異空人/イクウビト   作:蟹アンテナ

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第11話   空の民 空人

突如日本領空に現れた巨大な浮島は、そのまま福井県から東京都を突き抜けるコースで進行を続けていた。

 

「あの浮島の詳細な情報は届いていないのか?」

「はっ、どうやら太古の昔から存在するもので、日本が転移する前からこのコースを通っている様です。」

「それだけか?」

「大陸の国々は、浮島の住民たちとは基本的に交流が無い様で、ただ頭上を通り過ぎるだけの存在という認識しか無い様です。」

「ふむ、向こうの方から接触がないうえに、特に何をする事も無く唯通り過ぎるだけならば、問題はないのか?」

「ただ、気になる情報が・・・。」

「言ってみろ」

「その浮島の住民たちは、腕が翼の様な形状をしており、飛行能力を有するらしいです。」

「何だと!?」

「その気になれば、あの浮島から自由に降りてくることが可能かと思われます。」

「それをなぜ先に言わない!」

「このままやり過ごすか、浮島の住民と接触してみるか・・・。」

「難しい賭けだな・・・。」

 

 

 

空の国は、突如出現した未知の大陸の調査のために、自警団の中から有志を募り、千数百年ぶりに下界への接触を試みようとしていた。

 

「・・・・どういうつもりだ?ミーティア」

「私も行かせてください、お父様、下界の、それも未知の領域の探索なんて、またと無い機会です。」

「駄目だ、危険過ぎる。」

「何でも、例の怪鳥の目撃証言の中に、人らしきものが乗っていたと言う物があるではないですか。」

「俄かに信じ難い事だが、似たような証言が多く寄せられてきたので、信憑性はあるのだろう。」

「巨大な鳥の翼を借りて、空を舞う・・・リクビトの中で初めて私たちの領域に挑んだ者たちが居る大陸なのです。」

「そうだ、外界からの接触を断つ為に、我らは大地を捨てたのだ・・・しかし、それもここまでなのかも知れん。」

「だからこそ、私は彼らに会ってみたい、私たちに追いつき、手が届く程の力を持った大地の民に!」

「ミーティア、お前も歴史くらいは学んだのだろう?我々は太古の昔、他種族から度々襲撃を受けて続けてきたのだ、

もし、リクビト達が空の領域に手を伸ばす様になった場合、再び我らは危機を迎えるだろう。」

「大地を捨てる前の私たちは、多くの敵も居ましたが、多くの友も居ました、彼らが敵であると誰が決められましょうか?」

「しかしだな・・・・・。」

「領主様!大変です!未知の大陸から巨大な羽虫の大群が!!」

「何だと!?」

 

 

 

 

「本当にデカい島だな・・・まるで一つにくっつけたハワイが丸ごと空を飛んでいるみたいだ。」

ヘリから降ろされたジープに乗って、空撮された「空の民」の住居と思われる場所の写真を眺めながら呟いた。

 

「彼らの町の上空は気流が乱れていてヘリが近づけないみたいですね。」

「連中は、俺たちの接近に気付いて、何らかの装置を作動させたみたいだな、まぁそりゃ、警戒するだろうがよ。」

「ははっ、まぁ完全に不法侵入している訳ですからね。」

「構うもんか、こちとら領空侵犯されとるんだ、連中の首領に話つけなきゃいかんよ。」

 

 

ジープで島の中心部に向かっている今現在、既に浮島は日本上空にあり、太陽光を遮り場所によっては夕方の様に薄暗い地域がある様だ。

 

 

「今のところ浮島からの落下物は報告されていない様だな、まったく、地層が剥き出しな外観なのに、随分と頑丈な事だ。」

「浮島の下部に魔鉱石の塊と思われる発光体が確認されましたが、あれがこの島を浮かせている動力炉に当たるものの様です。」

「またまた魔鉱石か、この世界のものは殆ど魔鉱石に影響されたり依存していたりするんだな。」

「まさか、島を丸ごと空に浮かせるとは思ってもみませんでしたよ、でも、この性質は様々な用途に期待できそうですね。」

 

ふと、空を見ると、軽鎧を身に着けた人型の影が空に集まっているのが見えた。

「おい?あれを見ろ!」

「おおっ、本当に空を飛んでいるよ、ま、向こうの方から出向いてくれれば都合が良いか。」

 

 

彼らは非常に困惑していた、空から巨大な羽虫が飛んでくると思ったら、今度は空の民の領域に走竜を遥かに凌ぐ速さで、

汚い斑模様の鎧虫が街道を走っていたのだ。

その背中には、これまた汚い模様の服装をしたリクビトが乗っていたのだ。

 

「リクビトめ・・・空の民の領域に何をしに来たのだ?」

「お父様、彼らは短槍と思われるものを装備しているみたいです。」

「何とも奇妙な槍だ、あれだけ長い柄に取り付けられている刃が、短剣程度の短さとは・・。」

「一見軽装にしか見えんが、あの様な鎧虫を手懐ける者たちだ、何を隠しているかは分からんぞ?」

「お父様、彼らは私たちの首都へ向かっているみたいです。」

「ぬぅ・・・・彼らの目的が侵略であるのならば、容赦はせぬぞ」

「彼らもこちらに気付いたみたいですね、動きが変わりました。」

「ふむ、規則正しく整列し始めたな、話をする余地があるのかもしれん。」

 

 

 

 

 

「駄目だ・・・全くわからん・・・。」

空の民とコンタクトを取るために、空中大陸を訪れた自衛隊、しかし、大陸の言語と違う言葉で喋るため、まるで会話が進んでいなかった。

「うーむ、また人魚達の時みたいに解読作業を進めなきゃいかんのか?まぁ、一応覚悟はしていたんだが。」

「ジェスチャーで辛うじて意思を伝えることが出来ているが、このままじゃいかんよなぁ?」

「言語学者を総動員する必要がありそうだな・・・まったく・・・・あの西本っていう教授も喜びそうだ。」

「本当にどうした物か・・・・。」

 

 

 

「あの斑模様の連中の物言いは、よくわからん・・・。」

「斑のリクビト達は、複数の言語で話しかけてきた様に見えたな、残念ながら我々の言葉は喋れなかったみたいだが。」

「これで、少なくとも彼らが侵略目的で訪れた線は薄れたな、となると国交が目的か?」

「だが、言葉の壁がな・・・地道に解読する必要がありそうだが・・・。」

「あの、お父様?」

「何だミーティア、何か妙案でもあるのか?」

「その・・・彼らの話していた言葉の中で聞き覚えのある言語があったのですが・・・。」

「何?本当か?」

「恐らく、荒野の民の言語と思われます、学術院の先生から古文書を見せてもらったことがあったので」

「なるほど、彼らは荒野の民と交流を持っているのかもしれんな、して、話せるのか?」

「正確に発音出来るか不安はありますが、やってみます。」

「頼んだぞ、ミーティア」

 

 

こうして、ソラビトの代表として、領主の娘が護衛を付けて自衛隊の天幕へ訪れることになった。

 

 

『あの、私、ミーティア 、よろしく です。』

『大陸語が解るのですか?私、田辺 です。』

『ソラビト、場所、何ですか、用事、来る。』

『我が国、日本の空、貴方達、飛んでいる、理由は?』

『ニフォン?空?空は、皆の物、領土、関係ない?』

『私たち、元々、世界、空を飛べる、国々、だから、空に領土、ある。』

『元の世界?貴方、世界、違う?』

『私たち、地球、天災、巻き込まれた、それで、此処に来た。』

『チキュー?ここ、ウォルクス、世界、名前』

『世界?ウォルクス?アルクスと?違う?』

『呼び方、民によって、違う』

 

「何だか、向こうも片言っぽいな、話が通じるだけまだマシだが・・・。」

「まぁ、後はある程度話をつけて、それから国交を結ぶことになりそうだな、大使館を置くのには時間がかかりそうだが」

 

 

 

 

 

 

 

 

エルティ・カータ(エーテルカイト

魔鉱石の結晶に特殊な処置を施し、力場を形成し、物を浮かせることが出来る機構。

空中大陸の底部にある魔鉱石の塊は、異世界に存在する魔法版偏西風の様な物を利用し、外部から魔力を取り入れて飛行を続ける。

自力で航行するというよりも、ヨットの様に魔力の流れに乗って動いているので、自力で航路を変更することは不可能。

ただし、何らかの影響で魔力の流れが変わると航路が逸れる可能性が高い。

過去に火山噴火などの影響で気流が乱れ、大幅に航路が変わったこともある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

番外編

 

 

2XXX年

 

地球は滅亡の危機を迎えていた。

磁気嵐や、オーロラの発生、そして、日本の消滅と同時にスーパーボルケーノが発生。

日本から発生した、その凄まじい火山噴火は、アジア大陸の一部を飲み込み、地殻をめくりながら、吉林まで到達する巨大なカルデラを形成した。

地殻津波が、各国の湾岸を飲み込み、世界規模で壊滅的な被害が発生し、かつて前例のないほどの人口激減を起こしていた。

 

 

長く混乱が続いていたが、懸念されていた噴煙による地球寒冷化が全く起こらず、各国の調査団は日本跡地のカルデラから、鉱物サンプルの収集を始めた。

驚くことに日本から発生した巨大火山の溶岩は、青白く発光しており、地球上では今まで確認されていない物質で構成されていることが判明した。

舞い上がった噴煙は光り輝く粒子となり、電離層に帯を形成、新たな地球の気象の一部となった。

 

この物質は、今までの物理法則を覆す驚異のエネルギー物質である事が研究により判明し、大打撃を受けた人類の復興に大いに役立つ新資源として期待されている。

 

しかし、この物質・・・消滅した日本と言う国の名前から取ったジャパニタイトという万能資源は新たな資源争奪戦の原因となるのだった。

 

 

 

 


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