見習い執事?とAqours (鳥王族)
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1話:出会い

サンシャイン終わってしまったけど、色んなSSとか読んだりして書きたくなったので初投稿します。

いまいち、機能とかも使い慣れてないので読みづらかったりすると思いますがご了承ください


 

 

俺の名前は大川愛護(通称:愛、愛くん)高校二年生だ。

今日は土曜日ってことで朝からダラダラしてるんだよ。

ん?男なのに『愛』が入るのが珍しいって?

まあ、そうだろうな。小学校の時とかは結構いじられて正直当時は本気で改名したかった。高校生にもなるとみんなそんなことでいじったりする奴なんていないから今はそんなに気にしていない。てか、どちらかと言うと今はこの名前にこめられた『愛する人を護れる人になれ』っていう意味を知ってからちょっとだけこの名前に誇りを持っている。

 

まあ、そんな意味に該当してくれる恋人なんて今まで出来たことないけどな……うん、やめようこの話。なんか、自分で、言ってて悲しくなってきた。

 

「あーいー、ちょっと話があるんだけど」

 

母さんか、何の用だろ?俺は今までやっていた携帯ゲームを机に置くと自分の部屋から出て行った。

 

「何だよ?母さん」

 

リビングに行くと母さんがダンボールに何か詰め込んでいて、母さんは俺の方を一度も見ずに作業しながら話し出した。

 

「あんた、家事全般できるわよね?」

「まあ、一通りは母さんに教えてもらったから」

「あんた、特に料理が得意よね」

「まあ、昔っから料理人になりたかったから普通の男子高校生よりは出来ると思うけど」

「うん、そうよね。私から見てもあんたの料理美味しいわよ」

「あ、ありがとう」

 

なんだよ。急に褒められたからちょっと照れたじゃねえか!てか、なんなんだよこの質問。俺は意味のわからん質問に少しだがイライラしながら母さんに尋ねた。

 

「さっきから、なんだよ。急に変な質問して」

「あー、そうよね。じゃあ、本題だけどあんた明後日から沼津で暮らすのよ」

 

へー、俺、明後日から沼津で暮らすのか。ってどういうことだよ‼︎

 

「はあ⁉︎なんで、沼津で暮らすんだよ‼︎てか、まったくそんなこと聞いてねえぞ」

「だって言ってないから」

「「言ってないから」じゃねえよ‼︎なんのドッキリ?えっ、まじ?」

「超大真面目よ」

「な、な、なんで?」

「ほら、私の従姉妹がホテルチェーン経営してる人と結婚してるでしょ」

 

いや、知らねえよ。母さんの従姉妹なんて今まで出てきたことねえよ。もし出てたとしても覚えてねえんだから片手で数えられる程度だろう。まあ、いちいちツッコんだら話が進まないし、まだ理由聞いてないからここはスルーだな。

 

「で、その従姉妹がどうしたの?」

「いや、従姉妹とその旦那さんがね。家事全般が出来て娘と歳が近い人をさがしてるんだって」

「えっ、それに当てはまるのが俺ってことで沼津に行けって言ってんの?まじ意味わかんねえんだけど。てか、なんでそんな人探してるんだ?その人」

「まあ、行けばわかるわよ。安心して向かうの学校も住むところもちゃんと確保してあるから」

 

いや、安心できねえよ。てか、結局理由言ってもらってねえし。えっ!まじで!本当に行くの?結構ここ、気に入ってんだけど

 

「よし、オッケー。一応あんた中身確認してね」

 

そう言ってさっきまで母さんが詰め込んでいたダンボールを見ると俺の服などが詰められていた。

 

「えっ、ちょっと待って?まじで行くの?」

「あんた、さっきから何回同じこと行ってるの?行くに決まってるじゃない」

「ふざけんなよ。急すぎねえか」

「だから、明日じゃなくて明後日にしてあげたでしょ。友達とかに挨拶できるように。何?彼女がいるから離れたくないとかそういうこと」

 

いや、彼女がいるいないに関係なく急に言われたら誰だって嫌がるでしょうよ。てか、あんた俺が彼女いないの知っててわざと言いやがったな。

 

「まあ、彼女がいないあんたに朗報よ」

 

ほれみろ。知ってやがった。

 

「さっき、歳の近い娘さんがいるって言ったでしょ。超美少女よ」

 

いや、知らねえよ。それ本当かよ。よく言うじゃん女子同士の可愛いはあてにならねえって。てか、母さんは女子っていう柄じゃないだろ。もう4…「それ以上は言わないことを勧めるわ」なんで、わかった‼︎エスパーかよ‼︎

 

「それに、朗報はまだ続くわ」

 

えっ、なんで今ドヤ顔した?そのタイミングのドヤ顔とかいいイメージないんだけど‼︎

 

「あたしの従姉妹の娘。つまりあんたにとって又従兄弟となるわよね。知ってる?又従兄弟って結婚出来るのよ」

 

……知ってた。うん、結婚出来るってことではなくて、勿論結婚出来ることは家庭科の時間に習って知ってたよ。そうじゃなくて母さんがそういうことを言うってことがだよ。俺もエスパーに覚醒したのか?

 

「まあ、確率は万が一。いや、京が一だけど」

 

おい、待て。なんで億と兆を飛ばした。そんなに言わなくてもいいだろ。あんたの息子だぞ、息子。

 

「本当に、なんでこんな超絶美少女からこんな普通の子が生まれてきたのかしら?お父さんの所為ね」

 

泣くぞ、俺もだけど父さんが泣くぞ。てか、さっきも言ったけど少女なんて柄じゃ…「やめなさい」怖っ‼︎さっきよりもタイミング早くなってるし。

 

「はあ、結局拒否権ないんだろ?」

「そうよ」

「即答かよ」

「逆に私はあんたがもっと嫌がるかと思ったけど」

「今までの経験上から拒否しても無駄だってわかったから。友達とも今生の別れってわけじゃないし、もういいよ」

「正直、張り合いがないわね。せっかく脅し道具まで用意したのに」

 

おい、サラッと今、恐ろしいこと言わなかったか?

 

「まあ、了承してくれるのなら文句は言わないわ。あと、あんたが料理人になりたがってる言ったらお礼ってことで経営しているホテルのシェフが一週間に一回料理を教えてくれるらしいわよ」

「まじかよ‼︎」

 

なんだよ、結構高待遇じゃん。

 

「てことで、準備するわよ」

「うん」

 

 

 

●●●

 

 

 

そして今、沼津にいる。正確には『ホテルオハラ』にあるヘリポートの近くにいる。

なんでそんなとこにいるのかって?

まあ、簡単に今までの流れを話すとだな。

昨日、友達に事情を話してお別れするだろ。

そして、今日沼津に来る。次にここ、『ホテルオハラ』に来て今回、俺がお世話になる?というか、俺を呼んだ?というか、まあ、俺が沼津に来ることになった元凶の母さんの従姉妹の旦那さんに会いに行くだろ、そして、どういう理由で俺を呼んだかの話しをしてくれた。

 

まあ、その話ってのは娘の執事になってほしいってことらしい。執事って言ってもそんな大層なものじゃなくてその子の身の回りのこと(これはほとんど炊事だな)を少しと彼女の補佐的なことらしい。なんでも学校の理事長をするらしいからその手伝い的なこと。あとは、理事長になることと関係があるらしいけど理事長になるってことは色んなことで生徒たちや保護者と対立するかもしれないから、そんな時の心のケア?を知ってやってくれって。ん?これかなり責任重大じゃね?まあ、まとめるとそんな感じ。

 

で、今は留学から帰って来るその子をこのヘリポートに迎えに来たってわけだけどヘリで帰宅ってすげーな。おっ、ヘリが近づいて来てる。あれだな。

 

ヘリが降りてきて、止まると勢いよくドアが開くと女の子が急に飛び出してきた。すると、俺の方に駆けつけてくるといきなり抱きついてきた。てか、結構力強い

 

「ciao!あなたが愛護ね。これからよろしく‼︎」

「よろしくお願いします、って一旦離れて」

 

俺がそう言うと、彼女は俺を解放してくれた。てか、めっちゃ美少女じゃん‼︎さっき抱きつかれた時いい匂いしたし、なんで俺離れろとか言ったんだろ。

 

「ごめんね愛護、久しぶりの日本ってことでちょっとエキサイティングな気分なの。じゃあ改めて、初めまして愛護、小原鞠莉です。気軽にマリーって呼んでね」

「あっ、初めまして大川愛護です。よろしくお願いします」

「カタイカタイ、もっとfriendlyでいいのよ」

「いや、小原さん歳上だし」

「マリー‼︎」

「いや、流石にそれは…」

「じゃあ、命令です。マリーって呼びなさいあと、敬語も禁止」

「命令?」

「そう、愛護は私のbutlerってことだからこれは主人からの命令。これならいいでしょ」

 

なんだよ、その無茶苦茶理論。いや、この場合は正当か?まあ、なんでもいいやこんなことでも歳上からのお願いだし、それに了承しないと話が進まなそうだから。

 

「わかったよ。マリー、これでいいか?」

 

俺が呼び捨てにするとマリーは少し赤くなった。

 

「パパ以外の男の人から言われるとちょっと照れるわね」

「だったら、やめるか?」

「いいえ、それでオッケーよ」

「そうか、じゃあ荷物持つよ」

「サンキュー、愛護」

 

荷物を俺に渡したマリーは身軽になったため走り出した。

 

「ずいぶんslowね愛護。置いていくわよ」

「おい、待てよ」

 

俺もマリー追って走り出した。マリーはやっぱり疲れていたのか少し走るとすぐにやめたのでわりかし早く追いつけた。

 

「はぁはぁ、てかさ一個思ったんだけど」

「何かしら?」

「俺ってどこの学校通うの?全然知らないんだけど」

「浦の星女学院よ」

 

はい?なんか、今理解できない単語があったんだけど

 

「もう一回、言ってくれない」

「もう一回だけよ。浦の星女学院」

 

やっぱり、聞き間違いじゃなかった。よかった。

 

「いや、良くねえよ!」

「どうしたの?急にnoisyな声を出して、もっとcoolになりましょ」

「いや、落ち着けるかなんで“女”学院なんだよ!」

「だって、愛護は私のbutlerなんだからいつも近くにいるのは当然でしょ」

「そんなことしていいのか?」

「理事長のrightよ」

「それは職権乱用だろ」

「そんなこと言っても手続きも愛護専用のuniformも作ったわよ」

「まじかよ!」

 

もう、外堀埋まってんじゃねえかよ!いや、来た時点でそりゃ埋まってるわな

 

「わかったよ。行くよ浦の星女学院」

「よろしい」

 

想像してたけど、ここでの生活はいい意味でも悪い意味でも退屈しなさそうだ。




初回なのでほとんど説明でしたが次回から話を進めたいと思います。
基本的にアニメにそっていくつもりです。


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2話:転入

思ったより、見て頂いててすごく嬉しいです。お気に入りにも登録してくださった方もいてとても嬉しいです。

期待に添える頑張ります。


やっぱり、こうなるよなー。

今、浦の星女学院に転入して来て唯一の男子生徒になった。まあ、そのおかげで現在休み時間なんだけど質問ぜめになってるわけで、はたから見たら女の子に囲まれててアイドルみたいなんだけどそんなキラキラしてねえよ。

めっちゃ疲れるんだけど。だって、質問の内容が基本的に…

 

「大川くんって彼女とかいるの?」

 

こういう、恋愛的なのが多いんだよな。女子って本当に好きなんだな。ああ、もちろん答えは悲しいことに「いない」だよ。あー、生まれて初めて授業が始まってほしいと思ってるわ。

てか、あっちの方にも行けよ。俺と一緒に今日転入して来たえーっと…名前は確か桜、桜、あっ!桜内梨子さんだ。女の子同士あっちで会話して来たらいいのにって思ったけど…あの娘か。あのオレンジ髪の娘がすごい勢いでずっと大きな声で勧誘しているからみんな会話に入りづらいというか入れないのか。

 

「なあ、一ついいか?」

 

俺は周りにいた娘から適当に選んで喋りかけた。急に俺から喋りかけたから一瞬びっくりしたがすぐに笑顔になって応えてくれた。

 

「何?大川くん」

「あの娘、あのオレンジ髪の娘とずっと隣にいるベージュ髪の娘も仲間かな?あの二人って一体桜内さんになんの勧誘してんだ?」

「えーっと、千歌と曜ちゃんのこと?まさか、大川くん千歌と曜ちゃんに興味があるの‼︎それとも、桜内さん?三人とも可愛いもんね〜」

 

いや、だからそういうこと関係なしにだな。普通に考えてずっと勧誘してたら気になるだろ。まあ、三人とも可愛いのは否定しないけどさ。

 

「いや、そうじゃなくて普通に気になってさ。ほら、ずっとやってるし」

「まあ、そうだね。今、千歌と曜ちゃんはスクールアイドル部を創設するためにメンバー集めしてるんだよ」

「スクールアイドル?あぁ、あれか」

 

μ'sとか、A-RISEとかが有名だよな、実を言うとその二つしか知らねえけど。てか、あの娘たちがやるんだ。言ったら悪いけどなんか普通って感じの娘だよな〜。俺が言うのもなんだけどさ。まあ、あの三人見た目は普通に可愛いけど。

 

そんなことを考えてると先生が教室に入って来て授業が始まった。

 

 

 

●●●

 

 

 

昼休み、流石に毎回休み時間になると質問をして来たからネタがなくなったのか。少しさみしいけど俺のところにやって来る女の子はいなかった。そして、昼御飯を食べようとした時、スマホに電話が入った。俺は急いで教室に出て出来るだけ静かなところに行くと電話に出た。

 

『ciao‼︎愛護』

「なんだよ?マリー」

『今日、私はlunchをどうしたらいいのかしら?と思って』

「あぁー、悪い。伝えるの忘れてたな、冷蔵庫に作っておいたサンドイッチがある」

 

今日、マリーは疲れとか時差ボケとか色々考慮して学校を休んでる。そのため俺は朝早く起きてマリーの昼御飯を作っておいて来ていた。

 

「それよりどうだ?疲れの方は」

『たくさんsleepしたから、だいぶ良くなったわ』

「そうか、晩御飯は何食べたい?」

『やっぱり、和食が食べたいかな』

「わかった。あっ!そういえば食べられないものとかあるか?」

『納豆とキムチが苦手よ』

「そうか、それ考慮して考える。じゃあな」

『thank you愛護‼︎愛してるわ』

 

マリーが電話を切った。ていうか!なんだよ最後の一言は多分からかって言ってるんだと思うけどあまり男に軽々しくそんなこと言うなよ、勘違いするだろ。帰ったら注意するか。

 

そして、スマホをポケットに入れ教室に戻ろうとした時、放送が入った。

 

『大川愛護さん、大川愛護さん、至急生徒会室に来てください』

 

えっ、なんで?登校初日から呼び出しくらうなんてついてねえな。まあ、呼ばれたし行くしかねえか。ちょっと待てよ。生徒会室ってどこだ?

 

そのあと俺は、十数分かけて生徒会室にたどり着いた。

そして、扉をノックすると「どうぞ」と声が返ってきたので扉を開け部屋に入った。すると、目の前にはなんか機嫌が悪そうな女の子がいた。

 

「遅いですわ!放送してから何分かかってると思いますの?」

 

あー、それで機嫌が悪いのか

 

「すいません。ちょっと迷ってしまってました」

「そうでしたの?これからは学校の施設についてはしっかり頭に入れておくこと。今回だけは許してあげますわ」

「ありがとうございます」

「では、自己紹介がまだでしたわね。私は黒澤ダイヤ、この学校の生徒会長ですわ」

「へー」

「あら、あまり驚かないのですね」

「まあ、生徒会室に呼ばれた時点でなんとなく予想はしてましたから。」

 

あと、あんたより先にマリーを見てるからあんまり驚かないな。

 

「それで、俺はなんで呼び出されたのでしょうか?」

「そんなの決まってますわ」

「というと?」

「これからのあなたの学園生活についてですわ。女学院に一人男子生徒が入るなんて前代未聞ですわ‼︎私にはこの学校の風紀を守る義務がありますわ」

「はあ。まあ、それはわかります。じゃあ、結局のところは俺に問題を起こすなよっていう注意を言いにきたって解釈したらいいですか?」

「そうですわ。本当に頼みますわよ。と、特に…その…」

「特に?何ですか?」

「ふ、不純異性交友などないように‼︎」

 

顔真っ赤にして言ってるよ。歳上に失礼だけど結構可愛いとこあるな。

 

「とにかくそういうことですわ」

「わかりました。肝に命じて起きます」

「では、もういいですわ。貴重な昼休みを悪かったですわ」

「いえいえ、大丈夫ですよ」

 

そして、俺は生徒会室から出て行き教室に帰っていった。教室に着くと高海さんがまだ勧誘してる声が聞こえた。よくもまあ、懲りないものだ。俺はそう思いながら席につくと同時に昼休み終了のチャイムが鳴った。嘘だろ‼︎俺まだ飯食ってねえのに、そしてそのあとの授業を我慢しながら過ごした。

 

 

 

●●●

 

 

 

授業が終わり、帰り道に今日の夕食の材料を買って帰ってきた。

 

「ただいま」

「おかえり、愛護」

 

何気なしに言ったけど返してくれると結構嬉しいもんだな。一旦冷蔵庫に買ったものを入れて、俺は自分の部屋に行った。

 

俺の部屋はマリーの家の部屋が余ってもったいないからってことで一個借りてるんだけど、昨日は違うことで頭がいっぱいなったから深く考えてなかったけどこれって一つ屋根の下に二人きりだよな。てことは俗に言う同棲じゃないのか?いや、考えるのやめよう。意識したらダメだな。向こうはそんな気があって誘ったわけじゃないし。

 

考えるのやめ、荷物を置いて、部屋着に着替えて俺はマリーのいるリビングに行った。そして、四人がけのダイニングテーブルにマリーが座っていたので俺はマリーの対角線上に座った。マリーは何やら真剣に書類を見ていた。

 

「マリー、休みの日になんで書類なんか見てんだ?休みにならないだろう」

 

邪魔になるかもしれないと思いながら、いや、ある種さっき言った通り休みなんだから休ませようと思って俺は言った。すると、マリーは一旦書類を置いた。

 

「大丈夫よ、ちゃんと朝はしっかり休んだし。それに何かしてないと落ち着かないの」

 

いつものおふざけ半分じゃないその言葉に俺は言い返せなかった。そしたら、マリーはまた書類に目を通し始めた。

 

「はあ、わかったよ」

 

俺は、キッチンに行きコーヒーを入れるとマリーの近くさりげなく置いた。

そして、俺はまたキッチンに戻り夕飯の準備を始めた。

 

「ふふ、ありがとう愛護」

 

 

 

●●●

 

 

 

今は、夕食が出来てマリーも手を止めて食器を運んだりしてくれてる。今日のメニューは筑前煮とほうれん草のおひたしに味噌汁にご飯。

 

「今日も美味しそうね」

「なんか、品数が少ない気もしなくもないけど高校生のレパートリーだからそこは勘弁してくれ」

「別に気にしてないよ。don't worry。sandwichもdeliciousだったわ」

「ありがとう」

 

すごくキラキラした笑顔で言ってくれた。この笑顔が見れるなら早起きした甲斐があったな。

 

「じゃあ、いただきましょう」

「ああ、いただきます」

「いただきまーす」

 

マリーは美味しそうに食べてくれた。やっぱり、嬉しいもんだな。

 

「あっ、そういえば愛護。どうだった?浦の星女学院は、楽しいschool lifeをおくれそう?」

「初日だしな、まだわからない。勉強の話でいうと前の学校より進みが遅いから正直大丈夫そうかな」

「わからないとこがあったらマリーお姉さんが教えてあげるわよ」

「ありがとう。あっ、そういえばクラスに面白い娘がいたな。スクールアイドル部を創りたいらしくて、一生懸命勧誘しててさ」

「school idol⁉︎」

「ああ、知らないか?」

「知ってるわよ。面白いことになってるわね」

 

そう言うとマリーは一口ご飯を口に含んだ。でも、俺はこの時思った。なんか、嫌な予感がした…




愛護とマリーのやりとりが時折熟年夫婦みたいなのどうにかせねば‼︎とか思いながらこれもありかもとか色々考えて2話書き切りました。
3話からはガッツリAqoursとからませるつもりです。



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3話:始動

今回はほんの少し長めです。


 

 

やっぱり、嫌な予感がしてたんだよなとかなんとか考えながら今、俺は顔を真っ白にしてグロッキー状態になっていた。理由は簡単ただの乗り物酔い。

 

「だらしないわね。愛護」

「俺は初めてヘリに乗るんだよ。てか、ヘリってこんなに揺れるのか?」

「違うわよ。せっかくだし、派手な登場を演出をしてもらってるの」

 

は?演出?何言ってんだ?とかなんとか考えてるとヘリが急速に下降し始めた。

 

「はあ⁉︎」

 

そして、ヘリは砂浜の上に急停止した。そして、マリーがヘリの扉を開けた。

 

「ciao‼︎」

 

ciao?誰に向かって言ってんだ?俺も扉から顔を出すと同じクラスの高海さん、渡辺さん、桜内さんが動きやすい格好をしている。そして、マリーを見て完全に頭が?になってる。まあ、そうだろうな。

 

「三人はschool idolがやりたいのよね。だったら今日の昼休みに理事長室に来てね。じゃあ、バイバイ〜」

 

そう言うとマリーは扉をしめた。すると、ヘリは上昇し始め来た方向に戻り始めた。

 

「まさか、マリー‼︎それ言うためにこんなことしたわけじゃないよな⁉︎」

「いいえ、このためよ。だって、これならワクワクするでしょ」

 

満面の笑みで言いやがった。全く悪びれてねえ。そして、俺は誓った。緊急時以外俺はこいつと二度とヘリに乗らないと。

 

 

 

ーーー曜視点ーーー

 

 

 

「1、2、3、4、1、2、3、4…はい、ストップ」

 

梨子ちゃんが新しくメンバーに加わり私たちは今、三人で初めて朝練をしています。

 

「よくなってると思うけど、ここの蹴り上げがみんな弱いかな」

「ほんとだ〜」

「さすがね、すぐ気付くなんて」

「高飛び込みやってたから、フォームの確認とかはわかるんだ。リズムはどう?」

「う〜ん、だいたい良いけど千歌ちゃんがちょっと遅いかな」

「私か〜」

 

千歌ちゃんが頭を抱えて空を見上げた。すると、千歌ちゃんが何かに気づいたので私も見上げると小原家のヘリコプターが飛んでいた。すると、そのヘリコプターがどんどん近づいてきて…「うわあ!」私たちの真上を一度通ったヘリコプターは私たちの目の前でホバリングして停止した。そして、扉が開くと一人の女の人が見えた。

 

「ciao‼︎」

 

その女の人が元気よく挨拶をしてきた。浦の星の制服、リボンが緑だからたぶん三年生で小原家のお嬢さんってことがわかった。もう一人、奥に見えるんだけど…あれって大川くん(なんか、この世の終わりみたいな顔してるけど)?梨子ちゃんと同じ日に転校してきた彼とどういう関係なんだろう?とか考えていると要件を話小原家のヘリコプターは帰って行った。

 

「あはは、なんだったんだろうね?」

「わからない。でも、いいニュースかもしれないし行ってみようよ」

 

千歌ちゃんが興奮ぎみに言った。私たちも別に嫌な理由があるわけではなかったので昼休みの件については満場一致した。そして、話がまとまると時間なので私たちは練習を切り上げた。

 

 

 

●●●

 

 

 

「新理事長‼︎」

 

まあ、驚くよな。マリーに呼ばれた三人はすごく驚いて叫んだ。俺はやることがなくて暇なので部屋の隅で壁にもたれて話を聞いている。

 

「そう、でも気軽にマリーって呼んでね」

「でも…」

「あっ、紅茶飲みたい?愛護が入れたの結構美味しいのよ」

「あの、新理事長」

「マリーなの」

 

マリーって呼んで貰えなくて拗ねるマリー。まったく、めんどくさい。

 

「高海さん、マリーはマリーって呼んであげて。てか、呼ばないとめんどくさい」

「愛護‼︎めんどくさいってどういうことよ」

「そのまんまの意味だよ」

「あ、あの、マ、マリー。その制服は?」

「どこか変かな?ちゃんと三年生のリボン用意したんだけど」

「理事長ですよね?」

「そう、しかーしこの学校の三年生。生徒兼理事長。カレー牛丼みたいなものね」

 

おい、なんだその例え?今日の晩飯カレー牛丼にしてやろうか?

 

「例えがよくわからない」

 

あっ、桜内さんがツッコんでくれた。

 

「えー、わからないの」

「わからないに決まってます‼︎」

 

今度は生徒会長が言った。てか、どっから入ってきた⁉︎マリーは急に現れた生徒会長に驚いたのか尻餅をついた。でも、生徒会長をみた瞬間、満面の笑みで生徒会長に抱きついた。

 

「久しぶり、ダイヤ。大きくなって。胸は相変わらずね」

「やかましい!ですわ」

「it's joke 」

「まったく、一年の時にいなくなったと思ったらこんな時に。いったいどういうつもりですの?」

「shiny‼︎」

 

マリーが思いっきりカーテンを開きながら叫んだ。まったく、何がしたいんだ。あっ、頭が痛い。

 

「その、人の話を聞かない癖は相変わらずのようですわね」

「it's joke 」

 

本当に話が進まないな。頭がいてーよ。

 

「とにかく、高校三年生が理事長なんて冗談にもほどがありますわ」

「それはjokeじゃないのよ」

 

マリーは自分が理事長である証拠の書類を見せた。あー、生徒会長顔が引きつってるよ。

 

「まさか、じゃあ!そこにいる大川愛護さんもあなたの仕業ですの⁉︎」

「それ、私も気になります。大川くん、朝一緒にヘリコプターに乗ってましたよね。なんか、酔ってたけど」

「えっ、そうなの曜ちゃん⁉︎」

 

渡辺さん、発言するのはいいけど一言余計だよ。

 

「まあ、乗ってたけど」

「そうだよね。で、今も一緒にいるってことはまさか恋人?とかですか?」

「なんですって‼︎あなた、恋人を転入させるために職権乱用したんじゃありませんわね‼︎」

 

また、話がいらん方向に…

 

「ダイヤ、安心して。そんな関係じゃないわよ」

「本当ですの?」

 

生徒会長は今度こっちをにらんだ。

 

「まあ、信じて貰えないかもしれないけど恋人ではない」

「そうよ、私と愛護は恋人じゃないわ。fianceeよ」

「「「「えー‼︎」」」」

 

四人一斉に叫んだ。いや、俺も正直叫びたかったよ。驚きすぎて声も出ないレベルになってたわ。

 

「it's joke」

「マリー、言っていい冗談と悪いのがあるぞ」

「あら?愛護はやっぱり私とfianceeの方が良かった? 」

「そろそろ、お前は反省しろ‼︎」

 

俺はマリーの頭に右手を置き、思いっきり力を入れて握った。

 

「痛い、痛い、愛護痛い」

 

ある程度、懲らしめたので手を離してあげた。

 

「確かに、なんか恋人って感じじゃないですね」

 

渡辺さんのこの一言でこの話題は終わった。

てか、あんたの所為でこんなことなったんだけど。

 

「マリー、結局、本題は?」

「そうそう、この学校にschool idolが誕生したと聞いてね」

「まさか」

「そう、ダイヤに邪魔されちゃかわいそうだと思って応援に来たの」

「本当ですか?」

「yes‼︎このマリーが来たからには心配は要りません。デビューにはakiba domeを用意したわ」

「そんな‼︎急に⁉︎」

「奇跡だよ‼︎」

「it's joke」

「冗談のためにわざわざそんなの用意しないでください」

「実際はね」

 

そう言うとマリーが「付いてきて」と言うので俺たちはマリーについて行った。生徒会長は仕事があるって言って生徒会室に戻っていった。そして今俺たちは体育館に付いた。

 

「ここで?」

「そう、ここを満員に出来たら人数に関係なく部として承認してあげます」

「本当に?」

「でも、出来なかったら?」

「その場合は解散してもらうほかありません」

「どうする?千歌ちゃん」

「ここ結構広いよ。諦める?」

「諦めない‼︎他に手があるわけじゃないんだし」

「じゃあ、行うってことでいいのね」

 

マリーはそう言うと体育館から出ていった。俺もそれを追うようにたから出ていった。

 

「マリー、お前も結構意地悪だな」

「どういうこと?愛護」

「あの体育館、全校生徒が集まっても満員になんてならない」

「あら、気づいていたの?」

「まあ、お前の考えもわかるけどな」

「考え?」

「予想だが、あれぐらい出来なきゃスクールアイドルとしてはダメだってことだろ?」

「まあ、そうね。てことで、愛護仕事よ」

「仕事?」

「あの三人のお手伝いをしてあげて」

「なんで?」

「私は意地悪するのではなく応援するために来たのよ。だから、少しは手を貸さないとね」

「じゃあ、マリーがやればいいだろ」

「それだったら、わざわざあんな意地悪なことしません。とにかく、愛護は彼女たちの手伝いをする!これは主人からの命令です」

「わかったよ」

 

俺は来た道を戻り体育館に行き彼女たちに手伝いを申し出た。反対されるかと思ったらそうでもなく、俺は彼女らの手伝いをすることになった。

 

 

 

●●●

 

 

 

手伝いが決まった俺は作戦会議ってことで今は高海さんの部屋に来ている。まず、第一の作戦ってことで高海さんがプリンを持ってお姉さんに会社の人を連れて来てもらおうと交渉したところ、あえなく失敗。それどころか、額にバカチカというお土産までもらって帰って来た。てか、本当に上手く行くと思ってたのか?ちょっとおバカさんな娘だな。

 

「おかしい、完璧な作戦だったはずなのに」

「お姉さんの気持ちもわかるけどね」

「えー曜ちゃん、お姉ちゃん派?」

「派閥がどうこうより普通に考えて無理だと思うけど」

「そんなー‼︎」

「そういえば、渡辺さんは衣装作ってる?手伝おうか?ある程度は裁縫できるぞ」

「本当‼︎じゃあ、やってもらおうかな。あっ、あと曜でいいよ。ずっとさん呼びだと堅苦しいでしょ」

「そうかじゃあ、曜、よろしく」

「よろしく。う〜ん、じゃあこっちはなんて呼べばいいかな?」

「何でもいいぞ」

「えーっと…じゃあ…「愛くん‼︎」千歌ちゃん?」

「愛護くんだから、愛くん。どうかな?」

「まあ、構わないけど」

「じゃあ、私も愛くん。改めてよろしくね」

 

話が一通り終わると渡辺さ…曜に針などを借りて手伝いを始めた。

 

「すごい、愛くん上手いね」

「そうか?まあ、下手だとは思ってなかったけど」

「うん、上手いよ」

 

高海さんが興奮ぎみに褒めてくれた。てか、近い‼︎

 

「高海さん、近いんだけど」

 

俺が高海さんに退いてもらうよう言うと何故か顔を膨らませて拗ねたような態度をとった。

 

「どうしたの?高海さん」

「曜ちゃんは名前で呼ぶのに私は苗字でしかもさん付きなんだな〜って思って」

「いや、だってまだ許可貰ってなかったし」

「でも、流れ的に私も名前で呼んでほしかったな」

「わかった、わかった。ごめん千歌、気が付かなくて」

「よろしい」

 

なんとか、機嫌を直してくれた。てか、そんなに重要なのか?これも女子特有の考え方なのか?

色々と考えながらも俺は作業に戻った。

 

「そういえば、梨子ちゃんは?」

「お手洗い行くって言って帰って来てないね」

「ちょっと見てくるね」

 

千歌が襖を開けて部屋から出て行こうとした時、部屋の前で噂の彼女は手で柵を持ち、足をめいっぱいに伸ばして襖を利用して浮いていた。

 

「曜、あれ何やってんだ?」

「梨子ちゃん、犬が苦手だから。多分、しいたけに触れないようにしてるだと思う」

 

曜が苦笑しながら言った。

あんなに、必死ならなくてもしいたけって結構利口そうだけどな。

 

「そんなことより、人をどう集めるかだよ」

 

えっ!あれほっとくの?曜って結構腹黒い?

 

「そうだよねー」

 

千歌も関係なし会話を続けた。あっ、これが通常なのね。

 

「町内放送で呼びかけたら?多分、使わしてもらえると思うよ」

「あとは、沼津かな?向こうなら高校もいっぱいあるしスクールアイドルに興味がある人もいっぱいいると思うし」

 

まともな案だしてるとこ悪いがやっぱり、助けてあげろよ。はあ、仕方ない。

俺は、いったん作業をやめ部屋を出た。

 

「ちょっと、我慢しろよ」

「えっ⁉︎」

 

俺は桜内さんをいったん、抱きかかえて持ち方が不安定なので桜内さんをそっと動かしてお姫様抱っこの状態した。

 

「大丈夫か?梨子」

「えっ⁉︎り、り、梨子⁉︎」

 

桜内さんは顔を真っ赤にして驚いたあと、急にちっちゃくなった。

ん?ダメだったか?千歌が名前で呼べって言ったからてっきり梨子もそっちの方がいいのかな?って思ったんだけど…

 

「おーい、桜内さん?大丈夫?」

「あの、大川くん。そろそろおろしてくれないかな」

「悪い」

 

俺は、桜内さんをしいたけから遠い場所におろすと、桜内さんは顔を真っ赤にしながら千歌の部屋に入っていった。

 

「なんか、ごめん。桜内さん」

「い、いいよ。助けてくれてありがとう。あと、さっきみたいに梨子って呼んでくれていいよ」

「そうか、わかった。改めてよろしく梨子」

「う、うん。よろしく愛護くん」

 

なんか、よくわかんないけど許してくれたのか?てか、怒ってたのかすらわからない。まあ、名前で呼んでくれたし距離は縮まったと思っていいのか?本当にわからん‼︎てか、曜がニヤニヤしてんのもなんか気になるしイライラする。まあ、ほっとくか。

俺は座り、衣装作りの手伝いに戻った。そして、少し時間が経つと梨子も落ち着いたのか自分の作業を開始した。

 

こうして、俺はスクールアイドル部(仮)のお手伝いさんになった。




二話ですでにUAが千を超えるなんてすごく嬉しいです。
新たにお気に入り登録してくださった方もありがとうございます。


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4話:ライブ成功への道1

「ずら」の使い方がイマイチわからずおかしい点があるかもしれないのはご了承ください。


 

ーーー千歌視点ーーー

 

 

 

今、私たちは曜ちゃん、と梨子ちゃんそして愛くんとみんなで作ったチラシを持って、宣伝に来ました‼︎

 

「よーし、気合い入れて配ろう‼︎」

 

女子高生二人組が歩いていたので二人をターゲットにして

「お願いします」

でも、不発。見向きもしてもらえなかった。

 

「こういうのは気持ちとタイミングだよ‼︎」

 

次に曜ちゃんがやると上手くいった。やっぱり、曜ちゃんはすごい。じゃあ、私も‼︎

一人で歩いてる女子高生発見‼︎

気持ちとタイミング、気持ちとタイミング。

よし‼︎今だ‼︎勢いよくその子を壁ドンで追い詰めた‼︎

 

「ライブやります、ぜひ」

 

私はチラシを見せながら彼女に近寄ったら…

チラシを持って行ってくれた‼︎

 

「勝った」

「勝負してどうするのよ」

 

上手く行ったのに、梨子ちゃんに注意されました。あれ?梨子ちゃん?

 

「なんで、梨子ちゃんチラシ増えてるの?」

「これは…その…」

「あと、愛くんどこ行ったの?」

「それが…」

「まさか、逃げた?」

 

私がジト目で梨子ちゃんに迫ると梨子ちゃんは観念して喋り出した。

梨子ちゃんの話を聞くと…

 

ー回想ー

「なあ、梨子」

「はい⁉︎」

「こういうのってさ、適材適所だと思うんだ」

「というと?」

「知らない男がやるより女の子の方がいいってこと。女の子なら女性は安静するし、さらにその子が可愛いと男は喜ぶ。だろ?」

「そうなの…かな?」

「てことで、梨子。これ頼むな、俺は本屋で今どんなスクールアイドルが人気なのとか調べてくるから」

「えー‼︎」

「大丈夫、梨子は…その…可愛い部類に入るから」

「か、可愛い⁉︎」

「ああ、そうだよ!恥ずかしいから言わせんな。てことで頼むな」

 

 

っていうことで梨子ちゃんは愛くんにチラシを渡されてまんまと愛くんを逃してしまったらしい。というか、梨子ちゃん。ちょっと可愛いって言われて嬉しそう…じゃなくて‼︎

 

「梨子ちゃん‼︎ダメだよ。愛くん逃したら」

「だって…」

 

もう、帰って来たら愛くん。お仕置きだね

 

 

 

●●●

 

 

 

「ハクション!」

 

誰かが噂でもしてんのか?まさか、サボったのバレたか?てか、梨子に言ったこと八割ほど本心だから、許してくれ。それより、あの時なんで梨子は顔真っ赤にしてたんだ?風邪でもひいてたわけではなさそうだったけど。まあ、いざとなったら曜がいるし大丈夫だろ。

 

脳内でオレンジ髮の女の子が「私は‼︎」とか言ってるけどあいつは役に立たないと思う。

 

色々考えてるうちに本屋に着いたので俺はスクールアイドルの雑誌のコーナーに向かった。

その向かう途中高いところの本を取ろうと頑張ってる女の子がいた。台に乗って手を伸ばすも僅かに届いていなかった。てか、あれ危ないよなと思った瞬間、彼女はバランスを崩し始めた。

 

「危ない‼︎」

 

俺は急いで駆け寄り彼女倒れかけたところをなんとか俺にもたれかかったことで倒れずに済んだ。

 

「大丈夫か?」

「ずら?」

 

彼女は倒れるのを覚悟して目をつぶっていてらしく俺の声に反応して目を開けて俺の方を見た。

 

「ずら‼︎」

 

彼女は俺を見ると驚いて後ろに勢いよく後ずさった。だけど、本棚にあたり複数の本が雪崩のように落ちて来て、何個か彼女の頭に当たった。

 

「おい、大丈夫か?悪い。驚かすつもりはなかったんだ」

「こちらこそ、すいません。助けていただいてありがとうございます」

 

俺に謝罪したあと、その子は落ちた本を拾い始めたので俺も拾い始めた。

拾い始めて気づいたけどこの辺にある本、よくわからないけど難しそうだな。この娘、こんなの読むのか?ちょっと尊敬するな。ん?てかこれ!ハードカバーだし!まさか!

 

「君、ちょっとごめん。…やっぱりか」

 

俺は彼女の頭を覗くと案の定、大きなこぶが出来ていた。これ終わったあとで、薬局で薬とか買ってくるか。と思ったその時

 

「ピギィィィィ‼︎」

 

なんだ?今の奇声は?俺は声のする方を向くと赤髪の女の子が顔を真っ赤にして見ていた。

 

「ルビィちゃん」

「知り合いか?」

「はい、友達ず…です。どうしたのルビィちゃん?」

「は、花丸ちゃん‼︎」

 

すると、そのルビィちゃんは全速力でこっちに向かって来たかと思ったら彼女(花丸ちゃんって呼ばれてたな)その子を連れて走り去っていった。

 

「えっ?」

 

何が起こったのかわからずひとまず追いかけようと思ったけどまだ、本が散らばっていたので片付けを先にすることにした。あれ?なんでこんなとこにスクールアイドルの雑誌が?あー、あれかあのルビィちゃんって子が落としていったのか仕方ない。俺はそれを拾い片付けを再開した。

 

 

 

●●●

 

 

 

ーーー花丸視点ーーー

 

 

 

「ちょっと待つずら、ルビィちゃん」

 

いったいどうしたずら?急に連れ出すなんて、あのお兄さんにちゃんとお礼してないのに。

 

「どうしたの?花丸ちゃん、あの人来ちゃうよ」

「どうしたはまるのセリフ、どうしたの?ルビィちゃん」

「だって花丸ちゃん、あの人にそのナ、ナンパされてたから助けなきゃって」

 

あーなるほど、ルビィちゃんはまるがあのお兄さんがまるをナンパしてると思ってたのか〜。

 

「ルビィちゃん、ナンパじゃないよ。それどころか、まるを助けてくれたの」

「助けてくれた?」

「そうずら」

 

まるは一からルビィちゃんに事の顛末をルビィちゃんに話したずら、そしたらルビィちゃん顔を真っ赤にし始めた。

 

「ルビィ、あの人に失礼なことしちゃった」

「そういうまるもお礼してないずら」

 

まるが携帯電話を使えたらあの人と連絡取れたのかな?失敗したずら。

 

「あれ?花丸ちゃん、あの人って」

「ずら?」

 

ルビィちゃんの指差した方を見るとさっきのお兄さんが走って来ていた。

 

「花丸ちゃん、ルビィちゃん。よかった、追いついた」

「どうしたず…どうしたんですか?あれ?」

「ああ、これ。欲しかったんだろ?」

 

お兄さんに差し出された袋の中を見るとまるが欲しかった本が二冊入っていた。

 

「これ、どうしたずら…どうしたんですか?」

「買ったんだよ。色々と迷惑かけたからお詫び」

「そんな、まるの方こそ助けて貰ったのにお金払います」

「いいよ、別に。あと、これはルビィちゃんに…ってルビィちゃんは?」

 

お兄さんがルビィちゃんを見うしなって探している。まったく、ルビィちゃんたらまた隠れたずらか。

 

「お兄さん、それ貸して欲しいずら」

「ずら?」

「‼︎貸して欲しいです」

「いいけど、どうするの?」

 

お兄さんは顔をはてなにしながらも袋を渡してくれた。案の定、中にはルビィちゃんが欲しがってたアイドルの本が入ってた。まるがそれを取り出して見せびらかすと…

やっぱり、ルビィちゃん出て来たずら。そこをすかさず、捕獲ずら。

 

「ルビィちゃん、捕まえた」

「ピギィィ」

「ほら、ルビィちゃん。謝って、ちゃんとお礼いうずら」

「う、うん」

 

ルビィちゃんはまるの後ろに隠れながら少し顔を出してお兄さんの方を見た。

 

「あの、ナンパの人と間違えてごめんなさい。それと、雑誌ありがとうございます」

「あー、そういうことか。それで逃げたのか。まあ、知らない男が友達に近寄ってたら勘違いするよな、大丈夫気にしてないから」

 

これで一件落着ずら。

 

「あ、あと、花丸ちゃん頭痛くない?一応、色々買って来たんだけど」

 

ルビィちゃんのことで頭いっぱいになってたけど、お兄さんに言われて思い出したずら。確かに頭が痛いずら。

 

「あー、痛そうだな。ルビィちゃん、これで手当してあげて」

「は、はい!」

 

ルビィちゃんに手当して貰って気のせいかもしれないけど少し痛みがひいてきた。

 

「大丈夫だな?じゃあ俺は、これで」

「あっ、待ってずら‼︎」

「ん?どうした?」

「あの、お名前を教えて欲しいずら…欲しいです」

「俺か?大川愛護。あっ、花丸ちゃん。方言を直そうとするのは自由だけど無理して直すのはやめといたほうがいいよ。特に俺は気にしないから」

「ずら‼︎ばれてた?」

 

でも、馬鹿にするどころか笑いかけてくれるなんてお兄さんはやっぱりいい人ずら。

 

「結構、最初からボロが出てたぞ」

「あはは、あれ?お兄さん、どうしてオラたちの名前知ってるずらか?」

「ああ、ルビィちゃんが花丸ちゃんって呼んでたし、花丸ちゃんがルビィちゃんって呼んでたから覚えただけだ。てか、そのお兄さんってなんだ?」

「だって、愛護さん。優しい歳上のお兄さんみたいだったから…もしかして?歳上じゃないずら?」

「いや、確かに歳上だよ。リボンの色から君たち浦の星の一年だろ?俺は浦の星の二年生だから歳上」

「あ、愛護さん。噂の男子転入生ずらか?」

「そうだな、じゃあ学校でな」

「待ってずら‼︎れ、連絡先教えて欲しいずら」

「なんで?」

「今日のお礼をしたいから」

「いや、別にいいよ」

「でも、どちらかと言うとオラたちが迷惑かけたから。だから、ちゃんとお礼しないとオラ…」

「わかった、一応教えるよ」

「ありがとうございます。あっ、オラ携帯使えなくて持ってないから電話番号がいいずら。それなら家の電話で出来るから」

「わかった、なんか書くものある?」

「あっ、はい」

 

オラは鞄からメモ帳と鉛筆を渡した。そして、愛護さんは電話番号を書いて渡してくれた。

 

「これでいいか?ちょっと俺そろそろ戻らないと怒られるから。じゃあな、学校で会ったら声かけてくれ」

 

愛護さんは手を振って走っていった。やっぱり、男の人走るの速いずら。

 

「ルビィちゃん、大丈夫?」

「花丸ちゃんすごいね、知らない男の人と喋れるなんて」

 

ずっとまるの後ろに隠れてたルビィちゃんが喋り出した。やっぱり、人見知りしてたみたい。

 

「でも、優しそう人だったよ」

「そ、そうだね」

 

ルビィちゃんにも好印象だから少し時間が経てば二人は仲良くなれそうずら

 

 

 

●●●

 

 

 

「やべー、迷った」

 

花丸ちゃんたちを必死に探し回ってたから正直、自分がどの方向から来たのかも覚えてない。仕方ない、スマホで調べるか。……やべ、めっちゃメール来てる。千歌たち怒ってるだろなー。「♪♪♪」あっ、曜から電話来た。仕方ない、助けて貰うか。

 

「もしもし」

『ヨーソロー、さて愛くん。まず、言うことは』

「えーっと、ごめん。あっ、頼みがあるんだけど、道に迷いました。助けてください」

『えっ、大丈夫?』

「スマホで調べるからたぶん大丈夫。でもら帰るまで十五分くらい待って」

『わかった。あっ、愛くん帰って来たら覚悟してね』

「あはは」

 

そうして、電話が切れた。あれだよね、最後のって笑ってるけど目が笑ってないパターンのやつだった。自業自得だけど戻りたくねー、てか、最初はマジメにスクールアイドルのこと勉強するために本屋に向かったんだけど。これは真剣にそうだぞ、梨子にもそう言ったはずなんだけど…まあ、はたから見たらサボりだろうな。

 

 

それから、なんとか沼津駅まで帰った俺はこっぴどく説教されました。



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5話:ライブ成功への道2

やっぱり、マリーの口調が難しくて変かもしれません。すいません


 

 

「グループ名?」

「そう、今日ルビィちゃんにグループ名はなんですか?って言われて」

 

現在、練習のために俺たちは動きやすい服装をして砂浜で体操している。なぜか、俺もやらされてるのが気になるが、まあ、日頃運動してないしいいか。

それにしてもあの後、ルビィちゃんたち三人に会ったのか。あと、五人は知り合いだったんだな。

 

「てか、決めてなかったのかよ」

「だって〜、そういうこと考える暇もなかったんだもん」

「まあ、そうかもしれないけど…候補はあるのか?」

「う〜ん?やっぱり学校の名前入っていた方がいいかな?」

「というと?」

「浦の星スクールガールズ?とか」

「そのまんまじゃない」

「そういう梨子ちゃんは?」

「あっ、そうだよ。東京の最新の言葉とか」

「うんうん」

「じゃあ、三人海で出会ったから「スリーマーメイド」は?」

 

一瞬、空気が凍る。そしたら、聞いた千歌と曜はまったく触れることなく体操を続けた。

触れてやれよ、かわいそうだろ

 

「今のなし‼︎」

「まあ、俺はいいと思うぞ」

「愛護くん、変なフォロー入れないで‼︎」

 

悪い、あまりにもかわいそうだったから…

 

「じゃあ、次曜ちゃんは?」

「制服少女隊‼︎とかどうかな?」

 

またもや、一瞬空気が凍る…

 

「ないかな」

「そうね」

「そうだな」

「えーー‼︎」

 

すると、千歌がどこから取ってきたのか木の棒を持ってきて、色々書き始めた。曜たちも思いついたのがあれば、木の棒を取り次々と書いていった。途中俺も適当に書かされたが…結局、いいのが思いつかず。ていうか、途中からやけくそで書いたやつあるだろ。

 

「こういうのはやっぱり言い出しっぺじゃない?」

「賛成‼︎」

「戻ってきた〜」

「じゃあ、制服少女隊でいいっていうの?」

「スリーマーメイドよりかは…」

「あれはなし‼︎」

 

決まらないな〜、今まで何書いたっけ?ん?こんなのあったか?

 

「なあ、みんな。これ誰書いたか覚えてるか?」

「どれどれ?これなんて読むの?」

「アキュ、アキュアワーズ?」

「アクアかな?」

「なるほど、aquaとoursをかけてあるのか?」

「いいよ、これ‼︎」

「これにするの?誰が書いたかもわからないのに?」

「それがいいんだよ。名前を決めようとしたらこの名前に出会った。これってすごく大切なんじゃないかな」

「そうだね」

「このままじゃ、いつまで経っても決まりそうにないし」

「うん、この名前。三人に合ってるんじゃないか?」

「うん、じゃあこの出会いに感謝を込めて、今から私たちは浦の星女学院スクールアイドル「Aqours」‼︎」

 

 

 

●●●

 

 

 

「ただいま」

「遅い、愛護。お腹がすきました」

「だったら、少しぐらい手伝ってくれるか?」

「OK‼︎、初めての共同作業ね」

「はいはい」

 

いつもなら、部屋着に着替えるところだがそんなことしてたらマリーがうるさいのでブレザーとネクタイを外してエプロンを着けた。

すると、マリーもフリルがついた女の子らしいエプロンを着けて来た。

 

「どう?愛護」

「似合ってるよ」

「本当に思ってる?」

「いや、思ってるって。普段の行動はあれだがマリーは、まあ、可愛いよ」

「愛護、それ本気で言ってる?」

「そんな、嘘つくほど器用じゃない」

「あ、ありがとう」

 

何だよ、急に元気なくなっていつものカタコト口調でもないし顔も赤いな。体調悪いのか?

マリーの額に手を当てた。うん、熱はないな。

 

「なに⁉︎愛護⁉︎」

「いや、顔赤くしてたから熱でもあるのかと思ってさ。悪い、断わってやるべきだった」

「大丈夫。じゃあ、let's cooking 」

「はいはい」

「愛護先生、今日は何作るの?」

「唐揚げ、早くできるしな」

「fried chickenね」

 

体調、悪いと思ったのは気のせいか、カタコト口調にも戻ったし

 

「マリーって何ができる?」

「さあ?」

「さあ?ってじゃあ添えるキャベツ切れるか?」

「わかったわ」

 

よし、俺は鶏肉切って衣つけて、味噌汁も作るか…

 

「痛っ!愛護〜」

「まじかよ‼︎こんな数秒で指切るか普通⁉︎」

 

仕方なく俺は救急箱を取りに行き、マリーの手当をした。

 

「マリー、もう包丁持つな」

「えー」

「マリーが怪我したら困るんだよ」

「えっ、愛護それって、私が大事ってこと?」

「ん?大事?まあ、大事だな」

「本当‼︎」

 

どうしたんだ?怪我したかと思えばなんか元気だし、女の子の考えが全然わかんねえ

 

「嘘じゃない。一応、雇い主なんだから大事だろ」

「あっ、そういう意味だったんだ」

 

は?他に何の意味があるんだよ。てか、なんかテンション下がってるし、やっぱりわからん。

 

「あー、マリー作業続けるぞ」

「でも、愛護包丁持つなって」

「切る以外にも仕事はあるんだよ」

 

俺はジップロック的なやつに切った鶏肉を入れてあと、小麦粉とか色々入れてマリーに渡した。

 

「はい、衣つけてくれ。満遍なくなるようにな」

「うん」

 

じゃあ、作業続けるか…

そして、俺たちは完成させてテーブルに並べた。

 

「じゃあ、いただきます」

「いただきます」

「やっぱり、愛護の料理は美味しい」

「今日は、マリーも手伝っただろ」

「でも、私のhelpなんてほとんどないし」

「そんなことない。助かったよ」

「そう⁉︎どういたしまして愛護」

「また、作るか…一緒に。時間あるときに…今度はちゃんと教えるから」

 

柄じゃないなとか思いながら言ってみる。するとマリーは目を丸くして俺をじっと見ていた。

 

「なんだ?」

「うん、作りましょう‼︎愛護、しっかり教えてね」

 

この時の笑顔は今までっていうても一ヶ月も経ってないと思うけどマリーの笑顔の中で一番輝いていて可愛いかった。まあ、本人には絶対言わないが。

 

 

 

●●●

 

 

 

それから、Aqoursの三人はライブを成功させるため、宣伝、曲作りに振り付け、全てに妥協することなく順調に準備を進めていた。

そして、今はほぼほぼ完成したため振り付けなどの最終確認をしている。まあ、俺が口出すことではないから、俺は千歌の家の台所を借りて疲れが取れるようにちょっとした甘いものを作ってる。マリーがコーヒーを飲むときに作ってあげているお菓子がこんなとこで役に立つとは思ってなかったな。

 

「よし、出来た‼︎」

 

俺はさっそく千歌の部屋に持って行った。

梨子と曜はすごく集中して振り付けの話し合いをしていて俺が入ってきたのにもまだ気づいていない。

 

「二人とも、いったん休憩したらどうだ」

「あ、愛くん。あれ?そういえばどこ行ってたんだっけ?」

「これ、作ってた。疲れたときには甘いものかなっておもって」

 

俺は作ってきたものを二人の前に置いた。

 

「これは?」

「プリン作ってみた」

「すごーい、女子力高いね愛くん」

「曜、あんまり、嬉しくないんだが…」

「本当にすごい…」

「梨子?感動してないで食べてくれない?恥ずかしい」

「あっ、ごめん。じゃあ、いただきます」

 

曜と梨子がプリンを食べて、美味しいと言ってくれた。やっぱり、作ってよかった。これで少しは役に立ったかな?

 

「千歌ちゃんも起こしてあげたほうがいいかな?」

「別に、いいだろ。プリンは冷蔵庫入れて置いてあげるし休ませてあげよう」

「そうだね」

「でも、あんな体勢じゃ疲れも取れないよな」

 

千歌は今、机に顔をのせて寝ている。あれは疲れが取れるどころか身体を逆に傷めかねないしな。可愛そうだが一瞬起こしてベッドに移動してもらうか。

 

「千歌、千歌」

「なーにー?」

「寝るならベッドで寝た方がいいぞ」

「う〜ん」

 

ダメだ寝ぼけてる。仕方ない運ぶか。

 

「じゃあ、千歌俺の方にもたれてくれないか」

「愛くん?何するの?」

「千歌を運ぶ。よっと」

 

千歌がもたれてくれたので背中と膝裏に手を回して持ち上げた。思ったよりも軽いな。

 

「愛くん、カッコイイ‼︎千歌ちゃんの王子様みたいだよ」

 

曜が俺に少しからかいの意味が入った笑顔でグッドサインをしてきた。なんか、梨子は顔を赤くしてるけど。

 

「千歌の王子様か…ごめんだな」

「えー、千歌ちゃん可愛いのに」

「可愛いのは否定しないが…俺が王子ならもうちょっと姫様っぽく振舞ってほしいな」

「あはは、千歌ちゃんお騒がせなとこあるもんね。それにしても、愛くんずいぶんスムーズに持ち上げたね」

「まあ、慣れてるから」

「慣れてる?えっ!どういうこと?どういうこと?」

 

やばっ、マリーもよく仕事中に寝たりするから運ぶのに慣れてるのは事実だけどマリーと暮らしてるの隠してるしなんか変な誤解を招きそうでやばい‼︎

 

「愛くんにはよくお姫様抱っこする恋人とかいるの?」

 

ほら、みろ食いついてきた。

 

「待て、まず千歌を運ばせて」

「しょうがないなあ」

 

俺は千歌をベッドに乗せた。ちくしょー、幸せそうに寝やがって。てか、結構大声で喋ってたのに起きないなんてやっぱり、疲れてたのか。

 

「で、なんだ?」

「愛くんって、恋人とかいるの?梨子ちゃんも気になるよね」

「う、うん」

「いない、てか浦の星に来てからこの話題かなり話してるんだが」

「やっぱり、みんな気になるんだね」

「ほんと、女子ってそんなん好きだよな」

「うーん、愛くんがかっこいいからじゃない?」

 

はあ?俺がかっこいい?何言ってんの言ってなかったが俺の身長は168センチメートル。平均ないんだぞ。チビだぞ。そんな奴、どこがかっこいいんだよ。

 

「曜、お世辞を言っても何も出ないぞ」

「愛くんだって時々だけど私たちに可愛いって言ってくれるでしょ」

「俺のはお世辞じゃない。三人とも可愛いと思ってる。」

「あの、愛くん。そんな即答されると…」

「頼むから照れるな、言ったこっちが照れるから。梨子もな」

 

はあ、千歌も寝てしまったし時間も時間だし、帰るか

 

「俺、帰るな」

「えっ!もうそんな時間?ほんとだ‼︎バスどうしよう」

 

最終便のバスがもう出発してしまってるらしい。曜の家はここから十キロ程度離れてたよな。いつもなら千歌のお姉さんに頼んでるらしいが今日は少し無理みたいだ。歩いて帰れる距離じゃないし、頼んでみるか

 

「曜、ちょっと待ってろ」

「えっ?」

 

俺は部屋から出て電話をかけた。もちろん、電話先は…

 

『ciao‼︎』

「その挨拶が適用される時間帯じゃないと思うぞ」

『細かいことは気に「頼みがある」…愛護、人の話を切らないの』

「お前が言うな」

『で、頼みごとって何?』

「バスの最終便が切れたから曜が帰れないらしい。車出してやれるか?」

『元々、愛護を迎えに行かせるつもりだったのがあるけどそれに乗せてあげたら?』

「わかった。ありがとうな」

『愛護、ちょっとずつgentlemanになってきてるね』

「ありがとう」

『じゃあ、ちょっと待ってね。すぐ向かわせるから』

「ああ、本当にありがとう」

『ふふ、愛護enjoyしてるね』

「enjoy?」

『うん、最初は三人のhelp、そんなに乗り気じゃなかったでしょ』

「そういうことか、まあ確かに三人の頑張りに感化されたとこはないとは言えないかな」

『そうね、じゃあ後でね。帰ったらcoffee入れてね愛護』

 

そうして、電話が切れた。俺は千歌の部屋に戻り曜に車が来ることを伝えた。

 

 

 

●●●

 

 

 

俺は今、曜と一緒に車内にいる。

 

「何、緊張してんだ?」

「愛くん、この車すごい高い奴だよね、運転手さんもなんかいかにもって人だし」

「まあ、確かにな」

「愛くんの家って、もしかしなくてもお金持ち?」

「俺の家は普通の一般家庭だよ」

「いや、運転手がいる一般家庭とかないから」

「マリーの家のだよ。これ」

「マリーって鞠莉さんのこと?新理事長の」

「なんで、愛くん鞠莉さんの家の車呼べるの?」

「えーと」

 

別に隠しておくことでもないしいいか、同じ家に二人で住んでるってことは隠しとけば変な誤解もないだろうしな。

 

「マリーは俺の雇い主なんだよ」

「雇い主?」

「そう、俺は一応マリーの執事ってこと」

「そうだったんだ。だから、浦の星に通ってるんだね」

「そういうこと」

 

会話が途切れて沈黙が生まれた。はあ、いつも騒がしいからこういう空気なれない。

 

「ねえ」

「なんだ?」

「ライブ、成功すると思う?」

「逆に曜はどう思うんだ?」

「成功するといいな」

 

曜は心配そうに車の外を見渡す。

 

「この辺、人少ないし…」

「俺は大丈夫だと思うぞ」

「えっ?」

「こっちに引っ越して思ったんだけどさ、みんな暖かいからさ」

 

俺は曜の頭にそっと手を置いた。

 

「だから、大丈夫‼︎絶対成功するよ」

 

俺は出来る限りの笑顔を見せた。あんまり、人が元気を与えたりできる笑顔とかできないから気持ち悪くなってるかもしれないけど、俺なりに安心させるために

 

「ありがとう、愛くん」

 

曜も笑顔を返してくれた。やっぱり、この子は笑顔がいいな絶対俺なんかのよりも数百倍人に元気を与える力がある。

 

「愛くんって、やっぱり面倒見いいよね。執事ってちょっと合ってるかも」

「そうか?まあ、ありがとう」

「でも、執事というよりもお兄ちゃんって感じかな。お兄ちゃんって呼んであげようか?」

 

おい、元気になったと思ったら早速いじって来やがった。励ますの失敗したか?

 

「んな、変な趣味俺にはない」

「なんてね、あっもう着くね」

 

家の前に着くと曜は運転手にお礼を言うと車を降りた。

 

「じゃあね、今日はありがとう。おやすみお兄ちゃん」

「結局呼ぶのかよ」

「じゃあ、二人きりの時だけにするね」

「いや、やめろ‼︎」

 

曜は俺の言葉を無視して帰っていった。

てか、何が二人きりの時だけだよ。今、バリバリ運転手さんいるじゃん。はあ、やっぱ疲れる。いい意味でも悪い意味でも。

 

曜が家の中に入るのを確認すると運転手さんに車を出してもらった。

 

「青春ですな、お兄ちゃん」

「変なボケかまさないでください」

「いやはや、お嬢様が仰った通りの方ですな」

「マリーが?なんて言ってたんですか?」

「それは、お嬢様の口から聞いてくだされ」

「そうですか」

 

そのあとは、運転手さんと他愛もない話をしながら家に帰っていった。




曜ちゃんって、兄貴分的な面倒見いい人にはお兄ちゃんって言ってからかいそうなイメージが私の中にあったので呼ばせてみました。

次回、やっとライブします


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6話:初ライブ!

今回は少し短めです。


 

 

今日はついにやって来たライブの日しかし外はあいにくの雨。これで、観に来てくれる確率が下がったのは確かだ。

 

「慣れないなー、本当にこんなに短くて大丈夫なの?」

「大丈夫だよ、μ'sの最初のライブだって…ほら」

「はあ、やめときゃ良かったかなスクールアイドル」

「大丈夫だよ。ステージに出れば忘れるよ」

 

三人はまったく緊張感のない話してるし、いや逆か。緊張してるからこそ何か喋ってないともたないのかもな。

 

「えっと、もうすぐだね。どうするんだっけ?」

「こうやって、手を合わせて…」

「やっぱり、繋がない?」

「「えっ?」」

「ほらね、暖かくてこっちの方がすき…雨だね」

「みんな、来てくれるかな?もし来なかったら」

「じゃあ、ここでやめちゃう?」

 

千歌その一言で三人はくすりと小さく笑った。やっぱり、いいチームだな。さて、俺も準備しますか。

 

「さあ行こう‼︎いい全力で輝こう‼︎」

「「「Aqours、sunshine‼︎」」」

 

 

緞帳が上がる。そして、三人が観たのは数えられるほどの人数。体育館を満員に埋めるには程遠い人数だった。

意気消沈する三人だけど….

 

「私たちは、スクールアイドル」

「「「Aqoursです‼︎」」」

「私たちはその輝きと」

「諦めない気持ちと」

「信じる力に憧れスクールアイドルを始めました。目標はスクールアイドルμ'sです‼︎聞いてください」

 

三人の考え作った歌が、衣装が、踊りが始まった。決して上手いとはまだまだ言えないところが多々あるが三人のその思いが詰まったそれは本当に素晴らしく俺は引き込まれていった。だが…神様っていうのは時に残酷なことをするらしい、雷による影響か停電により照明、音響全てが止まった。

 

「嘘だろ、マリー」

 

俺は近くにいた観に来ていたマリーに声をかけた。

 

「なあ、非常用電源とかないのか?」

「あるわよ。体育館横の倉庫に」

「使わせて貰っていいか?」

「いいけど…三人はもう…」

「マリー、言いたいことはわかるでももうちょっと待ってろ。今は停電のショックで止まってるだけだ。だから、あの三人は大丈夫だ」

 

俺は急いで体育館から飛び出した。外は大雨だが、気にせずに外に出た時中から声が震えながらも三人の歌っている声が少し聞こえた。やっぱり、あの子たちは強い。

俺は倉庫に着いた。なんでか知らねえけど開いてたので中を見ると非常用電源が見当たらなかった。

 

「嘘だろ?他にも体育館の横に倉庫なんてあったっけ?」

 

俺が辺りを見回すと赤い傘を差した女の子が一生懸命非常用電源を運んでるのが見えた。

 

「何やってるんだ?って生徒会長‼︎」

「なんですの、急に大声出して」

「いや、なんで生徒会長が非常用電源持ってるんですか?」

「停電したからですわ」

「でも、あんだけAqoursのこと目の敵にしてたじゃないですか」

「確かにまだ認めてませんわ。しかし、浦の星女学院でライブをするのであれば成功していただかないといけませんの」

「なるほど、そういうこと。やっぱり生徒会長ってなんていうかその…いい女だなって」

「な、なんですの急に‼︎セクハラで訴えますわよ」

「悪い、ほらそれ貸して俺が持つから」

 

俺は生徒会長から非常用電源を渡してもらうと二人で体育館の裏側に回った。そして、ダイヤさんに接続をお願いしてる時にこの前、送って貰って仲良くなった運転手さんから一本の電話が入った。

俺は運転手さんからの電話の内容を聞いて思わず笑みがこぼれた。

 

「どうしたんですの?急に笑い出して気持ち悪いですわよ」

「なあ、生徒会長。今、道がめっちゃ混んでるらしいですよ」

「それがどうしたんですの?」

「来ますよ」

「何がですの?」

「体育館いっぱいのお客さんが」

「はい?」

 

生徒会長が接続し終わって電気をつけた。その瞬間同じくして体育館の中から盛大な歓声が起こった。

 

「どういうことですの?」

「来てくれたんですよ。あの子たちを観に来るために」

 

再び曲が流れだす。先ほどと違いお客さんの楽しそうな歓声と共に。

 

「生徒会長、ありがとうございます」

「私は私の仕事をしただけですわ」

「それでも、俺たちが救われたのは事実です。特に俺は観たかったからあの子たちが輝いているところが。やっぱり、三人は笑顔が似合う」

「ふん、アイドルなんですから笑顔は当たり前ですわ」

「まあ、そうですね」

 

曲が終わりかけてきた。その時、生徒会長は舞台の方に向かっていった。

 

「どこか行くんですか?」

「あの子たちに伝えないといけないことがあるので」

 

ったく、やっぱり、あの人自分にも他人にも厳しいんだな。でも、生徒会長は本当にいい人だな。

俺がそんなことを考えてると生徒会長が千歌と話してる声が聞こえた。話してる内容は俺の想像通りだった。

 

「これは、今までのスクールアイドルの努力と街の人たちの善意があっての成功ですわ。勘違いしないように」

「わかってます。でも、ただ見てるだけじゃ始まらないって、うまく言えないけど。今しかない瞬間だから、だから!」

「「「輝きたい‼︎」」」

 

千歌の言葉に会場全体から拍手が起こった。

こうして、Aqoursの初ライブはなんとか成功した。

 

 

 

●●●

 

 

 

ライブが終わって俺はマリーと歩いて帰っていた。

 

「マリーありがとうな」

「どうしたの?」

「マリーが手伝えって言ったからやってたけど、俺あの子たちとやって来てよかった気がする。だから、手伝いをやらせてくれてありがとうな」

「どういたしまして」

「まだ、手伝ってもいいか?」

「ええ、愛護はそのままAqoursのsupportをお願いね」

「ああ」

 

朝の雨とは比べものにならないほど晴れた空の下をこうして俺たちは帰っていった。



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7話:夢の続き

 

 

「これでよし!」

 

体育館にある部屋を部室として使うことを許されたスクールアイドル部はさっそく部室に来て千歌が看板をセットした。

 

「まさか、本当に承認してくれるなんてね」

「部員足りないのにね」

「理事長がいいって言ったんだからいいんじゃない?」

「いいって言うどころか…」

「ノリノリだったけどね」

 

そうだよなー、マリーの「しょーにん♪」が頭から離れないぐらいノリノリだったな。

 

「それにしても、なんで理事長は私たちの肩を持ってくれるのかしら?」

「スクールアイドルが好きだからじゃない?」

「それだけかしら?」

「愛くんは何か知ってる」

「さあな、マリーが何考えてるか何ていつもわかんない」

「そうだね…」

「そんなことより、中の掃除しないと活動なんて出来ないぞ」

「えー、これ全部やるの?」

「仕方ねえだろ、誰もやってくれる人なんていないんだから」

「そうね」

「そうだよ、千歌ちゃん」

「そうだけど〜…ん?」

 

千歌がホワイトボードに何か書いてあるのを見つけた。

 

「歌詞かな?」

「どうしてここに?」

「わからない、それにしても…」

 

今度は大量に積まれていた本を手に取った千歌

 

「これって、図書室の本だよね」

「そうだな」

「それ持っていかないとダメだよね」

「まあな」

「あー‼︎」

「別に本返しに行くぐらいなら俺一人でやっとくぞ」

「ううん、みんなでやろう」

 

そう言うと千歌は置いてあった本を四等分にしたが流石に俺と彼女らが同じ量ってのもあれだから俺は三人から二冊ずつ取って持つことにした。

 

「愛くん、本当に大丈夫?」

「大丈夫だから、いくぞ。時間ないんだから」

「うん」

 

俺たちはそうして図書室に向かった。

 

 

●●●

 

 

 

図書室に着くと花丸ちゃんがカウンターに座っていた。花丸ちゃんって本好きなのは知ってたけど図書委員だったんだな。

 

「あっ、花丸ちゃんだ!そして、ルビィちゃん!」

 

千歌が指差した方をみると扇風機の裏に隠れているルビィちゃんがいた。

 

「ピギィ、こ、こんにちは」

「可愛い」

 

ルビィちゃんを見て目を輝かせる千歌。

 

「おい、本来の目的果たすぞ」

「はーい」

 

俺たちはカウンターの上に本を置いた。そして、花丸ちゃんに見てもらいやっぱり図書室の本らしい。

てことで、部室に戻ろうとした時…

 

「スクールアイドル部へようこそ!」

 

千歌、お前何やってんの?花丸ちゃんたち引いてるぞ

 

「結成したし、部も出来たし決して悪いようにはしませんよ」

 

どこの悪徳勧誘だよ。

 

「二人が歌ったらキラキラする間違いない‼︎」

「あの〜」

「やめろ‼︎二人とも戸惑ってるだろ」

 

俺は千歌の頭を軽くポンとおく程度の威力でチョップをした。

 

「二人ともごめんな、でも確かに二人とも可愛いし千歌もこう言ってることだし少し考えてみてくれないか?」

「でも、まるそういうの苦手っていうか…」

「ルビィも…」

「うん、わかった。でも、やりたくなったら来てくれよ歓迎するから。ほら、掃除もあるし練習もするんだろ?」

「はーい」

「千歌ちゃんダメだよ。強引に迫っちゃかわいそうだよ」

「はーい。じゃあね、ルビィちゃん、花丸ちゃん」

 

そして、俺たちは部室に帰っていった。

 

 

●●●

 

 

ーーールビィ視点ーーー

 

 

「スクールアイドルやりたいんじゃないの?」

 

今、ルビィたちは学校からの帰り道です。今日図書室にスクールアイドル部のみなさんが来られたんですけど、その時勧誘されてそのことについて花丸ちゃんとお話ししてます。

 

「ダイヤさんが?」

「うん、お姉ちゃんは昔はルビィと一緒にμ'sの真似するぐらい好きだったのに、高校に入ってしばらく経った頃…」

 

ルビィは思い出しました。ルビィがアイドル雑誌を見ていたら、お姉ちゃんが急に片づけてって、見たくないって言ったことを…

 

「そうなんだ…」

「だからね、本当はルビィも嫌いにならないといけないんだ」

「どうして?」

「だって、お姉ちゃんが嫌いって言ってる物を好きになんてなれないよ。それに…」

「それに?」

「花丸ちゃんは?興味ないの?」

「まる⁉︎ないない、運動苦手だし、ほら、おらとか言っちゃう時あるし」

「じゃあ、ルビィも平気」

 

そう、ルビィは平気。

 

 

●●●

 

 

俺は今、マリーに連れられてダイビングショップに来ている。だが、二人きりで話したいけど、話の内容は理解してほしいという意味わからん頼みのせいで俺は石垣にもたれてテラスで話してるマリーとマリーの会いたかった果南って人の話を聞いている。

 

「どうしたのいきなり」

 

はあ、いきなり不穏な空気なんだが…

 

「果南をスカウトに来たの」

「スカウト?」

「休学が終わったら、一緒にschool idolをやるわよ。浦の星で」

「本気?」

「本気じゃなかったら帰って来ないよ」

 

マリーがそう言うと果南さんが最後に何か言ったけどそれは聞こえず、そして二人の会話は終わり果南さんは店に戻っていった。

 

「相変わらず頑固親父なんだから」

「相変わらずこっちはお前のせいで状況が理解できないんだが。マリー、スクールアイドルするのか?」

「そうよ」

「千歌たちとか?」

「うーん、どうだろう」

「はあ、まあなんか考えがあって来させたんだと思うから今は詮索しないでおく」

「ありがとう愛護でもいつか、愛護の力が必要な時が来ると思うの。だから…」

「わかった。さあ、帰るぞ」

 

 

 

●●●

 

 

 

「はあはあ、無理よー」

「でも、μ'sも毎日階段登ってたって」

「でも、こんなに長いなんて」

「こんなの毎日続けてたら、体がもたないわ」

 

今日から練習に階段ダッシュが加わった。理由はμ'sも階段ダッシュをしていたから。まあ、足腰を鍛えるのと体力をつけるにはもってこいだな。でも、曜を除く二人は今までろくに運動してこなかったからもうダウンしている。まあ、今日に限っては曜もダウンしているけど。

 

「それにしても、愛くんすごいね。やっぱり男の子だね」

 

曜がそんなことを言って来たがそんなわけない。俺だってもうギリギリだし、女の子の前で体力切れでダウンなんて出来ないからプライドで立ってるだけだよ。

 

「あれ?千歌?」

 

誰かが千歌を呼ぶ声がしたのでその方向を向くと上から果南さんが降りて来るところだった。

なんでも、果南さんは日課のランニングの帰りらしい。ていうことは、毎日この階段を登り下りしてるってことだよな。すげーな。今も息が全然切れてないし、俺のプライドもズタボロだぞ。

 

「あれ?君は?」

「果南ちゃん、愛くんだよ」

「愛くん?」

「うん、最近こっちに引っ越して来た。男の子だけど特例で浦の星の生徒になったんだよ」

「へー」

 

そういえば、果南さんは俺とは初対面か昨日俺は隠れてたし

 

「あっ、じゃあ私もう行くね店開けないといけないし」

 

そう言って果南さんはどんどん走って行った。すげーな、やっぱり毎日走るだけで違うんだな。

 

「すごい、息一つきれてないなんて」

「上には上がいるんだね」

「はあー、私たちもいっくよー」

 

いつもとは違い全く覇気のこもってない声で千歌が言うと、みんな立ってゆっくりとはいえ走り出して行き、俺も三人のペースに合わせて走った。

 

 

 

●●●

 

 

 

放課後いつも通り、練習しようと思った時ルビィちゃんと花丸ちゃんが体験入部をしたいということで部室にやってきた。これには千歌たち三人は大喜びしている。

 

「やったよ、やったー、これでラブライブ優勝だよ、レジェンドだよ!」

 

一人は全く別ベクトルで盛り上がってたわ。

まったく…

 

「千歌、あくまで二人は体験入部、今日やって見ていけそうなら入ってくれるし合わないなら見送りってところだから」

「そうなの?」

「色々あって」

 

花丸ちゃんが少し苦笑いで言った。なんか、訳ありらしく、その理由を曜が聞いたらルビィちゃんのお姉さんの生徒会長が関係してるらしい。まあ、なんかあの人は厳しそうだよな。ていうか…

 

「ルビィちゃん、生徒会長の妹さんだったのか!」

「あれ?愛くん知らなかったの?」

「ああ」

 

でも、あれだよな。言ったら悪いけど似てないよな。共通点といえば美少女ってところか。

 

「これでよし」

 

ん?俺たちが会話をしてる時、千歌が何かしてるなあーとは思ってたけど何してんだ?

千歌は何かを書いていたのでそれを覗き込むとポスターに「新入部員国木田花丸ちゃん、黒澤ルビィちゃん」と書いてあった。

 

「千歌ちゃん、人の話聞こうよ」

「体験入部だって言ってるだろ」

 

はあ、まあ気を取り直して練習スタートと思いきや

 

「運動場も中庭も埋まってるね」

 

練習場所がないらしい。いつもの砂浜もいいんだが、梨子曰く練習時間確保のため移動時間のいらない学校でやりたいらしい。

 

「屋上はだめですか?」

 

俺たちがいい案を思い浮かばず止まっているとルビィちゃんがアドバイスをくれた。なんでもμ'sは屋上で練習してたらしくそれを聞いた千歌は早速屋上に向かった。

屋上は誰もいなく、ダンスをするにも十分なスペースがあった。そして、練習場所がここで決まり練習を開始した。

練習は天気も良く順調に捗り、花丸ちゃんとルビィちゃんにもかなり好印象のようだった。一旦練習を終え、部室に帰ってもルビィちゃんは練習したステップを何度も確認していたからよほど好きなんだろう。

そして、場所を変えて俺たちはあの階段のある神社まで来ていた。

 

「これ、一気に登ってるんですか?」

「もっちろん」

「いつも途中で休憩しちゃうんだけどね〜」

「でも、ライブで何曲も歌うには頂上まで走りきるスタミナが必要なの」

「てことで、μ's目指してよーいどん!」

 

千歌の合図でみんな走り出した。俺はいつも通り何かの時に備えてしんがりを勤めることにした。

走ってから少し経つと花丸ちゃんはやはり慣れてないのか遅れ気味になって来た。

 

「大丈夫か?」

「愛護さん、先行っててください」

「いや、俺の場合一番後ろにいるのが仕事だから気にしなくいいよ。自分のペースで走って」

「わかりました」

 

でも、花丸ちゃんは前の四人に追いつくことなくどんどん離されていった。そんな時、見かねたルビィちゃんが逆走して花丸ちゃんのとこまでやってきた。

 

「ルビィちゃん?」

「一緒にいこ」

「だめだよ」

「えっ?」

 

花丸ちゃんの予想外の言葉に驚くルビィちゃん。確かに雰囲気が変わった気がする。

 

「ルビィちゃんは走らなきゃ」

「花丸ちゃん?」

「ルビィちゃんはもっと自分の気持ち大切にしなきゃ、自分に嘘ついて、無理に人に合わせても辛いだけだよ」

「別に、合わせてるわけじゃ」

「ルビィちゃんはスクールアイドルになりたいんでしょ?だったら、進まなきゃ。ほら行って」

 

花丸ちゃんが笑顔でそう言うとルビィちゃんは真剣な顔つきになったあと、笑顔を返すと言われた通り花丸ちゃんを置いて走って行った。

 

「よかったのか?」

「はい、ルビィちゃんは素晴らしい夢もキラキラした憧れも全部胸にしまっちゃう子なんです。だから、その胸の扉を思いっきり開かせてあげたいと思ってたんです。その中にあるいっぱいの光を…世界の隅々まで照らせそうな輝きを…大空に放ってあげたかったんです。それがまるの夢だったんです」

 

そう言うと、花丸ちゃんは俺に一回お辞儀をするとゆっくりと階段を降りて行った。

 

 

 

●●●

 

 

 

次の日、ルビィちゃんはスクールアイドル部へ入部した。なんでも、昨日階段を降りたところに生徒会長がいてその時に自分の気持ちを打ち明けしっかりと許可をもらったらしい。まあ、呼んだのは花丸ちゃんだろうし生徒会長だって反対する気はさらさらなかっただろう。あの人の心の奥底はスクールアイドルが嫌いどころか大好きだからな。

まあ、そんなこんなでルビィちゃんが入部したわけだが、俺は少し気になったことがあるというかやり残したことがあるというかそんな感じで今は図書室にいる。

そして、ついに俺の待ち人花丸ちゃんが図書室に入ってきた。

 

「よっ!」

「愛護さん⁉︎」

 

花丸ちゃんは俺を見てかなり驚いた。まあ、そうだろうな図書委員でもないのにカウンターの椅子に堂々と座ってるんだから。

 

「どうしてここに?」

「夢の続きを見に」

「夢の続き?」

「そう、花丸ちゃんの」

「どういうことず…ですか?」

「これ」

 

俺はカウンターの引き出しの中に入っていた。星空凛さんのページが開かれた雑誌を取り出した。

 

「見るつもりはなかったんだけどね、半開きになっていたから見えてしまって」

「それは、たまたま読んでただけずら。まるはアイドルとかは…」

「俺はさ、さっきも言ったけど花丸ちゃんの夢の続きが見たいんだ。ルビィちゃんの心の扉を開くのが花丸ちゃんの夢。素晴らしいことだと思うでもその先、夢の続きについて考えたことあるか?」

「夢の…続き…」

「そう、それは今度はルビィちゃんとあの三人が見せてくれるんじゃないか」

 

俺がそういうとルビィちゃんが図書室に入ってきた。

 

「花丸ちゃん!ルビィ、花丸ちゃんのこと見てた。ルビィのために無理してるんじゃないかってでも、練習の時もみんなと話してる時もすごく楽しそうだった。だから、花丸ちゃんも好きなんだって、ルビィと同じくらいスクールアイドルが好きなんだって」

「そんな、まるはそんな…」

「じゃあ、なんでそんなにそれを読んでたの?」

「…でも、そうだとしてもまるは出来ないよ。体力ないし向いてない」

「そこに載ってる凛ちゃんもね、自分はスクールアイドルに向いてないってずっと思ってたんだよ」

「えっ、」

「でも、やっと見たいと思った」

 

梨子たちも図書室にやってきて会話に入った。

 

「最初はそれでいいと思うけど」

 

千歌が花丸ちゃんに手を差し伸べる。しかし、まだ踏み出せない。

 

「ルビィやりたい!花丸ちゃんと一緒にスクールアイドルがやりたい!」

「でも、できるかな」

「私も一緒だよ。大切なのはできるかどうかじゃない。やりたいかどうかだよ」

 

千歌はそういうと再度手を差し伸べる。そして、花丸ちゃんはゆっくりと手を伸ばし千歌の手を握った。それから、みんなも手を重ねていった。

 

「愛護さん、まる見てみたい。ルビィちゃんと千歌先輩たちと一緒に夢の続きを」

「ああ」

 

こうして、花丸ちゃんも入部をすることが決まった。花丸ちゃん、頑張れよ。

 

 



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8話:堕天使ヨハネ

ついに五人となったAqours。だが、ランキングが上がらなくて少し今、みんなのテンションは低い。

 

「新加入の二人は可愛いって言ってくれてるのにな」

「そうなんですか!」

 

ルビィちゃんが嬉しそうにこっちを見てくれた。うん、たぶんその素直な反応のところが好印象なんだろうな。

 

「うん、特に花丸ちゃんが人気」

 

確かにコメント欄を見るとルビィちゃんと比べると花丸ちゃんの方が多いな。勿論、ルビィちゃんのファンもいるけど。

そんな話をしていると花丸ちゃんがパソコンに近づいて来た。たぶん、コメント欄を自分で読みたいと思い俺がスペースを空けると…

 

「これがパソコンずら⁉︎」

 

えっ…そっち…

 

「そっち⁉︎」

 

あっ、曜が代弁してくれた。

 

「これが知識の海に繋がっているという、いんたーねっと」

「そうね、知識の海かはわからないけど…」

 

それにしても、いつも以上にテンション高いな花丸ちゃん。

 

「花丸ちゃん、パソコン使ったことないの?」

 

千歌がルビィちゃんにこっそり聞くと何でも古いお寺の子で家に電化製品がほぼほぼないらしい。

だから、この前沼津に行った時も自動の蛇口とあの風が出て手を乾かすやつ(名前は知らん)でテンション上がってちょっと大変だったらしい。

 

「触ってもいいですか?」

 

すっごい目をキラキラさせて頼んで来た。千歌は快く了承した。まあ、嫌な予感がするんだけどな…

そして、想像どおり花丸ちゃんは光ってるから特別なボタンだと思って、いきなり電源ボタンを押してしまった。そのため、衣装のデータなどが消えてないか急いで確認する曜と梨子。

 

「まる、何かいけないことしました?」

 

少し、目に涙を浮かべる花丸ちゃん。そんな花丸ちゃんに俺はそっと頭を撫でるように手を置いた。

 

「いや、別に気にするな。初心者に何の説明もなしに触らせた千歌が悪い」

「えー、愛くんひどい!」

「で、データはどうだ?」

 

俺は千歌を無視して曜に聞いた。

ちなみに無視したことで千歌は拗ねてルビィちゃんに慰められてる。

 

「大丈夫だよ」

「だってさ、だから気にすることないよ」

「はい」

 

花丸ちゃんも無事だと知り少し安心した。

 

それから、俺たちは練習のために屋上に移動したがやっぱりちゃんとパソコンが触りたかった花丸ちゃんのために曜は使い方を教えている。

まあ、本当なら練習を始めてる時間だから少し梨子は不満の様だが一応納得はしてくれた。

 

「それより、今はランキングだよ。どうやったらいいのかな?」

「毎年スクールアイドルは増えてますしね」

「しかも、こんな何もないところで。地味&地味&地味なスクールアイドルだし」

 

おいトラブルメーカー、何で最後自分差した、お前が地味なら世界中の半分ほどは無だぞ。

 

「やっぱり、目立たないとダメなの?」

「人気は大切だよ」

「もっと派手なことだよねー」

「名前をもっと奇抜なのにするとか?」

「奇抜と言うと例えば、スリーマーメイドとか?あっ、ファイブか」

 

掘り返すのやめてあげて。梨子、顔真っ赤だぞ。

 

「ファイブマーメイドか」

 

あれ?ルビィちゃん好印象⁉︎しかも、なんか設定作り始めたし

 

「それじゃあ、踊れないよ!」

 

お前は入ってくるなよ!

 

「じゃあ、みんなの応援で足に変わるとか」

「いいね、その設定!」

 

話を広げるな!

 

「しかし、その代わり声を失うとか…」

 

どこのリ◯ルマーメイドだ!

 

「それじゃあ、ダメじゃん!」

 

いや、もうこの話終わろう。

 

「それにしても、悲しい話だよね。人魚姫」

 

はあ、もうグダグダだ。千歌はまだ梨子をマーメイドネタでいじってるし。

ため息をついて下を見るとパソコンをいじってた花丸ちゃんがどこかを向いていた。俺もそちらの方を向いて見ると女の子がこちらを見ていた。はっきりリボンが見えないからわからないけどたぶん一年生。その子は恨めしそうな雰囲気でこっちを見ている。

あぁー、屋上でくつろぎたかったけど先客がいるし困ってるって感じかな。

 

「善子ちゃん?」

 

ん?花丸ちゃん知り合いなのか?クラスメイトか何かかな?

すると、その子は見られてるのに気づくと逃げていった。

 

「愛護さん、ちょっといって来ます」

 

そう言うと、花丸ちゃんはあの子を追いかけていった。

 

「あれ?花丸ちゃんは?」

 

花丸ちゃんがいないことに四人は気づくとこと俺に聞いて来た。

 

「なんか、知り合いがいたから追いかけていった」

「えー、今から練習なのに!」

 

いや、今まで遊んでたのどいつだよ。

 

「はあ、わかった。連れて帰ってくる。ちょっと待ってろ」

「できるだけ早くね!」

「はいはい」

 

そうして、俺は花丸ちゃんを追いかけた。

 

 

 

●●●

 

 

 

一年生フロアかあんま来たくないんだよな。

だって、二年生は俺のこともう慣れてるから普通に接してくれるし三年は三年である程度落ち着いてるし、ダイヤさんが目を光らせてるからあんま俺見てキャーキャー言わないけど一年生はパワフルだし…

 

「あっ、先輩だ!」

「一緒に写真撮ってください!」

 

ほら来た。ここで勘違いしてはいけないのは決してモテてるのではなく。物珍しいから何だよな。おかけで一年生はほとんど顔見知りになってしまった。でも、女の子が年頃の男に不用意に近づくのはどうかと思うぞ。

 

「あっ今、人探してるから今度な」

「国木田さんですか?」

「そうだけど、見たのか?」

「はい、あっちの方で見ましたよ」

「ありがとう」

「さようなら、先輩」

「気をつけて帰れよ」

 

後輩たちと別れて俺は言われた方にいって見ると花丸ちゃんは窓の下にある収納スペースの中を順番に覗いていた。

すると、その一つから女の子が飛び出して来た。さっきの子だ。

なるほど、あの子が隠れてたのか。何でだかは知らんが。

すると、その子は花丸ちゃんに何か言い寄っている。険悪なムードはないからいいんだけど一応連れて帰ってこいって命令だし声かけるか。

 

「どうしたんだ花丸ちゃん?」

「あっ、愛護さん。どうしたずら?」

「連れ戻しに来た」

「あっ、ごめんなさい。練習の途中で」

「まあ、いいけど。時間かかりそうか?」

「わからないです」

「そうか」

「ちょっとずら丸!私を無視しないで!ていうか、何で男がいるのよ!女子校に入ってくるなんて不審者じゃないこの男!」

 

ん?俺のこと知らないのか?

すると、花丸ちゃんが俺の肩を叩いて耳打ちしてくれた。

 

「善子ちゃん、入学式以来学校来てなくて」

 

なるほど…それで俺を知らないのか。

 

「ちょっと、無視しないでよ!」

「あっ、悪い」

「あんたじゃないわよ、てかやっぱり何で男がいるのよ!」

「あっ、それなら俺がここの生徒だからだ。ちゃんと学生証もあるぞ」

 

俺は善子ちゃんと呼ばれてる子に学生証を見せた。

 

「嘘でしょ!まさか、この学校は悪魔や堕天使たちに改変されてしまっ……‼︎」

 

自分の言ってることが変なことと気づいたのか彼女はこっちを向いた。花丸ちゃんはと言うとジト目をしているので俺も真似してジト目をした。

そして、俺は理解した。この子マリー(残念な美少女)か。

 

「ねえ!クラスのみんな何か言ってた?」

「何か?」

「ほら、さっきみたいなこと自己紹介でも言ったじゃない。それでみんな「変な子だね」とか「堕天使だって、プップ」とか」

 

なるほど。それが不登校の理由か。確かに痛いな。

 

「みんな、何も言ってないよ。それどころかみんな何で学校来ないんだろうとか悪いことしたのかな?って心配してるよ」

 

まじかよ、浦の星の子めっちゃいい子だな!

 

「本当?」

「うん」

「よし、ならまだいける!」

 

立ち直り早!

 

「ずら丸、ヨハネたってのお願いがあるんだけど」

 

すごい形相で花丸ちゃんに迫る善子ちゃん。たぶん、ヨハネは中二ネーム的なやつだな。

ていうか、それが人にものを頼む態度かよ。

 

 

 

●●●

 

 

次の日、朝マリーと登校してると昨日会った善子ちゃんが登校してるのが見えた。

 

「あっ、あの子」

「あれが昨日言ってた一年生?」

「ああ」

「大人びて綺麗な子ね、愛護ああいう子が好きなの」

 

からかうように俺に言うマリー。

 

「まあ、マリーみたいな子よりはいいかな」

「ちょっと、それどういう意味よ」

「そのまんまだ」

 

それにしても、善子ちゃん猫被りというかキャラ変えすぎだろ。清楚系の女の子をイメージしてるのかわからないけど。誰だよあの美少女!レベルだぞ。本性知らなかったらたぶん気になる女の子にはなってるぞ、たぶん…

 

「まあ、あれならなんとかなるか」

「どうしたの?」

「なんでもない」

 

特に声をかける必要もなかったので俺とマリーは自分たちの教室に向かった。

 

しかし…

 

「なんで止めてくれなかったのよー」

 

部室にやって来て、止めてくれなかった花丸ちゃんに善子ちゃんの文句が響いた。なんでも、趣味の話題になった時に勢い余って堕天使道具で盛大にやらかしたらしい。

 

「まさか、あんなものを持ってきてるとは思ってなかったずら」

「確かに本気で普通にしたいなら持って来なきゃよかったと思うぞ」

「それは、ほらヨハネのアイデンティティというかあれがないと私は私でいられないっていうか」

 

ポーズを決める善子ちゃん。

 

「出てるぞ」

「あっ!」

 

しまったという顔をする善子ちゃん。

 

「それにしても、無意識か…こりゃ治したいんであればそうとうな努力が必要だな」

「そうなんですよ、今も時々ネットで占いやってますし」

 

ルビィちゃんはそういうと善子ちゃんの動画を検索し再生させた。

これにはみんな少し呆れ顔である。

 

「でもこれ、可愛いかもな」

「「「「「「えっ‼︎」」」」」」

 

俺の発言に六人が反応して一斉に俺の方を向いた。

 

「ちょっと、どういうこと!」

 

善子ちゃんの顔を真っ赤になり、みんなはジト目でこっちを見ている。

 

「どういうことって衣装だよ。アイドルのとはちょっと違うけどこれ明るい色にして装飾変えたらアイドル衣装としても使えそうだしいいなって」

「あー、そういうこと。相変わらずの女子力というかなんというか…」

「曜、それ褒めてんのか?」

「褒めてるよー」

 

でも、やっぱり褒め言葉とは思わないんだが。

 

「てっきり、善子ちゃんに言ってるだと思った」

「ん?両方だけど、いくら衣装が良くても本人に似合ってなきゃ意味ないし。ほら、コメントにも書いてある」

 

俺がそう言うと曜は俺の足を無言で踏んづけた。曜は座ってたから大したことはなかったが痛いもんは痛い。

 

「何すんだよ!」

「女子力あっても乙女心はわからないんだなーって」

 

周りを見ると全員俺が悪いみたいな雰囲気なので反論するのはやめた。

 

「でも、可愛いよ」

 

そんな中、千歌はもう一度動画を見ながら呟いた。

 

「これだよ!」

「千歌ちゃん?」

「津島善子ちゃん!いや、堕天使ヨハネちゃん!スクールアイドルやりませんか?」

 



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9話:アイドル、堕天使ヨハネ

 

 

「これで歌うの?」

 

今、みんなは千歌の意見により、俺と曜が中心に作った新しい衣装の試着をしていてそのスカートの丈の短さに梨子が文句を言ってきた。

 

「まあ、短いとは思ったけど千歌の指示どおりに作ったから文句は千歌に言ってくれ」

 

俺がそう言うと梨子は千歌に文句を言い始めた。

 

「大丈夫だって、ほら」

 

千歌はスカートをめくりしたに体操服を着ているのを見せた。

 

「女の子がそんなことしないの」

 

千歌の行動に女の子として注意をする梨子。

 

「はあ、いいのかな?本当に」

「調べてたら、堕天使アイドルってなくて結構インパクトあると思うだよね」

「確かに昨日までとだいぶ印象違うもんね〜」

 

曜はみんなを見回しながら言った。まあ、確かに千歌と曜がやりたいことはわかる。

でも、短いスカートなどにルビィちゃん、花丸ちゃんも落ち着かないみたいだ。

 

「本当にこんなの着てやっていいの?」

「可愛いねー」

「そういうことじゃない」

 

千歌はまったく心配じゃないらしい。

 

「そうよ、本当に大丈夫なの?」

「大丈夫だよ、ステージ上で堕天使の魅力をいっぱい伝えよう」

「堕天使の…魅力…」

 

千歌のワードにウズウズしだす善子ちゃん。だが、すぐに我に帰った。

 

「ダメダメ、そんなの絶対ドンびかれる」

「大丈夫、絶対人気出るって」

 

千歌の根拠のない自信を聞き、結局善子ちゃんも手伝ってくれるらしい。

 

そのあと、梨子がしいたけに追われてパニックになったが、まあ、無事に話し合いは終わり俺たちはそれぞれの家に帰っていった。

 

そうして、数日後…

衣装も完成し善子ちゃんを加えて撮影した動画をサイトにアップすると、順位が一気にランクが3桁台まで上がったのだった。しかし…

 

「キュート!」

「どこが、キュートですの!こういうのはハレンチと言うのですわ!」

 

マリーとダイヤさんに呼ばれて生徒会室に行くとダイヤさんに怒鳴られました。

 

「私がルビィにスクールアイドル活動を認めたのは節度を持って取り組むといったからですわ!」

 

ああー、やっぱり怒ってるなー。

 

「愛護さん!」

「はい!?」

 

急に呼ばれて驚いて声が裏返ってしまった。

 

「あなた、衣装作りも手伝っているんでしたわね」

「ああ」

「だったら、なんで作る前に注意しなかったんですの!私はあなたを信頼してルビィを預けたのに裏切られた気分ですわ」

 

えっ、なにそれ初耳なんですけど。そこまでダイヤさんに信頼されてたのかよ俺。それならもっと気をつけたのに。

 

「すいません」

「まったく、キャラが立ってないとかでこんなことをするのはいただけませんわ」

「でも、実際順位は上がったんです」

「そんなの一瞬に決まってますわ。今の順位を確かめてみるといいですわ」

 

ダイヤさんに渡されたパソコンを見ると確かにもう順位は下がり始めていた。

 

「これでわかったら、もう少し考えてから行動するべきですわ」

「ダイヤ、ちょっと言い過ぎだと思うけど。まあ、ダイヤの言い分もわかるからこれからは気をつけるように理事長命令です。」

 

全員、ダイヤさんに叱られマリーに注意されると小さく返事をすると生徒会室から出ていった。そして、それと一緒にマリーも部屋から出てった。

 

「愛護さん、あなたはなんでまだいますの?」

 

俺が残ってることに疑問を持ったダイヤさんが話しかけてきた。

 

「いや、ただ単にお礼をと思って」

「なんのですの?」

「彼女たちをしっかり叱ってくれることにです。俺、スクールアイドルのことほとんど知らないから雑用しかできないから」

「ふん、これぐらい大したことありませんわ」

「でも、助かってるのは本当ですからありがとうございます」

「前から思ってたのですけれど、なんで一歩引いた立ち位置にいるんですの?部員なのですから一緒に切磋琢磨したらいかがですの?」

「俺の本業はマリーを護ることですから」

「はあ、普通の高校生が言ったらかっこいいセリフだったでしょうけど、あなたの場合本当にそうでしたから笑えませんわ」

「そうですね。改めてアドバイスありがとうございます。じゃあ」

 

俺はダイヤさんに挨拶をし部室に戻っていった。

 

 

 

●●●

 

 

 

今、Aqoursのみんなは砂浜で今日の反省会を開いている。

 

「失敗したなー。でも、ダイヤさんの言う通りだよねー、こんなんじゃμ'sにも失礼だよね」

「別に千歌さんが悪いわけじゃ」

「そうよ、悪いのは…堕天使」

 

責任を感じてる千歌をフォローに入ったルビィちゃん。しかし、そこに善子ちゃんが割って入った。

 

「やっぱり、おかしいよね。高校生にもなって通じないよね……これでスッキリした。明日からは普通の高校生としてやっていけそう」

「それじゃ、スクールアイドルは?」

 

ルビィちゃんが質問すると…善子ちゃんは一瞬戸惑ったが

 

「やめておく。なんだか、迷惑かけそうだし。短い間だったけど付き合ってくれてありがとう。楽しかったよ」

 

少し、寂しそうといえば寂しそうな笑顔を見せて善子ちゃんは帰って言った。

 

「なんで、堕天使だったのかな?」

 

梨子は率直な疑問をつぶやいた。

そして、それに花丸ちゃんが答えた。

 

「まる、わかる気がします。ずっと普通だったんだと思うんです。私たちと同じであまり目立たなくて、そういう時思いませんか?これが本当の自分なのかな?って元々は天使みたいにキラキラしてて何かのはずみでこうなってるんじゃないかって」

「そっか…」

「確かにそういう気持ちあった気がする…」

 

ルビィちゃんと梨子がそういったことがあったのを思い出した。

 

「幼稚園の時の善子ちゃんずっと言ってたんです。私は天使でいつか羽が生えて空に帰るんだって」

 

そして、みんな黙り込みそのまま話すこともないので今日は解散した。

 

 

 

●●●

 

 

 

次の日、俺は朝一に沼津の方にやってきた。

理由は単純。善子ちゃんを勧誘しに。そして、俺はマリーに聞いた善子ちゃんが住むマンションにやってくると聞き慣れた声が聞こえた。俺は反射的に隠れてそちらの方を見た。

 

「堕天使ヨハネちゃん、スクールアイドルやりませんか?ううん、入ってください。Aqoursに堕天使ヨハネとして」

 

あいつら、何やってんだ?いや、たぶん俺と同じ理由なんだろうがなんでダイヤさんに怒られたあの衣装着てるんだ?

そう思った瞬間、善子ちゃんは逃げ出し、五人はそれを追いかけ始めた。

 

「はあ、まじかよ。これは追いかけた方がいいよな」

 

そうして、俺は気づかれないように尾行し始めた。さすがに女子と男子の体力の差で引き離されることなくついていけた。そして、結構大きい声で千歌が喋ってるから内容まで聞こえてきた。

 

「善子ちゃんはいいんだよ。善子ちゃんのままで」

「どういう意味〜⁉︎」

「私ね、どうしてμ'sが伝説を作れたのか、どうしてスクールアイドルがそこまで繋がってきたのか考えてみてわかったんだ。ステージの上で自分の好きを迷わずに見せることなんだよ!お客さんにどう思われるとか人気がどうとかじゃない。自分が一番好きな姿を輝いてる姿を見せることなんだよ。だから、善子ちゃんは捨てちゃダメなんだよ!自分が堕天使を好きな限り!」

 

千歌が叫ぶと善子ちゃんは走るのをやめ、五人と向かい合った。

 

「いいの?変なこと言うよ」

「いいよ」

 

曜が即答する。

 

「時々、儀式とかするかもよ」

「それぐらい我慢するわ」

 

梨子が優しく返す。

 

「リトルデーモンになれって言うかも!」

「それは……でも、やだったらやだって言う」

 

千歌は真っ直ぐな瞳で答えた。

 

「だから…」

 

千歌は善子ちゃんが捨てたはずの黒い羽を差し出した。そして、それを善子ちゃんは受け取った。

これで、スクールアイドルAqoursの六人目のメンバーが加わりアイドル、堕天使ヨハネが誕生した。

 

「はあ、今回は出番なしか」

「そのようね」

「うわ!」

 

声がすると思ったらマリーもなぜかここにいた。

 

「マリー!何してんだ」

「愛護がこんな朝早くに出かけるから面白そうと思ってついてきちゃった♪」

「お前は、夜遅くまで仕事してたんだから寝てなきゃダメだろ。すぐ、帰るぞ。今から帰ったらまだ仮眠は出来る」

「don't worryよ愛護。それに愛護だって私の付き添いで同じ時間まで起きてたじゃない」

「仕事量が違うだろ。まったく、何してんだよ」

「でも、本当に大丈夫よ」

「廃校のことで忙しいんだろ?」

「……うん」

「だったら、休め。倒れたら護りたいものも護れなくなる」

「……うん。ありがとう愛護」

 

そうして、俺たちは車に乗り運転手さんに出してもらった。

 

 

そう、今浦の星は廃校の危機に迫られてるのであった…



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10話:愛護の休日

 

 

コトコト、タンタンタンタン

 

土曜日なので、俺はいつもより遅めの朝七時起き(平日は六時)で朝ご飯を作っている。ちなみにマリーは今日が休みということで昨日夜遅くまで仕事をしていた。早く寝て早く起きてやればいいと言ったんだがキリのいいとこまでって言ってたら結局夜三時ぐらいまで仕事を続けていた。

まあ、一応俺も執事だから主人より先に寝るのもなんだと思って本を読んで俺も三時ぐらいまで起きてたから眠いのは眠い。

ちなみに本っていうのは小説とかじゃなくスポーツに関する本。特に練習だな、千歌たちはほっとくと無茶な練習をしかねないからこういう知識を知っといても無駄ではないと思い最近読み始めた。

 

よし、そうこう言ってる間に今日の朝ご飯完成。休みの日だからちょっと凝りすぎた気もするけどま、いっか。

 

俺はキッチンで手を洗いある程度盛り付けて、また手を洗ってからマリーを起こしにマリーの部屋に向かった。(マリーには平日は七時、休日は七時半に起こすよう言われている)そして、ノックをし声をかけた。

 

「マリー、愛護だ。起きてるか?」

「あと、五分…」

「はあ、入るぞ」

 

仕方なく俺はノック、ドアノブをおろしマリーの部屋に入った。最初の方は抵抗があったが今じゃ普通に入れる。

マリー曰く英国の執事は主人の部屋に入るときはノック無しらしいからノックなしでもいいとは言ってるが、流石にそこまでできないからノックはしている。

 

「マリー、起きろ」

「愛護、今何時?」

「七時半だ。気分はどうだ?昨日遅くまで仕事してたから疲れてるだろうしもう少し寝るか?時間さえ言ってくれればまた起こしにくるが」

「うーん、でも、ご飯作ってくれたんでしょ」

「まあな」

「じゃあ、起きるわ」

「わかった。じゃあ、待ってるから着替えてリビングに来てくれ」

「うん」

 

そして、俺はマリーの部屋から出てリビングの席に着いた。そして、少し経つとマリーがパジャマから部屋着に着替えて現れた。

 

「じゃあ、食べるか」

「うん、いつもありがとう愛護。いただきます」

「いただきます」

 

俺たちはご飯を食べ始めた。朝の食事は二人ともまだ完全に脳が起きてないのか無言で食事を終えた。俺は食器を重ね洗面台に置いて洗い始めた。そして、少しするとケータイに着信が来たので一旦洗うのを中断し電話に出た。

 

『おはヨーソロー、お兄ちゃん。今日、これから…』

 

俺は無言で電話を切った。曜が俺をお兄ちゃんと呼ぶときは決まってろくなことがない。

と思ったらまた電話がかかって来た。

 

「なんだよ」

『こっちのセリフだよ!』

「お兄ちゃん、なんて呼ぶからだろうが」

『二人きりのときは呼ぶっていったよ』

「許可出してない。まあ、それはいい用件は?」

『ちょっと、買い出しを手伝ってくれないかな?って』

「なんの?」

『今度の衣装で使う布とかかな』

「別に構わないがなんで俺なんだ?いつもは千歌と行ってなかったか?」

『うーん、今回はお兄ちゃんの意見も入れようと思って』

「わかった、だが条件がある」

『なに?』

「人前でお兄ちゃんって呼ぶな」

『しょうがないな。じゃあ、来てくれるんだね』

「いや、一応マリーに聞く」

『執事だったもんね』

「ああ、また掛け直す」

『わかった』

 

そうして俺は電話を切った。そして、リビングにいるマリーに話しかけた

 

「マリー、これから俺出かけても大丈夫か?」

「いいわよ、ちなみにどこ行くの??」

「曜と買い出し」

「っ…愛護、もしかしてデート?」

 

なんか、一瞬間があったがすぐにいつものマリーに戻ってニヤつきながら聞いてきた。

 

「買い出しって言っただろ。衣装の布とか買いに行くんだとたぶん、大荷物になるから男手が欲しかったんじゃないのか?」

「じゃあ、愛護お土産よろしくね」

「ああ」

 

俺はそうして、行けることを曜に伝えると十時に曜の家に集合と言われたので時計を確認し、了解したあと洗い物の続きをし曜の家まで結構時間がかかるので行く準備を始めようとしたその時…

 

「愛護、dateならこのマリーがサイコーのコーディネートをしてあげるわよ」

「デートじゃ…(ここで、断って話が長くなるのもめんどくさいな)…わかった。頼む」

「OK、じゃあ、愛護の部屋に行くわよ」

「はいはい」

 

そうして、俺の部屋に着いたらすぐさま俺の部屋のタンスやクローゼットを開けてコーディネートを考え始め、しばらくすると出来上がったのか服を渡されそれに着替えた。

そして、着替えた俺は荷物を持って出かけた。

 

 

 

●●●

 

 

 

曜の家に着いた俺は早速呼び鈴を押した。誰かしらが出てきたので名前を言うと相手が曜だったらしく「今行くね」と一言言って切ると玄関から出てきた。

 

「おはヨーソロー」

「おはよう」

「じゃあ、早速沼津の方に行くよ」

「はいはい」

 

そうすると、曜は俺の手を握り歩き出した俺は曜に手を引かれながら付いて行った。

ショッピングモールに着くと早速手芸屋に向かった。

 

「そういえば、愛くんが買いたいものあったら言ってね。私も用事があれば付き合うから。でも、まずは付き合ってね」

「わかってる」

 

そんなこんなで手芸屋に着いた俺たちは一緒に見て回った。しかし、見て回ってる途中に目線が気になったので曜に尋ねてみた。

 

「なんか、視線を感じるんだが…」

「たぶん、珍しいんじゃないかな?」

「珍しい?」

「基本的にこういうところって男の人珍しいでしょ。まだ、一人だったらそういう趣味の人かな〜で済むけど歳の近い男女つまりカップルらしいのが一生懸命うんうん悩んでるのが珍しいんだよ」

「なるほど。まあ、俺も見たことないしな。そっか…悪いな」

「どうして謝るの?」

「俺なんかとカップルと間違えられて」

「本当に愛くんは相変わらずだね」

「は?」

「そんなの気にしてたら元々誘わないよ、いくら人手が欲しくても」

「それもそうか」

 

とか言いながらも曜の奴ちょっと機嫌が悪くなってる気がするのは気のせいだよな。

まあ、一応いい感じの物はあったので部費でそれを買った。そして、時計を見るともう二時前になっていた。

 

「色々、考えてたら結構時間経ってたな。遅いけど昼飯にするか」

「うん」

「何がいい?」

「なんでもいいよ」

「一番困るんだが…」

 

よくご飯の準備をしてる者から言わせて貰えば本当になんでもいいは困るんだよな。マリーも時々「愛護の作ったものならなんでもwelcomeよ♪」とか言って結局リクエストくれなくて困るんだよな。

 

「じゃあ、愛くんが今食べたいものは?」

「……サバの味噌煮」

「ププッ、何それ」

「パッと浮かんだんがそれだったんだよ」

「わかった、わかったよ。じゃあ、和食屋さんとか定食屋さんにしよ」

「……ああ」

 

そして、サバの味噌煮が食べられる店を探すことになったんだが探す途中もおじいさんみたいだとか散々言いやがった。

そして、俺たちは定食屋を見つけて入った。二時を過ぎてるため客は少なかったのですぐに座り、俺はサバの味噌煮定食、曜はハンバーグ定食を頼んだ。

頼まれたものを運ばれてきたので早速食べてみるととても美味かった。

 

「美味いな」

「そうだね」

 

俺たちは料理が美味しかったので難なくたいらげた。そして、俺はバックからノートを取り出し開いた。

 

「愛くん、それ何?」

「美味かったものを記録してるんだよ。今後の料理に役立てるように」

「へー、料理が本当に好きなんだね」

「まあな。よし書けた。出るか?」

「うん。それはいいんだけどこれからどうする?愛くん買いたいものある?」

「うーん、食料品かな」

「…主夫みたいだね」

「特にないし帰るか?それ持って歩くのも辛いしな」

 

俺は足元に置いてあるさっき買ったものを見た。

 

「えー、せっかく来たんだし色々見ようよ。しんどかったら私がそれ持つし」

「いや、そこまでじゃないから大丈夫だ。じゃあ、ぶらぶらするか」

 

俺は伝票を持ち立ち上がり会計をお願いした。そして、俺は会計を済ますと店を出た。

 

「愛くん、私の分返すね」

「別にいいぞ」

「でも、そういう訳には…」

「いいって、ここは男にカッコつけさせろって」

 

曜は少し納得がいってないが話が平行線になるのを察したのか引いてくれた。

正直な話マリーの執事は一応正式なアルバイトだから給料も出る。でも、その給料が高校生の普通のアルバイトと比べたらめっちゃくちゃ貰ってんだよな。専業主婦の仕事を年収に換算すると一千万を超えるって言われてるから同じように毎日家事をしている俺が貰うのには妥当なのかもしれないが、それでも高校生としては多いから食事を一回奢るぐらいできるからそんなに気にすることはないんだが…まあ、節約するに越したことはないが。

 

「で、どこ行きたい?」

「うーん、愛くんが行きたいとこは?」

「俺はこの定食屋に来たから次は曜の番」

「えー、じゃあ洋服が見たい」

「わかった」

 

それから、俺たちは服屋に行ったりゲーセン行ったりした。ゲーセンではUFOキャッチャーでぬいぐるみを取りマリーのお土産にした。また、一緒に撮ったプリクラをいつの間にか俺のスマホに貼られていた。何故か取るなって言われたからそのままにしている。そんなこんなで日が落ちて来たので曜を送り帰って来たときにはもう真っ暗になっていた。

 

「ただいま」

「おかえり」

「今すぐ作るし待ってろ、あっ、その袋に入ってるぬいぐるみはお土産だ」

「うん、ありがとう」

 

手を洗い俺はキッチンに向かった。そして、料理を始めた。今日は時間がないからうどんにしよう。そして、俺は親子うどんを作りマリーと一緒に食べた。

 

そして、食事も終わり風呂も入った俺たちはいつものようにマリーは仕事の続き、俺は本を読み始めた。

深夜になりマリーが仕事を終えて寝たのを確認し俺は最後に戸締りを確認した後俺も眠りについた。

こうして、俺の休日は終わった。

 



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11話:PV

 

 

「どういうことですの」

 

ダイヤさんの叫ぶ声が聞こえる。

俺は今、マリーがダイヤと二人きりで話したいからと言ってきたので俺は理事長室から理事長室の前で出て話が終わるのを待っている。

それにしても、ダイヤさんとマリーのやつなんの話ししてるんだ?いつものマリーのセクハラに怒っている叫び方じゃなかったしな。それから導き出すとしたら多分「統廃合」の話だろうな。時々マリーに頼まれて書類の整理を手伝ってた時に見る統廃合についての書類。たぶん、マリーはそれを止めたいんだろうな。

そんなことを考えてるとダイヤさんが出てきた。ダイヤさんは俺を見たあと無言でどこかへ行ってしまった。そして、そのあとマリーも出てきた。

 

「ごめんね、愛護。追い出して」

「別に気にしてない。大事な話だったんだろ?」

「うん」

「少し休憩したらどうだ?コーヒー淹れてやる」

「ありがとう。でも、大丈夫よ。あっ、でもコーヒーは淹れてね」

「わかった」

 

俺とマリーは理事長に入りマリーは理事長用のイスに座り、俺はペーパードリップでコーヒーを入れ、マリーの前に置いた。

 

「ありがとう」

「どういたしまして」

 

俺はもう一つ置いてあるイスに座った。

 

「統廃合するの」

 

マリーが呟いた。急に喋り出したことにより一瞬驚いたがすぐに冷静になり俺も一言呟くように言った。

 

「知ってる」

「やっぱり、知ってたのね。別に構わないから書類の整理を手伝っててもらってたんだけど、今日発表するつもりだったから」

「そうか。で、俺は何をすればいい?」

「へ?」

「マリーのことだ。阻止したいんだろ?それなら、とっとといつも通り命令してくれ。俺はお前の味方だからな」

「愛護………うん、ありがとう。じゃあ、Aqoursのみんなのサポートよろしくね」

「それっていつもと変わらなくないか?」

「うん、でもそれが一番大事なの。愛護、スクールアイドルのことそんなに知らないけどμ'sは知ってるよね」

「まあな、あの人たちがどうかしたのか?」

「μ'sの学校も廃校になりかけたけど彼女たちの頑張りによって学校に人気が出て廃校を阻止したの。だから……」

「だから、Aqoursのみんなにも人気になって入学希望者を集めてもらわないといけないってわけか」

「うん」

「わかった。まかせろ」

「……ありがとう、愛護大好き」

 

ちょっと落ち込んでいたが、最後にからかう余裕が出てくるほど元気になったらしい。

 

「じゃあ、早速彼女たちを手伝ってくるな」

「うん、お願いね」

 

そして俺は立ち上がり、部屋を出て部室に向かった。

 

 

 

●●●

 

 

「……とは言ったもののどうすればいいんだ?」

 

全然、いい考えが浮かばないまま体育館の近くまできた。その時、千歌が走り回っているのが見えた。

 

「はあ、あいつは元気だな」

 

少し苦笑した。

しかし、よく千歌の声を聞いてると

 

「廃校だよぉぉぉ!」

 

待て待て、は?廃校のことを知ってるのはいいとしてあいつなんでそれで嬉しそうなんだよ。さっきのマリーの悲しそうな顔見てからだとなんていうか神経疑う反応なんだが…何か考えがあって言ってるなら良いんだが…

そして、俺は部室に入るとちょうど走り終わった千歌が反対側の扉から入ってきた。

 

「あ、愛くん!廃校の話知ってる?」

「知ってるけど」

 

俺は自分でも無意識に質問をかなりキツイ言い方で返した。たぶん少し無神経な千歌に少し怒ってるんだろう。

 

「愛くん、何かあったの?」

 

俺が機嫌悪いのに気づいたのか曜が俺だけに聞こえるように話しかけてきた。

 

「いや、廃校をあんなに嬉しそうにしてさ、そんなにこの学校が嫌いなのかなって思ってさ」

「違うよ。千歌ちゃんはこの学校のことが大好きだよ」

「じゃあ、なんで?」

「μ'sと同じ状況なのと。あと、単純に事の重大さにイマイチにわかってないんだと思う」

「そっか、わかった」

 

曜の説明で一応、自分の中で納得し落ち着かせた。

 

「愛護さんはどう思います?廃校について」

 

ルビィちゃんが廃校について聞いてきた。

そして、考えてみてわかった。確かに俺もマリーに言われて廃校阻止するために動こうとしたが…俺自身はこの学校に来て間もないし大して愛着もない。それにもし沼津の学校と統廃合になれば共学になるかもしれないから肩身も狭くなくなるしで正直統廃合の方がメリットがある。……俺も人のこと言えないな。

 

(ごめん、千歌)

 

俺は心の中でさっきの態度について千歌に謝った。そして、ルビィちゃんに率直な感想を伝えた。

 

「正直、どうでも良いかな」

「そうですか…花丸ちゃんは?」

 

ルビィちゃんは花丸ちゃんにも聞いてみた。

 

「統廃合‼︎」

 

なんか、かなり眼を輝かせてるんだが…

 

「統廃合ってことは沼津の学校に通えるずら?そしたらあの街に通えるずらか!?」

「相変わらずねずら丸。昔っからこうだったわ」

 

そんな、善子ちゃんが言うには昔センサーライトを見て「未来じゅらー」と言ったらしい。

 

「善子ちゃんはどう思う?」

 

ルビィちゃんが善子ちゃんにも聞いてみた。

 

「そりゃ、統合した方がいいに決まってるでしょ!私みたいに流行に敏感な子がいっぱいいるんだから」

「中学の時の友達にも会えるしね」

「統廃合絶対阻止!」

 

なるほど、善子ちゃんにはあの過去があるもんな。それにしても花丸ちゃん、今のは本心で善子ちゃんに良かれと思って言ったのか、腹黒いのかどっちだ?

 

「とにかく!学校のピンチとなれば私たちAqoursも学校を救うため行動します!」

 

千歌のこの一言でAqoursも統廃合阻止に動き出す方向に活動することが決まった。

 

「ところで、何をするの?」

「……へっ?」

 

梨子の質問に気の抜けた返答がきたのでみんな幸先が不安になった。

 

 

●●●

 

 

「PV?」

「うん、東京と違ってみんな内浦のことよく知らないでしょ。だから、まずは知ってもらえればいいなって」

「だからPVか」

「うん」

 

こうして、千歌の提案でPVを撮ることになった。確かに千歌の言うことには一理ある。

 

「というわけでよろしくね」

 

千歌の指示で曜が花丸ちゃんとルビィちゃんにカメラを向けたが…

 

「おらには無理ずらー」

「ピギィ!」

 

二人は逃げた。ていうか、堕天使衣装はオッケーでこれはダメって彼女たちの基準がわからないんだが。

 

「二人とも、逃げてちゃ撮影が進まない」

「「ごめんなさい」」

 

二人は俺に注意されて戻ってきた。そして、なんとか撮影を始めたが…

 

「どうですか、この綺麗な富士山、そして綺麗な海。みかんもどっさりそして、街には……街には……特に何もないです」

「「それ言っちゃダメだろ(でしょ)」」

 

千歌がPVにおいてタブーな事を言ったので俺と曜は同時にツッコんだ。

それからというものの…実際はバスで500円以上かかる沼津をちょっと行ったらとか言い出すし、坂を息をゼエハア言わせながら登った先にある伊豆長岡の商店街をまたもやちょっと行ったらで片付けるし、最終的には善子ちゃんにヨハネをやらせるしでダメだなこりゃ。

まあ、一応一通り撮影したので千歌の喫茶店にやってきた俺たち。

 

「ていうか、なんで喫茶店なんだ?」

「そうよ!」

 

俺と善子ちゃんが率直に思った事を聞いてみた。いつもなら千歌の家だし(まあ、いつもお邪魔するのもどうかと思うが)、学生としては出来るだけ出費は減らしたい。

 

「梨子ちゃんがしいたけいるなら来ないって」

「行かないとは言ってないでしょ。ちゃんと繋いどいてくれたら大丈夫よ!」

 

あー、なるほど犬嫌いの梨子のためか。でもさ…この店もいるよな、しいたけほど大きくないが。

 

「キャン」

 

やっぱり、犬だよな。

 

「エェー‼︎」

 

梨子がかなり驚いて足を椅子の上まであげた。

 

「こんなに小さいのに!?」

「大きさは関係ないのその牙!そんなので噛まれたら死んじゃう」

「噛まないよねわたちゃん」

 

千歌は子犬をわたちゃんと呼びながら抱き上げた。

 

「あっ、そうだ。わたちゃんで慣れてみたら」

 

千歌はそう言って、梨子の顔にわたちゃんを近づけた。確かに子犬で慣れるのはいいと思うが…結局、わたちゃんが梨子の鼻を舐めてしまったことにより梨子は隠れてしまった。

 

「はあ、ダメか」

「梨子、怖いにしても流石にその反応はどうかと思うぞ」

 

俺はそう言いながら、千歌からわたちゃんを受け取り頭の上に乗せた。

 

「どういうこと?」

「動物だって感情はある。せっかく仲良くなろうと近づいてきたのにそんな反応されたらおまえだって傷つくよな」

「クゥン?」

「まっ、梨子が心構えする前に無理やり近づけた千歌も悪いけど」

「あはは、ごめんね梨子ちゃん」

「う、うん。愛護くんその子に謝っといてくれる」

「はいよ。だってさ」

「キャン」

 

そして、俺はわたちゃんを頭に乗せながらさっき座ってた所に戻った。ちなみに善子ちゃんの目の前だ。席に戻ると善子ちゃんが編集作業をしていた。

 

「どうだ?」

「一通り出来たけど…」

「ん?どうした?」

「視線が二つあるからちょっと変な気分ね」

 

俺の上に乗っかってるわたちゃんも善子ちゃんをじっと見つめてるらしい。

 

「まあ、いいわ。出来だけど、お世辞にも魅力的とは言えないわね」

「もう一度、一から考えないとね。あっ!終バス来ちゃった!」

 

曜がそう言うと、曜と善子ちゃんは慌てて荷物をまとめて店を飛び出していった。

そのあと、花丸ちゃんとルビィちゃんも時間なのか慌てて飛び出していった。

 

三人と一匹になった。喫茶店は一瞬にして静かになった。

 

「難しいんだね、魅力を伝えるって」

「そうだね」

「でも、やってみてわかった。無くさせちゃダメだって。私、浦の星が大好きなんだって」

「そうか」

「じゃあー、みんなで頑張ろう!」

 

こうして、千歌は決意を新たにして廃校に向き合う事を決めた。

 

 

 

●●●

 

 

 

その夜…

俺たちの家に果南さんが訪ねて来た。

 

「来るなら、来るって言ってよ。急に来たら愛護が激おこプンプン丸だよ」

 

待て、確かに急に来て驚いたのは認めるが激おこプンプン丸ではない。

 

「なんで、彼がここにいるの?」

「果南、愛護のこと知ってたの?」

「千歌たちと走ってるのを見たことがあるだけ」

「そうなんだ。ちなみに愛護は私の執事」

「そう、本題なんだけど廃校になるって本当?」

「ううん、そんなことさせない。でもそのためには果南の力が必要なの」

 

マリーは復学届を果南さんに見せた。

 

「本気?」

「私は果南のストーカーだから…」

 

 



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12話:この町の魅力

 

 

「どうですか?」

 

俺たちは作ったPVをマリーに見せに理事長室にやってきていた。だが…PVが退屈だったのか寝てやがる。いや、正確には寝たふりして寝てしまうほどつまらないっていう遠回しの伝え方か。

 

「ちゃんと見てください。みんな本気なんですから!」

 

寝ているマリーに怒る千歌、その言葉を聞きマリーがゆっくり目を開いていった。

 

「本気?このテイタラークですか」

「体たらくって…」

「それは酷すぎませんか」

「そうですよ、これを作るのがどんだけた…」

「努力の量と結果は比例しません!」

 

言い返そうとした梨子に食い気味で言うマリー。確かにマリーの言うことは一理あるか。

 

「大切なのはこのtownやschoolの魅力をちゃんと理解しているかです!」

「じゃあ、理事長はそれがわかるって言うんですか?」

「少なくともあなた達よりはね。知りたい?」

 

マリーが挑発するように言った。しかし…

 

「いいえ、自分たちで探します。ありがとうございました。みんな行こう。この街の魅力を探しに」

 

千歌は断ると理事長室を出ていった。それにつられみんなも出ていった。俺もその後を追い部屋を出ようと思った時…

 

「愛護ー、今日の晩御飯はハンバーグがいいな!」

 

今言うそれ!?確かに今言わないとリクエストなんて出来ないかもしれないけど今言うか!?

 

「……わかった」

 

俺はマリーの方を振り向かず、そのままため息と一緒に返事をして部屋を出た。

そして、みんなと一緒に部室に戻り荷物をまとめ帰るために学校の玄関まで来た。そして、靴を履き替えている時に思い出したかのように梨子が口を開いた。

 

「どうして聞かなかったの?」

「何が?」

「この街の魅力」

「それは、聞いちゃダメな気がしたから」

「何、意地はってるのよ」

 

千歌が答えると今度は善子ちゃんが反応した。

 

「意地とかじゃないよ。自分たちで魅力に気づけないようじゃPVなんて作る資格ないよ」

「そうだな」

「うん、私もそう思う」

「ヨーソロー、それじゃあ早速千歌ちゃん家で作戦会議だね。喫茶店だってタダじゃないんだから梨子ちゃんも頑張ルビィしてね」

「わかったわよ」

 

話がまとまった。そして、みんながさぁ行こう。そんな雰囲気になった。しかし…

 

「部室に忘れ物しちゃった」

 

千歌が忘れ物をしたらしく。部室に戻っていった。しかし、しばらくしても帰ってこない。

 

「どうしたんだろう」

「仕方ない。迎えに行くか」

「そうだね」

 

みんな再度靴を履き替え部室に向かった。そして、体育館を覗くと千歌がダイヤさんと会話しているのが見えた。

 

「一緒に、スクールアイドルやりませんか?」

 

千歌がダイヤさんを勧誘していた。すると、いつもなら頭ごなしに反対していたダイヤさんだったが普通に嫌味もなく断って体育館を出ていった。そして、千歌が最後に何か言おうとしていたのをルビィちゃんが止めた。

やっぱり、あの人も事情を抱えているんだな。

 

 

 

●●●

 

 

あの後、普通に千歌の忘れ物を取って千歌の家に向かい作戦会議始めと思ったのだが、梨子が警戒して全然千歌の部屋に入らない。

 

「大丈夫だよ。ね、千歌ちゃん」

 

曜がベットにいる千歌に声をかけると反応した。まあ、正確にはしいたけなんだが…イタズラにしては度がすぎてる気がしなくもないが…まあ、いっか。

すると、千歌のお姉さんがお茶を持って来てくれたので外で貰うわけもいかない梨子は部屋に入りベットに座った。

 

「みんな、話し合い?でも明日は早いんだからそこそこでね」

 

お姉さんがそう言うと部屋を出ていった。しかし、俺たちは明日という言葉に疑問を覚えた。

 

「明日って何かあるのか?」

「うん、私も気になったんだけど」

「明日、えーっと何かあったかな?」

 

曜がうんうんと考え始めた。すると、

 

「海開きだよ」

 

千歌が部屋に入りながら答えてくれた。

 

「あれ?千歌ちゃん?……てことは」

 

恐る恐る梨子が後ろを振り向くとしいたけが布団から出て来た。それからというもの…梨子が騒ぎ出して話し合いどころではなく結局何も話合わず話し合いは終わった。

 

 

 

●●●

 

 

翌朝、海開きの恒例行事ということで早朝からマリーを叩き起こし軽い食事を済ませ砂浜に向かった。

 

「毎年、こんなことするのか?」

「そうよ、はい」

 

マリーにゴミ袋を渡され、ゴミを拾い始めた。途中、クラスメイトたちと話をしながらゴミを集めていると梨子たちを見つけた。

 

「おーい、梨子、曜、千歌」

「あっ!愛くん!」

 

俺は走って三人の方に向かった。

 

「愛くん、今ね、梨子ちゃんがいいこと言ってくれたの」

「いいこと?」

「うん、見てよこれ」

 

千歌に言われた方向を見るとたくさんの人がゴミ拾いをしていた。

 

「こういうことがこの街のいいところなんじゃないかって梨子ちゃんが!」

「そうか、なるほどな」

 

すると、千歌は走り出し高いところに上ると大声を出しみんなにあるお願いをした。

 

 

 

●●●

 

 

それからというもの、千歌の指示でスカイランタンを作り始めた。目標は1000個単純計算で一人142、3個作らなければならなかったのだが…千歌たちのクラスメイトから始まりついには学外にも協力してもらい予定よりだいぶ早く完成することが出来た。

そしてその次の日、千歌たちは新曲「夢で夜空を照らしたい」のPVを作成するために屋上へ俺はというと演出のため砂浜に来ていた。

 

「はーい、準備はいいですかーA班」

「OKだよ、大川くん」

「q班とo班は?」

「完成したよ」

「u、r、sの三班も準備完了です」

「準備完了だな。じゃあ、浦の星で撮影が始まったら撮影の付き添いの人が俺に連絡くれるので俺がGOって言ったらスカイランタンを飛ばしてください」

 

俺の指示にみんな、頷いたり返事をしたりしてくれた。そして、しばらくすると撮影が始まった。そして、日が沈み始め空が赤くなったその時

 

「GO!」

 

Aqoursの文字の形をした。スカイランタンが解き放たれ赤い空と混ざりかなり美しい。これを背景に歌ったらとても綺麗だろう。

 

「よし、成功かな?皆さん。本当にありがとうございました」

 

俺は頭を下げてお礼を言った。

あとは、あの子たちが歌を完璧に歌うだけ。

俺は役目を終えたので手伝いに来てくれたマリーに近づいた。

 

「どうだ、マリー?」

 

俺が声をかけるとマリーは俺に気づきこちらを向いた。ついでに一緒にいた果南さんとダイヤさんもこっちを向いた。

 

「いいと思う。すっごく綺麗よ」

「私もそう思う」

「わたくしもですわ」

 

三人は褒めてくれた。そのことで俺は自分の事のように嬉しくなる。

 

「だよな、これさあの子たちがあの子達なりにこの町の魅力を見つけてやったんだよ。すごいよな。年下がちゃんと頑張って答えを出したんだ。あんた達もいつまで微妙な関係続けるのか知らないが早く答えを出せよ。まあ、話の重さが全然違うかもしれないけど」

「あなたはどこまで知ってますの?」

 

俺から忠告なんてされるとは思ってなかったんだろう。少し驚いてダイヤさんが言った。

 

「ほとんど詳しいことはわかりませんよ。でも、ずっとマリーと一緒にいたんだ。ある程度の関係はわかる」

「そうですか。でも、大きなお世話ですわ」

「ダイヤの言う通り、そんな話するなら帰る。それに、もう答えなんて出てる」

 

そう言って、ダイヤさんと果南さんは帰って言った。わかってたことだけど頑固というかなんというか。

 

「愛護」

「うん?」

「急にどうしたの?」

「俺は見たいんだよ。お前達三人が一緒に笑ってるのを」

「私もよ」

 

そうして、俺たちは帰っていくダイヤさんと果南さんの後ろ姿を見た。

 

(まったく、三人ともお互いのことが心配なら仲直りすればいいのに)

 

三人の仲を取り持つのは苦労しそうだ。

 




今回はアニメ第6話のBパートをメインに書きました。スカイランタンのシーンすごく好きで実際誰が指示出してるんだろうという疑問から愛護にその役目を任せてみました。

Twitterを始めました。@asahirotokifuka です。




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13話:愛護の苦手なもの

俺、大川愛護はここ内浦に引っ越してきて早三ヶ月ぐらい経とうとしている。ここの生活にも慣れてきて結構充実してる。まあ、文句があるとしたら高校生だからな女子に囲まれるのも嫌じゃないが男友達がいないのがやっぱりきついとこはあるが男勝りな女子もいるし今のところは何とか暮らしてきているし大丈夫とか思っていた頃が俺にもあった……

 

俺は今、内浦に来て一番のピンチを迎えていた。それは……

 

『夏の暑さをふっとばせ!怪談スペシャル!』

 

今から怪談が流れるとは思わないほど和気あいあいとしたタイトルコールがテレビで流れた。そう、俺の苦手ものはお化けとか幽霊。

 

ん?じゃあ、なんで見るんだって?それは十分前のことだな今日はマリーの仕事がなくて飯食ったあと順番に風呂に入って二人でのんびりしてた時マリーが急にトランプ持って来て勝った方の頼みを絶対叶えるみたいな賭けをして負けた。

で、頼みが一人じゃ興味あるけど心細いから一緒にこれを観てくれだった。普通に考えれば女の子らしい可愛らしい頼み何だが…これはやばい!マジでやばい。

 

「愛護、震えてるけどもしかして怖いの?」

「いや、だ、だ、だ、だ、だ、大丈夫だ」

「他のお願いにしようか?」

「だ、だ、大丈夫だって。お前こそ怖いんじゃないか?」

「うーん、あんまりこういうの観たことないから分からない」

「そ、そ、そうか」

 

マリーに震えてることがバレてるようだが大丈夫って言ったんだ。頑張って耐える!

 

そして、番組が始まった。VTRが流れてはそれを観たテレビの芸能人が感想を言ったり彼らの実体験の話をし、また次のVTRが流れるという流れが三時間続いて終了した。

俺はやっと終わったことに安堵した時。

 

「愛護、もう大丈夫?そろそろ痛いんだけど」

 

俺はマリーに言われたことが一瞬理解できなかったが手に違和感があると気づいて下を見るとマリーの手を繋ぐというよりもがっちり掴んでいた。俺はすぐに手を離した。

 

「悪い!」

「うんうん、大丈夫よ。それよりやっぱり愛護怖かったんでしょ。今、すごく顔がBlueよ。可愛いとこあるのね」

 

イタズラっぽい笑顔でマリーは俺に言った。一緒に観てくれって頼まれた方がビビって相手困らせるなんてやべ超カッコ悪い。

 

「愛護が怖がってたから逆に私全然怖くなかったなー」

「悪い。実はかなり苦手でさ」

「見ればわかるわ」

「ですよねー」

「まあ、愛護の新しい一面が知れて良かったわ。じゃあ、夜も遅いし寝ましょ」

「ああ、おやすみ」

 

そして、俺たちはそれぞれの部屋に行きベッドに入った。

しかし……

 

怖くてねれない!

 

やばい、マジで眠れない。どうする!?怖い。怖い。誰か助けてくれ!

 

そんな時、窓の方からガタっという音が聞こえた。俺は恐怖で枕を抱えながら布団から飛び出した。(ちなみに、後々思ったんだがこの窓の音ただ風が当たっただけだと思う)

マリーの部屋に直行した俺はノックもせず扉を開けマリーを叩き起こした。(怖いので電気もつけました)

 

「マリー、マリー!」

 

最初はなかなか起きなかったが何回か声をかけると目をこすりながら起きた。

 

「なあに?愛護」

「マリー、一生のお願いです」

「なに?」

「俺と一緒に寝てください」

 

俺は少し目を潤わせながらマリーにお願いした。するとマリーは一瞬理解不能な顔をして、

 

「えええ‼︎」

 

マリーは見たことがないほど顔を真っ赤にして叫んだ。

 

「駄目か?」

「駄目じゃないけど…じゃあ、入る?」

 

普段の俺なら絶対に言わないことに戸惑いながらもスペースを開けてくれたので俺はそこに収まった。

 

「そこまで苦手だったなら何で見たのよ」

「お前の頼みだから」

「そういうルールだったけど、うーん」

「どうした?」

「ねえ、愛護。せっかくだから腕枕して!」

 

さっきの真っ赤な顔と違いいつも通りのイタズラっぽい笑顔でマリーは言った。それを見て俺も少しいつもの調子に戻ってきた。

 

「いやだ」

「じゃあ、出て行ってもらおうかなー」

「どうぞ、お嬢様」

 

情けないと思いながらも出ていくことが出来ないので右腕を差し出した。

そして、マリーが俺の腕に頭を置いた。

 

「思ったよりゴツゴツしてる。やっぱり愛護も男の子だね」

「ん?それ、褒めてんのか?」

「褒めてるよ」

「ありがとう。じゃあ、寝させてくれ」

「うん、安心してghostなんてこのマリーがやっつけてあげるわ」

「ありがとう」

 

そして、俺はマリーがいることで安心したのか眠りについた。

 

 

 

 

 

愛護ったら本当にお化けが苦手なのね愛護のママさんが言ってた通りね。それにしても可愛らしい寝顔ね。

 

「愛してるわ愛護」

 

私は愛護に聞こえないように起こさないようにつぶやいた。

 



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14話:TOKYO

俺とAqoursのメンバーは現在東京に来ている。理由はこの前の「夢で夜空を照らしたい」のPVの反響がよく。それを見た東京のスクールアイドルイベント主催者の目にとまり、参加することが決まったわけであるんだが…

 

まず、来るまでに千歌、ルビィちゃん、花丸ちゃん、善子ちゃんの4人が東京をなんだと思ってるんだ!と言わないばかりの変な格好をして来るわ。着いたら着いたらで地方から来たのがバレたくないのか変な芝居をし出すしで馬鹿丸出しなんだが…

 

「いい加減にしろ!普段通りにすりゃいいんだよ」

「でも、それじゃ地方から来たってバレちゃうじゃん」

「んなもん、どうだっていいんだよ。東京にどんだけの観光客がいると思ってんだ。数人の田舎のグループを見て小馬鹿にするほど東京の人は腐ってないだろ。特に花丸ちゃん!」

「ずら!」

「俺はいつもの花丸ちゃんが好きだから、方言なんて気にせず普通に喋っていい。笑われようが気にするな」

 

俺はみんなに注意をする。しかし、個人的にはいいこと言ったと思っていたのだが…花丸ちゃんは顔を真っ赤に他のみんなはすごく冷めた目をしている。

 

「えっ?俺、なんか間違ったこと言った」

「ううん、何でもないわ。本当、恥ずかしげもなくそんなこと言えるわね〜っと思っただけよ。じゃあ、予定通り自由行動始めましょ」

 

善子ちゃんがそう言うと各自行きたい店があったのかバラバラに行動し始めた。

 

だが、この自由行動もみんな各々趣味の物を見始めると梃子でも動かないのか全然集合しないし、結局成功祈願のために行こうとした神社に着いた時にはもう空は赤くなっていた。

 

神社に着くと何処からか綺麗な歌声が聴こえた。誰が歌っているのかと気になって声を頼りに追ってみるとそこには女子高生二人組がいた。

 

2人もこちらに気づいて挨拶をしてくれた。千歌も急に言われたので戸惑いながらも挨拶を返す。

 

「あれ?もしかして、皆さん。Aqoursの方ですか?」

 

二人組の背の高い方が聞いて来た。そのことでみんなはかなり有名になっていることに驚く。

 

「PV見ました。よかったです。もしかして皆さん明日のイベントに参加されるのですか?」

「あっ、はい」

「そうですか、楽しみにしてます」

 

そう言うと、その子は去って言った。そして、1人取り残された子は何を思ったのか走り出しアクロバットな動きを成功させた後一緒に去って行った。

…あの、男いるんですけど、スカートの中悪いがチラッと見えたぞ。これは言わない方が絶対いいよな。…うん。

 

まあ、そんな驚きがあったが神社でしっかり明日が成功するように祈願し旅館に着いた。

 

「じゃあ、各自明日のためにしっかりと休憩すること。俺は隣の部屋にいるからなんかあったら言いに来い」

「「「「「「はーい」」」」」」

 

俺はみんなと分かれて部屋に荷物を置き携帯を取り出してマリーに電話をした。

 

『はーい、愛護』

「少し予定より遅くなったが大きなアクシデントもなく無事に旅館に着いたぞ」

『そう、報告ありがとう。どう?みんなどんな感じ?』

「なんて言うか、みんな今日はめいっぱい東京を楽しんだって感じかな。明日が本番だから変にプレッシャーを感じずいい息抜きになったと思う」

『そう、じゃあ明日本番後に報告してね』

「ああ、おやすみ」

『おやすみ愛護』

 

そして、俺は旅館の食事を堪能し風呂に入って眠りについた。

 

 

●●●

 

 

翌日、会場入りするとイベントの内容が一部変更し出場グループを観客の投票でランキングをつけるらしい。ここで上位に入り込めれば一気に有名になりラブライブに一歩近づける。

Aqoursの順番は2番。出場グループのほとんどがラブライブ決勝出場経験のあるグループばかりなので仕方がないが前座だろう。

でも、これはチャンスと知ったメンバーは気合いを入れ直した。

 

俺はメンバーと別れ、観客席に向かった。

 

そして、イベントが始まった。一番トップバッターはSaint Snow。昨日会った二人組だった。2人のパフォーマンスは俺のアイドルのイメージの可愛い感じとは違うクールな曲調とダンスだったが。とても完成されていてすごく良かった。そして、Aqoursの番になった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果は…入賞できず。みんなは現在、ショックで落ち込んでいる。そんな時、俺の所に電話がかかって来た。主催者の方が渡し忘れたものがあるから取りに来て欲しいと。

近くにいたので俺たちは向かうと一つの封筒を渡され、千歌が受け取った。

 

「今日のイベントの集計表。出演者には渡す決まりになってるから近くにいて良かったよ。じゃあ、私はこれで今日はありがとうね」

 

そう言ってその人は何処かへ行った。そして、千歌は早速封筒の中身を取り出した。

そこには順位と投票数が書かれていた。

 

そして、Aqoursの順位は30組中30位。そして、投票数は0。

 

「…0」

「…そんな」

「…そうだ、愛護!」

 

我に返ったように善子ちゃんが俺を呼んだ。

 

「あなたも投票してたわよね」

「……ああ。悪いけど他のグループに入れさしてもらった。知人の情けで入れるのは何か違うだろ」

「…っ。そうだけど」

 

0。誰も自分たちに入れてくれなかったショックで落ち込むAqours。そんな時、Saint Snowの二人が声をかけて来た。

 

「お疲れ様です。今日のパフォーマンス、すごく良かったです。でも、μ'sのようにラブライブを目指すのは諦めた方がいいかもしれませんね」

「馬鹿にしないで!ラブライブは遊びじゃない」

 

そう言って彼女たちは何処かへ行ってしまった。そんな二人の目は少し赤かった。

 

Saint Snowの二人に言われたショックを隠せないまま東京を出ることになった。

 

 

 



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15話:リスタート

 

東京から帰って来た俺たちは学校のみんなに迎えられた。でも、ルビィちゃんが迎えに来ていたダイヤさんを見てから悔しかったのか急に泣き出したのでみんな何かを感じて今日は何も言わず帰ってくれた。

 

そのあと、ダイヤさんに起こったことを伝えた。勿論得票数0のことも…

 

「得票数0ですか。いつかこういうことになると思ってましたわ。でも、勘違いしないでください。あなたたちは別にダメだった訳ではないんです。たくさんの練習を積み観ている人を楽しませるパフォーマンスをしている。でも、それだけではダメなのです」

「どういうことです?」

「7,236。何の数字かわかります?」

「ヨハネのリト…「違うずら」ツッコミ早!」

「去年、最終的にラブライブにエントリーしたスクールアイドルの数ですわ。第一回大会の十倍以上」

「…そんなに」

「スクールアイドルは以前から人気がありました。しかし、ラブライブの大会の開催によってそれは爆発的なものになった。A-RISEとμ'sによりその人気は揺るぎないものになりアキバドームで決勝が行われるようになった。そして、レベルの向上を生んだのですわ」

「じゃあ…」

「そう、あなたたちが支持されなかったのも私たちが歌えなかったのも仕方のないことなのです」

「歌えなかった?」

「どういうこと?」

「二年前から浦の星には統廃合になるかもと噂はあったのですわ。だから、私たちはスクールアイドルを始めたのですわ。そして、あなたたちのように東京に呼ばれましたの…でも、歌えなかったのですわ。他のグループのパフォーマンスの凄さ、たくさんの観客に圧倒されて何も歌えなかった…あなたたちは歌えただけ立派ですわ。でも、いつかこうなると思ってきたから…」

 

ダイヤさんは知っていたのだろう上にあがることがどれほど難しいか。一生懸命に練習をしたって立ちはだかる壁があることを。だから、彼女は俺たちの為に嫌われ役にまでなって止めようとしたり注意したりしてたのだろう。

 

話が終わると俺たちはそれぞれの家へと帰った。今日のこと、ダイヤさんの話のことを考えてるのだろう。みんな俯いて終始無言だった。

 

 

 

●●●

 

 

次の日、曇天の中俺は朝起きると砂浜を歩いていた。何がしたかったのかはわからないが気づいたら歩いていた。

すると、海に向かって走っている千歌の姿が見えた。俺は何事かと思い彼女の元へと走っていった。すると、違う方向から梨子もやって来た。多分、家から千歌の様子が見えたのだろう。

 

「梨子!」

「愛護くん!千歌ちゃん見なかった?」

「見たぞ。海に飛び込んでいった」

「嘘!千歌ちゃーん!千歌ちゃーん!」

 

梨子は千歌のことが心配なのか必死に叫ぶと千歌が何食わぬ顔で海から顔を出した。

 

「どうしたの?愛くんも梨子ちゃんもそんなに慌てて」

「どうしたの?じゃないわよ!いったい何してるの!」

「えっ!?あー、何か見えないかなぁ?って」

「えっ!?」

「は?」

「ほら、梨子ちゃん海の音を探して潜ってたでしょ」

「そんなことしてたのか!?」

「えっ!?…うん」

「そういえば、愛くん知らなかったね。そう、梨子ちゃんそんなことしてたの。で、今度は私もなんか見えないかな?って思ったの」

「それで、何か見えたの?」

「ううん、何も」

「何も?」

「うん、何も見えなかった。でもね、だから思った。続けなきゃって…私、まだ何も見えてないんだって先にあるものが何なのか、このまま続けても0なのかそれとも1になるのか10になるのか…ここでやめたら全部わからないままだって」

「「…千歌(ちゃん)」」

「だから、続けるよスクールアイドル。だってまだ0だもん!…0だもん、0なんだよ。あれだけみんなで練習してみんなで歌を作って衣装もPVも作って、頑張って頑張ってみんなにいい歌聞いて欲しくてスクールアイドルとして輝きたいって…なのに0だったんだよ!差がすごいあるとか昔とは違うとかそんなのどうでもいい!悔しい!」

 

誰から聞いても分かるほど千歌の声は途中から震えていた。今まで悔しいという気持ちを溜め込んでいたのを爆発させて喋り続ける。

 

「…悔しいんだよ」

 

その一言を聞くと梨子も海に入っていきゆっくりと千歌を後ろから抱きしめた。

 

「良かった。やっと素直になれたね」

「だって、私が泣いたらみんな落ち込むでしょ。今まで頑張って来たのに悲しくなっちゃうでしょ。だから…だから」

 

千歌はAqoursのリーダーみたいでムードメーカーであるから確かにみんな動揺する。だから、さっきまで泣かないように我慢していたのか。そんな、重圧を背負わせていたのか。

 

「バカね。みんな千歌ちゃんのためにスクールアイドルやってるんじゃないのよ」

 

梨子が俺の方を向いた。いや、俺の後ろの方を見てる。だから、俺も振り向くとそこには曜、ルビィちゃん、花丸ちゃん、善子ちゃん。みんながいた。

 

「曜ちゃんもルビィちゃんも花丸ちゃんも善子ちゃんもいる」

「…でも」

「だから、いいの千歌ちゃんは感じたことを素直にぶつけて」

 

梨子ちゃんがそういうと陽たちも海に入っていった。

 

「みんなで一緒に歩こう。一緒に」

 

梨子がそういうと千歌はさらに大声で泣きだした。

 

「今から、0を100にするのは無理かもしれないでももしかしたら1にすることはできるかもしれない。私も知りたいのそれができるか」

 

「うん!」

 

千歌が元気よく答えるとまるでAqoursのみんなを見守るように太陽が顔を出した。

 

…敵わないな。俺も何か気の利いたことを言おうと思ったんだが、梨子が…みんなが…解決してしまった。

でも、俺も彼女たちの力になりたい!できることをしてやりたい!

 

「おーい、みんなあがってこい!」

「うん、今行くね愛くん」

 

千歌たちは俺に呼ばれ海から上がって来た。

 

「愛くんもごめんね。心配かけて」

「大丈夫だ。俺の方こそごめん。支えるつもりが千歌の背負ってるものに気づけなかった」

「ううん、いいんだよ。みんないるってわかったから。愛くんもこれからも一緒にいてくれる?」

「ああ!」

「ありがとう!」

 

千歌が突進するように抱きついて来たので慌てて受け止めた。

 

「じゃあ、よろしくね。愛くん」

「よろしく。…で悪いんだが千歌。そろそろ離れてくれないか?」

「えっ!?あっ、ごめんね。ちょっと抑えられなくなって」

「いいんだよ、これからはそれで。それより、みんな朝ごはんは食べたか?」

「「「朝ごはん?」」」

 

俺が急に朝ごはんの話題を振ったからみんな素っ頓狂な顔をしている。

 

「作ってやるよ、みんなの新しい門出を祝ってな!」

 

俺がそういうとみんなの顔は笑ってくれた。



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16話:伝わらない思い

 

「夏祭り?そんなのあるのか」

「沼津の花火大会って言ったらここら辺じゃ1番のイベントだよ」

「屋台も出るずら」

「なるほど、それはお客さんが来そうだな」

 

俺たちは今、夏祭りの企画で歌を歌わないかとオファーが来ている。そのことについて参加するかどうかを千歌の家にみんなで集まって話し合っている。

 

「これは、痕跡…わずかに残っている気配…」

 

いや、一人全然話に入ってないわ。長椅子に横になって一体何をしてるんだよ。

 

「どうしよう、東京に行ってからすっかり元に戻っちゃって」

「戻ったというか悪化してないか?」

「ほっとけばいいずら」

「花丸ちゃん厳しいな。まあ、でも逆に言えば善子ちゃんの魅力が高まったってことか」

「へ!?な、何よいきなり!ていうかヨハネ!」

 

善子ちゃんは急に顔を真っ赤にしたと思ったら体を起こし迫って来た。

 

「いや、だって千歌が言ってたじゃん。そのままでもいいって今の善子ちゃん好きなこと出来てるからなのか初めて会った時に比べて笑顔が増えていいと思うぞ」

「そ、そんなこと真顔で言うな!」

 

褒めたつもりなのにさっきよりも大きな声で迫られた。

 

「ごめん」

「本当に。で、で、出るの?夏祭り」

 

善子ちゃんは顔を真っ赤にさせながら急に話題を変えた。

 

「私は、今は練習に専念した方がいいと思うけど」

「千歌ちゃんは?」

「私は出たいかな」

「そっか」

「今の私たちの全力を見てもらう。それでダメだったらまた頑張る。それを繰り返すしかないんじゃないかな」

 

千歌のこの一言でみんなの意思が固まった。

 

「ヨーソロー!賛成であります」

 

曜が元気よく返事をする。

 

「変わったね千歌ちゃん」

「この前のことで何か吹っ切れたんだろうな」

「うん」

 

こうして、俺たちは夏祭りに参加することが決定した。…が何か千歌は何か別のことでモヤモヤしているように見える。

 

「どうした?千歌」

「いや、果南ちゃん。どうしてスクールアイドルやめたんだろうって思って」

「それなら、生徒会長が言ってたでしょ。東京で歌えなかったからだって」

「でも、それぐらいでやめちゃうような性格じゃないと思うんだけどな」

 

千歌の言ってることも少なからずわかる。マリーと時折話してるとこを見ていると気が強くて頑固なイメージだ。一度の失敗でくじけるとは思えない。

 

「でも、今の俺たちで考えたって答えは出ないよな。情報が少なすぎるマリーと一緒にいる時間は長いとは言えあくまでも最近の話だからな。当時からずっと一緒にいるってならまだしも」

「…当時から」

「…ずっと」

「…一緒に!?」

 

俺が何気なく言った一言に千歌、曜、梨子の三人が反応した。そして、顔をまるでフクロウのように動かしルビィちゃんを見た。

 

「ルビィちゃん、ダイヤさんから何か聞いてない?」

「小耳に挟んだとか」

「ずっと、一緒に家にいるのよね」

 

三人がルビィちゃんに畳み掛けるように問う。ルビィちゃんは年上の三人に一斉に話しかけられたことによりパニックになり逃げ出した。それを俺もどうしても話を聞きたかったためルビィちゃんの進行方向を塞ぎ壁に追い詰め顔の横に手を置いた。俗に言う壁ドンだが、甘酸っぱいものではなく俺の眉間にはシワがよっている。

 

「ルビィちゃん、逃げないで答えてくれあの三人に何があったのかを!」

「えっーと…」

「頼む!」

「ピギィ!」

 

ルビィちゃんは俺が大声を上げたことに驚いて縮こまって震えだした。俺はそれを見て冷静になった。

 

「ごめん、ルビィちゃん。怖がらすつもりはなかったんだ。本当にごめん」

 

俺はルビィちゃんに頭を下げる。

 

「大丈夫です。ルビィもちょっと驚いただけです」

 

俺が顔を上げるとそこには震えが止まって笑顔のルビィちゃんがいた。でも、俺には普通に接することが出来るようになってたけどルビィちゃんは男性恐怖症の節があることをすっかり忘れていたことに俺は猛烈に反省した。

 

「本当にごめんな。…それで、ダイヤさんたちのことで何か聞いたりしてないか?」

「えっと、ルビィが聞いたのは東京のライブで歌えなかったってことだけです、そのあとはスクールアイドルの話をしなくなったので。ただ、聞いたんじゃなくて理事長さんと話してるのが聞こえたんですけど…」

 

ルビィちゃんによると以前マリーがダイヤさんに会いに行った時、ダイヤさんは果南さんが逃げてる訳ではないから果南さんのことを逃げたと言わないでほしい。と言ったらしい。

 

「逃げた訳じゃないか」

「ダメだ、わからない。逃げただの逃げてないだの」

「そうだよね」

「うーん…もう、よくわかんないから果南ちゃんのことを調べよう!」

「調べるってどうやって」

「それは、やっぱり尾行だよ!だから、みんな明日果南ちゃんを尾行するから早朝にここ集合ね!」

 

千歌がどんどんと果南さんを尾行する話を進めていき、結局明日俺たちは尾行することが決まった。

 

 

 

●●●

 

 

 

「眠い」

 

俺たちは早朝集まって現在果南さんのランニングを尾行している。

 

「それにしてもペース早いね」

「しんどいずら」

「どこまで走るんですかね」

「あのさ、みんなしんどいなら喋らない方がいいぞ」

「そうなんだけど。やっぱり、みんながいると喋っちゃうよ。ていうか愛くんはなんでそんなに楽そうなの」

「いつもみんなと走ってるのと、あとは男だからみんなより体力つくのが早いんじゃないか?」

 

正直俺もこんなに楽に走れるとは思ってなかったからびっくりしてる。

 

そして、果南さんが止まった頃にはみんなゼエハア言ってかなりしんどそうだった。

一方、果南さんはと言うと踊っている。それもかなり楽しそうに。その姿はまるでアイドルのようだった。それを見てるとスクールアイドルが嫌になったとはやっぱり思えない。

 

「…綺麗」

 

一緒に隠れて果南さんを見ていた千歌もついつい声を発してしまうほどそのダンスは魅力的だった。

 

ダンスが終わり果南さんが止まるとどこからか拍手が聞こえるとマリーが出てきた。俺たちと違う所で隠れて果南さんを見ていたのだろう。

 

「復学届提出したのね」

「…まあね」

「やっと、逃げるのを諦めた?」

 

俺は隠れて見ていてマリーが「逃げる」と言う単語を口にした瞬間、果南さんの表情が変わった気がした。

 

「勘違いしないで休学していたのはあくまで父さんの怪我が元であってスクールアイドルは関係ないし、復学してもスクールアイドルはやらない」

 

そう言うと逃げるように果南さんは歩き出した。それを逃さないようにマリーは口を開いた。しかも、いつものふざけたカタコトで英語混じりではなかった。

 

「私の知ってる果南はどんな失敗をしても笑顔で次に走り出していた。成功するまで諦めなかった」

 

マリーの言葉に反応し果南さんは歩みを止めた。

 

「卒業するまであと一年も無いんだよ」

「それだけあれば十分。それに、今は後輩もいる」

 

マリーと果南さんの少し険悪な雰囲気の話に急に自分たちが出てきたことにより千歌たちは緊張し始めた。

 

「だったら千歌たちに任せればいい」

「…果南」

 

自分の知ってる果南さんならば絶対言わないであろう言葉を果南さんが発したことでマリーの目が潤み始めた。だが、そんなことが関係ないと言うが如く果南さんはマリーを責める。

 

「どうして戻ってきたの?私は戻ってきて欲しくなんてなかった」

「相変わらず果南は頑固なんだから」

 

マリーは今にも泣きそうになりながら言う。もはや強がりで、果南さんは頑固であるだけだと自分に言い聞かせるように言った。しかし…

 

「もうやめて。もうあなたの顔、見たくないの」

 

マリーを絶望に突き落とす一言を果南さんは言った。その一言でマリーは泣き崩れた。そして、果南さんはその場を去っていった。

 

でも、俺は感じた果南さんも本当に苦しそうに絞り出してその言葉を言った。だから、なんでそんな風に言うのかわからなくて怒りを覚えたが今は傷ついてるマリーのフォローが優先順位が上だと判断した俺は隠れていたことなど忘れてマリーに近づいた。

 

「あ゛、あ゛いごー」

 

マリーは俺に気づくと俺に抱きついた。俺はマリーが落ち着くまで彼女の頭を優しく撫で続けた。



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17話:仲直り

いいサブタイトルが思いつかない今日この頃…


 

俺たちはあの後解散し学校に登校して来ている。今日から果南さんも登校してるらしい。

 

「そういえば愛くん。マリーさんは大丈夫?」

「ああ、今は落ち着いてるはずだ。まあ、あいつのことだしまだ諦めずに果南さんにアタックするんじゃないか?」

「でも、さすがに顔も見たくないって言われるのはきついよねー」

「果南ちゃん、あんなこと言う人じゃなかったのに」

「それほどあの三人の関係が複雑というか噛み合ってないというか何だろう。あっ、あいつ朝のことで弁当を持って行き忘れてたんだ。ちょっと行ってくる」

「いってらっしゃい。ていうか、何で愛くんマリーさんのお弁当持ってるの?」

 

急に曜が質問して来たので俺は声が裏返ってしまった。

 

「え!?何でって俺が作ってるから」

 

ここで、俺は自分の失言に気づいた。俺は要らぬ疑いをされないために執事のことは言ってあるが一緒に住んでることは言ってないんだった。

 

「まあ、執事さんだから作ってるのはいいとして、別々に住んでたら愛くんが渡し忘れたんだよね。でも、今愛くんはマリーさんが持って行くの忘れたって言ったよね。もしかして一緒に住んでるの?」

 

曜は面白いことを知ったかのように少しニヤニヤしている。

 

「あはは、何のことかな!」

「あっ逃げた」

 

俺は急いでカバンから二つある弁当箱の小さめの方の弁当箱を持って教室を出た。

 

いつも俺とマリーは一緒に登校してるわけではない。理事長の仕事とかAqoursの朝練とかで二人の登校時間がずれることがあるから、基本的に朝作って弁当箱に詰めて机の上に置いておく。そしたら、マリーが勝手に取って行くんだが…今日は果南さんのことがあってショックだったのか弁当置いて行ったのを後から出発する俺が気づいて今、持って来ている。ちくしょー曜のやつ感が良すぎないか?

 

まあ、そんなことを言ってもしょうがないと思い俺はマリーの教室に駆け足で向かった。

 

上の階に向かう階段を登っているといつもより上の階が騒がしかった。すると、三年生の方が俺を見るなり俺に話しかけて来た。

 

 

 

●●●

 

 

ーーーマリー視点ーーー

 

 

私は今、一年生の頃に着ていたスクールアイドルの衣装を持って果南に勧誘している。

 

朝はあんなことがあったけど決して本心じゃない。果南は頑固なだけなんだからそう思って話しかけたら果南は怒りだした。そして、今はクラス中を巻き込んでる。でも、私も引けない!

 

「果南、もう一度やろ」

 

もう一回、果南に衣装を広げて見せる。すると、果南が近づいてくれた。衣装を受け取ってくれる物だと思った私は掴んでる力を少し緩めたその時、果南は私から衣装を受け取るというより奪う感じで持って行くと外に出て投げ捨てた。

 

「ちょっと!果南、あれは大事なものでしょ!」

「あれはもう、私には要らないもの。二度とこんなことしないで」

 

それを聞いた私は無我夢中になって果南にしがみついた。

 

「ちょっと!何するのよ!」

「果南がスクールアイドルをまたやるって言うまで離さない」

「何よそれ!離しなさいよ!」

「だから、離さない!果南がやるって言うまで!」

「そんなこと絶対に言わない!離せ!離せって言ってるの!」

「離さない!」

 

私たちは周りを気にせずに大声を出し合っている。そのため、周りも少しさっきよりもざわついてる感じがするけど私は気にせず腕の力を強めた。

 

「離せ!」

「離さない!」

「離せ!」

「離さない!」

「二人ともおやめなさい、みんなが見てますわよ!」

 

ダイヤが止めに入るけど私は止まる気がない。

 

「ダイヤも本当はそう思ってるんでしょ!いつまでもたった一度の失敗でネガティブになって、千歌っちたちはもう乗り越えたわよ!」

「やめなさい!果南さんは再びスクールアイドルをやることはありませんわ!」

「そうよ!私はスクールアイドルはやらない!ていうか、いつまでもはどっちよ!もう二年前のことなんだよ!」

 

さらにヒートアップする私たち。でも、そんな時ドスっと鈍い音がしたと思ったら果南が動きを止めた。あまりにも急なことだったので私も不思議に思って力を抜いて果南を見ると果南は何かを見て怯えてるように見えた。私も気になり果南の目線を追うとそこにはいつもとは違い恐ろしく黒いオーラを纏っている愛護がいた。

 

「いい加減にしろ」

 

…そういえば、ダイヤの他にやめろって言ってる人がいるなーとは思ってたけど愛護だったなんて。それより、愛護って怒ったらこんなに怖いのね。静かなのが逆に怖い。

 

「三人とも放課後、スクールアイドル部の部室に来い」

「…な、なんでそんなことしなくちゃダメなの!」

 

果南が少し緊張しながら返答した。わかるわよ果南。今の愛護に反論なんて怖くて出来ないわ。

 

「来い!」

「は、はい」

 

でも、それを来いの一言で一蹴した愛護は私に弁当箱を渡して帰っていった。

 

 

 

●●●

 

 

 

放課後になった。俺が怒ったことにより三年生の三人は素直に放課後部室にやってきた。

 

正直言ってあんなに怒ったの生まれて初めてなんだよな。俺って怒るとああなるのか。でも、野次馬で見てたAqoursのみんなが今俺にほんの少しだけ怯えてるのがちょっとショック。

 

とか何とか考えてると話が始まった。千歌がスクールアイドルをやめた理由、やらない理由を果南さんに何度も聞くが果南さんは相変わらず東京で歌えなかったからの一点張りでマリーだけでなく千歌までイライラし始めた。

 

「あー、もうイライラする!」

「わかるわ、その気持ち!ほんと、腹立つよねこいつ!」

「二人が勝手にイライラしてるだけでしょ。とにかく、私はスクールアイドルなんてやりたくないの!」

 

果南さんはマリーたちに少し強めに言い返した。

 

「でも、弁天島で踊ってたよね」

「うん」

 

ルビィちゃんが花丸ちゃんに確認するように言った言葉に果南さんは顔を真っ赤にした。

 

「ほら〜、やっぱり未練あるんじゃないの?」

 

マリーが勝ち誇った顔で果南さんに詰め寄った。その時、それを見て何故かダイヤさんが嬉しそうな顔をしたのに俺は気づいた。

 

「そんなことない!私はもうスクールアイドルはやらない!この話終わり」

 

果南さんは見るからに強引に話を切り上げると荷物を持って帰っていった。

 

「まったく、せっかく話し合いの場用意したのに。…ところで、ダイヤさん。何か隠してませんか?」

「えっ、私は何も…」

 

この人…普段嘘つかないんだろうな。嘘つくの下手すぎる。まあ、それがいいところなんだけど。

 

「ダイヤさん、隠しても無駄ですよ」

「だから、私は何も…」

「…言え」

「…えっと」

 

俺はさっき怒った時のように怖いオーラを今度は自力で出してみてダイヤさんを脅す。あまり、いい方法じゃないけど今は致し方ない。おまけで他の人も怯えさせるから乱用は禁止だな、この技。

 

「わかりましたわ。ここでは何なのでウチで話しますわ」

「ありがとうございます。じゃあ、みんな行こうか」

 

俺が普段通りに戻るとみんな安心したようにため息をついた。ていうか、そんなに怖いんだろうか?

 

 

 

●●●

 

 

 

黒澤家に着くと早速ダイヤさんが話してくれた…真相を。

東京のライブの時、マリーは怪我をしていた。そのまま踊っていれば怪我が悪化、最悪の場合事故になる危険性もあったため果南さんは歌わなかったらしい。それが逃げた訳ではないという意味らしい。

 

「でも、それなら怪我が治ってからまた始めれば良かったんじゃ…」

 

千歌が疑問に思ったことを口に出した。確かに千歌のいう通りだ。でも、俺はもう一つの理由に心当たりがあった。

 

「留学か?」

「その通りですわ。ですけどなぜそれをあなたが知ってるんですの?」

「以前、マリーの運転手さんに聞いたことがある。何回も留学の話を断っていると」

 

俺は以前仲良くなった運転手のおじさんが言ってたことを思い出した。

 

「それなら、辻褄が合うんだ。マリーの将来を考えてわざと離れたんだと思う」

「その通りですわ」

 

俺の推測をダイヤさんが肯定したのと同時にマリーが走り出した。

 

「どこへ行くんですの?」

「ぶん殴る!そんなこと一言も相談せずに!」

「おやめなさい、果南さんはずっとあなたのことを見てきたのよ。あなたの立場をあなたの気持ちを…そして、あなたの将来を…誰よりも考えている」

 

ダイヤさんは説得するために言った言葉は逆効果でマリーは再度走り出し、家を飛び出して行った。

 

「ちょっと、鞠莉さん!」

「ダイヤさん、無駄ですよ。てことで、俺もちょっと行ってきます!」

「ちょっと愛護さんまで!外は大雨なのですよ、いったいどこに行くんですの!?」

 

俺も家を飛び出した。果南さんの家に向かって。

 

 

 

●●●

 

 

雨の中、ビショビショになりながら果南さんの家のダイビングショップに着くと雨でお客さんがいないのか暇をしている果南さんを見つけると店の中へ入った。

 

「いらっしゃいま…愛護くん。何の用?もう話は終わったでしょ」

「もう、ダイヤさんから理由は聞きました」

「えっ!?……じゃあ、わかったでしょ。マリーの将来を考えたらこれが一番なの、マリーは歳下とはいえあなたみたいな執事がいるんだよ。私たちとは違うの。あの子の立場を考えると私たちとスクールアイドルをしてるより留学とかした方がいいに決まってる!だから、先生も何回もマリーに留学を勧めてた!」

 

果南さんはマリーのことなんか嫌いになっていない。それどころか大好きだから一歩引いてマリーのことを考えてる。でも、それが…俺は許せない!

 

「…なんだよそれ、マリーの立場とかあんたには関係ないだろ」

「何言ってるの!関係あるに決まってる!」

「はあ!!あんたはマリーの親か!?先生か!?違うだろ!なんで一歩引いて勝手に決めてんだよ!あんたは友達だろ!対等だろ、なんで、そんな特別に扱うんだよ!」

「大切な友達だから特別に扱うに決まってる、幸せになってほしいに決まってる!」

「あんたの特別の扱い方が間違ってるって言ってるんだよ!なんで、割れ物を扱うみたいにしてんだよ!もっと雑にしていいだろ、あんたのワガママ言ってもいいしあいつの想いを聞いてやってもいいだろ!……まあ、本当にあんたが何をしたいかは推測は出来ても答えは俺にはわからない。だから、ちゃんと話し合ってこい。今、スクールアイドル部の部室にマリーがいる。そこでちゃんと対等に話し合ってこいよ、それでも変わらないならもうマリーの勧誘をやめさせる」

 

俺がそういうと果南さんは一瞬迷ったが行くと決め店を出てった。

 

「はあ、興奮したとはいえついつい先輩に命令してしまった」

 

俺はさっきの会話を思い出し苦笑した。

 

 

 

●●●

 

 

 

ーーーマリー視点ーーー

 

 

 

ちょうど、果南と決着をつけようと思って果南を呼ぼうとした時、愛護からメールか来た。果南がこっちに向かってるらしい。いったい、あの子は何を言ったのかしら。

 

「マリー」

 

そんなことを考えてると果南がやって来てくれた。

 

「果南、決着をつけましょう。話して果南の本当の気持ちを果南が私のことを考えてるように私も果南のこと考えてるんだよ…私は将来なんてどうでもよかった。留学なんて興味なかった。当たり前でしょ、果南が歌えなかったんだよ。放っておけるわけないでしょ!」

 

私は涙を流しながら言うと果南は申し訳なさそうな顔をした。私はその顔を思いっきり引っ叩いた。

 

「私が果南を想う気持ちを甘く見ないで!」

「だったら、だったらちゃんと言ってよ!千歌たちと比べたりするんじゃなくてちゃんと言ってよ!」

「だよね」

 

私は果南にほっぺを向ける。私だけ殴るなんて卑怯だからお返しにもらうために。でも、少し怖いから目を瞑った。

でも、いつまで経っても来ないから目を開けるとそこには手を広げてる果南がいた。

 

「ハグ、しよ」

 

果南がそう言うと私たちは一気に泣きながら抱き合った。今まですれ違ってた分を取り返すほどに…

 

 

 

●●●

 

 

果南さんを追って学校に着くと校門前にダイヤさんとAqoursのみんながいた。顔を見る限りうまくいったらしい。

 

「はあ、良かった。それにしても本当に、ダイヤさんはダイヤさんで二人のこと大好きですよね」

「二人のことは頼みましたわよ。私の大切な友達ですから」

「だったら、一緒にどうですか?ダイヤさんもスクールアイドルが好きなのはみんな知ってますよ」

「そんなことは私には出来ませんわ、私は生徒会長なのですから」

「それなら、大丈夫ですよ。マリーがいて、果南さんがいて、この六人がいて俺がいる。みんなで力を合わせれば何でも出来ますよ」

 

俺がそう言うとAqoursのみんなも頷いてくれた。

 

「親愛なるお姉ちゃん。ようこそ、Aqoursへ!」

 

こうしてAqoursは九人になった。

 

…そして、夏祭りを九人で参加し新曲「未熟DREAMER」を歌い会場を盛り上げた。

 

 

●●●

 

 

「ねえ知ってる。私たち三人のグループ名もAqoursだったんだよ」

「へー、そんな偶然」

「いや、偶然じゃないだろ」

「うん、私もそう思う」

「愛くん、どういうこと?」

「俺たち九人はあそこにいる生徒会長さんにまんまとはめられて仲間にさせられてたらしい。本当に困った生徒会長だ」




やっと、Aqoursが九人揃いました!良かったー

さらに今回から愛護に怒ったら怖い属性がつきました。いいのか、これ?とは思ったが後悔はしてません。


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18話:PARTY

 

「パーティーをしようよ!」

「…は?」

 

練習終わり、みんなが帰る支度を始めた時千歌が急に言い出した。だから、俺は訳が分からず、つい素っ頓狂な声が出た。いや、みんなを見る限り声が出たのは俺だけだけどみんな戸惑っている。

 

「ねえ、千歌ちゃん。なんでパーティーやりたいの?」

「だって、果南ちゃんと鞠莉さんとダイヤさんが加わったんだし歓迎会だよ!それと新しいAqoursが今後勢いづくために決起集会みたいな?」

「なんで提案者の千歌が疑問形なんだよ」

「でも、千歌っちいいアイデアじゃない!」

「まあ、そうですわね。私はいいと思いますわ」

「ルビィも」

「まるも」

 

この後、結局みんなが千歌の意見に賛成したことによりパーティーをすることは決まった。

 

「決まったのはいいが場所はどうするんだ?」

「それなら、私たちの家でやりましょ。愛護も使い慣れたキッチンがあるとお料理いっぱい作れるでしょ!」

「ああ、そうするか。じゃあ………おい、マリー!今なんて言った!」

 

マリーが恐ろしい一言を言ったので俺はマリーに叫んだ。

 

「使い慣れたキッチンがあるとお料理いっぱい作れるでしょ」

「その前!」

「私たちの家でやりましょ。のこと?」

 

あっ、やっぱり気のせいじゃなく思いっきり言ってやがった。俺はみんなの方を向くとみんな怒っているような感じがした。ダイヤさんにいたっては顔を真っ赤にしてプルプル震えてる。

 

「へー、愛くんは鞠莉さんと同棲してるんだ」

「おい、曜待て!何を考えてるか知らねえけど、多分今曜が考えてるようなことはしてねえぞ!」

 

俺は冷や汗をかきながら必死に弁解する。

 

「あれ?愛護言ってなかったの?へー」

 

マリーが変な笑みを浮かべて、俺は一気に寒気がした。

 

「愛護。昨日の夜はとても良かったわ」

「おい、お前急に何を言いだすんだ」

「昨日の…夜!?」

 

マリーの発言に俺は冷や汗が止まらなくなり、他のみんなの顔は赤くなりだした。

 

「手際よくて慣れてて本当に愛護はすごいわね」

「慣れてる!?」

「マリー、本当に何の話をしてるんだ!」

「愛護、覚えてないの?」

 

誰から見ても嘘泣きなのはわかる下手くそな芝居をマリーはする。だが、みんな冷静な判断ができなくなっていてついにダイヤさんが俺に迫ってきた。

 

「私たちの仲を取り持ってくださって少しかっこいい人などと思っていた私が馬鹿だったのですね」

 

ダイヤさんが顔を真っ赤にしながら俺に詰め寄ってきた。完全に怒ってる…

 

「いや、待ってダイヤさん。俺は何もしてない無実だ。俺は基本的にマリーに自分から触れたりしてない」

「基本的に…ということは例外があれば鞠莉さんに触ることがあるんですわね。不潔!」

 

バチンと俺が人生で聞いた中で一番綺麗なビンタの音が聞こえると俺の頬は一気に真っ赤になった。

 

「ダ、ダイヤ。冗談なんだけど…本当に愛護は別にやましい事はしてないわ」

 

マリーも俺が殴られるとは思ってなかったのか目が点になりながら言った。

 

「今のは昨日の夜ご飯のハンバーグの話なの」

「ハン…バーグ?」

「そう、昨日の愛護のハンバーグがとても美味しかったの。で、作るとき愛護慣れてて本当に手際が良かったのよ」

「…そ、そんな!愛護さん。本当に申し訳ありませんわ」

 

今度は羞恥心で顔を真っ赤にしながらダイヤさんは謝り始めた。

 

「あっ、いや別に今のはダイヤさんは悪くないですよ。悪いのは…」

 

俺はマリーを睨んだ。そして、マリーは一歩後ずさった。

 

「今日の晩飯に納豆とキムチ入れてやるから覚悟しろよ」

「ちょっと、愛護!それだけはやめて、ごめんなさい。悪かったわよ〜」

 

嫌いな食べ物が出てくると知ったマリーは泣きついてくるが無視する。

 

「話戻るけど、ウチでパーティーをしよう。それでいいか?」

 

俺が確認するとみんな頷いたので我が家でパーティーをすることが決定した。てかマリー!さすがにうるさい!

 

 

 

●●●

 

 

 

そして、休日になりパーティーの日になり俺はみんなが来る時間に合わせて調理を開始するだけ、といっても、ほとんど昨日のうちに仕込みはしてある。メニューはうずら玉子やミニトマトなど彩の良いものを使ったピンチョス、フライドポテト、カルパッチョ、後は昨日買ってきたクラッカーに合わせる三種類のディップ。

飲み物はみんなが買ってきてくれる。

 

「マリー、手伝ってくれ!」

「はーい」

「そこにうずら玉子とかミニトマトとかブロッコリーとか海老とかあるだろ。マリーの好みでいいから見栄えがよくそこの串でピンチョス作ってくれ刺すだけでいいから」

「わかったわ」

 

俺はマリーを呼び料理の指示を出す。絶望的とは言わないにしろ料理があまり得意でないマリーに簡単な仕事を任せて俺は他の作業に取り掛かった。

 

そして、アツアツを食べて欲しいため時間を合わせてフライドポテトを揚げているとチャイムの音が聞こえた。

 

「マリー!」

「わかってるわ」

 

手が離せない俺の代わりにマリーがみんなを出迎える。そして、みんながリビングに入ってもう出来ている俺の料理を見た瞬間「すごい」と言ってくれて少し照れた。

 

「ありがとう、…おっ、出来たな」

 

フライドポテトが揚がったので俺は盛り付けテーブルに乗せた。

 

「よし、完成。お待たせ、始めようか」

「うん!じゃあ、みんな飲み物配って」

 

千歌が指示をだしてみんな飲み物を配りだし、みんなに行き届いた。

 

「えーっと、じゃあ。最初に果南ちゃん、鞠莉さん、ダイヤさん。Aqoursのメンバーになってくれてありがとうございます!これからよろしくお願いします。カンパーイ!」

「「「カンパーイ!」」」

 

千歌が音頭をとり、このパーティーが始まった。

 

「美味しいずら〜」

「花丸ちゃんの口に合って良かったよ。あっ、物足りなかったら言ってくれよ。材料はあるし基本的になんでも作れると思う。何か食べたいものあるか?」

「…う〜ん、のっぽパン」

「それは無理だ」

 

のっぽパンは作れないよ花丸ちゃん。それにしても、本当に美味しそうに食べてくれて作ったこっちがなんか嬉しくなる。

 

「さーて、今からご案内しまーす」

 

俺が花丸ちゃんと会話しているとマリーのハイテンションな声が聞こえた。俺はその声に嫌な予感がした。

 

「ちょっと待てマリー!お前どこ行く気だ!?」

「どこって愛護の部屋」

「いや、そんな当たり前でしょ。みたいな雰囲気出すなよ」

「でも、みんな気になるでしょ!」

 

マリーがみんなに聞くとみんなは一瞬気まずそうにお互いを見合わせた。しかし、否定はしなかった。

 

「ていうことでご案内しまーす」

「ちょっと待てー!わかった。1分待って」

 

俺はマリーを制止させて急いで自分の部屋に向かった。脱ぎ散らかした服とかないし、もちろんエロ本的な物もない。このご時世ネットで見て、検索履歴を消したらどうってことない。…ってそういうことじゃなく!まあ、とにかくやましい物はないけど自分の部屋に女子が急に入られるってなると緊張して…いやマリーいつも入ってるじゃん。じゃあ、大丈夫だろ。

 

俺は確認するのをやめてマリーの元へと戻っていった。

 

「別に入っていいぞ」

「愛護、どうしたの?さっきとは全然態度が違うけど。まあ、断っても入るけど」

 

そういうと、マリーはみんなを連れて俺の部屋へ入っていった。俺は一人リビングで自分の料理を食べ始めた。

 

そして、俺の部屋に入ってから数分後マリーが猛スピードで戻ってくると俺に抱きついた。

 

「お前、いつも抱きつくなって言ってるだろ!てか、なんで抱きつくんだよ!」

「えーっと…それは…」

 

みんなも後を追って現れたルビィちゃんの手には俺のノートパソコンがあった。

それを開くとパソコンの画面が映りそこには満面の笑みのマリーがいた。

 

「あー、それな。一回電源つけたまま少し部屋を開けたらマリーが勝手に壁紙にしたんだよな。変えるのも面倒だしそのままにしておいたんだよ」

「鞠莉さん、それが嬉しかった見たいです」

「そうか。てか!どうやってパスワード解いた!?」

「乙女の感よ」

「そうかよ」

 

まあ、さすがに生年月日にしといた俺が馬鹿だったな、後で変えよう。

 

「じゃあ、みんなでゲームでもする?私、トランプとか持ってきたよ」

 

曜がカバンからトランプやウノ、それに人生ゲームを取り出した。

 

「何入れてるんだと思ったら人生ゲームだったのか」

「ゲームと言えば、愛護はテレビゲーム持ってるわよ」

「ああ、持ってるぞ。マリカーとかなら四人まで出来る」

「テレビゲーム!!」

 

テレビゲームに反応し花丸ちゃんがテンションを高くする。

 

「噂では聞いたことがあったけど本当に実在したなんて…感動ずら」

「あっ、花丸ちゃんの家は家電とかないんだったな。前にパソコンを見て驚いてたし。じゃあ、やってみるか?」

「えっ!?でも…おら、前みたいにしちゃうかも」

「大丈夫。そんなことにならないように一緒にやるから」

 

俺はそう言って自分の部屋からWiiUを持ってきてリビングのテレビにつないだ。

 

「じゃあ、始めるか。ゲーム初心者に派手な操作とか難しいと思うから桃鉄にするか」

 

俺はテレビとWiiUの両方に電源を入れた。

 

「未来ずら〜」

「はは、言うと思った。じゃあ、操作方法教えるな」

 

俺は操作方法を教えて、花丸ちゃんが操作をすると自分のキャラが動いたことにまた「未来ずら〜」と言って感動した。そして、ある程度操作を覚えて慣れてきたので

 

「じゃあ、対戦してみるか。誰かやりたい人いるか?俺は花丸ちゃんの補助するから後三人誰かやるか?」

「はーい、私がやるわ。愛護が補助に入るんだったら花丸ちゃんには悪いけどこの前のマリカーのrevengeを愛護の代わりに花丸ちゃんにさせてもらうわ」

「堕天使ヨハネ降臨!付き合ってあげるわ。まあ、ぶっちぎりで私が勝つけどね!」

 

マリーと善子ちゃんが元気よく入ってきた。すると、正直思いもよらない人が入ってきた。

 

「あの、愛護さん。そのゲーム操作は難しいのですか?どのようなゲームなのですか?」

「難しくはありませんよ。簡単に言えば鉄道会社の社長になってすごろくの要領で全国を旅して物件を買い最終的な総資産を競うゲームです」

「そうですか。では、私も参加しますわ」

「えっ!ダイヤさんってゲームするんですか?あまりイメージがないんですが」

「あなたのイメージ通り、ゲームなんて片手で数えられるぐらいしかやったことはありませんわ。でも、こんな機会ですしやってみますわ」

「わかりました。操作はわかりますか?」

「説明書を貸していただければ大丈夫ですわ」

「わかりました」

 

俺はダイヤさんに説明書を渡した。

 

「…なるほど、操作もルールもわかりましたわ。このカードの使い所が大事なようですわね。お待たせしましたわ、始めましょう」

「はい。じゃあ、スタート」

「頑張ってお姉ちゃん」

「ダイヤ、初心者だって手加減しないわよ」

「もちろんですわ」

 

こうして、ゲームがスタートした。

結果は…

 

1位 ダイヤさん

2位 花丸ちゃん(&俺)

3位 マリー

4位 善子ちゃん

 

「嘘…だろ」

 

やっぱり、ダイヤさんは頭がいいのか無駄がなく物件を買っていきそのまま勝ってしまった。

 

「皆さん、もう少し先のことも考えて行動すべきですわ」

 

俺たちは負けたのに加えてダメ出しをされて落ち込んだ。

 

…それから俺たちは順番に様々なゲームをしたりして楽しんだ。そして、日が暮れていきお開きの時間になった。

 

「そろそろ、日が暮れてきましたし帰りましょうか」

「うん。じゃあ、最後に一言。千歌ちゃん!」

「えっ!?また私?えー、それなら〜愛くん。お願い!」

「俺かよ!」

「だって、愛くんがいないと9人揃わなかったかもしれないんだよ。だから、愛くんにお願いしたいな」

「わかったよ。グダグダでも文句言うなよ」

「うん!」

 

俺は大きな深呼吸をする。

 

「よし、それじゃあこれからはラブライブ優勝に向けてみんなで頑張ろう!そして、浦の星の統廃校を阻止しよう!行くぞ、Aqoursー」

「「「サンシャイン!」」」




書いてて思ったんですけどAqoursのメンバーってどのくらいの頻度でゲームするんだろう。

花丸ちゃん:見たことも触ったこともない
ダイヤさん:見たら触ったりしたことあるけどほぼ0に等しい
善子ちゃん:暇つぶしにやる程度
マリー:この小説的に暇があれば愛護とやる

って感じなんですけど他の五人が全然わからない


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19話:勉強会

 

もうすぐ、夏休み。ラブライブに向けてAqoursがレベルアップするにはこの夏休みを有意義に使うことが必須条件だ。9人になったばかりのAqoursには練習時間は他のグループよりも多く取らなければならないはず。でも、そう思っていてもそれを阻むイベントがある。それは…

 

「今度の期末テスト。赤点あったら夏休み中補修が入るからな。みんな明日からのテスト期間しっかり勉強するように」

 

そう、期末テストだ。そして明日からのテスト期間で部活は出来なくなる。まあ、別に俺は赤点取る心配はほとんどない。ていうか、普通は赤点は取らない物だ。しっかり授業を聞き隙間時間に復習したら高得点は無理でも50点は取れる。部活は言い訳には出来ない。でも…ここにいるんだよな、赤点取りそうな奴。

 

「愛く〜ん。やばいよテストだよ!」

 

そう、千歌だ。

 

「今度赤点取ったら夏休み練習出来なくなるんだよ!」

「そうだな…じゃあ、勉強しろ」

「そうだね…じゃあ、まず…その…」

「何だ?」

「テスト範囲教えてくれないかな?」

 

テヘッとちょっと誤魔化す風に笑って俺にお願いしてくる。

 

「ちゃんと、授業は聞いとけ!」

 

俺は千歌の脳天にめがけて軽くチョップをする。千歌は「イタっ」と言った後、両手で頭を抑えた。

 

「愛くん、その辺にして教えてあげたら?」

 

一部始終を見ていた曜が話に入って来た。

 

「甘やかすのはどうかと思うぞ」

「でも、千歌ちゃんいないと練習が出来ないんだし」

「まあ、それもそうだな。わかった、テスト範囲教えるよ。…でもさ曜」

「何?」

「テスト範囲教えただけで赤点回避できると思うか?」

「えーっと…」

 

俺の質問に曜は苦笑する。

 

「無理ね!」

 

すると、曜の代わりに梨子が結構強めに否定した。

 

「梨子ちゃんひどい!」

「だったら、ちゃんと勉強しなさいよ。この前の中間テストだって私と曜ちゃんが教えて何とか免れたんじゃない」

「そうだけど…」

 

梨子ちゃんに怒られ少し千歌は拗ねた。

 

「あー、じゃあ、今回も曜と梨子が教えたら大丈夫か?」

「うん、頑張ってみるよ」

「千歌ちゃん、厳しくいくわよ」

「は〜い。じゃあ、部室に行こう!テスト前最後の部活だから張り切って行くよ!」

 

千歌はさっきまで拗ねていたのに急に元気を出して教室を飛び出していった。

 

 

 

●●●

 

 

 

「みなさん、期末テストの対策はバッチリですの?いつも赤点を取らないのが当たり前ですけど今回は夏休みの練習時間にひびきます。くれぐれも赤点は取らないように対策はバッチリしておいてください」

 

練習が終わった時ダイヤさんが俺たちに忠告した。

 

「ダイヤ、そのことなんだけど休学してたから今回不安なんだよね。教えてくれる?」

「そんなことでしたら構いませんわ」

「はーい、果南とダイヤが勉強会するなら私も参加するわ」

「鞠莉さん、これは遊びじゃないんですよ」

「えー、私もダイヤに教えて欲しかったのに」

「わかりました。でも、邪魔だけはしないでください」

「もう、ダイヤは私を何だと思ってるの」

 

マリーはほっぺを膨らませ拗ねてるように見えるが嬉しそうな顔をしてる。多分、3人で勉強会をするのが久しぶりで楽しみなのだろう。ダイヤさんも果南さんも嬉しそうだ。

 

「あっ、この際だしついでに聞くけどルビィちゃんたちは大丈夫か?」

「はい、ルビィはいつも花丸ちゃんと復習してるので大丈夫です」

「バッチリ大丈夫ずら」

「じゃあ、大丈夫だな。千歌も曜と梨子ちゃんが見てくれるし。後は善子ちゃんは?」

「ギクっ!」

 

俺は珍しく静かにしてる善子ちゃんに話しを振ってみると誰がみてもわかるようにあからさまに動揺し始めた。

 

「まさか…」

「そ、そうよ!ちょっとピンチよ!何よ悪い!」

 

何でちょっと逆ギレ気味なのかはおいといてまずいな。

 

「ルビィちゃんと花丸ちゃんで善子ちゃんに教えてあげられるか?」

「えーっと、ルビィは人に教えるほど頭良くないです」

「まるもちょっと自信ないずら」

「そうか…じゃあ、今回は俺が教えるわ」

「愛護さん、そんなことして自分の勉強は大丈夫ですの?」

「まあ、隙間見て勉強します。てことで善子ちゃん、厳しくいくからな!」

「は、はい」

 

こうして、みんなのテスト対策方法が決まった。

 

 

 

●●●

 

 

 

そして、日曜日。この前決めた対策通りに今日は千歌、曜、梨子は千歌の家、ルビィちゃんと花丸ちゃんは黒澤家で、果南さんたち3年生トリオはもう少ししたらウチに集まる。そして、俺は今から善子ちゃんの家に行ってマンツーマンで徹底指導をする。

 

「じゃあ、善子ちゃんの家にいってくる」

「はーい、ちゃんと善子ちゃんの勉強見てあげてね」

「ああ」

 

俺は家を出るとバスに乗り善子ちゃんの家に向かった。

 

 

 

●●●

 

 

 

「部屋番号はこれで合ってるよな」

 

善子ちゃんの家はオートロックマンションだ。以前マンションの前までは来たことはあっても部屋までは来たことがなかったので教えてもらった部屋番号をエントランスの機械に不安になりながら打つ。そして、部屋に繋がったらしい。

 

「はい」

 

女性の声が聞こえ俺はさらに緊張する。

 

「えっと、津島さんのお宅ですか?」

「はい」

「えっと、善子さんと同じスクールアイドル部の大川です」

「あ、愛護!今開けるね」

「…え!?」

 

知らない女性と思っていたのは善子ちゃん本人だったらしい。機械越しなのと緊張で分からなかった。まあ、俺は無事開いたので俺は津島家に向かった。俺が善子ちゃんの家があるフロアに着くと善子ちゃんがわざわざ玄関の前で待っていてくれた。でも、その顔はムカつくほどニヤニヤしている。

 

「おはよう、善子ちゃん」

「おはよう。それよりさっきの何、緊張しすぎよ」

「オートロックのマンションって何度来ても慣れないんだよ」

「ふーん」

 

俺の言い訳は興味ないらしく善子ちゃんは軽く流しながら玄関を開けた。

 

「どうぞ」

「おじゃまします」

 

俺は家に入りそのまま善子ちゃんの部屋に案内され入ると部屋の中は基本的に黒や紫色で時折よく分からないグッズなどが目に入った。たぶん、堕天使グッズだと思う。でも、俺はあまり気にせず言われたところに座った

 

「ねえ、この部屋見て何も思わないの?」

「ん?」

 

俺は質問の意図がわからず首をかしげる。

 

「こんなに変なグッズもあってひかないの?」

「別に善子ちゃんがこういうの好きだって知ってるしひかないぞ」

「あ、ありがとう」

「うん、で、始めるぞ。何がわからないんだ?」

「えっと…ここ」

「ここか、ここはな…」

 

こうして勉強会が始まった。

 

 

●●●

 

 

ーーーヨハネ視点ーーー

 

 

今、期末テスト対策のために先輩の愛護が来てくれたのはいいんだけど……何でそんなに余裕なのよ!

私だけなんかドキドキして馬鹿みたいじゃない!

 

「…子ちゃん、善子ちゃん!」

「えっ!?」

「ぼーっとしてたぞ」

「ごめん」

「疲れたのか?…じゃあ、コンビニで甘いものでも買いに行こうか。ずっと部屋にこもってるのも疲れるだろ」

「…うん」

 

愛護の提案で私たちはコンビニに行くことになった。

 

「それにしても、内浦の方と違って市街地の方はコンビニとかあって便利だよな」

「そ、そうね」

 

歩いてると男女二人で歩いてる人たちはやっぱりカップルに見える。つまり、ヨハネと愛護もそう見られてるってこと!?

 

「善子ちゃん。またぼーっとしてるぞ」

「えっ!な、何でもないわよ。ていうかヨハネ!」

「あっ、いつも通りに戻った。そういえば、善子ちゃんってさ普段どんなゲームするんだ?」

「ゲーム?」

「うん、この前した時結構やってる人の動きをしてたからさどんなゲームしてるんだろうと思ってさ」

「えーっと、色々やるけど戦闘があるゲームが多いわよ」

「モンハンとかやる?」

「やるけど…」

「ほんとか!」

 

愛護がヨハネの肩を掴んだ。それにしても今、見たことないほど嬉しそうな顔してるわね。

 

「どうしたの?急に」

「あっ、いや。ここに来てから当たり前だけど女の子ばかりだろ、だからゲームの話とか全然出来なくてさ」

「まあ、気持ちは分からなくもないけど…それよりそろそろ離してくれない」

「あっ、ごめん。つい興奮して」

 

愛護は手を離した。

 

「そんなに嬉しいなら、後でやる?」

「ダメだ。今日は勉強するために来たんだから」

「ウッ!わかったわよ」

 

せっかくヨハネが誘ってあげたのに。私はわざと拗ねてみる、すると頭の上に愛護が手を乗せて優しくポンポンと叩いた。

 

「でも、今度一緒にやろうな」

「…絶対よ。誓える?」

「ああ、誓う誓う」

「堕天使との契約は破棄できないんだからね!」

「わかった」

「ていうか、いつまでヨハネの頭を触ってるのよ。堕天使ヨハネの頭は高貴なものなんだから!」

「はは、悪い悪い」

 

注意してるのに愛護は全然笑顔が崩れない。

 

「着いたぞ。お詫びに何でも好きなもの買ってやる」

「本当!?」

 

愛護がそう言ったのでヨハネは一番高いアイスを買ってもらった。愛護は棒アイスを買っていた。コンビニではドライアイスを入れてくれないので急いで帰りもう一度数分冷凍庫に入れた後食べた。

 

「美味いか?」

「美味しいわよ」

「それは良かった。…あっ、当たった」

 

愛護がそう言うと棒アイスの棒をこっちに向けると確かに「あたり」と書かれている。

 

「初めて見た」

「えっ!」

「棒アイスって当たるのね」

「えっ、まじかよ」

「だって、昔から運が悪かったんだから仕方ないでしょ」

「いや、そうなのか。じゃあ、今度からアイス買いに行く時は俺が選んでやるよ。そしたら当たるかもな」

「それって、これからアイス買う時は一緒に来てくれるってこと?」

「まあ、その時一緒に居たらな」

「じゃあ、契約よ。さっきも言ったけど破棄出来ないわよ」

「ああ、じゃあ続きやるか」

「うん」

 

こうして二人の勉強会は順調に進んで愛護が帰る時間になり玄関で今、愛護は靴を履いている。

 

「ありがとう、教えてくれて」

「別にいいよ。それより、テストの名前にヨハネって書いたりするなよ」

「しないわよ!流石に」

「でも、ノートとか全部ヨハネって書いてあるしさ」

「…だって、ダサいし」

「……そうか、俺も名前にコンプレックスがあった時代があってさ」

「何で?いい名前じゃない」

「だって男なのに「愛」って入ってるんだぞ、女みたいって小学生の頃からかわれてさすげー嫌だった」

「そう」

「でもさ、親父にさこの名前に込められた意味を教えてもらったらさ逆に誇らしく思ってきた。だからさ善子ちゃんの「善子」も絶対素晴らしい意味が込められてる。だから、好きになれとは言わないけどダサいなんて言ったらダメだ。それにさ」

「…なに?」

「「善子」って名前俺は結構好きだよ」

「!そ、そう。じゃあ特別にヨハネが許可してあげる」

「なにを?」

「「善子」って呼び捨てにするの」

「…わかった。じゃあ、またな善子」

 

そう言って愛護は帰っていった。

 

「…初めて名前褒められた」

 

 

 

●●●

 

ーーーおまけーーー

 

「ただいま」

「おかえり、愛護!」

「おかえり」

「おかえりなさい」

 

俺が帰ってきたことを知らせるとマリーの他に果南さんとダイヤさんも返してくれた。二人は今日ウチで夕ご飯を食べて帰るらしい。多分マリーが強引に誘ったのだろう。ちゃんと、帰ってくるときに連絡をもらったので途中で食材も買ってきた。

 

「今から、用意しますね」

「何か手伝えることがあったらいってください」

「あっ、はい。でも今日はお客さんなのでゆっくりしといてください」

 

俺はそう言って調理にとりかかった。すると、リビングからマリーが声をかけてきた。

 

「ねえ、愛護。善子ちゃんは大丈夫?」

「ああ、善子はちゃんと教えたらすぐ理解してくれたよ。だから、頭悪い訳ではないと思う」

「へー、それにしても愛護。今朝まで善子ちゃんは「善子ちゃん」呼びだったのに何で「善子」になってるの?」

 

何でそんな些細なことを聞くのかと一瞬戸惑ったがそれよりマリーが流しそうな一言によく気づいたのがびっくりした。でも、何でちょっと機嫌悪いんだ?

 

「よく気づいたな。でも、大したことはないぞ。そう呼んでいいって言われたからな」

「へー、いつも「ヨハネ」って呼ばれたがってる善子ちゃんに何したらそんなことになるの?」

「何って…人聞きの悪い事を言うなよ。ただ…仲良くなったからだと俺は思う」

「へー、仲良く。良かったわね、そういえば愛護は善子ちゃんみたいな子が好きだったわね」

「えっ!?愛護さんは善子さんが好きなんですか?」

 

マリーは急に怒りだし吐き捨てるように言った。それを聞いてダイヤさんは驚き、果南さんは苦笑している。

 

「いや、その別に好きって訳ではないんですがあの異性に対して好きなタイプってあるじゃないですか。外見とか性格とか。その外見の方で善子みたいな子は好きです。ってマリー、何でこんな話するんだ?」

 

俺はマリーに質問をしたが返答はなし。それから、ずっと無言だったが食事を食べるとお気に召したのか機嫌は何とか戻ってくれた。

 

 





書いてて今度はAqoursのメンバーの学力がわからないので想像しました。公式では善子ちゃん頭が良いとは書かれてるんですが…アニメ見て思うけどアホの子ですよね。
そして、またまたどうでもいい設定追加ですが愛護は外見だけで言うとAqoursの中で善子ちゃんがタイプです。


それにしてもオートロックマンションって本当に緊張しますよね。私なんか高校の頃友達の家行くときは着く直前に連絡入れてエントランスまで迎えにきてもらって二人で一緒に入る方法をしてました。


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20話:合宿1

タイトルあってないかもしれません


 

「あーつーいー」

「ずらー」

「天の業火に闇の翼が…」

「夏なんだから暑いのは当たり前だろ。さらに暑く感じるからやめてくれ」

「善子ちゃんはその服やめたらいいのに」

 

テストを無事に乗り切って夏休みが始まった初日。俺たちはダイヤさんに呼ばれて屋上に来ていた。集まって早々千歌、花丸ちゃん、善子は暑さにやられている。そのくせ、善子にいたっては暑そうな真っ黒のローブを着ているからルビィちゃんに指摘されてる。

 

「あの、ダイヤさん。屋上に集まれって何かあるんですか?」

「よくぞ、聞いてくれましたわ。今日からいよいよ夏休み」

「summer vacationと言えば〜」

「はい、あなた!」

 

ダイヤさんが適当に千歌に指を指す。ていうか、マリーはわかるけどダイヤさんもテンション高いな。

 

「えーっと…海…かな?」

「夏って言えばウチはパパが帰ってくるんだ」

「まるはおばあちゃんの家に行くずら」

「夏コミ!」

 

千歌が答えると刺されてもいない曜と花丸ちゃん、善子も答えた。曜はお父さんが好きなのかかなり嬉しそうだ。

 

だけど、この答えを聞いた瞬間ダイヤさんが震えだした。そして…

 

「ぶっぶーですわ!あなたたち、それでもスクールアイドルですの!?片腹痛い、片腹痛いですわ!」

 

怒りと呆れが混じったような感じで叫ぶダイヤさん。そのあまりの迫力に俺含め他のみんなは「ゴクリ」とツバを飲み込んだ。

 

「スクールアイドルの夏の過ごし方を私がお教えしますわ!さあ、部室に行きますわよ!」

 

すると、ダイヤさんは部室に向かって歩いて行った。

 

「え!?ここで集まった意味は!?」

「うーん、多分ダイヤの雰囲気作りじゃないかしら」

「…まじかよ。そのためだけにこの暑さの中集まったのかよ。あの人、ほんとはアホなんじゃないの?」

「愛護、気づくの遅いわね。ダイヤは学力は高いけど正真正銘おバカさんよ」

「あっ、そうなんだ」

 

今までの上品で和美人って感じのダイヤさんのイメージが崩れる衝撃の事実を伝えられ、俺はどっと疲労が溜まった気がした。

 

「何をしているのですか?早く行きますよ」

「あー、はい」

 

俺は面倒ながらもダイヤさんについて行った。

 

 

 

●●●

 

 

 

部室に着くとダイヤさんは自分が持ってきたカバンの中から巨大な模造紙を取り出すとルビィちゃんにホワイトボードに貼り付けさせた。そこにはスケジュールのようなものが書かれていた。

 

「いいですか、皆さん。夏と言えば…はい、ルビィ」

「うーん、多分ラブライブ!」

「流石、我が妹。可愛いでちゅね〜、よく出来ましたね〜」

「頑張ルビィ!」

 

な、何だこれ。俺たちは何を見せられてんだ。見たこともないダイヤさんの言動に俺はさらに疲労が溜まる。

 

「何、この姉妹コント」

「コント言うな!」

 

善子の呆れながらの一言に本気で反論するダイヤさん。頼むから自重してくれないかな?今までとの変わりっぷりについて行くのしんどいんだが。

 

「夏と言えば、ラブライブ!そのためにAqoursはこの特訓を行います!これは私が独自のルートで手に入れた。μ'sの合宿のメニューですわ」

「すごい、お姉ちゃん」

 

すると、ダイヤさんは先ほど貼り付けてた模造紙を指差した。その中には遠泳10km、ランニング10kmなど見るからにオーバーワークな練習メニューが書かれていた。それを見た他のメンバーも引いてる。だが、果南さんだけ「なんとかなる」とか言い出した。化け物かよ。

 

「熱いハートがあればなんでも出来ますわ」

「ふんばルビィ」

 

ダメだこの姉妹。ラブライブへの情熱はすごいけど周りが見えてない。

 

「なんで、こんなにやる気なんだろう」

「たぶん、ずっと我慢してた分の思いがシャイニしたのかも」

 

曜の疑問にマリーが答える。

 

なるほどな、ルビィちゃんもルビィちゃんでお姉さんとスクールアイドル出来て嬉しいんだろうな。

 

「さあ、外に行って始めますわよ!」

 

ダイヤさんが張り切って号令を出したがみんな量が量なのであまり外に出る気がない。

 

「そ、そういえば。千歌ちゃん、海の家の手伝いがあるっていってなかったー」

「あー、海の家を手伝うように言われてるのです」

 

千歌と曜がほぼほぼ棒読みで言った。たぶん、逃げる口実だろうな。

すると、果南さんも「私も」と言い出した。千歌たちと違って棒読みじゃなかった。

 

「そんな〜、特訓はどうするんですの」

「残念ながらそのスケジュールでは…」

「もちろん、サボりたい訳ではなく…」

 

曜、それを言うと逆に怪しまれるぞ。

 

しかし、ダイヤさんは文句を言わずその代わりに「見抜いてますわよ」と言わんばかりに悪魔かと思うほど気持ち悪い笑みを浮かべた。やめてくれ、俺の知ってるダイヤさんが消えていく…

 

「じゃあ、昼は全員で海の家を手伝って涼しいmorning&eveningに特訓をしましょう」

「しかし、それでは練習時間が…」

「じゃあさ、夏休みだしウチで合宿しようよ」

「「「「「合宿!?」」」」」

 

千歌が急に合宿を提案したため全員が同時に聞き返した。

 

「ほら、ウチ旅館でしょ。一部屋借りればみんな泊まれるでしょ」

「移動がないぶん、早朝と夕方で練習時間を取って練習できるもんね」

「でも、急にみんなで泊まりに行って大丈夫ずらか?」

「なんとかなるよ!じゃあ、決まり!今日はこれで解散にしよ」

「…まあ、そうですね。では、千歌さん頼みますわよ」

「はい、任せてください!」

「それでは、皆さん明日の朝4時に集合ということで」

「「「お、おう」」」

 

みんなもちろん4時なんて無理だと思いながらもダイヤさんの雰囲気に飲まれ返事してしまった。

そして、解散しみんなが部室から出て行く中、俺は梨子が珍しくぼーっとしてるのに気づいた。

 

「梨子、どうかしたのか?」

「えっ、何でもないよ」

「そうか、ぼーっとしてるのが珍しいから心配になってさ」

「大丈夫だよ。ちょっと暑さでぼーっとしてただけ」

「そうか、明日も早いらしいし今日は休んどけよ」

「うん、わかった。バイバイ愛護くん」

 

梨子は笑顔で俺に手を振ると帰って行った。そして、入れ替わるように俺が出てこないのを心配してマリーが戻ってきた。

 

「愛護何してるの?帰るわよ」

「ああ、悪い。今行く」

 

俺は荷物を持ち歩き出した瞬間、ポケットの中でスマホが鳴った。

 

「ん?誰だろ。あっ、旦那様からか」

「旦那様?」

「お前のお父さんだよ」

「なんで、旦那様?」

「なんでって、お前が俺が仕えてる「お嬢様」だろ。それで、雇い主であるお前のお父さんが「旦那様」だ。別におかしくないだろ。あと、そう呼んでくれって言われたし」

「今、その「お嬢様」に悪びれもなくお前って言ってたわよ」

「いつものことだろ」

 

俺はいつまでも出ないのは失礼なのでマリーとの会話を止め電話に出た。

 

『あ、愛護くんかい?』

「はい、愛護です。すいません、出るのが遅くなって」

『別にいいよ。それよりマリーは近くにいるかい?マリーに電話しても出ないんだけど』

「いますよ。ちょっと待ってください…おい、マリー。旦那様が電話したけど出ないって言ってるぞ」

「あっ、今日家に忘れたのよ」

「そうか…旦那様、マリーはケータイを忘れたので出られなかったらしいです。それより、ご用件は?」

『あっ、明日久しぶりに午前中と昼過ぎぐらいまで仕事で内浦に行くんだ。時間があれば一緒に食事でもと思ってね。最近の二人の話も聞きたいし』

「そうですか。ちょっと待ってください。マリーに聞きます…マリー、旦那様が明日帰ってくるから一緒に御飯どうだって聞いてらっしゃる」

「うーん、明日から合宿だし断るわ」

「いいのか?」

「うん、自分で断るから電話貸して」

「ああ、…旦那様、マリーと変わりますね」

『わかった』

「ciao、パパ」

『ciao、久しぶりだねマリー。元気にしてるか?』

「大丈夫よ。ありがとう。パパ、食事の件だけど私、school idol始めたの。そして、明日から合宿。だから、断らせてもらうわ。でも、愛護だけでも寄越すわね」

『わかった。明日、家に迎えを寄越すよ』

「うん、じゃあね」

 

そう言ってマリーは電話を切った。

 

「いや、待てよ!何勝手に俺だけ行くことになってんだよ!」

「だって、パパが可哀想だし」

「てか、お前はいいのかよ。旦那様、仕事で世界中行き来してて会える日がただでさえ少ないのに」

「うん、寂しくないって言えば嘘になるわ。でも、私にはAqoursのみんながいる。それに愛護もいるわ。だから、今は大切な仲間の方を優先したいの」

「わかったよ。明日、俺は行くのは夕方ぐらいになるってみんなに伝えとくよ」

「うん、ありがとう愛護」

 

こうして、合宿が決まったりマリーの父親と食事の約束をしたり波乱な夏休みが始まった。

ていうか、自意識過剰かもしれないが合宿初日から俺いなくて大丈夫か?

 

 





当たり前ですけど、マリーパパの口調がわからないので捏造しました。
書き終わったあと、マリーパパはマリーのようにカタコトかもしれないと思ったり思わなかったり


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21話:合宿2

今は、午前6時俺とマリーは朝ご飯を食べている。

 

「本当に良かったのか?4時に行かなくて」

「大丈夫。愛護も朝4時集合はやりすぎだと思うでしょ」

「まあ、確かに…」

「それに、言い出しっぺのダイヤだって絶対に4時には来れないわ」

「そうか?まあ、大丈夫ならいいんだ」

 

こうして、俺たちはゆっくり朝食を済ませた。

 

「じゃあ、流石にもうそろそろ行くわ。パパによろしくね」

「ああ、行ってらっしゃい」

 

マリーは家を出て行った。その後俺は合宿の用意を確かめたあと、数日家を空けるので念入りに部屋を掃除し、しばらく経つと旦那様が手配してくださった迎えの方が来た。

 

 

 

●●●

 

 

 

「相変わらず良いホテルだよな」

 

旦那様との待ち合わせ場所であり旦那様が経営するホテルチェーンの一つの「ホテルオハラ」についた俺はホテル内のレストランで旦那様がくるのを待っていた。

 

「ていうか、ここで会うならわざわざ迎えなんて寄越さなくてもいいと思うんだが…」

 

前日に迎えを寄越すとだけ連絡されどこに行くか知らなかった俺は目的地に着いて、そう思った。

 

「そうか、確かにここなら君一人でも来れたね」

 

俺は一人言のつもりで言っていた言葉に返答が帰ったことに驚きながら声のする方を見るとそこには旦那様がいた。

 

「あ!旦那様お久しぶりです」

 

俺は立ち上がって頭を下げ挨拶をした。

 

「うん、やっぱりいい響きだね「旦那様」。でも、愛護くん、硬い硬い」

「いや、しかし」

「私と君は遠いけれども親戚なんだ。硬くならなくてもいい」

「はあ」

「まあ、それはおいおい慣れていくとしよう。さて、早速だけどマリーと君の話を聞かせてくれないか?」

「あっ、はい」

 

俺は最近のマリーのことを思い出す限り全てを話した。もちろん、スクールアイドルをまた再開したことも。

 

「そうか、やっぱりスクールアイドルが好きだったのか」

「はい」

「私は良かれと思って留学を勧めたのだが…」

「いえ、旦那様。留学を勧めたことは絶対に間違いではないです」

「というと?」

「俺はあくまで同じ高校生としてしか相談に乗れません。だから、彼女のやりたい事を後押ししました。けど、やりたい事と役に立つ事はイコールじゃありませんから。もしかしたら、将来留学を切り上げた所為で彼女が苦労することがあるかもしれません」

「まあ、確かにそうだね」

「でも…そんな時も彼女を支えようと思います」

(えっ、もしかしてマリーと愛護くん付き合ってるの?)

「執事として」

(あっ、そういうこと…びっくりした。流れ的にマリーをくださいって言うのかと思った。それにしても…)

「あの時、泣き虫だった君がここまで成長するなんて」

「あの時?」

「ほら、十数年前にウチに君と君のお母さんが遊びに来ただろ?ちょうど鞠莉が内浦に引っ越す直前だ」

「いや、覚えてないです」

「そうか、まあまだ小さかったからね」

「はあ…」

 

俺とマリーが昔会っている。そんな話聞いたことがないしマリーからも聞いたことがない。まあ、マリーも忘れてるかもしれないのか。

驚きはあったもののやはり思い出せないので考えるのをやめた。

そうして、その後も話が続いたが旦那様の次の仕事の時間になったので終了した。

 

「今日は楽しかったよ。今度はマリーと一緒に話そう」

「はい」

「じゃあ、合宿頑張るんだよ」

 

そう言って旦那様はまたどこかへ行ってしまった。

 

「さて、そろそろ俺も行きますか!」

 

俺は荷物を持ち、みんなのところに向かった。

 

 

 

●●●

 

 

愛護がホテルから出る数時間前の昼ごろ砂浜では…

 

ーーー曜視点ーーー

 

 

「なんで、こんな時に限って愛護さんがいないんですの!?」

 

ダイヤさんは昨日、朝4時にここに来るために早く寝た(結局、起きれなかった)ため愛くんの連絡を見てなかったらしく……調理担当がいないことに今気づいて叫んでいる。

 

「もう!ダイヤうるさい!」

「仕方ないじゃありませんか!恥ずかしながら私たち愛護さんより料理が下手なのですよ」

「本当に女の子顔負けよね〜」

「なんで、そんな悠長なんですか!?」

「だって、愛護が来れないのは今日だけだもの今日を乗り切れば明日からは愛護がなんとかしてくれるわ」

「…それもそうですわね」

 

ダイヤさんが鞠莉さんの主張に納得すると急にやる気を出し始めた。

 

「やりますわよ!千歌さん、梨子さん。あなたたちはこれを…」

 

ダイヤさんが千歌ちゃんと梨子ちゃんに渡したのは大きな箱のようなものだった。箱にはこの店のことが書かれていてそれを被らせた。

 

「あの、ダイヤさん。これは?」

「これで、この店をアピールするのですわ!そして、果南さん!」

「何?」

「スクールアイドルも商売も必要なのは宣伝。あなたのグラマラスなボディでお客を集めてください。他の砂利どもでは魅力に欠けるので」

 

ダイヤさん、ひどいなー。確かに一番果南ちゃんが色っぽいけど…

 

「そして、鞠莉さん、曜さん、善子さん」

「ヨハネ!」

「あなたたちには料理を担当してもらいますわ。もちろん、愛護さんみたいになんでも美味しく作れるとは思っていませんわ。だから、一人一つずつ得意料理を作っていただきその三つで今日は乗り切りますわよ」

「まあ、それなら何とか出来るかな。一つでいいならそれに集中できるし」

「よろしい。では、都会の方々に負けない料理でお客様のハートを鷲掴みにするのですわ!」

「うん、面白そう」

「堕天使の腕の見せ所ね」

「じゃあ、Let's cooking!」

「「おー!」」

 

私たち三人は大きな声で気合いを入れると私は厨房に入り料理を始めた。焼きそばを作り薄焼き玉子を乗せ、ケチャップで絵を描けば…

 

「美味しいヤキソバ、ヨーソロー!」

 

完成した私は二人の様子を見ると…

 

「堕天使の泪、降臨!」

「シャイ煮、complete」

 

鞠莉さんは何か色々詰め込んだ鍋をかき混ぜているし善子ちゃんは黒い球体を作っていて二人は悪い魔女の実験みたい…

 

結局、お客さんは増えず来てくれたのは千歌ちゃんが呼んでくれたクラスメイトと数人だけだった。

 

 

 

●●●

 

 

 

俺は夕方、十千万に来るとちょうどみんなが水で体についた砂を落としているところだった。

 

「あー、間に合わなかったか」

「あ、愛くん。お疲れ様」

「そっちもお疲れ。どうだ?海の家と練習の両立は」

「あー、まあまあって感じかな」

 

俺が千歌に聞くと千歌は苦笑した。俺はその理由を聞こうとしたがマリーの俺を呼ぶ声に遮られた。

 

「愛護、お疲れ」

「お疲れ、旦那様が今度は三人で食事しようって言ってたぞ」

「そう。ありがとう愛護。それより愛護、どう水着似合ってる?」

 

マリーはそういうと俺の前で一回転した。

 

「ああ、みんな似合ってると思うぞ」

 

俺は照れ隠しに目線を外しながら言った。

 

「ありがとう愛護。(本当はまとめず個人的に言って欲しかったけど)」

 

マリーが俺に笑顔でお礼を言い、他のみんなは顔を赤くし俺含めみんな空気が照れくさくなり黙ってしまった。

 

そんな雰囲気の中、マリーのお腹の音が鳴り響いた。

 

「おう、l'm hungry!夕食はまだ?」

「それなんだけど、美渡姉が余った食材は自分たちで処分しなさいって」

「食材が余ったのか。まあ、初めてで完売なんて普通ありえないもんな」

「いや、まあそうなんだけど…とりあえず見てみて」

「ん?」

 

俺はみんなが着替えた後、千歌に案内され海の家の中に入るとそこには山盛りの高級食材があった。

 

「なあ、千歌。十千万はいつもこんな高級食材を使ってるのか?しかも、海の家で…」

「そんなことないよ。愛くんも知ってるでしょ、ウチは安い旅館だよ」

「じゃあ、まさか……」

「その、まさか……」

 

俺は千歌との会話である結論に辿りついた。

 

「マリー」

「何?」

「これは何だ?」

「それはシャイ煮よ。私が世界中のスペシャルな食材で作った料理よ!」

 

俺はあまりのアホさに少し面を食らいそして、少し呆れているとシャイ煮の他に丸っこい黒い物体が目に入った。

 

「ちなみにこれは?」

「それは堕天使の泪!」

 

善子がポーズプラスドヤ顔で料理名を言ってくれたが正直何のこっちゃわからなかった。

 

「この二つで海の家を盛り上げようとしたのか?」

「ううん、違うよ。曜ちゃんがヨキソバっていうのを作ったんだ。それは完売したよ」

「ヨキソバ?」

「簡単に言ったらオムソバだよ」

「そうか、それは良かったこの二つだけだと絶対赤字だしな」

「うん」

 

俺と千歌は海の家のことを考えると同時にため息を吐いた。

 

「で、でもシャイ煮と堕天使の泪がどんな味がするのか気になります」

「私もちょっと気になるかな」

 

ルビィちゃんが目を輝かせながら言ったことに果南さんが同意する。

それを聞いて今度はマリーと善子が目を輝かせると冷めきったシャイ煮と堕天使の泪をそれぞれ加熱と電子レンジに入れ温めた。

 

「「さあ、召し上がれ!」」

 

温めた料理をテーブルに並べると二人は自信満々に言い切った。

 

「まあ、残ってしまったんだから今日はこれを食べるしかないんだし頂くか」

 

俺は覚悟を決めて適当に座ろうとした瞬間、曜に止められた。

 

「せっかくだし、席順はくじで決めよ」

 

曜は何処からか割り箸で作ったくじを取り出した。俺たちは別に反対する理由はないので順番に引いていった。

そして、席順はテーブルを挟んで五人ずつで片側は順にマリー、俺、善子、ルビィちゃん、果南さん。もう片側はマリーの正面から順に千歌、曜、花丸ちゃん、梨子、ダイヤさんとなった。

 

席が決まったことで俺たちは「いただきます」と号令をした後、意を決してシャイ煮を口に入れた。

 

「シャイ煮美味しい!」

「確かに美味いな。流石高級食材って言ったところか。ポンコツマリーでもこれだけの出来が出来るのか」

「褒めてるのか貶してるのかどっち!?」

「食材褒めてお前を貶してるんだよ!」

「ひどい!」

「ところで、一杯いくらするんですの?これ…」

「さあ、正確なところはわからないけど10万円ぐらいかな?」

 

さらっとマリーが言った一言に食べていた全員が「ブー」っと吐き出してしまった。

 

「じゅ、10万円…」

「高すぎるよ!」

「えっ?そうかしら?」

「これだから金持ちは」

「お前の金銭感覚どうなってんだ!」

 

俺はこの一件により合宿が終わったら一般人の金銭感覚をマリーに植えつけようと決意した。

 

「えっと、じゃあ次は堕天使の泪を…あーん」

 

ルビィちゃんが堕天使の泪を口にいれた。みんなはどんな味がするのか気になったのでルビィちゃんに注目し感想を待った。すると……

 

「ピギャャャャャャャ!!!!!」

 

ルビィちゃんは叫ぶと同時に海の家を飛び出していった。そして、「辛い辛い」と大声で叫びながら建物の前を走り回り始めた。

 

「ちょっと、一体何を入れたんですの!?」

 

ルビィちゃんの反応を見てダイヤさんが善子に問い詰めた。

 

「タコの代わりに大量のタバスコを入れた。これが堕天使の泪!」

 

そう言いきると善子は堕天使の泪を一つ口に入れた。

 

「嘘だろ、平気なのか?」

「oh!strong hot!」

「お前も大丈夫なのか!?」

「ええ、意外とイケるわよこれ」

「…まじかよ」

 

結局、そんなこんながあったが俺たちは何とかみんなで協力して残り物を食べきったのだった。



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22話:合宿3

 

 

「あっ。目が覚めてしまった」

 

合宿のため、十千万で泊まっているから家事をしなくてもいいのに俺はいつもの癖というか習慣で朝早くに目が覚めてしまった。俺は、布団から出ると千歌の部屋で寝ているみんなを起こそうと思ったが…

 

「朝練習までは時間があるしみんなを起こすのはかわいそうだな。じゃあ、どうやって時間を潰すかだよな…」

 

俺はそんなことを口に出しながら着替えてトイレに行き、部屋に戻ろうとした時、何か作業している志満さんを見つけたので声をかけた。

 

「志満さん、おはようございます」

「あっ、愛護くんおはよう。早いのね」

「はい、いつも家事があるのでこの時間には起きているんですよ」

「そういえば、小原家で執事をやっているのよね」

「はい、だから今、家事をしてなくてちょっと変な感覚です」

「少しわかるな、その気持ち。慣れるとそれが普通になってやらなくなると気持ち悪いよね」

「はい」

「う~ん。じゃあ、みんなの分の朝ごはん作ってくれる?」

「えっ、いいんですか?」

「うん、厨房はお客様用に板前さんが働いてるから無理だけど、うちの居住スペースの台所は空いてるから。食材もあるものを好きに使って。元々あなたたちのために買っていたものだし」

「ありがとうございます!」

 

俺は、料理が出来ることがうれしくて急いで台所に向かった。

 

 

 

●●●

 

 

 

俺は、台所につくと早速冷蔵庫の中を確認した。

 

「レタスとかキャベツにトマトとかの野菜に果物もある。肉はこれってロースだよな。これなら…食パンとかあるかな?」

 

俺は食品棚を除くと食パンがあった。

 

「よし!これならサンドイッチだな」

 

俺は、メニューを決めるとロース肉を取り出して衣をつけて揚げ始めた。揚げている間にキャベツやら野菜をカットした。

 

「さてと、挟むか」

 

材料をパンに乗せて挟んで重石を乗せた。

 

「あとは、10分ほど待つだけだな」

 

そして、10分ほど待ち、サンドイッチが完成した。

 

「出来たはいいけどみんなまだ寝てるんだよな~…起こすか」

 

俺は、みんなの部屋につくと襖を少し叩いて部屋に入った。

 

「お~い!みんな起きろ~!」

 

俺は大声を出したが、昨日の練習と海の家の手伝いが疲れたのか全然起きない。仕方なくゆすって起こすことにし、一番慣れているマリーを起こそうと近づいた。マリーは果南さんを抱き枕にして寝ていた。

 

「はあ、マリー、これじゃ果南さんが苦しいだろうが」

 

まずは、マリーを果南さんから引き離すためにマリーの腕を掴んで話す作業をしていると、マリーは急に今度は俺の方に抱き着いてきた。そのまま、俺もマリーの体重を支えきれず倒れてしまった。

 

「ったく、またかよ。こいつの抱き癖どうにかならないのか?てか、俺も何度もやられているのに学習しないよな」

 

俺は、何度も抱き着かれていることで自分に呆れていた。だが、抱き着かれたまま数秒経つといつもより強く抱きしめられていることに気が付いた。

 

「おい、マリー。お前起きてるだろ」

「あれ、ばれた?」

「いつもより不自然なほど強く抱きしめられていたんだ。普通気づく。ってか、起きたなら離れろ!」

「えー!」

「文句言わずさっさと離れろ!ダイヤさんに見つかったら怒られるのは俺なんだぞ!」

「その通りですわ、よくお分かりですわね」

「……えっ」

 

俺はダイヤさんの声がしたほうに顔を動かすとパジャマ姿で仁王立ちしているダイヤさんがいた。

 

「愛護さん。まず、女性が寝ている部屋に入ってくるだけでも常識がありませんわ」

「あはは、いつもの癖で…」

「まあ、それは貴方の仕事の都合上仕方がないことなので今回は目をつぶりますわ。でも、鞠莉さんが抱き着いていることはどういうことですの」

「大丈夫よ。ダイヤ、いつものことだから」

「まったく、安心できませんわ!」

「ダイヤさん違います。いつもじゃないです。時々です!」

「どちらも同じ事ですわ!鞠莉さん、貴方は女性で愛護さんは男性です、過度なスキンシップは避けるべきです!」

 

マリーはダイヤさんに注意されて俺から離れるとなぜかカーテンの方に向かってカーテンを掴むと…

 

「シャイニー!」

 

カーテンを思いっきり開けながら叫んだ。ってか、この状況どっかで見たことあるぞ。

 

「私の話を聞いてますの?」

「it’s joke」

「貴方はまったく人の話を聞きませんわね!」

「だってダイヤの話面白くないんだもん」

「面白いとかつまらないとかの問題じゃありませんわ!」

 

「あははは」

 

俺は怒られている最中だったことを忘れて二人の掛け合いの息がぴったり過ぎてついつい笑ってしまった。

 

「愛護さん、何がおかしいんですの?」

「いや~二人って仲がいいなって思ってさ」

「そりゃ、そうよ。ねっ、ダイヤ」

「まあ、当り前ですわ」

 

ダイヤさんは怒っていたことを忘れて顔を赤くしながら応えた。

 

「もうさっきから何よ。うるさいわね」

 

結構大きな声で話していたからなのか善子が起きてしまい他のみんなも起き始めた。

 

「おはよう…あれ?なんで愛くんここにいるの?」

「朝ごはん作ったし食べてもらおうと起こしに来たんだ」

「えっ!朝ごはん作ってくれたの!?」

「ああ、って言ってもサンドイッチだしそんな手の込んだものではないけどな」

「ううん。ありがとう愛君。じゃ、さっそくみんなで愛くんのサンドイッチ食べよう」

 

千歌が号令するとみんな寝起きでゆっくりだが立ち上がり台所のほうへ歩いて行った。…いやまず、先着替えろよ。

 

 

 

●●●

 

 

 

朝ごはんを終え、朝の準備が一通り終わった俺たちは現在、今日こそは隣の海の家に負けないように海の家で作戦会議を始めた。

 

「では、今日は完売させるために愛護さん。料理の方お願いしますわよ」

「いや、勿論出来ることはするけど昨日マリーと善子が作ったシャイ煮と堕天使の涙を完売させるのは流石に難しいことなんだが…」

「愛護、シャイ煮は美味しいって言ってくれたよね」

「美味しくても値段が一般人の手の届く範囲じゃないだろ!適当に高級食材詰め込みやがって!」

「そうですわ。あれじゃ、完全に赤字ですわ」

「それだったら材料費はうちで持ちますから安く売ってもらって構いません」

「まあ、それだったらいいけど…じゃあ、格安で高級食材が食べられるってことを売りにしてだな。でも、煮物オンリーだと味気がないからラーメンやカレーにアレンジするか。よし、シャイ煮はこれで大丈夫だな」

「堕天使の涙はどうするんですの?」

「そうよ、売らないなんて絶対だめだからね」

「それについては考えている。ルビィちゃん」

「ぴぎぃ」

 

急に話を振られてルビィちゃんはいつもの声を出した。

 

「たぶん、Aqoursで一番辛い物が苦手なのはルビィちゃんだよな」

「はい、たぶんルビィが一番苦手です」

「じゃあ、ルビィちゃんが食べられるレベルにしたら大丈夫だな」

「でも、愛君。堕天使の涙はタバスコが大量に入っていて食べられるのは鞠莉さんと善子ちゃんだけだよ」

「曜の言う通りなんだが、いくら辛い物でも甘い物と一緒に食べればなんとかなる。そこでだ。十数分ぐらいかかるけどちょっと待っててくれ」

 

俺は、そういうと厨房で作業をはじめ、出来たものをみんなの前に出した。

 

「黒ゴマアイスだ。これなら、同じ黒だし善子のアイデンティティを守りつつ、辛さを抑えられる。ルビィちゃん、悪いけど堕天使の涙と一緒に食べてみてくれ」

「はい」

 

ルビィちゃんはアイスを救い堕天使の涙の上にのせ恐る恐る口に含んだ。

 

「どうだ?」

「なんとか、食べられます」

「よし、これで何とかするか」

「そうですわね」

「じゃあ、このアイスと堕天使の涙のセットの商品名何にする?」

「は?」

 

千歌が急に変なことを言い出したのでついつい素っ頓狂な声が出た。

 

「そんなの堕天使の涙アイスのせとかでいいだろ」

「え~そんなの面白くないよ」

「面白さは求めてねえよ」

「堕天使の魂よ」

「………はあ、わかったよ。それでいいよ」

 

こうして、俺たちは何とか方向性が決まったので昼までの練習を開始した。…ちゃんと売れるのだろうか?

 




進学し忙しくて全然書けず投稿できずが長引いていました。そのため、ひさしぶりに書いてみようとしたらもともと駄文なのにさらにレベルが落ちてしまいました。

それでも、これからも頑張って投稿していこうと思います。


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23話:合宿4

投稿遅くてすいません!

もうそろそろ二期始まるので一期の話は終わらせたいなと思い急いで終わらせたいと思うのでこれからは投稿ペース速くするつもりです


 

俺たちは早朝練習終わらせ昼時となり海の家で働いてるわけだが……

 

「なんで、昨日と違ってこんなに混んでんだよ!!」

 

今日はなぜか昨日と違いたくさんのお客さんがやって来て現在、俺たちはてんやわんやになりながらお店を回している。

 

「それは、昨日むっちゃんたちに来てもらったでしょ。そしたらむっちゃんたちが愛くんの美味しかったことを他のクラスメイトに言ってくれたの」

「そしたら、アレヨアレヨと言う間に他にも広まったって感じか」

「そういうこと、じゃあ私は梨子ちゃんと果南ちゃんと呼び込み続けてくるね」

「いや、これ以上呼び込みされると…くそ、千歌のやつ行きやがった」

 

よっぽど自分の家の海の家が繁盛してるのが嬉しいのかどんどん呼び込みをしているのだが正直作ってる身からすればそろそろしんどいが文句を言ってもお客さんは待ってくれないので俺は料理に集中することにした。

 

「曜!さっき注文入ったヨキソバ3人前出来たか?」

「もうすぐだよ」

「オッケー、こっちも出来る。ダイヤさん、料理を運んで!」

「わかりました」

 

俺がダイヤさんに指示すると俺たちが作った料理をダイヤさんがお盆に乗せて持っていった。

 

結局、なんとかみんな一生懸命に不慣れながら対応してなんとか海の家の仕事を終えた。

 

「疲れたー」

 

俺は疲れから座敷席に倒れるように寝転がった。

 

「お疲れ様です、愛護さん。まさか、あんなにお客様が来るのは予想外でしたわ。明日もこれぐらい来ると考えると食材を買い足しに行かなければなりませんわね」

「そうだな。はあ、明日もこんだけ忙しいとなると結構体力つくんじゃないか」

「それもそうかもしれません。でも、やっぱり夕方の練習もしっかりこなしますわよ!」

「えー、もうちょっと休もうよ〜」

「千歌さん、練習は積み重ねが重要なのですよ」

「そうだよ千歌。何回もしてればなんとかなるって」

「はーい」

 

そうして、練習を開始すると言われ俺は体を起こそうとした時ダイヤさんに止められた。

 

「愛護さんは休んでいてくださって構いませんわ。今日は誰よりも働いてくださいましたし私からのささやかなプレゼントですわ」

「あ、ありがとう」

 

俺はそう言われ返事をするとみんなは練習をするために海の家から出ていった。

 

「休んどけって言われても難しいんだよな…ふあーあ。そういえば今日は何気なしにいつも通り起きて、そして10人分の朝飯作ってそれから海の家か。確かに知らず知らずのうちに疲れてたんだな。せっかくだし休ませてもらうか」

 

俺はそうして、ゆっくり瞼を閉じた。

 

 

 

●●●

 

 

 

「……うする?」

「………かせてあげましょう」

 

俺は小さいながらも声が聞こえて来た。だけど、まだ疲れてるのか完全には意識は覚醒せず何を話してるかは全く聞こえなかったがしばらくすると頬のあたりに何かを感じて目覚めると…

 

「愛護って寝るときはこんなに丸くなるのね」

「猫みたいよね」

「ん?ああ、そうなのか?」

「あっ、おはよう愛護。よく眠れた?」

「ああ、おかげさまで」

「今から、晩御飯の用意するんだけど付き合ってくれる?」

「ああ、任せろ」

 

俺はそう言って体を起こし夕飯の用意を始めた。

 

 

 

●●●

 

 

夕飯も食べ終わり俺はみんなと分かれて貸してもらった部屋で寝る準備をして寝ようと思ったが昼寝をしたせいか全然眠れる気がしなく仕方なく体を起こしスマホを取り音楽でも聞こうとイヤホンでも着けようとした時、部屋の襖が開いた。

 

「愛くん、今ちょっといい?」

 

襖の先には少し困った顔の千歌が立っていた。

 

「どうしたんだ?」

「これみて欲しいんだけど」

 

俺はそう言って渡されたスマホの画面にはピアノコンクールのサイトが写っていた。

 

「これがどうしたんだ?千歌が出るのか?」

「違うよ。出るとしたら梨子ちゃんだよ!」

「あー、そうだな。で、それがどうしたんだ?梨子が出たいなら出してあげればいいだろ」

「大事になのは日にちだよ」

「日にち?」

 

俺はそう言われ日時の項目を見てみるとそこには「8月20日」と書かれていた。

 

「これって、ラブライブ予選の日だよな」

「うん」

「なるほど、これに梨子が出て欲しくないのか」

「ううん、違うよ」

「?だって梨子がこれにでたらラブライブ予選は8人で出ないといけないんだぞ」

「それはいいの。私が一番心配なのはもしかして梨子ちゃん出たいのに私たちのせいで出ないつもりかもしれないの。それが私は一番嫌。梨子ちゃんの意思で出るって言うなら応援するつもり」

「あー、千歌は俺たちに重りになってるかもしれないのが嫌なんだよな」

「うん」

「だと、言われてもこれに関しては本人の気持ち次第だ。出るって言わないのは本当にラブライブの方に力を入れたいのかもしれないし」

「うん。でも、志満ねえと梨子ちゃんのお母さんとの会話を聞いたんだけど出るとも出ないとも言ってないんだって」

「ってことは…まだ悩んでるってことか」

「うん……あっーーー!やっぱり梨子ちゃんに直接聞いてくる!」

 

そう言うと千歌は勢いよく部屋を飛び出した。

 

「おい、夜も遅いんだから静かにしろよ」

 

俺は二人だけで話すのが得策だと思い千歌は追いかけず一応警告だけすると布団の中に入った。

 

 

 

●●●

 

 

次の日、早朝練習が終わり昨日結局どうなったのか千歌に聞くと梨子は出ないことに決めたらしい。だが、やっぱり千歌の顔は釈然としない表情をしていた。

 

その表情の理由を聞こうと思ったが昨日同様に海の家が混み出したので仕方なく俺は仕事に戻ることにした。

 

そして、今日も大繁盛で忙しいながらもなんとか乗り切り練習も終わり風呂も入るとダイヤさんに千歌の部屋に集合だと言われ言ってみると…

 

「それでは、今からラブライブの輝かしい歴史とレジェンドスクールアイドルたちの軌跡について講義を始めますわ」

「えっ、今から始めるの?」

「てか、それいるんですか?」

「愛護さん、なんてことを!それに貴方方もスクールアイドルのくせにラブライブのラの字もわかってないなんて言語道断ですわ。今日この講義でみっちり覚えてもらいますわよ」

「嘘だろ〜」

(こうなったダイヤさんは止められないんだよな)

 

俺が半分諦めてかけていると後ろから小さくだが寝息を立てる音が聞こえて横をみるとマリーが寝ていた。目のシールをバッチリつけて

 

(そう言えば、合宿の準備のために買い出しに行った時面白そうとか言ってたな。本当に使うと思ってなかったが…そういえば、ダイヤならこれでいたずらできるとか言ってたけどこんなんじゃ子供でも騙されないだろ)

 

俺がそんなことを考えてるとマリーのシールの粘着力が切れシールが取れた。すると、ダイヤさんは本物の目が取れたと思いひどく大きな断末魔のような声をあげ気絶した。

 

「嘘だろ!なんでこんな子供騙しに気絶すんだよ!」

 

ダイヤさんの声で他のみんなもびっくりしたのかざわざわと騒ぎ始めた。その時、俺は背後に何か殺気のようなものを感じ後ろを振り返ると美渡さんがすごい目でこちらを睨んでた。それに千歌も気づいたらしく二人でみんなをもう寝ることを催促することで事態は回収され………なかった。

 

「愛護、寝ると言ってるのになんでまだこの部屋にいるのよ」

「マリーが寝ぼけて果南さんと俺を勘違いして抱きしめたまま離してくれないんだよ」

「それなら、力づくでも引き離したらいいじゃん」

「そうかもしれないけど、こんなに気持ちよさそうに寝てたら起こそうにも起こせないだろ」

「本当に理事長には甘いんだから。わかった。私がやる」

「ちょっと待て!」

 

そう言うと善子は俺からマリーを引き剥がそうとしたが体勢を崩し大きな音を立て俺にのしかかるようになってしまった。

 

「だから、待てって言った…」

 

俺は善子に注意しようと思ったその時先ほど感じた殺気を感じた。もちろん千歌も気づいたらしく急いで電気を消し今から寝ますアピールをすることでまたなんとかその場を乗り切った。だけど…

 

「あれ、俺このまま?」

「仕方ないからこのヨハネが愛護が邪なことしないように見張ってあげる」

 

そう言うと善子はハンモックに入らず俺の隣で寝転んだ。

 

「あれ、善子さん?狭いんですけど」

「仕方ないでしょ」

 

一人増えただけじゃなく善子がハンモックを使わない為実質二人増えたので部屋は寝るのに手狭になり俺と善子、そしてマリーは密着して寝ることが決定した。

 

だが、やはり疲れていたのか目を瞑ると気絶するように寝た。

 

それからしばらくして日が昇る前に俺は一度暑さで目が覚めた。ついでにマリーの力も弱まっていたので抜け出すことにした。

 

(このままだと朝起きてダイヤさんにどやされるのが目に見えてるからな)

 

俺はそうして部屋を出ようと思った時部屋に千歌と梨子がいないことに気づいた。昨日と朝のことがあったのでいう少し不安で二人を探しに宿を出た。しばらく歩くと二人が堤防で話してるのが見えた。

 

「あっ、愛くん」

「あっ、部屋にいないから心配したぞ」

「ごめんね、愛護くん」

「いや、別にいいんだけどさ俺が勝手に探してただけだし、それにしても二人の顔をみると答えが出たようだな」

「うん。私、コンクール出ようと思うの」

「そうか」

「驚かないの?」

「なんとなくわかってたから」

「えっ、愛くんすごい!」

「昨日の朝の千歌の顔を見りゃわかるって話し合ったのにまだ不安が抜けきってない顔。その時はラブライブの方に出ることを言ってたから単純に逆の方がいいと思ってたってことだろ」

「まあね」

「それで理由は?」

「愛くんには話してなかったけど梨子ちゃんはピアノに対してスランプだったの。だから、それを乗り切るために息抜きとか新たなことをしたら乗り切れるんじゃないかとか。まあ、また梨子ちゃんが前向きにピアノに向き合えるようにするために誘ったんだ」

「でも、私はスクールアイドルをやってくうちにこの街や学校のみんなが大切。でも、やっぱりピアノも大切だからこの気持ちに答えを見つけて来ることにしたの」

「そうか、いいと思うぞ。だったら、これからもっと頑張らなきゃな。8人でのフォーメーションとかやったことないこと色々しなきゃダメだしな」

「「うん!」」

 

二人は満足した答えを出し精一杯の声で返事した。



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24話:やっぱり、女子の悩みはわからない

 

俺たちはピアノコンクール出場のために一時東京に行く梨子を送りに沼津の駅まで来ていた。

 

「梨子ちゃん!次のステージは絶対みんなで歌おうね!」

「もちろん!」

 

千歌の言葉に迷いなく梨子は答えてホームへ向かっていった。

 

「さ、練習に戻りますわよ」

 

ダイヤさんの言葉に皆頷くとぞろぞろとバス停の方に向かって歩き始めた。

 

「これで予備予選で負けられなくなったね」

「なんか、気合いが入りまーす」

「それ、空回りしないでくれよ」

「マリーならありそう」

 

俺の発言に果南が同意するとみんなが急に笑いだした。マリーもいじられて反論はするがその後みんなと一緒に笑い出した。

しかし、後ろを振り返るとずっと改札の向こう側を見てる千歌を曜が見ている風景がそこにはあった。二人ともすぐにこちらに気づき追いついて来たのであまり気にせず帰ることにした。

 

 

 

●●●

 

 

「特訓、ですわ!」

「……また」

「本当に好きずら」

 

ダイヤの発言にみんなが呆れ半分不安半分な反応をする。

そんな中、パソコンをいじっていたルビィちゃんが驚いた声をあげたのでみんながパソコンをのぞいてみるとSaint_Snowが北海道予選を通過したことがわかった。

 

「すごい、頑張ってるんだ〜」

「気持ちはわかるけど、大切なのは目の前の予備予選。まずはそこに集中しない?」

 

Saint_Snowに意識を持っていかれていた、二年生たちに自分たちのことに集中するように果南が言った。

 

「果南にしては随分堅実ね」

「誰かさんのおかげで色々勉強したからね」

「では、それを踏まえてみなさん。行きますわよ、各自ジャージに着替えてプール前に集合ですわ」

 

ダイヤがそういうとみんなは特訓が始まると思ってちょっと面倒くさそうに返事をした。

俺も特訓だと思って何も考えずジャージを持って着替えるためにトイレに向かった。

だが、着替えてプール前にみんなが集まると特訓が始まると思いきやダイヤがデッキブラシをみんなに渡した。

 

「それでは、プール掃除を始めますわよ!」

「……なんで」

「なんでもありませんわ。みんなでしっかり磨きますわよ!」

 

ダイヤが言い切ったので俺たちの疑問も関係なしにプール掃除をすることは決まってるらしいと思った俺は考えるのをやめてプール掃除を始めた。

 

「ダイヤったら、プール掃除の手配忘れちゃったのね」

「忘れていたのは鞠莉さんでしょ!」

「言ったよ。夏休みに入ったらプール掃除、なんとかしろって」

「だから、なんとかしてるじゃないですか!」

「えー、なんとか、ねー」

 

「理事長と生徒会長があんなんで大丈夫?」

「私もそう思う……。けど、一応あの二人が事務作業するときは優秀な執事がついてるはず…だから。今回は上手くいかなかったけど」

 

しょうもないことで言い争ってるダイヤとマリー、それを見てこれからの学校を心配する善子と果南という構図が出来たのを俺は無視しながら掃除をすすめていると曜の姿が見当たらないことに気づいた。いくら面倒くさいとはいえみんながやってる中でサボるとは考えにくいため探しに行こうとした瞬間「ヨーソロー」の声とともにプール内に入っていく曜が見えた。何故か海兵のコスプレをしていたが…

 

「曜さん!あなた、その格好はなんですの!遊んでる場合じゃないですわよ!本当に、いつ終わるのやら」

 

曜の格好を注意するダイヤだが途中からプールの広さによる作業の多さから意気消沈し始めた。

だが、手を動かさなければ終わらないのでみんな、しぶしぶ手を動かし始めた。途中で衣装が汚れるからという理由で再度曜が着替えに戻ったりホースから出る水で遊び始めびちょびちょになりかけたり様々な遠回りをしながらもなんとか俺たちはプール掃除を終わらせた。

そして、果南の提案でプールで練習をすることになったのだが…梨子がいないため代役の曜を立てることにした。そのため、全体練習は取りあえず中断し二人の練習が始まった。

 

しかし…あまり上手く合わせられず苦戦していた。

 

「また、失敗か…」

「曜ちゃんなら合うと思ったんだけど」

「私が悪いの。いつも同じところで遅れて」

「ううん、私が歩幅曜ちゃんに合わせられないのが悪いんだよ」

 

千歌が梨子とやっていた時の癖があるし、曜も今日初めてやるポジションで少し遅れているしで上手く合わない。

 

「マリー、お前はどうしたらいいと思う?」

 

俺は隣にいたマリーにいい案がないかを尋ねた。しかし、マリーに返事がなく、ずっと曜を見ている。

 

「マリー!」

「えっ?」

 

少し声を張り上げるとマリーはこちらに気づいた。

 

「どうかしたのか?」

「何か、曜が悩んでるというか不安な表情なのよね〜」

「そうか?まあ、急に代役やれって言われたら誰でも不安だよな」

「はあ」

 

俺の言葉にマリーがため息をついた。

 

「なんだよ、ため息なんかついて」

「相変わらず愛護はこういうことにはニブチンの朴念仁だったな〜って思って」

「いや、言ってる意味がわからないんだが」

「わからないなら、それでいいです」

 

マリーは俺の質問に答えず話を切り上げた。

 

「果南、今日はこれぐらいにしない?」

「うーん、そうだね。こんを詰めてもしんどいだけだし」

「じゃあ、今日はこれで解散?」

「そうですわ。私は生徒会の仕事があるので生徒会室に戻りますわ」

「ダイヤ、私も手伝う」

「私も手伝うでーす」

「あっ、じゃあ俺も」

 

こうして、今日の練習を切り上げ俺たちは解散した。

 

 

 

●●●

 

 

 

「こんなに溜めてたのか」

「一人で抱え込んでたんでしょ」

「違います、これは…ただ」

「もう、これからは私と果南と時々愛護が手伝ってあげましょう」

「だな」

 

作業を始めるためマリーが適当に数枚プリントをとった。その拍子に一枚のプリントが床に落ちた。

 

「これは?」

「それは、スクールアイドル部申請書ですわね。以前、千歌さんが持ってきた」

「へー、最初は千歌と曜の二人だったんだな」

「意外?」

「はい、startはてっきり千歌っちと梨子だとばかり思ってました」

「まあ、確かにそう見えなくもないですわね。今の状況からすると」

「うーん、やっぱりそういうことだったのね。よし、愛護!このダイヤが溜めた仕事を早く終わらせるわよ。行くとこが出来たから」

「行くとこ?どこに?」

「つべこべ言わず終わらせるわよ」

「はあ、わかりましたよ。お嬢様」

 

マリーが何をしたいのかはわからないが元々手伝いにきていたためそれに集中することにした。そして、俺たちが作業を始めると果南もダイヤも作業を始めた。

 

 

 

●●●

 

 

ーーー鞠莉視点ーーー

 

 

作業を終えた私は愛護と一緒に曜を探し出し静かに話ができる場所へと移動した。

 

「ここからはぶっちゃけガールズトークなので愛護は出ていってください」

「はいはい、その辺ぶらついとくから終わったら呼べよ」

「はーい」

 

愛護は文句を言わず素直に出ていってくれた。相変わらず面倒くさそうな顔をするけど。

愛護が見えなくなると曜の方に向き直した。

 

「千歌っちと上手くいってる?」

「千歌ちゃんと?うん、あの後二人で練習して….「ダンスじゃなくて」えっ?」

「梨子に千歌っちを取られて嫉妬ファイアーーーが燃え上がってたんじゃないの?」

「嫉妬なんて…」

「ぶっちゃけトークする場ですよ。千歌っちと梨子にも話せないでしょ」

「…私ね、昔っから千歌ちゃんと一緒に何かしたいな〜って思ってて。だから、千歌ちゃんが一緒にスクールアイドルをしようって言ってくれて、これで一緒に出来るって思ったの。でも…すぐに梨子ちゃんが入ってきて、二人で歌作って、気づいたらみんなも一緒にいて…それで思ったの。千歌ちゃん、私と二人は嫌だったのかな?って」

「Why、なぜ?」

「私、なんか要領いいって思われてること多くて、だから、そういう子と一緒にって、やりにくいのかなぁって」

「なんで、そんなこと勝手に決めつけるんですか!本音で話し合った方がいいよ。大好きな友達と本音で話合わず2年間も無駄にした私が言うんだから間違いありません!」

「…鞠莉ちゃん」

 

曜の不安は完璧には取り除けなかったけど、少し顔が明るくなったのをみて私は少し安心した。

 

「じゃあ、帰りましょうか。愛護を待たせてるわけだし」

「うん…」

 

 

●●●

 

 

 

曜とマリーとの話し合いから少しして予備予選が始まった。曜も以前よりはハキハキしてて本当に楽しそうにしている。たぶん、マリーが上手いことしたんだろう。

結果は大成功。次に進めるかの結果待ちとなった。梨子の方も上手くいったらしい。

 

しかし…曜に何が起こってマリーが何したのかが本当にわからない。やっぱりサポート役として力不足を感じて俺はならなかった。

 




今回からアニメ同様メンバー内に敬語がなくなってるので
愛護も
ダイヤさん→ダイヤ
果南さん→果南
になってます


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25話:変わらない数字

二期始まる前に一期の話終わらせるとは何だったのか…

遅くなって申し訳ありません。


25話

 

俺たちはラブライブ予備予選合格者の発表を待っているのが学校では落ち着かないため俺たちはお菓子屋の松月にやって来て発表まで時間を潰している。

 

「そんなに食べると太るよ」

「何か食べてないと落ち着かないずら」

 

相変わらずは花丸ちゃんは食べ続けてるのをマリーが注意する。

 

その一方で…

 

「リトルデーモンの皆さん。ヨハネに魔力を霊力を、全ての力を!」

「こら!」

 

善子が地面に魔法陣?的なものを書いて儀式的なことをしてたので注意をする意味を込めてチョップを軽く入れる。

 

「ちょっと!儀式中に入ってくるなんて危ないでしょ!」

「危ないもクソもあるか、勝手に店の敷地に書いてほら消すぞ」

 

俺は善子を注意をし消させようとすると…

 

「きたよ!予備予選の発表!」

 

曜が発表が来たことを告げると善子も含めそっちに意識がいき曜の方に集まった。

かくいう俺も気になるので曜の見ているスマホを覗く。

 

「Aqoursの"ア"ですわよ!"ア"」

「うん、えーっとイーズーエクスプレズ…」

「落ちた…」

 

みんな、一番最初のグループ名を見てAqoursの名前がないことを確信し落ち込みだすが…

 

「いや、それ、エントリー番号順だぞ」

「「えっ!!」」

 

俺の一言にみんなが驚いて再度スマホをスクロールして確認すると「Aqours」という文字があった。

 

「予選突破、オーマイガー、オーマイガー!!」

 

あまりの嬉しさにマリーは頭を抱えて騒ぎ出し、みんなは固まっている。

 

「みんな、おめでとう!マリーは少し落ち着こう。とりあえず、予備予選突破したんだからお祝いしようぜ!」

「えっ…う、うん!」

 

千歌が俺の声に反応し答える。

 

「じゃあ、ひとまず学校に戻ろうか。でも…その前に善子」

「な、なに?」

「お前と俺はこの落書き消すぞ」

「えー!!」

 

俺に指示され大声で文句を言う善子。その声にみんなも意識を取り戻したのか一斉に笑い出した。

 

 

 

●●●

 

 

 

松月前の掃除を終え、学校に帰ってくると先に帰っていたみんなが部室を整理してパーティー風にしてくれていた。机の真ん中には今朝取れたばかりの新鮮な魚が置かれていた。

 

「今日、取れたばかりの新鮮な魚だよ。愛護、調理よろしく!」

「うん!任せてくれ、マリー、調理室開けてくれるか?」

「of course!そう言うと思って、ほら!」

 

マリーはそう言うと俺に向かって鍵を投げて来た。

 

「ありがとう、それじゃ、ひとまず作ってくるわ」

 

俺は鍵をキャッチし、魚を持って急いで調理室に運び調理を始めた。

新鮮な魚のため、生のまま刺身やカルパッチョにした。

作り終わると流石に一人じゃ運べないのでみんなを呼び部室に運んでもらった。

 

部室に戻り、食事をしながら話しているとパソコンを見ていたルビィちゃんがみんなにパソコンの画面を向けて来た。

 

「みんな、見て!Aqoursの動画の再生数がすごく伸びてるよ」

 

ルビィちゃんが見せてくれた画面にはたしかに15万回を超える再生数が載っていた。

 

「コメントもいっぱい来てる」

「全国来るかも。だって」

 

たくさんの人に見てもらっていることにみんなが感動する。

そんな時、千歌のスマホが鳴り出した。

 

「誰だろ?…あっ、梨子ちゃんからだ!」

 

梨子からの電話に笑顔を見せた千歌はすぐさまボタンを押し通話を始め、みんなに聞こえるようにスピーカー設定にする。

 

「もしもし」

『もしもし、千歌ちゃん。予備予選突破おめでとう』

「ありがとう。ピアノの方は?」

『大丈夫。ちゃんと弾けたよ』

 

梨子の一言にみんなが安心する。

 

「よかった。じゃあ、今度は絶対に9人で歌おうね。全員揃ってラブライブで!」

 

曜が梨子に向かって力一杯叫んだ。

 

『うん!』

 

曜と同じくらい元気な声で梨子も返事をする。

 

「そして、ラブライブで有名になって浦女を存続させるのですわ!」

「頑張ルビィ!」

 

これからについて意気込みを入れる黒澤姉妹。

 

「あっ、そうだ。予備予選突破したんだし学校説明会の方も結構期待できるんじゃない?」

「そうね。今のところの学校説明会の参加人数は…0」

 

思ってた結果と違い、声量が小さくなるマリー。同じようにみんなの元気も少し小さくなっていった。

 

そして、そのままみんな解散してしまった。

 

 

 

●●●

 

 

 

俺は学校から家に帰ってくると、着替えて晩御飯を作り始めた。

マリーはというと着替えた後は意気消沈しているのか。ずっと、座ったままで時折スマホを見てため息をつきまたぼーっとし始める。という行動を続けている。

俺はあまりにもそれが見ていられないというかほっとけなかったので作業を止めてマリーのとなりに座った。

 

「なんていうか……残念だったな。説明会の件」

「…うん。やっぱり、上手く行かないよね。こんな場所じゃ」

「確かにここは普通の人からすれば田舎だから学校がいくら魅力的でも他府県から来ることは難しい。いや、同じ静岡の静岡市の方の人たちも結構しんどいかもな。静岡駅から沼津駅に行くにも電車で1時間以上、そこからバスに乗ってこの辺に来るのに30分はかかる」

「そうね。ねえ、愛護はμ'sを知ってる?」

「名前とあと、数曲聞いたことあるし。浦の星と同じように廃校になるかもしれなかったからスクールアイドルを始めて。そして、その人たちの学校は人が集まったんだろ」

「うん、そのμ'sなんだけど。もうこの時期には入学希望者数を多く集めて廃校を阻止してたんだって」

「…そうか。でも、それってさっき言った通り」

「うん、勿論立地の問題もあると思う。でも、やっぱり考えちゃうの。私たちの魅力がないからなのかな〜って」

 

自分から出した言葉に落ち込むマリー。

 

「そんなことは絶対にないと思うぞ!」

 

俺はマリーの言葉を力強く否定した。急に大きな声を出したのでマリーは驚いてしまった。

 

「あっ、悪い」

「ううん。愛護、ありがとう。でも、どうしたの?急に大声だして」

「だってさ、お前たちに、Aqoursに魅力がないなんてこと。俺は思ったことはない。いつも一番近くに見ててそう思うしだから、一緒にいて楽しい…って何顔赤くしてんだ?」

「そんなの、急に真顔で褒められたりしたら誰だって照れます」

「そうか、えーっと。悪い」

「ほんと。愛護って何かそういうとこ、ずるいよね!」

「ずるいって何だよ」

 

俺はずるいの意味が分からずマリーに聞き返す。

 

「だって、ドキッとするから」

 

俺の返しにマリーは顔を真っ赤にしてボソボソ言ったが何を言っているのか聞き取れなかった。

 

「えっ?何だ?」

 

俺は耳に手を添えてマリーに聞き直した。

 

「何でもありません!そんなことより、愛護。私はお腹がすきました」

「いや、だから何て言っ「お腹がすきました」…はあ、わかったよ。ちょっと待ってろ」

 

俺はこれ以上聞いても答えてくれないため仕方なくキッチンに戻った。すると、マリーのスマホに電話がかかってきた。

 

「あれ?千歌っちからだ。どうしたんだろ?」

 

電話は千歌かららしくマリーは電話を持ってベランダに向かった。

そして、数分後マリーが戻ってきた。ちょうど俺も料理が出来上がったところだった。

 

「ちょうどよかった。晩御飯、出来上がったぞ」

「ありがとう。じゃあ、ご飯食べ終わったら準備しましょ」

「準備?何のだ?」

「東京へ行くの。そして、見つけるの。私たちとμ'sとの違い、μ'sがどうして音ノ木坂を救えたのかを」

「そうか、だったら完璧に準備しないとな」

「ええ、お願いね愛護!」

 

マリーは俺にウインクをしてお願いする。

 

「ああ、任せろお嬢様」



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26話:Second TOKYO

誰だ、二期始まる前に一期の話終わらせるって言ったやつ。

はい、すいません。

でも、ゆっくりでも絶対に続き書きます。


「はあ、やっと着いたのはいいけど…なんであんなにダイヤは張り切ってるんだ。普通、疲れるだろ」

 

俺たちはお金がないため朝早くから鈍行できたため俺は疲れているのだが、対照的に駅に着くやいなや東京を目の敵というかライバル視みたいな意味わからんことしてるダイヤに呆れている。

 

「お姉ちゃん。昔、東京で迷子になったのがトラウマで…」

「へ〜、ポンコツなところがあるとは思ってたけどそんなことがあったんだな」

「そこ!愛護さん。私がポンコツなのではなくて東京が魔の国なのですわ。呑気そうにしていると負けてしまいますわよ」

「…何にだよ。てか、そんなことより梨子と合流しようぜ」

「うん、梨子ちゃんから地図のこの辺にいるって教えてくれたから行ってみよう」

 

気を取り直して千歌が地図を持って移動しようとした。が、すぐに足を止め俺たちの方に向き直した。

 

「そういえば、私たちはこの地図のどこにいるの?」

「……もういい、地図を貸せ」

 

呆れて物も言えなかったが地図を千歌から受け取ると俺は現在地を確認し梨子との集合場所に着いた。

 

すると、梨子はすでに着いており一生懸命にコインロッカーに何かを詰めていた。

 

「梨子ちゃん、何それ?」

「えっーと、これは…」

 

梨子には珍しく口ごもりながらも荷物を積める動作はやめない。しかし、そんな梨子の頑張りを無にするようにコインロッカーから荷物が落ちてきた。

紙袋に入っていた本?が飛び出してきたので俺はそれを手に取ってみると表紙には「壁ドン」と書かれていた。

 

「見ないで〜〜!」

 

梨子は俺が本を手に取ると後ろから目を両手で隠してきた。

 

「勝手に見て悪い。わかったから離せ、危ないから!(ていうか、背中に柔らかい感触が…)」

 

俺がなんとか説得し離してもらった。

 

「えっと…ごめんね」

 

我を忘れたことを謝罪する梨子。それに俺は気にしてないと返す。

 

「ていうか、全員揃ったし行こうぜ。千歌どこ行くんだ?」

「うん、神社に行ってみようと思うんだ。ある人たちと会う約束している」

「ある人?」

「それは行ってからのお楽しみ!行こう!」

 

そういうと、今度はしっかりと正しい方向へ歩き出した。

 

 

●●●

 

 

 

神社に着くと、そこにはSaint Snowの二人がいた。たしかに全く予想だにしてなかった人物だった。うちの黒澤姉妹は違う誰かと思い込んでたため「なんだぁー」っと失礼きわまりないこと言ってるので後で説教するとして…

 

「なぜ、Saint Snowの二人を呼んだんだ?」

「私も正直、ちゃんとした話は聞いていません。なぜ、私たちを呼んだんですか?」

「知りたかったの、ラブライブのこと」

 

曖昧なことを言う千歌。だが、その瞳には何か強いものが見えた気がした。

 

「話は長くなりそうですね。場所を変えましょうか」

 

聖良さんに言われ俺たちはUTXのカフェスペースに移動した。

 

そこで、千歌のもつスクールアイドル像と聖良さんのもつ物とは違うことがわかった。強い覚悟で優勝を、勝利を得ようとする姿勢に千歌はどうしても共感出来ていなかった。

 

話が平行線になるのがわかったのか聖良さんは話を切り上げた。次のラブライブ決勝の情報が発表されると知りみんなで見に行くことにした。

 

そして、ラブライブ決勝はアキバドームで行われることが発表された。

アキバドームという巨大なステージで発表することがわかり、みんなどこか現実感のないようにしている。そんな時、

 

「ねえ、音ノ木坂に行ってみない?」

 

梨子が音ノ木坂に行くことを提案した。しかし…それは…

 

「梨子はいいのか?音ノ木坂って…」

「大丈夫。ううん、行くべきだと思う」

「そうだね、行けば何か思うこともあるかもしれないし」

「そうですわ。行きましょう!μ'sの母校に!さあ、行きましょう!」

「お姉ちゃん、色紙持ってる!?カメラは!?」

「大丈夫ですわ!」

 

梨子の提案にみんな賛成した。まあ、ある二人はちょっと違う目的もあるらしいけど…ていうか、そっちがメインになってるが。

 

「じゃあ、決定!みんな、付いてきて」

 

そうすると、梨子を先頭に俺たちは音ノ木坂に向かった。

 

 

 

●●●

 

 

音ノ木坂に着き、校舎を見ると、自分たちと同じ状況だった音ノ木坂がμ'sの活躍により今も綺麗に建っていることに俺たちは何か聖地のような力を感じた。

 

「あの、何か?」

 

俺たちが音ノ木坂を眺めて突っ立っていると一人の女生徒が話しかけてきた。たぶん、音ノ木坂の生徒さんだと思う。

自分の学校の前で棒立ちしていたから気になったんだろう。

 

「あっ、もしかしてスクールアイドルの方ですか?」

「はい!μ'sのこと知りたくて…」

 

彼女に質問され千歌が答える。その回答に彼女はちょっと残念そうな顔をした。

 

「残念ですけど…ここには何も残ってないんです。残さなかったんです。物なんかなくても、心が繋がってるからって」

 

そんな言葉聞いて俺たちは考えていると元気な女の子が現れた。

その子をみてみんな何か感じたのか、全員で音ノ木坂の校舎に向かってお辞儀をし、感謝を述べた。

 

顔を上げ話してくれた彼女にも礼を言おうとしたが、その時にはもういなかった。もしかしたら、急いでいたのかもしれないと思い俺たちは彼女にむかって心の中で感謝を述べ、帰宅することにした。

 

帰りの電車の中、今回の東京遠征で結局得たものはなんなのかをみんなで考え出た時、千歌が駅から見える海を見て、海に行こうと言い出して飛び出したため、みんなはあわてて飛び出した。

 

「おい、千歌。急にどうしたんだ!?」

「私ね、わかった気がする」

「何がだ?」

「μ'sの何がすごいのか」

 

千歌は何か晴れた顔している。だから、たどり着けたのだろう納得の答えに。

 

「そうか、じゃあそれは何なんだ。お前たちとは何が違うんだ?」

「比べたらダメなんだよ。追いかけちゃダメなんだよ。μ'sもラブライブも輝きも」

「というと…?」

「一番になりたいとか、誰かに勝ちたいとか…μ'sって、そうじゃなかったんじゃないかな。μ'sって…きっと何もない所を、何もない

場所を、思いっきり走ったことだと思う。みんなの夢を叶えるために!

 

自由に!

 

まっすぐに!

 

だから飛べたんだ!

 

だから、μ'sみたいになるってことは自由に走るってことだと思う」

 

千歌の説明でみんなが納得する。もちろん、俺も。

 

「自分たちで決めて自分たちの足で」

「全速前進!だね!」

「やっと一つにまとまれそうだね」

「それじゃ、みんなで決意を固めよう!指はこうやって…」

 

曜の提案でみんなの指をつなぎ合わせ大きな0を作る。

 

「それじゃ…

 

0から1へ

 

今、全力で輝こう!Aqours!」

 

「「「「「サンシャイン!!」」」」」

 

掛け声とともにみんなジャンプしながら人差し指を天に向け1をつくる。

 

これで、Aqoursはさらに決意を固め強くなるだろう。しかし、俺はSaint Snowが間違ってるとも思わない。ラブライブは大会だ。勝つために努力するのは普通だ。だから、これからは単純な技術だけが問題を言うんじゃない。みんなの心が一つになった今なら最高のパフォーマンスができるだろう。

 

 

 




二期のBlu-rayが全巻届いたので早く二期の話を書く意欲がわいてきたので出来るだけ早く投稿します。


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27話:鞠莉の想い

今回はきりのいいとこで切ったら短くなりました。


太陽の陽射しが最も強くなる8月の午前中、俺たちは学校の屋上で練習をしていた。

最近は俺も慣れてきたのか簡単なところならダメ出しが出来るようになったので9人が踊って俺が指摘する方法をとっている。

 

「善子、今のところは気持ち早く!」

「ヨハネ、空間移動を使います」

「ルビィちゃんはもっと動きを大きく!」

「ピギィ」

「マリーは少し速い!」

「オーケー!」

「うん!よくなってきた。一旦休もう」

 

オーバーワークは故障のもと。俺はキリがいいところで練習を切り上げた。

みんなは踊るのをやめ水を飲み、息を整えて休憩に入った。

そんな中、あまりの暑さに倒れこんだ者がいた。

 

「善子、やっぱりマントは取れ!倒れてからじゃ遅い」

「これは堕天使のアイデンティティ、取るわけには」

「取れ!」

「やだ!」

「取れ!」

「やだ!」

 

取る、取らないで俺たちは言い合いを始める。最終的にお互い平行線で同じ言葉をただ言い続けるだけになってしまった。

 

「善子さん、愛護さん。変な言い争いで体力を使ってはいけませんわ」

「そうだよ、今は休憩中なんだから。てことでみんな100円出して」

「やってきたのですね、本日のアルティメットラグナロク!」

 

ダイヤと果南にさとされすぐに言い合いをやめ、アイス買い出し係を決めるジャンケンをするんだが…

 

「ジャンケンポン!」

 

みんな同時に手を出す。

 

「また、負けた!」

 

善子特有のチョキを手を善子は眺めながら呟く。

そう、この子は本当に運が悪い。

 

「はい、これお願いずら」

 

敗北した善子に花丸ちゃんがお金とリストのメモを渡す。

 

「もー、わかったわよ。いってきます!」

 

潔く善子は渡されたものを持ってコンビニに向かった。

 

「あー、なんかさ。いつも行かせて可哀想じゃないか?」

「あっ、愛くんそれ言っちゃう?」

「まあ、確かに可哀想だと思うけど」

「負けたのは善子ちゃんズラ」

 

まあ、みんな不正をしてるわけでもないし仕方ないっちゃ仕方がないんだが…

 

「やっぱり、俺一緒に行ってくるわ」

 

俺は善子を追って走り出した。

 

 

●●●

 

 

鞠莉視点

 

 

愛護はアイスを買いに行った善子ちゃんを追って走り出した。

 

「行っちゃたね」

「愛くんって善子ちゃんのことよく気にかけてるよね」

「もしかして、愛くんは善子ちゃんにほの字だったりして」

「まさ…「曜、それ本当!」ま、鞠莉ちゃん?」

 

私は曜の言葉が気になり、曜の顔に限界まで顔を近づけてみんなの会話に割って入った。

 

「えっと…ひとまず、鞠莉ちゃん近い」

 

曜はそんな私を見て苦笑いしながら答えたのでひとまず少し離れた。

 

「それで、さっきのことは本当?」

「いやいや、冗談だよ。だって愛くんの善子ちゃんはの接し方って世話のやける歳下を相手してる感じじゃない?」

「really?」

「本当、本当!」

 

曜は少し引き気味だけどちゃんと否定してくれたので私はホッとして息を吐いた。

 

「鞠莉さん、前から思ってたのですが」

「鞠莉って、愛護のこと好きなの?」

 

ホッとしたのつかの間でダイヤと果南から思わぬことを聞かれて私の顔は真っ赤になった。

 

「ダイヤと果南ったら何を言い出してるの。愛護は私のbutlerだからちょっと気になっただけよ……って言い訳は見苦しい?」

「無理がありすぎますわ」

 

私は勘弁して話すことにした。そうなると、やっぱりみんな年頃の女の子らしく興味津々で聞き始めた。

 

「「「えーーーー!!!」」」

「愛くんが好きだったから執事に指名した!」

「でも、愛くんは会ったことなかったって」

「それは愛護が忘れてるだけです。本当に覚えてないのけっこうショックだったんだから」

「あはは、で、何で愛くんのこと好きになったの?」

「たしかにそれは気になる!」

 

みんな、さっきの私みたいに顔を近づけてくる。

 

「ええっと、言わなきゃダメ?」

「「「もちろん!」」」

 

みんなは声を揃えて答える。

 

「わ、わかりました。話します!」

 

こうして、わたしは愛護との出会いの話をすることにした。




単純に主人公のご都合主義でモテさせるのは嫌だったため過去の出来事に理由を持たせようとしました。やっぱり、理由とかきっかけがあるから面白いと思います。


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28話:過去

普段と子どもの頃の差別化として会話をひらがなだけで書いてます。

読みにくかったらすいません。


 

私と愛護が出会ったのは内浦に引っ越してくる前、まだ果南とダイヤにも会ってない時だった。

 

愛護と愛護のママがうちに遊びに来たことで私たちは出会ったの。

 

「ほら、愛護。隠れてないで出て来なさい。鞠莉ちゃんに失礼じゃない」

「愛護くんは恥ずかしがり屋なのね」

「本当にごめんね。恥ずかしがり屋で泣き虫。本当に男の子なのかしら?」

「まだ小さいんだから、そんなこと言ったらかわいそうでしょ。そんなこと言ったらマリーも恥ずかしがり屋だもん」

 

そう、私と愛護は初めて会う人たちがいるためお互いのママの後ろで隠れていた。

 

でも、ママたちは話が盛り上がり私たちは正直言って私たちのことを忘れるかのごとく話し続けた。

 

私は居心地が悪くなったから意を決して愛護に話しかけた。

 

「あの、わたしはまり。おはらまり。マリーってよばれてるの」

「えっと、おおかわあいごです。5さいです」

「それじゃ、わたしの方がお姉さんだね!」

 

私は愛護の歳を聞いて自分が歳上だと気づいて少し気分があがった。

あの年頃ってお姉さん、お兄さんに憧れるから。

 

「ねえ、いっしょにあそぼ。おっきなこうえんあるの」

「うん」

「ママ〜、あいごくんとこうえんいってくる!」

「もう仲良くなったの。いってらっしゃい」

「はーい」

 

私はそうして近くの公園に愛護を連れ出した。

 

公園に来た私たちは時間を忘れるぐらいめいっぱい遊んだ。そして、やんちゃだった私は木登りを始めた。

 

「あいごくんもいっしょにのぼろー」

「マリーちゃん、あぶないよ」

「だいじょうぶ、だいじょうぶ」

 

私は愛護に良いところを見せたかったのもあっていつもよりわざと危ないことをするようになった。

 

それを見て、最初の方は心配してた愛護も私を褒めるようになった。そしてそれは私を調子づかせた。

私はどんどんと登って行った。そして、途中足を置いた枝が折れてしまった。

私はバランスを崩して落下した。そして、大怪我をするはずだった…

 

でも、私はほとんど怪我することはなかった。なぜなら、愛護が庇って下敷きになってたから。

それなのに、愛護は泣いたり、ましてや私を怒ったりなんて全然しなかった。自分が一番痛い思いをしてるだろうに私の体を最初に心配したの。

 

その瞬間、わたしは目の前の王子様に恋をしたんだと思う。

 

そのあとはよくおぼえてないけど、パパが迎えに来てくれて、パパが愛護をおぶって帰ったの。

 

あっ、そういえば傷の手当てで消毒した時は泣いてたからパパは笑ってたな。

 

これが私と愛護の話、あっでも、流石にそれ一個だけで落ちるほど私はちょろくありません。

確かに、大きな要因ではあるけど10年も前のこと。それどころか久し振りに会った頃は私が勝手に王子様のイメージをつけていたからちょっと驚いた。

私をいじったりするしお説教はするしで全然王子様っぽくなかった。

でも、一緒に暮らしていくうちに優しいところが見えて、かっこいいところが見えて、やっぱり王子様に見えてきた。

 

それが、私が愛護に恋をしてる理由。

 




これが愛護とマリーの出会いです。

マリー視点なのでちょっと美化されてるかもしれませんけど


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29話:ラブライブへ

 

「ハクション!」

「ちょっと大丈夫?」

「誰か噂でもしてんのかな?」

「まさか、愛護を狙う者の襲来!?」

「はいはい、とっとと買って帰るぞ」

 

俺は善子に追いつき今は二人でコンビニに向かって歩いている。

 

「ていうか、なんでついてきたのよ。じゃんけん負けたの私だったでしょ?まさか、ヨハネに忠誠を使い、リトルデーモンとして契約する気になった?」

「誰がなるか。主人はマリーで足りてるっての。そうじゃなくて流石にここ毎日だから可哀想に思っただけだ。明日もし負けてもついてこねーよ。それより善子、お前ちゃんとメモ持ってるか?」

「持ってるわよ」

「よかった」

 

俺たちはコンビニに入るとメモを見ながら協力してアイスを集めレジに運んだ。

会計したあと、俺は袋を持ちコンビニを出た。

 

「ちょっと、私が負けたし私が持つわよ!」

「俺は勝手についてきたんだからそんなに気にすんなって」

「ダメ!」

 

善子は俺から荷物を奪おうとする。俺はそれに対抗し善子に届かないように荷物持った手を目一杯あげる。

 

「ちょっと、卑怯よ!」

「だから、俺が持つからいいって」

「だから愛護が持っちゃ意味がないでしょ!離さないなら…」

 

善子は手を伸ばして奪い取るのを諦めると今度は俺にプロレス技をかけてきた。

 

「堕天龍鳳凰縛!」

「待て!それはやめろ!色々まずい!わかった、半分持ってくれ。それでいいだろ!」

 

俺が叫びながら折れると善子はほどいてくれた。

 

「いくらなんでも、男にプロレス技かける女子高生がいるか!」

「プロレス技じゃなくて堕天龍鳳凰縛!」

「あーそうかよ。はい、こっち側持て」

 

俺はそう言って片方の持ち手を持たせる。

 

「それにしても、なんで毎回じゃんけん負けるのよ」

「うーん、完全にじゃんけんは運なところがあるからな」

「やっぱりヨハネの美貌に嫉妬した神のいたずらで運が奪われてるのね」

 

善子は相変わらずの変わらない設定を口に出す。

 

「それじゃ、お前は不幸なのか?」

「違うわよ」

「ん?」

「運が悪いからって不幸ってことじゃないでしょ」

 

善子は当たり前のことを言うみたいな顔して答える。

 

「ヨハネは"運"が奪われただけで"幸せ"は奪われてないの!」

 

俺は思ってもみなかった解答がきて驚いた。

 

「やっぱり、なんやかんや言って善子っていいやつだな!」

「ちょっと!急に何言ってるのよ!」

 

照れ隠しなのか顔を真っ赤にしながら俺に悪態をつく。

 

「ほら、さっさと行かないとアイス溶けちゃうでしょ!」

「そうだな」

 

俺たちはアイスが溶けないよう少し早足で学校に帰った。

 

 

●●●

 

 

 

俺は学校に着き、みんなで図書室で扇風機を回して涼んでいた。

 

「ぴぎぃー」

「ずらー」

「よはー」

 

1年3人が変な鳴き声とともに扇風機を独占してるのであまり涼めてはいないが。

 

「そういえば鞠莉ちゃん、今の説明会の参加人数は?」

「待ってね」

 

鞠莉はパソコンを起動させ現在の参加人数を確認する。

 

「今のところは…0でーす」

「まだ0かあー。この学校そんなに魅力ないのかな?」

「魅力ないというよりも魅力に気づいてないって感じだろ。そのために、ラブライブ出るんだろ」

「うん!それじゃ練習再開しよ!」

「そうですわね。休憩も十分しましたし」

 

俺たちは練習を再開することにした。その時、うちのクラスのむつさんたちがやってきた。

 

「むっちゃん達どうしたの?」

「本を返しにきたんだけど、千歌達の方こそどうしたの?」

「練習!もうすぐ地区予選だし、毎日やってるよ」

「毎日!?」

「うん、これからまた練習。じゃあね〜」

 

千歌はむつさんたちに手を振り図書室を出てった。それに続きみんなも図書室から出て行く。

俺も最後に図書室に出ようとした時、むつさんに話しかけられた。

 

「あの、ちょっと良いかな?」

「なんだ?」

「私たちもスクールアイドルになれるかな?」

「それは、Aqoursに入りたいってことか?」

「というよりも、千歌たちが一生懸命に学校守るためにやってるんだから私たちも何か手伝えないかなって。だから、一緒にステージで歌えたら良いし、愛くんはサポートしてるから私たちも違う方法でサポートできないかなって考えたんだけど」

「そうか、その気持ちは嬉しい。でも、ステージで歌えるのって最初にエントリーしてる9人だけなんだ」

「そうなんだ」

「でも、観客席で応援することはできる。だから、むつさんたちも学校を守りたいならみんなにその想いが伝わるようにおうえんしてくれ」

「うん!絶対みんなで応援する!」

「ありがとう、みんなに伝えとく。じゃあ、俺は練習あるから行くな」

 

俺はむつさんと別れ練習してるAqoursのもとに向かった。

 

 

そして、月日が流れ地区予選当日がやってきた。

 



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特別編
特別編:ダイヤの誕生日


特別編で今までの話とは繋がっていません。

ダイヤさんたち三年生も入っているしメンバー間も敬語がほとんどありません。


今日は、1月1日。

世界中が新年を迎え幸せオーラの中俺は今、黒澤家の大きな居間でダイヤさんの親戚の男性陣に睨まれて絶賛不幸中です。

こうなった経緯は5日前にさかのぼる。学校も冬休みに入り、昨年最後の練習が終わった時だった。

 

 

 

●●●

 

 

 

「あの、1月1日空いてませんか?」

 

ルビィちゃんがAqoursのメンバーに質問した。ちなみに今、ダイヤはいない。

 

「1日はちょっと…」

 

その質問に梨子が申し訳なさそうに断る。

 

「うちも帰省するから1日は厳しいな」

「私も…」

 

梨子に続くように曜、果南そして俺を除くメンバー全員が空いてないと言った。まあ、普通に考えたら無理だな

 

「何かあるのか?」

 

俺はなんで1日なのか気になり、質問してみた。

 

「お姉ちゃんの誕生日なんです」

「えっ!」

 

俺はびっくりして叫んだ。そして、その声にルビィちゃんが驚きいつもの「ピギー」が小さく聴こえた。

 

「あっ、悪い。思いもよらない理由だったから。で、えっと、本題に戻るけどということは一緒に祝って欲しいとかそういうことか?」

「はい、お姉ちゃんいつも家族や親戚の人には祝ってもらえるけど日にちが日にちなので友達に直接祝ってもらったことがないので今年はみんなで祝いたいなーって」

「なるほどな。それで、1日空いてるか聞いたのか」

「はい。やっぱりみんな予定入ってるよね」

 

しょんぼりするルビィちゃん。

ルビィちゃんの想いはわかった。でも、やっぱり毎年の決まった予定だしみんな変えられないよな。

 

「あれ?そういえば、愛くんは無理だって言ってないよね」

「まあ、別に俺の場合100%無理ってわけじゃないからな。母さんが別に無理して帰ってこなくていいとか言ってるしな」

「じゃあ、愛護。ダイヤのために行ってあげて」

「は!?俺一人で行くのか?」

「だって、みんな予定が入ってるし」

「いや、そういうのはみんながいるからいいんだろ。一人二人ならまだしも無理なやつの方が多いじゃねえか」

「ルビィちゃん、愛護一人でも大丈夫?」

「大丈夫、絶対お姉ちゃん喜びます」

 

ルビィちゃんはブンブンと首を縦に振った。

 

「じゃあ、決定。それじゃあ、明日ダイヤのberthday presentをみんなで探しに行きましょ。そして愛護に当日渡してもらいましょう」

 

マリーのこの一言で俺は行くことが決定した。

 

 

 

●●●

 

 

 

で、結局来たわけだが勿論、ダイヤとルビィちゃんの親戚も来ていて絶賛尋問中というわけ。特に伯父様方に…(親戚間の挨拶などがあると思って夕方にきたからもう伯父様たちは酔っているので結構面倒くさい)

 

「お前、どっちの彼氏なんだ?ルビィちゃんか?ダイヤちゃんか?」

「そうだ!答えろ!」

「えっーと、どっちも違…」

「どっちもだと!ふざけるな!」

 

俺の言葉を勘違いし遮って怒ってきた。やべ、これしんどい。普段の生活からマリーには慣れてるけど少しタイプが違うし対処方がわからん。

そんな俺が困ってるとダイヤとルビィのお母さんが助けてくださった。まあ、俺が絡まれてる原因を作った人でもあるんだが、俺を見た瞬間ダイヤが彼氏連れてきたって騒ぐからこんなことになったんですけどね(ちなみにダイヤたちのお父さんとお爺さんはショックで気絶したらしい)。

まあ、そんなこんなでお母さんに助けてもらい、伯父様方はその後、酔いつぶれて眠り部屋はだいぶ静かになった。

 

「はあ、助かった」

「大変だったわね」

 

お母さんがあったかいお茶を入れて持ってきてくれた。

 

「ありがとうございます」

 

俺は両手で湯のみを持ちお茶を飲み、リラックスした。その時、ダイヤとルビィちゃんが入ってきた。

 

「随分と疲れてますわね」

「大丈夫ですか?愛護さん」

「ああー、弁明してくれるお前らがいなくてだいぶ苦労したぞ」

 

俺はあえて皮肉気味に言った。

 

「仕方がないですわ、人がいるということはそれだけ洗い物などが増えるんですの。少しでも、手伝いませんと」

「ごめんなさい。ルビィもお手伝いしてました」

「それはわかる。だから、俺も手伝うって言ったんだよ」

「お客様にそんなことさせられませんわ」

「俺は気にしないって」

「そういうことではありませんの。常識ですの」

「…わかったよ。その代わりこれからは側にいてくれよ」

「わかりましたわ」

「はい」

 

そう言って俺の隣にダイヤが座りそのまた隣にルビィちゃんが座った。その様子を見ていた。お母さんがクスクスと笑っていた。

 

「どうしたんですか?」

「いやだって、これからは側にいてくれってプロポーズみたいな言葉だなと思って」

「なっ…そういう意味でしたの!」

「な訳あるか」

「そうですわね」

「でも、実際仲良いわよね。ルビィが親戚以外でここまで男の人に普通に接するなんてなかったもん」

「まあ、何かと一緒にいましたからね」

「そうですわね。昨年は色々ありましたもの」

「うん、千歌ちゃんがスクールアイドル部を作ってそのメンバーになってすごく充実してた」

「俺はここに引っ越して来たしな。気づいたら女子校に通わされてた」

「本当にあの時はびっくりしましたわ。まあ、思っていたよりほーんの少しぐらいは誠実だったのでよかったですわ」

「それはよかった」

「へー、楽しそうね。あっ、晩御飯の用意しなくちゃ大川くんも食べていきなさい」

「いやでも」

「大丈夫、ここのおばさん達は反対しないから、おじさん達はどうせ私たちに勝てないから」

 

やはり、どこの家も女性が強いらしい。

 

「てことで、私は行くわね。一人だけサボってられないしダイヤとルビィも休んどいていいわよ。大川くん一人じゃ可哀想でしょ」

「わかりましたわ」

「はーい。あっ、じゃあ愛護さん。ルビィとお姉ちゃんの部屋に行きませんか?」

「それはいいですわ。ここじゃ落ち着けないでしょうし」

「ああ、二人に任せる」

「じゃあ、行きましょう!」

 

そして、俺はルビィちゃんに手を引っ張られ部屋に連れて行かされた。部屋に入ると目に入ったのは大量のアイドル雑誌が少し散らかってることだった。

 

「すげー量だな」

「あっ、片付けとくんだった」

「だから読み終わったら片付けなさいといつも言ったのですわ」

「ごめんなさい」

 

そうして、ルビィちゃんは急いで雑誌を拾い片付けた。そのあと二人に言われ適当に座った。

 

「あっ、ダイヤ。誕生日おめでとう」

 

俺は持ってきていたAqoursメンバーと俺の誕生日プレゼントをまとめて渡した。

 

「ありがとうございます。開けてもよろしいんですの?」

「うん。いいぞ」

 

そうして、中身を見ていくと様々な物が出てきた。曜からのと思われるストラップとコスプレ用のナース制服…それ喜ぶのお前だけじゃね。

 

「これ、いつ着たらいいんですの?」

 

だよな。

そして、次に出て着たのは可愛らしいリボンと…黒がベースのリトルデーモン的な衣装。…あいつだな。

 

「だから、いつ着るんですの」

 

次に出てきたのはこれまた可愛らしいハンカチと…ダイビングショップの割引券…ちゃっかりしてんな。

てか、さっきからなんで真面目なプレゼントとネタ的な物入れてるんだよ!

 

「はあ、仕方がありませんわね。今度久しぶりに行って来ますわ」

 

微笑みながらため息をつくダイヤ。呆れてはいるがやっぱり嬉しいらしい。

 

そして、四つ目はというとマフラーとみかんが3、4個スーパーの袋に入っていた。一緒に手紙も入ってたらしくダイヤが読み上げると「これ、すっごく美味しいよ!」って書いてあった。…はい。

 

「あとで、いただきますわ」

 

続いて、手袋が出て来た。見た感じ手編みっぽい。

 

「あっ、それルビィと花丸ちゃんとで作ったのお裁縫は好きだけど編み物は初めてだったから花丸ちゃんと協力して作ったの」

「ありがとうルビィ。花丸ちゃんにもお礼を言わなければなりませんわね」

 

早速、付けてみるダイヤ。やっぱり、少し変なとこもあるような気もせんでもないが頑張って作ったのがわかる良いものだった。そして五つ目を見ようと思った時、ルビィちゃん達のにもう一個プレゼントがあるのに気づいたダイヤはそれを出してみると中から…のっぽパン全種類一個ずつ。

 

「これもあとでいただきますわ」

 

そして、五つ目に出て来たのは梨子のだと思われるマグカップ。それオンリー。いや、それが普通か。

 

「なんていうか、ここまでのを見てるともう一個何か入ってるのかと思ってしまいましたわ」

「俺もだ」

「ルビィも」

 

そして、次にダイヤが取り出したのにはなんかすごい高価な雰囲気をかもし出していた。

 

「マリーですわね。嬉しいんですけど、高価なものを渡されても逆にマリーの誕生日の時にお返しが困るからやめてほしいって前に言いましたのに」

 

そう言って中を開けるとダイヤの指輪が入っていた。

 

「少し怖いですわね金額が」

 

うん、たぶんそれめっちゃ高いぞ。

 

そして、最後俺のプレゼントはというと

 

「あら、可愛らしいですわね」

 

俺のプレゼントはネックレス。だからってマリーとは違い雑貨屋で買ったネックレス。

 

「ありがとうございます。愛護さん」

「あっ、俺からもう一つプレゼント。ちょっと待ってろ」

 

そう言って俺は部屋を出て台所に向かった。そして、ダイヤたちのお母さんに許可をもらい冷蔵庫を開け、冷やさせて貰っていた箱を取り部屋に戻った。

 

「お待たせ、もう一つのプレゼントはこれ」

 

俺が箱を開けるとプリンが顔を出した。

 

「プリン!」

 

大好物のプリンを見てダイヤはテンションマックスな声を出した。

 

「ああ、今日の朝作って来た。どうぞ、食べてくれ」

 

俺が進めてスプーンを差し出すと一口食べた。すると、嬉しいことに最高の笑みを浮かべてくれた。

 

「美味しいですわ。また作って欲しいほどですわ」

「それはよかった。じゃあ、また今度な」

 

それから、ダイヤはルビィちゃんに一口あーんをして食べさせるとルビィちゃんもとても喜んでくれた。

 

それから、三人でいろんな話をした。基本的にはルビィちゃんの雑誌を開きながらルビィちゃんとダイヤがスクールアイドルのことを教えてくれた。

しばらくすると、ダイヤたちのお母さんに食事だと呼ばれ部屋を出ていった。

 

ご飯の時、ダイヤが隣に座ったのでまたまた伯父様方に絡まれてダイヤが照れたりしたのはそれはまた別の話。




Twitterを始めました。@asahirotokifuka です。


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