異空人/イクウビト   作:蟹アンテナ

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話数が増えてきたら、時々更新するかもしれません。

登場人物ページは設定資料の方に移しました。

新たに書き直した1話を追加しました。



第1話    転移現象

無限にも思える広大な宇宙、過去と未来にまたがる途方もない時の流れ。

無数の銀河と幾多の星々、そしてそれに宿る生命たち・・・それらは、様々な命の光を放ち、瞬く間に誕生と死を繰り返し続ける。

 

それは一つの宇宙だけでなく、無数に横たわる異なる次元・異なる物理法則の世界でも同じ事であった。

 

太陽系第三惑星・地球・・・そして異なる次元に存在する生命を宿す青き星。

運命の悪戯か、それとも神の意思か、それが綺麗に合わさりそのタイミングで次元の裂け目が生じた。

 

 

本来混じり合う事の無かった星と星の接点、それが未知の力によって入れ替わり、局所的な次元シフトが発生する。

 

何かが一つ狂っていればそれだけで二つの星は星としての命を失っていたであろう。

しかし、無数の奇跡によって二つの星は崩壊を免れ、その表面の生命達も消えずに済んだ。

 

それが環境の激変と二つの星の運命を大きく変える事だとしても、それはこの宇宙にとって非常に些細な出来事だったのかもしれない・・・。

 

 

地震の発生・オーロラの発生・今まで観測されなかった未知の天体・消えてしまった星々・海外からの電波の消失、それらが一度に引き起こされ混乱し、やがて状況を飲み込み始めた文明は愕然とする。

 

異次元に飲み込まれ未知の天体へと転移したその国の名は・・・日本。

 

地球と同じく青い海に囲まれ、地球の環境に近くも、大きく異なるこの惑星に転移した日本は、文明として生き残りをかけた生存競争へと駆られる事になる。

 

この新たな世界は酷く単純に出来ている。

食うか食われるか、滅ぼすか滅ぼされるか、無数の文明が、無数の生命達が己の命運を掛けて争い、激しく命を燃やしているのであった。

 

それは元より地球でも同じ事であったが、そこに機械文明は存在せず、かつて地球にも存在した原初の姿を色濃く残しているのである。

 

最初は己の拳、次は動物の骨や棒状の木片、鋭く削り取られた黒曜石、そして最後に鉱物を溶かし固めた純度の高い金属塊である。

 

 

久しく忘れていた世界の在り方を日本はこの星の大陸に進出して目にする事になる。

そしてあの荒々しくも生命にあふれた人々の営みを思い出す。

 

 

血肉と骨を断ち切る刃は鋭く、鎧を砕くための棍棒はなお重く、威力と殺傷力を増し、相手よりも離れた位置から一方的に攻撃する手段として、槍は長くなり、弓の弦は固く引き締まる。

 

しかし、決定的に地球とは異なる要素がある。

 

[魔法]の存在である。

 

火種の無い所から火を生み出し、大気中の水分を集めて水を生み出す。

根本的に物理法則の異なる現象を引き起こしている物質は[魔素]と言う。

 

地球と似て非なるこの世界で、日本は魔法と言う未知の法則を研究し解明し、取り入れる事で生存戦略を練る。


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