東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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それは彼女たちにとって輝く存在であり、

僕にとっては背けたくなる存在




sunlight

卯月Side

 

 

 

12月24日  19時

 

 

「いや〜しまむー良かったよ!」

 

「卯月...よかったよ」

 

「ありがとうございます!」

 

ライブが終わり、私たちはとあるところに訪れています。

今、来ているところ。

そこは凛ちゃんと再びであった場所でもあり、私が二人に胸の中に隠していた思いを言った公園です。

未央ちゃんが『しまむーは今どこか行きたい?』と言ったため、私の希望でここに来ました。

訪れた時はすっかりと暗くなってしまい、冷たい風が日が出ているよりも強かったです。

私たちは街灯に照らされたベンチに座り、先ほど行われたクリスマスライブのことを話しました。

再び取り戻した、私。

あの瞬間は今でも心に残っています。

 

「そういえば、ここって凛ちゃんともう一度出会った場所ですよね?」

 

「そうだね。あの時は桜が綺麗に咲いていたね」

 

綺麗に咲いていた桜。

今は葉っぱがなくて、何もありません。

でもよく枝を見ると蕾が小さくあります。

春に向けて咲く準備をしていました。

そういえば未央ちゃんは私と凛ちゃんと違いオーディションでアイドルになったため、あの時は一緒にいませんでした。

 

「うん。ここで卯月とプロデューサー、"金木"と出会ったんだ」

 

「........」

 

「しまむー?」

 

「....大丈夫です」

 

私は凛ちゃんが言ったある言葉に思わず、暗く感じてしまった。

金木さんという言葉に暗く感じ始めてしまった、私。

本当はそう考えちゃダメなのに、自然と現れてしまう。

ふと気が付いた凛ちゃんは少し唇をしめ、

 

「ごめん、卯月..."あいつの名前"を」

 

「謝らなくてもいいですよ...凛ちゃんも誰も悪くはありません...」

 

「....金木さんもしまむーとしぶりんといたんだね」

 

あの時、金木さんの言葉が凛ちゃんがアイドルと言う道を踏み出すきっかけを作ってくれました。

そのおかげで凛ちゃんは初めよりも成長して行きました。

でもそれを導いてくれた金木さんはどこかに行ってしましました。

金木さんの話題を上げただけで、楽しく話し合っていた私たちは口を閉ざしてしまいました。

 

「...大丈夫です」

 

そんな空気の中、私は口を開いたんだ。

 

「金木さんは....大切な人です。だから、私は帰ってくるのを待ってます」

 

「...しまむー。やっぱ、そう考えないと金木さんは戻っては来ないね」

 

「..うん、あいつは死んでなんかはいない。どこかいるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

夢の舞台に立てた、私たち

 

 

 

 

 

 

舞台に立って、いろんなことが変わってしまった

 

 

 

 

 

 

それは良いこともあれば悪いこともね

 

 

 

 

 

 

 

 

私はどんなにキラキラと輝いても、忘れないよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いなくなってしまった、あなたを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

文香Side

 

 

私は事務所の玄関にあるソファに一人本を読んで座っていた。

仕事が終わり、私はしばらくここで本を読んだ後、家に帰ろうと思います。

確かここは志希さんと美嘉さんに金木さんが行方不明だと知らせた場所であり、長く事務所に訪れなかった卯月さんとお会いした場所になります。

 

 

玄関は音もなく、静まり返っている。

いつも本を読んでいると周りの音を気にしないはずの私が、今は周りの音を気にしている。

読んでいる本もただ文字を読んでいるだけで、全く物語が頭に入らない。

 

 

 

 

後悔

 

 

 

 

自分がやってしまった過ち

 

 

 

 

それが今の私の頭に大きく占めているもの。

考えるたびに胸が締め付けられる。

今更、後悔しても遅いのにまだ思い続けていた、私。

前に踏み出すことを恐るように見えてしまう。

 

「ふーみーかちゃん♪」

 

ふと我に帰ると、聞こえなかったはずの音が玄関に響き渡っていました。

あまりにも考えていたせいか、周りを気にしてなかった。

 

「こ、こんばんは...志希さん」

 

「一人で何してる〜?」

 

「あ...い、いえ、新しく買った本を読んでいまして」

 

「そう?いつもにしては、かなり読むのが遅いように見えるよ?」

 

確かに志希さんの言う通りであった。

今開いているページはソファーに座った時と同じページであり、

一行すら読むのが遅かった。

 

「全く文香ちゃんは...もしかして一人で抱え混んでる?」

 

「すみません...」

 

志希さんは知っていた。

私がこうして一人抱え込む姿を何度も目にし、理解してくれる。

 

「癖はすぐには治らないよ。例えばあたしの失踪癖とか♪」

 

そう言うと志希さんはにゃははっと笑いました。

志希さんの失踪癖は前よりは治ってますが、治っているとは限りません。

 

「おっ!志希に文香さん!」

 

すると志希さんが指差した先を見ると美嘉さんが立っていました。

確か美嘉さんはクリスマスイベントのお仕事が入っていました。

 

「美嘉ちゃんじゃんっ!お疲れ〜♪」

 

「こ、こんにちは...美嘉さん」

 

「ありがとう、二人とも☆」

 

「あ、美嘉ちゃん!!あたし話したいことあったんだ!」

 

「話したいこと?まさか変なことじゃないよね?」

 

「いやいや、今回は少しだけ違うよ♪」

 

「.......」

 

相変わらず楽しそうに話す、お二人。

それを黙って見ている、私。

夏の時と変わらない。

私は未だに変わってないと心の中で突き刺さるように感じる。

そんなことを思っていた私はふと美嘉さんと目が合い、

美嘉さんはあることを伝えました。

 

「文香さん。そういえば、アタシたち最後のクリスマスなんだよね」

 

「え?最後のクリスマスですか?」

 

「あれだよ。高校生活最後のね♪」

 

「あ、ああ...」

 

確かに志希さんと美嘉さんは高校三年生。

となると来年では高校を卒業してしまいます。

そう考えると、なんだか私が卒業をした時が懐かしく胸に感じます。

あの時の私は長野の山奥の小さな町から、都会である東京に行くことに胸を弾ませていました。

まだ見ぬ世界に期待を持っていました。

でも今の私は金木さんという一人の方を失った悲しみと、アイドルになったことに葛藤する日々を過ごしています。

 

(...何しているんだろう、私)

 

上京し始めた私と今の私。

あまりにも変わってしまった。

大学で勉強をするためにきた東京。

今はその目的よりも、大きく胸の中に占めてしまった悩み。

私はなんでこうなってしまったんだろう。

 

「文香さん?」

 

「...え?」

 

「どうしたのですか、暗い顔をして?」

 

「あ....い、いえ...なにも」

 

「何もじゃな〜い♪」

 

突然、志希さんが無理やり私の肩にもたれるようにくっつきました。

 

「文香ちゃん。今日は一緒にたのしも?あたしたちと、どこかに」

 

「ど、どこかって?」

 

どこに行くのかわからず、聞こうとしたその時、

 

「今日はぱっぱと遊ぼうか♪」

 

「え?」

 

すると志希さんが満足そうな顔をし、私は無理やり立たせ、手を引っ張りました。

 

「ちょっと、志希!急にどうしたの?」

 

「美嘉ちゃんも行かない?」

 

「え?」

 

「今日は特別な日。思い出に残るような日にしない?」

 

「...そうだね。なにせ今日はJK最後のクリスマスだしっ!」

 

はりきってそう言った美嘉さんは私の背中を押し、外に行きました。

 

 

 

 

 

 

私は二人に連れられ、外に出た

 

 

 

 

 

 

無理やりといいほど私は彼女たちによって連れて行かれた

 

 

 

 

 

でもそれはどこか心地よかった

 

 

 

 

 

冬の冷たい風が肌に感じるたびに、ワクワクとした好奇心が胸に生まれていた

 

 

 

 

 

 

まるで上京した時に感じた好奇心と似ていた

 

 

 

 

 

 

志希さんと美嘉さんの性格は私とは正反対の明るい性格です

 

 

 

 

 

 

 

違う性格だから相性は悪いのではないかと思うかもしれません

 

 

 

 

 

 

でも私はそうは思いません

 

 

 

 

 

 

私は二人に新たな世界を見せてくれて、助けてくれました

 

 

 

 

 

 

もし志希さんと美嘉さんに出会わなかったら、あの悲しみから立ち上がることができなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は探さなければならない

 

 

 

 

本当にアイドルと言う道を選んで良かった理由を

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

多くの人が行き交う駅

 

 

 

 

 

 

足の進む音はこの場所の雰囲気を表しているように聞こえる

 

 

 

 

 

その中に、人を装う僕がいた

 

 

 

 

 

見た目は人のだけれど、中身は喰種

 

 

 

 

 

正体がバレてしまえば、それは死の宣告と等しい

 

 

 

 

 

 

すると歩いていた僕はぴたりっと止まった

 

 

 

 

 

 

僕の瞳に映ったのは、駅の広告に映る輝く彼女たちだ

 

 

 

 

 

 

眼帯に隠れ、片目から見える彼女たちの姿はきらびやかに映っていた

 

 

 

 

 

 

その光は僕にとって隙間から照らされる命の光でもあり、自然と背けたくなる光

 

 

 

 

 

 

光の彼女たち

 

 

 

 

 

 

 

影の僕

 

 

 

 

 

 

 

 

悲しいことかもしれないけど、それが今の僕が表す現実

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕がやらなくちゃいけないこと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは姿を消さないといけない

 

 

 

 

 

 

 

彼女も友達も大切な人たちを守るために、そっと影から見守らないと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから僕はこの街に姿を消すよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女と再び出会うことがないようにね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




第2章 異変 終




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