空から舞い降りた異形の軍勢にトワビト達は、困惑していた。
幻惑の魔法が全く効果が無い事と、万物に宿るはずの魔力が一切感じられなかったこと、何よりも一番不味いのが集落を発見されてしまった事。
会議をするために使われている村長の屋敷の会議室は村の幹部たちでひしめき合っていた。
「まさか、森の外からの来訪者とは・・・」
「連中はこの森を調べるために派遣された調査隊と言っておりますが・・。」
「村の情報を外部に漏らすわけには行かん、すぐにでも始末しなければ村の存続にかかわるぞ!?」
「彼らは敵対の意思は無いと主張しております、更に彼らは巨大な羽虫に乗り、何十人も降りてきたのです、もし彼らと敵対したら次々と兵を空から送られ我々が滅びますよ。」
「更に悪い情報だ、奴らには幻惑魔法が全く効き目がない、他の魔法は試していないが、魔法の殆どを無効化されてしまう可能性がある。」
「なんと、魔法が通じぬと!?それでは、我らの最大の武器が無効化される事になるぞ?荒野の野蛮人じみた刀剣での肉薄しか手立てがないという事か?」
「少しは、争う事から離れろ、今は彼らをどうやって丸め込むかだ。」
「彼らは我々と国交を結ぼうと言ってきた、だが、そうなると我々の集落の位置を他の国々に漏らす可能性がある」
「忌々しいリクビトめ!空を飛ぶ巨大な羽虫だと!?魔法の無力化だと!?新しい玩具を手に入れた途端にこれだ!」
「千年以上も時を隔ててみたものの、相も変わらずか、人食い族との戦争の頃から全く変わっていない。」
「あの、盛り上がっている所申し訳ありませんが、彼らはそもそもリクビトではない種族らしいですが・・。」
「リクビトでは無い?リクビト以外が、あの荒野から訪れる事も無いだろう?亜人の使者など、そもそも連中が送り付けてくる筈がない」
「彼らと直接会った私が話そう、外見こそリクビトと余り差は無いが、彼らはその身に魔力を宿していない様なのだ。」
「アドル魔術長?それは真か?魔力がどれだけ弱い者でも、ほんの微量でも帯びている筈だぞ?」
「私も信じられなかった、極僅かな反応すら感じられなかったのだ、その様なリクビトは聞いたことも無い。」
「荒野に居た頃は、その様な種族は存在しなかったはず、魔鉱石によって変異したにしては、奇妙な話だ。」
「何にせよ、森の外の者たちを村に入れる訳には行かん、お引き取り願おうか」
「では、彼らに伝えましょう、使者を送る準備をしなければ・・・。」
森の外から訪れた斑模様の謎の集団の対応がまとまりつつあった、これから使者を送ろうとしたその時・・・。
「緊急事態です!ご無礼をお許しください!」
会議室の扉を叩き付ける様に開き、傷だらけの自警団の隊員が転がり込んできた。
「何事か!もしや例の連中が・・・」
「違います!鋼蟷螂の群れが現れたのです!!」
「鋼蟷螂の群れだと!?馬鹿な、奴らは鉱山付近にしか生息していないはず!?いや、兎に角、自警団と魔術師部隊を集めろ!急げ!!」
「はっ!!」
「ぐぐぐっ・・・・このような時に・・・。」