竜使いかのんちゃんのVRMMO (ヴィヴィオ)
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1話

 

 かのんの世界は暗くて真っ暗で、声しか聞こえない。それが数年と続いているのです。小学生の入学式に事故にあって失明し声を出せなくなり、足や手を失って寝たきりになったです。そんなかのんにママ達は毎日、会いに来てくれるのです。撫でてくれる感触だけは忘れられない。でも、なんの為に生きているのかもわからず、ただの感触を感じるだけ。そんなかのんの前に一気に不思議な光景が映し出された。

 

【ようこそ、無限の世界へ。特殊パッケージを起動します】

 

 直に綺麗な白衣を着た女性が現れた。

 

「柊花音様。ご家族様よりメッセージが届いております」

「?」

「この世界では昔のように自由自在に動き回り、楽しむ事ができるので楽しんでほしいとのことです。また、ゲームの中で出会えるのを楽しみにしているとの事です」

「パパやママたちにあえるのです?」

「はい。彼等はアバターを作成しております。正式サービスですので、一ヶ月後にはお会いできるでしょう」

「やったっ!」

 

 また会えるだけでも嬉しい。苦しいだけの世界から解放されるのです。

 

「さて、貴方があちらで遊ぶ姿を作成しましょう。お母様達からデータを預かっておりますが、構いませんか?」

「ん、良くわからないからお任せ」

 

 元の姿なんて、覚えてないのです。

 

「では、そちらを使用しますね」

「ん」

 

 直に綺麗な金色の髪の毛に赤い髪の毛をした、綺麗な女のが映し出されたのです。

 

「基本はこれでいいとして、種族はどうしますか?」

「種族?」

「はい。色々な種族になれます。人間、エルフ、ドワーフ、ヴァンパイアなどの種族が選べます。また、ランダムでも選べますよ」

「ドラゴン!」

 

 ドラゴンがカッコイイの。お話でもあった強いのっ。強かったら、もう辛い思いはしなくていいよね?

 

「えっと……ドラゴンはないかな」

「ドラゴンがいいです!」

「えっと……」

「ドラゴン、ドラゴンっ」

「ちょっと待ってくださいね……えっと、はい。わかりました」

 

 お姉さんが誰かと話してる。

 

「えっと、ランダムで一応竜族が出るそうですのでそちらを選んでください」

「当たらないかも……かのん、運ないです……」

「だ、大丈夫です。身体障害者の……かのんちゃんはケア用の特殊パッケージですから、作り直しが簡単にできます。気に入った種族が出るまで何度もやり直したらいいんですよ。残念ながら、選ぶ事はできませんが」

「?」

「ようは頑張ればかならず取れます!」

「ん、かのんがんばるっ!」

「では、どうぞ」

「らんだゃむ!」

 

 かんじゃったけど、種族という所が色々と回っていく。

 

「ドラゴン、ドラゴン、ドラゴンっ」

 

 出たのはエルフだった。やり直し。ドワーフ、やり直し。天使、やり直し。人間、やり直し。人間、やり直し。人間、やり直し。人間、やり直し。人間、やり直し。ドワーフ、やり直し。エルフ、やり直し。ドワーフ、やり直し。悪魔、やり直し。

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

「でにゃい!」

「天使や悪魔がでているんですけどね~」

「う~もう一回っ!」

 

 ランダムボタンを押すと、額に綺麗な石を持った翼を持つ物が出て来た。名前は竜人。

 

「えっと、一応ドラゴンですよ」

「う~」

「私の時間がないので、続きを説明しますね。次に進んでも、チュートリアルを終わらせるまでならやり直せますから」

「ん」

「では、次です。スキルを選びましょう。色々とありますよ」

「ドラゴンっ!」

「ドラゴン系統ですか……えっと、竜属性魔法と……あ、お勧めにしますか?」

「ん、お願い」

「じゃあ、ソロが多くなるかも知れないし、ドラゴンが好きなら……眷属召喚と属性を選んで……戦闘系も有った方がいいわね。いえ、ここは特化にさせておきましょう。眷属強化と上位召喚、代償軽減くらいね」

「?」

「竜族を召喚して戦うの。つまり、ペットね」

「おー」

 

 面白そう。

 

「職業も召喚士にしておくわね」

「ん、それでいい」

「あれだったらまた作り直していいから。クローズβやオープンβが終わるまでは慣れる為の専用エリアがあるからね。召喚したモンスターが気に入らなければやり直しでもいいからね」

「ん、よくわからないけど、わかった」

「まあ、連絡をくれたら教えるからね」

「ん」

「じゃあ、楽しんでね」

「ありが、と」

 

 お姉さんが消えると、視界が暗くなってまた暗闇に閉ざされて怖くなった。でも、次の瞬間には光りのある世界に戻った。中央には大きな塔があって、回りにはぷよぷよした変なのがいる。きょろきょろと眺めていると、塔から小さな妖精さんが飛んできた。

 

「ようこそ、初心者さん。ボクは妖精のノルン。まずは貴女の名前を教えてくれるかな?」

「かのんはかのんだよ」

「かのんだね」

「ん!」

「プレイヤー名、かのんで登録しました。チュートリアルを開始するね。まずは何から知りたいかな?」

「しょーかんっ」

「召喚だね。わかったよ。それじゃあ、君の場合は……眷属召喚だね。宣言するだけでいいよ」

「けんぞーくしょーかんっ!」

 

【召喚を開始します。ランダムでランク1から10までのランクのモンスターが出現します】

 

「ん」

 

 出て来たボタンを押すと、トカゲさんだった。やり直す事にした。

 

 

 

【2週間後】

 

 

 

 699072って数字がのってけど、気にしない。ドラゴンが出るまでやるのだー!

 

「ていっ!」

 

 でた種族はりゅーぞく。りゅ~じんじゃなくて、りゅーぞくっ! これはもう、何回もでたっ! あとはこのまま進んで次はしょーかん!

 

「しょ~かん!」

 

 ランク7のドレイクっ! にせどらごんだから、めっ。どらごんってつかないと!

 

 

 

【四週間と六日】

 

 

 

 ついに出た。りゅーぞくで、しょーかんしたのがランク8で機械竜ジャガーノート。おっきくて金属のドラゴンで、カッコイイのっ!

 

「おめでとう。眷属召喚に眷属強化、上位召喚によるランク上昇。普通の召喚よりランクをあげたから、出たね」

「最大じゃない、です……」

「それは出せないよ。スキル構成が間違ってるから」

「あう?」

「眷属召喚で+1、眷属強化で+1、上位召喚で+1、代償召喚で+1、使い捨て課金アイテムで+1。これが召喚に10ランクが出る確率がうまれるスキル構成とアイテムだよ」

「嘘つかれた、です?」

「いやいや、あの召喚はあくまでも条件を満たしたらロックが解除されるだけだから、出るって扱いとして書かれているんだよ。ロック解除されてなければ意味がないと。ちなみに基礎値は5だからね」

「お~」

 

 ランク8は今、最高なのです。なら、ジャガーノートでやっぱり決定なの。

 

「じゃあ、続きを教えるね。アイテムストレージの使い方からだよ」

 

 喋ったり、手を素早く動かして開いたり、消したりしていく方法を習ったのです。次は魔法の使い方。こっちも喋るか手で決めた順番に振ると発動できるとの事。つまり、ニンジャみたいに印を作ればいけるのです。

 

「続きを教えたいけど、ご家族の方がお待ちだよ。もうすぐ正式サービス開始だからね」

「ん、それなら直ぐいく」

「了解だよ」

 

 妖精さんがかのんを何処かへ飛ばしてくれたです。

 

 

 

 



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2話

 

 

 

 妖精さんに飛ばされた先は、大きなお部屋だった。そこで白衣を着たお姉さんが居た。

 

「やぁ、久しぶり」

「ん」

「アバターが少し変わっているね」

「ん、色変えた」

 

 髪の毛の色もランダムっていうのを選んだ。だから、今は長い髪の毛が柔らかい桃色で、瞳が紫色になっている。

 

「まあ、それも似合っているからいいわね。大まかなのは変えてないみたいだし」

 

 ママ達が作ってくれたのだから、基本的には変えてない。

 

「さて、ご家族がこっちで待っているわ」

「ん」

 

 案内されて、奥にすたっふるーむという扉を開けると、そこで二人の人が待っていた。

 

「……ママ?」

「そうよ。かのん、おいで」

 

 ママの姿は前とは違うけれど、なんとなくわかる。だから、飛び込んで抱き着く。ママはかのんの頭を優しく撫でてくれる。

 

「どうやら問題ないみたいですね」

「ありがとうございます」

「いえいえ、こちらも色々と助かりますから。しかし、良かったんですか? 会社を辞めてこっちに来てほぼ生活をこちらに移すなんて……」

「いいんですよ。娘が優先です」

「そうですか……では、頑張ってください」

「はい。確か、家も用意してくれているんですよね?」

「ええ、家というか城ですけどね」

「城ですか……」

「はい。どうせだから、派手にやろうという事になりましてね。転移方法はわかりますか?」

「ええ、ちゃんと教えて貰っています」

「では、開始まで後一時間くらいなので移動しちゃってください」

「了解です」

 

 ママに身体を擦りつけていると、お姉さんがこちらにやってきた。

 

「かのんちゃん、お姉さんはここで帰るから、パパ達の言う事をよく聞くんだよ。それと、リアル……あっちの世界の事はここ以外では内緒だよ。かのんちゃんは……いや、いいか。取り敢えず、内緒にしてくれたらいいから」

「ん」

「良い子だね。じゃあ、後はよろしくお願いします」

「はい。それじゃあ、いこうか」

「そうね」

「ん」

 

 今度はパパに抱き上げられると、パパが何かをすると一瞬で別の所に移動していた。

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 大きな物凄く広いお城みたいな所で、そこの王様が居るような所だった。そこでパパとママはかのんを連れて更に奥にいって、大きな広間へと入った。天井も回りも無茶苦茶広い。

 

「ここが新しい家だよ」

「ここ?」

「ええ。取り敢えず、ここの水晶に触れてね」

「ん」

 

 ママに言われた通りに触れると、直ぐに何かの画面が出て来た。

 

「?」

「それはこっちで操作するからいいよ」

 

 直ぐにパパが何かすると、違う画面が開いて。そこからワープって書かれた画面へと移動した。

 

「この竜宮城っていうのが、家へと帰るボタンだからね。でも、宿屋の部屋やママの店からしか使えないからね」

「ん、わかった」

「部屋を決める前にチェンジするか」

「そうね。カノン、姿が変わるけどママ達には変わらないから、安心してね」

「ん」

「良い娘ね」

 

 ママが撫でてくれている間に、パパの姿が翼と尻尾、角が生えた人の姿に変わった。全部黒色でカッコイイ。それになんか、紫色や黒色の変なのがパパの回りから出てる。

 

「どうだ、カッコイイだろう」

「ん!」

「よしっ、もっとカッコイイ姿を見せてやろう」

「あなた……」

「いいじゃないか。大丈夫だって」

「はぁ……」

 

 ママがかのんを連れて下がると、パパが変身のポーズをする。すると、黒い色の変なのがパパの身体から溢れ出して、みるみるうちに大きくなっていった。

 

「……どらごんっ!」

『そうだドラゴンだぞ!』

 

 変身が終ると、ものすごく大きな黒いドラゴンが居た。そのドラゴンからパパの声が聞こえてくる。パパの前に《邪竜王・ディザスター》と出ていた。

 

「んっ!」

 

 かのんはパパに触ってみる。不思議な感触がした。

 

『カノンに早速加護を……』

「職権乱用はやめなさい」

『だが、別に構わないそうだぞ? 10人ほど竜族と竜人族のそれぞれの者に選んで与えるようにと言われたからな。その中に娘がいても、問題ないだろう』

「聞いてみるわ」

 

 ママが連絡を入れると、直に返答が来たみたい。

 

「駄目だそうよ。ちゃんと公平にしろって」

『ちっ、仕方ない。開始時間と同時にするか』

「それって……」

『問題ないだろう。かのんに入る可能性が高くなっているだけだ』

「……それは……うん、駄目だって。加護は謁見に来た時にランダムに与えるようにとの事」

『仕方ない。お前も変わってカノンに見せてやるんだ』

「そうね」

 

 ママも姿が変わって、銀色のドラゴンになった。お母さんの前には《聖竜・セレスティ》と表示されていた。

 

「お~」

『時間はまだあるから遊びましょうか』

『そうだな。ゲームが開始したら、遊ぶ時間もないしな。あ、奈々も学校から帰ったらやるそうだから、二人で遊んでくるといい』

『そうですね。奈々も心配していましたから』

 

 ななはお姉ちゃんの事。会うの楽しみ。

 

『とりあえず、今はお母さん達と遊ぼうか』

「ん! のぼるっ」

 

 それから、ママとパパをのぼったり、滑ったり、楽しく遊んだ。転んだりもしたけど、ママが回復魔法とかいうのをしてくれたので、とっても楽しい。

 

「そうだ、ノートも呼ぶ!」

『ノート?』

「ん! くる、ノート!」

 

 おっきな召喚陣が現れて、機械で出来た竜のノートが現れた。ノートは直ぐにかのんに向かって光線を撃って来た。

 

『させるかっ!』

 

 でも、パパが弾いてノートを吹き飛ばした。その後、パパが取り押さえちゃった。

 

「ふぇ……」

『大丈夫よ。ちゃんと契約していなかったのよね?』

「ん……引いて、決めただけ」

『じゃあ、契約しちゃいましょう』

「ん」

『しかし、機械系は操りやすい類なのだが……』

『いえ、あれでしょ。暴走状態だからじゃないかしら? 名前がジャガーノートだし』

『なるほど。じゃあ、かのん操縦席に乗ろうか』

「ん」

 

 ママの掌に乗せて貰って、ノートの頭の上に移動する。頭に触れると、かのんは吸い込まれるように中に入った。中からはパパやママの姿が見える。

 

『召喚者がコクピットに到着した事を確認しました。これより、マスター登録を行います。よろしいですか?』

「ん!」

『データをスキャンします。スキャン完了。マスター登録を完了しました。使用者のキャパシティーを確認。ERROR。ジャガーノート・オーバードライブはキャパシティーオーバーの為に使用できません。システムを封印し、使用可能状態まで落としますか?』

 

 良くわからない。だから、パパ達に相談してみる。

 

『した方がいい。今のままでは意味がないからね』

「ん。封印、使う」

『承認されました。システムを封印します。次に武装形態と待機状態、自立起動モードを設定します。マスターはどのような形態がお望みですか?』

「ますたぁー? かのんはかのんだよ」

『カノン……バスターカノンですね。武装形態をバスターカノンに設定しました。待機状態は……』

「??」

『カノン、お母さんが言うように言うのよ』

「ん」

 

 それから、お母さんの言う通りに言うと、全部が終わった。ノートは武器の状態はばすたーかのんってのになって、待機状態は髪飾り。自立起動モードはかのんと同じ女の子の状態。こっちは銀髪ツインテールってのになった。

 

『彼女はカノンのお友達ね』

「お友達、ノート、お友達っ」

「イエス、マイマスター」

『かみ合ってないようだが……』

『学習機能がついているし、問題ないでしょ』

『それもそうだな。道徳教育も出来てないから、奈々には色々と頼まないとな』

『そうね。でも、出来る限り私達でもやりましょう……あ、取り敢えず、やっちゃいけない事は最低限教えておきましょう』

『そうだな。やばい事になるかも知れないしな』

 

 それから、パパとママとの遊びは終わって、ノートと一緒にお勉強する事になっちゃった。でも、こんなのも楽しくて新鮮だから、とってもいい。

 

 

 

 

 



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3話

 

 

【ゲーム開始時刻五分前となりました。各キャストは準備に入ってください。繰り返します……ゲーム開始時刻五分前となりました。各キャストは準備に入ってください】

 

 お勉強していると、アナウンスが流れて来た。パパとママはそれを聞いて立ち上がる。ちなみにドラゴンの姿じゃなくて、人型だよ。

 

「さて、楽しい娘との団欒は終わりだ。仕事と行こうか」

「そうね。ああ、そうそう。この国の名前はドラグニア帝国というの。だから、選ぶ国を間違えないでね? そうじゃないと、お父さんが敵になっちゃうかも知れないから」

「ん、わかった」

「良い子ね」

 

 お母さんが撫でてくれる。

 

「でも、覚えられるかな……」

「問題ありません。記録しました」

「というか、最初は中立地帯の中央に飛ばされるんだがな」

「中央?」

「ああ、この世界は中央島が有り、その周りに内海が存在する。その内海を超えた先の周りに円形の大陸が存在する。ドラグニア帝国は大陸に存在する国だな。険しい山脈に上層部に存在する」

「中央は島で、そこが中立地帯です。そこから船や巨大な橋を通って移動できるの最初は中央神殿がプレイヤー、カノン達を呼び出したって設定だから、そこからスタートになるの。後は種族やこの身に応じて、所属国を選んだら、飛ばしてくれるわ」

「ん、わかった」

 

 そんな話をしていると、時間が危なくなったのか、パパがかのんにキスをしようとして、弾かれた。

 

「む」

「時間ないでしょ。さっさといきなさい」

「わかった」

 

 急いで出て行ったパパ。ママはどうしたのかな?

 

「ママ?」

「ん~ちょっと待ってね」

 

 ママは白衣のお姉さんに連絡をしだした。それから少しして、かのんを抱いて立ち上がった。

 

「じゃあ、行きましょうか」

「ん」

 

 直ぐにママとかのんは光に包まれて、違う所に移動していた。

 

 

 

 

 そこはずっと前にテレビで見た事があるような牧場のようで、とっても広い場所だった。

 

「ここが私の仕事場です」

「動物、いっぱい」

「ええ、そうですよ。ここではテイマー系やサモナー系の人を始め、色んな人に愛玩動物系のペットや戦闘に使えるパートナーを紹介していきます」

「凄い」

 

 視線の先では角の生えたお馬さんや、恐竜まで、沢山の生き物がいっぱいる。

 

「ちなみに移動の為にレンタルもやってるから、必要になったら……ならなくてもきてくださいね」

「ん」

「さて、ここは中央領域に在りますから神殿から直ぐにこれます……っと、時間ですね」

「ん」

 

 かのんの身体が光っていく。

 

「プレイヤーは神殿に一度召喚されますから、楽しんできてください。寂しくなったら何時でもここや家に帰ってきていいですからね」

「ん、わかった」

「あっ、そうそう……出来る限り、早くお父さんの所に行ってくださいね」

「ん」

 

 返事をすると、視界が切り替わって何処かの大神殿へと到着した。

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

「おお、異界から来た来訪者よ。我等は貴方達を歓迎します。どうか、我等をお救いください。現在、我が世界はモンスターの大量発生が起き……」

 

 何かを言っているけど、かのんはママに言われた通りにパパの下へと急ぐです。てててと、走って最初はママが居る所へと目指す。ノートは待機状態でもなく、召喚もされていない状態だから、そのまま走る。直ぐに街の端にある牧場に到着した。

 

「ママっ」

「いらっしゃい。用意してあるから、こっちに来てください」

「んっ」

 

 ママに案内されたのは牧場の大きな柵の中。そこには大きなドラゴンさんが居た。

 

「はい、これが通行許可書で、こっちをパパに渡してね」

 

【クエスト、セレスからの密書が開始されます。このクエストによって所属国が決定されます。受けますか?】

「んっ!」

 

 答えは決まっているので、受ける。すると、ママがドラゴンさんの背中にある鞍に乗せてくれた。

 

「決して、到着するまで離してはいけませんからね」

「んっ!」

「じゃあ、行って来てください。くれぐれも落とされないように」

 

 ドラゴンさんがママの言葉に雄たけびをあげた後、直ぐに飛び立っていく。かのんは必死に掴まってパパの下へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 空を飛んでいると、沢山のモンスターに襲われたけれどドラゴンさんがブレスを吐いたりして、追い払ってくれた。そのまま大きな山脈につくと、上昇して雲の上に到達した。

 

「うゎぁ~」

 

 雲の上はまるで海みたいで、お日様の光がかのんを照らしてくれる。しばらく上昇していくとお城みたいなのが見えてきた。そこのバルコニーに到着すると、直ぐに怖いトカゲの兵士さんが現れた。

 

「何用だ」

「ん」

 

 許可書を見せると、直に案内してくれた。連れていかれたのは玉座の間とかいう所で、パパや他の人が居た。パパの隣には凄く強そうな人も居る。

 

「セレスティア様の密書を持ってきたようです」

「うむ。ちこう寄れ」

 

 直ぐに走って近付いて、パパの膝の上に乗る。

 

「なっ⁉ 無礼であるぞっ!」

「陛下っ」

「よい」

「パパ、ママから」

「う、うむ……ご苦労だった。これで其方は我が帝国の者となった」

 

【クエスト・セレスからの密書が達成されました。報酬を確認してください】

 

 パパが手紙を受け取ってくれる。

 

「パパ?」

「ええいっ、貴様っ、その方は貴様の父親などではない!」

「っ!? そ、そうなの……?」

 

 その言葉に涙が溢れてくる。

 

「やだっ、やだぁ……」

「違うぞっ、カノンは私の娘だっ!」

「「え?」」

「ちょっ、それは困りますってっ!」

 

 パパの隣に居た人が慌てる。

 

「仕方ないだろ! 娘に泣かれてどうにかなると思っているのか! それともっ、いたいけな幼い子を泣かせる趣味があるのかっ!」

「いや、ないですけど……でもっ、それはちょっと不味いんですよ!」

 

【プレイヤー・カノンにドラグニア帝国第一王女の称号が与えられました】

【ワールド:特殊クラス、王女(プリンセス)及び皇子(プリンス)が解放されました】

【特殊クラス:竜王姫(プリンセス・ドラゴンロード)を入手しました】

 

「あ~遅かったか。これは会議物だ……」

「すまん」

「まあ、仕方ないでけどね。泣く子には勝てません。取り敢えず、対策してきますので、進めておいてください」

「わかった」

 

 パパの隣の人が消えて、パパはかのんを撫でてくれる。

 

「この子は我が娘だ。皆もそのつもりで行動するように」

「「「はっ!」」」

 

 直ぐに皆が片足をついて、頭を下げてきた。

 

「さて、カノンは何かしたい事があるか?」

「肩車っ」

「よし、いいだろう」

 

 パパに肩車してもらいながら、お城の探検に出かけた。

 

 

 

 

 

 

 ※※※ 会議室

 

 

 

 

 

「で、どうするよ」

「起こった物は仕方ないだろう。子供の行動を制限できるとは思えんかったからな」

「しかし、色々と問題が起こるのではないか? 公平ではないと……」

「いや、彼女の場合はほぼこちらで生活するのだからいっその事、運営側のキャラとして扱ってしまえばいい」

「しかし、クエストを発生させる場合はどうするんだ? 彼女のアバターに組み込むと色々と大変だぞ」

「確かにそうだな。クエストが乱発しそうだ。自動生成があるとはいえ、彼女の所ばかりで起こるのは不味い」

「なら、彼女はテストプレイヤー扱いにして、クエストなどは付き人……メイドをつければいいのではないか? 仮にも王女なのだから」

「見聞を広める為に世界を旅して、修行する王女か。まあ、有りだな」

「なら、王子や王女は開始サービスとして喧伝すれば問題ありませんね。タイミング的にも問題ないでしょう」

「しかし、習得条件は……」

「緩和する。国の姫などはそうだが、一定人数の集団において認められるとなれるようにしよう」

「それって、コミュニティを解放するって事ですよね」

「うむ」

「徹夜じゃねえか!」

「頑張れ。残業手当は出す」

「えっと、じゃあ……彼女はモニターとして採用。そのプレイを観察記憶して、PVなどにも使わせて貰おう。もちろん、回覧は女性のみで。男性は女性陣が編集した物を見るように」

「おっけー」

「まあ、そうだな」

「じゃあ、アップデートするぞー」

「いえっさー」

「さ~て、徹夜の準備しますか~」

 

 

 

 

 

 

 

 



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4話

カノンのイメージは東方のこころちゃん。むろん、性格は違います。たぶん。やったことがないからわかんないし。



 

 

 パパと一緒にお城を探検してたら、パパが大きな扉のある部屋に連れて来てくれた。そこにはキラキラしたりするいっぱいの宝物が置いてある。

 

「パパ?」

「ここは宝物庫だ。カノンに好きな物を……あがっ⁉」

 

 パパが叩かれて、振りかえるとそこにはハリセンを持った白衣のお姉さんが居た。

 

「何をする」

「何をするとはこっちの台詞なんですけどねえ? なんでいきなり国宝級のアイテムを渡そうとしてやがるんですかね?」

「いや、ほら、第一王女になったからにはそれを証明する物をだな……」

「確かにそれは必要でしょうが、そんな物を持たせたらPKに狙われる事になりますよ」

「そこは強力な近衛師団の隊長各を護衛に……」

「阿保かっ! どこの世界にスタートとほぼ同時にエルダードラゴンを連れているプレイヤーが居ますか!」

「だが……」

「いいですか、確かに報酬としても、証明としてアイテムは必要です。ですが、それはこちらで決定します。カノンちゃんも、お姉さんが選んでいいよね?」

「ん、いい」

「む、娘にプレゼントをあげたいのだが……ほら、今まで誕生日にもちゃんとした……カノンが使えるプレゼントをあげられなかったからな……」

「……それは確かにあげるべきですね。いいでしょう。ただし、課金アイテムにしてください。ガチャならまだ納得は出来るでしょう」

「わかったっ! ちょっと課金してくるっ」

「じゃあ、カノンちゃんはこっちで預かりますね」

「たのむ」

「ん」

 

 かのんはお姉さんに渡されて、パパは何処かに行っちゃった。直にお姉さんはにやりと笑って指を弾く。するとかのんの回りに大人のお姉さん達が現れた。

 

「かのんちゃん、ちょっとお着換えしましょうね~」

「そうそう、可愛い女の子はちゃんとした服装をしないとね~」

「そちらは頼む。私は彼女に上げる物を探す」

「はい、主任」

「任せてください」

「しゅにん?」

「はい。あの人はカウンセリングの資格とかも持っていますが、研究者でもあります」

「まあ、カノンちゃんのような娘には甘い人ですからね。妹さんを亡くされて……っと、これは言っては駄目ですね。カノンちゃん、出来たら甘えてあげてくださいね」

「ん!」

 

 良くわからないけれど、お姉さんと仲良くなったらいいって事だよね。

 

「取り敢えず、ゴスロリでいいかな?」

「最初の方ですし、そこまで高価なのは駄目ですね」

「なら、ワンピースタイプで黒をメインにして白いフリルにしましょう」

「耳も尖っていますし、エルフと誤認されるかも。というか、動きづらいですし普通の服にしましょうよ」

「そうね。城で過ごす服と旅の間に着る服は変えましょうか。いえ、もう渡しておいて好きに着て貰ったらいいわね」

「取り敢えず、今は緑色のブラウスと赤色のミニスカートにしましょう」

「ちょっと、この子の髪の毛でそれって心ちゃんじゃ……」

「いいじゃない。その方が色々と誤認してくれるわ。だから、後は扇子ね」

「こいつ……まあ、いいか」

 

 色々な服を着れて楽しい。それにお話しできるだけでも、ううん、見えるだけでも楽しい。

 

「よし、じゃあ、今度はこれを持ってみてね」

「ん」

「どう、重い?」

「大丈夫」

 

 青色の扇子みたいなのを渡されたので、色々と振ってみる。開いて縦に振ると刃になって、切れるみたい。開いて見ると竜の絵が描かれていて、そこから青い炎の竜が飛び出て来た。

 

「この子、召喚士だったわよね」

竜王姫(プリンセス・ドラゴンロード)だから、こうなったんでしょうか?」

「おそらくね。そういえば、この扇子の素材って……」

「鑑定結果はウォータードラゴン、水竜ですね。骨組はそのまま水竜の骨を切り出して作られています。扇面は鱗を溶かしてコーティングした牙のようですね。だから、天の部分が少し尖っています」

「絵は?」

「水竜の魔石と血の混合液ですね」

「……ランクは?」

「ランクA、国宝級ですねぇ~」

「駄目じゃん!」

 

 なんか、お姉さん達が話している間に赤いのもみつけたから、服の中に仕舞っておく。後は興味があった本を読んでみる。ちんぷんかんぷんだけど、絵がかいてあったから、それだけはわかる。

 

「って、何を読んでるんですかーっ!」

「それ、不味い奴っ! やめてっ、読まないで~!」

 

 直に取り上げられちゃった。残念なの。

 

「ど、どうする?」

「だ、大丈夫。これは儀式魔法だから、流石に大丈夫なはず……それに、私達は何も見なかった。いいわね」

「おっけー。始末書じゃすまないかも知れないしね」

「折檻?」

 

 お姉さん達がそんな話をしていると、白衣のお姉さんが戻って来た。

 

「ちゃんと見てましたよね?」

「あっ、当たり前ですよっ」

「は、はいっ」

「なら、いいのですけど。さて、じゃあカノンちゃん。君にはこれをあげよう」

「ん、ネックレス?」

「ええ。隠蔽効果のあるアイテムです。竜煇石という特別な石が嵌め込まれています。竜族種ならこれで王族と判断できるでしょう。副次効果として、使用する竜種に対してのコスト軽減ができます」

「ちょ、主任っ!」

「それって伝説……」

「バレなきゃいいのです。例えバレても私なら、どうにでもできます」

「駄目だこいつっ!」

「どうやら、残業を38時間ほど増やして欲しいようですね」

「ごめんなさい!」

「勘弁してください! 私は関係ありません!」

「あっ、こいつっ」

「では、連帯責任でお二人がカノンちゃんのモニター及び、クエストの発行をしてくださいね。一応、こちらがNPCを用意または改造するまで」

「残業決定じゃないですかっ!」

「鬼畜だっ!」

「着せ替え人形にしていたでしょう。ほら、いきますよ」

「「ひぃ~~」」

「あ、カノンちゃんはお外でお父さんを待ってようね」

「ん!」

 

 外に出ると、お姉さん達が消えていった。かのんは言われた通りにお外で待ってる。でも、暇だからさっき見た絵本の絵みたいに踊ってみる。

 

「あうっ」

 

 回っていると、こけちゃった。でも、身体を動かすのも面白いのでやってみる。遊んでいると、パパがやってきた。

 

「ただいま。良い子にしていたか?」

「ん!」

「よしよし。じゃあ、ちょっとパパに手を操作させてくれ」

「ん」

 

 パパがかのんの手を握って、色々としていく。何かお店みたいな画面が開いて、パパがそこにいろんな文字をかのんの手でうっていく。

 

「よし。取り敢えず、竜族は経験値が低いから経験値アップ系列を買い込むか。一ヶ月パーティー全体の経験値2倍が2万で、5倍が3万か。これとスキル熟練度の方も買っておこう。六万だろ。あと四万はガチャ……いや、これはいいか。カノン、ここに回復アイテムとか沢山売ってるから、緊急時にだけ使いなさい。それ以外は毎月の小遣いをあげるから、それで好きに買いなさい」

「ん!」

「よしよし。っと、もう時間がやばいな。父さんは仕事にいかないといけないから、カノンはお外で遊んでくるか?」

「遊ぶっ」

「危ない事もあるかも知れないが、頑張るんだぞ。カノンはお父さんとお母さんの子供だから、大丈夫なはずだ」

「ん!」

「それと四時くらいになれば奈々もくるはずだから、一緒に冒険しておいで」

「ん、行って来る」

「ああ、いっておいで」

 

 かのんはドラゴンさんにママの所まで送って貰った。

 

 

 

 

 

 



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5話

 

 

 

 ママの所にもどって来た。でも、ママは忙しそうにしていた。というのも、お客さんがいっぱい来ていたから。

 

「すいません、馬が欲しいです!」

「こっちは走竜が……」

「お金があれば構いません。それとランダムでモンスターが生まれてくる卵ガチャもやっています。どうぞ、お試しください」

「付き合ってください!」

「夫がいるので無理です」

 

 忙しそうに働いている。かのんは邪魔になるから、出て行こう。だって、人多すぎて怖い。まともに喋れないし。だから、ドラゴンさんの所までもどる。

 

「ドラゴンさん、ドラゴンさん」

『なんだい、お姫様』

「しゃべれ、る?」

『姫様が言葉を理解しただけですよ』

「ん、そっか。じゃあ、人が少ない所に連れて……行って……」

『お安い御用です。ささ、乗ってください』

「ん!」

 

 ドラゴンさんに乗って、飛び立ったら改めて回りをみる。この街の中心には大きな大きな木があって、島も大きい。山や森、谷なんかもある。

 

「ねぇねぇ、おっきな木の上に行きたい」

『上までは無理ですが、途中までなら』

「それでいいよ」

『では、しっかりと捕まってください』

「ん」

 

 直に高く高く、飛んで行く。雲を超えて飛んだ先の木の上には大きな黄色い果実みたいなのがいっぱいなっていた。

 

「あれ、食べて……みたい……」

『あれですか。流石は姫様。お目が高い。ですが、取りにいくと敵がくるのでしっかりと捕まっててくださいよ』

「おーお願い」

 

【竜王姫のお願いが発動しました。対象の竜族を極大強化します。眷属強化が発動しました。対象の竜族を強化します。かりすまAが発動しました。対象を特大強化します。一定値の能力値を超えました。竜煇石を確認。条件を満たした為、限定進化を発動します】

 

『力がみなぎってくるぜぇええええええぇぇぇっ‼‼』

 

 ドラゴンさんが吠えて、突撃していく。すると大きな木の方からも大きな鳥さんが出て来た。それに対して、ドラゴンさんはおっきなお口からビームのようなブレスを吐いて、鳥さんは嵐を起こして防ごうとする。でも、ブレスが嵐を蹴散らして鳥さんに命中した。鳥さんは体勢を崩しながらも、次々と風や雷を放ってくる。でも、ドラゴンさんはそれらを翼で作った風で吹き飛ばし、ブレスを吐いて次々にダメージを与えていく。

 入れ替わるような激しい攻防の中、いつの間にか立ち位置が変わって、ドラゴンさんが大きな木の方になっていた。そして、ドラゴンさんが暴風にさらされて木に激突する。

 

『姫様。奴は俺が引きつけておきますから、今の間に回収してくだせえ』 

「ん! がんば」

『おう!』

【竜王姫の応援が発動しました。対象の竜族を全回復及び強化します】

『死に曝せぇえええええええぇぇぇぇぇぇっ!!』

 

 大きな木の枝に降りると、ドラゴンさんは直に飛び立っていった。たぶん、わざと吹き飛ばされた。っと、急いで果実を回収しよう。手を伸ばしたり、ジャンプしたりするけど、届かない。

 

「んー届かない。ノート」

「イエス、マイマスター」

 

 召喚して、お手伝いをお願いする。自立起動モードで出て来たノートが、大砲みたいなのを構えて、黄色……黄金の実を打ち落としてくれる。それをかのんが落下位置で受け取っていく。かのんの身体よりも大きな実で、食べごたえありそう。

 

「マスター、アイテムストレージに収納してください」

「ん? どうするの?」

「えっと、収納でいいはずです」

「ん、収納」

 

 すると黄金の実が光となって消えた。すると、視界の片隅に黄金の林檎を入手しましたと、出た。

 

「よくわかんないけど、いっぱい集めよう」

「イエス、マイマスター」

 

 林檎狩りをしていると、ドラゴンさんが鳥さんに虐められてとても苦しそうにしていた。だから、かのんはあるアニメを思い出しておっきな林檎を使う事にした。

 

「ドラゴンさん、新しい顔……違う。メカの素だよ!」

 

 林檎を思いっきり投げると外れて下へと落ちていく。でも、ドラゴンさんが必死に飛んでそれを咥えた。でも、投げた事でかのんの事がばれたみたいで鳥さんが、こっちにやってくる。

 

「あうあう」

「迎撃します。バスターカノン、スタンバイ。標準完了。ファイア」

 

 ビームが放たれ、鳥さんは回避しながらこっちにどんどん来る。もう駄目かと思った瞬間、鳥さんの身体は影に吹き飛ばされて、更に上に行っちゃった。

 

「マスター、今のうちです」

「ん!」

 

 いっぱいの林檎を回収して、回りがなくなったので、奥へと進むと大きな洞があったので中に入ってみる。

 洞の中は太陽の光が降り注ぎ、大きな碧のはっぱに反射して、水滴が落ちて来る。その水がかのんを頭から濡らした。

 

「ちゅめたい」

 

 ペロリと唇を舐めてみるととても美味しかった。これも回収しておこう。回収しながら更に奥へと進むと大きな100の頭を持つ茶色いドラゴンさんが居た。

 

「こんにち、は」

『竜王姫がこのような所にくるとは。外のフレースヴェルグを倒したのか?』

「ドラゴンさんが頑張ってくれているよ」

『そうか。して、このような所に何用だ。ここは……』

「遊びに来たの!」

『む、遊びにか。もしや、我と?』

「うん!」

『よかろう。どうせ退屈していた所だ。遊んでやろう』

「わ~い!」

 

 お話したり、触らせて貰ったりしたりしていると、ラードーンさんが大きな黄金の林檎を取り出して、切って食べさせてくれた。とっても美味しかった。気付けばもうお昼を過ぎて夕方になっていた。

 

「あ、そろそろ帰らないと」

『む、そうか。では、お土産を渡そう』

「いいの?」

『うむ、問題ない』

「ありが、とう」

『気にするな。我と汝は友だからな。何かあれば助けてやる』

【守護竜ラードーンと契約しました。以降、召喚が可能です。ユグドラシルの葉×100枚をラードーンより入手しました。特殊報酬:炎獄の竜眼を入手しました】

 

 かのんの額にある目が開いて、ラードーンさんから何かが入って来た。

 

『では、送ろう』

「ん!」

 

 外に出ると、ラードーンさんが火を噴いて鳥さんを追い払ってくれた。その間に黄金色に光るドラゴンさんが戻ってきて、かのんは乗って帰る事にした。

 

「またね」

『うむ。我はここから動けんから強くなったら呼び出してくれ』

「ん、頑張る!」

『ではな』

『では、いきます』

「またね!」

 

 地上に向かって飛んで行く。すると、ドラゴンさんの姿がどんどん元に戻っていく。到着する頃には普通の姿になってた。

 

『姫様、これをお持ちください』

「おっきな翼?」

『えぐりとってやりました。まあ、直ぐに再生しやがったんですが』

「おー、いいの?」

『どうぞどうぞ。俺も前よりもランクアップできましたからね。報酬は十分でさ。それに姫様を乗せたとありゃ、皆に自慢できますからね』

「ん、わかった。貰っとく。ありがと」

『いえいえ。それではまたよろしくお願いしやす』

「ん!」

 

 ドラゴンさんと別れて、お姉ちゃんを探しに向かう事にする。でも、よく考えたら、ここで待ってた方がいいので原っぱでお昼寝する事にした。

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

「おい、なんでユグドラシルが初日の、それも半日で攻略されてんだ?」

「……ワタシはワルクナイデス」

「オレモシラネー」

「原因は簡単でしょう。竜王姫の竜族に対する絶対命令権とまではいかないでも、それに準ずる権能ね」

「まあ、本来はフレースヴェルグが竜族に対する防波堤になり、巨人族の連中にとってはラードーンが防波堤になる設定でしたが……」

「竜王姫の強化能力と竜煇石による限定進化。さらに黄金の林檎の限定進化。うん、倒せないでも奮戦できるか」

「ましてや、後ろにお姫様を乗せているんですから、頑張りますよねぇ。修正しないとまずいですね」

「取り敢えず、ヴェズルフェルニルの実装と、上層部への侵入禁止にしないといけないっすね」

「進入禁止はいらんな。そもそも、普通はダンジョンをまともにクリアしないとこれない訳で。飛ぶ対策としてフレースヴェルグの配置だったのだが、それでも足りないからヴェズルフェルニルを配置するという事だったしな。これで大丈夫だろう」

「カノンちゃんへの修正はどうします? 煉獄の竜眼とか、結構やばい奴なんですけど」

「彼女のデータは……おい、明らかに初日のデータじゃねえぞ」

「修正、します?」

「しないわよ。そんなのやったら、許されないわ。だいたい、まともにラードーンとか呼び出すなんて不可能だし、この際対策はヴェズルフェルニルの実装とドラゴンのレンタルを修行の為に禁止という事にしましょう。自力で確保するならばともかくね」

「確かにそうですね。修行という事で、出来る限り竜族には協力しないように通達しておきましょう。もちろん、戦争とか例外は別で」

「そうですね。では、一番の問題は……黄金の林檎198個、ユグドラシルの葉100枚、ユグドラシルの露が8リットル。これをどうするかね」

「ユグドラシルの露が蘇生アイテムでしたよね」

「ええ、そうよ。黄金の林檎は全回復と進化アイテムね。葉はエリクサーとかのポーションとかに使う素材よ」

「……別に放置でいいと思いますよ。子供ですし、多分おやつくらいにしか思わないでしょう」

「……それもそうね」

「他の連中に割ったら危ないぞ?」

「いい考えがあります。子供という事を利用します」

「おい、まさかとりあげるとかいうなよ?」

「違います。私達が受け取って、林檎のお菓子やジュースを作って渡したり、他の食べ物とかと交換するのです。これで、回収出来ますよね」

「確かにそっちの方がいいか」

「子供なら喜んで渡してくれるでしょう」

「なにより、俺達の罪悪感がないのもいいな。よし、それでいくか。だが、能力を落としすぎるのもあれだからステータスアップアイテムとかにしておけよ。ドロップ強化や経験値増加でもいいけどな」

「待ってください! それってつまり、空腹度を実装って事ですよね!」

「用意しているだろ?」

「用意していますけど、コミュニティの実装もあるんですよ!」

「それがどうしました? 泣きごと言ってないで実装しますよ。なに、たった三日くらいの徹夜ですみます」

「三日で済む訳ないでしょ」

「大丈夫です……応援を要請しました」

「それ、何時きます?」

「二日目?」

「無理だーーー!」

「まあ、皆で残って手伝いますから」

「「え?」」

「ほら、やれる事はいっぱいあります。監視……モニタリングもしないといけませんし」

「そうだな。俺達開発チームだけ残るなんて許されねえ。全員だよな?」

「どうしてもの人を除いてですけどね。お子さんとか、居る人は仕方ないですし。もちろん、母親や夫など別の人が居る人は別ですが」

「デスマーチの始まりじゃぁあああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 



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6話

 

 

 草原で寝ていると、身体をゆすられて目を開ける。すると茶色の髪の毛を肩ぐらいまで伸ばした女の子が居ました。

 

「カノン、久しぶりですね」

「ナナお姉ちゃん?」

「はい、そうですよ」

 

 お姉ちゃんの姿は魔法使いのような恰好をしている。

 

「顔はリアルと同じです。名前はステラですね」

「ん、カノン」

「ええ、知っています」

 

 奈々お姉ちゃんがステラ?

 

「ん~」

「ここでは基本的に本名を使うと不味いですからね。ああ、カノンは大丈夫ですよ。まあ、そんな訳でステラかお姉ちゃんと呼んでください」

「ん」

「確か、カノンは召喚士でしたよね?」

「ん!」

「では、ステータスを見せてください」

「?」

「チュートリアルを飛ばしましたね?」

「ん、召喚するの、大変」

「わかりました。じゃあ、教えますね」

 

 お姉ちゃんからステータスの開き方を押しえて貰って、開く。

 

 

  名前 :カノン

  種族 :竜族

  称号 :ドラグニア帝国第一王女、ユグドラシル攻略者

 職業1:召喚士(1)

 職業2:竜王姫(1)

 技能1:眷属強化(1)、代償軽減(1)、かりすまA(1)、炎獄の竜眼(1)

 技能2:眷属召喚(2)、上位召喚(1)、竜属性魔法(1)、上位隠蔽(ー)

  召喚 :機械竜ジャガーノート(武装形態・バスターカノン、待機状態・髪飾り、自立起動モード・人型、機能封印)、守護竜ラードーン(召喚不可)

  装備 :水竜の扇(武器)、炎竜の扇(武器)。竜族の服(緑のブラウスと赤色のミニスカート)。ブーツ。竜煇石のネックレス。

  課金 :PT経験値5倍、PT熟練度5倍。

 

「何をしていたんですか……」

「?」

「まあ、いいでしょう。それより隠蔽をした方がいいですね。色々と隠さないと」

「ん」

 

 お姉ちゃんに従って、竜煇石についている上位隠蔽で駄目な所を隠していく。直に綺麗な状態になった。称号とか、職業2の場所も消した。

 

「竜王姫……かりすまAの習得と竜族に対する強化、命令権ですか。私の巫女より種の全体に効果があるのは凄いですね。いえ、それ以前のこの大量のアイテムが言われた事ですね……」

「お姉ちゃんはなに?」

「種族ですか? 種族は竜族ですよ」

「お~お姉ちゃんも?」

「ええ。βの時はランダムで天使を引いたのですが、正式サービスになって運営の人に両親や妹が竜族なのに、私だけ天使なのは嫌ですって言ったら、種族を変えてくれて特殊職も貰えました。頼み事も色々とされましたが」

 

 お姉ちゃんが頭を撫でてくれる。特殊職?

 

「ああ、そうです。林檎とユグドラシルの露とか、渡して貰いますね」

「ん、いいよ」

「後で美味しい料理を作ってあげますからね」

「おー」

 

 楽しみ。お姉ちゃんに全部渡す。

 

「これで頼まれた一つは問題ありませんね。じゃあ、次はパーティーを組みましょう。今から申請するので参加してくださいね」

【ステラより、カノンにパーティー申請を受けました。受託しますか?】

「ん」

【パーティーを組みました。課金効果の経験値5倍、熟練度5倍がパーティー全体に発揮されました。竜王姫の効果により、竜族のパーティー全体が強化されます。竜の巫女により、竜族に対して自動回復、移動速度上昇、自動障壁が展開されました】

 

 パーティーを組むと、お姉ちゃんのアイコンが視界の隅に出て色々な支援アイコンというのが出て来た。

 

「じゃあ、何かしたい事はありますか?」

「ん~ご飯……?」

「ご飯ですか……じゃあ、海の幸か山の幸、肉、どれがいいですか?」

「ん、お魚!」

「では、海岸に行きましょうか。っと、その前にちょっとよりたい所があります」

「んっ!」

 

 お姉ちゃんと手を繋いでお店に移動する。そこでお姉ちゃんが、色々と買ったりしていた。

 

 

 

 

 ※※※ ステラ

 

 

 

 

 運営から頼まれたのは妹のサポートです。代わりにクエスト発行権限などをはじめとした一部のシステム権限。それに竜族アバターと竜の巫女という特殊職。これによって私は父と母の子供でありながら、継承権は持っていないので王女ではない扱いです。まあ、このアバターは何を思ったのか、前のアバターである天使の力も持っていますのでそちらを理由としてされているのかもしれません。

 これが報酬でサポートの内容としてカノンの持つ危険な黄金の林檎とユグドラシルの葉などを回収し、それを料理にするように頼まれました。決して装備などには使わないようにとお願いされました。まあ、聞いた感じでは大変な事になっているようですし、私達姉妹が運営側になるのは納得です。それにお給料も出るらしいので、カノンの治療費を遊びながら稼げるのは正直助かります。ちなみに私の年齢では働けないのでお手伝いという感じです。報酬は妹の入院費から天引きとゲーム内での課金アイテムなので実際にお金を受け取る訳ではありません。欲しい場合両親の給料に上乗せされるそうですが。

 さて、現在はある運営側の職員限定のお店に来ています。カノンもちゃんと入れます。

 

「で、回収出来たのかい?」

「ええ、問題ありません。それで、頼んでいた物は?」

「そっちは大丈夫だ。調理道具のライブキッチンセット。それに杖にローブ、マント。帽子。どれもご注文通りだ」

 

 カウンターの上に私がβで使っていた装備類が置かれています。これらは引継ぎ特典でもあります。本来なら新しいアバターであるこの子は使えないんですけどね。

 

「ありがとうございます」

「着替えるならあっちの試着室にどうぞ」

「はい。カノン、着替えてくるから少し待っていてください」

「ん」

「じゃあ、嬢ちゃんにはジュースとケーキを出しておくか」

「お願いします」

 

 カノンを残して試着室に入ります。このゲーム、面倒な事にちゃんと着替えないといけないんですよね。ぱっと装着とか出来ません。現実と同じような感じです。

 先ずは服を脱いで下着姿になり、黒いアンダーウェアを着て、黒いタイツを履きます。それから、白色の布地に金色の線で描かれた魔法陣があるワンピースタイプの法衣を着ます。袖口が大きくて和服みたいな感じです。ここからポシェットがついたベルトをとりつけて、しっかりと膨れないようにします。太く見られるのは嫌ですし。次に白色の靴を履いて、白地に金色の刺繍があるマントを着ます。これで幅広の大きな白い帽子を被れば、後は杖を持って完成です。

 天使の時に着ていた装備ですが、やはりこれが性能もいいので落ち着きます。杖は天使を象った物だったのですが、今は錫杖でその輪っかが蛇が尾を喰らっている物になっていました。いえ、それどころか良く見たら杖の全体も蛇みたいです。

 

「ちょっと怖い」

 

 サービスなのかも知れませんが、はっきり言って蛇とか苦手です。そう思ったら、錫杖が光って私の腕に収まりました。形状は細いリングが連なっている腕輪ですね。普段は邪魔なので助かります。

 さて、着替えが終わったので試着室を出て店に戻ると、カウンターに座ったカノンが美味しそうにケーキを口元を汚しながら食べていました。私は隣に座って口元を拭いてあげます。

 

「お~似合ってるじゃないか」

「ありがとうございます。それで杖のデザインはなんとかならなかったのですか?」

「あ~カドケウスやウロボロスを表しているみたいだからなあ。嬢ちゃんにもいいのを渡したんだろ。そっちのお姫様は色々と持ってるからな」

「まあ、いいですけど。この装備も強化されているみたいです」

「最大強化でいいじゃねえかと思ったんだが、最初から最大強化だったからな。それ、ボスドロップから作った奴だろ」

「そうですよ。天使のボスを倒して倒して倒して、倒しまくって羽を集めて布にしました。その過程で強化アイテムが沢山出ましたからね」

「あの動画はやばかったな。ソロの天使が天使を杖で撲殺って」

「支援系ですから。それと障壁もちゃんと使いましたよ」

「攻撃にだろ」

「ええ、攻撃にです」

 

 ただの壁として障壁を配置するのではなく、わざと薄くした障壁を縦に配置して突撃してきた天使を切り裂くトラップにしたりしました。他はレンズのようにした障壁で太陽光を集めてレーザーにしたりですね。

 

「使い方を明らかに間違ってるだろ」

「仕様上で可能なのですから、問題ありません」

「座標指定だからなあ……」

「対象の内部にも作れたらいいんですけどね」

「それはもう、最強の攻撃呪文になるだろ」

「そうですよね」

 

 身体の内部に障壁を作り出して倒す事は残念ながら出来ません。あくまでも障壁など設置系は何もない開いている空間に使うか、身体に付属させる使い方しかできませんから。

 

「支援特化(笑い)の天使様って呼ばれてたしな」

「酷い話です」

「主任は大笑いしてたぞ。作ったプログラマーは泣いていたが」

「駄目でしたか?」

「いやいや、全然おっけーだ。育成のつらい支援型がそれで楽になったのも事実だしな。今までは殴る以外ではヒール砲で頑張るしかなかったからなあ」

「ゾンビとか、本当に止めてください。臭いが酷いです」

「嫌われダンジョンだしな。まあ、経験値はその分高いんだが」

「ん、食べ終わった」

「そうですか。では、ちゃんと手を合わせて御馳走様っていいましょうね」

「ん。ごちそうさま」

「お粗末様。じゃあ、いってらっしゃい」

「はい。いきますよ」

「ん。ありがと」

「おう、楽しんできな」

 

 カノンと手を繋いで外に出ます。直にメニューからマップを他人には不可視モードで表示させます。これはここ、ユグドラシルタウンで発行されている観光マップです。武器屋や道具や、宿屋はむろんの事様々な場所や近場に出現するモンスターの情報も載っています。これは特殊版なのでボスモンスターの出現方法も出ています。更には運営側専用のチャット機能にログが流れていきます。

 

 〔ステラちゃん、なんかイベントを起こしてください。今、開発チーム手一杯で〕

 〔了解です。では、今から海岸に向かうのでそちらで蟹料理をしつつ、討伐イベントを起こしますね。シザークラブを出します〕

 〔うわぁ、殺る気まんまんだ。まあ、了解。告知はどうする?〕

 〔開始時だけで。告知はいりません。突発イベントにします〕

 〔わかった。じゃあ、適当に報酬は用意しておく〕

 〔お願いします〕

 

 チャットをしている間に海に着きました。カノンは楽しそうに海をみています。

 

「おっきな水溜りっ!」

「見た事はありませんでしたね」

「ううん。ちょっと前に見たよ?」

「そうなんですか?」

「ん。ドラゴンさんと空を飛んで、パパの所に行ったの」

「なるほど。ところで戦闘をした事はありますか?」

「かのんはないよ」

 

 確か戦闘したとの既述はあったのですが……本人が戦ったという事ではないのかも知れませんね。

 

「じゃあ、戦ってみましょうか」

「ん!」

 

 街の門を潜り、街道を横断して防波堤にある階段を上って、降ります。下は砂浜になっており、所々で魔法使いの人達が大きな一メートルはある巨大蟹、ビッククラブと戦っています。

 

「魔法、綺麗」

「そうですね」

「? 武器、いない?」

「甲羅が固いですから、魔法を使わないとここでの戦闘はつらいのですよ」

「ん、そっか」

「ええ」

 

 ここにはビッククラブやビックタートルが出現します。彼等は甲羅に覆われていて、攻撃すると武器の耐久力がかなり減ります。物理攻撃にはめっぽう強いのですが、その反面。魔法攻撃には弱いのです。更にビックタートルは移動速度が遅いので逃げ撃ちが可能です。ビッククラブは横移動しかできないので、相手の行動を気を付けながら避けつつ逃げ撃ちすれば倒せます。もっとも、ビックタートルは耐久力がかなり高く、ビッククラブは攻撃力がかなり高いので後衛が喰らったら基本的には即死です。ただ、この街の回りはデスペナルティ……死んだ時に負うデメリットが免除されている上に、街も近いので直ぐ復帰できます。開発者の思惑としては、街の回りに配置したモンスターで身体の動かし方やスキルなどの使い方を覚えて欲しいとの事でしょう。

 後はモンスターの特徴を覚え、対策をたてて狩るという事を学ぶ事でしょう。プレイヤーに優しい街なのですが、その半面。街の付近を離れると途端に厳しくなります。容赦のない集団で襲い掛かる森の軍団蜂に軍団蟻。山に生息する巨大な石を投げてくるゴーレムや草原を走るトリケラトプスにアウカサウルス。山の頂上にある神殿には天使が。海に浮かぶ孤島には悪魔が。あえていいますと、殺しにきています。βとは違う事をせつに願いたいです。

 

「さて、武器を出してください」

「んっ」

 

 カノンは青と赤の扇子を取り出しました。

 

「召喚士でしたよね?」

「ん。これも使う」

 

 そう言ってカノンが扇を開いて振るうと、青い竜と赤い竜が出てきて狙ったのかはわかりませんが、ビッククラブに食らいつきました。そのビッククラブは半分がえぐり取られ、もう半分が炎に焼かれて良い匂いが漂ってきました。

 

「魔法攻撃タイプの武器ですね」

「ん」

「ですが、どうせなら扇子なのですから龍にしましょう。東洋の龍はわかりますか?」

「ん~?」

「こんなのです」

 

 カノンにネットをリンクさせて、検索した画像の画面を見せます。これは運営側にしか出来ません。

 

「お~こう?」

 

 カノンが扇子を振るうと今度は龍が出てきました。どうやら、使用者のイメージのようですね。しかし、使う度にカノンの魔力がそれなりに減っていっています。強力な反面、燃費はかなり悪いようです。一回で10%くらい消費しています。

 

「効率が悪いですね」

「ん~?」

「召喚の方を試してみましょう」

「ん、来る」

 

 直に魔法陣が展開されます。そこからゆっくりと赤い瞳の銀色の髪の毛をツインテールにした少女が出てきました。彼女の服装は青色の胸元が空いている薄いワンピースに白いミニスカート。両手はガントレットのような銀色の機械の腕。グリーブのような機械の足。しかし、足は太ももから上が人間と一緒で顔も人間にそっくりです。どちらかという白い肌は人形みたいです。額に有るのは私達と同じ竜眼ではなく石みたいです。額の物がなければランダムで出て来る機人種(エクスマキナ)の種族とも思えます。

 パーティー画面に彼女の名前であろうノートという名前が増えました。それに召喚獣であるマークもあります。視線を向けると名前の下に召喚獣・機械竜ジャガーノートと出てきています。召喚獣はパーティーメンバーの一つとして扱われる護衛召喚と一撃だけを放ったり、回復などをして消える瞬間召喚が存在します。パーティーに入ると基本的には瞬間召喚が好まれます。パーティーが居ない時は別ですが、経験値が召喚獣にも分割されて入るからです。他の嫌がられる理由として、基本的に召喚士は召喚獣を別にすると他のクラスより圧倒的に弱いからです。それなのに経験値は二人分持っていかれるからですね。

 課金をしていれば誰も文句はいいません。2倍しているなら、減る量より増加しているからです。

 

「あれ、倒す」

「イエス、マスター。バスターカノン典開。ファイア」

 

 両手持ちの大きなビーム兵器が出現しました。そして放たれる光線はビックタートルを飲み込んで、跡形も無く消滅させてそのまま海の彼方へと消えていきました。回りからの視線が痛いです。どうみてもこんな所で撃つ兵器ではありません。

 

「どうですか、マスター褒めてください」

「ん、よくやった……」

「ではありません」

「あうっ」

 

 ハリセンで二人の頭を軽くはたく。このハリセンは何故か竜族特攻武器になっていましたが、気にしません。

 

「痛い……」

「お前、マスターに何をするっ」

 

 敵意を向けてくる少女。取り敢えず、ハリセンで叩いて黙らせます。

 

「私は姉ですから、なんの問題もありません」

「ん、姉ちゃん」

「し、失礼しました」

 

 頭を抱えながら蹲るノート。なんでしょう、この妹が増えた感じは。まあ、いいでしょう。

 

「取り敢えず、そのバスターカノンは仕舞ってください。過剰な威力な上に他の人の迷惑になります」

「了解です」

「でも、武器、ある?」

「ハンドカノンとシールドカノンなら……威力も低いです」

「じゃあ、それでいいですね。私達はどちらも後衛ですから、盾は欲しいです」

 

 このパーティー、どう考えても後衛だけですしね。いえ、遠距離攻撃が充実しているのでいいのですが。近づく前に殺ればいいだけですし。

 

「これでいい?」

 

 ノートの手には銀色の縁がある青色の盾と50センチくらいの手と腕が砲になっていました。

 

「近接装備はありますか?」

「ある」

 

 ハンドカノンが消えて光るビームソードが現れました。武装はどれも物騒な感じです。

 

「では、遠距離の敵はハンドカノンで、近距離の敵はビームソードでお願いします。それとくれぐれもカノンを守ってくださいね」

「了解。マスターは必ず守る」

「良い娘です。良かったですね」

「ん。自慢の友達、妹」

「……マスターが妹かと」

「違う、アイアムお姉さん」

「……」

 

 互いに見詰め会う二人。二人は揃ってこちらを見て来ますので容赦なく答えてあげます。

 

「産まれ的にはノートが妹ですね。ですが、しっかりとしているのはノートでしょう」

「……」

「やった」

「まあ、どちらもどっちですが」

 

 私の言葉で二人はしゃがんで砂地にのの字を書いていきます。次第に色んな物を書いていくお絵かきに変わっていきました。それを見た私は周りに天使の力である、モンスターなど設定した者を近づけない祝福の結界を展開して邪魔な者が来るのを排除します。

 

「ふぅ」

 

 私は二人を置いて二人が倒したビッククラブやビックタートルを回収してきます。それから、ライブキッチンセットを取り出して、魔力をチャージします。その次に大きな大きな鍋をコンロにセットして、水魔法のヒーリングウォーターを使って水を溜めます。その後、着火して湯を沸かします。

 次に引き出しを開けると様々な包丁が入っています。そこから、比較的大きな包丁を選んで取り出します。

 回収したビッククラブを取り出して、解体します。甲羅と粗は大きな鍋に入れて出汁にします。次にライブキッチンセットの冷蔵庫から頼んでおいた野菜類を取り出していきます。先ずは野菜を洗ってから白菜を始めとして切っていきます。次にお米をヒーリングウォーターでといで、飯盒に入れて火にかけます。どうせならと、ユグドラシルの露を少しだけ混ぜておきます。後、水は蟹の出汁を遣います。別の飯盒で普通のお米を焚きます。

 粗や甲羅を取ってから、野菜を大きな鍋に入れて焚きます。後は焼き蟹や蟹サラダを作っていきます。どれも大量に作ります。カノンがどれだけ食べるかわかりませんし、保存しておいてもいいので。

 カノンが事故にあってから、家事は私の役割となったので小学生高学年になった私でも既にかなりのものです。

 さて、少し手が空いたので、甲羅を綺麗に掃除してお皿にします。そこにサラダとかを盛りつけます。大きな椅子とテーブルを取り出して飾っていきます。

 

「うわぁ、凄くいい匂い」

「美少女の料理……」

「食いたい……でも、近づけねぇ」

「結界とか、やべえレベルじゃねえか」

「というか、普通に装備もやばいよ」

 

 外野が集まっているのですが、今は無視します。作業を続けていると、取っていた料理のレベルが上がって更に効率のよい動き方がわかってきました。同時にレシピも浮かんできます。

 取り敢えず、レシピは後回しです。今は焚き上がったご飯です。普通のご飯は寿司酢と混ぜてから放置します。次に蟹のエキスを混ぜた奴は水を付けた手に塩を振ってからおにぎりにしていきます。具は蟹の身ですね。こちらは笹の葉にくるんでいきます。

 

「ノート」

「なに?」

「ちょっと蟹が足りないので取って来てください」

「了解」

「かのんは?」

「お城でも作っていてください」

「ん」

 

 時間が経つと、ノートが追加で持って来てくれたので追加の準備も出来たので大きなテーブルに座って、かのんと一緒に食べる事にします。

 

「おー」

「手を先に洗ってくださいね」

「ん」

「ノートもですよ」

「私もいいの?」

「ええ」

 

 三人でかのんが作った一メートルくらいの精工に作られたお城を見ながら食事をとります。回りには更に人だかりが出来ています。私は取り敢えず、ある程度食べてから、効果を確認します。ステータスアップのオンパレードでした。

 それから、別に出した大きなテーブルとイスを用意して、そちらに料理を置いていきます。

 

「食べさせて~」

「お願い~」

「お腹が~」

 

 空腹はまだ感じないはずなのですが……そう思ってログを確認すると既に実装されていました。そして、クエスト欄に飢えた獣達に食事を提供せよというのが出ていました。これはつまり、私用の物という事ですか。私もプレイヤーとして楽しんで問題ないという事ですね。

 

「では、提供しましょう。一人、一膳1000Gです」

「高っ!」

「1000Gって、100万円っ」

「蟹を提供した人は750Gです」

 

 円とかには答えません。結界の設定を弄って、お金を支払った人は入れるようにします。同時に集金箱を置きます。

 

「お金を支払えば入ってこれます。では、食べたい方はどうぞ」

「私は支払うっ!」

 

 お金を支払って中に入った人にはセットを渡します。サラダは自由にお代わり可能です。

 

「うまっ! これちょう美味いっ! っていうか、なんかステータスアップしてるんだけど!」

「効果時間は結界を出てから二時間です。全ステータスが上昇します。それとこの結界内ではHPとMPが回復する効果もあります」

「まじかよっ! 俺もくれ!」

「俺もだ!」

 

 次々と人が入ってきます。これで私のクエストは達成です。報酬はライブキッチンセットですか、そうですか。つまり、これはレンタル扱いだったのですね。

 

 料理を次々に提供していると、カノンが食べ終えたのかこちらに着ました。

 

「お代わり!」

「仕方ないですね」

 

 作っていた膳をかのんに渡します。

 

「おい、順番はこっちだぞ!」

「この子が優先です。皆さんへの提供はあくまでもついでですから」

「商売じゃ……」

「可愛い妹が最優先です」

「シスコンさんだ!」

「そうですが、それがなにか?」

「うん、駄目だ。勝てねえ。諦めてならぼう」

「嫌なら別の所に行けばいいんだし。その場合、返金はしてくれるよな?」

「もちろんです」

「ちっ」

 

 何人か帰っていきましたが、気にしません。カノンが優先です。

 

 

 

 ※※※

 

 

 それから少しして食材も無くなったので、ただの焼き蟹とかだけです。しかし、気づいたらお酒とかを持ち込んでいる人もいます。しかし、皆さん食事はだいたい終えていますね。この結界から出なければ二時間は効果が大丈夫ですし、ログアウトすれば問題ありませんから。

 カノンも食事を終えて再び砂遊びに戻っています。城の回りにドラゴンが居たり、城にドラグニア帝国の紋章があったりします。何人かはそれを見てなんとも言えない感じになったり、何かを決意したような人が居ます。

 

「さて、このタイミングですね」

 

 人も十分に集まっているので、私はイベントのスイッチを押し込みます。すると、沖合の海のほうで爆発が起こりました。

 

「なんだ、なんだっ!」

「お~?」

 

 カノンは不思議そうにしています。そんなカノンを守る位置にノートが立っています。沖合には巨大な蟹が現れてこちらにやって来ています。

 

「皆さん、あちらに見えるのはシザークラブです。彼の者はビッククラブ達の親であり、子供を倒されて怒り狂っているようです。このままでは街が崩壊してしまいます」

「え?」

「ちょっ⁉」

「どうか、街を守る為に皆さんのお力をお貸しください」

 

 私はそういいながら、クエストを発行する。

 

【イベントクエスト・シザークラブを討伐せよ。報酬:5000G+貢献度毎による報酬。参加者は強制的にレイドパーティに加入します】

 

「NPCかよ!」

「いや、イベントキャラじゃね?」

「というか、GM? いや、GMはアイコンがでるから違うな」

「って、もしかしてこのバフってあれと戦わせる為の奴?」

「多分そうだろ。レイド戦だし」

「何を言っているのか、わかりませんが時間がありませんよ」

 

 ライブキッチンセットを収納して、杖を実体化させる。

 

「お~戦い?」

「はい、戦いです。今回は沢山のか……こほん。人達が居るので後衛で構いませんよ。後はバスターカノンの方で、カノン自身が撃ってください」

「ん、ノート」

「イエス、マスター」

 

 直にノートが大きなバスターカノンになる。それをカノンが持って構える。重そうですが。

 

「まあ、参加するしかないよな」

「せっかくのイベントだしな」

 

 次々と参加ボタンを押して、私達のパーティに入ってきます。

 

「ちょっ、なにこれっ!」

「どうしたんだ?」

「いや、この異常なバフは……」

「料理の事か?」

「いや、そうなのか? 何かおかしい気が……」

 

 私達のステータス上昇のバフは料理のバフに隠れます。ここで更に駄目押しです。

 

「セイクリッドウエポン・エリア、セイクリドドシールド・エリア。プロテクション・エリア。リジェネート・エリア」

 

 錫杖を砂地に打ち付けて大きな魔法陣を展開して、参加者全員に支援をかけます。掛けたのは攻撃支援、防御支援、障壁、自動回復です。

 

「かのん、こう言ってください」

「ん。戦争のはじまりゅっ~~きゃんだ……」

 

 カノンがそう言うと、かりすまAが発動して全体が更に強化されました。カリスマがひらがななのは間違っていません。

 

「これならいけそうだな」

「そうだな」

 

 シザークラブが到達する前に全体のアナウンスが流れた。

 

【ワールド:南海岸にてレイドイベントが発生しました。討伐に失敗した場合、街が崩壊します。イベントに参加したくない方は南海岸に近付かないでください。また、新しくフィールドに入ると参加する意思がある者として判断し、レイドパーティに加入されます。既に該当エリアにおり、参加しない方は避難してください。繰り返します……】

 

 少しし人が増えてきます。皆さんはどんどん準備していきます。かのんは何を思ったのか、前に行ってバスターカノンを構えました。

 

「えいっ」

 

 可愛らしい声と共に引き金が引かれて、光の奔流が解き放たれました。すると、相手のヒットポイントが5%くらいなくなりました。そして、直ぐに戻ってきます。

 

「MPなくなった」

「……どうぞ」

「んっ」

 

 ジュースを渡します。他の人も届くかわからないのですが遠距離攻撃を開始しました。まあ、殆どが届いていません。

 

「もうちょっと近付かないと駄目だわ」

「そうだな。しかし、機械系の召喚獣か。便利だな」

「あ~契約するのが一番楽だしな」

「正確には契約した後がでもあるけどな」

 

 機械系は一度、マスターと認めたら尽してくれますからね。それ以外の生物は基本的には信頼度が上下します。機械系はあくまでも特別な者以外、意思がないですからね。つまり、リアルのペットのように世話が大事という事です。

 そんな事を思っていると、シザークラブが飛び上がって浜辺に落ちてこようとしています。私はそれを見て落下地点に障壁を沢山設置してやりました。

 ドンッという凄い音が響くと、砂煙が巻き起こります。直ぐにそれが張れると、ヒットポイントが半分まで減ったシザークラブが居ました。それを見た私はそっと目を逸らします。

 

「おい、自爆したぞ」

「馬鹿じゃね?」

「取り敢えず、攻撃するか」

「なんか痙攣しているし、いいんじゃないか?」

「盾の応援、いらんかもな」

 

 皆が魔法をどんどん撃っていきます。かのんもどんどん撃っていきます。砂地を沼に変えて動けなくしたり、バインドを使ってしばりあげたりとこちらに近付けない作戦です。

 

「お姉ちゃん」

「はいはい、どうぞ。トランスファー」

 

 私の魔力をかのんに譲渡して、どんどん撃って貰います。ステータスがアップした魔法使い達による、数々の魔法という暴力によってヒットポイントがみるみる減っていきます。

 これは不味い。イベント戦闘にしては弱すぎる事になってしまいました。私はそっと後ろに下がって、他人には不可視になっている画面のとあるボタンを押します。

 

「おい、なんか変だぞ?」

「ん? なんか変形してるんだけど」

 

 魔法にさらされるシザークラブの手が増えました。そこから蟹のハサミを飛ばしてきます。

 

「ぎゃぁぁぁぁっ」

 

 シザークラブの飛んできたハサミで人がゴミの様に吹き飛びます。ちょっと、ノーマルからハードにモード変更しただけなのですが、随分と違いますね。

 

「ノート」

「イエス、マスター」

 

 続いて飛んでくるハサミをノートが盾を構えて受け止めます。小さな少女なのですが、砂浜で足を引きずりながら後ろにやられていくだけで吹き飛びません。それどころか、駆動音が聞こえてくると弾き飛ばしてしまいます。

 

「邪魔です」

 

 ノートが精密射撃を行ってハサミを落としたり、盾で弾いていきます。明らかに強いです。流石はRank8のジャガーノートです。本来の姿じゃなくてもこれですか。ノートが前線で押さえてくれているので、なんとか体勢を整えて攻撃していけるようになりました。しかし、こうなると私もちゃんと仕事をしましょう。ノートに支援魔法と回復魔法を与えて回復して貰います。しかし、ノートの下にゲージみたいなのがどんどん溜まっていっているんですが。それにカノンが扇子を持ちながら踊り出しています。嫌な予感しかしません。

 

「相手の体力は残り微かです。頑張ってください!」

 

 皆さんが最後の猛攻をしてきますが、シザークラブは飛び上がって今度こそこちらを踏みつぶそうとしてきます。流石に今度は障壁を置いたら駄目なので、ちゃんとバリアとして使います。ですが、重量と速度=威力という事でかあなりの攻撃力になるでしょう。

 実際にあっさりと貫通されて大変な事になる……と思っていたのですが、ノートが足の裏に設置されていたスラスターで飛び上がって、盾を両手で構えたかと思うとその盾が開いて、光を収束させていきます。

 

「アヴェンジ・カウンター」

 

 盾の間に作られていた複数の穴から極光が迸ってシザークラブを押し返し、その身体を貫いていました。これにより、無数の穴が開いたシザークラブは沈黙してしまいました。

 

【シザークラブの討伐に成功しました。報酬を配布します】

 

 他の人が見えないランキングを見ると、カノンと私がトップになっていました。これは不味いのでランキングからは除外しておきます。まあ、ランキングはシークレット情報なので問題ないでしょうが。

 

 

 

 

 

 



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7話

 

 

 おっきな蟹さんを倒したら、ステラお姉ちゃんと手を繋いで一緒に宿屋にやってきた。

 

「いらっしゃいませ」

 

 中に入ると、おっきなおばさんが出迎えてくれる。

 

「説明はいるかい?」

「いえ、大丈夫です。この水晶に触るだけですし」

「そうだね。おや、これは竜族のお客様とは珍しい」

 

 竜族ってよくわかったね?

 

「凄い」

「どうしましたか?」

「竜族って、ばれたよ?」

「ああ、それはこの水晶ですよ。これで種族と犯罪経歴……悪い事をしたかどうかが出てきます。それで宿を貸してくれるか、貸してくれないか判断しているのです」

「そうなんだ~」

「はい。だから、カノンも触りましょうね」

「ん!」

 

 かのんが手を置くと光って、何かの板が出た。おばさんはそれを見て笑いながら、撫でてくれた。

 

「お嬢ちゃん、良く出来たね。良い子みたいだから、飴ちゃんをやろう」

「わ~」

「ほら、お姉ちゃんの方もね」

「ありがとうございます」

 

 貰った飴を早速食べてみる。みかんの味がして美味しい。

 

「一泊二日、朝食と夕食がついてシングルなら50Gだよ。ダブルなら100Gだ。何泊止まるんだい?」

「そうですね、取り敢えず……シングルの七日で」

「割り引いて300Gだね。50G追加するなら食事も二人分つけるけど?」

「いえ、要りません。食べ歩きもしたいですから」

「そうかい。まあ、うちはそんなに高級店じゃないからお嬢ちゃん達みたいなお貴族様には物足りないだろうしねえ」

「否定はしません。それでも、ここはこの街にしたら高い方ですよね」

「この街は物価が安いし、新米の人達が多い中立地帯だからねえ。一応、高級店は無茶苦茶高いところもあるけど、うちは冒険者がメインだから」

「お姉ちゃん、まだ~?」

「あ、ごめんなさいね。部屋は202号室よ」

「ありがとうございます。ほら、カノンも」

「ありが、とう」

「どういたしまして」

 

 お姉ちゃんと一緒に二階に上がって、205と書かれた扉の前に移動する。部屋の中に入ると、お姉ちゃんが溜息をついた。

 

「どうしたの?」

「いえ、色々と失敗してしまいましたからね」

「そうなんだ」

「それより、カノンは楽しかったですか?」

「うん、楽しかったよ!」

 

 お姉ちゃんに抱き着いて、頭を擦りつけるとお姉ちゃんが優しく頭を撫でてくれる。

 

「では、お父様の所に向かいましょうか」

「うん」

 

 鍵をしっかりとロックして、パパとママのお家に飛ぶの。わ~ぷっていうので一瞬で移動できちゃった。

 

「おお、お帰り。楽しかったか?」

「うんっ!」

「そうかそうか。ステラはどうだ?」

「大変でした。イベントは難しいですね」

「そうだな。ステラは竜の巫女という特殊キャラで、カノンの姉だから頑張ってくれ」

「はい。私も可愛い妹と遊べて楽しいですから。でも、取り敢えず報告してきます」

「ああ、頼む」

 

 パパ達が話していると、眠くなってきたのでお布団に入って寝る事にするの。パパが手を握ってくれているので、安心して眠れた。

 

 

 

 

 

 朝、起きたらママのお店でゆらゆらと揺れる大きな椅子みたいなところで寝かされていた。キョロキョロして回りを見るとママが気付いてこっちにやって来た。

 

「おはよう。よく眠れた?」

「ん、ママが見える……」

「そうよ。ここでは見えるわ。思い出した?」

「うん……ママ、ママ」

「大丈夫よ」

 

 また見えなくなるかも知れないと思ったら、泣けてきた。ママが抱きしめてくれて落ち着いてくる。こんなの夢でしか見た事なかったから。

 

「落ち着いた?」

「うん」

「じゃあ、朝御飯を食べて遊んでおいで。別に一緒に居てもいいけどね」

「邪魔にならない?」

「大丈夫よ」

「ん、お姉ちゃんが来るまで、一緒がいい」

「じゃあ、お手伝いしてくれるかしら?」

「ん、する」

「ありがとう」

 

 ママと一緒に朝御飯を食べて、お店のお手伝い。餌箱を運んで、動物さんに餌をあげていくの。おっきな動物さんもいてとっても楽しい。ドラゴンさんも居るし。餌の次は休憩して、ノートと一緒に羊さんや狼さんをブラッシングしてあげるの。もふもふしてとっても気持ちがいいの。気づいたら、そのまま寝ちゃってた。

 

 

 

 起きてからママと一緒にお昼ご飯を食べて、お客さんの相手をするの。動物さんを貸してあげたり、預かったり、貰ったりもするの。それで、カノンは今、卵屋さんなの。

 

「では馬を一日レンタルですね。代金は2000Gになります」

「安くなりませんか?」

「そうですね……買い取りならもう少し安くて分割に出来ますが……」

「それはちょっと無理ですね」

「後はあの卵ですね。一回1000Gで100個の卵からランダムで色んな種類の騎獣が当たります」

「高いよ。アレならクエストを受けて達成してくれれば一つにつき一回無料です」

「そうなんですか? どんなクエストがあります?」

「騎獣達の餌集めや回収クエストとか、世話のお手伝いとかですね」

「おい、面倒だからやめようぜ」

「そうだぞ」

「いや、悪い。俺はこれを受ける。だって、良く考えたらこれってお金貰えて世話の仕方とか、餌がどんなのとか教えてくれるって事だぞ」

「あっ」

「そういえば出来る限りリアルだったな。治療とかにも使われているそうだし。俺も受けるか」

「俺はどうするかな……」

 

 お母さんがお客さんの相手をしていると、お姉さんが入って来た。

 

「こんばんは」

「こっ、こんばんは……」

「一回、いいかな? これで無料なんだよね?」

「はいです」

 

 クエスト達成の報酬である無料券をお姉さんから受け取って、ハンコをぺったんって押して箱に入れます。

 

「お一つどうぞです」

「ん~どれにしようかな~。よし、これにする」

「はいです」

 

 お姉さんが指定した卵を受け取って、孵化器にセットするのです。それからスイッチを押して、少しするとパキパキと卵が割れていきます。でも、殻だけで中身はりませんでした。

 

「あうっ」

「あ~いいよ。はずれがあるのはわかってたし。卵の殻は貰えるかな?」

「はいです」

「じゃあ、もう一回。そうだ、お嬢さんお名前は? 私はオディーリアっていうの」

「かのんはかのんです」

「じゃあ、カノンちゃんが一回選んでくれていいよ」

「いいのです?」

「うん、お願い。別に外れても怒らないからね。後二回は出来るから」

「じゃあ、えっとえっと」

 

 卵を真剣に見つめて、びびっと来た奴を取るです。

 

「これです!」

「そう。じゃあ、それでお願いね」

「はいです」

 

 チケットを貰って、さっきと同じようにしてから孵化器にセットするです。スイッチを入れると、中から小さな赤い竜が出てきたのです。

 

「え、まじ?」

「えっと、ふぁいあどらごんです。ど、どうぞ」

「ありがと~」

「わぷっ」

 

 抱きしめられてなでなでされました。お姉さんにドラゴンさんを渡します。

 

「じゃあ、もう一回お願い」

「はいです。えっと、今度はこれです?」

「それでいいよ」

 

 次はなんとなく、これだと思った奴を選ぶと変なが出たのです。上半身が鷹で下半身がライオンなのです。

 

「グリフォン……まじでこの子、やばいっ」

「おい、まじかよ……」

「た、頼むっ、俺も選んでくれ!」

「俺もだ!」

「いや、俺のを!」

「ひっ!? やぁぁっ!」

 

 怖くなって慌ててママの所にいきます。ママは抱き上げてくれる。

 

「はい、残念でした。ここまでね」

「ええと、ダメですか?」

「駄目よ。私の子供を怖がらせたんだから、出禁にしてもいいのよ?」

「うっ」

「居るか居ないかはこの子の気分次第。当たりは入っているんだから、頑張って引きなさい」

「仕方ねえ。嬢ちゃん、悪かったな。これは詫びとして貰ってくれ」

「確かに子供を怖がらせるのは駄目だな。俺もお菓子おいてこう」

「もふもふ、触りたいな~」

「世話のクエストやったらもふもふさせてくれますよ? というか、この卵って多分ですけど世話をした生物がでやすいのかも。私、グリフォンとドラゴンの世話を教えて貰いましたし」

「なんつー難易度の高い物をえらんどるんだ」

「あはは、失敗してほぼ報酬なしですけどね。というか、デスぺナ何度か受けましたし」

「……よ~し、俺も頑張るぞ~」

「そうだな。可能性があるなら検証しないと」

「この卵の攻略方法はあの少女と種族の貢献度とか愛情度かも知れないな」

 

 怖かった人達が、普通になってきたです。

 

「ふふ、計画通り……」

「ママ?」

「なんでもないわよ~たまにお店を手伝ってくれればいいからね~」

「ん」

「お菓子くれたようだから、お礼言って食べるといいわよ」

「ありがとう、です」

「ううん、こっちこそごめんね?」

「ごめんな~」

 

 その後、おねーさん達とお話したり、一緒に牧場のお仕事を手伝ったりした。オディーリアさんはママにお世話の仕方とか色々と聞いていた。成獣と幼獣では世話の仕方が違うらしいの。

 

 

 

 

 

 



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