2018年は投稿ペースをもう少し上げたいですねー。
大森林に面した所に位置する小さな国。
その姿は田舎町と言った所だが、それでも石を積み上げられ出来た立派な防壁があり、中心部は石造りの建物が並び、中枢機能を持つ歴とした独立国家である。
時折大繁殖した魔物が大森林から溢れ、作物を荒らしたり人的被害が起きるので、定期的に討伐隊が組まれ、間引きが行われる。
特異な生態系を持つ大森林に面した特殊な環境なので、早い段階から日本と接触した国であり、大森林調査の為の拠点を提供する代わりに、それなりに良い条件で交易がおこなわれており、日本から齎される数々の物品により大きく潤っている。
日々の生活が便利になるだけではなく、その恩恵は大森林の魔物を間引く兵士達にも大きく影響を与えるのであった。
『あれ?コリン、武器の手入れ?』
『あぁ、ココルか。』
日本製と書かれたラベルが張り付けられたセラミック砥石を使い、銀色に反射する厚めのナイフを研いでいる。
『それがニッパニアのお店で買った短刀?とても綺麗だね。』
『それなりに値は張ったけど、青銅製の短刀よりも刃こぼれしにくくて丈夫なんだ。鉈と斧もすげぇけど、こういう小物も完璧だな。』
『んん・・・僕は、車輪の弓を買ってすっからかんになっちゃったから、そっちは新調できなかったなぁ・・・。』
瓶から水を流し、ダガーナイフに纏わりついている砥くそを落とし、布で拭き取り、獣の皮で表面を磨いた後に鞘に納める。
『で、ココルのコンパード・ボーとやらは、どんな調子だ?』
『えぇっとね、取り扱いにちょっとしたコツがいるんだけど、今まで使っていた弓よりも射程があって、凄い威力なんだよ。』
『ふーん?前の弓も水辺に生えるしなりの良い木材を使っていたじゃないか、あれよりも良いのか?』
『そうだね、押し出すような独特な感触があるんだけど、矢の軌道が安定するし的にも深く突き刺さるし、文句のつけようもない性能だよ。』
二人が会話をしていると、扉が開く音がし、振り向くとそこには討伐隊の隊長と副隊長が居た。
『お?武器の手入れか?武具は命を守る大切なものだ、良い心掛けだな。』
『変わった物を持っているな?異国の武器か?』
討伐隊の隊長は、角つきメットを作業台の上に乗せ、磨き始める。
『ニッパニアの大きな店で買った物ですよ。凄い丈夫で切れ味もあるんですよ。』
あごひげを撫でながら『ほぉ』と呟き、コリンからダガーナイフを受け取るとその品質を検める。
『妙に軽いな、鋭さも十分だ。しかも、強度も高いのか・・・。』
『ゴルグガニアのお城みたいなお店で買った物ですよ!僕も弓を新調したんです!』
『いいから飛び跳ねるなみっともない!』
ウサギの様に飛び跳ねながら弓をアピールするココルの服の端を引っ張り窘めるコリン
『なぁ、そう言えばこの前、楔飛蝗の群れを討伐する時にお前、真っ赤に染めた変わった斧を使っていたよな?それもニッパニアの武器か?』
『へ?え・・・えぇ、そうですけど?』
『少し借りて良いか?ここ最近、ニッパニアの道具を扱う奴が多くて気になっていたんだ。』
『・・・・構いませんけど』
『助かる』
場所は変わって、訓練場の近くにある薪割り用の切り株。
討伐隊の隊長は、切り株の上に小ぶりな木片を乗せ、防火斧を振りかぶり、刃を勢い良く叩きつける。
『どりゃあああぁぁぁぁ!』
快音と共に綺麗に両断された木片が宙を舞い、勢い余って切り株にも刃が大きく食い込んだ。
『すげぇ・・・。』
『わぁ、隊長カッコいい!』
『俺の斧・・・。』
唖然とした表情で、自分が両断した木片を暫く見つめていたが、我に返り切り株から防火斧を引きぬこうとするが、深々と突き刺さっていて引き抜くまでにそれなりに苦労した。
『凄まじい切れ味だな・・・刃は・・・曲がってねぇ!?』
『隊長の青銅斧、出撃する度にひん曲がっていたが、ニッパニアの斧はとんでもねぇな。』
『もうちょっと体格が良くなれば、俺もあれくらい重い一撃を魔物に浴びせられるのかもなぁ・・・。』
『コリンの斧ってやっぱりすごいね。』
防火斧が折れ曲がっていないか、確認するとコリンに返し、腕を組みながら唸り始める隊長。
『どうした隊長?』
『んあぁ?いや、ガキどもが装備を整えているのに俺らは、このままで良いのかと思っていてな?』
『ニッパニアの武具に更新すると言うのか?しかし、街の工房との付き合いもあるんだぞ?』
『あぁ、爺さん達にも義理があるし、行き成り慣れない武器を装備すると言うのも気が引けるな・・・。』
『ふむ、上にも掛け合わなければならないな、次の会議までに根回しもしておかなければ・・・・。』
隊長と副隊長の会話を聞きながら目を合わせる少年たち、恐る恐ると言った口調で二人に話しかける。
『あのー・・・その街の工房の親方達なんだけど・・・。』
『いち早くニッパニアの工具に目をつけて、道具を更新していましたよ?』
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・。
・・・・。
『あ?』『は?』
思わずと言った表情で、振り返る隊長と副隊長。
『何でも、グラインダーとか言う大きな工具を導入してから、研磨加工や資材の切断が楽になったー!って小躍りしてましたもん。』
『爺さん達が、べろんべろんに酔っぱらっていて絡まれた時に知った事なんだけどなぁ、台の横に輪っかが取り付けられた変な工具でしたよ。』
『ぎゅーん!って凄い音がするんですよ!!輪っかの部分を刃に当てて研磨するんです!』
隊長と副隊長は顔を見合わせると、無言で頷き、次の長期休暇の時にゴルグガニアに行く事を心に決めるのであった。
そして、後日・・・・。
『コリンー!暫くぶりだねー!』
『おう、ココルか』
『休日は、サテラニアに行ってきたんだよ!ゴルグガニア程ではないけど、背の高い建物が多くて見ごたえあったよ!昔あの街行った事あるけど、あそこまで変わるなんて・・・ニッパニアって凄いね。』
『俺は実家の手伝いばかりだったなぁ、まぁ何だかんだで我が家が一番落ち着くんだけどな。』
カラン、カラン
『おっと、もう集合の時間か・・・。』
『時計のお蔭で時間が正確にわかるようになったけど、慌ただしくなったなぁ・・・。』
兵舎に鐘の音が響くと、兵士見習いの少年たちが訓練場の広場に集まる。
暫くして、討伐隊の隊長と副隊長が訪れるのだが、見習い兵たちはその姿を見て思わず息をのんだ。
『おう、お前ら長期休暇は楽しんだか?』
『しかし、鍛錬は欠かしてはいないだろうな?だが、安心しろ、これからしこたま鍛えてやるからな!』
斑模様のヘルメットとゴーグル、そして沢山のポケットが付いたボディーアーマーと、どこぞの警備兵やサバイバルゲームプレイヤーの様な姿であり、その異様な光景に見習い兵は大いに狼狽える。
『あ・・・あの・・・そのお姿は・・・。』
二人は、よくぞ聞いたとばかりに、したり顔をすると仁王立ちをしながら装備を見せつける様に説明を始める。
『これはな、ニッパニアの兵士も身に着けるボディ・アーマと言う軽鎧だ!』
『革鎧の様に動きを阻害せずに、しかも刃に強い優れものだ!布とも皮ともわからん素材だが、全身甲冑を身に着けるよりも遥かに軽量で、防御力も高い!』
『流石に、連中が扱うジュウとか言う飛び道具は手に入らなかったが、刃物や工具に関しては規制が緩いらしくてな、いやぁ良い買い物だった!』
がははと、大笑いする二人組を白い目で見ながら、見習い兵たちは心の中で、大人買いを大人げなく出来るのは良いなと呟くのであった。
・・・・・同時期、日本と特別に親交のある国の兵装の一部が、日本式に更新されつつあるであった。
モンキーモデル・ボディーアーマー
日本の一部の企業が、未だに戦乱の続く異世界大陸の防具事情に目をつけて開発した簡略型のボディーアーマー。
高い防刃性能を持つが、自衛隊の装備するボディーアーマーに比べると大きく性能が落ちる。
しかし、大陸沿岸部の地域で使用されている革鎧を遥かに上回る防御性能がある為、かなり高い需要がある。
ベースがベースだけに、フル装備するとサバイバルゲーム装備の様な姿になってしまう上に、使用武器がポールウェポンなどの近接武器なので日本人から見たらシュールな姿に映ってしまうだろう。
ちなみに、異世界大陸用モデルの本アーマーは、一部の愛好家にも需要があり、日本でもそれなりに売れたと言う・・・。
実は・・・日本の呼び方によってその国の性質や日本に対する好感度が判ります。
ニーポニア(割と好感度が高い方、ごく普通に国交を開いて貿易していたりする。ただし、最低限の警戒は怠らない)
ニッパニア(ちょっと警戒していたり、距離が離れている方、全てが全て日本と敵対的では無いが、警戒心が強い国。後に仲良くなったところもある)
ニッパ族(族呼ばわり、完全に敵対的か、差別の対象。面と向かって呼ぶ場合もあるが、外交上ニッパニアと呼ぶに留めている国も存在するが、いずれボロが出そう)
ジャー・ポニス(大陸沿岸部から少し離れた地域で、言語や文化が違う。日本の情報はそれ程多く入らないが、それなりに気にしたり警戒したり)
ニフォン(ソラビトが日本の事を言う時に使う)
ニホン(ごく一部の親日国。ウミビトが主に使うが、その他にもごく一部の国や個人が正確な発音にこだわり、そう呼ぶ)