とある大学の研究所、言語や文化の研究の為に異世界の大陸の各地から、訪れた少女達が暗い休憩室でなにやら騒ぎを起こしていた・・。
「むり・・・もう無理っ!!」
「姉さま、耐えなきゃ、くぅっ!!」
「精神を安定させろ、集中を切らすなっ・・・ぐぅっ!!」
「だめ・・・もうだめ・・・んぁぁあああっ!!」
「ミーティアっ!・・・ちょ・・ちょっと、あっ・・ああぁぁぁぁっ!!」
「馬鹿者っ・・・ぐっ、すまん、ウルスラ、たの・・む・・・うぅぅっ・・んはぁぁっ」
「ま・・・まっ、ヴィーナお姉ちゃ・・・うぬーーっ!」
次々と、少女達が力尽きようとしていた、その時!!
ブゥゥゥン!・・・ぴんっ・・・ぴきんっ!
暗かった休憩室の電灯がつき、停止していた機械類が起動し始める。
「はぁっ・・・はぁっ・・・た・・・耐え抜いたわね。」
「も・・・もうこりごり」
「はっ・・・はぁっ・・だから言ったはずだ・・・無茶だと・・・はふぅっ・・・」
「ね・・姉さま、姉さま・・・わたし生きている?」
部屋に明かりがついた途端に、糸が切れたように倒れ込む少女達・・・全員まるで長距離走をした後の様に、
息を荒げ、顔を紅潮させ、全身汗まみれになっていた。
「れーぞーこ と言う物は、便利そうに見えて、随分と問題の多い魔道具だな・・・。」
「てーでん したら、れーぞーこの中の食糧が腐ってしまうと、此処の学生が言うから、やってみたけど・・・」
「まさか、電撃の出力を調整しないといけないなんて・・・高度な技術過ぎるわ・・・。」
「みんなでお金だして買ったのに・・・プリンが腐っちゃうなんて、そんなの許せないよぉ・・・。」
「もうやらんぞ・・・くそっ、汗でぬるついて上手く車椅子に乗れん・・・。」
その時、ガチャリとドアが開けられ中年男性が部屋に入ってくる
「電源が復旧しましたよー・・って・・・どうしたんですかっ!?」
死屍累々と言った休憩室の光景を見て、思わず固まる西本教授、するとへたり込んでいた少女達がはっと我に返る
「きゃっ」
「うん?」
「きゃあああああああああああっ!!」
汗まみれで透けた服を見られたヴィーナは、そのサンゴ色の鱗や髪と同じ位、顔を真っ赤に染めて、
反射的に碌に形にもなっていない魔力の塊を衝撃波として西本教授に放つ。
「なっ・・ちょっまっ・・・どわあああああっ!?」
まるで爆風に当てられたかのように部屋の外まで吹き飛ばされ、コンクリートの壁に叩き付けられぐったりする西本教授、
これが、水鉄砲や火球などに成形されていたら、死なないまでも、病院送りにはなっていただろう。
「ヴィーナ!やり過ぎよっ!」
「はぁっ・・はぁっ・・・す・・・すまん。」
「ヴィーナぁ?だから意地張っていないで布の服にすれば良かったのに・・・。」
「ヴィーナお姉ちゃん、水竜のヒレを重ね着しても、汗かいたら台無しだよ。」
「だが、ニホンから何時までも布を購入する訳にも行くまい、海の素材だけで、まともな服を作らなければならないのだ。」
「分厚くすれば、そりゃ見えにくくなるんだろうけど、濡れると透けるでしょ、その素材、やっぱり鎧のインナー向けよ。」
「強度だけは問題ないのだ、それは、間違いないが・・・。」
「君たち、私の事忘れていないかぃ・・・っててててて」
ふらつきながらも、腰を摩りながら、西本教授がドアにもたれかかる形で休憩室の前に立つ。
「っ!!に・・ニシモト教授!?・・・済まないが、他所の方を向いててくれないか?何か羽織るものを・・。」
「あぁ、ごめんごめん、えっと・・・部屋の端のロッカーにジャージがあるからそれを着ると良いよ。」
「っ・・・こ・・・これか?・・・この金具は一体・・・いや、無いよりはマシか・・・。」
チャックの閉じ方を知らないヴィーナは、開いたままのジャージの上着を羽織り、両手で布地を引っ張って塞いでいた。
「ニシモトさん、ニシモトさん、私とお姉さま達は、れーぞーこ を動かすために雷撃魔法をずっと使ってへばっていたの」
「それは、随分と無茶なことを・・・(文字通り人力発電だな・・・っと言うよりも、誰が動かし方を教えた?」
「全ては、プリンなる菓子の為・・・。」
「物を腐らせない為の魔道具なんでしょ?だから、電撃魔法の出力を調整して、起動してみたの。」
「あぁ、冷蔵庫が停止したら中の物が腐っちゃうかもね・・・って・・・あれ?」
「ニシモト教授?どうしたのかしら?」
「ねぇ、君たちは、氷結魔法と言う奴を使える?」
「え?勿論、使えるけど・・・それがどうしたの?」
「冷蔵庫はね、物を腐らせにくくする効果はあるけど、それは凍らせたりするから腐りにくくなるんであって、不思議な力で問答無用で腐らせなくする機械じゃないんだよ。」
「「「「っ!!?」」」」
「だから、態々電圧と電流を調節した雷撃魔法を使う必要は無かった筈だけど・・・。」
「ば・・・っ」
「ヴィーナさん?・・・あれ?プリシラさん達もどうしたのですか?」
「ばかものーーーー!!馬鹿馬鹿馬鹿!ばかぁぁぁぁっ!!」
「最初に言えばよかったのに・・・・。」
両目に涙を溜めたヴィーナに魔法衝撃波を連続で食らう西本教授、そして冷ややかな目つきでその光景を見続ける3人
試験的に導入された魔鉱石式発電機のトラブルで、一帯が停電してしまったが故に起きた悲劇がこうして幕を下ろす。