異空人/イクウビト   作:蟹アンテナ

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前回の投稿から大分期間が開いて申し訳ありません。秋のラッシュと体調不良のコンボでまともに時間を確保できませんでした。


第108話  硝煙の記憶

異世界に転移した日本は、大陸上陸時に異世界文明と接触し、不幸な事になし崩し的に戦争を開始する事になった。この衝突から、幾つのかの国々を統治下に収め、現在はそれぞれの城塞都市を近代化させ日本の大陸進出の重要な拠点として機能している。

 

 

ゴルグ陥落後、処刑された貴族と親族関係のある者たちによる報復攻撃を受ける事件があった。

復興作業中のゴルグに押し寄せた軍勢を返り討ちにし、逆侵攻を行った自衛隊に軍を壊滅させられ降伏した都市国家サテラニア、かの国もその一つである。

 

 

『ザーコリアが陥落したか・・・。』

 

『あれを経験した後では、戦う前から結果が分かりきっているので驚きはしないな。』

 

『手の込んだ遠回りな自殺としか思えんな、まさか自国の民を拉致監禁・殺害した程度で軍を動かすとは想像もしていなかったが・・・。』

 

『よもや、最初からわざとザーコリアに向かい捕らえられるよう仕向けたのではあるまいな?軍を動かす口実にするには苦しい気もするが・・・。』

 

『いや、ニッパニアは自国の民を捨て駒に扱う事は無いだろう、かの国は同族意識が強すぎる。』

 

窓ガラスの前に立ち、すっかり様変わりしたサテラニアの風景を眺めながら呟く。

 

『あの国の民は温厚な気質を持っている。しかしその反面、同族を傷つけられれば怒り狂う魔獣と化す。』

 

『我々が生きてこの街並みを眺めることが出来るのは、彼らに挑むも傷一つ負わせることが出来ずニッパニア側の戦死者を一人も出さなかったからに過ぎない。我らは甚大な被害が出たと言うのにな・・・。』

 

『あぁ・・・そうだったな、我らは生き延びてしまったのだ。』

 

 

 

 

 

時は遡り、日本が大陸に進出して間もない頃・・・。

 

 

『何だと・・・?もう一度言ってみろ。』

 

『・・・ゴルグガニア解放軍は、壊滅しました。』

 

『馬鹿な!規模だけならばゴルグガニアと同等の筈だぞ!?蛮族相手に壊滅するなど!』

 

『蛮族の軍勢は未知の魔術を操ると言う情報もあります。それも威力と射程共に常識を超えております。』

 

『な・・・何という事だ。』

 

『これだけの兵を失っては我が国の防衛にも支障をきたします。いえ、この機に乗じて蛮族は必ず逆襲しに来るでしょう。』

 

貴族の男は盛大にうろたえながら、よろよろと椅子に腰かける。

 

『あの馬鹿者どもめ・・・だからあれ程事前に情報収集をしておけと言ったというのに・・・・いや、私もかの国を侮っていたのかも知れぬ。』

 

親族を殺され怒り狂った貴族たちが兵を率いて出ていった姿を思い浮かべながら目頭を手で押さえながら俯いた。彼らは自ら先陣を切り、そして誰よりも先に散っていったのだ

 

『・・・・都市の防御を固めろ、少しでも奴らに損害を与えるのだ。』

 

城塞都市サテラニアが防御を固めたものの、未知の軍勢が街を包囲したのはそれから間もなくの事であった。

 

『アー・・アー・・・サテラニアに告ぐ!諸君らは既に包囲されている!武装を解除し、我らに降伏せよ!繰り返す!降伏せよ!』

 

魔道具を使っているのか、街全体に響かんばかりの音量で降伏勧告を行ってくる。

自分達の知らない未知の技術の一端をここに来て見せつけられ、思わず動揺するが、未だ一方報いることが出来ていないサテラニアはこれを拒否する。

 

『ふざけるな!そもそも、そちら側が先に手を出したのだろう!ゴルグガニアには我々だけではない多くの国々の貴族が血縁を結んでいるのだぞ!!』

 

城門が開き、次々と兵が吐き出されて行き、あっという間に陣形を組むと、隊列を維持したまま未知の軍勢へと突撃して行く。

 

兵士一人一人の雄叫びが合わさり、まるで巨大な獣の咆哮の様な迫力になり、若い自衛官が思わず息をのんだ。

 

「練度が行き届いているな、見事な陣形だ。」

 

「感心している場合か、目を離すなよ!なるべく引き付けろ!」

 

「映画なんかとは比べ物にならない迫力だな、数は多いが近接武器が主力だ。念のために弓に警戒しろ!」

 

砂埃を巻き上げながら、まるで一つの生物の様に動くサテラニア軍

奇妙な馬車のような物に乗った兵士が、黒い棒のようなものをこちらに向けると、聞いた事も無いような轟音と共に、戦列が真っ二つに引き裂かれる。

 

『な・・・何事かぁぁぁぁっ!?』

 

『蛮族の魔術です!馬車の上から大型の杖で我が軍を攻撃しております!』

 

『これが魔術だと!?こんな・・・こんな戦い方があってたまるかぁぁぁ!!』

 

肉が引き千切られる音、土煙と共にかつて人だった物が大地と混ぜこまれ、悲鳴が、怒声が木霊する。

 

車上から放たれるM2重機関銃の嵐が、戦列を横薙ぎにする。

岩陰や積まれた土嚢の影から89式小銃が軽快なバースト射撃をする。

風切り音と共に120mm迫撃砲が降り注ぎ、着弾地点周辺の兵士を大地に還す。

 

 

『これは一体・・・・私は悪夢でも見ていると言うのか・・・?』

 

蛮族を迎撃すべく出撃したサテラニア軍は、30分も経たず壊滅したのだ。

 

不気味な模様をした鎧虫から再び大音量で降伏勧告が呼びかけられている。

 

余りの事態に、多くの者が言葉を失っている中、鎧虫の角が城門に向けられると、目も眩まん閃光と耳をつんざく轟音が発せられ、見た事も無いような大爆発を起こし、城門は跡形もなく吹き飛ばされた。

 

『・・・・降伏だ・・・。』

 

『は?』

 

『もはや戦いにすらならないではないか・・・・これが・・・あの国の戦い方だというのか・・・。』

 

宝玉が収められた杖を力無く落とし、膝をつく貴族。

その場にいた兵士達も無念と悔しさに震え涙をこぼしたのであった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・・・・・。

 

 

『国としてのサテラニアの歴史はあの時に終わっていたのだ。我々はもう王族でも貴族でもない。』

 

『しかし、今でも何故我らを処刑しなかったのか疑問ではあるな。』

 

『ニッパニアの使者は、敗戦責任を生きて償えと言っていた。ニッパニアとの戦争を主導していた貴族たちは全て討ち死にした故に、我らは生かされたという事らしい。』

 

『つくづく奇妙な国であるな、通常であれば占領下に置いた国の王族・貴族は一族郎党皆殺しが当たり前なのだがな。』

 

『民衆からも我らを処刑しない様に訴えがあったと聞く、かの国も我らを生かしていた方が統治がやり易いと判断したのかも知れんな。』

 

ゴルグガニアと比べて真面目で芯の通った貴族の多いサテラニアは、普段から治安維持の強化や生活水準向上のために手を尽くしている姿勢がちゃんと民衆にも伝わっており、それ故に民衆から慕われていた。

 

未だ異世界国家日本に対して家族を殺された怒りや恐怖を持っている者も多いが、文明力を笠に着た傲慢な態度を取らず、自分たちの訴えを聞き元貴族を生かしてくれた事に感謝をする者も多かった。

 

『民衆が我らを・・・か、有り難い話であるな。』

 

『まぁ、立場上我々は既に貴族ではなく彼らと同じ、このニッパニアの建てた小部屋の連なる建造物に押し込められた一市民に過ぎない。』

 

『現場指揮官として給料をもらって働く事はあっても、貴族としての権限はすべて凍結されているから、彼らと扱いは変わらんのだ。』

 

『ところで、自警団から派遣された観戦武官はいつ戻るのだ?』

 

『夕方ごろまでには到着するとか、相も変わらず恐ろしい移動速度です。』

 

『・・・・そうか、リンズィン精霊教国とオムカイン王国、あぁそうだ、トナーリア商業国も観戦武官を派遣したらしいな、実際にニッパニアの力をこの目で見ていなかった彼らには大いに刺激になった事であろうな。』

 

ゴルグガニア陥落時に干渉してこなかった近隣諸国は、日本と直接戦火を交える事はなかった。それ故に、日本の国力に驚く事はあってもその実力に関して疑問視する目もあった。

しかし、観戦武官を派遣し、軍の上層部に精度の高い情報を持ち帰った近隣諸国はその考えを改めるであろう。

 

『ニッパニアがこの地に齎す物は一体何であろうかな・・・。』

 

異世界から突如現れた国、日本の大陸進出により世界(アルクス)がどのように変わって行くのか、行く末に想いを馳せ元貴族たちは目を細めるのであった。




まだ少々体調不良気味ですが、時間が出来次第また進めて行きたいと思います。

トナーリア商業国は名前は決まっておりましたが、オムカイン王国は、オムカイン・サン王国にしようか迷っておりました。(でも、某所の某作品の列強国と名前が被るので省略です。)リンズィン精霊教国は最初リン・ジーンだったのですが、響きがあまりしっくりこなかったので現在の形に収まりました。

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