ロトムを出すよ?」

 

「うん。出して」

 

 そしてマチスから貰ったボールに手を触れる。するとカタカタと震えており拒否反応を示していた。

 

「……ロトム?」

 

「どうしたの?」

 

「ロトムが出たくないみたい」

 

「もしかしてコスモのポケモンがいるからじゃない?」

 

 なるほど、確かにそれもそうか。だけどこのまま出ないってのは流石に問題があるし説得してみるか。

 

「ロトム、大丈夫だよ。ここにいる皆は君に危害を加えたりしないよ。だから大丈夫」

 

 するとロトムが拒否反応を示さず震えも止まった。口調こそ気持ち悪くて仕方ないがもはや矯正しようがない。人間堕落するのは早いというが、これは堕落なのだろうか? 

 

「よし、それじゃ出すよ」

 

 その瞬間、電磁音が響く。ロトムの鳴き声だ。機械に入り込むだけあってそういう鳴き声を出すみたいだ。

 

「ロトム、ここにいるポケモン達が君と同じ仲間だよ」

 

「zi!」

 

 物影にすぐさま隠れてしまい、姿を消す。するともう一つのボールが揺れ、タマネギが出る。タマネギが目を瞑り、テレパシーを送り説得しているようだった。

 

 

 

「ziーッ!!」

 

 タマネギの説得により、ロトムが姿を表して俺やフシギソウ、そしてイーブイを見て恐る恐る俺に触れた。

 

「っ!」

 

 静電気が流れ、思わず手を引っ込めてしまうがロトムは俺の反応に満足し、フシギソウやイーブイにも仕掛けた。

 

「ブイーッ!」

 

 フシギソウは効果半減やステータス上昇していることもあってかびくともしていないがイーブイは等倍な上に弱体化している。その為ロトムの静電気がイーブイに大ダメージを与えるのは無理もなかった。

 

「イーブイ大丈夫!?」

 

「ィ~……」

 

 ダメだこりゃ。気絶してやがる。モンスターボールの中に入れロトムの方に向く。

 

「ロトム。イーブイは繊細だから静電気はやめようね」

 

「Zi!」

 

 ロトムが返事をして頷くとフシギソウの方に絡むのを見て三匹ともモンスターボールの中に入れた。

 

「これで良かったかい? ミカン。持ち主が変わってからボールから出すのがはじめてだから流石に長時間出すって訳にはいかないけど、ロトムは出したよ」

 

「……コスモは女心をもっと知るべきよ」

 

 ミカンがまた拗ねてしまい、口を閉ざす。解せぬ……

 

 

 

「女心云々はともかくミカンは僕と同室で良かったの?」

 

「あのエセ箱入りお嬢様がここまで来た時の保障よ」

 

 エセ箱入りお嬢様って。まあ確かにあの怪力は人間が出すレベルじゃないけども、三半規管が人間のそれではないミカンも大概だ。

 

「エセ箱入りお嬢様とは随分な言われようですわ」

 

 そうそう。エリカが聞いたらこんな風に……風に? 

 

「ごきげんよう。コスモ、ミカンさん」

 

「な、なっ、なっ何でここにいるんですかお姉様!?」

 

 というかどこから現れたんだ!? 

 

「コスモの武者修行の旅をこの目で見届けに」

 

「タマムシジムは?」

 

「しばらくの間休業ですわ。トキワジムのジムリーダーも武者修行の為に休業したと聞きます」

 

 サカキはそうして誤魔化していたのか。てっきり俺は息子を育てているかと思っていた。

 

「そのジムリーダーさんは自分の為にやったことでしょう? お姉様の場合、僕の成長を見届けるだけですから理由としては不十分では?」

 

「コスモはポケモンに関する知識が誰よりも豊富で側にいるだけでも我々ポケモントレーナーにとって有益なものですわ。その事をポケモンリーグに三時間ほど説明し、説得致しましたので不十分とは言えませんわ」

 

「ミカン……」

 

「はぁ……仕方ないわ。諦めましょうコスモ」

 

 諦めんなよ! お前がそれを言ったらアカンだろうが! ほら、エリカが笑みを浮かべて喜んでいるし……

 

 

 

 こうしてバッチ二個ゲットした俺は姉であるエリカを仲間に加え、シンオウ地方へ向かうことになったとさ。続くし、めでたくもねえよ!




次回からシンオウ地方編始まります。次回もお楽しみに!


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第15草

シンオウ地方編スタート!


 シンオウ地方、ナギサシティ。そこで俺は新たにジムを受けようとしていたがナギサジムはシンオウ地方のジムのバッチ7個以上なければジム戦をしてくれないのですぐにジムバッチを集めることを決意した。

 

 

 

「ずいぶん舐め腐った真似をしてくれますわね。ここのジムリーダーは」

 

「エリカさん落ち着いて」

 

 ミカンが宥めるもエリカの怒りゲージは収まらず増幅し続ける。エリカが怒っている理由はただ門前払いさせられたからではない。シンオウ地方のジムバッチ7個云々はあくまでも建前で、実際は弱い挑戦者を相手する時間を趣味に没頭する時間にする為にそうしている。それだけならまだマシだが趣味に没頭し過ぎて条件を満たしても戦えない場合がある。つまり、完全なる職務放棄だ。今回はそのケースにぶちあたりエリカもぶち切れている。エリカも人のことを言えないけども。

 

「ミカンの言うとおりですよお姉様。お姉様が落ち着かずして誰が落ち着くんですか?」

 

「それはそうですが私はコスモの為を思って……!」

 

「いい加減弟離れしてくださいお姉様。最後にここに来ればいいだけでしょう! どうせ戻るんですから」

 

「……コスモがそう言うならそうしましょう。ですが次に来たときはコレですからね」

 

 エリカが手で首を切る動作をし警告する。ありゃマジだ大マジだ。目が笑っていないし、瞳も虚ろになっている。

 

 

 

「エリカさん少しやり過ぎよ。もう少し穏便な手段を考えた方が──」

 

「そうでしょうか? 職務怠慢の理由が理由なだけにそのくらいが妥当ですわ。感情任せに行動を起こしたらポケモンリーグ追放くらいのことをしてあげますわ」

 

 怖っ、ポケモンリーグから追放されるってことはポケモントレーナーの資格を失うだけじゃなく、ポケモンを所持することが出来なくなるってことで、草むらに入ることは当然だがポケモンのいる場所に近づくことすらも出来なくなる。デンジの場合でんきタイプのポケモンがいる発電所に近づけないから趣味の機械弄りの楽しみも半減してしまう。要するにデンジを含めポケモントレーナーにとってポケモンリーグ追放は死に等しく、エリカはその事を理解して言っているから恐ろしい。

 

「それでもだいぶ過激だと思いますよ、エリカさん」

 

 

 

 ミカンの言うとおり、少々過激過ぎる。チャンピオンは大抵放浪しているが、チャンピオンの場合チャンピオンに挑めるほどの実力者がいないから暇になるのであって、仕事を全て放棄している訳ではない。それにチャンピオンは癖こそあれども信念を持った人格者であることの方が多い。チャンピオンとジムリーダーは規模こそ違えど、ポケモントレーナーの象徴だ。つまりジムリーダーにも信念があり、人格者でもあると言える。

 

 サカキも方向性こそ違えど例外ではない。サカキは悪の組織であるロケット団のリーダーだったが部下にはかなり慕われていて、部下が自主的にサカキを呼び戻そうとしていたくらいだ。普通幹部が組織のトップに立ったなら真っ先に自分をリーダーとして認めさせるものだが、その幹部が率先してサカキを呼び戻すんだからサカキのカリスマはそれだけ異常だったということだ。それにサカキ自身も他の悪の組織のリーダーとは違い、息子や部下、ポケモンのことも思いやっている。

 

 息子や部下、ポケモンのことも思いやれないゲーチスとは真逆だ。SMのルザミーネはポケモン愛が酷すぎて息子や娘を犠牲にするどころか敵に回す始末だ。え? SMの悪の組織がエーテル財団じゃなくスカル団じゃないのかだと? この定義でいくとグズマはキャプテン──アローラ地方にはジムはない為ジムリーダーの代わりにキャプテンが存在する──の素質があるってことになるからな。小物だけど。

 

 

 

「そうですよお姉様。もう少しその過激な発想をするのを抑えて下さい。お姉様は穏便に済ませるくらいが丁度良いんです」

 

「だから穏便に済ましていますわ。一度見逃してそれでも尚改善しないようであれば……コレですわ」

 

 再び手で首を切る仕草をして、本気だということを伝える。

 

「も、もうその話は止めましょう。ここでジム戦が出来ないとなれば別の街に行ってジム戦をすればいいだけよ、ね? コスモ」

 

「僕もそう思うな!」

 

 ミカンが話を切り替える為に腰を折る。これに乗っからない手はない。エリカが徐々に不機嫌になっているのを態々油を注いで炎上させたいと思うか? 思わないだろ。つまりそういうことだ。

 

「ジム戦を受ける本人がそういうならそうしましょう。コスモの成長を見届けるのが主な目的ですしね」

 

 しね、死ね……いやまさかな? 本当にデンジ戻ってきてくれよ。そうすればナギサジムで被害者は出ないんだからな! 

 

 

 

 

 

 

 

 草むらを歩き、歩行妨害してくるポケモンをロトムやイーブイを先に出してからフシギソウで倒す。今までとはちょっと違い、レベルがお高めなこの地域。ロトムとイーブイのレベルアップがスムーズに行われる。俺のマイナス特典のおかげでなつき度はそう上がらない為イーブイがエーフィやブラッキーに進化することもない。ちなみに進化関係ないがロトムがロトム図鑑になることもない。

 

 

 

『だ、か、ら! そういう弱いものいじめは止めてっていっているでしょ!』

 

 しかし喧しいのがタマネギだ。何をどうやっているのかは不明だが、テレパシーで俺の頭に響かせる。

 

「ミカン、お姉様、この地域でジムリーダーの知り合いっていないの?」

 

「いきなりどうしたの?」

 

「いや僕が捕まえた某くさ・エスパーのポケモンがテレパシー越しで野生のポケモンを倒すなって苦情が来てて……ポケモンバトルの経験を積ませる為にやれないかなって思ったんだ」

 

「セレビィのことですわね?」

 

「……ひょっとしてあの時、最初から居たんですか?」

 

「船の時なら最初から居りましたわ。コスモが太くて長くてかたいものを持っている女に襲われないように見張っていましたわ」

 

「エリカさん、それは私のネールちゃんを馬鹿にしているのかしら?」

 

「事実を言ったまででしょう? ネールちゃんは太くて長くてかたいですし」

 

「そんな卑猥なセリフはツクシ君だけで十分よ!」

 

「そんな人知りませんわ」

 

 ギャーギャー喚き、口喧嘩する女二人。これを止めようにも俺じゃ無理だ。つーかツクシ、ミカンにそう思われているって何をしたんだ? 一番キャラ崩壊しているのはお前だろ。

 

 

 

『仕方ないね』

 

「うぁっ!」

 

「止めてぇぇっ!」

 

 タマネギがボールから出て来て、念波で二人に頭痛を起こさせる。

 

「ビィ?」

 

「な、何をいっているのかさっぱりわかりませんわ。名門のお嬢様である私が喧嘩などするはずがありませんわ。それにミカンさんとは親友ですもの」

 

「そ、そうよ。エリカさんとはこんなに仲良いもの!」

 

 そう言ってミカンとエリカがひきつった笑顔で肩を組む。どこからどう見ても誤魔化しているようにしか見えない。

 

「ビィ、ビィビビ。ビィ」

 

 それでもタマネギは二人が形式上仲良くしたのに満足してボールの中に戻る。それを見た二人がまた取っ組み合い、口を開いた。

 

「……さて、邪魔者もいなくなったことですしミカンさん。決着を着けましょう」

 

「そうですね……どちらか上かわからせてやりましょう」

 

「ビィ!」

 

 タマネギが再び、ボールから登場。ミカンとエリカがうめき声を上げて頭を抱える。テレパシーじゃなくとも何となくタマネギの言いたいことが理解した。

 

「ミカンもお姉様も喧嘩するからそうなるんだよ……」

 

 

 

「うう……仕方ありませんわ。ミカンさん、この勝負はジムリーダー同士が戦うエキシビションマッチで決着を着けましょう」

 

 まだ頭が痛むのかうめき声を出しながら、エリカが提案する。

 

「そうするしかないですね。でも大丈夫なんですか? はがねタイプの対策をしなくて? エリカさんの持っているポケモンはくさタイプの他にピジョットしかいないのでは?」

 

「この地方でくさタイプ以外のエキスパートタイプを探しますのでご心配なく。口実とはいえそのくらいのことをしなくてはリーグの方に報告出来ませんので」

 

 エリカの第二のエキスパートタイプか。くさタイプに続いて適性が高いのはどくなんだよな。どくタイプはフェアリータイプやはがねタイプを除いたどくどく持ちのポケモンにはかなり強いけど、はがねタイプやじめんタイプに弱い。つまり、どくタイプから見ればハガネールは天敵以外の何者でもない。比較的はがねタイプに強い特性ふしょくのエンニュートでもじしん一発でオワコンだからな。

 

 だからどくタイプをエキスパートに選ぶというのはないだろう。ついでに言っておくとフェアリーもない。フェアリーはドラゴンにこそ強いがはがねタイプが弱点だ。そんなポケモンを使って勝てる訳がない。勝つとしたら圧倒的なレベル差でねじ伏せるしかないんだよな。これ以上考えてもエリカのエキスパートタイプが決まる訳じゃないし、考えるのは止めよう。




USUMを安かったからダブルパックで買っちまった。

それはともかく面白ければ感想、高評価、お気に入り登録よろしくお願いいたします!


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第16草

まさかの一月以内に二度目の更新です。


 ナギサシティから出た俺達はジムのある街、トバリシティに着く。

 

「ようやく着きましたわ」

 

「ええ、そうね……で、コスモ。どこに目を輝かせているの?」

 

 ミカンが俺の視界を遮るように顔を覗く。それまであったゲームコーナーが見えなくなってしまった。

 

「え、いやこれはあの……」

 

「まさかゲームコーナーで遊びたいなんて言わないわよね?」

 

「失礼な! 遊びたいんじゃなく、ゲームコーナーにあるわざマシンが欲しいだけだよ!」

 

「ふーん……何でこのゲームコーナーにわざマシンがあることを知っているのか知りたいんだけど? ミカンお姉さんに教えてくれないかな?」

 

 ヤバい、半分くらいキレている。ここで逆らったら恐ろしい目に遭う。だけど前世の知識なんて言えるはずもない。

 

「え? タマムシのゲームコーナーの景品にはわざマシンあるのにここはないの?」

 

 なので全力で惚ける&話の論点をすり替える。これこそが俺の残された道だ。

 

「知らないわよ……というかエリカさん、タマムシで何でそんなものを認めたの?」

 

 ミカンがそう問うのには理由がある。ゲームコーナーなどの賭博類の店はジムリーダーが認めたものしか建築物や経営は認めれず、すぐに叩き壊されるような法律になっている。その上、ゲームコーナーの店は儲かるが、ゲームコーナーで儲かった金の一部をその所属している街に納めなければならない。

 

「タマムシにあるゲームコーナーは私ではなく先代のジムリーダーが認めたものですが、人口の多いタマムシシティの収入源になりますので私の代になっても認可していますわ」

 

 そう。都会になればなるほどゲームコーナーから収入を得られるようなシステムだ。だからある程度はエリカも黙認している。流石にロケット団が関わっているとわかったら動くだろうが。

 

「それでもコスモの教育には悪いでしょう!」

 

「いずれ通る道ですわ。私のような箱入り娘とは違ってコスモには家を継いで貰わなければならず、綺麗事のみを言うお坊ちゃんでは家を継いでも無意味ですから」

 

 エリカが箱入り娘かはともかく結構黒い事を言うもんだな。何せ……何でもないから睨むのは止めて頂きたい。

 

「既にその考え方を言える時点で箱入り娘とは言えないと思いますけど」

 

 同感だ。

 

「と、言うのは建前でして私もああいう物に興味がありますからいってきます!」

 

 エリカが真っ先にゲームコーナーの中に入っていく。行動といい、大胆さといい興味があったら何でも体験するのはやはり箱入り娘なんだと実感してしまう。

 

「エリカさんを追いかけるわよ!」

 

 ミカンも俺の腕を引っ張ってゲームコーナーに入っていく。そしてゲームコーナーに入った先にはコインの入ったバケツを三つまとめて運んでいるエリカの姿があった。

 

 

 

「エリカさん、何をしているのかしら?」

 

「コスモとミカンさんの分のコインを購入しましたわ」

 

「ミカンが聞きたいのはそういうことじゃなくて、なんでこんなに買っているのかってことですよ。いくら何でも多すぎですよ」

 

「まあまあ私のお金ですし、堅いことは抜きにして楽しんでくださいませ」

 

 コインケースとバケツを俺とミカンにそれぞれ一つずつ渡して、エリカがスロットで遊び始める。

 

「……もうやけくそよ! コスモ、エリカさんをギャフンと言わせるわよ!」

 

 ミカンがエリカと離れた場所のスロット台に付いて、遊び始めた。

 

「まあ別に良いけどさ」

 

 俺もエリカやミカンとは別のスペースでスロットをやり始める。ゲームコーナーのわざマシンを手に入れるにはコインと交換して手に入れるしかないからやるしかないんだけど。

 

 

 

 この世界のスロットは非常に遅く狙おうと思えば楽に777にすることが出来る。実際、俺の下にはバケツが追加されその中身が溢れんばかりにコインが溜まっていく。それだけに解せないのは隣にいるおっさんは惨敗している。何をどうしたらこうなるのかわからないよ。

 

「もし、よろしければおじさんの台と交換して貰えないかい?」

 

「わかりました」

 

 コインを回収し、惨敗しているそのおっさんに台を譲る いや台のせいじゃないっての。それを証明するかの如く俺はまた777を出しまくる。

 

「少年、もう一度交換して貰えないかい?」

 

「いいですよ」

 

 そしてバケツを持って俺とおっさんの席を交換し(以下略)

 

 

 

 

 

 

 

「何故だぁぁぁっ!?」

 

 発狂するおっさんを無視して、コインを出し続ける。数回も交換しておいてこの有り様だからか、おっさんが俺の胸ぐらを掴んできた。

 

「おい、イカサマしているんだろう! そうでなければこんなにコインが出るはずがないんだ!」

 

「ビギナーズラッキーだよ。それより手を離してくれない?」

 

 この生意気な口調……まさしく俺だ。俺が俺である台詞を人生で初めて言え、感涙してしまう。

 

「うるさいこのガキ!」

 

 おっさんが腕を振り上げ、殴りにいくが青い犬の手がそれを止めた。

 

「ルカリオ……?」

 

 そいつの名前はルカリオ。かくとう・はがねタイプであるが故にかくとうタイプが苦手という変わったポケモンだが、その分こおりタイプやはがねタイプ相手ならに無双出来るという優れたポケモンだ。ポケモン世界においてルカリオを切り札にしているジムリーダーは二人もいることからその優秀さが伺える。

 

「お父さん! やっぱりここにいたのね!」

 

 ピンクに染まった短髪の少女が現れ、おっさんを睨み付ける。彼女の名前はスモモ。ルカリオを切り札にしているジムリーダーの一人だ。

 

 

 

「す、スモモォ……」

 

「全く今日という今日は許しません! ただゲームコーナーで遊ぶだけならともかくこんな幼い子供に手を上げるなんて……!」

 

「ち、違うんだ。この少年が」

 

「初めから見ていた私にそんな言い訳は通りません! ルカリオ連れていきなさい」

 

「いだだだっ! 耳は、耳は止めてくれぇぇぇっ!」

 

 スモモのルカリオがおっさんの耳を引っ張り、耳障りなBGMを聞きながらゲームコーナーから消えていくのを見届けた。

 

 

 

「父がお騒がせしました。昔はもっとしっかりとした父だったんですが、私との一本勝負に負けて以来あのように自堕落な生活を送るようになって……」

 

「一本勝負?」

 

「ポケモンバトルですよ。私のルカリオと父のゴウカザルの一騎討ち。そのバトルに負けて以来お父さん、いえ父はゲームコーナーに入るようになってしまったんです。おかげでジムの改築も出来ない有り様で……」

 

「苦労しているんだね」

 

「弱音を吐きたくなるくらいにはですけどね。……って名前も知らない初対面の相手に何を言っているんでしょうか。この事は誰にも言ったらダメですよ?」

 

「コスモ。それが僕の名前だよ」

 

「え、ああ。私、トバリジムジムリーダーのスモモと申します。よろしくお願いしますねコスモ君」

 

「よろしくスモモさん」

 

「それじゃあの事誰にも言わないようにお願いします!」

 

「うん。それじゃまた」

 

「また機会があればお話しましょう。では失礼しました」

 

 スモモがそう言ってゲームコーナーから去る。……それにしても良い尻してやがるな。やっぱり鍛えているとああなるのか。

 

「おっと、回収しておかないとな回収、回収」

 

 コインを回収して多重影分身したバケツの中に入れ、コインケースの中に一気にぶちこむ。しかしコインケースは四次元空間になっているのか不明だが、満杯にはならないどころかまだ余裕すらもあった。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、皆様のコインを見ていきましょうか。最初にミカンさんから」

 

「わ、私は後でいいわよ」

 

「仕方ありませんね。ではコスモ。見せてくださいな」

 

「はい……」

 

 俺がそう言っていくつものバケツの中にコインケースのコインをぶちこんでいく。2つ目はまだ微笑ましいものを見る笑顔だったが、3つ目になってから顔の表情が引きつって4つ目に突入した頃には乾いた笑い声が響き、最終的には無表情になった。

 

「こんなものです」

 

「流石、私のコスモですわ!」

 

「エリカさん、コスモは誰のものでもないでしょ」

 

「そ、それよりもミカンのコインはどのくらいに?」

 

「……」

 

 渋々、本当に渋々コインケースをバケツの上からひっくり返し、コインを出させる。お賽銭のようなコインの音がその場に響くだけで終わった。

 

「ミカンさん、こう言ってあげましょうか? ギャフンと」

 

 どこから話を聞いていたんだ? この姉は。

 

「ある意味天才だね……ミカン。この先こう言ったギャンブルはやらないように頼むよ」

 

「エリカさんよりもコスモに言われたのが一番堪えるわ……」

 

「ところでお姉様は?」

 

「私ですか? 私はこの通りですよ」

 

 コインケースの中身をバケツに入れる。バケツ二杯と半分がエリカの成果だった。

 

「これでも凄い成果なんでしょうけど、コスモの前じゃ慎んでしまうわ……」

 

 いやどうなんだろうな? これはギャンブルというよりもスロットの慣れみたいなものだしな。今でこそ大人でも楽しく遊べるようになっているがポケモンは元々子供向けに発売されたものだから楽勝なんだよ。大人でも楽しめるようなゲームでないと前世の俺がアダルトチルドレンだと認めてしまうことになる。それだけは避けなければならない。

 

「私も予想外でしたわ。コスモにそんな才能があるなんて。やっぱりゲームコーナーで稼げる方ほどポケモンバトルは強くなるのでしょうか? ねえ、ミカンさん」

 

「エリカさん、そのケンカ買うわよ」

 

 またこの二人は……もう放っておこう。ミカンにケンカを売った罰としてエリカのコインは俺のコインとともにわざマシンに換金しておいた。




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第17草

まさか、まさかの1ヶ月三回投稿だぁぁぁっ!

こんなにモチベーションが上がったのもウルトラホール・ワープライドとかいう色違い入手システムのせい。
一番色違いが出にくい穴でも1%──ちなみにひかるお守り持ってかつ、呼び出し連鎖でどんなに確率を上げても1/273──は色違い。最高で36%だから、つまり9/25で呼び出し連鎖の90倍以上の確率で色違いが手に入るシステム……手に入れられるポケモンが限られているとはいえ如何にぶっ飛んだシステムかわかりますね。


 トバリジム。ジム施設とは思えないほどかなりボロいそのジムに俺達は来ていた。

 

「とてもじゃありませんけれど、ゲームコーナーがある街のジムとは思えませんわ……」

 

 エリカがそれを見て絶句してしまう。普通ゲームコーナーがある街は大都市と呼ばれるようなところで、ジムもボロくない。しかし目の前にあるこのジムは例外中の例外。ボロクソと言っていいほどボロだ。ボロボロだ。大事なことだから何度も言わせて貰った。

 

「これは……一体どんなジムの経営をしたらこうなるのかしら? 経営が下手な私でもここまで酷くならないわ」

 

 ミカンですらも信じられず、唖然としてしまう。いやまあ原作にも穴が空いていたりはしてたけどさ、いくら何でもここまでボロく表現されていなかったから俺としても予想外なんだがな。確かに一部ホラーな表現が緩くされていたのも知っているけど、ここまで予想を超えると何も言えなくなってしまう。……やばい、ホラーな表現と聞くだけでシオンタウンの音楽が脳内に流れてくるぅぅぅっ! 

 

 

 

「とにかく入りましょう! お姉様、ミカン」

 

 脳内に流れるシオンタウンの音楽を少しでも消そうと二人に急かしてジムに入る。

 

「そうですわね。見た目よりも中身が大切ですわ!」

 

 いや一言も言っていないからな? 

 

「どんなジムなのかしら?」

 

「かくとうタイプの使い手だよ、ミカン。パンフレットにかくとうタイプのジムって書いてあるじゃん」

 

「本当ね……」

 

 ミカンがそう呟くとジムからピンクの特徴的な女の子が出てくる。

 

 

 

「コスモ君来てくれたんだ」

 

「あ、スモモさん。こんにちは」

 

「はい、こんにちは。ところでこの二人は?」

 

「コスモの保護者にして姉のエリカと申します。本日は弟がお世話になるようですのでこうして見学させに頂いた訳ですわ」

 

「アサギジムのジムリーダーのミカンです。かくとうタイプがどのようなものか見学させて頂きますけどよろしいかしら?」

 

 二人が少しでも良い印象を与えようと猫を被る。ミカンはまだ良いとしてもエリカのはもう猫まんまじゃん。そんなことを考えているといきなり脳を揺らされ、意識を半分失い膝をつく。

 

「あらあら、コスモったら貧血かしら? 仕方ありませんわ」

 

 エリカが胴体を抱え、そのまま俺を前に担いでお姫様抱っこをした。

 

「エリカさん、そういう運びかたはコスモが可哀想でしょう。もう少し男の子が喜ぶ運びかたを考えないと……」

 

「いえ、私たちに見られる程度で貧血を起こすこの弟にはお仕置きが必要ですわ。そのお仕置きがこれです……良いですわね? ミカンさん」

 

 貧血を起こしたわけじゃないからな! 悟り並みの読心術で心を読まれただけだ! そう反論しようとしても意識が半分飛んでいるせいかこの身体を動かせない。

 

「マチスさんの時は緊張しなかったと思いますけど……」

 

「良いですわね?」

 

 意識が半分失ってもよくわかる。エリカが目を笑わせない笑顔でミカンに迫るその様子が。

 

 

 

「それでは私が担ぎますよ。エリカさんの華奢な身体つきじゃ辛い筈ですよ」

 

 第三者、いやこの声はスモモか? 確かにこの体勢は精神的にダメージが来るから有難い。是非ともお願いしたい。

 

「ダメです! 私がやります!」

 

 断らないでくれよそこは。このままだと……

 

「キャアッ!?」

 

 ほら言わんこっちゃない。変なところでおっちょこちょいだからこうなるんだ。人形のように放り投げられた俺は自然とスモモに抱えられるような体勢になった。

 

「ミカンさん、エリカさんを手当て致しますのでジムまで運んでくれませんか?」

 

「わかりました」

 

 常識人二人がタマムシの二人を運ぶ。しかし身体を鍛えているスモモが俺を運べるのはわかるが、鍛えてもない華奢なミカンが俺よりも重いエリカを運べるのはあり得ないと思うんだが。それともアレか? ここの世界の住民は何か謎のパワーでも与えられているのか? 俺はその身体能力を犠牲にしてチートを貰った──というかほぼあの神の強制──んだから何も言えないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 数分後。エリカに頭を揺らされただけだったが、病状が二日酔いそのものでまともに歩けずに千鳥足をする有り様だった。

 

「その調子でジム戦大丈夫ですか?」

 

「すみませんが、もう少し待って貰えます?」

 

「じゃあ、それまでの間お話しましょう!」

 

 スモモが笑顔で手を叩き、黒一点のガールズトークを始めた。

 

 

 

「コスモ君達は確かカントーの出身ですよね? タマムシはどんな街なんですか?」

 

「タマムシ……あそこはトバリと同じくゲームコーナーがある街でカントーでは一番の街ですよ」

 

「そっか。そんなところから来たんですね。もしジム戦が終わったら一緒に街を歩きません?」

 

「そ、んなことは許しませんわ」

 

 それまで無言でいたエリカが口を開き、反対する。エリカは俺よりも早く回復していたがミカンにおぶられたのが相当嫌だったのか不機嫌。何か八つ当たり出来るものがあればすぐにでも八つ当たりさせるんだがサンドバッグくらいしかなく、それをしたらサンドバッグの原型がなくなるくらい不機嫌になるだろう。

 

「お姉様?」

 

「いくら私が弟離れしていないと言われようともまだ可愛げのある子供を見守るのは姉である私の役目ですわ」

 

「そういうことでしたらエリカさんも一緒に行きましょうよ!」

 

「えっ?」

 

「えっ?」

 

 エリカが戸惑いの声をあげるとスモモも同じく戸惑いの声をあげる。ミカンがこれまでエリカを突き放すような事ばかりしてきたからスモモの善意にエリカは戸惑ってしまったんだろう。

 

 

 

「……止めませんの?」

 

「何をですか?」

 

「私とコスモを一緒にさせるのを」

 

「? 別に止める必要なんてないはずですよ。それより皆でワイワイ騒いだ方が楽しいに決まっているじゃないですか」

 

 汚れきった俺達姉弟には眩しいくらいスモモが優しいっ! なんで人はここまで優しくなるの!? 

 

「じゃあ私も一緒にお願いします」

 

「もちろんいいですよ」

 

 ミカンの参加表明にスモモが笑顔で頷く。

 

「ところでミカンさんの住むアサギはどんな街で?」

 

「田舎ですよ。ジムがなければタウンに降格させられてもおかしくないくらいに」

 

「それはまた……しかしどうしてそんなジムリーダーがコスモ君と共にしているんですか? エリカさんは姉だからと言うのはわかりますが」

 

「コスモのジム戦を全て見届けたいからですよ」

 

「どういうことですか?」

 

「コスモのポケモンバトルはくさタイプ使いとしては珍しい戦い方で、そこにいるエリカさんの攻略法の参考になるのではないかと思いまして」

 

「エリカさんも同じような戦法を?」

 

「いいえ。あのような真似はジムリーダーとしては出来ませんわ」

 

 エリカが首を横に降って否定する。そりゃそうだ。あんな戦い方はジムリーダーとして真似してはいけない。俺のチートは由来通りのズルだ。どれくらいズルかというとカンニングと同じく不正行為であり、決してあってはならないものだ。世界が崩壊するとも言っていい。俺を転生させたあの神はやはり有能だったんだな。

 

 

 

「お待たせしました。ようやく体調の方も回復してきたのでジム戦をお願いします」

 

「そうですか。ではコスモ君、ジムバッチは何個持っていますか?」

 

「カントーのジムは二つ。他はありません」

 

 エリカから貰ったレインボーバッチとマチスから貰ったオレンジバッチをスモモに見せる。

 

「ということですので、ポケモンリーグの規定によりトバリジムジムリーダー、つまり私スモモは道具なし、特定のレベルのポケモン三体のシングルバトルをすることを誓います!」

 

 スモモがそうお辞儀をして、気合いの叫び声をトバリジムに響かせる。こうして俺の三度目のジム戦が始まった。




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第18草

前回の前書きに書いたウルトラホール・ワープライドシステムの悪影響も少なからずあるんですよね。

それはUBの価値暴落。これまでのUBはタマゴグループ未発見なので増殖も出来ない上に一本のソフトで捕まえられる数も限られていて、言わば準伝説と同じ扱いでした。その為伝説と取引されることもそう珍しいことでありませんでした。しかしSMにいたUBはいくらでも手に入るようになり、今では伝説と取引しようとしても色違いでもない限り見向きもされないほど価値が暴落してしまう事態に……

以上雑談でした。それでは本文をお楽しみください。


 ポケットモンスターシリーズでかくとうタイプのジムリーダーはスモモで三人目。金銀から三回連続のかくとうタイプのジムリーダーが誕生しており、如何にかくとうタイプのジムリーダーを増やしたいかがわかる。しかもシリーズが改まるほどにマッチョ、イケメン、美少女となっていくものだから次のかくとうタイプのジムリーダーを期待していた諸君もいたのではなかろうか。

 

 

 

 ちなみに第七世代時点でじめんタイプのジムリーダーはサカキを含めても二人のみで島クイーンを入れて三人目が入るが島キング・クイーンをジムリーダーと同じ扱いにしても問題はないんだろうか。設定じゃ島キングと島クイーンは四天王と同じ扱いみたいだしな。それを言ったらあくタイプのジムリーダーは皆無になり、製作者陣営は如何にあくタイプ使いをジムリーダーにさせたくないのかがわかる。

 

 

 

 とにかく、それくらいポケモン世界においてメジャーなかくとうタイプの弱点はひこう、エスパー、フェアリーの3つだ。しかし俺の持っているポケモンの中で弱点をつける技を持っているポケモンはタマネギとイーブイだがこの二匹は使えない。イーブイはノーマルタイプの上に俺のマイナス特典のせいで戦力外だし、タマネギは戦力としては申し分ないが伝説を出す訳にはいかない。スモモを信頼していないという訳じゃないけど、このジムがオンボロだから自然と声も外に響くんだよな。外でタマネギを出すのとほぼ変わりないくらいだ。

 

 

 

 となればステータスによる暴力のみが頼りだ。

 

「いけっフシギソウ!」

 

 フシギソウ。今持っている俺の正式なポケモンの中でのエースがこいつだ。このフシギソウはレベルこそ35だが俺の特典によりパワーアップされており、最低でもこうげきの302、二番目に低いぼうぎょですら326。HPに至っては411だ。

 

 

 

 ちなみにポケモンで最もこうげきステータスが高いAV──アダルトビデオではない。こうげき個体値31──いじっぱりメガミュウツーXですらレベル50の時点でこうげきステータス266。ぼうぎょステータスが最も高いBVのわんぱくツボツボもレベル50時点で310。HPステータスが最も高いHV個体のハピナスでも362。これがどういうことかわかるだろうか? 

 

 つまり俺のチート特典でパワーアップした俺のフシギソウ(レベル35)はそれぞれの分野でレベル50のどのポケモンをも凌いでいるということだ。

 

 それくらい俺の特典はチートでぶっ飛んでいる。この特典を受けられるのがくさタイプでなくドラゴンタイプやエスパータイプだったらどうなっていたんだろうか……

 

 

 

「行きなさいアサナン」

 

 そしてスモモが出してきたのはアサナン。チャーレムの進化前だ。このアサナンとチャーレムはポケモンの中でヨガパワーという物理技を二倍にする特性を持っている。つまりちからもちと同じ効果でこうげきのステータスが実質二倍。しかもイカサマをされてもこうげきの種族値が倍のポケモンよりも痛みがないという恐ろしい特性だ。……だがそれは攻撃の時の話だ。

 

「フシギソウ、はっぱカッター」

 

「フシッ!」

 

 そして轟音が響く。ただでさえボロなジムがさらにボロくなり、アサナンがボールとなって場外ホームランした。

 

「アサナン、戦闘不能! よってフシギソ……!?」

 

 

 

 無情な攻撃がスモモのアサナンを倒し審判が宣言しようとした瞬間、フシギソウがフシギバナに進化したがフシギバナになってもトレードマークである顔の星模様はなくならないのか。

 

「うそぉ……ただでさえあんなに強かったのにさらに強くなるの?」

 

 スモモが涙目になり、絶望に暮れぶつぶつと呟き続けるその姿は国民的アニメである龍珠のサイヤ人王子のようだった。

 

「スモモさん?」

 

 俺が声をかけるとスモモはピクリと動き、背を向けた。

 

「……申し訳ありませんがアサナンを回収させて貰いますので少々お待ち下さい」

 

 ジム戦は中断され、スモモがアサナンを回収するまで待つことにした。

 

 

 

「エリカさん、いくらなんでもあのフシギバナ強すぎませんか?」

 

 ミカンがそう思うのも必然なわけで、隣で正座して観戦していたエリカに尋ねる。

 

「……」

 

「エリカさん?」

 

 エリカが反応を取らない為に、もう一度声をかける。それでも尚反応を見せない。そしてミカンと俺はあることに気がついた。

 

「寝ているわね……」

 

「お姉様……少しはそのマイペースを直してください」

 

「zzz……」

 

 器用なことにエリカは誰にも気づかれぬように目を閉じ、あたかも真剣に音だけを聞いて戦いの様子を聞こうとしているように見せた。

 

「ミカン、これをお姉様の口の中に入れて」

 

 俺が渡したものはカゴの実。カゴの実は眠り状態を回復させる効果がある。ねむるとの相性は抜群に良く、対戦でもねむるとカゴの実を使ったコンボ、所謂ねむカゴコンボを使う奴もいる程だ。

 

「それじゃエリカさんお口を開けて、って開かない?」

 

 このパターンは……物凄く嫌な予感がする。いや悪寒がする。そうはさせてたまるかよ。

 

「ミカン、お姉様は口移しがご要望のようですので口移しで」

 

「ええっ、口移し!?」

 

「お姉様がそうやる時は大体目覚めのキスを要望している時なんだよ。何度もやらされたし」

 

「それだったらコスモがやれば」

 

「言いたいことはわかるよ。でもお姉様はとっくに目覚めているんだよね。だから余程の嫌がらせをするか僕が口移しでカゴの実を食べさせるかしない限りは起きないよ。僕が口移しでやったらお姉様の我が儘がエスカレートするからミカンがやった方がいいんだよ」

 

「確かにコスモがやるよりも私の方が嫌がらせにはなると思うけど、余程の嫌がらせにはならないわよ?」

 

「とは言えしなくても別に問題ないよ。あくまで強制的に起こさせる手段がそれなだけで今起こす必要もないからね。僕のジム戦が再開したら狸寝入りは止めるだろうし」

 

「……納得がいかないわ」

 

 俺だって納得出来ねえよ。

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました」

 

「ところでスモモさん、棄権しないんですか? お姉様もマチスも僕のフシギバナの実力を見て棄権しましたから」

 

「正直なところ棄権したいです。しかしこの子達を止めたくても止められないんですよ。ジムリーダーどころかトレーナーとして失格ですよね」

 

「スモモさんそんなことはございませんわ。マチスさんがどうかは知りませんが、私の場合はもう一匹のポケモンが臆病過ぎて格上は勿論同格のポケモンとも戦わないほどで、棄権せざるを得ませんでした。しかし貴女のポケモンは相手がどんな強者であっても主人の為に戦おうとしている。その育成方法是非ともご教授願いたいですわ」

 

 後ろからエリカが立ち上がり、スモモの手を握る。それだけあのモンジャラに悩んでいたんだろうな。

 

 

 

「コリャーッ! うちの娘に触るなこの小僧がぁぁぁっ!」

 

 スモモ親父君臨。エリカにドスドスと踏み鳴らし、エリカに近づく。それにしても小僧って俺とエリカ間違えてないか? そりゃ顔こそ俺と酷似しているが髪型と服装、それに胸を見れば別人だってわかるだろ。

 

「お父さん、この人は」

 

「スモモ黙ってろっ、こんな男女成敗してくれるわ!」

 

 ダメだこりゃ。娘のスモモでもいうことを聞かないなんて手の施しようがない。スモモ親父の拳がエリカに目掛けて飛んで来る。

 

「はっ!」

 

 だがエリカは小さな体を利用してそれを避け、そのまま前に移動すると柔道の大外刈を放つ。スモモ親父が油断していたのかエリカが受け身を取らせなかったのかは不明だがどちらにせよスモモ親父が頭を打って気絶した。

 

「凄い……お父さんを気絶させるなんて」

 

「いえ、これくらいは護身術として当然ですわ。コスモだってやればこのくらいはできますわ」

 

 いや大外刈は出来るが、流石に頭を打たせたりはしないぞ。頭を打たせる柔道技は護身術じゃない。もはや殺人技だ。カイリューではかいこうせんを放つのと一緒だ。

 

 

 

「流石タマムシ人、桁が違うわ」

 

「いやいやミカン、誤解しているようだけどアレは受け身を取らせなかっただけの大外刈だよ。柔道習えば大外刈そのものは誰だって出来るし、ミカンの方が力があるでしょ」

 

 不名誉極まりないことを言われたので反論しておく。俺は断じてエリカのような超人ではない。張力100kgの弓で流鏑馬が出来る奴と同類にされたくない。

 

「コスモが非力過ぎるだけじゃない?」

 

「ミカン、それよりもお姉様とスモモさんを止めよう。あのままだとお姉様がパワーインフレ起こして別世界の住民になっちゃうよ」

 

 確かにこの世界で非力であることは認めるが前世では非力どころか怪力なくらいだ。しかしそんな反論よりも重要なのはエリカとスモモが護身術からどんどんかけ離れて関節技、寝技、そして打撃技、一撃必殺と物騒極まりない方向に向かっていく。もしそんな技をくらえば人生終了だ。そんな技を持たせない為にもミカンとともに止める必要がある。

 

「そうね、止めましょう」

 

 俺とミカンは二人の会話に割って入ってそれを止めた。




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第19草

長かった……ようやくトバリ編終わりです。


「御迷惑をおかけしました。申し訳ございません」

 

 スモモが頭を下げ、非礼を詫びる。

 

「スモモさん、貴女が頭を下げる必要はございません。元々私がジム戦を中断させたのが事の原因ですし、貴女のお父様は貴女を思っての行動ですわ」

 

「そう言って頂きありがとうございますエリカさん。しかしそれだけでは私の気持ちが収まりません。どうかこのタマゴを受け取ってもらえませんか?」

 

 絵本じみた展開になってきたぞ。この話を絵本にしたらバカ売れしそうだ。

 

「そのタマゴは?」

 

「父のゴウカザルが持っていたタマゴです。本来であれば父に渡すのが筋なのですが主に父が御迷惑をおかけしたので、二度とこのようなことをさせない戒めとしてこのタマゴをエリカさんに献上します」

 

 絵本どころかまるで時代劇だな。

 

 

 

「ですが……」

 

「受け取ってくれお嬢さん」

 

 スモモ親父が起き上がり、そう一言告げエリカの方に向いた。

 

「儂は当初スモモが挑戦者達をなぎ倒して貰いたいと思ってゲームコーナーにある景品のわざマシンを取る為に必死でした。ジムの経費やスモモから貰うおこづかいを使ってでも取ろうとしていた」

 

「ジムの経費がやたら巨額だと思ったらお父さんが原因だったんですね!」

 

 ジムリーダーなんだから気づけよ! 経費がどんなに大切かわかっているのかこの脳筋娘は。

 

「……そのせいで育ち盛りなスモモに一日一食という過酷な生活をさせてしまう程に負担をかけてしまった。スモモの胸が小さいのも儂のせいだ」

 

 スモモの後ろにある『一日一食』と書かれたスローガンを見てスモモ親父がため息を吐く。胸云々はセクハラだろ。

 

「お父さん!」

 

 そしてスモモの腹の虫が怒鳴り声をあげ、ジム中を響かせる。

 

「うっ……これはその、あの……」

 

「スモモさん、後で奢りますから今日はたくさん食べて下さいね」

 

 エリカが哀れむように微笑み、スモモの肩に手を置く。

 

 

 

「でも私結構食べますよ?」

 

「大丈夫、そこのミカンさんも相当な大喰らいですから。一人が二人になったところで何も変わりありませんわ」

 

 そう言えばミカンも大食いなんだっけ。タマムシで納豆定食なんて頼んでいたから忘れていた。

 

「ちょっとエリカさん、私は大食いじゃないですよ!」

 

「コスモの前だからってぶりっ子しなくていいんですよ。前に私と戦った後の時のようにたっぷり食べて下さいね」

 

 エリカが悪どい笑みで、顔を腕で隠しているミカンとその隣に出来たディッシュタワーの写真を見せる。

 

「これは隣の人のお皿ですよ!」

 

「両隣は誰もいなかったのに?」

 

「と、とにかく私はそんなに食べられませんから! コスモも覚えておいて!」

 

「ちょっ、揺らさないで!」

 

 普通に揺らす程度なら問題ないが、ミカン──というかこの世界の住民──の力でやるとシャレにならん! ウイスキーをロックでジョッキイッキ飲みした後よりも揺れるんだから揺らすなぁぁぁっ! 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢さん。いろいろ話が逸れましたがそのタマゴを受け取って頂けないか。その方がこのタマゴから孵るポケモンの為にもなります」

 

「わかりましたわ。このタマゴを預からせて頂きます。このままでは受け取らないとコスモのジム戦を再開してくれそうもありませんし」

 

「ありがとうございます。これで心置きなくジム戦を観戦出来る……スモモ、頑張れ!」

 

「お父さん……!」

 

 何だろうな~このアウェイ感は。これでさっきのようにぶっとばしたら血も涙もない鬼というか、完全な悪役だ。

 

「それでは試合を再開します!」

 

 マジでどうしようか……

 

 

 

 

 

 

 

 その数分後、考えている間に指示を出し、ステータスの暴力でフシギバナが二頭連続で秒殺──秒殺じゃなく秒倒が正しい──した。

 

「流石、としか言いようがありませんね。お見事です。コボルバッチとわざマシンを受け取って下さい」

 

「この中身は?」

 

「このわざマシンの中身はドレインパンチです。この攻撃を当てると与えたダメージの半分だけ回復するんですよ。是非とも使って下さいね」

 

「ありがとうございます」

 

 ドレインパンチか……くさタイプで覚える奴も多数いるがその中でも特に思い出すのはキノガッサだ。

 

 キノガッサというとキノコのほうしを搭載させきあいパンチを入れるのが基本。ドレインパンチの方はサブウェポンになりがちだがこいつの恐ろしさはポイズンヒール型になるとよくわかる。前世の時にキノガッサがうざくてキノコのほうし封じにしんかのきせきヤルキモノをメンバーに入れてみたが惨敗。その原因がドレインパンチだ。ドレインパンチ&ポイズンヒールで回復され、ボコボコにされた思い出がある。そんなトラウマを抱えているせいでドレインパンチ=キノガッサと結び付くようになった。

 

「それではエリカさん、お世話になります」

 

「ええいきましょう。スモモのお父様も」

 

「いや儂は……」

 

「お父さん、こういうのは好意に甘えておこうよ。この思い出が戒めになるんですから」

 

「わかった……だがその前にコスモ君」

 

「なんでしょうか?」

 

「先ほどは申し訳なかった。いくら儂が正常でなかったとは言えあのような態度を取ってしまった。どうかこれで許して欲しい」

 

 スモモ親父が頭を下げるどころか土下座までして非礼を詫びる。

 

「スモモさんが代わりに謝っているからいいですよ。その代わりこれからはスモモさんに迷惑をかけないようにしてください」

 

「ありがとう、ありがとう……!」

 

 うへぇ、汚ねえ。おっさんが涙を流すなんて誰得だ? 

 

 

 

 

 

 

 

 店主がタイムウオッチを見ながらスモモのラーメンを食べる様子を見る。

 

「ご馳走さまでした!」

 

 そしてその瞬間、ストップがかかった。

 

「9分14秒! お見事でさあ」

 

 15分間のスモモが大食いチャレンジが成功。それを聞いた観衆が沸き上がる。ちなみに大食いチャレンジというのは一定の時間内までに食べ終われば無料というメニューのことだ。当然量も多い。

 

「やった!」

 

「スモモ、よくやった!」

 

 スモモとスモモ親父が互いに抱きつき、喜ぶ。エリカもそれを見て微笑むが……ミカンだけは例外だ。ミカンも大食いチャレンジに挑戦しようとしていた。いやさせられていた。

 

「エリカさん、流石に無理ですよ」

 

「完食出来なかったらミカンさんの奢りにしますわ。私に借金をしたら即ジョウトに帰って貰いますのでよろしくお願いいたします」

 

「な、何の権限があってそんなことを」

 

「もし拒否するならこの写真をポケモンリーグやジョウトの各ジムに送りますので」

 

 エリカが先ほどとは違う写真を見せると悪どい笑みを浮かべ脅す。しかし何の写真だ? そう思い手に取ろうとするとミカンがエリカから写真を奪ってビリビリに破いた後ゴミ箱に捨てた。

 

「これで恐れるものは何もないわ!」

 

「先ほどの写真はコピーですわ。本物はタマムシジムにありますのでご心配なく」

 

 再び写真、いや写真のコピーを出しミカンにそれを見せるとミカンが絶望し顔を伏せ、影を落とした。

 

「さあ、ミカンさん。ここでコスモに貴女の食事する姿を見られるのとあの写真が拡散されるのどちらか好きな方を選んで下さい」

 

 ……仕方ない。フォローしてやるか。

 

「ミカン、無理しなくていいよ。僕が食べるから」

 

「えっ?」

 

「コスモ、そんな事をすればボットちゃんの中に入ってもらいますわ」

 

 ボットちゃんってマスコットキャラにする予定の着ぐるみのことか。その中に入るってことはタマムシジムに所属しろってことか

 

「構いませんよ。ミカンが悲しむ顔を見るよりも僕がボットちゃんの中に入る方が苦痛じゃありませんから」

 

 どうせタマムシには帰らないんだし。何一つ問題……はあるか。エリカが俺を強引にでも連れ戻そうとして外堀を埋めていくだろう。そうなったら俺は従わざるを得ないのでエリカが届かない場所に逃げる。何が何でも逃げる。タマネギの時渡りの力を使ってでも逃げてやらぁっ! 

 

「僕は決してスモモさんみたいに大食いじゃない。だけど困っている女の子を助ける為なら大食いにだってなってやる」

 

 俺が覚悟を決め、店員を呼び出そうとするとミカンがそれを止めた。

 

「ミカン?」

 

「コスモが無理する必要はないわ。ようやく私も一皮剥けて、いわタイプからはがねタイプになったんだから」

 

「……つまり?」

 

「これまで私はくさタイプのエリカさんにやられっぱなしだった。それは私がいわタイプだったから……だけどはがねタイプになった今、エリカさんのくさタイプの攻撃を受けてもいまひとつ。並大抵のことじゃびくともしないわ」

 

 そう言ってミカンが大食いチャレンジを注文した後、大食いチャレンジのレコードが更新された。




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第20草

いつぞや(第3草)の後書きに、最強の複合タイプ、ノーマル・ゴーストの話をしてから数ヵ月後の話。

この複合タイプを主題にした小説が出ていて「やっぱ同じ発想の持ち主はいるんだな~」と思いつつ、第3草とその小説の一話目が投稿された日時を見ると第3草の方が早く、「なんでやねん!? 何で俺が書いた方が投稿日時早いの!?」などと一瞬思ってしまった。

それでは本編どうぞ。


 二日後。俺達はハクタイの森に来ていた。うん? どうしてそんな速さで進んだのかだと? ゴールドスプレーをかけたおかげで特に何もなかったからな。スムーズに移動が出来た。ミカンと何かあったと思ったら大間違いだ。ミカンと何かしようとしてもエリカが見張っているんだからどうしようもない。

 

「イーブイ出てこい」

 

「ブイ!」

 

 ブイゼルみたいな鳴き声を出しながら外に出るイーブイ。 逃がす訳ではなく、ここで進化させる為に出した。

 

「ほらイーブイ、食べて」

 

「ブイっ!」

 

 イーブイが差し出したふしぎなあめを使い、レベルアップするとイーブイの身体に異変が起きた。

 

 

 

「フィ~!」

 

『ご主人様進化させてくれてありがと~!』と言わんばかりにイーブイ、いやリーフィアが甘えた声で俺の脚にすり寄る。妙だな。イーブイの時はここまでなつかなかったのに、リーフィアになったとたんに甘えるようになった……もしかしてここにも俺の特典が? そうだとしたらなつき度に依存するおんがえし覚えさせたら威力がとんでもないことになるな。

 

「まあ……!」

 

 エリカが紅潮した笑みを浮かべため息を吐く。そういえばカントーじゃリーフィアは見かけないんだっけか? 

 

「おめでとうコスモ。このリーフィアも喜んでいるわ」

 

 ミカンがリーフィアの頭を撫でると気持ちよさそうにリーフィアが顔を緩めた。

 

「み、ミカンさん私にも!」

 

 エリカもミカンに続いてリーフィアを撫でる。ここでリーフィアが噛みついてくれたら面白いんだが、リーフィアはさみしがりだから甘えん坊なんだよ。俺の顔に似ているエリカは当然、ミカンにも人懐っこい。

 

『やれやれ人気者だね、リーフィアは』

 

「そうだね……ってタマネギ。勝手に出ないでよ」

 

『そうは言われても暇なんだもん。それにリーフィアをコスモのポケモンの中で一番早くみたいしね』

 

「タマネギ、そこまでリーフィアのことを……!」

 

『同じくさタイプのよしみだからもの。当然さァ』

 

「……キャラ変わった?」

 

『さて何のことやら』

 

 

 

 タマネギがボールに戻る。そしてリーフィアに視線を向けるとエリカやミカンと同じくらいの年の少女がこちらに向かって走ってくる様子が視界の隅に映った。

 

「ふぁ~リーフィアだぁーっ!」

 

 前世において犬を見かけると寄ってくる子供のように目を輝かせ、近寄る少女。そしてそのリーフィアを触っているエリカに口を開いた。

 

「そのリーフィア、触ってもいい!?」

 

「構いませんわ」

 

「お姉様、親である僕を無視して勝手に答えないで下さいよ」

 

「親? ってことは君のポケモン?」

 

「そうですよ」

 

「そっか。ごめんね。リーフィアの気持ち良さそうな顔をしていたから君のお姉さんのかと思っちゃった」

 

 

 

 こいつはさみしがりやだから誰にでも甘えるんだよな。……そう言えばリーフィアの性別ってオスだよな? イーブイや御三家等はオスが生まれやすい為にメスが生まれ難く、厳選が難しい。高個体値メタモンがいればだいぶ楽だがそれでも難しいとされているのがエンニュートやビークインだ。エンニュートやビークインは進化前のメスが進化するとなれるがオスは進化出来ない。しかもそれぞれの進化前ヤトウモリやミツハニーはオスの方が生まれやすい為めざパ厳選なんてやろうものならかなり大変だ。銀冠を使うことを前提にするならS個体値を偶数にしてほかをVにすればめざパ氷エンニュートやめざパ氷ビークインの出来上がりだが、どんなに確率を良くしてもそれが生まれる確率は2%に満たない。

 

 話がそれた。リーフィアがあんなに甘えたがりなのはオスなんじゃないかってことだな。そう思った理由は単純にデレデレしすぎな感じがして嫉妬してしまうからだ。いや女子高生達の悪ふざけみたいなものかもしれない。全く羨ま……もといけしからん! 

 

 

 

「わかればいいんですよ。もっとも触れられるのはリーフィア自身なので嫌がらない限りは触っても結構ですよ」

 

「やったー!」

 

 少女がリーフィアに触れる体積を少しでも増やす為にエリカの胸に抱きつく。

 

「ああーっ、可愛い~!」

 

 ハンズをおっぱいにし、レタスをリーフィアにしたサンドイッチの出来上がり。助平な男が見たら思わず棒を固くしてしまうだろう。そうでなくとも百合萌えに目覚めてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 数分後、リーフィアは解放されボールに戻った。

 

「ところで自己紹介が遅れましたね。僕はタマムシシティのコスモ。先ほどのリーフィアの親です」

 

「同じくタマムシシティのエリカですわ」

 

「アサギシティのミカンです」

 

「あっ、失礼しました。私、ハクタイシティのナタネです。ジムリーダーを勤めています!」

 

 この少女がハクタイシティのジムリーダー? いやアニメ版ではくさタイプポケモンフェチだということは知っていたが、目の前にいる彼女はエリカ達よりも幼い。それでもジムリーダーをしているとは驚きだ。エリカですらつい最近ジムリーダーになったばかりだというのに。

 

「ということはくさタイプのジムリーダーなのですか?」

 

 ミカンがあまりのくさタイプ好きに引いたのか、顔をひきつらせてそう尋ねた。

 

「ええ。くさタイプが大好きで、それを極めようとしたらいつの間にかジムリーダーになっちゃいました!」

 

「それは凄いですわ」

 

 ミカンとエリカの二人がそう答えるが、セリフに込められた感情が違う……

 

「そうだ。皆さん私のジムに案内します!」

 

「よろしいのですか?」

 

「ええ。先ほどリーフィアを触らせてくれたお礼です」

 

「ではよろしくお願いいたします」

 

「じゃあ三名様ご案内~!」

 

 

 

 そしてハクタイジムに案内されるとそこには大きな花時計が設置されていた。この様子だとプラチナの世界なんだろう。

 

「どう!? この花時計に噴水! 自然に恵まれて良いジムでしょ!」

 

 こう自慢気に語られるとやはりナタネも若いな、と考えてしまうのは転生者だからだろうな。

 

「お見事、としか言い様がありませんわ。今後のジムの研究に使わせて貰います」

 

 エリカはただ感心し、花時計を中心にジムの設備を眺める。

 

「私のジムもこう華やかな方が良いのかしら……? いやはがねタイプだからコンパクトにしないと……」

 

 ミカンがぶつぶつと呟き、手で口を覆う。

 

「もしかして二人ともジムリーダーなんですか!?」

 

「ええ。とは言ってもナタネさんのように華やかなものではありませんわ。ミカンさんのアサギジムに至ってはまだ改築中で中にも入れない状況ですので」

 

「あら~そうなんですか。でもカントーやジョウトのジムがどんなものか知りたいのでいずれそちらにお邪魔したいです」

 

「同じくさタイプのエキスパートのジムリーダーとして楽しみに待っていますわ」

 

「ところでエリカさん、コスモ君は貴女の弟なんですか?」

 

「妹のことをお姉様と呼ぶ兄がいると思いますか? つまりそういうことですわ」

 

 あー、うん。そんなのエロ小説でもいないな。高度なプレイとかならあり得るが。

 

「でもなんていうかしっかりしてエリカさんよりもコスモ君の方が大人びいている感じがするのよ」

 

 そんなことは初めて言われたな。ミカンですら俺よりもエリカの方が年上と認めるくらいにはエリカの方が精神的に落ち着いており、俺の方がまだこどものように見える。

 

 

 

 そんなことを考えているとジムトレーナーの少女がナタネの肩に手を置いた。

 

「話の途中悪いけどナタネさん。もりのようかんには向かったんですか?」

 

 それを聞いた瞬間、ナタネの脂汗が滝のように流れ、口をゆっくりと動かした。

 

「い……」

 

「い?」

 

「行ってませんでした! 申し訳ございません!」

 

 土下座をかまし、ジムトレーナーに謝るナタネ。何だろう。親近感を凄く感じる。

 

「ナタネさん、私言いましたよね? 今度行くのサボったら許したりしないって」

 

「今回は本当に忘れていただけです! ナエトルのはっぱカッターで許してください!」

 

「それはナタネさんにとってご褒美でしょう! ……はぁ、仕方ありません。そこのトレーナーさん、後で報酬をお渡ししますのでナタネさんに付き添って頂けませんか? 実はナタネさん物凄く怖がりで、ありとあらゆる手段を使ってもりのようかんに行かない為の口実を作るんですよ。ですからナタネさんが逃げないように付き添ってください」

 

 報酬……どんな報酬だろうか。気になるな。

 

「ち、ちょっと! 私怖がりじゃないもん!」

 

「それだったらなんで今まで行かないんですか?」

 

「うっ、それはあのその……」

 

「とにかくもりのようかんまで行って何も異常がないか見てくださいね?」

 

 

 

「それじゃ僕がナタネさんと行くよ」

 

 はっきり言って俺だって行きたくない。具体的には地雷地帯並みには行きたくない。だけど困っている女の子を助けるのは男なら当然だ。

 

「なら私……」

 

 ミカンが口出しをしようとしナタネ達が目を離したその瞬間、俺は見てしまった。エリカが目にも見えない速さでミカンの首を叩き、気絶させたのを。

 

「ミカンさん! ……ミカンさんが貧血で倒れてしまったようですので、私達はここでお待ち致しますわ」

 

 お前が気絶させたんだろうが! と突っ込みたかったがそんなことを指摘しても惚けられるだろう。下手したら薮蛇になりかねない。

 

「それじゃナタネさん、行きましょうか」

 

「……うぅ、嫌だよう」

 

 ぼそりと幼児退行したナタネが呟くも誰もその事に突っ込まずにそれを見送る。薄情と言うか、自業自得というか世の中そんなものだ。




≫めざパ氷エンニュート
作者も作ろうとしたけど挫折しかけている。というかした。それくらい厳選が難しい。



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第21草

お待たせしました。年明けちゃったよ……


「デテイケ……!」

 

「ひっ!」

 

 

 

 わずかに聞こえたその声にナタネさんが震え上がり俺に抱きつく。それは別にいい。ただ少し問題があるとするとその胸で俺を圧迫していることだ。

 

「ナタネさん落ち着いてください。あれはゴーストタイプの仕業です」

 

「ゴーストタイプだから無理なの! 何で一介の生物が幽霊とかに干渉出来るのよ。おかしいわよ!」

 

 確かにおかしい。ナタネの文章力もだが、生物が幽霊に干渉するのはおかしい。

 

 とはいえ、このままでは作業が進まない。何か話題でも降ろうか。

 

 

 

「それじゃ他の地方で見られるくさタイプのポケモンの話しをしましょうか?」

 

「……どんなポケモン?」

 

「アローラ地方に生息するくさタイプのポケモンですね」

 

「アローラ地方……」

 

「そう。ダダリンというポケモンなんですがそのポケモンの特性は、はがねタイプの技の威力を上げてくれるはがねつかいという特性なんですよ」

 

「ってことはくさ・はがねタイプってこと?」

 

「いえいえ。くさ・ゴーストタイプなんですよ」

 

「ゴーストタイプなのにくさタイプ……!?」

 

「ナタネさん、そういうゴーストタイプを含んだくさタイプポケモンはダダリンの他にもいます。ダダリン達でゴーストタイプを克服しましょうよ」

 

「……」

 

 小さく頷くとその瞬間、ゴーストタイプのポケモン達が空気というものを読んでいないのか心霊現象を起こした。

 

「ひゃぁぁぁっ!?」

 

「ぶへっ!?」

 

 ちょっ、マジで苦しい! 頼むから、その胸を凹ましてから抱きついてくれ! 

 

「もうやだぁーっ! 帰りたーい!」

 

「むがーっ!」

 

 俺の貧弱な腕力でナタネの拘束をほどける筈もなく、呼吸が……やばい、窒息しそう。

 

「えっ、コスモ君?」

 

 ナタネさんが流石に異常に気がついて俺を解放してくれた。ナタネさんの拘束から解き放たれた俺はまず呼吸! 呼吸しなければ人間生きていけない! 

 

「ご、ごめん。そこまで苦しかった?」

 

「とても苦しかった。人、息しないと生きられない」

 

 カタコトになってしまうくらいに俺の息は乱れており、顔が紅潮とさせている。見る人が見れば変態、もといエロガキに見えてしまう。

 

「……ごめんなさい」

 

 そんなアホなことをしていると、ゲンガーが目の前に現れた。

 

「げ、ゲンガー!?」

 

「シシシ!」

 

「うわーっ、来ないで! 悪霊退散、悪霊退散!」

 

 悪霊退散て。ゲンガーは悪霊じゃないんだけど。いやどくタイプだから悪霊なのか? 

 

「落ち着いてください、ナタネさん。相手がポケモンなら怖くないでしょう。相手が挑戦者だと思ってください」

 

「相手は挑戦者、相手は挑戦者……」

 

 しばらくし、ようやくジムリーダーの顔つきになってチェリムとロズレイドの二頭を出した。

 

「チェリムはにほんばれ! ロズレイドはウェザーボール!」

 

 チェリムがにほんばれをし、ひざしを強くするとロズレイドのウェザーボールがほのおタイプに変化し、ゲンガーに直撃する。

 

「ンガッ!?」

 

 ゲンガーが呆気なく倒れ、安堵のため息を吐いたナタネが腰を落とす。

 

「怖かったぁ……」

 

 

 

 あんなエグい手を使って何をいっているんだか。ウェザーボールは通常の天候だとノーマルな為、ゲンガーにダメージを与えられることはない。だからといってゲンガーはどくタイプでありくさタイプの技を半減してしまうのでロズレイドが覚えているであろうリーフストーム等は大したダメージにはならない。つまり決定打がなかったわけだ。しかしにほんばれをしたことによりウェザーボールがほのおタイプに変わってゲンガーにダメージを与えられ、決定打を編み出しゲンガーを倒した。しかもあの様子を見るとロズレイドのレベルは高い。それにも関わらずロズレイドがにほんばれを行うのではなくもう一匹ポケモンをだしてそいつにやらせるというのがエグい。

 

 野生のポケモン相手にそこまでしなくてもいいんじゃないのか? と思わせるほどナタネのゴーストタイプ嫌いが伺える。

 

 

 

「大丈夫?」

 

「うん……」

 

「じゃあ休憩しようか。ナタネさん疲れたでしょ?」

 

「そうね、そうしましょう」

 

 俺が腰を落とし、ナタネの視線に合わせるとナタネはポツリポツリと話し出した。

 

「昔、ゴーストタイプに一度だけトラウマを植え付けられたの」

 

「トラウマ?」

 

「うん……とはいってもよくあることだよ。くさタイプのポケモンを追っかけていたら迷子になって……ダメ! やっぱり言えない!」

 

「言えないなら言わないでいいよ。無理して言っても後味悪いしね」

 

 いや本当に。無理に言ってしまったら逆効果だった場合もある。

 

 

 

「……ううん、ここで言わないと一生後悔することになる」

 

「頑張れ」

 

「それでね、迷子になった私は元の道に引き返して、帰ろうと思ったの……でもいつまで経っても帰れない。不思議に思った私が後ろを振りかえった瞬間、ゴーストタイプのポケモン、ゲンガーに襲われたの」

 

「襲われた? 具体的にはどんな風に?」

 

「くさタイプのポケモンがどんどん腐っていく悪夢を見せられたの」

 

「つまりゾン──」

 

「止めて! それ以上いうのは止めて!」

 

 半狂乱になり、耳を塞ぐナタネさん。

 

「ごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

 

「うう……そういう訳だから苦手なのよ。いつあの悪夢を見せられるか怖くて仕方ないのよ」

 

 確かに自分のポケモンがゾンビになったら怖いよな。だけどそれだったら尚更、勧めるよな。

 

「ナタネさん、だったら尚更ゴーストタイプ複合のくさタイプのポケモンをオススメします。ゴーストタイプがいるだけで野生のゴーストタイプが近づきにくくなりますから」

 

「それ本当?」

 

「ええ。ゴーストタイプといっても所詮はポケモンであり生き物、彼らにも縄張りが存在します。その縄張りを自分のポケモンに任せることで野生のゴーストタイプのポケモンは手を出しにくくなるらしいです」

 

 事実、ゴーストタイプ使いは呪われるなんて話しどころかむしろ自らのポケモンに恩恵を受けている立場だし。

 

「そうかな……それじゃ、そのダダリン捕まえてみようかな」

 

「それが良いですよ。それじゃ用事を済ませましょうか」

 

「うん」

 

 多少震えてこそいるがそれでも最初の頃よりもマシになっていてびくびくしながらも、もりのようかんの用事を済ませた。




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第22草

お久しぶりです。競馬小説や他のポケモンの小説ばかり書いていたら遅れました。


 もりのようかんを抜け、無事にハクタイジムに戻るとそこには不機嫌なミカンの姿があった。

 

「おかえり……」

 

「ミカンさん、そんなにもりのようかんに行けなかったことが残念ですの?」

 

 おい止めて差し上げろ。日本語がおかしくなってしまう程度に俺はミカンの機嫌を取ろうとしていた。それだけ怒ったミカンが怖かった。

 

「そうであってそうでないわ」

 

「ミカン、今度一緒に行こうよ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、ミカンの雰囲気が柔らかくなるがその一方でエリカの雰囲気が黒く染まる。いや俺だってあんなホラー極まりない所に二度と行きたくないからな。

 

 

 

「そ、それよりもコスモ君。ジム戦をやってみない? あのリーフィアを見た感じとっても育てられていると感じたんだけど、ポケモンバトルしてその実力試してみない?」

 

 ナイスフォロー、ナタネ。俺はくさタイプアンチでくさタイプなんぞチートの影響がなければ真っ先に切り捨てて他のタイプに切り替える人間だがナタネに免じて今だけくさタイプをヘイトするのを止めよう。

 

「やりましょう」

 

「それじゃコスモ君いこうか」

 

 ナタネの柔らかい手が俺の手を包み込み、手を引いてバトルフィールドに案内する。

 

「……ボットちゃんの刑」

 

……後でオシオキしないとね

 

 その間、エリカとミカン──特にミカンが殺意を込めすぎて声が怨霊染みていたのを聞き逃せなかった。

 

 

 

 

 

「コスモ君、そのリーフィアを見る限りじゃバッチ6個か7個あたり集めたんでしょ?」

 

「いえ、カントー地方で二つ、シンオウ地方で二つの合計四つです」

 

「嘘でしょ?」

 

 即座に目を丸くし、俺にそう尋ねるナタネ。なんというか──ミカンが目を半月どころか三日月にしているからこれ以上ナタネについて考えるのを止めよう。

 

「確認しますか?」

 

「コスモ君、他に所持ポケモンを見せて貰えない?」

 

「わかりました」

 

 そして俺が捕まえたポケモンを見せる──もちろんセレビィは除く──と真顔になり一言放った。

 

「もしかしてコスモ君はくさタイプのエキスパートを目指しているの?」

 

「そうですね。偶々捕まえたタイプのほとんどがくさタイプなんですが愛着が湧きましてくさタイプのエキスパートになりたいと思います」

 

 面接みたいに答えてしまったがそう答えないとエリカが怖い。最初にフシギダネを貰ったのが運の尽き……いやあの神がふざけたチート*1を持ち込んだのが運の尽きかもしれないな。

 

「コスモ、貴方はやはり……」

 

 エリカが感動している。これが最善の手だったんだ。そうに違いない。違うと言う自分がいるのは気のせいなんだ。

 

「それならくさタイプのエキスパートの一人として挑ませて貰うわよ。そのフシギバナを見ている限りじゃかなりのくさタイプ好きみたいだからね」

 

 

 

 

 

「それでは挑戦者コスモVSジムリーダーナタネのジムバトルを開始します」

 

「さあコスモ君、貴方の強さ試させて貰うわ!」

 

 ナタネが出してきたポケモン、それはシンオウ地方の御三家の一頭の最終進化形であり、唯一じめんタイプを混合させたくさタイプのポケモン、ドダイトス。

 

 このドダイトスはじめんタイプを複合しているだけあって御三家の中でほのおタイプに弱点をつけるがこおりタイプが4倍弱点な為にドラゴン対策ついでにやられてしまう。くさタイプの弱点の多さが招いた悲しき運命とはいえ、れいとうビームを覚えやすいみずタイプに圧倒的に不利な奴なんだよな。

 

 そのドダイトスをくさタイプのポケモンで倒すにはどうするかというとユキノオーといったれいとうビーム等のこおりタイプの技を搭載出来るポケモン、あるいはキノガッサくらいしか思い付かない。

 

 しかし残念ながらその二択は不可能。何故なら俺の手持ちにその条件を満たすポケモンはいない。

 

「リーフィア、とっしん」

 

「フィアー!」

 

 リーフィアのとっしんがドダイトスに炸裂すると、ドダイトスが大ダメージを負ってふらつく。

 

「ドダイトス、ウッドハンマー!」

 

「ダァァァ!」

 

 ドダイトスがウッドハンマーをリーフィアに喰らわせると同時に振動と轟音がその場に響き渡る。

 

「フィア?」

 

 凄まじい轟音が響き渡ったのに関わらずほぼ無傷のリーフィアがドダイトスを挑発するように声を上げそこに君臨していた。

 

 ほぼ無傷でいられたのはドダイトスの出した技がくさタイプの物理技であるウッドハンマーとリーフィアの種族値にある。

 

 リーフィアの種族値は攻撃と防御に特化していて、ウッドハンマーが如何に強力な技だとしてもくさタイプしかも物理技である以上リーフィアには対して効かない。

 

 それに加え、俺のチートという名前の呪いはくさタイプの能力を上げるものでありリーフィアもその恩恵を受けている。そんなリーフィアにウッドハンマーが効くはずもない。

 

「リーフィア、とっしん」

 

 そしてもう一度とっしんを繰り出させるとドダイトスが倒れた。

 

 

 

「嘘でしょ……? いくらリーフィアの物理攻撃が強いとはいってもとっしん二回で私のドダイトスを仕留めるなんて……」

 

「そりゃ僕のリーフィアですからね」

 

「フィア!」

 

 リーフィアが元気よく返事するとナタネが溜息を吐いて口を開く。

 

「降参するわ。そのリーフィアがいる限り今の私に勝ち目はないもの」

 

「またですか」

 

「またですわね?」

 

 オイコラ、そこの二人。こそこそ批判するように声を上げるんじゃない。ナタネが降参したのは別におかしなことじゃない。むしろ対策してなきゃ負けるのは当たり前だ。それにエリカはブーメランだろうが。

 

 

 

 

 

「コスモ君、これがこのハクタイジムのバッチ、フォレストバッチよ。それと技マシンとは別に受け取って貰いたいのがあるの」

 

「受け取って貰いたいものですか?」

 

 はて? 普通なら技マシンのみのはずだが一体何が──

 

「このタマゴよ」

 

 ナタネが取り出したもの、それはポケモンのタマゴだった。おそらくくさタイプのポケモンのタマゴだろう。

 

「このタマゴは私のナエトルが持っていたものなの。私の下で育てようと考えていたんだけど、くさタイプ使いのコスモ君なら信頼出来るから君に託したいの。そういうことだから受け取って貰える?」

 

「まあそういうことなら。ただナタネさん。連絡先を教えてくれませんか?」

 

「もちろん。こっちが教えて欲しいくらいよ。そのタマゴが孵ったら私もナエトルも様子を知りたいからね」

 

 そして互いに連絡先を交換するとミカンからゴーストタイプのような威圧感を醸し出していたが無視した。……無視でもしないとやってられないからだ。ヘタレで結構! 

 

 

 

 

 

「それでコスモ君、次のジムはどのジムに行くつもり? 普通ならクロガネジムを勧めるんだけど、コスモ君ならキッサキジムに挑んでも大丈夫そうね」

 

「何故普段はキッサキジムを勧めないのですか?」

 

 エリカがそう言って尋ねる。

 

「あのジムはジムリーダーが強すぎて、ほとんどのトレーナーが相手になれないの。ナギサジムとキッサキジムのバッチが取れなくて挫折したトレーナーはいくらでもいるわ。もしかしたらコスモ君ならそれが出来るかもしれない……期待しているわ」

 

 さらっとナギサジムを出すあたり、認められているんだな。だからと言ってエリカは許す気は更々なさそうだけど。

 

「それ程の相手なら尚更対策してから行きますよ。何せキッサキシティはこおりタイプのジムですからね」

 

「流石、私が見込んだトレーナー。いつか君はくさタイプ最強のポケモントレーナーになるよ」

 

 ナットレイとかこおりタイプに強いポケモンが欲しいが、シンオウにそんなポケモンは存在しない。

 

 だがこおりにもほのおにも等倍で済ませられるポケモンは世の中に存在していて、それがクロガネシティにいるかもしれない。だからこそ、俺はキッサキシティよりもクロガネシティを目的地に定めた。

*1
コスモは所持している複合を含めたくさタイプのポケモンは強化されるがそれ以外のポケモンを所持するとそのポケモンが弱体化する




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第23草

ヤバイって……何がヤバイかって?この小説の更新速度が遅すぎることだよ!

あ、後この小説の設定はご都合主義に基づきリメイクの設定も盛られます

ちなみに今回HABCDS等の専門用語が露骨に出てきますので注意して下さい。


 何事もなくクロガネシティに着き、そしてクロガネジムを突破した。バトル内容? 既にはがね使いのトウガンからいわ使いのヒョウタに代変わりしていて、蹂躙して終わったよ。

 

 タイプも得意、そして圧倒的なステータスの差がある。これが搦め手を使えるポケモンならともかくいわタイプはそういったものが少ない上に、ヒョウタはパワーでねじ伏せる脳筋戦法を好む。勝てない要素がない。

 

 

 

「それでコスモ、これからどうしますの?」

 

「クロガネ炭鉱に行こうかと思いまして」

 

「炭鉱ですか?」

 

「ええ。炭鉱に現れるいわタイプのポケモンの中にくさタイプのポケモンが混じっている可能性がありますので」

 

「くさ・いわタイプのリリーラとユレイドルね」

 

「はい。ほのお技を効果抜群で受けることのないくさタイプであり、その一方でみず技やくさ技を効果抜群で受けることのないいわタイプでもあります」

 

 その上タイプ一致で多くの弱点をつけるいわタイプの技を放てるし、いえきで特性を無効化する技も出来る上にステロ巻きまで出来てしまう万能なポケモンだ。とても弱点が多いとされる二つタイプが複合しているとは思えないくらいのポケモンだ。

 

 

 

「ところでお姉様とミカンは何か用事でもあるんですか?」

 

「コスモについていくわよ。もしかしたらこのクロガネ炭鉱のポケモンの中にはがねタイプがいるかもしれないから」

 

「まあ……そういうことでしたら、私も──」

 

「大丈夫ですよエリカさん。固くて強いはがねタイプのエキスパートたる私がついていますので!」

 

「あらあら、ミカンさん。いくら固くて強いはがねタイプのエキスパートとはいえ遅ければ意味がないでしょう。硬い、強い、おそい! を体現したポケモンが多いのも事実。貴女一人ならともかくコスモを逃がすには無理なのでは?」

 

 その瞬間、何かがキレる音が響きミカンを見ると何故か柔和な笑みを浮かべたミカンがそこにいた。

 

 

 

「エリカさん、もし相手がこおりタイプのエキスパートだったらどうするんですか? くさタイプのポケモンはほのおタイプの技を覚えないからこおりタイプのエキスパート相手に何も出来ないでしょう? ところが私のレアコイルちゃんならラスターカノンで撃退できますよ?」

 

 再び何かがキレる音が響く。そしてエリカの顔を見ると目が笑っていない笑顔だった……怖いって! 

 

「何故相手がこおりタイプのエキスパートに限定するんでしょうか? 相手がじめんタイプのエキスパートの場合何も出来ないのはミカンさんの方ではなくて?」

 

「はがね・ひこうタイプのエアームドがいますよ? じめんタイプの技は当たりませんが?」

 

「ニドクインにでんき技を出されたら終わりでしょう?」

 

「……」

 

 互いに見合い、ボールを取り出すその姿はまさしくポケモントレーナーだった。理由はショボいが。

 

 

 

「ネールちゃん、出番よ!」

 

「フシギバナ、出番ですわ!」

 

 ハガネールとフシギバナが現れるとともに地面が響く。共に重量級だから当たり前と言えば当たり前か。

 

「フシギバナ、じしんですわ!」

 

「ネールちゃん、りゅうのまい!」

 

 

 

 だいちのちからならともかくじしんはダメだって。ハガネールのBは200もある上にフシギバナのAは83とそこまで高くない。ガブリアスのCをちょっと上回ると言えば慰めになるだろうが、あれはSが102もあって高耐久だからこそのCなのであってフシギバナはそうじゃない。フシギバナはBが85と低く、ハガネールのメインウェポンは基本的に物理攻撃──つまりハガネールのAとフシギバナのBの値が関わってくる。

 

 先ほどハガネールがりゅうのまいでAとSを上昇させたことによりフシギバナよりも早く行動する可能性だってある。そうなればフシギバナは一貫の終わり。片やA一段階上昇かつタイプ一致のじしん。もう片やタイプ不一致のじしん。この勝負ミカンの勝ちだな。

 

 

 

「バンギラス、だいもんじ!」

 

 勝負の行方を見守っていると横槍が入った。

 

「あら、貴方は……」

 

 エリカがそういってミカンとともに振り向くとそこにいたのはこの街のジムリーダーのヒョウタだった。

 

「先程以来ですね。カントーのジムリーダーさんにジョウトのジムリーダーさん」

 

「エリカですわ」

 

「ミカンです」

 

「ご存知ですよエリカさんにミカンさん。それよりも何故僕が横槍を入れたかわかっていますか?」

 

 ヒョウタが怒り、そう問い詰めるとエリカがすっとぼけた。

 

「さあなんの事でしょうか?」

 

「路上でのバトルですよ。小さいポケモンバトルならともかくそんな重量級のポケモンで戦ったら近隣住民の迷惑になります。全く他の地方のジムリーダーと言え、その役職についているのですから近隣の皆様に迷惑を掛けないようにしてください!」

 

「それは申し訳ございませんでしたわ。しかしそうなると白黒つける場所がございませんわね」

 

「それならいい所がありますよ」

 

 先程怒っていたとは思えないイケメンが爽やかにそう答える。

 

 

 

「ではこちらをどうぞ」

 

「これは?」

 

「探検セットです。地下なら暴れても大丈夫ですよ」

 

「ええと、地下で暴れた方がもっと危険なんじゃないんでしょうか?」

 

 冷静さを取り戻したミカンがそう尋ねるとヒョウタが首を横に振る。

 

「いえいえ。地下は大洞窟と呼ばれるまで広く、先程ミカンさんが出していたハガネールなんかもいますしバンギラスやボーマンダといった重量級のポケモンもいます。そんなポケモンが地下にいるにも関わらず我々の生活を脅かしてはいません。つまり暴れても大丈夫だということですよ」

 

 えっ、バンギラスとかボーマンダとかいるの? どういうこと? もしかしてこの世界ってリメイクのダイパ世界? リメイク世界のトバリにカジノはなかったからてっきりリメイクの世界じゃないかと思っていたんだが、自称神はそこら辺言及してなかったから混合しているのかもしれないな。

 

「そうですか……ところでこの探検セットは貰っても大丈夫なんでしょうか?」

 

「ええ、その為に渡しましたから。それでは使い方を説明しますよ」

 

 

 

 それから探検セットの使い方の説明を受け、礼を言って地下を潜ると早速ポケモンバトルを始めたエリカとミカン。だが俺はそれを放置し、化石掘りを始めていた。

 

 

 

 収穫としてはずがいのかせき二つに、ひみつのコハク一つ、ねっこのかせき三つ、つめのかせき一つ、たてのかせき一つ。化石シリーズはかなりの収穫だったが、他の石とかは微妙でたいようのいしとみずのいし、リーフのいししか手に入れることは出来なかった。

 

 しばらくするとエリカが負けたのか俺に駆け寄り、俺の腰に抱きつく。

 

「コスモ、慰めて下さいまし!」

 

 色々おかしな言葉になっているが仕方ないのかもしれない。ミカンとエリカはこの世界で親友でありライバルでその相手に負けたんだ。

 

 しかし相手ははがねタイプのエキスパートで相性が悪かったとしか言えない。もしこれがガラルのトーナメントだったらミカンがエリカに対して全勝しているからな。

 

「お姉様、よく頑張りました」

 

「あふぅ……」

 

 頭を撫でられたことによって情緒が安定したエリカがため息をついて、静かに涙を流す。余程悔しかったんだろうな。そして俺を押し倒してそのまま眠りについてしまった。

 

「えっ、ちょっ、お姉様!?」

 

「zzz……コスモ、大好きですわよ……」

 

 俺が起こそうとしてもびくともせず、エリカが寝言でそう呟く。

 

「コスモ、エリカさんを退かすの手伝う?」

 

「お願い」

 

 ミカンが眠りについてしまったエリカを退かす為に俺の腰にしがみついたエリカの腕を取り除き、仰向けにさせるとミカンも腰を下ろした。

 

 

 

「ふふ、こうして見てみると本当に姉弟ね」

 

「あまり好きじゃないけどねこの顔」

 

 そういって俺は手で自分の顔を叩く。顔に関してはエリカにクリソツで髪型と服が同じならエリカそのものになってしまう。その為俺は髪型と服をエリカから遠ざけている。

 

「でもコスモとエリカさんが姉弟で良かったと思う。もしそうでなかったら恋敵になっていたから」

 

「えっ?」

 

「コスモ、もし良ければ──」

 

 その瞬間、大きな揺れがミカンの言葉を遮った。

 

「ミカン、行こう」

 

「う、うん……」

 

 エリカを背負ってそちらの方へ向かうとそこにはメタグロスとユキノオーが激しい戦いを繰り広げており、大激戦といったところだ。

 

「ミカン、止めるよ。僕はユキノオーを止めるからメタグロスの方をお願い」

 

「わかったわ!」

 

 ミカンが取り出したのは先ほどのネールちゃんでじしんを指示してメタグロスとユキノオーに注意を向ける。その隙をついて俺はフシギバナを出した。

 

 

 

「フシギバナ、ヘドロばくだん!」

 

 フシギバナが本来覚えるはずのないヘドロばくだんだが覚える方法はある。技マシンだ。技マシンをこの大洞窟内に偶々いた山男と化石で交換し、フシギバナにヘドロばくだんを覚えさせた。この世界の技マシンは使っても減ることはないから良心的だ。

 

「バナっ!」

 

 フシギバナの攻撃が当たると思われた瞬間、ヘドロばくだんが止まり明後日の方向へと向かう。

 

『だから言ったよね? ポケモンを無駄に傷つけるなって』

 

 それはタマネギの妨害だった。タマネギの妨害によりユキノオーが助けられたと思ったのか、調子に乗ってふぶきを放ち、フシギバナにダメージを与えるがフシギバナはびくともしない。当たり前と言えば当たり前だ。俺のチートの関係上くさタイプのポケモン全ての能力値がかなり上昇している。レベル1のフシギダネの時ですらレベル100相当だというのにレベル50手前のフシギバナともなればこの程度の攻撃では止まらない。

 

『うるさいよ』

 

「ノオッ!?」

 

 サイコキネシスがユキノオーに炸裂して気絶させると言葉を続ける。

 

『それよりも何か弁解の余地は?』

 

「あるよ! 思いっきり! そのユキノオーを止める為にやったんだよ?」

 

『で君はなんで暴れていたのかな?』

 

 それからタマネギが事情を聞くと旅をしていたユキノオーがメタグロスの縄張りに入ってしまい、メタグロスもユキノオーもやむを得ず戦うことになったとのことだ。

 

 

 

『なるほどね、自然界の掟って訳か。結果的に言えばコスモは正しいことをしたのかな? でもそれにしてはやり過ぎな気がするような……』

 

 タマネギがテレパシーでそう送るが俺はそれをスルーしユキノオーに近づく。

 

「ユキノオー、もし良ければ僕のポケモンにならない?」

 

「ノ?」

 

「僕と一緒に旅をしてみないかってことだよ。僕はこの地上のシンオウ地方だけじゃなくジョウトやホウエンといった他の地方にも行く予定なんだ。君さえよければ一緒に行こう」

 

「ノ!」

 

 モンスターボールを取り出すとユキノオーが開閉スイッチを押してその中に入る。

 

『……よし、決めた。コスモ、とりあえずそのユキノオーを捕まえたら不問……っていない?』

 

 タマネギがそう告げるがすでにユキノオーはモンスターボールの中におり、それを取り出すとユキノオーがおおはしゃぎで俺に抱きついた。

 

「ちょっ、冷たいって!」

 

「ノォ!」

 

 そう言えばチート特典(呪い)の関係上なつき度も上がるんだった。おかげでユキノオーの霜が冷たくて堪ったものじゃない。すぐにしまうとタマネギが唖然とした顔で俺を見る。

 

「それでなんだって?」

 

『いやもう捕まえているならいいや。それとゴメンね。色々と』

 

「?」

 

 俺が首を傾げるとエリカが起きると同時にエリカが顔を赤くさせる。

 

 

 

「どうしたんですかお姉様?」

 

「いえ、いくら精神的に弱っていたとはいえあのような軽率な行動をとったことに恥ずかしさを感じていたのですわ」

 

「いつものことでしょう?」

 

「──っ!」

 

「痛っ、止めてっ!」

 

 顔を真っ赤に染めたエリカが照れ隠しにピヨピヨパンチならぬポカポカパンチを繰り出す。

 

「……はぁ、それでコスモ。お目当てのポケモンは見つかりましたの?」

 

「ユキノオー一体とねっこのかせきを手に入れました」

 

「ミカンさんは?」

 

「メタグロスをゲットしました」

 

「それじゃいつか化石掘りでも一緒に行きましょうか。私も化石掘りをしておきたいですからね」

 

「それならお姉様、僕の化石を分けましょうか?」

 

「ありがとうございます。でもお気持ちだけ受け取りますわコスモ。化石掘りの醍醐味は化石を掘るのが醍醐味であって化石を手に入れるのはその副産物だと思っていますの。その副産物をタダで貰っては有り難みも半減してしまいます。故に受け取れませんわ」

 

「そうですか……わかりました。ではお姉様、僕はユキノオー達と交流していますから終わったら僕に声をかけて下さい」

 

「わかりましたわ。ではミカンさん、参りましょうか」

 

「仕方ないですね。付き合いますよ」

 

 ミカンがそう告げ、エリカについていく。喧嘩とかするけど何だかんだ言いつつも親友なんだろうな。




解説
・一段階上がる
≫所謂ランク補正。能力が一段階上がるとその能力の50%分上昇する。つまり1.5倍になる。二段階、三段階……となると2.0倍、2.5倍……と上昇する。逆に能力が一段階下がるとその能力の2/3、二段階下がると2/4になり分母の数が1ずつ増えていく
≫今回ミカンのハガネールことネールちゃんはりゅうのまいをしたことでAとSが1.5倍になり、ネールちゃんが最速のハガネールと過程するなら同レベルのフシギバナよりも早く動ける計算になる
≫回避率や命中率はまた別の計算になるので割愛する

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第24草

注意!後書きに新たなアンケートの注意書きありますのでアンケートにご協力頂ける方はそちらを参照お願いします

・前回のアンケート結果
≫圧倒的大多数でガラル地方でした!次点にホウエン地方……ジュカイン登場だからわかる。3位がカロス……いやXY非所持勢に書けと?ちなみに作者が期待していたジョウトは最下位という結果になりましたとさ。

・作者はどんなポケモンが好き?
≫ぶっちゃけ草タイプでもなければドラパルトでもなくドロンチ。草タイプもドラパルトも好きな方だがドロンチのあのフォルムは完璧過ぎだし、何よりも上に乗せているドラメシヤの反応も平行で見れて可愛い。進化後のドラパルトをメガドロンチとして見ているくらいには推しであり、アニメでドロンチが出た時は感動してしまった
≫ちなみにガブリアスも作者の好きなポケモンで、その理由はダークライのダークホールを2連で避けてくれたから。ドロンチのS種族値が102でその繋がりだからとかそんな理由ではない

・この世界の住民のフィジカルについて
≫現実よりも強靭で現実の一般人レベルより少しマシなはずの主人公(コスモ)もあの世界ではクソ雑魚。子供達はイシツブテ合戦を行い(主人公は非力な為行えない)、華奢なエリカですら張力100kgの弓を引くことが出来るといったらその異常性が理解出来るだろうか?

・くさタイプ統一
≫草と言えばゴリラと言わんばかりに8世代時点で草タイプ歴代最強はゴリラだが7世代まではゴリラがいなかったのでジャローダやキノガッサ、カミツルギと言ったポケモンで誤魔化すしかなかった
≫ぶっちゃけ今の環境だと草統一よりもエスパーや虫統一の方が辛い。理由は攻撃による一貫性のなさと弱点がメジャー過ぎる、つまり攻めも守りもない上に草以上に搦め手もないから
≫ちなみにこの小説では草統一らしさはなくほとんどステータスによるごり押しなので詰め将棋のような搦め手が好きな方はあまりオススメ出来ない


 ユレイドル。くさタイプとしてはほのおにもひこうにも弱点でない希有なポケモンだ。しかもいわタイプとしても弱点が少ないポケモンでもあり、くさタイプの複合としても4倍弱点がない。

 

 そんなユレイドルだが所謂マイナーポケモンとして名を馳せている。弱くはないのだが他のポケモンに比べると微妙。ユレイドルでなくても役割が出来てしまいマイナーポケモンとして有名だ。それ故に型が読めないなんてことはよくあることだ。

 

 

 

 しかしながらくさタイプとしてはかなり優秀な方だ。くさタイプ自体が搦め手が多いがステロを撒ける*1のはこのリリーラ系統とテッシード系統、そしてセレビィの5体だけだ。

 

 しかもナットレイは特性の関係上Bに特化していることが多く大体4倍弱点であるだいもんじでやられてしまうが、ユレイドルはDが高いこともあり砂嵐状態ならタイプ一致であってもだいもんじであれば耐えてしまう。

 

 それにタマゴ技*2になるがじこさいせいが使える。ナットレイにはそれがなく回復手段がやどりぎとたべのこしのみだ。つまりナットレイよりも回復手段に優れていると言える。

 

 

 

 だがそれでもユレイドルが使われないのには理由がある。ユレイドルが得意とする特殊アタッカーの環境ではなく、物理対面に特化しているナットレイの方が役割があるからだ。原種サンダーやカイオーガに強いのは間違いなくユレイドルだが、それ以外となるとキツいものがある。

 

 

 

 逆に言えば原種サンダーやカイオーガ受けとしては優秀で他にも特殊アタッカーならほとんど受けれてしまうポケモンということでもあり、特殊アタッカーの環境ならかなり活躍すること間違いなしだ。俺はASやCS極振りのアタッカーが好きだから受けとかは得意としない*3けど。

 

 

 

「リリーラ、よろしくね!」

 

「リリっ!」

 

 これで6体揃った訳だが、フシギバナ、リーフィア、カットロトム、ユキノオー、リリーラ、タマゴ(ナエトル)とまあ見事なまでにくさタイプ統一のパーティだ。セレビィは含まないのかって? あいつはどちらかというと図鑑ロトムとかアドバイザーのような何かだから俺の正式なポケモンとは違う。

 

『ふーん、僕を手持ちから外すんだ~』

 

 じと目で俺に訴えかけるセレビィ。よくよく考えたらこいつがいるせいでくさタイプの野良ポケモンとろくに戦えないから必要ないんだよな。いくら幻のポケモンでも厳しすぎるよな。

 

「タマネギ、うるさいよ」

 

『はいはいどーせ僕は不用品ですよーっだ!』

 

 タマネギが拗ねてしまい顔を背ける。性格も面倒な奴……

 

 

 

「コスモ、どうかしたの?」

 

 そんなことをしていると復元されたタテトプスを連れたミカンが俺に声をかける。

 

「ミカン、実はこのポケモンが拗ねちゃってね……」

 

「えっと、タマネギさん?」

 

『僕はコスモのポケモンじゃないからタマネギなんかじゃないもーん』

 

「コスモは何も君のことを見放した訳じゃありませんよ。見放していたら帰れの一言くらいあるはずですよ」

 

「そうだよタマネギ。君は僕と別れたくてそうした訳じゃない」

 

『ふんだ! そんなこと言っても騙されないよ』

 

「タマネギさん、コスモについていった目的って野生のくさタイプのポケモンを倒してほしくないからそうしたんでしょう?」

 

『そうだよ。でももう赤の他人だからいいんだ。今度は僕の目の届く範囲にいる人間にそうするだけだから!』

 

「……そ、うなんだ」

 

 何でなんだろうな。顔から涙が出てくる。大して交流した訳でもない、むしろ疎ましく思っていたのに赤の他人って言われて涙を流すってそれだけタマネギに嫌われるのが嫌なのか? いや俺の精神が身体に影響されているのか? どちらにせよ感情が抑えきれない。

 

「コスモ……」

 

『泣いたふりしたって無駄だよ。僕はサヨナラするから』

 

「タマネギさん……」

 

 タマネギが背を向け、そう告げるとミカンが切なそうに呟いた。

 

「……わかった。でもタマネギ、僕はそれでも野生のポケモンを狩り続ける」

 

『……』

 

「痛い痛いっ、無言で頭締め付けるのは止めてっ!」

 

 せめての強がりを否定するのはヤメロォっ! 

 

『という訳で二人とも、もしコスモがむやみやたらと野生のポケモン、特にくさタイプのポケモンを倒していたら注意してね』

 

「仕方ありませんわ」

 

「うん」

 

 ミカンといつの間にかそこにいたエリカが頷いた。

 

『じゃあボックスで待っているよ』

 

 そう言ってタマネギがボールの中に入りボックスへ転送されて待機する。

 

 

 

 そんなこんなでセレビィのタマネギをボックス送りし、ミカンにあるものを渡す。

 

「ミカン、そう言えばこんなものを見つけたんだけどいる?」

 

 そう言って俺はかみなりのいしを手渡すと不思議そう*4に首を傾げる。

 

「かみなりのいし? 私が持っていても使い道ないし、コスモが持っていた方が有用的なんじゃ……」

 

 はて? もしかしてレアコイルがジバコイルになる為の条件をご存知ない? いやそれはそうか。何せジバコイルがかみなりのいしで進化するようになったのって8世代つまり剣盾以降なんだよな。それまではテンガン山とか特定の場所でしか進化出来なかったし、イーブイもリーフのいしでリーフィアに進化出来るようになった。しかしハクタイの森で進化させたのは理由があるのだがそれはまた後にしよう。

 

 少なくともくさタイプしか使えない俺にかみなりのいしは不用品だ。だからこうして──

 

「ミカンさん、コスモのお気持ちを察して下さいませ」

 

「コスモ、私にこれを渡したってことははがねタイプのポケモンでこれを使って進化出来るポケモンがいるってこと?」

 

「そうだよ、レアコイルにそれを使うとジバコイルに進化するんだ。はがねタイプ使いのミカンなら必要かなって思ったんだけどいらないならいいや」

 

「いえ、いらないとかそういう意味じゃなくてね? コスモならポケモンに詳しいから何か私に渡す理由があるんじゃないかって思って聞いたの。誤解したならゴメンね」

 

「いいよ。じゃあはいこれ」

 

 ミカンにかみなりの石を渡すとミカンが石を包み込むように握り微笑む。

 

「ありがとうね、コスモ」

 

「その代わりジバコイルになったら見せてよ? ミカンの強いジバコイルを見てみたいんだからさ」

 

「勿論、そこにいるお義姉様なんかボコボコにしてあげるわ」

 

「あらミカンさん、コスモにおこぼれをもらったからって調子に乗っているのではありませんか?」

 

「また弟の前で無様晒すことになるけど大丈夫ですか?」

 

「……」

 

「……」

 

 二人が無言になりモンスターボールを取り出す。それを見た俺は間に割って入った。

 

「だから止めてって! 激しいバトルは禁止だってヒョウタさんから言われているでしょ!」

 

「それもそうですわね」

 

「そうね、コスモ私ったらつい……」

 

 恥ずかしそうに顔を赤く染める二人だがすぐに冷静さを取り戻した。

 

「では地下通路でやりますわよ!」

 

「コスモはどうする? 着いてく?」

 

「ここで待っているよ」

 

「ではコスモ、待っている間にかいふくのくすりとげんきのかけらを二つずつ、買い出しお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

 そう言ってエリカが3万円ほど俺に渡してくる。

 

「いりませんよこんなに……」

 

「念のためですわ。余ったらお駄賃として受け取って下さいませ」

 

 そう言ってそそくさとエリカがミカンを連れて地下通路に潜ってしまう。やれやれ、仕方ない。また買い出しに行ってくるか。

 

 その後、買い出しが終わった後に財布がないことに気づいた俺は慌てて捜索することになった。

 

 

 

 ~おまけ~

 

 

 

 エリカとミカンがポケモンバトルを繰り広げ、壮絶なデットヒートの末勝利したのはエリカだった。

 

「これで、ようやく前回の負けを取り戻せましたわ」

 

「流石エリカさんね……私がジバコイルを使っても勝てないなんて、成長力で言えば随一ですよ」

 

「だからこそでしょう? ジバコイルの動きに慣れていなかった。私はその隙に漬け込んで勝っただけですわよ」

 

「それもそうですね……はいどうぞ」

 

 ミカンがエリカに渡したのは4万円──バトルの賞金だった。

 

 

 

「少し多くありませんか?」

 

「いいえ多くありませんよお義姉さん」

 

「お義姉さんはよして下さい。コスモのお嫁さんになった訳でもないでしょう?」

 

「それはさておき、エリカさん。コスモがかみなりのいしを買ってきたことを見越して3万円渡したのでしょう?」

 

「コスモがかみなりのいしを買ったことに気づいていらしたの?」

 

「それは勿論ですよ。あの時──前回の地下通路の時に取れた物の中にかみなりのいしが入っていませんでした。もし入っていたならその場で私に渡したと思います」

 

「なるほど……ですがかみなりのいしを他人から譲渡された可能性もありますが、何故購入したと思いますの?」

 

「確かに心理的には譲渡された可能性の方が高いんですが、果たしてあの短時間でそんな都合のいい方がいるとは思えません」

 

「ヒョウタさんは? この街のジムリーダーですし、何より探検セットを譲渡してくれた方ですわ。かみなりのいしくらいついでに差し上げることも考えられます」

 

「ヒョウタさんはあの場にはいなかった。何故ならあの時間に予約しているトレーナーの対応に追われていたからです」

 

「ですがヒョウタさんだけに限らず──」

 

「更に決定的な証拠があるんですよ」

 

 ミカンが取り出したのはコスモの財布だった。

 

 

 

「いつの間に……!」

 

「この財布の中にかみなりのいしを購入したレシートがあります」

 

「う……確かにこれを見せられてはぐうの音も出ませんわ」

 

「そういうことですからエリカさん、何かしら理由をつけてコスモに返してくれませんか?」

 

「ミカンさん、それならば1万円だけ頂きますわ。しかし残りの3万円はコスモのサプライズプレゼント代として使って下さいませ」

 

「でも──」

 

「先ほど私のことをお義姉さんと仰いましたね。コスモとそういう関係になりたいのでしょう?」

 

「うっ」

 

「ただお金を渡すよりもコスモにプレゼントを渡してあげることの方が重要ではありませんか?」

 

 ──あのデコッパチオマセさんとは思えませんわ

 

 そう口に出すのを防ぎ扇子で口元を隠すエリカ。

 

「流石、エリカさんね。そこまで見抜かれているなんて」

 

「当然ですわ。ところでミカンさん、どうしますの?」

 

「どうするって、何を?」

 

「私の助言を聞くかどうかです。コスモの好みなら私が存じ上げています。しかしミカンさんが自力で考えてプレゼントするというのなら私は助言致しませんが……」

 

「それなら一つだけ助言を頂いてもよろしいでしょうか?」

 

「何でしょう?」

 

「実は──」

 

 ミカンが出した提案にエリカが微笑み、助言をするとミカンがコスモの財布をエリカに渡してその場から去っていった。

*1
ステルスロックのこと。相手のフィールドの状態をステルスロックにすることをステロを撒くという

*2
レベルアップで覚えない技をタマゴから孵化したての状態で覚えている技のこと

*3
第11草参照

*4
フシギソウではない




・転生者は複数人?
≫主人公以外に実はとある人物が転生者疑惑があります。読み返せばわかります。わかりましたらアンケートでお答えください
≫尚、「悪いな作者。俺、実は転生者複数アレルギーなんだ」という方は答えがわかっても「そんな奴はいない」にお答えください。
≫ちなみに転生者はポケモンではありませんので「答えわかんないけど転生者複数はアリだよ」という方は「タマネギ」に回答お願いします
≫この結果次第でその人物が転生者であるかどうか変わってきますのでご協力のほどお願いします

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