絢瀬絵里に出会った (優しい傭兵)
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それは金髪の女性だった

どうも。賢い可愛いエリーチカ推しの優しい傭兵です。

これとは別に『斬る?違う、粉砕だ』を投稿しています。もしよければそちらも読んでいただければ幸いです。


前々から書こうと思っていた小説です。楽しんでもらえるように頑張ります!


ではどうぞ


――桜満開で咲き誇る季節・春

 

 

 

 

 

桜が咲いているのが春が到来した事を伝えてくれた。今年も満開。いつもお勤めご苦労さん桜殿。

 

その桜の近くを歩いているスーツ姿の男。

 

 

 

 

横山隆也《よこやまりゅうや》

 

 

 

このたび高校を卒業し、ここSS大学に進学する事が出来た青年である。

 

なんだSSって・・・。細かいことは気にしない。

 

 

 

学力は悪くもなく良くもなく。言ってしまえば普通の大学である。

 

 

 

その大学への道を進んでいくと同じくスーツ姿で歩いている人がちらほらと。おそらく同じ学校の新しい学生になる人達か。真新しいスーツがよく似合う。ピッチリと着こなしていらっしゃる。友達と笑いながら歩く者やギクシャクした者も。後でちゃんとスーツ着てるか確かめるか。

 

 

その歩いている歩行者達の中に目を引かれる者がいた。

 

 

アメリカ人では無いかと思うほどの綺麗な金髪。青い瞳。女性にしてはそこそこある身長。レディーススーツから見えるスラリとした足。本当に俺と同い年か?年上の間違いだろうと思うほど。ハーフか何かかな?

 

 

「・・・・・・・・・・・・」ジロリ

「あ・・・・・・・・・」

 

あまりの珍しさに目が奪われてた。流石に見つめすぎてしまったかその青い瞳で睨まれてしまった。その少女は俺を睨んだ後早足でその場を去って行った。悪い事しちゃったな・・・。

 

 

少女が去っていき回りにいた男女達がボソボソと喋り始めた。

 

「ねぇさっきの人って・・・・・・」

「だよね。あのスクールアイドルの・・・・・・」

 

 

『スクールアイドル』

それは現役高校生のアマチュアアイドルのことである。少し前では大ブームになりあの有名な動画サイトでも有名である。そんな名前を知っていたとしても俺は中身をまったく知らないわけだ。ほんの少し興味があるかないかであった。

 

「あの人、有名な人なのか?知らないけど」

 

なにやら周りが騒がしくなってきたので俺も早足で歩き出した。まああの人も同じ大学に入るなら仲良くはしてみたいかなと思う。同じ学部か知らないけどね~。

 

 

「おっとそろそろ行かないと入学式間に合わないな」

 

腕時計で時間を確認し急ぎ足で移動を開始。いきなり美人パツ金少女に睨まれて始まる大学生活。幸先悪そうだな・・・・・・。

 

 

 

***

 

 

 

大学の大きな体育館で行われた入学式も終わりやっと休息の時を得た。小中高でもあった入学式の最初の難関、校長や理事長による長々としたグダグダの挨拶攻撃である。いつも思うがあのような話を聞いていると眠くなるものだ。高校生の時は立っていたから眠る事はなかったが大学での入学式ではパイプ椅子が置かれていたのでありがたく寝かせてもらいました。たまに思う。あの言葉は念仏か子守唄なのではないだろうか・・・。馬鹿な話はこれくらいにしておこう。今の俺には第二の難関が襲い掛かっているからだ。それは!!

 

 

「入学おめでとうございます!!サークルに興味は無いですかー!」

 

上級生の皆様方によるサークルの勧誘でゴザマス。みなさん血眼で新入生にビラを配りまくっていらっしゃる。どんだけ必死なんだあんたら。

 

俺は正直サークルに入る気など微塵もない。俺にはしたいことがあるのでな。それはまたおしえてあ・げ・る♪

 

キモイと思った奴出て来い・・・・・・。拳骨かケツバットのどちらか選ばせてやる。嫌いなほうをしてやるからよ。

 

 

 

上級生の皆様からのビラ攻撃の弾幕から抜け出した俺は場所も分からず建物の影に隠れ姿を消した。

 

 

「入学式に一通りサークルの説明を聞いたけど全部面白くなさそうだしな」

 

 

大事な事なので二回言う。俺はサークルに入るきは微塵もない。

 

 

 

 

ザワザワ

 

 

なにやら建物の向こう側が騒がしいな。ここは速めに帰ろうと思う。ここにいるとサークルに勧誘してくる上級生のオヤツにされちまう。されないか・・・・・・。とにかく帰ろう。今日は入学式だけだからな。明日からめんどくさい授業が始まるからな。戦士には休息をだ。

 

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・・・・」タッタッタッ

 

俺はこの時気付いていなかった。建物の影から人が走ってくる事に。

 

 

「きゃっ!?」

「うおっ!?」

 

走ってきた人にぶつかり俺と少女はバランスを崩し倒れてしまった。鳩尾に当たったぞ・・・・・・。

 

 

「いてて・・・・・・。あんた大丈夫・・・・・・・・・か?」

 

ぶつかってきた少女は俺が大学の入学式に向かう時に睨まれた少女。綺麗な金髪で青い瞳。そう美人のパツ金だ。そして、そしてだ!俺の右手になにやら柔らかいものが・・・。視線を落としていくとたわわに実ったパツ金美少女のお胸様をガッチリホールド!諸君よ!これが伝説のラッキースケベと言うものだ!あ、俺死んだ・・・・・・。

 

パツ金美少女の高く振り上げた右手によって俺の柔らかい頬に椛が出来ました。

 

 

パァンッ!

 

 

「貴方!セクハラよ!それと何処見て歩いてるのよ!」

「ちょっと待て!胸を触った事は謝ろう!だが!最後のそれは俺の台詞だ!俺は今から家に帰って戦士としての休息を得ようとしたときにあんたがぶつかってきたんだろうが!」

「何が戦士の休息よ!どうせゴロゴロするだけでしょ!変態!」

 

隆也の称号が『変態』になった。

 

この野郎・・・。戦士の休息を知らないな・・・。俺はあの戦い(入学式&サークル勧誘9をを生き延びて来たんだ。その勇敢な戦士に休息を与えてくれても良いだろう神よ!

まぁ、ゴロゴロなんすけどね・・・。

 

 

アヤセサーン!ドコー?!

 

「なんだあれ?」

 

建物の壁から覗き込むとサインペンと色紙を持った者数十名とさきほどのビラを持った上級生の皆様。ってかあんたら目怖いな!?血走ってるぞ!?イライラしてんのか!?ちゃんと牛乳のんでカルシウム取らないとダメだぞ!特に女性陣!成長しないから!(何処がとはいってない)

 

 

「なに?貴女追いかけられてるの?なんかしたの?殺人?」

「するわけないでしょ!?私が元スクールアイドルのμ'sだからって理由でサインとかサークルに勧誘とかで追いかけられてるのよ!」

「み、ミューズ?なにそれ薬用石鹸?」

「そっちのミューズじゃないわよ!スクールアイドルのμ's知らないの?」

「全く」

「そんな人っているのね・・・。大ブームらしかったのに・・・・・・」

 

時代の流れについていけてないだけです。はい。

 

「ってこんな事してる場合じゃないわ!また見つかって取り囲まれる!」

 

ヤンキーの絡みじゃないんだから・・・・・・。

仕方ない・・・。

 

「こっちこい。校門まで逃げるぞ」

「え?どういう・・・・・・わぁ!?」

 

パツ金少女の手を掴み俺はズンズンと歩き出し建物の間を縫うように移動し始める。なんで入ったばっかの学校なのに道が分かるの?って思う奴もいるだろう。この学校には俺の高校時代の部活の先輩がいてな。色々教えてもらったんだ。授業をサボる時の逃げ道とかな。先輩は卒業してるけど。いい人だったなぁ~(遠い目)

 

 

その逃げる時間も束の間。簡単に校門に到着~。

 

「貴方って何者?」

「普通の学生ですが何か?」

「絶対違うわよね・・・。まあいいわ助けてくれてありがとう」

「礼なんかいらないよ。では俺はこれにて・・・・・・」

 

学校から少し離れた場所にあるアパートに向かおうと踵を返そうとした時、

 

「待って、助けてくれたんだし何かお礼をさせて」

「だからいらないって。そんなアニメみたいな命の恩人ってわけじゃないんだから」

「どうしてもよ。この先におしゃれなカフェがあるのよ。一緒に来て!」

「行かないって言ったら?」

「さっきぶつかって私の体に触った事を警察に・・・・・・」

「よし行こう今すぐ行こう!」

「ハラショー。物分りがいいわね。優しい私に感謝しなさい」

 

この悪魔め・・・。上から目線で言いやがって・・・・・・。いやおっぱい様に触ったのは悪かったよ(最高の感触でした)。今のご時世女性の体に触れただけでセクハラと言われる始末。従わないわけにもいかない・・・。

 

ん?ハラショー?なんかどこかで聞いた言葉だな・・・。どこだっけ、イタリア?(ロシアです)

 

 

 

そして少しした時、大学から約600㍍ほど離れた場所に少し大きめのカフェ。スタ●には負けてるね。

店内に入り席へ誘導され、お互いが向き合う形に。

 

「なんか悪いな。これぞといった事して無いのに」

「いいのよ。助けてくれたのは事実だし」

(これを助けたと言うのか分からんが、余計な事は言わない事にしておこう)

 

俺はコーヒー、少女は紅茶を頼みチビチビと啜っていく。

 

 

「ところで自己紹介がまだだったわね。私は絢瀬絵里よ」

「俺は横山隆也。よろしくなパツ金美少女」

「誰がパツ金美少女よ!ちゃんと名前あるんだから」

「分かったよ。よろしくな絢瀬」

「よろしく。隆也」

「いきなり名前呼びかよ。やるなお主」

「どこの時代劇よ・・・。そっちの方が呼びやすいからよ」

「さいですか。ところでμ's?だっけ。その元スクールアイドルの綾瀬がなんで負われる羽目に?」

「そうね。そこから話さないと。一年前に行われたスクールアイドル達が集まる行事、『ラブライブ』があったのよ。私はその大勢のスクールアイドルのμ'sに所属していたのよ。私達は全員で9人のグループで参加して優勝したのよ」

「優勝とはそりゃすごいな・・・」

「元々は学校の存続させるためにやっていたスクールアイドルなんだけど日に日に人気になって行って最後にはアメリカのニューヨークにも行ったのよ」

「どんだけだよ・・・・・・」

「そこでのライブも成功して日本に戻った時は大量のファンに囲まれるのが普通になっていったのよ。そして時が過ぎていって私も当時3年生だったから卒業と同時にμ'sも解散したのよ。それもファンのみんなの目の前で宣言して」

「なるほど」

「でも大学生になってもまた歌ってや踊ってっていう言葉が後を耐えなくてね。挙句の果てには大学で追い掛け回される事になったわけよ」

「大変だな。スクールアイドルも」

「おそらく明日も質問されそうなのよね。困ったわ」

「まぁ俺は何かあったら言ってこいよ。愚痴ぐらい聞いてやるから」

「ありがとう。処で隆也はなんであんなところに?」

「サークル勧誘の為に襲ってきた猛者たちから逃げてきた。あの人達怖すぎるだろ」

「やっぱりね。私の周りも中々勧誘されてたわよ」

「やはりか。サークルには入らないってのに」

「私もよ。他にもしたいことがあるし」

「おろ?俺と一緒の意見だな。俺もしたいことがあってな」

「それは?」

「なーいしょ」

「もう、教えてくれたっていいじゃない」

「話しても得が無いだろ」ゴクゴク

 

カップに入っていたコーヒーを喉に通していく。

 

 

私、綾瀬絵里は不思議に思っていた。この男は追いかけてきた人達とは違っていた。自分で言うのもなんだけどかなりの人気者になった私。大学に入ってからも他の人達が私をチラチラ見たりボソボソと話しているので絶えなかった。でも、この男、隆也は普通に私を一人に人間として接してくれている。サインや勧誘をせがんでくるあの人達とは違い、凄く心地いい。

 

でも毎日あんな事になるのは勘弁してほしい。あれが続いたら身が持たなくなる。私はそこで一つの解決案が生まれた。話すのは少し恥ずかしい気がするが、考えた中でこれしか無いかと思った。しかも隆也には前科がある。私の胸を触ったしね。

 

 

 

 

「ふぅ、ご馳走様。ありがとな綾瀬。また学校で」

「ちょ、ちょっと待って!」

 

店を出て行く隆也を追いかけそのスーツの裾を掴み真剣な眼差しで見つめる。

 

「な、なんだ?」

「お願いがあるの!」

「お願い?まぁ、俺が出来る範囲内なら・・・」

 

 

目の前で綾瀬が大きく息を吸いゆっくりと吸い込んだ息を吐き出す。そしてもう一度俺を見つめなおした。

 

 

「隆也!」

「はい!?」

 

 

次の言葉が出てくる事は俺は予想もしなかった。これからオレ様の新しい大学生活が始まろうとしていた。色んなことを体験、経験して家族の目の前でちゃんと就職したよという報告をしてやりたい。それを俺がさっきまで思っていたことだ。

これが事の顛末だった。こうして俺は大変な毎日を送っていく羽目になってしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隆也。私の恋人になりなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい!!??」




という感じでした。

ラブライブを見た時に一目惚れしました。いつかはエリチーとの日常を小説で書いてみようと思っていましたので今回投稿させていただきました。

これからは普通の日常、少しドキドキ(?)させたりや、シリアス?などを書いていこうと思います。シリアスなんてかけるかな・・・・・・。ま、頑張っていきます!!


感想や評価、お待ちしております!!


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大学早々死にそうです

誤字がたくさんあったので再投稿しました。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

拝啓、実家にいるお母さん。俺はこの日をもって死にました。

 

縁起が悪いからやめておこう。だが完全に精神が死んでしまっている。それはなぜか。それはつい先ほどの大学入学式が終わった直後に、ラッキースケベで出会った絢瀬絵里というパツ金美少女との出会いから始まった。まあ色々とあり俺はコーヒーを奢ってもらうためにカフェに向かって軽く話しあった後に起こった出来事だった。なぜか知らないが俺はあいつの恋人になることになった。

 

 

数時間前。

 

 

 

「恋人!?」

「そうよ。私の恋人になりなさい!」

「いきなり告白とは、俺もイケメンになったという訳か」

「そんなわけないでしょ!恋人のふりよ!」

「ナンダッテ?」

「隆也には恋人になってもらうわ。決定事項よ、異論は認められないわ」

「話がぶっ飛びすぎだ!一から説明しろこんにゃろう!」

「貴方も見たでしょ?あの追いかけてくる人達を。そこで私はある手を打つことにしたの」

「手を?」

「そう。恋人がいれば流石にしつこくよってこないでしょ?」

「俺は魔よけって事か?」

「その通り。万が一それがあっても私を守ってくれるようにね」

「断る!なんで俺がそんな事を!」

「いいのかしら?胸を触ったことを警察に言ったら貴方どうなるのかしら?」

「ぐ!ぐぬぬ・・・・・・・・・」

「警察に言わない代わりに恋人のふりをしなさい。安いものでしょ?」

「元スクールアイドルのトップに立った人物がこんな腹黒いやつとは・・・」

「失礼ね!これでもちゃんと人としての心はあるわよ!」

「どの口が言いやがる!」

「ふんっ。と言うわけだからよろしくね。ついでに連絡先も教えなさい」

「俺の綺麗な大学生活が・・・・・・・・・」

 

涙をポロポロ(演出)と流しながら俺は渋々と連絡先を交換した。さよなら俺の大学生活・・・・・・。

 

「じゃまたね。言っとくけど授業始まってから恋人のふりをしなさいよ」

「へいへい・・・・・・」

 

ここで話を打ち切り俺と絢瀬は帰路についた。

 

 

 

回想終了。

 

 

 

 

というわけだ。なんだかんだでとんでもないことに巻き込まれちまったな・・・。学校やめようかな・・・。いやそれでもあいつの事だからまた脅迫してくるに違いない!俺はあいつに屈するしかないのか。と布団の上でゴロゴロしながら考えていた。キラキラ光っていた俺の素晴らしい大学生活は消え、女王に屈する大学生活に代わってしまった。ダレカタスケテー!

 

ピロリン♪

 

ちょっと待っててー!といわんばかりに携帯のアラームが鳴りそれを手にして送られて来た連絡先の名前を見ると・・・。

 

 

『絢瀬絵里』

 

パツ金女王だった。送られてきたメッセージを見ると、

 

 

【午前8時。学校校門前に集合。時間厳守。少しでも遅れたら・・・・・・ね?】

 

なんの大事件の脅迫だよ!俺の命が早々危うくなってきちまってる!明日やらかしたら俺の骨を家族に拾われなければいけないことになっちまう!

 

急いで目覚ましをかけ布団に上に横になり就寝の準備をする。俺は朝が弱いから7時にセットしそこから10分置きになるように目覚ましを設定する。床に就くと今日の出来事で疲れたのか瞼が重くなってきた。明日からまた忙しくなりそうだ・・・。速めに寝ておこう。

 

「おやすみ・・・Zzz」

 

夢の世界へゴー。

 

 

 

 

***

 

翌日

 

 

 

案の定。

 

 

「やべぇぇぇぇええ!!!」

 

これぞ某主人公にも負けない不幸体質。ちゃんと7時にセットしたのにも関わらずその目覚ましのスイッチを入れていなかった。ただいまの時間7時50分。学校までの距離約1キロ。詰んだわこれ・・・・・・。いやまだだ!俺は間に合って見せる!!

 

 

「急げえぇぇぇぇぇぇぇええ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「7時59分。なんとかギリギリね」

「はぁ・・・はぁ・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・」

 

人生で最高の走りを見せた気がする・・・。朝飯も食わずでの全力ダッシュ。飯食べてたら口からマーライオンみたいになってたところだ。絢瀬は7時半には到着して俺を待っていたとの事。さすがスクールアイドル様。時間厳守ですね。

 

「じゃ今日から私の恋人として頑張りなさい。こき使ってあげるから」

「全国でも有名になっていらっしゃるスクールアイドル様様がここまで人使いの荒い奴だって事がファン全員に知れ渡ったらどうなるのかね」

「入学式早々セクハラをしてくる貴方もどうかと思うわよ?」

「あれは事故だろ!?前見て走ってなかったお前にも悪いと思うけど!?」

「見苦しい言い訳はやめなさい。早く行くわよ」

「き、聞く耳もたずかよ・・・・・・」

 

そして俺達二人は校舎へと進んでいく。今通っている学校は中々の広さで校舎から校舎への移動に数分は掛かる。俺はその移動中に色々と質問をした。どこの学部なのか、家はどこなのかなど。そして、他の人達に聞かれたとき俺のことが恋人だと言う事をどのように説明する気なのだろうかと。

絢瀬曰く、家は大学からほんの少し離れた処にあるアパートに住んでいて。三つ離れた妹と暮らしている。学部はなんと俺と同じ学部に所属。入学式にあったときは一緒の学部なら仲良くしたいと決めていたが今となっちゃ学部を変えて欲しいくらいだ。どんな目に会うか分かったもんじゃない。俺の横には女王様が君臨しているからな。俺は絶対屈しない!アニメみたいな台詞言ってるけどもう屈しちゃってるんだがな。

 

 

 

「あ、あのμ'sの絢瀬絵里さんですよね?」

「え?そうだけど・・・・・・」

「すいません!俺大ファンなんですよ!握手してください!」

「俺も!サイン書いてください!」

「私も!」

「俺も!」

 

 

やっぱりな。入学式が終わってもこうなる事は予想はできた。一人のモブが声をかけたら連鎖的にこうなってしまう。気付いたら数十人ものモブ軍団に囲まれた。

 

「皆ごめんなさい。私はもうスクールアイドルをやって居ないのよ。仲良くなってくれるのは嬉しいけど、私の事はスクールアイドルの絢瀬絵里じゃなくて、大学での友達の絢瀬絵里として接してくれない?」

「はい!わかりました!これからよろしくお願いします!」

「私もよろしく!一緒にご飯とかたべよ?」

 

 

あんなお願いされたら誰でもそうなるわな。みんな騙されてるぞ、その女の奥底は真っ黒黒介並に黒いぞ。いつか目玉をほじくられるぞ?それはないか。ま、絢瀬も学校で男女関係無しに友達ができるのは良いことじゃないのかね。

 

 

「そういえば絢瀬さん。そっちの人は誰なの?校門から一緒に歩いてたの見たけど」

「もしかして高校時代からの友達?」

 

モブ女達がキャーキャーと黄色い声を上げている時、モブ男共は俺を物凄い目で見てくる。やめてくれ!俺は無実だ!と言いたい・・・。なんで言えないのかって?横の絢瀬の目が怖いんだもん。

 

 

 

「みんなに一応紹介しておくわね。彼は私の恋人の横山隆也よ。仲良くしてあげてね」

 

 

 

 

 

「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?」」」」

 

ハイ、ソノトオリデス。

 

 

「え!?それって高校時代から付き合ってたの!?でも音ノ木坂って女子高なはず・・・・」

「絢瀬さん!詳しく教えてくれない!?」

「教えてくださいエリーチカ!」

 

なんか最後に凄いのが混じっていたな・・・。キニシナイキニシナイ。

 

 

「そうね。実は隆也とは中学時代からの付き合いなの。中学から付き合い始めて無事に中学は卒業したのだけれど私は音ノ木坂に行く事になって事実上遠距離恋愛になってしまったのよ。でも隆也はいつもメールをくれてお前のことはいつも愛してるぞ。大学では一緒だぞって言ってくれたのよ。三年間、会うことは殆どなかったのだけれど隆也は私の事、ずっと待っていてくれたのよ・・・・・・」

 

最後に顔をほんの少し赤らめての全員への告白。勿論演出だ。

 

 

「「「きゃーーーーー!」」」

「絢瀬さんてすっごい可愛い乙女だったのね!」

「凄く可愛い!」

「「「コロスコロスコロスコロスコロスコロス」」」

 

絢瀬の野郎!なんてストーリーを完成させてんだ!しかも無駄にリアル感出しすぎだろ!みんな信じちゃってるぞ!女の子はキャーキャー言いながら興奮してるし男にとっては殺すコールだぞ!?そしてそのやってやった感あるドヤ顔やめろ!

 

 

「という訳だから告白は受け付けれないわ。それでも私と仲良くしてくれるかしら?」ウィンク

 

「「「了解でーす!」」」

 

お前ら弱・・・。簡単に騙されてるし・・・。みんなそいつが腹黒女という事に気付いてくれ!

 

「ほら隆也行くわよ。最初の講義に遅れちゃう」

「え?お、おい!」

 

俺は絢瀬の腕を引かれ最初の講義が始まる校舎へと引っ張られていく。そこに残された人達は甘ーい雰囲気を出しながら個人の始まる講義へと向かっていった。だが、その時に俺はかすかに聞こえた気がする。この関係を見ていいと思う者もいればそれを拒んでいる者もいたことに。

 

「ちっ・・・。なんだよアイツ・・・・・・」

 

こいつとどうなるかはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

そして午前の講義が終了し、今からランチタイム!と言いたいところだが、俺は食えない。それはなぜか、『財布を忘れた・・・・・・』だってあんな急いでた状態で完璧に準備ができると思うか!否、出来るわけが無い!

 

「ご飯でもたべましょうか」

(止めの一撃だこいつ・・・)

「あー・・・俺腹へって無いからさ、今日特にやること無いし帰って良いか?」

「ダメに決まってるでしょ。もし私がこのランチタイムの時に囲まれたらどうすんのよ」

「さっき仲良くしてねって言ったのはどこのどいつだ」

「そうは言ってもサインを求めてくる人がいるかもでしょ?」

「魔よけ役引退したいです」

「始まってまだ一日も経ってないじゃない。男の子なんだから我慢しなさい」

「てめぇのせいでこうなっちまったんだよ・・・・・・」ボソッ

「何か言った?」

「何も」

 

何時もの会話が済み人が少ない場所で食事を取る絢瀬(俺も)。カバンから小さな弁当箱を取り出す。中身を覗いてみると中々女子力とやらが高い弁当である。説明するのが難しいがこれぞ弁当といえる代物だ。スクールアイドルで腹黒と言ってもちゃんと女の子なのか。

 

「今失礼なこと考えたでしょ」

「べ、別に?」

「本当かしら・・・・・・」モグモグ

 

くそ~!美味しく食べやがって!一口でもいいから食わせろと言いたい処だがそんな事言ったら、『貴方みたいな変態にあげるお弁当なんて無いわ』というに違いない。我慢我・・・・・・「ぐぅ~」あ。

 

「隆也、そういえばあなたお弁当は?」

「無いよ。絢瀬の時間厳守のメールに書いてあった時間に間に合おうとしたけど寝坊してろくな準備も出来なかったんだよ。弁当どころか財布すら忘れたんだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

うわぁー・・・すんごい目で見てくる・・・。絶対心の中で忘れるなんて馬鹿ねとか変態とか思ってるに違いない。変態は余計だ!まぁこいつが食い終われば帰れる。我慢だ。

 

絢瀬から視線を逸らし頬杖を付いて携帯を触って時間を潰そうと思っていると肩をトントンと触られた。

 

「あん?」

「ほら、これ」

 

出してきたのは弁当の蓋の上に置かれた少量の白飯と少量のおかず。弁当を見てみると量は減っている。

 

「なんだこれ」

「私の弁当よ・・・。少しだけ分けてあげる・・・」

「この後俺をどうする気だ・・・・・・」ガタガタ

「どうもしないわよ!確かに忘れてきたのは貴方自身が悪いわよ」

「ごもっともで・・・・・・」

「でも、貴方の生活での起床時間もあるのに私が無理矢理起こしたっていうのもあるわ。それなのに貴方は時間を守ってきてくれた。セクハラをする変態だけど律儀っていうのがよく分かったの。だから・・・・・・その・・・今回は私も悪かったわよ・・。振り回して・・・・・・。だから特別として私のを少し分けてあげるわ。味は保障するわよ」

「絢瀬・・・・・・・・・」

 

 

腹黒というのは撤回しよう。こいつは本当は優しい奴なんだなと身に染みて分かった。どうやら彼女の中で俺を振り回して少しだけ悪い気がしていたのだろう。確かに俺が絢瀬にした行為は警察行きに行ってもおかしくない。なのにこいつは魔よけで許すと言ってくれた。よく考えたら寛大な処置なのかもしれない。俺の事を嫌っているはずなのにそれでも自分のこういう処が悪かったと反省してそのお詫びとして弁当を分けてくれてる。俺への扱いは酷いけど、根は優しい奴なんだな・・・・・・。

 

「優しいな絢瀬。ありがたくいただく」

「そうよ。おいしく頂きなさい」

「おう!」

 

食堂から割り箸をもらってき少量の弁当を口に含む。感想、俺の母が作った食事に似た味がした。柔らかくて優しい・・・。そんな味である。

 

 

 

 

「ご馳走様。美味かったよ」

「お粗末様。気が向いたらまた上げるわよ」

「これは俺も腕によりを掛けて弁当作らないとな」

「隆也って料理できるの?」

「こうみえても俺の母親のお墨付きだ。明日食わしてやるよ」

「期待・・・しておきましょうか」

「しとけしとけ。たまらずおかわりする事になるぞ」

「弁当でおかわりって聞いた事ないわよ・・・」

 

 

 

食事が済んだ後、俺達は午後の講義が無いので自宅に戻るために校門へと向かった。俺は思った。楽しい大学生活は消えたと思っていたが、そうでもないかもしれない。

 

 

「楽しみだ・・・」

「何がなの?」

「何でもねえよ。ま、これからもよろしくな。『絢瀬絵里』」

「今更何言ってるのやら。よろしくしてあげるわ。『横山隆也』」

 

そして俺達はお互いの帰路に付いた。

 

 

「「また明日」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

 

 

夜にたまたま電話をしていて・・・。

 

 

『気が向いたらじゃなくてこれから俺の分も弁当作ってくれよ』

『なにを言っているのかしらこのクズ虫は』

『クズ虫!?』




二話でした。アニメのエリーチカとは違いますがそれでも楽しんで読んでいただいたら幸いです。

書いてる時にキュンキュンしましたね。こき使ってるけど隆也の事をきにかけていらっしゃる。ツンデレかな?



それでは三話でお会いしましょう!またな!



感想・評価。お待ちしております!


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公道よ!私は帰ってきたーー!

「題名から馬鹿丸出しでスタートデース!」
「金●の真似しないでいいから早く書いちゃいなさいよ」
「エリーチカが応援してくれるなら頑張れる!」
「そんなこと言うとでも思ってるの?燃えるゴミにするわよ?」
「燃えるゴミに捨てるじゃなくてする!?」




大学生活が始まり一ヶ月が過ぎ、とうとうこの日がやってきた。

 

俺のアパートにあるものを乗せたトラックがやってきた。それは大学が始まる前からずっと待っていたものだ。乗せてあるのは黒い鉄の塊。いや、人間の手によって変わった鉄の乗り物である。なにを隠そうそれは!!

 

 

「お届けに参りました」

「来たアアアアアア!」

 

HONDAが出したバイクのホーネット250である。高校時代から頑張ってバイトをし、コツコツをお金を貯めて買った代物である。実は俺氏、バイクの免許を持っていましてね。高校時代から乗っていたのです。乗り立ての頃は親父から貰ったバイクを乗っていたんだがただいまバイク屋で入院中だ。代わりでもあり、元から欲しかったバイクがこのホーネットである。特にバイクの事に詳しいという事ではないが、親父の後ろに乗った時に俺もこんな風にバイクを運転してみたいと思っていた。それで俺は高校時代部活に通いながらも教習所に通い免許を取得したのだ。(その高校は免許取得したら退学なんだがバレなきゃいいんだよ)

 

業者さんから色々と話を聞き書類を受け取り軽く店の宣伝をした後業者さんは帰っていった。いや~かっこいいねこのバイク。大きさも丁度いいし排気量も丁度いい。これでゴールデンウィークは色んな場所にいける!絢瀬の手の届かないところにな!フハハハハハ!少し落ち着こう・・・。

 

軽く馴らすために俺はバイクに乗る準備をした。服は長袖長ズボン。フルフェイスヘルメットを被りプロテクターの付いたグローブを装着しバイクに跨る。

 

「おぉ・・・試乗したときと変わってない・・・。乗り心地抜群だ」

 

鍵を差し込み、右に捻りエンジンが動き出す音が鳴り始めた。セルを押すと・・・。

 

キュキュキュキュブルゥ~ン!

 

この音、たまらない。これは血筋なのか親父も高校の時からバイクに乗っていた。その時にも俺と同じ台詞を言ったらしい。

 

「バイク・・・。乗らずにはいられない!」

 

ギアを変えクラッチを繋ぎバイクが動き出し俺は公道に出た。軽くハンドルを捻った後ギアをセカンドに入れスピードを上げていく。今の時間帯では車も中々通って居ない。これはチャンスだと思いどんどんスピードを上げていく。アクセルを捻るたびにマフラーからでる排気音。俺はこの音が好きだ。ずっとこの音を聞いていたいとも思った。そして更にスピードを上げていく。景色が飛んでいく。今俺は、風と一つになっている!

 

 

「公道よ!私は帰ってきたーー!」

 

ブゥゥゥン!

 

 

 

 

 

 

それから数分後、速度超過によってお巡りさんのお世話になりました。お巡りさんにサインと判子とお金をあげました。ウレジグナイ!

 

 

 

 

 

そして翌日。俺は学校までバイクに乗って通う事になった。ウチの学校はバイク通学を認めており登校してもよいことになっている。ただし条件もある。学校では各自のバイク駐車スペースが設けられている。その駐車料金一ヶ月2千円払う事になっている。バイクで学校に通えるなら安い安い!しかもだ!今日は絢瀬に言われた時間に余裕を持って着く事ができた。バイクで校門をくぐり自分の駐車スペースにバイクを駐車させる。少し熱いがどうってことない。バイクと一緒に走れるのならな。

 

と、そんな事を思っているとまた校門からバイクが走ってき俺の横にある駐車スペースに止まった。俺の横に並んだのはYAMAHAのYBR250である。最近でたバイクで確か燃費が良いとか悪いとか?そこはよく知らない。だがここからが重要だ。そのバイク乗りのライダーは女性!女性ライダーだったのだ!これはいい!ここで話かけて楽しいバイクライフを一緒に楽しもう!

 

「すいません。綺麗なYBRですね」

「ありがとうございます。昨日納車したばっかりなんです」

「そうなんですか!よかったら俺とツーリング行きませ・・・・・・ん・・・・・・か?」

「良いですね。私もこれでどこか遠くへ行ってみた・・・・・・いと思って・・・・・・」

 

女性がヘルメットを脱ぎこちらに視線を送る。その女性は綺麗な金髪で綺麗な青い瞳。そう俺が一番良く知っている入学式初っ端から俺がセクハラをかましてしまった女性、絢瀬絵里だったのだ。

 

「あ・・・・・・絢瀬!?お前バイクに乗ってて・・・・・・」

「ふん!」

 

ズブリ!

 

「ぎゃああああ!目がああああああああ!!?」

 

ヘルメットの隙間から見えている俺の目に向かって絢瀬は目潰しをしてくる。効果は抜群だった。見事に俺の目玉にクリーンヒットし、俺は一時的に視力が失った。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

「まさか貴方もバイクに乗っていたとはね。隆也?」

「だからって目潰ししなくてもいいじゃねえか!」

 

 

何時もの服装になり俺達二人は食堂で話しをしていた。回りに誰も居ないので大きな声で喋っても問題ない。

 

 

「もしかして前に言ってたやりたいことってバイク関連の事?」

「まぁ・・・そんな感じだ・・・・・・」

 

やっと視力が戻ってきた。

 

「もしかして絢瀬もか?」

「まあね。こんなクソ虫と一緒なんて悲しくなりそうだわ」

「よし、ならば戦争だ」

 

言葉ではなんやかんや言っているが一見嫌そうに見えない。俺は知っている。バイク好きに悪い奴はいない。

 

「ってかお前が免許持ってることにびっくりだわ」

「私もよ。今まで通り徒歩でも良かったんだけれど、『ある人に助けられて以来バイクに乗りたくなったのよ』」

「ある人?」

「貴方には関係ないから教えない」

「ヘーヘーソーデスカ」

 

気になる・・・。非ッ常に気になる!なぜか知らないがバイク関連の事になると非ッ常に気になる!いつかこいつから聞き出してやる!

 

「ほら、今日は行くところがあるんだから早く講義終わらしていくわよ」

「ちょっと待て。それって俺も行くの?」

「当たり前よ。なんのための恋人なのよ」

「あんたに利用されている恋人です」

「マフラーに穴でもあけてあげましょうか?」

「申し訳ありません。それだけは勘弁してください」

 

やはり俺ではこの女王を倒す事は出来ないのかッ・・・・・・。神よぉ!!

 

その後の講義ではバイクに乗って楽しみすぎて疲れたのでゆっくり寝る事にしたのです・・・・・・が!!!絢瀬の足が俺の足を思いっきり踏みつけてきたので寝る事はできませんでした。この野郎・・・・・・。

 

 

 

 

***

 

 

全ての講義が終了し、よし家に帰ろう!と思っていたのに絢瀬の首根っこを掴まれ駐輪所に連行されている。

 

「ぐびね"っごづがむ"な"あ”!」

「貴方が逃げそうになっていたからでしょ。大人しく着いてきなさい」

「俺は犬じゃねえんだぞ!」

「ほら着いたから準備しなさい」

「話を聞けぇ!!」

 

意外にも強引なところがある絢瀬絵里。こんな奴がホントにスクールアイドルなのか・・・。他のメンバーの子達はよく頑張ってきたもんだなぁ・・・。

 

「で、どこに行く気なんだ?」

「神田明神って処よ。私の親友がバイトしててね。久しぶりに会いに行こうと思って」

「なら尚更俺はいらないだろ」

「一応貴方の事も紹介しとくのよ。もし何も言わないで二人でいる処を見られたら嫌だもの」

「何で?見られたところでなんかいやな事でもあるのか?」

「だ、だから!わ、私たちが本当の恋人って思われるかも知れないって事!!それぐらい察しなさいよ!」

「なんで俺が怒られてるんだ・・・・・・」

「分かったわね。ちゃんと着いてきなさいよ、見られて誤解がうまれるまえにね」

「はいはい。どんだけ俺のこと嫌いなんだまったく・・・・・・」

 

バイクに跨り絢瀬の後ろに付いていく。後ろから見てると意外にも運転が上手い。どうやら大学に入る前に運転していたのかもな。だが俺とは経験が違うのだよ。しっかし後ろから見てると中々のスタイルだな。本当に日本人なのか?聞いた話ではクォーターらしいけど・・・。あのモブ男達が絢瀬に近付く理由も分かった気がする。アイドルとしてでもだし綺麗な美人という事だからというのもある。ま、学校では女友達も増えてきてるし大丈夫だろう。男友達はほんの数名だが・・・・・・。

 

 

 

 

しばらくして長い階段の前に到着した。そこでバイクを駐車させ長い階段を登っていく。ってかここ階段長いし急すぎんだろ・・・。絢瀬なんか淡々と登っていってるし。あれか、服を脱いだら凄いんですってやつか。あ、やめとこ・・・。絢瀬が凄い目で見てくるから・・・。

 

 

登りきったその先には綺麗な神社が建っていた。俺は神社に詳しい訳じゃない。だがなぜか分かる。とても丁寧に手入れをされているのが分かる。

 

そしてその神社へ通じる石畳のに巫女服に身を包んだ女性が立っていた。

 

 

 

「久しぶりね。希」

 

絢瀬が声をかけるとその女性はこっちを振り向き優しく微笑みかける。

 

 

「久しぶりやね。エリチ」

「元気そうでよかったわ。まだここでバイトを?」

「そうなんよ。ウチ以外人でが少ないからね。処でそちらの男性は?もしかして彼氏!?」

「ち、違うわよ!この人が前に教えた私の恋人役よ!」

「もう思いきって付き合っちゃえばいいのに~」

「イヤよ!入学式早々セクハラしてくる奴なのよ!」

(無茶苦茶言いやがる・・・・・・)

「でもワザとじゃないんやろ?お似合いや思うけど・・・・・・」

「絶対嫌!こんなゴミ虫!」

「ゴミ虫!?」

「もう素直やないんやから」

「もう希!」

 

すげえ光景だ・・・。あの絢瀬がいじられてる。いつも俺を罵倒してこき使ってひっかい回してるあの絢瀬が・・・。あの人、中々の手練だ。メモしておこう・・・・・・。そしてここだ!絢瀬に負けないスタイル!お姉さん属性発動だ!絢瀬が対等に喋っている時点で俺とも同い年かな。ってか関西人かよ。(この後東條はエセ関西人だと言う事が分かった)

 

 

 

「よろしゅうな。エリチの恋人さん」

「恋人じゃないんだが・・・・・」

「もうそれでええやん?満更嫌でもないんやろ?」

「まあ、乗りかかった船だしな。嫌ではない」

「こっちは素直やのにエリチときたら・・・・・・」

「余計な事言わなくていいわよ!」

「やれやれやね。あ、名前教えてくれへん?」

「ん?あぁ・・。俺は横山隆也だ」

「ウチは東條希。よろしゅうな」

「お、おう。もしかしてあんたも元μ'sか?」

「そうやで。もうμ'sは解散してるけどな」

「ほう。見た感じは絢瀬とは大違いだな」

「というと?」

「絢瀬みたいにがさつで凶暴じゃないってこと」

「隆也、後で覚えときなさいよ・・・・・・」

「あ・・・・」

 

俺死んだな・・・。

 

「あ、そうやエリチ。新しいチョコ買ったんやけど食べる?」

「食べる!」

 

反応はや!

 

「ウチのカバンが置いてあるいつもの場所にあるからとってきてええよ」

「それってパシリなんじゃ・・・・・・」

「ええからええから。ほら早く」

「もう、仕方ないわね」

 

絢瀬は俺に荷物を持たせ神社の裏へと歩いていく。

 

「隆也君はエリチとどうなん?」

「どうなんとは?ってか名前・・・」

「隆也て呼ばせてもらうよ。親しみを込めてね」

「別に良いけど、どうとはなぁ・・・。いつも俺は振り回されてばっかりだよ」

「あらあら。それはそれで安心した」

「なんで?」

「隆也君には素の自分を出せているから」

「素の自分?」

 

意味が分からない。あれが素の自分?どうみても俺に対してだけキツイような気がするのに。

 

「エリチな、μ'sに入る前はあんなんちゃうかったんよ。偽りの自分やった。けど色んな出来事があって経験して、そして気付いたら皆の前でも素の自分を出せるようになった。けど話で聞いた感じやと大学の最初は偽った自分しかだせんかったんよ。回りはμ'sの絢瀬絵里としてしか見てなかったから。エリチはもっと普通に接してほしいと願っていた。μ'sの絢瀬絵里じゃなく大学生の絢瀬絵里として」

「あ・・・・・・」

 

あの時の言葉はそういう意味だったのか・・・。

 

「そこでエリチに前に現れたんが君なんよ」

「俺?」

「μ'sどころかスクールアイドルさえしらない隆也君に出会ってエリチは感謝してるんよ」

「感謝?あいつが!?」

 

信じらんねぇ・・・。

 

「大学で初めて普通の絢瀬絵里として接してくれた隆也君。他の人達とは違って普通の人物として接してくれた。自分との差をつけることなくごく普通に。ああやって言い合えるんはエリチが君の事を信用してるって意味なんよ」

「あいつが俺を信用してる・・・・・・」

「信用できる人じゃないと恋人役なんて頼まんやろ?」

「そりゃあな・・」

「この人なら私をちゃんと対等の人物として見てくれてる。差をつけず、距離をおかず、そんな隆也君やからこそ恋人役をお願いしたんよ」

「・・・・・・・・・・・・」

 

俺は最初はセクハラをした償いとして恋人役を頼んできたのかと思っていた。けど東條の話を聞いて考えがかわったかもしれない。自分は普通の女の子。けどスクールアイドルをしていた事に後悔はない。けどそのスクールアイドルっていう枷があるお陰で他の人との距離が開いてしまったのだ。大学では普通の絢瀬絵里としてみてほしい。けどその願いは叶わないと思っていた。

 

「対等の人物として始めて見てくれたんが、君なんよ」

「!」

「セクハラされての償いとして恋人役になってと言ってきたのはただの口実。他の人との接し方が違うのは信用してくれている証拠。素の自分が隆也君の前でしか出せているのは信頼している証拠。エリチは君に感謝してるんよ」

「感謝・・・」

「これからもエリチとは仲良くしてあげて。ウチが一緒におれればいいんやけどなぁ」

「そうか・・・・・・。ま、乗りかかった船だ。対等とかどうかは知らないがあいつよ一緒にいてやるか・・・」

「ありがとな隆也君・・・」

「希ー!取ってきたわよーー!」

 

話が終えようとした時に紙袋を持った絢瀬が戻ってきた。その後俺達は神社の縁側に腰を下ろし高級感あふれるチョコをおいしく頂いた。

そして俺は食べている時に一つ疑問が浮んだ。東條が言ったように、本当に俺を信用しているのか・・・・・・。

 

 

 

 

 

「なあ絢瀬」

「何?」

「お前って俺のこと信用してるのか?」

「・・・・・・・・・・・・」

口に含んだチョコをゆっくり飲み込み、そして俺へと視線を移す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ?どうかしらね」

 

その笑顔は俺と出会って、初めて見せた笑顔だった。




3話でした。とうとう登場してきましたのんたんこと東條希。やっぱり登場させるなら神田明神かと思いまして!これからもこの話にはちょくちょく入れていこうかと思います。他のμ'sのメンバーはどうしよっかなと悩んでいる最中です。もしかしたら気が向いたらって事になるかもです。


そして!評価してくださった

なこHlMさんとシンラテンセイさん。ありがとうございます!

これからも投稿頑張っていきます!
本日もご視聴、ありがとうございました。ジャンケンタ~iって違う違う笑

ではまた4話でお会いしましょう!またな!



感想・評価!お待ちしております!


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いつどんな時でも予想できない事は起こる。

「作者である自分、今自動二輪の免許取得の為に教習所に通ってます。自分も隆也のようにバイクに乗ってどこかへ行ってみたいですね」
「調子に乗りすぎて事故しちゃだめよ?」
「珍しくエリーチカが自分の心配を!ありがとぉぉぅう!」
「間違えたわ。早く事故してきなさい」
「それおかしくね・・・・・・?」


ゴールデンウィーク。学生にとってはとても嬉しいひと時である。こんな時でも仕事をしている人もいらっしゃる。皆さん頑張ってください。俺はこの時を満喫します!(最低?そんなもん知らん!)

今から俺は自分の時間を大事に使う。しかも今回は絢瀬の目が無いので自由に動けると言うわけだ。俺はこの時を利用してバイクで旅にでも出ようかなと思っている。ソロキャンプツーリングだな。キャンプ一式も準備しているので準備は完璧。あとはバイクの整備だな。明日一日はバイクの整備に専念して次の日にどこかのキャンプ場使うか。

 

ではさっそく整備をするために外にでるk『ピリリリリリリリ』←電話

 

「誰だよこんな時に・・・」

 

携帯の画面を見てみると。

 

『絢瀬絵里』

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

よし、無視だな!

後ですまない携帯の電源が切れていたとでも言っておこう。あいつのことだから許してくれるはず・・・(なにかはされるだろうが・・・・・・)

 

ピリリリリリリ!

 

うるせぇな・・・・・・。本当に電源でも切っとく・・・『ピロリン』あん?

 

今度は電話でなくメールが送られてきた。内容でも見ておこう。

 

『今警察署の前にいるんだけど電話に出ないって事は警察にセクハラの事を言っても良いって訳よね?』

 

はい、即効で電話を掛けました。

 

 

『出るのが遅いわね。何してたの』

『別になんでもいいだろ・・・。用件は』

『貴方ゴールデンウィークをどう過ごすの?』

『家でゴロゴロする。以上』

『切ったら殺すわよ』

『言葉使いがどんどん酷くなってきたな・・・・・・。なんなんだよ一体』

『貴方の家に行っていいかしら?』

 

 

 

 

 

 

 

『はい!!?』

『だから貴方の家に行っていいか聞いているのよ』

『あの話を聞いててどうやったら俺の家に来るという結果に至るか聞きたいんだが・・・・・・』

『バイクパーツを買ったからつけて欲しいのよ。バイクに使う工具とか持っていなくて』

『よくそれでバイク買ったな・・・。一人でバイクの整備とかしんきゃいけないんだから工具ぐらいもってろよ』

『わ・・・分かってるわよ!いいから今すぐ住所教えなさい!』

『はいはい。後でメールで送るからそんなに吼えるな』

『もう・・・速めにね・・・』プツン

 

 

絢瀬にメールを送った後、俺は布団の上にダイブした。

 

「嫌な予感がする・・・・・・・・・・・」

 

俺の勘はよく当たるらしい・・・・・・。

 

 

 

***

 

 

一時間後、俺のアパートの目の前にバイクに跨ってきた絢瀬がやってきた。バイクに乗ってる姿様になってるな~。これぞ女性ライダー!見たいな感じだ。俺なに言ってるんだろ・・・。ってかそのバイクの後ろにくくり付けてるダンボールなんだ・・・。

 

「隆也ー!」

 

声を掛けられたのでアパートの外に向かった。

 

 

「絢瀬にお願いされる時がくるとは・・・・・・」

「私だって頼る時くらいあるわよ。でも今回バイク関連で知り合いとしたら隆也くらいだし」

「女友達のなかにバイク乗りは?」

「居ないわ」

「まあ女性ライダーって少なそうだしな・・・」

 

バイク=男ってのがイメージだしな。

 

「まあバイクパーツつけるのはいいけどそのどでかいダンボールはなんだ?」

「この中に入ってるのよ。ま、『三つだけ』だけど」

「三つだけで?もしかしてパニアケースか?」

「そ、この時間を使ってバイクでソロツーリングにでも行こうかと思ってね」

(俺と一緒の考えじゃねえか・・・)

「ま、ゴロゴロする貴方とは違うってことよ」

「ほっとけ。ここじゃ暑いから入るか?」

「私を家に入れて何をする気なのよ・・・・・・」

「何もしねえよ!ここじゃ暑いから家で休んだらどうだって意味だよ!」

「襲ってきたら容赦しないわよ」

「誰がお前に手を出すか。いいから早く上がれよ」

「お邪魔するわね」

 

アパートの自室に連れて行き部屋へ招き入れる。

 

「お邪魔します」

「ま、そこで座っててくれ」

「えぇ」

 

 

絢瀬視点―

 

此処が・・・男の人の家・・・。

 

自慢じゃないけど私は生まれてこのかた男の家に入った事がない。相手が隆也っていう理由もあるが少しだけ緊張している。不思議な感じがする・・・。居心地が悪いと言うわけでもない。けど違う世界観があるので少しソワソワする・・・。イメージではもっと散らかってるというのが大きかったがそうではない。むしろキチンと片付けており整理整頓されている。以外にも几帳面なのね。隆也は・・・。

 

「麦茶で大丈夫か?」

「あ、ありがとう・・・」

「なに緊張してんだよ気持ち悪い」

「それ、私以外に言ったら嫌われるわよ」

「お前だから言ってるんだよ。他の人に言えるか」

「私に対して自重する気がないのかしら?」

「そりゃお互い様だ」

 

貴方って人は・・・。まあ、普通に接してくれてるから怒りは生まれてこないんだけどね。どんな人に対しても差別なく接する処がいいんだけどね。私の事を始めて普通の同級生としてみてくれた人なんだし。これでも私は信頼しているのよ?

コップに入れた麦茶をコクッと飲む。氷も入ってるお陰で冷たいから凄く美味しい。あれ?

 

「この麦茶、売ってる物より違う?」

「え?あぁ・・・。それ俺がお婆ちゃんから教えてもらって自分で作ったんだよ。不味かったか?」

「あ!そうじゃなくて・・・なんだか落ち着く味だなって・・・」

「俺もそれは思った。お婆ちゃんの作ったものって全部今の世代の物とは違う感じがするんだよな。やっぱり昔の人のお手製だからかな」

「貴方のお婆さま。凄い人なのね」

「凄いとまでは行かないが、色々と詳しい人だったな」

「だった?」

「もう死んでるんだ。歳も90いってたし」

「あ、ごめんなさい・・・・・・」

「なんで謝るんだよ。何も悪い事してないだろ」

「でも、ちょっと失礼だったかなって」

「気にしてねえよ。もうふっきれてる」

「そう・・・・・」

「絢瀬にはお婆ちゃんいないのか?」

「え?いるわよ?今はロシアに住んでるの」

「確かロシア人だったっけ。どんな人なんだ?」

「どんな人・・・・・・。そうね、優しい人よ。大好きなお婆様。いつも面倒見てくれてたし。学校では勉強頑張ってると賢い可愛いエリーチカって褒めてくれたし」

「賢い可愛いエリーチカ・・・・・ぶふっ!」

「なっ!何笑ってるのよ!」

「い、いやだって!この歳でそんな事いう奴いるんだなって!」

「う、うるさいわね!いますぐ殺すわよ!」

「オーケー分かった。その手にある包丁をまず直してこような?」

 

 

今どうやって取ってきたんだ・・・。目に見えないスピードで取ってきたぞ?

 

 

「でもいい人そうだな。絢瀬の言葉でわかる」

「ふん!貴方にお婆様の凄さがわかるかしら?」

「この野郎・・・馬鹿にしやがって・・・・・・」

 

コップに入ってる麦茶を全部飲み干す。

 

「さてとそろそろバイクにでもつけるか。パニアケース」

「そうね。やらせてしまって悪いわね」

「別にいいよ。バイクに色々したりするのもバイクの楽しみの一つだ」

「!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『バイクに色々したりするのもバイクの楽しみの一つだ』

 

 

 

「その言葉・・・」

「あん?」

「あ、なんでもないわ」

「なんだよ。誤魔化さないで教えろよ」

「なんでもないの!早くつけるわよ!」

 

ダンボールを担ぎ外に出て行く絢瀬。その足取りからして分かる。あれは激オコだな。

 

「なに怒ってるんだよ」

 

 

俺には到底理解できなかった。

 

 

その後、俺達2人はいつもの日常で話すような会話をしながら絢瀬のバイクにパニアケースをくっ付けた。聞いてみたところ、元々は原付に乗っていたがこの前聞いたある人に出会って乗りたくなったらしい。どんな人かを聞いたが絢瀬は答えなかった。気が向いたら教えるとの事。もしかして絢瀬の好きな人か!い、いや全然気にしてねぇし!興味すらねえし!!(嘘)

 

 

 

「よし、こんなもんかな」

「ご苦労様。褒めてあげるわ」

「なんで上から目線なんだよ・・・・・・」

「貴方は私の恋人。彼女のために頑張るのは当然でしょ」

「そんなポリシー聞いたことねえよ!(多分)」

「という事で、これからも私のために働きなさい」

「てめえのそのふざけた幻想をぶちころしてやりてぇ・・・」

「じゃ私は帰るから」

「気をつけてな。今から大雨降るそうだから」

「降る前には帰るわよ。じゃまた学校で」

「こき使われる日々が帰ってくる・・・・・・」

 

そして絢瀬は帰っていった。俺は明日は流石にキャンプツーリングにはいけないかなと思い今回のゴールデンウィークは軽くドライブにでも行こうかなと考えた。んでついでに東條の所にでも顔を出そうかなと計画。完璧だ・・・。

 

ザアァァァァ!

 

「やべ!降ってきやがった!」

 

ほんの数十秒でいきなり大粒の雨が天から落ちてくる。俺は急いで工具を回収しバイクにレインシートを被し、雨の当たらない処にバイクを避難させ急いで家に戻った。ん?なんか忘れてるような・・・・・・。

 

 

「あー!洗濯物ーーー!」

 

 

急いで取りに言ったが、洗濯物殿はお亡くなりになっていた。

 

それから数分後。

 

「こりゃバイクで何処にもいけねぇな・・・」

 

窓から外を覗いてみるとどす黒い雲から大量の雨が降り注いでた。競馬でいう重馬場かな?それくらいだ。いやもうこれ台風でいいだろ・・・。このまま学校雨で休校になっちまいな!ま、こんな事考えてるとすぐ雨上がるんだけどな。

 

ピンポーン

 

「え?こんな天気の中誰だよ」

 

ウチにはドアから外の覗き込むレンズが無いので一々ドアを開けて確認しなければいけない。もしこれで外に出た時におっかないおっさんだったらどうすんだよ・・・。借金取りじゃー!みたいな・・・。

 

「はいはーい。新聞はいりませんよ~」

 

言ってみたかった台詞。

 

だが、外にいたのはおっかないおっさんでもなく新聞配達の者でもなかった。さっきまで一緒にいた俺の恋人(仮)である、ビショビショに濡れた絢瀬がいた。

 

「馬鹿だろお前・・・・・・」

「それは自分でも思ったわ・・・」

「んで・何しに来た?」

「コホンッ。実は私も言いたくは無いんだけど・・・見ての通りに雨にやられてね」

「みりゃわかる」

「しかも帰ってる途中によ。出て数秒でいきなり雨にふられて私は焦ったわよ」

「ご愁傷様です雨女」

「ふん!」

 

ゴンッ!

 

「ほげぇ!?」

 

絢瀬の持っていた硬いヘルメットが俺の頭に振り下ろされた。

 

「あ・・・・・・あたま・・・が・・・・・・割れる・・・・・」

「誰が雨女よ。道も雨で濡れててあやうくスリップしかけてたのよ」

「よく無事だったな・・・。俺の頭は無事じゃないけど」

「家まで遠かったからこれはどこかで雨宿りしなくてはと思ってここに来たわけ」

「なら別に声掛けなくてもいいんじゃ・・・」

「ずっと外にいたらナンパされるかもしれないでしょ!賢い可愛いエリーチカなんだから!」

「まだそれを言うか・・・・・・。じゃあ俺にも外で雨が止むまで待てと?」

「そんなことさせるわけないでしょ!これでも人の心あるわよ」

「どこかで聞いた台詞・・・・・・。んじゃどうすんだよ」

「あ・・・だから・・・・・・うぅー・・・・・・」

 

なにこの可愛い生き物。顔真っ赤にしてもじもじして・・・。言葉は酷いけど黙ってれば可愛い奴なのに・・・。いつもこんな感じだったらな~(遠い目)

 

 

 

 

「隆也!!」

「は、はい!」

 

あれ?この光景・・・どこかで見たような・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日!私を家に泊めなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあああああああああああああああ!!!???」

 

 

 

 

 

今まで生きてきた人生の中で一番驚いた気がする・・・。




4話終了です。おい隆也。いますぐその家から出て行ってお前の家に住まさせろといいたいところですね。エリーチカは本当はいい子なんですけど隆也の前だとこんな感じになっちゃいます。ま、隆也もまんざら嫌そうじゃないんですけどね笑
リア充溶けて爆ぜろ!!!!これくらいにしておかないと隆也のメンタルが(^_^;)

今回新しく評価してくださった!

ポンポンさん。AQUA BLUEさん。テリアキさん。


ありがとうございます!そして気付いたらお気に入りがいつの間にか50を超えていました。見たとき目を疑いましたよ。あれ?マジで!?←こんな感じに。


次回ではエリーチカが隆也の家にお泊りする日です!一体どんな事が起こるのか!もしかしたらデレる・・・・・・・・・・・・かも!!!


今回もありがとうございました。また次回でお会いしましょう。またな!




感想・評価、お待ちしております!


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ツンデレをデレさせる奴は大抵鈍感だ

「最近疲れが溜まってきているな~」チラッ
「なによ。マッサージでもしてあげましょうか?」
「まじで!頼むわ!」
「じゃ横になって」
「はーい。エリーチカにマッサージをしてもらえる日が来るとは!嬉し・・・イダダダダダダダ!!」
「え?痛かったかしら?」
「なんでマッサージの時に俺の腰をハイヒールで踏みつけてくるの!?」
「これの方が貴方を気持ちよく出来るかと・・・(別の意味で)」
「気持ちよくなるわけないだろ!(別の意味で)」


現在の時刻。午後5時30分。いつもの俺はこの時間は特にやることがないのでテレビを見て時間を潰していた。『いつもの俺なら』・・・だ。だけど今はそれどことじゃなった。少し前にさかのぼるが俺の家に客人がやってきた・・・それは何を隠そう、俺の恋人である絢瀬絵里だ。外を見れば分かるがとてつもない大雨だ。そんな中バイクで帰ろうとしていた馬鹿な雨女を家に泊めることになった。大丈夫なのかって?大・問・題だ!こんなこというのもアレだけど俺は女の子を家に入れたことがない!一体どう対応したらいいのかさっぱりなんだ。あ、でも絢瀬だったら大丈夫かな?とも思ったけどあの絢瀬だぞ?ほんの少し何かをしたら一体どうなるかわかったもんじゃない・・・。これでも俺は紳士(?)だ。最低限の対応はする。けど相手が絢瀬だからという理由もあるけど緊張で冷や汗が半端じゃない・・・。こいつはこいつで横でテレビ見てるけどよ・・・。しかもだ!俺のTシャツ&半ズボンを着てだ!さっきまで雨で濡れたビショビショの服を着てたからシャワー浴びさせて着させたんだが、色々とヤバイ!ただでさえこいつは美少女だ!がさつで凶暴で俺を這いつかばせる女王様だが女だ!色々と犯罪臭が漂っている!頼む!俺の理性よ!我慢してくれーーーー!!

 

 

「隆也貴方さっきから何をブツブツ言ってるのよ」

「現状報告だ。気にするな」

「誰に対してよ・・・」

「絢瀬、日本にはこんな言葉がある・・・。気にしたら負けだという言葉が」

「それくらい知ってるわよ。馬鹿にしてるの?」

「馬鹿にしてる」

「貴方の私への印象がよく分かったわ。ちょっと待ってなさい。今台所にある包丁で貴方を調理してあげるから」

「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」

 

残像が出来るほどのスピードでスライディング土下座。

 

「分かればよろしい」

「いつか下克上してやる・・・」

「やれるもんならやってみなさい」

「こんちくしょうめ・・・・・・」

 

こんなやり取りをしていると気付いたら時刻は6時。

 

「そろそろ飯でも作るか」

「あ、それなら私が作るわよ」

「いいよ客は座ってろ。お前をギャフンと言わせる飯作ってやる」

「そう・・・。期待しないで待っておくわね」

「期待しとけよ・・・・・・」

 

*料理シーンはカット*

 

 

「ほい出来た!俺特製カツ丼だ!」

「ハ、ハラショー・・・。初めて見るカツ丼ね・・・」

「卵が少し黒いだろ?俺特製の調味料を入れたんだ」

「貴方って色々と凄いのね」

「色々は余計だ」

「じゃ、いただきます」

 

箸でカツを掴み口に運ぶ。

 

「むぐ・・・・・・」

 

歯でカツを噛むと・・・。

 

(お、おいしい!なによこれ!食堂や店で食べるのよりずっと美味しい!カツは完璧にカラッと上げてるしなによりこの卵!フワフワしてるしカツに絡み合って味を引き立ててる・・・。これは私でも作れないわ・・・。隆也に負けてる気がする・・・そんなの認められないわ!)

 

「で、お味はどうですかな?」

「え!?ま、まぁ・・・いいんじゃないかしら?」

「喋る時はその人の目を見て言いましょうね?絢瀬さん?」ニヤニヤ

「うるさいわね!それ以上言ったらタダじゃおかないわよ!」

「わー!わー!分かった分かった!もう充分に分かったからその目に突きつけている箸を下ろせ!目玉ほじく気か!」

 

真っ黒黒介見たいな感じで・・・。見たことないけど。

 

ま、食べてくれて安心した。雨で濡れて寒そうだったからな~。携帯のバイブ機能みたいに・・・・・・。

 

 

 

「ご馳走様でした」

「お粗末さま。さてと次はデザートにでも行こうか」

「デザート?」

「昨日作ったチョコケーキだ」

「いますぐ用意しなさい!い・ま・す・ぐ!」

「チョコの事に関すると目の色変わってるぞお前・・・」

 

ケーキを皿に盛り、絢瀬の前に出す。

 

「隆也って、生まれてくる性別間違えてない?」

「よく言われる。料理も家事も洗濯も掃除も出来るときてるからな」

「女の子だったら可愛がってあげるのに」

「断固拒否する」

 

パクッ

 

「隆也に負けた気がするわ・・・・・・」

「いやいやそこまで絶望するなよ」

「一生の不覚だわ・・・・・・」

「喧嘩売ってんのかコラ!」

 

ここで一つ気付いた。

 

「なあ絢瀬」

「なに?」

「あれだなこうやって一緒に飯食ったりとかケーキ食べたりするのって・・・・・・」

「?」

 

 

 

「本当の恋人みたいだな」

 

 

 

「・・・・・・・・・・っ!?///」ボンッ

 

絢瀬の顔が茹蛸みたいに真っ赤だ。

 

「な、なななな・・・何を言い出すのよ!///」

「いや、思ったこと言っただけだけど・・・。そして少し落ちつけ」

「わ、私はそんな事!これっぽっちも思って無いわよ!///」

「だから俺は思ったこと言っただけだ!そしてその皿を下ろせ!ここでチョコケーキでのパイ投げなんか洒落にならねえから!」

「隆也の馬鹿ーーーー!エリチカお家かえるーー!」

「この雨で帰れるのならどうぞ」

「うっ・・・・・・うぅ~・・・・・・///」

 

今回は俺の勝ちだな(ドヤァ)

 

恋関係の話をすると顔が真っ赤になる・・・・・・と。メモメモ

 

 

「隆也!今度覚えときなさいよ!バイクで轢いてやるんだから!」

「そんなので俺の人生終わらしたくねえよ!」

「いや、今度じゃなくていいわ・・。今殺してあげる!」

「待てーーー!その手に持っているスパナとドライバーを下ろせーー!」

「隆也!覚悟ーー!」

「ぎゃあああああああああああああああ!!!」

 

これは後々の事だが、後に俺のアパートの一室は男の人の断末魔の声がゴールデンウィークに聞こえてくるという噂が後を断たなかった。

 

それから約一時間後。俺は絢瀬の攻撃を逃げ切り休戦協定を結んだ。

 

「今度同じ事言ったら容赦しないわよ」

「はい・・・・・・・肝に免じておきまず・・・・・・・・・」

 

スパナとドライバーを持った絢瀬の目の先には畳の部屋に続く扉に頭が挟まった隆也の姿があった。

 

 

***

 

 

「じゃ風呂でも入れるか。絢瀬先に入れ」

「ならお言葉に甘えて。服どうしようかしら・・・」

「また俺の服貸してやるよ。下着は・・・・・・乾燥機で回しとくから」

「なんだが悪いわね。ゆっくりさせてもらうわ」

「あいよ。ゆっくり浸かってこい。ちゃんと100数えろよ」

「小学生じゃないんだけど・・・」

「それくらい浸かれって事だ。はやく行って来い」

「わかったわよ」

 

タオルや替えの服を持って浴室に向かう・・・・・・かと思いきや、いきなり俺の方に振り返った。

 

「なんだよ」

「覗いたら燃やすわよ」

「それは覗けってフリか?」

「寝込みを襲うから覚悟しときなさい」

「言い方が生々しい!それと年取ったらお布団さまの上で普通死ぬけどこの若さでお布団さまの上で死にたくない!」

「ふんっ!」

 

そうして絢瀬は浴室へと入っていた。

あぁ・・・・・・いつもより疲れる・・・。

 

 

約40分後。

 

 

「上がったわよ~」

「はいよ。じゃ俺も入るか・・・」

「あ、その前にお風呂の湯を抜きなさい」

「は!?なんで!?」

「貴方みたいな変態の事だから私の上がった湯を飲む気でしょ?」

「お前は俺のどんな偏見を持ってんだ!」

「貴方みたいな男って全員そんなもんでしょ?」

「馬鹿にすんな!さすがにそれは俺でもしない!」

「大学で可愛い女の子を見たりは?」

「それはする」キッパリ

「最低・・・・・・」

「なんでだよ!俺もお年頃なんだよ!」

「私がいるでしょ?」

「どの口が言うか。恋人(仮)だろうが」

「本当は嬉しいくせに~」

「まあ、美少女と一緒にいるのは嬉しいな」

 

 

「・・・・・・・へ?///」

「あん?なんだよ」

「なんでもないわよ!このケダモノ!」

「ケダモノ!?」

「早くお風呂入っちゃいなさいよ!」

「へいへい・・・。何を怒ってるんだか・・・・・・」

 

 

多分わかった者もいるが教えておこう!隆也は鈍感である。

 

 

そして俺は風呂でさっぱりしたのでそろそろ寝ようと思った。だが!ここで重大なミスを犯した。『おれの家には布団が一つしかない!』元々俺の家には他の人が来るとは想定していなかった。やばいぞ・・・。これは非常にやばいぞ。さすがに絢瀬を床で寝かせるわけにも行かない・・・。さすがの絢瀬もこれは焦って・・・・・・。

 

「私が布団で寝るから隆也は床ね」

「あのですね?ここ俺の家。分かる?」

「貴方は客を床に寝かせると言うの?」

「さすがにそれはしないが・・・・・・」

「なら良いじゃない。これで決定ね」

「あぁ・・・。何時もどおりで安心しましたよ(血涙)」

 

と言う事で、俺は布団からかなり離れた場所の冷たい床の上で寝ました。え?絢瀬の寝顔?あいつが見せると思うか?家具なんか使って完璧にあいつの領域を作っちまったよ。悔しいかって?クヤシイデス!!

 

 

 

 

「隆也・・・・・・まだおきてる?」

「おきてるが・・・」

「今日は・・・ありがとね・・・」

「気にすんな。俺は何もして無い・・・」

「貴方は私を簡単に家に入れてくれた。普通なら拒否するところよ」

「拒否?」

「まだあって一ヶ月しか経ってないのに特に仲がいい訳でもなく、本当の恋人でもない。しかも異性同士。普通なら入れないものよ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「なんであの時、普通に入れてくれたの?なんで助けてくれたの?」

 

こいつを家に入れたのはこのまま帰らせたら絶対に事故するという結果が見えてたからだ。しかもビショビショ。あのままでいさせたら雨なのに忠告しなかった俺の中に後味の悪いものを残す。だから家に招きいれた。けど・・・本当の理由は・・・・・・。

 

 

「助けるのに理由が必要か?」

 

「え・・・・・・?」

「別にお前だからって理由じゃない。もし他の知り合いだったとしても俺は家に招き入れてるさ。今回はお前だったてだけだ。困っている奴を助けるのに理由なんて必要ない」

「隆也・・・・・・」

「早く寝ろ。俺はもう眠いんだ・・・・・・」

「あ・・・お、おやすみなさい・・・・・・」

「おやすみ・・・Zzz」

 

 

 

(隆也の言葉・・・・・・・・・)

 

 

『困っている奴を助けるのに理由なんて必要ない』

 

「まるで・・・貴方みたいね・・・。『ライダーさん』・・・・・」

 

俺と絢瀬は深い眠りについた・・・。

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

「ふああぁぁ~・・・・・・」

 

床で寝ていたお陰で少しだけ体を動かしただけであちこちからバキバキと音が鳴る。人間が出していい音じゃないよな・・・。

 

今の時間は午前7時。休みだからもう少し寝ててもいいがそうしたらダラダラとした生活になってしまう。それは俺が全力で阻止する!

 

「おい絢瀬~。朝だ・・・・・・・・・ぞ?」

 

家具で出来た領域を進んでいくと俺のいつも使っている枕を抱き枕にして寝ているあの凶暴な絢瀬がいた・・・。

 

「俺は夢でもみているのか・・・・・・」

いや完璧に目が覚めている試しに顔面を殴ったが大丈夫だ。問題ない。

 

「それにしても・・・・・・子供みたいな寝顔だな・・・」

 

特に涎をたらしながら寝ているとかそうではない。体を横にして枕を抱きしめリズム良く呼吸しながら寝ている。ふむ・・・。これは見ていて飽きないな。

 

「いやいやいやそれ所じゃない。おい絢瀬起きろ」

「ん・・・ん~?りゅう・・・や?」

「完全に寝ぼけてやがる・・・。ほら顔洗って来い」

「ん・・・・・・・・りゅう・・・や・・・?」

「なんだよ」

(嫌な予感・・・・・)

 

 

 

「えへへ・・・・・・・・・ありがと・・・・・・・・・」

 

はい?何この子?いつものクール感あふれるあの顔は何処に行った!?いまのこの顔を見てみろ!寝起きでだらしない顔になってるけどなんか可愛い!まるで無邪気な子供もみたいだ!

何に対してのありがとうかわからないが・・・・・・・・・。

 

 

「んー・・・・・・ふあぁぁ・・・おはよ・・・・・・りゅう・・・・・・や?」

 

目をこしこしして起きた絢瀬。半開きだった目が完全に開き、完全に覚醒した。

 

(あ・・・)

 

「なんで貴方がここにいるのよ!なんで勝手に入ってきてるのよ!」

「なんで俺怒られてんだ!?お前を起こしにきたんだよ!」

「まだ7時じゃない!しかもこの領域に入らないでっていったはずよね!?」

「聞いてねえよ!しかもここは俺の家だ!俺のルールに従え!」

「私の寝顔を見た罰よ!覚悟しなさい!」

「寝顔ぐらい別に・・・って!その持っているフライパン達を下ろせ!」

「あなたを殺すためならこのフライパンも本望よ!」

「勝手にフライパンたちの言葉を解釈すんな!ではサラバダ!」

「待ちなさい隆也ーーー!」

「いやああああああああああああああああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二度目の断末魔の叫び。この声によってアパートに住んでいる人達全員が起きたとか起きてないとか・・・。




はい。今回もありがとうございます!お泊り回ですね~。自分もエリーチカとお泊りしたいものです。そしてあんな事やこんな事を・・・。え?本当にするのかって?するわけ無いじゃないですか~やだな〜(ゲス顔)

そして!新しく評価してくださった

十六夜鈴谷さん!セラフィさん!oksさん!かねぎさん!

ありがとうございます!

さてさて、今回の話で気になったのではないでしょうか?エリーチカが言葉に出した『ライダーさん』とは。一体だれなのか!その話もいずれ書いていきますよ~。

次回は隆也にとって大学で更なる難関が襲ってきます。それは一体!そしてあのキャラも姿を現すぞ!


では次回でまたお会いしましょう!またな!



感想・評価。お待ちしております


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女の子を見捨てるのは男じゃない

「この頃雨が続いてるから嫌だな~」
「まったくよ。洗濯物が乾かないしゴミもさせないわ」
「絵里の服なら俺の愛の炎で乾かしてやろう!」
「うるさいから黙って粗大ゴミ」
「そ・・・・・・粗大ゴミ?」



「やばい・・・・・・非常にやばい・・・・・・」

 

大学生活が始まり4ヶ月が経とうとしていた。絢瀬との関係は現在進行形状態である。特にこれといった変化はないが度々絢瀬が見せてくる女の子の表情にたまにドキッとさせられたり・・・。俺への扱いはこれっぽちも変わらないけどな!!この前なんかバイクのフロントタイヤに頭をこすり付けられたぐらいだ。そろそろ俺の命が危うい・・・。なんとかしなければ・・・って!俺はいまそれ所じゃない!大学のⅠ期が終わろうとしているという事はあれがあると言う事だ。何を隠そう・・・・・・『期末テスト』だ!俺はありえないというくらい頭が悪いという訳じゃない。ごく普通であるのだが予想以上にテスト範囲や内容の難しさに頭を抱えている。これが大学の厳しさというのが改めて実感した瞬間である。ついでに言うと大学では俺は話しかけられたら話すが一緒に飯を食ったりや勉強を一緒になどの友達がいない。ある一人を除いてな・・・。だからテスト対策などの勉強を一緒にやる奴が居ない!このままじゃ俺は完璧に留年してしまう!どうしたらいいのかと考えた中で出てきた解決策は・・・・・・。

 

 

「テスト勉強をしているがあまりにも難しい。このままでは留年しそうなんで私に勉強を教えて欲しいと?」

「その通りでございます・・・絢瀬殿・・・」

 

椅子に座ってる絢瀬の目の前で土下座してる俺・・・・・・・。

 

解決策とはこれだ。『絢瀬に勉強を教えてもらう』だ!俺だってこんな事はしたくなかった!けど頼れるのはこいつだけだ!絢瀬は俺らの学部では頭一つ飛び出してるほど頭がいい。テストの順位ではダントツで1位だろう。学部で気軽に話せて頼れるのはこいつしかいないと俺は考え絢瀬を頼る事にした。

 

 

「貴方それでも私の恋人なの?私の恋人なんだったらそれなりの学力をもってなさいよ」

「色々と言い返したいが今は素直に黙っておこう・・・。頭が悪いのは俺だ」

「でも良かったわね。私と一緒の講義とってて」

「まさか選んだ講義全部お前と当たってた事に俺は度肝を抜かれたがな・・・・・・」

「まあ教えるのは別に構わないわよ」

「マジか!」

「えぇ。それには条件があるわ」

「それは?」

「私の靴を舐めなさい」

 

 

 

ん?

 

 

「はあ!?」

「私の靴を舐めなさい。そして永遠に私に服従しなさい」

「お前の下僕になるなんて死んでもなりたくない!」

「なら一回死んでみる?」

「無駄にリアルすぎるからやめてくれ・・・」

「ま、それは冗談として・・・。別に教えるのは構わないわよ。私も希と勉強する気だったし今更一人増えようが気にしないわよ」

「お前が始めて女神に見えたよ」

「それなりのお金は貰うけど」

「前言撤回だ。やっぱり魔女だ・・・」

「あ、後もう一人くるけどいいかしら?」

「別にいいけど誰?」

「私の同級生よ。アイドルをやってるの」

「アイドル兼大学生!?」

「あの子もまあまあ勉強が出来なくてね・・・。毎回希が教えてるのよ」

「あー・・・。なるほどね・・・」

「じゃ行くわよ。場所は貴方の家ね」

「ええ!?また来るのかよ!」

「何か問題でも?」

「まるでヤンキーのたまり場だ・・・・・・」

「つべこべ言わずに行くわよ」

「あいあいさー」

 

俺は一旦家に戻り絢瀬は東條を連れてくるらしく神田明神にバイクで向かった。スタイル抜群の二人がタンデム・・・。いかんいかん妄想はやめよう・・・。

 

家で待つ事数分。俺の家に東條がやってきた。

 

「お邪魔しま~す」

「おう。今日はよろしくな」

「此処が隆也君のアパートか。意外と綺麗やね」

「意外は余計だ。これでも俺は綺麗好きなんだよ」

「ま、汚いところだと勉強ははかどらないしね」

「初めて絢瀬と意見があった・・・」

「これが普通なのよ」

 

いやー・・・。あれだな。素晴らしい光景だな。大学生とは思えないスタイルを持っている東條と絢瀬が家にやってくると色々と凄い。いかん妄想してしまう・・・。しかも元スクールアイドルのトップに立った人物である。一般学生である俺の家にこんな凄い人達が家にいるって今でも信じられない・・・。ま、絢瀬は一晩家に泊まってたけどよ。

 

「隆也。希に手を出したらこの世から消すわよ?」

「俺はいつから暗殺者に狙われるようなお尋ね者になったんだろう・・・」

「隆也君はそんな事せーへんよエリチ。へタレそうやし・・・」

「へタレ!?」

「そうよね。私が家に泊まったときも何もしてこなかったし」

「俺はそんな男じゃない!それくらいの感情ぐらいコントロールできる!」

「エリチから聞いたけどこの家で二人とまってんやんな~?エリチも大胆やね」

「どこがよ!何も大胆な事してないわよ!」

「男の人の家に躊躇なしに入り込むのも大胆や思うけどな~。もう二人付き合えばええのに」

「「絶対しない!」」

 

(相性抜群やな・・・)

 

東條が来るとなんというか色々と疲れる・・・。色々とからかわれるしいじられる・・・。東條・・・恐ろしい子。

 

「処でそのアイドル兼大学生の奴は?」

「そろそろ来るわよ。この家の住所教えたから」

「勝手に人の住所を教えんな!プライベートの侵害だぞ!」

「信用できる子だからいいのよ」

「ポリシー聞いてねえよ!」

 

ピンポーン

 

噂をすればなんとやらだな。

 

 

「はいはーい」

扉を開けると、少し小柄で髪の毛をツインテールにしている女の子が・・・。

 

「あんたが横山隆也?」

「そうだけど・・・もしかしてあんたがアイドル兼大学生の?」

「そうだけど」

「あ、にこ!久しぶりね!」

「にこっち~!久しぶり~」

「あんたたちも久しぶりね。元気そうでよかったわ」

 

え?なにこれ感動の再開?絢瀬と東條がにこという少女と一緒に抱きついてる。

 

「もしかしてμ'sのメンバーか?」

「そうやで。自称宇宙No1アイドルやで」

「じ、自称・・・」

「ちょっと希!自称じゃないわよ!にこは本当の宇宙No1アイドルなのよ!」

「わかってるよ。変わってなくてよかった」

「変わるわけないでしょまったく・・・・・・」

 

どうやら本当の友達らしいな。実は自分をアイドルっていってるナルシストかと・・・・・・。ん?にこ?

 

「あれ?にこって名前どこかで聞いたような・・・・・・」

「そういえば自己紹介してなかったわね。にこの名前は・・・・・・」

 

すると俺に背中を向け・・・。

 

 

『にっこにっこにー♪あなたのハートににこにこにー♪笑顔届ける矢澤にこにこー♪にこにーって覚えてラブにこー♪』

 

 

 

「へ?」

 

いきなりの少女の行動に俺の頭の思考回路が一瞬バグった。え?これはあれ?アイドルがやる自己紹介なの?

 

「どう?にこにメロメロでしょ?」

「いやメロメロにはなってないが・・・。まあよろしくな矢澤にこにこさん」

「だれが矢澤にこにこよ!にこの名前は矢澤にこ!覚えときなさい!!」

「言い方から聞くとそう聞こえるぞ・・・。まあ名前は覚えた。俺は横山隆也だ」

「隆也ね。覚えてあげるわ感謝しなさい!」

「こいつもこいつで上から目線だな・・・。誰かさんとそっくりだ」

誰かとは言ってない。

 

「で絢瀬。こいつが勉強できないやつか?」

「まあ大学でどうなったか知らないけど一応恒例行事で希に見てもらうのよ」

「恒例行事って・・・・・・お前も大変だな東條・・・」

「慣れてるから大丈夫!にこっちの相手はウチと決まってるし」

「確かに・・・こいつを相手にするのは骨だしな・・・」

「こいつって失礼ねあんた!」

「さあ。勉強始めるわよ!隆也は私が。にこは希お願いね」

「了解!」

 

 

それからすぐに勉強会は行われた。俺は絢瀬に問題の部分で簡単な事でも難しい事でも質問し、絢瀬は分かりやすく教えてくれた。絢瀬の教え方は独特で、けど決して難しい訳でもない。俺の質問するレベルに合わせて教え方を変えてくる。こりゃ頭に簡単に入るわ・・・。ある程度の質問を終えた後、絢瀬にこの通りに勉強したら覚えやすいという勉強法も教わった。もうお前教師になっちまいなよ。

 

 

「ふぅ・・・。これくらいかな・・・ん?」

 

横に視線を向けると。

 

「さあにこっち。この問題の答えは?」

「え・・・えっと・・・・・・」

 

うわぉ・・・。凄い光景だ。教科書を持った東條の前でノートに視線を送ったまま動かない矢澤・・・。汗が尋常じゃないぞ?

 

「分かるやんなこれくらい?」

「わ。分かるわよこれくらい!」

「じゃ答えて?♪」

「えっと・・・・・・にっこにっこにー♪」

 

勉強中に何をやっているんだお前は・・・。

 

「にこっち?それふざけてる?」

「ふざけて無いわ!これは頭の回転を早くするおまじないなのよ!」

 

そんなおまじない聞いた事ねえよ・・・。

 

「ちゃんと答えないとわしわしすんで~」

「いやああああ!」

 

わしわし?

 

「絢瀬わしわしって?」

「見てたら分かるわ」

 

どゆこと?

 

「じゃこの問題は?」

「えっと・・・わからないにこ!」

「えい!」

「きゃーーー!?」

 

な、なんと!いきなり東條が矢澤の成長しかけの胸を後ろから鷲掴みにした!しかもそこから矢澤の胸を両手の指を使ってわしわしと揉みしだいている!これはネット上で人気のある『百合』というやつか!!

 

パコンッ!

 

「いてぇ!!」

「貴方いま変態なこと考えたでしょ・・・」

「考えてねえよ!」

 

その持っている木刀を下ろそうか絢瀬さん?俺の頭が壊れる。

 

「はい。一旦終了やでにこっち」

「ふぇ~・・・。終わった~・・・」

 

深いため息をつき机に突っ伏す矢澤。俺はここで気付いた。

 

「宇宙No1アイドルじゃなくて宇宙No1ポンコツアイドルだろお前」

「誰が宇宙No1ポンコツアイドルよぉぉおお!」

 

そして俺たちは夜遅くまで勉強を続けた。この後矢澤は東條にめちゃくちゃわしわしされてた。

 

 

「「終わったぁぁああ・・・・・・」」

 

俺と矢澤は同時に畳の上に同時に倒れ込んだ。アイドルってこんなのでいいのか?

 

「もう夜も遅いしご飯でも作りましょうか」

「さんせーい!ウチエリチと一緒にご飯作るー!」

「はいはい。隆也とにこは留守番してて。食材買ってくるから。隆也財布」

「なんで!?」

「貴方の家で食べるんだから貴方の家の食材じゃないとダメでしょ」

「お前が出すという選択肢は?」

「無いわね」

「オーマイゴット・・・・・・」

 

素直に財布を渡した。

 

「じゃ行ってくるからちゃんと留守番しててな」

「ここ俺の家なんすけど・・・」

 

バタンッ

 

「さてと、帰ってくるまで俺たち暇だな」

「確かに暇ね・・・。なにしようかしら」

 

俺の家にゲームは特に無い。在るとしたら学校の課題をするようのパソコンぐらいである。

 

「あんた。絵里の恋人役をしてるって本当?」

「え?そうだけど・・・・・・」

「ふーん・・・。ま、うまくいってそうで良かったわよ。また一人になるんじゃないかって思って心配してたのよ・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 

また・・・・・・一人?

 

 

「絵里は元々他人にそこまで興味の無いクールな子で、μ'sに入る前は希と生徒会にいたのよ。その時期に私達の母校である音ノ木坂学院は廃校を決定していた時だったの」

「廃校・・・」

「絵里は生徒会で学校を存続させるために必死だった。色々考えて案を出して理事長や生徒会にみんなに見せたけどどれもダメだった。そこで廃校を阻止しようとしたのがμ'sなのよ」

「学校を存続させるためのスクールアイドル?」

「そうよ。私も途中で参加したんだけどμ'sの活躍で入学希望者が増えていったの。けど絵里も頑張ってた。なのに生徒会の皆や生徒誰も見てくれなかった。絵里が間違っていたわけじゃない。間違ってはいなかったけどその当時のμ'sの力が強かった・・・。その存在が大きかった。生徒会長である絵里の力は届かなかった。けど諦めなかった。一人になってもやり続けた。それなら自分もμ'sと一緒に頑張れば存続を可能にできるかもしれないと考えてた。けで当時にそれは出来なかった・・・・・・」

「な、なんでだよ。その時に一緒にやれば・・・・・・」

「絵里は小さな頃バレリーナをやっててね。ダンスが上手かったのよ。その時のμ'sよりも遥かに。その実力を持っている絵里にμ'sはダンスを教えてほしいとお願いしてその日から練習は行われたわ。皆誰も出された課題をクリアできなくて絵里はキツイ言葉を言ってたわ。いや・・・それよりも前のμ's設立の時もキツイ言葉をかけていた・・・。最初は遊び程度にしか見えなかったのよ。他の学校ではスクールアイドルのお陰で入学希望者が増えてたのが事実だった。ならスクールアイドルを始めたらこの学校も救われるかもと考えた。けど絵里はバレリーナで一度挫折した事があるから知っている。『現実はそう甘くは無い』」

「・・・・・・・・・・・・」

「そんな簡単に学校が存続させれたら苦労はしない。簡単じゃないから当時は絵里たちも苦労してたのよ・・・。認めなかった。μ'sの事も・・・・・・。自分たちも頑張っているのになんでμ'sはあんなにも凄いのか。その時ダンスの練習の後にメンバーからμ'sに入ってとお願いされたのよ・・・」

「それで入ったのか?」

「いいえ・・・。絵里は断ったのよ」

「な、なんでだよ!?」

「μ'sも否定してメンバー達の素人さも否定してきた。そんな事言ってたのに今更入る事なんか出来ない・・・・てね。責任を感じていたし、孤独感も感じていた。絵里は完全なる一人になったのよ・・・。誰も認めてくれない・・・。自分から自分を認めることも許さない。放った言葉はもう返ってはこないのよ」

「・・・・・・・・」

「けど私達は諦めなかった。μ'sには絵里が必要だったのよ。学校を救うには絵里の入ったμ'sが必要だったのよ。それで絵里を取り巻いている孤独から救い出してμ'sに入ったって訳。」

「そんな過去が・・・・・・」

「今じゃ思い出話みたいな感じなんだけどね。μ'sも解散したし学校も卒業してバラバラになったってわけよ。私はプロのアイドルもなれたし、希もいい友達ができたって言うし。けど絵里が心配だったのよ。またあの時のクールな感じになちゃってるんじゃないかってね。けどあんたが側にいるんだったら安心できる」

「俺・・・いつも罵倒されたりこき使わされてるだけなんだけど・・・・・・」

「それでも絵里から離れないでしょ?友達も必要かもしれないけどそれより絵里に必要なのは自分を見てくれる『理解者』なのよ」

「理解者?」

「生徒会当時は理解してくれるのが希しかいなくて大学では希も居ないから理解者は現れないんじゃないかって思ってたけどあんたが側にいて一安心したのよ」

「どうして?」

「自分のことをちゃんと理解してくれる人が側にいてくれてるからよ。今絵里の側に必要なのは元μ'sもだけどあの子を理解している隆也・・・。あんたが必要なのよ!」

「!」

「隆也!約束しなさい!」

「な、なにを!?」

「絵里を一人にしないって約束して!あの子は人一倍孤独をしっているから一人になったらどうなるか分からない。だからあんたがずっと側にいてあげなさい!」

「いや、俺恋人役なだけなんだけど・・・」

「そんなの関係ないわよ!あんたがいるから今の絵里がいる!あんたは恋人役だったとしてもたった一人の女の子を守ることもできないの!?」

「そ、それは・・・・・・」

「はっきりしなさい!」

 

にこから言われた言葉を聞き、拳を握った。

 

「やってやるよ!!東條からも矢澤からも言われてるがそんな事関係なしに!俺は!絢瀬の友達からお願いされたことを守らないような男じゃねえ!もうここまで来たなら後には退かない!あいつを守るって約束する!」

「言ったわね!男に二言はないわよ!」

「おう!」

 

俺と矢澤は握手を交わした。この握手には絢瀬の側から離れない覚悟と絢瀬の友達である東條と矢澤のお願いを必ず達成するという決意がこもっている握手である。

 

「裏切ったら針千本よ」

「そんな小学生のような約束・・・・・」

「誰が小学生よ!」

「お前だよポンコツアイドル!」

「むきぃぃぃい!」

 

 

「何を喧嘩してるのよ二人とも」

「食材買ってきたからご飯作るで~」

「ふん!私も料理するわよ!」

「隆也は大人しく正座してなさい」

「は、はい・・・・・・」

 

 

 

 

 

元は魔よけになるためとして恋人役いなったのにいつの間にかここまで大きな存在になるとは想わなかった。東條から頼まれた絢瀬を仲良くしてという願いと矢澤からの願いである絢瀬の側を離れない、守るという約束。その感情が入った存在である絢瀬絵里の恋人役。もう俺だけの問題じゃない。二人の想いも詰まった存在になったのだ。ここまで来たら腹を決めなきゃいけない。

 

 

 

アニメの感じで言うと。

 

 

 

 

「これが運命ならそれに従うぜ」

 

 

その後、絢瀬、東條、矢澤と一緒に食事をしてその日はお開きになった。




どうも作者です。隆也はのんたんやにこにーの願いを叶えることはできるのだろうか!みたいな感じになりましたね。いや元々はギャグコメディみたいに書こうと想っていたんですけど気付いたらこんな事になっていました。(後悔はしていない)
絵里の過去を知っていく事につれ隆也の絵里を想う気持ちがどんどん変わっていっています。いつになったら恋心になるのかな~絵里は(そっちかよ!)

そして新しく評価してくださった。

侑聖さん!EATERさん!Aromaさん!クリクリんさん!


ありがとうございます!


次回ですが夏休みに突入します!隆也と絵里にはどんな事をさせようかな~。ぐへへへへへ・・・。おっと涎が・・・フキフキ


ではまた次回お会いしましょう!またな!


感想・評価お待ちしております!


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風邪は馬鹿以外が引くのだ

「バイクバイクバイクバイクバイク……」
「まずいわね。作者がバイク症候群にかかっちゃったわ」
「俺にはバイクが必要なんだー!バイクほしいよー!」
「少し静かにしてくれないかしら。毎回ここで話してあげてる私の身にもなってほしいわ」
「そんなこと言いながら構ってくれるエリーチカ大好きだぞー!」
「いますぐ面に出なさい。バイクの車輪で頭踏んであげるから」
「われわれの業界ではご褒美にもなりませんけど!?」


今回の出来事は一つのメールから始まった。

 

『熱が出たから学校休むわ。講義で出たプリント私の分ももらっておいて』

 

 

あの絢瀬が熱をだしただと…。あの凶暴でいつも俺の事をい上から目線で罵ってくるあいつが熱?あいつも人間だったんだな…。俺失礼なこと言ってるな…。別にプリントとかを貰うのはいいけどお前いつ来るんだよ。俺がもってたらいつか燃えカスになるぞ?(燃えるゴミになるという意味)

 

「めんどくさいけどあいつの見舞いにでもいってやるか。そして熱を出したな馬鹿め!と罵ってやる!いつもの仕返しだ!!」

 

さあ、悪魔の時間の始まりだ………。

 

と、気合を入れていたのはいいが・・・・。

 

 

「あ、俺あいつの家知らねえ」

 

計画は一瞬にして消え去った。あいつが俺の家の場所を知ってたとしても俺はあいつの家を知らない。致命的ミスだこれは…。これではあいつのお見舞い(罵しり)にいけないじゃあないか・・。

 

「ま、それは置いといて講義を受けるか」

 

 

 

 

案の定講義では数枚ほどプリントを貰っておいた。俺のファイルがパンパンだ…。パンダじゃないぞ?よし、昼飯も喰ったしなにかお見舞いの品でも買ってこようか。

 

 

 

*学校の近くのスーパーマーケット*

 

熱の時はあっさりした物がいいはずということでリンゴを数個とプリンなどを購入。あと昔お婆ちゃんに教えてもらった飲み物を作るために黒砂糖も購入。なにやら熱の時に効果抜群だとかなんとか…。あとは飲み物としてポカリやゼリー飲料。あとは冷えピタハパイセン。

 

「合計で2480円です」

 

痛い出費だぜ畜生…。

 

前に聞いた時は学校から近くに家があると聞いたのでバイクでそこら走ってたらすぐに見つかるだろうと考え低速でそこらを走り回っていた…が、一向に見つかる気配はなし。

さてどうしようかと思ったとき、ある人物が目に入ってきた。

 

「あれ?絢瀬?」

 

バイクでゆっくり移動していると前に歩道を歩いている人物を確認。しかも金髪。手には買い物袋。なんだあいつ熱とか言いながら学校サボってただけかよ。心配して損したぜ。

 

「おーい絢瀬」

「はい?」

 

バイクを邪魔にならないところに止め声をかける。そしてと『絢瀬と思っていた人物』が振り返った。

 

「あ、あれ?なんか違う………」

 

目の前にいる少女はたしかに金髪だ。いや、でも少し髪の色がちがう。しかも絢瀬じゃなった。少し背丈が低いし顔がまだ少し幼い感じ。しかもだ!胸が小さい!あいつのはもう少し大きいはずだ!俺はとんでもないことをしてしまった。

 

It's KA★N★CHI★GA★I!!

 

「あの……どなたですか?」

「あ!いや…その…えっと………」

 

いかん!落ち着け俺!ただ普通に勘違いでしたと言えばいいだけだろ!だが口が動かない!どうみても年下。これは周りから見たら犯罪臭が超漂っている!俺はこの年で犯罪者になりたくない!

 

 

「はっ!もしかして……ストーカーってやつですか!?」

「あ!いや全然違うぞ!俺はストーカーじゃない!」

「犯人は全員そう言うんですよ!ど、どうしうよう…警察に……あ、携帯電話家に忘れてきちゃったんだ!ほ、ほかの人に助けを………」

 

まずーい!非常にまずい!ガタガタと震えだし涙目になってきている少女。これは非常にまずい!このままじゃ俺は刑務所行きになってしまう!

 

「あ、そうだ!雪穂が言ってた!ここは大きな声で助けを呼べばいいんだ!スゥーーーーー……」

 

わーーー!大きく息を吸うんじゃない!俺に危機が迫ってきている!このままじゃ俺は豚小屋行きになる!あれ?刑務所じゃなかったっけ?ってそれどころじゃない!どどどどどうしたら……そうだ!

 

 

「わー!待ってくれ!俺は絢瀬絵里の知り合いだ!熱を出したって聞いたから見舞いに行こうとしてただけなんだ!」

「………………え?」

 

そう……。俺は最初にこの子へ絢瀬と呼んでこの子はそれに反応した。ということは絢瀬関係の人物のはずだ。

 

 

 

 

「お姉ちゃんの知り合いなんですか?」

「お………お姉ちゃん?」

 

 

 

 

 

「貴方がお姉ちゃんの言っていた恋人さんだったんですね♪」

「あはは・・・・・・ソウダネ・・・・・・」

 

何とか誤解が解けてなによりだよお譲ちゃん・・・・・・。

 

この子の名前は絢瀬亜里沙。見ての通り絢瀬絵里の三つ離れた妹である。なんで歩いてたか聞くと絢瀬の看病のための買い物をしていたらしい。学校はあったが部活動を途中で抜けてきて、この時を使って看病をしようとの事。いい妹さんだ。姉があんなんだけど・・・・・・。

 

「でも隆也さん優しいですよね」

「え?」

「頼まれても無いのにお姉ちゃんの事を心配してくれてるなんて」

「それが普通だと思うんだが・・・・・」

 

ま、あいつを罵る為なんだけど・・・・・・。

 

「あと隆也さん!」

「ん?」

「私の事は亜里沙と呼んでください。お姉ちゃんも絢瀬、私も絢瀬だと混乱しそうなんで」

「まあ確かに・・・。ま、とにかくよろしくな亜里沙」

「はい!」

 

いい子や・・・。この子とってもいい子や。もう天使と言っても良いくらいだ。神は俺の目の前に天使を降臨してくださった・・・。感謝します。

 

 

「ここが私達の家です!」

「ここ?」

 

見ると少し家賃の高そうなアパート。よく生活できてるな・・・。そしてその家が絢瀬姉妹の家だと言うのがすぐ分かった。駐輪場に絢瀬のYBRが止まっていたのですぐに確信がもてた。

 

 

「お姉ちゃん!ただいま~」

「お邪魔します・・・・・・」

 

階段を登りある一室に足を踏み入れる。家の中は本当にごく普通。必要最低限の家具が複数。居間には少し大きめの机と椅子。扉が複数ありその一つの扉を開けるとベットに横になっていた絢瀬がいた。

 

「亜里沙・・・おかえ・・・・・・。なんで貴方がいるのかしら?」

「見舞いとプリントを届けに来たんだ。感謝しろ」

「そう・・・・・・ありがとう・・・・・・」

 

やべぇぇぇえええ!これ罵るとかの状況じゃない!顔が真っ赤でしんどそうなのが目に見えてる!汗も酷いし目が虚ろだ。俺はこんな状況なのになんと言う事を考えてこの家に来たんだー!最低だー!

 

 

「お姉ちゃん・・・熱どう?」

「まだ下がらないわね・・・・・・。大丈夫よ。明日には治ってるから・・・・・・」

「馬鹿いってねえで寝ろ。そんなのですぐに治るわけ無いだろ」

「気合で治すわよ・・・・・・」

「無理するな。いまはゆっくり休むことだけ考えろ」

「貴方に指図されるとはね・・・・・・。不覚だわ・・・・・・」

「熱でもその毒舌は健在でなによりだ。亜里沙、買ってきたものどうしたらいい?」

「あ!それなら貰います!冷蔵庫に入れときますね」

 

亜里沙は自分の買い物と俺の買い物袋を持ちパタパタと居間へ小走りしていった。

 

「なんで貴方が亜里沙って呼び捨てなのかしらね・・・・・・」

「お前のこと絢瀬って読んでるのに妹も絢瀬って読んでたら勘違いするだろうが。だからあの子は名前呼びなんだよ」

「ふん・・・・・・。私には名前で呼んでくれないくせに・・・・・・」ボソッ

「なんか言ったか?」

「なんでもないわよ。燃やすわよ」

「燃やす!?」

「ってうかいつまで居る気なの?」

「お前に俺特製のお粥を食わすまで」

「そんなの要らないわよ。早く帰って」

「へーへーそうですか。じゃ帰らせていただくわ」

 

立ち上がり玄関まで行こうとすると。

 

「あー!隆也さん!帰るんですか!?」

「ああ。あいつが帰れってよ」

「もう少し居てくれないですか?私今から出かけなきゃいけないんで」

「出かける?」

「部活の方で明日から始まる合宿の説明で行かなきゃ行けないんです・・・・・・」

「そしたらあいつの看病役がいなくなるな」

「ちょっと亜里沙!何を勝手な事を!」

「お姉ちゃん今一人で何も出来ないでしょ?なら隆也さんに頼めばいいじゃん」

「嫌よこんな芋虫になんか・・・」

「芋虫!?」

「お姉ちゃんには早く治って欲しいの!異論は認めないよ!」

「う・・・・・・分かったわよ・・・・・・ゴホッ!ゴホッ!」

「ほら言わんこっちゃ無い」

「と言う事で隆也さんお姉ちゃんを頼みます!」

「了解した天使」

「天使?」

「いいから行って来い。このポンコツ姉は任せとけ」

「誰がポンコツ姉よ・・・」

「分かりました!では行って来ます!」

 

亜里沙は学校のカバンを持ち家を飛び出していった。

けどすぐに戻ってきた。

 

 

「お姉ちゃん!私今日雪穂の家泊まるから!」

「え!?」

「行ってきまーす!」

 

 

「あ・・・・・・亜里沙・・・・・・?」

「あらら・・・。ま、今は妹の事心配せずに寝ろよ」

「分かってるわよ。けど・・・今はお腹が空いたわ」

「まあ見た感じ朝飯も昼飯も食べてなさそうだしな」

「悪いけど・・・・・・何か作ってくれないかしら?」

「あいよ。卵粥作ってやるよ。台所借りるぞ」

「えぇ・・・・・・」

 

ふむ。どうやら結構疲れが溜まっていたようだな・・・。咳が酷いし体がだるい。夏風邪にやられたかな?今は特に運動もしてないから免疫力が少なくなっているかもしれない・・・・・。

 

「食べやすいようにドロドロにしてやらないとな」

 

 

 

 

 

 

 

*それから数十分後*

 

 

 

「出来たぞ~。特性卵粥だ」

「あ・・・ありがとう・・・・・・」

「あー動くな動くな。起こしてやるから」

 

絢瀬の背中に腕を通し起き上がらせ、肩に毛布を被せた。

 

「貴方介護士向いてるんじゃない?」

「どこがだよ。ほらお粥食え。暑いから気をつけろよ」

「あちっ・・・。ありがとう・・・・・・」

 

絢瀬は震える手でスプーンを持ちお粥を掬い口に運ぶが、手に力が入らないのかスプーンを毛布の上に落としてしまった。

 

「あっ・・・・・・。ごめんなさい・・・・・・」

「あらら・・・。気にするな」

 

ティッシュで落ちたお粥を拭き取りゴミ箱に捨て、スプーンを新しいのに交換しお粥を掬って絢瀬の口元に持っていく。

 

 

「なんのつもり?」

「ほら口をあけろよ。食べさせるしかないからな・・・・・・」

「そんなの要らないわよ。一人で食べられる・・・・・・」

「それで落としたのは誰だ?」

「うぅ・・・・・・・・・」

「別にいじわるの為にやってるんじゃない。風邪や熱は体の調子を戻すのも大切だが何かを食べないと治るものも治らないぞ」

「わ・・・・・・分かったわよ・・・・・・・・」

「素直でよろしい・・・・・・。ほら、あーん・・・・・・」

「あ、あーん・・・・・・・・・」

 

口元にスプーンを持っていき絢瀬の薄い唇が印象的な口の中にお粥を食べさせた。

 

「んっ・・・・・・。おいしい・・・・・・・・・」

「そりゃ良かった。ほらまだ食べるだろ?」

「え・・・えぇ・・・。あーん・・・・・・もぐっ」

 

今考えたら俺恥ずかしい事してるな。いくらこいつが病人だとしても別にこんな事までしなくてよかったのではないだろうか?だけど俺の中に放っておけないと言っている自分がいる・・。なぜなのだろうか・・・・・・。こいつには色々とされてきたのに・・・。

 

 

「ご馳走様・・・・・・。おいしかったわ・・・・・・」

「お粗末様。じゃ次は水分補給だ。見たとき凄い汗だったからな」

「えぇ・・・。でも体が汗でベトベトしてて気持ち悪い・・・・・」

「まあアレだけ汗かいてたらな。ちょっと待ってろ。お湯とタオル持ってくるから」

 

ベットの近くから立ち上がった俺はまず風呂場に向かい桶を入手し、手探りで丁度いいタオルを発見。途中で絢瀬の下着を見つけたのは内緒・・・・・。

 

 

「ほら、これで汗拭いとけ」

「うん・・・・・・」

「じゃ俺外でとくから」

 

ガチャ・・・バタン

 

「ふー・・・。後は冷えピタの準備りんごと、俺用の晩御飯の準備だな」

 

今回俺の晩飯は卵掛けご飯である!お粥の残りを使ってるので。

 

「隆也ー・・・ちょっと来てくれない?」

「はい?」

 

ドアを開けて中に入ると毛布を体に巻きつけてまるで春巻きみたいな形になっている絢瀬さんがいた。

 

「なにしてんだお前」

「その・・・体を拭いてたのはいいんだけど背中に手が届かなくて・・・・・・」

「ほうほう。それで?」

 

 

 

 

 

「その・・・・・・背中を拭いてくれないかしら・・・・・・?」

 

 

 

 

 

 

「はい!?」

 

ナニイッテンノコイツ?え?背中を拭け!?

 

 

「し、仕方ないじゃない!私の手は背中には届かないんだから!」

「人間みんな背中全部に手は届かねえよ・・・・・・」

「だから・・・その・・・拭いてくれないかしら・・・・・・?」

「お・・・おう」

 

 

 

絢瀬は毛布を取り払い俺にそのスラリとした背中を見せてきた。ゴクリと唾を飲み込み絢瀬の背中の前で膝を付きお湯につけたタオルを掴む。

 

「優しくしなさいよ・・・?」

「言い方が生々しいんだよ・・・いくぞ・・・・・・」

「えぇ・・・・・・」

 

 

タオルを拭きやすい状態に畳それと手のひらに乗せ、絢瀬の背中に触れた。

 

「んっ・・・」

 

タオルで絢瀬の綺麗な背中にある汗を満遍なく綺麗に拭き取る。

 

「んぁ・・・・・・うぅ・・・・・・」

「変な声を出すんじゃない!」

「仕方ないじゃない!こそばゆいんだから・・・・・・んん・・・」

 

落ちつけ俺!こいつは病人!こいつは病人だ!俺の学校の知り合いで恋人役を頼まれてるだけで!今回はごく普通の看病をしに来ただけだ!俺は決してそのような行為を求めて来た訳じゃない!耐えろ俺の理性!絶えろ俺の理性!絶えちゃだめじゃん。

 

「お・・・終わったぞ・・・・・・」

「あ・・・ありがとう・・・・・・着替えるから外にいて・・・・・」

「了解」

 

よーし!良く耐えたぞ俺の理性!今回は二重丸をもらえるほど良くやったぞ!120点だ!普通の男達ならあの時どんな状況になるか予想できるが俺は決してそんな過ちは起こさない!だって美少女なのにあんな性格なんだもん!←これが本当の耐えた理由。もし手を出したらどのような目に遭うか分からないから。

 

 

「いいわよー・・・」

「あいさー」

 

入るとさっきとは違うパジャマを身に着けている絢瀬。みなさん?これは決して羨ましいと思うシーンじゃないですからね!!

 

「じゃ今はとにかく寝ろ。寝て体を休めるんだ」

「そうね・・・。貴方が来たお陰で熱が上がってそうだし」

「いつにもまして毒舌だな貴様・・・」

「亜里沙が居たらどんだけ楽か・・・」

「俺で悪かったな。これでも心配してたんだぞ」

「隆也が心配なんて珍しい」

「俺だって心配したりする」

「どうして・・・・・・?」

「え?」

「なんで心配してくれたの?」

 

 

 

 

どうして?そんなの決まってる。

 

 

 

「お前は俺の彼女なんだろ?彼女を心配しない彼氏なんているのか?」

 

 

 

間違っては無い。うん・・・。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「あれ?絢瀬さん?」

「な、なに!?///」

「何で黙ってるの?そしてなんでそんなに顔真っ赤なの?」

「う、うるさいわね!貴方には関係ないわよ!///」

「なんで怒るんだよ。イライラには牛乳でカルシウム摂取だぜ」

「なんで持ってるのよ・・・」

「これは俺用だ。病人である貴様にはこれだ!」

 

スポーツマンには必須!ポーカーリー!

 

「ありがとう・・・。でもまた起きないと飲めないわね」

「大丈夫だ。良く見てみろ」

「え?」

 

ペットボトルを良く見ると中にストローが入っていた。

 

「その方が飲みやすいだろ?」

「・・・・・・色々気を使わせて悪いわね・・・」

「お前今日で何回謝るんだよ・・・。気にしないでいいから早く寝ろ」

「さっきまで寝てたから眠れないのよ・・・。何かお話しを聞かせなさい」

「なぜ上から・・・・・・。そしてなんでお話し?」

「貴方の話ならすぐに眠くなれそうだからよ。つまらなすぎて」

「よーし言ったな。俺の今までの武勇伝を聞かせてやる」

「しっかりと聞いてあげるわ。その武勇伝を」

「ま・・・特に無いんだが・・・・・・」

「・・・・・・・・・かっこ悪い・・・・・」

「やかましい!」

 

 

 

その後、俺の話せることを話した。なんであの学校に行ったのか、なんでバイクに興味をもったのかなど。俺の過去に関係する話をした。話しているとき絢瀬は特に興味がなさそうな表情は出さず色々と質問をしてきてくれた。今思ったら・・・こんな話学校では誰にも言って無いな・・・・・・。俺はこの時初めて思った。絢瀬と話すことがこんなにも楽しい事が・・・。

 

「でだ・・・。その時俺が・・・・・・・・・・・・・・ってあれ?」

「すぅ・・・・・・すぅ・・・・・」

「寝てやがる・・。俺の声が子守唄になったか?まあいいや。冷えピタこうかーん」

 

換えの冷えピタと交換。

 

「さてと。飯でも作る・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」

 

立ち上がろうとするとなにやら重みを感じたので視線を移してみると、俺の服の裾を絢瀬が見事にガッチリと掴んでいた。

 

 

「あ・・・・・・絢瀬さん?」

「・・・・・・ゃ・・・」

「え?」

 

声が聞こえたけど聞こえなかったので耳を近づける。

 

 

 

 

 

 

「いや・・・・・・行かないで・・・・・・側にいて・・・・・・」

 

「絢瀬・・・・・・?」

 

 

特に詳しいわけじゃないが聞いたことがある。どうやら風邪や熱が出ている時は人が恋しくなるらしい。その原因は免疫力の回復が関係するらしい。人は誰かと触れ合ったり、笑いあったりすると風邪などの免疫力が高まる。逆に言うと風邪の時は身体的疲れ、精神的疲労、ストレスなどで免疫力が低くなるらしい。つまり、人間は風邪をひいたとき「人恋しく」なることによって、弱まった免疫力を回復させようとしているらしい。

 

 

「分かったよ。俺はここに居るから。一人じゃないぞ」

 

 

矢澤に言われたことを思い出す。

 

 

 

『絵里を一人にしないって約束して!』

 

 

「ここで俺が帰ったら約束を破る事になるしな・・・。だから泣くなよ」

 

絢瀬は寝ているため無意識のはずだが目元にうっすらと涙を浮かべていた。それを綺麗に拭って絢瀬の頭を優しく撫でた。

 

 

「お前は一人じゃないぞ・・・」

「んん・・・・・・んぅ・・・・・・えへへ・・・・・・」

 

 

 

 

寝ていながらも嬉しいのか笑みを浮かべる絢瀬。

 

 

「おやすみ。絢瀬」

 

 

 

 

 

俺はその日、裾の次に腕をガッチリホールドされてたので身動きが取れませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

絢瀬視点。

 

 

「ん・・・・・・・・・ふぁぁ~・・・・・・」

 

私は日の光で目が覚めた。熱を計ってみると昨日とは断然に熱が退いていた。しかも体が全然だるくない。どうやら昨日のお粥が効いたみたいね。思い出したら恥ずかしいんだけど・・・・・・///

 

 

「あ・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ウトウト

 

ベットのすぐ横で私の手を握って座ったまま寝ている隆也がいた。服装から見ると帰らずに私の側に居てくれていたらしい。

 

「大きな借りができたわね・・・隆也」

「んぁ・・・・・・・・・」

 

 

 

そして優しく隆也の頭を撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう・・・隆也」

 

 

 

 

 

 

その後。私は完全に風邪は完治したが今度は隆也が私の風邪が移って寝込む事になった。




どうもお久しぶりです。いやー自分は絵里が風邪だったらすぐに看病にしにいきますね。そしてさりげなく絵里のポイント稼ぎ!絵里は誰にもやらーん!意外と俺アホなのかも・・・・・・。

そして新しく評価してくださった!

インターセプトさん!TouAさん!V3Pさん!このよさん!ありがとうございます!

さあて自分もそろそろ教習所を卒業する日が近付いてきている!バイクをゲットして大空を空高く飛び上がるんだ!!なにを言っているのだろう・・・自分は。


ではまた次回お会いしましょう!またな!




感想・評価。お待ちしております。


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エリーチカは可愛い

「この話も夏休みに入りましたね~。自分の夏休みはバイトなどもせず家出ゴロゴロしてるだけですが・・・・・」
「何しているの引きこもりニート」
「誰がニートだ!今はちゃんと働いている!」
「じゃあクズに昇格ね」
「ニートってクズより下なの・・・・・?」


『本日の星座占いコーナー!第1位はいて座のあなた!今日は貴方の元に幸運が訪れることでしょう!この一日を大切に!』

 

 

「1位・・・・・・・・・俺だ・・・・・・」

 

朝の目覚めのコーヒーを飲みながら俺はテレビの占いコーナーを見ていた。特に俺は占いを信じてはいない。そんなに占いがよく当たるならこの地球上の人類全員に幸運がおとずれても良いのではないか。

 

「幸運ね・・・・・・。なら俺に可愛い彼女でも欲しいもんだぜ」

 

あ・・・・・・彼女(仮)はいるけど・・・。

 

「さてと、今日は食材の買い物にでも行こうか・・・・・・・・」

 

冷蔵庫の中身がすっからかんだからな。

 

 

 

 

ピロリンッ

 

「ん?」

 

携帯の着信音が鳴ったので画面を見てみると、

 

 

『絢瀬絵里』

 

「また嫌な予感が的中しそうだな・・・・・・」

 

その通りである。

 

『今から神田明神に来て』

 

まさか幸運ってこれの事?

 

「俺からしたら不運だけどな・・・・・・」

 

 

***

 

 

「んで?俺を呼んだ理由は?」

 

神田明神に到着すると、巫女服に身を包んだ絢瀬と東條が神社の掃き掃除をしていた。

 

「隆也君には一日神社でバイトしてくれへん?」

「バイト?」

「人手が今日少ないのよ。男手が必要な時があるかもしれないからお願いできるかしら?」

「まあちゃんと働いた分くれるなら良いけど」

「ありがとうな隆也君。さっそくやけどこっちに来てくれへん?」

「おう!」

「エリチはここらへんよろしく~」

「はいはい。分かってるわよ」

 

 

***

 

 

「東條、これはどこに置いたら良いんだ?」

「それはこの棚の上置いてくれへん?」

「ラジャー」

 

俺は神社の置くにある物置部屋に連れて行かれその中にあった大量のダンボールをみて驚愕した。なんじゃこの数・・・。俺は引越し屋じゃねえぞ。腰がぁああああ!!

 

「隆也君。この頃エリチとどうなん?」

「どう・・・とは?」

「何か進展はあった?」

「進展っていうか何もないぞ?まず俺たちは恋人じゃないし」

「ちゃうよ。友達としての進展」

「友達として・・・。何も無いな!」

「これっぽっちも?」

「おう。何時もどおりにこき使われてる・・・。そろそろ俺の体が持ちそうに無い・・・・・・」

「あらあら。あとでマッサージしてあげよか?」

「嫌、別にいい。あいつの誤解で面倒なことになりたくないからな・・・・・・」

「大丈夫や思うけどな~」

「俺は体丈夫だからちょっとやそっとじゃ壊れねえよ」

「男の子やな~。そんなところも・・・・・・・・・羨ましいなぁ・・・・・・」ボソッ

「ん?何か言ったか?」

「何でもあらへんよ~。ほら次はそれ持ってきて」

「あいよ」

 

「希ーー!ちょっと来てーー!」

「エリチが呼んでる。隆也君、ウチちょっと行って来るからここにあるダンボール棚に置いといて」

「了解」

 

東條は絢瀬の下に走っていった。

 

東條にどうと言われたが本当に何も無い。何時もどおりに会って、何時もどおりに言い合って何時もどおりに過ごす。この『何時もどおり』の空間で・・・何か他の事が起こるのか?何かが変わるのか?このニセモノの間に何かの進展なんかありはしない。これからどうなるのだろう・・・。ん?『どうなる?』俺はどうにかなりたいのか?この絢瀬との間にあるニセモノの恋人の関係から、どうにかなりたいと俺は思っているのか?

 

「・・・・・・也。隆也!!」

「え!?」

「さっきから話しかけてるのになんで返事しないのよ」

「あ、すまん・・・。考え事していた・・・・・・」

「それは希をどうやって手籠にしようかってこと?」

「んな分け無いでしょうが!」

「本当かしら・・・・・・。希のおっぱいばっか見てたような・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(汗)」

「図星ね」

「仕方ないだろ!俺と同い年であんなに胸がでかかったらそりゃ見るだろ!もうあれメロンだぞ!」

「私は?」

「イチゴ」

「殺してあげるわ!」

「すいません冗談です!!」

「まったく。そういえば此処で希と何話していたの?」

「ん?お前と何か進展はあったか?って聞いてきた」

「進展って・・・・・・。私達ニセモノの恋人なのに」

「だよな。俺たちの間にはなんの関係もない。あるとしたら友達ってことくらいだな」

「友達・・・ねぇ・・・」

「今思ったら俺とお前ってどういう関係なんだろうな?」

「さあ?貴方は私の下僕には変わらないわ」

「このポンコツ野郎め・・・」

「誰がポンコツですって!」

「うるせえ!お前だよお前!亜里沙の前だったらポンコツのくせに!あと東條の前でも・・・・・・」

「希の前でもポンコツじゃないわよ!ここで貴方を殺してあげるわ!」

「ぎゃあああああ!どっからそんな脇差出してきたー!」

 

やっぱり占いなんか信じちゃダメだーー!

 

 

バタンッ!

 

「「え?!」」

 

凄い勢いで物置の扉が閉じられた。

 

「って!これ開かないぞ!?」

「嘘!?もっと力入れなさいよ!」

「入れてるよ!んぎぎぎぎぎぎ!!!」

 

ダメだ。びくともしない。扉の取っ手を持っておもいっきり引っ張るが扉が動く事は無い。いや、これは開かないというより開かなくなった?おそらく反対側で何かがあったはず・・・。

 

 

 

 

「ふふっ。その中でラブラブしとき♪」

 

犯人は東條希。物置にいる隆也たちの反対側の扉に少し太めの棒をかませていた。

 

 

 

 

***

 

「駄目だ。こりゃ東條を待つしかないか」

「そ・・・・・・そうね・・・・・・」

 

見渡した限り出口はこの扉だけ。後は全て壁で覆われている。殴ったら壊れそうだが弁償などしたくないので却下。あるとしたら上にある小さな小窓。梯子が無いので無理。結論・・・。

 

「東條を待つか」

 

その場に腰を下ろし携帯で連絡しようと思ったが、

 

「あ、携帯カバンの中だ・・・・・・」

 

いかん・・・。非常にやばいぞ・・・。切羽詰ってきた。こんな暗いところで絢瀬と二人きり・・・・・・?そんなの俺に取っちゃ大問題だ!視界が悪すぎるからもし絢瀬の体に触ったら俺の存在はこの世から消される!

 

 

 

 

 

「悪いな絢瀬。まあ時間経てば東條が迎えに来てくれるはずだからそれまで我慢しようぜ・・・・・・っていうかお前随分静か・・・・・・・・・・」

「っ!」ガバッ

「え!?」

 

(は、はい!?)

 

後ろに居る絢瀬に声を掛けても中々返事が返ってこないから何事かと思って振り向こうとした瞬間、絢瀬がいきなり俺の背中に体を密着させて抱きついてきた。

 

(んんんんんんんんんんんんん!!??)

 

「え、えええ、ええっと、あ・・・・・・あ・・・絢瀬さん!?」

「う、うるさいわよ!静かにしなさいよ!」

「へ?!」

「少しだけ・・・・・・このままで居させて・・・・・・」

「は・・・はい・・・」

 

少しだけ頸を動かして絢瀬の顔を見てみれば目じりに涙を浮ばせ、息を整えているのか泣きじゃくりながら肩で大きく呼吸していた。

 

「ぅ・・・ひっく・・・・・・ぐす・・・・・・」

「お前・・・もしかして暗いところ無理なのか・・・・・・?」

「えぇ・・・。昔からこういう暗くて・・・・・・狭いところが苦手で・・・・・・・・・」

「ほ・・・・・・ほう。じゃあこの抱きついているのはどうして・・・・・・?」

「す・・・好きで抱きついてる訳じゃないわよ!でも・・・・・・こうでもしないと・・・私駄目なのよ・・・・・・うぅぅ・・・・・・」

「絢瀬・・・・・・」

「分かったら・・・・・・黙ってじっとしてて・・・・・・」

「お・・・・・・おう・・・・・・」

 

 

な、なんだよ・・・。普段とは別人じゃねえか・・・。こいつにこんな一面があったなんて・・・。

 

ドクンッ

 

やべぇ・・・。鼓動が直に伝わってくる・・・。しかも、こうして見ると・・・やっぱりこいつも女の子っつうか・・・今までこいつをそういう目で見たことが無い・・・。顔がすぐそこにあるし・・・呼吸の音が凄く近いし、綺麗な目が涙で光ってて・・・・・・まつげが凄く長いし・・・・・・シャンプーのいい匂いが漂ってくる・・・。それに胸が背中に当たってて・・・・・・凄い暖かい・・・・・・。こいつの唇・・・・・・ツヤツヤしてて・・・柔らかそうで・・・・・・。なんだが・・・・・・凄く・・・可愛い・・・・・・。

 

ヤバイ・・・・・・こんな密室で二人きりなんか・・・色々と・・・・・・まずい・・・・・・・・・。

 

「隆也・・・・・・・・」

「な・・・・・・なんだ・・・・・・・・・」

 

 

 

ドクンッ

 

 

 

 

「離れないで・・・・・・よね?」

「っ!!」

「きゃっ!?」

 

さすがに我慢の限界が来てしまったのか、勢いよく絢瀬をその場に押し倒してしまった。

 

「隆・・・・・・也・・・?」

「絢瀬・・・・・・・・・」

 

床ドンである。絢瀬の顔の近くに俺の右手と左手があり、完全に覆いかぶさっている状態である。そして顔と顔との距離が近い。あと数センチで唇が届く・・・。

 

「ちょ・・・まってよ・・・・・・」

「もう・・・・・・待てねぇよ・・・・・・」

 

絢瀬の肩を押さえつけ身動きが取れないようにする。

 

「隆也・・・・・・///」

「絢瀬・・・・・・」

 

絢瀬の唇との距離・・・。あと一センチ・・・・・・。

 

ガラッ!

 

「隆也君!エリチ!次の仕事が・・・・・・ある・・・・・・で・・・・・・?」

「「・・・・・・・・・・・・・・・あ」」

 

東條から見た俺たち。

1俺が絢瀬を押し倒して身動きが取れないようにしている。

2絢瀬が俺に押し倒されて身動きがとれない状態。顔真っ赤。

3床ドン

 

 

「な・・・何しとんの?」

「ととととととと東條!?そのこれはえっと・・・・・・誤解だ!」

「何処が誤解なのよー!隆也の馬鹿ーーーーー!」

 

 

パッチィンン!!

 

絢瀬の右手が俺の頬に炸裂した。

 

 

***

 

 

「誠に申し訳ありませんでした!あの時は俺もどうかしてた!俺はなにも言い訳はしない!煮るなり焼くなり好きにしてくれ!」

 

賢者モード全開。絢瀬の前で全力土下座。

 

「本当に反省しているのかしら?」

 

怖い!殺気がだだもれだ!そして足で俺の頭を押さえるのはやめてください!

 

「反省してます・・・。人生で一番反省していると思われます・・・・・・」

「そう、なら一つ命令しましょうか・・・」

「なんなりと・・・」

 

さあ何がくる?バイクで俺を轢くか?それとも根性焼きか?それか俺の人生を終わらせるのか??

 

「私の事・・・絵里って呼びなさい・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」

「こ、これはその!私達は恋人同士なのに名前で呼び合ってないのが不思議に思っただけよ!///ただそれだけなんだから!///」

「そんなのでいいのか?」

「他の事をしてほしいのかしら?」

「すいません呼ばせていただきます!!」

「なら試しに呼んでみなさい」

「はい・・・。えっと・・・・・・・・・絵里」

「うん・・・・・・隆也」

「っ///」

 

なんか名前で呼ばれると・・・恥ずかしいな・・・・・・。

 

「二人ともラブラブやね~♪」

「「全然違う!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、因みに扉閉めたのウチやから」

「はああああ!?」

「何をしているのよ希!」

「いいやん。仲良くなれたんやから」

「どこがだ!!!」

 

 

 

 

 

(でも・・・・・・隆也に押し倒された時・・・・・・ちょっとは嬉しかったかな・・・///)




どうもお久しぶりです。これで少しは二人の距離も縮まったのではないでしょうか?もうお前ら二人爆発しちまいな!!嘘です。

新しく評価してくださった。

紅蓮羅漢さん。ストライクノワールさん。海洋哺乳類さん。えれめんたる@世嗣さん。
ありがとうございました!

更にこの度お気に入り数が300を超えました!誠にありがとうございます。これからも頑張って書いていくのでよろしくお願いします!
いつも感想で更新頑張れと書いてくれる皆さん!いつもありがとうございます!いつでも感想お待ちしております!

そして次の話ですがお気に入り300記念として特別ストーリーを書きたいと思っております。自分でも色々と考えているのですがまだまとまっておりません。そこで皆様にお願いがあります。こんな風に書いて欲しいなどのリクエストがあればぜひ感想文でおくってください!送られてきたものを見て作者である自分がこれがいい!と思ったものを書かせていただきます!もし一つもなかったら此方で考えて書いていこうと想います!なんでも構いません!ちょいエロでも構いません!出来る限りエロく書いていきます!何を言っているんだ自分は・・・・・・。

ということでリクエストお待ちしております!期限は10月12日の23時59分までです。決まったシナリオについては活動報告でお伝えします!

それでは次の話でお会いしましょう!またな!!


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お気に入り300突破記念!特別ストーリー!

作「どーもみなさん!作者こと優しい傭兵でぇす!」
絢「皆ー!賢い可愛い?」
作「エリィィィィチカァァァァアアア!!」
絢「ハラショー!絢瀬絵里よ」
作「この度は皆様のおかげでお気に入りが300を超えました!」
「「ありがとうございます!」」
作「ということで、今回はお気に入り記念として特別ストーリーです!本編とは少し雰囲気が違うかもしれないぞ!エリチカのあんなところやこんなところg・・・・・・」

ドガゴキグシャブチッ!

絢「まったくこのクソ作者は余計な事を・・・。でも本編とは少し違うかもね?」ウィンク
「じゃ、特別ストーリ・・・スタート!!!」


作「くぁwせdrftgyふじこlp」ピクピク


「おめでとうございます!一泊二日の海でのカップル旅行券でーす!」

 

「え?」

 

少し大きめのスーパーで買い物をしていると店の入り口付近で何かの福引抽選会らしきものが開催されていた。今日のレシートに書かれてある買い上げ金によって回せるらしく、試しにやってみようかと思いおもいきって福引券を引いた。二回引いて一回目がトイレットペーパーで二回目にまさかの大当たりを引いてしまったのだ。え?あの不幸体質の俺がこんな幸運を?夢か?夢なのか?!

 

「期限が切れる前にご利用ください!ありがとうございました!」

「あ・・・どうも」

 

貰ってしまった・・・。本当に夢なのかもしれない・・・。ほっぺでも引っ張るか。

 

グイ~

 

「いでででで!夢じゃねえや。これは素直に喜んでおくか」

 

小さくガッツポーズ。

 

とはいってもこれどうしようか。別に海に興味がないという訳ではない。泳ぐのは好きだし見るのも好きである。だが、この券はカップル旅行券である。自慢じゃないが俺は彼女がいない。彼女いない歴=年齢ほどである。だからこの券は使えないわけである。さてどうしたものか・・・・・・・・・。友達に女友達もいないしな。いやいるけど・・・。あのスピリチュアル巫女と俺の中での自称ポンコツアイドルであるツインテール娘。あの二人に渡してもな~・・・・・・。

 

あっ!

 

 

「恋人(仮)はいるな」←ここ重要。

 

あいつに渡してみるか・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「カップル旅行券?」

 

俺の家に呼んだこのお方。俺の恋人(仮)である絢瀬絵里。俺のことを無理矢理こき使ってくださってる女王さまである。いつのまにかこいつの下僕になりさがった俺である。クソッタレガ・・・。

 

「一緒に行くか?東條も矢澤も行かないってよ」

 

電話したら即効で「行かない」って言って電話切りやがったからなあいつら。

 

「私を連れて行って何する気よ」

「俺をケダモノみたいな言い方するな!純粋に一緒に行かないかって誘っただけだ!」

「ホテルに連れ込んで私にエッチなことする気でしょ変態!」

「誰がてめえなんかに手を出すかこのアホチカが!」

「誰がアホチカよ!」ブゥン!

「ばうっ!?」ゴンッ

 

絵里の持っていたなべが俺の頭にダイレクトアタック。

 

「このやろう・・・・・・俺の頭は頑丈じゃねえんだぞ・・・・・・」

 

真剣に頭割れるかとおもった・・・・・・。

 

「自業自得よ」

「理不尽だ・・・」

 

この天上天下唯我独尊女め・・・。それはちがうか。

 

 

「・・・・・・・・・・・・いいわよ」

「え?」

「行ってあげてもいいわよ。久しぶりに泳ぎたかったし・・・・・・」

「意外だ・・・。お前が承諾するなんて」

「べ、別に貴方の為じゃないんだからね!///」

 

ツンデレ最高。

 

「じゃ一緒に行くか。券に書いてある期間は明日からだから明日早速行くか」

「別に構わないわよ。それなら今すぐ準備しないとね」

 

持ってきた自分の荷物を纏めて家を出た。が・・・・・・顔だけ出してこっちを見てきた。

 

「ん?」

「楽しみにしてるわよ」

 

それだけを口にし絵里は自分の家に帰っていった。

 

 

「それを言われちゃ頑張るしかないな」

 

 

 

 

 

 

 

翌日AM8:00

 

 

 

「隆也!早く起きなさいよ!!」

「んん・・・・・・あと5分・・・・・・」

「早く行かないと海で混むでしょ!起きなさーい!!」

 

ドスッ!

 

「ぐふぉあ!?」

「よし起きたわね。早く顔洗って歯を磨いてきなさい」

「はぁ!?なんで絵里が俺の家にいるんだよ!!不法進入だ!!」

「合鍵使ったのよ?何も盗んで無いから別にいいでしょ?」

「良くねえよ!お前警察に通報してやろうか!言い逃れはできねえぞ!」

「入学式早々セクハラしてきたのは誰かしら?」

「ぐぅぅ・・・・・・」

「ほらご飯作ったから早く食べなさい」

「お前はお母さんか・・・・・・」

 

 

洗面所に向かい歯を磨き、顔を洗う。冷たい水を浴びたお陰で意識がどんどん覚醒していく。リビングに向かうとテーブルの上にトーストやスクランブルエッグなどまさにザ・朝食が並んでいた。

 

「口に合えばいいんだけど」

「俺は大概のは食えるから大丈夫だよ」

「ならいいんんだけど・・・・・・」

 

こういう気遣いが出来るのが絵里のいいところなんだけど。

 

「絵里」

「ん?」

「お前はいいお嫁さんになれるな」ニコッ

 

・・・・・・・・・・・

 

「え!?///」

「気遣いが出来るお前はいいお嫁さんになれるな」

「な、なななな///何言い出すのよ!///」

「いや・・・思った事を言っただけだけど・・・」

「馬鹿隆也はさっさとご飯食べとけばいいのよー!///」

 

バッシャアッ!

 

「ぎゃああああ!?お湯ぅぅぅぅぅうう!?」

 

こいつ恥ずかしくなって熱湯を掛けてきやがった!!

 

「貴方のバイクのガソリンタンクに爆竹突っ込んでやるわ!」

「わーわーわー!それだけは勘弁しれくれぇぇぇええ!!」

 

その後、飯を食うよりも爆竹を突っ込もうとしていた絵里を止めるのに必死であった。

 

 

 

 

***

 

 

 

「じゃ早速行くか。インカムつけたか?」

「準備オッケーよ。早く泳ぎたいわ!」

「分かった分かった。行くぞ」

「えぇ!」

 

バイクのエンジンをつけバイクを走らせた。今回の海は千葉県にあるらしく二人でツーリングを含めてバイクで移動した。今回は高速道路を利用しない下道ツーリングである。俺が先頭に行き絵里がそれを後ろから着いてくるという形である。千葉県までナビを使っているので曲がる場所などをインカムで報告やちょっとした会話をしながら移動した。ツーリングは凄く楽しいものである。1人で走るのもそれはそれでいいが二人だと楽しさが二倍になる。いや、俺の場合は絵里と一緒に走っているからという理由かもしれない。学校でも日頃一緒にいるからなのか、それとも無意識に楽しんでいるのか、俺は詳しくは考えなかった。楽しいなら・・・それでいい。

 

 

「隆也。ちゃんとナビ見てる?」

「見てるよ。次を左に曲が・・・・・・・・・・あ」

「まさか・・・・・・」

「道間違えた・・・・・・・・・」

「着いたら火炙りの刑ね。分かったゴミクズ?」

「俺の間違いってそんなに罪なの!?あとゴミクズって酷くね!?」

 

 

現在の状況。俺たちが通っている道路には車が通っていない。さきほどからインカムで後ろから俺をゴミクズと罵ってくる絵里とその前を走行している俺。やる手段は勿論。

 

「逃げる!!」

「あ!逃がさないわよ!!」

 

アクセル全開で逃げる事を考えました。

 

「ぎゃあああああ!?」

「待ちなさー!」

 

後ろからガンガンのい煽られながら逃げました。

 

 

 

 

***

 

 

 

「到着ね」

「そ・・・ソダネ・・・」

 

 

約30分。全力で絵里から逃走した結果、予定より早く千葉に到着する事ができた。嬉しがった方がいいのか疲れたと言ったほうがいいのか・・・・・・。

 

目の前に広がる青い空、綺麗な海。やはり今は祝日という理由もあるのかかなりの客が来ていた。ビーチパラソルが一杯でまるできのこみたいだ・・・。しかも右を見てもビキニの女性、左を見てもビキニの女性が沢山。なんだここは・・・。天国か?天国の外側か?それアウターヘブンだわ・・・。しかも若い女の人がよりどりみどりだ・・・・・。いかん・・・鼻血が・・・・・・。

 

「隆也?今日の夜覚えときなさいよ」

「なんで!?」

「ふんっ」

 

なんで怒ってんだこいつ・・・・・・。

 

「じゃバイク止めて着替えるか」

「そうね。じゃあ20分後にここに集合ね」

「了解」

 

 

またバイクに跨り少し先にあったバイクを停め荷物を持ち更衣室に向かった。俺は今回黒色の水着を履き白色の半そでパーカーを着込みサングラスを装着。別に日焼けを気にしている訳ではないが一応日焼け止めを塗っておく。女の子みたいに準備に時間は掛かるわけでは無いのですぐに着替えた後駐輪場に止まっているバイクを眺める事に。

 

そして20分後。集合場所にいると、髪の毛を少し丸く纏めた絵里が来た。

 

「おまたせ」

「お・・・おう・・・・・・」

 

俺は目を奪われた。目の前に立っている絵里は一言で言い表すと『美しい』。大人の女性のような黒い水着を着ている。やはり大学生とは思えない綺麗さだからかスラリとした足がとても目立つ。絵里のスタイルは完璧だと言っても過言では無い。キュッと締まったヒップに括れた腰。そして突き出た胸。水着を着ているからか体の色々な箇所が目立つ。そして最後には青いパーカーを着込んで少しずらした丸みのあるサングラス。こんな女性が俺の知り合いか疑うくらいだ。

 

「ちょっと隆也?」

「あっ・・・・・・な、なんだ?」

「さっきから黙ってるけどなにかあったの?」

「いやそれは・・・・・・その・・・別にお前の水着姿が可愛いや綺麗だと思ったというわけじゃないんだが・・・・・・・・・あ」

「え///?」

(口に出してしまったーーーーー!)

 

「あ・・・ありがとう・・・///」

「お・・・おう」

「隆也って・・・意外と体がっしりしてるのね・・・」

「ま、まぁ・・・鍛えてたし・・・・・・」

「腹筋も割れてるし・・・胸筋も・・・・・・」

「その・・・俺着やせするタイプだからさ・・・。うん」

「そ・・そうなのね・・・」

「あ・・・あぁ・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

 

 

いかん・・・。会話が止まってしまった・・・・・・。な、何か喋らないと・・・・・・。

 

「じゃ、じゃあ海に入るか!」

「そ、そうね!折角きたんだし!」

「ならさ!競争しようか!負けた奴は昼飯奢りな!」

「上等よ!さっそく行くわよ!」

「よしきた!」

 

なにやら変なテンションでレース開始である。

 

 

 

 

「よしやるか。ここからあの目の前にある岩までだ」

「いいわよ。絶対負かしてあげる」

 

俺たちは岸からやく20m離れたところで海に浮いている。

 

「この石が海面に落ちた瞬間にレーススタートだ。さっき言った通り負けた奴は昼飯奢りな」

「オーケーよ。じゃさっそくやりますか」

「んじゃ、よっと」

 

手に持っていた石を上空に放り投げる。

 

3...

 

 

2...

 

 

1...

 

 

 

ポチャン

 

「スタート!」

「っ!」

 

 

 

 

 

***

 

 

「悪いわね。昼ごはん奢ってもらって」

「まさか女のお前に負けるとは・・・・・・」

 

レースの結果。5mほど距離を空けられた状態で俺の完敗である。まさか絵里がここまで泳ぐのが速いとは思わなかった。その速き事、水上バギーの如し。というわけでこいつに昼飯を奢ることになった。

 

「じゃ先に座る場所確保しとくからね」

「よろしくぅ」

 

絵里は焼きそばとカルピス。俺はたこ焼きとからあげとカレーとコーラ。あとデザートでメロンのシャーベットを購入。うぅ・・・痛い出費である・・・。

 

 

 

 

さて、絵里はどこかなと辺りをキョロキョロしながら捜していると、予想はしていたが今起こるとは思っていなかった出来事が起きていた。

 

 

「なあ俺と一緒に行こうぜ。なんでも奢ってやるからよ」

「嫌よ!私は連れと一緒に来ているのよ!貴方とはどこにも行かないわよ!」

「いいねえその強気!ますます一緒に連れて行きたくなるなあ」

「ちょっと触らないで!離しなさいよ!」

 

俗に言うナンパである。絵里は美人だからこんな事あるかもな~とは思っていたが本当に起こっていた。絵里の購入した昼飯を置いた机の近くでアニメのキャラでいうモブ男みたいな顔をしている男が絵里の腕を掴んで連れて行こうとしている。俺はそれを見たとき無性に腹が立った。別に仮の恋人だからという理由だからではない。分からないがあいつが他の男にナンパされているところを見るとイライラしてくる。

 

 

「いや!離して!!」

「素直に着いて来てくれれば悪いようにしないからさ」

「そうか。なら俺を連れて行ってくれ」

「あ?」

 

から揚げを買った時におまけでついてきたレモンをモブ男の目元に持っていき・・・・・・。

 

 

隆也パワーた〜ぷり注入!はーいブシュウウ!

 

 

プシャッ!

 

 

「うがあああ!目があああああ!」

「おらよっと」

「おわぁ!?」

 

レモンの汁がモブ男の目に入り一瞬だけ視力を奪った。それによりフラフラしだした男の足を足払いする。

 

「おいコラ!何しやがる!」

「それは俺の台詞だ。俺の女に手だしてんじゃねえよ」

「え!?///」

「てめえには関係ねえ!邪魔してんじゃねえぞ!」

「そうかそうか邪魔して悪かったな。それじゃ続きはそこのポリ公さんたちとやってくれ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 

後ろを見ると数名の警察官が立っていた。おそらく誰かが通報してくれたんだろう。

その後、男はポリ公たちによりお縄になりあの人達が乗ったパンダカーに乗せられて姿を消した。

 

 

「悪いな一人にして」

「べ、別に大丈夫よ!何もされて無いし・・・・・・」

 

腕つかまれてたじゃねえか・・・・・・。

 

 

ガシッ

 

「行くぞ」

「え!?ちょ、ちょっと!?」

 

絵里の手をを掴み海の家をでた。

 

「絵里」

「何よ!」

「今日は俺から離れるなよ」

「っ!///う・・・・・・うん・・・・・///」

 

絵里の手を掴み俺が設置したビーチパラソルの場所へと向かった。

 

 

 

 

(お・・・・・・俺の女って・・・・・・・・・///隆也の馬鹿っ///)

 

 

 

***

 

 

 

あの後、俺たちは昼飯を食べ終わりまた海の入り楽しく遊んだ。ゴーグルをつけどれだけ深く潜ったりや水を掛け合ったりポロリがあったり!!いやポロリはないぞ?まあ・・・少しは期待はしたぞ?そりゃポロリは男のロマンだ。絵里の場合なんかあんなにたわわに実ったおっぱい様が降臨なされるのは俺にとっちゃ感無量だ。けど!ポロリは起きませんでした・・・・・・。ションボリ

 

「隆也。貴方今ポロリがあったらて思ったでしょ?」

「ギクッ」

「天誅!!」

 

ガンッ!

 

「ほべぇ!?」

 

絵里の手にあったのは俺のバイクに詰んであった整備や修理に使うスパナである。

 

「おいコラァ!俺の頭ガンガン殴りやがって!頭割れたらどうすんだ!」

「いいじゃない割れたら。どこかで売りつけてやるわよ」

「怖いなお前・・・・・・」

「じゃあ頭は辞めてあげるわ」

「まじでか!」

「代わりにこれ」

「ハサミ?」

 

しかも布きりハサミ・・・。

 

「・・・・・・・・・・・・・・聞きたくないがそれで何をする気だ・・・・・・」ガタガタブルブル

「うるさいわね。ちょんぎるわよ」

「何を!?」

 

 

という感じで終わり俺たちは今回の宿になる券に書いてあったホテルに向かった。

だがそこで思いもよらない事が起こったのだ。

 

 

 

 

inホテル

 

 

「「はあ!?部屋1室!?」」

 

ホテルでチェックインしようと思いロビーに向かい券を受付の人に渡したら・・・

 

『ご利用になる部屋は1室になります』

 

とのこと。どうやらよく見てみたら小さな文字で

 

『カップル券になりますのでご利用していただく部屋は1室だけとなります』と書いてあった。すぐにもう1つ部屋を頼もうとしたが空き部屋がないらしい。ここでやっぱり言いですとなると今回の寝る場所は野宿になるかもなので仕方なくその部屋にした。エレベーターを上がり部屋の鍵を開けると普通のホテルの部屋なのかベットに小さな机に化粧用の鏡。あと部屋にある扉にはカップル専用なのか少し大きめの風呂が。しっかりと湯船とシャワーをわけていらっしゃる。おれは湯船と一緒になっているバスルームは嫌いだからな。

 

 

「分かてると思うけど貴方と一緒に入らないからね」

「へいへい。知ってますよ~」

「あと、貴方寝るのは床ね」

「またかよ!!」

 

家で止まったときを思い出す・・・・・・。

 

「先に入るぞ」

「えぇ・・・・・・」

 

流石に風呂場で殺す気はないよな・・・・・・。

 

 

 

服を脱ぎ体に染み付いた海水を洗い流す。あの後凄い匂いがしたからな。みんな、海なんかで泳いだ後はちゃんとシャワー浴びて風邪引かないようにな?

 

タオルにボディーソープをつけ体を洗う。その時、

 

 

「隆也ー」

「んー?」

「もう体洗ってるー?」

「おう。もうすぐ上がるからー」

「い・・・一緒に入っていいかしら?」

「おーう。いいぞー」

 

 

 

 

ん????

 

一緒に?

 

 

 

「はああああああああ!?」

「は・・・・・・入るわね・・・・・・・・・」

「ななななな!なんで入ってきてんだよ!さっき一緒には入らないって!」

「き・・・気が変わったのよ・・・・・・///」

「気が変わるの早すぎだろ!!!」

 

絵里がいきなりバスタオルを体に巻き浴室に入ってきた。いやその真っ赤な顔やめろ!俺も恥ずかしいだろうが!!

 

「りゅ・・・・・・隆也・・・。背中流してあげるわよ・・・・・・」

「お・・・おおおおおおおう・・・・・・てゃのむ・・・・・・・・・」

 

噛んじまったああああああああ!!

 

 

ゴシッゴシッ

 

 

 

「・・・・・・か、痒くないかしら・・・・・・・・・///」

「大丈夫だ、問題ない・・・・・・・・・・・・」

「ここでその台詞を言われても・・・・・・・・・・・・」

「お・・・・・・おう・・・・・・」

 

なんだこれは。一体無いがあってこんな事になっているんだ?いや別に嬉しくないという訳じゃないけど恥ずかしくて頭の回転が鈍くなっている・・・・・・。俺の後ろにバスタオル一枚の絵里が・・・・・・。バスタオルを外すと生まれたばかりの姿に・・・・・・いかん!考えるな!え、円周率を数えるんだ!!

π!おっπ!い、イコール!さ・・・3.141592653589793238462643・・・・・・

 

「りゅ・・・隆也・・・・・・」

「はいぃぃ!!?」

「その・・・助けてくれてありがと・・・・・・」

「お・・・・・・おう・・・・・・」

「これはその・・・・・・あの時のお礼よ・・・」

「お礼って・・・別に要らないんだが・・・・・・」

「要らないかじゃなくて!私がしたいからしてるのよ!文句ある!?」

「ありません!!」

「ふん!どうせ男の子はこういうのが好きなんでしょ!お・・・女の子にこういうことやらせるの・・・・・・・・・///

 

そんな事は無い!無くは無いけど・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、俺は確かに嬉しいぞ・・・・・・。え、絵里がしてくれるから・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・へ!?///」ボンッ!

「あ!今のはその!」

「隆也の馬鹿ーーーーー!」

「ぎにゃああああああ!目がああああああ!」

 

シャワーのお湯が俺の目にぃぃぃいいいいいい!!

 

 

 

***

 

 

 

 

風呂場での出来事の後、俺は外にたたき出され絵里はあのまま風呂場に残り体を洗い出した。俺は寝巻きに着替え冷蔵庫に入っていた飲み物を飲んで一息ついていた。そしてしばらくして髪の毛を拭きながら絵里が顔を真っ赤にしながら浴室から出てきた。トマトかな?君は。

 

 

「さっきのちゃんと忘れなさいよ!」

「分かったからこれでも飲んでろ。冷蔵庫に入っていたものだけど」

「ふん!」ゴクゴク

 

プルタブを片手で外した絵里。ワイルドかよ・・・。しかもゴクゴクと一気飲み。やるなお主。

 

「・・・・・・ん?これってジュースなの?なんか変な味が・・・・・・・・・」

「味?」

 

確かに俺も飲んで変な味したが、全然気にしてなかったな。

飲み物の入れ物を見ると端っこにこう書かれてあった。

 

 

アルコール数5%

 

 

 

あ・・・・・・これ酒だ・・・・・・・・・。

 

 

「絵里!どんだけ飲んだ!?」

「ふぇ・・・・・・?これ一本全部・・・・・・・・・」

 

こいつ一気飲みしやがった!!

 

「隆也ぁ・・・・・・・・・。おかわりない・・・・・・・・・?」

「あるけど渡さねえぞ!」

「いいじゃん!!はやく寄越しなさいよ!!じゃないとケーサツにセクハラの事言うわよ!」

「仰せのままにお嬢様ぁあ!」

 

 

 

 

 

「えへへ~///おいしぃ~///」

 

酔っている・・・。絵里が完全に酒に呑まれた。いま何が起こってるのかさっぱりわからねえ・・・・・・。色んなことが凄いスピードで起こっているお陰で頭が着いていけてない・・・・・・。

 

「隆也ぁ~///」

「は、はい・・・・・・?」

「ちゃんと飲んでる~?」

「の、飲んでるぞ・・・・・・・・・?」

「え~?///でも中身減って無いわよ~///」

「だ、大丈夫だから!な?」

「もぉ~///分かったわよ~///ヒック・・・・・・///」

 

やばいぞ・・・。この状況。絵里は今で3本も酒を飲んでいる。結構酔ってきているしこれ以上飲ませたら大変なことになりそうなのが本能的に分かってきた。

 

「絵里。もうこれ以上は酒は終わりだ!」

「あー!エリーチカのお酒取ったー!///返しなさいよー!///」

「お前酔って色々とやばい事になってるんだぞ?いつもと雰囲気違うし・・・・・・」

「え~?///エリーチカはぁ~///酔ってなにのれふ!!」

「完全に酔ってんじゃねえか・・・。しかも呂律が回ってない・・・・・・」

 

これ以上は色々と危険だな・・・。うん!

 

「絵里!もう寝るぞ!酒は終わりだ!」

「むぅー///隆也のケチ!///」

「ケチで結構だ。速く寝ろバカーチカ!」

「誰がバカーチカよ!///殺しゅわよ!///」

「できるもんならやってみろ!」

「むー!///えい!///」

「うわ!?」

 

絵里がいきなり俺の体をベットに押し倒してき、俺の体の上に馬乗りしてきた。

 

 

 

「ちょっと絵里さん!?」

「にひひ~///隆也捕まえた~///」

(捕まってしまったあああ!!)

 

何回言ったか忘れたが完全にヤバイ!目の前には酒に酔っている絵里。そして俺は押し倒され馬乗りされている状態。これは色々と犯罪臭がする!やってはいけない過ちをおかしそうな気がする!!

 

 

「ねえ・・・・・隆也ぁ///」

「こ、こんどはなんだよ・・・・・・・・・」

「今日は・・・・・・ありがとうね・・・・・・///」

「・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」

「海につれてきてくれたり・・・バイクでツーリングしてくれたり・・・・・・ナンパから助けてくれたり・・・///今日はいっぱいありがとう///」

「べ、別に大したことはしていないぞ?」

「だからぁ///これは今日のお礼ぃ・・・・・・んっ///」

 

へ?

 

 

絵里が俺の顔に自分の顔を近づけてきて頬にキスしてきた。柔らかい唇が俺の頬に当たったのだ。酔った勢いだと思うがこれはこれで男として嬉しい。だってあの美人に頬にだけどキスされたんだぞ!?嬉しくないわけが無い!!凄く心の底からそう思う行為であった。

 

 

ドサッ

 

 

 

「すぅ・・・・・・すぅ・・・・・・」

「ね・・・・・寝た?」

 

絵里が糸の切れた人形のように俺のからだに倒れてきた。そして俺の胸を枕にしリズムよく寝息をたてている。しかも右手が俺の寝巻きの裾を掴んでおり、左手は俺の背中に手を回して体を密着させて寝ている。普通の男なら襲うかもしれない・・・だがしかぁあし!俺はそんなゲス野郎ではない!へタレかもしれないけど・・・・・・・・・。

 

 

「絵里・・・・・・・・・」

「んんぅ・・・・・・・・・えへへ・・・・・・///」

 

可愛い・・・・・・。

 

この子が本当に俺を罵ってボコボコにしてくる女の子なのか・・・・・・。

 

 

右手で絵里の綺麗な金髪を撫でる。サラサラしていてずっと触っていても飽きないかもしれない・・・。こんな子が俺の恋人(仮)なのか・・・・・・。

 

 

 

「こういうのも・・・いいものだな・・・・・・」

 

絵里の頭を撫で部屋の明かりを消した。

 

 

 

 

 

「おやすみ・・・絵里」

 

 

 

 

 

 

 

これは俺と絵里と出会って初めて行った、ツーリング&海水浴であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。起きた絵里は昨日なにが起こったのか理解した後、俺は廊下に叩きだされ、1時間ほど部屋に入らせてもらえなかった。




はい!いかがでしたでしょうか!!はじめて書いた特別ストーリーです!楽しんで呼んでいただけたでしょうか!書いている最中、自分はニヤニヤしながら書いていました。変態ではありませんよ?


そして新しく評価してくださった。

蛮鬼さん!ダディエルさん!遊びの鬼さん!爽快クールさん!蓮兎さん!ルーカスさん!ありがとうございます!



そしてお知らせです。今の学校の少しばたばたしておりまして更新が遅くなる可能性があります。できるかぎり一週間に一回は更新しようと思いますのでよろしくお願いします!


さて、次回からまた本編を書いていくのですが次の話はシリアスを書いていきます。みなさんおぼえているでしょうか?2話で舌打ちをしていたあのモブ男を!あの男が隆也に・・・・。そして隆也と絵里の間に!・・・・・・・・・・・・・・・続きは本編でお楽しみください!


それでは今回はここでお別れです!また次回お会いしましょう!またな!


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不幸とは予想できないときに訪れる

「やっぱり飲み物はコーラだな」
「そこはカルピスでしょ。作者は分かって無いわね」
「なんだと!コーラほど素晴らしい飲み物はない!」
「炭酸飲料って骨をボロボロにするらしいわよ。特にコーラは」
「それってマジで・・・・・・?」
「マジよ。ついでに聞くけど一日何本飲んでる?」
「2本」
「貴方の骨は今日で終わりね」
「嫌だよママーーーー!」
「誰がママよ!!」


「はぁ・・・またか」

 

大学の新学期が始まって約一ヶ月がたっていた。俺は何時もどおりの時間に学校に通っていた。だが大学の新学期が始まり俺に対して変化があった。

俺が使っているロッカーを覗くと荒らされた。いや、荒らされていただな。新学期が始まってからか知らないが久しぶりに空けたロッカーの中が荒らされていた。なんでこんな事になったのか。予想は簡単につく。

 

『俺が絢瀬絵里の彼氏だからだ』

 

入学式が終わって次の日に俺が彼氏だと絵里を知っている奴ら全員の前で告白したのだ。驚く者もいればおめでとうと祝福してくれる者もいた。だがその中には勿論俺たちを良くないと思うものもいるだろう。絵里は少し前まで全国でトップに立ったスクールアイドルだ。すべてのファンに認められた少女だ。なのに大学に進んで見てみればどこの馬の骨とも知らない男が自分の恋人だと言っているのだから。面と向かって言いに来ない代わりにこんな陳腐なことをしてくる。

 

「やれやれだぜ・・・・・・」

 

 

とりあえずロッカーの中にあるゴミや埃を取り除こう。おっと、この見えないところにある画鋲もな。

ってか大学生にもなってこんな事するやついるんだな。恥ずかしくないのか?

うわ、なんだこの汚い液体・・・・・・・・・。ってかくッさ!!

 

 

「隆也、なにしているの?」

 

 

え?

 

 

後ろに俺の偽の恋人である絢瀬絵里が俺に対して険しい表情で見つめてくる。やめて!そんな目で俺を見ないで!

 

 

「何をしているの?」

「んー、ロッカーの掃除?」

「それ前もやってたじゃない。何回するつもりなのよ」

「あー、ほらあれだ!俺って綺麗好きだからさ」

「じゃあその入ってるゴミや画鋲ってどう説明するの?」

 

それを言われちゃおしまいだな・・・・・・・・・。

 

 

「お前が気にする事じゃない。これは前からの事だ」

「・・・・・・・・・そう。ならもういいわ」

 

絵里は自分のロッカーの中を整理し必要なものだけ取り出し、俺に冷たい視線を浴びせながら講義が始まる教室へと向かった。

 

 

 

 

***

 

 

 

あれから何日たったか覚えてないが、それからというもの俺は絵里と言葉を交わさず別れることが多くなった。誰がみてもわかる。こいつ明らか不機嫌だ。確かにこいつには気にするなと言ったがそこまで怒ることだろうか?これは俺に対する問題であり絵里は特に気にすることではないのだ。

 

 

そして今日の講義が終わった時、ロッカーに何時もと違うものが入っていた。

 

 

『今日の17時。大学にある渡り廊下に来い』

 

 

果たし状?と思ったが絶対違う事が分かった。おそらくこのいじめ行動に俺がなにも応えてない事を見た犯人が俺を呼び出してなにかしらの事をするつもりだろう。まあ、予想は出来るが・・・。ここで断ればまた面倒なことをされそうなので。

 

 

「行くしかないか・・・・・・」

 

 

その手紙を手に握り俺は渡り廊下へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

渡り廊下。この大学では渡り廊下を使用する学生はたくさんいるが今の時間帯は利用する者はいない。なぜなら今の本当の時間は講義の時間なのである。この時間にここを通る者はいない。なら俺を呼ぶのに相応しい場所なのである。

 

渡り廊下に着くと丁度廊下の真ん中付近に4人ほど座って俺を待ち構えていた。

 

「やっと来たか。なんでここに呼ばれたか分かるよな?」

「いや?まったく」

 

本当は分かっているがシラを切っておく。

 

「おい。調子にのるのも大概にしろよ?」

「俺は調子には乗っていないが?」

「チッ。分からせてやらねえと駄目だな。おいこいつが逃げないように取り囲め」

 

1人のボスらしき男が言うと他の男たちが俺が逃げないように取り囲んできた。

 

別に逃げる気はないのに・・・・・・。

 

「単刀直入に言うぞ。お前、絵里さんと別れろ」

「大体お前みたいなどこにでもいそうな奴が絵里さんと付き合ってるのがおかしいんだ」

「しかもあの人はμ'sの絢瀬絵里だ。お前と一緒にいちゃいけない人なんだよ」

「分かったらさっさとあの人と別れて二度とあの人の目の前に現れるな」

 

やはりか。こいつらは絵里のファンの男共だ。まあ考えは分からなくも無い。俺みたいな男があの有名なμ'sのスクールアイドルと一緒にいるんだ。多分この関係を見て反対だと思う奴は100%中99.9%は反対という奴がいるだろう。絵里にとっちゃ俺はこいつらへの魔よけ代わり。こいつらに対したら俺は邪魔者。俺という壁があるお陰でこいつらは絵里とお近づきになれないのだ。

 

 

「悪いが俺は絵里と別れるつもりはない。絵里は大事なやつなんでな。お前らの固定観念で出た言葉で指図をしてくるな」

 

この言葉がこいつらの怒りの炎への油となった。

 

「やっぱり駄目だ。おい取り押さえろ」

 

ガシッ

 

男二人が俺の腕を両腕で掴んで身動き取れないようにしてきた。

やっぱりこうなるのか・・・・・・・・・。

 

 

「わからない奴には体で覚えてもらわないとな」

「絵里に声すら掛けられない奴らがデカイ口叩くなよ。かっこ悪いぞ」

「っ!んの野郎!!ウラァ!」

 

ゴッ!

 

「ブっ!?」

「これで分からせてやるよ!!」

 

男の拳が俺の顔面に直撃した。ガードをしようとも腕が押さえられてどうしようも出来ない。

 

ドガッ!バキッ!

 

拳が俺の頬、鼻、胸、腹にめり込む。意識が朦朧としてき、鼻からは鼻血が出ていた。

 

 

「これで分かったか?分かったなら絵里さんと縁を切れ」

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」

 

体に力が入らない。数回ほど急所に当たっているお陰で頭の回転が鈍くなってきている。俺は解放されるが後ろが壁のお陰で逃げれない。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・か」

「あ?」

 

男たちが耳を近づけてくる。

 

「誰が切るかよ・・・・・・ばーか」

 

「「「「っ!」」」」

 

俺はこの後、男たちに何発殴られたか分からないほどの暴行を受けた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「いててて・・・・・・・・・」

 

男たちが帰った後俺は血を洗い流すため、便所で顔を洗っていた。

 

「あいつら・・・・・・おもいっきりやりやがって・・・・・・・・・」

 

あの喧嘩、いや・・・・・・リンチと言うべきか。俺は反撃はしなかった。なぜか?反撃してあいつらが怪我でもしてみろ。学校中に変な噂をたてられるに違いない。

 

「帰るか・・・・・・」

 

外はとっぷりと暗くなり学校にはほとんど学生はいなくなった。

 

今日はバイクでこようと思っていたが少し故障部分があったので徒歩でやってきた。ま、今のこの状態だとバイクに乗ってたら事故しそうで怖いしな・・・・・・。

 

「今日の晩飯・・・・・・なにすっかな・・・・・・」

 

家の近くにあるスーパーによろうとした時、

 

「あれ?隆也君?」

「へ?」

 

声を掛けられた方向を見ると、買い物袋を持ったスピリチュアル巫女娘。東條希氏が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう出来るからそこに座ってて」

「お・・・・・・おう・・・・・・」

 

ありのまま今の状況を説明しよう。あの後、俺は東條の家に連れて行かれ晩御飯を作って貰っている。どうやら占い師の勘と言うものか俺が学校でなにかしらの出来事があったと予想し、俺の逃走を阻止し家に連行されて今の状態に至る。

 

 

「なんであんな遅い時間まで学校おったん?」

「んー・・・・・・寝てた」

「寝てたらそんな顔に痣ができるん?」

 

なんでこうどいつもこいつも勘が鋭いんだ・・・・・・。

 

「あー・・・・・・俺は出来るんだぜ?」

「なんで疑問系なんよ・・・。まあいいや。はいどうぞ!」

「なっ!?これは・・・・・・・・・庶民の味方!牛丼だと!」

 

某牛丼チェーン店。俺も作者もお世話になっております。

 

 

「もしかして手作り?」

「そうやで。うち特製やで」

「いいのかよ。俺が食って」

「二人分作るのなんか1人分つくるのと変わらんよ。いいから食べて!」

「お・・・おう。いただきます」

「召し上がれ!」

 

箸で肉と白飯を摘みあげ口に含む。

すると・・・・・。

 

「ん!?美味い!」

「ほんまに!?よかったぁ~」

「肉がしっかりと味がついていて肉汁が白飯に味が染み付いてて凄い美味い!」

「おいしくいただけてるようでなによりやで。まだあるからおかわりしてな!」

「おう!ガツガツガツガツガツ!!」

 

牛丼。三杯おかわりしました。俺の好物の1つは牛丼である。

 

 

 

「ご馳走様。美味かったよ」

「お粗末様。まさか作った分全部食べるなんて・・・・・・」

「好物だから仕方ない・・・・・・・・・」

 

仕方ないのである・・・うむ・・・。

 

 

「じゃ俺はこれにて・・・・・・・・・」

「隆也君・・・・・・・・」

「はい?」

 

気のせいか・・・。東條の声のトーンが低すぎるような・・・・・・。

 

「学校でなにがあったん・・・・・・?」

「・・・・・・あ・・・・・・え・・・・・」

 

言葉が出ない。東條の言葉には刃がついているのではないかと思うくらいである。口からでた言葉が俺の心に突き刺さる。おそらく、いや・・・東條は気付いている。内容は分かって居ないかも知れないが学校で何かがあったことに気付いている。今日は嫌な日だ・・・・・・。

 

「べ・・・別になにもないぞ?こ、この顔の痣だって学校の友達とじゃれあってただけで・・・・・・」

「じゃれあうほどで痣ってできるもんやったけ?」

「お、男だから・・・・・・・・・な・・・・・・」

「その人は相当力が強いんやろな~。じゃあ聞くけど・・・・・・どうじゃれあってきたの?」

「いや・・・・・・ふ、普通にだよ!男のじゃれあいなんか暴れてなんぼだろ?」

「そう・・・。じゃ質問を変えるな。なんで・・・私の顔を見て喋らないの?」

「っ!」

 

最後の言葉が関西弁じゃなかった・・・・・・。東條の視線が痛い・・・。完全にばれている。

 

 

「今、隆也君のこと占ったらこれが出たよ」

「それ・・・・・・は・・・・・・」

「THE FOOL。愚者のカードの逆位置。焦りや意気消沈を意味している」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

当たっている。俺は今のこの状況に焦りが出ている。はやくこの状況を打破したいと思っている。

 

 

「私の占いは中々外れないのよ。さ、全て話して・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・分かった」

 

俺は学校で起こったことを話した。ロッカーの件や、呼び出されリンチに合ったこと。絵里との関係を切れと命令された事を・・・・・・。

 

 

 

「そうやったんや・・・。それは災難やったな」

「別に。いじめやリンチは高校の時でも体験してる」

「でもその人達はひどいもんやな。全てを隆也君のせいにしてるみたいで」

「俺が逆の立場でもそうなると思う。分からなくも無い」

「けど、隆也君でもそんなことはせんやろ?」

「さすがにな。俺は自分の力で何とかしたいやつだからな」

「やんな・・・。で?これからどうするの?」

「そうだな・・・・・・。今はとにかく絵rピロリンッ!ん?」

 

携帯のアラームがなったので見ると。

 

『絢瀬絵里』

 

「嫌な予感がする・・・」

「ウチもやな・・・」

 

メールの内容は・・・・・・。

 

 

『すぐに神田明神に来て』

 

予感的中。

 

 

 

「すまない。行って来る」

「わかった・・・・・・」

 

東條の家の扉を空け俺は外に出た。

 

 

 

「まさか・・・こんなカードが出るなんて思わなかった・・・」

 

隆也が家を出た瞬間に占いでカードを引いた。

出たカードは・・・。

 

 

「Wheel of Fortune。運命の輪のカードの逆位置。意味は・・・・・・情勢の急激な悪化、すれ違い、降格、アクシデントの到来・・・・・・そして・・・・・・」

 

 

***

 

 

 

急いで神田明神俺は急いで向かった。嫌な汗が背中を流れる。胸が苦しくなる・・・・・・。俺は一体どうしてしまったんだ・・・。病気か?いや・・・気のせいだ。さっきの東條とのやり取りで興奮しているだけだ・・・。

 

そう言い聞かせながら神田明神の階段を上がった。

 

 

そこには、片手に携帯を握った絵里が立っていた。

 

 

 

「意外と早かったわね隆也」

「まあな。彼女を待たせたら嫌われそうだからな」

「そうね。嘘をついたりしたら嫌われるわよ?」

「ごもっともで・・・・・・」

 

いつもの会話をしているのにこんなに鳥肌が立つのはなぜだろう。なんでこんなにも落ち着かないのだろう・・・・・・。何を・・・恐れているのだろう・・・。

 

「隆也。ここに呼んだのはあなたに用があったの」

「用?それってなんだよ・・・・・・」

「貴方に言いたい事があってね・・・・・・」

 

 

このシチュエーションは映画で告白をするシーンに流れそうである。告白をされ二人は幸せになりました。おしまいでハッピーエンドに終わるであろう。だが絵里から出た言葉はそんなお花畑のような雰囲気をはほど通りものである。それは俺の中の何かが一瞬で崩れるほどの威力を持っている。一種の核ミサイルより効果的かもしれない・・・。

 

 

 

 

 

 

 

東條が引いたカード。Wheel of Fortune。運命の輪のカードの逆位置。意味は情勢の急激な悪化、すれ違い、降格、アクシデントの到来・・・・・・そして・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日から貴方の私との恋人役は終了よ・・・・・・・・・『横山君』」

 

 

 

 

 

そしてWheel of Fortuneの最後の意味は・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

別れ・・・。




はい。どうもみなさん!今回は頑張ってシリアスな話を書いてみました。どうだったでしょうか?これを考えるために自分は布団の中でダンゴムシの如く丸まっていました!お布団は最強である。

そして新しく評価してくださった!

橘 絵斗さん!しかしまさかさん!バルサさん!Axelsonさん!薺《Nazuna》さん!猫狐獅子さん!ヒースクリフさん!いたんじさん!

ありがとうございます!

続いてシリアス編は続きます!これからの隆也と絵里はどうなるのだァァァァアア!

では次回お会いしましょう!またな!


感想・評価!お待ちしております!


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不幸の後は?

「とうとう自分も教習所で卒業試験を受けることになりました!」
「やっとなのね。早いような遅いような・・・・・・」
「だが色々と緊張はしている。だが!それを超えてこそ勝者である!!」
「中二病まるだしね」
「やかましい!世界の半分は中二病だ!」
「馬鹿なこと言ってないではやく書きなさい。クソ虫」
「お前の次の台詞は!こ、これは作者への応援なんだからね!と言う!」
「一回・・・・・・死んでみる?」
「どこかで聞いたような台詞・・・・・・・・・なんのアニメだっけ?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 

一瞬、一瞬だった。絵里の言葉へ反応が遅れた。今、何て言った?恋人役は終わり?なに言ってんだよ・・・・・・。

 

「え、絵里?いきなり何言ってんだよ・・・。お前らしくも無いな。冗談が上手くなったな・・・・・・」

 

なんでだろう・・・。汗が止まらない・・・。心臓がうるさい・・・・・・。バクバクと心拍数が上がってきている。

 

「冗談じゃないわ。もう恋人役は必要ないかと思ったのよ・・・。もうしつこく告白してくる人はいないから」

 

絵里の言葉が耳から入り逆の耳から抜けていく。なんでだ?なんで俺はこんなにも焦っているのだろう・・・。冷や汗が止まらない。動悸が激しい。少しは落ち着けよ俺・・・・。

 

「じゃあ・・・。なんで俺のこと苗字で呼ぶんだよ。別に何時もどおりに呼べばいいじゃねえか・・・。この偽の恋人の関係が終わっても今までの関係には支障はないだろ?」

 

違う・・・。俺はこんな事を言いたいんじゃない・・・。じゃあ何を?何を言いたいんだ俺は・・・・・・。

 

「別に名前呼びなんかどうでもいいでしょ?元々、なんの接点もない他人なんだし・・・・・・」

 

絵里の言葉が痛い・・・。心に突き刺さる。手で上から胸の心臓部分を押さえる。

 

「お前・・・・・・今まで付き合ってきたけどそれは無いんじゃないか!」

「そう?元は利用するために私の横に置いていたのよ。気付かなかったの?やっぱり馬鹿ね」

「お前・・・・・・・・・」

 

 

東條が言っていた。俺を信用しているから俺に恋人役を頼んだと・・・・・・。矢澤と約束した・・・・・・。絵里を絶対に1人にしないと・・・・・・。だがこれまでの思い出と言えるべき過去が簡単に崩れ去った気がする・・・・・・。

 

なんだよ。結局俺はこいつに踊らされてただけかよ・・・。1人で浮かれて、1人で頑張って・・・。そして1人で後悔する・・・・・。騙されていたのか?俺は・・・・・・。絵里に・・・・・・・・。

 

 

「なんだよ・・・・・・・・・」

 

恋人の関係?違うだろ・・・・・・。これまでの関係の終わりじゃねえか・・・・・・。

 

 

「そうか・・・。俺はお前に騙されていたのか。いい魔よけとして使われ、こき使われ、そして最後には裏切る・・・・・・。東條に言われたけど、俺を信用しているから?違うよな?結局お前は、魔よけになれば誰でも良かったんだよなぁ・・・・・・」

「っ・・・・・・」

 

絵里の表情が少し険しくなったがそれすら目に入らなかった。

 

「ならこの関係は終わりにしようか・・。ここで俺たちは他人に戻る。もう会うこともないな。会ったとしても何も口を交わさない・・・。そうだ・・・。俺たちはもうただの『赤の他人』同士だ・・・・・・」

「っ!」

 

 

パァンッ!

 

 

絵里の平手打ちが俺の頬に当たる。ジンジンとした痛みが身に染みる。絵里の方を見ると俺を鋭く睨みつけ、目にはうっすらと涙が浮んでいた。

 

 

「さよなら・・・・・・・・・『隆也』」

 

 

そして絵里はそのまま神田明神の階段を下りていった。

 

 

 

 

痛みを帯びている頬を抑える。別に凄く痛いというわけではない。だが、それ以上にズキズキと痛いのは俺の・・・・・・・・・心だ・・・・・・。

 

 

そうか・・・。こんなに焦っているのがなんでなのか今分かった。絵里と一緒にいたくて、絵里と別れるのが嫌で・・・・・・そしてこんな結末になってしまったのがとても悲しい・・・・・・。

 

 

 

「ビンタ・・・。今までのより・・・・・・一番痛いじゃねえか・・・・・・」

 

片手で目元を覆い隠し、そこから一粒の涙がこぼれた。

 

 

 

 

 

俺は・・・・・・、絵里が好きだったんだ・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

_____________________________________________

 

 

 

 

 

それから一週間ほど過ぎた。絵里とのあの会話があってからか学校ですれ違っても声をかけることは無かった。いや、声すら掛けれなかった・・・・・・・・・。目が合う事は数回あったが見事に逸らされた。講義の時はいつも隣同士で座っていたが今は席の距離を離して受けている。帰りも一緒でお互いバイクで登校しているのでよく見かけるが目線すら合わさず帰る毎日である。別にとても気にしている訳でも無く、とても会いたいとも思わない。なんだろうか・・・・・・。心にぽっかりと穴が開いたような感じである。

 

 

 

「はぁ・・・・・・」

 

深いため息が出る。いつもよりも疲れが出ているのか動きたくない気分になる。

 

「帰るか・・・。ここにいても何もやることないし」

 

プルルルル

 

「あん?」

 

電話?

 

画面を見ると。

 

 

『東條希』

 

「東條?」

 

なんのようだ?

 

 

「もしもし?」

『あ、隆也君?今大丈夫?』

「まぁ、大丈夫だけど・・・・・・」

『今からウチの家に来てくれへん?にこっちもおるし」

 

ポンコツアイドルもいるのかよ・・・・・・。

 

『なんで呼ばれたのかは隆也君が一番分かってるやろ?」

「よくお分かりで・・・」

『隆也君に聞きたい事がたくさんあるんや。来てくれるやんな?」

 

おそらく此処で行かないなんて言ったらありとあらゆる理由をつけてくるだろう・・・。

 

「分かった」

『物分りがいいんやね。じゃ待ってるよ?」

「・・・・・・・・・おう」

 

プツンッツーツーツー・・・

 

 

 

***

 

 

「いらっしゃい。中に入って」

「お邪魔・・・・・・します・・・・・・」

 

あの後、俺は急いで東條の家に向かった。何が起こるかは大体予想はつく。だが、俺はここで逃げるわけには行かないんだ・・・・・・。

 

 

「おそいわよ!何分待たせる気なのよ!」

「まだ電話して一時間も経ってないだろうが・・・・・・」

 

そして中では椅子にドカッと座っている矢澤にこ。

 

「隆也君。そこに座って」

「おう」

 

希に言われたとおりに椅子に座り、希は俺にお茶を出してくれて矢澤と一緒に俺とは反対側に座る。

 

 

「じゃ、単刀直入に聞くわ。絵里と何があったの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

やはりそれか・・。さすがあいつの同級生と言うべきか・・・。

 

「隆也君。ウチらの目を見て言うてな」

 

真剣な二人の眼差しが向けられる。まるで人生で一番大切な試験の面接を受けるような緊張感が俺の中から溢れる。

 

俺は二人の目を見つめ・・・・・・・・・言った。

 

 

「絵里の・・・・・・恋人役をやめた」

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

この言葉を聞いた二人は驚きもせず、うろたえる事もせず、しっかり俺の言葉を聞いた。

 

 

「つい先週の話だ。東條は知ってる通りにあの後神田明神で絵里とサシで話した。話の内容はもう恋人役は必要ないってことだった。特に近寄ってくる男もいないから俺の魔よけとしての役目を終わった・・・。元から利用する為に俺を恋人役を頼んだ・・・。信頼してる言葉なんかあいつの中には無かった・・・・・・。利用するだけして好きなようにこき使った・・・・・・。あいつにも言ったけどよ・・・結局あいつにとっちゃ誰でも良かったんだよ!別に俺じゃなくても!他の男でも良かったんだ!!俺は当たりの中に隠れていたはずれのクジを引いたんだ!!使うだけ使って捨てたんだ!!」

 

 

 

 

情けない・・・・・・。俺は今超情け無い・・・・・。男らしくなく何の関係もない少女達に叫んで・・・・・・・・・。

 

 

「隆也君。今度はウチらが話すよ」

 

俺の言葉を聞いた東條が口を開いた。

 

「隆也君がエリチとの話合いが終わったあと、エリチはウチのこの家に来たんよ」

「絵里が?」

「にこも来てたのよ。あんたが出た瞬間にたまたまここを通ってね」

「そうか・・・・・・」

「それでにこっちとエリチを家に入れて話を聞いたんよ。さっき隆也君が言った事をね」

「じゃあ、俺が来るより前から知ってたのに呼んだのか・・・・・・」

「そうゆうことよ。騙したみたいで悪かったわね・・」

「別にそれはいいけど・・・・・・」

 

なんか俺騙されてばっかだな・・・・・・。

 

「それで、エリチ・・・凄く悲しそうやったんよ」

「悲しそう?」

「悲しそうって言うより悲しいのよ・・・・・・・・・。取り返しもつかない事をしたからって」

「取り返しのつかないこと・・・・・・?」

 

どういうことだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隆也君。あの後、エリチ・・・・・・・・・ずっと泣いてたんよ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・え?」

 

 

泣いていた?絵里が?

 

 

 

「絵里があんなのになったのには理由がるのよ。隆也、この前学校のリンチ覚えてる?」

「そりゃ覚えてるよ。俺被害者だし・・・・・・」

「あの現場を、絵里は見ていたのよ。あんたがぼこぼこにされているのをずっとみていたのよ」

「そう・・・・・・だったのか・・・・・・」

「こう言われたんでしょ?絵里さんと別れろって・・・」

「あぁ・・・」

「けど、あんたは反抗して4人の男たちにリンチにあってボコボコにされた」

「そうだ・・・」

 

人の気配は無かったんだがな・・・。

 

 

 

 

 

 

「絵里はそれを見て悔やんでいたのよ。自分がスクールアイドルのトップに立ったことに後悔はしていない。けどそのおかげでなんの関係もない隆也があんな姿になるまで殴られていたことに・・・」

「エリチはな、それを自分のせいやと思ってるんよ。自分の招いた種のお陰で隆也君に迷惑をかけていたって。私が隆也をあんなめに遭わせたって言ってるんよ・・・」

 

 

絵里が・・・そんな事を・・・・・・。

 

 

「家に来たとき涙がとまらないほど泣いていたのよ。神田明神で隆也に酷い言葉を言った、私に対してなんの嫌な顔をしないで接してくれた隆也の顔にドロを塗った、感謝しないといけないのに信用していないって自分に嘘までついて隆也を拒絶したことにとても後悔していた。あんた達が別れてよく絵里はここに着たわ。大学で隆也と会う度に心が締め付けられる、けど自分は強い人間じゃない。これも隆也を傷つけたことへの償いなんだって」

 

絵里・・・・・・。

 

 

「エリチは、ウチらと会う度にずっとこの言葉を言ってたんよ」

「この言葉?」

 

 

 

 

 

『希・・・にこ・・・。私・・・・・・どうしたらいいんだろう・・・・・・?』

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

「ずっと悩んでるんよ。大学が始まって、隆也君と出会って、恋人になって、色々経験して、隆也君に助けられて、そして拒絶した。もう隆也君に合わせる顔が無いって」

「絵里とあんな風な結末になってしまったけど、本当はあんたの事、ずっと信じてたのよ。心の底から信頼してて、いつでも自分のそばに居てくれて、どんな時でも必ず来てくれる、自分のヒーローだと言っていたわ。隆也の話をする時の絵里の顔・・・・・・とっても楽しそうだった」

「エリチは不器用やからあんなやり方しか考えられんかったんよ。隆也君をこれ以上傷つけ無い為に・・・・・・」

「隆也・・・」「隆也君・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・おう・・・」

 

 

「「貴方は、どうするの?」」

 

 

 

 

 

絵里・・・・・・。人一倍不器用で、人一倍賢くて、人一倍可愛くて、人一倍優しくて、そして人一倍・・・・・・悲しみを知っている少女。人間なんて誰しも完璧ではない。必ず誰しも抜けているところは必ずあるし、完璧だといえる部分なんてどこにもない。絵里は不器用だからこうするしかなかった。優しいからこうでしか俺を守る方法しかなかった。今でも自分を戒めているのかもしれない・・・。今でも自分を責めているかもしれない・・・。今でも・・・泣いているかもしれない・・・・・・。別に俺はヒーローになりたいわけじゃない。けど俺は・・・・・・『好きな女の子が泣いているのになにもできない男にはなりたくない』

 

 

 

「東條・・・・・・。絵里はいま何処に居る?」

「今やったら神田明神におるよ。今日神社で会おうって約束してたから」

「分かった。今から行って来る」

「隆也君・・・。エリチを助けてあげて」

「勿論だ・・・。もう泣いてもらっちゃ困るからな」

「やっぱり隆也君はいい人やな。エリチにお似合いや」

「そりゃどうも・・・」

 

 

玄関に向かい靴を履き替えて扉を開けようとすると。

 

 

「隆也」

「ん?」

 

矢澤が俺を見つめてきて・・・・・・・・・・。

 

 

 

「にことの約束、覚えてるわよね?」

「・・・・・・・・・・・・・・・Of course」

 

 

 

「「絵里を絶対1人にしない!」」

 

 

「行って来る」

「「いってらっしゃい」」

 

 

そして俺は東條の家を出た。

 

 

 

 

「まったく、絵里も世話をやかせるわね」

「そんなんμ'sの時からやん。友達は助けてあげないとね」

「違いないわね。ところで希。あの二人はどうなるのか占ってよ」

「ええよ!」

 

タロットカードを机に広げ、一枚を取り出した。

 

 

「ふふっ。こんなカードが出たで?にこっち」

「あら・・・。意味は何て言うの?」

「意味は・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

長い階段を俺は一歩一歩踏みしめながら登っていった。まるでゲームでいうラスボスを倒しに行くかのような緊張感。だが妙に落ち着いている。絵里に言われた事を思い返してみる。信用?利用?他人?だから何だ・・・。どんな事を言われても・・・どんな理由を並べても・・・・・・それで絵里が苦しんでいい理由にはならない。この出来事は誰のせいでもない。なのに絵里は責任を感じて、1人で抱え込んで・・・1人で悲しんでいる。駄目だ。彼女に涙は似合わない。彼女には・・・・・・笑ってもらいたい。俺はあの子の笑顔を取り戻す。好きな人を守れないで、何が男だ・・・・・・。

 

階段を登り終える。視線を上げていくと誰かが立っていた。今夜は満月。月の光が雲から顔を出し、辺りを明るく照らしてくる。神社が明るくなり。立っている人物を照らしてくれる。そこに居たのはあの時と同じシチュエーション。立って居たのは夜風に靡いている髪を手で押さえ目に涙を浮かべていた俺の好きな少女・・・・・・。

 

絢瀬絵里が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだな。絵里」




どうもみなさん!隆也と絵里。別れてしまいましたが一体どうなるのかと自分で考えながら書いていると何か胸にくる何かがありました。っていうか展開早いと思う人も居るでしょう。シリアスを書きたいと自分で言いながらこんな事いうのもなんですが言わせていただきます。

こんな悲しいのが長く続くなんてイヤダアアア!

というわけです。絵里が大好きなのに絵里がこんなことになるなんて認められないわ!
とうとう自分も馬鹿になりそうです。いや元からだな。うん・・・・・・。

次回、隆也と絵里。どのような事でどのような関係になるのか。頑張って書くので応援よろしくお願いします!


それでは今日はここまで!次回もお楽しみに!じゃあ・・・またな!!


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神田明神にて

「希・・・・・・。まだかしら・・・・・・」

 

希のメールに呼ばれて神田明神に着たけどそこには誰も居なかった。できれば、すぐに帰りたい気持ちで一杯になった。ここは・・・・・・隆也と別れた場所でもある。私は隆也にひどい事を言ってしまった。入学式のあの日から・・・・・・隆也と一緒にすごした。こき使って・・・罵倒して・・・・・言い合いの喧嘩を毎日して・・・・・・。けど一度も楽しくないと思ったことは無かった。私を敬ったりせず対等の立場として接してくれた・・・。どんなときでも私の側に居てくれて・・・風邪を引いたときも一緒に居てくれた・・・・・・。隆也と会う度に胸がドキドキした。楽しかった。幸せの時間であった・・・・・・。なのに私はそれを無き物にしてしまった。隆也を・・・・・・傷つけてしまった・・・・・・。

 

 

「うぅ・・・・・・・・・ぐすっ・・・・・・」

 

絵里の瞳から大粒の涙がポタポタと落ちていく。

 

 

 

「隆也ぁ・・・・・・」

 

謝りたい・・・。許してもらいたい・・・・・・。けど、もし拒絶されたらと思うと胸が苦しくなる・・・・・。もしも・・・嫌われたらどうしよう・・・。いや・・・もう嫌われているはずだ・・・。自分勝手に引っ張り回して・・・勝手に斬り捨てた・・・。頭ではもう手遅れだと言う事が分かっているのに。今だ心の中のどこかで何かを期待している・・・。

 

 

「ごめんなさい・・・・・・隆也・・・・・・」

 

 

その時、階段を誰かが登ってくる音がした。コツッ・・・コツッと一段一段踏みしめて登ってくる音。まさか・・・いや・・・・・・これは希だ。第一、今の時間にこの場所に彼が来るわけが無い・・・。こんな悪い事をした子に・・・神様が願いを叶えてくれるわけが無い・・・・・・。

 

 

そして階段を登ってきた人物が現れた。最初は夜の暗さにより顔は見えなかったが、月明かりが神社全体を照らしてくれた。そこに居たのは・・・・・・希じゃなく男性・・・。

 

 

「ぇ・・・・・・・・・?」

 

消えるような声が口の中から出てきた。まさか・・・・・・そんな・・・・・・。もしかして・・・神様が願いを叶えてくれたのか・・・・・・。そこに現れた人物は・・・・・。

 

 

 

「久しぶりだな、絵里」

 

 

横山隆也・・・。本人だった。

 

 

 

 

 

_________________________________________

 

 

 

 

神社の鳥居の近くで立っていた絵里に声をかける。いつもならなにも思わないのに、今回は違った・・・・・・。緊張している。絵里と喋るのなんか・・・初めてでもないのに・・・。

 

 

 

「何しに来たの?」

「・・・・・・お前に会いに来た」

「会いに?どうしてよ・・・」

「話・・・・・・かな?」

「なにを話そうって言うのよ。貴方と話すことなんて無いわ。希も来ない感じだし私はもう帰るわ」

 

俺の言葉を無視して横を素通りしていく。

 

 

「待てよ」

 

ガシッ

 

「離して・・・・・・」

「嫌だ」

「離してって・・・・・・っ!?」

 

俺は逃げようとしている絵里を抱きしめた。

 

 

「隆・・・・・・也・・・・・・?」

「・・・・・・・・・・」

 

優しく、だが強く抱きしめた。絵里を逃がさないように・・・・・・。

 

 

「は・・・離しなさいよっ!ちょっと!」

「離したら逃げるだろ?」

「なんで・・・・・・こんなことするのよ!誰も頼んで無いわよ!」

 

俺から離れようと絵里は俺の胸元を叩いてくるが俺は一層強く抱きしめた。

 

 

「絵里・・・」

「っ・・・・・・・・・」

 

耳元で呟いた。

 

 

 

「もう・・・自分を責めるのはやめろ」

「っ!」

 

この言葉で絵里の体がビクッと跳ねたが言葉を続けた。

 

「お前はもう自分に罰を与えた。もうこれ以上自分を責めることはないんだ」

「なにを・・・・・・」

「アレはお前のせいじゃない。お前は何も悪くないんだ」

「だ・・・だってあれは・・・・・・」

「もう・・・自分を責めるな。俺はお前を嫌ってないし・・・。迷惑だと思ってない」

「でも・・・・・・私は・・・・・・」

「確かにあの言葉を聞いたときは傷ついたさ。けど東條と矢澤からちゃんと話は聞いたよ。俺を思ってのことだったんだろ?」

「隆也・・・・・・・・・・・・私は・・・・・・」

 

絵里の瞳から涙がポロポロと出てくる。

 

「不器用で、けど優しくて、誰よりも自分より俺のことを考えてくれた。こうでしか俺を守れなかったんだろ?」

「うぅ・・・・・・ぐすっ・・・・・・」

 

 

 

 

「なあ絵里。もういいんだ。もう苦しまなくていい。もう悲しまなくていい・・・・・・。もう・・・・・・笑っていいんだ」

「隆也・・・・・・隆也ぁ・・・・・・・・・」

 

 

 

なんで?なんで貴方はここまでしてくれるの?私は貴方に対してひどいことをした・・・・・・。もう治せない傷を負わせたかもしれないのに・・・・・・。そんな事言われたら私・・・・・・もう・・・・・貴方しか見えなくなっちゃう・・・・・・。

 

 

「絵里。もう大丈夫だ。側にいてやるから・・・・・・」

「うん・・・・・・うんっ・・・ぅあぁぁぁぁ・・・・・うわぁぁああん!!」

 

 

 

 

 

絵里は泣いた。まるで赤子のように泣いた。俺の服を握り締め。声をあげ涙を流し俺の服を濡らしていく。俺はそれを快く迎え入れ、泣き止むまで頭を撫で続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間が立った後、絵里はようやく泣き止んだ。

 

「ありがとう・・・。もう大丈夫よ」

「そうか。まさか絵里があんなに泣くなんてな」

「それ以上言ったらタダじゃすまないわよ・・・・・・・・」

「おぉ怖い怖い・・・。ま、それでこそ絵里だな」

「心配かけて・・・・・・ごめんなさい・・・・・・・」

「謝るなよ。もう大丈夫だから」

「本当に・・・・・・ありがとう・・・隆也」

「お前に礼を言われるなんてへんな気分だな・・・。ま、絵里が元気になってよかったよ」

 

 

 

 

 

絵里に笑顔が戻った・・・。これでめでたしめでた・・・・・・。

 

 

 

「ところで隆也。私のロッカーにあった海苔と梅干って貴方が?」

「あーあれか。親戚からの贈り物でお前にお裾分けをと・・・」

 

少し前の話だ。まだ絵里と別れる話をしていない時だが少しでも絵里の機嫌が良くなってほしいと思って海苔と梅をお裾分けでロッカーに置いたのだ。

 

 

「私の嫌いなものはね・・・・・・・・・」

「あん?」

「梅と海苔なのよーーーー!」バッチーン!

「へぶらぎゃあああああああああああああ!!?」

 

 

神田明神に俺の美声な断末魔の叫びが鳴り響いた。

 

 

 

______________________________________

 

 

 

 

 

それからというもの少しは俺と絵里の距離が近付いたかと思ったが以前と変わらない形となった。何時もどおりこき使われ、罵倒される日々である。じつはと言うとあの時絵里に告白しようと思っていた。が・・・完全にタイミングを逃してしまったのだ・・・・・・。まぁぼちぼちとやっていきますか。

 

 

 

「ん?」

 

またまたロッカーに果たし状らしきものが。

 

 

『またあの場所へこい』

 

「またかよ・・・」

「隆也。どうするの?」

「行くしかないだろ。もう関わってこないようにするためにな」

「でも・・・またボコボコに・・・・・・」

「あ・・・・・・そのことで絵里に言ってない事あったんだ」

「え?」

「まあ見てれば分かるよ」

 

 

レッツゴー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はいやってまいりましたここ渡り廊下です。まあ嫌な思い出でもありますね。そして置くにはいつしかの男たち。

 

 

 

「おい、ちゃんと絵里さんと別れたのか?」

「別れてるわけねえだろ」

 

一度別れたようなもんだが・・・・・・。

 

「まだこいつ分かってないみたいだな」

「また痛い目に遭わせてやる」

 

一瞬にしてあの時のように取り囲まれた。

ついでに言うと、物陰で絵里が見ています。

 

 

 

「よし、押さえつけろ!」

「おう!」

 

ガシッ!

 

「じゃ、あの時みたいに一発やるか」

「おいおい。ちゃんと俺の分も残しとけよ」

 

ご飯のおかずの取り合いかお前ら・・・・・・・・・。

 

 

「そういえばお前らはこの前やられたけど1つ言い忘れてた事がある・・・・・・」

 

「「「「ああ?」」」」

 

 

これは絵里にも東條にも矢澤にも言ってない事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺、柔道で二段なんだよ」

 

 

 

 

 

ドスゥン!ドゴ!バキッ!ゴキッ!グチャッ!

 

 

 

約数分後。4人の屍の山が出来ました。




はいみなさんどうも!シリアス書くとか言いながら簡単に終わってしまいました。こんな終わりを望んでいない人もいたでしょうが、これにてシリアス編終わりです!!(我は満足である。後悔はしていない)
次からまた日常編に戻っていきます。今回の出来事で二人の距離も縮まったと思います!多分・・・・・・笑


そして新しく評価してくださった!
霧纏の淑女さん!どんこつカカオさん!歌姫さん!ネウロイさん!紅月玖日さん!クーゲルシュライバー刃さん!ソプラノさん!BIbaruさん!kisyohさん!

ありがとうございます!!


そしてお気に入り500突破いたしました!ありがとうございます!また時間があれば500記念を書きたいと思います!!(時間があれば・・・・・・です)これからも書いていくのでよろしくお願いします!!



それでは今日はここまで!それじゃあ、またな!!


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心霊スポットには行かないほうがいい

『横山隆也』
黒い髪に少し鋭い眼つきの青年。
身長178センチ
体重70キロ
趣味、バイクドライブ
特技、トランペット
家事全体が出来る家庭的な青年。困っている人を放っておけない性格。大学に通っているが絵里にこき使われていてそろそろストレスで頭がハゲるかもと心配している。けど絵里の事は嫌いでは無い。


「こんなもんかな隆也の説明は」
「今更って感じだけどね」
「作者さんってやろう思ってること忘れること多いもんな。ドジやね」
「希?それは今になって始まった事じゃないわ」」
「てめえら失礼極まりないな・・・・・・」


「隆也君はお化けとか信じる?」

「はい?」

 

 

日曜日の昼時。さあ昼飯を作ろうと思っていたときに俺の家に東條がやってきた。どうやら買い物の帰りらしくお裾分けでイチゴを渡しに来たのだそうだ。あざます!

 

「よくあるやろ?学校の階段とか心霊スポットとか?」

「あー・・・確かにあるな。別に信じないという訳じゃないけど気になるかな」

「お?意外と興味津々?」

「まああるのかもな。よくあるだろ?高校の時の同級生が心霊スポットに行って幽霊を見たっていう話。そういう話は良く聞いててな。自分の目で確かめたいって気持ちはあるかな」

「おぉ~。これは丁度よかったかもしれへんわ」

「丁度いい?」

「実はな?今度エリチと一緒に心霊スポット行こうって約束してんよ」

「また凄いこと考えたな・・・・・・」

「やろ?これはおもしろくなるで?」ニヤリ

 

その笑みをやめなさい。

 

「・・・・・・・・・ん?おい東條・・・・まさか・・・」

「そのまさかやで。じゃ二日後に神田明神にまで来てな?」

「聞きたくないけど拒否権は?」

「ある思う?」

「デスヨネー」

「じゃまたね」

 

そう言い残し東條は家をでた。

別に怖いってわけじゃないぞ?ただ少しビビってるだけで・・・・・・。これを怖いって言うんだな・・・。まぁ、いい経験かもな。未来永劫心霊スポットに行かないって心に誓えるだろうし・・・。

 

 

「絵里ってもしかして怖いの大丈夫なやつなのかな?

 

 

 

 

 

***

 

 

 

二日後。午後10時。

東條に言われたとおり俺は神田明神にやってきた。今夜は新月のお陰で辺りが何時もより暗く見える。怖いよママ・・・。

鳥居を抜けると東條と絵里が神社の階段に座っていた。あれ?絵里いつもより顔青ざめてるような・・・・・・。

 

「お待たせ」

「時間丁度やね。ちゃんと道具用意してきた?」

「清め塩と懐中電灯。あとお前の言ったとおりに黒い服できたぞ」

「オッケーやね。なんかワクワクしてくるなエリチ」

「そっ!そうね・・・。確かにワクワクしてくるわね・・・・・・」

「絵里大丈夫か?お前汗やばいぞ?」

「な、何を言っているのよ!私は今まで心霊スポットに何回も言ってるんだから!こんなのへっちゃらよ!」

「そ・・・そうか・・・・・・」

 

これは知ってる・・・。仮説だが俺と一緒に心霊スポットに行く事になって暗いところやお化けが苦手だという事を知られたくないために無理矢理強気になって後には戻れなくなったわけか・・・。

 

 

ピンポーン!

 

 

「じゃ早速行くで~」

「で?場所はどこなんだ?」

「徒歩で30分のとこかな。すぐ着くよ」

「あいよ。おい絵里」

「な・・・なによ・・・」

「ん・・・・・・」

 

カタカタと震えている絵里に手を差し伸べる。

 

「え・・・・・・?」

「手、掴めよ・・・。俺の側を離れるなよ」

「・・・う・・・うん・・・」

 

絵里と手を繋ぎ東條の後についていった。

 

 

 

 

 

 

 

約30分が過ぎ、東條の言う心霊スポットにやってきた。

 

「もしかしてここ・・・・・・廃病院?」

「そう。ずっと前に潰れて病院はそのまま残ったんよ」

「いやいや・・・迫力ありすぎて奮えが止まらねえよ・・・」

 

だって見た感じいやなオーラが漂ってるんだもん。なんだろう・・・負のオーラ的な?中二病かよ・・・。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ガタガタ

「おいおい絵里大丈夫かよ!?携帯のバイブ機能みたいになってるぞ!?」

 

顔が残像で残るくらい・・・。

 

「じゃさっそくレッツゴー!」

「無駄にテンション高いな!?」

「もう希は止められないわ・・・・・・」

「手遅れかよ!!」

 

 

ではさっそく入ろうと思っていたが、病院の入り口にある鉄格子は硬く閉じられており開けれる状態ではなかった。

 

「希?ここ開かないわよ?」

「大丈夫やで。ほら」

「え!?」

「マジかよ・・・・・・」

 

何をしたかって?鉄格子の扉のしたに葉っぱで隠れてあった人が通れる位の穴を発見したのだ。ここに入った奴らどんだけの執念だよ・・・。それよりも東條がここを知っている事にびっくりだよ。

 

病院の扉を開いて薄暗いロビーを三人固まって移動する。勿論懐中電灯は忘れて無いぞ。

 

「あの・・・なんでお二人さんは俺の腕にしがみついているのですか?」

「りゅっ・・・隆也が俺の側にいろって言ったんじゃない!」

「ウチはそうじゃないけど、女の子にこういうことされたら嬉しいやろ?」

「もちのろんだぜ」

「隆也!!」

「馬鹿絵里!声がでかい!」

「あっ!・・・・・・ごめん・・・」

「そうやでエリチ。大きな声で叫んだらお化けが出てくるで?」

「そ・・・そんな冗談言わないでよ・・・・・・のぞm・・・・・・」

 

 

 

 

ピキピキパリンッ!

 

 

 

「「「!?」」」

 

 

どこからかは分からないが何かにヒビが入った音と何かが割れた音がなった。

 

 

「なんだ今の音・・・」

「もうここ絶対駄目なところよ希ぃ・・・」

「今の音がなんなのか凄いきになるんやけど・・・」

(いやいやもうこれ駄目なやつだろ。お化け屋敷より怖いぞ絶対)

 

「と・・・処で希・・・・・・。ここってどんなお化けが出てくるのよ」

「あ、それ俺も気になった」

「そっか。教えてなかったんやったな。この病院である手術が行われてたらしいんよ。その患者は小さな女の子で、遊んでた時に交通事故にあってもう意識不明の状態やってんよ。手術を行ったけどもう手遅れで死んじゃったんよ・・・。で、その子は死んでも恨みが晴れないのか夜な夜な病院にある備品を壊したりここに立ち寄った人間に近付くらしいって噂があるんよ」

 

 

 

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

 

 

マジデ?確かにそれは気の毒かもしれないが話の内容を聞いた感じ本当にあった話に聞こえる・・・。

 

「じゃあ今の割れた音って・・・・・・」

「ま・・・まさか・・・・・・・・・」

「その女の子が今になっても病院にある物を壊している音なのかもしれないってこと・・・・・・」

 

 

サー・・・

 

東條はともかく俺と絵里の血の気が引いた。噂は噂に過ぎない・・・。けどあの割れた音、東條から聞いた話を合わせたら本当に起こった話に聞こえる・・・・・・。絵里の顔を見たら真っ青になっている。

 

 

「ねえ希。悪い事は言わないからもう帰りましょ?」

「確かにな。これで本当に呪われたら洒落にならねえぞ?」

「んー・・・。確かにこれはマズいかもやね。けど最後だけ!その女の子が亡くなった手術室だけ見に行こ?」

「わ、私はもう嫌よ・・・。本当に呪われたくないもの・・・・・・」

「絵里だけ残すのも無理だし東條も1人で行かせるのも駄目だ・・・。絵里、すまないがこれだけ付き合ってくれないか?」

「で・・・でも・・・・・・」

「なにかあったらちゃんと塩まいて清めるんだ。お前が1人でここに居る方が危険だ。それに東條を1人にすることもできない」

 

本当は俺が1番早く帰りたいんだけどな・・・。女の子を残しておくってことは出来ないし・・・・・・。

 

「わ・・・わかったわよ・・・・・・。けどそこだけ見たら帰るわよ?」

「分かった。ウチも流石にこれはやばいって思ってきたから」

「いや遅ぇよ・・・・・・」

 

と言うわけで俺の右腕を絵里が、左腕を希がしがみついた状態で手術室へ向かう事に。お前ら・・・・・・俺の腕千切る気か・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

現在地。病院の3階。暗い廊下を進んでいくと『手術室』と書いてある場所に着いた。霊感があるわけではないがここは先ほどの場所と比べると段違いの冷気を感じる。

 

「なあ東條。お前巫女ならこの先にあるなにかを感じとったりは出来ないのか?」

「いくらバイトの巫女でもそれはできひんよ。お祓いも見よう見まねのことが少しぐらいやし・・・」

「なんだか嫌な感じがするわ。体の震えがとまらない・・・・・・」

「これはヤバイな。中をチラっと見てすぐに帰るぞ」

「「うん・・・・・・」」

 

手術室の扉をゆっくり開ける。

 

ガチャ

 

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

中を覗くと普通にテレビで見るような手術室があった。計器もさびていて中央にある手術台はボロボロで横に傾いていた。

 

「この病院が潰れて結構な年月が経っているようだな・・・・・・」

「見た感じ、30年以上かな?」

「計器も錆びてる・・・・・・。もう何十年前のものかしらね・・・・・・」

 

懐中電灯で辺りを照らすが特に目立ったものは無し。

 

 

「よし、帰るか」

「そうね!早く帰るわよ!」

「エリチ・・・。目の色変わったで・・・・・・」

 

確かにこれは早く帰るのに越した事は無い。いつ聞いた話か忘れたけど心霊スポットに居すぎると本当にとり憑かれるらしい・・。それは意外と軽いものでもあるが、最悪の場合死ぬとか・・・・・・。

 

 

というわけで急いで1階の出口に着いた訳だが・・・・・・。俺はとんでもないことをしてしまった・・・・・。

 

「げっ・・・」

「ん?どうしたん?隆也君」

「バイクの鍵落とした・・・・・・」

「え!?どこでよ!」

「多分・・・・・・手術室・・・・・・」

「なんで落とすのよ!馬鹿じゃないの!?」

「どうしよう・・・・・・」

「取りにいくしかないやろな」

「私は嫌よ!もうここに入るのは!」

「ウチももう入るのは止めとこうかな・・・。もう清め塩振ったし」

「まさかおれ1人でいけと?」

「「それ以外何か?」」

「何でもございません・・・・・・。行ってきます・・・・・・」

「何かあったら連絡してな。助けになるかわからへんけど・・・・・・」

「意味ねえじゃねえか・・・・・・」

 

 

デハイッテキマス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人でまた病院に入ったのはいいけど怖すぎだろ・・・・・・。なんかいそうな気がしてならないんだけど・・・・・・。その置物の陰にこっそりと何かが・・・・・・わーーー!考えるのはやめよう!嫌な予感がする!!

 

そして無事に手術室に入ったのかいいけどバイクの鍵がどこにも落ちて居ない・・・・。どこだ?

 

懐中電灯で照らすが何も無くもしかしたら別の場所にあるのではないかと思い引き返そうとすると・・・・・・。

 

「隆也」

「うぼあああ!?」

 

振り返るとさっき東條と一緒に別れた絵里が後ろに立っていた。

 

「うるさいわね!少しは静かに出来ないの!?」

「は!?いやお前・・・さっき東條と・・・・・・」

「貴方が心配で来たのよ!本当はここには来たくなかったわよ!」

「いや別に来なくてよかったのに・・・・・・。それで東條は?」

「下で待っててくれてるわよ」

「そうか・・・・・・だが鍵が見つからなくて・・・・・・」

「これのこと?」

 

絵里の手に俺のバイクの鍵があった。

 

「え!?どこで見つけたんだ?」

「その入り口の近くに落ちてたのよ。それすら見えなかったの?」

「いや・・・ちゃんと見てたんだけどよ・・・・・・」

 

見落としてたのかな・・・・・・。

 

 

「ほら、早く戻るわよ」

「当たり前だ。もうこんな所おさらばしたい!」

 

手術室を背にし俺たち二人は東條が待つ出口までノンストップで走っていった。

 

 

 

 

出口に着くと東條が近くに生えてあった木にもたれ掛かっていた。

 

「あ、おかえり隆也君。鍵あった?」

「あぁ。ちゃんと見つけたぞ。絵里が見つけてくれたんだ」

「え?エリチ?」

「そうだぞ?俺が心配で迎えに来たって・・・・・なあ絵里・・・・・・・あれ?」

 

後ろを振り向くがさっきまで絵里が居た場所には誰も居なかった。

 

「エリチならここにおるよ?」

「はい?」

 

東條の横では体育座りしている絵里が居た。

 

 

「エリチ、隆也君が言ったあとずっと此処におったよ?」

「え」

「本当よ。もうあんな怖いところになんか入りたくないわよ」

「・・・・・・どういうことだ・・・・・・?」

 

 

さっきまで一緒に走りながらここまで来たのに絵里はずっとここに居た?じゃあ俺と一緒に居た絵里は・・・・・・・・・。

 

一瞬で理解した・・・・・。俺と一緒に居たのは誰か・・・。東條が言っていた。その小さな女の子はここに立ち寄った人間に近付くって・・・・・・。ということは・・・。

 

 

「っ・・・・・・・・・」

「ちょっと隆也?顔色悪いけど」

「汗も尋常じゃないけど隆也君大丈夫?」

「あぁ・・・・・・大丈夫だ・・・。いいから早く帰ろう・・・・・」

「そ、そうね・・・。はやくかえって寝ましょう」

「清め塩ちゃんとからだにも振ってナ」

「おう・・・・・・」

 

清め塩の袋を開け、頭からおもいっきり被る。

 

 

 

「じゃ帰ろっか」

「おう・・・・・・」

「そうね」

 

 

その時・・・・・・。

 

 

病院の出入り口付近で・・・・・・。

 

 

ミシミシ・・・・・・。

 

 

 

「「「え?」」」

 

 

 

瞬間。

 

 

 

パリィィン!

 

上から蛍光灯が数本大きな音を立てて落ちてきた。

 

 

 

 

 

「うわあああああああああああ!!!」

「「きゃあああああああああああああ!!!」」

 

俺たちは一目散に走り出し、急いで神田明神に帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隆也たちは気付かなかったが、手術室の奥に扉があった。そこは手術が終わった患者をしばらくの間そこで検査をするための部屋である。

隆也たちが去った後、その部屋から小さな明かりが漏れていた。そこにはあったのは・・・・・・1つだけのベット。検査用の計器。そしてそのベットの上には・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

『マタ・・・・・・キテネ・・・・・・・・・』




はい皆さんお久しぶりです。今回はホラー?らしきものを書かせていただきました。実の話・・・・・・。わたくし作者はこれを書いている時に部屋でいつもなら鳴らない音がそとから聞こえてる中書いていました・・・。これを作って読んだときも家の内部から変な音がして超怖かったです。ホラーはホラーを呼び寄せるのかな・・・・・・。考えるのはやめよう。作者・・・怖いのは大の苦手であります。じゃあ何で書いたのかって?書いてみたかったんだよ!!

そして今回評価してくださった!
ネバチョーさん。blank sさん。チュッパチャップスさん。Amesupiさん。十六夜@543さん。Jokerさん。ありがとうございます!


お気に入り600を超えました!たくさんの人に読んでいただき嬉しいです!ありがとうございます!感想で更新頑張れなど書いてくれている皆さん!ありがとうございます!これからも頑張ります!


ではまた次回お会いしましょう!またな!


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お気に入り700突破!特別ストーリー!

700お気に入ありがとうございます!たくさんの人に呼んでもらえて嬉しいです!これからもよろしくお願いします!今回は特別ストーリー!隆也の家族の1人が現れます!
では!特別ストーリー!スタート!!


 

『今日16時に家に行くから!!』

 

学校の休み時間、一通のメールを見て俺は机に突っ伏した。まじで?お前なんでこっち来ちゃうの・・・・・・。今だけでいいからもしもボックスを使いたい・・・。不幸が俺に訪れる・・・・・・。

 

「隆也?なんで死んでるのかしら?あ、元からかしら?」

「やかましいぞ・・・・・・」

 

絵里が俺の横の席に座ってきた。あいかわらず毒舌で何よりだ。

 

「で?なにかあったの?」

「あったのじゃない・・・。これから起こるんだ・・」

「何が起こるって言うのよ」

「人生で1番嫌な事かもしれない・・・・・・」

「そんなに!?」

「すまないが・・・今日は帰る・・・」

「別に風邪を引いたわけじゃないんでしょ?ちゃんと講義受けなさい」

「嫌だ」

「フライパンか圧力鍋のどっちがいいかしら?」

「逃げるという選択肢をくれ」

「私は元生徒会長よ?学生が授業を受けないなんて認められないわ!」

「だぁぁああ!帰らせてくれー!隆也お家帰るぅぅぅうう!!」

「それ私の台詞よ!!」

 

逃げようと思ったが絵里に服を掴まれ逃げる手段を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

なんで俺がこんなに焦っているのかには理由がある。さっきのメールは俺の弟から送られたメールだった。別に弟が嫌いという訳じゃない。大事な奴だとは思っている。けどこっちに来て欲しくは無かった。なぜか?あいつが超モテるんだよ。あいつが出かける場所には大体女の子が3,4人ほどくっ付いているのだ。あいつがモテようが別に気にしないのだが、あいつがもし家に来てこの大学に足を踏み入れたら恐らく全学生があいつの下に全速力で走ってくると思う・・・。俺はそれを小学生の頃から高校までずっと見てきたんだ。そろそろ自分が惨めに感じてくる。

 

 

 

それで今は今日の講義全てが終わり家に帰る時間になったのだが。

 

 

「なんで今日はあんなに帰ろうとしてたのよ」

ひふぁないでくれ(聞かないでくれ)

 

ちなみに言うと休み時間に帰ろうとした時に、絵里が俺を逃がさないように完膚なきまでにボコボコにしてくれたお陰で顔がはれ上がっている状態だ。痛いよ・・・・・・

 

ま、数秒で治るけどよ。バケモノ?俺。

 

 

「なにか気になるわね・・・。今日貴方の家に行くわね」

「アホかー!絶対にこさせんぞ!今頃あいつは俺の家に来て俺の帰りを待っているかもしれない!お前とあいつを合わせる訳にはいかん!!」

「なんでよ?」

「そ、それは・・・・・・・・・」

 

い・・・言えねぇ・・・。あいつと会ったら絵里が取られるかもなんて言えねぇ・・・。

 

「なんなのよ。はっきりしなさい」

「と、兎に角だ!絶対来るなよ!」

「へぇ~・・・。隆也?そんな事言っていいのかしら?」

「あ?」

「これ・・・なーんだ?」

「へ?・・・・・・・あぁぁあああ!!」

「これ無いと帰れないわよね?」

 

絵里が持って居たのは俺の家の扉を開けるのに必要な鍵を持っていた。

 

「こ・・・この野郎・・・・・・」

「じゃ、ちゃんと私も家に連れて行きなさい?もう希もにこも呼んでるから」

「はあ!?いつ連絡を!」

「一時間前かしらね?」

「ふ、ふん!そんな簡単にあの二人が来るかよ。あいつらだって暇じゃ・・・」

 

「来てるでー」

「来てるわよ~」

「なんで来てるんだよぉぉおおお!!」

 

校門で2人はスタンバイオーケー状態。

 

「じゃ、隆也の家にレッツゴー!」

「「おー!」」

「ダレカタスケテェ~!」

 

 

 

 

 

俺の後ろに東條。絵里の後ろに矢澤を乗せ俺の家に到着でぇす!!あぁ・・・着いちまった・・・。俺の人生これで終わりだ・・・。今日の俺は何時もよりもネガティブだな・・・。

 

 

「で?そろそろ観念したらどうなの?」

「エリチから話ほんの少ししか聞いてないからよう事態が掴めへんねやけど、詳しく聞かせてな」

「いきなり呼んだからにはそれなりのことしてもらうわよ!」

 

無茶苦茶言ってくるなお嬢様方・・・。これは言うしかないな・・・。

 

「分かったよ・・・。今俺の弟が来てるんだよ」

 

「「「弟?」」」

 

「出来ればお前らに会わせたくなかったんだよ」

「別に弟がいる事ぐらいで騒ぐ事でもないでしょうに・・・」

「少し期待したんやけどね・・・。隆也君の弟かぁ~」

「私にも妹や弟いるんだけどね」

「悪いが一言言っておくぞ?お前らの想像している弟とは結構かけ離れてるぞ?」

「どうゆこと?」

「まさか!?義理の弟とか!?」

「んな訳あるか!!義理じゃねえよ!紛れも無く俺と一緒の血筋だよ!」

「じゃあ何だって言うのよ」

「今に分かる・・・・・・」

 

アパートの階段を進み俺の家の前に立ち。

 

「ちょっと待ってろ」

「「「う・・・うん」」」

 

ガチャ・・・。

 

 

「おーい。いるかー?」

「おーう。おかえりー」

 

部屋の置くから返事が返ってくる。

 

「悪いがちょっと来てくれ。客だ」

「客?それってメールにあった?」

「そうだよ。だから早く来い」

「あいよー」

 

置くからドタタと走ってくる音が聞こえてき、さきほどの返事をした人物が顔を出した。

その人物は・・・・・・。

 

 

「え!?」

「へ!?」

「うそ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、どうも!隆也の弟の信也です!絵里さん!希さん!にこさん!」

 

 

 

 

 

 

横山隆也に瓜二つの人物が出てきた。

 

 

 

「一応お前らに紹介しておく・・・。俺の双子の弟の信也だ」

 

 

 

 

 

 

「「「ふ・・・・・・双子ぉぉぉおおおお!!??」」」

 

 

 

***

 

 

 

「いやぁ~。まさかあのμ'sの3人に会えるなんて俺光栄です!」

「こっちは隆也が双子だってことにびっくりなんだけど・・・・・・」

「お兄ちゃんとは大違いやねぇ~」チラッ

「こら希。これでも信也のお兄ちゃんなんだからやめときなさい」

「これでもってなんだこの貧乳が」

「誰が貧乳よ!!」

「お前だよ!ポンコツアイドル!」

「むきぃぃぃい!!」

「おい隆也!にこにーに大してその発言は失礼だぞ!」

「なんでお前が怒ってんだよ・・・・・・」

 

 

信也が一瞬で3人と馴染んでる・・・。それもそのはず信也はμ'sの大ファンなんである。ずっとμ'sを見ていたらしく実家のこいつの部屋はアイドルグッズで一杯なのだ。信也からスクールアイドルはいいぞと薦められたことは何回もあるが記憶の隅にすら置いていない。右耳から入って左耳に抜けていく感じだ。興味がなかったからな。

 

「ところで信也。なんで俺の家に来た?」

「隆也の顔を久しぶりに見に来たんだ」

「見に来なくていい帰れ」

「えー!この3人に会えるのなんか滅多にないんだからいいじゃんか!」

「よくねえよ。俺はもう休みたいんだよ」

「じゃあ俺の家に連れて行っていい?」

「許すと思うか?」

「ですよね・・・・・・」

「お前の家遠いんだよ」

「信也君ってどこに住んでるん?」

「新潟です!」

「「「遠っ!?」」」

「実家が兵庫で、こいつは新潟の大学に通ってるんだよ」

「そうなんや~。え?隆也君関西人なん!?」

「そうだけど?」

「え・・・でも関西弁じゃない・・・・・・」

「こっちで関西弁で喋ると関西では通じる言葉が、こっちでは意味が分からないって言われるからだ」

「だから標準語なのね・・・」

 

覚えるのに苦労した・・・・・・。

 

 

「あ、そろそろ行かないと。じゃ隆也!今度いつ会うかわからないけど」

「別にいいよ。会おうと思えば会える・・・・・・」

「間違いない。じゃあ3人方!またどこかで!」

「気をつけてね」

「またね」

「にこにーの活躍に期待しときなさい!」

「はい!では!」

 

そうして信也は俺のアパートを出て新潟へと向かった。

 

 

「いい弟じゃない。大事にしなさいよ」

「そうやで隆也君。めっちゃええ子やん」

「これからも私のファンとして大事にしたいわね」

「はは・・・・・・ソウデスカ」

「けど。なんで私達にあの子を会わせたくなかったの?」

「そうよ。別に隠す事でもないでしょ?」

「んー・・・・・・。隆也君にも事情があるのかな?」

 

 

言いたく無いんだけどなぁ・・・・・・。

 

 

「あぁ・・・・・・ちょっと・・・な」

「ちょっとって何よ?」

「言っても怒らないならいいけど・・・・・」

「いいから言いなさいよ」

 

仕方ない・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「比べられたくなかったんだよ・・・・・・」

「比べる・・・・・・?」

「どうゆうこと?」

「俺はさ、昔からあいつに劣ってたんだよ。勉強も、運動も、全部弟のあいつに劣ってるんだよ俺は。高校までずっとそれでからかわれたりしてたんだ。比べられてたんだ。だけどアイツを恨んだりしたことは一度もない。けど・・・・・・お前らが見て俺とあいつを比べられたりするかもと思って会わせたくなかった。それだけの理由だ」

 

 

勉強ではあいつに負けて、運動でもあいつに負け・・・。俺のいいところは何一つなかった。信也はずっと俺を励ましてくれてたけど周りからの俺をからかう言葉の方が俺の心に響いた。もしかしたら絵里達も俺たちを見て比べるのではないかと不安に思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「あなた馬鹿?」

「へ・・・・・・?」

 

顔を上げると絵里が呆れたわと言わんばかりのため息をついた。

 

「そりゃどっちがすごいとかで比べたりするかも知れないけど、貴方にいい所が無いことなんか無いわよ。誰よりも人に優しくて、いつも自分より他人を優先してる。その人のどこにいい所がないのよ」

「絵里・・・・・・」

「そうやで隆也君。エリチの事大切にしてくれて、尚ウチらにも同等に接してくれてるやん。隆也君はいい人やで」

「東條・・・・・・」

「ま、信也の方が明るい子だと思うけど隆也はちゃんと私との約束を守ってくれている律儀な奴じゃない。私は隆也の優しくて助けてくれる。そういう性格好きよ」

「矢澤・・・・・・」

 

 

3人の言葉が俺の心に染み渡る。

 

 

「自信を持ちなさい。貴方に助けられて感謝してるんだから」

「これからも仲良くしてな?」

「ちゃんとにこにーの事を見ときなさいよね!」

「・・・・・・・・・ありがとうな。3人とも・・・」

 

目から涙が零れたがばれない様に服の袖で拭う。

 

 

 

 

「よし!今日は俺のおごりだ!なんでも食いやがれ!」

「言ったわね!容赦しないわよ!」

「ウチ焼肉食べたーい!」

「太っ腹ね隆也!遠慮はしないわよ!!」

「おう!いくらでもくいやがれ!!」

 

 

 

 

 

 

これは新学期が始まってのある一日の出来事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ。

 

 

 

 

「合計で12560円になります」

「高っ!?」

 

 

「「「ごちになりました~♪」」」




というわけで特別編終了です!最初に言っておきましょう!信也は本編ではでません。多分・・・・・・・・・。今回特別に出させていただきました笑700のお気に入り数になったとき自分感動しました。こんなにたくさんの人に読んでもらえたなんてと思うと・・・。みなさん!ありがとうございます!!

そして新しく評価してくださった!
ヒューイさん!愛のダークフレイムマスターさん!師匠さん!
ありがとうございます!!



これからも本編での日常は続いていきます!頑張って書いていくのでよろしく願いします!!


今日はここまで!次回を楽しみに!それじゃあ、またな!


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勘違いも甚だしい!

お久しぶりです


「じゃ、今からこの学部で出す大学祭の出し物考えるぞ」

 

 

俺の所属している学部全員が集められた。理由は大学祭での出し物だ。とはいってもこの学部は30前後しか人数がいないからやることは限られるが・・・・・・。

 

「お化け屋敷!」

「たこ焼き屋!」

「何かの劇!」

「キャバクラ・・・・・・」

 

まあ定番といえば定番だな。最後はおかしいけど!!?誰だ言った奴・・・。

 

「悪いが出したお題は全部他の学部がやっている。諦めろ」

 

一刀両断されたなお前ら・・・。

 

「じゃあメイド喫茶ってのはどう?この学部女の子多いし、なにより絢瀬さんがいるし!」

「え!?」

 

おぉ・・・。モブ女が意見を出した。確かにこの学部には女の子が多い。女:7男:3みたいな感じだ。しかもこの学部には元スクールアイドルこと絢瀬絵里殿が君臨しているからな。

 

「メイド喫茶で賛成の人ー」

『はーーーーーい!!』

 

ほぼ満場一致だな。賛成して無いの俺と絵里だぞ。なんで俺は賛成しないのかって?まず大学祭には参加しないと思うからな。

 

「男共は半分厨房で残りの半分は執事でいいだろ」

「はぁ!?執事!?」

「なんだ横山。嫌なのか?」ギロリ

「イエ・・・・・・ナンデモアリマセン・・・・・・」

 

ついでに言うと今俺の名前を呼んだのはこの学部の主任だ。まさに体育会系みたいな感じのガタイを持っている。睨んだだけである意味ヤクザだろ・・・。サングラスつけてスーツ着て歩いてたら絶対勘違いされるぞ・・・・・。しかも俺にだけ態度違うし・・・。おのれゴリラ・・・・・・。

 

「じゃあメイド喫茶で決まりだ。服とかは手配するようにするからサイズとかは副主任の人に伝えるように」

 

お前が女のサイズ知ったら犯罪だぜ。そこはちゃんと考えてるのな。

 

 

「絵里がメイドか・・・。なんか想像できるな。絵里はメイド服着たことあるのか?」

「あるにはあるけど、久しぶりにって感じが多いからね」

「ライブで着てた事が?」

「そうよ。ちょっと恥ずかしかったけど」

「経験豊富なことで・・・」

「これは希がからかいに来そうね・・・」

「俺は厨房だから関係ナッシング」

「へぇ・・・。私だけメイドになれと?」

「な・・・なんだよ・・・・・・」

「皆!私もメイドになるから隆也は執事ね!」

『わかったー!』

「お前ふざけんなぁあぁぁぁ!!」

「道連れよ。文句は言わせないわ」

「文句を言わせろ!!」

『じゃあ絢瀬さん!サイズ測るからこっち来てー」

「はーい!」

「コラ逃げんなあああ!!」

 

 

 

***

 

 

サイズの寸法も終わり最後の連絡を伝えるために再度集められた。

話全然聞いて無いけどな。

 

「はぁ・・・。なぜこうなった・・・・・・」

「別にいいじゃない。何事も経験よ?」

「確かにそうだが・・・、大学祭なんか行きたくないんだよ」

「なんでよ?」

「めんどくさいから」

「当日は連行ね」

「先生絢瀬さんがいじめてきまーす」

『いじめられとけ』

「酷すぎる・・・・・・」

「諦めなさい」

「諦めたらそこで試合終了だ」

「人生諦めが肝心よ?」

「俺の人生終わりかよ!?」

『横山。お前うるさいからあとでこの教室の掃除な?』

「意義ありいいい!!」

 

その後、掃除をさせられました。

 

 

 

 

 

 

時刻・午後の8時。教室を隅々まで掃除を終えやっと帰路に着いた。絵里も少しだけ手伝ってくれたけどな。す・こ・し・だ・け!!

 

「あのゴリラめ・・・。ゆるすまじ・・・」

「自業自得よ」

「元々はお前だよ悪魔」

「そう。もう言い残す事は無いわね」

「なぜそうなる?そしてなぜバタフライナイフを出した?」

「ペーパーナイフよ。死にはしないわよ」

「痛いよな絶対に?」

「大丈夫痛くないわよ」

「小さな子供に注射するときの医者か!」

「いいから準備しなさい。帰るわよ」

「あーわるい絵里。俺今日バイクじゃねえんだ」

「え?」

「迎えが来るんだよ」

 

すると向こうから一台の車が来て学校の校門前に止まった。

 

「おう。ご苦労」

「え・・・隆也?」

「じゃあまたな絵里。今日はこいつと一緒にでかけるんだよ」

「一緒に・・・・・・?その人は?」

 

車の中を覗くがよく見えなかった。分かった事は運転席に乗っている人の首には綺麗なネックレスがあった。

 

「ちょっと隆也?その人って・・・・・・」

「急いでるからまた明日な」

 

俺は車の助手席に座りそのまま絵里の前から走り去った。

 

 

 

 

 

 

 

「今のは・・・・・・・・・誰?」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「エリチどうしたん?いきなり呼び出して」

「実は希に話があって・・・・・・」

 

私は翌日希と一緒にファミレスにて食事を取っている。

 

「もしかして隆也君となにかあったん?」

「ま、まぁ・・・・・・ね。昨日の帰り道なんだけど隆也が女の人?らしき人の車に乗っていったのよ」

「女の人?どうやってわかったん?」

「車の中をちょっと覗いたらその人の首に綺麗なネックレスが掛かってたのよ。多分女の人よ」

「へぇ・・・。もしかして嫉妬?」

「ち、違うわよ!ただ隆也と一緒に居た人がどんな人か気になるだけで・・・・・・」

(それを嫉妬って言うんやと思うけどなぁ・・・・・・)

「で?エリチはどうしたいん?」

「それは勿論・・・どんな人なのか確かめるのよ!!」

「その理由は?」

「べ、別にいいじゃない!隆也が気になるとかじゃなくて!そ、そうよ!隆也がデレデレしてないかを見に行くのよ!私という恋人が居ながらデレデレしてたら許さないんだから!」

(仮やねんけどなぁ・・・・・・。ま、ウチもどんな人か気になるし)

「ええよ。じゃ一緒に行こっか」

「ありがとう希。こんど家で焼肉食べましょ?」

「やったーーーー!」

(ふふふ・・・・・・。さぁ隆也・・・・・・。貴方と一緒に居た人がどんな人なのか・・・・・・確かめてやるわ!」

 

 

 

 

 

 

 

「で?まずどうするん?」

「多分町に行っても隆也を見つけるのは無理だと思うわ。だから隆也の家に・・・・・・」

「家に?」

「殴り込みよ!!」

(物騒やな・・・・・・)

「行くわよ!」

「はーい」

 

 

 

数十分後・・・。隆也の家の前。

 

 

 

 

「到着ね。あの時みた車もあるから家の中に居るという事でいいわね」

「エリチはいつのまにス○ークみたいにになったんや・・・・・・。しかもバンダナまでつけて・・・・・・」

「よし!さっそく行くわよ!」

 

気合を入れて家の扉に続く階段を登ろうとすると・・・。

 

 

 

「絵里に希?」

「「え??」」

 

 

後ろから声を掛けられ振り向くと、伸ばしているロングヘアをポニーテールに纏め、その手には買い物袋を持っている、まさに大和撫子では無いかと言われるくらいの清楚な美少女がいた。

 

 

「海未!?」

「海未ちゃん!?」

 

 

元μ'sのメンバー。園田海未である。

 

 

 

 

「どうして2人がここにいるんですか?」

「それは私達の台詞よ!?なんで海未がここに?」

「ウチらはあの部屋の人の家に用があって来たんよ」

「奇遇ですね。私も用が会ってきたんです」

「海未ちゃんも?」

「どうして?」

「えっと・・・・・・あ、後でお話しします。今はちょっと・・・・・・」

 

顔を赤くしている海未。

 

 

「まあいいわ。私たちの目的はあの家に殴り込みよ!!」

「「物騒ですね!?(やね!?)」

「行くわよ!希!海未!」

「「お・・・おぉ~・・・・・」」

 

新しく海未が仲間に入った。

そして扉の前に立ちインターホンを鳴らした。

 

 

ピンポーン

 

 

 

『はい?どちらさまで?』

「隆也。私よ」

『なぜお前がおるのだ・・・・・・」

「話があるから家に入れなさい」

『合言葉は?』

「殺されたいのかしら・・・・・・」

『了解しましたマドモアゼル・・・・・・』

 

 

ドタタタタ・・・ガチャ

 

 

「んで?ご用件は・・・・・・」

「単刀直入に言うわ。あの車に乗っていたネックレスをつけていた人は誰?」

「え?俺の友達だけど・・・・・・」

「友達?女の子の友達なの?」

「女の子の友達?」

「そうよ!あんな綺麗なネックレス男の人がつけるわけないでしょ!?私という恋人が居ながら女の子の友達とデート・・・・・。認められないわ!!」

「お・・・おいちょっと待て。なにか勘違いを・・・・・・・・・」

「いいから!あの時に一緒に居た人は誰なのか教えなさい!」

 

絵里が顔を真っ赤にし若干涙目で俺の胸倉を掴んで言葉を投げかけてくる。

 

「え、絵里!いいから落ちつけ!!あれは女じゃない!おい!翔輝!ちょっと来てくれ!」

「「翔輝?」」

 

すると部屋の奥から。

 

 

「おうどうし・・・・・・。なにこの修羅場・・・・・・」

 

眼鏡を掛けて髪形をスポーツ刈りにし、首に絵里が見た事があるネックレスを掛けている『青年』が出てきた。

 

 

「こいつが俺と昨日一緒に遊びにいった高校時代の友達の中上翔輝だ」

「どうも」

 

 

「え?」

「へ?」

 

 

絵里と希が鳩に豆鉄砲でも食らったかのような目をパチパチと瞬きしながら俺と翔輝を見つめる。

その中、海未は手を額に当て深くため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「多分・・・・・・お前達の勘違いだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、部屋に入った絵里と希(特に絵里)は顔を真っ赤にし自分は一体何をしているのだと思い出し、体育座りを崩さなかった。(海未は別)←これ重要



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友達と後輩

「さて、なんでお前らがいるのかを説明させてもらおうか」

 

約数分前、いきなり家に押しかけてきた絵里と希。大体の予想はつぐがこの二人に聞いたほうがいいと思い、目の前で座らせている。そしてその横には俺の友達の中上翔輝と元μ'sもメンバーである園田海未。

 

「簡単に言うと、昨日の帰りの時に隆也と一緒に帰った人が誰だったのか気になってここに来たと言う訳よ」

「エリチは女の子かもって勘違いしてたらしいけどね。ウチもやけど」

「ほう…」

 

とんでもない勘違いだな。いきなり絵里たちが押し掛けてきたから何事かと思ったがこいつらの勘違いだったというわけね。まあ説明をしてない俺も悪かったのかもしれないが勘違いも甚だしいこと極まりないな。俺は絵里が好きなのに……。俺がヘタレなだけかもしれないがな………。

 

「ま、その正体はこいつだったんだけどな」

「へへへ」

「褒めてねえよ」

「マジかよ……」

「マジだよ」

「まあ謎が解けたからよかったやん。な、エリチ」

「え、えぇ…」

 

(安心したけど……なにかしら…。この胸のモヤモヤ……)

 

誰も見ていない中、絵里は自分の胸に手を当てていた。

 

 

 

 

 

 

―それから数分後―

 

 

時間が時間になってきたので、集まっている5人は一緒に俺の家で昼食をとることになった。

 

 

 

「なあ隆也くん。翔輝くんのこと教えてや。どんな人なんか気になるし!」

「あぁ。こいつは中上翔輝。俺の高校時代の友達で今はこっちに来て働いてるんだ。昨日メールで久しぶりに遊ぶぞって誘われてこいつの車に乗って出かけてたんだ」

「そうなんや。友達なんは分かったけど、隆也くんとはどういった仲なん?高校時代どんなことして仲良くしてたん?」

「どんなことっすか?そうっすね~…うーん……」

「こいつが悪いことしてたら俺が拳骨か頭突きで制裁していたな」

「「げ、拳骨か頭突き……」」

 

絵里と希の顔に冷や汗が流れる。二人の心中では、一体、この男の高校時代に何があったのかと疑問に思っていた。

 

 

「なんでお前は今それを言うんだよ!」

「何か間違ったことでも?」

「間違ってないけどよ……」

「こいつはすぐに調子に乗るからな」

「それはお前も一緒だろ!!」

「やかましい!久しぶりにぶん殴ったろか!!」

「あぁ!?やれるもんならやってみろや!」

「やったるわボケェ!!」

 

(ふ、2人の口調が関西弁に戻っってしもうてるやん……)

『二人は兵庫県出身である』←豆知識

 

 

「「やめなさい!!」」

「「ほげぇ!?」」

 

隆也の頭にフライパン。翔輝の頭には鍋がたたきつけられていた。隆也に攻撃したのは勿論絵里で、翔輝には海未が鍋を叩き付けた。

 

「こんなところで喧嘩するんじゃないわよ!そろそろ本気で大人しくさせるわよ!」

「ここは人様の家ですよ!迷惑を掛けてはいけません!」

「「だってこいつが!!」」

「「まだ足りない?(足りませんか?)」」

「「す、すんません……」」

 

ただ一人、蚊帳の外で傍観してる希は一人でポカンとしている。今の光景はとってもシュールである。背後から般若のオーラを滲み出している絵里と海未。その二人に土下座をしている隆也と翔輝。そしてその光景をこっそりと写真に収めた希。やりおる……。

 

 

 

 

「処で海未ちゃん。翔輝くんとどんな関係なん?」

「・・・・・・・・・え?」

「だって、隆也君とはほんの最近会ったばかりやんな?隆也君とは仲が良いって訳じゃないけどさっき翔輝君の頭を躊躇なしに叩いてたから結構前から仲が良いんかなぁって思って」

「それは私も思ったわ。二人はどういった関係なの?」

「えっと・・・・・・それは・・・・・・」

 

海未が顔を赤くしながら両手を合わせてモジモジしている。翔輝は焦っているのか恥ずかしいのか視線を当たりにキョロキョロさせ落ち着かないご様子。さすがにもう分かっていると思うだろうからここは俺が言おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「海未と翔輝は恋人同士。付き合ってるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「えぇぇぇ!?」」

 

そりゃ驚くはな・・・。

 

 

「本当なん海未ちゃん!?」

「いつから!?どうやって!?何があったのよ海未!!」

「い、いっぺんに質問しないでください!1番恥ずかしいのは私なんですよ!」

「俺も一応恥ずかしいけどな・・・・・・」

 

 

俺も話しを聞いたときは驚いた。高校時代は人見知りが激しくて女の人と話せないくらいだったのにも関わらず、俺と高校時代のあいつらと会わない間に1つ下の美人な彼女が出来てるんだからなあ。あれなんだろう・・・俺こいつに負けてる気がする・・・怒りで拳が凄い震えてるんだけど・・・・・・。

 

 

 

「ま、また後日話すので今は簡単な説明でもいいですか・・・?」

「ふむ・・・。仕方ないわね」

「それで今日は許してあげるよ」

 

お前らは金をたかってるヤンキーか。

 

 

「その・・・・・・6月の話です。私は一時期数名のストーカーに後を付けられてたんです」

「学校からの帰りに?」

「はい。 穂乃果やことりにも一応相談に乗ってもらったんですが、不安で押しつぶされそうだったんです。そんな時に翔輝が私を助けてくれたんです」

「そうなん?」

「まぁ・・・・・・はい」

 

はっきりしろよなお前も。後で蹴り飛ばすか。

 

「私がそのストーカーに声を掛けられた時に、車で移動していた翔輝がそれを見かけてくれて私を守ってくれたんです」

「翔輝君男前やん。どっかの誰かさんと違って」

「それは誰の事だ?アン?」

 

俺のことか。

 

 

「それから翔輝と仲良くなり・・・車でどこかに連れて行ってもらったりなどしてて、凄く楽しい日々を過ごせたんです。今でも私は翔輝に感謝してるんです・・・」

「・・・・・・っ」

 

お前顔すんごい真っ赤だぞ?これ俺から見たら単なる後悔処刑みたいなもんだぞ。

 

 

「それで一ヶ月前に翔輝から・・・・・・その・・・告白をされて・・・・・・私達は恋人同士になったわけです・・・・・・///」

 

 

「ハラショー・・・」

「海未ちゃん。いい人とめぐり合えたんやね」

「はい。凄く楽しいです!」

 

海未の満面な笑顔。こいつも凄い男になっちまったな。

 

「大事にしろよ翔輝」

「分かってるよ。お前も絵里さんを守れよ」

「別に恋人同士じゃねえけどな」

「それでもだよ。ニセモノでも恋人なんだから」

「わーったよ・・・・・・」

 

なんだか凄く恥ずかしいな・・・・・・。

 

「絵里も隆也さんとはどんな感じなんですか?」

「ど、どんな感じ!?」

「神田明神の倉庫でイチャイチャする仲やで」

「ちょっと希!?」

「お前なに余計な事言ってんだぁぁあ!?大体アレはお前のせいだろ!」

「ん?なんのこと?」

(こいつシラきってやがる・・・・・・)

 

「い、イチャイチャ・・・・・・ですか・・・?」

「そうなんよ。エリチのこと押し倒してたし」

「ちょっ!」

「お・・・・・・押し倒して・・・・・・///」

 

やばい!海未の頭から湯気が!んでもって顔が茹蛸になってる!

 

「希!それ以上言わないで!海未も私も耐えられないから!」

「そ、そうだぞ!海未も混乱して頭がパニック状態だ!」

「お、おい海未!そろそろ帰ろうな?な?」

「は・・・・・・」

「「「は・・・?」」」

 

海未の口がワナワナと震えながら開き、涙目で翔輝をにらみつけた。

 

 

「破廉恥です!!」

「俺じゃねぇっぎゃぶん!!」

 

海未のビンタが翔輝の頬にクリーンヒット。

 

「な・・・なんで俺が・・・・・・」

「彼氏の宿命だ・・・・・・哀れな男よ」

 

しっかり手を合わせて合掌するのをお忘れずに・・・・・・。

 

 

 

 

 

***

 

 

変な絡みが終了し、各自帰る時間になってきたので翔輝が海未と東條を車で送る事に鳴った。絵里?俺がバイクで送るんだよ

 

 

 

 

「じゃ、海未と希さん送ってくるわ」

「おう気をつけてな」

「絵里。また音ノ木坂にも来てくださいね」

「えぇ。希と一緒に行くわ」

「またねエリチ」

 

翔輝の運転する車に海未と東條が乗り込み、神田明神の方向へと発進していった。

 

 

 

「まさか海未に彼氏か・・・。よかったわ」

「心配性だな」

「大切な後輩なんだもの。どんな時でも心配ぐらいするわよ・・・。大切な後輩で、μ'sの時の仲間なんだから」

「・・・・・・・・・そうか」

 

俺も高校時代の友達であるあいつらがとても大切だ。色んなことがあって、すれ違う時やぶつかる時もあったけどそのお陰でより絆が強くなった。絵里やμ'sのその後輩たちもそれと一緒なのだろう。また、あいつらにも会いたいな・・・・・・。

 

 

「彼女か・・・・・・」

「なに?隆也も彼女が欲しいの?」

「そりゃ俺だってそれくらいの欲ぐらいある。お前と違ってな」

「そのように考えられてるとは心外ね。私だって彼氏ぐらい欲しいわよ」

「ほぉ。ついでに聞くがどんな奴が好みなんだ?」

 

ありきたりの質問をすると、絵里が俺の顔を凝視し、フッと軽く笑った。

 

 

「さぁね。それくらい自分で考えたら?」

「なんだよ。教えてくれたっていいじゃねえか」

「女の子はね。謎が多いほうが輝くのよ?」

「なんだそりゃ・・・」

「ほら!亜里沙が待ってるから早く私を送りなさい!もうすぐ大学祭なんだから色々と準備しないといけないのよ」

「はいはい。ほら、後ろ乗れよ」

 

絵里に予備のヘルメットを渡し、バイクに跨った。

 

「しっかり捕まれよ」

「えぇ」

 

アクセルを回し、バイクを発進させた。

 

 

 

 

 

 

 

『どんな奴が好みなんだ?』

 

 

隆也のその言葉を聞いたとき、私の心は一瞬だけドキッとした。

 

 

 

 

 

 

「私の好みの人は・・・・・・1人しか居ないわよ・・・。バカ・・・」

 

 

彼の体に手を回し、家に着くまでの間、私は彼の体から離れる事は無かった。




今回もありがとうございました!

続きも頑張って書いていくのでよろしくお願いします!


では・・・またな!


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大学祭・・・そして

あけおめことよろです!
これからもよろしくお願いしまあああああす!


○○月○○日

 

今日の大学はいつもの雰囲気では無い。今日は1年に一回だけある行事の日。大学にある学部は各々の決まった品で大学にやってきた人達をお出迎えする。

校門に入り、大学の敷地の中にある2号館と名前が付いている建物の中にある、1つの部屋に入るとそこには・・・・・・・・・。

 

 

 

『お帰りなさいませ!ご主人様!』

 

 

 

 

 

俺と絵里が所属している学部の出し物、メイド&執事喫茶であった。

 

 

***

 

 

 

「それでは注文の品をお持ち致しますのでしばらくお待ちください。ご主人様!」

「「「は、はい!!」」」

 

さすが絵里と言うべきか・・・。この店を出してからというもの、先ほどから絵里を指名してくる人が後を絶えない状態になっている。まあそれは分からなくも無い。なんたって金髪の美人がメイド服を着て100点と言えるほどの満面な笑みで接客してるんだぞ?俺でも多分指名するな。

 

 

「まさか絢瀬絵里がメイド服着てるなんてな!」

「スクールアイドル辞めてから見なくなったけどもう一度見れてよかったな~」

「エリーチカエリーチカエリーチカ・・・」

 

 

多分だと思うが絵里に会いに来た奴らの殆どはスクールアイドル時代から見てきた大学の学生だろうな・・・。1人やばい奴がいたけど・・・・・・。

 

「本当に絢瀬さんって有名だよね~。7割は絢瀬さん目当てで来た人達だよ?」

「だろうな。殆どの男の目はアイツに向いてるからな」

「横山君?持ってるお盆にヒビがいってるよ?」

「ハハハナニヲイッテイルノカナ?キノセイダヨ?」

「まあ横山君の気持ちは分からなくはないけど・・・・・・」

 

偽の恋人だが俺は絵里が好きだ。自分の好きな女が他の男共に変態の目で見られてるのだけは我慢ならない。今日でお盆3つくらい割ったくらいだ。怒りを抑えるのがやっとだ。

 

 

「恋人の横山君にとっちゃ辛い事だね」

「目から血が出るくらい辛いな・・・」

「涙じゃなくて?」

「細かい事は気にするな」

 

 

ついでに俺はと言うとなぜか指名率が中々のものであった。絵里までとはいかないが女の人達によく呼ばれている。執事役達の中では俺がダントツでトップになっている。モテるような事は特にしていないんだがな・・・。しかも大学生になるまで殆ど信也(特別ストーリー参照)の方に取られてきたからな。ガッテム・・・・・・。

 

 

「ねえねえ!隆也君、この喫茶店のおすすめってなに?」

「お・・・おすすめは・・・お客様に料理を食べさせる品が・・・・・・ございます・・・」

「本当に!?それ1つお願い!」

(マジかよ・・・・・・)

「因みに・・・・・・食べさせる執事はどなたに?」

「隆也君!!」

「・・・・・・ハラショー・・・承知いたしました・・・・・・」

 

一度厨房に戻り、皿の上に数多の茶菓子を乗せてさきほど注文してきた人の下に戻った。

 

 

「こちら、お客様専用の茶菓子でございます・・・」

「じゃ!さっそく食べさせて!」

「・・・かしこまりましたでございます・・・・・」

 

緊張が頂点に達して上手く日本語が喋れない俺である・・・・・・。

 

 

「では・・・あーん・・・」

「あーん・・・んむ・・・」

 

フォークに突き刺したカステラを口まで運び食べさせる。なんだろうこの気持ち・・・・・・。女の人に食べさせるのってこう心にグッと来るのがあるなぁ・・・。餌付けしてるみたいであれだけど・・・・・・。

 

 

「ん~!隆也君に食べさせてもらってるから余計においしく感じちゃうよ~!」

「さいですか・・・」

「もっと食べさせて!」

「承知いたしまいした・・・」

 

また茶菓子を口に運ぼうとすると・・・。

 

 

「隆也!今から休憩時間貰ったから一緒に行くわよ!!」

 

猪の如く走ってきた絵里にシャツの襟を掴まれ、文字通り拉致されてしまったのだ。

 

「うげぇえあ!?」

(く、首絞まるぅぅぅううう!!)

 

 

「りゅ・・・隆也君?・・・・・・」

 

 

その女性は途中から他の執事に嫌々食べさせられていたのだった。

 

 

 

***

 

 

絵里視点―

 

「いきなりなんだよ絵里!」

「私が休憩なんだから彼氏の貴方が付き合うのが筋ってものでしょ?」

「そんな恋人のルール聞いたことがねえよ!」

「いいから行くわよ。お腹すいたんだから」

「人の話を聞けぇ!」

 

(私という彼女がいるくせに・・・・・・隆也のバカ・・・)

 

 

けど・・・この偽の恋人の縛りがあるお陰で隆也と本当の恋人になれない・・・。その前に隆也の私に対する気持ちがどうゆう物なのかが未だによく分からない。早くこの気持ちに気付いて欲しい・・・・・・。私を本当の彼女にして欲しい・・・。最近そう思う気持ちが強くなった気がする。いつからは分からないけど・・・・・・いつも頭に隆也の顔が頭に浮かび上がってくる。

 

 

(隆也は・・・私の事どう思ってるのかな・・・・・・)

 

 

「・・・り・・・里っ。絵里!」

「ふぇ!・な・・・なに?」

「さっきから声掛けてるのになんで上の空なんだよ」

「べ・・・別になんでもないわよ!ちょっと考え事してただけで・・・・・・」

「悩み事か?相談なら乗るぞ?」

(貴方に対する悩みなのよ!このバカ!)

「なんで俺をそんなに睨んでいらっしゃるのでしょうか・・・・・・?」

「そのミクロ単位になった脳みそで考えなさい」

「俺が人間と見られているのか心配になってきたぞ・・・」

「・・・・・・バカ隆也・・・」ボソッ

 

 

(隆也は鈍感そうだとは思ってたけど・・・・・・まさかここまでだったとはね・・・)

 

「おっ。絵里!あそこの屋台のたこ焼き食べようぜ」

「え?あー・・・確かにおいしそうね」

「俺の奢りだから一杯食べて腹いっぱいになろうぜ。飯食ったら少しは楽になれるかも知れないぞ?」

「隆也にしては中々いいチョイスね。じゃ一緒に食べましょうか」

「おうよ」

 

隆也の奢りでたこ焼きを購入して大学にあるベンチに座って少し早めの昼食を取る。

 

 

「美味しいわねこのたこ焼き」

「だな。祭りのたこ焼きみたいだな」

「隆也。たこ焼きとコーラ買ってきなさい」

「おいコラ。お前は暴走族のリーダーか。パシリに使うんじゃない」

「冗談よ。本気にしちゃだめよ」

「この野郎め・・・モグモグ・・・」

 

 

楽しい・・・。隆也と居ると退屈しないって言うか・・・凄く楽しい。隣に居ると凄く胸が熱くなって心地いい。これが恋心だっていうのは流石に気付いてる。けどそれを意識すると顔が凄く熱くなってくる。ドキドキしすぎて胸が張り裂けそう・・・・・・。

 

「さてと、そろそろ昼休憩も終わりだし戻るか」

「そ・・・そうね・・・」

 

いや・・・。まだこの時間を終わらしたくない・・・。もっと、隆也と一緒に居たい。

 

 

「ねぇ・・・隆也」

「ん?どうした?」

「そ・・・その・・・今日の大学祭が終わったら・・・時間ある?」

「まぁ・・・あるけど・・・」

「なら・・・・・・終わったら・・・大学の中庭に・・・・・・」

 

来て欲しいと言うとした瞬間。

 

 

 

 

「絢瀬さーん!」

「へ!?」

 

遠くから学部の私と仲がいい、店で隆也の横で一緒に喋っていた同じメイド役のしている友達の『藍菜さん』が手を振りながら近付いてきた。

 

「あ、邪魔だったかな?」

「だ、大丈夫よ。ところでどうしたの?」

「えっとね。さっき店に絢瀬さんに会いたいって人が来てさ。居ないこと伝えたらこれを渡してきたの」

「手紙?」

「もしかしたらラブレターかもしれないよ!」

「ら、ラブレター!?///」

「マジかよ・・・」

 

隆也の顔が暗くなっていたけど今はそれを見て見ぬフリして話を続けた。

 

「とにかく、確認しましょう」

 

手紙の封を破り、中に入っている一枚の紙に書かれている文を読み上げた。

 

「『絢瀬絵里さんにお話ししたいことがあります。12時に2号館の裏で待ってます。霧生(きりゅう)より。』誰かしら?」

「霧生って○○学部の1年生じゃない!しかも今凄くモテてるって聞いたことあるよ!」

「面識は無いのだけれど・・・」

「これっておもいっきりラブレターよ!さすが絢瀬さんね~」

「で、でも私には隆也がいるのに・・・・・・」

「じゃあ丁重にお断りしないとね」

「そ、そうよね。12時・・・って!もう後5分しかないじゃない!」

「早く行って来いよ。多分そいつも相当な勇気を出して告白してきてるだろうからよ」

「う、うん!じゃ行ってくる!」

 

私は手紙をメイド服のポケットに入れ、2号館の方向へと走っていった。

 

 

 

 

「絵里はいつまで経ってもモテるんだな」

「あれれ~?横山君嫉妬?」

「うるせ。あいつの恋人なんだから嫉妬するに決まってるだろ」

「可愛いところあるんだね~」

「この前お前が絵里の学食のおかずを絵里が居ない間に盗った事あいつにチクってやる」

「わーわーわー!ごめんなんさーい!調子にのってごめんなさーい!」

「よろしい」

 

 

(だが一体なんなんだ・・・。あの手紙を見てから収まらないこの嫌な予感は・・・・・・)

 

 

 

 

***

 

 

 

 

私は急いで2号館に待っている霧生という人物に会うために出せる全速力で走った。

 

「もう・・・。私は隆也っていう好きな人がいるのに・・・・・・」

 

多少の愚痴を零しながら2号館の裏に到着する。そこには髪の毛を金髪に染め上げている人物がいた。

 

 

「あ、絢瀬さん!来てくれたんですね」

「えぇ。手紙を読ませてもらったわ。話って何かしら?予定が詰まっているから急いで欲しいのだけれど」

「す、すいません。実は絢瀬さんを呼んだのは・・・・・・その・・・」

 

大体予想はつく。この人は大学が始まってから私に告白をしてきた人達と一緒だと思う。けど今回も彼ら同様告白は丁重にお断りさせてもらう。私には心から好きだと思う人がいるから。

 

「どうか・・・・・・」

「はい・・・」

 

 

霧生さんの口がゆっくりと開いた。早くこれを終わらせて2人の元に戻らないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死んでくれませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え・・・・・・・・・?」

 

 

霧生さんの手には銀色に輝くナイフが握られていた。

そして霧生さんはナイフの持っていない手で私の肩を掴み地面に押し倒してきた。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

ブチンッ!

 

「どわっと・・・」

「どうしたの横山君?」

「いや、靴紐が切れただけだ。大丈夫だ」

「え?その靴ってこの前届いた新品の靴じゃ・・・・・・」

「あぁ・・・。そうなんだけどな・・・」

 

 

 

冷たい風が俺の頬を撫でて流れ去っていった。

 

 

(絵里・・・・・・?)




はい。お久しぶりのあとがきです。色々とばたばたしていたお陰でやっと執筆する事ができました。誰かぁあああ!執筆できる時間をオラに分けてくれえええ!
バカはこれぐらいにしておきましょう。(゜-゜)

そして新しく評価してくださった!
ラジストさん!鈴木集さん!メシさん!tatumiさん!ありがとうございました!

なんとかして時間を作り書いていきたいと思います!

次回は一体どうなるのか・・・・・・。そして隆也は・・・・・・。



評価、感想お待ちしております!



では今回はこの辺で!では・・・・・・またな!!


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アクシデント

 

「きゃあ!?」

 

 

霧生さんに肩を掴まれ、地面に押し倒されてしまう。

私を押し倒した直後、ナイフを持っていない手で首を掴まれギリギリと締め付けられる。

 

「な・・・なに・・・を・・・ぐぅっ・・・・・・」

「言ったでしょ?死んでくださいって?」

「どうして・・・・・・こんなこと・・・・・・」

「おぼえていますか?一年前に行われたラブライブ地区予選を」

「よ・・・・・・せん・・・・・・?」

「貴方達μ'sはスクールアイドルトップと呼ばれていたA-RISEを破ったスクールアイドルの新星。俺はそこが許せなかったんですよ・・・・・・。今まで頂点に君臨していたA-RISEがほんの少しの期間でしか活動していなかったちっぽけなグループがラブライブを優勝したことにねぇ!」

 

首を掴んでいる手に力が入り私の呼吸を本気で止めにいた。

 

 

「あぁっ・・・・・・うぅぁ・・・・・・」

 

ほんの少ししか出来ない呼吸をしながら考えた。この男の人は心からA-RISEを応援していたファンの一人だろう。私達がA-RISEを負かした事でファンからしたら私達を良くない物と思う人は少なくはないはずだ。私達は最終予選であった合同記者会見で私達のリーダーである穂乃果が堂々と優勝宣言をしたのだ。おそらくアレもこの人に対して火に油を注いでしまったのだと思う。

 

 

「という訳でA-RISEに楯突いた罰として死んでもらいます。心配はいりませんよ?一緒にいたあの男も殺すんで」

「っ!?」

 

あの男・・・隆也の事だと言う事はすぐに分かった。なんで?なんで隆也まで殺されなくていけないの?あの人は何も関係ないのに・・・。また、前みたいな事で隆也を巻き込みたくない!

 

 

「じゃ、これでお別れです。遺体は別のところに隠しておくので・・・・・・」

 

霧生は持っていたナイフを振り上げ、その狂気に走ってしまい濁ってしまっている目で私を睨みつけてきた。

 

 

体が恐怖で震えてしまい身動きがとれない状態。目には涙を浮べ怖いあまりに目を閉じてしまった。もう駄目だと思ってしまった。

 

 

(私・・・・・・死ぬのかしら?こんなアニメや漫画でありそうなシーンみたいなことで・・・・・・。もうみんなには会えないのかしら・・・。μ'sの皆・・・大学で友達になってくれた皆。妹の亜里沙・・・・・・。そして・・・・・・・私の偽の恋人になってくれた隆也・・・)

 

脳裏に次々とその人達の顔が横切っていく。これが走馬灯というものなのか・・・。隆也の顔が浮んだ瞬間、隆也と交わしたある言葉を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いいか絵里。お前はある意味有名人なんだ。いついかなる時に色々な方法でお前に襲ってきたりや近付いてきたりする奴がいるかもしれない。ほんの少しの護身術は覚えとくべきだ』

『柔道でも習えってこと?』

『さすがにそこまで言わない。お前でも覚えられる護身術を教えてやる』

『どういったものよ』

『これは男女に共通することだ。人間の体には中央線ってものが存在する。文字通り人間の体の中央、真ん中にある上から下まである人間の見えない線だ』

『中央?』

『ここは人間の急所がたくさんある場所だ。聞いたことあるだろ?顎を殴ったりしたら脳が揺れたりとか鳩尾を殴ると吐くとか』

『聞いたことはあるけど・・・』

『もし襲われたりしたらそこを狙え。女に襲われるって事は無いと思うけどたぶん男には襲われる可能性はあると思う。多分・・・・・・』

『襲われたくないのだけれど・・・・・・』

『それが1番だが備えあれば憂いなしっていうだろ?一応知識として覚えとけ』

『分かったわよ。貴方に教えられるのがちょっと癪だけど・・・・・・』

『今だけは目を瞑ってやろう・・・・・・・。でだ、お前みたいな女でも出来ることは二つある。ひとつは顎を殴る事だ。適度な強さで殴ると脳は脳震盪を起こす。けどそれは隙があるときだけにしろ。もう1つは・・・・・・・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はもう一度目を開け霧生の急所部分が何処にあるのか確認する。今は私が完璧に霧生に押し倒されている状態だ。左手は私の首に、右手はナイフを持っているので彼の胴体は隙だらけだ。でも体勢上腕で顎を殴ることはできない。ならば最後に残っている急所は下半身。

 

 

 

 

『もう1つは男が蹴られたら1番痛い場所だ。さすがにお前でも知ってるだろ?人間で特に急所と呼ばれている場所・・・・・・・・・股・・・。股間だ』

 

 

 

 

 

 

「ていっ!」

「うげぁ!?」

 

足で彼の股間を思いっきり蹴り上げた。ちょっと場所はずれたがヒット。その衝撃で彼の私の首を掴んでいた手が離れたので押し倒されている状態から脱出できた。

 

(やった!隆也に教えてもらったのが役にたった!ありがとう隆也!)

 

霧生が蹲ってるので急いでここを離れようと思った。メイド服のスカートの裾を掴んで走り去ろうとした。

 

「このアマぁ!!」

「きゃっ!」

 

蹲っていた筈の霧生が起き上がり私の服を掴んで自分の方に寄せてきた。

 

「は、離して!!」

「こっちが本気にならなかったから調子に乗りやがって!」

 

霧生の手に力が入り、メイド服の生地をビリビリに引き裂いてきた。

 

「いやああぁああ!」

「その綺麗な胸にこのナイフをおもいっきりブッ刺してやるよ!」

 

両手を左手で握られ抵抗が出来ない。下着が露になった胸に向かってナイフが振り下ろされた。

 

 

 

「死ねやぁあ!!」

 

 

 

 

抵抗してもこのような結果になってしまった・・・。涙が頬を伝って地面に零れ落ちた。

 

 

 

 

「隆也・・・・・・助けてよぉ・・・・・・」

 

 

 

 

 

バキィッ!

 

 

「ぐはぁ!」

「・・・・・・・・・え?」

 

 

ナイフが胸に刺さる感触ではなく、優しく私を抱き寄せてくれた感触だけがあった。

 

霧生が少し離れた場所まで吹っ飛ばされ、頬には殴られた後があった。

そして誰が私を抱き寄せているのか確かめるために視線を上に上げていく。するとそこには急いで来てくれたのか額に汗を浮ばせ、私を左腕で優しく抱きしめてくれる、私の好きな人が居た。

 

 

 

 

 

 

「絵里・・・・・・またせたな・・・・・・」

「隆・・・・・・也ぁ・・・・・・」

 

 

 

***

 

 

 

 

俺がここまで来たのは絵里が心配だったからだ。絵里は気にすることが出来なかったのかもしれないが今の時刻は12時30分だ。すぐに断れるはずの告白にここまで時間が掛かっているのは流石におかしいと思った。絵里の友達の愛菜さんも少しオドオドしていたくらいだ。んで2号館の近くまで来てみたら絵里の悲鳴が聞こえるから見てみたら絵里が下着丸出しの状態で金髪の男に捕まっている図が目に入った。頭で考えるより先に体が動いて金髪の男を殴り飛ばしたわけだ。こいつが霧生か・・・・・・。思っていたよりイケメンだが性根はクソ野郎だな。

 

 

 

「隆也・・・隆也ぁ!」

「怖かったな絵里。もう少し早く気付いてれば良かったんだけどな」

「怖かったわよ!もう少しで殺されるかと思ったわよ!なんでもっと早く来てくれなかったのよ!」

 

絵里が俺の胸倉を掴んで大粒の涙を流しながら訴えかけてきた。

 

「悪かったって・・・。ごめんな・・・」

「うぅっ・・・・・・ぐすっ・・・・・・ひぐっ・・・・・・」

 

絵里が俺の胸に顔を押し当ててて肩を震わせながら泣き崩れる。よほど怖かったのだろう・・・。恐怖でさっきから体が震えっぱなしだ。

 

 

「いってぇ・・・。てめぇ・・・」

「結構思いっきり殴ったのに意外とタフだな」

「なんで俺の邪魔をするんだよぉお!どいつもこいつも俺の思ったとおりに行かしてくれないんだよ!もう少しでその女を殺すことが出来たのに!」

「お前の御託はどうでもいいんだよ。俺は今絵里が傷つけられた事に腹がたってんだよ」

「殺す!お前みたいな奴が凄くムカつくんだよ!殺してやる!その顔斬り刻んで胸をメッタ刺しにする!殺す!殺す殺す!コロスコロスコロスコロス!!」

 

霧生はもう怒りが頂点に達したのか何も考えられなくなったのか、手に持っていたナイフを握りなおし、口から涎を垂らしながら最後には『殺す』という言葉しか出ていなかった。

 

 

「まるで薬中毒者だな」

「隆也・・・・・・どうするの・・・・・・?」

「なんとかしてこいつを黙らせないとな・・・。今の俺たちの立ち場所じゃ逃げれない」

 

2号館の裏は大学を覆っている柵が建物に溶接されている唯一の場所。上から俺たちの場所を見たら三角形の形をしている感じだ。そして俺たちの背後にははその溶接されている場所がある。簡潔に言うと逃げ道が無い。霧生の後ろが俺が入ってきた裏への入り口。絵里を連れて走って逃げるのは無理がある。結論・・・・・・。

 

 

「ぶちのせすか」

「隆也!?相手はナイフ持ってるのよ!?今は逃げないと!」

「流石に今の状況じゃ逃げれない。今愛菜さんに大学に来てる翔輝と教授達を呼んできてもらってる。それまであのキチガイを止める必要がある。一応ナイフ相手の護身術は受けてる。心配するなよ」

「でも!」

 

絵里の言葉を聞く前に着ていた服を絵里に着せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫。ちゃんと守るから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絵里の頭を優しく撫で霧生の方に振り向くと・・・。

 

 

「横山隆也ぁああああ!」

「っ!」

 

ナイフを俺に向かって振り下ろしてきた。ナイフの使い方を知らないのか大振りすぎて動きが読める。ナイフが当たる瞬間に横にローリングし攻撃を避けた。

 

「死ねよぉお!」

「少し黙れ」

 

今度は横に振ってきたナイフを避け、ナイフを握っていた腕を掴み外側に捻る。

 

「あぐっ!」

「っ!」

 

腕を捻って隙が出来た瞬間、右手で霧生の片方の服の袖を掴み左手で霧生の服の襟を掴み俺のほうにおもいきり引き寄せ自分の腰を捻り、テコの原理で霧生の腰を浮かし、左足で霧生の内ももを蹴り上げる。

 

 

柔道技『内股』

 

 

ドシィンッ!

 

 

「がはっ!」

 

蹴り上げ霧生の体を地面に叩きつけた後、手からナイフを捥ぎ取り腕を捻り上げた。

 

「いてててて!おい離せ!」

「ん?仕方ないな。なら離してやるよ」

 

手を離す前に、霧生の利き腕と思われる右腕の関節をおもいきり外した。

 

ゴキンッ

 

「あ"あ"っ?!」

「おー・・・いい音なったな」

 

ナイフを捥ぎ取ったがまた取られたら面倒なので奴から離れた場所の放り投げた。

 

「教授たちが来たら一緒に警察のところに行ってもらうぜ。完全に刑務所行きだろうけどな」

「・・・・・・っの野郎がぁ・・・・・・」

 

 

 

絵里視点―

 

 

凄い・・・。その一言だった。隆也が柔道をしていたのは知っているけどナイフ相手に簡単に倒してしまった。バトルアニメでありそうなシーンを見たような感じがする。

 

 

「かっこいい・・・・・・」

 

無意識にその一言が出た。

 

 

 

 

 

「絵里。大丈夫か?」

「う・・・うん。大丈夫・・・」

「怖い思いさせて本当に悪かったな。怪我がなくてよかった」

「ううん・・・。隆也が助けにきてくれたからよかった・・・・」

「とにかく今はここから離れよう。翔輝たちもそろそろ来るだろうからな」

「えぇ・・・そうね・・・・・・っ!?」

 

 

 

隆也から少しだけ目を逸らした瞬間、目に入ってきたのは懐から出したもう一本のナイフを持って霧生が隆也に飛び掛っている姿だった。

 

 

「隆也後ろ!!!」

「っ!?」

「死ねぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

グサッ!!

 

 

 

「っ!!あがぁっ・・・・・・・・・ぬぅああ!」

「ぐへあっ!」

隆也が霧生の腕を掴みそのまま腰を捻り一本背負いをした。

地面に鈍い音を立てて霧生はそのまま気絶した。けど私が目に入ったのはそこではない。

 

 

(さっきのナイフは・・・・・・?)

 

隆也の足元を見ると、真っ赤な水たまりが出来ていた。振り返った隆也のお腹を見るとナイフが隆也の腹に深く突き刺さっていた。その傷口から血が滝のように地面に滴り落ち、どんどん真っ赤な水たまりが大きくなっていった。

 

 

(・・・・・・血・・・?)

 

 

自分の顔を触ると少量だが隆也の帰り血が頬についていた。そして視線を隆也に移すと。

 

 

 

 

 

「絵・・・・・・里・・・・・・・・・だい・・・じょう・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

隆也の口と腹から血が出ていた。

 

 

 

 

ドサッ

 

隆也はまるで糸が切れた人形のように地面に倒れた。その倒れたところから血が止まる事は無い。

 

 

 

 

 

「隆・・・・・・也・・・?」

 

隆也の体に触れ摩ってみる。だが隆也から返事がない。

 

 

「隆也・・・・・・ねえ隆也・・・・・・隆也ってば・・・・・・・・・」

 

何度声を掛けても隆也から返事が返ってこない。さっきまで止まっていたまた涙がどんどん溢れてきた。

 

 

返事してよ・・・・・隆也・・・・・・。早く目を開けてよ・・・・・・・・・。

 

 

 

涙が隆也の顔にこぼれていく。だが案の定のこと・・・返事は無い。

 

 

 

 

 

 

 

「いやあああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数分後後。隆也は教授たちの手で救急車まで運ばれ、私は翔輝さんと一緒にその救急車の後に続いて病院に直行した。




どもどもみなさん。シリアスの襲来ですね。パターン青ですね!自分はこんな時に何を言っているんだ・・・・・。

さて隆也が刺されて意識不明に陥りました。これから一体どうなるのかは次回で!!



感想・評価お待ちしております!


それでは今回はこの辺で!では・・・またな!!


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目覚めぬ病室で・・・・・

「もう駄目だ・・・エリーチカ・・・さらばだ」
「ちょっと何縁起でもないこと言ってるのよ!」
「ここまでのようだ・・・・・・強く生きろよ・・・」
「やめてよ!こんなところで諦めないでよ!」
(ドッキリなんだけどなぁ笑)
「貴方がここで死んだら・・・誰が私にお金を貢ぐのよ!」
「ってそこかーーーい!!(゜o゜)」


ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・

 

 

 

ここは東京で1番近い大病院こと、『西木野病院』の個室の病室。病室には心拍数、脈拍、脳波を測る機材と数本の点滴と酸素マスクをつけている隆也と、その隆也が横たわっているベットの横で椅子に座っている私しかいない。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・隆也・・・」

 

ガラッ

 

 

「今、大丈夫かしら?」

「真姫・・・・・・」

 

病室に入ってきたのはこの西木野病院を経営している西木野先生の娘、元μ'sで今の音ノ木坂の2年生の西木野真姫。恐らく今回の出来事があったことを先生から聞いて来てくれたんだろう。

 

 

「話はパパから聞いたわ。災難だったわね・・・・・・絵里」

「私はいいのよ。けど・・・・・・隆也が私を庇って・・・・・・」

「急いで手術したおかげで傷口はすぐに塞げたわ。傷はすぐ治ると思うわよ。けど出血があまりにも・・・・・・」

「じゃあ・・・このまま目が覚めなかったら・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・なんとも言えないわ・・・・・・」

「そんなぁ・・・・・・隆也ぁ・・・・・・うわぁぁぁぁあ!!」

 

私は涙が止まらなかった。自分のことで2度まで隆也を巻き込んでしまった。しかも今回は私を庇ってまで・・・・・・。なんでこの人がここまで傷つけられなきゃいけないのよ・・・・・・。この人は何もしていないのに・・・・・・。

 

 

 

「絵里・・・・・・・・・」

「真姫・・・私はどうしたらいいの・・・?私には何も出来ないの!?」

「この人が絵里のどういった人なのかは私は分からないわ。けど・・・貴方を守ってくれた強い人よ。信じてあげなさいよ・・・・・・。この人は貴方の『ヒーロー』なんでしょ?」

「真姫・・・・・・うん・・・。私は信じてみるわ・・・・・・隆也を」

「それこそ絵里よ。じゃまた来るから後でね」

「えぇ・・・・・・ありがとう」

 

ガラッ・・・ピシャ・・・

 

 

 

 

 

 

ベットで寝ている隆也の頭を優しく撫でた後に隆也の左手を優しく両手で包み込む。

私はこの言葉が隆也に届くとは思えない・・・。けどお礼が言いたい・・・。

 

 

「隆也・・・・・・。私は大丈夫よ?貴方が私を守ってくれたから傷1つ無いわよ・・・・・・。私っていつも隆也に助けられてばかりよね・・・・・・。前に貴方は言ってくれたわよね?なんで私を助けてくれたの?って聞いたら・・・『助けるのに理由が必要か?』って。貴方はいつでも私を助けてくれる・・・・・・。理由がなくても助けてくれる貴方は私のヒーローよ・・・。だからお礼を言わせてちょうだい・・・・・・。これだけのお礼じゃ足りないと思うけど言わせて・・・・」

 

 

 

 

 

『私を守ってくれて・・・ありがとう・・・・・・』

 

 

 

 

 

この時、隆也の手がほんの少し動いたのは絵里も気が付かなかった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

あれから5日。隆也はまだ目を覚まさなかった。私はいつも大学が終わった後に隆也の病室に行っている。時には希と・・・時にはにこと・・・。私は病室に行くとすぐに涙を流してしまうようになってしまった・・・。その時希とにこが励ましてくれているけどやっぱり堪える事は出来なかった・・・・・・。考えられることじゃなかった・・・。自分の好きな人がこんなことになることが・・・・・・。今自分が隆也に出来る事が目を覚ます事を祈る事しか出来ない事が悔しかった・・・・・・・。自分の無力さに腹が立つほどだった・・・。

 

 

「今日も・・・隆也は目を覚まさないか・・・・・・」

 

 

いつも通りに大学での講義を終わらせて病院に向かった。受付で挨拶を済ましエレベーターで隆也の病室の階まで上がり、いつも通りに真姫のお父さんとお母さんに顔を見せた後、お供え用の花を持ちながら部屋に入ると見かけない人が居た。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「あの・・・・・・誰ですか?」

「ん?・・・あぁ、どうも。隆也の父親です」

「え!?あ・・・・・・こ、こんにちわ!」

「そんなに改まらなくいい。絢瀬絵里さん・・・ですよね?」

「なんで・・・私の名前を・・・・・・」

「西木野先生に聞いたんだ。いつも隆也のお見舞いに来てくれている金髪の美少女がいるって」

「そ!そんな美少女だなんて!///」

「ははは。まあ座ってください」

「は、はい・・・失礼します・・・」

 

隆也のお父さんは凄く逞しい体をしている人だった。肩幅は隆也よりもあるし背丈だって隆也より高い。これぞ大人の男みたいな人だった。

 

 

「先生から話は聞いた。こいつは貴方を庇ったんだって?」

「はい・・・。私が襲われているところを助けてくれました・・・・・・」

「そうか。『こいつもやっとそれくらい出来る男になった』訳か・・・」

(それくらい・・・・・・?)

「刺されたのは予想外だけどな」

「そう・・・・・・ですね・・・・・・」

(何も・・・・・・言えないわね・・・・・・)

 

 

少しの沈黙の後、隆也のお父さんが口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こいつはさ、こんなに強くなかったんだ」

「え?」

「小さな頃からずっといじめられててな。中学校では3年間ほぼ1人みたいな状態だったんだ」

「そんな時期が・・・・・・」

(少し・・・信じられないわね)

「中学校の頃は毎日がいじめられる日々だった。部活はバスケ部に所属してたけどそこでもいじめられて大好きなバスケが出来なかったくらいなんだ」

「今の隆也から見たら信じられない事ですね」

「まあな。けど高校では恵まれたんだ。部活では仲のいい友達も増えてな。あの翔輝もその1人だ。クラスでも仲良くなれて毎日が楽しいってこいつ自分から言い始めてきたんだ」

「そうなんですね。隆也も救われたんだ・・・・・・」

「だが、一度だけ辛い事があったんだ」

「?」

 

 

「ある日のことなんだが、中学校の頃の同級生に告白されたんだ」

「え・・・・・・」

「流石に最初は疑ったがこいつはそれよりも嬉しいって気持ちが強かったんだ。あんな事があったけど今では自分事が好きになってくれたんだって」

「それのどこが辛い事なんですか?」

「この話には続きがあるんだ。その告白してきた奴はその日からLINEばかりで会おうとはしなかったんだ。高校で1番仲のいい部活の友達に相談したんだが、それは騙されてるっていうのが答えだったんだ」

「騙されてる・・・・・・」

「隆也はその言葉を信じたくなかったんだがこのままでは駄目だって友達たちに気付かされて告白してきた女は中々自分に顔を見せないから電話で白黒つけさせたんだ。そしたらそいつは電話でこう言った」

 

 

 

 

 

『お前みたいなクズに本気で好きだと思ってるの?死んでくれない?』

 

 

 

 

 

「!?」

「こいつにとっちゃそれがどれだけ辛い言葉だったか・・・。しかもその告白はその女だけが考えたことじゃなかった。隆也の中学生の同級生とその女の友達合わせて10人くらいが考えたことなんだが・・・・・・そいつらにとっちゃその告白は隆也に対するドッキリ程度のこととしか考えてなかったんだ」

「酷すぎる・・・・・・」

「隆也は悲しみと怒りで大変なことになった。電話ではその女に対して隆也は本気で怒って怒鳴り散らした。その女はその言葉を聞かずに即効で電話を切って逃げたんだ」

「最低っ・・・・・・」

「だが隆也に降りかかった悲劇はこれだけじゃなかったんだ。その後まったく知らない番号で電話がかかってきた。内容は『お前なに俺の友達泣かしてんだよ。覚悟しとけよ?』ってな。その電話は告白を考えた男でこれは仮説なんだが女が裏で隆也を懲らしめてって言ったんだろうな。その電話があった次の日に隆也は男たちにリンチにあって体にも心にも大きな傷を負ったんだ」

「酷すぎますよ!なんで隆也がそんな目に!!」

「俺も話しを聞いた時は怒りを抑えられなくてな。その計画を考えた奴らの家を中学校時代の講師から聞いて1つずつ回って隆也の前に土下座させてな。これでも足りないかってくらい俺も怒鳴った。けどその時の隆也はいつもの隆也じゃなかった・・・」

 

 

 

 

 

 

『もう・・・・・・どうでもいい・・・・・・』

 

 

 

「隆也はそいつらに対して怒りなんてなかった。心がまるでミキサーで掻き混ぜられたくらいにぐちゃぐちゃだったんだ。学校では偽の表情まで作って高校の友達には心配させないように振舞っていたんだ」

「なんで・・・・・・隆也がそんな目に・・・・・・」

 

握っている拳から血が出そうだ・・・・・・。隆也にこんな過去があるなんて・・・・・・。酷いって言葉じゃ足りないくらいだ。

 

 

「その心の傷を癒してくれたのはこいつが高校2年生になったときに部活に入ってきた新入生の女の子と同級生の男友達だったんだ。治すのに時間は掛かったが隆也は完全に元通りになったよ。隆也は泣いてそいつらに感謝してお礼を言った・・・・。本当にこいつが恵まれてるって実感したな」

「よかった・・・・・・」

 

 

うっすらだが今の話を聞いて私も涙が出た。隆也にいい友達ができて本当によかった。

 

 

 

「それで隆也が元に戻ったある日の事なんだがな・・・・・・。家で俺にむかってこいつはこういったんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺は父さんみたいに強くなりたい!俺を想ってくれたあいつらを守りたい!!あいつらを助けてあげたい!俺が守りたいと想う人を守れるくらいの人になりたい!これが・・・俺を助けてくれたあいつらに対するせめてもの恩返しなんだ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隆也・・・・・・・・・」

「んでこいつは高校時代に学校の部活をしながら柔道を始めたんだ。自分が守りたいと想う人を守れる存在になるためにな」

「それで柔道を・・・・・・」

「これで話は終いだ。悪いな、長々と・・・・・・」

「い、いえとんでもないです!聞かせていただきありがとうございます!」

「ふっ。そろそろ俺も帰る時間だ・・・・・・。後は美少女に任せよう」

「だから美少女じゃ!!///」

 

荷物を片手に持ち部屋を出た隆也のお父さん。けど病室の部屋の扉を閉める前に一言だけ私に言葉をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今の隆也の守りたい人は貴方なんだろうな。こいつの事・・・よろしくな」

 

 

 

 

 

 

「え・・・・・・?」

 

 

ガチャ・・・・・・バタンッ・・・・・・。

 

 

 

 

 

***

 

 

翌日:午後

 

 

 

 

 

「じゃ、病院に行きましょうか」

 

講義が終了し身支度を済ませる。今でも学部の友達には目を覚まさないと伝えている。真姫のお父さんは普通なら目覚めると思うんだがって言ってたけどなんで隆也はここまで目を覚まさないんだろう・・・・・・。

 

 

「早く・・・起きなさいよね。バカ隆也」

 

今日は希とにこも来るとの事なので急いでいこう。

 

 

ピリリリ・・・・・・ピリリリ

 

(電話?)

 

「希じゃない・・・。もしもし?」

『エリチ!?今何処!?』

「何処って学校だけど?」

『急いで病院に来て!早く!!』

「ちょっとどうしたのよ。なにかあったの?」

『何かあったとかじゃないねんよ!』

 

希がこれでもかってくらい焦っているのが分かる。

 

 

「落ち着いて希。どうしたのよ?」

 

 

 

私は、次に発した希の言葉に冷静さを失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『隆也君の心臓が止まったんよ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 

 

 

 

 

私の手からスマホが滑り落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

ダダダダダダ!

 

 

 

「希!にこ!」

「エリチ!」

「絵里!」

 

 

希の声を聞いてバイクで急いで病院に到着し、隆也の病室に飛び込んだ。

そこで目に入ったのは希とにこ。そして数名の医師が隆也のベットに群がってる姿と心拍数が止まっているのを表す機材だった。

 

 

 

「なん・・・・・・で?」

「ウチらが来た時はお医者さんが部屋に入っててずっと人工呼吸をしてたんよ!」

「さっきからずっとしてるのに心臓が動かないのよ」

「心臓が・・・・・・動かない・・・・・・?」

 

 

なんだろう・・・。希たちの声は聞こえるけど頭ではその言葉の意味が理解出来ていなかった。

 

 

 

「このままじゃ駄目だ!AED!」

「準備できました!行きます!3、2、1!!」

 

 

バシュッ!ガタンッ!

 

教習所でみた貼り付けるAEDとは違う、まるでアイロンのような形をした電気パッドを隆也の胸に当て電気を流す。電気を流した瞬間隆也の体が跳ね上がるが心臓が動く気配はない。

 

 

「まだだ!もう一度だ!」

「はい!3、2、1!!」

 

 

 

バシュッ!ガタンッ!

 

 

だが、何度同じことをしても隆也の心臓が動く事はない。

 

 

 

「もしかして・・・・・・隆也君は・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・いやよ・・・・・・いやぁ!!」

 

私は医者がいるのをお構い無しに隆也の元に駆け込んで隆也の手を握った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隆也!死んじゃ嫌よ!!こんな事で死なないでよ!私を守ってくれるんでしょ!私のこと置いていかないでよ!まだ貴方に言ってない事があるのよ!!私は・・・・・・貴方が好きなのよ!私を守ってくれる・・・助けてくれる貴方が好きなのよ!『ニセモノ』の恋人じゃなくて・・・私の本物の・・・『ホンモノ』の恋人になってよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

涙が隆也の手にポツリと零れ落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の・・・・・・私の側にいてよぉ・・・・・・隆也ぁ・・・・・・隆也ぁ!!」




はいどうもでござる。残念ながらシリアスは続くのでした。なんだか凄いことになっていると自分でも思っておりますです。・・・・・・・・・ついでにこれを考えたのはお風呂の時だったのは内緒で・・・・・・笑


新しく評価してくださった!
美波みさん!機動破壊さん!コープさん!滝沢さん!
ありがとうございました!


では今日はこれにて。感想・評価お待ちしております!


では・・・・・またな!!


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目覚めの時

「我の癒しの場所はお風呂である」
「奇遇ね。私もよ」
「まさに!肉体と精神と心の洗濯機!すべてを洗い流すのだ!」
「貴方の煩悩も流されてしまえばいいのに」
「それは不可能だ。俺の煩悩を処理する事は出来ぬ!」
「なら硫酸ですべて流しましょう」
「WRYYYYYYYYYY!!」


???―

 

 

 

「ん・・・・・・・・・ここは・・・・・・?」

 

全てが白で埋め尽くされている世界が目に入ってきた。右をみても左を見ても白。なぜ俺はここにいるんだ?

 

「確か俺は絵里を庇って腹を刺されたはず・・・」

 

腹を見てみると傷跡は残っていた。が・・・痛みがまるでなかった。

 

「あ・・・・・・もしかして俺って死んだ?」

 

アニメで転生したりや死んだときは普通ではない世界に行くってあったけどもしかしてここがその世界だったりして?

 

『違うで』

「へ?」

 

聞き覚えのある声が聞こえる。声は俺の後ろから聞こえた・・・。後ろを振り向くと。

 

 

『久しぶりやね。隆也』

「お婆ちゃん・・・・・・?」

 

亡くなった・・・・・・俺のお婆ちゃんがいた。

 

 

 

『隆也はまだ死んでへんよ。まぁ・・・死にかけってとこやな』

「それってほぼ死んでるのと変わらないような・・・・・・」

『隆也がここに居るんは天国と現実の狭間におるんよ』

「天国と・・・現実の狭間?」

『ここで隆也に聞くよ?隆也はどこに行きたい?』

「どこに行きたい?」

『天国に来るか、現実に戻るか・・・やな。隆也の自由やで』

「つまり・・・俺が望めばどっちかの世界にいけるって事?」

『そう。お婆ちゃんと一緒に天国に行くのも1つの道。隆也が望めば今生きてきたあの世界にもいける。隆也はどっちがいい?』

「どっちか・・・・・・」

『好きにしなさい。隆也の選ぶ道やで』

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

現実の世界・・・。俺はあの世界で苦しい日々を経験してきた。中学校の奴らにはいじめられ、高校では遊び心で俺の気持ちを弄ばれ続けた。死にたいって何度思ったことだろうか・・・・・・。けど・・・死ぬのが怖くて自分を終わらせる事も出来なかった。所詮弱い奴が強い奴に劣るんだと思った。けど、あいつらが・・・・・・あいつらが俺を救ってくれた。心が壊れていた俺を・・・優しく癒してくれた。感謝してる。それでは足りないと思うほどに感謝している。あいつらを守りたいと思った。それが恩返しになると思っていた。俺が強くなってあいつらを守りたいと心に誓った。心のどこかであいつらを守り抜いたと思っていた。

 

 

(もう・・・俺は必要ないかな・・・・・・)

 

 

お婆ちゃんの方に歩を進めようとすると脳裏にあいつの声が聞こえた。

 

 

 

『隆也!!』

 

(絵・・・・・・里・・・・・・?)

 

 

大学であいつと出会った。偽の恋人になって、一緒に過ごして、毎日喧嘩して、一緒に遊んで、ごたごたで別れて、仲直りして、そして絵里を好きになった。だが、心のどこかで高校時代の俺の気持ちが邪魔をしていた。またあの時と同じ思いをするんじゃないかって思っていた。

 

 

だけど、あいつを守ってあげたいと思った。深い理由は無いけどあいつを助けたい、守りたいと思うぐらいだ。

俺はあいつが好きだ。一緒にいたいと思った。あいつの側に居たい。

 

 

 

 

 

 

 

『隆也!死んじゃ嫌よ!!こんな事で死なないでよ!私を守ってくれるんでしょ!私のこと置いていかないでよ!まだ貴方に言ってない事があるのよ!!私は・・・・・・貴方が好きなのよ!私を守ってくれる・・・助けてくれる貴方が好きなのよ!『ニセモノ』の恋人じゃなくて・・・私の本物の・・・『ホンモノ』の恋人になってよ!!』

 

 

 

 

 

(絵里!!)

 

 

 

 

 

 

『隆也?決まったかな?どっちに行くのか』

 

 

俺が行くのは・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

「お婆ちゃん」

『ん?』

「おれさ、今守りたい人がいるんだ」

『守りたい人?』

「そいつはさ、素直じゃなくて、いじっぱりで、ツンデレでさ。よく俺はそいつに振り回されてるんだ。最初は嫌いなタイプって思う奴だったんだ。けどさ・・・・・・一緒に居るたびに色々と分かったんだ。笑顔が可愛くて、明るくて、元気で、無意識に俺の心をドキドキさせてくるんんだ。俺はそいつが好きなんだ。その人は・・・・・・俺が守ってあげたいって決めたんだ。まだあっちにはあいつが居るんだよ。あいつを1人にしたらまた悲しい顔すると思うんだ。あいつの悲しむ顔はもう見たくないんだ。あいつの笑顔を見るのが俺の幸せなんだ。生まれて初めてあいつと一緒にいたいと心の底から思った」

 

 

 

 

 

 

 

 

「大事な人を置いてはいけないんだ」

 

 

 

 

 

 

お婆ちゃんは笑顔で答えてくれた。

 

『そっか。なら早く行きなさいな。お婆ちゃんいつでも見てるから』

「ありがとうお婆ちゃん!元気でな!」

『幸せにね。隆也』

 

 

 

 

 

(待ってろよ!絵里!)

 

 

お婆ちゃんに背を向け一直線に走った。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピー・・・ピッ・・・ピッ・・・

 

 

「心拍数戻りました!安定してます!」

「なんだって!?」

「奇跡だ!生き返った!」

 

 

 

「隆也!!」

「隆也君!」

「隆也!」

 

 

 

ゆっくり目を開くと、そこには俺の右手を掴んで涙を流している絵里。俺を囲んでいる医者と、東條と矢澤が居た。

 

 

 

 

 

「絵・・・・・・里・・・・・・」

「隆也!」

「俺・・・・・・生きてる?」

「生きてるわよ!さっきまで死んでたのよ!」

「はは・・・・・・。そっか・・・・・・・・・」

 

頭がまだボーッとしているが、自分が生きているという事ははっきりと分かった。

 

 

 

 

 

 

「良かった・・・。隆也君が目を覚まして・・・・・・」

「本当に・・・心配させるんじゃないわよ!!」

「2人も悪かったな・・・・・・・・・ありがとう・・・・・・」

 

東條もにこも涙を流しながら俺の目覚めを喜んでくれた。

 

 

「では我々は西木野先生に報せてきます」

「「では」」

 

医者たちは場の空気を読んでくれたのか病室から姿を消した。

 

 

「じゃウチらもみんなに連絡してくるね」

「海未たちにも連絡してくるから!絵里、隆也の事よろしくね」

「え・・・えぇ・・・」

 

 

ガチャ・・・バタンッ

 

 

 

「なんだが・・・・・・気を使わされちゃったわね・・・」

「だな・・・・・・」

「けど、本当によかった・・・。隆也が目を覚ましてくれて・・・・・・」

「そうだな・・・・・・お婆ちゃんのお陰かもな・・・・・・」

「お婆ちゃん?」

「いや・・・・・・なんでもない・・・・・・」

 

俺はゆっくりと起き上がり、絵里の頭を優しく撫でた

 

 

 

 

 

 

 

 

「絵里・・・・・・」

「なに・・・・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺もお前が好きだ・・・・・・。俺の・・・本当の恋人にしてくれないか・・・?」

「っ!」

 

絵里は顔が真っ赤になり、少しだけ慌てふためいたが、すぐに冷静になり目に浮んでいた涙を指で拭った。

 

 

 

「私も・・・・・・隆也が好き・・・。私の・・・ホンモノの恋人になってください!」

「あぁ・・・」

 

 

絵里の笑顔。綺麗で・・・愛らしい。ここにもう一度誓おう。絵里の全てを守ると。

 

 

 

 

 

「ただいま・・・絵里」

「おかえり・・・隆也」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在の時刻は夕方。窓から差し込んでくる夕日に照らされながら俺と絵里は正真正銘、ホンモノの恋人同士になった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

それから何日が経過した。俺の体調は良い方向に進み、腹の傷が治りかけまで回復したので無事に退院する事が出来た。小さいころから俺は怪我をしてもすぐに治る回復力を持っていた。ここにきて覚醒した模様・・・・・・。

絵里、東條、矢澤には日を改めて感謝を込めてお礼をした。俺のせいで迷惑をかけてしまったことのお詫びに全員の好きなものを買ってあげた。絵里には高級チョコ、東條には焼肉の食べ放題、矢澤にはアイドルグッズ多数。かなり金がなくなったが後悔はしていない。

そして俺と絵里は正式に恋人同士になった。東條と矢澤は「あんな大胆に告白して」とからかわれ、絵里は数日の間おもいっきりいじられる羽目になった。見ていて滑稽だったな。大学の奴らにも心配され色々とごたごたしたが心配してくれたことの嬉しさが身に染みた。翔輝含め高校の奴らには腹を刺されたことより絵里と恋人同士になったことをねたましく思われ夜中のイタ電が無り止む事はなかった。

(あいつらいつかぶっ飛ばす・・・・・)

父さんにお礼を言ったら「もっと強くなれ」の一言だけ言われ電話を切られた。その言葉がどれだけ重く深い意味があるのかを理解し心の奥にとどめることにした。

 

因みに霧生はあの後逃亡したらしいが見事に捕まったらしい。誰が捕まえたのかを聞いた時はあいつバカだなって思ったな。

 

 

 

「隆也は霧生が誰に捕まったのか知ってるの?」

「あぁ、絵里は父さんと会ったけど職業知らなかったな。俺の父さんの職業は警察で刑事なんだよ」

「え!?じゃあ霧生を捕まえたのって!」

「俺の父さんだ」

 

俺の父さんは追跡は上手いらしくなんの手を使ったのか影で隠れていた霧生を柔道技でボコボコにして捕まえたらしい。

 

「ついでに柔道は俺と一緒の二段だけど俺より強いな。一度も勝てた事が無い」

「隆也の父さんって何者・・・・・・?」

「昔は兵庫の怪物って呼ばれてたらしい」

「聞かなかったことにしておくわ・・・・・・・」

 

 

 

 

父さんに見つかった時の恐怖は俺も熟知している。まさに怪物だ。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「んで?なんでお前は俺の家に居る?」

「今の貴方じゃろくに家事できないでしょ?今日は泊り込みよ」

「マジで?」

「マジよ。いいでしょ・・・・・・その・・・・・・恋人同士なんだし///」

「お・・・おう」

 

恋人同士になってからというもの、絵里が可愛く見えてきた。いや元から可愛いのだが・・・・・・。ちょくちょく俺の萌えポイントを狙撃してきやがる。おのれ絵里・・・・・。

 

 

「もう今日は寝るだけでしょ?早く寝なさいよ」

「あー・・・いやそうもいかなくてな。絵里がくれた大学のプリントとか整理したいからな。絵里は先に寝てていいぞ」

「・・・・・・そう、わかったわ」

 

絵里の返事が怖い・・・・・・。

 

 

 

 

 

現在の時刻23時。さすがに入院した日が多すぎたお陰でプリントが多すぎる。またこれを覚えなきゃいけないんだよなぁ・・・。

 

「少し一休みするか」

 

シャーペンを机に起き、椅子に座りながら固まった体を伸ばす。伸ばした時にこの頃動いていないからかバキバキと音がなる。

 

「早く運動しないとな・・・・・・」

 

コンコンッ

 

 

「ん?絵里か?」

「えぇ。今大丈夫?」

「大丈夫だ。入ってもいいぞ」

「じゃ・・・・・・じゃあ・・・・・・」

 

ガチャ・・・。

 

 

ドアをノックし、絵里がゆっくりと入ってきた。だが俺は驚いたのは絵里の服装だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ど・・・どうでしょうか・・・・・ご主人様・・・・・・」

 

 

 

 

 

メイド服を着た絵里が居た。

 

 

 

 

大学で着ていたものとは違い、黒を多めに白を少なめにしたメイド服。しかも胸元が開き谷間が顔を出している。そして黒のニーソックス。ミニスカートだからニーソックスとスカートの間から見える絵里の太ももが凄く魅力的だ。しかも髪の毛をいつものポニーテールじゃなく下ろしている。いつもの絵里とは違う雰囲気が逆に可愛らしい。

 

しかも止めの一撃で恥ずかしがっている絵里の表情がエロい・・・・・・。

 

 

 

「えっと・・・・・・なんで?」

「そ・・その隆也の退院のプレゼント・・・」

「プレゼント・・?」

「え、えぇ・・・。似合わないかしら・・・?///」

 

そんな上目遣いで見ないでくれ・・・・・・。

 

「凄く可愛いと・・思うぞ・・・。似合ってる」

「本当?よかった・・・。似合ってなかったらどうしようって考えてた・・・・・・」

 

ホッとしたように呟く。

 

 

 

「メイド服を着た絵里が見れたからこれは中々なプレゼントだな」

「あっ!いや・・・・・・その・・・・・・」

「へ?」

「そ・・・その・・・・・・///」

「どうした?」

 

絵里がモジモジしながら目を泳がしている。

 

 

 

「えっと・・・・・えいっ!」

「どうした・・・え・・・っうおわぁ!?」

 

絵里が椅子から立った俺をそのままベットに押し倒し、体を密着させてきた。

 

 

 

「え・・・絵里さん?」

「その・・・・・・しが・・・・・・ゼント・・・」

「な、なんだって?」

 

声が小さすぎて全部聞き取れなかった。

 

 

 

 

 

「私が・・・・プレゼントよ・・・///」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 

 

 

「だ、だから!私が隆也のプレゼントよ!二回も言わせないでよ!///」

 

(ツンデレ最高・・・・・)

 

 

「絵里が・・・俺へのプレゼント・・・・・・?」

「・・・///」

あ、頷いた・・・・・・。

 

 

「その・・・隆也にはなにもお礼が出来てないから・・・・・・男の子って・・・こういうのが好きなんでしょ?///」

「嫌いでは・・・・・・ありません・・・・・・」

(むしろ大好物です・・・)

 

 

 

「隆也は・・・私の恋人でしょ・・・?彼女がこんなことしたらどうするかぐらい分かるでしょ///」

「なんで・・・こんな事・・・」

「隆也には感謝しきれないくらいの恩があるわ・・・私の恋人にもなってくれた・・・。だから・・・・・・隆也に私のはじめてをあげたいのよ///」

「俺でいいのか・・・?」

「隆也がいいのよ!隆也しか嫌なのよ!もう隆也のあんな姿は見たくないのよ・・・・。貴方が居なくなるのが怖いのよ・・・・・・。だから私を抱いて!貴方を忘れないようにして!貴方を・・・・・・愛させてよ・・・・・・」

 

俺の首に腕を回し力一杯抱きしめてくる。だがそれと同時にからが震えているのが分かる。

 

 

「絵里・・・。俺は君が好きだ・・・勇気を出してこんなことしてくれて俺は嬉しいぞ。もう絵里を悲しませないようにするからさ。もう泣くなよ・・・・・・」

「な・・・泣いて無いわよ・・・・・・」

 

うそつけそんな涙溜め込んで・・・。

 

親指で絵里の涙を拭う。

 

 

 

「隆也が大好き・・・・・・ずっと一緒に居なさいよ・・・?」

「あぁ。約束するよ・・・・・・絵里、大好きだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そっと目を閉じた絵里の頬に手を添え、ゆっくりと近付き俺と絵里の唇が合わさった。

 

 

 

 

 

「ん・・・・・」

「んぅ・・・・・・」

 

触れるだけのキス。けどそれだけでも俺にとっては心地いいものだった。

 

 

 

 

 

「隆也ぁ・・・・・・」

「絵里・・・・・・プレゼント・・・・・・貰っていいか?」

「はい・・・・・・プレゼント貰ってください・・・・・・ご主人様ぁ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

色気のある表情を見せられ俺は我慢ができなくなり・・・絵里のメイド服に手を掛けた。

 

 

 

 

 

 

「ぅあ・・・・・・・・・///」

「絵里・・・・・・いただきます・・・・・・」

 

 

 

 

そこから俺は頭が真っ白になり、気づいた時はもう朝になっていた。




どうもみなさんこんちくわ!!めでたく隆也と絵里が本当の恋人になりました~。長かったこれまで・・・あっというまだった。←(どっちだよ)


そこでこれを読んでくださった皆さんにお知らせです。
話のネタがたまに思いつかないことがあります。そこで皆さんにネタを提供して欲しいわけです。リクエストって奴ですね笑。ジャンルはなんでも構いません。皆さんが提供してくださったネタで小説を書いていきたいと思います。グロや精神崩壊などやそういった辛いものは出来る限り無しでお願いします笑(エロも大丈夫です。上手く書ける保障はありませんが・・・笑)

活動報告の方でリクエスト募集します。期間は1月12日の23時59分までとします。その活動報告は新着活動報告一覧にはありません。わたくしのユーザーページにある活動報告にありますのでそちらからお願いします!
期限は短いと思いますがそこは気にしないようにお願いいたしますですます。



そして新しく評価してくださった!
コナミさん!倉崎さん!竹千代さん!蒼瑪瑙さん!
ありがとうございます!




さてこれからは頑張って2人をイチャイチャさせていこうかなと思います!
働け!我が煩悩!覚醒せよ!我が妄想力ぅう!

バカはこれぐらいにしておきましょう笑


それでは今回はここまで!感想・評価お待ちしております!

では・・・・・・またな!!


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デート&ばったり

えぇー・・・皆様、リクエストありがとうござざざざざいます!予想していたより多くリクエストいただきました。感謝感激雨あられです(イミワカンナイ!)

さてさて、リクエストの中には作者の我輩にとって興味深いものが多々ありました。フフフ・・・・・・やりおる・・・・・・。

それででして!今回の話は『東雲アキ』さんが考えてくれた『隆也の寝顔を眺めてるエリチを、寝ぼけた隆也が布団に抱き込む。』と『緑竜』さんが考えてくれた『デートしたら別のμ'sメンバーにばったり』の二つを取り入れた話を作りました。
因みにその二つを入れたストーリーを考え付いた場所はお布団の中でござる。


ではどうぞ。


朝の8時。

 

 

ピンポーン・・・ピンポーン

 

「隆也ー起きてるー?」

 

返事が無い。私こと―――絢瀬絵里は私の彼氏である横山隆也の住んでいるアパートに訪れていた。今日は彼との本当の恋人になっての初デート。今まで遊んではいたが昨日から緊張とドキドキでよく眠れたのかすら覚えていない。けど目覚めは良かったので2人で食べるお弁当を作り隆也を迎えに来た。けど案の定起きては居なかった。

 

「まったく・・・・・・」

 

鞄から隆也の家の合鍵を取り出し鍵を開けて中に入った。この合鍵は隆也と恋人同士になったその日に貰ったもの。隆也曰く・・・。

 

『これならいつでも俺の家に来れるだろ?』

 

とのこと。もう・・・そんなこと言われたらずっと会いに来ちゃうじゃない・・・・・・。

 

 

玄関から入り台所を抜け、居間にある扉を開けるとそこには。

 

 

「ぐぅ・・・・・・んぅ・・・・・・」

 

 

布団の中ですやすやとまるで泥の様に眠っている隆也がいた。

彼が眠くなるのも無理は無い。入院している間中々勉強できないでいたのだ。いつもの寝る時間を削って学部の皆に遅れを取らない様に必死に勉強していたのだ。昨日も勉強に集中しすぎて疲れて今もこうやって眠っている。

 

 

 

「いつもお疲れ様・・・隆也」

 

布団から出ている頭を優しく撫でながら寝ている隆也の寝顔を観察する。

 

 

「そういえばこうやって隆也の顔じっくり見たことないわね。いつも張り詰めた感じで険しい表情だったから」

 

けど今はどうだろうか。まるで親に寝かしつけられた無垢な子供みたいな顔だ。

 

「男にしては睫毛が長い・・・・・・男の癖に生意気」

 

人差し指で隆也の頬をツンツンとつつく。

つついてみるとまるでマシュマロのように柔らかい・・・・・・。逞しい男がこんな柔らかいなんて・・・・・・。

 

ツンツン・・・・・。

 

「・・・・・・んぅ・・・・・・」

「っ!?起きたかしら・・・・・・」

「・・・・・ぁう・・・・・・」

「あうって・・・・・・可愛いわね」

「んんー・・・・・・・・」

 

隆也がまだ寝ぼけているのかボォーとした間抜けな顔で私の顔を見つめてくる。

 

 

「・・・・・・・・ぇり・・・・・・?」

「そうよ。ほら起きなさい」

「・・・・・・ぁうぅ・・・・・・・・・んん・・・」

「あ!こら布団の中に逃げるんじゃないわよ!」

 

布団の中にモゾモゾと動きながら身を隠していく。

 

 

 

 

 

 

「隆也!早く起きな・・・・・・きゃっ!!」

 

布団の中から隆也の腕が伸びてき私の腕を掴み布団の中に私の体ごと引き込んだ。

布団の中に入ると隆也が私を抱き枕代わりにしているのかその大きな体で私の事を抱きしめてくる。

 

「ちょっと隆也!寝ぼけてないでおきなさいよ!///」

「んん・・・・・・」

 

だが言葉は届かず隆也はより一層私の事を力強く抱きしめてくれた。

 

(り、隆也が近い!///しかも布団から隆也の匂いがするからドキドキが止まらない・・・・・・っじゃなくて!///今は逃げないと!)

 

 

 

「隆也!いい加減おきなさいよ!///」

「んぅ・・・・・・・・・あぐっ・・・」

「ひゃあっ!?///」

 

隆也が軽く私の耳を噛んできた。稀に言う甘噛みだ。私も漫画でしか見たこと無いがリアルでされるとよく分からない感覚が背筋を走った。ゾクゾクした感じで体がビクビクと震える。

 

 

「あぐ・・・・・・あむ・・・・・・」

「ぃや///隆也ぁ///ちょっとぉ・・・・・・///」

 

隆也は止めることなく、寧ろ何回も繰り返して私の耳を責めてきた。

 

 

(き・・・気持ちよくなんか・・・・・・ないんだからぁ・・・///)

 

けどこれ以上やられたら私もおかしくなりそうだ。今日はデート。ここで時間を潰すわけにもいかない。

 

 

 

 

 

 

「い・・・いいかげんにしなさぁあああい!!!」

 

バッチイイイイン!

 

「ふげばがぁ!!?」

 

 

 

***

 

 

 

 

絵里に叩き起こされた俺は凄い形相で睨まれながら支度し絵里と一緒に家を出た。今日はバイクに乗らず電車で秋葉原に移動し、少し小腹が空いたので駅の近くにあるファミレスで軽い昼食を取った。

 

 

 

「・・・・・・痛い」

「貴方が悪いんでしょ!?寝ぼけていきなり私を抱き枕にして!」

「抱き心地最高だったぞ」

「・・・・・・・・・・・・・・」ギロッ

「すいません・・・・・・」

 

絵里が超怖い・・。確かに今回は俺が悪いとは思うけどそこまで怒らなくてもいいだろ・・・・・・。

 

 

「・・・・・・・・・かん・・・なさいよ・・・・・・」

「え・・・?」

「時と場所を考えなさいよ・・・・・・///」

「・・・・・・・・・っ・・・おう・・・」

 

(時と場所を考えたらいいのかな・・・・)

 

「さっき時と場所を考えたらいいのかなって思ったでしょ?」

「心読むなよ!」

「もうずっと居るから隆也の考える事ぐらい分かるわよ」

「どんだけ俺のこと好きなんだよ・・・・・・俺もお前の事好きだけど」

「破廉恥よ!」

「お前は海未か」

 

やれやれ・・・・・・。

 

「とにかく!今日はとことん付き合ってもらうわよ!」

「はいはいお嬢様。俺はどこまでも付いて行きますよ」

「よきにはからいなさい」

「こんにゃろうめ・・・・・・」

 

ファミレスで軽く食事を取った後、絵里に連れられて町に繰り出した。

 

 

***

 

 

「ねえ隆也。こうゆうのどうかしら?」

「ふむ・・・もう少しシンプルな色でいいんじゃないか?」

 

絵里とショッピングセンターに入り冬用の服を購入するために洋服屋に訪れた。

絵里が見せてきたのはカラフルな色で使われているパーカーを見せてきた。色使いは女の子向けだな。明るい色を万遍なく使い色鮮やかなスタイルにしている。

 

「隆也だったらどんな色がいいの?」

「俺の服は母さんがいつも買って来てたからなあ。俺好みに単一色の服を買ってくれてたな」

「単一色?」

「俺は濃い色が好きでな。黒や白とかそういう色が好きかな」

「シンプルねぇ。それもありかしら」

「絵里は水色が似合いそうだな。濃い色よりそっちの綺麗な色の方がいいと思う」

「水色・・・・・・ならこれとかどうかしら?」

 

絵里が手にしたのは水色一色でできたパーカーで右胸のところに『The strange power』と書かれている。後でGoogleで調べたら不思議な力という意味。

 

「いいと思うぞ。家での普段着とか俺の家での泊まりの時に使えるな」

「そうね、ならこれを買いましょう。隆也も一緒のもの買いましょ?」

「俺は別にいらないと思うが・・・・・・」

「もう。乙女心分かって無いわね・・・・・・彼氏と一緒のペアルックの服がいいのよ」

「ペアルック?」

「私達、一緒の物って持ってないじゃない?今日は私との初デートなんだから」

(本当の恋人になってのだけど)

「記念にってことか?」

「そ!お揃いよ」

「分かったよ。なら買っとくか」

「ハラショー!あと他にも見ましょ!」

「お、おいおいそんなに急がなくても服は逃げないぞ」

 

絵里が俺の手を握り洋服屋の奥へ奥へと歩を進めた。その絵里の表情は本当に楽しんでるのが分かる・・・・・・笑顔がキラキラ輝いている、眩しいほどに。

 

 

 

 

「これなんてどうだ?絵・・・・・・あれ?どこいった?」

 

絵里の服を探して店の中に進んでると隣にいた絵里を見失っていた。店の中を歩き回っていると絵里の姿を見つけた。そこで絵里は何をしていたのか見てみた(覗いてみた)ら、なにやら小さな棚の前で立ち止まって何かを持っていた。

 

「何持ってんだあいつ・・・・・・・・・・・・あ」

 

チラッと見たら、手になぜやら黒色のコスプレ用の猫耳を手にしていた。ってかなんで洋服屋に猫耳があるんだよ!そして絵里さん!?なんで猫耳もってその場から動かないんですか!?

 

 

「猫耳・・・・・・これつけたら隆也に可愛いっていってくれるかしら・・・?猫みたいにナデナデしてもらったり・・・・・・って!私は何を考えてるの!」

 

猫耳にでも目覚めたのかお前は・・・・・・確かにお前が猫耳つけたらかわいいと思うぞ。猫耳メイド服・・・・・・ありだな。というか絵里。お前最初の頃と比べると甘々になったな・・・・・・。

 

 

「1つだけ・・・・・・隆也にばれないように買っていこうかしら」

 

背後からこっそり・・・・・・。

 

「いいと思うぞ?」

「え!?」

 

凄い勢いで俺の方に振り向く絵里。その顔は真っ赤になっており口をパクパクさせながら目を右へ左へとキョロキョロさせている。

 

「ああああっ!・・・・あの・・えっと・・・・・・その///」

「でも絵里なら黒より白の方がいいかもな」

「あわわわわ!///」

「えっと・・・・・・絵里さん・・・・・・?」

 

プルプルと震えだし顔を伏せている。錯覚かもしれないが頭から湯気が出ている。

 

 

「ば・・・・・・・・・」

「ば?」

 

 

あ・・・・・・顔上げた。しかも涙目だ。

 

 

 

「ばかあああああああ!!///」

 

絵里の得意技、目潰しである。

 

ブッスゥ!

 

 

「にぎゃああああああああ!!?」

 

 

 

洋服屋に俺の断末魔の叫び声が響き渡る。

 

 

 

***

 

 

 

 

「もう!隆也のバカ!デリカシーのカケラもないゴミ!」

「ゴミ!?」

 

絵里がお怒りだ。それも叱り・・・さっきの一部始終を見てしまったので絵里の恥ずかしさが限界までに達している。目潰しで済んだのが幸いだな。

 

「絵里・・・もう怒るなよ。悪かったって」

「今日は抱き枕にされるし恥ずかしいところも見られるし・・・・・・顔から火が出そうよ!」

「だから悪かったって・・・・・・わざとじゃないんだから」

「ふんっ!」

 

そっぽを向かれてしまった。んー・・・・・・どうしたものか・・・・・・・・・。

 

 

「隆也・・・・・・」

「ん?」

「んっ」

「へ?」

 

いきなり俺の前に自分の右手を出してきた。

 

 

「い・・・いくらだせば許してくれる・・・・・・」

「お金じゃないわよ!なんで財布を出すのよ!」

 

違うのか・・・・・・。

 

「その・・・・・・手・・・///」

「手?」

「手を握ってくれたら・・・・・・許してあげる・・・」

「へ??」

「手を繋いでって言ってるのよ!ニブちん!」

「ニブちん・・・・・・」

「ほら早く!」

「お、おう!」

 

左手で絵里の手を握り返すと俺の側によってくっ付いてきた。

 

 

「隆也のバカ・・・・・・ばーか」

「バカバカ言いすぎだぞ・・・・・・」

「けど・・・・・・好き・・・」

「っ!?///」

 

不意打ちだ!そんな上目遣いで俺の目を見てくるなぁああ!!

 

 

「ふふっ。顔真っ赤ね」

「うるせ///」

「ほら、まだ時間あるんだから他のところにも行きましょ」

「あぁ。次はどこに行く?」

「そうね・・・・・・次は・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

絵里が俺の手を握りなおし、指を絡めてくる。そしてこのまま別の店にでも足を運んで楽しいデーとを再開しようと思っていたが、まさかこんな所で『彼女たち』と鉢合わせることになるとは思っていなかった。

 

 

 

 

「久しぶりの秋葉だね~!」

「そうだね。やっぱりここはいつきても変わらないね!」

「ちょっと穂乃果!ことり!あまり人がいるところで騒いではいけません!」

「けど、さっきの男の人の叫び声はなんだったのかにゃ?」

「なんだが、誰かに襲われて出した断末魔の声だったような・・・・・・」

「凛に花陽。そんなに気にしても何にも出ないわよ?」

「そういう真姫ちゃんが1番気にしてるような~?」

「な!気にしてなんか無いわよ!!」

「もう貴方達はいつまで経っても変わらないわね~。希も何か言ってあげなさいよ」

「まあまあにこっち。これがいつもの皆やねんからええやん!」

「しょうがないわね~」

 

 

 

俺たちの前には、オレンジ色の髪の毛をサイドテールに纏めている子、グレーの髪の色で左側の髪の一部の根元を輪にして結んでいる子、山吹色でショートヘアで語尾ににゃんをつけている子、やや黄緑色よりの髪の毛でセミショートヘアの子、髪の毛が真っ赤でセミロングヘアの子、そして顔見知りの海未に矢澤に東條。

 

 

 

 

 

 

 

そう・・・・・・彼女たちは『μ's』だ。

 

 

 

 

 

 

「「あ・・・・・・」」

「「「「「「「「あ・・・・・・」」」」」」」」

 

 

 

お互いの目が一致。すると彼女達の口が一斉に開いた。

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「絵里(ちゃん・ち)!?」」」」」」」」

 

 

 

 

瞬間、彼女達は一斉に走り出し絵里に抱きついてきた。

(おれ?瞬間に避けたよ)

 

 

 

「絵里ちゃんだー!久しぶりー!」

「絵里ちゃん!会いたかったよぉー!」

「絵里。お久しぶりです!」

「絵里ちゃんとの再会にゃー!」

「絵里ちゃん!なんで秋葉に?」

「絵里久しぶりね。この前あったばっかだけど」

「絵里の顔を久しぶりに見た気がするわ」

「エリチとの久々の再会~!」

 

「そうね。みんな久しぶり!元気にしてた?」

 

 

完全に女の世界になってる・・・・・・・・。なんだろうか。ピンクの空間が見える。

 

 

「み、みんな?とにかくここじゃ人の邪魔だから別の場所行きましょ?」

「わかった!絵里ちゃんに続け~!」

「わぁ~い!」

「ちょっと貴方達!少し静かに!」

「テンションあがるにゃー!」

「凛ちゃん置いてかないでよ~!」

「もう・・・イミワカンナイ」

「どこにいこうかしら?」

「カフェにでも行こか~」

 

 

 

すると、その彼女達は絵里の後ろに続いて移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は?」

 

 

 

絵里が連れて行かれたので、彼女達から離れて付いて行き、全員がカフェに入っていったので俺は1人静かに寂しくカフェの近くにあるベンチで大人しくコーヒーを飲みながら待つ事にした。

 

 

 

 

「苦い・・・・・・」

 




いかがでしたでしょうか。これを作っている時凄い甘々だなぁと感じながら書いていました。コーヒーを飲みながらしていましたが凄く甘い味でした。(ブラックなのに!)

そして皆様本当にリクエストありがとうございました!ありがたいことに沢山いただきました。このリクエストを元に書いていこうかなと現在考えています。妄想がふくらむぅ・・・。

そして新しく評価してくださった!
⊂((・x・))⊃さん!ジョースターさん!gamdanhiさん!ムラサキ@さん!チュッパチャップスさん!
ありがとうございます!

次回ですが『メシさん』のリクエストの『音ノ木坂の里帰り』と『チバチョーさん』の『音ノ木坂学院の案内をしてもらう』を取り入れた話を作りたいと思います。なんだか雰囲気似ている感じはしますが、里帰りの方を久しぶりの訪問のような感じにします。
里帰りというより久しぶりに母校に帰ってきましたー!みたいな感じのほうが分かりやすいかと。勝手で申し訳ありません。
そして絵里には隆也の学院案内をしてもらいましょうかね。一体何が起こるのやら・・・・・・。信じるか信じないかは・・・貴方次第です!!(#^.^#)←(アホ)



では今回はここまで!感想・評価お待ちしております!



では・・・・・・またな!


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μ's&音ノ木坂

さて今回は『メシさん』のリクエストの『音ノ木坂の里帰り』と『チバチョーさん』の『音ノ木坂学院の案内をしてもらう』を取り入れた話を作りました!久しぶりに再会したμ's!

なんとか頑張って書いてみました!少し変かもしれませんが気にせず読んでいただければ幸いです!

そして今回・・・・・・『あの曲』も入れてみました!

ではどうぞ


「絵里ちゃんとまさかこんなところで会うなんてね!」

「それは私の台詞よ。穂乃果たちがここにいることがびっくりよ」

「私たちは練習で使うスポーツドリンクなどを買いに来たんです」

「学校でたときに希ちゃんとにこちゃんと会ったから一緒にいこうってなったんだよ」「ウチとにこっちも久しぶりに練習でも見に行こうかなって思ってたんよ」

「あなた達がどれだけ上手くなったか見に来てあげたってわけよ!」

「ドジのにこちゃんがそれ言う?」

「ぬぁんですってー!」

「まあまあ真姫ちゃんもにこちゃんも落ち着くにゃ」

「「落ち着いてるわよ!!」」

「凛に怒らないでよー!かよちーん!」

「凛ちゃんよしよし…」

 

カフェにみんなで集まり久しぶりに言葉を交わす。みんな元気でよかったわ。私たちが音ノ木坂を卒業してなかなか出会う機会がなかったから心配していたけど全員変わりなくてよかった。

 

 

「ところで絵里ちゃんはなんで秋葉原に?」

「そうそう!一人で来たわけじゃないよね?」

「私?今日は隆也とデートしに……あ!」

「「「「「「「「?」」」」」」」」

「そうよ!私は隆也と一緒に来てたのよ!」

(さっきのみんなとの再会ですっかり忘れてた!)

「エリチ隆也君と一緒におったん?」

「あー…そういえば隆也らしき人いたわね」

「隆也さんはどこに?」

「さっき別れたからどこかにいると思うんだけど……」

スマホを取り出し隆也に電話をした。

 

プルルル……プルルル……

 

 

『はい?』

「あ!隆也!さっきはごめんなさい!」

『思いっきり俺のこと忘れてただろ……』

「ご、ごめんなさい!それで今どこにいるの?」

『絵里たちが入っていったカフェの前にあるベンチで一人寂しくコーヒー飲んでるよ……』

(これは色々とやらかしたかしらかもしれないわね……)

「えっと…カフェに入って来てもらっていいかしら?」

『別に構わないが……』

「それだったらお願いしていいかしら」

『わかった。今行く』

「悪いわね」

 

プツッ……

 

 

「ふぅ……」

「隆也君はどこって?」

「カフェの近くよ。すぐに来るわ」

「ねえね絵里ちゃん。隆也君ってだれ?」

「もしかして男の人?」

「来たら紹介するわよ」

 

それから数十秒後、隆也がカフェに入ってき私たちを見つけた後こちらに近づいてきた。

 

「ったく俺をすっぽかしやがって」

「ごめんなさい…」

「もうするなよ?」

「肝に免じるわ」

「え?え?絵里ちゃんこのかっこいい人だれ?」

「もしかして?もしかして!?」

「はわわわわ///」

「かよちん顔赤いにゃ!」

 

だいたい気づいた人はいるだろう。かよちんって呼ばれている子は顔を真っ赤にして手をパタパタしてる。かわいい……。

 

 

 

「えっと…海未と希とにこと真姫は知ってるから穂乃果たちに紹介するわね。私の通っている大学の同級生で私の恋人の…横山隆也よ///」

「よろしくな」

 

 

 

 

 

 

「「「「彼氏ーーー!?」」」」

 

彼氏ですです。

 

 

 

 

***

 

 

 

「じゃあ真姫ちゃんが言っていた絵里ちゃんを庇った人って隆也さんのことなんですか!?」

「まあ…な」

「絵里ちゃん羨ましい~!ことりもそんな彼氏欲しい~!」

「隆也くんかっこいいにゃー!」

「男らしいですね隆也さんって!」

 

カフェではさすがに10人座る席はさすがにないので店を出て近くにあった公園で話をすることにした。

 

 

「完全に懐かれたわね。絵里」

「まあ隆也君やさしいからどんな子でも気軽に話せるからな~」

「さすが隆也って褒めたいところだけど……」

 

(隆也のバカ……ちょっと穂乃果たちに近すぎるんじゃない……?)

 

「隆也さんが元気になってよかったです」

「まあ私のパパが手術したからなんだけどね」

「真姫のお父さんには感謝してるわ。またありがとうございますって伝えてもらっていいかしら?」

「わかったわ。きっとパパも喜ぶわ」

 

 

「海未ちゃんの彼氏の翔輝君とは知り合いなんですか?」

「翔輝は俺の高校時代からの親友だ。あいつが海未と付き合ってたのはびっくりしたけどな」

「ことりたちも海未ちゃんに彼氏がいたのはびっくりしましたよ。海未ちゃん中々教えてくれなかったんで」

「うぅ……恥ずかしいのでことりやめてくださいよぉ///」

「ある意味公開処刑だな…」

「翔輝君よりも背が高いにゃ~。もしかして柔道やってたの?」

「やってたぞ。今でも父さんにしごいてもらってる」

「お父さんも強い人なんですね!隆也さんの強さはお父さん譲りなんですね!」

「そう……なのかな?まあ父さんの強さは見習ってはいるが……」

 

父さんを強いって言葉で表せれないんだが……なんたって『怪物』だからな。

 

 

「あ!自己紹介が遅れました!私、音ノ木坂3年生の高坂穂乃果です!」

「同じく3年生の南ことりです!隆也さんよろしくです!」

「一応自己紹介しておきますね。私は園田海未です」

「音ノ木坂2年生の星空凛だよー!よろしくー!」

「えっと…2年生の小泉花陽です。よろしくお願いします!」

「2年生の西木野真姫よ。病院で一回顔を合わしたわね」

 

一人ひとり自己紹介してくれる。みんな元気でいい子だな。

 

「俺は横山隆也。絵里と一緒の大学の所属で翔輝とは高校時代からの付き合いで一緒の柔道仲間だ。よろしくな」

 

「「「「「「よろしくお願いします!」」」」」」

 

 

 

 

 

絵里、東条、矢澤…そしてこの子達。この9人がそろってμ'sなんだな。スクールアイドルのトップに君臨したグループ……。だがラブライブが終わって姿を消した。確か以前に絵里から聞いたことあるような・・・・・・。この9人がμ's。この中で1人でも抜けたらμ'sではなくなる。この子たちだけの物って事なんだな。

 

 

 

 

「隆也さん!私達の事名前で呼んでください!絵里ちゃんと海未ちゃんだけ名前で私達を苗字で呼ぶのもなんだか気になるんで」

「え?」

「そうにゃ!隆也くんには名前で呼んで欲しいにゃ!」

「絵里、いいか?」

「別に大丈夫よ。その方が親睦も深まるだろうし」

「そうか。ならえっと・・・・・・穂乃果にことりに凛に花陽に真姫でいいか?」

「ちょっと隆也君!ウチらも名前で!結構長い付き合いやねんから」

「にこも名前で呼んでも構わないわよ」

「なら希ににこ。これからよろしくな」

 

女の子を名前で呼ぶのも少し恥ずかしいが・・・・・・。

 

 

 

「絵里ちゃんの彼氏さんてかっこいいよね~。なんだかどんな時でも守ってくれそうなヒーローさんみたいにゃ!」

「体もがっしりしててスポーツマンみたいです!白米をいっぱい食べてる証拠ですね!」

(体がっしり=白米をいっぱい食べるってのもどうかと思うが・・・・・・けど白米は大好きだ)

 

「パパが言ってたんだけどしっかり体が出来てるって言ってたわ。いつも何をしているの?」

「いつもは軽く筋トレくらいだな。時間ある時にジムに通ったり翔輝と柔道してたりだな」

「翔輝さんも柔道強いの?海未ちゃん」

「詳しく話しを聞いたことはないですけど柔道で二段って言ってました」

「そんな2人に守られてる絵里ちゃんと海未ちゃんが羨ましいな~」

「「///」」

 

2人とも。なぜ顔真っ赤なのだ?

 

 

女子高だから男が珍しいのかな?しかも俺たち2人とも同じ高校出身だからな。

 

 

「けど隆也ってエリーと恋人になってるけどμ'sのこと何も知らないのよね」

「初めてその名前を出した時は薬用石鹸と間違えたぐらいよ」

「翔輝と一緒じゃないですか!」

「あいつもかよ・・・・・・」

「スクールアイドルのド素人ね。このにこにーからしたら足元にも及ばないわ!」

「おいそこのポンコツツインテール。その上から目線は俺よりも背が高くなってから言うんだな」

「むきぃぃぃい!頭押さえてくるなー!」

 

にこの頭をグリグリと押さえ込む。俺は知っている・・・・・・こういうやつは調子に乗って有頂天になる奴だ。

 

 

 

 

μ'sの第一印象・・・・・・楽しい子達だ。まるで俺の高校時代に仲良くなったあいつらみたいだ。この楽しいやりとりも長い間色々な事を共にしてきて出来上がった友情(モノ)なんだろうな。俺からしたらそれがなによりも羨ましく、何よりも身に染みて分かる。仲間というものがどれだけ大切なのか、この子達は理解しているんだな。絵里もいい子たちと出会えたな・・・・・・。

 

 

 

そんな時、穂乃果が口を開いた。

 

 

 

「ねえみんな!久しぶりに9人集まったから学校で踊ろうよ!」

「「「「「「「「え?」」」」」」」」

 

なん・・・・・・だって?

 

 

「久しぶりにみんなで踊りたいんだ!隆也くんにも私達を見てもらうために!」

「ことりはいいと思うよ!みんなどうする?」

「私は構いませんよ」

「凛もOKにゃー!」

「μ's再集結です!」

「ま、別にしてあげてもいいけど」

「ウチ賛成!」

「私も同意見よ」

「ハラショーよ穂乃果!」

 

 

どうやら全員意見が一致していらっしゃるようだ。

 

 

「よーし!じゃあ今から学校まで競争だー!」

「穂乃果ちゃん待ってよー!」

「穂乃果!ことり!待ってください!」

「穂乃果ちゃんには負けないにゃー!」

「みんな走るの!?」

「やれやれね!」

「ウチらも負けへんよー!」

「このにこを置いていくんじゃないわよ!」

「ちょっとみんな!隆也!追いかけるわよ!」

「え!?お、おい絵里!?」

 

絵里に手を掴まれそのまま連行された俺。なんでこうなった!?

 

 

 

 

***

 

 

 

絵里たちに付いて行き、長い階段を上がるとそこに聳え立つ学校。

 

 

『音ノ木坂学院』

 

 

「ここが、音ノ木坂。μ'sが生まれた場所・・・・・・」

 

今日は祝日だから生徒が1人も居ない。居るとしたら事務の先生ぐらいか。

 

「あれ?ここって俺入っていいの?」

「多分大丈夫だと思うけど・・・・・・」

「ことりちゃんがもう許可取ってるってー!」

「「はやっ!?」」

 

ことりの母親はこの学校の理事長らしい。手が早いことで・・・・・・。

 

 

「絵里ちゃんは隆也くんに学校を案内してあげて!穂乃果たちは衣装とか準備するから!」

「わかったわ!ありがとう!」

 

それを言い残し、俺と絵里以外の全員は校舎に入っていった。

って衣装!?

(ガチなのか・・・・・・)

 

 

「懐かしいわね。何も変わって無い」

「ここがお前の母校なんだな」

「えぇ。ここで色んなことがあったわ・・・・・・そして楽しかった」

「此処は絵里にとって最高の場所なんだな」

「ここ以外に最高の場所と言える場所はないわね」

「・・・・・そっか」

「さ、中を案内するわ」

 

絵里に手を引かれ学校内に入った。職員室、教室、音楽室、体育館など色々なところを回った。そのときの絵里はとても楽しそうだった。そうとうこの学校に想い入れがあるんだな・・・・・・。色々な場所を回るたびにここでこんなことが、あっちではこんなことがなど高校時代の話をしてくれた。1年生の時に最初に仲良くなったのが希らしい。

 

 

「そしてここが私達の部活のアイドル研究部よ」

「アイドル研究部・・・・・・」

 

おそらく作ったのはにこだろうな。あいつのアイドル愛を見れば大体予想は付く。

 

 

 

「あ!絵里ちゃん、準備できたから着替えて!」

「えぇ。じゃ隆也先に屋上に行ってて」

「おう」

 

屋上に続く階段を登り扉を開けた。見た感じはそこらにある高校の屋上。だがここから見える町の景色は圧巻だった。

 

「すげぇ・・・・・・」

 

 

景色に見入ってると、後ろから扉の開く音が聞こえた。振り向くと純白の服に身を包んだμ'sの姿。

 

 

「なんだか隆也に衣装を見られるって恥ずかしいわね///」

「どうそう隆也君!エリチの衣装姿!」

「凄い似合ってるぞ。綺麗だ」

「そんなに凛々しい目で言わないでバカ・・・・・・///」

「絵里ちゃんが照れてるにゃー!」

「恋してる乙女ってこれを言うのね」

「絵里ちゃんよかったね!」

 

 

だが本当に似合っている。純白の衣装、シンプルだが魅了できる完成度の高い衣装だと思う。しかもその服は1人1人衣装のデザインが違う。絵里にとっちゃミニスカートなので綺麗なスラリとした脚がとても魅力的だ。

 

 

 

 

 

 

「じゃ絵里ちゃん今回はセンターね!隆也くんにカッコいいところ見せないと!」

「え!?けどこの曲は穂乃果がセンターでしょ!?」

「いいからいいから!動きは分かるでしょ?」

「分かるけど、いいの?」

「かっこいい彼氏を前にして弱気すぎ!大丈夫だよ!」

「隆也も何か言ってあげなさい!」

 

何か・・・・・・。

 

 

 

 

 

「絵里。俺にお前のかっこいいところ見せてくれ」

 

 

 

 

 

「っ!///」

「ほら!隆也君がいってるんやから!」

「わ、分かったわ!隆也!ちゃんと見ておいてよ!」

「分かってるよ」

 

 

 

そして各々自分のポジションに付いた。

 

 

 

 

「じゃあ、隆也にこの曲を・・・・・・μ'sのラブソングを!私が貴方のことが大好きだってことを伝えます!」

 

 

「「「「「「「「「聞いてください!」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

『-Snow Halation-』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

曲が流れ出した。まるでここは雪国にでもいるのかと思わせるイントロ。今からでも雪が降りそうだ。手を天に掲げそれを胸の前で祈りのポーズを取っている。

 

そして彼女達が歌い出した。ドラムの音がなり彼女達もその音と同時に動き出す。

 

個々が各々の動きをし俺に視線を向けてくる。

 

全員が手を伸ばしリズムを取る。ドラムのリズミカルな音が響き、バスドラムの低音で踊りに移る。体を激しく動かし客であるおれを魅了してくる。

 

そしてギターの音がスピーカーから出てきた。全員空から降ってきた雪を掴むかのように天に手を伸ばし、絵里を中心に集まる。まるで全員が恋する乙女のような表情だ。

 

次の瞬間、俺は絵里から目が離せなかった。

 

絵里がソロで歌い出した瞬間、冷たい風が俺の横を横切った。絵里の『好き』という気持ちが風になったのか俺の体に染み渡る。絵里が俺の目をみて歌ってくれた。可愛いや凄いとかそんなチンケな言葉では言い表せない。もし今の絵里に合う言葉といったら・・・・・・。

 

 

 

 

『美しい』

 

 

 

最後には全員、空を見上げ・・・・・・曲は終了した。目が離せなかった・・・・・・。これだけの魅力的な曲は聴いたことが無い・・・これほど感動するパフォーマンスは見たことが無い。絵里の好きという気持ちがこもった歌を聴き終えた俺は・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

目から涙がこぼれていた。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

ライブを見せてもらい、外も暗くなってきたので全員アイドル研究部の部屋に集まった。

 

 

「隆也の泣いているの初めて見たわ・・・」

「そんなに感動したん?」

「涙腺が凄い緩くなっちまってさ。絵里から目を離せなかったんだ・・・・・・」

「よかったね絵里ちゃん!彼氏さんにこんなに喜んでもらって!」

「頑張った甲斐があるってものね」

「余韻に浸るのもいいけど速く着替えなさいよ絵里!着替えていないの貴方だけよ!」

「エリーは隆也ともう少し一緒にいたいのよにこちゃん。そっとしてあげて」

「鍵は私が閉めるからみんなもう帰っていいわよ」

「じゃお言葉に甘えて!絵里ちゃんまたねー!」

「絵里、では失礼します」

「またねー!」

 

絵里と俺を残し、部員全員と希とにこは部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

「ねえ隆也」

「ん?」

「私が・・・・・・貴方の恋人でいい?」

「なんでそんなこと聞くんだよ。当たり前だろ?」

「今日、μ'sのみんなと話してる貴方を見てたら心がズキッって痛くなるの・・・・・・私の時みたいに楽しく笑ってたから、胸が凄く痛かったの・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「だから今日のライブで貴方に向かってもう一度貴方が大好きだって事を伝えたの・・・・・・私の気持ち伝わった・・・・・?」

 

絵里・・・・・・そんなこと考えてたのか。

 

 

「絵里・・・」

「え?・・・・・・ってひゃ!」

 

絵里の手を掴み部室の壁まで詰め寄った。そう、『壁ドン』だ。

 

 

 

 

「り・・・隆也?」

「俺はさ、今回のことでお前がどれだけ大切か再確認できた・・・・・・お前が俺を思ってくれる気持ちが心まで伝わった・・・・・・あの子たちも絵里の仲間なら大事にしてあげたいって気持ちはあるが、俺の心、いや・・・・・・魂に誓って大事にしたいって思った女の子はお前だけだ・・・・・・。もう一度言うぞ・・・・・・大好きだ絵里」

「良かった・・・・・・良かったよぉ・・・・・・私・・・隆也から離れたくない!」

「あぁ・・・お前は俺の女だ・・・・・・誰にも渡さない・・・誰にも譲らない・・・・・・お前は・・・『俺のモノだ・・・・・・』」

「隆・・・・・んんっ!?」

 

絵里の手を右手で掴み、左手で絵里の頭をこちらに引き寄せ絵里の唇を奪う。

 

 

「んんっ・・・・・んむ・・・・・・ん・・・」

 

唇をついばむフレンチなキスを数回した後、絵里の口に舌を入れ口の内部を愛撫するディープなキスに変わる。

 

 

「んっ!・・・・・・ちゅ・・・・・あむ・・・・・・くちゅ・・・・・・」

 

絵里の舌に触れるとビクンッと体を震わせ、若干怯えかけだったがほんの少し時間がたてば絵里の俺の行為に応えてくれる。舌を吸い上げ、歯茎を優しく舐め、口内を蹂躙する。

 

 

「隆也ぁ・・・・・・もっと・・・もっとぉ・・・・・///」

「欲張りだな絵里・・・・・・エッチな子だ・・・・・」

 

 

 

 

 

 

その後も行為は続き・・・・・・俺たちが帰路に着いたのは完全に外が真っ暗になったときだった。




はいお久しぶりです。いやあ~寒くなってきましたね、本当に雪が嫌いになりましたよ!お陰でバイクでどこにもいけない!ちくしょう!けどそんな時絵里とのあんなことやこんなことを妄想しながら温かく頑張っています。


そして今回は『チバチョーさん』と『メシさん』のリクエストを使わせていただきました!ありがとうございます!

気付いたらお気に入り数も900を超えていました。まさかこんなにお気に入りをしてくれるとはおもってもいませんでした!凄く嬉しいです!ありがとうございます!

更に日間ランキング9位にもはいりました!嬉しい事だらけです!


そして!今回新しく評価してくださった!
ケチャップの伝道師さん!NT-Dユニコーンさん!ありがとうございます!


さてさて、次回ですが・・・・・・まだ決めていません!リクエストしてくれた話を書こうか自分がお風呂で考えた話を書こうかと迷っております。できればリクエストしてくれた話は全部書きたいなあ~。ミニスカサンタの絵里や嫉妬した絵里とか振り回されるデートやダブルデート・・・・・・。

うおおおおおおおおお!妄想が膨らむ!

これからも頑張っていきたいと思います!

感想・評価お待ちしております!


それでは今回はここまで!次回でお会いしましょう。では・・・・・・またな!


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カップル同士の団欒?

どうもみなさん。最近寒い日々が続いています。風邪やインフルエンザにご注意ください!
今回はリクエストにあった縁竜さんのリクエスト!
『海未ちゃん&翔輝とのダブルデート』回です。ダブルデートというか4人での楽しいひと時といった感じでしょうか。そんな形になりました。書きながら自分ニヤニヤしていました←(変態)

これを読んで変態と思った人、近々持っているイヤホンが片方だけ聞こえなくなりますよ・・・・・・(T_T)


ではどうぞ


 

 

 

「全員、用意はいいか?」

「「「・・・・・・・・・」」」コクッ

 

海未の実家である園田家にある和室の一室。その中央で俺、絵里、翔輝、海未の4人は鎮座している。そして俺の右手に握られている4本の割り箸。これを1人一本抜いた瞬間、勝負が決まる。

 

 

「いくぞ・・・・・・せーの!」

 

 

『王様だーれだ!!』

 

 

全員割り箸を引きぬく。そして色が付いた割り箸を引いたのは・・・・・・。

 

 

「私です!!」

「まさかの海未か」

「さて・・・海未はどんな命令をするかな・・・・・・」

 

 

なんで俺たちがこんな事をしているかと言うと、少し前にさかのぼる。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

海未の実家に行くという計画がまだ頭になかったときの事。俺たち4人は所謂ダブルデートに来ていた。翔輝も仕事が今日と明日が休みが出来たのでそれなら一緒に遊ぼうという事になり4人で近くのカフェでランチを取っていた。

 

 

 

「あ、隆也今日泊まってもいいかしら?」

「ん?別に構わないけどなんでだ?」

「今日私の家に亜里沙の友達の雪穂ちゃんが来るのよ。それなら2人っきりにしてあげたほうがいいかなって」

「本当にいいお姉さんですね絵里は」

「賢くて可愛いからな」

「可愛いは言わなくていいわよ!///」

「そっか絵里さん隆也の家の泊まるのかぁ~」

「え?翔輝さんもしかして」

「今日隆也の家に泊まろうかなって思っててさ。絵里さんがいくならやめとくか」

「ごめんなさい・・・・・・」

「別に謝らなくていいよ。それなら家に戻るし」

 

そんな時、海未が口を開いた。

 

 

「そ、それなら翔輝も隆也さんも絵里も私の家に来ませんか?」

「「「え?」」」

 

あの恥ずかしがりの海未が自分から人を家に呼ぶなんて!

 

 

「これは俺たちの財布の中身をぼったくる気だぞ翔輝・・・・・・」

「だな・・・あの海未がこんなこと言うのはおかしいからな」

「貴方達失礼ですよ!!」

 

プンプンを怒っている海未。一言言ってやる・・・・・・全然怖くない。

 

「まあそれは冗談だ」

「けどどうして?」

 

 

 

 

「その・・・・・・今日は家族が誰も居ないので誰かがいてくれないと寂しいのです・・・皆さんが居てくれたら安心できるので・・・・・・///」

 

 

顔真っ赤にしてお願いしてくる海未。そんな表情を見ていた絵里が1番さきに動いた。

 

「もう!可愛いわね海未!」

「え、絵里!?人前で抱きつかないでください!」

海未をギュッと抱きしめ顔を海未の頬にスリスリしている絵里。百合の空間が出来てしまっている。

 

 

「あれだな・・・・・・翔輝」

「おう・・・どうした・・・」

「女の子同士のこういう場面見てると凄いほっこりしないか?」

「奇遇だな。おれもだ・・・・・・」

 

その空間を見つめながら俺たちはテーブルに置いてあった紅茶を飲み干す。

 

 

「じゃあ今回はダブルお泊まりデートだな」

「それなら今から海未の家に行きましょうか?」

「は、はい!皆さん今日はお願いします!!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

そして冒頭に至るわけだ。海未の家は温泉旅館かと言いたくなるほどデカイ屋敷だった。玄関から入ると畳の匂いがフワッと漂ってくる。完全の和風屋敷。長い廊下を歩いていけば1つの和室に到着。

 

「今日はこの部屋で寝てください」

 

とのこと。まさかここで4人で寝るのかなって期待したが、

 

「翔輝と隆也さんはここで、私と絵里はその隣です」

 

畜生!!俺の期待を返せ!!

 

 

今の時刻は丁度夕方。まだ晩御飯には早いので何かで時間を潰す事に・・・。その時に翔輝が提案したのが、

 

『王様ゲーム』

 

色が付いているクジを引いた人が王様、そしてその王様はクジに書かれている番号をいい、その番号が当たった奴は王様の言う事を『絶対』に聞かなければいけない。それがどんな命令だろうと!!

 

 

 

そして最初の王様は海未。どんな命令を出すのだろうか。

 

 

「じゃあ3番の人は私の髪を櫛で梳かしてください」

「あ、3番俺だ」

 

俺こと隆也でごわす。

 

「じゃ、失礼して」

 

海未の髪を手で持ち上げ上から下へと髪を梳かしていく。

 

「隆也さん上手なんですね」

「まあな。絵里の髪をよく櫛で梳かしてるからさ」

「あと・・・・・・凄く気持ちいいです///」

「そ、そうか」

 

やべぇ・・・海未のこと余計意識しちまう・・・。

 

 

「隆也・・・後で覚えときなさいよ・・・」

「隆也、後で風呂場で沈めてやる・・・」

「なんでだよ!!?」

 

髪を梳かし終わり、次に移る。

 

「せーの!」

『王様だーれだ!』

 

次の王様は・・・・・・。

 

 

「よっし!俺だ!」

翔輝である。

 

 

「じゃあ2番と4番がここでキスしろ」

「「「はぁ!?」」」

 

俺の持っていたクジの番号は2番、そして4番は・・・・・・。

 

「・・・・・・・・・///」

絵里だった。

 

「ちょっと翔輝!破廉恥ですよ!」

「だめだ!王様の命令は絶対だ!」

 

さっきの仕返しかこいつ・・・・・・。

 

「さあ!キスしろ!」

「仕方ない・・・・・・絵里一瞬だけだ」

「う、うん・・・・・・///」

 

絵里の肩を掴み、ゆっくり顔を近づけ絵里の唇に自分の唇を合わせる。口付けを交わしたとき絵里の体が一瞬ビクッと跳ねたが一瞬で落ち着き顔が真っ赤になり目がトロンとなってしまった。翔輝の横に座っていた海未は顔を真っ赤にしながら轢いていた座布団を頭から被り、その隙間から目を半開きしながらこっちを見ていた。

 

「ぷはっ・・・・・・///」

「絵里、よく頑張ったな」

「えへへ///」

絵里の頭を撫でてやるとだらしなくなった笑顔を見せてくる。勿論この2人には見せないけどな!!

 

「翔輝覚悟しろよ・・・・・・」

「さあ!ゲームを続けるぜ!」

「なんでこの2人はこんなにやる気なのかしら?」

「さ、さぁ・・・・・」

 

その後もゲームは続き、海未と絵里との壁ドンを見たり、翔輝と絵里の抱き合いを見て翔輝を全力でぶん殴り、翔輝と海未のお姫様抱っこを見たり、俺と絵里とのイチャイチャを見せ付けたりと、ほっこりしたりニヤニヤしたり怒りで発狂したりと波乱が巻き起こったが意外と王様ゲームがとても楽しく思えた。

 

 

そして最後にはとてつもないことが起こった。

 

 

「王様は私ね!2番と3番は抱き合ってほっぺにキスしなさい!」

 

「「っ!?」」

 

3番は俺で、2番は・・・・・・。

 

「う・・・嘘だろ・・・・・・」

 

翔輝・・・・・・・・・。

 

 

「さ!はやくしなさいよ!」

「はわわわ///」

「嫌だ!なんで男と男が抱き合ってキスしなきゃいけないんだ!」

「気持ち悪すぎて吐きそうだ!!」

「ダメよ!王様の命令は絶対よ!拒否権は認められないわ!」

「そうですよ!私も恥ずかしい目に合ったんですか貴方達二人も同じ想いを味わうべきです!」

「「理不尽だ!」」

 

逃げようと思ったが二人に捕まってしまい身動きが取れない。

 

 

「海未!いくわよ!」

「はい!」

「ま、待てお前ら何する気だ!?」

「ま、まさか・・・・・・」

「「せーの!」」

 

ドンッ!

 

同時に絵里と海未は俺と翔輝を背中から突き飛ばした。俺と翔輝の目の前には互いの顔がある。

 

このまま顔と顔がぶつかったら・・・・・・・・。

 

「「いやああああああ!!??」」

 

 

 

   ***こちらから先は見せられません***

 

 

 

 

 

 

 

 

―1時間後―

 

 

 

あの後はご想像にお任せします。

 

なんとかあの修羅場を終えた俺たちはご飯を作る前にお風呂にでも入ろうと決まり、最初に女性陣を風呂場に向かわせた。なぜなら?

 

「さてと、準備はいいか?」

「おう。あいつらに目に物を見せてやろうぜ」

 

 

 

晩御飯作りである。

 

 

 

 

確かに女性陣の料理も食べたいが今回は男の俺たちがあいつらにご馳走してやろうと考え料理役を承った。

 

 

「といっても鍋だけどな」

「俺の実家から送られてきた野菜を万遍なく使ってな」

 

昆布や油揚げで出汁を取り、その後一口サイズに切った野菜を入れる。その後に魚の切り身や豚肉などなどを投入。

 

 

「こっちも大体出来たぞ」

 

翔輝の方では特製ロールキャベツを作っていた。キャベツに肉で作った団子を入れゆっくり煮込み全体に味を浸透させていた。

やはり人暮らしが長かったのか料理が簡単に出来るようになっていた。お互いかなりの料理のレパートリーを持っているのでそう簡単に料理のメニューに困る事はない。出来るなら家で誰かに作ってもらいたいけどな。

 

 

「そういえばあいつら遅いな」

「女の子のお風呂は長いことは知ってたけどここまで長い訳・・・・・・ないよな?」

 

現在の時刻は8時。絵里たちが入ったのは7時前。流石に1時間も入るわけない・・・よな?

 

「呼びにいくか」

「だな。じゃないとメシが冷めちまう」

 

 

エプロンを外し園田家の浴室へと向かう。この家に来た時チラッと見たけど完全に和式のお風呂だった。流石にお湯を入れたりやお湯だきはちゃんと機械を使ってるけど湯船なんか木で出来た巨大な桶みたいなんだからな。これも金持ちの特権なのかな?

 

浴室に近付くと絵里と海未が着替え室で乙女トークでもしているのか喋っている声が聞こえる。

 

「なんだ居るじゃん」

「あけるか」

 

着替え室の扉を開ける。

 

ガラッ

 

 

「おーいメシできた・・・・・・・・・ぞ?」

「あ・・・・・・・・・」

 

 

 

「「え・・・・・・・・・」」

 

 

扉を開いたらなにやら素晴らしい桃源郷があった。お風呂で体が火照ってることで顔が必然的に真っ赤。そして服装、2人は今から服を着ようとしていたのか下着だけしかつけていなかった。絵里は色が少し濃い目の黒色で少し色気のある紐の下着。そして海未は真っ白に染められている純白。布部分がV字になっているタンガ・ソングの下着。

 

 

 

((俺の彼女は天使か・・・・・・))

 

 

 

「り、隆也!?///」

「翔輝なんでここに!?///」

「あ、いや・・・その、メシが出来たから呼ぼうかと・・・」

「中々来なかったからさ・・・・・・」

 

バスタオルで体を隠し真っ赤になった顔でこちらを睨みつけてくる二人。けどそんなことは気にしない。恥ずかしくなっている2人を見ていると凄く眼福である。

 

 

「目の保養だ・・・・・・」

「俺・・・これで次の仕事頑張れそうな気がする・・・・・・」

 

 

大満足である俺たち二人を見ていた絵里と海未がワナワナと震えながら口を開いた。

 

 

 

「「さ・・・・///」」

「「さ?」」

 

そして地べたに落ちていた椅子を拾い・・・・。

 

 

 

「「最低よ(です)!!」」

「はぶがぁ!?」

 

見事に俺たちの顔面に直撃しそのまま意識を失う。

次に目を覚ました時は縄で縛られた状態で放置され折角作った食事もお預けにされ、2時間ほど口を聞いてもらえなかった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

「じゃそろそろ寝るか?」

「まだ早いんじゃないかしら?」

「私も明日は練習が無いのでゆっくり夜更かししても大丈夫ですよ?」

「ならもう少し話でもするか」

 

俺と翔輝も風呂に入り、寝る準備は完璧にできた。後は布団を敷き床につくだけ。だがまだ9時30分なのでもう少し起きておくことに決定。

 

 

「そういえば私ずっと気になっていたことあるんだけど・・・翔輝さんと海未がどういった経由で付き合ったのか聞いたことが無いわね」

「あ、確かにな。前は簡単に説明されただけだからな」

 

確か翔輝がストーカーから海未を助けたとか何とか。

 

 

「確かに話してなかったな」

「特に聞かれませんでしたので」

 

(聞いてたら普通に話してくれたのかよ・・・・・・)

 

 

 

「どんなロマンチックなのかしら?」

「ロ、ロマンチックなんて無いですよ絵里!」

「本当にそこらにありそうな少女漫画みたいな話だよ!」

「名も知らぬ女の子を仕事帰りの男がたまたま助けたなんて話少女漫画でも見たことねえよ。ヒーローかお前は」

「ヒーローね」

「「・・・・・・///」」

 

あーあ・・・2人とも顔真っ赤で黙っちまったよ・・・・・・。

 

「さ、流石に絵里の時のような刺されそうなところを助けてもらったとかではありませんよ?」

「あの時は普通に人助けしたようなもんだからな」

「けどそれが気付いたら恋だったのよね~。凄いロマンチックじゃない!」

(お前はどんだけ興奮してんだよ)

 

絵里はもしかして恋バナ系等が好きな奴か・・・・・・。

 

 

 

「じゃ、話してもらおうか翔輝の武勇伝を」

「武勇伝じゃないわ!」

「からかわないでください!///」

「「はいはい」」

 

 

 

 

ひと段落着いたので俺と絵里は翔輝と海未の恋に至った経由の話を聞かせてもらうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「約2,3ヶ月前のことです。私はアイドル研究部での練習が終わった後、学校からこの家までずっと誰かに就けられていました。それが翔輝との出会いのきっかけでした」




はい今回もありがとうございました!絵里が下着姿で居たら速攻でルパンダイブしそうですね。そんな素晴らしいものを見たら自分我慢できない!!ハァ・・・ハァ・・・。
(おっと涎が・・・・・・)
この話は続編として翔輝と海未との出会いを書かせていただきます。恐らく1話で終われるかと思います。まあサイドストーリーみたいな感じですね(笑)


そして今回新しく評価してくださった!
拓摩さん!あにゃんあにゃんさん!お隣はヴェールヌイさん!イベリコ豚29さん!桃色の悪魔さん!ぺんぺん92さん!
ありがとうございます!


また機会があればリクエスト募集すると思いますのでどうぞよろしくお願いします!


それでは今回はここまで!感想・評価お待ちしております!

では・・・・・・またな!


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翔輝・海未の出会い

中々投稿できず申し訳ない。大学での期末テストに追われてたでごわす。おのれテスト・・・・・。

そして今回は前回の続きで翔輝と海未の出会いの話です。これを書き終えたとき翔輝と海未が主人公とヒロインの座についたような気がしました。←違うからね


ではどうぞ


「約2,3ヶ月前のことです。私はアイドル研究部での練習が終わった後、学校からこの家までずっと誰かに就けられていました。それが翔輝との出会いのきっかけでした」

 

 

 

まだ隆也さん達が付き合ってない頃、音ノ木坂の部活にあるアイドル研究部に所属していた私はいつも通りに出席し、躍りの練習をして帰ろうとしていたときだった。

 

 

「?」

「どうしたの海未ちゃん?」

「いえ・・・気のせいです」

「何が気のせいなの?」

「誰かに後をつけられているような・・・・・」

「そんなの気のせいだよー!」

「誰も居ないよ~?」

「ですよね・・・気のせいですよね」

 

その時はただの気のせいだと思っていました。いつも通りに穂乃果とことりと一緒に下校をして家に戻りました。その日は家に母も居なかったのですぐに寝る準備をし、念には念をと思って私は自室の窓から外を覗きました。暗くてよく見えなかったので流石に誰も居ないかなと思いカーテンを閉めようとした時にふと目にあるものが見えました。

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

「!?」

 

家の近くにある電柱の影に黒い服を身に着けていた男の人が居ました。

 

 

その人は私に気付いたのか知りませんがすぐに姿を消しました・・・・・・。なぜかは分かりませんでしたが体から出てきた震えが止まりませんでした・・・・・・。すぐに穂乃果やことりに連絡してどうしたらいいのか相談にのってもらいました。

 

 

 

次の日からは穂乃果とことりが家まで送ってくれたのでその男の人も現れず、大事には至りませんでしたが、それから3日たった日でした。その日まで男の人も現れなかったのでもう穂乃果たちに今回の私の送りはいいと言いました。だけどなんで今回はいたのか今度は堂々と私の前にその男の人が現れました。

 

 

 

 

 

「園田海未だな・・・・・・」

「だ、誰なんですか!?」

「やっと会えた・・・・・・俺の女になれ!!」

「っ!?いゃ・・・むぐぅ!?」

 

男が隠し持っていたハンカチらしきものが私の口を覆いロクに息もできず声も出せなかった。

 

 

「んんん!んんっ・・・むぐぅ!?」

「それには睡眠薬を染み込ましている・・・・・・大丈夫だ・・・誰も助けに来ない・・・」

 

口を押さえられなんとか無我夢中で呼吸をしようとしていたのでハンカチに染み込んであった匂いを嗅いでしまった。瞼が重くなり意識が朦朧とし、体に力が入らなくなる。

 

 

 

(だ・・・・・・誰か・・・・・・たす・・・け・・・・・・)

 

 

 

そこから先は私も覚えてません。けど少しだけ耳に入ったのが・・・・・・・・・。

 

 

「・・・・・・ぉい!大丈・・・・・・夫・・・・・・おぃ・・・・・・ぉい!」

 

 

さっき襲ってきた男の声ではなく、若い男の人の私を呼びかけてくる声が聞こえました。意識が薄れてきた時だったので全部聞き取れずそのまま意識を失いました。

 

 

 

 

 

 

「海未にそんなことがあったのね」

「ストーカーはどうなったんだ?」

「はい。次の話に移ります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・んぅ・・・・・・」

 

目を開けた時、知っている天上が目に入ってきました。まだ頭がボーッとしていましたがそこが私の部屋だとすぐに分かりました。ゆっくりと起き上がり周囲を見渡すとなにやら視界の端に動いているものがあったので視線を移すと・・・・・・。

 

 

 

 

「ぐぅ・・・・・・んぐぅ・・・・・・」

「・・・・・・・・・え?」

20歳ぐらいの男が私のベットにもたれ掛かって寝ていました。記憶がフラッシュバックし昨日の出来事を思い出す。そうだ・・・・・・私は昨日学校の帰りに黒い服を着た男の人に襲われて・・・・・・そして口を押さえられ・・・・・・。

「っ!?」

すぐにベットから起き上がり、手元にあった目覚まし時計を手にしその寝ている男の頭に時計を振り下ろした。

 

「きゃああああああああああ!!」

 

ガァンッ!

 

「いっだぁああああああ!?」

 

 

鈍い音が響きその男は目を覚まし部屋の地べたをゴロゴロ転がりまわった。

 

 

「おい!起こし方に気をつけろ!」

「誰が気にしますか!なんで知らない男の人がここにいるのですか!不審者ですね!」

「ちょっと待てぇぇえ!?確かに君からしたら俺は初対面の不審者で頭に10円ハゲがあるが・・・・・・って!誰が不審者でハゲだコラァ!?」

「誰もそんなこと言っていないでしょう!?貴方昨日私を襲った男ですね!あの時は不覚を取りましたが今ここでボロ雑巾にしてやります!」

 

ベットの近くに立てかけてある木刀を手にし男に構える。

「待て待て待て!?木刀はなしだ!!」

「問答無用!体の骨を粉々にします!覚悟ぉ!」

「ぎゃあああああ!?」

 

 

 

 

 

「朝から元気でよかったです。海未さん」

 

 

 

 

「は・・・・・母上!?」

 

バシッ!

 

木刀はそのまま振り下ろされ、男の死ぬ気の真剣白羽取りで防御。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・・・・やっと助け舟が来てくれた・・・・・・」

 

 

女の子に殺されそうになっている男の図。まるで浮気をした夫を殺す気である妻。海未の母から見たらシュールである。

 

 

 

「ど・・・どういうことですか母上!この気持ち悪い男は一体・・・・・・」

「誰が気持ち悪いだコラ!」

「ちゃんと順を持って説明しますよ。まずは着替えて居間に来てくださいね」

「わ、わかりました!」

 

言われたとおり、服をパジャマから私服に着替え、いつも食事を取る居間に隣にいる怪しい男と一緒に向かい、先に座っていた母の前に座った。

 

 

「まずは自己紹介から、その人は貴方を守ってくださった中上翔輝さんです」

「中上・・・・・・翔輝・・・・・・さん?」

「どうも」

「まず貴方を襲った犯人ですが、もう警察に逮捕されたので心配は要りません。ただのストーカーでした」

「良かったです。ストーカーに襲われた時はどうしようかと思いました・・・・・・」

「本当に奇跡でしたよ。あの現場に通りかかった翔輝さんが貴方を助けてくれたのですよ」

「・・・・・・え?」

「もう少しで連れ去られるところだったんですよ」

「そ・・・そんなことに」

「そして気を失ってるところを家まで運んでくれてずっと看病してくださったんですよ」

「そうだったんですか・・・・・・」

助けた人を私は殴ってしまいましたよ!?

「翔輝さん。私の娘を助けてくださり・・・ありがとうございます」

「いやいや!?そんな頭下げなくて大丈夫ですよ!ただ俺が助けなきゃって思っただけで!」

「それでもです。貴方にはなんとお礼をしたらいいか・・・・・・」

「大したことして無いでって!お礼も何も要らないですから」

「そうですか・・・・・・ならこれだけ言わせてください」

 

私の母が立ち上がり翔輝さんに深く頭を下げた。

 

 

 

 

「本当にありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだか・・・とんでもない事してもらったみたいですね」

「あの後お母さんを宥めるのに凄い時間掛かったしな」

「あんな母始めてみました・・・翔輝さん本当にありがとうございます」

「別にお礼なんていらないって、大したことしてない」

「けど!」

「君が無事ならそれでいい」

「っ・・・・・・」

「まあ、見返りを求むって訳じゃないけど・・・・・・」

「はい?」

海未の顔を見て優しく微笑みながら問いかけた。

「俺の友達になってよ。それが君を助けたお礼ってことで」

「友・・・達・・・・・・そんなのでいいのですか?もっと凄いことでもよろしいのですよ?」

「別に欲望が無いって訳じゃないよ。後々これを言っておけば良かったって思うかもしれない。けど今はそれがないんだ。今思った欲は君と友達になりたいことなんだ。俺にとっちゃそれが何よりのご褒美だ」

 

ご褒美・・・・・・どんな事を言われても私からしたら断れないのに。なのにこの人は私と友達になりたいが望みだなんて・・・・・・。

 

 

「・・・・・・ふふっ」

「な、何笑ってんだよ」

「おかしな人だなっと思って・・・人の命を助けたも同然なことをしたのにその見返りが私と友達になりたいだなんて・・・ふふふっ」

「う、うるせ!美少女と友達になりたいの何がおかしい!」

「なっ!誰が美少女ですか!そんなに私を褒めても何も出ませんよ!?」

「いらねえよ!スタイル俺好み!綺麗な長髪!綺麗な顔立ち!俺に取っちゃパーフェクトなものを持っている子と友達になれる!これ以上の幸福があるものか!」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

少しの沈黙。

 

 

「っ!?///」

「え?」

「な・・・ななな何を口走ってるんですか!」

「お、俺なんか変なこといったか!?」

「言いましたよ!不潔にも程があります!破廉恥です!///」

「確かにデリカシーが無いかもしれないが言わずには言られない!」

「貴方みたいな変態で破廉恥な人私は嫌いですーー!///」

「えーー!?告白もして無いのに振られたー!?」

「貴方みたいな変態ここで成敗します!はぁあーーー!」

「その木刀を下ろsぎゃああああああああああ!」

 

 

 

これが、俺たち2人の出会い。

それからこの2人は色々なことでぶつかり言い合うような仲になるが傍から見たらただの仲のいい恋人にしか見えなかったのかもな。そして海未の母に相談し当分の間海未の学校の送り迎えを任されるようになった。俺の仕事の帰り道が海未の通学路を通るので帰るついでに海未を家まで送るという流れだ。最初はモジモジしながら俺の車に乗っていたが回数を重ねるたびに俺に慣れたのか少しずつ心を開いてくれた。

海未はとても可愛かった。笑った顔やしぐさ、全てに魅了された。そしてたまに天然が入るギャップや軽くいじめると顔を真っ赤にするところが面白かったのでそこを指摘するとよく頭を木刀で殴られたものだった・・・・・・。

帰る途中に海未の幼馴染である穂乃果やことりに帰るところを見られたときは流石に焦ったな・・・・・・。これ第三者から見るとお持ち帰ゲフンゲフン!連れ帰るみたな形だからな。あの時の海未の焦りようは今でも脳内に残ってる。永久保存だ。それからというものμ'sのみんなとも仲良くなり1人の少女との出会いで俺の周りには個性豊かな女の子達が集まった。海未と色々なところに遊びにいったりや練習風景を見せてもらったりなど俺の高校時代に体験できなかったものを体験できた。

 

 

『翔輝さん。また反復練習のアドバイスお願いしますね』

『翔輝さん!穂乃果たちを甘やかしすぎです!』

『し、翔輝さん・・・・・・今日も送り迎えありがとうございます・・・・・・』

 

 

 

 

 

『翔輝さん!』

 

 

 

 

 

 

 

月日がたつにつれて薄々と気付いてきた。俺は海未に恋心を抱いていた。いつも海未を家に送り届け晩飯を食べて風呂に入り床につく。目を閉じたらなぜか海未の顔が浮んでくる。海未の笑顔、真っ赤になった顔、怒っているときの顔、もじもじした時の表情。すべてが脳裏に焼きついてくる。仕事でもあいつのことを考えてしまって集中できなくなるほどだった。

 

 

「海未・・・・・・」

 

無意識にあいつの名前を呟くのが日課になってきた・・・・・・。初めてだ・・・こんなにも女の子が気になるのは・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

だが・・・・・・。

 

 

 

 

 

「俺は・・・・・・もう君に会えない・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「え?」

「聞き取れなかったか?これで君とはお別れだ」

 

 

何時もの送り迎えの時間。海未に伝えなきゃいけないことがあり近くの公園のベンチに座った。

 

 

「ど・・・どうしてですか?」

「もう君も大丈夫だろ。これまでの君を見てきた期間で後をつけてくるストーカーはもういなくなっただろうからな」

「そ、それは確かにいいことです!けど、なぜお別れなんていうのですか・・・」

「・・・・・・教えなきゃいけないか?」

「当たり前です!理由を聞かしてください!」

「・・・・・・・・・・・・」

自販機で買ったコーヒーを飲み干し、呟いた。

「引越しするからだ」

「引越し・・・?」

「東京から離れるって訳じゃない。今の住んでる場所じゃちょっと不便でな。会社の出してる社宅を借りることになったんだ」

「なら、別に会えなくないんじゃ・・・・・・」

「俺の会社はこの公園からだとかなりの距離でな。社宅になったらかなり近くになる。そうなったらもう君たちと会うことは無くなるんだ」

「・・・・・・・・・・・・・」

「会う時間を作ろうと思えば作れる。けど今は会社の方が忙しくて残業が多くなったんだ。君と会う時間を割く事が出来ないんだ・・・・・・」

横目で見ると海未の暗くなった顔が見える。視線を下に落とし俺の顔を見ようとしなかった。

 

「そんなに落ち込むなよ海未。別に今生の別れじゃないだからさ!それに今の君ならもう俺は必要ないだろうしな。君は強いからもしまたストーカーに襲われても大丈夫だ!」

少しでも海未に元気を与えようと明るく接するが表情は暗くなったまんまだ。

 

コーヒーを飲み干しベンチから立ち上がる。

 

 

「んじゃ今から送り届けるよ。海未のお母さんにも説明しないといけないからな」

 

 

 

車に歩きだした瞬間。

 

 

ドンッ

 

 

 

海未が俺の背中に抱きついてきた。

 

 

 

「海・・・・・・未?」

「どうして・・・・・・」

「え?」

 

 

 

ギリギリまで首を動かし海未の顔をみると。

 

 

 

 

 

「どうして今そんなことを言ってしまうんですか!!」

 

 

 

涙を流していた。

 

 

 

 

「なんで今なんですか・・・・・・なんで今そんなことを言ってしまうんですか!」

「なんでって言われても・・・・・・」

「私は・・・楽しかったです!貴方と・・・翔輝さんと一緒にいれて楽しかったです!いつも私を送り迎えしてくれて、私を楽しくしてくれて、私をずっと見てくれた・・。翔輝さんと一緒に居ると凄く幸せだって感じられたんです!」

「・・・・・・・・・」

「家に帰ってベットに横になって目を瞑ると翔輝さんの顔が浮んでくるんです。最初はそんなこと無かったのにここ最近はずっとこんな事がいっぱいありました。貴方と目を合わせると心臓がいたいくらいドキドキして顔がすぐ赤くなってしまいます。貴方に名前を呼ばれるたびに心が凄くあったかくなるんです・・・・・・。この気持ちが一体何なのか全然分かりませんでした・・・・・・けどやっと分かったんです・・・・・・」

「海未・・・・・・」

俺と一緒だ・・・・・・全部。

 

 

 

「私は・・・翔輝さんに恋をしてしまったんだって・・・・・・」

「っ・・・・・・」

「やっとその気持ちに気付けてよかった・・・・・なのに貴方は私の前から居なくなってしまう・・・それを聞いたとき凄く胸が痛くなりました・・・・・・ズキズキして苦しくなりました・・・・・・貴方を失いたくないんです!!」

 

海未の瞳からこぼれた涙は地面にポタポタと滴り落ちる。

 

 

「居なくならないでくださいよ・・・・・・もっと一緒に居てくださいよぉ・・・・・・」

 

 

俺の服を掴んでいる手の力が強くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願いですから・・・私を独りにしないでください!!」

 

 

 

「っ・・・」

「うっ・・・・っうぅ・・・・・・・うぁぁ・・・・・・」

 

海未の泣いている嗚咽が耳に入る。海未がこんなに俺のことを想ってくれていたのか・・・・・・こんなに俺のことを必要としてたのか・・・・・・なのに俺はこの子の目の前から消えようとしていたのかよ・・・・・・。

 

 

 

「海未!!」

「えっ・・・」

 

俺は海未を力いっぱい抱きしめた。壊れそうなくらい・・・強く抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は・・・・・・お前が好きだ・・・・・・最近お前のことを考えちまう・・・・・・今ここでお前と別れたら、今までの思い出が全部消えそうだ・・・・・・。消えそうで怖いんだ・・・消したくないんだ。俺はお前と別れたくない!」

「翔・・・・輝さん・・・・・・?」

「俺と・・・付き合ってくれますか・・・?」

「っ・・・もう・・・貴方はずるい人ですね・・・・・・こちらこそ・・・よろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「と言う事で、俺たちは付き合ったって事・・・・・・なんで泣いてんだよ2人とも」

 

「「感動の涙・・・・・・」」

誰かハンカチください・・・・・・。

 

「海未良かったわね、翔輝さんと付き合えて・・・」

「えぇ・・・つくづくそう思いますよ」

「翔輝・・・お前成長したなぁ・・・高校時代はイカれてたのに・・・」

「なんでお前に上から目線で言われてんだ?まずイカれてないし」

 

俺が絵里と一緒にいるときにこいつもこいつで頑張ってたんだな。

 

「そういえば引越しの件はどうなったのよ」

「ん?やめたよ」

「マジかよ!」

「海未のためならなんだってできる!」

「父さんの柔道でのしごきを耐える事は?」

「無理っす・・・・・・」

「今でも翔輝には送り迎えをしてもらってますよ。たまに翔輝が残業で迎えこれない時もありますが・・・」

「それがあるたびに海未が甘えてきて大変なんだよなあ」

「なんで今そんな事を言うんですか!///」

「あ・・・・・つい口が滑って・・・・・・」

「翔輝なんか嫌いです!///変態!死んでください!」

「そこまで言うか!?」

「翔輝それは凄く分かるぞ。おれもたまに絵里に会えないときがあるから久しぶりに会った時ちょっとやそっとじゃ俺から離れないからな」

「なんで隆也も言うのよ!///」

「ノリ?」

「ばかぁ・・・」

 

あ、絵里まで顔真っ赤になった。

 

 

 

「まあ昔話もこれくらいにしてそろそろ寝ましょうか」

「だな」

「もうそろそろ12時回るぞ」

「じゃ私たちは隣の部屋なので」

「別に4人で寝てもいいような気が・・・」

「俺も・・・・・・」

「ダメです!もし絵里と隆也さんを一緒にしたら破廉恥なことするに決まってます!」

「「な!///」」

「しないと言いきれますか?」

「無理だな」

「アウトぉ!」

 

バコンッ!

 

翔輝の回し蹴りが炸裂。

 

「げふぉ!?」

 

「ということで絵里と私は隣の部屋です」

「だって。また明日ね隆也」

「おう・・・・・・」

「翔樹、おやすみなさい」

「あぁ。またな」

 

そう言い残し絵里と海未は隣の部屋に戻っていった。

 

 

「ほら、寝るから早く起きろよ隆也」

「てめえ・・・いつかぶっ殺す・・・」

 

2人分の布団を引き、明かりを消し布団の中にもぐりこんだ。

 

 

「じゃ、寝るか」

「おう・・・・なあ隆也」

「ん?」

 

 

翔輝が俺に拳をつきつけてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「絵里さん、大事にしろよ」

 

 

 

(・・・・・・言われるまでもねえよ)

 

 

 

 

「お前も海未を大事にな」

 

 

俺も拳を突き出しコツンッとぶつける。

 

 

 

 

しばらく目を閉じると睡魔が襲ってき、深い眠りに付いた。

翌日、体を起こそうとした瞬間、なにやら体が重く感じたので布団を剥いでみると絵里が俺に抱きついて寝ていた。翔輝と海未も同じくである。




はいどうもおっひさーしぶりぶりです。海未可愛い・・・すごいほっこりですわ。
この話を作れたのもリクエストしてくださった縁竜さんのおかげです。ありがとうございました!

そして新しく評価してくださった!
陽瑠 雪さん!Riotさん!ktt2828さん!
ありがとうございました!!

次回ですが今テスト期間中なのでいつ投稿できるかわかりませんができるだけ首をながくして待っていただけば幸いです。

それでは今回はここまで!
感想・評価おまちしております!



では・・・・・・またな!!


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嫉妬の絵里

最近・・・・・・凄く絵里に避けられている気がする。

 

 

 

 

ある時は・・・・・・。

 

 

「絵里、この問題教えてくれないか?」

「それくらい教科書見れば分かるでしょ?少しは自分の力でやりなさいよ」

「お・・・おう」

 

 

 

そしてある時は・・・・・・。

 

 

 

「よう絵里。一緒に昼飯食べないか?」

「今日は女友達と食べるからまた今度ね」

「わかったよ」

 

 

そしてまたある時は・・・・・。

 

 

 

 

「絵里、今日泊まりに来るか?」

「今日は家に希が泊まりに来るから遠慮するわ」

「そ、そっか・・・・・・」

 

 

 

ことある事に誘いを断られている状態である。海未の家に泊まってから2週間経ったが、つい1週間前から俺に対する態度が冷たくなった。まるで初めて会った時に戻ったみたいだ・・・・・・。

 

 

 

「なんでだ・・・・・・」

「俺の家に来てまで嘆くなよ」

「翔輝・・・俺とお前の仲だろ?そんな冷たい事言うなよ・・・」

「いや、困ってたらそりゃ助けるけどよ。絵里さんとお前の仲の事だと何とも言えないぞ」

「一体何をしたんや隆也君?」

「何かしてたらとっくに謝ってるよ・・・・」

「隆也の事だから絵里に何か失礼な事したんじゃない?」

「失礼な事ってなんだよ!?」

「隆也君は鈍感やから無意識にやらかしたんちゃう?」

「「可能性大だな(ね)」」

「お前ら俺のことバカにしすぎだろ!?」

 

翔輝、希、にこは『別に~』と言わんばかりニヤニヤしながら首を振る。絶対これ自覚あってやってる奴だ・・・・・・。

 

「貴方ここ最近絵里と何かあった訳じゃないの?」

「全く身に覚えが無いんだが・・・・・・・」

「いいから海未の家に泊まってから起こった出来事全部言っちまえよ」

「いい加減吐けよ見たいな拷問の言い方やめろ」

「けど言わないとウチらも相談に乗れへんからなぁ」

「分かったよ・・・・・・まずは海未の家に泊まってから次の日だけど・・・・・・」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

私・・・絢瀬絵里は隆也にたいして怒っている。いや・・・『嫉妬』していると言った方がまだ分かりやすいかもしれない。海未の家に泊まって以来、私は隆也に冷たく接している。理由は簡単。隆也に少しでも私が居ない寂しい思いをしてもらうためである。

隆也は私の恋人。だけど隆也は私が恋人だという自覚が足りていないのかもしれない。

以前、希と遊んでいる時だって・・・・・・。

 

「希、それ重そうだから持ってやるよ」

「え!?いいよ大丈夫やから」

「大丈夫そうに見えないからだよ。いいから貸せ」

「もう・・・なら半分ずつ持と?そしたら隆也君だけが持ったって事じゃないから」

「別にいいけどよ・・」

 

私から見たらこの2人の方が恋人同士に見えてしまう・・・・・。

 

 

音ノ木坂に一緒に顔を出した時だって・・・・・・。

 

 

「隆也先輩!柔道の技教えて欲しいにゃ!」

「教えろって言われても・・・凛素人だろ?柔道は見かけどうり危ないんだぞ?」

「素人だけど出来るもん!こうやれば!」

「おわぁ!?バカやめろ!」

凛に不意を突かれ、胸倉と腕を掴みふらついた足を引っ掛けられ、そのまま凛に地面に押し倒される形になってしまった。

 

「ふにゃ!?///」

「いてて・・・・・・だから危ないって言ったんだ」

「ご、ごめんなさい・・・・・・」

「ま、お前に怪我無くてよかったよ」

「うぅ・・・・・・///」

(あ、頭撫でられちゃったにゃ・・・・・・///)

 

 

「・・・・・・・・・・・隆也・・・」

 

 

 

真姫のピアノの演奏を聞いていた時も・・・・・・。

 

 

「心が落ち着くような音色だな」

「そ、そりゃこの私が弾いたピアノなんだから当たり前でしょ?」

「俺、楽器と言ったらトランペットしか吹けないからな」

「え?トランペット吹けるの?」

「まあ高校時代の話だけどな。今は全然わからん」

「えっと・・・・よかったら・・私がその音色聞いてあげても構わないわよ?///」

「なんで顔真っ赤にして上から目線で言われなきゃいけないんだ俺は・・・・・・」

「約束よ!ちゃんと聞かせなさいよね!」

「はいはい。約束だ」

 

音楽室で真姫と指切りを交わした。

 

 

 

皆での食べたお弁当の時も・・・・・・。

 

 

「隆也さん!どうぞおにぎりです!」

「え?俺にか?」

「はい!男の人なんで一杯食べてもらわないと!」

「ありがとな。・・・・・・んむ・・・・あれ?このおかず・・・」

「明太子です!嫌い・・・・・・でしたか?」

「いや、俺の大好物だ。ありがとな花陽」

「っ///い、いえ・・・また作って来ますので!」

「期待して待ってるよ」

 

 

 

練習風景を見ているときも。

 

 

「隆也さん!私達のダンスどうですか?」

「ん?あぁ、いいと思うぞ」

「むー・・・なんだか曖昧な答えですね・・」

「とは言われてもな・・・俺ド素人だからな」

「だったら!ことりちゃんと私とやりましょう!」

「はい!?」

「そうだね!穂乃果ちゃんと私がダンス教えますよ!」

「いや、俺ライブに出る訳じゃないんだが・・・・・・」

「出なかったとしても!踊ったら楽しいですよ!」

「隆也さんの躍り見てみたいです!」

「それじゃこちらへ!」

「へ!?」

 

穂乃果とことりに手を握られ満更でもない表情で連れて行かれた。

 

 

 

 

こんな感じで他の女の子と一緒にいる事が日に日に増えていってる気がする。別に女の子と喋るなとは言わない。けど度が過ぎると想っている。この頃私に構ってすらくれない・・・・・・私の事を全然見てくれない・・・・・・。

この頃よく考えてしまう・・・・・・。

 

 

 

 

隆也は・・・・・・私を愛してくれているのだろうか・・・・・・・・・。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「・・・・・・ということで・・・これがこの頃起きた出来事かな」

「「「隆也(くん)が悪いじゃん!」」」

「うぐ・・・・・・」

 

お、俺が悪いのか・・・・・・。

 

「絵里に全然構う時間ないでしょ!」

「エリチがこの頃元気が無い理由がやっとわかったで!」

「お前絵里さんを大切にって言ってたけど全然じゃねえか!」

「いや・・・ちゃんと絵里とは会ったりとかはしてるぞ?」

「絵里を家に泊めたのはいつ!?」

「2、2週間前・・・・・・」

「全然じゃない!」

「エリチと遊んだのは!?」

「1週間前・・・・・・」

「バカ野郎!おもっくそ避けられてるじゃねえか!」

「まじでか・・・・・・」

「「「バカーーー!」」」

 

 

3人におもいっきりやられてる俺・・・。確かにこの頃絵里から避けられてるという自覚はあったけどそんなに事が重大になってるとは・・・・・・。

 

 

 

「とにかく!あんたは反省して今すぐ家にかえりなさい!!絵里のことは私達でなんとかするから!」

「え」

「今の隆也君がエリチと会ったら逆効果やから少し時間をおかなあかんよ!」

「へ」

「今度覚えてろよ隆也・・・・・・地獄をみせてやる・・・・・・」

「え”」

 

 

 

ということで家に帰りました。

 

 

 

 

***

 

 

それから3日が過ぎた。特に日常で変わったことは無いが、絵里とはまたぎこちない感じになってきていた。学校で俺が喋りかけても普通には返してくれるが少し冷たいのは変わってない。寧ろ少しキツめになって来たかもしれない。

 

 

「はぁ・・・・・・ダメだな俺は。絵里のこと全然考えてない」

 

 

もしかしたら絵里に嫌われたのかもしれない。覚悟はしていたけどまさか今その時がくるとは思わなかった。彼女を構ってあげず無意識に他の女の子と一緒にいて何が彼氏だ・・・・・・。

 

「・・・・・・バカ野郎だ俺は」

 

ピンポーン

 

「ん?」

 

インターホンが鳴ったので扉を開けると・・・・・・。

 

 

「希に・・・・・・絵里・・・?」

「ごめんな急に来て」

「いや、別にいいんだけど・・・・・・・・・絵里どうした?」

「うぅ~・・・・・・」

 

絵里が希の肩にしがみ付いた状態で顔が真っ赤だ。

 

「何があった?」

「すこーしだけお酒飲んでたんよエリチと。まあ、ウチはジュースやけど」

「おい」

「エリチイライラしてたんかグビグビお酒飲んでしもうて結果がこんな姿になった訳なんよ」

「把握」

「ということで介抱よろしくね!」

「・・・・・・・・・はぁ!?」

「これからウチにこっちの家に泊まりに行くからエリチの事介抱できないんよ」

「いやいやいや俺に押し付けんなよ!」

「彼氏なのに彼女をほっておくの?」

「うぐ・・・・・・・・・」

「じゃ、よろしく!」

「っておい!?」

 

絵里を俺に突き飛ばしそのまま疾きこと風の如く姿を消した。

 

「マジかよ・・・・・・絵里大丈夫か?」

「うぅ~・・・・・・体がふわふわするぅ~・・・・・・」

「体はふわふわしたりしません。今布団あるからこっちこい」

「おふとん~」

 

絵里をなんとか連れて行くと。

 

 

「・・・・・・・・・」

「絵里さん・・・・・・?なんでそんなに顔ムスッとしてんの?」

 

布団に寝かしたのはいいが一向に寝る気配が無い。というか目を開いて凄いこっちを見てくる。

 

「もしかして・・・・・・怒ってるよな?」

「・・・・・・・・・」

あ、頷いた。

 

 

「・・・・・・・・・えい!」

「どわ!?」

久しぶりと言わんばかりに絵里に布団に押し倒され馬乗りにされた。

「え、絵里!お前酔いすぎだ!」

「酔ってないもん・・・・・全部隆也のせいだもん・・・・・・」

「酔ってるのは俺のせいじゃない!」

 

 

 

 

 

「隆也が悪いもん!!」

 

 

 

俺の顔に一粒の涙が零れた。

 

 

 

「音ノ木坂に行ったときだってそう・・・・・・私なんかよりμ'sの皆と楽しくしてるし・・・仲良くしてるし・・・・・・触れ合ってるし・・・。隆也は鈍感だからそんな気持ちがあってやってるとは思ってない・・・・・・けどそれを見るたびに私の心が凄く痛いの!ズキズキして押しつぶされそうで・・・・・凄く苦しい・・・。それを見るたびについ考えちゃう。隆也は私の事本当に愛してくれてるのかって・・・・・・」

「っ・・・・・・」

「私は隆也の事を愛してる・・・・・・けど今の隆也は嫌・・・・・・凄く嫌なの。けど1番嫌いなのはこんな事を考えてる私が1番嫌いなのよ!」

「おい絵里・・・もうそれくらいで」

「独占欲なのかもしれない!隆也が他の女の子と話してるだけで嫉妬しちゃう・・・・・・けど私はこんな自分が嫌い・・・こんな醜いことを考えてる私が1ばnっ・・・・・・」

「絵里!!」

「んっ!」

 

絵里の言葉を遮るように絵里の唇を俺の唇で塞いだ。

 

「んん・・・・・んむっ・・・・・・ぷはぁ・・・」

「ぷはぁ・・・・・・はぁ・・・はぁ・・・」

「絵里・・・」

「・・・・・・・・・なに?」

「ずっと構ってやれなくてごめんな」

「・・・・・・」

「悪気は無かったと言っても説得力ないけど・・・・・俺はあの子たちに好意がある訳じゃない。俺が好きなのは絵里だけだ!」

「っ・・・・・・・・・」

絵里の目からどんどん涙が零れていく。

「今回は俺の落ち度が招いた事だ。許してくれとは言わない!お前の気が済むようにしてくれ!」

「気の済むまでしていいの・・・・・・?」

「おう・・・」

「本当に・・・?」

「おう」

「なら・・・・・目を瞑って・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

恐らくはたかれるか殴られるかどうかだ。覚悟はできている・・・・・・いつでもこい・・・・・・。

 

だが、いつまでたっても打撃は来ない。少し目を開けようとした瞬間、

 

 

 

「っ」

「え・・・?」

 

絵里に抱きつかれていた。

 

 

 

「絵里・・・・・・?」

「今日は・・・このままにさせて・・・」

「分かった・・・・・・」

 

絵里に背中にまで手を回し優しく、少し強めに抱きしめる。

 

 

「隆也・・・・・・」

「なんだ?」

「私の事好き・・・・・?」

「・・・・・・大好きだな」

「本当に?」

「本当だ」

「誓える?」

「もっと前に誓ってるよ」

「キスも出来る?」

「当たり前だ」

「なら・・・・・・して?」

「おう・・・・・・失礼・・・・・・」

「んむっ・・・・・・」

 

絵里の頬に手を添えて口付けをする。だが次の瞬間・・・・・・。

 

 

「あむっ・・・ぬちゅ・・・ちゅるっ・・・ちゅぐっ・・・・・・」

「っ!?」

 

絵里が俺の口内に舌を侵入させ、俺の舌に絡め合わせてき、口内を蹂躙してきた。

微量だが酒の匂いがする。やばい・・・・・・絵里の匂いと酒の匂いが合わさって・・・・・変な感じだ・・・・・・頭がボーッとしてきた・・・・・・。

 

 

「んむっ・・・・・・ぷはぁ・・・・・・ふふっ・・・」

「ぷはっ・・・・・・え、絵里?」

 

絵里の眼光が鋭くなり、俺の目を見据えてくきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隆也・・・・・・愛してる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日・・・俺は色々と搾り取られ、絵里は二日酔いとなった。




どうもお久しぶりです。やっとテストも終わり投稿することが出来ました。単位大丈夫かな・・・・・・まあ気にせず穏やかな日々を過ごしていこうと思います!

今回のストーリーは『東雲 アキ』さんのリクエストの『隆也と仲良くしている希に嫉妬して空回りからの、デレーチカ』を描きました。

希に嫉妬というかμ'sの皆に対する嫉妬でしたね。希も入ってるのでお許しを・・・。
まずこれが嫉妬でいいのかな・・・・・・嫉妬だと思います・・・うん!嫉妬だ!(分からなくてすみません)

今回新しく評価してくださった!
Lankasさん!赤いアイツさん!Rausさん!
ありがとうございます!

リクエストに頑張って応えていけるように頑張りますので!よろしくお願いします!


それでは今回はここまで!感想・評価お願いします!


では・・・・・・またな!


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少し苦い感じかもしれないバレンタイン

この話は、隆也と絵里が付き合い始めてまだ全然月日が経ってないという設定です。


 

2月14日。所謂バレンタインデーである。簡単に言ったら女性が好意のある男性にチョコを送る日である。この日の為に前から準備をしている女の人は少なくないのではないだろうか。意中にある男性に振り向いてもらう為に気持ちを込めてチョコを作って勇気を出して男性に渡しているのだろう。

 

 

 

 

その中には、絢瀬絵里の姿もあった。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「んー・・・どんなのがいいのかしら?」

 

 

今の日にちは2月13日。私は今自宅の台所でバレンタインで隆也に渡すチョコを作っている。隆也の恋人になって初めてのバレンタインデーなので隆也に喜んでもらえるチョコを作ろうと思っているのだが・・・・・・。

「隆也ってどんなチョコが好きなのかしら・・・・・」

 

さっきから色々なチョコ作りをしているが一向に隆也の好みのチョコが分からない。

 

「昨日学校で聞いておけばよかったわ・・・・・・けど聞くのもそれで恥ずかしいし・・・」

 

ビターチョコがいいのかミルクチョコがいいのか種類は色々とある。チョコが大好きな私からしたらどんなチョコでも作れるが、出来る事なら隆也好みのものを作りたい。

「隆也には助けて貰ったから、そのお礼も込めて作らないといけないから気合いれないと・・・・・・」

瞬間、スマホの着信音が鳴り響く。

 

~♪

 

「誰かしら・・・・・希?」

着信ボタンを押し、スマホを耳に当てた。

 

『あ、エリチ~?やっほー』

「いや、やっほーじゃないわよ。いきなり電話来てびっくりしたじゃない」

『ごめんごめん。いま何してるん?』

「え?隆也のバレンタインチョコを作ってるのよ」

『ええ子やねエリチは~。隆也君も幸せ者やね』

「隆也には助けてもらったからお礼の意味も込めてチョコを渡したいのよ」

『そっかそっか。隆也君もきっと喜ぶよ』

「喜んでもらうのは嬉しいんだけど、隆也のチョコの好みがさっぱり分からないのよ」

『え?聞いてないん?』

「恥ずかしくて聞けなかったわ・・・・・・」

『もう~エリチのバカちん』

「バカちん・・・・・」

『けど、隆也君やったら何でも食べてくれそうな気がするけど』

「私もそれは考えたけど、やっぱり誰でも好きなチョコを食べたいじゃない?できるなら隆也の好きなチョコをあげたいのよ」

『ふむふむ・・・・・なら!この希先生に任せなさい!』

「の、希先生?」

なにそのネーミング・・・・・・。

 

『ウチの考えやと恐らく隆也君はなんでも食べれる気がする!その人の好みも大切やけど、1番大切なのはその人に対する気持ちやで!』

「気持ち・・・・・・」

『エリチがどれだけ隆也君のことが好きなのかを気持ちで表さなあかん!勿論形でも!』

「う、うん!」

『ということで、今からウチの言ったとおりに作ってみたら?材料はあるから(、、、、)

「あるから?」

『いい?まずは・・・・・・』

「う・・・・・・うん」

 

 

数分後

 

 

 

「えええ!?」

『大丈夫やエリチ!隆也君もメロメロや!』

「め、メロメロじゃなくて!なんで私がそこまで!」

『その方が隆也君もエリチのこともっと好きになってくれるかもしれへんよ?』

「で、でも!///」

『じゃ!1時間後にウチの家集合!っじゃ!』

「ちょっとのぞm・・・・・・で、電話切られた・・・・・・」

 

スマホを机に置き、顔を手で隠す。

 

(そんな恥ずかしい事出来ないわよ~///)

 

顔を隠しながら頭をブンブンと振っていると・・・・・・。

 

「お姉ちゃん?なんでそんなに悶えてるの?」

「いやああ!///亜里沙!今は何も言わないで~!///」

「???」

 

 

その後、渋々希の家に向かった。

 

 

 

***

 

 

2月14日。結局、希の教えてもらったとおりにチョコを作り学校に持ってきた。隆也と一緒に登校しながら。私の通っている学校はバイクを置いている駐輪場から少し歩かないと講義のある建物まで到着しない。いつも通りに隆也と駐輪場で合流し、建物まで話ながら向かうのがいつもの日常である。けど今日は日にちが日にちなので少し緊張しながら隆也と一緒に歩いている。

横目で隆也を見るがまったく緊張感が無いと言うか間抜けというか、こっちがこんなに恥ずかしい思いをしているのに隆也が間抜けな顔で横にいるのがなぜか許せない・・・・・・。

 

(ダメよ絵里!希に教えてもらいながら頑張ったんだから!ここで躓いちゃだめよ!)

誰にもバレないようにガッツポーズをし講義に向かう前に自分の教材などが入っているロッカーに向かうと・・・・・・。

「ねえ隆也・・・貴方のロッカー膨らんでない?」

「膨らんでたりするわけ・・・・・・膨らんでるし・・・」

見てみると誰からどう見ても分かるくらいロッカーが膨らんでいるように見える。

 

ロッカーを開けて見ると、中から物理法則を無視した量のチョコが飛び出してきた。

 

「どわあああ!?」

「きゃあああ!?」

私と隆也が同時に悲鳴を上げる。

中から何十ともいえるバレンタインチョコが出てきた。

 

 

隆也視点ー

 

 

 

全く意味が分からない。なんでこんなに大量にチョコがあるんだよ・・・しかもそれが俺のロッカーに!

「これ、全部隆也への物ね」

1個1個確認しながら絵里が呟く。

ヤバイ・・・顔が怖い・・・。

「えっと・・・これどうしたらいいと思う?」

「知らないわよ」

「お・・・おう・・・」

とりあえず、ロッカーから飛んできたチョコを鞄に詰めれるだけ詰め、あふれたものを手に持って講義のある教室に向かう。向かうときにすれ違った人達(男たち)に凄い目で見られながら教室に入る。

「とりあえず・・・これをどうにかしないと」

「いいわよねぇ、モテるのね~隆也は」

「うぐ・・・・・・」

「私という!!彼女が居ながら!!こんなにも!!チョコを!!貰ってるんだからね!!」

「ぐぅぅ・・・・・・」

胸がズキズキと痛む・・・・・俺だってまさかこんなにチョコをもらえるとは思ってもいなかった。出来ることなら絵里に貰いたい!とは願っているが今の状況だと恐らく貰えないであろう・・・・・・。

「隆也」

「はい・・・?」

 

絵里が俺のことをゴミを見るかのような目で見て口を開いた。

 

 

 

「今日1日・・・・・・反省するまで私に話しかけないで!」

 

 

 

 

地獄の1日の始まりだった。

 

 

 

***

 

 

 

絵里視点ー

 

 

大学食堂にて・・・・・。

 

「はぁ・・・・・・」

「どうしたの絢瀬さん?」

「ちょっと・・・ね」

「横山君と何かあったの?」

「っ!やっぱり分かる?」

「分かるよ!顔に書いてあるもん!」

「うぅぅ~・・・」

愛菜さんとお昼の時間にランチを取っているのだが食事が喉を通らない。朝に起こったことがあったから隆也と一言も喋っていない。たまにチラッと隆也の事を見てみると魂が抜けたかのようにやせ細っている感じになっている。反省もしているようだからそろそろ話しかけようかと思ったがタイミングを逃してしまい今の状況に至る。

 

「早く仲直りしたらいいんじゃないの?」

「そうなんだけど、今の隆也を見ると逆に言葉をかけづらくて・・・」

「自分が言った言葉でこんな事になるなんてね」

「けど!隆也も悪いわよ!私という彼女がいるのに事あるたびに他の女の子に思わせぶりな態度をしてるからバレンタインのチョコをあんなに貰ってるのよ!」

入学してから薄々気付いてはいたが隆也の人気が徐々にうなぎ登りになっている。その理由はどんな女の子でも優しく接している事が原因である。特に私の事を体を張って守ったという事件を知った人は隆也の事を『完璧な男性』というイメージが強くなった。

「横山君の場合、無意識でやってると思うよ?」

「隆也は誰でも助けにいっちゃうからね・・・そこもかっこいいところなんだけど」

「惚気?」

「違うわよ!」

「まあ横山君もあの様子だと反省してるだろうからそろそろ許してあげたら?」

「そうね・・・次の講義の時に話かけてみるわ」

「だね!横山君にチョコもあげないといけないし!」

「ちょ、ちょっと!///声がでかいわよ!///」

「えへへ~」

「もう・・・・・」

愛菜さんにいじられてる気がする・・・・・・。

「ところで隆也君は?いつもならこの時間に食堂でご飯食べてるのに」

「確かにそうね・・・まさか今もショックで干からびてたり・・・」

「流石にそれは・・・・・・あれって隆也君じゃない?」

「え?」

視線を移すと食堂の外を女の人と歩いている隆也の姿があった。

「隆也!?」

「あの人って確か3回生の人だよね?噂ではモデルもしてる美人だとか・・・」

「なんで・・・・・・そんな人と」

「もしかしてチョコを渡すためじゃない?」

「っ!!」

すぐに椅子から立ち上がる。

「あ、絢瀬さん!?」

「ごめん愛菜さん!少し待ってて!」

「い、いってらっしゃい・・・・・・?」

 

 

 

***

 

 

隆也視点―

 

 

 

食堂で飯でも食おうかと思ったのにいきなり声を掛けられた。

 

「はい?」

「隆也君よね?私の事覚えてる?」

「えっと・・・」

目の前に美人・・・目の前に美人・・・・・・おっと落ちつけ。だけどこの人どこかで見たことが・・・・・・。

「あ、もしかして俺がとんでもない量の書類を運んでいた時に手伝ってくれた・・・」

「そう、3回生の『桐山沙奈』よ。会ったと言っても結構前の話なのに」

「俺人の名前を覚えるのは苦手ですけど美人の顔を忘れる事はないもんなんで」

「ふふっ、お世辞が上手いのね。今大丈夫かしら?」

「大丈夫っちゃ大丈夫ですけど・・・」

「ちょっと来てもらえるかしら?」

「どこに?」

「こっちよ」

「あ、はい・・・」

 

桐山先輩の背中についていき、到着した場所は俺が不良共にボコボコにされてボコボコに仕返した事件現場。なんでこんなところに・・・。

 

「えっと・・・桐山先輩?なんでこんなところに・・・?」

「なんでって・・・・・・こ、此処じゃないと2人っきり(、、、、、)になれないでしょ?///」

「え?」

(2人っきり?そしてなんでこの人顔が赤いんだ?)

「そ、その・・・・・・あなたに言いたい事があって・・・・・・///」

「言いたい事・・・?」

流石の俺でもすぐに分かった。このシチュエーション・・・。

 

 

 

 

 

「わ、私と・・・・・・付き合ってください!!」

 

 

 

 

 

***

 

 

絵里視点―

 

 

 

「わ、私と・・・・・・付き合ってください!!」

 

 

え?

 

 

 

隆也の後をつけてあの頃の事件現場に来ていた。2人にはばれないで盗み見してた時、相手の先輩が隆也に告白していたところを見てしまった。

 

 

 

「え?せ、先輩?」

「その・・・私と付き合ってくれる?隆也君///」

「え、で、でも俺と先輩ってそんな接点がなかったですよ?」

「これは本当に私の一目惚れから始まったのよ。書類を運んでいる時に君が見せてくれた表情を見て胸がドキドキしたのよ・・・・・・あの後も家に帰って目を瞑ると君の顔が目に浮んできて・・・君の事を忘れる事が出来なかったのよ///」

「そう・・・・・・なんですか・・・・・」

「だから!ずっと君と一緒に居たいと思った!私の恋人になってください!」

先輩が頭を下げていた。隆也の背中しか見えないから顔が見れない・・・。隆也はどんな気持ちでこの告白を聞いているのだろうか・・・・・・。

 

「桐山先輩・・・」

「・・・なに?」

「告白・・・凄く嬉しかったです」

「っ!じゃあ・・・」

 

私はもうこの先を聞きたくなかった。相手は私よりスタイルもいいし美人。そんな人から告白されたらどんな男の人でもOKをだしてしまうのではないだろうか・・・・・・。もしかしたら隆也も・・・・・・。けど隆也は私に好きだと言ってくれた・・・そんな事は無いと心に訴えてはいるが心のどこかに『もしかしたら』という気持ちが出てくる。

 

胸が痛い・・・・・・ズキズキと痛む。自分の好きな人が盗られそうで怖かった。耳を塞ぎそうになった。

 

そんな時・・・・・・。

 

 

 

 

「けど、すいません。俺は先輩の恋人にはなれません」

 

 

 

 

先輩の告白を断った。

 

 

 

 

「理由を・・・聞かせてもらってもいいかしら?」

「俺にはもう恋人がいます。絢瀬絵里という女の子が」

「話題になった元スクールアイドルの子よね・・・けど知ってるわ。彼女と貴方が付き合ってるのは」

「なら、なぜ告白を・・・」

「これは単なる私の自信の話だけど、私は彼女よりも貴方の事を好きだと思ってる。貴方を愛する気持ちは誰にも負けないつもりよ!絢瀬絵里さんよりも!」

「・・・・・・」

「恋人がいることは前から知ってるわ。けど気持ちは退かなかった。この気持ちをずっと持ったまま何もなく終わりたくなかった!後悔したくなかった!だから貴方に告白したのよ!」

「そう・・・ですか」

「けど、貴方にとっちゃ絢瀬絵里さんがとても大事なのね」

「え?」

「告白してもフラれるって大体分かってたから」

「それなのにどうして!」

「言ったでしょ・・・気持ちを持ったまま終わりたく無かったのよ。けど、告白して少しすっきりしたわ」

「は、はぁ・・・・・」

「ねえ、聞かせてもらっていいかしら?貴方がなんでそんなに絢瀬絵里さんを大事にしているのか」

 

私も影からばれないように覗く。

 

 

 

 

 

 

「絵里は、俺の大事な・・・大事な女の子なんです。人一倍寂しがりやで、人一倍意地っ張りで、人一倍優しい。そんな彼女とこの大学で出会いました。最初は凄く自分勝手な女の子だと認識していました。けど時間が過ぎていくにつれて彼女のもっているものが見えてきました。可愛くて、優しくて、寂しがり屋で・・・俺はこの人を守ってあげたいと思ったんです。すぐに壊れそうな彼女を支えてあげたい、悲しんでる彼女を助けてあげたい、楽しそうにしている時は彼女の横で一緒に居たいと思いました」

 

 

私は手で口を塞ぎながら涙を零していた。隆也が私をそこまで想ってくれていたことが嬉しかった。初めて男の人にこんなに愛してもらっている事が嬉しかった。

 

 

(隆也・・・・・・)

 

 

 

 

 

「彼女は・・・俺の失いたくない・・・・・・宝物なんです」

 

 

 

 

 

「そう、愛されてるわね絢瀬絵里さん」

「俺は今もあいつを愛してますよ」

「フッた女性を前でよくそこまで堂々としてるわね」

「あ!いや、その!」

「ふふふっ・・・大丈夫よ。誰にも言わないから」

「よ・・・よかった」

「大事な恋人との時間を邪魔して悪かったわね。貴方のことは諦めるわ」

「はい・・」

「絢瀬絵里さんを大事にしてあげてね」

「・・・・・・はい!!」

 

桐山先輩はその場から立ち去った。笑顔なのに・・・少し悲しげな表情で。

 

 

 

「はぁぁ~・・・初めて告白されて焦ったぁ~。まだ胸がドキドキしてるよ・・・」

 

隆也もその場を去った後、私は涙が止まるまでその場から動けなかった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

隆也視点―

 

 

 

「結局絵里とは喋れなかった・・・」

ただただタイミングが無かったというか・・・・・・。けど午後の講義からは絵里と顔を合わせたら顔を真っ赤にして顔を逸らされたんだが・・・。

「なんだったんだろうな」

バイクの鍵を出しいざ出発しようかと思ったとき。ケータイの着信音が鳴った。

 

「絵里?」

LINEで絵里から。

『隆也の家に入ってるから』とのこと。

「あ、そっか絵里に合鍵渡してたんだった・・・」

一瞬不法侵入かと思った。

バイクに跨りすぐに帰宅。

 

 

 

 

 

 

 

「絵里ー帰ったぞ」

家の扉を開け、リビングに向かうと。

「お、おかえりなさい・・・///」

もじもじしてる絵里がいた。

「えっと・・・その今日のことは・・・」

「待って!」

絵里の人差し指で口を塞がれた。

「それはもういいわよ。怒ってないから」

「お・・おう」

絵里の様子が少しおかしいような・・・。

「隆也・・・・・・今日告白されてたわね」

「っ!?なぜそれを・・・・・・」

「み、見てたから・・・・・・趣味悪いかもしれないけど」

「いや別に大丈夫だけど・・・」

「っ!」

「おっと・・・」

絵里が俺に抱きついてきた。

「どうしたんだ絵里?何かあったのか?」

「・・・・・・・・・怖かった」

「え?」

「隆也が私じゃなくて桐山先輩と付き合うんじゃないかって、私を捨てるんじゃないかって怖かった・・・けど隆也は私の事を宝物って言ってくれた・・それが凄く嬉しかった・・・私、隆也と離れたくないよぉ・・・」

顔を上げた絵里の瞳には涙が溢れていた。俺はそれを手の親指で拭った。

「俺は絵里が好きだ。絵里を捨てたりしないから安心しろ」

「うぅ・・・・・うわぁぁああん!!」

絵里が声を上げて泣いた。俺は絵里が泣き止むまで絵里を抱きしめ頭を撫でた。

 

 

 

 

「落ち着いた?」

「えぇ・・・ごめんなさい。ずっと頭撫でてくれて・・・」

「気にするなよ。久しぶりに絵里の泣き顔見れて良かったと思ってるよ」

「も、もう!隆也の馬鹿!」

俺の胸をポカポカと殴ってくるが全然痛くない。逆に愛しく感じる。

「んで絵里。俺の家に来たって事は用があるんだよな?」

「そうね。これを渡したくて・・・・・」

自分の鞄をゴソゴソと漁り俺にあるものを渡してきた。

 

 

「はい隆也。ハッピーバレンタイン!」

「チョコ・・だよな?」

「えぇ・・・頑張って作ったから味わって欲しいわ」

「なら早速」

綺麗にラッピングされている包装を綺麗にはがす。

「え!?今ここで食べるの?」

「ちょっと小腹が空いててさ。今頂くよ」

綺麗な紙に包まれたチョコを口に入れる。

「・・・・・んむ・・・・・」

「ど、どう?」

「凄い美味いよ。味も俺好みだ」

「ほ、本当!?」

「あぁ。この甘いのが体に染みるんだよ」

次々と口の中に放り込み飲み込んでいく。

「ご馳走様。美味しかったよ」

「美味しく食べてもらって私も嬉しい。またバレンタインとは関係なしだけどチョコ作るから食べてね」

「おう。楽しみにしてるよ」

重い鞄を置き体を伸ばすとバキバキと音が鳴る。

「~~~っ!あーー・・・絵里帰り道送っていくよ。夜は危ないからな」

「あ・・・いや・・・・・・そのぉ・・・・・・」

「ん?」

「まだ・・・・・・チョコあるのよ・・・///」

「え?まだあるのか?」

「あるのだけど・・・・・・ちょっと特殊でね」

「特殊・・・・・・?」

「・・・・・・・・・これよ」

机に出されたものは・・・・・・・・・。

「口紅?」

見た感じ完璧に口紅。

「えっと・・・・・・これのどこがチョコな訳?」

「は、恥ずかしいから後ろ向いてて///」

 

(後ろ?)

言われたとおりに後ろを向き、数十秒後背中を叩かれたので振り向くと特に何も変わって居ない絵里。

 

「絵里?」

「その・・・・・・んっ」

「え!?///」

絵里が目を閉じて顔を少し上に向けてキスを求めてきた。

 

(こ、これって・・・・・・キスだよな・・・絵里から求めてくるなんて珍しい・・・)

絵里の肩を掴み顔を近づけるとあることに気付いた。

「あれ・・・・・・唇が茶色・・・・・・もしかして?」

「察しがいいのね・・・///そうよ、この口紅はチョコで出来てるのよ。だから私の唇はチョコの味がするのよ。だから・・・・・・その・・・召し上がれ///」

 

 

 

 

(か・・・可愛い!まさか俺も予想出来なかったことを絵里がしてくるなんて!///もう1つのチョコってこういうことか・・・・・)

絵里の唇に俺の唇が当たる。

 

「んんっ・・・ちゅっ・・・・・・ちゅっちゅっ・・・」

「んんっ・・・・・」

絵里の唇を優しく啄ばみ唇についているチョコを舐めとる。

「ぷはっ・・・・・最高のチョコだな」

「えへへ・・・・・・///」

「絵里・・・・・・こっち来いよ」

「うん///」

 

絵里の手を引き俺はベットに座り俺の膝の上に絵里を座らせる。

「なあ絵里・・・おかわりいいか?」

「どうぞ・・・まだいっぱいあるわよ」

「じゃあ失礼・・・・・」

口紅を手に取り絵里の唇に塗っていく、次は少し濃い目で・・・。

「んんっ・・・んぁ・・・///」

「絵里、声・・・・・・」

「ごめん・・・・・・ちょっと気持ちよくて///」

「ふっ・・・・・・絵里のエッチ・・・」

「ぅああっ・・・・・・///」

絵里の耳元で低い声で呟くと絵里の体がビクッと震える。

 

 

 

 

 

「じゃ・・・・・・チョコ唇・・・いただきます」

「・・・召し上がれ///」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、唇がふやける程チョコを味わった。傍から見たらただただキスをしているように見えるけど実は違う・・・俺はチョコを食べているだけだ。




はいお久しぶりです。少し時間を空けてしまいましたがなんとか投稿することが出来ました。そして今回バレンタインという事でバレンタインの話を書きました。前書きにあるとおりに隆也と絵里の設定は付き合い始めてまだ全然月日が経ってない状態にしました。その方がいいかもと思いまして笑

そして今回新しく評価してくださった!
Eli Loversさん!ありがとうございました!


自分も絵里からチョコ貰いたいな~そしてイチャイチャラブラブしながら夜を過ごす・・・・・最高だ!!もっと絵里を喰わせろ!←(お巡りさんこいつです)

では今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!

では・・・・・・またな!!


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結婚までの修羅場???

東京。

 

日本の首都である大都会。この場所で、嘗てスクールアイドルのトップに君臨した『μ's』が最も名を轟かせた場所。μ'sのメンバーは高坂穂乃果、南ことり、園田海未、星空凛、小泉花陽、西木野真姫、矢澤にこ、東條希、絢瀬絵里。若者にその名を聞けば10人中8人は『知っている』と応えるのではないだろうか。

 

この物語はμ'sが有名になった年から約7年後の話。

 

 

東京のとある一軒家の表札に書かれている名前。

 

 

 

『横山』

 

 

 

この家には横山隆也という男性と、その男性と結婚した横山絵里、旧名絢瀬絵里の住んでいる愛の巣である。

 

 

 

 

 

これは、その2人で過去を振り返りながら語られる結婚後の物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま・・」

とっぷりと暗くなった夜に俺こと横山隆也は、重くなった足を無理矢理動かしながら帰宅することができた。今日も今日で残業が入ってしまいいつもの帰る時間より2、3時間ほど遅れてしまった。

「流石に寝てるか・・・」

なんていったって今の時刻は11時前。よい子も悪い子も大人も眠りに入っている時間である。『彼女』もいつもの時間なら寝ている・・・・・・と思っていた。

 

 

「あ!おかえりなさい!」

部屋の奥からパタパタと小走りしてくる女性。ロシアのクォーターで綺麗な金髪をポニーテールに纏めている俺の恋人で今は俺の嫁、奥さんになった。

 

 

 

 

「起きてたのか、絵里」

 

絢瀬絵里である。

 

 

 

 

 

 

「夜遅いから寝てればいいのに」

「夫を待つのは妻の務めよ。今日もお仕事お疲れ様」

「あぁ。父さん俺のことこき使うからさ」

俺の今の職業は警察官である。大学を卒業して小さいころの憧れだった父さんと同じ職業である警察官になる事が出来た。まだ凄く偉いという地位には着いていないが愛する絵里の為に日々頑張って馬車馬の如く動いている。日々俺の父さん、今は警部になって俺はその警部直属の部署で汗水&血を流して働いている。

絵里は公務員になり東京の市役所で働いている。大学で公務員試験に合格して大学を卒業してすぐそこに勤める事ができた。賢い可愛いエリーチカという名前は伊達ではなかったということか・・・・・・。

 

「今少し失礼なこと思ったでしょ?」

「な、なんのことかな!?ハハハハ・・・」

「本当かしら?まあいいわ。ご飯温めるから座ってて」

「おう」

鞄を置き服装を楽な状態にし凝っている肩を自分の手でマッサージしながら椅子に座る。父さんに「お前はまだ特訓が足りん!」って言われて柔道でこの頃よく投げ飛ばされてるからな~。

「明日は待つに待ったお仕事がお休みの日ね。ゆっくりできるじゃない」

「頑張って耐えた甲斐があったよ・・・久しぶりに絵里と一緒にいれるからな」

「も、もう!///恥ずかしい事言わないでよ・・・」

(そ、そりゃあ一緒にいれるのは凄く嬉しいわよ?この頃『隆也成分』が足りてないから・・・」

「隆也成分?」

「え!?私今声出てた?」

「モロにな」

「り・・・」

「り?」

「隆也のばかああああ!!///」

「ぅわっちゃいいぁあ!!」

台所で準備してくれていたあっつあつのおにぎりを顔面に投げつけられ、目が火傷したんじゃないかってくらいの激痛に襲われ地べたでゴロゴロと転がりまわる羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿・・・最低男・・・クズ・・・・・生ゴミ」

「どんどん口が悪くなっている・・・・・・」

「ふんだ・・・」

晩飯はしっかり食べる事は出来たがさっきから絵里がずっとこんな感じだ。いじけるところも可愛いぞと言ってやりたいが次は何を投げてくるのか分からないので言わないようにしとこう・・・うん。

「ほら絵里。機嫌直してくれよ。な?」

「むぅ・・怒ってないわよ・・・」

ツンデレなのか?見た感じ怒った表情してるのに手招きすると俺の胡坐の中にすっぽりと納まりスリスリと顔を胸に押し付けてくる。

「ツンデレ絵里・・・大好きだ」

「私も大好きよ。隆也のこの包容力」

「包容力・・・・・・?」

男に包容力ってあっていいのか?

「あ!そうよ隆也!今日これを見つけたのよ!」

「ん?」

絵里の持っているのは少し厚みのあるアルバム。

「あ、懐かしいなそれ。よく見つけたな」

「今日速めに仕事が終わったから家の中を軽く掃除してるときに見つけたのよ」

「なんという偶然。久しぶりに見ていくか」

ページをペラペラと捲っていくと懐かしい写真が顔を出してくる。

 

 

 

 

 

「これ懐かしいな。初めて絵里と海に行ったときの写真」

「私が隆也を後ろからバイクで追いかけたわね。道を間違えたから」

「間違えただけであんなに必死に追いかけてこなくて良かったのに」

「ちょっとムカッと来たのよ」

「理不尽だ」

また1枚ページを捲ると。

「これは私達が付き合い始めて始めて取ったツーショットね」

「この時も思ったけど初めて会ったときと比べて絵里凄い変わったなと思うな」

「そんなに私変わったかしら?」

「自覚なしなんだな」

「凄く普通なんだけど・・・」

(あの時は俺が初対面の人間だったからかな?元は今の状態で初対面の時は初めてあう人間に対する対応なのかな・・・まぁ、深く考えない)

 

 

そしてまた1枚捲ると。

「やっぱり・・・これが1番心に残ってるな」

「そうね。今までの人生の中で1番幸せだったわ・・・」

「凄く緊張したけどな」

 

写真に写っているのは結婚式の時の俺たちだ。ウェディングドレスを着ている絵里とタキシードを着ている俺。この時は絵里から目が離せなかった。綺麗で可愛くて美しくて、俺は絵里のことを愛しているんだなと深く自覚することができた。

「私・・・凄く夢だったのよ。愛している人と結婚式を挙げるのを・・・」

「そっか。願いを叶える事が出来たんだな」

「隆也には今も感謝してるわ」

「ありがとな。まぁ・・・この結婚に至るまで苦労したけどな」

「そうね。隆也のお父さんに結婚は簡単に認めてもらえたけど・・・」

「絵里の親父さんがな」

「今でも記憶に残っているわ」

 

 

 

そう・・・結婚に至るまでで最強の難関だったのが・・・絢瀬絵里の親父さんとの対面だった。

 

 

 

 

***

 

 

約3年前。俺と絵里は無事に大学を卒業する事ができ、就職した職場でも安定してきたので俺は絵里と結婚することを決意した。貯めて貯めた貯金で指輪を購入し、絵里にプロポーズをした。

 

 

 

 

「絵里・・いや、絢瀬絵里さん・・・・・俺は、横山隆也は今でも貴女のことを愛しています。これからも・・・俺の側にいてくれますか?」

指輪のケースから指輪を見せながらのプロポーズ。告白した瞬間絵里は数十秒ぐらい固まって無表情だったが、瞬間。

 

 

涙を流して喜んでくれた。

 

 

「やっと・・・言ってくれた・・・。横山隆也さん・・・・・・私、絢瀬絵里は貴方の事を愛しています。これからもずっと貴方の側にいさせてください・・・」

どんどん溢れてくる涙を拭いながら答えてくれた。俺は誓った。この人をずっと守っていこうと・・・・・・。

 

 

プロポーズは見事に成功し、残りは両方の親への報告だ。俺の父さんと母さんに報告したら、止める事もなければ褒めてくれるわけでもなく。

 

『『やっとか』』

 

の一言。両親そろってアバウトだな・・・・・・。

 

 

 

「初めて隆也のお母さんに会ったけど凄く若くて綺麗な人よね」

「なんで俺の母さんを見た奴は若いっていうのかな・・・」

「え?年を考えたら若いんじゃないの?」

「俺の母さんの年齢教えてやるよ」

「う・・・うん」

「○○歳」

「え・・・・・・」

「信じられるか?」

「・・・・・・今から若さの秘訣を教わってくるわ」

「待て待て待て待て!!」

目の色が変わった絵里を止めるのに苦労したのは言うまでも無い。

 

 

 

 

 

 

次は・・・・・・。

 

 

 

「絵里のご両親に挨拶だな」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

その日は絵里の一通のメールから始まった。

 

『私の両親がロシアから帰ってきたから婚約の話を報告しましょ』

 

俺はすぐに恥ずかしくない格好に着替え、急いで絵里の家に向かった。

玄関の前に到着すると、得体の知れないオーラのようなものに体が反応したのかインターホンを押す事を躊躇してしまった。

(ここで止まってんじゃねえよ・・・覚悟をきめたんだろうが)

 

ピンポーンッ

 

 

数秒後。

 

 

「どちら様?あ!貴方が絵里の彼氏さん?」

「あ、え、そ、そうです!!」

 

出迎えてくれたのは絵里そっくりの大人の女性。絵里よりも背が高く綺麗な金髪を背中まで伸ばしていた。

 

「絵里のお母さんですか?」

「そうよ。いつも絵里の側に居てくれてありがとう」

「い、いやいや!俺の方こそ絵里によくしてもらってます!」

「そうなの?絵里も大人になったわねぇ。こんなイケメンな彼氏を捕まえて」

「い、イケメンじゃないですよ!?」

「ふふふっ、そうやって慌てるの可愛いわよ?」

(ヤバイ!絵里のお母さんのペースに乗せられて何て言ったらいいのかわからない!)

そんなやりとりをしていると・・・・・・。

「ちょっとお母さん!隆也の事困らしたらダメよ!」

凄い勢いで絵里が走ってきた。

「あらあらごめんなさい。どんな人なのか気になったものでね」

「もう!///」

絵里のお陰で何とか助かった・・・・・・。そのまま絵里に導かれリビングに向かうと、背中を向けている男性と絵里の妹の亜里沙がいた。

「あ!隆也さん!お久しぶりです!」

「亜里沙。久しぶりだな、元気にしてたか?」

「はい!あれ?隆也さん少しの間しか会ってないのに背が伸びてませんか?」

「え?そうか?」

「180あると思いますよ?お姉ちゃんと幸せな時間を過ごしたから背が伸びだんじゃないんですか?」

「それで背が伸びたら世界中の背が低い男共が一心不乱に彼女を作り出すぞ・・・・・・」

「私も隆也さんみたいな彼氏が欲しいなぁ~。お姉ちゃんから奪っちゃおっかな?」

「ちょっと亜里沙!いくら妹でも隆也は渡さないわよ!」

(亜里沙・・・少し見ない間に色々と覚えたんだな・・・・)

小さな子供って色々と覚えていくから怖い・・・・・・。

 

「お父さん!隆也が来たから紹介するわ」

「ん・・・分かった」

背を向けていた絵里のお父さんが此方を振り向いた。俺よりほんの少しほど背が高く、がっしりとした肩幅に太い腕。男らしい顔つきに綺麗な黒髪。

「隆也!この人が私のお父さんよ。名前は『絢瀬真太郎』」

「よろしく・・・横山隆也くん」

「よ!よろしくお願いします!」

 

 

俺は瞬時に深く頭を下げた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

ソファーに座らせてもらい絵里のご両親と面と向きあう。

 

「さて、今日は報告があるんだって?絵里」

「えぇ、それは・・・」

「絵里、俺が言う」

絵里より先に言わせるわけにはいかない。

 

 

 

 

「俺・・・僕は絢瀬絵里さんを愛しています。どうか・・・娘さんと僕が結婚することを許してもらえないでしょうか?」

「「・・・・・・・・・・・・」」

無言、ただそれだけだった。絵里のお母さんは俺をじっくりと見た後、ニコッと笑み浮かべてくれた。だが、絵里のお父さん、真太郎さんは全然表情を変えていない。

「私は良いと思いますよ。ね?あなた?」

「・・・・・・・・」

お母さんは良いという答えを出してくれたが、真太郎さんは口を開こうとしなかった。

「お父さん・・・・・・」

「あなた?」

「私と隆也くん以外、別の部屋に行ってなさい」

真太郎さんの一言で絵里、亜里沙、お母さんは席を外した。

 

 

 

 

 

「隆也くん」

「はい」

「君の事は絵里からよく聞いている。大学在学中に絵里を守ってくれたと」

「はい・・・」

「まずはそれに礼をいいたい。ありがとう」

「・・ありがたいお言葉です」

真太郎さんの一礼はとても貫禄があるように感じる・・・・・・。

「私と妻は事情で今ロシアに滞在している。できることなら絵里と亜里沙の側にずっと付いてあげたい。だが今はそれができない状態にある。その中絵里を守ってくれる男性が出来て私は安心している」

「安心・・・・・・」

「その絵里と君が結婚する。それは大いに大賛成だ・・・・・・」

「それじゃあ・・」

結婚を許してもらえるのですか?と聞こうとしたが真太郎さんの言葉が先に出た。

 

 

 

 

「だが、君にその覚悟はあるか?」

「覚悟?」

「絵里と結婚する。そうしたら今まで以上の重みを背負うことになる。私も妻と結婚する時にそれを思い知らされた。それがどれだけ大切なのかと言う事も・・・・・」

「はい・・・」

 

次の真太郎さんの言葉は、ずっと心に残っている。

 

 

 

 

 

 

「男は、歳いくたびに人に頼られる事はあっても、人に頼れない立場になってくる。人に頼れないという事は、全部自分でするという事・・・・・」

「・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「君に絵里を含め・・・それ全てを背負う覚悟があるか?」

「・・・・・・・・・」

 

 

覚悟。真太郎さんの言葉が凄く重く感じる、今はこれぐらいかもしれない・・・これからはそれがどんどん重くなってく・・・・・・。絵里を守っていく・・・これから先の人生・・・それが出来ないと絵里を守っていく事など到底無理だ・・・。男には・・・どんな困難なことがあってもやらなきゃいけない覚悟がいる・・・。

 

 

俺は・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

「隆也!!」

 

 

絵里が隣の部屋から飛び出してきた。その目にはうっすらと涙を浮かべている。ずっとこの話を聞いていたんだろう・・・・・・。

 

 

(絵里・・・・・)

 

 

 

 

 

「俺は・・・・・・」

「ん?」

「絵里を守る覚悟や・・・一緒に生きていくという覚悟。その覚悟すら受け止める所存です。これから絵里と歩んでいく道に後悔という言葉なんて出させない。絵里は俺の人生の中で始めて心の底から愛していると思えた女性です」

 

 

 

俺は・・・・・・真太郎さんの目を見て応えた。

 

 

 

 

 

 

「覚悟すら受け止められない男にはなりたくありません・・・。絵里を守るために、真太郎さんよりも絵里を守れるほどの強い男になる・・・俺を此処まで育ててくれた俺の父さんのように・・・絵里をずっと守ってきた真太郎さんのように・・・今度は俺が『守られる』側の人間などではなく『守る』側の強い人間になります。それが・・・俺の覚悟です」

 

 

 

 

 

 

 

 

少しの静寂の後・・・真太郎さんが口を開いた。

 

 

 

 

「その言葉だけで充分だ・・・・・・その言葉・・・しかと受け止めた・・・隆也くん」

「はい・・・」

「絵里をよろしく頼みます」

「・・・・・・はい!!!」

 

 

 

 

 

「隆也ぁ!!」

「絵里!」

 

俺は強く絵里を抱きしめた・・・・・・。

 

 

 

 

 

これからも・・・・・・よろしくな・・・絵里。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・で結婚できたというわけだな」

「お父さんによくあんなに強く出れたわね」

「緊張で汗がやばいけどな・・・・・・特に冷や汗」

「それを口に言わなかったらかっこよかったのに・・・・・・」

 

アルバムを閉じた。

 

 

 

 

 

「絵里・・・」

「なに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これからも・・・・・・よろしくお願いします!」

「ふふっ・・・よろしくしてあげるわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして俺たちは・・・・・・・『ホンモノ』の恋人の次に・・・『ホンモノ』の夫婦になった。




はいお久しぶりです!今回はリクエストにあった『海未ライバー UMR』さんの結婚後のお話でした。まぁ・・・殆ど絵里のご両親への報告とお話でしたね。イチャイチャじゃなくてすいませんでしたぁああああああ!次回はイチャイチャ書こう・・・・・・うん・・・。



今回新しく評価してくださった!
あとらすさん! 紅蒼の魔神さん!ありがとうございました!

次回は『ドスメラルー』さんのリクエスのお話を書きます!更新が遅くて申し訳ありません。また機会があればもう一度リクエスしようかなと想っております。


それでは今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!



では・・・またな!!


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クリスマスでの出来事

後書きにお知らせがあるのでよろしければ見てください!


「12月・・・24日か」

 

前日からのことだが家のパソコンでクリスマスでのデートコースを調べている時にポツリとその日付を呟いてしまう。今までの人生を思い返していくとクリスマスではこれぞといった思い出がない。

 

「ま、高校時代は別だけど・・・」

 

なんで未成年の高校生が酒飲んで一日中カラオケで暴れなきゃならんのだ。

この話を簡単に説明すると、クリスマスに高校時代の友人共とカラオケで朝まで歌おうということが決まり全員テンションMAXの状態でカラオケに直行。程よい具合に歌い終わった時、友人の1人がこっそりそこまでアルコール度数の高くない酒を持ち込んでいたことが判明。まあ全員テンションMAXどころかテンションで頭がおかしい状態になっていた。簡単に言えばキチガイ状態だ。そして調子に乗って酒を飲みまくって酔いまくったせいでその空間だけカオスと化した。

 

 

「あの後全員を介抱した俺の身にもなれって話だ」

 

その後そいつらは酔いまくって記憶が飛んだ状態のまま頑張って介抱をしている時に俺のことをぶん殴ってきたから、後日全員纏めて一本背負いしておいた。

 

 

「あれがある意味(?)いい思い出なのかな」

 

またあいつらとクリスマスを過ごすのも悪くないのかもしれない・・・・・・。

 

 

 

「ちょっと息抜きに動画でも見るか」

 

パソコンをいじり某動画サイトを開く。最近よく見るのは・・・・・・。

 

 

 

『みなさんこんにちは!μ'sです!』

 

動画サイトに投稿されているμ'sのPVだ。絵里や他の子たちがやっていたスクールアイドルがどんなのか気になったので時間があるときにこうやって眺めている。

 

『聞いてください!僕らのLIVE!君とのLIFE!』

 

これはにこから話を聞いた感じだと絵里と希がμ'sに加入して出した初の曲らしい。これもノリノリになれる曲だから俺は好きだな。

 

「・・・・・・・・・」

 

絵里の踊っているところをずっと見てしまう俺はもう病気なのか?いや確かに可愛いとかは思うぞ?だけどほかにも見れる場所はある。かっこいいところとか綺麗な処とか可愛いところとか可愛いところとか・・・・・・結論可愛いところしか見てない。

 

「あれ?懐かしいの見てるわね」

「このサイト開くと絶対これを見ちまう」

「隆也もスクールアイドルに興味もったのかしら?」

「さあな。お前が出てる曲には興味あるけどな」

「も・・・もうっ///」

絵里は褒められて恥ずかしくなったのか俺の背中に抱きついて顔をすり寄せてくる。

「おい絵里そんな事したらお前の顔が見れないだろ」

「今は絶対に見ないで!///絶対顔赤いから!///」

(その顔が見たいって言ったら怒るかな?)

「その顔が見たいってっても見せないからね///」

 

よ、読まれてた・・・・・・。

 

 

「ところでだ絵里・・・今度のクリスマスイブの日だけど」

「なに?」

「一緒にデートしないか?」

「ほんと!?」

「あぁ、折角のクリスマスだから絵里といい思い出を作りたいからな」

「やった!私はオッケーよ!」

 

絵里が両手を使って嬉しいアピールしてる。しかもガッツポーズまでしてるし・・・。

 

「もしかしたら隆也には誘ってもらえないのかもしれないって思っちゃって・・・」

「俺そんな薄情じゃないんだが・・・」

「けど良かった・・・・・・隆也と一緒に居れるから」

今度は正面から俺に抱きついてきた絵里。スリスリと俺の胸に額を擦りつけてくるところを見ると凄い猫っぽい・・・。

 

 

 

「隆也は私をどんなところに連れて行ってくれるのかしら?」

「いきなりプレッシャーを与えてくるな。まあ軽くそこからを回って晩御飯食べて俺の家に到着だな」

「それだけ?」

「まあちょっと物足りないように聞こえるけど絶対退屈にはさせないからさ」

「なら、私の彼氏を信用しましょうかね」

「おう。かっこいい彼氏を信用しろ」

「ふふっ・・・頑張ってね・・・・・・・・・んっ」

「えっ・・・・・・」

 

触れたか触れなかったくらいだったが・・・絵里の柔らかい唇が俺の頬に当たったのが分かった。

 

 

「え・・・・・・絵里・・・?」

「退屈させなかったら・・・ちゃんとご褒美あ・げ・る♪」

「っ!///」

 

絵里が自分の指を唇に当てている動作がとてもエッチだ。こっちを振り向いた時に靡いた金髪もウインクしてきた絵里の顔も・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

「じゃ頑張ってね。隆也」

 

 

 

 

 

 

絵里の期待に応えないとな。最高のクリスマスにする為に!

 

 

 

 

 

 

「へっくしゅん!・・・・・・?」

 

 

なんだろ・・・・・・少し寒気が・・・・・・。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

―クリスマス当日―

 

 

 

 

「隆也ー!」

夜中に隆也から送られてきたメールに『俺の家に集合で』という事で、予定していた時間より少し早いが隆也の家に到着した。だけどさっきからインターホンを押しても声を掛けても隆也の返事がない。

「まだ寝てるのかしら?」

扉に手をかけようとした時、ガラッと玄関が開いた。

「あぁ・・絵里か・・・」

「あぁ・・絵里かじゃないわよ!メールに書いてあった時間通りに来たのになんでそんなに準備が遅いのよ」

「悪い・・・・・・今から準備するから・・・」

「もう・・・仕方ないんだか・・・・・・・・・あれ?」

「・・・?なんだよ・・・」

(なんだか・・・隆也の様子がおかしいような・・・顔も赤いし少しフラフラしてるしいつもの覇気がない)

「隆也、ちょっとおでこだして」

「・・・なんで・・・?」

「いいから!」

「・・・・・・おう」

前髪をかきあげ露になったおでこを触ると凄く熱くなっていた。

「・・・・・・・・・・・・隆也」

「・・・?」

「今すぐ布団に戻りなさい」

「な、なんでだよ・・・今日は大事なデートなのに・・・」

「そんなに高熱を出してる状態でデートなんか出来るわけないでしょ!」

隆也の手を掴み家の中に連行する。

「お・・・おい絵里!?」

「強制送還よ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ピピピッ

 

 

「・・・・・・38.9」

「・・・・・・マジで?」

「大マジよ」

「大丈夫だって・・・・・・体も動くしさ。今から出かければ・・・」

「いいから貴方は寝てなさいよ!それで出かけても私は嬉しくないしその熱が原因で私にうつって1番罪悪感が沸くのは誰?」

「うぐぐ・・・・・・」

「心配しなくてもちゃんと側に居てあげるから」

「・・・・・・・・・ごめん」

「謝らなくていいわよ。熱を出したのも何か無理をしてたからだと思うから」

「無理を・・・・・・か」

「隆也の事だから今回のデートのために色々と調べたり頑張ってくれたんでしょ?その気持ちが私は凄く嬉しいわ・・・。だからそれに応えるためにも私ちゃんと頑張って看病するから」

「絵里・・・・・・けど俺のためにそこまでしなくても・・・」

「『助けるのに理由が必要か?』」

「っ!・・・・・・おいそれ・・・」

「隆也の受け売りよ。意外とこれ恥ずかしいわね」

「くそっ・・・・絵里に一本取られたな」

「今回は私の勝ちね。ま、隆也が私に勝つ事なんて万に一つもないけどね」

「疲れてるからか分からないけど何も言い返せない・・・」

「病人はそのまま黙って寝ていなさい。台所借りるわよ」

「おう・・・・・・置いてるものの場所は・・・・・・」

「言わなくていいわよ。何回この家に泊まりに来てると思ってるの?」

「・・・・・・・・・流石だな俺の奥さん」

「っ!?///」

「え?」

「だ、誰が奥さんよ!///確かにそういう関係になるかもしれないけどまだ気が早いというか何と言うか・・・・って何私に言わせてるのよ!///」

「いや、お前が勝手に言ったんだろうが・・・・・・」

「問答無用よ!さっさと寝なさい!」

「膝枕を所望する」

「寝ろぉ!」

「がふっ!」

普段の絵里の口から聞かない言葉を発しながらプラスチックのコップを俺の顔面をめがけて投げ出し、見事に直撃。そのまま俺の視界はブラックアウトした。

 

 

 

 

 

 

「隆也起きて。お粥できたから」

「んぅ・・・・・・」

絵里の手を借りながら起き上がるがだるいのか分からないが視界がぼやける。

「大丈夫?さっきより顔赤いけど・・・」

「大丈・・・夫・・・・・」

「こんなフラフラでどう大丈夫だって見たらいいのよ・・・」

お盆の載せてある鍋に入っているお粥を別の器に移し隆也に手渡した。

「大丈夫?ちゃんと食べれる?」

「馬鹿にすんな・・・・・・ちゃんと食べれる・・・」

プルプル震えるレンゲを持ちお粥を掬って口に運ぶが見事に布団の上に落とす。

「ぁ・・・・・・」

「もう・・・何時もは強そうなのに熱を出すとだらしないわね」

「悪い・・・・・・」

ティッシュで布団の上を拭いていると絵里がクスクスと笑い出す。

「なに笑ってるんだよ・・・・・・」

「なんだか懐かしくてね。隆也が初めて私が熱出した時にしてくれた時と今の状況がそっくりで」

「・・・言われてみれば・・」

「じゃ、今日は私が隆也を食べさせてあげるわ。はい、あーん」

「・・・・・・」

「早く口を開けないと無理矢理ねじ込むわよ・・・」

「それが病人に対する言い方か・・・」

「病人じゃなくて恋人に対して言ってるのだけれど?」

皮肉気味に言いながら笑ってくる絵里。意外とクるな・・・・・。

「なんだか今日の絵里はSだな」

「まるでいつも私がMみたいな言い方しないでもらえるかしら?」

「間違ってるか?」

「ふんっ!」

「あっつぅ!?」

「ダマッテタベナサイ・・・ワカッタ?」

「わ・・分かったからもう少し優しく頼む・・・そして目のハイライトを戻せ・・・」

あっつあつのお粥ってある意味恋人同士の中では兵器になるんだな・・・・・・気をつけよう・・・。

「ほら・・・あーん」」

「あーん・・・もぐっ・・・」

「どうかしら?」

「・・・・・おいしい・・・」

「そっか。良かったわ。食べれるだけ食べてなさい。あーん」

「あーん・・・・・・・むぐっ・・・」

「おかわりいる人~」

「・・・はい・・」

「素直でよろしい。どんどん行くわよ」

「・・・うす」

絵里に優しくされながらお粥を完食しました。

「あ、ちゃんと薬も飲んで」

「忘れてた・・・・・・」

 

 

 

 

「凄い美味しかったよ絵里・・・・・・ありがとう」

「いいのよ。ちゃんと食べていい子ね」

「今の歳でいい子なんて言うな・・・」

「ふふっ、じゃ早く寝なさい」

「今寝るのは色々と勿体無い気がする・・・・・・」

「何も勿体無いことないわよ。寝ないと治らないんだから」

「・・・・・・わかった・・」

「寝るまで横にいてあげましょうか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「冗談よ冗談。隆也は子供じゃな・・・・・・」

「頼む」

「へ!?」

「俺が寝るまで横でいてくれ・・・・・・」

「ほ、本気で言ってるの・・・・・・?」

「本気だ・・・・・・」

(び、びっくりした・・・・・・本当に冗談だったのに隆也がこんな事いうなんて・・・・・・隆也は風邪を引いたら少し甘えん坊になるのかしら・・・なんだか・・凄くかわいい///)

「じゃ・・・・・・寝る・・」

「あ・・・お、おやすみ・・・・・・」

風邪薬がさっそく効いてきたのか隆也はすぐに眠りに付いた。私は隆也の枕元に座り込みスマホを触りながら隆也の寝顔を見たりなど。たまに汗をかいてたらタオルで拭いたり氷水でキンキンに冷やしたタオルを額に置いたりなど。隆也が安心して眠れるように施した。

(寝顔かわいいわよね・・・・・・なんだか弟を見てる気がする。寝顔が幼いからなのか母性本能が目覚めそう・・・・・・いやいやそれはいい過ぎね・・・)

腕時計で時間を確認するともう午後5時近くまで回っていた。今日は隆也の家で泊まったほうがいいと思い、私は隆也が起きないようにそっと外に出た。

「すぐに帰って来るからね」

お泊りセットを取りに一度家に戻った。

 

 

 

 

 

それから30分ほど経った。お泊りセットと同時にまた何か必要になるかなと思いスポーツドリンクや栄養ドリンクを購入。買い物袋を片手にまた隆也の家に戻った。

「隆也ー戻ったわよ・・・って聞こえないか」

そこまで時間が経ってないから特に変わりはないだろうと思っていた。

だが・・・変わりはあった。

「うぅ・・・・・・はぁ・・・はぁ・・・」

「隆也!?」

隆也の顔色が悪くなっているのと呼吸が悪くなっていた。

「やめ・・・ろ・・・来るなぁ・・・・・・」

「やっぱり熱を出したら悪夢を見ちゃうのよね・・・・・・」

隆也の額に当てていたタオルを交換し顔に流れていた汗を拭き取る。

「大丈夫よ隆也・・・・・・私が側にいるから・・・・・・」

「え・・・・・・り・・・・・・」

「うん・・・大丈夫だから・・・」

「はぁ・・・はぁ・・・・・・・ふぅ・・・」

「落ち着いたかしら?」

「・・・・・・めん・・・」

「え・・・・・・?」

「絵里・・・・・・ごめ・・・・・・んなぁ・・・・・・」

「何んで謝るのよ。何もしてないでしょ?」

「・・・・・・・・・ごめんな・・・・・・折・・・角・・・・・・・の・・・クリスマス・・・・・・」

「あ・・・・・・」

(そっか。私もそうだけど・・・隆也もこのクリスマスでのデート楽しみにしてたんだ・・・)

私といい思い出を作ろうと一生懸命頑張っていたのにこんな結果になってしまった。隆也にとってそれがどれだけ辛い事か・・・・・・。まだクリスマスは来年もあるとは言え今過ごしているクリスマスはこれで終わり。複雑な気持ちが心と頭を駆け回っているのだろう・・・・・・。

「隆也。大丈夫・・・私最悪だなんて思ってないわよ。私にとってクリスマスを過ごす事で1番欲しかったのは隆也と一緒に過ごす事だから・・・・・・。貴方は何も悪いことしてないわよ。何も・・・泣くことなんかないわよ」

隆也の目元にはうっすらと涙があった。

「今は・・・・・・ゆっくり休んでね・・・」

隆也の右手を優しく両手で掴み微笑みかける。

 

 

「ゆっくり休んでね・・・・・・私の愛しの『ヒーロー』」

 

 

 

 

 

隆也がぐっすり眠れるように子守唄代わりにこの歌を歌った。

 

 

 

 

『愛してるばんざーい』:絵里solo ver

 

 

***

 

 

 

 

「うぅ・・・・・・あれ・・・冷たい・・」

デコに付けられてたタオルを握り辺りを見渡す。俺の枕元には氷水が入ってる鍋があった。

「そっか・・・・・・絵里が看病してくれたんだな・・」

汗もかいてるから軽くシャワーでも浴びようかと体を起こそうとしたが思うように動かない。

「あ、あれ?さっきよりも体が・・・・・・へっ!?」

起きてすぐ目に入った光景に俺は度肝を抜かれた。それはなぜか?

(て、天使がいる!?)

「すぅ・・・んぅ・・・・・」

起きようと体を動かそうと布団を剥ぐと・・・・・・猫耳をつけたミニスカサンタ姿の絵里がいた。

「ふぇ・・・・・・あ、隆也おはよう・・・体調はどう?」

「体調はどうじゃないよ・・・なんでそんな姿なのかを先に聞いていいか?」

「あ・・・これのこと?///」

 

 

 

絵里は袖なしのミニスカサンタの格好をしている。更には足には白いニーハイソックス。しかも頭には黒い猫耳をつけてる。ミニスカだからニーハイとスカートの間からチラリと見える太ももに目がいってしまう・・・。白い肌の露出が多いので真っ赤になった絵里の顔が目立つ。心なしか猫耳もピコピコ動いているような・・・・・・あと女の子座りをして足をモジモジさせてる・・・。

 

「えっと・・・隆也が少しでも元気になればと思って・・・前もって用意してたの」

「な、なるほど・・っていやそうじゃなくて!なんでそんな格好で俺の布団の中に?」

「見えてなくても隆也ならこの格好をして側にいれば元気になるかなと思って・・って何を言わせてるのよ!///」

「ツンデレ・・・」

「隆也には早く元気になって欲しいからよ!バカ!///」

(なんていい娘なんや絵里は・・・・・・ツンデレやけど)

おっと・・・うっかり関西弁に戻ってた・・。

「恥ずかしいのにありがとな絵里」

「いいわよ・・・隆也のためだもん///」

(なんだか今回は絵里に色々と借りをつくっちゃったな・・・)

 

 

「処で隆也熱は?」

「ん?あー・・・少しだけ下がったかな」

「よかった・・・じゃシャワー浴びてきなさいよ。晩御飯作ってあげるから。お粥だけどね」

「あぁ・・・汗でビショビショだからな・・・正直いって気持ち悪い・・・・・・」

「さっぱりしてきてね」

「おうよ・・・」

若干フラフラしながら布団から起き上がり軽く伸びをすると骨がバキバキと音が鳴る。

「~~~あ"あ"っ!じゃ、行って来る・・・・・・」

「うんっ・・・・・・あ!待って隆也!」

「ん?」

「少しだけ中腰になって」

「ん・・・・・・こうか?」

「動かないでね・・・・・・」

「何を・・・・・・・・・・・・ぇ」

「んっ・・・・・・」

 

 

 

絵里が俺の肩に手を添え俺の額に軽く唇を当ててきた。

 

 

 

 

「早く治るおまじない!隆也には元気でいてもらわないとね!」

「あ・・・・・・あ・・・・///」

「じゃ、お風呂いってらっしゃい!」

「え・・・・・・・・・絵里・・・・・・?」

「~♪」

 

俺の額にキスした後、絵里は上機嫌になりながら台所に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・さっきので熱あがりそうだ・・・///」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから俺は完全復活を遂げ、絵里にお礼として高級チョコをプレゼントした。

 

 

 

 

 

 

 

絵里の顔をまともに見るのには時間がかかったけどな・・・・・・・・・。




お久しぶりです。今回は『ドスメラルー』さんのリクエストで絵里のミニスカサンタを書かせてもらいました。リクエストにはクリスマスパーティーと書かれてましたが今回は隆也と2人っきりにさせたいと思いましてこういうスタイルにしました。

絵里のミニスカサンタ・・・・・・アリだな!


そして今回新しく評価してくださった!
ヤムチャブラックさん!翔斬さん!グレース王子さん!
ありがとうございました!!


これで以前行ったリクエストしてくださった皆様の題材を終了しました。色々とリクエストしてくださった皆様、ありがとうございました!


そこでですが・・・第二回リクエスト回をしようかと思います。
リクエストというかアンケートですね。
内容ですが、この2つの内どちらかをしようと考えております。

まず1つ目は元μ'sメンバーと隆也が一緒に海で合宿をする数日間と。
2つ目は隆也の生まれた場所である兵庫県で隆也と絵里が過ごす数日間のどちらかを書きたいと思っております。

このアンケートは自分の活動報告にありますので答えていただければ嬉しい限りです!

合宿での物語の場合は『合宿で!』と書いてください。兵庫県での物語の場合は『兵庫県で!』と書いてください。



それでは今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!

では・・・・・・またな!


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お気に入り1000突破記念!特別ストーリー

 

窓から差し込んでくる日差し。俺はその眩しい日差しで目が覚めそうになってので布団でその日差しを遮る。今日は大学もバイトも何も予定のない一日。これは二度寝とする・・・・・・・・・。

 

「・・・・・・きて。・・・ぅや」

(誰だよこんな時に・・・・・・俺は眠いんだから寝かせろ)

「おき・・・・・いよ・・・ゅうや・・・」

(この野郎・・・よほど俺を起こしたいようだな・・・ならば俺はとことん寝たフリを続けさせてもらおう・・・)

「・・・・・・・・・・・・」

(ん?声が止んだ?流石に諦めたか・・・・・)

「起きなさい隆也ぁ!!」

「へぶがぁ!?」

肘が見事に鳩尾にクリーンヒットしました。

「げほっ!ごほっ!誰だ朝っぱらから俺を叩きおこ・・・・・・すの・・・は・・・」

「へぇ~?起こし方悪かったかしら?ごめんね?」

「お・・・おはようございます・・・・・・絵里さん」

「えぇ、おはよう」

「なぜ怒っているのでしょうか・・・?」

「貴方が自分から今日はお家デートしようって言い出したから来たのですが何か?」

「え・・・・・・あ、寝ぼけてて・・・忘れてました・・・・・・」

「そう・・・言い残すことはあるかしら?」

「・・・・・・今日もかわいいぞ・・・・・・?」

「せいっ!」

「すみまはぎゃばぁ!?」

 

朝から絵里の熱い拳をいただきました。

 

 

 

***

 

 

「全く・・・隆也のバカ」

「本当に悪かった・・・昨日バイト終わったあとに大学の課題を遅くまでしてたから・・・」

「なんで限界までやるのよ・・・・・・無理はしないでって約束したでしょ?」

「ごめん・・・・・・絵里にも迷惑かけた・・・」

「本当に反省してる?」

「おう・・・」

すると絵里が俺の首に腕を回し抱きついてきた。

「絵里?」

「私を庇って刺された時みたいじゃないけど隆也に無理をされたら私も悲しくなる・・それだけは絶対に忘れないで・・・」

「あぁ・・・分かったよ」

その後絵里とは目が合い数秒見つめあった後、お互いで引き合うかのように唇を合わせる。言ってしまえばこれは朝の目覚めのキス。俺はこの口付けで完全に頭が覚醒した。

「改めて・・・おはよ隆也」

「おはよう絵里・・・」

「じゃ、朝ごはん作るから顔洗って歯を磨いてきて」

「うす・・・」

絵里に言われた通り顔を冷たい水で洗い、歯を磨き終わりリビングに向かった。そこでは白のエプロンに身を包んだ絵里が朝ごはんを作ってくれていた。

「どう?すっきりした?」

「まあな。あれ?この匂い・・・・・・」

「あ、分かったかしら?隆也に少し前に教えてもらった玉子焼きを作ってるのよ。見よう見まねだけどね」

「けど匂いが完全に似てる。醤油と白だしの匂いがな。けど他にも入れてるよな?」

「それは秘密よ。これは隠し味だから」

「ふっ・・・・そうかよ」

後ろから見てるとエプロンをつけて料理している絵里が凄く魅力的だ。いつもはクールな雰囲気を出しているがこう見ると凄く家庭的な女の子だな。

俺は無意識に絵里に近付き絵里のお腹に手を回し抱きしめていた。

「きゃっ!?隆也!包丁持ってるんだから危ないでしょ!」

「わ、悪い・・・料理してる絵里の後ろ姿が凄く魅力的で・・」

「そ・・・そう・・・」

「おう・・・・・・・・・」

まるで新婚さんみたいなやり取りだな・・・。絵里もさっきから包丁を動かしている手が止まっている。少し顔を覗いてみると顔が真っ赤だ。

「こ、これじゃ料理できないよな?飯出来るまで離れるとくよ」

「あ、いや・・・別に・・・・・・」

「え?」

「その・・・・・・別にこのままでもいいわよ。隆也に抱きしめられると凄く安心するから・・・」

「そ、そうか・・・・・絵里も素直になったな・・・」

「む・・・私はいつも素直よ。失礼ね」

「ははは・・・悪い悪い。じゃ、早いところ飯作ってくれよ」

「はいはい・・・もう少しだから待ってて」

料理が出来るまで俺はずっと絵里のことを抱きしめていた。

 

 

 

 

「隆也、召し上がれ」

「あぁ、いただきます」

絵里が作ってくれたのは玉子焼き、豆腐の味噌汁、炊きたての白ご飯、もやしのお浸しなどの和風の食事を用意してくれた。

「絵里はいらないのか?」

「私はもう亜里沙と朝ごはん食べたから大丈夫よ」

「色々と迷惑をかけるな」

「いいわよ。これからもどんどん迷惑かけられるだろうし」

「面目ない・・・・・・」

深く頭を下げ料理を口に運んでいく。やっぱり絵里の作った料理はいつも美味しいな。

「美味い・・・」

「ほんと!?嬉しいわ」

「絵里は本当にいいお嫁さんになれるな」

「お!おおお・・・お嫁さんって・・・・・・///」

「ん?どうした?」

「あ・・・貴方以外の人の嫁になんてならないわよ・・・」ボソッ

「え?今なんて・・・・・・」

「いいから早くたべなさーい!///」

「ごめんなさーい!!」

絵里が癇癪を起こしたので急いで口の中に料理を放り込んだ。

 

 

 

 

「お家デートとは言っても俺の家にこれぞといったものないぞ?在るとしたら・・・」

視線を向けた先には筋トレ用のダンベル。

「隆也っていつも家で何してるのよ・・・」

「筋トレかパソコンでyoutubeみるか」

「暇じゃないの?」

「意外とそんなに・・・・・・後は整理整頓とか」

「ベットの下には私には見られたくないものとかを隠す為に?」

「お決まりの展開かもしれないが今のうちに言っておくぞ。無いからな」

「よね。会ったら隆也の事ぶちの・・・・・・許さないから」

(今ぶちのめすって言おうとしたよな・・・・・・早いとこ捨てておくか(・・・・・・・・・・)

「あ、そうそう隆也。今日気付いたんだけど貴方の家のお風呂少し汚れてるわよ?」

「マジか。最近少しサボり気味だったからなぁ・・・」

「じゃあ一緒に掃除しましょうか」

「え?いいのか?」

「私はいつも亜里沙と一緒にやってるから疲れたりしないわよ」

「なら、お言葉に甘えていいか?」

「えぇ!じゃ、さっそくやるわよ!」

「おう!」

 

 

 

 

「早速するわよ」

「お・・・おう・・・」

目のやり場に困る・・・・・・。今絵里が見につけているのは俺のTシャツと半ズボンを着込んでいる。だけど・・・流石に男の服を着ているから大丈夫だと思っていたが絵里の豊満なバストは隠す事は出来なかった・・・。しかもだ、絵里はシャツの裾を縛ってるのでへそが丸見え・・・。太ももが完全に露になっているし裸足だ。スラリと細い足が凄く綺麗・・・・・・。下ろしていた髪をポニーテールにしているのでもう見た感じ完璧になんでも出来るお姉さん・・・。賢い可愛いエリーチカも伊達じゃなかったのか。

「隆也?なんで顔赤いのかしら?」

「キニスルナ・・・・・・」

「そう?じゃ、はじめるわよ」

掃除用のたわしに洗剤をしみこませ床を磨いていく。俺は絵里よりも背が高いので湯船の上の天井を磨く。意外とここも汚れるもんなんだな。

「んっ・・・よっ・・ほっ・・・」

「さすが絵里。手馴れてるな」

「一週間に一回はやってるのよ。全部の汚れを落としてやるわ!」

「絵里を相手にした汚れに同情する・・・」

「さてと、少し流そうかしらね」

絵里はシャワーの蛇口を捻り洗剤で擦った部分を水で流していく。 

(綺麗だな絵里って・・・・・・」

「えいっ!」

「わぷっ!?」

絵里が床を流していたシャワーを行きなり俺にぶっかけてきた。

「なんだよ!?」

「隆也が私に対して真っ赤な顔で見てくるから冷やしてあげようかと」

「見てない!顔も赤くない!///」

「言い訳しても無駄よ!顔りんごみたいに真っ赤だもの」

「なんだと!ならお前ごと冷やしてやる!!」

「えっ!?ちょっとま・・・つめたッ!」

桶に貯めていた水を思いっきり絵里にかけてやった。

「このぉ・・・やったわね!」

「ふんっ・・・これでお前も・・・って冷たぁ!」

今度は絵里がお返しにと今度は胸全体に水をかけてきた。

「やり返しよ!」

「この野郎・・・・・・ならもう一度ぶっかけて・・・・・・っ!?///」

「?何よ・・・・・・」

絵里の今の現状。水が掛かったTシャツが濡れて白い肌にへばりついている。しかも俺が借しているTシャツは白色だから絵里のその中に身に着けている紫色の下着が透けて見えてしまっている。ぴっちり張り付いてるので絵里の豊満な胸がはっきりと分かる。

「なによ隆也。顔真っ赤にして顔逸らしちゃって・・・変態?」

「お前、今の格好をちゃんと確認した後に同じ台詞を吐けるか?」

「え?どういう・・・・・・っ!?///」

今更気付いたのか自分の今の状態を確認するとみるみると顔を真っ赤にする。

「もう!隆也見ないでよ!///」

「無茶言うな!」

「エリチカお家帰っ・・・・・・きゃっ!」

「絵里!」

絵里が浴室から出ようとした瞬間、床に広がっている洗剤に足を滑らせ、後ろに倒れこむ。俺はいち早く絵里の腕を掴んだが間に合わず一緒に倒れこんでしまう。

「いたた・・・・・・」

「いてて・・・絵里大丈夫か?」

「大丈夫・・・・・・けど隆也・・」

「え?」

「近いんだけど・・・・・・///」

「あっ・・・・・・」

傍から見たら俺が絵里を押し倒している形。

絵里と俺の顔の距離が数センチとなっている。

 

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

俺も絵里もお互いを見つめたまま固まってしまった。目を逸らしたいが逸らそうにもできない。

「絵里・・・・・・」

「隆也・・・・・・・・・」

また朝の時のように唇が近付いていくが、それが合わさることは無かった。もう少しで合わさる時に絵里の人差し指によって止められた。

「絵里・・・?」

 

 

「隆也の・・・えっち・・・・・・」

 

絵里の方から触れるだけのキスをしてきた。

 

 

 

風呂掃除が終わった俺たちは絨毯の上に座ってテレビを見ていた。ソファを背もたれにし、絵里は俺の足の間に座り込み俺に背を預けて一緒にテレビをみていた。

「なあ絵里」

「んー?」

「今からなにする?」

「隆也とイチャイチャする」

「イチャイチャって・・・」

「外に出かけるのもいいかもしれないけどこうやって家でのんびりするのもいいわね」

「だな。これで最近不足していた絵里養分を補給できる」

「なによ絵里養分って」

「いいから絵里養分よこせ~」

「きゃ~!」

絵里を後ろから抱きしめ寝転がる。絵里も俺に背を預けてるから一緒に横になってしまう。

「あれ?」

「どうしたの?」

「絵里シャンプー変えた?」

「いや、これは隆也の家のシャンプーよ?さっき少し借りたから」

「あぁ、なるほど・・・」

「へん?」

「いや、いつもの絵里の髪の匂いじゃないから少し気になっただけで・・・」

「隆也はこの匂いすき?」

「絵里の匂いなら好きだ・・・」クンクン

「もう・・・後さっきから頭に鼻押し付けて匂い嗅がないでよ」

「病み付きになる・・・・・・」

「少しだけよ?もう・・・」

 

 

それからは絵里と色々な事をした。一緒に昼ごはんを作ったり、部屋の掃除をしたり、テレビを眺めたり。いつもならば外に出かけて買い物をしたりや映画を見たりなどしてたが、今回のお家デートは凄く楽しかった。家で絵里とふたりっきりというのも中々無かったから今日のデートはいい経験になったかもしれない。絵里は家だったらこんな表情をしたりするんだなという発見もした。大学ではクールな絵里も家だと賢い賢いエリーチカなどといったイメージがまったく感じられない。何かにたとえたらはぐれメタルみたいにだらけている。やるときと静かな時のON&OFFが激しい。

 

「ポンコツエリーチカ・・・・・・(ぼそっ)」

「ふんっ!!」

「いたぁ!!」

 

絵里に対する小言を言うと毎回硬い何かを投げてきた。

 

 

 

だけど俺はこの時予想していなかった。

 

 

 

 

『絵里がとんでもない服を着て俺を誘惑してくることに』

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「ご馳走様。絵里って本当に料理上手だよな」

「もう、お世辞を言っても何も出ないわよ?」

「絵里の照れてる顔が出てくる」

「馬鹿っ・・・・///」

外も暗くなってきたので今日は少し速めに寝るという事でいつも食べる晩御飯の時間を早くした。

「じゃあ風呂入ってくるな」

「えぇ。私は後でいいわ」

「一緒に入ったりは?」

「包丁を投げられたいのかしら?」

「いってきます」

包丁を投げられるのは流石に勘弁なので急ぎ足で風呂場に向かった。脱衣所で服を脱ぎ浴室に入る。今日浴室を掃除したのでピカピカ。掃除をしたからかいつもの浴室の風景じゃないような気がする。湯船に浸かると今日の疲れが一気に抜けてリラックスすることができた。

 

 

約20分後。

 

 

 

「絵里ー上がったぞ」

「じゃ次は私が入ろうかしら」

「ごゆっくり」

「えぇ」

 

 

 

 

「・・・・・・よし・・・やるぞ」

 

 

すれ違った時にそんな言葉が聞こえたような気がした。

 

 

約40分後

 

 

 

「やることないから布団でも敷くか・・・」

youtubeでチャンネル登録した人の動画を大体見終わったらやることがなくなったのでもう寝ることにした。今日は絵里が泊まって行くらしい。普通なら来客用の布団を敷くのだが俺は自分ようの布団しか敷いていない。それはなぜか?

(どうせ敷いても絵里が俺の布団に入ってくるからいらないだろ)

という理由。

一度聞いた覚えがある。絵里に俺の家に泊まるときは布団1つでいいか?って聞いたら顔を真っ赤にしてこくりと頷いた。ちゃんと本人には承諾済みなのでOK。

 

 

 

「り・・・隆也ぁ・・・」

「ん?」

声を掛けられたので振り向くと浴室の扉から髪を下ろした絵里がひょっこりと顔を出していた。

「どうした絵里?タオル無かったか?」

「あ・・・そうじゃなかったんだけど・・・・・その・・・うぅ・・・」

「???」

特になにかしらのフラグが立った訳でもないのに絵里が顔を真っ赤にしてもじもじしてる。どうしてだ?

「えっと・・・・・・布団に座って後ろ向いてて・・・見せたいものがあるから・・・///」

「見せたいもの?今じゃだめなのか?」

「ダメよ!絶対こっちを向いちゃダメよ!」

「わ、分かった分かった」

絵里に言われた通りに布団に胡坐で座り込み背中を向けた。

(見せたい物ってなんだ・・・・・・まさか俺をぶちのめす為の新しい武器を見せてくる気か・・・・・・)

そう考えてると後ろの方で絵里が座り込む音が聞こえた。

「絵里?」

「いいわよ・・・こっちむいて・・・・・・」

「おう・・・」

 

ゆっくりと振り向くと絵里が女の子座りですわっていた。だが俺の目に入ったのはそこではない。『彼女の服装だ』。

絵里の今の服装は今の季節とは全く合わない『黒色のセーター』をつけていた。だが普通のセーターと違うと言ったら袖が無いというところだけだ。

「おぉ、それって自分で編んだのか?」

「う、うん・・・前ネットであったのを見つけたから自分で作ってみたのよ・・・///」

黒色のセーターだからそこまで目立たないが絵里の顔がほんのりと赤くなる。

「よく似合ってるぞ。可愛い」

「あ、ありがとう・・」

「けどそれが俺の見せたいものか?」

「えぇ・・・けどこれだけじゃないのよ・・・///」

「これだけじゃない?」

「えっと・・・隆也・・・」

「はい?」

「・・・・・・『我慢できる?』」

「が、我慢?どういうこと・・・・・・」

すると絵里が後ろを向いた。そこで俺が見たものは強烈なものだった。

 

それはなぜか?セーターの背中部分が『無い』のだ。綺麗な背中を露にしている『ホルターネック』で『ベアバック』なデザインのセーター。しかもそれは背中だけしか見せていないと思っていたらそれだけじゃない。お尻の割れ目の根元がチラっと顔を見せている。このセーター、俺は知っている。一時期ネットで評判になっていたセーター。

 

そうこれは・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

『DTを殺すセーター』

 

 

 

 

 

それを俺の彼女が今見に付けている事で俺の思考回路は一瞬完全にバグってしまった。

 

 

 

 

「これはその・・・希とにこと一緒にネットを見ている時に見つけて・・・これなら隆也も喜んでくれるかなって思って作ったセーターなんだけど・・・・・・///」

「・・・・・・・・・・・・」

「り、隆也・・・・・・?」

「っ!!」

 

 

 

 

 

ブッシャァァア!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は見事に鼻血の噴水を上げてしまい、文字通り貧血となり絵里の看病の下2日ほど寝込んだ。

 

元気になった後絵里にまた着てくれと頼んだら・・・・・・。

 

 

『絶対イヤ!///恥ずかしくて死んじゃいそう!!!///」

と反対し、着てくれなかった。

 

(何回も頼んだらそのセーターを着て一緒に寝てくれたのは秘密で・・・)




長い間、お待たせいたしました。今回はお気に入り1000突破というわけで特別ストーリーを書かせていただきました。
完っ全なるイチャイチャを書かせていただきました。書いている最中に「隆也爆発しろ」と何度呟いたことか・・・・・・。
まさかこんな時が来るとは思いもしませんでした。まさか!自分の!作った!小説の!お気に入りが!1000を!超えるなんて!
これもこの小説を読んでくださっている皆様のお陰です。誠にありがとうございます。
いつも書いてくださっている感想には元気をいただいております。感想をいただく度にベットの上で嬉しくて悶えるほどです(流石にそれは嘘です)
評価の方も100人の方に評価していただきました。感謝の言葉でいっぱいです。
これを次への糧として頑張っていきます!応援よろしくお願いします!


そして今回新しく評価してくださった!
亜徠さん!のすけさん!グリグリハンマーさん!絢瀬絵里推しサバゲーマーさん!
ありがとうございます!!

そして次回ですが今の状況でいいますと隆也と絵里と一緒に兵庫県に行く話を書いていこうと思います。
これは現在のアンケートの結果での言葉ですので後々代わるかもしれません。
兵庫県か合宿かの話ですが、3月27日の23時59分までお待ちしておりますので興味のある方はアンケートにお答えいただけると嬉しいです!アンケートは活動報告の方にありますのでそちらをご覧ください!




それでは今回はここまで!
感想・評価お待ちしております



では・・・・・・またな!!








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荷造り

今回は少し短めです


「・・・・・・という事であり、これを計算するには統計学を使うわけで・・・・・・」

 

 

 

 

「ふあぁ・・・・・眠い・・・」

「もう、ちゃんと真面目に受けなさいよ。これだって期末試験にでるかもしれないんだから」

「悪い・・・少しだけ寝かせてくれ・・・」

「ダメよ」

大学での講義中。おれは昨日の夜中まで『とある場所に行くための準備』をしていた。バイクのツーリングという訳でもなくどこかへ旅行に行くわけでもない。高校時代でもいつもこの時期になったら部活があろうがバイトがあるだろうが全ての予定を休んで顔を出しにいくんだ。だが今回は違ってその予定と学校の休みが重なってるので心置きなくいける。

ちなみに絵里は俺の横に座って講義を受けている。さすが元音ノ木坂の生徒会長なのかどんなことでも真剣に真面目に取り組む。いやこれは絵里のご両親の育て方が良いのか、はたまた絵里自信が自負してるKKE(賢い可愛いエリーチカ)が居るからなのか。俺もこれぐらい熱心に勉強できたら以前みたいに絵里に土下座して勉強を教えてもらう事にならなかっただろうに・・・・・・。

 

「では今回の講義はここまで。今回配布した資料にしっかり目を通しておくように」

教授が教室を出て行くのを見終えると俺は自分が使っていた机に突っ伏した。

「あぁ~やっと今日の講義が終わったぁ~」

首を右、左に傾けるとゴキッと鈍い音がなる。

「今日の講義内容はまた一緒に勉強しなおすわよ」

「めんどくさいのでパスでよろしく」

「じゃないと晩御飯作ってあげないわよ」

「それは困る」

「なら頑張りなさい」

「鬼教師・・・・・」

「頑張ったら隆也の大好物作ってあげるから」

絵里が俺の頭を撫でてくる。小さな子供を甘やかすかのような撫で方。

(いいモノだ・・・・・)

「ところで今日はいつもより寝不足だったじゃない。なにかしてたの?」

「まあ荷造りかな」

「え、隆也今の住んでるところ追い出されたの!?」

「違う!!]

「もしかして今まで家賃を払わなかったからヤクザに追い回されてたり・・・」

「待て待て!話が大きくなりすぎ!家賃も光熱費もちゃんと払ってる!」

「冗談よ」

「冗談にしても早とちりしすぎだ」

「ならその荷造りっていうのは?」

「あー・・・後で話してあげるからさ。今日の講義をさっさと終わらせよう」

「そうね。話はそれからで」

俺と絵里は残りの講義を受けるため鞄にさっきまで行っていた講義の教材を詰め込み次の教室へと向かった。

 

 

 

 

***

 

 

 

それから約3、4時間後。

 

俺と絵里は学校の近くにあるカフェでお茶していた。レコーダーから奏でられるジャズとカフェの雰囲気が完全に調和しているのが特徴なカフェ。しかもここのコーヒーがまた絶品。これぞまさに大人の味。

「変な食レポしなくていいわよ隆也」

「なんでお前はそう簡単に人の心を読むことができるんだ」

「顔に出てるからよ」

「マジで?」

「マジよ」

因みに絵里が飲んでるのはロシアンティー。やっぱり母国の味は忘れられないんだな。凄い味わって飲んでるのが分かる。

「それで?なんで荷造りしてたのよ」

「あぁ、それはな・・・・・・」

コーヒーを飲んで一息ついた後、ポツリと言葉を漏らした。

 

「もうすぐしたら俺のお婆ちゃんの命日なんだ」

「ぁ・・・・・ごめんなさい。聞いちゃダメだったわよね、そういうのは」

「気にするなよ。絵里はなにも悪い事してないだろ」

「そう・・・・・だけど・・・・・・」

(ちょっと失礼なことしちゃったわね・・・・・・)

「だから、実家がある兵庫県に帰るんだよ。墓参りをしにな」

「そっか」

「だから少しだけ東京から離れる」

「どれくらいあっちに行くの?」

「2、3日くらいだな。実家には残ってる家族もいるから少しは話しがしたいしな」

「なら、少しの間だけど寂しいわね・・・・・・」

「そんなに落ち込むなよ。たかが2、3日だからさ」

絵里の頭を優しく撫でるが顔の表情は変わらず。

「寂しいか・・・・・?」

「寂しいわよ・・・・・・馬鹿・・・」

「ごめんな」

「ふんっ・・・・・・・・・」

絵里が頬を膨らませて拗ねてしまった。

 

「まあ、話はこれだけじゃないんだがな」

「何よ、まだ悲しくさせるような話でもする気?」

「いや、これはなんというか俺の我侭というか、絵里の判断に任せる」

「どういうこと?」

 

 

 

これは言っていい事なのか言ってはいけない事なのか悩んでしまったが、考えるのも面倒なので単刀直入に絵里に問いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

「俺と一緒に兵庫県に来てくれるか?」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「兵庫県・・・か」

その日の夜、絢瀬絵里こと私は晩御飯を作りながらカフェで言われた隆也の言葉を思い返していた。隆也の生まれ故郷の兵庫県。どんなところか興味あるし隆也のご家族がどんな人達なのかというのも気になる。

 

『答えは急には決められないよな。無理はする必要ないからな?これは俺の我侭だから絵里が無理して会わせる必要はないぞ。交通費とかは父さんが負担してくれるらしいからそこは気にしなくて大丈夫。ゆっくり考えてくれ』

 

と隆也に言われた。

行きたい行きたくないと言えばすぐに行きたいと答えるのだが、今回のお誘いは断ろうと思っている。その理由はよく考えたら簡単。

 

「お姉ちゃん!何か手伝う事ある?」

「そうね。ならお皿並べてくれるかしら?」

「はーい!」

 

そう、また(・・)亜里沙を1人にしてしまうのだ。ここ最近隆也と一緒にいることがとても楽しいからか隆也の家に泊まることが頻繁になってきていた。

亜里沙は『亜里沙は1人で大丈夫だからお姉ちゃんは隆也さんと楽しいお泊りデートしてきて!』と言ってくれる。言葉はありがたい限りなのだがこの頃はその言葉に甘えすぎた節を感じてきた。いくら亜里沙が妹だからと言ってもまだ高校生。両親はロシアにいるので家族である私が亜里沙の横からまた居なくなるわけにもいかない。

 

 

「いただきまーす!」

「いただきます」

 

別に隆也と会えなくなる訳じゃない。亜里沙と過ごす時間も大切・・・。

そんなことを考えていると亜里沙が声をかけてきた。

 

 

「お姉ちゃんどうしたの?」

「え!?何が!?」

「ずっと難しい顔してたから」

「そ、そう?そんなつもりはなかったんだけど・・・」

「今から亜里沙がお姉ちゃんの考えてる事当てるよ」

「?」

「また亜里沙に気を使わせるんじゃないかー・・・じゃない?」

「っ・・・。なんでそう思うの?」

「この頃お姉ちゃんが亜里沙に何時もより気に掛けてくれるからなにかあるんじゃにかなーって」

「いつも通りにしてるつもりなのよね・・・これでも」

 

まさかこうも簡単に当てられるとは思わなかった。まだ私が音ノ木坂の生徒会長で学校を存続させるために頑張っていた時も亜里沙は今のように私の心理を当ててきた。

なぜこう妹というのは鋭いのだろうか・・・・・・。

 

「お姉ちゃん」

「・・・・・・何?」

「亜里沙は大丈夫だよ?確かにお姉ちゃんと離れるのは凄く寂しいよ?けど」

「けど?」

「今のお姉ちゃん楽しそうだから!」

「楽し・・・そう?」

「だってお姉ちゃん、隆也さんと一緒にいるととても楽しくしてるように見えるよ?スクールアイドルしてた時も楽しそうだったけど、その時と変わらないくらい笑ってるもん!横で見てて分かるよ?お姉ちゃん隆也さんと居れて嬉しそうだなって!隆也さんが凄く好きなんだなって!」

「あ、あうぅ・・・・・・///」

聞いてると凄く恥ずかしくなってきた。

「お姉ちゃんが楽しい事してるのを亜里沙は気も使うし邪魔だってしないよ?今だって亜里沙の事が大切だから隆也さんのお誘いを断ろうって考えてたんだよね?」

(なんでここまで気付くのかしら?)

コクッと頷くと亜里沙がふふっと微笑んだ。

「亜里沙は大丈夫だよ?もう高校生なんだし!それに雪穂や穂乃果さんたちがいるからちっとも寂しくない!亜里沙が1番嫌なのはお姉ちゃんが好きなことを差し置いて亜里沙と居ようとすることなんだよ?亜里沙は、お姉ちゃんの幸せを最優先にした方がいいと考えてます!お姉ちゃん先生!」

「亜里沙・・・・・・」

ロシアからここに来て言葉も全然覚えてない中、日本の文化に中々少し頼りないと心の中で思ってた。けど私が見ない間に亜里沙はこんなに成長してたんだ。

「だからさ、お姉ちゃん。隆也さんと楽しんできてね!お土産よろしく!」

「えぇ、ありがとう亜里沙。少しの間だけ家空けるからよろしくね」

「うん!」

亜里沙のことを正面から優しく抱きしめ頭を撫でた。私って・・・面倒なお姉ちゃんよね・・・亜里沙。

 

 

 

その後、私はスマホを起動させメールを送った。

 

 

宛先『横山隆也』

 

 

 

 

***

 

 

3日後

 

 

 

 

「ふぅ・・・・・・」

東京にある新幹線乗り場である駅でスマホを触りながら軽く息を漏らした。随分長い間戻らなかった訳ではないが、なぜか俺は緊張していた。この緊張は久しぶりに家族に会うからなのかそれとも我が彼女である絢瀬絵里を連れて行くからなのか。

「隆也ー!」

「おう」

「待ったかしら?」

「いや、さっき来たばかりだよ」

「もう、正直に言えばいいのに」

「これが正直な返しなんだが・・・・・・」

絵里今の格好は黒のワイシャツを二の腕で捲くり、ぴっちりとしたジーンズを履いている。

「まさに旅行に行きますよって言ってるような格好だな」

「これってある意味旅行でしょ?私にとっては」

「まあな。絵里は高校のライブ以外で他県に行った事ないのか?」

「んー無いわね。ライブでは東京内だったから」

「1番デカイ処でしたライブはどこ?」

「東京ドーム」

「質問してすんませんでした!!」

「なんで謝るのよ!?」

「レベルが違いすぎた・・・俺とお前は月とゴキブリぐらい差がある」

「それは言いすぎよ!私の高校生活が少し特殊なだけで・・・」

「まあ。その程度で傷つく俺じゃないんだがな」

「メンタル強いわね・・・・・・」

「ま、今回は俺の我侭に付き合ってもらって悪かったな」

「いいのよ。行きたいのは事実だし、楽しみだし」

「楽しみ・・・・・か。ま、単なる墓参りだからそんなに楽しい事はないかも知れないぞ?」

「いいって言ってるでしょ?ほら、早く行きましょ!」

「お、おい絵里!待てよ!」

 

お互い自分の手に持っている鞄を持って駅の中に歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この旅で絵里は隆也の知らない過去を知る事になる・・・・・・。




はい、お久しぶりです。今回はアンケートの結果に基づき、隆也と絵里との兵庫県で過ごす数日間を書くことになりました!少しシリアスありイチャラブありで数話ほど書いていきます!そしてこの兵庫県の話でオリキャラ2人ほど増やす予定です。まあ翔輝みたいな感じのキャラです。お楽しみに!(笑)


そしてこれはお知らせです。
少し投稿ペースが落ちると思われます。いや、これまでも遅かったのですが・・・・・・。4月に入り大学も始まったので投稿する時間があまりないかもしれません。勉強なんかクソ喰らえ!小説書くぅぅぅうう!見たいな気持ちで頑張って書こうと思います!


では今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!


では・・・・・・またな!!


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実家帰り

大変お待たせいたしました!どうぞ!


――早く帰りますよ先輩!

 

 

――はいはい・・・・なんでそんなに元気なんだよ・・・。

 

 

――先輩より体力があるから?

 

 

――ぶっ飛ばすぞこの野郎・・・・・・。

 

 

――できるもんならしてみろですよーだ!べー!

 

 

――このガキ・・・・・・そんないはしゃいでたら危ないぞ。

 

 

――ここ歩道ですよ?そんな危ない事なんか・・・・・・。

 

 

キキーッ!

 

 

――・・・・・・え?

 

 

――あぶねぇっ!!

 

 

 

ドガシャーンッ!

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・はっ!」

目が覚めた瞬間、無我夢中で辺りを見渡した。俺が今いるのは実家のある兵庫県に向かって走っている新幹線の中。そして俺の顔からは大量の冷や汗が流れていた。

(なんだ・・・夢か・・・・・・けどなんであの時を今思い出すんだよ・・)

「・・・うや・・・・ゅうや」

「えっ?」

「ちょっと大丈夫?汗酷いけど・・・」

「・・・絵里」

耳につけていたイヤホンを外した絵里が俺の顔から出ている冷や汗をハンドタオルで

拭いてくれている。

「凄い魘されてたけど何かあったの?」

「いや・・・・・・少し・・・な?」

「私に言えないこと?」

「いや、ちょっと昔を思い出しただけだから心配しなくて大丈夫だぞ」

「本当?辛かったら言いなさいよ?」

「あぁ・・・じゃさっそくお願いがあるんだが・・・」

「何?」

「膝枕してくれ」

「時と場合を考えなさい」

「はい・・・・・・」

「隆也の実家に帰ったらしてあげるから」

「マジか!約束だからな!」

「はいはい。そろそろ兵庫県に入るらしいから準備しなさいよ」

「え?俺どれくらい寝てた?」

「軽く2時間以上は・・・・・・」

「・・・・・・富士山見れなかった・・・不幸だ・・・」

 

『次は~西明石~西明石に止まります』

 

 

 

 

 

***

 

 

新幹線から降りた俺と絵里はキャリーバックを転がしながら駅の外に出た。今日の天気は絶好の晴れ日和。しかも少し風も吹いている。いい実家帰りの日である。

「ねえ隆也。隆也の実家ってどこにあるの?」

「あぁ、○○って処なんだ。凄いド田舎だけど」

「え?ここからじゃ少し距離があるんじゃ・・・・・・」

「勿論向かえは来るよ。ていうか来てる」

「へ?」

「あそこ」

「?」

俺が指を差した方向にはバスのロータリーの端っこで車に背を預けている身長190を軽く超えているガタイの良い男の人が立っていた。

「ね、ねえ隆也・・・・人違いじゃない?あんた大きな人なわけ・・・」

「ビビりすぎだ・・・・」

高身長の男が俺たちに気付きゆっくりこっちに歩み寄ってくる。

「っ!」

「おい絵里。後ろに隠れるなよ」

「だって・・・少し怖いから」

「注射を嫌がる子供か」

「注射は怖くないわよ!」

「そこは否定するんだ・・・・・・」

絵里と茶番を繰り広げていると俺の目の前に高身長の男がすでに立っていた。

「よう。元気にしてたかハゲ」

「ハゲてねえよ。そっちも元気そうやな」

「仕事で毎日大変やけどな・・・。ハゲみたいな顔しやがって」

「ハゲみたいな顔ってなんやねん・・・・・」

「え・・・隆也?この人は・・・・・?」

「あぁ、紹介するよ。こいつは俺の高校時代の友達で社会人の芝多櫂土(しばたかいと)だ」

「よろしく。絢瀬絵里さん・・・でいいのかな?」

「あ、どうも!私の名前知ってるんですね・・・」

「こいつから聞いたからな。彼女できたって俺に報告してきた時はどんだけ殺してやろうかと思ったか・・・・・・」

「ご・・・ごめん・・・」

「隆也そうだったんだ・・・・・・」

「ちょっと!?少し引かないで!?」

「おい、イチャイチャしなくてから早く行くぞ」

「「イチャイチャなんかしてない!」」

(相性ピッタリやんけ・・・・・・)

 

 

 

***

 

 

俺と絵里の荷物を車に乗せ、俺は助手席、絵里は後ろに座り移動を開始した。

「どうだ隆也、大学は」

「勉強に追いつけなくて死にそう・・・」

「やっぱり大学でもアホやったか・・・」

「え?やっぱりってどういうことですか?」

「こいつは高校では頭悪かってんよ。中々酷い点数を・・・」

「おいコラ!絵里にバラすんじゃねえよ!」

「別に良いやんけ。減るもんでもなし」

「絵里の俺へに対する信頼度が減る!」

「元から無いやろ」

「シャラップ!」

「あはは・・・2人とも仲が良いのね」

「もう4年間ぐらいの仲やからなぁ。高校時代は色々と迷惑かけちまったけど」

「迷惑しか思い出に無いかな」

「本当に頼むからその口閉じとけ!」

「冗談やって・・・・・・・・・・・・・・・・・・多分」

「多分!?」

「というか少しうるさいから黙れ隆也」

「誰のせいだ誰の!」

(本当に仲がいいのねこの2人。まるで穂乃課と海未みたい)

「ねえ隆也。芝多さんのことについて教えてよ」

「芝多の?んー・・・優しいが1番の魅力だな。俺ら高校では休み時間はずっと一緒にいたし、よく一緒に遊んだし。あと強くて義理堅い。よく人のために動いてくれるし守ってくれる」

「強くて逞しい人なのね。芝多さん」

「やめろ・・・恥ずかしいから・・・・・・」

「後は・・・・・アニメが好きで、よく色んなライブにいったり、他に・・・ぎゃふんっ!」

芝多におもいっきり拳骨された。

「家着くまで口を開くな。オーケー?」

「No!!」

「後で覚えとけ・・・・・・」

「ふふっ・・・。ようするに良い人なのね」

「その通り」

「もう好きにしろ・・・」

 

 

 

 

 

「ところで隆也」

「ん?」

「足はどうだ?痛みとかは」

(足?)

「あー・・・まあまあって処かな。この頃痛みは無いから」

「そうか、けどもう無理はすんなよ?翔輝から聞いたぞ。技使ったんだろ?」

「あの時は流石に痛かったかな。無理はしないようにするよ」

絵里は首を傾げた。足がどうしたのかさっぱり分かっていない。技と聞いた時は以前私を助けてくれた時に使った技のことなのだろうかと思い返す。けど、『痛み』というのがよく分からない。隆也から足が悪いとは聞いた事が無い。

(どういうこと・・・?)

「隆也、そろそろ着くぞ。準備しろ」

「おう。絵里、降りる準備して」

「え!?あ、うん・・・」

都会感が出ていた街並みから一変して完全な田舎道を車は進んでいた。狭い道を進んで行き到着した場所は海未の家に比べると少し小さいがかなり立派な屋敷が立っていた。

「ここが・・・隆也の実家?」

「あぁ、この家は俺のおじいちゃんが建てたんだ。大工さん兼土地の不動産をやっててな。試作として作ったのがこの家なんだ」

「へぇ、綺麗な家ね」

「この家から出て1人暮らしするのは色々と複雑な気分になったけどな」

「東京の大学なんだから仕方ないだろ」

「まあそうなんだけどな・・・・・・」

「・・・・・・・・」

隆也の顔がこの時少し暗くなったのを絵里は見逃さなかった。

 

 

 

 

 

車から荷物を降ろした隆也と絵里は車から顔を出している芝多に手を振った。

「芝多ありがとな」

「本当にありがとうございます!」

「あぁ、気にすんな。また来るからその時連絡する」

「おう、事故するなよ」

「お前には言われたくないわ」

芝多はそのまま細い道を通って行き自分の家へと戻っていった。

「さてと、家に入るか」

「なんだか緊張するわね・・・・・・」

「緊張なんかするなよ。今家に居るの俺のお母さんだけだから」

「そ、そうなの?大丈夫・・・緊張なんかしてないんだから・・・」

(嘘丸見えだ・・・・)

だってさっきから目が泳いでるしそわそわしてるし。

「まぁ、まずは家に入るか」

「えぇ」

駐車場には一台の車とバイクカバーを被さっているバイクが3台置いてあった。

「あ、もうこれ帰ってきてたんだ」

「え?隆也バイク2台もちなの?」

「東京にあるホーネットとここにあるのが俺のバイク。残りの二つは父さんのだ」

「バイク親子ね」

「間違いない」

 

石畳で出来た客路を進み玄関に到着。玄関の上には少し大きめな字で『横山』と書かれてある。

「大きな玄関ね」

「毎回思う・・・凄い恥ずかしい・・・」

玄関は家の顔だとか何とか言ってたな。だからこんな玄関にしたのかおじいちゃん。

そして玄関の取っ手に手を掛けて扉を開いた。

「ただいまー」

「お、おじゃまします・・・・・・」

その時、扉の奥からこちらに向かって走ってくる音が聞こえてくる。

 

「おかえりなさい!」

 

そこに立っていたのは俺の母親こと、横山利子(よこやまとしこ)である。

 

 

 

***

 

 

 

「絵里ちゃんの話は隆也からよく聞いてたけど生はこんなに可愛い子なんて~!」

「あ、あの~・・・そろそろ離してもらえないでしょうか?」

「やっぱりこうなったか・・・・・・」

現在、荷物を下ろして実家の居間にいるのだが、見事に絵里が俺の母さんに捕まった。付き合い始めたといった連絡や顔写真は母さんにメールで送ってはあった。送るたびに『可愛い!』と返信してきている。しかもだ。俺の母さんは可愛い女の子が大好きなのである。流石に道ですれ違った女の子に抱きつくなどはしないが俺の後輩の女の子や信也が連れてくる女の子、または俺の『姉』が連れてくる友達など。連れて来た可愛い子に対して躊躇無く抱きしめている。母さんにとってはただただ普通のスキンシップだと思っているのだろうが抱きつかれてる本人達からしたら勿論びっくりする。現に絵里がその状態になっちゃっている。

「母さん。もうそれぐらいにしてくれませんかね?絵里が困ってるから」

「後少しだけダメ?」

「ダメです」

「もう、ケチなんだから」

やっと介抱された絵里は母さんにビクビクしながら俺の後ろに隠れてしまう。

「けど隆也も隅に置けないわね。こんな可愛い子を彼女にしちゃうなんて」

「まるで俺がおかしいみたいな言い方だな・・・」

「間違ってる?」

「息子に対してなんて言い方だ・・・・・・」

これが通常なのでノープログレム。

「さて絢瀬絵里ちゃん」

「は、はい」

「私は隆也の母親の利子よ。ここを自分の家だと思ってのんびりしていってね」

「あ、はい!ありがとうございます!」

「それで隆也。すぐにお墓に行くの?」

「行くよ。今回帰ってきたのもそれが目的だから」

「わかった。『奈央』と私とおじいちゃんはもうお墓参りしたからあとは隆也だけだからね。お花とかは用意するから少しだけ待ってて」

「あいよ」

母さんはそのまま居間を後にした。

「凄いお母さんね」

「ここに来た奴は全員それを言うぞ」

「後凄く若いわね」

そう、俺の母さんは年齢とは裏腹に凄く若いのだ。肌にはハリがあり皺が一切無いのだ。しかも動きが20代の女性とほぼ遜色ない。

「ちなみに歳は48な」

「・・・・・・・・・・・・若返りの秘訣を教えてもらわないと」

「そこ気にする歳じゃないだろ!」

「乙女には必要なことなのよ・・・」

「まずは落ち着くことからはじめましょう!」

 

その後母さんからお参り用のお花と線香を貰い家を出た。

 

 

 

 

***

 

 

田舎感満載の風景を眺めながら移動する。お墓は歩いていける距離なのでバイクにも乗る必要もない。懐かしい風景を眺め名がた移動する俺と絵里。

「東京と比べたらのどかなところね」

「車とかの音がなくて五月蝿くないからな。しかも空気が綺麗だ」

「東京は少し排気ガスが酷いわよね」

「喘息持ちに同情するよ」

「それと、こういう処でお昼寝したらぐっすり眠れそうね」

「寝るには最適だが財布を取られたり友達からのドッキリにはご注意を」

「隆也のそれは経験談?」

「・・・・・・・・・ご想像にお任せします」

(あったのね・・・・・)

喋りながら移動していると気がついたら墓地に到着。手桶に水を入れ横山家の墓の場所に移動する。

 

 

そして、『横山家ノ墓』と書かれた墓石の目の前に着いた。

「・・・・・・隆也のお婆様って、どんな方だったの?」

「凄く優しい人だったよ。よく褒めてくれたしよく叱ってくれたし、教育者としたらお婆ちゃんの右に出るのは居ないんじゃないかな・・・」

「そう・・・良い人だったのね」

「バカしすぎて良く怒られたのが良い思い出だよ」

「あ・・・・・・隆也・・・」

毎回のことだ。墓参りに来ると少しだけ涙が出てしまう。亡くなったときは一生分泣いたからもう涙は枯れたんじゃないかって思ってたんだけどな。やっぱり心残りがあるのかもな。

「ご、ごめんなさい隆也。私、無神経だったわよね・・・」

「いや、気にするな。いつものことだから」

「ごめんなさい・・・」

「別に怒ってないんだから大丈夫だよ。んじゃ軽く草刈して線香焚くか」

「えぇ」

墓回りに生えている雑草を草刈鎌で刈っていく。母さんたちが先に墓参りしたから雑草など色々綺麗にされていると思う奴もいるかもしれないがそれは違う。ここを掃除するのは俺の役目だ。お婆ちゃんが生きていた時に返せなかった沢山の恩をせめてこういう処でも返せればと思ってお墓を掃除している。

絵里にはお墓を綺麗に拭いてもらっている。本当だったら他者の人にしてもらう事じゃないんだけど絵里が。

『私にも何かやらせて』

と聞かないものだから、綺麗に拭いてもらっている。

大体の雑草を刈り終わり、墓も拭き終わったところで、手桶で墓に水を掛ける。それを終えたらポケットに入れていたライターで線香に火をつけ墓にお供えする。母さんに準備してもらった花も添える。

俺と絵里に墓の前でしゃがみこみ手をそろえる。数十秒の黙祷をし終え目を開けた。

 

「お婆ちゃん。俺いまでも元気やで。ちゃんと朝昼晩飯食ってるしよく寝てるし風呂もしっかり入ってるよ。タバコもギャンブルもしてないし、人に迷惑掛けたりは・・・少ししてるかもな。いや少し以上やな。けど人として恥ずかしくないように生きてるよ。それにさ、俺には絢瀬絵里って彼女もできたからさ。より一層お婆ちゃんに認められるような男にならないとって自覚してるよ」

(隆也・・・・・・)

「またここには来るよ。俺の一年の恒例行事みたいなモンだからさ」

 

墓の前で立ち上がる。

 

 

「じゃ、今日はもう行くわ。こんどはお婆ちゃんの好きだった柏餅でも持ってくるよ」

掃除道具などを仕舞い、一度墓にお辞儀する。

 

 

「俺のことをここまで育ててくれてありがとうございます。これからもがんばっていきます」

 

体を起こし墓に背を向ける歩き出す。絵里もその俺の後ろを着いてくる。

 

 

 

 

 

『絢瀬絵里さん』

「!?」

後ろを振り向いたら墓の近くで隆也のお婆様らしき人が立って笑っていた。

『隆也の事よろしくお願いしますね』

笑顔で軽く頭を下げてお辞儀をしてきたので、私も笑顔で答えた。

 

 

 

 

 

『はい。任せてください!』

 

 

 

 

 

***

 

 

 

隆也の家に帰ると利子さんが隆也に『ちょっとお使いに行って来てくれないかしらというか行って来なさいていうか行け行かないと今日は物置で寝てもらうわよ』と見事に噛まずに言われた命令に反論をすることも許されぬまま買い物に行った。

その間私は隆也が東京に行く前に使っていた部屋でのんびりしててと言われたので部屋に向かった。中に入るとまさに男の部屋という感じである。特に家具が置かれてるというわけでもなく散らかってるわけでもなく綺麗に整理整頓されている。

そして本棚にはラノベが沢山ありその横には大量の写真立てがあった。写真には隆也の小学生の頃から今に至るまでの写真が飾られてあった。

 

「意外と隆也の小さな頃って可愛いわね・・・・・・・・弟に欲しいかも」

幼稚園の頃の写真を見終わり次は小学生の頃の写真。これは面に運動会や文化祭、後はバスケットボールをしている時の写真。

「やっぱりあの運動神経はバスケから来ているのね。かっこいい」

中学生の頃の話はあの時隆也のお父さんから聞いている。辛い思い出しかないから中学時代の写真は少ししか無かった。

 

そして次は高校時代の写真。いままでの写真より一層量が多かった。一年生、二年生、三年生の頃の写真が種類別にしっかりと分けられている。さらに写真立ての横には少し分厚いアルバムも。高校時代の写真には体育祭、文化祭、そして部活動での写真。そして柔道での試合の写真もある。

 

「隆也ってこの頃に成長期を迎えたのね。小学生の頃、中学生の頃はそこまで身長は変わらなかったのに高校になって一気に背が大きくなってる・・・・・・」

高校時代の写真の隆也は凄くイキイキしてるように見える。友達との集合写真やツーショットなどなど。

 

「隆也、よかったわね」

 

大体の写真を見終える1つだけ伏せてあった写真たてがあった。好奇心でその伏せてる写真を眺める。そこには部活動での集合写真があった。全員部活のユニフォームを着てカメラに向かって満面の笑みを浮かべている。勿論そこには隆也も翔輝もいた。けどなぜか、隆也だけ姿が違っていた。

 

 

「これは・・・・・・」

隆也だけユニフォームを着ておらず、そして手には二つの松葉杖と右足には膝から足全てが隠れるほどの大きなギブスと包帯が付けられていた。

 

「あ、見ちゃったか」

「・・・利子さん」

「やっぱり、気になっちゃうよね。隆也のそれは」

「はい、この家に来る前にも芝多さんと意味深な話をしていました。足がどうとかって・・・・・・」

「まったく隆也ったら、絵里ちゃんに話してなかったのね・・・」

「利子さん。隆也のこれは一体・・・・・・」

「そうね。絵里ちゃんにも話ましょうか。隆也が帰ってくるまで時間あるから」

 

隆也の部屋にある机を挟んで私達は向き合った。そして利子さんは『少し長話になるからこれも』といって二つ紅茶を用意してくれた。

 

 

「絵里ちゃん。隆也は多分好きでこの話を隠してたわけじゃないと思うの。それだけは分かってあげてね」

「はい・・・分かってます」

「じゃ、今から教えるわね」

 

利子さんは紅茶を一口飲み私に鋭い視線を向けてきた。

 

 

私はある程度の予想はしていた。隆也の事だから何かしらのことがあって足の骨を『折った』のだろうと。けど、そんな考えは一瞬で消された。利子さんの口から出た言葉はそんな予想を簡単に崩すほどの言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隆也はもう・・・・・・バスケも柔道もできないのよ」

 

 

 

 

 

 




一ヶ月経ちやっと執筆する事ができました。お待ちしていた皆様大変申し訳ありませんでした。そして待っていただきありがとうございます。
こちらの諸事情により投稿が大変おそくなってしまいました。これからもまた遅くなると思いますがこの話を完結できるようにがんばろうと思います。



では今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!



じゃあ・・・・・・またな!


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隆也の秘密・悲劇

「それは一体・・・・・・・どういうことなんですか?」

「高校時代の話なのだけれど、隆也は交通事故に遭ったのよ」

「交通事故・・・・・・」

「高校3年生の時、そのときは高校の部活での全国大会前だったのよ。隆也はその時不運に事故に遭ったのよ」

「なんで、事故が起こったんですか?」

「歩道を歩いているときに車が突っ込んできたの。しかも、人を庇ってね・・・・・」

「庇って・・・・・・?」

利子さんはポケットからスマホを取り出し指を滑らしていく。そしてある程度動き終わると私にその画面を見せてきた。

「これって・・・・・・」

その画面には私より少しだけ幼い女の子が隆也と一緒にピースをしている写真だった。

「この子の名前澤本楓(さわもとかえで)。今は神戸にある隆也が行っていた高校の3年生なのよ」

「可愛い子ですね」

黒髪をポニーテールで纏め、瞳は濃い紅色。写真で見た感じで言うと雰囲気は穂乃果と花陽を混ぜたような女の子である。

「凄くおしとやかで、元気がある良い子よ」

(この子が隆也のお父さんの言っていた、女の子?)

病室で隆也のお父さんが言っていた言葉を思い返す。確か隆也が絶望していた時に励ましてくれた女の子がこの子なのかもしれない・・・・・・。

 

 

「それで、隆也のことが大好きだった子なのよ」

「え・・・?」

「柔道やってる姿や部活やってる姿の隆也を見て惚れちゃったのよ。告白はしなかったんだけどね」

「告白をしなかった・・・・・・?」

「出来なかった・・・かな。さっき言ったわよね。人を庇ったって」

「はい・・・」

「隆也はこの子を庇って事故に遭ったのよ。自分の選手生命と右足を犠牲にして」

「・・・・・・・・・・・・」

言葉が出ない。今まで隆也が壮大な人生を送って来たのはお父さんとの話で理解していた『つもり』だった。けど、まだ私が知らなかった隆也の過去があった、しかも選手生命と右足を犠牲にしてでの過去。

 

 

「これは、隆也が卒業する少し前の話よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、こんなモンかな」

当時18歳だった隆也。卒業間直に部活での全国区での大会があった。今日はその開催場所である横浜に行くために学校で部活で使う必要な物を準備していた。

「おい隆也!こっち終わったで!」

「よしならこの作業やれ翔輝。俺帰るから」

「帰らせるかボケ!」

「イテテテテテテ!!」

翔輝の十字固めをモロに喰らい地べたでバタバタと暴れまわる。

「隆也先輩、翔輝先輩」

「「え?」」

その2人の茶番をゴミを見るかのように見下ろす女の子、澤本楓。

「よう楓。そっち終わり?」

「そっち終わり?じゃないですよ。もう全部終わらせましたよ。お2人が馬鹿やってる間に」

「先輩に向かって馬鹿とはなんだ!」

「翔輝ツッこむのそこじゃない」

「馬鹿でしょ。この前の卒業考査何点でした?」

「50点!」

「留年確定ですね」

「翔輝・・・今まで楽しかったよ・・・」

「俺を見捨てるな!!」

ある程度、全ての準備が完了したので部員全員帰宅の準備をした。明日は朝の8時に学校に集合なので速めに帰って布団に包まって寝よう。

 

「じゃ、また明日な!」

「おう、気をつけて帰れ」

翔輝はこの後家の用事があるからとかで先に車で迎えに来てもらい先に帰っていった。残りの部員も次々と学校から出て行った。

 

 

 

「さてと俺も帰るか」

部室の鍵を職員室に返し、真っ暗な空の中隆也は『ぼっち』で帰ろうとしていた。

そんな時。

「隆也先輩!」

「あれ?楓?」

「一緒に帰りませんか?」

「いや、別に構わないけど、ってかなんで居るの」

「女の子に根掘り葉掘り聞くのはどうかと思いますけど?」

「じゃああえて聞かないようにしておこう・・・」

「先輩はもっと女の子のこと考えたほうが良いですよ」

「・・・それが出来れば苦労はしないんだよ・・・」

「あ、すみません!私・・・無神経な事・・・」

「いや、大丈夫や。楓や他の奴らのお陰で俺も元気になれたから」

「ごめんなさい・・・・・・あ」

楓の頭を優しく撫でてやるとふにゃりと口元が歪んだ。

「ほら、帰るで」

「あ、まってくださいよ先輩!!」

それから駅に着くまで色々な話をした。この頃の柔道の調子はどうですか?とか勉強の方はどうですかなどなど。ちなみに楓は学生トップの学力を持っている。頭が悪い隆也からしたら月とスッポンのような差だ。その頭の中身を覗きたいほどである。

 

「あーあ、もうそろそろ隆也先輩達が卒業しちゃうんですね」

「しゃーないやろ?俺がお前より先に生まれてもうてんから」

「私も同じ年に生まれてれば・・・・」ボソッ

「あ?どうした?」

「なんでもないです。けど先輩!卒業してもちゃんと高校に来てくださいね!」

「ま、時間があればな」

「あればなじゃないです!作るんですよ!」

「えー・・・めんどくせぇ・・・」

「後輩のいう事は聞いてください!」

「それは俺がいう台詞・・・・・・」

「じゃないと、会えなくなっちゃいますよ・・・・・・」ボソッ

「けどなぁ。場所が場所だからなぁ」

「そういえば同期以外に大学の場所言ってないですよね?どこに行くんですか?」

「あー言ってなかったな。神戸にある大学で、併願で東京の大学なんだよ。東京は一応だけどな」

「神戸なら大丈夫じゃないですか。ちゃんと来て下さいね!」

「分かった分かった・・・ったくうるせえな」

「えへへ!やった!」

楓は外だからそんなに激しくは喜ばなかったが、両手でガッツポーズするくらい嬉しがっていた。

(仕方ない後輩だな。たまには見に来てやるか・・・)

 

 

 

 

大学に入学しても、楽しみが減る事は無さそうだな・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

『この時、隆也はそう思っていた・・・・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「早く帰りますよ先輩!」

「はいはい・・・・なんでそんなに元気なんだよ・・・」

「先輩より体力があるから?」

「ぶっ飛ばすぞこの野郎・・・・・・」

「できるもんならしてみろですよーだ!べー!」

「このガキ・・・・・・そんないはしゃいでたら危ないぞ」

「ここ歩道ですよ?そんな危ない事なんか・・・・・・」

 

 

キキーッ!

 

瞬間、歩道に向かって黒色の乗用車が突っ込んできた。

 

「・・・・・・え?」

楓は突然の出来事に反応が一瞬遅れてしまった。

 

 

「楓!あぶねぇっ!!」

 

隆也はいち早く反応し楓に向かって飛びかかった。

 

 

ドガシャーンッ!!!

 

 

 

***

 

 

 

「うぅ・・・・・・いたた・・・」

楓は一瞬何が起こったかわからなかった。車が来た瞬間動けなかった。瞬間スローモーションのようになりすべてがゆっくり動いているように見えた。当たる直後から意識が飛んでしまい今に至る。車が当たった冷たい感触ではなく何かに優しく包み込まれてる感触。視線を上げると額から地を流している隆也が楓の事を抱きしめていた。

「よう・・・楓・・・・怪我ないか・・・・・・?」

「先・・・輩・・・?私、何が・・・・・・」

「まあ、轢かれそうになってただけだから・・・・・・うぐぅ・・・・・・」

「額から血が出てます・・・・・先輩私を庇って・・・・・・」

「あぁ、今は救急車呼んで・・・くれないかな・・・・・・足の感覚が無いんだ・・・・・」

「え・・・・・?」

隆也の腕の中から抜け出し隆也の足を確認する。見ると左足には異常は無かった。『左足』には。そして次に右足に目を移すと、車と地面にサンドイッチにされ大量の血が流れている隆也の右足があった。

 

「先輩・・・・・・足・・・・・・」

「足・・・すげぇイテェ・・・・・・流石に泣きそうだ・・・・・・」

隆也の目からは痛みで涙が出ていた。楓はフラフラとした足つきで立ち上がりすぐにスマホを起動させ警察と救急車を呼んだ。

 

(血・・・足・・・・・・先輩・・・・私を庇って・・・・・・)

除々に頭が覚醒してくる。今起こってる事が理解できてくる。隆也は楓を庇って身代わりになりその代償に足を大怪我した。自分の命よりも楓の命を大切にした。柔道やバスケをするのに大切である足が今は動かないどころか感覚すらない。

 

(私のせいで・・・・・・先輩は・・・・・・)

 

血の気が引いてきてガタガタと体が震えだす。そして目からは涙が流れ出し、口からはあまりの光景に胃の中身が全部出そうだった。

 

 

(いやだいやだいやだ嫌だ嫌だ嫌だイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ・・・・先輩が・・・先輩が・・・・・・・センパイガ・・・・・・)

 

 

 

「いやああああああ!!!センパアアアアアイ!」

 

 

 

 

***

 

 

 

隆也の足は粉砕骨折を起こしていた。骨折と同時に足の靭帯がボロボロになり、すぐには歩けない状態になってしまった。その事故で骨にはボルトなどを手術で詰め込みなんとか元の形にする事が出来た。だが勿論代償はあった。その事故により足の骨は以前のような頑丈なモノではなくなった。粉砕骨折した足の半分は人口骨を入れ、多少走るぐらいなら問題なく歩くことや軽く走る事は出来るようになった。しかし激しく動かしたり骨に衝撃を与えたら二度と歩けなくなる可能性がある。

勿論全国大会では隆也は出場できず観覧状態だった。柔道も止めバスケも出来なくなった。

 

 

隆也の選手生命が絶たれたのだった。

 

 

楓は目立った怪我はなく体に支障は無かったがその事件のせいで隆也を見るとあの事件の光景がフラッシュバックし吐き気が起こるようになってしまった。自分のせいで隆也のモノを奪ってしまった。私がもっと気をつけていればとずっと悔やんでいる。

隆也が卒業する時も楓はその場に姿を現さず、隆也は楓と顔を会わせぬまま卒業した。

 

神戸の大学へは柔道の推薦で入る約束だったが柔道が出来ない体になっているので推薦の話は無しになり、併願だった東京の大学に隆也は入学。

楓は現在は高校3年生として在籍。

 

 

 

あの事件では色々なモノを無くし壊し、不快な思い出となった。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「これでお話しはおしまい。大丈夫・・・・・・?」

「はい・・・・・・大丈夫です・・・・・・」

私はその話を全部聞き終わるとあまりの悲しみに涙が止まらなかった。隆也の過去は辛すぎるものだ。柔道もバスケも出来ぬ体になり、この兵庫県にひどいトラウマができてしまった。

これで全てが繋がった。芝多さんの言っていた足の意味が。隆也は私を助けた時に無理矢理足を動かし柔道技を使った。二度と歩けなくなると分かっていて・・・。

「けどね絵里ちゃん」

「はい・・・?」

「隆也ね。その事故の後こんなこと言ってたわ」

「?」

 

 

 

『俺の足1つで1つの命が救われたなら安いモンじゃない?』

 

 

 

 

「っ・・・・・・」

「柔道もバスケも出来ない事に後悔なんかなかったのよあいつは。むしろ誇らしく思ってたわ。私達の気も知らないで」

「ははは・・・・・・」

話にひと段落着いた時。

 

「ただいまー!!」

「あ、帰ってきたわね。そろそろご飯にしましょうか」

「あ、私も手伝いします!」

「いいのよ絵里ちゃんはお客なんだから。少しここで休んでて。今は無理でしょ?」

「あ・・・・・・はい・・・」

 

そういってペタリと座り込んだ。

 

 

「絵里ちゃん」

「はい・・・」

「私はあの子の事誇りに思うわ。だからずっと隆也の側にずっと居てあげてね?」

「はい・・・・・・」

「じゃ、また後で呼ぶわね」

利子さんはそのままパタパタと走っていきその部屋には私だけになった。

 

「隆也・・・・・・」

フラフラとした足取りで立ち上がった時写真立てが沢山ある棚に手をついた。その瞬間1つの写真がヒラリと舞い落ちた。

 

 

「あ、」

拾い上げてその写真を見るとバイクに跨った隆也の姿があった。

「え・・・?」

けどそれは私にとって奇妙なものだった。隆也が跨っているバイクはYAMAHAのR1Zというバイク。そして隆也の姿は全身真っ黒のバイク用の服を着ていた。そしてヘルメットは白色。この姿はバイクに乗っている人間なら特にめずらしくもない姿だが絵里にとっては衝撃的なものだった。

 

 

 

まだ大学に入学するまえに原付を乗っていた時代。ガス欠とエンジントラブルにより動かなくなった時に困っていた時に私を助けてくれた人とまったく一緒の姿を隆也がしていたのだから。

 

 

この姿、そしてこのバイク。あの頃から忘れたことはなかった。あの誰も助けてくれないというときに私を助けてくれた男の人。私がバイクを乗るきっかけを作ってくれた人物。

 

 

 

 

「ライダー・・・・・・さん?」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

隆也と利子さんが晩御飯を作ってる間、私は横山家の庭で東京にいる翔輝さんに電話をかけた。

『そうか、知ったか隆也の足のこと』

「えぇ、なんで隆也はこれを隠していたのかしら・・・」

『あいつは絵里ちゃんに心配かけたくなかったんだよ。俺もあいつから

口止めしといてくれって言われたから』

「・・・・・・私、この話聞いてる時涙が止まらなかったのよ・・・・・・」

『絵里ちゃん・・・』

「隆也の・・・過去が・・・辛すぎて・・・」

『絵里ちゃん。苦しいかもしれないけど今それを考えてもなんにもならない。運命だったのかもしれないのだから。絵里ちゃんは隆也の側に居てあげて。それがあいつにとってどんなことよりも幸せなんだから』

「私・・・隆也の力になってるのかしら?」

『自信持って。海未も俺もそれはよく分かってるから・・・・』

「うん・・・うんっ・・・・・・」

『そして絵里ちゃん。君に会いたいっていう人がいるんだけど、いいかな?』

「会いたい人?」

『澤本楓だ』

「澤本・・・楓・・・さん?」

『話を聞いたから知ってると思うけど楓は隆也を見ると発作を起こすから会うことは出来ない。隆也が帰ってきたことをあいつに連絡したら隆也の彼女である絵里ちゃんに今の隆也がどんな感じなのかを会って聞きたいみたいなんだ』

「そう、楓さん・・・・・・」

『絵里ちゃんがこれは決めてくれ。君の自由だ』

澤本楓さん。隆也が大好きなのに今では会うことすら出来ない。これは私の予想ではあるが楓さんは隆也に会って謝りたいはずだ。あれは自分のせいだと、自分がしっかりしていればと、私が隆也と『ニセモノ』の恋人になって隆也がリンチされて隆也を突き放した私のように。その気持ちが私にはよく分かる。これは、楓さんを救う事に繋がるはずだ。

 

 

 

「分かったわ。私・・・・・・楓さんに会うわ」

『了解。あいつにも連絡して会う時間とか色々決めるから後々連絡する。今は隆也の実家で休んでて』

「ありがとう・・・翔輝さん」

『大した事はしてないよ。じゃ、あとで』

「えぇ」

 

 

 

 

 

(エリーチカ・・・しっかりやるのよ)

 

自分に喝を入れるために両手で自分の頬を叩く。

 

 

 

 

(これは・・・・・・私にしか出来ない事だからっ!)

 

 

 

 

「絵里ちゃーん!ご飯できたわよー!」

「あ、はーい!今行きます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『こんどは私が、楓さんの心を助けるヒーローになる番よ!』

 

 

 

 

 

 

以前、隆也が絵里を助けたように。絵里はそれを心に秘め横山家に入っていった。

 

 

 

 

 

 




どうもみなさん!久しぶりにシリアスです!隆也の秘密と悲劇が明かされました。そしてかなり前の話で出した『ライダーさん』。絵里は澤本楓さんとどうなるのか、そして写真にあったライダーさんと瓜二つの隆也。これも後々秘密を明かしていきます。
少しの間は絵里が主体のお話になるとおもいますのでよろしくお願いします。


そして今回新しく評価してくださった!
敬称楽さん!ありがとうございます!


では今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!


では・・・・・・またな!


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救いの手

タイヘンオマタセイタシマシタ


晩御飯では、私と隆也、そして隆也のお母さんの利子さん、隆也のお爺様の義雄(よしお)さんで食事を取った。本当だったら隆也のお姉さんの奈央さんとも食事を共に出来るはずだったがお姉さんはバイトがあったので無理だったようだ。因みにバイトは3つ掛け持ちしているらしい。・・・・・・隆也の家族はなんで他の人とかなりレベルが掛け離れているのだろうか・・・・・・。利子さんは年齢とは裏腹に若すぎる。奈央さんは仕事好き人間。お爺様は80を軽く超えているのに背筋は綺麗に伸びていて今も自分の事務所で働いている。

 

 

(横山家には人間離れした人が多いって事ね・・・・・・)

 

 

夜も遅くなり、客人としての私が先にお風呂に入らせていただいた。別に後でも良かったのだが『絵里ちゃんは長旅で疲れてるから先に入りなさい』とのこと。

家のお風呂は海未の家のお風呂と比べると少し小さいがそれでも一人で使うにはかなり大きなお風呂だった。体を洗い湯船に浸かると体が柔らかくなった気分になった。落ち着いた気分になり、気付いたら1時間ほど浸かっていた。

 

 

「どう?我が家のお風呂は?」

「凄く気持ちよかったです!疲れが取れた気がします!」

「ならよかった。あ、絵里ちゃんの今日寝る場所だけど」

「はい・・・?」

 

 

 

 

 

「隆也の部屋で寝てもらってもいいかしら?」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・っ!?///」

 

 

 

お風呂から上がってきた時より顔が熱くなった気がします。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「やっぱり・・・と言うべきかな?」

「利子さんの顔凄くニヤニヤしていたわ・・」

「母さん・・・・・・」

 

客室用の部屋はあるはずだった。そう『だった』のだ。けどその部屋は今は物置にしているとかどうとかを利子さんに言われ今は隆也の部屋で座り込んでいるという事だ。まあ、隆也の部屋で寝るのは全然構わない・・・寧ろ好都合というか・・・。

 

(なんで私はそういう事を考えちゃうのよぉお!///)

「絵里?どうした?そんな顔ブンブン振って」

「なんでもないわよ!轢くわよ!」

「何で!?」

 

もう夜も遅くなってきたので寝ることに。寝る場所は用意してくださった布団で。

 

 

 

「ねえ隆也。もう寝てる?」

「いや・・・まだだけど・・・・・」

「その・・・隆也のベットに行って良いかしら」

「え・・・?」

「その・・・部屋が暗いから・・・」

「お、おう」

隆也の部屋の電気は豆電球がつかないので完全に部屋は真っ暗な状態。

隆也のベットに潜り込み隆也の体に手を回す。こうするとどんなに暗い場所でも落ち着ける。

「・・・・・・・・・」スンスン

「え、絵里さん・・・・・・?」

「いい匂い・・・・・・」スンスン

「そ、そうか?ボディーソープの匂いかな?」

「それもだけど・・・隆也の匂いのほうが好き・・・・・」

「臭い・・・・・・?」

「全然・・・・・」

 

それから約10分ほど匂いを嗅いだ後、隆也の右足を触る。

 

「隆也」

「ん?」

「右足・・・・・・利子さんから聞いたわ」

「っ・・・」

「ごめんなさい。あの写真を見て知りたくなったの」

「はー・・・いいよ。どうせ近々バレるとは思っていたから」

「澤本楓さんの事も聞いたわ。後輩で隆也が右足を犠牲にして守った女の子」

「そこまで聞いたか。なら楓の発作も?」

「えぇ、隆也の顔を見たら発作が起こるのも知ってる」

「俺はあの子に会うことは出来ない。卒業式の日もロクに喋れていないんだ」

「心残り、あるのね」

「当たり前だ。あの子は俺が絶望している時に助けてくれた恩がある。まだしっかりと『ありがとう』も言えていないんだ」

「そこでなんだけどいいかしら?」

「?」

 

ベットの上で座りなおし隆也の目を見つめた。

 

「私、澤本楓さんに会ってくるわ」

「っ!?」

「なんで会いに行く?って顔をしてるわね」

「そ、そりゃあな・・・・・・」

「楓さんから私に会いたいそうなのよ。隆也の今の状況を知りたいらしいから」

「楓・・・が・・・」

「・・・思い出しちゃう?」

「あぁ・・・」

「楓さんも私に会いたいらしいのよ。なら隆也が元気だって事ちゃんと教える義務があるわ」

「絵里・・・」

「隆也が会うって『ありがとう』が言えないなら私が貴方に代わって言ってあげる」

「・・・ありがとな絵里」

そっと私の頭に手をおいて撫でてくれる。私は隆也に頭を撫でられるのがとても好きだ。

 

「けど気をつけて行けよ?兵庫県は危ないやつがよくいるから」

「大丈夫よ。もし危なくなったら隆也を呼ぶから」

「約束だぞ?絶対無理もしたらいけないからな?」

「分かった。約束」

 

隆也の小指と私の小指を絡ませて指きりをする。そのまま私は隆也の体に抱きつき体力を回復させるために眠りについた。

 

 

 

『楓からメッセージ来たから渡しておくな』

 

 

 

『10時に○○市にある○○駅の改札前で待っています。 澤本楓』

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ここで・・・いいのかしら?」

隆也の家で起きた私はすぐに準備をして隆也の自転車を借り、最寄の駅まで移動し電車で待ち合わせをしている駅まで電車で向かった。出かけることを利子さんに話すとなぜか電車賃やお昼の食事代を出してもらった。

「別によかったのだけれどね・・・」

こういうお人良しなところは隆也そっくりね。いや、隆也が利子さんに似たのかしら?

楓さんに会うことは一応報せたけどそこまで心配されるほどではなかった。ただ一言、頑張ってねの一言だった。

隆也は午前中と午後の少しはお爺様の義雄さんの仕事の手伝いで連れて行かれていた。初めて人間が片手で肩襟をつかまれて引きずられて連れて行かれるところを見た気がする。

 

 

「もう少しで10時ね」

腕時計で時間を確認していると遠くからこちらに走ってくる音が聞こえてくる。そちらに目を移すと、ボーイッシュな恰好にしていて、腰まで伸びている髪の毛をポニーテールに纏めている少女が私の下に走ってきた。

 

 

「えっと…絢瀬絵里…さんですよね?」

「そういう貴女は澤本楓さん…かしら?」

「は、はい!よかった~…人違いじゃなくて」

「それにしてもよく私だってわかったわね?」

「あ、えっと、つい昨日LINEで翔輝さんから写真を送っていただいたのですぐに見つけることができました」

「翔輝さん…いつのまに私の写真なんか」

「盗撮……ですかね?」

「別に怒りはしないけど、東京に帰ったら……ね?」

「ですね。あの人は一発キツいのが必要ですね!」

(絵里さん写真でみたのより綺麗だな~。確かロシアのクォーターだっけ?」

「……私の顔に何かついてるかしら?」

「あ!いやいやいや!写真で見たのより綺麗だなって思って!」

「そんな事ないわよ。楓さんも可愛いわよ?」

「そんなことないです!絵里さんの方がかわいいですよ!」

「ふふっ、褒め言葉として受け取っておくわね」

「本当に褒めてるんですよ~!」

(楓さんって利子さんから見せてもらった写真通りに元気で可愛い子ね。けど、こんなに元気でも隆也に会えなくて辛いはずなのよね……)

「……里さん…ぇりさん…絵里さん!」

「はっ!な、なにかしら?」

「どうしたんですか?そんなに難しい顔して」

「な、何でもないわよ?ちょっと考え事してただけだから」

「そうですか……それならいいのですが…」

(勘の良さそうな子だから感ずかれないようにしないと……)

「とりあえずここで長話もあれだからどこかへ行かない?」

「ですね!私のほうがここに詳しいのでついてきてください!」

 

駅の改札口から私と楓さんは駅の外に出た。

 

 

 

***

 

 

 

 

「やっぱり絵里さんってあのμ'sの人だったんですね。私動画で何回も見ましたよ!かっこよくて可愛くて惚れそうでした!というか惚れてます!」

「わかった!分かったから少し落ち着きましょ!?ね?!」

 

駅を出てから楓さんと一緒に服を見たり雑貨屋を覗いたり、ゲームセンターで遊んだりと色々なもので楽しんだ。そして時刻が夕方を過ぎ始めた頃、私と楓さんは少しおしゃれなカフェに入った。ここまでは良かった。

だけどカフェについてからと言うもの、さっきから楓さんからの質問攻めを受けている。高校時代の話、μ'sの話、ラブライブでどんな気持ちだったか、アメリカでのライブや東京ドームでのライブ。ありとあらゆる事を聞かれた。まあファンなら色々と聞きたい事があるとは思うが流石に厳しい。

(アメリカから帰ってきてファンの皆から逃げ回ったのを思い出すわね)

 

 

だが、さっきから楓さんは私の質問ばかりで隆也の質問を一度もしていない。そもそも今回楓さんが隆也の今の状況を知りたいという理由が第一のはず。後、心なしか楓さんの顔が少々暗い気がする・・・。

 

(無理をしているとしか見えない。ただの女の勘だけど)

 

 

 

「絵里さんって綺麗だから色々な人にモテそ・・・」

「楓さん」

「あ、はい!なんですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は少し強めに言葉を放った。

「隆也の事が知りたいのになんで私の話しかしていないのかしら?」

「っ・・・それは・・・」

「後、顔色が悪いように見えるわ。体調悪いのかしら?」

「すい・・・ません・・・体調は大丈夫なんですが・・・」

 

彼女が無理をしているように見える理由。()の方に問題があるのではと考えた。私は大丈夫だとも言わんばかりの作り笑顔。たまに逸らす視線。視線を下に落としていくとそわそわとさせている両手。

 

 

「隆也の話を聞くのが本当は怖いの?」

「っ!」

図星である。だがその理由も分からなくもない。過去の出来事が辛いものだからそれを受け入れるには時間が掛かる。隆也を見るだけで発作が起こる。少しでも隆也を受け入れれば楽になれるかもしれないが自分の心のどこかで隆也を受け入れることを拒んでいる。

 

「ごめんなさい。キツい言い方をしてしまって・・・」

「いえ、大丈夫です。絵里さんの言うとおりです。受け入れることから逃げてるのは事実です」

「そこまで無理をしてでも成し遂げたいこと・・・なのね」

「あの事件が私のせいでも隆也先輩のせいでもない事は私も分かってるんです。あれは不運な事故だった。けどあの時の隆也先輩の姿が瞼を閉じると浮んでくるんです。私だけ助かって隆也先輩だけ体にも心にも思い傷を負った。更には柔道もバスケも出来ない体になったんです」

「話は聞いてるわ。けど隆也はそれでも・・・・・・」

 

 

「それでもじゃないんです!!」

 

 

楓さんは此処がカフェなのに関わらず大きな声を出した。その声に反応してカフェにいる客全員がこちらを振り向いた。

 

「私は隆也先輩が好きでした・・・隆也先輩とずっといたいと思いました。隆也先輩が傷つく事は私も辛くなっちゃうんです。神様はひどいです。私だけが大した怪我もなく隆也先輩が傷ついた。なんで私じゃなかったんですか・・・・・・。なんで傷ついたのが私じゃなくて先輩だったんですか・・・・・」

「楓さん・・」

「私はどうしたらいいんですか・・・絵里さん。私はもう隆也先輩とは仲良く出来ないんでしょうか・・・・・?私はもう・・・隆也先輩に会えないんでしょうか?」

楓さんの目から大粒の涙が零れ落ちる。ポタポタと机に落ちて小さな水溜りができた。体はブルブルと震えだし両手で口からでる嗚咽を必死に止める。

「私は・・・隆也先輩に会いたいです・・・隆也先輩に『ごめなさい』と『ありがとう』を言いたいんです・・・。あの人に『私を助けてくれた』お礼が言いたいです・・・・・・。誰か・・・私を助けてくださいよぉ・・・・・・」

 

 

こんな時、隆也ならどうしたのだろうか。何も言わずに抱きしめるのだろうか・・・。それとも励みの言葉をかけるのか。私は隆也じゃないからどうするかは分からない。けどこの子をどうにかしてでも助けてあげたい。こんな考えは傲慢だと思う。だから私は私の出来ることをする。

 

 

「楓さん」

「・・・ぐすっ・・・はい・・・?」

「ちょっと来て」

「えっ?・・・絵里さん?」

 

私は楓さんの手を引き料金を払いカフェを後にした。

 

 

 

 

 

***

 

もう外が完全に夜と化した今。

私は近くにあった公園のベンチに楓さんを座らせ正面から抱きしめた。

「絵里・・・さん?」

「よく今まで頑張ったわね・・・辛かったわよね・・・嫌だったわね・・・」

「なんで・・・今それを・・・」

「もう悲しまなくていいのよ。今は私の胸を貸すからおもいっきり泣いて良いのよ・・・」

「私・・・はぁ・・・・・・」

「今までの分も今吐き出しなさい・・・。私が側にいてあげるから」

「あぁ・・・絵里さん・・・絵里さん・・・辛かったよぉ、悲しかったよぉ・・・ずっとずっと辛かったです・・・。隆也先輩が離れていく事が・・・隆也先輩に会う事ができないことが・・・私の中から隆也先輩が除々に消えていくのが辛くて辛くて仕方なかったよぉ・・・・・!」

楓さんが私の背中に手を回して服をギュッと掴んできた。私は楓さんの背中を右手で摩りながら楓さんの頭を優しく撫でる。

「・・・・・・・・・もう・・・大丈夫よ・・・」

「うわぁぁぁぁぁ・・・・うああぁぁぁあああん!」

 

 

楓さんが泣き止むまで私はずっと抱きしめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたかしら?」

「はい・・・・泣いて色々と吐き出したので少し楽になれました」

手洗い場で顔を洗って帰ってきた楓さんに自販機で買ったお茶を手渡す。

「楓さん」

「はい・・・?」

「私は隆也になんども助けられた。命が危ない時は体を張ってまで私を助けてくれて、ずっと私の側に居てくれた」

「はい・・・」

「私じゃ貴方の苦しみを和らげることは出来ても完全に貴方を救う事は出来ない。だから今回も隆也に助けてもらう事にしたわ」

「それは・・・どういう・・・」

ポケットに入っていたスマホを取り出し楓に画面を見せる。だがそこには何も移ってなくただ画面が黒くなっているだけだった。

「絵里さん。これは?」

「貴方に伝えたい事があるっていう人がいるのよ」

「それってもしかして・・・・・・」

画面の再生ボタンをタッチした。そしてスピーカーから流れてきたのは・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

『よう楓。久しぶりだな』

「・・・・・・・・・え?」

 

 

隆也の声が流れてきた。

 

 

 

 

『こんなビデオ越しで悪いな。いや顔も何も映ってないからボイスメッセージかなこれは』

「絵里さん・・・」

「私が隆也にお願いしたの。面と向かえれないならボイスだけならどうかって」

昨日の夜に隆也にお願いをした。『楓さんを助けるために楓さんに向かって今想っている気持ちを伝えて』と。

ボイスなら顔をみず言葉を伝えられる。発作も起こることもない。

 

 

『楓。俺はお前に感謝してるんだ』

「感謝・・・・・?」

『俺が完全に絶望している時にお前は俺のことをずっと励ましてくれた。俺の心を優しく癒してくれた。お前には『ありがとう』じゃ良い足りないくらい程の恩がある」

「そんな、私は何も・・・・・・」

『まずはお礼が言いたい。何回も聞いた事がある言葉だが許してくれ・・・ありがとう』

「っ・・・・・・」

楓さんの目からまた涙がこぼれた。けどその涙を拭いボイスに耳を傾ける。

 

 

 

 

『あの事件だが、お前は何も悪くない』

「ぇ・・・・・・」

『俺はお前を助けた事に悔いはない。俺の足一本でお前の命が救えたんだ。これを誇らずしてなんていうんだ?』

「っぅ・・・・・・隆也先輩・・・・・・」

『柔道が出来ない?バスケが出来ない?それがどうした!その2つが失った事で救えた命があるんだ。あの時もしお前を助けれなかったらその方が俺は何百倍もつらい。お前は俺の大事な後輩だ!』

「うっ・・・ぐすっ・・・・・」

『俺は今は元気だ。多分あの時にお前、いや・・・翔輝や楓たちが俺を助けてくれなかったら多分今の俺は居ない。今の俺があるから絵里や希たちと出会えたのかもしれない。もしかしたらあれが俺の人生の分岐点だったのかもしれない。なら今の俺があることに感謝だ。楓たちに救ってもらった事に感謝だ!』

「隆也・・・先輩ぃ・・・うぅ・・・」

『だからさ楓。もう泣くな。苦しむな。悲しむな。自分を責めるな。俺たちの縁は切れちゃいないんだ。発作もゆっくり治していけ。そして・・・また・・・またさ!』

「うあぁぁ・・・ぐすっ・・・ひぐっ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『また高校のときみたいに一緒に笑おうぜ!!楓!!』

 

 

 

 

 

 

 

「その言葉・・・やっと聞けましたよぉ・・・・・・ありがとう隆也先輩・・・ありがとぉう・・・・・・うわぁあああああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり隆也には敵わないわね。貴方の言葉には力がある。それも凄く強い。人を苦しみから救い出せる力が。私もそれに救われた。そして今回は楓さんが救われた。貴方は強くて優しい・・・・そして私の彼氏で・・・・・・とてもカッコイイヒーローよ。

 

 

 

「ねえ隆也。今日の出来事で・・・私は役に立てたかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

空を見上げると綺麗な星空が広がっており、その一部から綺麗な1つの流れ星が落ちていった。




はい。皆様お久しぶりですそしてお待たせいたしました。一ヶ月以上投稿できませんでした。理由は簡単というかなんというか、大学の勉強に追われておりました。小テストやレポートなどが自分に容赦なく襲い掛かってきました。最低な言い訳ですはい。
次の投稿ですが・・・・・・不明です。ですが時間はかかりますが次話は絶対に投稿します。

そして新しく評価してくださった!
穂乃果ちゃん推しさん!塩釜HEY!八郎さん!十六夜師匠@Aqoursさん!koudorayakiさん!ありがとうございます!

恐らく次の話で兵庫編は終了します。それが終わりましたら最終話に向けて何話ほどか書く予定です。

何とか時間を作って書いていきます!投稿は絶対遅くなると思いますが首を長くしてお待ちください。


では今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!


では・・・・・・またな!


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またね・・・。

今回で兵庫県編終了です


「本当にここでいいの?」

「はい、今日は色々とありがとうございました」

 

 

隆也からの声を聞き終わり、大泣きした楓さんを慰めて落ち着かせていると気付いたらあともう少しすると日を跨ぐ時間帯となっていた。公園で楓さんの今の気持ちを落ち着かせるためにちょっとした雑談をした後、今日集合した駅まで楓さんを送り届けた。

家まで送ろうとは言ったのだが・・・。

「それは絵里さんに悪いので大丈夫です。早く帰らないと隆也先輩が絵里さんのこと心配しますから!」

と押し切られてしまった。

けどさきほどと比べて楓さんの顔色が良くなってるので心配はなさそうだ。

 

 

「絵里さん明日東京に帰ってしまうんですか?」

「大学もあるからそんなに長い間いれないのよ。向こうには私の妹もいるから」

「そう・・・ですか。あえなくなるから寂しいです」

「そんな顔しないで楓さん。また会えるから」

「・・・・・・っ」

「楓さん?」

顔を俯かせたまま私に抱き付いてくる。背中に手を回し、胸に顔を埋めてすがり付いてくる。なんだか亜里沙を抱きしめてるような感じがする。

「・・・・・・楓さん」

「絵里さん、今日は本当にありがとうございました。絵里さんのお陰で救われた気がします」

「私は何もしてないわよ。助けてくれたのは隆也よ」

「そんなことないです。今日絵里さんが会いに来てくれなかったら私ずっと苦しんだままだったと思います・・・。だから、今日私を救ってくれたのは・・・絢瀬絵里さんです」

「・・・・・め、面と向かって言われると恥ずかしいわね・・・」

「えへへっ。絵里さんもかわいいところあるんですね」

「それ以上言うともっとぎゅっと抱きしめるわよ?」

「そ、それならもっと言います!絵里さんかわいいです!」

「もう!そんな子にはこうよ!」

「あ!なら私もぎゅー!ってします!」

傍から見たら凄い仲が良い姉妹に見えるかもしれない。お互い力強く且つ優しく抱きしめ合っているのだから。

「まるでお姉ちゃんが出来たみたいです。絵里・・・お姉ちゃん?」

「そ、それはそれで恥ずかしいから出来れば遠慮してほしいわね・・・」

「むーっ・・・絵里お姉ちゃんがいいです・・・」

「そんな顔しないの」

「はーい。わかりました」

 

そう言って抱きつくのをやめてくれた。

「それじゃ、私もそろそろ帰るわね。隆也が待ってるから」

「はい、その何度もしつこいですが本当にありがとうございました。今度なにかでお礼をさせてください」

「そうね。そのお礼期待してるわね」

「はい!東京には気をつけて帰ってくださいね!」

「ありがとう。楓さんも気をつけて家に帰ってね」

「はい。では今日はお疲れ様でした!」

 

楓さんはそのまま駅の改札口まで走っていき、切符を改札に入れる直前に私の方に振り向いてきた。

 

 

 

「絵里お姉ちゃん!また会いましょう!」

 

 

 

 

それだけを言い残し改札口を通っていった。

 

 

 

 

 

結局最後の最後にお姉ちゃんと呼ばれ私の顔は少し真っ赤になっているだろう。

 

(やられたわね・・・)

 

 

顔を片手で隠しながら駅を背中にし隆也の家まで歩き出す。

 

 

 

 

「今日は楽しかったし、楓さんとも仲良くなったし、ちょっと疲れたわね速く家に帰らないと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだな・・・こんな遅くまで居る悪い子にはお仕置きが必要だな」

「ひっ!きゃああああああ!」

 

 

 

いきなり肩を掴まれ、さらには耳元で声を掛けられたので、私は反射的にその男に向かって平手打ちを食らわしてやった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「別に叩かなくていいじゃねえか・・・」

「あんな風にいきなり喋り掛けられたら誰でもびっくりするに決まってるじゃない!」

 

私は今隆也の運転する車に乗っている。そう、さっき声を掛けてきたのは私を心配になって迎えに来てくれた隆也だった。いくらまっても帰ってこない私を迎えに行くために家にあった利子さんの車を借りて来てくれたのだ。ついでに自転車も回収済み。

 

「こんなに遅くまで出かけていたのはどこの誰なんでしょうね?」

「うっ・・・そ、それは・・・」

「ったく、気をつけるんだぞ」

「ごめん・・・なさい・・・」

「分かればよろしい」

 

 

確かにいくら楓さんのことが会ったとしても隆也たちが心配するかもしれない、それでもせめて連絡一つは送っておけばよかった。

 

 

「絵里」

「ん?」

「楓は・・・どうだった?」

「大丈夫・・・よ。多分」

「多分?」

「あとはあの子次第だと思う。私も出来る限りのことはしたと思ってる。ま、隆也の手を借りてだけど」

「俺の声を聞いてあいつはどうだった?」

「喜んでたし・・・・・・泣いてたわ」

「・・・・そうか」

「あの涙は喜びの涙よ。隆也に助けてもらったから」

「俺は何もしていない。今回あいつを助けたのは絵里だ」

「私こそ何もしてないわよ。特にこれぞと言った事もしていないし」

「もしそうだったとしてもだ。絵里が楓と会わなかったら、今頃あいつはどうなっていたか分からない・・・。ヒーローはお前だ絵里」

「ヒーローね・・・。実感沸かないけど」

 

(私はヒーローなんかじゃない。客観的に見てこれは言いくるめたらおせっかいな手助けに見える。あくまで私のヒーローの概念は、隆也のような人間のことを言うのだと思う・・・・・・。私は人を助ける(・・・・・)ことは出来ても人を救う(・・・・)ことは出来ない)

 

 

ナデナデ

 

 

「ふぇ?」

「今日はお疲れさん。絵里のお陰で助かりました」

「なにいきなり・・・キモチワルイ・・・」

「お前は真姫か。褒めてるだけだよ。嫌だったか?」

「いやじゃないわよ。ちょっとびっくりしただけ・・・・・・」

「そんなこと言いながら頭擦り付けてくるところって本当にツンデレだよな」

「ツンデレじゃないわよ・・・。頭撫でられるのが好きなだけ」

「そうか。なら今日頑張った絵里にはご褒美として頭を撫でてやらないとな」

「そ、そうよ。ちゃんと頭撫でないといけないのよ」

「はいはい・・・。ウチのお姫様は我侭だな」

 

そして隆也は私の頭を撫で続けてくれた。その手が私は好き。ゴツゴツしてて大きくて、優しさを感じるその手を。

 

 

「じゃ、家に帰るか。明日の東京に帰る準備もあるからな」

「そうね。亜里沙に早くお土産かって買ってあげないと」

「それなら母さんが絵里の必要だと思った分買ってくれてるぞ」

「え!?いつの間に!?」

「絵里ちゃんの驚く顔が見たいからだってさ」

「もう・・・隆也といい利子さんといい、横山家の人達は優しい人ばかりね」

「これが普通な気がするが」

「いいえ、異常よ。とても」

 

とてもという部分を強調する。私の周りには優しい子や優しい人は沢山いる。けど隆也やそのご家族の人達はそれを上回るほどの優しい人達だ。

 

 

(貴方を好きになった理由もその優しさに惚れたから・・・なのよね)

 

 

 

 

「速めに家に帰って準備して寝ましょうか」

「それに同意。今日は家の庭の芝刈りしてて肩が痛い・・・。家ですぐ寝よう」

「じゃ私もすぐにお風呂いただくわ。隆也お風呂は?」

「まだだ。お爺ちゃんと母さんの風呂長いから結局俺が最後になるんだ」

「長風呂なのね。じゃ一緒にお風呂入る?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」

「じょ、冗談よ冗談!そんな間に受けないでよ!」

 

 

隆也は顔を赤くしたまま車を運転する。けどその目は鋭く光っていた。

 

 

 

「隆也・・・・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・絵里」

「は、はい!」

 

 

赤信号で止まった瞬間、隆也が私の耳元でボソッと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「風呂上がったら覚えとけよ・・・」

 

 

 

 

 

 

青信号となり、シン・・・とした空気のまま隆也は運転を再開する。

 

 

 

私は家に着くまでずっと顔が真っ赤のままであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―翌日―

 

 

 

 

 

「ちゃんとご飯食べるのよ。洗濯も掃除も怠らないように!」

「分かった分かった!ちゃんとやるから!」

「絵里ちゃんも東京では気をつけてね!これ私の携帯電話番号とLINEのID!隆也が怠けてたら連絡してきてね!隆也の家に父さん呼ぶから!」

「ごめんなさいご飯も食べます洗濯もします掃除もしますだからそれだけは勘弁してください」

「よく噛まずに言えたわね」

「感心するところそこじゃねえよ!」

「あはは・・・」

 

私達は今、新幹線乗り場の西明石駅にいる。私達の前には利子さんと芝多さんが来てくれている。利子さんは隆也にあれでもかこれでもかという具合にガミガミと隆也に言葉を投げつける。けどそれは隆也を心配しての言葉だという事がよく分かる。

 

 

「絢瀬絵里さん。隆也に事よろしく頼むわ」

「はい。ちゃんと面倒見ますね」

「あいつのことだからこれからまた無茶するやろうからな。また柔道技しそうで怖い」

「そんな事態にならないように願います。もう誰も傷ついてほしくありません」

「そうやな。またなんかあったら連絡してくれ。仕事の休みぶんどって東京いくから」

「そ、それは少しやりすぎかと・・・・・・」

 

そんなことにならないに越した事は無い。東京に帰ったら神田明神にお祈りしに行こう。

 

 

 

 

先ほどから駅の中にいる人混みを見るが私の目当ての人はやはり居なかった。

 

 

 

(やっぱり・・・楓さんは来なかった・・・わね・・・・・。仕方ないかな・・・)

 

 

 

 

荷物を手に取り、駅の奥へ進む準備をする。

 

 

 

 

 

「じゃ、東京に戻るわ」

「色々とお世話になりました」

「えぇ。気をつけて」

「またここに帰ってこいよ」

「「いってきます」」

 

 

 

 

一歩。歩き出そうとした瞬間、背後から待ち望んでいた人の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隆也先輩!絵里さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

振り向くと、その人は息が荒く肩で大きく呼吸しており、額には大粒の汗を流していた。私は来ると信じていた。私はこの人を待っていた。やっと、救われたこの人を。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・楓・・・・・・」

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

楓さんは息を上げながらも隆也の目をジッと見つめている。今まで、目が合っただけで発作が起こるはずだった。だけどそんな事は起こらなかった。克服したのだ。トラウマを。やっと・・・。

 

 

 

 

 

 

「やっと・・・・・・会うことが出来た・・・。あれのお陰で私はやっと・・・ここまで・・・戻る事が出来ました・・・。絵里さんのお陰で・・・私は這い上がる事ができた・・・。やっと・・・隆也先輩を『見る』事ができました!」

「楓・・・・お前・・・治ったのか・・・」

「まだ・・・完全じゃありません・・・。けど・・・これぐらい大丈夫です!」

「そっか・・・よかったな・・・」

「はい・・・絵里さん」

「うん・・」

「ありがとうございました!また・・・きてくださいね!」

「うん。絶対また来るから・・・」

「俺もまた帰って来るからな」

「待ってます!!」

 

 

 

本当によかった。ずっと苦しんで、悲しんで、辛くて、今まで助けてもらえなかった。

そしてやっと・・・助けてもらえる日が来た。

 

 

 

 

「いってらっしゃい!隆也さん!(・・・・・)絵里お姉ちゃん!(・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達2人は微笑み返し、手を振りながら駅の中へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

『いってきます』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よかったわね隆也」

「あぁ。本当によかった」

 

新幹線の中の座席に座り込んだ。座ったと同時に安堵感と感動による涙を流していた。

 

「絵里お前泣きすぎだぞ」

「そういう隆也こそ。うっすら涙目よ」

「そんな事ない。これは汗だ」

「へぇ~・・・じゃ、汗という事にしておきましょう」

「そうしてくれ・・・」

 

私が目を離した時に服の袖で目をゴシゴシと拭いていること知ってるんだから。

 

 

 

 

「東京か・・・」

「東京に帰るのはいや?」

「嫌じゃない。けどあんな事あったから余計な」

「また一緒に行きましょ?こんどは海未たちも連れて」

「あぁ。翔輝もな」

 

 

この兵庫での旅は私にとって大切な思い出になるものだった。隆也の家族に会い、隆也の過去を知り、その過去によってトラウマを抱える女の子に出会い、隆也の友達に出会い、人を助けることがどれだけ大きな事なのかを知った。隆也の人を守ることや救うことは伊達ではなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ隆也」

「ん?」

「ちょっと今回の旅で気になったことがあるのだけれど」

「気になったこと?」

「気になったことというか、隆也の部屋に会った写真なんだけれど。1つだけ気になった写真があったの」

「そんなのあったか?ほとんど高校時代のモノだから無いと思うけど・・・・・・」

 

 

この旅で1つだけ心残りがあった。隆也の部屋にあった写真の1つ。YAMAHAのR1Zに跨った隆也の写真。あれは私を助けてくれたライダーさんと瓜二つの写真だった。

 

もしかしたら・・・隆也は私を付けてくれたライダーさんなのではないかという疑問に至った。

 

「何かあったのか・・・?」

 

 

隆也が心配そうに私を見てくる。

 

いや、そんなに焦って詮索しなくてもいいかもしれない。すぐに今答え合わせをしても変わることはないだろう・・・。

 

 

「ごめんなさい。なんでもないわ」

「なんだよ気になるから言えよ」

「女の子は秘密が多い方がかわいいのよ」

「なんだそりゃ!そんなこと良いから言えよ」

「それ以上しつこく聞いてきたら家に帰った直後海未たちに隆也に襲われたって言いふらしてやるんだから」

「この野郎ズルいことしやがった!はいはい何も聞いてませんよ」

「ふふっよろしい!じゃ、私は東京に着くまで寝るわ。起こさないでよ?」

「起こさねえよ。俺も寝るから・・・ふぁ~・・・」

 

 

 

そうして私達はお互いアイマスクとイヤホンを身につけ東京に着く約3時間眠りについた。

 

 

 

 

 

(隆也・・・もし貴方が私を助けたライダーさんだったら・・・・・・ちゃんとしたお礼をさせてね・・・)

 

 

 

 

 

そんな言葉を心の中で呟きながら私は深い眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

(またね・・・兵庫県・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

そして、新幹線は東京に向かって走り出した

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。今回は絵里に頑張ってもらいましたね。こんなヒーローがいたら自分必死に助けを求めるでしょうね(笑)
そして今回で兵庫県編は終了です。次の話では話でも出てきた絵里とライダーさんの過去話を短いですが執筆しようと思っています。何文字いくかな・・・・(ボソッ)
その話の次に最終話に向けて書きます。勿論シリアスぶち込みますので!←(言ってはいけない事である)


そして今回新しく評価してくださった!
フリュードさん!煉崎さん!ありがとうございます!

いつも評価やお気に入り、感想などありがとうございます!見ていて元気になれます。
たまに感想読んだりしてニヤニヤしていたり・・・(ボソッ)←嘘です
これからもお待ちしております!




それでは今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!



では・・・またな!


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ライダーさん

今回のお話は絵里の過去のお話です


 

 

 

 

 

 

 

これは、私が音ノ木坂を卒業して……μ'sが解散して1,2ヶ月が経った時の過去のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私達μ'sは最後のライブをやり遂げ己の道へと進んでいった。

穂乃果、ことり、海未は生徒会で私の祖母の代から続いてきた音ノ木坂を今も守り続けてくれている。真姫、凛、花陽は次代生徒会になるために他の生徒達から見られて恥ずかしくないために努力している。

 そして希は私とは違う大学へ進んで、現在も神田明神の巫女のアルバイトを続けている。

 にこは卒業後大学に通いながら大人気アイドルの道を進んでいる。最初は苦労はしたものの、にこはそれでも負けないと強い意志を持ちあらゆる所から依頼が来るほどの人気人物となった。

 

 私、絢瀬絵里は今住んでいる家からさほど遠くない大学に入学。今は家の近くにある飲食店でアルバイトをしている。

 大学が始まるまでの間に出来るだけ自分の使える資金を集めている。現在はロシアにいる両親の仕送りで充分なのだがその甘えにすがらないように自分のお金は自分で稼いで自分や亜里沙のために使おうと決めた。

 

 

 そして初めて私が稼いだアルバイト代で買ったものは、大学やなにかしらの移動時に使用するための乗り物で、お父さんの知り合いの人から安く交わしていただいたバイクを購入。それはTZR50という名前のレーサーレプリカの原付バイクである。

ひょんな時にそのバイクの写真をみつけて以前から乗って見たいと思いやっと納車することができた。

 原付だから時速30キロでしか走れないがそこは特に気にしていない。自分が乗りたいと思っていたモノに乗れたのでそれだけで満足している。

 

 

 

 

 

時間があるときにこのバイクに跨ってどこか綺麗な景色が見れる場所に行こう……そう考えていた。

 

 

 

 

 

 

それがきっかけだったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、私と私を助けてくれた『ライダーさん』との出会いの物語。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがいいかしら」

バイクに跨り海が見える場所までやってきた私。一眼レフのカメラで景色をバイクと一緒に撮る。それが私の趣味である。

それで今回は海とバイクのツーショットでの写真を収めるために来た。

ほどよい角度にバイクを移動させ、海をバックにカメラのスイッチを押す。それを数回ほど繰り返して写真を確認。

「よし!今日も良い写真が撮れたわ!」

写真をとっては家のパソコンに保存する。一見見た目は地味だが私はそれが楽しい。なにより写真を撮ることがとても楽しい。これから元μ'sの皆と遊ぶ時もこのカメラを使って沢山写真を撮ろう。

 

「そろそろ帰ろうかしら」

夕日が沈み出し、あと数分をすれば日が暮れる。暗いと色々と危ないかもしれないと考え私はカメラを鞄に仕舞いバイクに跨りエンジンを掛ける。

 

 

 

 

だが………。

 

 

 

 

「え……あれ?」

右ハンドルにあるエンジンを始動させるためのスイッチである『セル』を何回も押すがエンジンが一向に掛からない。キュルキュルキュルと空回りする音がする。

「な、なんで!?家を出た時は大丈夫だったのに!」

 少しパニックになりながら私はエンジンの掛からない原因を探した。バイクの足回りガソリンタンクの中、数多の場所を虱潰しにするとその原因が分かった。

「え…ガソリンが無い……?」

ガソリンタンクの中身を見るとガソリンがほんの少ししか入っていなかった。所謂ガス欠というやつだ。ならガソリンを入れればいいのではと考えるがそう簡単にも行かない。

「どうしよう…この近くにガソリンスタンド何てないし、それに誰かに来てもらおうにも車やバイクに乗っている人も居ないし…」

胸がチクチクしてきた。初めての出来事に完全にパニックになっている。一体どうしたらいいのか、歩いていこうにも距離があるしガソリンを運ぶ道具すらない。さらには今この道に車一台すら来ない。

「だ・・誰か…助けて…うっ…ぐすっ……」

いくら高校を卒業しても1人の女の子。怖いものは怖いのだ。このまま誰もここを通ることなく誰にも助けてもらう事なく時間が過ぎていく。目から出てくる涙を止めようと服の袖で拭うがどんどん後から涙が出てくる。

 

 

 

 

 

 

 

そんな時、私はこの人に出会った。

 

 

 

 

 

 

 

泣いていると後ろから甲高いバイクの音が聞こえた。そのバイクはどんどんこちらに近付いてきて私の後ろで止まった。アイドリングの音が鳴り続けている中、私は後ろを振り向いた。

そこに居たのはR1Zに跨っている黒いバイクスーツに黒いズボン。そして白いヘルメットを被った男の人が居た。体つきは男らしくがっしりしていて私よりもずっと背が高い。ヘルメットのバイザーからは少し見えにくかったがサングラスをつけているのが見える。

だが私はそんなことより私を見て通り過ぎていくような事をせず困っている私に近付いてきてくれた事がなによりも嬉しかった。

その男の人はバイクのエンジンを切り、ヘルメットを外してサングラスを付け直し、私に近付いてこう言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうかしました?可愛いお嬢さん」

 

 

 

 

これが私とライダーさんとの初めての出会いである。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

(やべええええ!超絶恥ずかしいいい!)

初めて東京に来て大学始まるまで少しの期間があるから軽くバイクでも走らせようかと思って近くの海で少しだけボーッとしてたまではよかった!

んで帰るときに道の端っこで原付のTZRの近くで泣いている金髪の女の子が居たからついいつもの感じで声を掛けてしまった。

なんだよお嬢さんって!関西人の俺が言っちゃダメな台詞やんけボケェ!こういう台詞はイケメンなおにいちゃんがすることだ!

落ちつけ俺…落ちつけ。大丈夫。俺は大丈夫…。やばかったらここから逃げれば良いんや!いやそれは人間としてクズだ。

 

「えっと…あの…」

ヤバイ…金髪お嬢さんが少しアタフタしてる。しかも目じりに涙をためてウルウルさせてる。困らせたらダメだろ俺ェ…。

 

「君も海を撮りに?」

「あ、はい!そうなんです!海をバックにバイクの写真を撮っててもう日が暮れそうだから帰ろうかなって思ってたときにバイクがエンストしちゃって…」

「あ~…TZRガソリンメーターないから分からないからな。もしかして乗ってそんなに時期が経ってないのかな?」

「その…のってまだ3週間も経ってないです…」

「それは分からなくても仕方ないな。そういうのは乗っていくことに感覚で分かってくる事だから」

「はい…」

(こりゃそうとうパニックってたらしいな……)

まだ20歳にもなっていない女の子がこんな怖い体験したら泣きたくもなるよな…。

 

「えっと、お嬢さん」

「は…はい?」

「ちょっとバイク見せてもらって良いかな…?ほかに壊れてないか確かめたいからさ」

「はい…お願いします」

「では失礼」

 

TZRの前にしゃがみこみバイクに穴が開くんじゃないかというくらい見つめ1つだけ目に入った部分があった。

 

「あ」

「どうかしたんですか?」

「なにかの拍子でチェーンが切れてる。こりゃガソリンを入れても動かないな。というかこれ運転中にならなくて良かった…。もしかしたら怪我してたかも知れないよ」

「よ、良かったぁ…大きな怪我をしなくて」

お嬢さんがここが道路だというにも関わらずペタンッと座り込む。今ので緊張の糸がプツリと切れた模様。

「ま、不幸中の幸いとはこのことだな。ま、ガソリンを前にこいつをどうにかするか」

「けど…どうにかってどうするんですか?」

「君は東京に住んでる子でいいのかな?」

「え?そう…です…」

「ならこの近くにあるバイクのパーツショップは知ってる?」

「知ってます……」

 

 

 

 

そうか……なら。

 

 

 

 

「なら今すぐそこに行ってチェーンを買ってパパッと直すか」

「え!?え!?」

「えっと、俺ここらの土地勘ないから道教えてもらって良い?後ろ乗ってくれるかな?」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「え?何?」

「な、なんで私にそこまでしてくれるんですか……?さっき会ったばかりの他人なのに……」

 

 

(なんで…?なんでって言われてもなぁ…)

今まで何回も困ってる人を助けたことはあったが、俺の中でそれへの答えは決まってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助けるのに理由が必要か?」

 

 

 

 

 

 

 

「え…………?」

「別に君だからっていう理由じゃない。こんなところで困っている女の子がいるのになにもしない傍観者に俺はなりたくないだけだ。『困っている奴を助けるのに理由はなんて必要ない』」

「そう……ですか……」

「そういうこと。さてと…じゃそろそろ行こうか。早くしないと真っ暗になって家の人が心配するぞ」

「は、はい!失礼します!」

 

そして俺はバイクのエンジンを掛け、タンデムシートに金髪のお嬢さんを載せる。お嬢さんに俺の体にしっかり捕まってと伝えると腰に手を回してぴったりと密着してくる。んー…この子バランス力いいな。全然揺れない。

 

 

「じゃ、行こうか。道案内よろしく」

「は、はい…よろしくお願いします」

 

 

 

 

少し急ぎ足で俺はバイクを走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

この人はなんでここまで優しく親切にしてくれるのだろう。さっき会ったばかりなのに……。普通ならここまでしてくれないはず。

パーツショップに着いても自分から私のバイクのチェーンを買ってもくれた。何度もお金を渡そうとしたのに。

 

『俺が出すよ。気にしなくて良い』

 

の一点張り。

 

 

おかしな人だ。ここまで他人に気遣いをする人は見たことが無い。まるで人を助けるために生まれてきたような男の人。

だが、この人の事を見てるともっとこの人を知ってみたいとも思う気持ちが出てきた。なぜここまで他人に気を使うのだろうか…。なぜここまで必死に困っている人を助けるのだろうか……。

 

 

 

「いやぁ~工具持ってきてて良かった。念には念をとはこのことだな」

「バイクの解体の仕方に詳しいんですね」

「まあバイクが好きだからな。できるかぎりバイク屋に頼らないように、自分で出来るようになろうと思ってな。まあ覚えるのは苦労したな」

「本当にバイクが好きなんですね」

 

 

 

「『バイクに色々したりするのもバイクの楽しみの一つだ』」

「色々?」

「自分でカスタムできるようになったりとか自分で直せれるようになるとさ、そのバイクに愛着が沸いてくるんだ。このバイクは絶対大事にしようと思ってくるんだ」

「前言撤回します。バイクが大好きなんですね」

「少ししか変わって無くないか?ま、大好きなのは否定しない」

 

手際良く私のバイクを分解していき新しいチェーンを取り替えてくれる。この人本気を出せば整備員になれるんじゃ……。

 

 

「あ、お嬢さん。タンクにガソリン今のうちに入れといて。もう少しで終わりそうだから」

「あ、はい!」

「ゆっくり入れるんだぞ。花に水を掛けるようにな」

「その例え凄く分かりにくいんですが……」

「マジで!?関西だと一応通じるんだが……」

「え?関西?」

「いや、なんでもないよ」

「はぁ……???」

 

チェーンを買うと同時にこの人は携帯式のガソリンタンク一ℓ分も買い、通り過ぎたガソリンスタンドに寄り事情を説明しガソリンを入れさせてもらった。普通なら私が言わなきゃいけないことなのにこの人は自ら先に店員に話しかけていた。なんだかこの人に会ってから色々とお世話になりすぎていて少し恥ずかしくも思った。私は賢い可愛いエリーチカと呼ばれてるのにこれじゃ賢くもなく可愛いくもない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!完了。エンジンも掛かるしこれで一安心かな」

「あの、本当にありがとうございました!この恩は忘れません!」

「大げさだよお嬢さん。俺はただただ放っとけなかっただけだ」

「でも、それでも貴方は私を助けてくれました。本当に感謝してるんです!」

「ははっ。ならお世辞としてもらっておこうかな」

「もう!お世辞じゃないですよ!」

「はははっ!悪い悪い」

私の頭を少し乱暴に撫でてくる。不覚にも私は軽くからかわれたことよりも頭を撫でてくれたのを喜んでしまった。

 

 

 

でも本当に今回は完璧にこの人に助けてもらえてよかった。別の野蛮な男の人だったら今頃一体どうなっていただろうかと想像するとゾッとしてしまう。

なら、後日どうにかしてお礼をしたいと私は考えた。

 

 

 

「それじゃ俺はもう行くな。そろそろ寒くなってくるだろうし」

 

だが私の考えは簡単にどこかえ消えてしまった。男の人はさっさと工具を片付けヘルメットを被っていた。

 

 

 

「あ、あの!せめてお礼がしたいので連絡s「お嬢さん」っは!はい!」

 

すると今度は先ほどの優しい口調とは別で厳しい口調に変化した。

 

 

「俺の目が正しければ貴方は優しい子なんだろうな。だから連絡先を交換して後日俺にお礼をさせてほしいと考えたんだろ?」

「は…はい」

 

 

 

 

「そんな事はしなくていい」

 

 

 

「え?」

「今回の事は俺が勝手にやったことだ。お礼を言われる事をしたわけじゃないしされたいと思ってしたわけじゃない。更にも、俺たちは赤の他人同士だ。そう簡単に連絡先を交換なんて口にしちゃいけない。俺は貴方のことを知らないし貴方も俺のことを知らない。いくらなんでも無用心じゃないのか?」

「それは………」

「悪いって言ってるわけじゃないが、簡単に心を許しちゃいけない。もう少しは人を疑う事も考えるんだ」

「…………」

「俺がもしかしたらその連絡先を流出してしまう悪い男かもしれないぞ?そうなったら責任もてないだろ?」

「はぃ……」

 

正論だ。確かに無用心にも程があったかもしれない。いくら助けてもらった恩人だからってこう簡単に心を許してはいけない。もう少し警戒もしなければいけない。けどお礼がしたいのは事実だ。

 

 

「でも…お礼だけでも」

「いいんだよ」

 

今度は優しく私の頭を撫でてくれた。

 

 

「へ………?」

「俺がしたくてしたことだ。お礼なんていらない。それに……」

「それに……?」

「もうお礼は貰ってる」

「え?私なにもしてないですよ?」

「わからなくていいんだ。俺だけが分かることだから」

「はぁ…そうです……か…」

「そうだよ。んじゃそれじゃ俺はもう行くよ。お嬢さんも気をつけて帰りなよ」

「はい!その本当にありがとうございました!」

「あぁ。また何処かで会えたら会おうな」

 

 

そして男の人はバイクにエンジンを掛けていつでも発進できる準備をした。

 

 

 

「あ、最後に1つだけ!」

「ん?」

「その!名前を教えてください!私は絢瀬絵里です」

「名前か…」

 

 

 

「俺の名前は……よ―――り―う―だ」

 

 

 

男の人が口を開け、名前を言う直前、道路にトラックが通りすぎて完全に名前を聞き取ることが出来なかった。

 

 

 

 

「え……?」

 

 

「じゃ、また何処かで」

 

 

 

 

それだけ言い残して男の人はバイクを発進させ一瞬で遠くにいってしまった。

私はそこに立つことしたできなくてもう一度名前を聞こうと追いかける事すら出来なかった。

 

 

 

 

 

「貴方の名前はなんだったの…………『ライダーさん』」

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

これが私が大学に入るまでに起こった忘れる事のない出来事だ。

あれ以来ライダーさんに会うことすら出来なかった。何度もあの海に向かったが会うことは無かった。

けど私は1つだけ心に決めた事があった。今度彼を見たらちゃんとそのサングラスをとってもらってその素顔を見て貴方にお礼を言いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あの時……私を助けてくれて………ありがとう!』と……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで自己紹介がまだだったわね。私は絢瀬絵里よ」

「俺は横山隆也。よろしくなパツ金美少女」

 

 

 

 

 

そして私は大学でニセモノの恋人役になってもらった『横山隆也』に出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(んー……このパツ金美少女。どこかで出会ったことがあるような……気のせいだな!多分……)

 

 

 

 

 




お久しぶりです。やっと大学の試験が終わりぐーたらしてる作者です。やっぱり夏休みは家に引きこもってナンボですよね!そして毎日ゲーム!←(ヤバイ)


そして今回新しく評価してくださった!
スミスさん!純宮さん!ギィすけ0413さん!ピポサルさん!
ありがとうございます!


そして次回からは新学期という設定で話を進めていきます。
シリアスあり少しイチャイチャありみたいな感じです。まぁ恐らく後半ほとんどシリアスになると思いますが。楽しんで読んで頂けるならなら嬉しいです!
それでこの小説の最終章、最終話にしようと思っていますのでよろしくお願いします!






それでは今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!


では・・・・・・またな!


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ロシアでの

さて、最終章書いていきますか


 

 

兵庫県での里帰りも終わり、大学も新学期に入った。

季節も秋に入り、灼熱の夏から涼しい時期に移っていった。

秋といえば食欲の秋などスポーツの秋などとよく言われるが、俺にとって秋は1年で唯一心を休める事が出来る季節だと考えている。この季節は紅葉が綺麗に見れる時期だからそこで景色を眺めると凄く体を落ち着く事が出来る。あとお茶や栗料理が美味しい。甘味類なら栗きんとんだな。あの甘さが大好きだ。

今度栗でもとって絵里に作ってもらおう。多分作ってくれるはず……。

いや、1期の終わる前にあったテストの点数がそこまでよくなかったからもしかしたら作ってもらえないかも知れない……。

まぁ今度ダメ元でお願いしてみよう……。

 

そして俺は教室のドアを開ける。そこには俺の所属する学部の人数の殆どが集まっていた。

 

もちろんその中には俺の彼女の絢瀬絵里の姿も見える。

 

 

 

「おはよう絵里」

「おはよう隆也。集合時間ギリギリよ?また寝坊しかけたんでしょ」

「あー…いや大丈夫寝坊じゃない。おそらく…多分…まぁ…その…」

「正直に話したほうが身のためよ?」

「はいすみません寝坊しかけました」

「よろしい。けど夜遅くまでなにしてたの?」

「筋トレしてたら夜中の2時になってた」

「貴方は頭本当に筋肉で出来てるんじゃないの?」

「新学期の朝から毒のある台詞どうも……」

「ちゃんと寝なさいよ?心配しちゃうから……」

「はいはい。気をつけますよ」

 

 

いつもの席に座り学部の教授を待つ事数分。

 

 

 

「じゃあ出席取りますよ~」

 

 

 

久しぶりの大学生活がスタートした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで連絡は以上です。それと明日にですが他の大学からの2週間ほどの他大学体験講義で大学に10人ほど来ます。その内の1人がこの学部に来ますので仲良くしてあげてくださいね」

「先生!その人って男ですか?女ですか?」

「かなりイケメンなクソッタレ野郎らしいですよぉ」

 

『キャーーーーーー!』

『ちぃっ!!!!』

 

 

あるあるだよなこれ。イケメンとか美少女が来るとかで騒がしくなる感じ。っていうか教授?今クソッタレ野郎って言ったよな?教授がそんな事言って良いのか?更にはだが女どもの口から黄色い声が教室内に木霊し、男どもから超不機嫌な舌打ちが響いた。多分女の子を期待してたんだよなお前ら。大丈夫、諦めなかったら希望はあるから。保証はしねえけど。

 

 

 

「へぇ~そんな制度があるのね」

「まあそんなに気にする事でもないしな俺たちからしたら」

「少し興味あるかも………」

「……………………絵里さん今なんと?」

「そのイケメンな男の人」

「え?そこ?」

「私だってイケメンな男の人に興味あるに決まってるじゃない」

「あのね?俺貴女の彼氏なんだけど……?それ普通彼氏の前で言うか……?」

「え?」

「え!?」

(なにこのやりとり?やべ…泣きそう……)

 

「あははっ!冗談よ。ごめんね?」

「マジで泣きそうになった…絵里怖い……」

「ちょっとやりすぎたわね。今日美味しい晩御飯作ってあげるから許して?」

「……おう…」

(隆也……流石にチョロイくないかしら?)

 

 

 

 

 

 

「ですので明日も気をつけて且つ遅刻しないように。それと掲示板に新しい講義内容を記載してるのでしっかり考えて時間割を組むようにしてください。それでは今日はここまでです。お疲れ様でした」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ時間割はおいおい決めていくか。期日まで少しだけ時間あるし」

「そうね。あ、公務員試験対策っていうのがあったからそれ受けるわよ」

「はいはい」

「はいは一回よ」

「はいよ」

 

 

今日は連絡事項だけだったから大学での講義は無い。あとやることとしたら自分のロッカーの整理とかかな。ま、それも終わったから暇なんだけどな。

 

 

時間ができた俺と絵里は大学の食堂で軽い昼飯を食べている。今日は俺はカレーライスを、絵里は日替わりランチ。特に講義が無いからお互い弁当は作ってきていない。

そして今回は俺の横に座っているオマケ付き。

 

「いや~編入生もどきが明日来るんだよな~。どんな奴だろうな?」

「さあな。たった2週間ぐらいなんだからそんなに仲良くするつもりはない」

「とか言いながら隆也。心のどこかで楽しみにしてるんじゃないのか?」

「してない。断じて。お前のから揚げ食ってやる」

「あ!この野郎!俺の好物を取るな!!」

「ちょっと貴方達!ここ食堂なんだから大人しくしなさい!」

 

 

俺の横に座ってるのは俺の大学での友人『神崎煉(かんざきれん)』。ひょんな事で仲良くなり、よく一緒にラーメンや寿司や焼肉などなど。よく一緒に飯などを食いに行くほどの仲。体格はほぼ俺と一緒で、ツンツン頭が特徴。

絵里がμ'sのメンバーだという事も知りながら絵里と対等に喋ってくれる唯一の同い年の男性。こいつ曰く『それがどうした?』と抜けた発言をするほど。

そのお陰で絵里とも仲良く喋っているところを見ることもチラホラ。

けど俺と絵里が付き合ってる事は知ってるので、出すぎた事は一切していない。そこのところの歯止めはしっかりと利く。俺よりのバカだけど。

 

 

 

「いいだろ俺のカレーライス一口あげたんだから」

「全然量無かったわ!しかもさっきのから揚げ食堂のおばちゃんが作ってくれた中で1番大きかったやつだぞ!」

「マジで?」

「マジだ」

「まあいいか」

「よくねえよ!そのカレーライス食ってやる!!」

「げっ!この野郎返しやがれ!」

のごごふ!んがふ!(させるか!返さぬ!)

 

だがこんな事してると……。

 

 

 

「いいかげんにしなさい!!」

 

『へぶがはっ!!』

 

 

お嬢さまの怒りを刺激するのも勿論のことである。

因みに今回の鈍器は折りたたみ傘である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何かいう事あるわよね?」

『誠に申し訳ございましぇんでした……』

「よろしい」

 

日々日々絵里の俺を殴る力が強くなってる気がする……。

 

「隆也も煉くんもここが大学だってこと忘れてたわよね?他の人にも迷惑が掛かるってこと分からなかった?」

「いや、こいつが俺のから揚げを取るから……」

「俺のカレー食ったから……」

 

 

「誰が言い訳をしていいと言ったかしら?」

 

((理不尽……))

 

「食堂ではお静かに…OK?」

『サー・イエッサー』

 

今回は俺たちが悪いがここまでされるのは解せぬ。

 

 

 

「あ、俺のツレから聞いたんだけどよ」

「ん?」

「どうやら俺たちの来る奴ってハーフらしいぜ?」

「え?ハーフ?」

「それどこ情報だよ」

「その大学に友達が居るらしくてさ。そいつから根掘り葉掘り聞いたらしいぜ」

(根掘り葉掘り…)

「そいつの特徴ってなにかある?」

「えーっと…」

煉はスマホをスライドしていき数秒たってそれをピタリと止める。

 

「身長177センチで体重64キロ。髪の毛が綺麗な白髪で整った顔。因みに髪は地毛。んで目が赤?いやちょっと濃い紅色かな」

「えっ……?」

「絵里?どうした?」

「あっ!いや…なんでもないわ」

「?」

煉の一通りの説明を聞いた絵里の顔色が少しだけ青くなったのを俺は見逃さなかった。

「んで続きある?」

「ん?えーっとこれは特徴じゃないけど成績は優秀で運動もできてそしてモテる。死ねば良いのに……」

「だなリア充死ね」

「お前もリア充だろうが」

「え」

「んで、武道では合気道をしてたらしいぞ」

「うわぁ…ケンカしたら勝てないな」

「いやケンカなんてすんなよ!」

「隆也。合気道ってどんな武道なの?」

 

 

ロシアのクォーターの絵里も流石に分からないかと理解した俺は簡単に説明した。

 

 

 

 

「合気道っていうのは柔道、空手、剣道と違って自分からの攻撃をしない武道のことだ。この武道はやっかいなやつで相手の体格、体力、強さ関係なしで相手を倒す事が出来るんだ」

「え?それって反則級じゃない!」

「俺もそこまで詳しいって訳じゃないんだが体の運用を利用してこれぞという力を使わずに相手を投げ飛ばしたり固め技をしてくるんだ。150センチの人間が180センチの人間を投げ飛ばしたっていう話を父さんから聞いた事がある」

「もう無敵じゃね?それ」

「もし俺が相手しても多分勝てないな。合気道は相手の呼吸に合わせて相手との接触点が離れないように保って円の動き……螺旋って言ったほうが早いな。その動きで相手の重心や体勢を崩す方向に持っていって無駄な力を使わずに流れるように相手を屈する事が出来るんだ」

「チートだな」

「柔道は投げ技類、空手は打撃技類、剣道は剣術、そして合気道は攻撃を受け流す。大概の攻撃は返されるか流される。ほぼカウンター類だな」

「そいつのモテる理由もしかしたらそういうので女の子守ってきたからじゃねえのか?」

「かもな」

「やはり時代は武道なのか……」

「そんな気を落とすなよ。お前もいつか彼女ぐらいできるって」

「そうだといいんだがなぁ…………ぐすん…」

 

合気道か。多分俺じゃ勝てないっていったけど訂正しよう。絶対勝てない。ありとあらゆる攻撃をしても絶対にひっくり返される。メタルギアのCQCかよ。スネークかよそいつ…。

 

 

「ねえ煉くん」

「ん?」

「その男の人ってどの国とのハーフなの!?」

「お、おい絢瀬落ちつけ。そんな焦らなくても教えるから」

 

それとこの話をしてから絵里の様子が少しおかしい気がする。焦っているのもあるが。

 

『怖がってるみたいだった……』

 

 

「えっと…確かこいつは………」

 

 

 

そして煉の出した言葉を聞いた瞬間、絵里の顔に大粒の汗が流がれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日本とロシアのハーフらしいぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「なんだったんだろ絵里のあの態度」

「そんなに普通じゃなかったん?ロシアの単語があかんかったんかな?」

「ロシアだけであーなると思わんが……希なにか知らないか?」

「んー…ロシアではバレエしてたとか話は聞いたことないなぁ」

「そっか…」

 

俺は絵里の事を1番知っている少女である希がいる神田明神に来ている。煉との話で見せた絵里の表情がどうにも頭で引っかかってモヤモヤする。

 

「エリチのことやからまた1人で抱え込んでるんやろうね」

「一応何かあったのかとか聞いたんだけど『なんでもないわ』しか言ってくれなかったんだ」

「まったくエリチは……。一応ウチの方でも話きいとくね」

「悪いな希」

「ええよ。こういうのは女の子同士の方が聞きやすいっていうのもあるから」

「間違いない。適材適所だな」

「分かったらすぐ連絡するわ」

「おう。頼んだ」

 

希に軽く手を振り神社の鳥居を通り階段を下りていった。

 

 

 

「絵里…俺に何か隠し事でもしてるのか……」

絵里と付き合って数ヶ月はたったがやはりお互いを完全には理解していないのかもしれない。だけど俺は絵里の彼氏として隠し事は出来る限りして欲しくないと思ってる。人間だれしも言いたくない事はあるだろう。けどあんな態度されたら聞きたくなくても聞きたくなってしまう…。

いや、いや…それはデリカシーが無さ過ぎるか。束縛彼氏になっちまう…。

 

(絵里、俺はお前の味方だ。だから、出来る限り俺を頼ってほしい・・・。力になるかは分からないが)

 

 

 

そんなことを考えながら歩いてると気付いたら家に到着していた。

 

家の扉の鍵を開けると同時にスマホの着信音がなり、画面を覗くとそこには『東條希』の文字。

 

「以外と早かったな」

 

 

LINEの内容は………。

 

『ちょっとロシアの頃を思い出してただって』

 

 

 

「ロシア…か」

 

 

 

それが一体どういった意味なのかは今の俺には理解できていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

そして翌日。

 

昨日のことを夜ずっと考えながら大学に登校する。横には絵里もいるが、顔の表情が中々よろしくない。なにかを心配しているかのような、それか今内心で思っていることが起こらないように願っているかのように感じる。

俺はその絵里の頭を優しく撫でた。

 

「隆也?」

「まぁ、なにかあったのかは聞かない…今はな。けど決心してくれた時でいいから話を聞かしてくれるか?」

「…うん…。ごめんね?心配かけて……」

「大丈夫だ。だからそんな顔すんなよ。俺もなんか元気なくなっちまうから」

「そう・・・ね。出来る限りいつも通りにしてみるから」

「空元気は好きじゃないけどな」

 

ポンポンと頭を撫で昨日と一緒の今日室に入り席に座る。横で絵里がそわそわしてるから他の奴らにばれないように手を握る。すると絵里も握りかえしてきて安心したのか微笑み返してくる。うん…まあこれで元気出してくれたならいくらでもしてやるよ…。

 

 

そして教授が急ぎ足で教室に入ってきた。

 

 

 

「はい、おはようございます。昨日連絡したとおり他大学のイケメンで成績優秀スポーツ万能の非リア充からしたら完全なる敵である学生が今日から皆さんと一緒に講義を受けることになってます」

 

『キャーーーー!』

『ケッ!!!!』

 

教授さん凄い煽るな。しかもなんかこの光景どこかで見たことがあるような…。

 

 

 

「じゃ、入ってきて」

 

ガラリと扉が開き、昨日煉から聞いた通り白髪で俺とほぼ同じぐらいの体格の男がゆっくり入ってきた。

そしてその男は教授の横に立ってホワイトボードにペンで名前を書いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー・・・○○大学から来ました。青山 (たくみ)です。少しだけの期間ですがよろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

その男、青山は綺麗なお辞儀&女性陣にウインクをプレゼント。瞬間女性陣はさっきよりも甲高い黄色い悲鳴を上げた。

 

 

「え!?予想してたより美形なんだけど!」

「しかも綺麗な白髪に凄く輝いてる紅色の瞳!」

「イケメン万歳!!」

 

 

 

 

 

「へぇ、予想してたよりイケメンじゃん。な?隆也」

「え?あー…そうだな。絵里お前の評価は………どう……だ……?」

 

 

 

絵里の方を見るとさっきまで見ていた微笑んだ笑顔は消え失せていて変わりに驚きの表情になっていた。

そして青山は教室をキョロキョロし俺と目が合った。

 

 

「…………」

(ん………?)

 

 

一瞬睨まれた気がしたがすぐに視線を逸らし俺の横に座っている絵里を見つめ手を振りながら近付いてきた。

 

 

 

 

「あ!絵里!久しぶり!」

 

 

 

『え……?』

 

 

 

俺含め、教室全員の心と言葉が一致しその視線はその2人に注目した。

 

 

「絵里、ずっと会いたかったよ。元気にしてた?」

「え、えぇ…匠も元気そう……ね」

「あぁ、もう絵里と会えなくなって心配してたんだ。μ'sのことも知ってる。あんなに輝いてる絵里を見たのも久しぶりだよ!」

「わ、分かったわ…。だから後で話しましょ?ね?」

「ん?あー…そうだな。その方が都合が良い(・・・・・)な」

(都合が良い?)

 

 

「あー…青山くん。思い出に浸るのもいいですが先に連絡事項を伝えたいのですが…」

「あ、すみません。ちょっと興奮しちゃって」

「大丈夫です。ちょっとこちらに来てください」

「はい」

 

 

 

 

青山は絵里から離れて教授の方へと向かう。離れた瞬間絵里は電池の切れた人形のように椅子にストンっと座りこんだ。

 

 

 

 

「なんだ…あいつ」

「なんか絢瀬のこと知ってる感じだったな」

「あぁ、しかも幼馴染みたいな感覚で………」

「絢瀬。あいつ誰だ……?」

 

 

 

 

 

 

 

「なんで…貴方がここに居るのよ…」

「絵里……?」

「あの時……別れたのに…」

「別れた………?」

「隆也、私あなたに1つだけ隠してた事があった。けどこれはできるなら貴方には知って欲しくなかった事なの…ごめんなさい……」

「絵里、顔色悪いぞ?俺は何も怒ってねえよ。大丈夫だから落ちつけ」

「本当にごめんなさい……もしかしたら先に話していた方が良かったのかもしれない……」

 

絵里は弱々しく俺の右手を両手で握りこんでうっすら涙目で俺を上目遣いで見つめてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼……青山匠は………ロシアで出来た……………私の嫌いな………元彼氏なの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬、この世の時間が止まった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 




はい。絵里の元彼です彼は。かなりぶっとんだ話だと思いますがそこは気にせず←
一体彼はどんな人物なのか、絵里との関係は、そして隆也とどうなるのか。
これからはそれを書いていこうと思います。よろしくです。



そして今回新しく評価してくださった!
白月姫さん!あ  んさん!ありがとうございます!


大学の試験が終わっても今も大学に行く事がたまにあるのでなんとか頑張って書いていこうと思います。さぁて…面白くなってきたぁ……。




それでは今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!



では……またな!


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最低で最悪

「元…彼氏?」

「ごめんなさい…隠してた訳ではないの…」

「別に彼氏がいた事は気にしてない。けど、『嫌い』ってどういうこと?」

「それは……」

 

 

「それではこれで連絡事項は終わりです。では皆さんしっかり考えて講義を取る様に。お疲れ様でした」

 

はっと気がつけば教授の話が終わっていた。各々友達と行動する者や一人で行動する者が次々と教室を出て行く。少し過ぎれば教室に残ったのは俺、煉、絵里。そして今日俺たちの学部に来た男、青山匠だけとなった。

 

 

「やっぱりここは綺麗な学校だね絵里。俺との大学と比べたら綺麗だし広いし開放感があって良いところだよ」

 

まあ案の定、すぐさま青山が絵里に話しかけてきた。

 

「ねえ匠。貴方いつロシアからこっちに来たの?」

「えっと、去年からかな?まだ日本に来て1年も経っていないんだ」

「そう…なんでか、聞いていいかしら?」

「いいけど今でいいの?これから講義は行かなくていいの?」

「私達は今日は特に出ようと思っている講義は無いから時間はあるわ」

 

絵里は先ほどと違っていつもの強気を出して青山に話しかける。更には『私達』というのを強調して。

 

 

「えっと…私達?そこにいる二人のこと?」

「そうよ。私の『大好きな』彼氏の横山隆也と私の『良き』友の神崎煉君よ」

「お、おい隆也!絢瀬から良き友って言われたんだけど!?」

「少し黙れ煉。今そんな空気じゃない」

「あ、はい」

 

「へぇ~…君絵里の彼氏なんだぁ…」

 

彼氏だという言葉を聞いた青山が俺の体中をを舐めるように見つめてくる。だがその目は鋭く俺の目を離さなかった。

 

「あぁ、絵里の彼氏だ」

「ふーん…あっ、そう。別にいいけど」

 

(別に…ねぇ…?)

 

明らか俺だけ態度が違う。だがそれを見せたのもほんの一瞬。すぐさま笑顔を見せて俺に近付いてきた。

 

「よろしく!少しの間だけど仲良くしてくれ!」

「お、おう!よろしくな青山!」

「……よろしく」

乗り気ではないが俺と煉は青山と軽く握手を交わした。

 

 

「ねえ絵里!ちょっと2人で話しがしたいんだけど良いかな?」

「…別にいいわ。隆也、煉君。ちょっと外に出ててくれない?」

「おう、分かった」

「手短にな」

「えぇ」

 

俺と煉は自分の鞄を持って教室に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ隆也」

「ん?」

「あいつ、良い奴には一応見えるんだけどさぁ…」

「やっぱりお前も分かったか?」

「どう考えても俺たちの事はオマケ扱いだ。ありゃ絢瀬目的だ」

「元彼女だからっていう理由だろ」

「それだと思うけどな。後この大学を選んだのも偶然じゃねえ。絢瀬がいるからこの大学に来たんだと思うぞあいつ」

「その心は?」

「あいつの言葉1つ1つ聞いたけど、あいつはこの大学に何回かこの大学に来てる口ぶりだ。やっぱりこの大学はとか良いところだよって普通言わないだろ?これは仮説だけど下見みたいな感じでこの大学に来て絢瀬を見つけた。なんらかの情報を得てだ。だからこの大学に決めた。学力とか大学施設関係無しにだ」

「お前よくあれだけでそこまで推理できるな」

「趣味人間観察の俺を舐めんなよ?」

「それ俺の前以外で言わないほうがいいぞ」

「………やっぱり?」

 

こいつは人を見るのが本当に上手い。観察眼があるとかそんなレベルじゃない。日頃から色んな奴を見たり聞いたりして身に付いたスキルだ。更には語彙力もそこそこ。頭の回転も俺より早い。もしなにかしらの二次元などの世界に行ったらこいつほど頼りになる男は居ないと俺は思っている。

 

「隆也、これらを全部纏めて単語にしたものを何ていう?」

「ストーカー」

「大正解。絢瀬の事を諦めきれないと言ってもこれは引くレベルだ。日本に来たのもあいつにとっちゃ故郷を離れた事がラッキーって思ってるだろうな」

「関西人の俺からしたらフルボッコしたくなる奴だな」

「いやこれは誰でもだろ」

「まあ、この2週間いつのより絵里に気を………」

 

「配ろうとするか」と言おうとした瞬間、教室から。

 

 

「もう私に近付かないで!貴方の事は嫌いって言ったはずよ!」

 

絵里の怒号が飛んできた。

 

 

 

***

 

 

 

 

「それで?話って?」

「分かると思うけど、あんな男とは別れて俺ともう一度付き合ってくれよ絵里」

「お断りよ。隆也と別れるつもりはないわ」

「ロシアでお互い愛し合った仲じゃないか。考え直してくれ。な?」

「昔の話を掘り返してこないで。女々しいわよ」

 

断ってもこの男は私についてくる。ロシアの時もそうだ。どれだけ離しても近付いてくる。私はこの男とは確かに付き合っていた。けどそれも短い日々だった。周りから見たら逞しい、カッコイイ、優しそう、などの大層な褒め言葉が出るだろう。けど私は違う。生理的にも受け付けない、嫌い、情けない、女々しい。そんな言葉しか出ない。

 

 

「変わったな絵里…ロシアでは俺たち仲が良かったのにな」

「そうね。けどこれが私の中での正解の道だったわ」

「俺は諦めきれない。絵里ほどの綺麗で強くて凛々しい女の子は他に居ない。君が好きだ。君がいれば俺はなんでも出来る。だから合気道も覚えた。強い男になれば絵里に振り向いてもらえると思ってた。けど………なんだありゃ?横山隆也だっけ?あんな男と付き合ってるのかよ。やめとけよあんな奴。俺の方が君に相応しいんだ」

「貴方に隆也の何が分かるの?それに私の前で彼をバカにしないで。気分が悪くなるわ」

「絵里の目も随分曇ったよな。俺を嫌いになってあんな男を好きになるなんてさぁ」

「貴方に決められる筋合いは無いわ。私の自由よ」

「ずっとロシアで一緒に居た俺よりあいつの方がいいと?」

「そうよ。だから私にもう関わらないで」

「そんなつれないこと言うなよ。またロシアの時みたいに仲良くさ…………」

 

 

 

 

「もう私に近付かないで!貴方の事は嫌いって言ったはずよ!」

 

 

 

我慢できなくなり匠に怒鳴りつけた。気持ちが悪い、嫌い、顔も見たくない、会いたくない、近くに居て欲しくない。心の中から不快感しか出てこない。もう、あんな思いはしたくない。好きだと思っていた人が『こんな人』だったと思うことが。やっと私を心から好きだと言ってくれた隆也(ヒト)が現れたのに……。

 

 

 

 

 

 

「それが……絵里の本音か?」

「そうよ…お願いだから目の前から消えて」

「………はぁ」

 

匠の口から大きな溜息が出た。その溜息をつきたいのは私のほうだというのに。

 

 

「わかった。けど俺は諦めないからな。『どんな手を使っても』君を手に入れる」 

「早くどこかへ行ってくれないかしら?」

「ふふっ。強気な絵里もいいな。じゃまたね」

 

それだけを言い残して匠は教室を早歩きで出て行った。

やっと緊迫した空気から開放されそのまま椅子に座り込んで頭を抱えた。

 

 

「どうやら終わった感じだな」

「隆也……」

隆也を見ると横に居た煉君が居なくなっていた。私と隆也を2人にさせるために気を使ってくれたのだろう。また後でお礼を言わないと……。

 

「途中からしか聞こえなかったけど、いつもの絵里じゃなかったな」

「私…いつもより感情的になっちゃったかしら……?」

「完全にな。音ノ木坂以来じゃないのか?」

「そう…ね…。素直になれなくて意地を張ってて色々なモノを拒絶してきたあの頃に戻ったみたい………」

「まぁ…いまは大学だから詳しい話を聞かないけど、どうする?」

「ねえ隆也…」

「ん?どうし……おっと」

 

 

 

顔を上げた絵里が俺に抱きついてくる。いつもなら恥ずかしがってしてこないが今はそれどころじゃない。顔を擦り付けていつもより腕に力を入れて抱きついてくる。

 

 

 

「今日、夜時間あるかしら……?」

「あるぞ」

「匠について、話しがしたいの」

「………分かった」

「ありがとう…悪いけど今日はもう家に帰るわ。少し気分が優れないから」

「その方がよさそうだな。家まで送ろうか?」

「いえ、大丈夫…今日は希と会う約束もあるから……」

「あいよ。希によくしてもらえ」

「今はそうしておくわ……ふぅ…」

「そうとうなダメージだな。じゃ、気をつけてな」

「えぇ、また今夜」

 

 

絵里は軽く俺に手を振り教室を出て行った。そして教室内は俺1人になり椅子に深く腰を下ろす。

 

 

「めんどくさい事になっちまったなぁ……」

 

 

まさか絵里の元彼がここまでの奴だとは思ってもいなかった。青山が俺に向けてきた鋭い目付き、完全に殺意籠もってた。まあ自分の好きな人が別の男と付き合ってるなんて見たらそりゃ怒るのもわからなくもないが、異常すぎる。表面は優しい男を演じてるけど裏面が黒すぎる。この2週間なんとかして過ごすしか今は無さそうだ。

 

 

 

 

 

 

「…………………痛み止め貰わないと」

 

 

 

 

 

 

 

 

病院行かないとな。

 

 

 

 

 

***

 

―夜―

 

 

 

「まぁ、そういう事があったわけだ」

『なんかまたトラブルが起こってるみたいだな。な?トラブルメーカー』

「叩いて被ってじゃんけんポンしててんぷらにして食うぞコラあぁん?」

『こいつもこいつでどんどん口が悪くなってる……』

 

絵里の家に向かっているついでに電話を掛けた。一人でグチャグチャ考えるより誰かに話でも聞いてもらったほうが良いと考え同じく東京にいる中上翔輝に連絡を取った。

 

 

『けど、別にこれぞってぐらいに迷惑を掛けに来てはないんだろ?大丈夫だと思うけど』

「それで終われば1番楽だけど青山の言葉が妙にひっかかる」

『どんな手を使ってもって言葉か?』

「霧生の時と同じ匂いがする」

『……多分その予想は外れては居ないと思う』

「まあ可能性は低いけどな」

『……やれやれ、出来る限り無理はするなよ?俺も海未も力は貸すからさ』

「ありがとな。お。絵里の家の前に着いたから電話切るな」

『了解。くれぐれも無理はしないように』

「くれぐれの処を強調してくるな」

『またな』

 

スマホをポケットに入れ絵里の扉の前に立つ。少し深呼吸をしてインターホンを鳴らす。するとすぐにその扉は開かれた。

 

 

「あ!隆也さん待ってました!」

「よう。久しぶりだな亜里沙」

「お久しぶりです!兵庫県ではお姉ちゃんがお世話になりました」

「いやいや、あっちでは俺の方がお世話になったぐらいだ。感謝してるよ」

「えへへっ。そう言ってもらえたら嬉しいです!」

 

天使としてのレベルが着々と上がってきている亜里沙。良きかな。

 

 

「2人とも!扉の前で話してないで早く入ってきなさい!」

『はーい』

 

絵里は立派なお姉さんである。

 

 

 

 

 

 

 

 

椅子に座り、俺の前に絵里と亜里沙が隣同士で座る。俺の分も入れてくれた紅茶を一口飲み絵里は軽く溜息をついた。

 

 

 

 

「家に戻って少しは楽になったか?」

「だいぶね。希に介抱してもらったから尚更ね」

「希にも今から俺に話すことは教えたのか?」

「えぇ…。怒られたけどね。なんで私に教えてくれなかったの!って……」

「そうだろうな。3年も一緒に居たのに隠されてたからな。希のこと大事にしろよ」

「勿論よ。今度焼肉でも一緒にたべにいってくるわ」

「それがいいな」

 

俺も一口紅茶を飲み込む。香りが鼻孔を刺激し気分が良くなっていき体を温めてくる。

 

 

 

 

 

「じゃ、青山の事について教えてもらうえるか?」

「そうね…。匠と会ったのは4年前のロシアよ」

「その頃私は小学生6年生でお姉ちゃんは中学3年生でした」

「日本に来る前になるのか。出会いのきっかけは?」

「ごく普通よ。同じクラスで仲良くなって付き合ったっていう流れよ」

「特別な理由とかなにかがきっかけとかではないんだな」

「そう。とても楽しかったわ。いつでも私を楽しませてくれて、側にずっといてくれたのよ」

「ほぉ…聞いた感じでは完璧な彼氏だな」

「私もロシアで何回も会った事があります。優しくてずっと私やお姉ちゃんに気を使ってくれました!」

「最高だねそんな男は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「けど…それが全部…全部が嘘で偽りで最低で最悪な『演技』だったのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「演技……だと?」

 

 

 

「隆也、貴方は私を自分の男としてのランクを見せびらかすために私を利用したりする?」

「あ?何言ってんだよ。どうゆうことだよ」

「いつの日か忘れたけど、私に付きまとう別の男が居たのよ。そこで匠はその男をやっつけてくれたの」

「ほう」

「けど、その日の放課後に廊下を歩いてたときなんだけど、匠が別の男たちと話し声が聞こえてきたの。趣味が悪いけど聞き耳を立てたのよ」

「そしたら?」

 

 

 

『絢瀬絵里?あいつなんか全然興味ねえよ。あいつを俺の横に置いてたらどいつもこいつも羨ましがって俺の事褒め称えるんだよ。女なんかちょっと優しくしてやればコロッと落ちちまう。面白かったぜ。ニコニコしながら頭なんか撫でてやるとすぐに大好きだって言ってきやがる。『暇つぶし』には最高だったぜ!ははははっ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………へぇ。なるほど」

「その後私はどうなってたか覚えてない。うっすら覚えてるのはその次の日に匠に別れるって話をして、家でおもいっきり泣いて……それで…それで…うっ…ぐすっ…ひぐっ……」

「絵里、もういい」

「大好きだった人に裏切られて…利用されて…なのに今でも私を自分の女だって言ってくる……」

「大丈夫だ。今はあいつは居ない」

 

 

絵里は自分の服をぎゅっと握り締めその綺麗な碧眼からどんどん大粒の涙がこぼれる。その口はギリギリと噛み締めて怒りを露にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なのに貴方は!!どれだけ私を苦しめれば気が済むのよ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は……今まで聞いた事がないぐらいの絵里の心の叫びを聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の事だ。

絵里は疲れてそのまま自分のベットに横になり泥のように眠った。亜里沙は絵里の頭を抱きしめながら一緒に寄り添って寝てくれている。今絵里を1人にしたらダメだという事が長年の勘で分かった。

今日でかなりのストレスとトラウマが出てきたのだろう。絵里の精神が完全にやられている。絵里の今の気持ちが痛いほど分かった。好きな人に裏切られ利用される。これほど心に傷を負わせるほどのモノがあるだろうか。人それぞれ違う考えや価値観、概念などはあると思う。

 

 

(だけどよぉ……)

 

 

 

 

 

 

 

「それが人を・・・ましてや絵里のことを傷つけていい理由にはならないよな?青山匠」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これ以上手出しさせてたまるか。

 

 

 

 

 

 




どうも皆さん。完ッ全なゲス野郎が出来てしまった。一体どこを間違えてこうなってしまったのだろうか…。自分が聞きたいぐらいです←(ダメじゃねえか)



そして今回新しく評価してくださった!
狩る雄さん!GON@絵里推しさん!jishakuさん!霧エヴァンさん!
ありがとうございました!



これからまたシリアス且つ黒ーい展開が続いていきますのでよろしくお願いします!


それでは今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!



では……またな!


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全てが繋がった

なぜこうなった…(-_-)


 

結論から言ってあれから特に変わった事は無かった。

 

 

 

 

 

青山から絵里に対する接触も無い。こちらからしたら何もない事に越した事はないのだが、俺はどうにも何かが引っかかって仕方が無かった。あんなに絵里に執着していたのにも関わらずふと次の日になったらまるで別人になったかのように大学での日常を過ごしている。長い時間待ちに待った獲物が来たのにもかかわらず殺さず退散するスナイパーみたいだ。

 

 

ついでに絵里はあの次の日には色々なものが吐き出されたか顔色がかなり良くなっていた。少し目の下の隈が目立っていたがその日は化粧で隠したが、またその次の日には隈も綺麗に消えていていつもの絢瀬絵里になっていた。

 

 

「絵里、もう大丈夫か?」

「えぇ。凄く心配掛けたわよね隆也……ごめんなさい」

「俺は大丈夫だ。そんな弱々しくしないでもっと気合いれろ」

「むっ…彼女にそれはひどいくない?」

「俺は強きな絵里も好きなものでね」

「っ!」

絵里の顔が耳まで真っ赤になる。

「ほら、行こうぜ」

「隆也のバカあああ!!」

 

何日ぶりかに絵里に襲われた(物理的)俺は全速力で逃げたのを覚えている。

 

ロシアにケンカ売ると殺されかけるんだな……。何時もの事だけど。

 

 

 

***

 

 

 

 

 

青山がこの大学に来て1週間程が過ぎた。後数日すれば青山は自分の大学に帰る。それはそれでいいのだが、あいつがあの接触だけで満足しているとは俺は思っていない。出来る事ならあいつを警察送りにしてやりたいが元カレでそこまで付きまとってないけど近付いてくることだけでは犯罪にはならない。絵里をあそこまで追い詰めた事は俺は許さない。

どうにかして合法的にあいつを一発でもいいからぶん殴ってやりたい。

 

 

 

 

だけどこの時の俺は完全に考えが甘かったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あいつがあんな事をするとは一切考えていなかったのだから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「青山を見た?」

「はい。音ノ木坂の校門の近くで何かを探しているみたいにキョロキョロしていました」

 

大学が終わった頃、メールで穂乃果から『伝えたい事があります』との連絡を貰い急いで向かった。アイドル研究部の部室に入ると穂乃果とことりが椅子に座って俺の事を待っていた。

穂乃果の伝えたい事をまとめると、ダンスの練習を終え全員で帰ろうとしていた時校門の近くで青山らしき人物が居たとの事。キョロキョロした後穂乃果達と一瞬目が合うと踵返してその場を離れたとの事。たまたまそこには翔輝の姿もあったからか目が合ったのが不味かったのかどちらかは分からないが姿を消した。それ以降青山を見ることはなかったが一応俺に直接伝えた方がいいと判断したとのこと。

 

 

「お前ら何も声を掛けられたりはしなかったか?」

「それは大丈夫なんですけどなんだか不気味で」

「何かを探している感じでした」

「何かを……探す……?」

 

 

もしそうだとしたら一体何を探していたんだあいつは。絵里の友達であるこいつらをか。だけど目が合って帰ったんならその可能性は薄い。じゃあ他には?音ノ木坂の場所を知るため?絵里がここを通るかもしれないと見越したからか。だけど残念な事に絵里は家に帰るときにそこは通らない。あいつの予想はハズレだ。

 

 

 

「隆也さん。絵里ちゃんは今大丈夫なんですか?」

「大学では特に何も無い。あいつが近付く事も一切ない」

「よかったぁ~…。霧生って人の時みたいに絵里ちゃんが危ない目に合ってないか心配で心配で……」

「けど隆也さんが居てくれて安心です!」

「ははっ……」

 

(正直、俺も気が気でならないんだよな。霧生の時とは訳が違う)

 

 

 

 

 

 

 

「あの…隆也さん」

「ん?」

 

 

 

 

 

 

「やっぱり……私達ではお役に立てないでしょうか?」

 

 

 

 

 

「………は?」

「ほ、穂乃果ちゃん…」

 

穂乃果の問いには流石に度肝を抜かれた。一言も役に立つ立たないの話はしていないのにだ。

 

 

「雰囲気で分かります。隆也先輩が1人でどうにかしようとしているのが」

「……その通りだって言ったら何かが変わるのか?」

「いえ、変わりません…。けど私達も少しは何か役に立ちたいんです」

「その言葉はお前自身の独断での言葉か?それともお前達全員の言葉か?」

「私達、全員の言葉です」

「ことり・・・そうなのか?」

「…はい、そうです。穂乃果ちゃんや私、海未ちゃん、凛ちゃん、真姫ちゃん、花陽ちゃん、後、穂乃果ちゃんの妹の雪穂ちゃん、絵里ちゃんの妹の亜里沙ちゃん全員の言葉です」

「君たちの気持ちは分かる。大事な仲間であり先輩である絵里の事を心の底から心配している事が」

「だったら!」

 

 

 

「だが」

 

穂乃果の言葉を遮る。

 

 

 

「無理な事をすれば足元を掬われる。ただでさえ君たちは高校生な上にか弱い女の子だ。俺や翔輝のように柔道をしているわけでもなく男1人投げ飛ばせる事が出来る怪力を持っているわけでもない。あいつの目的は絵里をどうにかして付き合っていた頃のように絵里を自分の身近に置くことなはずだ。俺は手を出されたら戦う事が出来る。けど君たちはどうだ?もしこの件に関わったとして危ない目に合うのは目に見えてわかるはずだ」

「分かってます…分かっています!けど私達にとっての大事な人が危険な目に合ってるのにあたし達我慢できません!」

「そうです!絵里ちゃんは私達μ'sの一員であり私達のおねえさんでもあり!なにより大好きな人なんです!絵里ちゃんが苦しい目にあってるのを見るのは耐えられません!少しでも良いから絵里ちゃんを助けてあげたいんです!」

 

 

2人のこの言葉は強い力が籠もってある。大事だから、大切だから、大好きだから。あれだけ長い時間を過ごした仲でもある絵里が傷ついたり苦しんだりしたらキツいのは俺だけではない。この女神たちも自分の心に深い、とても深い傷を負う。ならどうする?答えはシンプル…『助ける』になる。だが俺はそれを許さない。この女神達をこの件に首を突っ込むとどうなった結末になるかは俺にも予想は出来ない。

 

 

 

そう、予想出来ないから俺は怖いのだ。

 

 

もし穂乃果達が危ない目にあったらどうなる?それで誰かが傷ついたらどうなる?またまた女神たちの心が傷つく。以下無限ループになる可能性も低くない。ちょっとしたことがどんな事への鍵になるかも分からない。

 

 

 

そしてなにより……。

 

 

 

 

 

「もしこの件に関わって危ない目にあって、全てが解決したとして絵里はどうなる?あいつは自分が傷つくより大事なダチが危ない目にあって欲しくないと願う奴だ。そしたら1番責任を感じるのは誰だ?危ない目にあいながら君たちが絵里を救っても絵里がそれを素直に喜ぶと思うのか?」

 

 

 

「「っ……」」

 

 

2人が口ごもる。痛いところを突かれたからか次の反論の言葉が出ない。

 

 

 

「なら・・・」

 

 

だが、すぐさま穂乃果が口を開いた。

 

 

 

「隆也さんが傷つくことを絵里ちゃんが許すんですか?」

「…………」

「大事な人が傷つくのを見たくない。なら隆也さんも同じはずです。なにより隆也さんは絵里ちゃんの恋人さんです。一度絵里ちゃんは隆也さんが傷ついたところを間近に見ています。もう二度とあんな目にあって欲しくないって言ってました。なら、せめてその重荷を私達にも分けてください!隆也さんが絵里ちゃんを助けるために貴方が1人で傷ついたり重荷を全て背負う必要なんて無いじゃないですか!!」

 

穂乃果とことりの瞳に涙が浮んでいる。決死での言葉だったんだろう。それに穂乃果の言葉は正論だ。大事な人を巻きこみたくないならその中には勿論俺も入っている。それを絵里が許すか。否、許すわけない。だったらどうする?いっその事全員でその重荷を背負おうじゃないか。穂乃果は優しいから手助けしたいのだ。他人が傷つくのが嫌いなのだ。ことりもそうだ。μ'sの一員で、音ノ木坂の先輩で、大事で大好きな人だから。助けたい、救いたいのだ。この2人に関わらずμ's全員も同じ気持ちだ。

 

 

 

 

「「隆也さん……」」

 

 

2人が俺を見つめる。俺の答えを求めている。俺の答えなんて……とっくに決まっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はヒーローなんかじゃない」

 

 

 

 

 

 

 

「「え……?」」

 

 

 

 

 

「俺は全部を救えるわけじゃない。手の届く場所しか救うことが出来ない。救うとなったら地を這ってでもやってやる。俺にはスーパーマンのような力は無い。一撃で敵を倒せるような能力も無い。全てをハッピーエンドに終わらせる事も出来ない。俺の体は人を助けるためにある。それも大事な奴なら尚更だ。誰かを助けるのには誰かが汚れ役を買わなきゃいけないんだよ。今まで何度も何度もあったんだ。他人を助ける時も、後輩を救うときも、絵里を救うときも。結局は汚れ役を誰かがなるしかないんだ。誰も傷つかずに全てが綺麗に収まって欲しいなんて傲慢なんだ。ならその役を誰が担う?そう…俺だ」

 

 

 

 

「汚れ役は俺がうってつけなんだ」

 

 

 

 

 

「けど、それだと隆也さんが可哀想ですよ…」

「誰かを救うことが隆也さんが傷ついて良い理由にはならないですよ……」

 

 

 

 

「俺を犠牲にする事で救えるモノがあるんだ。安いもんじゃねえか」

 

 

誰かを犠牲にしなければならないのなら俺がその犠牲になろう。

 

 

 

 

 

 

「なら…約束してください隆也さん」

「ん?」

 

穂乃果とことりが零れる涙を袖で拭い俺の手を握ってくる。

 

 

 

 

『絶対に……絵里ちゃんを助けてくださいね』

 

 

 

それが少女達の願いなのであれば……。

 

 

 

 

「まかせろ」

 

 

 

こう答えるしかないだろ。

 

 

 

 

 

 

どれだけ倒れても立ち上がろう。どれだけ転がろうとも這い上がろう。どれだけ傷ついても舞い戻ろう。それが俺が出来る唯一できることだ。

 

 

 

 

 

絵里は俺が守る。絶対に。

 

 

 

 

 

そう心に決めた時――――。

 

 

 

ピリリリリ

 

 

 

 

俺のスマホの着信音が鳴った。

 

 

 

 

 

『絢瀬亜里沙』

 

 

 

絵里の妹からだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はスマホを手に取り着信にタッチする。ついでに穂乃果とことりに聞こえるように音量を上げスピーカーに切り替えた。

 

 

『あ、隆也さん!今大丈夫ですか?』

「よう亜里沙。大丈夫だどうした?」

『今どこにいますか?』

「今、穂乃果とことりと一緒に音ノ木坂にいるぞ」

『本当ですか!だったら都合がいいです!』

「都合が良い?」

「亜里沙ちゃんどうしたの?」

『あ!ことりさん!お疲れ様です!少し皆さんに聞きたい事があるんですが…』

俺たち3人は首をかしげる。

 

 

 

 

『お姉ちゃんどこにいるか知りませんか?』

 

 

 

 

 

 

「え?」

「絵里ちゃん今家に居ないの?」

『はい。1時間前に家を出たっきり帰ってこないんです』

「買い物じゃないのか?」

『いつも買い物なら私と一緒に行きますし、1人で出かけてたとしてもいつも1時間は絶対にかからないんです』

「んー…大学では一緒に出て別れたから俺は分からないな」

「私もことりちゃんも分からないです」

「うん…」

『電話掛けてるんですが全然出なくて、私心配で』

「そうか…。じゃあ俺も今から学校を出て探すわ」

『ありがとうございます!』

「じゃ、電話切るなー」

 

そうしてスマホをタップしようとした瞬間、亜里沙の口から意味深な言葉が出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お姉ちゃん……なんで家出る時、『神』だの『上』だの言ってたんだろ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、亜里沙。今なんていった?」

『え?『神』だの『上』だのって言ったんですが…』

「なんだそりゃ」

『えっと、順を追って説明しますと、お姉ちゃんが家に帰ってきて台所で晩御飯作ってる時に誰かからメールが来たんですよ。それ見たお姉ちゃん凄い怖い顔してて、机にペンと紙を広げて……なんだろう…?タンゴ?いや…カンジを一杯書いてたんですよ』

「タンゴ…?あぁ単語か。んでカンジは漢字な」

「亜里沙ちゃん。紙に絵里ちゃんは何て書いてあったの?」

『えっと…私が分からない漢字があて読めないんです。だから写真送りますね!』

「おう」

 

そして数秒後、亜里沙から1枚の写真が送られてきた。その写真には大きな紙に7個の漢字が書かれていた。

 

 

 

そこには。

 

 

 

 

『神』『上』『石』『段』『枝垂桜』『総鎮守』『大己貴命』

 

 

「えっと…かみ、うえ、いし、だん、…なんとかさくら!」

「穂乃果ちゃん。これはしだれざくらって読むんだよ」

「え!そうなの!?」

「まあ中々見ない感じだな。あとはそうちんじゅ、これは…なんだっけ…?見たことある漢字なんだけど・・」

「これは私も分からないです」

「穂乃果も分からないよ~!」

 

「大…読み方あだいでいいのか?いや最後に命がついてるから多分誰かの名前だ。ヤマトタケルノミコトも確か最後に命が着いてたはずだ…」

 

3人全員腕を組みうんうん唸るとことりがポンッと手を叩いた。

 

「あ!思い出した!確か海未ちゃんが読んでた本にこれが書いてた!たしか『おおなむちのみこと』って言います!」

「その名前って確か縁結びの神の名前じゃねえの?」

「おお!ことりちゃん天才!」

『凄いですことりさん!』

 

 

読み方が分かったから良いが、けどこの漢字はなんだ?どれもこれも関係性が無さ過ぎる。これは連想ゲームかなにかか?連想するにもどれもこれも当てはまる何かがないぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきスマホで調べたんだけどこの『大己貴命』?って言う人神社で良く見たことあるよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果の言葉に俺の頭に電流が走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「穂乃果!?どこでこの神様を見た!」

「ぅえ!?えっと…家族で出かけたときに通りかかった神社でよくこの仏像見たことあります…」

「あとは!!」

「後は、あ!家にその仏像の置物があります!」

「置物……」

 

 

頭の中で1つ1つ整理していく。まず『大己貴命』は神社に祀られる神様の名前。んで『総鎮守』は歴史か何かで出たことがある。確か『江戸総鎮守』なはずだ。そしてこの簡単な漢字達、『神』『上』『石』『段』。『神』はまだ分からないから後まわし。石…段…いし…だん…?あれ?

 

「いし…?段の読み方がだん、だよな…。いし…だん…。だん…いし…。石段…石段石段……上に?…石段…登る?んだよな…登る石段………はっ!!!」

 

「そうだ石階段だ!」

『石階段?』

「少しずつ分かってきた…。これは石階段の事を指してる。んで『上』多分これは上に上れってこと!石階段で上に上がれ…。んで『神』が上に待っている…。神…神…っ!!」

 

瞬間、俺、穂乃果、ことり、亜里沙が全員声をそろえて叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『神田明神!!!』

 

 

 

 

 

 

「亜里沙ちゃん!多分絵里ちゃんは神田明神に居るよ!」

『かもしれないです!けど…この『枝垂桜』と『大己貴命』はなんなんでしょう?』

「多分神田明神にあるモノだ。『枝垂桜』と『大己貴命』は二つとも神田明神にある!」

「4月に神田明神で綺麗な桜が咲いてました!」

「恐らくそれが枝垂桜です!」

「穂乃果が言ってた神社で見たことあるっていうのは神田明神の事も入ってるはずだ。今、江戸総鎮守を検索したら1番上の項目に出てきた」

「おぉ~!なんだか穂乃果たち探偵みたい!」

「凄い今頭のモヤモヤがすっきりしたよ~!」

 

 

 

 

(モヤモヤはすっきりしたっちゃしたんだが何かが頭に引っかかってる…。そもそもなんで絵里はこの漢字を見て家を出たんだ?この漢字の関係しての到達点が神田明神なのは分かった。けど神田明神だったからって家を出るのはなんでだ……。行く理由は見た感じ皆無なのに)

 

 

 

 

もう一度写真を見て、見落としが無いか確認する。

 

案の定、見落としている部分が1つだけあった。その紙の一番端にロシア語で一文書かれてあった。

 

 

 

『Знаете ли вы смысл этого?』

 

 

「なあ亜里沙。このロシア語…か?日本語で何て言うんだ?」

『え?あ…これ見てませんでした!ちょっと待ってくださいね』

 

数秒後、亜里沙がこのロシア語の意味を教えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これの意味が分かるか?』ですね。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉で俺の頭の中にあるパズルのピースが全て揃った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「穂乃果、ことり。お前ら今すぐに家に帰るんだ」

「え?急にどうしたんですか?」

「いいから早く帰るんだ。念のために翔輝を迎えに来させる。絶対に寄り道せずに帰るんだ!良いな!!」

『翔輝さん!?』

 

 

 

 

俺はそのまま部室を飛び出し、音ノ木坂を飛び出しバイクに跨った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで俺はこの事に気が回らなかったんだ…なんでこの事を考えなかったんだ!!」

 

 

 

 

全てが繋がった。あの漢字の意味も、絵里が飛び出したのも、あのロシア語の意味も。そして青山が言っていた『どんな手を使っても』の言葉の意味も。音ノ木坂に近付いて何かを探していたのかと思わせたことも!

 

 

絵里のあのメール、紙に書いてあった漢字を送ったのは紛れも無くあいつ、青山匠だ。

 

 

あの漢字の関連している事が神田明神だという事に今まで引っかかっていた事がやっと理解できた。更に裏があった。ロシア語の一文で決定づけれた。『その神田明神に関わる事だったんだ』。神田明神と絵里に関係するのは他でも無いμ'sだ。音ノ木坂に近付いたのは元μ'sメンバーである穂乃果たちを確認するため。それで穂乃果たちと目が合って退散したのはその場に翔輝がいたからじゃない。『目当て』がいなかったんだ。どおりでおかしいと思った。あの絵里との一件から何もしてなかったのは『これ』すべてを準備する為の時間だったんだ。あいつの言っていた言葉、『どんな手を使っても』はこの手段を使うからという予告や脅迫でもあった。なんで他の事に気を配れなかったんだ俺は……。もっと周りを見ていればこの状況にならずに済んだというのに!!

 

 

 

 

あいつの目的は、絵里を誘い出す事。そしてそれを俺に伝えたら俺が危ない目に合うと思って絵里は1人で家を出たんだ…。誰にも伝える事ができない、だから絵里は1人で向かったんだ神田明神に。あのロシア語の一文で絵里の中でも全てがつながったんだ。

 

 

 

 

「青山匠……あのクズ野郎がぁ!!」

 

 

 

 

 

俺はバイクのギアを次々にチェンジしていきスピードを上げていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつの目的は…………人質を取るため………その人質が…」

 

 

 

 

 

 

くそったれが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「東條希だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌な予感が体を過ぎ通っていく。嫌な汗が体を伝って降りていく。怒りが収まらない。

 

 

 

バイクを止め、神社に続く階段を登る。一段一段足で踏みしめる度に体が重くなっていく。

 

 

緊張とかそんな類のもんじゃない。プレッシャーに近いものだ。更には心臓の鼓動がどんどん早くなっていく。

 

 

「くそっ!」

 

 

 

階段を登り終え鳥居をくぐった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう、待ってたぜ絵里の彼氏さん」

 

 

 

 

 

 

そこには数人の男たちと一緒にいる青山。そして男たちの内の1人が巫女服姿の希の両腕を拘束して身動きが取れないようにしている。

 

そこに俺の怒りを逆撫でするかのように見せ付けているのがあった。

 

青山の腕の中で嫌々抱きしめられている絵里の姿があった。

 

 

 

 

 

 

「隆也……」

「隆也くん………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんばんわ。絵里のヒーローさん」

 

 

 

 

 

 

 

青山のその言葉が耳に入った瞬間、俺の中で何かが『プッツン』と切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コンバンワ……随分舐めとることしてくとるなあ青山匠さんよぉ」

 

 

 

 

 

 

無意識に関西弁になるぐらいキレてるのがよく分かった。

 

 

 

 

 




なんだか後半部分へたくそな探偵じみた事になってしまった。どうも優しい傭兵です。
そろそろクライマックスになってきました。これからどうやって繋げようか悩んでおります。むむ…まあなんとかなるでしょう!(考えるのをやめた)


そして今回新しく評価してくださった!
咲夜@雪桜さん!ヴァナルガントさん!馬鹿野郎さん!腹黒めがねさん!絢瀬絵里推しサバゲーマーさん!ピポサルさん!賢い可愛いエリーチカさん!とーかさん!

ありがとうございました!




さてさてそろそろ隆也の堪忍袋にも限界がきました。次回にはあの方々に頑張っていただきましょう。誰かって?ご想像にお任せします!



それでは今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!


では……またな!


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男ならどんな時も強くあれ・・・。

キズイタラコウナッテイマシタ


嫌な気分だ。

 

翔輝や芝多といる絵里を見てると男らしくないかもしれないがヤキモチをやいていた。他の男と居るのはできるかぎり避けてほしいと思っている。勿論、多少は我慢する。

 

 

 

 

 

だけど、今の状況なら話は別だ。

 

 

 

 

「青山、まず絵里を離してもらっていいか?」

「離さないって言ったらどうするの?」

 

 

 

「できれば俺を怒らせないで欲しいんだが」

 

 

無意識にドスの効いた声が出てしまった。回りの男たちは多少ビビっていたが青山は全然堪えていない。むしろニヤリと笑い俺をあざ笑ってくる。

 

 

 

「悪いけど絵里を離すことはできない。絵里は俺のモノだから」

「いやっ…離して!」

「隆也くん!エリチを!」

 

青山はさっきより絵里を強く抱きしめる。そんな事をされた絵里は涙目になりながらその腕を解こうと必死に踠がそれも敵わず。希も絵里の方へ向かうが男に捕まる。

 

 

「っ!」

 

さすがに我慢が出来なくなり早足で近付く。だけどそれを阻止しようと1人の男が俺の前に立ちふさがる。

 

 

「おい、それ以上青山さんに近付くんじゃねえよ」

 

俺の頭1つ分体が大きい男が俺の胸倉を掴んできた。左手で俺の胸倉を掴み右手で俺の顔面に目掛けて殴りかかろうとしてくる。

 

 

 

「ふっ!」

 

 

 

俺はすぐさま左腕の袖を右手で掴み、男の襟を左手で掴む。そして右手で男の左腕を外側から内側に押し込み左手で掴んでいる襟を使い逆に外側に崩す。そうすると男は俺から見て右側に体の上半身が傾く。

その一瞬の不安定になったバランスを利用し、右足で男の前に出ている左足を払った。

 

 

柔道技【出足払い】

 

 

 

「ぐわっ!?」

 

柔道の素人には受身が出来ないのは当たり前である。そのまま男は鈍い音を立てながら地面に倒れた。

 

 

 

「ヒュー。さすがだね隆也くん」

「やめろ。気分が悪くなる」

「やれやれ…相当嫌われてるようだね俺は」

「最初から分かりきってたことだろうが」

 

 

 

(とっさだったから仕方ないがやらかした。右足を使ったおかげで凄くイテェ…)

 

 

技を使ったから俺の右足がズキズキと痛む。出来る限り青山に気付かれないように痛む足を庇いながらゆっくりと近付く。

 

 

 

「横山隆也。柔道で2段。関西の兵庫県出身。大会で幾度となく勝っており実力は本物。素早い動きによる技のキレに注目が寄せられている」

「……よく知ってるやんけ。もう随分前から柔道の大会には出てないけどな」

「出てないじゃなくて【出れない】の間違いじゃないの?」

「……なんの事か俺にはわからんなあ」

「まあいいよ。どうでも良い話しだし」

 

腕の中にいた絵里を別の男に渡し少し前に出た。

 

 

 

 

「なんでここが分かった?」

「お前がご丁寧に絵里に渡した漢字をみたんだよ。その全ての漢字の関連する事がここだと分かったんだよ。おそらく絵里もだ」

「じゃあ問題です。なんで絵里のほかに東條希がいるのでしょうか?」

「最初は穂乃果たちを目的として音ノ木坂に近付いんやと考えたけど全然ちゃうかった。それは希がどこかにいるのかを知るため。そして神田明神に1番出入りしているのも希。あの子らの中で絵里に1番近い存在は誰でもない希や。これらの答えを出してお前の目的が希だという事が分かった。」

「へぇ?頭は悪くはないんだな?」

「大学の試験では頭悪いがこういった事は得意なんよな俺は」

「褒めてやるよヒーローさん」

「反吐がでるわ」

 

 

 

くだらない話に俺は軽く溜息を吐いた。

 

 

 

 

「めんどくさいわ。さっさと絵里離さんかい」

「それはできない。今から僕の家に連れて行くから。ずっと絵里と一緒にいるんだ俺たちは。ロシアの時のように」

「そんなもん絵里は望んどらんわ。あんな泣き顔見てもわからんのか己は」

「好きなものを手に入れるためにどんな手も使う。それが絵里にとって不快な事でもな」

「お前、頭イカれとんのか?病気ちゃうんか?」

「なんとでも言えばいい。ちなみに東條希も連れて行く。2人まとめてな」

「あ?」

 

 

 

「この2人は俺のモノだ……俺の『オモチャ』だ」

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間、プッツンと何かが切れた。

 

 

 

 

 

 

俺は青山の腕を掴みこちら側に引き寄せ手を青山の腰に巻かれてあるベルトに手を伸ばした。

 

 

伸ばしたはずだった。

 

 

 

 

 

 

だけど次の瞬間、俺の視界は一回転し気付いたら仰向けに地べたに寝転がっていた。

 

 

 

 

「………は?」

 

 

「隆也!」

「隆也くん!」

 

 

 

 

訳が分からなくなった。確かに俺は青山の腕を掴んだ。そのまま技に持ち込もうとしたはずだった。なのになんでだ?なんで俺が仰向けになっていたんだ?

 

 

 

「なにが……?」

「君は柔道が得意。そして?俺は何が得意でしょうか?」

「・・・合気道か」

 

今の一瞬の時間で俺は自分の動きを返され投げ飛ばされていた。

そして立ち上がろうとした瞬間、

「そして……」

「あ……………?」

 

 

 

頬に衝撃が走った。

 

 

「ごはっ!」

「喧嘩が得意なんだなこれが」

 

 

殴り飛ばされた俺は地面をゴロゴロと転がる羽目になる。殴られた直後に口の中が切れて口の端から血を流していた。

 

 

「いやあ!隆也ぁ!」

「おら動くんじゃねえ!」

「離して!隆也くんが!」

「じっとしてろ!」

 

「あーららお嬢さん方が暴れてますねぇ。どうする隆也くん?続ける?それともやめる?」

「…………ぺっ」

 

口の中の血を吐き出す。後でちゃんと拭いとかなとな…。

 

 

 

「舐めんなボケが!」

「こいよ」

 

せめて一発。一発だけ当たればいい。そうしたら奴のバランスが崩れて俺の技を使えることができる。

だが、そう簡単にはいかなかった。動きが読まれているのか俺の殴りや蹴りは当たるどころか触れる事すら出来なかった。更には俺の攻撃を軽くあしらわれ地面に何度もひれ伏してしまう。合気道は相手の呼吸を合わせて相手の動きを逆に利用する武術。今の俺は完全に奴のペースに乗ってしまっている。このまま続けば俺は格好の餌食だ。

 

 

「ぶっ!」

「ほら、さっさと地べたで寝てろ!」

「がっ!?」

 

 

それからと言うもの、俺はあいつのサンドバックになっていた。顔面を殴られ腹を殴られ、気がついたらまた合気道で投げ飛ばされる。殴り飛ばされたら顔面を踏みつけられ蹴り飛ばされる。完全なリンチだ

 

「もうやめて!!匠!!」

 

絵里の叫びが神社に響く。だがその言葉は青山には届かない。

 

「おらっ!」

「がふっ!?」

「ふんっ!」

「ごほっ……!」

「だあ!」

「げはっ!!」

 

何発殴られたのか分からない。10を数えた辺りから意識が朦朧としてきた。痛みが蓄積されたからかはたまた殴られている時に頭をやられたか。

 

「ごふっ…絵里……大丈夫…だ」

「隆也!もういいの!私のためにここまでしないで!このままじゃ貴方が壊れちゃう!」

 

頬は腫れ上がり、処どころから血が流れている。足はガクガクと震え力が入らない。その上膝が笑っている。目も虚ろになってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあどうする絵里。ここで誓ってもらおうか。こいつとは別れて、俺についてくるという誓いを!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

「やめろ絵里!」

「エリチ!」

 

 

 

「そうしないと、隆也くんがこれ以上にボコボコにされてどこかの骨が折れることになるけど…?」

「そ…それは……」

「決めるのは君だ」

「絵里……冷静になれ…」

「エリチ!そんなことしたらあかんよ!」

「絵~里?」

「絵里!」

「エリチ!」

 

 

絵里は目元に浮んでいる涙を袖で拭い、両手を握り締める。

 

 

 

「匠」

「ん?」

 

 

 

「分かった」

 

 

『!?』

 

 

 

「隆也と別れる。ずっと貴方についていく…。だからもう隆也には手を出さないで」

「ほう…」

「お前……何言って……」

「聞いたかい隆也くん!絵里が自分の口から言ったよ。俺についてくるって!」

 

 

 

「もう…やめて…お願い…」

「絵里………」

「そうだね。これ以上していたら後味の悪いものが俺の中に残る。これくらいにしておこう」

 

 

 

青山が俺から少し距離を取る。

 

 

 

 

 

 

「絵里…お前…」

「ごめんなさい……けど、こうするしかないのよ。貴方がこれ以上傷つくのを見てられない…」

「なんで…俺が勝つって信じてくれないんだ…」

「無理よ。素人の私でも分かる。このままだと隆也は勝てない……匠より弱い貴方は・・・」

「弱い……だと」

「その通りだよ。俺には勝てない。君は完全な敗北者だ」

「くっ………」

 

 

 

「それじゃあ、さようなら隆也」

「ダメだ…行くな…」

「もうだめだよ隆也くん」

「がっ!」

 

髪の毛を鷲づかみされ青山と同じ目線にまで持ち上げられる。その青山の顔は今までに見たことが無いくらい生気に満ちており、ゲスにお似合いの笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあな。横山隆也」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青山の渾身の右ストレートが顔面に直撃し、俺はそのまま意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれくらい俺は気を失っていたのだろうか。神田明神にいたはずなのに、俺は自分の家にいた。布団の上で寝ていたのか天井に受かって仰向けで眠っていた。あれからの記憶が全くない。あるのは殴られた痛みと絵里との決別の言葉によって心がズキズキとした痛みだった。どこかで俺は自惚れていたのだろう。自分が絵里を守る。大層な口を叩いていたのに結果がこのザマだ。調子にのって絵里を助けるだの守るだの、手の届く人を助けたいとかを口にしていたが現実は甘くなかった。青山は強かった。あの性格などを別にしたら尊敬できるほどに。敬意を払えるほどに。

俺は弱い。どんな事をしても簡単に投げられ、殴られ蹴られだ。絵里を守る……?はっ…くだらねえ。

 

 

 

「俺は…なにも守れてねえじゃねえか…絵里も…希も…」

 

 

 

「よっ、起きたか」

「翔輝……?」

「私もいます」

「海未も……?」

俺が寝ているベットの横に地べたに胡坐をかいて座っている翔輝とその隣に綺麗に正座している翔輝の彼女の海未がいた。

 

「穂乃果たちに言われてな。神田明神に隆也を見いってくれって。嫌な予感したから急いで着いて見れば案の定でお前がボコボコにされてぶっ倒れてたんだよ」

「私も翔輝がボロボロになった隆也さんを見たときは焦りました。幸いどこかが折れてるってことはありませんでした」

「…………そうか」

「青山匠にやられたんだろ」

「…そうだよ。完膚なきまでにな」

「何があったか説明しろ。包み隠さず全部だ…」

「おう…」

 

俺は翔輝と海未に全てを話した。音ノ木坂で穂乃果とことりと話したことを。漢字での暗号、そしてその答えが希と神田明神だという事。絵里と希を助けるために右足に負担を掛けながら青山とやりあった事を。そして絵里は俺を庇うために青山に付いて行ったこと。その全てを。2人は俺の話をちゃんと聞いてくれた。俺の話に言葉を挟むことなく、全ての言葉に頷きを返してくれた。

 

 

 

「……これが全部だ」

「なるほど」

「最低ですねその青山っていう人は」

「全部……俺が弱いせいだ」

「「……………」」

 

握り拳から血が出そうだ。それほど俺の中では悔しいという感情がぐるぐると嵐のように吹き荒れていた。どれだけ綺麗事を並べたら結果がこれだ。俺にはなんの強さも無い。絵里を守るなんて…口にできない。

 

 

「………これが倒れていたお前の体の上においてあった」

「…手紙?」

 

翔輝が一枚の紙を俺に渡した。

 

 

「俺はもう読んだ。お前も読んでおけ」

「おう・・・」

 

二つ折りにされてある紙を開いた。

そこにはこう書かれていた。

 

 

 

 

『横山隆也くん。傷の方はどうかな?まあ軽くしたつもりだから君なら大丈夫かな?さて、ここから本題だ。君にチャンスを上げたい。あの後絵里の悲しそうな顔を見ていたら俺が完全な悪者みたいな気分になってね。ま、これは俺の愛故にの行動なんだけどね。こんどは真っ直ぐと正面きってやりあおうじゃないか。なに、武器なんかない。素手だ。合気道も柔道をあり。『ケリ』をつけようってことさ。強い方が立ってる。全開のは別で今回のでどちらが強いか『白黒』つけよう。君の『右足』の事情もあるからね。あ、君の父親は警察だったね。警察にいうなよ?そうしたら絵里がどうなるか……。予想は大体つくよな?ということだ。来るか来ないかはお前次第だ。負け犬のクズのまま来ないか、それとも俺という強者に立ち向かうか。楽しみだ。日時は……そうだね。明日の夜中の0時。○○っていうデカイ公園の人気の居ない場所で絵里と東條希と一緒に待っている。時間に間に合わなかったらそれで終了だ。ふふふ…ワクワクするね。これで正真正銘で絵里を俺のモノにできる。待ってるよ……敗北者』

 

 

 

 

 

 

 

 

「文で分かるようにそれは青山からだ」

「だな……」

「お前の右足のことも知ってる。その中のこの決闘じみたことだ。かなりなゲス野郎だな」

「……あぁ」

「…………隆也さん」

 

手紙を読んでから怒りなんて感情が湧き出てこない。完全に脱力した感じだ。なんでだ…?なんで怒りがこみ上げてこないんだ?俺は……どうなっちまったんだ……。

 

 

 

「勿論行くよな隆也」

「……え?」

「お前あれだけコケにされてだんまりのままか?あの野郎をぶちのめすんだろ?だったら今からでも気合いれろ!絵里を助けるためによ!」

 

 

 

 

絵里を助ける………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな事できねえよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポツリと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ?」

 

普段の翔輝から聞いたことのない返事が返ってきたが今はそんな事にすら耳を傾けない。

 

 

 

 

「見ての通りに俺はあいつにボコボコにされたんだ。勝てる見込みがない……。あいつは合気道も喧嘩も強い。霧生の時は素人が相手だから勝てたけど今は話が別だ。俺は弱い……あんなクズにすら勝てないくらいに弱いんだよ俺は。お前に分かるかよ…あいつには勝てない。絵里や希すら救えない。こんな弱い俺がまたあいつに立ち向かうのか?冗談はよしてくれよ…。俺はさ………」

 

 

「お前……」

 

 

 

 

「口だけのクソガキなんだよ」

 

 

 

 

直後、翔輝に胸倉をつかまれベットから引きずり出された。

 

そして……。

 

 

 

「らぁっ!」

「ぐふっ!」

 

 

翔樹に顔面をおもいっきりぶん殴られた。

 

 

 

ドガッンッ!

 

 

と大きな轟音とともに俺は壁に激突した。

 

 

 

 

「翔樹!貴方何を!」

「海未……黙ってろ」

「っ……」

 

さすがの海未も口をつぐんだ。今の翔樹には恐怖すら感じたのだ。

 

 

 

 

 

「いってぇ……何すんだよ」

「何すんだよじゃねえよ!んだこの根性無しが!」

「…なんだよ」

「その程度かよ!お前は!あれだけで!たった一回負けただけでお前はこんな弱くなるのか!あんなクズ野郎に負けるほどお前は弱いのかよ!」

「っ……」

「負けたのは悔しいかもしれない!けどそれすら踏み台にするのがお前じゃないのかよ!右足が自分の足じゃないっていうのにお前は一度絵里を助けた!それは俺たちからしたら普通出来ない事だ!お前はそれだけ強い人間なんだよ!大事な奴が危険な目に合ったら自分から助けに行くほどお前は強いんだよ!!」

「強くなんかねえんだよ俺は…現に俺はあいつにメンタルも体もやられてる…現実なんかこんなもんなんだよ」

「まだ言うんか!」

 

ガンッ!

 

 

また殴られる。

 

2回、3回、4回と。

 

 

 

 

 

「絵里が好きでお前の側から離れたと思っとんか!ちゃうやろ!絵里はお前を守るために自分を犠牲にしたんだ!お前の傷つく姿を見るのに耐えられなくなったから!お前と一緒だ!お前も自分が傷つくのなら自分を犠牲にするようにあいつも自分を犠牲にしたんだ!希も対象にされたならなおさらだ!μ'sの仲間であり親友でありダチでもある希を助けるために!お前という大好きな彼氏を助けるためにあいつは自ら青山についていったんだ!それをお前は無駄にすんのか!あいつの覚悟を無駄にすんのか!!」

 

 

 

 

「っ……」

 

 

 

 

絵里…俺の最愛の彼女。優しくて、厳しくて、寂しがり屋で、強がりで、そしてとても強くて弱い女の子。そんな女の子が俺や希を助けるために今度は自分が戦いに行った。

 

 

 

 

「俺は……俺は……」

 

 

 

 

なのに俺はこんな所で何してんだ?翔樹の言うとおりだ。立った一回あいつに負けただけだ。それだけでなんで俺はこんなに女々しく、弱くなってんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前が絵里に対する気持ちや覚悟はその程度なんか横山隆也!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

『隆也!」

『ちょっと隆也待ってよ!』

『もういい加減にしなさい隆也!』

『隆也…もう少し一緒に居て……?』

『ありがとう…ぐすっ…隆也…私を助けてくれてぇ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

『隆也!』

 

 

 

 

 

 

 

絵里……。

 

 

 

 

 

 

 

そんな時服のポケットから一枚の小さな紙が落ちた。

 

 

 

 

 

翔樹の腕から開放された俺はその紙を拾い上げる。

 

そこには綺麗な字で言葉が書かれてあった。

 

 

 

 

 

 

『貴方を信じれなくてごめんなさい。けど貴方が傷つくのはみたくない。けど…私の心の中でどこか期待している。貴方はあのライダーさんに似ている。何の得も無いのに私を助けてくれたあの人のように。ねえ隆也…貴方はまた私を助けてくれる?こんな私をまた助けてくれますか?私は貴方が大好きです。優しくて強くて逞しい貴方が大好きです。だからまた貴方にまた頼ってしまいます。そんな私を助けてくれますか?

 

 

 

また私と笑ってくれますか?

 

 

また私を救ってくれますか……?

 

 

 

 

 

 

いえ、貴方ならこんな事言わなくても絶対に助けに来てくれる。私はそう信じています。

 

 

だって……。

 

 

 

だって………貴方は私の…。

 

 

 

 

 

だって貴方は私のヒーローだから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その手紙を読み終えると紙の上に小さな雫がポタポタと零れた。

 

 

 

涙が止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「絵里………」

 

 

 

袖で目元を拭った。

 

 

 

 

そうだ…俺はあいつを助ける。救ってやる。俺はあいつのヒーローだから。

 

 

 

 

 

「翔樹…」

「ん?」

「手伝ってくれるか……?」

「………」

「おそらくあいつが1人で待ってるわけがない。数人は仲間がいるはずだ。俺1人じゃ対処できない。だから…お前の力を貸してくれないか?」

「はぁ……やっと俺様を頼る時が来たか」

「すまない」

「いいよ。俺ら高校からの付き合いだろ?お前のことは俺が1番良く知ってるよ」

「ははっ…お前をダチに持った事を誇りに思うよ」

「そんな褒めるなよ」

 

『はははっ!』

 

 

そうだ。ここで立ち止まるな…歩き続けるんだ。

 

 

 

 

 

「頼らせてもらうぜ」

「任せろ」

 

 

 

 

 

ピリリリ

 

 

 

 

 

LINE:父さん

 

 

 

『もう少しでアレが来るぞ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『隆也さん!海未ちゃんから話は聞きました!翔樹さんも無理はしないでください!』

『2人が傷ついたら私たちも悲しいです!無理はしないでください!』

『翔樹…隆也さん…絶対に絵里と希を連れて帰ってきてください……』

『凛たち何もできないけどせめて応援だけさせてほしいにゃ!頑張ってにゃ!』

『どんな怪我しても私が診てあげるから…だから……頑張ってね2人とも…』

『絵里ちゃん…希ちゃん…無事でいて…』

『私達のかっこいいお兄さんたちが負けるわけありません!出来る限り怪我だけはしないで!』

『お願いです…隆也さん翔樹さん…お姉ちゃんと希さんを助けてください…』

 

 

 

 

 

『悲しみに閉ざされて泣くだけの君じゃない~!熱い胸きっと未来を切り開くはずさ~!』

 

 

 

STARt:DASHか……。

 

 

俺のスマホからμ'sの女神達、俺たちの無事を祈る天使たちの声が聞こえる。

 

 

 

 

そうだ。悲しむな。前を見ろ。諦めるな。父さんからよく言われた言葉だ。どんな時も屈するな。男ならどんな時でも強くあれ。その言葉を胸に俺はまた立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…行くか」

「あぁ、途中で芝多とも合流するぞ」

「は?なんであいつがいるの?」

「有給とったんだってさ」

「ははっ…また良いときにあいつは…」

「ちゃんと俺たちに飯奢れよ?」

「わかってるよ…さてと…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「関西人を舐めた事を後悔させてやる」

 

 

 

 

 

 

 




はい。ボコボコからの這い上がりです。まるでガンダムですね。もえあが~れもえあが~れ。なぜこんな事になったのかは自分が1番聞きたいものです。あれか、半分寝ている状態で書いていたらこうなるのか!眠気恐るべし(なんのこっちゃ)

次回、乱闘かもです!!!乞うご期待


そして新しく評価してくださった!
鮭とイクラの親子丼さん!4443カポネ・ベッジさん!ミカロスとその少年さん!磯部さん!
ありがとうございます!


さて、着々と最終話に近付いてきました。この絵里の物語が終われば次は誰にしよう…μ'sのみんなどれも個性的だから選べぬ!一応候補は2人ほど……(ゴニョゴニョ)



それでは今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!


では……またな!


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青山匠 前編

前編と後編で分けます。


―○○公園―

 

 

 

午後11時50分。

 

 

 

 

この公園には遊具エリア、森エリア、野原エリアの3つで構成されている公園。そして、この公園で唯一夜になって危ない場所はすぐに分かるであろう森エリアである。大量の木が密集されているこのエリアは夜中になると外灯の光を僅かしか受けつけないくらいの暗闇と化す。

 

その場所にある一回り大きな木に絵里と希が木に背中を預けて三角座りをしており、そこから少し離れた場所にあるベンチには青山匠が座っていた。

 

 

 

 

「……ねぇエリチ」

「…何?」

「……ごめんね。本当に・・・ウチがあの人達に捕まったりしなきゃこんな事にはならなかったのに…」

「さっきから何回謝るのよ。仕方なかったんだから…。前々に起こった事なんか気にしちゃダメよ」

「だってぇ…そのせいでエリチや隆也君に凄く…うぇっ…迷惑かけてもうたんやもん…ぐすっ…」

「大丈夫…大丈夫だから泣いちゃダメよ。誰のせいでもないんだから」

「でもぉ…」

「でももだっても無いわよ。希は何も悪くないんだから」

 

泣いている希を優しく抱きしめ左手で頭をゆっくりと撫でる、この公園にきてから希はずっとこうだ。自分のせいで巻き込んでしまいこんな大変になってしまった。そのせいで私や隆也が傷つく事になってしまったこと。枯れるほど涙を流しているが希の目からは今も大粒の涙が零れている。

 

 

「エリチ…隆也君に手紙渡したやん?」

「えぇ」

「絶対隆也君来ちゃうよ?」

「そうね…絶対来るわね」

「また…あの時みたいにボロボロになっちゃうよ。もうあんなのウチ見たくないよ」

「私も見たくないわよ。助ける為に自分を犠牲にしてボロボロになる隆也の姿なんて……。それなのに私は隆也に助けてほしいと願ってしまう…」

「巻き込んでしまって、隆也君からしたらほぼ巻き込まれたようなモノなのになんで隆也君はウチらを助けてくれたりするんやろ…」

 

私の聞いて知った限りの話と隆也と出会ってから今までの時間を思い返す。隆也は助けてくれる時はあったが助けてもらっているときは見たことが無い。自分から行動し救いの手を差し伸べる。隆也の中では自分が傷つけば他人は傷つかないと考えている。

 

 

「優しすぎるのも……良い事ではないわね…」

 

 

希とそんな暗い話をしていると、ベンチに座っていた匠がゆっくりと近付き私と希の目の前に立ち言葉を投げかけてきた。

 

 

「なに?2人はあいつが来ると思ってるの?」

「思ってるんじゃないわ。来ると分かっているのよ」

「あんな挑発丸見えの手紙読んで来るのは完全なる馬鹿だよ。チャンスをあげたのも今度こそ再起不能になるまでぶちのめすためだしね。それに俺はあいつの右足もしってる。あいつを二度と歩けない体にするつもりさ」

「匠って…武道を人を傷つけるためにしか使っていないのね」

「俺は所謂目的のためになら手段は選ばない男でね。それを達成するためならどんなモノでも使うんだよ」

「私が今も貴方とは居ないと言っているのにも関わらず?その目的になっている人の心は考えないのね」

「それは俺にとっちゃ知ったこっちゃないんだよ。俺が満足すればそれでオーケー」

「自分勝手……」

「最低やね…」

「なんとでも言え。どうせ今回も俺の勝ちは決まってる。勝つ自信しかない」

 

(勝つ自信…しかない?)

 

 

「これは俺の勝手な偏見が入ってるかもしれないが柔道に勝つ方法はある。それは『掴まれない』事だ。掴まれないように立ち回って動けば先にスタミナ切れするか先に潰せば楽勝だ。合気道は相手の呼吸に合わせてやる武道だ。俺にとっちゃ専売特許なわけだ」

「っ……」

「言葉も出ないか?だから言っただろ?勝ちは決まってるって」

「それでも隆也君は君みたいな男には二度も負けない!」

「勝てる算段がついて居ればな?ま、そんな事言ってもあいつ1人じゃ俺、いや…『俺たち』には絶対勝てないんだよ」

 

匠のいう【俺たち】。そう、匠はハナから1人で隆也を相手をするつもりなど無かった。この場所には私や希、匠だけではない。神田明神にいたあの男たちもいる。私の仮説だが匠は1人で来た隆也を全員で袋叩きにするつもりなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「………スポーツマンシップ、ナッシングね」

 

 

私はすぐさま立ち上がり抗議した。

 

 

 

 

「あん?」

「エリチ……?」

「私から言わしてもらったら貴方の方が卑怯者よ。武道を人を傷つけるために使うなんて…ありえないわ。隆也は違う。柔道で人を傷つけたりなんかしない。貴方のように【道具】として使ってない、何かを【守る】為に隆也は柔道を使っているのよ!この時点で貴方は隆也に負けてる、実力も精神も!」

 

 

 

 

(言いたい事全部言ってやるわ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「合気道や卑怯な手に頼らないと隆也に勝てない貴方なんか隆也の足元にも及ばないわ!そんな醜悪な性根を持ってる時点で貴方の負けよ!青山匠!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言いたいことを全部言ってやると匠はさっきとは変わって眉間に皺を寄せて険しい顔になり図星を突かれたのか両手を強く握り締めている。

 

 

 

 

 

「じゃあ、その卑怯という手であいつを潰そうか」

 

 

 

 

「絶対に……隆也は負けない!だって…彼は…あの人は!」

 

 

 

 

 

 

 

 

私の……私の好きな………私の大好きな!

 

 

 

 

 

 

「私の大好きな……強いヒーローだから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間。

 

 

 

 

 

眩い光が私達を照らし出した。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

その場に居る全員、その光の方へ視線を移す。そこには眩しい光を放つモノ、いや…【ライト】があった。しかもそのライトはバイクのヘッドライトの光だ。バイクの独特の排気音が耳の鼓膜を刺激する。

その光で上手く、その正体が何かが全然検討がつかなかったが私はすぐに分かった。

 

隆也が来てくれたと。

 

 

だが、私の目に見えた光景は、私の予想の遥か斜め上を行っていた。

 

隆也のバイクはホーネットだ。けどそこには全く違うバイクがいる。更に言うとそのバイクの排気音はホーネットとは差があるほど甲高い排気音を出している。私は知っている、聞いたことがある。忘れたりしないこの【音】を。

そのバイクのライトが光を失うと一瞬、夜の闇に包まれるが公園の外灯によって【それを】照らした。

 

目を見開いた。そこにいたモノが、否…そこにいた【人】が居た事に度肝を抜かれた。

 

 

 

 

 

その一台は隆也が何時も乗っていたのは赤色のホーネットではない。そこにはそんな影すらなかった。そこにあるのは、白と黒の二色で彩られたバイク、R1Z。

そしてそこに跨っていた人は上下黒色の服を着て白いヘルメットを被っている男の人。

 

 

「ライダーさん……?」

 

 

あの頃、私を助けてくれたライダーさん本人だった。あの頃の面影が残っている。隆也の実家にある写真を見て隆也がライダーさんではないのかと疑心暗鬼だったので深く考えないようにしていた。

 

 

 

今、ライダーさんの秘密が明らかになった。

 

 

 

白いヘルメットを脱ぐとそこには見知りの顔があった。黒い髪の毛に鋭い目付き。だがとても優しい心の持ち主でだれかれ構わず助ける御人好し。そして強くて逞しい人。

 

私はこの人を知っている。

 

 

私はこの人を愛している。

 

 

 

今まで幾度となく助けてくれた私の大好きなヒーロー。

 

 

 

 

 

あの頃、始めてライダーさんに出会い本名を名乗った時のビジョンが頭を過ぎる。

 

 

 

 

 

『俺の名前は…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり…貴方だったのね……横山隆也(ライダーさん)……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺の名前は……横山隆也だ』

 

 

 

 

 

ヘルメットをバイクのシートに置き、その男はこちらを見据えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「またせたな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

見た感じには絵里はまだ何も手は出されていなかった。それが分かっただけでも気持ちが少し楽になった。もし殴られたりはたかれたりされていたら自分がどうなっていたか分かったもんじゃない。怒りに身を任せてそうだ。

 

 

「本当に来たんだな。あれだけボコボコにされたら普通来ないな。俺ならそうしてる」

「お前みたいな奴に絵里と希を渡したくなくてな」

「お人よしもここまで行くと馬鹿の領域だな」

「好きなだけ言え。約束通り来たんだからさっさと白黒つけようぜ」

「へぇ…言うねぇ。ならさっそくはじめる?」

 

さっきと居た場所から移動し拓けたスペースのある場所につく。絵里と希には俺たちとは離れた場所でこちらを見つめており、俺は青山と一緒に少し離れたスペースの中央部分に立つ。

 

 

 

「さてと、白黒つけると言っても俺はお前を潰せればそれでいい。ボコボコにしてやるよ」

「俺もそのつもりだ。前のようには行かない。返り討ちにしてやる。タイマンでだ」

「タイマンねぇ?悪いが………」

 

 

 

 

 

「俺はそんなつもりサラサラないんだよなぁ!」

 

 

青山が指をパチンッと鳴らすと、木の陰からゾロゾロと男たちが出てきた。その中には神田明神で見たことのある男たちも含まれている。出てきた男たちの数は5人。青山を含めたら6人。体ががっしりしている訳じゃないが細くは無い体を持っている。腕が太い者も居れば分厚い胸板を持っている者も、中には俺より頭1つほど身長が高い者もいる。

 

 

 

「予想はしていたんだが……案の定だったな。

「手紙では俺とお前のタイマンでやろうって言ってないからな。俺が手を出さなくてもこいつらにお前はやられるんだな」

「怖いのかよ」

「あん?」

「そんなに怖いのかよ俺とタイマンでやるのがよ。だから他の奴らにやらせるのか?俺に勝ったのにえらい自信が無いんだな。その程度かよお前の自信っていうやつはよ」

「……挑発のつもりか?悪いがその手は通じない。どんな手でも使うんだよ俺は。文句あるか?」

「……はぁ」

 

呆れた。ここまでの奴とは思わなかった。思わず俺の口から思い溜息が漏れた。

 

 

 

 

「自分の手は汚さずほかの奴にやらせる……。お前本当のクズだな」

「なんとでも言えよ。こいつらはそれでも俺についてくるんだ。なら使うほかないだろ?」

「恥ずかしくないのかよそんなことをしている自分が」

「全然全く。これが俺のやり方だ。誰にも文句は言わせない。お前らやれ」

 

その合図で男たちが俺に近付いてくる。その中の1人は絵里と希の側に立ち2人が逃げないように監視をしている。

 

こいつは数じゃないと威張れない奴なのか?それともこうやって甚振るのが好きな奴なのか。どちらかだったとしてもどっちもだったとしても男として情けない。1人で俺に勝ててはいてもどこかでビビっているのか。自分が傷つきたくないための保険なのか。

 

(あぁダメだ……考えただけで無駄だ。それに……【そろそろ】だな)

 

 

 

「なんだよ動かないのかよ。さっそく負けを認めたか?」

「いや違うね」

 

 

 

耳を澄ませば聞こえてくる。あいつらがこっちに駆けつけてくれた音が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってたんだよ!こいつらを!」

 

 

重々しい排気音とともに二台のバイクが飛び出してきた。まさかの登場に青山たちは驚愕の表情を露にし絵里と希は驚いたのか背中を木に任せている。

 

 

そのまま俺たちの回りをグルグルと旋回したバイク二台は離れた場所に停車。そして被っているヘルメットを外した。

 

 

 

 

 

 

そのうちの一台はかなりな大きなサイズのアメリカンバイク。そこに乗って居たのは隆也と一緒に行った里帰りで出会った身長190を超えていた男の人。『芝多櫂土』。

 

次に二台目は綺麗な緑色が目立つスポーツタイプバイク。それには私の大事な後輩であり大事な仲間でもある園田海未を彼女に持つ、隆也の親友である『中上翔樹』。

 

 

そう、俺の最も頼れる友達だ。俺の今回の事に力を貸してくれるとのこと。

 

 

 

「お前が仲間呼ぶならこっちも呼んでも構わないよな?」

「ま…まぁ、潰す奴が増えただけだけどな」

 

 

「よう隆也お待たせ」

「久しぶりにバイクなんか乗ったわ俺。しかも東京久しぶり」

「悪いな。巻き込んで」

「「全くだ」」

「少しは大丈夫だくらい言ってくれよ…」

「んで?あれが青山匠でいいんか?」

「おう」

「その回り…邪魔だな」

 

『あ?』

 

翔樹の一言が男らの逆鱗にふれた。

 

 

「おいてめえら。いきなり出てきて舐めた事言ってくれたなあ!」

「ボコボコにしても後悔すんなよ!」

 

 

(完全に釣れた…。あいつの言い方どうも人の怒るツボにズッポリはまるよな…)

 

 

「さりげなく俺も巻き込まれてる件についてやねんけど…」

「気にしない気にしない」

 

こんな相手を舐めるような態度で男らの言葉を無視する二人。

 

「無視してんじゃねえぞゴラァ!」

 

1人の男が翔樹左腕を掴んだ。

 

 

 

 

「大事な腕に触れてんじゃねえよ…」

 

 

瞬間、翔樹は相手の懐に潜り込み掴まれている左腕を振りほどき逆に相手の掴んできた右腕を掴む。そのまま上体を落とし男の右足を持ち上げ男を地面に押し倒す。

 

 

柔道技【朽木倒し】

 

 

「ぐわっ!」

「これで終わると思うなよ」

 

押し倒した直後、男の胸倉を掴み渾身の頭突きをお見舞いする。

 

「ふんっ」

「ぶっ!」

 

顔面にモロに頭突きを食らわされた男はビクビクと体を痙攣させながら気絶した。更にいうと鼻の両穴から血が流血している。

 

 

「なんだよそいつも柔道使えるのかよ!」

「そんな話聞いてないですよ青山さん!」

 

これで残り3人となった。

 

 

 

「隆也」

「?」

「俺ら2人で残りの奴潰すからお前はよ行け」

「……いいんか?」

「ええからはよ行け。やられた分倍返しにしてこい」

「絵里を助けて来い」

「……おう」

 

俺は他の男たちを無視し青山に近付いていく。

 

 

「おいこら!行かす思うなよ!」

「それはこっちの台詞や」

「あ?ひっ……」

 

身長が軽く190を超えている芝多の姿は圧巻だろう。そしてその太い腕で男の胸倉を掴んだ。

 

 

「おい、神田明神で隆也をボコボコにした1人はお前か?」

「だからなんだ!離しやがれ!!」

 

ジタバタと暴れるがそんなもの全く通用しない。工場で働いている芝多の握力は軽く70を超えている。ちょっとやそっとじゃ力を緩ませることなんかできない。

 

 

 

 

「俺の友達に手ェ出しとんちゃうぞ」

 

芝多は特に格闘技をしてる訳ではない。だが生まれつき体格や身体能力に恵まれてるその体で男を肩車する。

 

「うおわぁ!?てめぇおろしやがれ!」

 

肩車すると見た目は完全にプロレス技のアバランチ・デスバレードライバー。首と足を掴まれてる事で男は身動きが取れなくなっていた。

 

 

「オラァ!」

「がふっ!?」

 

芝多は腰を落としそのまま男を投げ飛ばす。その投げ飛ばした方向にはかなり太めの木があり、男は木に直撃する。

 

「いってぇ…」

 

悶絶している男に追い討ちをかける。左足を軸足にし右足を使い男をおもいっきり蹴り飛ばした。

 

「がっ!?」

 

ゴロゴロと蹴り飛ばした後、肩を掴み関節を外す。

ゴキンッと鈍い音が鳴り男が地べたに転がりまわった。

 

「ああああ!肩がぁあ!」

「威勢は良いくせにこんなもんかよ。調子にのんなよ小僧が」

 

 

残り2人。

 

 

「やべえよこいつら!どいつもこいつも喧嘩なれしてやがる……」

「青山さん!!」

 

だがそんな言葉も青山には届かない。

 

 

「良いから行け…」

 

 

そのたった一言の言葉で掻き消された。

 

 

「くそおおお!」

「クズについていくとこうなるって事だ。よく覚えとけ」

 

そのやけくそになった男に翔樹が立ちはだかる。

 

「どけこの野郎!」

「ふんっ…」

 

右のパンチを軽く避けて襟と右腕の袖を掴んだ。

 

そのまま男を自分の体の方に引き寄せ左足を踏み込む。次に腰を捻って振り返り軸足を右足に変え、男と体を密着させる。そのまま自分の体を大きく捻り腰で男の体を持ち上げ左足で男のふくらはぎを蹴り上げ、勢いよく浮かせ地面に投げ飛ばす。

 

 

柔道技【払腰】

 

 

「がっ!」

「二度と隆也たちに手を出すなよ」

 

地面に落ちた衝撃で強く背中を打ってしまい、痛みで動けなくなった。

 

 

「そっちも終わったか?」

 

 

芝多も最後の1人を片付けた直後だった。見るからにさっきと同じ方法でぶん投げて気絶させている。

 

 

 

「くそ!役立たずどもが!情けなくやられやがって!」

「少しはこいつらをねぎらってやれよ…お前のために動いたのによ」

「俺の役に立たない奴ら全員ゴミだ!んな奴らいらねえんだよ!」

 

 

「クズすぎる…」

「吐き気がするわ」

 

全くその通りだ。こいつらはお前の為にしたことなのになんとも思わないのかこいつは…。

 

 

 

 

「青山匠」

「あぁ!?」

「約束通り……ケリをつけようぜ。てめえ見たいなクズはぶちのめさないと気がすまない!」

「何が気がすまないだ敗北者が!両腕の骨を折ってその右足二度と使い物にならないようにしてやる!」

 

今までの態度はどこに消えたのか青山匠の言葉遣いが完全に変わっている。いや…これが本性なのかもしれない。絵里を騙して、希を攫って、こいつらを道具として使ってきた。そんな奴があんな偽りの優しそうな青年な訳が無い。根っこから穢れている奴はそう簡単に変わることはない。父さんが言っていた。

 

 

『性根が腐っている奴は変わることはできない』

 

 

 

俺のやるべき事。それは簡単な答えだ。至ってシンプル。絵里を助けに来た。希を救いに来た。そして今このシチュエーション。これが最後だ。ここでこの件の終止符を打つんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「昔に絵里を傷つけて、そして今も傷つけた。その親友でもある希をも攫った。俺を傷つけるならまだしも俺の大事な女の子をここまでしたんだ。覚悟はできてるんだろうな?」

「右足を重点的に攻めてやる……二度と歩けない体にしてやる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絵里が心配そうに見つめてくる。そうだ、もう終わらせよう。もう…彼女の悲しむ顔は見たくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タイマンでケリつけてやる。青山匠」

 

 

 

 

これで終わらせよう。

 

 

 




はい、お待たせいたしました。続きでございます。
たまに思うのですがこういうのを書いてたら恋愛小説が完全な喧嘩小説になってるなと思うときがあります。いや…気のせいだ…多分。ちゃんとイチャイチャさせてる部分もあるから…大丈夫だ(自己暗示)

後編はここまで長くならないと思いますのであしからず。

さてと、隆也にはもっと頑張っていただきましょう!!


そして今回新しく評価してくださった!
神埼遼哉さん!iburaさん!ルーミアは可愛いさん!
ありがとうございました!


いつも小説を読んで下さっている皆さん!本当にありがとうございます!次回また投稿に時間がかかると思いますがよろしくお願いします!




それでは今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!

では……またな!


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青山匠 後編

9月24日の日曜日、Yoshino Nanjo Live Tour2017〈R・i・n・g〉【support by dアニメストア】in 大阪に行ってきました。

感想ですがもう最高でしたね南條さん。感無量でした。アルバムのサントロワの曲全て聴いてでの参加でしたが生で聞くと感動が半端じゃなかったです。一緒に行った友人と感動のあまり涙を流していました。心に響くんですよね南條さんの歌声は。アーティストさん達は人を引き寄せる不思議な力があることを再確認できた日でした。あ…思い出してきたら涙が…。







それでは後編スタートです


「タイマンでケリつけてやる。青山匠」

「俺に勝ててない奴がデカイ口叩くんじゃねえよ!」

 

 

殴りかかってきた青山の攻撃をよく観察しながら出来る限り避けていき、避けきれないパンチ等は腕で受け流していく。

 

 

(柔道やバスケでも一緒だ。1番は焦らない事だ。バスケのディフェンスで相手をよく見るようにこいつの動きもよく見るんだ…。あの時も冷静に対処してればミスはしなかったんだ)

 

 

「クソが!逃げてんじゃねえよ!」

「逃げてるように見えるか?…合気道してたんじゃねえのかよ」

「黙れ!!」

 

動きが単調すぎる。こいつもあの時の俺と一緒だ。こいつも頭に血が上ってるお陰で拳を振り回してきたり蹴りを仕掛けてくる。

 

「っ!」

 

青山の踏み込みで出ていた右足を踏む。

 

「おわっ!?」

 

踏んだ直後バランスを崩した青山の右肩を、踏んでいた足を外したと同時にドンッと押すと地べたに尻餅を着いた。

 

 

「足ががら空きすぎるぞ」

「てめぇ…コケにしやがって!」

「ぐあっ!」

だがそうやって俺も安心しきっていた時に油断してしまった。逆に俺のがら空きになっていた俺の右足を蹴りに来た。

 

 

「隆也!」

 

絵里の言葉が耳に入ってくる。その言葉でなんとか右足の痛みを堪えて倒れないように地べたに膝を着く。

 

(やべぇ…イテェ…)

 

「調子にのってるからそうなるんだよ!オラァ!」

「がっ!?」

 

 

だがその膝をついた事があだとなった。青山の左足がそのまま頭の側面を蹴り飛ばし、俺は地べたを転がりまわる事になった。

 

 

 

(しまった…。今ので目眩が…)

 

何とかおぼつかない足で立ち上がるが頭を蹴られたおかげで視界が悪くなった。俺の見えている全てがモザイクをかけられているみたいだ。

 

 

「さぁてここからお前は俺の人間サンドバックだ。骨格変わるくらい殴ってやるよ」

 

手の骨をボキボキと鳴らしながら近付き俺の髪の毛を掴んで自分と同じ視線まで持ち上げる。

 

「っ……」

「その顔が凄い気に喰わないんだよ。勝てもしないのに挑んで、弱いくせに守るって大口叩いて、結局お前は何もできてないじゃねえか。弱い奴は地面にでも這い蹲ってろよぉ!」

 

 

 

虚ろな目で見ると青山の右拳が飛んでくるのが映る。気付くのが完全に遅れてしまった。しかもその拳は俺のこめかみに向かって伸びてきている。完全に俺の脳天を潰すつもりだ。

 

すべての動きがスローモーションに見える。体が重い…。手足が動かない。

 

 

 

(ヤバイ…また負けちまう……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けないで!頑張って隆也ぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!」

「脳みそごと終わりにしてやる!!」

 

 

 

 

 

バシィンッ!

 

 

 

 

「ふぅ……」

「は…?」

 

 

 

 

絵里の叫びが、俺の体を駆け巡っていく。頭の上から足のつま先まで全神経に脳が命令を一斉に掛ける。俺のこめかみに向かって飛んできた右ストレートを片手で受け止めた。

 

 

 

(そうだ…。諦めるな…絵里を守るんだろ……横山隆也ァ!)

 

 

「ふんっ!」

「ぶへっ!?」

 

止めた青山の右拳を振り払い、顔面に向けて裏拳を放つ。それをまともに喰らった青山は鼻から垂れている鼻血を手で押さえながら体のバランスを取った。

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ…参っちまうねぇ。こめかみに向かって蹴り入れたのになんで止められるのかねぇ…?あれか?アニメみたいに危機に直面すると本当の力でも発揮するとかかな?」

「んな特殊能力さまさまなモノな訳ねえだろ?頭沸いてんのかよ」

 

 

口の中が切れた事で溜まった血を吐き出す。

 

 

「ぺッ……」

 

 

 

 

 

「なんで俺が動けたかって?そんな野暮な事聞くなよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは……。

 

 

 

 

 

 

 

「大好きな彼女の為なら男は頑張れるんだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははっ…ふざけんじゃねえよ!!」

「ふっ!」

 

 

右ストレートを軽く避ける。

 

 

 

 

そして…。

 

 

 

「だァっ!」

「ぐへっ!」

 

カウンターを決める。

 

 

 

 

そうか…。やっと分かったぜ。

 

 

 

「お前…左腕動かないのか?」

「っ!?」

「図星か?やっぱりか…さっきから右と足でしか攻撃して来ないからおかしいと思ったんだよ」

「分かったからどうだってんだよ!てめえも右足弱ぇえだろうが!!」

 

 

右足に向けて飛んでくる足払いを重点的に避けて青山とある程度の距離を取る。

さっきから気になっていた事を説明するとだ。こいつはほとんどの攻撃を右腕と両足でしかしていない。左腕を動かしていないと言っても騙し騙しなような動きをしている。なんで動かない…?いつからこいつは動かせないんだ?いや…もしかしてさっきの尻餅をついた時に地面についた時に手首を捻ったのかもしれない。なら攻めないわけにはいかない!

 

 

 

 

 

「とっとと潰されろ!」

「お前がな!!」

 

無理矢理伸ばしてきた動かない左腕を両腕で掴み肘の関節を外す。

 

 

ゴキンッ!

 

 

「がぁ!?」

 

 

ここからが反撃だ。

 

 

 

 

「てめぇ!!」

「もう合気道も使いモンにならねえぞ」

 

相手に掴まれる前にこちらから掴みに掛かる。左腕で青山の服の襟を掴みこちら側に引き寄せおもいっきり頭突きを喰らわせる。

 

 

「ぐぁ!」

「よくも絵里と希に手を出しやがったな。もうごめんなさいじゃすまさねえぞ!!」

 

頭突きでバランスを崩した隙を狙ってがら空きになった腹に向かってボディーブローを放つ。

 

 

「ぐほぁっ!」

「絵里も希もてめえの為の道具でもオモチャでもねえんだよ」

 

嗚咽を吐きながら悶えてる青山に対して俺は慈悲なんて与えてない。

こいつはなんでも自分の為に使ってきたんだ。今までのそのツケが今ここで回ってきたんだ。借りてきたツケを俺が変わって返させてやる。

 

 

また胸倉を掴みこちらに引き寄せる。

ボディーブローが鳩尾に当たったのか体がガタガタと震え目から涙が流れている。

 

 

「ご…ごめん…なさい…。もう…ゆすじでぇ…」

「何泣いてんだよ。この程度で終わると思ってんのか?俺が殴られようが蹴られようが別にいいんだよ。だけど絵里と希を攫って自分のオモチャにして有頂天になって2人を傷つけたんだ。だから……」

 

 

 

「俺がぶちのせしてやる!!」

「がぁっ!?」

 

渾身の右ストレートを顔面に放ちバランスを崩した瞬間に左腕を蹴り上げる。

 

 

「ぎゃあああ!左腕がぁあ!」

「それは希のぶんだ!」

 

 

 

「でめぇ”!ごろじでやるぅ!」

「来い…」

 

狙いが定まってないのか放ってきた蹴りも空振りし、その空間の空気を蹴った。

 

 

「だらぁ!!」

「ぶへぇっ!?」

 

蹴りで空振りした瞬間青山の懐に飛び込み体のバネを利用して顎に向かってアッパーを決める。

 

 

「これは以前の俺のぶんだ!」

「くっ…ぐぞぉ…。なんでてめえ如きに俺が負けるんだよ!なんで弱いお前が俺に!地獄を味わって来た俺がこんなに弱い訳ねえんだよ!」

「地獄?」

「匠?どういうこと…?」

 

 

 

 

「絵里のように才能に恵まれた訳でもない!てめえのように強い人間でもない!!色んな奴に馬鹿にされながらも必死で合気道を覚えて強い男になったはずだ!これでなんでも手に入ると思った!なのになんで俺がこんな目に合うんだよぉ!!自分が自分のために死に物狂いでやってきたのになんでてめえのような敗北者に俺が負けるんだよぉ!!」

 

 

青山が半狂乱になりながら俺に向かって突っ込んでくる。

 

 

 

 

 

「才能に恵まれてない。馬鹿にされたから必死に頑張った。言葉で聞けば素晴らしい、敬意を表するところだ。俺もその気持ちは良く分かる。だがお前のやり方は完全に別モノだ。お前は根っこが腐ってるんだ。そんななんとでも言える言葉で言っても一切響きはしない。お前のその行動事態が今まで頑張ってきた努力を完全に無駄にしている。自分勝手にしてきて全てが上手くいくはずが無い…そして何より…」

 

 

 

 

俺も青山に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

「どれだけ言葉を叫んでも!どんな理由を並べても!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで彼女達を巻き込む理由にはならねえだろうが!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「横山隆也ァ!!」

 

 

 

 

これが俺の持っている柔道の中で得意技だ。

 

 

突っ込んでくる青山の突進を右に避け、すぐ様青山の腰に手を回した。

回した手で腰のベルトを掴み青山の袖を強く掴む。そして腰を捻り、その勢いをつけた動きで自分の腰で青山の腰を密着させ持ち上げる。テコの原理で持ち上がった腰を、ベルトを掴んだ腕と袖を掴んだ腕の力を最大限使い、地面に向かって投げ落とした。

 

 

 

柔道技【大腰】

 

 

 

 

「ごへぁっ!?」

 

 

 

 

背中からおもいっきり倒れた青山は意識を失いピクリとも動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最後のこれは…俺の大切な存在である…絵里を傷つけたぶんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「さて…」

「ひっ!!」

 

 

残りはただ1人。この喧嘩が始まってからずっと絵里と希が逃げないように見張っていた青山匠の仲間ただ1人。最初はボコボコにするつもりでここにきた筈なのに形勢逆転されて完全に劣勢。更には全員ボコボコに出来るほどの喧嘩なれした俺たち。そんな奴らの目の前ででかい態度が取れるわけが無い。俺たちにビビりすぎて腰をぬかしている。

 

 

 

「まさかお前だけ逃げるわけないよな?俺はちゃんと覚えてるぞ。お前も俺の事ボコボコにした1人だろ」

「ま!待ってくれ!俺はただ青山さんに連れて来れられてきただけだ!俺は完全な無関係だ!」

「無関係だろうがなんだろうが今回の事をもう目にしちまってるんだよ。無関係じゃない!」

「許してくれ!ほら!ちゃんとこの子たちから離れるから!」

 

そういうと男は絵里と希から離れた。

 

 

「なら、一発だけでもぶん殴ってやる。じゃないと俺の気がすまない」

「な、なんでだよ!?俺は誰にも手は出してないだろうが!?」

「絵里と希を攫ってる時点でもう手は出してるんだよ。往生際が悪いぞ」

「隆也。早めに終わらせろよ」

「早くこの2人を帰してやらないと」

「おう」

 

拳を鳴らしながら跪いてる男に近付く。ゆっくり息を吐き腕に力を込める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「油断しすぎなんだよこのボケがぁ!!」

 

気を抜きすぎていた。これで終わると俺の中で緊張の糸を緩めてしまっていた。全然気付いていなかった。跪いている男の手には大きな石が掴まれていたことに。

 

 

そして、俺の右足をその石を持ってぶん殴った。

 

 

 

 

「~~~~っ!?がああああっっ!?」

 

 

『隆也!!』

 

 

(痛い!痛い痛い痛い痛い!!すげえ痛い!!!?)

 

不意を突かれたのもあるが今の一撃で完全に俺の右足がイっちまった。

 

 

「調子にのりやがって!舐めてんじゃねえぞ!」

「きゃあっ!?」

「希!!」

 

その男は絵里から希を引き剥がし、希の首に手を回し懐から小さなナイフを取り出した。

 

 

「いいか?近付くなよ…近付いたらこの女の綺麗な顔に傷がつくぞ」

「やっ…べぇ……希が…」

「おいお前!ええ加減な事しとるんちゃうぞ!」

「希から早く手を離せ!」

「黙れクソがっ!俺が逃げるまで絶対動くんじゃねえぞ!」

 

 

 

どうしたらいいんだ…。俺は右足が完全にやられていて今はまともに動けない。しかもこいつはナイフを持っている。本物か偽物か分からないから無闇に動けない。絵里は涙を流しながらその場で震えてしまい、翔樹と芝多も動きたくても何も出来ない。

 

 

「絶対に…動くなよ・・・」

「え、エリチ…」

「ねえやめて!希を放してよ!」

「やかましい!お前らが悪いんだよ!こんな目になったのもてめえらのせいじゃねえか!」

「希は関係ないのよ!私が変わりになるから希は放して!」

「エリチ……来ちゃだめ…」

「の、希……?」

 

 

 

 

 

「大丈夫…私……は…大丈夫だから……怖くなんか…ないから…」

 

 

 

嘘だ。

 

怖いに決まってる。俺でもわかる。希の体はブルブルと震えてしまっている。更にはいつものエセ関西弁じゃなくて素の口調に戻ってしまっている。あんな女の子がこんな怖い事に耐えれるわけが無い。その瞳からはポロポロと涙が地面に零れている。

 

 

 

「おい…目当ては俺だろ……。俺の右足ならくれてやる…だから希を離せよ…」

「放すかダボが!」

 

駄目だ。こいつもこいつで興奮してて頭が回っていない。今自分が殺人の犯罪に手を染めようとしている事が理解できていないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「希ちゃん」

 

 

 

 

そんな時、芝多が口を開いた。

 

 

 

「ふぇ……?」

「いいか?絶対動いたあかんで」

「動いたら……?」

「女の子には優しくが俺のモットーやねんよ。絶対助けたるからな」

「………うんっ」

「何ごちゃごちゃ言ってんだお前!動くなつったよな!」

 

 

 

 

 

そして…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「女の子に…手ぇ出してんじゃあ……ねぇよ!!」

「がっ!?」

 

 

芝多が足元に落ちていた小石を拾い、男のナイフを持っている右手に向かって投げた。その小石は真っ直ぐ飛んでいき綺麗に右手に命中した。

 

 

「うおおおっ!」

 

 

 

その一瞬を芝多は見逃さなかった。手に小石が当たり怯んだ瞬間に猛ダッシュ。男との距離が近くなった瞬間に体を回転させほぼ体が後ろを向いた瞬間右足を踏み込みジャンプ。その勢いに乗せて体を空中で半回転捻り右足で男の側面を右足で蹴り飛ばす。

 

 

武術【旋風脚】

 

 

「がっはぁ!?」

 

男が吹っ飛んだ瞬間手から離れて倒れそうになった希をお姫様抱っこで抱き上げた。

 

 

 

「きゃっ!」

「ふぅ……大丈夫?希ちゃん…」

「あ……ありがとう…うぅ…ぐすっ…怖かったよお!」

 

 

 

希は涙を流しながらも顔を赤くさせ芝多の首に抱きついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

それからどれほど時間がたったのだろうか。あの後、青山を含めた連中はその場に放置。俺のスマホから父さんに連絡し回収をしてもらうように頼み込んだ。するとものの1時間経たずに父さんたちが到着。青山全員をパトカーにのせ警視庁へ連行。俺たちはまた後日に話しを聞くとの事でその場はお開きとなった。

芝多は希をバイクの後ろに乗せ夜の街に消えていった。あんな出来事があったお陰で希の精神はかなりやられていた。そのためのアフターケアのために芝多は明日の朝まで希といることに。

翔樹は海未にこのことを報告するために園田家に向かった。穂乃果たちも園田家にいるらしいとのメールを貰い翔樹は急いでバイクを発進させる。

 

「ちゃんと絵里さんを届けろよ」

 

分かりきっていることを言い残して芝多と同様夜の闇に消えていった。いつかぶん殴ってやる。

 

 

 

最後に俺は絵里を後ろに乗せ自分の家に向かった。さらには絵里とは以前俺と出会っていたという話も聞いた。確かに金髪の美少女に会った記憶はあるがまさか絵里とは思わなかった。いやこれはマジで…。大学で絵里に出会うまでバイクで出会う事なんてなかったからな。奇跡なのかもな…。

そして…俺は右足に大怪我を負ってしまった。今は喧嘩でのアドレナリンが出ているからか痛みはない。だが絵里の肩を借りないとまともに動く事が出来ないほどである。病院にいかなければと思ったが絵里を1人にするわけにはいかないので明日に行く事に決めた。幸い今は痛みが無いお陰でバイクを運転はなんとかできた。

 

 

 

家に着き部屋の中に入った瞬間、絵里に抱きつかれた。

 

 

 

 

「隆也…ごめんなさい…また私のせいで…」

「絵里…」

「救ってもらったのに…また助けてもらったのに……隆也の足が…」

「足の一本で助けれたんだ。安いだろ?」

「でも!これがひどかったら二度と歩けなく…!」

「それは祈るしかないな」

「隆也ぁ……ぐすっ…ひぐっ…」

 

ポロポロと涙を流している絵里の頭と背中を優しく撫でると絵里が俺に抱きつく力を強くしてきた。少し苦しいほどに。

 

 

 

「ありがとう…隆也。ありがとう…ライダーさん…。もう、感謝しきれないわよ」

「俺は絵里が横にいるだけで幸せだ。これほどのご褒美はない…」

「貴方が好き…大好き…。私の横に居てくれる貴方が好き…私を守ってくれる貴方が好き…。私の…ヒーローになってくれた貴方が大好きっ…」

「俺も大好きだ。絵里じゃないと嫌なんだ…」

「こんな私でもいいの…?また、助けてもらうことになるかも…まあ隆也が酷い目になることもあるのに…、私でいいですか?」

「俺は絵里が好きだ。どんな時も…絵里を助けに行く。君は俺の全てだ。俺は…横山隆也は……絢瀬絵里が好きです。ずっと…俺の横にいてください!」

「っ……はい!!」

 

 

 

そのまま俺たちはお互いに顔を近付き、唇をあわせる。柔らかい唇がとても心地いい。ずっと…これを味わっていたい。大好きな絵里を…離したくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま俺たちは月明かりに照らされながらベットに倒れこむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、最低で最悪な事件はゆっくりと幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後半終了です。凄いやりきった感があります。バトルシーンは難しいですね。文字で表すのが中々……だけど書いていてとても楽しいです。自分もこんなことが出来たらな~(一生無理)こうなったら朝早く起きてランニングでもしてみますか!(三日坊主で終了確定)



そして新しく評価してくださった!
中等の巨人さん!ピポサルさん!曜未さん!○○○○さん!本郷 刃さん!神崎遼哉さん!MNKNSさん!たけちーさん!ラジストさん!アーリオスさん!エーアールさん!らいてーんさん!ファンテBBさん!蒼風さん!
ありがとうございました!(今回凄い多い!!)



えー…前々から言っていたように次回で最終話となります。長い間書いてきたこの小説は次で最後になります。特に長くや短くなどは考えておりません。どちらかになるかは自分もわかりません。これほどで良いかなと思うところまで書こうと思います。よろしくお願いします。



それでは今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!


では……またな!!


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絢瀬絵里に出会った

この小説を長い間ご愛読してくださった皆様!本当にありがとうございました!
これで最終話となります!ではどうぞ!


 

 

 

 

 

――桜満開で咲き誇る季節・春。

 

 

 

桜が咲いているのが春が到来した事を伝えてくれた。今年も満開。今回もお勤めご苦労さん桜殿。

 

その桜の近くを歩いている男。

 

 

 

横山隆也。

 

 

 

「やっと大学にこれるようになった。長かったなぁ~…」

 

 

ある事件のお陰で、俺は右足を大怪我し病院に入院する事になった。この事件を知っているのはほんの数人。俺の親友達と俺の彼女の親友のみ。

俺の右足は高校時代の事故で人口骨を移植してあるもの。病院の検査結果、その骨が完全にやられていた。とは言っても二度と歩けない状態にならなかったのが不幸中の幸いだった。自分とは全く違う骨を体に入れ馴染むにはかなりの時間が必要、そしてバイクにも乗る俺はいずれかまた事故をする可能性がある。その為に人口骨を入れると同時に足にギブスを入れてあった。今回の事件ではそのギブスがあったお陰で粉砕骨折にまではならずに済んだという事だ。だがダメージが酷いため新しく足の骨などを調整する必要があった。それでしばらく病院で入院&リハビリの日々が続いた。最初は松葉杖がないとまともに歩けなかったが時間を重ねていく事につれて完全とは行かないがある程度は歩けるほどになっていた。しかもあの頃とは時代が変わったのか人口骨もかなり丈夫なモノを入れてもらえるようになった。

 

 

(あ、勿論医療費とかその他もろもろはあのクズ野郎共に全部出させた。容赦なく)

 

 

入院して数ヶ月、やっと退院できた俺。流石に長い間ベット生活は体が参っちまう。

 

「けど大学の教授達も分かる人達で良かった。ちゃんと俺を二年生に上げてくれたし」

 

 

普通なら単位が足らなすぎて二年生には上がれないと思っていたのだが、大学の教授達が俺の為に色々と手回しをしてくれていた。とは言っても楽をさせるわけにも行かず、俺には病院でも出来る大量のレポート課題を単位取得の条件としてくれた。

 

「絵里に手伝ってもらわなきゃたぶん足より頭が死んでたかもしれない…」

 

前言撤回。教授たち超厳しい。

 

 

 

 

 

 

「隆也!」

 

 

 

大学の門をくぐるとそこには金髪で碧眼を併せ持つロシアのクォーターにして、あの事件で守る事の出来た俺の大事な宝物。

 

 

 

 

「よう、久しぶりだな…絵里」

 

 

 

俺は、やっと自分の足で自分の彼女に会うことが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

絵里と合流した俺達は誰もいない空いている教室に入った。

 

 

 

「1番驚いたのが入院した次の日にボロボロになっている翔樹を見たことなんだが…」

「私もよ。話を聞いた時は呆れたけどね」

「間違いない」

 

病室で暇を持て余しているとき、病室に俺の親友の1人である中上翔樹が全身ボロボロの状態で入ってきた。

理由を聞くとあの事件が終わり帰った後、アイツ自身で事故にあったらしい。更に翔樹を轢いたのは女性。だがここから先があった。

その事故では翔樹に大怪我は無かったが少しの擦り傷程度。あと在るとしても打撲程度だ。あいつも中々不幸な男だ。俺との事件の後に轢かれるって中々ないと思うぞ…。

んでその事故のごたごたがあった後園田家には無事到着したらしい。到着したら海未以外が眠っており、起きていた海未はボロボロになっていた翔樹に泣きながら抱きついたそうだ。

 

 

 

【回想】

 

『良かったです!翔樹が無事に帰ってきて…』

『ただいま海未。心配させてごめんな?』

『はい…。絵里や希も大丈夫ですよね…?』

『勿論。今は隆也と俺と隆也の親友である芝多って男が見てくれてる。どこよりも安全だ』

『良かったぁ…。でも翔樹がこんなに傷ついて…』

『いやぁ…これはあの後事故って………あ』

 

その言葉が海未のある電源のスイッチだった。

 

 

『翔樹…?貴方は絵里たちを助けにいったのですよね?』

『は、はい!』

『で?この傷はその時の怪我じゃなくてなんなんですか?』

『いえ!助けるために怪我をしました!』

『事故ったと言うのは…?』

『…………』

『人と話すときはちゃんと私の目を見なさい!!』

『ごめんなさーい!うそつきました!!』

『なんで貴方は頑張ってきたのにも関わらずそんなドジを踏むんですか!心配した私が馬鹿みたいじゃないですか!いや確かに事故で怪我をしたのも大変ですけどどうして嘘をつくのですか!そうしたらもっと心配するという事がなぜ分からないのですか!』

『いやつい口が滑ったというかなんといか!けどこうやってちゃんと帰ってきたからいいじゃないか!』

『それとこれとは話が別です!ここでは穂乃果たちが起きそうなので別の部屋に行きます!いいえ連行です!』

『待って待って待って!俺海未の説教は大の苦手なん……って話を聞いてぎゃあああああああ!?』

 

 

【回想終了】

 

 

 

 

 

「馬鹿だ」

「全くね」

 

ようするにボロボロになっていた理由は海未の説教&お仕置きである。

 

 

 

「それと芝多だけど…」

「あの2人ね」

 

 

芝多と東條希。この2人は付き合うことになった。あの事件で芝多が希を助けた事で希が芝多に惚れたらしい。確かにあんな助けられ方したら誰でも落ちるだろ。その後お互い歩み寄りながら好き同士…所謂恋人同士になった。だが芝多の仕事場が兵庫県にあるため、何度も出会う事は出来ない。遠距離恋愛ってやつだ。でもお互いそでもいいとの事。今は芝多が東京に会いに行ったり希がたまに兵庫県に向かったりなどで愛し合ってるそうだ。

 

 

 

「希…。顔真っ赤だったわね」

「だな。俺が女だったらすぐに告白するね」

「……キモチワルイ」

「なぜ真姫?!」

 

 

因みに今ごろ二人は何処かでデートをしているらしい。

 

 

 

 

「そういう絵里は大丈夫なのか?」

「え?」

「青山匠。嫌いだったとはいえ元カレが警察に捕まるのは…心てきに…」

「大丈夫よ。もうそこは割り切ってるから。それに……」

「おっ?」

 

絵里が俺の横にすわり頭をコツンッと肩に乗せてきた。

 

 

 

「今私が好きなのは…隆也だから」

「……そっか」

 

 

 

青山たちは父さんたち警察に捕まった後、刑務所行きになったらしい。まあ当然っちゃ当然というか。あれだけの事をしたんだ。おとなしく自分の罪を償って来い。

 

 

 

 

「隆也の足…」

「ん?」

「私を助けるために…。貴方は無理をしすぎなのよ。そのままだったら貴方の体が壊れちゃう…。もっと自分の体のことを考えなさいよ…」

「俺にはこれくらいしかできないんだ。俺も弱かったからよく分かる…。弱い人間が傷つくのは納得がいかない」

 

 

 

 

 

「でも…それが貴方が傷ついていい理由になんてならないのよ」

 

 

 

絵里が鋭い目付きで俺を見つめてくる。よく見てみれば目元にはうっすら涙を浮かんでいる。

 

 

 

 

「…そうだな」

「貴方が傷つく事をよくないと思う人がいる事に早く気付きなさいよ」

「ごめん…」

「隆也がそういう人だって事は知ってる。やめろとは言わないから……だから、絶対に私のところには帰ってきなさいよ?」

「約束するよ。帰ってくるって」

「約束破らないでよ」

 

 

 

絵里の小指と俺の小指が絡まりあう。指きりげんまん。嘘ついたら針千本…いやそれだけじゃ済まないかもな。肝に免じておこう。

 

 

 

 

「絵里の事、絶対守るし…絵里の元に絶対帰ってくるからな」

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

教室から出た俺たちは外の空気を吸うために建物の外にでた。

 

 

 

「なあ絵里」

「なに?」

「覚えてるか?俺たちはここで出会ったんだよな」

「そうね。もう私達が出会って…丁度1年ぐらいなのよね」

 

 

 

この建物の曲がり角、俺と絵里は1年前に出会った。大学の入学式に目が合い、俺はサークルの勧誘から…絵里はファンの人達から逃げ、ここでぶつかって出会った。

 

 

 

「戦士の休息とか言ってたわね。あの時はバカって言うのが第一印象だったわ。それに私の胸も触ったし」

「やめろ…掘り返すな」

「そして貴方は私を逃がすために、大学で出会って初めて助けてくれた」

 

懐かしい…。あの時が最近に感じる。

 

 

 

 

 

 

 

この曲がり角で俺と絵里は出会った。

 

 

 

 

 

そうだ……全てはここから始まったんだ。

 

 

 

 

 

「んで近くのカフェで自己紹介して」

「私達はニセモノの恋人になって…」

「バイク乗り同士だと分かって」

「希に出会って」

「絵里の事を…よろしく頼むといわれた」

「そして貴方の家にお泊りした」

「あの時最初は快晴の時に来たのに、土砂降りの中俺の家に来たな」

「まだ会って間もない女の子を家に入れるのは普通ないけどね」

「うるせ」

「で、次は私の親友のにこに出会った」

「あいつ中々インパクト強かったな」

(特ににっこにこにー…)

 

 

胸の中がどんどん暖かくなってくる。頭の中で今までの思い出が蘇ってくる。

 

 

 

「私は風邪を引いた」

「俺がお見舞いに行ってあげたっけな」

「あの時の卵粥美味しかったわ」

「あの時初めて絵里が可愛い女の子だって意識し始めた」

「私も貴方が優しい男の人だって分かってきた」

「海にも行ったな」

「えぇ…とても楽しかった」

「酒飲んで大変だったけどな」

「あ、あれは油断してたのよ!」

(油断……?)

「そして…絵里は俺から離れていった」

「貴方を私の事で巻き込みたくなかったから」

「俺はそれに気がつかなくてお前に酷い事を言った」

「私は貴方をはたいた…。ごめんね?」

「大丈夫だ。気にしてない。あれが絵里の優しさから出た物だって希とにこに気付かされた」

「あれだけ言っても隆也は私を見捨てなかった。私の事を抱きしめてくれた」

「絵里の事を守ってやりたいと思った」

「貴方の親友の翔樹と私の仲間で大切な後輩である海未が付き合ってる事を知った」

「俺も驚いたあれには」

「私も」

「絵里が凄い心配してたな~。希と俺の家に来てさ」

「もう!隆也ぁ!」

「ごめんごめん」

 

心が温まる。絵里の愛が伝わる。

 

 

「そして大学祭」

「私は霧生に襲われた」

「目の前で絵里が殺されそうになっていて我慢できなくなった」

「そして貴方は私を体を張って助けてくれた」

「それがきっかけで俺たちは」

 

 

『ホンモノの恋人になった』

 

 

「絵里を守りたいと思った」

「隆也が大好きだと分かった」

「絵里が好きだ」

「隆也が好き」

「色々な事があった」

「μ'sと隆也が始めてであった」

「絵里の仲間達が皆いい子だった」

「けどそこで仲良くしている隆也に私は嫉妬した」

「絵里をもっと大事にしないとと再認識した」

「私の事をもっと見てほしかった。隆也を誰にも渡したくなかった」

 

 

束縛とは言いすぎだが、大事なモノなんだ。

 

 

 

「2人で俺の地元である兵庫県に帰って」

「隆也の家族に出会って、隆也の親友の芝多さんに出会い…隆也の過去を知った。右足の事を知り…そして澤本楓さんとも出会った」

「絵里はあいつを助けてくれた」

「隆也みたいなヒーローにはなれなかったけどね」

「ヒーローは誰でもなれる。なれるかなれないかは自分次第だ」

 

 

 

「そして私を助けてくれたライダーさんが貴方だと気付いた」

 

 

 

 

「そんな時に青山匠が来た。絵里の元カレで」

「私の大嫌いな人」

「俺はあいつに一度負けた」

「けど、諦めなかった」

 

 

 

 

 

 

「絵里を想う俺の気持ちはこの程度だと決め付けたくなかった。絵里を傷つけた奴らを許せなかった」

 

 

 

 

「幾度となく貴方はまた私を助けてくれた」

「歩けなくなったとしても、もう治らなかったとしても、君だけは失いたくなかった」

「また私達はこうして出会う事が出来た」

「奇跡…かもしれない」

 

 

 

 

 

 

いや、まずここに偶然だなんて無かったのかもしれない。すべてが必然的に形を成していった。俺が絵里と出会ったのも、こうした時間が流れて行ったのも偶然ではない。ましてや奇跡でもない。

そういう運命だったのかもしれない。俺の運命は俺をここまで導いてくれた。

 

 

 

 

隆也に出会う事が偶然だとは想わない。私と隆也はもっと前から何かで繋がっていたのかもしれない。そして私達は出会った。私を理解し、私を敬うことなく、私を1人の絢瀬絵里として見てくれた。

 

 

 

 

 

これがゴール?違う、ここからが新たなスタートだ。俺と絵里はこれからも歩き続ける。またぶつかったり、助けたり助けられたりするかもしれない。俺は絵里と一緒に居たい。

 

 

 

私は彼と一緒にいたい。私は彼をこれからも愛していきたい。どんな壁にぶつかっても彼となら乗り越えられる。そう思わせる力が隆也にはある。

 

 

 

 

だって俺たちは。

 

 

 

だって私達は。

 

 

 

 

『こうして出会えたのだから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「絵里」

「ん?」

 

 

風が吹き、それと同時に桜が散り俺たちの回りを桜吹雪が風と一緒に奔る。

 

 

 

 

「これを君に渡したい」

 

 

持っていた紙袋の中から花束を差し出す。絵里の瞳に少し似た、青色の花を。

 

 

「これは?」

「それはアイリスって花だ。どうしてもこれを君に渡したかった」

「綺麗…ありがとう隆也」

「どういたしまして。なあ絵里」

「何?隆也」

 

 

 

 

 

 

「これかれもずっと俺の横に居てくれますか?」

「ふふっ…愚問ね。私の方から言わせて欲しかったわ。こちらこそよろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

 

渡した花束を両手で持って満面の笑みを浮かべた。胸がどんどん熱くなっていく。

 

 

俺はこの子に…絢瀬絵里に会えてよかった。幸せだ。俺は絵里のことが大好きなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「その花はギリシャ神話に出てきたりフランスの王室の紋章になったりとか歴史がある花なんだ。ところでその花の花言葉は知ってるか?」

「え…知らないけど…。なにか意味があるの?」

 

 

「その花には吉報、良い便り、などの花言葉がある。今日は俺たちにとっていい日だと思ってな」

「確かに…この日は私達にとって大切な日ね」

「それと…もう1つ花言葉があるんだが」

「え!?まだあるの?なにかしら?

 

 

 

 

 

 

「それは……いや、なんでもない。忘れてくれ」

 

 

 

 

 

「ちょっとここまで来たのに言わないのはズルイわよ!」

「良いんだよ知らなくて。そろそろ昼飯だしどこか行くぞ」

「あ!ちょっと逃げるんじゃないわよ!待ちなさーい!」

「待ってと言って待つ奴などおらぬ!」

 

 

 

絵里に背中を向け逃げ出した俺。その後ろを絵里が全力で追いかけてくる。捕まるわけにはいかないなぁ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日を大切にしよう。この時間を……。そして今まで築いてきた絵里との時間を、これから作っていく絵里との未来を。

 

 

 

 

―――――今が最高だ。

 

 

 

 

 

 

「ほら、置いてくぞ絢瀬絵里!」

「待ちなさいよ!横山隆也!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイリスの花言葉。それは――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『愛』、そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あなたを大切にします』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

去年の今。そして今この時の中で…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絢瀬絵里に出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様。この小説を最初から長い間読んで頂いた方々、又は途中から見てくださった方々。本当にありがとうございました。皆様から頂いた感想・評価などが自分にとってとても素晴らしい活力になりました。感想を見るたびに嬉しくなり、評価されるたびにもっと頑張ろうと気合を入れることができました。誠にありがとうございました!

少しだけですが自分の話にお付き合いください。
自分がこの小説を書こうと想ったきっかけはラブライブを見た影響もありますが、ほかにも理由があります。それは『自分でなにか物語を作ってみたい』という想いがなにより強かった事ですね。小説を読むことが元々好きで作ってみたらどんな感じなのかが気になりハーメルンに投稿しました。絵里をヒロインにしたのはロシアのクォーターでもありμ'sのメンバーでのお姉さんポジションでもあり、過去で最悪の挫折を味わいながらも負けないと想うあの強さに惚れたからです。なので男主人公と絵里のストーリーを作ったらどうなるのかと思い、この小説を作りました。
最初は書くのが難しいとも思ったり疲れたと思ったときもありましたが皆様の感想などがあったからこそここまでやり遂げることが出来ました。凄い達成感があります!
何度もしつこいですが…皆様ありがとうございました!!



そしてまた最新作を作りたいとも思っております。また原作はラブライブです!(もしかしたら別のになるかもしれません)
次のヒロインは……希です!スピリチュアル少女との日常を書きます!イチャイチャあり!ギャグあり!シリアスあり!喧嘩シーンはそこまで無しかも!と計画しております。
いつになるかは分かりませんが、出来れば首を長くしてそしてお腹を空かしてお待ちください!(なんでやねん)
自分も色々とやることがあるので今だけペンを置かせていただきます。



というか作りたい小説が大量に在りすぎて大変です。自分の影分身がいてくれれば色々と書けるのに……ガッデム。



それでは最後に!お気に入りをしてくださった皆様!評価してくださった皆様!感想を送ってくださった皆様!

1年間!この小説にお付き合いいただきありがとうございました!!これからもよろしくお願いします!
皆様が居たからこそこの物語を描くことができました!

感謝です!!



隆也『皆さんありがとうございました!』
絵里『長い間ありがとうございます!』


最後はこの2人を入れて挨拶したいと思います!



では……。


『『【またな!!】』』


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後日談的なやつです
Happy Birthday


10月21日…我らが絢瀬絵里の誕生日です


「どうも皆さん、集まっていただいて光栄です」

 

 

俺の部屋に中上翔樹、園田海未、東條希、矢澤にこ、そして俺こと横山隆也が集まっていた。

その部屋はいつもの娯楽の空間ではなく、ギスギスとした圧迫感に満たされていた。

 

 

「…で?なんで俺らは集められた?」

「いきなりの電話にびっくりしましたよ」

「かなり深刻そうな顔してるけど大丈夫?」

「私が仕事の非番でよかったわね。けどそれなりの話じゃないと怒るからね」

 

そう、俺はこの人達にある頼みを聞いてもらうために集めた。

今回の頼みは俺のこの生きていく時間の中でベスト3に入るほどの大切な事だ。もししくじれば俺は最悪のトラウマを背負う事になるのだ。それだけは絶対に阻止しなければ。

『男』横山隆也の見せ所だ。

 

 

 

 

 

 

「みんなに集まってもらったのはほかでもない。俺の一生のお願いって頼みを聞いてもらうためだ。今回は俺だけじゃどうする事もできない。だから皆の力を貸してほしい」

 

 

胡坐をかいてすわっている俺は、両手をつけ頭を地べたの畳にこすり付けるつもりで下げる。

 

 

 

「隆也の目がいつもよりマジなんだが…」

「見たことないです。こんな真面目な顔…」

「海未ちゃん。それやったら隆也君の顔がいつもアホみたいになってるって言ってるみたいやで」

「駄目よ希。そんな事言ったら失礼でしょ」

 

 

ほんとに失礼なんだよ……てめえ()

 

 

 

「今はそれどころじゃなくてな。単刀直入に言わせて貰うけどいいか?」

 

 

全員ゆっくりと顔を縦に振る。

よし…いくか。

 

 

 

 

 

 

 

「今回集まっていただいた理由、それは………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「絵里の誕生日プレゼントどうしたらいいか分からないので助けてください!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『自分で考えなさい』

 

 

 

 

 

 

一発でKOされました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マジで助けてくれ!どうしたらいいか全く分からないんだよ!」

「こういうのは自分で考えないと意味がないんだよバカ」

「私達が一緒に選んでも良くないかと…」

「自分で選んだ方がエリチ喜ぶよ?」

「まあ?にこだったらもっと凄いプレゼント用意するけどね!」

「あ、そういうのはもういいんで」

「なんでよ!!!」

 

 

今日は10月19日。後2日すれば俺の彼女である絢瀬絵里の誕生日である。大学に入学してから絵里には本当に色々とお世話になった。更にいうと初めて出来た心の底から好きだと思っている女性の誕生日。それをどうする?簡単に終わらせたくないのだ。

だからこの4人に助けを求めたのに……やべ泣きそう。

 

 

 

 

「だって…どうしたらいいのか分からないんだよ。どんなモノあげたらいいか何てわからないし…」

「おぉ…あの隆也がここまで縮こまるなんて」

「あんなに強い隆也さんが弱気…」

「同情しそうだわ」

「見てて滑稽やね」

「うぐっ…」

 

(((希容赦ない…)))

 

 

 

 

 

「まあ結論だがやっぱりお前が自分で選んだ方が良いと思うぞ」

「そうですよ。こういうのは自分の力でするものです」

「自分でやったからこそ意味があるんよ」

「これも自分の試練と思いなさい」

「…やっぱりそうなるよなぁ…」

 

 

大きく溜息をつく俺に翔樹が声を掛けてきた。

 

 

 

「確かにお前にとって大事な事なのは分かってる。けどそれは他人の力を借りちゃ駄目だ。自分で成してこそ大きな一歩になる。お前も1人の男ならこんな所で挫けるなよ?これはお前の戦いだ」

「俺の戦い…」

「いつものように勝って来いよ。この大勝負に」

 

 

 

 

「おぅ…」

 

 

 

「ま、力は貸さないけどちょっとしたアドバイスはあげるわよ」

「にこっち、それって力借りてるような…」

「アドバイスはただの助言よ。そこまで助けてないわ」

((助けてるような…))

 

「女の子ってのはモノが欲しいんじゃないの。それにどれだけ気持ちが込められてるかが大事なのよ」

「確かにそうですね。自分のことをここまで想ってくれてるんだなって実感できます」

「そこが鍵やね。隆也君がエリチにどれだけの想いが籠めれるモノを用意すればいいかってことが」

「想い…か」

「女の子は想ってくれるだけでもとっても嬉しくなるんよ」

「そうそう。大事なのは気持ち。忘れちゃ駄目よ」

「絵里もきっと楽しみにしていますよ。頑張ってください!」

 

 

 

 

 

気持ちか…。父さんも言ってたな。気持ちが込められたものはどんなモノよりも高価でどんなモノよりも強いモノになるって。

俺が絵里に思ってる気持ち。それをどうやって伝えるか…か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かった。絵里の為に俺頑張ってみるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

全員笑顔で頷いてくれた。

 

 

 

***

 

 

 

 

「……とは言ったものの、まったく検討がつかないんだよな」

 

全員を家に帰した後、俺はベットの上で胡坐をかいて腕を組みうんうんと唸っていた。確かに自分で絵里の為に頑張ると言ったのはいいが、よし考えようと思っても全く駄目だった。

絵里が喜びそうなもの…大好物のチョコレート?いやそれだったらバレンタインの時に渡せる。バイク用品…。いや絵里はそこまでカスタムにこだわる人間じゃないから却下。文房具とか大学で使えそうな物一式…。なんだかロマンチックさが無いから駄目。

 

「思い切って指輪…とか?いや駄目だろ!!まだ俺ら学生なのに!」

 

自分のバカな考えを頭から消すために壁に思い切って頭突きをする。

 

 

「高校時代にもっとこういうのを予習とかすれば良かった…。いや恋愛に予習も復習もないだろうに」

 

 

もっとちゃんとした彼氏だったら前もってよく考えて動くのに、俺と来たら何も出来てない。

 

 

 

 

 

「……情けねぇ…」

 

 

 

 

 

そんな時枕の近くに置いてあったスマホから音楽が流れた。

 

何も考えず、そして誰から掛かってきたかも確認せずに電話に出た。

 

 

「もしもし?」

『やぁ。迷える少年よ』

「いや別に迷ってないし。それに少年じゃねえし」

『そこは【だ、誰だあんたは】って答えるとこでしょ?』

「やかましい。で?いきなり電話してきたのはいいけどなに?」

『随分上から目線からの物言いやね?ブットバスヨ?』

「すいませんもう言いません」

『よろしい』

「話し戻すけどどうしたん?」

『今頃色々と悩んでるだろうなーって思って電話した』

「エスパーですか?」

『全然違います。で、あんたの為にこの可愛くて素晴らしい私から大事で素晴らしい言葉をあげようとおもってね』

「可愛くて素晴らしいって自分で言うんだ……。ってか素晴らしい二回出た」

『細かい事はいいの。まあ、とは言ってもちょっとした事言うだけだけどね』

「ほう…」

『いい?プレゼントってのはどれだけの気持ちが籠もってるかってのが大切なのは知ってるよね?』

「勿論」

『そこで女の子が喜ぶプレゼントがどんなのがいいか教えて進ぜよう』

「自分で考えようと意気込んでいたのにこいつは……」

『ナンカイッタ?』

「いえ何も」

『そう。けど答えは言わないよ?自分で答えを出しなさい』

「教えてないじゃん……」

 

いやこれ以上つっこむと面倒だ。やめておこう…。

 

 

 

 

『ヒント、日常』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………日常?」

『日常』

「それだけ?」

『これだけ』

「マジか」

『マジだ』

「難易度高くない?」

『イージーモードです』

「んー…日常…」

 

 

 

絵里の日常…。ヒントがこれだけだと全然分からないんだが…。あいつの日常。もしかして何かを使うものとか?いやそれだと筆記用具が一番先にでるぞ。いや…そこじゃないんだろうなぁ…。

ほかで考えよう……。日常…容姿端麗…絵里…金髪…完璧なプロモーション…ポニーテー………。

 

 

 

「あ!」

『分かった?』

「そういうこと?」

『醤油こと』

「醤油……。ってか全然頭の中に無かったわ」

『バカじゃん』

「うるせ」

『では本日はここまで。もう私も寝るから電話してこないように』

「おう…なあ」

『ん?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう…姉ちゃん」

『ん。弟の為にかっこいいところ見せないとね』

「ふっ…。珍しい事もあるな」

『鼻で笑うな鼻で』

「はいはい。じゃ、ちゃんと寝ろよ」

『はいはい。お休み』

「おやすみ」

 

 

 

俺はスマホをもう一度枕の近くに置きベットに横になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……よしっ」

 

 

軽く気合を入れ俺は眠りに付いた。

 

 

 

 

***

 

 

 

10月21日

 

 

 

 

『絵里(ちゃん)!誕生日おめでとう!!』

「皆、私の為にありがとう!」

 

 

絵里の誕生日当日。俺は絵里の誕生日パーティーという事でμ'sがいる音ノ木坂に招待された。今は仲間水入らずで楽しめばいいのに『隆也さんも居ないと駄目です』と言われて連れてこられ(連行され)た。穂乃果と海未と希に。

 

だが今回の俺は大丈夫。ちゃんと絵里の為にプレゼントは買ってきている。あとは誰かと被らないように願うだけだ。

 

 

「穂乃果からはお母さんと一緒に作った特製のおまんじゅうだよ!隠し味にチョコを入れてみました!」

「私からはお洋服!がんばって作ったから絵里ちゃんに着てほしいな!」

「私からはブレスレットです。絵里の瞳の色に似せて淡い青色にしてみました」

「凛からはカップラーメン1週間分!凄く美味しいから食べてみて!」

「わ、私はお米を。家で一杯食べてほしいな」

「私は高級チョコ。ママといっしょに選んだから味は保証するわ」

「ウチからは手編みのセーター。そろそろ冬が近くなるからちゃんと着て風邪引かんようにね」

「にこからはネックレス。少し地味かもしれないけど着けなさいよ」

 

 

 

机の上に大量に置かれたプレゼント達。どれも絵里が喜びそうなモノばかり。

 

 

 

「皆…ありがとう。私凄く嬉しい!」

 

喜びながらうっすらと涙を流す絵里。所謂嬉し涙。良かったな絵里……。良い仲間に会えて。

 

 

 

「さて!それでは最後のメインイベント!隆也さんのプレゼントです!」

(滅茶苦茶ハードルあげるじゃねえか…)

「隆也も…プレゼントあるの?」

「そりゃあな。絵里は俺の大事な彼女だし」

「っ…もうバカ……」

 

 

 

「隆也さんって不意を突くの上手いよね」

「胸がキュンキュンしちゃうよ」

「うぅ…やっぱり破廉恥です…」

「絵里ちゃん顔真っ赤にゃ」

「これが…恋する女の子…」

「エリーも彼氏の前では可愛い女の子なのね」

「にこっち…ちゃんと撮ってる?」

「勿論よ」

 

 

なんか色々と言ってくださってますね。というか希とにこ。後でゆっくりお話ししようぜ…『屋上で』。

 

 

 

 

「じゃあ…俺からこれを…」

 

絵里の前に赤と青の色をした小さな箱を差し出す。

 

「ありがとう隆也。開けてみて良い?」

「おう。どちらからでもどうぞ」

 

では、と絵里が最初に赤の箱を開けるとそこにあったのは蒼と白の水玉で描かれてあるシュシュだ。更にはそのシュシュにはデニムで出来たリボンが付いている。

 

 

「これって…シュシュ?」

「あぁ。普段絵里が日常で使えそうなモノで何がいいかなって思って、考えた結果がそれだ。絵里はポニーテールにする時があるから丁度いいかなって」

「凄く可愛い…。本当にこれ私にくれるの?」

「勿論だ」

「…えへへ…。ありがとう隆也」

「っ…おう」

 

絵里の笑顔で俺の顔が真っ赤になったが何とかばれないように平然を装う。

 

 

「じゃあ、次はこの青の箱をどうぞ」

「うんっ」

 

青色の箱を開いた。そこにあったのは女性用の腕時計。デジタルではなく針で時間を刺すアナログタイプ。特に珍しくもない数字が書かれてあるシンプルな腕時計。少し明るめの色を意識してオレンジ色を選んでみた。

 

「腕時計?」

「持っていて困る事はないかと。バイク乗ってる時とか便利だろ?」

「確かに…」

「それと絵里…・・・。持ってた腕時計壊れてただろ?」

「え!?知ってたの……?」

「少し前にな。お前があの時は何も言わなかったけど」

(隆也…そこまで気がついてたんだ…)

「これを機会に新しいのをどうかなと…思いまして…」

 

 

 

「隆也…この2つ、大事にするわね…。本当にありがとう」

「喜んでもらえて何よりです。お嬢様」

「もうっ…誰がお嬢様よ」

「絵里お嬢様?」

「やめて!皆いるところで!恥ずかしいんだから!」

「なら2人っきりだったらいいのか…?」

「うぅ…皆ぁ、隆也がいじめてくる…」

 

 

別にいじめてはいない。からかってるだけだ。

 

 

 

 

 

『イチャイチャするなら家でしてください』

 

 

はいすいませんでした。

満場一致だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー…その、絵里?」

「なに…?」

「改めて、誕生日おめでとう。これからもよろしくな」

「ふふっ…。私のほうこそよろしくね。隆也」

 

 

絵里の頭を撫でると猫のように頭を擦り付けてきた。

 

 

 

(良い1年にしてくれよな…)

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「本当に俺の家に泊まっていいのか?」

「良いのよ。また皆でどこかに旅行に行ければ良いし」

 

パーティーが終わった後、俺だけ帰ろうかと思っていたところで絵里が一緒に帰ると言い出した。

いや流石に今日ぐらい仲間と一緒に過ごせよと言ったのにも関わらず俺の家に泊まると言い張ってくる。

 

μ'sの皆にどうすると聞いたら『遠慮なく』と送り出してくれた。お前らそれで本当にいいのか……。

 

 

「いや良かったかもな。絵里の為に作ったチョコケーキが無駄にならずにすんだ」

「え!?あるの!?」

「まあな。ってかさっきのパーティーで食ったのにまだ食うのかよ」

「甘い食べ物は別腹なのよ」

「女の子って怖い」

「むっ…失礼ね」

 

冷蔵庫から冷やしていたチョコケーキを机に置き食べやすいように小分けする。勿論絵里には多めで。

 

 

 

 

「じゃ、召し上がれ」

「…………」

「ん?絵里さん?」

「…………」

「まさかおなか一杯だったとか?」

「あ!そうじゃないの……その…」

「?」

 

 

絵里が手をモジモジさせながら上目遣いで見つめてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は…私の誕生日だから……隆也に甘えても良いかしら…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?

え?何?この可愛い生き物。え?甘えて…?いったい絵里どうした?いつもこんな直球には言ってこないのにどうした?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……絵里が珍しく甘えん坊だ…」

「い、いいじゃない!たまには……甘えても…」

 

 

可愛すぎるだろ……。

 

 

 

 

「………絵里」

「?」

「ほら、あーん」

「ふぇ!?」

 

フォークでケーキを刺し絵里の口まで運んであげる。

 

 

 

「食べさせてやるよ」

「ん………あーんっ」

「どうだ?」

「んっ…むぐっ……美味しいわ」

「そうか。まだあるからもと食えよ。……あーん」

「あーん…もぐっ…」

 

なんだろう。凄いこれ癒しを感じるんだが。絵里の口にケーキを食べさせてあげると大きく口をあけて飲み込んでハムスターみたいに頬を膨らませて食べてる。

 

「……ほっこりする…」

「ん?ろうひたの?」

「なんでもない」

「?」

 

ステージではあんなに輝いていたクールキャラの絵里がここまで癒しキャラになるとは…。

 

 

 

 

 

(写真撮りたい……)

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

ケーキも食べ終わり、お互いお風呂にも入った。後は寝るだけなんだが……。

 

 

 

 

 

「なんで当然のように俺のベットに入ってるんですか?」

「一緒に…寝ちゃだめ…?」

「頼む。そんな目で見ないでくれ。ちゃんと一緒に寝るから」

「やった!」

 

 

ベットに入るとすぐに絵里が俺の胸に抱きついてきた。

 

 

「隆也…あったかい…」

「絵里も暖かいぞ。湯たんぽだ」

「なら…存分に堪能してね…?」

「仰せのままに……」

 

俺も絵里を抱きしめた。両手を絵里の背中に回して自分の方に引き寄せるようにギュッと力を入れて抱きしめる。

 

 

 

 

「……今度は」

「ん?」

「今度は隆也の誕生日ね」

「俺の?」

「私も…隆也に何かしてあげたいのよ」

「別にいいぞ?俺は今あるこの時間があれば・・・」

「もう。彼女がしたいって言ってるんだからそんな事言わないの!」

「お…おう…」

「私だって…好きな男の人の為に何かしてあげたいのよ…」

「………なら期待してるよ」

「えぇ。目玉が落ちるくらいの事してあげるから!」

「それはそれで駄目だろ……」

 

 

 

 

こんな他愛ない話を続けていると心がすごく落ち着く。この人といると自然と笑顔が出る。

 

 

 

 

「絵里…」

「何?隆也?」

 

 

 

 

 

 

 

 

どんどん時間が過ぎて行き、外の世界もどんどん夜の色に染まっていく。

 

 

 

 

 

 

 

10月…21日……。この日は俺の大事な人が生まれた日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……生まれて来てくれてありがとな。俺はお前がいてくれて幸せだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

君が生まれた事に祝福を……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絵里…Happy Birthday。

 

 

 

 

 




エリチ!Happy Birthday!
ということで絵里の誕生日物語を書きました。
絵里にはこれからもずっと元気でいてほしいですね。


あ、ちなみに新作の希ストーリーですが、まだ少し時間が掛かります。大学の方で色々ありまして……。色々あるのにも関わらず絵里の物語よく書けたなって?
……誕生日なら黙っていないでしょう……!!!



恐らく10月中にはできると思いますので待ってくださる方もう暫くお待ちください!!



では改めて…絢瀬絵里さん!誕生日おめでとう!生まれて来てくれてありがとう!



ではまた会いましょう!……またな!










あ……もしかしたら活動報告で言いたい事書くかもしれないので気が向いたら覗いてみてください。いつになるかは分かりませんが……。


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3つのデレ

さあ、貴方はどれが好きですか?


【ツンデレ】

 

 

 

今は大学での午前講義が終わって、さあいつものお昼タイム。けど今日は弁当を準備する時間が無くてそのまま大学に来たから昼飯は自動的に学食かコンビニのパンかおにぎりになるんだよな。

 

 

「どうすっかな・・・。大学の購買でもいいんだけど高いからできるだけ買いたくないんだけどな」

 

 

普通のコンビニでのパンなら100円少しか120円を超えるか超えないかぐらいだが、大学の購買のパンって140が最低金額なんだよな。あれってぼったくりも良いところだ。学生にはもっと優しい値段にしてほしいぞ。

 

「・・・しかたない。バイク走らせてコンビニかマックス○リューでも行くか」

「隆也。どうしたの?」

 

教室の机に座ってもんもんとしながら悩んでると、俺の彼女にして超絶美人の絵里が近付いてきた。あれ?今日は学部の女の子と飯じゃなかったか?

 

「いいのか俺のところに来て?」

「今だけよ。たまたま貴方が眼に入ったから来てあげたとかじゃないわよ」

(それただただ気になったから俺の場所に来たって言ってるもんじゃないのか?)

 

あ、こいつ耳が赤くなってる。絵里って何かを我慢してるときとか素直になれないときに耳が赤くなるのが癖なんだよな。まあ癖というか反応というか。

しかもそれプラスに顔を少しだけプイッと逸らしてる。

 

 

「で?どうした?」

「あ・・・いや、ちょっと・・・ね」

「?なんだよ。言わないとわからねえぞ?」

「そ・・・その・・・」

 

絵里が自分の鞄をごぞごぞと漁り出し。

 

 

「こ・・・これよ!」

「おっ?」

 

黒いバンダナで包まれた弁当箱を取り出した。

 

「弁当?」

「ち・・・違うわよ!?ただ私と亜里沙のお弁当を作ってて・・・亜里沙がそこまでおかず要らないって言ってたからおかずが余ったのよ。食べないのも勿体無いから隆也に仕方なく・・・仕方なく!お裾分けしようかなっと思っただけよ!」

「おぉ・・・。絵里の弁当久しぶりだな。いいのか?」

「い、いいから渡したのよ!ちゃんと食べなさいよね!?お・・・おいしく・・・作ったんだから・・・」

 

顔真っ赤で手をモジモジさせながら言ってるから可愛さが倍増してるんだよなこれ。

多分絵里の事だから俺の事思って用意してくれたんだろうな・・・。

 

「おう。ありがとな絵里」

 

優しく頭をポンポンと撫でてやるとさっきよりも顔が赤くなる。まるでトマトだ。

 

「っ・・・!」

 

 

 

 

 

 

あ、逃げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弁当を開けるとと、明らかにおかずの残り物ってほどの量じゃないぐらいのおかずがでてきた。から揚げに玉子焼き、きんぴらごぼうと少しのおから。綺麗に切られているうさぎ型のりんご。あとはホウレン草の御浸し。

から揚げを食べると俺の好きなコショウ多めの味付け。流石に肉汁がじゅわっと溢れたりはしないがそれでも凄く美味い。玉子焼きも白だしを隠し味にしてあった。

はっきり言うとこのおかず全部俺の好物ばっかりだ。こういう心遣いが絵里の優しすぎるところなんだよな・・・。

 

 

 

 

 

「また今度絵里にお詫びしないとな。ごちそうさまでした」

 

うん。凄く美味かった。今度は俺が絵里に弁当でも作ってあげようかな。

 

スマホでLINEを開き絵里のトーク画面を開く。キーボードをスライドさせて文字を打ち込む。

 

隆也【弁当ありがとな】既読

既読つけるの早っ。

絵里【全部食べたの?】既読

隆也【おう。全部食べちまったぞ】既読

絵里【その・・・おいしかった?】既読

隆也【おう。凄え美味かった】既読

絵里【あ、当たり前よ!私が作ったんだから!】既読

隆也【だな。また作ってくれ】既読

絵里【べ、別にいいわよ。そこまで言うなら作ってやらない訳にもいかないわね】

隆也【なら、またよろしくな】既読

返信が止んだ。多分顔赤くなって悶えてるところだな。恐らく。

 

あ、それと・・・。

 

隆也【俺の為に弁当作ってくれてありがとな。絵里、大好きだぞ】既読

 

 

 

その後、絵里からのスタンプ連打が止まる事は無かった。

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 

 

【クーデレ】

 

 

 

 

 

 

今日は俺のバイトも絵里のバイトも休みが重なったという事で、久々のデートに勤しむ事となった。いつもは絵里の服を買いに行ったりバイクでそこまで一緒にツーリングしたりなどまあ用途は色々だが、今回は映画を見る事になった。最近上映された恋愛映画を絵里が見たい言い出したのがキッカケだ。まあ確かに俺も久々でちょっとワクワクする。恋愛映画ってワクワクドキドキの他にたまに心がキュンッと締め付けられたりする。アレが俺は嫌いじゃない。

 

「ごめんなさい。待たせたかしら?」

「いや、今来たところだから大丈夫だ」

「もう、嘘は良くないわよ?」

「ちょっとはカッコつけさせてくれよ」

「ふふっ・・・。ならそうしとこうかしら」

 

駅での待ち合わせを予定していて、今の時間は待ち合わせの20分前。やっぱり絵里も映画が楽しみだったんだな。多分絵里自分では分かってないと思うけど1つ1つの動作にソワソワとした感じが入っている。しかも少しスキップ気味。絵里って大学では賢い可愛いエリーチカでいるためにクールに立ち回ってるけどこういう2人っきりの時って少し素がでるよな。いや、嬉しいんだけどさ・・・。

 

 

「・・也・・・隆也!」

「うぇあ!?ど、どうした?」

「さっきから呼んでるのになんで聞いてないのよ」

しゅみましぇん(すみません)い、いはいれす。ほっへはらしてくだふぁい(い、いたいです。ほっぺ離して下さい)

「もう・・・バカッ。せっかくのデートなんだから楽しんでよ・・・」

「・・・悪い」

 

ちょっと申し訳ない事したな。

そんな事考えてると、絵里が俺の右手を左手で握ってきた。

 

「私、今日凄く楽しみにしてたんだから・・・ちゃんとエスコートしないと承知しないわよ?」

(・・・可愛い)

「そうだな。自分に着いて来て下さい。お嬢様」

「えぇ、よろしくね?執事さん」

 

映画館まで手を繋いで歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

映画館に入って、俺はポップコーンLサイズとメロンソーダ。絵里はポップコーンSサイズとカルピスを注文し、チケット購入して中に入った。

座席は1番後ろ。真ん中でもいいんだが如何せん人が多いので少な目の後ろの席を指定。

部屋が真っ暗になり早速映画が始まる。この映画は1人の男性会社員がとある駅で困っている金髪クォーターのお姉さんを助けた事がキッカケで知り合って行き、2人の甘くて切ない物語を描いたストーリー。

うん・・・なんだか俺たちと少し似てる気がする。

 

「・・・・・・・・・」

 

絵里がうっとりとした眼で映画を凝視している。普通なら映画を見なきゃいけないんだがなぜか絵里の方に目がいってしまう。その整った顔が、綺麗な蒼い瞳が、サラサラとした金髪が俺はとても好きだ。

 

 

「・・・・・・見すぎよ」

「お、おう・・・悪い」

 

確かに見すぎてしまった。絵里が横目で俺をジト目で見つめてくる。しかも少しだけ頬を膨らましてムスッとしてる。メロンソーダを口に流し込み映画に目を向ける。

 

 

『貴方が好きです。俺に・・・貴方を護らせてください!』

『私で・・・本当にいいんですか?』

『貴方じゃないと嫌なんです!』

『私も・・・貴方が好きです!』

 

 

 

ついに来た告白シーン。なんだろう、胸がキュッと苦しくなる。やっと恋が叶って感動するシーンなのだが、なんだか俺たち2人との面影が重なって見える。

 

 

 

俺はちゃんと絵里の彼氏としてしっかり出来ているのだろうか・・・。

 

 

 

 

肘置きに右手を置くと、絵里の左手の小指と俺の右手の小指がちょんっと当たる。

絵里も俺も少しビクッとしたが、徐々に指同士が絡み合い手と手が重なって恋人繋ぎになる。

横目で絵里を見ると、顔が真っ赤になり俯いてしまっている。恥ずかしいのかなと思い右手を離そうとすると絵里の方からギュッと強く握ってくる。更にもう離したくないと言っているのかにぎにぎと俺の手を握ってくる。少しくすぐったい。

 

 

 

「絵里・・・?」

「・・・・・・・・」

 

呼びかけても反応が全く無い。

うん・・・今はそっとしておこう。

 

 

 

「・・・・・・隆也」

「ん?どうし・・・・・・んむっ」

 

 

 

 

顔を横に向けて絵里の方を見ると、絵里との顔の距離がゼロになり俺の唇と絵里の唇が触れる。別に激しいキスでもないが、愛を確かめれるぐらいのフレンチなキス。しかも絵里からしてくる事が特に珍しい。

でも場所が映画館で他の人に見られるわけにもいかないので、そっと唇を離す。すると絵里が顔を真っ赤にしながら俺の耳元に口を近づけて呟いてきた。

 

 

 

 

 

 

 

「ずっと私の事・・・護ってね・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 

【ヤンデレ】

 

 

 

 

 

「えっと・・・絵里さん?」

「んー・・・?」

「な、なんで俺は押し倒されているのでしょうか?」

「黙ってて」

「うっす」

 

 

夜になって今日は絵里が俺の家に泊まりに来てるんだが、来た途端に暗い顔を、いや黒い顔をしながら俺の事をベットに押し倒してきた。そこから俺の体のあちらこちらの匂いを嗅いできて頬や額をグリグリと押し付けてくる。一体どうした?今日はいつも通り大学に行っていつも通りの日常を過ごして明日が祝日だから絵里が俺の家に泊まりにきただけなんだが・・・。

 

 

「なあ絵里どうした?今日は何時もより甘えん坊というかなんというか・・・」

「そう?私はいつでも隆也になら甘えられるわよ?時と場所関係なしにね」

「いや時と場所は考えなきゃいけないだろ」

「私は隆也が好き。好きな人とずっと一緒にいたいと思うのはおかしいことかしら?」

「いや、全然おかしい話ではないが・・・」

「なら良いじゃない。んんぅ・・・隆也の匂い好き・・・」

「ぅ・・・少しくすぐったいぞ絵里・・・」

「我慢して・・・。隆也に私の匂いをつけるためなんだから」

(に、匂い・・・)

 

いや、まあ嫌ではないんだぞ。絵里にこうやってされるの。けどいつも泊まりに来た時にこんな事は中々しないんだ。少し抱きついてきたりするくらいだが・・・。

 

 

「ねえ隆也」

「お?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで貴方から別の女の匂いがするの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、頭を掴まれて絵里の方に引き寄せられた。

 

 

 

 

「!?」

「ねえ?どうして?どうして別の女の匂いがするの?ねえ?」

「ちょ、ちょっとまて絵里!いっ・・・いてぇ・・・」

 

女性とは思えない力で俺の頭を鷲掴みにする絵里。しかもその顔を良く見たら目のハイライトが消えている。

怖いけど・・・ちょっとゾクッとしちまった。

 

 

「ま、まて・・・ちゃんと話すから待ってくれ・・・」

「・・・・・わかった」

 

話は一応聞いてくれる感じだな。俺の頭から手を離す。

 

 

まあ、俺の体から女の人の匂い?がするのか知らないが、一応心当たりはある。

今日の昼過ぎぐらいに大学の図書館にある、とある参考文献を見ながらレポートを書いてくださいと言われて探してたとき。俺よりも、最悪絵里よりも背が低い女の人が本棚の高い場所にある本を頑張って背伸びして取ろうとしていたんだ。横目でずっと見てたんだがいてもたっても居られなくなって変わりにとってあげようかと近付いたんだ。その時頑張って背を伸ばしてた女の人の足が本棚に当たって高い段においてある本が落ちそうになっていた。

急いで近付いて女の人の後ろから本棚を支えたわけだ。その時俺の胸に女の人が背中から倒れてきて、完全密着。多分・・・そのときの接触でついた匂いだと思う・・・。

 

 

 

その一連の流れを絵里に話した。

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・絵里?」

 

 

 

 

 

 

 

刹那、絵里が俺の首筋に吸い付いてきた。

 

 

 

 

「ふぁ!?」

「んっ・・ぢゅっ・・・」

「うぁ・・・え、絵里・・・うっ・・」

「ん・・・・・ぷはっ・・・」

 

机に置いてある手鏡で俺の首筋を見るとそこには真っ赤になったキスマークが1つ。

 

 

 

「絵・・・里?」

「ダメよ。隆也は私のモノよ。他の女には絶対渡さない。匂いも絶対に残さない。隆也、希やにこは仕方ないかもしれないけど出来る限り、いえ・・絶対に他の女と喋っちゃだめ。私だけをずっと見て。私だけを愛して。貴方はずっと私の側にいればそれでいい。愛してる・・・隆也」

「お・・・俺はずっと絵里が大好きだぞ?他の女の子を好きになったりしない」

「本当?」

「本当だ」

「嬉しい・・・けど、それだけじゃ信じられない・・・だから・・・」

「だから・・・?」

 

 

また首筋にキスマークかと思ったら・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・がぶっ!」

「いッッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吸い付くでは無く・・・『噛み付いてきた』

 

 

 

首の肉に絵里の歯が喰い込み、そこから真っ赤な鮮血が溢れてくる。それが首筋を伝っていき俺の鎖骨部分まで流れてくる。

 

 

「じゅるっ・・・じゅるるる・・・んくっ・・・ぢゅっ・・・」

 

まるで吸血鬼のように俺の血を吸い取っていき、綺麗に喉を鳴らしながら俺の血を大事に大事に飲み込んでいった。

 

 

「・・・・・・ごくっ・・・ぷはっ・・」

 

 

 

俺の首筋から顔を離した絵里が俺の目を見つめてきた。その蒼い瞳はいつもより輝いており、艶かしく感じた。まるで獲物を捕らえた捕食者かのよう、それか好きなものをやっと手に入れて喜んでいる子供、はたまた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

肉を貪る肉食獣のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

それの証拠に、唇の端から垂れていた俺の血を舌で舐め取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隆也・・・私だけの隆也は・・・・・・誰にも・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ダレニモワタサナイ・・・】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・という夢を今朝見たと言うわけだ。いやぁ、色々な絵里の一面が見れて俺は楽しかったけどな。はははっ!!」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、俺に噛み付いた首筋のところを涙目になりながらずっとペロペロしてきた。




はい。久々にこちらの方で投稿しました。

皆さんはどのデレが好きでしょうか?自分はツンデレが1位かもしれないです。いや、この頃ヤンデレもいいかもと思ってきてるので断定できませんが、今の自分の中ではツンデレですね。


今回ツンデレ、クーデレ、ヤンデレを書いてみましたが似ていたでしょうか?もしかしたら違うかもしれないのであしからず。


絵里のデレなら何でも大好きです。はい。





では!今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!

では・・・またな!


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寂しがり屋

寂しくなった彼女に甘えられたい人生だった・・・。


あ、今回の話の設定です。

隆也(22):会社員
絵里(22):専業主婦

まだ結婚をしてはいません。

ではどうぞ。


隆也と結婚を前提とした同棲を始めて早3ヶ月。毎日が幸せに感じる。一緒のベットで寝て、一緒に起きて、一緒に朝ごはんを食べて、仕事に行く隆也を見送って、帰ってきた隆也に「お帰りなさい」と言って、一緒に晩御飯を食べて、また一緒に寝る。

こんな当たり前と証された毎日が私は・・・とても好き。

 

大学時代に私は隆也に出会って、そして恋をした。大学に入る前は【私に恋なんて訪れない】と思っていたが、まさか1年生の時に好きになる男性と出会うとは。

世の中何が起こるかはわからないものね。

 

でも、私は今、とても寂しい。

 

付き合ってもう4年は過ぎているのにも関わらずこんなに寂しくなるのは過去で5本の指に入るのじゃないかと言うくらい寂しい。

 

別に隆也が私に冷たくしてくるとかはまったく無い。いつも私に優しくしてくれている。笑顔の私の頭を撫でてくれたり、作った料理を毎回おいしいと言ってくれる。かなり満足している。

 

ではどうして寂しいのか?

最近隆也の残業が長引く日が続いてしまって帰りが遅い。ある日は日にちを跨いで帰ってくるときもあり、またある日は会社に寝泊りしている日もある。

仕事をしてない私からしたら何も言えないが、もっと早く帰ってきて欲しい。

日にちを跨がない時に帰って来ても疲れがピークに達してるので着替えてすぐ寝てしまう。

 

単刀直入に伝えましょう。

隆也に甘える時間があまりにも無い。

 

私だって、いくら賢い可愛いエリーチカと呼ばれていても、どれだけクールな生徒会長だと呼ばれていても、私だって甘えたいと思う時ぐらいある。同じ人間。食欲、睡眠欲もあれば性欲もある。

私だって女の子なのだから隆也に抱きついたり、頭をもっと撫でてもらったり、もっとキスだってして欲しい。

欲求不満なの?と言われたらぐうの音も出ないかもしれない。

 

 

 

そう。

 

 

 

 

隆也成分が不足しているのだ。

 

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

時間と場所が変わってここは私と隆也の同棲所。

 

家賃もそこそこの1LDKのマンション。

時間は午後の10時半。

 

いつも通りに隆也と食べる晩御飯を用意していたのだが、この時間になっても隆也は帰ってこない。恐らく今日も残業。

 

 

「・・・・・・まだかな」

 

私の口から出た言葉は静かな居間の空間に消えていった。

この言葉を何回発したか10回のところから覚えていない。同棲を始めてこういうのも何度も体験してるから慣れてはいるが、私はこの時間が好きじゃない。1人でいるという孤独感が強く感じる。

 

 

「早く帰ってきてよ・・・」

 

 

そんな事をまた呟いてると願いが届いたのか家の玄関が開かれた。

 

 

 

 

「ふぅ・・・ただいま」

「あ!お帰りなさい隆也!」

 

スーツ姿で帰ってきた最愛の彼氏の横山隆也がフラフラしながら家に入ってきた。

 

「久しぶりじゃないこんな時間に帰ってくるの」

「今日はなんとか早く終わらせる事ができたんだ。先に寝てくれて良かったのに・・・」

「そ、そんな事できるわけ無いじゃない!い、いつか貴方の・・・つ、つつつ・・・妻になるんだから!!」

「ふっ、そうだな奥さん」

 

これはいつもしてくれる事。帰ってきた隆也に頭を撫でてもらう。隆也の私より大きくてゴツゴツした手が私は好き。虜になってしまっている・・。

 

「えへへっ・・・。あ、お風呂にする?ご飯にする?」

「んー、作ってもらってるからご飯からかな?」

「分かったわ。鞄とスーツなおしてくるから先に座ってて!」

 

隆也の脱いだスーツと渡された鞄を持って寝室に持っていく。なんだかこれって・・・本当の奥さんみたい・・・。

 

 

「はっ!ま、まだ気が早いわよ絵里!もっと色々勉強しなきゃいけないのよ!」

「何独り言いってんだ絵里?」

「きゃあああああ!!」

「ぬぎゃあ!?」

 

寝室に顔を覗き込ませた隆也の目に渾身の目潰し。

 

 

 

こういう処は変わっておりません・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「いてて・・・日に日に目潰しの威力が強くなってる気が・・・」

「ご、ごめんなさい・・・」

「慣れたからいいけど・・・目潰しに慣れたらダメか」

 

椅子に深く腰を下ろした隆也の前にゆっくり煮込んで作った豚汁とご飯と鯖の塩焼き、あと少々の野菜の詰め合わせを出す。

 

 

「「いただきます」」

 

 

ちょっと遅い晩御飯だけどこういうのも良いわよね。

 

 

 

「んっ・・・美味い」

「ふふっ、ありがとう」

「絵里のご飯は本当に美味いな。幸せだ」

「褒めすぎよ。今の女ならこういうの簡単に作るわよ」

「俺も頑張らないとな」

「隆也が頑張ったら私のご飯が弱く見えるから絶対ダメ」

「よ、弱く・・・?」

「分かった!?」

「はい!!」

「おかわり居る人!」

「はい!!」

 

隆也のお茶碗を持って炊飯器の前に。大学時代から変わらず沢山白米をおかわりしてくれている。まるで花陽ね。

 

 

「はぁ・・・」

「どうしたの?今日も疲れた?」

「いやぁ・・・幸せだなって」

 

 

ご飯を入れてる手が止まった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・え?」

「絵里のお迎えがあって、絵里のご飯を食べれるっていうこの当たり前の生活がとても幸せだっていうことだ」

「っ・・・・・・!」

 

 

もうなんでこの男はこう恥ずかしい事をサラリと言うのかしら。あれかしら天然なのかしら?大学時代から一切変わってないのよねこういう処!いや、嫌と言うわけじゃないのだけれど心にはちょっと厳しいというか、ドキドキが止まらないというか。

 

 

「おーい絵里。白米どれだけ乗せる気だ?」

「へっ!?」

 

手元を見ると山のように積みあがった白米が。

 

 

 

 

 

「俺にこれを喰えと?大食い選手か俺は」

「・・・・・・・・・私も一緒に食べます・・・」

 

 

 

2人で美味しくいただきました・・・。

 

 

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

お互いお風呂にも入って今の時間は新しい日付の午前1時。こんな時間に寝るのは肌に悪いが仕方ない。隆也の事を待つのも未来の嫁の勤めなんだもの!

 

 

「ね、ねぇ隆也。明日も・・・早いの?」

「ああ。明日も早出なんだ」

「そう・・・大変ね」

 

パジャマに着替えてベットに座り込みながら交わす少しの会話。私達は2人で1つのベットを使っている。2人でも使えるために幅がデカイベット。あの・・・いい難いけど・・・あんな感じのホテル並のベットの大きさ。

 

 

「じゃ、おやすみ」

「おやすみなさい・・・」

 

 

やっぱり今日も隆也に甘える事は出来なかった。向こうの方に隆也が顔を向けて眠ってしまったので、首を

傾けると隆也の大きな背中が見える。女性はなぜ男の人の背中が好きになるんだろうか。男の人の包容力から来るものなのかは分からないが、私は隆也の背中が大好き。

けど甘えたい時に甘えられなくて、このすぐ近くに隆也がいるのになんだか遠くにいる感じがする。手を伸ばせばすぐに触れれるのに、感覚では遠く感じる。

 

 

「っ・・・」

 

そんな事を考えてると涙が出てしまった。

寂しくなんかないのに。ただ甘えれないだけなのに、それだけなのに・・・。

 

 

(ダメ・・・隆也が起きちゃう・・・)

 

私も大学時代からなんにも変わっていない。こういう弱いところも変わっていない。音ノ木坂の時はみんなに頼られる立場だったから強い存在で居るために強くいることができたが、大学に隆也と出会ってから弱い絢瀬絵里になってしまった。

 

 

(だめ・・・なのに、涙がでちゃう・・・)

 

 

隆也にばれないように手で涙を拭っていると。

 

 

 

 

「ふぇ・・・・・・?」

「どうした?絵里」

 

 

隆也が私の頭を撫でてくれていた。

 

 

 

「あ、ご・・・ごめんなさい。起こしちゃって・・・」

「いいんだよそれぐらい。それで・・・なんで泣いてたんだ?」

「な、なんでもないわよっ。なんでも・・・」

「・・・・・・」

 

私の馬鹿。隆也がここまで心配してくれているのに私はどうしてこの人の前だとこういう態度を取ってしまうのだ。

 

 

 

「絵里」

「なに・・・きゃっ」

 

 

次の瞬間、私は隆也の胸の中で抱きしめられていた。

 

 

 

「その、ごめんな絵里。仕事が忙しいから絵里に割ける時間を作れなくて」

「そ、そんなこと・・・」

「俺は・・・将来は絵里の旦那になるからさ。奥さんが泣いてたら俺も悲しくなっちゃうからさ。できれば、話してくれないか?お前の力になりたいんだよ俺は」

「隆也・・・」

「それとも、俺はそんなに頼りないか?」

「そっ!そんな事ない!隆也は私に優しくしてくれているのにそんな事思ってないわよ!ずっと前から・・・頼りにしてるわよ」

「うん・・・そっか」

 

また頭を撫でてくれる。こうしてると凄く落ち着く。

 

 

 

 

 

 

「私・・・隆也に甘えたかったの・・・」

「甘えたい?」

「仕事だから仕方ないのよ。けど、私も女の子だから、隆也に甘えたくなる時もあるのよ。けど、最近・・・隆也と一緒にいれる時間がすくないから尚更・・・」

「・・・寂しい想いさせてごめんな」

「いいのよ。仕方ないんだから・・・・・・」

「ならっ・・・よっと」

「え?きゃあ!?」

 

 

隆也の手に引かれて気付いたら隆也の膝の上に対面座位で跨る私。

 

 

 

 

「いまから少しだけ甘えさせようか」

「け、けど隆也明日も仕事・・・」

「いいんだよ。奥さんのケアも旦那の仕事だから」

「でも・・・」

「でももへったくれも無い。良いからおいで」

「じゃ、じゃあ・・・」

 

隆也の首に手を回して抱きつく。近付いている分隆也の匂いが鼻につく。凄く良いにおい・・・。

 

 

 

「すんすん・・・」

「匂うか?」

「ううん・・・好き・・」

「そっか」

「隆也に匂いのマーキング・・・」

「そんな事しなくても俺は絵里一筋だぞ?」

「そうだけど・・・念には念を」

「はいはい・・・お好きなように」

 

 

少しずつ顔を動かして言って隆也の首筋、耳元、そして最後に顔の真正面。

 

 

 

「好き・・・」

「俺もだ」

「大好き」

「そうだな」

「隆也も言って・・・」

「俺も大好きだぞ」

「・・・・・・えへへっ」

「可愛いなこいつ」

「うふふ・・・・・・んっ」

「おっ?」

 

隆也の頬に軽くキス。右頬に数回。左頬に数回。

 

 

そして最後に口にキス。

 

「んっ・・・えへへ」

「嬉しそうだな」

「だって、久しぶりなんだもん」

「だな。キスもいつ振りかってぐらいだな」

「そうよ。愛を確かめるにはキスが1番。だから・・・もっとするの」

「おう。好きなだけやれ」

「はぁーい。ん・・・ちゅっ」

 

 

特に破廉恥な事はしていない。ただキスを交わす。隆也が仕事が休みの日は心も体も可愛がってもらうが今はそんな事はしない。

今はこれで充分・・・。

 

 

首に巻きつけている腕の力を強くすると隆也も強く私を抱きしめてくれる。密着すればするほど幸せを感じる。凄く気分がいい。

 

 

キスをすると隆也の唇を独り占めできる。柔らかい唇を味わってるとたまに隆也の体が震える。それを体で感じるとなんだかいけない気持ちになる。けど今はダメ。この先は隆也の仕事があるときまでお預け。

 

 

 

 

 

 

「ねえ隆也」

「んー・・・?」

 

 

 

 

これからも私はこの人と生きていく。

 

 

今回の話は私と隆也の日常の1部でしかない。

 

 

これから先どうなるかは、想像に任せるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・愛してる」

「あぁ・・・俺もだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、絢瀬絵里は、横山隆也が大好きです。

 

 

 

 

 

 

 

これは、寂しがり屋の女の子の日常の1ページのお話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【おまけ】

 

 

 

 

 

 

 

 

「隆也!お帰りなさい!」

「ただいま絵里。久しぶりに帰ってこれたぜ」

 

家に入ってきた隆也のスーツの上着と鞄を預かり、昼前に練習した言葉を発する。

 

 

 

 

 

 

「お風呂とご飯と私でいいですか?」

「えっ?全部?」

 

 

 

 

 

だって、明日はお仕事お休みだからね。

 

 

 

 

首を傾げながら問い掛けると隆也の顔が少しだけ真っ赤になる。そしてそこに間抜けな顔も含まれる。

 

 

 

 

 

 

(その顔が、私にとって最高のご褒美です♪)




なんでこのような話が出来てしまったのか?
妄想してたらこういう話ができてしまいました。後悔?するわけがない!!
アホな発言はこれぐらいにしますか。

え?この話を書く前に希の話を書け?

・・・・・・・・・(顔逸らし)

あーごめんなさい!許してくぁwせdrftgyふじこlp・・・。(ゆるキャン△いいですよね・・・。大塚さんのナレーションも特に)



実は自分の乗っているバイクが故障してしまいそちらの方に時間を回させております。
まーた面倒なところが壊れてしまいまして・・・分解に時間がかかる。その逆も然り。

また投稿しますのでよろしくお願いします!


では今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!


では・・・・・・またな!!


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こんなデート

お久しぶりです


「どうしようかしら・・・・・」

スマホに写るのは我が最愛の彼氏、横山隆也とのトーク画面。明日は2人とも学校もバイトも休みの上での休日になる。私達はこう言った休みの日には隆也の家でゆっくりと過ごす、バイクでどこかにいく、2人でデートに行くと言った充実した日を過ごしてきた。

そんな中、今は春になりかけている時の中。私も一介の女の子なのだ。流行の服を着てお洒落にしゃれ込みたい年頃でもある。

というわけで明日は隆也と一緒にデートに行きたいわけ、な・の・だ・が!!

 

たまには私から隆也をデートに誘ってみようかと思ったわけなのだが、どんな風に誘えばいいのか分からない。いつもは隆也からデートに誘ってくれていたからこんな事考える事はなかったのだが、いざやってみようかと思うと初っ端から挫いてしまった。

 

「関西風に・・・遊びに行かへん?とかは、いやダメよ。なんだか軽く感じるし男友達みたい!!」

 

できればもっと可愛く誘いたいのだが・・・凄く恥ずかしくなってしまう。今まで何度もデートには言ってるのに今更何を言っているのか・・・。

 

 

「はっ!ちょっと可愛くすればいいんじゃないかしら?」

トーク画面のキーボードをタッチして文字を打ち込んでいく。

『明日一緒にデートにいかないでござるか?』

「いやこれは流石に可愛くなさ過ぎたかしら!?いつもの感じじゃないから変に思われるんじゃないかしら」

 

 

 

『明日一緒にデートにいかないでござるか?』既読

『ん?どうしたんだ?(゜-゜)笑』既読

 

 

(うぅ・・・やっぱり可愛くなかったかしら)

 

 

 

『勿論いくでござる(^^)たのしみだな』既読

 

 

 

「~~~~~~~っ。よっしっ」

 

 

そうと決まれば明日の準備。まだ寒い時期だから暖かく可愛い服を着ていかないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『真似しないで!隆也のバカ!』既読

 

 

 

「・・・・・・はーっ。なんだござるって。可愛いすぎるだろうが・・・。罪な子だぜ」

 

 

絵里が可愛すぎるあまりベットの上でニヤニヤが止まらない隆也であった。

 

 

 

***

 

 

 

 

今日も一段と冷え込んでいるな。

一応ダウンは着込んでいるがまだ少し寒い。大きく息を吸って吐いたら息は綺麗な白色になっている。

今の時刻は10時半。駅前での待ち合わせは10時50分だが少し早かっただろうか。いや完全に早いな。

 

今日は絵里の春物の服探しと雑貨屋巡り。最後には一緒に晩御飯を食べて終了といったプラン。

時間があったら俺も少し薄めの服でもみようかね。バイクに乗ってるときは厚着はするけど大学での時間では熱いのには絶えれないからな。

 

「ごめんなさい。結構待ったかしら?」

 

上を向いてボーッとしていると絵里が小走りで近付いてきた。

 

「いや、全然。俺もさっき来たところだから」

「そっか。よかった」

 

絵里の服装はグレーのマフラーに茶色のフード付きコート。ボタンは空けたままで中は赤色の縦編セーター。小さなポシェットにズボンはジーンズ。髪は今日は珍しく下ろしてるんだな。可愛い・・・。

 

「あれだな。可愛いな。どうしてくれようかこの可愛さ」

「知ってる」

「うんうん・・・そっかそっ・・・ん?」

「隆也に可愛いって言ってもらいたくて業と可愛くしてきたのよ」

「なんだと」

(マジか興奮するな・・・)

「だから私の事もっと可愛いって言って。セイ、リピートアフターミー。可愛い」

「可愛い」

「もっと。可愛い」

「可愛い」

「ワンモア」

「可愛い!」

(なんだよ無茶苦茶可愛いじゃねえか・・・)

「ありがとう隆也。さ、行きましょうか」

 

なんとか平然としてるようだけど絵里さん?顔真っ赤ですよ?

 

 

「・・・・・・・・・満足したのか」

 

 

 

 

「今日は服選びと雑貨屋だけでいいのか?」

「私はそれくらいでいいわ。隆也も行きたいところある?」

「俺はお前の荷物持ち係だからな~。特に考えてなかった」

「ごめんね・・・付き合わせて」

「いいんだよ。彼女なんだから」

「・・・・・・ばか」

「ははっ・・・そうだな」

 

優しく頭を撫でられるのが好きな絵里。外見はツンツンして子供扱いしないでって主張してるが全く逆。無意識に頭を押し付けてきてもっと撫でてと催促してくる。

 

電車に乗ってあたりを見渡すが座れる場所は・・・・・・・・・おっ。あった。

 

 

「絵里、そこ座れよ」

「え?私は別にいいわよ」

「うそつけ。ヒール疲れるだろ?」

「うっ・・・バレてた?」

「最初から。歩き方が何時もと少し違ってたからな」

「ばれないように歩いてたつもりなのに・・・。逆に気を使わせちゃったわね」

「謝らなくていいから座れ」

「うん、でも隆也が座れないわよ?」

「俺はいいんだよ。特にヒールも履いてるわけじゃないしよ。疲れてるわけでもないし」

「うぅー・・・」

「大丈夫だよ。俺に気にせず座っとけ」

「・・・分かった」

 

絵里が腰を下ろした目の先に立つと絵里が不安な顔を浮かべながら上目遣いで見てくる。どうしたのかね?

 

「なんだ?」

「私だけ座るのはなんだか嫌」

「我侭か」

「ずっと隆也を立たせるのは凄く申し訳ない気がして・・・」

「そんなに?」

「しかも今日の目的地はまだまだ先よ?2駅後に交替しましょ」

「そこまで座りたそうな顔してるか俺?」

「だって隆也も疲れるから」

 

優しすぎる。別にそこまで心配する必要は無いのにもだ。伊達にバスケや柔道をしてた訳じゃないんだ。この程度の立っていることくらい朝飯前だ。あの頃から馬鹿みたいに足腰は鍛えたからな。

 

 

 

 

「心配してくれてありがとな。気にするな」

 

 

 

もう一度優しく頭を撫でると下を向いて顔を真っ赤にしながらうーうー唸っている。

 

 

 

 

(優しすぎるわよ・・・隆也のバカチン・・・)

 

隆也の笑顔に負けた絵里である。

 

 

 

その後、入ってきたご年配の人に席を譲り、隆也の手に手を絡ませながら目的地までずっと絵里がくっ付いてきた。

 

 

 

 

目的地到着。ここはカップルなどがよく訪れるショッピング街。右を見てもカップル。左をみてもカップルといった状態。

しかもどいつもこいつも手を握り合ってイチャイチャしてやがる。おのれリア充が。

 

「貴方もリア充よ」

「心を読むな」

 

女性って怖いよね。

 

 

「ちなみに絵里はどんな服がいいんだ?」

「んー・・・。春が近いから少し涼しめで明るい色の服がいいわ」

「ほう、因みに種類は?」

「よく着てるカーディガンとか薄手のワンピースかな」

「また可愛くなっちまうじゃねえか・・・」

「嬉しくない?」

「嬉しくないわけが無い」

「ならいいでしょ」

「おう」

 

また顔赤くなってる。あれか?お姉さんの余裕とした処をみせたいのかお前は。絵里がお姉さん・・・。アリかもしれない。けどこうやって頑張ってるのにも関わらず顔を赤くして照れてるのがまた可愛いんだよな。頑張れ絵里。お姉さんとしての絵里も好きだぞ。

まあそんな事を頭の隅で考えながらデパートの中に入りエスカレーターを使い上階にあがった。上がりきって前を見るとこれまた視界一杯に広がった洋服店。しかも女性向けが盛りだくさん。今の人気の品が展示してあったり、大きく『広告の品!』とラベルを貼られたもの、または『20%』オフといったものも多々あり。女性服は男性の服よりよく売られるようだな。ま、お洒落が好きな人がほとんどだろうしな。絵里も含めてな。勝手な偏見かもしれないが・・・。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・ん?」

 

あたりを見て回ってると急に絵里が歩みを止めた。絵里の見ている視線の先を見てみると今月から出てきた新作のワンピースが飾られてあった。

ピンクに仕立てられたワンピースで生地は少し薄めで、肩がだいぶ露出してある仕様となっている。ちょっと場所を移して背面を見てみると首元が紐で結ばれていた。女性の首筋が好きな人は彼女にこれを着させてみるといいだろう。俺?着せたいよ(超真面目)

 

 

「着たいのか?」

「え?あ・・・いや・・・」

「いいじゃねえか。着てみろよ」

「・・・いいの?」

「逆に聞くが着ちゃダメなのか?」

「うぅ・・・分かった」

「よし」

 

近くにいる従業員さんを呼び、絵里の体に合う服のサイズをいくつか出してもらい更衣室に入った。色はピンクの他にも水色、白色、薄い黄色、紅色などなど様々。

今頃絵里は更衣室の中でもぞもぞしながら頑張っているのだろう。しかし深く考えていると絵里のこういったワンピース姿を見るのは初めてかもしれない。いままでのデートではスカートなどの服は着ておらず動きやすさ重視でボーイッシュな格好が多かったからな。特にズボン。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

これ以上絵里が可愛くなりすぎたらどうしよう俺。直視できなくなる。絶対に。いや・・・彼氏という立場上動じてはいけない時は何度もある。ここはポーカーフェイスを貫いて胸を張って褒めるべきか。

 

 

「り・・・隆也」

「・・・・・・おう」

 

結果、頑張ってポーカーフェイスします。

 

 

更衣室のカーテンが開かれて絵里が姿を見せた。

 

「おぉ・・・・・・」

 

言葉を失った。今来ているのは絵里のイメージカラーとも言われている水色なのだがかなり似合っている。しかも絵里の抜群のスタイルが綺麗にアピールされていた。肩も露出しているから撫で肩である絵里の肩が顔を出しており、後ろを振り向いてもらえば首筋、うなじが出ていた。

 

「どうかしら・・・?」

「悪い、言葉詰まってしまった・・・。あまりにも可愛すぎて・・・」

「か、可愛い?」

「かわいいし・・・もうっ・・・好き」

「っ~~~~」

 

率直な感想を言うと絵里がカーテンの後ろに隠れてしまった。だがものの数分でカーテンからひょこっと顔を覗き込ませる。

 

 

「・・・・・好き?」

「好き」

「本当・・・?」

「おう」

「・・・・・・えへへっ」

 

可愛い・・・・・・。

 

 

「すいません店員さん。これ全部下さい」

「隆也!?」

「かしこまりました!!」

 

 

 

***

 

 

 

 

「隆也の目が怖い」

「怖くない」

「怖いわよ!」

 

いい時間になったのでディナーのお時間。ファミレスは何度も行っているので今日は少し別の飲食店に向かった。ちなみに予約済み。

今日は色々と歩き回って腹も空いているからボリュームのある料理が食べたいと絵里が言うだろうから勝手な先読みで良い場所を確保しておいた。まあ絵里が喜んでくれているからいいんだけどさ。

 

因みに店は肉料理専門店。

 

 

 

 

「ん~~~~っ!」

肉を頬張ったまま腕を小さくブンブン振って喜んでいるご様子。

「美味いか?」

「おいしいっ!これ好きっ!」

「それは良かった」

「うぅっ・・・凄く美味しい・・・ありがとう隆也」

「おう」

 

いやはや、まさかこんなに喜んでくれるとは探した甲斐があるというものだ。ほらほらそんなにほっぺに詰め込んで食べなくてもも大丈夫だぞ。肉は逃げないから。あー、ほらほら口元汚してるぞ。

 

 

「んん・・・」

「まさかの高評価だな」

「お肉は食べたいって思ってたし、しかも焼肉とは違った肉料理まで食べれたし・・・隆也ってエスパー?」

「な訳ないだろ。偶然だよ」

 

確かに美味い。これ白飯あればもっと食えそうな気がする。

 

 

 

「・・・・・・・・・」

「んむ?隆也?」

「ん?」

「どうしたの?ボーッとして」

「あー、いや大した事じゃない」

「何よ気になるじゃない」

「少し思うことがあっただけだよ」

「何よ」

 

 

 

 

 

 

「絵里の事好きだな・・・てことをだよ」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・っ!?」

 

 

 

 

 

今更好きって言うのもなんだが今想っている言葉をそのまま絵里に伝えた。すると絵里が口の中で噛んでいた肉料理を凄い勢いで噛んでいきいい喉越しを立てながら飲み込んだ。

 

 

「な、ななななななによいきなり!」

「想った事を言っただけなんだが・・・」

「恥ずかしいじゃない!」

「す、すまん・・・」

 

顔が真っ赤になっている絵里だが嬉しいのか顔が凄いにやけてる。必死に隠そうとしてるが残念ながら手遅れでございます。

 

 

「絵里は・・・?」

「え?」

「絵里は、俺の事好き?」

「そ、それ今聞くの!?」

「たまには言って欲しいんだよ」

 

 

(ど、どうしよう・・・確かにそれは伝えたいけど・・・・・・)

 

 

 

「―――――――・・・・・・・・・み、」

「み?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「みーとぅー・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?なんだって?」

「あ、いや、ミートパイが美味しいお店できたからそこ行きたいなって思って・・・」

「あー、うんうん。今度行こうな」

 

 

 

 

(「Me too」は可愛すぎるだろこの野郎・・・・・・)

 

 

お肉はおいしくいただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間も遅くなってきて景色も黒くなってきた。腹も肉で一杯になったので俺は絵里を駅まで見送っていた。

 

 

「楽しかったか?」

「えぇ、とても」

「良かった」

「ありがとう隆也」

「いえいえ。どういたしまして」

 

握っている手を強く握ってくる絵里。俺もできることならもう少し絵里と一緒に居たいのだが残念ながらそうも行かない。明日はお互い学校もあるしな。またデートをしたいものだ。

 

「ねえ・・・」

「お?」

「また・・・デートしてくれる?」

「勿論」

「なら・・・今度その・・・さっき言ってたミートパイのお店に行きたいわ」

「いいぞ。今度はバイクで行こうか」

「ツーリング?タンデム?」

「絵里の好きな方で」

「なら久々にツーリングにしましょ」

「了解」

 

ミートパイか。また絵里の顔がハムスターみたいになるんだろうな。こっそり写真とってやる。

そうやって次のデートの話や学校での日常での話しをしていたら駅に到着してしまった。楽しい時間はすぐに過ぎるっていうのは本当だな。

 

 

 

「ついたぞ絵里」

「・・・・・・えぇ」

「また明日会えるんだからそんな悲しそうな顔するなよ」

「そうだけど・・・もう少し一緒にいたかった」

「仕方ないだろ。また行こうぜ」

「うん・・・・・・わかった」

 

拗ねて頬を膨らませる顔もまた可愛い。これを口に出したら殴られるだろうから絶対に言わない。

 

 

 

 

「・・・・・・っ・・・・・・っ」

「絵里さん?」

 

急に絵里が首を右に左にと振ってキョロキョロし始める。しかもその顔がとても赤い。

 

 

 

 

 

突如。

 

 

 

 

「えっ?」

「んっ・・・・・・」

 

 

 

絵里が俺の服の襟を掴んで自分の方に引き寄せた。勿論俺はそのまま引き寄せられ絵里との距離が零距離になった。唇には柔らかい感触が。愛を深めるキスではなく触れるだけの優しいフレンチな口付け。

唇が離れると絵里が顔を真っ赤にしながら上目遣いで見つめてくる。

 

 

「絵里・・・?」

「~~~~っ」

 

 

そしたら自分の服のフードを勢いよく被せる。

 

 

「じゃあまたね!」

「!?」

 

 

絵里はそのまま俺に背中を向けてスタスタと駅の中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不意打ち・・・・・・ズルイだろ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

胸がドキドキして仕方が無い。あんな急なキスにときめかないわけ無いだろ・・・。あいつ今度覚えとけよ。壁ドンしてキスしまくってやる。

 

 

 

 

 

 

ピロリンッ

 

 

 

 

「ん?」

 

 

 

『絢瀬絵里』

 

 

 

 

「メッセージ?」

 

スマホの画面をスライドさせトーク画面を開く。そこには・・・。

 

 

 

 

「・・・・・・ははっ」

 

 

 

 

 

 

『言い忘れてた』

『私も隆也の事が大好き!』

『だっ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなデートも、いいものだな。

 

 

 

 

 






彼女とこんなデートをしてみたいと思って書いた話でした。

女性からのイキナリしてくるキスって最高にときめくと想うんですよ。特に自分は!



そして報告です。
活動報告にアンケートを書きましたのでよろしければお答えくだされば幸いです。


では今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!


では・・・・・・またな!


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私は隆也と寝たい

はい、リクエスト投稿一回目です。様々なリクエスト色々とありがとうございます。
出来る限り応えようと思いますのでよろしくお願いします。

まず今回は薺《Nazuna》さんのリクエスト『一緒の布団で寝たいけど、素直になれない絵里』です!

では、レッツゴー。


今日は大学もバイトも無い休日。そういう余った時間に俺と絵里はいつも一緒に居る。こういう時間にはデートだのなんだのと色々選択肢はあるのだが、今日は2人でゴロゴロまったりする日。

ソファーに背を預けながら座る俺の股の間に絵里が座り込み俺の胸板を背もたれ代わりにしてくる。

 

ちなみに言うぞ?あすなろ抱きしている状態だから俺の両手は絵里の前に回すことになるだろ?必然的に・・・。そしたら絵里が俺の手に自分の手を絡ませてにぎにぎしてくるんだ。付き合ったときはこうやって座り込む事すらしなかったのに・・・。可愛すぎてテレビに映ってる映画に集中できない!!

 

ちなみに今見てるのはロ○ガン。いや本当にこの映画熱いし泣けるし。やっと長い旅が終わったって感じ・・・。

あ、絵里泣いてる。

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

映画を数本見て気付いたら外は真っ暗。2人で作った晩御飯作って一緒に(・・・)風呂も済ませた。あ、風呂は下心無しだ。水の掛け合いはしたけどな。後は寝るだけなの・・・だ・・・・・・が。

 

 

「・・・・・・」

「絵里さん?」

「・・・・・・・・・なにかしら?」

「どうして布団に入ってこないの?」

「・・・・・・私」

「おう」

「今日隆也と一緒に居たでしょ?」

「おう」

「べったりだったじゃない」

「・・・自分で言うんだな」

「うるさい」

「はい」

「お風呂・・・も」

「おう」

「一緒だったでしょ・・・?」

「顔赤いぞ自爆してんじゃねえか」

「ううううるさいわね!口に出すんじゃないわよ!」

「お前が言い出したのに!?」

「馬鹿!変態!デリカシー無しのおたんこなす!」

「な、なす・・・」

 

顔を真っ赤にしながら俺の頭を枕で叩いてくる絵里。痛い痛いよ絵里さん。貴方地味に力あるんだからいててててて!!

 

 

「と、ということで!」

「何がということでだ」

「結論から言うと、私たちは世間一般でいう『イチャイチャ』をしていたわけ!」

「まぁ・・・そうだな」

(自覚無しだけどな)

「さっきそれを思い出しながら考えていたんだけど・・・」

「ほう・・・」

 

 

 

「恥ずかしさがぶり返してきて隆也と一緒に寝るのに躊躇しています・・・」

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

えーっと・・・。

ということは?本当なら絵里はいつも通り俺と一緒に寝たいわけだけど、今日の出来事を振り返ると恥ずかしくなってきて一緒に寝ることに戸惑っていると?

 

 

 

「なに?俺を萌え殺す気かお前は」

「何よ!私だって女の子なのよ!」

「知ってるわ!」

「恥ずかしい事だってあるのよ!文句ある!?」

「ねえけど今更過ぎるんだよ!!寝るくらいいいじゃねえか!」

「貴方大好きな彼氏と一緒に寝るってことがどれだけの難しいことなのか分かってるの!?」

「クエストか何かか!?」

「それよりレベル高いわよ!一緒に布団に入る!体が密着する!胸のドキドキが全然止まらなくなる!そして自分の彼氏の匂いに包まれる!それだけで目が覚めちゃって寝たくても眠れなくなるのよ!!」

「落ちつけお前何を言い出してんだ!!」

「もー!貴方は私のして欲しい事を無意識に気付いてくれるから尚更嬉しくなるのよ!寝るときも背中を摩ってくれて眠気を促してくれたり!私が寝るまで起きててくれたり!なんなのよ貴方は!!思い出したらまた恥ずかしくなってきたじゃない!」

「お前が勝手に思い出してるからだろ!!」

「という結果!寝る事ができません!」

「寝れない方程式を作ってんじゃねえよ!」

 

 

 

 

 

 

 

・・・暫くお待ちください・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・隆也のえっち」

「なんでそうなる」

 

 

あの喧嘩(惚気)から少し。なんとか絵里を布団の方へ連れ込めたのだが、頑なに俺の方を向かずに背を向けている。

いや、一体どんな手を使ったのかって思うかもしれないけど何もしてないぞ?無理矢理布団に連れ込んで押し倒しちまったけど何もしていない。誓える。父さんにだって誓ってやる。

 

 

 

「私の事・・・押し倒して・・・」

「いや、わざとじゃ・・・」

「えっちな事しようとしたんでしょ・・・?」

「やめろその言い方とその表情」

 

布団から覗かせる潤んだ瞳。そして少し赤い頬。そんな顔するんじゃありません。何もしませんから。

 

 

 

「ほら、電気消すぞ。明日も希たちと遊ぶんだろ?」

「・・・・・・うん」

「じゃ、寝るとしますか」

 

 

本当なら電気全部消して寝るんだが、絵里が何分暗いのが苦手だから・・・な?豆電球つけないと寝てすらくれない。

だから俺の家に泊まりに来る時は絵里の為に豆電球。俺1人の時は電気を全部消している。

 

 

 

 

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

 

うん、背中合わせだとしても凄い静かだ。いつもなら抱きしめあいながら寝てるんだが生憎そういう雰囲気ではない。っていうかさっきから絵里が全然こっちを向いてくれない。

 

 

「絵里・・・ねたか?」

「・・・・・・」

あ、もぞって動いた。

 

 

「・・・・・・・・・すーすー」

「こら狸寝入りするんじゃない」

 

仕方ないな・・・。

 

 

「よっと・・・」

「っ!?」

 

体を反転して絵里の事を後ろから抱きしめる。あすなろ抱きと言う奴だな。絵里って俺と寝る時こうか抱き締め合いながらじゃないと寝る事ないんだよなぁ・・・。

 

 

 

「どうだ?」

「・・・・・・落ち着く」

 

それなら結構。

 

 

「隆也の心臓・・・どくどくいってる」

「そりゃなるだろ・・・彼女がこんな近くに居るんだし」

「・・・・・・ドキドキ・・・する?」

「まあな」

「やっぱり隆也はえっちだ」

「どこがだ」

 

ゆっくりと俺の方に寝返りをして俺の顔を至近距離から見つめてくる。

 

 

「そんなにじっと見られると照れるんだが・・・・・・」

「ふふっ、可愛いわね」

「可愛くねえ」

 

絵里の手が俺の頬に触れてくる。

 

「隆也の睫毛って男の子なのに長いわね。女の子みたい」

「特に意識した事はないな。女に間違われることはないし」

「手も目も綺麗だし・・・女としてはちょっと複雑」

「おい」

「隆也を女体化さしたらモテそうね!」

「辞めろ考えたくない!!」

「今度女装したりしてみない・・・?」

「やったら三日間口きかねえ」

(三日間なのね・・・)

「そういう絵里も綺麗な目してるよな。淡い蒼色で」

「ロシアの血も入っているからかしらね。目も髪もお婆様譲りなのよ」

「綺麗な金髪に、輝く蒼眼。よく今までナンパに合わなかったな」

「合わないわけじゃないわよ?ナンパに合うたびに逃げてるだけよ」

「護りたいこの彼女」

「護ってよこの彼女を」

「もち」

 

絵里の背中に手を回してぎゅっと抱きしめると絵里も俺の背中に手を回してきた。

 

「隆也・・・」

「んんー・・・?」

「眠くなってきちゃった・・・」

「そうか・・・」

「また・・・私が眠るまで起きててくれる?」

「背中ポンポンしてやろうか?俺が昔お婆ちゃんにやってもらったやつだが」

「いいのぉ・・・?」

「ほぼ寝かけてやがる・・・。因みに何か子守唄は欲しいか?」

「なにか・・・落ち着ける・・・・・・のがいい・・・」

「了解」

 

体にかかっている布団を絵里の首元まで持っていき、俺ごと被せる。

布団の中で絵里の背中を右手でリズムよくポンポンと叩いてあげる。赤ちゃんを寝かしつけたりする時にお腹をポンポンと叩いてあげる感じだな。俺は娘をもったお父さんか←1人ツッコミ。

 

 

 

「隆也ぁ・・・」

「ん・・・・・・?」

 

 

 

うっすらと眼をあけた絵里が俺を見て・・・・。

 

 

 

 

 

「おやすみの・・・・・・ちゅーして欲しい・・・・・・」

「・・・・・・・・・っ」

 

 

キスじゃなくてちゅーって可愛すぎかよ。ジタバタしたいけど我慢しろ俺ぇ!!

 

 

 

 

「おう・・・ほらよ」

「んゅ・・・・・」

 

今の俺には絵里の唇にちゅーをするのは出来ないので絵里の前髪をかき上げて少し大きめの額にキスを落とす。

 

 

 

「隆也の意気地なしぃ・・・・・・」

「やかましい」

「んぅ・・・・・・えっちぃ・・・」

「こいつ・・・・・・」

 

 

明日覚えとけよ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きぃ・・・・・・んぅ・・・くぁ・・・」

 

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

本当にこいつが彼女で最高だ。俺がしっかり護ってやらないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺もだよ。絵里」

 

 

 

 

優しく頭を撫でてあげた後、背中を叩きながら絵里を寝かしつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

子守唄はそうだなー・・・・・・。これかな?

 

 

 

 

 

 

『小さな恋の歌』

 

 

 

 

 

 

 




はい、お久しぶりです。と言うわけでリクエスト回です。
自分も小さいころ背中を優しくポンポンされながら寝かしつけられた覚えがありそれを入れて見ました。少なくとも数人はそういう体験があったはずです。


「絵里の寝顔を見て良いのは俺だけだ」

いいから早くお前も寝なさい全く。



また次回もリクエスト回になります。出来る限り早めに出そうとは思いますが、首を長くしてお待ちください。
9月に東京にて論文の発表会がありますので中々こちらの方の時間は割けないと思いますが、ご了承ください。東京行ったら山手線制覇してやる!(意味不明)


それでは今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!


では・・・・・・またな!


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危機?

はい、リクエスト回の第二回です。
今回は『武御雷参型さん』の隆也と絵里の喧嘩と、『ミロカロスとその少年さん』の浮気未遂を合わせたお話になります。
お二人のリクエストは似たり寄ったりのリクエストだったので私事ながら合わせて投稿させていただきます。

名付けて『浮気未遂で起こった喧嘩』という題材で行こうと思います。

では、どうぞ。


「何よ!!なんで私には言ってくれないのよ!」

「仕方ないだろ!俺にだって言いたくないことだってあるんだよ!!」

 

現在の季節は10月の後半。現大学生である横山隆也が住んでいるアパートにてそれは起こった。

 

事の発端は、先日の出来事。絵里が食材の買い物に出ていた時だった。

 

少し大きめのデパートにて買い物を済ませた絵里が帰ろうとしたとき、遠くに愛しの彼氏、隆也の姿が見えた。声をかけようとした瞬間にその言葉が口から出ることは無かった。

それはなぜか?

隆也の隣に綺麗な女性の姿が見えたからだ。背は私より少し大きいくらいの茶髪の人物だった。顔は見れなかったがかなり美人の女性だということが分かった。

そんな女性と仲良くしている人物といる隆也が浮かべている笑顔がとてもまぶしく映った。

 

 

 

『浮気』

 

 

という言葉がすぐさま私の頭に浮かんできた。

 

いやでも彼がそんなことする訳がない。

彼は私を愛してくれると約束してくれた。そんなことは無い。あるわけがないという否定の気持ちが湧き出てくる。

 

 

けど、目の前で実際に見える現実から目を背けることはできなかった。

 

 

 

 

 

だから聞いた。あれは何か。彼女は一体何者なのか。

 

 

そして冒頭に戻る。

 

 

けど彼は頑として真実を話してくれない。私が好きならばすぐに言ってくれるはずなのに。どうして?なんで答えてくれないの?

 

 

 

「教えてよ!私が何か悪いことでもしたの?私が気に障ることを言ったの!?何かあるならハッキリ言ってよ!」

「人には少なくとも言いたくないことがあるんだよ!そこまで聞く内容でもないんだから放っておけばいいじゃねえか!」

「そういう言い方がやましく聞こえるんじゃない!」

「お前がそう聞こえるんじゃねえか!!知らなくていいつってんだろ!!」

「っ!!」

 

 

 

何よ…なんでそんな事言うのよ。もう私はいらないの?あなたの横にはいれないの?もう私は必要じゃないの……?」

 

 

 

「……ない…」

「は?」

 

 

パァンッ!

 

 

 

 

「もう知らないわよ!」

「あ、おい絵里!?」

 

私は頭に血が上っていたのか、冷静じゃなかったのかわからなった。その場の勢いで隆也をはたいて家を飛び出してしまった。

後ろから隆也の私を呼ぶ声が聞こえるが振り向かなかった。

今はこの空間から逃げたいという気持ちが強かったのだ。

 

 

 

(なんでよ…隆也)

 

 

 

 

 

***

 

 

そして数日が立ち。俺の前には親友の中上翔輝が立っていた。

 

 

 

「……で?」

「おう」

「絵里のプレゼントを頑張って作っていて?」

「おう」

「頑張って教室にも秘密裏に通っていて?」

「おう」

「その教室の人とプレゼントに必要なものを買いに行ってるところを絵里に見つかって?」

「おう」

「聞かれたけどどうにかしてばれないようにしようとしてるウチに喧嘩勃発して?」

「おう」

「頭に血が上って絵里に酷いことを言ってしまいはたかれて逃げられたと?」

「おう」

「連絡しても返信無し。学校でもあっても無視されて?」

「おう…」

「正直今心が折れそうだと?」

「………」

「馬鹿野郎」

「ぐぅ…」

「なんでそこで臨機応変対応できない?後々分かってしまうのになぜ言わなかった?そんな事言ったら泣くのはどう見てもわかるだろ」

「いやその…なんというか…」

「お前昔から頭に血が上ると周り見えなくなるのは知ってるけどまさかそんな時に発足してしまうとはな」

「どうしよう…」

「どうするもこうするもなー、謝るしかないだろ。ぜーんぶ説明してな」

「だよなぁ…」

「まあ手伝いはしてやるよ。海未にもな」

「悪い本当に…」

「俺には飯おごり、海未には服一着」

「お、おう…」

「本当に馬鹿野郎。馬鹿野郎。馬鹿。バーカ」

「バカバカ言いすぎだろ」

「バカだろ?おぉん?馬鹿?あぁん?」

「い、言い返せねぇ……」

 

 

 

「絵里に悪いことしちまったなぁ…。もし別れようって言われたら…」

「そういう事言うんじゃねえ。なるようになるんだからよ」

「そうだな……」

「ちなみに俺の説教まだ続くからな」

「まじかよ…」

 

そのあと、翔輝からの説教が2時間ほど続いた。

 

 

 

 

 

 

「それで…?」

「うぅ…」

「隆也さんが浮気してるかもと思い?」

「はい」

「家に上がって問い詰めたら答えなくて」

「はい」

「冷静じゃなくなり言い合いという名の喧嘩になり?」

「はい」

「そして挙句の果てにははたいてしまい?」

「はい…」

「今更になって罪悪感が込みあげてしまい?」

「はい」

「学校でも無視してしまい、どうにかして謝る機会を作ろうかしているがすべて空回り?」

「はい」

「どうしたらいいかわからないという現状ですか?」

「その通りです…」

「確かに隆也さんも隆也さんです。自分の彼女が知りたいと思っているのに言わないのは確かに酷いです。そうしたら彼女が不安になるというのに」

「そ、そうよ!大体隆也が!」

「絵里も絵里です」

「うっ…」

「確かに落ち着きがなくて聞いてしまったのかもしれません。けどどんな理由でも手を出してはいけません。もしかしたら隆也さんが本当に言いたくない事なのかもしれなかったのですから」

「ごもっともです…」

「二人とも冷静になれなかったのですか?もっと落ち着いてください」

「うっ……ぐすっ…」

「…涙拭いてください」

「ありがと……。私、これで嫌われたらどうしよう…。もう隆也にいらないって言われたら…」

「そんな事言ってはいけません。そうしたら悪いほう悪いほうに考えが行ってしまいます」

「だ、だって…私…隆也に…どうしたらっ…えぐっ…うぅっ…」

 

すると、海未が私のことを優しく抱きしめてくれた。

 

 

「大丈夫ですよ。隆也さんも絵里も落ち着いて話せばきっと大丈夫ですよ。私が保証します」

「うぅ…海未ぃ…」

「ほら、元気出してください。私も手伝いますから」

「ごめんねぇ…ひぐっ…」

「ほら、鼻水かんでください」

「ぐすっ……うんっ…」

「やれやれ、このカップルには困ってばかりですね」

 

その後、二人でおいしいごはんを食べました。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「で?ブツはできたのか?」

「ブツっていうなブツって」

「できてるんだろ?」

「まあ…気合入れてやったからできてるけど…怖いなぁ」

「ビビるんじゃねえよ。誠心誠意謝れ」

「おう…」

 

謝る場所は翔輝が設けてくれたのは俺の家の近くにある公園。時間も夜になっているから遊ぶ者もいなければ溜まっている者もいないから都合がよい。

公園の出入り口に立つと海未と絵里がベンチに座っており、俺と翔輝が公園に入ったことを感じ取りこちらに視線を移す。

絵里は俺と目を合わせるとすぐに視線をそらし、海未は俺に軽くお辞儀をし出入り口に歩いて翔輝と合流した。

すれ違い様に「任せましたよ」と言い残してくれた。そのまま翔輝と一緒に公園を後にした。

 

 

 

 

「………」

「………」

「…よう」

「ん…」

「隣いいか?」

「好きにすればいいじゃない…」

「そうさせてもらおうか」

 

持っていた紙袋を袖に置き絵里の横に腰を下ろす。

 

 

「……流石に10月だから寒いな」

「…そうね」

「大丈夫か?」

「別に……」

 

だめだ。完全に他人行儀になってしまっている。しかも絵里一回も俺に視線を合わせてくれない。更にはというと少しずつ距離離してくるしで。

だめだなこれでは。正面から堂々と真っ直ぐに。

 

 

 

 

 

 

 

「絵里」

「な、なによ」

「悪かった」

「へ?」

「俺が悪かった。どんな理由があっても彼女を不安にさせたことは事実だ。絵里も俺が浮気してるかもしれないと考えて俺に聞いてきたはずだ。俺もあの時にしっかり言っていれば…こんな事にはならなかったんだ。ちゃんとアレには理由があるんだ」

「理由?」

「それは、絵里にこれを渡すためだ」

 

絵里に袖に置いておいた紙袋を手渡す。

 

「これは?」

「中身みてみろ」

 

中身を取り出すと、水色をしたマフラーであった。

 

 

 

「わぁ…」

「そろそろ冬だろ?絵里にプレゼントしたくて自分で作ったんだ」

「え?でもそれとあの女の人は…」

「順に説明するよ。俺編み物なんて全く分からないからさ。自分でするのは難しいから編み物教室っていうのに通っていたんだ。そこの先生が女性の方で教え方うまくてどんどんできるようになってきたんだよ。んでもうそろそろマフラーが完成するっていうときに毛糸が無くなったから先生と一緒にデパートに買いに行ってたんだよ。多分絵里はその時を見ちゃったんだろうな」

「じゃ、じゃあ私に話さなかったのは?」

「できる限り内緒にしたかったんだよ。サプライズとして渡したかったからさ。まぁ…頭に血が上って喧嘩になっちまったけど…」

「そ、そういう…ことだったのね…」

 

瞬間、絵里の目から涙が零れる。

 

「え、絵里…?」

「な、なによ…それならそうと言ってくれれば…ぐすっ…心配しなくて…すんだのに…」

 

絵里が俺の方に抱き着いてきた。しかも首に腕を回してぐりぐりと頭を押し付けてくる。

 

 

「悪かった…絵里」

「ばかぁ…隆也のばかぁ…私…嫌われたと思って…泣いてたのにぃ…」

「本当にごめんな…」

「なのに…本当に…馬鹿ぁ…」

「あぁ」

 

絵里の頭を優しくなでると、絵里が俺の頬に手を添えてきた。

 

「ごめんなさい…はたいてしまって…」

「気にするな」

「だって…おもいっきりやったし…」

「痛かったけど、大した事じゃない」

「本当にごめんなさい」

 

そのはたかれた頬に絵里は触れるぐらいのキスを落とす。

 

 

「んっ…んっ…」

「お、おい絵里」

「馬鹿…馬鹿…好きぃ…大好き」

 

横から抱き着いてくる形になっていたが気づいたら絵里は俺の膝の上に跨って馬乗りの状態になる。

絵里と俺との顔の距離が近い。

 

 

「お願い…私を大事にしてるのはわかるわ。けど…もうこんな気持ちになるのは嫌。私のことをもっと見て?私のこともっと抱きしめて。私のこと愛して」

「わかってるよ。愛してるよ絵里」

「大好き…隆也」

 

絵里は渡したマフラーを俺と自分の首に巻き付けそのまま唇を押し当ててきた。舌は絡ませない、至って普通のフレンチキス。けど俺たちにとっちゃ幸せな感触。

 

「んっ…隆也」

「なんだ?」

 

 

 

「マフラーありがとう。大事にするわ」

 

 

 

 

俺の目に映った少女は、マフラーを大事に握りしめ、俺に向かって満面の笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

「あぁ。ありがとな」

 

 

 

 

***

 

 

「お、おい絵里さん?」

「なぁに?」

「いつまで俺に引っ付いてるんだよ…動きづらいぞ…」

 

そして仲直りした後、俺と絵里は俺の家に来たのだが…。さっきから絵里が俺に抱き着いて離れてくれない。

風呂も済んだから寝る準備はできてるんだがな。

 

ちなみに言うと、今は布団の上で絵里が俺に跨っている状態なんだがな…。

 

 

「ねえ隆也」

「ん?」

「私…少しの間だけど寂しかった…。隆也に触れたいって考えてた…」

「お…おう」

「だから今だったら貴方に一杯甘えてもいいわよね?」

「お…おい」

 

 

すると絵里は俺を布団に押し倒し、体をどんどん密着させてくる。特に胸を。

絵里のたわわに実った果実が俺の胸の上で形を変えて密着してくる。

 

 

「当たってるぞ…」

「当ててるのよ。好きでしょ?こういうの…」

「んぐっ…」

「んんっ…」

 

すると絵里は俺の唇に唇を押し付けてきた。自分の舌を俺の口内に侵入させ蹂躙してくる。俺の舌を舐め上げ、吸い上げ、唾液を交換しようとしてくる。

 

 

 

「ふふっ…隆也のその顔大好き…」

「お前はサキュバスか何かかよ…」

「そうね。私はあなたのサキュバスかもね…。だってあなたの色々な事をしっている。こんな風に…」

「ひょわぁ!?」

 

すると絵里は俺の頬に手を添えたまま俺の右耳に舌を這わせてきた。

 

 

「隆也の弱いところも…全部しってる」

「絵里…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が貴方のことが好きってことを…今から存分に教えてあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

翌朝、俺の体、特に胸や首に大量のキスマークができていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




はい。急ピッチで作り上げました。
今回リクエストしてくださった『武御雷参型さん』と『ミロカロスとその少年さん』ありがとうございました。
いかがだったでしょうか?イチャイチャはほんの少しで喧嘩全般となりました。
皆さん浮気はよくありません。ダメ絶対。

次回もリクエスト回をやっていきたいと思います。多分…。もしかしたら自分の書きたいストーリーが出てくるかもしれません。ご了承ください。


誰か隆也と絵里の絵を書いてくれないかな~(チラッ)自分の絵だと碌なもの出来ないから誰かに書いてもらいたいな~(チラッ)

お願いします誰か書いてください←土下座
自分のオリキャラと推しキャラが一緒にいる姿を見てみたいんです。もし書いていただける方よろしくお願いします。←願望


では、今回はここまで!
感想・評価お待ちしております。


では……またな!


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仮面ライダー隆也

仮面ライダー龍騎みたいだ。


「…………」

 

貧乏ゆすりが止まらない。

通帳に書かれてある残高を見て俺は頭を抱えていた。

いや、確かに今月は色々あったよ?絵里とデートにいったりとか、ホーネットのディスクを変えたりとか、光熱費払ったりとか大変だったよ?けどこれ全部俺の事だから仕方ないんだけど…。

 

 

 

「今月の生活がぁ・・・・・・」

 

 

 

あとほんの少しあれば大丈夫なんだ。あと少しあれば生活に支障は出ないんだよ。

 

「どうしよう……。給料日までまーだ大分あるぞ」

 

 

仕方がねえ。ネットで一日バイトでも探すか。絵里には悪いが今週のデートを無にしていただくしかない…か。大学のゼミだの言っておけば大丈夫なは……ず!!

 

 

「ん~……引っ越しバイト…試験監督…イベントスタッフ…ん~」

 

まあ丸一日は勿論かかると思ってたけどかなり疲れそうだなこれ。まあ金を稼ぐのなんか辛くないものなんかないんだけど…。

 

 

「欲を言ってしまえば面白そうな事したいんだけどな」

 

 

マウスをコロコロと転がしながら眺めていると、変わったページがあった。

 

 

 

 

 

 

「あ?なんだこれ?」

 

 

 

【イベントスタッフ!着ぐるみを来てファンを楽しめせるお仕事!体力に自信のある方大歓迎!】

 

ん~?着ぐるみ?あれか?ゆるキャラとかそういうやつ?確かにあれはしんどそうだな。体力根性どうこうの問題じゃなさそうだな。

けど…意外といい経験になるかも?

 

 

「興味がある……」

 

 

えっと電話番号は・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、すいません。ネットでこちらのページを見た者なんですが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、とある場所にて。

 

 

「いや~助かったよ君!本来のスタッフが吹っ飛んで大変だったんだ!」

「いえいえ、自分も目に留まったものだったので……今なんて言った?」

 

ふ、吹っ飛んだ?その代役何があった?

 

「ネットに挙げたけど中々電話が無くてね。けど、そんな時に君みたいないい体をしている男の子が居たんだから!」

「そう言っていただきありがとうございます」

「ちなみに君即採用ね。体力にも自信があるからここに応募したんだろう?」

「そう…ですね。柔道とバスケットをしていたのでそれなりには」

「よぉし!頼むよ君!えっと名前は…」

「横山隆也です」

「よし隆也君!君にはイベントのスタッフをしてもらおうと思ってるんだ」

「…と言いますと?」

「実は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仮面ライダーになってもらおうと思ってね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………はい?」

 

 

 

 

 

え?なに?カメンライダー?ナニソレオイシイノ?

 

 

「順を追っていくと、実は東京であるイベントがあってね。それも子供向けの。その子供向きのイベントで、仮面ライダーショーを我々は考えているんだ。勿論、本家並みの事はできない。せいぜいそれらしきアクションをするぐらいがせいぜいだ。その方針に決まったんだが、仮面ライダーの本来の役の人間が文字通り吹っ飛んで怪我しちゃってさ。なんとか代役を探したんだけど見つからなくて頭を抱えていたんだ」

「…なるほど」

「それで、どうにかして代役を探した結果、君がいたと!いうわけなんだよ!」

「ほほう…」

 

吹っ飛んだっていうのがすごい気になるがな…。

 

 

 

「け、けどそれはさすがにそこらの学生である自分がするのは無理があるのでは…」

「いや、これが意外と単純で、子供の前でそれなりの動きをしてもらうだけなんだ。セリフは別の声優さんがいるから大丈夫」

「現場経験ないんですが…」

「そこも大丈夫!それっぽい動きをしてもらえば良いんだ。ワザとやられたり怪人をやっつけたりとか、なりきってくれればいいんだよ」

「む、難しそうですね…」

「勿論練習はしてもらう。スタントマンもどきみたいな事をしてもらうからね」

「わ、わかりました。自分ができるとは思えませんが…頑張ります!」

「ありがとう!本当に助かった!予定していた給料より少し水増しさせてもらうからよろしく!」

「まじか……」

 

こりゃ意外とかなりおいしい話なのではないだろうか…。

 

 

 

 

「じゃ、また連絡するけど一度服を着てもらって動いてもらう必要あるから、後日予定空けていてね」

「は、はい!よろしくお願いします!!」

 

 

 

 

 

 

 

まさかこの歳で小さいころ憧れた仮面ライダーになれるとはな。

 

 

 

 

 

 

 

バイクも乗れるか聞いてみたらそれは無いって言われた。

そっすか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

いやきっついなこれ。予想以上にきっつい。

文字通りに仮面ライダーに変身した俺だがありえないくらい動きづらい。自分の体重が倍になったくらいに感じる。まあそりゃそうだろうな。こんな完成度高いもの作るのを軽く低コストで済ますことなんて無理な話だ。それなりの素材でできてるんだろうな。汗とまらねえ…。

 

 

こいつに身を包んで約4時間たった。やっと慣れてきた。けど何か動作を起こそうと思っても重すぎて1秒くらいのロスが生じてしまう。先読みして体を動かすしかない。

 

 

 

「はい、次は回し蹴り」

「ふっ!」

「次は右ストレート」

「はっ!」

「受け身」

「ぬんっ!」

「跳ね起き」

「ふんぬぁっ!!」

「オラオララッシュ」

「オラオラ…ってできるかぁ!」

「君ノリいいね」

「キツいんですけどぉ!?」

「はい、次はジャンプ」

「これが一番キッツいんだよおらぁっ!!」

 

 

これドラゴンボールで見た甲羅背負っての修行と変わらない気がする…。凄い重い…。

 

 

 

「はぁっ!はぁっ!ぜぇっ!ぜぇっ!」

「いいよ隆也君!少し休憩にしようか」

「っ……っ…うっす」

 

完全に舐めてた。こういう仕事してる人尊敬しますよ。ある意味トレーニングになるけど尋常じゃなかった。汗が全然止まらない。

 

 

 

「良い経験だが…やばい…」

「そうとう堪えてるね」

「そ、そりゃそうですよ…」

「けど、君で本当に良かったよ。これならイベントも成功させることができる」

 

そう言われると誇らしく思う。俺がしたことによって喜んでくれる人がいるなら猶更だ。

少し元気出た気がする。

 

 

「次はなんですか…?」

「んーっとね。次は……」

 

 

 

 

 

俺のトレーニングは止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

「でかい赤ん坊ね」

「うるせ」

 

正座で座っている絵里の膝に抱き着いて頭を撫でてもらっている俺。あ~…癒される。

 

 

「そんなに疲れるのねその仮面ライダー」

「体の水分飛ぶぞアレ」

「干からびてたわね」

「乾物になっちまう…」

「まあお金を稼ぐためだからそれは仕方ないわね」

「それに疲れたら絵里がこうしてくれるからなおさら頑張れる」

「匂いも嗅ぐ?」

「後で」

「するのね…」

 

とうとう明日が本番だ。今日は早めに寝て体力を温存しよう。

 

 

「もう寝ちゃう?」

「寝ちゃう…」

「ちゃんとベットで寝なさいよ。体痛めるんだから」

「絵里と寝れるならどこででも」

「私が痛いから嫌」

「ちぇ」

「明日ちゃんとご褒美あげるから」

「寝るぅ」

「現金な人ね」

「絵里のご褒美大好き!」

「はいはい、分かったから」

「解せぬ…」

 

 

仕方ない。ちゃんとベットで寝ましょうかね。

 

 

 

 

 

「あ、それと隆也」

「ん~…?」

「明日私用事があるからまた夜会いましょうね」

「ん~…」

 

 

 

寝ぼけてたから全然俺の頭には入らなかった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、頼んだよ隆也君」

「うっす」

「もし何か変更点あったらカンペで知らせるから見逃さないでね」

「了解です」

「じゃ、レッツゴー!」

 

 

外に作られた簡易ステージ。その袖にてスタンバイする俺。

ステージの外には小さな子供、その保護者の親御さん達。他にも仮面ライダーが好きな男の人たち、一眼レフを持っているカメラマンと色んな人たちがステージをじっと見てる。

緊張はしてるよ。けどさ、俺にはそれよりびっくりすることがあるんだ。

 

 

 

 

 

 

『なーんで絵里達がいるんでしょうかねぇ!?』

 

 

 

 

 

 

 

ステージの袖からチラリと顔を覗かせると、そこには絵里たちこと、μ'sのフルメンバー勢ぞろい。

そして矢澤にこの前には姉妹たちか、小さな子達が目をキラキラさせながらステージを見つめる。

要するにあれだろ?にこの妹たちを連れてきてあげて、そこに便乗して穂乃果を筆頭にここに来たってやつだろ?

絵里から何にも聞いてないんですけど?

いや、絵里の事だから元から見に来るつもりだったのか。

 

 

【寝ぼけていて聞いてませんでした】

 

 

 

っていうか穂乃果。お前が言い出しっぺのくせにもぐもぐ飯食ってないでステージ見ろよ。もぐもぐしててかわいいけど。

 

 

 

「隆也君出番だよ」

「う、うっす」

 

今は忘れろ。劇に集中するんだ。

 

 

 

アナウンスの人と子供たちが一斉に叫んだ。

 

 

 

 

【仮面ライダー!!】

 

 

 

(行くぜ!)

 

 

ステージの袖にある踏み台でジャンプし、ステージにいる怪人たちの前に立ちはだかる。

 

 

 

『き、貴様は!』

『俺は子供の笑顔を守る仮面ライダー。そこまでだ怪人ども!』

『何を生意気な!』

『返り討ちにしてやれ!』

 

 

『『『『うぉおおおおおおおお!!』』』』

 

 

 

ここからは簡単。それなりの演技も見せればいい。乱闘で怪人とやり合って俺がピンチになるって流れ。しかもどの攻撃も寸止めだから本気でやられるわけじゃないから痛くはない。

 

 

 

 

はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

『くたばれこの野郎!』

『一人で戦いに来やがってなめんじゃねえぞ!』

『やっちまえ!』

 

 

 

ちょっとまって皆さんなんで本気でやりに来てるの!?話と違うんですけど!?

 

 

「あの金髪の女の子お前が言ってた彼女だろ!」ヒソヒソ

「なんて羨ましい!」ヒソヒソ

「後で食ってやる!!」ヒソヒソ

「「「しかも可愛い女の子たちと知り合いとか死に晒せぇ!」」」ヒソヒソ

 

 

交わりながら小声でやりとりをしあう俺達。この人たちどんだけ怒ってんだよっいってぇ!?おい溝に入りかけたぞ!!絵里は俺のもんだ誰にもやらねえ!!

 

 

 

「痛いですよ先輩方!」ヒソヒソ

「やかましい!ぶっ殺してやる!」ヒソヒソ

「このままみじめにやられちまえ!」ヒソヒソ

「後でお持ち帰りだ」ヒソヒソ

 

 

んだとこいつら!?いいぜ上等だ!!そっちがその気なら俺も本気だ!

あと最後の人ふざけんな!!

 

 

 

 

『あぁ!?仮面ライダーがやられちゃう!皆!応援してあげて!』

「がんばれー!」

「負けるなー!」

「勝てー!」

 

 

 

 

『頑張れーーー!』

 

 

 

 

子供たちの声援が聞こえてくる。凄いいい気分だ。なんだか本当に元気が湧いてくる。

だがまだだ、上司の人が合図を出すまで何もできない…。

 

そして俺はそのまま地面にひれ伏しリンチに遭う。

 

 

 

『はっ!所詮口だけだったな!』

『弱すぎるぞこいつ!』

『大したことないな!』

 

だが、本当の声は。

 

「くたばれ横山ァ!」ヒソヒソ

「死ねぇ!」ヒソヒソ

「金髪の子をハスハスクンカクンカしてやる」ヒソヒソ

 

 

くっそ滅茶苦茶痛いじゃねえか!足を狙わないのはいいところだけど!

そして最後の人いい加減にしろ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けないで!!仮面ライダー!!!」

 

 

 

 

声が響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子供たちの声援の中から聞き覚えのある声が聞こえる。

この声は…。

視線をそこに移すと絵里が叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

「負けないで!頑張ってぇ!!」

 

 

【反撃開始!何かかっこいいセリフ言って!】

 

上司からのカンペが来たので反撃開始。

そして無茶ぶり!!

 

 

 

 

 

『うおおおおおおおお!!』

 

リンチで取り囲んでくる人たちから振りほどき距離をとる。

 

 

『ありがとう皆!皆の声が俺に力をくれる!!』

 

 

 

かっこいいセリフ………これしかねえっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ……お前達の罪を…数えろっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

覚悟しろ(本気)

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ………」

ステージは大成功。あの後の怒涛の猛攻撃により会場は大盛り上がり。怪人の人たちをぶん殴って蹴り飛ばして最後はお決まりのライダーキックで大勝利。子供から大人まで全員喜んでくれたので俺も満足。怪人の先輩達ぜってえ許さねえ…。

 

 

 

『ありがとね隆也君!君のおかげで大成功だ!』

 

 

 

上司の人も喜んでくれたからよしとしましょう。しかも給料少しだけ増やしてくれたし。

 

 

 

 

 

「あ~…つっかれた。家で寝よう…」

 

 

ベンチから立ち上がり、顔を上げると。

 

 

 

 

 

【…………………】

「…………………」

 

 

 

μ's全員がニヤニヤしていた。

 

 

 

 

 

「……お、お前の罪…ぷふっ!」

「ちょっと穂乃果ちゃん笑っちゃダメ…ふふっ!」

「大丈夫です隆也さん。翔輝には言いませんから」

「なんだか寒くないかにゃ?」

「りゅ、隆也さんかっこよかったですよ!?」

「ふふっ…あなたもあんなセリフ言うのね」

「いい動画取れたから後で送るで」

「まっ。妹たちを…くくっ…喜ばせれたから…ぷふっ!いいんじゃない…?」

「かっこよかったです!」

「仮面ライダー強いね!」

「らいだ~」

 

 

 

 

こ…こいつら…。

 

 

 

 

 

 

「り、隆也」

「……ん?」

 

 

 

絵里が苦笑いしながら…。

 

 

 

 

 

「か……かっこよかった……わよ?」

 

 

 

 

疑問形でフォローしてくれた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそったれがぁぁああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

恥ずかしさのあまりその場から逃げ出し、俺は自分の部屋で3日間引きこもった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ、大丈夫よ。私は凄くかっこよかったって思ってるから」

「フォローになってねえよ……」

 

 

 

絵里の膝の上で泣いた。

 




長らくお待たせいたしました。
閻魔刀さんのリクエスト「度重なるデートとバイクのメンテ代で金欠になって仮○ライダーショーのバイトをやってえりちー達からからかわれる」でした。

とは言ってもからかわれるのは最後だけです。はい。

ちなみに皆さん仮面ライダーではだれが好きですか?
自分はWと000ですね。ダントツで。


次回もリクエスト回ですのでよろしくお願いします。
リアルで色々とありますのでまた遅くなります。誠に申し訳ないです。
精一杯頑張りますのでよろしくお願いします。



では!今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!


では……またな!


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絵里は依存系

大変長らくお待たせいたしました


「ふわぁ~…眠い…」

 

BO4面白すぎるだろ、やめる区切りが全然分からないくらい没頭してしまっていた。マルチ楽しいしゾンビ楽しいしブラックアウト楽しいし。

 

遅くまでゲームしてたら絵里に怒られそうなんだが。

 

「ゲーム!やらずにはいられない!!」

 

学校があるというのに夜遅くまでゲームをしてしまうこの気持ち。分かる奴もきっと居るだろう。仕方ないよな?こういうのは。

 

冬に入ってので黒のダウンを着こんで、マフラーを首に巻く。

昨日の残り物で軽く作った朝飯を口にぶち込んで、一人暮らしをしているアパートの玄関を開けると。

 

 

「あ!おはよう隆也!」

「おはよ絵里。今日も迎え来てくれたのか」

「えぇ!早く隆也に会いたくて朝の6時から待ってたの!」

「はぁ!?6時!?合鍵あるんだから入ってくればよかったのに…」

 

最愛の彼女、絢瀬絵里が待ってくれていた。因みに現在の時間は午前8時前。今の季節は外で待つという行為は苦痛でしかない。だがそんな難行苦行なんのその。雨の日だろうと雪の日だろうと、彼女はいつも俺の事を待ってくれる。

 

 

「これ以上じっとしたままだと風邪ひくぞ。学校行こうぜ」

「わっ!?ちょっと隆也!?」

 

手が冷たい。そんな長い時間俺の事を待ってくれていたのか。

 

(……もう少しだけでも、早寝早起きを心がけるか)

 

一層強く絵里の手を握った。

 

 

 

(隆也の手…暖かい…)

 

 

 

***

 

 

 

 

 

冬に決めていること。外に出て道路の具合を見て俺は学校までバイクで行くか電車で行くかを見極めている。今日は路面凍結の日。ゆっくり行けば運転できるだろうが無理はしないのが吉だと思った俺は電車での通学を選択。

だが流石朝の電車。人混みが凄い。関西にいた時はこれほどの込み具合を体験することは無いから、最初に関東での電車乗った時少し酔った。

 

 

「うぅ……」

「狭いか?」

「うん…」

「だけど、痴漢に遭わないためにはこれが一番だと思うんだよな」

 

いくら絵里が高校生ではなく、大学生なんだとしても有名人には変わりはない。μ'sはもう存在していない…にも関わらず、街中では絵里に声をかける奴は少なくない。現に今も絵里に集まる視線が複数感じる。

だから絵里には電車の扉に背を向けてもらい俺が絵里を覆うように立つ事で視線をシャットアウトし壁と化す。身長178舐めんなよ。絵里は誰にも触れさせん。

触れた瞬間そいつは一本背負いだけどな。

 

だが、隆也がこんな事を考えているとき、絵里の心中はとんでもないことになっていた。

 

(ひゃー!ひゃー!隆也がが近すぎる!今まで何度も触れあってきたけど周りに人がいるから凄く恥ずかしくなっちゃう!ベットの上だと凄くワイルドな隆也だけど、今の隆也は紳士に見えちゃうからすごく顔が熱い!あー…隆也に引っ付いてるから服の匂がダイレクトに来ちゃう…。ん…隆也の匂い好きぃ…)

 

俺の服に顔を埋めて凄いって言うくらい匂い嗅いでんだけど…、そんなに俺匂うのかな?

しかもさりげなく俺の服に腕を入れて抱き着いてくるんだけど…。セーター来てるけど絵里の胸の膨らみがダイレクトに感じるんだよ。やめろおい。柔らかいから色々炸裂(?)するぞ。

 

 

「何?そんなにひっつきたいのか?」

「……隆也が匂うせい」

「え。そんなに臭い?」

「うん匂う。すごく匂う…」

「い、一応風呂はしっかり入ってるんだが…」

「酷い匂いよ…。ふん、ひどい位にね…すんすん」

「う…今日から10回ぐらい体洗います…」

「いいわよ別に。ボディーソープが勿体ないから……ふんふん…」

「スプレーもしまくります…」

「だめよ。お金が勿体ないからやめなさい」

「どうしたらいいんだ……」

 

 

 

(今度……隆也にワイシャツ貰おうかしら…)

 

 

 

 

 

 

講義中は大体絵里と一緒。勿論、大学は取りたい講義を取る学校だから別々の講義を取る事はあるが、大抵絵里と一緒。

 

 

なのだが……。

 

 

 

「ねえ横山君。さっきの問題についてなんだけど…」

「よう横山。今度飲みに行かねえか?」

「隆也。今日の夜BOしようぜ」

「横山君。今度のグループディスカッションの日程なんだけど」

「絢瀬絵里の写真くれ」

 

「……………」

 

 

俺と別の講義では知らないが、講義中とか、休み時間の間だとすんごい見てくるんだよな。男と話すときはいいんだけど女性だと終始真顔なんだよな。

更に、更にだぞ?俺の服の裾ずっと摘まんでるんだよ。頬ぷくーっって膨らまして。

 

どうしたんだ?

 

(隆也の馬鹿。私って彼女がありながらなんで他の女と喋ってるのよ。男はいいわよ、特に盗られるわけではないわけだし。けど、私にしか向けてはいけない笑顔を他の女にばら撒いてるのが腹立つ。あんたたちも慣れ慣れしく隆也に近づくんじゃないわよ)

 

 

内心穏やかではなさそうだな。

 

 

仕方ない…。

「悪い。今日は別の用事あるからまた今度な」

 

 

 

 

言った瞬間、絵里の顔がパーッと明るくなってニコニコしてんだよな。

お前俺といない時の講義どうなってんだよ。正気を保って居られてるのかすら疑わしいんだが。

 

 

「お前も大変だよな隆也。まあそれだけ絢瀬さんに愛されてるんだったら良いんじゃないか?」

「まあ…な。けどたまに思っちゃうんだよな。愛が重いような…」

「逆に考えてみろよ。お前一筋なんだぜ?しかも美人」

「嬉しいに決まってるだろ。けどなぁ…」

「なーんかわけわからないモンがあるんだな」

「うん、よくわからんが…」

「ま、贅沢な悩みだって思え若者よ」

「お前タメだよな?」

 

 

 

後、最後の奴なんつった?脇固めすんぞ。

 

***

 

 

 

「ねえ隆也」

「ん~?」

「私って重い女かしら?」

「ブッ!?」

 

いつも通りの日課。学校が終わって行くのは俺の下宿先。俺と絵里のバイトがある時は学校終わりに会わないんだけど今日はお互いバイトがないから夜までまったりするのが俺達の日課。

 

瞬間、ベットの上でまったりしてるときに絵里の口から爆弾が飛び出す。

 

 

 

「ど、どうした急に…」

「今日…隆也が愛が重いって言っていたから…私は重い女なのかしらって…」

「あ、あれはなんというか…言葉の綾というか…本心ではないっていうか…」

「……もっとおとなしくなった方が…いい?」

 

首をコテンッと傾げて俺を見めてくる。

確かに愛が重いな~っとは思うけど、絶対嫌!って訳でもないからなんとも言えない。

 

 

「じゃあ聞くが、絵里はなんで俺にそんなにひっつく?というか、べったりなんだ?別に嫌って訳じゃねえぞ?そこまでしてお前大丈夫なのか?」

「ねえ隆也。私は隆也の事が大好き。朝からずっと隆也と一緒に居たいってくらい隆也の事が大好き。私をずっと見て欲しいし私とずっと傍に居て欲しいし私以外の女とも喋ってほしくないって思ってる」

「お、おう」

「だから、隆也には私から離れて欲しくない。朝の起きるときも、お昼のお弁当を食べるときも、夜の寝るときも。物理的に…いえ、精神的にってぐらいひっついていたい。隆也の視界には私しか映っていて欲しいし、食事の時も私の血が入ったごはんを食べて欲しいってずっと思ってたりする」

「う、うむ…」

「けど…こんな事考えてるけど、隆也が嫌だって思うことはしたくないの…。所詮はこれも私の願望なの。また、隆也が離れてしまいそうで…」

「離れる?」

「私の為に体を張って…死にかけたときだってあった。ここまで私の事を想ってくれてる人と…一緒に添い遂げたいって思ってるくらいに…。けど、それで隆也の迷惑にかかるのは、ダメだと思う…」

「絵里…」

 

絵里に出会ってから今までの人生の中でとても濃ゆく、とても混沌としたものだった。離れ引かれ、体を張って死にかけて。けど俺はそのくらい彼女を、守ってあげたいと思った。彼女の事を放したくないだって思った。

けど、それが今の絵里を作ったのかもしれない…。目の前で大切に思ってる人が傷つくのを黙っていられる人は居ない。だからか。俺の傍から離れないのは。

 

好きだから離れたくない。傷ついてほしくないから大切にしている。傍にいないと不安になるから。

 

 

 

俺のせい…じゃねえか。

 

 

 

俺がこうさせたんじゃないか。

 

 

 

 

 

「だ、だから…ね?こんなにべったりで、邪魔だって思ったら言ってね…?わ、私…できる限り、我慢するから…。隆也から…離れるから…」

「………」

 

俺の馬鹿野郎がっ…。

 

 

 

俺はそのまま絵里を力強く抱きしめた。

 

 

 

「り、隆也?」

「絵里、俺はお前が好きだ」

「へっ!?」

「ずっと護ってあげたいくらい大好きだ」

「あ、ありが…と…」

「だから、お前は今のままでいいんだよ」

「今の…?」

「お前が俺にしてるのは自分の心にある不安を取り除くためだろ?離れて欲しくないから、消えて欲しくないから…だから、こんな愛の表現しかできないんだろ?」

「………」

「俺は嫌だって思ったことはない。逆にお前をもっと愛してやりたいと思った!」

「にゃっ!?」

「いいんだよお前はこれで!絶対俺から離れるな!絶対俺の前から消えるな!俺はもっとお前の事を大事にしてするから!」

「隆也……」

 

 

 

「だから……、不安にさせてごめんな」

「っ……」

 

絵里の綺麗な金髪を撫でる。頭のてっぺんから毛先までゆっくりと優しく。こうしないと、こいつの中の何かが壊れてしまいそうな気がしたから。

 

 

 

「好き…」

「俺もだ」

「好き…。好き好き好き好き好き好き好き好き好き好きっ!」

「おう」

「いいの?もっと汚いって思うような事しちゃうかもしれないわよ?」

「気にすんな。へでもねえわ」

「愛してる…あなたの事…愛してる愛してる愛してる愛してる!!」

 

グリグリと頭を俺の胸に押し付けてくる。

 

 

「私の事…愛してる?」

「愛してるさ。これからもずっと」

「ふんっ……、私のこと愛しすぎてぺちゃんこになっちゃえ。重い愛に潰されちゃえ」

「潰せるもんなら潰してみろ。軟な体じゃねえんだよ」

「後悔させるくらい…愛してやるんだから」

「そりゃ楽しみだ」

 

ニッと口角を上げて笑ってやると絵里も似たように笑ってくる。その笑顔から思わせられるのは、ドS、小悪魔、ヤンデレ、などなど思わせるような笑顔に見える。

愛が重い?そんなもんどうってことねえよ。それだけ俺の事好きだと言ってくれるなら俺もそれくらい好きだって言ってやる。10回いうなら俺は20回言ってやる。100回いうなら200回言ってやる。

 

 

それくらい、絵里の事を愛してやるんだ…俺は。

 

 

 

 

 

 

「隆也…」

「お?」

 

 

 

 

 

 

「今夜は離さないから!!!」

 

 

 

 

 

 

やっぱり、俺の彼女は依存系だ。

 

 

 




(2回目)大変長らくお待たせいたしました。やっと時間ができたのでリクエスト回を執筆させていただきました。

今回はアイドルアニメおじさん様の依存系です。
一応、できる限りの力を尽くして書かせていただきましたが、これが依存系なのかどうかは自分も判りません。好き過ぎて仕方ないのが依存系だと認識しております。
あってるか心配でしかない…。
もし、違うな、これではないと思ってしまいましたら申し訳ありません。リクエストにお答えできるように努力していきたいと思っております。


さて、次回が最後のリクエスト回となります。
本当に申し訳ないです。就活に入るのでまた執筆する時間を作るのが難しくなると思いますので、また長い間待っていただくことになると思います。
できる限り頑張りますので、お待ちください。



では!今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!


では……またな!


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私はずっと傍にいるから

やっっっっとリクエスト回最後の話が出来上がりました。
リクエストしていただいたニックネームは忍者さんありがとうございます。


お題は【悲恋】です。

因みに設定ですが、まだ二人は付き合っておらず、友達以上恋人未満関係です。


「やっぱり…でしょうか」

「そうですね。右はともかく、もう左は……」

「手術でどうにかならないでしょうか」

「先天性の色覚異常は今のところ、治療法はありません……。もう片方の目を大事にするしか方法がないかと」

「最悪のケースになるときも、あると?」

「……はい」

「そうですか…」

「なので、身内の方、大事な人にはこの事実を必ずお伝えください。そして、私共の力が及ばず…申し訳ありません」

 

 

身内…、母さん、父さん、姉ちゃん、信也、じいちゃん。

 

 

 

絵里……。

 

 

 

 

「悲しいなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

心の準備なんかできてねえよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んん………」

「最近よく目を抑えているけど、大丈夫なの?」

「あぁ……見えにくくてな。眼鏡も付けてるのに…」

「眼科は?」

「二日前に行ったんだが、どうもな。薬も効いていないみたいだし」

 

 

ここ最近、目の調子が良くない。眼科の先生によると、目の中にある瞳孔が小さくなっているらしい。光を上手く捉えられてないのか、又は先天性のものか。流石にこのまま裸眼だと講義のホワイトボードすら見えないから眼鏡は付けている。他にも……症状はでるらしい。

先生から今は様子を見るしかないらしいと言われたんだよな。

頼むぜ本当に。明日は絵里とのデートもあるんだから。

 

 

出来ればその時に……【告白】も、したいって考えてるし。

あーー!考えると顔熱いわ!冷静だ!冷静になれ!これからまたプラン考えないといけないんだから。

 

「なんでそんなに四面楚歌状態になっているのかしら?」

「はっ!?い、いやなんでもねえよ!本当に何でもねえよ!?」

「全力で否定してくるあたりが怪しいのよね。なに?デートの事でも考えていたのかしら?」

「べ、べべべべべべ別に考えてねえしぃ!?」

「もう、私の荷物持ちなんだから当日遅れるんじゃないわよ」

「え?俺荷物持ち?」

「それ以外に貴方の役に立つことある?」

「ご、護衛とか…護衛とか…」

「私を何だと思ってるの」

「金髪狂暴極悪兼最恐無敵スクールアイドル様」

「殴られたいようねぇ?」

「う、嘘嘘ごめんなさい!」

「もう、いくら私が賢い可愛い優しいエリーチカだからって生意気よ」

(……一つ増えてるような…)

「っ!」

「あっぶね!?」

 

鼻先に飛んできた裏拳を間一髪でよける。

 

 

「次は……ないわよ?」

「お…おう…」

 

 

そして荷物を纏める絵里。

 

「じゃ、私は帰るから」

「あ、あれ?もう帰るのか?」

「……察しなさいよ…バカッ」

「へ?」

「~~~~っ!!じゃあね!」

「え?お、おい絵里!?」

 

 

 

 

耳を真っ赤にさせながら帰っていった。

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「もう、本当に隆也は……デリカシーって言うか…なんというか」

 

帰ってきて早速行ったのはデートの準備。ただでさえ大好きな男の人とデートに行くのだ。ちゃんとお洒落の準備をして体調も整えて赴きたい。

 

「さ、最近は隆也の眼鏡姿がカッコいいって思ってるのは……気のせいかしら?」

 

ただでさえ素面の時でもクールでカッコいいのに、眼鏡なんて掛けたら賢い優等生って感じが出てて好きだし。あの人は私が好きだって思ってるところで追い打ちらしきものをかけてくるから本当にズルい。

 

 

「できるなら……恋人同士に……早くなりたいのよね」

 

 

偽物の恋人をこのまま続けていたら……悲しい…。

ベットにある枕をギュッと抱きしめる。

 

 

「隆也も……私と同じ気持ちならいいのに」

 

隆也が好き。隆也と離れたくない。ずっと一緒に居たい。どんな時でも一緒に居てくれる彼を愛している。

 

 

 

「隆也の…ばかっ…鈍感……」

 

 

枕をベットに叩きつける。隆也の事で頭が一杯なのでどうにかして発散しないと爆発してしまいそうだ。

 

 

「がんばるのよ…絵里っ」

「お姉ちゃんごはんできたよ~」

「きゃあああああああああああ!!?」

 

 

 

爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

 

 

 

「………」

「………よ、よう」

「唐変朴念仁」

「なにその単語!?」

 

 

集合時間に絵里を待たせるのは悪いので30分前には駅前でスタンバっていようと思ったわけだが、なーぜか暗い顔をしている絵里が先に待ってた。悪口付きで。

 

「一体どうしたんだよ…」

「一体!誰の!せいで!こう!なったと!思ってるの!!」

「理不尽!?」

 

マジでわからない。何の話だ。

 

絵里の服は白色のブラウスに淡い水色のカーディガンとジーンズのパンツ。絵里のお姉さんの雰囲気を全開に引き出している服装…うん。すごく可愛い。

 

 

「なあ絵里」

「なによ…」

「その服、凄い似合っててかわいいぞ」

「っ!?」

 

率直な感想を言うと絵里の顔が茹蛸みたいに真っ赤になった。すげえ手品みたいだ。

 

 

(こーゆー所なのよね……本当に)

「絵里さん?」

「ふ、ふんっ!そ、そんな事言ったって嬉しくないんだから!」

「あ、そ、そうか…」

 

一応勇気を出して言ったんだが、ダメか。何がいけなかったんだろう。来た時にすぐ言わなかったからだろうか。

悶々と考えていると俺の右手を握ってきた。

 

 

「へ?」

「ほら、行くわよ。今日はコキ使ってやるんだから!」

「ちょ、ちょっと待って絵里さん!?腕抜けるるるるる!!」

 

凄い勢いで右腕を引っ張られ俺は引きずられるかの如く絵里に連行された。

 

 

お、俺今日告白できるのか?

 

 

 

 

 

それからというもの、絵里の笑顔が絶える事は無かった。ショッピングモールに入ってからはずっと手をつないでいたんだが、絵里はずっとニコニコしていて一層強く手を握ってきたり、指を絡ませたりとまるで恋人のように接してくる。

絵里が俺の名前を呼ぶときの笑顔、服を選ぶときの動作、食事をしているときの表情、髪を耳にかけるしぐさ。どの動きも俺にとっては微笑ましいものだった。

こんなにキラキラとした少女と共にいる俺は相当な幸せ者だろう。出会いが最悪とはいえ、今こうして居られるだけで俺は嬉しい。彼女の事を離したくない。

絵里が好きだ。絵里の笑顔が好きだ。絵里のしぐさが好きだ。絵里の綺麗な金髪が好きだ。絵里の一生懸命なところが好きだ。絵里を守りたいくらい好きだ。

 

 

嫌だなぁ(・・・・)

 

 

このまま彼女の事を見ていたい。何度も、何度も何度も見ていたい。その靡かせる綺麗な金髪をずっと見ていたい。このまま時間が止まればいいのに。

現実は残酷だ。俺がどれだけ願っても現実は思い通りにはならない。嬉しい事は短く辛い事が長く感じる。どれだけなりたくなくても神様は見向きもしない。たまにしか与えてくれない奇跡をこんな時に限って与えてくれない。

たくさん家で泣いた。胸が苦しくなって、頭がぐちゃぐちゃになって、涙が洪水のように止まらなかった。

 

覚悟は決めたはずだ。立ち止まるな、歩き続けろ。

 

 

 

 

『今の俺には、もう時間がないのだから』

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう隆也。色々と付き合ってくれて」

「気にするな。俺にとってもいい時間を過ごせた」

「なんだかんだ言いながらちゃんとエスコートしていたのは私にとってポイント高いわよ」

「お?仮恋人にそんなポイント与えていいのか?」

「仮恋人だからでしょ?」

「よく言うぜ」

 

ショッピングモールの上階にある展望台で夜に映る夜景を眺めていた。

そう、ここはデートする前に調べておいたカップルおすすめスポットである。絵里に夜景…うん。すごい似合う。

 

 

「綺麗だ…」

「へっ?」

「………あ」

「り、隆也?今のは…」

「あ!いや!その、口が滑ったというか!いや滑ってないけど!心の声がというか…出たというか…あの、その…」

「ふ、ふふっ…」

「え?」

「焦りすぎよ。私は可笑しいとは思ってないから」

「お、おう…」

「焦る貴方もかわいらしいわ」

「可愛くねえわ。どこが可愛いねん…」

「関西弁出てるわよ」

「あ」

「ド~ジ」

「ぬぐ…」

 

は、恥ずかしい。

バカやろう、今から告白するんだろ。気を引き締めろ。

 

 

 

 

 

 

 

「なあ絵里。大事な話があるんだ」

 

 

 

 

 

 

「ん?」

「俺は、絵里の髪が好きだ」

「…へ?」

「絵里のしぐさが好きだ」

「ちょ、ちょっと!?」

「絵里を誰にも渡したくないと思ってる」

「そ、そう…なの…?」

「お前と恋人のフリをするたびに、この恋心はどんどん大きくなってきたんだ。もう抑えることはできないと思うんだ」

「うん…」

 

顔を真っ赤にしながら俺の目を見つめてくれる絢瀬絵里。流石にこれ以上言ったら俺がなんていうかわかるはずだ。

 

 

 

 

「絢瀬絵里さん。俺はあなたの事が好きです。これからずっと護らせてください」

 

 

 

 

ポケットから出した手のひらサイズの箱。その箱を開けて中に入っているネックレスを見せる。

 

 

「俺と付き合ってくれますか?」

「ぁ…………」

 

手のひらにあるネックレスを見た後、俺の顔に視線を移す。そしてそのまま俺の手を握る。

 

 

 

 

「私も隆也が好きです。不束者ですが……よろしくお願いします」

 

瞳に涙を貯めながら、満面の笑みで答えてくれた。

 

 

 

「はぁぁぁぁ…」

「ど、どうしたのよ隆也」

「フラれるかと思ってヒヤヒヤしてたぁ…」

「だ、大丈夫よ!私も隆也の事大好きだったから!!」

「それ聞けて本当に安心…」

「もうっ…体格良いのに打たれ弱いわね」

 

 

とにかくよかった。これで第一関門は無事クリア。

 

次だ。

 

 

 

 

 

「絵里」

「ん?」

「このネックレス、受け取ってもらえるか?」

「えぇ、勿論」

「絵里に似合うと思ってな綺麗な白色(・・)にしたんだ」

「何言ってるのよ。綺麗なぎんい……ろ……」

 

俺の言葉を聞いた絵里の端切れが悪くなり、ネックレスを掴もうとする手が止まる。

そして、次の瞬間、俺の目を見た。

 

 

 

「隆也、今……なんて…」

「白色…だ。それに付け加えると」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は、絵里の髪は白色に見えるんだ」

 

 

 

 

 

絵里は俺から少しだけ離れた。

 

 

 

 

 

「隆……也…?」

 

 

 

 

 

 

絵里から涙がこぼれた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

【全色盲】

人間の網膜は赤、青、緑の光を感じる三種類の細胞があり、物を見るとその細胞に刺激が起こり、網膜や脳に伝わって色として感じる働きをする。全色盲という病気はその細胞が起こす反応『色覚』がなくなり、すべての色が白、黒、灰色に見える病気だ。

今の俺の目、正確には左目はもうこの症状が反映されており、視界に写る絵里の髪の色、肌、服装など全部モノクロに見える。まだ右目は色を識別出来ているが、それも時間の問題だというのが医者の判断だ。

全色盲、又は先天性の色覚異常と言われるこの病気の治療法は今のところ存在しない。このまま色を識別できなくなると、最悪のケース、目が見えなくなる。

 

できることなら絵里には伝えたくなかった。余計な心配を掛けたくなかった。だが、絵里の傍に居続けたら、バレるのも時間の問題なのだ。

 

 

絵里には悪い事をしたと思う。愛の告白と同時に悲しい事実を告白したのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「折角、告白したのに……ごめん。これを言わないと、いけないんじゃないのかって思って」

「目が………」

「もうすぐしたら俺は今まで見えてきた世界が見えなくなる。その前に絵里にこの心にある想いを伝えたかったんだ。卑怯……だよな。折角の告白を…潰してしまったんだ…」

「…………」

「まだ、間に合う。こんな……目がに見えなくなる俺に付き合う必要はないんだ。さっきの俺に言ってくれた言葉は撤回してくれて構わない」

 

 

なんて最低な男なんだ俺は。こんな事言って嬉しいと思っているのか。

 

 

大好きな人の目が見えなくなるかもしれないんだ。そんな事実、どう受け取ればいいってんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ごめ……んな」

 

俺の目からも涙がこぼれた。

 

 

右手で涙でぐしゃぐしゃになりそうな顔を覆う。こんな顔を絵里に見せれるわけない。

 

 

 

 

 

 

「隆也」

 

 

 

 

覆っていた手を払いのけられ、目を開けた瞬間、絵里の顔が目の前にあり、唇には暖かい感触があった。

 

 

 

 

 

「隆也が好き。隆也と離れたくない。私は貴方がどんな姿でも愛している。例え目が見えなくなったとしても、貴方を好きになってはいけないっていう理由にはならない」

 

涙でぬれているその瞳はどんな宝石よりも輝いていた。

 

 

 

「目が見えなくなって、貴方が暗黒の世界に落ちてしまっても、私は貴方を離さない」

「絵……里…?」

 

俺の震えている手を両手で握って、俺に微笑んでくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『私はずっと傍にいるから』

 

 

 

 

 

 

 

貴方の見える黒白(こくびゃく)の世界で、私は貴方にとってのたった一つの想い(ひかり)になる。




大変お待たせいたしました。
リクエスト回最後をようやく飾ることができました。
リクエストしていただいたニックネームは忍者さん!ありがとうございます!

自分の中で考えついた『悲恋』を頑張って描いてみました。
ちゃんとできているのかとても不安です……。\(゜ロ\)(/ロ゜)/

初めて取り組んだ内容でしたのでとても遣り甲斐のある執筆になりました。

そして、この『絢瀬絵里に出会った』ですが、また番外編は投稿します。
今は、別に執筆している方へ力を入れようと思いますのでよろしくお願いします。


今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!

では……またな!


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